このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

御坂妹「……代理演算……ですか?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :たくみ :2011/12/20(火) 18:02:16.10 ID:DHkrYFdFo
某上琴ssの中の、美琴一方の和解話、某電磁通行ssを読む

電磁通行書きてぇ……

文章力の無さに挫折

なら他作品と比べられないように誰もしたことのない新ジャンルの作品を書けばいいんじゃね?


ということで書き始めた誰得ssです。
・時系列的には9月1日から。
・一方通行と妹達主体の和解?話
・地の文多め
・カップリングは原作を踏襲、微妙な感じの通行止め
・初長編SS
>>1の文章力がもし上達したのならこのまま、残骸編→通行止めの大覇盛祭→美琴一方の和解話まで書く

最後までご付き合いいただけたら幸いです。
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 :たくみ [sage]:2011/12/20(火) 18:02:49.33 ID:DHkrYFdFo
秋が近い。

最近、御坂妹はその事を頻繁に感じるようになっていた。それをはっきりと感じ、きちんと意識したことはない。無意識と有意識の狭間で、ただぼんやりと。

明確な根拠はない。
日中の気温は未だに真夏日と呼ばれる気温だ。夜だってまだ寝苦しい。雷が夜空を貫き、大粒の雨がこの地を叩くことも今だにある。
熱に犯され、倒れてこの病院に運ばれて来る患者もいる。

それでも、と。
御坂妹は思う。ここには秋の吐息がある。秋がすぐそばに来ている。

耳を劈くばかりに鳴り響いていたセミが、何時の間にやら姿を消してしまったことに気づいたとき。熱気の中に存在する、確かな秋の冷気を肌で感じたとき。地面に落ちた葉を見たとき。
そして、かつては痛いと感じるほどの午後の斜陽が、柔らかいと感じるようになったとき。
御坂妹は季節の変化を感じた。

彼女にとっての初めて感じる季節の変化は、どこか切なくて、寂しくて。名残惜しくてしょうがなくて。
次の季節が、まだ味わったことない、知識でしかない「秋」が楽しみで、待ち遠しくて。
それは出会いと別れが交錯する春のようで。

まだ出会ったことのない季節に期待と不安を抱きながら。初めて味わう『心』の変化に胸踊らせながら。
少女はこの季節を過ごす。




3 :たくみ [sage]:2011/12/20(火) 18:03:21.46 ID:DHkrYFdFo
部屋に差し込むのは茜色に輝く夕方の斜陽。光が届く面をオレンジに、それ以外を黒色に塗り上げる。
赤と黒の対比が部屋を覆う。

窓から伺えるのは今にまさにビルとビルの合間に沈もうとしている真夏の太陽と。
それに染め上げられた学園都市の近未来風の人工物。
昼間、空の碧を反射した壁面は今もまた空の色を忠実に再現している。
街全体が紺碧に彩られていた。

その窓から差し込む太陽の最後の輝きを身に受けながら、御坂妹は診察室に置かれた椅子に腰掛けていた。学園都市製の、磨き上げられた床が反射する光に多少目を細める。

そしてその光を背負うように御坂妹の前に立つ一人の人物。逆光で顔に影が落とされる。絵の具で塗りつぶされたかのようだ。御坂妹には輪郭しか見えない。

が、御坂妹にはその情報だけで十分だ。彼女はこの人物をよく知っている。
初老を超え、少しズングリとした、白衣をまとった彼。

『冥土帰し』と呼ばれる人物だった。



4 :たくみ [sage]:2011/12/20(火) 18:03:54.47 ID:DHkrYFdFo
御坂妹は彼の手を何気なく見つめていた。老年期特有のツヤが失われてきたゴツゴツとした手。わずかに角ばったその手が、マウスを操作し、彼女の目の前の画面を変化させていく。
そこには彼女の知識で理解できるものもあれば、知識外のものもあった。画面を流れる文字列やら画像をこれまた何気なく見つめる。

この手でどれほどの生命を救ってきたのだろうか。
それら一連の動作を眺めながらふとした疑問が彼女の心の内に湧き上がる。
目の前でマウスを操作するその手、そして彼自身と、緑の手術着を着て治療室に入る彼がどうしても重ならない。
目の前にいるのは何の変哲もない老年期の男性だ。
そこらの老人と変わらない、その角ばった手が命を救えるようには思えない。

が、そんな疑問はすぐに立ち消える。
目の前で生命の奇跡を目撃したこともある。
自分自身、御坂妹本人だって現在進行形で彼に命を救われている立場の人間なのだから。
この自分自身が生きた証拠だろう。


5 :たくみ [sage]:2011/12/20(火) 18:04:30.07 ID:DHkrYFdFo
命の恩人とか、そういう薄っぺらい言葉では形容できない気持ちが御坂妹にはあった。心の内に抱く思い。
それはかつて彼女に妹達の自己同一性を教えてくれたツンツン頭の高校生に対する思いとはまた別のもの。家族愛に近いもの。

まだここに来て二週間程度しか経っていない。それでも御坂妹は彼に絶対的な信頼を置いていた。彼は頼れる存在だった。この病院の中が心地よかった。初めて心安らぐ場所を作ってくれた彼だった。

だから。
そんな感情を抱いていた御坂妹だからか。絶大なる信頼を置いていたからか。それとも彼を絶対的なものとして見てしまっていたからか。
目の前の医者が言った言葉が理解できない。
読み込めない。頭の中でいく度となく繰り返される言葉を飲み込むことができない。
6 :たくみ [sage]:2011/12/20(火) 18:05:02.97 ID:DHkrYFdFo
「……代理……演算ですか……とミサカはあなたにもう一度確認を取ります……」

言葉の『意味』なら理解できる。人の思考の補助をしろ、ということだろう。
が、『意味』に『中身』が伴わない。それが示すものが分からなかった。


妹達

代理演算

演算能力の補助

ミサカネットワーク

脳波

変換システム


様々な単語が頭のなかで反芻され、次第に飲み込まれていく。
そんな中で最後まで消化不良として残った単語。どんな酵素も働くことがなく、思考の渦に重く横たわるそれ。


『一方通行』

どうして自分が、妹達が。
自分を、妹達を殺し、殺し続けようとした人間の。
学園都市のピラミッドの最上部に君臨し、他者を蹂躙する彼の。
実験でいく度となく見た不吉な微笑を浮かべながら、無表情に人を殺して行く化け物の。

一方通行の脳の演算を補助しなければいけないのか。

そして。

どうして実験の事実を知っている、信頼を置いていた彼が、そんなことを言ってくるのか。

御坂妹には分からない。
心の中に渦巻くのは、憎悪や侮蔑、そして失念の気持ち。
一万三十一回繰り返される死の記憶。御坂美琴の悲痛な叫びとボロボロになった学生服の彼。

人工的に冷やされた部屋の空気が気持ち悪く感じる。
夕方の斜陽が静寂が支配する診療室をいつまでも照らしていた。
7 :たくみ [sage]:2011/12/20(火) 18:05:52.62 ID:DHkrYFdFo
もしかしたら夜にもう一度投下するかもしれません

これからよろしくお願いします
8 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 18:21:09.51 ID:bKHJWEqgo
おぉ、なかなか好みな感じ…乙です
9 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 18:23:57.75 ID:8YZTgCLCo
期待大です
10 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 19:23:38.58 ID:xZNe7raeo
おいおい普通に面白そうじゃないですか
なんなら並行して電磁通行の話も書いちゃって構いませんことよ?
11 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 19:45:04.18 ID:0IXgHspZ0
総合かどっかでさわりを投稿したりした?
気のせいだったらごめん

文章が超好みです
期待して待ってます
12 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 21:14:08.69 ID:arEp51j80
超期待
13 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 22:31:08.38 ID:hFL+c/yB0
微妙な感じの通行止めってのが気になる
期待
14 :たくみ :2011/12/22(木) 17:37:41.05 ID:z9cn91yIO
>>10

電磁通行は話の芯がしっかりとしていて、なおかつ文章力で無理矢理見せるところがあると思うので……


>>11

そうですね
あの後これマネされたら元も子もないじゃん、ということに気がついて慌ててスレ立てした次第です

たくさんのコメントありがとうございます
それでは投下します
15 :たくみ :2011/12/22(木) 17:38:16.87 ID:z9cn91yIO
ドアの開閉音が嫌に響いた。
音が廊下の奥に行くに連れて小さくなっていくのを耳が聞き取る。
昼間の、清潔感を全面に醸し出していたこの長く続く廊下。
目に優しい、という間接灯の微妙な暗さが中途半端な暗闇を作り出して逆に気味が悪い。点線のように廊下の奥まで続くそのわずかな灯が気味の悪さをさらに助長する。

が、そこに立つ御坂妹が、それら周りの情景に心を動かされることはない。視野から、全身の感覚器官から入ってくる情報を内でひしめく多様な感情がすべて塗りつぶす。

考えがまとまらない。
そもそもまともに思考することすら叶わない。
自分で何を考えているのかが分からない。
自分がこの場で何をしているのか、そもそもなぜここにいるのか。それさえも分からなくなる。

足元がおぼつかない。
平衡感覚が狂い始めている。
まともに立つことすら出来ない。
16 :たくみ :2011/12/22(木) 17:39:41.59 ID:z9cn91yIO
心の内をせめぎ合う感情は、彼女を傷付け、まとまることなく彼女を撫で回す。心の内に滞留する様々な感情。
心の奥に鈍痛が走る。心臓そのものが重く感じる。吐き気すらこみ上げる。
このままこの場に倒れ伏したかった。何も考えず、横になりたい。この思考をやめたい。考えたくもない。

心の内を駆け巡る悲痛な叫び。
邪悪な笑い声。
道具として利用されてきた記憶。
ようやく開放されたと思ってきたものから、再び触手が伸び、御坂妹をがんじがらめに縛り付ける。


あの透き通るように白い、それでいて鋭いナイフを持つような少年が、昨晩にここに運ばれてきたのは知っている。何が原因なのかも、そこに至った経緯も。
すべて、ミサカネットワークを介して送られてくる末妹の拙い、今にも途切れそうな映像から。

『……、分かってンだよ……』

頭の中で昨晩の声が再生される。一字一句たがわず、それこそ録音した音声を再生するように。
やがてノイズ混じりの映像が、次第にはっきりしたちょうど人の目の形の映像が始まる。

『目』の前に立つ、質素な黒いTシャツを着て、まるでこちらを守るように、こちらへの道をふさぐように手を伸ばす少年。かつての純白の髪は今は真紅に染まり、貫通した銃痕が見える。傷跡が痛々しく、立っているのが不思議だという状況。血が滴り落ち、首筋を不気味に変色させる。
17 :たくみ :2011/12/22(木) 17:40:10.06 ID:z9cn91yIO
それでも彼は立ち上がる。
地面に足を付け、まるで足の裏から根が生えているかのように。
こちらに背を向け、まっすぐに相手を見据えながら。
少年が叫ぶ。

『……クズだったとしてもさァ……このガキが、見殺しにされて良いって理由にはなンねェだろうが。俺達がクズだって事が、このガキが抱えてるモノを踏みにじっても良い理由になるはずがねェだろうが!』


化け物が吠えた。
漆黒の空に向かって猛々しく。
それは叫びであり、少年の腹の底の言葉だった。これほどまでに自身の感情を表立たせた一方通行を妹達は見たことがない。
それは一方通行の本心だった。
もしかしたら精一杯の自己表現だったのかもしれない。

が、それを見ても。
その言葉を聞いても。
何か心を動かされる妹達はいなかった。感覚同期という、臨場感溢れる感覚の中で聞いていたのにも関わらずだ。

ああ、そうか。
そこにいたのは、その一言二言で終わらせる妹達だけだった。
全員が全員、約一万の妹達の意見は合致した。

殺人鬼がたった一つの命を救ったくらいで。
万の罪を一つの行動で許せるはずがない。
自己満足で行動するのはやめろ

そう思っていた。
18 :たくみ :2011/12/22(木) 17:40:42.00 ID:z9cn91yIO
彼が白衣を着た中年男性に飛びかかかるところで映像はブラックアウトする。
御坂妹は閉じていた目を開けた。目に映るのは先ほどより暗くなった病院の廊下と、これまた磨き上げられている床に映る自分の顔。

先ほどより心の内をめぐる感情の数は増えていた。同極の磁石のようにそれらは反発し、彼女の内部を刳り、傷つけていく。

御坂妹には分からなかった。
冥土帰しが自分に代理演算を依頼した理由も、一方通行の思考の補助しなければならない理由も。
そもそもなぜ冥土帰しが彼を助けたのかも。
昨晩の一方通行の行動の動機が。
彼が学園都市280万の頂点の能力を捨ててまで、末妹を救った理由が。
19 :たくみ :2011/12/22(木) 17:41:18.76 ID:z9cn91yIO
冥土帰しは妹達の『受難』を知っているはずだ。一方通行の圧倒的な陵辱を受けていたことを。道具にされてきたことを。一方通行に対していい感情など持ち合わせてないことを。

その上でなぜ彼は妹達に代理演算を打診した?まさか昨日の件で妹達が彼を許したとでも思ったのか?

そしてなぜ、あの医者は一方通行を助けた?あの殺人鬼を助けてどうにかなるのか?生きているより死んで命を償った方がまだマシに思える。

御坂妹にはその行為が最大級の裏切りに思えた。
20 :たくみ :2011/12/22(木) 17:41:59.82 ID:z9cn91yIO
一方通行の行動も疑問だ。

あの時、右手を離してさえいれば彼は助かっていたはずだ。一番単純な反射を機能させていれば、ものの一秒もかからずに済んだ話だ。
ウィルスコードの起動など、彼が手を降るだけで、幼女の命の消滅と共に解決する話だ。あの幼女に愛着があったのだとするなら、また作ってしまえばいい話だ。
どうせボタン一つで我々は作れる単価十八万の存在なのだから。

かつての実験の時見た一方通行と、昨晩の彼は全く重ならない。寒気がするような微笑は、優しい微笑みに変わっていた。
自信にまみれ、才能の波に溺れていた彼の表情は弱々しく、まるで何かにすがりつきたそうにしていた。
群れを嫌い、孤独を好む一匹狼は、何かを懐かしむように寂しそうにしていた。
壊すことしかできなかった能力を守ることに使った。

どちらも一方通行だし、『一方通行』ではなかった。彼が命を賭してまで救った理由が分からない。彼のあの態度の意味も、何もかも。

御坂妹にはすべてが理解しがたいものだった。
21 :たくみ :2011/12/22(木) 17:42:31.42 ID:z9cn91yIO
だからこそ。
御坂妹の心は波立ち、収まることがない。
心臓の鼓動が早い。体の中の血管の収縮運動が感じられる。動悸が激しい。

立つこともままならなくなり、御坂妹はその場に座り込んでしまう。スカートが捲り上がり、
太ももが露わになる。
が、それを気にすることもなく、彼女は壁に頭を預け、上を見上げた。

「……ミサカは……ミサカはどうしたらいいのでしょうか……」

返答を返す者などいない。すぐに静寂が彼女を包み込む。

「ミサカには……どうすることもできません……何もわかりません……どうしたらいいのかも……」

ここで演算補助するのは人道的かもしれない。このままじゃ彼は植物人間状態だ。動くことはもちろん、瞬きすら出来ない、考えることもできない、ただ生かされるだけの死ぬことを待つ存在になる。

が、ここで彼に救いの手を差し伸べるのは、すでにこの世にいない、欠番となった妹達への、そしてなにより存在することすら許されなかったクローンの自分達を許してくれた御坂美琴への、最大の侮辱だ。

『……この子は私の妹だから。……ただそれだけよ』

すべてが終わったあの日、そう言って彼女は自分の目の前に立ちふさがった。白い怪物に物怖じもせずに。
その言葉は御坂妹の胸にまっすぐに届いた。

彼女は自分達を救うために立ち上がり、ボロボロになり、精神を叩き折られ、絶望のどん底に叩き落とされた人物だ。
彼女をそこまで追い込んだ悪の根元を植物状態から救うために思考に手を貸す。
彼女は何と言うだろう。
死んでいった妹達は何と言うのだろう。

怒り?侮蔑?蔑み?諦め?

