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蛇足 とあるフラグの天使同盟 陸匹目 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/04(日) 16:09:02.09 ID:ETsIBHFYo
この二次創作はライトノベル『とある魔術の禁書目録』の登場人物、一方通行を主人公にした
どうにかしてほのぼのな雰囲気を出そうと奮闘するどうしようもないSSです。


【本編】

一方通行「フラグ・・・ねェ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1285654962/

一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」  風斬「そうですよ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1289310136/

一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」  エイワス「まだそんな事を言っているのか」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294928027/

一方通行「フラグ・・・・・・だろォな」  垣根「ち・・・・・・くしょ・・・・・・う」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1295564748/

一方通行「フラグだと? って事ァ」  レッサー「私はあなたが好きって事です♪」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1298041227/

一方通行「そンなフラグはヘシ折ってやる」  ヴェント「・・・・・・あ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300453744/

一方通行「いいか、フラグってのはなァ」 ガブリエル「vbhti素敵apfrgt」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303132992/

とあるフラグの天使同盟
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305963129/


【本編のエピローグ・続編】

蛇足 とあるフラグの天使同盟
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307804166/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 弐匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310210981/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 参匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313069422/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 肆匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316009458/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 伍匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1319277226/


上記のスレからの続きとなっています。もしお暇でしたら、ご一読を。


以下、留意点など。

・更新は基本的に三日以内です。時間帯は不安定。
・キャラ崩壊が起きています。ご注意ください。
・地の文と台本形式、両方でお送りします。
・誤字脱字のバーゲンセール。発見した方は厳しく指摘してやってください。
・書き溜めは多分尽きる事は恐らくないでしょう。
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/12/04(日) 16:10:21.82 ID:ETsIBHFYo


                   【登場人物紹介・『天使同盟(アライアンス)』の構成員】


【一方通行(アクセラレータ)】


このSSの主人公。学園都市最強、超能力者(レベル5)第一位の『一方通行』の能力を持つ白髪の少年。
第三次世界大戦を経て大天使ミーシャ=クロイツェフに好意を抱かれてしまった哀れで幸せな男。
『第一九学区事件』後、ひょんな事から垣根帝督と衝突してしまうが、その事もあって一方通行は
他人(特に異性)との交流について真剣に考えるようになる。現在はフラグを立てた女性陣と真剣に
向き合い、自分という存在と方向を確立しようと奮闘している。


【ミーシャ=クロイツェフ】


『神の力(ガブリエル)』。本作のヒロインにして『天使同盟』の顔。水を司る本物の大天使。
第三次世界大戦で意思疎通をした一方通行に好意をよせ、以後は彼と共に人間界で生活する。
『第一九学区事件』で周囲の仲間達に救ってもらった後も学園都市に居座り自由奔放に暮らす。
現在、フィアンマと打ち止めを巻き込んで一方通行に贈る『サプライズ』を進行している。


【風斬氷華(ヒューズ=カザキリ)】


『天使同盟』に咲き誇る一輪の花。『天使同盟』内でも比較的常識を持ち合わせている健気な女の子。
油断をするとつい風斬がヒロインなのではないかと勘違いしてしまうほどヒロインをしている、はず。
『第一九学区事件』も好意を寄せる一方通行相手になかなか積極的になれずにいるが、健気に彼を
遠くから見守っている。風斬氷華専用ルートが蛇足にて確定した。
3 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/12/04(日) 16:10:52.86 ID:ETsIBHFYo



【エイワス】



――――システムエラーにより、エイワスの情報が閲覧出来ません。



【垣根帝督】


学園都市第二位の超能力者(レベル5)、『未元物質(ダークマター)』の能力を持つ少年。
『第一九学区事件』で脳をひどく損傷し、能力と魔術が使用出来なくなってしまった。
ひょんな事から一方通行と衝突してしまい、彼は一時的に『天使同盟』から離脱した。
現在はドレスの少女と共に過去に訪れた魔術サイドの地へ足を運び、能力と魔術を
取り戻す修行に専念している。一方通行同様、異性との向き合い方がわからないでいる。


【フィアンマ】


『天使同盟』最後の構成員。ローマ正教『神の右席』のリーダーを務めていた最上級魔術師。
様々な経緯を辿った末、『天使同盟』唯一の魔術師として加盟する事になった。
組織内でも比較的常識人ではあるが、それでもたまに意味不明のボケに走ってしまったりする。
現在はミーシャと打ち止めの協力を受けながら、とある『計画』を進行中なのだが…………。
4 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/12/04(日) 16:11:29.93 ID:ETsIBHFYo


                   【閲覧可能エンドルート一覧】



・【風斬氷華育成計画 -AIM Simulation-】

・【???】

・【???】

・【???】 

・【???】 

・【第一位と第二位の垣根を越えて -Identity-】

・【???】 

・【???】
5 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/12/04(日) 16:12:03.57 ID:ETsIBHFYo
前スレで更新を開始しますので、しばらくお待ちください。
6 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/12/04(日) 16:36:33.19 ID:ETsIBHFYo

前スレからの続きを投下します。
カエル顔の医者と一〇〇三二号が診察を終えて帰るようです。
7 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/04(日) 16:37:33.67 ID:ETsIBHFYo

カエル顔の医者と一〇〇三二号は荷物を片して部屋を去ろうとするが、
一方通行が二人を呼び止める。


「金はイイのかよ?」

「ああ。 そうだったね、えーと」

「診断料なら既に頂いているので問題はありません、とミサカは返答します。
 それ相応に良い物を見させていただきましたし、ネットワークも大いに盛り上がってます」

「……そりゃずいぶんとお高い診断料だなクソッたれ」


いやちょっと何勝手に決めてんの、とカエル顔の医者が呆れ果てた様子で一〇〇三二号を見るが、
彼女は全く応じず、一度頭を下げると踵を返して部屋を後にしてしまった。
8 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/04(日) 16:38:53.96 ID:ETsIBHFYo

「……やれやれ、個性というのも考えものだね? それじゃ、お大事に」

「世話になったな」

「"お互い様さ"」

「?」


最後に一方通行へ意味深な発言を残し、カエル顔の医者も部屋から立ち去って行った。


――――――――――――――――――――――


『さてウサギ。 お前にもう一つお願いしたい事があるの』


カエル顔の医者と一〇〇三二号が帰った後、キャーリサに『ある物』を持って来いと
頼まれ、否、命じられ、一方通行は頑なに拒んだがやはり最後は根負けし、一度
ホテルを出て『ある物』を取りに行き、再びホテルへ戻ってきた訳だが―――――、
9 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/04(日) 16:39:40.11 ID:ETsIBHFYo

「……これでイイのかよクソババア」

「あははははは! うんうん、やっぱお前にはそれがよく似合ってるの、不思議とな!」


本当に風邪なんだろうなこいつ、と疑いながら一方通行がこめかみをひくつかせる。
そんな苛立ち度数一〇〇の一方通行を見ながらゲラゲラと笑うキャーリサが本当に
病人なのかどうか疑問に思う彼の胸中も頷けるが、こればかりは致し方ないだろう。




学園都市最強の第一位の頭上で何ともキュートなウサギのお耳がひょこひょこ揺れていれば、鬼だって笑う。



10 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/04(日) 16:40:28.89 ID:ETsIBHFYo

「ふふふ、それ、まだ大事に持っててくれたんだな」

「成り行きだクソ……。 ま、これのおかげでとある強敵を討てた事もあるしな。
 打ち止めのヤツも何故か気に入ってやがるみてェだし、割りと重宝してる」

「それ付けてたら足が速くなったりしないの?」

「オマエはあの国民的ゲームをやった事があンのか!?」


一方通行が頭に装着しているのはロンロン牧場の周囲を走り回っている
マラソンマンから貰える物……でもなければ、ロマニー牧場でマーチを演奏し
ヒヨコを集めて入手出来る物……でもない。

『星の欠片』を巡る旅の過程で立ち寄ったバッキンガム宮殿でキャーリサから貰った
謎のウサ耳バンドである。


「オマエこれ一回付けたら何故かなかなか取り外せねェの知ってンだろ……」

「でもお前は付けてくれてるし。 案外自分でも気に入ってるんじゃないのか?」
11 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/04(日) 16:41:22.08 ID:ETsIBHFYo

「オマエが年甲斐も無く手足バタバタさせて付けろ付けろのシュプレヒコールを
 しやがるからだろォが!! 二〇代後半の女が駄々こねても気味悪いだけなンだよ。
 ……それで、これを装着した俺はどォいうアクションに移ればイインだ?
 杵でも担いで餅つきよろしくオマエのめでたい頭でもカチ割ればイイのかよ」

「鑑賞するの。 私がこーやって、じ〜」

「これオマエがオッサンとかだったらコスプレを強制されてる野郎の
 卑猥な絵面が完成するな……。 とンだ趣味嗜好をお持ちのよォで」


愚痴愚痴と文句を漏らす一方通行に構わず、キャーリサは膝を抱えて座った体勢で
月からやって来た正義の使者、『因幡通行(ウサミミレータ)』を凝視し続ける。

本人は見ているだけでも満足そうだが、特にアクションも要求されずウサ耳バンドを
装着して突っ立っている一方通行にとってはただの羞恥プレイでしかなかった。
もしこの時点でまだ一〇〇三二号が帰っていなかったらどう行動していたかは言うまでもない。
12 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/04(日) 16:42:18.73 ID:ETsIBHFYo

「もォそろそろ俺、帰ってもイイか? 月に」

「ダメなの。 今日はずっと私の看病してろ」

「ふざけンじゃねェぞ。 つか病人が看病しろなンて命令してくるか普通。
 もォずいぶん体調良くなってンだろ、朝死にかけてたオマエは誰だったンだよ」

「うー、ごほっ、ごほっ……」

「女優にゃなれねェな、その演技力じゃ」


ともあれ、この様子だと今日は本当にアジトへ戻れそうもないな、と一方通行は
ため息をつく他なかった。そんな些細な仕草にさえ反応するウサ耳バンドの耳が
ふらふらと揺れ、その度にキャーリサが笑顔を浮かべるのだが、一方通行はもう
文句を言う気力も残されていない。

それに、

この状況や出で立ちはともかく、純粋に楽しく笑うキャーリサの姿を見るのは
悪くない。一方通行は陽が沈んでいく学園都市の空に目を向けながら、
無意識にそんな感情を抱いていた。
13 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/04(日) 16:48:13.79 ID:ETsIBHFYo
という訳で、今日はここまでとさせていただきます。

一〇〇三二号を加えたお話はいかがだったでしょうか?
本当はもう少し真面目に会話させたかったのですが、それやっちゃうと
本筋からズレまくるのでまた次の機会にさせていただきました。

さて、次回でいよいよ一方通行パート、アンロック編withキャーリサも終了します。
長かったですが楽しんでいただけだでしょうか。
そしてそのまま垣根帝督パートに移行します。大変長らくお待たせしました。

蛇足もついに六スレ目、もうここまで来たら10スレくらいやったろうかと
いう気になってしまいますね……。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

14 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/04(日) 16:48:40.61 ID:ETsIBHFYo



                          【次回予告】



「普段はふざけているような女だが、それでもテオドシアはイギリス清教のエキスパートだ。
 魔術はおろか能力の一つも使えない生身の状態で戦うなんて無駄、無茶、無謀の三連コンボだよ」
イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師――――――ステイル=マグヌス




「それでもあなたのその……演算能力? は確実に修繕されているようデスマス。
 あと一〇〇回くらい死にかければ能力を取り戻せるのではないマスでしょうか。
 いやー、死にかけて復活するたび強くなるってどこかの戦闘民族みたいデスねえ」
イギリス清教『必要悪の教会』の魔術師――――――テオドシア=エレクトラ




「その一〇〇回の内何回本気で死ぬ可能性があんだよ。 マジで死んだら元も子もねえだろ」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督



15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/04(日) 16:52:03.83 ID:DvZxSIVTo
この状況や出で立ちはともかく、純粋に楽しく笑うキャーリサの姿をウサミミ姿で見るのは
悪くない。兎耳通行(ウサミミレーター)は陽が沈んでいく学園都市の空に目を向けながら、
無意識にそんな感情をウサミミ姿で抱いていた。

ふぅ・・・
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大分県) [sage]:2011/12/04(日) 16:55:56.99 ID:r1l6ZI7U0
>>1
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]:2011/12/04(日) 17:02:18.97 ID:LArvcvl5o
キャーリサは雌豚だったんだね
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/12/04(日) 17:03:33.99 ID:19pVlTIGo

エンドルートの多さが気になる…後何度一方通行は爆発しなければならないのか…
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/04(日) 17:09:25.52 ID:fq6izg2No


>・【風斬氷華育成計画 -AIM Simulation-】
>・【???】
>・【???】
>・【???】
>・【???】
>・【第一位と第二位の垣根を越えて -Identity-】
>・【???】
>・【???】
一つがキャーリサだから後五つ、オルソラも多分入ってるだろ
残りの四つは一体誰なんだ……そもそも単独ヒロインエンドとは限らないんだよな
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/04(日) 17:15:26.10 ID:+XrRdUdDP

ところで垣根とのルートはホモルートかなんかなんですか(迫真)
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/04(日) 17:18:10.26 ID:f9X7zjL1o
国民的ゲームのでのアレは渡す物であって、貰うのはサイフいっぱいのルピーですぜ
乙!
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(熊本県) [sage]:2011/12/04(日) 17:58:24.50 ID:kwHy1k8S0

そして相変わらずの垣根ェ…
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/12/04(日) 19:27:01.42 ID:AvBWt5dz0
エイワスの情報が閲覧出来ない......だと...!?
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東) [sage]:2011/12/04(日) 19:31:54.33 ID:ekvEfL4AO
>>14
バーバヤーガがアップを始めました
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]:2011/12/04(日) 19:51:15.82 ID:ve0Ir6Uc0
>>19
おいおい、メインヒロインたるミーシャさんルートを忘れちゃいけねぇぜ
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/12/04(日) 19:55:35.91 ID:phrzFu+E0
乙。
嫉妬するキャーリサやなんだかんだで因幡通行になってあげる一方通行ににやにやしてたら予告の垣根で吹いたwwwwwwwwwwwwww
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/04(日) 20:28:48.99 ID:/k9BL93DO
>>1乙!

ルートは…

めがね巨乳
無敵変人
Mr.死亡フラグ
おっぱい
弁当
小悪魔
愛・天使

の7人(?)かな?


そして10スレとか…
0が2〜3個足りねぇぜ
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/04(日) 20:30:17.13 ID:/k9BL93DO
おっとルート追加


子供王女を忘れてた
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/05(月) 01:29:09.52 ID:2/CLehzoo
最初から全部ひっくるめて何スレだ?すげえなげえなこのスレ




ちょっと全部見直してくる!
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/12/05(月) 02:16:51.78 ID:pp1woMQH0
wrfholj>>1rft乙qyhzep

前スレのカエル医者のしらばっくれっぷり思わず声出して笑ってしまった
いいセンスしてやがるぜ
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/05(月) 18:12:24.35 ID:j6dGimRo0
垣根がまた死亡フラグを立て・・・

回避してる・・・だと・・・
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(四国) [sage]:2011/12/05(月) 19:20:27.09 ID:X65VIovAO
垣根の扱いひど過ぎww
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/12/06(火) 01:32:39.84 ID:MVM8SzEp0
新スレおめでとー!
これからも頑張ってくれ!
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 09:18:27.60 ID:K0XHcx020
乙りんこ
垣根パート待ちくたびれたぜ
35 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:17:56.75 ID:b5vuv5uBo
こんにちわ、更新を開始します。

新スレでも変わらずの支援をありがとうございます!
蛇足だけで既に六スレ目……ボリュームだけで考えると
もはや蛇足じゃなくなってる気がしないでもないですね……。

さて、そんな新スレで始まる今回の投下は、一方通行パート・アンロック編のキャーリサの
お話が終わり、次は垣根帝督パートに移行します。

ロシアでテオドシアと演算能力復活のための訓練をしていた垣根帝督。
その結果と、あと垣根もついに例の事件について知ることになります。

それでは、よろしくお願いします!
36 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:18:34.92 ID:b5vuv5uBo


「ウサギ」

「……あンだよ」

「こーしてると、お前らが宮殿に来た時の事を思い出すの」


ふと、キャーリサがそんな事を言ってきた。彼女の表情は先程までの
明るい笑顔と打って変わり、過去の記憶に思いを馳せるような儚い笑顔が浮かんでいる。
一方通行は不覚にもそんな彼女の姿に魅せられそうになった。

いや、ここは素直に認めるべきだろう。淡い夕焼けの光が窓から差し込み、
そのオレンジ色の陽射しに照らされるキャーリサの表情が良い塩梅に演出されており、
一方通行は彼女の姿に少しだけ見蕩れてしまった。
37 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:19:43.26 ID:b5vuv5uBo

「あの時も部屋で、二人きりで、色々と話をしたな」

「……そォだな。 オマエがイギリスで"不器用"なクーデターを起こした時の
 話とか、やれ母上がどォだの姉や妹がこォだの息つく間もなく思い出語り
 してやがったっけか。 第二王女してねェ時は本当に普通の女だなオマエ」

「可愛いだろ?」

「自分で言うな。 ……しかしまァ、あれだけ楽しげに話してた母国や
 家族の下へ帰りてェとか、オマエ少しは思わねェのか?」

「………、」


何の気無しに尋ねた一方通行だが、キャーリサは答えなかった。
ただ、その呻吟と寂寥感が混じり合ったような複雑な表情が、確かな返事になっている。
一方通行はゆっくりとキャーリサが座るベッドの端に腰掛けて、
38 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:20:52.18 ID:b5vuv5uBo

「軽率だったか。 考えりゃオマエが帰れねェ原因を作ったのは俺だしなァ」

「……そーだぞ」

「あァ、そォだよな。 ……だからちょっと待ってろ、ちょうど上手い話が
 俺の下に舞い込ンできてな。 イギリス清教の神裂が俺をイギリスまで連れて行く
 よォ厳命を受けたらしい。 俺はその話に乗った、だからついでって言やァ聞こえは
 悪いが、宮殿に行って詳しい状況をオマエの母上様から聞いてくる。 出来たらだが。 
 上手く取り繕ってオマエを、オマエやオッサン二人をイギリスに帰せるよォ手配してやる。 
 だから、」

「……お前のせいで、私はイギリスに帰れないの」


キャーリサは確認するようにもう一度繰り返した。


「本当に悪いとは思ってンだ。 だからそこは俺がきっちりケジメつけて―――」

「そーいう事じゃないし、鈍感め」
39 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:21:42.59 ID:b5vuv5uBo

鈍感という言葉に一方通行が過剰な反応を示した。

彼は考える。今の鈍感発言は恐らく自分が見当違いな発言をしているからなのだと。
焦らず、冷静に、状況と相手の心境を推測して一方通行は言葉を選ぼうとするが、
キャーリサは待ってくれなかった。


「英国のマスコミがどーとか、世界各地で小規模ながら騒ぎを起こしてる
 『暴徒』の出現とか、そーいうのは気にするなとさっき言ったはずだし」

「……でも俺のせいでイギリスに帰れねェンだろ? オマエは」

「そーなの」

「………、……。 ………………、帰れねェンじゃなくて、"帰りたくねェのか"……?」


そこでキャーリサはようやく傍にいる一方通行と目を合わせた。
その目付きは睨んでいるようにも見えたが、そこに恨みや敵意の色は見受けられない。
彼女の瞳を彩っているのは――――純粋な迷い。揺蕩う心が反映されていた。
40 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:22:54.86 ID:b5vuv5uBo

「お前と宮殿で話している時も言ったはずなの」

「?」

「お前と一緒にいると面白い、お前と一緒にいると楽しい、って」


本来、このように胸の内で思っている事を素直に口にする性格ではないキャーリサが
その胸中をはっきりと言葉にする要因の一つに、風邪による衰弱の影響もあるだろう。
病に冒されて弱ってしまった人間の言動が素直になるという話も多分にある。

しかしそれ以上に、キャーリサの言葉は己の強い意志が含まれているのを
一方通行は察する事が出来た。それ程までに、彼女は"想っている"。


「どーせこーなるなら学園都市でお前としばらく会ってなかった内に
 無理を通してでもイギリスに帰ってれば良かったの。 そーすれば
 今みたいに、半ば本気でずっとここに居たいなんて気持ちは生まれなかったし」
41 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:23:55.10 ID:b5vuv5uBo

「……、」

「仮に今、私の第二王女としての王権が本当に剥奪されたら、多分私は
 抗う事なく受け入れるの。 そーなれば私の居場所は無くなる。 いや、
 私の居場所はここになる。 ここにする。 学園都市じゃなくて、」

「……、」

「お前と、ずっと一緒に居る。 ……仮の話だけどな」


一方通行は口を挟めなかった。いつもならここで茶々を入れて適当にごまかす所だが、
そんな余地も与えられない程に、キャーリサの言葉は真剣味を帯びていた。


「けど、それでも、私にはやはり私の帰りを待ってくれている国民達がいるの。
 ブリテン・ザ・ハロウィンなんてクソ以下のクーデターを起こしたこんな私の
 帰りを待ってくれてる国民達がいる。 国のために、『連合の意義(ユニオンジャック)』
 の恩恵を受けていたとは言え、天使長クラスの力を手にしていた私に立ち向かった
 勇気ある国民達がいる。 私は第二王女として、『軍事』の柱として、その国民達を
 自分の勝手な都合で見捨てる訳にはいかないの」
42 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:24:52.20 ID:b5vuv5uBo

「……あァ」

「それに母上や姉上、ヴィリアンも私の帰りを待ってくれてるし。
 家族だ、あそこが私の居場所だ。 騎士団長もウィリアムも連れて、
 私はいずれ帰らなきゃならないし、帰りたい気持ちも当然ある」

「……、」

「でも、」


キャーリサの声に震えが生じているように聞こえるのは、果たして一方通行の思い違いだろうか。


「その一方で、心のどこかで、私が得た何もかもをかなぐり捨てて真の自由を得たいと
 考えている自分がいるの。 目を背けるなんてものじゃない、本当に全てを捨てて、
 廃棄して、破棄して、ここに居たいと考えてる自分がいる。 憧れや羨望じゃない、
 あくまで『選択』。 ……どこまでも自分勝手な女だと思っただろ?」
43 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:25:38.93 ID:b5vuv5uBo

「そォだな」

「……こんな事で思案に暮れるハメになったのも、全部全て何もかもお前のせいなの。
 どーしてお前はそんな態度で私に接して来るんだ。 お前さえいなきゃこんな喜び
 を知ること無く私は……。 ……ガキのくせに、知ったよーな態度とりやがって」


積年の恨みを晴らすような物言いとは対照的に、キャーリサは自然と
傍で座っている一方通行の白い手を握っていた。

この行動こそが、彼女の心境の顕れ。もはや言葉など不要と言っても過言ではない。


「……"一方通行"、私はどーしたらいいと思う?」

「自分で決めろ」
44 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:26:26.70 ID:b5vuv5uBo

慰めるでもなく、黙って抱き締めるでもなく、一方通行は言葉で応じた。
相手の気持ちによっては、それは冷たく突き離すような言い草に聞こえたかも知れない。
だがキャーリサがそうであるように、真剣に相手の心情を考慮した一方通行は即答出来た。


「俺も、国ってモンを背負ってるオマエとはスケールが違いすぎるかも知れねェが、
 この際規模の大小なンざ関係ねェ。 オマエ自身が並べた選択肢を吟味して、
 選ンだ道を進めばイイ。 胸を張ってな。 少なくとも俺はそォいうやり方で
 ギリギリの所を生きている……と、思ってる」

「……生意気言ってくれるし、ガキのくせに……」

「オマエは俺よりずっと歳上なンだから、俺に出来る事くれェオマエにも出来るよなァ?」

「歩んできた人生が違いすぎるの。 比較なんて出来る訳がないし」


そう言ってキャーリサはベッドに寝転び布団を掛けた。どうやらこのまま就寝するつもりらしい。
それでも、握った一方通行の手を離すことはなく、
45 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:27:03.70 ID:b5vuv5uBo

「……もー少しだけ、じっくり考えてみる」

「そォしろ」

「だから今日だけは……、ずっとここに居てくれないか? ウサギ」


一方通行は答えなかった。キャーリサも返事を待てる程の余裕が無かったのか、
目尻に僅かな雫を輝かせながらすぐに寝息を立ててしまった。
一方通行は彼女の目元を優しく指で拭ってあげると、


「………俺もオマエと居ると楽しいよ、……クソッたれが」


一方通行は翌朝、キャーリサが目覚めるまで一睡もせず彼女の看病に励んだ。
46 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:28:48.80 ID:b5vuv5uBo


                  〜Information〜


     【兎追いしかの街 -Wonder land-】がアンロックされました。



・【風斬氷華育成計画 -AIM Simulation-】

・【兎追いしかの街 -Wonder land-】

・【???】

・【???】 

・【???】 

・【第一位と第二位の垣根を越えて -Identity-】

・【???】 

・【???】
47 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:29:39.23 ID:b5vuv5uBo


――――――――――――――――――――――




起床してまず一戦。その後朝食を取って一戦。食事を兼ねた昼休憩を終えて一戦。
夕食の前に軽く一戦。夕食後に一戦。風呂に入る前に一戦。就寝前に一戦。夢の中で一戦。




どこのバトルマニアのスケジュールだと思わせる日々を過ごした垣根帝督は、


「痛てててててッ!! テメェわざとやってんのか!? 普通消毒ってのは
 こうトントントンって軽く叩いて処置するもんだろうが。 テメェはさっきから
 傷口に塩を塗り込むように痛い痛い痛い痛い痛い痛いっつってんだろぉぉぉッ!!!」

48 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:30:32.57 ID:b5vuv5uBo

「これぐらい我慢しなさい。 というより、"この程度で済んだ幸運を噛み締めなさい"」

「……君のような熱血バカを見てると、どうしても思い出したくない男の顔を思い出すよ」


ふーっ、と紫煙を窓に向かって吐きながら冷めた口調で言うステイル=マグヌスに
垣根は『俺は熱血とは程遠い人間だぞ痛い痛い痛い!!!!』と目を背けたくなるような
傷口に消毒液を染み込ませたコットンで抉り込むように処置をするエリザリーナを
睨みつけながらツッコミを入れた。


「ふーむ。 少々やり過ぎた感があったマスでしょうかねえ?」

「自覚があるだけマシってもんだ。 もう走馬灯なんざ見飽きたぞクソが」


現在エリザリーナ独立国同盟の軍事基地施設にある医療室で治療を受けているこの男、
垣根帝督は自分に何度も走馬灯をリフレインさせてきた銀と金が入り交じる髪の毛を
した四十路前の女魔術師、テオドシア=エレクトラと訓練を繰り返していた。
49 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:31:54.74 ID:b5vuv5uBo


訓練内容は『垣根帝督の超能力を取り戻す』という建前で行われた。
『未元物質(ダークマター)』。垣根帝督曰く、『自身が極限まで追い込まれたら
脳が反応して演算能力を取り戻すかもしれねえ』との事。

そんな訳で垣根帝督はイギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師、
テオドシアに自分から喧嘩を売るような物言いで訓練相手として選んだのだが、


「普段はふざけているような女だが、それでもテオドシアはイギリス清教のエキスパートだ。
 魔術はおろか能力の一つも使えない生身の状態で戦うなんて無駄、無茶、無謀の三連コンボだよ」


ステイルがつまらなそうな調子で言うように、テオドシア=エレクトラはめちゃんこつおかった。

もとい、メチャクチャ強かった。
50 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:33:25.91 ID:b5vuv5uBo

ダブついた上着に色を抜いて真っ白にしたジーンズという魔術師らしくない格好をした
テオドシア御大将はなんか一種類の魔術を究めているとかそんなんじゃなく、
手品師のように多彩な魔術を使い捨てるような手段で行使してくるタイプの魔術師だった。

正確には北欧神話をベースとした魔術を使い、短期間で使用魔術をホイホイと
変えるというタイプの魔術師なのだが、テオドシアは垣根があんまりにも勝ち気な
態度で接してくるものだから『ちょっとくらいは本気出しても問題ないマスよね?』的な
軽いノリで"戦闘中に魔術に基づく神話を切り替えまくる"という、格ゲーに出演したら間違いなく
複雑な操作を要求されるトリッキーな戦闘スタイルで挑んだのだが、


「対魔術師の経験こそ少なかれど、俺は今まで色んな能力者と殺り合って生きてきたんだぞ。
 つまりどんな戦闘スタイルの相手でも余裕で対応出来るスキルを持ち合わせていたはずなのに、
 まさかこの女がここまで強かったとはな……………」

「その対能力者との経験は、『未元物質』ありきで積んできた経験でしょう?
 魔術も能力も使えないあなたが『必要悪の教会』の魔術師に勝てる要素なんて無いわ」


エリザリーナの厳しいが的確な指摘に垣根は唇を噛むしかなかった。
51 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:35:56.60 ID:b5vuv5uBo

『追い詰められたら能力が復活するかも』という週刊少年誌でよく見るような
展開を期待した垣根帝督だったが、追い詰められるどころか実際マジで一〇回くらいは
死んだ気がする、とため息をつく。

しかし、ならば訓練は全くの無駄に終わったのかと言うと案外そうでもない。

「ていうか、さっきから皆さん。 垣根が魔術はともかく能力さえ使えない
 使えないと連呼しているのが気になるというか何というかデスねえ――――」


テオドシアは落ち込む垣根にくすくすと微笑みかけながら、




「―――実際、私に使ってきた"アレ"。 超能力デスしょ?」



52 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:37:09.33 ID:b5vuv5uBo

そう。


ほんの僅か。微弱で微細で微動でしかなく、片鱗のへの字も見えるか見えないかくらいの変化だったが、訪れていた。
垣根帝督は何度目かも分からなくなった訓練の最中、テオドシアに対して間違いなく能力による攻撃を行ったのだ。

その詳細は掌から鉄骨くらいなら吹き飛ばせそうな威力の烈風の発生。
そして自分を中心に小規模な全範囲爆破攻撃という、かつて垣根帝督が『未元物質』の
能力を用いて使用していた攻撃手段とほぼ同じである。

背中から『未元物質』最大の武器と言ってもいい無機質な白い翼が現出するような事は
無かったが、それでもこれは大きすぎる前進、収穫であった。


「あの程度じゃハエも殺せねえよ、使えねえのと変わらねえ」
53 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:38:05.40 ID:b5vuv5uBo

「それでもあなたのその……演算能力? は確実に修繕されているようデスマス。
 あと一〇〇回くらい死にかければ能力を取り戻せるのではないマスでしょうか。
 いやー、死にかけて復活するたび強くなるってどこかの戦闘民族みたいデスねえ」

「その一〇〇回の内何回本気で死ぬ可能性があんだよ。 マジで死んだら元も子もねえだろ」


当然、その程度の力を取り戻しただけでは垣根帝督は満足しない。
超能力を完璧に取り戻し、かつ魔力の精製が可能になる事。それが
垣根帝督の最終目標であり、己の『居場所』へ帰れる条件なのだ。


「はい。 とりあえず手作業で施せる治療はここまでよ。
 回復魔術でも完治出来ない程の怪我を毎回毎回負わないでちょうだい」

「チッ、うるせえな……それが出来りゃ苦労しねえよ」


垣根は言いながら、血が滲んだ包帯だらけの上半身にシャツと上着を重ねていく。
54 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:39:03.57 ID:b5vuv5uBo

「『必要悪の教会』以外に魔術のエキスパート的な組織は存在しねえのかよ?
 エリザリーナは訓練に付き合ってくれねえし、ステイルも乗り気じゃねえし、
 ワシリーサはもう飽きたっつーか次あいつとやったらマジで殺されるかもしれねえし、
 サーシャとは俺がやる気起きねえし、現状、テオドシアくらいしかいねえってのがな」

「何をー! 人がわざわざ忙しいスケジュールの合間を縫って訓練に付き合って
 あげているというのに、その言い草は失礼極まりないというものデスしょ!」

「……単純に、質の高い魔術師をお目にかかりたいのなら、
 僕は推奨しないが君にうってつけの魔術結社が存在するよ」


意見を提示してきたのは豈図らんや、ステイル=マグヌスだった。
垣根はとりあえず彼の言葉に耳を傾けてみる。




「イギリスの『黄金』系魔術結社の一つ……。 『明け色の陽射し』」

「……『黄金』系?」




垣根が聞いたことのない魔術結社の名前を出し、ステイルは忌々しげに煙草を噛みつけた。
55 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:46:33.94 ID:b5vuv5uBo

今回はここまでです。

キャーリサエンドのルートが解放されました。どういう結末になるかは
皆様も大体わかっているでしょうが、どうかお楽しみに。

そして垣根帝督ですが、すみませんウソつきました。彼が例の事件について
知るのはまだ少し先でした。ですが今回であの『黄金』系魔術結社との
接触フラグが立ちましたです、はい。

次回も垣根帝督パート。一方のドレスの少女はワシリーサとの計画を進行していて……。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
56 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/07(水) 10:47:02.50 ID:b5vuv5uBo



                          【次回予告】



「―――という事ですので、ワシリーサの事は単純に魔術師として尊敬していますが、
 同じ人間、女性としてはむしろ軽蔑さえしています。 人として破錠しています」
ロシア成教『殲滅白書』の魔術師――――――サーシャ=クロイツェフ




「本人の目の前でボロクソな評価を言えちゃうサーシャちゃんもス・テ・キ♪」
ロシア成教『殲滅白書』のシスター――――――ワシリーサ




「あなたも大概病気だわ……」
『クラッカー』の構成員・『心理定規(メジャーハート)』の能力者――――――ドレスの少女



57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/12/07(水) 11:23:28.15 ID:4uxvd52E0

キャーリサ様が可愛すぎて一方通行爆発しろとか思ってたら垣根ェ。
落差ひでぇwwwwwwww
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山陽) [sage]:2011/12/07(水) 12:19:24.59 ID:UnhFvhjAO
キャーリサ様かわえええええ
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 13:11:01.61 ID:UgnUVLXqo

垣根パートの安定感は異常
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 13:41:33.95 ID:34ovz9fk0
垣根がレイヴェニア=バードウェイにフラグ立てそうですね
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(静岡県) [sage]:2011/12/07(水) 14:12:32.88 ID:J85tKbt8o
もちろん死亡フラグですねわかります
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 14:27:28.21 ID:tUjXwzNoo
死線を共に潜り抜けた男女の間には恋愛フラグが立つものだよ
垣根は死線を潜り抜けた女の子と温泉で童貞捨ててるし
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 14:40:40.57 ID:TkooW1IU0
>>62
ちょwwwwwwww
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 17:38:27.45 ID:9V/OMJ9Bo
乙ー
あのドSで辛いものと大きくウサギが描かれたパンツが苦手な
見た目12歳ぐらいのボスと訓練するとか…垣根死んだな
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/12/07(水) 17:45:59.05 ID:4x6YGDqx0
頼りになるキャ−リサと
可愛いキャ−リサが魅力的に描ける
>>1

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/12/07(水) 18:23:15.21 ID:JSjful4H0
マークじゃないか?
バードウェイはきついだろ
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大分県) [sage]:2011/12/07(水) 19:30:08.59 ID:kRHAzmEA0
>>1
兎追いしかの街ワロタwww
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 22:18:58.79 ID:W436/waL0
垣根死亡フラグおもっくそ立ててたwwwwwwwwww
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/08(木) 00:48:48.56 ID:H9GV/0X2o
母ちゃん・・新しいエピソードをアンロックしたよ・・
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/08(木) 03:10:35.66 ID:JI39JlCIO
質の高い魔術師? フィアンマで良くね?
71 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 06:09:45.18 ID:3hfqSgCDO
今少しわかたことが…


本編

蛇足(各ルート解放)

ED(各ルート毎のシナリオ)

TRUE ED

続編

新規シナリオ


こんな感じで>>1はこち亀並の期間やってくれるに違いない
72 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 06:50:01.63 ID:lRWTS0sR0
>>71
ちょwwwwwwそれは長すぎwwwwwwww
73 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 08:31:26.06 ID:arqpAsUZo
支部に私服オルソラキタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!
私服ヴェントも来るとか何これ夢?
74 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 17:18:01.69 ID:YaAGMHnR0
黄金系とか…明らかに死亡フラグじゃないですか垣根さん
75 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 17:59:03.50 ID:IwlH2SJY0
>>73
今見てきた、本家の本気スゲェ!!!!
76 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 18:04:28.28 ID:vrwVr9+7o
新約三巻の表紙美琴の服ってハイムラーが前に支部で書いてたやつだったのか
77 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 19:50:43.21 ID:fThFLYlW0
はいむらさんて支部の垢持ちだったのか
見た事ある絵があって嬉しくなった(゚∀゚)=3
78 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:18:39.08 ID:IvK9dLcOo
>>70
いやフィアンマはちょっと……。確かに質も高いし実力もある優秀な魔術師ですが
彼は『神の右席』体質ありきの魔術師ですし使用する魔術も特殊すぎて参考にならない
かなと思いました。でも基礎を学ぶくらいなら彼でも問題ないですよね。

>>71
トゥルーエンドまではともかくそっから先はさすがに長過ぎますww


夜遅くにこんばんわ、更新を開始します。

今回も垣根帝督パートです。心理定規がギャグ担当、垣根帝督が今度こそ『暴徒』について知っていきます。

それでは、よろしくお願いします!
79 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:19:39.93 ID:IvK9dLcOo


――――――――――――――――――――――


同刻、ドレスの少女は独立国から少し離れた雪原で雪だるまをせっせと作成している
サーシャ=クロイツェフと、その上司であるワシリーサと談笑していた。


「―――という事ですので、ワシリーサの事は単純に魔術師として尊敬していますが、
 同じ人間、女性としてはむしろ軽蔑さえしています。 人として破錠しています」

「本人の目の前でボロクソな評価を言えちゃうサーシャちゃんもス・テ・キ♪」

「ふーん……なるほどね。 ロシア成教に『殲滅白書』……、こうやって聞いてると、
 学園都市なんて箱庭が如何に狭い世界かを嫌でも認識させられるわね」


80 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:20:48.12 ID:IvK9dLcOo

ドレスの少女はサーシャに魔術サイドの仕組みについての説明を受けていた。
十字教という世界最大の宗教から派生する旧教(カトリック)と新教(プロテスタント)、
イギリス清教、ローマ正教、ロシア成教、アタナシウス、グノーシス、ネストリウス……etc。

さらにイギリス清教なら『必要悪の教会』、ローマ正教なら『神の右席』(現在は解体)、
そしてロシア成教なら『殲滅白書』と言った内部組織も存在し、旧教でない宗派に
天草式十字凄教やスペイン星教派、以上のどれにも属さない魔術結社やその予備軍、
組織や宗派にすら属さず、単身で活動する魔術師など、そのバリエーションは多種多様だ。

一般人、能力者、暗部、統括理事会、研究者くらいしかカテゴリが無い学園都市で
生活してきたドレスの少女からすると、確かに学園都市は狭く感じてしまうだろう。
尤も、複雑さで言えば魔術サイドも科学サイドも大差は無いのだが。


「まさか第三次世界大戦にそんなオカルトが深く関わっていたなんてね。
 ニュースやマスコミが報道しないのも、基本的に魔術という法則は
 公には出来ないから魔術サイドが隠蔽工作をしているという訳、か。
 『外』に能力者の詳細情報を開示しない学園都市と似てる部分もあるのね」
81 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:22:58.23 ID:IvK9dLcOo

「第一の質問ですが、如何ですか? 魔術サイドの全貌を簡単にですが
 知ったという感覚は。 今この国にいる垣根帝督や以前に訪れた
 一方通行達はある程度魔術についての知識があったので無知めいた
 雰囲気はありませんでしたけど」

「なんていうか、正直どうでもいいかな。 今のあなたの話を聞いても
 魔術自体には興味を持てなかったし、実際にワシリーサが魔術を使った
 時も驚きはしたけど自分も使ってみようとは思わなかった。
 私は自分が持っている能力さえあれば『力』に関しては満足かな。
 垣根帝督みたいにどっちも、なんて気持ちにはなれないわ」


仕上げに雪だるまの頭部を胴体部分に慎重な動作で置き、小さな手で雪だるまの
頭部をぺちぺちと叩くと、完成した作品に満足したのかサーシャはにこやかに微笑んだ。
そういうあどけない仕草がワシリーサの邪な感情を揺さぶっているのだが、
普段のワシリーサの奇行に辟易しているサーシャはその辺の自覚はあるのだろうか。
82 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:23:54.88 ID:IvK9dLcOo

ちなみにワシリーサもサーシャに習って、サーシャのあられもない姿を模した
氷像を作成していたが、当然サーシャの手によって破壊されている。


サーシャは立ち上がるとドレスの少女に質問をした。


「第二の質問ですが、あなたはどのような能力を有しているのですか?
 補足説明しますと、一方通行や垣根帝督は学園都市でも大変優秀な
 能力者であると聞いていますが、あなたも彼らクラスの能力を?」

「冗談よしてよ。 第一位や垣根帝督と私を同列視されても困るわ。
 あの二人は学園都市じゃもはや人間扱いされてない、文字通り化物よ。
 反面、私は別に大した能力じゃない、せいぜい――――」

「はい、ちょっと待ったー!」
83 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:25:10.48 ID:IvK9dLcOo

ドレスの少女が自分の能力説明に入ろうとしたところでワシリーサが制止してきた。


「……第三の質問ですが、急に何ですかワシリーサ」

「ムスッとしてるサーシャちゃんも食べたくなるほど可愛いけど、
 ちょっとゴメンにゃ♪ ここだけは譲れないのよ」

「?」

「こっち来て」


ワシリーサは明らかに訝しい視線を送るサーシャを放置してドレスの少女の
手を握り、サーシャから少し離れた位置まで移動する。
84 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:25:57.20 ID:IvK9dLcOo

「何よ」

「何よじゃないでしょおバカ! いい? サーシャちゃんは可愛いだけじゃなくて、
 素質もバッチリの優秀な子なの。 今あの場面であなたが自分の能力の詳細を
 話したらサーシャちゃんに私の企み……じゃない、サプライズが見抜かれちゃうじゃない」

「……ああ、そう言えばそうだったわね。 確か私の『心理定規(メジャーハート)』を
 利用してあの子と仲良くなりたいんでしょ? ……でもそれってサプライズというより、
 ただの自己満足じゃないの? 得をするのはあなた一人なんだし」

「夢くらい見させてよ、いつもはツンツンのサーシャちゃんが引くくらい
 私にデレッデレになる姿を見てみたいのよ!」

「私は別にいいけど、あの子の意見は無視するの? これって別の言い方をすると
 サーシャの心を私があなたの意志で勝手に弄るって事になるんだけど」
85 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:27:04.54 ID:IvK9dLcOo

「事情説明はあとで必ずサーシャちゃんにするわよ。 多分殺されるけど、
 この夢が成就したら私もうマジで死んでもいいとさえ思ってるから」

「あなたも大概病気だわ……」

「それで、出来るの? この前お風呂で言ってたけど、他人と他人の
 心の距離を調節する事は難しいとか。 実際の程はどうなのかにゃん?」


うーん……、とドレスの少女は唸る。この様子からして簡単にはいきそうもない事は窺える。

ワシリーサの計画は『心理定規』の能力によるサーシャ=クロイツェフとの
ベタベタイチャラブライフを送りたい、というアフロディーテも頭を抱える
くっだらない計画だった。

ドレスの少女が扱う『心理定規(メジャーハート)』は対象に対して他人の心の距離を自由自在に
調節出来るというもの。端的に説明すれば『自分と相手の親密度を調節出来る』という訳だ。
86 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:28:09.46 ID:IvK9dLcOo

しかし今回のワシリーサの計画で実行するのはサーシャ=クロイツェフとワシリーサ。
『心理定規』はあくまで『自分』と『相手』の心の距離しか調節出来ない……と、
ドレスの少女は考えている。

というのも、ドレスの少女は『心理定規』の対象に己を含まないパターンを試した事がない。
能力が発現してから間もなく『スクール』として活動する事になり、能力の効果範囲を試す
暇が無かったからだ。自分の立場や状況を有利にしたり身の危険を回避するだけならば自分と
相手の心の距離を調節するだけで充分なため、検証する必要性が無いという理由もある。

それならワシリーサの計画は実行前から破綻する事になるのだが、ドレスの少女にとっては
自分の能力の検証を行える良い機会とも言える。という訳で少女はワシリーサの話に乗ったのだが、


「成功の見込みは薄いわね。 現時点での『心理定規』の応用性を考慮しても、
 私観点で言う他人と他人の距離を調節するのは不可能だし」

「いやん、そこを何とか出来ないかしらん………?」
87 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:29:10.37 ID:IvK9dLcOo

「いやあなたに上目遣いでウルウルとか様式美なおねだりされても不快なだけだから。
 ……でもそうね、一縷の可能性なら無い事も無いんだけど」

「ふむ?」

「能力使用者である私が対象Aと対象B……、つまり今回のケースで言う
 サーシャとあなたに直接触れて介する事で、二人の心の距離を調節
 出来るかも知れないという、まぁ荒唐無稽にも程がある理論だけどね」

「荒唐無稽だろうが机上の空論だろうが検証可能ならするのが科学でしょ。
 早速それでやってみましょう、悩む暇があるならまず行動よ」


徐々に魔の手が迫っている事など露知らず、勝手に検証対象に選ばれた
サーシャ=クロイツェフは雪だるまにデコレーションを施すのだった。
88 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:30:39.68 ID:IvK9dLcOo


――――――――――――――――――――――


『明け色の陽射し』。


イギリスの『黄金』系魔術結社の中でもトップクラスの力を有する大組織。
元々は魔術結社としてではなく、『支配のためにカリスマを研究する』という指針を持った
組織だったが、当時のカリスマは教祖への信頼・信仰を大前提とした宗教権威と不可分であったため、
どうしてもオカルト色に染まってしまいがちだった。やがて組織は『黄金』を調査する内にオカルトに
取り込まれ、魔術結社と化す。それが今の『明け色の陽射し』である。

『黄金』系魔術結社は当然、『明け色の陽射し』だけではないのだが―――。


「質の高い魔術師を相手取りたいと言うのなら、僕なら『明け色の陽射し』を想起する。
 ……もっとも、『黄金』系はその他の結社と比較しても一癖も二癖もある連中ばかり
 だからね。 君の要求から挙げるなら『黄金』系だが、やはり推奨は出来ない」

89 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:32:00.00 ID:IvK9dLcOo

過去に『明け色の陽射し』と何かがあったのか、ステイルは苦虫を噛み潰したような顔を
浮かべながら窓の外を見つめ続けていた。


「『黄金』系……なぁ。 ご大層な名前だが、俺は聞いた事ねえな」

「そうなの? 『天使同盟』のあなたなら『黄金』系の名を
 聞いた事くらいはあると思っていたけど、意外ね」

「そりゃどういう意味だ? 『黄金』と『天使同盟』にどんな因果関係があるんだよ」

「……あなた、『暴徒』に関する話は聞いてないの?」


エリザリーナは眉をひそめながら質問を返すが、垣根は首を横に振る。
『暴徒』とがどうとか言われても垣根には何の心当たりも無い。
90 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:32:54.11 ID:IvK9dLcOo

そんな彼の疑問に答えるために、ステイルは吸い終わった煙草を灰にすると
室内へ視線を戻す。


「『第一九学区事件』で発生した現象の事を、君は覚えているか?」

「どの現象の事だ? あの日は訳の分からねえ出来事が起きまくってんだろ、心当たりがありすぎるぜ」

「世界から魔力というエネルギーを喰らい尽くすように蔓延した、
 黒い霧の事だ。 詳しい原因は不明だが、あの日世界中の魔術師や
 魔術的施設、霊装が力を失い機能しなくなったんだよ」

「……………前言撤回、心当たりねえわ」

「無理もない、当時の君は『禁書目録』の酷使によって意識が定かではなかったからね。
 強制的に精製していた君の魔力すらもあの黒い霧は奪っていたが……、
 さすがにそれと今の君が魔力を精製出来ないという事実は結び付けられないだろうが」
91 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:35:25.34 ID:IvK9dLcOo

黒い霧発生時、垣根帝督はただひたすら『星の欠片』の保護について思考を巡らせていた。
『禁書目録』の酷使によって脳がボロボロになっていた以外に、彼が『星の欠片』だけに
意識を向けていたのも当時の事を覚えていない理由に含まれるだろう。

ステイルは続ける。


「あの日、僕を含めほとんどの魔術師が十字教の終焉をイメージした、させられたんだ。
 エイワスから受け取った『手紙』にも十字教の終わりを思わせる文が記載されていたが……、
 しかし結果的に魔術サイドの崩壊は成らなかった。 十字教は今も健在している」

「ま、十字教がどうとか言われても俺にはよくわかんねえけどな」

「だが『第一九学区事件』で起きたその現象を目の当たりにした魔術師の一部が
 暴走し始めたんだ。 事件から数日しか経ってなかったかな。 その暴徒は口々に
 『今の時代は終わっていなければならない』、『現存する魔術師は滅びなければ』、
 と世界各地の魔術師を襲ったり霊装や施設を破壊したりとやりたい放題な訳さ」
92 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:36:16.94 ID:IvK9dLcOo

「それでも規模としては微々たるものなのだけれどね」


ステイルの説明にエリザリーナが補足を加えてきた。


「確かにその点だけを鑑みれば魔術サイドの現状は荒れ狂っていると思うかも知れない。
 けど実際はその逆。 既に誰かから聞いてるかも知れないけど、魔術サイドは第三次世界大戦
 を終えてからというもの、良い方向に改善が進んでいるのよ。 これまで派閥同士の交流が
 盛んでなかった十字教も、今では組織と組織が手を取り合い互いの支えになっているわ。
 『第一九学区事件』で発生した暴徒も、主にイギリス清教とローマ正教が率先して淘汰してる」

「じゃあステイル、お前やテオドシアみてえなイギリス清教の魔術師がロシアに居るのも」

「いや、僕とテオドシアは暴徒の鎮静のためにここへ赴いた訳じゃない。
 今のところロシアではそんな連中は現れていないからね。
 でもイギリス清教やローマ正教の魔術師が出張ってる事も事実だ」
93 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:37:20.31 ID:IvK9dLcOo

『第一九学区事件』で発生した黒い霧の影響は何も暴徒の出現だけでは無いらしい。
術式によって封印されていた曰くつき世界遺産や重要文化財などが世間に露呈してしまったり、
魔術を施すことによって安定した保存状態を保っていた国宝級の物品等が破損してしまったりと、
大々的に報道される事はなくても魔術サイドにとっては苦慮せざるを得ない事態も多いようだ。

だからこそ宗派と宗派が協力し合い、直面している問題を解消しているのだと二人は語る。


「それで?」


しかし自分が覚えてもいない黒い霧による問題など垣根は興味が無いらしく、


「その話と『黄金』系はどういう繋がりがあるんだ? 話が脱線してるんじゃねえだろうな」

「……今説明した暴徒の乱心に拍車を掛けている組織があるらしいのよ」
94 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:38:48.09 ID:IvK9dLcOo

「あぁ? まさかそれがステイルの言う『明け色の陽射し』って連中なのか?」

「暴徒の激化を促進させているその連中は確かに『黄金』系結社だが、
 それは『明け色の陽射し』ではない」


と、エリザリーナは着込んでいるコートの懐から何枚かの書類を取り出した。
彼女に書類を渡された垣根は怪訝そうに書類の文面を目で追う。


「『宵闇の出口』」

「?」

「この前ここへやって来た姉さんから聞いたのだけど、どうやら今回の
 暴徒発生事件は『黄金』系魔術結社の一つ、『宵闇の出口』が一枚噛んでいる
 らしいのよ。 まだ確証は無いけれどね。 『第一九学区事件』の影響が絡んでる
 事件だから『天使同盟』であるあなたも『宵闇の出口』について何か知ってると
 思ってさっきも聞いたの。 知らないのなら、せっかくだから聞いていくといいわ」
95 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:39:51.67 ID:IvK9dLcOo

「……『宵闇の出口』、か。 やっぱり聞いた事がねえが、『明け色の陽射し』と
 比べると何か陰険そうっつーかタチの悪そうな組織っぽいな」

「事実、陰険であるし質も悪い。 『明け色の陽射し』を支援するわけではないけど、
 同じ『黄金』系魔術結社である事が不思議なくらいの連中だ」


『宵闇の出口』。


魔術サイドはおろか、同じ『黄金』系魔術結社の魔術師からも酷評を受けている組織。
無駄が多く、数に限りのある資源や人員を平然と消費し、とにかく反道徳的な行為を
頻繁に行う事で知られている、魔術業界で問題視されている結社だ。


「………おいおい。 危機感こそ覚えねえが、これ結構シャレになってねえんじゃねえの?」


垣根が眺めている書類には、その『宵闇の出口』が『第一九学区事件』を起こしたとされる
『天使同盟(アライアンス)』を全面的に支持している、と書かれてあった。
96 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:47:29.69 ID:IvK9dLcOo
今回はここまでです。

きりよく次のパートへ移行するために調節をしているため、少し
投下量が少ないと感じるかもしれませんがご了承ください。

今回で明らかになった暴徒出現の原因。『宵闇の出口』ですが、これからも
こいつらが『天使同盟』と魔術サイドにちょっかいをかけてきます。
ただ『宵闇』には名有りキャラがいないので扱いづらいのが難点ですね……。

次回も垣根帝督パートです。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
97 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/10(土) 02:48:01.96 ID:IvK9dLcOo



                          【次回予告】



「だ、第一の私見ですがそれは分かっています。 ……補足説明しますと、
 分かってはいるのですが……あぁ、ど、どうして急にこんな気持ちに……?
 今の今までこんなに……あなたの顔を見るだけで胸が高鳴る事は無かったのに……」
ロシア成教『殲滅白書』の魔術師――――――サーシャ=クロイツェフ




「(……よ、よっしゃ、出来たわ……。 人間、やろうと思えば何でも
  出来るものね……。 私はこの日をもって己の限界を突破したのよ)」
『クラッカー』の構成員・『心理定規(メジャーハート)』の能力者――――――ドレスの少女




「ノン。 聖ジョージ大聖堂の魔術防壁は今、ガッタガタなのデスマスよ」
イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師――――――テオドシア=エレクトラ




「ロシアに来た事が無駄足にならずに済んだって事だよ。 急に押し
 かけて来ておいてこう言うのも悪いが、俺はそろそろ出て行くぜ」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督



98 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/10(土) 02:50:42.20 ID:n5K1hyY50
99 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 02:52:11.91 ID:iwAXCEnUo
つん
100 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 03:17:22.47 ID:Urp5Qldfo

今天使同盟を1から読み返してて、ちょうど独立国に着いた所だったからちょっと混線したww
101 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 05:23:31.59 ID:Tt1DVeVDO
乙!!

毎日楽しく読んでるぜ!


だが、実は禁書と電磁はアニメしか知らんからフィアンマ辺りから付いていけない…
はずなのに普通に受け入れられる!不思議!!

まぁ wikiったりしまくったしね

知らないキャラが出る度に調べてるんだが…
実はアニメだけだとていとくんすら出ないんだよな……

禁書3期 電磁2期まだー?
102 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 06:12:37.14 ID:w8+ogu0x0
このままではサーシャちゃんの貞操がマッハ
まさかワシリーサとサーシャの距離変えたままのタイミングで強引に心理定規連れて出て行くオチはねーだろうなww
103 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 09:21:31.53 ID:ycZNrpZC0

サーシャ逃げてー。
心理定規はレベル4.5ぐらいになったのか。
104 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 11:31:51.74 ID:694WvbM90
>>78
つまりトゥルーエンドまではやってくれるということですね、わかります。

1乙!
105 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 12:22:08.41 ID:VGi0DmGAO
いやこれは能力ミスってサーシャ×心理定規に……

やべえ俺得
106 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 16:34:51.39 ID:7MvfRpym0
次回はサーシャの告白か…… 胸が熱くなるな
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/10(土) 21:14:44.31 ID:vFOpYGio0
やべえ、心理定規たんがかわええ 元からか
108 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 02:08:51.12 ID:/BwTnZCIO
今日は>>1の誕生日だったよな、たしか

誕生日おめでとう!
109 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 10:31:10.39 ID:l6TISA4a0
おめでとう!おめでとう!
誕生日おめでとう!
110 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 11:55:47.30 ID:HwC8RThK0
>>1乙です&おめでとー
流れ的にオリキャラなのかな?
続き楽しみにしてますー

>>109
なんかモンスターファーム思い出した
111 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 13:29:48.67 ID:2Vt9De02o
>>1誕生日おめでとう!

>>110
宵闇の出口のことを言ってるのなら、禁書目録SPに収録されてる「マーク編」に登場してるからオリジナルじゃないんだけど、知らなくても別に問題ないと思う。
112 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 15:10:09.21 ID:MHHZucTn0
>>1誕生日おめでとう!
これからも頑張って!!
113 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 16:31:48.55 ID:JlDKIx0Z0
>>1誕生日おめでとう!!

>>104そしてトゥルーエンドが終わったら
新しい作品を書くんですね、わかります。
114 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 16:34:21.85 ID:rfebCDgt0
>>1おたおめー!
がんばれってくれよな!
115 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 18:15:08.93 ID:RdX838SDO
誕生日についてのソースが知りたい


でも、おめでとう!
(*^▽^)/★*☆♪
116 :108 :2011/12/11(日) 18:38:08.80 ID:KUcGbyOIO
>>115
http://matomeee.blog123.fc2.com/

12/11の分の投下を読むと分かると思います
117 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 18:41:19.64 ID:KUcGbyOIO
すみません、sage忘れました
118 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 18:46:58.85 ID:wpm++BtH0
>>1様おめっとーございます(○´∀`○)

次回作からはスピンオフですね。なのでもう一年は続きますよね。頑張ってください (`・ω・´)
119 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 19:31:56.72 ID:K55kKPel0
>>1誕生日おめでとうございます!!

