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式「誰だ、オマエ」  太子「聖徳太子です」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) :2012/01/11(水) 11:23:42.09 ID:AYpgYrao0
空の境界の両儀式と超絶美男子の聖徳太子が型月世界を巡るssです

いろいろと原作崩壊することもあると思いますが生暖かく見守ってください

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1326248621(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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寝こさん若返る @ 2024/05/11(土) 00:00:20.70 ID:FqiNtMfxo
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第五十九回.知ったことのない回26日17時 @ 2024/05/10(金) 09:18:01.97 ID:r6QKpuBn0
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ポケモンSS 安価とコンマで目指せポケモンマスター part13 @ 2024/05/09(木) 23:08:00.49 ID:0uP1dlMh0
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今際の際際で踊りましょう @ 2024/05/09(木) 22:47:24.61 ID:wmUrmXhL0
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誰かの体温と同じになりたかったんです @ 2024/05/09(木) 21:39:23.50 ID:3e68qZdU0
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A Day in the Life of Mika 1 @ 2024/05/09(木) 00:00:13.38 ID:/ef1g8CWO
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真神煉獄刹 @ 2024/05/08(水) 10:15:05.75 ID:3H4k6c/jo
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愛が一層メロウ @ 2024/05/08(水) 03:54:20.22 ID:g+5icL7To
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) :2012/01/11(水) 12:03:14.30 ID:AYpgYrao0
橙子「で、誰なのこの人は?」

式「知るか。勝手についてきたんだよ」

太子「・・・」

事務所に入るなり目の前には青いジャージを着た冴えないおじさんが座っている。
いや、正確には床の上に正座させられいる。

橙子「しょうがないわね。見られたから困るものは無いけど、一応消しておきましょうか」

太子「ひぃぇぇぇぇぇけけけ消すってあれアレだよね絶対。嫌だー、痛いのはイヤー」

式「コイツはどうするんだ?」

橙子「式の後をつけてきたなら元の場所においてくればいいんじゃない?というわけでよろしくね」

式「何でオレが「たたた助けて妹子死にたく無ほぐぁっ!?」

橙子「あなたに懐いているようだし私には仕事があるし、ね?」

ジャージを着たおじさんは式にすがろうとして蹴り飛ばされた。まるで交通事故にあったみたいなとび方をしている。
しかし所長・・・橙子さんのいう”消す”とは記憶を消して町に放り出すことなのだが、この人絶対に楽しんでる。
多分、このまま放っておいたらあのおじさんは死んでしまう。その前に助けてあげないと。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) :2012/01/11(水) 13:30:52.97 ID:AYpgYrao0
幹也「所長、この人、何なんですか?」

橙子「あら幹也君、その言葉はお客様に対して失礼じゃない?」

幹也「お客様でしたか。失礼しました。なんとなくなんですけど、この人が居ることに違和感を感じたので」

橙子さんの顔から笑みが消えた。

橙子「違和感、ね。相変わらず鋭いわね、幹也君は」

壁の下でうずくまってすすり泣いているおじさんを一瞥して橙子さんは眼鏡をはずした。

橙子「アレはこちらの世界の住人ではない。並行世界の住人だ」

式「へぇ、なら「[ピーーー]のはダメだ。何が起こるか分からないからな。あとアレを連れてきてくれ。いくつか聞きたいことがある」

おじさんがお客様でなくて良かった。そもそも依頼主を蹴って壁にたたきつけるサービスは扱っていない。
我関せずと壁に寄りかかったまま動こうとしない式。僕が運ぶしかないか。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/01/11(水) 17:03:30.53 ID:AYpgYrao0
橙子「さて、どうやってココに来たのか話してもらおうか」

おじさんは駄々をこねて動こうとしなかったが、式に睨まれて床に正座している。なんだか式の機嫌が非常に悪い。
おじさんは地面を見ていて小刻みに震えている。あのおじさんは悪い人には見えない。
が、ココには人避けの結界が張ってある。魔術師でも無い限りここに来れる人はいないだろう。

太子「気かついたら人がたくさん居る知らない所に居まして、その中で妹子を見つけたんです!
妹子を追いかけてたらここにいました!」

橙子「気がついたら、か。なるほど。ここに飛ばされる前の事を聞きたいんだが。話してくれるか」

太子「は、はい!しゃべります!あること無いこと言いますからどうか命だけは!」

橙子「あったことをそのまま話すだけでいい」

太子「はい!わかりました!あれは・・・


山の中

妹子「ちょっと、何でこんな山奥まで行くんですか。日も落ちてきましたし、そろそろ帰りましょう」

太子「イヤだ!ぐったりマーフィーくんを見つけるまで帰らないぞ」

妹子「山で一日中探してたものがそれ?もう知るか馬鹿!疲れたんで先に帰りますよ」

太子「馬鹿?馬鹿ていったな妹子の分際で。もう許さん!聖徳太神拳奥義、太子有情百裂烏帽子!」

妹子「キモッ、ってどこ行ってんです?そっちは崖ですよ!
何やってんですかぁ!」ああああぁぁぁぁぁぁぁ.....    メコッ


というわけです」

・・・何だろう。真面目に生きていることが馬鹿らしくなるようなこの感覚は。

橙子「いまいち要領を得ない説明だが、凡そ理解はできた。よし、二人ともしばらく外に出てくれ。荒治療をしてみる」

そう言われて僕と式は4階に行った。
階段を上がる途中で何か聞こえた気がしたが、今の事務所に入る勇気は無い。
式は町の景色を見ている。その姿はいつも通りで何も変わったことはない。変わったこともなく変わるはずの無い日常。
でも、何故かわからないけどしばらく式と会えなくなる気がした。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/11(水) 20:26:54.67 ID:AYpgYrao0
書き溜めが無いので今日はここまでです

完結させるつもりでやりますので気長に待ってください

では
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/11(水) 21:38:24.44 ID:54rR0eAuo
幹式なら見る
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/11(水) 22:11:33.23 ID:n9tWoL+bo
どんな発想だよ
期待
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/01/11(水) 22:44:46.17 ID:2WMfaQmAO
ゼルリッチの爺さんの仕業か
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/12(木) 00:05:27.78 ID:LepUH2tAo
式と幹也はくっついてるんだろうな?
太子とくっつけたら承知しねえぞ
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/01/12(木) 08:50:56.11 ID:peFbbbaAO
>>9
太子×式とか誰得だよwwwwww
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 09:27:34.36 ID:tN0M4w4no
ほんとだよwwwwww幹式しかねえよwwwwww



……大丈夫だよな?
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/12(木) 11:32:14.13 ID:rRxX2M8l0
幹也「ところで式、あの人と知り合い?」

式「そう見えるか?」

幹也「いや、全然。式に近づくなんて物好きな人もいるんだなって思って」

物好き、ね。その物好きが目の前に居るわけだが。

式「面と向かって言うことじゃないだろ、それ。・・・傷、大丈夫なのか。治ったばかりなんだろ」

幹也「ああ、不便じゃ無いといえば嘘になるけど問題ないよ。それより式は大丈夫?
   すぐに退院したらしいけど、痛みとかは無い?」

式「・・・」

自分よりも他人を優先するのは幹也の悪い癖だ。
余計なことに首を突っ込んだ挙句、死にかけたのに反省している気配が無い。
そもそもなぜあの事件に関わったのか。自分で決着をつけるために誰とも関わらないようにしていたのに。
あれは私の問題だ。私と幹也では住んでいる世界が違うのに、なぜ危険を冒してまで近づいてきたのか。

幹也「傷、大丈夫?」

結果三週間入院する怪我を負った挙句、右目を失い走ることも満足に走ることもできなくなった。

幹也「・・・式?聞いてる?」

コイツは後先考えない大バカだ。死にかけてまで私を助けようとするなんて、本当に

式「・・・ありがとう」

幹也「ん?何か言った?」

式「別に」

つい顔をそらしてしまう。やっぱり面と向かって言うのは恥ずかしい。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/12(木) 13:47:05.98 ID:rRxX2M8l0
とりとめのない会話の中、幹也は突然

幹也「式、ちょっといいかな」

何の前触れもなく

幹也「こんなことを突然言うのもなんだけど」

幹也「結婚してほしい」

式「・・・何馬鹿なこと言ってんだ。お前」

なんて事を言い出すのか。

幹也「馬鹿なことって、ひどいな」

式「オレと居ればお前は必ず死ぬ。この前の事で分かっただろ。・・・オマエはオレと一緒に居たらいけないんだ」

幹也「いや、一緒に居れないことは無いと思うよ。現に今一緒に居るじゃないか」

式「馬鹿、そういうことじゃない」

幹也「一緒に居るってそう変わった事でもないだろ。結婚して一緒に居るってことは今みたいなことじゃないのかな」

解っていない。両儀式と居るということは死と共に居るということ。幹也の気持ちはうれしい。私も幹也を好いている。
だけど幹也と共に居る事はできない。幹也を失うことは私にとって生きる意味を失うに等しいから。
陽だまりの中に引き入れてくれる相手が居なければ、日陰に戻るしかない。
一度あの暖かさを知った私は、もう二度とあの冷たさに耐えられない。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/12(木) 13:53:54.26 ID:rRxX2M8l0
今日はここまでです

別の世界に行くまで太子は空気

では
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/12(木) 19:20:30.64 ID:R+uNb+1S0
これは斬新やで、スレタイだけでワクワクした
面白いです、乙
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/12(木) 19:34:57.82 ID:rRxX2M8l0
バイト休みになった+明日から合宿で間が空くから12時くらいまで投稿します
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/12(木) 20:36:40.87 ID:rRxX2M8l0
式「コクトー、オマエ未来に希望とか無いのか。楽しい明日とか欲しくないのか?」

幹也「うん?今のところは無いかな。式と一緒に居られる。それだけで十分だよ」

欲しかったのはその手。識の守りたかった夢。式が欲しかった幻想。
私といることでそれが無くなることに、私は耐えられない。

式「そうか、じゃあ今死んでもいいんだな」

引き倒して喉にナイフを突きつける。面食らった様子もなく、幹也は抵抗せずただ私を見上げている。
両儀式と居れば必ず死ぬ。遅かれ早かれそうなってしまう。

式「今が満ち足りてるなら思い残すことは無いよな」


幹也は何も言わない。ただこちらを見てるだけ。
時間が止まったように動かない。3年前のあの夜を思い出す。冷たい雨にうたれ、追いかけあったあの日。
ああ、確かにあの夜と同じだ。心は凍え、震えている。壊したいシキと、壊したくないシキ。
今の私と重なって見えてひどく滑稽。あの時と同じなら、結果も同じ。ごめん、識。あなたの守りたかった夢もここまで。
どっちも選べないなら、私が消えるしか―――
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/12(木) 22:10:45.04 ID:rRxX2M8l0
「―――――――」

目の前のモノが何かしゃべっている。ゆっくりと、手を伸ばしてくる。何がおきているのか理解できない。
ふと、右手に温もりを感じた。その手は大きく、優しく慈しむように包んでくれている。

幹也「・・・やっぱり君は傷だらけだ。傷いて傷いて、それでも自分を許せない。ならせめて、側に居させて欲しい」

聞こえたのは幹也の声。

式「私はもう一人殺している」

一生で殺していいのは一人だけ。なら私は私を殺せない。罪を背負えない。

幹也「知ってる。言っただろ。君を一生、許さないって」

ああ、確かに言ってくれた。・・・嬉しかった。でも、私には殺人衝動がある。いつか誰かを殺してしまう。
今まで大丈夫だったのは偶然ではなく、両儀式はそれは哀しいことだと知っているから、と言ってくれた。
でもダメだった。私は、結局幹也の言いつけを守ることができなかった。人を殺してしまった。

幹也の首から血が滴る。それでも、アイツはまっすぐ私を見ている。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/12(木) 22:52:24.05 ID:rRxX2M8l0
幹也「3年前と同じ、だね。なら大丈夫。」

違う。あの時とは違う。アイツは、幹也ははっきりと私の目を見ている。恐怖や畏怖の感情は、無い。あるのは

幹也「僕が君の代わりに背負っていく」

幹也「僕たちは同じ場所に居られるよ」

氷が解けて、視界が曇っていく。手に持つナイフもよく見えない。

式「オレといると死ぬかもしれない」

幹也「わかってる」

式「私を、許さないでくれる」

幹也「ああ」

式「おまえは、莫迦だ・・・」

幹也「うん、よく言われる」



どれくらいの時間が流れたのか、空は今にも泣き出しそうになっている。
冷たい雨に打たれ、互いの息だけが熱かったあの夜。寒さに凍えていたあの時とは違う。
私たちは互いの温もりを感じながら

太子「ひ、人殺しの現場に出会ったー!し、聖徳太子として人殺しは見過ごせない。
それに助ければ明日の新聞の一面に載るかも。見出しは"超絶美男子聖徳太子、悪党妹子を倒す!"
民衆は拍手喝采でファンクラブまでできちゃうかも。いやーもてすぎるって怖いなぁ。
よし、そうと決まれば。ウオォー!食らえ!飛鳥文化アタッぶはっ」ガンガガガン ベチャ

・・・いきなり現れたジャージ男はワケのわからない言葉を叫び、再び視界から姿を消した。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/12(木) 23:41:35.96 ID:rRxX2M8l0
今日はここまでです

地獄から帰ってきたら再開します

では
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/13(金) 01:42:57.81 ID:siHYuctGo
それにしても太子はなんなんだwwwwww
退院して幹也は式に世話してもらってるからそんときに告白してないんだーと思ったらイキナリくっついた
幹也は異世界にいけないフラグでしかなさそうだが
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/15(日) 18:11:08.51 ID:XuXAOnwx0
式「・・・なあトウコ、あいつ殺していいか」

橙子「さっきも言ったでしょう。ダメ。あとアレの死を視るのもやめなさい」

あのおじさんは階段から現れるなり何かを叫び、勝手に足を滑らせて階段を転げていった。
結局、式へのプロポーズはうやむやのうちに終わってしまった。一世一代の勇気を出したのになぁ。
気絶したおじさんはソファーから床に寝かされることになった。
床に引き摺り下ろした式曰く"ソファーがジャージ臭くなる"だそうだ。

幹也「それで、何かわかったんですか」

橙子「えーっと、まずあの男は聖徳太子らしいわ」

幹也「聖徳太子、ですか?」

聖徳太子といえば日本の天皇だった人物で過去の人間のはずだ。同姓同名だとでも言うのだろうか。

橙子「そう、私たちの世界で言う聖徳太子。どうやら時間軸がずれて召還されたみたいね。
神隠しの延長みたいなものと考えて。あの男、聖徳太子は小野妹子と共に山にある生物を探しに行った。
しかし見つからず、小野妹子が帰ろうとした際に誤って崖から転落。崖の下の神社に落下。
その時に御神体を壊して土地神の怒りをかってしまい神隠しにあった、ということみたい」

幹也「どこのコントですか、それ」

橙子「困ったことにそれが事実なの。アレの記憶を覗かせてもらったけど、他の理由は考えられないわ」

橙子さんがそう言うのならば本当だろう。信じ難い話だけど、ウソを言ってるとは思えない。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/15(日) 19:30:10.60 ID:XuXAOnwx0
式「記憶を覗いたのならオレをつけてきた理由もわかっただろ。いったい聖徳太子様がオレに何の用があるってんだ」

橙子「理由は単純。アレが式をつけた理由は後姿、正確には後ろから見た上半身の色が小野妹子に似ていた。それだけ」

なんだか聖徳太子に関する尊厳というか威厳が崩れてきた。
冠位十二階の制度とか創った偉い人のはずなんだけど、ジャージ着てるし。
そもそもあの時代にジャージがあったのか。そんな気持ちを察したのか、橙子さんは

橙子「アレは私たちの世界にいた聖徳太子じゃないから、安心なさい」

と付け足してくれた。失礼だけど、あんな人が天皇でなくてよかったと思う。

式「で、どうしたらコレを元の世界に送り返せるんだ」

橙子「いつになく殊勝じゃない、どうしたの?」

式「・・・コレを殺さないでいられる自信が無い」

まあ、わからなくも無いかな。恥ずかしかったし。でも多分会話の内容は聞かれて無いと思う。ヒトゴロシーとか言ってたから。
でもこんなことで式に殺しをさせるわけにはいかない。あと二人とも人をモノ呼ばわりはどうかと思う。

橙子「アレを殺しても何も出ない、って、あれ?無い?まだあるとおもったのに」

机の上をあさっている。どうやらタバコが切れたらしい。コーヒーとフィルターも切れかけていたし買出しにいくとしよう。

橙子「あら、幹也君悪いわね。ついでに領収書もお願い。」

幹也「わかりました。式は?」

式「いいよオレは。もう帰る」

橙子「帰るのなら義手の調整をさせてもらっていい?前から調整しろってうるさかったし」

ム、と顔をしかめる式。さすがにあんなことがあった後に二人になるのは正直恥かしい。
二人が話している間に買出しに行く。


いつか式からちゃんとした答えを聞けることを期待しておこう。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/15(日) 20:40:30.28 ID:XuXAOnwx0
義手の調整を終えた後、唐突にドライブに誘われた。"地脈との相性が強いところ"とやらに向かっているらしい。
トランクには工房から出した大きなバックとジャージの荷物が積んである。

式「で、オレを残した理由は何だよ。コレを元の場所に戻すなんてできないぞ」

橙子「察しが早くて助かるな。なに、難しいことじゃない。お前には案内役をやってもらいたい」

式「案内役?コレを引きずって町を回れって事か?」

橙子「いや、元の世界に戻してきて欲しい。できる限りのバックアップはする」

式「何でオレがそんなことをしなくちゃならないんだ」

無言で差し出される歴史の本。どうやら読めということらしい。勉強は苦手ではないが興味は――――

橙子「わかってもらえたか?それが今世界規模でおきようとしている。
   それに、ここはもう飲み込まれはじめている。時間が無いんだよ」

橙子が急いでいる理由がわかった。本の中身が変わっている。いや、正確には変わりつつある。
過去、聖徳太子が存在した時間から徐々に本の内容が変化してきている。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/15(日) 22:28:31.98 ID:XuXAOnwx0
式「なるほど。で、どうするんだ。人気の無いところで消すのか」

橙子「いや、いまさら消したところで意味が無い。もうコイツはこの世界に在ってしまったのだから」

世界は密閉されたグラスのようなものだという。歴史が水でグラスが世界。余分なモノが入る隙間は無い。
水は絶えずに増加しているが、その増加にあわせてグラスも大きくなっている。ではその中に異物が入ればどうか?
密閉されているため異物は外に出ることはできない。増えた体積の分だけグラスが増加することもない。
余分な圧力に耐えられなくなったグラスはいずれ限界を迎える。
それだけでなく、水は異物により汚れてしまう。異物と混ざり合った水は、以前とは全く別のものに変化する。
結果、例えグラスが割れなくとも中身は変わって全く別の存在になる。

式「なら、もう手遅れじゃないか。異物は入ってしまった。例え元の容器に移したところで変わった水は戻らないだろ」

橙子「概ね正しい、が少し違うな。元々世界は相容れないものだ。乱暴な言い方だが、磁石の逆の性質と考えてくれればいい。
   違う世界は反発し合い、同じ世界は引き寄せあう。
   異物を元のところに戻すことで混ざり合った異物は全て元の世界に戻ろうとする。
   異物がなくなればこの世界に及ぼされた影響も修正される、というわけだ」

要するにコレを元の世界に戻せばいいってことか。嫌な予感しかしない。この状況で案内役といったら

式「こんなやつと一緒に行くなんて、オレはごめんだ。お前が行けばいいだろ。」

橙子「残念ながら私は道を開くので精一杯でね。道案内はお前に任せた。と言うよりお前にしかできない」

車が停まる。町を見渡せる小さな上り坂だ。橙子はなにやら準備を始めている。
幹也と何度か通った道。この道に思い入れは無いはずだが、何故か鮮明に覚えている。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/15(日) 22:31:25.40 ID:XuXAOnwx0
今日はここまでです

気になる点があれば指摘してくれるとたすかります

では
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/17(火) 00:19:01.62 ID:kBP2DyYG0
式「ったく、オレちゃんと帰ってこれるんだろうな」

橙子「ああ、その点は問題ない。お前は肉体の純度が高いからな。
   どの世界もお前を受け入れるが、お前という異物を受け入れる余裕のある世界は無い。安心して帰って来い」

式「オレを使う理由はそんな下らないことか」

橙子「何もお前の肉体だけが理由じゃない。必ず帰ってくるという強力な意思が必要なんだ。
   先ほどプロポーズされたお前ならその条件は満たしていると思うがな」

――――心底楽しそうに笑っている。今すぐコイツをガードレールの外に放り出したい。事故なら幹也も許してくれるだろう。

橙子「あそこは私の城だぞ?会話なんぞ筒抜けに決まってている。おかげで面白いものを見れた」

そういって押し付けられる封筒。中に入っているのは小さな破片。

橙子「御神体の破片だ。そいつを元に探せ。っと、そろそろ開くぞ。準備はいいな」

式「開く?どこに―け――い―――」

周囲に変化は無い。変わっているのは私。視えるのは昔見た世界。昏睡していた間に見続けた何も無いところ。
辺りの気配が死んでいく。生きているものはなく光さえ無い世界。死がカタチとなってある世界。
体の感覚はすでになく、意識だけが在る世界。

ほどなくして、両儀式と聖徳太子は姿を消した。

橙子「・・・頼んだぞ、式」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/17(火) 00:38:53.45 ID:kBP2DyYG0
幹也「あれ、どうしたんですか?」

買出しから帰ってきたら橙子さんが机に突っ伏していた。長い間ここで働いてきたけど、こんな姿は見たこと無い。
眼鏡を外しているのに生気も覇気も無い。出かけている間に何があったのか。

橙子「なに、少し疲れただけ、気にするな。それと明日から一週間は来なくていい。今は仕事ができる状態じゃない」

消え入りそうなこえで言うなりまた倒れる。買出しに時間がかかったことが原因かな。
極度の愛煙家は2時間近くタバコを吸わないだけでこうなる・・・わけないか。

幹也「休みってことは有給ですか?」

返事はない、ただの屍のようだ。預金残高を思い出す。うん、来月はなんとか暮らしていけそうだ。

幹也「お疲れ様でした。先にあがりますよ」

残っていた仕事と後片付けを済ませて一声かける。手だけで挨拶を返してきた。起きているなら大丈夫か。
3月だというのに外は雪が降っている。積もりそうだから、早めに帰ろう。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/17(火) 00:40:20.38 ID:kBP2DyYG0
今日はここまでです

次回から別世界にいきます

では
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 00:49:32.88 ID:Fkps16Jyo
幹也可哀想すぎワロエナイ…
プロポーズ邪魔されて挙句の果てに式は他の男と旅行で、しかもその事実を知らないのか…
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/17(火) 10:07:40.53 ID:kBP2DyYG0
幹也は連れて行きません。といより行けません
彼が一緒に行ったらすぐに鍵を見つけてしまうからです
橙子さんが疲れている理由もあとで明らかになります
渡る世界はメルブラ、ホロウを基にしています

研究で三日ほど缶詰状態になってきます
申し訳ありませんが、ネコを預かってください。えさは多めに用意しています

では
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/01/19(木) 16:42:50.44 ID:eBh5mJOM0

