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梓「もうちょっと眠りますおやすみなさい」 -
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1 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 21:32:37.55 ID:57u9h0yAO
目が覚めた。
頭が痛い。頭痛。
ーーん。
耳の奥で甲高い音が鳴り響いていた。
がちゃり。
玄関の扉が開く音。
先輩たちのはなし声。
時計を見た。
5時34分32秒……33……34
もう夕暮れなんだ、って思った。
眠りはじめてどのくらいたったのかな。
まあ、たいしたことじゃないけど。
そういえばどんな夢を見ていたんだっけ。もう思い出せないよ。思い出せない。
そこなら幸せになれるはずだったのになあ。
先輩たちが上がって来る間、そんなことをわたしは考えていた。
1.5 :
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/
【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/
ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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2 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 21:53:02.50 ID:57u9h0yAO
【唯】
唯「ううっ寒いねー」
律「だよなあ。べりーべりーこーるど」
わたしたちは四人であずにゃんの家に向かっていた。
紬「今日は梓ちゃん起きてるといいわねー」
律「ま、寝てたら叩き起こせばいいだろ」
澪「おいおい」
律「冗談だよ。じょーく」
唯「あずにゃん今日は起きてるよー」
紬「なんでわかるのっ?」
唯「かんです」
律「勘かよー」
みんなの前へスキップで出てわたしはつまずいた。後ろを向いて愛想笑い。えへへ。
3 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 22:11:45.24 ID:57u9h0yAO
律「しっかし、この道にもなれちゃったよなあ」
電柱を見上げてりっちゃんが言ってその隣の自販機にコインを入れた。
がたんがらん。
ぴぴぴぃ。
律「ちぇっ、はずれだー。毎日買ってるのになあ」
紬「73連続ー」
律「あれっ数えてんの?」
紬「えへへ計算しただけ。あの日から今日まで」
澪「73かあ。長いのか短いのかよくわかんないよなあ」
4 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 22:20:01.23 ID:57u9h0yAO
自販機から缶ジュースをりっちゃんが取り出した。
律「ひゃっ冷たっ」
りっちゃんは大げさに驚いて見せた。
澪「あったかーいにしとけばいいのに」
律「いつもあったかいやつだから飽きたんだよ。。ほっぺた冷たいぞ唯。ぺたー。……あれれ?」
唯「へ?ぼうっとしてた……あっ冷たいっ!」
律「おそっ」
5 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 22:29:49.81 ID:57u9h0yAO
りっちゃんは缶ジュースのプルタブを開けるのに苦戦していてムギちゃんが何かを言って澪ちゃんは笑った。
わたしはまだあの日を思い出し続けていた。
夕暮れの空を鳥が横切っていった。
あの日、あずにゃん家からの帰り道もやっぱり夕日が出ていたような気がする。
ちがうのかなあ。
6 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 22:42:06.22 ID:57u9h0yAO
日曜日わたしたちは映画を見ることになっていつもの待ち合わせ場所であずにゃんを待っていた。『すいません寝坊しちゃいました』ってメールがきた。
ただあずにゃんはいつまで待っても現れなかったんだ。
わたしたちは変だなあとかなんとか思いながら、あずにゃん家まで迎えに行った。
チャイムを押しても反応がなくて、勝手に上がった。こういうふうにあずにゃん家に入ることは何度かあった。そんなときあずにゃんは「なんでいるんですか」って嬉しそうに笑ったんだ。
7 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 22:50:26.50 ID:57u9h0yAO
あずにゃんは寝ていた。
揺すってもつねっても起きないからそのままにしていて、わたしたちはしりとりをしながら待っていた。
三時間くらいしてあずにゃんは起きた。
ふあふぁぁあって二回あくびをして言った。
梓「おはようございます」
澪「いやもう朝だよ」
それがなんかおかしくてわたしは笑った。
8 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 22:56:05.62 ID:57u9h0yAO
律「まったく約束を忘れたのかよー」
