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男「ベホマズン(物理)」 魔王「それはおかしい」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:33:06.68 ID:lQJANtf5o

男「なにか不審な点でも?」

魔王「いや、確かに余を含めて側近も侍女も全員回復したようだが」

側近「拳で殴った後に身体の傷や装備品まで復活するという
   回復魔法は初めてみたのですが」

男「ベホマズン(物理)ですから」

魔王「だから」

男「ベホマズン(物理)です」

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バームくんへ @ 2025/06/11(水) 20:52:59.15 ID:9hFPsRzXO
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秘境 @ 2025/06/10(火) 00:47:53.81 ID:BDVYljqu0
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【安価】上条「とある禁書目録で」鴻野江「仮面ライダー」【禁書】 @ 2025/06/09(月) 21:43:10.25 ID:qDlYab/50
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1749472989/

ツナ「(雲雀さん?!)」雲雀「・・・」ビショビショ @ 2025/06/07(土) 01:30:36.87 ID:AfN9Rsm0O
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【安価コンマ】障害走を極めるその5【ウマ娘】 @ 2025/06/06(金) 01:05:45.46 ID:RaUitMs20
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貴様たちの整備のお陰で使いやすくしてくれてありがとう @ 2025/06/04(水) 20:56:21.03 ID:QjuK6rXtO
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阿笠「わしの乳首に米粒をくっ付けたぞい」コナン「は?」灰原「は?」 @ 2025/06/04(水) 04:01:13.39 ID:ZjrmryLdO
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レッド(無口とか幽霊とか言われるけどまだ電脳世界) @ 2025/06/02(月) 21:21:00.13 ID:ix3UWcFtO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:33:48.96 ID:lQJANtf5o

側近「そもそもベホマズンという呪文は古くは勇者、昨今では一部の
   魔物か高レベル僧侶のみが扱えると聞いていますが」

男「自分、そういえば寺育ちでした」

魔王「ほう。身なりから異界の者と推測していたが僧侶だったか。
   やはり貴様の故郷では名の知られた寺院なのか?」

男「そうですね。田舎にある王虎寺って古刹です」

側近「」

魔王「どうした?」

側近「東に王虎寺あれば西に蒼龍寺あり(ぼそ)」

男「和尚とか凄い人ですけど、自分はただの寺育ちデスヨー」

魔王「いやいやいや。庶民はそんな回復呪文とか使えない」

男「ベホマズン(物理)です」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:34:42.06 ID:lQJANtf5o

悪のモンスター「隙あり! 人間と手を組む魔王め、女であろうと容赦はしない。●ねぇ!!」

男「ニフラム(物理)!」

悪のモンスター「うぎゃっぴーっ!!?」



男「ふう、危ないところでした」

側近「」

魔王「いろいろと待て」

男「ああ。ニフラム(物理)というのは敵1グループを光の彼方に消し去る聖なる呪文で」

魔王「いま拳の先から赤い光の虎が飛び出して、アークデーモンを城壁ぶち抜いて
   地平線の彼方まで吹き飛ばしたように見えたんだが」

男「ではバシルーラ(物理)ということで」

魔王「そんなわけがあるかー!」

側近「王虎寺奥義暹氣虎k」

男「ニフラム(物理)です」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:35:36.03 ID:lQJANtf5o
魔王「突っ込みどころしかないのだが」

男「ええ。自分としても魔王さんが人間との融和を宣言して交戦派モンスターに
   襲われて絶体絶命だったとか、どう突っ込むべきか悩みました」

側近「得体の知れない麺料理片手に城壁をぶち抜いて現れた時には心底どうしようかと」

男「引っ越し蕎麦を届けに来たら両手がふさがっていたので仕方なくアバカム(物理)を」

魔王「攻城兵器でもびくともしない城壁を一撃で三枚ぶち抜くそれのどこがアバカムだ!」

男「アバカム(物理)です」

側近「……ひょっとして男さんは、勇者なんですか?」

男「学生です」

魔王「学生、ということは魔法職の徒弟みたいなものか」

男「ソウデスヨー」

側近「いま露骨に視線逸らしましたね」

魔王「魔法職ではないのか?」

男「正式な職に就く前の訓練生といえば聞こえはいいんですけど、こっちの基準だとその」

側近「あー、無職なんですね」

男「……自由業って不景気になると真っ先に切られるから、自分は堅実な職に就いて
   平凡でも慎ましく穏やかに生きていこうって思ってたんですよね。ははははは」

魔王「お前のような無職がいてたまるか」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:36:47.41 ID:lQJANtf5o


悪のドラゴン「いまだ、灼熱の吐息を喰らえぃ!」

男「フバー破ぁ(物理)!」

悪のドラゴン「馬鹿な、周辺のゲッター指数が……十億度の火球だとおっ!?」



魔王「」

側近「」

男「フバーハというのはブレス攻撃を軽減する呪文で(ドヤ」

魔王「ゲッター指数って」

男「錯乱してうわごとでも吐いたのでしょう」

側近「いま両手を突き出して放出された光の奔流がドラゴンをブレスごと呑み込」

男「フバー破(物理)です」

魔王「ですよねー」

側近「デスヨネー」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:37:39.25 ID:lQJANtf5o

魔王「……もう、ゴールしてもいいよね」

男「じゃあ休んだ方がいいですね。うん、手伝いますよ」

魔王「なあ」

男「はい、なんでしょう」

魔王「余の錯覚でなければ、貴様が怪しげなチョップの構えで迫ってきているんだが」

男「ラリホー(物理)です」

魔王「嘘だッ!!!!」

男「失敬な。75%という高確率で相手が意識を失うという事で
  地元では有名なんですよ、このラリホー(物理)は」

側近「ちなみに残りの25%は?」

男「そのまま永眠してしまいます」

魔王「ザキ(物理)じゃないかそれーっ!」

男「鍛えてますから」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:38:29.83 ID:lQJANtf5o

側近「そういえば男さんが最初に乱入した際に、魔王様を狙っていた暗殺者
    集団を横殴りにして昏倒させてましたね」

男「ラリホーマ(物理)です」

側近「暗殺者たち、首から上が消滅しているんですが」

魔王「ひい!」

男「両手に蕎麦を持ってたからラリアットするしかなくて、つい」

魔王「そんな魔法があるかあ!」

男「科学では説明できない現象を魔法と呼ぶことに何の支障がありましょうか」

魔王「寺育ちがそんなこと言っていいのかおい」

男「うちの寺では代々『そのとき不思議な事が起こった』と呼んでいます」

魔王「アウト―! 色々と、アウトー!」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:39:08.88 ID:lQJANtf5o

男「それに、俺を育ててくれた和尚さんがこんなことを言ってました」

側近「どのような?」

男「『右の頬を打たれそうになったら、カウンターを合わせて神速で撃ち貫け』と」

魔王「おい」

男「はい、なんでしょう」

魔王「色々と、おかしい」

男「人生経験豊かな人ですから、和尚さん。他にも
  『心頭滅却すれば至近距離からのボルテッカを喰らっても何ィ!?』と」

魔王「」

側近「強くなる度に大事なものを失っていくような和尚様ですね」

男「大怪我で治療してた際に今の嫁さんに逆レ●プされたような半生だったとか」

側近「なんという修羅」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:40:45.64 ID:lQJANtf5o

魔王「……正直、余らの方がまっとうに生きているような気がしてきた」

男「実際まともじゃないですか。世界征服じゃなくて未開地の新規開拓を
   する魔王なんて初めて会いましたよ」

側近「太陽があって、汚染されてない土地と水がありますからね。魔界に比べれば楽園ですよ」

魔王「開墾が完了するまでは食料は外から輸入せねばならんがな」

側近「魔界の神とやらが突然滅んで魔界が消滅した時はどうなる事かと肝を冷やしましたが
   民と城と魔界の生き物達が未開の荒野とはいえ安全な世界に転移できたのは幸運です」

男「不思議な事もあったものですね」

魔王「おお。空の彼方から『ゆ゛る゛さ゛ん゛っ』という雄たけびが聞こえた時は正直
   もう駄目だと思った」

男「デスヨネー」

側近「むしろ魔族が長年求めてやまなかった太陽のある大地に移り住めたことで
   臣民の間では日光浴とガーデニングが大ブームという有様です」

男「」

魔王「野生のモンスターがなかなかに手強いが、魔王軍の訓練相手としては悪くない。
   素材を剥ぎ取れば外貨獲得にもなる」

側近「というのが魔王様を中心とした穏健派の主張ですね」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:41:17.57 ID:lQJANtf5o

男「つまり、どこかの国を攻め落として支配しようって急進派がいると」

魔王「そういう連中が、先刻から定期的に襲ってきているわけだ」

側近「男さんが引っ越し蕎麦を持ってこなかったらクーデター成功してましたね」

男「この世界にもいちおう勇者がいるんですけどね」

魔王「いるのかー」

側近「ちょっと困りましたね」

男「ここは野生モンスターが危険で人間の国からも遠い土地ですし、仲良くやっていけるなら
   争いを避けたいっていうのが人間の国の総意なんですけど」

魔王「実はな、急進派の主張というのがアレでな」

男「アレ?」

魔王「うむ。急進派のトップは余の妹なのだが」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:42:43.17 ID:lQJANtf5o


王妹「魔王たるもの勇者に喧嘩を売って華々しく散るのが粋というものではないかあ!」

男「ルカナン(物理)」

王妹「ぎゃわーっ!?」



魔王「おー。王家の鎧から勝負下着から下の毛に至るまで謎の衝撃破で木端微塵に」

男「ルカナン(物理)です」

側近「真空殲ぷ」

男「ルカナン(物理)ですよ」

王妹「うううう、大事な毛があ。大事に育てていた下の毛があああ」

魔王「我が妹ながらなんと大人げない」

側近「元より生えていないに等しい産毛未満の代物でしたから大事ありませんよ王妹殿下」

王妹「うるさあい! 姉上と違って少しは生えておったんじゃあ!」

魔王「!」

男「」

側近「実に不毛な争いです」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:43:43.98 ID:lQJANtf5o

男「この残念そうな巨乳のおねいさんが、急進派のトップですか」

側近「はい。天上の精霊神をして『乳に注がれた栄養の一割でも脳に届いていたら、
   地上のみならず天界まで彼女の手に落ちていたであろう』とまで言わせしめた
   王妹殿下であります」

魔王「よもや精霊神の言葉に肯く日が来ようとは」

王妹「乳に回るべき栄養を全て脳に吸われた絶壁姉上には辿りつけぬ境地に妾はいるのじゃよ」

魔王「ほほう」

側近「できれば話し合いで解決したいので守備力を戻して頂けますか?」

男「とりあえず、スクルト(荒縄)」

王妹「ひぎっ――!!?」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:44:46.09 ID:lQJANtf5o

男「スクルト(荒縄)、スクルト(荒縄)、スクルト(吊)」

王妹「ひっ! あっ!? ぐぅうっ!!!?」

側近「なぜか3か所ほどピンポイントでスクルト(物理)の効果が倍増になっているようですが」

魔王「バイキルト(物理)ではないのか、これ」

側近「仮にも実の妹君がアレな目に遭っているのに、意外と冷静ですね魔王様」

魔王「縄で縛られて吊るされているだけだろう。拷問ですらない」

側近「確かに、身動きとれず息苦しい程度なのでしょうが」

王妹「あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……ン」

魔王「なんか嬉しそうだな」

男「守備力の代わりに別の属性を上げてしまいましたかね」

側近「なるほどこれが中国拳法でいうところの進化の秘法(物理)」

魔王「」

男「わぁい」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:45:26.75 ID:lQJANtf5o


王妹「――と、特別に許可する。男よ、その手に持った縄束で」

男「縄束で?」

王妹「わ、妾の尻を! 妾の尻を縄束で荒々しく叩いてたもr」



魔王「いてつく波動(物理)!」

王妹「うわらばっ!?」

男「」

側近「なんという見事な右ストレート。世界を狙える器です魔王様」

魔王「いてつく波動(物理)じゃ!」

男「わかりましたから、血に染まった拳を構えたまま迫るのは勘弁して下さい」

15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:46:15.23 ID:lQJANtf5o

 同時刻、勇者(11)は。

女僧侶(17)「勇者くーん、一緒にお風呂入りましょー★」

女賢者(19)「勇者さまあ、いいお湯ですよお」

女戦士(23)「ほらほら諦めろって勇者。この宿には風呂は一つしかないんだから」

勇者(11)「だ、だ、だ、駄目なんです。み、皆さんのその姿を見ちゃうとボクの
      いいいいい一部分がアストロン(物理)しちゃうんですっ。だから!」

女僧侶(17)「……勇者クン」キュンキュンキュン

女賢者(19)「……勇者さまぁ」キュンキュンキュン

女戦士(23)「……勇者ェ」キュンキュンキュン
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:47:10.68 ID:lQJANtf5o
勇者(11)「ぼ、ボクは部屋で身体を拭い」

女僧侶(17)「じゃあ、マホトラ(口)しちゃおっか★」

女賢者(19)「マホトラ(乳)なら任せてくださいっ」

勇者(11)「目が、目がぁ石川賢ッッッ!!!?」


 勇者(11)は逃げ出した。


女戦士(23)「――あはっ」


 だが廻り込まれてしまった。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:48:00.54 ID:lQJANtf5o


 後日。

勇者(11)「おっぱいこわい、おっぱいこわい、おっぱ」

魔王「なあ、これ勇者だよな」

男「形容しがたい虐待を受けた痕跡があったので保護してきました」

王妹「勇者と言えば、確か優れた従士が三名いたと聞いておりますわ。彼女たちは?」

側近「……産休です」

魔王「」

王妹「ぱねぇ」

勇者(11)「ぱぱになっちゃった、ぱぱになっちゃった、ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ」

側近「いけない、心の傷に触れてしまったようです!」

男「仕方ありませんね、ここはラリホー(物理)を」

魔王「やめてーっ!」



どっとはらい
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/09(月) 20:50:05.63 ID:lQJANtf5o
本日これにて終了。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 20:52:00.81 ID:nth6gZxIO
こういうの好きよ
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/01/09(月) 20:54:34.24 ID:aSTXZAjXo
貧乳の魔王たんぺろぺろ
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/01/09(月) 20:56:00.60 ID:O7ue6xpAO
クレイジーダイヤモンドかと思ったらもっとすごいものを見た
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/01/09(月) 20:56:27.20 ID:iFjP7TIFo
寺生まれってすごい。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 21:30:04.23 ID:4XG75suDO
改めてそう思いました。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:11:26.28 ID:0/7X97Sfo
幕間:男さん(寺育ち)のよくある日常


 一日目。

女「ち、小さい頃から! ず、ずっとあなたの事が好きでした! 
  私と付き合ってください!」

男「すいません、人違いです」

女「……え?」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:11:58.65 ID:0/7X97Sfo

男「ですから、人違い」

女「まーたまた御冗談を。幼馴染の顔を見間違えるなんて」

男「申し訳ありませんが、その幼馴染は貴女の空想の産物ではありませんか」

女「」

男「ではアルバイトがあるので自分はこれで」

女友「ちょっと待てーい!」

男「むむ、まさかの援護攻撃」

女友「あんたね、仮にも幼馴染に告白されたのに人違いだなんて
   冗談でも許されないわよ!」

女「そうだよ、そうだよ! 傷ついたよハートブレイクだよ謝罪と慰謝料で
  左手の薬指に装着する金属製のリングと婚姻届がほしいんだよ!」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:12:33.45 ID:0/7X97Sfo

男「すいません、バイト先の顧客にバストアップ体操の本と駅前ドーナツを
  届けないと今月のノルマ達成が激しくピンチなんですが」

女友「むむむ、強情な奴!」

女「……あれ?」

女友「どうした女。道に落ちていたタコでも食べたか?」

女「いつもだったら金髪縦ロールの留学生とか淫乱ピンクの巨乳生徒会長とか
  学生なのにメイド服の黒髪オカッパとかサムライガールが乱入してくる
  タイミングなんだけど」

男(マップ兵器を撃ちたいですね。識別機能オフで)

女友「そういえば、どういうことだ?」

男「自分の前方200メートルに、今おっしゃった外見の女学生が数名いますね。
  自分の兄と一緒に歩いているようです」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:13:10.84 ID:0/7X97Sfo

女「なん、だと?」

女友「……兄?」

男「自分は彼の弟です。昨年末まで県外の寺に住んでいましたので、
  残念ですが女さんの幼馴染ではありません」

女「そ、そういえば兄君はそんな能面っぽくないし血生臭くないし制服に
  謎の液体とか謎動物の体毛とか付着してたりしないッ!?」

女友「て、寺育ちって壮絶な人生送ってるのなぁ」

男「真っ向から否定できないのが悔しいですね」

女「むしろなんで今まで勘違いしてたのよ私のモストデンジャラス馬鹿っ!」

男「自己嫌悪されるのは構いませんが、先刻おっしゃった淫乱ピンクらしき
  女性が往来のど真ん中で制服を脱ぎ始めて兄に襲いかかろうとしていますよ。
  兄が警察に捕まる前に追いついて告白するのが得策かと愚考しますが」

女「な、ナイス判断! うおおおおおお、兄くうううん! わったしはぁ、
  一回のイベントで完オチするほど、ちょ・ろ・い・ぞおおおおおおおお!」

女友「なあ」

男「はい」

女友「こんな時、どうすりゃいいんだろうな」

男「バイト先のお得意さんの場合、腰だめに構えた右拳で解決してましたよ。
  自分なら布団かぶって不貞寝していますけどね」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:13:54.59 ID:0/7X97Sfo

女友「ところでさ」

男「はい」

女友「弟の目から見て、兄ってのはどんな奴なんだ? あたしは女ほど
   兄って奴を知らないから」

男「バイト先の店長が言うには」

女友「ふむふむ」

男「一昔前のライトノベルの主人公、だそうです」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:14:23.02 ID:0/7X97Sfo

 二日目。

男「女さんがめでたく告白に成功し、兄のハーレムに組み込まれたそうです」

女友「」

男「追尾自爆型幼馴染というのは古典的にして基本らしいので、簡単だったようですね」

女友「そんな基本がまかり通る世の中が憎い」

男「世の中そんなものらしいですよ」

女友「あんたそれでいいのか!? あの時しらばっくれたまま告白OKしてたら
   チョロいけど健気に尽くしてくれる美少女と付き合えたんだぞ!」

男「」

女友「なんだその『そこに気づくとは、やはり天才か』な間と表情は!」

男「女友さんってエスパーですか?」

女友「いや、あのけしからん乳をどうにかしたい野郎どもが学校に沢山いるからな。
   男もそうだとは正直思いたくはなかったけど」

男「下校時のコート姿では体型なんて分かりませんよ」

女友「それもそうか」

男「それと女性の体型について余計な事を言うなんて命知らずな真似は自分にはできません」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:14:51.21 ID:0/7X97Sfo


王妹「寄せて上げようにも余分な肉すらないとは、質素倹約を美徳とする姉上らしいなあ」

魔王「ぐぬぬ」

側近(困った、今のサイズだときつくて入らない)



男「偉い人はそこが解ってないんです」

女友「なにその実感こもった発言」

男「まあ、兄は確実におっぱい星人ですから安心して下さい」

女友「ちっとも安心できんわ」

男「あと2年も経てば合法的に結婚も出産もできる年齢と立場ですし、付き合い始めた
   二人が多少先走ったところで自分には関係のない話ですし」

女友「ううう」

男「むしろ兄の主人公属性から察するに、既に一線超えてても不思議ではありません」

女友「昨日の今日だぞ、おい」

男「女さん、チョロい人ですからね。告白して4コマ目で脱いでいたかもしれません」

女友「いやいやいや。コンビニで売ってるエロ漫画のヒロインだって
   もう少し慎ましい性格だぞ?」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:15:25.55 ID:0/7X97Sfo


女「――まだ、何か挟まってるような。ううう、歩きづらい」ひょこっ、ひょこっ



男「あうとー」

女友「うわああああああっ(バキっ)」

男「痛いです」

女友「あいつの頭には、脳味噌の代わりに何が詰まってるんだあ!」

男「……ういろう?」

側近「股ぐらにナニが詰まっていたのかは容易に想像できるのですが」

女友「あいつは先週までキーボードの『H』を無意識に連打したり、国語辞典の
   卑猥な単語に蛍光ペンで強調するような奴だったんだぞ!」

王妹「いやあ、それは素質十分じゃな」

男「ですよねー」

女友「って、ごく自然に会話に参加しているんだが誰だこの外人さんは!」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:16:00.53 ID:0/7X97Sfo

側近「これは失礼。あー、あー、あー。ワッターシハー、にほんハジメテーデスウ、
   ちちバンドー、ウッテルトコーロ、オシエテクダサーイ」

王妹「オパーイ、オパーイ」

女友「さっきまで流暢な日本語話してたじゃねーかっ!」

男「はて、お二人がこちらに来ているということは」

側近「先日の健康診断の結果が芳しくなかったため本日は休業となりました」

王妹「折角だから新しい下着とストッキング類の調達に来たのじゃ」

女友「は、はあ」

側近「というわけで男さん、私達はこれで」

王妹「やはり今年も姉上の栄養は脳味噌にしか廻らなかったな!」

側近「黙秘権を行使させていただきます」

男「……」

女友「……」

男「とまあ、兄は主人公体質で」

女友「表紙にR−18とか書かれてそうな主人公だな」

男「本人としては007を目指しているそうです」

女友「ジェームズなめんなー!」

男(優男に見えて兄は自分も真っ青の出鱈目なんですけどね)

女友「うううう、ばかやろー!」

男「兄とうまくやっていくコツが一つだけあります」

女友「諦めて現実を受け入れる以外に方法があるなら教えてくれ」

男「」

女友「無力だなぁ、あははははは」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:16:34.04 ID:0/7X97Sfo

 三日目。

女「――アヘ顔Wピース……」

女友「うわあああああああああっ!(バキィ)」

男「とても痛いです」

女友「あいつの! あいつの近くで! モーター音とか聞こえたんだけど!
   それも複数!」

男「……落ち着いて自分の話を聞いてくれますか?」

女友「がるるるるるるるる!」

男「兄は、ライトノベルの主人公っぽいと以前話ましたよね」

女友「がるっ!」

男「人気のあるライトノベルって、同人誌もたくさん作られるそうですね。
   それも18禁の」

女友「」

男「見た目が良かったり、性格がチョロかったりするヒロインはそういう需要も
  高いそうで。まあ、そのドンマイ」

女友「ううう。女が誤解したまま男と付き合ってたら、あんな目に遭わずに
   済んだのに!」

男「女さんの境遇をなんとかしたいのなら、自分ではなく兄に直談判するしか
  ないと思いますが」

女友「ちくしょおおおお、兄ぃぃぃいいいいい! 清純だったころの女を、
   かえせえええええええええ!」

男「――南無三」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:17:04.05 ID:0/7X97Sfo

 四日目。

女友「……」ヴィイイイイイイン

男「おはようございます」

女友「お、おひゃ(カチ、カチ、カチ)ごにゃい、ま、ひゅううっ!!?」

男「」

女友「ち、ちがうろぉ。こんな(ギュイイイイイン)らめえ!」

女「んほぉぉぉぉお」

男「」

女友「み、みらいれえ! あらしのかお、みらいでほぉおおおおっ!!!?」

女「見てえ、はしたない、私の姿を見てええええ!」

男「これはひどい」

兄「うん」

男「兄」

兄「うん」

男「モシャス(物理)」バキィ
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:17:33.24 ID:0/7X97Sfo

兄「」

男「とりあえず歯ぁ喰いしばりやがりください。全力で殴るので」

兄「ま、待てブラザー。既に性転換を真剣に考慮せにゃならんほど股間を思い切り
  蹴り上げておいて、更に追撃があるのか」

男「何をおっしゃる。先刻のはモシャス(物理)ですよ、殴るのはこれからです」

兄「な、殴る理由を聞いてもいいかな」

男「殴った後に欠片でも脳味噌が残っていたらお話しますよ」

兄「兄ちゃんぜんぜんわからないよ!」

男「自分としても兄との間にこれほど倫理観の違いがあるとは思いもしませんでした(霧ッ」

兄「兄ちゃんとしても、純愛ルートで結ばれた筈の二人が一晩経ったらクリム●ンも
  真っ青の堕ちっぷりで驚きを隠せないんだがブラザアッー!!?」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 08:18:03.07 ID:0/7X97Sfo

男「兄にはですね。現時点で義理の妹が18人、親同士の決めた婚約者が48人、幼馴染が108人いるんですよ」

店長「ぱねぇ」

男「当然、実家は押し掛け女房だの世話焼き幼馴染などが合法非合法を問わず押し掛けてまして
  住む場所を追い出された自分は幼いころから親戚のいる寺で暮らしていたんです」

店長「御両親は?」

男「海外赴任だとかで、あと5年は戻ってこれないそうです」

店長「言いたくはないが、女の敵だね」

男「無自覚に色んなフラグを立てる体質なので、正義の味方の真似事をやってるんですよ兄。
  得難い人材らしいので女難は無視されているそうです」

店長「正義の味方なら、ウチの手伝いもやってくれないかなあ」



魔王「――こんな、こんなスライムもどきを胸に詰め込んでまで見栄えを優先させる
   世界など! 余が、余が討ち滅ぼしてくれるウう!」



店長「具体的には、アレ」

男「魔王さん胸パッド握りしめて何を絶叫してるんでしょう」

店長「矯正下着が役に立たないから最後の手段を教えただけなんだけど――お兄さん、
   呼んでくれる?」

男「信じて送り出した魔王様からアヘ顔Wピース決めたビデオレターが届きそうなので
   勘弁して下さい」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/10(火) 08:18:55.50 ID:0/7X97Sfo
どっとはらい。 間に合えば次は深夜に。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/10(火) 08:49:22.65 ID:bkuJDMFAO
性病になれコンチクショウとか思ったけど、主人公属性あるからならないんだろうね
なってもどうせ科学者キャラの娘が兄にしか効かない奇跡的な特効薬くれるんでしょ、もっとモシャス(物理)しろ
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/10(火) 09:53:09.53 ID:Vq2xbv0AO
良いな
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/01/10(火) 10:14:12.24 ID:aREJHTjAO
昼間っから前かがみになっちまったぜこの野郎
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/01/10(火) 11:24:27.62 ID:OtqwD5fz0
この兄はマダンテ(物理)を食らって爆散するべき
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/10(火) 12:29:40.87 ID:t8/1n+WAO
むしろ堕とされる過程を書けください
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 13:04:32.42 ID:mf+rfzJSO
主人公体質……なんだアダムか
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/01/10(火) 13:45:09.45 ID:3NnDPqEmo
女友も最初からフラグ全開だったな
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 15:04:54.86 ID:Me4YTqQIO
何が書きたいのか分からなくなったな
ただエロが書きたいならいいんだけど
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 17:06:59.15 ID:aE4+aEBwo
魔王もおなごなのか…?
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/10(火) 17:09:55.66 ID:u7K4jGkho
魔王=貧
王妹=巨
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/10(火) 17:27:03.08 ID:bkuJDMFAO
>>47
不覚にも経済状況かと思った
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:23:35.65 ID:eMOHvssZo
短いけど投下予定。

登場人物の簡単な説明とか、要る?
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:24:33.26 ID:eMOHvssZo

魔王「国内の意思統一を果たせたのは重畳だが」

側近「この開拓地で完全自給を果たすまでの食糧を、どこからいつまで
   買い付けるか。ですね」

王妹「野生のモンスターを適度に狩れば良いではないか」

魔王「肉や魚は、一応それで確保できるのだな」

側近「野菜や雑穀それに芋類がネックです。野生種の香草や食用可能な野草類の
   調査は進んでいますが、植物を主食とする魔族も少なくありません」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:25:09.27 ID:eMOHvssZo

王妹「やはり男に頼んではどうだ、姉上」

魔王「あ、あやつにどれだけ借りを作ったのか理解しているのか。叛逆して
   返り討ちに遭った暗殺者どもを無償で蘇生してくれたのだぞ?」

王妹「あー。なんか『王大人、死亡確認!』て叫んだ途端に蘇生してたな」

側近「本人いわくザオリク(物理)とのことでしたが」

王妹「ザオリク(物理)では仕方ないであるな」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:26:10.61 ID:eMOHvssZo

魔王「あのな。蘇生にかかるコストが洒落にならんのは良く分かっているだろう」

側近「レベルが上がるほど信じられない額を要求されますからね。精霊神のとこは」

王妹「何代か前の魔王なんて部下の蘇生代を工面できずにゾンビ化させて誤魔化してた
   とも聞く」

魔王「今回かかった蘇生費用、精霊神の神殿でやったら我ら三名が娼館で百年頑張って
   完済できるかどうかという額だからな」

側近「」

王妹「別に娼館で百年頑張らずとも、男にまたがって三日三晩腰を振ったら
   帳消しにしてくれんかのう」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:27:04.61 ID:eMOHvssZo

側近「人身御供ですか」

王妹「将来性はともかく、借りっぱなしというのは性に合わん」

魔王「」

側近「魔王様、顔色が愉快なことになっております」

王妹「青いのか赤いのか白いのか黒いのか」

魔王「い、いや。さすがは余の妹、国難に際して自らの身を差し出すとは
   貴族王族の鑑。天晴れである、と、うん。褒めようと思ったのだが、な。
   はははは」

側近「魔王様……」

魔王「うん。確かに魔中学一年生にしてAV業界に敵なしとまで讃えられた妹だ。
   脳髄にタンパク質の代わりにイチゴ味のフルーチェが詰まっていたとしても、
   余が関与すべき問題ではない!」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:28:12.55 ID:eMOHvssZo

王妹「姉上がなぜ涙をぼろぼろこぼしながら力説しているのか妾にはさっぱり
   理解できんのだが」

側近「おそらく魔王様ご自身も理解されていない感情かと」

魔王「これはだな! 可愛い妹を、恩人とはいえ慰み者として差し出さねばならん
   余の無力さを嘆いているが故の涙なのだ! 多分!」

王妹「姉上」

側近「魔王様、それは」

王妹「――男に抱かれるのは、姉上ではないのか?」

魔王「へ」

側近「ですよねー」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:29:24.07 ID:eMOHvssZo

王妹「姉上も独身じゃろ? というかバストサイズ0.75チハヤの姉上が合法的に
   二次元ドリーム文庫できるチャンスなんて、これを逃したら性転換して
   嫁を迎え入れるしかないというか」

魔王「へ、ふえ、ええええ?」

側近「これで相手が勇者だったら、魔王の立場上いろいろと問題がありますがね。
   なにせ男さんは勇者とも精霊神とも無関係ですから誰も反対しません」

王妹「別に減るもんじゃないしナー」

魔王「い、いやっ。純潔とか色々と大切なものを失うだろうっ!」

王妹「姉上」

魔王「な、なんだっ」

王妹「魔族で外見の劣化が起こりにくいとはいえ、その年で乙女というのは
   ユニコーンですら第七感の小宇宙に目覚めて蹴ってくる詐欺じゃぞ?」

魔王「せ、成長期だもんっ! まだまだ成長の余地あるもん! 年頃の乙女だもんっ!」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:30:37.66 ID:eMOHvssZo

側近「魔王様、年頃の乙女が三枚1ゴールドの木綿のぱんつを愛用するのはさすがにアレかと」

男「アレ?」

側近「ええ。女としての尊厳と申しましょうか。不意に訪れたチャンスを無駄にしないための
   最低限の備えとも言います」

男「やはり王族だから、そういう心構えが必要なんですか?」

王妹「まー、王族といえども閨の中では裸の獣である。そこに至るまでの過程で
   以下に雅に振る舞うかが貴婦人の格というものでな。木綿のぱ」

男「ぱ?」

魔王「ぱるぷんてっ(物理)!」

男「はぐわっ!?」

側近「おおお、必殺の右! やはり世界を狙える器です、魔王様!」

王妹「もう姉上だけでクーデターぶっつぶせたんじゃね?」

側近「夢見る乙女()でも、実力は魔王の称号にふさわしいものですから」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:32:20.27 ID:eMOHvssZo

王妹「ところで男が気絶しているのだが、どうする?」

魔王「ど、どどどどどうしよう。洗うのめんどくさいからって昔買った勝負下着とか
   カツオブシムシにあらかた喰われて捨てちゃったから、三枚1ゴールドの
   木綿ぱんつしかないのにっ」

王妹「おちつけ姉上。既に相手は意識を失っているからいきなり全裸で迫れば無問題じゃ」

魔王「そういう話をしているわけじゃない!」

側近「いえ、まさにその話をするタイミングではないかと」

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 23:42:30.19 ID:eMOHvssZo
どっとはらい。今回はこれにて。

魔王を可愛く描ければそれでいいやと思うようになったり。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/01/11(水) 00:57:23.69 ID:YE9S2mh7o
乙!
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 04:56:06.63 ID:Xt0Ce9bAO
魔王を下さい(迫真)
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/11(水) 09:08:18.38 ID:kwgo34Xno
場面転換が意味分からん
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/11(水) 10:07:02.26 ID:kFkrsA4Ro
>>61
だな、魔王とかといたはずなのに、いきなり日常?っぽくなったり
そこになんの説明もないから別のssが始まったのかと思った
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 10:35:41.16 ID:jqCA905jo
俺は王妹でいいよ^^
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/11(水) 11:03:43.69 ID:SAbePzLeo
誰か、一連の流れを軽く説明してくれー
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/11(水) 18:08:06.44 ID:+uqhRCMAO
魔界アボンで魔王が引っ越して来る
→穏健派と過激派の対立激化
→引っ越し蕎麦持って来た男が過激派の大半を倒しちゃう(ちゃんと治した)
→過激派トップの魔王妹がMに目覚める
→穏健派と過激派が和解
※男は魔王城の連中と友達になれたようだ

→仲間にレイプされトラウマを持つショタ勇者を男が拾い、魔王城へ連れてくる
※その後は不明

→男、バイトしたりする日常
→兄が、一人勝ちハーレムしてる
→モシャス(物理)
※いいぞもっとやれ男

魔王、男に恩返ししたい
→肉体的な話題に
→男「なにしてんの―?」
→魔王の右ストレート

多分こんな感じ
一話完結漫画みたいに読めば良いんでないかな?
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 23:40:43.75 ID:6RSBYw3i0
成る程、つまり「考えるな、感じるんだ!」って事か
兎に角>>1
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/12(木) 00:04:10.64 ID:AEpk3Uv6o
【はじめに】
>>65基本的にあるように各話完結方式でお読みいただけると幸いです。
試験的に今回よりサブタイトル等を挿入し、表現も変えていきます。
そのため極度に短いエピソードを重ねていく予定です。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/12(木) 00:04:41.57 ID:AEpk3Uv6o

+男さんの日常、魔王国(仮称)編+

 魔王国(仮称)における男の一日は、午後4時以降に始まることが多い。

男「時差ボケが厄介なので、転移門の時間軸を揃えてもらっています」

 男の居住地は、この世界にはない。
 魔王城の中庭にある一軒の小さな木造平屋建ての家屋に設置された転送門から
通勤してくる。ガッコウという機関から直接来るためか、黒色の軍服じみた
ガクセイフクに身を包んでいる事が多い。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/12(木) 00:05:10.59 ID:AEpk3Uv6o
男「校則の規定では黒の詰襟なんですが、兄は何故か白ランで日本刀を常備してますね」

 ちなみに瓦葺の木造家屋は魔王城に存在しない様式の建築物であり、男が言うには
泊まり込みの作業する際の仮眠室を兼ねているとのことらしい。また転送門は限度こそ
あるものの双方向に起動できるため男の許可を得た魔王国の要人が男の所属する異世界を
幾度か訪ねてもいる。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/12(木) 00:06:04.41 ID:AEpk3Uv6o


魔王「毎度思うのだが、男は何故ここまで我らに尽くしてくれるのだ?」

 出勤の報告は大事だからと、男が最初に向かうのは魔王の執務室である。
 程良く異世界の文化に触れた魔王の執務室には伝統的な調度品と近代現代的な器具が
所狭しと並べられている。魔王本人もまた小豆色のジャージにどてらを着用、掘り炬燵の
上に旧式のデスクトップPCと羊皮紙を並べて財務記録の確認を行っていた。

魔王「いや、そもそも男は何の理由があってこの世界に来たのだ?」

 魔王本人としては真面目な問いかけのつもりではあっても、駅前ドーナツの箱を受け取り
バターとシナモンの香りに頬緩ませては台なしである。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/12(木) 00:07:10.28 ID:AEpk3Uv6o


男「ええと、ですね」

 慣れた手つきで急須に煎茶の茶葉を放り込みながら男は珍しくも眉を寄せて唸る。
 身の丈30メートルを超える巨大ゴーレムを前にして無表情のままニフラム(物理)を
放つ普段の姿からは予測できなかった反応に、魔王は思わず身を乗り出した。

魔王「やはり深刻な理由があるのか」

男「理由そのものはシンプルなんですよ。三行で説明できるくらい」

魔王「頼む」

男「自分の世界のとある人物が、魔界を支える女神達を寝取った。
  魔界の主神が逆上して件の人物を襲ったが逆に倒されてしまった。
  精霊神が責任とらされてこの世界に魔界民を避難させて自分が尻拭いに来た」

魔王「」

男「なんでも『君のような女神に、ずっと傍にいてほしい!』と熱烈にプロポーズして
  相手もうっかり承諾したそうです」

 思考が停止した魔王を前にうんうんと頷きつつ、男は煎茶を湯呑に注いで魔王の
前に置いた。

魔王「なんじゃそりゃあああああ」

男「自分もそう叫びました」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/12(木) 00:08:51.58 ID:AEpk3Uv6o


 眉を寄せたままの表情で、しかし声に感情の起伏なく男は言う。

男「本来なら代役を用意して魔界を復活させるのが筋なのですが、そこまでの
  権限は自分達にはないので移住先のフォローを行おうというのが
  自分達の世界の出した結論です」

魔王「男は、その結論を出した連中の配下ということか」

男「ええ、まあ」

魔王「?」

 珍しく言葉を濁す男に、はてと首を傾げる魔王。しかし湯呑の茶をすすり

魔王「貴様の望む時に教えてくれれば良い」

 と微笑んでみせた。
 過去の真実がどうであれ、未知の大地に新しく国を造り直すと決めた魔王である。
 世界の消滅に巻き込まれなかっただけ自分達は幸運であったとさえ考えていた。
 次の発言を聞くまでは。

男「女神を寝取ったのって、自分の兄なんです」

魔王「貴様の身内かああああああ!」

 教科書に乗せたくなるような美しいフライングニーアタックでした。
 一部始終を目撃していた側近は後にそう語っている。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/12(木) 00:10:56.28 ID:AEpk3Uv6o

 という感じて短いですがエピソード投下でした。
 
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/01/12(木) 00:37:39.02 ID:T8pt0LQNo
(`・ω・´)ゞ 乙であります!
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/01/12(木) 01:23:05.87 ID:hosflwZTo
兄爆発しろ
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/01/12(木) 01:30:36.41 ID:77izVBPUo
兄はなんで帯刀してるんだよwwww乙
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/12(木) 04:58:13.99 ID:gjKFGZLco
フライングニーアタック(物理)
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 19:27:10.87 ID:PQ8CjT6mo
流石に兄貴にニフラム(物理)かまそうぜ…
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/12(木) 20:25:28.28 ID:wNi4M5F00
マダンテ(物理)だろ
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/13(金) 00:15:06.39 ID:exAoqvHvo
それでは短いですが投下します。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/13(金) 00:15:46.22 ID:exAoqvHvo

+男さんの魔王国での日常〜外交(物理)編+


 魔王国(仮称)のある世界には、当然だが先住者がいた。
 知性の高い者、そうでない者。人に近い者、モンスターに近い者。
 それらの種々の民が集い、あるいは争って幾つかの国を造り
繁栄と滅亡を繰り返してきた。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/13(金) 00:17:09.34 ID:exAoqvHvo


男「現在こちらと交渉の窓口を設けてくれている大国は
  この国から見て東西南北に一つずつあります」

 魔王の執務室。
 どこから入手したのか、ひどく精巧な世界地図を卓袱台の上に広げて
男が魔王相手に説明を始めた。側近に王妹の他、内政を担当する半魚人の大臣も
控えている。

魔王「友好的なのは、どの国だ?」

男「南の国を除けば、静観の姿勢を保っています。事情は伝わっていますし
  事前の交渉(物理)もそれほど問題なく」

魔王「ちょっと待て」

男「はい」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/13(金) 00:26:07.98 ID:exAoqvHvo


 空気が凍った。
 側近と大臣の表情がこわばり、王妹はほほうと目を輝かして身を乗り出す。

魔王「いま、なんと言った?」

男「魔界消滅の事情については精霊神から各国に伝わっていると」

魔王「その後だ」

男「魔王さんたちが転移してくる前に、各国の首脳陣に会って簡単な説明と
  今後の方針について条件を煮詰めていました」

魔王「交渉(物理)とは何だ」

 そうなのだ。
 たとえ危険なモンスターが多数生息する地域とはいえ、仮にも魔王と呼ばれる
者とその国が出現したのだ。周辺国から何らかの動きがあってしかるべきだったのだ。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/13(金) 00:26:51.86 ID:exAoqvHvo


男「話し合いをした幾つかの国から、皆さんを奴隷という身分でなら
  引き受けるという返答をいただきましたので」

 感情の起伏を感じさせない声だが、だからこそ怖い。

男「遺憾の意(物理)を表明しましたところ、対等の友人ということで
  受け入れていただいた次第です」

 沈黙が執務室を支配する。
 男が各国の大臣いや下手をすれば王族を相手にいかなる交渉を実行したのか
容易に想像できてしまったのと――自分達も最初どのような目に遭ったのかを
克明に思い出してしまったからだ。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/13(金) 00:28:21.04 ID:exAoqvHvo

大臣「男殿、東西北国の事情は理解した。では南国の現在について教えて
   くれないだろうか」

男「南国はですね」

 一呼吸、間が空いた。

男「女神の再来と呼ばれるほど美しく頭脳明晰だけど野心家でぽんこつな姫君が
  半年前に王位に就いたのですが」

王妹「なんかもうオチが見えたぞ妾」

男「先週、南の国に兄と思しき」

魔王「よし、解散」

男「今朝ですね、自分の下宿先に一通のビデオレターが」

側近「男殿、血涙流すほど辛いなら縁を切るなり処罰するなりされてはどうですか」

男「今まで何回も死んでいるんですけど『新しいシリーズ』が始まると
  人間関係もリセットした状態で復活するんですよ。兄は」

王妹「」

大臣「男殿の兄君は、いかなる存在なのですか」

男「血縁であることを呪わしく思う相手には違いないですね」

 このようなやり取りを経て。
 魔王国はその外交方針を「みんな仲良く」に定まったという。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/13(金) 00:29:16.04 ID:exAoqvHvo
投下終了。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/01/13(金) 00:38:41.99 ID:PgWhTADn0

てか、兄のハーレムはもういいから主人公のハーレムをだな…




あれ?主人公って男だよな?兄じゃないよな?

兄の方が主人公補正持ってる気が・・・
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 01:06:16.53 ID:as/3FOHSO
つまり兄にはモシャス(物理)しても次週には元通りか
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 02:20:34.81 ID:TQSACP4zo
これ終わったら兄サイドも読んでみたいなと思ったけど毎回バッドエンド迎えるんだよな
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/13(金) 02:29:36.94 ID:vySdQUVAO
どんな悲惨な死に方しようと、どうせ何百人分もの幸せを常に得て且つ復活するんだ
プラス過ぎて貯金どころか大型定期組めるな兄[ピーーー]
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 04:58:24.26 ID:SjPvlU2DO
遺憾の意(物理)ってなんだ!?
男は何をしたんだwwww
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/01/13(金) 05:37:20.96 ID:X5hpkpYjo
臭い
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/01/13(金) 05:40:27.97 ID:X5hpkpYjo
誤爆しましたごめんなさい
だってあいつらうんこうんこうっせーんだもんよ
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/13(金) 12:32:22.10 ID:ES7fOChto
>>93
わかったからそのスレ晒せ
俺がうんこしにいくから
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/13(金) 21:25:16.63 ID:YjJX39Lqo
+人物紹介その1・男+

寺育ちの男。イニシャルは多分T。Tはおそらく「てつを」のT。
育ての親である和尚は、きっと声が森川智之。和尚の得意技はボルテッカとリボルビングステーク。
初恋の時分より、好意を寄せる女性がことごとく兄とフラグを立て寝取られていった。
そのため恋愛感情を抱くだけ無駄だという境地に達している。
肩書上は高校生だが『転校生』でもある。
本来は真女神転生な世界観でスパロボのユニット並の詐欺スペックで暴れ回る仕様のため
牧歌的なファンタジー世界では慣れぬ交渉事(物理)に悪戦苦闘しているらしい。



+人物紹介その2・兄+

男の兄。男いわく「昔のライトノベルの主人公」。
主人公属性とフラグと御都合主義で構築された「ぼくのかんがえたかっこいい主人公」。
ヒロインや敵が現れる度に「実は●●だったのさ!」という驚きの隠し設定が明らかになる。
そのため主な武道系の全国大会で優勝経験があり、同時にバイオリンやピアノコンクールの
全国的な入賞者だったり、実は売れっ子週刊少年漫画家だったり、高校生にして芥川賞候補の
小説家でもある。あかほりさとると両澤千晶と吉岡平のどうしようもない部分を抽出したような感じ。
なお上記の設定は兄が飽きたり「次のエピソード」に突入するとリセットされてしまう。


本編は深夜に。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/14(土) 00:46:05.09 ID:WI2CdrGLo
まだ・・・深夜じゃないのか・・・
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/14(土) 00:54:14.84 ID:wTSNHU7mo


+幕間・突撃となりの晩御飯(物理)その1+

 荒野の一画が緑に覆われている。
 地面を這うのは大小様々な蔓で、太いものは木質化してさえいた。
近くに水源があるのだろうか、葉は瑞々しく、赤紫の花からは甘い匂いが漂っている。

男「葛という植物に似てますね」

大臣「葛ですな。正しく」

 奇怪なものを見たという衛兵の報告で城より離れた荒野を訪れた男と半魚人大臣は、
堅い土の上で繁茂する葛の群生に圧倒されていた。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/14(土) 00:55:08.12 ID:wTSNHU7mo


大臣「荒れた土地でも育ちますからな。我らも人界より持ち込んだ葛を育てて家畜などを育てて
   おりました」

 草食主体の魔族にとっては貴重な食料でもあります、と大臣は言う。
 おそらく荒野に住まう大小様々な草食動物もこの葛を餌にしているのだろう。凶暴な大型
モンスターが多数生息するということは、その餌となる動植物がそれなりに存在する事になる。

大臣「にもかかわらず、この葛はどんどん拡大しているようですな。今は城より遠い
   ですが城下の街に届くのも時間の問題でしょう」

 土地が豊かだと、葛は有益を通り越して脅威となる。旺盛な繁殖力が仇となるのだ。
大臣はその辺りも熟知しているのだろう。いや、最初に報告をした衛兵も知っていたのかも
しれない。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/14(土) 00:55:41.23 ID:wTSNHU7mo


男「自分の故郷のものより繁殖力が旺盛みたいです。土地のせいなのか、そういう
  系統なのかはわかりませんが」

大臣「毒ではないのですから、有難く使いましょう。葛粉の餅は魔界でも好まれた嗜好品です」

 理不尽で暴力的な魔界のイメージからは随分とかけ離れた食べ物の名に男は正直
戸惑ったが、執務室でこたつむりと化している魔王の姿を思い出して納得した。

男「以前から魔界は他世界との交流があったようですね」

大臣「勇者の大半は異世界から召喚されますからな」

 まさか自分達が異世界に追い出されるとは予想できませんでしたと苦笑しつつ半魚人大臣は
男の言葉を肯定した。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/14(土) 00:56:42.92 ID:wTSNHU7mo

大臣「芋と豆の導入で飢餓より救われた者が多いのは、世界を問わぬようですな」

男「人の生き血とか精気を糧にする魔族もいますよね」

大臣「おりますが、そういう者は人間に依存しているので魔界には住めませんな」

男「なるほど」

 大臣の指摘に男は手を叩く。彼らの故郷だった魔界は、男が知る「魔界」とは根本的に
異なる存在のようだ。そもそも魔王からして瘴気ではなく石鹸の匂いがする。
バイト先の店長の話を信じるのなら、彼らはあくまでも魔界に住んでいるから魔族と
呼ばれているだけの存在らしい。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/14(土) 00:57:16.02 ID:wTSNHU7mo

 その頃、魔王城では。
 男が持ち込んだ二種類のチョコレート菓子を巡って深刻な対立が発生していた。

魔王「ちょっと待て、余の出番ここだけか!?」

王妹「ところてんを辛子酢醤油で喰う姉上だから、ヒロインの座から転落するのじゃ!」


 その2に続く予定。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/14(土) 00:59:05.23 ID:wTSNHU7mo
今日はここまで。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 01:01:25.10 ID:oIG9zDm9o

大臣が意外といい味だしてる気が
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 10:37:54.75 ID:KY3wuM3/0
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 01:32:13.01 ID:rJMMGMydo

+人物紹介その3・半魚人大臣+

魔王国の内政を担当する大臣の一人で、水棲魔族を束ねる。水棲魔族にしては珍しく淡水域出身で
水草や水辺の植物が好物という変わり種でもある。
大臣級の魔族は他に「陸」と「空」がいる。陸の魔族は軍を指揮し、空の魔族は親衛隊を構成している。
クーデターに最後まで反対していたため当初は拘束されていた。陸の魔族は中立を表明し、空の魔族は
魔界崩壊時に行方不明となっている。





+人物紹介その4・南の国の女王+

女神の再来と呼ばれるほど美しく頭脳明晰だけど野心家でぽんこつな姫君。
東西北国が魔王国と早々に国交を樹立したのを野蛮とみなしており、魔族すべてを支配下に置こうと
軍隊を手配していた。
兄が説得(物理)しなかった場合、高確率で南国はb釣り的に消滅していた。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 01:33:25.47 ID:rJMMGMydo


+幕間・突撃となりの晩御飯(物理)その2+


 今は滅んだ魔界において、光は文字通り貴重な資源だった。
 空はあれど太陽が無い。
 星があれど太陽が無い。
 主たる創造主が支え女神達が光と熱をもたらしたが、晩秋の曇天のように
薄暗く肌寒い空気が魔界の自然であった。
 弱い光に育つ草もある。
 地熱や独沼の硫化水素を源として生命を維持する生物もいた。が、およそ
植物に分類されるもの――なにより精霊に属するものにとって十分な量とは
いえなかった。魔界に起源を持つ生物ならば環境に適化して反映しただろうが、
僅かな適応種を除けば大多数の生命は「どこの世界にもいるもの」だった。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 01:34:08.28 ID:rJMMGMydo


魔王「だからこそ魔界が消滅して異世界に放り出された我々が、こうして
   生きていけるわけだが」

 執務室で繰り広げられている悲惨な争いを目視したくないのか、歴代の魔王が
記したであろう備忘録に目を通しつつ魔王は小さい声で呟いた。

魔王「こうして太陽の光で満ちた世界では、余の仕事の大半が意味を持たない」

男「そうなんですか」

 執務室に積まれた書類の山を一瞥し、はてどの仕事を指しているのかと男は考えた。
 戦闘、ではなさそうだ。
 他を圧倒する力があれば、そもそもクーデターで命を狙われたりはしない。
 執務能力は現在最も必要とされている仕事だ。都市計画と食料増産に加えて
防衛体制の強化と外交。それぞれ大臣や各種氏族が得意分野で能力を発揮して
はいるが、彼らに的確な指示を与え現状を把握できる人材は魔王の他に側近な
ど僅かしかいない。ちなみにクーデター勢力に御輿として担ぎあげられていた
王妹は乳に栄養が行き過ぎて行政能力は残念極まりない。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 01:35:03.98 ID:rJMMGMydo


魔王「王族はな」

 備忘録を読むことにも飽きたのか、視線を男に向け魔王は軽く手を振った。
 呪文を詠唱した訳でもないが、彼女の掌に力が収束し、林檎大の暖かな光の珠が生まれる。

魔王「こういう小細工が得意なのだ」

男「ひかりのたま、ですか」

魔王「おお。これで村一個分の畑が一年保つ光と熱になる」

 この地ではもはや意味のない特技だが。
 昔話でも語る様に苦笑し、魔王は光の珠を握りつぶした。

魔王「太陽のある世界ならば、余がいなくともやっていけると思ったのだろう」

男「急進派の皆さんが揃いもそろってぽんこつなのは十分に理解できました」

魔王「そうか?」

 頭を抱えている男を、魔王は不思議そうに見ている。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 01:36:08.41 ID:rJMMGMydo


魔王「まあ、ぽんこつなのは事実だがな」

王妹「きのこの山こそ至高、たけのこ厨は去れ!」

側近「おやおや、現実を直視されぬとは王妹様はやはり残念極まりない御方ですね」

 ぐぬぬぬ。と。
 普段ならば感情を表に出すことのない、執事然とした立ち居振る舞いの側近が
珍しくも八重歯をむき出しにして王妹といがみ合っている。相手が魔王の妹でな
ければ手袋を叩きつけて短剣を引き抜いてもおかしくない程だ。

王妹「カリカリのビスケット、ねっとりしたチョコレート。相反する二つの食感を
   敢えて組み合わせる事で口中に未知の感覚を生み出したこの菓子がどれほど
   革命的なのか! サラシで胸を締めつけても、やはり貴様もオツムに十分な
   栄養が届かなかったと見えるな!」

 ぬふふん、と。
 勝ち誇った態度ではあるものの、王妹もまた額と胸の谷間に青筋浮かべている。
隙あらば自前の麻縄で側近の執事礼服をスクルト(物理)し、未知の世界に誘おう
という姿勢が窺がえる。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 01:37:24.71 ID:rJMMGMydo


魔王「貴様はどちらのチョコレート菓子が好きなのだ?」

男「自分は和菓子派ですが」

 強いて言えば。
 と、男は己の世界より持ち込んだ物資の山より菓子を一箱取り出した。ポッキーと記されたそれを二人の前に置く。

男「選ぶなら、これですかね」

 氣を込めれば飛び道具としても暗器としても使えるので便利なんですよ。
 王妹と執事の争いで砕けた壁の石材を食パンでも刻むかのようにすぱすぱと
男の持つポッキー(イチゴ味)切り落としていく。
 仕上げとばかりに棒手裏剣の要領で窓の外に投擲すると、飛んでいた野鳥の頭部を貫通すると共に砕け散った。
直後に羽毛が衝撃波で吹き飛び、あとは内臓を取り出して焼くだけという状態で地面に落下する。

王妹「な、なんじゃーっ! 男がポッキーを振り回したら大理石がスライムみたいに
   真っ二つになったりプラズマ化して飛んでいる鳥に命中しおったぞーッ!?」

側近「ま、まさかアレは中国拳法で言うところの霊坐?武霊威怒!?」

王妹「知っているのか雷電ッ!!?」

男「いやそんな武術ありませんがな」

 こうしてグダグダの内にきのことたけのこ陣営による魔界最終戦争はなんとか回避されたのである。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 01:38:24.65 ID:rJMMGMydo
 本日ここまで。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/15(日) 01:55:51.80 ID:hwyDL3goo
乙!
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/15(日) 03:58:41.58 ID:q9+OMD60o
どうやら俺は王妹の下につくべきらしい
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 08:20:14.48 ID:Ae4Khq2DO
どうやら俺の天職は側近の補佐のようだ
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 12:15:08.08 ID:po3Z7/Eno
どうやら俺は男に掘られる運命らしい
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/15(日) 19:21:15.59 ID:ldf7EonC0
どうやら俺は魔王と夜を共にする宿命にあるようだ
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 19:28:40.93 ID:i/i4INOIO
>>113-116 スクルト(物理)
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/01/15(日) 21:19:30.81 ID:v7ifg5Gwo
>>117
なんか鎧でも着せそうな魔法だな、それ
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 22:35:22.52 ID:1T43rSjro
>>118
ヤクルト(物理)
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/15(日) 22:40:52.28 ID:KP+gpb3AO
乳酸菌が町内環境を整えてお通じをよくしてくれます
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/15(日) 23:38:00.19 ID:YIX3JKb1o
>>120
乳酸菌の活動範囲広いな...
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 23:54:58.77 ID:vtkkgnnjo

+人物紹介その5・女+

現実世界(仮)において男の話が続く場合にヒロイン候補として用意されていた。
兄の自称幼馴染で世話焼き女房で自爆型ヒロイン候補。
実はこのお話は異世界でのファンタジー風話と現代日本でのオカルト風という
二つの舞台を行き来する男の物語だったらしい。非処女。開発済み。



+人物紹介その6・女友

本当は男の彼女になる筈だった人。たぶん兄に直談判している最中に水の代わりに
強烈媚薬キモチヨクナールEをうっかり飲んでしまってエッチしないと発狂死するという
状況下でやむを得ず大人の階段を飛び越えていってしまったとか、そういう背景の人。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/15(日) 23:56:07.87 ID:vtkkgnnjo