連れてってほしいけど黒桐は探し物に関してはチートだからね
まあ無理か
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 17:27:33.04 ID:YZufJUpQo
囚われの姫さまとかなら出番あるな
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/19(木) 21:31:20.34 ID:6M4Yu1CAO
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/20(金) 17:02:04.50 ID:yZsBHn1k0
見上げた空は赤く、まだ日は沈んでいない。誰かと居た思い出の場所。
紅く染まった教室には二人だけ。部屋は二つ。一人として同じ人間はいない。だけど話していることは同じ。
共に居ることを望み、決別を告げたあの教室。あれは何時で、誰なのか。思い出すことができない。













見たくも無い夢を見せられたせいか、気分は最高に悪い。このまま眠ってしまいたいが、体が言うことをきかない。
どうやら四肢はあるらしい。感覚は虚ろだが、少しすれば動けるだろう。
世界の跳躍とやらは一応成功したのか。が、魔術師ならもっとマトモにやれ。

式「痛っ、何でオレがこんな面倒なことしなきゃならないんだ」

立ち上がるだけでも全身に痛みが走る。悪態をつきたいが、無駄に体を痛めつける気力は無い。
別の世界とやらに来た反動か、体はいたる所にガタツキがある。しかし動く分には支障はない。
辺りを探る。ある程度手入れのされた植物に囲まれ、遠くからは人の気配と車の音がする。
聖徳太子の居た時代に車は無い。つまりアレが居たのとは違う別の世界にいるらしい。
大層なことをやっておいて失敗か。

式「トウコのやつ、あとで覚えてろよ」

どうやらここは公園らしい。日も落ちかけて、辺りに人はいない。ふと、足元にある物体に目を向ける。
地面からジャージが生えている。
正確には手足が地面に埋まった男が白目をむいてえびぞっている。
正直関わりたくないが、唯一の情報源なので起こすしかない。

式「おい、起きろ」

返事は無い。呼吸はしている。・・・何故かわからないが、コレに触りたくない。
辺りを探索したいが、勝手に動かれてはぐれるのは困る。仕方が無い。起きるまで待つか。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/20(金) 17:59:51.17 ID:yZsBHn1k0
太子「ぷっ、妹子が逆立ちして平民の服着てる。ジャージも小さい。やーいーやーい、妹子のびんぼうにーん
   悔しかったら立派なジャージを着てみろー、ってあれー!逆さになってるの私ー!?
   ああ、手足が動かない。妹子ー、助けてー!見てないで助けてー!」ダバダバ

起きるなりこれか。タスケテってことは手を貸せってことだよな。よし、タスケテやるか。


式「お前、本当に聖徳太子なのか」

太子「はい、聖徳太子です。どこからどう見ても聖徳太子です。」

目の前のアレは何を言われるでもなく地面の上に正座している。そうえば事務所でも正座をしていた。
これがあの時代の礼儀作法なのか。今の時代に床や地面に正座する習慣が無くなってよかった。
事務所からだが、コイツは決して目線をあわせようとしない。もしかして怖がってる?
確かに地面から引き抜くときに少し荒っぽいことをしたかもしれないが、助けてといったのはコイツだ。

式「そうか。どこの時代から来たか覚えてる?」

太子「ね、ねえ妹子。いや、妹子様。私が悪うございました。
もう二度と食べかけのおにぎりを食べたり飲み物に細工したりしません。
   袖の長いジャージも用意します。あとマーフィー君の探索も諦めます。だから!だから!」

記憶が混乱しているのか、こっちの言葉が聞こえていないのか。
考えたくないが、もしかして今の状況理解できてない?こっちは気分が最悪だってのに。

式「おい、今の状況を簡単にまとめて話せ」

太子「や、山の中にぐったりマーフィー君がいると思って探し回っていたらいつの間にか隋の都に着いていました・・・
   たくさんの人の中で妹子を見かけたから追っていったらいつの間にかここにいました」

なにやら様々な体液を撒き散らしてわめいている。汚らしくて近寄りたくない。
トウコのヤツ、記憶を覗くならコイツの頭に現状を入れてくれればよかったのに。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/20(金) 19:53:30.62 ID:yZsBHn1k0
太子「え、何それ怖い・・・」

説明にだいぶ時間がかかったが、現状は理解させた。話を聞いてみたがこれと言ったものは無し。
そもそもコイツは自分がどこに来たのかさえわかっていなかった。もう手がかりは無い。
そういえばどうやってもとの世界に帰れるのか。大事なところが説明されていない。
聞かなかった自分の間抜けさにあきれつつも、トウコを恨む。
これからどうするか。目処は無いが、置かれている状況を理解する必要がある。

ここは人のいる所に行くのが一番手っ取り早い。人がいれば情報は集まるし、何よりお腹がすいた。
適当な店に入って情報を集めよう。幸い秋隆からもらったお小遣いはまだ十分残っている。

太子「ちょ、ちょっと、おいてかないで。待ってー」

ふと、自動販売機が目に入る。そもそもここでこのお金は使えるのか。試してみる必要がある。
自動販売機は元の世界と変わったところはない。商品は見たことあるものばかり。これには正直驚いた。
お金は何の問題もなく使えた。ここまで似てるなら当然か。

太子「ああ、もうだめ。眠い。妹子、じゃない両儀さん、どこで寝ればいいの?」

式「知るか。そこら辺で眠ればいいだろ」

ほら、と買った缶コーヒーを渡す。アレは投げた缶コーヒーを頭で受け止め、そのまま眠った。

式「・・・事故だな。うん、これは事故」

倒れたのを幸いに町に出る。アレも眠いと言っていたし、寝かせておいてやろう。
人目のつかないところに置いておく。そもそも存在した時代が違うから町に連れて行くことはできない。
連れて行くといろいろ面倒だし、その面倒を背負い込みたくない。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/20(金) 20:14:50.18 ID:yZsBHn1k0
今日はこれで終わりです

多分次回安価でどこに行くか決めます
月姫、fateそれぞれ一回ずつとる予定です

では
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 11:32:49.27 ID:FzizAJJs0

よければ書いてるときageてくれんかね
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/21(土) 21:42:27.87 ID:WXXOAxVH0
歩くと違和感を感じる。何かを擦る音と、体が引っ張られる感覚。
止まると違和感は消え、歩くとまた感じる。体にかわっている所はない
変わっているところは、遠くに寝かせてきた男が15メートルほど後にある事くらい。もしかしてアレが原因?
後ろを向いて歩く。何かに引っ張られる感覚と共に、引きずられるようにあの男もついてくる。

式「どうなってるんだ、これ」

突然、左腕から電子音がするした。音は腕の中から発生している。そういえば義手の調整のときに
"困ったことがあれば左腕に頼りなさい"とか言って腕をいじっていた。
中身を確認すると、入っていたのはナイフではなく電話。
人の腕をいったいなんだと思っているのか。音はまだ続く。出ろ、と言うことらしい。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/21(土) 22:23:19.58 ID:WXXOAxVH0
「式か?」

一番聞きたくない声。自然と足が早まる。

式「ああ、そうだよ。他に誰がいる。それより変なところに送り込みやがって。さっさと戻せ」

橙子「その言葉からすると一回目か。やっと説明ができるな」

一回目も何もない。これを使ったのは今が初めて。ついに頭がいかれたか。

橙子「いろいろ不満はあるだろうが話を聞け。こちらの方は問題ない。ゆっくり旅を楽しめ。
   それよりクソジジイのせいで話せる力があまり無い。一度しか言わないからよく覚えておけ。
   まずアレの居た世界に一度の跳躍で行けるわけではない。せいぜい近い場所に移動するくらいだ。
   その世界にもお前をはじき出そうと寄ってくるヤツがいるはずだ。跳躍はそいつらに協力してもらえ。
   跳躍には『』であるお前を使わせてもらったが、行き着くのはアレの居た世界だ。安心しろ。
   アレについての説明をする。まずお前とアレは一定の距離から離れることができない。お前を基にした跳躍だからな。
   物理的な手段ではまず離れん。次にアレを殺さないようにしろ。今はアレと繋がっている状態だ。
   アレが死ねばお前も死ぬ。大まかに言うとこちらの世界に帰ってくることができなくなる。
   それとアレにはこの時代の常識は刷りこんでおいた。万全とは言えんが大丈夫だろう。
   今使っている電話は常に腕の中に入れておけ。大雑把に言えばそれはお前を原動力としている。
   連絡は必要なときだけかけろ。そうそう、跳躍に関しては義手を使え。以上だ」

式「・・・何だったんだ、今のは」

疲れた声で一方的にまくし立て、一方的に会話は終わった。橙子が喋り終わると同時に画面が暗転する。
電源がどうとか言っていた気がするが、そもそもこれは受話器の子機だ。ボタンも一つしかない。

式「こんな欠陥品渡しやがって、これからどうしろっていうんだ」

騒音がする。振り向くと黒山の人だかりができていた。感嘆の声や悲鳴も聞こえている。
戻ってみると、首が地面に刺さったまま直立しているオブジェが一つ。地面には頭と同じ位の深さの溝が続いている。
周囲の人間は、埋まったまま動くアレを新しいパフォーマンスか何かと勘違いしているらしい。
実害が無い以上、気持ちよく眠っているアレを起こすのは悪い。放っておこう。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/21(土) 23:03:48.52 ID:WXXOAxVH0
警察官「待て、止まれ!そこの不審者二人!」

式「くそ、何でお前ぬめってるんだよ!持ちにくい!」

太子「ちょ、危ないって!ぶつかる!壁にぶつかっイヤァァァァァ!」ザリッザリザリザリッ

放っておいたのが悪かったのか、アレは警察に連行されていた。捕まるといろいろ面倒なので助け出す。
助けはしたものの

太子「ばーかーばーか、ここまで来てみろー」

と追ってくる警官を挑発し続けている。抱えられている身分で何をしているのか。
そもそも走る速さが男を抱えた女より遅いってどういうことだ。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/21(土) 23:33:15.72 ID:WXXOAxVH0
警察官「ええい、どこにいった!」

路地裏に逃げ込み警察を振り切る。路地裏は好きではないが、背に腹はかえられない。
逃げ切ったようだし、もう荷物を抱える必要はないだろう。

太子「ぬぽん!ほ、放り投げるなんてヒドイ!妹子並みにヒドイ!」

式「・・・クサッ。何だこの臭い」

太子「あ、今臭いって言った。私は臭くない!どちらかと言うとさわやかな草原系の香りだ!」

少しアレを抱えただけで臭いが移ってしまった。以前、路地裏で一週間生活した時以上の臭いだ。
鼻が曲がりそう。目も痛くなってきた。・・・この革ジャン、気に入ってたのに。

太子「私はいい匂い、って臭っ!妹子、じゃなかった両儀さん臭っ!ああ、目が、臭いで目が焼けるぅー!」ギャァァァ

その臭いの元はオマエだ。スカンクは自分の出した臭いで気絶するが、コレはしないらしい。
そういえばコンビニで買っていたパンと飲み物があった。今のうちに渡しておくか。

式「お前食事がまだだろ。買ってきたからさっさと食べろ」

太子「あ、どうも。でも大丈夫。さっき持ってきたおにぎりを食べたから。少し紫色だったけど大丈・・・
   ふおおぉぉぉぉ!?」グゴゴゴゴゴ

腹を抱えて急にうずくまる。そんなものどこに持っていたのか。そもそも紫色はダメだろ。
病院は金銭の都合で無理か。腹痛の薬はコンビニに売ってあるが、今コレを一人にするのは色々とまずい。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/21(土) 23:35:35.88 ID:WXXOAxVH0
今日はここまでです。

太子は世界を渡ったことでいろいろなところが強化されています。色々なところが。

では
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/22(日) 17:52:03.81 ID:Tn1MdgMw0
あれだけ鳴っていた腹の音が止んだ。急に立ち上がり辺りを見回し始める。
どこにそれだけの体力が残っていたのか。

式「それだけ動ければ大丈夫だろ。おい、さっさと寝床を探しにいくぞ」

太子「だ、誰かが私を見ている。誰だ」

場所や人数はわかっていないみたいだが、コイツ気付いてたのか。
見知らぬ場所なので厄介ごとは避けたかったが、そうもいかならしい。
暗がりから女が出てくる。背は高く髪は紫。どう見ても日本人ではない。

式「公園からココまでわざわざご苦労だったな。暇だな、アンタも」

返事はない。代わりに返ってきたのは明確な敵意。
隠れる必要がなくなったためか、殺気も隠さずこちらに向けてきている。

式「ふーん、顔を見せるのはお前だけ?別にいいけど。それより何の用?」

シオン「気付いているなら仕方ありません。リーズ、さつき、出てきてください。」

呼びかけと共に二人の女が出てくる。一人は男のようなの女。もう一人は学生服らしきものを着た女。
三人に共通している点は、どれも人のカタチをしているがヒトではないということ。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/22(日) 19:41:57.84 ID:Tn1MdgMw0
太子「そ、そんな!貴方は・・・」ガタガタ

リーズ「シオン、あのジャージの男と面識があるのか?」

シオン「いえ、ありません。会っているならばあのような異端、気付かぬはずがありません」

女を見て驚いている。コイツと面識があるということはあいつらも世界とやらを越えてきたのか。
だがそんなことはどうでもいい。色々あって丁度むしゃくしゃしていたところだ。
久しぶりに歯ごたえのある相手が出てきた。十分楽しめそう。

式「いいよ。やるっていうなら相手してやる」

ナイフを取り出す。こっちの気配を察してくれたのか、向こうもその気らしい。
最終通告として女が問いかける。

シオン「答えなさい。貴方達は一体何の目的で来たのです」

太子「師匠ぉ。お久しぶりですぅ。はい、元気にしているでおますぅ」

シオン「・・・・・」

式「・・・・・」

胡乱な目でつぶやくアレ。場の空気が凍る。トぶのは勝手だが、時と場所をわきまえろ。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/22(日) 20:10:06.27 ID:Tn1MdgMw0
シオン「・・・毒気を抜かれてしまいました。一つ聞きます。貴方達は何者ですか」

式「さあな、いろいろありすぎてオレにもよくわからない」

女は困惑している。当然か。こっちはアレのせいでやりあう気分じゃなくなった。
こちらが手を出さなければ手を出さないつもりか、向こうから仕掛けてくる様子はない。

シオン「記憶がない、というわけではなさそうですね。何のためにここに来たのかを聞かせてもらえますか」

式「よくわからないけど、簡単に言うとオレ達の世界の危機とやらを救うためにここに跳ばされた」

シオン「貴方達の世界?貴方達はこの世界の住人ではないというのですか?」

太子「りゅ、流派、聖徳腐敗はぁ・・・」ガタガタ

シオン「・・・そちらの方、顔色が悪いようですけど大丈夫でしょうか?」

式「単なる食あたりだ。気にするな」

シオン「そうですか。一つ提案があります。場所を変えて話しませんか?このままだと話が進みません」

目線で返答し、アレを残して全速力でこの場から離脱することが決まる。

シオン「決まりですね。二人とも、そこの男の監視は任せましたよ」

さつき「ああっ、ちょっと待ってよー!シオン!シオーン!」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/22(日) 20:40:31.50 ID:Tn1MdgMw0
さつき「あー、ほんとに行っちゃった・・・。どうしよう」

リーズ「行ってしまったものは仕方ない。言われたとおりあの男を見張ろう」

悪臭漂う中取り残されるリーズさんと私。自分だけ逃げるなんてシオンの薄情者。
残されたジャージのおじさんを観察してみる。嫌な臭いはオジサンから漂ってきてる。
あとリストラされた中年のサラリーマンみたいな悲惨さと哀愁も漂っている。

さつき「えーっと、私、弓塚さつきっていいます。こっちはリーズさん。貴方はなんていうんですか?」

太子「馬子は死に、妹子はついでに冷凍刑・・・おまけに私は摂政ファイターに身を落とした・・・」ブツブツ

さつき「あのー、聞いてます?」

リーズ「どうやら錯乱しているようだな。何かおかしな真似をしたら叩き潰すから安心してくれ。
    それにしてもこの男、あのネコを思い出させる使い減りの無さだが・・・これはキモイだけだな」

うんうんと、何やら納得しているリーズさん。ネコって、私の部屋を乗っ取ったあのネコのことだよね。
あのネコは思い出したくないけど、あれに近い存在感というか、同じくらいのうさんくささがする。

太子「キモイ!?今キモイって言った?私はキモくうぅぅぅぅ」ゴロゴロゴロ

大きな声を出して再びうずくまるおじさん。動きが気持ち悪い。あと路地裏とはいえ、大声を出すのはやめてほしい。

さつき「シオン、早く帰ってきてくれないかな・・・」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/22(日) 20:44:23.06 ID:Tn1MdgMw0
今日はここまでです。

安価をするといっていましたが、話が進んでいないためまだできません。

では。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/23(月) 23:06:37.85 ID:gpaaMJC+0
リーズ「む。叩き潰されたくなかったら勝手に動くな」

よろめきながら立つおじさん。どことなく漫画の熱血キャラっぽいポーズをしている。

さつき「?なんだろう、何か音が聞こえてきたような」

リーズ「退がれさつき。あの男、様子がおかしい」

太子「い、今こそ、修行の成果を見せるとき!飛鳥一武道回で勝ち取ったあのパワーで!ハアァァァァ・・・・」

突如大音量で流れてきた謎の音楽と共に構えをとるおじさん。正直言って気味が悪い。

リーズ「な、なんだ!?この無駄に熱い音楽は!どこだ、どこから流れている?」

さつき「何か、おじさんがすごいぬめぬめしたもので覆われていってる」

太子「俺のこの手がしっとり湿る!汗疹ができると轟き叫ぶ!」グゴゴゴゴゴゴゴゴ

リーズ「くっ、まずい!私の中の何かが抑えられない!耐えろ、耐えるんだ!」

全身がぬめぬめした液体で覆われてテカっている。目が血走って焦点も合っていない。
臭いもひどくなってきてるし、死徒って言われたら信じてしまいそう。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/23(月) 23:43:07.51 ID:gpaaMJC+0
太子「爆湿!推古朝フィンガー!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

リーズ「ぐあぁぁぁぁぁ!!」

音楽は山場を迎えたらしい。謎の構えと共にこちらに掌を向けてくるが、飛んできたのはぬめぬめした液体。
その謎の行動に反応してその場に踏ん張るリーズさん。何が起きているか分からないけど非常に苦しそう。
あと臭いが濃くなると目が痛くなるって言う話、本当だったんだ。

さつき「ううっ、目が痛いよぉ」

リーズ「負ける!?この私が・・・」

太子「摂政ファイト第一条、ブリーフが破れたもの゙っ はぁん」ブピッ   ベチャ

急に倒れるおじさん。ピクリとも動かない。

さつき「あ、倒れた。変な音も聞こえなくなったけど、大丈夫かな?」

リーズ「ふっ、紙一重か。あの音楽、熱く、燃え滾るものがあった。この男、ただ者じゃないな」ガクッ

さつき「リーズさん?」

リーズ「異郷の音楽、見事であった。再び機会があれば、一音楽家として手合わせ願いたいものだ・・な・・・」バタン

さつき「もしもーし。リーズさーん?聞こえてますかー?」

共に倒れるおじさんとリーズさん。どうしよう。
おじさんはともかくリーズさんが倒れたことはシオンに伝える必要がある。
でもこの場を離れるわけにはいかない。目を離している間におじさんが何をするかわからないし。

さつき「どうすればいいのかな・・・」

「どうした」

さつき「あ、ちょうどいいところに。お願い、私シオンを探してくるから、この人見張っててくれないかな?」

「承知した。行ってこい」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/24(火) 00:11:45.80 ID:pyK5dhf00
式「・・・と、あったことはこれで全部か」

起きたことをすべて話す。この女、シオンはこちらの話を真剣な目で聞いている。
たまに口に手を当てて思案することもあるが、口出しは一切してこなかった。
話すことで何か手がかりがでてくればいいが。

シオン「平行世界への移動、事象の書き換え、共に現代の業では不可能です。そのようなことが行われたとは信じられません。
    ですが、いま起きようとしている異変の大きさを考えると嘘ではなさそうですね。わかりました、協力しましょう。
    少し調べたいことがあります。ラボに来ていただけますか」

式「協力してくれるのか。さんきゅ」

どうやらこいつ等が橙子の言っていた協力者のようだ。異世界に飛ばされた直後に協力者が見つかったことは幸先良い。
しかし協力者は見つかったものの、肝心の世界を跳ばす者に関しては心当たりがないらしい。さて、どうしたものか。

さつき「あ、いた!」

シオン「何をしているんです、さつき。しっかり見張るようにお願いしたはずですが」

さつき「シオーン!助けてよぉ」

出てくるなりシオンに飛びつく制服の女。たしか弓塚さつきといったか。

シオン「なっ、いきなり飛びつかないでください。それよりも何があったのですか?」

さつき「えっと、あの男の人がぬめった後に変な音楽が流れて、リーズと一緒に倒れちゃったの」

シオン「?状況が理解できませんが、急いで戻ったほうがよさそうですね。両儀さんも一緒に来てください」

アレが何か起こしたらしい。急いでその場を後にする。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/24(火) 00:13:06.13 ID:pyK5dhf00
今日はここまでです。

安価の内容はどこに行くかを予定しています。

では。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/24(火) 22:08:20.80 ID:pyK5dhf00
さつき「ああっ、なにやってるの。ちゃんと見ててっていったじゃない」

シオン「オシリス!倒れている人にしゃがみ弱キック連打はやめなさい!」

オシリス改「だが断る」ペシペシペシペシペシ

太子「・・・・・」ゲシゲシゲシゲシ

アレと女が倒れていること、少女が増えたこと、その少女がアレを蹴っている以外に変わったところはない。

さつき「捕まえた!いい子だからおとなしくして」

オシリス改「アークドライブ発動まで残り12発。邪魔をするな」

シオン「いいから眠りなさい!」

停止音とともに動かなくなる少女。ロボットだったのか、アレ。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/24(火) 22:54:28.12 ID:pyK5dhf00
シオン「まだ調整が上手くいってないようですね。性能は問題ないのですが、やはり思考パターンが・・・」ブツブツ

さつき「またスイッチはいっちゃた。えーっと、その、名前、教えてもらえますか?」

制服の少女は雨にぬれた子犬のような目つきでこちらを眺めている。
この中で唯一言葉が交わせる私にこの状況を打破する期待をかけているのか。

式「式。両儀式」

さつき「式さんですか。私、弓塚さつきです。向こうのほうで何をやっていたんですか?」

式「事情を話したら協力してくれるんだと。んで、これからラボに向かう所。あんた等三人のことはシオンから聞いてる。
  オレから仕掛ける気はないよ。そっちから仕掛けてくるなら別だけど」

さつき「シオンが異変に気付いてそのあとを追いかけていっただけなので、私がどうこうしようっていうつもりはないかな。
    ところで顔色が悪いようですけど、お兄さんもあのにおいにやられたんですか?」

式「まあ、そんなとこ」

協力者が見つかったことは喜ばしいが、体の様子がおかしい。
意識ははっきりしているが、体のほうが無理やり休もうとしている感覚。
徐々に休もうとする体に引き寄せられていている。気を抜くとすぐ倒れそうになってしまう。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/01/24(火) 22:57:13.54 ID:pyK5dhf00
今日はここまでです。

書き溜め作って一気に出したほうが良いのか。

では。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/25(水) 10:12:51.86 ID:o/dZgN5m0

太子はこの先生きのこれるのか
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/01/25(水) 23:52:32.71 ID:QXNWPWex0
諸事情により二週間ほど休ませていただきます。