梓「あっ!約束ー……約束……あれれ」
あずにゃんは真剣に5秒くらい考えてそして首をかしげた。
梓「あ……なくなってる」
紬「え?」
9 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 23:01:48.58 ID:57u9h0yAO
梓「実はさっきまですごく楽しくて幸せな夢をみてたんですよ。それでどうやら帰るのを忘れてきちゃったみたいなんです」
律「誰が?」
梓「わたしが」
紬「どこから?」
梓「夢の中から」
唯「ほんとかなあ……ていっ」
梓「あ」
あずにゃんにわたしは抱きついた。
あったかくて柔らかくていつもと同じだった。
10 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 23:14:39.83 ID:57u9h0yAO
でも照れない。
あずにゃんはあくびをして寝惚けた顔をしていた。
むむう。
まあこれはこれで悪くはないのかなあ。
11 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 23:23:37.40 ID:57u9h0yAO
とにかく、あずにゃんは眠くて眠くて仕方がないらしい。
ほんとは夢の中にいるから。
よくわかんないけどここにいるあずにゃんは確かに足りない。何がって言われても困っちゃうけどちょっと欠けてる。
でもやっぱりあずにゃんはあずにゃんなんでしかないからどうしようもないなあとわたしは思ってしまった。
だからわたしたちは「いい夢見ろよ」てな感じでそこを後にした。
次の日もその次の日もあずにゃんはそんなぐだぐだな感じだった。
それでわたしたちもどうするでもなく毎日だらだらあずにゃん家に通っていた。
12 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 23:30:28.47 ID:57u9h0yAO
和ちゃんにこのことを話したら「完全に惰性じゃない」って言って「だけど軽音部らしいかしら」と笑われた。
13 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 23:39:19.41 ID:57u9h0yAO
わたしはあずにゃんの夢の中がここより幸せで、あずにゃんがそれを望んでるなら、それでいいんじゃないかなあって思っている。
缶を開けて吹き出した炭酸に戸惑うりっちゃんも口笛の吹き方をムギちゃんに教えてる澪ちゃんも頑張って息を吹いてるムギちゃんも、きっとそう思ってるんじゃないかな。
もちろん、こんなふうにいつまでも続けられるわけはないし、現実的な問題をいっぱいあるけどわたしは気づかないふりをして口笛を吹く。
ムギちゃんが「あーずるいっ」て頬を膨らませた。
14 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 23:42:17.87 ID:v1hv8k9d0
期待
15 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/22(木) 23:54:20.09 ID:57u9h0yAO
そんなことを考えていたらあずにゃん家についた。
チャイムを押しても反応がなかった(いつものことだけど)から家に入った。
梓「おはようございます」
澪「わっ」
律「だからもうおはようじゃないしー」
紬「今日は起きてたのねー」
梓「はいまあ……ふああ……さっきまでねてましたけど」
唯「わたしの予言は当たったね!」
梓「?」
16 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 00:03:24.23 ID:4oTf+BoAO
澪「あ、そだ。お菓子持ってきたから小腹でも空いたら食べてくれ」
梓「どうも」
律「澪は小腹が空くたびに何か食うからあれなんだよなあ」
澪「うるさいっ」
律「いたっ」
紬「梓ちゃんはいつもどんなものを食べてるの?」
梓「カップ麺とかたまにみんなが持ってきてくれたものとか……でもだいたいは夢の中ですましちゃいますけど」
唯「ひゃうっ。くれいじーだよー」
梓「むう」
17 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 00:11:53.44 ID:4oTf+BoAO
澪「親は海外で仕事だっけ?」
梓「えーと、親は爆発しました」
紬「え?」
梓「ああ……それ夢でした。ごっちゃになって」
唯「えへへばかにゃんだねー」
梓「うっさいです」
18 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 00:16:44.11 ID:4oTf+BoAO
うにゃああ。
あずにゃんは変なあくびをした。
澪「ふああ……あ」
澪ちゃんもつられてあくびしてちょっと照れた。
紬「もうそろそろ寝る時間ねー」
律「活動時間が30分くらいってのはどうなんだろうな」
唯「ウルトラマンの10倍だよっ」
19 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 00:32:47.88 ID:4oTf+BoAO
