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ジュぺッタ「あたし、メリー。今あなたの後にいるの」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 00:50:01.67 ID:4mWTuhEn0
ポケモンのSSです

舞台はポケモンがまだ殆ど見つかってない世界です

多分読み終えたとき「ポケモン全然関係ないじゃないか」と思われるかもしれません

でも前々スレで書くと宣言したので最後まで頑張って書きます

SS書きは5度目、スレ立ては実質4度目になります

拙い文章ですが暖かい目で見ていただければ幸いです…

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1327247396(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 00:50:54.64 ID:4mWTuhEn0
永い眠りから覚めた気がした。だが覚めたのだろうか?

完全に、暗闇である。

少女の人形は困惑する。

ジュぺッタ「…ん…ここは…?」

???「ここはあなたの深層心理の世界です」

ジュぺッタ「深層心理…?」

???「あなたは生まれ変わるかそれとも地獄を彷徨い続けるかどちらか二つを選択できます。」

ジュぺッタ「…?どういうこと…?」

???「詳しくは話せませんがあなたは死にました」

ジュぺッタ「え?」

???「あなたは死にました。」

ジュぺッタ「嘘!なんで!?」

???「何故かは話しません。話を戻します。あなたは生まれ変わるかそれとも地獄を彷徨い続けるかどちらか二つを選択できます。」

ジュぺッタ「う…うぅん…百歩譲って選択できるとするならうm」

???「しかしただ選択するなら面白くありません。賭けをしましょう」

ジュぺッタ「え」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 00:52:06.54 ID:4mWTuhEn0
???「私の手の中に…片方は転生への片道切符、もう片方は転落への墜落切符があります。勘で当ててください。確率は純粋に2分の1です」

少し逡巡する。だが迷ってても仕方ないと決断する。

ジュぺッタ「…うーん…じゃあ…左手!」

暗闇の中に光が満ちる

???「おめでとうございます。あなたは第二の人生を送れるようになりました。なのであなたに使命を与えようと思います」

ジュぺッタ「しめじ…?何…?それ…」

???「使命です」

???「条件付きであなたを蘇らせてあげます。あなたの条件は…」

???「あなたの条件は前の持ち主を探し、呪い殺す事です。ただし、前の持ち主とは出会ってはいけません。出会った場合は…」

ジュぺッタ「待って、なんで呪わないといけないの?」

???「あなたは捨てられたのです」

ジュぺッタ「えっ!?どうして?あたしの持ち主はそんな…」

???「そんな?」

ジュぺッタ「…顔が思い出せない。それに名前も思い出せない。どうしよう」

???「ま、頑張って呪ってね♪」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 00:52:44.73 ID:4mWTuhEn0
ジュぺッタ「待って!」

???「待たないよ」

ジュぺッタ「フリーズ!!」

???「ナニ人だっけ?」

ジュぺッタ「どうだっていい。あたしの…顔は覚えてないけど、その人はあたしを捨てるような人じゃない!」

???「そう?何かの拍子で捨てられたんじゃないの?誰だって心変わりはある。それじゃ、私は急ぐから」

ジュぺッタ「待って!」

???「あなたには『呪いの相手を見つけるまで元の持ち主の国の言葉が喋れる』、『移動は遅いものの誰にでも電話でき、1回の電話で制限された距離をテレポートできる能力』能力。そして『持ち主はあなたの町にいる』という情報をあげるわ。じゃ、がんばってね♪」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 00:53:39.27 ID:4mWTuhEn0
ジュぺッタ「まt」光が見える。前方に。

とてつもない光、やがてそれは彼女を包み込む…

落下する感覚、やがて地面ではない何かに叩きつけられる感覚。

気がつくと彼女はどこかのゴミ捨て場にいた。


男「あっれー…?どこだっけ…」

時同じくして男は捜索を開始する。

男は若い。一目で大学に在籍しているのが見て取れる風貌。皮のコートを羽織り、下にジーンズを穿いている。

彼は人形を探していた。それは彼にとってはとてつもない程の思い出を秘めたものだった。

彼は生来虚弱体質であった。幼少時、他の子が川や海、山で遊んだりサッカーや野球に興じたりおにごっこや缶蹴りをしている頃、ずっと家にいなければならなかった。

不憫に思った親は彼に人形を与えた。初めて与えた人形は小さな女の子だった。

彼は始め名前を付けなかったが、あとでつけたぺタ子という名前でこの人形を呼ばさせていただこう。

(ペタ子とは彼が「そういえばこいつ貧乳だよな」という事を考えペッタンコな胸の子=ペタ子とプロフィールを決めた事による。後々ここに「胸が小さいから悩んでいる」とか「『貧乳じゃなくて美乳なんだよ!』が口癖」とかいう設定が付くのはまた別の話。)

