このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

澪「16日の誕生日」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/01/16(月) 23:29:39.00 ID:5Cvu8oBHo

突然ですが、私には誕生日が二度あります。
とは言っても、年に二度年をとる訳ではありません。
今の年齢は律と同じ二十歳、花の新成人です。

本来の誕生日は1月の15日、生まれてこの方この日から移ったことはありません。
パパとママの言葉を信じれば、私は確かにこの日に生まれたのだから。

では、もう一つの誕生日は?
それは1月16日、本来の誕生日の翌日。

不思議に思う人もいるだろうけど、この日は私にとって、本当の誕生日と同じぐらい特別な日なのです。

なぜ「特別」になったかって?
それをこれから、書き綴りたいと思います。

拙い文章で申し訳ありませんが、どうかお付き合いください。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1326724178(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714136403/

少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:30:57.59 ID:5Cvu8oBHo


小学生の頃の私は、今以上に内向的で恥ずかしがり屋だった。
そんな私の周りには友達なんて数えるほどしかいなくて、誕生日会を開いてくれる友達になるともう、誰一人としていなかった。
その年の誕生日もまた、パパとママの三人で細々と過ごした。

特に寂しいとは思わなかった。家族だけで過ごす誕生日なんて、ごく当たり前のことだったから。


その次の日のことだ。
誕生日の余韻が抜けきらないまま、ご機嫌で登校する私に、一人の女の子が声をかけてきた。

「みーおちゃんっ、おっはよー!」

「あ、りっちゃん……お、おはよう」

この子は田井中律、私はりっちゃんと呼んでいた。
りっちゃんが私によく話しかけるようになったのは、この頃のことだった。

「あれ、みおちゃん。今日は何だか元気いいね」

「そ、そう?」

「うん、いつもはもっと暗くてハムスターみたいにおびえてるもん」

りっちゃんにむかっとするのは当時からだ。

「いいことがあったから」

「へー、何があったの?」

「……じょう日」

「えっ?」

「きのうね、たんじょう日だったの」

りっちゃんはすごく驚いた顔をした。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:31:29.76 ID:5Cvu8oBHo