+やっぱ冒険(物理)でしょ+


 身も蓋もない話になるが、この世界に冒険者という肩書はあるが
職業としてのそれは存在しない。
 
王妹「浪漫のない話じゃな」

側近「一時期は冒険者制度というのを設けていたそうですが、廃止されたようですね」

 執務室のいつもの面々。世界情勢をまとめた資料を用意しながら側近が答える。

側近「今より十数年前、この世界に妖魔王を名乗る存在が現れて全生命の
   根絶と魔王および魔界主神召喚を試みたそうです」

王妹「あいたたたた」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 23:56:35.11 ID:vtkkgnnjo



 資料に添付された妖魔王(自称)の絵姿を見た王妹が思わず本音を口にする。

王妹「なんじゃこの装飾過剰で腕を真っ直ぐに伸ばすことさえ困難そうな鎧は。
   おまけに配下と思しき女どもの衣装は全裸より恥ずかしそ――姉上、ちと
   思うことがあるので革職人と仕立て屋を」

魔王「ラリホー(物理)」

 紅潮し興奮気味にまくしたてる王妹の顔面に金属バットが炸裂する。
 フルスイングで叩きつけられたそれは、常人なら肉は潰れ骨も砕け脳漿と眼球をまき散らして即死するレベルの一撃だった。
 が、そこは名ばかりの残念仕様とはいえ魔族それも王族の一員である。

王妹「姉上、そこは金属バットではなくハリセンを使うのが作法じゃぞ」

魔王「む、すまない。うろ覚えでマナー違反をしてしまったか、余の失態だ」

王妹「よい。古典ヨシモトの笑い文化は研究途上の代物じゃ。妾も映像などを
   集めておるが、池乃めだか師匠の笑いは理解できても松本人志は高尚
   過ぎるのかどこで爆笑すれば良いのか判断に困るほどじゃ」

 頼むから大川興業とWAHAHA本舗だけは手を出さないでほしい。
 そんな言葉を飲み込みつつ、側近は話の筋を元に戻そうとした。

側近「この妖魔王と配下のですね……えー、天魔三龍、人魔死将、獣魔五大騎
   という強大な」

魔王「側近。妹が過呼吸で倒れて色んな意味で危険だ」

王妹「――いっそ殺してたもれ」

 その後、献身的な看護により辛うじて王妹は息を吹き返す事に成功した。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 23:57:10.28 ID:vtkkgnnjo



 ほぼ同時刻。
 男は魔王国(仮称)の軍司令部にいた。
 内政を担当する半魚人大臣と共に訪ねたのは、いわゆる軍務を司る元帥であり歴代の王に仕えてきた軍人貴族の今代当主だった。

元帥「行方不明の同胞が見つかったと?」

 軍服に身を包んだ獅子頭の偉丈夫が、身を乗り出す。
 獅子頭の元帥。前線より退くのが厭で元帥の称号から逃げ回っていた軍人貴族は、
文字通り獣の王に相応しい目で男を睨んだ。

男「こちらが資料になります」

 気の弱い者ならば震えあがって意識を手放しても不思議ではない。
 獅子の眼光に睨まれつつ男は事務的に報告した。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 23:57:33.08 ID:vtkkgnnjo



男「消滅した魔界にあった生命は、精霊神の力で此処を含めて十一の異世界に
  送り込まれました。王国とは無関係に独立した野生種や王国とは別体系で
  社会を構成していた部族に関してはそれぞれの移送先で新しく生活すると
  いう意思確認を済ませています」

 あと精霊神は女性化させた上で兄の部屋で72時間耐久フルコース中です、と。
 その場にいる大半の魔族が理解できない単語を織り交ぜた説明が続く。

男「王国民と系類については、すべてこの世界に転移していました。ただ緊急
  事態だったため世界各地に分散して在地で拘束されていたようです」

元帥「拘束されて、いた?」

男「大半は国や集落で拘束されて事情聴取程度でしたが、一部は奴隷商人に
  捕まっていたようです」

元帥「む」

大臣「もっとも転移時に行方不明だった親衛隊員が奴隷商を蹴散らして同胞と
   幾許かの引きつれて合流したようだ」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 23:58:15.30 ID:vtkkgnnjo


男「東西南北の国に対しては交渉(腕力)の結果、親衛隊の行動を不問にして
  いただきました」

元帥「交渉(腕力)か」

男「さすがに外交の場で魔法を使うのは失礼かと思いました」

元帥「いや、素晴らしい」

 片眉を器用に動かし、満更でもなさそうに獅子頭は頷く。

大臣「問題は、親衛隊の連中が男殿を信用していない点です」

元帥「どうしてそうなった」

 どうしようもないほどの間が生じた。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/15(日) 23:59:04.94 ID:vtkkgnnjo


 大臣は咳払いをし、男は表情を硬くする。初めて見る男の動揺に
元帥はどうしたのかと怪訝な顔をするが、

男「南国の女王を説得してた兄が、そのまま親衛隊の隊長さんの処に
  行ってしまいました」

元帥「おお、例のベッドヤクザがか」

男「身も蓋もありませんけど、その通りです」

大臣「隊長にはいささか刺激の強い光景が繰り広げられていたそうで」

元帥「これだからレズビアンは」

 露骨に舌打ちをする元帥。
 隊長は同性愛者ではありませんが、夢見がちな乙女で魔王への崇拝が
常軌を逸しているだけですと男に耳打ちした。
 それは下手なレズビアンよりも始末が悪いと男は思ったが口に出す事は
せず、用件を済ませる事を優先した。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 00:00:27.29 ID:xdRdf9A2o

男「親衛隊の皆さんが信用できる方に、出迎え役をお願いしたいのです」

元帥「それで吾輩か」

男「もちろん理由があってのことです」

 それは、と男が言いかけて。

元帥「王族の異能を外の連中に知られると間違いなく大きな戦となる」

男「――はい」

大臣「良く御存じで」

 男は息をのみ大臣は目を丸くし、元帥は痛快とばかりに、がおと吠え
その後に忌々しそうに椅子に腰かけた。

元帥「冒険者とやらがな」

 吐き捨てる言葉に殺意がこもっている。

元帥「どこからか王族の力を聞き付けて、魔族狩りと称して侵入してきた。
   幾人もだ」

 おそらくは拘束された民が情報の重要性を理解せずに漏らしてしまったのか。

元帥「これでオシマイなのか、はてさて」

男「すいません急用ができたので数日不在となります」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 00:01:19.76 ID:xdRdf9A2o

大臣「御武運を」

元帥「守りは固めておく」

男「では」

 言うや男の姿は霞のように消え、それより数秒と経たない内に城下町の数か所と街外れの荒野に爆発が生じた。
 爆発の中心では、街にいるはずのない人間種族の悲鳴が混じっていたが、爆発がおさまった後には何も残っていなかった。

元帥「こちら側の神々が肉体を失って久しいとはなあ」

大臣「男殿の話では、適性の高い依り代を集めては現世への復活を試みるモノが
   善悪を問わずに大勢いるのだとか」

元帥「いざとなれば男殿の世界に送り込むか」

大臣「丁度よい大義名分になりますな」

 悪くないアイディアだと獅子頭と半魚人は手を叩く。
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/16(月) 00:03:25.62 ID:xdRdf9A2o




 身も蓋もない話になるが、この世界に冒険者という肩書はあるが
職業としてのそれは存在しなかった。
 今では、その肩書ですら口にしようという命知らずはいない。

男「失敬な。誠心誠意をこめて御話合い(物理)をしたダケデスヨ」

 具体的に何を行ったのか、男は決して口を割らなかったと王国の歴史書には
記されている。




本日ここまで。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 00:08:32.16 ID:1FMKGHf+o
おつ
兄は魂ごとさっさと滅却しなくちゃな
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/01/16(月) 00:19:26.38 ID:ipqgyHJp0

兄はもういらないから
そんなに重要なキャラなの?
これ以上ヒロイン増やしたら本気で邪魔
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/16(月) 00:23:22.94 ID:RtRmIXero
>>133
ヒロイン 物語の中心にいる女性

それヒロインちゃう。ただの[ピーーー]要員や
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/16(月) 00:33:49.81 ID:vz7jLOKZo
なんか、○○の物語の、とか、次の物語では、とか意味わからん……
どういう事だ?
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/01/16(月) 00:50:54.66 ID:ipqgyHJp0
>>134
失礼。兄ハーレムのヒロインって意味だった

モブだけならともかく主要キャラまで取り込むなら邪魔かなーって
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 22:13:24.36 ID:4U/JcLiwo
今日はのんびり投下、というか書きながら投下に挑戦してみます。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 22:23:59.82 ID:4U/JcLiwo

+悪のモンスター(物理)+

 魔王城を中心とした都市の再開発は、驚くべき速度で進められている。
 重機がなくとも怪力のモンスターがおり、魔法がある。
 火炎の魔法が煉瓦を焼き、水と氷の魔法が霧雨となって畑を潤し、風の魔法が荒れ地の雑草を
刈り取り細かく刻む。
 地に埋まる巨大な岩塊も爆裂呪文の一つで砕け、吹き飛ばされてしまう。
 それらの作業が化石燃料も木材資源も消費せずに行われるのだから、あきれるしかない。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 22:33:45.72 ID:4U/JcLiwo

 道を踏み固め石畳を敷き詰めるのは、ゴーレム職人の独断場である。
 腕力に自信のある魔族は岩塊を加工して石材を調達して好みの建築物を拵え、
そうでなくとも必要な施設――たとえば食堂や酒場など――は掘立小屋の状態から
営業と増改築を並行していた。
 ここは、そんな大衆食堂の一角である。

悪のドラゴン「聞いたか」

アークデーモン「聞いたとも」

 大型モンスター御用達の食堂は調度品が間に合わなかったため、客は床に座って飯を食う。
 かつてクーデターの際に魔王の命を狙った大型モンスターである悪のドラゴンとアークデーモンは
支援物資として送られてきたイワシの缶詰を自前の炎であぶりながら愚痴をこぼしていた。

悪のドラゴン「うちの魔王、実は神様だったらしいな」

アークデーモン「しかも太陽神に連なる光と慈愛の女神らしいな」

 言ってから、がっくりと肩を落とす二匹のモンスター。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 22:45:19.32 ID:4U/JcLiwo

悪のドラゴン「魔王じゃねえじゃん!」

 酸の涙をぼろぼろこぼしながら、ドラゴンが慟哭する。

悪のドラゴン「そりゃ魔界の国で王様やってんだから魔王って呼ばれても筋は通るけど、
         魔王ってのはもっとこう独裁者で我がままで邪悪で、誰かを苦しめたり
         征服した後の事も考えずに世界征服とか企む奴だろう!」

アークデーモン「魔王様このまえジーパンにエプロン姿で城の前庭で炊き出しやってたぞ。
          難民とかかなり来てるからな」

 親衛隊が離散していた自国民と共に帰還した際、人攫いに捕まっていた孤児や難民も
一緒に連れてきていたのは魔王国では既に広く知られている事だ。

悪のドラゴン「魔王が、エプロン?」

 息をのむ悪のドラゴン。

アークデーモン「ああ」

 同じく神妙な顔のアークデーモン。

アークデーモン「あの●チガイむっつり野郎の故郷でいうぽにぃてえるという髪型で、ヒヨコ柄の
          エプロンを着用していたぜ。ふふふ」

悪のドラゴン「ちくしょうなんで俺はその時いなかったんだよ!」
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 22:54:25.34 ID:4U/JcLiwo


アークデーモン「仕方なかろう。魔王様が世にも珍しい『肉体を喪失しなかった神』の一族と
           判明した以上、冒険者以外にも狙う連中は山ほどいる」

悪のドラゴン「それはわかるけどよー、正義とか愛とか普段口にしている奴らが血走った眼で
         襲ってきているんだぜえ。あいつら僧侶だろ確か」

 あれじゃあ、どっちが正義で悪なんだかわかったもんじゃねえ。
 悪のドラゴンは嘆き、硫黄臭いため息をつく。

アークデーモン「なにしろ魔王様の肉体を使えば、崇拝対象の神が完全復活するという話だ。
          邪神だろうが正義神だろうが関係なしに襲ってくるぞ」

悪のドラゴン「誇り高い悪はねえのか! 勇者に倒される誉を得るために、自身を鍛え抜き、
         勇者に対してのみ卑劣にも振る舞う悪のエリートはよお!」

アークデーモン「いない。諦めろ」

 気持ちはわかるんだがと告げ、アークデーモンもまた嘆息する。
 悪のモンスターを自称する彼らは、彼らなりの美学がある。いわく世界を救うような勇者が現れた時
その成長の糧となるような壁として勇者の前に立ちふさがりたい。
 自分達を倒す事で世の中の問題が解決できるように、ややこしい世界の仕組みをシンプルなものに
したい。
 そういった屈折した「悪」への思い入れが強い連中が、かつてクーデターを起こした急進派の中枢である。
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 23:10:22.37 ID:4U/JcLiwo

アークデーモン「大体にして勇者の一人がこの国で保護されているのはお前も知っているだろ」

悪のドラゴン「お、おう。まだケツの青いガキだよなアイツ」

 運ばれてきたまるごとのキャベツを器用に爪に引っ掛けてかじりながら悪のドラゴンが頷く。

悪のドラゴン「神の祝福を受けただかしらねーが、あんな年端もいかねえ餓鬼に魔王退治させる
        なんざ外道の所業だわな」

アークデーモン「アレな。魔王退治は二の次で、勇者の血を自分の国に取りこむ目的で貴族の令嬢を
          冒険者の格好させて一緒にいさせたんだと」

 阿呆だなーと毒づくアークデーモンの横で、悪のドラゴンが怒りに拳を震わせている。
 実を言えば悪のドラゴンと勇者(11)は面識があり、請われて戦いの訓練にも付き合っていた。

 
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/16(月) 23:15:08.84 ID:rvwXSXWAO
あぁ…だから仲間3人から性的虐待受けて無理矢理パパにされてたのか…
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 23:21:09.53 ID:4U/JcLiwo


アークデーモン「そんで、種がしっかりついたからって勇者は祝福された装備を没収されて
           貴族の令嬢どもの慰み者にされてたんだそうな。
           保護された時は水とレタス以外の喰いもん口にしたら吐くほどだったとよ」

悪のドラゴン「……むごいな」

アークデーモン「それを指示した大賢者様とやらは『それが正義を残すための唯一つの解
           なのです。大局を理解しようともしない愚物は退きなさい』つーて襲いかかった
           らしい」

 背後から。大賢者と呼ばれて先代勇者の懐刀と呼ばれた者が不意打ちをしかけたという。

悪のドラゴン「……男の、旦那にか?」

アークデーモン「ああ。マホトーン(物理)が炸裂したらしい」

 マホトーン(物理)という言葉に、いつの間にか聴衆と化していた周囲の客が騒ぎ立つ。
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 23:31:28.17 ID:4U/JcLiwo

悪のドラゴン「まほ、とーん?」

アークデーモン「マホトーン(物理)らしい」

 ごくり、と誰かが息を飲んだ。
 詳細はわからないが、決して触れてはいけないと本能が警告している。

アークデーモン「とにかく、だ」

 それ以上マホトーン(物理)に触れたくないのか。アークデーモンは咳払いをした。

アークデーモン「俺たちが誇り高い悪として振る舞うためには、誇り高い正義って奴を
          育成せにゃならん状況のようだ」

悪のドラゴン「本末転倒じゃねえか」
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 23:40:05.42 ID:4U/JcLiwo

アークデーモン「そうか? 魔王様が光の萌え萌え女神様だってきゅんきゅん判明した以上、
          魔王様の下で清く正しく勇者と仲間達を育成しちまえと思ったんだが」

悪のドラゴン「いや、あの餓鬼は戦いには向いてねえ。才能も覚悟もねえ」

 鍛練とやらにつきあった時の事を思い出し、悪のドラゴンは嘆く。

悪のドラゴン「アレはな。餓鬼だ。褒められたからって勇者になって、褒めてほしいから勇者で
        あることをに固執してる餓鬼なんだよ」

アークデーモン「そういうもんじゃないのか?」

悪のドラゴン「そんな勇者に倒されてやるほど、俺様は安くはねえ」
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/16(月) 23:52:28.43 ID:4U/JcLiwo

 言うや悪のドラゴンは立ち上がり、店員に勘定分の硬貨を押し付けると羽根を広げた。

悪のドラゴン「決めたぞ。あの餓鬼に正しい悪の道ってのを教え込む。勇者は廃業させる」

アークデーモン「ほう」

 それは面白そうだとアークデーモンは呟いた。
 国を転覆させるよりも、神の操り人形としての勇者に倒されるよりも、ずっと心が躍るではないか。
 そう思うとアークデーモンもまた悪のドラゴンと同じように勘定を済ませ、翼を大きく広げる。

アークデーモン「一枚、噛ませてもらおうか」

悪のドラゴン「好きにしやがれ」

 まんざらでもない顔で悪のドラゴンは嗤う。
 二匹のモンスターは食堂の天幕を突き破り、彼らの勇者の許に馳せ参じるべく空を駆けた。
 
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/16(月) 23:53:24.71 ID:4U/JcLiwo
今日の投下は以上。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 00:05:28.14 ID:PgAKQuESO
ふむ
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 05:05:29.26 ID:hJ1iH09DO
絵師は!絵師はいないのか!
ポニテのひよこエプロンした魔王をpleaseplease!
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/17(火) 07:37:33.77 ID:hOaOmd48o
魔王は響子さんか
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/17(火) 07:53:01.28 ID:PP1AZjpQo
>>151
乳は無いがな
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 10:09:41.63 ID:w5Ih4POno
>>150
絵師様()
絵なんていらないだろ、きもい
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/17(火) 16:39:14.93 ID:qlPVxM7AO
>>二匹のモンスターは食堂の天幕を突き破り、彼らの勇者の許に馳せ参じるべく空を駆けた。

まだちゃんと店も整って無いのに壊されるとは、店主涙目だな
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/17(火) 23:53:33.08 ID:c3QMCwe0o
番外編というか分かりにくいかもしれない話を投下予定
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/17(火) 23:56:26.27 ID:c3QMCwe0o
+用語説明・新シリーズ+

兄の特殊能力。死のうが消滅しようが人間関係が破綻しようが、新しいシリーズが始まると
全てリセットされて新規に物語が始まる。ただし兄の取得経験値およびスキルは持ち越され、
男もまた弟として経験値その他を持ちこし状態で新シリーズに連行される。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/17(火) 23:57:15.05 ID:c3QMCwe0o


+強くてニューゲーム(物理)+


 彼女は夢を見ていた。

 見ていて夢と分かる夢を、見ていた。
 夢の中で彼女は魔王に仕える側近ではない。アリウス系列銀河を故郷とする
ひとりのヒューマノイドであり抵抗勢力の女闘士でもあった。
 第一世界。
 真なる起源より来たと主張する武装集団がアリウス系列銀河に現れたのは
ほんの数年前のことだった。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/17(火) 23:57:44.85 ID:c3QMCwe0o


 文明発達の頂点を過ぎ、アリウスの民は緩やかな停滞と衰退の時代を迎えつつ
あった。若い血は更なる発展を求め、闘争に明け暮れる星系もあった。しかし
穏やかなる黄昏を迎えようとする星と民が大勢を占めるアリウス系列銀河は
平和という言葉を口にしても許されるほどであった。
 故に、第一世界からの侵略はアリウスの民にとっては予想外のものであり、
応戦の準備が整うまでに総人口の二割を喪失していた。反撃を開始してから
現在までに更に二割失われた。
 絶望的な戦いである。
 第一世界の目的は支配ではなかった。名も知らぬチキュウという星の古き神々を
自称する彼らはアリウスの民が信徒となりえないと理解するや、あらゆる知性体を
糧にし始めた。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/17(火) 23:58:14.55 ID:c3QMCwe0o


 第一世界の武力は、神秘だった。
 リュウシとナミで分析するカガクではなく、イシキとニンシキで作用するリリョク
と呼ばれるものだった。核爆発さえ封じ込める電磁障壁をすりぬけ、単分子装甲を
触れるだけで塩の柱に変換する。
 とらわれた知性体は感情という感情を爆発的に増幅され、それを得体の知れない
エネルギーに変換して取りこまれていく。衰弱死するならば幸運である。無制限に
増幅された感情が被害者の肉体に作用した場合、僅か数分で惑星表面を覆い尽くす
肉の海が生み出され――抵抗勢力はその大半の武力を肉の海に向けねばならなかった。
 対抗手段は、無きに等しい。
 滅亡を避けるために肉海と化した同胞を焼き滅ぼすだけのレジスタンス活動に絶望し
自ら命を絶つ者も少なくない。彼女自身、友を、家族を、灰にしてきた。故郷の街が
あった島状コロニーは動力炉の暴走と共に消滅している。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/17(火) 23:58:54.45 ID:c3QMCwe0o


 概念体と称する神々を滅ぼす技術はアリウスにはない。
 能力の高いサイキックが唯一対抗できると判明した頃には、彼らはすでに集中的に
狙われて壊滅寸前だった。
 生き残る道などない。
 誰もが諦めかけていた頃、唐突に転機は訪れた。

 第一世界の動きが明らかに変わり、拡大していた勢力は一点に集中した。
 肉海と化した知性体が元に戻り、神々を称する侵略者たちが蹴散らされていった。
 彼女は見た。
 ああ、これは夢なんだ。
 分かってしまった。
 奇怪な鎧を身につけた派手な象の頭を鷲掴みにしている、詰襟服の後ろ姿。
 無表情でありながら、象を掴む掌に青筋が浮かんでいるではないか。

男「貴様のように物理反射も出来ない物がギリメカラを名乗るとは笑止千万!
  帝釈天の産湯をつかって出直せい! 破ぁああっ!」

 裂帛の気合と共に放たれた法力で象を微塵に吹き飛ばすその姿は、彼女が良く知る
男の姿そのものだったのだから。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/17(火) 23:59:40.63 ID:c3QMCwe0o


 意識が暗転する。

側近「世界観台無しじゃないですかーッ!!!!」

 絶叫と共に側近は目を覚ました。
 そこは城に用意された彼女の部屋で、側近は身体にバスタオルを巻き付けた
状態で寝台に横になっていた。
 全身が熱を帯び肌が湿っていることから、自分が長時間蒸し風呂に入って
意識を失っていたのだと理解した。
 目の前には、冷水を満たした杯を持った魔王がいる。彼女も似たような姿であり、
側近が倒れてからそれほどの時間が経っていないことがわかる。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 00:00:09.06 ID:HxUEl0j+o


魔王「目が覚めて最初の台詞がそれかおい」

側近「あ。ナイチチ星人ずるぺったーん皇帝陛下、おはようございます」

魔王「よし貴様には全裸にヨーグルトと蜂蜜をたっぷり塗って砕いたナッツを
   まぶした後に夜の盛り場で2時間ぶっ続けでベリーダンスを踊る栄誉を
   与えよう」

 用語の意味はさっぱりわからないが、とりあえず罵倒されている事は察した
魔王がイイ笑顔のまま側近の首を締めあげる。仮にも幼いころからの付き合いで
適齢期を迎えても嫁に行かず魔王を補佐し続けてきた間柄であるからして、
多少の冗談は赦される仲なのは間違いない。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 00:00:51.50 ID:HxUEl0j+o


魔王「あれかー側近、貴様もアレか。その無駄に突き出て形の良い二つの膨らみが
   ファイヤーでボンバーで意中の相手の背中に押し付けてラッキー助平から
   始まる恋がナニして一撃必殺砲なのかそーかそーか」

王妹「いやー姉上、妾と側近の胸が豊かになったのは生活環境の激変の結果であって
   男殿に揉まれたとか吸われたとか注がれたとかそういう事はまだないから」

 まだ。

魔王「……予定は、あるのか」

王妹「勇者の例を見るに、逆レイプするのがこちらの世界の淑女の作法らしいからの。
   仮にも王族である以上は外交的に正しい振る舞いを身につけねばな!」

魔王「よーし魔王ちょっぴり本気出してこの世界を滅ぼしちゃうZO☆」

 その後、騒ぎを聞き付けて駆け付けた男が無表情のまま鼻血を吹いて倒れるまで
魔王の暴走(物理)を止められるものはいなかったという。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/18(水) 00:01:12.57 ID:HxUEl0j+o
本日ここまで。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 01:25:03.49 ID:dkL1ywWSO
一瞬何事かと
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 10:30:55.88 ID:82zBbf51o
おつ
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 18:49:13.69 ID:7PIk4AHro

今日は作りながら投下しますね。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 18:55:27.68 ID:7PIk4AHro


+告知(物理)+


 男が魔王の正体を告げたのは、魔王国より冒険者(自称)及びスパイの類を一掃した後だった。

男「魔王さんは、神と呼ばれた種族のひとりです」

 大事な話ですと事前にいわれ完全武装で待ち構えていた魔王は、完全武装したことを早くも後悔していた。
 なるほど大事な話だ。
 自分が魔王を名乗って魔王らしく振舞っていながら、その正体が神様だったという。本来ならばここで
驚くなり嘆くなり男の言葉を否定しなければならない立場のはずだ。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 18:59:33.66 ID:7PIk4AHro

 が。

魔王(やっべー)

 平静を装いつつ、魔王は混乱の極みにあった。
 朴念仁とまでは言わないものの家庭環境の苛烈さから恋愛感情から程遠い人生を送っているらしい
男である。万が一の事態が起こったところで、色恋沙汰に発展する話題にはなるまいと魔王も理性では
分かっていたはずだった。
 理性では。
 そもそも自分は男のことをどう想っているのか、その点すら魔王は己の感情を整理できずにいるというのに
周囲だけが異様に盛り上がっているのが現状だった。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 19:05:51.14 ID:7PIk4AHro


 まず暴走を始めたのは脳内ピンクだった。

王妹「逆レイプから始まる恋があったっていいじゃないか」

 前提からして間違ったことを口にしながら、それでも勢いづいた王妹は彼女なりに立てた綿密な
計画書を執務室の机に広げながら力説する。

王妹「適当な世間話→喉が渇きませんか→媚薬入りジュース→あれれー、身体が火照ってきたぞー
    →この状態を鎮める方法がひとつだけある→結婚を前提に逆レイプしてください!
    →その言葉を待っていた! →待って、そっちは違う穴アッー
    ……完璧じゃ!」

魔王「魔王チョップ」

王妹「冷凍マグロッ!?」

 フルスイングで繰り出された冷凍カジキマグロを眉間に喰らい、王妹は昏倒する。
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 19:13:57.31 ID:7PIk4AHro


 二番手は側近だった。
 先日蒸し風呂で倒れて以来、胸をきつく締め付けない衣装に切り替えたとのことだが
男いわく「まるでスペースオペラの登場人物ですね」と評されたそれは、城内の男達を
密かに興奮させるような刺激的なものだった。側近がそれを自覚しているかは不明である。

魔王「そもそもだ。男は兄の尻拭いのために我らを手助けしてくれているのだぞ。
    そこに邪な想いがこもっているとでも思うのか?」

側近「ただの親切心で接していたのが、やがて相手の人柄に触れて惹かれていく
    というのは古典に帰るまでもなく普遍の原理かと」

 わたしもですねー、銀河の中心に殴りこみかける時に全裸で迫っておけばよかったなー
なんて思ってるんですけどまあ前シリーズの話ですし。
 などと側近は言葉を濁しつつも力説する。
 そんな側近を冷めた目で見つつ魔王は尋ねた。

魔王「この場合、どちらが相手の人柄に惹かれていくのだ?」

側近「それはもう」
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 19:20:56.81 ID:7PIk4AHro


魔王「それはもう?」

側近「……どうしましょう、互いに惹かれあうような要素がありませんね」

魔王「指摘は正しいが、それはそれで不愉快な事実だ」

 なにせ男に対する魔王国および諸外国での評価はすさまじい。
 こいつこそ真の魔王、いやいや大魔王がこいつなんだ、俺たちの魔王様はあの超魔王の言いなりになって
日夜エロエロしく恐ろしい調教を受けているってはなしなんだぜ! なんだってー!
 という感じである。
 事実、この世界に現れた男が行った破壊の記録を見るに、どちらが魔王らしいかと民衆に質問すれば
百人が百人ともに男を指出すだろう。
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 19:32:33.92 ID:7PIk4AHro

 一方で魔王の評価も色々と凄まじい。
 実年齢の割に幼い容姿のために好戦的な魔族は以前より見下してくる節があった。
 魔王自身、戦闘に立つことよりも太陽のない魔界に光の珠を生み出して配り歩く事に
己の使命を見出していたし、それに伴って食糧生産や教育を重視し行動に移していた。
 歴代の魔王も好戦的なものは少数派だったが、官僚制度を取り入れて初歩的な
議会制度を導入しようとする魔王は歴代でも稀だと半魚人大臣は半ば呆れて評価している。

魔王「うん。少なくとも余は支配者としての適性は高いとは言えんしな」

 おかげで婿入りの話も来なかったしなと笑って自沈する魔王。

側近(婿候補を親衛隊長をはじめとする連中がが片っ端からハニートラップ仕掛けたり
    スキャンダル起こしたり別の女性とくっ付かせてましたっけ)

 背景事情を少しだけ知っている側近は、魔王の自爆に涙した。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 19:38:41.21 ID:7PIk4AHro


側近「ど、同情から始まる関係だってあるかもしれませんよ」

魔王「同情で」

 魔王は考える。
 同情から始まる愛というのは、相当に屈辱的ではないだろうか。
 いやいやまてまてと魔王は頭を振る。

魔王「貴様らは余と男をそんなにくっつけたいのか」

 そうだ。
 その点からしておかしいのだ、この話は。と、魔王は立ち上がった。

魔王「なぜ余と男が結ばれねばならんのだ!」

側近「では仮定の話ですが、私が男さんと結婚する場面を宮廷絵師に頼んで描かせたものが
    こちらに」

魔王「超魔王ヨーヨー!(物理)」

 側近が背後に隠し持っていた油絵のキャンパスに、魔王の両手から放出された電撃と鉄塊が炸裂する。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/18(水) 19:46:50.09 ID:7PIk4AHro


側近「あああっ、宮廷絵師が『すごいっすよエロス革命っすよ』と叫んだ初夜の場面が!」

魔王「超魔王た・つ・ま・き〜!(物理)」

 本気で慌てる側近の手元にある油絵の残骸に炸裂する、雷を帯びた小型の竜巻。
 生乾きの油絵はすぐさま着火して一瞬で燃え上がってしまう。

側近「な、なんて事するんですか魔王様!」

魔王「いやあ、その台詞はどちらかというと余が口にしないといけない気がするんだが」

側近「も、妄想するのは自由じゃないですかっ! そもそも男さんはまだ特定の相手がいる
    訳じゃないんですから!」

魔王「それを言ったら貴様は男とそういう関係に至りたがる理由がさっぱりわからんから
    説明してほしいのだが」

 割と本気で涙目の側近の様子に、さすがの魔王も罪悪感を抱く。
 ふう、と側近は目を伏せ、こう呟いた。

側近「つい先日ですね、魔界高校の同級生から手紙が届いて――結婚していない女子、もはや
    私と魔王さ」

魔王「超魔王スピイイイイイイイン! ついでに魔王ダッシャー!!!(物理)」
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 19:54:09.27 ID:7PIk4AHro


 容赦のない一撃が側近を吹き飛ばした。
 が、その一言で魔王も色々と現実を直視する余裕を取り戻したのは皮肉な話である。
 恋愛感情は錯覚かもしれないが、婚姻とはそもそも妥協の産物でもある。
 そう、同情などではない。
 将来に向けた人生の投資、あるいは対外的に魔王国が盤石であるとアピールする為には
自然災害級の物理攻撃翌力を誇る男と婚姻を結ぶというのは貴族社会としてはおかしくもなんともない
話ではないか。

魔王「うん。貴族社会とは残酷なのだ、夫にする相手を選ぶ自由など存在しない」

 こうやって自分を騙し続けているから現在の状況になっているんですよと。
 そう言ってくれる相手は超魔王スピン(物理)からのコンビネーションで戦闘不能になっていた。そのため
原因と結果が逆転した形で暴走を始めた魔王の様々な行動を止めてくれる奇特な者は、午後4時以降に
なるまで城内には現れなかったのである。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 20:02:16.96 ID:7PIk4AHro


 かくして魔王は現実に戻る。

男「神と言っても、その実態は様々なんです。知性体の概念が一個の人格を得たものや、自然現象に
  人格を与えたものが昇格して神の域に達したものもいます」

 魔王の事情など知らぬ男は、魔王が己の出自にショックを受けないように、男としては出来うる限り
穏便な表現を選んで説明を続けていた。

男「魔王さんに近しいのは、自分の故郷だと古代ギリシアの神話に出てくる神々と思われます。
  彼らは自然等の具現者でありながら、同時に肉体を有した一個の種族として認知されていました」

魔王「あー、へー、うん。スゴイナー」

 男はあくまでも誠実だった。
 ギリシアの神々を例に出したのは、その誕生経緯がどうであれ立場と振る舞いによって正義とも悪ともなり
同時に人間のような俗っぽさを備えた超越者が存在することを魔王に伝えたかったからだ。
 肉体を有する神は、信仰の力で己の存在を保持する必要はない。信仰を得るために他者を傷つける必要もない。
魔王は今まで通り魔王として生きていっても全く問題ないと知ってほしかったのだ。
 その誠実さが、魔王の(薄い)胸にぐさぐさと突き刺さる。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 20:17:13.60 ID:7PIk4AHro


男「注意してほしいのは、肉体を捨てた神が魔王さんに憑依する場合なんです」

 そんな魔王の内面状態を知らぬ男は、ここからが本題ですよと強調した。

男「万が一どこぞの神性が魔王さんの肉体を支配した場合、存在維持に廻していた
  エネルギーが余るんです。強大であればあるほど、その度合いは凄まじいものに
  なります」

魔王「ソッカー」

男「伏せておく事も考えましたが、新シリーズが始まるまでに事態が根本的に解決できないと
  こちらの上層部でも判断しましたので告知に踏み切りました」

魔王「あー、うん。新シリーズ始まるんだ」

男「はい」

 表情を変えず男は肯定し、生返事をしていた魔王は凍りついた。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 20:31:31.81 ID:7PIk4AHro


男「次のシリーズがどこでいつ始まるのかはわかりません」

 ですが、と。
 男の声が上ずっていた。
 魔王は、男の顔を見る事ができなかった。

男「兄が新しい世界に行けば、自分も引きずられてしまいます。そうなる前に」

魔王「ははは、男もきっついジョークが好きと見える。まるで昨今のヨシモトのようだな」

 男は黙っている。

魔王「ははは。うん、そうか。理解した、側近や大臣とも相談せねばならん案件のようだ」

男「はい」

魔王「だから――頼む、少しの間でいいから一人にさせてくれ」

 魔王は俯き、男は無言で頭を下げ執務室より退出した。
 彼女は椅子の上で膝を抱え、

魔王「……ぅ、ぁ、あぁ……」

 泣いた。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/18(水) 20:32:01.19 ID:7PIk4AHro
本日ここまで。
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/01/18(水) 20:43:55.28 ID:IhY0Of6x0

やっぱり兄邪魔だなマジ消えればいいのに
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/18(水) 21:20:37.34 ID:YCnldHyN0
このスレで初めて「切ない」と思った。

兄関連を除けば。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/18(水) 21:42:23.01 ID:CuOBQVpQo
魔翌力
攻撃翌力
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage saga]:2012/01/18(水) 21:46:39.98 ID:CuOBQVpQo
魔力
攻撃力

流行りなのかと思った
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/01/18(水) 22:15:53.94 ID:7PIk4AHro
自動的に変換されるのをすっかり忘れてた次第。

兄は新シリーズに移行する際に人間関係がリセット(任意)されるけど
男は人間関係リセットされてないのが兄の能力の欠陥でもある。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 22:30:47.86 ID:OQcinfOA0
男は世紀末救世主っぽくて(物理)だし
師匠は仮面の下の涙を拭うベーオウルフっぽいし
魔王は何かV!V!V!でビクトリーなロボっぽいし
何なんだよホント
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/18(水) 23:50:24.89 ID:oEtx0YnAO
乙乙

ホント兄が色んな意味で敵すぎる…どうにか男に干渉させず飛ばせないもんか
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 04:00:25.75 ID:Ts4DCFUso
ラスボスは兄
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/19(木) 08:04:32.92 ID:FQ8/VC+AO
兄に勝てる手段が浮かばない
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/19(木) 18:23:48.14 ID:nXOANXNx0
今までも兄を殺した事はあるんだから
とりあえず今シリーズの内に兄殺しとけば
次シリーズまでは干渉しなくて済むだろ
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/19(木) 21:22:59.20 ID:riGviYVeo
運が良ければ日付が変わった後に投下。

>兄関連

今までに男が実践した、もしくは目撃した兄の最期の一例。

「ラスボスと一緒に太陽にダイブ」
「お前は電子レンジの中のダイナマイトだーっ!」
「魂を糧にいかなるものも切り裂くという魔剣に全てのエネルギーを注いで消滅」
「天下の往来で●ッキーマウスマーチを絶唱して消滅」
「ムドオンカレー」
「劇場版Xを24時間エンドレス視聴」
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 22:04:22.03 ID:DFee8Grwo
クロノクル!周りを見てみろ!
ミノフスキー粒子に電磁波を流して作ったプラズマバリアーだ!
この中にメガ粒子砲を撃ち込めばどうなるか!
さらばだ!クロノクル!
貴様は電子レンジに入れられたダイナマイトだ!
メガ粒子の閉鎖空間の中で分解されるがいい!

クロノクルは弟…ッ!?
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/20(金) 00:03:45.62 ID:umZgnGwyo
間に合わなかったので朝の投下を目指します。

クロノクルの漫画版の最期を見てウィングマンのデルタ・エンドを
思い出した自分は明らかに若くない。
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 07:01:17.58 ID:cHz8pfUvo
四十路付近かな
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 07:07:14.52 ID:CwnUZ+QIO
三十路後半かも
196 :)年齢があっさり推測されるなんて(ビクンビクン [sage]:2012/01/20(金) 08:22:26.90 ID:umZgnGwyo
+兄弟喧嘩(物理)+


 魔王達の住む世界とは別の場所。
 男と兄が故郷と認識し活動の拠点と定めている世界がある。
 現代日本とさほど大差なく、しかし幾つかの決定的な違いがある世界。
ドラゴンが燕尾服を着て喫茶店の主人を務め、機械人形が産婦人科で
我が子の出産日を幸せそうに待っている。
 宇宙に飛び出した者もいれば、昭和の景色を保つ街もある。

男「兄があちこちから色んなものを引っ張ってくるから」

兄「半分はブラザーも加担しただろう」

 転送門のある男のアルバイト先に近い空き地の真ん中に、男と兄がいた。
 正確に言えば、ダブルノックダウンの形で倒れていた。
 二人が戦うのはそれほど珍しいことではない。暴走する兄の息の根を止めるのは
日常茶飯事だったし、兄の望む筋書きに沿って男が敵役として立ちふさがる事も
あった。

 兄は、この世界ではあくまでもごく普通の高校生である。
 体感時間で数百年、そういう設定を押し通している。

兄「それで、なんで俺はブラザーから本気で殴られなきゃいけないんだ」

男「新シリーズの準備がほぼ完了している現実を直視したくなかった」

 背中に当たるアスファルトの冷たさと堅さを心地よく感じながら、男は
用意していた湿布を顔にあてた。兄と本気で殴り合って骨が折れなかったのは
久しぶりのことだ。
 いや、と男は口中で呻く。
 本気だったのは男だけで、兄は手加減してくれたのかもしれない。そう
考えると無性に腹が立った。魔王国で魔王に泣かれて、そのまま帰還した先に
兄が出迎えていたことが、そもそも腹立たしかった。
 自分でも気づかぬものを見通しているような態度の兄にこれほどの怒りを
抱いたのは本当に久しぶりだったのだ。
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/20(金) 08:23:38.39 ID:umZgnGwyo


兄「そりゃあ、俺が活躍したのは魔界で女神にゃんとにゃんにゃんする話だし。
  高飛車女王とか性転換精霊神とかはファンディスクみたいなもんで」

 互いに仰向けのまま会話は続く。
 兄の方は最初から怒りなど持ち合わせていなかったようで、往年の森田健作も
真っ青の爽やか下種好青年っぷりである。もし立ち上がる気力が男に残っていたら
男塾仕込みの超奥義が炸裂していただろう。

兄「これでもブラザーの事を想ってだな、新シリーズの開始を引き伸ばしたり
  してたんだぜえ?」

 なーんて優しいお兄ちゃんでしょー、ほーれほれブラザーは感謝の気持ちを
四百字詰め原稿用紙20枚にまとめて明日までに提出するようにー。と続く。
 ああ、どうして自分はいま立ち上がるだけの気力を残していなかったのだろう。
 たとえ指一本動かす体力が無くとも、気力いや漢気さえあれば不可能はないと
あの暑苦しくも懐かしい私塾での日々が教えてくれたはずなのに。

男「自分、こんどアカシックなレコードか多元世界のルールを定めたという
  ブラックタブレットを探そうと心に決めました」

兄「はっはっは。兄ではなく一個の雄として忠告するけど、女心もわからん
  奴が世界の真理に到達したところで押しつぶされるのがオチだぞ?」

男「失敬な」

 立ち上がれずともなんとか上体を起こし、至極真面目に男は抗議の声を上げた。

男「先方のスケジュールも考えずにこちらの一方的な事情で支援事業が
  中断する事への謝罪と弁償はこれからが本番ですよ」

兄「兄貴パンチ!」

男「へぐわっ」

 パンチと言いつつ勢いのついたドロップキックが男の首筋に炸裂する。先刻までの
疲労と傷の一切が消滅した、それどころか全身がキラキラと輝き始めてさえいる兄が
主人公モード全体で立っている。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/20(金) 08:24:34.30 ID:umZgnGwyo


兄「ブラザー、俺の心に悲しみと怒りが満ちている」

 ああ、やばい。
 後ろでサイキックラバーの歌が流れてても不思議じゃないほどに、兄の周囲に
形容できないエネルギーが渦巻いている。蹴り飛ばされた衝撃で辛うじて再び
立てた男は、無表情ながらも全身に汗が噴き出すのを自覚した。

兄「この気持ちは俺のものじゃあない」

男「はあ」

 ああ、これは自分死んだなあと覚悟を決めつつ、男は曖昧に返事をした。
 兄より放出されるエネルギーは風を生み、土埃を巻き上げて男に叩きつけて
いる。

兄「ブラザー、何故だと思う?」

 一歩ずつ近づきながら、兄は問う。
 握った拳に黄金の光が宿っており、直撃したら宇宙の彼方まで吹き飛ばされ
そうだ。

男「じ」

 兄の傾向を思い出し、男は推測を述べる。

男「自分が、女心を理解しなかった、から?」

兄「何人分だ?」

 意識が止まった。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/20(金) 08:25:04.75 ID:umZgnGwyo


男「え、は? 複数? 単数じゃなく、て?」

兄「回答期限まで10、9、8面倒だもう兄貴キック!」

男「ふぐおっ!」

 拳の光を一切無視したヤクザキックが男に炸裂する。転倒こそしないが
悶絶する男。

兄「大サービスで教えてやる。ブラザーが現在進行形で踏みにじっている
  女心の数は3! だが、それだけでは50点だ」

 こと女性に絡む問題では兄は論理的思考を飛び越えた直感で正答に至る。
 それこそが主人公特権と言わんばかりに。

兄「残りの50点、どこにあると思う?」

男「さっぱり」

 素直に答える男。兄は露骨に嘆き、黄金に輝く拳で男の胸を強打した。
急所を外し骨格を傷つけぬ部位を狙った一撃だったが、身体内部から崩壊
させるようなエネルギーに打ち貫かれて男は今度こそ気絶する。

 意識を手放す直前。

兄「そこだ」

 兄が悲しげな顔で呟き、背を向けて去っていくのが見えた。
 打たれた胸が熱く、締めつける痛みを自覚して男は「ああ、そうか」と
いまさらながらに己の愚かしさを痛感した。
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/20(金) 08:27:00.95 ID:umZgnGwyo
以上、ここまで。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/20(金) 09:55:33.58 ID:HkUcGu1+o
兄だけには言われたくないな
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage]:2012/01/20(金) 19:36:00.63 ID:UPIhiQoNo
いいかげん兄殺そうぜ
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/20(金) 23:07:11.45 ID:yEMBatoro
書きながら投下。
かなり短いです。それと土日は多分投下できません。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/20(金) 23:07:49.24 ID:yEMBatoro

+無題(物理)+
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/20(金) 23:29:13.52 ID:yEMBatoro


 魔王は床に伏せているとのことだった。
 男は見舞いを申し出たが、側近の「それには及びません」との言葉に従うしかなかった。

側近「おおよその事情は私も伺っております」

 強張った表情の側近が、事務的な口調で応対する。
 男が用意した書類を受けとり、営業スマイルを浮かべようとして失敗し、頬を引きつらせてしまう。

側近「殴っていいですか」

男「勘弁して下さい」
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/20(金) 23:38:20.25 ID:yEMBatoro


側近「刺すのと殴るのと、どちらがよろしいでしょう」

男「笑顔で包丁とハンマーを取り出すのをやめていただけると有難いのですが」

側近「うふふふふ」

 
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/20(金) 23:46:28.96 ID:yEMBatoro
すいません睡魔には勝てそうにないので中断します。続きは暇を見て
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 06:42:40.21 ID:wcM90ZH+o
起きろ(物理)
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/21(土) 09:04:29.01 ID:IJFX9rK4o
ザメハ(物理)
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/22(日) 08:38:36.10 ID:g09ezKeAO
兄はズルいよな
本人もヒロインも一般人も必ずそれが最善のパターン"という事に出来る"んだから
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage]:2012/01/22(日) 15:31:50.32 ID:VyGhKAGzP
あれだけカスなのに自分がまともなこと言ってる感出されてもうざ過ぎるだけだしマジ兄いらね
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/23(月) 21:33:50.46 ID:JUkhELjto
再開、のんびり作りながら投下。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/23(月) 21:41:10.97 ID:JUkhELjto

側近「男さんが私達の前に現れて、半年ほど経過しているんです」

 ハンマーと包丁を握りしめたまま、無理に作った笑顔のまま側近はにじり寄る。

男「もう、そんなに経ってたんですね」

側近「それはもう。転移の衝撃で崩れた瓦礫の撤去から始まって、上下水道の整備とか
    やるべき事が山積みでしたから――これで内乱が続いていたら、それどころでは
    ありませんでしたけど」

 喋り続けることで少しずつ落ち着きを取り戻しているのか、男まであと一歩の距離で
側近は足を止めた。
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/23(月) 21:47:06.94 ID:JUkhELjto

側近「男さんは」

 逡巡の後に、側近はこう尋ねた。

側近「やはり同性愛者なんでしょうか」

 気まずい沈黙が生まれた。
 やはり、の三文字が何を意味するのか。たとえば男が半魚人大臣や獅子頭元帥と共に
城下の露天喫茶で遅めの夕食を取っている際にウェイトレスの少女達から生温かい視線を
向けられたり、蛇の干物や亀肉の燻製などの毛色の変わった食材を振舞われた事も
おそらく無関係ではないのだろう。
 亀肉の燻製は、美味かった。
 が、別段に精力が増強されるなどの効果があったわけでもないし、男は同性愛に耽った
過去もなければ今後にそのような予定もない。
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/23(月) 22:10:00.16 ID:JUkhELjto

 側近は男の沈黙を肯定と受け取ったのか、引きつった笑顔のままでぼろぼろと
涙を流す。ひょっとしたら鼻水も出ていたかもしれないが、国の重鎮としての誇り
もしくは独身女性のプライドが鼻腔粘膜の制御を可能にさせていた。

側近「他人の主義主張や思想信条更に言えば趣味嗜好に文句をつけて矯正しようなど
    およそ施政に関わる立場の者が口にしてよいものではないと自覚はあります。
    己が正常であるという保証などどこにもありはしないのだと。ですが、男殿が、
    男殿が、かつて救助して保護した勇者の少年に女装を強要した上で手籠に」

男「メラ(物理)」

側近「はうあっ」

 扉を叩くような仕草で繰り出された軽めの裏拳が側近の眉間を叩く。

男「今のはメラゾーマではないんです」

側近「どちらかというとオラって感じだったんですが今のは」

 正気に返った側近が涙目で抗議する。叩かれた際に包丁とハンマーを落としてしまい、
空いた手で額を押さえていた。
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/23(月) 22:21:53.72 ID:rSohP70ro
オラで歯みがき噴いた
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/23(月) 22:23:17.20 ID:JUkhELjto

男「ヘタレとか罵られるのは覚悟してましたが、よりにもよって稚児趣味ですか」

側近「ちっぱいからでっぱいまで美人と仲良く半年間も一緒に仕事してて浮いた話の
    一つも出なければ臣民もあれこれ勘繰るのは仕方ないと思います」

男「そういう噂が城下で流れてて、真に受けたと」

側近「そうでもなければ魔王様の告白を拒んだりしないと思うんですが」

 再び間が空いた。
 どうしようもない沈黙が、数秒間。

男「え?」

 何を言っているのか分からない、という表情の男が首を傾げていた。

男「離任する話を切り出したら魔王さんに泣かれたんですが――スイマセン、いつごろ
  自分は告白されたのでしょうか」

側近「あれー?」
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/23(月) 22:36:44.84 ID:JUkhELjto

側近「え、や、あのですね。先日ちょっと王妹様と魔王様とガールズトークなどしていた時に
    男さんを結婚相手として意識するような雰囲気がいろいろ出てきまして場の勢いで
    魔王様とかが男さんに政略結婚から始まる愛があったっていいじゃないかってノリで
    男さんに交際を申し込む手筈だったんですよ!」

 あわわわ、と。
 額の痛みも忘れたのか、自分の墓穴を埋めるために更に別の墓穴を掘り始める側近。
包丁を取り落としたあたりで物音に気付いた城内の侍女や役人達が何事かと集まり始めた中で
うっかりさんのスットコドッコイ・オンステージが開催されている。

側近「わ、私もですね。魔界高校の同級生が魔王様を除いて全員結婚しやがって色々焦っているというか
    魔王様の仕事を補佐する為に女としての幸せを捨てたとか実家の両親には言いましたけど
    いざ魔王様がオトコを引っ掛けようとしているのを見て私もこのビッグウェーブに乗りたい
    むしろ突っ込まれてアヒンアヒン言いたいとかそういう」

男「質問があります」

側近「は、はい。体重は秘密ですけどスリーサイズは後で直に測定していただけるよう巻尺持参です!」

 どうだーっ。
 と、仕立屋が使うような本格的な巻尺を取り出して叫ぶ側近。おおー、と唸る侍女。壁を殴る役人。
 混沌というか無法地帯に等しい環境において浮いた感のある男だが、側近が一通りまくしたてるのを
聞き終えてから、こう言った。

男「ガール、なんですか?」

 掛け値なしの地雷であった。
 
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/23(月) 22:49:14.80 ID:JUkhELjto

 結局その日は逆上した側近に追いかけ回され、逃げ切れずに土下座を三時間して男は解放された。
 その頃には夜も更けており終業の時間となっていた。
 
男「では自分はこれで」

元帥「刺さっとる、刺さっとる。包丁とかフォークとか刺さってる」

男「誤差です」

大臣「伝言などございますかな」

 転送門まで見送りに来た獅子頭元帥と半魚人大臣に感謝しつつ、男は頭を振った。

男「これ以上の失言で刺されるのはさすがにちょっと」

元帥「だよなあ」

 半分以上自業自得なので弁護のしようもないと獅子頭元帥は肩を揺らしながら笑う。
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/23(月) 22:54:51.59 ID:JUkhELjto

 本日ここまで。中断してすいませんでした。
 あと兄を倒すエンドと兄と無関係に幸せを目指すエンドとどっちがいい?
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/23(月) 23:02:22.12 ID:ongOHdgEo
乙ー

兄との縁をすっぱり切って幸せになれる無関係エンドで。
倒そうが何しようが、どうせまた生き返るんだろうし主人公様には関わりたくないわww
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/01/23(月) 23:03:34.64 ID:6q3VcgpFo
それなら後者に一票かな
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/23(月) 23:08:30.34 ID:I2uhTqVko
後者で
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagasage]:2012/01/23(月) 23:28:48.39 ID:6YssFHiVo
より兄が出番少ないほうで
多分後者かな
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/23(月) 23:53:45.97 ID:JUkhELjto
了解です。男は兄と無関係の人生で幸せを目指す方向になりました。
幸せを目指すパートナーの数とかに希望は
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/01/24(火) 00:16:37.16 ID:fLe1lPNro
魔王択一
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 00:46:55.97 ID:tDhQ3G5Co
流石にそこは書き手が決めて欲しいな
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/24(火) 01:57:57.97 ID:tCMW+RXCo
うん、それは>>1が決めてくれた方がいいと思う
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/24(火) 02:09:51.18 ID:JfGifyDAo
ハーレムがいいけどやっぱそこは書き手次第だよね
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 07:43:49.56 ID:z9xdBorSo
御意見ありがとうございます。

読んで楽しく書いて楽しい、そんなエンドを目指します。
兄関連はサクっと処理してしまう感じで。

なお余談になりますが、魔王と側近の肉体年齢は二十代前半いくかどうかですが
三十歳から高翌齢出産という価値基準のため適齢期どころか本格的に相手を見つけて
おかないと……という世代。
高校卒業と同時に結婚するのが4割、就職や短大含めて高校卒業後2年以内に
結婚するのが4割、四年制大学を出たりして高校卒業後5年以内に結婚するのが
1割。

男の外見年齢は、兄の呪縛がある内は16〜18歳を変動しているようです。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 20:01:29.26 ID:cz2jxq9Co
のんびり投下。
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 20:05:50.04 ID:cz2jxq9Co
+魔王の逆襲その1(物理)+

 プレハブの建物に最低限の内装を施した、質素という表現すら憚られる建物が男のバイト先だった。
 外壁には補強の鉄骨が交差し、鉄骨も錆び止め塗装が最低限されているだけの仕様である。
窓ガラスこそ最新の仕様なのか綺麗に輝いており小まめに掃除されているのか汚れもないが、
だからといって建物の貧乏くささが誤魔化されることはない。
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/24(火) 20:15:26.12 ID:cz2jxq9Co

 ついたて一つで応接間を主張するほどの狭い事務室。
 向かい合ったスチール机6個の半分は花瓶が意味ありげに置かれ、残る一つに
書類や備品が山と積まれている。
 あれが男さんの仕事机ですよと受付を担当した女子社員が耳打ちし、微妙にぬるい
麦茶の入ったグラスを2つ、応接テーブルに置いた。

魔王「急に押し掛ける形となりすまなく思っている」

 珍しくも魔王らしい地味派手なドレスを着用し、魔王っぽいねじり角のヘッドセットまで
装着した魔王が安物のソファーに浅く腰かけて頭を下げた。
 仮にも王、その実は女神に属するものが人間を前に頭を下げるなど前代未聞の事態である。
 故に、下げられた方も慌ててそれを止めようとした。

店長「あ、あのですね。謝らなきゃいけないのは我々でして、その、頭を上げてくださいな」

 会社の標語に『階段でのジャンプ禁止』とか『外に出る時は残機の数に注意して』とか掲げてそうな
線の細い優男は室内にもかかわらずヘルメットを目深にかぶったままである。
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/24(火) 20:26:16.61 ID:cz2jxq9Co

店長「ええと、前にお越しになられたのは――こちらの衣服や道具を買い求めに
    来られた時でしたか」

 そして矯正下着が使えない体型と知り暴れたんでしたっけ。
 一部始終を目撃していた受付OLが、遠い目で魔王を見ている。黒を基調に燻した銀の糸で
目立たぬように柄を織り込み、不死鳥の羽根さえ黒曜石の粉で塗したものを埋めたドレスは
魔王の淡く蒼を帯びた銀色の髪によく似合っている。
 魔王本人としてはこちらの世界で購入したジャージやストレッチ素材のジーンズを気に入って
いるのだが、男の勤め先に赴く以上は正装であることが望ましいと判断しての衣装選択だった。

魔王「食糧の輸入についても深く感謝している。金はともかくモンスターの血肉があれほどの量の
    食糧や医薬品などの対価になるとは驚いているが」

店長「こっちの世界では絶滅して入手できない素材や、医薬品として利用価値の高い物ですから。
    同じ重さの金よりもはるかに貴重なんですよ」

 ですから、対価分の食糧援助はまだまだ続く予定です。
 この業界、信用が第一ですからと店長は胸を張る。
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 20:40:09.89 ID:cz2jxq9Co

店長「男君も、新シリーズ移行で現場を離れることを気にしていますが当社からの援助は継続するよう
    本部からの了解も得ています。魔王さんへの憑依を試みるモノへの対策も織り込み済みですよ」

