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美琴「触らないで!!」一方通行「・・・・・・」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 10:49:56.26 ID:2v+2XtbN0

・初ss
・拙い文章
・電磁通行
・シリアス
・遅筆

です!本気ですみません
時期的には5巻が終わったくらい?ですかね
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 10:51:01.83 ID:2v+2XtbN0

「君たちに集まってもらったのは他でもない、能力の向上のためだ」

敷地面積は学校一つ分というところか。そこに集められた四人の学生達は各々好き勝手にのんびりしつつ――例えばアルビノっぽい中性的な面持ちの少年は壁にもたれ掛かり缶コーヒーを飲んでいたり――一応、自分達を集めた研究員の話に耳を傾けている。
その四人の一人、御坂美琴はパニックを起こしてはいるものの、表面は自分のクローンも真っ青の無表情で装っていた。
理由は二つ。

(な、なんで第四位が居るわけッッ!?うわぁ睨んでる睨んでるよーッ!?)

一つは、前にドンパチやった敵が視線だけで人を殺せそうな瞳で睨んできていること。
そして、もう一つは、

(……一方通行……ッ)

彼女のトラウマを思い出させる、最悪の敵が居るから。
二人ともあの『実験』の時に色々あったのでいずらいいずらい。来なければ良かった、と少し後悔した。
だが来てしまったものは仕方がない。まさかこのまま帰るわけにはいかないだろう。

3 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 10:52:00.72 ID:2v+2XtbN0

「そこでだ。君たちには戦ってもらうことにする」

ハッと現実に引き戻され――それから考えた。戦う?レベル5同士で?
割合興味を引かれる話ではある。レベル5となればそこらの腑抜けとは違うにちがいない。
皆同様にそう思ったのだろう。にやにやしながら、よく知らないチャラそうな男が呟いた。

「成程な、俺の未元物質はレベル5にも常識が通用しないってことを見せてやるよ」

それに彼女の宿敵、一方通行が反応する。

「三下ごときがなァに調子こいてやがるンですかァ?」

なんだとコラ!?と喧嘩になりそうな二人を慌てて研究員は止め、

「今回集まってもらったのは上位四名、……お互いに自己紹介はしたのかな?そこの白髪赤目が第一位の一方通行、長身の彼は第二位の垣根帝督、常磐台の制服を着ているのが第三位の御坂美琴、シャケ弁を食べているのが第四位麦野沈利だ」

さらっとそれぞれの紹介をすますと、研究員はでは早速、と戦う者同士を指名した。

「一方通行、君は第三位の超電磁砲とだ」

なっと美琴は息が詰まった。最悪だ。まさかの、アイツとは。
当の本人、一方通行は片眉を少し吊り上げただけで何も言わない。
4 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 10:54:36.75 ID:2v+2XtbN0
逆に、研究員はさらに言う。

「一方通行、君の反射は能力向上のために解除してもらおう。ベクトル操作だけで戦いたまえ」
「……チッ」

一方通行は舌打ちしただけだった。美琴は不信気に彼を見る。変だ。あの『実験』の時は驚く程ハイテンションだったというのに。
そこで、美琴は一つの可能性をあげた。
まさか――自分に罪悪感でも感じているのか?
即座にあり得ないとその可能性を経ちきる。第一、あの『実験』では自分も加害者だったではないか。なのになぜ罪悪感を感じられなければならない?
それに。
あの――あの『化け物』にそんな人間らしい感情があるとは思えない。
一万人の人間を殺しておきながら、それでもなお笑ってさらに人を殺していたあの『人間』に。
それを一方通行に対する皮肉だとは美琴は認識していなかったが、確かにその時美琴は一方通行へそういう考えを抱いていた。
研究員は美琴と一方通行を別の部屋に連れていった。どうやらそこで戦うらしい。

「じゃあ、好きに戦ってくれ」

「好きにって……」

美琴が呆れたように呟いたが、研究員は無視して出ていってしまった。美琴はため息を吐き――渋々、一方通行に声をかけた。

「……ね、ねぇ」

「……」

無視かよ、と一人心の中で毒づく美琴。

(少し位反応してくれたっていいじゃない)

ムカついたので、もう一度呼び掛けてみる。

「ねぇったら」

「……なンだよ」

何故かほっと胸を撫で下ろす。少なくともこいつは話しかけただけで襲いかかってくるような奴ではないらしい。

「……戦わないの?」

「……チッ」

美琴のもっともな質問に、一方通行は舌打ちし

「オマエと同じ顔の奴と戦うのは飽き飽きしてンだよ」

イラッとした。
なによ、と思う。

(だったら、最初から実験なんてするなっての)

ギリ、と歯を食い縛り、右手は力強く握りしめる。顔に浮かび上がるのは明らかな憎悪。
自然と辛辣な言葉が口から出た。
5 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 10:59:26.53 ID:2v+2XtbN0


「最ッ低ね……アンタ」

「……」

「あの子達を殺したこと、何にも思わないわけ?飽き飽きした?それだけで終わらせられるの?はは……はは、最高ね、ほんと、最高ね……ッ」

「……」

やめろ、と理性が止める。
もっと言ってやれ、と憎悪が囃し立てる。
美琴は、一方通行を睨み付けながら震える声で思い切り叫ぶ。



「ふざけんじゃないわよ――ッッッ!!!!!」



6 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 11:12:23.56 ID:2v+2XtbN0

その瞬間、ゴバッと胃の中のものが逆流しそうになる。
美琴はふらふらとしゃがみこんだ。右手で口を押さえる。そうしないと吐いてしまいそうだ。口の中は胃酸で酸っぱく、目尻には涙が滲む。

「オイ、オマエ……?」

一方通行がたじろいたのに気付かず、彼女は一人、震え続ける。
脳裏に浮かぶのは少し前の記憶。

一緒に猫を助けた。――彼女の壊れたゴーグルを見つけた。
一緒にアイスを食べた。――車体に押し潰される妹と届かない叫び。
一緒に蛙のバッチの取り合いをした。――あの子のちぎれた片足が見えた。

血が、
もう、血が、さようなら
血が。もう、いない。片足、じゃあね

「う……うぅ……っうぐ、ひ、ぃあ……っ」

「オイ、だから――」

もう、いない。
私のせいで、あの子は。
もう――いないのだ。

美琴は全てを拒絶するようにいやいやと首を横にふった。
拒絶。
それはあの子との思い出か。
それは自分も加害者側だということか。
それは――
7 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 11:13:00.59 ID:2v+2XtbN0




「う、あ……うああああああああああああッッッッッッ!!!!!!!!」




8 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 11:13:33.91 ID:2v+2XtbN0

訳も分からず美琴は叫んだ。彼女の全身から放たれる電撃がバチバチと派手な音をならした。美琴を中心にして強力な磁力に引き摺られ、鉄パイプなどが宙に浮かび渦を描く。
一方通行は美琴の肩を掴んだ。これは明らかな暴走だ。レベル5、それも上位の者の暴走から巻き起こる損壊などは考えたくない。早く覚醒させた方がいいと判断した上での行動だ。
だが。

バチィンッ、とその手を叩かれる。

一方通行が思わず身をひいた。
彼の視線の先には。

「触らないで!!!」

「……」

憎悪。

恐怖。

恐れ。

屈辱。

怒り。


様々な感情をない交ぜにした美琴がいた。
彼女は一方通行の手を払いのけた格好のまま、もう一度叫ぶ。

「触らないで!!化け物!!」

「……ッ」

9 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 11:14:48.82 ID:2v+2XtbN0

一方通行は美琴から目をそらした。そこでようやくハッと美琴は目を覚ます。

「あ……わ、わた……し……」

自分がやったことを信じられないとでもいうように自分の手と一方通行の顔を何回もみる美琴。
一方通行は舌打ちをして美琴から離れた。もう一度壁にもたれかかる。

(触らないで……か)

彼女の言葉は彼の心を抉ると同時に安堵させた。
打ち止めのような母性満開で自分の罪を受け入れられるよりも、こちらの方がよほどいい。
だが、結果としてこの少女をさらに傷つけている気がするのが難点だが。
彼女とて、彼が守りたい――守らなければならない相手なのだから。
本人はそれを拒絶するのだろうが。
ともかく、むずがゆい。
守るべき相手は今、今にもなきそうな顔で自分を見ていた。
なんて言葉をかければよいのだろう。第一位のくせに、そんなこともわからないのか、と自らを嘲笑した。あるいは、あの三下ならば、こんな時かける言葉がぽんぽん浮かび上がるのかもしれない。

(あー、やりづれェ)

わなわなと震えるこの弱い少女が、あの時自分の前に立ちはだかった意思の強そうな少女と同じには到底思えなかった。
レベル5とはいえ、まだ中学生なのだ。
そんな当たり前のことを、一方通行は噛み締めていた。


10 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 11:35:03.95 ID:2v+2XtbN0

一方、美琴は美琴でどうしようと悩んでいた。
謝る気はない。毛頭ない。
彼はそれを言われるだけのことをやってきたと思うし、あんなことをされた男に頭を下げるだけの優しさもない。
だからといって、何をしてもいい、というわけではないのだろうが。

(うあー、どうしよう……っ。やっちゃたーっ!!)

でもなんだかんだで後悔している節がある限り美琴もまだまだ甘い――いや、優しいのかもしれない。
もしくは、優しすぎる、か。

「あ、あの……」

「気にしてねェ」

美琴が話しかけると何も言わずに彼はそう言った。
それから流れる沈黙の時間。

(うう、気まづいー……)

自分のせいだと分かってはいるものの、早くなんかしゃべれやー!と内心一方通行に催促する。
美琴のその思いが伝わったのか、一方通行は口を開いた。

「……その、悪かったなァ。挑発しちまって」

「……別に。こっちこそ」

「オマエは多分、信じらンねェだろうけどなァ……」

「?」

「俺は妹達のことをどォでもイイとか思ってねェからな」

「……は?」

11 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 12:40:41.81 ID:2v+2XtbN0

美琴は呆けたように一方通行の顔を見る。
一方通行は自分から顔を背けていたが、それでもわかる。
耳までまっ赤に染まりきった表情。
これは、もしかして。

(・・・・・・?照れてる?)

そんな訳がない。だって相手は一万人以上の人間を殺してきた『怪物』。
人間らしい感情なんて、あるわけがないのに。
そう思って、しかしそれを疑問に思う。

本当に、そうなのだろうか、と。

(・・・・・・馬鹿なことを考えるのはやめよ)

美琴はため息をついた。どっちにしろ、人間らしい感情があったところで、罪が消えるわけではない。
冷たい壁に体重を預け、天井を見上げた。
建材などがつまれてはいるものの、基本的にこの部屋はすっからかんだ。
ふと、口に出してしまう。

「・・・・・・ねぇ」

「・・・・・・アン?」

「こんな感じの場所だった? ・・・・・・屋内の『実験』って』」

「・・・・・・あァ」

そう、と美琴は呟いた。そして、瞼を閉じる。
一方通行は思う。
この少女の目の裏側では、一体どんな悲惨な光景が浮かび上がっているのだろう、と。
打ち止めから聞いている。
超電磁砲が、とても『妹達』を大切にしていると。
そして、同時に罪悪感を深く抱えていると。

『お姉様はね、ミサカ達と遊ぶときね、すっごく愛しむような目を向けてくれるのってミサカはミサカは自慢してみたり!』

『・・・・・・でもね、同時に凄く、凄く悲しそうなんだって、ミサカはミサカはしょんぼりしてみる・・・・・・』

そして、こうも言った。

『お姉様にとって、ミサカ達の中で一番大切なのは、9982号なのかもしれないね・・・・・・ってミサカはミサカはちょっぴり寂し気にいってみたり』

一方通行はおそるおそる超電磁砲のほうへ視線を向ける。
と、彼は拍子抜けした。

(寝て、やがる・・・・・・)

宿敵の前で睡眠などと無防備な姿をとる彼女に呆れつつ、彼もまた瞼を閉じた。不思議なことに、眠気までしてくる。
耳をそばだてると、少女のすーすー、という可愛らしい寝息が聞こえる。
それを聞きながら、彼も眠気に身を委ねた。

12 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 13:06:26.66 ID:hXK9wpzl0
電磁通行も好きだが第二位と第四位も気になるな
13 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 13:50:36.27 ID:t8e0qaPa0
戦えっていわれて、なんでいきなり寝始めるんだwww
14 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 14:02:02.30 ID:2v+2XtbN0
>>12 一方その頃〜的な感じで一瞬書こうかなとか思ったんですけど、書いたほうがいいですかね?