これからも楽しみにしてますd(^_^o)
120 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 19:34:45.65 ID:F6B725Cno
お前らこまめだなwwww
>>1おめでとう
121 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 20:36:31.41 ID:vNlJzF4w0
>>1誕生日おめでとう
122 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 21:26:16.73 ID:d7dLZ5G7o
>>1誕生日おめでとう!!
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/11(日) 21:52:52.51 ID:qji9Gbcc0
>>1おめでとう!
124 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 22:40:48.41 ID:KjVnDq2X0
>>1いつも更新楽しみに待ってる!                                                           誕生日おめでとう
125 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 22:45:26.35 ID:fmXSyu/90
>>1誕生日なのか。
おめでとう!
126 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 22:58:37.34 ID:T6fUUJj+0
おめでとう  って、あれ?1年3ヶ月も長期連載してんのか・・・?しかも1〜3日に1回投稿って、、、すごいな・・・
かまちーの小説にしたら、何冊分くらいあるんだ?
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/11(日) 23:06:29.55 ID:XTMIfDMk0
>>1誕生日おめでとう!
天使同盟最高!
128 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 23:44:31.06 ID:34O8T7JAO
誕生日おめ!いつも更新ありがとう!
129 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 00:55:03.82 ID:mdn5dq8DO
ここまでおめでとうと言われる人も今じゃ少ないだろうにww
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/12(月) 08:56:32.07 ID:xQfBj5Db0
これで誕生日でなかったらどうするんだか
131 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 16:33:59.77 ID:mdn5dq8DO
歴代の>>1の中には今日が誕生日の人が一人くらいはいるさ
132 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:18:45.49 ID:o9l91fnL0
>>130
一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」  エイワス「まだそんな事を言っているのか」 に

>81 : ◆3dKAx7itpI:2010/12/11(土) 20:58:55.69 ID:ZMJGgkYo
私、本日誕生日でございます。盛大に祝ってもいいのよ
      とある。
133 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:22:19.00 ID:f2nEAXLjo
まさかここまで私の誕生日を覚えていてくださった方がいたなんて……
素で喜んでしまいました。皆様本当にありがとうございます。
まさか二度も誕生日を迎えてしまうとは……つくづく長いSSだなこれ。

さて、皆様からの祝福を受けながらの更新です。

今回も垣根帝督パートをお送りします。
『宵闇の出口』が暴徒を率いている事を知った垣根帝督はどうでるのか。
一方、サーシャとワシリーサの心の距離を操作せんと奮闘する心理定規の結末は……。

そんな感じで始まります。

では、よろしくお願いします!
134 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:22:59.15 ID:f2nEAXLjo


――――――――――――――――――――――


『言うは易し行うは難し』とはよく言ったもので、実際に他者と他者の心の距離を
詰める演算処理は思った以上に苦戦を強いられた。

ウキウキ気分満点のワシリーサとこれから何を行うのか一切の説明を受けておらず
キョトンと首を傾げるサーシャ=クロイツェフの手をドレスの少女が握り、全身から
不愉快な汗を掻きながら必死で距離の調節を実行した。


結論から言うと『心理定規(メジャーハート)』による他者と他者の距離の調節は
見事に成功した。この成果を学園都市の能力研究機関に報告すればドレスの少女は
さらに一段階上のレベルの能力者として登録される事だろう。


無論、大量の雪が積もった白銀の地面に膝をつき、荒々しく息を吐く
疲労困憊のドレスの少女にそんな考えは全く無いのだが。
135 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:23:47.33 ID:f2nEAXLjo




「だ、第一の質問ですがワシリーサ……ど、どうしましょう……」




サーシャ=クロイツェフだった。彼女はドレスの少女が疲労により崩れ落ちた直後、
明らかな異変を生じさせていた。
頬を赤らめ、ワシリーサに何かを尋ねるその声は普段のサーシャが絶対に発しない
甘えた声色そのものだった。


「ど、ど、どうしたの? ていうか、どう? サーシャちゃん、私に何か―――」

「い、いえ………その。 あ、すみません……あの、あまり顔を近付けないで……」

136 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:25:12.71 ID:f2nEAXLjo

ワシリーサに対するサーシャの態度が急によそよそしくなっていた。
ワシリーサが様子を窺うために彼女の小さな顔を覗こうとすると、
照れたようにそっぽを向いてしまう。


「さ、サーシャちゃーん……? どうしたのかにゃ? ワシリーサさんですよー?」

「だ、第一の解答ですがそれは分かっています。 ……補足説明しますと、
 分かってはいるのですが……あぁ、ど、どうして急にこんな気持ちに……?
 今の今までこんなに……あなたの顔を見るだけで胸が高鳴る事は無かったのに……」


過度な演算処理を行ったせいでオーバーヒート寸前に陥った脳を冷やすため
ドレスの少女はふっかふかの雪の絨毯に思い切り顔を埋める。
そうしながら、彼女は二人の会話を聞いてグッと握り拳を作った。


(……よ、よっしゃ、出来たわ……。 私と対照だけでなく、他者と他者の
 心の距離を調節するという応用性が生まれた。 人間、やろうと思えば
 何でも出来るものね……。 私はこの日をもって己の限界を突破したのよ)
137 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 23:27:36.71 ID:HYUTF8c20
>>1誕生日超おめでとーなのよな!!
天使同盟はあと3年は続いてほしい
終わらないのが一番だが・・・
138 :×=対照 ○=対象 失礼しました。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:27:40.53 ID:f2nEAXLjo

それは学園都市に住む能力者なら誰もが気持ちよく噛み締める達成感。
能力の向上。例えそれが具体的なレベルアップには至らないとしても、
成長したという実感を得る事が出来れば微々たる成長でも喜ばしい事なのだ。

そしてそれは能力者に限らず、努力の成果が実る瞬間の充実感というものは
それがどんな事でも過程でも、人間動物問わず何物にも代え難いものである。
この広い雪原に今誰一人として居なかったら、ドレスの少女は両腕を
天に突き上げて歓喜の咆哮を轟かせていただろう。


「さ、サーシャちゃん……?」

「だ、第一の私見ですが……。 正直に告白します」


ズボッと積雪から顔を引っこ抜き、自分の努力の成果を現在進行形で
再現してくれている『殲滅白書』の魔術師をドレスの少女は見る。
139 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:29:28.41 ID:f2nEAXLjo

ドレスの少女が設定したワシリーサとサーシャの心の距離は何と『ゼロ』。
互いを隔てる壁などもはや二人の心にはありはしない。そんな壁はドレスの少女が
粉砕してしまった。今のワシリーサとサーシャはこの世に現存するどの友達よりも、
兄妹よりも、親子よりも、夫婦よりも、カップルよりも、想い、愛し合える関係にある。

そして何より、それはワシリーサの祈願だった。人間一人の夢を叶えてあげるという
行いがこれほど気持ちの良いものだとは、ドレスの少女は思わなかった。
慈善事業など本来の彼女なら鼻で笑う所だが、いざやってみると悪くないとさえ思えた。


「わ、ワシリーサ! す、す、好きです……ッ!」


我慢の限界に達したのか、サーシャはこの世で最も愛しい(という設定の)ワシリーサに
飛びついて抱き締める。顔をりんごのように真っ赤にしながら抱きつく彼女の姿の
なんと初々しく甘酸っぱい事か。ここで『I Will Always Love you』が流れればそのまま
エンドロールが出現しだしても違和感の無いシチュエーションだった。
140 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:30:16.39 ID:f2nEAXLjo

(本当は成功したらそれ相応の報酬をいただこうと思っていたけど、
 ……こんな場面を見せられたらそんな野暮な事言えなくなるわね。
 おめでとう、お二人さん。 未来永劫、あなた達の愛が尽きぬ事を願って……)


まだ脳の調子が戻っていないのか、ドレスの少女は二人の愛が開花した瞬間を
見届けると、薄く笑みを浮かべながら無言で踵を返す。

愛しのサーシャちゃんにギュッと抱き寄せられたワシリーサは、




「なーんか違くねこれ? 私が求めてるものじゃないなぁ」



141 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:31:17.92 ID:f2nEAXLjo

気がついたら、二人に背を向けていたはずのドレスの少女が
ワシリーサの頭に華麗なまでのドロップキックをぶちかましていた。
抱きついたままのサーシャと共にワシリーサは雪の上を盛大に転がっていく。


「いったーい!! ちょっと、いきなり何すんのよ!?」

「黙れ……」


唸るように低い声を出すドレスの少女は、そのまま懐に手を忍ばせ
グリップの小さいレディース用の拳銃を取り出した。
危険を察したサーシャが慌てて起き上がりワシリーサを庇うように立ち塞がる。


「だ、第ニの私見ですがやめてください!! ワシリーサが一体
 あなたに何をしたというのですか!? 本気で彼女に牙を剥くというなら、
 私もあなたを迎撃するために全力で魔術を―――」
142 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:32:30.53 ID:f2nEAXLjo

「あなたも黙りなさいクソガキ!! つかキャラ変わっちゃってるじゃない!!
 人の苦労も知らないで……、ああもう面倒だからこれでも喰らえ、えいっ☆」


これでも喰らえと言われて怯んだサーシャは思わず唇をキュッと噛むが、
ドレスの少女は特に何のアクションも起こさなかった。が、代わりに、


「ふ、ふにゃ〜……」


一体どうしたというのか、サーシャは口元をにへら〜と緩めると
とてとてと母親に甘える子供のようにドレスの少女の下へ歩み寄り、
スカートの裾をギュッと摘んできた。
143 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:33:58.69 ID:f2nEAXLjo

「さ、サーシャちゃん!?」

「ふん、この子と私の心の距離を弄っただけよ。 距離は『母性』すら感じる
 程度に調節してるけどね。 ……それよりあなた、ふざけないでよ」

「だ、だって何か違ったんだもん! そりゃサーシャちゃんにあんな風に
 甘えられたら垂涎もの……どころか出血多量で死んじゃってもおかしくないわ。
 でもいざそういうシチュに直面してみると何か違和感あるっていうか……。
 私はあくまで可愛いものが好きなのであって、サーシャちゃん一辺倒って訳じゃ……」

「脳が焼きつくくらいの演算処理をしたのよ私は! そんな私の苦労も考えず
 なーにが求めてるものと違う、よ。 僅かでもあなた達の間に芽生えてた愛に
 感動した私の心を返せ! ていうかどうしたら満足するっていうのあなたは!?」

「うーん……、思い返せば私、サーシャちゃんになじられてた頃が一番充実してたかも。
 もしかしたら私はサーシャちゃんに愛されたいんじゃなくて虐げられたいだけなのかにゃ?
 だってほら、現にこうしてあなたに拳銃を突きつけられてる状況でも私、ちょっと興奮」

「ならたぁっぷり虐めてア・ゲ・ル」
144 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:34:40.33 ID:f2nEAXLjo

ドレスの少女は唇を舌で艶かしく濡らすと、うふふうふふと"愉しげ"な笑い声を
漏らしながらヒールを履いた足で雪の上に寝転がるワシリーサの顔を踏みつけた。


「あらやだ、だらしない顔で悦んじゃって……ふふ。 何だか私の心の
 奥底に眠っていたサディズムの資質が沸き上がってきちゃったみたい♪
 ……ほらサーシャも、この愚かで醜いメス豚の顔を踏みにじってあげて」

「第ニの解答ですが、それがあなたのご命令だと言うのでしたら……とりゃ」


やたらエロい格好をした小柄な少女二人に顔を踏まれ悦に浸るいい歳した修道女。


とてもじゃないが絵や映像ではお送り出来ないこの光景を、雪合戦をしに
足を運んだ純粋無垢な独立国の少年少女達が未知と遭遇したような目で眺めていた。
145 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:37:12.45 ID:f2nEAXLjo


――――――――――――――――――――――


「と、そんな垣根帝督のご朗報が届いたのデスマスが」

「あん?」


『宵闇の出口』に関する情報が記載された書類を眺めてその情報の
信憑性を疑っていた垣根に、テオドシアが声をかけてきた。


「つい先ほど、イギリス清教から緊急の連絡が舞い込んで来マスした。
 イギリスのグラスゴーにて魔術師による暴動が発生、そこに暴徒を引率する
 『宵闇の出口』の魔術師を確認。 直ちにこれを鎮静、無力化せよ……。
 状況が芳しくないのデスかねえ? ロシアにいる私達に応援要請を送るなんて」

「……こちらでも確認した」
146 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:38:51.80 ID:f2nEAXLjo

携帯電話の画面を睨みながらステイルが言う。


「どうやら奴らの狙いはイギリス清教本部、聖ジョージ大聖堂らしいね。
 大凡、魔術サイドで現状最も大きな勢力を保持しているイギリス清教を
 潰す事で、残りの『掃除』を楽に進めようという魂胆だろう。言うまで
 もないが周囲の一般市民に振りかかる被害について、奴らは全く考慮して
 いない。 これで件の暴徒発生事件に『宵闇の出口』の連中が絡んでいる
 事は確定したな」

「ちょっと待って」


ステイルの言葉を遮るようにエリザリーナが割り込んできた。


「聖ジョージ大聖堂は数ある教会の中でも群を抜いて強固な魔術防壁で固められているはずよ?
 いくら『黄金』系と言っても首謀者は『宵闇の出口』、連中があの防壁を突破出来るとは
 とても思えないのだけど」
147 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:40:07.75 ID:f2nEAXLjo

「ノン。 聖ジョージ大聖堂の魔術防壁は今、ガッタガタなのデスマスよ」


エリザリーナの疑問にテオドシアは他人事のような調子で答える。
そこへ退屈そうに話を聞いていた垣根が話に参加した。


「例の黒い霧とかいう現象の影響か?」

「そうマス。 不思議なことに、黒い霧によって奪われた魔力は魔術師には戻ったものの、
 聖ジョージ大聖堂のような教会や魔術的な物件にはほとんど戻ってきていないのデス。
 つまり黒い霧によって一番被害を受けたのは魔術師ではなくそういった建造物や物品」

「特に聖ジョージ大聖堂は第三次世界大戦で、……甚大なダメージを被っていた。
 その被害を修復している最中にあの黒い霧だ。 手痛い追い打ちだったよ。
 おかげでイギリス清教の本部はネズミはおろか一般人でも堂々と最深部まで
 辿りつける程度のクソセキュリティになってしまっているんだ」
148 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:40:57.36 ID:f2nEAXLjo

もちろんその分、教会を護衛する魔術師の数もハンパじゃないけどね、
とステイルは付け加える。垣根は眉間に皺を寄せながら尚も尋ねた。


「今の話のどの辺に俺にとっての朗報があるんだよ?」

「『宵闇の出口』の迎撃に『明け色の陽射し』が参加するようマス。
 どうやら今回の件を受けて『黄金』系、少なくとも『明け色の陽射し』は
 完全に連中を見限るようデスね。 ぶっちゃけ、『明け色の陽射し』が
 出張るなら私達の増援なんて必要無いと思うマスけれど」

「腐っても『黄金』。 同じ結社の『明け色の陽射し』だけでは
 不安要素が拭えないとイギリス清教が判断したんだろう。
 ……しかしこの状況で最大主教に動きが見られないのが
 少し気になる。あの女、このままのんびりと高みの見物を
 決め込むのか、それとも何か策を講じているのか………」
149 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:42:06.82 ID:f2nEAXLjo

言いながらステイルとテオドシアは医療室から出て行ってしまった。
恐らくイギリスへ帰還するために荷物をまとめに向かったのだろう。
垣根は部屋から出て行く二人を見送ると、改めて書類に目を通す。


(……一方通行の野郎はこの情報を傍受してやがんのか……?)


垣根が気にしていたのは『宵闇の出口』ではなく、その組織に対して
『天使同盟(アライアンス)』のリーダーである一方通行がどうアプローチを
仕掛けるのか、という点だった。

『暴徒』の一件は世間的には何も報じられず、魔術サイドの大半にとっては
いきなり訳のわからない連中が魔術師にいらぬ発破をかけ始めた、程度の認識
でしか無いだろう。

しかし『天使同盟』がこの件を我関せずで貫くとは垣根には思えなかった。
と言うよりも、我関せずで通せる訳が無いだろう。
例え周囲が暴徒の件に悩む一方通行に『気にするな』と気を遣っても、
一方通行という少年は聞き入れない。あれはそういう人間だと垣根は思う。
150 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:43:55.71 ID:f2nEAXLjo

だとしたら既に一方通行他、『天使同盟』の構成員も何らかの行動に出ているはずだ。
もしかしたら既にイギリスへ向かっているかも知れないと垣根は推測する。


(俺から言わせりゃ『天使同盟』が起こした事件に感化されたクソボケ共が
 何をどうしようが関係ねえが……。 その後始末を魔術サイドの連中に
 押し付けるだけってのは面白くねえな……。 『天使同盟』を勝手に崇め
 奉ってバカ騒ぎしてやがるって点も気に入らねえ。 ……クソ、仕方ねえ)


垣根は考える。テオドシアの言う朗報とは『明け色の陽射し』に接触するチャンスの事を
指しているのだろう。イギリスで『明け色の陽射し』と合流し、共闘戦線を張って迎撃に
貢献出来れば儲け物、あわよくば連中から魔力喪失について詳しい話を聞けるかも知れない。

少々ズレはあるが、互いの利害は一致しているはずだ。
151 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:44:59.15 ID:f2nEAXLjo

「だったら、俺がロシアに来て得た報酬は『手掛かりと情報』だな」

「?」

「ロシアに来た事が無駄足にならずに済んだって事だよ。 急に押し
 かけて来ておいてこう言うのも悪いが、俺はそろそろ出て行くぜ」


垣根がそう言ってくる事がある程度予想出来ていたのか、エリザリーナは
大してリアクションをしてこなかった。


「あなたもイギリスへ行くの? 『明け色の陽射し』と接触するために」

「会えたらいいな程度の気持ちだけどな。 身から出た錆って訳でもねえが、
 ついでに『天使同盟』の名を汚そうとしてやがるクソ共を片付けてやろうか
 なんて考えてる。 ……言っておくが、魔術サイドの手伝いをしようってんじゃ
 ねえからな? 丁度いいウォーミングアップにもなるし、あくまでついでだぞ」


残念ながらエリザリーナは『ツンデレ』という言葉と意味を知らなかったため、この場面で
垣根に的確なツッコミを入れる事は出来なかった。今の発言がツンデレに含まれるのかどうかは扠置いて。
彼はエリザリーナに書類を手渡す。
152 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:45:42.94 ID:f2nEAXLjo

「世話になったな。 俺一人じゃなくて他の『天使同盟』の連中も
 連れてきた方がお前も嬉しかっただろうが……いや、逆にうぜえだけか」

「そんな事はないわよ。 あなたがここに来て何か収穫を得る事が出来たのなら、
 私としても嬉しいわ。 でも、イギリスに向かうなら気をつけなさい。
 『宵闇の出口』は評判こそ酷いものの、それでも『黄金』系の魔術結社なのだから」

「肝に命じておくぜ。 お前もあんまり根詰めるんじゃねえぞ」

「ふふ、一方通行のような事を言うのね」


不意にそう指摘された垣根帝督は失言を悔いるように舌打ちをし、医療室を後にした。


次に向かうは彼にとって『二度目』のイギリス。目的は『明け色の陽射し』との接触。
目標が明確になる事で、垣根の気持ちも活気づく。
153 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:51:31.93 ID:f2nEAXLjo
今回はここまでです。

ドレスの少女の話はもうカンペキにギャグですね。サーシャがオモチャに
なってしまってるし……。オチもバレバレだったでしょうが、楽しんでいただけたら幸いです。

垣根帝督は再び、というかやはりイギリスへ向かう事に決めました。
このSSイギリス行き過ぎですよねどう考えても……。

てなわけで垣根帝督パートはここで一旦終わりです。またすぐに
始まると思いますが、次回からは一方通行パートと、なんとミーシャパートを
交互に繰り返しながら進行させていきます。どうかお楽しみに……。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
154 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/12(月) 23:51:59.90 ID:f2nEAXLjo



                          【次回予告】



「krughc気分qagtnl爽快cppoogx」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・水を司る大天使『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ




「いや無理ッ!! ないない、無いわよ!」
学園都市・常盤台中学の超能力者(レベル5)――――――御坂美琴



155 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 23:53:13.51 ID:puH44gbLo
156 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 23:59:34.58 ID:Zw8Gr6k70
>>1乙!
心理定規たんに踏まれたい
157 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 00:09:54.61 ID:FAbx91fdo
ああ、胸か
158 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 00:14:54.10 ID:hq71sn8ao
I Will Always Love You聞きながら読み始めたら
調度ワシリーサが二人に踏まれるところで
最後のサビのえんだあああああああが来てクッソワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
159 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 02:17:40.97 ID:JgQFzHIAO
>>「とりゃ」

くっそwwwwwwにやけ死んだwwwwww
160 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 02:53:05.64 ID:Yetxljp80
今ここに、サーシャちゃんにおずおずと踏まれ隊を結成する!
161 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 03:17:20.54 ID:4cEBQRkDO
もうね ワシリーサの株がストップ高ですよww
いや、ストップ安か?ww


イギリスってことは次のルート解放は小悪魔ちゃんか?
俺の中じゃ結構好きなキャラだから久しぶりの登場に期待だ
162 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 05:42:46.36 ID:bStjm7jc0
あのドS世界第三位と垣根の邂逅か

上条さん以来のお姫様だっこに期待
163 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 14:34:29.32 ID:j9w4R0ol0
おつ
おい心理定規とサーシャに踏まれるとかどんなご褒美だよ代われワシリーサ。
164 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:23:23.08 ID:8DEBMbw+o
こんばんわ、更新を開始したいと思います。

ところで、ルート解放の話の時にチラッと出てくる『小悪魔』なんですが、
…………誰の事なんでしょうか?
あのキャラのことかなってのはあって、それならいいんですがもし違ったら
どうしようと内心ハラハラしていますww きっとあの娘のことですよね……

さて、今回は一端覧祭四日目のミーシャパートからお送りします。
このパートではミーシャと第三位の御坂を中心に展開します。

では、よろしくお願いします!
165 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:24:04.03 ID:8DEBMbw+o


――――――――――――――――――――――


学園都市で開催されている一端覧祭も今日で四日目となった。
本来なら終わっているこの文化祭だが、学園都市統括理事長の粋な計らいで
七日間に期間が引き伸ばされたらしく、街は昨日に引き続き活気づいている。

四日目開始の朝、御坂美琴は第七学区を散歩していた。
本日は特にやることもなく、常盤台中学の寮で一日中惰眠を貪っていても
文句を言われない、彼女にとっては完璧なオフだったのだが、今日の美琴は
宛もなく外をブラつきたい気分だった。


「……、」


166 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:24:39.11 ID:8DEBMbw+o

美琴の顔には若干の疲れが浮かんでいた。一昨日、常盤台中学のイベントである
能力の実演ショー的なものに出場していた美琴はそこでとある能力者とバトルを演じる
ハメになった。

いや、あれを能力者と呼んでもいいのかどうか、美琴の中では未だに判断がついていない。
ガウンの着た謎の怪物は、パフォーマンスの範疇とはいえ美琴の実力を圧倒していた。
パフォーマンスの範疇だというのに、既に美琴を圧倒していた。


―――学園都市第三位の超能力者(レベル5)、『超電磁砲(レールガン)』の御坂美琴を。


(不思議と、悔しさは無いんだけどね)


それは強がりや意地ではなく、美琴は素直にあの能力者の実力を認めていた。
過去にも自分の力をあっさりと越える実力者に遭遇した事のある彼女だが、
その者の存在を認めず、否定するような事を美琴はしない。実力で勝っていれば
素直に勝ち誇るし、劣っていれば甘んじて受け入れる。そんな心を彼女は持ち合わせていた。
167 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:25:36.81 ID:8DEBMbw+o

そしてそれ以上に。


(楽しかったなぁ……。 あいつの名前……確かミーシャって黒子が言ってたっけ)


気が沈むようなバックストーリーも無く、出会った瞬間殺し合う程の縁も怨恨も無かった
ガウンの怪物との戦いは素直に楽しめたと美琴は今でも思う。
その証拠に、美琴はガウンの怪物―――ミーシャ=クロイツェフとメアド交換を交わしている。


(あいつのメール……文章がちぐはぐ過ぎてたまに要領を得ないけど、
 やり取りは割りと楽しかったりするのよね。 変な事知ってたりするし)


メールでのやり取りの頻度はそうでもないが、美琴はミーシャと今日まで普通に
連絡し合っていた。その時だけの勢いでメアドを交換してそれっきり、という
ありがちな関係には留まっていない。メールの内容は実に日常的で些末なものだが、
美琴にはそれが何故だか新鮮だと思えた。
168 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:26:40.61 ID:8DEBMbw+o

(さて、と。 ……これからどうしよう、宛もなくフラつくってのも案外難しいわね)


着信したメールを処理しながら美琴はため息をついてしまう。


実を言うと今日の朝(というかついさっき)、常盤台中学の学生寮に初春飾利と佐天涙子が
訪問してきたのだ。二人の目的は『一緒に一端覧祭を見て回りましょう』というごくありふれた
お誘いだったのだが、美琴はイマイチ乗り気になれず丁寧に断ってしまっている。

その時同じ部屋で暮らしている白井黒子が明らかに不安げな視線を送ってきていたが、
美琴は敢えて無視した。無視して、そして現在彼女は街を散策しているのだが、案外
一切の目的無く外出するというのは暇なもので、一端覧祭という素敵な催し物も、
既にこの文化祭以上に派手なイベントに遭遇している経験のある美琴の興味をそそるには至らないらしく、


「お?」
169 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:27:34.64 ID:8DEBMbw+o

と、そこで美琴は軽く目を見開いた。彼女の視線の先にはそこそこの面積がある公園があった。
夏には涼を取るために子供や学生が噴水に集まり、安全面をとことん追求した遊具が何点か設けてあり、
意外と大人でも楽しめてしまうような人気の高い物が並ぶ公園。

そんな公園に今、結構な数の人が集まっていた。一端覧祭というイベントの内容上、
人が集まるなら学校か一般人でも見学出来るようになっている研究施設等が主だが、
こんな普遍的な公園でも何かをやっているのだろうかと美琴は釣られるようにその足を
公園へ向かわせた。


敷地内に入って分かったが、どうやら集まっている人は遊具やイベントが目的ではないらしく、
皆が皆『噴水』へ好奇の目を向けていた。そのほとんどが子供で、目をパチクリさせて驚いていたり
指をさしてケラケラと笑っていたりと様々なリアクションを取っている。美琴の位置からでも
噴水自体は確認できるが、子供たちが見ている何かは回り込まなければ見えない位置にあるらしい。


「?」
170 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:28:19.77 ID:8DEBMbw+o

噴水。

水、というイメージに若干嫌な予感を抱きつつ、美琴は子供たちが
見ている何かを確認するために円形の噴水に回り込むように移動してみた。


回り込んで。


子供たちが見ているそれを見て、美琴はフリーズした。
だがそれも無理はない。




「krughc気分qagtnl爽快cppoogx」



171 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:29:17.97 ID:8DEBMbw+o

公園に設けられている噴水で水浴びをしながら、明らかにリラックスした様子で
寛いでいる『異形の化物』がそこに居れば、美琴じゃなくても凍りついてしまう。


異形の化物は美琴から見ても本当に『異形』だった。
まず、という前置きすら億劫に感じる程説明する気が起きないが、それでも
美琴はこの異形の具体的な特徴を唯一稼働している脳で確認する。

まず、頭がおかしい。これは一二月という冬真っ盛りの時期に公共施設の噴水で
水浴びをしているこの化物の頭がおかしいという意味ではなく(真冬に大衆の前で
水浴びをしている時点で頭もおかしい気はするが)、文字通り頭の形状がおかしい。

後頭部から伸びるその布……? は、まるでラッパのようにさらに後ろへ広がっており、
顔、と判断していいのかどうか分からない部分は、凹凸で目や鼻、口のような部位が
表現されている。

全身は青白いような灰色のような曖昧な色の布で覆われていて、全身に流れる
神経や血管の意匠なのか、至る部分に金色の葉脈のような物が巡っていた。
172 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:30:13.68 ID:8DEBMbw+o

しかしここまでならまだ良い。いや良くはないが、ここまでなら美琴は
この異形を受け入れる器を持っていた。フリーズこそすれど、『まぁ、たまにいるわよね
こんな格好したヤツ』程度の認識で済ませる事が出来た。

今は一端覧祭真っ最中だ。こんなコスプレをした学生が公園で休憩がてら
水浴びをするくらい何の不思議も―――、


「いや無理ッ!! ないない、無いわよ!」


無理だった。『いるいるこんなヤツ』程度の認識では済まなかった。

目の前の異常現象は美琴の器の許容量をオーバーしてしまったらしい。
身体の硬直が解けたと同時、美琴は周囲の事も気にせずツッコミを入れてしまっていた。

コスプレ、と割り切るにはあまりにも不自然な部分が見られた。
どう目を凝らしても皮膚と装束の境目が見当たらないし、身長が二メートル近く
ある事はどうでもいいとしても、その巨体が淡い青色に光っていたらそれはもう
コスプレでも何でもない。例え発光機能を備えた高制作費衣装だとしてもそれを着て
噴水に浸かるなんて馬鹿な真似をする意味が無い。
173 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:31:26.41 ID:8DEBMbw+o


何より美琴の目を引いたのは目の前の化物だけではなく、


(……………あのガウン、どっかで見たような気がするのは気のせい?)


それが一週間前や一ヶ月前なら気のせい、で片付ける事も出来ただろう。

しかし美琴が噴水の傍に無造作に放置されているボクシングの世界チャンピオンが
入場時に着てそうな黒のガウンを見かけたのはつい一昨日の事である。
現実逃避をするにはあまりにも最近の出来事だった。


(こ、こいつだったの!!? 色んな意味で能力実演に貢献してくれた怪物は!)

174 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:32:52.31 ID:8DEBMbw+o

美琴は思い切り顔を引きつらせながら、あまり振り返りたくない過去を振り返ってみる。
確かに今目の前で水浴びをしている怪物とあの時プールで死闘を演じたガウンの怪物は
特徴が一致する。どちらも同じく巨体であったし、『水』というイメージがどちらにも
しっくり来るのはこの怪物が噴水で水浴びをしているだけが理由ではないだろう。

そもそもこんな派手なガウンを着込む人間がそうそういるはずもなく、
そもそもこの怪物は信じ難い事に(恐らく)人間ではない訳で、

それでもプールで戦ったミーシャ=目の前で水浴びをしている怪物という
確定したも同然の現実をなかなか認めない美琴に、怪物が決定打を与えた。


「dkhi美琴tybg」

「あ……」


美琴は怪物と目が合った(目があるかどうかはともかく、視線がぶつかったのは確実だった)。
その瞬間、噴水でのんびりとしていた怪物は二日ぶりくらいに友人と出会った時くらいの気軽さで
美琴へ手を振ってきたのだ。
175 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:34:04.84 ID:8DEBMbw+o

周囲の視線が一気に美琴へ集まっていく。『え、噴水で水浴びしてるバカと常盤台中学の生徒が知り合い?』、
的な疑惑とセットになって集まっていく。美琴は顔から嫌な汗を冬の朝にも関わらずダラダラと流し、
手を振ってくる怪物―――ミーシャだと認めざるを得ない怪物にどう応えようか思案を巡らせる。


「hyyrw美琴aqpm美琴enxvgt」

(ぬぐおおおお! いや良いのよ!? あいつと私は知り合いなんだからあいつが
 私に手を振ってくるのは全然構わないのよ、私だってそれを無視してここから
 逃げ出すなんて野暮な事はしないわ。 けどね、せめて普通の状況でいてよ!!
 真冬に噴水で水浴びするバカ――しかも外見が特異過ぎる――にフレンドリーな態度
 取られても応じようがないでしょうが!! って、ああもうメッチャ手振ってるし!)


バッシャバッシャとあちこちに水を撒き散らしながらジェスチャーで美琴に
呼びかけるミーシャ。このまま放置しておく訳にもいかず、かと言って
ミーシャを無視して立ち去る事は美琴の良心が許さない。
176 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:35:11.70 ID:8DEBMbw+o

発覚した事実と周囲から湧き出る重圧にもう色々耐えられなくなった美琴が
下した決断は――――、




「な、何でやねーん!」




関西弁を大して知らない人間がとりあえず使う関西弁第一位のセリフと共に、
ミーシャの頭に軸足で地面を割らんばかりのネリチャギをお見舞いした。
普通の人間なら脳に深刻なダメージを負う威力だが、相手は普通の人間では
ないので美琴は一切の手加減を加えなかった。
177 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:36:16.98 ID:8DEBMbw+o

「?????」

「普通にシャワー浴びればいいでしょ!! 何でわざわざ噴水なのよ!
 しかもこんな真冬に! いくらボケだからって体張りすぎだっつの!!」

「?」

「だーっ、もう! ほらさっさと服持って逃げ、じゃない帰るわよ!!」


手を振っただけなのにカカトを浴びせられたミーシャは首を傾げるが、
美琴は構わずミーシャの手を引っ張って噴水から引き出すと、地面に
置いてあった黒のガウンを押し付けるように持たせて、


「で、では失礼しましたー。 あはははー!」


そう言い残して脱兎の如く公園から姿を消してしまった。もちろんミーシャを連れて。
ネリチャギ→逃走までの流れが速すぎて、周囲に居た子供や学生達は開いた口を
塞ぐ事も忘れて呆然と佇む事しか出来なかった。
178 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:37:06.33 ID:8DEBMbw+o

――――――――――――――――――――――


「ふう……何とか撒いたか……」


泥棒が追っ手から逃げ切った時に吐くようなセリフを呟く美琴だが、
彼女は別に誰にも追われてないし何も後ろめたい事はしていない。

美琴はもう一度好奇心旺盛なお子様等が追いかけてきてないか周囲を警戒し、
完璧に逃げ切った事を確認すると近くに設置してあったベンチにへたり込むように座った。
朝っぱらから自分の肉体に全力疾走を強要したため、息は切れ切れで冬だというのに
手で顔を扇いでしまう始末だ。


「ysrrw何事znahr」

「あー……もう丸一日消費してアンタに説教したい所だけど、
 今は何よりも水分補給を優先したいわね。 急に走ったから
 喉乾いちゃったわよ、まったく……」
179 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:38:03.71 ID:8DEBMbw+o

ノイズ混じりの不気味な声で話しかけてくるミーシャ(ガウン装備済み)に対し、
美琴は聞きたい事が山ほどあったがとりあえず保留する事にした。

座ったベンチのすぐ隣には運良く自動販売機が設けてあった。が、美琴は顔をしかめる。
この自動販売機は美琴が新入生の時分にジュースを購入しようと入れた万札を飲み込んだ
恐るべき守銭奴なのだ。いや、守銭奴というよりはジュースという商品で人を誘惑しておいて
金だけ奪うという特徴からして詐欺師と呼称するべきか。

よって美琴は飲み込まれた万札の分はきっちりジュースを吐き出してもらうと、
ここでジュースを入手する際に自販機の側面に四五度から強烈な蹴りを浴びせる事で
無理やり吐き出させる、という手法を繰り返していた。

風紀委員である白井黒子には呆れられている行為であるし、以前この自動販売機を
蹴った事で白井ではない厄介な風紀委員に絡まれた事もあり、美琴にとって
この自販機はあらゆる意味で思い入れがある。
180 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:39:18.96 ID:8DEBMbw+o

「……うーん。 今はちょっと蹴り入れる元気も無いし。 どうしよっかな」


と、美琴は隣で座る水芸者(性的な意味ではない)を一瞥すると、


「ちょろっとー、アンタに頼みたい事があるんだけど」

「?」

「そこにある自販機、実はちょっとした裏技があってね。 ……あんま大声じゃ
 言えないんだけど、こいつの横っ腹を蹴っ飛ばすとジュースが出てくる
 仕組みになってんのよ。 ……会っていきなりで悪いんだけど、出来る?」


『唐突で申し訳ないんですけどちょっとこの自販機蹴り飛ばしてくれませんか?』、
と言われてハイ承知しましたとキックを放つ人間など居るわけがない。
美琴もそこは分かっているため冗談で言ってみたのだが―――、
181 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:40:37.57 ID:8DEBMbw+o

「xxgti了解fersi」

「あ、え? ほ、本当にやってくれるの? 度胸あるわねアンタ……」


ミーシャは元気よく立ち上がり自販機の前まで移動する。美琴はまだ把握し切れて
いないようだが、ミーシャは『自販機蹴ってくれ』と言われたら『ハイわかりました』と
頷いてしまうくらい世間知らずな天使なのだ。


「あ、そっとよそっと! いや、あんまり手加減してもジュースは出てこないんだけど、
 力加減間違えたら壊れちゃうかもしれないから。 まず最初はかなり弱めに蹴って、
 そこから微調整していけば問題ないわ。 四五度の角度で蹴るのがポイントよ」

「ctykf把握ewzs」


フードで顔が隠れているため見辛いが、ミーシャは首を縦に振って理解したと意思表示した。
右足をトントンと地面に叩いて準備運動をする。このさりげない仕草だけでコンクリートの床に
ヒビが入っている。この時点で美琴は気付くべきだったのだ。
182 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:41:22.01 ID:8DEBMbw+o


ミーシャ=クロイツェフにそんな"面白そうな事をやらせてはならない"、と。


美琴はミーシャの蹴りを肉眼で捕捉する事が出来なかった。
ヒュッ、という空気どころか空間を切り裂くような風切り音がしたかと思ったら、
トラックとトラックが正面衝突事故を起こしたと想起させる轟音が鼓膜を叩き、
盗難防止も兼ねて非常に頑丈かつ複雑な構造で出来ている自販機が『くの字』に折れ、
グシャグシャにひしゃげたボディからカラフルな液体を吹き出し、


一〇メートル以上先の街灯の頂点に引っ掛かった。


「………………………………………………………………………………………………………」

「nmptr……失敗?」


本日二度目の全力疾走が決定した。
183 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 21:44:03.51 ID:9wj2JbUd0
ちょwwwwww
ミーシャやりすぎwwwwwwwwww
184 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:45:47.57 ID:8DEBMbw+o

今回はここまでです。

初っ端からメチャクチャな展開で始まったこのミーシャパート。
御坂と天使の組み合わせは個人的に書いてて面白かったのですが、
いかがだったでしょうか。

この二人は次から始まる一方通行パートと徐々に繋がっていきます。
で、その一方通行パートなんですが、風斬やキャーリサの時と違って
いわゆる『爆発しろ』要素が(終盤を除けば)ほとんどありません。
今までの展開とは少し違う特殊なお話になります。

そんな一方通行パート、次は誰のアンロック編なのか……まぁバレバレですよねww

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

185 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/14(水) 21:47:08.80 ID:8DEBMbw+o



                          【次回予告】



「だからって帰ってもオマエらが畳毟ってンだろ!? 黙って見てられるかァ!」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)



186 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:08:26.01 ID:ckCh7bPKo
乙乙
久しぶりにミーシャの力加減ミスが出たwwwwww
187 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:21:45.71 ID:QOadfA5J0

>まず、頭がおかしい。
ここのあたりくそワロタwwwwww
ミーシャさんマジ人外。
188 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:26:05.91 ID:qQ+oL73Mo
セブンスミスト倒壊させた時を考えれば幾分かマシになったな
189 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:28:55.10 ID:rZaZB5KZo

場面転換が多いせいか一方通行が今何してるか完全に忘れてしまった
読み直すか
190 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 23:48:57.97 ID:zTmRCQKD0
ついにくの字さん来たか
学園都市に嵐が巻き起こるで……!

ミーシャさんが楽しそうで何よりです。
191 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 04:29:19.16 ID:hC42JskDO
>>164
うお!?

すんません
毎回『小悪魔』と呼んでるのは俺っすね


ええたぶんあってますよ

小悪魔でパンダ(黒子ではない)でロリでセロリのセカンドだかサードだかのキスの相手(頬だが)ですよww


そして、ガブくそワロタwwwwwwwwww

いや、まだ自販機の原型があるだけかなり手加減した方だな
ガブなら居合い斬りの要領で一刀両断にも出来たはずww
192 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 16:19:16.00 ID:XkAa4esX0
さすがですミーシャさんwwwwwwww
193 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 23:01:35.43 ID:HjkKSYsP0
sageってやり方、これであってるのかな・・・書き込むの初めてだから不安だ・・・。

>>1 乙です!!!
まとめから全部読んで、やっと追いつきました!

ミーシャさんが流石すぎて笑ったと同時に放屁したのは言うまでもない。
これからも頑張ってください!!めっちゃ楽しみにしてます!!!

あと、遅れてしまいましたが誕生日おめでとうです!!!うひゃー!!!
194 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 00:49:15.48 ID:ywNFuJdNo
>>193
半年ROMれ
195 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 01:20:24.33 ID:ZbLk4zXh0
か、感想書いただけなのに半年ROMれと・・・何がいけなかったのか・・・ビクンビクンしちゃう

もしかしてsageってのが出来てなかったですか(´・ω・`)
196 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 01:29:51.20 ID:lVfMK0kXo
テンションがうるさい
197 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 01:45:59.58 ID:ZbLk4zXh0
>>196
そういうことでしたか・・・自重します。
198 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 02:31:14.86 ID:D+txglvt0
>>197
いろんな人がいるからイチイチ気にしなくていいよ
もっとテンション高い人もいるし、むしろ1人で何レスもする方が問題かも(つまりこのレスにもレスいらない)
半ROM半POMは初めて〜に対するテンプレみたいなもんだと思うんだ
199 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 03:50:42.60 ID:binTRYuUo
まぁ気にしすぎないでな。俺は初めての感想の緊張思い出して微笑ましかった
好きでずっと追ってる人間にはこれだけ長く続いて未だに新規の人が来るのは凄い事だなと
ずっと続けてくれて楽しませてくれて作者さんにはいくら感謝しても足りないわ
200 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 08:48:51.72 ID:2/uoRouDO
そんなことよりオルソラさんの話しようぜ
201 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 10:19:52.24 ID:GxXDb3lF0
オルソラさんって女として無敵じゃね?
202 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 11:16:38.08 ID:2/uoRouDO
俺としちゃ髪がもう少し長ければ完璧

首から上がローラだったら神
203 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 14:57:41.62 ID:mQ50Xbjbo
むしろローラが女性的に完璧
性格も完璧
口調はその・・・ちょっと・・・
204 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 16:26:19.02 ID:T4+DpQuJo
ログだけ貯めてて、毎日授業中に読んでやっと2スレから追いついた
205 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 18:18:52.95 ID:gySggZF+o
>>203
英語で会話したら良くね?
206 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 18:27:13.39 ID:2/uoRouDO
>>203
むしろ口調は完璧だろ


後はおっぱいか胸か乳房がもう少しあればレベル6どころかレベル100くらいにはなれたな
207 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 18:32:49.52 ID:ywNFuJdNo
>>206
逆だっての
あれが実はパッドで御坂よりかわいそうな胸だったら神の境地に達する
208 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 18:39:28.93 ID:4O0IUi4ko
お前らBBA好きだなwwwwwwwwww
まぁ、俺もだが
209 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 19:04:38.27 ID:2/uoRouDO
>>208
バーバ・ヤーガがそっちに言ったぞ

後、ついでに三騎士も
210 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 19:08:41.65 ID:GxXDb3lF0
そろそろ雑談やめろお化けが出てくるから自重しようぜ。
まあ俺が言えたことじゃないけど。
211 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 20:12:55.76 ID:toiICBW10
そんなことより更新待とうぜ!
212 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 10:05:43.40 ID:lx8D45TIO
おっぱい!
213 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 11:58:05.47 ID:tDYemluv0
ちっぱい!
214 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 13:10:15.53 ID:MCt0maN2o
でかぱい!
215 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:04:20.16 ID:oYRNUrCFo
>>193
ありがとうございます。こんなクソ長いSSを始めから読んで
ここまで追いついてきてくださる方がまだいるとは……本当に嬉しいです。
そしてここからがまた長いのですが、どうかお付き合いください。

こんにちわ、真っ昼間からの更新です。

今回は一方通行パート。アンロック編ですが、さて風斬→キャーリサときて
次のヒロインは一体誰になるのでしょうか……と言いたいところなのですが、
前回も言った通り今回は今までと少し趣向が異なります。

それでは、よろしくお願いします!


216 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:05:06.28 ID:oYRNUrCFo


――――――――――――――――――――――


「………なンだこりゃ。 ずいぶンと暇なヤツがいるンだな」


何やら道に人集りが出来ていたため一方通行も近付いてみたのだが、
どこかの能力者の能力が暴発でもしたのか、自動販売機らしきスクラップが
街灯の照明部分にぶら下がっていた。何人かの警備員や風紀委員が集まって現場周辺を調査している。


「くっだらねェ」


一方通行は杖をつきながら踵を返す。人集りから背を向け、大きなあくびを一つ。
217 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:06:20.49 ID:oYRNUrCFo

彼は徹夜明けだった。昨日、風邪を引いてしまったキャーリサを一晩中看病していた彼は
翌日、つまり今日の早朝にキャーリサを黄泉川愛穂の家まで送り届けていたのだ。
ついでに黄泉川の家で朝食をご馳走になり、かまってかまってとゴネる打ち止めを宥めて
アジトへ帰りがてらここに立ち寄ったのだ。


一端覧祭開催から今日で四日目。


今日一日くらいは爆睡しても構わないだろう、と一方通行が再びアジトの帰路へ着こうとすると、




「あら、一方通行さん。 おはようございます」

「お、おはようございます!」

「……オマエらか。 相変わらず朝から活動してンだな」



218 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:07:19.00 ID:oYRNUrCFo

あくまで彼の主観だがすっかり学園都市の街並みに馴染んでしまった
オルソラ=アクィナスとアンジェレネの凸凹シスターコンビに声をかけられた。

二人は学園都市の店で購入したのか、ここへ来た時は持っていなかった
オシャレなバッグを提げている。このまま二人をファッション誌の
表紙に飾っても良さそうだが、二人の衣装は相変わらず修道服だった。


「オマエら代えの服とか持ってねェのか? 女ならその辺気になるだろ」

「もちろん持っているのでございますよ。 ここへ来る時に持参しているので
 ございます。もっとも、代えの服も全部修道服でございますけど」

「修道服ねェ」
219 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:07:58.09 ID:oYRNUrCFo

「わ、私達が修道服以外の服を着たらキャラとしての特徴が無くなって
 誰が誰やら分からなくなりますから、修道服は常備していないと」

「そンな悲しい事言うなよ……。 修道服着てなくても顔見りゃ判別出来るだろ……」


何か朝からネガティブな発言をするアンジェレネに少しだけ気分を沈ませた
一方通行は再び大きなあくびをする。


「あれ……一方通行さん。 心なしか眠たそうにしてますね。
 何だか誰かを一日中徹夜で看病した直後みたいな……」

「なンで無駄に鋭いンだよ……」
220 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:09:13.49 ID:oYRNUrCFo

「ねむねむなのでございますか?」

「ねむねむでございますゥ。 オマエの物憂い声聞いてたら余計眠たくなってきた」


するとオルソラとアンジェレネは一方通行に背を向けて囁くような小声で何か話し始めた。


「(ど、どうしましょうシスター・オルソラ。 一方通行さんはどうやら
  スリープモードに移行する寸前みたいですけど)」

「(電源スイッチをちょっとだけスライドさせたら切り替わる状態の事でございますね)」

「(いやそれ風斬さんが持ってたゲーム機の機能じゃないですか。 シスター・オルソラは
  昨日風斬さんや五和さん達と遊んだ時に妙な知識を蓄え過ぎです。 そうではなくて、
  一方通行さん、これじゃもう街を回って遊ぶ元気は残ってないんじゃないですかね?)」
221 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:10:14.59 ID:oYRNUrCFo

「(それは困った事でございます。 せっかく寮の皆様には無断で学園都市に
  遊びに来たというのに……まだ私達は一方通行さんと楽しく過ごせていない
  のでございますよ。 今日は思い切って彼と一日を過ごそうと決めていたのですが……)」

「(でも無理をさせて倒れられても……)」

「(……そうでございますね。 こればかりは私達のワガママで押し通せる問題では
  ございません。 アンジェレネさん、今日はもう潔く諦めて帰るのでございます。
  帰って、部屋の畳の藺草を一日中毟って過ごしていましょう)」

「(そうですね……、仕方ないですもんね。 一日中毟りましょう、惨めったらしく)」


オルソラとアンジェレネは何事も無かったかのように笑顔を浮かべて振り返ると、


「「それじゃあ一方通行さん、私達はこの辺で―――」」

「ぜェーンぶ聞こえてンだよクソシスター共。 つか何で畳を毟る!?」
222 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:11:00.78 ID:oYRNUrCFo

そそくさと立ち去ろうとするシスター二人の肩を掴んで一方通行は引き止めた。


「で、でも一方通行さん……お疲れなんでしょ?」

「だからって帰ってもオマエらが畳毟ってンだろ!? 黙って見てられるかァ!」

「しかしそれを考慮せずとも……、今日はゆっくり休んだ方がよろしいのでございますよ」

「……オマエら、どォやら俺を見くびってやがるな?」


一方通行はカツン! と一度だけ杖を強く鳴らすと、


「俺が本気になりゃ向こう一年くれェは不眠不休でも問題ねェンだよ。
 睡眠欲のベクトルを操作して肉体の外へ追い出せるからな」
223 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:11:54.04 ID:oYRNUrCFo

「……睡眠欲にベクトルなんてあるんですか?」

「ベクトルを完璧に究めた俺が言ってンだぞ? あるに決まってンだろォが。
 その気になりゃ俺は時間や空間のベクトルも操作してこの世の法則を――」


一方で睡魔と激しい戦いを繰り広げているせいか、一方通行の発言が
少々おかしな事になってきている点にアンジェレネが不安げな顔になる。
オルソラも重心を支えている一方通行の杖が震えている事に気付くと、


「……無理を言って申し訳ないのでございます。 私達は今日は完全下校時刻まで
 外出していますので、一方通行さんはどうか休暇を取って―――」

「………、」


普段の彼ならここまで言われると、いやここまで言われるまでもなく
さっさと帰って就寝している所だろうが、彼は深く深呼吸をして冬の外気を
体の中に取り入れると、頭の中で暴れ狂っていた睡魔を霧散させた。
224 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:12:36.66 ID:oYRNUrCFo

「……時間は無駄にしたくねェンだ」

「?」

「今日一日付き合ってやる。 近くの公園に移動するぞ。 一日の
 スケジュールを組むついでに、俺から少し聞きてェ事もあるしな」

「よろしいのでございますか?」

「二度も言わせンじゃねェよ、着いて来い」

「わーい!」


一方通行の言葉を受けて無邪気に喜ぶアンジェレネ。オルソラも逡巡したが、
ここは厚意に甘える事にした。率先して歩く一方通行の背中に着いて行く。


イギリス清教の最大主教。ローラ=スチュアートとの謁見まで残り三日。


風斬氷華、キャーリサと続いて今回はオルソラ、アンジェレネと過ごそうと一方通行は決めた。
225 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:13:50.51 ID:oYRNUrCFo


――――――――――――――――――――――


ともあって近くの公園に移動した一方通行とシスターズ(妹的な意味合いは含まれない)。
だが公園内の様子が少しおかしい。何やら十数人くらいの子供や学生が佇み怪訝そうに
会話をしている姿が見られる。先の街灯の自動販売機同様、ここでも何かが起きたようだ。


「チッ、一端覧祭中だってのになンで公園にこンな人が集まってやがンだ」

「と、とりあえずあそこのベンチに座りましょうか。 そういえば
 一方通行さん、朝ご飯は済ませました? 私達、オニギリを作って
 きてるんですけど……良かったらどうぞ」


アンジェレネに促され、一方通行達は公園のベンチに腰を降ろした。
このベンチは以前、風斬氷華と紛い物のデートを実行した時に訪れたベンチだ。
一方通行は当時の事を振り返り、よく考えるとここで結構大変な事態が発生した
事を思い出し、首を振って払う。
226 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:14:55.45 ID:oYRNUrCFo

歪な形ながらも実に美味しい握り飯を食べながら、まずはオルソラが発言する。


「最初に一方通行さんが話しておきたい事、というお話を伺うのでございます。
 私達が聞いても意味のあるものなのでございましょうから」

「多分だけどな。 ……オマエら、世界各地で発生してる『暴徒』の件については知ってるか?」

「ぼ、暴徒ですか……?」


朝っぱらから物騒な言葉を耳にしたアンジェレネが怯えながら反応する。


「それは魔術サイドに関するお話でございますか?」

「モロにな。 なんでも、『第一九学区事件』の影響で発生した連中らしいンだが。
 そいつらが事件に感化されて暴れ回ってて、それを魔術サイドの組織が協力して
 淘汰していってンだとよ。 ……その様子だとどォやら初耳みてェだが」
227 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:16:02.65 ID:oYRNUrCFo

「うーん……確かに初耳ですね。 規模が大きいならシスター・アニェーゼ辺りが
 情報を傍受していそうですけど、私達、『ミサカ』さんが居た研究施設から
 寮に帰って、次の日の早朝にはここへ向かうために出掛けちゃってましたから」

「って事ァオマエら学園都市に到着するまで一週間近く掛かってるって事だよな。
 どンだけ冒険してンだよ……シスターのクセに逞し過ぎるだろ……」

「しかしあの事件に感化されてそのような方達が現れるというのも、
 何だか聞いてて気持ちの良いお話ではございませんね……」

「まァな。 しかも事は『天使同盟(アライアンス)』に関わる。 イギリス清教の
 最大主教とやらが俺に招集するよォ要請があった話はオマエらも聞いたよな?
 もしかすると呼ばれた理由に『暴徒』の件が絡ンでンじゃねェかと思って、
 同じイギリス清教のオマエらなら何か知ってるンじゃねェかと聞いてみたンだが」


考え過ぎだったか、という一方通行の言葉を受けてオルソラは眉を八の字に
曲げて落ち込んでみせた。
228 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:17:09.04 ID:oYRNUrCFo

「申し訳ございません……、何のお役にも立てなくて……」

「気にすンな。 むしろ知らねェ方が良かった話だ、聞かせちまった俺に非がある」

「暴徒……ですか。 何だか物騒で怖いですよね……」

「まァ、頬にごはン粒つけてもぐもぐメシ食いながらするにゃ相応しくねェ話題だったな」


内容自体は『暴徒』という暴力的なワードが含まれている時点でシリアスな話題なのだが、
突き抜ける青空を仰ぎながら公園のベンチでおにぎりを食べつつ話すには些か真剣味が
欠けているシチュエーションと言えよう。

これから楽しく過ごすという時にこんなテンションを引きずっていては
締まりがない。一方通行は早々に話題を切り替える事にした。
229 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:18:34.26 ID:oYRNUrCFo

「俺からの話は以上だ、つか忘れろ。 ……で、オマエらの方は?」

「と、言いますと?」

「と、言いますと? じゃねェだろ、こっちは畳を人質にされてンだ。
 人じゃねェけどな。 今日もどっか行って遊ぶンだろ?」

「じゃあこういうのはいかがでございましょう。 誰があの部屋の
 畳を一番に丸裸に出来るか、私達で藺草をぶち抜いて―――」

「オマエは畳に親でも殺されたのか? どンだけ草むしりしてェンだよ。
 そンな非生産的なボランティアのためにオマエらに付き合ってンじゃねェンだよ」

「非生産的だなんて事はないと思うのでございますが……。 毟られた藺草は
 業者に回収され、ゴミ処理場で新たな生命を育む肥料に代えられるので
 ございます。 学園都市の技術なら更に質の良い肥料にしてくれるのでは」
230 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:19:30.68 ID:oYRNUrCFo

「科学の最前線を突っ走る学園都市にわざわざ一週間近く掛けて遊びに来た
 シスターのやる事が畳の藺草を毟って肥料に代える事なのか?
 もしそォなら俺はもォ泣くしかねェぞ、虚しすぎるだろそンな観光旅行……」

「あ、でもそれだとこの街から畳が無くなってしまうのでございますね」

「オマエは学園都市に存在する畳を殲滅する心構えだったのか!?
 つか人の話を聞けよ! つまらなすぎるってンだよオマエの予定表は!」

「あ、でもでも毟った藺草から更に品質の高い藺草を錬金術で
 錬成すればより素晴らしい畳を生産出来るのでございますよ」

「錬金術って言葉に科学の匂いを感じねェよ。 オマエはこの数日間で
 学園都市から何を学ンできたンだ。 そして人の話を聞いてくれ」

「私達は別に観光旅行のためにここへ訪れた訳では……」

「もォ終わってンだよそのくだりはァ!」
231 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:20:14.24 ID:oYRNUrCFo

もう最後の方はほとんど叫んでいた一方通行は、隣に居たアンジェレネが
取り繕うように差し出してきた美しく透き通った色合いの緑が特徴の
やたら凝ったホット玉露を一口飲んで心を落ち着かせる。

……畳といい、この恐らく急須から手間をかけて淹れたと思われる玉露といい、
このシスター達は学園都市で『わびさび』でも学んできたのだろうか、と
一方通行は呆れ果てる。それならこんな科学一直線の街よりどこか風情のある
日本の地へ飛んだ方がよっぽど効率的だろう。


「そのお茶はフクオカという土地で貰ってきた物でございますよ」

「冒険し過ぎだろいくらなンでも!!」


イギリス清教はいよいよ日本全土までその勢力に加えようと着手しているのだろうか。
恐ろしい話である。


「……まァイイ。 それで、」
232 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:21:06.74 ID:oYRNUrCFo

こういったオルソラとのふざけた掛け合いをするのもずいぶんと久々だった
一方通行は、付き合ってられないと思う反面この光景を密かに懐かしみながら再度尋ねる。


「今日の予定をさっさと聞かせろ。 まさかマジでノープランか?」

「世の中そのくらい適当な方が過ごしやすいと思います」

「オマエ本当にシスターなのか……?」


修道女らしからぬ発言をしながらオルソラは持参していたバッグの中身を漁る。
彼女がバッグの中から意気揚々と取り出したるは、


「じゃーん、でございます。 本日はこれに参加しようかと考えているのでございますよ」
233 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:22:11.66 ID:oYRNUrCFo

「へェ。 元気よくバッグの中から代えの下着を取り出して見せつけてくるサービス精神には
 感服せざるを得ねェけどよ、それに参加するってのはどォいう意図が含まれてンだ?
 人類にも理解できるよォ説明してくれねェとこっちとしても困るンだけどなァ」

「し、シスター・オルソラっ!」

「あ、………こほん。 これはほんの前フリなのでございます」

「前置きじゃなくて前フリなのか!? オマエまた下着出してくるつもりだろ!
 ていうか仮にも女がバッグに堂々と下着詰め込ンでンじゃねェよ……」


ほんのわずかに頬を赤らめながら結構色っぽいデザインのパンツをバッグに仕舞い、
オルソラは今度こそ本命のブツを中から取り出した。


「じゃーん、でございます。 本日はこれに参加しようかと考えているのでございますよ」
234 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:22:47.07 ID:oYRNUrCFo

「………あァ? なンだこりゃ」


オルソラが取り出したのは一枚の紙だった。イラスト等は無く、A4サイズの味気ない
白紙に何やら細かい文字がビッシリと記載されている。
一方通行がそれを受け取り文面を目で追う前に、オルソラが本日の予定を宣言する。




「今日はこの、『「風紀委員(ジャッジメント)」体験講習』に参加したい次第でございます」




235 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:28:28.83 ID:oYRNUrCFo

ここまででーす。

という訳で、今回のアンロック編ヒロインはオルソラ……、か?アンジェレネか?
一体どっちなんだと言いたいでしょうが、皆様にお任せします。

オルソラの宣言通り、一方通行パートはシスター二人に加え更に風紀委員三人と
あの女子中学生一人を交えて進行していきます。どうかお楽しみに。

次回はミーシャパート。ついに御坂美琴があっちの法則に触れてしまいます。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!


……そろそろ年末ですね。このSSにとって恐ろしいあの日が近付いてきましたね…………。
236 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/17(土) 14:29:00.81 ID:oYRNUrCFo



                          【次回予告】



「あるんだ……こんなの。 ロシアに行った時もそれに近い現象を見てるけど、
 これだけ近くでハッキリと示されたら現実逃避のしようもないわよね。
 ……超能力とは、科学とは違う『法則』。 うわー……手ぇ震えてるよ私」
学園都市・常盤台中学の超能力者(レベル5)――――――御坂美琴




「『注文が多い』」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・水を司る大天使『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ



237 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 14:31:57.97 ID:ThMWtp6d0
更新きた! >>1 乙です!

あなたの書くオルソラとアンジェレネが可愛すぎて生きるのが辛い
238 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 14:41:21.40 ID:jwv7SFbvo

ミーシャの言葉は……筆談か?
239 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 14:58:34.94 ID:EUtkfCBDO
メールじゃなイカ?
240 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 15:06:06.18 ID:UbkA6+hDO
俺が思ってた小悪魔じゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!??

くそっ…

次はレッサー(小悪魔)だと思ったのに早くもオルソラが来るとは…
しかもアンジェレネとかルートの予想の中に入ってなかったよ……


>>1乙!

クリスマスには番外編で各ヒロインとデート!
なんて話を書いてみてはいかがでしょう?
241 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 15:20:40.76 ID:4mQSmrrD0

美琴とミーシャのやりとりが好きな自分は次回がwktkだわ
242 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 16:46:30.22 ID:/C2bVnpn0
俺にもじゃーんでございますとか言いながらツンパ披露してくれる
花も恥らうおっとり巨乳シスターの知り合いが出来ないものだろうか
243 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 16:51:56.36 ID:w51SOcF1o

オルソラ&アンジェレネ√か
でかぱいとちっぱいを同時攻略とは
244 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 17:25:46.97 ID:D3odwSeso
オルソラ「今日はこの、『学園都市の暗部の歴史講習』に参加したい次第でございます」
一方通行「エイワアアアアアアアアアアアアアス!!!!」

こうだと思ったらそんなことなかったぜ!これが嵐の前の静けさか……
245 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 19:17:25.15 ID:yYGzV1Nn0
乙!

日増しに上がっていく一方さんのツッコミスキルにワロタwwww
246 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 20:51:36.11 ID:yAAY06210

オルソラ強すぎわろたwwwwwwww
美琴とミーシャの会話期待。
247 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 01:40:05.97 ID:zYZhtqVSO
あぁ……、あの日がやってくる
248 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 03:36:51.42 ID:Eaadhu2IO
今年のクリスマスも家にひとりで置き去り(チャイルドエラー)ですよ
249 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/18(日) 20:36:22.54 ID:bvQo8i3O0
一方通行「ねむねむでございますゥ」








ふう。
250 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 22:07:28.52 ID:qhXKOUMl0
抜くなwwww
251 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 22:09:47.72 ID:qhXKOUMl0
てゆーかageるなよ。思わず突っ込んじゃったよ(´・ω・`)
252 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 22:14:02.17 ID:0CyF9eZ30
気になってたんだけど、>>1のメール欄sageじゃなくてsagaになってるのはわざと?