魔王「男は、やはり次の世界に強制召喚されるのか」

店長「ええ」

 渋面となり頷く店長。視線の端でOLが「あの糞兄が」と毒づいているのが聞こえたが、魔王も店長も
聞こえなかったことにした。

店長「こちらの世界の状況、お話してましたか?」

魔王「同じ時間を繰り返しているとは聞いている」

 にわかには信じられぬがと魔王。

魔王「時間が循環しているならば、その中にいる者はそれを知覚できるとは思えんのだが」

店長「ええ、まあ」

 そうなんですよねー、と渇いた笑いの店長。

店長「SFマニアと物理学者が毎年のように珍説を披露しては殴り合いの喧嘩に発展するのがこの世界の
   風物詩となってますね。おかしいです」


 
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 20:50:20.16 ID:cz2jxq9Co

店長「まあ、ぶっちゃけますと『ヒーローは永遠の美少年なんだよ!』ってとある糞野郎が
    主張した途端に同じ年を繰り返すようになりました」

 時間の経過は確かにあるし、生物は代謝もすれば成長もする。物体もものによっては風化する。
しかし一部のものは老化せず、損傷しても瞬時に回復してしまう。

店長「男君は、その繰り返す時間の檻に組み込まれた人間の一人です。こっちの漫画に倣って
    サザ●さん時空とか●ラえもん時空なんて呼ぶ人もいますが、まあそういう現象ですね」

 永遠の十七歳を主人公にする以上、その弟もまた永遠に年をとってはいけないのだ。
 傲慢とも言える想いが世界を歪めてしまったとも言えます、と店長は続ける。

魔王「……どれほど繰り返したのだ?」

店長「そうですねー。通常推進ロケットでアルファ・ケンタウリを目指した冒険家が3往復しちゃうくらいの
    絶対時間が経過したという記録はあります」

 推進材が消費されないし船内酸素も消費されないから気密さえ保てばどんな距離でも1年間で到達
出来るのは反則なんですよねーと店長は苦笑する。そもそもアルファ・ケンタウリが何を意味するのか
知らない魔王は適当に相槌を打つしかない。
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 21:03:06.16 ID:cz2jxq9Co

 ですから。
 一つ咳払いした後に店長は背筋を伸ばした。

店長「魔王さんの世界には直接影響は出てませんが、こちらは最近何度か『リセット』に
    巻き込まれましてね――アレはいけない。関わっていいものじゃあない」

魔王「何があったのだ」

店長「詳しくは知りませんが、どこぞの女神様と女王様が妊娠したとかしないとかで認知を
    迫ったり入籍を強要しようとして大騒動になりまして」

 ワー、ソレハヒドイハナシダナー。
 聞かなければよかったと心底後悔しつつ、魔王は麦茶を口にした。
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 21:19:30.17 ID:cz2jxq9Co

店長「上層部の指示で男君のサポートに動いている当社ですが、あの件では男君に
    時間外の仕事を押し付けることになってしまいました」

魔王「そうなのか」

店長「ですから、男君が魔王さんのところに残りたいって言った時は上層部も八方手を
    尽くしたんですけどねえ」

魔王「え」

店長「え」
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 21:40:04.42 ID:cz2jxq9Co

 間抜け面が二つ。
 そのうちの一つは、あちゃー、という顔となり残機が一つ減った。
 そのうちの一つは、面白いほど真っ赤な顔になった。
 観察していたOLは、魔王に気取られぬように事務所内のカメラを起動して撮影を開始し、
男の仕事用PCにそれらを速やかにコピーした。

店長「お、男君がですね」

 落ち着きを取り戻そうとして深呼吸した後に、店長は続けた。

店長「フォローしに行った先で現地の方と関わるなんて、ここしばらくの間なかったことなんです」

魔王「お、おお」

店長「それがね、今じゃそちらでは大魔王とか言われるくらいの大暴れしてるじゃないですか。
    報告書を受け取った本社の上層部が連日会議するくらいの異常事態なんですよ」

魔王「そ、そうなのカー」

店長「学園物とかそういうジャンルでも最近じゃあ存在感を希薄にして空気のような扱いで
    動いてましたから。先月魔王さんが男君と一緒に屋台で昼食を摂ったって報告書が
    届いた時には先代会長が全裸で本社の老化を全力疾走するほどでしたし」

 いいのかその会社。
 いいわけないんですよこの会社。
 無言のまま視線が重なった魔王とOLは言葉を交わさずに互いを理解してしまった。
240 :老化×→廊下○ [sage]:2012/01/24(火) 22:00:44.52 ID:cz2jxq9Co

店長「ですから、男君は新しいシリーズが始まっても有休を使うなりして魔王さんの
    世界に行けるように本社でも便宜を図る予定ですが」

魔王「あ、うん。有休ね、有休」

店長「それで、御用件は」

 ようやく本題に移れると魔王は安堵し、用意していた言葉を口にした。

魔王「男が大魔王って呼ばれ始めた事でこちらの世界に影響が出始めているから、それを
    男が解決するまでは新シリーズに男が移るのを待ってほしい。可能だろうか?」

 なるほどと店長は唸り、OLが即座に動く。

OL「確かに男さんが魔王さんの世界に干渉した結果、幾つかの影響が出ています。不具合に
   発展する可能性もありますので――男さんに直接処理していただくのが最も効率的かと」

 ようやく仕事になりましたと、OLもどこか嬉しげである。

店長「それで、解決すべき直近の問題は」

魔王「ああ、それは――」
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 22:13:28.37 ID:cz2jxq9Co

 ここは地の果て魔王国。

 凶暴なモンスターが跋扈している荒野のど真ん中のため周辺国からの侵略対象になりにくく
それなりに豊かな自然が農耕畜産の可能性を生み出している。
 もちろんそれを実現する為には凶暴なモンスターを適度に駆除し自国の領土と人民を
守り切るだけの武力が備わっている必要がある。

大臣「ここで問題。必要以上の戦闘力があり、周辺国が揃っても返り討ちに遭うと判明した場合
    周辺国が次に取る行動は何でしょうか」

元帥「答えが、こちらにある」

 どこか棒読み調の半魚人大臣と獅子頭元帥が面白くもない前説を親衛隊や陸軍兵士の前で
披露している。笑ったら処分されそうだし、笑わなくても処分されそうな空気に胃のあたりを押さえる
兵士が少なからずいる。

 元帥達が指さすその先にいるのは。

大臣「各国より送りこまれてきた王侯貴族の様々な年齢層のお嬢さんが扇情的な衣装であります」

元帥「なにしろ大魔王と恐れられている男は別に稚児趣味じゃないと各国に触れまわったからな」

大臣「それを聞いた周辺国がどう動くのかは火を見るより明らかでしたな」

 うんうんと頷き合う大臣と元帥。
 兵士たちは今すぐにでも辞表を叩きつけて荒野で畑を耕したい衝動に駆られていた。
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 22:30:03.79 ID:cz2jxq9Co

 兵士長が意を決し、元帥に問う。

兵士長「我々に課せられた任務は、あの御婦人達に関係するものでありましょうか」

元帥「とりあえず発情した親衛隊長があの娘っこ達に襲いかからないように見守っててくれ」

兵士長「あの、親衛隊長殿は女性で」

大臣「世の中には」

 目を伏せ、重苦しい口調で大臣が呟く。

大臣「表ざたにしたくない個人の趣味がありますな」

兵士長「了解いたしました!」

元帥「あと、春先とはいえ全裸より恥ずかしい格好の娘っこも沢山いるからジャージとか着せて
    迎賓用の宿に連行してくれ。城の侍女が面倒みてくれる手はずだから」

兵士長「了解しました元帥閣下!」

 理解したくなかったけどな!という心の声を呑み込んで兵士長は一礼した。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 22:47:56.69 ID:cz2jxq9Co

 できるだけ相手の劣情を刺激するように趣向を凝らした様々な衣装に身を包んでいた
美女たちが、次々と小豆色のジャージに呑み込まれていく。
 故郷にいた頃はよほどの貴公子でもなければ手を握ることさえ許されなかったであろう
やんごとなき身分の美少女や美女たちが、今は城下町の屋外レストランのウェイトレス以下の
扱いを受けているのだ。見る者が見ればこれほどの虐待もないだろう。

大臣「あの告知文では、男殿が好色家であると宣伝しているようにも受け取れるのでありまして」

 さすがに同情したのか、そんな言葉を漏らす大臣に元帥は

元帥「ああしなきゃ、女装した男の子が押し寄せてきたと思うぞ」

 と、身も蓋もない真実で返した。
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/24(火) 22:59:23.65 ID:cz2jxq9Co

元帥「それで、元ショタ野郎で現在好色一代超魔王様はどこにいるんだ」

大臣「さきほど執務室を訪ねたら『さがさないでください』という書き置きが」

 そりゃ逃げるよなー、逃げますよねえ。
 獅子頭元帥と半魚人大臣はひとしきり笑った後、

(どうすんだよこれ)

 と頭を抱えるのであった。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/24(火) 22:59:53.34 ID:cz2jxq9Co

 本日ここまで。です。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/01/24(火) 23:06:20.14 ID:UgcZp6y1o
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 23:41:54.38 ID:TYWY56XSO
兄がつっこんだら一週間後にはアヘ顔ダry
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 18:02:16.86 ID:wF5rO8EGo
のんびり投下を行います。
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 18:11:21.85 ID:wF5rO8EGo

 魔王国の城下町の外れに小さな家がある。
 
 石を主体とした建物が多い魔王国にあって、木を多く使った造りは城内にある男の仮住まいに近い。
 違うとすれば城内のそれが板と瓦を使った和風建築であり、こちらは丸太を組み合わせたログハウス
という点だろうか。
 そのログハウスより少しばかり離れた場所。もはや荒野と呼ぶしかない場所に二人と二匹がいた。

勇者「いきます」

 削りだした木の棒を剣に見立てて構えた勇者(11)が、小さく頭を下げた後に大きく踏み込んだ。

男「いつでもどうぞ」

 相対するのは、男である。
 
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 18:20:49.36 ID:wF5rO8EGo

 男もまた勇者と同じように削りだした木の棒を手にしている。
 棒を正面に構えて突進する勇者と異なり、男は棒を杖代わりに正面に立てて右手を添えていた。

勇者「勇者剣術、基本1応用3! 縦一文字ぎ」

男「トンファーキック(物理)」

 ドゴォォォォ

 突進と共に真正面から棒を振り下ろす勇者の下顎に、キックと称して男が蹴り上げた杖代わりの
棒が垂直に飛び出して直撃する。

勇者「でたらめだあ!」

 カウンターの直撃に吹き飛んだ勇者は後ろに二度三度転がってから勢いそのままに立ち上がり
思わず叫ぶ。勇者の後ろでは悪のドラゴンとアークデーモンがうんうんと頷いていた。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/25(水) 18:29:22.47 ID:z4lhenqIO
わくてけ!
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 18:35:17.39 ID:wF5rO8EGo

男「そもそも自分は寺育ちですから、勇者剣術とやらの作法も知らないのですよ」

悪のドラゴン「そもそもトンファーってなによ」

男「浪漫武器です」

 浪漫は大事ですよー。
 浪漫のない武器とか兵器とか使ってても面白くないんですよねー。
 悪のドラゴンの冷たい視線を無視しつつ、男は棒を手に勇者に近付く。

男「そもそも伝説の武器ありきで発達した武術は一子相伝が限度でしょうから
  技術の継承や発展が難しいと思うんですよね」

アークデーモン「身も蓋もない」



 
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 18:45:32.96 ID:wF5rO8EGo

 実際、祝福された武器防具を取り上げられた勇者は戦闘力が激減していた。

男「ですので、木の棒でオリハルコン製の巨大ロボットを両断できるくらいまで頑張りましょうか」

勇者「そんなのできるわけないでしょー!」

男「おかしいですね」

 涙目で抗議する勇者に、男は不思議そうに首を傾げてドラゴンとデーモンを見た。

男「こっちの世界の勇者は、極めるとそれくらい余裕で実行できると聞いているのですが」

悪のドラゴン「できてたまるか」
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 18:55:15.37 ID:wF5rO8EGo

 ドラゴンも毒の息を吐かんばかりに抗議する。

男「あ」

勇者「どうしました?」

男「タイトル忘れてました」

アークデーモン「メタんな」



+魔王の逆襲その2(物理)+



男「とりあえず、そこの岩山を木の棒で両断できるところまで特訓しましょうか」

勇者「おにーっ!」

男「大魔王とか言われてるのに今更オニ呼ばわりされたところで」

勇者「う」

男「とはいえその反骨心には報わねばなりませんから、両断予定の岩山を一回り大きいのに変えましょう」

勇者「やぶへびだったーっ!」
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 19:13:50.74 ID:wF5rO8EGo

勇者「どちくしょおおおおおお!」

 と、勇者が血の涙を流しながら30メートル級の岩塊に突進しているのを眺めながら
男は横に並ぶドラゴンとデーモンに声をかけた。

男「すっかり腕白小僧になりましたね」

アークデーモン「ふふん」

悪のドラゴン「あれくらいの歳の餓鬼は、それくらいで丁度いいんだよ」

 男が救助した時、勇者の少年は女物の下着姿で化粧までさせられていた。
その白い肌には習慣性の強い薬物を練り込んだ乳液がすりこまれ、発情した小型犬のように
男の腕にしがみついて腰を振っていた。

勇者「男さんの、ばかーっ! 女心知らずーっ! 処理しきれないのにハーレム作って
    こっちに逃げ込むな朴念仁クラーッシュ!!!」

男「ごふっ」

アークデーモン「あ、会心の一撃」

 やけくそ気味に放った一撃が泥岩とはいえ30メートル級の巨大岩塊を両断し、
その一撃とは無関係に男は吐血して膝をついた。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 19:41:38.42 ID:wF5rO8EGo

 大魔王()が現実に逃避しているその頃、魔王国では。

王妹「捕虜?」

大臣「ええ」

 執務室で茶を飲んでいた王妹が、半魚人大臣の報告を受けていた。

王妹「妾や姉上のいやらしボディを狙った冒険者や間諜どもはあらかた排除したとか」

大臣「別口です」

 なんとまあ。
 うんざりした口調の大臣に心から同情しつつ、王妹は報告書にある名前と身分の調書に目を通した。

王妹「なるほど。献上された女を追いかけてきた雄どもじゃな」

大臣「あわよくば大魔王も倒して故郷に錦を飾りたいと下心むき出しの者も多数」
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 20:01:44.11 ID:wF5rO8EGo

 どうされますかな、と大臣。
 真に勇気ある者と戦って華々しく散るのが魔族の本懐と主張してクーデターを起こしたのが王妹と
その信奉者たちである。

王妹「ふむ」

 没収した物品の目録には、かつて精霊神が勇者に祝福と共に与えた武器防具が含まれていた。
オリハルコンやミスリルといった特別な金属を鍛えて作ったそれらの武具は、使い手に恵まれれば
天を切り裂き地を砕くと言われている代物だ。

王妹「ふむふむ」

 執務室の窓より見える街の景色に変化はない。
 街の整備は途上とはいえ順調であり活気もある。

王妹「天を斬り裂いたり地を砕く者は?」

元帥「押し掛け女房の大軍団から逃げ出して街外れで勇者に稽古をつけているそうだ」

 からからと笑いながら獅子頭元帥が現れる。
 拘束する際に多少の荒事があったのだろう、久しぶりに二本足の敵と戦えたわいと御機嫌である。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/01/25(水) 20:18:12.65 ID:wF5rO8EGo

大臣「そういえば側近殿の姿が見えませんが」

王妹「あー、アレなら」

 そこに。
 と指差す先は執務室の机の裏で、側近が膝を抱えて落ち込んでいた。

王妹「男と二人きりで数時間一緒にいて邪魔もなかったのに、説教と土下座でチャンスを
    潰したことを後になって自覚したらしいのじゃ」

側近「わたしってほんとばか、わたしってほんとばか、わたしってほんとばか」

王妹「妾ならその場でファックミーって叫びながら全裸で迫ってるくらいの千載一遇の好機
    だったのに」

側近「モウナニモコワクナイ、モウナニモコワクナイ、モウナニモコワクナイ」
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 20:37:18.76 ID:wF5rO8EGo

 ともあれ。
 王妹は大げさに肩をすくめ、興味なさそうに拘束者の名簿を机に置いた。

王妹「えーと、姉上の指示では確か」

元帥「暴れてしまうと厄介なので武器防具はすべて没収し、迎賓用の宿にいる侍女に連絡。
    両想いの間柄だったら路銀を渡して最寄りの村で解放するか我が国に亡命するか
    選択させる。だったな」

 周辺国に男の性的嗜好を誤解気味に伝え、選りすぐりの美女を送り付けるよう誘導したのは
魔王の仕業である。
 王妹から見れば競争相手を増やす真似だけに魔王の意図が掴めず悩むところではあるが
側近から異論も出てこないし、頭を使った作業で魔王に勝てるとも思っていない。
 おそらく魔王は、王妹が好き勝手に行動する事も考慮に入れて今回の策を練っている筈。
奇妙な話ではあるが、執務室にいる全員の共通した見解であった。

大臣「どさくさにまぎれて令嬢達を手籠にしようという不埒者もいそうですが」

王妹「その時はモシャス(物理)で」

元帥「モシャス(物理)であるか」

王妹「うんっ」

 これ以上ないほどの笑顔で王妹は断言した。
 余談ではあるが、この日およそ23名の侵入者が性転換を余儀なくされたという。
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/25(水) 20:37:56.04 ID:wF5rO8EGo
ひとまず投下終了です。
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/25(水) 21:07:01.52 ID:52grRsipo
おつ
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/01/25(水) 21:10:56.48 ID:XBsZdMBr0
兄が出てこなくてほっとした
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/25(水) 21:35:13.94 ID:hjnH9VRSO
モシャス(物理)か
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 23:42:36.32 ID:wF5rO8EGo


+魔王の逆襲その3(物理)+

 岩山が真っ二つになったのを確認し、勇者の特訓は終了となった。
 男は両断された岩の断面と木の棒を見比べ、なるほどと独り言ちて、それから木の棒を横に薙いだ。
 無造作に振るったはずの木の棒を一閃すると岩山は今度は真横に両断される。

男「一応、復習という事で縦横の断面を比較して下さい」

悪のドラゴン「目の前で起こった光景に驚かなくなってきた自分がいる」

アークデーモン「諦めろ」

 こんな奴と正面から戦いたくねーと慄くドラゴンとデーモン。勇者は男の指し示す場所、つまり縦横の
切断面が交差する箇所を見た。

勇者「男さんが切った面は、石工さんが割ったような感じです。僕が切った面は……その」

男「鏡みたいでしょう」

 男に指摘されて、勇者ははいと答えた。予想していなかったので驚きながら切断面に触れるが、磨き上げた
銀の皿でさえここまで滑らかにはなるまい。
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/25(水) 23:49:44.90 ID:wF5rO8EGo

勇者「これは、魔法剣なんですか?」

男「自分達は『意の太刀』なんて呼んでいますね」

 言うや男は四分割された岩山を拳で数度軽く叩いた。ただそれだけなのに、岩山は砂のように崩れてしまう。

男「今のはメラ(物理)とメラ(物理)って感じですね」

悪のドラゴン「どう見てもオラオラです」

アークデーモン「ありがとうございました」

 勇者の目には拳を二度付きだしたようにしか見えないが、デーモンとドラゴンの目には岩山に向けて突き出された
拳が千発、しっかりと映っていた。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 00:31:55.09 ID:wdaNwTw3o

男「木の棒を持とうが伝説の剣を持とうが、意の太刀を修めた者にとっては同じです」

 武器の鋭さではなく、相手を破壊しようという剣技の境地であると男は説明する。
 よほどの天分に恵まれ、それでも才能だけでは到達できないものらしい。
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 00:32:58.26 ID:wdaNwTw3o
睡魔には勝てず中断。運が良ければ24時間後に再開予定です。
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) [sage]:2012/01/26(木) 00:37:23.75 ID:TRZiCCpwo
はいな
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/01/26(木) 02:04:51.66 ID:QqnYl99ho
寺生まれまじですごい。乙だと思いました。
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 02:09:59.89 ID:jb4cV6m1o
とびひざげり(魔法)
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/01/26(木) 15:04:32.20 ID:bSpXu/wIo
>>264
男が切った方が荒くて、勇者が切った方が鏡みたいなの?
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 15:05:12.74 ID:bSpXu/wIo
ごめんなさい上げちゃった
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 20:06:39.19 ID:AusFZT7Ao
 ではのんびり再開します。
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 20:21:07.20 ID:AusFZT7Ao

悪のドラゴン「>>271

アークデーモン「メタんな」

勇者「ボクの切った方がツルツルでした。技量は男さんの方が上なのに」

 成し遂げた勇者からして不思議そうである。

男「意の太刀というのは主人公格が得意とする出鱈目な技でして」

 出鱈目が服を着て歩いている奴の台詞ではない。
 と、喉まで出かかった台詞を飲み込みつつ一人と二匹は男の説明を聞いた。

男「この場合は『岩山を切断したい』という想いを最小の形で叶えた事になります。
  切断面をどうするかとか、具体的な破壊のイメージを伴わない切断だから
  棒の軌跡に沿って岩を構成する物質の結合が外れたんです」

 だから鏡のような滑らかな切断面になりました、と男は言う。

勇者「すいませんさっぱりわかりません」
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 20:49:50.23 ID:AusFZT7Ao

男「レベルが上がったら身体に傷つけずに女の子の服を切り裂いて下着姿にしたり、
  悪霊に憑依された女の子の肉体を損傷せずに霊体だけ切り裂いたり、亜空間に
  とらわれた女の子を空間ごと切りぬいて助け出したりできるようになりますよ」

勇者「女の子限定!?」

男「ロケットで逃げ出した爺さんとか、宇宙怪獣とか宇宙の犯罪者とかも問答無用で
  真っ二つになってますよ」

 男塾の伝説的なOBや犬頭の警察署長や白銀のコンバットスーツに身を包んだ伝説の
宇宙刑事のことを思い出しながら、男はそう補足した。

男「ちなみに自分の場合は学術的にプルッツフォン・ポイントと呼ばれる、物体の臍とでも
  いうべき分子集合体の一番弱い箇所を見極めようとしたのですが面倒くさかったので
  レベルを上げた物理の一撃でぶっ壊しました」

悪のドラゴン「技でもなんでもないのかよ!」

男「世の中には通常技ですら奥義の名前を付けるようなサービス精神旺盛な方も
  いらっしゃいますけど」

 面倒じゃないですかそういうの。
 本気だか冗談だかわからない表情で男はきっぱりと答えた。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 21:38:11.40 ID:AusFZT7Ao

 身も蓋もない話であるなーとデーモンは呆れた。

男「鏡みたいな切断面を作るのは自分もできますけど、勇者くんとは正反対で相当の技術と
  力を必要とします」

勇者「男さんは意の太刀を使えないんですか」

男「意の太刀(物理)ならなんとか」

 
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 22:00:36.85 ID:AusFZT7Ao

 男の答えに意外そうに驚く勇者。

勇者「やっぱり大魔王だからですか」

アークデーモン「えりすぐりの美女に推しかけられて逃げる大魔王とか聞いたことがない」

男「ですよねー」

 どうしてこうなったと呻き、男はうなだれる。
 現場の引き継ぎと残務処理に来てみれば、己が原因で騒動が起こってしまったので片付くまでは
次のシリーズに行くことができないよとバイト先の店長とOLさんにきつく言われた。
 ある意味で身柄の差し押さえである。
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 23:03:29.19 ID:AusFZT7Ao

悪のドラゴン「どうするのか考えてるのか?」

男「ほとぼり冷めるまで逃げる」

 そうしたら十中八九、あの魔王は形だけでもハーレム維持に動くだろうよとデーモンは突っ込み、
動きますよねーと勇者も同意した。

勇者「ボクが言うのも変ですけど、ハーレムって浪漫じゃないんですか?」

男「自分の甲斐性考えずに見境なく手を出して、世渡り上手で当人同士は上手く行ってるけど
  不具合の諸々を笑顔で身内に押しつけてくるのがいまして」

勇者「ど、どれくらい?」

 聞きたくないような、聞かなきゃいけないような。
 葛藤の果てに勇者は質問し、

男「前の仕事場、兄と自分以外の生徒が全員女の子という学校で、女教師含めて兄の攻略対象でした」

悪のドラゴン「」

アークデーモン「」

男「メインヒロインが365名でノーマル・トゥルー・バッドの三種類のエンディング。二週目要素に裏ヒロイン
  果ては隠しシナリオとハーレムルートの実装で、兄個人は三年間の学園生活を満喫しただけですが
  兄のフォローに入った自分は累計で」

王妹「正気にかえるのじゃ」

 目からハイライトが消えて恐ろしい単位の数字を口走りそうになった男の顔を暖かい何かが包む。
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 23:29:21.99 ID:c7nN7BX6o
出なくてもこれか…
完全にしなねーかな兄
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/26(木) 23:35:57.94 ID:AusFZT7Ao

男「スライムですかこれ」

王妹「うんにゃ、妾の生乳」

男「」


 この時の様子を勇者は以下のように語っている。

勇者「憔悴していたとはいえ、あの男さんに気取られることなく死角より現れて、反応するより
    早く男さんの頭を抱きかかえるようにして、王妹さんは男さんの顔を自分の胸の谷間に
    挟み込んだんです。
    ええ、あの乳です。
    かつて一緒に冒険していた女戦士さんも凄かったんですけど、その、格が違うというか
    あの姿勢のまま男さんの軸足を蹴り崩して押し倒そうとするなんて、それだけの技量が
    あれば王妹さんってクーデター起こさずとも乗っ取りできたんじゃないのかなって。
    その王妹さんにぱふぱふ(物理)されたまま垂直落下式ブレーンバスターを仕掛ける
    男さんも大概なんですが」
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/26(木) 23:38:49.29 ID:AusFZT7Ao
本日ここまで。昨日は中断してすいませんでした。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/27(金) 00:04:31.98 ID:YHRhtAWBo
おつ
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/27(金) 21:18:43.43 ID:NIqeOxQYo
のんびり投下します。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/27(金) 21:40:45.55 ID:NIqeOxQYo

+魔王の逆襲その4(物理)+

 勇者の仮住まいである丸太小屋の傍らに乗ってきた馬を繋ぎながら、王妹はこう言った。

王妹「男はな、オンナというものに幻想を抱き過ぎているのじゃ。良い面でも悪い面でも」

 あのお馬さん、綺麗な白毛ですねと勇者が呟く。
 ああ見事な一本角が額から生えている白馬だなとドラゴンが答える。
 まさかユニコーンを生きてみることができるとはとデーモンは感心さえしている。

王妹「ここはキング・オブ・ビッチとまで言われた大淫婦たる妾の出番という訳じゃ」
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/27(金) 21:49:58.71 ID:NIqeOxQYo

 大淫婦という単語に二人と二匹の間からどよめきの声が上がる。

男「大淫婦、ですか」

王妹「そうとも」

 胸の谷間が大胆に露出する衣装でえへんぷいと胸を張る王妹。
 繋いでいたはずのユニコーンが後ろから王妹にすり寄っている。

王妹「男関係も女関係も百戦錬磨どころか一騎当千の働きにして誘導追尾式
    炸裂爆運精霊も真っ青の性経験を誇る妾が男の力になるというのじゃ!」
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/27(金) 22:05:44.22 ID:NIqeOxQYo

 へー、そいつはすごいやー。
 あからさまに白けた視線が合わせて八つ、王妹に炸裂している。もちろん当人は
気付いていない。

王妹「今の男の状況に対するアドバイスとしては、妾が絶頂五輪愛撫会にて巨根十六羅漢の
    猛者共と激しくも情熱的な夜を過ごした際のエピソードが役に立ちそうじゃ」

アークデーモン「きょ、巨根十六羅漢だとうっ」

勇者「ご存じなんですかデーモンさん!」

アークデーモン「いやさっぱりわからん。そもそも実在するのか?」

悪のドラゴン「そんな名前つけられたくないな」
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/27(金) 22:32:08.17 ID:NIqeOxQYo

 ですよねー、と男と勇者が声を揃え、ユニコーンもうんうん頷いている。

王妹「そう、あれは激流の中に設置された闘撫場での出来事。先鋒である男色ディアブロが敵の先鋒に
    挿しつ挿されつ男祭りだワッショイわっほい菊の花だよイエーイな戦いを繰り広げた後、副将である
    妾が九節棍にもなる巨大張り型を手に女のダンディズムを」

 観客たる二人と二匹は今夜の食事をどうするかなど話始め、それなら自分の故郷の料理など
作りましょうかと男が提案すると勇者は目を輝かせる。以前魔王の城で保護されていた時に男が
土産に持ってきた駅前ドーナツや駅中ハンバーガーがお気に入りだったようだ。
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/27(金) 22:58:32.28 ID:NIqeOxQYo

 男がこちらで引き起こした問題を解決するまでは次のシリーズには行けない縛りだが、
元の世界への帰還は自由に行えるので食材の確保はそれほど難しくはないのだ。

王妹「幼い頃、各地より集められた美少女100名が深い穴の底に押し込められていた。
    ある時そこに90名の美少年が投げ込まれ、美少女達はそれを奪い合っって90名の
    美少女が残った。そしてしばらくの後に今度は80名の(中略)最後の一人になった
    美少女にこの世のありとあらゆる性技が施された――それが、この妾なのじゃ!」

悪のドラゴン「いや、そこは美少年を奪い合わずに一緒に付き合えよ。ハーレム上等なんだろ」

王妹「そこなのじゃ」

 どうでもいいホラ話のはずなのにドラゴンがうっかり突っ込みを入れたために王妹は
話の本筋への突入に成功してしまった。

王妹「男と女の数が釣り合わぬのならば、余計な争いを回避するためにもハーレムは
    至極合理的な制度なのじゃ!」
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/27(金) 23:52:55.22 ID:NIqeOxQYo

男「物には限度というのがありまして」

 大魔王即位の御祝いという名目で送りこまれてきた美女の数が50を越えた時点で
男は逃げ出していた。
 周辺にある大国は東西南北に4つだが、その国内に幾つもの派閥があり、属国や
自治領として無数の小国が存在するのはわかっていた。

王妹「根性で乗り切るのじゃ」

男「そういう問題でもないかと」

 大魔王と呼ばれるほどの男が独身で、しかも結婚の意思がある。

アークデーモン「たとえば、どこぞの小国家から来た姫が大魔王の正室になったら」

ドラゴン「どうなるんだ?」

アークデーモン「大魔王の威光という奴で好き勝手し始めるかもしれんな」

 
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 00:10:52.53 ID:shEGVGk8o

 大魔王を恐れてというよりも、他人としての美的感覚と欲求を有しているのならば
国を傾けるほどの美女をもって籠絡してしまえと考えて当然である。
 事実、送りこまれた美女の大半はそれを目的としていた。
 仮に籠絡が不可能だとしても、男のそばに置く事で間接的に魔王国の力を削ぐ
意味もある。

男「しかも魔王国からの通達が原因だから、やってきた人たちを追い返す事も
  できないのですよ」

王妹「うむ。姉上が積極的に受け入れてたな」

 正気とは思えんのだがと王妹も唸る。

勇者「どうすればいいのでしょうか」

アークデーモン「この国の益を第一と考えるのであれば」

 勇者の教育に悪いのだがと断った上で、デーモンは己の意見を述べた。
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 00:17:27.34 ID:shEGVGk8o

アークデーモン「魔王国に縁の深い者で正室と最小限の側室を固めてしまえ」

 そうすれば外部から美女が来ても政治的な力を持つことは難しい。

悪のドラゴン「最小限って、どれくらいよ」

王妹「20名か」

男「論外の数です」

アークデーモン「甲斐性があれば10名くらい余裕だろ」

男「そんな便利なものは寺での修業では身につかなかったんですよ」

悪のドラゴン「何人なら大丈夫なんだ」

 一人きりてのはナシだからなと念を押すドラゴン。
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 00:30:22.97 ID:shEGVGk8o

男「うーん、自分の故郷では(妻と子供二人くらいで)3名くらいが標準だったような」

勇者「(正妻の他に愛人さん含めて)3人ですか」

アークデーモン「ならば、この国出身者を3名ほど嫁に迎えるのが最良か」

王妹「では姉上と側近と相談し、3名の嫁を選定しておこう」

男「え」

悪のドラゴン「善は急げだな」

王妹「はっはっは、妾が全力を出せば3名の嫁を選ぶなど造作もない!」

男「ちょ」

王妹「男よ、楽しみに待っているがいい!」
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 00:35:52.68 ID:shEGVGk8o

 男の訂正も待たず、王妹はユニコーンの背に飛び乗って城に向かって爆走した。

アークデーモン「勇者よ見るが良い」

 唖然として立ちつくす勇者に、したり顔でデーモンが解説する。

アークデーモン「あれがな、外堀を埋められた雄の顔というものだ」

勇者「勉強になります」

 男が正気に返ったのはそれから2時間後だったという。
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 00:36:23.46 ID:shEGVGk8o
本日ここまで。
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/28(土) 00:36:40.11 ID:mQLmIGn0o
お疲れ様
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/01/28(土) 02:18:22.21 ID:Cvmpqhj1o
最近はハーレムルートばっかだな
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/28(土) 12:27:27.35 ID:OGFDLndDO
それが一番無難なんだろうな。変な争い起こらないだろうし
ただこのSSの場合はアレな糞兄の尻拭いのために動いてる弟までハーレムだと多少違和感あるがな
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 21:08:15.01 ID:lOU/an5Vo
ちなみに没案では、今までに兄の尻拭いで廻っていた世界で無自覚に引っ掛けていたヒロイン達が
男を追いかけて【出撃!ガンダム連合】してくるエンディングでした。
元の世界の男の住まい近くにはそういう女性たちが大量に住んでいたというオチで。

それではのんびり投下します。
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 21:28:28.02 ID:lOU/an5Vo
+魔王の逆襲その5(物理)+

 駅前ドーナツの箱をたくさん抱えて魔王は帰還した。

側近「おかえりなさいませ」

魔王「うむ」

 焼きドーナツ100個詰の箱を侍女に預け、特典のもこふわフェイスタオルとマグカップを
侍従長に託し、努めて平静に魔王は側近からの報告を待った。

側近「ホンシャとやらから連絡があり、男さんの問題が解決するまではこちらの世界に
    滞在する事が正式に認められました」

 何をもって問題の解決と判断するのかは、魔王国が決めて良いとのことですと、側近は
眼鏡をくいと押し上げて報告する。

側近「つまり理論上は十年でも百年でも滞在できる事に」

魔王「そうなったら、あやつの兄がこっちに乗りこんできて問題を強引に解決するだろうな」
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 21:43:22.60 ID:lOU/an5Vo

 実際に、かつて男を自分の世界に引きとめようとして似た手段をとった世界があったらしい。
 店長の話では、男の境遇を不憫に思った銀河聖女と伝説宇宙妹とやらが、男を家族として
引き取ろうと画策したらしい。

側近「で、兄に乗りこまれたと」

魔王「銀河聖女も伝説宇宙妹も相応の力を有していたためか正面から兄を打ち破ろうとして
    あっさり返り討ちにあった」

 その時の映像を無修正で見たが、あれは刺激が強すぎた。

魔王「よもや排泄のための器官がああまで拡張してしまうとは」

側近「ワースゴイナー」

魔王「だから余はアレとは争う意思は持ち合わせておらん。あんなん来たらその時点で詰みだ」
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 22:37:21.76 ID:lOU/an5Vo

 基本方針を再確認しつつ、魔王は深く息を吐いた。
 やろうとしている事の本当の理由を、彼女自身は本当の意味で納得していない。
理詰めによって雑多な要素を排除して、最後に残った感情を魔王は信じることにした。

魔王「男はやはり怒っているか?」

側近「怒っているかどうかはわかりませんが、後宮の話が現実味を帯びて逃げました」

魔王「逃げたか」

側近「逃げなきゃ搾り取られますもの」
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 23:44:18.14 ID:lOU/an5Vo

 年端もいかない勇者でさえ、ああだったんですよ。
 男さんが今の城下町を歩いてたら、あちこちに潜んでいる各国からの美人さんが
すっぽんぽんで飛びかかってくるんじゃないでしょうか。

魔王「そこまでするのか」

 男の足どめを主目的とした策ではあったが、予想以上にひどかったか。魔王は
この世界の人間達を甘く見ていたことを実感した。

側近「そこまでしちゃうくらいの事を、男さんは各国でやらかしちゃったんでしょうね」

 具体的に何をやらかしたのか。
 魔王は西の彼方の山に視線を向けた。はるか遠くに臨む連邦は西にある大国の首都に近い場所と聞いているが
魔王がこちらに帰還する前と後で形状が随分異なるように見えた。
 具体的には、3000メートル級の山が、その上半分くらいが綺麗に消し飛んでいるように見えた。
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/29(日) 00:21:26.45 ID:leHHNpt8o


側近「魔王様が向こう側に出張されている間に、ここいらで悪さしている神様の元締め連中が
    押し寄せそうになった事がありまして」

 まるで近所の飼い犬が仔を産んだかのような軽いノリで側近はとんでもない事を話す。

側近「魔王様は不在でしたけど神々を短時間でも憑依させるのに適した乙女が沢山いるとかで
    一大軍勢を率いて攻めてこようとしたのですが」

魔王「フバー破(物理)か」

側近「惜しい。忍法サテライトキャノン(物理)でした」

 しかもツインです、と側近が真顔でWピースをする。

魔王「もはや魔法ですらないのか」

側近「そもそも忍法って初耳でした。男さんは例によって説明してくれませんでしたし」
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/29(日) 01:03:13.49 ID:leHHNpt8o
 
 例によって出鱈目なのだろう。
 その出鱈目に真正面から突っ込んできた哀れな犠牲者がいて、あの山は
巻き込まれてしまった破壊の痕跡という事なのだろう。

側近「周辺国への警告にもなるのでしばらくの間はベホマズン(物理)はかけずに
    おくということでした」

魔王「」

側近「あの出力の百分の一でも子孫に受け継がれる可能性があるなら、子孫繁栄に
    国の将来を託したくなるかもしれませんね」

魔王「ならば書類の上だけでも正室と側室をこちらで固めねばなるまい」

王妹「あねうえ〜」

 タイミングを見計らったかのように、ユニコーンに乗った王妹が土煙を上げながらやってくる。

王妹「4【ピーッ】フラ」

魔王「フバー破ぁ!(物理)」

 見よう見真似で繰り出したら両腕から破壊光線が出てくるとは思わなかったと、魔王と側近は述懐している。
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/29(日) 01:03:39.27 ID:leHHNpt8o
本日ここまで。
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/29(日) 04:03:27.32 ID:IO8IzVWBo
忍法サテライトキャノンwwwwwwwwww
おつ
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 04:45:24.61 ID:8YBEawCno
あいかわらず安定のクオリティで安心した
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/29(日) 21:27:30.18 ID:soynoLiAO
おwwwいwww
王妹wwwユニコーンてwww

あれ なんか王妹かわいくね?
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/29(日) 21:35:27.46 ID:J6seSJ3Uo
申し訳ありませんが本日の投下は休止します。
代わりに用語解説とか少々。
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/29(日) 21:52:21.47 ID:J6seSJ3Uo
+男さんの魔法ボキャブラリー+

ベホマズン(物理) もしかして:クレイジーダイヤモンド
ニフラム(物理) もしかして:王虎寺秘奥義暹氣虎魂
フバー破(物理) もしかして:北斗剛掌破
ラリホー(物理) もしかして:岩山両斬波
ルカナン(物理) もしかして:大豪院流真空殲風衝
ザオリク(物理) もしかして:王大人、死亡確認!
事前の交渉(物理) もしかして:黒船来航
遺憾の意(物理) もしかして:ちょっと頭、冷やそうか(物理)
メラ(物理) もしかして:オラ
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/29(日) 22:06:29.59 ID:J6seSJ3Uo
+男の趣味+

男の趣味の一つに神社仏閣巡りというのがありますが、
男の関わる世界において寺というのは王虎寺や蒼龍寺や神券寺、南朝寺に三面寺など
怪しげな超武術を駆使するhentai達の巣窟でもあります。




+意(フォース)の太刀+

いわゆる主人公効果で一発逆転してしまう必殺技の総称。主人公属性をもっていない男は
習得できない。BGMが渡辺宙明とかサイキックラバーに切り替わると、もはやどれほどの
力量差があろうとも敵対するものは必ず死ぬ。
劇場版ギャバンのギャバンダイナミックは最高でした。
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/29(日) 22:27:59.50 ID:J6seSJ3Uo
+尻拭いにかかる日数+

男が前の仕事先で要した時間

【365名のメインヒロイン+108名のサブヒロイン・裏ヒロイン】
 ×
【高校三年間】
 ×
【エンディング3種類+二週目シナリオ+隠しシナリオ+ハーレムルート】

で、累計8500年ほど一つの学園で過ごしています。既読スキップ機能は
実装されておりません。
兄は体感として3年間のみ過ごしています。

魔界が滅びるきっかけになった魔界の女神は隠しシナリオの登場人物で
本来は非攻略対象でしたが兄が『惚れた!』と魔界まで乗り込んだため
魔界の神様が激怒→世界崩壊となりました。

それでは本日ここまで。
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/29(日) 22:30:14.49 ID:vLFWV5tE0
元ネタに気付けなかった技もいくつかあるなぁ
しかしどれも男(漢)すぎる
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/29(日) 22:35:04.31 ID:vXAV3xcgo
ああ、うん。
兄はマジ要らないわ。

最初はもっとまともだったかもしれないけど、行いや思想全てが肯定されるようになってって
腐りきってるんだな。
常に奪う側であり、何やっても許されてなおかつ正しい事になるから
バランスのために男を必要としてるんだろうけど、男の意志とかそういうんじゃなくて
ただ自分のためだけに必要としてるんだな。

315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 22:38:54.53 ID:dtWN9mnXo
このスレでは兄という単語自体排除したいレベルだな
誰得すぎる
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/01/30(月) 00:25:50.06 ID:Nt4TXM3to
兄が無邪気にそういう生き方をしてるならやっぱり腹立つし
自分でも屑だとは思いながら、だとしても腹立つな
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/01/30(月) 00:54:31.40 ID:JmCdQzBVo
兄がいなかったらただのラブコメにしかならないだろうから必要悪として存在してもらわなければ

兄[ピーーー]
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 07:36:21.92 ID:4W2BSk4IO
兄は男の引き立て役…になるといいなぁ
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/30(月) 10:41:25.88 ID:nBGWKG2AO
寺がそういう寺なのかよ、納得したわ
男が蒸着する展開マダー
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/30(月) 21:36:57.09 ID:0J+ZPfzlo
それではのんびり投下していこうと思います。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/30(月) 21:56:07.39 ID:0J+ZPfzlo

+魔王の逆襲その6(物理)+

 魔王国より正室一名と側室二名を送り出し、大魔王(物理)もこれを了承した。
 この報せは瞬く間に城下の街をはじめとして周辺国にも伝播した。

大臣「魔法を使った情報の伝達。まあ簡単なものは自動書記を用いた文字転送から、
    似顔絵などの描画が基本でしょうな」

 技術の高い国では音声や映像も送れるようですが、我々は長距離移動魔法で使者を
送るだけで事足りてましたからこれからの発展が必要ですなと半魚人大臣は感心する。

元帥「諜報部が嘆いておるわ」

大臣「男殿も驚いておりましたな。匂いや味も部分的に転送できるなど聞いた事もないと」

元帥「人間はフェロモンでの情報伝達機能が備わっておらんからな」

 
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/30(月) 22:08:07.81 ID:0J+ZPfzlo

 一部の獣人や昆虫型魔族は文字や音声と同じくらい、嗅覚での情報を重視している。
 露天にて並べられていた奇怪な香木が実は書物と同じ扱いを受けていると知った時
男は一緒にいた元帥に「今日ほど自分の不見識を思い知ったことはありません」と
実に楽しそうに言ったほどだ。

大臣「この世界に来る前は単調な世界で長い時間を過ごしていたようで、こちらでの生活は
    驚きと発見の連続だと嬉しそうでしたからな」

元帥「うむ」

 いつものように食事のために城下のカフェテラスにいる半魚人大臣と獅子頭元帥は、
街から人型の女性の数が急速に減っていると感じ取っていた。魔王国の告知をどのような
意味で受け取ったか詳細は知らないが、退くという選択によって魔王国との友好を選ぶ
国が多いと判断できた。
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/30(月) 22:18:17.07 ID:0J+ZPfzlo

元帥「一発逆転を狙っている商売女もいたようだが姿が見えんのである」

大臣「親衛隊が動いたようですな」

 どうにかなりませんかね、あの女の子大好き娘っ子集団。
 どうにもならんだろうよね、あの女の子大好き娘っ子集団は。
 国賓級の女子に関しては軍人がガードを固めているので、親衛隊の毒牙にかかるのは
商売女や特定の背景をもたない旅行者の類である。

隊長「魔王様の一大事だからな、我々親衛隊が動くのは当然であろ?」

 ザシャア。
 そんな効果音が似合いそうなポーズと共に一人の女性が大臣と元帥の前に現れた。
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/30(月) 22:38:33.74 ID:0J+ZPfzlo

 背中に純白の翼が三対、後頭部には光輝の環。黄金色に輝く剣を帯び、
着用する鎧と衣服は炎よりも深い紅である。
 背後には同様に深紅で統一した武装の兵士たちがいる。いずれも見目麗しい
少女たちであり、その種族は様々であった。

隊長「そう、我々親衛隊がいる限りは魔王様を娶ろうとする悪は必ず滅ぶのだ!」

 往来で叫ぶ親衛隊長。
 黙っていれば天使と見紛う美貌が台なしである。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/30(月) 22:49:04.35 ID:0J+ZPfzlo

元帥「お前のその頑張りで陛下が婚期を逃しまくっていたとは思わんのかね」

隊長「まったくもって遺憾ではあるが、かのクーデターが無血で達成されていたら
    我々が魔王様の身元引受人として魔王様を生涯御世話していく予定ではあった。
    そして!」

 強く握った拳を正面に突き出し、悔しそうに震わせる。

隊長「王妹殿との約束により、女の子同士でも結婚できる社会制度になる筈だったのだ!」

元帥「おーい、そこの兵士。この親衛隊長クーデターの隠れ支持者だから拘束して
    軍法会議に廻しておいて……あ、抵抗するようなら羽をむしっていいから」

兵士「よろしいので?」

大臣「政治的な意図が一切ない叛徒というのも酷い話で」
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/30(月) 23:34:53.26 ID:QKpyx1cmo

元帥「それで、己の性癖を天下の往来で暴露する為に我らの前に現れたわけでもあるまい」

隊長「ああ、大魔王とやらの件で確認したい事があった」

 蜂蜜色に輝く長い髪を揺らし、親衛隊長は気障ったらしく問いかける。

隊長「魔王国では大魔王とやらの正室と側室を送り出すと決めたのだな」

 誰だよこいつに教えたのは。
 空気読めよ修羅場になるの必至だろうに魔王様また泣いちゃうだろと、周りにいた兵士でさえ
冷たい視線を親衛隊長に向けている。

大臣「ええ」

 親衛隊長の意図が掴めず、慎重に言葉を選びつつ大臣は答えた。

大臣「国としての姿勢を示す意味もありますから、それなりの地位にある者の内より募る予定です」

隊長「そうか」
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/30(月) 23:46:17.51 ID:QKpyx1cmo

 その言葉を聞きたかったとニヤリと笑い、親衛隊長は高らかに宣言した。

隊長「ならば、この親衛隊隊長および副隊長2名、計3名が大魔王のもとに
    嫁ごうではないか!」

大臣「」

元帥「……呆れた」

隊長「何を言う。政治的な色彩の強い婚姻ならば、形の上だけの夫婦など珍しくもない。
    それとも我らでは不足か」

 貴族としての位階はともかく、親衛隊のトップ三名という地位は魔王国においては限りなく高い。
いずれもが美しい年頃の少女であり、礼儀作法も修めているので外交の場での評判は良い。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 01:02:18.43 ID:8z76TRwpo

大臣「そもそも、親衛隊の副隊長と言えば確か人魚族と鳥人族」

元帥「卵生かよ」

隊長「偶然だよ。偶然、そういう者が副隊長の地位にいた」

 偶然ってコワイヨネーと棒読みで親衛隊長は驚いてみせる。

隊長「なぁに書類の上だけでの夫婦関係だ、気にする必要などな」

魔王「ほほう」


 翌日。
 魔界名物おしおき水をたらふく飲んで悶絶している親衛隊長の姿が発見されたが
いつもの出来事だったので事件にはならず、その詳細が男の耳に届く事もなかった。


本日ここまで。
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/31(火) 02:00:59.25 ID:okpMkyI/o
お仕置き水についてkwsk
乙!
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/31(火) 07:02:34.09 ID:KIUVeR6IO
親衛隊いいね、いいね
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/31(火) 10:12:49.25 ID:vLQiDgcIO
こぼすと絨毯が変色する水?
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 11:58:55.04 ID:BzMvVSujo


+用語解説・おしおき水+

 一部の種族では音声による言語と同じくらいの比率で
嗅覚・味覚での情報伝達を行っており、文字文化に比する程の
体系化されたものを継承している種族もある。
 いわゆる回復薬や解毒薬の中で高級品とされるものは、味覚
情報や嗅覚情報を基板として製作された「魔法」の品であり、
嗅覚魔法や味覚魔法がそれ以外の種族にも近く適用されうる事を
しめしている。

 魔界名物おしおき水は、この技術を応用して開発された拷問薬品であり
一口飲むと脳内で映像と音声が再生されてしまう恐ろしい魔法薬である。
 以下にそのリストの例を示す。
「半魚人大臣の今夜も立ち飲み万歳(30分番組13話)」
「獅子頭大臣の爆笑ヒットステージ(90分番組26話)」
「王妹姫殿下の乱交トーク〜彼氏いない歴=年齢のわけないじゃないですか
 処女賭けたっていいですよ(15分番組55話)」
「側近の喪女万歳(5分番組120話)」
「魔王様が魔界中学時代に密かに書いたポエム集朗読(3分番組1話)」

 もちろん味覚的にひどい水や腐食性の高い水も存在するが、種族によって
耐性があったり逆効果になってしまうため拷問の場で使われることは多くない。
成分変化があると情報が消失ないし改変されてしまうため、おしおき水の
消費期限は原則として製造より24時間と魔界では定められている。
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 12:00:17.93 ID:BzMvVSujo


+用語解説・カフェテラス+

 様々な種族が存在する魔王国では、稀にではあるが肉食系の民が他の民を
空腹という理由で襲う事があった。そのため城下の街では餌と臣民を区別して
うっかり食べてしまわないように各所に食堂やカフェテラスを用意して
格安で食事できるようにしている(援助物資の提供場所でもある)。
 自炊したいものには無料で調理器具を貸出し、燃料代も非常に安価である。
出来たての物をその場で食べてもよいし、持ち帰ってもいい。郊外に居を構える
者は自炊が許可されているが、援助物資の横流し防止の意味も含め、耕作が
安定するまでは食堂を利用することが望ましいと魔王の指示が出ている。

 貧困層や流民などへの対策として、皿洗いや配膳などをすることで「まかない食」
という形で食事が与えられている。従業員用の宿舎がまとめて管理されており、
伝染病の対策や雇用斡旋も行われている。

 魔王国の城下町は現在拡大中のため、食堂そのものの拡張はもちろん数そのものを
増やしている最中であり人員不足は割と深刻である。流民や貧困層も建築ラッシュの
現在は平均して三日で食堂の皿洗いから解放されている。

 要職に就いているものは専属料理人や出前での食事が許可されているが、大臣や
元帥は食堂やカフェテラスでの食べ歩きを楽しんでいるようである。新世界における
魔王の政策の一つの形としてカフェテラスは概ね好意的に受け入れられているようだ。
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 12:01:39.47 ID:BzMvVSujo



+人物紹介その7・親衛隊隊長+

 外見は天使。三対六枚の翼にエンジェルハイロウ、武装は赤に金でウェーブの
かかったハニーブロンドで巨乳。肌は白く、瞳も紅である。
 でも女の子大好きッ娘。
 種族名は不明だが、親衛隊を束ねるだけあって陸海空の全てのフィールドで
いかんなく実力を発揮できるという。一度だけ兄とニアミスしそうになったが
部下及び難民の女子を無事に逃すだけの力量の持ち主である。
 でも女の子大好きッ娘。
 魔界においても有力な氏族の娘であり、本来であれば魔王の側近もしくは有力
魔族に嫁ぐことが期待されていた。が、どうしようもないほどの女の子好きで
魔王が好みどストライクだったため、自主的に賛同者を集めて親衛隊を設立。
 家柄と実力と行動力が揃ってしまった上に幾つかの小規模な内乱や自然災害
において大活躍し、半魚人大臣も獅子頭元帥も親衛隊を公的に認めるに至った。
もしも彼女が雄であれば魔王の婿として第一の候補に挙がったと言われている。
 でも女の子大好きッ娘。


次話は夜にのんびり投下予定です。
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 20:21:58.70 ID:BzMvVSujo

+魔王の逆襲その7(物理)+

 男が仮の住まいにしている住居は、今は城の中にはない。
 城内にあった木造建築は転送門の施設として機能しており、出入りする者たちに
解放されている。男自身は眠るためだけの施設なので別段困らないと言ったのだが、

側近「そ、それでは将来的に色々と困る方もいるのです。露出趣味があるならともかく!」

 という側近に代表される意見が強く、また故郷の世界に送る素材の調達加工の都合上
簡単な調理ができる場所が望ましいという理由で、郊外に簡素な丸太小屋を設置するに
至った訳である。

勇者「でも、ボク達がお世話になって良かったんでしょうか」

 いつの間にか転がりこんできて居候と化している勇者は恐縮そうである。
 ちなみにデーモンとドラゴンも押し掛けているが身体のサイズの都合上、丸太小屋の外に
天幕を張ってそこで寝泊まりしている。

男「食料調達も手伝ってもらっていますし、治安が安定している現状では自分が
  城の近くにいるとかえって騒動が起こってしまいます」

 修業の帰り道、昔の漫画に出てきたようなマンモスを引きずりながら男と勇者がそんな
会話をしている。男はともかく、幼さの残る勇者が恐るべき怪力を発揮しつつある現状に
デーモンとドラゴンは軽く戦慄している。
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 20:31:18.05 ID:BzMvVSujo

 かつてその事についてドラゴンが質問をすると、こんな答えが返ってきた。

男「オーラとか生体エネルギーとか呼ばれてるもののコントロールができるようになると
  体内で疑似的な骨格や筋肉を形成する事ができるんですよ」

 いわく、標準的な生命が発するそれらのエネルギーは曖昧な光球に近しいのだが、
コントロールできるようになると明確な輪郭を得て第二の肉体とも言うべきものを
形作り、その強さはエネルギーの総量と強度に比例するのだという。

悪のドラゴン「そういうのって、すげえ時間かかるんじゃないのか」

男「普通の武術家が体術のみ鍛えるような人生送ってたら、五十年近くかかると言われていますね」

勇者「え」

男「勇者君は魔法の適性がありました。体系化した訓練法も取得させていますから」

 それでもこちらの予測の数倍の速度で習得しているのは事実です。
 なるほどこれが勇者なんですねと男は感心している。
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 20:40:30.49 ID:BzMvVSujo

アークデーモン「ちなみに貴様はどれだけの歳月を要したのだ?」

男「400年くらいですかね」

 あっさりと、男は答える。

悪のドラゴン「時間かかり過ぎじゃねえか?」

男「師匠筋の方にも『これほど適性のない者は珍しい』とまで言われましたね。なにせ
  仕事で訓練どころではありませんでしたし、あの頃は実践では徒手空拳よりも
  重火器や罠で対処する方が確実でしたから」

 懐かしいですねあの頃は、と遠い目で語る男。苦い過去というよりも、戻りたくても
戻れない日々を思い出しているようだ。

男「その400年の間に経験値貯めて体術も修めて基礎体力を向上させたから、なんとか
  そういう力の使い方を覚えるに至りました」

勇者「うわぁ」

男「世の中には『実は俺は超☆古武術の達人だったんだZE☆』の一言で次の瞬間から
   地上最強の武術家になってしまう奴もいますので」

 他人の尺度で自分を見るのはあまり意味のないことかもしれませんよと男は続ける。
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 21:02:51.67 ID:BzMvVSujo

 かくして二人と二匹は丸太小屋の前に到着し、勇者は調理と解体道具を取りに行くと
一足先に小屋に入っていった。

悪のドラゴン「それにしても、なんでマンモスの肉なんだ?」

男「需要が半端ないんですよ。マンモスの輪切りステーキに謎の肉。これの本物が
  手に入るって情報が向うに伝わった時に富豪がうちの会社に押し寄せてきたって
  ニュースになったくらいです」