「たんじょう日って、あのみんなで集まってケーキ食べたりゲームしたりする?」

他に何があると言うのか。
と言っても、私はそんな誕生日なんて経験したことないけれど。

「……うん、そうだよ」

「なっ、なっ、なっ、なんで教えてくれなかったのさ!!」

「へっ、なんでって」

「わたしもみおちゃんのたんじょう日行きたかったのにー!」

りっちゃんは悔しそうに地団駄を踏んだ。

「あのねりっちゃん、そうじゃなくて、いつもたんじょう日はパパとママと過ごすの」

りっちゃんは目を丸くすると、首をかしげる。

「おたんじょう日会とかしないの?」

少しだけ暗い気分になった。

「……わたし、あんまり友だちいないから」

誰かに打ち明けるのは初めてのことだった。
そのまま私は顔をうつむけてしまった。

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:31:57.43 ID:5Cvu8oBHo

実はさっき、一つ嘘を書いた。
寂しくない、と言ったことだ。

当時の私は内気な子だったが、決して人嫌いではなかった。
本当は、もっと色んな人に祝ってほしかった。
たくさんの友達に囲まれて、誕生日を過ごしたかった。

でも、私にはそういう友達がいなかったのだ。

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:32:24.91 ID:5Cvu8oBHo

「みおちゃん……」

りっちゃんが顔をのぞきこんでくる。

「ねえ、みおちゃん。こっち見て」

「……なに?」

顔を上げた瞬間、思わず吹き出してしまった。

「ぱいなっぷる!」

「ぷくっ、り、りっちゃ、やめて……くくっ」

「ほら、ぱいなっぷる!」

「やめてってば、ぷふっ」

笑いすぎて、お腹が痛くてたまりません。

「えへ、うまくなったでしょ?」

「うん、おかし……」

「今度はねぇ……みのかさご!」

「ふひゃっ」

「ぷぷ、みおちゃん今へんなこえ出した」

「も、もうりっちゃんのせいだよっ」

「あはは、おっかしー」

りっちゃんが笑い出す。つられて私も笑う。
たっぷりここ何年分かの大笑いだった。

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:32:59.73 ID:5Cvu8oBHo

そして、ようやく落ち着いた頃。

「ねぇ、みおちゃん。今日いっしょにあそぼうよ」

「えっ、今日? いいけど……」

「みおちゃんのおたんじょう日会やろっ!」

いきなり何を言い出すのかと、びっくりした。

「で、でも、もう16日だよ?」

「いいじゃん、一日おくれでも。みおちゃんの、もう一つのおたんじょう日ってことで」

「りっちゃん……」

びっくりして嬉しくて、子供心ながら涙が出そうになった。
そんなことを言ってくれる友達は初めてだったから。

ぎゅっと胸元に両手をのせる。
必死に涙をこらえて、今できる精一杯の笑顔で答えた。

「うん、いいよ!!」

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:33:39.94 ID:5Cvu8oBHo

その後、私とりっちゃんは二人でささやかなパーティーを開いた。
りっちゃんが持ってきてくれたお菓子と、私の家にあったケーキの残りを食べた。
二人きりの小さな誕生日会だったけれど、すごく楽しかったことを今でも覚えている。


りっちゃんはプレゼントに、おもちゃの指輪をくれた。
私が友達から初めてもらう、誕生日プレゼントだった。

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:34:07.82 ID:5Cvu8oBHo

「これって、ゆびわ?」

「そうだよー、おもちゃのだけどね」

「ゆ、ゆびわって、好きな人にあげるんじゃないのっ?」

「わたしはみおちゃんのこと好きだよ?」

「へっ」

「だってみおちゃん、かわいいもん」

「か、かわいくないよ」

「そんなことないよ、かわいいよ!」

「あうぅ……」

りっちゃんは無邪気な子だ。
誰かに好きということにまるでためらいがなかったのだ。
それが異性であれ、同性であれ。

一方の私といえば、異性からはもちろん同性からも「かわいい」とか「好き」とか言われたことなんてない。

私はりっちゃんに抱いた淡い感情に、気づかない振りをした。

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:34:33.93 ID:5Cvu8oBHo

そういえば、この時言い忘れていたことがある。
何度も何度も言おうとして、ついつい機会を逃してしまった。

だから、かわりにこの場を借りて一言だけ綴りたいと思う。


ありがとう、りっちゃん。


10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:35:02.42 ID:5Cvu8oBHo



それから律は毎年、私の誕生日会を開いてくれた。
小学校、中学校の友達と、高校に入ってからは軽音部のみんなと。

おかげで私は、寂しい誕生日を過ごさなくなったのだけど。
一方で、16日にパーティをすることはもうなかった。

当たり前と言えばその通りだ。
誕生日の翌日にまた、わざわざパーティを開くことはない。
そんなことするぐらいなら、本来の誕生日を全力で楽しむ。

そんな自然の発想のもと、16日はそれほど特別な日ではなくなったのだ。

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:35:31.82 ID:5Cvu8oBHo

その日が再び「特別」になったのは、高校三年生の時のこと。
年も明けた頃、私たちはいよいよ受験直前にあって、勉強漬けの日々を送っていた。

律は毎晩のように私の家にやって来ては、日を跨ぐまで勉強をしていく。
自分の部屋でやれとも思うのだが、一人だと勉強する気にならないそうだ。

私の見る限り、律はかなり頑張っている。
中学受験の時ですら、律はギリギリまで怠けていたのに。
ここまで真剣に勉強に打ち込む律の姿は、今まで見たことがない。

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:36:09.71 ID:5Cvu8oBHo

しかし、律の成績はあまり伸びなかった。
この時期になっても、模試の結果はC判定が精一杯だった。

律はそのこともあってか、どうにも疲れている様子だった。
学校の授業でも虚ろ虚ろとして、ちゃんと聞いているのかよく分からない。
せっかく私の家に来ても、ぼんやりすることが多くなった。