>>13 多分のんきだからだと思います。多分。
15 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 14:04:31.84 ID:dtEzlAH20
いきなり集められて戦わせられて寝始めるってことはつまり…
どういうことだってばよ
16 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 14:16:10.25 ID:zid99JDSO
>>15
おのれ魔術師!
17 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 14:20:24.64 ID:FNnU5mEAO
はよかけや
18 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 14:21:47.08 ID:tfLRXs/oo
わけのわからなさは嫌いじゃない

でもわけがわからない
19 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 14:22:36.52 ID:2v+2XtbN0




「んー・・・・・・うぅ?」

美琴はぼんやり目を覚ました。あれ?ここはどこだっけ?
そしてどこか首がこそばゆい。何かが当たってる気がする。
なんだろうとそれをぺたぺたと触ると、なんだか気持ちいい。

「ふにゃー、ふわふわー」

ぬいぐるみだろうか?しかし、彼女には白いぬいぐるみを買った覚えはなかった。
・・・・・・って、ん?

「しろい、ぬいぐるみ・・・・・・?」

嫌な予感がした。
凄くいや過ぎる予感がした。
ギチギチと変な音がなりそうなくらい機械のように少しずつ顔を右肩の方へ向ける美琴。
見えたのは、白いもの。
否、白い髪。
そこまでわかると、もう十分だった。


「ふ、ふっにゃ、ふにゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


バチバチバチィ!!と美琴の髪の毛から電気がスパークする。
自分の顔が羞恥に真っ赤に染まっているのが分かる。嫌なくらい分かる。
彼女がぺたぺたと心地よさげに触り、自分の肩に頭を預けていたのは。

一方通行、だった。

20 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 14:43:51.81 ID:dhNW0c38o
むぎのんと垣根はこの間なにしてるんだ?録画か?ww
21 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 14:44:48.00 ID:2v+2XtbN0
ベタ過ぎる展開すみません。でもコレしか思い浮かばなかった。



最悪だ、とうなだれる。
というより、傍目から見たらカップルではないか。そう思って、またボンッと顔が赤くなる。
美琴のスパーク音で目を覚ましたのか、「うン・・・・・・?」と一方通行が目を覚ます。
きょろきょろとあたりを見渡して、――美琴と目が合った。
そして、二人して硬直。

「・・・・・・ハ、ァ・・・・・・?」

「う、うぅう、うぅううううーうーうーうーっ」

目を見開く一方通行と、顔を真っ赤にしてうーうー唸る美琴。
一方通行も現状を認識すると耳まで真っ赤になり、「ちょ、ま、どォなってやがる・・・・・・っ!?」とあたふたしはじめる。

「と、とりあえず・・・・・・っ!離れて」

「お、おゥ・・・・・・」

二人は離れるととりあえずほっと一息した。
美琴はできるだけ一方通行を見ないようにしつつ、ぼそぼそと話しかける。

「あ、あのさ・・・・・・さっきまでのことは、その・・・・・・記憶を封印って方向で・・・・・・」

「あァ・・・・・・分かってる」

きまづい空気を破るようにピーンポーンパーンポーンと間抜けな音が部屋に鳴り響く。
そして、どこかに備え付けられているであろうスピーカーから声が聞こえた。

『一方通行、超電磁砲、帰宅時間がもう近い。戦闘をやめて帰るように』

「「・・・・・・」」

二人して黙る。
あれ?結局戦ってなくね?と思ったが口には出さない。口に出したら負ける気がする。

22 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 14:50:51.90 ID:t8e0qaPa0
ごめん。シリアスって書かれてるから真面目に読んで損した。
あれか、PLAYPLAYPLAYとか言う馬鹿の類か
23 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 14:53:23.98 ID:2v+2XtbN0
シリアスも入りますけどちょっと待ってください。
いまほのぼのパートなんで。



「じゃ、じゃあ帰りましょうか・・・・・・」

美琴の言葉に一方通行は頷き、二人は立ち上がった。
外に出るともう夕暮れだ。いったい何時間寝ていたのやら。
二人は無言で並んで建物から出た。
昨日『上位のレベル5を集めて戦わせて能力を上げるので絶対にくるように』といわれて渋々来た意味はどこに。

(あー、何で私寝ちゃったのかしら・・・・・・。そんなに疲れていたのかな?)

確かに昨日は黒子に変態アタックをされてシメたり妹達とショッピングに出かけてクタクタだったりはした。
でもまさか、宿敵の前で寝てしまう様な失態を犯すほどではないはずだ。
宿敵――どちらかといえば、憎んでいる『怪物』が、憎んでいる『人間』へと、認識が変わったことによる油断が原因だったと彼女は気がついていない。
そんなことを考えつつ、分かれ道まで二人で歩いていると

「あれ?ビリビリじゃねーか」

「あ、アンタ・・・・・・ッ」

上条当麻に出会った。
瞬間、美琴の顔がまた赤く火照る。
彼女は会えたことの嬉しさを隠すために咄嗟に言い放つ。

「わ、私の名前は御坂美琴よ!い、いい加減覚えないさいよ、馬鹿!」

ついでとばかりにビリビリと放電してしまう美琴。
それを見て、ゲッと上条は声をあげた。

「す、すまん!謝るからビリビリは簡便してください美琴!」

「み、みこっ・・・・・・ッ」

急に名前で呼ばれ、美琴はまた顔が赤くなった。
と、先ほどまで黙ってこの会話を見ていた一方通行は「あ」と何かに気づいたように声を漏らす。

「オマエ、あの時の三下じゃねェか・・・・・・ッッ!!」

「そういうお前は一方通行!? ふ、不幸だーッ!」

その二人の様子を見て、美琴は冷静に戻ったのか一方通行を諌めた。

「ちょろっとー、コイツに手ェだしたらぶっ飛ばすわよ?」

目を細めマジ切れする恋する乙女の顔を見て一方通行は悟った。

(成る程、超電磁砲は三下に惚れてるっつゥわけかァ)

でもまあ三下のほうは気づいていなさそうだが、と彼は推測する。
24 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 15:06:58.20 ID:g/PhAfTAO
なんという原作レイプ
25 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 15:18:12.49 ID:axkK9PCqo
電磁通行+シリアスなので期待して読んでみたら…
誤字多い、設定破綻、文章おかしいと色々残念すぎる
26 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 15:27:38.73 ID:dtEzlAH20
誤字や文章は特に気にならないけど設定や展開の納得出来るものにしてほしいかな
27 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 15:29:14.59 ID:N/35NQfDO
戦うっていうシチュエーションでの再会だったのを、書いてる途中で忘れたのかと思った
28 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 15:33:23.45 ID:nVUJTFXTo
この電磁通行は恋愛系?和解系?まさかの美琴の恋を応援する一方さん?それとも別の何か?

29 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 15:39:38.18 ID:2v+2XtbN0
色々と言われてるしかかないほうがいいのかなぁと思いつつ更新。
>>27書いてる途中でどんどんそれてしまうんです、すみません・・・・・・
>>28いうなれば全部です。あんまりネタばれはしたくないんですが、上条さんとのを応援後、恋愛系に入っていきます



守るべき相手である超電磁砲の相手をなぶるのもなんだし、と一方通行は思い直す。第一、勝てる気がしない。腹の立つことに。

「ふン、もう別に三下のことなんざどォでもイイ」

「え!?まじで!?うっそ、ありがとうございますありがとうございます!!」

一方通行の言葉に上条は何度も何度も頭を下げる。なんでこいつがお礼を言ってるんだ?と首を傾げつつ彼はくるっと背を向けた。

「一方通行?」

「帰る。お前らと馴れ合うつもりはねェ――!?」

そのとき、ぎゅーっと一方通行は抱きつかれた。突然のことに、彼の体は少し後ろへ揺れた。

「だったらミサカとだったら馴れ合うつもりはあるの?ってミサカはミサカはちょっと意地悪な質問をしてみたり!」

「クソガキ・・・・・・!?オマエ、なンでここに・・・・・・」

「えへへ、お姉様の電磁波を近くに感じたから来てみたら、たまたまあなたがいたのってミサカはミサカはここにいる理由を説明してみる!というわけでお姉様初めまして!」

「え?え?あ、え?は、初めまして??」

いきなり会話に割り込んできたあほ毛ピンピンの幼女の存在に、美琴は首を傾げた。

「あの子たち・・・・・・?にしては、体が小さすぎるような・・・・・・」

30 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 15:43:19.38 ID:tKPW5JcIO
シリアスならシリアスで最後まで通せよって思う
電磁通行嫌いじゃないけどこれはあまりにも酷いぞ…
31 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 15:53:35.24 ID:RvG53xaDO
別に何も変ではないだろ

最近は自称評論家がひどいな
32 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 16:14:16.33 ID:P6l50HCF0
応援してる
33 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 16:17:55.53 ID:cxRlTdyho
支援だよ
34 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 16:33:01.54 ID:t8e0qaPa0
>>31
逆に、戦えといわれた寝た理由をどう補完したのか聞きたい
35 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 16:38:35.90 ID:Fon81TPko
二次はあらゆるものを許容する
36 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 17:01:11.74 ID:YeHDOgayo
日常やほのぼのから落とす手法は王道で、むしろ落差のない終始シリアスは稀。
プランとか、理由付けをきちんとしてれば実験自体が電磁通行を推すって解釈も可能。


でも二次だから、細けえこと(ryって言うなら二次でする必要がない。
大した理由なく美琴の失恋で一方が〜、打ち止め噛ませ〜のご都合主義全開ならここより、相応しい場所があると思う。
37 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 17:07:03.22 ID:yvH3/HKQ0
>>1
期待してる
38 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/19(月) 17:08:49.00 ID:2v+2XtbN0



「ミサカは妹達に命令できる上位固体で、ミサカネットワークの中でコンソールみたいな役割を担ってるんだってミサカはミサカはさらっと自分の説明をしてみたり!ついでに20001号で打ち止めって呼ばれてるよって補足説明してみる!」

「よく分かんないけど・・・・・・アンタも私の妹ってことなのよね?」

「うん!ついでに末妹だねってミサカはミサカはうれしそうに頷いてみたり!」

「で、どうして妹は一方通行と仲がいいの?」

当然の質問である。
どうして『妹達』の一人は、敵である一方通行に抱きついたのか。
打ち止めはきょとんとし、美琴はその打ち止めと一方通行の顔を見比べている。

「端的にいうとね、ミサカの命を助けてくれたからだよってミサカはミサカは言ってみる」

「助けてくれた?」

「・・・・・・チッ」

一方通行は小さく舌打ちする。多分そこには照れ隠しが隠れているのだろう。
善意による行動を恥じる必要はないのに、と打ち止めは思った。
打ち止めは一方通行が命がけで自分を守ってくれたことを美琴に説明した。
美琴はそれを黙って聞いていたが、その目には明らかな不審の色が浮かんでいる。

「――というわけなの、ってミサカはミサカは説明してみたり! お姉様はやさしいからつっこまなかったみたいだけど、この人が杖をついているのはそのせいなんだよってミサカはミサカは――」

「で、でも!!コイツの罪は変わらないのよ?1万人を救ったからといって、1万人を殺したのを許す理由にはならないでしょうが!」

美琴はたまらずに叫んだ。
打ち止めはそれを聞いて、首を横に振る。

「んー、許してはないんだよってミサカはミサカは本人の前で大暴露!」

「・・・・・・は?」

ぴく、と一方通行が動いたのを打ち止めは気づいたのかどうか。
ぽかんと口を開ける美琴に打ち止めは苦笑して、

「この話は今度ねってミサカはミサカは”次”の約束をとりつけつつ誤魔化してみる」

「・・・・・・はー。分かったわ。今度ね。アンタ携帯持ってる?番号交換しましょ」

「え?いいのってミサカはミサカは飛び跳ねてみる!!」

打ち止めはパタパタと美琴のほうへ走る。
そして、美琴の出した携帯に「うげ」と呆れたような半眼になった。
その反応が後輩と似ていて美琴は少しむくれる。

「本当にお子様趣味なのねってミサカはミサカはドン引きしてみる」

「な、なによう。みんなして。・・・・・・と、これが番号ね」

「わーいお姉様の番号ゲットーってミサカはミサカは飛び跳ねてみる!!」

言葉どおり飛び跳ねる末妹に、美琴は淡く微笑んで

「よし。これで”次”がいけるわね」

「うん!また会えるねってミサカはミサカは笑顔でお姉様に答えてみる!」

ばいばーいと一方通行に引っ張られていった打ち止めを見ながら、上条は「よかったな」と声をかけた。
美琴はびっくりして言う。

「あら、アンタまだいたのね」

「ひど!?御坂さんひっど!?」

上条は涙目で美琴を見る。冗談よ、と美琴は笑った。

「それにしても、さ」

「何だよ」

「あの子達、私を恨んでないのかしら」

「・・・・・・」
39 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 18:30:30.75 ID:Op7QCNmK0
電磁通行は少ないから挫けずに頑張って欲しい。
応援してるよ。
40 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 19:39:26.92 ID:ST4vugfSO
普通に面白いよ、楽しみ
なんか偉そうに文句つけてる奴は帰れば?
41 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 23:16:25.51 ID:3YY3/dLto
電磁通行キタ━(゚∀゚)━!
42 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 00:29:19.44 ID:awe2ZIwa0
5巻が終わったくらいっていったら一方さん入院してるんじゃね?
43 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 01:07:28.66 ID:KrjVMrpDO
脳みそシェイク状態とか言ってたね
44 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 01:15:28.74 ID:wtO2xYQz0