アークデーモン「なんだそれは」

男「ある一定以上の世代にとっては、マンモス肉の輪切りステーキというのは絶世の
  美女が自宅で全裸で待ち構えていることよりも幸運だと、店長が言ってましたっけ」

勇者「あの、男さん」

男「あ、道具ありましたか」

 気付けば勇者が戻っていた。心なしか顔が青ざめっており、手に持った解体用の大型包丁を
落としそうなほど震えている。
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 21:10:04.18 ID:BzMvVSujo

悪のドラゴン「どうした?」

勇者「――家の中にですね」

男「はい」

勇者「素っ裸の綺麗なおねいさんが二人ほど待ち構えていました」

男「」

アークデーモン「よし、薙ぎ払え」

悪のドラゴン「いくぜ灼熱の吐息い!」

勇者「あ、あわわわわ。と、止めてくださいドラゴンさんっ! ここは男さんの家なんですよう!」

 冷徹に虐殺を指示したデーモンと、微塵の躊躇もなく実行しようとしたドラゴン。
 止めようとする勇者もまた家の中にいる痴女の助命ではなく家屋損壊を気にしての発言である。

男「勇者君」

勇者「は、はい」

男「形あるものは、みないつか壊れてしまうんだ。それは早い遅いの差でしかない。哀しいけど、それが
  この世界におけるたった一つの真実じゃないかと思う事があります」

アークデーモン「つまり、ぶち壊し決定と」

勇者「やっちゃえドラゴンさん!」

悪のドラゴン「シャイイイイイイイン、スパアアアアアア――」

 
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 21:21:11.22 ID:BzMvVSujo

 直後。
 丸太小屋より二人の痴女が飛び出してきた。
 外の会話が聞こえたのだろうか、慌てて衣服を着て、飛び出すと共に男たちの前に
土下座した。
 二人の衣装は深紅を基調とした軍服で、親衛隊のものだと直ぐに分かった。一人は
背中に猛禽の翼を生やし、もう一人は外見こそ人間と大差ないが耳のあるべき位置に
胸ヒレ状の飾りと帆立貝の首飾りを身に着けていた。

アークデーモン「鳥人に人魚か……その階級章は、親衛隊の副長クラスではないか」

悪のドラゴン「なー男ぉ、今日は寄せ鍋にしねぇか」

男「いいですね。元帥と大臣もお招きしましょうか」

 笑顔のドラゴンに、真顔で応じる男。
 痴女もとい親衛隊副長の二人は慌て出す。

鳥副長「お、お待ちください男様!」

魚副長「わ我らに敵意も害意もありませぬ!」

勇者「でも全裸でしたよね」

 勇者が汚物を見るような眼で副長二人を見ている。
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 21:37:04.77 ID:BzMvVSujo

 勇者が過去に受けた仕打ちを考えれば、汚物の方がマシと見ているのかもしれない。
 事実デーモンとドラゴンは臨戦体制であり、男もまた勇者が暴走しないように解体用の
大型包丁を受け取っているものの切っ先を彼女たちに向けかねない雰囲気である。

男「そもそも自分は親衛隊の方とは接点がありませんので、御二方が当家を訪ねてくる
  理由はないはずですが」

鳥副長「じ、実はですね」

魚副長「大魔王である男様の許に魔王国より正室側室合わせて三名を派遣する事が
     上層部の判断で決まりまして」

男「」

鳥副長「そ、それでですねっ。ま、魔王様の御身を案じられた親衛隊隊長がですね、
     隊長と我ら副長の三名で男様の妻となることで魔王様をお守りしようと」

 ぷちん。

 と、何かがはじける音が聞こえたような気がした。
 最初は男かと思って魚副長が息をのんだが、男は額に手を当てて呻いているだけだった。
 では勇者かと見れば、勇者は先ほどよりもさらに蒼白の顔で家の方を見ていた。
 デーモンとドラゴンは凍りついたままだ。
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 22:25:42.64 ID:BzMvVSujo


鳥副長「ゆ、勇者よ。何を見ているのだ」

男「や、やねのう」

魚副長「屋根の上?」

 意味を察したか土下座していた二人は上体を起こして振り返り。
 そして見た。

 怒髪天とは、本当に起こる現象なのだなと理解もした。

 黒のドレスが、風に揺れていた。
 銀の髪が、怒りのオーラで揺れていた。
 比較的晴天だったはずの空が今は紫電を帯びた黒雲に覆われている。

魔王「親衛隊の副長達よ――遺す言葉があれば、吐くがよい」

 あ、死んだ。
 確実に死んだ。
 二人の副長は己の状況を理解した。弁解の余地もなく、仮に弁解の猶予があったとしても
結果は何も変わりはしないだろうことを理解した。故に潔く討たれることが最期の忠義と考え
沈黙を貫こうとした。
 そう思わせるほどに、屋根の上にいる魔王の威圧は圧倒的だったのだ。

 
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 22:44:40.37 ID:BzMvVSujo

 魔王も二人の覚悟を受け取ったのだろう、頭上に両手を掲げ魔翌力を収束し。

男「黒のレースで、紐?」

 男の一言で硬直した。
 冷徹な表情が半ば崩れた状態で固まり、思い出したかのように目線だけを
男に向ける。

 魔王は屋根の上にいる。
 男は地上にいる。
 長い髪を浮かび上がらせるほどの風は上昇気流のそれであり、すなわち。

男「――ぱんつ、買ったんですね」

魔王「忍法サテライトキャノンッッッッッ!!!!(物理)」

 ぽんと納得して手を叩いた男に向けて、地形を変えるほどの莫大な熱量が叩きこまれた。
 が。

男「忍法セーフティーシャッター(物理)がなければ命を落としていたところです」

 山を砕く一撃は男の手前で弾かれて、虚空に消えた。暗雲が余波で吹き飛び周囲には
オゾン臭が漂う。副長二人は突っ伏すように倒れ、勇者と二匹は今更ながらに自分達が
絶命の危機にあったことを察して震えた。

魔王「お、おt、男よ!」

 赤面しながらスカートを両手で押さえつつ、絶叫気味に魔王は男の名を口にした。

男「はい、なんでしょうか魔王さん」

魔王「用件がある、時間はあるか」

男「魔王さんの都合が良い時に」

 即答であった。
 魔王は数度深呼吸し、額の汗を手でぬぐう。

魔王「ならば今宵、謁見の間にて待つ」

 それを告げるや魔王は踵を返し、転移魔法で姿を消した。

 魔王が姿を消したのを確認して勇者と二匹は座り込み、男は軒先に置いたマンモスを見た。
約束の時間までにマンモスを解体するのはさすがに難しい。

勇者「獲物の処理はボク達がやっておきます」

悪のドラゴン「血生臭い身体で行くなよ、街で身体ぁ洗ってこい」

アークデーモン「幸い人手が増えたのでな」

 なんとかなるだろうと、勇者と二匹。
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/31(火) 22:56:23.11 ID:BzMvVSujo

アークデーモン「とにかく貴様は魔王に会って来い。今のままだと世界が滅ぶ」

悪のドラゴン「いや、今のやり取り聞いてると会ったとしてもこの国は滅びるような」

勇者「あははははははは」

 伊達に魔王と言われてないんですねーと、勇者。

男「それでは行ってきます、帰りは少し遅くなるかもしれませんが」

アークデーモン「泊ってこい、頼むから!」

悪のドラゴン「そこで帰宅するとか選択したらマジで世界滅ぶから!」

男「ゑー」

勇者「男さんは無事でも他の人が保たないんです! 主に胃が!」

 なるほどと男は頷き、マンモスの解体を勇者たちに託して街へと向かう。

勇者「……大丈夫なんでしょうか」

 男の姿が見えなくなった後、勇者は遠い目で呟いた。
 多分だめじゃないかなあと誰かが答え、ですよねーと全員が頭を抱えた。
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/01/31(火) 22:56:49.79 ID:BzMvVSujo
以上、本日ここまで。
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/31(火) 23:08:18.01 ID:r7/0HJDAO
乙乙
何と言うか魔王も順調にトンデモになってきているようで何よりです

後アホみたいな一言で地上最強の武術家になれるヤツとか死なねーかなー、誰かはわからんが…誰かはわからんがっ!
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/31(火) 23:16:37.40 ID:PoRGlytIO
たまらん面白さが北の大地から届けられるwktk
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/01(水) 01:59:38.54 ID:j1D1kGrro
魔王可愛いわ
さっさと男は魔王抱いてやれよ
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/02/01(水) 10:42:55.12 ID:zOWOp1CAO
しかし最近のドラゴンとデーモンが妙に可愛くて辛い
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 19:01:52.06 ID:5AVmKSCeo

それでは、のんびり始めようと思います。
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 19:25:03.53 ID:5AVmKSCeo

+魔王の逆襲その8(物理)+

 城下の街にある公衆浴場は燃料代の節約を理由に蒸し風呂が主流である。
 実情を言えば上下水道の整備が未完了であることも大きな理由である。更には
脱皮により体表を正常に保つ種族や冷水浴を好む種族も少なくない魔王国では
温水浴は第一の選択とはなり得ない環境であった。
 したがって妥協の産物として設置された蒸し風呂に、洗い場を併設した公共浴場が
数多く作られることになった。

男「うん」

 男が身を清めたのもそんな公衆浴場の一つである。
 水に強い石を切り出して組み立てた簡易施設ではあるが、芸術家志望だという若手の
石工見習が趣味で作り上げた石像やレリーフが設置されている。
 いつもならば仕事帰りの労働者や見張りを兼ねてくつろいでいる巡回兵士が大勢いる
のだが今日この時において男以外に利用客はいない。
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 19:43:13.99 ID:5AVmKSCeo

 この浴場だけではない。
 街は異様な雰囲気に包まれていた。
 街から店から食堂から、民の姿が消えていた。戦争前夜であるかのように、息をひそめ
自分と隣人たちの無事と安全を祈っているかのようだった。

男「これはひどい」

 知らず苦笑する。
 人間よりはるかに強靭で魔法にも長けているはずの魔界の民が、である。

元帥「ひどいと思うのなら、さっさと決着をつけるのである」

 脱衣所に戻った男を待っていたのは獅子頭元帥だった。
 普段ならば数名は伴っている筈の兵士の姿もなく、元帥自身も重厚な鎧に身を包み
街灯の柱ほどもある太い鉄棍を担いでいた。

元帥「臣民の批難はほぼ完了させた。三日三晩が限度ではあるが郊外に天幕を張り
    首都機能を移転させてある」

男「三日も?」

元帥「あー、ほれ」

 妙に具体的な数字を出してきた元帥だが、男の質問に少々慌てる。
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 20:01:16.25 ID:5AVmKSCeo

元帥「若いモン同士だからな。色々とおさまり切らずにアレがソレする事も考えねば
    ならんからと大臣が張り切っててなあ」

 しかもほれ、場合によっては複数であろう。と言い訳を始める獅子頭元帥。

元帥「吾輩もほれ獅子の系譜であるからして複数の雌を養うという甲斐性と戦ってきた
    半生でもあるのだが、吾輩の嫁共と比して男殿の立ち向かうであろう相手は
    見た目こそ清楚可憐ではあるが」

男「が?」

 今一つ要領を得ない表情で男はとりあえず相槌を打つ。

元帥「――太古より怒れる神を鎮める者は人身御供扱いされるものでなあ」

男「そういえば神族ですもんね、魔王さん」

元帥「ただ神であるならば問題はなかったもしれんがな」

 神であり女である。
 だから皆恐れているんだよとは、獅子頭元帥は口にできなかった。ひどくくだらない理由で
訪れたかのように見えるこの現状でも、街と民を守るために尽力していた魔王の姿を元帥を
はじめとして多くの臣が見ていたからだ。
 できるならば本懐を遂げさせたい。
 それが彼らの本心である。
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 20:55:37.24 ID:5AVmKSCeo

 吾輩にできるのはここまでだよと、獅子頭元帥は去る。

男「なぜここまでの大事に」

 自問しながら男は街を往く。
 久しぶりに会った魔王と、夜の面会を約束した。
 伝えたい事もあったし、聞きたい事もあった。
 ひどく個人的な事情が絡むそれは、こうして周囲を巻き込む類のものではない筈だ。

大臣「理由は幾つかありますな」

 城門の前に、半魚人大臣が待っていた。
 いつもの格好で、いつものように立っている。

大臣「公費では木綿のぱんつしか買ってなかった魔王様が、経費削減で真っ先に削ったご自身の
    お小遣いを貯めて勝負下着を購入されたのを知った時に――もはや傍観などしていられない
    と思ったのですよ!」

男「」

大臣「男殿が来てしばらくは小豆色のジャージだったというのに、男殿の派遣終了の話題が
    出た途端に気合の入った化粧とドレスで公務に打ちこみ、積極的に活動されていたのです!
    すべては今この時のためにですぞ!」
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 21:33:55.43 ID:5AVmKSCeo

 普段の様子からは想像できぬほど熱弁をふるう半魚人大臣。
 なるほど獅子頭元帥が張り切っていると表現するだけはあると男は感心する。

大臣「たとえ一夜の後に別離が待っていたとしても」

 その一夜を王が迎えるために臣は全てを尽くすのですよと笑う。

大臣「滑稽とお思いですかな」

男「魔王さんが小遣い溜めて勝負パンツ買ったと聞かなければ、感動的な話でした」

大臣「」

男「あ、そうだ」

 話題を切り替えるべく、男は城門の柱を指した。

男「あれ、何かの儀式ですか?」



 
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 22:33:52.85 ID:5AVmKSCeo

 あれ。
 城門の柱に視線を向ければ、天使っぽい美女がスクルト(物理)状態で縛り付け
られていた。
 親衛隊隊長その人なのだが、身分を示す物をはぎ取られた上におしおき水を
服用して半ば意識が混濁した状態の彼女の正体を所見で見破るのは至難である。
 故に半魚人大臣はこう答えた。

大臣「魔王様の下着を狙った痴女ですよ」

男「あれが親衛隊隊長さんでしたか」

 何故ばれたと半魚人大臣は驚くが、魔王国においてそれを実行する者は彼女以外に
存在しない事は男でも知っていた。

大臣「ご存知でしたか」

男「ええ」

 爽やかな笑みを返す男。

男「副長が二人、自分の住んでいる丸太小屋にて全裸で待ち構えていたそうです。
  魔王さんが手討ちにする寸前でした」

大臣「ああ、それで先刻より城内からの威圧感が尋常ではないのですね」

 
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 22:54:36.93 ID:5AVmKSCeo

 やっちまいやがりましたかと半魚人大臣は呻き。
 ええ、やっちまいましたよと男は返す。

男「そういう訳で予期せぬ出来事が起こって地面が軽く沸騰する程度の
  荷電粒子がまきちらされるかもしれませんから大臣も避難してください」

大臣「ではアレは置いておきますか」

男「出来れば回収してください」

大臣「」

男「心底厭そうな顔されても、自分としても無意味な犠牲は避けたいので」

 ザオリク(物理)かける前に強制召喚されるかもしれませんからという男の
説得に半魚人大臣も渋々同意する。
 本音を言えば「それ」を狙っていたんですよねえという小さな声は聞こえなかった
ことにした。
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 23:17:47.73 ID:5AVmKSCeo

 親衛隊隊長が回収されるのを見届けてから、男は城門をくぐった。
 直後、門扉がひとりでに閉じる。

男「ははは」

 意味のない仕掛けである。
 あくまでも意思表示にすぎない。
 逃れるのは容易だが、門扉を破ることは魔王を拒絶することを意味する。面倒そうな素振りで
前庭を通り城に入る。
 通り抜けた扉は閉まると共に消えて壁となる。謁見の間に至るまでの十三の門扉は、まるで
処刑台の階段のようだと男は考えた。

男「ただ今到着しました」

 最後の扉の前で、男は宣言した。
 扉は開く代わりに塵となって崩れ、歌劇の舞台のような謁見の間が男の視界に広がった。

魔王「よくそ来た」

 大型の種族でも問題なく入ることができる謁見の間は、城の中でもっとも広い空間である。
 中央奥の玉座には魔王が座り、その背後には王妹と側近が控えていた。

魔王「幾多の困難を乗り越え、屈強なる配下を退け、余の前に現れたことを称賛しよう」

 優雅に右手を差し出し誘うかのような仕草で、魔王は妖艶な笑みを見せる。
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 23:44:00.56 ID:5AVmKSCeo

 まるで歌劇に出てくる悪役のように。
 魔王は男に語りかける。

魔王「貴様が勇者であるのならば、世界の半分と引き換えに余の配下になれと
    誘ったのだがな」

 ああ、貴様が本当に勇者だったのなら。

魔王「世界の半分では、足りぬよな」

 嗤う魔王。
 臣民に大魔王など呼ばれている男である。歌劇に出てくる勇者でさえ悪役の
誘惑をはねのけるというのに。

魔王「なあ、男よ」

 声がかすれている。
 喉が渇くほどに魔王は昂り、同時に苦しんでいる。
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 23:59:34.44 ID:5AVmKSCeo

 知らず、男は一歩また一歩、玉座に歩み寄っていた。
 側近も魔王も動かない。
 
魔王「男よ」

 玉座の前に立った男が、魔王を見る。
 魔王もまた、玉座の前に立つ男を見る。
 手を伸ばせば触れられる程の距離に二人はいた。

魔王「余をくれてやる」

 だから。
 男の服を掴み魔王は哀願した。

魔王「だから、余と、この世界を」

 言い終える前に、男は魔王を抱きしめていた。
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 00:30:54.38 ID:Wqo90QOSo

男「いただきます」

 返せと言っても、もう返しませんからね。と。
 ぎう、と強く抱く。
 肉が潰れ骨が砕けても構わないと、魔王も抱き返す。

魔王「余はな、貴様のものだ。貴様のものになったのだ」

 受け取り拒否は認めないし、返品も駄目だ。
 かすれる声を震わせて魔王は繰り返す。

 
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 00:48:40.56 ID:Wqo90QOSo

 そうして四半刻ほど抱擁が続き。

側近「えー、ごほん」

 わざとらしい咳ばらいが魔王と男を正気に戻した。

王妹「姉上。ハグだけでは子は生せん」

魔王「……正論だが、今この場で口にする台詞ではない」

 魔王は男に抱きついたまま反論し、男は玉座の後ろに用意されているものに気づいてしまう。

男「あの、なんでキングサイズのベッドがここに」

側近「善は急げと申しまして」

男「ぜ、善?」

王妹「むしろ据え膳かな」

男「なぜ王妹さんと側近さんが服を脱ぎ始めているのでしょうか」

側近「あ、それはですね」

 多少の恥ずかしさは残っているものの勢いに任せて下着姿になった側近が、思い出したように
こう言った。
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/02(木) 01:01:23.26 ID:Wqo90QOSo

側近「魔界高校の頃に、魔王様と王妹様の三人で誓いを立てたのですよ。
    われら三名、同年同月同日に生まれざるも願わくば同年同月同日に純潔を散らさん。と」

男「吉川英治先生と横山光輝先生に謝れ!」

王妹「うむ。妾も今まで不本意ながらビッチを演じていたが、ようやく大人の仲間入りを果たす事が
    できるというものじゃ」

男「……嵌められた」

王妹「面白い冗談を言うな、男よ。ハメるのは今まさにこれからではないか」

 からからと王妹は強がって笑うが腰のあたりが震えている。

側近「とはいえ先ずは我々は魔王様の補佐に廻りますので、ご安心ください」

 何を安心しろって。
 ナニですよ、ナニ。
 という至極どうしようもないやり取りの暫く後。

 破瓜の痛みに耐えきれずに放出した三名の魔力により、魔王城は跡形もなく吹き飛んでしまった。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 01:03:12.55 ID:Wqo90QOSo
本日ここまで。
書いてて精神にダメージが。
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/02(木) 01:45:11.19 ID:RmbqCsyho
初夜(物理)か…
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/02(木) 01:54:38.71 ID:0nJRJBoAO
ああ、このままギャグで終わって欲しいのに…
ダメだ、なんだか涙が…くそ、男の血縁よ頼むから消えてくれ
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 07:16:23.61 ID:veQS4PkIO
兄は女心を直感で解する者だからきっと…きっと…
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 08:33:43.66 ID:K0EgTrFSO
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/02(木) 12:32:42.16 ID:N5ayHCmpo
破瓜で城を吹っ飛ばすかwww
次以降は別の理由で吹っ飛ばしそうだなwww
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/02(木) 13:24:14.52 ID:RmbqCsyho
男は結構早い段階で魔王に惹かれたんかな?
つか>>259の魔王が周辺国に男の性的嗜好を誤解気味に伝え〜ってのはどんな意図があったんだ?

371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 19:30:39.06 ID:vXwFDE2Yo

のんびり投下しますね。
あと投下後に「兄」をどう処分するか決めようと思います。
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 19:49:48.47 ID:vXwFDE2Yo

+魔王の逆襲その9(物理)+

 
 夜の闇を切り裂くように城のある方角より光の柱が立ち上り爆音が轟いた時、
郊外でテント村を拵えていた魔王国の臣民は作業を止めてそれを凝視した。
 光。
 光である。
 そして爆音にまぎれて、裂けた、とか、無理無理無理入らないってば、とか、
嘘ぉまだ先っぽだけなのっ、とかそういう絶叫が聞こえたような気がしたのだが
多くの臣民はそれらを聞かなかったことにした。

大臣「聞いてほしい、魔王国の臣民よ」

 行政の長として各所に的確な指示を出していた半魚人大臣が、光の柱を見つめた後に
厳かな口調で宣言した。

大臣「今宵は祝宴である! 杯を美酒で満たすのである!」

 うおおおおおおおおおお。
 民草も兵士も旅行者も歓声を上げ、魔王達の初夜を肴に国を挙げてのドンチャン騒ぎが
始まった。

 
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 20:16:49.46 ID:vXwFDE2Yo

 それでいいのかよと思う者も極少数いたのだが、それらの良識派は現在
マンモスの解体で大忙しだった。

悪のドラゴン「おいおい、テント村の連中、宴会始めやがったぞ」

アークデーモン「気持ちはわかる」

 マンモスの血抜きは予想以上に大変だ。
 毛を丁寧に除かねばならないし、下手に血が肉に留まってしまうと味が悪くなる。
武骨な鉄骨を組んで作った櫓にマンモスを吊るし、血抜きと毛刈りを並行して
片付けなければいけないのだ。

アークデーモン「気持ちはわかるんだ、気持ちは」

勇者「魚と鳥の人が息してません!」

アークデーモン「気持ちはわかるんだ、気持ちはな!」
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 20:44:31.87 ID:vXwFDE2Yo

 ねじり鉢巻きに出刃包丁片手にマンモスの解体に勤しむデーモンの姿など、
精霊神崇拝の関係者が目にしたら卒倒間違いなしの光景ではある。

アークデーモン「俺だって酒飲みてぇっての! デーモンの知覚能力なめんなよ!」

 ぶっ壊れた城の中であいつらナニやってんのか分かってんだぞばかやろー!と
叫びながらデーモンは解体を進めていく。

悪のドラゴン「――どのみち、今日はもう仕事になんねえな」

 ぽつりと、ドラゴン。

アークデーモン「ぬわんだとう」

悪のドラゴン「だってよ」

 牙をむくデーモンを軽くいなし、ドラゴンは光の柱を指さす。

悪のドラゴン「転送門、城の中にあるんだぜ?」

アークデーモン「」

勇者「あ」
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/02(木) 21:09:06.30 ID:vXwFDE2Yo

 そうなのだ。
 せっかくマンモスを丁寧に解体できたとしても、送りだす施設が大破壊の
直下にあるのでは意味がない。
 なにより、城で起こっているアレでナニなソレが一晩で終わるという保証は
どこにもない。

アークデーモン「よし、飲んで喰うか」

 今なら哲学の一節でもひねり出せそうな顔でデーモンは己の仕事を放棄し
勇者とドラゴンは異議なしと賛成した。

悪のドラゴン「とりあえず、そこの痴女ふたりの意識を戻すか」

勇者「正気に戻ったら暴れそうですよね」

アークデーモン「酔いつぶすぞ」
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 21:30:38.85 ID:vXwFDE2Yo

 既に竈の設営を始めていたドラゴンが、くけけけと笑う。

ドラゴン「マンモスの輪切りステーキに、謎の肉の丸焼きといくか」

 どうせ酔っ払いどもが匂いを嗅ぎつけてやってくるんだ、とっとと焼くぜい。
 調節した炎の吐息を半解体のマンモスに吹き付け、肉が焼けたそばから
削る様にして切り落としていくドラゴン。

勇者「すっかりお祭りですね、これ」

アークデーモン「始まりは、大体こんなものだろう」

 百年、二百年と続けば、こんな馬鹿騒ぎも荘厳な祭典に化けるのだ。それが
伝統とやらの本質だし、そんな後世の事を自分達が気にする必要もない。
 とにかく楽しんで騒いだものが勝ちなんだよ、こういう時は。
 はしゃぐ勇者の頭をぽんと叩き、デーモンは自分も楽しもうと決めた。
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 21:45:59.48 ID:vXwFDE2Yo

 城のそれに倣ってか、巨大な篝火が広間の中央に設置されていた。
 持ち込まれたマンモスの肉が酒と共に振舞われ、酒を飲めぬ者や子供には
男の世界から運ばれてきたという茶やジュース類が配られる。
 踊る者がいる。
 歌う者もいる。
 城の中で繰り広げられたであろう魔王と男の会話を想像して、即興劇を始める
若い恋人たちの姿もある。

 なるほど、これは祭りだ。

 半切りキャベツを齧りながら、獅子頭元帥はもっしゃもっしゃと感心していた。
 崩壊した魔界より転移して半年以上が経過した。太陽のある世界での生活に
民は希望を見出していたはずだったが、それでも不安はあったし、喪われた
故郷への想いも捨てきれなかったのだろう。
 
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 22:25:20.41 ID:fz2RgYRqo

 魔王と男が結ばれるのは、魔王国の民草にとっても希望の象徴になっていたのだ。
 これからもそうであってほしいと獅子頭元帥は願う。

元帥「魔王も大胆な事をされるものだ」

 男をこの世界に引きとめるために魔王が打った手を思い返し、獅子頭元帥は眩暈を覚えた。
 帰還の話が出た直後、魔王は半魚人大臣と獅子頭元帥を呼び出してこう訊ねた。

魔王「この身を差し出してでも、男をこの世界に引きとめたい。知恵を貸してくれ」

 返す半魚人大臣の言葉はこうだった。

大臣「おそれながら陛下。離れる人材を連れ戻す術は存じませんが、恋しい殿方と結ばれるための
   策ならば少々心当たりがございます」

 
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 22:42:13.11 ID:fz2RgYRqo

隊長「貴様のせいかあああああああ、半魚人んんんんんっ!!!!」

大臣「はっはっはっは」

 逆上した親衛隊隊長が黄金剣を振り回して半魚人大臣を追いまわしている。

元帥「大臣が唆さずとも魔王は動いたであろうよ」

 事実、大臣たちとの謁見の前に魔王は幾つもの手を打っていた。
 男そのものが原因となって世界に混乱が起こっていると訴えかけ、解決まで
次のシリーズに移行できないように手続きをとった。
 その際に男の勤め先に乗りこみ、男の仕事に関する契約事項などを調べ
現地の店長たちとの相談もした。
 
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 22:58:42.90 ID:fz2RgYRqo

 各国より美女を集めて後宮騒ぎを起こしたのも

「嫁百人は無理だけど、三人くらいなら大丈夫」

 という一言を男の口から出させるための策だった。デーモンとドラゴンに対して
勇者の恒久的な支援を約束することで味方に引き入れようとして事情を説明
したら、むしろ同情された。
 それどころか、告白と同時に押し倒していいんじゃないか、とか、本懐遂げた
瞬間に問題解決したと判断されるかもしれないから次の手を考えろとさえ言われた。

 ひどい話である。

 デーモンとドラゴンにとっては、魔王の庇護と男の指導が勇者には必要だという
考えがあったのだろう。実際、男と勇者は家族のように接しているとの報告が
獅子頭元帥にも届いていた。

元帥「で、今こうして陛下は男と結ばれた訳なのだが」

 城を飲み込む破壊の光は未だに衰える様子がない。
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 23:15:49.46 ID:fz2RgYRqo

元帥「さて、最後の策はどんなものか」

 キャベツを齧り終え、獅子頭元帥はぐびりと酒を飲む。
 魔王が言うには、一人で相手をした場合には男の体力がアレなので
こちらが先に尽きてしまうかもしれない。
 ならば三人がかりで男を相手にして消耗させる。
 そうして初めて最後の策を実行できるのだという。

元帥「実行する前に、国が滅びぬと良いのだが」

 そこまで気にするのは野暮というものか。
 爆発と共に「まて、そっちは不浄のアッ――」という嬌声じみた悲鳴が聞こえたような気もしたが
酒に酔った幻聴だと獅子頭元帥は自分自身を誤魔化すことにした。


本日ここまで。
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 23:24:02.51 ID:fz2RgYRqo
アンケートという程ではありませんが「兄」の処理について二通り候補があります。

A:ギャグっぽく酷い目に遭って退場する。
B:シリアスっぽく悲惨な目に遭って退場する。

ABどちらでも話の筋は全く変わりません。兄の処遇がちょっと変わるくらいです。
ABのネタを融合するのもアリで。
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/02(木) 23:36:24.09 ID:RmbqCsyho
Bだな
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 23:39:40.02 ID:lWtKY70Uo
出てこなくていいけど苦しむBだろうか
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/02/03(金) 00:11:20.03 ID:CVvwRBrJo
AとBの半々で
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/02/03(金) 00:14:26.27 ID:/xecOBwo0
厳しく罰せられるならどちらでもいいけどBで
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/03(金) 00:24:51.18 ID:IHQsgAbh0
Aを含みつつBを主体に

それにしても今更ながら悪のドラゴンって最初は爬虫類型で想像してたのに
いつの間にか仁王立ちするドワオなドラゴンになってた
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/03(金) 00:59:07.91 ID:uVOIxaO6o
ギャグ程度の痛い目では物足りないのでB
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/03(金) 01:17:57.37 ID:xUEhtQBco
つか男の行動理由も全ての問題も兄にあるわけでそこらへんはきちんと決着つけるべきだと思う
まぁ登場するだけで嫌悪感がってのはあるが
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/03(金) 07:21:14.98 ID:IkVksp0IO
ノータイムでB一択
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/03(金) 10:03:26.37 ID:/1UEQnXyo
B
というか、>>1ではない『兄を設定した存在』が別に居る事は>>236あたりで
明言されてるっぽいんでそこ辺りも絡めて欲しいかも。

……まあ、兄の滅茶苦茶具合は色んなネットとか創作を読む側の願望に
乗っかった存在だからなんだろうけどね。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/03(金) 11:30:30.70 ID:LXUx9evho
兄関連はできるだけさらっと終わらして欲しいから軽そうなBで
その分濃厚な4Pの描写をだな・・・・・・
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/03(金) 11:31:46.88 ID:LXUx9evho
ごめん、間違った。Aだった
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/03(金) 14:24:27.84 ID:VO/hdFkXo
Aだな
せっかくいい感じなのに兄の話で重くなるとか勘弁
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 19:43:44.21 ID:TBRDssbOo

皆さんありがとうございました。>>383-394のご意見感謝します。

それでは今日ものんびり投下しようと思います。
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 20:02:10.90 ID:TBRDssbOo

+魔王の逆襲その10(物理)+

 兄のしでかした事の後始末のために奔走してきたのが男の人生であった。
 彼は永遠の十七歳を自称し、故郷の世界は同じ年を際限なく繰り返すようになった。

王妹「それなのに童貞だったのか、妾の夫となったものは」

 容赦ない一言である。

王妹「雄という生き物は三十まで童貞を守るという行を修めて魔法使いに至るという。
    ならば我が夫はいかほどの大魔道士だったのだろうなあ」

 身体を重ねていた時は下手くそ粗忽者と喚き、噛みつきひっかき、締めつけては喘ぎ
与えて吸って、しまいには叫んでいた。

王妹「せめて商売女を相手に技巧を磨くとか考えなかったのか」

男「仕事漬けの日々でした」

 真正面より下手くそと罵倒され続け、ケダモノだのジェロニモだの言われた男が寝台の上で
正座したままそう答えた。


 
 
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 20:36:47.22 ID:TBRDssbOo

 無表情にも見えるが、雄としてのプライドがズタズタになっている事を、三人は
容易に読み取ることができた。
 実際それはもう酷かったのだが。
 どれほど酷かったかといえば後日アークデーモンに真顔で
「襲われて愛撫する前に条件反射でロメロスペシャルはやめい」
 と説教されるほどには酷かった。

王妹「それでもな、妾の乙女をくれてやるほどには好いているし恩義もある」

 他に二名ほどいなければこれでメインヒロインですよと断言できるほどの笑顔で
王妹は男の背に身体を重ねた。

王妹「だから拗ねるのは仕舞いにすると嬉しいぞ。ほれほれほr」

男「スクルト(物理)」

 匠の業である。



    
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 21:12:51.08 ID:TBRDssbOo

 側近は、尻のあたりを押さえて呻いていた。

側近「ふおおおおお」
 
 性生活の参考資料として取り寄せた書物の中にボーイズラブ本が紛れ込んで
いたのが敗因であった。
 とはいえ

側近「雄でもあんなに気持ちよさそうなら、私達も気持ち良いに違いないと思ったのです」

 の一言は歴史書に残す価値があると、後にデーモンは評価している。
 この側近に対して男は一言「ROUND-2(物理)」で返したと別の歴史家は語っている。 
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 21:38:06.22 ID:TBRDssbOo

 そして魔王は。

魔王「そなたの妻として、ひとつ行使したい権利がある」

 一通りの契りを終えた後、精が尽きて倒れそうになった男を抱き支えて魔王は言った。
 新しいシリーズが始まれば、この暖かさに再び触れるまで果たして何千年を耐えねば
ならないのか。
 覚悟を決めたつもりでいた男だったが、魔王のぎこちない笑みに胸をうたれ返事の前に
抱擁していた。

男「自分にできることなら」

魔王「なに、難しい話ではないのだ」

 話をせねばなと抱擁を解き、魔王は瓦礫の下より小さな端末を取り出した。
 コール三回で画面が宙に投影される。

OL『脱童貞おめでとうございます男さん』

男「大魔王って世界滅ぼすのが仕事らしいんでそっち行ってイイデスカ」

 画面の向こう側で安物のクラッカーを鳴らすOLは男の台詞を無視する。

OL『それで魔王さん、男さんから許可もらえましたか?』

魔王「ばっちりだ」

 えへんぷいとピースサインで答える魔王。
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 21:51:22.87 ID:TBRDssbOo

男「猛烈にいやな予感が」

店長『大丈夫だいじょーぶ、本社に話も通したから』

男「今のでとどめを刺された気分です」

 画面の奥で何かを操作している店長の姿に、言いようのない不安を覚える。

男「それで、何の許可を」

魔王「有給休暇」

 別に隠す事でもないからと、魔王はぎこちない操作で端末を操りながら答えた。
 有給休暇。
 仕事漬けの男にとって、はるか太古に目にした言葉である。

魔王「男のこれまでの勤務実態から年間で20日分が認められたのだ」

男「……なんと」

OL『その間は代理できるスタッフが存在しないので業務そのものを凍結する規約になっているんですよ』

 最初の頃に説明したんですけどねえと、画面の中のOLは苦笑する。
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 22:08:04.36 ID:TBRDssbOo

店長『もともと新シリーズが始まっても有休使ってそちらに行けるように便宜を図る予定
    だったんだ。あーんしんしてちょうだいよ』

男「あ、はい」

魔王「では当初の手筈通りに」

   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
OL『たまっている有休休暇を全部使うというオプションですね』

 発動が承認されました、良い休暇をお過ごしください。
 そのメッセージを残して通信は終了した。

男「そっか、年間で20日も休めたんですね」

魔王「せめて新婚気分は楽しみたい」

男「20日、長いようで短いものになりそうですね」

魔王「ソウダネー」

 少々の罪悪感を胸に秘め、魔王は打つべき策の全てを発動した。
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/03(金) 22:11:27.56 ID:hEeSUtZAO
20日×数万年か…
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 22:12:21.91 ID:TBRDssbOo

 さて、場面を切り替えよう。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/03(金) 22:21:55.07 ID:3NkCBcw/0
これは…股間があつくなるな
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 22:26:23.93 ID:TBRDssbOo

 兄と呼ばれるものがいる。

 超絶美形にして生後3週間で歩き、8週間で言葉を話し、 中学時代の3年間で
1500冊の本を書き、6本のオペラを作曲した。初めてゴルフコースに出たにも関わらず、
1ラウンドのうち合計11回のホールインワンを達成し、どのホールも 最悪でバーディー、
スコアは38アンダーという驚異的な記録を達成した。

 これは兄と呼ばれる存在の、ほんの一部のエピソードである。
 彼は永遠に十七歳であり、十七歳である限り「主人公」であることを約束されていた。
いかに問題を起こそうとも破滅しようとも、世界が彼を「主人公」であると認めている限りは
必ず復活し、栄光を掴んでいた。

 もちろん、そこにはカラクリがあった。

 ひとつは兄の行いが生み出す世界の歪みに対する修正力を、男が引き受けていた事。
 兄が365名のヒロインと仲良くなりたいと願えば、男は少なくとも365に分岐した可能性の
世界に送りこまれ全てを見届け補佐する役目を背負っていた。
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 22:52:51.38 ID:TBRDssbOo


店長「もう一つはですね、あのひとは【ルールブック】に一行書き加える事に成功したみたいなんです」

 既に撤収を完了したプレハブ造りの会社の中。
 あとは床掃除だけですからと休憩を決めた店長が、茶を飲みながら語った。

OL「ルールブック?」

 茶ではなく缶ビールを開けつつ、OLが胡散臭そうに聞き返す。

店長「私も話に聞くだけなんですけどね、要するに世の中のあらゆる法則を記し、なおかつ
    それを全ての世界に適用させている【ルールブック】があるそうです」

 北欧神話においてオーディンの妻が己の息子バルドルを守るために世界中の生物・無生物に約束させたように。
 兄は十七歳の時に、彼が主人公であることを世界に約束させたのだ。

店長「そんな恐ろしい物が実在するかどうかは知りませんけど、あのひとは実現した」

 おかげで、この世界は永遠に兄が十七歳であるために同じ一年を繰り返す羽目になったのだそうです。
 阿呆の一念ですねえと、店長は呆れ気味につぶやく。
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 22:58:38.22 ID:TBRDssbOo

OL「うちの会社を畳むのと、どの辺が関係しているんですか」

店長「えーと本社の説明ではですね」

 魔王との間に交わした契約書をひっくり返しながら、店長は楽しそうに言った。



 
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 23:19:57.00 ID:TBRDssbOo

店長「まず、男君が貯め込んでいた有休の日数」

OL「男さんは20日って勘違いしてましたね」

店長「他の人は、年越しと共にリセットされて20日固定ですけどね。男君の
   場合は兄の歪みを背負ったためにリセットすることができないから
   重ねた年月の分だけ蓄積するわけです」

 まともに有休を消化するだけで、松脂が琥珀に転じるほどの歳月である。

店長「でもね。こっちで有休が365日を越えると自動的にリセットかかっちゃうから」

 そうなっちゃうと、何億年経過しようが365日しか有休を消化できないんだよねー。
 店長はゲラゲラと笑う。
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 23:28:05.70 ID:TBRDssbOo

店長「だから、男君の有休を完全消化する為には」

OL「この世界の時間を進めないといけない、と。でも、この世界の時間を
   進めてしまうということは」

 兄が、十七歳であることを自身で否定しなければならない。
 それは兄が主人公であることの自己否定につながる。

OL「詰みですか?」
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 23:43:19.41 ID:TBRDssbOo

店長「さあ」

 ひどく意地の悪い笑顔で、店長は肯定も否定もしなかった。
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 23:54:32.87 ID:TBRDssbOo

 兄は、新しい刺激に飢えていた。
 一通りのヒロインと出会い、結ばれ、堪能したつもりだった。

兄「それで、気付いたんだよね」

 転送門の前で両手をわきわきとさせながら、兄は感慨深そうに独白した。

兄「兄弟で一人の女性を奪い合うって、王道だよね」

 確執のある兄と弟、翻弄されるヒロイン。
 衝撃的な、弟の死。
 深い絶望の後に真の愛で結ばれる兄とヒロイン。

兄「うん、王道だ」

 だが、そのためには必要なものがある。
 弟が――男が、恋愛感情を抱く相手がいなければいけない。

兄「長い仕込みだったなぁ」

 ごくごく自然に、爽やかな青年の顔で兄は来るべき未来の姿に頬緩ませる。
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 00:03:49.65 ID:/14baLppo

兄「では挨拶がてら、兄としてAV男優も真っ青のテクを披露しに行きますか」

 初夜の場に乗りこむべく兄は転送門に飛び込む。
 が、反応はない。
 兄が知るべくもないが、かの世界の転送門は城と共に吹き飛んでいた。

兄「ふむ」

 転送門が使えない。まあ珍しいピンチとはいえない。
 兄は日本刀を鞘より引き抜く。

兄「はて、妙に重い」

 普段とは異なる感覚に少々戸惑いつつ、兄は刀を振るう。

兄「超技・虚空念動剣!」

 空間の壁、次元の壁を切断して異世界に突入する(という設定の)剣技は、果たして
発動することはなかった。いい加減な握りで振るわれた刀は兄の手よりすり抜けて
吹き飛び、壁に当たって転がり落ちる。
 見れば切っ先は大きく欠け、刀身は歪んでいた。

【修正力が不在のため、主人公としての機能を停止しています】

 何もない場所に文字が浮かぶ。
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 00:11:42.55 ID:rT9mMmPVo
周りに迷惑かけずに出来るだけ惨たらしく死んでくれ
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/04(土) 00:16:10.61 ID:Joy/M5UXo
なるほど
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 00:18:33.18 ID:/14baLppo

 初めて見るものだった。
 修正力とは何か。それさえ兄は理解していない。

 少しばかり焦り、兄は端末を取り出す。

兄「ブラザー、面倒な事が起こった」

 しかし、画面に出たのは男ではなかった。

兄「おい、ブラザー?」

魔王『はじめまして、兄殿』

 それが録画メッセージであると気付くのに数秒を要した。
 画面の中の魔王は黒のドレスに身を包み、男といる時とは異なる冷たい笑みを
兄に向けていた。

魔王『我が夫は長い休暇に入った。貴様の尻拭いはできぬから、休暇明けまで
   独力で対処してほしい』

 
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 00:37:25.89 ID:/14baLppo

 メッセージは終了し接続が切れた。
 伝言さえ受けつけぬ仕様である。

【修正力が不在のため、矛盾の蓄積が発生しています】

 新しいメッセージが宙に現れる。

【修正力の回復まで本体を凍結しますか?】

【修正力の回復まで時刻を飛ばしますか?】

 メッセージの意味の半分も理解できず、兄はいつものように行動し
そのまま跡形もなく消滅した。
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 00:38:01.99 ID:/14baLppo

本日ここまで。
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/04(土) 00:40:19.40 ID:A3oMvz2AO
え?兄何でいきなり消えたん?
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 00:41:46.56 ID:/14baLppo
消えた詳細は次の投下で説明しますので。すいません。
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/04(土) 00:43:17.93 ID:A3oMvz2AO
こっちこそスンマセン
次回も楽しみにしてます
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/04(土) 00:55:30.38 ID:Joy/M5UXo
よくできた話だ
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 00:55:46.21 ID:IxfKz9z+o
いや兄はムカつくやつだったけどここまでだとなんか申し訳無い
弟くんは納得するのか
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/04(土) 02:04:02.63 ID:Joy/M5UXo
男は兄を血縁であることを呪わしく思う相手って言ってるし
身内の尻拭いのためにあちこち飛び回って時にはありえない年数を過ごしたり
もう完全に人としての人格が麻痺してるだろ
よくある「怨んではいるけどそれでもやっぱり兄だからさ…」みたいな感情はないと思う
ギャグを織り交ぜて淡々と書かれてるSSだけどこんな悲惨なキャラそうそういないな
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/04(土) 04:15:14.78 ID:3bSeaEULo
殴って説教みたいなものかましたのも男の想い人を寝取りたかったからってだけなのか
男が殺しに行ってもいいレベルだな
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 05:55:25.64 ID:PcWtQr+DO
なんか、アホなクライアントと振り回されるSEみたいな関係だな
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/04(土) 09:18:10.07 ID:GXGRu668o
ちょっとはマシな生き物だと思ったらどうしようもない屑だったのは俺に見る眼がなかったwwwwww

兄ざまあああああああwwwwww
絶対のルールで守られてたが故に、ルール改変で消滅wwwwww
できればもうちょっと苦しんで消滅してほしかったがwwwwww

乙ー
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/04(土) 09:26:54.23 ID:A3oMvz2AO
ルールは改変されてない
男に有給があることははるか昔に伝えてたのに男が忘れて使わなかったただけ
兄は全部無意識でやってるから、弟に迷惑かけてることも、弟がいなければ
自分は無力なことも知らなかったみたいだけど、知ってもクズなままかな?
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/04(土) 09:27:25.18 ID:0zexTsZ7o
>>426
ルール改変と言うか、自分で建てた一見パーフェクトなシステムが、実は砂上の楼閣だったってとこじゃね?

兄ざまあwwwwww
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 09:30:21.33 ID:buXDP8yDO
男の力は長い修行の末に手に入れたものだから大丈夫そうだな
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/04(土) 09:48:31.24 ID:A3oMvz2AO
勇者くんも兄と同じような力持ってるっぽいけど、兄みたいに好き勝手
してない(というか逆にひどい目にあってる)よね
修正力が不在だから、自分で自分の尻拭いしてる状態なのかな?
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 10:01:08.35 ID:tlSEC+oIO
男(の修正力)が存在する、という事実が兄を主人公、無敵にするわけだ。

つまり、
兄=ゼオライマー
男=次元連結システム
男の修正力=異次元の超エネルギー
こんな関係性なのかな?
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 10:13:28.01 ID:WhAWPgzDO
勇者のはあくまで「その世界における勇者補正」だろ
主人公補正やましてや兄みたいに都合よく改変できる力とはまた別な気がする
それにしても魔王様やり手だな
登場人物みんな良いキャラしてるし設定も面白いしよく出来たSSだわ
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 18:39:12.62 ID:GFEdpEBao
皆さま、レスありがとうございます。

のんびり投下を始めようと思います。
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 19:08:51.67 ID:GFEdpEBao

+魔王の逆襲その11(物理)+

 安っぽい作りのプレハブ建物の中で兄は意識を取り戻した。
 身体が動かず、視線も定まらない。
 声を出そうとしても、出てこない。呼吸そのものが停止していると気付いたが、酸欠の
苦しみも意識の混濁もない。

OL「店長、反応ありましたー」

 どこか間延びした感のあるOLの声が耳障りだと、兄は考えた。
 直接の面識はないが、男が所属している会社とやらの制服だと記憶にある。程なくして
店長と呼ばれた冴えない中年が兄の前に現れた。

店長「うーん」

 幸薄そうな貌の店長は無表情を取り繕いつつ、肩を小刻みに震わせている。その後ろでは
OLが、げははははは、と品のない笑い声を上げていた。

店長「理屈では知っていましたし、魔王さんとの契約書にも書いてましたし、本社からの指示でも
   分かっているつもりでしたが……現実に見ると、凄いですねこれ」





 
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 19:42:45.17 ID:GFEdpEBao

 こいつらは何を話しているのか。
 苛立ちを覚えつつ、兄は声を上げようとする。だが身体は全く反応しない。
 そんな兄の様子を知ってか、店長は安物のファイルを開きながら実に適当に説明を始めた。

店長「えー、兄、さん。ですね」

 兄の反応など考慮しない、いや、そもそも返事をすることができないと分かっているのだろう。
事務的に呼びかけをしたという感じで店長はファイルに視線を落としている。

店長「いつも当社のシステムをご利用いただき、誠にありがとうございます」

 感謝しているのは男さんに対してですけどね、と一言加えつつ店長は頭を下げる。

店長「兄さんが修正力として登録して下さった男さんのおかげで、当社は様々な世界で発生する
    トラブルに対処できることができました」

 九割方はあんたのしでかした仕事の後始末だったんですけどねと毒を込める店長。
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 19:49:05.64 ID:GFEdpEBao

 ぽん、と。
 店長の周囲に小さな石が現れる。
 携帯端末ほどの大きさのそれは黒曜石のように透き通った材質の石板で、
表面に無数の記号が刻まれていた。
 その石板が、次々と現れる。百を超えるあたりで、石板に刻まれた記号が明滅して
文字らしきものを描き始めた。

【修正力の機能中断を承認、待機モードに移行しています】

 それは兄が意識を失う前に見た文字そのものだった。
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 20:50:51.31 ID:GFEdpEBao

 兄は、その石板を知っていた。
 かつて彼は、その石板に己が主人公であると刻んだのだ。
 宙に新しい文字が浮かぶ。

【修正力の機能回復は四万年後を予定しています】

店長「どんだけーって数字ですよね、これ」

 普通に考えたら人類の歴史とかぶっちぎりじゃないですか、と笑う店長。
 あんた今までどんだけ好き勝手に男さんを振り回してたんですかとOLは
心底呆れているようだ。

店長「うちの【本社】はほら」

 宙に浮かぶ石板を一瞥し、店長は道化のように大げさに肩をすくめてみせた。

店長「規則厳守で融通が効くとは言い難いんですよね。ですから僕らみたいなのが
    支店をこさえて色々動いているわけですが」
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 21:12:57.39 ID:GFEdpEBao


【修正力の機能復帰前に主人公としての機能を行使することは規約に違反します】

【修正力の回復まで本体を凍結しますか?】 

【修正力の回復まで時間を飛ばしますか?】

 兄の視界には、この三行の文字が表示されている。
 まるで出来の悪いアドベンチャーゲームのように、用語の説明もチュートリアルもなく
選択肢が突きつけられているようだ。

店長「それでは兄さん、回答を――ああ、『スピーカーの配線』が外れてましたか。どうぞ」

兄『……なんで俺が、こんな仕打ちを』

 ようやく出た兄の声は、ひどく安っぽく、雑音まじりだった。
 店長は目を丸くし、OLはあからさまに不機嫌そうに壁を蹴った。

店長「男君の嫁さんを寝取ろうとするとか、外道だと思いませんかね」

兄『リセットすればいいだろ。別のシリーズ始まったら綺麗なままの嫁さんがブラザーの許に
  戻ってくるんだぜ?』

 それって誰も傷つかないサイコーな展開じゃないのか?
 兄は何の疑いもなく言ってのけた。本心から。
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 21:23:42.16 ID:GFEdpEBao

店長「初夜の真っ最中に乗りこんで何をする気だったんですか」

兄『乱入して俺のテクを披露』

 生娘でも三分で妊婦に仕立てるのが俺の超テクニックだからと兄は吠える。

店長「罪悪感とか皆無ですよねー」

兄『今までもブラザーに惚れてた銀河聖女とか伝説宇宙妹とか、ブラザーに
  告白する前に俺のモノにしたけど、御咎めなしだっただろ』

 いまさら外道呼ばわりされる理由が分かんない。
 本気でわかんない。
 手足が動けば主人公パンチを店長の顔面に叩きつけたのになーと悔しがりつつ、
兄は自身の正当性を主張した。
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 21:58:49.70 ID:GFEdpEBao


店長「あれは酷い話でしてねー。人間関係とか発覚したのは事後でしたし、フォローに
    本人を派遣する訳にもいきませんでしたから本社の研修でも『あってはいけない
    事故』として研修の度に取り上げれてるんですよ」

兄『最後には嬉し涙流しながら俺のモノになるって叫んでたのに? ハッピーエンドじゃないの?』

OL「お前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな」

 ねー店長、こいつぶっ壊しましょうよとOLはドスのきいた声で呻き、周囲の石板たちは【肯定】【処刑】を
次々と表示し始める。

店長「こんなのでも男君の血縁ですからね。異性誘引とトラブル誘発はわが社の契約前に得ていた
    異能ですから、契約破棄してもラブコメエロス話の主人公くらいにはなれます」

 わが社の規約上、能力の全てをはく奪することができないのが残念でなりません。
 と、店長はなにか堅い物を蹴っ飛ばした。
 ごつん、と鈍い音と共に兄の視界が揺れる。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 22:19:09.92 ID:GFEdpEBao

店長「ああ、説明が遅れましたね」

 自身が蹴った物を思い出して店長はわざとらしく言った。

店長「あなたが『収まっている』のは、理論上は四万年の時間に耐える存在維持装置です。
    身体は動かせませんし外部との連絡も困難ですが、電力が絶えない限りは食事の
    必要もありません。娯楽にマインスイーパーとスパイダソリティアも入れてますから」

兄『お、俺にこのまま四万年こうしていろって?』

店長「はい。そのためにこの子会社を整理して、装置を跡地に設置したんですよ?」

 真顔である。

兄『ブラザーの有休が終わるまで、こうしていろと?』

店長「あくまで生命維持だけですので肉体の加齢そのものは止められない仕様ですけど、
   運が良ければ四万年後に男君が兄さんを十七歳に戻してくれるかもしれませんよ」

 店長の話は嘘ではない。
 四万年を耐えることができれば、世界の修正力としての機能を取り戻した男ならば
兄を十七歳に戻す事は造作もないことなのだ。

店長「それまでに、男君の嫁さんを寝取ろうとしたことのナニが悪いのかを十分に考えて
   反省してくださいね」

兄『よ、良く分からんけど反省s――

OL「おっと、スリッパをタコ足コードに引っ掛けたぁ(棒)」

 すぽん。ぷつん。ひゅーんn。
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 22:40:39.77 ID:GFEdpEBao

 どんがらがっしゃーん、という効果音を伴って。
 OLが店長の背後で転んでいた。確かにスリッパの先にタコ足配線の電源コードが引っ掛かっている。
 何本かのコンセントがOLの店頭の際に引き抜けてしまったようだ。

店長「あーあ」

 兄の反応はない。
 店長は、兄を収めていたという存在維持装置を指先で軽く叩いた。電源を再び投入しても反応はない。

【存在情報の希薄化および拡散を確認】

 石板の一つが表示を切り替える。

店長「やっぱり、ぴゅう太をベースに半島製のパーツを詰み込んで装置をでっち上げたのは問題でしたかね」

OL「5インチのフロッピーディスクとか、探すの大変だったんですよ」

 店長とOLが、骨董品という単語すら生ぬるい機械と、どこから見付けてきたのか分からないブラウン管モニターを
前にぼやいていた。

OL「ここの地区、大規模な工事があるとかで停電が三日後にあるって通知きてましたしね」

店長「不可抗力ですね」

【回収業者に連絡をして廃棄を提案】

 異議なしと店長とOLは声を上げ、あらかじめ書き上げていた始末書にサインをした。
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 22:42:46.66 ID:w/lcBV87o
ぴゅう太ワロスwwwwwwwwww
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 22:57:55.02 ID:CgndCHfho
ぴゅう太わかる世代がどれだけいるのやら
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 23:04:27.46 ID:GFEdpEBao


 魔王国。

 青空の下で城の復旧をどこから始めようかと技師たちが話し合っている。
 どうせ夜毎にぶっ壊れるから中庭にベッドを置けばいいじゃないかと面倒くさそうにドラゴンがぼやき、
デーモンがこんな感じかと図面を引いている。
 王妹と側近は沐浴のために侍女たちの抱える担架で城下町の公衆浴場まで運ばれ、男の隣には
魔王だけがいた。
 男はというと。
 端末の前で真っ白になっていた。

男「……兄が?」

店長『あーんしんして頂戴な。君のお兄さん、死んでないから』

 ただ、ものすごーく希薄な情報体みたいなものになって、世界中に拡散しているだけだから。
 有休が終わるまでは世界は正常な状態に復帰していますよとも言ってきた。

店長『四万年後に男君が職務復帰して、拡散したお兄さんの要素をかき集めて十七歳に戻せたら
    復活できる可能性が残っているから』

男「兄の主人公補正が働いてないなら、自分も人並みに加齢しますよね?」

店長『そっかー、いやー、失念してーたー』

 白々しい演技で、画面の向こうの店長は自身の頭を叩いていた。
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 23:24:03.07 ID:GFEdpEBao

 補正がなくなったという話を聞き、魔王が眉をひそめる。

魔王「ふむ。つまり男は、あのデタラメな力を喪失したのか?」

店長『それはですね――』

 ちょっと説明が長くなるのですがと画面の向こう側で店長が資料を探す。
 そこに油断があったのか、瓦礫の下より親衛隊長が飛び出して黄金剣を振りかざした。

隊長「にっくき恋敵が大幅に弱体化したと聞いて、今! 必殺のぉぉぉおおお!」

男「レミーラ(物理)」

隊長「今までで最大火力うううううううっ!?」

 それは地上に現れたもう一つの太陽と呼んで差し支えないものだった。
 男の感覚では太陽光線を収束し、夜の闇を払うついでに全長100メートル級のメガノイドを
ぶち壊す程度の破壊光を生み出す予定だった。
 が。