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:36:51.66 ID:5Cvu8oBHo

そんなある日のこと、勉強に身が入らない律との間で、とうとう事件を起こしてしまった。


「おい律」

「……」

今日も律はぼんやりと、眠たそうな目をしながら、こっくりこっくり船を漕ぐ。

「律ってば」

私の呼びかけに答えない律に、ふつふつと怒りが湧いた。

人の家に来ていながら、失礼じゃないか。
私は律と勉強しなくても一人でできる。言ってみれば、私は律に付き合っているのだ。
当の律がこんな調子なら、わざわざ一緒に勉強する必要がどこにあるのか。

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:37:36.69 ID:5Cvu8oBHo

私は不快感を込めてテーブルを叩く。

「りつ!」

「ひぃっ……あ、どうかした?」

「勉強するならちゃんと集中しろ」

「ご、ごめん。ちょっと疲れちゃって」

律は律で調子が悪いのだけど、一方の私も長い受験勉強で、疲れとストレスがたまっていた。

「疲れてるなら、今日はもう帰ったら」

ここは勉強する場所であって居眠りをする場所じゃない。
今は勉強する時間であって、無駄に眠る時間じゃない。

律が不真面目なのはいつものことなのに、どうにも気が立って仕方がない。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:38:04.81 ID:5Cvu8oBHo

「いや、もうちょっと頑張る」

大きなため息が出る。
本当にそう思っているのか、信用できない。

「な、なんだよ態度悪いな」

「お前が言うな」

普段怠けるのは別にいい。軽音部での練習も、ティータイムの合間にする。
でも、練習の時は全身全霊を傾ける。やるときはやる。

それが律のスタンスじゃないのか。


今は受験の直前、人生で一番頑張らないといけない時期だ。

それなのに、普段と同じように怠けていて一体どうするつもりなんだ!
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:38:56.46 ID:5Cvu8oBHo

「こんなこと言うのもなんだけどさ」

苛々の募った私の口はもう止まらない。
律の様子がおかしいという疑問より、律に厳しくしなければという思いが勝った。

「隣でいい加減な気持ちでいられると迷惑だ」

「そ、そんな言い方しなくたって」

「だいたい、最近のお前は気が緩みすぎてるぞ」

「そんなことねーし!」

「そんなことあるよ。あるから釘を刺してるんだ」

「私にだって、色々事情があるんだよっ」

「事情って何? 受験より大事な?」

「そ、それは……」

口ごもる律。
言い訳すら出てこないのか。私の苛々が限界に達する。

そして、私は決定的な一言を言ってしまった。


「勉強の邪魔」

「……!」

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:39:22.46 ID:5Cvu8oBHo

その時の律の顔は未だに忘れられない。

真っ赤になって、目元に涙をため、かすかに肩をふるわせる。

いつもは元気いっぱいの、少年のように活発な律が見せる「女の子らしさ」だった。

とうとう、律はたまらず涙を流してしまう。

そこで私はようやく、律にひどいことを言ったと悟った。

18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/16(月) 23:39:55.53 ID:5Cvu8oBHo

「ご、ごめん律。言い過ぎ……」

「悪かったよ、邪魔して」

律が立ち上がって、そそくさと帰り支度をする。

律、という呼びかけを遮られる。

「澪もさ、人が悪いよ。邪魔なんだったら、そう言ってくれたらよかったのに」

私が止める暇もなく、律は去ってしまった。


ひとり部屋に残された私はぽつりと呟く。

「……バカ」

律にではなく、自分に向けて。


こんなんだから、いつまで経っても想いを伝えられないんだ。

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/01/16(月) 23:40:59.42 ID:5Cvu8oBHo
日を跨いでしまいますが、少し中断します。

後半は一時には投下します。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 23:42:56.35 ID:qDSMGWtSO
>中学受験の時ですら、律はギリギリまで怠けていたのに。



これ、高校受験の間違いじゃね?
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/01/17(火) 02:06:39.59 ID:irwkSXCJo
>>20
ご指摘の通りです、訂正します

再開します
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:07:19.74 ID:irwkSXCJo