それらを引っ括めて、ごちゃ混ぜにして、凝縮したような感情を抱くだろう。

そして何より自分の心がそれを拒む。
22 :たくみ :2011/12/22(木) 17:43:10.11 ID:z9cn91yIO
ふぅ、と。
彼女は息を吐き出す。数時間ぶりに呼吸をした気がした。肺の中の空気が循環する。初めてのこの場の空気が淀み、蒸されていることに気づいた。
それを自覚した途端、汗が噴き出す。

内の不快感を外の不快感が上回った。
ゆっくりと、体重を壁に預けながら立ち上がる。スカートの裾を気にして手で払うようにシワを伸ばす。わずかにホコリが舞う。
かすかな明かりの中に舞うホコリを見ながら御坂妹は思案する。


「……ミサカネットワークに入ります……」

少しの時が過ぎ、ふと誰にともなくつぶやく。
同じ容姿形の、世界中に散らばる彼女らに聞こう、と。
投げやりでもあったし、民主主義的な考えでもあった。

自分一人では重すぎる。もしかしたら約1万人で背負うにもこの話は重すぎるだろう。
それでも一人よりはマシに違いない。
どちらにしろこの問題は自分では解決できまい。


決断は早かった。

胸をえぐる感じは今もなお消えることはない。心の奥の痛みはまだ疼いている。
それらを抱えたまま、御坂妹はその足を踏み出す。
自分の足音が嫌に床に反響した。
23 :たくみ :2011/12/22(木) 17:43:48.10 ID:z9cn91yIO
すいません

>>1
今から飛行機に乗るので、投稿が出来ません
羽田に着き次第、投稿を再開します

あとこれからの注意事項がいろいろあります

次回より妹達と一方通行の間について深く込み入った話になってきます
このSSは>>1の未熟な読解力から出来たSSです
人によって見解の差異があると思いますが、このSSは自分の見解を強制させるものでは無いということを念頭に置いてこれから先を読んでいただけると幸いです。

また>>1は今年受験生というレッテルが貼られています
1月後半から3月中盤にかけてSSの投稿スピードが極端に落ちると思いますが、ご了承願います
24 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 18:03:04.77 ID:LeTPCwJA0
乙です!
投稿は自分の早さで頑張ってください
続き期待してます
25 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 19:25:39.77 ID:OTWmHeeAO


このSSの御坂妹は原作より人間らしいな
26 :たくみ :2011/12/22(木) 22:13:15.63 ID:SM1L1K9IO
ホテルに無事着いたので続きを投下します
27 :たくみ :2011/12/22(木) 22:14:03.44 ID:SM1L1K9IO
LEDの電球が細かい明滅を繰り返しながら、点灯する。目に入るのは何も変わらない自分の病室。
壁にはめ込まれた様々な医療機器に、最新のベット。天井に備え付けられた薄型テレビに、机の上に綺麗に畳まれた病院着。

昼間、看護婦に呼ばれてこの部屋を出た時と、何一つ変わっていない自分の病室。部屋を冷やす業務用の冷房の音だけが低く唸る。

窓に映るのは学園都市の光輝く夜景と、焦点をずらした時に映る自分の顔。我ながら感情のない顔だと思う。その人工的な明るさと、今の自分の存在がひどく重なったように感じた。
自嘲的に笑おうとして、やはりその笑みすらもできないことを確認し、彼女はベットに深く腰掛ける。ベットのスプリングが彼女の体重を優しく支えた。

別にリラックスした体勢でなくとも、ミサカネットワークには接続可能だ。自分から流れ出す電磁波を、そこらを漂う同系統、同人物の電磁波の波に乗せればいいだけだ。ラジオの周波数を合わせるように、いやそれよりも遥かに簡単にネットワークには接続することが出来る。
28 :たくみ :2011/12/22(木) 22:16:38.70 ID:SM1L1K9IO
が、自分の今現在のまだ不完全な体調、そして今から自分がネットワーク上に放出する情報の危険性、重要性を考慮すると、やはり慎重にならざるを得ない。
一方通行による蹂躙からまだ日は浅い。二週間と立っていない。あの医者の恐るべき医療技術は感嘆に値するが、表面上は治った怪我でもその内部ではまだ完璧とは言えない。
念には念を、だ。

靴を脱ぎ、かかとを揃える。
ベットに体重を預けた。柔らかな枕が自分の頭を包み込む。

体のすべての力を抜き、重力に逆らうことを辞める。
自分が、ベットに沈み込み、うもれて行く錯覚を覚えながら、御坂妹はゆっくりと目をつむる。先ほど廊下で目をつむった時よりも深く。ゆっくりと。
彼女の視界が細まり、やがて黒一色になる。

そこらを漂う様々な電磁波の一本を手繰り寄せ、それに自身の電磁波を合わせていく。
そこは情報の宝庫。
記憶の保管庫。
電子の海の、最新部へ彼女は誘われる。
29 :たくみ :2011/12/22(木) 22:17:22.06 ID:SM1L1K9IO
ミサカネットワークは言うならば概念的なモノだ。現実には存在してないし、認知もされていない。あるのはただ彼女らが繋がっているという事実のみ。
ネットワークに絶対的な形はないし、目にも見えない。ネットワークはただの手段でしかない。
その電気的通信をどの様に表示させるかは個人の自由だ。

だから、彼女らは各々が、各々に思うネットワークの姿を想像し、構築する。
ネットワークの形式は彼女ら個人によって違う。

ある妹はインターネットのチャット形式だという。
またある妹は広大な闇の中に浮かぶ光の玉が自分に語りかけてくる形式だという。
そしてまたある妹そこに実在するかのような肉体がたくさん集まり、話しかけてくる形式だという。

一万通り近くの出力形式が存在する中、御坂妹が心に思い描くのは図書館だ。
天井は高く、空間の真ん中に巨大な遥か奥まで続く長机が。
そしてそれと左右対称に、長机に対して垂直で並べられる無数の本棚。

そこに存在するのは一万近い、もう更新されることのない大きさのマチマチな本と。今なお現在進行形で書き続けられているある程度一定の、巨大な本。
そしてその著者であるふわふわとした白く光り輝く10000の魂。
空間は荘厳かつ巨大。ヨーロッパの宗教建築を想起させる作り。
これが御坂妹が描くネットワークだ。

なぜこのような形になったのかは御坂妹自身覚えがない。気づいたらこうなっていた、というよりこれしか考えられない、というのが現状だ。
念じれば作り変えることも不可能ではないだろうが、この形に慣れてしまっているのでそうする気はない。
30 :たくみ :2011/12/22(木) 22:18:38.88 ID:SM1L1K9IO
空間は閑散としていた。辺りを漂う白い玉は、今では両手で数えられる程度しかいない。それらもパッと消えたり、また現れたりを繰り返しながら、数を減らすこともなく増やすこともなくこの場にいた。

かつては常時ネットワークに接続していた妹達。彼女らの生きる目的が変わった日に、またネットワークの使用方法も変わった。

『妹達の画一化を防ぎ、個性の成長を助長させる』

そんな目的でネットワークへの常時接続義務は取りやめになった。
それがこの空間が静かな理由の一つだろう。

だから彼女は情報を更新させる。
意識の中のにも関わらず彼女はもう一度目をつむる。右手を頭に当て、やがて手を離す。それに付いてくるのは銀色の漂う糸のようなモノ。
彼女の記憶であり、記録だ。

それを右手からそっと離し、天井に向ける。
ふわふわとホコリのように漂うそれは、天井に当たると天井に水面のように波紋を広げさせ、やがて映像を映し出した。
31 :たくみ :2011/12/22(木) 22:19:31.31 ID:SM1L1K9IO
金色に染まる部屋。
赤と黒の濃淡。
画面に映し出される傷ついた脳の画像。
かつて、そして今もお世話になっている白衣の男性。
彼の口が開く。


『彼の、一方通行の代理演算をお願いできないかな』

そのセリフが終わるか終わらないかの内に、この狭い空間は光に満ちた。

『ミサカはーーーー』

『これはーーーーー』

『なぜーーーーーー』

『ミサカはーーーー』

『一方通行のーーー』

『昨日はーーーーー』

『上位個体はーーー』

『ミサカはーーーー』

『ミサカはーーーー』

『ミサカはーーーー』


情報が爆発する。錯綜し、交差し、ぶつかり合う無数の光玉。負荷に耐えきれず、目の前の景色にノイズが走る。軽くめまいがし、頭の奥が痛む。
ベッドに寝た状態で良かった、と御坂妹は先ほどの判断が正しかったことを確認する。

ネットワークが沸騰状態にあることを悟ったのか、それとも話を進めたかったのか。
辺りに漂う光玉は落ち着きを取り戻し、響き合う声も少なくなっていく。

やがて声を発する者は一人になる。
32 :たくみ :2011/12/22(木) 22:20:06.46 ID:SM1L1K9IO

『……我々は、何をすべきなのでしょうか……と、ミサカ20000号は困惑の中呟きます』

すべてを共有した彼らに詳しい説明などいらない。彼らは『ミサカ』であったし、ある意味で一つだった。
昨日、一方通行の身に何が起こったのかもすべて知っているし、そこでのセリフも痛みも、我が身に起こったかのように知っている。皆がみな、固唾を飲んで見守っていたはずだ。

ある者は自分自身を縛り付け、ある者は自分自身の額に黒光りする殺傷兵器を押し当てながら。
妹達の、わが末妹の行く末をしかと見守っていた。
ウィルスコードの発動は学園都市の終焉を意味する。彼女らは命をかけていた。

一から十まで説明する必要などもはやない。議題は、そして解答はYesかNOの二択だ。それだけでいい。
33 :たくみ [sage]:2011/12/22(木) 22:21:09.19 ID:SM1L1K9IO
ネットワークに存在する、突然のことに対する困惑、
一方通行への怒り、憤り、
もうこのネットワークにすらいない記憶となった妹達への悲しみ。
そして今だ培養器の中で眠る上位個体への哀れみ。

様々な思いが交錯するネットワーク。やがて一人の『ミサカ』がその口火を切る。


『私は……反対です。彼にはもう関わりたくありません。それ以前に私たちは彼にそんなことをする義理もないのでは?と、ミサカ10692号は疑問を呈します』

一つの発言が万の解答となって返ってくる。

『その意見には賛成です。死んでいったミサカたちへの最大の失礼に当たるのでは、と、ミサカ15632号はもうここに存在しない10031人のミサカを思い出しながら自分の立場を表明します』

『ですが上位個体は……』

『上位個体は上位個体で、ミサカ達はミサカ達です。それが「個性」とも言うべきものなのでは?とミサカ10078号は自身の自己同一性を主張します』

『そもそも上位個体は妹達のなかでも唯一生き残る予定だったのでは?とミサカ16987号は上位個体の立場を改めて確認します』

『医師の報告では上位個体はあと二日は眠ったままだそうです、とミサカ13577号は医師の診察結果を報告します』

『話がそれていませんか、とミサカ15951号は話のズレを元に戻そうとします』

『それ以前にお姉様はなんと思うのでしょうか、と、ミサカ14369号は我々を救おうと奔走したオリジナルの存在を提示します』

やはり考えることは一緒なのか、と御坂妹はふと思った。

『ですが、彼は昨日我々の命を、彼の能力と引き換えに救ったのでは?と、ミサカ18769号は昨晩のことを思い出しながら訴えます』

『万の罪が一の贖罪で終わると思っているのですか、と、ミサカ16987号は強い憤りを感じながら自分の意見を叩きつけます』

『一の贖罪ではなく、万の贖罪では、と、ミサカ18963号は昨日救われた妹達の総数を数えてみます』

『贖罪だ云々ではないはずです。彼が一万のミサカを殺したことには変わりないのでは、と、ミサカ15995号はかつての実験を思い出しながら罪について語ります』

『ミサカ達はいま彼の呪縛から開放された立場です。なぜ今さら元に戻ろうというのですが?とミサカ13575号は疑問を抱きます』
34 :たくみ :2011/12/22(木) 22:21:47.90 ID:SM1L1K9IO

議論は平行線をたどろうとしていた。一万もの意見が飛び交い、一万もの返答があり、また一万の意見が飛び交う。
御坂妹は目に映る、光玉がせめぎ合う様子を眺めていた。

万の殺人を、たかが昨日一日のことで許すつもりはない、ということだけは全員の間で一致していた。それくらい御坂妹にも分かっている。
殺人と人助けが等価関係とは思わない。ましてや一万の殺人とただ一回の人助けとが釣り合うわけがない。

かつてココで生き、今は更新のない情報となった幾千のミサカたち。

銃殺、刺殺、圧死、爆死、失血死

それらすべての記憶を妹達は持つ。事細やかに、痛みから、その生が失われる瞬間までの記憶を。
記録であり、記憶でもある。
我々が彼女らが生きていた証拠だ。証明だ。それを忘れてはならない。
その記憶たちを風化させてはならない。

それらを持ち、忘れることができないからこそ、『自分自身』に起こったことだからこそ。
彼女たちは許すことが出来ないのだろう。

自分たちが生き残ったからこそ、否、生き残ってしまったのだからこそ。
自分たちは彼女たちの呪縛を心の中で無意識の内に作り上げてしまっている。
それこそが正しいと信じている。

一方通行が絶対的な悪で。
我々は被害者で。
一方通行は殺人者で。
我々はその生き残りで。
その絶対的な悪を憎むことが正義で。
憎まなければならなくて。
そうでなければかつての『ミサカ』たちに失礼で。
35 :たくみ :2011/12/22(木) 22:22:18.87 ID:SM1L1K9IO
しかし。
御坂妹は何かに引っかかった。
我々に本当に彼を救う義理がないのか?
そもそも、我々が彼に怒りを抱くのはなぜなのか?

我々は彼に殺されるための存在ではなかったのか?

とある高校生に心の内を変化させられたとしても。最強が最弱に倒されたあの日に何かが変わったのだとしても。彼に生きる理由、世界に一人の『ミサカ』を諭されたのだとしても。個体の生命の価値を見出されたとしても。

それ以前の我々の役割は殺されることではなかったのか?
そして我々はその役割に疑問を抱いていたのか?
あれは双方の合意ではなかったのか?

一方通行は悪なのか?
我々は被害者なのか?