ならいいんだけど・・・
253 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 22:24:28.59 ID:CYxtYE/G0
sageにするとスレの位置が上がらない
sagaにすると[ピーーー]とかがちゃんと表示される
254 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 22:31:49.04 ID:0CyF9eZ30
おぉ、なるほど・・・

教えてくれてありがとうです(・∀・)
255 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 05:14:09.73 ID:OL4hCyv10
>>1

オルソラのマッタリ感が心お落ち着かせる。

感謝
256 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 15:50:26.43 ID:yj8Ivy+i0
超乙ッス!
>>253 スレの位置があがるとは?
257 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 16:30:16.66 ID:49d1HlADO
>>256
スレッドの位置が1番(上)に来るってことだよ

そうなると必然的にこのスレが目立つ→新参が増えて書き込み増加→スレが埋まる



スレが目立つ→荒らし登場→荒れる

とか

後は>>1が来たのかな?と勘違いする人がいるからそれらの対策用に下げ(sage)る


こんな感じ?
258 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:50:17.85 ID:RQrQHHTHo

こんばんわ、更新を開始しまーす。

ええ、確かにクリスマスとかいうイベントも憎たらしいものですが、
そうではなくてですね……。年末はその、このSS史上最悪の事件が……あぁぁ。

気を取り直しまして、今回はミーシャパートです。
自動販売機を一発KOしてしまったミーシャを連れて逃走した美琴。
そして彼女はミーシャの正体に触れていきます。

それでは、よろしくお願いします!
259 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:50:53.00 ID:RQrQHHTHo


――――――――――――――――――――――


朝から出し抜けに二度も全力疾走を余儀なくされた常盤台の超電磁砲、御坂美琴は
年頃の女の子が一人で居ては色々と危険そうな雰囲気の漂う路地裏でへたり込んでいた。


「ぜえ……ぜえ……。 ま、さか……この私が、トラブルに巻き込まれるだけなら
 多々あったけど……、巻き込まれて逃走するなんて選択を強いられるなんて……」

「xkftut休憩pddtwl」

「自由奔放なんて言葉じゃ足りないわよアンタの奇行は……。
 フリーダムねフリーダム。 アンタ羽生えるし」

260 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:51:56.31 ID:RQrQHHTHo

会話するつもりで言葉を発するが、何せ今目の前にいる本物の大天使――美琴は知らないが――、
ミーシャ=クロイツェフの言葉がちっとも理解出来ないため、どうしても独り言をボヤいて
いる感が拭えない美琴。


「向こう一年はあの自動販売機があった周辺には立ち寄れないわね……罪悪感で。
 うわっ、さっそく黒子からメール届きまくってるし。 知らんぷりを決め込もう。
 ……でも黒子、今日は非番じゃなかったっけ? 初春さん達遊びに来てたし……」


後輩から滝のように送られてきたメールを静かに無視すると、美琴は
携帯電話を閉じてガウンを来た怪物をジロリと睨む。


「……はぁ、やったのはアンタとはいえ、唆したのは私だもんねー……。
 アンタを責め立てるのもお門違いか。 でもさすがにやりすぎ!
 重量三〇〇キロ前後の鉄の塊を蹴りで街灯にぶつけるか普通!?」
261 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:52:55.36 ID:RQrQHHTHo

「xsutyw謝々oupfm」

「改めてアンタの怪物じみたスペックを思い知らされたわよ……。
 本当に人間なの? こう言ったら失礼に当たるかもしれないけど、
 噴水で水浴びてたアンタの姿、まず人間には見えなかったんだけど」


そう言われるとどう返したらいいものかと、ミーシャは首を左右に傾げて
困った様子を表現してみせる。


「……学園都市が秘密裏に製造した新種の『駆動鎧』? な訳ないか。
 『駆動鎧』の性能を大幅に向上させるために新たに生産された
 人造人間とか……? そんな『闇』に関わってそうな計画で作った兵器を
 こんな街中に放り出すわけないよね。 うーん、謎は深まるばかりね」

「hrero乾燥npyru」
262 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:53:49.57 ID:RQrQHHTHo

ミーシャの正体について、ありとあらゆる情報が詰まった第三位の脳をフル稼働させる
美琴の事など気にもかけず、ミーシャは公園から逃げる際に水浸しになってしまった
黒のガウンの袖口を絞り、水を排出する。

こんな人間臭い行動を見せられると、然しもの美琴もますます人工物ではないと認識せざるを得ない。


「……アンタ、生き物なの?」

「?」

「そこで首を傾げるのはおかしいでしょ……。 人間でも人工物でも無かったら何?
 虫? 魚類? 水関連に因んでいるアンタとはいえ魚類ではないか……。 植物?
 哺乳類か! 二足歩行だし。 ……今私、物凄い失礼な発言連発してるけど、ごめんね?」

「ykhuo平気nbkto」
263 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:54:23.66 ID:RQrQHHTHo

「……当然人間じゃないわよね。 この世の生物じゃないなんて言わないでよ。
 でもそうだと仮定した場合……、アンタってもしかして神とか天使とかだったりする?」


なーんてね、あはは。 と諧謔的な発言で笑いを取ろうとした美琴だったが、
彼女の言葉のどこに反応したのか、ミーシャは勢い良くコクコクと頷いてみせた。


「え? 何? どこどこ? どのワードに反応したの?」

「天使」

「急にハッキリ喋るな!! ビックリするじゃない! ……で、え? 何?」

「天使」

「天使……? アンタが? さすがに冗談よね?」
264 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:55:23.99 ID:RQrQHHTHo

そう言うも、美琴の頬には一筋の汗が流れていた。二度の全力疾走による発汗で
伝った汗ではない。『いや、まさか』の不気味な予感が美琴の恐怖心と好奇心を
増幅させているのだ。

それに応えるように、ミーシャは指を一本立てた。指す方向はミーシャの頭上。


「うわっ。 あの時の……」


ミーシャの頭上に出現したのは、まさに天使を想起させる芸術的な『輪』。
水で構成された、青白い、淡く光る幻想的な現象。

学園都市の第三位に位置する美琴でも、その現象を説明する事が出来ない、非科学的光景。
常盤台中学の能力実演で見た際は能力によって作り出した演出的な何かだと思い込んでいた
美琴だったが、こうして堂々と、間近で見せつけられるとこの不可解な現象から目を背ける事も出来ない。


神秘的とさえ思える天使の輪。そして目の前に佇む"自称"天使ミーシャ=クロイツェフ。
265 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:56:22.43 ID:RQrQHHTHo

天使などという偶像的概念が現実に存在するとは、美琴はここまでされてもまだ信じられなかった。


しかしこの瞬間、美琴は明確に『科学とは違う法則』の存在を認めたのだった。


「あるんだ……こんなの。 ロシアに行った時もそれに近い現象を見てるけど、
 これだけ近くでハッキリと示されたら現実逃避のしようもないわよね。
 ……超能力とは、科学とは違う『法則』。 うわー……手ぇ震えてるよ私」


例えるならこの状況は、幽霊の存在を全く信じていない人間の目の前にガチで幽霊が
現れたようなものだろうか。幽霊が実際に存在するかどうかはまた別の話としても。
未知との遭遇とは言い得て妙だ、と美琴は乾いた笑い声を発する。気がつけば、
彼女の手は小刻みに震えていた。

歴史上の偉人も、人類未踏の現象や発明を目の当たりにした際、美琴のように歓喜に震えたのだろうか。
だが今の美琴に生じているのが歓喜による震えなのかどうかは、本人でさえも分からない。
266 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:57:22.74 ID:RQrQHHTHo

自分の身に湧き上がる感情の正体が掴めず戸惑い震える彼女の手を、ミーシャは―――。


「―――――――、」

「あ……」


極めて優しい動作で、己の手を重ねて包み込んだ。
母なる慈愛。疑う余地も無い愛をその手から感じた美琴は、不覚にも涙を流しそうになった。
ただ手を握られただけで泣きそうになるなど、自分はどれだけメンタルが弱いんだと
落ち込みそうになるが、彼女の感情の揺れは決して弱みなどではない。

美琴は知る由もないが、ミーシャが人に与える愛はあの第一位ですら涙した程なのだ。
中身がどうあれ、人間なら誰でも等しく感じる事の出来る天上の愛。
魔術サイドでは時に『兵器』としてカテゴリされる天使だが、本来の天使とはこのように
人に無償の愛を捧げる恵みの対象なのではないだろうか。

その天使の理想論ですら、人間が生み出した事には違いないのだが。
267 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:58:19.75 ID:RQrQHHTHo

「…………あ、ありがと」


心の底から、素直にそんな言葉が出た。
美琴はミーシャに笑顔で礼を言うと、ゆっくりとミーシャの手を解いていく。

ここが薄汚い路地裏ではなくヤコブの梯子が降り注ぐ平地だったら、さぞ絵になった事だろう。


「ったく、例え本当に天使だとしても、そんなアンタが噴水で水浴び
 したり自動販売機ぶち壊したりとかしないでよね。 そんなのが
 世に知れたら、アンタのせいで天使のイメージぶち壊しになるわよ?」

「dptud不祥事exmgt」


頭を抱えてあわあわと慌てふためくミーシャ。この彼女の様子を『天使同盟』の
誰かが見たら、何を今更と冷静にツッコミを入れているに違いない。
268 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 22:59:17.87 ID:RQrQHHTHo

さて、と美琴は立ち上がり、お尻についた埃をパッパと払う。


「ちょっとこんがらがった頭の中を綺麗に整理したいとこなんだけどー……。
 こんな場所じゃそれもままならないわよね。 朝から陸上競技並に走らされたし、
 喉も乾いたという事で、適当にファミレスでも利用しますかね」


美琴が振り向くと、ミーシャは頭上に出現させていた輪の中心部に指を入れて
チャクラムのように振り回して遊んでいた。そんな事も出来るのか……と
美琴は呆れて笑う。


「……その格好ならさして問題も無いわよね? どう?」

「?」

「アンタも一緒に来る? ファミレス」
269 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 23:00:08.79 ID:RQrQHHTHo

まさかここまで人外っぷりを披露した自分が食事に誘われるとは思わなかったのか、
ミーシャは無邪気な子供のように首を縦に振って喜んだ。


「ホント、変なヤツ……。 あー、ちゃんと自己紹介してなかったわよね?
 私は御坂美琴。 一応この街でレベル5の第三位やってるんだけど、
 まぁそんな肩書き、アンタには関係ないか。 よろしくね」

「foitryd宜敷pairtu」

「アンタの名前は……黒子がミーシャって呼んでたけど、合ってる?」


ミーシャは首を縦に振り是を示す。と同時に、携帯電話を取り出して
ポチポチと拙い動作で操作し始めた。


「?」
270 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 23:00:59.29 ID:RQrQHHTHo

美琴が怪訝に思っていると、彼女の携帯電話が着信音を発した。
また黒子か……? と辟易したようにメールを確認するが、そのメールは
目の前にいるミーシャから送られたものだった。

こんな至近距離でメールによる意思伝達もおかしな話だと思いながらメールを開き、
内容を確認する。


『私の事を天使、或いは別法則に準ずる人外的存在と認識したと思う。
 美琴は信頼に値する人間と判断し、私は美琴に対し、他の仲間に向けている
 感情や態度を向ける事をここに誓う。 しかしそれでも、その他大勢の
 人間から見れば私は脅威と畏怖と混沌の対象となる存在であり、現時点では
 私の存在を公に露呈するという事態は避けるべきだと私は判断する。
 よって、美琴は私の存在を他へは口外しない事を約束して欲しい。
 私から歩み寄っていてこの物言いは些か得心いかぬ事だろうとは思う。
 でもどうか、その時が来るまで、内密にしておいてほしい。 おおきに。
 ―――――ミーシャ=クロイツェフ』

「……、」
271 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 23:01:45.99 ID:RQrQHHTHo

最後の一言さえなければ切実な頼みである事は容易に伝わったのだが、これでは
マジなのかテキトーなのか判断に困る、と美琴はため息をついた。


「おおきに、って……私はまだ何にも言ってないでしょ。 関西弁の使い方
 完璧に間違えてるから。 つか仮にも天使を自称するアンタが関西弁とか
 使わないでよ。 どんだけユーモアセンス溢れる天使だっつーの。
 あとこれだけまともな文章が作れるなら普段もそうしてくれると助かるわ。
 アンタのメール、たまに"絵文字のみ"で送られてくるから解読に時間がかかるのよ」

『注文が多い』

「アンタの事を慮って言ってるんでしょうが! そしてたったこれだけの
 文章をこんな距離から送ってくるなっての。 メール魔かアンタは」

「…………」

「…………」
272 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 23:02:45.67 ID:RQrQHHTHo

ジーッとこちらを見てくるミーシャの表情は、この距離ならフードを着ていても
確認できる。マネキンの首に挿げ替えたようなその顔はやはり美琴と言えど背筋が凍るが、


「……りょーかい。 ま、アンタみたいな怪物なら、そりゃもう色々と
 事情がおありなんでしょうよ。 誰にも喋らないわ、美琴さんを信じなさい」

「codfy感謝vcpyi」

「うわっ!? ちょ、抱きつかないで―――うぎゃーーーーー!!?」


ミシミシ……と美琴の背骨から嫌な音が鳴り響いた。
ミーシャが仕掛けたハグは思慮の外強烈で、美琴は反射的に電流を放ってしまうが
天使には全くと言っていいほどダメージが無かった。
273 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 23:03:30.64 ID:RQrQHHTHo

――――――――――――――――――――――


その後、行きつけのファミレスに向かう道中も美琴は振り回されっぱなしだった。


「――――ッ、」

「ひいいっ!!? な、何でくしゃみしただけでコンクリが炸裂するのよ!?
 規格外なんてもんじゃないわね……、さっき水浴びしてたから、身体冷えてんじゃないの?」


くしゃみらしき仕草をしたかと思ったら、コンクリートで出来た歩道が爆発したり、

274 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 23:04:11.80 ID:RQrQHHTHo

「―――――♪」

「ファッション誌なんて読むんだ……。 てかオイ、アンタその本どこから持ってきた?」

「お客さああああああああん!!!! お金お金、代金貰ってないですよ!!」


鮮やか過ぎるミーシャの万引きに、あの第三位が頭を下げるハメになり、


「vbkktuf後方syrit後方aapgit」

「だー、もう! あんまり自分を知らない他人とは関わらない方がいいって
 言ったのはアンタでしょ! あの人は交通警備って仕事をやってるのよ、
 邪魔したら怒られるのは私なんだからもう勘弁して!」
275 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 23:04:55.23 ID:RQrQHHTHo

一端覧祭のために配置されたゴツいオッサンの警備員になぜか近寄ろうとする
ミーシャを必死で引き止めたり(幸い警備員のオッサンは気付いていなかった)、


「えっ、ウソ!? ちょ、ちょっとこれ……もしかしてロシア限定の
 ロシア連邦軍仕様ゲコ太二等兵AK-47V型装備フィギュア!!?
 日本はおろか世界各地でも手に入らないため半ば伝説と化していた……、
 さすがは一端覧祭! これ買っ……三〇万!? 本物の軍用小銃と
 大差ない値段じゃない!! いやでもこの程度なら私の財力で……」

「jtxxlyt飲食店oyie急行clcollri」


何やらレア物らしいフィギュアを目撃し周囲の目も憚らず興奮しまくる美琴にミーシャが呆れたり、


「そういやアンタ、外出禁止令がどうとか言ってたけど……保護者的な人がいるの?
 外出禁止令が本当ならアンタこうして私と出歩いてるのはマズいんじゃない?」
276 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 23:05:49.39 ID:RQrQHHTHo

「vmkf少々puogk」

「まぁ別にいいんだけどさ……、保護者がいるなら私も会ってみたいし。
 ところでこの前私が薦めたゲコ太のアニメ、ちゃんと見てくれた?」

「tofsw勿論orosj」

「感心感心。 ねえ、第二二話から最終話にかけての展開なんだけど、あれどう思う?
 ネットの評価じゃかなり批判されてたけど、個人的にはあの急ぎ足な展開もありだと
 思うのよね。 確かに詰め込み過ぎ感あったけど、ゲコ太が踏んだ地雷がさ―――」


天使とアニメについて熱い議論を交わす事ができる人間は、美琴以外に数人しか居ないだろう。
というかさりげなく会話が成立しているのはどういう訳なのだろうか。


そんなこんなで二人は結局、徒歩で一〇分掛からないファミレスに三〇分以上掛けて
ようやく到着したのだった。


異形と過ごすという美琴にとっての非日常は、皮肉にも彼女が密かに抱く辛い現実を
ほんの少しだけ忘れさせてくれた。
277 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 23:12:23.86 ID:RQrQHHTHo

今回はここまでです。

ハグ→ファミレスの流れは初期にあった展開です。
意図的に昔ながらのお話を書いてみましたが、いかがでしょうか。
ミーシャにサバ折りハグされたのって一方通行と御坂だけかな?

次回は一方通行パート。風紀委員の皆さんと合流して体験講習を行います。
シスター二人はきちんと風紀委員を務めることが出来るのでしょうか、的なお話です。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
278 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/19(月) 23:12:52.83 ID:RQrQHHTHo



                          【次回予告】



「……参加者が俺達以外に存在しねェってのはどォいう事だ? まさか
 ここの支部だけ胸に一物ありそォな噂でも囁かれてたりすンのかよ」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)




「まったく……本当に自由奔放なのね、あなたは」
第一七七支部所属の風紀委員(ジャッジメント)――――――固法美偉




「まぁ……、風紀委員という役職はつまり、如何にゆったりとした日常を
 上手く過ごしていくか、そこに熱意を向けているのでございますね」
元ローマ正教のシスター――――――オルソラ=アクィナス




「(……イギリス清教って何ですの?)」
第一七七支部所属の風紀委員――――――白井黒子



279 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/19(月) 23:15:07.20 ID:PnxmGXac0
超おつです!
280 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 23:19:28.24 ID:AgOdFceno
2週間前から睡眠時間と休憩時間削って読みふけってたら追いついちゃった
超乙です
281 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 23:33:17.77 ID:dtEzlAH20
乙!
美琴とミーシャのコンビいいなぁ
自由な妹の世話をする姉の様な図式が物凄くほのぼのする
282 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 23:39:38.43 ID:bxjxst+co
>>1乙する事を強いられているんだっ!!
283 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 23:39:47.04 ID:qKlQdTKSO
くしゃみでコンクリエグるとか超懐しい

あとは、美琴がどうやっていただきますの衝撃波を切り抜けるか楽しみだわ
284 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 23:50:13.82 ID:LVUr0xOb0
乙でしたー
>ここの支部だけ胸に一物ありそォな
一瞬固法先輩とオルソラの事かと思ったのは俺だけでいい
285 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 23:50:22.99 ID:oENhzEqe0

>>283
懐かしいなそれw
御坂の鼓膜が破れなければいいが……
286 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 23:56:47.49 ID:w3JjtcGG0
おおきにでワロタwwwwwwww
287 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 00:04:44.89 ID:woOcvt160
>>284 確かにたわわに実ってますけど
288 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 00:40:43.47 ID:d4SDiMd/0
>>1乙です!

やだ、展開が懐かしい・・・

もっかい最初っから読み直そうかな(・∀・)
289 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 05:40:24.87 ID:v7rSHjeA0
>>1

>>284, >>287  つ仲間
290 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 11:59:34.04 ID:Li/a8E0a0


>美琴が振り向くと、ミーシャは頭上に出現させていた輪の中心部に指を入れて
>チャクラムのように振り回して遊んでいた。
ミーシャはかわいいなぁ!かんわいいなぁ!!
美琴とミーシャの会話好きだわー。
291 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 02:03:42.18 ID:Qw4h0Qu/o
セブンスミスト「美琴さん頼むから買い物は勘弁してください!!」
292 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:23:10.56 ID:5VTuysmko

こんにちわ、お昼からの更新です。

今年も残すところ十日となってしまいましたね。とりあえず今週末の
クリスマスですが、皆様はどのように過ごす予定でしょうか?
恋人とのリア充クリスマスライフを送る方は末永く爆は……お幸せに。

さて、今回は一方通行パート。アンロック編のシスターコンビです。
風紀委員の体験講習に参加したいとか面倒な事を仰ったオルソラ様の提案に乗っかり
一方通行はまたしても第一七七支部に赴くことになるのでした。

では、よろしくお願いします!
293 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:24:09.36 ID:5VTuysmko


――――――――――――――――――――――




「何だかんだ言って昨日に引き続きここへ来てくれるなんて、無愛想な
 態度を取りながらも其の実、一方通行さんって良い人なんだなあって
 あたしは思うんですよ。 けれど、昨日の紳士風な男性に続いて
 今日はシスターさん二人を連れてくるなんて、一方通行さんって
 結構そういう風に奇を衒う傾向があるんですか?」

「昨日もそォだが俺は何もオマエのツラを拝みにここへ来てる訳じゃ
 ねェンだよ。 そもそも通っている学校に居る事自体は問題ねェと
 して、なンで風紀委員でもねェクセにオマエはここで寛いでやがンだ?」

「ま、まぁそれは今に始まった事ではないですし……ほら、居るじゃないですか。
 アニメとかでも。 いつの間にか主要キャラの一人として当たり前のように
 ポジションを築いているキャラって。 佐天さんの場合、『乱雑開放(ポルターガイスト)』
 の件とかもあって結構お世話になってるんですよ。 だからもう気分的には、というか
 雰囲気的には佐天さんもすっかり第一七七支部の一員って感じなんですよね」

294 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:24:51.60 ID:5VTuysmko

「雰囲気的にはすっかり風紀委員の一員である佐天さんがここに来て
 する事と言えば、勝手に買い置きしておいたお菓子を頬張ったり
 ソファで寝転がってテレビ鑑賞に明け暮れたりしてるだけですの」

「まぁ……、風紀委員という役職はつまり、如何にゆったりとした日常を
 上手く過ごしていくか、そこに熱意を向けているのでございますね」

「そ、それなら私達でも何とかやっていけそうですね! シスター・オルソラ」

「妙な誤解を生んでしまうような会話は謹んでもらえるとありがたいのだけど」


ジロリ、と眼鏡の奥から射抜くように飛んでくる固法美偉の
眼光を受けて佐天は身体を強張らせ苦笑いを浮かべた。
295 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:25:46.67 ID:5VTuysmko


一方通行、オルソラ=アクィナス、アンジェレネの三人は第七学区の柵川中学へ
足を運んでいた。


その目的はオルソラが提案してきた『「風紀委員」体験講習』の参加。
なんでも『外』から来訪してきた一端覧祭の参加者の中には、毎年風紀委員の
仕事に就きたいと志望する者がいるらしい。

そういう人達のために実地されるのがこの風紀委員の体験講習。
学園都市全域に点在する風紀委員支部の何れかに申請書類を送り、
実際の風紀委員の指導の下、風紀委員としての活動を体験するという講習だ。

今年は一端覧祭初日から実地されていたこの講習だが、


「……参加者が俺達以外に存在しねェってのはどォいう事だ? まさか
 ここの支部だけ胸に一物ありそォな噂でも囁かれてたりすンのかよ」
296 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:26:41.84 ID:5VTuysmko

「人に不信感を与えるような活動なんてここではしてません。今日はもう
 一端覧祭の四日目よ? 風紀委員の体験講習を志望する人は大抵一日目で
 参加する支部を決めて、次の日には講習を始めるのよ。 ……もっとも、
 今年の一端覧祭は開催期間が大幅に延長されてるから、途中で根をあげて
 棄権しちゃう人もいるようだけど、ここはそういった事とは関係なく、
 人手が少ないから参加者もこぞって参加しようとは思わないだけ」

「と、途中で棄権するような事をするんですか……? このイベントって」


固法の言葉に一抹の不安を覚えたのか、アンジェレネが若干怯えた表情をしながら尋ねる。
その保護欲が掻き立てられる幼い顔を見た固法は歳上のお姉さんらしい柔和な笑みを浮かべて、


「参加者は実際に事件が起きた時などは活動出来ない決まりになってるから、
 安心していいわよ。 途中で棄権する人の大半の理由は訓練がきついとか、
 思っていたより活動内容が地味だったからとか、そんなものよ」

「確かに女性四人……いえ、三人では人手不足も否めないのでございますよ」
297 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:27:57.60 ID:5VTuysmko

オルソラの言葉に、頭にたくさんの花を咲かせる少女、初春飾利が補足を加える。


「実を言うと固法先輩と白井さんは第一七七支部所属の風紀委員じゃないんです。
 ただこういう大きな催し物やイベントが行われる際はヘルプとしてこのお二人が
 一七七支部で活動してくれている訳でして」

「とりあえず一端覧祭中はこの支部で活動する事になっていますので、
 ここで体験講習をするというのでしたら私達の指示にも従ってもらいますの」


ツインテールが特徴の白井黒子は腰に手を添えながら言う。


「じゃあオマエは? オマエもここで講習に参加するのか」

「ん? いえいえ、あたしは面白そうだなーって思ったから着いてきただけです。
 御坂さんは何か用事があるみたいですし、初春と白井さんは一方通行さん達が
 こうして体験講習に来たから仕事が出来ちゃって―――いや不満はないですよ?
 だからあたしも暇なんで、今日は皆さんの活躍を陰ながら応援する次第です」
298 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:28:36.58 ID:5VTuysmko

「まったく……本当に自由奔放なのね、あなたは」


固法にそう言われ、えへへーと頬を掻きながら佐天は笑顔を浮かべた。
風紀委員でも参加者でもない人間がここにいる事を、本来なら固法は
咎めなければならないのだが、追い出そうとはしない様子からするに
彼女も佐天の同伴を暗に認めているらしい。


(にしても、俺みてェな人間が二度も風紀委員の支部に赴く事になるとはな……)


在校生と他校の生徒が行き交う柵川中学のグラウンドを第一七七支部の教室の窓から
ぼんやりと眺めつつ、一方通行はため息をついた。


この『風紀委員体験講習』にオルソラとアンジェレネが食いついた理由。
それは彼女たちが数日前に参加した学園都市見学ツアーに同伴していた
風紀委員の仕事っぷりに興味が湧いたから、との事らしかった。
299 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:29:34.59 ID:5VTuysmko

街の学生が街の治安を守るという学園都市ならではの体制により関心を示したらしく、
ツアーの最中にこの体験学習の情報を得て、これは丁度いいと参加してみる事にしたそうだ。

参加手続きを取るためにどこかの支部へ赴かなければならないのだが、『外』の人間である
オルソラとアンジェレネは場所が分からないため、一方通行に尋ねるついでに一緒に参加
しよう、という流れになって一方通行が選択したこの支部へ訪れた。


「さて、講習の一連の過程は把握してるし、さっそく始めましょうか。
 改めまして、私は固法美偉と言います。 今日は一日よろしくお願いします」

「あ、初春飾利です。 よろしくお願いします」

「白井黒子と申しますの。 ……それにしてもまさかシスターの方々が
 このような講習に参加なさるなんて……、世の中わからないものですの」

「えーと、あたしも一応自己紹介しといた方がいいのかな?
 佐天涙子でっす、よろしくお願いしまーす!」


四人の自己紹介を受けて、オルソラ達も丁寧に自身の情報開示をする。
300 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:30:09.69 ID:5VTuysmko

「オルソラ=アクィナスと申します、イギリス清教所属のシスターで
 ございます。 今日はご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします」

「あ、アンジェレネです! 頑張りますっ!」

(……イギリス清教って何ですの?)

「…………」

「そういえば一方通行さんって、本名はなんて言うんですか?」

「どォでもイイだろ。 睡魔が蘇る前にさっさと始めちまおうぜ」


佐天に名前を尋ねられるがそれを軽くスルーする一方通行。


斯くして、シスター二人に学園都市最強の超能力者という異色が混じった
風紀委員の体験講習が幕を開けた。
301 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:30:54.79 ID:5VTuysmko


――――――――――――――――――――――


さて、あれよあれよという間に始まった風紀委員体験講習。
だが本来、風紀委員として活動するには厳しく辛い過程を乗り越えなければならない。

そもそもの大前提として、風紀委員とは基本的に校内の治安維持にあたる組織であり、
校外で起きた事件などは学園都市の警察的組織『警備員(アンチスキル)』の管轄だ。
よって風紀委員のメンバーは各学校から選出される。九枚の書類にサインをし、
一三種類の適性試験の後に四ヶ月の研修をクリアという軍隊のような道のりを踏破して
初めて正式な風紀委員として任命されるのである。

そのため今回の体験講習という形は風紀委員という体制上成り立ちにくいのだが、
将来的に学園都市の学校に入学して風紀委員として活動したいという人も
この一端覧祭には多数集まってくるため、こうして体験講習というものが実地されている。

つまり、
302 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:31:45.89 ID:5VTuysmko

「貴女のように興味本位で風紀委員として活動したいという方は珍しいんですの」

「そうでございますか。 でも私、面白半分でこの講習に参加した
 訳ではないのでございますよ。 以前にあなたと同じような……、
 その、腕章を付けていた風紀委員の働きぶりに痛く感動いたしまして、
 何より学生の方が意欲的に街の治安維持に励むという事実に驚きまして、
 私も体験という形であれど、参加出来ればと思った次第でございます」

「……『外』の、しかも外国の方にしてはずいぶんと詳しいんですのね。
 学園都市の科学技術に興味を示すのは理解出来ますけれど、風紀委員に
 そこまでの関心を寄せる方はやはり珍しいというか……」


そんな会話をしながら、白井黒子とオルソラ=アクィナスは第七学区をパトロールをしていた。
この街のパトロールという活動も本来の風紀委員だと管轄外なのだが、一端覧祭で実地される
体験講習に限っては風紀委員の活動範囲が広がるらしい。第一七七支部は初日にきつい訓練を
行う事はせず、こうしてパトロールに励む方針を固めた。
303 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:32:30.88 ID:5VTuysmko

話し合いの結果、固法美偉の提案で二手に別れる事になり、一方は固法美偉、初春飾利、
佐天涙子、アンジェレネという面子に。
そしてもう一方は白井黒子、オルソラ=アクィナス。そして―――、


「貴方が彼女に知識を提供したんですの? 学園都市第一位」

「その呼び方は癪に障るからやめろ。 一方通行でイイ」

「一方通行さん」


一方通行もまた、面倒くさそうに杖をつきながら二人と一緒に街を歩いていた。


「柵川中学に向かう道中で軽く説明しただけだ。 風紀委員の働きぶりが
 どォとか、街の治安維持に取り組む姿勢がどォとか、そンな事はこの女にゃ
 説明してねェし、する気もねェし、俺はそンな事に興味はねェからな」
304 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:33:18.42 ID:5VTuysmko

「では貴方はなぜこの講習に?」

「付き添いだよ、このシスター共のな」

「以前、私とアンジェレネさんで学園都市の見学ツアーに参加した時、」


話の流れを意にも介さず、オルソラは語り始めた。


「二人の風紀委員の方が引率していたのですけど、その内のお一人が
 私とアンジェレネさんに風紀委員の特徴を詳しく説明してくれたので
 ございます。 懇切丁寧に、という感じでは、こう言うと悪いのですが
 無かったのでございますが、少なくともあのお方は風紀委員である事に
 誇りを持っていたのだと思うのでございますよ」

「割と惰性で続けてる風紀委員も少なくないのですけど、感心ですわね。
 その方に風紀委員に対する想いでも熱弁されたんですの?」
305 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:34:08.60 ID:5VTuysmko

風紀委員としての誇りを持っている人物に少しばかり興味を示した
白井はオルソラに尋ねる。
しかし帰ってきた答えは白井の予想とは違った、意外なものだった。


「いえ、そのお方。 "見たところまだ小学生くらいのようでございましたので"。
 ちょうど白井さんと同じ金髪のツインテールの女の子でございました。
 小学生というまだ未熟な年頃でありながら風紀委員として勤しんでいる以上、
 彼女はこの仕事に誇りを持っているんじゃないかなぁ……と思ったような思わなかったような」

「気のせいかよ」


相変わらずのマイペースなオルソラの話にツッコミを入れる一方通行。
だがその隣では白井が何かを思い出そうとしているように唸っていた。
306 :白井はツインテールだが、金髪じゃねえ……  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:34:55.05 ID:5VTuysmko

「どォした」

「いえ……、その金髪ツインテールの小学生……。 聞いたことがある、
 ではなく、見た事があるような気がするようなしないような……。
 はて、いつだったでしょうか、そんな風紀委員とお会いしたような」

「それは奇遇でございますね」

「いやわたくしも風紀委員ですので、他支部の方と顔を合わせる事は
 珍しくも何とも無いんですけど……。 うーん、思い出せませんの。
 一方通行さんの件といい、どうもここのところ物忘れが激しいような」

「ボケが始まってンじゃね―――げふゥ」


まだ最後まで言葉を言い切っていない一方通行の脇腹に鋭い肘がめり込んだ。
白井は咳払いをして気を取り直し、金髪ツインテの風紀委員の事はひとまず
置いておき話題を切り替える。
307 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:36:07.19 ID:5VTuysmko

「ではこれからの行動についてですが」

「はい。 難事件の解決でも暴走した能力者の捕縛でも何でも来い! でもございます」

「オマエに暴走能力者の捕縛が出来る訳ねェだろォが……って、魔術があったか。 なンか使えるのか?」

「戦闘的な魔術は使えませんが、私は修道女。 世界各地で布教活動をしてきた
 経験で培った交渉術がございます。 自分の意見だけを押し付けて言い包める
 のではなく、相手の心情を理解し、どんなお方であろうと優しく手を握り、
 そのまま合気道を仕掛ければ能力者でも一発ノックアウト、でございますよ」

「交渉術どこいった。 ふン、だが面白いじゃねェか。 そォだな、
 なら例えば、今ここで俺の能力が暴走したと仮定しよォか。
 オマエはどンな話術で俺を食い止める? ぐ、ゥ、うおおおお!!
 の、能力が…………能力の制御がきかねェ!! ぐああああ!!!」

「頑張れー」

「頑張ったらダメだろ!! 遠回しに死ねっつってンのと変わらねェよそれ」
308 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:37:04.53 ID:5VTuysmko

「物騒な話題に花を咲かせている所申し訳ございませんが、
 わたくしの話にも少し耳を傾けてもらってよろしいですの?」


間抜けな漫才を繰り広げる二人に割り込み、白井は言う。


「仮に能力者の暴走事故や強盗事件等、危険度の高い事件が発生したとして、
 体験講習という形で活動をしている貴方達は一般人としてわたくし達の指示の下、
 現場から避難してもらいますわよ? って、これさっき固法先輩が説明しましたわよね?」

「……それはつまり、」

「貴女が思い描いているような、事件現場で切った貼ったの大立ち回りで大活躍、
 異国のシスター・科学の街の治安維持に貢献、なんて事にはなりえませんの。 
 そもそもそんな事件が起きたらそれは『警備員(アンチスキル)』の管轄ですの」

「………………」


至極真っ当、至極当の然な白井の言葉を受けたオルソラは、
309 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:37:38.68 ID:5VTuysmko

「『警備員』体験講習はどこで―――」

「やってねェよ」


普段はのほほんとした雰囲気を醸すシスター、オルソラ=アクィナスだが、


そんな彼女でもたまにはヒーローのような大活躍をしてみたいと思いを馳せる事があるのだろうか。


「バイクに乗ってスーツを着て、困っている人を助けてみたかったのでございますが……」

「オマエなンでシスターやってンだ? そンな願望があるならもォやめちまえよ。
 そして困っている人間を助けるのにどォしてバイクとスーツが必要なンだ」
310 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:38:35.47 ID:5VTuysmko


――――――――――――――――――――――


しかし風紀委員の活動において校外へのパトロール等は管轄外というのは
"通常時"の事であり、一端覧祭のような学園都市全体で催されるイベントの際は
『外』からの来訪者が多いため警備員だけでは数に不足が生じてしまう。

その場合、警備員だけでなく風紀委員も校外の治安維持に取り組む事になるのだ。
風紀委員の体験講習もパトロールを兼ねて行う事が出来るので問題はない。


「まぁ大覇星祭に比べたら『外』からの客は少ない方だし、元々学園都市で
 暮らしてる学生も一端覧祭の時は大半が自分の通う学校で勧誘活動をしてたり、
 他校に赴いて将来自分が進学する学校の様子を確認したりしてる場合がほとんど
 だから、街中が人でごった返すなんて事はあまり無いんだけどね」

「で、でも……人、たくさんいますよ? 注意して歩かないと
 すれ違い様にぶつかっちゃいそうになる程度には……」
311 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:39:20.15 ID:5VTuysmko

言ったそばから通行人とぶつかってしまったアンジェレネはペコペコと頭を下げて謝罪する。
そんな彼女を見て固法はクスっと微笑みながら、


「良かったら手、繋ぐ?」

「むっ、それには及びません! 講習とはいえ私も今は風紀委員ですから!
 街の安全を守る組織の一員が上司と手を繋いでパトロールしてちゃ締まりません」

「おおー、カッコイイねえ」


佐天は悪巧みを思い浮かんだような笑顔を見せて、


「あ! あそこで女の子が不良たちに絡まれてるよ!」

「ど、どど、どこですか!? 今すぐ助けに行きます!」
312 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:40:18.33 ID:5VTuysmko

「と、そんな嘘に引っかかって持ち場を離れている間にあたし達が誘拐されたり
 とかしたらどうするのさ。 周囲の景色に目を凝らし、常に警戒を怠らず、
 何かが起きても冷静に状況を判断し分析する。 それが風紀委員というものだよ」

「風紀委員でも何でもない佐天さんが言えた事じゃないですけどねー。
 それに私達だってそんな目をぎらつかせて警戒網を張ったりとか
 してませんよ。 それじゃ気疲れしちゃってパトロールもままなりませんし」


嘘だと分かり、からからと笑う佐天を睨んでアンジェレネはプクーっと頬を膨らませる。


アンジェレネは非常に人見知りな性格をしている。ほぼ同僚しかいないロンドンの
女子寮でこそ明るく振る舞い、時にイタズラを働くような事もある彼女だが、
初めて顔を合わせた人間に対してまずアンジェレネが取る行為は決まって『警戒』だ。

女子寮に一方通行率いる『天使同盟(アライアンス)』が訪れた時などは顕著だった。
それはもうひどかった。警戒どころか敵意すら向けていたんじゃないかという程に。
特に一方通行に対してはなんか『食べられる』とか言っていたような気さえする。
313 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:41:18.55 ID:5VTuysmko

そのように、とにかくアンジェレネはあまり顔の知らない人間に対しては
おどおどとした調子でルチア辺りの後ろに隠れるのがお決まりだったのだが――――。


「ごめんごめん、もうからかわないから。 ほら、腕章、似合ってるよ?」

「そ、そうですか……?」


佐天に言われて、アンジェレネは右二の腕に取り付けられた、盾をモチーフとした
デザインが施された風紀委員の証である腕章に視線を移す。
盾。その意匠を見てアンジェレネはふと思いだすように言った。


「『盾の紋章(エスカッシャン)』」

「?」
314 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:41:55.86 ID:5VTuysmko

「イギリス清教の『騎士派』に選ばれた人が貰える家紋です。 その中でも
 盾の紋章は通俗的なものらしくて、盾の図柄に伝説上の生物や色を重ねて
 その紋章を持っている人の立場や生い立ち、思想や理念を示すんです。
 ……シェリーさんとシスター・オルソラの受け売りですけどね」

「ふ、ふーん……」


盾の紋章について滔々と語るアンジェレネ。しかしそれのよって生まれた空気は
『一般人が知らない知識を熱弁されてリアクションに困る』的なものだった。
魔術的知識を持たない固法も初春も佐天は、とりあえず頷くしかない。

そんな空気を察してか、アンジェレネは慌てて話題を変える。


「こ、この風紀委員の腕章はどのような意味合いが含まれてるんですか?」

「えーと……何でしたっけ」
315 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:42:52.34 ID:5VTuysmko

「その盾はどのような状況に置いても街に住む人々の盾になり、守り通す。
 そういう思いが込められてるのよ。 警備員のシンボルマークである
 三叉の矛とは対照的になっていて、風紀委員が守るべき人々の盾となり、
 警備員が人々の平穏を脅かす脅威を穿つ。 ちょっと前時代的だけどね」

「なるほど……」

「脅威が迫ってきてから盾を構えても遅い、なんてたまに言われるけど、
 風紀委員は住民への脅威を未然に防ぐために日々地道な治安維持を行なっているから、
 そういう意味じゃ盾というよりは脅威の侵入を防ぐ壁なのかも知れないわね」

「…………大変なんですね、風紀委員って」


固法の説明を聞いてアンジェレネは、自分はどこか風紀委員の存在を軽んじていたと思い知らされた。
もちろん今回の講習を真剣に取り組む気持ちもあったが、しかし心のどこかでは浮ついた興味本位の
ようなものがあったと、自覚させられた。
316 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:43:47.94 ID:5VTuysmko

主に教師で構成されている警備員とは違い、学校の生徒で構成された警察的組織。
その活動範囲は所詮校内だけの、言ってしまえば本来の意味での風紀委員(ふうきいいん)。
大きな事件が起きれば一般生徒に混じって避難する、形だけの役職。

アンジェレネもさすがにそこまでは思っていないものの、それを少し延長したものが
風紀委員なのだと無意識に感じていたのかもしれない。だからアンジェレネは改めて、


「が、頑張らなきゃ」

「あまり気負っても空振りするだけよ。 程々にね」


自分に喝を入れる。三人に支えられながらも、自分も今日一日しっかりと
街の治安を守っていこうと決心した。
317 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:44:44.51 ID:5VTuysmko

と、このように人見知りであるはずのアンジェレネは、今日出会った
ばかりの固法や初春や佐天と目を合わせて会話をしていた。


いつもの臆病なアンジェレネは、ここには居なかった。まだ少しだけ距離を
置いている感は否めぬものの、彼女は三人とまるで親友と談笑するような
調子で楽しく過ごせていた。

きっかけは、突如女子寮にやって来た『天使同盟』との交流―――ではなく。

恐らくは『アドリア海の女王』の件から、彼女の中の引っ込み思案が
薄れていく予兆はあったのだろう。
あの件以来、様々な人間と交流するようになってきたアンジェレネは、
自分でも気付かぬまま、見知らぬ他人に自ら歩み寄るような勇気が
生まれてきていたのだ。

その勇気が産声をあげるきっかけになったのが『天使同盟』との
出会いというだけで、彼らのおかげという訳ではない。
いつかアンジェレネも、誰とでも笑顔で過ごせるような日がやってくるだろう。
318 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:46:09.64 ID:5VTuysmko

「あ、改めてよろしくお願いします! 固法さん、初春さん」

「うん、頑張ろうね」

「私も初心に帰って治安維持に務めます!」

「あ、あれ? あたしは?」

「えと、佐天さんは風紀委員じゃないみたいですから……」

「なにをーっ! 差別禁止〜!!」


斯くしてアンジェレネは風紀委員としての活動に意を決して望む。


刻一刻と『その時』が近付いている事に気付かぬまま。
319 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:46:48.68 ID:5VTuysmko

――――――――――――――――――――――


少女はビルとビルの間に生まれた細い路地に佇んでいた。
第七学区。一端覧祭の影響でこの街は今日も多くの人で賑わっている。


「ま、ここでいいか」


いかにもテキトーです、みたいな調子でそう言った少女は手に持っていた可愛らしい
カエルのぬいぐるみを汚い地面に放り投げた。

その瞬間を見計らったように、彼女のズボンのポケットから声が響く。
無線機特有のノイズが混じっていたが、それでも相手の透き通った声色は正確に
彼女の鼓膜に届いた。
320 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:47:32.45 ID:5VTuysmko

『そんなところに「地図」を置くのか? 通行人に拾われでもしたらどうする』

「それはそれで愉快だと考えればいい。 どうせ『地図』は私達のような能力者や
 一般人には解読できないシステムが組み込まれてるんだろ? こんなクソみたいな
 お仕事を務めてやってるんだ、少しくらいのスリルが無いと退屈で死んでしまう」


そう言う少女の笑顔は、歳相応の少女が浮かべられるようなものではない醜悪に満ちたそれだった。


『私達も堕ちたものだ。 "あっち側"の下請けのような雑務をやらされているのだからな』

「ていうか下積み? 今は『耐』だよ、誰かが上層部、もしくは暗部に一悶着起こして
 くれでもしない限り現状は変わらない。 "今の"学園都市統括理事長サマはずいぶんと
 自由奔放なお方みたいだからな。 私達の組織も一人勝手に抜け出しやがって、グダグダも
 いいとこだ。 ま、元々堕ちてこその暗部だし、気にする程の事でもないだろう」
321 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:48:02.15 ID:5VTuysmko

『私の「コレクション」を勝手に使い潰した前の統括理事長よりはマシだと思うがな。
 ……ん、連中が行動を開始した。 私の方から「地図」の所在のポイントを連中に送る』

「りょーかいりょーかい」


少女は無線機の通信を切り、ごく自然に大通りの人ごみの中へ溶け込んだ。




「でもまぁ……十中八九、連中の作戦は失敗するだろうなぁ。 こんな
 手段で学園都市の裏をかけるなら、この街はとっくに崩壊しているよ」




イルカのビニール人形を背中に貼り付けながら歩く少女の独り言は、
周囲の人間が発する雑音によってかき消された。
322 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:54:34.11 ID:5VTuysmko

今回はここまでです。

さて始まった風紀委員体験講習ですが、腕章の由来とかは私が勝手に設定しました。
多分こんな感じなんだろうなって。原作にその辺詳しく説明されてる部分あったらすみません。
第一七七支部が柵川中学にあるのも原作を基準にしたのが理由です。アニメでは確か専用のビル
があるんでしたっけ?そういうとこうろ覚えなのは問題ですよね……。

最後に何やら怪しい影が動き始めた場面がありましたが、どう展開するか楽しみにしていただけたらなと思います。
あんまり楽しい体験講習にはなりそうもないですけど……。

次回はミーシャパート。美琴がある相談をミーシャに持ちかけます。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
323 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/22(木) 11:55:06.97 ID:5VTuysmko



                          【次回予告】



「話す前に一つ聞いておきたいんだけど、アンタって好きな人とかいる? 私もその……いるんだけどさ」
学園都市・常盤台中学の超能力者(レベル5)――――――御坂美琴




「efkpu選択apqit」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・水を司る大天使『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ



324 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 11:59:07.44 ID:0FXR6keJ0
こんな時間に投下とは……乙
オルソラさんはほんとどんな場面でも輝ける人やでぇ・・・。
というか美琴さんミーシャに恋愛相談て。
325 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 13:17:01.41 ID:r5/6Qk+IO
イルカの人形…一体誰なンだ…
326 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 13:30:34.80 ID:JIHxPYYSO
超謎ですね?
いったい誰でしょう?
327 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 14:25:09.78 ID:sJIAJRe70
>能力が暴走
厨二病ですか(笑)
エターナルフォースアクセラレータ(暗黒微笑)
328 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/22(木) 14:42:27.06 ID:WsPVNCX50
               x≦二二≧ ̄二ニ=‐- .
              /´ >:::::::-=ミ `ヽ、 `  ヽ
             / /:::::::::::::::::::::仆、       ',
            /  :/:::::/7::::::::::::/ !:::::\  \   ′
          /   :/:::::/}/::::::;:=ァ‐ ⌒T::\  ヽ   ヽ
            i   :/::::x=ァミ´   ,ィァ=‐-:.:.:.ヽ
            | . : :厶イ、 {::0:}   . {::0::}_冫. . .ヘ  、   i   >>1
          ' . :/:: イー┴ ´i     `'冖冖|  |ハ  ヽ  !   泣いてないよ?
           ∨:/:::|              |  |::::::.  ∨|    ほンとだよ?
             /:∧|八    _,ィ´ ̄ ヲ   |  |::::::::、  V
         /:∧/|::::l::.、   ̄   ̄    _,|  |:::::::::ヘ   }
.          ′{:/八:::!:::::>  ____  -=ニ:::|  ∨:l:::::::} .∧
      r─v─┴─┴┐::::::::;}     {::;⊥|    V::::::::!へノ
      レ=ミl________|::::::ノノ r‐ァく:{ |   ト、:::::V \
     rく z人      人´   /∠l:|  l    |ヽ\:} .ノ^ヽ
     {ヽ( ̄ ̄)====z'へ辷zz爻 ' ニ|:|  |  | |   }≧ト<}
    人::::( ̄ ノフ / ニ ニ ニ ニ ニ キV´|  | |、  ,仁ヲ:::::::::`ヽ、
   イ爻7::ト.二フYニ ニ ニ ニ ニ ニ ニ Vi. |  | |::`:::':<:::ノ:::::::〃:}
 x父爻7:::::/:::::/{ ニ ニ ニ{ニ ニ ニ ニ八.|  | |:::::::|:::| `ヾ:≠::::::|
r仁爻'´:::::イ::/ /| 、 ニ ニ 仁 ニ ニ ニイ爻{|   W|:::::::|:::|    }:::::::::::|

泣くぞ すぐ泣くぞ 絶対泣くぞ ほら泣くぞ

             ,.イ
             ヾ{
               ≫―‐- 、
           _,. -=≦::::::::::::::::::::::`ヽ
         / 〉:::/__/!__ト、::::::::::::::\
        〃/:::/´,.へ   ,.へ \:::::::::::::≧=<{
        !//〉::::{_  ヽ   '´  _ヾ:::::::!:∧
        |//:::::::j_≧= 。 c-=≦ぅ|::::::|::::∧
         /::::::cC///// ι:!:::::h::::∧
       /:.:.:.::::o r〜 ⌒ー― 、o |:::::レ:::::::∧
      // /:::::八 {__,. ---、_ノ 人:::|:::::::::::::ヽ
____/:::://:::::::::::::::u> .._    ,. イ:::|:.:.:!:::::::::::::::::\
 ̄ ̄ ̄冫 /::::/:::::::::::::::::::::::::}   {:::::::!::::! :!:::::::::::::::::::::::\__
.   //:::〃::::::::::::/!::_ノ    V::::|ヽ\|::::::::::::|\::::::\ ̄ヽ
  ///:::://::/:::::/ / 八___ノ {{ `ー 、::::::::::::!  ヽ::::::::ヽ
/ /  :!//:/|:::V  //`ーァ‐=≦八   |\::::::|    }∧::::i
___/  /| :/:/ |::::| V   /  / :∧/  :!、 \!   /  ヽ!
`7   { |/:/   !:::! {   〈    7  / :}   |∧  ヽ
 {´ ̄ヽ!/   V Y   〉  / /  :|  __j⌒ヽ  }
      (⌒ヽ「 ̄ }  /  //   j,.-{__><__}_}ノ
      >、j:::::::〈>――=ニミ≪ヽ::::::::乂
        }:::::::::}         Y:!::::::{{x!
         r':::::::::,'           / |:::::::V{
         r!::::::::/     ノ     { {:::::::::ハ
        !:::::::/             Vハ::::::::}x!
      /::::::::j  、______ ,.  V |:::::::|x!
       |:::::::::厂::::::::::::O::::::::::::::::≧=}. V:::::!x!
       |:::::::/::::::::::::::,::::::::::::::::::::::::::::::! V:::{x!
  _,. - 、 j>:::/:::::::::::::-{-=≦::::::::::::::::ハ V::{x!


??「誰かは全然わかりませんけど向こうに超泣いてる子がいましたよ(プークスクス」

(とあるスレからAAとかコピペさせて頂きました.誰かわからんけどおそらく俺の妹だな)
329 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 17:22:54.23 ID:o+H1aR8Fo
乙ー
>>328絶対貼られると思ったわwwwwww
330 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 17:43:26.79 ID:owW+cAKio
コレクションにイルカの人形?誰なのかさっぱりわからないぜ!
331 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 17:45:08.05 ID:7K6S42uE0
あれ此処の上条さんはend迎えてたよね?
332 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 18:58:21.09 ID:SieGFQcSO
乙アフィ
333 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 19:22:17.82 ID:+yuhPjly0
>>307
何この漫才。もう結婚しちゃえよ!
334 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 20:04:23.16 ID:PRSnK5Vk0
無線の人ってあの駆動鎧マニアの人か?
335 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 00:44:49.25 ID:WptXD9bjo
いつから一方さんはボケと突っ込みをこなせるようになったんだ
コントやるまでレベルを上げやがって
336 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 01:06:09.05 ID:aCfLgbiDO
>>292
クリスマスは>>1の投下を待つっていう予定で忙しいです
337 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 04:31:32.53 ID:6uHDvltDO
今回は多めの投下だったな

>>1


こんなに安定した定期更新で読める速報のSSも珍しいぜ…
338 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 10:02:45.25 ID:htaoRgbo0
ここの>>1ならクリスマスに投下をしてくれるに違いない
339 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 16:44:08.78 ID:iLVXGl920
やっとこさ追いついたぜ!

あとsageの場所あってます?
340 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 17:29:45.38 ID:imKKcUuj0
>の、能力が…………能力の制御がきかねェ!! ぐああああ!!!
違和感しかねえwwwwwwwwww
341 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 20:15:56.74 ID:88+4Do4w0
>>340
これを一方通行が言ってると思うと笑いがこみ上げてくるな
342 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 20:51:56.53 ID:MLOV4GsDO
>>340
これを一瞬、演技じゃなくて一方通行がガチで能力暴走したと思った俺はきっとガブリエルのような心の持ち主なのだろう
343 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:14:33.91 ID:DT6ENUoSo

メリークリスマス!私からのクリスマスプレゼントは……はい、ただの更新です。

という訳でクリスマス・イヴにも関わらず普通に投下します。
大切な方と過ごしているあなた、帰ってからでもいいので読んでやってください。
彼女持ちの方はは一緒に読んで……ってのはやめた方がいいでしょうか。

さて今回はミーシャパート。ファミレスに到着した御坂は、ミーシャに
とある相談を持ちかけます。その内容は意外にも……。

それでは、ローストチキン片手にスタートです。
344 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:15:02.44 ID:DT6ENUoSo


――――――――――――――――――――――


果たしてこの状況はいつもと何ら変わらぬ日常なのだろうか、と美琴は考える。


過ごしている環境、状況だけ鑑みれば、誰もが日常だと答えるだろう。
なぜなら御坂美琴はただ単に、何の変哲もないありふれたファミリーレストランで
抜いていた朝食を取りに来ただけなのだから。


「えーと。 何食べよっかな」


何の気無しに呟く美琴。今の言葉も、メニューを閲覧して料理を選んでいる
人間なら誰もが発するであろうごく普通の言葉。至って、通常である。
むしろ面白みがないと言ってしまってもいいくらいに。
345 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:15:41.57 ID:DT6ENUoSo

そんな日常という環境に身を置いていた美琴の鼓膜を、


「efkpu選択apqit」


"非日常が叩く"。


「……こう言っちゃ悪いけど、どうせアンタお金持ってないんでしょ?」

「utifo当然ddtrg」

「何で得意げだ」
346 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:16:31.09 ID:DT6ENUoSo

テーブルを挟んだ対面に座っている非日常が大袈裟な動作で首を縦に振り、
美琴は反応的にツッコミを入れた。が、構わずその非日常―――、
ミーシャ=クロイツェフは美琴と同じようにメニューを眺めて注文する料理を選ぶ。


(…………冷静に考えると私、今とんでもない状況の中心にいるんだろうなあ)


冷静に考えると、と言うが、自称天使の怪物とこのファミレスに至るまでの道中、
平気で日常会話を繰り広げていた時点で冷静じゃないだろうと美琴は自分の
考えを自ら否定する(会話といってもミーシャの言葉は要領を得ないためほぼ独り言)。


「アンタってさ、その、保護者……でいいのかな。 知り合い? とかいるの?」


美琴の問いかけにミーシャは黙って頷く。
347 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:17:12.64 ID:DT6ENUoSo

「ふうん。 ああでも、考えたらあの赤い髪の……火野って言ったっけ。
 とか打ち止めとか番外個体が居たわね。 アンタの事知ってる人間は
 これだけ? あ、私と黒子と初春さんと佐天さんは除いてね」

「goufldsrutlkpqbc」

「んー? まだ居るって事?」


ノイズまみれの言葉はやはり理解出来なかったが、ミーシャが首を
横に振ったのを見て自分を知る人間はそれだけに留まらないと
伝えたいのだろうと美琴は把握する。


「誰? もしかして、ていうかやっぱり学園都市に居る人間?」
348 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:18:48.01 ID:DT6ENUoSo

「cdli色々aqfti面倒pufcl省略xatut」

「うん、やっぱ何言ってんのかわかんないけど、とりあえず今
 適当に流しやがったんだろうなってのは分かったわ」


まったく……、と美琴はため息を一つ。同時に、ガウンを着ているとはいえ
明らかに怪しさ満点の容姿をしているこの怪物をすんなり入店させてくれた
ファミレス店員の対応に今更ながら疑問を感じた。

ここに入った時出迎えてきたウェイトレスが自分達を、というよりも
ミーシャ=クロイツェフを見て『あ、呼び出しボタン連打魔……こほん、』と
既に何度か顔を合わせているような事実を示唆する言葉を口にしていたのだ。


「アンタってこの店に来た事あんの?」
349 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:19:41.33 ID:DT6ENUoSo

未知との遭遇に、例えば人間が遠い未来、いるのかどうかも定かではない
宇宙人や異星人に出会ったらまず行う事は警戒と積極的なコミュニケーションだろう。
美琴も天使と自称する未知、ミーシャ=クロイツェフにどんな事でもいいから会話を試みる。


「ucxtfc常連pjtym」

「うーむ……現象が未知の法則なら言葉もまた未知の法則なのかな。
 アンタみたいな言葉を放つ怪物と一度だけ戦った事があるんだけど、
 アンタの言葉はそれの上位版っていうか……より人外っぽいのよね。
 いや、むしろあの怪物に比べたらまだ人間らしいのか?」

「?」

「あの火野って男はアンタと平気でコミュニケーションを取ってた
 みたいだけど……、こうなるとあの男も怪しいものね。
 翻訳機みたいな何かがあるわけではないんだろうし……、うーん」
350 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:20:26.60 ID:DT6ENUoSo

少しでもミーシャの言葉が理解出来ないかと頭を悩ませる第三位。

……しかし言葉より先に、まずミーシャという存在そのものに疑問を
持つ方が先ではないのだろうか。ミーシャ自体については既に受け入れて
しまっているのか、もしくは美琴が言う『未知の法則』に、美琴自身が
既に何度か触れている事で、無意識に存在を認めているのかもしれない。

と、そこでウェイトレスが注文の確認をしにやって来た。
入店時、さも当たり前のようにミーシャを歓迎したウェイトレスだ。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

「あ、えっと……私はこのサンドイッチとコーヒーを」

「かしこまりました」

「xmuit所望lhporu」

「はい、チーズハンバーグセットですね。 ふふ、今日は
 あのウサギさんはいらっしゃらないんですか?」

(普通に会話している……だと……!?)
351 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:22:17.50 ID:DT6ENUoSo

学園都市第三位の頭脳でもまるで法則を掴めない言葉を使用する天使を相手に
まるで常連客と談笑するような気軽さで会話をするウェイトレスに美琴は
驚愕せざるを得なかった。もしかしたらこの光景が普通であり、ミーシャの言葉を
理解出来ていない自分こそが異常なのではないかという錯覚さえ起こしてしまう。


「…………。 ocjt呼出pxkt」

「はい? あ、スイッチですか? どうせあなたに呼ばせたら
 スイッチ連打しちゃうでしょうから、今日は不意を突いて
 ご注文を承りに参りました。 私だって学習するんですよ」

「firus不覚cmlr」

「ふふふ、私だってそう何度も遅れをとったりしません」

「…………私の視野が狭すぎたのか、世界があまりにも広すぎるのか……」


なんかやたら親しげに会話を続けるミーシャとウェイトレスを呆然と眺めながら、
美琴はこの世界に対して向ける目を改めなければ、と妙な決意を固めるのだった。
352 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:23:46.91 ID:DT6ENUoSo

注文した料理が来るまで特にやる事もない。美琴は気怠げにテーブルへ突っ伏すと、
大きくため息を吐く。視線だけ動かしてミーシャを見ると、彼女は携帯電話を操作していた。


「誰にメールしてんの?」


とりわけ尋ねる必要の無い事を尋ねてみる美琴。
しかしミーシャは問いに答えず、美琴の携帯電話を振動させる事で返事を返す。


(私にメールしてたのか……、この距離なら喋っ―――まぁ言葉わかんないんだけど)


美琴は仕方なくといった調子でポケットから携帯を取り出す。
一件の新着メール通知。相手はもちろんミーシャ=クロイツェフ。
353 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:24:32.69 ID:DT6ENUoSo

『ずいぶんと鬱積している様子だが、何かあったのか』

「……」


ミーシャの外見や仕草と比較するとやたらギャップのある文面だが、
美琴は特に気にしなかった。むしろ驚かされたのは、ミーシャの洞察力。


「そう見える?」


美琴の問いかけにミーシャはコクリと頷く。


「そっか……、会ったばかりのアンタでもわかるほど私の気が滅入ってんのか、
 それともアンタが鋭すぎるだけなのか。 どっちでもいいけど……」
354 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:25:25.19 ID:DT6ENUoSo

『胸中の憤懣は吐露するに限る』


再び届いたメールを見て美琴は唇を尖らせる。
どうでもいい事だが、メールの文章を作成する際のミーシャの指の動きが
尋常ではないくらい早い。自分とは別の誰かと頻繁にメール交換をする内に
慣れてしまったのだろうか、と美琴は推測した。


「……憤懣とは少し違うかな。 私が勝手に悩んで、それを抱えてるだけだし」

『憤懣も煩悶も蓄積してしまえばそれが毒となる。 心に生じた毒は
 その心を蝕み、やがて愚かな暴走を引き起こす。 私と人の心では
 かなりの差異があるかもしれないが、毒を吐き出さなかった私は
 かつてひどく醜い暴走に至ってしまった』

「……?」
355 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:26:14.29 ID:DT6ENUoSo

『蓄積し、背負い、抱えていく事こそが思いやり、優しさだと
 私は勘違いしていた。 結果、私は私の最も大切な人に、否、
 この街に、果ては世界に多大な迷惑をかけてしまった』

「この街……? 学園都市に? 世界? アンタ何スケールのデカい事言ってんのよ」


この街に迷惑をかけた、という文章を見て美琴の頭に一瞬"例の事件"が過る。

『第一九学区事件』。世間で未だに話題になっている『天使同盟(アライアンス)』が
引き金を引いたと言われるあの大事件の首謀者が、まさか今目の前にいる自称天使なのか
と美琴はわずかに警戒心を高める。

自称天使。そして天の使いの同盟。ミーシャ=クロイツェフと『天使同盟』を
結びつける材料は一応揃ってはいるが――――。


(…………まさかね)
356 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:27:16.78 ID:DT6ENUoSo

『天使同盟』のミーシャ=クロイツェフが何らかの理由で暴走し、第一九学区事件で
鬱憤を晴らすように暴れ狂い事件を起こした。いくらなんでもそれはこじつけ、
強引な解釈だと美琴は自らの推測を心の中で否定した。


「なるほど。 アンタが言わんとしている事は悩みを打ち明けてみろ、って事でしょ?」


ミーシャは携帯を持っていないもう片方の手でテーブルに置いてあった
ナプキンを取り出し、物珍しそうに弄りながら無言で頷いた。


「黒子に見抜かれてるのは仕方ないとして、まさか会ったばかりの
 アンタにまで心配されるハメになるとはね。 私もずいぶんと
 不抜けちゃったもんだわ。 ……んー、でもまぁ、そうね」
357 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:28:13.02 ID:DT6ENUoSo

前髪を弄りながら逡巡した様子で美琴は唸る。確かに美琴は現在、
あまり誰にも知られたくないような悩みを抱えている。
知られたら己の立場が危うくなるとか、そういう類の悩みではなく、
自分自身の力だけで解決したいと考えている悩みを。

しかし目の前にいる自称天使は言う――言うと言っても言葉ではなくメールだが――。
一人で悩みを抱えていたらやがてそれは毒になり、心を蝕んでいく、と。
ずいぶんと遠回しな物言いだが、ミーシャは美琴に悩みを打ち明けてみろと言っているのだ。


「案外、出会って間もないアンタみたいなヤツに打ち明けた方が
 すっきりするって場合もあるかもね。 じゃあ、聞いてくれる?」

「miys勿論lpsirm」


ミーシャが頷いた事を確認すると、美琴は前置きのように
小さくため息をつき、そして口を開いた。
358 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:28:55.62 ID:DT6ENUoSo

「話す前に一つ聞いておきたいんだけど、アンタって好きな人とかいる?」


問われ、ミーシャは少し間を空けて首を縦に振った。


「いるんだ……気になるわね。 うん、でも……そう」


美琴はガラス張りの壁から多くの人々が行き交う街の景色に視線を移し、言う。


「まぁ、私もその……いるんだけどさ」


そして美琴は、ミーシャが知らない一人の少年の名前を口にした。
359 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/24(土) 23:33:10.28 ID:DT6ENUoSo

ウェイトレスさんが踏み込んではならない領域に入りそうなところで、
今回の更新を終了したいと思います。


あ?投下量が少ない?……言われてみれば確かにそうですね。
不満に思うかもしれませんが、とりあえず今日はご勘弁ください。
ボリューム不足で申し訳ありません。


さて次回のお話ですが、あえて何も言うまい。

次回更新は三日以内…………と見せかけて 明 日 だ 。

それでは、明日のクリスマスまで皆様、あでゅー。

次回予告はなしです。
360 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 23:36:54.36 ID:oz3CRGkc0
乙乙
これでクリスマスの予定が埋まった

>>342 おまおれ
361 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 23:40:09.11 ID:2STwWbup0
>>1
翌日投下ktkr
362 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 00:19:39.53 ID:C1zfScq/0
>>1
やっと追いついた…
ウェイトレスさんすげぇな
363 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 01:13:55.68 ID:UL/8BkUS0
クリスマス? ナンノコトデスカ?
武装練金の変人バーガーの店員といい、ウエイトレスの適応力はスゲェな…
このまま町になじんで欲しいわ
364 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 06:50:56.59 ID:adg1MuZI0
>>1に乙そしてメリ−クリスマス
365 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 08:03:16.83 ID:WN3+5fnr0
>>1乙メリークリスマス
クリスマスは天使同盟を読み返す予定があってだな
366 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 10:24:49.98 ID:pEBp8FVDO
>>1乙!

