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梓「ストーカー」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:29:08.05 ID:EAYQUC/J0



始まりは、昨日の帰り道だった。

――――

唯「ばいばーい」
梓「はい、また明日!」

最後に唯先輩と別れて、しばらく歩いていると、後ろから突然

カシャッ

という音がした。

梓「…?」

変に思って、くるっと後ろを向いてみても誰もいない。
それどころか、車一台すら通ってなかった。
カメラのシャッター音みたいな音が聞こえたのだが、気のせいだろうか。
もともとあまり人通りが少ない道だから気にしていなかったが、よく考えたら今一人だ。
薄暗くなってきてるせいもあって、少し怖くなってきた。

梓「空耳…だよね」

自分に言い聞かせるように口に出してみる。
そして、早足で家に帰った。

――――



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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:29:49.78 ID:EAYQUC/J0


翌朝

憂「あ、梓ちゃん!おはよう」
純「おー梓、今日は遅いんだねー」
梓「あ、憂、純…おはよう…」
純「へ?梓?」
憂「梓ちゃん…なんかあった?」
梓「え…ううん、大丈夫だよー」ハア…
憂純「どこが…?」
梓「ただ…ちょっと寝不足…かな」
憂「そっか…」
純「あ、梓が寝不足なんて珍しいね!」
梓「ごめん…ちょっと寝る…」
純「あ、オッケー」
憂「じゃあ先生来たら教えるね」
梓「ありがと…」

3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:30:20.80 ID:EAYQUC/J0

今日は朝からツイてない。
昨日小走りで帰ったからだろうか。ケータイにつけていたストラップがなくなっていた。
家中探してもないし、昨日帰ったいつもの道を探してもやっぱり見つからなかった。
あれ、お気に入りだったのに。
それに、朝ケータイがやけに鳴るなと思ったら、大量に迷惑メールが来ていた。
私は基本的に朝はケータイをカバンに放り入れるだけで終了なのに、ストラップがなくなってた事に気付いたのもこのせいだった。
しかも、内容は全然意味分からない。
全て着信拒否にしたらメールは来なくなった。

極めつけは、登校中。
時間は少し遅くなってしまったけど、いつも通り一人で歩いていただけで、いつもと変わらない道を歩いていたはずなのに、今日はやけに視線を感じる。それも一人じゃない。なんか、気持ち悪い。
後ろを向いてみたけれど、やっぱりそれらしき人はいなかった。もしかしたら、電柱の陰に居るのかも…と思ったが、怖くてチラッとしか見なかったので分からなかった。
そして、昨日のあの事と今日の迷惑メールを思い出した。

梓(もしかして、ストーカー…?)

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:31:10.33 ID:EAYQUC/J0


背中がゾクッとする。怖いし、早く逃げたい。
このまま交番に駆け込もうかと思ったけど、もし勘違いだったら恥ずかしいし遅刻する訳にもいかない。
私はダッシュで学校に来たのだった。

純と憂が、私を心配そうに見ている。
怖いし、相談しようかな…。
でも、二人にはいつも迷惑ばっかかけてるし、心配かけたくないなぁ…。
今までを思い出して、やめた。
純も憂も、あまり自分の事は相談してこない。私が軽音部の悩みを話している時も、二人はうんうんといって聞いてくれるし、憂はアドバイスまでくれる。純も持ち前の明るさで私を元気づけてくれる。
今だってこうやって心配かけている。
助けてもらってばかりの私が、さらに迷惑なんてかけちゃいけない。

私は、恐怖心を隠しながら、なんとかごまかし、放課後までやってきた。
授業は全くと言っていいほど耳に入って来なくて、授業中もずっと今日の事を考えていた。

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:31:41.70 ID:EAYQUC/J0


部室へ行く途中、階段を上っていると、後ろから同じように階段を上る音が聞こえた。

梓(ここの階段、音楽室に行く以外あまり使われてないのに…)

トン…トン…トン…

ストーカー疑惑の話もあって、怖くて前に進めなかった。
足が震えて、上がろうと思っても上がれないのだ。

梓(やだ…どんどん近付いてくる…怖いよぉ…)ブルブル

チョンチョン

梓「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」グラッ

突然肩を叩かれた私は、びっくりしてバランスを崩してしまった。
膝がガクッと折れ、後ろに崩れ落ちるように倒れる。

梓(ヤバい…!!)

でも、いつまでたっても痛い衝撃は来なくて、かわりに良く知った声が耳に入った。

律「梓?大丈夫か?」

肩をたたいた主は、律先輩だった。
後から聞いた話によると、前に私がいたから、驚かせようと思ってやったらしい。
律先輩は倒れかかった私をキャッチしてくれたため、私は無傷で助かった。

律「わりーわりー、ごめんな?梓」
梓「……」ポロッ
律「…へ?」
梓「……」ポロポロ
律「どうした?ごめんな、痛かったか?」
梓「……」フルフル
律「…ちょっと落ちつこっか」ギュッ

律先輩は、泣いたままの私を静かに屋上へと連れ出した。
律先輩は何も聞いてこないし、私も何も言わない。沈黙の時が流れた。
でも、私にとってはむしろそれがありがたかった。
今はまだ喋れない。気持ちが追いつかなかった。
怖さが律先輩の優しさに触れて安心に変わり、律先輩の隣で声をあげて泣き続けていた。その間律先輩はずっと私の手を握っていてくれて、優しい顔でそばにいてくれた。
律先輩のあの顔は、一生忘れる事が出来ないだろう。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:32:35.93 ID:EAYQUC/J0


律「…落ち着いた?」
梓「……はい、…すみません…急に…」グスッ
律「大丈夫だってー、私が驚かせたのが悪いしな!」
梓「…ほんとですよ…」グスッ
律「…ん。ごめんな」ヨシヨシ
梓(いつもだったら『なんだとー?』とか言ってくるのに…)
梓(気を使ってくれてるのかな…)
梓「…いえ、冗談です…」
律「……そっか…よ、よかったー」
律梓「……」

再び沈黙が流れる。
律先輩はやっぱり何も聞いてこなかった。
唯先輩あたりだったら、『どどどうしたの?!?!なんかあったの?!?!』とか聞いてきそうだ。
律先輩も、きっとそうやってなんか聞いてくるのだろうと思っていた。
だから、どうやって話せばいいのか迷っていた所だった。

律「……あのさ、」
梓「…はい」
律「……友達に言いにくい事あったら、先輩…頼っていいんだからな?」
律「…………澪とか、ムギとか…皆いるし…な?」

最後のは照れ隠しだろう。
律先輩はやっぱり素敵な部長でした。
私の雰囲気で何か気づいてくれたのでしょう。私としては、先輩方にもいつも迷惑かけてばかりなのでこれ以上迷惑をかけるわけにいかない…と思うのですが。

でも、そろそろ私の心も限界です。
帰り道を想像すると、不安を隠せなくなってきます。

なので、思い切って律先輩に打ち明けてみました。

梓「あの、律先輩……実は…」

昨日の事も、今日の事も全部話しました。
途中でやっぱり怖くなってまた泣いてしまいましたが、律先輩は優しく私が話すのを待ってくれました。
いつもの不真面目で大雑把な律先輩は何処にもいません。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:33:54.97 ID:EAYQUC/J0


話を聞き終わった後、律先輩も動揺していました。

律「……梓、それって……」
梓「やっぱり、ストーカー…なんでしょうか…?」
律「多分…な」
梓「……」ブルブル
律「…まだ実際の被害は迷惑メールだけか?」
梓「え…?」
律「見られてる、とかはまだ証拠がないから置いといて、無言電話とかはきてないんだよな?」
梓「はい、一応…」
律「…んー、じゃあ、まだ…や、でも危ないな…」ブツブツ
梓「…律先輩?」
律「あ、悪い。実はさ、ストーカーされてたことがあってさ…」
梓「えっ?律先輩が?」
律「は?…あ、違う違う、私じゃなくて澪がさ!」
梓「そうなんですか…」

その話で、律先輩から澪先輩が無言電話や迷惑メールを受けていた事を聞いた。
調べたら、その犯人は澪先輩の事が好きで追いかけまわしていたらしい。
その人は結局何処かに引っ越していったみたいだけどな…、と律先輩は言っていた。

律「とりあえず、今日はどうするんだ?」
梓「え?」
律「帰り。危ないだろ?」
梓「あ…」
律「ま、とりあえず部室行こうか!皆待ってるだろうし!」
梓「は、はい!」

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:34:37.36 ID:EAYQUC/J0


律「おっすー」
梓「遅くなりましたー…」
唯「あーーーーずにゃーーーーーーーーん♪」ダキッ
梓「にゃああああああ!!!」グイッ
唯「もー!あずにゃんのいけずー」プンプン
梓「当たり前です!!」
澪「律、遅かったな」
紬「梓ちゃんと一緒だったの?」
梓「……!」
律「ああ、会ったから話してたら遅くなっちったー」ヘヘヘ
梓(あれ、律先輩ナイショにしてくれてる…)
澪「そうか」
紬「お茶入ったわよ〜」コト
律唯「やったーーーー!」
澪「いつもごめんな?」
紬「いいのよ♪」


こうして、いつもの軽音部らしくろくに練習もせず部活を終えた。

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:35:12.46 ID:EAYQUC/J0


唯「あずにゃん?どしたの?」
梓「へっ?」
唯「だってなんか怖い顔してたから〜」
梓「き、気のせいですよ!」アセアセ
唯「そうかなぁ〜。ねえ澪ちゃん、そう思わない?」
澪「私?!…んー普通じゃないか?」
唯「そうかなー…」
律「唯どうしたんだ?」
唯「だってあずにゃん今日変なんだもん!」
梓「そ、そんなことありませんよ!」
唯「えー…」

律「あ、澪ー、今日こっちから帰ろうぜ〜?」
澪「え?…ああ、いいよ」
律「あんがとー。ちょっと用事があってなー」
澪「…」
唯「あれ?りっちゃん達今日こっちなの?」
梓「…?」
澪「ああ、律が用事あるんだってさ」
唯「ええ〜?もしや、りっちゃん彼氏〜?」
律「…彼氏だったら澪連れてかないだろー」パコッ
唯「いったぁ〜それもそっか〜」サスサス

律先輩も澪先輩も、さりげなく私を助けてくれた。
特に澪先輩なんか、何も言っていないのに助け船を出してくれる。
きっと一生、この二人には頭が上がらないだろうな。

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:35:43.72 ID:EAYQUC/J0


唯「じゃあね〜」
律「気をつけろよ唯隊員!」ビシッ
唯「はいっ!りっちゃん隊長!!」ビシッ
澪「じゃあな、唯」
梓「さよならです」
唯「うん!まったね〜」ヒラヒラ

澪「…さて」
律「あはは…」
梓「…?」
澪「梓、今私が想定した事を言ってもいいか?」
梓「?はい、いいですよ」
律「これで間違ってたら恥ずかしーでちゅねーみーおちゃん♪」
澪「」ボカッ
律「いって…」サスサス
梓「あはは…。あ、で澪先輩、なんですか?」
澪「ああ…。もしかして梓、何か悩んでることないか?」
梓「え?」
澪「特に…“ストーカー”」
梓「……!!!」
澪「で、それを律に相談した…って感じであってるか?」
梓「…はい」
律「…さすがだな」

どうやら澪先輩は分かっていたらしい。

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:36:49.02 ID:EAYQUC/J0


澪「律は分かりやすいんだよ」
律「私がか?」
澪「昔私が同じ目にあった時もそんな顔をしてたからな」
梓「そうだったんですか…」
律「澪、怖くないのか?」
澪「まぁ、ちょっとは…。でも、律がいるから」
律「は?」
梓「?」
澪「梓、律から私の話は聞いてると思うが、それには裏があってな」
律「ちょっ、澪!」
澪「実は、犯人捕まえたの、律なんだよ」
梓「えっ?!」
澪「律がおとりになってな」
律「もういいから!」
澪「……。まあ、いざとなったら律は強いから大丈夫」
梓「はあ…」
律「……」

澪「じゃあな」ヒラヒラ
律「?…ああ、そっか、こっちからならまっすぐ帰れるもんな」
澪「ああ。梓、何かあったら相談しろよ?」
梓「…!はい!」
澪「じゃ」

澪先輩は帰っていった。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/09(月) 16:39:21.57 ID:EAYQUC/J0


すみません、ちょっと落ちますノシ
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/01/09(月) 16:50:53.76 ID:cpsJnQmO0
ほっほっほっしゅ
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/09(月) 17:31:45.34 ID:JtZ0W+ylo
激期待
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 18:56:38.59 ID:na9m95nDO
かずにゃんとうとう……
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 19:04:38.59 ID:9uDfPJEDO
まーた紬空気の律黒幕か
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 06:25:20.88 ID:fXrJIEF00
いいよいいよ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/10(火) 18:01:15.40 ID:0baoLDF6o
>>16が核心を射抜いた感が否めない
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/10(火) 22:48:37.62 ID:AykZ2kzVo
どっちでもいいから続きを
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 21:58:15.33 ID:k06feIBc0
まってるよ
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/18(水) 15:21:29.76 ID:Pugu1VoQ0

すいません、遅くなりました。

続きやっていきます。

22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/18(水) 15:34:11.84 ID:Pugu1VoQ0

それと同時に、2通のメールが来る。

律「梓、ケータイなってるぞ?」
梓「あ、はい、ちょっとすいません」パカッ

唯『あずにゃん!待ってるよ!!』
紬『悩みがあったら相談してくれていいからね?』

メールの送り主は、唯先輩とムギ先輩だった。
唯先輩のは…何だろう、内容の意味がよくわからない。けどやっぱり、私が何か悩み事を抱えてると気づいているのだろう。そういえばさっきも「今日はなんか変」って言ってたし。
ムギ先輩はストレートな言葉だったが、それが一番ありがたかった。
メールの文章を見ているだけでもムギ先輩の優しさが伝わってくる。
二人とも、律先輩や澪先輩のように直接言っては来なかったけど(唯先輩は指摘したけどね)、私の事を本気で心配してくれているのがメールからでもすごく伝わってきた。

軽音部の先輩は、みんな素敵な先輩だ。
私はちょっと嬉しくなりながらケータイをしまった。

律「梓、今の所はまだ大丈夫そうか?」
梓「あ、はい、多分…」
律「ん、ならいいけどさ」

律先輩はそう言って黙り込んだ。私達の間に、沈黙が流れる。

もうすぐ私の家が近付いていた。今日は二人でいるからか、見られている様な感じも何もしなかった。
そうだ、律先輩にお礼言わないと。わざわざ私のためにここまで来てくれたんだから。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/18(水) 15:43:59.08 ID:Pugu1VoQ0

梓「あの、律先輩…!」
律「ん?」
梓「…ありがとうございました。私のために送ってくれて」ペコッ
律「?…ああ、いいっていいって!照れるし!」
梓「いえいえ、本当に感謝してるんです」
律「…あ、うん……ま、まあ…ありがとなー…!」
梓「それでは失礼し……」

その時だった。私の家の前に、誰かが立っていたのだ。自転車が止まってるし、黒い服装だけど、ただの新聞配達員かもしれない。
でも、それ以上に昨日と今日の事がフラッシュバックしてきて、恐怖から私はその場に立っている事が出来なくなった。

梓「」フラッ
律「梓?!」
梓「…………怖いよぉ………!!!」グスン

ああもう、どうして私はこんなに泣き虫なんだろう。
今日一日だけで、律先輩に何度泣き顔を見られたことか。

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/18(水) 15:50:52.82 ID:Pugu1VoQ0

でも。そんなことよりもっと大事なことがある。

そう思ってもう一度私の家を見たけど、もう誰もいなかった。
あの人は、誰だったのだろうか。
両親の友達?はたまた私の知り合い?近所の人?
でも、身長は意外と小さそうな気がした。私が言えることじゃないけど。
女性?それとも背が低い男性?
よく分からない。考えれば考えるほどこんがらがってきてしまう。

律「…」
律「…………………あの自転車……どっかで……?……」ボソッ

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/18(水) 15:53:23.84 ID:Pugu1VoQ0

あ、今更になりますけど、ID変わっていますが≫1です


26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/18(水) 16:09:54.62 ID:Pugu1VoQ0


律先輩が何か言った気がしたけど、私の耳には入って来なかった。
あの人影が、脳内にこびりついて離れない。あの瞬間の映像は、私の不安を大きくさせていくだけ…。

私が少し落ち着いてから、家まであと20メートルと言う所からようやく進みだした。
まだちょっとドキドキしているけど、隣にいる律先輩のいつもと違う、大人っぽい表情が、私を少し安心させてくれた。
そういえば澪先輩が言ってたな。「律は強いから大丈夫」って。
私にとっては、強い、じゃなくて、頼もしい、かな。

少しして律先輩が、そういや追いかければよかったな、と思い出したように私に言った。

梓「すいません、私、いきなりあんな風に…」
律「大丈夫大丈夫、あれはあたしもびっくりしたよ!」ハハ
梓「すいません…」カアッ
律「ま、梓が無事ならいいんだよ、あたしは」ポン
梓「…はい」
梓(律先輩、やっぱ優しい…)
律「ここだよな?」
梓「あ、はい」
律「……」キョロキョロ
梓「律先輩?」
律「…よっし、大丈夫そうだな!」
梓「何がですか?」
律「この辺に誰かいないか!…梓、家帰っても一人なんだろ?危ないじゃん」
梓「……あ……」
律「?」
梓「………そっか…一人…なんだ…」ボソッ
律「…!」

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/18(水) 16:30:56.83 ID:Pugu1VoQ0

梓「あっ」

気づいた時はもう遅かった。つい思った事を口に出してしまっていた。
だって、妙に現実に引き戻された感がして、今こうやって二人でいる時でも怖いのに、一人になることが怖くてしょうがなかったんだ。


28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/18(水) 16:32:38.36 ID:Pugu1VoQ0


すいません、ちょっと出かけます。
帰ってきたら少し書きためて再スタートしますノシ
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 16:36:04.22 ID:OwyZovl7o
おっつん。

長くなる、投下時期が開く場合は、
トリップを付けることオススメするよ。


律「」

梓「」

律「」

梓「」

あと、台詞は上記のようになってると助かる。


なんにせよ、シリアス好きなので完結を祈る
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 17:02:23.01 ID:licNGh3Y0

アドバイスありがとうございます。

了解しました。


すみませんが、トリップとは…?