時間が空くので安価を先にしておきたいと思います。
安価の内容は次の日どこに向かうかを指定してください。安価下です。

では。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/26(木) 01:54:15.93 ID:0gPr8v+Go
志貴の家
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 13:53:48.09 ID:McZNwRp10
発想がおかしい
だが支援
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/02/08(水) 23:43:02.17 ID:PATEN0Uy0
お待たせしてしまい申し訳ありません。
明日の朝か昼から書きはじめたいと思います。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/09(木) 08:41:11.67 ID:vj84K8GN0
シオン「・・さん。両儀さん?聞こえていますか?」

式「悪い、聞いてなかった。なに?」

シオン「ですから今からラボに向かう、と言ったではありませんか。ついてきてください」

いつの間にか倒れていた女は起きており、三人とも移動する準備を整えていた。
アレはまだ起きていないらしくリーズバイフェに担がれている。
三人の後ついていくが体は重く、水の中を歩いているような違和感がある。
どこに向かっているか判らないが、ついていくのがやっとでそんなことを考える余裕は無かった。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/09(木) 10:00:42.01 ID:vj84K8GN0
シオン「こちらです。リーズとさつきはあまり無暗に動かないように。式さんはこちらのほうに来てください」

さつき「うわー、おっきい水槽がいっぱいある」

リーズ「つくづく思うが、やはり君は金の使い方を間違えている」

地下通路を抜け、案内されたのは巨大な地下研究所。怪しげな機材や薬品が整然と並んでいる。
体が重く、眩暈がする。集中していないと意識がぼやけてくる。違う世界に跳んだ反動とやらが来たのか。
様々なことがあったけど普段ならこの程度で疲れるはずはないのだが。
今倒れるのはまずい。せっかくつかんだ手がかりなのに。

シオン「両儀さん?顔色が優れないようですが、大丈夫でしょうか」

式「気にするな。単なる立ちくら、み―――」

リーズ「おっと。無理をするな。シオン、どこか休ませれる場所はないか」

立っていることができなくなり誰かに肩を支えられている。
立ち上がろうと足に力を入れるが、地面に立っている感覚がない。
自分で立つ事すら儘ならなくなるとはなんとも情けない。

シオン「そこの椅子を使ってください。顔色が悪いようでしたが、やはり無理をしていましたか」

誰かがこっちを見て何かを言っている気がするが、何を言っているかよくわからない。
返事をしようにも声も出なくなっている。どこからか誰かが近づく気配がする。
しかし今の私は顔を上げることすらできない。

「今晩は、シオン。今夜は一体どういった厄介ごとを持ってきて下さったのかしら?」

シオン「貴女がここに来るとは珍しいですね、秋葉」

秋葉「なにやら町のほうが騒がしいので調べに行こうとしていたら、貴女達が屋敷に来るのを見つけましたので。
   貴女が何の用も無くここに来るわけがないでしょう?」

シオン「この地に起きていた異変に貴女も気付いていたのですね。それならば話が早い。
    この二人がどうやらその異変の中心のようです。こちらの女性は両儀式、あちらの男性は聖徳太子だそうです」

秋葉「両儀?両儀ですって?それに聖徳太子とはどういうことですか?説明して―――」

「―――――――――――」

声が頭の中を通り抜けていく。体が落ちる感覚とともに意識も溶けて無くなった。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/09(木) 13:46:42.12 ID:vj84K8GN0
「今までの話の要点をまとめますと、彼女等は別の世界の崩壊を防ぐ為にこの世界にやってきた。
 二人が気がついたのは今日の日暮れ前。私たちが異常を感知したのも日暮れ前。
 両儀さんがいた世界では過去の改竄が発生していましたが、今のところこの世界で過去の改竄は確認できず。
 実害が今のところ確認できていないとはいえ、傍観しておいていいものではありません。
 この問題を解決するには―――」

「世界とやらを越えて二人を送り込んできた魔術師に話をつける、もしくはあの二人を別の世界に飛ばす必要がある。
 その二つはいずれも実現は不可能。仮にこの世界で二人を殺しても問題は解決しない。
 話を信じるならば解決の手段はやってきた聖徳太子という男をを元の世界に返すことだけ、か。
 ・・・おおよそ把握はできました。
 正直信じたくありませんが、こんな出鱈目なものをみせられたら信じるしかないでしょう」

「同感です。人の身でありながら魔術師の最終到達点である根源に通じている。
 話していたことは信じられませんが、これならば話していたことを実行することは可能でしょう」

「でもどうするんだ。世界を飛び越えさせるなんて、僕達には無理だろう」

「確かに私達には不可能です。ですが、この世界から彼女等を弾きだそうとする者がいる。
 そしてその者たちは彼女等に寄ってくるそうです。それを利用するしかないかと」

「寄ってくるって、待つしかないのか?あの二人がこれからどこに行くかわからないのに」

「ならあの二人をここにおいて監視しておきましょう。その者たちが現れたとき何かと都合がいいですし。
 何よりあの二人を含め、不審な真似をしたらすぐに手を下せます」

「同感です。これから何が起こるか判りませんので、なるべく近くにおいていた方が得策でしょう」

「決まりね」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 16:49:19.67 ID:otx4KTCDO
頭のおかしい(誉め言葉)>>1がいるときいて飛んできますた
太子分が足りないのでもっと太子を出せください
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/09(木) 17:11:37.93 ID:vj84K8GN0
「秋葉。一応言っておきますが目の届かない場所に監禁する、という事はやめてください。
 彼女達を弾き出す者が出てくるまである程度自由に動けるようにしておいた方がよいかと」

「わかっています。そのような真似はしません。問題がおきない限り、ですが」

「物騒なこと言わないでくれ。そんなことがおきないように話してるんだろ」

「その通りです。あくまでそれはどうしようもなくなったときの手段です」

「当たり前でしょう。私を一体なんだと思っているんですか。ただ言ってみただけです」

「承知しています。こちらも言ってみただけです。気にしないでください。
 あと彼女等には寝床が二つある部屋を用意してください。お二人は15メートル以上離れられないそうですので」

「構いません。部屋は幾つもあります。琥珀、翡翠」

「かしこまりました。お部屋へお連れしておきます」

「かしこまりました。シオン様は如何なさいますか?」

「私はもう少し術式について調べようと思います。しばらくラボをお借りしますがよろしいですか?」

「お好きなように」
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/09(木) 18:49:03.78 ID:vj84K8GN0
―――――――――――――――――――――――――


突如現れた薬品系魔法少女と極悪非道な探偵に町が襲われている。
市民を守るために怪人に立ち向った勇敢な三人の男。いい盾ができたと我先に逃げる市民共。
一般人を守るために奮闘するものの、三人の男はついに追い詰められてしまった。

マジカルアンバー「あーっはっはっはっは!どうやらここまでのようですね!」

洗脳探偵ヒスイ「あなたをBADENDです」

志貴「つ、強い・・・」

士郎「くっそ、こんなところで・・・」

幹也「もうだめなのか・・・」

――「待ちなさい!」――

アンバー「だ、誰だ!」

――「貴女の悪行、見過ごすわけにはいきません!」――

ヒスイ「まさか、貴女達はっ!?」

とうっ、という掛け声と共に現れた三人の女。いずれも露出度の高い衣装を着ている。

アルク「悪は絶対許さない!正義の月姫 ファンタズ・ムーン!」

セイバー「自宅の平和は私が守る!気高き獅子 カリッジ・ムーン!」

シキ「男の強さと女の魅力!ツンギレ撫子 ムーン・オリジン!」

――「三人揃って! 型月ヒロイン レックネス・ブルーム!」――

アルク「アナタの心にマーブル・ファンタズム」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・夢、か。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死にたい。


―――――――――――――――――――――――――
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/02/09(木) 18:52:44.56 ID:vj84K8GN0
今日はここまでです。

4日以内には続きを書けると思います。

では。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 19:07:02.01 ID:vzp06P9SO
式が疲れ切っている…
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/09(木) 20:27:31.77 ID:sJ1ZEVtAO
乙!
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/09(木) 20:47:40.31 ID:9M2is+30o
式の心の拠り所はお留守番からな…
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/10(金) 19:09:50.89 ID:HyfPB1MA0
太子成分が足りていないということなので、太子の夢も書きます。
尚、この夢は実在の人物、団体とはほとんど関係ありません。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/10(金) 20:06:57.12 ID:HyfPB1MA0
―――――――――――――――――――――――――


名探偵だよ! 両儀ちゃん

名探偵は死の香り? 編



太子「やあ。おはよう両儀さん」

式「おはよう太子。なんだ、まだ生きてたのか」

太子「まだ生きてるよ!朝からイヤなこと言わないでよ!何でそんなに不機嫌なのさ」

式「こっちは事件がおきなくて暇なんだよ。お前十六分割にされてみない?」

太子「笑顔で何物騒なこと言ってるの!それじゃ犯人を見つけるんじゃなくて犯人になっちゃうよ!」

式「秋隆がどうにかしてくれるさ」

太子「ええっ、どんだけ我侭なんだよまったく。それでも十六分割なんてイヤだよ。痛いし」

式「大丈夫だよ。痛いのは失敗したときだけ。それに失敗しても痛いだけだから」

太子「どっちもダメじゃん!」

妹子「おはようございます。超絶イケメン太子様、式さん」

太子「おはよう妹子。今日もお前はかさかさだな」

妹子「はい、かさかさですみません。太子様のようなスベスベプリティな肌が羨ましいです」

太子「欲しくても分けてやらないぞ。ところでそんなに急いでどうしたんだ?」

妹子「あ、実は僕の昼ごはんのツナおにぎりが誰かに盗まれたんです。その犯人を捜しているところです」

太子「そりゃ丁度いい事件だね。よかったね両儀さん。・・・ああっ」

妹子「式さんの目が蒼く光りだした!」

あの目は両儀さんが事件の真相を見つけて犯人を切るときに見せる目なんだ。
そして犯人を見つけると一刀の下に切り捨てている。
この特徴から両儀さんは別名「ツンギレ」と呼ばれている。
さすが両儀さん。もう事件の真相に迫ったのか。

妹子「さすがツンギレと呼ばれるだけのことはある。もう犯人の目星をつけたみたいだ」

太子「そんなに早く見つけるだなんて、一体誰が犯人だというんだ!!」ムシャムシャ







ザンッ

ギャァァァァァァ
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/10(金) 20:44:40.39 ID:HyfPB1MA0
名探偵です? 両儀ちゃん

強敵(ライバル)出現!? 編


式「はあ、どこかに殺人(事件)おきてないかな」

太子「ちょっと両儀さん!物騒なこと言わないでよ。あとカッコつけるほう間違えてるよ」

式「どっちだって構わないだろ。どうせ中身は同じなんだから」

太子「同じでもまずいよ!印象悪くなっちゃうよ!」

妹子「おはようございます。クレオパトラも一目ぼれする美男子太子様、式さん」

太子「おはよう妹子。今日もお前はパンツ一丁か」

妹子「はい、太子様のことを羨んでいましたら服を着てくるのを忘れてしまいました」

太子「はっはっは。お前は実に哀れだな。ところでどうしてそんなにそわそわしている?」

妹子「何でも今日このクラスに転校生が来るらしいんですよ」

式「別にどうでもいいよ」

妹子「それがなかなかの美青年らしいんですよ。太子様には敵いませんが」

太子「それは楽しみだな。あ、先生だ」

青子「おっはよー。みんな、さっさと席に着きなさい。じゃないとぶっとばしちゃうわよ?」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/10(金) 21:18:28.76 ID:HyfPB1MA0
青子「みんなに新しいお友達を紹介するわね。入ってきて」

志貴「初めまして。三咲町から来た遠野志貴です。よろしくお願いします」

青子「彼、こう見えても向うじゃ結構有名な探偵だったんだって」

妹子「探偵だって?丁度よかった。志貴君、探してもらいたい物があるんだ。
   僕の昼ごはんのツナおにぎりサンドイッチが無くなったんだ。探してくれないかな」

太子「彼も探偵か。思わぬ強敵出現だね両儀さん。・・・ああっ」

妹子「式さんの目が蒼く光りだした!」

あの目は両儀さんが事件の真相に気付いた時に見せる目だ。
そして犯人を見つけると有無を言わさず切り捨てている。
この特徴から両儀さんは別名「ツンギレ」と呼ばれている。
さすが両儀さん。新参には負けていない。もう事件の真相に迫ったのか。

志貴「あれは一体・・・」

太子「そういえばこのクラスには彼が居ることを伝えてなかったね志貴さん。
   彼は両儀式。君と同じ探偵なんだよ。・・・ああっ」

妹子「志貴さんの目も蒼く光りだした!」

眼鏡を外して目を蒼く光らせている志貴さん。目つきが怖い。
そういえば三咲町にはインスピレーションが働くと眼鏡を外して目を蒼く光らせる探偵が居ると聞いた。
その探偵は眼鏡を外したときの言動とその特徴から別名「ポエマー」と呼ばれている。
彼がその探偵だったのか。

ああ、二人とも目が光っていて人間じゃないみたいだ。
どこからどう見ても事件を解決する側より事件を起こす側の人間にしか見えない。
どっちだ。どっちが先に事件の真相にたどり着くんだ。

太子「この勝負、一体どっちが勝つんだ!!」ムシャムシャ

式「オレが合わせる。スキにやれ」

志貴「はい、わかりました」












ザザザザザザザザザザザザザザザザザン

ギャァァァァァァァァァァァ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・夢、か。









ツナおにぎりサンドイッチおいしかったな。


―――――――――――――――――――――――――
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/02/10(金) 21:21:09.58 ID:HyfPB1MA0
太子の見た夢 終わります。

明日の夜か明後日の朝か昼には書けると思います。

では。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 23:38:23.16 ID:SsHl8KVbo
乙!

この太子って、元ネタになった漫画や小説あるんですか?
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/10(金) 23:41:34.83 ID:ibzIhnAGo
>>77
ギャグ漫画日和 という漫画
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 06:42:02.25 ID:VVLJWr+go
>>78
thx
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 10:38:25.07 ID:hDUyg4E00
式はうさぎですか
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/11(土) 15:28:47.80 ID:W0giYyQUo
いいえ、妹子の来世です
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/11(土) 20:03:10.05 ID:P4oDZmcN0
変な夢を見ていた気がするが、どんな内容だったか思い出すことができない。
多分思い出さない方が幸せだろう。それにしてもこんなに早く目が覚めるなんて珍しい。
時刻はまだ6時半。今日は学校も休みだしもう少し―――


悠長に寝ている場合ではない。慌てて飛び起きる。目が覚めたのは見知らぬ部屋
そういえば橙子のバカに別の世界に跳ばされていたんだった。
昨日の出来事を思い出そうとするが、シオンという女に会ったこと以外の記憶が虚ろでよく思い出せない。
ただ一つ言えることは、この部屋には行っていないことだけだ。

式「どこだここは」

辺りを見回してもここが何処か判る手がかりになりそうなものは無い。
それに昨日着ていた服ではなく、知らない服を着せられている。持ってきた物が有るか確認する。
どうやら持ち物は全て取り上げられたらしい。さて、どうしたものか。
謎の木片の入った封筒を手がかりに進んでいるが、それを奪われてしまうとは。
あの封筒を取り戻さなければならないが、アテは無い。それ以前に丸腰ではどうしようもない。

式「ま、縛られてないだけあの時よりマシか」

ベッドに身を投げ出し今後の方針を模索する。しばらく考えてみるものの、良い案が浮かばない。
何も知らない場所を一人で行動することはそれなりの危険が伴う。
昨日だってこの世界に跳ばされたことがすぐにこちらの人間に見つかってしまった。無闇に動くのは得策とは言えないか。
そもそも一緒に運ばれていたアイツは無事なのだろうか。

「おはようございます。よくお眠りになられましたか」

ドアの方角から声がする。いつの間に入ってきていたのか、メイド服を着た女がドアの近くに立っている。
女は暗がりに立っているせいか、ここからでは表情が読み取れない。
女はまるで無機物のようで、一見すると置物のように見える。動く気配が全く無い。

式「お前は誰だ」

「ここは遠野の屋敷です。私はこの家の使用人、翡翠と申します。シオン様は昨夜の内に帰られました」

事務的な口調で答える女。あっさりと答えが返ってきたことは以外だった。
しかしその声に感情というものが感じられない。女はこちらに近づいてくる。
その体は小さく、顔つきは年下の少女のような感じをしている。

翡翠「遠野家当主、秋葉様より言伝を預かっております。
   ”昨夜のことは聞いております。話がありますので起きたらいらして下さい”。以上です」

式「昨日のことって、あんたらシオンの仲間?」

翡翠「私共の当主とシオン様は知り合いです。あなた方のことはシオン様より伺っております」

シオン。確か昨日この名前の女と会ったはず。路地裏で何か話しをした後、どこかに向かっていたはずだ。

式「昨日は確か、路地裏でシオン達と会って、地下を通って・・・」

翡翠「地下の研究所に着いて、そのまま倒れられたそうです」

思い出した。地下を抜けた後すぐに倒れてしまったんだっけ。
だが研究所で倒れた事とこの部屋で起きた事との接点が見つからない。
こちらの考えを察したのか、女は

翡翠「この屋敷は昨晩倒れられた研究所の地上に位置しております。誠に勝手ながらここに運ばせていただきました」

と付け加えた。
異変とやらが起きているのに丸腰の私を拘束していないところを見ると、シオンの知り合いというのは本当のようだ。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/11(土) 21:20:09.23 ID:P4oDZmcN0
式「アイツはどこだ?一緒にいたジャージの男」

翡翠「あちらの部屋におられます。言伝は既にお伝えしましたが、窓の外を見つめられたまま動かれておりません」

メイドは隣の部屋に通じる扉を指し示す。どうやらアイツは無事らしい。

式「そう。ところでこの服は何?それと持ち物、あるなら返してくれない?」

翡翠「お召し物は汚れておりましたので取り替えさせていただいております。
   申し訳ありませんが、洗濯が終わるまでそちらのお召し物をお使い下さい。
   所有されていた物はこの籠の中に入っております。御確認ください」

そういって差し出された2つの小さな籠。中にあるのはナイフとサイフと封筒。手が着けられた様子はない。
もう一つの籠には見覚えのない物が入っているが、これはアイツの持ち物だろう。

式「気を使ってもらって悪いな。ありがたく使わせてもらう」

翡翠「ありがとうございます。朝食の用意ができておりますので食堂へご案内いたします。
   部屋の外で待機しておきますので、準備ができましたらお声をおかけ下さい」

一礼して出て行くメイド。愛想の無さはどうかと思うが、必要以上にこちらに干渉してこないのは助かる。
秋隆もあれくらいの可愛気と過保護なところが直れば言うことはないのだが。


隣の部屋を覗いてみると、聖徳太子は外を見たまま微動だにしていない。
私が入ってきたことにすら気づいていないのか、窓の外を見つめたまま動く様子はない。
違う世界を二度も跳ばされて、アイツはアイツなりに何か思うところがあるらしい。

式「ったく。おい、違う世界に飛ばされて不安なんだろうがやるしかないだろ。さっさと食堂に行くぞ」

太子「あ、両儀さん。ちょっと椎茸と妹子どっちが乾いてるか考えてて聞いてなかった。
   もう一回言ってくれる?」











ギャアァァァァ

翡翠「?何の音?」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/11(土) 21:44:25.90 ID:P4oDZmcN0
メイドに案内され食堂に足を運ぶ。そこには三人の男女がいた。
並んで立つ長い黒髪の女と眼鏡をかけた男。その後ろに私と同じような服に割烹着を着た少女が控えている。
どうやら黒髪の女と眼鏡をかけた男がこの館の主らしい。
詳しい話は朝食の後にするという事らしく、食事は終始無言で終わった。
朝食が終わり居間に集まって話を始める。ようやく手がかりらしい物が出てきそうだ。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/11(土) 22:56:18.71 ID:P4oDZmcN0
式「自己紹介がまだだったな。オレは両儀式。隣のコレがジャージ」

太子「ちょっと待って、ジャージって何だよジャージって。ジャージじゃないよ聖徳太子だよまったく」

式「うるっさいな気持ち悪い。気持ち悪いから喋るな」

太子「今気持ち悪いって二回言ったよね?二回言う必要あった?息を吐くように罵倒しないでもらえる」

二人の名前は本当に両儀式と聖徳太子というらしい。昨日から聞いていたものの、正直信じられない。
両儀式という名前は聞いたことが無いが、日本人で聖徳太子の名を知らない人はいないだろう。
シオンの話では本物の聖徳太子らしいけど、なんだか真実味に欠ける感じがする。ジャージ着てるし。

志貴「えっと、両儀さんと太子さんだよね。はじめまして。遠野志貴といいます」

式「そっちで呼ぶな。式でいい」

秋葉「では式さん、太子さん。私は遠野秋葉。後ろで控えている二人が翡翠と琥珀。貴方達のことはシオンから聞いています。
   微力ながら貴方達が元の世界に帰れるように私たちも協力させていただきます。
   あの部屋はこの世界での拠点としてお貸しします。思い出したことや必要なものがあれば遠慮なく仰ってください」

式「助かる。ところでお前らが跳躍の協力者とやらじゃないのか?」

秋葉「残念ながら違います。ですが、それ以外のことでしたら協力させていただきます」

手がかりなしか、とあからさまに落胆している両儀さん。
シオンから聞いた話だと御神体の欠片を元に世界を超えて来たと聞いている。
昨日聞いたはずなのだが、そこの辺りの理屈がよくわからない。
彼女達が嘘を言っているとは思えないが、確認の意味も込めてもう一度聞いてみることにする。

志貴「昨日までにあった事を詳しく話してもらえるかな。シオンから一応聴きはしたんだけど確認しときたくて」

式「わかった。初めから話せばいいのか?」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/02/11(土) 22:57:53.62 ID:P4oDZmcN0
今日はここまでです

次回は水曜日辺りに書けると思います

では
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 23:20:44.84 ID:NLcpI5Vdo
おっつ
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 09:10:24.91 ID:Zkk8DoWd0
ポエマー視点か
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/15(水) 23:32:21.36 ID:UjsG9exW0
式「これで終わり。他に何か聞くことある?」

秋葉「・・・確かにシオンの話と矛盾しているところはありません。どうやら話に嘘は無いようね」

式「そんな風に思われてるなんて心外だな。嘘を言ったつもりはないぞ」

所々で太子さんが両儀さんに反論していたが、両儀さんはそれを全て無視して話を進めていた。
そのせいだろうか、太子さんはソファーの隅でうずくまって泣いている。・・・本当に聖徳太子なのか?あの人。
彼女達がこの世界に来た理由や昨日の出来事など全ての出来事を聞いたが、シオンが話していた事と一致している。
ただ一つだけ言えることは、どのような理屈でこっちの世界にやってきたのかはよくわからないまま、ということだ。

  話の中で何か引っかかることがあったが、どうも思い出せない。
  まあ、思い出せないなら思い出さないほうが良いのだろう。

両儀さんの話が終わった後、誰も口を開こうとしない。
二人ともそれ以上話すことはないらしく、重苦しい沈黙が流れている。
とてもじゃないが何か口を挟める雰囲気ではない。
眼を合わせたまま動かない二人。室内にはカチャカチャと食器の擦れる音だけが響いている。
どれくらいの時間が流れたのか、その沈黙は秋葉が口を開いたことで破られた。

秋葉「・・・なぜ手助けをするか、その理由を聞かないのですか?」

式「手伝ってくれるならそれ以上求めないよ。それとも聞いたほうがいいの?」

即答する両儀さん。秋葉は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにさっきまでの顔に戻った。
そのまま両儀さんを睨み続けている。今の返事が少々頭にきたらしい。