これはあれか?
まさかウェイトレスがヒロインに昇格したりするのか??

なんかかわいいんだがww
367 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 10:34:50.10 ID:7bT17uOAO
>>366
ウェイトレスは仲人プレイ要員
368 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 15:27:23.77 ID:xd3DAEg20
>>1メリークリスマス!!
窓割ったのにウェイトレス感じいいなと
思ったけどバレる前に逃げてたんだっけ?
369 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 17:18:37.67 ID:Y3nEGsMy0
>>368
いや、結局後で発覚してたと思うよ
370 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 19:37:10.13 ID:KmYKWfCg0
メリクリ乙
371 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 21:19:14.06 ID:LwlGnox40
サァァァンタさァァァァァァァァン!!
今日投下なんですか!?もう服脱いで待ってていいんですか!やったー!!!
372 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:07:20.27 ID:t8mJiQNOo
>>368
その辺は『第一九学区事件』の影響で有耶無耶になってる感じですね。
あんな出来事のあとだと窓がどうとかどうでもいいというような。
まぁ……セブンスミストだけはしっかり出入り禁止になってますけどww

メリークリスマス!(二度目) 二日連続の投下を開始します。

クリスマスだからって二日連続投下というのも意味がよく分かりませんが、
ちょっとでも特別感を提供したかったので……地味で申し訳ないですが。

さて今回は一方通行パート。のんびりと風紀委員の活動に勤しむ一方通行と修道女コンビ。
しかしまさかというか必然というか、トラブルが発生してしまいます。

それでは、よろしくお願いします!
373 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:07:57.08 ID:t8mJiQNOo


――――――――――――――――――――――


「だ、第四学区ではただいまこの街の科学技術で調理された学園都市製の
 お弁当フェアをやっています! 第四学区は隣接している第一学区を
 通るバスで向かうとコストパフォーマンス的にも一番お得なので、
 ここ第七学区のバス停を利用して移動する事をオススメします」

「ありがとう」


"風紀委員のアンジェレネ"に学園都市食品フェアを行なっている学区の場所を尋ねた
『外』からの参加者は笑顔で礼を言うと、バス停へ向かって歩いていった。
アンジェレネはふぅ、とため息をつき固法に声をかける。
374 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:08:45.83 ID:t8mJiQNOo

「ど、どうでした……? こんな感じで良いですかね?」

「うん、すごいじゃない。 あなた自身も『外』から来た人間なのに、
 風紀委員としてキチンと活動出来てるわよ。 上出来上出来」


固法はまるで自分の事のようにアンジェレネの懇切丁寧な道案内の出来を喜び、
アンジェレネの頭を優しく撫でる。

ちなみになぜ固法がアンジェレネが『外』の人間だと知っているのかというと、
単にアンジェレネ自身が固法達に教えたからだ。イギリスから遥々ここまで
やって来た事実に三人は驚きを隠せないでいた。


「良かったぁ……。 す、すごく緊張しました」

「しっかり風紀委員やってるじゃないですかアンジェレネさん。
 もういっそ講習生としてじゃなく、第一七七支部で公式の風紀委員として
 活動しませんか? 事務処理担当の仲間が欲しかったところなんですよ」
375 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:09:41.19 ID:t8mJiQNOo

「そ、そう言ってもらえると嬉しいんですけど、私はイギリス清教の
 シスターだし……。 それに訓練とかそういう体力面を求められる
 ような事は苦手なんですよ……。 私、鈍くさいですし……」

「それなら大丈夫です! 私も運動はダメダメでしたけどこうして
 風紀委員として認められてるんですから。 ……まぁ私の場合、
 情報処理能力を高く評価されたからって部分もあるんですけど」


初春はえへへと頬を掻きながら照れくさそうに言う。


時刻は正午に差し掛かろうとしていた。アンジェレネ達は既に昼食を済ませており、
引き続き風紀委員体験講習を実行している。

アンジェレネは予想以上に風紀委員の活動をこなせていた。
現職のシスターである影響か、人に物を教える事に長けていた彼女は
道案内や学園都市の特徴を一端覧祭参加者に突然尋ねられても、
慌てること口頭で丁寧な説明を伝える事が出来た。
376 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:11:47.24 ID:t8mJiQNOo

公認の風紀委員である固法や初春にもその仕事ぶりを絶賛され、
意外と風紀委員は自分の天職なのかもしれない、とアンジェレネも満更ではない様子だ。
もし生まれ変わったらシスターではなく、風紀委員として人生を歩んで行こうかな、
とアンジェレネが何だか飛躍した考えを浮かべていると、


「おおー!?」


何やら素っ頓狂な声が細い路地の奥から響いてきた。どうやら声の主は佐天のようだ。

それとほぼ同じタイミングで、


「あの、ちょっと道を尋ねたいんですけど……」

「はい。 どちらまで?」
377 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:12:48.19 ID:t8mJiQNOo

通行人に道を聞かれ、固法がそれに対応する。アンジェレネは路地にいる
佐天の方も気になったが、現在彼女は風紀委員タイム。固法の仕事ぶりを
手本にしようと佐天が向かった路地には足を運ばなかった。
道案内を詳細に行うため、固法とアンジェレネは一旦横断歩道を渡る。


代わりに初春が佐天の下へと向かった。


「どうしました佐天さん? 固法先輩とアンジェレネさん、向こうの歩道に行っちゃいましたよ」

「おお初春や、ちょいとこれ見てみそ」


掘り出し物を見つけたような顔をしながら、佐天が路地から何かを持って歩道へと出てきた。
彼女が抱えていたものは、パッと見では薄汚いカエルのぬいぐるみだと窺える。
しかし初春はレベル5第三位の超能力者、御坂美琴の友達だ。そのカエルが"ただのカエルでない事は"
すぐに看破出来た。
378 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:13:58.79 ID:t8mJiQNOo

「あ、これ……もしかしてゲコ太シリーズ?」

「やっぱそうだよね。 しかもこれ、確か御坂さんが言ってたんだけど、
 『機関のエージェント仕様』のゲコ太でしょ。 ほら、黒いコート羽織って
 悪そうな顔してるし。 何か中二臭い雰囲気がたまらないとか御坂さんが言ってた。
 これそこの路地に置いてあったんだけど、捨てられたのかな? 勿体無い……」


ポンポンと付着した埃を払いながら佐天はゲコ太のぬいぐるみを改めて凝視する。
ダークな雰囲気漂う黒いコートを羽織り、キュートな丸い眼も赤く塗装されており、
口元の笑みも『ニコッ』というよりは『ニヤリ……』といった怪しげな冷笑になっている。

と、初春が何かを見つけたのか目を丸くしながらこう言った。


「あれ? このゲコ太……お腹に傷がありません? ほら、ここ」
379 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:14:57.54 ID:t8mJiQNOo

初春が指をさした部分を佐天が見る。確かに初春の言う通り、ゲコ太のポテっと
した腹の一部にまるで手術後のような縫合跡があった。


「何だろ、某チョコスナックのアレみたいに盲腸仕様とかあるのかな?」


そんな呑気な事を言っていると、


「?」


ふと、初春が脇の道路に視線を投げる。

今の今まで気が付かなかったが、二人のすぐ傍、道路と歩道の境目ギリギリの位置に
一台の車が停まっていた。いつから停まっていたのか、最初からそこにいたように
停車している車は、窓ガラスから内部が窺えないよう透明度の低いスモークフィルムが
貼りつけられている。
380 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:15:42.56 ID:t8mJiQNOo

「え」


叫ぶ暇もなかった。


突如として後部座席側のドアが開いたかと思うと、そこから腕が伸びてきて―――――。


――――――――――――――――――――――


道案内を終えた固法が振り返ると、そこには横断歩道を挟んだ
向かい側の歩道をジッと見据えるアンジェレネの姿があった。
381 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:16:37.32 ID:t8mJiQNOo

「どうしたの?」

「え、あの……」


気のせいか若干顔が青くなっているアンジェレネは、その一部始終を見ていた。




「………………も、もしかして。 いわゆる誘拐、でしょうか?」




談笑していた初春と佐天の姿を隠すように一台の車が停まり、
急発進した時には二人の姿が幻のように消えていた。
382 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:17:41.34 ID:t8mJiQNOo


――――――――――――――――――――――


「喫煙を今すぐやめろ、とは言わないのでございます。 しかし、
 未成年の喫煙がこの国の法律で禁じられている事もまた確か。
 私としましては、これから先この街を、いいえ、この国の
 未来を導くあなた達の体が毒に侵されていくのを見過ごす訳には
 いかないのでございますよ。 だからこれは申し訳ありませんが
 没収させていただくのでございます。 もう吸ったらダメですよ?」

「……は、はい。 すんませんっした……」


オルソラ=アクィナスは笑顔で諭すと、スキルアウトの不良から
優しく煙草の箱を受け取り、修道服のポケットに仕舞い込んだ。
ここで油断したオルソラに暴力を振るい、再び煙草を奪い返す事も
出来たスキルアウトだが、その手段に出る事はない。
383 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:19:07.42 ID:t8mJiQNOo

なぜならそのスキルアウトは、完璧にオルソラに説き伏せられてしまっていたからだ。
風紀委員のクセになぜか修道服という異様な組み合わせの格好をした巨乳で可愛いお姉さんに
至近距離から優しくお説教されたら然しものスキルアウトもノックアウトというものである。
事実、入手したばかりの煙草をぶん取られたにも関わらず、不良少年の顔は真っ赤だった。


……これでこの少年の顔がボッコボコのグシャグシャでなければ、
ドラマのワンシーンにも使えそうな場面だったのだが。


「第一位という人間は野蛮で粗暴で短期で喧嘩っ早い、としっかり
 記憶しましたの。 ……ったく、確かにああいう輩相手に強行手段を
 取る事は風紀委員の間でも日常茶飯事ではありますが、それにしたって
 やりすぎですの! 下手したらあの殿方、死んでましたわよ?」

「……っせェな。 ちっとばかし頭にきただけだよ、手加減もしてる」

「あれで手加減って……、貴方、殺し屋稼業でもやってたんですの?」

「…………ある意味、な」
384 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:20:27.42 ID:t8mJiQNOo

最後の一方通行の言葉は消え入るような声だったため、白井には聞こえなかった。


事の経緯はこうだ。オルソラが路地に座り込んで喫煙している一人の不良を発見。
どう見ても未成年であったため風紀委員としてオルソラがやんわりと注意をする。
しかし不良、そのオルソラに対し『うるせえよ』と彼女の肩を手でどつく。
白井が援護に向かおうとした矢先、一部始終を見ていた一方通行が不良の顔面に
ベクトルパンチ。白井が一方通行と止めようとするも、彼の反射能力によって
触れる事も叶わず、結局最後はオルソラが一方通行を宥める事で事態は収束した。


「白井さん、彼を責めないでほしいのでございますよ。 彼は彼で
 先ほどの少年を更正させようとした結果に過ぎないのでございます」

「むぅ……まぁ終わった事ですの、良しとしましょう。
 それからオルソラさん、怪我はしておりませんの?」

「私は大丈夫なのでございますよ。 一方通行さん、さっきはありがとうございました」
385 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:21:18.63 ID:t8mJiQNOo

「……礼を言われるよォな事はしてねェよ。 さっさと巡回に戻るぞ」

「貴方が仕切らないでくださいまし」


という訳でパトロールを続行しようと歩き出そうとした三人だったが、


「あら?」

「おや、わたくしの携帯が……」


白井とオルソラのポケットから携帯電話の着信音が鳴り始めた。
ただしオルソラは着信音でもなければ携帯電話でもなく、フィアンマから
受け取った小麦粉人形型連絡用霊装が不気味に振動しているのだが。

白井は一風変わったどころの騒ぎではないオルソラの携帯端末にギョッと
しながらも、着信音を発し続ける携帯に応答する。相手は固法美偉だった。
386 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:22:57.86 ID:t8mJiQNOo

「はいもしもしこちら白井。 どうされましたの固法先輩?」


そしてオルソラに連絡してきた相手は当然、アンジェレネである。


「はいはーい、でございます。 アンジェレネさんですか?」


二人は端末を耳に添えていたが、相手の声は一方通行にも明瞭に聞こえた。




『誘拐事件発生。 応援、急いで!!』

『うわああああああああん!! し、シスター・オルソラァァ…………!!! う、初春さんと佐天さんが……』



387 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:24:06.24 ID:t8mJiQNOo

霊装から響くアンジェレネの泣き声と、携帯から伝わる固法の言葉を聞いて、
一方通行の表情が一気に険しくなる。

誘拐。

真昼という時間帯でもお構いなし。一端覧祭開催中でも関係無し。


アンジェレネと固法が揃ってこんな質の悪い冗談を言う事もないだろう。
一方通行は首元に手を持って行き、チョーカーのスイッチを切り替えた。
この瞬間、彼は学園都市最強の超能力者として君臨する。


「すぐ向かいますの、場所は!?」

『第七学区の特別運行バス停近く。 犯人の詳細は不明、警備員への
 連絡は済んでるわ。 犯人はアンジェレネさんの証言によると窓ガラスに
 スモークフィルムを施した黒塗りの一般乗用車。 ナンバーは無し』

「こんな白昼に堂々と……!! 了解しましたの、貴方達は待機していてくださいまし!!」
388 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:25:29.29 ID:t8mJiQNOo

白井は一方通行とオルソラにそう叫ぶと、最初からそこにいなかったかのように
姿を虚空へ消してしまった。彼女が有する『空間移動(テレポート)』の能力だ。


『うぐっ、ひっく……シスター……オルソラ、ど、どうしよう……私。
 私が二人から……うゅ、目を離したから……こんな、うううぅ……』

「ええ、大丈夫でございますよアンジェレネさん。 自分を責めないでください。
 落ち着いて。 ただ泣いているだけでは、事態の解決へは進まないのでございます」

『うう……ぐすっ。 ど、どうしたらいいですか? どうすれば……』

「……オマエらは合流してアジトに戻ってろ。 俺が片付けてくる」


一方通行はベクトル操作能力を使用して一気にビルの屋上へ飛び上がり、
逃走車両を確認するため視界を確保しようとした。しかし、
389 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:26:23.42 ID:t8mJiQNOo

「待って下さい、一方通行さん」

「あ?」


足元のベクトルを集中させている所にオルソラが声をかけてきた。


「私とアンジェレネさんも協力するのでございます」

「……寝言か? 言っておくがこいつは訓練でもギャグでもなンでもねェぞ」

『あ、一方通行さん!! 私も、私も手伝わせて下さい!!』


アンジェレネの必死の懇願は、小麦粉で出来た霊装が叫んでいるようにも見えた。
一方通行は真剣な眼差しを送ってくるオルソラの瞳を見ながら、
390 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:27:24.99 ID:t8mJiQNOo

「この件は科学サイドの学園都市で起きたモンだ。 魔術サイドのオマエらにゃ関係―――」

「科学だとか魔術だとか、そういう区別をつけるのが『天使同盟』でございましょうか?」

「な、に?」

「科学も魔術も関係なく、別け隔てなく交流する組織、それが『天使同盟』だと
 私はずっと思っていたのでございますが、それは誤りなのでございますか?」


オルソラの言葉には力があった。いつもののんびりとした雰囲気など
微塵も感じられないオルソラの静かな迫力に、一方通行は閉口してしまう。


同時に、確かに、何を今更科学だの魔術だの喚いているんだと一方通行は思った。


一方通行がミーシャ=クロイツェフと邂逅し、『天使同盟(アライアンス)』などという
ふざけた同盟を結成し、それが現在でも存続している時点で最早魔術も科学もクソもない
だろう。科学サイドの人間である一方通行が平気な顔で魔術サイドの事態に首を突っ込み、
魔術サイドの天使であるミーシャ=クロイツェフは、今も学園都市で堂々と過ごしている。

そんな『天使同盟』が今更科学と魔術を区別するなど、エイワス辺りなら鼻で笑っているだろう。
391 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:28:23.85 ID:t8mJiQNOo

「……ハッ、今更オマエらを除け者にしよォなンざ、勝手が過ぎるか」

『そ、そうです! 何を言われたって私達は揺らぎませんから!』

「という訳でございますので、エスコートをお願いするのでございますよ」

「それを言うならサポート……、いや」

「きゃっ」


すると一方通行はおもむろにオルソラの体をお姫様抱っこの形で抱えて、


「エスコートしてやる。 ……手ェ離すンじゃねェぞ」


オルソラを抱きかかえたまま、恐るべき跳躍でビルの屋上へ飛んでいった。
392 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:35:53.69 ID:t8mJiQNOo

今回はここまでです。

という訳で、誘拐事件が発生してしまいました。初春と佐天には申し訳ないですが、
この二人はトラブルに巻き込みやす過ぎるんですよねー。被害者にはもってこいです。
今後の展開はそんな二人を救出するために奮闘する一方通行達、という感じになります。

さてクリスマスが終われば次は年越し。大晦日という悪夢が再びこのSSを襲います。

次回も一方通行パートでお送りします。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
393 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/25(日) 23:36:42.74 ID:t8mJiQNOo



                          【次回予告】



「『0930』事件だと? ……まさか、オマエ」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)




「それにしましても……このビルは一体何なのでございましょうか?
 『窓のないビル』と仰っていましたけど、怪しげでございますね」
元ローマ正教のシスター――――――オルソラ=アクィナス




「きたれっ!! 十二使徒の一つ、――――――ッ!!」
元ローマ正教のシスター――――――アンジェレネ



394 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 23:39:09.20 ID:wBblo+zT0
>>1
犯人が誰かわからない
395 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 23:39:42.69 ID:wBblo+zT0
>>1
犯人が誰かわからない
396 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 23:40:05.81 ID:wBblo+zT0
>>1
犯人が誰かわからない
397 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 23:41:05.40 ID:wBblo+zT0
↑連投スマソ
398 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 23:57:16.51 ID:VG1ZmzHk0
犯人は





魔術師
399 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 00:01:13.59 ID:YslRVE5eo
おのれ魔術師


しかし「路地裏+佐天さん」の鉄板さはやばいな
400 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 00:14:35.30 ID:3azs+cle0
>>1乙!!
>エスコートしてやる。 ……手ェ離すンじゃねェぞ

濡れた
401 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 00:23:29.10 ID:m6hMNV620
お、お姫様抱っこですと!?
402 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 00:23:55.83 ID:WdjOLCOT0

路地裏にあの二人がいればそりゃさらわれるよね。かわいいし
403 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 00:25:21.14 ID:m6hMNV620
お、お姫様抱っこですと!?
404 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 00:40:07.24 ID:Qzyv6WSx0
>>1
犯人は誰なんだ?
405 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 01:00:51.43 ID:a+9oi0wU0
そりゃーねー
第一位サマともなればトラブルが発生したら避難しろと事前に言われてる風紀委員体験中の
ごくフツーのシスターさんをエスコートしながらガチの誘拐犯を愉オブするのも朝飯前ですわー
ええい爆ぜろイケメンロリコン白ウサギッ
406 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 05:16:48.96 ID:e3DtMZvSO
一方通行がカッコいいとかねーわ
だれかテンプレ持ってこい
407 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 05:48:53.50 ID:wP0b81320
フェスタのさなかに、

シスタ−を、お姫様抱っこして空を飛ぶ。

どう考えても、注目の的なのである。

408 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 06:23:56.70 ID:yc5W1icDO
犯人はおそらく…

最初が『ヤ』で最後に『ス』が付く二文字の名前の奴だろう……
409 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 07:51:03.44 ID:ltV4IfXGo
>>407
光を反射して光学迷彩すれば良いと思うのである
410 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 10:56:36.52 ID:gwDtIa7DO
犯人がイルカの人形を持ってる気がするが、誰だか全く分からない
411 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 12:27:40.74 ID:CeiROHIF0

一方通行かっけぇもげろ。
412 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 12:32:15.66 ID:Bq+diKqD0
>>406
・口調がおかしい
・服装がおかしい
・笑い声もおかしい
・顔が怖い
・いつまでも中2病(※黒い翼が生えます)
・借金八兆円

413 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 12:38:06.65 ID:GsoZoffqo
借金はもうないよ
414 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 12:57:16.81 ID:YslRVE5eo
>>406
・口調がおかしい
・服装がおかしい
・笑い声もおかしい
・顔が怖い
・いつまでも中2病(※黒い翼が生えます)
・どこまでも中2病(※白い翼が生えます)
・あくまでも中2病(※天使の輪っかが浮きます)
415 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 13:09:01.86 ID:73K/XI+70
>>414
俺それを見ても一方通行がかっこいいと思えるんだが…
俺中2病なのか?
416 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 15:33:53.49 ID:CeiROHIF0
一方通行かっこいいとか思っちゃったら確実に・・・。
俺もだけど。
417 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 17:16:32.83 ID:oB4nElqDO
みんな仲良く厨二です
418 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 18:08:25.10 ID:7/YPyqz6o
世の中金だよ
419 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 21:54:39.47 ID:Mbkos0ix0
世の中ね顔かお金かなのよ
420 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 22:46:31.84 ID:hw2sknHMo
原作のあくせらさんは
殆ど笑わなくなったよな
421 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 00:39:00.04 ID:w+DD1KQd0
>>417
心配するな、俺たちにはメルヘンがいる
422 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 20:31:48.01 ID:PgTGDEdl0
>>1乙!!
一通さんカッコいいっす!!濡れる!!!
423 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:37:31.91 ID:7JyNs8zyo

おはようございます。朝っぱらから更新ですが……その前に一つ。

現在、このSSのお話は初春飾利と佐天涙子が何者かに誘拐されてしまい、
風紀委員(仮)を務める一方通行、オルソラ、アンジェレネが救出に向かう、
という展開で進行しておりますが…………。

誘拐犯についての考察はしない方が、いや、するべきではありません。

『もしかしてあいつが犯人!?』、『いや意外にもあのキャラが……』的なオチでは
ないからです。これは私の失態です、一言『犯人はそういうアレじゃないので』とでも
告げておけば、もしかしたら誘拐犯の正体にwktkしていらっしゃる方がいたとして、
その方の期待を裏切る事にはならずに済んだので……。

いや〜、本ッ当に申し訳ない!(副会長風に)

という訳で犯人の正体など気にせず、適当に読み流していただけたらと思います。
くだらない事で長文を投下してしまい誠に申し訳ございませんでした。

さて、こんな話はさっさと打ち切って、今回も一方通行パートで進行します!

それでは、よろしくお願いします!
424 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:37:59.56 ID:7JyNs8zyo


――――――――――――――――――――――


固法美偉は駆け足でアンジェレネの下から去ってしまっていた。
己の失態を悔いて泣き喚く彼女を宥めている場合ではない。固法の
判断は風紀委員として正しい。

そしてアンジェレネもまた、それを理解していた。彼女は涙で真っ赤になった
瞳をゴシゴシと拭う。彼女もこの状況でいつまでも泣いている訳にはいかない。

初春飾利を、佐天涙子を、出会って数時間しか経っていない『友達』を、
全力で救出しなければならない。
仮とはいえ風紀委員として、そして窮地に立たされた人間を救うシスターとして。

アンジェレネは気持ちと表情を切り替え、小麦粉の霊装に言葉を投げかける。
425 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:38:52.51 ID:7JyNs8zyo

「あ、一方通行さん!」

『こっちは今オルソラと「窓のないビル」の屋上に居る。 ……そォだな、
 オマエらの魔術でクソ野郎どもの車の位置を掴めたり出来ねェのか?』

『私にサーチ術式の知識はございませんが……』

「…………いえ、私にいい考えがあります!!」


アンジェレネは言うと、修道服のポケットをまさぐり始めた。
彼女が取り出したのは一つの硬貨袋。それを空中に放り投げると、


「きたれっ!! 十二使徒の一つ、――――――ッ!!」
426 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:40:10.72 ID:7JyNs8zyo

魔術を行使するための詠唱を途中で止めてしまうアンジェレネ。
そうしている間にも硬貨袋はアンジェレネの頭上めがけて落ちてきている。


(二人が危険な目に遭っているかも知れないのに、いちいち長ったらしい
 詠唱なんか唱えてられない。 ……インデックスさんにも指摘された、
 自分の欠点を克服しろ。 今実行出来る省略法を突き詰めて――――)


アンジェレネが使用する魔術は、二匹の火竜を十字と祈りだけで討った
『十二使徒マタイ』の伝承をモチーフにした、硬貨袋を触媒とする魔術。
通常、この魔術を使用するには定められた呪文を詠唱しなければならない。

しかし教科書通りに詠唱をするとこれがまたひどく長いのだが、魔術師によっては
ある程度省略をすることでそのデメリットを打ち消す工夫を凝らす事が出来る。

今は緊急事態。ちんたらと呪文など唱えてられないアンジェレネが行ったのは、
427 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:41:26.70 ID:7JyNs8zyo

「詠唱破棄。 『対象』は『初春飾利』と『佐天涙子』」


詠唱破棄。魔術を行使する際に必要とする呪文を一切唱えず発動する高等技術。
正確には頭の中だけで呪を紡ぎ、魔力を精製して発動する方法だ。
本来のアンジェレネの技量では到底追いつかない技術だが、この切羽詰まった状況が
アンジェレネの隠れた才能を爆発的に開花させた。

結果、地球の法則に従って地面に落下していた硬貨袋は空中で動きを止め、
魔術が成功した証である翼を生やす。

翼の色は、青。そしてその翼は通常とは違う、"水晶で出来たような鋭い翼"だった。


(……! そうか、学園都市にいる大天使様の『天使の力(テレズマ)』が……!!)
428 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:42:47.72 ID:7JyNs8zyo

この学園都市には信じ難い事に、本物の大天使が我が物顔で暮らしている。
アンジェレネの魔術は『天使の力』を注ぎこむことで威力を発するのだが、
この時点で最も身近に居るミーシャ=クロイツェフの『天使の力』が優先され、
硬貨袋に集まってしまったようだ。

別位相を介さぬ純粋で濃厚な『天使の力』。


「いけっ!」


ミーシャの力の一部が濃縮された硬貨袋が、『対象』に目掛けて恐るべき速度で飛翔していった。
その速度は申し分なく、その辺を走る車程度ならあっさりと追い抜いてしまえる程だった。


『おい、何をやってンだ!? こっちにも状況を説明しろ!!』
429 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:43:20.24 ID:7JyNs8zyo

と、そこへ一方通行が霊装を通してアンジェレネに吠えてきた。


「た、たった今、初春さんと佐天さんを乗せた車に私の硬貨袋を飛ばしました!」

『硬貨袋? ……いつだったか、女子寮で披露した「十二使徒マタイ」の魔術か?
 オマエあれは確か硬貨袋を砲弾みてェにぶっ放して敵を攻撃する魔術だろ。
 そンなモンが当たれば車のガラス程度なら砕いちまうンじゃねェのか?』

『…………いいえ、そうでございます、そういう事でございますねアンジェレネさん?』

『?』


オルソラはすぐに理解したようなので、アンジェレネは一方通行にだけ補足説明をする。
430 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:44:25.71 ID:7JyNs8zyo

「そうです、私の硬貨袋は初春さんと佐天さんを狙うように飛ばしました。
 『対象』の指定は私の視界に映るもの、或いは私の記憶にあるものに
 限定されますが、確実に標的目掛けて飛んでいくんです」

『………………。 まさか、』

「は、はい。 つまり、"硬貨袋は確実に初春さんと佐天さん目掛けて飛んでいく"、
 つまり……私の飛ばした硬貨袋は二人を乗せた車を追跡するはずです」

『その硬貨袋を辿っていきゃァ犯人に追いつく事が出来るって訳か』

『さすがでございますアンジェレネさん。 これならすぐに辿り着けるのでございますよ』


魔術の性質を逆手に取った、アンジェレネの超ファインプレーだった。
しかも硬貨袋は『対象』以外は回避する特徴があるため、たまたま上空に
人がいたというあり得ない状況でも余計な怪我人を出す心配がない。

欠点があるとすれば、単なる障害物は突き破って進んでしまうという点だろうか。
431 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:45:34.95 ID:7JyNs8zyo

「そ、それと硬貨袋は永遠に『対象』を追いかけていく訳ではありません。
 どうやら今回は大天使様の『天使の力』を分け与えてもらえたため
 通常よりかなり長持ちすると思いますけど、それでも一時間保たないでしょう」

『そンだけ余裕があればお釣りが来る』

「い、いえ……! 硬貨袋が二人の下に到着する前に私達が二人の下に
 辿りつけなかった場合、本当に硬貨袋が二人に命中してしまいます。
 硬貨袋が今どこを飛んでいるのかは私にも察知出来ない上に、勘で
 魔術を解除したら空振りに終わる可能性もあるので……その……」

『だから、もォ問題ねェって言ってンだろ』


一方通行は力強く言った。


『見直したぜ。 俺達も別の手段で犯人を追うが、いざとなったら頼む』

「……は、はい!」
432 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:46:05.28 ID:7JyNs8zyo

アンジェレネは嬉しそうに頷くと、霊装での連絡を一度切った。


「………………ほ、褒められた。 えへへ……」


両頬に手を当てて顔を赤らめながら照れくさそうに笑うアンジェレネ。
しかし媚びたような仕草を一人でやっている場合ではない。
あとは一方通行とオルソラに丸投げでは、初春と佐天を助けられないのだ。
逃走車両を素早く発見し、すぐに魔術を解除しなければ大惨事になりかねない。


「わ、私も急いで追いかけないと……。 何か、何か方法は……」


首を忙しなく動かすが、手頃な移動手段が見当たらない。
とにかくジッとしている事が我慢できなくなったアンジェレネは宛もなく走り始めた。
433 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:48:28.90 ID:7JyNs8zyo


――――――――――――――――――――――


「それにしましても……このビルは一体何なのでございましょうか?
 『窓のないビル』と仰っていましたけど、怪しげでございますね」

「気が向いたらこのビルの存在を魔術サイド全体に報告してみろよ。
 多分面白い事になるンじゃねェか? 俺は知らねェけどな」


さりげなくとんでもない事を言いながら、一方通行は窓のないビルの
屋上から学園都市を俯瞰する。第七学区の中でも一つ抜けて背が高い
このビルだが、しかしその屋上からでも広大な学園都市の全域を見渡せる
訳ではない。

それが出来れば犯人が運転する逃走車両など一発で発見出来るだろうが、
そうそう都合良く物語は進まないようになっているらしい。
434 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:49:22.30 ID:7JyNs8zyo

(……まだ事件発生からそォ時間が経ってない点を考慮すると、ここからなら
 犯人の野郎の車を視認できると踏ンだンだが……、見当たらねェか)


とりあえず、ここからでは一方通行にもオルソラにも逃走車両は発見出来なかった。


「だが、警備員は大方配備完了してるみてェだな。 オルソラ、地上に降りて情報を集めるぞ」

「情報、でございますか?」

「いくら一端覧祭開催中の学園都市でも、空中を飛ぶ硬貨袋は目立ってるはずだ。
 おそらく硬貨袋は人の目にもつく程度の高度で飛ンでる。 そォじゃなかったら
 俺達がここから見つけられてるはずだしな。 警備員か風紀委員の情報を傍受して
 怪しげな袋の位置を特定するか、もしくは本命の車を突き止めるか、だ」

「しかし私達のようなものが警備員さんの情報交換に介入出来るのでございましょうか?」


オルソラの懸念に答えるように、一方通行は右腕をポンポンと叩いた。
435 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:50:30.50 ID:7JyNs8zyo

「忘れてンじゃねェぞ? 今の俺達は講習生とはいえ風紀委員なンだ。
 風紀委員ならある程度のレベルの情報も傍受出来るはずだ、
 だから警備員か風紀委員に接触して、いかにも現状を知りたいよォな
 素振りや物言いで誘拐事件の情報を入手すればイイ」

「それじゃウソつきでございますよー」

「ンなイイ子ちゃんぶってる場合じゃねェンだよ、状況が状況だ。
 アンジェレネの魔術で二人の生存は確認出来るが、のンびりはしてられねェ」

「……それもそうでございますね」


人を騙す、という行為に若干抵抗を覚えていたオルソラだが、初春と佐天の
安否を思うとそんな悠長な事は言ってられないと理解し、力強く頷いた。
436 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:51:00.69 ID:7JyNs8zyo

「よし、地上に降りるぞ。 俺の手に掴まれ」

「ふふ」

「あン?」

「さっきみたいに抱っこしてほしいのでございます」

「…………オマエ、どンな時でもマイペースなンだな」


呆れながらも一方通行はオルソラのリクエストに応じる。
先ほどのように彼女をお姫様抱っこすると、一方通行は重力など無視して
緩やかな速度で地上へ降りていった。


足を地に着けると、一方通行は指示を出す。
437 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:52:23.60 ID:7JyNs8zyo

「ここから二手に別れるぞ。 さっき言ったよォに、オマエは
 警備員か風紀委員に接触して情報を手に入れろ。 互いに何か
 分かったら……、オマエ携帯持ってねェンだよな? 仕方ねェ、
 俺も霊装を持ってるから、こいつで俺とアンジェレネに連絡しろ」

「了解、でございます」


二人は一度だけ目を合わせると、素早く解散した。
オルソラを一人で行動させる事に少しだけ不安を覚える一方通行だが、
ああいう人間はいざという時はしっかりと行動する、という根拠も何も
無い持論で自分を納得させ、情報を得るために行動を開始する。


――――――――――――――――――――――


切羽詰まった状況だからこそ、冷静に対処しなければならないというのは
風紀委員に限らず常識である。焦って下手なミスを犯しては元も子もないのだ。
438 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:55:10.17 ID:7JyNs8zyo

「…………次はここでイイか」


そんな訳で一方通行は能力を駆使して街中を飛び回る―――ような事はせず、
オルソラにも指示した通り徒歩で情報を集めていた。

しかし成果の程はイマイチであり、事が事だからか風紀委員である一方通行にも
警備員は情報を開示してこなかった。どうやら一方通行が講習生の風紀委員である
事には気付いていないようだが、それでもこの街の一般学生だと思われたのだろう。
風紀委員も結局は学生。誘拐事件などというデカいヤマにな関わらせてもらえない。


(俺の考えが甘ちゃン過ぎたか……。 学生がボランティアでやってる
 警察ごっこ的な組織にガチの誘拐事件に関する情報を開示する訳がねェ、と。
 ある程度の実績がありゃァ事件捜査に参加出来るンだろォが……仕方ねェ)


という事で一方通行は警備員ではなく風紀委員の支部に当たってみる事にした。
適当に目についた学校に入り(一端覧祭中のため自由に学校へ出入りできる事が幸いした)、
そこの風紀委員支部に自然な挙動でお邪魔する。緊急時のためか、ロックは掛かっていなかった。
439 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:56:36.11 ID:7JyNs8zyo

「第一七七支部の風紀委員(仮)だ。 突然で悪いが、現在発生中の誘拐事件についての情報を知りてェ」


一方通行が訪れたのは、"風紀委員第四九支部"だった。


その支部を担う学校の教室には、一人しか人間が居なかった。


「………………………………、まさかこんな形で出会うとはね」

「あァ?」


その人物は確かに風紀委員の腕章をつけてはいたが、しかし一方通行は怪訝に眉をひそめる。
440 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:57:41.88 ID:7JyNs8zyo

小柄な少女だった。背中には赤いランドセルが背負ってあり、不自然な鮮やかさを
放つ金色の髪は、一方通行が出会ったばかりの風紀委員と同じくツインテールに
まとめられている。いつまでもランドセルを背負う趣味を持っている訳ではないとしたら、
この少女は小学生である事が窺えた。

ただ、


「…………"誰だ、オマエ"」

「風紀委員だよ……、第一位のお兄さん」

「見りゃわかンだよクソガキ。 俺が言いてェ事、わかるよな?」


見る者全てを畏怖させる一方通行の眼光にも、少女は臆さない。
少女は薄く笑みを浮かばせながら、一方通行の真の問いに答えた。
441 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 07:59:42.87 ID:7JyNs8zyo

「名乗ってもいいけど、そうしたらお兄さんにとって忌々しい思い出でもある
 『0930』事件を思い出させてしまうかもしれないけど、構わないのかな?」

「『0930』事件だと? ……まさか、オマエ」

「うん」


一方通行がなぜ、この少女を訝しんだかと問われれば、"何となく同じ匂いがしたから"、
としか答えられないだろう。


少女は机に向かってパソコンで作業をしていたが、その手を止めてゆっくりと立ち上がる。
そして彼女は、名乗った。

言う通り、一方通行があの事件を想起せざるを得ない、その名を。




「木原那由他。 ……先進教育局、特殊学校法人RFO所属の、……風紀委員だよ」



442 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 08:06:41.66 ID:7JyNs8zyo

とは言っても、推理SS物でもないこのSSで起きた誘拐事件の犯人考察なんて
真面目にやるのも馬鹿馬鹿しいって感じですよね……。何か一人でテンパってて
重ね重ね申し訳ないです。

そんな感じで、今日の更新を終了します。

アンジェレネが行使する魔術にかなり強引な後付け設定が加えられていますが、
その辺はご愛嬌という事で流していただけたらありがたいな、なんて思っています。

一方通行があの"木原"とまた出会ってしまいました。しかし前の木原と比べると
なんとも可愛らしいですね。

次回更新ですが、大晦日を予定しております。去年はあんな事があって
投下できなかった大晦日ですが、今年こそは何が何でも更新してみせる……。

それでは、今日もありがとうございました!
443 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/28(水) 08:07:21.21 ID:7JyNs8zyo



                          【次回予告】



「はぁ……はぁ……! だ、大天使様、ミサカさん!! た、大変です!」
元ローマ正教のシスター――――――アンジェレネ




「へ? え、ええっと……何で私の名前知って、ていうか大天使様って―――」
学園都市・常盤台中学の超能力者(レベル5)――――――御坂美琴




「……これ、どうして走らないのでございましょう? 私の体重がこのバイクの重量制限をオーバーしてる?」
元ローマ正教のシスター――――――オルソラ=アクィナス



444 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 08:08:14.38 ID:kEUmwb5No
乙です
445 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 08:56:30.37 ID:VgSJltm30
>>1
乙です
446 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 08:56:33.41 ID:8m/alTr20

バイクはきっとオルソラのおっぱいにやられたんだと思う
447 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 09:49:02.66 ID:PtQha7gR0
>>1
ハーレーに跨ったオルソラさんを想像してみたが、凄い違和感wwwww
448 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 11:37:35.58 ID:824bvvSAO
まさかのドラゴンライダーか

449 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 11:46:18.24 ID:hPj+8F9n0
>>1乙!!
きっとオルソラのおっぱい!!が重すぎたんだね!!
450 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 12:21:23.76 ID:342gV39qo
おっぱいの重さで動けなくなるってぴょころたかよwwwwwwwwwwww
451 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 14:48:08.07 ID:d/jM7uVF0
オルソラがライダースーツ生着替えをやれば認証なしでも余裕で動くはずだ!
452 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 16:54:58.50 ID:aq4aARG20
服を脱いで軽量化を図ればいけると思うよオルソラさん
453 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 17:23:25.49 ID:RnQw1q8Q0
ちょっとバイクになってくる
454 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 20:20:25.48 ID:7PmcraRp0
皆の熱気がすごすぎるwwwwwwwwww
455 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 21:14:37.17 ID:7PmcraRp0
GPSの付いた携帯は破壊された、又は捨てられたのか?
456 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/29(木) 01:15:42.72 ID:4jIWBWXDO

木ィィィ原ちゃァァァァァァァァン!!
457 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/29(木) 02:53:50.96 ID:ys0XsjoDO
浜面「そのバイクに乗るならこのヘルメットが必要っスよ!(着用済)特別にウサ耳も付けときましたので!」
458 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/29(木) 19:12:30.86 ID:of2lv3A10
>>457
バシュンッ!
459 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 03:55:31.90 ID:yH3n9voj0
>>457
ハイハイ、ブチコロブチコロ
460 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 13:37:54.80 ID:CRd59C820
超乙ッス!
これってどんな木原ちゃン?
市販のやつしか読んでないからわからん
スレチだったらスマソ
461 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 18:37:09.02 ID:SO8XUJTno
wiki見れ
462 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 10:15:33.22 ID:FCxbebxA0
スマソ
463 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:38:14.13 ID:wAL1GO5io
>>460
Wiki読まないとわからないようなキャラ出しちゃって申し訳ないです。
簡単に言うと木原那由他は木原一族の人間で、無茶な実験ばっかやって
肉体が半分くらい機械になってるロボっ娘なんです。違うか。

こんにちわ、人居ますかね。今年最後の更新を開始します。

どうやら無事に大晦日での投下が出来るようで安心しました。
でもコミケとか実家帰りとかでここ見てる余裕なんて無い人も多いのかな。
年明けでもいいので、読んでやってください。

さて、今年最後のお話は……残念ながら主人公の一方通行も、何故か皆様の間で人気の垣根帝督も
登場しません。が、ヒロインのミーシャは出てきますよ!ほんの少しだけ。
一方通行パートとミーシャパートが徐々に繋がってきます。

それでは、よろしくお願いします!
464 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:39:25.63 ID:wAL1GO5io


――――――――――――――――――――――


朝から本物の大天使とずっと会話をし続けて、気がつけば昼になっていた。
ここまで長い時間、完全なる人外と二人きりで談笑出来る人間など、
世界中を探しても両手の指で数えきれる程度の人数しかいないだろう。


その内の一人、学園都市第三位の超能力者、御坂美琴は
自分が内に抱え込んでいる悩みを全てミーシャに打ち明けると、
乾いた喉を潤すために水を一気に呷った。


「……と、そんな感じよ。 アンタが聞いてもつまんない話だと思うけど」

「………………………………………………」
465 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 14:39:31.98 ID:hPg9Uanro
お前をみているぞ
466 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:40:30.10 ID:wAL1GO5io

ミーシャ=クロイツェフは配膳されたチーズハンバーグを鉄板ごと食べ尽くすと、
美琴から聞かされた話の情報を頭の中で整理していく。


この街には上条当麻という人間が居るらしい。
名前を聞いただけで写真等を見せてもらえなかったためミーシャは思い出せない
だろうが、彼女はかつて一度、第三次世界大戦で上条当麻を目撃している。

『ベツレヘムの星』でサーシャ=クロイツェフと共に行動していた彼の姿を。
上条の特殊な右手に吸い寄せられるようにミーシャは彼に牙を剥いたが、
まさかその時の少年が美琴の言う『あのバカ』だとは今のミーシャには予想も出来なかった。


美琴が上条と初めて出会ったのは六月の中頃だという。
街の不良に絡まれていた所を助けてもらった……と美琴は言うが、
その話をしていた時の美琴の表情はなぜか微妙な感じだった。

当時、彼に何か失礼な事でも言われたのかも知れない、とミーシャは適当に予想する。
467 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:41:33.76 ID:wAL1GO5io

そしてその時、上条は何らかの方法で美琴の能力を打ち消したのだという。
その行為が美琴の闘争心に火をつけ、その後は事毎に彼に勝負をふっかけたのだとか。
結局一度も勝てなかったけど、という美琴の表情に、しかし悔しさは窺えなかった。

八月の下旬、美琴は上条に大きな借りが出来た、と話した。
だが彼女は当時の事を詳しく説明しようとはしなかった。
しかしこの件をキッカケに、美琴は彼の姿を目で追うようになってきたらしい。

その後も幾度か彼と出会い、交流を深めていき。


――――彼を心から『想っている』事に気付いたのが、一〇月の事。


その日、美琴は己の精神、心を支える『自分だけの現実』が派手に砕け散った感覚を味わった。
468 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:42:41.52 ID:wAL1GO5io

「その日からあのバカを見る私の目は変わった。 激変したわ」


けど、と美琴はほとんど口にしていないサンドイッチに視線を落としながら、


「私を見るあのバカの目は、いつだって、今だって変わってないわ。
 ……まぁ当たり前といえば当たり前なんだけどさ。 結局、私は
 自分の気持ちに気付いてもアイツに何一つアプローチとかしてないし」

「……」

「結構大きなチャンスもあったのよ? 第三次世界大戦終結後、北極海から
 近くの沿岸に瀕死の状態で這い上がってきたアイツを一番最初に見つけたのは
 私だった。 ……って、大勢の人間が傷ついてる戦争を『大きなチャンス』
 だったって……、あはは、さり気なく最低の発言しちゃってるわねー私……」
469 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:43:52.19 ID:wAL1GO5io

想い人の話をしているというのに、美琴の表情は沈んでいく一方だった。
そんな彼女に対して、ミーシャは特に口を挟まない。


「極度の体温低下で死にかけてて、意識朦朧の中で……。 それでも、
 アイツは言ったわ。 自分が今どこでどういう状況に置かれてるのかも
 判断出来ないくらい衰弱している状態で、アイツはハッキリ言った」

「……、」

「……、」


その時上条当麻は何を口にしたのか。ミーシャは美琴の言葉の
続きを待っていたが、美琴はそこから一向に言葉を紡ごうとしない。
口にすることで認めてしまう事を恐れているのか。
470 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:44:49.50 ID:wAL1GO5io

だがその上条の一言が、美琴をこうして陰鬱な心境にさせてしまっている
原因である事を、人間ではない異形の存在であるミーシャにも容易に予測出来た。


「……ごめん。 つまんない話だったでしょ? もうこれで終わりだから」


話し終えて、美琴は再び机の上に突っ伏してしまった。
一切のリアクションを返さないミーシャに一方的に悩み事を吐き出した美琴は
まるで壁に向かって話しかけているような感覚を抱く。

だが美琴としてはそれで良かった。彼女にとってこの話は友人や他人には
絶対に話したくない事であり、それならいっそ壁に向かって溜め込んだ『毒』を
ぶちまけた方が気が楽になるからだ。

誰にも話せない、親友でありパートナーでもある白井黒子にすら明かせないのは、
決して美琴が相手を信じていないからという訳ではない。
むしろ絶対の信頼を置いているからこそ、こんな話をしてしまったら相手に無駄な
心配や気苦労を掛けてしまうから。美琴は今までずっと胸中に溜め込んできた。
471 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:45:53.90 ID:wAL1GO5io

「アンタにとっても迷惑でしかなかったわよね。 たかが人間一人の、
 惚れた腫れたのくだらない話を延々と聞かされて……。
 途中で席を立てくれなかっただけでも感謝したいわ。 ありがとね」


もはや口から出る言葉全てがネガティブになっている現状に気付き、
美琴はより一層暗い面持ちを浮かべてしまう。
別にミーシャからの励ましや応援に期待している訳ではないが、せめて
『つまんね』とか『退屈』程度のリアクションでもしてくれないかな、とは思う。


しかし美琴もミーシャも、これ以上この話題を膨らませる気にはなれなかった。
なぜなら、


『―――――――――ッ! ―――、――――――!!』

「………………は?」

「?」
472 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:46:41.91 ID:wAL1GO5io




美琴とミーシャが視線を向けている全面ガラス張りの壁を、バンバンと
思い切り叩いて何かを喚く修道服を着た女の子が居たからだ。




『――――――使様!! ミサ―――!!』

(……このシスター、確かアイツと一緒にゲーセンで遊んでた……?)

「kkxmy入店aapitj」


かなり切羽詰まったような表情でガラスを叩くシスターに、ミーシャは
ちょいちょいと軽く手を動かし、シスターに店へ来るよう促す。
美琴はキョトンとしながら、恐らくこのシスターとミーシャが知り合いである事を推測した。
473 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:47:48.18 ID:wAL1GO5io

ミーシャに呼ばれたシスター、―――アンジェレネはすぐに店内へ駆け込んできた。


「はぁ……はぁ……! だ、大天使様、ミサカさん!! た、大変です!」

「へ? え、ええっと……何で私の名前知って、ていうか大天使様って―――」


何故か一度とて出会った事のないシスターに名前を呼ばれた事や、
ミーシャの事を大天使様と崇め奉るように呼ぶシスターに色々と疑問が
浮かぶ美琴だったが、


「初春さんと、佐天さんが誘拐されました……! ち、力を貸してください!!」


そんな瑣末な疑問は、アンジェレネのその言葉によってあっという間に吹き飛んだ。
474 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:49:07.41 ID:wAL1GO5io


――――――――――――――――――――――


とにかく初春飾利と佐天涙子を救出するために遮二無二走り回っていた、
と言えば聞こえはよく、オルソラの必死さと直向きさが伝わってくるという
ものだが、しかしそれで第七学区から最終的に第三学区まで移動してしまっては
それは奔走ではなく迷子と言った方が正しいだろう。

第三学区。国際展示場が多く並ぶ外交向けのここは、一端覧祭開催中だと
特に賑わう学区になる。

『外』からやってきた人間に学園都市の最先端技術を披露したり、街の最高クラスの
ホテルへ案内したりと、今日も第三学区は多くの人で溢れ返っていた。


そんな中、本職の警備員や風紀委員に情報提供を求めて全て断られてしまい
途方に暮れながらこの学区へとやってきていたオルソラ=アクィナスは
活気溢れる街の様子をキョロキョロと見渡しながら『足』を捜していた。
475 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:50:11.84 ID:wAL1GO5io

(こうなってしまいますと、もう自分の足で逃走車を追いかけた方が
 早いのでございます。 ……最悪、自転車でもいいから何か移動手段は……)


さすがに自転車では猛スピードで逃走する車には追いつけないだろうが、
それでも徒歩よりは幾許かマシだ。
もうワンランク上の自動車やバイクなどが望ましいが、オルソラは免許を取得していない。
緊急事態ではあるが、かといって体験講習生の風紀委員に無免許での運転を許可してくれる程
緊迫した状況ではない事も確か。既に警備員や風紀委員が誘拐事件解決のために出動している。


(でも、だからといって指をくわえて待っているだけでは我慢ならないのでございます)


この際戦車でも戦闘機でも構わないという気構えで『足』がどこかに無いか
首を動かして周囲を見回していると、
476 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:50:49.51 ID:wAL1GO5io

「あら? …………あれは」


『それ』を目にした瞬間、オルソラは即決した。



アレしかない、と。直感でしかないが、アレを使えば二人を助けられる、と。




477 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:51:25.31 ID:wAL1GO5io

――――――――――――――――――――――


「ま、とりあえずはこんなもんか」


何やら複雑な機構を備えていそうな金属の塊に複数の金属固定具と強化ゴムの
ベルトを取り付け終えると、丈澤道彦は満足気に微笑み、額の汗をタオルで拭き取る。


「丈澤さーん、運搬用のトラック、間もなくこっちに到着するみたいですよ」

「あーそうかい。 予想より早かったな、作業を早めて取り組んだのは正解だった」


職場の同僚に声をかけられ、丈澤は軽く手を振りながら応じる。
そして目の前にある、自分の職場で完成させた機械の塊から一度視線を外し、
彼は愚痴るように言った。
478 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:52:27.26 ID:wAL1GO5io

「戦争なんて物騒なもんに使われるよりは、一端覧祭の宣伝広告として
 第二学区をのんびり走って見世物にされた方がまだマシだよなあ。
 俺としちゃ兵器用にカスタマイズされた怪物スペックも元に戻しておきたい
 ところだが、第三次世界大戦や『第一九学区事件』があった矢先に学園都市製の
 兵器を宣伝しても大丈夫なもんなのかね。 ま、その辺は俺の管轄じゃないけど」


丈澤が整備していた機械は、本来ならば第三次世界大戦に投入される代物だった。




HsSSV-01『ドラゴンライダー』。



479 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:53:42.49 ID:wAL1GO5io

警備員の新型警邏バイクとして開発されていた駆動鎧を第三次世界大戦で
出撃させるために接収し、学園都市の最新技術を余す事無く組み込まれた
究極の軍用バイクである。

時速一〇〇〇キロオーバーは朝飯前、傾斜七〇度の崖を時速三〇〇キロで走破する事も可能で、
そのぶっ飛んだ暴れ馬性能を安定させるためにボディにはジェットエンジンとリニア機関、
翼のように伸びるアームに動作補助機構とステアリングを兼ねたブースターエンジン。

要はどんな地面だろうが常に最高速度と安定性を維持できるスペシャルな機構が全て揃っている訳だ。

結局『ドラゴンライダー』を実戦投入する前に第三次世界大戦は終結し、
怪物バイクが日の目を見る機会は訪れず、今日まで大型倉庫で埃をかぶっていた。
しかし統括理事長の粋な計らいで一端覧祭開催期間が大幅に延長され、
『ドラゴンライダー』は大衆に披露するチャンスに恵まれたのだ。


「広告塔として走らせるために俺は汗水流してこいつを開発したんじゃ
 ないんだが……、贅沢は言ってられないか。 まぁせいぜい、小さい
 お子さんが夢見れる程度には活躍してくれよ。 バイクは男なら
 無条件で憧れる乗り物だしな。 そうすりゃ俺達も少しは報われる」
480 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:54:34.17 ID:wAL1GO5io

わずかに物哀し気な表情を浮かべる丈澤だったが、やがて諦めたように
微笑すると、間もなくやってくる運送用のトラックに『ドラゴンライダー』を
運ぶための準備に取り掛かる。

いや、取り掛かろうとして『ドラゴンライダー』に視線を戻したのだが、




「……これ、どうして走らないのでございましょう? ドラマ等では
 人が乗っかってハンドルを握ればすぐに颯爽と駆け抜けていたので
 ございますが……。 私の体重がこのバイクの重量制限をオーバーしてる?」

「……………………………………………………………………」



481 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:55:28.49 ID:wAL1GO5io

いつの間にか、というかその時に気付かなかった自分も相当気が抜けてるな、
と丈澤はその光景を目にしながら自己分析する。


固定具と強化ゴムでガチガチに戒められた『ドラゴンライダー』に、
思わず見蕩れてしまうくらいの美人が何故か修道服姿で跨っていた。
彼女は『ドラゴンライダー』のハンドルを握りながらボディのあちこちを
見回し、『あ、そうでございましたか。 音声システムによって動くので
ございますね』とか訳のわからん事を言いながらぶおーんぶおーんと鳴き始めた。

普通なら運用直前のバイクに勝手に触ったシスターに対して厳重な注意を
するべき立場の丈澤だが、不思議なことにそんな気にはなれなかった。
注意する事自体がバカバカしい、とさえ思えてくるくらいだ。


「あー、お嬢さん?」

「はい? あ、これは失礼でございました。 私、第一七七支部の
 風紀委員、オルソラ=アクィナスと申します」
482 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:56:26.98 ID:wAL1GO5io

『ドラゴンライダー』に跨ったままオルソラは自己紹介をし、
右腕に取り付けられた風紀委員の腕章を丈澤に示してきた。


「風紀委員が何でシスターのコスプレを……。 あー、ていうかね、
 悪いんだけど勝手にそれに触られちゃ困るんだ。 この駆動鎧は
 第二学区の実験用サーキットに移送しなきゃならんのでね」

「まぁ……それは大変申し訳ないのでございます」

「いやまぁ、わかってくれたらいいんだけど」

「………………」

「………………」

「?」

「いや降りろよ!! 可愛らしく首傾げても困る!」
483 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 14:57:12.02 ID:wAL1GO5io

ここまで自然に人の話を聞かない人間がいるとは、と丈澤は思わずオルソラにツッコミを入れる。
しかし当の本人は少し困ったような顔を浮かべるだけで、『ドラゴンライダー』から降りようとしない。


「あなたはこのバイクの持ち主でございますか?」

「持ち主というか、開発者の一人だよ」

「まぁ、そうでございましたか。 でしたら、少しお願いがあるのでございますけど」

「お願い?」


何とも言えぬ嫌な予感を覚えながらも、丈澤は聞き返した。




「このバイク、少しの間お借りする事は出来ないでございましょうか?」




484 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/12/31(土) 15:04:15.20 ID:wAL1GO5io

今回はここまで。というか、今年はここまでとなります。

いや今年の投下納めでしたが……それにしては中途半端というか、
地味というか、微妙な内容ですよねえ……。いつも通りといえばそうですが。
最後くらいドカッと大量投下したかったのですが、申し訳ないです。


そんな訳で、いかがでしたでしょうか?2011年の『天使同盟』は
"蛇足"という称号を冠して本編から継続する形となりました。


皆様が過ごした一年の、ほんのわずかな楽しみになれたなら、私はもう言う事ありません。
もしよろしければ2012年も、グダグダと続くこのSSを読んでいただけたら幸いであります。

次回更新は未定です、お正月とかありますから。でも近い内に更新しますよ。
次回予告も無しでございます。オルソラのワンマンショーだったので。

それでは、今年もありがとうございました!また来年もよろしくお願いします!