今更すいません。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 17:03:11.32 ID:licNGh3Y0

またまたID変わっていますが≫1です。

続きやっていきます。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 17:04:38.13 ID:licNGh3Y0


体は勝手にブルブル震えだすし、さっきの謎の人が立っていた事を思い出して、今いる場所から後ずさりしてしまう。
これじゃ、また律先輩に迷惑かけちゃうのに…。


律「……梓」

梓「…は……はい…」ガクブル

律「…怖いなら、あたしん家泊まりに来るか?」

梓「え…でも…」

律「今日金曜日じゃん?あたしん家、今日両親いないしさ。弟はいるけど、それでもいいなら来ても大丈夫だぞ?」

梓「……」

律「どうする?」

梓「…お願い…します」

律「…おー!それじゃ、荷物用意しないとな!ここで待っててやるから、着替えて荷物持ってきな!」ニカッ

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 17:05:05.79 ID:licNGh3Y0



こうして、私はまた律先輩の優しさに甘えることになった。
家に入ってすぐ、律先輩に言われた通り用意して、ぱっと着替えた。家から出た時、律先輩がいなかったらどうしようかと思ったけど、ちゃんと同じ場所で待っていてくれていた。
なんか今日は、いつもの律先輩じゃない。


私達は、さっき通った道をもう一度引き返した。

私の家のポストに、謎の人物からの手紙が入れられていた事も知らずに…。


梓「おじゃましまーす…」

律「おう、入れ入れ!」

聡「おかえりー…ってあれ、け、軽音部の…人?」

律「ああ、梓は今日うちに泊まりに来たんだぜ!」

聡「へえ〜……は?!?!」

律「梓、何度も見てると思うけど、こいつ私の弟の聡な」スルー

梓「はい、知ってます」

聡「…!」

律「やっぱりか」

律「ま、あたしの部屋に行こーぜー!」スタスタ

梓「はい」スタスタ

聡「……」


34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 17:10:42.53 ID:VRfyeap+o
カプ的には律梓なのか?
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 17:17:47.54 ID:licNGh3Y0


律「大丈夫か?」

梓「…?何がですか?」

律「いや…別にいいけど」

梓「そうですか」

律「じゃーちょっとお茶とってくるから待っててな!」


そう言って律先輩が部屋を出ていった。
この部屋にいるのは私一人。
それなのに、どこかで誰かが見ている様な気がしてしまうのは、私が臆病だからだろうか。

不安で不安で仕方ない。でも、顔には出さないようにしようと決めた。
これ以上律先輩に、みんなに、迷惑はかけられない。
月曜日までに解決しなかったとしても、軽音部の先輩方の前や、純と憂の前では明るくふるまおう。
そう決心していた。


36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 17:19:52.83 ID:licNGh3Y0

一応そのつもりです。

ちょっと唯とムギが空気になりつつありますが、それは力量不足です。
すいません。

37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 17:20:28.03 ID:licNGh3Y0




律「あーずさー、ちょっとドア開けてー」トントン

梓「あ、はい!」カチャ

律「サンキュー、片手じゃ持てなかったからさ!」

梓「呼んでくれれば手伝ったのに…」

律「梓は客人だろ?ダメダメ」

梓「でも、突然おじゃました身ですから…」

律「そんなことはいーの!あたしが勝手に呼んだようなものだし」

梓「そんなことないです!私が…」

律「……ぷっ」

梓「へ?」

律「あっはははは!」

梓「律先輩??」

律「梓がへりくだってるー!!」ニヤニヤ

梓「ちょっ、もう、律先輩!!私だってそれくらいできますー!!」プンスカ

律「言い返すなんてまだまだ子供でちゅねー」クスクス

梓「もう!!」プンプン

律「……」フゥ

律「まーまー、そんな怒るなって、お菓子持ってきたから食べようぜー!」

梓「え…?ティータイムしたばっかじゃないですか!」

律「細かいことはいーの!」

梓「よくないです!!」



38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 17:27:16.89 ID:licNGh3Y0



ピンポーン


急に、玄関のチャイムが鳴った。

聡『ねーちゃーん、澪さん来たけどー?』

律「おう、上がってこいって言ってー」

聡『りょうかーい』


トン…トン…トン…


澪先輩の階段を上る音が聞こえた。

ちょっとその音にビクビクしてしまったけど、そういえば学校の階段の音は律先輩だったんだっけ。
思い出してビクビクするのをやめた。
怖くない、大丈夫…。

澪先輩がちょっとのことで怖がる理由が分かった気がした。


39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 17:29:33.44 ID:FxeKSGP1o
トリップは、名前欄に『#〜』を入力してつける

〜の部分は何でも良い。



#あああ    →  ◆GJolKKvjNA

と、なる。

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 18:02:04.18 ID:VRfyeap+o
>>36
…そっか、ノシ
41 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/19(木) 18:47:30.03 ID:licNGh3Y0

≫36

ありがとうございます
42 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/20(金) 16:58:31.25 ID:tdtdiS1x0


澪『入るぞー』ガチャ

律「おう、いいぞー」

澪「珍しいな、開けにきたのが聡だなん……そういうことか」

梓「…お、おじゃましてます…」モジモジ

澪「ああ、気にしないでいいからな」

律「…ホント澪はこういう時は勘付くのが早いよな」

澪「そうか?」

律「いつもそうだよ。怖がりなくせに」ニヤニヤ

澪「ばっ…それは関係ないだろ!…ていうか、律だって同じだぞ?」

律「は?」

澪「周りいっつも見ててさ。いつでも律がサポートしてやってる」

律「そんなこと…」カアァ

澪「あるよ。なあ、梓?」

梓「え?……はい、私もそうだと思いますよ?」

澪「ほら」

律「ちげーし!梓も適当な事言うなってーの!!!!」

澪「……まぁ、律がそう言って照れ隠ししてる事だから、この話はやめにしようか」

律「そーだそーだ!やめやめ!!」


43 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/20(金) 17:30:35.29 ID:tdtdiS1x0



律先輩と澪先輩の関係はすごいと思った。
律先輩がみんなのことをサポートしてくれているし、澪先輩の事も助けてあげている。
そして、澪先輩がそんな律先輩を支えている。

私にはそんな関係を持った人は誰一人いなかった。
幼馴染もいないし、友達だって少ない。
それに、自分の事で精一杯で、周りなんか観ていなかった気がする。

軽音部に入って本当に良かった。



44 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/20(金) 17:39:22.29 ID:tdtdiS1x0




澪「…あ、でさ…」

律「そうか、何の用だ?」

澪「いや、実はさ…」モジモジ

律「?」

梓「!!わ、私トイレ行ってきますね!!」ガタッ

律「お、おう、1階の玄関前な!」

澪「…」


律「で?」

澪「…」

律「梓には聞かれたくない事だったのか?」

澪「いや、むしろ梓も聞いてほしかったかな…」

律「は?」

澪「実はさ…」


私はトイレ、と誤魔化して律先輩の部屋を出た。
きっと澪先輩、私がいる前だと言いづらい事だったんだろうな。
先輩方は私より1つ上なんだ。
先輩方と同じような話をするのも無理がある。仕方ないか。



45 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/20(金) 18:01:47.51 ID:tdtdiS1x0




私はトイレ、と誤魔化して律先輩の部屋を出た。
きっと澪先輩、私がいる前だと言いづらい事だったんだろうな。
先輩方は私より1つ上なんだ。
先輩方と同じような話をするのも無理がある。仕方ないか。


梓「はあ…」


玄関の所で少し座っていた。
律先輩の家に来てから、私もようやく冷静さをとり戻すことができたようだ。
今なら帰れるかも…。

そう思ったが、やっぱり私の事だ。
家の前に着いたら怖くなって入れないだろう。
人が通っていたりしたらなおさら。
もう少し気を落ち着けたい。もうビクビクするのは嫌だから。


座ってじっとしてから少したった時、突然後ろから手が伸びて来たかと思ったら、
急に目の前が見えなくなった。
どうやらタオルで目隠しされているみたいだ。
一瞬理解できなかったのと、恐怖心から声を出すことも忘れて、必死で手足を動かして抵抗していた。

これ、夢じゃない。

梓(まって、ここ、律先輩ん家だよね?…誰がこんなことを…?)

梓(まさか、律先輩と澪先輩?!)

梓「律先輩!?澪先輩!?」

??「…!!!!!」


私が叫んだら、犯人(?)は動きを止めた。
やっぱり律先輩たちか、と安心した所で、思いもよらない事が起こった。



46 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/20(金) 18:02:23.16 ID:tdtdiS1x0




??「おい、ズラかるぞ!!」

??「「はい!」」


こんな声が私の後ろから、前から、聞こえてきたのだった。
明らかに、律先輩たちの声じゃなかった。
これは、男の人の声だ。…じゃあ一体誰?
もう一度声を出そうと思ったら、今度は口にもタオルをされ、さらに私を持ち上げて歩き始めた。
そして、玄関のドアが開いた音がしたと思ったら、同時に上から聞きなれた声が耳に入った。


律『梓?呼んだ?』

梓「……ーー!!!!!!!」


声にならない声で私は叫んだ。
律先輩が聞いてくれる事を信じて。

でも、結局律先輩はそれっきり、何も言葉を発さなかった。
…聞こえていなかったのだろうか。
だとしたら…。

いや、それより、私は誰に連れ去られているのか。
抱きかかえて逃げようなんて事をしているのだから、車に乗せられちゃうのだろう。
まず、誰が田井中家に侵入したのだろう。
下には律先輩の弟、聡君がいたはずだし、上には進入できそうな所なんてなさそうだった。


今自分が置かれている状況がどうしても理解できていなかった私は、冷静にそう考えていた。


47 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/20(金) 18:20:29.51 ID:tdtdiS1x0




ただしその次に、それを打ち砕く様な衝撃的な発言を私は聞くこととなった。


『…梓さん、一人で降りてくるなんて、バカだね』フッ


まるで人を蔑むような声で、嘲笑うかのように言い放った人がいた。
おそらく、この人も男だろう。でも、少し幼い様な…。


梓(……!!!!!!)


私はこの声を聞いたことがある。
しかも、ついさっき、1時間も立っていないうちにだ。
忘れるはずがない。

………聡君の声だった。

――――

澪「実はさ、最近この辺りで、不審者が出たそうなんだ」

律「なに?!」

澪「マ…お母さんが言ってた。……で、な。…それに関わっている男の子がいるらしいんだ。」

律「…ほう…」

澪「男の子は二人いてさ、もう片っぽは無理矢理誘われて関わってるみたいなんだけどな?」

律「……ああ」

澪「その不審者と、公園で何かやってるらしいんだよ」

律「見に行こうってか?」

澪「まさか…。そ、そんなこと、で、で、出来る訳無いだろ…!!」ブルブル

律「冗談だって」



48 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/20(金) 18:28:04.49 ID:tdtdiS1x0



澪「…はあ。まあそれでな?」

律「うん」

澪「………知り合いが見たらしいんだ、その現場を。でさ…、そこに居たのが…」

澪「鈴木っていう人と、」

律澪「……田井中聡」

澪「えっ?!」

律「…そんな事だろうと思った。話し振りからして」

澪「知ってたのか?」

律「まさか。私だって今戸惑ってるし」

澪「…ごめんな」

律「いいよ、聡に聞いてみて、やっぱりヤバかったら抜けるように言うから」

澪「……」


梓『…つ…いみ…んぱ…?!』


澪「今梓の声しなかったか?」

律「そういえば梓帰って来ないな」

澪「私達に気を使ってくれてるんだろ、悪かったな」

律「そうか…まあ一応聞いとこ」ガチャ

律「梓?呼んだ?」


梓『????????????!!!!!!!』


律「…?!」

澪「どうしたんだ?」

律「なんか…うめき声見たいなのが聞こえた気が…」

澪「ひっ……!!!!!!」ミエナイキコエナイ

律「…澪、ちょっとここで待ってて、梓見てくるわ」



49 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/20(金) 18:46:29.98 ID:tdtdiS1x0


ガチャ

律「?!?!」ピタッ

聡『あず……も……で…なんて…か……ね』

律「聡……?」


――――


案の定、私は車に乗せられ、アイマスクも猿轡も外されることのないまま両腕を縛られ、シートに座らされた。
隣には人がいる。…多分。

何処に連れていかれるんだろう。



50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/23(月) 09:09:57.34 ID:XmZq+qCHo
聡ェ…
51 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/25(水) 12:12:29.83 ID:6zc8nojN0



気づいた時は、暗くて少し肌寒い所に寝かされていた。


梓(あれ…ここ、どこだっけ……)


うっすらと目を開けると、起き上った訳でもないのに、頭がクラクラしてくる。
そして、ぼんやりとした意識のまま、私はようやく自分の置かれている状況を理解した。


梓(そうだ、私、誘拐されたんだ…)


頭がクラクラするのは、薬でもかがされて眠っていたからだろうか。
ううん、そうでもしなきゃ、私が寝るはずがない。あんなに怖かったんだから。


梓(ここ、ホントに何処なんだろ…)

梓(それに…………聡君……)


私にとって一番気がかりだったのは、私自身の事じゃなかった。
律先輩の弟、聡君の事だった。
忘れもしないあの声。
律先輩の声に少し似ていて、兄弟だなぁ、と感じたあの声。


『…梓さん、一人で降りてくるなんて、バカだね』


あれは、確かに聡君の声だった。

なにより私の事を『梓さん』何て呼ぶ人はそうそういないし(というかまず私には年下の知り合いなんていない)、
少し離れた所からの声でもばっちり聞こえたのも身長が私とさほど変わらないからだと思う。


梓(律先輩…)



52 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/25(水) 12:19:17.78 ID:6zc8nojN0




梓(律先輩…)


そして、もう一つ気になる事は、律先輩の事だった。

律先輩は、聡君のあんな姿を知っていたのだろうか。
…知らなかったのかもしれない。だから、私が呼んでも気のない返事しかしなかった。


それとも。


律先輩も、それを知っていたとしたら。

律先輩は、もともと聡君達とグルで。
私を助けるふりをして、家に呼んで。
私を誘拐するために……。

だから、私が呼んでも、来てくれなかった。


梓(……澪先輩は…?)ハッ


そうだ。澪先輩もあの家にいた。

もしかすると…澪先輩もグルなのかもしれない。
律先輩がもしこうなる事を知っていたのなら、わざわざ澪先輩を家にあげる事なんてしなかったはずだ。

または、律先輩は何も知らないけど、澪先輩はグルだったとか。

律先輩を引きとめておくために部屋に入って。
ちょっと言いづらそうな雰囲気にして、私を外に追い出して。

それなら、まんまと引っ掛かる道しかなくなる。

それが……狙い……?