男「……あれ?」

 収束して打ち出した光の珠は親衛隊長に直撃するや音の速さを超える勢いで上空に飛ぶと
共に拡大していく。光球は上空十万メートルの位置にて直径300メートルに到達し、そのまま
破裂した。

悪のドラゴン「ストナーサンシ」

男「レミーラ(物理)です」

 その筈なんですがと男も慌てている。
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/04(土) 23:26:12.99 ID:GXGRu668o
今まで逆補正がかかってた、と言う事か。
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 23:32:41.03 ID:CgndCHfho
シャインスパーク
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/04(土) 23:36:52.17 ID:ii9F4SeAO
兄が居たから兄以下のステータスになるように封印されてたか?
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/04(土) 23:37:40.50 ID:A3oMvz2AO
男の力は兄や勇者みたいな不思議な力じゃなくて
数億年かけて鍛えた努力の賜物だからね
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 23:41:23.02 ID:IxfKz9z+o
努力っつーか苦労だな
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 23:46:22.44 ID:GFEdpEBao

アークデーモン「パワーアップしてないか?」

店長『もともと男君は得意能力の付与などありませんでしたから、後天的に修業で
    身につけた技術ばかりです』

 そういうものは、システムが停止しようが無関係ですねと店長。

男「まさか童貞を捨てたからってパワーアップするなんて」

魔王「惜しいが違う」

 何故か赤面しながら答えたのは魔王である。
 何となく察したデーモンとドラゴンは近くにいた勇者を連れてその場を離れ、ついでと
ばかりにようやく落下してきた黒こげ親衛隊長を拾っていく。
 獅子頭元帥と半魚人大臣は二日酔いの頭でぼんやりと男達を見ているが、口々に
このエスプレッソまるで色つき蜂蜜のようですなーなどとぼやいていた。

OL『神とか高位魔族の血とか体液って、物凄い霊薬なんでしょうね』

 破瓜の血とかなら尚更。
 ごちそうさまー、とげたげたOLは笑い、通信が切れた。
 残されたのは男と魔王の二人である。
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/04(土) 23:47:01.29 ID:vZ/9YG8x0
今までの男は男G
これからは真男か

男エンペラーに行き着くんだな
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 23:55:36.90 ID:CgndCHfho
>>453
すごく分かりやすいな
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 23:55:55.30 ID:GFEdpEBao


男「」

魔王「あのな、その」

 前夜に試みたプレイの内容を思い出して絶句する男に、あわあわと魔王は弁解を試みる。

魔王「そ、そなたの兄を封じ込める際に危惧していたのはな。そなたに数千年から
    数万年の時間が訪れる可能性だったのだ」

 そして、それは強ち考えすぎではなかった。
 もしも兄が主人公であることを正式に破棄していたら、男の身体に時間の歪みが襲っていた
可能性は非常に高かった。

魔王「だ、だからな。どうすれば良いか知恵を絞ったのだ。こう、不自然に感じない程度に!
    軽蔑されない程度のものをだな! 三人分あれば、なんとかなるだろうと!」

 側近とかは最後の方はノリノリでやったんだけどな!
 この場にいない側近に特殊性癖を押しつけつつ、魔王は弁解を続ける。
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 00:08:10.36 ID:HqsnJu/1o

男「それで、このご利益ってどれくらい続くんでしょうか」

魔王「知らん」

 あっさりと魔王は白状した。

魔王「余の一族が人間と交わった記録はないし、魔界の住人が複数同時に人に娶られたのも前代未聞だ」

男「ゑー」

魔王「……足りなければ強引に混じってでも体液を与える予定でもあった」

 もしそうだったら自分は二度と濃縮還元林檎ジュースを正視できなかっただろうなと男は
遠い目で考えた。

魔王「そもそも、余達を遺して百年足らずで土に還るつもりだったのか?」

 首を掴まれ吐息のかかる距離に顔を寄せられ、凄みのある貌で魔王は男に迫る。

魔王「魔界の民は、それはもう長寿だぞ」

 それだけ長寿なのに婚期が危うくなる状況だった魔王が、うふふふふと笑う。
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/05(日) 00:12:00.59 ID:3rJlCx7AO
男が入れたのはたしか不浄の穴ですよね…
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/05(日) 00:15:08.17 ID:Ax9GJpr10
穴があったら突っ込むのが男ってモンだろ
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 00:29:59.35 ID:HqsnJu/1o

魔王「少なくとも千年は新婚気分でいさせてもらおう」

男「千年ですか」

魔王「天上のしみを数えている間にすぎる程度の時間だぞ」

 体液とか随時補充するからなと、新たな性癖への覚醒を自覚しつつある魔王は
男の首をぐいぐい締める。本人としては照れ隠しのつもりなのだが、頸動脈を
確実に絞めているため男の顔がどんどん青白くなっていく。

王妹「千年とはまた大きく出たものだな姉上」

 身体を清め終えた王妹と側近が侍女を連れて戻ってきた。瓦礫の片付けと城の再設計
などの青写真を脳裏に描いていた側近だが、男を見て、あと三日は無理だと結論付けた。

側近「千年間、つかず離れずその調子で?」

 ベタ惚れですねーと、まるで他人事のように側近が苦笑する。
 魔王は、まーな、と驚くほど素直に答え、お気に入りのヌイグルミでも扱うかのように
男を胸元に抱き寄せた。

魔王「知らなかったのか?」

 太陽の下で、魔王は幸せそうに微笑んだ。

魔王「大魔王からは逃げられない」



 おあとがよろしいようで。

 
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 00:30:52.62 ID:bAsYRSoDo
ひゅー!
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/05(日) 00:32:20.34 ID:Ax9GJpr10
この場合大魔王って呼ばれてるのは男だからつまり・・・そうか・・・そういうことだったのか・・・
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 00:33:37.25 ID:HqsnJu/1o

 以上でデタラメな男と魔王さまの話は、ひとまずオシマイであります。ありがとうございました。

 レス返しとか質問への回答とかは、またいずれ。

 後日談とか番外編とか没エンドとか投下するかもしれませんので

「もうちょっとだけつづくんじゃよ」

 ということでひとつ。
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/05(日) 00:35:42.45 ID:Ax9GJpr10

このSS見つけたのは二三日前くらいだったけど
ここまで一気に読んでしまった
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/02/05(日) 00:40:11.38 ID:dYVqnsc9o
乙ー
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/05(日) 00:46:31.06 ID:VZIlQHxQo
魔王さまの黄金水なら喜んでいただくな
つか魔王様おっぱい大きくなればいいな
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/05(日) 00:49:43.16 ID:3rJlCx7AO
男と3人のプレイ内容がいまいちよくわからなかった
処女膜×3なのか
肛門×3なのか
体液与えてないなら何を与えたのか
詳しく解説お願いしますです
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/05(日) 00:55:26.75 ID:OdeJcEHL0
おつかれさまー
途中ガチで兄ウゼェ惨殺されて存在消滅されちまえって思ったが
より精神的に苦しんで貰える形になって良かったわ
男と魔王(たち)の子・・・どんな規格外になってくれるんだろうな
あと勇者の今後も気になる所
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/05(日) 00:55:42.19 ID:hs/Qw4Bzo
乙ー
魔王様は外見中○生で黒髪ロングのポニーだからちっぱいのままでいいんだよ!
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/05(日) 01:07:22.33 ID:VZIlQHxQo
>>466
処女膜×3は確実だろ。アナルは知らんが
体液に関しては汗とかも有効だろうしあとは普通にク○ニとかで
足りなかったら飲尿プレイしてたわって感じじゃない?濃縮〜って言ってるし
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 01:09:50.97 ID:HqsnJu/1o
>>466

一応18禁スレではないので簡潔に述べれば、道教の内丹における
金丹の形成をイメージしています。

魔王たち三名が男に与えたものは以下の通りです。

・血液(しかも純潔もセットで)×3
・皮膚や粘膜(ごく少量)
・汗
・涙
・尿
・唾液
・汁(生殖器、消化器の粘膜からの分泌物)

錬金術師が知れば血の涙を流して悔しがるほどの希少素材が男の体内に
取り込まれました。

初夜の内容に関しては「勝算はあるけど万が一の事もあるから妊娠前提で挑む」という
方針で三名は準備をしていたようです。
尻に関しては側近は確定ですね。
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/05(日) 01:26:11.77 ID:VZIlQHxQo
初めての性行為にしちゃ随分濃いな。勇者みたいにトラウマになったりして

つか疑問に思ってたんだが魔王様が実は萌え萌え女神様だったって話があったが王妹のほうも神様なの?
あと王妹がビッチ気どってたのはなぜ?
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/05(日) 01:40:58.28 ID:3rJlCx7AO
おや
尿はやってないかと思ってましたがすでにやってたですか…
男はリンゴジュースが飲めない体に…
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 01:43:25.62 ID:HqsnJu/1o
>>471
王妹種族としては神に含まれます。

ビッチ気取りだったのは没ネタではありますが

王妹は金髪巨乳という外見的にビッチっぽい上に
露出の高い服が好きで、下ネタも大好きのため
処女なのにものすごいビッチと誤解されて今更
引っ込みがつかなくなっていました。

この辺のやり取りは番外編で書ければと思ってます。


>>467
勇者の今後も番外編で。
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 01:45:01.91 ID:HqsnJu/1o
それでは今度こそ今日はこの辺で。
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/05(日) 01:48:38.62 ID:VZIlQHxQo
乙。久々に面白いSSに出会えた
番外編も後日談も期待してます
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/05(日) 01:53:01.81 ID:3rJlCx7AO
お疲れさまでした
番外編も楽しみにしてます
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/05(日) 02:15:35.62 ID:NMN0wK7AO
おつ!

銀河聖女とか伝説宇宙妹はもうでてくることはないのかな?
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/05(日) 02:39:04.34 ID:sJMBgE+70
おつかれさまでしたー
兄の最後には溜飲が下がった
勇者にも幸せになって欲しい・・・・・・
逆襲もいいけど普通に女の子を好きになれるといいなぁ
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/05(日) 03:13:36.40 ID:P8rRq0q30
おつ
しかし、兄の今回の目的がどうにも後付けっぽすぎてピンとこない
今回以前についてはフォローのしようもないからいいんだが
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 03:58:10.15 ID:xslp7eYDO
男は結構早い段階で魔王に惹かれてたみたいだし兄もそれには気付いてたみたいだね
兄はあらゆるシチュエーションを体験してきてマンネリ化してるだろうし
元々ろくでもない人間だってのが分かってたし「弟の嫁を寝取る」って考えに至るってのは過去の行動や人間性からみて不自然な流れではないと思う
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 03:59:15.07 ID:bsFm/YRSo
いや後付けだろ
というか√次第だろ
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 04:18:32.48 ID:xslp7eYDO
魔王の逆襲編開始からみてると魔王の行動とか兄が寝取るに走った後の店長とOLのやり取りとか
色々細かい設定は考えてたように感じるがまぁ√によっての結末なんだろな
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 07:31:16.46 ID:DW9vwa+5o
この>>1は1/9からの連載中にIDにssが二度も入りほどの天運に恵まれている

素晴らしく面白くて更新頻度も良くて見つけてからいつもwktkしてた
素敵な作品をありがとうありがとう

>>1の過去作SSや現行の別SSあったら教えてほしい
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 07:44:20.15 ID:HqsnJu/1o
>兄関連

 選択肢次第でしたが、今回のが最も下種なパターンでした。
 兄の扱いが良かった場合、男のホモ疑惑を危惧した兄嫁たちより

兄嫁「男にもそろそろ青春させなきゃだめでしょ(意訳)」

兄「な、なんだってー!」

 という形になり、兄がラスボスとして男を拉致拘束して

『風雲!アニキ城〜どきっ、ヒロインだらけの大決戦。○クロスもあるよ!』

 てな感じの最終決戦になったかもしれません。この場合、>>298にあるように
今までに無自覚に引っ掛けた嫁候補が大量に乗りこんで魁!乙女塾と化して
いたと思われます。銀河聖女とかその辺の布石でした。

 もっと扱いが良かった場合、兄が「飽きた」と言って新シリーズ以降の主人公の
座を男に譲渡するエンディングが候補としてありました。この展開だと男は
魔王国を離れて新シリーズに突入し、魔王・王妹・側近はそのまま継続しますが
女・女友(リセット済み)が嫁候補として参加する予定でした。



>銀河聖女とか伝説宇宙妹

 今回のルートでは、彼女達が生きていた時代から相当な年月が経過しており
既に存命ではありません。会社が彼女たちの存在に気付いたのは没後であり、
フォローに苦心しました。
 側近がアリウス系列銀河の夢を見たのは、その布石でした。伝説宇宙妹は妹ですので
妹となります。
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 08:16:24.42 ID:HqsnJu/1o
>勇者は幸せになれるのか

 後日談で描ければ良いのですが、没シナリオでは魔王国に各国美女が
押し寄せた際に身重の女賢者・女僧侶・女戦士がどさくさに紛れて逃げてくる
展開がありました。

 勇者はその世界の神に祝福されていますので、魔王ほどではありませんが神が
肉体代わりに憑依する素体として適しているようです。精霊神の神殿の凶行に
気付いた女賢者たちが魔王国に身を寄せるけど、今更どの面下げて勇者に
会えるのか……という感じの御話でした。



>過去作や現行の別SS

 こちらでは、本作が最初の作品になります。
 SSだから会話文だけで構成しようと試みたのですが、分かりにくいとの指摘を受け
自分が書き慣れた形式に変更するなど経験不足を痛感しています。

 最近は御無沙汰しておりますが、ロボ関係の板で短いネタを投下していました。

 それ以前は黒歴史ということでひとつ。
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 09:37:02.75 ID:HqsnJu/1o

興ざめかもしれませんが勢いが残ってるので番外編(?)を短いですが今夜投下しようと思います。

A.勇者後日談〜パパは○学六年生(物理)
B.いけない!王妹せんせい〜耳年増の逆襲(物理)
C.没エンド「兄が屑じゃなかった場合〜おにいちゃんは心配性(物理)」

もし希望があれば↓1で。特になければ適当に。
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/05(日) 09:46:57.16 ID:VQbsuuFHo
2
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 10:25:22.20 ID:j/Wp25KIO
A
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 11:00:19.81 ID:xslp7eYDO
勇者と王妹の話は読みたいな
兄関連は兄の印象が悪すぎて改心したイメージがわかない
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 11:16:09.98 ID:DW9vwa+5o
B
ダメならA
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 11:55:15.89 ID:rY3NWbIDO
ルート、と言われる以前に出た設定を見るに
最悪を見せられた時点で
>>1がどんなに言葉を重ねたとしても
このスレの兄と言うものを信じるのは不可能だな

反省するのは猿でも出来るがこの兄は何が悪いか解ろうともしないから猿以下だよね

そして選択肢は王妹で

492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 12:32:03.60 ID:iasg9yT3o
Cじゃなければどちらでも
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 12:36:10.56 ID:asM761kIO
Aの後にBもだな
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 12:48:20.73 ID:DW9vwa+5o
兄人気なすぎだなwwwwww
読者は正直だww

>>1が兄を嫌いじゃないのはわかる
>>1ならいかようにもできたからな
でも、スレの頭からの兄の言動で読者に嫌われたんだから仕方ないさwwww
495 :1 [sage]:2012/02/05(日) 14:24:20.02 ID:HqsnJu/1o
とりあえずCはナシという方向ですね。
>>487-488の流れで
王妹、勇者の順に投下しようと思います。


兄は主人公()だけど正義の味方でも善人でもなかったのがポイントでしたね。
おっかしいなあ。日本一売れていた頃の週刊少年マガ○ンの主人公達を参考に
したはずなのに。
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 14:43:49.65 ID:DW9vwa+5o
週刊少年マ◯ジンwwww
もしかして、即孕ませとか即アヘ顔Wピースがいけなかったんじゃね?wwwwwwww
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 15:32:33.05 ID:U/ylw1o/o
抜きゲーの主人公が純愛ゲーの脇キャラで出たらそりゃ憎むわな
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 17:58:54.23 ID:bsFm/YRSo
苦悩も葛藤も何もなかった主人公(笑)だったからな
おまけに主役じゃなくて脇役だししょうがないと言えばしょうがない
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 18:39:18.23 ID:HqsnJu/1o
1です。
急用が入ったので開始時刻が大幅に遅れてしまうことになりそうです。
本日は王妹さんネタ(という建前)の話を予定しています。
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/05(日) 18:45:13.72 ID:Q36V0ytAO
相変わらず>>1はぴゅう太とかダイターンとか懐かしいネタを入れてくれて違う意味でニヤニヤするなぁ
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 20:30:54.18 ID:HqsnJu/1o
用件終了につきのんびり投下しますね。
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 20:31:37.28 ID:HqsnJu/1o

+番外編・いけない!王妹先生〜耳年増の逆襲+

※時系列としては魔王の逆襲その7(物理) >>335 前後。



 転送門より帰還した魔王は、執務室に信用できる臣を集めてこう宣言した。

魔王「男と結ばれたいので行動に移そうと思う」

 それは事実の再確認にすぎなかったが、魔界を束ねていた者の言葉は
重かった。半魚人大臣は、先代魔王夫妻の馴れ初めなどを思い出し、
感極まっている。

魔王「異存があれば今の内に言ってほしい」

側近「おそれながら魔王様」

 最初に手を上げたのは側近だった。

側近「駆け落ちと婿入り、どちらを選ばれるのでしょう」

魔王「あ」
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 20:32:55.97 ID:HqsnJu/1o


 そうか、駆け落ちというのもアリだったか。
 感心するように魔王は反応し、側近をはじめとした一同は迂闊な
発言を悔やんだ。

魔王「余はな、この新しい土地で男にも人生をやり直してほしいと思っている」

王妹「同じことを考えて返り討ちに遭ったのが二例あるのじゃろ?」

魔王「ふむ」

 意外そうに魔王は妹を見た。
 彼女が知る王妹は思慮という言葉を脳内に持たないが、行動力と決断力
なにより天性の勘ともいうべき直感に長けている。どれほど不利な状況で
あろうとも「ここで散るのも一興」と笑い、自ら死地に踏み込む胆力が
備わっているからこそ、かつて急進派は王妹を御輿に担いでいた。

魔王「そなたにしては珍しい」

王妹「アレと正面より戦うのは破滅の二文字以外にないと、妾の中の
   雌が吠えておるのじゃ」
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 20:33:52.82 ID:HqsnJu/1o


側近「おそれながら私も王妹殿下と同じ意見です」

 たとえ星を砕く武装を持ちだしたとしても、男の兄を撃ち滅ぼし退ける
のは不可能だと確信します。
 まるで経験したかのような口ぶりで、側近は身体を震わせる。

側近「ですから男さんと結ばれたいのであれば、全てを捨てて彼の
   手を取って数多の世界を渡るより他にないと愚考します」

王妹「そうそう。トイレ共同で風呂のない四畳半の襤褸アパートを借りて、
   ふたりエッチ以外に娯楽がないから穴という穴を開発されたり
   縛ったり吊るしたり注いだり飲んだり飲ませたり挟んだり踏んだり
   果ては首輪と目隠し以外の着衣を外した状態で夜の公園を散歩して
   衆目に裸体を――裸体を――ふぅ」

 何を想像したのかたぱたぱと鼻血を吹きだしつつ王妹は力説する。

王妹「そんなうらやまけしからん苦難の生活を姉上ひとりに強いるなど
   王族の名折れ!」

魔王「怒らないから何をどこまで想像したのか正直に話そうか妹よ」

王妹「……」
505 :ここから先は作りながらの投下になりますorz [sage]:2012/02/05(日) 20:47:30.60 ID:HqsnJu/1o


魔王「妹よ」

王妹「なあ姉上」

 わずかな逡巡の後、王妹は目を大きく見開き気迫を込めて叫んだ。

王妹「男が分身の術(物理)を使えぬという保証がどこにある?」

魔王「!」

側近「!!!?」

元帥「!」

大臣「なん、ですと」
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 20:55:35.36 ID:HqsnJu/1o

 王妹の発言に衝撃を隠せない一同である。
 特に魔王の動揺は激しく、手にしていた羽ペンをとり落とすほどだった。

王妹「確かに男は単騎で数万の軍勢を相手にできる。恐るべき体術と
    破壊的な魔法を駆使できる。
    だがな。
    男が使ったという忍法サテライトキャノン(物理)にヒントが隠されて
    いたのだ……忍法、忍術転じて妊術! 乙女でさえ押し倒して安心と
    信頼6時間経過後には【パイルダー】屈服させてしまうのが男の
    常套手段だったんだよっ!」

側近「な、なんですってー!」

 最後の方には何故かメガネを着用し集中線付きで叫ぶ王妹に、律儀に反応
する側近。

王妹「そのような恐るべき相手に姉上一人で立ち向かうなど無謀の極み」

魔王「では妹と側近も共に契りを交わすか」

側近「へ」
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/05(日) 21:33:08.71 ID:HqsnJu/1o

 あっさりとした魔王の返事に、側近は間抜けな声を出してしまった。

魔王「契りを交わす際には人払いを行いたい。すまんが民をしばらくの間
    城と街より遠ざけてほしい」

元帥「御意」

大臣「三日を目処に対処しましょうかな」

 委細承知と、獅子頭元帥と半魚人大臣は退室する。
 執務室にいるのは魔王、王妹、側近の三名である。ちなみに親衛隊隊長は現在進行形で
おしおき水の刑に処せられていた。

魔王「男をこの地に留めるには、そなたたち二名の助力が必要なのだ」 
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 21:52:58.00 ID:HqsnJu/1o

 二人を前に、魔王は己の建てた仮設と対策を述べた。

 はじめは嫁入りの話に思考が吹き飛んでいた側近も、男の世界の仕組みと
それを逆手に取った魔王の策を聞いて正気に返る。

側近「アレと正面から戦わず、なおかつ干渉を受けずにアレの機能を停止させる
    方法ですね」

 私の時もそれ思いついたけど、確か断念したんですよねーと呟きながら側近は
魔王を見た。

側近「この方法のリスクは?」

魔王「上手くいきすぎた場合、男が死ぬ」

王妹「本末転倒ではないか、姉上!」

 
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 22:19:34.08 ID:HqsnJu/1o

 吠える王妹に、仕方ないのだと魔王も吠え返す。

魔王「男は不自然な形で、記録にあるだけでも同じ一年を八十万回繰り返している」

王妹「は、はちじゅうまん?」

 記録にあるだけで、その数字なのだと魔王は額に手を当てる。

魔王「元凶の方も、下手すると数千回繰り返しているらしい」

 万が一にシステムが破綻した場合、少なくとも数千年分の時間が男の身体に
負荷として襲いかかってくるという。システムの恩恵なしにそれだけの時間加速が
生じた場合、老化どころか身体が消滅しても不思議ではない。

魔王「おそらく過去にコレが試されなかったのは、男の急激な老化を防ぐ
   手段がなかったからだと思う」

側近「つまり、魔王様にはそれを防ぐ方法があると」
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 22:36:18.81 ID:HqsnJu/1o

 段々と分かってきましたよという感じのジト目で魔王を見る側近。

魔王「うん、まあ。その、だ」

 未婚女性が口にすべき単語ではないのだがと断りを入れた上で、魔王はできるだけ
爽やかに告げることにした。

魔王「YOUのバージン、男の肉棒で散らしちゃえYO☆」

側近「ちっとも爽やかじゃありませんがな」

 わーん、やっぱりーと側近は叫び返す。

側近「後生大事に抱え込むつもりもありませんでしたけど、そういうので処女捨てるのも
    何か間違っていると思いませんか魔王様っ!」

魔王「誰が処女だけでいいと言った」

側近「え」

 ずごごごごご。
 側近の全身から汗が噴き出す。
 魔王は執務デスクの引き出しより一冊の本を取り出し、側近に手渡した。
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 22:58:45.05 ID:HqsnJu/1o

魔王「魔族や神族の肉体や体液は不老長寿の霊薬として扱われるそうだ」

側近「そ、それなら純潔を捧げるだけで」

魔王「足りぬのだ」

 ごくりと息をのんだのは果たして魔王か側近か。

魔王「男が不自然と思わぬ範囲で入手できる範囲の体液や分泌物その他を
    経口摂取もしくは粘膜接触させたい」

側近「粘膜、ですか」

魔王「今渡した資料にくわしく書いてあるが――尻の穴って、慣れると
   キモチイイラシイヨ?」

側近「そんな豆知識を知らずに過ごしたかったです!」

 大体そういうプレイは王妹様の役割じゃないですかと泣きながら部屋を見渡す側近。
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/06(月) 01:03:22.94 ID:36P4h7+lo

 王妹は。

王妹「い、一発までは誤射かとっ」

側近「なにを誤射されるおつもりで」

王妹「うん」

魔王「乙女的に、それ以上はアウト―っ!」

 どこまでも王妹であった。



 本日ここまで。途中でオチてましたすいません。
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/06(月) 02:20:52.96 ID:B+ZvnCrh0


誤射なら仕方ありませんよねー(棒)
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/06(月) 04:12:06.79 ID:OBReF5Wro
分身の術(物理)は相手を物理的に左右に分身させる技だと思っていたけど、
己の分身とも言える子種を解き放つ方だったか
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/06(月) 06:57:59.76 ID:Ey2lmleKo
一発までなら誤射かもしれませんね
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/06(月) 08:14:15.10 ID:36P4h7+lo

+おまけ〜音声のみでお送りします+

男「言い忘れていた事があったんですが」

王妹「ふぬははははは、わ、妾の、のぉ、ほほほほ女陰がンギモヂイイイくて果てそうなのだなっ!」

男(タイタス)「いや本当にこんな理由で分身(物理)させられるとは思わなかったんですけど」

魔王「ふおおおお、う、う、あう。痛い……けど、ど根性ぉ!」

男(スパロー)「入って早々で申し訳ないんですが。出そうです」

側近「よ、よかったじゃ、な、なないDEATHかはっ」



男「では大体六十万年ぶりですが、出ます」


王妹「へあっ」

魔王「ろくじゅうま……」

側近「一日当たりの平均生産量を3ミリリットルと仮定して、それを365×60万っ!?」

王妹「3人に分かれて3倍量、3人の生娘を相手にして感度3倍ッ!?」

魔王「つまり」

側近「まままままままってください、たたたたしか放出されなければ十日前後で体内に吸」

王妹「……常人ならばな」

魔王「あ」




 破瓜の衝撃で城が吹き飛んでいなければ、およそ2000トンのそれに3人は圧壊していたという。
 また臣民の避難が完了していなければ、その余波で恐ろしい数の妊婦が誕生していたに違いない。

アークデーモン著:魁!乙女汁より抜粋。
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/06(月) 09:59:17.72 ID:kdUGhD+DO
こんな色んな意味で濃いプレイをしてた外で国民たちは宴会してたのか
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/06(月) 18:13:27.84 ID:mdS0hIvAO
通常の1回の射精に約3億の精子があるとして
365×60万×3億=6.57×10の16乗(1京)

これが…AGEシステムか…
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/02/06(月) 18:28:54.59 ID:cYgIK0UAO
>>518
どっちかつーとSEEDだな
精子だけに
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/06(月) 20:41:04.95 ID:bK/VmXfIo

では、のんびり投下をしようと思います。
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/06(月) 21:07:41.74 ID:bK/VmXfIo

+勇者後日談〜パパは○学六年生(物理)+

 勇者が魔王国に保護されてから十一か月が経過した頃の話である。


悪のドラゴン「もうじき一年か」

アークデーモン「十月十日を過ぎていたな」

 郊外の丸太小屋、その庭に張った天幕の下でデーモンとドラゴンはマンモスと恐竜の解体に
勤しんでいた。
 二匹とも高速かつ長距離の飛行が可能であり、なおかつ驚くほど多くの荷物を運べることから
マンモス肉の調達の他に都市間の荷運びなどの仕事も請け負うようになっていた。

悪のドラゴン「産まれちまったのかねえ」

アークデーモン「人間どもとしては、堕胎させる理由がないだろうからな」

 生まれた命に咎があるわけではないだろうが、酷な宿命を背負うのは目に見えている。
 そういうのは本来悪の為すべき所業なのにとドラゴンは嘆く。
 嗚呼、誇り高い正義はこの世界のどこに残っているのかと。
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/06(月) 22:12:06.02 ID:bK/VmXfIo

悪のドラゴン「あいつも肩書こそ勇者のままだけど、魔族の友達とか増えてるしなあ」

 そもそも魔王国には純粋な人間の定住者は数少ない。
 魔界の住人も種々様々なので、少数派だからと言って差別を受ける訳ではない。
深刻な対立は食の嗜好や特殊性癖に関して起こるものであり、幸いにして勇者は
その種の対立に巻き込まれたことはない。

アークデーモン「成人した暁には故郷を訪ねるのも良しだろう」

悪のドラゴン「成人する前に故郷とやらが原形留めてるといいけどな」

 なにしろ勇者の血筋を取り込むような国だ。
 次に何を考えているのかは想像に難くないし、そうなった場合に「大魔王」がどう動くのかは
もっと分かりやすい。
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/06(月) 22:29:33.71 ID:bK/VmXfIo

???「あのー」

 悩みながら作業する二匹に、声をかける者がいた。

???「卒爾ながら、御尋ね申し上げる」

 声の主は三つ。

???「こちらに勇者殿がお住まいと聞いて来たのですが」

 いずれも年若い少女であった。
 若いとは言っても十五かそこらの、見目麗しい三人組である。身長や体格に差はあるが
揃いの衣装に簡素な防具を身につけていることから同郷かつ血縁なのかもしれない。

悪のドラゴン「あいつなら、えーと」

アークデーモン「大魔王の居城で、街の子供と一緒に勉強の時間だな」

 当たり障りのない言葉を選ぶデーモンとドラゴン。
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/06(月) 22:49:55.43 ID:bK/VmXfIo

 しかし、その回答が予想外だったのだろう。
 三人の少女は大層驚き、そして怒りに拳を震わせた。

???「許せない、許せないんだよ!」

???「おのれ大魔王め、甘言呈して勇者を誑かすとは不届き千万。成敗してくれる」

???「急ぎましょう皆さん。今こそ勇者殿を取り戻すのです!」

 三人の少女は義憤に燃えた後、デーモンとドラゴンに頭を下げて踵を返した。
 走るその勢いは人間の規格を越えたものがあったが、道行く者の邪魔にならないように
している姿には好感が持てた。

悪のドラゴン「なあ」

アークデーモン「うん」

悪のドラゴン「俺たちは何も見なかった」

アークデーモン「よし酒にしよう」

 二匹は現実逃避した。
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/06(月) 23:10:31.32 ID:bK/VmXfIo

 魔王の城の中庭に、プレハブ建ての小さな会社がある。

店長「いやー、工業汚染のない世界の空気はおいしいなあ」

OL「ですよねー」

 かつて転送門のあった木造小屋が、再建の折りにプレハブ建ての施設となり、
いつの間にか男の勤め先が移転していた。

男「その節は大変ご迷惑を」

店長「結果オーライですよー、男君。海外に住んでいる御両親も『あなたの御子息が
    ストーカー気味の女性に関わって行方不明になりました』と言ったら『ああ、
    遂にですか』と納得されていましたし」

OL「御両親が実在していたことに驚いたのは秘密ですけどね」

 相変わらず残機の少なそうな店長と、昼間から缶ビールを手放せないOLである。
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/06(月) 23:39:27.37 ID:bK/VmXfIo

店長「それで、初等教育をできる人材の派遣でしたね」

勇者「よろしくおねがいします」

 頭を下げる勇者。
 魔界の民が使う言語は、この世界の標準文字とは異なる。嗅覚味覚を使った
文化交流はともかく、人間種族は文字と音声を重視している。

勇者「この世界の人たちと仲良くやっていくのなら、言葉が通じあうように
    しないといけないって思ったんです」

 それがきっと僕の、勇者として果たす役目じゃないか。
 
勇者「なんて、生意気な事を言ってすいません」

OL「圧倒的な火力で脅した後に友好の握手を求める大魔王さんよりはマシだと思うわ」

男「ひどい大魔王がいたものですね」

 あくまで他人事のように男は感想を述べた。
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/06(月) 23:43:08.48 ID:bK/VmXfIo

 本日の投下ここまで。明日以降に続きます。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/06(月) 23:46:17.97 ID:X2XVDkTjo
店長とOLがちゃっかり移住してるのか
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/07(火) 00:55:56.90 ID:bScWh0yw0
乙ですー
勇者が立派になってくれて嬉しい
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/07(火) 03:37:16.53 ID:sVqXsAHao
魔王様のデレがみたいです
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 07:56:02.42 ID:E30wNVjIO
兄問題が片付いていちゃラブ(物理)が楽しみだwwww
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 20:14:13.72 ID:9XoGhftlo
では続き投下しますが、今日の投下でも終わらないことが確定しました。
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 20:15:02.97 ID:9XoGhftlo


店長「それにしても、勇者君は男君の特訓に耐えた逸材と聞いていますが」

 やさぐれた様子もなく年相応の笑顔さえ見せる勇者の姿に、店長は
感慨深そうに何度もうなずいた。

店長「よくもまあ、真っ直ぐに」

魔王「ほう」

 と、顔を出してきたのは魔王その人である。自身も資料を携え側近や侍女を
伴っており、公的な立場としてやってきたようだ。

魔王「やはり余の夫はひねくれた育ち方をしていたか」

OL「それはもう」

 うふふふ。
 不気味な含み笑いと共にOLは、事務所の引き出しから分厚いファイルを
何冊も取り出す。それらが何であるかを察した魔王は側近に声をかけた。
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 20:16:35.76 ID:9XoGhftlo


魔王「午後の予定はどうなっていたかな」

側近「初等教育の教員選定さえ完了すれば、あとは各種書類の決裁ですね」

 魔王の言わんとするところを即座に理解した側近は事務用の伊達眼鏡を
くい、と動かし有能さをアピールする。

OL「教員候補としては当社で事前にデータを提出させていただきましたが
   いかがしましょうか」

店長「え、あの。OLさん、それぼくの仕事で」

魔王「各種氏族の力関係も考慮した配置だと感心している。実際に運用を
   始めてから見つかる問題点をどうするかだな」

側近「では、教員選定は完了と」

 側近が指を鳴らす。
 控えていた侍女たちが会社の中にテーブルを持ち込み、食器と料理を運んで
来たかと思えば各人を椅子の上に座らせていた。

勇者「……いつの間に」

男『勇者君』

 魔王と側近に両隣の席を固められていた男が、唇の動きだけで勇者に語りかけていた。

男『自分の最期を目に焼き付けて――願わくば君が後の人生でこれを回避できることを
  切に願います』

勇者「お、男さあああんっ!?」

 目からハイライトの消えていた男を肴に、宴は始まった。
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 20:18:32.78 ID:9XoGhftlo



 一言でいえば、さらし者であった。
 今のようなデタラメを身に着ける前、すなわち修業時代の男の資料が会社に
残っているのは当然なのだが、OLの解説がすさまじかった。

OL「あれはいつだったかなー、ゴルフみたいな技で鉄球に脳天ぶち割られて」

勇者「ぶっ」

OL「後は相手に目つぶし喰らわせて視界を奪ったと思ったら、実は相手は
   生来より目が見えない人であっさり逆転されちゃうし」

魔王「男も意外と弱かったのだなあ」

OL「相手がデタラメすぎたんですよう、主人公属性でしたし」

 昼食時だというのに缶ビールを何本もあけながら、機嫌よさそうにOLは
ファイルをめくる。

OL「下り坂でジャンプして死んだり、相手がいきなり天和W役満だったり
   道中で拾ってくる食材が全部キノコで中毒したり」

 ぽんこつだった時代が千年近くあったのよねー、とデータを調べながら
嬉しそうに語るのはOLだけである。店長は血涙を流し、呼び出された
半魚人大臣と獅子頭元帥は目元をハンカチーフでおさえ、男は真っ白になっている。
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/02/07(火) 20:19:38.13 ID:9XoGhftlo


王妹「安心されよ我が夫」

 同じく魔王より召集を受けた王妹が、慈愛の笑みを浮かべた。

男「王妹、さ、ん」

王妹「あの日より今まで妾だちが夜毎どれほどの羞恥を晒してきたと思う?」

 それに比すればこのような暴露などほほえましい昔語りではないか。

 ああ、味方となる女性はどこにもいない。

 給仕をしている侍女達も、男の顔と広げられた資料を見比べて、同情のような、
あぁこの人もデタラメになるまでは苦労してきたんですねーむっつり野郎、とか、
この頃は綺麗なお姉さんの乳と尻にイロイロ惑わされていたんですねーケダモノ、
といった感じのアルカイックスマイルを向けていた。
 仮にも大魔王と呼ばれている相手なのだが、威厳や畏怖という感情は消えて
微妙な親近感が残ったようである。

勇者「お、男さん。生きて……ます?」

男「いっそ死なせて」
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 20:21:00.11 ID:9XoGhftlo


???「その願い、叶えて進ぜよう!」

 救いの手は、予期せぬ方向から来た。

 プレハブの扉を突き破り、三人の少女が飛び込んでくる。カラフルな衣装に
身を包んだ少女たちは、会食のために部屋の隅に動かされたスチール机を
足場として着地した。

店長「な、何者だ!」

 こういう時のお約束を外してはいけないと店長は狼狽気味に叫び、それを待って
いたかのように少女たちは名乗りを上げた。

長女勇者「長女勇者、イェーガー!」

 猫科の猛獣を思わせる俊敏な動きで藍色の服の少女は叫ぶ。

次女勇者「次女勇者、シュナイダー!」

 猫科の猛獣を思わせる攻撃的な動きで橙色の服の少女は叫ぶ。

三女勇者「三女勇者、パンツァー!」

 猫科の猛獣を思わせる獰猛な動きで緑色の服の少女は叫ぶ。
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 20:22:46.68 ID:9XoGhftlo


長女勇者「悪の根源たる大魔王、この世界をあなたの好きにはさせない!」

次女勇者「天網恢恢疎にして漏らさず、罪を償う時が来たと知れ!」

三女勇者「我ら勇者三姉妹、父様を救いに只今参」

隊長「美少女の匂いは、ここかああ!」

勇者三姉妹「「「のわーっ」」」

 窓を突き破って現れた親衛隊隊長が、三人の少女を見て涙を流す。

隊長「おおお、神よ……私は今、あなたに感謝します! こんな、こんな、
   こんなにも愛らしく穢し甲斐のある美少女を! ふおおおおおおお!」

男「ニフラム(物理)」

隊長「気分は! え・く・す・た・しいいいいいっ!?」

 赤い光の虎に呑み込まれ、壁ごと吹き飛んで城の外に飛ばされる親衛隊長。
あのまま光の彼方に消し去ってしまえばいいのにと、その場にいた誰もが
考えたが優先すべきことが他にあった。
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 20:23:42.97 ID:9XoGhftlo


魔王「負傷者はいるか?」

大臣「おりません」

魔王「料理や資料は無事か?」

元帥「不幸中の幸いにして」

魔王「男のライフは?」

王妹「とっくにゼロだぞ姉上」

 ならばよしと魔王は息を吐き、改めてスチール机の上にいる勇者三姉妹を見た。
 ニフラム(物理)を初めて見たのか、そのデタラメな威力に腰を抜かしている。

魔王「椅子と料理を三人分、追加できるか?」

側近「御意」

 恭しく側近は頭を垂れ、侍女たちは迅速に行動を開始した。先刻とはまた異なる
修羅場の予感に、店長は胃の辺りを知らず押さえていた。
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 20:27:01.85 ID:9XoGhftlo

書き貯め分は以上で、ここからは即興になるので投下が思い切り遅くなります。
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 20:42:14.23 ID:gofTaVymo
三女はグレーの服じゃないのかぁ
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/07(火) 20:52:26.75 ID:3yWkpjbBo
他にはゼロとかイクスとかフェニックスとかファルコンとかマリナーとかソウガとかヒオウとかいるのかしら?
乙!
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 21:27:16.22 ID:9XoGhftlo


 勇者は十二歳になったばかりだった。 
 テーブルを挟んで向かい側にいる少女たちは、勇者より三つは年上に見える。
 先刻とは別の意味で味を感じなくなった昼食を口の中に運ぶ勇者。
 生まれた、とは予想していた。
 いつか自分の気持ちを整理できれば会いに行きたいとも思っていた。あるいは
彼女達が会いに来てくれるかもという淡い期待もあった。現実は淡くも甘くもない。
そんな勇者の様子に何を思ったか、少女の一人が口を開いた。
 
長女勇者「は、初めましてお父さま」

 女戦士の面影がある長女が上ずった声で、距離を図るかのように話しかける
次女三女は、勇者の反応を固唾をのんで見守っていた。
 お父さま。
 店長と男の表情が曇る。二人には思い当たる事例があったのだろう。勇者は
食器を置き長女の瞳を見た。かつて淡い憧れを抱いた女戦士に、やはり似ている。

長女勇者「わ、わたしはっ! あなたのっ、肉便器ですっ!」

勇者「チェンジで」

長女勇者「に、肉便器が駄目なら、穴奴隷でっ!」

勇者「台無しだよ! 一年間のボクの苦悩とか思い出とか全部台無しだよ!」
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 22:33:34.70 ID:9XoGhftlo


 これはひどいと、獅子頭元帥が評する。
 我々の種族の場合魚便器になるのですかなと半魚人大臣はどうでもいいことに
逃避してみた。

男「あー、その。勇者君、人生こういう事もある」

勇者「回避不能ですよ、こんなイベント!」

長女勇者「お父さま、どういう立場なら私達は側にいても良いのですか」

 我に返った。
 長女も次女も三女も、泣いていた。

次女勇者「母上は我らに父上を訪ね其処を安住の地と定めよと仰られた。だが
     ここは魔族の国で、父上は虜囚の身と聞かされておりました」

三女勇者「だから大魔王を倒して父様を取り戻して、母様を連れ戻したい。
     父様はどうすれば私達と一緒にいてくれるのですか」

 ぼろぼろと、泣いていた。
 果たして己と血がつながっているのか勇者には確証は持てないが、この
少女達は間違いなく自分を父親として見ているのだ。
 十二歳の自分を。
 自分よりも年上に見える少女達が。
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 23:05:12.05 ID:9XoGhftlo


勇者「よし、わかりました」

 勇者は宣言した。

勇者「家族会議を開こうと思います」

魔王「家族?」

王妹「会議?」

側近「ですか?」

 聞き慣れない言葉に、魔王達が反応する。そういえばこれは
男さんの世界の考え方でしたっけと勇者は苦笑し、泣いている
少女達を見た。

勇者「家族の問題を話し合うのですから、家族が揃わなきゃ
   話になりません」

大臣「なるほど正論ですな」

勇者「ですので、ちょっと出かけてきます」

元帥「いちおう聞いておくが、行き先と目的を教えてくれ」

 止めるつもりなど毛頭ない獅子頭元帥が、片眉を持ちあげて
興味深く訊く。
 少年は迷う事もなく、こう返した。

勇者「故郷へ、家族を取り戻しに行ってきます」
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/07(火) 23:10:56.24 ID:9XoGhftlo

 以上で本日の投下終了です。勇者の後日談その2に続きます。
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 23:29:35.45 ID:nq6cIgyIO
勇者きゅんがかっこいい……! お兄さん股間がきゅんきゅんしちゃうううう
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/07(火) 23:44:15.46 ID:0XENecKAO
ヒャッハー!大魔王様も連れてこうぜー!
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/08(水) 00:22:42.06 ID:U1L3DyGL0
乙ですー
勇者がんばれー
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/08(水) 00:33:17.96 ID:ve0mOZAgo
最強パーティーで行こうぜ
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 01:19:38.21 ID:AP4eaxZwo
ガンガンいこうぜ
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/08(水) 01:33:28.16 ID:pXLOldjs0
勇者・デーモン・黒竜・大魔王
の四人ですね分かります
・・・王様逃げて超逃げて
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/08(水) 01:53:11.39 ID:xFvTrbAI0
>>552
どう考えても勇者のパーティってメンバーじゃないよなー
むしろ国が逃げて
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/08(水) 01:55:14.08 ID:ve0mOZAgo
そういや最強パーティーって言っても男一人いりゃ十分なんだな
そうなるとやっぱり二人と二匹か
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 06:48:03.77 ID:6342owKbo
勇者は一人でももうかなりの火力なんだよね
デーモンとドラゴンが恐れるくらいだったよね
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 07:11:46.94 ID:FlQlWF6IO
攻撃は最大の防御な方々ばっかりwwww
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 12:54:55.45 ID:ABarGG3DO
普通パーティーってのは色々バランスを考慮するもんだが男いる時点でバランスも糞もないよね
面白さのバランス考えるなら二人と二匹は良いな
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/08(水) 15:26:13.13 ID:iSZmWHqpo
男一人でも最低三人に分身(物理)出来るしなあ
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/08(水) 18:08:44.47 ID:wr4b3X2AO
仮に逃げ出したところで、男(ビット)がずらーっと並んでるんだろうな…
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/08(水) 19:26:37.36 ID:lt4iFO3mo
本日の投下はちょっと遅れますね。
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 20:45:40.82 ID:ckUZaJ/IO
十二王方牌大車併(物理)か
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/08(水) 21:16:49.04 ID:lt4iFO3mo
それでは短い上に投下間隔が不安定になりますがいきます。
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/08(水) 21:17:23.26 ID:lt4iFO3mo


+勇者後日談その2〜勇限会社トッキューマンモス+


 勇者の宣言を無謀と罵る者はいなかった。

店長「でも、その前に情報整理くらいはさせてくださいな」

 道具の調達もあるからねーと軽い口調で端末を操作しながら店長は
勇者に同意を求め、勇者もお願いしますと頭を下げた。店長の隣では
OLが同様に端末を操作し、空中に幾つもの画面が投影される。

OL「結論から言えば、勇者君の故郷は妖魔王と呼ばれる存在を復活させて
   十数年前の大戦争を再度引き起こす予定ですね」

店長「あのそれぼくの台詞」

OL「うちは勿体ぶった正義の味方じゃありませんから」

 一時期はやったんですよねー、最後まで情報隠したまま前線に貴重な
人材を無駄に送り込んで色んなものを御破算にした連中。

 なにかを思い出したのか額に青筋浮かべ、OLは本日十本目となる
缶ビールをあけた。
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/08(水) 21:18:34.76 ID:lt4iFO3mo


OL「勇者くんの祝福って本来は妖魔王とその眷族に対して発動するもの
   だそうです。それで、妖魔王達を世界中で暴れさせて、疲弊した
   各国を真なる勇者の名の下に統一するとか」

 誰だこの図面引いた間抜けはと笑いながら、OLは資料をまとめる。
 魔王は、そういや十数年前にそういうのが暴れていたっけと、側近達と
共に集めた過去の資料を引っ張り出した。

魔王「余達よりは、人間への依存性が強い種族のようだな」

側近「疑似的な肉体を構成した悪霊に近いですね。物理攻撃は無効、
   元が精神生命体なので魔法攻撃だってどこまで有効なのか
   不明で、先代の勇者が妖魔王と相討ちで封じ込めたとあります」

 厄介な相手ですねえと側近が嘆息し、配下のネーミングセンスに
王妹は悶絶している。

勇者「じゃあボクの力って魔王さん達に向けられたものじゃないんですね」

OL「身体能力とかの修正はありますけど、本質的には彼らのいう神器を
   発動させるための素養ですね。それで」

 確認のためにOLは店長と男を見て、話を続ける。
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/08(水) 21:19:56.23 ID:lt4iFO3mo


OL「この妖魔という種族は、異世界から来る新興の神様が自分の縄張りを
   増やすために頻繁に利用する尖兵なんです」

元帥「……冗談であろう?」

 ぶわりとタテガミを揺らす、獅子頭元帥。

元帥「仮にも神を名乗る輩が、己の救世のために世界を滅亡の危機に落とすと
   言うのか」

OL「誇り高い悪を貫くために、清く正しく勇者を育成しようって悪魔と
   ドラゴンがいるじゃないですか」

 本質はそれと一緒ですよとOLは頬を引きつらせつつ、割れた窓を指さした。
 当たり前のように居たデーモンとドラゴンが、デーモンのおじさまドラゴンの
おじさまと勇者三姉妹に懐かれている。

元帥「あれか」

OL「あれです。あれがロリコンというナマモノです」
566 :書きとめここまで、以後はのんびり投下します。 [saga]:2012/02/08(水) 21:21:34.99 ID:lt4iFO3mo


悪のドラゴン「ろ、ろろろろろロリコンとちゃうわっ」

アークデーモン「うろたえるあたりが実に怪しいな」

 ロリコンでは仕方ないなと獅子頭元帥と半魚人大臣も納得する。

店長「それで、勇者くんの故郷の国王と大司教ってのが結託して
   勇者くんから神様の祝福を新しい勇者に移植して、そこのロリータ
   三姉妹勇者とハーレムパーティー結成させて妖魔王を倒す筋書きだと」

 話が脱線しかけたOLから資料を取り戻し、店長が読み上げる。
 途端にデーモンとドラゴンが凍りつき、動かなくなる。

店長「えーとですね、彼らの予定では三姉妹と勇者くんが感動の
   再会で油断しているところを『異世界から召喚した戦士』を
   使って魔王国を襲撃、破壊工作のついでに勇者くんの身柄を
   確保して神の祝福を移植するんだそうです」

魔王「今まで移植してなかった理由は?」

店長「有資格者が神器に触れたら祝福が自動的に移行すると思い込んでた
   みたいですね」

 勇者くんがそういう経緯で勇者認定されたので、気付かなかったのでしょうと
店長は淡々と告げる。
 淡々と告げているのだが。
 室内の気温が確実に数度下がっているような錯覚を抱いている。
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/08(水) 21:41:19.20 ID:nlQmI5T3o
『異世界から召喚した戦士』
普通なら王道のようなものと思えるのに、このスレではなんておぞましい響きなんだ……
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/08(水) 21:56:55.60 ID:lt4iFO3mo


魔王「その情報の信憑性は?」

店長「うちの『本社』のデータベースから引っ張ってきた情報ですので、
   観測時の誤差を除いても大まかな流れに変更はありませんぜ」

 当社の基準では真っ黒で、処罰対象ですねこれ、と資料を見ながら店長は
あきれ返っている。
 襲撃者の攻撃翌力が十分なら魔王さんと王妹さんの身柄も拉致しかねない
連中ですねと、OLが続ける。該当する神のリストを呼び出し、この神性が
これまで訪れた世界でどのような行為を続けてきたのか調べたようだ。

OL「推測ですけど、大魔王が君臨した事で妖魔王のインパクトが薄れ
   まくったんでしょうね」

 本来なら十数年かけて進める計画なのに、無理やり赤子の成長を加速させ
異世界から勇者でもない戦闘員を召喚する。おそらく一度の戦闘で使い潰す
前提なのだろう。

店長「男君、たぶん街から200キロのところにまで来てると思うんで」

男「あい」

 コンビに行くならついでに弁当買ってきてというようなノリで、店長は
男に声をかけた。

店長「ファンタジー世界に第二次大戦の奇天烈兵器を持ち込んで重火器
   無双したがるお客さん、叩き返して頂戴な」

OL「一発だけなら誤射ですよ☆」

 いつもの仕事ですねと男は言い。
 いつもの仕事ですよとOLと店長は返した。
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/08(水) 22:01:28.97 ID:nlQmI5T3o
オリ主さんですね、わかります
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/08(水) 22:19:55.16 ID:ve0mOZAgo
普通は新たな敵対勢力の登場って燃える展開なんだろうけど
全然燃えないフシギ
571 :このお話はフィクションであり特定の以下略誹謗する意思は微塵もありません [saga]:2012/02/08(水) 22:26:45.19 ID:lt4iFO3mo

 男は怒りに震えている魔王たち三名を抱擁し、いつもと変わらぬ口調で
こう言った。

男「この戦いから帰ってきたら伝えたいことがあるので、パインサラダと
  ステーキの準備をお願いします」

魔王「そなた結構フラストレーション溜めこんでいたか」

男「今ならアークインパルス(物理)できそうですけど、些細な問題です」

王妹「妾らも共に戦おうぞ、な。な。だから、その目がグルグルしているのを
   やめよう、な」

男「ああいう異世界召喚ものって兄の定番の一つだったんですよね。
  状態の良い戦車や航空機を用意して、整備とか燃料とか弾薬を調達して
  それなのにヒロインと駆け落ちした際にあっさり乗り捨てとか
  今までに何度も何度も何度もうふふふふふふ」

側近「正気に返ってくださいーッ!!?」
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/08(水) 22:42:13.58 ID:lt4iFO3mo


 涙目になって震える魔王達を侍女に託し、けろっとした顔で男は
壁に備えつけのロッカーより必要装備を取り出した。

男「彼らは無理やり召喚されたようですし『元々召喚された先の異世界』に
  戻っていただく予定です」

OL「ゑー」

 不満そうに声を上げるのはOLである。

男「そういうわけで、ここは自分に任せて勇者くんは家族を連れ戻しに
  行ってください」

勇者「あ、はい」

悪のドラゴン「10分待ってりゃ全部片付きそうなんだが」

男「はっはっは」

 ドラゴンの突っ込みに男は笑顔で返す。

男「自分、戦いに行く訳ではありませんからね」

 嘘じゃないですよ。
 ウソジャナイヨー、と白々しくうそぶく男。
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/08(水) 23:07:05.21 ID:lt4iFO3mo


男「そもそもですね、この世界とあの人たちの故郷世界ってのは
  似ているようで結構違うんですよ」

 ロッカーより取り出した装備、軽量で防具とは思えない衣類を
勇者に着せる。後方より「いいなあ、あれ」という小さな声と
ねっとりした視線を感じたが、男は無視した。

男「惑星のサイズも違いますし、大気組成にも違いがある。精霊の
  機嫌損ねたら竹トンボだってまっすぐ飛ばないんですよ、ここ」

店長「精霊神だっけ、ここのメイン」

 魔界消滅時の騒動を思い出し、店長は納得した。原則として精霊神崇拝で
成り立つこの世界は、奇跡の大部分も精霊神に依存している。

男「ですから」

 すちゃっと男はカラオケ用のマイクを取り出し、スイッチを入れた。

男『今こちらに向かっている兵器乗りの皆さん、兄の同類ですよ』

 次の瞬間。
 地平線の彼方より大地を轟かすほどの爆音が上がり、空の一角が紅に染まる。
化石燃料が引火したのか火薬が暴発したのか、いやいやそんな生易しいもので
あのような爆発が起こるものかとOLは慄く。

アークデーモン「いまの、魔法か?」

男「外交(物理)です」

 スイッチを切り、男はマイクをロッカーに戻した。
 兄に関わったばかりに女体化され、ついでに女性としての悦びを
教育されてしまった精霊神の心的外傷はそれほどまでに深刻だった。
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 23:22:14.98 ID:6tNqS5BFo
ps2のゲームで柿崎選んであるステージ選択するとプレイしないでゲームクリアになる場所があったな
あ、劇場版ってステーキ食べてなかったっけ
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/08(水) 23:27:17.30 ID:xFvTrbAI0
グルグル目ということはドワオ(物理)か
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/08(水) 23:41:08.19 ID:lt4iFO3mo


男「それで、男君に武器を渡そうと思うのですが」

勇者「狩猟用のナイフなら、持ってますよ」

 普段より持ち歩いているナイフを見せる勇者。男は首を振り、
自分のデスクより真新しい短剣を取り出した。
 武器としては頼りない長さだが、勇者くらいの背丈の少年が
使うには丁度よい大きさだ。
 あ、と声が漏れる。

男「護身用として持ち歩いても、邪魔にならないものを選びました」

勇者「はい」

 ありがとうございますと勇者は短剣を鞘ごと腰のベルトに差し、更に
幾つかの武器と道具を譲り受けた。

勇者「デーモンさん」

アークデーモン「ふむ」

勇者「ドラゴンさん」

悪のドラゴン「おうよ」

勇者「故郷まで一緒に行ってもらえますか」

 返事の代わりにドラゴンは勇者を乗せデーモンと共に勇者の故郷目指
して飛び立った。
 
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/08(水) 23:42:09.65 ID:lt4iFO3mo

本日ここまでです。

>>576
×男君に武器を
○勇者くんに武器を
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/08(水) 23:55:21.35 ID:lt4iFO3mo
なお今回登場した『異世界から召喚した戦士』という単語はあくまでも演出上の
表記であり、万が一にも連想する物語や事物があったとしても当方には一切の
他意は(ピンポーン)おや、こんな時刻に宅急便とは珍し(日誌はここで途絶えている)
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/09(木) 00:09:37.03 ID:EbsPdOxTo
何を今更
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 00:31:04.68 ID:3m72TCkSO
何を今更
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/02/09(木) 00:36:59.95 ID:n4o54ZB8o
なにをい
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/09(木) 00:41:43.33 ID:vH5sJ2FJ0
なにを
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/09(木) 00:54:22.14 ID:1tzCquhr0
乙ですー
勇者は男と別れて行動するのか。がんばれー
そして自分を虐待した女たちを「家族」と言える勇者まじイケメン
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 06:57:07.97 ID:Tu1v2oxIO
なに
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 20:00:14.48 ID:t8CDrivHo
今日の投下は、のんびりと、始まるのも遅くなる予定ですはい。
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/09(木) 20:06:36.65 ID:pkUj2Lm8o
待ってゆ
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/09(木) 20:30:36.76 ID:t8CDrivHo
+勇者の後日談その3〜彼女達の事情+