梓「あ、あの……」
律「どしたー」
梓「みなさんありがとうございます。わたしなんかほっといてくれていいのに……その毎日毎日……」
唯「あずにゃんそれ昨日も言ったよー」
梓「え、あ、すいません……記憶がぐにゃぐにゃで」
唯「いいよいいよ、毎日感謝されるのも気分いいんだよー」
澪「それにわたしたちだってこうやって梓と会うの楽しいんだ」
紬「うんうん。だから精一杯いい夢見てね」
律「あ、でも夢に飽きたらいつでも戻ってきてもいいんだぜ」
20 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 00:42:49.57 ID:4oTf+BoAO
唯「よしっ、じゃあ最後にあずにゃん分もらっとこかなー」
梓「……ん」
くたり。
あずにゃんに触れた。
とろんとしてるのは気のせいだろうか。
唯「久しぶりのあずにゃん分だよー」
梓「わたしが寝てるときも抱きついてるくせにです」
唯「なんでわかったのー」
梓「匂いとかです」
唯「わぅっ、なんか恥ずかしいねー」
梓「じゃあ香りで」
唯「そういう問題じゃないんだっ」
21 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 00:47:34.18 ID:4oTf+BoAO
澪「じゃあわたしも最後に……お菓子の中で特にオススメはスニッカーズだから」
律「いやそれはいいだろっ」
澪「おいしいし腹持ちもいいんだぞっ」
律「だから澪しゃんはーー」
澪「だまれっ」
律「あたっ」
紬「じゃあ梓ちゃんおやすみなさい」
唯「おやすみー」
梓「おやすみです」
22 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 20:24:11.53 ID:4oTf+BoAO
【梓】
わたしは学校の屋上にいた。
どこかで歌声と演奏の音がした。
唯先輩が隣に座っていた。
そこでわたしは気づく、泣いてるんだ。さっき聞こえた音は唯先輩が泣く声だったんだ。
梓「何がそんなに悲しいんですか?」
唯「ううん違うよ。泣いてるのはあずにゃんのほうじゃん」
23 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 20:33:19.60 ID:4oTf+BoAO
梓「何言ってるんですか。ほらっハンカチ使ってください」
わたしはそう言ってポケットから白いハンカチを出し唯先輩に渡した。体を近づけたときに唯先輩がわたしの目の下に触れた。
唯「ほらっ泣き虫だっ」
梓「……む」
風が吹いた。
ぴゅう。
目の下が冷たい。
それで自分が泣いてるってことに気づいた。
唯「はいっ」
唯先輩はわたしのとは別のピンクのハンカチを放り投げた。
わたしはそれで涙を拭いた。
24 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 20:45:50.52 ID:4oTf+BoAO
唯「こわい?」
梓「だって、そのうちみんな失くなっちゃうんですよ」
唯「あずにゃんは病気だ」
梓「そうでしょうか」
唯「そうだよ。大好き症候群だよっ」
梓「どうしようもないんでしょうね。きっと」
唯「そうだねえ」
25 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 20:52:05.86 ID:4oTf+BoAO
何だっけ。
末期患者が残りの人生を出来るだけ平穏に幸福に過ごすための場所。
わたしはそのイメージを抱いていた。
唯「ホスピス」
そう、それ。
ここはまるでそんな感じだ。
どうしようもないくらいどうしようもない。
梓「だからこんなとこまで来てる?」
唯「だからこんなとこまで来てる」
もう一度涙が溢れだした。
わたしは唯先輩に飛びついて思いっきり声をあげたいと思う。でも、できない。
それが魔法の解ける合図だからだ。
26 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 21:06:37.15 ID:4oTf+BoAO
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時計のライトが顔を照らした。
眩しくて目をそらしてしまうが時刻は見えた。
丑三つ時だ。
もちろん幽霊なんて信じてるわけじゃないけど。
きっかり15秒数えてわたしはベッドから飛びだし、鉛筆をとり、ノートを開いた。ここには見た夢を書きとめることにしている。
夢を書いとくとね、夢の中で自由になれるんだって―――唯先輩に勧められた。
わたしはさっき見た夢を思い出そうとした。でも、ほとんど忘れてる。
とりあえず唯先輩、、屋上、、むむむ、、、と書いた。
なんとなくパジャマのポケットに手を突っ込むとピンクのハンカチがあった。
それでハンカチと書き足しておいた。
27 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/23(金) 21:19:09.52 ID:4oTf+BoAO
試しにノートのページを前に繰ってみた。・先輩たちと海に行ってクラゲを撮った
・ドーナツ食べ放題の店で純と憂と戦った・天使を助けてお腹いっぱいごちそうしてもらった
・唯先輩と花火をした