53 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/25(水) 12:31:29.88 ID:6zc8nojN0




梓(ダメダメ!!先輩を疑っちゃ!!)ブンブン

梓(いつか…私がいないって、気づいてくれるよね…)


藁にもすがるような思いで、私は祈り続けた。

きっと、先輩達は関係していない、ということを信じて。
でも、もしも。
もし関係していたら………私はここで、死ななくてはいけないのだろうか。

不安がよぎるが、精一杯耐えてなんとか自分の恐怖心を押さえつける。


落ち着いて、もう一度目を開けたその時だった。


梓「…………!!!!!!!」

??「…」ギロッ


私の目の前に、覆面マスクみたいなのをした人間が一人、私を睨んでいた。

恐怖。


??「Aさん!起きたっぽいですよ!!」

A??「おお、そうか。御苦労だ、B」

B??「どうします?」

A??「そうだな……ま、とりあえず椅子にでも座らせとけ」

B??「ハイ、了解しました!!!」


知らない声だった。



54 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/25(水) 12:55:43.85 ID:6zc8nojN0




知らない声だった。


梓(誰なの…?)


私はどうしてこんな目に遭っているんだろう。
どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだろう。
見ず知らずの人。
私が、いったい何をしたというんだ。


B??「起きてるー?中野梓ちゃーん?」サワッ

梓「!!」ビクッ

B??「やっぱ起きてるみたいだねぇ?」

B??「梓ちゃん、動けないだろうから、動かしてやるよ」ダキ

梓「〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」ジタバタ

B??「フッ。これでどうだ?」グイ

梓「?!…!!」カアッ




55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/25(水) 23:18:14.47 ID:oSEXm+9U0
しえんぬ
56 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/26(木) 16:42:51.19 ID:n2jXx2GY0




B??によって、私のズボンがずるりと下がり、私の下着が露わになった。
抱きかかえられているから、隠す事さえできない。

しかも、ピンクのレースがついたお気に入りのものだった。


B??「Aさん!!こいつ、勝負下着はいてますぜ!」ニヤニヤ

A「ハハッ丁度いいじゃねーか」

梓「〜〜〜〜!!!!」


違う。そんなんじゃない。
だいたい、こんな人に見せたくなんかなかった。
そう言いたかった。


A「何か言ってんぞ?」

B??「面倒なんで、これ取っちゃっていいスか?」

A「ああ」

梓「………プハッ」


私の猿轡が取れた。

自由に会話ができるようになった。
でも、会話など、怖いしする気もないのだが。


とりあえず今は静かにしておこう。
助けが来る事を信じて。



57 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/26(木) 16:43:54.87 ID:n2jXx2GY0





――――


澪『律ー?何かあった?』ガチャ

律「!」ハッ

澪「律?…あれ、どうしたんだ?」

律「…さっき……下でな、聡の声が聞こえたんだ…」

律「それがさ……『梓さん一人で〜(なんとかなんとか)〜だね』って…」

澪「は?!」

律「その後すぐ玄関が閉まってさ。急に何の音もしなくなった」

澪「え…」

律「梓がどこかに行ったのかもしれない」

律「梓のやつ、外は怖いって言ってたのに一人で出かけちゃったのか…?」

澪「…それって…」

律「でもさ……聡もいないんだ…」

澪「…」

律「……梓と同じタイミングでいなくなるなんて、一緒に出かけない限りおかしーっしょ」

澪「……!!!」

律「……探してくる」タッタッタッ

澪「まって律!!もしさっきの不審者の話本当だったら、律も危ないぞ?!?!」

澪「警察に連絡してから…」

律「いや、それはいい」

律「どんな状況でも…私の後輩と弟がいないんだ。まず探しに行くに決まってんだろ」

澪「……」

律「澪はここにいてくれ。梓が聡と出かけただけって可能性もある訳だから、警察に通報もしなくていい」

澪「……分かった」

律「もしヤバかったらケータイから電話するから、そん時は連絡よろしくな」

澪「え…」

律「だいじょーぶだってー!!じゃ」ガチャ バタン


律(あの時、追いかけてれば梓の行方が分かったのにな…)

律(必ず見つけてみせる…!!!)


――――




58 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/27(金) 13:48:02.70 ID:OWb01+Wc0



A「梓?だっけ?」

梓「…………ハイ」ボソッ

B??「声ちーせえなあ〜?」

梓「…………」

B??「おい聡ー、ホントにこいつ中野梓なのか?」チッ


B??が聞くと、聡、と呼ばれた人は、近くまで寄って来た。
そして私が見た人物は、あの、聡君だった。
まぎれもなく、田井中聡。律先輩の、弟…本人だった。


聡「当たり前です、ねえ、梓さん?」ニヤッ

梓「……!」


私は悟った。
この聡君は、私が初めて会った時の聡君ではない。
もう、本当に別人じゃないかってほど。
こんな笑い方、するんだ。

律先輩と少し顔が似てると思ったけど、全然違う。


梓(律先輩もこんな顔するの…かな…?)ビクッ



59 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/29(日) 18:31:06.78 ID:MZb741EC0




もし律先輩に裏切られたら…と考えると胸が痛い。
私の事、あんなに助けてくれたのに…。
違うよね?大丈夫だよね…?

先輩を疑うなんて、私らしくないよ…。
もうこんなの、嫌。


梓「たすけて………」


うわごとのように呟いた。
無意識に、ふっと自然に口から出ていたのだ。
幸い、周りの連中には聞かれていない…と思う。

いや、それは間違いだった。

聡君が、ニヤニヤと気味が悪い笑顔を浮かべて私の事を見つめていた…


――――


澪(律は警察には連絡するなって言ってたけど…)

澪(やっぱ心配だ……聡の事もあるしな…)

ピロリロリーン♪

澪「!あ…なんだ……ムギからか」パカッ

紬『澪ちゃん、りっちゃんの弟って名前なんていうの?
  ちょっと気になることがあって…』

澪「もしかして、不審者の話かな……」ピッ

澪『聡って名前だけど…。
  どうかしたのか?』

澪「送信っと…」ポチ

澪「……」

ピロリロリーン♪

澪「ムギ、打つの速いな…」ピッ

紬『やっぱり…。
  聡君?でいいのかしら。
  最近桜ケ丘で見かけられてる不審者と関係あるらしいの。
  りっちゃんはこのこと知ってるのかな…?
  澪ちゃんなんか知らない?』

澪『律もそのこと知ってるよ。
  というか、私がさっき話したんだ。
  でさ、ムギ…今電話しても大丈夫か?
  そのことで大事な話があるんだけど…』ピッ


澪(律……今頃、どこで何してるんだ…?)

澪(どっかに隠れてたら音ならしちゃまずいだろうし……)ハァ



60 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/29(日) 18:41:52.91 ID:MZb741EC0




ピロロロロロロロロロ♪


澪「あ、ムギから電話だ…」ピッ

澪「もしもし?ムギ?」

紬『あ、澪ちゃん?!なんかあったの?』

澪「うん、実はさ…梓の事なんだけど…」

紬『梓ちゃん?…うん、どうしたの?』

澪「いなくなったんだ」

紬『へぇ〜………え?!?!?!?!?!』

澪「唯みたいな反応だな…。で、律が、今探しに行ってる」

紬『梓ちゃんは大丈夫なの?!もしかしてそれって…』

澪「わかんない。でも、多分梓は…」

紬『聡君とあの集団がらみってことね』

澪「うん…それに、梓が連れ去られたのは、律ん家なんだ」

紬『…今澪ちゃんは?』

澪「律ん家にいる。待っててって言われちゃって…」

紬『分かった。今からそっち行くわね!』

澪「うん…ごめんな?詳しい事情は直接話すよ」

紬『分かったわ。……斎藤!!すぐ車の準備して!!!!急いで!!!!!』

紬『じゃあ、あとでね』プツッ


――――



61 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/30(月) 16:03:55.39 ID:2QA8h3Hm0




――――


聡「梓さん?」

梓「…?」

聡「ヒマなんで、服、脱いで下さいよ」

梓「!!」フルフル

A「聡〜お年頃って奴だな〜お前も…」

B??「まあいいじゃないっスか。どうせ…ね。ほら、梓ちゃあん?脱いでやんなよ」

梓「…嫌です……」

B??「ああ?!反抗する気か?!」ギロッ

梓「!」ビクッ

聡「Bさんいいですよ、俺が脱がしてやりますから」フッ

梓「や…めて……」ブルブル

A「無駄なんじゃない?手足縛られてるような奴が何もできないってーの!!」ハハハハ

B「そうそう、もし邪魔が入っても俺がやっつけちゃうもんね!」


そう言ってBがポケットとりだしたのは、拳銃だった。
おそらく、本物だろう。
これがモデルガンだったら、こんな大それたことしないだろうし。


梓(…って、なに冷静になってるの!?命の危険じゃん!!)


恐怖を通りすぎた私は、さっきより大分冷静に判断することができるようになっていた。
コンクリートの床の上に、一つだけ置かれた椅子。
ずいぶん古びた木の椅子で、暴れたら請われてしまいそうなくらいだ。
その上に、私が座っている。

ズボンは足首の所に足を縛っているロープと一緒に引っ掛かっているから、下半身は下着だけも同然。
上半身は特に問題ない。でも。
今、聡君……いや、目の前の男が、私に脱げと言った。
そして、私にどんどん近付いてくる。



62 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/30(月) 16:06:25.70 ID:2QA8h3Hm0




聡「ふふ、梓さん…いや、もう俺の物になるんだから梓でいいか」

聡「梓……服、脱げよ」ソッ

梓「……いや…っ」ジタバタ


必死で抵抗する。
とは言っても、両手両足縛られてる訳だから、大したことはできない。

その前に。

この集団は、いったい誰が仕切っているのだろうか。
A?それともB?または……聡君?

Aのことを二人は「Aさん」と呼んでいる。
Bのことは、Aが「B」、聡君が「Bさん」。
聡君の事は、二人とも「聡」。

Aの方が一番上みたいな感じだ。
でも、聡君が自分の好きなようにやっても許されている。
いったいこの3人はどんな関係で、どうして私を誘拐するに至ったかが疑問だった。

…というより、3人なんておかしい。
普通、こうやって私を誘拐するくらいなら、もっといるはずだろう。


聡「ほら……梓」ニタァ

梓「……何のために私を誘拐したんですか」

聡「…はあ?」

梓「答えて。どうして私を誘拐したのか」

B「今さら?…っつか、教えるわけねーじゃん、な、聡!」ニヤ

聡「当たり前です。あと、誘拐じゃありませんよ?」ケラケラ

梓「…?」

A「………殺人、だ」ニヤ

梓「……!!!!!!!!!」ゾッ


――――




63 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/30(月) 16:36:11.91 ID:2QA8h3Hm0





唯「ねえ、ういー」

憂「なぁに?」

唯「今日のあずにゃん変じゃなかったー?」

憂「梓ちゃん?」

憂「うーん、あ、寝不足って言って、すっごい疲れてそうにしてたよー」

唯「やっぱり?」

憂「軽音部で何かあったの?」

唯「ううん。あずにゃんなんかぼーっとしててさ」

唯「それに、怖い顔してたんだ」

憂「そっか…」

唯「あずにゃん何かあったのかな〜」ソワソワ

憂「うーん、どうだろう…」

唯「あずにゃんにメールしてみようかな?」

憂「寝てたら悪くない?」

唯「それもそうだね〜」ハァ

テレレレッテレー♪

憂「お姉ちゃん、携帯なってるよー?」

唯「どれどれ…?あ、ムギちゃんからだ」

唯「…ええーーーーーーーーーーーーーー?!?!?!?!」

憂「どうしたのお姉ちゃん?!」

唯「これ見て!!!あずにゃんが!!!!」


紬『唯ちゃん!!
  梓ちゃんが最近桜ケ丘に出没してる不審者に誘拐されたらしいの!!
  今私達が探してるわ。
唯ちゃんは憂ちゃんと家で待機しててね!!』



64 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/30(月) 16:37:04.85 ID:2QA8h3Hm0




憂「これって…」

唯「あずにゃんが、誘拐…?」ビクビク

憂「紬さんの言うとおりにしておこう?」

唯「でも…あずにゃんが!!」ピッピッピッ

唯『そんな!!!!
  私も、探しに行くよ!!』

憂「お姉ちゃん!!危ないよ!!」

唯「でも、あずにゃんの方がもっと危ないんでしょ?!だったら…」

テレレレッテレー♪

唯「あ、返信」

紬『唯ちゃんは家にいて。
  りっちゃんと私の家の人が梓ちゃんを探しに行ってるから大丈夫。』

唯「……」

憂「お姉ちゃん?!」

唯「りっちゃんは探しに行ってるのに私じゃ駄目なの…?」グス

憂「お姉ちゃん!!!それは違うよ、紬さんはきっと情報を集めてほしいんじゃないかな?」

唯「じょーほー?」

憂「うん。ほら、皆で探すより、何人かは不審者が行きそうな場所とかを調べたりした方が…」

憂(というより、きっと外に出たら紬さん家の人が大勢いるし…いろんな意味で危ない…)

唯「そっか!」

憂「あ、お姉ちゃん、紬さんに、警察には通報したのかだけ聞いて?」

唯「…?分かった〜」

唯『ムギちゃん!!
  憂が、けーさつには言ったの?だって』


テレレレッテレー♪

紬『まだ言ってないわ。
  でも、琴吹家が動いてるから多分大丈夫。
  また連絡するわね!』

唯「憂〜言ってないって〜」

憂「分かったー」カタカタ

唯「憂何やってるの?」

憂「ネットで検索してるの」カタカタカタカタ

唯「私もやる!!」

憂「うん、梓ちゃん、助けようね!」

唯「うん!!!!!!」


――――



65 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/01/30(月) 17:11:58.86 ID:2QA8h3Hm0





梓「殺……人……?」ガタガタ

B「は?知らなかったのー?だっせーなー。誘拐なんてさ、帰す訳ねえだろ?」

梓「……」

A「今さらビビってんのかよ、俺らに聞いた方が悪いんだぜ?」

聡「ホント、バカだよなあ?梓?」

聡「レイプくらいされてもいいんじゃない?どうせ死ぬんだし…」ニヤニヤ

梓「い、嫌……っ……」ジタバタ


聡君の手が、私の胸に触れた。
触られた所から一気に震えがやってくる。

昔両親に抱っこされていた時の感覚と真逆だ。
あの時は、触られる所からじんわりぬくもりが伝わって来て、私まであったかい気持ちになれた。

今は違う。

聡君は、はっきりと「レイプ」といった。
いくら女子高だからと言って、私にそういう知識がない訳ではない。
このまま無理矢理、犯されるのだろうか。
しかも…尊敬する先輩の、ただ一人の弟に。


聡「梓、もしかして初めて?」

梓「……」

聡「無言は肯定。ぷっ、俺が初めてなんだ?」ニヤ

B「処女かよー?こんなの捕まえるなんて、やるなー聡」

聡「そんなことないですよ、女子高とかは大体そうなんじゃないですか?」

A「そんなこと…まあ、あるか」

B「そうっすねー、失敗したけど、前の桜高の女も処女でしたよねー」

A「ああ、あれは残念だったな」

聡「…前にも桜高狙った事あるんですか」

B「ああ、もち。あいつが警察に通報したから、俺らは女を[ピーーー]ことに決めたんだよ」

聡「口封じですもんね。ねー、梓?」

梓「……」ビクビク




66 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/01/30(月) 17:13:24.46 ID:2QA8h3Hm0


梓「殺……人……?」ガタガタ

B「は?知らなかったのー?だっせーなー。誘拐なんてさ、帰す訳ねえだろ?」

梓「……」

A「今さらビビってんのかよ、俺らに聞いた方が悪いんだぜ?」

聡「ホント、バカだよなあ?梓?」

聡「レイプくらいされてもいいんじゃない?どうせ死ぬんだし…」ニヤニヤ

梓「い、嫌……っ……」ジタバタ


聡君の手が、私の胸に触れた。
触られた所から一気に震えがやってくる。

昔両親に抱っこされていた時の感覚と真逆だ。
あの時は、触られる所からじんわりぬくもりが伝わって来て、私まであったかい気持ちになれた。

今は違う。

聡君は、はっきりと「レイプ」といった。
いくら女子高だからと言って、私にそういう知識がない訳ではない。
このまま無理矢理、犯されるのだろうか。
しかも…尊敬する先輩の、ただ一人の弟に。