電磁通行難しいからなぁ…
最初の実験シーンて今後話に関係あるの?それとも二人を出会わせる為だけに設定したんじゃないよな
今後の展開に関係してるなら良いんだが、もしも後者ならちょっと適当すぎる気がしなくもない
45 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 02:42:44.97 ID:nsJ9Ul2IO
電磁通行と聞いて期待して開いてみたのに…

せめて設定くらいきちんと組み立ててから投下しようぜ
46 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 09:46:17.13 ID:BdCHu+hOo
むしろどこの設定が不満なのだろうか
普通に話進んでるだろ・・・

騒ぐなら完結してから騒げよ

元来の本だって書き終わってから出版される訳だし、執筆中にあまり根拠のない文句を垂れるのは野暮
人それぞれ好みもある訳だし、誰かが文句言い出したらキリがない
47 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/20(火) 16:00:56.61 ID:6Nn1l2QLo
嫌なら見るな、文句言うなら見るな、文句見たくないなら見るな、文句言われたくないなら見るな、そして誰もいなくなった。
作者死ねとか暴言は別だけど、批判すら気に入らなければ黙ってNG登録すればよろし。
読者同士が喧嘩するのが作者からしたら一番困ることを知った方がいい。
48 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/20(火) 16:12:23.09 ID:VKd1EYSW0


「私は、あの子達をたくさん見殺しにしてきたって言うのに」

「それでも、立ち上がったことは事実だろ?」

「原因を作ったのも私だけどね」

「・・・・・・それでも妹達はお前を恨まないと思うぞ」

「・・・・・・そうね、そう思っておくことにするわ」

美琴はぐいー、と伸びをした。この話はここで終わり、とでもいうように。
夕暮れが二人を照らし、それはもう夜が近いことを示していた。

「さて、帰りますか」

「だな」


49 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/20(火) 16:14:22.05 ID:VKd1EYSW0

「ただいまー」

「あら、お帰りなさいですの。お姉様」

先に寮に帰ってきていたらしい後輩、白井黒子に挨拶をしつつ、美琴はぼふんと音を立ててベットに倒れこんだ。眠くはないがなぜか疲れた。
一方通行。
それから、それに懐いている妹、打ち止め。
変なの、と彼女は思う。どうして自分達を殺した張本人と仲良くできるのだろう。

(・・・・・・ま、あの子の勝手だ、といわれたらそれまでなんだけど)

いくら姉とはいえ、個人の思想に手を出すような真似はしてはならないだろう。
深く、大きくため息をつく。隣にいる同居人に気がつかれない様に。
と、

「ふにゃっ!?」

ピリリリリ、と携帯から着信音がなる。
だれだろう、とパカッと開いて少し驚いた。

「打ち止めだ・・・・・・」

そういえば番号を交換したっけ、と思い出してちょっぴり微笑む。
メールを開き、操作をして中を開いた。

『やっほー、お姉様!
 折角正規ルートで番号を手に入れられたしメールしてみたのってミサカはミサカはこのメールの意味を説明してみる!
 でねでね、お姉様。空いてる日ってあるかなぁってミサカはミサカは尋ねてみたり。
 会って、今日の話の続きと、それから一緒に遊びたいなぁってミサカはミサカはここぞとばかりに自分の願望を言ってみる!』

どうやらメールでもあの口調は変わらないらしい。彼女らしいといえば彼女らしいが。
美琴はくすくす笑って返信用のメールを打つ。
それをみて、黒子は不思議そうに

「誰とメールしてるんですの? ハッ・・・・・・まさか類人猿と!?」

「違うわよ。私の妹。末妹とメールしてるの」

「末妹・・・・・・?お姉様、姉妹がいらっしゃったのですね」

「ま、ねー。っと、返信返信」

『こんばんわ、打ち止め。
 メールでもその口調変わらないのね。打つのが大変そうだけど。
 明日なら日曜日だし全然空いてるわよ。打ち止めはいつあいてるの?』

ピッと返信ボタンを押す。
『送信されました』という表示が出てきたので、美琴はパタンと携帯を閉じた。
あの小さい手でがんばってメールを打っているのだろうか、と考えるとなんだか和んだ。
ベットでごろごろしていると、またピリリリ、と着信音がなる。
すぐさま携帯を手にとって、メールを開いた。

『ミサカは明日何もないし、そーしよう!ってミサカはミサカは同意してみたり!
 ついでにこの口調はミサカがミサカたるゆえんだからはずせないのってミサカはミサカはこの口調気に入ってるんだぜーっていうことを何気にアピールしてみる。
 どこいくどこいくー?ってミサカはミサカはまたまた尋ねてみたり!』

「んー・・・・・・。ねえ、黒子、10歳くらいの妹とでかけるなら、どこがいいかなぁ」

「10歳ですの? 無難に学び舎の園に招き入れるとか・・・・・・」

「学び舎の園はちょっと周囲の視線が気になるかも・・・・・・」

何せ自分のそっくりさん(幼女ver)が自分と歩いているのだ。さぞかし好奇の目を引くだろう。
黒子はうーん、と唸り

「ではセブンスミストなどはどうでしょう?」

「セブンスミスト? あー、そうね、いいかもしれないわ。ありがと」

『ミサカたるゆえんってww
 セブンスミストとかはどうかしら?周りにクレープ屋とかあるしね。一緒に食べない?』

もう一度操作をして返信する。

(お姉様・・・・・・凄くにやにやしていますの・・・・・・。そんなに妹様が大事なんですの?黒子少しばかり妬けてしまいますの!)

バタバタと足を動かしちょっとむくれてみせる黒子。まあ当の同居人はどうせ気がついてくれないのだろうが。
鈍感も困ったものですわね、と黒子はにやにやしながらメールをまっている美琴をみて、くすりと笑った。
50 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/20(火) 16:14:58.17 ID:VKd1EYSW0
何気にレールガンネタも入ってます。


「おおー!なんだかいっぱいものがあるってミサカはミサカははしゃいでみたり!!!」

「はいはい、暴れないのー」

ガッチリと打ち止めの腕をつかんだ美琴は、それでもなんだか楽しそうだ。
そんなお姉様の顔をみて、打ち止めの顔も綻ぶ。テンションがあがってもしょうがない。

「ねえねえお姉様、あのストラップの蛙がお姉様が好きなやつだよねってミサカはミサカは尋ねてみる!!」

「そうよ、ゲコ太っていうの。・・・・・・あのストラップほしい?」

「ええ!?」

ちょっとうずうずした感じの打ち止めを見て、美琴がそう尋ねるとうれしそうに打ち止めは驚いた。
美琴は笑って

「じゃあ買ってあげるわ」

「え・・・・・・?お姉様、いいの?」

「勿論。妹の我侭を聞くのは姉の務めなんでしょ?」

「・・・・・・うん」

美琴の言葉に打ち止めは頷いた。
姉妹だけでの休日は、どうやら楽しいものになりそうだ、と美琴は内心思った。


51 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/20(火) 16:15:42.07 ID:VKd1EYSW0


「ふー、遊んだわねぇ」

「ねー、ってミサカはミサカは同意してみる」

セブンスミストから出て、クレープを買った二人は食べ比べをしながら仲良く食べていた。
美琴はイチゴクレープ、打ち止めはチョコマロンクレープである。
ベンチに腰掛、似ている(もしくは似すぎな)姉妹がクレープを食べているのは結構人目を引くものだと二人は気がついていないが。

「で、よ。昨日の話しの続き、してほしいんだけど」

クレープを食べ終えると、美琴はそう切り出した。
打ち止めは困ったように笑い、「よく分かりにくいかもしれないんだけどね」と前置きし、自分たちの心情をゆっくりと話し出した。

「まずひとつ、ミサカ達はあの人を許してはいない。これは分かってねってミサカはミサカは昨日行ったことを反復してみる」

「・・・・・・ええ、分かったわ」

「でも、同時に感謝してるの。助けられたからねってミサカはミサカはこれまた反復してみたり」

許さないのは殺されたからで。
感謝しているのは助けられたから。

だからといって、そう割り切れるものでもないだろう、と美琴は思うのだが。
そんな美琴の心情を知ってかしらずか、打ち止めはこんなことを言った。

「だから、お姉様にはあの人と仲良くしてほしいのってミサカはミサカは頼んでみる!」

「え?」

あまりの言葉に美琴は思わずまじまじと打ち止めの顔を見てしまう。
打ち止めは真剣な顔をしていた。

「……どうしてアンタは一方通行と私が仲良くして欲しいって思ってるの?」

「どうしてって……それは、お姉様も、ミサカを救ってくれたでしょってミサカはミサカはあのときのことを思い返してみる」

「……私は、誰一人、救えなか――」

「ヒント」

美琴の話を遮るように打ち止めはさらに言葉を重ねた。

「お姉様は――少なくとも、お姉様自身が自分を加害者だと思っているはずってミサカはミサカは確認してみる」

「当たり前、じゃない」

「んー、分かんないかー。じゃあもう一個ヒントね。お姉様は加害者にして救世主。それってどこかの誰かさんと似てない?ってミサカはミサカはそこはかとなく匂わせてみる」

「あっ……」

ようやく、美琴にも打ち止めが言いたいことがわかった。
つまり、美琴と一方通行の立場が似ているということ。
52 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/20(火) 16:17:22.95 ID:VKd1EYSW0

「でも、似ているから……なんなの?」

「似ているから、傷の癒しあいができるかなーとかミサカは考えてるのってミサカはミサカは自分の考えを伝えてみる!」

「……」

「でもね、お姉様。これはあの人のためじゃない。お姉様のためなんだってミサカはミサカは姉思いをアピールしてみる!えへへ」

「私の……ため」

美琴の呟きに、そうだよ!と打ち止めは笑いかけ、

「よく聞いていてね、お姉様。お姉様がどう思ってるか分かんないけど、今から言うことは真実。ミサカはお姉様を恨んでなんかない。むしろ感謝してるの。加害者じゃない、被害者――救世主なんだよ。だからね、お姉様。――もう、ミサカ逹のことで、思い悩まないで。ミサカ逹だって強いんだから!お姉様に似て……ね?」

打ち止めの笑顔を見て、美琴の心は震える。
嬉しい。
純粋にそう思う。

だけど。

『さようなら、お姉様』
引き留めなかった、実験のことを何も知らない馬鹿な自分のせいで死んでしまった少女。

『やめてよ。その声で、その顔でっ。もう……私の前に現れないで……ッ!』
酷いことを言ったまま、謝ることもできずディスプレイ越しに死んでいった少女。

たった二人だけど。
たった数時間、数分しか一緒にいなかったけれど。
それでも、大切な妹達だった。

その二人のことを思うと、とても――

――とても、許してもらうことなんかできない。
否、許されるわけがない。

私が、殺したんだ。

その言葉は嘘じゃない。
だから、許されない。許される、わけがない。
53 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/20(火) 16:18:10.53 ID:VKd1EYSW0

「あっ……」

ようやく気が付いた。
恨んでいるのだろうか。
憎んでいるのだろうか。
そう思っていたのは、自分が傷つきたくなかったから。
いつの日かあの子たちがきちんとした感情を持ち、憎悪や怒りを理解したとき