そして気づく。


我々は





あの実験中に





一度でも





生きたいと願ったことがあるか?
36 :たくみ :2011/12/22(木) 22:23:01.75 ID:SM1L1K9IO
今日ここまでで

たしかに御坂妹に人間味がありすぎる気がしますね……
37 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 22:44:30.36 ID:h0JphC3u0
乙でした


確かに5巻で「一方通行は妹達に命乞いを一度でもされていたら、どうしていたか?」みたいなことは言われてたし、
御坂妹が気付いたことは結構重要なことかもね
38 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 22:55:25.07 ID:NOeD2BoQo
この時点でここまでの感情を発揮出来るかというと分からないが
でも良いんじゃないかな乙
39 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 23:36:42.20 ID:4U5xnED20
乙ですの

妹達の中で一人でも生きたいと願う個体がいたら、実験初期にいたら、どうなってたんだろう
実際、レールガンの方じゃ一回目の実験とかなんて命令された妹達の自爆な感じで一方通行も殺そうとまではしてなかったように思えるし
40 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 03:26:11.27 ID:Ile2fllDO
妹達って狙撃とかしてたし[ピーーー]気満々だよな
まぁ同朋をあんだけ一方的に殺されてれば怨むのもしょうがないか
41 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 10:52:06.37 ID:pEF5bf7DO
無数のクローンが毎日自分に殺意を向けて殺しにきたあげく、
こちらの自衛手段である反射使って自殺していきました
と言う考え方したら、一方さんに狂うなと言う方が酷だろ
完全サイコホラー。三人目ぐらいで自殺したくなるレベル
あの実験人格壊すには十二分だ
42 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 11:58:53.75 ID:gbomdVEDO
しかしネットワークの解釈とか描写が良いな
一万通りの出力方式とかグッとくるわ
43 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 12:02:48.69 ID:jupDyepgo
一方通行が能動的に実験をやめるのがいちばんだったんだろうけど、
それは無理だったのだろうか。
44 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 12:27:48.26 ID:JVkHJ0KAO
いいな、乙
45 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 12:31:43.65 ID:Tq4qi2JKo
>>41
一方通行が精神的ヘタレなのは誰もが認める所だろうからなぁ
殺した時点でもう止まれず、実験の一貫として器物と判断し、必要な犠牲として
自己正当化しつつドンドン狂いながら進むしか出来なかったんだろ
46 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 14:51:58.06 ID:Tq4qi2JKo
…どっかで語り尽くされてるようなことを申し訳ない
どんな話になるか続き楽しみにしてる乙
47 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 15:42:26.94 ID:Od5IzlO0o


ただ>>14でマネされたらって言ってるけど、余りマネとか口に出さない方がいいよ
多少の被りは仕方がないし、そもそも二次創作だし

一方通行ってヘタレと言うか、甘いだけだよね
スキルアウトや研究員の数十人殺しても正当防衛や能力暴走って言えば事故か失踪扱いだろうし
残忍になれるならスキルアウトを生きたまま輪切りして、額縁に入れてアジトに郵送すりゃ雑魚に絡まれなかったろうに
48 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 19:00:42.26 ID:HkPorGfAO
今でも「本当は殺したくなかった」は何だかなーと思う。
49 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 20:38:32.29 ID:xluM+BYd0
>>48
それって一応打ち止めの推測で一方通行自身が言った言葉ではないんじゃなかったっけ?
間違ってたらすまん
最初こそ超電磁砲を見る限り[ピーーー]気なかっただろうし、実験中の人格と比べて比較的今に近い性格ぽかったけど
三巻時点じゃばっちり楽しんでたよな楽しまなきゃやってられん域までイっちまったんだろうが

かまちーの思いつきで主人公格のひとりになったからって言えばそれまでだけどさ
50 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 20:46:46.15 ID:u8Jx+vTSo
信者の幻想が凄い
51 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 21:38:48.28 ID:fHFLgZNjo
そもそも原作に対して幻想持ってなかったら二次なんか読まないわけで
52 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 23:37:57.05 ID:o9sfSvIG0
>生きたいと願ったことがあるか?
3巻序章で狙撃に失敗したミサカは、生物としての本能か その場から逃げる程度には生きようとはしていたような

一方通行寄りに考えちゃうってのは、やたら一方側の描写が多い所為かね
原作だと妹達(打ち止め含む)の心理描写って殆ど無いんだよな
53 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 23:57:56.11 ID:Od5IzlO0o
>>52
狙撃手は成功失敗問わず、狙撃後可能な限り早くその場から移動するから関係なくね?
戦闘中に逃げるシーンも敵前逃亡と言うより、戦略的撤退っぽいから実験中に限っては生きようとしたシーンはなさげ
54 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 00:16:37.66 ID:DVT+cUBdo
新巻でも自分が楽しそうに殺してたこと都合よく忘れて自分のこと棚上げするクズだったじゃん
55 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 00:25:16.78 ID:9LfrPJM9o
お前らの意見なんぞとうの昔に語り尽くされ切ってんだよ
信者もアンチもちょっと黙ってろ
56 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 07:10:49.81 ID:6z0bBV6IO
ひとまず議論はよそで
ここはSSのスレだ

>>1
57 :たくみ :2011/12/26(月) 17:12:27.98 ID:0Yv1tRQmo
>>1です

冬季講習、クリスマス、テストなど行事が立て続けにあったので投下できませんでした

少しですが更新したいと思います
58 :たくみ :2011/12/26(月) 17:13:02.93 ID:0Yv1tRQmo
疑問が思わず口から吐き出された。

「我々に彼を責める権利はあるのでしょうか、と、ミサカ10032号は呟きます」

自分たちの作られた目的は殺されることではなかったのか?
自分たちの存在価値は。
レベル2止まりの自分たちの価値は、それでしか見出されなかったのではないか?
我々の存在理由は一方通行に殺されることではなかったのか?
死して始めてその意味をなすのではなかったのか?

傾きかけた超能力者量産計画を拾ったのは一方通行がいたからではないのか?
我々か生まれたのは一方通行がいたからではないのか?

あれ程までに騒がしかった空間は今は静寂が支配する。

疑問は絶えない。
絶えることなない。
次から次に生まれ、御坂妹の口から吐き出され、消えていく。

自分たちの生まれた理由。
存在価値。
目的。
すべてが彼のためであったはずだ。
59 :たくみ :2011/12/26(月) 17:13:30.46 ID:0Yv1tRQmo
そして何より、



「我々は彼を殺そうとしていたのではありませんか?」



妹達は彼を全身全霊をかけて相手にしていたのではないのか?
60 :たくみ :2011/12/26(月) 17:13:57.81 ID:0Yv1tRQmo
第一次絶対能力進化実験

ミサカ00001号は自ら銃を手に取り発砲し、反射され、死亡。


第九九八二次絶対能力進化実験

実験の開始の合図はミサカ9982号が手に持つその銃声より。学園都市製の地雷までもを使い全力で応戦するも、一方通行が投げた車両により圧死。


第一○○三二次絶対能力進化実験

先制攻撃はミサカ10032号による電撃。周囲の空気中の酸素を電気分解、オゾンに化合し窒息死を狙うも失敗。乱入者による当実験の中止、及び実験計画の凍結。


何が加害者だ。
何が被害者だ。

殺人鬼?
残された者たち?

絶対的な悪?
我々が善?

悪人?
かわいそうな自分たち?
61 :たくみ :2011/12/26(月) 17:14:55.45 ID:0Yv1tRQmo
くっだらない。
そう御坂妹は吐き捨てる。

何の疑問も抱かずに一方通行に殺傷兵器を向け、発砲したのは誰だ?
誰があの時生きることを望んでいた?
死ぬことに疑問を抱いていたか?

答えは否だ。
我々の生きる意味は彼に殺されることで、死ぬことで始めてその価値が生まれる、と。
我々は死ぬために生まれてきたのだ、と。
そう考えていたのはどこのどいつだ。紛れもない自分たちだ。
我々の存在が御坂美琴を苦しめた。
62 :たくみ :2011/12/26(月) 17:15:23.08 ID:0Yv1tRQmo
何が被害者だ。
白々しい。

死にたくないのならば、実験に向かうときに逃げれば良かったはずだ。いくらでもチャンスはあった。
生きたいのならば一方通行に懇願し、泣き叫んで頼み込めば良かったではないか。
抵抗すれば科学者どもなど動かぬモノにすることさえできたはずだ。
安全装置たる上位個体など簡単に手中に出来たはずだ。

誰かそんなことをしたのか?
誰かが涙を流したか?
涙を飲んで実験場に向かっていたか?
あの実験が終わった日の前に、妹達の死を、我々は悼んだか?
この巨大な図書館にそんな記録などどこにもない。そんな都合のいい記憶など持ち合わせていない。それは自分自身がよく知っている。
63 :たくみ :2011/12/26(月) 17:15:55.70 ID:0Yv1tRQmo
自分たちが命の価値に気づいたのはつい数週間前だ。それ以前には自分たちの命など考えたこともなかった。それが当たり前だと思っていた。

それを今更気づいて被害者ヅラ?

バカバカしい。

自分たちは加害者だ。
死んでも被害者ではない。
恨むのは一方通行ではないはずだ。
恨むべきはこの計画を作ったバカどもと、この街と。実験を受動的に受けていた自分たちだ。

この実験に加害者は存在しない。

歴史にifはない。
だが、もしも。
お姉様がDNAマップを提供しなかったら。
一方通行が実験を拒否していたら。
我々が生き残ることを望んだのなら。

はたしてどうなっていたのか。
64 :たくみ :2011/12/26(月) 17:16:46.13 ID:0Yv1tRQmo
我々にも責任はある。
こんな単純なことに気づけなかった、いや気付こうともしなかった我々にもだ。

妹達は生きることを望まず、一方通行はそれに答えた。
それだけだ。
それが事実だ。
例え彼が好んで殺していたとしても。その元を作ったのは自分たちだ。
我々の言うことは支離滅裂だ。
矛盾だ。

都合のいい格好ばかりするな。
65 :たくみ :2011/12/26(月) 17:17:41.23 ID:0Yv1tRQmo
大まかそんなことを言い切って御坂妹は息をついた。動悸が激しい。心臓が激しく胸を打つ。呼吸が荒く、横になっているにもかかわらず、肩で息をしているのがわかる。
ここまで自身の感情が溢れたことはなかった。自分がそれを一番驚いている。

今まであれ程までに胸の内をせめぎ合っていた感情の波は、今は静かに収まり、わずかな波紋を残すのみ。

そこにあるのは妹達への、そして先ほどまで被害者のツラを被った自分への怒り。
なぜそこに気がつかなかったのか。

我々と一方通行は同罪、いや我々の方が罪は重いのかもしれない。
妹達が拒否していれば一方通行が大量殺人鬼になることはなかった。妹達が死ぬこともなかった。
抵抗すればインテリなど糸もたやすく殺せた。

だがそれをしなかった。
無数にある選択肢を我々は放棄した。
死ぬ道を選んだ。
自ら、自分の手で。
助かる道を探そうともしなかった。その道を黙[ピーーー]らした。
66 :たくみ :2011/12/26(月) 17:18:34.37 ID:0Yv1tRQmo
被害者などと自分を可愛い子ぶる自分たちが恥ずかしい。
自分への激しい怒り。
自己嫌悪。
憎しみ。
侮蔑。

別に一方通行への代理演算の義務があるとは思わない。強制される筋合いもない。

だけど、
だけどだ。
彼に生きる権利はあるはずだ。
我々が殺そうとし、殺され、大量殺人鬼になったとしたら。
妹達には彼と共に歩み、生きていく理由はあるはずだ。
代理演算を断る理由もなければ、強制される理由もないはずだ。
そんな時。
もし妹達に『ヒト』としての心があるならば、彼に救いの手を差し伸べてもいいはずだ。
67 :たくみ :2011/12/26(月) 17:19:04.03 ID:0Yv1tRQmo
周りは波を打ったように静まり帰っていた。白玉たちは身じろぎもしない。空間が静止していた。

天井で流れ続ける妹達の無数の記憶。
そこに映し出されるのはどれもこれも自ら実験へ参加していく妹達。

自覚しているからこそ、自分たちがかつて命を知らなかったことを知っているからこそ。
彼女たちは何も言えない。

沈黙だけが流れ、時だけが過ぎていく。

痺れを切らしたように御坂妹が言葉を発する。

「……多数決を取ることを提案します……一方通行の代理演算をするか、しないか……とミサカは尋ねます」

再び沈黙。
沈黙は肯定の印ととる。

「一方通行の代理演算に反対する者はここからの退出を願います。賛成する者はここに残ってください、とミサカ10032号は吐き捨てます」

御坂妹はそう冷たく言い放った。
68 :たくみ :2011/12/26(月) 17:19:51.32 ID:0Yv1tRQmo
その言葉が合図となり、一つ、また一つと光玉が霧消していく。消えた後に残るボヤッとした霧のようなモノが空気に溶け込み、やがて消える。

誰も何も発しない。
ただ音もなく消える白銀の魂。

やがて。
この空間での動きが再び静止した。

御坂妹は図書館を眺める。
そして、

「……そうですか、と、ミサカ10032号は呟きます」

そう言って、彼女自身もまた、空気に溶け込むようにして消えた。

112対9857

圧倒的なまでの反対派多数だった。
覆ることのない圧倒的な数字の差。
自らが課し、自らが決めた投票という方法。
妹達の総意だ。
69 :たくみ :2011/12/26(月) 17:20:31.40 ID:0Yv1tRQmo
その差は御坂妹を失望させた。
ここまでか、と。

一方通行が正しいなどと言ってるわけではない。
ましてや自分たちに全責任があるなどとも言ってない。

ただ。
ただ単に妹達と一方通行の立場は変わらないと思っただけだ。
被害者、加害者の関係などない。
実験の関係者として、そして同じ罪を背負うものとして。

支え合うことが出来るのではないかと思ったのだ。

だから御坂妹は失望した。
生き残った妹達があそこまで飄々として生き、過去の自分を美化していることに。
死者を過剰なまでに悼み、悲しみ、恨みを募らせ、今を見ていないことに。


この日から御坂妹はネットワークへの接続を完全に断ち切った。
70 :たくみ [sage]:2011/12/26(月) 17:23:56.98 ID:0Yv1tRQmo
今日はここまでです

正直このSSの中の『賛成派』と『反対派』の意見はどっちもどっちだと思います

御坂妹の意見は極端、他の妹達よ意見もまた極端

感情の発達が未熟な妹達ならしそうだな、ってことで書かせていただいてます

次回の更新は年内にあと一回くらい
よろしくお願いします
71 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 17:50:24.83 ID:Sl452zn0o
乙です
リアルでも意見の分かれる問題だしな
妹達でもこうなってもおかしくないね
えらい人間味あるけど
72 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 18:13:25.56 ID:Q8SWhYwLo

この問題が難しいからねぇ。どんな理屈をこねてもいっぱい殺したのは事実だしなあ。命は一度失われたら帰ってこないわけだし
でも一方で殺しに来たのを殺したって言うことで自己防衛っていう面もあるんだよね…
議論で荒れそうなよかん…カッとなったときは一度掲示板の向こうにも人がいるのを意識しようね。
73 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 18:29:30.46 ID:AYOF6U2Zo
乙おっつ

実験当時の妹達は学習装置で実験に都合のいい知識しか与えられて無かった可能性があるしなぁ
生きる事も死ぬ事も[ピーーー]事も、その向こうにある倫理とか道徳とかを教えなかったり、生存本能とかを意図的に封殺しとけば
そりゃモルモットとして振舞うだろう

それを当人達が振り返って当人なりに考えたり議論するのはいいと思うけど
当人以外が変に関係者の一部の肩を持ってあれが悪いあれは悪くない言っても結論なんか出るわけ無いんだから荒れるだけだわな
74 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 19:03:00.57 ID:Av0adMi90
乙です。
自分的には実験は一方通行の虐殺と同時に妹達の自殺のような要素もあるんじゃないかと思ってます。

「殺される為に生み出されたんだって〜」「へぇ〜」
「でも[ピーーー]気でやれってさ〜」「ふぅ〜ん」
「でも向こうが死んだらどうなるんだろ〜ね」「さぁ〜」
「他に存在意義も無いしやろうか」「そうだね〜」

みたいな。
75 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 20:21:37.07 ID:JbCs+QbAO
>>73
[ピーーー]ことが良いことだと教育されて人殺したらそいつは悪くないの?
76 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 20:39:49.61 ID:AYOF6U2Zo
>>75
結論は出ないにせよこの手の議論で語り合うのは個人的には嫌いじゃないが、
ここは議論を広げる場じゃないのでこれ以上やりたいなら別スレ行った方がいいのかも
ちょっと逸れた事書いたのは謝る
けど一応>>73はあくまで>>1の書いた物語を読んで思った事を書き込んでるつもり
出来れば>>75さんも思った事すぐに書き込む前に>>1の書いてる物語について思った事を優先して書き込んで欲しいと思う

ともかく、色々余計な事考えて書き込んでしまうくらいに、御坂妹や他の妹達が思考停止せずに悩みながら意見交換してる描写は移入できて面白かったし、
ここからどういう道筋を辿って先の話が広がるかは凄く楽しみです
続き待ってます
77 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 21:08:26.01 ID:OYe2xOZy0
乙おつ
>>1のMNWの描写が好きだ
78 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 21:24:41.32 ID:wP0b81320
>>1

甘い話しだ、一方通行が、無視していれば、

ウイルスで妹たちは全て犯罪者、

生死を問わずの捕獲対象になっているのである。

知らぬが仏とはまさにこのことか。
79 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 22:10:47.67 ID:Wym/xbQW0
それとこれとは何の関係もない話だけどね。頭撃たれたのも一方の自己責任だし