聡「梓、もしかして初めて?」

梓「……」

聡「無言は肯定。ぷっ、俺が初めてなんだ?」ニヤ

B「処女かよー?こんなの捕まえるなんて、やるなー聡」

聡「そんなことないですよ、女子高とかは大体そうなんじゃないですか?」

A「そんなこと…まあ、あるか」

B「そうっすねー、失敗したけど、前の桜高の女も処女でしたよねー」

A「ああ、あれは残念だったな」

聡「…前にも桜高狙った事あるんですか」

B「ああ、もち。あいつが警察に通報したから、俺らは女を殺すことに決めたんだよ」

聡「口封じですもんね。ねー、梓?」

梓「……」ビクビク


67 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/01/30(月) 17:31:11.92 ID:2QA8h3Hm0




聡君が鋭い目で私を見ていた。
口元は気味が悪いほどに上がっていて、もう上半身裸になっている。
それに、いつ撮られたのか分からない、私の写真を持っていた。

その時にはもう、聡君の第一印象なんてものはとっくに崩れ去っていた。


BとAは懐かしむように、その桜高の女子の話をしだした。
その話を聡君の睨みを受けながら聞いているうちに、私の頭の中に、ふと二つの顔が浮かんできた。

そうか、あの二人だ。


A「去年だか一昨年だかだっけ?あいつは顔もスタイルもなかなかだったんだけどなー?」

B「ホントそうっスよねー、あそこで邪魔が入ったから」

A「あの邪魔者、結局女連れ去っていきやがって」

B「あれ男なんスかね?」

A「さあな」

聡「…。どんな奴だったんですか?」

B「んー、茶髪で前髪が長げーんだ。フードかぶってたからよくわかんなかったけど」

A「声は女みたいなガキの声だったけどな」

B「しかも、女よりもチビだったな」

聡「梓くらいってことですか?」

A「ん?ああ、あれよりちょいデカいくらい」

聡「……」

B「あのチビとは対照的だったなー、中学卒業したてなのに大人びた女でさ」

A「ああ、黒髪でロングなんてそうそういねぇぞ?」

梓聡「…!」


言うまでもなく、澪先輩がストーカーされていた時の事だった。
邪魔者、と言うのは間違いなく前髪を下ろした律先輩だろう。

私には一つ気付いたことがあった。
目の前の聡君が、「黒髪でロング」という言葉に一瞬動揺したように見えたのだ。
もしかして、今まで知らなかったのだろうか。
まあ、動きは止めているものの、今の彼は敵だ。気にしない。


――――




68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/31(火) 01:37:45.63 ID:ruZ8Ogwno


もしかして澪貫通させられた?
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/31(火) 22:38:01.37 ID:kVVzE/GJ0
おい誰か安倍さん呼んでこい
70 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/04(土) 18:34:02.34 ID:fupPCkzm0




澪「律…、梓……」

澪(無事でいてくれ……)

ピンポーン

紬『澪ちゃん?!?!私!!』ドンドン

澪「ムギ!!」ガチャ

紬「どうしたの?!?!詳しく聞かせて!!!」

澪「うん、さっき…」



紬「そんな…」

澪「どうしようムギぃ……私…私……」オロオロ

紬「落ち着いて澪ちゃん、唯ちゃんにはさっきメールしたんだけど、今琴吹家が全力で二人を探してるわ」

澪「梓…やっぱり、不審者に…?」

紬「この時間になってもりっちゃんから一つも連絡が来ないってことはほぼ確定ね」

澪「!!そんな…」

紬「それに、その不審者、ちょっと前にこの桜ケ丘で誘拐事件起こしたのよ」

紬「被害者は桜ケ丘の生徒だって言ってたから…」

澪「……」

紬「澪ちゃん?」

澪「ムギ……その被害者、さ。………私なんだ」

紬「えっ?!」

澪「入学する直前の日に…さ」

紬「…澪ちゃんだったの……ごめんね、私…」

澪「ううん、いいよ…。それに…あの時は、律が助けてくれたから…」

紬「りっちゃんが…?」

澪「うん。…犯されそうになったとこで、来てくれたんだ。律だって怖かったはずなのに…」

紬「…」

澪「……律は…きっと梓を見つけてくれると思う。でも…」

澪「律だけ危険な目にあわせる訳にはいかないよ…!」ダッ

紬「澪ちゃん?!?!?!?!」ダッ

ガチャ


71 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/04(土) 18:44:09.37 ID:fupPCkzm0



SP1「?!紬お嬢様の…」

澪「お願いです!!!!」

SP達「?」

澪「不審者の情報を知ってるだけ教えてください!!!!!!!!!」

澪「梓を…律を…助けたいんです!!!!!!!!!!」

紬「澪ちゃん……」

SP2「しかし…」

紬「澪ちゃんに教えなさい!!責任は私がとるわ!!!」

??「紬。子供が責任をとれる訳無いだろう」

紬「えっ?」クルッ

紬父「話を聞いた限りだと、秋山さんは不審者に顔を知られているようだからね。行動するのは危ないから、情報をまとめておいてもらおう」

紬「お父様…」

SP達「はっ!」

澪「ありがとうございます!!!!!!!!」ペコリ

ピロリロリーン♪

澪「…あれ、唯からメール」パカッ

唯『あずにゃんが連れ去られちゃったってホント?!
  憂がね、この辺だと商店街の裏か廃工場があやしくない?っていってるんだけど
  澪ちゃんはどう思う?』

紬「さすが憂ちゃんね…」

澪「…てことは、唯達はもう調べてたってことか…」

澪『ホント…だと思う。
  確かにそこがあやしいな。今ムギも一緒だからなんか手掛かり探してみる。』

紬「…行って来てもいい?」

澪「え?」

紬「私。探しに行こうかと思うの。りっちゃんを」

澪「律を?」

紬「うん。なんだかりっちゃんが危ない気がするから…」

紬父「紬、お前何をする気だ?」

紬「お父様許して。私はりっちゃんと梓ちゃんを助けたいの」


72 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/04(土) 21:39:24.27 ID:fupPCkzm0



澪「…私も行く」

紬「でも、澪ちゃんは…」

澪「皆が必死に頑張ってる所で、私だけ家で震えて待ってるなんて、嫌だ!」

紬「怖い事、あるかもしれないのよ?」

澪「それでも、いい」

紬父「しかし…女の子二人でだなんてな…」

紬「…危険な事はしないわ!ただ、探したいの!!」

紬父「紬、今こうやって言ってる間にも、琴吹家の捜索隊が探しているから大丈夫なんだぞ?」

紬「でも!!」

澪「お願いします!!」ペコ

紬「…」

澪「私は行かなくてもいいから…」

澪「せめてムギを!!ムギが望む通りにやらせてあげてください!!!!」ドゲザ

紬「…お願いします!!絶対、危ない事はしません!!」ドゲザ

紬父「………顔をあげなさい」

澪紬「……」

紬父「紬よ。行くなら、お前が乗ってきた車で行動すること」

紬父「それと、何かあったら絶対に斎藤と一緒に行動すること。いいな?」

紬「……!!はい、お父様!」パァ

紬父「あと、秋山さんを守ることを忘れるなよ?」

紬「それじゃあ…!」

澪「…!!」

紬父「お前が約束を守ると誓うなら、二人で行っても構わない」

紬澪「ありがとうございます!!!!!!お父様(ムギのお父さん)!!」

紬父「斎藤」

斎藤「はい」

紬父「…頼むぞ」

斎藤「任せてください」

紬「斎藤!!行くわよ!」

斎藤「了解しました、お嬢様」


澪(律…梓…また皆で集まれるよな…?)

紬(何があっても、絶対あきらめない…!)



――――



73 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/04(土) 21:40:02.85 ID:fupPCkzm0




――――


目の前には、自分が上半身裸である目的を思い出した人が一人。

私はもう、ほとんど諦めた感情にも近くなって来てしまっている。
助けなんて、こないのだと。

でも、今からされることは絶対に阻止しなくては。
そこだけは、諦められない。

じりじりと近づいてくる聡君を視界にとらえながら、恐怖心に押し潰されそうな私にムチを打ちながら、必死にここから逃げ出せる方法はないかと考えていた。


聡「梓?もう、逃げられないよ…?」ニタァ


気味悪い笑顔。
一度は離した両手が、再び私の肩に触れそうになる。


梓「いやっ!」

聡「…無理だって言ってんのにねぇ?」

B「バカだなー」ニヤニヤ

聡「抵抗しなきゃ楽なのに」

梓「やめて……!」


聡君の両手が、私の肩に触れた。



74 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/04(土) 21:59:26.79 ID:fupPCkzm0




A「…おい、ちょっと煙草買ってこい、C」


突然、Aが声を発したかと思ったら、Cと呼ばれた人が、私の視界に入った。
それに続いて、倉庫らしき所からもう一人出てくる。


A「ん?D、何だ?」

D「Aさん、ライターも切れそうっス」

A「…ん、じゃあDも行って来い」

D「合点です!」


まだいたのか…。
聡君も想定外だったのか、私の肩に手を置いたままそちらを見ていた。
Bは…知ってたのだろう。
ずっとニヤニヤしたまま私達とC達の方を交互に見ている。

いったい、何人いるんだろう。

そしてCは、Dを連れてAには何も言わずに煙草を買いに行った。


B「聡?早くしないと、殺す時間になっちゃうぞ?」ニヤ

梓「!」ゾク

聡「あ、そうでしたね。…梓、脱がせるからね」サワッ

梓「きゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


私は聡君に上半身をブラだけにされた瞬間、無意識に叫んでいた…。


――――


律「ついた…」ゼエゼエ

律(ここにいるのか…?梓…)コソッ

律(茂みに隠れて移動すれば…)ガサガサ

律「!」

律(あれ…誰かでてきた…?)

??「…ん……だ……」スタスタ

??「……よ……」スタスタ

律(ちょっと怖いけど…入口の方まで行ってみよう…)ガサガサ


??『きゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!』


律「!!!今の声……!!」ダッ

律(梓…助けに行くからな…!)


――――



75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 22:53:13.29 ID:9GOctmBm0
きたか
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 23:49:39.13 ID:LXxX6vfSO
キャラを酷い目に合わせて律を目立たせようとする、律厨のやり方は汚い

まぁ、二度と読まないがな
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 01:40:24.53 ID:jwDcGPUUo
唯だけ良い子ちゃんのままで他キャラが性格酷くなって敵にされたりしてるSSいくつかあるのにそっちでは何も言わないんだな
この前あったポケモンのやつは澪が唯梓のかませにされて悪役にまでされてたよな
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 05:23:23.25 ID:mT454I0DO
終りかな? 乙


律アンチなんざその程度だ
こういうアホが春休み入ると増えるだろうから覚悟しといた方がいい
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/05(日) 05:38:06.14 ID:u5LpAPx/o
読んでるよー
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 09:27:55.21 ID:IomtQwtDO
>>76
律に対してアンチ行為してる奴等はマジうぜぇな。他のキャラに対してアンチ行為してる奴等も同類だが。
アンチする様な奴等にはけいおんを見る資格も、語る資格もねーんだよ。
81 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/05(日) 15:02:43.26 ID:ILp/DrSu0




梓「やめて……やめてよ……」

聡「辞める訳無いじゃん?っつーか、どーせ殺されんだからさwwww」

B「そうそう、タイムリミットが近づいてるよ〜wwww」

A「そうだな、どんな風に殺して欲しい?」ニヤッ


Aはそう言って、自分の胸元からナイフを、腰のあたりから拳銃をだした。
Bもそれを見てニヤニヤ笑っている。
そして、同じようにポケットからサバイバルナイフを取り出して、私の背後に近づいてこようとしていた。

聡君は私の両手が縛られてるのをいいことに、胸を触り、顔がもうすぐそこまで近づいてくる。

夢なら覚めてよ……。



ガタッ


??「お前ら!!!!!!!!!!!!!!梓に何してんだ!!!!!!!!!!!!!!」


何かが開いた音がしたと思ったその時、聞き覚えのある声が、遠くから聞こえた。


――――



82 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/05(日) 15:14:33.82 ID:ILp/DrSu0




律「梓に何してんだ!!!!!!!!!!!!!!」

律(……人は…3人か。いや、まだいる可能性もあるな…)


??「へーえ?わざわざこんなところまで来て助けに来たってわけ?笑えるじゃん」

??「ま、こっちとしては獲物が増えただけなんだけどなぁ?」

??「聡も何か言ってやんなよ」

律「…………聡…?」

聡「………ここまで来るなんてやっぱバカなんですね、軽音部は」

聡「“律さん”でも手加減しませんから」フッ

律(聡………?…どうして…だ…?)


――――


B「へーえ?わざわざこんなところまで来て助けに来たってわけ?笑えるじゃん」

A「ま、こっちとしては獲物が増えただけなんだけどなぁ?」

B「聡も何か言ってやんなよ」

律「…………聡…?」

聡「………ここまで来るなんてやっぱバカなんですね、軽音部は」

聡「“律さん”でも手加減しませんから」フッ


その言葉を聞いた律先輩は、その場で立ちすくんだ。
なんと言っても、聡君がこの場所に居るからだろう。

でも、そんなのは一瞬で、律先輩は素早く中に入り私に近づいてきていた。


律「梓!!!」

梓「せん……ぱ……!」


83 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/07(火) 12:03:44.88 ID:4kmCXdNZ0




先輩は、私のことを助けに来てくれた。
このまま何もされないまま、助かるのかもしれない。
そんな希望が見えてきたように思えた。
…でも、現実と言うものはなんとも非情なものだったんだ。


B「おっと、それ以上近づくと、この中身が飛び出すけど?」ニヤニヤ


そういって構えたのは、言うまでもなく拳銃。
律先輩の背中にぴったりとくっつけている。
ここから離れたら発砲する、という意味だろうか。

もしかして、本当に実弾が入っているのか…?モデルガンじゃなくて?


律「…チッ……」ピタッ


律先輩は動きを止めた。
そんな様子を見て、さらに奴らは笑う。


A「助けに来たって、その程度じゃなー」ケラケラ

B「まぁ、コイツの前で女を殺すのも悪くねェっスよ?」ニタァ

A「そうだな、よし聡、レイプは止め。殺しの時間だ」ニヤッ

聡「了解です」


聡君は、私から一度手を離し、Aからナイフをもらって私の所に来た。
律先輩は拳銃を突きつけられているから、動けない。
もう、駄目なの…?


梓「来ないで…」ブルブル

律「聡!!やめろ!!!!!!」

聡「……フヒッ」

梓「やめてよぉ……」ガクガク

聡「……さぁ、ここからが本番だよ」ニタァ

律「おい、聡!!!!!」

梓「やだ……やだ………!」ショロロロロロロロ…

聡「………フッ」スッ


律「梓っ!!!!!!!!!!!」


――――


84 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/07(火) 12:04:21.65 ID:4kmCXdNZ0




律(チキショー、動けねぇ……)


梓「来ないで…」ブルブル

律「聡!!やめろ!!!!!!」

律(この聡は聡じゃねえ!このままだと梓が…!)

聡「……フヒッ」

梓「やめてよぉ……」ガクガク

聡「……さぁ、ここからが本番だよ」ニタァ

律「おい、聡!!!!!」

律(どうする…?どうする私………!)

梓「やだ……やだ………!」ショロロロロロロロ…

聡「………フッ」スッ


律(やっぱり、見てるだけなんて…………駄目だ!!!!!!!!)キッ

律「梓っ!!!!!!!!!!!」ダッ

B「は?!」パァン

律(1発目はしゃがめばOKだろうな…)スッ

律「当たるかよ!!」

B「何!?」カチャッ

律(問題は…2発目。それまでにやれるだけをやらなきゃ…)

律「聡!ふざけんじゃねぇ!!」ガシ

聡「!?姉ちゃ……律さん、手加減はしない、と言ったはずですよ?」キッ

律「しらねぇよそんなの!!!勝手にやっとけよ」

聡「どうなってもいいのか、と言ってるんです」

律「お前!!!!いいかげんにし…」

B「おいおいおい、逃げんなっていったよなぁ?ナメてんのか!?あぁ!?」ギロッ

A「…お前も殺して欲しいんだろ?…殺してやるよ」ニヤ

律「……梓に手ぇ出すんじゃねぇ」キッ


85 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/07(火) 12:31:13.49 ID:4kmCXdNZ0



律「やるなら、私だけにしろ」


――――


律「やるなら、私だけにしろ」

梓「…?!律先輩……!」ブルブル


律先輩は、今とんでもないことを言った。
私が巻き込んでしまったのに…さらに律先輩が傷付けられるの…?