『全て、お姉様のせいなのですね』

そう言われるのが、何より嫌だったから。
いくら加害者じゃない、許している。そう言われたところで。
いつの日か――

「あは、あはは……」

なんだ。
どこまでいっても自分は自分勝手すぎる。
そう思って、自嘲の笑みを浮かべた美琴の脳裏に浮かんだのは、一人の敵。

一方通行。

そうか、と理解する。
こいつも、同じだったのかと。

「……アンタも、弱いのね」

レベル5のくせに。
学園都市最強のくせに。
なんて――弱い。
笑ってしまうくらい、弱すぎる。

「お姉様……大丈夫?ってミサカはミサカは心配してみる」

打ち止めは顔つきが変わった美琴を心配したのか、声をかけてきた。
少し考えて、美琴は言った。

「ねぇ・・・・・・、アンタ、一方通行の居場所知ってる?」

「・・・・・・お姉様」

驚いた顔をして――それから、すごくやさしそうな微笑をうかべ、打ち止めは言った。

「うん、知ってるよ」
54 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 16:43:51.80 ID:wknO632Mo
シリアスな電磁通行なんて特に心情表現や展開が大事なのに、そこが下手じゃ叩かれてもしゃーない
でも原作最新刊が出てから、こんなもんでいいんじゃないかって気もしてるんだよなぁ…
ともかく、俺は期待してます>>1
あと、批判を受け取るのは>>1なんだから外野が騒ぐな迷惑だよ
55 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 16:46:59.20 ID:l6Y7iPibo
自分で騒いでなにいってんだこのバカは
56 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 17:06:16.83 ID:xZNe7raeo
叩かれてるとはいうけど要はどそれだけよくなる余地があるってことだろ
あと>>46はこういってるけど書きながら感想、批判をもらえるってことはこういった掲示板でSS書く側としては最大のメリットだと思う
だから批判は批判としてきちんと受け取って直していけば何も問題はないってこと
つまり自分は電磁通行大好きなので超応援してますよ
57 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 17:10:18.62 ID:orP2Y6PFo
小難しいことは置いといて、>>1頑張れ!
58 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 18:19:22.89 ID:pBrsukvB0
何か面白くなりそうな予感がする。
批判の声を教訓に、支援の声を励みにして完走して欲しい。
59 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 20:00:22.24 ID:w/YOQVN+o
乙!!応援してる
60 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/21(水) 21:43:03.17 ID:rrt76dOk0


打ち止めが案内したのは、比較的近いところにある病院。
二人で手を繋いで病院を歩く様は、どこからどう見ても仲の良い姉妹だ。

「そっか・・・・・・アイツ、怪我してるんだっけ」

「うん。・・・・・・あのね、お姉様」

「何?」

「これは、ミサカの推測なんだけど・・・・・・。あの人ね、実はあんまり出かけちゃいけないのってミサカはミサカは言ってみる」

「・・・・・・うん。それで?」

「そんな状態で昨日の呼び出しに応じたのは・・・・・・あわよくば、お姉様と仲直りしたかったからじゃないかなー、なんて・・・・・・その、ミサカは」

ふぅ、とため息をつく。
本当に、この末妹は一方通行が好きなのだ、と美琴は理解した。

(まったく、私の妹をたぶらかしてんじゃないわよ)

と思ったが口には出さない。第一、たぶらかしているわけではないのだろうし。
美琴は苦笑して、ぽんぽんと打ち止めの頭を撫でた。

「大丈夫よ、アイツを殺したりしようなんてもう考えちゃいないから」

そっか、と打ち止めはほっとしたように呟き、「あ、ここだよ」と先ほどとは違う朗らかな声を出した。
目の前にある扉には『一歩通行』とそっけなく書かれているプレートがある。確かに彼の部屋なのだろう。
緊張が彼女の頭の中を支配する。
そのとき、手の中からぬくもりが消えた。

「え?」

打ち止めが、手を離したのだ。
美琴が不思議そうに打ち止めを見ると、打ち止めはにこにこと何が楽しいのかうれしそうに笑って、

「ミサカはここで待ってるね、ってミサカはミサカは空気の読める女を演じてみる!」

「……サシで話をしてこいってこと?」

「そういうことになるねってミサカはミサカは頷いてみる」

美琴は嘆息し――分かった、とだけ打ち止めに言った。打ち止めはそれだけで満足になったのか笑顔でそれに答えた。
すぅー、はー。すぅー、はー。
深呼吸。
それだけで、少し緊張がほぐれた。

61 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/21(水) 21:43:39.29 ID:rrt76dOk0

「・・・・・・よし」

ガチャリ、と病室の扉を開けそろりと病室に入る。
そこには。

白くて、白い、どこまでも真っ白なレベル5、一方通行がいた。

美琴の呼吸がとまる。
一方通行はベッドから上半身だけをお越し、窓を見ていた。
窓があるのは美琴がいるドア側とは反対側なので、美琴の位置からは一方通行の表情は見えない。
それでも。
いや、それだからこそ、だろうか。

窓から射し込む光によって仄かに内光る一方通行は

――とても綺麗で、儚くみえた。

62 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/21(水) 21:44:16.40 ID:rrt76dOk0

(……って、何考えてるのよ私!アイツは……アイツは、あの子逹を殺したのよ!?綺麗なわけないでしょうが!)

ぶんぶんと何かを追い払うように美琴は首を左右に振る。
そして、一歩、踏み出した。

「一方通行」

意を固め、目の前の男の名を呼ぶ。
一方通行はようやく美琴の存在に気が付いたようで、バッと勢いよくこちらを振り向き、驚いたように目を見開いた。

「……オリジナル、かァ?」

「正解。でも私には御坂美琴って名前があんの。どいつもこいつも……」

自分のことをビリビリと呼ぶ失礼な少年と一方通行を重ねて、ふふ、と小さく笑う。
そして、そうやって目の前で笑えるくらい自分が一方通行に気を許していることに内心驚愕する。

(どうして?)

考えても答えが出ないことはなんとなく分かっている。それは例えるならば上条に対する自分の態度だ。いくら勝てないからといって、なぜ毎度毎度自分は追いかけているのだろう?適当にあしらわれたからといって、なぜ腹がたつのだろう?
考え事をして黙ってしまった美琴に不審を覚えたのか、一方通行は「オイ」と声をかけた。

「なンでオマエがここにいる?誰から居場所を聞いた?っつゥかなンで普通に声をかけてきた?そして何しに来たン――」

「一辺に質問を言わない。一つずつ、が基本でしょ?」

それもそォだ、と一方通行は納得したのでもういちど、今度は一つずつ疑問を述べる。

「誰から居場所を聞いた?」

「打ち止めから」

「……そォいやオマエら今日一緒に出掛けたンだったなァ。つってもなンで俺のところに?しかもオマエ単体で。それから打ち止めはどこ――」

「だから質問は一個ずつだってば。あの子は今この部屋の外……ドアの前で待ってるわ。サシで話してこいってさ」

「……オマエと話すことなンざねェよ」

「あの子はあると思ってるみたいね」

美琴の言葉に一方通行は呆れたような顔をする。まったくよね、と美琴も表情だけで返した。
このやりとりの中、彼女は確信する。
自分の中で『一方通行』という存在は何かが変わったのだと。
どうして、なのかはわからないが。

63 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/21(水) 22:23:47.91 ID:rrt76dOk0

「もう一つの質問の答えはなンだ?」

「どうしてここに来たかってこと? ……笑わないで聞きなさいよ。
あの子ね、私とアンタがにてるって言うのよ。加害者だけど……妹逹を守ろうとしたところが。加害者だけど救世主って、さ」

ぽかん。まさにそんな表現が似合うような顔を一方通行がしたのを見て、美琴は吹き出しそうなのを堪える。
数秒の間があり、そして

「ギャハッあはははひひひぎゃははヒヒッあはあはははははは!!!なンだよそれ、なンよそりゃァ!!有り得ねェ!!有り得なさすぎンぞオイ!」

一方通行はその端正な顔をぐちゃぐちゃにして爆笑した。美琴は一瞬ひいたものの、すぐに「なによ!」と言い返した。

「笑わないでねって言ったじゃない!」

「だって、オマ、ブホッ、有り得ねェだろそれは!!」

そこで笑うのをやめ――そう、あたかも許されない罪を犯した罪人のような顔で一方通行は呟いた。

「それに、俺とオマエじゃ犯した罪の大きさが違いすぎる」

言葉がつまる。

(……なによ)

ズルい、と思う。
どうしてそう、泣きそうな、悲しそうな顔で言うのだ。この男は。
そんな顔で言われてしまったら――

(……しまったら、なん、なの……?)

まさか。
許してしまいそうになる、とでも言うつもりか。
冗談じゃない。
あの子逹のためにも、コイツを――そして、自分も絶対に許してはならない。
あの『実験』から妹逹を救ったって。
打ち止めをウイルスから救いだしたって。

自分逹が犯した罪は消えない。


64 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 23:38:48.52 ID:Ncwj6BG6o
目の前にある扉には『一歩通行』とそっけなく書かれているプレートがある。確かに彼の部屋なのだろう。

一歩通行wwwwwwwwww
65 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/22(木) 09:48:47.72 ID:QQIuwOTw0
>>64 うがあああ!!ごめんなさいよく打ち間違えるんです一方通行を一歩通行に
   まじすみません、本気ですみません
66 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 10:03:12.30 ID:5EoDlhSPo
クロネコヤマトの宅急便♪ 一歩前へ! っての思い出したww
67 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/22(木) 11:21:56.52 ID:vbrm6j7AO
頑張れ
68 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/22(木) 21:30:17.55 ID:QQIuwOTw0



「……でもさ」

自然と、口から言葉が零れ出た。

「私たちが何やったところでさ、10031人分の消えていった命の償いはさ、……できない、よね」

自分でも驚くくらい抑揚のない声だった。
冷たい、凍えた声。
そして自分の言ったことに、馬鹿みたいに傷ついている自分がいる。
当たり前のことを確認して、どうして傷ついているのだ、と自分を叱咤した。
言葉は、止まらない。

「……あの子逹、早くもっと感情を出せるようになればいいのに。そして……私を罵倒して、お前なんか姉じゃないって……死んじゃえって……」

言っちゃいけない。
今から言う言葉は、言ってはいけないんだと分かっていたけれど。
言葉は、やっぱり。
止まらない。
止められ、ない。
そして。
泣きそうな顔で、泣きそうな声で、

「それで。……私を、殺してくれれば……いい」

少女の、誰にも吐かなかった本音を、少年は聞いた。
つまるところ、少女は――美琴は、もう疲れていた。

常盤台のエース。
レベル5の第三位。
能力者の模範生。
どんな言葉を並べたって。
どんなに彼女が優れていたって。

御坂美琴が、たったの14歳であることは変わらない。

69 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/22(木) 21:30:45.85 ID:QQIuwOTw0

それは、昨日も思ったことだった。
強いくせに、弱い、ちぐはぐな少女。
泣けばいいのに。
彼は思う。
今だって、泣く寸前の顔をしているくせに。
自分とは違って、この少女は、その権利がある。
自分は”実行犯”だけど、彼女は”原因”を作っただけなのだから。
そしてそれも、だまされただけ、なのだから。
ぎゅっとスカートの裾を握り締め、黙って口を引き締め、眉を顰めさせ必死に泣かないように耐えている少女を見る。
あまりにも幼すぎる、と一方通行が感じた。
幼くて――弱い。
だから。

その小さな双肩に、
その小さな背中に、
20001人分もの業を背負うことは、あまりにも酷すぎる。

それでも彼女は背負うのだろう。
たとえ妹逹が「もういいのだ」と言ったって。「あなたを許す」と笑いかけたって。
彼女自身が自分を許さない。
それは、9982号の死に怒りを爆発させ、10032号を守ろうとした強い意志を真っ向から受けた一方通行だからこそ分かる“事実”だった。
そして、打ち止めから何度も聞かされ、少ししゃべっただけでも分かるあまりに優しすぎる心が自分に“ソレ”を強要する。

70 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/23(金) 20:13:22.06 ID:4csoBtoQ0

守ると決めた。救うと決めた。
打ち止めと、妹達と、それから、オリジナルを。
だけど、これじゃあ、無理だ。
自分で自分を罰している人間を、どうやって救えるのだ。
気の利く言葉一つ言えない、自分に。