新約3巻、早く読まないとな……。

485 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 15:38:47.45 ID:aMx/0KlP0
>>1乙!!
来年も楽しみに舞ってる
486 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 15:44:09.75 ID:3m5OGYBio
今年の天使同盟はオルソラの可愛さで締められたな
487 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 15:51:24.64 ID:e2wXWylDO
乙でしたー
オルソライダーか…胸が熱くなるな
488 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 15:59:32.89 ID:0sdPJsSqo
乙ライダー
オルソラのライダースーツとか胸どころか股間も熱くなりそうだ
489 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 16:08:56.81 ID:n8H4INBZ0
>>1
来年も舞ってるぜ
490 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 17:22:29.26 ID:yHkPnmqh0
誰もツッコまないようだが
ミーシャが鉄板を食うのは既に当たり前になっているのかww?

乙です
よいお年を
491 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 18:00:33.75 ID:gLjX7e1Wo
お年玉として新年早々も期待してる
492 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 18:19:34.27 ID:FCxbebxA0
よいお年を、>>1
493 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 20:17:27.59 ID:q83iYQxF0

オルソラ可愛すぎて色々つらい
494 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 21:32:28.78 ID:99NpQrnAo
乙です。今年もありがとうございました来年もよろしくお願いします
495 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 21:35:58.84 ID:zTiEDn3i0
>>1乙!!
来年も>>1が元気に更新してくれますように!

それでは良いお年を!!
496 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 23:33:19.72 ID:8iyinZ2x0
ライダースーツってノーブラがデフォなんだっけ?



……ふぅ
497 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) :2012/01/01(日) 00:48:26.16 ID:kiekQtWX0
>>1乙!
そして明けましておめでとうございます!
今年はエイワス(ドラゴン)の年ですねwwwwww
498 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 00:56:29.04 ID:LVWtwHP/0
>>1乙!
あけましておめでとうございます!これからも応援します!
499 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 01:00:19.04 ID:HAKONJ0m0
おけおー、>>1
今年も楽しく読ませていただきます
エイワス年男(女)wwww 
500 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 01:26:03.34 ID:Djs/yAYbo
>>1
あけでとーごぜーやす!
今年も楽しみに待ってるぜぃ

>>497,499
エイワス年吹いたwwwwww
501 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 02:01:48.93 ID:yx4PiOKs0
>>1
あけましておめでとうございます
>>497,499
エイワス年wwwwww
502 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 05:54:26.75 ID:nKMljI+f0
>>1あけましておめでとうございます。

ドラゴンライダ−ス−ツ姿のオルソラ

すごいお年玉ですね。
503 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 14:16:00.98 ID:QVakGjrDO
あけおめい!!


そっか
最近エイワスを見掛けないのはエイワスの年だから準備に忙しかったんだな
504 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 20:14:50.55 ID:r7g1Hs40o
干支天使も大変だな
505 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 09:53:24.33 ID:9RFo49xIO
>>490
わかりきってたことだろ?
506 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 01:41:15.25 ID:kGKnOg5so
おっぱい
507 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:22:01.82 ID:lYEyqy8Eo

そ、そうですね……今年は辰年ですから、『ドラゴン』であるエイワスも
色々と忙しいのでしょう……うん。すまぬエイワス、いつも出番が行間ばかりで……。

そんな訳で、おはようございます。そして、あけましておめでとうございます!
2012年最初の更新を朝っぱらから始めたいと思います。
お正月はのんびり過ごせましたでしょうか?私はいつも通り仕事でしたけど。

さて、大晦日はまさかのオルソラ締めとなりましたが、今年最初の
投下もまさかまさかのオルソラパートです。
『外』への宣伝のために使う『ドラゴンライダー』の拝借を丈澤に要求するオルソラ。
果たしてこれで初春と佐天を救う事は出来るのでしょうか。

それでは、よろしくお願いします!
508 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:22:55.08 ID:lYEyqy8Eo


嫌な予感は見事に的中した。クリティカルヒットだった。
予想通りの返事が飛んできたが、それでも丈澤は驚きを隠せなかった。


「か、貸せったって……何を出し抜けに」

「お願いするのでございます、この通り」

「この通りって、アンタそれに乗っかってぶんぶん言ってるだけだろ」

「では風紀委員の権限を行使し、このバイクは回収させていただくのでございます」

「脅しに出た!!? 顔に似合わない大胆さを持ち合わせてるなアンタ!!」


言いつつも、なかなか『ドラゴンライダー』から降りようとしない
頑固なシスターに丈澤は辟易しながら頭をポリポリ掻く。
509 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:24:14.99 ID:lYEyqy8Eo

「大体なぁ、それはただのバイクじゃないし、むしろバイクじゃないんだよ。
 だから例えアンタが風紀委員だろうが警備員だろうが、上の命令に背いて
 こいつをアンタに貸し出す訳にはいかないんだ」

「バイクじゃなかったら何なのでございますか?」

「駆動鎧……かな。 俺は『ドラゴンライダー』に萌えなんて感情は
 抱かないけどスタイリッシュなフォルムに魅入られた。 ……てのは
 冗談で、いや冗談じゃないけど、そいつは興味本位だけで操縦出来る
 ようなチャチな駆動鎧じゃないんだ」

「『ドラゴンライダー』、でございますか」

「そうそう。 学園都市で開発された軍用バイクなんだが、その学園都市でも
 こいつの存在を知ってる人間は少ない。 だから宣伝するんだけどな。
 そんな訳でアンタにこれを貸す訳にはいかないんだ、わかってくれるか?」
510 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:25:26.47 ID:lYEyqy8Eo

「だったらこのバイクを『オルソライダー』に改名すれば――――」

「名前の問題じゃねえんだよ!! でもちょっと良いな『オルソライダー』!!」

「その点は問題ございません。 私はこれを興味本位で乗り回そうと
 考えているのではございませんから。 深刻な理由があるのでございます」

「ああもう話の内容が行ったり来たりだな……。 ……で、深刻な理由ってのは何だい?」


オルソラ独特の会話方式に振り回されながらも何とか着いて行く丈澤は、
聞くだけ聞いてやろうという気持ちで理由の内容を求めた。
オルソラは表情を真剣なそれに切り替えると、ゆっくりと『ドラゴンライダー』から降りる。


「先ほど、第七学区で誘拐事件が発生したのでございます」

「……、誘拐事件?」
511 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:26:53.32 ID:lYEyqy8Eo

合わせるように、丈澤も表情を引き締める。
同時に、オルソラの口から出てきた誘拐という物騒な響きに拳を強く握った。


「犯人は恐らく現在も逃走中、私はその逃走車両を追わなければならないのでございます」

「…………既に警備員が出張ってるんだろ? 風紀委員の一人に過ぎない
 アンタが『ドラゴンライダー』で出動する理由としては少し薄いな」

「誘拐された学生は、私の『友達』でございます」


胸の鼓動が一際大きく鳴り渡った。丈澤は友人が誘拐されたという
オルソラの青い瞳をジッと見据える。
嘘をついているにしては、その瞳はあまりにも濁りがなく、透き通っていた。
512 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:27:58.29 ID:lYEyqy8Eo

「確かに誘拐されたお二人のために、学園都市の警備員や風紀委員の
 方々が動いてくれているのでございます。 でも、だからといって
 その方々に全てを任せて私はのんびりと待機する理由はありません」

「……そりゃあ、そうだが」

「友達……と言いましても、そのお二人とは今日出会ったばかりでございまして、
 私は友達だと思っていてもお二人にとってはそうじゃないかも知れない。
 それでも、私は助けたいのでございます。 例え足手まといになろうとも、
 せめてお二人のために、お二人を救おうとしている全ての方々に助力したい」

「それはつまり、自己満足じゃないのかい?」

「でしたら自己満足で終わらぬよう、死ぬ気で救出に向かうまででございます」


それを聞いて、丈澤は思わず吹き出しそうになった。
513 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:28:41.91 ID:lYEyqy8Eo

なんてくだらない事をほざく女なんだろう、と呆れたのではない。

何でこんな強固な芯が通った強い女性が、学園都市という街にそぐわぬ
シスターのコスプレなんかしてるんだろうと、そのギャップに笑いそうになったのだ。


「?」

「面白い人だなぁ、アンタ。 怖くはないのかい? 相手は白昼堂々の
 誘拐事件を起こすほどのイカれた野郎だ。下手すりゃこの街の『闇』が
 関わっているかもしれない。風紀委員のアンタなら学園都市の『闇』の
 片鱗に触れた事くらいはあるだろう? だったら理解できるはずだ、
 その恐ろしさと、そこへ首を突っ込む自分の愚かさが、嫌って程に」

「『闇』を晴らす事が出来なければシスターは務まらないのでございますよ」

「くっ、ははっ! アンタ、風紀委員より本物のシスターの方が向いてるんじゃないか?」
514 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:29:46.40 ID:lYEyqy8Eo

それとも風紀委員の称号はフェイクで、本職こそがシスターなのかと
丈澤は一瞬考えたが、そんな事は最早どうでも良かった。
どれだけ理屈や事情を並べても、このオルソラ=アクィナスという一人の女は
退かない。そう理解した丈澤は『ドラゴンライダー』の傍に置いていた工具箱を拾い、


「いけよ」

「よろしいのでございますか?」

「広告塔よりは人助けの道具のが良いだろ。 固定具外すからちょっと待っててくれ」

「……大変助かるのでございますよ。 ありがとうございます」

「感謝の気持ちはお友達の救出報告ってリボンを添えて贈ってくれりゃいいさ。
 ……あと、そうだ。 『ドラゴンライダー』は生身じゃどうやっても操縦出来ない。
 こいつとセットになってるもう一つの専用駆動鎧に『着替え』なきゃならないんだ」


そう言って丈澤は『ドラゴンライダー』の封をテキパキと外していきながら
ある方向に指をさす。オルソラがそちらに目を向けると、特殊な形をした
アタッシュケースのような容器が地面に置いてあった。
515 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:30:14.10 ID:lYEyqy8Eo

オルソラはそのケースに近づき中身を確認すると、そこには灰色を基調とした
ライダースーツのような駆動鎧が丁寧に畳んで収められていた。


「それでも駆動鎧なんだ、すごいだろう? そいつに『着替え』たら
 『ドラゴンライダー』の操縦方法も全てアンタの頭に流れてくる
 仕組みになってる。 『着替え』方は一緒に入ってた紙を見てくれ」

「了解でございます」

「ちょ、ちょっとおい!! ここで服脱ぐな!! そこの路地の奥で着替えろよ!」


危うく美人シスターのメリハリボディが群集の視線を奪いそうになったが、
丈澤がそれをギリギリの所で回避させた。
516 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:31:13.04 ID:lYEyqy8Eo


丈澤が『ドラゴンライダー』の固定具を全て外し終えたと同時に、
彼の耳が籠った女性の声を受け取った。


『着替え終わったのでございますよ〜』

「ご苦労さん……って、おお……これは……」


専用の駆動鎧に着替え終えたオルソラの姿を見て、丈澤は思わず生唾を飲み込んだ。


駆動鎧というとゴツゴツとしたイメージを思い浮かべがちだが、現在オルソラが
着ている『ドラゴンライダー』専用の駆動鎧は全体的に細い、引き締まったシルエットだった。
駆動鎧の存在を知らない人間が見たら、フルフェイスヘルメットをつけたライダースーツにしか
見えないだろう。全体的に灰色だが、所々に黒のプロテクターが装着されている。
517 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:33:16.06 ID:lYEyqy8Eo

……が、丈澤が目を奪われた理由はそんなところじゃなく、なにせ人間の全身像を
くっきりと浮き彫りにするタイプの駆動鎧であるため、オルソラの美しく艶かしい
肢体が明瞭に確認出来るのだ。

特に胸の辺りはもう色々とビューティフルな事になっているのだが、


(し、下着は着けていないのか……? 何か出ちゃならん部分が出てるような……って、イヤイヤ!)


今はそんな事に気を取られている場合ではない。丈澤は気を取り直すように
咳払いをすると、


「どうだ? どこかに不具合が発生したりはしてないか?」

『多分問題ないと思いますが、これ、ヘルメットに透明な部分が無いのに
 どうして視界を確保出来るのでございますか? 普通の目で見るのと
 遜色ない風景が見渡せるのでございます。 あとお胸がきつきつ〜……』
518 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:34:01.27 ID:lYEyqy8Eo

「視界は全部ヘルメットに搭載されてる電子機器が取得した情報で
 補ってるんだよ。 表示されてる風景に違和感は無いんだな?」

『はー……、改めて学園都市という街の技術に驚かされたのでございます』

「…………アンタもしかして『外』の人間だったりするのか?
 いや、学園都市の人間でもその駆動鎧の性能には驚くか普通は」


オルソラは駆動鎧の調子を確認するために柔軟体操の要領で全身を動かす。
その度に『出ている』ところが強調されるため、丈澤は目の向け所に困るばかりだった。


『「着ている」という感覚がほとんど無いのでございます。 全裸に近いというか……』

「そりゃ結構な事だ。 アンタ、修道服はどこに置いてきた?」
519 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:34:48.13 ID:lYEyqy8Eo

『このスーツが入っていたケースに入れておいたのでございますよ。
 二人を助けたら取りに戻りますので、よろしくお願いするのでございます』

「救出成功前提、か。 心強いことだな、それじゃあ乗りな」


完全装備に着替え終えたオルソラは意気揚々と『ドラゴンライダー』に跨る。
その瞬間だった。


『わ、わ。 頭の中に何か沢山〜……』

「落ち着け。 『ドラゴンライダー』の操縦マニュアルがアンタの頭に
 インプットされてるんだ。 自転車にさえ乗った事なさそうなアンタでも
 初乗りでロードレーサーの如くこのじゃじゃ馬を扱えるようになる」

『…………、……。 ……、……………………はい。 大体把握したのでございます』
520 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:35:44.98 ID:lYEyqy8Eo

「よし、それじゃ張り切って行ってきな。 上へは俺から適当に言っておく。
 そうだな、『もっとド派手な宣伝方法を思い浮かんだのでそれを実行に移しました』、
 とでも言っておこう。 誘拐事件だってのに不謹慎極まりないけどな」

『これ、もし壊れてしまいましたらイギリス清教に弁償代を請求してほしいのでございますよ』

「友達を必ず助けるってんなら、こいつは派手にぶっ壊しちまっても構わないよ。
 気にせずぶっ飛ばしてこい。 てかイギリス清教って何だ? アンタの職場か?」

『では、「オルソライダー」発進でございまーす』


のんびりとした声色とは対照的に、『ドラゴンライダー』の発信音は凄まじいものだった。
戦闘機が至近距離で離陸したのかと思わせる程の爆音は大気を振動させ、
ジェットエンジンから吹き出す灼熱の炎は、オルソラの決意を体現するように轟々とうねる。
521 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:36:30.26 ID:lYEyqy8Eo

そして瞬間移動をしたように、オルソラが駆る『ドラゴンライダー』は丈澤の前から消えた。
周囲は『ドラゴンライダー』の派手な初出動にざわめいていたが、丈澤は気に留めない。

彼は既にその姿が見えなくなったオルソラを見送るように、笑って言った。




「行って来い、『オルソライダー』」




――――――――――――――――――――――


街に広がる光源が線を帯びて後ろに退いていく。街を行き交う人々や
車が、全て自分に向かって猛突進してくるような錯覚に陥る。
オルソラが乗る『ドラゴンライダー』は、一瞬で時速五〇〇キロまでに到達していた。
522 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:37:18.90 ID:lYEyqy8Eo

『あわわわわわ……!! 申し訳ございません、ど、どいていただけると助かるので―――』


と、注意を呼びかけようとした人物が次の瞬間にははるか後方へ流れている。
そもそもこの状態ではオルソラの声など周りには届かないだろう。

ただマシンに乗って走っているだけなのに、オルソラの視覚が捉える風景が
全て歪んでいく。異世界にでも突入してしまったのかと思えるその風景は、
実際はオルソラの視覚ではなくヘルメットの電子機器が取得しているものなのだが。


初めはあまりの『未知』と『速度』に混乱しかけたオルソラだったが、
わずか数分で第七学区に戻ってきた時には既に気を取り直していた。
それどころか、


『これならあっという間に犯人の下へ辿り着けるのでございます』
523 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:38:12.35 ID:lYEyqy8Eo

『ドラゴンライダー』に対して頼もしさすら抱いていた。
駆動鎧とはいえ所詮は通常よりちょっと早いバイクだろう程度にしか
認識していなかったオルソラの口元には、余裕の笑みすらこぼれている。

実際、時速一〇〇〇キロ超の駆動鎧を振りきれる車などこの世に存在しないだろう。
これなら確実に初春飾利と佐天涙子を乗せた犯人の逃走車両に追いつける。
逆に追い越してしまわないかと心配してしまうくらいの余裕さえある。

だが、


『……犯人は今どの辺りを走っているのでございましょう?』


オルソラは未だに犯人の車に関する情報を入手していなかった。
『ドラゴンライダー』が早くとも、犯人を捕捉していなければ追いつくもクソも無い。
さてどうしたものかとオルソラが考える前に、その変化は起きた。
524 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:40:13.12 ID:lYEyqy8Eo

『?』


オルソラの眼前、正確にはヘルメットの内側にある液晶画面に小さなウィンドウが表示された。
何やら電子的な記号等がずらりと並んでおり、魔術サイドの人間であるオルソラには意味を
理解出来なかったが、それらを無視してオルソラは画面に注目する。

街の全体図のようなマップに、点滅するマーキングが二つ表示されていた。
一つは『Target』、一つは『Dragon Rider』。これはオルソラにも理解出来た。
そして、


『この「Target」が、犯人の位置という訳でございますね。 このナビゲーションが
 あればアンジェレネさんの術式に頼らなくても追跡出来るのでございますよ』


一体どういう仕組みなのか、オルソラが着ている駆動鎧が彼女の思考を読み取り、
欲している情報を瞬時に検索し、彼女に提供したのだ。
警備員が管理している事件の詳細情報を何らかの技術でコピーしたのだろうか。
525 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:41:05.63 ID:lYEyqy8Eo

機械に思考を覗かれているのとほぼ変わりないシステムだが、オルソラは意に介さない。


(待っていてください……、初春さん、佐天さん)


大きな道路に出ると、オルソラは『ドラゴンライダー』に"指示を送る"。
瞬間、『ドラゴンライダー』の左右に備え付けられている補助ブースターが
展開され、爆撃が発生したかのような炸裂音と共に一気に最高速度まで加速した。


位置さえわかれば、すぐに追いつける。


オルソラはハンドルを握る手にギュッと力を込め、力強く正面を見据えた。
526 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:47:16.35 ID:lYEyqy8Eo
>>487
先 に 言 う な よ

って、ネーミングセンスゼロの私が悪いんですけどね。
もちろん『オルソライダー』のくだりはギャグですのでお気になさらずww

という訳でオルソラ、発進でございます。ライダースーツの駆動鎧に
胸が出てくる部分なんてあるのかと疑問に思うでしょうが、女性用の駆動鎧だったと
脳内補完しておいてください……。ライダースーツ、エロくていいですよねえ。

次回はようやく、主人公の一方通行が出てきますよ。
年末年始が全部オルソラって、『天使同盟』SSとしてどうなんだって話ですよね……。
一方通行と風紀委員の木原那由他の掛け合いを中心に進行していきます。

次回更新は三日以内。

それでは、ありがとうございました!今年もよろしくお願いします。
527 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/04(水) 07:47:56.74 ID:lYEyqy8Eo



                          【次回予告】



「ルーンってのは文字だよ。 鍋だの杖だの儀式だのは関係ねェ」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)




「し、知ってたもん」
先進教育局、特殊学校法人RFO所属の風紀委員(ジャッジメント)――――――木原那由他



528 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 07:51:58.27 ID:xY0rinib0
>>1乙!!

オルソライダー!! オルソライダー!!
529 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 08:21:02.65 ID:VBs6yvkAO
乙!
なゆたん期待せざるを得ない
530 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 08:41:17.29 ID:LPKY3lSp0
乙 一通さんは幼女と絡むのが一番しっくり来るような・・・なんだろうか
531 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 08:54:49.23 ID:rYHkYe6DO
乙。ライダースーツの女の子っていいよね

>>526
サーセンwwwwww
532 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 09:27:21.45 ID:nOnvN0h00

>(し、下着は着けていないのか……? 何か出ちゃならん部分が出てるような……って、イヤイヤ!)
おい
533 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 10:41:38.88 ID:0B5bE3nT0
乙。なゆたんかわいい
534 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 10:54:53.94 ID:bKzkg0Hf0
>>1乙!!

>>530セロリだからに決まってんだろ?
535 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 11:30:58.70 ID:8NRlMYzJ0
>>1
>特に胸の辺りはもう色々とビューティフルな事になっているのだが
俺のドラゴンが火を噴いた
536 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 12:05:54.34 ID:YjfjReIq0
新年早々俺の股間が辰年に
537 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 13:58:11.57 ID:m23fZYb6o

>>530
新約3巻でも幼女とよく絡んでたしな
538 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 18:34:44.52 ID:9ANEVVFr0
>>1乙、

なるほど、ドラゴンライダ−ス−ツ、
イ−ジスシステムの学園都市版が搭載されているのか。

539 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 22:04:28.73 ID:ep0WWU5DO
浜面がただの浜面になった瞬間であった
540 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 23:57:33.40 ID:zDuLP2ZIO
>>535
>>536
その兎の尻尾をさっさとしまえよ
541 :以下、あけまして [sage]:2012/01/05(木) 00:11:58.56 ID:45OteVXQo
>>540
バニーと聞いて(ガタッ
542 :以下、あけまして [sage]:2012/01/05(木) 00:47:33.85 ID:VD5x/xCDO
丈澤あああああああ

ってめなにおっぱいさんの生着替え邪魔してくれてんだ


>>1乙!
エイワスさんに今年一年頑張れよと伝えて下さい
543 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:22:22.13 ID:yUGGGU3Ho

こんにちわ、真っ昼間からの更新です。
いつも時間帯がメチャクチャで申し訳ありません。

さて、オルソラのお着替えに興奮している皆様には申し訳ありませんが、
今回は一方通行です。女の子キャラは木原那由他だけですので、オルソラの
ようなお色気的展開は残念ながら……。

一方通行が情報収集のために立ち寄った第四九支部にいたのは
なんとあの木原一族が一人、木原那由他。オルソラが言ってた小学席風紀委員は
彼女の事です。そんな那由他と一方通行は……的なお話。

それでは、よろしくお願いします!
544 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:22:51.61 ID:yUGGGU3Ho


――――――――――――――――――――――


『木原』、という名前を聞いて一方通行が浮かべる表情を人に言わせると、


「……とても小学生の女の子に向けるような顔じゃないね」


との事らしい。木原那由他はクスっと、歳相応の笑い声を漏らすと、
視線を机のパソコンに戻しキーボードを叩き始めた。
一方通行は第四九支部の室内に木原那由他以外の人物が居ない事を確認すると、
ゆっくりと横引きの扉を閉めた。

閉めて、一言。
545 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:23:58.89 ID:yUGGGU3Ho

「木原一族の研究者か」

「人の話はちゃんと聞かなきゃダメだよ、第一位のお兄さん。 私はここ第四九支部所属の
 風紀委員。 ……でも、そう。 私も木原の一人、お兄さんもよく知ってるであろう、
 木原のね。 もっとも、私は研究者よりはモルモット……実験体として研究に加担した
 場合がほとんどだけど」


九月三〇日。一方通行が木原というキーワードを頭に浮かべると同時に想起するは、その日付だった。
一方通行と打ち止めを散々苦しめた研究者、木原数多。学園都市最強の超能力者を追い詰めたその男も
今では夜空に輝く星の一つと化してしまっているが、一方通行は今後一生、あの男の存在を忘れる事は
ないだろう。

一方通行は扉の前に佇んだまま、足を踏み出す事もせず言う。


「"俺が誰だか、分かってるよな?"」
546 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:25:08.09 ID:yUGGGU3Ho

「もちろん、第一位の一方通行お兄さん。 ……能力者の力を読んでその隙を突いて
 闘うって格闘術が私達の間で流通してて、私にそれを仕込んでくれた"数多おじさん"
 は『これを極めたら第一位だって手玉に取る事が出来る』なんて言ってたけど、
 やっぱりダメだったみたいだね。 さすがの数多おじさんも、一方通行ではない
 『未知の法則』までは対応出来なかったって訳だ。 残念だけど、それが結果だよ」


那由他は一方通行の方へは一切顔を向けず、パソコンでの作業を行いながら話し続ける。


「でもそれは、やはり喜ぶべき事なのかもしれないね。 力の流れを見たり読んだり
 するだけじゃ、超能力者(レベル5)は、学園都市が築き上げた科学の結晶は
 崩れない。これは私も実際にレベル5と対峙して思い知らされた結果なんだけど」

「俺に対して積もる話はねェと解釈しても構わねェンだな? 悪ィが、今ここで
 オマエみてェなクソガキとじゃれ合ってる暇はねェンだ。 風紀委員として、
 同じく風紀委員であるオマエに情報提供を要求する。 それでイイだろ」
547 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:26:08.70 ID:yUGGGU3Ho

「構わないよ。 でもまさか、第一位が風紀委員のお仕事を勤めてるなんて
 意外だね。 学園都市は街の治安維持活動に力を入れ過ぎじゃないのかな」

「一日体験の講習生だ、第一七七支部のな。 現在進行形で起きてる誘拐事件について」

「……第一位がボランティアの一日体験に参加するまでの過程がすっごく気になる」


言いながら、那由他はようやくキーボードを叩く指を止め、考えこむように首を傾げた。
一方通行は無視して、杖をつきながら那由他の下に歩み寄る。


二人が『第一位』と『木原』の関係性についての話題を交わしたのは、これだけだった。
両者ともに、色々と聞きたい事や言及した事は、それこそ積もる程あったかもしれない。
だが一方通行も木原那由他も、共に話を膨らませるつもりもなければ、ここで一戦交えよう
という気も毛頭なかった。
548 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:28:06.61 ID:yUGGGU3Ho

今はそれどころではないというのもあるだろうが、二人にとって『それ』は、既に過去の事だ。
そもそも一方通行がここで出会ったのは木原数多ではなく木原那由他。仮に木原数多が奇跡の
生還を遂げて一方通行を待ち構えていたのなら、この第四九支部は戦場になっていたかもしれない。

だが一方通行と木原那由他は今、今日、ここで初めて会ったのであり、いくら那由他が
木原一族の一人だとしてもただそれだけで、一方通行とは何の因縁も存在しない。
那由他自身、第一位という存在に個人的な興味こそあれど、怨恨や敵意は抱いていない。
木原数多という親戚を殺されていたとしても、だ。一方通行もまた同様に。

なので二人の『それ』に関する話はここで終わり。
話題は現在も進行している初春飾利と佐天涙子の誘拐事件に移る。


「逃走車両の現在位置を確認してェ。 そっちで尻尾は掴めてねェのか」

「不思議な事に、現在各学区に配置されてる警備員が、
 "逃走車両が走るルートを避けるような場所にいるんだよ"。 
 犯人たちは平気で街の道路を走っているにも関わらず、ね。
 しかも監視衛星は逃走車両の姿を"捉えられていない"んだよ」
549 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:29:57.86 ID:yUGGGU3Ho

「何?」

「まるでステルス迷彩技術を施した車を追っているようなんだ」


これ見て、と那由他はパソコンを操作し、モニタの画面を切り替える。
そこには街の監視カメラや学園都市が打ち上げた人工衛星の写真から特定した
犯人たちの逃走ルートが記載された地図が表示されていた。

が、そこに車そのものの姿がない。映っているのは逃走ルートだけ。
一方通行は激しい違和感に襲われる。


「で、これが配備された警備員の『初期位置』と『現在の位置』。
 ……わかるかな? まるでモーゼの海割れ。 犯人達の逃走ルートを
 予測し、予めそこに配備された警備員が、犯人たちが通る数分前に
 "見当違いの位置へ移動してるの"。 犯人たちを避けるように」

「現地の警備員に指示を送ってる警備員の中に犯人の一人が紛れてる可能性は」
550 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:30:46.45 ID:yUGGGU3Ho

「既に洗ってるみたいだよ、でも残念。 警備員の中にそれらしい容疑者は
 発見出来なかったみたいだね。 むしろ勝手に位置を変更する現地の警備員に
 憤ってるみたいだよ。 もちろん、それらの情報は私が警備員のデータベースに
 ハッキングしたから得られた情報だけど。 例の『天使同盟ハッキング事件』以来、
 外部の不正アクセスに対するセキュリティが大幅に強化されてたから大変だったよ」

「……、」


さらにそれは警備員に限らず、犯人たちが通ったルートの周辺にいた人間全てに
及んでいるらしい。逃走車両がそこを通る数分前に、突然集団移動を始めて、
あっという間にその一帯から姿を消してしまうのだという。

この時、一方通行は以前に行った『天使同盟逢引計画(エンジェルズ・スポット)』を思い出していた。
それは彼がのん気な訳ではなく、そのデート計画のラスト、ミーシャ=クロイツェフと外出した時の事を
振り返っていた。
551 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:31:35.92 ID:yUGGGU3Ho

あの日、結局デートはステイル=マグヌスの乱入によって中断せざるを得なくなってしまったが、
その際にステイルが使用していた『とある魔術』が何だったか、一方通行は記憶を探っていた。

頭の中を探って、掴んだそれを口にする。


「『人払い』のルーン……? まさか魔術、学園都市であっちの
 法則を使って誘拐事件なンてモンを起こしやがったのか連中は」

「だろうね」


同意してきた那由他に一方通行は思わず目を丸くする。
どうせ彼女があちらの法則について知るわけもないのだから、一方通行は
自分の言葉が独り言に終わると思っていたからだ。

一方通行の表情を見て、那由他はふふん、とどこか誇らしげな笑みを浮かべる。
552 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:32:55.85 ID:yUGGGU3Ho

「木原一族を見くびっているんじゃないの? 第一位のお兄さん。
 私達が実験でどれほどの領域まで足を踏み入れてたかくらい想像出来るよね?
 その実験の中には、科学じゃない『未知の法則』が一枚噛んだものもある」

「クソ忌々しい……と言いてェところだが、この状況なら助かる。
 いちいち説明する手間が省けるからな。 それで、この集団失踪現象に
 『人払い』が絡ンでる可能性は? 監視カメラから確認出来る位置に
 ルーンが貼られたりしてなかったか? 逃走車両が透明だろォが何だろォが、
 こォして人が避けてるって事ァ存在そのものを消してる訳じゃ―――――」

「………………」

「……どォした?」

「…………ひ、『人払い』とかルーンって、…………な、何」

「……」
553 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:33:51.62 ID:yUGGGU3Ho

さっきまでの自慢気な態度と笑顔はどこへやら、那由他の表情は一変して困惑に染まっていた。


「オマエ、あっちの法則についても知ってるンじゃねェのか」

「……、」

「木原一族を見くびるな、こなしてきた実験の中には、未知の法則が
 絡ンだものもある。 そンなご高説を今さっき垂れ流してやがったのは
 一体どこのどいつだったかなァ」

「いい趣味してるね、お兄さん。 こんなか弱い小学生の女の子を
 精神的に追い詰めて、何がそんなに面白いのかな? 他人の嗜好に
 どうこう言うつもりはないけど、小さな女の子をいじめて愉しむ
 なんて質の悪い趣味は止めておいた方がいいと思うよ」

「そいつはどォもご親切に。 で、ルーンは確認出来たのか?」
554 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:34:31.17 ID:yUGGGU3Ho

「………………う、うん、もちろんだよ。 犯人の逃走ルートの周囲に
 使用済みのお鍋と杖が放置されてた。 多分、今回の誘拐事件は計画的な
 ものだね。 犯人たちは予め逃走ルートを決めた上で、人を追い払うための
 儀式を行ったんだと推理でき――――――――」

「ルーンってのは文字だよ。 鍋だの杖だの儀式だのは関係ねェ」

「し、知ってたもん」


最後の方は声が上擦っていた。


なぜか知ったかぶりを貫く那由他は紅潮した顔を精一杯逸らして一方通行と目を合わせようとしない。
そんな彼女の様子に、一方通行は盛大なため息をついて『人払い』のルーンの詳細を説明するのだった。
555 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:36:00.78 ID:yUGGGU3Ho


――――――――――――――――――――――


「―――ってのが『人払い』のルーンの仕組みだ。 まァ俺も
 偉そォに魔術に関する知識を垂れる程知っちゃいねェけどな」

「魔術、か。 まぁ当然それも知ってたけどね、カードを捜せばいいんでしょ?」


一方通行は魔術そのものに関する情報ではなく、『人払い』の性能についてだけ
端的に説明した。那由他は人間の死角になるような位置に怪しげな札が貼られていないか
監視カメラのシステムとパソコンをリンクして検索を始める。

この時那由他は『魔術……魔術。 ふうん、そろそろ本格的にそっちの法則にも……』とか
そのような独り言をぶつぶつ言っていたが一方通行は気付かない、フリをした。
556 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:38:02.46 ID:yUGGGU3Ho

「一通り調べてみたけど、無いね。 既に回収された後なのかな」

「まず『人払い』を使ってるってのも憶測の域を出ねェンだけどな。
 或いは連中の中に札を遠隔操作で回収出来る魔術師がいるのかも知れねェ」

「犯人が魔術師で、かつ複数という推論は確定なの?」

「魔術師かどォかはこれまた予想でしかねェが、複数である事はほぼ間違いねェ。
 ガキとはいえ人間二人を攫うのは単独じゃ難しい。 そもそも誘拐なンて犯罪自体
 成功率が低い、非効率的な手段だからな。 相手は複数と想定して問題ねェよ」


そしてもしも相手が推測通り魔術師だとしたら、と一方通行は考える。
それ即ち、魔術サイドの連中が何らかの目的で学園都市に侵入した事になる。
現状、魔術サイドは安定の方向へと進んでいる最中、このような犯罪を白昼堂々と
犯すような連中、その目的も、恐らくろくな物ではないと彼は推理する。

……そのような面倒極まりない連中を統括理事長、というかエイワスが見過ごすか?
という疑問が浮かんだが、どうせあえて見逃して高みの見物を決め込んでいるのだろうと
一方通行は気にしなかった。

――この時は、気にも留めなかった。
557 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:39:26.56 ID:yUGGGU3Ho

犯人は魔術師、そして複数。一方通行は犯人を追うにあたってその二つの前提を念頭に置いた。


「予測逃走ルートだともうすぐ犯人は街から『外』へ出て行く。 
 外にまた何人か犯人の一味が待ち構えているのかもしれない。 
 車が目視出来ない以上これも特定するのは難しいけど、どうするの?」

「…………物は試しだ。 少し席を外すぞ」


そう言うと一方通行は教室の窓を開け、首元の電極のスイッチを切り替えると
一切の躊躇なく窓から外へ飛び出してしまった。
彼は空中でベクトルを操作し、一気に校舎の屋上のフェンスへ登っていく。


(……アンジェレネが車を追わせてる硬貨袋にも当然魔力が込められてるはずだ。
 だったら車の位置より、硬貨袋の現在地を把握した方が効率がイイ)
558 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:40:34.56 ID:yUGGGU3Ho

一方通行はフェンスの上に全くバランスを崩すこと無く立つと、一度息を大きく吸った。
目を閉じ、ここから見渡せる学園都市の風景をイメージし、瞼の裏に移す。

途端、彼の全身の神経が急激に膨張したような感覚に襲われた。


「…………ぐ、くっ!!」


一瞬体がぐらつくが、奥歯を噛み締めて屋上からの落下を踏みとどまる。
彼が今行なっているのはアンジェレネが射出した硬貨袋の探索である。
一方通行の肉眼では街を飛び回っている硬貨袋は確認できない。
宇宙にある人工衛星のカメラでも使えば或いは発見出来るかもしれないが、
それではあまりにも時間がかかる。

だから一方通行は自分自身で捜す事にした。だが肉眼はおろか、自身の最強の能力を
行使したって街全体の変化を探る事は出来ない。
だから一方通行は自分自身で捜す事にした。肉眼でも能力でも発見出来ないのならば、
559 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:41:16.44 ID:yUGGGU3Ho


魔術で捜せばいい。


(こっちからアプローチをかけるンじゃなく、あっちの『力』をこっちに
 引き寄せりゃイイ。 探るよォに、俺に向かってくる『紐』をイメージ
 しろ。 それらを引っ張って、"当たり"を掴めばそれが目当てのモンだ)


一方通行が使っているのは、魔術師が使う『サーチ術式』の超劣化版と言ってしまっていいだろう。


『第一九学区事件』時、一方通行は魔術を酷使した垣根帝督を厳しく非難した。
能力者が魔術を使うという事の危険さを、身を持って味わっているからだ。
そんな自分が魔術『のようなもの』を使う事に最初は躊躇ったが、現状はその躊躇いすら
初春と佐天の安全を脅かす。
560 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:43:16.39 ID:yUGGGU3Ho

一方通行は自身の身体を薄く覆う魔力『らしきもの』を大きく広げるイメージで
街全体に行き渡らせる。彼が張った『網』に彼があまり触れる事のない違和感が
引っかかれば、それが恐らくアンジェレネの放った硬貨袋だ。

途中、何度かそれらしき違和感がかかるが、それらは第七学区に集中していた。
ただでさえ魔術師が多く集まっている現状の学園都市。どれがどの魔術師で魔術なのか
一方通行には判断がつきにくい。

これで硬貨袋ではなく、犯人そのものを捉える事が出来たら儲け物だが、
それには犯人たちが魔術師である推測が確定しなければならない。
そもそも相手が本物の魔術師ならば、こんな紛い物の包囲網に引っかかるヘマは
しないだろう。(恐らくだが)術式で姿を消す程の警戒心を持っている連中だ。

全身の血管や神経が炸裂しないように汗を流しながら力の調節を行う一方通行。
やがて、
561 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:44:11.00 ID:yUGGGU3Ho

「こいつか」


ある一点。

明らかに"何かを追っている"動きをする違和感を一方通行は感知した。
もう一つそれに似た違和感を感知したが、それはあまりにも速度が凄まじく、
アンジェレネが放った魔術ではないと一方通行は直感で判断する。

一方通行はそれらしい反応があった位置を確認すると、再び那由他のいる教室へ降りる。


「第二三学区付近だ。 野郎、東部東京方面のゲートに向かってやがるな」

「警備員に連絡して第二三学区に集中配備するよう言ってみる?
 どうせその『人払い』とやらで無効化されちゃうんだろうけど」
562 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:45:03.80 ID:yUGGGU3Ho

「俺なら『人払い』に対応出来るが、いちいち札捜して剥がしてる間に
 逃げられちまう。 だから一旦奴らがゲートの外へ出るのを待って、
 そこを叩けばイイ。 奴らも街の『外』なら『人払い』を使わねェだろ」

「『外』に出るまでの間に人質のどちらか、或いは二人が殺される可能性は?」


最悪だが、しかし充分にあり得る可能性を提示する那由他に、一方通行は答える。


「……今回の事件は誘拐だ。 初春と佐天という個人を誘拐した事に
 何らかの理由があるンだろ。 ……これは全く根拠のねェ推論だが、
 恐らく連中は初春と佐天自体に用はねェ。 あの二人が"何か"を
 手にしたか、もしくは"知っちまった"可能性が高い。 情報漏えいを
 防ぐためか、相手が魔術師なら記憶消去の魔術か何かを使って対処するか、
 どちらにせよ現時点で二人は生きてると考えて支障はねェだろォよ」
563 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:45:38.27 ID:yUGGGU3Ho

さらに、と一方通行は付け加え、


「アンジェレネが放った魔術は二人を対象にしてる。 二人が死ンでたら
 俺が硬貨袋の位置を特定する事は出来ねェはずだからな」

「……ふうん、まぁその辺はよく分からないけど、とりあえず応援はいらないね?」

「むしろ呼ンじまったら面倒だろォな。 相手が魔術師であるなら、だが」


やる事が明確になった一方通行は能力使用モードをオンにしたまま
再び開放された窓枠へ足をかける。

と、そこへ彼の背後に那由他が声をかけた。
564 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:46:07.21 ID:yUGGGU3Ho

「プレッシャーをかける気はないけど、二人は必ず助けてね」

「あン? オマエ、あいつらの友達か何かか?」

「未だ面識はないけど、"あの二人にも借りがあるんだよ"、私は」

「?」

「とにかくよろしくね、第一位のお兄さん」

「その呼び方、気に食わねェからやめろ」


トンッ、と一方通行は窓から外へ飛び出す。
同時に、彼の背中から凄まじい勢いで四本の竜巻が出現した。


大凡の居場所はつかめた。あとは追い、『粛清』するだけだ。
565 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:52:42.86 ID:yUGGGU3Ho
>>398-399
先 に 言 う な よ

いやー全く本当に、参っちゃいましたね。
分かっちゃうもんなのかなこういうの……すごいです。

そんな訳でもうここまで来ると皆様もわかったと思うのですが、はい、
魔術師です。初春と佐天を誘拐したあんちくしょうは。
少し安易すぎましたかね……魔術師といっても、面倒な連中なんですが。

さて次回は初春と佐天の現状報告と、それを追うオルソラとアンジェレネの場面を
お送りします。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

……長いな、このアンロック編。

566 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/06(金) 13:53:09.76 ID:yUGGGU3Ho



                          【次回予告】



「ちょっとー!! いい加減あたしら解放してよ!! 目的や事情は知らんけどさ、
 あたしら別にアンタらの事チクったりしないし、『これ』の事も言わないっていうか、
 『これ』に関しては本当に見たり覗いたりしてないって言ってるでしょ!?」
柵川中学の女子生徒・初春飾利の親友――――――佐天涙子




「か、解放って……街に帰してくれるんですか?」
第一七七支部所属の風紀委員(ジャッジメント)――――――初春飾利




「わ、私も乗せてってくださいよぉ…………」
元ローマ正教のシスター――――――アンジェレネ




「(ふむふむ、高さ五メートル厚さ三メートル……。 えーと、仮に
 "ここを回って"第二三学区方面へ向かった場合の到達時間を算出すると……)」
元ローマ正教のシスター――――――オルソラ=アクィナス



567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/06(金) 13:54:41.89 ID:GVv6m1JAO
おつ!
知ったかぶるなゆたんかわええwwwwwwwwww
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 13:59:13.43 ID:/RTD6lpco
>>566
> 『これ』に関しては本当に見たり覗いたりしてないって言ってるでしょ!?」

スカートだな
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/06(金) 14:14:29.27 ID:cWrQX26K0
乙!
なゆたんかわいいなぁ
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 14:46:28.64 ID:pmu5zgdZo

>「し、知ってたもん」
金髪ツインテJSが顔を真赤にして頬を膨らませて言ったかと思うと…
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/06(金) 15:38:01.91 ID:0Ukkvq84o
オルソラが覚醒しとる
流石ドラゴンライダー
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 17:37:31.78 ID:MtILQu4E0
>>1
なゆたん登場に俺の股間もドラゴンライダー
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/06(金) 20:51:46.54 ID:fceS3BU10
オルソラが俺の上でオルソライダー
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/01/06(金) 20:58:36.90 ID://mehxWuo
第一位はもっとオルソライダーに気を配るべきだろwwwwwwwwww
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 21:42:58.49 ID:sIlZP92DO
俺のなゆたんがこんなにかわいいわけがない
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/06(金) 23:33:34.47 ID:3hHVVXR+0
なゆたちゃん可愛すぎわろた
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/07(土) 21:44:12.09 ID:lYwRaTfso
なゆたちゃんマジ天使
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 03:09:22.87 ID:f3jrTOnt0
お前らいい加減その粗末なパッソルをしまえ
579 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:40:21.73 ID:cZ+wvFRRo

おはようございます、更新を開始しますね。

那由他が思いの外好評なようでこちらとしても嬉しい限りです。
知ったか那由他はちょっとキャラ崩しすぎかなとヒヤヒヤしてましたが、
まぁSSなのでこの程度のキャラ崩壊は問題ないですよね。もっとひどいの居ますし。

今回は誘拐されてしまった初春、佐天の仲良しコンビの場面をお送りします。
二人が誘拐された理由がついに明らかに……なるっけ?。 すみません、
これから投下する話なんてもういつ書き溜めたのかわかんないんです……。

それでは、よろしくお願いします!
580 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:40:57.26 ID:cZ+wvFRRo


――――――――――――――――――――――


流石。と賞賛する人間は存在し得ないが、一方通行の憶測はほぼ全て的中していた。


「次。 ポイント23-FLから23-RRまで、ルーン散布」

「了解」


運転手の指示に男は頷くと、助手席側の窓を開け怪しげな文字が書かれた
札を複数枚放り投げた。札は風に吹かれ、頼りなく舞いながら空へ吸い込まれていく。
その様子を確認した後部座席の男が口元でぶつぶつと何かを呟き始めた。

途端、ランダムに散らばっていた複数の札が風を切って四方八方へ飛散していき、
人が通りかかってもまず気付かないような位置にぺたぺたと貼りつけられていく。
581 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:42:25.34 ID:cZ+wvFRRo

これで『人払い』は完了。一端覧祭中のため多くの人と航空機が行き交う第二三学区。
間もなくそこへ突入する彼らの車は、何の問題もなく『逃走』を成せるだろう。
いや、『逃走』という表現は間違いかもしれない。何せ彼らを追う警備員は存在しないのだから。

彼らが行なっているのは『逃走』ではなく『運搬』。車に乗っている三人は全員が魔術師だった。
そして何を運搬しているのかというと、




「ちょっとー!! いい加減あたしら解放してよ!! 目的や事情は知らんけどさ、
 あたしら別にアンタらの事チクったりしないし、『これ』の事も言わないっていうか、
 『これ』に関しては本当に見たり覗いたりしてないって言ってるでしょ!?」

「さ、佐天さん……! あまり相手を刺激するような物言いは……」



582 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:44:09.07 ID:cZ+wvFRRo

後部座席で喚く佐天涙子やそれを宥める初春飾利ら"人質"ではなく、


「ねえ、聞いてるの!? 『これ』! アンタらに必要なのはこの『ゲコ太』なんでしょ?」


佐天が隣に座る男に突きつけている、黒コートを着たデザインのゲコ太人形だった。
二人が知る由もない魔術師の男の一人がうんざりとした調子で息を吐き、低い声で言う。


「その『中身』を貴様らが見ていないという証拠も、保証もない」

「そんなの……! 見てないったら見てないとしか言いようがないじゃん」

「安心しろ。 現地に到着したら、我々の手でお前達の頭の中を覗いてやる。
 それでお前達の記憶の中に『中身』の情報が無ければ、解放してやるよ」
583 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:45:03.07 ID:cZ+wvFRRo

助手席に座る男の言葉に、初春の表情がわずかに綻ぶが、


「か、解放って……街に帰してくれるんですか?」

「いいや、解放するんだよ。 "この終わった時代をいつまでも引き摺る腐敗した世界からな"」


終わった時代、という意味は理解出来なかったが、初春の顔が一気に青ざめた。
世界からの解放=殺害、という身震いするような連想をしてしまったからだ。
そして初春のその想像は、概ね正しい。魔術師の連中は二人を五体満足で帰すつもりは毛頭ない。

絶望に打ちひしがれる二人など気にもかけず、運転手の男が後部座席の魔術師に言う。


「喋るのはいいが、防護術式の方に抜かりはないだろうな?」
584 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:46:44.38 ID:cZ+wvFRRo

「問題はない。 その程度で揺らぐ集中力など持ち合わせてはいないからな。
 学園都市側がいくら俺達を探ろうとも、例え学園都市が魔術師を招き、
 そいつにサーチ術式を使わせても、俺達とこの車は引っかからないようになってる。
 人工衛星の監視カメラ対策である迷彩術式も施している以上、この計画に不備はない」

「それでも油断はするなよ。 常に複数のアクシデントを想定し、対処できるようにしとけ。
 ずいぶんと回りくどい方法になってしまったが、この小さな積み重ねが、やがて世界を
 次なる時代へと導く鍵となる。 これが成功すればその他の行動も終わらせてしまって構わんだろう」


魔術師だの防護術式だの、意味のわからない言葉が飛び交う車内の雰囲気に
初春と佐天は精神的に参ってしまいそうだった。
この連中が何者なのか、二人は知ることは出来ないがとりあえずまともな頭をした人間でないことはわかる。

先ほどは少しだけ会話が成立したが、この三人の魔術師は基本的に言葉を発しなかった。
口を開けばどこどこのポイントがどうのこうの、了解、そして二人の隣に座る上下ジャージ姿の
男が意味不明の言語をぶつぶつと呟き、撒いたカードを操る。会話をするにしてもこの三人の間だけで、
初春や佐天の質疑にはほとんど応じようとしない。さっきの佐天に対する応答も、答えれば黙ると
判断してのものだろう。
585 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:47:30.76 ID:cZ+wvFRRo

それら一連の流れの全てが、二人には理解出来なかった。


「第二三学区に入る」


まるで機械が予め設定されていた言葉を発するように、運転席の男が冷淡に言った。
第二三学区。ここには宇宙開発分野の研究所や唯一の国際空港の他、東部東京へと
繋がる『外』へのゲートも設けられていた。

ゲートを通るためには警備員による厳重な点検をクリアする必要があるが、
この魔術師達には関係ない。すでに『人払い』でゲートから立ち退けさせているからだ。


『外』に出たら、いよいよ学園都市側からの救援が期待出来なくなってくる。
初春と佐天は互いの手をギュッと握り締めながら震えていた。そこへ、

586 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:48:28.01 ID:cZ+wvFRRo

「……なぁ。 このガキ二人が『中身』を見ていようが見ていまいが、
 どっちにしろ殺すんだろ? 特に目隠しなんかもしていないし、
 俺達の行動をここまで見せる以上、そういう解釈でいいんだよな?」


助手席に座るニット帽をかぶった魔術師は、昼休憩にクラスメイトと談笑するような気軽さで言った。


「だったらもう、今ここで始末しておいてもいいんじゃないか?」


初春と佐天が握る互いの手の力が更に強まった。ついさっきまで必死に
抗議をしていた佐天も、瞳に涙を浮かべながら奥歯をガチガチと鳴らしている。


「ここまで来て生かしておく必要性が、俺には見出せない。
 要はこのぬいぐるみの『中身』さえ入手できればいいんだから、
 この二人は用済みだろう。 ならここで処理しておいた方が」

「いや、今ここで殺すのは駄目だ」
587 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:49:42.74 ID:cZ+wvFRRo

助手席の男の提案を運転席で車を操作する、顔に妙な刺青を施した男が却下した。
どう考えてもこの刺青の男もまともではない事は分かっている二人だが、
それでも『殺すのは駄目』という男の言葉にわずかな希望を抱いてしまう。

世界から解放=殺害と解釈していた初春は特に顕著だった。しかし、


「こいつらは"使える"。 我らが進めている儀式魔術の生贄、
 人体を介して操作する霊装、肉体を解体し、骨や臓器を霊装や
 魔術に使う消費材料として。 年齢的にも儀式魔術ならベストに近い」

「さすがにそこまでやったら『明け色』の連中が黙っちゃいないだろ?
 科学サイドの人間を俺達が消費するなんて、『ブルーリサーチ』の
 一件でさえ奴らは妨害してきたんだぞ?」

「ブルーリサーチの件はバードウェイが関わっていたからだろう。
 今回の行動は学園都市で発生した単なる誘拐事件で幕を閉じる。
 我らに疑惑の目が向けられる事はない。 心配するな」
588 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:50:38.12 ID:cZ+wvFRRo

例に漏れず、彼らの会話の内容が二人には理解出来なかった。
だがそれでも、生贄、儀式、解体、骨、臓器と、物騒にも程がある
ワードは理解出来ていない二人の思考を凍らせるには充分だった。

佐天は零れそうになる涙をグッと堪えたが、初春はもう限界だった。
ボロボロと涙を流し、嗚咽する。殺されはしないようだが、生贄や
肉体の解体等といった言葉を耳にし、殺された方がマシな状態になる事を予感したからだ。


どうしてこんな事に。二人の頭をぐるぐる回るのは、そんな思いだけだった。
そして残酷にも、二人を乗せた車はついに警備員に捕まる事なく『外』へのゲートを抜けた。


その瞬間だった。


「おい!!」

「どうした?」


後部座席にいた上下ジャージの魔術師が急に叫び声をあげた。
二人は突然の事態に身体を硬直させてしまう。
589 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:51:32.82 ID:cZ+wvFRRo

「クソ!! やられた、追われてるぞ!!」

「学園都市の警察か!?」

「いや……、あれは。 チッ、このガキ二人にも隠蔽術式を施しておくべきだったか!?」


運転席の男はサイドミラーを確認するが、警備員の車両らしき影は見当たらない。
それどころか人影の一つも無い。しかし警戒しながら窓の外を覗く助手席の男と、
後部座席から直接背後を確認しているジャージの男。

そして、身体の硬直を解いて振り返った初春の佐天の目には、確かに映っていた。


まるでこの車を追うように飛翔してくる、奇妙な翼を生やした硬貨袋が。


アンジェレネの魔術が、犯人を捉えた瞬間だった。
590 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:53:07.59 ID:cZ+wvFRRo


――――――――――――――――――――――


時計の針は少し巻き戻る。
初春飾利と佐天涙子を誘拐した犯人達が第二三学区に入る直前の事。


アンジェレネは第七学区にあるファミレスの店内で呆然と空を眺めていた。


修道服という学園都市にそぐわない格好をしたこのイギリス清教のシスターは、
一方通行やオルソラと同じく犯人達の行方を追っている最中だ。
一二使徒マタイの伝承に基づいた得意魔術で犯人を追跡させ、さらに『足』を捜している
最中にファミレスでミーシャ=クロイツェフと御坂美琴の姿を見かけた。

アンジェレネはこれ以上なく心強い味方になってくれるであろう二人に
初春と佐天の二人が何者かに攫われた経緯を説明したのだが――――、
591 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:54:20.90 ID:cZ+wvFRRo

「わ、私も乗せてってくださいよぉ…………」


事情を把握したミーシャは、同じく話を聞いた美琴を背中に乗せ、
ガラス張りの壁をぶち破って颯爽と飛翔してしまったのだ。
何の騒ぎだとざわめく店内で一人時が止まったようにポツンと佇んでいるのはそのためだ。

ミーシャ達に同行すればすぐに犯人の下へ辿りつけただろうと考えると、
これは非常に大きなタイムロスである。
と、そこでアンジェレネの着ている修道服のポケットからわずかに魔力が漏れた。
フィアンマに作ってもらった小麦粉の通信霊装が着信している。


「は、はいもしもし……」

『アンジェレネか?』

「あ、一方通行さん!」
592 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:58:12.75 ID:cZ+wvFRRo

相手は一方通行だった。一体どんな場所にいるのか、霊装から
一方通行の声と一緒に凄まじい風切り音が聞こえてくる。


『連中の逃走先が大体分かった。 あいつら第二三学区からゲートを抜けて「外」に出る腹積もりだ』

「第二三学区……。 えーと、ここからなら第一八学区を経由して……」

『風紀委員のマニュアルを確認するのもイイが、オマエが放った霊装はどォなってる?』

「あ、はい。 現在も犯人を追って…………、あ、アレ?」

『どォした?』

「…………す、すみません。 この感覚、多分硬貨袋が撃ち落とされました……」


狼狽しながらもアンジェレネは冷静に状況を分析した。
魔術行使中の独特の感覚が消失した。何らかのアクシデントか、否、
恐らく誘拐犯に迎撃魔術を使用されて撃ち落とされたのだとアンジェレネは判断する。
593 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 07:59:19.03 ID:cZ+wvFRRo

『これでますます犯人魔術師説が濃厚になってきやがったな……』

「あ、でも、さっき大天使様とミサカさんが協力を
 承諾してくれて、二人共犯人を追ってくれてます!」

『あァ!? なンでここでガブリエルが出てくるンだよ!? 
 大体あのバカ今日どこに居やがっ……、…………待て、ミサカだと?』

「はい。 あの、私イギリスで一度会ってたんで、つい事件解決の協力を
 お願いしちゃったんですけど……ま、マズかったでしょうか?」

『……"そっちのミサカかよ"。 まァイイ、ガブリエルなら恐らく素で連中に
 追いつけるだろ。 オマエもまだ追う気があンなら俺が迎えに行くぞ?』


願ってもない助け舟が提示された。アンジェレネは笑顔で応じる。
594 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 08:00:15.90 ID:cZ+wvFRRo

「お、お願いします!」

『場所はどこだ』

「第七学区の飲食店なんですけど……」

『……どォせいつものファミレスだろ。 そこで待機してろ』


通話を終えたアンジェレネは店員の目を盗み、こっそりと割れた壁から抜け出した。
店の外で一方通行の迎えを待っている間に、今度は霊装でオルソラに連絡を取る。


――――――――――――――――――――――


念のためスーツ型駆動鎧にフィアンマ自作の霊装を忍ばせておいた事が
奏功した。オルソラが着ている駆動鎧では魔力までは読み取れなかったのか、
一瞬彼女の視界に砂嵐のような映像が介入したが、オルソラは冷静に軍用ベストの
ポケットから怪しげな小麦粉人形を取り出す。
595 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 08:02:05.39 ID:cZ+wvFRRo

『はいはい、こちらはオルソラ=アクィナスでございますよ〜』

『シスター・オルソラ、アンジェレネです。 今どこに?』

『えっとでございますね、』


ヘルメット内部に表示された犯人の位置を目指して『ドラゴンライダー』を
走らせていたオルソラだったが、最短距離を案内する電子情報を見ても
彼女にはちんぷんかんぷんだったようで、今は見当違いの道を走っていた。


『第二一学区……? でございますね』

『二一……二一って第二三学区のほぼ真逆じゃないですかバカー!』


『ドラゴンライダー』のサポート受けていながら道を誤るという、もはや不可解と言っていい失態。
丈澤辺りが知ったら駆動鎧ではなくオルソラの頭の故障を疑っていただろう。
596 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 08:03:00.46 ID:cZ+wvFRRo

『も、申し訳ないのでございます……。 でも犯人の方が第二三学区へ
 向かっているという情報はすでに受け取っているのでございますよ』

『あ、あれ? そうなんですか? だったら話は早いですね。
 今、一方通行さんと大天使様とミサカさんも犯人を追ってくれてます。
 私は一方通行さんと一緒に犯人を追いますが、シスター・オルソラはどうします?』

『まぁ……大天使様とミサカさんが。 それは心強いのでございますね。
 お話は承りました、私は私で犯人の方を追ってみるのでございますよ』


通信を終え、オルソラは一旦『ドラゴンライダー』にブレーキをかけて停止した。
その際の爆音とテレビゲームに出てくるようなバイクのフォルムが周囲の視線を
集めてしまっている。これではご近所に迷惑をかける暴走族とあまり変わらない。

だがそんな事に気をかけている場合でもない。一方通行、アンジェレネ、ミーシャ、
そして『ミサカ』の協力を得て自分だけ『道に迷ってたんで間に合いませんでした』では
『ドラゴンライダー』を託してくれた丈澤道彦にも申し訳が立たない。
597 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 08:04:18.25 ID:cZ+wvFRRo

『………………、』


オルソラの目の前には、学園都市と『外』を隔てる『外壁』がそびえ立っていた。
高さ五メートル、厚さ三メートル、侵入者を阻む厳重なる壁(……の割には今回の件も含め、結構侵入されてるが)。
厚さが三メートルもあるのは容易に蹴破られたりされないためでもあるが、『外壁』の上には
万里の長城ように通路が存在しているからだ。そこでは今もドラム缶型の警備ロボットが
複数台巡回している。


(ふむふむ、高さ五メートル厚さ三メートル……。 えーと、仮に
 "ここを回って"第二三学区方面へ向かった場合の到達時間を算出すると……)


オルソラの思考を手助けするようにヘルメット内部に詳細な情報が表示される。
駆動鎧の性能に頼り切りでいると、操縦者が『自分自身とは何なのかがわからなくなる』
というデメリットがあるのだが、魔術サイドの人間であるオルソラにそんな欠点が理解
出来るはずがない。友達を助けるためなら猫の手でも借りるのが今の彼女だ。


『いける、という事でございますね』
598 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 08:05:35.95 ID:cZ+wvFRRo

駆動鎧が弾き出した算出結果を見て、オルソラは再びハンドルを握る。

途端、何を思ったかオルソラはそのまま"『外壁』に向かって"『ドラゴンライダー』を
発進させた。壁と接触するまで二秒もかからない速度で突っ込んでいくオルソラは、
ハンドルをしっかりと握ったまま、あろうことか腕を畳み、『ドラゴンライダー』を
ウィリーの体勢に持ち上げてしまう。

するとオルソラを乗せた『ドラゴンライダー』は重力を完全に無視し、
垂直の壁を登るように走り出した。直後、アーム部の補助ブースターが
爆砕するように炎を吹き、『ドラゴンライダー』を壁の上まで運んでいく。

これではもはやバイク型駆動鎧というより『ロケット』である。
九〇度という傾斜もクソも無い角度の壁を走りきった『ドラゴンライダー』は
あっという間に壁の通路へ到達してしまった。


『あとは道沿いを進めば第二三学区に向かえるのでございますよ』


通路を巡回していた警備ロボットがオルソラの方を向くが、そこから警報を鳴らして
管制直通の連絡をするという事はなかった。オルソラが装備しているスーツ型の駆動鎧が
彼女を『侵入者、或いは街に害をもたらす不審者ではない』という旨の通信を取ってくれたらしく、
オルソラは誰にも邪魔される事なく『ドラゴンライダー』を走らせる事が出来た。
599 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 08:11:29.72 ID:cZ+wvFRRo

今回はここまでです。

投下してる最中に思ったのですが、車の中の魔術師が座ってる位置、おかしいですね。
誘拐したんなら普通後部座席の初春達を左右から挟むように配置するべきでした……。
いやトランクにでもぶち込んでおくべきだったか。どちらにせよ凡ミスですた。

さてこのアンロック編withオルソラ・アンジェレネという名の誘拐事件編も
いよいよ大詰めです。次回はミーシャと、その背中に乗る御坂の場面から始まります。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
600 :次回予告はここまでです。 ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/09(月) 08:11:56.69 ID:cZ+wvFRRo



                          【次回予告】



「その人払いだかルーンだか言うの、どうやったら解除出来るの?」
学園都市・常盤台中学の超能力者(レベル5)――――――御坂美琴




「cmvpo破壊iuldexbj」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・水を司る大天使『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ



601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 08:12:13.40 ID:XZaLVd5L0
おはよー!おつー!
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/01/09(月) 08:24:35.83 ID:QZFTRTvAO
おつおつ
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 10:31:07.16 ID:jO8YRzpo0
おお、投下きてた。乙
ドラゴンライダー化け物やな。
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/09(月) 10:52:02.12 ID:aRbV+ivL0
乙〜
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 10:57:21.11 ID:6POJ6k0DO
ガブが乗り物になってるこっになんの違和感も感じない1月の朝


>>1
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/01/09(月) 11:46:09.72 ID:ZMh/02jU0
>>1

607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/01/09(月) 17:59:08.58 ID:/RWYj6jZ0
>>1
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/09(月) 21:43:05.29 ID:LHK5LA3C0
>>1

今度は、アンジェレネをお姫様だっこで飛ぶのか第一位…

べ、別に、うらやましく無い…ハズ
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/09(月) 23:26:35.76 ID:ahsy5aRy0
>>1乙!