その日から、律は私の家に来なくなった。

相変わらず授業中は眠そうで、時には実際に寝てしまうこともあった。
そのたびに先生から大目玉を食らうのだが。

辛うじて部室の勉強会には顔を出すものの、私とは目も合わせてくれなかった。

「りっちゃん隊員、お疲れですね」

「あぁ、最近夜遅いから」

「そんな遅くまで勉強してるの?」

「……うん、まあ」

「あわわ、私を置いて一人で先を行っちゃうなんてずるいよ!」

「いや知らんし」

「夜更かしは体に毒ですよ。本番で体をこわしたらどうするんですか」

「梓が心配してくれるなんて珍しいな」

「まぁ、一応先輩ですから」

「一応とはなんだ中野!」

「きゃー♪」

私とは目も合わせてくれないくせに、唯や梓とはやけに仲が良い。
いや、いつも通りなんだろうけど、今日は特に目につくんだ。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:07:45.87 ID:irwkSXCJo

「でも、本当に体調には気をつけてくださいよ」

「大丈夫よ、澪ちゃんが体調管理してくれてるだろうから」

「「へっ?!」」

ムギの言葉を聞いて、奇しくも律と声が重なった。

「いつも澪ちゃんの家で勉強してるんでしょ?」

律と気まずい視線を交わす。

「ま、まあな」

「うん、一応な」

私と律のケンカにみんなを巻き込む訳にはいかない。

一時休戦と行こう、と私は目で合図した。

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:08:15.53 ID:irwkSXCJo


部室では何とかやり過ごしたものの、律はその日も私の家に来なかった。
次の日も、またその次の日も。


そんなことが何日か続いたある日、ムギに声をかけられた。

「もしかして、ケンカしてる?」

「……何の話」

「りっちゃんと澪ちゃん、最近あんまり会話してないでしょう?」

ムギは鋭い。ほわほわしているようで、微かな空気の変化に敏感だ。
私と律の間に漂う険悪な雰囲気を見逃さなかった。

「二人がケンカなんて、珍しいわね」

確かに律とケンカしたのなんて、久しぶりだ。
この前は、高二のライブ直前だっけ。

つくづく大事な時期にケンカしてるものだと思う。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:08:45.55 ID:irwkSXCJo