秋葉「勘違いされても困りますし、一応話しておいた方がよさそうですね。
   貴方達を手助けするのはシオンの頼みということもあります。しかしそれだけではありません。
   この土地の管理者として、当然の行いをしているだけです。
   もし不審な真似をしたら相応の処罰を執らせて頂きますので、そのつもりでいてください」

凄みを利かせた高圧的な視線を向ける秋葉。それをそ知らぬ顔で受け流す両儀さん。
見た感じ秋葉が一方的に噛み付いている感じがするが、両儀さんはそれをどこか懐かしそうに見ている。
秋葉はそれが気に入らないらしく、噛み付こうとしているが言葉が見つからないらしい。
とてもじゃないがこの二人の間に入れる気がしない。こっちに飛び火しないことを祈るばかりだ。

太子「あ、お茶ありがとう。ケーキおかわりもらえる?」

そんな中、この空気を無視して一人明後日の方向に爆走している太子さん。あんた大物だよ。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/15(水) 23:34:44.55 ID:UjsG9exW0
鐘が鳴っている。いつの間にか9時を回っていたらしい。
話も一区切りついたみたいだし、今日のところはこれで終わりか。
琥珀さんと翡翠はそれぞれ仕事を始めている。秋葉もこの後出かける予定だったはずだ。

式「話は終わりか。じゃあそこら辺ぶらついてくる。待ってるより自分から出向いたほうが早いだろ」

秋葉「待ちなさい。貴女は話を聞いていたんですか。そのような勝手な行動が許されるとでも?」

立ち上がるなりそんなことを言う両儀さん。ここぞとばかりに秋葉は食ってかかる。
確かにこの二人を勝手に外に出すのはよくない。しかし外に出さなければ手がかりが無いのも事実だ。
ならば話は簡単だろう。この二人を監視する人物がついていけばいい。秋葉は用事があるからついていくのは無理。
となると俺が行くしかない。どうせ今日は大した用事もないし。

志貴「なら俺がついていくよ。それなら大丈夫だろ」

秋葉「兄さんっ!あなたはどっちの味方をしているんですか!」

志貴「手がかりも何もないわけだし、今日一日外に出てみることは悪い案じゃないと思うけど」

秋葉「兄さん。まさかとは思いますが、今日の予定が嫌でそんなことを言っているんじゃないですよね?」

志貴「はは、ははは。まさか、そんな。緊急事態なんだし、今日は仕方ないだろ」

多少嘘をついていることに気が引けるが、俺だって健全な男子学生だ。休日は外に出て遊びたいと思う。
それに勉強はいつでもできるし、家庭教師の人だってたまには休みたいだろう。
俺は外に出られる、家庭教師は何もせずにお金が入る。双方にメリットがある理想的なwin-winの関係だ。
そこに二人の監視も加わり一石三鳥。実に理に叶っている。

秋葉「・・・まあいいでしょう。手がかりが必要なのも事実ですから。今日のところは任せましたよ、兄さん」

志貴「わかってくれたか。あるがとう秋葉」

少し不満げな顔をしていたが、どうやら納得してくれたらしい。踵を返して部屋を後にする秋葉。
すれ違いざま両儀さんに何か言っていたようだが、何を言っているのか聞こえなかった。
しかしこれで大手を振って外に出ることができる。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/15(水) 23:37:24.16 ID:UjsG9exW0
式「鮮花に似てるな。実の兄に惚れてるところなんか特に」

志貴「ん?式さん、今なにか言った?」

式「気にするな。単なる独り言だよ」

二人と十時に玄関に集まる約束をして居間を後にする。
部屋に戻る途中、奥から籠いっぱいの果物を抱えた翡翠が歩いてきた。

太子「あ、バナナだ。一本もらっていい?」

翡翠「お好きなだけどうぞ。全て洗ってありますのでそのまま食べられても大丈夫です」

太子「ひゃっほーい!いただきます」

そう言うなりバナナを食べ始める太子さん。あれだけ食べたのにまだ入るのか。
そういえば大量の果物が送られてきて処理に困っていると秋葉がこぼしていた。
しばらく食事もおやつもフルーツ三昧だったが、まだ残っているらしい。

志貴「重そうだね。手伝うよ。どこに運べばいいのかな」

翡翠「いえ、志貴様のお手を煩わせるほどの事ではありません」

そう言って奥に進む翡翠。山盛りになった果物がゆらゆら揺れている。
見ていて不安になるが、手伝わなくていいといった翡翠の意思を尊重しよう。

太子「うままっ。あ、待って、もう一本ちょうだヌホァ!」ポヒーン

ハゴロモッ メゴリ

翡翠を追いかけて走って行く途中に自分で落としたバナナの皮で足を滑らせたようだ。
勢いよく滑った太子さんは壁を突き破ってどこかに飛んでいった。
滑るというより発射という表現が近いか。バナナの皮であそこまで滑れるなんて何者なんだあの人。

志貴「あの、太子さん大丈夫なんでしょうか。なんかやばい角度で突っ込んだ気がするんですけど」

式「知るか」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/15(水) 23:38:13.99 ID:uislKXLGo
流石ポエマーさんあんた最低だ
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/15(水) 23:44:42.64 ID:UjsG9exW0
琥珀「何ですか?今の音は」

さっきの音を聞きつけたらしく、パタパタと近寄ってくる琥珀さん。

志貴「ああ、さっき太子さんが足を滑らせて壁にぶつかったんですよ」

琥珀「そうですか。太子さんは大丈・・・。ああっ、あの場所はー!」

太子さんの突っ込んだ穴を見て叫ぶ琥珀さん。
この人はいつも笑顔を浮かべているのだが、心なしか顔が引き攣っている。

琥珀「志貴さん、式様。お願いだから動かないでくださいね。私が太子さんの様子を見てきますので」

そういって穴に入っていく琥珀さん。
向うの様子はここから見えないが、なにやらがさごそと音が聞こえてくる。

志貴「この場合は素直に待つべきなのかな。なんだか嫌な予感しかしないんだけれど」

式「行きたきゃ行けばいだろ。オレはごめんだ」

琥珀「キャー。止めてー。お願いです。あまり激しく動かないでください」

穴の向こうで悲鳴を上げる琥珀さん。何かあったのか。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/15(水) 23:47:15.36 ID:UjsG9exW0
志貴「いわんこっちゃない。大丈夫か琥珀さん!」

待っているようにと頼まれたが言いつけを守っている場合ではない。壁の穴を抜けて中に入る。
目の前には怪しげな謎の空間が広がり、様々な場所に大小無数のコードが走っている。
そのコードの中に太子さんが頭から埋まっているらしい。懸命に足をバタつかせてもがいている。
それを無視してなにやら太子さんの周りを駆け回っている琥珀さん。琥珀さんが悲鳴を上げる要素が見つからない。

琥珀「やや、志貴さん。来てしまったのですか」

志貴「あの、琥珀さん。一体なにをやってるんですか?」

琥珀「ええっと、そうです!今まさにこの人を助けようとしてたんです!
   べ、別に大事な薬品を隠したり重要なデータを別の場所に転送したりなんてしてません」

どうやら太子さんそっちのけで大事な物を隠していたらしい。よく見ると様々な機器や瓶、はては培養試験管らしきものまである。
この屋敷に点在する不思議空間の一つがここのようだ。
ドクロマークのついた怪しげなボタンなどがそこらじゅうにあるが、下手に触らないほうがいいだろう。

志貴「はあ、わかりました。俺が太子さんを引き抜きますから琥珀さんは下がっていてください」

琥珀「引き抜くのが先ですか。仕方ありません。私もお手伝いします。あまり周りの器具には触らないでくださいね。
   何が起きるか分かりませんので。あとここで見たことは口外無用ですよ」

さらりと恐ろしいことが聞こえた気がするが、聞こえなかったことにしよう。
二人がかりで太子さんを引き抜きにかかる。しかし太子さんは何かに引っ掛かっているらしく、なかなか抜けない。

琥珀「よいしょっと。志貴さん、あとちょっとみたいです。一気にやっちゃいましょう」

志貴「それ、もう一息だ。がんばって太子さん」

太子「ぬふぅーもげる、もげちゃう!ん、なにこのふにふにしたもの」カチッ

琥珀「あ。だ、ダメです!そのスイッチは・・・」

勢いよく引っこ抜ける太子さん。同時にピッ、という何かのスイッチが入った音が聞こえた。
突如震えだす屋敷。響き渡る轟音。この部屋にある赤いランプが大きな音を出して回転している。
突然”えまーじんしー、地下帝国を破棄します。総員、速やかに退避せよ”とアナウンスが流れだす。

志貴「な、何だ?地震か?」

立っていられないほどの揺れと騒音の中、頭を抱えながら立っている割烹着の少女。
"ああ、地下帝国が、地下帝国がー"という言葉が聞こえてくる。
震えが停まる。皆が立ち上がる中、一人崩れ落ちるように座りこむ少女。あはは、と乾いた笑いを洩らしている。

志貴「琥珀さん、まさかまた何か・・・」

遠くからコ〜ハ〜ク〜と地の底から響くような声がする。まずい、鬼が来る。

式「何だ、この禍々しい気配は」

志貴「やばい、にげるぞ。こっちだ」

太子「ちょっままって、髪!それ髪、髪だからそれ。ハゲる、ハゲちゃうってイヤー!」

太子さんをひきつれて謎の空間から逃げ出し、近くの窓から脱出する。俺たちが外に逃げ出したのとほぼ同時に穴を視認する鬼。
鬼は紅い髪で灰になった琥珀さんを引きずり出してどこかへ行ってしまった。
さようなら琥珀さん。あなたのことは忘れません。

95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/15(水) 23:50:57.49 ID:UjsG9exW0
式「あそこには人外しかいないのか。おまえもつくづく退屈しないな」

恨めしそうな表情でこちらを睨む両儀さん。うう、ゴメンナサイ。こっちも生き延びるのに必死なんです。

式「で、これからどうする」

志貴「どうするって言われても・・・」

必死に逃げてきた為ここがどこの辺りかわからない。見覚えはあるのだが。
子供の頃によく見た道のような気がするが、どこだったっけ。
そうか。ここは有間の家の近くか。せっかくここまで来たんだ。顔を出すくらいはしておこう。

志貴「式さん。ちょっと知り合いの家に挨拶に行きたいんだけど、いいかな?」

式「あてがあるわけじゃないんだ。別にかまわないよ」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/02/15(水) 23:55:46.64 ID:UjsG9exW0
短いですが今日はここまでです。

書き溜めがあると凄く楽でした。次は月曜までに書けると思います。
尚、一日の終わり毎にケミカル研究室なるイベントの開催を予定しています。
夜が終わるまでだ少しありますが、よければ気長にお待ちください。

では。

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/16(木) 09:47:32.00 ID:4liFNGcM0
琥珀さんが死んだ!
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/16(木) 18:03:32.00 ID:cAdPI6tgo
さすが太子wwwwwwwwwwwwww
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 11:52:58.28 ID:aVw2LrTK0
この人でなし!
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/18(土) 19:46:08.16 ID:qPOwmDVT0
有間の家に向かうと決めた途端、不審な気配を感じる。周囲を見回しても気配の出所は判らない。
しかし、気配は有間の家に近づくにつれどんどん強くなっている。
目的地まであと少し、というところで両儀さんが足を止めた。誰かが潜んでいることに気付いたらしい。
とするとこの襲ってこようとする気配もどうやら気のせいではないようだ。

志貴「太子さん止まって。あそこに誰かいる」

式「早速か。アタリだといいんだけど」

志貴「そこにいるのは誰だ!出て来い」

奇襲が失敗したと気付くとそいつは素直に姿を現した。出て来いと言われて出てきたのはパンダ。
どこからどう見てもパンダだ。・・・なんでパンダ?
そもそもこんな所にパンダが居ることがおかしい。二本足で立っていることから見ても多分ぬいぐるみだろう。

式「あんなヤツに狙われてるのか。お前変なのと知り合いなんだな」

志貴「いや、俺の知り合いにこんな変なのはいないかな。というかいても関わりたくありません」

有彦、じゃないな。あんな馬鹿な真似をするほど暇ではないだろうし、何より背丈が違う。
しかし出てきたままの姿勢で動かないパンダ。不気味だ。厄介ごとは無視するに限る。
しかしこっちが右に行こうとすると右に、左に行こうとすると左にずれてくる。
道幅はそこまで狭くないものの、さすがに目の前に立たれると通ることができない。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/02/18(土) 20:06:17.59 ID:2UaWOruu0
師匠!
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/18(土) 20:13:58.87 ID:qPOwmDVT0
志貴「あの、通りたいので通してもらえませんか?」

「・・・・・」

返事はない。返事はないが、こちらが通ろうとすると道を塞いでくる。
反対側に移動してもしつこくこちらの動く方についてきて道を塞いでくる。
しかしこのパンダに近づくのは危険だと直感が告げている。迂闊に近寄ることはできない。

太子「パンダだパンダ。笹たべるかな?あ、雑草しかないや・・・」

志貴「待て、不用意に近づくな!」

軽い足取りでパンダに近づく太子さん。次の瞬間、へぶほぉ!と情けない声を出して吹き飛ばされる。
綺麗な放物線を描いて地面に落ちていく。あの高さからから落ちるのはまずいんじゃないか。
手を伸ばすもここからじゃ間に合わない。しかし両儀さんは落下地点にすでにまわりこんでくれていた。

志貴「このままじゃまずい。式さん!」

式「任せろ」ドゴン

太子「オブパッ!」

志貴「蹴ったー!」

いや、確かに落下の衝撃は消えました。おかげで墜落死?しなくて済んだみたいだし。
でもそれ以上の衝撃をあたえるのはどうかと思う。死んだかな?
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/18(土) 20:40:38.87 ID:qPOwmDVT0
どうやら太子さんは無事らしく少しした後に何事も無かったかのように立ち上がった。
それどころか両儀さんに文句を言っている。なんであれで生きていられる?

式「で、どうするのアレ?なんか増えてるみたいだけど」

志貴「増えてるって、何が増えてるんだ?」

太子さんの言葉を無視してこっちにきた両儀さん。増えてるとは一体何のことなのか。
振り向くと、いつの間にかパンダは地面に一本の線を引きその前に仁王立ちしている。
どうやらここから先は行かせないという意思表示らしい。
その少し前にはなぜか都子ちゃんが立っている。増えてるって都子ちゃんのことか。

都子「師匠、私も手伝います!ここから先は一歩も、って。お兄ちゃん!?なな、何でこここんなところに・・・」

志貴「あ、都子ちゃん。久しぶり。おじさん達元気にしてるかな?」

そういえば都子ちゃんに会うのも久しぶりだ。いつもどおり元気にしてるみたいで安心した。
だけどなんだか様子がおかしい。顔は赤く、体は小刻みに震えている。
しかし顔を伏せているので表情を読み取ることができない。

志貴「顔が赤いけど、どうかしたのかな?熱はないよな」

都子「ひえっ!?」

額に手を当ててみるが熱があるというわけではなさそうだ。しかしますます顔が赤くなっている。

志貴「なんともないようだけど・・・。あれ、少し熱いかな。都子ちゃん大丈夫?体調が悪いなら」

都子「あわ、あわわわわわわわわ。お、おおおお兄ちゃーーん!!」

志貴「うお、危なっ」

太子「ウギャアァァーーー!!」

いきなり突進してきた都子ちゃん。間一髪のところでタックルは回避できたが、後ろにいた太子さんに直撃している。
そのまま一緒に十メートルほど吹き飛ぶ二人。小さい体のどこからあんなパワーが出てきたのか。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/18(土) 21:00:43.48 ID:qPOwmDVT0
都子「痛ったたた。失敗しちゃった。あれ、オジサン誰?」

太子「子供に吹き飛ばされた私を笑うがいいさ。あと私はおじさんじゃない。お兄さんだ」

都子「あっ、そうだ!そんなことよりお兄ちゃんは?」

太子「ギエー!痛い、痛い!踏んでる!顔踏んでるから!」

都子「あ、踏んじゃった。ごめんなさい」

太子「ま、待てコラー!」

都子「なによ。私急いでるんだけど」

太子「私は聖徳太子だぞ。偉いんだぞ。ちゃんと謝れ。もっと敬え!主にこのすばらしい容姿や香りについて」

都子「あーもううっさい!変なジャージ着て大声出さないでよ。ちゃんと謝ったじゃない。
   せっかくお兄ちゃんと話せるチャンスなんだから邪魔しないで」

何か話しているようだが、ここからでは聞き取れない。しかし身振り手振りを交えてなにやら語り合っている。
体を使ったコミュニケーションはただ話すだけよりも仲良くなるのが早いという話は本当だったのか。
出会ったばかりの太子さんと都子ちゃんがあんなに仲良くなっている。
そんなことを考えているうちに二人の会話はますます熱くなっているみたいだ。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/18(土) 21:31:35.03 ID:qPOwmDVT0
都子「うるっさいこのバカジャージ!」

太子「バ、バカジャージ?」

都子「そうよ!なんでお兄ちゃんと話すチャンスを邪魔するのよこのバカ!」

太子「ムキーーー!!子供といえど数々の無礼、もう許せん!くらえ、ライトニング米沢センセーション!」

都子「なんの、ちょうしんちゅー!」

太子「ウボォ!私の一番お気に入りの寝技が破られるとは。両儀さん受け止めてー」

式「そら」ゴシュ

太子「グハッ!た、たしかに受け止めてとは言ったけど、足で受け止めないでもらえる?」

式「気が向いたらな」

会話がエキサイトしてきたのか、太子さんが都子ちゃんに飛びかかり迎撃された。
吹き飛ばされた太子さんのお腹に両儀さんの放つ鋭い回し蹴りがクリーンヒットする。
そのまま地面を滑っていく太子さん。さっきから太子さんへの風当たりが強い気がするけど、気のせいだろう。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/18(土) 21:52:52.58 ID:qPOwmDVT0
その後も太子さんが何か叫んで都子ちゃんに飛び掛っては撃退されるという光景が続いている。
その繰り返しに飽きたのか、両儀さんがこちらにやってきた。
都子ちゃんは太子さんと遊んでいるから大丈夫だろう。

式「お前が行きたい所って、あのパンダの居る先にあるの?」

志貴「そうなんだ。ここまで来たのならおじさん達に挨拶していきたいんだけど」

ふーん、と気だるそうな返事を返してくるが、両儀さんはパンダを見つめたまま動かない。
こちらを睨んだまま微動だにしないパンダ。一体何の恨みがあるのか。パンダに恨まれる出来事なんておきてないぞ。
そのまま睨み合うこと数秒、両儀さんはパンダに興味が無くなったようで突然踵を返した。

式「アイツとやるのは面白そうだけど気が乗らない。オレ向こうに行ってるから終わったら呼んでくれ」

そう言って両儀さんはどこかへ行ってしまった。
パンダは依然として馬鹿にした顔でこちらを見てでいる。顔は見えないけれどそんな雰囲気が漂っている。
具体的に言うと”だっさ、振られてやんの”という感じの雰囲気だ。振られたわけではないが、なんだか無性に腹が立つ。
そこまで馬鹿にされて黙っているほどお人よしではない。

志貴「仕方ない。どうしても退かないなら、力ずくで通してもらうぞ」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/18(土) 22:15:59.85 ID:qPOwmDVT0
志貴「痛てて、何でこんな使い手がこんな所にいるんだ」

拳を交えること数十回。こちらの攻撃は一度も当たることはなく、パンダを退かせることはできなかった。
着ぐるみを着ている分相手の方が動きは遅くなるはずだが、相手の動きは自分の動きを上回っている。
まるでこちらの動きを初めから知っているかのような感じだった。

志貴「このっ、何で邪魔をのわぁ!?」

もう一度組み伏せようとした途端、突如頭に衝撃が走る。コーンと、ものすごくいい音が聞こえた。
その後に聞こえてくる地面を転がる空き缶の音。なんでこんなところに空き缶が?

式「おい、いつまでやってんだ。もう昼だぞ」

振り向くと不機嫌な顔つきで何かを投げ終えた格好をしている両儀さん。どうやら空き缶を投げたのは彼女のようだ。
後ろからとはいえ、飛んでくる空き缶にすら気付けないくらいに集中していたらしい。
時計を見てみると時刻は12時半を過ぎている。今お邪魔しにいくのはまずいか。

志貴「ああ、もうそんな時間なのか。癪だけど有間の家を訪ねるのは諦めよう」

式「ったく、オマエもいつまで遊んでるんだ。もう行くぞ」

太子「私は泣いていない、これはただの心の汁です・・・。あと負けてはいない、ただ心が折れただけ・・・」

倒れている太子さんを回収して元来た道を引き返す。
短い腕を組み道路の中央で仁王立ちしているパンダとその隣で構える都子ちゃん。
結局、謎のパンダに邪魔されて有間宅に行くことはできなかった。

都子「見たか!あたしのコンフー!」

後ろからは都子ちゃんの雄叫びが聞こえてくる。まあ都子ちゃんの元気な姿を見れただけでよしとしておこう。
しかしあのパンダ、何者なんだ。どこかで見た気がするがどうも思い出せない。
それに体術には自信があったが、まさかそれが通用しない相手がいたとは。
最後まで声も出さなかったから誰だかわからないけど、できれば二度と会わないよう願いたい。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/18(土) 22:26:58.69 ID:qPOwmDVT0
式「色男が二人か。毒牙に引っかかったヤツが哀れだな」

志貴「ん?式さん、今何か言いました?」

式「別に。それより昼飯はどうするんだ。屋敷に戻るの?」

太子「体の節々が痛いしお腹が減ったからあんまり動きたくない」

恐らく今朝の一件はまだ片付いていないだろう。それどころか食事を作れる人が生きているかどうかすら危うい。
ここから屋敷に戻るよりも街でなにか食べた方が早くていいだろう。

志貴「屋敷に戻っても多分なにもないかな。どこかで昼食を食べましょう」

二人は同意してくれたようで無言で後についてきている。
天気もいいし、やはり休日は町に出るに限る。さて、どこに行こうか。













この時、これが地獄の始まりだったとは知る由も無かった。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/18(土) 22:40:01.34 ID:qPOwmDVT0
次回予告

neco「謎のジャージを連れて異世界に逃げ込んだツンギレ。幹也っちをおいてまさかの他の男とデェト中!?

   そこで待っていたのは数々の強敵(とも)との出会い、そして別れ。

   その中で式は立派なヤンキルとして成長し、やがて自分の中にある青さと絶壁さを知り、絶望する。

   行く先々でスタンバッっている謎のツインテール型薄幸吸血鬼。彼女は物語の中に加わることができるのか?

   まあぶっちゃけ無理っしょ。どうあがいてもさっちんだし。出番が無いのがアイデンティティだしにゃ。

   そんなことはつゆ知らず、火花を散らしぶつかり合う脇役共。主に知得留とロックなマン。青と銀。銃と盾。

   リボルビング・ステ○クとNi○h!果たして勝つのはどちらににゃのか!

   次回、天猫突破グゥレイト!キャット 俺のドリルが天を穿つ!