「あんたは、殺したのよね・・・・・・」

「・・・・・・」

「あの子たちを、10031人・・・・・・さ」

「・・・・・・あァ」

「殺した、のよ・・・・・・ね」

「・・・・・・」

「9982号・・・・・・も?」

「そォだ」

美琴は黙った。
打ち止めの言葉を反芻する。

『お姉様にとって、ミサカ達の中で一番大切なのは、9982号なのかもしれないね・・・・・・ってミサカはミサカはちょっぴり寂し気にいってみたり』

やはり、そうなのだろうか。
打ち止めによると、死んだ妹達のなかで一番美琴と交流があったのは9982号だったらしい。
初めて会ったときも9982号の実験の直後だったしな、と彼は思い出す。

71 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/23(金) 20:13:48.12 ID:4csoBtoQ0

「……私、帰るわ」

「そォか」

美琴はくるりと背を向けた。
一方通行は引き留めない。引き留めるだけの理由も、権利も彼にはない。
ただ、

「携帯」

「……は?」

帰るために踏み出された一歩がとまり、一方通行のほうへ振りかえる。その顔はいぶかしげに眉がひそめられていた。

「あのクソガキとも交換したンだろ。……あいつらに何かあったとき用だ」

こう言われてしまえば美琴は拒否できない。いかにも仕方なく交換してやるみたいな顔で一方通行に携帯を差し出した。
赤外線通信なので数秒でやりとりは終わる。
美琴はため息をついて、

「今度こそ帰るね」

と言ってもう一度背を向け歩き出した。
一方通行は何か言うべきだと考える。
さよなら、か。またね、か。
……どっちも自分逹の関係には不釣り合いな気がする。
だから、彼は言った。

「オマエ、三下好きなンだろォ?俺から見てもアイツは手強いぜェ?鈍感、ここに際まれし、ってなァ!」

「ブッ、ふぉ、ふぇぇ!?な、ななななななにをっなにを言ってるのよアンタは!!」

分かりやすい狼狽えかたをするな、と一方通行はニヤニヤしながら思う。
美琴は扉にかけかけていた手を振り上げ、バチバチと漏電しつつ一方通行へ弁解になっていない弁解をする。

「そっそりゃあ?好きか嫌いかの二択だったら、そ、その嫌いじゃないから好きになるけど……っで、ででででも!」

「あーハイハイ分かりましたァ。ベタ惚れなのは分かったからその漏電ヤメロ。ここ病院。俺障害者」

ベタ惚れなんかじゃ……と顔を真っ赤にし、もごもご反論しつつ美琴は電気をだすのをやめる。
その時、ガラッと扉が開いた。そして、美琴のお腹に衝撃が走った。

「もうお話は終わったの? ってミサカはミサカはお姉様に抱きつきながら尋ねてみたり!」

「抱きつくならもっと優しく抱きつきなさいよ!」

「うわわっごめんなさいってミサカはミサカは涙目のお姉様に謝ってみる!」

そんな姉妹のやりとりをみながら一方通行は思う。
……やはりここは。
自分が居てはいけない場所なんだと。


72 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/23(金) 20:18:21.95 ID:4csoBtoQ0


御坂美琴が打ち止めと遊びにでかけ、一方通行と病室で話した日から一週間程たった日の、夜。
打ち止めは他の妹逹とミサカネットワークを介し通信していた。

『……一週間毎日なんだね、ってミサカはミサカは確認してみたり』

『はい。日曜日の夜はこのミサカが、月曜日の夜は19090号が、とミサカは報告します。念のためスネーク……17600号に偵察を頼んだところ、火曜日も水曜日も……今日もその姿が発見されました、とミサカは上位個体に確かな情報を伝えます』

『……どんな様子だった? ってミサカはミサカは聞いてみる』

『いつもとは考えられないくらい無表情で……そして、どこか悲しそうな雰囲気だったとミサカはあのときのことを思い出してみます』

『無表情……悲しそう……行動パターンは?』

『毎日同じ道を。一回もそのルートから外れたことはありません、とミサカはスネー……17600号の情報を教えます』

『なるほど……ねぇ、もしかしてそれって……』

『はい。多分そういうことだと、ミサカは同意します』

プツン、と用が終わったので通信が切れた。
と、パタパタとこちらへ歩いてくる音が聞こえる。
誰かは分かっている。一方通行だ。

「オイクソガキィ……まだ夜の2時だろォ……なンで起きてンだァ……?」

「……そこまで過保護じゃなくていいかもってミサカはミサカは呆れてみたり。ちょっと妹逹と通信してたのってミサカはミサカは事情を説明してみる」

「通信……?こンな時間にかァ?そンな急いだ用事だったのか?」

一方通行が眉をひそめたのを見て、打ち止めは慌てる。

「別に妹逹に危機が迫ってるわけじゃないよってミサカはミサカはあなたをなだめてみる。ただ、ちょっと不審な点をまとめた報告を受けただけだからってミサカはミサカははぐらかしてみる」

「不審な点?」

「あうう、はぐらかすってちゃんと言ったのにってミサカはミサカはあなたを軽く睨んでみる。うん……不審な点。ミサカ逹の大切な人のことだから心配になっただけだよ、ってミサカはミサカは説明してみる」

「大切?」

一方通行ははて、と考える。
まだ社会に出たばかりの妹逹にとって、大切な人はあのオリジナルと三下くらいのはず――

「――まて、もしかして……」

「うん。多分あなたが挙げたのと同じだと思う。ミサカ逹が心配しているのは



 ――お姉様のことだよってミサカはミサカは答えを教えてみる」



73 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/23(金) 20:21:10.20 ID:4csoBtoQ0


打ち止めが一方通行に事を説明する数時間前。



白井黒子はパチリと目をあけた。
今は12時、そろそろ“いつも”の時間だ。
じっと待つ。
一秒、二秒、三秒……
その時、ガサリと隣のベッドから物音が聞こえる。

(――やっぱり)

物音の主――御坂美琴の方へちろりと視線を向ける。美琴は焦点のあわない瞳を半分くらいまで開き、のそのそと常盤台の制服に着替えている。

(……最近のお姉様はおかしいですの。夜中に制服に着替えて出掛けるなんて……。しかも)

しかも、あんな死人のような顔で。
事に気が付いたのは一昨日だった。風紀委員の仕事がのび、帰ったのはなんと12時。あり得ない時間帯である。当然美琴が寝ていると思って部屋に入ったのだが、どこにもいない。また“あの殿方”と騒いでいるのだろうか、と白井が仕事を家に持って帰って来てやるサラリーマンのように、残った始末書を部屋で片付けていると、がちゃんと言う音がして美琴が帰ってきた。
お帰りなさい、お姉様――そう言おうと美琴の方を振り向いて、息を呑んだ。
美琴があまりにも無表情な顔をしていたからである。
よもや類人猿め、お姉様に何かしたのか……と思っていたら、美琴はベッドの下からくまのぬいぐるみを引っ張りだし、そこからペンと何か地図のようなものを取り出した。
そして、その地図に書かれている×マークをなぞるようにペンで書いていく。
白井はそれを黙って――正確には言葉を発せないまま――みていた。
あまりにも鬼気迫るような顔の美琴に、蹴落とされたから。それが、その理由である。
とにかく、白井は何もできずにそれを見ていた。美琴は一通りそのマークをなぞり終えると、またパジャマに着替えて寝てしまった。昨日の朝に何をしていたのかと聞いても本当に知らない様子で『黒子夢でも見てたんじゃないの?』と言われた。

(……今日こそ、何をしているのか後をつけてやるんですの……!)

昨日は寝てしまってつけれなかったが、今日こそ、と白井は意志を固める。
実際、心配だ。
活発な御坂美琴があんな顔をするなんて、信じられない。
パタン、とドアが閉まる音が聞こえる。出ていった、と分かり白井も常盤台の制服の着替えた。
とりあえず、何をしているのか知ること。
話はそれからである。


74 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 10:18:21.36 ID:umKUS5Nu0
75 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 17:26:52.47 ID:TMlL1xdh0
>>1

サスペスドラマなのである。
76 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/25(日) 14:20:35.74 ID:cPaekyeS0

次の日の夜。
一方通行は打ち止めに無理やり美琴が夜な夜な歩いているルートを聞き出し、美琴を待っていた。ついでに、木の近くの茂みに隠れている。

(……確か、この木の下に12時10分から20分の間に来るンだよなァ……)

打ち止めが言うには、『9982号と過ごしたルートを毎日通ってるんだよ』ということらしい。
現在12時5分。そろそろ来るはずだ――と。

「あら?」

ヒュン、と一方通行の隣に突然少女が現れた。

「こんな夜中にこんなところで何をなさっていますの?完全下校時間はとっくのとっくに過ぎてますわよ」

「オマエも人のこと言えねェだろ」

「私は……人を待っていますの」

「奇遇だな、俺もだ」

と、そこで一方通行は気付いた。この少女の服装である。彼が待っている第三位の超電磁砲と同じ、常盤台ではないか。それに、先ほどの『待っている』発言。……もしかして。

「オリジナル……いや、御坂美琴の関係者か?」

「お姉様のお知り合いですの? ・・・・・・私はお姉様を待つためにここに来ましたの。昨日もここに来ていましたし」

「……成る程な。帰れ」

「んなっ!?」

少女は体を大きくのけぞらせた。
一方通行はさらに言う。

「オマエじゃ無理だ。アイツから何してるのか聞き出すのは」

「……」

「その様子じゃ昨日もつけてたンだろ? でもアイツは今日もくる。昨日、何があった?」

「……。はあ」

少女は嘆息し、それからぽつぽつと話し出した。
いわく、昨日御坂美琴を引き留めたところ、「あれ? どうして私ここにいるんだろ。あれー?」ととぼけられたらしい。
何度問いても「私知らないんだけど」と繰り返すばかりだった。

「……だから今日は最後までつけようと思いましたの」

「ふゥン……」

一方通行はしばらく考えて、もう一度

「よし帰れ」

「だからなんでですのっ!最後までつけたら何か分かるかもしれませんのに……」

「いや、無理だろォ。オマエ、その様子じゃ『実験』のこと知らねェだろ?」

「……実験? ですの?」

はあ、と一方通行は溜め息をついた。

「アイツがオマエに隠してることがないわけがねェ。そして今回はそれが関わっていて、それをオマエは知らなくて俺は知ってる。ならオマエが引くのは当たり前だろ?」

「……分かりましたの。……お姉様を、よろしくお願いしますの」

「あァ」

来たときと同じように少女の姿は一瞬で消えた。空間移動系の能力者かな、と一方通行はあたりをつけた。その時、
77 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/25(日) 14:21:17.89 ID:cPaekyeS0

「……来たかァ」

薄暗いが分かる。御坂美琴が木の元へ来ようとする姿がぼんやりとみえた。一方通行はなるべく音をたてないように息をひそめる。
御坂美琴は木の下で何をするでもなくじっと木の上を眺めている。数分後、御坂美琴は木の上の方に手を伸ばした。木の方へ少し近づく。

「……いないの?」

ぽつりと呟かれた美琴の声がやけにあたりに響いた。

「……黒猫。みゃー、じゃなくて、黒猫。小さいから、子猫。いないの? 黒い、子猫……あの子と一緒に助けた、子猫……は……あの子と、同じ……よう、に……?」

泣いてるのか、途中から声が途切れ途切れになる。美琴はだらんと手をおろし、木から背を向けふらふらとおぼつかない足取りで次の目的地へ向かう。
その、振り向き様の一瞬。
彼はみた。

「……ッ」

打ち止めから聞かされていたが、まさかここまでとは。あの少女が心配するのも分かる。

それは廃人。

それは死人。

それは――

あまりにも何もない、無表情。泣いているのに、『悲しい』という感情が現れていない。それでいて、雰囲気だけは『悲しい』を表している。
怖い。
学園都市最強がそう思うほどに、今の御坂美琴には何もない。
気が付けば美琴の姿がない。

「……クソがァッ」

一方通行は慌ててその後を追い始めた。




78 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 19:38:15.19 ID:dP7aYxeJ0
79 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 20:08:08.81 ID:adg1MuZI0
>>1乙そして、重くて暗い

クリスマスに、なんと言うダ−クSS…
80 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/25(日) 21:11:45.71 ID:cPaekyeS0
>>79 一応シリアスってことなんでがんばってみたんですけど・・・・・・だた暗くて重いだけだったかもしれませんです。なんかもうごめんなさい。
   
81 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/25(日) 21:41:13.89 ID:vVP/2ynL0
>>1
乙!!
シリアスって加減難しいかもっすけど超応援してます!
82 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 21:16:38.42 ID:E9IIDMbA0
>>80深刻にとらないで欲しいのである。