「私が、ちょっと律に言い過ぎちゃって」

ムギが相づちを打つ。

「私自身も受験で苛立ってたんだ。それで、つい律に当たっちゃった」

私は言葉に詰まった。
思い返せば、私は何てことを言ってしまったんだろう。


ムギは何かを考え込む。

「あ、そういえば!」

そして、思いついたように声を上げた。

「ねぇ、澪ちゃん。今度の15日って誕生日でしょ?」

受験ですっかり忘れていたが、そういえばそうだった。

「みんなでお誕生日会を開きましょう!」

「いや、いいよ……みんな勉強で忙しそうだし」

「大丈夫よ、ちょっとぐらい」

「でも……」

「それじゃ、お昼の間だけを使ってとか。今日みんなに聞いてみましょう!」

ムギは既にその気らしい。
目が輝いて、眉毛が充実している。

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:09:12.31 ID:irwkSXCJo


そして、部室にて――

「さんせーい!! 憂も呼ぶね!」

「み、みなさん勉強は大丈夫なんですかっ?」

「あずにゃんは来ないの?」

「もちろん行きます!」

「……ぷぷ」

「はっ」

こうして、軽音部のみんなが私の誕生日を祝ってくれることになった。

――ただ一人、部室に顔を見せなかった律を除いて。

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:10:06.06 ID:irwkSXCJo

「りっちゃん、どうしたのかな」

「まさか、本当に体調を崩したとかじゃ……」

「学校には来てたからそれは大丈夫よ」

「それじゃ何で……」

今日は週末、つまり私の誕生日前では最後の登校日。

律が私を避けたことは明らかだった。


「大丈夫よ、澪ちゃん」

ムギに背中をさすられる。

「りっちゃんにはメールでもしましょう?」

怪訝そうな表情を浮かべる唯と梓に向かって、ムギは言った。

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:11:23.10 ID:irwkSXCJo


その日も律は私の家に来なかった。

一人で机に向かう。数学を一問解くと、時計を見る。
まだ十分そこらしか経っていない。

勉強の邪魔、なんて律に言っておいて、律がいなくてもまるで勉強がはかどらない。

受験勉強は長く苦しい。でも、誰かと一緒なら頑張ってやっていける。
誰かが側にいた方が、頑張れるんだ。

直前になって疲れとプレッシャーが限界になったとき、それは如実に感じられる。


鉛筆を乱暴に投げ捨てた。

筆記用具や問題集を机の上にほっぽりだしたまま、私はベッドに倒れ込んだ。

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:12:11.21 ID:irwkSXCJo



「ハッピーバースデー澪ちゃん!!!」

「おめでとうございます!」

クラッカーの音が盛大に鳴り響く。
唯とムギ、梓と憂ちゃん。

受験直前ということもあって去年より人は少ないけれど、それでもみんなが集まってくれた。

「あ、ありがと、みんな」

嬉しくて、ちょっと照れくさかった。

「こんな忙しい時に、私のために集まってくれて……」

「あ、澪ちゃん涙ぐんでる〜!」

「お姉ちゃん、めっ」

「ちょ、ちょっと欠伸しただけだっ」

十八歳の誕生日も、みんなに囲まれて過ごすことができた。

でも、やっぱりそこに律の姿はなかった。

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:12:59.22 ID:irwkSXCJo

「律先輩、何してるんでしょうか」

「澪ちゃんの誕生日なのにね」

「メールしたら、行くとは言ってたんだけど」

「家まで呼びに行きますか?」

「いいよ別に、そのうち来るだろ」

「でも……」

「そうね、先にやっちゃいましょう。今日は特製ケーキを持ってきたの」

「おぉ! ケーキ!」

ムギの計らいもあって、どうにかパーティが和気あいあいと進んでいく。
ゲームをしたり、プレゼントをもらったり、演奏してもらったり。

その年の誕生日も、とても楽しいものになった。

……結局律は最後まで現れなかったのだけれど。


31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:14:44.18 ID:irwkSXCJo




私の誕生日がもうすぐ終わる。

あと十秒、九、八、七……時計から目を逸らす。

とうとう16日になってしまった。


ずっと前から、律は私と誕生日を過ごしてくれた。
誕生日に律と会話すらしないなんて、初めてのことだった。

携帯を開く。メールは一件もない。
机の前に座る。もう一度、携帯を開く。

体ごと突っ伏して、ため息をもらした。

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:15:22.93 ID:irwkSXCJo


律との思い出がよみがえる。
小学生、中学生、そして高校生。
私と律はずっと一緒だった。


私は律を助けているようで、いつも律に助けられていた。

いじめっ子に絡まれてる私を、身体を張って守ってくれたり。
恥ずかしがり屋の私の背中を押してくれたり。

引っ込み思案だった私を音楽の道に引っ張りこんだのも律だ。
そのおかげで軽音部に入って、かけがえのない親友と出会うことができた。

いつしか律はただの幼なじみじゃなくなった。
私にとって、大切な人。
弱虫の私をずっと支えてくれた、かけがえのない……


手で涙を拭く。
拭いても拭いても、止めどなく溢れる。

律に会いたい。
仲直りができなくてもいいから、嫌われたままでいいから、会って謝りたい。

会いたいよ、律。

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:16:07.23 ID:irwkSXCJo


そのとき。こんこん、と音がした。
息を呑んで耳を澄ませると、もう一度、こんこん、と音がした。

窓を叩く音だ。こんな風に家に来る人間は一人しかいない。

おそるおそるカーテンを開けると、そこには……

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:17:05.33 ID:irwkSXCJo


「みおー、開けてくれい」

私はすぐに窓を開けて、そのびっくりするほど冷たい手を取る。

「あちゃー、ちょっと遅れちゃったか」

のんきなことを言っているのは、幼なじみだった。

「ごめんごめん、寝過ごしちゃってさ」

ケンカしていることを忘れたかのように、律はにこやかに話しかけてくる。

「もしかして、私を待ってたとか? まさかな」

そのまさかだよ、バカ律。

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:17:31.92 ID:irwkSXCJo


「パーティってもう終わっちゃった?」

とっくの昔に、と私は頷く。

「ですよねー、失敗しっぱい」

律は悪びれる様子もない。

業を煮やした私は律に問いただす。

「いったい今まで何やってたんだよ!」

「何ってそりゃ……」

これ、と律は紙袋を差し出した。
その中には、所々ほつれたマフラーがあった。

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:18:03.88 ID:irwkSXCJo


「慣れないことするもんじゃないな、やっぱ」

律がぽりぽりと頬をかく。

「勉強の合間にちょいちょいとやっても一向に進まないし、夜更かししたら眠くなるし」

「じゃ、じゃあ最近お前の様子がおかしかったのって……」

「そだよ、それ編んでた」

こんな大事な時期に、勉強の時間を割いてまで私のプレゼントを?
それで寝不足になって、何考えてるんだお前は。

「いやー、完成したらどっと疲れが出ちゃって、寝て起きたらこんな時間だろ? 急いで来たんだけど……」

律、と名前を呼ぶ。
不思議と心が温かくなった。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:18:51.11 ID:irwkSXCJo