オルソラさんの行動力にギョッとした。
今後の>>1とオルソラさんに期待
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/10(火) 00:00:54.58 ID:W0sYQIlG0
いやー魔術師追跡陣豪華すぎるわー
カップラーメンの具に北京ダック丸ごと乗せるくらい豪華やわー
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2012/01/10(火) 10:25:39.96 ID:KsEMJaih0
オルソラがでた時点で勝利確定の法則
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 13:48:54.68 ID:NgwO9u5/0
>>1乙!

>顔に妙な刺青を施した男
木ィ原くウウウウンかと思ったわwwww
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 17:11:26.21 ID:Eyf+OqZz0

いつになったらていとくんは再登場するかな・・・・
心配してちょっと原作のていとくんの強さを調べたら・・・•ヴィーダルの靴の女 赤き洪水の少女より強かった・・・。
スペックみたけど『いくら未元物質で魔術を操作できたとしてもここまで強いのか?』というレベルぐらい↑の二人強いんだが・・・・。(あと•ヴィーダルの靴って、ていとくんが使えばなかなか使えると思う)
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/01/10(火) 17:16:58.01 ID:rpgG2zHAO
強さ議論スレに引きこもっててください。お願いですから
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/10(火) 20:40:39.63 ID:vAs5dLZ40
そんな事よりかおりちゃんの話しようぜ!
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 20:46:17.16 ID:fPckx/huo
おっぱい
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/10(火) 23:26:46.18 ID:kRi2+Ab40
露出狂
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/10(火) 23:45:41.08 ID:Ort9lksE0
おwwwwまwwwwえwwwwらwwww
619 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:48:00.57 ID:kHO/TQ/uo
>>612
確かに……キャラかぶってますね。これはまたひどい凡ミス、ごめんなさい。

>>613
垣根帝督はもう少しお待ちを!これ終わって少し出番で、またしばらくお休みで、
それが終わったら垣根パート史上最多投下量があなたに襲いかかりますので、もうしばらく!


おはようございます、更新を開始します。

一端覧祭……何日目でしたっけ、4日目?の誘拐事件もいよいよラストスパート。
一方通行、オルソラ、アンジェレネ、ミーシャ、御坂で追ってんだからさっさと
捕まえちゃいましょう。

それでは、よろしくお願いします!
620 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:48:51.70 ID:kHO/TQ/uo


――――――――――――――――――――――


高速で移動するミーシャの背中に乗っている美琴は歯噛みしていた。


(……クソッ、もし私があの時初春さん達の誘いを断らなかったら……)


ファミレスで謎の修道女から初春飾利と佐天涙子が誘拐されたという話を
聞いた時、最初は質の悪い冗談だと美琴は思っていた。

しかし話を聞いている内に冗談にしては出来過ぎている内容、謎の修道女――アンジェレネの
真に迫る瞳、彼女の右腕に装着された風紀委員の腕章、それらの要素を考慮して、それが
作り話でも何でもない事を理解した。
621 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:49:38.59 ID:kHO/TQ/uo

何でシスターのコスプレをした小さな女の子が風紀委員の活動をしているのか、
なぜそんな彼女がミーシャを大天使様と呼ぶのか、どうして自分の事を知っている風に
接してくるのか。美琴は頭に並ぶ疑問を全て後回しにしてミーシャ=クロイツェフに叫んだ。


『お願い、協力して!! アンタの飛行能力ならすぐに追いつけるでしょ!?』


出し抜けにも程がある注文だったが、それでもミーシャは即座に首を縦に振ってくれた。
店の出入り口から外に出るという過程を豪快にすっ飛ばし、ガラスを破壊して外に出た
天使は背中から膨大な数と長さの翼を周囲の目も気にせず生やし、美琴を乗せて飛び立ってくれた。


「まだ何も終わってないけど、とりあえず言っておくわ。 ありがとね」

「oifut無問題alpur」
622 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:50:33.34 ID:kHO/TQ/uo

学園都市の俯瞰風景が模型に見える程の高度で、美琴はミーシャに礼を言った。
少し飛びすぎじゃないかと思ったが、今はそんな我侭を言っている場合ではない。
美琴は片手でミーシャの翼を持って体を支えながら、もう片方の手で携帯電話を取り出す。

連絡先は、恐らく今も事件解決のために奔走しているであろう風紀委員の相棒。


「もしもし、黒子!?」

『お、お姉様? わたくしも今ちょうど―――』

「話は全部聞いたわよ、アンタと同じ風紀委員のシスターちゃんからね」

『シスターって、まさか―――』

「……初春さんと佐天さんが誘拐されたんでしょ? どうしてすぐに連絡くれなかったのよ!!」
623 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:51:17.86 ID:kHO/TQ/uo

怒鳴った直後、美琴は後悔した。白井がまさか本当に美琴を除け者にするために
今まで連絡をしなかった訳がない。白井もまた、今の美琴のように全力で事件に
対応していたはずなのだ。それこそ、美琴に連絡をする暇もないくらいに。


「……ごめん、ちょっとテンパってて。 とにかく、話は聞いたから」

『オルソラさんかアンジェレネさんに聞いたんですのね? あの二人が
 お姉様と面識があった事は僥倖でしたの。 第四九支部からの連絡に
 よりますと、犯人は現在第二三学区を逃走中。 恐らくそのまま「外」へ逃走する
 腹積もりかと。 ……ですが第二三学区も含め、犯人が逃走に用いたルート
 の周辺全てに警備員がおりませんので、追跡は難しいですの』

「警備員が……居ない? 間に合わなかったならともかく、居ないって何?
 犯人の逃走予測ルートが掴めてるなら今からでも追えばいいんじゃないの?」

『それが……逃走ルート周辺に近付けないんですの』
624 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:52:14.54 ID:kHO/TQ/uo

「近付けない? 連中が仕掛けた罠か何かが見つかったとか?」

『いいえ、そういう意味ではなく……。 とにかく、近付けないんですの。
 現在も逃走ルート周辺には警備員はおろか一般人の一人もおりませんの。
 ヘリで空中からの追跡も試みたらしいのですが、何らかの迎撃手段によって
 撃ち落されたようですし、警備員は頭を抱えていますわ』

「………………どういう、意味よ」

『それに、これが最も不可解な点なのですが……。 どうも警備員の話を聞く限りでは、
 犯人達が乗る逃走車は"影も形も見当たらない"とか……。 姿が見えないらしいですの。
 わたくしに連絡を寄越した第四九支部の風紀委員も「そうなんだから仕方ない」と……』

「……………………!?」


こんな時に何をふざけて、と激昂しそうになった美琴だが、
先の反省も踏まえて何とか押し留める。
625 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:53:12.27 ID:kHO/TQ/uo

この状況で白井が馬鹿げた謎掛けを出題してくる訳がない。"何かがあるのだ"。
警備員が、人間が近づく事さえ出来ない何かが、不可視の車の秘密が、そこに必ずある。


「…………アンタでも追跡出来ない? 空間移動を使ってでも」

『すでに試みてはいますが、駄目ですの。 座標位置は演算出来ますが、
 そこから先、「そこへ移動しよう」という行動にどうしても移れないんですの。
 ……友人が危険な目に遭っているというのに、追いかける事すら…………!!』

「…………」


それは、ギリリと電話先から奥歯を噛み締める音が聞こえてくる程だった。
当然だ。大切な友人の命が脅かされているという現実を目の当たりにしているのに、
意味不明理解不能な原理で救助活動を抑制されているのだ。

ここで悔しさを滲ませるな、という方が無理というものである。
626 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:54:05.12 ID:kHO/TQ/uo

「黒子」

『はい』

「状況はわかったわ。 とりあえずこっちで色々仕掛けてみる」

『お、お姉様……今どちらに?』

「空よ空。 友達を助けるためなら天使にでも何でも頼っちゃうんだから」

『は?』

「少し待ってて」


言葉の意味が理解出来ない黒子に対する説明を省き、美琴は一度通話を切った。
携帯を握りしめたまま、彼女は自分を乗せて優雅に大空を舞う大天使に呼びかける。
627 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:55:28.61 ID:kHO/TQ/uo

「今の会話、聞いてたでしょ?」

「xydi無論arjlg」

「……無茶な事聞くけど、人が近付けなくなる現象の原因、目に見えない車の正体、わかる?」

「…………」


ミーシャは空中で動きを止めると、フードで隠れた頭を捻って考え事をするような仕草を示す。
すると今度は携帯電話を取り出し、すっかり慣れた指さばきでメールを作成し始めた。
宛先は美琴。だが美琴は背中に乗っかっているため送信するまでもないと判断したミーシャは
メールの作成画面で作った文章を美琴に直接開示した。


『我々の法則を鑑みて導き出される結論は、人払いのルーン。 これが最も容易に
 必要のない人間を特定の場所から遠ざける手段であり、かつ看破されづらい方法で
 あると考えられる。 ただし看破されづらいというのは学園都市側から、という
 意味であり、我々の世界の観点からしたら比較的メジャーな魔術であるため容易に見破れる』
628 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:56:10.32 ID:kHO/TQ/uo

「……ルーン? 魔術、……非科学か?」

『車の姿が見えないというのも、恐らくは隠蔽術式が迷彩術式に準じた
 魔術を施しているものと推測出来る。 これも私なら看破する事が可能』


第三位の美琴ですら理解出来ない言葉がそこには書かれていたが、
とにかくミーシャは現象の理由がわかっているという事だと判断すると、


「その人払いだかルーンだか言うの、どうやったら解除出来るの?」

「cmvpo破壊iuldexbj」


何やら物騒な単語を呟かれたような気がした美琴だが、聞き返す暇はなかった。

ミーシャは片腕を天に向けて伸ばすと、彼女の掌を囲うように虚空から
無数の氷の礫が出現し始めたのだ。目的の数まで氷を出現させたミーシャは
命令を送るように手首を真下の学園都市に向けて折り曲げる。
629 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:57:11.48 ID:kHO/TQ/uo


直後、ふわふわと浮かんでいた無数の礫が流星群の如く学園都市へ落下していった。
ミーシャが指示を送っているのか、礫の一つ一つが複雑な軌跡を描き、街に満遍なく
降り注ぐ形で地上へと吸い込まれていく。


「…………何? アンタ、今何やったの?」

「……、」


返事をしないミーシャに一抹の不安を覚える美琴。
落下していった礫はすぐに見えなくなり、しばらくの間沈黙だけが残った。

その沈黙を破ったのはミーシャでも美琴でもなく、美琴の携帯電話の着信音だった。


「もしもし?」
630 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:58:00.87 ID:kHO/TQ/uo

『お、おおお、お姉様!? た、確かお姉様は今、空におられるとか仰ってましたわよね!?』

「え、うん……まぁ。 すっごく嫌な予感がするんだけど、何かあった?」

『たった今、学園都市の複数のポイントで爆撃が発生しましたの!!
 それぞれの被害は大した事無いのですが、爆撃ポイントが多すぎるため
 警備員が対応に追われていますの。 これはお姉様の仕業……?』

「アンタ学園都市に何やったんだ!?」


ビシビシとミーシャの後頭部をチョップで小突く美琴は極寒の上空にも関わらず
冷や汗を掻いていた。具体的に何をどうしたのかはわからないが、このままでは
自分が学園都市に空爆を仕掛けたテロリストだと疑われかねない。

しかし、


「……待てよ? 黒子、警備員が爆撃の対応に追われてるって……
 警備員が"移動"してるって事? 例の訳わかんない現象は?」

『……言われてみれば。 ついさっきまで近づくことすら叶わなかった
 ポイントに、今は警備員が平気で向かっていますわね。
 先の爆撃で現象が解決された? やはりお姉様が何か仕掛けたんですの?』

「…………!」
631 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:58:45.45 ID:kHO/TQ/uo

気づけば、ミーシャの後頭部をチョップしていた美琴の手が撫でるような形になっていた。
まるで『でかした!』と賞賛するように。


「と、とにかく! これで追跡出来るのよね?」

『え、ええ。 わたくしもこれから第二三学区方面へ向かいますの。
 事件の大きさからして完璧に管轄外ですが、そうも言ってられませんし』

「私もすぐに向かうわ。 それと、その爆撃は私の仕業じゃないから、一応」


美琴は電源ボタンを押し、冷や汗を拭いながらミーシャに言った。


「……よくわかんなけど、アンタの規格外っぷりを再確認したわ」

「――――、」

「もしかして照れてるの? それ」


非科学的な現象を解決した二人は、改めて友達を攫った馬鹿野郎の追跡を続行する。
632 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 10:59:44.85 ID:kHO/TQ/uo


――――――――――――――――――――――


初春と佐天を誘拐した魔術師達は学園都市を出て更に数キロ車を走らせると、
人気のない閑散とした車線で車を停止した。
停まった場所には彼らが今乗っている車と似たような車種の青い乗用車が停まっている。

運転席に座る、顔に奇怪な刺青を施した魔術師の男が指示を出す。


「二手に別れるぞ。 この車は破棄する予定だったが、こうなったら仕方がない。
 この車と中継用に準備していたあの車の両方を走らせて奴らの手を分断させる。
 ガキ二人は両方の車に一人ずつ乗せればいい。 『トンネル』は俺が預かる」


そう言うと、刺青の魔術師は身を乗り出して後部座席に転がっていた
ゲコ太のぬいぐるみを乱暴に掴み取った。その時、
633 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 11:00:51.47 ID:kHO/TQ/uo

「……どうした?」

「チッ、奴ら、『人払い』に気が付きやがったか。 街中に張り巡らせておいた
 ルーンの札が一瞬で破壊されちまった。 街にも魔術師がいるのか、それとも
 魔術の知識を持った能力者がいるのか……。 とにかく、追っ手が来るぞ」

「さっき撃ち落とした硬貨袋を放った魔術師と同一人物かも知れないな。
 だとしたら追っ手は単独だが……それはないか。 警備員と手を組んでる
 って最悪のケースもこの場合だと考慮しなきゃならないだろうな」


後部座席に座る、一見魔術師には見えない上下ジャージの男の頬に汗が伝う。
彼が操作した『人払い』のルーンの配置範囲は、広さこそそこまでのものではないが
尋常ではない数だった。本来どこかへ特定の道具を設置して効果を発揮するタイプの
魔術は、その道具を何者にも見つからないような場所に設置するのがセオリーだ。

ジャージの魔術師は多大な数の札を貼り付けるという困難な前提条件を達成していた。
数は多いが、それでも普通に捜していては見つからないような場所に、正確に、素早く
設置する高等技術を成し遂げてみせた。にも関わらず、
634 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 11:01:51.91 ID:kHO/TQ/uo

(一瞬で"全ての札を無効化しやがっただと"!?広範囲で、かつ針の穴に
 糸を通すような精密作業が要求される業だぞ……?
 学園都市に魔術師がいるとして、そいつは一体どれほどの技量を……)


と、刺青の魔術師とニット帽の魔術師が初春と佐天を各々の車に移動させている時に、気付いた。

ジャージの魔術師は、見た。

空に、遙か上空に。


「…………………………?」


何かが飛んでいた。あまりにも上空であるため、それが具体的に何なのかまでは把握出来ない。
それは学園都市の真上辺りを飛行しており、学園都市の偵察機か、または空中飛行が可能な
能力者なのかまでは判断出来なかった。
635 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 11:02:30.67 ID:kHO/TQ/uo

しかし。ある一点。

ジャージの魔術師の顔を青ざめさせるのに充分な要素が、そこにはあった。


「…………翼、か? 水晶、の……」

「何?」

「……………………………………………………まさ、か」


ジャージの魔術師の不明瞭な呟きにニット帽が眉をひそめる。


「どうした?」

「……"だとしたら"警備員や能力者、魔術師がどうこう言ってる場合じゃねえ」
636 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 11:03:17.89 ID:kHO/TQ/uo

「おい、」

「車を出すぞ!! クソッたれ、奴ら……予想以上に狂ってやがる!!」


ジャージの男は佐天の腕を掴み、強引に引っ張って中継用に準備していた青い車に放り込む。
ニット帽の魔術師は首を傾げたが、普通ではない様子のジャージの男を見る内にその焦燥感が
伝わってきたのか、彼も慌ててジャージの男が乗っている方の車に乗り込んだ。

刺青の男は最初から運転していた方の車に乗ったままだ。
懐に無理やりゲコ太のぬいぐるみを忍ばせ、隣の車に連れ込まれた佐天を
不安な面持ちで見つめる後部座席の初春を一瞥し、通信用の札で連絡を取る。


「多少予定が乱れたが、ここから先は予定通り進めていくぞ。
 俺はこのまま港まで走る。 お前らは追っ手を引きつける囮として―――」

『分かってるからさっさと行け!! もう追っ手はそこまで来てる!!』
637 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 11:04:05.43 ID:kHO/TQ/uo

「なんだと?」

『俺達はガキを連れて迂回し、別ルートから港へ向かう。 船はちゃんと
 用意してあるんだろうな!? ここまで来て待ちぼうけなんざまっぴらだぞ』

「その点は問題ない。 それより追っ手の位置は確認―――」


刺青の魔術師の言葉が不意に途切れた。


彼が乗っている車の前後左右、車を包囲するように巨大な氷の剣が着弾したからだ。


その威力はコンクリートの道路を軽々と突き破り、かなりの重量があるはずの車が
わずかだが宙に浮いてしまう程のものだった。後部座席から初春の短い悲鳴も聞こえた。
その際の衝撃で繊細な術式に乱れが生じたのか、車の姿を隠す用途で施していた迷彩術式が
解除されてしまった。

―――これは、ほんの牽制に過ぎない。刺青の魔術師は瞬時に状況を理解した。
638 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 11:05:10.60 ID:kHO/TQ/uo

『空に何か居たんだよ。 確認をする暇がない事は今のでわかったな?
 追っ手が空から俯瞰している以上、この車にどこまで囮としての価値が
 あるかは甚だ疑問だが、とにかくここで停滞してたら駄目だ』

「ちくしょう……!! 人払いはともかく、迷彩術式まで破られるとは……!」


氷の剣を車に直撃させなかったのは、人質である初春、もしくは佐天がいる事を
知っていたからだろう。つまり人質さえいれば少なくとも先の馬鹿げた攻撃によって
殺されるという事はないはずだ。

相手が能力者か、或いは『それ以外の何か』か。推測の余地は残されていない。


囮用の車が発進した事を確認すると、刺青の魔術師もアクセルを底まで踏んで
車を急発進させた。目の前には目的の遂行を阻むように巨大な氷の剣がいくつも突き刺さっていたが、
男は剣と剣の合間を縫うように蛇行させ、辛うじて氷の包囲網から脱出する。

その際に車体のあちこちが傷つき各部のガラスが割れたりもしたが、気にしている時間はない。
639 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 11:05:46.56 ID:kHO/TQ/uo

(ここだ……この局面を乗り越えれば、我らの目的は達成出来る……!!)


刺青の魔術師の目が不気味に血走っていた。ぶつぶつと、口角を歪ませて
醜い笑みを浮かべながら独り言を呟く彼の姿に、初春はただただ怯えるしかない。


(一度街の外へ出る事が出来たら、あとは根気だ……。 逃げて逃げて、
 ひたすら逃げ続ける。 目的地まではまだ結構な距離があるが、
 それでも車を走らせるしかない。 逃走劇? 上等じゃないか。
 俺と奴ら、どちらが先に根負けするか。 『時代』のために、俺は……!!)


辛く、長い逃走劇が展開するだろうと男は考えていた。
640 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 11:06:24.62 ID:kHO/TQ/uo

しかしその懸念、ある意味では好機的状況が展開される事はなかった。
男が思い描いていた逃走劇は発生しなかった。


男が座る運転席からでは、恐るべき速度でこちらへ向かってくる白い怪物と、
その怪物に抱きかかえられている修道女、そして駆動鎧を纏った『ライダー』の
姿を確認する事は出来なかった。

だが、


「ひ、ひ――――」


確認は出来なくとも、聞きとる事は出来た。


"まず"、耳を劈くようなバイクのエンジン音を。そして――――。
641 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 11:12:44.32 ID:kHO/TQ/uo

今回はここまでです。

というワケで至極当然と言うか、いくら『黄金』でもこれだけの面子に
追われたら逃げきるのは難しかったようです。
そろそろこの話も終わりですね、キャーリサ並に長かった気がする……。

ところで、今回の事件の犯人である三人の魔術師なんですが、
これってオリジナルキャラ扱いなのでしょうか?オリキャラは
出さないようにしているので名無しなのですが、そもそもオリキャラって
どこまでがオリキャラなのでしょう……?少し心配になったので一応。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
642 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/11(水) 11:13:13.05 ID:kHO/TQ/uo



                          【次回予告】



「『風紀委員でございます。 えーと、すぐに車から出て投降して欲しいのでございますが』」
元ローマ正教のシスター――――――オルソラ=アクィナス




「風紀委員だ。 罪状確認すっ飛ばしてとりあえず死ね」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)




「もう一度妙な真似しようとしたら……この車、ここから落とすわよ?
 理解出来る? 私の気分次第でアンタらはここから真っ逆さまって事」
学園都市・常盤台中学の超能力者――――――御坂美琴



643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 11:19:01.64 ID:brwbCF42o
高速で飛ぶ怪物に抱きかかえられている修道女と並走する巨乳ライダーってあまりにもシュールだなwwwwwwwwwwwwww
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/11(水) 11:40:02.46 ID:wdsEDRRso
おつおつ
かまちーならこれだけ一方通行と美琴が接近してもニアミスで流すわけだがさてさて
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/11(水) 12:13:33.69 ID:M9GIZAF40
なんだろう。
こんな状況なのにミーシャを撫でる美琴想像したらすごく微笑ましい。
とにかく乙。
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/11(水) 13:41:01.91 ID:P3ZozoBV0
さすが一方さん何という男らしいセリフ
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/11(水) 20:06:53.58 ID:tSVvSxgOo
第一位に第三位に天使にオルソライダーてw

648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/11(水) 20:07:09.73 ID:tSVvSxgOo
第一位に第三位に天使にオルソライダーてw


649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/11(水) 20:14:42.48 ID:VBPzcsEP0
>>1

シスタ−、
真っ白、
天使、
ドランゴンライダ−


美琴…
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/01/11(水) 20:17:42.53 ID:xk7FYNMy0
まさか、アルビノツンデレオッパイ天使とは
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 20:36:13.81 ID:sSU0E88SO
>>650

アンジェレネェ…
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 21:28:54.11 ID:FPSRsHFRo
美琴……意外に残酷だな
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/11(水) 21:32:15.30 ID:oYP3PTnZ0
>>651
アンジェレネは…ロリ?
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/01/11(水) 21:43:24.46 ID:WvEYNL5m0
バイクのエンジン音って聞いてサウザー思い出したwwww
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/11(水) 22:00:24.94 ID:n9tWoL+bo
人払いってそんなに強制力は無かったような
まあ、ルーン数が多い分強制力も強かったのかな
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/12(木) 00:07:12.98 ID:YBff8V4H0
原作で捨てゐるが人払い使った時にかなり近い位置に居た人たちが不自然に退いていく描写があったような気がする。
もしあったなら人払いには札の枚数に関係は分からないけど、結構強制力があると言えるはず。

ていうか人払いの効果自体が人の意識に働きかけて遠ざけるという効果であって、行こうと思って行けるなら使われないと思う。


まあどうでもいいからおっぱいの話しようぜ!
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 00:10:16.77 ID:+YS+Lfwbo
原作でもイノケンさんが天草式配置でパワーアップしてたし配置の仕方で強力になったり効果に変化つけれるのかも

おっぱいはふくらみかけ〜普通サイズくらいが好みかな!
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/12(木) 00:46:04.97 ID:DpWf2Ykl0
おっぱいは膨らみかけに限るな!!
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 01:40:52.43 ID:mphalC9Vo
色んなおっぱいが好きだ!
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 08:52:39.54 ID:3rk5mx7X0
乙!
おっぱいは貧乳から巨乳が好きだ!
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 10:46:03.81 ID:SGR90GjZo
絶壁から無乳が好きだ!
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/01/12(木) 13:01:26.12 ID:89ORom5Bo
ある程度差がろうとも全てのおっぱいが私は好きだ
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/12(木) 18:09:21.83 ID:8tskygIl0
そんなことよりていとくんの話をしようぜ
>>661 つまり貧乳好きってことですね分かります
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 21:54:24.59 ID:2ead1PcSO
私はすべてのおっぱいを愛することをここに誓おう
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/12(木) 22:44:23.93 ID:f9dZb7iX0
ここにたくさんの青ピがいるなw
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 23:21:58.97 ID:v4PrarJDO
>>641
個人的には名前があったり、名無しでも設定に深く関わるのはオリキャラかなー
この魔術師達はオリキャラってかモブキャラ?
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 06:50:37.86 ID:eF4iwz7DO
なんか誘拐犯に同情してきた…

誘拐したら国が全勢力で追跡してきたような…


いや、戦力的には国家より上か…;
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 11:36:46.55 ID:GphEu69IO
>>667
まぁ俺の佐天さんを誘拐したんだからこれぐらい当然だよ
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/13(金) 11:48:31.04 ID:8z9LNwPAO
>>667
まあ俺の黒子に歯がゆい思いさせたんだから当然だな
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 12:44:07.36 ID:exHaqrtCo
>>667
まぁ俺のお花さんを怖がらせたんだからこれくらいが調度いい
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 12:55:27.57 ID:Pesmx2Uho
>>667
俺の最強の彼女の美琴がおってるんだから同情するなぁ
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 13:38:55.12 ID:qgNJsRFLo
>>667
俺のガブリエルちゃんにはかなうわけねえよな
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 15:21:09.87 ID:gUniKrs10
>>667
俺の一方通行さンを怒らせたンだからしょォがねェよなァ
674 :sage :2012/01/13(金) 18:04:15.31 ID:IqmqdZQi0
やべェよ!
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 18:05:53.28 ID:w4I9MzpCo
良いか、名前欄にsage と入れるんじゃない
メ欄にsageと入れるんだ。わかったな?
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/13(金) 19:53:08.98 ID:BoDbtuMi0
膨らみかけじゃなくて膨らまなかったおっぱいこそ我が至高!個人的にはBくらいを所望する!(愉快に遅レス
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/13(金) 19:59:09.89 ID:cz3HIZ9U0
ライダースーツのオルソラさんに正面からハグされたい

つまりおっぱい最高
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/13(金) 22:32:42.42 ID:NgsU90n90
>>676
あれ?俺いつ書き込んだっけ
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/14(土) 02:03:57.38 ID:YIbDv97W0
>>677
あれ?俺いつ書き込んだっけ
680 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:23:44.92 ID:hEec6qILo
>>666
この誘拐犯、魔術師達は19巻で一方通行に助けられた妊婦の彼氏とか、
新約1巻で一方通行と番外個体に叩きのめされた新入生の下っ端とか、
名前は無いけどある程度アクションを起こしているという位置のキャラです。

ですがそういうのもオリキャラだと言えるなら、次スレの最初に
『オリキャラ注意』を書き足した方がいいですかねえ。検討しておきます。


という訳でおはようございます。早朝から更新を開始します。

えー、上の方であった『人払い』についてですが、ばら撒かれたルーンの量が
半端ではないためより強力な効果が生まれている設定になってます。
鬱陶しくなりそうなので説明描写は省きました。申し訳ありません。

いやでも本当、人払いって便利なんですよ。周囲の一般人はどうしても邪魔になるから……。

それでは、よろしくお願いします!いよいよ犯人に追いつきます。
681 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:24:14.23 ID:hEec6qILo


――――――――――――――――――――――


空で地上の状況を確認していた一方通行は二手に別れた逃走車両を見て、
さてどちらを追おうかと思案を巡らせていた。彼に抱きかかえられている
アンジェレネも視線をあちこちに泳がせながら困惑している。


「ど、どちらかに初春さんと佐天さんが乗ってるんでしょうか?」

「どちらにも乗ってるって可能性も考慮しとかねェとなァ。
 『人払い』が無効化されてる今、もォ少し待てば警備員
 辺りが追走してくれるだろォが……ここまで来て待機ってのもな」

「それにしても迷彩術式を一発で打ち破るなんて……」

「大天使サマはなンでもアリなンだろ。 ったく、借り作っちまった」
682 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:25:09.46 ID:hEec6qILo

二人はミーシャ=クロイツェフが遥か上空から氷の礫を放ち、ルーンの札が破壊された瞬間
を目撃している。今でも一方通行の位置から豆粒程の大きさのミーシャが空で停滞している姿が見受けられた。
一方通行達は空にいるため広範囲の視界を確保出来る。ミーシャ=クロイツェフと、『外』へ出て
尚も逃走を続ける正体を現した二台の車。

それから――――、


「……あのバイク、いや駆動鎧か? アレも犯人を追ってると考えてイイのか」


『外壁』の通路。そこを恐るべき速度で爆走している一台のバイク。
それが『ドラゴンライダー』と呼ばれる軍用バイクで、操縦者が
オルソラ=アクィナスだという事実を二人はまだ知らない。
バイクは第二三学区内に入ると、『外壁』から跳躍して『外』に出るという荒業をこなし、
再び犯人を追って走行を始めた。
683 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:26:07.73 ID:hEec6qILo

一方通行が本気を出せば今からでもすぐに逃走車両に追いつく事は出来る。
空と地上では逃走劇にならない。地上を走る乗用車など、空から猛追すれば
蟻を追い回す巨像が如し、あっさりと潰す事が出来るだろう。


「だ、大天使様とミサカさんの二人に合流して相談してみますか?
 硬貨袋は撃墜されたようですけど、もう相手の位置も確認出来てるので
 意味はないでしょうし……、初春さん達さえ無事ならあとはもう、」

「相談なンざ時間を浪費するだけだ。 俺達は黒の車を追うぞ」

「わかりました」


背中に接続された四本の竜巻を唸らせ、一方通行は空を切って直進した。
振り落とされないよう、アンジェレネが彼の服を力強く握り締めている。
684 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:27:04.27 ID:hEec6qILo


「!」


すると、彼らよりさらに上空にいたミーシャが一方通行とは別の方向、
即ち青い逃走車両の方へ向かって急降下した。恐らくミーシャは一方通行が
どちらを追うのか確認するために待機していたのだろう。或いはミーシャの
背中に乗っていると思われる『ミサカ』の指示か。

ともあれ、例え初春と佐天がそれぞれ別の車に乗せられていたとしても、
これなら二人共救出する事が出来る。


「あ! 一方通行さん、あれ!」

「……怪物バイクの方が先に追いついたよォだな」


見ると、一方通行達が追いかけようとしていた黒の逃走車両が停車していた。
というより、停まらざるを得ない。逃走を阻むように、やたらゴツいフォルムの
バイクが逃走車両の前方に回り込んでいたのだから。
685 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:28:01.44 ID:hEec6qILo


――――――――――――――――――――――


『風紀委員でございます。 えーと、すぐに車から出て投降して欲しいのでございますが』

「………………、お、オルソラさん……!?」

『その声は初春さんでございますか? 良かった……ご無事のようで何よりでございます』


ヘルメットによって頭部が完全に覆われているためその声は篭っていたが、
それでもその丁寧な口調と、スーツ越しでも充分に窺える豊満なバストを見て
初春飾利は逃走車両の行く道を阻み助けにきてくれたのがオルソラだと理解出来た。

一瞬で訪れた結末。たかが一乗用車が『ドラゴンライダー』から逃げ切れる訳がなく、
『外』へ抜けてしばらく走行し、班を二つに別け、超上空からの牽制にも怯まず、
さぁ再び逃げようと運転を再開したわずか数分後の出来事。
686 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:29:16.38 ID:hEec6qILo

後方からとんでもない爆音が聞こえたかと思ったら、前方には既に
オルソラが操る『ドラゴンライダー』が回り込んでいた。


これにてジ・エンド。あとは人質である初春飾利を解放し、大人しく
学園都市へ連行されるのを待つだけ――――、




「クソッたれがぁ!!」




――――なのだが、犯人の一味である刺青の男は抵抗を試みた。
運転席側のドアを蹴破り、勢い良く外へ飛び出す。後部座席の初春を
脅しに利用して時間を稼ぐという手段も頭をよぎったが、刺青の男が
必要としているのは『時間稼ぎ』ではなくやはり『逃走』。
687 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:29:57.95 ID:hEec6qILo

男は右手を口元に持っていくと、親指を噛み切って自ら傷を負った。
突然の自傷行為に戸惑うオルソラだったが、すぐにその行為の意味を理解する。
しかしその頃には刺青の男の―――魔術師の、抵抗の準備が整っていた。


男は親指から流れる血液を地面に垂らす。するとそこからどす黒い煙と共に
一振りの杖が生えるように出現した。


『魔術師……でございますか!?』

「よくご存知だな、まさかテメェも同類か?」


と、地面から伸びてきた杖を受け取った男の背後で車の扉が開く音がした。
振り向くと、男がオルソラに気を取られている隙に逃げ出そうと初春が
車から脱出した瞬間が視界に映った。
688 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:31:06.20 ID:hEec6qILo


「チッ!! このガキ、」


杖の先端が淡く発光する。恐らくそこから何らかの魔術を放出し、
初春を攻撃しようとしているのだろう。
それに気付いたオルソラが男の持っている杖に手を伸ばす。


「逃がすか――――」


だが、その杖から初春を傷つける悪意が放たれる事は無かった。
オルソラも、男が持つ杖を奪う事は無かった。
初春も、這うように車の中から飛び出して、しかしそれだけだった。

凍ったように動きを止めた刺青の魔術師の目に、『それ』は映っていた。


最初、男はそれを『災害』だと思った。なぜなら、男が見たそれは
蛇のようにうねる四本もの竜巻だったから。


そして男はすぐに考えを改めた。確かにそれは竜巻だったが、『災害』ではない。
そう思った理由の一つに、その竜巻がなぜか正確に自分の方へ向かって来ていたから
というものがある。
689 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:31:47.24 ID:hEec6qILo

そしてもう一つ、


「……………………え、?」


向かっているそれは、竜巻ではなく『人』。いや、果たしてそれを人間のカテゴリに
当てはめてしまってもいいのか、この極限の状況で男はそんなのん気な事を考えていた。
なぜなら、その竜巻は悪魔のような白い影の背中から出現しているものだったから。

学園都市最強の超能力者。

第一位の怪物―――そして今は、




「風紀委員だ。 罪状確認すっ飛ばしてとりあえず死ね」




その言葉が届いたと同時に、男の顔面が一方通行の蹴りによって見事に潰された。
690 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:32:59.56 ID:hEec6qILo


――――――――――――――――――――――


一方、囮としての役割を担う青い逃走車両は、




「………………………………………………………………………………」




走っていた。どこを?


『空』である。空中を走行していたのだ。否、走行といっても
本当に車が空を走っている訳ではない。この車に乗っているのは
人質の佐天涙子と犯人の一味である魔術師の二人だが、彼らは車が
空でも走れるようになる魔術など会得していない。
691 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:33:50.93 ID:hEec6qILo

にも関わらず、車は空中で虚しくタイヤを回転させていた。
運転席でアクセルを踏み込むジャージの男が半狂乱になって叫ぶ。


「何だ、どうなってる!!? 何で車が宙に浮いてんだよ!?」

「学園都市の仕業か!? 一体外で何が起きてんだ……!!」


ニット帽の男は状況確認のため助手席の窓を開いて身を乗り出した。
高度は約一〇〇メートルといった所か。こんな高度から落とされたらひとたまりもない。
遠く離れた地面を見つめて顔を青くするニット帽の男。


そんな彼の鼻先を掠めるように、横合いからオレンジ色の閃光が空間を引き裂くように突き抜けた。


「うわっ!!?」
692 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:34:54.22 ID:hEec6qILo

遅れてやってきた凄まじい風圧によってニット帽の男は車内に押し戻される形となる。
学園都市の最新鋭狙撃銃か何かを撃たれたか、または能力者の攻撃か。
ニット帽の男はもう一度外を確認しようか考えたが、さっきのアレがもし頭部に直撃したら―――。
そう思うと再度顔を覗かせようという気には到底なれなかった。

仕方なく助手席から後部座席に移動し、そこで彼らと同じように困惑している
佐天涙子を押しのけて後ろの窓から様子を窺おうとするが、


「きゃあっ!!?」


叫んだのはニット帽の男ではなく、佐天だった。彼女のすぐ傍にあった扉が
強引に"引き千切られ"、そこから妙に青白い腕が伸びてくれば佐天じゃなくても叫ぶだろう。
魔術師の男二人は何が起きたのか理解できず、間抜けに口を開いてア然とする他ない。
佐天は次々と起こる意味不明の事態に完全に怯えてしまい、目を閉じて身を竦めてしまった。
693 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:35:51.95 ID:hEec6qILo




「ちょっと、中に二人がいるんだからあんま無茶しないでよ!」

「vcldfou謝々cxlruot」




高度一〇〇メートル前後であるにも関わらず、外からそんな会話が聞こえてきた。
佐天が恐る恐る瞼を開けると、そこには以前出会った黒いガウンのお化けが
背中から巨大な氷の翼を生やして飛んでおり、その翼の隙間から、


「初春さん、佐天さん、大丈夫!!?」

「………………み、御坂、さん?」
694 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:37:10.42 ID:hEec6qILo

自分のよく知る、かけがえのない親友の顔が窺えた。

学園都市最強の『電撃使い(エレクトロマスター)』。

常盤台の『超電磁砲(レールガン)』。


「あれ、初春さんが居ない!? クソッ、あっちの車に乗せられてるのね。
 とにかく佐天さん、こいつの腕に掴まってここから出てきてくれる!?」

「……は、はい!」


佐天の瞳から涙がこぼれていた。これまで蓄積していた恐怖とストレスが、
美琴の勇ましい笑顔によって一気に霧散し、緊張の糸がほぐれたからだろう。
彼女は依然として呆けたままのニット帽の男に怒りをぶつけるように
グーパンチを一発かますと、そそくさと青白い腕に掴まった。
695 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:38:32.11 ID:hEec6qILo

「ミーシャ、とりあえず一度車から距離取って。 あ、佐天さん落としちゃ駄目よ!」

「vdjfjtu御意aqkcou」

「み、……みしゃかさぁ〜ん……ううっ、ぐすっ」


佐天が自分の腕をしっかりと掴んだ事を確認したミーシャは、そのまま力に任せて
彼女を車内から引っ張り出した。その一部始終を見ていた運転席のジャージの男が
ようやく我に返り、ニット帽の男に指示を送る。


「あの翼、力……やはり、そうなのか? ……おい、おい!! ガキは逃がすな!!」

「………ッ!!」


催眠術が解けたように肩をビクンッ、と震わせたニット帽の男が行動に移った。
懐をまさぐり、数枚の札を取り出す。
696 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:39:52.66 ID:hEec6qILo

札を指に挟んで何かしらの魔術を使おうとするがの直後、車のルーフパネル部分に
とてつもない衝撃が加わり、車体そのものが大きくへこんでしまった。
外にいるミーシャが背中の翼を振り下ろし、車体へ叩きつけたのだ。
その衝撃でニット帽の男は札をばら撒いてしまい、魔術を発動し損ねる。


「…………」


引っ張り出した佐天をミーシャの背中に乗せ、彼女が無傷である事を確認した
美琴はゴミを見るような目付きで男に言う。


「もう一度妙な真似しようとしたら……この車、ここから落とすわよ?
 今は私の能力で生み出された磁力線が干渉してるから空中で停滞出来てる
 訳だけど……、理解出来る? 私の気分次第でアンタらはここから真っ逆さまって事」

「……」
697 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:41:15.99 ID:hEec6qILo

「そしてこいつは、アンタらが想像している以上の怪物。 言っても
 わかんないでしょうけど、私よりこいつの方がよっぽど脅威よ?
 さっきの翼、今度はアンタらの汚いツラにぶち込んでもいいのよ」

「は、はは」

「アンタらがこのまま大人しく、私達に全てを話すっていうなら
 地面のシミになる事態だけは勘弁してあげてもいいけど―――」

「く、はは。 ……くくくく、くくくくくくくく…………」

「……何?」


美琴がどれだけ脅しても、車内に残った二人の魔術師は薄気味悪い
笑い声を発するだけだった。
最初、何か罠でも用意してあるのか、或いは周囲に仲間が待ち構えているのか、
とにかくこの窮地を脱する手段があるから笑っているのだと美琴は思った。
698 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:42:37.74 ID:hEec6qILo

しかし違う。彼らが漏らす笑い声は、何らかの秘策があっての余裕の笑みではない。
かと言ってそれは全てを諦め、ただ機械的に笑うしかない絶望的なそれでもない。


「翼。 『天使の力(テレズマ)』。 くく、くふふ、ははははは…………」

「………………?」


それはまるで、"求めていたものが目の前に現れた時の、歓喜に震える笑み"のようだと
美琴は認識を改めた。その証拠に、魔術師の二人はさっきからくつくつと笑いながら
ある一点の方向へしか視線を向けていない。

その視線の先には――――。




「大天使様……ふはは、ははははは…………!!」

「大天使様に、『天使同盟(アライアンス)』にこのような場所でお会い出来るとは……。
 光栄の極みにあります……。 くくくく…………くくくくくく…………………………」



699 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:43:11.35 ID:hEec6qILo

「『天使同盟』……? こいつら急に、どうしたってのよ……」


追い詰めたどころか、チェックメイトをかけたはずの美琴に粘つくような不安が生まれる。
彼らはまるで狂信するような目でミーシャ=クロイツェフを見つめ続けていた。
大天使様、大天使様と、あの小さなシスターがミーシャをそう呼んでいたように、彼らもまた
ミーシャを崇め奉るように、『大天使様』と呪文のように繰り返し呟き続ける。

美琴と佐天にはその狂気の沙汰としか思えぬ二人の様子が理解出来なかった。

だが、しかし。


男達に崇め奉られているミーシャ=クロイツェフだけは、この現状を理解出来ていた。

700 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:49:19.22 ID:hEec6qILo

Q. 初春と佐天が乗ってると判断して超電磁砲撃つ美琴も無茶しすぎでは?

A. そんな事よりおっぱいの話しようぜ! 美琴に胸ないけどな、くけけ


さてぶっ殺される前にさっさと更新を終わりますね。
こんな感じで犯人は捕まえましたが、まだ話は終わりません。
この魔術師に色々と聞かなければならない事があるので。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
701 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 05:49:49.89 ID:hEec6qILo



                          【次回予告】



「学園都市の平和を愛する、正義の味方『オルソライダー』、でございます」
元ローマ正教のシスター――――――オルソラ=アクィナス




「オマエが選べる選択肢は二つ、俺の質問に素直に答えるか、全身の骨砕かれて軟体生物になっちまうか」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)



702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/14(土) 05:55:36.41 ID:AmquxxiC0
乙です
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 05:57:02.61 ID:lIIEEZ7vo
おつおつ

みこっちゃんは78-56-79なのでこれで胸が無いとか言うと本当に胸が無い人や真のつるぺた好きからすると説教ものです
禁書世界は無駄に巨乳多いんでこれでも小さい方になるんだろうけどね
704 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/14(土) 06:09:23.01 ID:hEec6qILo
軽率な発言をどうかお許し下さい。すみませんでした
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2012/01/14(土) 06:16:59.82 ID:/+AFoV0P0
>>1が乙されたそばから謝罪とは…
げに恐ろしきはおっぱいよ…
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 06:25:11.96 ID:dU/9IciDO
>>1乙!

なんか一方さんが徐々にやばくなってる気がする。暗部フラグか?
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/01/14(土) 06:30:43.07 ID:dFkCT6cio
大丈夫、御坂はちゃんと俺のセンサーに反応してるぜ!
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/14(土) 06:50:10.95 ID:1A/5PG6L0
alsoライダーか…なるほど、わからん。
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/14(土) 09:46:24.96 ID:TSNhGpr30

>>1がすぐ謝罪しててなんかわろた
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 10:10:20.21 ID:muBsSUGMo
中2で78って実はかなりでかくね?
遺伝子的にも高校で巨乳化ワンチャンあるで!!
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 10:36:14.89 ID:QGyyOgoBo
美琴の身長がどれくらいか忘れたが十四歳の平均身長156.7に対して平均バスト79.9とかなんとか
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県) [sage]:2012/01/14(土) 10:49:42.27 ID:fzO9auG70
乙乙
>>711
161cmだってよ
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/14(土) 11:27:39.33 ID:th4ZALKAO
>>703
>みこっちゃんは78-56-79

単純にバストとウエスト比較しても意味ねーぞ
アンダーバストとウエストの差(腰のくびれ)がどれだけあるかわからんが10cmあればカップはBくらいになる。
つまり俺得ちっぱいだ
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/14(土) 11:32:48.56 ID:th4ZALKAO
アンダーバストとウエストの差は5〜15cm程度だと思ってればいいと思うんだよ
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 13:41:43.82 ID:r4q8tOl3o
俺が書き込みきてないのか、更新に失敗してるのかの確認でおっぱいって書き込んでたのがいつの間にかこんなにおっぱいになっているだなんて・・・
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 14:50:06.03 ID:zvUb9ilDO
誘拐犯に同情してたんだが、最後に佐天に殴って貰えたんだからプラマイ0…いや、むしろプラスだな
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 14:58:10.30 ID:dcpAHc3so
>>716
さんをつけろ
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 15:06:30.69 ID:IZBiN6MIO
サテンサン!
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/14(土) 15:07:31.29 ID:soQEiPmdo
ウイハルー!
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/14(土) 15:17:01.73 ID:Ve5nrmP70
>みこっちゃんは78-56-79

ってことは少なくともB…
大きく見積もると…!?

ちょっと学園都市行ってくる



721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 15:25:43.08 ID:YJYj79b4o
実際の芸能人と比較すると…
内山理名 79 - 56 - 79 157
堀北真希 78 - 58 - 83 160
仲間由紀恵 78 - 59 - 80 160
持田香織 78 - 58 - 80 160

あれ?中学生でこれなら十分じゃね?
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/14(土) 15:39:19.04 ID:pcrm2OsAO
お前らどんだけ中学生の胸を真剣に考察してんだよww物好きだなww
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 15:43:57.21 ID:dcpAHc3so
>>721
仲間由紀恵って貧乳なイメージしかなかったんだけど以外にあるのか?
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 15:52:13.31 ID:muBsSUGMo
>>721で比較
http://blog.television.co.jp/entertainment/entnews/images/20080213_02_000.jpg
http://pds.exblog.jp/pds/1/201003/28/59/b0028859_2074069.jpg
http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/static/image/2007/08/21/nk_ms_nga1.jpg
http://inm-119.img.jugem.jp/20100514_954697.jpg
http://img4.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/64/6d/import780/folder/486015/img_486015_11510594_1?1321192238
そこまで残念ではないがやっぱりちっぱいか……
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/01/14(土) 16:09:12.62 ID:pZTXrhW60
おっぱおっぱおおっぱいぱいいっおぱ!(いくら何でもスレチすぎる流れだろwwwwwwwwwwwwwwwwwwww)

いちおつ
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/01/14(土) 16:16:45.24 ID:IY5QfC/AO
>>703
トップだけでサイズが計れると思うのはただのグラビア脳
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 19:57:25.44 ID:szxXxokDO
中学生は膨らみかけがいい(ry

>>680
>>666はこの魔術師達ならオリキャラとは思わないって意味で書いてます
あくまで個人的な意見だけど
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 19:57:43.13 ID:zvUb9ilDO
>>717
ごめん

呼び捨てとかなんたるミスを…


お詫びに佐天さんにスカート捲られてくる
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/14(土) 20:42:30.67 ID:jR8Lrk8wo
おっぱいに貧富はあれど貴賎なし
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/14(土) 21:39:51.86 ID:BLp1EECk0
皆おっぱいが大好きなんだな!






俺はアンジェレネを肩車しつつジェラートでも食べに行くわ
おっぱいはお前らに任せた!
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/14(土) 22:06:40.27 ID:aofut9wM0
>>1
久しぶりにきてみたら、おっぱいスレに変わっていたでござるww

732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 22:22:32.29 ID:eNyHI2uDO
キャス狐スレといい、天使同盟といい、ここといい、俺が巡回するスレはおっぱいおっぱいしてるな
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 00:44:10.91 ID:AXwH932Jo
ちっぱいと無乳には越えられない大きな壁がある事から「無い」に対してのツッコミとしては>>703割と的確なのに
何故いつの間にか大きい小さいの話にすりかえられているのだ!
無乳愛好家としてはみこっちゃんのおっぱいは残念ながら守備範囲外だ!
いいから無乳の打ち止めや黒子やバードウェイを呼んで来い!!

スレチすいませんでした
続きを全裸正座でお待ちしております
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/15(日) 01:27:12.23 ID:tSWJyiEb0
流石に風邪引くぞ。
この季節は寒いから防寒の意味を含めマスクをして首もとにネクタイ、後はまあ足下も冷えるから靴下とそれからニット帽とかもかぶって、最近は紫外線もきついから外出るときはサングラスも掛けていくと良いぜ。
まあランニングとかして体が冷えないように軽くアップをしながら更新を待ちな。
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 05:33:13.98 ID:2f3fQnQDO
>>734
そんなことしたら黒子が来るぞ…


あ、それが狙いか
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 07:23:10.16 ID:JYrrmfCIO
そんなことよりワシリーサのオシリーサをワシづかみしたい
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 17:23:58.67 ID:RaCV3E/O0
>>736そっちにバーバ・ヤーガとんでったぞ
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 19:19:02.93 ID:FCrX9efXo
しかし長いなこの話も
あとどのくらい続くとか、コメントあったっけ?
739 :>>713 [sage]:2012/01/15(日) 20:45:33.37 ID:VKGU+lcM0
>>733
無乳と貧乳に対してのツッコミが的確なのは確かだ
俺もちっぱいスキーの端くれとして無乳と貧乳が別物だということはきちんと理解している

ただ>>713に書いたアンダーとウエストの差が10cmなら,みこっちゃんはBにギリギリ届かないAなんだ
みこっちゃんは画像とか見る限りスタイルよさそうだし差が5cmとかいうのはないと思うんだ.大きく見積もってもギリCに届かない程度だと思うんよ
つまり>>703の『これでも小さい方になるんだろうけどね』と,いうところに納得いかなかっただけなんです,ごめんなさい

              ___
           `>   ̄ ̄ ̄` 、
         /           \
.         /       l         ヽ   <とりあえずこの話は終わりだァ さっさとプリキュア見にいくぞ
        /イ    ,/ \トゝ      l
       ' l  /, /ハ.      il   l |
           リl レl lェニヽ.  l   ハ l.l |リ.     ,-―-、
         |ハ.|ノリ_  ∨, | /ヽ.l ll l       {_}  > ―― 、
            l      リレレ' __ノ リレ.         /: : : : : : : : : :\   <待って〜ってミサカは(ry
             ゝ -__リ-<トl /.           / : : : : /ミ: : : : : : : .
              /v':/イ:::::=ヽ        /: : : .;∠  ミ : : : : : : l
               lo:::::::::::l___|.        !,イ: :/ {゚リヽ  ミ-、:l l: l:.|
               |l::::-ニニヘ  ',            ∨ 、,、,:::  ζノ| |:.|:{
               |lo::::-ニニヘ  ',.          ゝ __ ノl: :,'.:|リゞ
              〈:o:::::-ニ/ /            ,r≦   从|从
              「フ ̄¨L∠l            〈< ̄     ト、____
              /   ノ                ( }  `     \    /
                 /  ,X´ \             ハ                |
             /  '   \ \.             / |              _ノ
            r=、_/ ./    \,ノヽ          ./  ハ     __,ノ´
           ヾ=、ヽ/       》_ノ         \/__l__,ノ   〉〉
             ¨                         `ー'.       `′
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/01/15(日) 21:40:16.79 ID:R+R38G4d0
ところでみこっちゃんはブラのワイヤーをも武器として使うのだろうか?
それともワイヤー入っているブラなんて出来る程・・・ん?誰か来た?
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 11:38:26.52 ID:e2TiaAiDO
みこちん子供趣味で、運動が好きなタイプだぜ?