>>1
80 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 22:31:43.35 ID:JbCs+QbAO
そもそもこのまま打ち止めを救ったという自己満足に浸って死ぬより罪償わすために生かす方が一方通行にとってはよほど辛いと思うんだがね
死んで罪を償うって一方通行の罪は死ぬくらいで償えるくらい軽いもんなのか
81 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 23:00:21.94 ID:Sl452zn0o
知るか
黙ってろ
82 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 03:38:33.11 ID:ySuqGMtBo
罪を償うとか所詮自己満の世界だし
83 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 09:35:57.91 ID:3lmymZFso
シスターズさえ納得してるなら、第三者(美琴含む)がなにいっても仕方ないのよ
84 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 13:59:16.75 ID:T530CHzBo
御坂妹が極端過ぎて引くわ
85 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 19:49:30.34 ID:0sLha0910
>>83
上条と美琴は第三者じゃなく当事者だけどね。2人がいなきゃ妹達は予定通り全滅してたろうし
どっちみち妹達が自分の意志で決めたことなら、思うトコはあっても何も言わんだろうけど
86 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/27(火) 20:34:25.93 ID:NUQsoUZb0
こういった『絶対能力進化計画』関連のssを見る度に常々思うんだが、仮に一方通行が実験に加担しなかったとして
その場合、妹達には幸福な未来よりも一思いに一方通行に殺されていたほうが遥かにましなぐらいの最悪な未来の方が
可能性的に見て相当高いという事実になんで誰も気づかないんだろうか?
むしろ現状の妹達って、一方通行の代理演算をしているからこそ、最悪な未来を回避しているようなものだと思うんだが……
87 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 20:55:44.16 ID:Eg9RRk4oo
if話を長々と書くな
全部プラン通り、全部プランのせい
88 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 04:47:18.74 ID:oUiBlxPqo
木原彗星さえもプランプラン
89 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 14:58:51.25 ID:27EntT5yo
妹達は周囲からこうと言われたことをそのまま鵜呑みにする傾向があるから
妹達の意識って
実験中→妹達は実験で死ぬために作られましたが何か
実験後→極悪非道の殺人鬼の暴虐に耐え続けていた妹達は勇敢な若者とお姉さまに助けられ、悪者は退治されました。めでたしめでたし
なわけだし、このSSの流れは納得できるけどな
上条さんやカエル医者から直接「お前はどうしたいんだ?」という問いをぶつけられてる御坂妹は
他の妹達より早く自分自身で「それは本当か?それでいいのか?」と考えるようになったってだけだろう
90 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/29(木) 15:01:40.09 ID:i3VX44KIO

大体そんな感じでこのSSを書いてます。
御坂妹は選択肢を提示されて、そこから19090号とはまた違う感情の発達を始めている、と。

年内に一回投下すると言っていたので。少しですが、どうぞ
91 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/29(木) 15:02:10.56 ID:i3VX44KIO
「……そうかい……それは残念だね」

ミサカネットワーク上での決議から一夜が開けた九月二日の午前中。
昨日と同じ部屋で、同じ人物と、御坂妹は顔を合わせていた。昨日と異なるのは部屋の色彩くらいか。

「演算補助は百人ではとても足りない。言語能力を賄うだけで精一杯だろう。運動神経を援助しようとしたら間違いなく君たちは倒れるね」

今日はそこまで忙しくはないのか、テーブルの上のパソコンを操作することなく、こちらを見る冥土帰し。
そういえば、昨日は地下街で能力者同士の衝突があり、この病院にもいく人かの怪我人が運ばれてきたな、と前日の昼過ぎの病院の騒ぎ具合を思い出す。

「……まぁ、僕は君たちにあくまで頼んだだけだ。君たちに絶対という強制はないんだね」

その声にはいつもの優しさはなく、かと言って冷たさがあるものでもなく。まるでそうなることをある程度予期していたかのような、分かり切った様子の声で。
92 :たくみ :2011/12/29(木) 15:02:40.56 ID:i3VX44KIO
「それにしても君たちの中でも意見が別れるなんて珍しいんだね。それも100人も意見が違うとは。これも個性の現れかな?」

自分の意見が「100人も」と少数派に入れられたことに不快感を感じる。
決議が行われ、敗北することを知っていたかのような物言いに、どこか深いところで怒りを感じた。
それは、この医者に何がわかっているのかという半ば八つ当たりに近い怒り。
が、それを御坂妹が明確に感じることはなく、それを億尾にも出さず。
ただ未熟な感情が、怒りを理解しない彼女の脳が、彼女自身を傷つけ、苛立たせていく。

「それにしても、一体全体、なんで君は賛成派にいたんだい?一方通行を許したのかい?」

なぜか。
そう言われてすぐに答えが出るモノではない。

許してなんかない。
許すわけがない。
そしてこちらは許す、許さない、そんな権利など持ち合わせていない。
怒る権利すらもない。
権利は一方通行が持ってると言っても過言ではない。
被害者など誰もいない。
妹達はいつでも受動的に、流されるままに自己に与えられるモノを感受するだけだ。

だから御坂妹は言う。

「分かりません、と、ミサカは返答します」

明確な答えは出ないまま。
そのモヤモヤとした不可解な感情が、数字で表せない虚数のようにわだかまりとなって御坂妹の心に残る。
93 :たくみ :2011/12/29(木) 15:03:06.84 ID:i3VX44KIO
「なぜ、あなたは一方通行を救ったのですか、とミサカは問いかけます」

逆に御坂妹は問いを発する。
昨日散々悩み、結局解決出来なかった疑問。
この医者は一方通行が妹たちに何をしたのかを知っているはずだ。その上で代理演算という言葉を口走るのか?
端からみるならば、殺人鬼である一方通行。それを救って何になるのだ?

それこそが犯罪にすら思えて。
その感情が『反対派』の妹達の原動力だと分かって。
昨日の言動をすこし後悔して。

その押し問答を何回か繰り返しているうちに夜が明けた。
知りたいという欲求に自分の感情が、未熟な思考が追いつかないのが腹立たしくてしょうがない。

すこしの間が空いて。

「それは君が『賛成派』になったのと同じ理由じゃないのかな?」

結局答えは分からないのか、と御坂妹はうなだれる。

「けれど……」

冥土帰しは御坂妹の様子を見て付け加えたかのように。

「医者に人を助けない理由なんてないんだね」

どこかいつも楽観しているような冥土帰しの声が、いつになく真剣になった気がして。
御坂妹が下に向いていた目線を上げた時に映るのはいつも通りの冥土帰し。
わずかな疑問を残しながら御坂妹は冥土帰しの話を聞く。

「例え僕が救った人が『大罪人』になろうが、僕は後悔はしないよ。本人に罪はあっても、それが生きるのを妨げる理由にはならないからね」

冥土帰しの目線が御坂妹を見て、それからどこか遠いところに移って。
何かをこの医者は経験したのだろうか、と御坂妹はそんなことを思う。
その『大罪人』の申し子が自分だとは決して思わず。
その遠い目に何か哀愁の念があるのに気づかず。
94 :たくみ :2011/12/29(木) 15:03:35.97 ID:i3VX44KIO
沈黙を割るのは突然のナースコールと、天井のスピーカーが歌う呼び出しの音。
机に置かれた一世代前の携帯が震え、着信を知らせる。

それに呼応し、冥土帰しがその重い腰を上げた。

「ふぅ、もう僕も年だね……」

それをつぶやく冥土帰しから漂う、先ほどとは違う哀愁の念。
そんな空気をまとう彼を見ながら御坂妹は椅子に座ったままでいる。

「一方通行の件はどうするのですか、とミサカは尋ねます」

白衣を着直す冥土帰しに向けて御坂妹が声をかける。

「君たちがダメなら、また別の道を探るだけだね。そうだね、スーパーコンピュータでも使えばどうにかなるんじゃないかな?」

言いながら苦笑いをする冥土帰し。
この医者にそこまでの財力があるのだろうか、と疑問が浮かぶ。

「まぁ、君たちのネットワークを使わせてもらうのが一番最善の方法なんだけどね」

御坂妹は確信する。
一方通行を救う手段に今現在最も近い場所にいるのはこの自分たちだと。
この医者のように一方通行を救えば、自分が彼を救おうとしている理由もわかる気がして。
95 :たくみ :2011/12/29(木) 15:06:31.75 ID:i3VX44KIO
冥土帰しが部屋と廊下を育てる扉の取っ手に手をかけようとしたその時。
ふと思い出したかのように。
まるでオヤツの存在を示した母親のように。
軽い調子で。

「『彼ら』に会ってみるかい?」

そう声をかけた。
『彼ら』が誰を示すのかは明確だ。

コクッと御坂妹はうなづいた。
96 :たくみ [sage]:2011/12/29(木) 15:07:12.81 ID:i3VX44KIO
一旦中断

ここより後にミスが見つかったので……
御坂妹は打ち止めやネットワーク上では下にミサカ10032号は〜、という事を忘れていた……

ところで一つ動画紹介
http://www.youtube.com/watch?v=h3FO7XaU3uE
この歌がこのSSを作るきっかけとなっています。

「せめて人間らしくありたいと願った時」

この部分に触発されたわけですが……

そんな不純な動機で作り始めたSSですが、これからもよろしくお願いします。
97 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/29(木) 18:39:10.75 ID:B68JZUSN0
乙!
98 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/29(木) 20:36:22.69 ID:afiVAewDO
おつおつ
賛成数100位って生々しいよな……

>>96 その曲にもこのSSにも最近はまった俺は勝ち組
妹達を掘り下げたのってあんま知らなかったから、どっちにもハッとなったわ
99 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/29(木) 20:46:55.41 ID:0O39mLSf0

既にその曲を聞きながらこのss読んでた
妹達がもっと掘り下げられたものが増えることを祈るぜ
100 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 07:57:22.09 ID:Nun9qWrz0
>>58辺りからは御坂妹が作者の主張を代弁してるだけに見える
内容も豹変具合も極端すぎる
最初は人間らしいと思ったがそれ以降は操り人形みたいだ
101 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 09:49:09.68 ID:TI284uhDO
ssなんてそんなもんだよ
庇いたいだけ
102 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 14:29:22.59 ID:auTvbVQv0
 ssだろうが小説だろうが作者の代弁に変わりないと思うが
だってマンガも小説も映画だって妄想何だし。
……というかこの作品自体の考え方が的外れってわけじゃないと思うが

支援
103 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 17:48:38.92 ID:i8bUu8HUo
>>100
なにがいけないのかわからんな
そういう考えを書くために構想したって>>1もいってるじゃん
自分の思想をキャラに代弁させんなってのはとんだ的外れ発言だよ
104 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 17:58:49.38 ID:ZJ5Zjwo6o
逆に作者の主張したいことが一切反映されてないSS・小説・漫画・映画なんてあるのかと聞きたいわ
主義主張が一切ない文字の羅列なんて新聞のお悔やみ欄くらいしかないだろ
105 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 20:55:57.03 ID:cCallxKT0
フィクションで作者の存在を感じさせたらまず失敗だろ(例外はあるが)
106 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 04:50:55.21 ID:MsLfToHw0
ま、立ち位置やバランスの問題だろ
妹達的にも、自分達は「一方通行をレベル6に押し上げるための踏み台」「天地がひっくり返っても勝算のない当て馬」
だった自覚はあったし、それに疑問も持ってなかったわけだからな
御坂妹が今更「こっちだって殺そうとした」とかズレた考えなのも、そりゃ少数派だろとは思う
107 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 07:34:04.48 ID:DlZMtpQ70
キャラ=作者 になるのを好しとするのは流石に……
SS、特にシリアスな作品において代弁扱いされるのは「キャラが死んでる」と言われてるのも同然なわけで
擁護するにしても開き直ったような形でやったら逆効果だと思うが
108 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 10:32:13.22 ID:Z8XsD7rYo
>>107
確かに直前の10032号の考えから急変したから不自然に思えるな
109 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 20:37:04.46 ID:OQyMraRIO
>>23に書いてあるが、受験生ということは中学3年か高校3年だろ?
まだガキの年齢にそこまでのSSを要求するのは酷じゃないか?
大学受験でこの文章力は危ないと思うが…

>>1もここに書き込む以上、批判がくることを覚悟してのことだと思うから、反省材料にして頑張れ
110 :以下、あけまして [sage saga]:2012/01/03(火) 16:57:42.45 ID:Rgo8IGPY0
あけおめ、待ってるぜ
111 :以下、あけまして [sage]:2012/01/05(木) 05:51:45.92 ID:Z4gW+0Wso
崇高なSS上級読者様のおかげでまた一つのスレが終わったのかな?
112 :以下、あけまして [sage]:2012/01/05(木) 06:14:51.82 ID:x2dirQ+Fo
色んな意見はあるだろうけど、期待してる人がいる以上頑張って欲しいね
これくらいで失踪すんなら初めからスレ立てないでいただきたいね
113 :たくみ :2012/01/06(金) 10:36:31.90 ID:6WF66qvIO
あけましておめでとうございます
>>1です
やめるつもりは毛程もありません。
スレを立てた以上、叩かれようが最後まで書き切るつもりです。

正月、勉強の息抜きに原作全巻を読み返したところ、ここに書かれた通り、御坂妹にはほとんど感情の描写がありませんでした。が、超電磁砲7巻で僅かながら感情描写があったので、怒り、憧れ、など基本的な感情があるのではないか、とも思えました。

しかし、書いていたものでは御坂妹がちょっと感情が豊かすぎたので、書きだめを放棄してプロットから書き直し中です。

今年もよろしくお願いします。

ちょこっと投下。
114 :たくみ :2012/01/06(金) 10:37:11.51 ID:6WF66qvIO
冥土帰しに示された場所は病院の別館、そこの地下階だった。
妹達の存在の秘匿性からか、はたまた別の理由があるのか。
そう思考を膨らませながら御坂妹は、旧式の水銀灯に照らされた地下へと通じる階段を降りる。

通常、病院の地下には病室や診察室など『生きた』人が関わる部屋はない。皆から忌み嫌われる死体安置所や電源室くらいか。
いくら学園都市の科学力が他者の追随を許さない位置にいるとしても、技術の差は人の価値観を変えるものではない。

機械群の唸り声、地下特有の冷気を全身で感じながら、御坂妹は地下への入り口を見下ろす。
まるでそこが文明の発展から取り残されたかのように、ポッカリと口を開けて御坂妹を待つ。

かつての記憶が脳裏をかすめ、その忌々しいはずの記憶に嫌悪感を抱けない自分がいる。
久々に感じる生と死の境の感覚。
その感覚に身震いしなければいけない気がして。
人間らしくなければ、とする半ば脅迫観念のようなものを振り払い、御坂妹は階段を降り始めた。
115 :たくみ :2012/01/06(金) 10:37:46.87 ID:6WF66qvIO
階段を降りると見えた長く続く廊下。
時折明滅する釣り下げられた蛍光灯の元、御坂妹は記憶を頼りに教えられた部屋を目指す。
湿気のこもったこの空間に、御坂妹の足音が反響し、消えていく。

それらに何ら心を動かされることなく、それらに疑問を抱くことなく御坂妹はその足を進める。
やがてたどり着く観音開きの扉。

銀色に光るその扉が薄白い弱々しげな光の元、自分の無表情な顔を反射し見せてくる。忠実に自分の表情を描き出す憎々しいその扉を一瞥し。
いつも鏡の前でするように精一杯ニコッと微笑み、いつも通り絶望し、息を吐く。
どうも笑顔というものはうまくいかない。
この扉の向こうにいるであろう上位個体のその満面の笑みが脳裏をかすめて。それを真似したいという強烈な焦燥感にかられて。

何十回と繰り返した禅問答を一度頭の外に追いやる。
自らの吐息で白く曇ってしまったその冷徹な銀の扉に手をやると。
御坂妹はその細い左手に力を込めた。
116 :たくみ :2012/01/06(金) 10:38:22.56 ID:6WF66qvIO
扉は存外簡単に開いた。
軋んだ音を立ててドアが開く。
疼く傷跡の痛みが力の入れ具合を御坂妹にちょっとだけ後悔させた。

目に入るのは一面の白の世界。
床、壁、天井。それらに埋め込まれたり、持ち込まれたりした電子機器からディスプレイまですべてが無色、穢れのない色で統一されている。
部屋を覆う正方形のタイルには曇りの一つもない。
それらに反射する光が眩しく、御坂妹は目を細める。

中央に鎮座する妹達の子宮たる培養液。部屋を貫く一本の支柱が空間を圧迫し、確かにその存在感を御坂妹に提示していた。
その生まれ故郷に懐かしさと僅かな嫌悪感を抱きながら、御坂妹はその部屋に入る。

背後で扉が音も立てずに閉まるのを風の流れで確認する。
シャンパンゴールドの髪が静かに揺れた。
117 :たくみ :2012/01/06(金) 10:39:06.66 ID:6WF66qvIO
ガラスケースを満たすオレンジ色の液体。時々下から上へと上がる気泡の群れ。
そしてそこに浮かぶ今回の事件での最大の被害者。
全く同じ遺伝子を持ち、まだ自分より幼い自分の上司。
培養液の為すがままに漂う上位個体を、御坂妹は見上げた。