「な、何ですか澪さん。もしかして怒ってらっしゃる?」

ゆっくりと律に近づく。

「あ、勉強はそれなりにしてたぞ、別にサボってなんかないからなっ」

なおも律に近づいていく。

「ごめんってば、でも澪にどうしても渡したくてっ」

距離を詰めて詰めて、そして、思いっきり。

思いっきり、律を抱きしめた。

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:19:48.52 ID:irwkSXCJo


「みお……?」

「ごめっ、わたし、律にひどいこと言った!」

声にならない声をひねり出し、ともすれば収拾がつかなくなる心を必死に抑えつける。
涙でくしゃくしゃになった顔を律の胸に押しつける。

「律は、わたしのために、ここまでして、くれたのに、わたしはっ……」

律に背中をなでられる。

「ごめん、あんなこと、言うつもりなかったのに、疲れてて、どうかしてたっ」

「よしよし、もう気にしてないって」

「ごめん、律ごめん」

「ごめんより、お礼が欲しいな」

「……」

ありがとう、と私は呟いた。

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:21:00.38 ID:irwkSXCJo

しばらくして、ようやく落ち着いた頃。

私は律と肩を並べて座り込む。
律からもらったマフラーを首に巻いて。

「ごめんな、誕生日に間に合わなくて」

「全然気にしてないよ」

「悪いな、下手くそなマフラーで」

「……うぅん」

最高のプレゼントだよ。

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:22:05.03 ID:irwkSXCJo

「なぁ、澪。今日空いてる?」

「受験生に暇はなし」

「そう言わずにさ、ちょっとだけ!」

「一体何の用?」

「澪の誕生日会やろうぜ!」

いきなり何を言い出すのかと、びっくりした。

「で、でも、もう16日だぞ?」

「いいじゃん、一日遅れでも。澪の、もう一つの誕生日ってことで」


はっと、小学生の頃の記憶が思い起こされた。


「どした、急にぼっとして」

「似たようなことを、昔言われた」

「そだっけ?」

そうだよ、忘れるもんか。
律と過ごした最初の誕生日だ。
お前は忘れたかもしれないけど、私にとっては大切な思い出なんだ。

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:23:23.93 ID:irwkSXCJo

律の肩によりかかる。

「16日の誕生日か」

「いいアイデアだろ?」

「分かった、いいよ」

「よし決まり!」

「そのかわり……」


私は一つ条件をつけた。

今年だけじゃなく来年も、そのまた来年も……

この日は二人で過ごそうって。


42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:25:06.71 ID:irwkSXCJo




そして、今年もまた――


「みおー、何書いてんの?」

「ちょっと、手紙をさ」

「へー、どんな?」

「私と律のこと」

「えっ、私のこともか?」

「そうだよ」

「何を書いたんだ、見せなさい」

「だーめ」

「ぐぬぬ……私には肖像権がある」

「ないから」

「ちぇーっ、昨日いっぱいお祝いしてやったろっ」

「そのことは感謝してるけど、それとこれとは話が別」


――16日がやってくる。


43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:25:40.62 ID:irwkSXCJo


「ねぇ、変な手紙書いてないでさー」

「変なとは何だ。てか、特に用もないだろ」

「あるし!」

「へぇ、どんな?」

「それはだな……」

「んー?」

「は、早くそれ書き終えろよ!」

「あともう少しだから」

「うー……」

律は何を焦っているのだろう。

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:26:07.19 ID:irwkSXCJo

「はい、終わりっと」

「ほんとかっ?」

「お待たせ。それで、何の用事?」

「じ、実は澪にプレゼントがありまして……」