スカートの下に短パン穿いてるくらいだし

ゲコ太のイラストが入ったスポブラに決まって…ん?昼間から雷とは珍し……
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/16(月) 18:02:33.11 ID:PDt1H++O0
つまり美琴は最高ってことですね分かります
743 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:33:35.20 ID:Hfb6yG3Ao
>>738
私が聞きたいくらいです……と言いたいところですが、
もちろん終わらせる気はありますし、締め方も決めてます。
しかしそこに至るまでまだまだ続く……としか言いようがないのが
正直なところでして、下手すりゃ本編の9スレを超える恐れも。

そんな長期間皆様を付き合わせる事に心苦しさを禁じ得ない……って
こいつらおっぱいの話しかしてねえじゃねえかちくしょう!!!
まぁ煽ったのは私なのですが……クソッ、見くびっていた。


はい、では更新を開始します。犯人である魔術師を捕まえた一方通行、おっp……オルソラ、アンジェレネ。
こいつらには色々と聞かなければなりませんね。

では、よろしくお願いします!
744 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:34:49.46 ID:Hfb6yG3Ao


――――――――――――――――――――――


誘拐事件はどうやらハッピーエンドで幕を閉じたようだ。
学園都市の第一位、魔術サイドの魔術師二人、しかもその内一人は最新技術を駆使して
製造された怪物級の駆動鎧込み。そして学園都市の第三位と本物の大天使。


これだけのキャストでバッドエンドでした、ではオチとしてひどすぎる。
実は新たな黒幕が待ち構えていたのですとか、一方通行達は何者かの掌の上で
踊らされていたピエロでしたとか、予想だにしない展開など介入する余地もない。


「……警備員が来ねェな。 まァ、"その方が今は都合がイイけどよ"」


一方通行達がいる道路からはさすがに学園都市の『外壁』は窺えなかったが、
警備員がやってきて後始末をしてくれる気配は今の所感じられなかった。
745 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:35:52.61 ID:Hfb6yG3Ao


「う……、」

「あ。 あ、一方通行さん、目を覚ましましたよこの人」


時間にしたらわずか数分の気絶だった。一方通行の殺人的な飛び蹴りを
喰らった誘拐犯の一人、顔に奇妙な刺青をした魔術師が目を覚まして呻く。
一方通行としては二度と修復出来なくさせるつもりで顔を踏み潰したのだが、
直前で防御術式か何かを展開させたのか、男が受けた被害は鼻の骨がへし折れ、
前歯が粉々に砕けた程度のものだった。

オルソラが男の傍にしゃがみ込み、右腕を示すように向けて話しかける。


『風紀委員でございます。 誘拐の現行犯であなたを拘束させていただくのでございますよ』

「シスター・オルソラ。 腕章付けてないですよ」
746 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:36:36.77 ID:Hfb6yG3Ao

『あ、うっかりしてたのでございます』

「つゥかもォイイ加減そのヘルメット外せよ。 人間と話してる気になれねェ」


指摘され、思い出したようにヘルメットを取り外すオルソラ。
彼女は顔いっぱいに汗を掻いており、髪の毛が何本か頬にくっついていた。


「うわあ……本当にシスター・オルソラだ。 どういう経緯でそんな格好に?」

「学園都市の平和を愛する、正義の味方『オルソライダー』、でございます」

「愛するだけで守ってはくれねェのか?」


犯人の魔術師を撃破した後、全身スーツの特撮ヒーローが『オルソラ=アクィナスでございます』
とか言ってきた時には一方通行もアンジェレネも何の冗談だと全然信じていなかった。
……が、スーツの胸部を大きく歪ませるバスト、ヘルメットで篭っていても伝わるのんびりな声色。
そして初春飾利の説明、というか弁明で半信半疑程度には信じてみる事にした。
747 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:37:39.32 ID:Hfb6yG3Ao

結果、ヘルメットから出てきた端正なお顔は正真正銘のオルソラだった、という訳である。


「…………で、オマエは大丈夫なのか?」

「はい、すみません……"また"助けてもらっちゃって」

「前にも言ったが、あン時はオマエを助けるつもりは無かったし、
 今回だってこいつらが協力してくれた以上、俺だけの手柄じゃねェよ」


誘拐という突発的な急展開にすっかり参ってしまったのか、初春は現在
一方通行におぶってもらい、彼の背中にぐったりと体重を預けていた。
当然、一方通行は今も能力使用モードをオンにしている。


「あの……もう一つの車に佐天さんが乗せられてて……」
748 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:38:35.39 ID:Hfb6yG3Ao

「そっちは心配いらねェよ。 俺の連れが救出に向かってるはずだ。
 あいつが向かった以上、あのうるせェガキの安全は保証されたと言ってイイ。
 むしろ犯人の連中を殺しちゃいねェか心配しなきゃならねェくらいだ」

「そう……ですか。 良かった……」

「さて、」


と、一方通行は初春をここまで衰弱させたクソ野郎の胸を思い切り踏みつけた。


「が、ァああ!!?」

「んンー? なンだよ、胸にパッドでも詰めてやがンのかァオマエ?」
749 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:39:37.35 ID:Hfb6yG3Ao

一方通行は初春をおぶったまましゃがみ込むと、刺青の魔術師の懐を探る。
中から出てきたのは中二心がくすぐられる格好をしたゲコ太のぬいぐるみ。
この事件の発端となったキーアイテムだった。

初春は虚ろな目でそれを見ながら一方通行達に事情を説明する。


「その……ゲコ太を佐天さんが……路地裏で、……」

「……、」

「普段誰も……通らないような場所にそれが……置いてあって……。
 それを佐天さんが拾って……そしたらこの人達が……はぁ……」

「……わかった。 もォ喋らなくてイイから、オマエは休ンでろ」
750 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:40:29.46 ID:Hfb6yG3Ao

この時、一方通行は疲弊しきった初春の姿を『とある一人の少女』と重ねて見ていた。見えてしまった。

打ち止め(ラストオーダー)。彼女は過去に三度も、今の初春のように、いや初春以上に
衰弱し、意識不明の重体に陥っている。その度に彼はもがき、苦しみ、汚い地面を
這いながら打ち止めを救った。代償は大きかったが、それでも彼女の笑顔という見返りがあった。

もう二度と打ち止めが苦しむ状態を見たくない。あの第三次世界大戦を経て
一方通行は強く願っていたが、


「…………」


自分の背中で弱々しく息を吐く初春の姿が、かつての打ち止めと重なってしまう。


「このぬいぐるみが他者の手に渡っちまったから、オマエらは
 ガキ二人を誘拐したンだな? このぬいぐるみには何がある?」
751 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:41:30.89 ID:Hfb6yG3Ao

「……はっ。 質問されて、素直に答えるとでも思っているのか?
 学園都市の脳開発ってのは、そのガキみたいに頭を愉快な花畑に
 しちまうもんらしいな。 戦争が終わって気が抜けてん―――」


男の減らず口は、一方通行が足で男の右腕を踏み折る事で中断された。
アンジェレネは思わず耳を塞ぎ、骨が砕ける音の侵入を拒む。


「ぐああああぁぁああぁ!!?」

「立場ァ考えろよオッサン。 ここに来て子供みてェに無駄な抵抗しても
 しょうがねェ事くらいわかるよな? オマエが選べる選択肢は二つ、
 俺の質問に素直に答えるか、全身の骨砕かれて軟体生物になっちまうか」

「はぁ……はぁ……!! ぐ、ぅぅ……!!」

「質問だ。 このぬいぐるみには何が隠されてる? あァ、
 一応忠告しとくが警備員がここへ駆けつけてこの質問タイムを
 終わらせてくれるなンて甘ったるい希望に縋っても無駄だぞ?」

「…………?」


一方通行は折れた右腕に追い打ちをかけるようにもう一度踏みつけると、
752 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:42:31.38 ID:Hfb6yG3Ao

「オマエ、魔術師だろ? 学園都市で魔術サイドの人間が誘拐事件なンてモンを
 起こしちまった場合、捕まりゃ最悪死刑だわな。 そりゃ困る、オマエには
 これから色々と聞かなきゃならねェ。 警備員は邪魔になるだけなンだよ」

「…………!!」

「だから"警備員をぶちのめしてでも"、俺はオマエへの『取り調べ』を続けるぞ?
 良かったなァ、相手が俺で。 安心してイイぞ、"殺さねェよォじっくり話を
 窺う作業"は慣れてンだ。 少なくとも死ンじまうよォな事はねェだろォよ」


カチカチカチカチ、と硬い物が小刻みにぶつかる音がした。
それが自分の歯が恐怖によって震えているのだと気付かぬまま、
刺青の魔術師は無意識に笑みを浮かべていた。

人間、心の底から恐怖に染まった時は笑ってしまうものであると一方通行は知っている。

彼は言った。


「さて……改めて聞くぞ。 このぬいぐるみにゃ何が隠されてる?」
753 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:43:42.06 ID:Hfb6yG3Ao


――――――――――――――――――――――


『天使同盟(アライアンス)』は新たな時代への道標となってくれた。
現代に蔓延る無知な人類を導くための案内人。次世代の理想。希望。


学園都市で発生した『第一九学区事件』。あの事件は学園都市はおろか
世界中に多大な影響を及ぼした異例の大事件だったが、現在、世に広がる
ほとんどの人間はあの事件の事を忘失しつつある。

忘失、というと悪い表現に思えるかも知れないが、あんな事件は忘れてしまった方が
良いに決まっている。事件の影響の一つに『黒い霧』という現象が発生しているが、
あれは大半の人類にとって悪夢でしか無い。霧によって直接的な被害を受けた人間は
さほど居ないが、そうでない人間にもアレは底知れぬ恐怖を植えつけた。

そんな忌々しい事件など、さっさと忘れてしまった方が良いに決まっているのだ。
754 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:44:30.26 ID:Hfb6yG3Ao

しかし、それでも。あの事件を経て、あの現象を目の当たりにして、それを
『希望』だと捉えた人間もいる。捉えてしまった人間もいる。


魔術師。魔術サイドに位置する魔術師のほんの一握りが、あの事件を時代の変革だと
捉え、狂信し、醜い行動に移るという事実が、現実が、確かに存在する。

暴徒と蔑まれるそれらは、しかし暴徒である自覚が一切無い。
今まで己が信仰していた教えや宗教などかなぐり捨てて、次の時代へ移るための
行動が絶対のものであると信じて疑わない。




その信仰の対象に、『天使同盟』という組織の名があった。



755 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:45:23.17 ID:Hfb6yG3Ao

「……我々は彼らが、そして大天使様が示してくださった時代へ進むために、
 何も行動を起こさない愚かな人類に代わって下準備を進めているに過ぎない」

「存在するかも疑わしい、胡散臭せェ連中を信仰して、か」

「『いる』さ。 彼らは、『天使同盟』は必ず存在する。 彼らが我々に与え給うた
 影響が、いや御宣託と言っていい。 暗に示してくださったのだ。 でなければ
 あれほどの事が起きるはずがない、あれほどの事を起こせるはずがないのだから」

「……、」

「…………そのぬいぐるみに入っているのは、新たな時代に移るための下準備の、
 その更に下準備だ。 小さな積み重ねが時代の架け橋になる。 これは何も
 今になって始まった事ではない。 大昔から人類が経験を重ねて得た教訓だろう?」


仰向けで倒れている刺青の魔術師は浅く呼吸を繰り返しながら語った。
一方通行もその情報をキャーリサから受けていた『暴徒』と呼ばれる連中。
科学サイドの『闇』にも魔術サイドの『闇』にも一切関わっていない
初春飾利と佐天涙子を巻き添えにして、時代とやらを優先し行動する。
756 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:46:18.64 ID:Hfb6yG3Ao

それが暴徒の正体。無様に地面で寝転ぶこの魔術師も、その一部。

オルソラは一方通行が持っていたゲコ太のぬいぐるみを取り上げると
入念にそのぬいぐるみをチェックする。やがてぬいぐるみの腹の部分に
縫合の痕がある事に気付き、縫合糸を慎重に取り除いていった。


中から出てきたのは、一枚の小さな『羊皮紙』。正方形の羊皮紙には
一般人どころか魔術師でもおよそ理解出来ない暗号が綴られていた。


「暗号解読なら任せてほしいのでございますよ。 少々時間が掛かりますが」

「頼む」


羊皮紙の内容についてはオルソラに任せ、一方通行は再び男の方へ視線を戻す。
757 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:47:33.26 ID:Hfb6yG3Ao

「なンであンなモンを学園都市に置いておいたンだ」

「アレを一度魔術結社に用意させ、それを学園都市に秘密裏に運び、
 学園都市で我々が回収する予定だったんだ。 魔術サイドではない、
 学園都市を経由する事で魔術サイドの警戒網を潜る必要があった」

「なぜガキでも拾えるよォな場所に隠しておいた? 中身が知られたり
 拾われて破棄される懸念事項を考慮していねェほどバカでもねぇだろ」

「……学園都市は現在、街中で大規模な催し物が開かれているらしいな。
 アレの隠し場所は"学園都市に一任していたんだ"。 俺達も設置場所の
 連絡が届いた時には焦燥したがな。 案の定、ガキ二人に拾われた。
 恐らく多くの人間が行き交い、賑わっている現状では下手な行動を
 取れなかったんだろう。 警備の目を掻い潜って隠すためにあんな場所を」
758 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:48:22.50 ID:Hfb6yG3Ao

「敢えて他者に見つかってしまう場所へ隠す事で、中身の重要性を
 悟られねェよォにしたか、学園都市側がふざけたギャンブル性を
 求めて適当な路地裏に放り投げた、どっちかだろォな。 それで、
 今のオマエの発言だと学園都市にも『協力者』がいるよォだが」

「……今更隠す事に意味は無いだろうしな。 そうだ、学園都市に我々の
 計画に加担している者がいる。 魔術師ではないぞ、学園都市を経由して
 物を運ぶ以上、ならば加担者も学園都市の住人でなければ意味が無い」

「……、アンジェレネ。 このガキを少し頼む」


一方通行はおぶっていた初春をゆっくりと降ろし、アンジェレネに介抱を任せる。
さっきから学園都市で耳にする機会が無い言葉が飛び交っているが、初春は彼らの
会話を聞き、何を思っているのだろうか。

出来れば何も考えてない、明日にはすっかり忘れていて欲しいと願いながら
一方通行は痛む右腕を抑える刺青の魔術師を見下ろした。
759 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:49:56.06 ID:Hfb6yG3Ao

「オマエらの計画に加担してる学園都市の人間ってのは誰だ」

「それは俺達も知らない、言っておくが虚言でも何でもないぞ。
 さっきも言ったが、この状況で嘘を貫いても意味が無いからな。
 お前も学園都市の人間だろう? だったら心当たりがあるんじゃないのか」

「……別方向へ逃走したオマエの連れも同様か?」

「ああ……。 そして俺達の素性もまた、相手は知らないだろう。
 俺達がこうして失敗した事で加担者の正体も発覚するかもしれないが、
 そんなのは知った事じゃない。 それが俺達のやり方だからな」

「……………………」


心当たり、と言われて一方通行の頭に浮かんだのは、粘ついた黒い沼のイメージ。

魔術サイドの暗躍に一役買っている学園都市の人間など、
個人までは特定出来ないが一方通行には容易に想像できた。

760 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:50:45.57 ID:Hfb6yG3Ao


それはやはり、『闇』。学園都市暗部組織。『第一九学区事件』を経て
学園都市の暗部も少しはおとなしくなったんじゃないか、と一方通行は
一度考えた事もあったが、依然として『闇』は『闇』のままらしい。


(……『グループ』からの活動連絡が第三次世界大戦以来一度も来てねェ事に
 『天使同盟』とエイワス、アレイスターが関わってると思ったが……。
 あいつらや統括理事会は今も暗部を動かして活動してやがるのか?
 暗部に関する情報収集を怠っていた事がこンな時に仇になるとはな…………)


とにかく、これで無視は出来なくなった。


『天使同盟』発足以来暗部に何一つ関わる事のなかった一方通行だが、
しかしそれで暗部との縁が切れたという短絡的な考えを彼はしていた訳ではない。

だが、やはり『闇』は絡みついてきた。一方通行を引きずり込むために、
呼び戻すために、魔術サイドという別の法則を介入させてまで、『闇』は彼にまとわりつく。
761 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:55:27.85 ID:Hfb6yG3Ao

ちょいと短めですが今回の投下はここまでです。
なんか地味な展開で申し訳ありません。

一方通行、黄信号です。同時に、未だ残り続ける暗部を少し匂わせてみました。
かなり前に出てきた『グループ』ですが、あのまま放置したりはしませんよ。
伏線とまでいいませんが、ここらで暗部も出しておかないとと考えました。

ですがそのせいでちょっと一方通行がマズい事になってきました。
まぁそこであのシスターの出番なのですが。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!


762 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/17(火) 09:55:55.89 ID:Hfb6yG3Ao



                          【次回予告】



「あの時の繰り返しでございますよ。 ロンドンで、あなたが学園都市の実験の事を
 私達に打ち明けて、自ら闇に閉じこもってしまったあの時と、同じでございます」
元ローマ正教のシスター――――――オルソラ=アクィナス



763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 11:45:10.43 ID:hxPuwU0SO
あれか

またおっぱいに顔押し付けるんか
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 11:55:07.86 ID:tmDshJjFo

アンジェレネ、初春、美琴のちっぱい、佐天さんのなみぱい、オルソラ、ガブリエルのでかぱいの6種類か…
アンジェレネのちっぱいは俺が引き受けたから他はみんなでわけてくれ
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/17(火) 12:25:50.80 ID:4NbTMYcc0
大は小を兼ねる、オルソラ
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/17(火) 12:50:17.46 ID:hPo1AZFAO
いちおつ!
佐天さんは貰っていく
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 13:11:41.13 ID:ytKcmroDo
さすが正妻さんや……
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/01/17(火) 13:43:28.99 ID:zTX5PgY/0
暴走モード化虐殺モード化
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/17(火) 14:34:53.34 ID:db9bgsrw0
だんだんきな臭さが濃くなっていくな
乙でした

正妻さんさすがやで
頬にくっついていた髪の毛ぺろぺろ
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 01:36:14.71 ID:k+2s+/rIO
エイワスは何してんのかなぁ
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 11:04:37.84 ID:E88kUpEDO
リアル頭花君はもらって行きますね
772 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:17:46.09 ID:h6+sHGeJo

おはようございます。今日の更新を開始したいと思います。

前回はえらい中途半端に終わってしまい、今日はまんま前回の続きとなります。
初春と佐天が誘拐された原因に自分があると気付き、さらにこの事件に暗部が
絡んでいると知った一方通行の胸中がヤバい事になってきますが……さて。

それでは、よろしくお願いします!
773 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:18:26.80 ID:h6+sHGeJo


ふつふつと。黒い重油のような感情が沸騰し、胸にせり上がってくる感覚。
怒りや憤怒ではない。確かに『闇』に関係のない人間を巻き込んだこの連中に
憤りを感じてはいる一方通行だが、今、彼の全身を支配するように巡る黒の重油は、
怒りや哀れみなど、人間誰もが持っている類の感情ではない。


再発、と言えばいいだろうか。


一ヶ月や二ヶ月程度身を離していたとしても、学園都市の『闇』は
その程度の期間で洗い流せるほど清くもなければ、希薄でもない。
だが一方通行の場合は『天使』という突き抜けた異端に深く長く関わったため
その身体から『闇』が取り除かれつつあった。
774 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:19:18.43 ID:h6+sHGeJo


彼の心の、底の底まで沈められ封印されていた『闇』が、再び彼を支配しようとしている。


「……、」

「な……何だ」


刺青の魔術師は自分を見下ろしてくる一方通行を見て、怯えたような声で言う。
確かに自分を見下ろしているはずの白い怪物の表情が窺えない。
顔が見えないという直接的な意味ではなく、雰囲気的に、一方通行の顔に墨がかかったように、
彼が何を言おうとしているのか、何を考えているのか、魔術師の男には何一つ読み取れなかった。

一方通行の唇が、ゆっくりと開かれる。
775 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:20:02.84 ID:h6+sHGeJo


「…………キャーリサのヤツは気にすンなと言ってたが、さすがに
 "あっちから来られたら"無視するわけにはいかねェよなァ?」

「は?」

「『天使同盟』が生ンだゴミ以下のクズが、学園都市にまで関わってるとなると、
 俺も黙ってる訳にはいかねェっつったンだよ。 テメェのケツはテメェで拭かなきゃな」

「な、何を言ってんだ……?」


魔術師の男は一瞬、一方通行が自分ではなく他の誰かに言葉を送っているのかと
思ったが、どうもそんな様子ではない。やはりこの怪物は、男に語りかけている
のだとしか思えない。しかし当の本人は自分が一方通行に何を言われているのか
理解出来なかったが、

次の言葉だけは、嫌でも理解出来た。馬耳東風とはいかなかった。
776 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:21:02.80 ID:h6+sHGeJo




「とりあえずオマエは今ここで、俺が殺す」

「………………、え」




殺す、なんて言葉は、この刺青の魔術師はこれまでの人生で数えきれない程浴びてきた。
なんでもない世間話の拍子に、敵対する魔術結社の魔術師に、自分がこれまで利用してきた
罪のない人間に、怨恨と共に。

だが一方通行から出てきたその言葉は、真に迫る力が込められていた。
叫ばれた訳でもないのに、体が硬直し、喉が干上がった。
この白い怪物が『殺す』と言えば本当に『殺す』。そんな、有無を言わさぬ
尋常ではない迫力を、魔術師の男は本能で感じ取った。
777 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:21:47.42 ID:h6+sHGeJo


「だ、な……なぜだ!? 俺は洗いざらい話したぞ、嘘はついていない!!!」

「『撒き餌』にすンだよ。 オマエらを細切れにして街にばら撒けば
 暗部の連中がひょっこり釣れるかも知れねェ。 暗部が興味を示さなくとも
 魔術サイドの方で何らかの動きが見られるかも知れねェ」

「ふざけるな!! そんな事をしたって我々は止まらな―――」

「ってのは建前っつーか、口実であって。 オマエらを殺す理由が
 俺にはあンだよ。 身から出た錆じゃねェが、オマエらみてェなのが
 蛆のよォに発生した原因に俺があンなら、俺が害虫を駆除しねェとな」

「……!? ……、……………………お前、まさか」

「あァ、お察しの通りだクソ野郎」
778 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:22:25.08 ID:h6+sHGeJo

魔術師の男にとって『崇拝』の対象である組織の人間が目の前にいる。
その事実を理解した事による歓喜と、しかしその人間に自分はこれから
間もなく殺されるという絶望が混じり合い、男の顔は涙と脂汗で
グシャグシャになっていた。

一方通行は愉快そうに笑う事もなく、怒気に表情を歪ませる事もなく、
ただ冷徹に、鉄の仮面をかぶったような無表情で、緩慢な動作で右足を
持ち上げると、男の顔の前に持ってきた。後ろでアンジェレネが何か言葉を
叫んでいたが、一方通行の耳には届かない。


「お前が…………、"あなたが"……?」

「『天使同盟(アライアンス)』だ」


一方通行が右足をさらに持ち上げる。魔術師の男にはそれが
断頭台のギロチンのように見えた。
779 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:23:00.63 ID:h6+sHGeJo

そして一方通行は最後に、気軽に挨拶するように言った。




「よろふぃふ」




何かの呪文なのか、それとも『天使同盟』内でのみ使用される共通言語なのか。
魔術師の男はきつく目を閉じながらも一方通行が発した意味不明の言葉の意味を
考察していた。


「……………………………………………………………………。 …………?」


だが、いつまで経っても男の顔を磨り潰す槌は振り下ろされなかった。
目を開けたその瞬間に一方通行の靴底が迫ってくるかもしれない。
そんな身も凍るような想像をしながらも、男は勇気を振り絞って瞼を開く。
780 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:23:32.28 ID:h6+sHGeJo


「むにゅ〜ん」


男の視界が捉えた光景。


それはついさっきまで人間とは思えない氷の悪魔の如き表情を浮かべていた
一方通行が、両頬を引っ張られ『世界一間抜けな顔』をしている姿があり、


「むににに〜ん」


一方通行の背後から両手を回し、彼の頬を餅のように引っ張って弄ぶ
『世界一怖いもの知らず』のシスター、オルソラ=アクィナスがにこにこと微笑んでいた。
 
781 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:24:24.45 ID:h6+sHGeJo


それを見た魔術師の男も、アンジェレネも、衰弱していたため介抱されていた初春さえも、
『このシスターは本当にバカなんだなぁ……』と心の中で呆れ果てた。
先程までの黒く、重々しい雰囲気や空気を無視して、殺意に満たされた学園都市最強の
怪物の頬を引っ張り回して遊ぶオルソラの行為の勇敢さと無謀さは筆舌に尽くし難い。


「すべすべのもっちもちでございますね、一方通行さんのお肌」

「………………離ふぇ」


一方通行の言葉が乱れる。恐らく先の男に向けた言葉も『よろしく』とかだったのだろう。
しかしオルソラに頬を引っ張られたため叶わなかったという事だ。
782 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:25:18.12 ID:h6+sHGeJo

やがてオルソラはそっと彼の頬から手を離した。当然、そこまで強く
つねっていた訳ではないだろうが、一方通行の肌が白すぎるためほんのりと
赤く変色してしまっている。

一方通行は右足の位置を魔術師の眼前に固定したまま、オルソラを睨んだ。


「なンのつもりだクソシスター」

「風紀委員のお仕事は悪い方々を拘束する事であって、裁く事ではないのでございます」

「オマエも話は聞いてただろォが。 風紀委員だの警備員だの、
 そンな小せェ物差しで測れるよォなレベルの事態じゃねェンだよ」

「でも、今のあなたは風紀委員でございましょう?」

「ふざけてンじゃ―――」

「繰り返しでございますよ、そんな事では」
783 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:26:11.68 ID:h6+sHGeJo

オルソラの声色が一変した。それに気付いた一方通行は反射的に閉口する。
彼女の声は、撫でるような、抱擁するような、暖かさに溢れた声になっていた。
一方通行は過去に何度か、彼女のこの声を聞いている。

最初に耳にしたのは―――――。


「あの時の繰り返しでございますよ。 ロンドンで、あなたが学園都市の実験の事を
 私達に打ち明けて、自ら闇に閉じこもってしまったあの時と、同じでございます」

「……」

「私は、あなたがいくら闇に沈もうとも手を差し伸べる所存でございますが、
 それではいつまで経ってもあなたが"進めない"のでございます。
 ここで彼を殺してしまえば、あなたはまた逆戻り。 光が照る場所へ進んで、
 また闇に沈んで。 それではあなたは変われない。 垣根さんの言うとおり、
 あなたはあなたのままでしかいられないのでございます」
784 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:27:02.24 ID:h6+sHGeJo

「……、」

「もちろん、自分の全てを捨てずに抱き続ける事も大事でございますよ。
 過去の自分を捨てる行為は自己の欠落に繋がる。 それはとても不安定で、
 最も進んではならない誤りの道にございます。 でも、捨てずに抱く自分を
 制御出来なければ結局意味が無いのでございます。 ……今のあなたのように」


風斬氷華に言われた、『己を捨てないで』という言葉。一方通行は彼女の言葉を
受けて今も『闇』の自分を抱え続けている。それはそれで良いとオルソラは言う。
しかしそれを抑える事が出来なければ意味が無い、とも彼女は忠告してきた。


「今のあなたは"それ"じゃないのでございますよ。 風紀委員として、
 初春さん達を誘拐した方々を拘束するのが勤めにございます」

「……」

「だから、ね?」
785 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:27:57.08 ID:h6+sHGeJo

それだけで心が洗われそうな笑顔を見せるオルソラに、一方通行は反論出来なかった。

いや、反論などする必要もなかっただろう。一方通行だって、そんな事は理解している。
全ての自分を捨てず、且つ制御し、一つ一つの自己を確立させていく。それを実行するのが
難しいだけで、一方通行も頭では当然理解できているのだ。

何も一方通行は多重人格という訳ではない。ただ単に、性格にちょっとしたムラが
あるだけに過ぎない。怒ると性格が豹変する人間は多数いるが、一方通行はそれが
少し過激になっただけの『人間』なのだ。……少し、では収まらないかもしれないが。

平たく言うとオルソラは一方通行に『頭を冷やせ』と諭しているだけである。
彼女の性格と職業上、大袈裟な説教みたいになってしまっているだけで、
何も難しい事は言っていない。


「……わかったよ。 つか、わかってンだよ」

「では、どうぞ」
786 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:28:47.54 ID:h6+sHGeJo

オルソラはポン、と彼の華奢な肩に手を乗せ、促す。
一方通行は魔術師の顔から足をのけると、面倒くさそうに右腕の腕章を示しながら、


「風紀委員だ。 誘拐の現行犯でオマエを拘束する、……異論はねェな?」


男は仰向けで倒れたまま、物凄い勢いで首を縦に振った。
死の寸前まで追い詰められた状況から解放され、ひどく安堵したのだろう。
魔術師の男はぼろぼろと涙を流しながら唇を噛み締めていた。


「来たか」


そして、このタイミングを見計らっていたかのように、丁度良く警備員の
車両が鳴り響かせるサイレンの音が聞こえてきた。程無くして警備員は
一方通行達の下へやって来た。一台の警備員専用護送車の中から数人の
警備員が降りてきて、周囲の状況を確認する。
787 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:29:39.98 ID:h6+sHGeJo


「警備員第一九支部の者です。 件の誘拐事件の被疑者の引渡しに伺いました」

「この男だ」


一方通行が首をわずかに動かして倒れている魔術師の男を指し示す。
警備員達は厳重な装備で身を包んでおり、素顔は窺えない。
警備員は魔術師の体を二人がかりで抱えると、護送車の中へと連れていった。


「被害者の佐天涙子と初春飾利を保護するための警備員が後ほど
 ここへ向かってくるかと思います。 しばしの間、待機していてください」

「待て」

788 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:30:40.95 ID:h6+sHGeJo

なぜか事件の一部始終を聞いてきたりする事もなくあっさりと学園都市へ
引き返そうとする警備員を、一方通行が言葉で引き留めた。


「腕章を付けちゃいるが、俺とこのライダースーツの女とシスターの
 チビは正規の風紀委員じゃねェ。 一端覧祭期間中に行われる
 風紀委員の体験講習を受けてる講習生だ。 そンな素人が今回のよォな
 でけェヤマに関わった事でお咎めを受けるよォな事はねェのか?」

「構いませんよ? あなた方の素性は既に我々が調べております。
 学園都市第一位の超能力者、一方通行様。 『外』からお越しの
 オルソラ=アクィナス、アンジェレネ。 正規の風紀委員じゃなかろうと
 一般人だろうと『外』の人間だろうと、学園都市の住人の危機を救って
 くださった事に変わりはございません。 咎めるどころか、表彰すべき
 偉業であると警備員及び学園都市統括理事会は結論を出しております」

「…………ずいぶんと寛大な器をお持ちのよォだな、『上』は」

「残りの二人の容疑者も既に連行しておりますのでご安心を。 では、お疲れ様でした」


街へ走り去っていく護送車を睨みながら、一方通行は考える。
統括理事会という『上』の意向についてさっきの警備員は話していたが、
恐らくそれは真実なのだろう。
789 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:31:20.59 ID:h6+sHGeJo

一方通行、及び『天使同盟』とそれに関わる人物が学園都市で何か事を
起こしてしまった場合、学園都市統括理事長であるエイワスが彼らに
振りかかる面倒事を手回しして排除してくれているのが現状だ。
よって、今回の誘拐事件は全て綺麗に収まったと言って問題はない。

あとは初春飾利と佐天涙子を無事に学園都市へ帰し、ミッションコンプリート。

だが、


(…………さっきの警備員の野郎)


第一九支部を名乗った警備員の"ある一言"がどうしても引っかかっていた。


(一方通行、"様"だと? 一体どォいうつもりで俺を敬称付けで呼びやがった?)


事件は解決したというのに、一方通行の心にはもやもやとした違和感が残っていた。
790 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:32:16.47 ID:h6+sHGeJo


――――――――――――――――――――――


一方通行達と同じく誘拐犯の連中を圧倒し、警備員に引き渡した
御坂美琴は盛大にため息をついて苦笑した。


「いやー……本当、アンタといると暇にならないわね」

「…………」

「いやそれ照れてんのか? 褒めてないっつーの……。 でもま、アンタのおかげで
 佐天さんを救えたし、さっきの警備員の話だと初春さんも無事みたいだし、
 これにて一件落着ってとこかしら? 色々大変だったけど、ありがとねミーシャ」

791 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:33:12.29 ID:h6+sHGeJo

美琴が笑顔で感謝を伝えると、巨大サイズのガウンを着込んだ
大天使ミーシャ=クロイツェフは親指をビシッと立ててサムズアップで応えた。
翼は生やすわ空を飛ぶわ氷の礫を降らせるわで散々人外っぷりを見せつけた
怪物がそのような人間らしい仕草をする事に、美琴は未だ違和感を拭えない。

しかしそんなミーシャが親友の救出に一役どころか三役くらい買ってくれた事実の前では、
人外だの天使だのという『細かい』点などどうでもよくなっていた。


「いやでも改めて、お二人には感謝します! ありがとうございました、
 御坂さん、ミーシャさん! いやー、本当にもう駄目かと思いましたよ」


誘拐された佐天は幸いな事に怪我一つなく、五体満足で二人に最大級の感謝を捧げていた。
美琴も元気な彼女の姿を見て、改めて心の底からホッとする。
792 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:34:06.22 ID:h6+sHGeJo

「面倒な事件に巻き込まれちゃったわよね」

「ホントですよ。 しばらくゲコ太には関わりたくないかもです」

「なぬっ、ゲコ太とな!?」


美琴の目の色が変わる。彼女が無類のゲコ太マニアである事は佐天もミーシャも
重々承知していたが、いざこうしてゲコ太好きな姿を見せられるとやはり笑ってしまう。


「vmxlkpd………………」

「ひっ!? どうしたんですかミーシャさん!? 急にガクガク震えて……」

「あーこれ、どうやら笑ってるらしいんだけど……やっぱちょっと不気味よねえ」

「おーい、大天使様ー、ミサカさーん!」
793 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:35:36.69 ID:h6+sHGeJo

遠くから声が飛んできた。三人がそちらを向くと、ぜえぜえと
息を立てながら美琴達の方へ走ってくる初春とアンジェレネの姿が見えた。
美琴が応じる前に、佐天が歓喜に満ちた笑顔を浮かべながら初春達の方へ飛んでいく。


「うーいはるーん!! 心配したんだぞこのこのーっ!!」

「佐天さぁ〜ん、無事で良かっ……ぎゃああ!? スカート捲るなー!!」

「うむうむ、いつもの初春だねえ」

「佐天さんも無事だったんですね、本当に良かった……」

「この通り、御坂さんとミーシャさんのおかげでね。 アンジェレネちゃんも
 ここに居るって事は、私達を助けに来てくれたって事?」

「ほとんど役に立ちませんでしたけどね……」
794 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:36:14.68 ID:h6+sHGeJo

そう言って自嘲気味に笑うアンジェレネの頭を、佐天は優しく撫でた。


「助けようとしてくれただけで嬉しいよ。 誘拐事件なんて
 物騒な事に物怖じしないその勇気は見習いたいものがあるなぁ」

「あ、ありがとうございます……!」

「それはこっちのセリフ、ありがとねアンジェレネちゃん」


感謝され、アンジェレネは屈託の無い笑顔を浮かべた。
大した活躍はしていないと言うアンジェレネだが、佐天も言っていた通り
誘拐事件という危険極まりない件に立ち向かったその勇気は尊敬に値する偉業だろう。


と、そこへ美琴が頬を赤くして照れながら笑うアンジェレネに声をかける。
795 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:37:09.43 ID:h6+sHGeJo

「えーと、アンジェレネ……でいいのかしら?」

「え? あ、はい! ミサカさんも手伝っていただいてありがとうございます」

「それは別にいいんだけど、アンジェレネは何で私の事知ってるの?」


言われてみれば、と初春と佐天も顔を合わせて首を傾げる。
美琴は初春か佐天から自分の事を聞いたのだと予想していただけに、
二人のリアクションを見て怪訝な表情を浮かべた。


「アンタと私ってどっかで会った事あるっけ?」

「やだなぁミサカさん。 イギリスで一度お会いしてるじゃないですか」

「は? イギリス?」
796 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:37:59.71 ID:h6+sHGeJo

「え……、学園都市の協力機関、という場所で会ってますよね……?
 あの時はシスター・オルソラとか他にもたくさんのシスターが
 押しかけましたから、私の事は覚えてないかもしれませんけど」

「?????」

「…………?」


アンジェレネと美琴の会話に明らかな齟齬が生じる。
アンジェレネはイギリスの学園都市協力機関で美琴と出会っていると言う。
美琴もイギリスに協力機関がある事くらいは知っている。

だが美琴は、ここ最近イギリスに立ち寄った記憶がない。


「誰かと間違えてるんじゃないの?」
797 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:38:50.60 ID:h6+sHGeJo

「え? ミサカさん自らミサカだって名乗ってたじゃないですか。
 しかもしつこいくらいに。 そういえば、"今はそんな喋り方なんですね"」

「……………………待てよ、まさか」

「いえ、まさか、ではなくミサカ、でしょう?」

「上手くないっつーの。 ちょっと黙ってて」

「は、はい」


しょぼんと落ち込むアンジェレネに悪いと思いながらも、美琴は推理を始める。
アンジェレネは自信満々に美琴と出会ったと言っている。
いや、美琴とではなく、『ミサカ』と出会ったと、そう言っている。


(学園都市協力機関……。 …………ミサカ、じゃない、まさか)


美琴の中である結論が導き出された。
798 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:39:35.23 ID:h6+sHGeJo

「そのミサカってさ、頭にゴーグル付けてなかった?」

「はい、付けてましたよ。 あれ、そういえば今日は付けてないんですね」


やっぱり、と美琴はガクッと項垂れてしまった。
アンジェレネが出会ったという『ミサカ』の正体が、これで判明した。
推理するまでもない、出会った『ミサカ』が『美琴』ではないのなら、
あとはもう"彼女達"としか考えられない。

美琴は初春と佐天に聞かれないよう、さり気なく声を潜めて真実を明かした。


「……それ、私じゃなくて『妹』よ、……"双子"の。 語尾に『ミサカは』って付けてたでしょ?」

「え、そうだったんですか? そ、それは大変失礼しました……」

「いや、別にいいんだけどさ」


強いて疑問を挙げるとすれば、なぜこのような小さなシスターが
学園都市の協力機関などに立ち寄ったのかというものだが、美琴は
それ以上言及しなかった。
799 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:45:26.01 ID:h6+sHGeJo

今回はここまでです。

ようやく犯人もきちんと捕まえて、完璧に事件は終わりました。
一方通行のほっぺたは柔らかそうなイメージだと思いませんか。

駆けつけた警備員が何かちょっと変でしたが、予想はつくと思います。

では次回より、このお話もそろそろまとめに入りますので、
皆様あともう少しだけお付き合いください。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
800 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/19(木) 08:45:51.59 ID:h6+sHGeJo



                          【次回予告】



「この羊皮紙に綴られていた情報は……、"学園都市への侵入路"、だと思うのでございます」
元ローマ正教のシスター――――――オルソラ=アクィナス




「侵入路? まさかご丁寧に学園都市入りの申請手続きのレクチャーが
 書かれてた、とかじゃねェよなァ。 クソッたれが、『闇』のルートか」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)




「……一つ、聞いていい? 『天使同盟』って、何なの?」
学園都市・常盤台中学の超能力者――――――御坂美琴




「『これ以上言及されれば、恐らく私は美琴に真実を話す。』」
『天使同盟』の構成員・水を司る大天使『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ



801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/19(木) 09:37:54.18 ID:z2nPdAVso
乙!

イカヅチの翼を背負うミコっちゃんがどう関わるやら気になるところ
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/01/19(木) 09:38:31.73 ID:h9L6SxsAO
シリアス
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 09:45:59.43 ID:1O0X4vHIO

美琴に羽が生えるシーンを入れたのはそういう事だったのか…
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/19(木) 10:10:09.85 ID:M/1f3cvZ0

美琴のは水素ブースターだから正しくは羽じゃないよ
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 10:34:39.21 ID:86f6811Co
おつ
アンジェレネって実験のこと知らなかったっけ
と思ったけどミサカってことは知らないんだったかな
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 10:35:16.46 ID:dqSR+q8IO
前スレの対ミーシャ戦で
>ミーシャに呼応するように、美琴も水分子を操作して背中に大小六枚の翼を背負い、

って描写はあるけど、どうなることやら
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/01/19(木) 11:40:30.46 ID:C0kph9rAO
いやもう流石に増えないっしょ
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/19(木) 12:01:02.87 ID:G1t7YcAeo
>>804
禁書に、生やした翼を羽ばたかせて空を飛んでるキャラなんて殆どいないだろ。
なにで形作られてるかはさておき、翼がある事が重要なんだろ、多分。

美琴が天使同盟に参加するかはわからんが、今後特別に絡んでいくのだろうか
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/19(木) 14:03:23.99 ID:tt9BZ9GE0
乙!!

>>801
雷の翼は風斬の特権だろ!水の翼だと条件が不安だな…
空気中の水分で作れるのか?

ミコっちゃん天使同盟にならない…よな?

810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 15:15:39.99 ID:wodr8ByAO
翼の話より一方さんのほっぺの話しようぜ!
むにむに!むにむにしたい!いやぺろぺろもぐもぐしたい!
一方さんのほっぺがオルソラさんのおっぱいに押しつけられたらむにむに×むにむにだぜたまんねえな!
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/19(木) 16:23:22.40 ID:6M4Yu1CAO
火野さんが最後の一人と明言されてたしな……ふにふに
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 17:43:28.78 ID:UVu6CknPo
一通さんマジもち肌かわいい!
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 18:42:22.62 ID:EW8S/phDO
もぐもぐ
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/19(木) 18:48:05.90 ID:64jQAiOMo
>>809
ミーシャに水を出してもらえば良いよ!
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 21:22:13.03 ID:Lg4ScnsC0
いやほんと申し訳ないけどさ、みんなが思ってることをあえて口にしない訳だから今ここで言うべきじゃないと解ってるけどさ
何か体がムズムズしてておかしくなりそうだから本っ…当に悪いんだけれど言わせて、これを言うことで反発が出ることは解ってるが後悔はしない




オルソラまじ天使
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/20(金) 00:03:43.44 ID:KWFvFyZP0
禁書キャラで羽はえるのってほかに誰がいたっけ?
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/01/20(金) 00:06:03.08 ID:Wp3j86qr0
>>815
うむ、新加入するならこまっしゃくれた超電磁砲なんぞよりおっぱい天使だな
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/20(金) 00:06:42.92 ID:Wp3j86qr0
sage忘れた…スマソ
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/01/20(金) 07:23:21.78 ID:eIiluUago
>>816
ていとくん仮面を装備したその他大勢
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 07:55:40.44 ID:OjGmX92DO
>>816
キサマにはくぎゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ(ryもといアニェーゼの背中に生えた美しい翼が見えないのか
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 08:07:43.97 ID:k/TJOQtA0
お前らには見えないのか?オルソラの背中にあるマジ天使の羽が見えるだろ?
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 09:01:03.10 ID:pl7NnQdmo
>>820
どうやら俺が硬貨袋と思ってたものはアニェーゼだったらしい
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/01/20(金) 12:22:37.53 ID:19Sg4LyAO
オルソラの羽は胸から生えてるだろ
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/20(金) 14:30:59.17 ID:saK2Bfta0
つまりお前らが興味ないルチアさんは俺だけの天使ってことで
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/20(金) 17:22:30.91 ID:fhq86GdG0
撲殺天使むぎのんは俺がもらって行きますね
むちむちの足をぺろぺろしてきます
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/20(金) 20:03:41.59 ID:vzgDDduAO
今は全く関係ないし話題にでていないから言える


ブレンダは死して天界で俺の天使になったのでもらっていきますね
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/21(土) 00:01:04.23 ID:xddrGEbk0
天使と言えば、アレって結局何なんだろうね。
ほら、アレだよ。

エンゼルさうわなんだやめろ
828 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:26:29.12 ID:KX6ArUBdo

おはようございます。まだ空も白んでいない早朝からの更新です。

御坂が天使同盟に云々という話題が出てきていますね。
これらも支援レスとしてありがたく受け取ります、嬉しいです。

御坂がどうなるかとか、言わない方がいいですよね?
まぁ言うもクソも、大体予想はつきますけど……あえて言うなら
>>3のフィアンマの項目が、ある意味答えになっています。

とにかく、御坂は今後もたまに出てきますのでご安心ください。
上条と絡まない御坂では満足出来ないという方が大多数でしょうが……ご勘弁を。

では投下します。誘拐犯を捕まえた一方通行達のその後です。

それでは、よろしくお願いします!
829 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:27:14.53 ID:KX6ArUBdo


――――――――――――――――――――――


『外』の現場にやって来た後続の警備員に事情を適当に説明した
一方通行は、とりあえず収束の方向へ向かっている現状を認識すると
心底面倒くさそうに息を吐いて道路のガードレールに腰を降ろした。


「一方通行……さん」

「あ?」

「『解読』、滞りなく…………終了したのでございます」


相変わらずライダースーツ型駆動鎧を装着したままのオルソラ=アクィナスが
ゲコ太のぬいぐるみの中から取り出した『羊皮紙』を片手でひらひら揺らしながら
一方通行の下へ歩み寄ってきた。
830 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:28:00.15 ID:KX6ArUBdo

この誘拐事件の根幹と言える、『暴徒』の三人が必死で秘匿しようとしていた、
奇妙な文字が綴られた謎の羊皮紙。
暗号解読のプロでもあるオルソラは大した時間をかけずに解読に成功していた。


「どォだった。 ヤツらの一斉駆除に繋がりそォな有益な情報はあったか」

「それは私には判断しかねるのでございますが、まずこの羊皮紙に
 綴られた文字……これは『呪詩』、魔術的な意味が込められた
 力を含む詩……で、ございました…………。 ……、…………」

「呪誌……? …………おい、どォした?」

「申し訳ないので……ございます」


そう言って、オルソラはふと体のバランスを崩し、倒れ込みそうになった。
一方通行が慌てて彼女の体を支える。
犯人が逃走に使用していた車を調査していた警備員が怪訝な目を向けてきたが
一方通行は無視してオルソラの体をそっと起こした。
831 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:28:50.37 ID:KX6ArUBdo

「急にどォしたってンだ」

「『呪詩』は……、意味を理解した瞬間、読解者の意識を昏倒させて
 しまうような種類のものもございまして……。 今回のこれは
 大した威力じゃございませんでしたが……少し、アテられました」

「…………ッ」

「……ふふ。 大丈夫、でございますよ。 この程度の呪力なら
 私も抵抗出来るのでございます。 その証拠に、私は意識まで
 刈り取られてはいないのでございますから」

「………………すまねェ。 よくやってくれた」


安易にオルソラに文字の解読をさせた自分の行いを一方通行はそれこそ呪った。
同時に、オルソラによって緩和させられていた『暴徒』への怒りが再び爆発
しそうになってしまう。
832 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:29:32.58 ID:KX6ArUBdo

今からでも追いかけて始末するか。

だが結局、それには及ばなかった。自分の腕の中で辛そうに体を預ける
オルソラが、人差し指で一方通行の震える唇を撫でてきたからだ。


「えーと……。 私は平気よ、一方通行」

「……、そ、そォかよ。 それならまァイインだが……」

「ふふ、ちょっとだけ大人のお姉さんみたいな口調にしてみたのでございますよ」


敬語口調のオルソラが急に『女らしい』言葉遣いになり、一方通行は静かに動揺した。
一瞬、その呪いによって操作でもされてるのかとも思ったが、オルソラの純然たる笑顔を
見てそれはないと判断した。呪いなんかでこんな笑顔が浮かべられるものか、と。

事実、呪いで操作などされていないオルソラは『呪詩』の解読結果を報告する。
833 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:30:33.62 ID:KX6ArUBdo

「この羊皮紙に綴られていた情報は……、"学園都市への侵入路"、だと思うのでございます」

「侵入路? まさかご丁寧に学園都市入りの申請手続きのレクチャーが
 書かれてた、とかじゃねェよなァ。 クソッたれが、『闇』のルートか」

「私には理解出来ない部分が多いのでございますが……、恐らくこれを魔術師が
 解読したら、学園都市側に察知される事なく学園都市への侵入が容易となる
 手順が記載されてるのだと思うのでございますよ。 普通に解読してしまっては
 今の私のように呪力にアテられるのでございますが、恐らくさっきの犯人の方々……、
 『暴徒』は、特殊な解呪法を誰かから伝えられているのだと考えられます」

「今までも散々学園都市に魔術師は侵入してきてンだろ。 それにしちゃ
 今回はずいぶんと回りくどい手段を選ンだじゃねェか。 第一、
 今回ヤツらは簡単に街へ侵入してきてる。 一端覧祭開催期間を狙って
 這入ってきたンだろォが……、それがこれに記載された侵入経路じゃねェのか?」

「そこまでは私も……。 ただ、こんなものが存在してはこれから先も
 学園都市に魔術サイドの悪意が這入る可能性が残るのでございます」
834 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:31:19.73 ID:KX6ArUBdo

「……さっきの刺青野郎は『下準備』とかほざいてやがった。 もしかすると、
 この羊皮紙を予定通りに運ぶことが出来ていた場合、ヤツら、『暴徒』の
 連中が大量に押し寄せて来るハメになってたって事かも知れねェな」


だとしたら疑問が残る、と一方通行は眉間に皺を寄せて思案する。


魔術サイドの『暴徒』が、何の目的かは知らないが学園都市に、それも
群れをなして攻めてくる。これが学園都市の存続の危機に繋がる事は
想像に難くない。

だとしたらその危険性をいち早く察し、対抗手段を講じる立場に就いている者が
動きを見せなければ不自然である。


現在学園都市でその立場に就いている存在は、言わずもがなエイワスだ。
『天使同盟(アライアンス)』の構成員にして、『天使同盟』最強の守護天使。
あの怪物なら既にこの事態を予見し、あっさりと解決策を見出しているはずだ。
835 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:31:57.66 ID:KX6ArUBdo

興味の無い事には関心を示さないエイワスだが、今のエイワスは学園都市統括理事長。
学園都市を守る立場。興味無き事に関心を寄せぬ存在が統括理事長という役職に
就いている時点で、エイワスにとって学園都市は、今は必要な街という事。

そのエイワスが、今回は何の行動も起こさなかった。一方通行達が勝手に
解決してくれる事を予知していたのならそれまでだが、それにしたって
何かがおかしい、と一方通行は考える。

そもそも、最近のエイワスはやけにおとなしい。おとなしすぎる。
一方通行は知る由もないが、エイワスは垣根帝督に連絡をしたのを
最後にぷっつりと消息を絶っている。恐らくは今も『窓のないビル』に
のうのうと居座っているのだろうが、果たして本当にそうだろうか?


(……何を考えてやがる、あのクソ野郎。 いや、だが……)


まずあり得ない。天文学的数字にすら値しない。"そんな可能性"を考慮する
くらいなら、その他の可能性に目を向けた方が効率的だとさえ思える。

だが、それでも"そんな可能性"も考慮せずには、今の一方通行にはいられなかった。
836 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:32:36.07 ID:KX6ArUBdo


(まさか、あいつの身に何かあったのか? ……こォして思ってみれば
 思うほどそれはあり得ねェンだが、しかし何だ? この胸騒ぎは)


今回の誘拐事件はもしかすると何かの『序章』に過ぎないのかもしれない。
あるいはキッカケか。もしくは『挨拶』か。誰の?それは今の一方通行では
想定出来ない。


次々と連鎖する最悪の可能性に頭を抱えていた一方通行だが、


「見つけましたの、一方通行さん、オルソラさん」


突如として虚空から出現したテレポガール、白井黒子の介入で
一方通行の頭の中で起きていた連鎖は断ち切られた。
837 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:33:15.59 ID:KX6ArUBdo


――――――――――――――――――――――


「じゃあ、今日はもうゆっくり寮で休んでなきゃ駄目よ?」

「はーい。 御坂さん、ミーシャさん、今日は本当にありがとうございました!
 このお礼はいつか必ずさせてもらいますので。 ゲコ太はさすがにアレですけど」

「あ、白井さんによろしく伝えておいてください。
 あとオルソラさんとアンジェレネさん、それとアク――――」

「わああああああああああああああ!」

「――――レータさんにも。 ……佐天さん、何で今叫んだんですか?」

「いや別に! ほら、無事に日常へ戻れた事が嬉しくてさ、あははは」

「?」
838 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:34:31.77 ID:KX6ArUBdo

ミーシャが外壁の方をジッと見つめながら意味不明の言語を口にする。
美琴は理解出来ないだろうが、ミーシャは一方通行の事を心配していた。

初春と佐天を誘拐した男達。ミーシャは連中が一発で魔術師だと看破していた。
しかもただの魔術師ではなく、その胸に深く暗い野望を抱いている魔術師。
ミーシャの事を『大天使様』と崇拝し、『天使同盟』を崇め奉る謎の連中。

一方通行もその内の一人に接触しているはず。だからこそミーシャは彼を心配した。
一方通行がシスターの二人を連れて風紀委員の体験講習を行なっている事を
ミーシャはアンジェレネからこっそりと聞いている。
オルソラ達がいるなら恐らく大事はないだろうが、それでもやはりミーシャは―――。


「おーい、どうしたの大天使様。 何か忘れ物?」

「…………vmclh無問題lzoirml」
839 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:35:12.55 ID:KX6ArUBdo

「いい加減そのノイズまみれの音声にも慣れてきたわね……。
 それにしてもアンタってアンジェレネとも知り合いだったんだ。
 案外交友関係広かったりするの? 私が知らないだけで、天使って
 そこら辺にいる存在だったりするのかな……」


天使がそこら辺を闊歩している事態が起きていたら、今頃白い髪の
超能力者辺りが発狂しまくっているだろう。


「アンジェレネからもっと色々話聞きたかったんだけど……、
 固法先輩に"拉致られちゃったし"。 黒子は風紀委員の仕事で
 忙しいんだろうし。 暇になっちゃったわね……アンタは?」


聞かれ、ミーシャは携帯電話を取り出すとポチポチとメールを作成し始めた。
840 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:36:00.67 ID:KX6ArUBdo

「その携帯、どうして通話機能が付いてないのよ。 何か変な札貼ってあるし」

「zmcmo事情aldu有stmgoj」


メールを作り終えたミーシャは美琴にメールを送信する。


『よく考えてみれば私は現在待機中の身。 今回、派手に
 動き回った事は彼に迷惑をかける事に繋がったかもしれない』

「彼って誰よ……、彼氏とかだったら盛大にずっこけてやるけど」

『私はもうあまり動かない方が良いのかもしれない。 もうすぐ彼が
 準備を整え終えるだろうし、今更である事実は拭えないが。
 美琴は暇なら、神浄討魔と一緒に遊べばいいのでは?』

「うぐ……鋭く切り込んでくるわねアンタ。 つか名前の漢字違うし。
 ……けど何か、これでもしっくり来るのはなぜなんだろう」
841 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:37:22.47 ID:KX6ArUBdo

首を傾げつつ、美琴はミーシャの提案について考えてみる。

上条当麻、彼は今どこで何をしているのだろうか?
いつもならここでバッタリと邂逅し、いつものように戯れる展開が訪れる
ものだが、第三次世界大戦以降その流れは全くといっていいほど起きていない。


(…………まぁ、もういいんだけど、さ)


美琴は頭の中を切り替え、ミーシャに尋ねた。


「……この、『もう動かない方がいいかも』ってのはどういう意味?
 アンタもまさか誰かに追われてたりしてんじゃないでしょうね」

「…………」

「沈黙で返すなよ! 不安になってくるじゃない」
842 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:38:37.73 ID:KX6ArUBdo

しかし今回の事件の犯人といいアンジェレネといい、ミーシャの事を『大天使様』と
呼んでいた辺り、隣にいるガウンの怪物はもしかしたら本当に本物の天使なのかも、
と美琴は横目でボケーッとしているミーシャを見ながら認識を改めてみる。


「……一つ、聞いていい?」

「diur何aiem」

「『天使同盟』って、何なの?」


ミーシャの返事を待たず、美琴は続ける。


「あー、アンタは知らないかもしれないけどさ、前に世界規模のハッキング
 事件が起きたのよ。 私の能力によりアプローチも寄せ付けない程の。
 それで、『天使同盟』って組織名なのか何なのかもわかんない文字が表示されて、
 ……今日捕まえた犯人たちも『天使同盟』の名を呟いてたでしょ?」
843 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:39:33.77 ID:KX6ArUBdo

「……」

「アンタはあいつらにとっては本物の天使のようだし? 何か知ってたり、或いは―――」

「……」

「アンタが"そうなのかな"って……。 ごめん、これってあのイカれた
 誘拐犯やハッキング事件と、アンタの事を結び付けてるようなもんね。
 根拠もない空っぽの憶測をぶつけるなんて、私も大概性格悪いなぁ」


己の言葉を自省する美琴に、ミーシャはメールで答えを提示した。


『これ以上言及されれば、恐らく私は美琴に真実を話す。』

「……ッ」
844 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:40:42.44 ID:KX6ArUBdo

なぜか背筋が凍った。それはこのメールの最初の一文だけで、
自分が『天使同盟』との関係を持っていると答えているのも同然だったからだ。

心臓の鼓動が徐々に早まっていく感覚を認識しながら、美琴は続きを読む。


『だけど出来れば、私達には深く関与しないで欲しいという思いが、
 私の本音でもある。 彼もそうだが、私達は本当なら、極力周囲の
 無関係者との接触を避けるべきである。 にも関わらず、私は、
 そして私達は、他人との触れ合いを求める。 この矛盾が、少なく
 とも私には心地が良い。 こうして今、美琴と通じ合っているように。』

(私達……。 これって、ミーシャが『天使同盟』の一人で、他にも
 仲間がいるという事を示唆してるんじゃ……。 学園都市はおろか
 世界政府ですら尻尾も掴めない謎が、こんな身近に………………?)

『私は、美琴と友達になりたい。 今願うは、ただそれだけ』

「……」


文中、様々な推論が掻き立てられる文章が連々と綴られていた。
しかし最後の一文を見て、美琴の頭に浮かんだ数多くの推論が
一気に霧散してしまった。
845 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:41:35.23 ID:KX6ArUBdo

「……なるほど」

「……、」

「天使ってのも案外、大した事ないのね。 的外れっていうか、何もわかってない」

「?」


美琴はミーシャから送られた、『天使同盟』の発覚に繋がる文章が表示された
メールを迷うことなく"消去"し、普段親友に向ける笑顔を浮かべて言った。


「私達、とっくに友達でしょ? こんな当たり前で、でもちょっと恥ずかしい事を言わせんなっつーの」

「……………………………………」

「そうね、これから常盤台の女子寮来る? 私のゲコ太グッズを披露して―――」


ミーシャは返事をしなかった。

ただ、美琴を思い切り抱き締める行為と、美琴の体から響き渡った嫌な音が、答えになっていた。
846 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:42:25.66 ID:KX6ArUBdo


――――――――――――――――――――――


事件を無事に解決した一方通行、オルソラ=アクィナス、アンジェレネの
三人を出迎えたのは、事件解決を賞賛する風紀委員の方々でもなければ、
彼らと人質の生還を祝福する警備員の方々でもない。


「ま、これも体験講習の一環という事で、張り切ってやってみようか♪」


書類の山だった。山どころか、その山がいくつもそびえ立っており、
谷まで出現している始末。始末というか、第一七七支部の教室に
帰ってきた一方通行達はその始末書群の前に絶句する他無かった。

ただ一人、オルソラだけが『まぁ……』と心なしかワクワクしているような
表情を浮かべている意味が、一方通行には理解出来なかった。
847 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:43:52.87 ID:KX6ArUBdo

「張り切ってやってみよォかじゃねェよ……、何なら張り切って
 オマエらを殺ってやろォか? 説明しろ、なンだよこれは」

「だから、今回の事件で私達が処理しなきゃならない始末書の皆様よ。
 風紀委員にこれだけの書類が送りつけられたのは初めてかもね。
 オチとしてはそれらしいし、私と白井さんは空から降ってきた謎の
 飛来物の件について調査をしなきゃならないから、任せたわよ」


固法美偉は彼らの心中を察しているのかいないのか、そんなのん気な事を言う。
だが一方通行としては納得出来ないようで、


「講習生が取り組む業務の域を超えてンだろォが。 大体、これは本来
 オマエら本職の風紀委員がきちンと処理すべき書類じゃねェのかよ。
 例え学生で構成された治安維持部隊とはいえ、職務放棄は許されねェだろ」

「これをご覧になってくださいまし」
848 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:44:50.52 ID:KX6ArUBdo

白井が事務机を潰さん勢いで重なっている書類の山に手を入れてランダムに
選んだ一枚を取り出すと、内容を一瞥して一方通行達に突きつける。


「第七学区のレストランで、店内のガラスが全て破損する事故が発生。
 そこに居合わせていた風紀委員に事故の経緯と謝罪文を要求する」

「はァ? そンなモン俺は知らね――――」

「あ…………」


白井が見せつけてきた書類を目にして恐る恐る手を挙げたのはアンジェレネだった。
目尻に涙を浮かべ、冷や汗を流しながら彼女は弁明しようと試みる。


「そ、そ、それはその、あの…………私が割った訳ではなくてですね……」
849 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:45:24.23 ID:KX6ArUBdo

「誰がどういった方法でやったか、アンジェレネさんが起こした事故では
 無い証拠文書等々、全てはこれに書き連ねてもらうわけですので、
 結局は同じ事ですの。 諦めておとなしくペンを走らせてくださいな」

「あうー……」


しかし、まさか馬鹿正直に『大天使ミーシャ=クロイツェフがガラスをぶち割りました』
とは報告出来ない。学園都市もそんな与太話を信じる程甘くはないだろうし、
仮に信じてもらっても困る。世界的に天使の存在が発覚したら、アンジェレネはその責任を
取る自身が無い。


「それから……、これ」


白井は同じく書類の山から適当に一枚取り出すと、
850 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:46:03.64 ID:KX6ArUBdo

「学園都市の『外壁』で運用している警備ロボが複数台破損。
 原因は『外壁』を走行する軍用バイク型駆動鎧によるものと断定。
 人工衛星のカメラによって撮影された写真を駆動鎧開発機関の整備員、
 丈澤道彦に提示したところ、駆動鎧の操縦者は第一七七支部の風紀委員
 である事が判明。 警備ロボ修理費用、その他諸々を第一七七支部に一任する」

「丈澤って、さっき駆動鎧を返しにいった所にいた男か」

「ああ、そういえば私、『ドラゴンライダー』で壁の上を走っている時に
 ドラム缶を何個も跳ね飛ばしたのですが、それの事でございましょうか?」

「何やってくれてンのオマエ……」

「ちなみにその丈澤さんという方からオルソラさんへコメントが寄せられて
 いますの。 『すまん、オルソライダー。 事態が事態だけに完璧な言い訳
 が出来なかった。 まぁ大事の前の小事と思って、事務処理を頑張ってくれ』」
851 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:46:53.00 ID:KX6ArUBdo

「『ドラゴンライダー』を返しに伺った時、少々様子がおかしいと
 思ったのでございますが……そういう事だったのでございますね。 
 ふふ、こればかりは仕方がないのでございます。 承りました」

「つか大事の前の小事の使い方を間違ってるぞあのオッサン」

「それから、あなたにも」


固法が重たそうに抱えてきたのは、やはり書類の束だった。


「あンだよ、このバカシスター二人とは違って俺は何もしてねェだろ」

「この書類は第一七七支部宛てじゃなく、"あなた個人"に送られてきたものよ」

「俺個人?」
852 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:47:46.64 ID:KX6ArUBdo

「そう、第四九支部から。 そこの風紀委員の一人が第一七七支部の
 白い髪の風紀委員に精神的屈辱を受けたため、償いとして第四九支部
 に溜まってた書類の処理をしろ、だそうよ。 第一七七支部宛ての
 依頼じゃなかったからつい引き受けちゃった」

「木ィィィィィィィィィ原ちゃァァァァァァァァァン」

「あ、あの……それでもこの書類は多すぎると思うんですけど……」

「わたくし達が処理しきれてない、この事件には関係ない書類の
 処理もやってもらおうかな、なんて考えてたり考えてなかったり」

「そのツインテールぶち抜かれてェかこのクソガキ……」


ともあれ、大量の始末書整理に取り組まなければ帰してもらえそうにもなかった。
色々と理不尽な理由で押し付けられた業務だが、既にオルソラがやる気満々な
時点で一方通行もアンジェレネも付き合わざるを得なくなっている。


「いい経験になるのでございますよ。 魔術サイドに身を置いている
 だけでは、このような経験は味わえなかったでございましょうから」

「シスター・オルソラの前向きな性格が少し羨ましいです……」
853 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:48:18.85 ID:KX6ArUBdo

「前向きっつか、何も考えてねェだけじゃねェのか?」

「という訳で一方通行さん、書類整理の手順を教えてほしいのでございます」

「ほら見ろ、結局面倒な事は俺が全部引き受けるハメになるンじゃねェか!」


学園都市に降り注いだ謎の飛来物の調査に向かうため、白井と固法は
準備を済ませて教室を後にする。その寸前、


「教室の戸締りはお願いしますわね。 どうせ朝までかかるでしょうから、
 必要ないとは思いますけど。 そんな訳で、泊まり込みでもオッケーですの。
 何か困ったらそこらにあるマニュアルに目を通して対処してくださいな」


そう言い残し、今度こそ三人を残して教室から出て行った。


「……また徹夜決定だクソ野郎」


思い出したかのように、強力な睡魔が一方通行に襲いかかってきた。
854 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:54:05.72 ID:KX6ArUBdo

今回はここまでです。

ミーシャにまた一人、友達が出来ました。良かったですね。
しかし寮にいくとなるとあのツインテテレポ娘がいるわけですが……
彼女との絡みも楽しみにしていただけたらと思います。

さて次回、いよいよ一端覧祭四日目のアンロック編が終わります。
これ下手したらキャーリサより長かったんですが……おかしいなぁ。
ここまで付き合ってくれた皆様方に最大級の感謝を。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
855 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/21(土) 05:54:33.55 ID:KX6ArUBdo



                          【次回予告】



「よーし、頑張るぞ〜……!」
元ローマ正教のシスター――――――アンジェレネ




「そう、最悪でございますね。 人の心の『闇』につけこんで、
 介入して、私しか見えないようにする。 人の心の暗がりに
 光を差す事が修道女の勤めと言えば聞こえはいいのでございますが」
元ローマ正教のシスター――――――オルソラ=アクィナス




「そンなンじゃねェ……。 まだ、"見極められねェだけだ"」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)



856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 06:09:34.31 ID:OFNjvnLOo
乙〜
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 06:10:40.21 ID:fbs4qpzDO
ひゃっほい!!