身体中に吸盤と共に付けられた無数の電極。
鼻や口を覆うものは何もない。
ここから出る時の肺の痛み、呼吸器機から液体が流れ出る感覚を思い出し、御坂妹は身震いをする。

自身と同じシャンパンゴールドの髪の毛が今はアホ毛の区別なく上に下に漂うのを御坂妹は眺めながら。
自分と『ヒト』とを区別する壁の象徴を目の前にぼんやりと感じて。
自分をコピーと知らしめる存在を半ば諦めたような、いつもの冷めた目線で見つめて。

自分の存在を考えるという禅問答を辞めた。
118 :たくみ :2012/01/06(金) 10:39:36.87 ID:6WF66qvIO
漂う上位個体の身体を覆うものは何もない。生まれたままの姿でその培養液の中を上下している。
別にそれを見ても御坂妹は劣情を催したりとか、恥ずかしいと思ったりはしない。
正直、裸で第七学区を歩けと言われたら歩ける、と自分で思う。
そもそも羞恥心とか、そういう感情の意味がわからない。

「ヒトは元々は裸だったのですから、別にいいのではないのでしょうか、とミサカは思案します」

ガラスケースに手を当てながら御坂妹は別の禅問答を始める。
その答えを男性から身を守るため、という考えで終わらせ、ならばなぜ男性は劣情を催すのか、という思考に突入し、やがて胸という存在の価値についての思考が始まり、

チラリと上を見上げたときに目に入る、まな板並の平らな胸と、自身の、そのベージュの制服を押し上げることのない貧弱な胸を見比べ、

「お姉様DNA、恐るべしですね……と御坂妹は改めてDNAの恐ろしさを自覚します」

思考の終着点をそこに定めて終わらせた。
119 :たくみ :2012/01/06(金) 10:40:02.23 ID:6WF66qvIO
『それはお姉様に失礼かも、ってミサカはミサカは下位個体を叱りつけてみたり』

思いのほか返事があった。
わずかに色のついた水の中で浮かぶ二つの眼差しと目がかち合う。
一方はそこから感情をうかがい知ることのできない動向の開いた目、もう一方はその目に確かな感情をかもし出す『ヒト』としての目。

「起きていたのですか、上位個体……と、ミサカ10032号は驚きを隠せずに言います」

自らの識別番号を『ミサカ』の後に付け、御坂妹は返事を口にする。他のミサカと話す時の、もはや暗黙の了解と言っても過言ではない決まり事項だ。感情のない声が二つ以上集まり、それがまったく同じ声だとすると、それを区別することは半ば不可能に近い。
まぁ、今回の場合はお互いを識別可能な状態の会話なのだが。

『フッフーンだ、実はミサカはミサカ10032号がこの部屋に入ってきたときから起きていたのだ、ってミサカはミサカは種バラしをしてみたり!!』
120 :たくみ :2012/01/06(金) 10:40:28.03 ID:6WF66qvIO
腰に手を当て、エッヘンとも言いたげな上位個体。
そんなことをして何になるのだ、と御坂妹は思うが、子供心から来るものなのだろう、と黙って打ち止めの話を聞く。

『ヘヘッ、感情豊かな上位個体は人を欺くこともできるのだ、ってミサカはミサカは自己の「あいでんてぃてぃ」を主張してみたり!!』

前言撤回です、このやろう、と。
こちらに自己同一性などというものがないことなど、とうの昔に自覚している。
自分が気にすることを苦もなく言わしめた上位個体に対して、

「寝たふりとはなかなかの策士ですね、とミサカ10032号は、裸のくせに何が叱りつけるだ、威厳もそんなもんねぇだろ、と本心を吐露します」

腰に手を当て、浮翌力の力でこちらを見下ろす上位個体は、ドヤ顔で瞑っていたその目をチラリと開け、やがて自分の現状を自覚すると、

『はっ!?しまった〜!!上司としての威厳が〜!?こんなんじゃお嫁に行けないよ、ってミサカはミサカは乙女らしく頬を赤に染めてみたり!!』

自身の手で恥部を隠す打ち止めをやはり冷めた目で御坂妹は見つめる。
121 :たくみ :2012/01/06(金) 10:41:12.60 ID:6WF66qvIO
頭の中に直接響いてくる声。
ミサカネットワークから接続を切り離していると言えども、この距離になれば携帯の電波のように思考回路が直接つながってしまう。ミサカネットワークを介さずともだ。
余程身体中にゴムを巻きつけて遮断してやろうか、と目の前で一丁前に恥ずかしがる上位個体を冷めた目で見ながらそう思う。

(何が頬を染めるだ、マセガキめ。そんなことはせめてそのアホ毛がなくなってから言いやがれ、とミサカはぶりっ子上位個体にイライラを募らせます)

『いや、知ってるよね?これがネットワークで繋がってるって知ってて、そんなこと思ってるんだよね!?筒抜けだからね!?ってミサカはミサカは涙目で下位個体を見つめてみる』

御坂妹はハァとため息かただの呼吸か分からないような、小さく息を吐く。
さすがに思考のタダ漏れは気分が悪いのである程度、目の前の幼女とつながる見えない線を細くした。

「水の中にいるくせに何が涙目ですか。あとその涙目は同性から見た場合不快感しか発生しないので、やめた方がいいですよ、とミサカ10032号は、人世の『先輩』としてアドバイスします」

『ムキーー!?下位個体に説教されたーー!?!?ミサカの方が立場は上なのにーー!?』

水の中で健気にムキーーっと両手を使って感情を表現する上位個体と、それを冷感にただ見つめる下位個体。
その対比がおかしくもあり。二人の感情の程度を如実にあらわしてもおり。
122 :たくみ :2012/01/06(金) 10:41:38.18 ID:6WF66qvIO
『う、うぅ。ミサカは立場的にはお姉さんなのに……なんでこんな身体なの?ってミサカはミサカは自分の将来のボディを想像しながら今を嘆いてみたり……』

いや成長してもあんまり変わらない気がする、と御坂妹は、今まさにアメリカの砂浜でとある映画監督のボディに絶望している御坂美琴を頭に描きながらそう思う。
毎夜風呂に浸かるたびに、まな板のような胸を見ていては、絶望するのも無理はないか。

「上位個体、お姉様を見る限り……少なくとも私達下位個体の年ではあまり今のあなたと成長の変化は見受けられません。期待するのはどうかと、と、ミサカ10032号は暗に諦めろ、と宣告します」

ガックリと肩を落とす打ち止め。
幼児が胸の成長の心配をするのは如何なものか、と疑問も湧いて出るが、それを口に出すほど愚かではない。

ガラスケースの中でなにやら悶えている打ち止め。
『上位個体』、などという大層な名前を背負っているには、あまりにも幼すぎるその姿。この幼女の下に自分が位置しているのか、と残念に思うと同時に、また新たな疑問も湧き出す。
123 :たくみ :2012/01/06(金) 10:42:12.30 ID:6WF66qvIO
一方通行がこの幼女を救った理由。
新たにというよりは、再び、か。
昨晩眠気を吹き飛ばすほどに考えを巡らしても答えの出ないこの疑問。
今までの一方通行の考え方を踏襲するのなら、彼の絶対能力者に到達可能なその学園都市最高の能力と、目の前の幼女の命が等価関係にあるとは思えない。
その能力を失うという結果が後から付いて来たものだとしてもだ。

この幼い子どもをどうして、自分の能力を賭してまで助ける必要があったのか。

冥土帰しが一方通行を救った理由。
一方通行が打ち止めを救った理由。

端から見ればそれは似て非なるものだ。月とスッポン、天と地の差すら感じられるほどの。
だが、御坂妹にはそれを区別できる感性も思考もない。

どうして一万三十一回命を奪った、それこそ、その一万の表情を彷彿させる彼女を救うのか。

彼女は答えのない疑問に頭を悩ませ、本人に聞かなければ分からないという本質に気づくことなく、思考のスパイラルにはまっていく。
124 :たくみ :2012/01/06(金) 10:43:50.80 ID:6WF66qvIO
『ね、ミサカ10032号』

思考は打ち止めの言葉によって遮られた。
意識を現実に戻す。
その大きな目でこちらを見ている打ち止め。

『ミサカね、こんなガラスケースに閉じ込められてヒマなんだよね。何かしようよ。ってミサカはミサカは幼い子供のように遊びを求めてみたり』

「あなたは見た目も中身も子供でしょう……もしかしてワザとぼけているのですか?あと、あなたは一応怪我人なのですから、休んでいた方がいいのでは?とミサカ10032号は寝ていろ、と諭します」

一昨日の晩に頭にウィルスコードをぶち込まれるという、通常の一般人ならば決して経験することのないことをされたのだ。そこに通常の常識など通用しないだろう。寝ていたほうが懸命に違いない。最悪残り一万の妹達に影響が出る可能性もある。

『もう、大丈夫だよ、それに今起きたばっかだから体力も満タン!!ってミサカはミサカは自分の元気を自慢してみたり!!』

目の前の幼女の認識を『一応尊敬すべき上司』から『ただの幼女』に格下げする。
この目の前の幼女は自分の重要性というものを理解しているのか。疑問が噴き出す。

『それくらい認識してるもん!!ミサカはちょっと偉くて可愛い上司なのだ、ってミサカはミサカは胸を貼ってみたり』

油断するとすぐ思考が繋がってしまう。自身の思考の答えのような打ち止めの言葉に御坂妹は多少の諦めの気持ちを持つ。
思考を繋ぐ電磁線を細くしようとする間際、多少のデジャヴを感じながら、ない胸を張るな、と心で呟き、そして二人を繋ぐ線を打ち切る。

本日二度目の問答が繰り返された。
125 :たくみ :2012/01/06(金) 10:44:30.88 ID:6WF66qvIO
やがて、

『それよりもあなた達は大丈夫なの?ってミサカはミサカはあなた達を心配してみる……』

下位個体をその優しい表情で気遣う打ち止め。
その申し訳そうな、ションボリとした様子を見せる打ち止めに御坂妹は少しの驚きと感情の豊かさに多少の憧れのようなものを抱いて。
やがて不器用にフッと笑うと。

「上位個体に心配されるほど下位個体はヤワじゃありませんよ、とミサカ10032号はミサカの丈夫さをアピールします」

『ゴメンね、ミサカ10032号……迷惑かけちゃって……』

申し訳なさそうに謝る打ち止め。
御坂妹は二人を隔てるガラスケースに右手を起き、

「妹の迷惑を許するのも、姉の仕事なんですよ、とミサカは手のかかる妹を助ける姉を演じます」

自分が出来る、今まで散々鏡の前で練習して来た、精一杯の優しい表情を作り、そう言った。

『むぅ、またそうやって子供扱いして……ミサカの方が個体番号は上なんだからね、ってミサカはミサカは自己の優位性を誇示してみる』

そう言って打ち止めはガラス越しの御坂妹の手に自身の手を合わせる。
そして二人でニコッと微笑んだ。

上位個体はその天真爛漫な笑顔で。御坂妹はまだ不慣れな、それでも精一杯努力した笑顔で。
二人は微笑みあった。
126 :たくみ :2012/01/06(金) 10:44:57.32 ID:6WF66qvIO
スッと打ち止めは目をつむる。
ぶっちゃけ暇を持て余してる御坂妹が時々見る真昼のドラマ、通称『昼ドラ』。その中でみた『キスを待つ女』と今の打ち止めが重なって見えて。

が、打ち止めを象徴とするアホ毛が液体の動きに逆らってピンと伸び切っているのを見ると、どうやらネットワークと交信しているらしい。
妹達に無事を伝えているのか、ともはや入る気も失せたネットワークのことを考えながら御坂妹は考える。
この上位個体と共にネットワークで説得、演説をして協力を仰ぐのも一つの手か。正直、この自分でさえ一方通行に対してよくない思いを抱いているというのに、あんないきなり代理演算に協力しろ、というのは無理すぎたのかも、と考えを巡らしていると、
127 :たくみ :2012/01/06(金) 10:45:37.25 ID:6WF66qvIO

『……あのさ、ミサカ10032号……』

打ち止めが困った様子で語りかけてきた。
その目に浮かぶ困惑という名の表情。今までで初めて見る打ち止めのその表情に御坂妹は多少驚く。

打ち止めの作るその今にも泣きそうな、子供が何か大切なものを失ってしまったようなその表情が御坂妹の心にまっすぐに突き刺さる。感情がなかろうと、その表情には人を動かす何かがある。

『……ミサカの、ミサカの記憶が見当たらないんだけど、なんでなのかな、ってミサカはミサカはしょんぼりしながら尋ねてみたり……』

御坂妹は気づく。
この目の前の上位個体の頭の中は、言わば『工場出荷時』の状態だということに。二日前の夜に、一方通行の命を賭した『治療』により記憶を失っていることに。

一方通行がした『治療』とは実に簡単な事だった。『工場出荷時』の上位個体と今の上位個体とを比較し、その相違部分を潰し、上書き保存して行く。簡単に言い換えるならばリセットだ。
記憶を引き換えに彼女は救われている。

そしてその記憶はミサカネットワーク上に残っているはずだった。降り積もるたくさんの記録の中の一ページとして記録されている、否、記録されていたはずだった。
それがないとはどういうことなのか。
128 :たくみ :2012/01/06(金) 10:46:16.35 ID:6WF66qvIO

御坂妹は思う。
代理演算『反対派』の妹達はそこまでするのか。
上位個体の強制命令を恐れたのか。それとも昨日のいざこざがバレるの恐れたのか。
いずれにしても、子供の言い訳レベルの行為だ。

それでも。
そんなことをしてまで。
人の心を形作る思い出まで消し去ってまで。
代理演算を拒むのか。

別に代理演算を拒むのは悪いことではないと御坂妹は思う。
が、そこに打ち止めさえも巻き込むのか。

感情が極端に少ないはずの御坂妹の中に、はっきりと、自身が自覚するほど激しく、心の中をかきむしる感情が生まれた。
129 :たくみ [sage]:2012/01/06(金) 10:47:11.46 ID:6WF66qvIO
以上!!

受験まで二ヶ月をきり、投下スピードも極端に落ちていきますが、今年もよろしくお願いします
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/06(金) 13:12:47.12 ID:Co9ISgO+o
がんばれよ
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 14:16:52.67 ID:5EU6ODIIO
乙です!
気になるところで終わられた…!
妹達が記憶を隠してるくだりにゾッとしたよ。
叩きたいだけの人はすぐにいなくなるだろうし、楽しみにしてる人間も確かにいるので>>1の納得できるように頑張って欲しい。
次の更新も楽しみにしてるよ!
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 14:27:05.81 ID:ipVHPTHIO
   ○○○
  ○ ・ω・ ○ がおー
   ○○○
  .c(,_uuノ

              ○。  ○
    ミハックシュ   ○    o   ○
    ミ `д´∵° 。 o ○
  .c(,_uuノ  ○ ○   ○


           >>1  ○○○○
                 ○
    ∧∧         ○
    ( ・ω・)       ○    ○
  .c(,_uuノ      ○○○○○
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/01/06(金) 17:36:20.71 ID:Wi7WKJJo0
一方通行を庇わない妹達=悪にしたい感じがしてあれだね
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/06(金) 19:49:34.93 ID:rBrX9LDF0
妹達が明確に一方通行を嫌っていて、それ相応の行動をする描写があるssはあんまり見ないから新鮮
ここからどんな風に反対派の妹達が代理演算をしてもいいと言ってくれるようになるのか楽しみ
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 20:04:09.25 ID:tmWFUn8DO
>>1乙!