 最初に少年を見た時の印象は「生贄の羊」以外の何物でもなかった。
 傾いた国を再興するといえば聞こえはいいが、大災厄を再び起こして周囲の国を
壊滅させようという企みである。

 かつて世界を救った勇者は痛々しいまでの夢想家だった。

 人と魔が手を取り合って暮らす日を目指し、泣きながら魔を斬り伏せ、妖魔王と
相討ちになって果てた。最後の戦いを見届けたという父親の言葉が正しければ、そ
んな甘い人物だったという。

 形ばかりの儀式を経て公爵家に四男という形で引き取られた少年が、それ以前に
何処で誰と暮らしていたのか彼女は知らない。孤児だったとも農奴だったとも噂は
流れているが、勇者である事実が王家にとっては全てだった。父である王は少年の
出自に何も語らず、ただ勇者に祝福あれと叫んだ。

 勇者の血を残す。

 それは先代勇者では果たせなかったものだった。
 王の娘として彼女が。先代勇者と行動を共にした大賢者と大司祭の娘が、その任に
選ばれた。妥当な人選だったし、政略結婚で見も知らぬ男に股を開くのと出自も知れぬ
少年の逸物を呑み込む事の違いなど、彼女にはなかった。
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 20:49:41.63 ID:t8CDrivHo



 反発していたのは大司祭の娘で、人身御供となった少年の境遇に涙さえ流していた。
大賢者の娘は、自分たちが勇者の子を身ごもった後に何が起こるのかを知っていた。
精霊神とは異なる神性と契約を結び、数多の民草の屍の上に大帝国を築き上げる。その
過程で彼女たちが生み育てた勇者の子が世界を救い、自分たちは聖母として歴史に
名を残すのだと。

 知らなかったのは勇者ただ一人だ。

 彼は倒すべき敵すら知らず、勇者だからという理由で旅に出ようとしていた。
 無謀だった。
 種馬として招かれた少年は剣の持ち方さえ知らず、旅の中で口にするすべての水と
食糧に、発情の薬を仕込まれた。

 彼女たちの本来の身分を誰も知らぬ異国ので、彼女たちは少年に精を注ぎ込ませる
事にすべてを尽くした。発情を促し、刺激を足し、倒錯的な状況に身を置かせて
理性を砕き、眠る間ですら猛るように禁制の乳液をすり込んだ。

 少年との会話は、楽しかった。

 乳液の効果が切れわずかに理性が戻る短い時間に、少年は勇者であろうとした。
まともに握れぬ剣を持ち、彼女たちを守れる強さを身に着けたいと本気で願った。

 無駄な願いだと彼女達は何度も言った。

 
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 21:24:36.68 ID:t8CDrivHo


 意識が戻った隙に、どうして逃げ出さないのかと罵りもした。

 女僧侶は、精霊神の神殿への紹介状を書き、これを持って逃げ込めば悪い
ようにはならないと訴えた。
 女賢者は、少年が逃げ出せば次の候補を探すだけだから気にする必要はないと
強がって見せた。嘘の下手な娘だった。
 彼女は。
 戦士である彼女は、泣きながら腰を振った。一日でも一刻でも早く身籠れば少年は
解放されるのだと思い、耐えろ勇者と叫び続けた。勇者だった少年は冒涜的な姿で
腰を振り続け、彼女たちは放たれた精を総て受け入れた。喜びと悔しさに、嬌声と
嗚咽を幾度も繰り返した。

 身籠ったと判るのに三月を要した。

 別れの言葉を告げる間もなく彼女たちは祖国に連れ戻され、大賢者が勇者の身を
引き取った。何をするのかと訊けば一言、神は無垢なる魂を求めていると返ってきた。
 あれはもはや肉親ではない。
 女賢者は吠えた、女僧侶が続いた。女戦士は躊躇し、その隙に大賢者の人質と
なって三名は幽閉された。

 昏睡の魔法がもたらす夢の中で、彼女たちは少年に詫び続けた。次代に残る血を
得るだけならまだしも、その身を神性召喚の贄に使うなど考えもしなかった。
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 21:45:14.68 ID:t8CDrivHo


 おそらくは自分たちも、少年の子を産み落とすまでの命なのだろう。
 それでも構わないと、彼女達は夢の奥深くで考えていた。
 あの少年の魂は、もはやこの世にはないのだろう。彼らが神々と呼ぶ何かを
この世界に呼び出すための材料にされたのだ、たとえ精霊神が力を尽くしたとして
あの少年を救うことはできないのだ。
 ならば自分達も同じように散ろう。
 魂が粉々に砕け、朽ちゆく汚泥の末に、あの少年の欠片があるかもしれない。
それだけで十分だと彼女達は考えた。

 転機は、腹が膨らむ前に訪れた。

 昏睡の魔法が解けた時、彼女達の子宮に子はいなかった。
 何かに焦り苛々しく周囲に怒鳴り散らす大司教と、それとは反対に三十歳は
老けたように見える王の姿があった。
 小さくも荘厳だった宮殿は、徹底的に破壊された後にデタラメに組み立てら
れたような、おかしな建物になっていた。

国王「大魔王なんて、そんな話は聞いていないぞ!」

 滑稽であった。
 妖魔王を目覚めさせて世界を再び破滅させようと図面を開いていた父親が、
予期せぬ敵対者の出現に狼狽していた。
 自分達の世話をしていた侍女に話を聞けば、魔王の使者を名乗る男が大賢者を
叩きのめし勇者を連れ去ったという。真正面より乗り込んで、国体の維持に
最低限必要な兵士を残し、他はすべて再起不能の一歩手前まで叩きのめされた。
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 22:07:39.01 ID:t8CDrivHo


 他国への侵略を前提に揃えていた騎馬は一頭残らず姿を消し、頑強な鉄弓は
赤錆の山となり、国庫に蓄えた金銀は一枚の領収書に変わり国内の飢えた民に
温かいスープとパンが配られていた。
 大賢者は。
 かつて大賢者と呼ばれていた男は、呪文を一節でも口にしようものなら逸物と
肛門に凄まじい快楽が押し寄せ一瞬にして絶頂を迎える体質になっていた。
 人間、苦痛には耐えることができるが防御不能の快楽を直に喰らうと思考が
焼けつくようだと、かつて大賢者だった廃人を遠巻きに見た誰かが呟いた。
 理性ある最期の言葉は、[らめぇぇっ!]語だったらしい。

 ならば妖魔王ではなく、魔王とその使者を標的に武力闘争を起こせばいいと
進言する臣もいたようで、国王も魔王国討伐を題目に掲げて再軍備を進め。
 魔王の本質が、肉体を得た神性であると知った。
 信仰による見返りを求めない神性である。

大司教「神の眷族が魔王を名乗るか! いいだろう、それだけで既に討伐の
    理由ともなる!」

 神聖騎士団を編成し、即刻かの穢れた国を滅ぼすべし。
 口から泡を飛ばし、勇者は、勇者はどうしたと大司教が宮殿内を走りまわる
のが日常の風景となったという。
 今のこの国に、そんな事をする武力もなければ財もない。
 半ば気のふれた大司教が負傷した兵士を魔法で癒す事もないため、国防に
就く人員の疲労は限界に近い。
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 23:37:32.38 ID:t8CDrivHo


女戦士「私の子は、流れてしまったのか」

 膨らんだ気配のない腹を撫で、彼女は自重気味に呟いた。
 発情を促す薬も、理性を奪う乳液も、身体に長く留まれば毒になる代物だ。
回復魔法による解毒を併用したとしても、やはり無理があったのか。

女賢者「残念ながら違います」

 答えをくれたのは、彼女より早く戒めを解かれた女賢者だった。気のふれた
父の代わりに計画を推し進めろと国王に迫られた女賢者は、交換条件として
女戦士と女僧侶の身柄解放を呑ませたという。

女賢者「わたくし達に宿っていた胎児は、わたくし達の昏睡とほぼ同時期に
    胎内より抜き取られ人工子宮で育てられていました」

女戦士「すまんが結果だけ教えてほしい」

 こう言う時に学のないのは厄介だと女戦士は呻き、あなた様は変わりませ
んわねと女賢者は疲れた笑みを見せる。

女賢者「現在、妖魔王復活の計画を推し進めているのは国王と大賢者が
    盟約を結んだ神々の使徒と呼ばれる存在です」

 使徒なるものの正体は女賢者も知らないという。大賢者に必要な装置を与え
的確な助言と技術指導をしていたという彼らは、十五年以上をかけて進める
予定の計画を一年間で実行に移すと通達した。
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 23:58:49.98 ID:t8CDrivHo


 魔王が神性として覚醒した場合、外来の神が持ち込む妖魔というシステムは
何の脅威ともならずに駆逐されてしまう。そうなれば彼らがこの世界に根を張り
君臨することは出来なくなるだろう。

女賢者「だから彼らはわたくし達の子供を急速に成長させ、同時に異世界より
    強力な兵器を持つ戦士を召喚して魔王国に打撃を与えようとしています」

 おそらく無理でしょうけどね、と。
 魔法の鏡を用いて映し出した景色を見せながら女賢者は断言した。それは
大魔王が講師した忍法サテライトキャノン(物理)で吹き飛ばされた山の映像
であり、彼女達の国が受けた損害が実は大魔王の慈悲深い手加減の結果だと
示すものだった。

女賢者「推定戦力の比較をしたところ、使徒は大魔王との戦闘を極力回避
    すべしとの結論を出しました」

女戦士「それなのに魔王国を襲うのか」

女賢者「報復を受けるのはこの国であって、彼らの神ではないと考えたので
    しょうね」

 愚かしいと、女賢者は冷たく言い放つ。
 彼女の下に集められた幾つもの情報が正しいのであれば、大魔王相手に
そのような詭弁は通用しない。
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 00:12:07.92 ID:pprNmGndo
色々消し飛びそうだなww
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 00:19:58.31 ID:zjYX7pefo


女賢者「遠からず、この国は滅ぶでしょう」

女戦士「そうだな」

 滅ぶべきだと、彼女も思う。

女賢者「ですから、せめてわたくし達の子供を勇者様の許に送り届けようと
    思います」

 この想いすら神の使徒の掌上にあるものかもしれませんが、全治でも全能でもない
相手ならば出し抜く事も不可能ではない筈。都合のよい考えかもしれませんが、
そう信じて行動する事しかできないからと女賢者は女戦士の手を取る。

女賢者「送り出す前に、母親としてあの娘達に会ってください」

女戦士「私に、その資格があるのか?」

 資格がなくても責任というものがあるでしょう、母親なのだから。
 どんな形であれ、まっとうに産むことができなかった子供だとしても。
 女賢者の手が震えていた。女戦士の手も震えていた。

女賢者「あの娘達を送りだしたら、わたくしと女僧侶はこの国を終わらせます」

 宣言だった。

女賢者「成功しても失敗しても、あなたとはこれ以後は会えなくなります」

 王女様、と。彼女ですら忘れかけていた肩書で女賢者が彼女を呼ぶ。
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 00:24:42.78 ID:zjYX7pefo


女賢者「あの娘達を追って、魔王国へ。あの娘達にも、勇者様にも、母親と妻が
    必要だとわたくしは考えます」

女戦士「冗談を言うな」

 知らず言葉が出る。

女戦士「出ていくなら三人揃ってだ。死ぬ時も三人揃ってだ。狂った父を止められ
    なかったのは、私も同罪だ」

 一人逃げても、勇者に会う資格などない。
 勇者に会わぬまま生きるのであれば、生きる意味はない。
 だから一緒に死んでやろう。女戦士の言葉に女賢者は、短く、馬鹿ですねぇと
呆れながら涙を流した。
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 00:25:27.81 ID:zjYX7pefo
本日ここまで。明日投下できるかどうかは体調次第で。
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/10(金) 00:28:26.11 ID:6c2rrcfU0


ふざけた国はぶっ飛ばせ!ふざけた神は消し飛ばせ!
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/10(金) 00:32:17.94 ID:GxeK0/vTo

インフルエンザ流行ってるし、健康には気を付けて。
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/10(金) 00:37:55.53 ID:YM9hZU7s0
乙ですー
お大事にー
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 00:52:26.74 ID:ktIciltSO
裏話重すぎワロエナイ
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/10(金) 00:59:55.59 ID:NIQVQ+T9o
最初はギャグっぽく語られてた種馬状態の勇者の話が、その実本人の人格も、親としての尊厳すらも踏み躙られ続けてた凄惨な内容でワロエナイ……

が、大好物でした乙
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/10(金) 02:16:07.67 ID:PddgS7bTo
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/10(金) 04:18:43.10 ID:pIa2yn9Qo
家族会議の前にちょっくら国滅ぼさないとだな
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 07:16:08.25 ID:n2iyn9zIO
家族会議が国を救うのかwwww
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 13:27:50.13 ID:lJ+z+A5Wo
勇者がんばれ
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage saga]:2012/02/10(金) 20:34:34.83 ID:48E3BF+20

>>勇者(11)「だ、だ、だ、駄目なんです。み、皆さんのその姿を見ちゃうとボクの
      いいいいい一部分がアストロン(物理)しちゃうんですっ。だから!」

女僧侶(17)「……勇者クン」キュンキュンキュン

女賢者(19)「……勇者さまぁ」キュンキュンキュン

女戦士(23)「……勇者ェ」キュンキュンキュン




これ見たときはまさかこんなことになるとは…
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 20:53:42.90 ID:EzRNnMBOo

A:話の続きを始める

B:登場人物紹介とか小ネタを見る
 ・悪のドラゴン
 ・アークデーモン
 ・女戦士
 ・女賢者
 ・女僧侶
 ・店長&OL

安価↓2
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/10(金) 20:56:43.41 ID:PddgS7bTo
A
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 20:57:32.87 ID:wTbY0Q9/P
A
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 21:05:20.58 ID:EzRNnMBOo

5分以内に2レス入るとは思いませんでした。
本日書きためなしのため超スローでの投下になりますが、よろしくお願い致します。
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 21:20:08.28 ID:EzRNnMBOo


+勇者の後日談その3〜天使百人に聞きました+


 その日、二十七億八千万とんで二十七柱の天使が辞表を勤め先に叩きつけた。
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 21:30:42.24 ID:wTbY0Q9/P
キ━━━(゚∀゚)━━━タ
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/10(金) 21:38:28.25 ID:YI6hs0TAO
いったい何やらかしたし
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 21:52:13.48 ID:EzRNnMBOo


 天使と呼ばれる存在がいる。

 神の御使いとされ、神の意志の代弁者であったり、あるいは反逆者として描かれる有翼の存在である。
 彼らはその容姿や立場によって天使以外にも冒涜的な呼称がつけられるが、共通しているのは
彼らが神々と呼ばれる存在の使い走りとして物質界に干渉しているという点である。

アークデーモン「世界を滅ぼすって神に仕えてても、天使は天使」

 前方を埋め尽くす「それ」を眺めながら、デーモンは嗤う。

アークデーモン「まあ事情知らない奴らからすれば神々しいんだろうけど、実体もたない神に代わって
          雑用することで生計立ててる連中だ」

 違いない、と勇者を乗せて飛ぶドラゴンが豪快に笑う。

アークデーモン「幾つもの世界に干渉できるから滅多なことでは食いっぱぐれない多芸な連中だが」

 今回それが裏目に出たようだな、と。
 デーモンは全身にみなぎる力を感じつつ、前方の空域を占める軍団を見た。
 前時代的な金属鎧を身につけた、有翼の武人。金色に輝く鎧に槍は、まるでどこかの親衛隊長を連想させる出で立ちだ。
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/10(金) 22:00:40.69 ID:EzRNnMBOo


 隊長格の一人と思しき天使の一柱が、巻物を広げながら迫ってくる。

天使A「聞けい、異形の者どもよ! この一帯は我ら」

悪のドラゴン「わき見運転(物理)」

天使A「ぽうっ!?」

 広げた巻物には拘束の魔力が込められていたのだが、まるで聞かずに天使Aは
音速の九割程度の速さで突き進むドラゴンに吹き飛ばされた。

悪のドラゴン「んー、何かぶつかったかなー」

アークデーモン「羽虫だろう。春先に湖沼の上を飛ぶといつもそうなるではないか」

悪のドラゴン「口あけたままだと、飛び込んでくるから面倒なんだよなあ」

 がははは、とドラゴンが吠える。魔獣とも神の敵対者とも呼ばれる竜種の咆哮は、それ自体が
強力な魔法である。
 特にこのドラゴンの場合、残念なほどの音痴であるからして咆哮の凄まじさは想像を絶する
ほど。衝撃波という形で前方に直撃した殺人音波が天使の軍団を襲い、悲鳴と共にばたばたと
天使が落下していく。
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 22:26:28.39 ID:EzRNnMBOo

 天使の側から見れば、悪夢以外の何物でもない。
 全長十数メートル、翼を広げればその倍に達しようというドラゴンが音速に近しい速度で迫ってくる。

天使B「小隊長Aがやられたぞ!」

天使C「ふ。あいつは俺達小隊長の中でも一番の未熟者」

 ここはひとつ私が天使流銃撃術を披露しましょう。と優雅に前に飛び出した天使Cは、アギトを開いた
ドラゴンの接近に気付かずそのまま食道を経由して胃袋に果てた。丸飲まれである。

悪のドラゴン「不味い」

アークデーモン「噛めよ」

悪のドラゴン「この前イワシの缶詰を面倒だから缶ごと齧ったらさ、すんげえ染みて懲りた」

 それなりに高速移動しつつ、なおかつ敵陣のど真ん中であるはずなのに、デーモンとドラゴンは
普段と変わらぬ口調である。

悪のドラゴン「やっぱさー、イワシの煮物にはジンジャーは欠かせないと思うんだ。あとキャベツ。
         いいね、あの野菜。人間とか天使とか食うよりよっぽど美味い」

アークデーモン「おまえシロナガスクジラがプランクトン全滅させるような勢いで天使を呑み込んで
          ないか?」

悪のドラゴン「こいつらはほら、水の上を飛んでる羽虫みたいなもんだから」
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 22:59:34.09 ID:EzRNnMBOo


天使D「と、止まれえ! わ、我々はあ! この地域に、こ、こ降臨予定である神の指示を受」

アークデーモン「他に誰もいないぞ」

 必死に叫ぶ天使Dにデーモンが静かに告げる。
 そんな馬鹿なと周囲を見渡すが、雲霞の如くいた筈の天使は一柱残らず消えていた。

悪のドラゴン「武装まで霊体だとさ、腹に溜まらないな」

天使D「そんな。この空域だけで二十余万柱の軍勢がいたのだぞ!」

悪のドラゴン「お前さ」

 ゲップまじりにドラゴンは呆れ声と共に迫る。ゆっくりとした動きで、鈍いとさえ言える。
 だが天使は手足も翼も動かす事ができずに震えている。

悪のドラゴン「握り飯食う時、米粒をいちいち数えるか?」

天使D「か、数えません」

悪のドラゴン「俺もだ。握り飯なんて一回しか喰った事ないけどな」

 そう言ってドラゴンは最後の一つ部を飲み込んだ。
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/10(金) 23:22:13.18 ID:lzEwWKH8o
精霊神がメインの世界だから無双できるのか
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 23:38:37.86 ID:EzRNnMBOo

 竜退治はいずこの世界でも英雄譚の定番である。
 神々は己の威光を知らしめるため、これぞという人間を祝福して竜に挑ませる。
 天使が竜退治するという話は、あまり伝わらない。
 概念に縛られやすい天使達は、気付かぬ内に自身に対する絶対的な捕食者を
誕生させていた。

アークデーモン「男の旦那の世界だと、マイコーって天使が竜っぽいのと戦うらしいが」

悪のドラゴン「歌と踊りでドラゴン倒すんだろ。すげえよな、憧れちゃうよな」

アークデーモン「ああ。イカしたダンスと歌で襲われたらひとたまりもなかっただろうな」

 なんでもムーンウォークという凄まじい魔法が炸裂するらしい。
 すげえよマイコーとデーモンが叫び、ドラゴンもいつか腕を磨いてマイコーに
立ち向かえるようになりたいと本気で唸っている。

悪のドラゴン「それにしても、妙に歯ごたえのない連中だったな」

勇者「不思議ですよね」

 ドラゴンの背の上にいた勇者も一部始終を見ていたのだが、あまりに現実離れした光景に
何かの冗談ではないかと思ったほどだ。
 デーモンは勇者が腰帯に刺した短剣が僅かに輝いているのを視界の端にとらえたが
あえて指摘をせず、そのとき不思議な事でも起こったのだろうと短く返した。
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 23:45:41.77 ID:EzRNnMBOo

 短いですが、本日ここまで。
 
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/10(金) 23:47:41.42 ID:6c2rrcfU0
乙ポゥ!
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 23:49:06.37 ID:vUTUrswlo
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/10(金) 23:54:01.93 ID:PddgS7bTo
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/11(土) 00:18:57.82 ID:ewVaMhnr0
乙ですー
この世界でもマイコーは伝説の存在になってしまったよww
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 00:25:50.61 ID:HwGdH3tSO
マイコーなら仕方ない
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/11(土) 01:07:57.45 ID:Z/1t0wEx0
悪竜つええw
男に>>6でカッ飛ばされ、勇者のな成長にゲンナリしててりするけどそういやコイツ、男来なかったら二人で魔王討ち取りかけたんだよなw
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 01:22:03.72 ID:P0Ux6l5lo
>>611
あんたwwみなにどれだけ好かれてるか分かってないなwwwwwwww
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 07:38:19.75 ID:dz91wn7no
キャベツをかじる悪のドラゴンか…
元帥もよく食べてるよね
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/11(土) 15:16:18.64 ID:BVhsta3m0
キャベツは美味いからな
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/11(土) 17:08:18.69 ID:vDLcnbg5o
1です。
本日投下予定は不明となりました。
もし夜中に突然投下が始まって卑猥な単語が連発した場合
1がアルコールに理性を破壊されたものと思ってください。
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/11(土) 17:38:37.93 ID:q3XQg30W0
>>631
メダパニ(物理)
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 18:38:58.26 ID:/Yoz0KxIO
メダパニ(化学)だろwwww
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/11(土) 18:47:06.13 ID:d1UFYgkVo
アセトアルデヒド(分解)
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 19:01:49.47 ID:P0Ux6l5lo
アルコール(物理)
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/02/11(土) 19:47:58.63 ID:ukQk4xfqo
酔拳(魔法)
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/11(土) 21:19:56.85 ID:vDLcnbg5o
短いけど、短いけど……のんびりはじめます。
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/11(土) 22:05:12.57 ID:vDLcnbg5o

+勇者の後日談〜天使達の午後(無職)+


 詐欺だ、と誰かが叫んだ。天使である。

 出鱈目だ、と誰かが泣いた。これも天使である。

 霊的なもので構成された彼らの肉体は、物質の影響を受けにくい。それなのに霊的物質を凝縮させ
疑似的に物質化させることで、物質への干渉能力を有する。この反則的な性質を保有するがゆえに
天使と呼ばれる種族は物質界において一方的なまでの強さを誇っている。

アークデーモン「そりゃそうだ」

 勇者を乗せたドラゴンは空を往く。

 そこに挑む天使は一柱とていない。
 消滅を逃れた天使達は他所にいた同胞を招き、大地を埋め尽くしている。地上より無数の矢を放ち
ドラゴンが降り立つより早く貫こうという目論見なのだろう。
 故に。
 デーモンは大地に降り立った。
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/11(土) 22:38:14.55 ID:vDLcnbg5o


 闘争は、基本的に数の多い方が勝つように出来ている。

 孤立したライオンがハイエナの群れに勝てないように、スズメバチがニホンミツバチの群れに
蒸し殺されるように、多少優れた個体であっても数という暴力に勝つ術はない。
 
アークデーモン「基本的には、なんだよなあ」

 何事にも例外は存在する。
 そもそも前提が成り立たないこともある。

 天使の一柱が叫ぶ。馬鹿が、わざわざ死にに来たと。

天使E「隙あり! 人間の手下になった悪魔め、同胞であろうと容赦はしない! 遙かな眠りの旅を与えてくれるわ!」

アークデーモン「ニフラム(物理)!」

天使E「あじゃぱーっ!?」

 見よう見真似で突き出したデーモンの拳より、蒼い光の龍が飛び出す。襲いかかる天使Eはもちろん、数十柱の
天使が呑み込まれて吹き飛んだ。
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/11(土) 22:42:14.40 ID:6eOUr8G6o
あじゃぱwwww
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/11(土) 22:53:11.25 ID:W0giYyQUo
せきしきめいかいは(物理)
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/11(土) 23:10:05.42 ID:vDLcnbg5o

アークデーモン「まさかとは思ったが、本当に出来るとは」

 しげしげと己の拳を眺めてデーモンは感嘆する。
 事情を掴めぬ天使達は、見たこともない魔法の出現に硬直した。

アークデーモン「あー、何が起こったのか理解できてない面だな」

 こくこくと、天使達が頷いた。
 デーモンは、ふむ、と考えるそぶりを見せた後にこう切り出した。

アークデーモン「お前らさ、うちの社長が世話になった大魔王の名前って知ってるか?」

天使F「い、いや知らない」

アークデーモン「じゃあ次の質問。男って名前に心当たりあるか?」

 ぎしり、と空間が軋みを上げた。

 確認するだけで数十万を超える天使の軍団が、恐怖に怯え竦んでいる。

天使F「あ、悪魔が魂を売るために行列をなすって噂の、あの男?」

アークデーモン「イエスイエスイエス」

天使G「もしかして、オラオラですかああ!」

アークデーモン「残念、これはメラゾーマ(物理)」

 流星雨のように無数の拳を叩きつければ、拳の先端が炎に包まれて周囲の天使を焼き始める。

 
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/11(土) 23:59:44.42 ID:vDLcnbg5o

天使H「聞いてないぞ、このハイパーおちんちん野郎!」

アークデーモン「誰が黒歴史ポエマーなスパロボW主人公だ、誰が」

 恥も外聞もなく泣き叫ぶ天使に、容赦のないデーモンの突っ込みが入る。

アークデーモン「やっぱり男の旦那はそっちでも有名だったか」

天使I「うちらの業界では、あそこの兄弟にだけは喧嘩を売るなというのが暗黙の了解で」

 しかも風の噂で、あの理不尽な兄が姿を消した。
 各勢力がフリーとなった男の囲い込みに動き出しているが、彼を支援していた会社も
姿を消してしまい行方が分からない。

アークデーモン「良かったじゃないか。男の旦那が見つかって」

天使J「ソウダネー」

アークデーモン「見付けたら、報告しに戻らないとまずいよな」

 デーモンの言葉に、塩の柱になりかけていた天使達の目に生気が戻る。

天使K「そ、その通りですよ猿渡さん!」
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/12(日) 00:05:21.60 ID:Kcq30B74o

 すいません。続きは翌日に。
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 00:07:17.20 ID:vpZm694SO
天使……
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/12(日) 09:49:55.65 ID:HcUNikaAO
デーモンもニフラム(物理)なんだなぁ…バシルーラ(物理)はまだ出来ないか
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 14:51:30.43 ID:q7drh9Hyo
まったくですよ猿渡さんwwwwww
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/12(日) 21:27:19.01 ID:Kcq30B74o
本日も書きためなしのため、のんびり投下で再開しようと思います。
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/12(日) 21:32:56.08 ID:fOSR5PXoo
オナシャス
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/12(日) 21:54:47.12 ID:Kcq30B74o


 着地したドラゴンの背中から降りようとしている勇者が、そのやり取りを見て飽きれている。

勇者「請け負った仕事をそんな形で放り出していいの?」

天使L「まったく問題ありませんっ!」

大天使「問題ありまくりですわ」

 声は上空から。
 今まで感知できなかった気配の出現にドラゴンは嬉しそうに身構え、デーモンはようやく
大天使様のお出ましかと呟く。

大天使「神の威光が届かぬ内に下級とはいえ天使が召喚されたので何かと思えば」

 深紅に彩られた二対の翼を動かしながら、金髪縦ロールというお約束をどこまでも外さない
高飛車な態度で大天使と呼ばれた娘が降り立った。天使達とは異なり武装を帯びず、
白を基調とした優雅なドレスを身につけている。

大天使「神の敵と認定されていないドラゴンとデーモン相手に天使が勝てるわけがないでしょう!」

勇者「認定されたら勝てるの?」

大天使「ぶっちゃけ認定されてもマイコー様がポゥしない限りは無理ですわね。聖人に祝福の武器を
    与えて支援するのが私達の任務ですし、武力特化の天使は基本的に世界を破滅させる役目を
    担っている者たちですから」
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/12(日) 22:13:12.22 ID:Kcq30B74o


 敵対する意思がないと示したいのか、両手でバンザイのポーズをとりながら
大天使は営業スマイルを勇者に向ける。

悪のドラゴン「すげぇなマイコー」

大天使「もっとも、それは契約を結んだ神の威光が及ぶ世界に限定されますけどね」

 そういう神様が独占してる世界は凄いですわよー。
 おにんにんランドとか年増園とか開催するような街を塩の柱にしたり、生意気な連中
増えてきたから洪水で全滅とか余裕でやっちゃいますから。

 あまり笑顔で語っていい話ではないのだが、周囲にいる天使達からの反応はない。
つまり大天使の出した例は珍しくない事なのだろうと勇者は考えた。

大天使「だからこそ私達は神々と契約を結んで干渉できる世界を増やしているのですが」

アークデーモン「神が降りていない筈のこっちに天使が出現するのがおかしいと」

 大天使は肯く。

大天使「天使どころか、末席とはいえ大天使である私も降臨できたのです。それなのに
     契約を結んだ神は未だにこの世界に現出するどころか妖魔王さえ復活させて
     いません」
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/12(日) 22:33:54.96 ID:Kcq30B74o


天使M「自分達の場合、試したら召喚出来たとの事で大司教に呼び出されました」

大天使「通常ありえない事なんですから、少しは疑いなさい!」

勇者「え?」

 そうなの、と勇者はデーモンとドラゴンを見た。
 ドラゴンは視線をそらし、デーモンは天を仰いだ。

アークデーモン「実はな、勇者」

勇者「うん」

アークデーモン「こいつらな。アレとそっくりだけど無関係の存在で天使って種族なんだ」

勇者「え!」

 デーモンの言葉に勇者は心底驚き、大天使はなるほど似たものがいたから間接的に召喚
出来たのですねと納得した。

大天使「調査の手間が大分省けましたわ」

 優雅にスカートの端を持って会釈する大天使。

 
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/12(日) 22:53:07.64 ID:Kcq30B74o


大天使「神の威光や信仰の力ほどではありませんが、収斂進化を経た種族から
     連想して天使が呼ばれることは皆無ではありませんわ」

勇者「そ、そうなんですか」

大天使「ところで、少年。あなたが天使と間違えた種族はどのような御方なのですか」

 天使と見間違えるほどなのですから、見目麗しく魂が高貴なのでしょうね。
 大天使は微笑む。

勇者「えーと」




 ――同時刻、魔王国郊外。

隊長「むむっ!」

魚副長「どうされましたか」

隊長「いや……乳と尻が育ちすぎたが清楚で高飛車で実はマゾっぽい美人さんがこの私の噂を
    していたような気がする!」

鳥副長「隊長、異世界から召喚された戦士がことごとく好みから外れているからって現実逃避し
    ないでください」

隊長「ちょっと笑顔見せたら女が二秒でパンツ脱いで股開くような特異能力者ばかりで苛々している。
    あと簿記とマヨネーズを自慢している奴も妙に多い。こっちの国の識字率と五感駆使した
    言語文化と魔術制御に使用している基礎数学理論を話したら自殺しようとするし面倒だ」
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/12(日) 23:05:54.68 ID:Kcq30B74o

天使「」

大天使「」

悪のドラゴン「気持ちはわかる」

アークデーモン「あいつら、魔王国に帰還するまでに各国で魔族の難民を回収しては
          大暴れしていたからなあ。酒場で歌の題材にもなっていたらしい」

勇者「ど、どんな」

 あまり聞きたくないなあと思いつつ、聞かなければいけないと勇者は無理をした。

アークデーモン「悪代官を懲らしめた有翼の女騎士、捧げられる勝利の美酒は幼女のぱん」

勇者「ストップ、天使さん達が! 天使さん達が!」

 おそらく勇者達の思考や記憶もうっかり覗いてしまったのだろう。
 大天使をはじめとする天使達は一様に崩れ落ちていた。ドラゴンに喰われるよりもショック
を受けているようである。
 やがて。
 時間にして数秒とも数時間とも思える沈黙の後。
 大天使と呼ばれたものがむくりと起き上った。

勇者「だ、大丈夫ですか大天使さんっ!」

大天使?「はははははは、誰ですか大天使とは。私は大天狗様デスヨ」

天使?「ぼくたちカラス天狗〜」
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/12(日) 23:05:56.30 ID:NkKusisk0
ああアレってソレか…
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/12(日) 23:12:12.79 ID:kV7lkS1qo
わろた
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/12(日) 23:15:44.80 ID:kWeY8rqfo
>簿記とマヨネーズを自慢
ヤバイwwwwww業界に消されるwwwwww
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/12(日) 23:16:43.50 ID:Kcq30B74o

 けたけた笑う自称天狗達に、デーモンは心底同情した。

アークデーモン「こいつらは想像力や信仰心を媒介に出現するから、イメージに左右
          されやすいんだよ」

 親衛隊隊長が世界中で暴れ回ったため、この世界の住民は天使というものに対して

『女の子が大好きでどうしようもなく駄目で残念な種族』

 という概念を固定させていた。
 万が一にも彼らの契約する神がこの世界の絶対的な支配者になれば、長い時間を
かけて天使という種族のイメージを塗り替えることは可能かもしれない。

悪のデーモン「無理だな」

アークデーモン「ああ、無理だ。それを実行するには魔王国を攻め滅ぼさなきゃならん」

 どさくさに紛れて親衛隊長を処刑したがっている奴もいるかも知れんが、うちの魔王は
慈悲深いからなとドラゴンは嘆息する。
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/12(日) 23:57:59.08 ID:Kcq30B74o


大天狗「というわけで私達はこちらの世界では愉快で素敵な空飛ぶ妖怪としてやっていきますので
     大司教に召喚された部下達を許して下さいませんか?」

アークデーモン「決めるのは勇者だ」

勇者「……ボクを捕まえて、神の祝福とやらを新しい勇者に移すために待ち構えていたんですか?」

 妖魔王を復活させても、彼らの意向に沿う勇者が誕生しなければ意味はない。
 勇者の身柄を確保すべく国王と大司教が動いていると教えられていた勇者は、不信の目を向けている。

 かつて天使だったものたちは、ああそういえばそうだったねと答えた。

天狗「でも、君にうちの元契約先の加護なんて微塵も残ってないけどね」

勇者「え」

大天狗「嘘は言ってませんわ」

 勇者の頭や肩などを触りながら、元大天使が元天使の言葉を肯定する。

大天狗「以前は付与されていたかもしれませんが、オーラの収束が物凄くて半端な加護など
     貴方には通用しないようです」

悪のドラゴン「じゃあ新しい勇者が祝福されねえのは?」

大天狗「先方に問題があるということでしょね」

 あっさりと大天狗は言ってのけた。
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/13(月) 00:00:25.64 ID:VoEgXId6o


以上本日ここまで。なお特定の作(銃声そして静寂)
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/13(月) 00:03:52.63 ID:u4B9mtZw0

どんな先方だwwwwww


猟師というのは獲物を仕留めかどうか確認するためにもう一発銃で撃つと聞く・・・
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/13(月) 01:26:59.81 ID:+j+pzCvv0
マヨネーズと簿記の意味が分からないがとりあえず乙ですー
それにしても勇者パネェ
男と同じく主人公補正なしでも強いと言うことか
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/13(月) 19:43:18.70 ID:NVYRa/3Po

+用語解説・異世界の戦士召喚+

死霊招来魔法の一種で、強力な加護を持ちながらも悪意ある、もしくは不幸な事故により
所属する世界ごと停滞という名の死を迎えた英雄達を一時的に召喚する。

本エピソードにおいては、類似する異世界という事で魔法使いが支配階級として
数千年君臨する割に科学技術の発達どころか政治形態の変化が見られない事で有名な
異世界に近似する並行世界より伝説の戦士を召喚しようとした。

メタ的な発言をするとエターした作品の主人公を一時的に召喚する魔法。


もうしばらくしたら、のんびり投下しようと思います。
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/13(月) 20:28:05.67 ID:fpGrYDtD0
待ってました
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/13(月) 20:29:52.38 ID:M1r/NcaDo
いけいけごーごー
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/13(月) 20:41:43.78 ID:NVYRa/3Po


+勇者の後日談5〜滅ぶ国+
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/13(月) 21:15:04.35 ID:NVYRa/3Po

 かつてそこは渓谷に囲まれた美しい小国だった。

 三方を険しい山に囲まれ、残りは大きな湖に面していた。大国を結ぶ街道筋より少しばかり外れ、
冬の寒さは少々厳しい土地だった。米よりも麦が、麦よりも菊芋や馬鈴薯が育つ土地であり
肉よりも乳と卵を好む民が多く住んでいた。

 先代の王は精霊とその神に感謝を捧げ、山と水辺の者たちと友になった。
 決して豊かとは言えなかったが、掘り出した岩塩と幾種かの鉱石は小国が大国の覇に呑まれ
程度の財を蓄えることができた。

 後継者となった者が精霊神ではない神をどこで知り、契約を結んだのか。
 
 使い慣れた長剣を引っ張り出して、女戦士がそんな事を言ってきた。

女戦士「そもそも先代の勇者はどこから来た?」

 妖魔王の出現により世界が滅亡しかけた時、勇者と呼ばれるものがこの国に現れたという。
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/13(月) 22:33:19.17 ID:NVYRa/3Po

 さあ、と女僧侶は宮殿の外の景色を見て表情を曇らせる。

女僧侶「先代勇者の実在を証明するものは、祝福された剣と盾だけですから」

 その剣と盾も、大魔王襲撃後の混乱期にどこぞの青年貴族が勝手に持ち出して
魔王国に突撃したため没収の憂き目にあったとか。

女僧侶「何の神がどんな祝福したのでしょうか」

女戦士「そりゃあ、妖魔をぶった切るための祝福だろ」

 防具の留め金を確認し、予備の武器として鉄棍棒をベルトに下げながら興味なさそうに
女戦士は答えた。女僧侶が武器と防具に祝福とやらを施したが、妖魔相手にどれだけ
有効なのか想像もつかない。

女僧侶「でも妖魔王は復活しようとしています」

女戦士「?」

女賢者「神とやらの祝福は、妖魔王には通用しなかったかもしれない」

 同じく窓の外を見ていた女賢者の指摘に、女僧侶はその通りですと返した。

女僧侶「そもそも精霊神の力が強いこの世界で、信徒も名もない神を自称するだけのものが
     どうして妖魔を一時的にせよ倒す力を武器に籠められたのでしょう」
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/13(月) 23:42:09.00 ID:NVYRa/3Po


 破裂音が、響く。

 城門が破られ、冒険者達が城内になだれ込んでいく。

 城を守るのは人間ではない。

 人間の衛士は、しばらく前に城内の生き残りの脱出誘導と冒険者たちへの連絡を頼んでいた。
いま冒険者たちと剣を打ちつけ盾を掲げるのは、人間でもないし、この世界の生物でもない。
 妖魔と呼ばれる存在だった。

女戦士「いいのか、あれ」

 妖魔、と言っても土くれに憑依して人の形を成そうとした程度の最下級妖魔は動きも鈍く
軽装の戦士ならば被弾の恐れもない。しかし数が多い上に再生力が高いから貧弱な武装では
有効打を与える前に他の妖魔を呼ばれる恐れがある。

女賢者「情報と対策法は伝達済みです。最下級とはいえ妖魔の類ですから油断はできませんが
     私達の操る魔法や聖別武具で対処できるのは確認済みです」

 精霊神の神殿が十五年前の妖魔王襲来を教訓に備えていたのは、ある意味で当然であった。
大魔王関連で冒険者制度の復活を望む声があったのも大きかった。

女賢者「ちなみに大魔王からも直筆で妖魔王討伐参加の親書が届いてます」

女戦士「大魔王に全部任せろよ!」
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/14(火) 00:14:17.33 ID:bLJf8AxGo

 叫ぶ女戦士。まあ無理もない。

女僧侶「本人は参加したくても出来ないので、一番弟子を派遣します。とのことでした」

女賢者「大魔王をして一番弟子とまで呼ばせるほどの猛者……要チェックですわね」

女戦士「ま、私らが死んでもそいつが妖魔王を間違いなく討ってくれるだろうな」

 そう納得することにして、女戦士は仲間二人を見た。
 かつて勇者と旅立った時に用意した装備を身につけた女僧侶と女賢者が、こちらを見ている。

女戦士「削るだけ、削っていこう」

 それがこの国の王族としての最期の役目になるだろうと女戦士は武器を掲げ、女僧侶と
女賢者は杖を掲げてそれに合わせた。

女戦士「我が剣を、子とその父に」

女僧侶「我が祈りを、子とその父に」

女賢者「我が叡智を、子とその父に」

 想う相手を夫と呼ぶことなく、三人は戦いの場に身を投じた。
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/14(火) 00:15:07.20 ID:bLJf8AxGo
本日ここまでです。
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/14(火) 00:17:20.61 ID:7bm+kOty0

三人はどうなるのか・・・

それにしても一番弟子とは
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/14(火) 00:21:12.08 ID:bFziStrAO
もちろん、特訓のおかげで男よりもキレイな断面で岩山を切れるようになった彼です
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/14(火) 02:01:42.87 ID:ak+ZPSJO0
乙ですー
燃える展開になってきた
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/14(火) 09:59:26.81 ID:l86Duk/IO
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/14(火) 11:41:52.65 ID:o3YZr4hAO
>>673
いや、断面は前から綺麗じゃなかったか?
男は意(フォース)の素質が無いから断面が歪だが、彼はスパッと斬れてた気が
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 16:14:06.93 ID:I6FXJVWIO
     ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
   /:::|  ___|       ∧∧    ∧∧
  /::::_|___|_    ( 。_。).  ( 。_。)
  ||:::::::( ・∀・)     /<▽>  /<▽>
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  ||::|   <ヽ/>.- |  |:と),__」   |:と),__」
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.|| ゙ヽ i    ハ i ハ i ハ i ハ |  し'_つ
.||   ゙|i〜^~^〜^~^〜^~^〜
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/15(水) 16:17:35.69 ID:hwp79J+no
もうしばらくお待ちください。

本日投下予定は21時以降となっております。
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 17:20:05.09 ID:nq+ZLTgIO
わくてか
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 17:20:40.92 ID:nq+ZLTgIO
やっと復活した
>>1の文が読めなくて苦しかった
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/15(水) 21:12:02.67 ID:hwp79J+no
それではのんびりですが投下を試みます。
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/15(水) 21:12:54.73 ID:hwp79J+no


+勇者の後日談6〜精霊と神々+


 十五年。
 人間という比較的短命の種族なら、誕生から成人までに要する時間である。
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga ]:2012/02/15(水) 21:13:55.15 ID:hwp79J+no


 十五年。
 人間という比較的短命の種族なら、誕生から成人までに要する時間である。

 妖魔と呼ばれるものが突如として出現し、突如として消えてから十五年。
 妖魔を知らずに育った子供も少なくない。そのような幼子にとって十五年とは
人生に匹敵する永劫の時間である。彼らにとって妖魔とは過去の災害であり
未知の恐怖である。

 だが多くの大人たちにとって十五年という月日は決して長いものではない。
 故郷を、友を、家族を、愛するものを、敬うべき先達を奪い蹂躙した存在に
対する恐怖と、それ以上の怒りが多くの人間に宿っていた。
 人に非ざる長命の種族たちの怒りは、それを勝るものがあった。エルフも
ドワーフも、小人も獣人も、魔物と呼ばれるものですら妖魔に対して激しい
怒りを抱いていた。
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/15(水) 21:25:33.62 ID:hwp79J+no


 妖魔は人を主に狙って襲った。殺され貪られたのは人だけであった。

 魔翌力に長けたエルフの中に直接の被害を受けた者は皆無であり、彼ら長命種が
妖魔との戦いにおいて命を落としたのは、彼らが人と妖魔の戦いに介入した結果である。
 深い森や地下に築かれた長命種の集落が妖魔に狙われ壊滅したという話はない。
 厭戦により当時の長達を糾弾するものは、その事実を根拠に人を見捨てるか、
最小限の人間を集落に手保護すれば良かったと主張することもあった。
 長達の、いや大部分の長命種たちの返答は様々でありながら、回答の本質は一つだった。

 あれは、生命に対する冒涜である。

 夢魔の姫が傷つく騎士を助け、そう語ったという。
 夢魔は人に依存し、精気や血を代償に人々に超常の力を貸与する種族である。魔界に
居ることができずこちらの世界に住まいを定めた彼らは、種族の本質として人間を必要と
している。一方的に人間の生命と魂を略取し使い潰す妖魔の遣り方は、夢魔ならずとも
到底受け入れがたいものだった。
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/15(水) 21:42:13.42 ID:hwp79J+no


 なによりも。
 超常の力を有し人よりはるかに長い寿命を持ちながら、妖魔に対抗する戦力
たりえなかった事実が彼らの誇りをひどく傷つけた。たった一人の、勇者と呼
ばれた人間にすべてを押し付けて平和を取り戻したことが許せなかった。
 霊長の種族を自負するがゆえに。
 人とは別の道を究めた進化の頂点に立つものとして、長命の妖精種と魔物たちは
己のため世界のため人のために復讐を誓った。

 神々は。
 精霊神を頂点とする大小さまざまな神々は。
 多くの命が失われたことを嘆き、介入できぬ己の無力さを嘆き、復讐を誓った。
妖魔の疑似肉体を構成するものの正体を探り、対抗するための方法を模索した。
 妖魔が精神生命体に近しい存在であることは判明していた。魔法がある程度有効で
あること、しかし決定打となりえなかったこと、精霊神達の与り知らぬ加護を受けて
現れた謎の勇者のみが妖魔を滅ぼし得たこと。
 神は決して全知でも全能でもなかった。
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/15(水) 22:29:10.15 ID:hwp79J+no


 魔界の消滅という大事件が起こるまで、神々の関心は妖魔の再来襲に向けられていた。
 決して遠くない未来に、妖魔は来る。
 彼らは備えを怠りはしなかったが、万全ではなかった。理不尽な理由により精霊神が
姿を消した事も、神々にとっては打撃だった。直接の原因ではないが精霊神の負担
増加と失踪が妖魔王復活を早める要因の一つになったのではとの推測が神々にあった。

男「アフターサービスに参上しました」

 救いの手は理不尽な方向から伸びた。
 精霊神の神殿にやってきた大魔王が、莫大な量の資料を携えてそう言ったのだ。
 大魔王である。
 一部の狂信者が神族である魔王の身体を奪おうと画策した際に、彼がなぜ大魔王と
呼ばれているのかを誰もが納得できる形で証明してくれた大魔王である。
 戦争の本質が数の暴力である事は、この世界においてもそれほど間違ってはいない。
 ただ大魔王の場合、その基準が適用されなかっただけだ。輪ゴム鉄砲を装備した
三億からの兵士が伝説巨神に戦いを挑むようなものである。
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 22:42:31.58 ID:N36UNlJSo
赤ジムに喧嘩売る奴なんていないだろー
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/15(水) 22:55:15.70 ID:T58GJkJ30
スペースラナウェイ
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/15(水) 23:29:53.69 ID:hwp79J+no


 かくして。

 各地より集った精鋭が城に突入していた。
 戦力の逐次投入などではなく、事前の調査に基づいた上での総力戦である。
 エルフが、ドワーフが、小人が、魔物が、それぞれの特性を活かす形で城内に
突入して妖魔と戦っていた。精霊神殿を含む各種神殿の兵士が冒険者と共に
縦横無尽に駆け回り、長命種族軍の補佐を担っている。

 時間が足りない事もあり、大魔王からの助言は限定されていた。

男「妖魔の倒し方、妖魔の攻撃からの身の守り方、妻が三名とも食べ線だったので
  微妙に飯マズだった夫の悲劇。可能な限り伝えます」

 最後の一つ入らないという彼らの主張は残念ながら却下された。



 本日ここまでです。

 
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 23:36:23.94 ID:8D9S2AK40
お疲れ様ー 
男さん、その悲劇の報告のせいでシリアス場面がギャグになっちまったじゃねーかww
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/15(水) 23:38:02.83 ID:T58GJkJ30

最後は実体験かwwwwそれほど誰かに訴えたかった事なのかwwww
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 00:14:06.25 ID:+v4YXpJIO
「まおうさまはめしまずまないたです」
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/16(木) 01:11:55.52 ID:ucfAJEsQ0
乙ですー
嫁がメシマズはちょっとした災厄だな・・・・・・
勇者も同じ運命が待ってそうだが
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/16(木) 05:12:56.15 ID:cAdPI6tgo
ネタバレ:妖魔は実は霧散した奴の思念体
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/16(木) 12:25:29.36 ID:u2o1uvNAO
魔王が料理できないのは、今まで調理師雇って作らせてたからじゃね?
結婚したからって、わざわざ調理師クビにして自分で料理する必要なくね?
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 19:24:43.81 ID:W9cSzHcDO
魔王様は1000年は新婚でいたいなんてこと言うくらいベタ惚れなんだから察してやれよ
魔王様も妹も側近も乙女なんだよ
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 19:46:22.68 ID:9WQf6FmIO
微妙に飯マズってことは、食えないレベルではなく改善の依り代があるということ
で、乙女な彼女達ならメキメキ上達するだろう
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/16(木) 20:07:19.90 ID:7YYJ4Qi/o
+彼女達が微妙に飯マズな理由+

・王侯貴族なので調理の機会があまりなかった。

・太陽がない魔界なので作物も食糧のバリエーションも乏しい魔界育ちだった。

・隙あらば体液とかを料理に仕込もうとする。

・少女マンガなどを読んで乙女というのは飯マズであるべしという誤解を持っている。


というわけで、非常にのんびりと投下を予定しております。
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/16(木) 20:22:06.93 ID:7YYJ4Qi/o


+勇者の後日談7〜吶喊+
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/16(木) 21:18:08.53 ID:7YYJ4Qi/o


 妖魔とは何か。

男「皆さんが推察されている通り、妖魔は精神生命体と呼ばれるものの特徴を備えた兵器です」

 精霊神の神殿に各種の代表をかき集め、大魔王と呼ばれる男は簡潔に述べた。
 兵器。
 幾つかの仮説の中に、それは含まれていたのだろう。参加者の動揺は小さかった。中でもエルフの
代表と思しき青年と小人の老婦人は目を輝かせて男の発言の続きを待っていた。

男「素体としては、魔族の亜種に分類される長命種ですね」

 彼らは元々は強靭な肉体を保有していたが、環境への適応を進めていった結果として精神生命体に
昇華したという。
 始原妖魔種と呼ばれる者達の資料を並べ、男は説明を続けた。

男「彼らは精神生命体に昇華した際に繁殖能力を喪失しました。本来はこの時点で種族としては滅亡
  したも同然なのですが、彼らは精神生命体であると同時に情報生命体としての特性を獲得したのです」
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/16(木) 21:37:12.28 ID:7YYJ4Qi/o

 そして、情報生命体となった瞬間に原始妖魔種は絶滅した。

 肉体という拠り所を喪失した生命にとって、繰り返される時間と歴史の「リセット」は致命的である。
数度の「リセット」によって彼らは自己存在を形成する情報の矛盾に耐えきれず、自意識を持たず
増殖する特性を持った幽霊になり果てた。

男「身内の不始末とはいえ、気付いた時には手の施しようもない有様でした」

 遠い目で呟く男。
 
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/16(木) 22:03:24.94 ID:7YYJ4Qi/o


 大魔王の家庭の事情など、飯マズ嫁くらいしか知らない参加者達は一様に呆け、その後に
滅んだはずの原始妖魔がどうして現在こうして復活しているのかという疑問につながった。

男「自我を持たないのであれば、そこに寄生して操作できると考えたものが現れました」

 それが妖魔王の背後にいるもので、この世界への侵略を企てている「神」です。
 反撃のための会議がようやく始まった。

 
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 22:08:35.94 ID:0hOzNy0So
先にメシマズの方語ってんじゃねーよwwww
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/16(木) 22:29:50.31 ID:7YYJ4Qi/o

 現在。


 五色の光が、崩れた城門の前に現れた。

 アンデッドもどきの最下級妖魔を蹴散らしていた冒険者の一人が「それ」に気付き、警告の
呼子を吹く。呼子は幾度も鳴り、突入した全員が身構える。

 五色の光は人の形となり、獣を模した奇怪な鎧姿の麗人が現れた。

妖魔「ふははははは! なかなかやるではないか、だが我ら獣魔五大k」

エルフの青年「喰らえ聖なるクレイモア(物理)」

妖魔「射程距離2っ!?」

 高笑いをしていた妖魔の一体が、至近距離から撃ち込まれた聖別済ベアリング弾の雨を喰らって
吹き飛んだ。資料通りならば獣魔五大騎が一騎だったようだ。
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/16(木) 23:23:38.71 ID:7YYJ4Qi/o


 妖魔は、獣魔五大騎は混乱した。

 ありえない。

 指向性散弾もさることながら、ベアリング弾に施された聖別処理は精霊神とは
まったく異なる世界に拠点を置く神性のものだった。

 ありえない。

 次々と撃ち込まれる、ベアリング弾に無数の矢。そのどれもが、この世界ではない
数多の異世界に拠点を置く無数の神々の祝福を受けている。

 ありえない。

 この世界は精霊神を中心とした神々が創造し保守している、閉鎖的な世界のはずだ。
少なくとも十五年前の妖魔王降臨時には、他の世界の干渉があったなど聞いていない。

 ありえない。

 獣魔五大騎の中に潜む「神」は、困惑し、事の本質を見落としていた。
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/17(金) 00:45:07.70 ID:xA12Vhhfo
途中ですが今日はここまでです。
明日以降に続きます。
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/17(金) 01:42:54.68 ID:tZ9IOqBho
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/17(金) 02:16:28.66 ID:JKaEDu7xo
スクエアクレイモアーーー!!
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/17(金) 02:20:14.55 ID:VpdcgMMzo
これだけのベアリング弾だ! 避けられると思うなよ!
乙!
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 02:40:59.17 ID:4AsMQoRAo
俺達ゃ喧嘩弱いからよ、おっかねぇからよ、
正々堂々と勝負なんか、しねぇぜ。

来たぞ、やれ。

3万6千発の法儀礼済みベアリング弾の一斉点火だ。
避けられるなら避けてみやがれってんだ。
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/17(金) 02:43:11.58 ID:RC4XptAh0
乙ですー
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 07:18:34.37 ID:+Hxga3IIO
ワクテカが止まらないww
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/17(金) 21:04:13.47 ID:+6VjV34fo
本日の投下は日付が変わる前あたりに。
質問とか、番外編のリクエストとか、次回作のネタとか聞きたい事ありましたら投下前と後に。
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/17(金) 21:19:05.90 ID:+6VjV34fo
ちなみに次回作(もし書くとしたら)のタイトルは

「いもうとドラゴン」

というのを予定しています。

橋の下で拾われて、友人にも恵まれて元気に高校に通う兄ドラゴン(♂、17歳、鱗は金色)

義理の兄に対してほのかな想いを寄せ、どうすれば卵生になれるか模索する妹(人間、15歳)
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/17(金) 21:46:46.66 ID:RC4XptAh0
獣姦だと!ガタッ
是非お願いします
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/17(金) 21:57:34.57 ID:DclmF6yN0
勇者の気のいい兄貴分(物理)の人物紹介オナシャス
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/17(金) 22:05:42.06 ID:Wao7fhIeo
>>「いもうとドラゴン」

どっかで見たことあるタイトルだと思ってググったらまんまでワロタww
面白そうなのでぜひおねげーします
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 22:31:43.62 ID:Da+jrhoq0
これまた凄くカオスな方面にだな
にしても・・・ドラゴン「兄」か。別の存在だと認識していいんだよな?
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/17(金) 23:59:00.86 ID:+6VjV34fo
勇者の気のいい兄貴分の紹介は次回投下前に。
いもうとドラゴンという小説があったとは。はははははorz
そしてドラゴンで兄はドラゴン主体なので兄ではありません