・ライブハウスで演奏した
ちゃんとした記録になっている。今回は調子でも悪かったんだろうか。
ところどころ絵なんかも書いてある。
そしてどれも幸せな夢だった。
前回書いたときのことを思い出そうとしたけど、ダメだった。
わたしはあきらめて一階に降りた。
暗闇の中で点滅するものがあってそれは電話機の留守電のようだった。
発信者は憂からだった。
28 :
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[sage]:2011/12/23(金) 21:24:02.24 ID:4oTf+BoAO
こんな内容だった。
「梓ちゃん、もしもし?……寝ちゃってるのかなあやっぱり。
えーと、今日梓ちゃん家に夕飯作って持っていたから食べてくれると嬉しいな。前に純ちゃんと行ったときゴミ箱がカップ麺のばっかりだったから。
あ、でも今日おねえちゃんから聞いたんだけど梓ちゃん夢の中でご飯たべちゃうんだっけー。すごいや。
そうそう前にテレビで見たんだけど寝る前に軽く運動するといい夢見られるらしいよー。
じゃあまた今度純ちゃんと遊びに行くね。…………がちゃ」
29 :
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[sage]:2011/12/23(金) 21:29:05.73 ID:4oTf+BoAO
わたしは憂の作ってくれた料理を電子レンジであっためて食べた。澪先輩が持ってきたプリンをデザートにした。
なんだか泣きそうだった。
がたん。
どこかで音がした。
そして沈黙。
幽霊? ……じゃないよね。
30 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/24(土) 21:54:52.18 ID:TBV6JukAO
【唯】
授業を終えて部室に向かった。
ムギちゃんが横から小突いてきて、わたしはくすぐったいよって笑った。
唯「あれ、りっちゃんと澪ちゃんはー?」
紬「今日掃除って言ってたわ」
唯「そだっけ?」
紬「うん」
唯「そっかあー」
31 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/24(土) 22:11:36.75 ID:TBV6JukAO
紬「唯ちゃん今日はよく寝てたわね」
唯「えーそうかなあ」
紬「だって4回くらい注意されてたじゃない」
唯「そーゆのは今日もって言うんだよ」
紬「自分で言っちゃうのねー」
唯「てへへ」
紬「きっと夜遅くまで勉強してるのね」
唯「……あ、笑ったなあ」
紬「ふふっ」
唯「ひどいよっ」
32 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/24(土) 22:25:18.93 ID:TBV6JukAO
階段を登っていくと、踊り場の窓からすりきれた青の空が顔を出した。たくさんの人が見るからきっと疲れちゃうんだろうな。ムギちゃんは最後の段を一つ多く登ってバランスを崩した。
かくん。
紬「あ」
唯「いただきましたっ」
紬「えへへ」
33 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/24(土) 22:37:41.53 ID:TBV6JukAO
唯「そういえばさ、あずにゃんのゆめもに“唯先輩、屋上、むむむ、ハンカチ”って書いてあったんだけどどうなのかなあ?」
紬「ゆめも?」
唯「夢のメモ帳だからゆめもだよっ」
紬「うん」
唯「で、ムギちゃんはどう思う?」
紬「ロックだわっ」
唯「へ?」
紬「ええと……ああ、ロックじゃないかしら?」
唯「……それ言いたかっただけでしょー」
紬「ん……えへへ」
34 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/24(土) 22:43:57.46 ID:TBV6JukAO
唯「もう、わたしはまじめなんだよー」
紬「でも、唯先輩って書いてあるから唯ちゃんのことを無意識に意識してるのよ。きっと」
唯「そ、そかな?」
紬「ひゅぅ」
唯「ムギちゃん口笛できてなーい」
紬「むむむ」
35 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/24(土) 22:54:05.50 ID:TBV6JukAO
唯「あずにゃんにさ、コロロ届くかなあ」
紬「どうかしら……でもわたしたちみんなが梓ちゃんのこと忘れても梓ちゃんはわたしたちのことを絶対に忘れないんじゃないかしら」
唯「うん。あずにゃんは優しいから」
部室の扉を開けた。
今までこもっていた空気が、風船のそれみたいにふわっとぬけたようなそんな気がした。
もう一度空が見えた。
あずにゃんの見てる空とわたしの見てる空は同じだろうか。
違うといいなあって思う。
なんだか空はきれいに見えなかったから。
36 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/26(月) 21:24:18.12 ID:4Nnn3LfAO
【梓】
耳の奥で何かが爆ぜるような音がした。
でも、わたしが聴いていたのはもっと別の、ささやくような、懐かしい声だった。