打ち止めと10032号のやり取り可愛いとか思ってたらこの展開…

更新楽しみにしてます。
受験も頑張れ
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 20:32:37.67 ID:6uxrL4fDO

楽しみにしてるから受験頑張って書ききってくれ
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 00:52:23.96 ID:OSoqTWLZ0
この御坂妹は誰の味方なんだ結局
少なくとも、惚れてるはずの上条でも「実験動物」から引っ張りあげてくれたはずの美琴でも
同胞であるはずの他の妹達でもないことは確かだが…
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2012/01/09(月) 13:08:18.14 ID:5LyTcUcv0
受験頑張ったうえで書ききってくれるとうれしい
>>1
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 19:29:31.70 ID:Agw7uH1IO
というか本当のところどうやって妹達を説得したんだろうな冥土帰し

手術終わった後の芳川に「一万人の脳波をまとめて一方の脳に流しこみゃヨユー」みたいなこと豪語してたけど
あの時点じゃまだ妹達も説得してなかっぢろうし、よくあんな大口叩けたな
いや実際できたけどさw

あの頃の妹達に個性が無かったなら納得できるが
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 03:45:49.77 ID:brShLFYs0
>>139
原作に許可描写なんてあったっけ?
許可なんて取ってないんじゃないのか?って思ってたんだが。
昏睡状態にならないレベルアッパーのネットワークと同じだろ?
もしくは許可が必要でも、打ち止めから許可が出れば、
上位固体の命令に反する事は出来ない以上、妹達全員の許可も不要だろうがな。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/10(火) 06:08:30.16 ID:+C/YzfNCo
>>139
たいして個性無かったろ
てか、打ち止めのレストランでの描写的に、あの時点で一方さんにたいしてのある程度の理解はあったんだろ
142 :たくみ :2012/01/10(火) 16:33:46.52 ID:YNK5C544o
>>137
個人的には誰の見方とも考えてません。禁書本編や超電磁砲の大覇盛祭編でも自分の意識で行動しているように感じたので……

でも禁書本編も超電磁砲もこのSSも見る視点ごとに見方はあると思うので、読者の想像する通りでいいと思います。

あと『反対派』をこのSSで登場させたのは、番外個体が負の感情を拾う、というところからです。
多少なりとも一心同体である仲間を殺された妹達にも、事情はなんであれ、代理演算を反対するかな、と思ったので。

では少ないですが10レスくらい投下
143 :たくみ :2012/01/10(火) 16:34:17.10 ID:YNK5C544o
話は至極簡単なこと。
『反対派』総勢9857名が、上位個体に一昨日の晩に起こった事象を知られるのを恐れたということ、打ち止めの持つ『上位個体権限』を恐れたということ。
彼らの言う犯罪者に手を貸すことを恐れたということ。

打ち止めの持つ上位個体権限こと、強制命令文。全妹達の行動を支配下に置き、行動の制限、そして操り人形のように動かすことを可能にする、言わば打ち止めの、『上位個体』たる最高の権限。

一昨晩の例を見れば分かる。
これは諸刃の劔だ。妹達を全支配下におけるということは、逆を言えば打ち止めさえ手中に納めれば後はどうにでもなるということ。
自身の身を案じる研究者が作り上げた、手元の打ち止めでの妹達の一括管理。

強制命令文の前では下位個体の意思など糸もたやすく粉砕される。どうあがいても、例えネットワークから外れようとも。全身に絶縁体を巻きつけるならまだしも、電波が繋がる状況にいるのならば命令文は確実に妹達に狂いなく届けられる。
144 :たくみ [sage]:2012/01/10(火) 16:34:59.37 ID:YNK5C544o
それを『反対派』は恐れた。
強制命令文を使われることを。命令文に一方通行への代理演算という文字が書かれることを。彼らの言う『犯罪者』に手を貸すことを。
彼らは恐れた。

どんなに反対意見を挙げようが、強制命令文の前ではそれらは封殺される。妹達の総意など、ただの言葉の羅列に過ぎなくなる。
民主主義よりずっと原始的な方法で。権力の行使という絶対に逆らえない『力』で。

9857の意見が黙殺されることを彼らは防ごうとし、結果としてそれは成功している。
末妹の大切な、『初めて』の記憶と引き換えに。

もしも上位個体が真実を知ったのなら。
一方通行が妹達を救ったと知ったら。自身の象徴たる能力を捨ててまで、植物人間になってまで我々を救ったと知ったのなら。

上位個体は責任を感じ、そして『賛成派』の提案する代理演算に賛同する。
打ち止めはあの日に一方通行に
こう言った。

『ミサカ達はアナタのサインに気づけなかった、たったの一度も気づいてあげることができなかった、ってミサカはミサカは後悔してみる。でも、もし、仮に。あの日、あの時、ミサカが戦いたくないって言ったら?ってミサカはミサカは終わった選択肢について語ってみる』
145 :たくみ :2012/01/10(火) 16:35:36.37 ID:YNK5C544o
パズルのピースは揃う。
打ち止めは御坂妹、『賛成派』の妹達と相違ない意見を持っている。そして自らの命を救われている。
彼女は自分を救ったもう一人のヒーローに恩返しをするだろう。たとえどんなに反対意見が上がろうともだ。
おそらくこの子供は我を貫き通す。

そう、例え強制命令文を使ってでも。

その強迫観念が『反対派』をこの行動に移させた。
そんなことを打ち止めがするはずがないのに。そんなことが通用するはずがないなに。そんなことをこの優しい子供がするはずないなに。

今の彼女は、一昨日の彼女ではない。
一方通行と出会い、わずかな時間だが行動を共にした彼女ではない。
『反対派』に作られた虚構の存在だ。本当の彼女は『反対派』が握っている。彼女の人格は人為的なものだ。

ネットワークから離脱した『賛成派』には手も足も出ない。あの図書館には御坂妹は入れない。そもそも記憶が削除されているのだからどうしようも無いのが事実だ。

百聞は一見に如かず。
口で伝えても、文章を書き起こしても。
一方通行の必死な姿は。
血を流しながら自分を守るあの情景は。
決して伝わるまい。

御坂妹にはどうすることもできない。
彼女の思い出は失われたままだ。
146 :たくみ :2012/01/10(火) 16:36:15.83 ID:YNK5C544o
『ホントに……誰だったんだろうね……ウィルスコードを除去して、妹達を救ってくれた……ってミサカはミサカは自分のヒーローさんを知りたがってみたり……』

培養器の中に浮かぶ打ち止めがそう小さくつぶやいた。先ほどまで屹立していたアホ毛は今は他の髪の毛と同じように波に漂う。
薄緑色の溶液の中にいる彼女は、本当に残念そうで、悔しそうで。
そんな様子が御坂妹の内にある、極端に細い心の琴線をわずかに震わせて。

御坂妹の心臓に小さな痛みが走る。それはかつてお姉様としたう御坂美琴に拒絶された時と同じ痛み。
研究者からは異常なし、と言われたその疼き。それを御坂妹は明確に感じた。

『反対派』が与えた情報は、目の前の打ち止めのセリフから察するに、自分の脳内にウィルスを入れられたこと、そのせいで妹達に迷惑がかかってしまったこと、それを誰かが救ったこと、くらいか。

もう少しマシな嘘を付けばいいものを、と御坂妹は『反対派』の妹達を皮肉る。
記憶が無くなった理由は、あの夏の終わりの日の混乱でネットワーク上に保存するのを忘れていた、とか。ウィルスコードの影響でネットワークまで打ち止めの記憶が届かなかった、とかだ。
打ち止めを救った人間だって、芳川が救ったと言えば良かっただろうに。
147 :たくみ :2012/01/10(火) 16:36:44.64 ID:YNK5C544o
御坂妹はふと昨夜のやり取りを思い出す。

『医師の報告では上位個体はあと二日は眠ったままだそうです、とミサカ13577号は医師の診察結果を報告します』

そう言えばそんなことを言っていた妹達がいたな、と昨晩のネットワーク上の会話を思い出す。

おそらく打ち止めがこんなに早く目覚めるとは思わなかったのだろう。それか打ち止めの存在を忘れるほどに『反対派』が賢くなかったか、だ。
そう御坂妹は推測する。
148 :たくみ :2012/01/10(火) 16:37:29.43 ID:YNK5C544o
どちらにしろ打ち止めはある程度の検討は付けているのだろう。

もし科学者が打ち止めを救ったのならそれを隠す必要はない。一般人でもそうだ。しかも記憶を消すという強行な手段で。
そして、例えこの学園都市でもウィルスコードを除去できる人物は限られている。

打ち止めは少なくとも二万のミサカを統べるに値する人物だ。そこまで知恵足らずではないだろう。現に彼女はそのヒーローを知っているであろう御坂妹に『誰か教えて』とは頼み込んでいない。

それに一昨晩、ネットワーク上にほとばしった彼女の記憶は、一方通行の『治療』が終わってからも続いていた。ノイズが撒き散らされた、とても綺麗とは言えない映像だが、すべてを忘れたわけではないだろう。

この目の前の幼女は心の奥底で気づいている。
御坂妹は半ば確信のようなものを胸に抱く。
149 :たくみ :2012/01/10(火) 16:38:39.20 ID:YNK5C544o

『……ミサカの記憶はどこに行ったの?ってミサカはミサカは聞いてみたり……』

「…………」

何も言えない。
目の前の幼女を慰める言葉も、態度も、表情の表現方法も。
何一つ御坂妹は知らない。

ここでどんな言葉をかければいいのか。
どんな態度で接すればいいのか。
どんな表情を作ればいいのか。
御坂妹には分からない。

目の前の子供一人を慰めることすらできない。
これが今の自分だ。
自分の心だ。

銃の扱い方が分かろうが。
敵の目をかいくぐる歩き方が出来ようが。
素晴らしい受け身を取ることが出来ようが。
そんな学習装置で詰め込まれたゴミ屑などなんの役にも立たない。

その事実を明確に突きつけられ。
自身の不甲斐なさを否応なしに自覚させられて。
自分がやはり『人形』であることを思い出して。

御坂妹は先ほどより明確に、はっきりと、心に痛みを抱く。
それはかつて一方通行から受けたどんな痛みよりも重くて、痛くて、苦しくて。まるで心臓に亀裂が走ったかのような痛みで。
上位個体の一言一言に載せられた言葉の槍が突き刺さる。
150 :たくみ :2012/01/10(火) 16:39:34.32 ID:YNK5C544o

『……もう……ミサカの元には帰ってこないの?』

「……すいません、とミサカは頭を下げます……」

頭を下げることしかできない。

『……わたしの記憶はどこいっちゃったのかな?』

もう一度そう小さく呟く上位個体。
対する御坂妹は返事を返すことが出来ない。謝ることすらできない。
頭の中に直接ねじ込まれる上位個体の言葉一つ一つが御坂妹を傷つけ、か細く幼い心に、その精神を抉る。

痛む胸に渦巻くのは、後悔とわずかばかりの怒りと、自分を攻め立てるもう一人の自分。
たった一つのデータさえ守ることが出来なかった自分の不甲斐なさを嘆いて。自分がその記憶消去の可能性を考慮してネットワークから引っ張り出しておかなかったことに対する後悔。
そしてこんなことをした『反対派』への怒りを、その『反対派』を作り出したのは自分だという現実が消火する。

もし自分が代理演算なんてことを言い出さなければ。
もしあんな喧嘩腰になっていなけらば。
もし自分がネットワークから断絶しなければ。
もし打ち止めのところにいく前にそのことに気づいていれば。
151 :たくみ :2012/01/10(火) 16:40:44.91 ID:YNK5C544o
歴史にIFなんてない。
過去は変えられない。
時間のベクトルは操作不可能。
それこそ一方通行。
過去から未来へ永遠と流れ続ける時間の波。
止まらない時間の中、後悔することは無意味。
そんな自分の感情の矛先は理性と言う名の反射膜で反射され、自分へと向かう。

悔しかった。
自分に何も出来ないことが。記憶を渡すことも、あの日のことをそのまま伝えることが出来そうにない自分の感情、語彙の貧弱さが。

可哀想だった。
目の前の大切な思い出を奪われた名ばかりの上位個体が。『反対派』の妹達に権力の使用を恐れられる、まだ幼いその子供が。

憎かった。
この自分自身が。
自分らを悲劇の主人公のように振舞う『反対派』の妹達が。
『反対派』を絶対悪と考える自分が。『反対派』を作り出した自分が。

憎くて悔しくて憎くて悔しくて
憎くて悔しくて憎くて悔しくて
憎くて悔しくて憎くて悔しくて
憎くて悔しくて憎くて悔しくて
憎くて悔しくて憎くて悔しくて
憎くて悔しくて憎くて悔しくて
憎くて悔しくて憎くて悔しくて
憎くて悔しくて憎くて悔しくて
憎くて悔しくて憎くて悔しくて

こんなことに立ち会いながら、まったく心を動かされることなく、たった四種類の怒り、憎しみ、悔しさ、憐れみの感情しか抱くとことが出来ない自らの心が。
目の前であれ程までに悲しむ上位個体に共感することも叶わず、言葉をかけることさえ能わず。
ただ黙って謝る自分自身が。
悔しい。
152 :たくみ :2012/01/10(火) 16:41:46.99 ID:YNK5C544o
『ミサカには……ミサカにはあなたたちが何を考えているのかは分からない。ミサカの記憶が無くなった理由もわかんない!!』

それを言う打ち止めは悲しそうな表情で。顔をクシャクシャに歪めながら。
明確な意思と感情を持つその目が、御坂美琴と同じように凛とした瞳に涙を浮かべたその目が、今の御坂妹には痛かった。
ただ痛かった。

『ミサカがネットワークに入ったら……みんな慌てふためいて……ちょっとの説明しかしないで、……そしてみんなどっかに言っちゃった!!ネットワークの中もだいぶ荒らされてる!!昨日のデータはまるごと消えてるし、ミサカ10032号たち112人のデータも消えてる!!』

記憶を消されたことに対して、不思議と怒りは湧かなかった。
御坂妹の記憶は御坂妹が持っている。その思い出に浸ることができる。
が、この目の前の少女はどうだ?
この少女は何も知らない。
何も悪くない。
ただ邪魔だったのだ。『反対派』の妹達にとって、強制命令文を持つ彼女が。『賛成派』がいくら事実を説明しようとも

『ミサカには上位個体権限がある。情報の開示を要求できる……』

権力には権力で対抗を。

『……だけど……だけど、ミサカはそれをしたくない……あなた達にそんなことをしたくない!!ミサカは王様になんかなりたくない!!ミサカは妹達と対等でいたい!!』

その対抗手段を打ち止めは自らの手で封じる。
打ち止めはその行動がさらに妹達の亀裂を広げてしまうことを知っている。
153 :たくみ :2012/01/10(火) 16:42:38.17 ID:YNK5C544o
『だから、ミサカは待つよ……みんなが仲直りする時を。せめて妹達が仲直りするその時を。ミサカは待ってる……』

果たしてそんなことがあるのだろうか。
妹達の軋轢は考え方の差だ。
一方通行を助けるか助けないか。
自分たちの存在価値を一方通行に見出すか見出さないか。
この悲劇の責任を誰に押し付けるか。
自分たちのせいで倒れた一方通行を、一夜にして間接的ながら妹達一万の命を救った彼に、手を差し伸べるか差し伸べないか。

この問題に答えはない。
どれが正しいか、どれが間違っているか。
そんなことは存在しない。
観点を変えれば答えはその数だけ存在する。
ただ一つの正解はない。

遥か昔から繰り返される考え方の相違からくる争い。
宗教。
経済。

妹達は世界の縮図だ。
まだ幼い、生まれた頃の世界の縮図だ。

今の世のようにどちらもが妥協し、折衷案を捻り出すのか。
自らの考えを捻じ曲げることなく、我を突き通すのか。

歴史を作るのは妹達本人。
それを御坂妹は理解し始めていた。
154 :たくみ :2012/01/10(火) 16:43:39.65 ID:YNK5C544o
打ち止めの声が頭の中に響く。

『だから、いつか……返してほしいな。ミサカの記憶を……8月31日の記憶を……』

そして小さな声で、

『……あの人との、思い出を……』

目に涙を浮かべて、

『……返して……』

弱アルカリ性の培養液が、ほんの少し、薄まった。





155 :たくみ :2012/01/10(火) 16:44:27.59 ID:YNK5C544o

「……上位個体……」

暫時の沈黙が過ぎ、この白い空間を冷房のファンの音のみが支配していたその後。御坂妹がその静けさを割った。
打ち止めは相変わらず、ちょっとばかししょっぱくなってしまった培養液の中でフワフワと漂っていたが、 その大き目を両手でこするとこちらに視線を向けた。