短いですが再開します。
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/17(金) 23:59:44.84 ID:+6VjV34fo

 そもそも、彼らがこの場に来たのは何故だ。

 魔王国を襲うべく異界の戦士を送り込んだのは事実だ。情報が漏れるとすれば、
勇者に会いに行った三名の娘からだろう。
 だとすれば、おかしい。
 早すぎる。
 勇者の娘達が出奔したのは前日だ。早馬を乗り継いだとしても、街道に出て最寄りの
大国に至るまで最短で三日。これは特使の証を掲げて国境の検問を素通りしての
数字である。女賢者が身分を保障する物を持たせたとしても、いち国民が複数の国を
経由して魔王国の最寄りの地に至るには十日から半月を要すると大司教たちは考え、
それに沿って異界の戦士を召喚した。

 召喚した戦士を魔王国の近隣に集結させ、陣地を張りながら偵察を行い、一気に
攻め落とす。魔王の身体を奪う事ができればそれで良し、そうでなくとも勇者の身柄を
確保することで十分な戦果となるはずだった。
 その頃には復活した妖魔王を中心として、十二の強力な妖魔と無数の妖魔兵士が
周辺国を蹂躙している予定だった。
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/18(土) 00:01:06.45 ID:PyiakDISo


 得体の知れない年上の少女達が「あなたの娘です」と言ったところで、薬と虐待で
精神を半ば壊した勇者が認めるとは思えない。半ば気狂いと化した勇者の言葉に
魔王達が耳を傾けるとは思えない。
 万が一に魔王が勇者とその娘を自称する少女達の言葉を信用したとして、魔王国が
各国に呼び掛けて対妖魔の共同戦線を張り、本拠地であるこの国を目指すまでに要する
日数というのはどれほど早くとも半年近いのではないかと大司教と国王は考えていた。
 
 では、この現状は何だ。

 この世界に住まう長命種が、魔物が、在地の神殿の兵士が、冒険者達が!
 妖魔に備えていたとはいえ、連携を取っていたわけでもなく、有効な対抗手段を
持っていたわけでもない者達が手を結び、最下級とはいえ妖魔の兵士を蹴散らした。
 更には、クレイモアである。
 指向性の散弾地雷、それも「破邪」という、この世界には存在しない概念に基づいた
術式を刻みこんだ金属球だ。火薬の中にも妖魔に対して致命的に作用する霊薬が
混入されており、対人兵装の範疇を越えた代物だと理解できる。

 理解はできるが、納得などできないのが情というものである。喜怒哀楽。憤怒も
立派な情であろう。
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/18(土) 00:02:05.09 ID:PyiakDISo

妖魔「何故だ、なぜだ、ナゼダァ!」

 潰れた喉より空気と体液を漏らしながら、妖魔は叫ぶ。クレイモアの直撃を受けて
直ぐは鎧どころか肉も骨もまとめて擂り潰された姿になっていたが、驚くほどの速さで
再構築を始めていた。妖魔王直属の部下というのは伊達ではないようだ。

妖魔「どうして貴様達が、そんな兵器を持っている! 使いこなしている! 
   我らを傷つけられるゥ!」

 傍にいた最下級の妖魔兵士は、爆風のみの衝撃で霧散していた。それを考えれば
驚くほどの耐久力である。その妖魔を囲むように冒険者たちは油断なく武器を構えて
いるが、クレイモアによる追撃はない。妖魔でなくとも、あれだけの勢いで鉄球を
撒き散らされれば致死は避けられないのだから、当然か。

妖魔「この世界はぁ! 科学技術を凌駕する魔法文明が! 生活の基盤から軍事力に至
るまでを担っているはずだ! なぜそんな兵装を使えるのだ!」

エルフの青年「誤解しないで頂こう」

 最初にクレイモアを発射した長命種の青年がぴしゃりと言った。

エルフの青年「我々は、貴様たちの起源に関係する世界から由緒ある大剣を召喚しようと
       試みただけだ」

 その結果として同名の素敵な破壊兵器をうっかり召喚してしまったので、勿体ない
から有効活用しているだけだ。
 長命種の青年は胸を張る。
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/18(土) 00:03:16.89 ID:PyiakDISo


エルフの青年「一発だけなら誤射だというではないか」

ドワーフの戦士「そうそう、一発なら誤って撃っても仕方ない」

小人の婦人「そうよねえ。なんていったって誤射ですもの、悪気なんて無いわ」

 異界の神々の護符を縫い付けた矢を装填しながら、冒険者ももっともだと声を上げた。

 おかしい。

 剣と魔法の世界の住人ではなかったのか。
 場違いな工芸品を運よく手に入れたとして、どうして効果的に使用できるのだ。
 どうして自分達がこの世界に復活した事を察知し、対抗する武器を用意できたのだ。
 予定が違う。
 話が違う。
 彼らは、魔法を得意とした種族ではないのか。この世界の精霊や神々と契約し
自然に即した魔法で戦う者たちではなかったのか。

妖魔「卑怯だぞ!」

 自身がこの世界のルールを好き勝手に逸脱できる立場である事を忘れ、妖魔は絶叫する。
肉体の損傷は問題ない程度に回復しているが、それによって自覚できることがあった。
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/18(土) 00:04:12.21 ID:PyiakDISo


 一つは、辺りに張り巡らされた力である。
 雨あられと降り注がれた様々な神の護符が、妖魔達の動きや知覚を鈍らせている。たとえ
直撃せずに地面に落ちた護符でも、立派に役目を果たしているという事だ。
 もう一つは、妖魔を包囲する陣形にはあからさまに逃げ道が用意されていた事だった。
 おそらくは罠。
 確実に罠。
 その逃げ道に突入すれば、再生不能の一撃が待っていても不思議ではない。

妖魔「この世界の住人なら、剣や魔法で――」

アークデーモン「だったら御期待通りに」

 ぶわり、と。
 風を切る重い音が上空から聞こえた。

悪のドラゴン「トマホゥゥゥゥゥク!」

 ぶんっ。
 ぶんぶんぶんぶんぶんっ。

 超重量の金属塊が、風を切りながら城下の「十二か所」目がけて降ってくる。それが
人間サイズの巨大な戦斧だと妖魔が気付いたのは、その分厚く鋭い刃に両断された瞬間だった。
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/18(土) 00:04:54.94 ID:PyiakDISo
 本日ここまで。ありがとうございました。
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/18(土) 00:10:37.00 ID:/tpBaTUs0
乙ですー
妖魔ザマァ
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/18(土) 00:11:55.99 ID:t97kr5JAO
ゲッターなドラゴンさんカッケェーーーwww
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/18(土) 00:41:17.53 ID:Xi5eY+Ul0

トマホークブーメランwwww
妖魔にも味わわせてやる!魔王国の恐ろしさをなぁ〜っ!!状態か
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/18(土) 03:26:11.69 ID:I5Y5qg72o
これはついに勇者と嫁の再会くるか
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/18(土) 10:17:28.93 ID:fDXNHyZbo
十二箇所、六芒星か…
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/18(土) 23:50:11.96 ID:nrIAtXv2o
日付が変わる頃に(物理)
誰もいない今の内に。
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/18(土) 23:52:47.16 ID:2UaWOruuo
俺がいるぜ!
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/18(土) 23:56:35.25 ID:PC9Aj3z1o
誰もいないっていつ錯覚した?
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/18(土) 23:58:06.63 ID:nrIAtXv2o

+勇者の気のいい兄貴分・アークデーモン+

魔界出身のモンスターの中でも大型に分類される。身長18メートル前後。
外見はドラゴンクエストに出てくる同名のモンスターではなく、空にそびえる
鉄の城を思わせるような姿。多分パンチも飛ぶ。酸の息も吐く。火も吐く。
電撃も撃てる。
男と社長辺りに「おまえ正義の味方だろ」と何度も指摘されているが、誇り高い
悪を貫く姿勢を崩そうとはしない。
Arkの守護魔神なのでアークデーモンなのだが悪っぽくないのでアークデーモンと
名乗っているし呼ばせてもいる。

誇り高い悪として散ることを夢見ていたが、クーデターの際に大魔王に倒され
毒気が抜けた。反逆罪に問われたが大魔王に倒された後だったので恩赦で蘇生、
燃え尽き症候群に陥っていたところに勇者の話を聞かされ後見人に。
世界の仕組みとか異世界交流に詳しいのは、魔界にて召喚(もしくは勝手に来る)
された勇者達の相手をしてきたから。
性別は不詳で、展開次第では勇者の嫁になる案もあった。
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/18(土) 23:58:52.01 ID:nrIAtXv2o


+勇者の気のいい兄貴分・悪のドラゴン+

魔界出身のモンスターの中でも大型に分類される。身長15メートル前後だが
翼を広げると20メートル級。ドラゴンと名乗っているが、ゲッターの申し子同然の
扱いを受けている。
誇りある悪の道を目指す過程で勇者に出会う。勇者の受けてきた仕打ちに彼を
勇者廃業させて悪の騎士にでもしようと再教育したが、あまりに真っ直ぐ育って
しまったので「もう勇者でいいや」とか思い始めている。
ちなみに投擲したトマホークなブーメランは大魔王が仕事で使用していた武器。
こいつも性別不詳で、勇者の嫁候補の可能性もあった。
自然のエネルギーや悪霊の類を喰らって活動する聖属性の生命なのだが、悪で
なければ正義を育てられぬという信念で悪を名乗る。
料理の摂取は半ば嗜好であり、魔界の気候では生育困難だったキャベツに嵌った。
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/18(土) 23:59:30.22 ID:nrIAtXv2o



+勇者後日談その8〜勇者、勇者+
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/19(日) 00:00:31.99 ID:FXGD3N+Co


 最上位の妖魔であり妖魔王の側近と呼ばれた十二体の「それ」を前にして、
デーモンは一巻きの紙を取り出した。強力な祝福を施した戦斧で両断されても
なお完全消滅しておらず、冒険者たちは妖魔の強靭な生命に畏怖していた。
 その場で妖魔に対して恐怖していなかったのは、ドラゴンとデーモンだけ
である。様々な護符を撒き散らした城の前庭では妖魔は能力を行使することも
出来ずにいるが、時間と共に復活するのは見えていた。攻め続ければ復活を
食い止めることはできるだろうが、現実的な手段ではない。
 つまり。
 
アークデーモン「大魔王より直々の銘を、この者たちに下賜する」

妖魔「ふ、ふはは。何を間抜けな」

アークデーモン「お前の銘は、本日よりシリアナースキ・オナホビッチである」

『了承する』

 声が聞こえた。無機質な声、有機的な声。老若男女、感情を殺した声、憤怒や
失笑に満ちた声、僅かながら同情の声。
 様々な声が、周囲に起こる。
 冒険者や長命種の者たちは驚き、声の主を探って気付いた。
 手にした武器や周囲の護符が光を帯び、声はそこから出ている。
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/19(日) 00:01:24.88 ID:FXGD3N+Co


アークデーモン「連鎖する樹状分岐、交差する七十六万八千四百余の世界より
        承認を得た」

妖魔「んば」

 馬鹿な、と呟く前に。
 かつて妖魔だったもの、そしてその内部にひそむ神性は、彼らが干渉できる
領域をはるかに超える世界の認識に基づいてシリアナースキ・オナホビッチという存在になった。
 それがいかなる生命で、どのような位置付けにあるのかシリアナースキ・オナホビッチは
知らない。種族名なのか、職業名なのかもわからない。
 得体の知れないものになってしまったシリアナースキ・オナホビッチは、自分が妖魔であった
ことすら忘却し、シリアナースキ・オナホビッチとはいかなるものかという思索の迷路に自らを
封じ込めて消滅した。
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/19(日) 00:02:33.88 ID:FXGD3N+Co



 父親の笑顔を最後に見たのはいつだったか。

 女戦士は、場違いなことを考えていた。
 思えば哀れな父親だった。中興の祖と讃えられた祖父、つまり先王と常に比較され
ていた彼は、実の親子でありながら畏敬の念以上にどす黒い感情を抱えていた。
 その想いが妖魔王を、異界の神を引き寄せたのだろうか。

女戦士「なあ父上、それで満足か」

 謁見の間。
 あと少し手を伸ばせば玉座に届く床の上で国王と呼ばれた者が絶命していた。
 刀剣による外傷はなく、しかし身体が白蝋のように生気を失い、女戦士達の見る間に
しぼみ、泡を噴き出しながら解けていく。十も数える頃には豪奢なだけの礼服と、
くすんだ黄金の額冠が転がっているだけになった。

女僧侶「夢に殉じて死ねたのですから、本望なのでしょう」

 大司教が着用していたと思しき法服と司祭杖を足下に、女僧侶が抑揚のない声で
答えた。涙はない。
 三名の視線が玉座に向けられる。
 主を失ったはずのそこに、座す者がいる。
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/19(日) 00:03:56.32 ID:FXGD3N+Co


女賢者「貴君が首魁か」

妖魔王「目論見は潰えてしまったがね」

 少女であった。
 異界の服に身を包み、長い髪を束ね、見たこともない片刃の長剣を玉座に立てかけている。

妖魔王「外のアレ、実に恐ろしいな」

 称賛の意を込めた言葉で、少女は自らの敵を褒めた。

妖魔王「実体を持たないが故にいかなる災厄にも亡ぼされぬ妖魔を、意識と認識の
    強制によって得体の知れないものに変えてしまった」

 我々が知覚する世界の、三倍以上におよぶ世界の神々が、妖魔という存在を書き替えた。
よりにもよってシリアナースキ・オナホビッチというものに。
 これが恐怖でなくてなんだというのだ。
 少女は笑う。

妖魔王「この妖魔王とて、寄り代がなければ外にいた有象無象と同じ運命を辿っていた」

 その意味では、国王と大司教には感謝せねばならないな。
 少女は笑ったまま立ち上がり、剣を持つ。
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/19(日) 00:05:11.90 ID:FXGD3N+Co


女戦士「寄り代?」

妖魔王「文字通りの意味だ」

 世間話でもするかのように、少女は女戦士の呟きに答え、そのついでに剣を水平に振る。
 斬劇。
 受けてはいけないと咄嗟に判断した女戦士が伏せるように身をかがめれば、背後に
あった大理石の柱と壁が真二つに切れていた。

妖魔王「肉体があればこそ、存在を保ったまま逃れることもできる」

 この世界ですべきことも出来ることも、もはや何もない。

妖魔王「無益な戦いは避けて、逃がしてくれないか?」

 柱と壁が、切り崩されて穴が開く。
 謁見の間のみならず、外に至るまでの全ての壁が一度の斬撃で断ち切られていた。
もはや剣の技巧云々を問う水準ではなく、出鱈目極まりない強さだった。

妖魔王「誰も知らない異世界へ渡り、平穏で静かな余生を送りたいのだよ」

女戦士「貴様のいう平穏のために、どれほどの屍を積み重ねるつもりだ」

 
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/19(日) 00:06:13.07 ID:FXGD3N+Co

 女戦士は直感で理解していた。
 目の前にいる少女は呼吸する感覚で殺戮を行い、一切の罪悪感もなく全てを奪う
だろう。妖魔と呼ばれるものの本質が、少女の行く先の世界で破壊をまき散らすだろう。

妖魔王「生物はな」

 その思考を読みとったのか、少女は女戦士の目を見た。

妖魔王「その器を満たすために必要な量の贄というものがある。兎一羽の胃を満たす
    干し草を飢えた象が喰らって、そのまま死ねと?」

 死んではやれんなあ。
 瞳の中に凶気を宿し、少女は一歩進む。
 その威に飲まれ、女戦士は退く。反射的に女賢者と女僧侶が魔法を放つが、少女が
剣を僅かに振るうだけで魔力は?き消えてしまう。

妖魔王「答えられぬか」
 
 まあ、そうだろうよ。
 少女は嗤う。

妖魔王「過去に一人だけ、答えをくれた者がいた」

女戦士「?」
743 :書きとめここまで、ここから即興です。 [sage saga]:2012/02/19(日) 00:12:41.38 ID:FXGD3N+Co


妖魔王「そいつはな、涙と鼻水を垂れ流しながら配下を切り伏せた。
    妖魔となり果ててまで世界を彷徨う我が身のために涙を流して
    くれたのだ」

 剣を持たぬ腕を廻して自身の身体を抱きしめ、慈しむような仕草を
みせた後に少女はもう一度笑った。
 自嘲の笑みだった。

妖魔王「そいつは本当に優秀だった。我が背後にある神の企てを察知し、天使どもの
    介入をさせず、神授の武器にかけられた祝福さえ封じ込めて戦った」

 あの時、あの神の侵略に真に気付いていたのは「そいつ」だけだったのだろう。
 宿敵を語る少女の貌は何故か嬉しそうで、同時に悲しみに満ちていた。

妖魔王「異界から流れてきたそいつは、誰にも理解されずに戦い続けた。
    理解されないからこそ、この国の王たちはそいつの異能と神の祝福を
    混同して受け取った――神が、その配下を滅ぼすような祝福を武器に
    載せるものか」
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/02/19(日) 00:26:25.42 ID:FXGD3N+Co


 この世界に、妖魔王の背後にある神の奇跡は一度たりとも発動していなかった。
 だからこそ今まで天使は降臨しなかった。

妖魔王「この身体はな。そいつが我に遣してくれた、たった一つの解なのだ。
    神の器にくれてやる訳にはいかんのだ」

女賢者「まさか」

妖魔王「たとえ幾億の世界を呑み込もうと、我はこの身に再びそいつの
    魂を呼び戻すと決めた!」

 少女は。
 先代の勇者と呼ばれた少女が叫ぶ。少女の肉体の内にある妖魔王が叫ぶ。
 女戦士は理解した。
 大司教は、妖魔王の新しい依り代として国王を使い、少女の肉体には彼らの
契約した神を降ろそうとしたのだろう。それが妖魔王の激怒を買い、生命を
奪われた。

女戦士「そんな事は、させない」

妖魔王「許可など求めんよ」

 止めたければ実力で来い。
 こちらも全力で抵抗する。
 少女は長剣を振るう。速度は決して早いとは言えないが、呼吸や間合いを外した
その一撃はどれほどの腕自慢でも反応できないタイミングで繰り出されていた。
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/02/19(日) 00:43:28.89 ID:FXGD3N+Co


 ああ、私は死ぬ。
 自らの力量を知っているからこそ、女戦士は眼前に迫る切っ先を前に冷静で
あった。
 才能よりも修練の極みにある技が、ここにある。この境地に至るまでに少女が
どれほどの地獄を体験したのか。
 だから。

妖魔王「ほう」

 鈍い金属音と共に、少女の長剣が弾かれる。柄を握ったまま腕を持ち上げる格好に
なった少女は、目の前に現れた少年の力量を瞬時に悟りこの上ない笑みを浮かべた。

妖魔王「我が剣の間合いに割り入るか」

勇者「それはもう」

 2メートルほどの樫の棒を振り回し女戦士を守る様に立ちふさがる勇者は
至極真面目にこう言った。

勇者「一家の大黒柱ですから、家族の危機には駆けつけて当然でしょう」

妖魔王「違いない」

 新旧の勇者はそう言って息を吐き、距離を取って互いの武器を構えた。
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/19(日) 00:44:34.87 ID:FXGD3N+Co

以上、本日ここまで。ありがとうございました。
よもや投下前に反応があるとは。
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 00:58:11.62 ID:fRNLLDxso
かっこいい場面のはずなのに安定のぶち壊し具合、好きです
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/19(日) 01:12:49.50 ID:lHHni1Es0

きゃーパパさーん!

それにしてもアークデーモンまでダイナミックだったのには爆笑した
その勢いでストーブに頭打ちつけた
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 05:40:46.22 ID:VS4Mi6UDO
乙!
0時過ぎにこのスレ見つけて、ここまで一気読みしてもうた・・・
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/19(日) 13:33:56.86 ID:oqHNOfKto
キャーユウシャサーン!!
すっかり立派になって……

そしてアークデーモンの、
ベギラゴン(物理)、もしかしてブレストファイヤー
ギガデイン(物理)、もしかしてサンダーブレーク
というわけですね?
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 16:06:20.81 ID:/7fJqq2jo
>>734 これのArkの守護魔神なのでアークデーモンなのだが
ってアークデーモンだとおかしくないか?
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/19(日) 16:50:38.14 ID:VsTjM+2zo
ArkDaemonでアークデーモンだから問題ない
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/19(日) 19:53:37.03 ID:y3LF6Dk10
魔神の方の兄貴が案外デカくて吹いた
悪ドラよりでけえのかよw

あと妖魔王健気すぎワロエナイ
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 21:18:01.83 ID:BG269IAIO
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 21:25:09.35 ID:Ak+20qhIO
兄さんがいなくてホッとしたのは俺だけじゃ無いはず
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 21:49:46.38 ID:35/7CfzQo
つーかデカすぎwwww
でも、それがいい
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/19(日) 23:22:06.68 ID:BUXO4BgIo
1です。いつも感想ありがとうございます。
本日の投下は残念ながらナシとなりました。申し訳ありません。

ちなみに次話のタイトルは「勇者vs勇者」であります。

ネタバレ質問とか読んでみたい番外編の要望などありましたら次回投下までに
↓にお願いいたいます。
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/19(日) 23:33:32.39 ID:lHHni1Es0
アークデーモン対悪のドラゴン

勿論"対"はダイナミック的意味で
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/19(日) 23:35:19.24 ID:lHHni1Es0
しまった番外編ってことはこれまでに出た候補の中からか
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/19(日) 23:38:35.48 ID:BUXO4BgIo
番外編のお題は割と自由です。幾つか候補が上がれば、その中で1が話にまとめられ
そうなものを投下できればと考えています。
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 23:43:50.18 ID:coZE4FY4o
じゃあ、店長とOLにひたすらダベってもらいたいです
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/19(日) 23:47:32.29 ID:1aKqn8Mco
魔王様のデレが見たいです
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/20(月) 00:51:49.15 ID:t2ZJbNJg0
番外編の候補とな
ここはやはり忍法サテライトキャノン(物理)のシーンとか遺憾の意(物理)のシーンとか
獅子元帥の雄々しい姿とか親衛隊長の一日とか色々みたいものはあるけれど
ここはやはり魔王の子達を登場させたり
勇者の平和(?)な一日が見てみたいですハイ

あ、魔王様のお料理クッキングコーナーも良いなぁ
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/20(月) 01:05:21.45 ID:7MrqIsM0o
>>444
30年前に10代だったら、まぁまぁ記憶あるんじゃないかな。
http://ja.m.wikipedia.org/wiki/ぴゅう太
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 07:50:54.31 ID:nEuiM7wIO
外交シーンの遺憾の意(物理)は見たいね
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/20(月) 21:44:23.39 ID:dLAd52wxo
デーモンvsドラゴン
店長とOLさん
魔王デレ
忍法サテライトキャノン(物理)
遺憾の意(物理)
獅子頭元帥
親衛隊長
魔王の子供達
勇者の平和(?)な一日
魔王のお料理万歳
外交(物理)

把握。
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/21(火) 00:25:45.38 ID:L7VfyciMo
今週は仕事が忙しすぎて投下がきわめて難しいのですが、ほんの少しずつでも投下できればと思います
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/21(火) 00:31:36.08 ID:L7VfyciMo
+勇者後日談その9〜勇者vs勇者+


 片刃の長剣を構え直し、先代勇者の身体に妖魔王を宿した少女は
現勇者である少年に語りかけた。

妖魔王「羨ましいな、君が」

 意外な言葉であった。
 詭道の手管ではなく、本心より出たものだと誰もが察した。少女の
右目より涙がこぼれ、頬を伝って流れ落ちて初めて少女自身が己の
落涙を理解した。

妖魔王「あやつが語った青臭い理想が、なあ」

 バケモノでも人でも仲良くできる、一緒に暮らすことができる。
 今は無理でも、それを理由にして前に進むことを止めたくない。
 勇者の称号を押し付けられた異能の少女は、何度そう叫んだだろうか。
何度裏切られ傷ついただろうか。

妖魔王「あの泣き虫はな、君が暮らすような国を目指していたのだ」

 あいつにも見せたかった。

妖魔王「いつの日か、この身に本来の魂を呼び戻す。その時には、君の
      いる国にこいつを住まわせてくれないか」

勇者「良く分からないよ」

妖魔王「分からなくていいのだ」

 左の頬だけ動かして無理やり作った笑顔で、少女は勇者を肯定した。

妖魔王「だから、逃げて良いか?」

勇者「どこまで逃げるの?」

 事情を知らぬ勇者の問い。事情を知らぬからこそ少女は答えに詰まった。
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/21(火) 00:31:40.82 ID:61kA4Lceo
土下座(物理)外交なんてフレーズがふと頭を過ぎった
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/21(火) 00:32:44.08 ID:L7VfyciMo
本日はこれでおしまい。明日以降に続く予定です。
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/21(火) 00:58:12.97 ID:/Kcq69mI0
乙ですー
勇者さん△
772 :本日の投下はこれのみですorz 残業ェ [saga]:2012/02/21(火) 23:13:09.35 ID:LsM3JpYHo


 樫の棒を手に、勇者である少年は納得いかぬ表情を見せた。

勇者「ねえ女賢者さん」

女賢者「な、なんでしょう」

 何の躊躇いもない呼びかけであった。
 悲壮な覚悟を胸に秘めて戦いに挑んだはずの女賢者たちは、一年前のように
自然と言葉を交わしていることに驚き、胸に熱いものがこみあげていた。許される
はずもないと自覚していたが、少しだけ報われた気分であった。

勇者「王様って独りぼっちなの?」

女賢者「高度に政治的な立場では、王とは孤独を強いられるものです」

勇者「じゃあ、今みたいな時は?」

女賢者「それは――」

 勇者の意を察したか、女賢者は声を上げた。

女賢者「妖魔王には付き従う十二の強力な妖魔がいたと記録にあります」

勇者「そいつらはみんな城の外に出てて、倒されたんだ」

 だけど、と。勇者は少女を見て己なりの推測を続けた。

勇者「魔王さんは、クーデターを起こされた時でも側近さんや侍女の人たちが
   いたって師匠が言ってた。暗殺者から部下を守るために自分で怪我しちゃう
   王様だけど、そういうところが好きになったんだって惚気てた」

 よほど珍しいことだったのだろう、その話を聞いた当時を思い出しながら
勇者は少女の目を真っ直ぐに見た。激怒とも狼狽とも違う、かすかな憔悴の色が
そこにある。

妖魔王「少年、何が言いたい?」

 勇者の推察に興味を持ったのか、しかし剣の構えに油断なく少女は勇者に
答えを促した。

勇者「王様が復活するって時に、直属の部下がそばにいないなんてヘンだよね。
   でも、部下の妖魔は城の中でボクらを迎撃していたんだよ」

妖魔王「ははは」

勇者「ボクは、ボクらは、こう考える。
   妖魔を支配している者は他にいて、そいつがお姉さんを狙っている」
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/22(水) 02:55:59.72 ID:IUG3Y3MO0
乙ですー
お仕事がんばってください
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 06:57:28.62 ID:np+T+OBIO
なんだか暑い展開に
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 14:04:15.99 ID:PeHAeW7uo
うむ
776 :1です。 [sage]:2012/02/22(水) 23:13:32.88 ID:Fd64ik6so
そして今日は書きための時間どころか即興すら不可能というスケジュールです。

忍法サテライトキャノン。
たぶん、どこかの女忍者の人と一緒に修業して取得したと思うんだけど
フラグ立てて告白される前に次のシリーズに旅立ったと脳内設定。
女忍者さんも男の事情を知っているから身を引いたふりをして
「男が自由になった時代」を座標として「忍法いつでもどこでもドア〜」で
追いかけてくる。

と、ここまで考えてしまうと四人目の嫁フラグが成立するので没に。

時間に余裕が出るのは、下手すると日曜以降でして申し訳ありません。
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/23(木) 00:20:55.28 ID:cF2K0756o
なに、悠長で結構なSS板だし。
あわててガサツになるより、ゆっくりと。
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/02/23(木) 07:34:13.94 ID:mvoIwFGAO
今は年度末だから仕方ないよね
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/23(木) 11:43:45.18 ID:NDKlGbUIO
気楽に書いてくれ
来てくれると分かっていれば待つのも一興
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/23(木) 13:37:38.13 ID:KYT/caAbo
ごゆっくりー
781 :短いけど投下の続き [saga]:2012/02/25(土) 00:42:12.04 ID:GsoLwNNyo


 十秒に満たない沈黙の後、少女は心底感心した表情を見せた。

妖魔王「その答え、自力で導いたか?」

勇者「まさか」

 そんなに賢かったら、別の生き方をしていますよと少年は真顔で
言ってのけた。年齢の幼さなど関係なく、莫迦と思われる生き方しか
出来ないことを自覚しての返答だった。

勇者「ボクにそんな難しいこと考えられると思います?」

妖魔王「考えるのは無理だろうが」

 この上なく嬉しそうに、少女は構えを変化させた。少年に向けていた
切っ先を天井に変えて突き出せば、それだけで天井もろとも城の上部が
消し飛んだ。
 膂力や魔法の力などでは説明できない破壊を目の当たりにして、
女戦士たちは国王たちがあれほどまでに勇者の血を国に取り込もうとした
理由を、本当の意味で知ることができた。

 歯の根が噛み合わぬほどに震えている。
 叫び逃げ出さずに立っているのは、そこに少年がいるからに他ならない。
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/25(土) 00:43:11.40 ID:GsoLwNNyo


 たった一人で妖魔を撃退し妖魔王と相討ちになったという先代勇者の
肉体能力は、これほどまでなのか。この力が、神の祝福なしに人間が
有するものだと誰が信じるのか。女僧侶は反射的に祈り己の信奉する
神にすがろうとして、それがひどく無意味で滑稽であることに気付いた。

 大司教の娘であり司祭としての教育も受けていた彼女を救う神は、
この場この時には存在しない。
 
勇者「はい。考えるの、ほんとに苦手で」

妖魔王「でも、直感で理解したのだろ?」

 少年は天井が吹き飛び青空が覗いたのを見た後、はい、と強く短く頷いた。
少女がもたらした破壊を目にしてなお臆することも敵意を抱くこともなく、
まるで御近所の新婚さんが夜毎にやらかしている出来事でも思い出して
いるかのような、落ち着き払った様子である。

勇者「生意気なことを言ってすいません」

妖魔王「いいよ。君には、その資格がある」

 言って二人は視線を空に向ける。
 吹き飛ばした城の大部分は粉微塵になっていた。
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/25(土) 00:44:01.53 ID:GsoLwNNyo


妖魔王「さっきの一撃で吹き飛ばしたつもりだったが、囮を掴まされたか」

大賢者「貴様は昔から疑う事をせず踊るしか能のない女だったからな」

 声は、女戦士の背後から。
 油断があったのは否めないが、何かの道具で気配を隠していたと思しき
半狂人が立っていた。

妖魔王「魂砕かれた狂人にとり憑いたか。そこまでして、この身体が
    ほしいか」

 少女の言葉に女賢者は、かつて父親だったものを見た。
 大魔王のマホトーン(物理)で魔法の一切を奪われた筈の半狂人は、
全身に十を越える「人面」を埋め込んでいた。造りモノにも見えたが
数十もの眼球が不規則に動き、開かれた口が呪詛の言葉を吐いている。

大賢者「一時借りるだけではないか」

 人面は、使徒と呼ばれるモノだった。
 妖魔王を復活させるために動いていたというそれらが大賢者と融合し
呪詛と共に瘴気を耳目より垂れ流していた。
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/25(土) 00:44:46.82 ID:GsoLwNNyo


大賢者「貴様の身体能力で、魔界より来た女神の身体を頂戴する」

 そうすれば貴様が後生大事にしている先代勇者の身体など直ぐに
返還しようではないか。

妖魔王「そんなものを我が認めるとでも思ったか、神を自称するものよ」

 講釈垂れる狂人に、間合いを詰めて女戦士を蹴り気味に突き離し、
少女は長剣を躊躇なく振り下ろした。
 天井を吹き飛ばした破壊の力は、今の一撃にはない。代わりに切っ先は
青い光を帯び戯作に出てくる光の剣のように狂人の身体を両断しながら
塵に変えた。

大賢者「逃げるのではなかったのかあ、かつての道化よ」

 塵になりながら、剣を掴む狂人。

妖魔王「貴様が顕現したのだから、今ここで討ち憂いを断つ」

大賢者「ざぁんねん」

 狂人の全身は塵となり、塵のまま宙に融けた。同時に少女の周囲六方に
見慣れぬ形状の魔法陣が現れ融けかかった塵ごと少女の身体に吸い込まれる。
785 :本日ここまで。 [saga sage]:2012/02/25(土) 00:46:38.74 ID:GsoLwNNyo


神?「封を解き蘇生させる際に、仕掛けは施していたのだよ」

 少女の身体で、声で。
 狂人と化したかつての大賢者の内に潜んでいた者は種を明かした。

神?「さて、我が祝福を一度は受けた少年よ」

勇者「なにか」

 先刻己を貫いた長剣を玩具のようにいじりながら、神を自称するモノは
目の前より動かない少年に声をかけた。

神?「私は気分が良い。再び祝福を受ける気はないかね」

勇者「ボクとしてはサイアクの気分かな」

神?「そうか、では神の名の許に断罪しt」

勇者「トンファーキック(物理)」

 容赦のない衝撃が少女を貫き、神を自称するモノは生まれて初めての打撃に
悶絶した。
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/02/25(土) 01:25:24.80 ID:QksMAl5Wo
トンファーキック(物理)しやがった・・・
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 01:27:04.31 ID:nPMaoMHSO
トンファーキックとは……wwwwwwwwwwww
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/02/25(土) 01:28:42.90 ID:be7kv4pjo
トンファーキック…
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/25(土) 01:29:38.21 ID:K+NojZK+0
これが男から受け継いだ技か・・・・・・
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 02:29:12.02 ID:VdihqcGEo
元から物理じゃねーかwwww
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/25(土) 03:54:19.85 ID:BbcoRKYMo
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/25(土) 05:42:36.84 ID:BfZYGk7Fo
トンファー持ってすらいねえw
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 07:39:47.79 ID:a2s22Rblo
トンファーのように振り回された足を、足を…
(物理)だからいっかwwwwww
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 10:05:38.20 ID:fYjGSalbo
↓トンファーキックのAA
795 : [乙]:2012/02/25(土) 15:25:12.27 ID:8dvIOjdy0
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/25(土) 15:29:55.28 ID:XIsgNJmWo

いくぞ!
      ∧_∧  トンファーキ〜ック!
     _(  ´Д`)
    /      )     ドゴォォォ _  /
∩  / ,イ 、  ノ/    ∧ ∧―= ̄ `ヽ, _
| | / / |   ( 〈 ∵. ・(   〈__ >  ゛ 、_
| | | |  ヽ  ー=- ̄ ̄=_、  (/ , ´ノ \
| | | |   `iー__=―_ ;, / / /←>>794
| |ニ(!、)   =_二__ ̄_=;, / / ,'
∪     /  /       /  /|  |
     /  /       !、_/ /   〉
    / _/             |_/
    ヽ、_ヽ

797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/25(土) 16:23:44.66 ID:HknYvTEK0
たかがトンファーキック
されどトンファーキック
さすがトンファーキック
安定のトンファーキック
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/25(土) 16:35:20.56 ID:lOTC7APHo
手にトンファー持ってキックする事だったのかー(棒)
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga sage]:2012/02/25(土) 16:47:15.11 ID:Fvocd8ako
トンファー置きっぱなしなんとかってあったな…
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/02/26(日) 00:22:57.91 ID:Z4gqqmkgo
トンファーを持つことによってトンファーキックを出せる
つまりトンファーは必要
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 00:24:34.16 ID:E9SPeN++o
トンファーは胸のうちにあればいい

故にトンファーは不要
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 01:02:16.25 ID:DRjUQMpDO
トンファ-の反動により威力は倍になる。
極めた達人によってはさらに数倍の威力が出せる
という訳で必要
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/26(日) 03:08:05.73 ID:JrS89FWho
達人になるとトンファーを持たずともその反動を引き出せる
よって不用
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/26(日) 03:18:15.39 ID:uidehnmyo
ここまでテンプレ
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/26(日) 23:03:43.08 ID:wVpPjkfV0
あれ、今更気付いたんだが
対妖魔王の会議時における男のあの発言って伏線?
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/26(日) 23:16:54.66 ID:TMGr9Mozo


 城が吹き飛んだ後にデーモン達の耳に届いたのはドゴォォオオという鈍い破裂音だった。

 聞き慣れているデーモンとドラゴンは、少年が遂に戦い始めた事を理解し
他の冒険者や長命種たちは初めて目にする爆発音に戦慄した。

エルフの青年「何が起こったのだ」

アークデーモン「勇者が戦っている」

 どういう戦い方をしているのかは説明せず、デーモンは簡潔に答えた。
 誇りある悪を目指す身として、打ち砕いてはいけない浪漫があることを
デーモン達はよく知っていた。

 そして。

 少年が今の今に至るまでトンファーという武器の形状や使い方を知らない
ままに大魔王から一通りの技を修得してしまった事を、二匹は知っていた。
 おお、と声を上げる冒険者達。
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/02/26(日) 23:18:02.30 ID:TMGr9Mozo


ドワーフの戦士「勇者というのは、神の祝福を受けた少年のことだったな」

悪のドラゴン「近いが、違う」

 少年が対峙しているものの気配と力を探りながら、ドラゴンが訂正した。

悪のドラゴン「あそこで戦ってるのはなあ」

 翼を大きく開き身構えながらドラゴンは嬉しそうだった。

悪のドラゴン「泣いてる女がいたら、どんな相手でも救おうとするってえ
       女たらしの大悪党よ」


 神?は嘔吐していた。
 胃に食物があった訳ではなく、食道から口腔を焼く胃液と唾液の混合物を
涙と鼻水と一緒に撒き散らしていた。
 見た目は美少女である。
 先ほどまで握っていた剣は柄も刀身も胃液もろもろにまみれ、異臭を放って
いた。両手で腹を押さえ、額を地面に擦りつけるように蹲っている。

神?「ぅ、お、ぁぁ、ぁ」

 肉体を獲得したが故に、精神体では知覚できない情報と痛みが全身を襲う。
痛覚を遮断して逃れようとも、痛みと衝撃に反応した神経と内蔵は精神体の
制御を既に外れている。
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/26(日) 23:19:04.78 ID:TMGr9Mozo


 身体が、ひどく鈍い。

 年頃の少女に比べれば遙かに鍛えられた肉体だが、城を吹き飛ばす一撃を
繰り出せたとは到底思えぬ水準であった。

神?「ふ、ぐううううう。ううううう」

女僧侶「回復呪文」

 同じ女性としてさすがに捨て置けなかったのか、剣を取り上げてから
女僧侶が最下級の回復呪文を施した。痛み程度の効果しか期待できない軽度の
ものだったが、少女は即座に立ち上がる。

神?「い。今のは、ちょっとだけ効いた!」

 だが痛覚を遮断したから、二度は通じぬ!
 
 少女は魔法の力で僅かに浮遊し、滑るように後方に飛んで距離を置いた。
 少年は樫の棒を杖のように持ち。

勇者「ふとんが、ふっトンファー(物理)」

 次の瞬間、少女の足下に無数の羽毛布団とトンファーが出現して大爆発を
起こした。
 一切の防御も回避も無視するような爆発に呑み込まれ、少女の身体が
宙に舞う。
809 :本日ここまで。 [saga sage]:2012/02/26(日) 23:20:05.90 ID:TMGr9Mozo


神?「ゴッドなバリヤーを張っていたのにぃ!」

 今度は即座に回復呪文を唱えていたのだろう、その一切が無効化された
爆発を喰らったので少女は相当に慌てている。
 なにしろ少年が魔法を唱えた形跡はない。
 
神?「どうしてだ!」

 絶叫に近い悲鳴を上げる少女。
 彼女の問いに答える者はなく、ドゴォォオオという音と共に吹き飛んだ。
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/26(日) 23:23:30.67 ID:AtPWYGJHo


なぜか小物臭が止まらないきがするぞ?/(^o^)\
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/26(日) 23:33:58.14 ID:kNGdbqQzo
どうしてこうなった?
アルェー?( ・3・)
乙!
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/27(月) 02:55:56.63 ID:SrSm/77c0
乙ですー
おもしれー
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 06:19:08.23 ID:zKFgEjm50
なんだろうこのスレ
最初の方良くわからないけど面白い
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 18:21:41.54 ID:7gTMgMHIO
たまらなく面白いが…今回はすっぱい胃酸臭がwwwwww
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/27(月) 18:50:53.90 ID:+SLIcbzPo
ひでぇなぁこの(物理)攻撃wwwwwwwwww
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 19:18:24.30 ID:l4tkUkrDO
作者の年齢が知りたい
なんとなく30前後のように思える
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/27(月) 20:08:47.37 ID:cu8fpO/wo
>>816
おっさんです。どれくらいおっさんかというと、浅香唯がドラマガの表紙を飾った
現物雑誌を読んだ事があるくらいおっさんです。


>>805
飯マズ嫁はとりあえず伏線ではなさそうです。


あと2時間後くらいに投下予定です。
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 20:17:21.92 ID:vhO3BbDWo
盛り上がってまいりましたぁ
819 :のんびり造りながら投下でございます。 [saga sage]:2012/02/27(月) 21:59:26.44 ID:cu8fpO/wo

 結論から言えば、少女の運動能力は生体エネルギーのコントロールに
依存したものだった。
 収束、凝集され半ば実体化した生命と魂のエネルギー。
 第二の肉体とも呼ぶべきそれは筋力の増加以外にも神経加速や内分泌
調節などにも応用され、少女を超人の域に高めていた。

 紛れもなくそれは大魔王が少年に伝授した身体強化法と同系列の
技術であり、その極意が似通っている事から同じ源流に辿りつく
可能性が高い。

 二人に違いがあるとすれば、少年が防御と運動性と耐性強化に重点を
置いた技術を学んだのに対し、少女は剣を用いた攻撃と神経加速を重視
した訓練を受けたという点である。
 少女の半生において身を置いた戦場は、一撃必殺の威が飛び交う
地だった。そのような場では踏みとどまって相手の攻撃を受け止めるのは
基本的に自殺行為である。
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/27(月) 22:09:53.93 ID:cu8fpO/wo

 逃げるか、切り払うか。
 空間転移と見紛うばかりの瞬間移動が標準的な回避運動となる戦場に
おいて足を止めて殴り合い切り結ぶのは少数派であり、少女は幸運にも
マイノリティに属せずに済んだ。
 プラズマ化した重金属粒子弾や地面をガラス化させてしまうほどの
広域熱線を切り払ってしまえる技量が珍しくもない世界で生き残る事が
果たして少女にとって幸せだったのかは分からない。

 だが少女は独りで戦い、生き残っていた。
 援護も救出も最初から存在しない戦いに身を置いていた。
少年には大魔王という師がいてデーモンやドラゴンという仲間がいて、
それを前提に修業を組み立てられた。

 立場の違いが、闘士としての質の差につながったとも言えた。

 少年はたとえ闘気を使えなくともマンモスの群れに立ち向かえる程度の
頑強な肉体を手に入れていた。対して少女は闘気による身体強化依存が
高く、オーラのコントロール法を知らない自称神が憑依しても先刻までの
運動能力を発揮できる道理などなかった。
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/02/27(月) 22:20:04.81 ID:cu8fpO/wo


神?「な・め・る・なあああ!」

 宙に浮く少女の身体より七色の光が放出され、馬ほどもある金属質の
巨大昆虫が多数出現する。

神?「審判の機皇蟲よ、目につく全てを!」

 喰らい尽くせ、という号令と同時に金属昆虫が爆発した。

神?「え」

勇者「え?」

神?「し、終末の騎士よ!」

 動揺を必死に隠し、少女が再び叫ぶ。
 今度は四色の風が吹き、馬に乗った仮面の騎士が。

神?「黙示録に記されし、終末を呼ぶ四人の騎士よ!」

 騎士は現れなかった。
 代わりに、辞表と一筆記された封筒の束が二十七億八千万とんで二十七通、
少女の頭上に降ってきた。
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/27(月) 22:22:30.16 ID:iwACDElAO
終末の騎士って四大天使のことか
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/02/27(月) 22:33:37.49 ID:cu8fpO/wo


神?「な」

 少女の内に潜む、神を自称するモノは辞表の存在を知覚し、自分の手勢の
大部分が失われた事を理解した。
 
 妖魔は、この世界に存在することができない。
 人類を滅ぼすために作り上げた機械仕掛けのイナゴ達も同様だ。
 四騎士をはじめとする契約天使は全てが裏切り、逃げ出した。

 天使が逃げ出したのは、ある意味で解る。
 妖魔を消滅させた手法を見るに、数多の世界を渡るような存在が
この世界の住人に手を貸した事は確定している。もしも、その存在が
それらの神々と深く関わるような立場であれば天使達にとっては死活
問題となる。
 だが機械仕掛けのイナゴは、神性の力で起動するそれに妙な仕掛けを
施された形跡はなかったはずだ。

神?「何が、起こったというのだあ!」

???「こういうことですわ!」

 少女の絶叫に、叫び返す声。
 声の出所は、少年。
 少年の、懐。
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/02/27(月) 22:51:35.04 ID:cu8fpO/wo


???「勇気あるものよ、今こそ剣を!」

 懐に挿した短剣が眩い光を放ち、甘ったるい声が辺りに響き渡る。
 声の主に心当たりはない。

勇者「……えーと」

 言われるままに鞘ごと短剣を引き抜けば、鞘が小刻みに震え、刀身
から更に強い光が溢れ出している。

悪のドラゴン「勇者ー、それポイしちゃいなさい」

勇者「あ、はい」

アークデーモン「アルティメットでデビルなビィィィィィム!!(物理)」

???「にょぬわーっ!?」

 戸惑う少年が、飛んできたドラゴンの言葉に反射的に従って短剣を
放り投げ、同時に飛んできたデーモンが目から怪光線と胸から熱線を
放って短剣に全エネルギーを叩きつける。
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 22:59:29.57 ID:BId8mMCCo
ゲッターーーーーー
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 23:04:28.21 ID:D9ReFzECo
魔神の方だろ
名前的にゲッターでもいい気がするけど
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 23:11:36.04 ID:BId8mMCCo
見た目の説明を覚え違えしてたわ…
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/27(月) 23:22:40.98 ID:cu8fpO/wo


 短剣は悲鳴を上げたものの、焦げ目ひとつつかずに短剣は地面に落ちる。

???「あ、落ちたショックで抜けそうになった。ラッキー」

 お気楽な一言と共に短剣より光の塊が現れ、空中で人型となる。

???「妖魔を使い、この世界への侵攻を企みし独善なる神を自称するものよ!
  貴方達の所業は既に私達の知るところなのです!」

 目についたのは、フリル。フリル、フリル。フリル満載のドレス。
 ピンク色の髪。
 カラフルなバトンと宝石のついたティアラ。
 幼い面立ちに、少々反則気味に発育した肢体。
 特殊な嗜好の持ち主ならば即座に発情してしまうような美少女だった。
 美少女は叫ぶ。

精霊神「この精霊神ちゃんが、勇者と一緒に成敗ですのっ!」

 空中で珍妙な決めポーズをとりながら、精霊神を名乗る美少女は高らかに叫んだ。
 その様子を見て、長命種の精鋭たちは手近な柱にロープを引っ掛けて
首吊りの準備を無言で始めた。
 事情をよくわかっていない冒険者たちはそれを必死に食い止め、精霊神殿の
神官たちはイイ笑顔で信仰のシンボルである儀礼杖を膝で圧し折っていた。
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/02/27(月) 23:34:54.27 ID:cu8fpO/wo


勇者「精霊神って、確か魔王国の説明だと」

悪のドラゴン「ヒゲのおs」

精霊神「まじかる縮☆退☆胞♪」

 笑顔のまま精霊神は少女に向けてバトンを振るが、漆黒のエネルギー球が
襲ったのはドラゴンだった。もっともドラゴンは「なんでやねん」と裏拳で
エネルギー球を弾き、直撃すれば周囲30メートルにある物体をエネルギーに
変換してしまう力場は崩壊して消えた。

悪のドラゴン「うちの勇者を巻き込むような物騒な魔法使うんじゃねえ変態」

精霊神「へ、変態じゃないもんっ!」

アークデーモン「たのむから勇者に近付かないでくれ、女装癖が感染する」

精霊神「な、なんのことかしらあ☆」

 露骨に視線を逸らして精霊神を自称する美少女はとぼけてみせた。
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/27(月) 23:39:47.77 ID:hm91LqrIo
なんだよ女装かよふざけんな
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 23:40:30.78 ID:BId8mMCCo
               ,, -―-、       
             /     ヽ   
       / ̄ ̄/  /i⌒ヽ、|    オエーー!!!!
      /  (゜)/   / /          
     /     ト、.,../ ,ー-、       
    =彳      \\‘゚。、` ヽ。、o   
    /          \\゚。、。、o
   /         /⌒ ヽ ヽU  o
   /         │   `ヽU ∴l
  │         │     U :l
                    |:!
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/02/27(月) 23:41:02.36 ID:cu8fpO/wo


女賢者「染みついた女装癖」

女僧侶「ヒゲ面やめて、ピンクのツインテール」

女戦士「変態だ、ああ変態だ、変態だ」

 教養として精霊神について一通り知っている女戦士達が、腐乱死体より
汚い物を見るようなまなざしを美少女に向けている。

アークデーモン「掘られて目覚めて、これを機会に女神として再デビューか」

精霊神「違うわっ! 今までのあたしは自分を偽っていただけなのっ!
    精霊の頂点なのよ、生命と豊饒の象徴なのよ! 筋肉ヒゲゴリラより
    可憐でおっぱい大きな美少女の方が説得力あるじゃない!
    遺伝子レベルで女の子なんだからぁっ!!」

神?「ち、ちなみに将来の夢は?」

精霊神「素敵なお嫁さんかしら〜♪」

 条件反射で答えた直後に訪れる、救いがたい沈黙。
 知性あるものが軒並み硬直する中で、少年だけが黙々と動き、地面に落ちた
短剣と鞘を拾い上げていた。
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/27(月) 23:41:45.53 ID:iwACDElAO
兄のせいで無理やり美少女にされたんじゃなかったっけ?精霊神
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/27(月) 23:42:29.70 ID:6UtWIMkj0
縮wwww退wwwww砲wwwww

そうか(物理)ではなくまじかるか
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/27(月) 23:42:41.05 ID:cVmZhAc4o
うむ
女体化させられて女の悦びを教えられていたはずだ
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/27(月) 23:43:51.99 ID:6UtWIMkj0
>>833
こればかりに関して感謝すべきか悩むな

もっとも兄は何を考えて目を付けたのだろうか
837 :兄「精霊神っていうからには、おしとやかな女神様なんだろうなあ」→そのとき不思議な事が起こった [sage saga]:2012/02/28(火) 00:01:26.28 ID:4BpGSwp+o


 わざとらしく手を叩き、少年は自分自身を誤魔化すことにした。
 そうでなければ短剣を向ける相手を間違えそうだったからだ。

勇者「この世界の主たる神様が顕現しているから、外から来た自称神様の
   力が封じ込められているんですね?」

精霊神「そ、そうなの! 勇者くんが持ってる短剣が媒体として最適だったから
    こうして顕現することで天使とか妖魔とかを弱体化させたり、今も
    先代勇者ちゃんに憑依した悪いヤツの力を封じているのよっ☆」

神?「こんな性的倒錯者に力を封じれるなど!」

精霊神「愛には年齢も種族も関係ないのです!」

 高らかに叫ぶ精霊神。
 確かに魔王と大魔王の組み合わせを知っている者たちは、そういうものかもと
同意した。

精霊神「だから性別も深く考える必要がないのです!」

アークデーモン「ドヤ顔で生命と豊饒の本質を否定するな」

 言い争いを始める精霊神とデーモンを横目に、勇者である少年は
神を自称するものに憑依された少女に向き直った。

勇者「妖魔王さんと先代さん、返していただきます」

神?「ハイそうですかと、渡せるものか」

勇者「別に、あなたから譲り受けるなんて言ってませんよ」

 ボクは女の人を泣かせた責任をとらなきゃいけないんです。
 少年は唇を噛み、地面を蹴って少女に迫った。
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/28(火) 00:02:19.62 ID:4BpGSwp+o
 本日ここまででございます。
 会いの手、突っ込みありがとうございました。
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/02/28(火) 00:03:52.95 ID:gC0t4jf40

戦ってる二名と外野の温度差wwwww
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/28(火) 00:21:28.49 ID:RJEe1g8/o
勇者も中心人物に変わりないのに意外に淡々としてるな
余裕が出てきて良かった
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/28(火) 01:38:02.86 ID:lKBDmu0Y0
乙ですー
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/28(火) 05:05:47.20 ID:+ViM3DfMo
光子力ビーム!!
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 09:36:44.42 ID:4fd7/CcIO
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/28(火) 11:28:48.37 ID:7P9KbYtAO
>>827
昔のゲッター2は目からビーム撃ったからあながち間違いではないさ
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 12:34:24.21 ID:13ovioAxo
BLACKの仕業なら仕方ない
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 20:23:58.82 ID:mn7cJ55IO
笑いが止まらないよ〜
なんだこれwwww
鬼才あらwwわるwwwwww
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/29(水) 01:20:32.98 ID:QTrK1hV50
>>817
飯マズ嫁の方じゃねーよw
「身内の不始末」って方だが・・・ま、男が来れば分かることか
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/29(水) 10:36:33.37 ID:Zt5PYXZAO
>>847
身内=兄
兄が学園の女の子全員を攻略するために同じ3年間を何度も繰り返したせいで
肉体の無い妖魔がそれに耐えられずこんなことになってしまったんだろ?
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 11:23:14.01 ID:fZhOszaDO
>>848
不始末って妖魔対策の中心の精霊神を兄がTSさせて
女の悦びを教え込んでゲシュタルト崩壊させたのが
妖魔と異界神の侵攻を早めたきっかけって事じゃね?
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/29(水) 13:07:31.99 ID:UNh/l6PMo
>>849
そもそも兄が同じ時間の繰り返しリセットをやらなければ妖魔は自我を失わなかった
妖魔が自我を失わなければ、異界神は妖魔を使った侵攻ができなかった

侵攻できるきっかけを作ったのも、侵攻を早めたのも両方兄だが、文章の流れからして
「身内の不始末」は前者を指していると思われる
851 :身内の不始末 >>848-850の流れです [sage saga]:2012/03/01(木) 00:00:47.40 ID:g9xCONKzo


 実体や象徴を持たない神は、崇拝者や世界の認識によって姿や本質が変わる。
 拠り所を持たないからこそ崇拝者の増加に伴い力も増すが、忘却されたり
過った形で伝承されれば善悪の前提でさえ容易に歪む。

精霊神「つまり、ここでハッスルすれば可憐でえっちぃ女神様として世界に
    再デビューすることも不可能ではないんですう!」

 現在進行形で崇拝者の数が激減中の精霊神が拳とバトンを振り回す。
 配下の無名小神より次の精霊神を選出してはどうかとエルフの青年が深刻な
顔で呟き、小人の貴婦人やドワーフの戦士が血涙を流していた。

精霊神「異世界の精霊は最初っから美少女で! いのまた画でっ! ラブで
    コメって戦いの果てに永遠の愛を誓って!」

 わたしも、そんなロマンスをしたいのよー。

 すっとこどっこいなことをのたまいつつ、ミニスカートからぱんつ見せ放題の
美少女が力説するそばで、精霊神を崇拝する者たちはがっくりと膝をついている。
あふれ出る精霊の力は彼女が間違いなく精霊神であることを証明していた。

 なるほど精霊神の力は絶大だ。
 だからこそ信者たちも絶望だ。
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/03/01(木) 00:01:38.86 ID:g9xCONKzo

 
 自称神は、己の失敗を認めた。
 超越者あるいは全能者であることを自身の存在定義に据えることの多い神性に
とって自らの誤りを認めることは時として存在変質さえ招く。それでも自称神は
自身がとった選択と策がもはや何も機能しないことを認めざるを得なかった。
 逃げるにせよ交渉するにせよ、迫る少年を退けねばならない。

 憑依した少女の肉体能力が予想通りならば、目の前の少年を蹴散らし顕現した
精霊神さえ切り伏せていただろう。仮に魔王の肉体を奪えずとも、主たる神で
ある精霊神を倒すことができれば捲土重来を期すことも不可能ではなかった。
 だが現実は自称神の欲する結末とはならなかった。
 この世界にもはや味方は存在せず勝利もない。奇しくも先刻妖魔王が同じ
ことを少年に向けて言った、その繰り返しである。