B「後輩思いのいい先輩だねぇ?でも、人生そんな楽じゃないんだよ?」

A「見られた以上、死ぬ運命ってワケだ」

聡「………」

律「…じゃあなんで梓なんだよ!?」

B「その辺に居たから」

律「…はぁっ!?」

A「世の中、そんなもんなんだよ。それに、テメェなんざガキがかっこつけようったって、無理なもんは無理な訳よ」

B「どっちにしろ、お前が死んだあと、こいつも死ぬんだからな」ニヤニヤ

律「……け……ね……!」

A「は?」


律「ふざけんじゃねえよ!!!!!!!!!!!!!!!!」

律「梓が!!!!!梓が何したってんだよ!!!!!」

律「死ぬ運命だ?…そんな訳あるかよ!!!!!!!!」

律「そんな運命決まっちゃいねぇよ!!!!!!!!!梓は…」


律「梓は、私達と一緒に武道館へ行くんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


梓「……!」ハッ



86 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/07(火) 12:47:56.20 ID:4kmCXdNZ0





律先輩が本気で怒っているところを初めて見た。
先輩は能天気で、明るくて、大雑把で少し短気だけど、今まで怒鳴ってる姿を見たことがなかった。
それどころか、怒った表情すら見たことなかった。
いつも笑っていて、私や他の先輩が機嫌が悪かったり落ち込んだりしていると、いつでも笑顔で助けてくれた。
そんな律先輩が、怒っている。

もう、やめて……。
私が捕まってしまったせいで、先輩に辛い思いをさせてる…。
私は、みんなで笑ってる普通の生活に、戻りたいのに……!


A「いいたい事はそれだけか?」

律「…?」

A「俺たちはなァ、綺麗事聞いてるヒマなんざねぇっつーんだよ!」サッ


Aは、サバイバルナイフを手にし、


A「テメェみたいなやつは顔をゆがめてるほうがお似合いだ!!!」


私の左肩にむかって、


A「まずは、お前だ!」


突き刺した…



――――


律「!!梓!!!」ダキッ

律(どうしてだ!?何で梓がこんな目に……!)

律(あと一歩早ければ、かばってやることができたのに……!)


梓「グッ!?」ザクッ

律「しっかりしろ!梓!!!」

梓「……りつ…せんぱ……」

律「梓!!!動かなくていい!」シュッ

律(リボンで止血しとかないとな…)ギュッ


律(こいつら……ぜってー許さない!!!!!!!!!!!!!)キッ



87 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/10(金) 12:29:59.74 ID:Th2sVL3H0




律「おい!梓になんてことしてくれてんだ!」

B「ざまあだな」ケラケラ

A「結局、口だけじゃねぇかよ」ニヤ

B「所詮それだけの人だったってことだよな?せーんぱい?」ニタニタ

律「……」

A「さーて、まずはどっちを殺っちまおうかな!」カチャ

聡「梓がいいんじゃないですか?」

聡「ゴミ以下のバカな先輩が目の前に居ることですし」

律「聡!!!!!!お前……!!!!!」ギリッ

A「そうだな」

B「一発で片付けられたい?それとも、いろいろやられて苦しみたい?」

梓「…!」

A「あ、返事がなかったらキツイ方な、楽しいから」スッ

B「ハハ、さすがっスね!」スッ

A「まずは腕からだな」カチャ…

B「了解っス」カチャ

B「あばよ」カチャ…







律(…こんなのに負けてたまるか!)グッ

律「やめろ!!!」ダッ

パァン!パァン!


――――




88 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/10(金) 12:30:50.90 ID:Th2sVL3H0






梓(撃たれる……っ!)ギュッ

律「……め…!!!」


律先輩が何か言っていた。
でも、もう私は終わりだ。
撃たれて死なないはずがない。
逃げる気力もない。なんとなくぼんやりとしてしまう。
出血したせい?
肩も痛い。先輩のリボン、赤くなってた……。

ああ、私は先輩にさよならが言えない。
私が巻き込んでしまったのに。
先輩には逃げてほしい。
そして、放課後ティータイムのリーダーとして、軽音部の部長として、また皆と楽しく音楽をやってほしい。


パァン!パァン!


終りを告げる合図。
ごめんなさい。
さようなら……。




89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/10(金) 12:36:40.92 ID:SAQpl6GAO
ゴクリ…
90 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/10(金) 16:52:37.42 ID:Th2sVL3H0






梓(…………?)


どうして?

私、意識がある……?
それに、どんなに待っても衝撃が来ない。
音は聞こえたのに…。
もしかして外れたの?


梓「…」パチ

梓「!!!!!!!!!!!」



91 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/10(金) 16:53:23.30 ID:Th2sVL3H0





私は驚愕した。

やっぱり、私は撃たれてなんかいなかった。
衝撃が来ないのも当然だ。


外れたんじゃない。

しっかり、当たっていた。


私の大好きな、そして、今私の目の前に立っている律先輩に…。


梓「律先輩!!!」

律「…あず…さ?」クルッ


律先輩が振り返る。
先輩のブラウスは鮮血で真っ赤に染まっていて、手で腹部を抑えている。


聡「!!!!!!!!!!!!!!!!!」ハッ

B「!チッ…でも、ま、お前はもう再起不能だよ!」

A「もう動けないだろう?立ってるのがやっとだろう?」ニタニタ

B「今度はもう逃げられないよ、梓…だっけ、そこの君、ね」

A「どうやら銃より、やっぱりナイフの方がいいらしいからねぇ?」

梓「!」ブルブル


律「梓」ボソッ

梓「?」

律「梓はずっと目を閉じといてくれ」ボソボソ

律「絶対梓を殺させないから」ボソッ

梓「でも…」

律「いいから…。約束…な」ニカッ


92 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 16:54:20.30 ID:9mmkE15E0




私は目を瞑った。
先輩もケガをしている。それも、私より重症だ。
すごく心配だったけど、私は先輩の言う事を聴くことにした。
実際の所、意識がもうろうとしていたから、先輩が目を瞑れと言わなくても目を閉じていたと思うが…。

とにかく、私は信じることにした。
次、目を開けた時は、律先輩と帰れる瞬間になっている事を。


律「…やんならやれよ!!!!!!!!」


――――


律(ちきしょー…痛ぇ…!!でも!!)

律「…やんならやれよ!!!!!!!!」


A「…へぇえ?そんな体で?」

B「立ってるのもやっとなのにまだ叫ぶ体力あるんだ?」

律「私は…お前らに負けたくない!!!!負けない!!!!!」

律「聡も!!お前!年下の分際で調子こきやがって!!」ギロッ

聡「…」ジッ



93 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 16:54:59.18 ID:9mmkE15E0



律「…さっき、手加減しない、とか言ってたけどな、私だって手加減しねぇよ!」

律「今までお前に対してどれだけ手加減してやったと思ってんだ!!!」

聡「……」

律「お前が生まれてからずっと…お前に手加g………!?」ウッ

グサッ

B「負けない?バカじゃねぇの?」

A「聡のことグチグチ言ってる暇あったら戦ったら?武器もないくせに」

律(…クッ……ヤバい……脇腹が……!!)

聡「!」

律「さ…とし…!!私は……お前、を…許さない……」ゼェゼェ

律「それに…お前ら、も!」ギリッ

B「まだ言ってんのかよ?そんな状態で?」フハッ

A「懲りねぇ野郎だな!度胸だけは認めてやるよ?でもな…」

B「先にこっちだ!!」クルッ

律「な!?」ダッ



94 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 16:55:54.80 ID:9mmkE15E0




B「お前なんかより梓の方が殺しやすいんだよ」スッ

律「そうは…させえねぇよ!」サッ

ザクッ

律「……ウッ!?」ポタポタ

B「は!?」

梓「……せんぱ…?」ボソ

律「なんで、もねぇ…よ梓!!そ、のままで、いろ…よ!!」

梓「……ハ…イ」


A「まだそんな力あったんだなぁ?ま、もう無理だろうけどな!」スッ


律(ヤバい……息が……!!胸が痛い…!!!!!)ヒューヒュー

律(でも…梓だけは守ってやる!!!!!!!!!!)ダキッ


グサッグサッ


律「うぁぁぁぁぁああぁぁぁあああぁあああああああああああああああ!!!!!!!」







95 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 16:56:25.44 ID:9mmkE15E0












??「……め…さ………!……」

律(だれ、だ…?こえ…が……)

律(梓……)フッ


――――




96 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 17:09:04.80 ID:9mmkE15E0




これだけフラフラするほど血が流れたのかな…私。
もともと貧血ぎみだったからな…。
AB型だから、もし輸血とかになったら大変だろうな……。

どうでもいいことばかり考える。

こんなことがあった疲れからか、だんだん眠くなってきた。


私はもうろうとした意識の中で、先輩のぬくもりを感じた。
あったかい。

直後に声が聞こえた。

律先輩…の声。叫んでるみたい…。


あれ…?なんか違う声も聞こえた様な……。
それにこの声…聞いたことある…。


??「や…なさ…!これ…上……砲……わ…!」


ああ、これは、ムギ先輩の声だ。


梓(ちょっとだけ、目を開けてみよう…。)

梓「……」ウッスラ


見えるのは、私を抱きかかえた律先輩。
入口の方には黒い服の集団が。なんか持ってる…。
金髪が目立ってるムギ先輩。
その隣にいるのは…黒髪の長身の人。澪先輩だ…。


助けにきてくれたんだ…。

そう認識した私は、意識を落としていった。


――――




97 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 17:28:40.94 ID:9mmkE15E0




紬「澪ちゃん、降りるわよ!」ヒソヒソ

澪「ああ」ヒソッ

斎藤「お嬢様、こちらにはほぼ確実に田井中様も中野様もいると思われます」

斎藤「しかし、奴らもいるのでお気を付け下さい」

紬「分かってるわ。…澪ちゃん平気?」

紬(りっちゃん…梓ちゃん…無事かしら…)

澪「…大丈夫」

SP「紬お嬢様、私たちは入口から突入致しますがどうなさいますか?」

紬「…私達も行くわ」

斎藤「しかし…!」

紬「なら、盾を貸して!ちゃんと自分で身を守るわ!!」

澪「ムギ…」

斎藤「…そうなされると思いました。ならば…秋山様は私がお守りしましょう」

紬「ええ、お願いするわ」

紬(澪ちゃんには刺激が強すぎる可能性もある訳だし…銃を持たれていたら危ないものね…)

澪「…?」

紬「大丈夫よ、澪ちゃん。私はこれでも訓練を受けてるし、斎藤もこれくらい難なくやってのけるわ」

斎藤「ご安心ください。では、行きましょう」

SP1「出動準備!!」

SP達「ハイ!!!!!!!」



98 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 17:29:54.43 ID:9mmkE15E0





??「うぁぁぁぁぁああぁぁぁあああぁあああああああああああああああ!!!!!!!」


澪「!?……律!?!?」ダッ

紬「澪ちゃん、待って!?…早く突入しなさい!!!」ダッ

SP「突入だ!!!」ダッ


ガラッ


紬「やめなさい!!それ以上動いたら発砲するわよ!!」

SP「動くな!!!!!」


B「チッ……あれは…琴吹家!?」

A「ヤべぇな…おい!!!!!出てこい!!!!!!」

???????「ラジャーーーーーーーーーーーー!!!」ダダダダダダダダダダダダダ


紬(人が大勢…!あれは…りっちゃんと梓ちゃん!!!!)

澪「あれ…!」スッ

紬「斎藤!りっちゃんと梓ちゃんを保護しに行くわよ!!」

斎藤「了解いたしました。部隊U!!こっちだ!!!」

SP「ハイ!!!!!!」






――――




99 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 18:17:35.01 ID:9mmkE15E0


――――



梓(ここ……どこ…?)


気が付くと、私は真っ白い空間にひとりぼっちだった。
重い頭をフル回転させて、ようやくさっきまでの状況を思い出す。


梓(そうだ…私、あの後意識飛んだんだった…)


だとすると…この場所は?
私死んだの…?


律『あずさ…』

梓「律先輩…?」


ふいに、律先輩の声が聞こえた。
今のは、空耳…?

そうだ…先輩は?
私を必死で守ってくれた、律先輩は…?
そして、助けに来てくれた先輩たちはどうなったの…?


梓「痛っ」ズキズキ


突然、肩が痛くなる。
でも見てみても、傷一つ付いていない。

この状況が分からなくて、頭が混乱する。


澪『梓』

梓「…!」


紬『梓ちゃん』


唯『あずにゃん』


憂『梓ちゃん』


純『梓』



聞こえる。
大好きな先輩達の声が。大切な親友たちの声が。

だんだんと大きくなってくる。


それに比例していくかのように、見た目は何ともない肩の痛みも増していく。


梓「みんな………!!…」クラッ


また、意識が遠のいた。



――――



100 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 18:40:51.51 ID:9mmkE15E0





――――



澪「梓……律……」ポロッ

紬「梓ちゃん…りっちゃん……」ギュッ


ダダダッ

ガラッ


唯「あずにゃん!!りっちゃん!!!!」

唯「どうして……」ポロポロポロ

澪「唯……」グスッ

紬「ごめんねりっちゃん…ごめんね梓ちゃん…」グスン

唯「…あずにゃん、目、覚めるよね!?」

澪「一応…傷も思ったより深くなかったから、大丈夫だと思う…って…」


ガラッ


憂「お姉ちゃん…ここ、病院だよ…!」ハァハァ

純「梓…大丈夫なんですか!?!?」

澪「あ、憂ちゃんに…鈴木さん…」グス

純「…こんにちは、澪先輩…」

憂「…あの……律さんは…?」

澪「…………」グスッ

紬「……りっちゃん…今、集中治療室にいるわ……」

紬「危険な状態なんだって…」ポロポロ

憂「……そうですか…」

唯「ういーーー…あずにゃんが…あずにゃんが…!」




101 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 18:42:19.38 ID:9mmkE15E0




憂「……梓ちゃん…」ソッ

純「梓……」ポロッ





梓「…………ナ」



純「梓!?!?!?!?」

憂「梓ちゃん!?!?」


紬「どうしたの!?」

憂「梓ちゃん…今何か言ってたんです!」

澪「え!?」

唯「あずにゃん!?あずにゃん!!!!」ユサユサ

憂「お姉ちゃん、ゆすっちゃだめだよ!!!」




梓「…………………ユイセンパイ……ヤメテ………クダサイ………」


唯「あずにゃん!!!!!!!」


梓「……」ウッスラ


澪紬純憂「梓(ちゃん)!!!!!!!!!!!!!!」


梓「……………あれ……ここ…?」


紬「ナースコール押さなきゃ!」ピッ

澪「梓?聞こえるか?ここ、病院だぞ」

梓「……澪先輩………私…助かったんですか……?」

唯「そうだよあずにゃん!助かったんだよ!!!」

梓「よかった…………」



102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 22:31:30.13 ID:Sg5rudep0
ちょっと聡ぼこぼこにしてくる
103 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 23:13:51.00 ID:9mmkE15E0



紬「じゃあ、お医者様がくるから私達は外に出てるわね」

梓「はい」


ガチャ バタン


唯「よかった…よかったよぉ…!!!」ポロポロ

純「あずさぁ…よかった……」グスッ

憂「よかった……」ホッ


紬「これであとは……」

澪「律だけ、か………」


唯「……りっちゃん…大丈夫…だよね…?」


紬「……体の損傷が激しいみたいだから、どうなるかはわからないって……」

澪「でも、律は……きっと戻ってくるよ……!」

憂「そうですよ。律さんを信じましょう?」



――――



104 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/11(土) 23:19:17.32 ID:9mmkE15E0





医者「中野さん、目が覚めたんですね。体の調子はどうですか?」

梓「はい、多分大丈夫かと……」

医者「ならよかったです。あなたの場合、ケガはしていましたがリボンで応急処置がされていたので止血も早かったようですね」

医者「あの応急処置がなかったらあなたは失血死していた可能性もありましたからね…」

梓「え…?」

医者「あ、そのリボン、ここに置いときますね。じゃ…」


ガラッ パタン


梓「……」


私のケガは、まだ腕を上げると痛いけれど、少しすれば元通りに治るらしい。
律先輩が、また私の命を救ってくれた。
感謝してもしきれない…。

そうだ。

律先輩、は……?