――そうしてあずにゃんは鬼とも仲良くなり幸せに暮らしましたとさめでたしめでたし
誰かがわたしの横で喋っている。
その声の響きが心地よくてわたしは再び眠りの中に――どおん。
また何か爆発する音。
37 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/26(月) 21:33:30.63 ID:4Nnn3LfAO
今度はちゃんと目を覚ました。
ぼやけた視界の向こう、わたしのベッドの隣に誰かの姿が見えた。
わたしは無意識にその影に手を伸ばした。
「わおっ……びっくりしたあ……起きた?」
つんつん。
ほっぺたをつつかれる。
どうにか動こうとしたけど、意識はまどろみの最中に両足を突っ込んだままだった。
38 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/26(月) 21:41:25.11 ID:4Nnn3LfAO
「寝てる、のかなあ……まったく寝相が悪いよっ」
ぱちん、と軽くおでこを弾かれた。
それが合図になったみたいに、わたしの意識は一つにまとまっていった。
梓「ゆ、いせんぱい?」
唯「わわっ、ホントにおきた」
梓「むにぁ」
唯「き、聞いてた?」
梓「いま、何時ですか?」
唯「3時さんじゅう、ええと……二分」
梓「聞かなかったですよ」
39 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/26(月) 21:48:52.48 ID:4Nnn3LfAO
唯「ああ……そう、じゃあいいんだけどね……うん」
梓「で、めでたしめでたしって何がめでたいんですか?」
唯「それだよっ」
梓「へ?」
唯「わたしはそれを聞いちゃったのかなあってたずねたんだよっ」
梓「すいません。おきたばっかなんでアレなんですよ」
40 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/26(月) 21:58:07.93 ID:4Nnn3LfAO
唯「どこまで?」
梓「どこまで?」
唯「どこまで聞いてたの?」
梓「ああ。少しだけですよ。ほんの」
唯「そっかあ」
梓「何を喋ってたんですか?」
唯「ちょっとしたお話だよ」
梓「なあんだ。わたしはてっきり先輩が呪文でも唱えてるのかと思っちゃいました」
唯「いやあ」
41 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/26(月) 22:08:00.48 ID:4Nnn3LfAO
部屋は暗くて周りがよく見えない。
わたしは唯先輩の声がする方向に視線をやった。
光る。
一瞬だけ唯先輩のなんだか真剣で、ちょっと照れくさそうな表情が見えた。
それが別にどうだったってわけじゃないけど、わたしは口元が綻びるのを感じた。
遅れて音が響いた。
梓「なんですか?」
唯「花火だよ」
梓「花火?」
唯「うん」
梓「こんな時期にこんな時間におかしいですね」
唯「見に行こっか」
梓「あ、いいですねそれ」
42 :
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[sage]:2011/12/26(月) 22:17:09.48 ID:4Nnn3LfAO
わたしたちは外に出た。
冷えた空気に震えた。
顔見合わせて、さむいって跳び跳ねた。
どおん。
ここからだと音しか聞こえない。
唯「あずにゃんや」
梓「はい?」
唯「この時間におきたのはじめてじゃない?」
梓「たしかに。唯先輩がぶつぶつ言ってたからでしょうか」
43 :
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[sage]:2011/12/26(月) 22:22:12.06 ID:4Nnn3LfAO
唯「えーそれは毎日だって」
梓「ゆうれいなんかですか」
唯「きっとあれだ花火の音だ」
梓「ああそれですね。てかなんで唯先輩は毎日わたしの家に?」
唯「あずにゃんにお話を聞かせるためだよっ」
梓「お話?」
44 :
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[sage]:2011/12/26(月) 22:31:02.51 ID:4Nnn3LfAO
唯「あずにゃんずっと夢見てる間うなされてたんだよ。知ってた?」
梓「そうだったんですか?」
唯「うん。だからさあずにゃんがいい夢見れるようにね、あずにゃんの横で楽しい話を聞かせてたんだ」
梓「毎日?」
唯「そうだよ。せっかく夢の中にまで行ったのにそこでも楽しくないなんてあんまりだよー」
梓「先輩眠くないんですか?」
唯「授業中いっぱいねてるもんっ」
45 :
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[sage]:2011/12/26(月) 22:37:57.10 ID:4Nnn3LfAO
梓「先輩ってなんというか……優しすぎますよ」
唯「む」
梓「他の先輩方もそうですけど、わたし逃げたんですよ。なのに……」
唯「あずにゃんは勘違いしてるよっ」
梓「え?」
唯「それじゃあまるでわたしたちが病院のベッドで寝てるあずにゃんをお見舞いしに行ってるみたいじゃんっ」