   続きはMBAACCで。あ、練習用のサンドバッグには、アタシをお使いください」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/02/18(土) 22:43:14.61 ID:qPOwmDVT0
今日はこれで終わりです。

次回予告は殆ど嘘です。次回はラブラブデートの予定です。
次は水曜までに書きたいとおもいます。

では。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/19(日) 23:29:57.28 ID:GJ5sIT3AO
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 12:28:13.83 ID:WOAoLei50
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/20(月) 19:47:13.24 ID:Vao84a7mo
式と太子のラブラブデートか・・・胸熱!
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/20(月) 20:02:19.25 ID:LRGcV8Tc0

太子絶好調だな
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/21(火) 10:24:06.92 ID:Ovr7fzyw0

さっちんェ・・・
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/22(水) 16:52:46.50 ID:wprIEmnQ0
どこか昼食をとれる場所を探して街を彷徨い歩く。
辺りには人があふれ返っており、人や車など様々な物が動いている。この喧騒は嫌いではない。

志貴「二人とも、どこか行きたい所や食べたい物あるかな?」

太子「どこでもいい、はやくどこかで休みたい」

式「オレも。そもそもこっちのことはよく知らないから任せる」

志貴「そっか、じゃあどこか適当な店にでも・・・」

「あ、志貴だ。志貴ー!やっほー!こっちこっち!」

「おや、遠野君ではありませんか。こんなところで会うなんて奇遇ですね」

こちらを見つけて別々の方角から近寄ってくる女性。まずい。この二人がカチ会った日には何が起こるか判らない。
それに今は何かと複雑な事情を持つ二人と行動している。これ以上事態が複雑になるのは勘弁してもらいたい。
幸い両儀さんと太子さんは二人から死角になっているためまだ見つかっていない。
急いで人ごみの中に逃げようとするが、二人はもうそこまでやって来ている。
運悪く信号は全て赤。逃げようにも道の両方からそれぞれ近づいてくる二人。

志貴「まずい、二人とも隠れて!」

式「なに急に言い出すんだ、ってどこ触ってんだよお前。おい、離しやが・・・」

志意「ごめんなさい、ごめんなさい!後で謝ります!とにかく急いで隠れて!」

太子「むぎゅ。やめて潰れる、中身が出る、でちゃ・・・」

力任せにドアを閉める。両儀さんと太子さんには悪いが、急いで近くにあったトラックの荷台に二人を強引に押し込んだ。
少し遅れて現れる二人の女性。どうやら隠蔽は間に合ったらようだ。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/22(水) 17:03:45.73 ID:/wplKSoWo
おいこらどこを触ってんだ眼鏡
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/02/22(水) 17:15:43.78 ID:yyRLwmXI0
トラックが発車して離れ離れになっちゃうフラグだなww
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/22(水) 17:20:34.78 ID:wprIEmnQ0
志貴「や、やあ。アルクェイドに先輩。こんなところで会うなんて奇遇だなあ」

アルク「うん、こんなところで会うなんて偶然だね志貴。それにこっちは・・・ちっ、なんだシエルか。
    あれ、そういえば志貴さっき誰かと一緒にいなかった?」

シエル「遠野君こんにちは。そして人に会うなり舌打ちとは相変わらずいい度胸ですね、この腐れ吸血鬼。
    そういえば遠野君、先ほどここで何かしていたようでしたが、何をしていたのですか?」

志貴「いや、誰もいないし、何もしていない。俺は朝からずっと一人で町を歩いていた。
   そしてたまたまここを通りかかっただけだ。別に誰も一緒に居ないし何もしていない」

アルク「怪しいわね。何か私に隠し事でもしてるんじゃないの?」

シエル「確かに今日の遠野君は少々変ですね。何か後ろめたいことでもあるんじゃないですか?」

鋭い。これが女の勘って奴なのか。二人はあたりに不審な物がないか探している。
いくらトラックの中にいるとはいえ、少しすれば両儀さんたちは外に出てくるだろう。
となるとこの近くにいることは安全とはいえないか。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/22(水) 17:48:14.37 ID:wprIEmnQ0
志貴「二人とも、せっかく会ったんだ。とにかくここから移動しないか?
   いつまでもここにいたら通行の邪魔になる――」

突如後ろからキンッ、と鋭く何かが斬られた音がする。振り向くと、そこに立っていたのは先ほど隠れてもらった二人。
後ろには荷台ごと真っ二つにされたトラックが一つ。あれ?なんで?トラックって簡単に割れる物だっけ?
もしかしてナイフを持っているこのお方がトラックを真っ二つにしたのかしら?

式「人をあんな汚いところに乱暴に押し込めやがって。覚悟はできてるんだろうな、志貴」

志貴「ま、待って式さん。ゴメンナサイ。悪かったです。これにはいろいろと事情がありまして・・・」

ヤバイ。何かわからないけど相当ヤバイ。これ以上彼女に何かすると俺の首が飛ぶ。
今まで様々な化け物や人を見てきたが、あれを超える殺人鬼はいないと断言できる。

アルク「やっぱり何か隠してたのね。ちょっと志貴。この女何なの?私知らないんだけど」

シエル「少し見ない間にまた新しい女性ですか。全く、遠野君の手の早さにはあきれて物も言えません」

出会うなり両儀さんを指差すアルクェイド。先輩もあまりよい表情をしていない。
二人の言葉に不快気に眉を顰める見せる両儀さん。

式「なに?もしかしてオレ志貴の女だと思われてる?」

シエル「おや、違うのですか。でも名前で呼びあうなんて、ずいぶんと親しい間みたいですが?」

式「お前等には関係ない。それに誰をどう呼ぼうがオレの勝手だろ」

太子「初めまして。私は聖徳太子といいます。よろピクおねがいします」

睨みあう三人。三人の間には一触即発の空気が漂っている。その隣で何やら自己紹介をしている太子さん。
・・・多分キメてるつもりなんだろうけど、正直いつもとあまり変わらない気がする。

太子「あれ、もしかして私無視されてる?」

志貴「でしょうね」

太子「で、でしょうねって君・・・」

だがこの空気を無視して話しかけたことは尊敬に値する。やっぱりこの人大物なんじゃないか?
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/22(水) 18:09:09.25 ID:wprIEmnQ0
少し辺りが騒がしい。周囲を見てみると、トラックの騒ぎを聞きつけたのか、遠巻きに人が集まりだしている。
そして彼らの興味は両断されたトラックから目の前の話し合いに移ったらしい。
天下の大来で目立つのはさすがにマズイ。決死の覚悟で二人と両儀さんの間に割ってはいる。

志貴「まあまあ、三人とも落ち着いて。少し落ち着いて話し合ったらどうかな?」

アルク「なによ、志貴はその女を庇うっていうの?」

志貴「そうじゃない。そうじゃないけど、ここで揉めるのはまずいだろ。周りに人も集まってきてるし・・・」

シエル「そうですね。人目を集めるのはよくありません。では単刀直入に聞きます。
    遠野君、貴方と彼女はどういう関係なのか、説明してくれますか?」

アルク「そうね。志貴がどっちの味方かよりも、まずはそこのところをはっきりさせとかないとね」

志貴「ちょ、ちょっと待て落ち着け二人とも。俺と彼女はそんな関係じゃない。大体まだ会ったばかりなんだ。
   ほら、式さんからも何か言って・・・」

振り向いた先には誰もいない。一人残った太子さんだけがポツンと立っている。

志貴「あ、あれ。式さん?どこに行ったのかな・・・」

アルク「あれ?さっきまでそこにいたわよね?」

シエル「ええ、確かに先ほどまでそこにいたはずなのですが・・・」

太子「ははは、彼は妹子の分身ですから、今頃どこかで平たくなっているでしょう。
   そんな妹子は放っておいて、これから私と一緒にお茶でもしませんか?」

シエル「お茶って。貴方、今どういう状況かわかって言っているんですか?今はそれどころじゃないでしょう」

太子さんの言葉を聞いたアルクェイドはピーン、と何か閃いたらしく笑っている。
その笑いにはどことなく邪悪な物が含まれている気がする。

シエル「それに今は遠野君とあの女の関係を・・・なんです真祖、引っ張らないでください」

アルク「いいからいいから、ちょっとこっち来て」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/22(水) 18:36:24.91 ID:wprIEmnQ0
先輩を連れて少し離れていくアルクェイド。何やら二人で内緒の話をしているらしい。

アルク「シエル、あの男のあの行動、きっとシエルをナンパしてるのよ。よかったじゃない。
    シエルにとってナンパって一生に一度有るか無いかの機会でしょ?折角だし付き合ってあげたら」

シエル「冗談じゃありません!お断りです。なんであんなヘンテコジャージ男と一緒にお茶なんてしなきゃいけないんですか。
    私にはこれから遠野君と一緒に買い物するという予定があるんです。貴女が付き合ってあげればいいじゃないですか」

アルク「嘘ばっかり。志貴とはさっき偶然会ったんでしょ。志貴は今日空いてません。志貴は今日私と遊ぶんだもーん。
    それに私だってあんなダサイ顔と服の人とお茶なんてイヤよ。おまけに何だか臭そうだし」

シエル「貴女はどうせいつも一日中暇なんでしょうから、あのだっさいジャージ姿の男がお似合いです。
    遠野君は私に任せて、家に帰ってお揃いのダサいジャージでも着てきたらどうですか?」

アルク「なによ。シエルの法衣だってヘンテコなくせに。志貴は私に任せてイロモノヘンテコ同士仲良くやってきたら?」

シエル「誰がイロモノヘンテコ法衣だ誰が!何で私がわざわざハズレを選ばないといけないんですか!」

アルク「ヘンテコなのは本当だとして、アレがハズレってのには同意かな。隣の志貴と比べると月とすっぽんだし」

シエル「いいえ、違います。アレと遠野君は月とすっぽんではなく、地球とミジンコくらいの違いがあります。
    もしくは太陽と産業廃棄物が妥当でしょう」

アルク「まああの産業廃棄物はシエルが引き取ってよね。そうすれば邪魔者はいなくなって万事解決なんだし」

シエル「何で私がアレを引き取る必要があるんですか!彼女が消えた今、残る障害は貴女だけです。
    なので早急に消ええてください。遠野君は私が貰います。貴女には邪魔なあのミジンコを差し上げましょう」

アルク「イヤよ。志貴は私が貰うの!シエルはあの廃棄物もってどっか行きなさいよ!」

シエル「いいえ遠野君は私のものです!貴女はさっさとミジンコ連れてとっととジャージでも買いに行きなさい!」

離れたところでくり広げられる恐ろしいガールズトーク。二人とも、声、聞こえてます。
こっちまで聞こえるのなら離れた意味がないじゃないか。ふと隣を見ると、太子さんが唇を噛締めてプルプル震えてる。
二人とももうやめて!とっくに太子さんのライフはゼロよ!・・・あれ、何で俺まで涙が流れているのかな?
しかしこの話の流れは少しまずい。これ以上ここにいると俺を仲良く半分こ、なんて事態になりかねない。
二人が話している間に逃げよう。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/22(水) 19:00:51.06 ID:wprIEmnQ0
志貴「ふう、ここまで来れば大丈夫だろう。二人には悪いけどあの場は逃げるしかなかったもんな。
   さて、まずは式さんを探さないと」

シエル「なるほど。逃げた、ということはやぱり彼女とはそういう関係なのですね」

志貴「まあ、端から見ればそういうことに見えちゃうのかな、ってなんで先輩がここに!?」

アルク「ふーん。私達を放っておいてあの女を探すんだ。志貴ってば、私がいるのにやっぱり他の女に手を出してたんだ」

志貴「なっ、アルクェイドまで。いや待て二人とも。落ち着け。それは誤解だ。
   確かに逃げたのは事実だけど彼女とは何もないんだ。本当なんだ、信じてくれ」

二人から逃げたことが裏目に出た。そもそも普通の人間がこの二人から逃げられるはずがなかった。
それにどうやら要らぬ誤解を招いてしまったらしい。こちらの話も聞かずじりじりと詰め寄ってくる二人。
徐々に後ろに追い詰められる。ついに背中が壁にあたり、これ以上下がることができなくなってしまった。
獲物を構えて佇むアルクェイドと先輩。二人とも表情は無い。

アルク「ねぇシキ、何か言ってよ」

アルクェイドは言った。遺言を聞いてあげる、と。

志貴「誤解だ・・・本当なんだ・・・信じて、くれ―――」

俺は二人にではなく、今襲いかかってくるであろう死そのものに言ったのだろう。
二人は微笑う。

――「私は、アナタを殺したい」――

二人の声が聞こえる。死刑執行の大鎌が天高く振りかざされた。
ああ、終わった。サヨウナラ、俺。



式「なにやってんだ。昼飯食べるんじゃなかったのか」

アルク・シエル「っ!?」

大鎌が振り下ろされる寸前、二人の背後に突如現れた両儀さん。助かった。ナイスタイミングだ。
二人ともすぐ背後に立つ両儀さんに気付けなかったことに驚いている。

志貴「そうだ!今から昼食を食べに行くんだった!アルクェイド、先輩、悪いけど先約があるから今日はこれで」

そんな約束はしていないが、急いでこの場を離れる必要がある。
二人が驚いている間に両儀さんと、近くで打ちひしがれていた太子さんの手を取って急いでその場を後にした。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/22(水) 19:15:25.92 ID:wprIEmnQ0
近くにあった喫茶店に入る。
時間は昼時だが、そこまで混んでいなかったので空いている席に座ることができた。
座ることはできたのだが――

式「ここアーネンエルベだよな?何でここにもあるんだ」

志貴「うん、たしかにここ「ええそうです。ここはアーネンエルベという名前の喫茶店です」

太子「隋の都よりも発展しているな。よし、このことを妹子に自慢してやろう」

志貴「あ、あはは。隋ってそ「隋って昔の中国の都の名前よね?あなたおもしろい冗談言うのね」

式「内装も似てるけど、メニューまで似てるとは驚いたな」

志貴「あれ、そうな「他の場所にもアーネンエルベがあるのですか。今度一緒に行ってみたいですね、遠野君」

アルク「あ、そんなのダメよ。志貴は私と行くの!ね、志貴?」

どうしてこうなった。
あの後、二人は無言でついてきて、当然のように同じテーブルに座った。
二人がついてきたことについて聞いても返事は無く、ただただ笑顔だけが返ってきた。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/22(水) 19:39:32.00 ID:wprIEmnQ0
「ちかちゃん、おのお客さんたち怖いよ・・・」

「あそこは後回しにしよう。死ぬのはごめんだ」

席の周りには異様な空気がたちこめており、誰も近づこうとしない。
アルクェイドと先輩は言うまでも無く美人である。居るだけで当然人々の視線を集めてしまう。
その美人に囲まれているはずなのに、テーブルの周りには触れるだけで腐ってしまいそうなどす黒い空気が漂っている。
この現象は以前、先輩が説明してくれた”術者の心象を具現化する”という固有結界という名の術式の類だろうか。

シエル「どうしたんです遠野君。私は昼食をとりにたまたまこの店に入っただけです。
    どうぞ気にしないでください」

アルク「そうそう。たまたま混んでてたまたま相席になっただけじゃない。これは仕方ないわよね」

式「たまたまじゃなくついてきただけだろうが。空いてる席は他にもあるだろ」

二人は両儀さんの言葉が聞こえないらしい。笑顔でこちらを見続けている。怖くてその笑顔を直視できない。
確かに店は忙しそうだが座れるの空席はいくつかある。というよりできている。
この空気にあてられた周りの客が帰っていっている。ウエイターも近寄ってこないからテーブルには水すら無い。
必死にカウンター内を見るが、店員の二人は目が合わないように顔を背けている。

志貴「まあまあ式さん。いいじゃないか、食事は皆で食べた方がおいしいし。皆もそう思うだろ?」

みんな一緒に仲良くしよう、という思いやりのこもった言葉のはずだが、誰も反応が無い。
それどころか空気はますます黒いモノになりつつある。このままこの空気が重くなることは精神衛生上よろしくない。

志貴「あ、あのさ。みんなお腹すいただろ。はやく選ばないとランチの時間が・・・」

多少強引でも話題を変えるしかない。周りには目に見える程の空気の壁ができつつある。
幸い術式というか重い空気は立ちこめたばかり。今ならまだ何とかなるはずだ。
二人ともまだ俺の言葉が聞こえるらしく、メニューのほうに意識を向けてくれた。

アルク「それもそっか。どれにしようかなー」

シエル「私はこれにします。あなた方は?」

太子「私は今朝屋敷で食べた食事のほうがいいかな。あれほどおいしい物は食べたことがない」

――術式再起動。中途詠唱破棄、最終工程省略。術式の完全開放を宣言。命令 目標の解析及び殲滅――

二人の座っている方から聞こえてくる謎の声。とたんに噴出す瘴気。
辺りは闇に包まれる。どうやら途中の工程や最終段階をすっ飛ばして術式は起動したらしい。
急速に辺りに満たされるどす黒く甘ったるい空気。今やこのテーブルは完全に外界と断絶された。
この状況でそんなことを言うなんて太子さん、アンタ一体どんな神経してるんだ!
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/22(水) 19:57:43.24 ID:wprIEmnQ0
見ほれるほど優雅な動きでメニューを置く二人。その顔は依然として笑みが貼りついている。

アルク「ねえ貴女、琥珀の料理おいしかった?」

式「ん?まあ悪くはなかったな。美味かったんじゃないのか」

シエル「なるほど。つまりこの方も一緒に遠野君の家で朝食を食べた、ということですか。
    両儀さん、一つ伺います。貴女と遠野君はどのような関係なのですか?」

式「オレと志貴は何でもないよ。ただ一つ屋根の下で暮らすことになっただけ」

志貴「ぶっ!?ちょ、ちょっと待ってし「へー、そうなんだ。ねえ志貴、本当なの?」

シエル「どうやら幻聴が聞こえたみたいですね。遠野君、今この方はなんと言ったのですか?」

式「なんだよ、事実を言ったまでだ。なあ?志貴」

何故こちらに意見を求めるのか。あと二人ともその笑顔はやめてください。
確かに一つ屋根の下で暮らしたことは事実だが、たった一日。昨日だけだ。それにやましい事は何もしていない。
両儀さんはアルクェイドを事を気にいらないのか、わざと棘のある返事をしている。
その棘が刺さるのは俺のほうです。後隣の先輩にも飛び火してます。
このままだと火傷どころか八つ裂きになった後串刺しにされてローストされてしまう。

志貴「待て、落ち着け。二人とも、落ち着け。冷静に。冷静に話し合おう。
   これにはいろいろと複雑な理由がありまし――てっ!?」

突然体が動かなくなった。どうやら二人から魔眼をかけられたらしく、顔を二人から逸らすことができなくなった。
顔の向きだけが固定されただけで表情と声は自由に動かせるようにしているところが恐ろしい。
自分は一体今どんな表情をしているのだろうか。二人は笑顔でこちらを見たまま微動だにしない。
両儀さんはそのことに興味が無いようで別の方向を向いている。
太子さんに至ってはよだれをたらしながらメニューを凝視している。
状況を整理しよう。目の前には攻撃態勢の無敵艦隊が二つ。対するこちらは孤立無援、残存兵力はゼロに等しい。


誰でもいい、誰か助けてください。

127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/02/22(水) 20:00:00.19 ID:wprIEmnQ0
今日はここまでです。

次回は日曜までには書けるとおもいます。

では。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/23(木) 10:47:52.14 ID:DF5QP+sAO
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/23(木) 10:51:00.85 ID:+QtBmhA80

ラブラブ、だよ、な?
それはそうともう少し一度に投下する文章量減らしてくれませんか?
ちょっとおおいかも
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/24(金) 00:03:26.62 ID:Z8+qVmevo

少ないよりはマシだ
作者の書きやすいペースで書けばいい
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/02/26(日) 16:48:32.26 ID:Q9zfdWIv0
ごめんなさい。用事が出来ました
書くのを火曜まで待ってください
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/28(火) 23:32:07.62 ID:vxP905Bq0
重苦しい空気を切り裂くように突如電子音が響いた。これは携帯電話の音か。
アルクェイドは携帯電話なんてもの持っていない。俺はそんな高価な物は持たせてもらえない。
太子さんと両儀さんの二人は仮に持っていても使えないだろう。となると先輩しかいないか。

志貴「シエル先輩、電話みたいだけど」

シエル「いえ、私のものではありません」

志貴「え、それじゃあ一体誰が」

式「ん?なんだ、オレのか。少し席外すから」

そう言うなり両儀さんは外に出て行った。そういえば今朝の話の中で彼女が電話で話をしたと言っていた。
公衆電話かなにかと思っていたが、まさか携帯電話だったとは。携帯電話には確かリダイアル機能というものがあったはず。
それで電話をした相手にかけなおすことも出来るし、電話番号だって知ることが出来る。
なぜ両儀さんはその事を話してくれなかったのか。もしかしてまだ何か隠していることでもあるんだろうか。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/28(火) 23:49:00.70 ID:vxP905Bq0
志貴「ちょっと式さんの様子見てくる。三人ともここで待っててくれ」

アルク「あ、志貴。待ちなさいよ。まだ話は終わってないんだから」

二人の気がそれている内に拘束から抜け出して外にでる。店を出てすぐの場所で両儀さんを見つけることが出来た。
まあ太子さんと離れることができないからそう遠くへは行けないか。

アルク「志貴。あの女とどこに行くつもりなの」

志貴「ア、アルクェイド。来るなって言っただろ。何で来たんだよ」

アルク「なによ。私がついてきたらなにか都合の悪いことでもあるの」

シエル「そうです。私達がついてくると都合が悪い、ということはないですよね。
    電話があったというのはブラフで、二人だけで抜け出すというわけでもないでしょうし」

志貴「先輩まで。だから何で来たんだよ。二人とも待っててくれって言ったじゃないか」

この二人が来たのは予想外だが、両儀さんの後をつけるのを止めるわけにはいかない。
ここで説明する時間もないし連れて行くしかないか。それに気づかれてしまった時はその時に考えよう。

志貴「仕方ない。ついてくるのはいいけど、彼女に見つからないよう二人とも出来るだけ静かにしていてくれ」

両儀さんの方に目をやると、人目を避けるように路地に入っていった。
彼女に見つからないように少し離れた場所から観察する。見ると両儀さんは左腕の袖を捲っている最中だ。
そのまま左腕を露出させ、二の腕の辺りから何かを取り出した。ん?二の腕って何かを入れるスペースなんてあったっけ?