人は、希望があるから前向きになれる。

だからどんなに小さくてもいいから希望の光を。

83 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/28(水) 09:20:09.50 ID:ADkK0QuM0


その後も、美琴は『とあるルート』を歩き続けた。
『とあるルート』。それは、

『お姉様はね、9982号とすごした記憶をたどっているんだよってミサカはミサカは教えてみたり』

出会った場所である木の下。
一緒にアイスを食べた通り。
入った喫茶店の前。
ハンバーガーを半分にわって食べたジャンクフード店の前。

『・・・・・・やっぱり、9982号なんだよ、ってミサカはミサカはさびしそうに笑ってみる』

二度と戻らない思い出を求めて。
御坂美琴は、未練がましくルートを歩いている。

それを止める権利なんてもの、自分にはない。
自分がそれをする理由を作ったのだ。

だけど、許せなかった。

打ち止めにあんな顔をさせるからか。

いつまでも“あそこ”に立ち止まっているからか。

なぜだかは、分からないけど。

どうしようもなく、御坂美琴という少女に、腹が立った。

だから、美琴の最終的目的地。
――鉄橋で立ち止まったとき、彼は声をかけた。

「・・・・・・超電磁砲」

「・・・・・・あぁ、アンタか」

御坂美琴はゆっくりと振り返る。
その瞳には、やっぱり何もうつっていなかった。



84 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 20:08:44.38 ID:7PmcraRp0
>>1乙、重く暗くても読んでるよ。

続きが気になる。
85 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/29(木) 09:26:23.15 ID:+CCU8sA00
86 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) :2011/12/31(土) 16:33:14.55 ID:1FhTNXeS0


――私は、何をしているんだろう。

胸に沸き起こるのは、純粋な疑問だった。                                                    なに                                なに
ここまで歩いてきた記憶ならある。“動作”をしているのかなど分かりきっている。自分が疑問に思ったのは、“心理”のほうだ。
どうして、なんで毎晩毎晩、あの子と過ごした記憶の道筋を辿っているのか。自分自身のことなのに、わからない。
わからない
わからない
わからない
わからない
わからない
わからない

「あ……う、ぐ……」

激しい嘔吐感が体内をかき乱す。酸っぱい胃酸をギリギリのところで止めて、気持ち悪いのを堪えながら頭上を見上げた。
涙はでない。
そんなもの、流す資格なんてない。

――私が、殺したんだ。

87 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) :2011/12/31(土) 16:34:48.26 ID:1FhTNXeS0

言葉を、じっくりと噛み締める。
結局のところ、これも欺瞞なのだろう。自身はここまで思っている。自身はここまでやった。だから被害者。加害者なんかじゃない、可哀想な、哀れなヒロイン。

――最低だ。

罪から目を背けるな。
捨てられ乱造された命の数だけ贖罪し続けろ。
罪と汚濁にまみれたその躯であの子逹を守り続けろ。
中学生が背負うにはあまりにも重いそれを彼女は自身に強要する。

――さあ、
――さあ、
――さあ!!

一生許されないのだと心に刻め。
あの子逹の全てを許容しろ。
あの子逹の盾となり、消えない汚れをそぎおとし続けろ。
         美琴
嫌だ、助けてと呟く少女。
                  美琴
それを許すまいと負の言葉を吐き続ける少女。
内と内でせめぎあい、御坂美琴自身が御坂美琴という少女を傷つけ、崩壊させていく。 

88 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) :2011/12/31(土) 16:36:02.44 ID:1FhTNXeS0

「……助、け……て、よ……」

そう呟けば、また、あの少年は来てくれるだろうか。
美琴にとって救いの象徴である彼は。
しかし、世界はそんな都合よく廻っていない。
救いを求める少女の目の前に、現れる主人公はいた。
――ただし。

「・・・・・・超電磁砲」

「……ああ、アンタか」

美琴の目の前に現れたのは、破壊の権化。
自分の精神を壊し、あの子を壊し、日常を壊した、白い、白くて白い、どこまでも白い死神だった。




Σルビを振ってみたけど凄くずれてる
なんでだ・・・・・・。やめます。泣けてきた。
89 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) :2011/12/31(土) 16:36:42.38 ID:1FhTNXeS0



御坂美琴が辿るルートの中で、唯一『9982号』が関わっていなかった場所がある。
それは、この鉄橋だ。
打ち止めが言うには、『助けてほしいってことなんだと思うよってミサカはミサカは自分の見解を述べてみたり』ということらしい。
助けてほしい。――何から。
決まっている。――自分から。

9982号を、10032号を救ってくれたときと同じように、誰かに、――あるいは、あの三下に――、助けてほしかった。

そういうことなのだろう。

(クソッ・・・・・・)

結局、守るといっておいてこの様か。
美琴は、薄く笑いを浮かべて一方通行に話しかけた。
明るい、鈴のなるような声。

「何しに来たの?」

「・・・・・・オマエが夜中に歩き回っているっつゥので打ち止め達が心配してンだよ」

「・・・・・・そう。あの子たちには悪いことをしたわね」

目を伏せ、美琴は呟いた。
しばしの沈黙。
先にそれを破ったのは、美琴の方だった。

「ねぇ」

責めるような、苛立ったような声で。
一方通行を糾弾するために。
美琴は、自ら“逃げ”を選んだ。


90 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 07:54:28.23 ID:nKMljI+f0
>>1乙、そしてあけましておめでとう。
91 :sage :2012/01/01(日) 20:41:30.84 ID:zTshQtc40
>>1
あけおめことよろ。超応援してる
92 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 20:51:08.66 ID:iLmufIC40
>>1
今年も頼む
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/07(土) 12:24:18.32 ID:z/z0V5rP0
お久しぶりです!ようやくMAD製作おわったのでssの方に集中できますー




打ち止めはネットワークを介してその様子を見ていた。
実は一方通行にも言っていないが、今日も17600号にお姉様を見張らせている。
打ち止めはそれを見ながら、昨日の夜の会話を思い出していた。

『なァ――』

『なにかな? ってミサカはミサカは答えてみる』

一方通行は、空を見ながら、ポツリと、こんなことを言った。

『姉は妹を守るのが役目。だからオマエ達を守るのはアイツの役目だ』

打ち止めは『実験』の事を思い返して、そうだね、と頷いた。

『だったら、アイツを守るのは――誰なンだろォな』

え――? と打ち止めは問い返した。
彼は寝る、といって答えてくれなかったが。

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/07(土) 12:24:54.01 ID:z/z0V5rP0

そのことを、打ち止めは思い返している。
守られるばかりだった自分達。
ぼろぼろになって、そして今も守り続けてくれている姉は、一体だれに守ってもらうのだろう。
あの少年? ――それは違う、と打ち止めは否定する。
だって、いつだって守ってくれるのなら、どうして彼はこの現状を知らないのだ。
世界がそんな上手くまわれるわけがない、と分かっていても、彼がどうしても姉を守れるとは思わない。思えない。

(ねぇ、お願いだから、誰だっていいから――)

打ち止めは願う。
打ち止めだけじゃない。ネットワークを介して、妹達全員が願う。

守られている自分達じゃ彼女を守れないから。
だからどうか、お願いだから。

(お姉様を守ってください、ってミサカはミサカは祈ってみる)


95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/07(土) 12:25:21.69 ID:z/z0V5rP0


「・・・・・・どうして、来たのよ」

美琴の問いに、一方通行はしばし考えて、それから宣言した。

「・・・・・・オマエを、助けるために決まってンだろ」

一方通行は、まるであのときの少年のように、真っ直ぐな視線を美琴に向けてきた。
――それが、少女の逆鱗に触れる。

「なんで……アンタなのよ……」

黙ったまま、自分を見つめる白い少年。
――気に入らない。
どこまでも、気に入らない。

「ここにいて、助けてって呟けば、来てくれるのは、アイツだって……! なのに、なんで……!!」

――なんで、あの少年じゃないのか。
理不尽な怒りに、一方通行はただ一言。

「すまねェ」

と。本当に、すまなさそうに謝った。

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/07(土) 12:25:55.99 ID:z/z0V5rP0

「俺がオマエを、こんな風にしちまったンだよな」

見たこともない――苦しそうな、辛そうな、そんな顔を浮かべて。
そして、少年は言う。
贖罪というには、どこまでも甘すぎる言葉を、少女にかける。

「大丈夫だ。オマエは何もしなくていい。オマエがもし、背負わなきゃいけないって、そォ思ってるなら」

今度は、とても優しい笑みを美琴に向けて。

「俺が、オマエの分まで背負うから」

だから、と一方通行は言う。

「オマエはただ、表の世界で笑っといてくれればイイ」

それは、オマエにしかできないから、と。
そして。
美琴はぽつり、と呟いた。

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/07(土) 12:26:35.41 ID:z/z0V5rP0

「……あんたが」

美琴は止まらない。
否、止まれない。
あまりにも優しすぎる彼に、ずたぼろだった美琴は――甘えてしまった。全てをなげうって、罪を放棄して。
まるで、悲劇のヒロインのように、無責任に。

「アンタが、殺したのよ……」

感情の昂りと共に紫電がバチバチと美琴の体にまとわりつく。
それはまるで、皮肉にも“あのとき”のようだと彼女が気付いていたのかどうか。

「アンタが、あの子を……殺したのよ――ッッッ!!!!!」

美琴の感情が爆発し、一際大きく紫電がはぜた。
そォだ、俺が殺したんだ、と。
そんな声が聞こえたきがして。

98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/07(土) 12:27:19.06 ID:z/z0V5rP0




もう、限界だった。


助けて、と少女は言った。


罪から逃れたいと少女は願った。


許されないことだと少女は理解して、それでも。


罪の大きさに耐えられなかったから。


だから。
だからだからだからだから。


99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/07(土) 12:28:03.62 ID:z/z0V5rP0




「私は、アンタを・・・・・・絶対に、許さない・・・・・・ッ!!!!!!」


ごめ  さい    助 て  もう  だ     ねぇ  たい
   あの子  嫌い  けじゃ い  だ ど    よ   い 
 私   な     姉     ごめ  ね   けで   て
今だ  私  許   罪か  ない   で      すき


ぼろぼろの思考で。
許しを請い、
罪を再確認して、
甘えに縋って、



           ごめんなさい。



「                                          
                                           」




そして、爆発音のような音と共に。
閃光が、少年を貫いた。



           ごめんなさい。


懺悔は、終わらない。
罪は、永遠に、消えない。




100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/07(土) 12:28:51.59 ID:z/z0V5rP0








一方通行の雷撃を放って、美琴はぺたん、と地面に座り込んだ。
何故反射をしなかったのか、という疑問すら思い浮かべない。
ただ、ただ――


お姉様のせいだお姉様が殺したんだお姉様お姉様お姉様お姉様――

「ひ、ぁ、・・・・・・ぐ、」

殺した殺した殺した殺した罪を償えお前のせいだお姉様が元凶だ全てお姉様が悪いお姉様さえいなければミサカは作られなくてミサカは殺されなくてミサカはミサカはミサカはミサカはミサカはたくさんたくさん苦しかったどうして気づいてくれなかったんですかお姉様のせいで1万人以上のミサカ達が殺されたお姉様殺した殺した殺した殺した殺人者お前のせいでミサカ達は殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて
されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されてされて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて――


「ごめんなさい・・・・・・ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!!!!!!!」


101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/07(土) 12:29:39.72 ID:z/z0V5rP0

涙をぽろぽろ零して、耳をふさいで何も聞こえないように、だけど内から聞こえてくる責める声にそれは効かなくて、だから美琴は発狂する。

「う、あぁああああああ・・・・・・!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!」

身を捩じらせて、美琴は叫ぶ。ごめんなさい、と。

殺されるだけに生み出してしまってごめんなさい。
目の前で殺されたのに救えなくてごめんなさい。
自分ひとりじゃ誰一人救えなくてごめんなさい。

「ぐぁぁああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

激しい吐き気に襲われ、眩暈と頭痛がして、美琴は地面に伏した。
責める声にかき消されるように、小さな呟きを吐露する。

102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/07(土) 12:31:13.37 ID:z/z0V5rP0