46 :
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[sage]:2011/12/26(月) 22:50:08.92 ID:4Nnn3LfAO
梓「でも、実際わたしは先輩たちにすごくめーわくをかけて……」
違うんだ違うんだよ。
唯先輩は言った。
唯「わたしたちはあずにゃんが夢の中に行っちゃても悲しくないんだ。だからさあずにゃんは悪い子にはなれないんだよ」
花火が上がった。
並んだ屋根の隙間から緑色の光が見えた。
47 :
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[sage]:2011/12/26(月) 22:55:35.01 ID:4Nnn3LfAO
唯「今、わたし幸せだよ。そりゃあ、どうしようもないこといっぱいあるけどさ。あずにゃんは夢の中が楽しいと思ったから眠ることにしたんでしょ?」
梓「そうですけど……」
唯「だったら笑ってよ!」
梓「え」
唯「いつもあずにゃん悲しそうな顔してるよ。寝てるときもおきてるときも」
梓「そんなことないです」
唯「わたしはあずにゃんがどんなカタチになっちゃってもいいけど……笑ってないといやだよ」
48 :
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[sage]:2011/12/26(月) 23:03:22.49 ID:4Nnn3LfAO
あそこなら花火がよく見える、って唯先輩は駆け出していった。
白線を避けて歩くその幼さにわたしは少しだけ笑った。
真似をしてわたしも、太い白線を飛び越えた。
唯「ねえ、夢の中のわたしはどんなカタチをしてた?」
梓「むむ……柔らかったです多分」
唯「こんなふうに?」
唯先輩がわたしの体に手を回した。
覚えてる。いつもここで夢が終るんだ。覚えてる。
49 :
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[sage]:2011/12/26(月) 23:13:54.13 ID:4Nnn3LfAO
でも、終わらなかった。
ここは夢じゃない。
だから人のぬくもりだけじゃ寒かった。
わたしたちは体を寄せあったまま花火が上がるのを見ていた。
唯「夢みたいだねー」
梓「夢だったりして」
唯「たしかめてみよう」
お互いにのほっぺたをつまんで、引っ張った。できるだけ思いっきり。
唯「ひたいひたああい」
梓「へふはふへふはふ」
手を離した。
お互いの顔をじっとみつめあう。
花火の上がったその瞬間にだけ真っ赤なほっぺたが見えて、わたしたちは笑った。
50 :
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[sage]:2011/12/26(月) 23:26:02.91 ID:4Nnn3LfAO
帰り道、今度は白線だけを踏んで歩いた。
唯「そういえば今日はどんな夢を見たか覚えてる?」
唯先輩はいたずらっぽく言った。
梓「えと、たしか唯先輩と花火を見る夢です」
唯「ほんとー?」
梓「まあウソでもいいじゃないですか」
唯「えへへそうだねー」
わたしはどうしようもないことを、どうでもいいこと、にしてしまうことにした。
だからってわけじゃないけど、もう幸せな夢は見れないんだろうなあ、そう思った。
51 :
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[sage]:2011/12/26(月) 23:29:29.20 ID:4Nnn3LfAO
梓「唯先輩って絵けっこう上手ですよね」
唯「あんなの落書きだよー」
最初から幸せ夢なんて見たことなかった。それはわかってた。わかってたんだ。
52 :
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:2011/12/26(月) 23:38:54.88 ID:4Nnn3LfAO
【唯】
次の日、あずにゃんは部活に来た。
「楽しい夢はすぐ覚めるからなあ。でも退屈なわたしたちは長続きだぜっ」
りっちゃんが言った。
「でもでもスニッカーズは長持ちでしかもおいしいぞ」
澪ちゃんが言って、りっちゃんがいつもの返しをしてぶたれた。
こつん。
わたしはあずにゃんに抱きついてみた。
あずにゃんは突き放そうかどうか悩んで、まるで寝惚けてるみたいだった。
でも、照れた。
ムギちゃんが――ひゃぅ――口笛の失敗したのを吹いた。
わたしはこの場所が好きだと思う。
どうしようもなく。
53 :
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:2011/12/27(火) 00:03:47.68 ID:1UB/X6LAO
おわり!
54 :
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[sage]:2011/12/28(水) 00:01:40.25 ID:Je/cj+jAO
よくわかんなかったけど、雰囲気が良かったです。
お疲れさまでした。
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