ガラッ


唯「あずにゃーん」ダキッ

梓「…!?ちょ、唯先輩、痛いです!!!!!」

唯「あ、ごめんごめん」パッ

澪「梓は怪我人なんだからさ」

紬「でも、梓ちゃんが起きてくれて本当に良かったわ」ニコッ

純「あずさー!心配したんだよー!?」

梓「ごめん…」

憂「ケガはすぐ治るの?」

梓「うん、少ししたら元通りだって」

唯「よかった〜」



105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/12(日) 00:33:14.94 ID:V64ItC71o
しえん
106 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/12(日) 18:14:24.03 ID:YdKv5IZY0




みんなが安心したような表情に変える。
私自身もすごくほっとしている。
もうギターが弾けない、なんて言われたら、自殺モノだ。

そして私は、疑問の核心に触れてみた。


梓「あの…」

梓「…律先輩…は……?」


澪紬純「!!!!」

憂「…」

唯「りっちゃん?えっとねぇ〜」

澪「唯…!」

紬「いいよ……隠してもしょうがないわ…」

梓「え…!?」

唯「今手術してるよ〜さっきまでえーと、I…なんだっけ?」

憂「ICUだよ、お姉ちゃん」

唯「そう!ICU!!にいたんだけどね、傷が深いから手術することになったんだって」

梓「律先輩は…大丈夫なんですか!?!?!?」

澪「……正直、危ない」ボソッ

紬「もう、いつ死んでもおかしくないほどなの…」

梓「そんな…。私……!!」ポロッ

純「梓…」サスサス


律先輩が、危ない。
そう聞いただけで、目の前が真っ暗になった。
巻き込んだのは、全部私。
助かったのは嬉しいけど…先輩を危険な目にあわせてしまった。

私…最低だ。後輩失格だ。


憂「で、でも!!今律さんは生きてるんだよ!?!?梓ちゃん、応援しなきゃ!!」

梓「憂……。でも、私のせい……全部、全部…私のせいなんだよ…っ!?」グスッ

唯「そんなに自分を責めないで…あずにゃん…」ヨシヨシ


紬「…行ってみる?」

澪「へ?」

紬「りっちゃんの手術、もうすぐ終わるころだと思うの」

純「でも…大丈夫なんですか?」

紬「一応移動している間なら会えると思うわ…りっちゃんは眠ってると思うけど…」

澪「……そういえば、律の両親、来てるのかな」ボソッ

紬「?……そういえばまだ見てないね…」

憂「……律さんの親御さんは、聡君の…こと、知ってるんですかね…?」

澪「………多分、知らないんじゃないかな…。あまり家にいないから。今日もいないって言ってたくらいだし」

紬「そっか…」
107 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/12(日) 18:15:07.19 ID:YdKv5IZY0




唯「っていうか、もうこんな時間!!」


唯先輩の声と一緒に、みんなが時計を見る。
時計の針は一定のリズムと共に、八時近くを示していた。
あれ、私、そんなに寝てたんだ…。


梓「みなさん、帰らなくて大丈夫なんですか?」

唯「私と憂は家にお母さんとお父さんいないから、二人で気をつけて帰るから平気だよ〜」

憂「純ちゃんは?」

純「私は、一応お母さんに言って来たから、もうちょっとなら大丈夫…かな」

澪「……私はマ…お母さんもこっちに来るって言ってたから、それを待つ間なら、かな」

梓「というか…面会時間って大丈夫なんですか?」

唯憂純澪「あ!」


紬「大丈夫よ」

澪「どういうこと?」

紬「この病院、お父様が経営してる病院で…。だから、うるさくしないからって頼んだの」

唯「ほぇ〜ムギちゃんのお父さんすごいね〜」


さすがムギ先輩。
というか、ムギ先輩のお父さんは結構いろいろなものをやっているんだな…。
こんなに身近に、すごい人がいるなぁ、と今でも思う。


憂「じゃあ……行く?梓ちゃん」

梓「え…」


私は迷った。
大好きな先輩が、私のせいで、私よりずっと大変な目に遭ったのだ。
よく分からないもやもやとした気持ちが私の心を駆け巡る。
罪悪感だろうか?それとも、傷ついた律先輩を見たくないという気持ちからだろうか…?

それでも、私は先輩に一言謝りたい。

そして、助けてくれたお礼を言いたい。


梓「……行く」

純「梓…いいの?」

梓「うん。…律先輩に謝りたいし……」

純「そっか…」

澪「…じゃあ行こう、梓、歩ける?」

梓「あ…多分大丈夫だと思います」

紬「無理しないでね?私がおぶってもいいのよ?」

梓「だ、大丈夫です!!歩けますから!!」



108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/13(月) 01:50:28.20 ID:rd3f+s6IO
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/13(月) 03:20:26.25 ID:h/fRSuaDO
>>76
漫画のキャラをアンチする事しか出来ないネクラヤローが御託ばかりほざいてウゼェんだよ、 とっとと消え失せろ、消し炭にするぞ。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/13(月) 05:34:34.27 ID:heUf6RE9o
両親……
りっちゃん苦労してんだろうな
111 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/13(月) 17:43:23.37 ID:2XrGGNtF0




ガラッ

パタン



――――



パチッ

ガラッ



タッタッタッタッタッ

ガラガラガラガラ


唯「!!りっ…ちゃん……?」ポロッ

紬「りっちゃん…!」ハッ

澪「……うぅ…っ…」ポロポロ

憂「うそ…」

純「………そんな……」

梓「……………………………」ペタン


唯(りっちゃん…こんなに……)

唯「………あずにゃん?」

澪「梓……!」

純「……梓…?」


梓「…………………………いやぁぁぁぁぁあぁぁぁああぁあぁぁあぁあああああ!!!」ギュッ


唯(あずにゃん……当たり前だよね…)

唯(目の前で、りっちゃんが………………)




112 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/13(月) 17:51:09.13 ID:2XrGGNtF0







梓「いやっ…!嫌だよ……!!私もう……い…や……っ……!」ガクガクガクガク

梓「わたしがっ…!!…私……私を………殺して……っ!」

梓「死んで償うから……!!!だから……っ…!!」


唯「あずにゃん、落ち着いて……」ダキッ

梓「誰か……!!もう……やだ、よぉ……!!」ブルブルブル



紬「梓ちゃん!!!」パシン

梓「!!!!!!」


唯(ムギちゃんが、あずにゃんをビンタした……!!)

澪「ちょ、ムギ!?!?」

憂「紬さん!?」

唯「ムギちゃん…?」


紬「梓ちゃん、よく聞いて」

梓「……」

紬「梓ちゃんは今、『死んで償う』って言ったよね?」

紬「そんなの本当にりっちゃんが望んでると思うの?」

紬「梓ちゃんが死んじゃったら、りっちゃんが怪我してでもかばった理由がなくなっちゃうじゃない!!!」

梓「……!」



113 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/15(水) 16:23:05.82 ID:3MsTIJwJ0



梓「……!」


紬「確かに、結果的にりっちゃんは梓ちゃんを助けてあんな怪我をしたわ。でもね?」

紬「もともとは梓ちゃんだって被害者だもの」

紬「本当に死んで償うくらいするべきなのは、あの場にいた奴らなのよ…」グッ


澪「そうだよ、梓」

澪「ムギの話に付け足すようで悪いんだけどさ、律は、梓を本気で守りたかったんだと思うよ?」

唯(澪ちゃん声が震えてる…)

澪「自分が怪我をしてでも、ね。あいつは、そういう奴なんだ」

唯(そうだよね…澪ちゃんだって、幼馴染のりっちゃんがあんな姿になっちゃったんだから、もっと悲しいはずだよね…)

澪「だから…。梓は律に対して悪い、と感じてるなら、今出来る事をやればいいと思うよ…?」


梓「!」ポロポロ




114 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/15(水) 16:23:51.52 ID:3MsTIJwJ0




憂「……落ち着いた?」

梓「うん…憂、ありがと…」

梓「ムギ先輩も、澪先輩も、唯先輩も純も…ごめんなさい…私……」

唯「大丈夫だよー」

純「気にしないでいいから!」

紬「…私もたたいちゃってごめんね?痛くない?」

梓「いえ、大丈夫です………律先輩はもっと痛かっただろうし………」

澪「梓…」


唯「…今は信じよ!!りっちゃんを!!!!」


――――


律先輩は、2週間たった今でも眠っている。

学校もあの事件があったからしばらくの間休校になっていたのだが、昨日からまた始まっていた。


いつもの学校。
いつもの仲間。
いつもの授業。
いつもの放課後。
いつもの部室。
いつものティータイム。


なのに、律先輩がいないだけで、楽しさが全然なくなってしまう。

心なしか空気も重い。


115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 20:22:56.30 ID:ZCB/Hx6DO
りっちゃん早く目覚めて元気になってあずにゃんを安心させてやって。
116 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/15(水) 21:42:29.80 ID:3MsTIJwJ0





紬「お茶入ったわよ〜」

唯「わー!久しぶりだねー!」ズズズッ

澪「ほんとだな」ズズッ

唯「おいし〜い!!」

紬「マドレーヌもあるからね〜」

唯「わーい」

梓「……」

澪「梓?」

紬「梓ちゃん?お茶さめちゃうわよ?」

梓「……。!あ、すいません、いただきます!」ズズッ

澪「……」チラッ

紬「これも食べてね〜」コクッ

梓「あ、はい………」モグモグ


唯「今日はまったりだね〜〜」ニコニコ

澪「そうだな」

紬「昨日もだったわね」

唯「そうだったね〜」

梓「……」


私はどうしても、先輩達の話が耳に入って来なかった。

律先輩、律先輩、律先輩。

ここにいると、思い出してしまうのだ。
忌まわしきあの事件を。
あの日助けてくれた律先輩の顔を、いつもの先輩の太陽みたいな笑顔を。
そして、病院で見た、律先輩の弱った顔を。



117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/02/15(水) 23:05:30.95 ID:Dvwdd1Yxo
この梓は律以外の先輩に失礼すぎる
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 23:40:45.46 ID:ZCB/Hx6DO
>>117
文句があるなら観なければ良いじゃん。
目障りだからさ。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/02/15(水) 23:47:25.21 ID:Dvwdd1Yxo
まぁそだね。
律がだけいればそれでいい感が強くなってきたから消えるよ。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 23:53:14.11 ID:1pFpG49DO
>>118
毎回過剰反応しているお前もいい加減ウザイ
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/16(木) 02:38:29.70 ID:KwL/PY8Po
続き待ってます
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 02:55:55.46 ID:AyJu7PzDO
いつものほのぼのとした軽音部の生活に戻る事を 願っています。
123 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/16(木) 21:05:48.72 ID:hfmPCq6R0



あの日以来、私は毎日病院に通っていた。
他の先輩達が来られない日でも、毎日毎日。

それが私にとっての律先輩への償いだと思いたかった。
いつか律先輩に謝れる日が来ることを信じて。

でも、いつだって先輩は苦しそうな顔のままで、目を開けてくれはしなかった。
先輩がふっといつもの優しい顔に戻るのは痛み止めが効いている間だけ。
医者によると、先輩は傷が酷いから、痛み止めもすぐ効かなくなってしまうらしい。
失血したショックで死んでもおかしくなかった、と後で聞いた。

律先輩の両親にも会った。
聡君の事、律先輩のことをムギ先輩の家から連絡を受けて、出張先から慌てて帰って来たらしい。
ちなみに、あの集団は琴吹グループの力によって、琴吹家の地下室で何やら講習?を受けているらしい。
よくは分からないが、警察に送らなかった理由は聡君が関わっていたから、と言うことらしい。
ムギ先輩が言っていた。
また、私は律先輩の両親に事情を説明して、律先輩に大怪我を負わせてしまった事を謝った。

でも、律先輩によく似た顔をしたお父さんは言った。


律父『それが律の望んだことなら、君を咎めるつもりはないよ』

律父『律には小さい頃から苦労をさせてきた。私達も家に居ないことが多かったから…』

律父『律は、ちょっと一休みをしてるだけだと思っていてほしい』ニコッ


と。
胸が熱くなった。
自分の娘が大怪我をしていて危ないという時に、巻きこんだ私に向かってそんな事が言えるだろうか?

しかも私は軽いけがですんでいるのだ。
怒鳴られて、許されなくて当然だと思っていたのに……。



唯「…ず……ん…?」

澪「……さ!!」

紬「…あ…さちゃん!!!」

唯「あずにゃん!!!!!」

梓「…ハッ!!!!ごめんなさい!!なんですか?」

唯「あずにゃんがずっと喋ってなかったからどうしたのかと思ってー」

澪「大丈夫か?」

梓「はい…」

紬「調子悪いの?」

梓「いえ、そういう訳では…」

唯「無理しちゃだめだよ〜」

澪「…そうだな、今日はもう帰るか」

梓「えっ?」

唯「そうしようか〜」

梓「そんな…!ごめんなさい!!私は大丈夫ですから!!」



124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/16(木) 21:12:14.00 ID:3xiG9tijo
>君を咎めるつもりはないよ

むしろお前らが謝罪するケースなんだが
125 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/16(木) 21:32:10.79 ID:hfmPCq6R0




唯「…でもさ…」

梓「…?」

唯「やっぱり私は、あずにゃん見てると、今は…部活休んだ方がいい気がするんだ」

澪「私も……そう思う」

紬「梓ちゃん、やっぱりりっちゃんのこと、まだ辛いのよね…」

唯「あの事件があってから、あずにゃんなんか暗くなった気がするよ?」

澪「…梓、お前、一人で何でも抱え込んでるんじゃないか?」

梓「……」

紬「私達に何でも相談してくれて、いいのよ?」


唯「あずにゃん、もう少し先輩を頼ってよ…?」スッ

唯「頼りない先輩かもしれないけどさ、あずにゃんの悩みを一緒に悩むことぐらい出来るから…」

唯「このままだと、あずにゃんが壊れちゃうよ……」ギュッ


そう言って私を優しく抱きしめた唯先輩は、とても温かくて。
いつも明るい唯先輩にこんな悲しそうな顔にさせてしまうほど心配かけて。
澪先輩だって律先輩がすごく心配なはずなのに、私は励ましてもらってばかりで。
いつもニコニコしているムギ先輩が不安を押し殺して必死で私を叱ってくれて。

それなのに私はそれを忘れて、こんなに優しい先輩が3人もいるのに、私は一人で悩んで、苦しんで、迷惑かけて。
そんな自分がいた事を、今思い知った。

もう枯れたと思ってた涙が、再び溢れた。



梓「……うぇ……っ…せんぱ…い……っ…!!……せんぱ…ぁ……!」グスグス

唯「よしよし…」ギュッ

澪「辛かったな」ナデナデ

紬「思いっきり泣いていいのよ…」フキフキ

梓「ごめ…っなさ……!わたし……!」グスグス




126 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/16(木) 21:35:32.94 ID:hfmPCq6R0

≫124

あ……すみませんorz

両親はこの時はまだ聡がやらかしたことを知っていなかったということでお願いします。

127 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/16(木) 22:09:27.15 ID:hfmPCq6R0




私は、先輩の胸で思いっきり泣いた。
先輩達は私が泣きやむまでずっとそばにいてくれて、励ましてくれて、唯先輩は一緒に泣いてくれた。

そして、私が泣きやんでしばらくした後、お茶を出しながらムギ先輩が言った。


紬「みんな、あとちょっとしか時間ないけど、演奏しない?」コトッ

梓「今から…ですか?」チラッ

唯「いいね!!」

澪「でも…」

紬「病院でも、カセットくらい流せると思うの」

唯「分かった!!りっちゃんに聞かせるんだね!!」

紬「うん♪」

澪「それはいい考えだな」

紬「でしょ?おとといまでは学校に入れなかったからそんな事も出来なかったし」

澪「梓はどう思う?」

梓「…いいと思います!」ニコ

唯「きまりっ!」

紬「じゃあ準備しましょう?」

澪「ああ」

梓「はい!」

唯「まかせてよ〜」


――――
128 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/16(木) 22:10:21.69 ID:hfmPCq6R0





澪「じゃあふわふわやろうか」

唯「うん!」

紬「あ、待って。唯ちゃんが1番歌って、澪ちゃんが2番歌ったらどうかしら?」

梓「いいですね!」

唯「それじゃあコーラスも変えようよ!」

澪「ムギが1番のコーラス、梓が2番のコーラスでいいんじゃないか?」

紬「面白そう!」

梓「私がコーラスですか…?」オドオド

唯「大丈夫だよ、あずにゃん!あずにゃんならできるよ!!」フンス

梓「……分かりました、やってやるです!!」


唯「じゃあいくよ〜」カチッ



ジャカジャカジャンジャンジャカジャンジャカジャン♪


「きみをみてるとーいつもハートDOKI☆DOKI♪」


唯(りっちゃん…)


〜〜

〜「いーつもがんーばーるー♪」『いーつもがんーばーる♪』


紬(届くよね…この曲…)


〜〜〜〜

〜「ふとした仕草に今日もハートズキズキ♪」


澪(律…私達はずっと、ここで待ってるからな…)


〜〜

〜「いーつか目にーしーた♪」『いーつか目にーしーた♪』


梓(律先輩…ちゃんと感謝を伝えたいです……)


〜〜〜〜〜〜〜〜

〜ふわふわターイム♪(ふわふわターイム♪)