「きゅう、せ・・・・・・ん、きゅうひゃ、・・・・・・くはち、じゅ・・・・・・に、・・・・・・ご・・・・・・」

彼女にとっての全ての始まり。

「あん、ただけは・・・・・・いき、て・・・・・・っ」

絶対に、叶わぬ願いを、美琴は吐き出した。

そして、その声に応えるかのように。

「お呼びですか、お姉様」

相変わらずの無表情で。
だけどどこか寂しそうに。

自分を見下ろす、『あの子』がいた。






本日の投稿はこれで終わり!です。
っていうか殺されて連発のところで間違って変なところで改行しちゃってる・・・・・・
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/07(土) 12:51:01.78 ID:fxZN4Xeo0
3ヶ月ぶりくらいに来たら電磁通行っぽいスレタイ発見
見たら電磁通行表記!
やったぁ今から読みますヽ(´∀`)ノワーイ
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/07(土) 13:23:15.33 ID:SUhCDqwt0
>>1

読んでるよ。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/07(土) 17:48:52.75 ID:7nOBoxL90
だんだん面白くなってくるねww
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 21:53:09.85 ID:DDYcra2v0

「9、9・・・・・・82号・・・・・・?」

美琴の目は驚いたかのように見開かれていた。
目の前で死んだあの子が、どうして、ここに?
いつもの美琴なら、これは妹達の誰かが偽装しているのだろう、と看破できたかもしれない。
でも、今の美琴はぼろぼろで。
何かにすがりついていないと、堕ちてしまいそうで。
だから。

「はい、そうです、とミサカは同意します」

「あは・・・・・・あはは、はは・・・・・・」

美琴は笑った。
心底、嬉しそうに、楽しそうに。
あの『実験』以来、初めて、心の底から。
それはどこまでもどうしようもなく、歪んでいたけれど。


107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 21:53:49.80 ID:DDYcra2v0








「会いたかった」











108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 21:54:32.89 ID:DDYcra2v0

美琴は笑って、そう言った。
一瞬息が詰まったように“9982号”は震えて、それから「ミサカもです」と返した。

「・・・・・・あれ。ケロヨンの缶バッチ・・・・・・失くしちゃった?」

「・・・・・・すみません、とミサカは謝罪します」

「ううん、いいの。またとればいいし。また、つけてあげるね」

「・・・・・・ありがとうございます、とミサカはお礼をします」

「それから、また、猫を触ろう。それで、ハンバーガーを食べよう。アイスも食べたいね。喫茶店で紅茶を飲んで、それでね」

幼い子供のように、無邪気に。

109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 21:54:58.80 ID:DDYcra2v0

「いっぱい、笑お?」

絶対に叶わない、願望を。
もう一生、そんな日が来るわけないのに。
美琴はただひたすら、それだけを胸に抱えて。

罪を苛む声に精神を脅かされても。
ずっとずっと、それだけを、願っていた。

「沢山沢山、一緒に過ごして。私常盤台やめたっていいから、アパートに住もうかな。それでさ、一緒に住んでみる?あ、でも調整あるし、住めないか。んー、じゃあ私が病院に住もうかな、なんて。あはは、無理だよね。いつでもいいの、連絡してね。どんな願い事だって叶えてあげる。ハンバーガーもアイスも、いっくらだって買ってあげるわよ。レベル5の財力なめんなってね、アイツには怒られそうだけど。うんうん、毎日が忙しくて楽しくなりそうだ――」

「お姉様」

美琴の言葉を、“9982号”は遮った。
なぁに? と美琴は問い返す。

110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 21:55:31.22 ID:DDYcra2v0

「どんな願い事だって叶えてくれる、というのは本当ですか? とミサカは問います」

あったりまえじゃない、と美琴は笑って返した。
そうですか、と“9982号”は呟いて。



「だったら、この“ミサカ”を見てください、とミサカは嘆願します」




時が、止まった。
たった数秒の沈黙が、何時間にでも感じられた。
あは、とぎこちない笑みを浮かべて、美琴は言う。

111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 21:56:15.98 ID:DDYcra2v0

「このミサカって、9982号、なんでしょ・・・・・・? アンタそう言ったじゃない・・・・・・!!! アンタは、アンタは・・・・・・!!」

「9982号は死にました、とミサカは告げます」

「・・・・・・ッ。嘘よ!!嘘、だって、アンタは現に目の前にいて、あの子は、死んでない!!絶対に、死んでなんかないの!!」

「・・・・・・このミサカは、17600号です、とミサカは訂正します」

「・・・・・・違う・・・・・・」

17600号は泣きそうな顔で美琴を見ていた。
だけど美琴は分からない――やっぱり、美琴にとって大切な妹なのは、9982号だけなのかもしれない、と17600号はぼんやりと思った。
きっと、9982号と自分達が似ていたから、あの実験を止めようとしてくれたのではないか――という最低な想像まで膨らんで。

112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 21:58:04.65 ID:DDYcra2v0

「違う、違う違う違う違う!!! 絶対信じない!!! あの子は、絶対に死んでないんだから!! また、一緒に笑いあって、それで、それで・・・・・・っ!!」

「・・・・・・お姉様は、少し、混乱しているようですね、とミサカは判断します」

17600号は美琴の首に手で衝撃を加える。それと同時に、気を失って美琴は倒れた。それを、危うく受け止める。
そして、鉄橋の柵にもたれかけさせ、地面に伏している一方通行へと近づいた。

「どうせきいていたのでしょう、とミサカは尋ねます」

「・・・・・うるせェ・・・・・・」

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 21:58:31.78 ID:DDYcra2v0

美琴の電撃は不安定で、さらに微弱ながらも自制があった。あれだと出力は欠陥電気並みに落ちていたのではないだろうか。
まあだからといってダメージを受けないわけでは決してないが。
だが、ダメージといってもしばらくの間動く、喋るなどができない、それから多少の火傷をした程度だ。

「どうして反射、またはベクトル操作をしなかったのですか、とミサカは再度尋ねます」

「・・・・・・アイツにそんなことできるような立場にいねェだろ」

そうですね、と17600号は同意して、それからしゃがんだ。

「・・・・・・あの実験の中、一番の被害者はお姉様だった、とミサカは思い返してみます」

「・・・・・・」

114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 21:58:59.12 ID:DDYcra2v0

「ミサカ達は当事者で、数多の理由があったものの、あの実験を受け入れていたのは事実です、とミサカは告げます」

「・・・・・・そォ、だな」

「一人、ミサカ達を救おうと翻弄していたお姉様を見捨てていたのはほかならぬミサカ達です、とミサカは言います」

「分かってる」

「そしてそのお姉様をあまつさえ殺そうとしたのはあなたです、とミサカはさらに付け加えま――」

「分かってるっつってンだ!」

一方通行の叫びに、17600号はただ一言。

「黙りなさい」

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 22:00:24.90 ID:DDYcra2v0

ぐ、と一方通行の言葉が詰まった。
あの年がら年中無表情の妹達が――怒っていた。

「お姉様をあんな風にしたのはミサカ達です、とミサカは宣告します」

「・・・・・・」

「お姉様を救うことこそがミサカと貴方の役割であることを――お忘れなきよう」

それだけ言うと、17600号は美琴を背負っていなくなってしまった。

「・・・・・・クソッ」

言いたいことなど分かっている。彼が一番よく知っている。
姉をどうしようもなく壊したこと。
その罪を絶対に償え――そう、言っているのだ。
壊れた少女の欠けたピースは、彼が奪ってしまったのだから。

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/08(日) 22:04:55.38 ID:DDYcra2v0

本日の投下、終わり!です
美琴があの『実験』の1番の被害者――というのは、私の勝手な解釈ですので、ご了承ください。
17600号が地味に怖い・・・・・・。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/08(日) 22:45:34.25 ID:aknubMbS0
1乙          
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 10:00:39.34 ID:9AApSnbk0
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/09(月) 22:05:27.26 ID:LHK5LA3C0
>>1乙、そして読んでるよ。

破滅、それとも希望… 判らないのが最高
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2012/01/10(火) 10:28:14.50 ID:KsEMJaih0
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 01:44:57.47 ID:KiQd1vxpo
原作でも超電磁砲でも一通って美琴のことは殺そうとしてないぞ?
実験に乱入してきた美琴の攻撃テキトーに逸らしてあしらっただけで眼中にもない感じだった
妹達が美琴を助けようとするのは胸熱なんで
原作にない設定にするならそのシーンの描写を入れて欲しい
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:09:37.12 ID:hixf0+pl0
>>121 うええ!?そうですか? 原作はともかくレールガンではがちで殺しているような気がしたのですが……
   すみませんが、『そういうこと』にしておいてほしいです、ごめんなさい

では、久方ぶりに投稿です。少ないですけど
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:09:58.11 ID:hixf0+pl0


パチリと目を覚ました。
美琴はゆったりと上半身を持ち上げ、キョロキョロと辺りを見渡す。
ここは――ここは、どこだろう?

「目を覚まされましたかお姉様、とミサカは寝起きのお姉様に話しかけます」

「妹……達……?」

「はい、10032号です、とミサカは答えます」

10032号と名乗る妹達の一人は、美琴にお水を差し出した。美琴はありがと、と礼を言って口に含む。

124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:10:29.86 ID:hixf0+pl0

「……ここは……」

「ミサカ達が調整を行っている病院です、とミサカは説明します」

「病、院……?」

「さすがにミサカ達ではお姉様を寮に戻すことは出来なかったので、とミサカは返答します」

「寮……そうだ、私、昨日……っ!!」

「……色々とお疲れでしょう。朝御飯を持ってきます、とミサカはかいがいしさわアピールします」

125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:11:13.81 ID:hixf0+pl0

10032号は朝御飯を取りに行くため部屋からいなくなった。また一人になった部屋で美琴はうずくまる。
泣きそうだった。
謝りたかった。

(最低だ……私……)

一方通行を傷つけ、大事な妹さえも傷つけた。
17600号といったか――。

126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:11:42.77 ID:hixf0+pl0






『だったら、この“ミサカ”を見てください、とミサカは嘆願します』






127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:12:18.60 ID:hixf0+pl0



ダン!! と勢いよく壁に右手を打ちつけた。
衝撃で皮が破れ、ぼたぼたと血が流れてくる。
くそ。

「くそ、くそ、くそぉおおおっ!!」

何度も何度も壁に右手を打ちつける。
ガリガリと皮膚が削れていく感触がして、同時に出血の量も次第に増えていく。
数分後には、まるで殺人現場のように血まみれになった壁と右手があった。
それをみて、あの『実験』のことを脳裏に浮かばせてしまって、また、吐き気がこみあげてきた。

「う、うぅ……うぅぅううううううううううっっっ!!!」

悲嘆に明け暮れた少女の叫びを、彼女の大切な妹たちは聞いていた。
ドアの向こう側で、寂しそうに、悔しそうに、――苦しそうに。


128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:13:05.55 ID:hixf0+pl0


「お姉様、朝ごはんをお持ちしました。入ってもいいですか、とミサカ10032号は呼びかけます」

ビク、と体が震え――美琴は、一回だけ深呼吸をする。
血まみれの右手を後ろ側に持っていって、ばれないように隠してからドアの向こうにいる妹に「いいわよー」とできるだけ明るく応える。
これでいい。
何も知らなくていい。
この子達は――ただ、幸せに、生きてくれれば。
自分の苦悩など背負わせるべきじゃない。
知るべきでもない。
理解者は――どこまでも憎い、あの白い最強だけでいいのだ。
それすらも、忌むべきものだけれど。

129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:13:38.24 ID:hixf0+pl0

「病院のご飯ですから、少々味気ないかもしれませんね、とミサカは弁解してみます」

「あはは、貰えるだけで感謝よ」

美琴が笑うと、10032号もうっすらと微笑んだ。
それだけで、美琴は救われたような気持ちになる。
同時に――心を、かきむしりたくもなる、が。
美琴が朝ごはんを食べるのを10032号はなにが面白いのかじーっとみていた。
そして美琴が食べ終わると、そそくさとトレーを下げに行った。