「昨日もらったけど。恒例のホラー系DVD」

「それとは別に!」

「だったら昨日くれればよかっただろ。大体私が恐いの苦手なこと知って……」

「み、みんなの前で渡せるわけないだろっ!」

「なんで?」

「そういうプレゼントなの!」

「へぇ……?」

律は不機嫌そうに口を突き出した。

45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:26:55.41 ID:irwkSXCJo


「それより、そろそろ出かけないとレストランの予約が……」

「その前に!」

「プレゼントとやらは、レストランじゃダメなのか?」

「今じゃないとダメなの!」

ここは寮の私の部屋、律と二人きりだ。
今年もまた、もう一つの誕生日を律と過ごす。

「……これ」


手渡された物は、手のひらにすっぽり収まってしまうほど小さかった。

「あ、ありがと……中、開けていい?」

律は無言で頷いた。

46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:27:32.54 ID:irwkSXCJo



包装を開けると、また小さな箱があった。
この箱は、どこかで見たことがある。

あれは確か、律のいたずらで化粧のまねごとをするために、ママの鏡台の前に座って……

「開けてみて」

いじってみようと手を触れたら、ママに見つかって、律ともども大目玉をもらったんだっけ。
きっとママにとっては、それぐらい大事な物だったんだろうな。

「へへ、安物で申し訳ないけど」


そういえば、律にも以前もらったことがある。
あの時はおもちゃだったけど、これは立派なシルバーの……

「その、女同士なんておかしいかもしれないけど」

いつか誰かにもらえるかなと、夢に見た贈り物。
律からもらえるなんて思わなかったけど。

でもずっと、律から欲しいなって思ってた。


「好きだよ、澪」


手紙に書けばよかったな。
私の想いが通じたって。


47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:28:06.02 ID:irwkSXCJo


「あれ……? もしかして外した?」

うるさい。

「えっと、みおしゃん?」

うるさいってば。ずっと片想いだった相手の気持ちが初めて分かったんだ。
今返事をしたら、感情が抑えられなく……

「な、泣くなよ〜っ、気に入らなかったのか?」

そんな訳ないだろ、バカ律。
お前は昔から本当にバカなんだから。

ずっとずっと、十年以上昔から。

デリカシーがなくて、鈍感で、いつも私をからかって振り回してばっかりで。

無邪気でうっとうしいぐらい元気なくせに、繊細で、人一倍寂しやがりで。

いつも私を守ってくれて、辛いときや悲しいときは一緒にいてくれて。

そんな律が……ずっと好きだった!

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:28:55.68 ID:irwkSXCJo


「ひゃっ……み、みお?」

私は律に抱きついて、十年間たまりにたまった感情を思う存分流し出す。

「好き! 私も大好き!」

「みお、苦しい……ちと離れろ」

「やだ! やっと律と両想いになれたのに!」

「はいはい、別に離れたら私が消える訳じゃないんだから」

「何年待ったと思ってるんだよぉ……」

「よしよし」

「ぐすっ……ひっぐ……」

「……ごめんな、待たせちゃって」

律の腕の中であやされて、私は少しずつ落ち着きを取り戻していく。

49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:31:31.35 ID:irwkSXCJo


「ええっと、それじゃ澪」

「……」

「私たち、付き合うってことで……」

「それって、恋人同士になるってこと?」

「そうだよ」

「誰と誰が?」

「はぁ? 私と澪に決まってんじゃん」

「澪って誰よぉ」

「お前だよっ」


付き合う……恋人同士……? 私と律が?

なななななんと!? わわ、あわわわわっ!

そそ、そ、そんなことがあっていいのですか!?

いやこれは夢かもしれない。

頬をつねってみる。うん、夢じゃない。

いやったあああ〜〜!!