早起きはしてみるもんだぜ!!!

>>1乙!


そして、木原ちゃんなにやってんの?!wwwwwwwwwwww
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/01/21(土) 09:20:16.65 ID:6Z0j6bKX0
乙でございます

エイワスの活躍も見たいである
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/01/21(土) 09:22:57.85 ID:GdKveVsAO
美琴生きてるのかな・・・
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/01/21(土) 09:23:56.99 ID:ElJQQIf30
乙でしたー、美琴…無茶しやがって…

>>857
木原流のラブコールなんだよきっと
ヒャッハー!書類はシュレッダーだァ!!
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/21(土) 10:09:38.82 ID:4OK8zqOw0
木ィィィィィィィィィ原ちゃァァァァァァァァァン!!?

次も楽しみにまってます
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/21(土) 11:20:07.49 ID:JKPcrrHO0
>>857 確かにコンタクトを要求しているのかも…

はたして、第一位は大人の対応が取れるのか?
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/21(土) 11:22:49.26 ID:bNU9Y0ljo


LEVEL5は苦労人ばっかりだなwww
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 11:52:36.69 ID:fbs4qpzDO
そう言えばレベル5ではソギーだけ出てないのか?

心理掌握もまだ出てなかったっけ??
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/21(土) 13:52:30.02 ID:4xkhWHTa0
付録を読んだ身としては木原ちゃんが元気そうで何より
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 15:38:06.40 ID:JbQYvILgo

やっぱり第一位には幼女がお似合い
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/21(土) 16:22:00.24 ID:kz6CjTdH0
ロリコンだしな
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/21(土) 17:50:56.74 ID:4+nySwbu0
そういえばセロリさん本日のイベント前から既にお疲れなんだっけww
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/21(土) 19:17:27.31 ID:LVXtjieko
この一方さんロリのフラグ率低いけどな
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 20:03:53.19 ID:JTR4NSxNo
むしろおっぱい率高いよな
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 23:08:22.14 ID:zN/iidLXo
徹夜でキャーリサ看病→誘拐事件解決→徹夜で書類山脈
精神が折れない辺り流石第一位
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/21(土) 23:19:00.32 ID:gvgZzfh90
ここの美琴、こんな友人が欲しかったなぁ…
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/22(日) 10:54:36.46 ID:/LuHMBiq0
乙!!     美琴は天使同盟には要らない気がしてきた
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/22(日) 11:34:03.29 ID:jQzv3o+AO
>>873
そもそも入ってないし入るという話もないだろう・・・「入らない気がしてきた」の誤変換?それでも変だけど
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/01/22(日) 16:17:30.96 ID:8Rdxc7FL0
美琴が入る→バッドエンドの未来しか見えない・・・
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/22(日) 18:50:24.74 ID:A+MmTm3IO
美琴が加入したら、おっぱい率が下がるだろ……
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/22(日) 19:03:09.92 ID:kj4PDPXU0
エイワスに第三位程度障害にならないって言われてたからはいんねぇと思う
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/22(日) 19:11:30.89 ID:RdObWqOFo
フィアンマの人物紹介に最後の構成員って書いてあるって>>1が言ってるのに
何でまだ騒いでんの?
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/22(日) 19:39:35.75 ID:f+OsMfdE0
バカなんでしょ。
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/22(日) 20:22:02.29 ID:z5awPgSj0
そんなことよりAIM拡散おっぱいの出番はまだか
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/22(日) 23:03:52.25 ID:l8QaoKaao
拡散おっぱいっておっぱいが爆ぜて飛び散ってるみたいでグロいな
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/23(月) 06:08:08.45 ID:MyQrNtIzo
オルソラさんのセリフがまんま私ってズルい女ねって感じでイメージと全然合わないから困る
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 02:18:10.98 ID:CJtF0KUDO
風斬が新必殺技の拡散おっぱい砲を引っ下げてきたと聞いて
884 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:01:28.78 ID:pY8cTqxwo
>>882
すみません……。好き勝手に書いてるとつい調子に乗ってしまうんですよ。
これくらいなら言わせてもいいだろ、とか……。以後気をつけつつ、修正とか
していきますのでよろしくお願いします。


こんにちわ、更新を開始します。

さて、今回で一端覧祭四日目……でしたっけ、オルソラメインのアンロック編が終わります。
今回はかなり久々に台本形式でお送りします。風紀委員の書類処理に追われる三人、
はたして一方通行は眠れる日はやってくるのか……。

では、よろしくお願いします!
885 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:02:27.13 ID:pY8cTqxwo


――――――――――――――――――――――


――学園都市・第七学区 柵川中学 第一七七支部


アンジェレネ「一方通行さん、これはどう処理すればいいんですか?」

一方通行「あン? ……第七学区、自動販売機の在庫数と売上の照合?
     缶ジュースの在庫数と売上の差に誤差が生じてたら何らかの
     方法で盗まれてるってこった。 算出後に誤差があったら
     風紀委員か警備員にその書類を送ればイインじゃねェか?」

アンジェレネ「これも風紀委員のお仕事ですか……、頑張ります!」カキカキ

一方通行「つか自動販売機と今回の誘拐事件は何の関係もねェだろ……。
     クソ、あのテレポート女、マジで仕事押し付けてやがンな」
886 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:03:24.59 ID:pY8cTqxwo

オルソラ「それはつまり、私達が風紀委員として認められたという事でございましょう」

一方通行「チッ。 第一七七支部のデータベースに無断でアクセスして
     一般公開されてねェ事件の詳細ファイルをリークしてやろォか」

アンジェレネ「よ、よくわかりませんけど駄目ですよそんなの……!」

一方通行「……つかよォ、」

オルソラ「?」

一方通行「明らかに回してるよな? オマエら」

オルソラ「ま、まわしてるだなんてそんな……///」カァァ

アンジェレネ「?」

一方通行「修道女が至ってイイ妄想じゃねェだろクソボケ。
     そォじゃなくて、オマエら始末書のほとンどを
     俺ンとこに回してンだろっつってンだよ!!」
887 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:04:04.97 ID:pY8cTqxwo

アンジェレネ「ぎくっ」

一方通行「ぎくって口に出すヤツ初めて見たぞ。 オマエの仕業だな?」

アンジェレネ「し、シスター・オルソラだってやってる事ですよ!」アセアセ

オルソラ「こういった事務処理は一方通行さんの方が得意だと思いまして……」

一方通行「魔術サイドで下請けしてるオマエらの方が得意じゃねェのかよ」

アンジェレネ「修道女の勤めは下請けなんかじゃありません……」

一方通行「そォなのか? 前線で戦ってる魔術師を後衛からサポートする
     イメージがあンだけどな。 回復魔術とか、あるンだろそォいうの」

オルソラ「シスターとは基本的に属している宗教の教えを説く人間を指すのでございます」
888 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:04:40.29 ID:pY8cTqxwo

一方通行「戦場に駆り出される事は」

アンジェレネ「滅多にありませんよ。 私達はシスター・アニェーゼの
       下で活動していた時期がありましたから、前線なんかで
       戦う経験も多く積んでいますけど…………」

一方通行「ふン、なるほど」

オルソラ「それにしても私、今回の件で『ぱわーどすーつ』という
     ロボットの魅力に気付いてしまったかもしれないのでございます」

一方通行「駆動する鎧、で『駆動鎧(パワードスーツ)』。 オマエら
     シスターにゃ最も縁遠い代物だと思ってたが、意外だな」

オルソラ「例えばこれ、とか」ピラッ

一方通行「?」
889 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:05:37.95 ID:pY8cTqxwo

オルソラ「本日、一端覧祭で行われた学園都市製兵器ショーで出展された
     『Lost_Over.Modelcase_"Radio Noise"』。 何でも先の
     第一九学区事件で回収された駆動鎧の残骸を回収して
     カスタマイズした、スペックダウンモデルらしいのでございます」

一方通行「なンでカスタムしてスペックダウンするンだよ……なンか引っかかるなそれ」

アンジェレネ「ゲームセンターでやったロボットゲーム、面白かったですもんね」

オルソラ「左様でございますね。 あんな風にロボットに乗って
     こう……ガシガシ動かすのはとても楽しいのでございます」

一方通行「そォいうのって普通男が憧れるモンなンだけどな」

オルソラ「一方通行さんはロボットがお好きなのでございますか?」

一方通行「興味はねェな」
890 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:06:39.41 ID:pY8cTqxwo

アンジェレネ「ロボットより凄い動き出来ますもんね」

一方通行「駆動鎧にゃあンまイイ印象がねェンだよ。 ……にしても多いな、クソ」カキカキ

オルソラ「……」カキカキ

アンジェレネ「……初春さんと佐天さん、無事で良かったですよね、本当に」

オルソラ「そうでございますね」

一方通行「誘拐されたってのに、花飾りのガキも最終的には落ち着いて
     やがったし、あいつらはあいつらで何度か修羅場を乗り越えてンだろ」

アンジェレネ「でも……あの犯人達は一体何だったんでしょう?」

一方通行「あいつらは魔術サイドの人間だった。 オマエらは心当たりねェのか」
891 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:07:29.70 ID:pY8cTqxwo

オルソラ「魔術サイドにはたくさんの魔術結社がございますから……。
     私達のようなシスターでは知り得ない結社の方々である可能性も」

アンジェレネ「私にもどこに属している魔術師なのかまでは……。
       ただあの人達、『天使同盟』の事を…………」

オルソラ「……一方通行さんが朝に仰っていた、『暴徒』でございますよね?」

一方通行「まず間違いねェだろ」

アンジェレネ「私がこんな事言うのもあれですけど……大丈夫なんですか?」

一方通行「……」

オルソラ「……」

一方通行「……誰の心配をしてンだこのチビガキは」
892 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:09:06.37 ID:pY8cTqxwo

アンジェレネ「で、でも……」

一方通行「本物の大天使、学園都市製の人工天使、規格外の地球外生命体、
     学園都市第二位の超能力者、『神の右席』最強の魔術師、ンで俺」

アンジェレネ「……」

一方通行「このメンツに正面から対抗出来る勢力なンざ存在しねェよ、多分な。
     自慢してるみてェであンま言いたかねェけどな、その気になりゃ
     小国の一つや二つは落とせる連中、それが『天使同盟』なンだ」

アンジェレネ「……」

一方通行「心配されるまでもねェよ」

アンジェレネ「そ、そうですよね。 すみません、私なんかが……」

一方通行「あー、うぜェから卑屈になるな。 気持ちだけは受け取っておいてやる」ナデナデ
893 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:10:03.95 ID:pY8cTqxwo

アンジェレネ「わっ……///」

一方通行「ありがとォございますゥ」

アンジェレネ「い、いえ……!」ニコー

オルソラ「ふふ」

一方通行「なンだよ?」

オルソラ「いえいえ、別に」ニコッ

一方通行「まァイイ。 さっさとこのクソ雑務を片付けよォぜ。
     イイ加減俺の中の睡魔も膨れ上がりまくってやがる」

オルソラ「お疲れのようでしたら眠ってもらっても構わないのでございますよ?
     元々、私達が原因でこんな事になってしまったようなものですし」
894 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:10:46.81 ID:pY8cTqxwo

一方通行「お気遣いどォも。 オマエらこそどォなンだ?」

オルソラ「私は大丈夫でございますが、アンジェレネさんは……」

アンジェレネ「むっ。 確かに今日はハードな状況が続きましたが、
       私もまだまだ頑張れます! 見た目は子供でも中身は
       ちゃんとシスターなのですから! 張り切りますよ〜」フンスッ

オルソラ「ふふ、頼もしい限りでございますね」

一方通行「腹が減ったら言え。 俺が適当に何か買ってきてやる」

オルソラ「お願いするのでございます」

アンジェレネ「よーし、頑張るぞ〜……!」カキカキ
895 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:11:27.07 ID:pY8cTqxwo


――――――――――――――――――――――



アンジェレネ「………………くー……、すぴー…………」Zzzz



一方通行「……で、結局これだしな」

オルソラ「仕方がないのでございます。 さっきはああ言ってましたが、
     アンジェレネさんはまだ幼いですので、今日のような出来事に
     巻き込まれれば心身ともに疲れ果ててしまうのでございますよ」

一方通行「……もォ夜かよ。 白井と固法は直帰しちまうし、ふざけやがって。
     何が『第一位の頭脳があればこの程度の始末書くらい―――』だ」

オルソラ「ふふっ」
896 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:13:33.58 ID:pY8cTqxwo

一方通行「白井のヤツは常盤台中学の生徒だったな……、クソッ、手が出せねェ」

オルソラ「やはり私達はそれなりに信頼されているのでございましょう。 それに、
     この事務処理を終えたら必ず礼をすると白井さんも仰っていましたし」クスッ

一方通行「ったく……」

アンジェレネ「くかー………………むにゃ」

一方通行「オマエら、もォ帰ってイイぞ。 あとは俺がやっておく」

オルソラ「そうやって、何でも一人で背負い込まないでください」

一方通行「何そのシリアスパートにありがちなセリフ。 今は別にそォいう
     状況でもねェだろ。 ただ書類の処理を済ませるだけじゃねェか」

オルソラ「私達は一蓮托生でございますよ、共に風紀委員の講習を受けた身として」
897 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:14:33.69 ID:pY8cTqxwo

一方通行「その内一人はあのザマだけどな」

アンジェレネ「…………んにゃー……シスター・ルチア、野菜はいらにゃ……」Zzzz

オルソラ「アンジェレネさんはもう充分に頑張ったでございましょう?」

一方通行「……まァな。 こいつ、そこのソファに運ンでやるか」

オルソラ「教室の電気も消してあげた方がよろしいかと」

一方通行「書類整理ならデスクライトだけで光源は事足りるしな」パチッ

アンジェレネ「ふに……」

一方通行「おらクソガキ、ソファで寝てろ」カチッ ヒョイ

アンジェレネ「ふぇ……、あ、一方通行さん。 私はまだ一〇年は戦える……」
898 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:15:28.48 ID:pY8cTqxwo

一方通行「寝ぼけ眼でそンな事ほざいても説得力ねェよ。 ほら」スッ

アンジェレネ「んんー…………」ポフッ

アンジェレネ「…………。 ……くー…………」Zzzz

一方通行「ったく、ガキが……」

オルソラ「…………」カキカキ

一方通行「はァ……。 こりゃマジで徹夜コースだな」ギシッ

オルソラ「…………」カキカキ

一方通行「さて次は……、あァ? 第七学区の喫茶店から俺宛ての代金請求書だと?
     クソッたれ……木原のクソガキだな。 あいつも星にしてやろォか……」ブツブツ
899 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:16:15.39 ID:pY8cTqxwo

オルソラ「それにしましても、今日は色々な体験が出来て、
     充実した一日でございました……多少、疲れましたが」

一方通行「まさかオマエみてェなのがバイク乗り回すたァな」

オルソラ「正義のヒーロー、オルソライダーでございますよ」シャキン

一方通行「ガキが憧れるよォなタイプのヒーローじゃなさそォだが」

オルソラ「まあ、ヒーロー気取りは上条さんの影響だと思うのでございますが」

一方通行「あン? ……あのクソ無能力者か」

アンジェレネ「うう……ん……」ゴロン

オルソラ「あの方の芯の強さはまさに、理想のヒーロー像と言えるのでございます」
900 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:17:06.44 ID:pY8cTqxwo

一方通行「……。 否定はしねェけどな」

オルソラ「?」

一方通行「チッ。 やっぱあの野郎みてェに上手くはいかねェな。
     今回みてェな件に首突っ込んだら、やっぱり俺は暴走しちまう」

オルソラ「……」

一方通行「イギリスであの魔術師のガキ四人とやりあった時も、
     目の前が見えなくなっちまってたしな。 余裕って
     モンが俺にはどォやら欠けちまってるらしい」

オルソラ「……それはあなたの心に」

一方通行「あァー、オマエから言わせりゃそォなンだろォな。
     俺自身から言ってもそォなンだけどよ。 今回の
     事件も、俺じゃなくてあの無能力者ならもっと――」
901 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:18:04.57 ID:pY8cTqxwo

オルソラ「一方通行さん」

一方通行「あ?」

オルソラ「そういう事を言うものではないのでございますよ」

一方通行「……」

オルソラ「誰が助けた方が……とか、そういう考えはよろしくないのでございます。
     事実、初春さんも佐天さんも、あなたに助けられた事によって笑顔に
     なっていたのでございますから」

一方通行「オマエが理想のヒーロー像がどォとか言い出したから、」

オルソラ「あなたもあなたでまた、素敵なヒーローだと、私は思うのでございますが」

一方通行「冗談だろ。 ……胸ェ張れってか?」
902 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:18:53.99 ID:pY8cTqxwo

オルソラ「で、ございます」ニコッ

一方通行「チッ。 そンな日が果たして来るのやら、だ」

オルソラ「……」カキカキ

一方通行「……」カキカキ

オルソラ「時に一方通行さん」

一方通行「今度はなンだよ」

オルソラ「垣根さんとの約束、上手くいっているのでございますか?」

一方通行「約束? ……"あの事か"?」

オルソラ「はい」
903 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:20:01.24 ID:pY8cTqxwo

一方通行「……正直、自信はねェけどな。 俺は俺なりに他人との
     コミュニケーションを取ってるつもりだ。
     つか、アレって約束とはまた別モンのよォな気もするが」

オルソラ「一方通行さんは好きな異性の方がいらっしゃいますか?」

一方通行「話題の変え方ヘタ過ぎねェかオマエ……」

オルソラ「ええ。 私個人の、単純な質問でございます」

一方通行「…………何でそンな事をオマエに教えなきゃならねェ?」

オルソラ「言いたくないのでございましたら、それで結構でございます」

一方通行「……」

オルソラ「ただ、」
904 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:21:01.63 ID:pY8cTqxwo

一方通行「?」

オルソラ「私は、あなたが困った時に助力できる存在でありたい」

オルソラ「あなたが道に迷った時、手を差し伸べて導いてあげたい」

一方通行「だから、急になンだよ」

オルソラ「急じゃないのでございます」

一方通行「……、」

オルソラ「ずっと、想ってる。 あなたが孤独に満たされたら、
     私はあなたをずっと抱き締める。 あなたが私に何かを
     求めるのなら、私は何でもするのでございます」

一方通行「そいつは魅力的だなァ。 で、どォして俺みてェな野郎にそこまで言える」
905 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:22:12.90 ID:pY8cTqxwo

オルソラ「多分私は、あなたの『闇』に魅せられているのでございます」

一方通行「……!」

オルソラ「普段のあなたにも、『闇』に侵されたあなたにも、私は魅せられて
     いるのでございますよ。 イギリスであなたに実験の話を聞かされ、
     あなたが一時的に『闇』に染まり、それを介抱した時から…………ずっと」

一方通行「おい」

オルソラ「思えばあの『法の書』の解読も……もちろんやるべき事なのだと
     信じてやった事でございますが……その裏で、あの未知なる魔導書の
     『闇』を知りたかったのかも……。 こうしてシスターという職業に
     就いていると、隣の芝生は青い……というか、まあ黒いのでございますが、
     "対するもの"に惹かれる傾向が、私にはもしかしたら……」

一方通行「オマエ、それがどォいう意味かわかって―――」
906 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:22:46.87 ID:pY8cTqxwo

オルソラ「そう、最悪でございますね。 人の心の『闇』につけこんで、
     介入して、私しか見えないようにする。 人の心の暗がりに
     光を差す事が修道女の勤めと言えば聞こえはいいのでございますが」

一方通行「……」

オルソラ「今日は色々あったと言いましたが……これまでも色々ありすぎて、
     私自身が不安定になっているのでございましょうか?」

一方通行「……俺に言われてもな」

オルソラ「愚かな修道女だと思いますか?」

一方通行「…………、…………………………思わねェよ」

オルソラ「……優しいのでございますね、あなたは」
907 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:23:23.72 ID:pY8cTqxwo

一方通行「そンなンじゃねェ……。 あの野郎だってそォ答えるに決まってる」

オルソラ「左様でございますか。 …………ねえ、一方通行さん」

一方通行「……なンだ」

オルソラ「あなたが今、変わろうと頑張っているように、私も頑張るのでございます。
     自分を見失わないよう、『闇』に飲み込まれないよう、いえ、むしろ
     私から飲み込んでしまうくらいの勢いで、頑張るのでございます」

一方通行「……」

オルソラ「だから応援しててほしいのでございますよ」

一方通行「……わかったよ。 いざとなりゃ『天使同盟』全勢力でバックアップしてやる」

オルソラ「頼もしい限りでございます」
908 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:24:08.42 ID:pY8cTqxwo


アンジェレネ「わ、私も」


一方通行「!」

オルソラ「!」

アンジェレネ「私も頑張りますから……置いてけぼりなんて、許しませんから」

オルソラ「アンジェレネさん……」

アンジェレネ「…………………………あ、ね、寝言寝言……むにゃむにゃ」

一方通行「……寝言は寝て言えってのは、この事だな」

オルソラ「ふふっ」
909 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:25:16.40 ID:pY8cTqxwo
                  〜Information〜


     【闇喰らわぬもの祈るべからず -Saint-】がアンロックされました。



・【風斬氷華育成計画 -AIM Simulation-】

・【兎追いしかの街 -Wonder land-】

・【闇喰らわぬもの祈るべからず -Saint-】

・【???】 

・【???】 

・【第一位と第二位の垣根を越えて -Identity-】

・【???】 

・【???】
910 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/24(火) 13:28:24.92 ID:pY8cTqxwo

今回はここまでです。

こんな感じでルート解放しましたが、いかがだったでしょうか。
楽しんでいただけたでしょうか。投下が終わるたびにハラハラする
現象をどうにか克服したのですが、難しいものです。

という訳で一端覧祭四日目、オルソラ(と、アンジェレネ?)編でした。
ここまで付き合ってくださった方に改めて感謝を。

次回は休憩です。割とどうでもいい、行間的なお話を。
どうでもいいっつってもエイワスとか出ますけど。イルカの女の子とか出ますけど。

なので次回予告は無しです。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 13:40:09.57 ID:IUpYf3Tyo

イルカの子?ああ、ちっぱいか
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/24(火) 14:27:39.82 ID:oEBpcK3C0

やっぱ>>1はセンスあるなぁ・・・。
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/24(火) 15:35:59.97 ID:lwxVWFzN0
乙です
なんだかエイワス懐かしいなぁ。
元k訊くまでもなかったかな
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/24(火) 16:13:51.70 ID:u3X39oXY0
乙!
イルカの子楽しみだ
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 16:56:07.89 ID:a0Al8fqy0
>>1乙!!
魅せられる…なんてエロい響き
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/01/24(火) 17:23:58.14 ID:fIUllNDt0
乙です
オルソラさんマジ天使
ちっぱいとエイワス超期待してるって訳である
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 17:26:43.12 ID:DxPut8Db0
一方さんならインクぶちまけてベクトル操作で字書くとかやりそうだな
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 18:12:43.28 ID:vmy3VcjDO
乙!

エイワス久しぶりだ


そして、イルカ少女初登場?楽しみだ
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/24(火) 18:16:08.31 ID:MfEMbxj0o

いやその別にイメージと会わないから悪いってわけじゃなくて
むしろ新鮮な魅力を感じて一人で堕天使みたいなというか悪堕ちしそうな背徳感を感じたというかなんと言うかして盛り上がっちゃっただけです、なんか変なふうな言い方して口出しした形になってしまいましたごめんなさい。
>>1が書きたいように書いて欲しいです。
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/24(火) 18:33:34.16 ID:a98bYUHdo
乙!!

次回は久しぶりのエイワスか
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 20:01:47.59 ID:GFLQFw34o

10年戦えるって最近どっかで見た気がするけど
りせちーだったかな
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/01/24(火) 20:06:58.56 ID:fvbKX9kNo
乙乙
10年戦えるってマ・クベさんじゃないのか
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 22:16:00.07 ID:eTb5hXhSo
兎追いしかの街は何回見ても少し笑ってしまうなwwwwww
良いタイトルだ
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/24(火) 23:21:04.83 ID:LodImQOd0
マ・クベさんを知らん人間が現れるとは
ゆとり恐るべしだな
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/01/24(火) 23:34:37.54 ID:MEZrYcA80
ゆとり関係なくガノタじゃないと分からないんじゃ・・・
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/25(水) 00:07:03.21 ID:+koWa+yko
ガノタでもF91世代の俺はマさんだとは知らなかった
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/01/25(水) 08:11:04.70 ID:zpi8Vj4AO
二昔前だとガンダムはオタクの基礎教養みたいな扱いだったからな。
取りあえずファーストはみてんだろ、みたいな
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/01/25(水) 11:28:39.75 ID:s7KrZdGb0
おつおつ

F91か…
そんなのあったな・・・
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/25(水) 16:54:37.86 ID:WTBVTt0n0
スレチ
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/25(水) 19:58:25.34 ID:IdCzv0Or0
>>1乙、オルソラに感謝しろよ第一位と言いたい。
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/01/25(水) 22:54:40.18 ID:gCqqtGH50
そろそろ次スレのお時間かな?
932 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:33:52.91 ID:m4zDdcq5o
>>919
そうでしたか、こちらこそ早とちりをしてしまい申し訳ありません。
といっても結局は好き勝手書いちゃってるんですけどね……。
一端覧祭六日目の話なんかひどい事になってますので、お楽しみに……。

こんにちわ、更新を開始します。
気がつけば次スレの季節が到来していました。すっかり失念してた……。

さて今日は行間的なお話を三つほど。ぶっちゃけ読み飛ばしてもらっても
構わないような話なんですが、せっかくなのでご一読いただけたらなと思っております。

それでは、よろしくお願いします!
933 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:34:37.31 ID:m4zDdcq5o


――――――――――――――――――――――


初春飾利と佐天涙子を誘拐し、自らが崇拝する『天使同盟(アライアンス)』と
その取り巻きの活躍によって計画の遂行を阻止された魔術師の三人が警備員に
連行されてやってきたのは、小さな窓から差し込む月の光しか光源のない
質素で薄暗い部屋だった。


「警備員の取調室というのは、ずいぶん寂しい部屋なんだな」


ミーシャ=クロイツェフと御坂美琴によって撃破されたニット帽の魔術師が
憎たらしい笑みを浮かべながら言う。
対して、彼らを連行した第一九支部の警備員は何の反応も見せなかった。
934 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:35:28.85 ID:m4zDdcq5o


魔術師の三人は、学園都市からの脱出を企んでいた。


あのまま天使や一方通行を相手取っていれば脱出どころか生存も危うかった三人だが、
相手が警備員ならば脱出できる可能性も向上する。
何せ警備員は所詮、訓練を受けた学園都市の教師によって構成されている警察的組織だ。
三人が扱う魔術に対して何らかの打開策を持っているとは考えられない。

もちろん三人の魔術師は警備員が訓練を受けた程度の教師である情報は入手しているし、
今も手首にはゴツい手錠が何層も装着されているが、指先さえ動けば彼らは魔術を使える。

脱出など造作も無い。


そう考えていた三人に、部屋に同室していた警備員の一人は言った。
935 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:36:20.26 ID:m4zDdcq5o

「"愚かだな"」

「?」

「ここまで来ても、ここまで我々に接近しても、貴様らは何の違和感も覚えない」

「何だ? 警備員の取り調べというのはそんな回りくどい―――」


と、顔に奇妙な刺青をした魔術師が警備員の指摘する『違和感』とやらに気付いた。


指先を細かく動かして術式発動の条件である『文字』を描こうとするが、
その指が思った通りに動かない。まるで魔術の発動を強引に避けるように、
あらぬ方向へ指が曲がってしまうのだ。

他の二人も同様らしく、指先を忙しなく動かしながらもその表情には狼狽っぷりが窺える。
936 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:37:13.40 ID:m4zDdcq5o

「故に、愚か」

「…………?」

「腐っても『黄金』系の魔術師が、この程度の阻害術式も見破れないとは。
 ホルスを求める器としてはあまりにも頼りなく、愚かしく、哀れなものだ」

「………………ッッッ!!?!?」


三人の頭の中が真っ白になった。


この警備員は、魔術の法則を知っている。どころか、『黄金』の名を口にしたり、
阻害術式などという言葉を使う点を考慮すると、この警備員達は、


「テメェら……どこの……!?」

「我ら、クロウリー教に仕えしホルスの手駒」


気がつくと、部屋にいた警備員の全員の容姿が一変していた。
937 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:37:45.92 ID:m4zDdcq5o

警備員の厳重な装備ではなく、黒のローブでその全身が包まれていた。
頭にはすっぽりとフードが覆われており、フードには黄金の鷹の意匠が施されている。


「な……っ、クソ、お前らは…………!?」

「安心しろ。 耳が痛くなるような取り調べなど我々は行わない」


フードによって隠された顔には、この世の万物を吸い込みそうな『闇』しか見えない。
その『闇』から、言葉が放たれる。


それが、三人の魔術師が聞いた最期の言葉になった。


「ホルスを仇なす愚者に、死の裁きを」
938 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:38:45.54 ID:m4zDdcq5o


――――――――――――――――――――――


少女は呆れた調子でため息をつきながら言った。


「せっかく私達が仲介に入ったってのに、どうやら失敗したらしいな。
 クソ、"だから魔術師なんて輩は信用出来ないんだ"。 だってそうだろ?」


尋ねるように言う少女の言葉に、しかし返事は来ない。
それでも少女は続ける。


「ここは学園都市だ、科学サイドの総本山だ。 そんな所へ別サイドの
 人間が立ち回ったところで結果は見えてる、情報収集能力が致命的に
 欠けてやがったんだな。 警備員に捕まったようだけど、私は救出
 には向かわないからな。 この件はこれで終いだろう」
939 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:39:20.61 ID:m4zDdcq5o

『元はと言えばお前が適当な場所に「トンネル」を置くから、街の学生に
 拾われ、作戦が破綻したと言えるんだが……まぁいい。 で、どうする』


そこへようやく少女の言葉に返事をする別の声が聞こえた。
しかしその声は素顔を何かで包んでいるように篭っている。


「何が」

『第一位が私達の存在と動向に勘付いた可能性を考慮しなければならないだろう。
 今回の件に第一位は大きく関わった。 恐らく「トンネル」もヤツに回収された
 だろうな。 「トンネル」の侵入経路を逆に利用されて、直接攻め込まれる
 可能性だってある。 言っておくが、第一位単体なら管轄はお前だぞ』
940 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:40:40.80 ID:m4zDdcq5o

「魔術師を使った学園都市への侵攻計画を知ったところで、第一位サマが
 私達の目的に気付くにはまだ少し時間がかかるだろう。 
 むしろ私達が今思案しなければならない件は『あの女』の目的だ」

『……』


少女の言葉に沈黙で返すそれは、人間として判断していい容姿をしていなかった。
見た目だけで言うと、アルマジロのようだった。滑らかな曲線で構成されたその
装甲は、人間一人が着る事の出来る小型の駆動鎧だった。

アルマジロは右掌を握りしめたり離したりする事で駆動鎧の調子を確認している。
大した興味が無いのか、少女はアルマジロに目を向ける事なく続けた。


「私の予想だと、近いうちに学園都市の暗部は一度『解体』される」

『第一位の手によって、か』
941 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:41:35.90 ID:m4zDdcq5o

「一方通行は今回の魔術師と私達暗部に繋がりがある事を知ったはずだ。
 まさか健気に一方通行の拷問に耐えて口を割らないなんて涙あふれる
 誠意を見せたりはしないだろう。 十中八九、ヤツらは情報を漏らしてる」

『第一位が暗部解体に動いた場合、ヤツの取り巻きも行動を共にするだろうが、
 その場合私達の戦力では阻止は出来ないぞ。 ヤツの手駒には第二位もいる』

「確かに、正面からぶつかれば勝ち目は薄い。 だから―――」


それが癖なのか、少女は床に置いたイルカのビニール人形を足で踏みつけながら
醜悪な笑みを浮かべてこう返した。


「一度潰させてやればいい。 暗部と上層部を全て、な」

『……解体を終えて油断をした所に再び活動を始めるのか?
 いくら何でも、少なくとも第一位がそんなヤワとは思えないが』

「いや、今の一方通行ならイケる。 今までと違い、『あの女』から
 受け取った情報が確かなら、今の一方通行は魔術サイドの事情にも
 意識を割かなければならないからな。 『宵闇の出口』だったか、
 一方通行は恐らく暗部を解体した後、一度学園都市を出るはずだ」
942 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:43:09.12 ID:m4zDdcq5o

『…………なるほど。 第一位が"向こうで"「宵闇の出口」とじゃれてる間に、
 私達が再び暗部として君臨するという訳か。 ……骨が折れそうだな』

「今の統括理事長は暗部を肥溜めか何かとしか思っていない。 私達の敵は
 一方通行と愉快な仲間たちだけじゃない、統括理事長も含まれてるんだ。
 暗部、上層部、統括理事長。 一方通行達を利用して学園都市のシステム
 そのものを破壊し、私達が街を牛耳る。 下拵えなんて雑魚に任せておけばいい」


この少女もアルマジロも、学園都市の暗部の一部である。
かつての一方通行のように、垣根帝督のように、彼女達も学園都市の
情報を『裏』から守るために活動する暗部の組織。




「統括理事長を抑える事が出来れば、学園都市そのものを牛耳れる。
 何が『天使同盟』だ。 その天使もろとも『闇』に沈めてやるよ」




黒夜海鳥。

シルバークロース=アルファ。


彼らが所属する組織の名は、『クラッカー』と呼ばれていた。
943 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:44:25.75 ID:m4zDdcq5o


――――――――――――――――――――――


「確定、だな」

「……、」


軽く絶望してもいい程の事実が明らかになったが、それでも
エイワスの声色はさして興味の無いような、平坦なものだった。


「私をmgu在kx……、んん、顕現させている最重要プログラム、
 『ラプラス』はほぼ間違いなく何らかのエラーを起こしている」

「根拠は?」
944 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:45:25.24 ID:m4zDdcq5o

弱アルカリ性培養液に満たされたビーカーの中で逆さまに浮かぶ
アレイスター=クロウリーが怪訝な目をしながらエイワスに尋ねる。
エイワスは相変わらず窓のないビルの一画に設けられた機材を弄りながら、


「根拠? いくら力を失った君とて、ある程度の推測は出来るはずだがな。
 まぁ、そうだな。 根拠としてはまだ弱いかもしれんが、本日発生した
 魔術サイドの人間の手による誘拐事件。 普段の私なら容易に"見通せた"。
 だが私はこの事件の発生を統括理事会から聞き及ぶまで気付けなかった。
 『滞空回線(アンダーライン)』を利用すれば事態に気付き対応出来たかも
 知れないが、『ラプラス』の不具合を調べるため他の件は後回しにしていたからな」

「……『ラプラス』を司るあなた自身がそう言うのだからそれは事実
 なのだろうが、しかしにわかには信じられないな。 『ラプラス』は
 科学という法則の究極といっていい概念だぞ? 私が学園都市開拓の
 際に手掛けた所業の中でもこれ以上はない最高傑作。 偶然の産物と
 はいえ、あなたの核である『ラプラス』がそう簡単に壊れるものか?」
945 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:47:17.76 ID:m4zDdcq5o

「君が科学を発展させていく過程で生まれた偶然の産物、『ラプラス』。
 偶然の産物、という所が既にプログラムの不安定さを示しているとは
 思わんかね? 科学と魔術の境界線という曖昧さも相俟って、な」

「…………」


二人が口にする『ラプラス』という学園都市究極のブラックボックスが
一体どのようなものなのか、熟知している二人は語らない。
ただ、その『ラプラス』が何らかの異常をきたしている事が何に繋がるのか、




「……エイワス」

「うむ、私は私として『機能』しなくなるだろうな。 そう遠くない未来に」

「……」

「その他の生物でいう『死』が、私に訪れる。 死の概念など無いはずの私に」



946 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:47:59.90 ID:m4zDdcq5o

これまでのエイワスの言動は、まるでこの先に何が起こるのか、誰が何を必要とし、
それを自分が準備する価値があるのか、あった場合、どのように動けば効率よく
物事を運ぶ事が出来るか、必要な物をどのように生むか。

それら全てを『予見』しているような素振りを見せていた。

事実、エイワスは過去も未来も全てを見通せる『眼』と、この世のあらゆる
現象、法則、概念を理解出来る『脳』。そして万物を生み出し、万物を破壊
する最強の『力』を持っていた。


エイワスが神の如く振る舞えたのも、おしなべて『ラプラス』の恩恵によるものと言っていい。


だが、その『ラプラス』にエラー、或いは破損が生じてしまった今、エイワスに
神のような力を振る舞う事は出来ない。いずれエイワスはAIMの残骸として朽ち果てて
しまうだろう。エイワスに『死』の概念はないが、そうなればそれは死と変わりない。
947 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:49:55.80 ID:m4zDdcq5o

「つまり、私を核とする君の『プラン』もこのままでは結局成し遂げられない
 という事になる。 まずいぞアレイスター。 君、今のうちに再就職先でも
 探しておいた方がいいんじゃないか? そうだな、コンビニの店員とかどうだ?」

「己の危機に直面しておきながらその物言いとは、『ラプラス』が無くとも
 あなたはやはりあなたなのだな。 ……だがここで匙を投げてもつまらん。
 腹ただしいが、今の学園都市を支えているのは実質あなたなんだ。
 このまま無駄に時を消費して消滅を待つ事もない、何か手を打たねばならん」

「学園都市のためか」

「私個人のためでもある。 やはり私はあなたをそう簡単に手放したくはない」

948 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:51:07.24 ID:m4zDdcq5o

自分を活動不能まで追い詰めた元凶であるエイワスは失いたくないと願うアレイスター。
それは学園都市のためでもあり、『プラン』の復旧、遂行のためでもあるのだろう。

だがやはり、その根源はエイワスに対する歪んだ『愛』がある。
『第一九学区事件』でアレイスターはその想いを全て打ち明けている。


「『ラプラス』に異常が生じた原因を探ろう」


アレイスターの言葉に"裏"は感じられなかった。彼はただ純粋に、
エイワスを救うために行動に出る。


「本格的な調査は私が復帰した後になるだろうが、この状態でも出来る事はあるはずだ」

「やだアレイスター……超カッコイイ……」


学園都市第七学区。窓のないビルの一画で、小さな戦いが始まった。
949 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:57:50.39 ID:m4zDdcq5o

ここまでです。短いですか、短いですよね。

でも今回は休憩を兼ねたような投下だったので、ご勘弁ください。
休憩にしてはちとヘビーなお話もありましたが……。
まあ要するに、エイワスまじヤバいどうすんのってお話でした。


次回からようやく、垣根帝督パートです!大変長らくお待たせしました!
もう垣根が今どうなってんのかわかんねえって方もいるでしょうから、
面倒ですが読みなおしておいてもらえると助かります。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
950 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/26(木) 11:58:19.34 ID:m4zDdcq5o



                          【次回予告】



「それで、どこへ行くつもりなの?」
『クラッカー』の構成員・『心理定規(メジャーハート)』の能力者――――――ドレスの少女




「ランベスによ、シスターが集まって暮らしてる寮があんだよ。
 せっかくだからイギリス来たついでに顔出しておこうと思ってな」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督




「赤ちゃんを生む時とはまた違った苦しみが……しかも達成感ゼロ」
イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師――――――テオドシア=エレクトラ




「生々しい発言は控えてくれ」
イギリス清教『必要悪の教会』の魔術師――――――ステイル=マグヌス



951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/26(木) 12:27:47.86 ID:Q+CfUzcd0
アレイスター「らっしゃっせー」エイワス「はんぺんと大根2つ」

だめだ吹くwwwコンビニ店員は駄目だwww
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/26(木) 13:47:47.77 ID:gkrSYTRAO
なんというガハラさん
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/26(木) 14:48:39.91 ID:PkgZ/LO50


>「やだアレイスター……超カッコイイ……」
エイワスさんやばいっぽいのにふざけまくってるなwwwwww
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 14:52:14.86 ID:5L+sHoa+o
エイワスが消えたら天使同盟の尻拭いがいなくなったり
拡散おっぱいがエラー吐いたりで大変なことになるな
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/01/26(木) 14:53:31.98 ID:WHPJ9x6AO
エイワスはガハラさんだったのかwwwwどうりで最強な訳だ
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 15:50:59.64 ID:LZ3koRTDO
アニメしかみてない俺にはラプラスやホルスがいまいちよくわからんが…

とりあえず☆がめっさカッコいいのはわかった
やはり愛は偉大だ!!


さて、3日間スレ持つかな?
次スレの誘導用に少し減速減速
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/26(木) 16:52:13.98 ID:zB95a0nu0
>>1

おっと!このスレも終盤に差し掛かってまいりました!!
まだこのスレでやるのかな?
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 19:04:35.61 ID:iaKESbpE0
>>1乙!!
☆がイケメンな回か、誰得ww

あと>>947の6行目腹ただしいじゃなくて
腹立たしいかな?
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/26(木) 19:50:48.86 ID:NpD3kfDd0
ラプラスって何回も見てるうちにラブプラスに見えてきた
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/26(木) 21:09:12.34 ID:SImRGlIM0
>>959
あれおかしいな今日かきこんだ覚えは……
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/27(金) 00:43:01.72 ID:Mz4MRvxQo
ラプラスっつーと前知魔か?
樹形図の設計者関連なのかね
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/27(金) 00:46:05.77 ID:X9ezGmHDO
ラプラスって言われても水・氷タイプのあいつしか思い浮かばなかった
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/27(金) 01:02:44.55 ID:SYDN3C/po
俺は兎の方かな
あっちのは出典は同じだよな
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/27(金) 01:04:17.04 ID:SYDN3C/po
俺はあの兎の方も思い浮かぶわ
あっちは確か出典も同じだったよな
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/27(金) 01:05:10.67 ID:SYDN3C/po
Fuck!!!!!書き込めてたんじゃねーか!!
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/01/27(金) 11:18:44.41 ID:mBsKlVxw0
エイワスたん死なないで
ドラコ☆マジック★
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/27(金) 12:19:48.03 ID:TT9RByOIO
面接官「前はどういった仕事をしていましたか」
アレイスター「学園都市の統括理事長をやっていました」キリッ
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/01/27(金) 14:50:31.78 ID:17v6+6nD0
やめwwwwwwwwwwwwwwwwwwワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/27(金) 17:44:54.47 ID:kwES0sARo
面接官「この空白の期間は何をしていたんですか」

アレイスター「……」
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/27(金) 18:35:53.37 ID:yeV8aElz0
アレイスター「特に何もせず、培養器の中で逆立ちになってました…」
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉) [sage]:2012/01/27(金) 19:10:52.32 ID:iPdNinh50
アレイスター「滞空回線で女の子見てました」
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/28(土) 00:06:47.81 ID:mnrfTYjz0
アレイスター「ラブプラスやってました」
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/28(土) 00:09:48.93 ID:RbuCdjoK0
店長    「今日から入った新人だ。仲良くするように」
アレイスター「よろしくお願いします」


上条「・・・・・・」
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/28(土) 01:04:47.13 ID:Is67yiVbP
アレイスター「うーーーーい。(ォライッ、ォライッ)」
975 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:09:14.72 ID:MBMzVLU9o

次スレです……くそぅ、こんちきしょう……スレタイ……
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1327741451/


皆様こんばんわ、いい具合の時間帯で更新開始します。
かなり久々ですね、この時間帯での投下は。

今回から垣根帝督パートが始まります。
イギリスへ向かう事を決めた垣根はエリザリーナ独立国同盟を後にします。

それでは、よろしくお願いします!
976 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:10:18.95 ID:MBMzVLU9o


――――――――――――――――――――――


早朝。午前六時前。


イギリスへは四人で向かう事にした。
垣根帝督、ドレスの少女、ステイル=マグヌス、テオドシア=エレクトラ。
目的は『第一九学区事件』の影響で発生している暴徒の活動を抑止しようと
行動しているであろう『明け色の陽射し』の援護なのだが――――、


「で、実際に助けなんて必要なのか? お前らが言うに『明け色の
 陽射し』って魔術結社はエリート様が勢揃いしてる組織なんだろ?」

「現地に向かって状況を把握しない事には何とも言えないね。
 イギリス清教からの連絡はあれから来ないし、やはりテオドシアの
 言うとおり戦況は芳しくないのかもしれない」
977 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:10:58.09 ID:MBMzVLU9o

「敵対勢力の数がどれほどの規模かもわかっていないデスのに、
 私達二人だけという少数精鋭を向かわせるイギリス清教の判断も
 首を傾げざるを得ないのマスが、はてさてどうなることやら」


垣根帝督はエリザリーナ独立国同盟の居住区で借りた部屋で荷物をまとめていた。
既にエリザリーナには礼を言い別れを告げている。ステイルとテオドシアは学園都市の
超音速旅客機で垣根達がロシアへ来たという話を聞き、イギリスへ発つ手段として
その旅客機を利用させてもらうという事で垣根と話をつけていた。


「大丈夫かぁ? あの旅客機、飛行中は機内に恐ろしいGが……あー、問題ないんだったっけ」

「?」

「何でもねえ。 ……それより、あのクソ女はまだ出発準備が出来てねえのかよ」

「はあ、彼女なら未だに"サーシャ=クロイツェフの説教"を受けているようマスけど」
978 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:12:09.14 ID:MBMzVLU9o

荷物をまとめ終えた垣根帝督はステイル、テオドシアと一緒に部屋を出た。
出た先から少し離れた所に、『心理定規(メジャーハート)』の能力者、
今回、超能力と魔術を取り戻す垣根の旅に同行してきたドレスの少女が居たのだが、


「"第七四九の私見ですが"、先に私が説いたように、人の心というものを
 そう簡単に弄っていいものではないのです。 補足説明しますと、心は
 人間にとって最も尊重すべき概念であり、心の距離を容易く調節出来て
 しまうというあなたの能力は非情かつ残忍なものであるが故に――――」

「うううう……もう許してよ……。 元凶はあのクソシスターだとしても
 私も私で悪ノリしちゃった感はあるし、そこは反省してるって言ってる
 じゃない……。 ていうか説教の内容が被りまくってて耳が痛いんだけど」


ドレスの少女は居住区に積もった雪の上で正座を強要させられていた。
さらにその上からサーシャ=クロイツェフが両手を腰に当ててぷんすかと
怒りながら少女へくどくどと説教を垂れ流している。
979 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:13:16.16 ID:MBMzVLU9o

先日、ドレスの少女は己の限界を超えてしまった。
『心理定規』という自分と他人の心の距離を調節するその能力の応用性を
飛躍的に上昇させたのだ。自分以外の対象Aと対象Bの心の距離を調節する
という、言わば他人と他人の心情を操作出来る応用力を手にしてしまった。

少女はサーシャとワシリーサの心の距離を弄った。結果、サーシャは
ワシリーサに身体も心も捧げます状態になってしまったのだが、
ワシリーサはどこか納得いかなかったらしく、計画はグダグダな結末を迎えた。


「くだらねえ事するんだな、あの女でも」


呆れたように呟く垣根の視線の先にあったのは、『薔薇』であった。


サーシャちゃんのハートをゲッチュしちゃおうぜ作戦の立案者。元凶。ワシリーサ。
サーシャの心の距離を元に戻し、全ての事情を説明したワシリーサは、直後に"咲いた"。
腹の中心から大爆発を起こし、鮮血と共に散ったのはサーシャが"よくわからない魔術"
をワシリーサに放ったからである。
980 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:14:26.40 ID:MBMzVLU9o

無数の肉片になったワシリーサにサーシャは重ねて追撃を食らわせ、彼女を細切れにした。
残ったのは鼻腔を刺激する血特有の鉄の匂いと、白いキャンバスのように広がる積雪に
咲いた真紅色の美しい『薔薇』だけだった。

サーシャ=クロイツェフは北斗神拳の正統伝承者ではないのかと、その光景を
眺めていたドレスの少女は身震いした。
よってワシリーサは帰らぬ人となったのだが、彼女の事だ。どうせひょっこり復活して
再びサーシャを辟易させる行為に走るのだろう。


「おい、いつまで説教食らってんだ。 もう出発すんぞ」

「あーちょっと待って、置いてかないでよ。 ……そういう訳だから、ね?」

「……第七六八の私見ですが、仕方がありませんね。 事情は既に
 聞いています。イギリスへ向かい、例の『暴徒』を抑えるのだそうですね」
981 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:15:31.38 ID:MBMzVLU9o

ようやく説教が終わり立ち上がるドレスの少女だが、その直後、足に尋常ではない
痺れが走り、少女はサーシャの両肩に手を置いて内股で体を支える。


「ひ、ひいいい……あ、足、足がぁ。 うひゅぅぅ〜…………」

「だ、第二一四の質問ですが、大丈夫ですか? 私もついカッとなって
 感情赴くままにあなたを叱ってしまったものですから……すみません」

「いひっ、い、いや……いいっていいって。 薔薇になった変態よりマシだし」


ガクガクと震える足に鞭を入れ、ドレスの少女はゆっくりと垣根達の下へ歩く。


「次はどこへ行くんだっけ?」
982 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:16:18.56 ID:MBMzVLU9o

「イギリス。 ステイル達は直接『明け色の陽射し』の連中と合流するらしいけど、
 俺はどうしようかまだちょっと迷ってんだよな。 "寄っていきてえ場所もあるし"」

「あっそ……、よくわかんないけど。 私も引き続き同行するわよ」

「魔術に対する興味は無くなったんじゃなかったのか? お前」

「うるさいわね」


ドレスの少女を回収した垣根は荷物をまとめたバッグを提げると、
サーシャの方に振り返って軽く手を振って挨拶をする。
するとサーシャが、


「あ、あの! 第七六九の私見ですが、学園都市に帰ったら『天使同盟』に
 よろしくお伝え下さい! 暇を見つけたら遊びに行くのでよろしく、と!」


サーシャのお願いに、垣根はやはり手を振る事で答えるのだった。
983 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:17:18.32 ID:MBMzVLU9o

(さて、イギリス……。 『明け色の陽射し』も興味が
 あるが、やっぱまずあそこに顔出しておきてえんだよな)


魔力奪還の手掛かりをロシアで得た垣根帝督が次に目指すは、
彼が魔術により興味を示すきっかけにもなった地、イギリス。
『「未元物質(ダークマター)」の復活』という明確な目標も見えた彼は
イギリスで何を得るのか。


そして、垣根達を見送るサーシャの背後から、


「………………サ〜シャちゅわぁぁぁぁぁぁぁん…………」

「ぎゃああああああああ!!? クソッ、予め『命の水』を仕込んでいたのか!!」


ワシリーサに背後から抱きつかれるサーシャ=クロイツェフ。彼女はまだ気付いていない。知る由もない。


暇があったら学園都市へ遊びに行くという彼女の思いは、間もなく叶うという事に。
ただし、それが彼女にとって納得のいく叶い方であるとは限らないが……。
984 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:18:44.65 ID:MBMzVLU9o


――――――――――――――――――――――




『機内に漏出する我々の魔力を感知されると面倒なので、ご了承ください』




学園都市製超音速旅客機の操縦を担当するセレマ教の黒ローブの魔術師は
ロシアの空港にやってきた垣根に、離陸する数分前にこっそりと言った。

結果。
985 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:19:25.04 ID:MBMzVLU9o




「………………………………………………」

「うえぇ……うぇ。 まだお腹の辺りが削ぎ落とされた感覚が治らないマス」

「ったく、これだから学園都市は……。 まさか煙草を吸う余裕すら与えられないとは」

「今度はお酒飲まないようにしたのに、結局吐き気に襲われるだなんて……」




黒ローブの魔術師達による摩訶不思議魔術、重力加速度無効化術式の恩恵を得る事が
出来なかったロシア→イギリス間航空は最悪であるとしか形容できなかった。
986 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:20:33.24 ID:MBMzVLU9o

どうやら、あくまで秘密裏に行動をしたい黒ローブの魔術師達にとって、ステイルや
テオドシアは厄介者でしかなかったらしい。魔術サイドのそういった因果関係について
詳しくはない垣根はそれでもステイル達の同行を許可させ、黒ローブ達は渋々応じた。


よって垣根達は超音速旅客機の『殺人的な加速』をリアルに体験するハメになったのだ。
イギリスに一時間もかけず到着した一行は腹を下したように青ざめながら空港を出る。


「赤ちゃんを生む時とはまた違った苦しみが……しかも達成感ゼロ」

「生々しい発言は控えてくれ。 ……それで、君達はここからどうする?」


四男八女の子持ちママの説得力ある発言に呆れながら、ステイルは垣根達に尋ねる。
987 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:21:27.21 ID:MBMzVLU9o

「どうするって、その明け色のなんたらと合流するんじゃないの?」

「僕達は一旦イギリス清教本部に戻って詳細情報を貰いに行く。
 あれから一度も連絡がないという事は『明け色の陽射し』の
 連中が既に事を収めたか、依然として膠着状態にあるか、または
 逃走されたか、この内のどれかである可能性が極めて高い」

「『明け色の陽射し』が既にやられちまったって可能性はねえのかよ」

「「それはない」」


ステイルとテオドシアが声を揃えて否定した。しかしその物言いは
『明け色の陽射し』に対する心からの信頼から来ている訳ではなく、
『あの忌々しくも強すぎる連中が暴徒なんざに遅れを取る訳がない』、
という面白くない感情から出た発言のように聞こえた。
988 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:22:46.69 ID:MBMzVLU9o

「だから僕達は現場の状況や行動方針を本部で固めて向かうつもりだが……」

「先に言ってろよ。 俺は俺で勝手に連中と接触するから」

「あれ? じゃあ今からどこに行くのよ?」


ドレスの少女の疑問を無視して垣根は話を進める。


「『明け色の陽射し』のアジトもこの辺にあるんだろ?」

「いくつか拠点を構えているらしいが、少なくとも僕らは場所を知らない。
 連中がアジトの場所を開示して得られるメリットも無いだろうしね。
 君が連中に会うつもりなら今が良い好機だと思うけど、どうするんだ?」
989 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:23:58.09 ID:MBMzVLU9o

「あー……、まぁ何とかなるだろ。 じゃあこうしよう、俺もそのイギリス清教の
 本部って所に後で向かうかもしれねえから、お前ら話通しておいてくれよ。
 もしくは俺単独で暴徒の連中を追えばバッタリ邂逅出来るかもしれねえし。
 それと、もし暇が出来たらお前らのとこの"寮"に顔出してくれよ」

「…………簡単に言ってくれるマスねえ。 ま、あんまり無茶しないでくださいよ」


という訳で、垣根達は一度ステイル達と別れた。時刻は間もなく午前七時。
今年の一端覧祭も後半戦に突入してるな、と垣根は学園都市に思いを馳せながら
空を仰ぐ。が、そんな憂い気な彼の心を、彼自身の腹の虫が一刀両断してしまった。


「……そういやロシアを発つ前にメシを食うのを忘れてたな」

「あうー……ダルい」

「しゃあねえ、あそこに行ってついでにメシごちそうになろう。
 ……おい、何座り込んでやがる。 さっさと俺達も移動するぞ」
990 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:25:04.88 ID:MBMzVLU9o

ドレスの少女は何やらあうあう言いながら空港を出た先にある
ベンチに座って項垂れていた。だがそれは神社の可愛い守り神が
彼女に乗り移った訳ではなく、単に機内の強烈なGのダメージが
未だに尾を引いているだけのようだった。

彼女のようなスリムな体には尚更堪えたのかもしれない。
完全にダウンしてしまったドレスの少女は、


「先行っててー……」

「んだよだらしねえな。 先行ってろってんなら遠慮はしねえけどよ」

「うん。 それで、どこへ行くつもりなの? 私も復活したら
 そこへ向かうから教えておいてほしいんだけど」
991 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:25:53.82 ID:MBMzVLU9o

「ランベスによ、シスターが集まって暮らしてる寮があんだよ。
 俺が『天使同盟』に加盟したばかりの頃にそこへ行って遊んできた。
 せっかくだからイギリス来たついでに顔出しておこうと思ってな」

「……教会?」

「寮だっつってんだろ。 あいつらまだ住んでるのかなぁ」


そこは本人も言うとおり、垣根が『天使同盟』に加盟して最初に訪れた
魔術サイドの領域だった。
元アニェーゼ部隊のリーダー、アニェーゼを筆頭とした大勢のシスターが
暮らしている寮。垣根はここから本格的に魔術にのめり込み、未知なる
領域へと足を踏み入れた。

まるで昨日の事のように、垣根は当時の記憶を振り返る。
992 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:27:18.71 ID:MBMzVLU9o

「あの口うるせえシスターもいるんだろうな。 楽しみだ」

「あらやだ、あなたシスターフェチだったりするの?」

「そうじゃねえよ。 あいつらにゃ"事件"の時にも世話になったらしいしな。
 一方通行に変わって俺が一言例をしておこうと思っただけだっつーの」

「ふうん………………。 まぁいいけど、ランベスね。 了解」


弱々しく手を振って、ドレスの少女はついにベンチに寝転がってしまった。
年頃の女の子が無防備に横になっては色々と危険な気もするが、彼女は
学園都市の能力者だ。下衆な輩が寄ってきても容易に追い払う事が出来る。


斯くして垣根帝督は再びシスターが集うカオスな女子寮に足を運ぶのだが、
彼が想像しているような陽気な再会劇が訪れる事はなかった。
993 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:33:10.90 ID:MBMzVLU9o

ちと短めですが、今回はこれでおしまいです。

いかがだったでしょうか、久々の垣根帝督パートですが。
楽しんでいただけましたでしょうか。間を空け過ぎの場面転換と、
そして上で指摘された『腹立たしい』の誤字に関しては大変申し訳ないです。
二度目だよこのミス……。

次回はあの口うるせえシスターとの再会ですが、案の定邪魔が入ります。
どうぞお楽しみに。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

次スレでもよろしくお願いします。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1327741451/
994 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:33:46.97 ID:MBMzVLU9o



                          【次回予告】



「(二対一では……、いえ、多人数相手でも対応出来るのが
 『車輪』の術式。しかし相手の技量は私より遥かに上……)」
元ローマ正教のシスター――――――ルチア




「そいつ、俺のオンナなんだけど」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督



995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 18:34:54.34 ID:DWQDDaV90
>>1乙!!
ついに垣根×ルチアが…ッッ!!
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/28(土) 18:36:31.36 ID:rCaz/G9SO
いちおつ

かっきーフラグくるのか?
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/28(土) 18:36:52.61 ID:kwGWsRTIO
乙!

ラプラスの不具合がスレタイにまで出るとは…ヤバイな
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/28(土) 18:37:14.77 ID:yo6oy1Xvo
おつうめ
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/28(土) 18:38:45.10 ID:aFhGyjks0
いちおつ


次も楽しみに待ってる
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 18:39:21.60 ID:DWQDDaV90
>>1000なら垣根×バーバヤーガルート一直線
1001 :1001 :Over 1000 Thread
                  ヽ人人人人人人人人人人人人人人人ノ
         / ̄(S)~\  <                      >
       / / ∧ ∧\ \<  嫌なら見るな! 嫌なら見るな!  >
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学校BBS潰そうぜwwwwwwwwwwwwwwwww @ 2012/01/28(土) 17:40:00.78 ID:d/EXDgcT0
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