「私も……いい妹を、持ったわねぇ……」

130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:14:09.69 ID:hixf0+pl0

感慨深くそう呟く。
ちょっと前までは一人っ子だったというのに。
今では1万人近い妹を持つ立派な長女だ。
その役目を果たせているとは――到底、思わないが。

「お姉様、そういえば学校はどうされるのですか、とミサカ10039号は尋ねます」

「おわっ!? び、吃驚したー……」

いきなり現れた妹に反射的に肩をすくませ、ふーと嘆息する。
10039号ということは、先ほどトレーを下げていった個体とは違う人物であるらしい。

131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:15:11.06 ID:hixf0+pl0

「学校かぁ……、休むかな、今日は」

「おや、サボりですかお姉様、とミサカは姉が不良に一歩近づいたことを嘆きます」

「不良ってアンタ……違うっつーの!」

楽しげに言い合う姿はどこからどうみても仲のよい姉妹だ。
……その背景にある歪なナニカを感じ取らない限り。

「……お姉様、昨晩の件ですが」

132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:15:37.58 ID:hixf0+pl0

その言葉で、一瞬で空気が変わった。
重く、深く、血なまぐさく、悲しいものに。

「……なに?」

「17600号は、怒っていませんよ、とミサカは助言します」

「……優しいのね、アンタ」

「……他の人間には何も言いませんよ。お姉様だからこそ言うのです、とミサカは応えます」

妹の助言に苦笑して、美琴は短く「ありがと」とだけ言った。
10039号から目をそらし、下へと視線を落とした美琴は、心の隅だけで思う。

――優しくしないで、と。

そしてそれは、美琴自身、気づいていない――確かな、本音だった。



133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/01/16(月) 00:16:28.03 ID:hixf0+pl0
終わりです!久々なのに少なくてごめんなさい。
今度はもっといっぱいできるといいな。
最近忙しいし頭は痛いし疲れたし……がんばろ。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 00:39:34.56 ID:xEGclBpSO
SSは面白いのに>>1が臭い。痛い。もったいない
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/16(月) 14:03:42.69 ID:LNgMZbMb0
最初の20レスほどを無かったことにすると凄く面白い
進化してるんだな
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 16:35:40.46 ID:keWfKVOT0
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/06(月) 06:49:08.55 ID:sXI91PHd0
1乙
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/06(月) 12:41:12.05 ID:OBReF5Wro
人が書いたものを「無かったことにする」ねえ・・・
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/07(火) 22:06:51.77 ID:JWI0PEmE0
>>138
けど普通漫画とか小説って編集者が居るもんじゃない?
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/07(火) 22:39:28.36 ID:RLBr7D030


ごめんなさい。

なぜ謝るのですか。

一夜ぶりに対面した妹の一人に頭をさげたら、そう言われてしまった。

自分が9982号と偽ったから悪い。
お姉様の傷口をほじくり返したのがわるいのだと、頑としてそう言い張った。

最後には美琴も折れてしまって、じゃあお互い悪かったことにしよう、というのでその話題は打ち切りになった。
ふぅ、と無駄に澄み渡った青空をみて、ため息。
特に怪我や病気をしていない(右手は別)美琴は、これ以上病院に留まるのはあつかましいと思い、渋る妹達に謝って病院から出てきたのだ。
何気なく携帯を開けて、「――あ」声をだした。

一方通行。

その名前が表示されて、美琴は一瞬息が止まった。
一度だけだが、電話がかかってきている。
美琴が起きる数分前、というところか。

「……かけなおす、べき……なんだろうなぁ」

なにより昨晩電撃をくらわせてしまったし。
美琴はしばし指を宙にさまよわせて、それから意を決したように通話ボタンをおした。

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/07(火) 22:40:07.00 ID:RLBr7D030

ぷるるるる、ぷるるるる……。

間の抜けた音声が電話から発せられ、数秒。
プツッと音がした。相手が電話にでたのだろう。

『……一方通行だァ』

「……み、御坂……美琴よ」

『……オリジナルか』

コイツは表示を見ずにでたのか、と一瞬つっこみそうになって抑えた。
昨日はごめんなさい。
体は大丈夫?
後遺症はない?
打ち止めはどうしてる?
沢山沢山いいたいことがあって、だけど――だから何もいえなくて。
一度言葉が詰まってしまうと、もう何も言えない。
そのまま、無言で気まずい雰囲気が流れた。
どく、どく、どく、どく。
死刑宣告を待つような心情で美琴は一方通行からの言葉を待つ。
10秒にも満たないその沈黙は、美琴にとっては数分、数時間にも感じられた。
そして。

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/07(火) 22:40:35.19 ID:RLBr7D030

『……昨日は、悪かった』

返ってきたのは、意外な言葉だった。
え、と声をだしてしまう。

「な、なに言ってんのよ!!それはむしろ私の台詞でしょ!!」

思わず声を荒げた美琴に、一方通行はいいや、と返した。

『その原因を作ったのは――俺だ』

「ち、違う!!元はといえば、私が、私がDNAマップを提供しなかったら……!!」

『だとしても、だ』

美琴は思う。
なんで。
どうして。
右手を強く握り締めたら、止まりかけていた血がまた滲み出した。

143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/07(火) 22:41:03.46 ID:RLBr7D030

「……どうして、アンタは……」

『あン?』

「アンタだけじゃない……あの子も……あの子達も、皆そう!!」

『……、』

「私に、どうして優しくするのよ!!どうして、許すだなんて言うのよ!!なんで、背負わなくていいっていうのよ!!」

『……それは、オマエが』

「私は、アンタと同じよ」

一方通行の言葉をさえぎって、美琴は言い放った。

「私も、アンタと同じ、共犯者よ」

144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/07(火) 22:41:37.05 ID:RLBr7D030

だから、とそういう声は、一方通行にはどうしても泣いているような声にしか聞こえなかった。
幼い、小さな、ただの女の子の、泣き声に。

「……お願いだから、許さないで……っ」

ぼたぼた。ぼたぼた。
地面に血が流れていく。
それはとどめなく流れているのに、美琴は傷口を塞ごうともしない。
つまり、そういうことなのだ。
心の傷の方も、きっと。

「ねぇ、アンタには分かる?」

美琴は搾り出すように声を出した。

「償うべき罪があるのに、償わなくていいといわれる気持ちが」

『……』

一方通行はぐ、と息を詰まらせた。
美琴のいいたいことが分かった。
多分、同じ共犯者だからこそ――誰よりも、理解できた。

「まるで、お前には……"お前には、償えるほどの価値もない”……そう、言われてる、みたい、で……っ!!」

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/07(火) 22:42:08.35 ID:RLBr7D030

嗚咽交じりの悲鳴が痛ましい。
そういうことではないんだと思う。
妹達は、打ち止めは、本当に美琴が大好きだから、大切で堪らないから、そう言っているだけなのだろう。




本当の、本当に、背負ってほしくないから。
だけどそれは、背負うべきだと信じ込んでいる美琴にとって、最悪の言葉だったというだけ。




「分かってるわよ……私が、償いをできるような人間じゃないって」

全ては自分から始まり。
血と闇しかないレールを彼女達にひいたのは、自分なのだから、と。

「……私は……私は、この世で最低の姉なのよ!!いくら自己犠牲にひたったって、いくらあの子達を救おうと頑張ったって!!結局それは自業自得で!!!」

……それは。
その言葉は、一方通行に深くのしかかった。

『いくら自己犠牲にひたったって、いくらあの子達を救おうと頑張ったって!!結局それは自業自得で!!!』

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/07(火) 22:42:38.08 ID:RLBr7D030

打ち止めを救っても。
妹達に許されるわけではない。
ましてあの罪が消えるわけでもない。

それと同じように。

いくら御坂美琴が実験をやめさせようと実験施設をつぶして回ったり、暗部の人間と戦ったり、ツリーダイアグラムを壊そうとしたところで。
やはり、彼女が元凶であることに変わりはない。

拭っても拭いきれない罪の山。
……だけど。

『俺、この前いったよなァ……』

「……?」

147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/07(火) 22:43:09.19 ID:RLBr7D030

『"俺が、オマエの分まで背負うから、オマエはただ、表の世界で笑っといてくれればイイ”』

「……っ」

美琴は息を呑んだ。
なんで、と言った。
なんで、どうして、そんなことをいうの、と。
一方通行が、向こうで笑ったような気がした。

『そンなの、決まってる』

そして、

『                      』

プチ、と通話が切れた。
美琴は力なく崩れ落ちる。
彼女自嘲気味に笑いながら、たった一言だけ呟いた。

「    、」


  




148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/07(火) 22:45:43.67 ID:RLBr7D030
1ヶ月ぶりの更新です。
一旦平和パートに戻ります。っていうか今のルートだとバッドエンドになってしまう……
146のこの前→昨日です。直すの忘れてました
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/02/08(水) 08:14:53.91 ID:Qlv4f9AAO
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 19:21:58.90 ID:gcJR2YRe0
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 19:23:18.37 ID:gcJR2YRe0
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/08(水) 21:57:26.29 ID:/ujRhy+p0
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/11(土) 23:53:34.26 ID:tvgniJKt0

これは、夢だ。
どうしようもなく夢だ。
分かっているのに、彼は震えが止まらなかった。
怖い、と思う。

「……許、さな……い、」

手のひらがぬめぬめとしている。
視線をむけると、手のひらには血がどろりとたれていた。自分のではない、とある、少女達のものだ。

「……一方。通、……行」

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/11(土) 23:54:04.89 ID:tvgniJKt0

雑音が混じったように、ぶつぎりになりながら恨みの言葉を吐く少女達。
彼女達の死体は道となり、山となり、一方通行の歩む道を塞ぎ、彼を闇の中へと埋めていく。
ああ、と恐怖が納得へと変わる。
当然の報いだ。
当然の、結果だ。
このまま、こいつらの死体で窒息死するのも悪くない、と彼は思う。
最後に浮かぶのは、この少女達に似た二人の少女。
この少女達を幼くしたような外見の打ち止め。
そして、この少女達のオリジナルである御坂美琴。

「……一方通行」

155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/11(土) 23:54:39.36 ID:tvgniJKt0

ハッとうすれかけていた意識が覚醒した。
少女達の死体の隙間から、御坂美琴の顔がみえた。
彼女は、自分を無表情で見下ろしている。
ずきり、と胸が痛んだ。

「アンタが、殺したのよ……」

泣いている。
否――瞳から涙は溢れていない。
だけど、どうしようもなく心が泣いていた。
こんな顔をさせてはいけないのに。
こんな顔をしてほしくはないのに。

「アンタが、あの子を……殺したのよ――ッッッ!!!!!」

156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/11(土) 23:55:07.18 ID:tvgniJKt0

少女の叫びを一方通行は聞いた。
少女の本音を一方通行は聞いた。
少女の懺悔を一方通行は聞いた。
少女の嘆きを一方通行は聞いた。

全て自分のせいだった。
全て自分がやったことのせいだった。

だから救わなくてはならない。
壊れた少女を元の形に戻さなければならない。
……絶対に。





157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/11(土) 23:55:46.27 ID:tvgniJKt0



「……タ、一方通行!!」

ゆさゆさと体を揺さぶられる感覚がして、一方通行は悪夢から目を覚ました。
どうにも下腹部のあたりが重い。誰かが乗っているのだろうか。
誰か――それは十中八九、打ち止めだろうけれど。

「ラス――」

「一方通行、アンタほんと朝に弱いのねぇ」

打ち止め、と呼びかけようとして声が止まる。
……あれ?
打ち止めは、こんな喋り方をしていたっけ?

「まったく、せっかく客人が来てるんだからさ、寝てないでちょっとはもてなしたらどう?」

158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/11(土) 23:56:22.23 ID:tvgniJKt0

ぐるぐる、ぐるぐる。
あれー? と思考が超速球で回転し、とあるひとつの答えへと辿り着き。
おそるおそる目を開けた。
そして、下腹部へ。細かく言えばそこへ乗っているものの顔を確認する。

「……マジかよ」

とりあえず絶句した。
いつもの常盤台の制服(外出時も着用を義務付けられている)はどうしたのか、秋物の私服に身を包んだ彼女は、一方通行と目があうと、あ、と声を出した。

「なんだ、起きたんだ。ご飯届いてるわよ」

「……超、電磁砲」

159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/11(土) 23:56:50.41 ID:tvgniJKt0

名前をよんだら何よ、と普通に返された。
さて、何からいおう。
言いたいことは沢山あるがとりあえず――

「重いからそこどけ」

直後、にっこり笑顔が逆に怖い美琴さんに可愛らしいグーで(わりと全力で)殴られた。



160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/02/12(日) 00:00:40.55 ID:I+UqaOS90
本日の投稿終わり。
美琴は軽そうなんですけどね。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 01:09:06.97 ID:L/jA2P5DO
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 09:31:52.34 ID:p7jyyXuc0
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/12(日) 18:38:43.25 ID:fbzG9j6X0
>>160
一方通行貧弱だからなww
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送ります [sage]:2012/02/17(金) 20:42:34.02 ID:FFmWJU3y0
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [age]:2012/03/20(火) 22:02:18.65 ID:LCFte7Vs0
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 00:14:45.82 ID:3vkBO5nm0
失踪?
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/10(火) 02:05:16.15 ID:KZU94xmJo
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