ふわふわターイム♪(ふわふわターイム♪)

ふわふわターイム♪(ふわふわターイム♪)


ジャジャッジャジャッジャーン♪


――――



129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/17(金) 02:22:07.03 ID:YWdgljl60
>>1乙 でも律ちゃん全快しても、田井中家は崩壊しそうだよね…
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 02:58:55.90 ID:q2jRJeLDO
>>129
確かにそれだけは避けられそうにないと思う。
131 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/17(金) 22:33:35.01 ID:nkZpJYMM0





――――



ピッ…ピッ…ピッ…ピッ


律(…………)



――――



唯「澪ちゃん!早く早く!」ピョンピョン

澪「バカ!病院では静かにしろ!!」

紬「あらあら」


次の日、私達は律先輩の眠っている病院へと向かっていた。
もうこの風景も、慣れてしまった。
それは、どこか寂しく、悲しい。
きっと、先輩達も同じ気持ちでいることだろう。



ガラッ


唯「りっちゃん」

澪「律、来たぞ」

紬「お茶いれるわね」カチャ

梓「……」


静かに荷物を置き、近くのパイプ椅子に腰かける。
先輩達も、律先輩のベッドを取り囲むように座る。

ベッドの上の机に置かれるティーカップ。
その数は、きっかり5つ。
この部屋の人数分。


紅茶を飲み、まったりしながら、唯先輩が話しだす。


唯「そうだりっちゃん、今日はね、カセット持って来たんだぁ〜」ガサゴソ

澪「ムギ、ラジカセってあるか?」

紬「もちろん♪準備しといたわ」

唯「さすがムギちゃん〜」

梓「さすがですね…」

唯「じゃあ、いくよー?」ポチッ


唯先輩がボタンを押したラジカセから、つい昨日とったばかりの音楽が流れる。
新鮮な感じがするのは、皆が歌ってるからって事もあるかもしれないけど、やっぱり律先輩の力強いドラムがないからだと思う。



132 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/17(金) 22:34:38.91 ID:nkZpJYMM0





澪「…律、聞こえるか?お前のドラムがないと、こんなのになっちゃうんだ」ソッ


澪先輩が律先輩に向かって話しかける。


紬「そうよ、ムードメーカーのりっちゃんがいないと、軽音部も盛り上がらないわ」スッ


続いてムギ先輩も。


唯「…りっちゃんがいないと寂しいよ…?」ギュッ


そして、唯先輩。


梓「……律先輩…いえ、律部長……!わたし…まだ、伝えたいこと…いっぱいあるんです…!」ギュ


梓「…せん…ぱい……」ポロッ

唯「りっちゃん…」ボロボロ

紬「…っ」ホロリ

澪「……りつ……」グスン









































律「………………………………………………泣くなよ……………」ボソッ
133 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/17(金) 22:45:41.36 ID:nkZpJYMM0







それは、とても小さな声だった。
ラジカセの音と混じっていて、本当に注意していなければ聞き取れないほどの声だった。

でもそれは、私達がずっと待ちわびていた、まだ弱弱しいけど、いつもの、大好きな声だった。


梓「律先輩!?!?!?」ポロポロ

澪「律!?!?」グスッ

唯紬「りっちゃん!?!?!??!?」ボロボロ



律「…………泣くなって…」パチッ



唯「り゛っぢゃーーーーーーーー!!!!!!」ビエエエエ

澪「りつぅぅぅぅぅぅぅぅうううう!!!!!」ダキッ


律「ちょ……澪、痛いって……唯も…」



梓「………!!!!!!!!」ブワッ


律先輩が、目を覚ました。
私が望んでいた瞬間が、今訪れた。





134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/18(土) 07:58:42.07 ID:ZohAXrWDO
りっちゃん目覚めてよかった。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/02/18(土) 17:43:04.74 ID:IVS9JCJAO
ワッフルワッフル
136 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/18(土) 18:21:44.51 ID:4+3OyJsb0





律「梓…無事だったか、良かった……」ソッ

梓「りつせんぱい…!!せんぱぁいいいい……!!!」ギュッ

律「……よしよし。…私は大丈夫だからな…」ナデナデ

梓「せんぱい…ごめんなさい……!」

律「何で…謝るんだ…?」

梓「だって…私……先輩をこんな目にあわせて……!」グスッ

律「………それは、いいんだ……」

梓「え……?」

律「……あれは、聡が…やった事だ…。私は……」


律先輩は、そんな事を言った。
どうしてですか、と聞こうと思った。
けれど、私の言葉が出るよりも先にパタパタと足音が聞こえたかと思うと、金色の髪を揺らしながら、ムギ先輩が入ってきた。


紬「りっちゃん!お医者様呼んできたわ!!」ハァハァ


律「ああ、ありがとな…、ムギ…」

澪「…じゃあ、私達は一旦ここから出るな」

律「おう、あとでな…」

唯「いこー、あずにゃん!」

梓「はい……」


律「また、ゆっくり話そう、梓……」ボソッ

梓「!…はい」クルッ


パタン


――――





137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/18(土) 23:55:48.95 ID:zzhijGkV0
それじゃ皆で聡とその他ボコボコにしようぜ
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 00:26:58.93 ID:J9bzCd1DO
>>137
俺に任せな

男に目覚めさせればいいんだろ?
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 05:41:17.17 ID:tbK1qIUbo
>>138
あのさぁ
140 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/20(月) 14:45:10.06 ID:x77w18KR0



パタン


唯「うう…っ」ポロポロ

紬「…」ヨシヨシ

澪「……よかった……」ギュッ

梓「……」グスッグスッ


唯「…あ、ねぇねぇ、りっちゃんが退院したらパーティーしようよ!」

唯(やっと、5人そろったね……)

澪「いいな、それ!」

澪(これから、だな……)

梓「いいですね!」

梓(もう一度、いつもの生活に戻るんだ……)

紬「あ、じゃあ、部室でやるのはどうかしら?」

紬(今度は楽しいティータイムになるわね……)


唯「いいねぇ〜、あ、でも練習は?」

澪「まぁ今回はいいんじゃないか?って、いつもやらない奴が何言ってんだか…」

梓「そうですよ、遊んでるの唯先輩じゃないですか…」

唯「でへへ〜ばれちった〜」テヘ

澪「まったく…」



141 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/20(月) 14:45:49.91 ID:x77w18KR0






紬「あ!なら、演奏するのはどうかしら?」

梓「え?」

唯「ほぇ?」

澪「どういうことだ?」

紬「だからね、演奏するの!りっちゃんのために!!」ワクワク

唯「おぉ〜!名案だね!」

澪「いいかもしれないな!」

梓「でも、何の曲やるんですか?」

紬「んー…」

澪「何がいいんだろうな…」

唯「…あっ、あれにしようよ!!」

梓「何ですか?」


唯「冬の日!」


澪「…。…何でだ?」

梓「季節的にも何か違う様な…?」

唯「え〜だってアレさ、りっちゃんのための曲なんでしょ?ぴったりじゃん!」

澪「まぁそうだけど……」

紬「いいわね!!!!!」

澪「え?ムギ?」

紬「だって、澪ちゃんがりっちゃんを想った書いた詩でしょ?気持ちがこもってると思うの!!」キラキラッ

梓(…どうしてムギ先輩キラキラしてるんだろう……?)



142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/02/21(火) 01:21:29.73 ID:h7hLJsRAO
ジョイフルジョイフル
143 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/22(水) 16:03:39.72 ID:E5Knh4sv0




唯「そうだよ!りっちゃんへのラブレターなんでしょ!?」

紬「なんでしょ!?!?!?!?!?!?」キラッキラ

梓(そういうことか……)クス

澪「ラブレターって……//////」カァ

紬「とにかく!やりましょう?冬の日」

澪「ええ…私は……」

唯「あずにゃんはやるでしょ?」

梓「はい、もちろんです!」

澪「…!」

紬「澪ちゃんは、どうする?」ニヤニヤ

澪「……私もやるぅ…!!」

唯「決まりだね!!」

梓「じゃあ明日からさっそく練習しましょう!」

紬「そうね……あ、お医者様出て来たわ。りっちゃんの所に行きましょう?」



144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/22(水) 16:28:42.86 ID:8iXl2LtWo
あずにゃんが冬の日を歌うとかだと胸熱
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/22(水) 16:31:13.22 ID:ky87zhrro
>>144
歌声がアレだけども…
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 18:09:07.65 ID:DFzicIoDO
>>144
まぁそこはつっこまない方向で
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 18:48:34.72 ID:zCOrdXwIO
  _ ‐..::  ̄ ̄ ::::... 、
. r'::/::::イ:::::::l:jハ:::::ヽ::::\
. |:::|::/‐|:::::::l/┤ハ::l:::|:::::rヘ
. l:::仏≦ヘ::/ z≦ハl:::|:::::|::::|
/::::リ ヒソ ′ヒソ /::::l:::/:::::|
|::::{        /::::::「):::::::| ぶぶえー
lハ::仆 .._ −   /:::: /´:|:::::::|
 Y::::ソ勺 7:イV_  |:::::::|
  |::/ 爻___ん'´ッ'⌒ヽ:::::::|
  ソ /‐―一弋{、  |:::::::|
148 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/22(水) 19:59:49.46 ID:E5Knh4sv0





――――


ガラッ


唯「りっちゃーん!」

紬「今お茶いれるわね〜」カチャカチャ

澪「5人でティータイムも久しぶりだな」


律「……」


梓「律先輩…?」


さっきから、律先輩は俯いたまま何もしゃべらない。
心なしか、肩が震えてるような気がした。
どうしたんだろう…?


律「………うう……っ……ひぐっ……」グスグス

澪「律!?!?」

唯「どうしたの!?」オロオロ

梓「え…?だ、大丈夫ですか……?」

紬「りっちゃん…?なんか、あった……?」


急に泣きだした律先輩は、次の瞬間、衝撃の発言をした。










律「わたし……っ…ぐすっ…ドラム………もう……」ポロポロ




149 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/22(水) 20:09:34.83 ID:E5Knh4sv0


唯「え………」

梓「そんな………」

紬「うそ……」

澪「りつ………?」


律「ごめん…っ……みんな…」グスグス

唯「……りっちゃん……」ホロ

梓「何で謝るんですか……っ!私が、私がいけないんです…っ…先輩を……!」ポロポロ

紬「梓ちゃん…自分を責めないで……」ウルッ

澪「そうだぞ、梓…。…ごめんな…?律……私が代わってあげられたら…!」ボロボロ


律「いや……ごめん…っ……」


律「“騙して”。」ニヤッ



唯澪紬梓「へ?」


律「今のは泣き真似だwww似てたか?」ハハハ


唯澪紬梓「…へ?」


律「だから、泣・き・真・似!」


澪「だってお前…ドラム出来ないって……」

梓「そうですよ!」


律「へ?私は『ドラム………もう……』としか言ってないぜ?」ニヤニヤ


唯「じゃあ…ドラムがなんとかっていうのは…」

紬「ウソ……?」


律「だから、嘘も何も、できない、なんて言ってないってwwwwww」

律「つーか、1ヶ月くらいしたら退院できるってさ」

律「すごいだろー?りっちゃん様のスゴ技だぜ?」




唯澪紬梓「…………」


唯「ちょっと、りっちゃんーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?」ズイズイッ

梓「律先輩ーーーーーー!??!?!??!???!?!」ズズズッ

紬「りっちゃんーーーーーーーー!?!?!?!??!?」ズイッ

澪「りぃぃぃいいつぅぅぅううううう?」



律「ひえーーーーー」


150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/02/22(水) 21:34:15.18 ID:ua3MEJ+AO
りっちゃん…
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/22(水) 21:44:42.95 ID:Da83mFSeo
りっちゃああああ〜〜ん
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 21:47:18.03 ID:DFzicIoDO
りっちゃんらしいいつものお約束の演技だね。
153 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/23(木) 17:13:01.61 ID:lCDS28hb0






――――


澪「もうこんな時間だ。じゃあ、私はもう帰るな」

唯「私も憂が待ってるから帰るね〜」

紬「…!あ、私も、今日ここにお父様が来てるからそっちに行くわ」ニコッ

梓「えと…私m
紬「梓ちゃんはこの花瓶洗って来てもらってもいいかしら?ね?…ね?」

律「……」

梓「はい、分かりました。では、唯先輩澪先輩ムギ先輩、さようなら」

唯「うん、ばいばーい」フリフリ

澪「ああ、またな、梓、律」

紬「またね〜」

律「じゃあな〜」


パタン


律「……」

梓「あ、私、洗ってきますね!!」

律「ああ、悪いな」

梓「いえ…」


ガラッ パタン


律「はぁ…」

律(なんか疲れたなぁ……まあ、2週間眠ってたんだもんな…)

律(まだちょっと痛いけど……体動かしてなかった分リハビリ真面目にやんないとな…)

律(…………母さん、父さん、来てくれたのかな…。…………聡…)

律「聡……どうしてだよ…………」ボソッ




154 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/23(木) 17:14:56.58 ID:lCDS28hb0






ガラッ


律「!!!」

梓「洗ってきました〜…律先輩?」

律「ああ、ごめんごめん、ちょっとビックリしただけ」タハハ

梓「大丈夫ですか?」

律「おうよ!……イテッ」ズキッ

梓「無理しないでください!!」

律「たはは〜」

梓「もう……」


梓「…この花瓶、けっこう綺麗ですよね」

律「ん?」

梓「落としたらどうしようかと思いましたもん」

律「まぁ、ムギんち系列とか言ったらこうなるんだろうな…」

梓「全然汚れてなんかなかったですし」

律「はは、ムギもそれくらいしか思いつかなかったんだろ?」

梓「え?」

律「ん?…だから、ムギが気を遣ってくれたって話」

梓「…!!」

律「あ、もしかして梓気づいてなかった?」

梓「…はい…」カァ

律「二人きりにしてくれたんだろ、さっき後で話そうって言ったし」

梓「そういえばそうですね…」




155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/02/24(金) 14:56:35.95 ID:7Vq9qTTAO
律先輩と2人きり…ごくり
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 15:36:47.30 ID:VE2ERI+DO
最近の律梓SSって良い作品が多くて良いね。
(この作品の前半は悲しい出来事が多くて辛かったけど。)
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/24(金) 17:45:26.58 ID:UEwIpyKyo
エンディングに期待
158 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/24(金) 19:56:52.43 ID:6A6rjsyh0






梓律「あのさ…!(あの…!)」

梓「!?…ごめんなさい、先、どうぞ…」アセアセ

律「…え、いやいや、大したことじゃないから、先いいぞ!?」アセアセ

梓「いえいえ…」

律「いやいや……」

梓「……プッ」

律「?」

梓「ふふふふ!」クスクス

律「…あはっ」ニコッ


梓「じゃあ、私から……。律先輩、すみませんでした!!」ペコリ

梓「私、先輩に迷惑かけて…おまけに、こんなケガまで…」ウルッ

律「いや、それは……」

梓「刺された時……律先輩がリボンで止血してくれてなかったら…」

梓「私死んでたんですよ…?」

律「!?」

梓「ホントです。医者が言ってました…“応急処置してくれた人に感謝しなさい”って…」

梓「ありがとうございました!!!!!!!!」グスッ

梓「先輩には、感謝してもし足らない位です…!!!!!」グスグス

梓「なのに…わたし…っ……!先輩をこんな目にあわせて……っ!!」グスッグスッ
律「それは違う」

梓「え…?」

律「違う。それは違うぞ、梓」

梓「…?」




159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 23:28:33.98 ID:b+3EAoWH0
もしかして俺?
160 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/25(土) 10:32:22.87 ID:HpQrcwYq0




律「梓、本っっっっ当にすまない!!!!!!!!」ペコリ

梓「…どういう…ことですか…?」


律「そのまんまの意味。…ごめんな?」

律「梓には辛い思いをさせた。私のせいで。…いや、私と、私の弟のせいで…」

梓「…!」

律「もっと早くに気づいていれば……」

律「梓をこんな目に合わせなくてよかったし、私のことでこうやって気に病むこともなかったはずなんだ……」

律「ホント、ごめんな…」ギュッ

律「……何回謝っても謝りきれないよ…」

律「ごめん…ごめんな……梓…」


梓「いいんです……というか、私…先輩が助けてくれて、嬉しかったですから…」

律「でも…」

梓「先輩が謝る必要なんかないんです…」



161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/25(土) 14:01:06.74 ID:NXNwgrNio
某律澪SSに展開が酷似…げふんげふん!
162 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/25(土) 20:49:01.65 ID:HpQrcwYq0