アルク「うっそ!?何アレ!」

志貴「しーっ!静かにしろ!」

腕の中に何かを入れるスペースがあっただけでも驚いたのに、そこから有線電話らしき物が出てきた。
しかも式さんは何のためらいも無くその電話に出ている。
彼女、どこかの悪の組織に捕まって改造でもされたのか?
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/29(水) 00:03:00.48 ID:BwYjqQEL0
式「トウコか」

「・・・・」

式「いるんだろ。返事しろ」

橙子「・・・ちっ。まだ終わってないのか」

式「舌打ちとはまたずいぶんだな。こっちだって遊んでるわけじゃないんだけど」

橙子「いつまで続くんだまったく。いいか、こっちの言う事を黙って聞け。一々確認するのは面倒なんでな」

またしてもこちらの話を聞かずに喋りだす。昨日の会話も橙子が一方的に喋っていた。
もしかしてこっちの言葉は伝わっていないのか。

式「おい、いいかげんこっちの話を聞け。もしかして聞こえてないの」

橙子「聞こえている。聞こえているから黙っていろ。前に言っただろう、お前と話すと疲れるんだよ。だから黙っていろ。
   ・・・今まで伝えたこと以外に話すことはないはずだろう。くそっ」

式「オマエもしかしてケンカ売ってる?」

橙子「反動も伝えた、鍵も伝えた、抑止力も伝えた。術式もリンクも跳躍も干渉も全て伝えたはずだ。
   何だ?何が欠けている?」

そういって会話は途切れた。どうやら言葉は伝わっているが理解する気はさらさら無いらしい。
一方的に喋ったと思えば突如無言で考えはじめるなどどう見ても普通ではない。もしかして精神疾患でもあったのか。
橙子の二重人格は人為的に作り上げた物なので、そういった副作用が出ていてもおかしくないだろう。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/29(水) 00:19:36.07 ID:BwYjqQEL0
式「狂人の戯言につきあってられるか。話すことがないのならもう切るぞ」

通話機にある唯一のボタンを押す。ピ、と電子音が鳴っただけで何の変化もない。
何度押しても音が鳴るだけで通話は続いている。

式「どうなっている。なんで切れないんだ?」

橙子「ぐっ、また流れてきた。おい、それを無闇に押すなと言っただろうが。止めろ、頭が割れる!私を殺す気か!」

電話の向こうで急に叫びだす橙子。通話越しでも聞こえるくらいに息が荒い。
今コイツはボタンを押すなと言ったといっているが、ボタンを押すなとは一度も聞いていない。
それ以前にボタンについてコイツは何も言っていない。まさかとは思ったが、本当におかしくなっているのか。
しばらくうめき声のようなものだけが聞こえ続けた。

式「もしもし、生きてるか。死んだなら切るぞ」

橙子「・・・・・ああ、そうか。これか。いいか、跳躍の際には『』であるオマエ自身が必要になる。
   そいつに任せろ。伝えた情報はこれで全部だな。切るぞ」

消え入りそうな声で何かをつぶやいた後、電話は切れた。アイツはいったい何がしたいのか。
画面は暗転していてボタンを押しても何の反応もない。もしかしてこの電話は向こうから一方的に受け取るだけなのか。

式「なんだったんだよ今のは。トウコのヤツ、ついに壊れたか?」

通話ができないのならばコレに用はない。さっさと仕舞っておこう。
そういえばさっきから後ろでコソコソしている馬鹿共は一体何をしているのか。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/29(水) 00:33:04.70 ID:BwYjqQEL0
式「で、お前等は一体何しに来たんだ」

志貴「げ。気付いてたんですか」

式「当たり前だ。あんな大声だして気付かない奴がいるか」

隠れていたのにあっさりと見つかってしまった。さて、どう言い訳したものか。

志貴「えっと、俺たちはただ式さんが心配で見にきただけだよ。なあ、先輩」

シエル「え、ええ。そうです。何か変な事でもしてないか見に来たのですが・・・」

アルク「いやー、世の中にはいろいろな人がいるって聞いてたけど、まさか腕に電話を入れてる人がいるとは思わなかった」

志貴「こ、こらアルクェイド。そういうことは面と向かって言うんじゃない。式さん、こいつの言うことは気にしないで」

シエル「だ、大丈夫ですよ。腕に火炎放射機や機関銃を仕込んでいる人もいます。そんなのに比べれば可愛いほうです」

式「・・・これの何処が可愛いんだ?ああ、そうか。オマエ等もケンカ売ってるのか。
  気分も悪いし、今なら買ってもいいけど」

今の二人の発現を聞いた式さんの表情が厳しくなった。当然か。
アルクェイドの発言はともかく、先輩の発言がまずかったらしい。
言った本人はフォローしたつもりなんだろうけどフォローになってません。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/29(水) 00:44:35.01 ID:BwYjqQEL0
ひたすら謝り倒してあの場は何とか事無きを得ることが出来た。そのまま何事もなくアーネンエルベに戻る。
二人は両儀さんが腕から電話出して話をしていた光景を見たからなのか、先ほどまであった険悪な空気が無くなっている。
突破口はここしかない。

志貴「アルクェイド、先輩、詳しくは言えないけど彼女達には複雑な事情があるんだ。
   彼女達を家に泊めたのも別にやましい気持ちがあるわけじゃない。話を聞いてもらえないか」

さっきの空気が戻らない内に一気に畳み掛ける。
二人の素性やこちらに来た理由を隠して昨日あったことを伝える。
二人ともただならぬ事情があることを察してくれたようでちゃんと話を理解してくれたようだ。

志貴「そういうわけなんだ。わかってくれたかな」

アルク「なにか事情があることはわかったけど、なんか納得いかない」

しぶしぶ納得してくれたアルクェイド。
後は先輩だけだ。先輩はアルクェイドよりも物分りがいいからわかってくれるだろう。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/29(水) 00:53:33.99 ID:BwYjqQEL0
シエル「私を差し置いて別の女性と町を歩いていた事実は変わりませんが、まあいいでしょう。
    ここの支払いは任せましたよ、遠野君」

笑顔でとんでもない提案がとんできた。先輩、目が笑ってません。
暗黙の取引を持ちかけてくるのはどうかと思います。それに今回の件で自分に非があるところが思いつかない。
俺は両儀さんと太子さんと一緒にただ町を回っていた。そこにアルクェイドと先輩が一方的に合流してきただけですよね?

アルク「え、おごってくれるの?やったー!志貴の太っ腹ー!」

シエル「ええそうです。優しい彼のことですから、女性に支払いを任せるなんてマネはしませんよ」

アルク「ありがとう。志貴ってやさしいね」

いつの間にか支払う事が決定している。しかしさっきまでの不機嫌な顔がいつの間にか満面の笑みにかわっている。
この笑顔には勝てない。まあ仕方がないか。二人の機嫌が直ってくれるなら安い物だ。
それにアルクェイドの笑顔が見ることができたから元は十分取れた。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/02/29(水) 01:06:40.04 ID:BwYjqQEL0
志貴「わかった、わかりましたよ。払います。でもあんまり高い物は」

太子「すみません。カレーおにぎりとカレーライスください」

シエル「私も同じ物を二つ。あとカレーパイとラズベリーケーキとコーヒーを一つずつお願いします」

アルク「私はスペシャルランチと特製ケーキを一つずつ。あ、期間限定イクリプスストロベリーパフェも追加でお願い」

前言撤回。元が取れるどころか足が出る。
今所有している金額は8000円、注文した品物の合計金額は7270円。
両儀さんはまだ注文していないが、注文した商品の値段如何によって支払えなくなる。
・・・それ以前に俺が何も注文できないことが確定しているが。

志貴「式さん、申し訳ないけど700円以下の品物を頼んでいただけませんか」

式「いいけど、オマエはどうするの?」

志貴「水だけでいいです・・・」

式「なんだ文無しか。情けないヤツ。オレ少しなら持ってるぞ」

ほら、と目二人に見つからないように差し出されるサイフ。断りを入れて中身を確認すると2人の諭吉先生が鎮座されている。
救いの神はここにいた。両儀さんの後ろから後光が見える。

志貴「本当にありがとう。お金が入ったら必ず返すから」

式「いいよ。どうせすぐに戻るんだろ。気にするな」

発言の意図がわからないが、ともかく助かった。
この後アルクェイドと先輩が競い合うように追加注文をしたが、どうにか支払うことが出来た。
両儀さん、本当にありがとうございます。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/02/29(水) 01:10:57.04 ID:BwYjqQEL0
今日はここまでです。

数日以内に続きを書けると思います。

では。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 11:08:39.36 ID:gd/aI+w00
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 17:28:49.82 ID:CASQjwTp0
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/02(金) 20:36:33.74 ID:i47u5SZY0
太子影薄いな
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/05(月) 22:32:49.67 ID:+VP+UthX0
喫茶店を出た後も日が傾くまで町を歩き回ってみたが、これといった手がかりは見つからなかった。
町を回っている途中に穴に挟まったり首から下が地面に埋まるということなど色々な事とあったが、まあなんとかなった。
アルクェイドと先輩も一緒についてきたが特に問題も起きなかった。うん、俺に問題は起きなかった。

シエル「それじゃあ私はこれで。今日一日楽しかったですよ、遠野君」

二人と別れて屋敷に戻る。
屋敷に戻る最中にも太子さんが塀と塀の間に挟まったり子犬と乱闘するなどのイベントがあったが、問題は無かった。
しかしいくら問題が無いとはいえ、短期間でこんなに何かに絡まれるなんてあの人本当に何者なんだよ。
なんだか朝よりしおれてるし、あの人本当に人間か?
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/05(月) 22:53:15.32 ID:+VP+UthX0
翡翠「お帰りなさいませ」

志貴「ただいま翡翠。いつもご苦労様」

翡翠「いえ、志貴さまを出迎えるのも私の仕事ですので」

屋敷に戻るといつものように翡翠が出迎えてくれた。いつも待たなくていいといっているのに、毎回律儀に待ってくれている。
帰るのが遅くなっても出迎えてくれる人がいるのは嬉しいが、待っている方はこたえるだろう。

志貴「いつ帰ってくるかわからない奴を待ってるのはつらいだろ。迷惑かけて悪いな」

翡翠「志貴さま。私は志貴さまの使用人です。そのようなお気遣いをしていただく必要はありません。
   それに、志貴さまをお待ちするのは私が勝手にやっていることですので、どうかこのまま続けさせてください」

む。そういわれるとこちらもツライ。翡翠を待たせたくないが、勝手にやっている、といわれると何もいえなくなる。
翡翠も変なところで頑固だから、この分だと何を言っても聞かないだろう。だとするならばこちらが妥協するしかないか。

志貴「わかった。それじゃ今度から帰るとき、出来るだけ連絡するようにするから、その時は頼む。
   その代わり、今までみたいに帰ってくるまでずっと待ち続けるのはやめること。それでいいか」

翡翠「私に連絡、ですか」

志貴「そう、連絡。伝えるのは電話でいいかな?あ、でも俺も翡翠も携帯電話持ってなかったな。どうしよう」

どうしたものか考えてみるが、なかなかいい案が浮かばない。ふと目を上げると俺の言葉を聞いて笑っている翡翠。
翡翠は表情が乏しいが、確かにあの顔は笑っている。今笑われるようなおかしい事言ったか?

翡翠「わかりました。口頭で結構ですので、志貴さまが連絡を入れて頂いたときは待たせていただきます。
   その代わり、出来るだけ連絡をしていただけると嬉しいです」

志貴「わかってくれたか。ありがとう」

わかってくれたようで何よりだ。
翡翠の負担を減らす為にも携帯電話が欲しいところだが、遠野家の財布の紐を握っている赤い悪魔が許してくれるだろうか。
うん、無理だな。なら出かける時には翡翠に一言声をかけておかなければ。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/05(月) 23:20:11.63 ID:+VP+UthX0
太子「・・・ねえ。さっき待ってたって言ってたけど、もしかして私のことも待っててくれたの?」

翡翠「それは・・・まあ、その。一応、そうですが・・・」

太子「バヒィィン!やっぱり私は要らない子なんだ!」

翡翠「申し訳ありません。太子さまをお待ちしておりました。お帰りなさいませ」

太子「やめて!無表情で目を逸らしながら言わないで!余計に傷つくから、それ!」

なにやら玄関の方でやり取りが聞こえるが、ここからでは聞こえない。
そういえば今日は秋葉と話をする約束をしていたんだっけ。
話すついでに町を回って何を見つけたかをまとめておくのも悪くはないか。
それに今日のことを秋葉に伝えておかないと後が怖そうだ。

志貴「式さん、ちょっと時間あるかな。秋葉に今日あったことを報告しておきたいんだけど」

式「報告でも何でも勝手にやればいいだろ。何でオレに聞くんだよ」

志貴「一緒に来てもらっていいかな。来ないと秋葉がうるさそうだし」

式「いいよ。で、どこにいるのそいつ」

両儀さんはあまり乗り気ではないようだが一緒に来てくれるらしい。気が変わらないうちに居間に移動する。
しかし、当の秋葉の姿が見当たらない。いつもこの時間には居間にいるはずなのだが。

志貴「あれ、秋葉の姿が見えないけど。今日は家にいるんじゃなかったっけ?」

翡翠「秋葉様でしたら、今朝の一件で外に出られております。屋敷に戻られるのは二日程後になるそうです」

志貴「あ、そっか。今朝そんなことがあったか。秋葉も大変だな」

朝の一件のことをすっかり忘れていた。まああれだけ濃い時間が続いたんだ。
朝おきたことを忘れても仕方ないか。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/05(月) 23:37:42.80 ID:+VP+UthX0
志貴「式さん、わざわざ来てもらって悪いけど秋葉が居ないみたいなんだ。だから報告は取り消しで」

式「なんだ、何もないのか。ならオレ部屋に戻ってる。用があったら呼んでくれ」

太子「私も戻る・・・。海の底の貝になりたい・・・。・・・ションボリタイシ・・・」

二人は部屋に戻って休むらしい。両儀さんはともかく、あの二人と町を回った太子さんの体力と精神力はゼロだろう。
町を回る最中、アルクェイドとシエル先輩が俺と太子さんを比較する度に散々変な名称で呼ばれ続けていた。
腐った酢、折れた割り箸、マーキングされた電柱、川原に捨ててある本、トイレの側溝などの様々な呼び名が飛び交っていた。
何か聞こえる度に逃げようとしていた太子さんだが、両儀さんと離れられないという理由で逃げ出すことは出来なかった。
そのせいだろう。たった一日で太子さんの髪の大半は白く染まってしまった。
極度のストレス下におかれた人間は短期間で髪が白くなるという噂は本当だったのか。

志貴「太子さん、強く生きろ・・・」

アルク「志〜貴。みーつっけた」

志貴「ア、アルクェイド!?なんでお前がここにいるんだよ。帰ったんじゃなかったのか」

アルク「なによその顔は。私がここにいたらダメなの」

志貴「いや、駄目ってワケじゃないけど・・・」

翡翠「ここにおられましたか。アルクェイド様、勝手に屋敷に入られては困ります。どうかお引取ください」

アルク「あ、来たなメイド二号。私勝手に入ったわけじゃないもーん。ちゃんと入る時お邪魔しますって言ったもんね」

アルクェイドを追いかけるように現れた翡翠。どうやら無断で屋敷に侵入してきた賊を追ってきたらしい。
アルクェイドに常識はあるのだが、それを守ろうとする機能が欠けている。なまじ常識を知っているだけに性質が悪い。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/06(火) 00:02:37.76 ID:JG9xhZ9A0
アルク「ねえ志貴、今日は妹家に居ないんだよね」

志貴「ああ。屋敷に戻るのには二日くらいかかるって。でもなんでアルクェイドがそれを知ってるんだ?」

アルク「さっきここで話してたの聞こえたの。よし、妹居ないのなら私今日泊まっていくねー」

志貴「ちょっと、何言い出してるんだお前は。ダメにきまってるだろ」

翡翠「そうです。秋葉様の御許可無くお泊めすることはできません。
   それに、私もアルクェイド様が泊まられることに賛成できません。どうぞお引取り下さい」

強引に屋敷を侵略しようとするインベーダーに対して翡翠と共同戦線を張る。
しかしアルクェイドの勝手な決定に反対してくれるのは助かるけど、翡翠がここまで自分の意見を表に出すのは珍しい。
アルクェイドのことをあまりよく思っていないみたいだが、なにかあったのだろうか。

アルク「ふっふーん。なかなかやるじゃない。でも、これを聞いてもまだ同じことが言えるかな?」

反対多数の圧倒的不利な状況のなか、何故か勝ち誇った顔をしているアルクェイド。
ちょいちょいと手招きをして、耳元でささやいてくる。

アルク「私を泊めなくていいのかなー。見たところ琥珀が居ないから翡翠が料理を作ろうとしてるみたいだけど。
    泊めてくれたら私の手料理、食べさせてあげようと思ったのになー」

忘れていた。朝の一件で居なくなったのは秋葉だけじゃなかった。
遠野邸で唯一料理を作れる人物も居なくなっていたのだ。
残っているのは薄力粉と卵と砂糖のみで象すら殺せる毒物を製造するワンダーなシェフのみ。
背に腹はかえられない。それにアルクェイドの手料理というものにも非常に興味がある。

志貴「しがない屋敷ですが、どうぞ寛いでいってくださいませ」

アルク「うん。素直でよろしい」

結局、賛成多数によりアルクェイドも泊まることが決定した。まあアイツも一人は寂しいだろし、たまにはいいだろう。
翡翠はアルクェイドが泊まることにあまりよい顔をしていなかったが、どうにか説得することができた。
しかし夕食をアルクェイドが作ることを伝えたら無言で抗議と非難の視線を送ってきた。
持ちうる知識と話術を総動員して説得したところ、最後には翡翠の方が折れてくれた。
残った仕事を片付けに行く翡翠の背中を見ると少しばかり良心が痛む。後で埋め合わせをしなくては。

志貴「なんだか悪いことしちゃったな」

アルク「志貴ってば、翡翠の望みを断ってまで私の手料理食べたかったんだ」

志貴「翡翠の望みを断ったってのは、それは、まあ否定できないけど・・・。でもアルクェイドの料理は是非食べてみたいかな」

アルク「ありがとう。嬉しい。よーし、頑張っちゃおうかな。腕によりをかけて作るから期待して待っててね、志貴」

そういって厨房に消えていくアルクェイド。夕食ができるまで時間があるな。
さて、それなら―――



1 両儀さんと太子さんは何をしているのかな?

2 アルクェイドはどんな感じかな?

3 翡翠は何をしているのかな?

4 琥珀サンヲ探ス

5 部屋で休もう
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/03/06(火) 00:04:41.42 ID:JG9xhZ9A0
時間が空いてしまい申し訳ありません。今日はここまでです

アルクェイドとシエルの二人は悪気があって言っているわけではありません。単純に志貴と比較した場合の素直な感想です
太子成分が薄いのはちょっとした理由があります。ケミカル研究室にて言及させていただきますので、もう少しお待ちください
安価はこの下でお願いします。安価の内容により話が変わるということはありません

では
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/03/06(火) 00:08:27.18 ID:xpGuF93AO
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/06(火) 07:32:06.94 ID:YHkqeoFAO
乙!
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(近畿) :2012/03/06(火) 08:25:54.73 ID:AtOlqFhF0
1
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/06(火) 09:22:30.88 ID:7Xrv7BTL0

できれば琥珀サンヲ探してほしいな
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/06(火) 16:26:02.39 ID:wwVllfCAO
乙追い付いた
太子の大暴れが楽しみだ
1
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/07(水) 16:26:17.33 ID:JeUXX/vAO
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/08(木) 14:43:29.73 ID:aztEtTdE0
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) :2012/03/11(日) 20:22:13.98 ID:XqmJInQ60
それなら両儀さんと太子さんの様子を見にいこう。
今日あったことで俺が気付かなかったことや見落としていることがあるかもしれない。
一人であれこれ考えるよりも大勢で考えた方がいいに決まっている。
それに太子さんがあの二人から受けたダメージのケアもしておかなければマズイだろう。

志貴「よし、そうと決まれば――」

二人が居る部屋の前に立つ。男性の太子さんが一緒にいるとはいえ、一応声とノックくらいはしておいた方がいいか。

志貴「すみません。ちょっと今日のことで話がしたいんだけど」

返事はない。何度声をかけてもノックをしても、中からは物音ひとつ聞こえない。
二人は部屋に戻ると言っていたのだが出かけているのだろうか。しかしここまで来た手前、このまま帰るというのも少し寂しい。
仕方がないので勝手に入って待たせてもらおう。ドアに手をかけてみると鍵はかかっておらず、すんなりと開いた。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/11(日) 20:44:53.28 ID:XqmJInQ60
部屋の中にはソファーで横になっている両儀さんと部屋の隅でうなだれている太子さんがいた。
両儀さんはもう眠っているようで、かすかに寝息が聞こえてくる。太子さんは暗い表情でカーペットの毛の数を数えている。
眠っている両儀さんを起こすのは気が引けるし、ここは太子さんに声をかけるか。

志貴「太子さん。隣、いいですか?」

太子「あ、どうもイケメンモテ男さん。わらびもち以下の存在の私に何の用ですか?」

志貴「特に用があるってわけじゃないけど、今日会ったことを確認しときたくて」

太子「今日あったことの確認だと?」

志貴「ええ。忘れない内に確認しておいた方がいいかなと思って」

太子「チクショウ、私が落ち込んでいる所を狙って止めを刺しに来たのだな!馬鹿にしやがって!」

志貴「そうです。今日あったことを確認って、何でそうなるんですか!?」

太子「うるさい!昼間は人のことをへこんだマシュマロだの砕けたプリンだの散々に言いやがって!
   あんな美人を二人もはべらせている上に人をコケにして楽しいか!」

話を聞いてねえ。マシュマロだのプリンだのと言っているが、あれは多分あの二人が昼間話していた事を言っているのだろう。
あの二人が発していた暴言と俺は何の関係もない。あれはアルクェイドと先輩が勝手に言っていただけだ。

志貴「落ち着いて太子さん。俺はそんなこと言ってない。それにあの二人に付きまとわれるのはいつもの事なんです」

太子「あの二人に付きまとわれるのがいつもの事!?こっちはいつも貧相な妹子に付きまとわれてるんだぞ!
   ろくに仕事もしないくせにいつも私を馬鹿にしやがって!一番低い身分のノースリーブの分際で!」

志貴「いや、言ってる意味がわからない」

太子「意味がわからないだと?お前まで私をバカにしやがってコンチクショウ!
   摂政権力の強さを知れ!推古天皇ビーム!」

志貴「うおっ、危なっ」

太子「あ、勝手に避けんといて。壁にぶつかると痛いか・・・ギャイン!」
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/11(日) 21:00:23.57 ID:XqmJInQ60
何やら変な言葉を叫びながらこちらに飛んでくる中年のおっさん。そのまま壁に激突して痙攣している。
避けるなと言っていたが、目の前におっさんが飛んできたら普通は誰でも避ける。
飛んでくるのが美女だったら体を張って受け止めなくもないが、何が悲しくておっさんを受け止めなければならないのか。
確かこの部屋に来た目的は今日会ったことの確認だったはず。それがなぜこうなった。

志貴「あの、太子さん。大丈夫ですか」

太子「へへ・・・ドジっちまった・・・。やられたぜ、イケメン対決はお前の勝ちだ・・・」

こちらに向けた目に光が宿っていない。言ってることもさっきから少し卑屈だし、これは心が折れているな。
これでは今日あったことを話すのは無理だろう。したくないけどフォローをするか。

志貴「えっと、大丈夫ですよ。自信を持ってください。今は駄目だけど、これからがんばればいいじゃないですか。
   それに太子さんは偉い人なんですから、きっと先は明るいと思う」

太子「私が、偉い?」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/11(日) 21:29:17.26 ID:XqmJInQ60
反応あり。押してダメなら引いてみる。とりあえず適当に褒めておけば機嫌が直るかもしれない。
何を言おうと口を動かす分はタダなんだし、機嫌が直ってくれれば儲けものだ。

志貴「そうです。太子さんは偉いんですよ。だって摂政なんですよ。偉いに決まってるじゃないですか」

太子「でも、妹子は遣隋使になって私より有名になったし、私は朝廷内ではバカにされっぱなしだし」

志貴「みんな太子さんを羨んでキツくあたっているんですよ。太子さんは後世に名を残す大物ですから。
   現に日本で聖徳太子の名前を知らない人はいないと思います」

太子「そ、そうかな。私が偉いからあんな風にされてるのかな」

立場が高かったり偉かったりすると自然と人は集まってくるものだし、逆に人からやっかまれもするだろう。
しかしこの人の場合、そうだと言い切れないのが悲しい。まあ見た目がアレでも中身までそうとは限らない。
立ち直るまであとひと押しみたいだし、今度は中身を褒めてみるか。

志貴「そういえば聖徳太子はいろいろな優れた制度などを考えたと聞いています。
   今何か良いと思っている制度やこうしたら良いと思うものなんかありませんか?是非聞いてみたいな」

太子「それじゃあ十七条の憲法を変えて柔軟そうな健康にしようと思うんだけど、どうだろう。
   十七条も憲法があったって覚えられないし、どうせ覚えるなら健康な方がいいかなって思って」

馬鹿だ。この人馬鹿だ。今すぐにその考えをやめて口を閉じろといいたいが、ここまで持ち上げてしまったんだ。
ここから落としたらたぶん死ぬ。なら最後まで持ち上げておかないと。

志貴「い、いいんじゃないかな?なかなかユニークだと思いますよ」

太子「そうだよね!やっぱりこの考えは私にしか出来ないしね!やっぱり私は偉いんだ!」

志貴「そうですね。こんな発想は普通の人には出来ないだろうし。聖徳太子だから出来るんでしょうね」

口からでまかせをならべる。しかしあながち嘘でもない。こんな発想、あの人にしか出来ないだろうし。
正直ここで止めないと歴史に汚点を残してしまう気がする。でもまあ面倒だし、今はこの人の機嫌が直ればそれで良いか。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/11(日) 21:42:10.45 ID:XqmJInQ60
太子「ねえ、私の偉業を称えるものって何か残ってない?」

志貴「えっと、それは・・・。そうだ!あります。今持ってます。
   ほら、この紙幣を見てください。ここに太子さんが載っているでしょう。太子さんは紙幣に載るくらい有名なんですよ」

昔の人間に紙幣の概念が通用するかどうかわからないが、一応見せてみる。
実際に聖徳太子が描かれたものを見せてあげたかったのだが、一万円札なんて貴重な物俺が持っているわけがない。
なので手元にあった千円札を代わりに見せる。写っている人が少し違うが、近くで見せなければ問題はないだろう。

太子「何だか私に似てない気がするけど・・・」

志貴「いや、これは数年後の太子さんを描いた物です。太子さんはこれからこういう風にものすごくダンディになるんです。
   こんなダンディな人、きっと女の子達が放っておきませんよ。モテモテじゃないですか。うらやましいなぁ」

太子「そ、そう?そうかな?私将来モテモテなの?」

志貴「そうです!太子さんの将来はモテモテに決まってます!未来は明るいですよ!」

太子「やった!私将来モテモテなんだ!生きててよかった!」

口からでまかせっていうのも、案外馬鹿に出来ない。
目の前の中年は普段の元気を取り戻したようで、無邪気に年甲斐なくはしゃいでいる。
いつの間にか白かった髪も黒くなっているところをみると、この人は人間ではないのかもしれない。
ちなみに両儀さんはというと、あの騒ぎの中いっさい起きなかった。彼女もまた普通ではないのか。
見た目はキレイだけど太子さんと一緒に居るあたり、やっぱりどこかおかしいのだろう。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/11(日) 21:56:25.35 ID:XqmJInQ60
結局今日あったことをまとめられなかったが、まあいいか。
君子危うきに近寄らず、死亡フラグは避けて通るという格言がある。そういうわけなのでさっさと部屋を出よう。
そろそろ夕飯の支度ができているころだろうし、一言声をかけたほうがいいか。

志貴「そろそろ夕食の時間ですから、式さんが起きたら一緒に食堂の方に来てください」

太子「モテモテってことは、私のファンクラブが出来て私のブロマイドが出回って出待ちも増える。
   それを妹子が痒みをこらえながら羨ましそうに見てて・・・」

馬鹿、もとい太子さんは一人ではしゃいでてこっちの話を聞いていない。まあいいや。
一応伝えはしたんだし、義務は果たしたな。このまま話しててボロが出るのもあれだし、そのまま部屋を後にしよう。


「イヤッホーイ!起きろ妹子、夕食だーい!キャッホー!」

ガスッ

ドサ





ギャァァァァァァ!