ガラス越しに重なる打ち止めの小さな手と御坂妹のちょっと大きな手。
二人の距離は手が重なるほど近くて、たった一日の記憶も伝えられないほど遠い。
例え二人の距離が一メートルも離れていないとしても、二人が電磁波という電波で繋がっていようとも。その距離が御坂妹の持つものを打ち止めに伝えられるとは限らない。このガラスの壁を越えて、御坂妹の思いが伝わるとは限らない。

言葉は映像の代わりにはならない。その目で見たもの記憶には言葉は敵わない。どんな言葉もどんな記録方式も人間の記憶には負ける。そのここらの扉を一番大きく叩けるのはその目で見た記憶。

そして自分の拙い言語表現、語彙力。
自分の幼く、未熟な感情表現、その精神、心。
打ち止め心の扉を叩けるのかも、その扉の前にたどり着けるかすら分からない。
どんなに二人の距離が近くても、手が重なっても、テレパシーが繋がっても、御坂妹の心の内に抱えるものを伝えられるとは限らない。
156 :たくみ :2012/01/10(火) 16:44:54.28 ID:YNK5C544o
それでも、だ。
それでも御坂妹は記憶を、自分が知っていることのすべてを伝えたい。この無知な、無知でいることを強いられた打ち止めにすべてを知らせたい。打ち止めの言う『ヒーロー』の活躍を、『反対派』が隠すすべてを伝えたい。
『反対派』に対する当て付けとか、反抗心からくるものではない。ただ純粋な一つの意思。御坂妹が抱く決意、思い。

自分の拙い感情表現能力など言い訳にすぎない。文才など関係ない。
自分の考えたことを口にすればいい。昨夜のネットワークのように、自分の幼い感情を声に出して。思いを言葉に変えて。
157 :たくみ :2012/01/10(火) 16:45:43.41 ID:YNK5C544o
御坂妹は打ち止めをまっすぐに見る。打ち止めの瞳の中で御坂妹が揺れる。

打ち止めの目に映る御坂妹。
その目に微かに、漆黒の闇夜に輝く一つの六等星のように宿る感情の光。
その微かに、自分たちの生みの親である御坂美琴のような信念を感じさせる目に打ち止めは驚き、おののく。

(……こんな目見たことないかも、ってミサカはミサカは思ってみたり)

そう心の中で呟いたところで。
20001の記憶から反射のように引き出される一つの記憶。
思えば9982号も、御坂美琴と去る間際にあんな目をしていた気がする。

「上位個体、……」

先ほどの呼びかけより強い声。
思考は中断され、意識は頭に響くその声に。
やがて意を決したように、御坂妹は言葉を紡ぐ。

ある男の名が呟かれた。
打ち止めの目が見開かれた。

告白が始まった。
158 :たくみ [sage]:2012/01/10(火) 16:47:57.48 ID:YNK5C544o
以上!!

今思う
御坂妹主人公は難しすぎる……
感情表現があまり出来ないし、地の文が単調になる……

少なくとも初心者には厳しすぎた
では、また次回
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 20:25:42.91 ID:D48VIJbN0
>>1乙 文章力があって非常に読み応えがあるぜ

この手の話は荒れやすいが負けずに頑張ってくれ!
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/10(火) 21:22:09.36 ID:qC5EpkQU0
乙ですの
そろそろ反対派の妹達の視点も見てみたいな
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:27:32.00 ID:XoGHAikE0

短絡的に御坂妹age反対派sageの流れにはして欲しくないかも
普通に考えれば反対派の方がマトモだし、一方通行としか関わってない打ち止めの方が歪んでるんだから
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 23:59:29.95 ID:9AxPUdlDO
無理だろもうそういう流れ
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 01:31:10.43 ID:rw9ZXuSe0
>>1
確かに御坂妹主人公でシリアスネタは難しいだろうが、
俺はこのSS好きだし、>>1>>1の書きたいように書いてくれ。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 08:57:43.01 ID:fP4j9hLDO
乙乙
御坂妹視点は難しそうだけど頑張ってくれ
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/11(水) 21:42:39.23 ID:n9tWoL+bo
あんまりわーわー要求してやんなよ
まあ、でもその分期待されてるって事だから頑張って欲しい

166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 02:06:43.65 ID:wSvWj27DO
そやね
好きなように一方マンセーストーリーを書いたらいい
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/12(木) 09:54:13.56 ID:Hz2LuXCv0
いちいち嫌味入れないと書けないなら黙ってろ
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 13:43:51.68 ID:wSvWj27DO
え?違うの?
3巻のことは都合よく忘れる棚上げ八つ当たりダークヒーロー(笑)さんの話でしょ?
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/01/12(木) 14:30:41.59 ID:VS33bYzWo
面白そうなSS発見!
難しいと思うけど、>>1なりの解釈で最後まで書き上げてほしい
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/12(木) 22:28:46.42 ID:sqoXxUDlo
>>168
スレチ
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/13(金) 00:29:14.65 ID:W/6NH1G6o
あの実験がなかったことになったり美琴が一方通行を許してたり妹達と馴れ合ってたり
一方通行ハーレムだったりの棚上げSSなんてたくさんあるのになぜこのSSだけ絡まれるのかね
信者の多いところに喧嘩売る勇気がないからか?
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/13(金) 00:40:33.08 ID:yKgfDXz2o
相手して欲しいだけなんだから続きが読みたいなら流しなさいな
そうじゃないなら自分は続き楽しみにしてるのでお願いですから止めてください
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/13(金) 19:50:49.75 ID:aHZe9q0Xo
>>1です

応援メッセージありがとうございます
あと、一方通行ageに見えたりするのは自分の至らなさだと思うのです、これからの課題にしたいと……

それでは本日分の投下
174 :たくみ :2012/01/13(金) 19:51:31.78 ID:aHZe9q0Xo
気がついた時、すでに自身の声は事切れていた。先ほどまで喉を震わせていた自分の意思は、発声というその行動に拒否反応を示す。口をついて出てきた言葉に続きはない。声を発する余裕はもうない。
口の中の水分は何処かに消え失せ、喉が渇きを訴える。喉に走る鈍痛。唾液腺を刺激してなんとか出した唾を飲み込むたびに喉に不快感が現れる。

まだ完全でない体調に影響があったのか、下腹部の奥底に痛みを感じる。
全身の力を抜きながら、深く息を吸い、痛みを我慢して、息を吐く。
それが何度か繰り返される。

それこそ無我夢中だ。
自分が何をこの口から発し、何という言葉を組み立てたのかを思い出すことが出来ない。頭の中でその語句を反芻するその前に、ほとんど反射的に言葉を口にしていた。話した内容など頭の中から抜け落ちている。
理路整然などとは程遠い。
それこそ自分の思考をそのまま読んだようなもの。

相手にきちんと伝わった確証などない。
そもそも自分がきちんとしゃべれたかどうかの自信すらない。

打ち止めの返事を聞きたいようで、聞きたくなくて。
確証を求めようとして、それを拒絶されるのが怖くて。

175 :たくみ :2012/01/13(金) 19:52:06.46 ID:aHZe9q0Xo
が、それでも。
それでも御坂妹は胸の奥底、心臓の上の部分をきつく締める、それこそ拘束具のような存在が緩まったのを感じた。心の底にわだかまり、重くのしかかるモヤモヤとしたものが何処かに流れたのを確かに感じる。
身体が軽くなったようにも思えた。

電波に乗せれば簡単に伝えられることを、なぜわざわざ口頭で伝えたのか。たしかに記憶の映像は御坂妹の脳内には存在しないし、あるのはそれこそ事実を伝える記憶のみ。それでもその記憶を電波に乗せて相手に送ったほうが簡単に見える。

が、御坂妹はそれをしたくなかった。自分の言葉で伝えてみたかった。自分の言葉で相手に何かを与えるというものをしてみたかった。
御坂妹の無意識下にあるのは一人のツンツン頭が特徴的な男子高校生の存在。
あの夏の日、操車場で言われた言葉。
他の誰にでもなく、このたった一人の『ミサカ』に向けられたその
言の葉。

その経験が、その男子高校生の存在が。
御坂妹の胸の内にゆっくりと、それこそ種から目を出す植物のように遅々として、成長しつつある彼女の柱とも言うべき存在に。
多大な影響を与え、その柱の根幹をなしていることに御坂妹はもちろん気づくことはない。




176 :たくみ :2012/01/13(金) 19:52:37.39 ID:aHZe9q0Xo

『ミサカ10032号……』

頭の中に響く凛とした声。
自分の発する無生物な、無感情な声と対極に位置するようなその声。一万の被害者、一万の加害者を統べるその声。

その声が次に作り出す語句が怖い。その声の主の感情を聞くのが怖い。相手の気持ちを知るのが怖くてたまらない。

彼女の記憶消去の一因となった自分に対する彼女の気持ち。
妹達を真っ二つに分断してしまった自分への叱責
妹達の感情というものを無視した自分への戒め。

一方通行と対峙し、死に直面したた時とはまた違うその怖さ。
誰かに嫌われるという怖さ。
かつて御坂美琴に拒絶されたときの痛みが思い出されて。
あの痛みが怖くて。
自分の周りの誰かを失いたくなくて。
もうこれ以上自分が傷つきたくなくて。

先ほどまで自信をもって見上げていたその視線は今は足元を彷徨う。
顔をあげられない。
目が合うのが怖い。

無意識に足が震える。
スカートの下から除くその日焼けの少ない白い足が小刻みに動き、膝が笑う。

怖くて、怖くて、怖くて、
怖くて、怖くて、怖くて、
怖くて、怖くて、怖くて、

ただひたすらに怖い。




177 :たくみ :2012/01/13(金) 19:53:11.98 ID:aHZe9q0Xo
そんな御坂妹だからか。
そんな精神の状態に苛まれていたからか。
感情の発達が未熟で、一つの感情が他の感情を差し置いて何倍にも増幅された彼女だからか。
期待の二文字を何処かに置いてきてしまったからか。
自分への負の感情を予期していたからか。


『ありがとう』


そんな言葉が、
その五文字が、
たった表音文字のうちの五つを選んで作られたその五文字が、

やんわりと御坂妹の心を包み込み、温めて。
凝り固まった芯をほぐして、柔らかくして。
心の琴線をたしかに震わせ、何かを御坂妹に感じさせて。

御坂妹が目を見開くことになったのは偶然のことだったのかもしれない。
御坂妹に何かを抱かせたのは当然のことだったのかもしれない。
御坂妹の心に一つ、嬉しさという感情が増えたのは必然のことだったのかもしれない。

こんな腐った世界の中で。
腐った実験のための申し子が、感情を育む。
確率など無視した存在が、神のシナリオを超えたものが存在するのが、この世界なのだから。




178 :たくみ :2012/01/13(金) 19:53:44.00 ID:aHZe9q0Xo
『大丈夫だよ、ってミサカはミサカは続けてみる』

打ち止めの言葉が御坂妹の頭の中で直接響く。頭の中で反芻するその言葉たちを咀嚼するのに手間はかからない。飲み込みは容易だ。意味の理解は早く進む。

打ち止めの言葉はいつだってまっすぐで、直線的で、それでいて柔らかくて。
頭の中で消化した瞬間、氷のように解け出して、どんな小さな隙間だろうがそこに入り込み、やがて心に到達させる。

それが、そこに感情という概念的なものがまだ希薄な御坂妹でも。
絶対防御の膜に包まれ、孤独を生きるどこかの誰かさんでも。

地球は丸くて、それでいて太陽の周りを回る。
地球には重力があって、林檎は地面に向かって落ちる。
そんなこの世の摂理のごとく、それは変わらない。

179 :たくみ :2012/01/13(金) 19:54:26.43 ID:aHZe9q0Xo


『10032号の気持ちは、ちゃんとミサカのこの胸に伝わったよ、ってミサカはミサカはホンワカする気持ちを抑えきれずに言ってみる』



ーーホンワカというのは理解しかねますが、この全身を包む高翌揚感がそれならば、自分の方がそれを味わっていますよーー



この不思議な感覚を御坂妹は甘受して、味わって。
全身にその感覚を行き渡らせて、味わって。

その気持ちと呼ぶべきか、感覚と呼ぶべきか分からないようなものにその身体を浸らせる。

心地よい。
それこそ精神的な意味で。
この病院とはまた違う、心地の良さ。
意図して作られた心地よさと、意図せず作られた心地よさ。
ベクトルは違えど、今の御坂妹にそれらを区別する力は持っていない。

だから、その感覚をただ味わうのみ。

180 :たくみ :2012/01/13(金) 19:55:00.32 ID:aHZe9q0Xo
『だから、ありがと、ってミサカはミサカは言ってみる』



ーーずるいですーー



その甘美な言葉を噛み締めて。
そんな感覚の原因の打ち止めを羨ましく妬んで。


181 :たくみ :2012/01/13(金) 19:55:37.37 ID:aHZe9q0Xo
『あなたの一生懸命な気持ちも伝わったよ、だって、10032号、その語尾をつけるのを忘れるほどだったんだよ、ってミサカはミサカは語尾を捨てた下位個体に違和感を抱いてみる』



ーーどうしてあなたは、……あなたの言葉はそんなにもこのミサカを『ホンワカ』させるのですか?ーー



疑問を抱いてしまう。
182 :たくみ :2012/01/13(金) 19:56:13.17 ID:aHZe9q0Xo
自分には決して出来ないであろう言葉の魔法、魔術。
一生懸命練習しても決して届かない目の前の存在。
記憶を伝えるのにさえ難儀するその距離は、二人の感情の有無の差と綺麗に比例のグラフを描いて。
満点の夜空に悠然と、趙然として輝く星空のごとく、手を延ばしてもつかむことの手巻きない存在が。



ーーずるいですーー



羨ましくて、妬ましくて。
一方的に与えられたこの感情を味わうのが等価関係にないことに気付いて。
だけど、自分では相手に送ることが出来ないことに気付いて。

それが無償に腹立たしくて。
一方的にやられたようで。
けれども自分には決して出来ないことだから、と理由をつけて。
それが悔しくて。

そんな問答が、もはやどうしようもないほどに膨れ上がって。

「ずるいです……」

思いがそんな音を御坂妹の口から出して、破裂した。

183 :たくみ :2012/01/13(金) 19:57:14.86 ID:aHZe9q0Xo
『だから、10032号………顔を上げて』

打ち止めの紡いだ言葉はやっぱり綺麗な絹のように滑らかで。ぬるま湯みたいに柔らかく。そして砂糖水のように甘ったるい。
ただの表音文字を意味ある言葉に変えて。
まっすぐに心に入り込む。

御坂妹の行動を待つ打ち止め。
その間が、心に入り込んだ打ち止めの言葉が、身体に残る甘美な感覚の余韻が。



ーーずるいですーー



やっぱりそんなことを思わせ、その言葉が御坂妹の頭をあげさせる。
184 :たくみ :2012/01/13(金) 19:57:47.12 ID:aHZe9q0Xo
白い空間をそのまんまに真っ白な背景とし、天井まで貫く巨大な培養液を引き立て役として、自分はあたかも望まずにその主役の座に座っている、というような様相を漂わせる打ち止めと、

あくまで脇役の雰囲気、主人公の座から立ち、誰かを待つようなスタンスを取る御坂妹。

二人の視線が交錯し、交わり合い。
御坂妹のそのわずかに、六等星のようにチラッとまたたくくらいの凛とした視線が打ち止めの目に映ったとき。
打ち止めのその天真爛漫、そしてその奥に秘めた確かな意思を感じさせる視線が御坂妹の目に入り込んだとき。

もう一度。
今度はしっかりと相手の目をみて。
正真正銘、誠心誠意、この気持ちを伝えようと、


『ありがとね、と……』
『ありがとう、と……』

二つの声が重なる。
一つは平坦な、それでも努力した無感情な声と。
一つは抑揚あふれる、感情のこもった声で。

語尾は違えど、声は違えど。
声に感情の有無はあれど。
伝えようとする気持ちはなんら変わらない。


185 :たくみ :2012/01/13(金) 19:58:18.33 ID:aHZe9q0Xo
それは同い年の人と比べるとあまりに貧弱で、基本的な感情だけれども。
御坂妹は生まれて初めてその感情を抱き、生じたその心を味わう。
心の様相と、それを示す言葉が重なり、合致し、その言葉本来の感情を知った御坂妹は、