梓「私は先輩がいなかったら死んでたんですよ?…先輩に守ってもらって、今こうやって生きてるのは事実なんです」

梓「…たしかに、聡君のことは怖かったですけど…」

梓「律先輩は律先輩。聡君は聡君。姉弟でも、関係無いじゃないですか……」

梓「聡君の事は許せません。断言しておきます。…それは誰かにそそのかされた事であったとしても、姉である律先輩が許してやれ、と言ってもです」

律「…」

梓「でも、律先輩の弟だから、と言う理由で、律先輩に謝ってほしくないんです……」

律「……そっか。……でもさ、とりあえず言わせて?」

律「私の弟が、一人じゃないとはいえ、悪い事をしたのは事実なんだ。…下手すりゃ、どころじゃなくて、実際に罪を犯したんだ。………本当に、すまなかった!!!」

律「罪を犯した奴の家族として、謝る…」

梓「……」

律「私ん家、親二人ともあんまり家にいないんだ。唯ん家みたいに旅行言ってるとかじゃなくて、仕事でなんだけどさ…」

律「二人で暮らしてる時間の方が長かったはずなのに、聡のことをちゃんと見てなかった…。異変にも、気づけてなかった…」

律「だから、責任は私にもあると思う」

律「本当にすまない」ペコ


律「……で、ここからは梓の部活の仲間として…」

律「梓が無事で、本当に良かった……」

梓「…!」

律「ギターも弾けるだろ?」

梓「…はい」

律「よかった……」

律「助ける事が出来て、本当に良かった…」

律「感謝なんていらないんだぜ?私がやりたくてやった事だからな…」

梓「律先輩……」





163 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/25(土) 21:02:28.33 ID:HpQrcwYq0





梓「一つだけ、聞いてもいいですか…?」

律「ん?」

梓「…どうして律先輩は私を助けてくれたんですか…?」

律「は?!」

梓「少し気になったんです」

律「……そりゃまあ、部長だし?部員の安全守れない奴が部長やっててもダメだろ?」

律「それに…」


律「部長とか関係なく、梓のこと、好きだからなっ」ニカッ


梓「律先輩……フフ、私も、先輩のこと大好きです」ニコッ


梓「大人になっても、一緒にHTT続けましょうね…!」

律「もっちろん!途中脱退は認めないぜ?」

梓「はい!律先輩も、リーダー引退とかやめてくださいね!」

律「あったりまえだろ〜?このりっちゃん様がやめる訳無いぜ!」

梓「そういうと思いましたっ」クスッ

律「…あははっ」ニコ



律「早く治してみせるから、待っててくれよな!」ニッ

梓「はい!!」ニコ



――――





164 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/25(土) 21:25:50.25 ID:HpQrcwYq0






律先輩が意識を取り戻してから、1カ月が経った。

今日は先輩が退院する日だ。


唯「いよいよだねっ!」

紬「ええ♪」

澪「ついにだな…!」

梓「はい!」


私達は病院には行かず、部室で先輩の退院祝いのパーティーの準備をしている。

ちなみに、澪先輩によると、律先輩は一度家に帰って、着替えてから部室に行くから、とメールで言っていたらしい。
そして、律先輩の家から学校まで、病み上がりということもあるので、さわ子先生が車で連れて来てくれるらしかった。

唯先輩は「りっちゃん、さわちゃんの車に乗れるなんてずるい!!」とか言ってたけど、朝集まってからずっとニコニコしている。
それは澪先輩も、ムギ先輩も、私もで。

今日という日を待ち望んでいた私達は、律先輩がリハビリを頑張っている間、たくさん練習をしていた。


曲は、冬の日。ボーカルは、唯先輩。

一応皆で歌詞を覚えて、一人ひとり歌ってみたが、やっぱり唯先輩だろう、という事になったのだった。
でも、そのかわり、と言っては何だけど、私はリードギターをやることになった。

高校に入って、HTTではリズムギターしかやっていなかったから、少し緊張する。


紬「お茶入ったわよ〜」コトッ

唯「うわ〜い!!」

澪「これ飲んだらもう一回合わせような」

梓「そうですね」

唯「そうだね〜」

紬「りっちゃん、あと30分くらいで支度が終わるみたいよ」ピッ

唯「メール?」

紬「うん、さわ子先生から」

澪「もう行ってたんだ…」

唯「きっとさわちゃんも待ち遠しかったんだよ〜」

梓「そうですね。先生だから忙しくてなかなかお見舞いに行けなかったでしょうし…」





165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 23:11:36.38 ID:T+mHjUSSO
初期にあった律澪SSに似てる感じがする
あれは聡じゃなく、確か教師だったような……うろ覚えだけど
166 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/26(日) 09:22:29.17 ID:QdtLkKSK0


161,164≫

マジですか……

知らなかった……


すいませんorz


似ているかもしれないけど、これはこれで見てもらえると幸いです。

167 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/26(日) 10:13:49.21 ID:QdtLkKSK0




あの後の話を少しだけしよう。

私と律先輩を苦しめたあの男達は捕まった。
私の他にも何人も同じことを繰り返していたらしいし、当然だ。
おまけに薬物にまで手を染めていたらしい。
今は禁断症状に苦しみながらリハビリしているらしいけど、私は同情なんてできない。
というか、思い出したくもないよね。

将来またあの男達が襲ってきたらどうしよう、とも思うけど、その時はもう私は大人になってるかな。


そして聡君は、捕まらなかった。

少し驚いたけれど、理由は大体分かる。
ムギ先輩の家が動いたのだ。
律先輩と、田井中家のために。

でも、薬物検査で陽性が出ているし、悪い事をしたことには変わりがないので、ムギ先輩の家の地下でリハビリと更生のための講習を受けるらしい。
学校には行かず、毎日食事と風呂等以外は外に出られないそうだ。
田井中家に戻るのは、彼の更生次第だという。

私的には、もし更生して、もう家族と会っていい、と言われても、元のような関係に戻るのは無理だと思うけど……。




168 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/26(日) 10:29:10.37 ID:QdtLkKSK0






ジャッジャッジャーン♪


唯「ふいー」

梓「よかったですね!」

澪「そうだな」


ピピピピピ♪


紬「あ、メールだわ」パカッ

唯「さわちゃん?」

紬「うん」

澪「さわ子先生、なんだって?」

紬「今りっちゃん家出たって。あと10分くらいじゃないかしら?」

梓「もう一回合わせますか?」

澪「んー、それより最終確認しておこう」

紬「そうね、せっかくのりっちゃんのパーティーだもん!」

唯「パーティ♪パーティ♪」ウキウキ

梓「唯先輩が一番喜んでる気が……」

澪「…はは…」



――――



律「いやー、さわちゃんの車、案外快適だねぇ!」

さわ子「案外って何よ案外って」

律「意外だからww」

さわ子「どんなの想像してたのよ…」

律「さわちゃんの事だから、ハードな感じ?」

さわ子「……黒歴史思い出させないでくれるかしら…」グスッ

律「悪い悪い」ヘヘッ





169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/26(日) 12:43:15.53 ID:ab35Bhbao
梓「やっぱり軽音部は最高です!」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/26(日) 14:30:12.42 ID:MvVjuogTo
wktk
171 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/26(日) 14:52:53.61 ID:QdtLkKSK0





さわ子「それにしてもりっちゃん、平気なの?」チッカチッカ

律「何が?」

さわ子「…弟のことよ」

律「……あ、あぁ、その事か……」

さわ子「…辛いんじゃないの?」

律「……ん…まぁ、辛くない…って言ったら、嘘になるかな…」

さわ子「泣いた?」

律「へ?」

さわ子「りっちゃん、あの事故の後から、泣いた?」

律「…泣き真似ならしたけど…?どうしたの、急に」

さわ子「……そう。…りっちゃんの顔、いつもと違うなぁって」

律「どういうこと?」

さわ子「…ちょっとでも気を緩めたら泣いちゃいそうな顔」

律「え……」


さわ子「りっちゃん、辛い時は泣けばいいのよ?」

律「……」

さわ子「自分のイメージなんてどうでもいいじゃない。どうせりっちゃんの事だから、皆の前だけじゃなくて一人だけの時もずっと我慢してるんでしょ?」

さわ子「辛い時はちゃんと辛いって言った方がいいわよ?」

さわ子「…そうじゃないと、りっちゃんの心が壊れちゃうんだからね?」

律「……っ」ウル

律「…!」フルフル

さわ子「…大丈夫、誰にも言わないから」ソッ

律「っ…!!………うぇ……ひぐっ……さわ…ぢゃぁ……!」グスッ

さわ子「よしよし」ニコ





172 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/26(日) 14:53:26.74 ID:QdtLkKSK0





律「……………さわちゃん、ごめん」

さわ子「なにが?」

律「…なんか、その……泣いちゃって……//」

さわ子「今さら何言ってんのよ、可愛かったわよ?」サラッ

律「さらっとおかしー事言うな…!///」

さわ子「あら、おかしくなんかないわよ〜」

律「おかしーし…」

さわ子「ほらほら、早く涙ふいとかないと、皆に心配されちゃうわよ?」

律「うん……」グシグシ

さわ子「しかしねぇ…りっちゃん、こういう時に我慢しちゃだめなのよ?」

律「……」

さわ子「唯ちゃんも澪ちゃんもムギちゃんも梓ちゃんも、りっちゃんの味方なんだから…」

律「うん…」

さわ子「しかも、りっちゃんにとって、梓ちゃんは、特別なんじゃないの?」

律「!?!?…ちょっ、さわちゃん!?!?//」アタフタ

さわ子「間違ってないでしょ?…とにかく、自分のイメージを崩さないようにしてたって、一緒にいる皆にはばれちゃうのよ?」

律「……」

さわ子「みんなに気を遣わせながらの“普通”と、みんなと今までどおりの“普通”にするの、どっちがいいの?」

律「今まで通りの、普通がいいな…」

さわ子「でしょ?」



173 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/26(日) 14:59:09.94 ID:QdtLkKSK0






さわ子「ほら、行くわよ!」ガチャッ

律「ああ!」ガチャ

さわ子「私は職員室に行くけど、ムギちゃんにケーキ残しとくように言っといてね!」

律「はぁ?…分かったよ」

さわ子「そういう事だから。…あと、言い忘れてたけど退院おめでとう!」スタスタスタ

律「ありがとな、さわちゃん!」



律「よっし、行くか!!」


スタスタスタスタ


トン…トン…トン…トン…



ガチャ




律「ただいまーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」バンッ


――――




174 : ◆gb8GVi7Khk [saga]:2012/02/26(日) 15:38:08.47 ID:QdtLkKSK0





ガチャ


律「ただいまーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」バンッ



唯澪紬梓「おかえり(なさい)、りっちゃん(律(先輩))!!!!!!」パァン!


律「!!びっくりしたっ!!」

律「音が出るとは想定外だったぜ……」フゥ


唯「りっちゃん!退院おめでとう!!」ギュッ

律「ありがと…って、痛ぇ!」

唯「あ、ごめんごめん!」

澪「でも、ほんと回復早かったな」

律「あったり前よ!」

梓「すごいですね……」

律「頑張ったからなー!まだちょっと痛いけど歩けるし」


紬「お茶入れたわよ〜♪皆でケーキ食べましょ!」ニコニコ

律「やったー!」

唯「りっちゃんはティータイム久しぶりだもんね〜」ゴクゴク

律「そうだぜ〜?皆部活だったし、私も時間の限りリハビリやらせてもらってたからな」

紬「あんまりお見舞いいけなくてごめんね?」

律「いいっていいって!」

唯「ひっひゃんふぉめんふぇ〜」モゴモゴ

律「だいたい分かったし、気にしてないけど……お前は食べてから喋れ!」ポカ

唯「いたいー!」サスサス

唯「あずにゃーん、りっちゃんがいじめるー」ウルウル

梓「何で私にふったんですか!?!?」

唯「えー?なんとなくー」ウフフフ

梓「何となくですか…」

紬「うふふ」ニコニコ


澪「そういえば、今日律、目腫れてないか?」

梓「言われてみれば……。むくんでるんですかね?」

律「そうかー?腹刺されたから水ばっか飲んでたからかもな…」

澪「……そうかもな」フフッ

梓「…?」

紬「ふふふ」キラキラ




175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 21:54:33.06 ID:/9lJLHlIO
ふふふ
176 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/02/26(日) 22:44:31.09 ID:QdtLkKSK0





唯「りっちゃん!ここに座って!!」


唯先輩が律先輩を手招きする。
指を差したのは私達がいつもカバンを置いているいつもの長椅子。

少し雑に椅子の上の鞄を右に詰め、空いたスペースに律先輩を座らせた。



澪「律、退院おめでとう」


そういったのは澪先輩。
ベースを肩にかけ、ストラップの下から綺麗な長い髪をさらりとなびかせて、準備を終える。


紬「りっちゃんのために、一曲演奏するね」ニコ


次は、ムギ先輩。
いつものふわふわした笑顔で、キーボードの前に立った。


梓「先輩、本当に退院おめでとうございます!!」


次は、私。
今回はリードギターだから、という事もあって、私が真ん中に立つ事になった。
これは、唯先輩の提案だった。




177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 23:41:06.25 ID:U3RwWFDE0
さわちゃんって意外にいい先生なんだよな
178 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/02/27(月) 13:07:05.58 ID:085WFphC0



唯「りっちゃん!ここに座って!!」


唯先輩が律先輩を手招きする。
指を差したのは私達がいつもカバンを置いているいつもの長椅子。

少し雑に椅子の上の鞄を右に詰め、空いたスペースに律先輩を座らせた。



澪「律、退院おめでとう」


そういったのは澪先輩。
ベースを肩にかけ、ストラップの下から綺麗な長い髪をさらりとなびかせて、準備を終える。


紬「りっちゃんのために、一曲演奏するね」ニコ


次は、ムギ先輩。
いつものふわふわした笑顔で、キーボードの前に立った。


梓「先輩、本当に退院おめでとうございます!!」


次は、私。
今回はリードギターだから、という事もあって、私が真ん中に立つ事になった。
これは、唯先輩の提案だった。
でも、ボーカルが唯先輩なんだから、私はいつもの端っこでよかったのに…。


唯「それじゃあいくよ!冬の日!!」


ジャーンジャジャジャージャジャージャジャージャジャージャー♪


唯「……」ジャカジャカ ジッ



…?
なぜか唯先輩がこっちを見ている。
あれ?私リフ間違えた??


澪「……」ボーンボーン ジッ


?澪先輩まで!?!?
私、やらかしちゃった!?


紬「梓ちゃん」コソッ


ムギ先輩を見ると、弾きながら私にだけ聞こえるような声でこそっと言った。


紬「梓ちゃんがボーカルよ」ニコニコ


!?


唯「あずにゃん、始まるよ!」ジャジャジャッ♪



どんなーに寒くーてもー♪

ぼーくは幸ーせ 白い吐ー息♪


179 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/02/27(月) 13:16:03.20 ID:085WFphC0





梓「はーずまーせて かーけてーく♪///」ジャカジャカ

梓「君ーを見てーるーと♪//」ジャカジャカ


唯「…!」ニコニコ ジャジャーン

澪「…」フフッ ボーンボン

紬「♪」ニコニコニコ チャラララ


律「!……ふふ」ニコ



梓「〜〜何から 話せば いいのーかーなっ♪」



ホントにそうですよ、律先輩。



梓「好ーきかーら始めていいーかな♪」



…私にはそんな勇気無いけど。



梓「舞う雪 踊ーった 気持ちみたい♪」



でも……。



梓「なーんか♪」



先輩が自分を犠牲にしてまで助けてくれた私の命。



梓「嬉しいね♪」ジャカジャカ



大事にしながら、いつまでもギターを弾き続けます!


先輩達と一緒に。






180 : ◆gb8GVi7Khk [sage]:2012/02/27(月) 13:18:22.44 ID:085WFphC0


終わりです。


書きはじめてから2ヶ月近くかかるとは思っていませんでした……orz

大分時間をかけましたが、見て下さった方、コメントして下さった方、ありがとうございました。


181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/27(月) 14:36:48.83 ID:E8J9wQ3Qo
長いことおつかれさん
すごくよかったよ
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 17:08:51.13 ID:MRP3f1xco
おっつん。
完結して何より。

本当の欝はここからだ的なのあるかと思ってた分、
微シリアスで良かった。

183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 23:36:53.52 ID:3NFePuZp0

微妙に某作品と被ってるけどこっちはこっちで面白かったよ



聡に思いっきりグーパンしてもいいかな?
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 04:42:26.00 ID:0uPLIqeDO
>>183
良いと思います。
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/02/28(火) 13:34:13.77 ID:asmXTPbAO
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