志貴「?何の音だ?」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/03/11(日) 21:57:54.02 ID:XqmJInQ60
短くて申し訳ありませんが、今日はここまでです

多分後二回くらいで月姫一日目が終わると思います。遅筆で本当にすみません
次は一週間以内に書きます

では
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/11(日) 22:00:36.34 ID:sjQSpQqAO
乙ー
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/12(月) 01:47:56.60 ID:9vuVbOfq0

TMと太子のコラボとか発送がぱない
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 13:17:55.26 ID:DALvMM9B0
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 12:48:21.45 ID:l4PL8tYM0

大子に直死の魔眼は効くのだろうか
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/03/15(木) 03:13:32.03 ID:gMlss7BUo
>>167
大の下にあるはずの死の点が視えないな

効かないのかもしれない
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/16(金) 13:49:21.47 ID:pkNg3ZbL0
では大の線が消えた人は死の線が視えないことになるな

人子か。誰だコレ
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/03/21(水) 21:12:38.73 ID:8w+DJjEr0
更新遅れて申し訳ありません。車と合体して病院に逝ってました
やっと家に帰ってこれました
更新はもう少し先になります。申し訳ありません
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/21(水) 21:28:22.03 ID:P/D8mFzto
>>
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/21(水) 21:30:05.25 ID:P/D8mFzto
>>170
合体スイッチは何だ?
電柱さんか?壁さんか?ガードレールさんか?
それとも、徒歩で車にやられたか?
太子なら1秒で復活したのにな、ナンにせよお大事に
続き待ってる
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/22(木) 11:12:33.59 ID:cm7hVHIAO

お大事に
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/26(月) 22:08:14.66 ID:1mjbMqar0
食堂に向かう途中、辺りにはなにやら食指を動かされる香りが漂っている。
香りの出ている元を辿っていくといつの間にか厨房にたどり着いていた。
せっかくここまで来たんだ。こんなものを嗅がされては厨房に立ち寄るという誘惑に勝てそうに無い。
アルクェイドのエプロン姿を見るのも悪くないし、あわよくばつまみ食いくらいはできるかもしれない。

アルク「あ、志貴。料理もうちょっとでできるから、それまで待っててね」

翡翠「志貴さま。申し訳ありません。まだ料理の方が全て完成しておりませんので、もうしばらくお待ちください」

厨房の扉を開くと、慌しく動いているアルクェイドと翡翠の姿があった。
二人ともひと時も休むことなく動いている。

翡翠「アルクェイド様、その料理はこちらの皿をお使いください。こちらの方が見栄えがよくなります」

アルク「はーい、了解。たしかにそっちの方が綺麗に見えるわね」

どうやら料理は殆ど完成し、残る作業は盛り付けだけとなっているらしい。翡翠が皿を出してアルクェイドがそこに料理を盛る。
料理が盛られた皿をケージに載せ食堂に運ぶ準備をする、という流れが出来ている。
働いている二人をただ眺めるだけ、というのも少々居心地が悪い。

志貴「何か手伝うことあるかな」

アルク「ううん。全部私達がやるから、志貴は先に食堂に行ってて。それともそこで座って見てる?」

志貴「そうだな、じゃあお言葉に甘えてここで見させてもらうことにする」

手を貸してやりたいところだが、下手に手を出したら邪魔になるか。
でもこの二人が一緒に行動するという事は珍しく、料理を作っている姿もまた珍しい。
さすがに三人もいると少し狭いが、言われた通り二人の姿を見させてもらう事にしよう。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/26(月) 22:32:05.38 ID:1mjbMqar0
翡翠「では出来た分を運んでまいります。食事の準備はもう少しで整いますので、それまでお待ちください」

料理が載ったケージと共に厨房から姿を消す翡翠。久しぶりに彼女と二人きりになった。
しかし二人きりになったといっても変わったことは一つもなく、彼女は黙々と作業を続け俺はそれをただ見ているだけだ。
何かしてくれるのが彼女で何かしてもらうのが俺。この関係はどこかで経験したことがあるような気がする。
しかし、いくら考えてもどこで経験したのか思い出すことができない。思い出せないということは大した事ではないのだろうか。
そのままどのくらいの時間がたったのか、彼女はこちらを振り向かずに話しかけてくる。

アルク「ねえ志貴。そういえば昨日の―

――この■■に■われた■みについてなんだけど、アレを■さなければ、アナタが■■いてしまう―

    ―事なんだけどさ・・・」

志貴「あれ?アルクェイド、今なんて言ったんだ?」

アルク「あ、ヒッドーイ。聞いてなかったの?
    私はこの前シエルが上司の人から電話ですっごく怒られてたって言ったのよ。ちゃんと話し聞いててよ」

調理している手を止め、振り向いてこちらを見てくる。アルクェイド顔はふくれっつらだ。

志貴「悪い。そうだったな。それで先輩が何したんだ?」

アルク「そうそう。シエルったらね、なんでも伝説の黄金配合スパイスのメモを鞄に入れて学校に持ってきてたの。
    おかげでいろいろと面白いことになっててすっごく怒られてたわ」
    
志貴「メモって、なんでそんなメモを学校に持ってきたくらいで先輩が怒られるんだよ?」

アルク「シエルの持ってきたメモは普通の人が見たらレシピ通りに書かれているもの作るっていう暗示がかかるようになっているの。
    そのメモがシエルのいない間にちょっとした事があって鞄の外に出ちゃったのよ。
    おかげでクラス中の人間がカレーを作り出しちゃって大騒ぎ。シエルが騒ぎに気付いた時にはもう既に手遅れ。
    暗示にかかった人が押しかけた家庭科室や学食の後始末や一人一人暗示を解くのに相当苦労してたわ。
    おまけにメモは破れちゃった上に作られた大量のカレーの後始末なんかでもうてんてこまいだったみたい」

志貴「・・・なるほど。あの日学校中に漂ってた臭いの原因はシエル先輩だったのか」

アルク「メモが無くなった事と上からこっ酷く叱られた事でヤケになって、シエルったら学食のカレー類全部食べちゃったの。
    昼の事件も相まって、裏でおばさん達がついにインドからの侵略者がここにもやってきたって大騒ぎして――」

志貴「はは、そうなんだ。しかし怒られたからヤケ食いするなんて先輩らしいな」

なんだったんだ今のは。一瞬おかしなものが聞こえた気がしたが。今は聞こえないし気のせいだったのかな?
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/26(月) 22:59:23.33 ID:1mjbMqar0
他愛のない会話をしている間にもアルクェイドの手は止まることはなく、どんどん料理は出来上がっていく。
それにしてもアルクェイドが料理を勉強していたなんてちょっと感動する。
前みたいなことも無いだろうし、こっちに住むようになってからアルクェイドもずいぶんと人間らしくなったな。

アルク「志貴〜。ちょっとこっちに来てもらえる」

志貴「なんだ。何か手伝うことでもあるのか」

アルク「うん。こっち向いて口あけて。はい、あーん」

志貴「はい、あーん。って、アルクェイドお前なにやってるんだ!?」

アルク「いいからいいから、あーん」

志貴「アルクェイドさん。これは一体何のまねですか?」

アルク「え?なにって、料理を作っている所に男の人が来たら普通はこうするものじゃないの?」

どうやらまた要らない知識をテレビか何かで仕入れたらしい。
アルクェイドは俺の反応にキョトンとしており、できたての料理を箸でつまんだまま動こうとしない。
テレビを見るなとまでは言わない。が放送されたことを鵜呑みにするのはいい加減やめてほしい。
つまみ食いしに来たことは確かだが、普通つまみ食いとはここまで堂々とやるものではない。

アルク「ちょっと、なんで逃げてるのよ。もしかして私の手料理食べたくないの?」

右に避けても左に避けても箸は俺の口の後を追ってくる。どうやら俺が食べるまでこの行動をやめないつもりらしい。
断ろうにも少し不機嫌ながらも期待に目を輝かせているアルクェイドの顔を見ると何も言えない。
すこし恥ずかしいけど周りに誰もいないし、覚悟を決めるしかないか。
口をできるだけ大きく開け、目の前の料理を口に入れてもらう。

アルク「ねえ、どうかな」

志貴「・・・うん。おいしい」

俺の返事を聞くと、よかったー、と言って嬉しそうに調理に戻った。
正直、食べたことよりあーんの威力が方が大きすぎて味がどうだったのかよくわからなかった。
しかし、舌に残った余韻が今食べたものがただものでないという事を告げている。
口の中に残った味だけでもいつも食べている琥珀さんの料理を食べたような感覚がある。
とすれば味は琥珀さんの料理に劣らない、いや、それ以上ということだろう。
つまりアルクェイドのあーんを除いてもこの料理は非常に美味しいということだ。

贅沢すぎる願いだが、出来れば毎日作ってもらえないだろうか。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/26(月) 23:34:39.88 ID:1mjbMqar0
アルクェイドのあーん事件の少し後に翡翠が戻ってきた。
翡翠は俺の顔を見るなり何かあったのか、どこか体調が悪いのかなど聞いてきた。そんなに変な顔してたのかな、俺?
どんな顔をしていたのか一人で思案している間に残っていた作業は全て終わったらしく、二人とも後片付けをはじめている。
しかし厨房に来て本当に何もしなかったな。二人とも手伝わなくていいと言っていたが、もしかしなくても邪魔だったんだろうか。

翡翠「これで最後ですね。私はこれを運んでまいりますので、お二人とも早めに食堂にいらしてください」

志貴「待った、それを食堂に運べばいいんだろ。それくらい俺がやるよ」

翡翠「いえ、結構です。これは私の仕事ですので」

にべも無く断られる。即答だった辺りやっぱり邪魔だったのだろうか。
邪魔になっているのは自覚していたとはいえ、やはり面と向かって伝えられるとすこしこたえる。
これ以上ここに居てもやることも無いか。素直に食堂に行くとしよう。

翡翠「志貴さま」

呼び止められて振り返る。

翡翠「先ほどの返事は志貴さまの事をやっかんでいたわけではありません。どうか誤解なさらないでください。
   志貴さまのお気持ちは嬉しいのですが、志貴さまは料理をどこに置けばよいのかあまりご存じではないと思います。
   それに給仕は私の仕事です。いつも私がやらせていただいておりますので、これは私に任せてください」

そう言って頭を下げて厨房から姿を消す翡翠。むう。こちらの考えていることを読んでくるとは。
さすがは翡翠といったところか。伊達に毎日ぐうたらな俺の世話をしていたわけではないようだ。
しかし仕えている人の思考が分るなんて高性能メイドすぎないか?

志貴「本人がああ言ってるんだし、食事の準備は翡翠に任せるとするか。それじゃ行こうかアルクェイド」

アルク「ううん。私もすぐに行くから志貴は先に行ってて。ちょっとやることがあるから」

志貴「やることって、片付けはもう済んでるだろ。やることって他に何があるんだよ」

アルク「私女性のプライベートってあんまり詮索するものじゃないと思うんだけど。
    それにやることといってもちょっとした野暮用。気にしないで」

女性のプライベートを詮索するな。それを言われると男である俺は何も言い返せない。

アルク「早く食べてくれないと料理冷めちゃうでしょ。ほら行った行った」

背中をぐいぐい押されて厨房の外に追いやられる。アルクェイドの奴、本当に一緒に行かないつもりなのか。
ここに居ても仕方がないため一人で食堂に向かう。
食堂へ向かう途中、後ろから、少し時間かかるかもしれないから先に食べてていいよー、という声が聞こえてきた。
アイツはここで一体何をしているのか。その真相は本人のみが知る、か。
でもここ俺の家だよな?人の家の中での野暮用なんて、一体どんな野暮用なんだ。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/27(火) 00:02:56.38 ID:QVdiPWX20
急いで食堂に移動する。
テーブルの上には既に料理が並べられており、両儀さんと太子さんの二人はもう席についていた。
三人にアルクェイドが少し遅れることと先に食べてるようにと言っていたことを伝える。
席に座る時に「見た目はバカっぽいけど案外やるもんだな」という言葉が聞こえた。
恐らく今の言葉は料理ではなく料理を作った人物についての感想なのだろう。作った当人がここに居なくてよかった。

太子「この料理の豪華さは、もしかして私の誕生祝いなのか」

志貴「え、太子さん誕生日今日だったんですか?それならそうと言ってくれればよかったのに」

翡翠「そうでしたか。それは申し訳ありません。ただいまケーキを用意してまいりますので、少々お待ちください」

太子「あっ。よく考えたら誕生日今日じゃなかった・・・」

厨房へ向かおうとしたままの姿勢で固まる翡翠。その言葉を聞いた俺たちにどんな反応をしろというのか。
太子さんはさっき自分が言った言葉に本気で落ち込んでいるようだが、普通は自分の生まれた日を間違えはしないだろう。
馬鹿と天才は紙一重と言うが、本当は間に紙なんて無いんじゃないのだろうか。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/03/27(火) 00:03:55.78 ID:QVdiPWX20
一旦小休止させていただきます
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/27(火) 00:05:05.42 ID:F9v+Wo4AO
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/27(火) 01:02:39.20 ID:QVdiPWX20
気を取り直して並べられた料理を見渡す。どれも文句のつけようの無い見た目で豪華絢爛、満漢全席という言葉がふさわしい。
いつも食べる琥珀さんの料理はあっさりした物が多いせいか、こういうがっつりした物を食べれるのは嬉しかったりする。
特に肉をふんだんに使った料理がたくさん作られているのは嬉しい。

志貴「さて、それじゃ俺もいただくとしますか」

眼の目にあるロールキャベツに箸を伸ばして口に運ぶ。見た目もよく、一口サイズにまとめられている為とても食べやすい。
皿に敷かれた黄金色のスープも程よい温度に保たれており、そこから漂う香りがさらに食欲をそそる。

口に入れた瞬間に広がるほのかな肉の風味。期待以上の味だ。
じっくり煮込まれているため中身は程よく口の中で溶けていき、噛むたびに肉に含まれていたスープが口の中にあふれてくる。
全ての味が自己主張をしているものの、互いの足を引っ張ることなく逆に互いの持つ味を引き立てあう。
全ての味が混然一体となり奥底にある一つの味を隠している。しかしその味を隠すヴェールは一噛みごとに無くなっていく。
やがて全てのヴェールが無くなり、奥に隠れていた味が口の中にあふれてくる。いや、これは押し寄せてくるという表現が近い。
そう、口の中に一気に押し寄せてくる――――梅干しの味。

志貴「梅干の味?」

俺が一体何をした。
目の前の料理を注意深く観察してみる。自惚れではないが、多分これは俺に食べさせる為に作った料理だと思う。
なぜなら作られた料理はほとんどが俺の好物である。加えて俺の皿の料理は全て梅干が練りこまれているという特別仕様らしい。
料理のところどころに見える赤いツブツブが多分梅干だろう。他の皿に盛られた料理には赤いツブツブは見当たらないし。

志貴「・・・なぜに俺だけ?」

正直、ここまで気を使われても困る。
調理した本人に問いただそうにも、アルクェイドは厨房からまだ戻ってきていない。
かといってこのまま食べるというのも作った本人にどのような意図があるか分からないため怖い。さて、どうしたものか。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/27(火) 01:22:27.23 ID:QVdiPWX20
翡翠「志貴さま」

志貴「ん?なんだ翡翠。まだ料理はたくさんあるし、水だって全然減ってないぞ」

翡翠「いえ、そうではなく。その・・・」

いくら秋葉が居ないとはいえ、食事の最中に翡翠が話しかけてくるなんて珍しい。
何事かと振り向くと翡翠が所在無さ気に立っていた。

翡翠「あの、料理のお味は、その。ど、どう、ですか・・・」

不安そうに胸に手を当ててこちらを見ているが、よく見ると両手の指には包帯が巻かれている。
翡翠はアルクェイドと共に厨房に居た。料理の出来栄えを聞いてくる。手を怪我している。
そこから導き出される答えは一つしかない。

志貴「あれ、もしかしてこれを作ったのって」

うつむいて頬を赤らめる翡翠。少しの間逡巡していたが、意を決したように告白する。

翡翠「ほとんどの部分はアルクェイド様が作られましたが、私も少し、ほんの少しだけですが、手伝わせていただきました」

なるほど。俺の皿は翡翠が手伝った特製料理か。道理で料理に梅干が入っているわけだ。
しかし翡翠が作った料理が食べられるとは。二重の意味で驚きだ。

志貴「うん。よくできてると思うよ。翡翠とアルクェイドの気持ちが詰まっててすごくおいしい」

翡翠「あ、ありがとう、ございます」

ほっと胸をなでおろす翡翠。心なしか顔が赤いけど大丈夫なのか?
味はともかく、アルクェイドと翡翠がここまでがんばって作ってくれた料理だ。不味いわけが無い。
それに正直そこまでひどい味ではなかったし、食べてみると意外と微妙に相性のいい組み合わせのものも幾つかあった。
まあ元がよければそこまで酷いものにはならないか。アルクェイドの料理の腕がそれだけ上手だったということなのだろう。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/27(火) 01:29:10.21 ID:QVdiPWX20
その後少し遅れてアルクェイドも食卓に加わり、夕食は特に問題もなく終わった。
多少駄々をこねたり行儀が悪い人が居たけどアルクェイドの一睨みでおとなしくなった。
普段のような静かな夕食も悪くは無いが、やはり食事時は大勢で談笑しながら食べるのが一番美味しい。
今度琥珀と翡翠も一緒に食べるように言ってみるか。二人は絶対首を縦に振らないだろうし、秋葉がまず反対するだろう。
でも諦めないで言い続ければ、いつかはみんなで食卓を囲むことができるかもしれない。やってみる価値はあるな。
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/27(火) 01:56:28.92 ID:QVdiPWX20
食事が終わり、居間に集まる。皆が集まっているいい機会だし今日あったことを皆に聞いてみる。
ある程度予想はしていたがやはりこれといったものは無かった。
もっといろいろと情報をまとめたいのだがアルクェイドがここにいる時点であまり突っ込んだ話ができない。
しかし追い返すのも何だか気が引けるので当たり障りの無い会話でやり過ごすことにした。
両儀さんもそのことには賛成してくれたが、太子さんにそのことを聞いてもよくわかっていないみたいだった。
そもそも自分が飛ばされたこと自体に気付いていない節すらある。やっぱりあの人は大物なのだろうか。

志貴「しかし今日一日出歩いてみたけど手がかりは何も無しか。でも急いでも仕方ない。
   何かしようにも手がかりは何も無いんだし、むこうから近づいてくるのを待つしかないか」

式「手がかり、ね」

志貴「明日はどうしようか。どこかアテが――」

式「どうでもいい。お前が行きたいところに行けばいいだろ」

志貴「どうでもいいって、そんなてきとうな」

太子「え。行きたいところに行ってもいいの?」

式「どこでもいいって言ってるだろ。お前の好きなところに気が済むまで行けばいい」

太子「そうか、行きたいところか・・・」

志貴「どうしてそんな投げやりな」

式「投げやりにもなるさ。こっちだって暇じゃないのにこんな茶番につき合わされてるんだからな」

こちらの言葉を遮るように即答してくる両儀さん。朝ほどやる気は無いらしく、こちらの言葉を話半分ほどにしか聞いていない。
しかしやる気が無いにしろ今の言葉は聞き逃せない。こっちだってまじめにやっているのにその言葉は無いだろう。

志貴「茶番って、一体どういう意味なんだ」

式「なんだ、お前まだ気付いてないの。存外鈍いんだな」

志貴「気付いてないって、何がですか」

腕を組み、少し苛立ったふうにこちらを見ながらながらそんなことを言ってくる。
苛立ちたいのはこっちの方だが、両儀さんの視線を見るとそうも言えなくなる。
視線は俺を捉えているが、彼女が見ているものはもっと別な物を視ているような気がする。
そう。例えば。視ているのは俺ではなく、俺が見ようとせず、気付かないふりを―――
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/27(火) 02:13:30.03 ID:QVdiPWX20
ぱぁん、と突如聞こえる炸裂音。その音を聞いて、思考が正常なものに戻りはじめる。
音の鳴った方角を見ると胸の前で手をあわせているアルクェイドが居た。先ほどの音の原因はこいつか。