 何がいけなかったのか。
 十五年前に妖魔王を派遣してこの世界を蹂躙しようとした事か。それとも
異世界で孤独な戦いを続けていた少女をこの世界に送り込んだ事か。送り込んで
勇者に仕立てた少女が加護の一切を拒否して最期まで一人で戦い続けた事か。
妖魔王がその少女に心打たれ共に封じられた事か。
 わからない。
 自称神は、己を維持するのに残していたエネルギーを攻撃の力に変換し、
無数の光弾を生み出した。目の前に迫る少年は、自称神の祝福すら受け付け
ないほど高密度の闘気を宿している。 
 精神支配による憑依は、ほぼ不可能。
 先代勇者への憑依とて蘇生前後の意識混濁時に術式を幾重にも施して、ようやく
成功したのだ。少年の闘気密度は強化魔法さえ作用しないだろう。
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/03/01(木) 00:03:00.80 ID:g9xCONKzo


 ならば。

 精霊神の意が、威の囲となって辺り一帯を満たしている。
 少年が迫る。
 かつて与えた勇者の称号をそのままに、今は自分を狩る者して少年が迫る。
 数秒あれば短剣の切っ先が喉元に届くほどの距離。

神?「弧を描く星輝の弾丸!」

 時間差で数百の光弾が動き出し、複雑な軌道を描いて少年に襲いかかる。
正面から、死角から。突入速度も一定ではなく、一度の切り払い動作では
受け流す事も回避することも不可能に近い。

神?「神の威を知れ、定命のものよ!」

 少年ほどの逸材を失うのは痛恨であった。
 自称神が知る限り、ここまでに闘気を磨き上げた者は十人にも届かない。
もしも神の祝福を受け永遠の存在となれば、他世界侵略の切り札にさえ
なっただろう。

神?「魂残らば、我が眷族に迎え入れようぞ!」

エルフの青年「はて」

 この戦い、タイマンだと誰が言いましたかな。
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/03/01(木) 00:04:07.29 ID:g9xCONKzo


 飄々とした声と共に、千を越える魔弾が少年の背後より飛び出して光弾に
喰らいつく。
 ありったけの魔力を込め精霊達の祝福した魔法の弾丸は、威力でこそ光弾に
劣るものの莫大な数により大半の光弾を相殺し、残るものについても大幅に
威力を減衰させていた。

小人の婦人「人間が神様に挑むんだよ、この程度の手助けはアリさね」

ドワーフの戦士「一族よりかき集めた魔力の弾が牽制程度にしかならんか」

 それはそれで悔しいが、無力であるよりは余程ましだ。
 急な出撃のために十分とは言えぬ装備だったが、長命種の者たちが独自に
開発していた魔法と武具は自称神の光弾を相殺するだけの威力を有していた。

勇者「援護射撃、ありがとうございます!」

 振り返らずに礼の言葉を口にして、少年は一気に踏み込む。
 縮地。
 もしも仙術をたしなむ者がいればそう評しても不思議ではない歩法で、
少年は一瞬にして少女の眼前にまで到達していた。

神?「! しま――」

勇者「大魔王、直伝」
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/01(木) 00:06:07.67 ID:g9xCONKzo


 距離を詰める踏み込みは、次の動作への布石でもある。
 岩を砕き潰さんほどの踏み込みは地面に一切の凹みを残さず、その勢いは
繰り出した左掌に移る。必殺とも呼べる掌打の法は少女には触れず、

神?「精神体剥離だと!?」

勇者「バシルーラ(物理)です」

 黒い塵が凝集した、曖昧な輪郭のそれが少女の身体より弾き出される。

勇者「確かに返していただきました」

神?「お・の・れえええええええ!」

 力を失い崩れ落ちる少女の身体を左腕で支える少年に、塵となった自称神が
覆いかぶさるように突っ込んでくる。

神?「カラダを、ヨコゼえええええ!」

勇者「やなこった」

 短剣を鞘に収め、少年は短い言葉で拒絶した。
 直後。
 塵状の自称神が硬直し、捻じれ、少年と少女から退く。

神?「マサカ、斬ッタ、ノ、カ」

 斬りましたと少年は答えたが、その言葉を聞く前に神を自称したモノは
存在の根源を断ち切られて消滅していた。
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/01(木) 00:06:56.05 ID:g9xCONKzo
以上、本日の投下はここまでです。
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 00:37:10.87 ID:Ui+yMTejo
おつおつ
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 00:45:48.48 ID:125wN8fho
おつ
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/03/01(木) 00:51:05.49 ID:AMd5iFwx0


勇者編はよ終わらんかな男や魔王が恋しくなってきた・・・
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/01(木) 00:55:21.07 ID:g9xCONKzo
勇者後日談は、いちおう次回で終了予定です。はい。
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/03/01(木) 01:04:45.97 ID:ZUk27obFo
おつ
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/01(木) 01:19:23.95 ID:gLTq1cgO0
乙ですー
勇者SUGEEEE
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 02:16:03.42 ID:zeN11tQzo
\      |l        //      /
          \      _     //    /
           \、-'´.:xミー- 、 ′  /
          //.:::/.::/  `ー-、l  /
         /彡′/.::/‐-、    |:::|    “虚蹴跳”!!
         /ヘ/.:〃.:l<oュ r-、!:::|
.        |{ (/.::::l:::::| u   (oュ.|::::ト、     ―==ニ二
.       , -‐|゙ト!:::::::|:::::|     ノ  !::::|::l
     /..:::::ノリ レ!::::|:::::| ≦=ュ /.:::: /|   以前 兄上が
    /.::::.:/ /  .|::: !::N.   ̄ /.::::::/.ノ
   イ::/ | ̄ ̄`W::::| 、_   /l:::::::::|     見せた技!
    レ' /|\ ::::::: |:::|  ./  ̄  \N
  , -‐ク´.:.:.|::::::\::: :::ヘ|ー┴≧         \、 \
/.:.:.:/ |:.:.:.:.\::::::::::::::::::::::::::/  |l       \  .\

.             /⌒ヽ_       .落下直前に
            r‐f{.:.:.:.:.:bト、ヽ       後足で前足を
            ト、! ト、_ノ | ∨}、     蹴ることにより
           / | l リ / |  |
             ト、_.| ∨ ./  .|.  !、
          /|_ |ュ/__/_,イ、_ノ!   空 中 で 加 速 す る
         くr‐''´_>┬ ´`ー`ヽ
         / /´ __/!`ー‐-、三≡  変 型 縮 地 !!
         |/  /´  _⊥__ ≡=ノ
         `l { ミ≡イ  /\_ノ三≡
   /|__  `ーゝ<´>y′三≡    /|__
. /     |.      `l ト、三≡   /     |
. \     |    カ .{_ノ \三≡  \     |
   \| ̄ ̄     ッ              \|
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/01(木) 03:01:12.85 ID:TOtZzMgzo
ついに家族会議か
あと妖魔王にも救われてほしいものだが・・・
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 08:04:38.81 ID:gFOcqyFIO
ずっと読んでいたい
このスレの登場人物の話を
そして>>1の話も
866 :1です。年度末って略 [sage]:2012/03/01(木) 23:47:12.56 ID:m6rVsjc4o
勇者後日談の次回(最終回)投下は土日のいずれかを予定しております。
その後は、残量に合わせて小ネタとか雑談とかできればと考えてます。
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 06:02:16.65 ID:kfKKvwWIO
おもしろすぎ
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 06:29:10.40 ID:zAwfbdr9o
>>1
あんた最高だよ!
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 12:41:43.45 ID:Dt9aZS+DO
ぶっちゃけここまで面白くなるとは思わなかった
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 21:01:05.66 ID:rtA2SyoT0
そうか、不始末は兄関連だったか・・・
てっきり先代勇者が男nうわなにするやめ
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 00:39:18.58 ID:tghSeHdvo
そんなことより年度末がどうなったかが気になるwwww
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/04(日) 23:13:15.32 ID:G/aXxw7ho
年度末。今日も仕事だ楽しいな。どちくしょう。

本日の投下で終了する予定が、続きます。すいません。
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/03/04(日) 23:13:50.81 ID:G/aXxw7ho


+勇者の後日談〜おしまいとはじまりの日+
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/03/04(日) 23:14:36.15 ID:G/aXxw7ho


 多くの国の歴史書では、大魔王の怒りに触れたため一夜にして
滅びた国があると記されている。
 エルフやドワーフ達の国にも、その記述はある。

 荒野よりやってきた巨大な竜と悪魔が王国の城を破壊し、二人の
勇者とその仲間達が辛うじて竜と悪魔を撃退した。だが、勇者と仲間達は
竜と悪魔を追いかけて荒野に向かい、帰ってくる事はなかった。

 主だった貴族が竜と悪魔の襲撃で命を落としたため、三人目の勇者と呼ばれる
筈の青年貴族が残された国を立て直そうとした。しかし竜と悪魔を恐れた民草は
二人の勇者を追いかけて姿を消し、青年貴族は独りぼっちの王様として空っぽの
国で余生を過ごしたと後世の歴史家は述べている。
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/04(日) 23:15:36.81 ID:G/aXxw7ho


 かくして魔王国で家族会議が始まった。

勇者「全員正座」

長女勇者「横暴ですわ、お父さま! 私はお父さまの肉便器になりたいだけなのに!」

次女勇者「悪逆無道であります父上殿! 勇者の穴奴隷は女子にとっては花形職業!」

三女勇者「ここは親子の感動の再会場面ではありませんか! 母娘がひとつの竿を
     共にして姉妹の契りを結ぶことこそ真の大団円では!」

 第三者として暴走が起きないように立ち会っていたOLと店長が、絶望的な表情で
勇者を見た。勇者は、三人娘と対面に正座している女戦士達を見た。

勇者「説明をお願いします」

女戦士「最期だと思って色々と溜めこんでたのをぶっちゃけ過ぎましたー!」

 勇者の言葉はとても丁寧で、だからこそ怖い。
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/04(日) 23:16:27.53 ID:G/aXxw7ho


勇者「色々と手遅れだとは思いますけど、これから一緒に子育てするんですから
   きちんと話し合いたかったんです」
 
女賢者「え?」

女僧侶「一緒に、子育て?」

 思わぬ勇者の言葉に女賢者と女僧侶が素で返し。

OL「微妙な反応ですね」

店長「将来を誓った相手が別にいたのかな」

女戦士「い、いない! 断じていない!」

 最初に声を上げたのは女戦士だった。女賢者と女僧侶もぶんぶんと音が鳴るほどの
勢いで首を振っている。

女賢者「私達が過去に勇者さまにしでかした事を考えるに、離縁どころか将来を
    共になど――にわかには信じ難く」
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/04(日) 23:17:43.64 ID:G/aXxw7ho


 最悪、魔王国に連れ込まれた時は娼館に売り飛ばされれば御の字で、巷で噂の
エルフの女騎士プレイ(婉曲的表現)すら彼女達は覚悟していた。
 だが実際には魔王と側近が直々に出迎え、魔法医による診断と治療の後に
護衛まで付けて勇者達の住居に案内されていた。
 規模の大きい丸太小屋ではあるが、今は長命種の精鋭達が周囲に天幕を張っているため
ちょっとした市場のようになっている。
 そのど真ん中で正座させて家族会議を始めてしまうあたり、なかなかの大物であると
長命種の精鋭達は感心していた。

OL「それだったら早目に誤解を解かないと」

 近くの作業場に視線を動かし、OLは冷静に指摘した。

OL「店長の腕力だと、勇者くんの首吊り自殺を食い止められるのって残り十秒くらいよ?」

女僧侶「ぶーッ!!?」

女戦士「は、早まるな勇者ぁ!」

女賢者「きょ、拒絶なんてしてませんから! 私達勇者さまのお嫁さんになって、娘の
    教育しっかりやりますからあ!」

長女勇者「ち、父上ーっ!」

次女勇者「あ。店長殿が力尽きた」

三女勇者「呑気に実況してないでお父さまをなんとかしなさいようっ!」
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/04(日) 23:18:49.63 ID:G/aXxw7ho
 以上、本日ここまで。続きは明日以降です。すいません。
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/03/04(日) 23:21:37.35 ID:hI2z9zHAo
エルフの女騎士プレイって字だけでどんなのか予想つくな
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/04(日) 23:22:33.53 ID:4mtNyaAxo

忙しそうだな
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/05(月) 01:17:19.83 ID:yGe34TDxo
>>1よ 同士よ
ブラックな会社じゃないだけ良しと考えよう
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/05(月) 01:43:23.71 ID:7enmYG1Bo
883 :1です。 [sage]:2012/03/06(火) 00:19:45.01 ID:hvcBd8XEo
今日も投下は無理でした〜。
番外編とか残りでは足りないなあ。 
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/03/06(火) 00:54:12.56 ID:BnvJHI1No
いいから休むんだっ・・・!
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/03/06(火) 01:34:32.52 ID:Hxf532zMo
足りなかきゃ新しく立てればいいじゃない
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/06(火) 07:13:50.51 ID:A2YaLj4IO
このスレは次スレに行くべきクオリティ
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/03/06(火) 23:58:25.72 ID:EuMaYDero


 軽い修羅場に突入しつつも母娘の再会を果たした勇者一向。
 その一方で、魔王城の会議室では別の意味での修羅場が始まっていた。

男「なんで、あの短剣に精霊神が顕現できたんでしょうね」

 幾重にも封を施した短剣を前に、男はとんでもないことを言った。
 戦いの一部始終を見守っていたデーモンとドラゴンはもちろん、会議に
参加していた長命種の精鋭たちも唖然としている。

 大魔王の仕込みでなければ、いったい誰があんな真似をしでかしたのか。
相手によっては幾多の国を巻き込んだ大戦争が起こっても不思議ではなく、
特使としての権限を委譲されて集った長命種の精鋭たちは固唾をのんで
大魔王と周辺のやり取りを見守っていた。

悪のドラゴン「おいおい、あれはアンタの仕業じゃなかったのか」

 天使や妖魔の牽制に、異界からの自称神の力を封じ込めたのは精霊神の
力が大きい。
 たとえ偶発的に女装癖から女体化にまでワープ進化した性的倒錯者であっても
この世界の根幹を支える主たる神という事実は覆されることはない。
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/03/06(火) 23:59:31.54 ID:EuMaYDero


男「嫁さんと復縁するのに風俗嬢より始末の悪い奴を同伴させるわけないでしょ」

大臣「でありますわな」

 この世界の精霊神が女性化した経緯を知っていた男は、勇者がそれに関わらずに
済むように数多の世界より破邪の護符をかき集めて長命種の精鋭達に託していた。
 かの異界神が降臨しても神威を抑え込めるほどの量と質だったが、精霊神の
顕現により護符は最低限の機能を発揮して終了した。

アークデーモン「なんでも依り代として極上の素材だという話だが」

男「そこが不可解で」

 そっちは無反応なんですよねえ、と男は勇者から預かった武器防具を見る。
 手甲やすね当てが光り輝いて何かが出現する気配はない。魔法使い達が感知を
試みたが反応があったのは短剣のみだ。

男「やはり短剣の封印を一度解いて」

精霊神「やっほーっ!」

 短剣の呪符を剥がそうとした瞬間、会議室の扉を蹴破ってピンクのフリルに
身を包んだ「外見だけなら抜群の美少女」が飛び込んできた。

精霊神「らっぴー、みんなのアイドル・精霊神ちゃ」

男「チェーンソー(物理)」
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/07(水) 00:15:38.90 ID:4IGwxlwAo


 およそ優雅という言葉とは無縁なやり取りが数度繰り返され、会議室の
円卓に証拠物件が並んだ。

アークデーモン「見慣れない物ばかりだな、これ」

男「……万年筆、古い歯ブラシ、縦笛」

元帥「どれも男殿の私物か」

大臣「しかも紛失もしくは破棄されたと思われていた物品ですな」

 それらの品は魔王、王妹、側近の私室にあったという。
 精霊神が顕現する際に無意味にポーズをとったり暴れたりしたので侍女以外に
目撃数が多数あった。
 これはどういうことだと議論を始める大臣と元帥。男はそれらの物品と短剣を
交互に見て固まっている。

エルフの青年「無礼を承知で言わせてもらうが」

男「はい」

エルフの青年「うちの氏族には普通の性癖の娘もいるから、嫁として紹介しようか?」

魔王「あ、あああああアブノーマルちゃうわ!」

王妹「想いを寄せた異性の私物でひとり繁殖練習とか、学園物の基本であろうが!」

側近「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! まさか勇者さんに渡すとは
   思わなくて男さんが仕事で不在の夜に三人で使い廻してましたっ!」

 精霊神が暴れた後に修繕した会議室を蹴破って、魔王国のトップ三名が現れる。
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/03/07(水) 00:28:24.69 ID:4IGwxlwAo


魔王「本来であれば謁見の間で特使を待つのが作法ではあるが、我らが異常性癖者と
   思われるのは甚だ心外である故に無礼を通す」

王妹「黄金水を飲ませるくらいは、どの夫婦でも日常的にやっているはず!」

側近「すいません馬鹿ふたりは後でシメときます」

 ハリセンで魔王と王妹の後頭部をしばき倒し、側近が営業スマイルを浮かべた。

側近「勇者さんが所有する短剣。神を降ろすに足る器ならば、扱いに気をつける
   必要があると判断してまいりました」

男「銘を与えて、国宝扱いで国で買い上げて厳重封印という方向で勇者君には
  話を通しています」

 知的生命を生贄にして神を降ろすよりは健全ではあるが、これ一本を巡って
狂信者達が戦争を起こすのは避けねばならない事である。

大臣「銘でありますか」

 大魔王の言葉に、半魚人大臣は封印を施された短剣を見る。
 結果として精霊神を宿し、異界の神による侵略騒動を未然に防いだ鎮守の
剣である。ご利益の有無とは無関係に祀られてしかるべきものである。
 ならば。

元帥「鎮公」

 ぼそりと呟いた獅子頭元帥の一言に魔王以下三名は膝から崩れ落ちた。



 これが魔王国に伝わる破邪の宝剣の、由来と言われている。
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/07(水) 00:29:19.43 ID:4IGwxlwAo

 以上。おあとがよろしいようで。
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/07(水) 00:33:34.43 ID:4IGwxlwAo
勇者の後日談はここまで。
次回からは短いネタを単発で投下できればと思っています。
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/07(水) 00:53:58.11 ID:B9K0i29co
字面的には結構それっぽいけどやっぱ酷い銘だなw
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/03/07(水) 01:28:57.31 ID:1tThbIIRo
チェーンソーwwww
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/07(水) 07:29:59.60 ID:CbP+20mIO
単発ネタがんがんこーい
ばっちこーい
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/07(水) 09:31:20.61 ID:1u3lV21IO
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/07(水) 10:20:17.57 ID:maG73sPvo
[田島「チ○コ破裂するっ!」]で体液が,ということか
依代に極上ということは
神の[田島「チ○コ破裂するっ!」]はやはり神聖な儀式であったようです

そして>>1
小ネタどんどん待ってます!
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/03/07(水) 20:33:03.92 ID:zRjg9YLpo


+用語解説 『鎮公』 +


 大魔王より勇者に贈られた短剣。刀剣というよりは金属棒に近い作りで、
刃もついておらず切っ先も丸みを帯びている。

「刃先の鋭さではなく、技の鋭さで断つ」

 という使い手を選ぶ武器であり、技量が及ばなければただの鈍器である。
意の太刀を修めた勇者が所持することにより、神霊をも断ち切る鋭い
剣として認識された。

 名前の由来については、一部の神学者たちが「珍しい鋼」とか「神の光」
などが語源であると新説珍説を発表しているが、名付け親はノーコメントを
通してる。

 少なくとも女神二柱に高位魔族一柱の体液がこれでもかという水準で
染み込んでおり、ロンギヌスの槍も真っ青の御利益があるらしい。
そのため神が実体を得るための依り代として最適素材であり、勇者の手に
渡った際に精霊神が宿った。

 神器としても優秀であるため冒険者の中にはこれを求めてくる者もいるが、
出自が出自なので貸し出しの許可すら下りず代わりに大魔王が直々に力を
貸すので勘弁してくださいと菓子折り持たされて帰還した者もいた。

 この世界において最強(?)の武器がわざわざ魔王の城に安置されているのは
上記のような理由があっての事らしい。
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/07(水) 22:35:35.50 ID:s04zrdJio
別名:珍交
つまりアブノーマルwwwwww
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/07(水) 22:36:44.21 ID:cbL9y7zKo
短剣を突っ込むなんて、危険なオナニーですね・・・
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/07(水) 23:02:57.11 ID:zRjg9YLpo
 ちなみにエルフやドワーフ達の間では

「精霊神が性転換する際に斬り落としたち◎こを大魔王が拾って武器として鍛えた」

 という説が広く信じられております<鎮光

 つまり彼らの伝承では

「異界から侵略してきた自称神が、精霊神のち◎こに一刀両断された」

 という一文が刻まれたという事になります。
 色んな意味で二度と復活できない最期を迎えました<敵



>短剣を突っ込むアブノーマルプレイ

 ソンナコトシテナイヨー、タブン


 明日は妖魔王さんのお話。
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/07(水) 23:10:03.69 ID:0/VBRqLDO
>刃もついておらず切っ先も丸みを帯びている。

最適ですね
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/07(水) 23:12:00.97 ID:EIe5uR0AO
ほぅ、突っ込んでないなら、リコーダーとかと同じノリでペロペロしただけか
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/07(水) 23:16:06.89 ID:zRjg9YLpo
>リコーダーの処遇

アルトリコーダー:ぺろぺろ

ソプラノリコーダー:回答を聞く前に魔王様達は逃亡しました


>最適

刀身の幅が3.5センチ、刃の厚さが2.5センチ、長さが【マッカナーチカーイー】センチ位なので
欲求不満気味の新妻さん達は血迷ったようです。

ということで今日はこの辺で。
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/08(木) 00:59:17.93 ID:+a2EL8Oio
敢えて問うが、万年筆は?
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/08(木) 01:07:30.68 ID:8wLwna/So
にょうど…おや?こんな時間に誰だ?
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/03/10(土) 16:56:11.46 ID:WRsiOpJ20
いやいや筆先でクリちゃんをつんつn…男「チェーンソー(物理)」ん、なんか聞こえたな…
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/10(土) 18:57:04.15 ID:u86B/rKAO
>>907
痛い痛い!考えただけで痛いわ!
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 00:06:44.75 ID:DN8WQa9vo
万年筆、古い歯ブラシ、縦笛いずれも国宝級なんだろうか・・・?
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 00:16:50.13 ID:JWHI7GTDO
>>909
少なくとも重要○ん○財だな
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/11(日) 01:18:03.57 ID:sydKxZ+Io
>万年筆
紙魚丸という方のいやらし漫画単行本に詳しい使い方が記載されていましたよ(棒)

>汁のついた万年筆とか歯ブラシとか縦笛
大魔王が責任もって消滅させました。
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/03/11(日) 02:06:11.69 ID:sydKxZ+Io


+責任の取り方+


 勇者の家族会議より一週間が経過した。

 大司教の召喚魔法により呼び出された異界の戦士(の残骸)を送還し、国が
滅びて難民となった者たちの受け入れ作業が進んでいる。
 金と縁故のある貴族たちの多くは友好国へ亡命という形で落ち延び職種は様々
であるものの市民の大半は魔王国への恭順を選んだ。

 魔王国が難民に提供したのは都市中央部に近い場所で、魔王国の民が食事に
利用している食堂街に近い天幕街であった。しばらく前に大魔王に輿入れすべく
各国が美女を派遣した際に仮宿として用意した建物を難民向けに改装中であり
天幕街は一時避難の場として機能していた。

 とはいえ万単位の人間と、その十倍及ぶ魔族たちの邂逅である。

 魔王国の民も人間の難民も、これほどの規模を目の当たりにするのは生まれて
初めてである。異星人とのファーストコンタクトに近しいやり取りが各所で
行われ、文化的な背景の違いから生じるトラブルは当たり前のように発生する。
 前途は多難であると言えた。
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/11(日) 02:07:13.58 ID:sydKxZ+Io


 魔王城の中庭にあるプレハブ施設の社屋。
 その中には得体の知れない技術を駆使した医務室があり、現在はそこが
妖魔王を宿した少女の仮住居となっていた。

魔王「勇者の知名度と大魔王への恐怖が有効な内に、治安体制を整備して
   警察組織を発足させようと考えている」

先代「そうか」

 身体そのものには異常はないが、検査入院のため寝間着姿の少女が上体を
起こしたままの姿勢で静かに微笑んだ。ここは良い国だなと。

先代「店長に聞いたが、貴女達もこの世界に飛ばされて然程の時が経って
   いないとか。此度の難民受け入れは相当な負担だったのではないか?」

魔王「夫を口説き落とした時に比べれば、苦労とも呼べぬ」

 見舞い席のパイプ椅子に座った魔王が胸を張れば、背後に立っていた側近が
噴き出した。

側近「向うの世界から、ものすごーく感謝されましたものね。アレ退治で」

先代「アレか」

魔王「アレに比べたら、多分なんとかなる」

 なんとかしてみせる。
 だから貴様も安心して養生しろと魔王は笑い、日課の見舞いを終えた。
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/11(日) 02:08:19.45 ID:sydKxZ+Io


 魔王達が執務に復帰してしばらく経った時分。

先代「ここは良い国だな」

 思いだしたように少女は見舞客にそう言った。

先代「聞けば元の世界が消滅し、国ごと転移してきたとか」

男「一年ほど前の話になりますね」

 見舞い用にと持たされたフルーツ籠より林檎を取り出し、大魔王は皮を
剥かずにそのまま置いた。特別な仕草をしたわけでもなく、ひとりでに
皮に螺旋の切れ目が入ると木綿糸のように外れ落ち、芯を除いた果肉が
八等分されて広がる。

 大魔王は慣れた手つきで林檎の芯を摘まみ出し、フォークを皿に添えた。
 何が起こったのか理解していた少女はやや不機嫌そうに大魔王を見る。

先代「武功究めて真人の号を天帝に認めさせた者が極意を俗な事に
   使わないでほしいものだ」

 少女と男は同門であった。
 とはいえ少女は三か月の修業で皆伝に至り、男は四百年の長い修業の
一過程で少女と面識があったにすぎないが。

 文字通りの天才児であった少女はひとり戦いを始め、男は男で身内の
尻拭いの日々を送っていた。もしも男の兄が少しでも自重していれば、
少女と男の関係はまったく別のものになっていたのかもしれない。
 男は表情を殺した顔で嘆息し、肩を落とす。
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/11(日) 02:09:31.03 ID:sydKxZ+Io


男「そんな称号ありましたね」

先代「私たち『転校生』にとっては到達点の一つなのだが」

男「自分、いまは大魔王やってますので」

 転校生とは「学園」という限定された世界を渡り歩く超人達の総称でもある。
 多感な時期であるからこそ不安定な肉体と精神を保有する若者達が集う
閉鎖空間は、怪異と奇跡の温床でもある。週替わりに世界の危機が訪れる
学園もあれば、世界の危機を救う鍵が隠される学園もある。
 一般人もいる。
 逸般人もいる。
 転校生は、学園が存在の危機に陥った時に召喚される。彼らの出現は平穏の
終焉であり、同時に戦乱と飛躍の前兆でもある。だからこそ転校生は憧憬と
畏怖と憎悪の対象となり、卒業と進級と引き換えに不老不死を約束されている。

男「それに、先代さんも今は『転校生』ではありませんよね」

先代「失念していた」

 少女は神に召喚される前に学生である事を止めていた。
 転校生を続ける限り不老不死は約束されているが、あまりにも長く戦い
続けると心身の摩耗が訪れる。戦いの中で命を落とす者もいれば、少女の
ように退学することで転校生という鎖から逃れる者も少数ながらいた。
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/11(日) 02:10:25.67 ID:sydKxZ+Io


先代「戦い続ける事に疲れて学生を辞めて、次の生き方を探そうとした時に
   召喚されて――逃れられないのだなと、思った」

 だから私は妖魔王と戦い、そこで果てる事を選んだ。

先代「なあ、私は『どっち』なのだ」

男「ベースは貴女自身ですが、摩耗して欠落した部分を妖魔王の情報体が
  補っています」

 勿体つけるという言葉を大魔王はあまり好まない。

男「蘇生直後は自分が妖魔王そのものと思い込んでいたみたいですけど、
  憑依しただけの精神生命体に闘気を操るなんて真似は出来ませんから」

 自称神が少女の肉体を支配して一気に弱体したと勇者の少年が報告して
いたのを思い出しながら、大魔王は説明する。

男「だから、貴女は間違いなく貴女です。霊体ではなく情報体との融合
  ですから、人間のままですよ」

先代「そうか」
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/11(日) 02:11:33.48 ID:sydKxZ+Io


 妖魔王がなぜそのような真似をしたのか。妖魔王としての記憶は全て
少女の内側にあった。それを引き出す術を今の少女は持ち合わせていない。

先代「それで、私はこれからどうなるのだ」

男「勇者君が『責任を取る』と言ってましたね」

先代「おい」

 大魔王は躊躇という言葉も忘れていたようだ。

男「どんな流れで出た言葉かは知りませんがね。あの子は自分の言葉に
  責任を持つ人間ですよ」

先代「……頼もしいと言っていいのか」

男「それに、嫁が3名に娘が3名押し掛けてきて大騒ぎですから今更家族が
  ひとり増えても彼の負担は大して変わりませんよ」

先代「ひどい奴だなあ」

男「それくらいしないと大魔王と認めてもらえないんですよ」

 どこまで本気かわからない大魔王の嘆きに、かつて勇者と呼ばれた少女は
噴き出してベッドの上で笑い転げるのであった。
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/11(日) 02:12:22.80 ID:sydKxZ+Io
以上、本日ここまでです。
投下が遅れて申し訳ありませんでした。
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 02:27:23.45 ID:9WNNDXx1o
乙!
ほとばしる乙!
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/11(日) 08:03:10.30 ID:f67hHcnn0

勇者の家族はこうして増えていくのか
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 08:42:29.03 ID:pNOkFW3Bo
待ってたあ
次も楽しみ♪
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/11(日) 11:58:42.10 ID:i8xX8xVso
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 16:20:49.57 ID:39Gx5VSXo
おつんつん
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 18:11:56.20 ID:pNOkFW3Bo
ヘタレよぅ…
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/11(日) 20:46:48.54 ID:gVrebD7a0
もしも、もしも彼らが大人になってから
勇者と先代のサラブレットが生まれたなら…
少し楽しみだな…
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/03/11(日) 23:57:36.85 ID:sydKxZ+Io

+デーモンvsドラゴン+

 ある日の話である。

 共同の食堂を兼ねた炊事場に、見慣れぬ魚が並んでいた。
 氷と共に箱一杯に詰められた細長く青い魚にデーモンとドラゴンが
感嘆の声を上げた。

アークデーモン「ほう、こいつにお目にかかれるとはな」

元帥「知っておるのか、魔神の」

悪のドラゴン「サンマじゃねえか」

大臣「さんま、でありますか」

 じゅるりと涎を呑み込むドラゴンに、半魚人大臣が意外そうに驚く。

悪のドラゴン「冷たい海水で育つ異界の魚でよ」

 骨ごとすりつぶして団子汁にすると、うめーのよ。

 うっとりとした顔のドラゴンに対し、デーモンは鼻で嗤う。

アークデーモン「塩焼きの美味さを理解できぬとは、哀れな奴め」

悪のドラゴン「んだとぅ、ここで焼いたところで炭になるだけじゃねえか」

アークデーモン「粗野な貴様ならそうだろう、だが俺は違う!」

 ぐぬぬぬぬ。
 ふぬぬぬう。

アークデーモン「塩焼きが最高だ!」

悪のドラゴン「つみれ汁は捨てる部分がないんだよ!」

 どうした事かと周囲の市民も騒ぎ始める。
 普段は勇者の頼れる兄貴分として、荷運びをはじめとして迷子の保護や
子供たちの遊び相手などで大活躍している二匹である。暇な時に愚痴を吐いたり
酒を飲んでいる姿も目撃されてはいるが、こうして正面よりいがみ合う姿は
初めてかもしれない。
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/03/11(日) 23:58:22.44 ID:sydKxZ+Io


元帥「試食して比べるよりなかろう」

大臣「責任を持って審判を下しましょう」

 止める者はいなかった。

アークデーモン「ならば魔神流割烹術の奥義を見せてくれるわ!」

悪のドラゴン「ぬかぜ、悪のクッキングマジックが炸裂するぜ!」

 歓声が上がる。
 その巨体に似合わず器用に調理道具を駆使してサンマを調理する
デーモンとドラゴン。材料が沢山あるからか、観衆に振舞う分も当たり前の
用に作っているあたり、二匹の性格が良く分かる。

元帥「今のところは一進一退の好勝負である」

大臣「ところで疑問があります」

元帥「奇遇であるな、吾輩もだ」

 いつの間にか街の衛士たちが実況席と審査員を用意しているのを傍観
しながら、獅子頭元帥と半魚人大臣は同時に頷いた。

大臣「このサンマとやらを持ち込んだのは誰でありますか?」

男「……自分です」

 ぞわり。
 気配なく現れた大魔王の姿に誰しもが恐怖した。
 その手には味醂と醤油の瓶があった。

男「一尾も――残っていませんね」

元帥「ふぉぉぉぉぉ」

大臣「お、男殿は塩焼きとツミレ汁のどちらがお好みですかなっ!」

 直後、それが地雷を踏みぬく最後の言葉だったと半魚人大臣は理解した。
 ゆらりと身体がぶれるような動きで一歩また一歩、料理バトルを繰り
広げる二匹に近付きつつ、大魔王は引きつった笑顔で答えた。

男「自分はサンマの蒲焼と味醂干しが好」

元帥「逃げろおおおおお、いますぐ逃げるのであるううううう!」

大臣「ど、どなたか魔王様達に連絡をおおおおおおおおおお!」

男「ハハッ」

 その日の魔王国に訪れた絶望について、歴史書には一切の記述が
存在しない。ドラゴンですら記述を躊躇ったという点から、その日こそ
魔王国の開国以来最大の危機が訪れたのだと後世の研究者達は結論
付けている。
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/11(日) 23:58:48.32 ID:sydKxZ+Io
本日ここまで。
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/12(月) 00:08:24.77 ID:knSvM8Zgo
食べ物の恨みはマリアナ海溝より深いとは良く言ったものです乙!
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/03/12(月) 00:16:38.40 ID:VQrLsL+co
あえて刺身を推す
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/03/12(月) 00:58:54.51 ID:O2yXcFFAO

アークデーモン対悪のドラゴンをリクエストした者だけど
こんな恐ろしい事態になるとは夢にも思わなかった
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 07:03:50.48 ID:ZJGtz6HIO
傾国のサンマ事件だな
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 09:15:33.57 ID:SvwZip5IO

どれも美味しいよね
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 12:44:39.40 ID:nvvGVokUo
マジンカイザーvs真ゲッターvsゲッペラー様って感じですね
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/03/12(月) 22:13:26.35 ID:x2Zfekhko


+店長とOLさん+


 魔王城の中庭にあるプレハブの建物は、大魔王がアルバイト先として
努めている会社の支店である。もっとも、その業務内容がどのようなもの
なのか知る者は少ない。

OL「それでは次の方、どうぞ」

女「男君のお嫁さん大募集と聞いて履歴書と婚姻届を持参して参上しました」

店長「すいません、それ没になった近未来サイバー伝奇物編での配役なんですよ」

女「がーん。じゃあ魔王国編での第四夫人でいいので応募します」

OL「ごめんなさい。こっちでの四人目以降は募集していないんですよ」

女「がーん」

女友「だから勘違いから始まる恋愛ストーリーとか、変化球はよせって言ったのに」

女「まさか魔王編が続くと思わなかったんだもん」

店長「当初の予定では、店を中心に色んな世界に派遣される男君の珍道中で
   したからねえ」

OL「魔王さん、単発のゲスト予定だったんですよ」

女「ちくしょー」
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/03/12(月) 22:14:50.70 ID:x2Zfekhko


店長「それでは次の方、どうぞ」

女友「えーと、女の付き添いで応募しました。でも何のオーディション?」

OL「番外編か、次のシリーズの配役応募ですね」

女友「マジすか。ヒロインとかアリなの?」

店長「主人公がドラゴンだけどアリですよーん」

女友「そっかー、美少年がドラゴンに変身するのか」

OL「いいえ。全長2メートルくらいまでは縮むけど本来は10メートル級の
  立派なドラゴンさんが主人公となる話ですよ」

女友「冗談きついなあ」

店長「ドラゴンさん爬虫類系だから、ち◎こ2本ついてるんですよ。だから
   正副ヒロインを用意するか、両方OKてな感じのフリーダムな女性を
   真ヒロインとして――あれ、いない?」

OL「さきほど逃げ帰りましたよ」

店長「えーと本日他に面接予定の方は」

 面接会場の待合室を覗くが、数名いた筈の応募者の姿が消えている。

OL「新シリーズの主役予定のドラゴンさんの1/1スケール二股御立派様の
  模型を展示したところ軒並み辞退されました」

店長「新シリーズの企画書を見る限り、濡れ場なんて想定されてないって
   説明なかったっけ?」

OL「さあ」

 それより今日はもう面接業務も終了しましたから、さっさと片付けて
食事に行きましょうよとOLは店長の背中を押す。


 店長とOLさんは、いつも大体こんな風に仕事をしているという。
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/12(月) 22:15:45.07 ID:x2Zfekhko
身も蓋もない短い話ですが、本日ここまで。
店長さんたちはメタ空間の住人であります。
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/03/12(月) 23:24:24.25 ID:xvV/oteyo
これ明らかに客を追っ払ってるよね さぼってる?
あとドラゴンさんまじご立派
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 23:38:33.08 ID:Mqf02sWEo
メタメタですなwwww
おつんぽ!
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/13(火) 01:04:32.92 ID:0vshI/c20
乙ですー
次回作のヒロインはこうやって生まれていくのか・・・・・・
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/13(火) 09:08:19.88 ID:vPsRN+VWo
兄弟の始まりの話見たかったな
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 09:12:30.59 ID:UCJjP7bIO
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/13(火) 09:22:06.74 ID:rybGn2um0


女友と側近(前シリーズ版)は好みだった・・・もったいない
944 :1です。 [sage]:2012/03/13(火) 23:03:32.12 ID:xos6d2yuo
>>941 >>943
次スレに続くようなことがあれば「妹×ドラゴン」を含めた雑多な小話を投下するかもしれません。
次回投下は木曜以降かも。
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 23:25:32.27 ID:C/ZGb8oDO
それは期待
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/03/15(木) 21:25:10.61 ID:2oU/YFS50
あと一スレでいいからもっと魔王たちと男のいちゃラブが見てみたい


…いや、今までもほとんどなかったけどさ
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/15(木) 21:35:30.95 ID:uHVCRDG/o
かなり禿同
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/03/15(木) 21:38:54.17 ID:Ghn/vgAho
魔王様御懐妊まだですk
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/03/16(金) 00:26:56.90 ID:sRa2oeO8o

+魔王デレ+

 魔王さんの朝は、だいたい夜明け前に始まる。

 吉野家の牛鮭定食と寝言で涙まじりに呻く夫の耳元で「今日はビーフ
ストロガノフに挑戦する予定だ」と囁けば、いやだーカタストロフは
いやだーと夫が寝言で返してくる。

魔王「よし、夫はカタストロフを所望だ」

 とてもイイ笑顔で魔王は頷くと、夫が前夜までに一生懸命に翻訳した
料理のレシピを金庫に封印し、今まで以上に独創的かつ大胆な解釈で
朝食を作ることを侍女たちに表明する。

魔王「斬新で独創的な愛妻料理で、夫の舌と胃より停滞と陳腐の文字を
   消し去ろうと思う」

側近「せめて味見しましょうよ」

 侍女たちに泣きつかれてやってきた側近が諫言するが、魔王は頬を
膨らませ意固地になっている。

魔王「余は悔しいのだ。新妻の手料理よりジャンクフードを有難がる
   夫に、心のこもった美味のなんたるかを教育したいのだ」

王妹「姉上」

 侍女にサンドイッチなる軽食を作らせていた王妹が、紅茶のカップを手に
現れる。

王妹「即興曲の上手な楽師はな、基礎をしっかり踏まえていんじゃぞ」

魔王「どこぞの世界ではオランウータンが適当に描いた絵に馬鹿みたいな
   値がついてるそうではないか」

王妹「姉上ェ」

魔王「あう」

 さすがに自滅発言を悟ったのか、魔王は言葉に詰まり頭を抱える。

魔王「だってなあ。余の作るモノで夫が喜んでくれるのって、雑穀の
   粥とか暖炉に吊るした鍋に野草とか野兎とかぶち込んで三日くらい
   煮込んだ汁物とかだし」

 魔界にいた頃に時折作っていた素朴な郷土料理を披露した際、夫は心より
称賛の言葉を述べ、何度もお代わりをしてくれた。
 味がある。
 化学変化が起こっていない。
 栄養のバランスが整っている。
 驚異の新生命が誕生していない。
 胃に優しく消化に良い。
 毒劇物だと身体が認識しない。

魔王「釈然としなかったのだ」

 しなかったのだー。
 しなかったのだー。
 しなかったのだー。

 あさっての方向に向けて叫ぶ魔王の背後で、実はすでに目が覚めていた
大魔王は王妹よりサンドイッチを受け取っていた。
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/16(金) 00:30:12.41 ID:sRa2oeO8o
年度末のせいかなかなか投下の余裕ありませんが魔王様達のイチャラブ編の始まりです。
イチャラブって、なんなんでしょうね。
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/16(金) 00:30:56.46 ID:sRa2oeO8o
本日の投下ここまでです。
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/16(金) 00:32:33.39 ID:FmfEsQxSO
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/16(金) 00:33:46.31 ID:uTYy1McAO
王妹はさっさと手作りあきらめて美味しい朝ご飯を夫に食べさせる道を選んだようですな
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/16(金) 01:08:29.20 ID:nPfp4XnDO
乙!
驚異の新生命が誕生する料理を一生に一度は食べてみたい。
まあ食べた瞬間に俺の一生も終わりそうだが……
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/16(金) 07:43:44.25 ID:qYDYxhGIO
魔王様イイヨイイヨー
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/16(金) 10:29:07.99 ID:pZq2OV5IO
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/03/16(金) 23:39:29.83 ID:7+43DBCAO
カタストロフワロタ
958 :今日の投下はこれのみ。 [sage saga]:2012/03/16(金) 23:52:58.99 ID:105enDQUo

+魔王デレ2+

 魔王さんの仕事量は、この一年で少しばかり減っていた。
 闇の世界に小さな光の珠を生み出す仕事は無くなり、代わりに他国との
折衝や難民受け入れの仕事が激増した。

 先手、魔王。

魔王「新しい魔王国では議会制度を重視すべきであり、存在意義を喪失した
王族は国家の象徴程度に留めて政治経済への関与を避けるのが望ましいと考える」
 
 後手、半魚人大臣。

大臣「行政畑は慢性的な人材不足です。陛下より事務能力と外交判断力に長け、
法知識と各種礼儀作法に精通した新人が入庁してくだされば考慮させていただ
きます」

元帥「では男殿を招聘するか」

大臣「妙案でありますな。お喜びください陛下、男殿の拘束時間を従来の三倍
   にすることにより陛下を政務より解放することができると試算されました」

元帥「睡眠時間として自由時間が3時間もあれば十分であるな」

大臣「然り」

 ぐぬぬぬぬ。
 ぬぬぬうう。
 本末転倒なやりとりも、魔王国執務室の日常風景のひとつである。各方面の
専門家育成は現在も行われているが実務に耐える技能者の登場にはいましばら
くの時が要ると魔王も分かってはいる。

魔王「余は新婚なのだが」

大臣「陛下の名代として動ける方が共に同じ相手に嫁ぐとは予想外でした」

元帥「国内情勢が落ち着くまで式の延期はやむを得ないとはいえ、夫婦となって
   既に半年以上が経過しているのである」

 夫婦仲睦まじいのは結構であるが、相応の落ち着きを見せても悪くはないの
であると獅子頭元帥が茶をすすりながら進言する。
 魔王もまた暴君の類ではない。筋の通った言葉に冷静さを取り戻し、何かを
諦めたような顔で語った。

魔王「余はなあ、夫とでぇとというものをしてみたかったのだ」

大臣「逢引き、でございますか?

 ぎょっとして半魚人大臣が魔王を見る。

元帥「デートというと一緒に遊びに行ったり飯食いに行ったりするアレで
   あるか」

 獅子頭元帥も額に汗を浮かべながら魔王を見る。
 迂闊であった。
 確かに、魔王は仕事ばかりやっていてプライベートの時間など結婚前も
皆無だった。大魔王は大魔王で仕事人間の典型で、そもそも魔王との出会い
からして仕事派遣先ではなかったか。

魔王「結婚してからも一緒に寝て食事はするが、起きている時は仕事か
   初夜の意趣返しばかりだったと先日気付いたのだ」

 視線を逸らし窓の外を見つめている魔王の姿に、獅子頭元帥と半魚人大臣は
魔王のこの日の政務を強制的に終了させ、大魔王と共に巷で評判の活動写真館に
放り込むことにした。

 その日の上映が実写版デビルマン・無修正版ガンドレス・劇場版Xという
フィルムを手配したOLさん以外の誰も喜ばないようなラインナップだったことに
大臣たちが気付くのは、翌日に活動写真館が消滅したと報告を受けた後である。
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/17(土) 00:32:33.01 ID:suEw358Eo
活動写真館が消えるのも仕方ないわな
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/03/17(土) 01:16:52.22 ID:OK3WHl9zo
このラインナップに実写ドラゴンボールなんか追加した日には街ごと消滅しそうだな
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/03/17(土) 01:42:18.42 ID:u5+abmjdo
そのラインナップだったら鼻血出すわ
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/17(土) 17:10:15.38 ID:WFJaLP0DO
幕末闇婦始末記はないのかww
963 :>1です。明日は午前4時出勤です、>1です…… [sage]:2012/03/17(土) 18:49:08.63 ID:NUgX64Jco
>>959-962
没としたその他の上映作品に「北京原人 Who are you?」「宇宙皇子地上編」「実写版ときめきメモリアル」
「平成版戦国自衛隊」などを候補として考えていたのですが、OLさんが駄目映画マニアになってしまいそうで
上記三作品に限定させていただきました。
ハリウッド版DBなんてなかったんですよ。ええ。マグロ喰ってるから駄目なんですよ奴らは(遠い目)
時代劇で中の人が出ているサイレントメビウスなんて御存じの方は確実に三十代以上でしょうな。
本田知恵子の巫女さんテレカが出廻ったのがあの作品の唯一の存在意義だったのではないかと思っています<幕末〜

原作ファンを一瞬で発狂死させるならドラマ版「八神君の家庭の事情」なんですが、TVドラマはOLさんの
受け持ちではないようです。個人的にドラマ版「ソムリエ」「おせん」「将太の寿司」の三作品は原作ファンの目の届く
場所においてはいけない劇物だと思っています。

今日明日明後日とひどいスケジュールが決定してしまいましたので次の更新は不明となりました。
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/17(土) 19:15:17.20 ID:Z1g5yhGoo
ハリウッド版ブリーチが完成した暁にはそのラインナップに即仲間入りを果たしそうですね
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/17(土) 20:39:28.65 ID:sl2+itNto
> 店長の話では、男の境遇を不憫に思った銀河聖女と伝説宇宙妹とやらが、男を家族として
>引き取ろうと画策したらしい。

>側近「で、兄に乗りこまれたと」

>魔王「銀河聖女も伝説宇宙妹も相応の力を有していたためか正面から兄を打ち破ろうとして
>    あっさり返り討ちにあった」

> その時の映像を無修正で見たが、あれは刺激が強すぎた。

>魔王「よもや排泄のための器官がああまで拡張してしまうとは」


「その時の映像」が欲しいんですが
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/03/17(土) 22:22:59.39 ID:8doVIizAO
>>963
はい
やはり、一撃で吹っ飛ばされて一発で炎上させられるような奴は駄目ですよねー
967 :>1です。生きてるって素晴らしい。 [sage]:2012/03/19(月) 23:23:03.71 ID:kI6nv2d+o
何事もなければ20日の夜に投下を考えています。
兄がかつてやった所業の描写をどうしようかと考えグーグルで「尿道」「拡張」という単語を打ちこんだ時点で
我に帰りました(何)
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/19(月) 23:25:44.48 ID:aZXI+6k/o
そういや女の尿道に小指いれてる動画があったな

とりあえず待ってます!
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/19(月) 23:27:37.66 ID:rtFzNQfAO
画像検索したらグロかったです…
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 00:25:41.72 ID:7aOaYaego
待ってるが尿道拡張はいらんwwww
971 :本日これのみです [saga]:2012/03/20(火) 23:53:59.16 ID:kH9+q75oo


+魔王デレ3+

 ある時、王妹がこんなことを口にした。

王妹「マンネリって、なんか卑猥よな」

 食事中に出す内容ではないなーなどと側近は無表情で考えた。魔王は至極
真面目な顔で、

魔王「マンはともかくネリとは何だろうな」

 と呟き、横で納豆を小鉢で混ぜていた大魔王は思わず力んでしまい大粒
大豆の納豆をピーナッツバター状に擂り潰してしまった。

王妹「それはもう、手打ちうどんを作った時のような手つきでマンを
   練り上げるからマンネリではなかろうかと」

側近「うどん」

 それは数日前に大魔王が「お願いだから今日の夕食は自分に作らせて
下さい、材料とか全部用意してあるんです勘弁して下さい」と土下座してまで
自作した大魔王の祖国の郷土料理である。
 小麦粉を塩水で練って伸ばして切って茹でるだけ。
 技法としては単純極まりなく、王宮料理人や侍女たちも直ぐに調理法を
修得した。

 宇宙ガラナの実と淫乱粉を魔王達に渡そうとしたOLさんは一昼夜ほど逆さで
吊るされていたが、反省する様子は微塵もなかった。
 ちなみに没収された筈の宇宙ガラナの実は翌日に勇者の食卓に上っており
実に満ち足りた笑みで先代勇者が半分ほどに目方の減った宇宙ガラの実を
店長に返却している姿が目撃されている。

王妹「夫が小麦粉の塊を揉み練った時のあの指使いが、我らの雌である部分を
   やめてと懇願してなお止まることなく蹂躙する」

側近「つ、つまりマンネリとは」

王妹「そう! 性欲をもてあました夫が貞淑で清楚な妻たちにエロエロで
   ぬとぬとでひぎぃとなって屈服させられれしまうのだよ!」

側近「な、なん……ですって」

魔王「あーすまんが侍従長、本日の余達と夫が担当する予定の政務は大臣に
   任せることにした」

 程良くスイッチの入った新妻三名に引きずられていく大魔王の姿は
数日前の勇者の姿によく似ておりました。侍従長は後にそう述べている。
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 00:10:39.31 ID:LdPZw/92o
きっと『嫁を練った』ではなく『嫁に練られた』もしくは『練らされた』なんでしょうね・・・
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2012/03/21(水) 00:28:08.62 ID:S04npTNx0
先代勇者まで何やってんのwwwww
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/03/21(水) 01:50:30.24 ID:U3mWTcEko
ここで空気を読まずにこの作者が書いたスレのURLを要求してみる
前から気になってたものっそい気になる
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 07:00:34.13 ID:ydh2Fx1IO
>>974
>>485
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/21(水) 07:13:32.39 ID:lYT05h9Ao
>>974
元々はロボ板の住人ですんで、スレ立てるのは今回が初めてですはい。
さすがに個人のHPは晒せないで御勘弁を。
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 07:34:49.71 ID:FsSJNlmIO
>>976
>>1様乙!
ロボットものもそのうち書かれるのかな?wwktk
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/21(水) 07:38:19.81 ID:lYT05h9Ao
>>977
ロボ板とかに投下してたのはタコ頭の基地司令がコンビニで買い物したり
そういう話ばかりでしたから。ロボ戦闘とかは少しだけかいたっきりですね。
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 11:38:54.41 ID:FsSJNlmIO
今後の話だよ!
書きたいなら読みたい
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/03/21(水) 16:30:37.38 ID:2fTdaqCQo
>>978
ああ、あの本編と全く違う司令がいるスレか
どうりでネタがほとんど理解できたわけだww 
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 17:55:36.51 ID:jx+zoQtMo
>>980
ああ、だがここの1さんがドコの人かは深く追及しないのが紳士だな

うどんネタ吹いた
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 00:25:21.40 ID:xyWBovTDO
うどんネタってスパロボの同人誌だっけ?
983 :sage :2012/03/22(木) 21:13:03.01 ID:Lg9Qw8IV0
>実に満ち足りた笑みの先代勇者
なにやってんのこの人wwwwww
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/23(金) 22:05:39.43 ID:yCH0fQB/o
1です。
とりあえず残りの番外編ネタは「魔王の子供たち」くらいでしょうか。

>>ロボな話を書く予定はあるか

月面に幽閉されていたマッドサイエンティストな「かぐや姫」が五つのメカを持ちだして地球に遁走。
宇宙の海を駆け巡る女海賊「乙姫」の追撃を逃れ、地上に降り立ったかぐや姫は、一人の少年の
家に転がり込む――その目的は、天地を貫く巨大な軌道エレベーター「竹取翁」の破壊――


てな感じの話を昔考えてていました。火鼠の皮衣→炎をまとった巨大ロボ、とかそういう解釈で。

今週末ちょっと忙しいので次の投下は未定です。決まり次第報告します。
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 23:29:55.49 ID:/cBlcP3+o
>>984
最初の部分読んでYAIBA?って思ってしまった
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 07:15:17.09 ID:6JJtEyS1o
>>984
いいね、いいね!
987 :1です。 [sage]:2012/03/27(火) 00:23:14.94 ID:YW1LrJNEo
生存報告。
地獄のような月曜日をなんとか乗り越えました。のんびり書きためていこうと思います。
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 12:49:51.12 ID:rmbOShpIO
地獄の先は天国さ
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/29(木) 00:03:36.12 ID:ZdFqENJ4o
サイレントメビウスとか懐かしすぎ泣いた
まだ20代だが
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/03/29(木) 01:21:11.45 ID:adLlCEE1o
月曜日の手を逃れた>>1を待っていたのは、また地獄だった。 に一票

991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 06:39:16.71 ID:nbQeHGiIO
>>1さん、次スレ立てと誘導しろ下さい
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/03/29(木) 17:43:42.55 ID:LddCYFvD0
お願いだから次スレしてくださいお願いします心からのお願いです
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/30(金) 07:08:16.49 ID:Dpm44IBko

次スレです。

いもうと×どらごん
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1333058732/

埋まりそうだったので、建てました。
四月以降のスケジュール……社長、話が違……
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/30(金) 07:36:53.41 ID:Dpm44IBko
いもうと×どらごん 第0話を投下してきました。
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 17:58:32.81 ID:8Xg9XZCWo
ふむ
996 :カイト [sage saga]:2012/03/30(金) 19:39:46.31 ID:vT5pPy/V0
うめ
997 :カイト [sage saga]:2012/03/30(金) 19:40:48.64 ID:vT5pPy/V0
うめ
998 :カイト [sage saga]:2012/03/30(金) 19:44:40.58 ID:vT5pPy/V0
うめ
999 :カイト [sage saga]:2012/03/30(金) 19:45:15.99 ID:vT5pPy/V0
うめ
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 19:45:20.66 ID:gQQ0x2OIO
1000ならあと10スレ続く
1001 :1001 :Over 1000 Thread
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | もうたらい回しは勘弁だぜ
 |_____ _____________
         ∨
    ⊂⊃
   .∧_∧          ,  ⌒ヽ
  .( ´Д`)_        (       ヽ⌒ヽ
  ( ̄ヽ   ヽ_ヽ   /⌒.\ ⌒ヽ    ⌒ヽ
  |. T |      ̄ ̄´ /\ \  /⌒)   ⌒ヽ
⌒ ヽ_ノ、    ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  /⌒ヽ   ⌒ヽ
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(   ⌒ヽ  ⌒    ,  ⌒ヽ   ⌒ヽ  ,    )              SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
 ヽ   (              ,          )                 http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
   (   丶   (        )     ノ  丿

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
魔王「人間たちと仲良くしたい!」側近「おやめくださいませ!」 @ 2012/03/30(金) 19:41:25.12 ID:Oja8b7xoo
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宮藤「サーニャちゃんが猫になった!?」 @ 2012/03/30(金) 18:20:39.76 ID:wqisvizDO
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だにいいいいいいいいいいいいいいい @ 2012/03/30(金) 17:55:11.97 ID:ynUwpUP60
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光の戦士プリーシアディキアンだけど質問ある? @ 2012/03/30(金) 17:35:15.89 ID:KZFjRjZSO
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クイズ!ゲリ便! @ 2012/03/30(金) 17:31:19.22
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暇だからみんなで安価画像うp◆74(sage進行) @ 2012/03/30(金) 16:48:25.03 ID:l3kv1GUIO
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赤沢「安価で恒一くんをゲットするための対策を行う」 @ 2012/03/30(金) 15:54:32.88 ID:hwbFKs8zo
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あいうえろ @ 2012/03/30(金) 15:49:16.40 ID:f5xFh7CUo
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