あーあーかーみさーまおねーがいー

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:32:46.66 ID:irwkSXCJo


「澪さん?」

「ふたりーだーけーのー」

「気がどーてんしてる」


私と律は、両想いだ。

両想いなら付き合って、恋人同士になる。

なるほど、自然の摂理だ。


「おーい、みおー」

「律!」

「は、はい」

「ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」

「……うん、よろしく」

私は深々と頭を下げた。


「おい、それじゃ土下座だぞ」

「はっ」

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:33:16.71 ID:irwkSXCJo

二人の穏やかな時間は流れる。

「りつー」

「なんだ?」

「キスしていい?」

「いいよ」

「んっ……」

甘くて酸っぱいイチゴの味。
今なら、いい歌詞が書けそうだ。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:33:49.55 ID:irwkSXCJo

「ファーストキス、あげちゃった」

「初めてだったんだ」

「律は違うの……?」

「そ、そんな訳ないじゃん! 私に甲斐性ないの知ってるだろ」

「うん、とてもよく」

「さいですか」

私に想いを伝えてくれたのだって、今が初めてだもんな。
ずっとずっと好きだったのに、全然気がつかないでいて。

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:34:52.05 ID:irwkSXCJo

「律、もう一回」

「んっ……」

「もう一回」

「ちょ、何回する気だ」

「今まで我慢してきた分」

「マジですか?」

「マジです……嫌?」

「別にいいけど、時間は大丈夫?」

律が時計を指さす。
午後六時前、ええっとレストランの時間は……

54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:36:43.53 ID:irwkSXCJo

「律、もう一回」

「んっ……」

「もう一回」

「ちょ、何回する気だ」

「今まで我慢してきた分」

「マジですか?」

「マジです……嫌?」

「別にいいけど、時間は大丈夫?」

律が時計を指さす。
午後六時前、ええっと予約の時間は……

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/17(火) 02:37:45.90 ID:irwkSXCJo

ミスです

>>54>>53に差し替えてください
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:38:46.53 ID:irwkSXCJo

「……わわ、予約の時間が!!」

「そ、そんなにやばいの?」

「速く仕度して! できれば五分で!」

「そんな無茶な」

「速く!」

「わ、分かったよ!」

律があわただしく部屋を出て行く。
仕方ないけど、残りはおあずけだ。

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2012/01/17(火) 02:39:47.95 ID:irwkSXCJo


今夜は律とディナーだ。
恋人になった最初の日を、思う存分楽しもう。

外出着に着替えると、私はマフラーを首に巻いた。

扉の前で律が待っている。

「行こっか、律」

「ほいほい」

律と手をつないで、寮の廊下を歩いていく。
唯やムギ達にからかわれるだろうか。

それでもいい。これからずっと、律と同じ道を歩んでいくのだから。



今日は1月16日、十年越しの想いが実った日。
私にとって、誕生日と同じぐらい特別な日。


End

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/01/17(火) 02:42:21.11 ID:irwkSXCJo

とにかく幸せな澪ちゃんを書きたかった作品です
センター試験は?とか荒削りな所がありますが、見逃してください

一日どころか二日も遅れてしまったけど、澪ちゃん改めて誕生日おめでとう!

そして、ここまでお読みいただきありがとうございました。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 02:43:44.53 ID:2myIUc9Ao
凄い良かったよ
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/17(火) 03:10:59.26 ID:mZM8VQOh0
おつおつ
1日遅れだったのは内容とリンクしてたんだな
面白かったよ
15日にも書いたけどもう一度、澪ちゃん誕生日おめでとう!
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 04:26:11.48 ID:sjjMCioSO
イイハナシダナー
乙でした。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 06:36:47.77 ID:xbfKLlxi0

これで一週間は頑張れるぜ
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/01/17(火) 07:21:53.26 ID:9V/LqjXAO

良い物読ませてもらった。
ありがとう。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 08:30:05.57 ID:7N9psnJDO
澪誕SSでやっとマトモなのを見つけた
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 15:05:21.35 ID:XZr1pO5DO
久しぶりに心が暖かくなる澪律が見れて凄く良かったです。
やはりこの2人の関係は素晴らしいと言う事を
再確認する事が出来ました。
35.43 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)