アルク「話は終わった?」

式「ふん。終わるも何も初めからそんなものしてないよ。こっちには関係ないんだ。やるのならそっちだけでやってくれ」

アルク「そう。それじゃこの話は終わり。明日は適当に町を歩くってことで。それでいいわよね」

立ち上がって周りを見渡すアルクェイド。そういえばここでは明日どうするかを聞くために話をしていたんだった。
他の余計なことは考えなくていい。それは俺の役目ではない。

太子「そうだ、明日遊園地に行きたい」

アルクェイドの言うとおりだ。目的が分らないから町を彷徨う。今の話の流れからするとそれが最善ということになるか。

太子「私今まで一度も行った事ないし、遊園地に行ってみたいんだけど」

アルクェイドの言葉に対して誰も何も言わないことから、反対意見は特にないらしい。
・・・うん。反対意見は聞こえてこない。

太子「遊園地に「反対も無いみたいだし、明日は町を歩くことで決まり。それじゃ話はここまでね。私先に部屋に戻ってるね」

太子「遊えn「お前は黙ってろ」

両儀さんに睨まれて泣き顔になる太子さん。少し可哀相だが、俺はわざわざ身を挺してまで男を助ける趣味なんて持ってない。
それにそもそも貴方の発言にはフォローのしようがありません。もう少し場の空気を読んでほしい。
俺は聖徳太子と言う人物は聡明で思慮深い人物なのだと子供のころからずっと思っていた。
しかし、今日一日の貴方の行いのせいで十数年間聖徳太子という人物に持ち続けていた幻想が見事に崩れ去りました。
このやるせない気持ちを一体どこにぶつければいいのだろう。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/27(火) 02:25:56.05 ID:QVdiPWX20
集まりはしたものの結局有益な物は何も見つからず、明日もあてもなく町をさまようことになった。
アルクェイドが部屋に戻ってから約一名を除き、誰も口を開くことはなかった。
十時を知らせる鐘が鳴り、まるでそれが合図であったかのようにそれぞれが部屋に戻る。
俺もそれに倣い部屋に戻り、ベットに横になる。そのまま目を閉じて意識を遮断する。今まで何度もやってきたことだ。
いつも通りにやれば何の問題も無い。意識をこのまま手放せば、今日あったことは過ぎたことになる。
過ぎたことは、記憶されなければ、それは起きなかったことになる。
例え本当にあったとしても、記録にのこっていないのだから、しょうがない。思い出しようがないんだ。
ただ、記録にのこるとしても、記憶したとても、思い出さなければいいだけの話。それでいいだろう。


また、いつもの日常が続くだけ。彼女達が来たからといって、それが変わる訳ではない。
いつもの日常に、ただここにあってはならないものが、混じっただけ。それだけだ。そう気にすることでも無いだろう。


また、いつもと変わらずいつもと同じように判を押したような複製された日常が続くだけだ。
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) :2012/03/27(火) 02:36:51.75 ID:QVdiPWX20
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


ケミカル研究室 



「皆さんこんばんは。寂しい夜に一時の潤いを。貴方のお耳の恋人、琥珀です。そしてこっちが」

「知らない方は初めまして、知ってる方は今晩は。
 元アトラス院所属、現路地裏同盟参謀兼司令塔、シオン・エルトナム・アトラシアです。以後お見知りおきを」

「私とシオン様の二人で、このケミカル研究室の進行役を勤めさせていただきたいと思います。
 どうでもいい、さっさと本編はじめろ、文章量稼いでんじゃねーぞ、という方は読み飛ばしちゃってください」

「この−−−があるところが境目ですので、そこまでスクロールして頂ければ大丈夫です」

「さて。最初に言っておきますが、ケミカル研究室、略してケミ研は本編とは一切関わりはありません。
 このコーナーのは有り体に言って教えて知得溜先生やタイガー道場のパクリです。
 クオリティーは期待しないでください。ま、それは本編にも同じことが言えますか」

「ここでは軽いネタバレや軽いメタ発言なども含まれます。そのことが気になる方は下の方のまでスクロールしてください」

「突然ですが!私が主役となれる貴重なこの企画、悲しいことにあとg」

「ストップ!琥珀、いきなりそういうメタ過ぎる発言は控えてください!
 いくらネタバレありでもそれだけはダメです!私達が主役であるこの企画が終わってしまいますよ」

「終わるも何も、これを書いている人の頭の中ではこのSSは全て終わっていますからね。
 だからこの企画の回数も決まっているのですk」

「だーかーらー!そういうのがダメだって言ってるんです!貴女わかって言ってますよね?」

「本来ならばこのSSは歌月十夜やホロウアタラクシアのような感じのものになる予定でした。
 ただ、書く時間がないのと書き溜めをするパソコンが自由に使えないので投稿ペースが非常n」

「エーテライト!ていっ!」

「はひゃっ!?」

「捕捉完了。琥珀、先ほどの発言は一体どういう真似ですか?」

「い、いえ。ネタバレやメタ発言がオッケーでしたら、どの程度まで許されるのかちょっと気になりまして・・・」

「・・・ハァ。いいですか、これは私達が主役となれる貴重な企画。
 舞い上がる気持ちやどこまでやっていいのか気になるのは私にもよくわかります。
 ですが、企画が潰れてしまっては元も子もありません。余計なことはせずに節度を守って進行してください。いいですね」

「はーい。わかりました。以後気をつけます」

「よろしい。では説明を続けます。琥珀、説明の方を」

「いきなり問答無用で縛るだなんて、シオン様って意外と大胆なんですね。びっくりしちゃいました、私。
 えっと、本編の解説などにつきましては月姫の世界が終わってからさせていただく予定です。
 後で質問を募集しますが、のちの解説と被る質問に関しましては月姫の世界が終わってから答えさせていただきます」

「尚、質問されたこと全てに答えられるというわけではありません。その点はご了承下さい」
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/27(火) 02:52:14.45 ID:QVdiPWX20
「ではいっちゃいましょう!記念すべき第一回!ケミカル研究室、スタート! ワー パチパチパチパチ」

「それでは聞きたかった事を聞かせてもらいます。琥珀、何故聖徳太子はずっとジャージを着ているのですか?」

「シオン様、ここは読んでくださっている方への質問募集・解説のコーナーです。私達が質問をするコーナーではありません。
 でも折角の質問ですし、一応返答の例として答えておきましょう。大体の受け答えはこのような形になります。
 式様と太子様には誠に申し訳ありませんが、着ていたお召し物を私共が勝手に取り替えさせえて頂いた事はご存知ですよね?」
 
「それは知っています。二人とも眠っている間に衣服を取り替えられている。ではあのジャージも貴女方が用意したと?」

「いいえ違います。そもそも遠野の屋敷にあんな貧相なジャージなんて置いていません!
 私共が用意した着替えはジャージではなかったはずなのですが、いつの間にかあのジャージと入れ替わっていたようです。
 琥珀的には裏で国家規模の陰謀が働いているように感じます」

「そうですか。ですがそれでは私の質問の答えになっていない。
 私はなぜ彼が常にジャージを着ているのか、それを聞きたいのですが?」

「ぶっちゃけ私にもわかりません。そもそも聖徳太子の居た時代にジャージがあるのがおかしいんです!
 このSSを作ったのは誰だぁ!責任者を呼べ、責任者を!」

「琥珀、こちらを見てしっかりと質問に答えてください」

「ふっ、サボテンが花をつけている・・・」



「と、まあこのような形の受け答えになります。あまり突っ込んだ質問をされると少々返答に困りますね。
 困った私達が見たい、という奇特な方はいないでしょうけど、一応本編に関わってるっぽい内容の質問をお願いします。
 因みに先ほどの答えは、あの馬鹿がかゆい十二回という阿呆な制度を一人で実行しているだけです。気にしないでください」

「かゆい十二回。一体どのような制度なのでしょう。あの時代にジャージが存在していた事と何か関係が・・・」

「シオン様。こちらの世界に戻ってきてください。戻って頂かないと話が進みません。質問の答えについての説明をお願いします」

「そうでした。質問の答えは次回の初めの方で答えさせていただきます。少々間が空いてしまいますが我慢してください。
 なお、基本的に質問はこのコーナーでのみ受け付けさせていただきますので、その点もご了承ください。
 逆に質問であれば大抵のことはしていただいて大丈夫です。ただ答えられるかどうかは別ですが」

「あと太子さまの影が薄いというツッコミがありましたね。あれはどうなっているのでしょうか?」

「その件に関しましては次のような回答が寄せられています。
 ”選択肢を無視して無理やり最短ルートを通っている為、聖徳太子に関連する話は自然と少なくなってしまいます。
  ですが、できるだけ聖徳太子の出るイベントを選択して進んでいますので御容赦下さい”
 とのことです。意味不明ですね。どう見てもただの言い訳にしか見えません」

「少々補足しておきますと、書いてる人は歌月十夜やホロウアタラクシアのような物を脳内で何度もプレイしているのでしょう。
 ここまで進行が遅いのは予想以上に書く時間が作れなかったことと、書き手の文字を打つ速度に問題があるんですがね。
 これは100%書いている人の責任です。期待されていた方や待たれている方には大変申し訳ありませんとしか言えません」

「説明することは以上ですね。では琥珀、お願いします」

「はい。それでは質問の方を募集させていただきたます。お気軽にどうぞ」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/03/27(火) 02:54:52.65 ID:QVdiPWX20
書くのが大変遅くなってしまい申し訳ありません。今日はここまでです

今回は地の文が非常に多くなったり駆け足で進んでしまいかなり読みにくかったと思います。本当に申し訳ありません
二回分を一度にまとめた為このようになってしまいました
次回は金曜日に書きたいと思います。ですので質問などがありましたら金曜日までにお願いいたします

では
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/27(火) 08:26:07.35 ID:F9v+Wo4AO
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 11:27:06.23 ID:ZARbFdHC0

質問だけど結構前にネコが言ってたヤンキルって何?
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 15:51:44.00 ID:jtvGlp8C0
何でこのクロス思いついたの
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 23:17:39.34 ID:7Zm2a8GN0

歌月十夜やホロウアタラクシアみたいなものってどういう意味?
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/28(水) 09:22:34.43 ID:1gOma2ZJ0

橙子と式の電話がよくわかりません。どういうこと?
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/30(金) 21:21:30.01 ID:4h3U35so0
「質問をしていただきありがとうございました。一旦質問の募集を締め切らせていただきます」

「これより質門していただいたことに答えていきます。しばらくの間お付き合いください」

「ではこちらの質問からいきましょう。琥珀、お願いします」

「なんでこのクロスを思いついたの、とのことです。これはどういうことでしょうか?」

「私が調べたところ、次のような調査結果が出ています。
 ”figmaを改造して両儀式を作っていたら、友人に腕と足を取り替えられて太子の隣に並べて妹子、といわれたから。
  ムカついたけど一瞬だけ妹子に見えたから、ついむしゃくしゃして書いた。反省はしている”
 以上です」

「馬鹿ですね」

「ええ、馬鹿です。でなければこんな見切り発車感漂うSSを書いたりしませんよ」

「結論は出ましたね」

「ええ。これを書いている人は馬鹿、思いつかせた友人も馬鹿、ということでいいでしょう。では次の質問に移ります」
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/30(金) 21:43:59.29 ID:4h3U35so0
「続きましてはこちらの質問です。ネコが言ってたヤンキルって何?だそうです。シオン様、ヤンキルってご存知ですか?」

「いえ、知りません。しかしある匿名の方からヤンキルについての情報を聞くことができました。
 こちらがその映像資料です。入手ルートは明かせませんが、情報の信頼性は私が保証します」

「ほぅ、そこまで手が回っているとは流石シオン様。では早速このビデオデッキに入れて見てみるとしましょう」

「私も映像を確認するのはこれが初めてです。どのような物が記されているか、実に興味深い」

「式様の代名詞、ツンギレに代わる新たな属性誕生の予感。それでは再生スタート!」


『何だよもー、今幻のタイガールートやってるから邪魔す――ん?もうビデオ回ってる?え、始まってんのコレ。
 マジかよ。テレビに出るんならもちょっと高いネコ缶油とマタタビで化粧しとけばよかったぜ。
 あー、テステス。どうも。アタシが今回の情報提供者、匿名希望で眼鏡の似合う美人秘書系セレブキャット、ネコアルクでぇす。
 只今より、あの女について我々が調べ上げたことをお話します。ポップコーンとメントスコーラ片手にお聞きください。
 まずあの女はツンギレなんて生易しいもんじゃにゃい。例えるならネロアよりももっとおぞましい何か。
 たった一つの死の線切り裂く。見た目は病んでて頭脳はキルのみ。その名は、侍探偵両儀式!(某少年探偵風)
 幹也っちに会えない日が続くとナイフで枕を滅多刺しにしてるあたり、どう見ても病んでいます。
 たまに元祖ポエマーの匂いをつけた枕を与えないと暴れだしますからねアレは。
 ヤーさん執事も影でかなり苦労してるんですよ。それに彼女さ、いつも夜出歩いてるじゃにゃい。
 そのときにアタシ等を見つけると、例え一キロ先にいても全力で追ってくるんだぜ。
 しかも追いついたら馬乗りになってアヤツの気が済むまで滅多刺し。おまけにその時の顔は笑ってるときた。
 アタシがネコじゃなけりゃ、あの女おじいちゃんから聞いた大事なこと破りまくってますよ、マジで。
 あ、ありのままに起こったことを話すぜ。『俺は夜歩いていると思ったら、いきなり殺されていた』
 な、何を言ってるかわからねーとおもうが、俺も何をされているかわからなかった・・・。
 ありゃ一種のホラーなんてちゃちなもんじゃねえ、もっとおそろしいぶぎゃっ!!
 ギニャー!止めて!痛い!痛いかボクヘァッ。カフッ!グベ!―――』ブツン


「・・・・・」

「・・・すぷらってますね。流石に私でもコレはちょっと引きます。
 やぶへびでアレに巻き込まれるのも嫌ですし、次の質問に移りませんか?」

「その案に同意します」

「では続いての質問です」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/30(金) 22:09:12.84 ID:4h3U35so0
「最後はこの質問ですね。歌月十夜やホロウアタラクシアみたいなSSってどういうこと?とのことです。
 何気に痛いところを突かれてしまいましたね」

「痛いも何も貴女が勝手に話したことでしょう。身から出た錆です」

「あらら、なんとも素っ気無いお言葉。つれないですね」

「この質問の答えに関しましては少々長くなってしまいます。それでもよければ続けて読んでください。
 それでは琥珀、説明の方を」

「はい。本来、このSSはは歌月十夜やホロウアタラクシアみたいなものを目指していました。
 基本は繰り返す日常の中で選択肢を選び、その中から鍵となるものを見つけて話を進めていく、というお話でした。
 普通のノベルゲームのように選択肢を選んで物語をすすめていく、という形式のSSを目指していましたんでしたっけ。
 しかしやっていて面白くないことと、毎日書くことができないことなどから急遽このような形式になりました」

「本来、世界を渡る予定だった人物は両儀式、黒桐幹也、聖徳太子の三人でしたか。
 世界を渡った後、日中共に行動するパートナーを幹也と太子のどちらか選び物語を進めていく、という形式でした。
 イージーモードが幹也、ハードモードが太子で、選択するパートナーによって出現するイベントや選択肢も少し変化します。
 選ばれなかったほうは日中は単独で調べ物を行い夜に報告する、という行動をとります。
 志貴が夕方に式や太子と日中あったことをまとめようとした行動はその名残ですね」

「パートナーによって選択肢が変わるとはいえ、話や選択肢の大筋が変わるというわけではありませんでした。
 あと式様、幹也様、太子様、志貴さん、アルクェイド様以外の登場人物の行動は全てパターン化されています。
 その事を簡単に話しますと、先ほどの五名以外は行なう行動が一切変わらない、というものですね。
 この五名に関連したイベントはそのイベントに関わった全ての人物の行動記録に残ります。
 しかし、先ほど挙げた五名意外の方は持っているのは記録だけで記憶は持つことができません。
 ですので出現する選択肢も変わりませんし、同じ選択肢お選んだ際にとる行動やその反応は以前見た物の繰り返しとなります。
 先ほどの五名以外の登場人物は同じ行動をループし続けるNPCのようなもの、と思っていただければ結構です」

「要するに○○をしたことは見えないところでカウントされるが、それ意外のことは全てリセットされている状態です。
 月姫やfateなどのノベルゲームの選択肢を思い浮かべてください。それが一番近い表現です」
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/30(金) 22:22:56.31 ID:4h3U35so0
「ここから先は余談ですが、本来は月姫の世界に移動した後初めから遠野邸に入れる、というわけではありませんでした。
 月姫の世界に入った後、初めは地道に町を歩いてフラグの回収を行なわなければなりませんでした。
 そして町を廻る内に町や人に変化が無いことに気付き、その中で唯一変化のある人物を突き止め接近を試みる。
 この世界の鍵となるフラグを一定値以上集めると変化の中心人物と会うイベントが起きて話は終盤へ、というものでした」

「その変化の中心人物である志貴さんに会うことが目的でしたので、このSSはもう話の終盤に入っちゃってるわけですね。
 そうそう。中盤までは寝起きをする場所は遠野邸ではなく、他の方のお部屋や住んでいる場所にお邪魔する予定でした」

「その候補は路地裏同盟、アルクェイド、シエル、浅上学園の四つでしたか」

「その通り。右に行くほど志貴さんにたどりつくまでの難易度が上がっていきます。
 たどり着けずにゲーム・オーバー、なんて事はありませんが、右にいくほどはこなさないといけないイベントが多くなります。
 志貴さんへの接点の多さ、同居者の協力具合、行動制約、ループへの気付きやすさなどが難易度決定の主な理由です」

「泊まる場所が複数あるとはいえ、話が大きく変わるということはありません。
 宿泊拠点によって朝と夜の記録イベント、及び雑談や会話の内容が少し変わるだけです。
 話の大筋に関わるイベントや選択肢に変化はありませんでした」
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/30(金) 22:41:48.05 ID:4h3U35so0
「あと主観視点が式様でなく志貴さんになっているのも話を短縮する為の苦肉の策です。
 志貴さん視点で話を進めているため、様々なイベントや予定をごちゃ混ぜにしたりカットしたりしています。
 本当は私や翡翠ちゃんの出番はもっともっとありましたし、買い物や学校に関するイベントもあったんですよ」

「それに私達路地裏同盟が主役の話もあったというのに・・・。残念です」

「繰り返す日々に対応する為に式様の夢やこのコーナーも十数種類以上ありましたからね。
 他にも志貴さんや他の方の話や夢もあったりします。まあ、中には有彦さんが覚醒して大活躍するものもありますが・・・」

「・・・その話は止めてください。あれは誰も得をしません。私達が損をするだけで何も生み出さない非生産的な駄作です。
 大体彼が覚醒したところで最終的な勝利者は彼じゃないじゃないですか。むしろ一番被害が大きかったですよ」

「あはは。やっぱり根に持っていらっしゃいましたか。私は見てるだけでしたので、なかなかに楽しかったですよ。
 それにシオン様のあんな声やこんな声が聞けましたし、そして意外とむn」

「エーテライトッ!」

「はひっ!?またですか!?」

「黙りなさい!今後一切そのことを口にすることは禁じます!もしくは今すぐ記憶から消去すること!いいですね!」

「わ、わはひまひは。わはひまひはふぁは、くひほふぁふぁひひゅうをひれふぁいふぇくあふぁい。あふふぁいへふ
(わ、わかりました。わかりましたから、口の中に銃を入れないでください。危ないです)」

「ふん、まあいいでしょう。長くなってしまいましたが、これにて質問の回答を終了します。
 お付き合いいただきありがとうございました」

「それでは式様の夢を見ていただいて今夜はお別れです。ご質問ありがとうございました」
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [saga]:2012/03/30(金) 22:59:38.31 ID:4h3U35so0
―――――――――――――――――――――――――


暗い部屋に置かれた四つの筐体。周りにはロボットらしき絵が多数書き込まれている。
そこに群がる数人の男女。どうやらゲームに熱中しているらしい。


鮮花「くっ、NTDがまだ使えない。いちいちBMの射角外に潜り込むなんて生意気なのよ!」

シキ「いくら撃ってもそこからじゃ当たらないよ。終わりだ鮮花。お前が堕ちろ」

鮮花「なーんてね。残念でした。落ちるのは式、貴女よ!」

臙条「さよならだ両儀。お前の闘志は称えさせてもらう!」

NTDが溜まる前に決着をつけようと、覚醒を使ってまで敵陣に単機で攻めたことが裏目に出た。
ノーロックのシナンジュからN格を叩き込まれる。高火力の特射締めコンボだ。
そこに飛んでくたBMが同時ヒットする。いくら覚醒をしていてもこれには耐えられない。

シキ「しまった、覚醒落ちか。コクトー、後は任せた」

鮮花「今よバナージ!必ず帰ってくるという約束を違える事は許しません。行きなさい!」

コスオバしたオレの復帰位置はコクトーと離れた場所。いくらデスティニーでもすぐに駆けつけられる距離ではない。
そこにNTDと覚醒を発動して襲ってくるユニコーン。神速のBD格で一瞬で距離はゼロになる。

鮮花「これで終わりよ。亡霊は暗黒に帰りなさい!」

必死に抵抗をするものの、覚醒のないオレに共振状態のユニコーンを捌けるはずがなかった。
一瞬の隙を突かれてデストロイモードのBD格が刺さる。覚醒と根性補正がついた格闘は簡単に280以上削っていく。
ああ、負けてしまった。ごめんコクトー。オレのせいで。

黒桐「鮮花、君少し黙れ」

鮮花「兄さん!?」

遠くから覚醒したデスティニーが残像ダッシュで近づいてきている。
シナンジュは打ち上げコンを食らったようで、高いきりもみダウンをしていて身動きが取れない。
ガナーが上空に持ち上げられる寸前、デスティニーのパルマが謎の吸い込みを見せユニコーンを捉える。
そのまま上空に連れ去り、高高度でコンボを決める。この高さではシナンジュもカットできない。

黒桐「キミが正しいって言うのなら、ボクに勝って見せろ!」

そのまま覚醒技を叩き込みオレ達は勝利した。オレのアタポは7000程あったが、コクトーが前でロックを取ってくれたおかげだ。
それに要らぬ深追いをしてみすみす相手にチャンスを与えてしまった。今度は気をつけないと。

黒桐「あんまり無茶したらダメだろ。シキは2000コストなんだから」

シキ「うるさい。どうしようとオレの勝手だろ。それに勝ったからいいじゃないか」

いつも助けられてばかりだが、助けられたことが恥ずかしくてつい悪態をついてしまう。
オレだってずっとこのままコクトーの腕に甘え続けるつもりではない。いつかオレがコクトーを助けて逆のことを言ってやる。
そう考えている内に、負けた鮮花と臙条に代わって新しい対戦者が乱入してきた。

荒耶「二人が敗れたか。仕方あるまい、私がザクで出るとしよう」

白純「当然だろ。あんなヤツに負けてもらっちゃ困る。あいつ等は俺の獲物なんだから。
   さあ、俺のストフリで遊んでやるぜ、両儀ぃ!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・夢、か。







織、だよね?


―――――――――――――――――――――――――
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage saga]:2012/03/30(金) 23:02:06.45 ID:4h3U35so0
短くて申し訳ありませんが、今日はここまでです

ご質問ありがとうございました
続き書けるのは少し時間がかかると思います。申し訳ありません

では
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/04/11(水) 12:54:05.66 ID:zEm2xBOAO

まだかな
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 22:32:57.79 ID:Hve/DwSDo
待ってるぜ
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