「……これが……嬉しいという感情なのですね、とミサカは……とても『嬉しく』……感じます」

14の身体と、それに見合わぬ知識量と、1歳にも満たない矛盾した状態の御坂妹。彼女が抱くのは基本的な感情の怒りや戸惑いしかなかったが。
ここで初めて感じたこの嬉しさを、彼女は噛み締め、味わい、そして嬉しく思う。

『どういたしまして、ってミサカはミサカは頭を下げてみる』

やっぱり一枚上手の打ち止めが頭を下げて。
二人は見つめ合う。


186 :たくみ :2012/01/13(金) 19:58:58.38 ID:aHZe9q0Xo







「上位個体……」

沈黙を破るのは御坂妹の声。
自信なさげなその声は、ガラスケースに阻まれることなく、今までとは違い、まっすぐにすばやく届く。
ありのままの距離で、ありのままの声で。
そこにかつて感じた距離感はない。実際に見た距離と、感覚的な距離が何ら変わらない。

今なら自分の思いが通じる気がして、意思疎通を妨げる障害が二人の間になんにもないように感じて。
目の前の打ち止めを見上げる。
その距離が近いことを確認する。

その感覚が御坂妹の背中を後押しして、

「……ごめんなさい、とミサカ10032号は謝ります」

ぺこりと、その頭を下げる。

今なら伝わるであろうこの感情。
まっすぐに届いて欲しい自分の謝罪。
シャンパンゴールドの髪が揺れ、彼女の顔を隠す。
187 :たくみ :2012/01/13(金) 19:59:25.26 ID:aHZe9q0Xo
それは妹達に亀裂を走らせたことに対する謝罪。
それは打ち止めの記憶を消す、契機になってしまったことに対する謝罪。
それは自分自身への戒め。

履いているスカートの端を両手で握りしめながら、御坂妹は頭を下げた。

「あなたが眠っている間に代理演算の件をネットワークに流し、妹達を混乱させたこと、勝手に『賛成派』の妹達を引き連れてネットワークを離脱したことをいまここに謝ります、とミサカ10032号は『賛成派』の代表として非礼を詫びます」

妹達をまとめられなかった自分が、生き残った妹達の中で長女である自分の役割が果たせなかったこと。
記憶を満足に打ち止めに話すことが出来ないこと。
それらを悔やんで、悔しくて。
御坂妹はその頭を上げない。
188 :たくみ :2012/01/13(金) 19:59:51.53 ID:aHZe9q0Xo
『あわわ、頭なんて下げないでよ、10032号。ほ、ほら早く顔をあげてよ、ってミサカはミサカはなれない立場にあたふたしてみたり』

打ち止めの心底慌てているようなその言葉。
御坂妹もその重い頭を上げる。

『別にミサカ10032号は悪くないかも、ってミサカはミサカは自分の考えを述べてみる』

半ば慰めや哀れみの言葉にすら聞こえる打ち止めの発言。
本人もそれを自覚しているのか、それとも無意識のうちのフォローなのか、打ち止めの口がまた開き、言葉を紡ぐ。

『ミサカ10032号の気持ちは分からなくもないかも、ってミサカはミサカは言ってみる』

「なら、代理演算は……」

『……それは分からないかも、ってミサカはミサカは返事を返してみる』

御坂妹の顔がクシャリと歪む。
189 :たくみ :2012/01/13(金) 20:00:21.76 ID:aHZe9q0Xo
『このミサカは一昨日のミサカとは違うミサカ。別人といっても言い過ぎじゃないかも、ってミサカはミサカは説明してみる』

打ち止めの柔らかい言葉が御坂妹に届く。
御坂妹はそれを黙って受け取り、咀嚼する。

『だから、このミサカにはあなたの言う一方通行に救われた記憶もないし、ミサカ個人に一方通行に対する感謝もないのも事実、ってミサカはミサカは心情を吐露してみる』

御坂妹の顔がまたわずかにゆがむのが見えて。
それでもなお打ち止めは言葉を続ける。

『でも、このミサカが一方通行に救われたのも事実、曲がりなりにもすべての妹達、世界中の人への殺人を救ったのもまた事実、ってミサカはミサカは矛盾した事象を述べてみる』
190 :たくみ :2012/01/13(金) 20:01:16.24 ID:aHZe9q0Xo
記憶がないからこその矛盾。
殺人者が救世主になるという矛盾。
いくつもの矛盾が折り重なる、さらに大きな矛盾。
紐ほどくことが出来るようには到底も思えない。
ゴルディアスの結び目のごとく、複雑に絡み合い、底の見えないような難題。

『だから、この「ミサカ」の声は、代理演算に対する答えは……』

交錯した視線が培養器のガラスで反射する。

『わからない、ってミサカはミサカは述べてみる』

それは絶望へ誘う言葉。
御坂妹の行動をすべて水泡に帰すものとする言葉。
打ち止めが代理演算に反対するなら御坂妹がいくら頑張っても、いくら行動しても、一方通行を助けることは出来ない。
すべてを無駄の二文字で片付けさせるその言葉に。







結局、御坂妹の小さな心が動かされることはなく。







……
191 :たくみ :2012/01/13(金) 20:02:43.16 ID:aHZe9q0Xo
打ち止めのまっすぐな視線が、包み込むようなやさしさを与え、それらを纏う御坂妹には、理由もなく根拠もなく、この幼女を信じてみようという感情が生まれていた。
絶対的な安心感を享受させる打ち止めに絶対的な信頼感を置いて。それに寄り添い、味わって。

何の根拠もなく、御坂妹は次の打ち止めの言葉を待つ。

192 :たくみ :2012/01/13(金) 20:03:09.87 ID:aHZe9q0Xo



『でもそれは今までのミサカの話。これからは今ミサカの話、ってミサカはミサカは説明を続けてみる』

脳内に響き、直接投入される甘い声に心を預けて。

『ミサカに残ったわずかな記憶。記憶消去(リセット)の後のわずか一分間のタイムラグ。それをミサカは思い出してみる』

こちらに背を向ける白髪の少年と。
こちらに銃を向ける白衣の男性。

こちらを守るように立ち、手をかざすかつての殺人者と
こちらを道具としか見ていない、今も昔も変わらない研究者。

絶対的な力を持つ少年の叫びは、こちらを守るために振り上げるその手は、

しっかりと打ち止めの中に存在する。
リセットされてからの、始めての記憶。
生まれたての頭の、初めての視覚信号。

記憶を打ち止めはその脳内に大切に持つ。
193 :たくみ :2012/01/13(金) 20:04:17.21 ID:aHZe9q0Xo
『ミサカのせいであの人が倒れたのなら、ミサカを守ってあの人が倒れたのなら……』

そこで打ち止めは言葉を切り、一呼吸ついて。
それが先ほど御坂妹から聞いた一方通行を救いたいと思う理由だということを無意識の内に認識する。
そんな思いも、そんな感情も打ち止めの心の中にはある。責任の二文字も十字架のように背負うことが出来る。迷惑をかけてしまったという罪悪感もある。

『いや、違うってミサカはミサカは否定してみる。そんな義務とか責任とかじゃない、もっと別のものってミサカはミサカ何か分からない感情を口に出してみる!!』

御坂妹の思う義理、責任を超えた上にあるもの。
罪悪感とか、申し訳なさとか。
責務、務め、筋道、使命、強制とか。

そんな縛り付けるものではない思い。
それらを超然としたその思い。

人のどんな思いよりも気高く、人がいつか抱くであろうその感情。
自信を強制させることなく、自発的に生まれ、育つその感情。
人類の根幹をなす感情という言葉の枠に入り切らないような、その概念的で、それでいてたしかに存在するそれ。

194 :たくみ :2012/01/13(金) 20:05:18.45 ID:aHZe9q0Xo
御坂妹は悟る。
自分の中の一方通行に対する気持ちが、目の前の幼い少女と自分とでは圧倒的な開きがあることを。

御坂妹の一方通行に対する気持ちは、義務だ権利だなどという余計な言葉がついて回っている。そこにあるのは自分を責め立てる責任の二文字。心の内で微かに一方通行を否定しているのがいい証拠だろう。

だが、打ち止めは違う。
許すとか許さないとか、そういう次元の話ではない。殺人者だの被害者だの、そんな話を超越したところに打ち止めはいるに違いない。
そこにあるのは純粋な一方通行に対する気持ち。

御坂妹は打ち止めの心をまだ表現することが出来ない。スペックが圧倒的に不足している。初期のパソコンで天候の予測演算をするようなもの。圧倒的に力不足、出力不足。

だが、そこにかつての制服姿の彼と同じ姿を見出すことが出来た。誰にでもなく、ただ皆に与えられるそれ。義務だ権利だ、強制だ云々ではない。そこにある無償の『それ』。

御坂妹に明確に分かるわけでもなく、かといって全く理解出来ないわけでもなく。
自身にわずかに心当たりのある、その制服姿の人物に対する、恩やお礼と理由付けしていたその感情を思い出して。

打ち止めの抱くその感情と、自分のその感情が似ていると気づいて。

195 :たくみ :2012/01/13(金) 20:06:40.12 ID:aHZe9q0Xo
打ち止めの口が開く。

『ミサカはあの人を助けたい、ってミサカはミサカは宣言してみる!!』

それは誓い。
誰に対するものでもなく、自分自身を鼓舞するかのようなその言葉。そこに一切の迷いはなく、高らかに。

打ち止めの宣言を御坂妹は受け止めた。
その莫大な感情とともに。

それは自分の感情とは違って、ただ、重かった。
中身があって、ひたすらに重かった。

196 :たくみ :2012/01/13(金) 20:10:20.68 ID:aHZe9q0Xo
以上!!

なぜ>>173で大阪府になってんだろ……九州の田舎住まいなのに……
あとこのSSは今五分の一くらいです

構想的には代理演算編→大覇盛祭編→13巻再構成を考えてますが、どうなることやら……

ではまた、
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/13(金) 21:09:05.55 ID:vUh5X9d/0

打ち止め純粋まじ天使
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 00:10:25.42 ID:EXifjE/i0
>>1乙。
打ち止めの語尾は〜してみる、と〜してみたり、が混在してろから、〜してみたりも入れてみると読みやすいかな、と思ってみたり。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 00:23:07.75 ID:9jIMtjXDO
やっぱり都合のいい人形だなあ
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 09:40:03.15 ID:ATyLuALIO
大覇星祭編は今超電磁砲でやってるとこか
みさきちとかも出てくるから楽しみだ
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/14(土) 12:29:35.87 ID:NisNI+3AO
打ち止めってなんかコワイな
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/14(土) 14:30:09.30 ID:EnI2FLm4o
アンチってコワイ(嗤)
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/14(土) 22:31:03.02 ID:HoXFZ9do0
>>1

ってセンターの前日に何してんだよww
ま、明日もがんばってくれ
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 03:04:08.62 ID:38jVAQma0
>>1
あれ、>>1って大学受験だっけ?
受験として言ってなくね?
まあ、先も気になるが、>>1の受験が失敗してもあれなんで、気分転換は程ほどにな。
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 14:19:58.59 ID:dYADp4aOo
乙です

ふと疑問に思ったんだが反対派に分散共有されてるはずの賛成者脳内の記録の削除や
ネットワーク接続に必要なアカウントの抹消とか管理者権限が必要な行為ができるのか?
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 23:13:52.24 ID:ynisr2Z20
乙です
センター大丈夫だったんですかね

>>199
おまそう
都合がいいのはあなたの頭じゃないですかね
己の解釈ありきで思考停止した読者様は、何を求めて他人が書いた二次創作読んでんですか
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 00:05:02.41 ID:Quev+d0DO
おまえが(略)とか言い出す人は本当にそう思ってるならスルーすればいいのにね(笑)一方厨は沸点低いね
打ち止めは一方を無理矢理主人公にする為に後付けや心理描写が下手な作者が無理矢理作ったキャラだから何考えてない人形みたいになって当然。
その印象このSSでは拭えなかったなあという感想。
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 01:03:50.41 ID:sibp4br5o
厨とか言い出した時点でまともな意見とは思われなくなるよ
キャラ叩きではなく感想のつもりなら、それなりの態度を守った方がいい
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 08:17:03.68 ID:46bUDF+Eo
>>207
ちゃんとした文章と言葉使いができない限り、お前の話なんぞ誰も聞かないよ
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 20:41:29.92 ID:q79zginDO
一方マンセーものって他キャラsageばっかだよね
このSSだと反対派妹達
これから一方さん悪くない!の大合唱始まりそうやね
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 23:13:15.01 ID:p6rIdXlQo
>>210
他キャラがsagaってると思うお前の愛が足りない
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/18(水) 23:17:43.61 ID:5MPjC2ffo
妹達ペロペロ派19090号は俺の嫁ですけどここの妹達はいろいろ悩んじゃっててかあいいなあちゅっちゅですよ
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 10:06:02.99 ID:rq6BrKIDO
一方厨の思考が垣間見えて面白いなあ
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/19(木) 18:56:26.11 ID:6p9M9tJp0
進んでるから投下きたかと思ったのに…
ss自体の批判ならまだしもマンセーだの厨だの使うから信者が反応するんだろ
信者じゃなくてもそういう挑発含みのレスはスレ自体の空気が悪くなるから止めて欲しい
普通に>>100みたいな御坂妹が>>1の代弁(一方通行弁護)してるだけになってるーとかなら一つの意見だと思うけど

>>212
そげぶ
19090号とかロシアんミサカも出てくるのかな
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 20:02:31.29 ID:gi9VQlEmo
>>213
あなたは面白く無いのでレスしなくて結構です
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/19(木) 20:59:27.39 ID:dSaXU5uq0
こいつ他スレでも一方マンセーガーっつって空気悪くしてんのね。
アンチなんだろうに、なんで一方SS見てるんだろ
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 22:15:11.11 ID:rq6BrKIDO
怖いもの見たさだよ
原作がクズだから二次で持ち上げるしかないんだろうなあ
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 22:15:42.55 ID:bdrKdwA1o
マンセー君はは一方が上がることで他のキャラが相対的に下がるのが相当嫌らしいね
あほらしい
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 22:16:34.10 ID:bdrKdwA1o
原作クズって上条のことですか?
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 22:20:51.30 ID:bGs6LPTuo
キャラdisりなら然るべきとこでやれよ
書き込み増えてると思ったら何だコレ
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/01/19(木) 22:25:05.33 ID:W3LLWddRo
争いは禁書板へ行って下さい
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 22:29:20.26 ID:o/krPZn+0
>>219
お前も同じ穴の狢だよ
他のキャラ巻き添えにするくらいなら黙ってろ
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/19(木) 22:37:46.90 ID:bdrKdwA1o
クズでサーセンwww
一方上条御坂マジクズでサーセンwwwww
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 23:38:36.71 ID:B63/44MZ0
まぁ一番のクズは>>217だろうな。
他のスレでも荒らしてるし。>>207>>210も同じ奴っぽいなIDからみるに。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/19(木) 23:43:51.53 ID:kTQg7hJXo
誰が悪いとかどうでも良いわ相手するなら同類
どっちがどうとかで荒れてやっぱり〇〇厨は両者共に勝手な結論出すだけなんだから不毛すぎる
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 01:00:33.95 ID:KuUY8P49o
いやいやみんな黙れば解決よ
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/20(金) 02:49:49.97 ID:opg+PcN60
題材からして荒れやすいだろうとは思ってたけど、案の定・・・
このネタに踏み切った勇気ある>>1には、今後も負けずに頑張ってほしいな
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/01/22(日) 02:02:54.80 ID:hM3gpYZAO
そもそも原作者がクズなのに上げも上げもない
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/01/22(日) 13:02:11.97 ID:eTF1jlwDo
>>228
お知り合いですか?
230 :たくみ [sage]:2012/01/25(水) 23:07:18.70 ID:YcfbS+6do
>>1です
とんでもないレスがついたと思ったらなんかすごいことになってた…

えー、どう考えても受験、入学の関係上二ヶ月以上放置してしまうことが決定的なので一旦このスレを落とします
五月以降に暇が出来たら総合の方で投下し直したいと思います

ではまたいつか…

231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 07:14:55.93 ID:bDMJP2VNo
乙です
受験がんばって下さい
待ってます
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/01/26(木) 22:16:03.59 ID:COrsQLb8o
受験頑張れー
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 23:15:36.36 ID:VK6cn7kDO
受験がんばれ
ここまですごくおもしろかった
続きも楽しみにしてるよ
117.01 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)