始めはただただ人形で遊んでいたものの、TVの影響が出始めやがて物語を形成するようになる

その頃には人形は数十体を数えていた。物語もいくつかあった。

しかし彼はすでに大学生。流石にそんな物語は妄想しない。最近の趣味はPCであった。

人形はたまにタンスから取り出し、あの頃の空想に浸ったり設定を追加していくに至っていた。

だがぺタ子だけは違った。友人から何を言われようとタンスに入れず部屋に出し、たまに一人の時こっそり抱いたりして可愛がっていた。

―そんな人形を捨てるはずなど無い。

…となると無くした可能性のほうが高い。普段はPCの横に座らせてたまに愛でているからPC付近のかばん類が怪しい。

しかし調べてみると…ハズレだった。最近、どこに消えたのか伊万里の焼き物やらディベート大会3位入賞トロフィーやらよく物を無くす。

男「っかしーな…げ、もうこんな時間」男は午後に必修の単位があることを思い出し、部屋を駆け出た。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 00:55:03.28 ID:4mWTuhEn0
冬、それはこの国で見られる四季の一つである。

太陽の熱は影を潜め、ゴミ捨て場には寒風がすべての生けるものに容赦なく吹き付けられていた。

ジュぺッタ「とりあえず、何か使えるものは…」

彼女はとりあえず生活できるもの、そして探索に役立ちそうな物を探し始める。彼女の新たに与えられた命は汗を排出はしないものの寒さは感じるようであった。

凍えるような中、電池がわずかに残っているペンライトと携帯を探し出した。

ジュぺッタ「電話なら何でもいいんだよね…?」

彼女が落ちた地点に捨てられた雨合羽と救急箱があったのは幸いだった。これで雪を凌げる。

もう一つ、思い出したことがあった。しかしそれは喜べるニュースではなかった。この町の人口が少なくない事だ。

ジュぺッタ「どうしよう…」

彼女はもう一つ思い出した。持ち主が男だったことである。

しかし迷いがあった。彼女を捨てた人物の思い出も徐々に思い出してきたのである。(相変わらず名前は思い出せなかったが)

彼女は大切に、大切にされてきたぬいぐるみであった。沢山の仲間と囲まれていたように思える。そんな相手を呪うのか彼女の心は大きく揺らいでいた。

仲間が沢山いたということは少なくとも貧乏な家じゃなかったのかもしれない。また情報が増えた。

ガサッ

ジュぺッタ「!?」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 00:56:16.12 ID:4mWTuhEn0
見ると…そこには水色の巨体があった。それと同時にガラクタの後ろに隠れる丸い影。

ニドクイン「あら、起こしたかしら?」

ジュぺッタ「あなたは誰?何でこんなところに?」

ニドクイン「私はニドクイン、さしずめここのポケモンの世話役ってところかしらね。あなたは?」

ジュぺッタ「あたしは…と、とある人を探しているの。ところで…まだ誰かいるの?」咄嗟に自分の名前が出てこなかった。

ニドクイン「ビリリダマ達がいるわ。ただ、あなたがさっき空から落ちてきたことにびっくりしてみんな隠れちゃったみたいね」

ジュぺッタ「え、あ、あの、ごめんなさい」まさか驚かせるつもりはなかった。自分たち以外にもポケモンがいたとは

ニドクイン「心配しなくてもいいわ、ただみんな人間から追い出されてきた子達だからね…」

ジュぺッタ「追い出された?」

ニドクイン「そう、この子達は元は発電所にいて、ポケモンだと分かると一旦は調べられるんだけど発電所の計器類を狂わすからって追い出されちゃった子達。」

ジュぺッタ「人間って…」

ニドクイン「別に私がどうこうあなたの事を聞くつもりはないわ、あなたはここで暮らすの?それとも出て行くの?」単純に疑問というよりは警戒の言葉。

ジュぺッタ「…少しだけ、ここにいてもいい?」

ニドクイン「別にいいわ。ただ私は今この子達を養うので精一杯だから自分でやってね」

ジュぺッタ「ありがとう。あと、ここらへんで金持ちそうな人間っていたら教えて」

ニドクイン「TAKAGIって人が車とかタイヤとかの社長をやってるって事を聞いたことがあるわ。そこのダンボールね」ややぶっきらぼうとも取れる風と言った感じで指す。

見るとそこにはダンボールが積み上げられていた。ジュペッタはこの山の上に落ちたので幸い怪我が無かったのだった。

そのニドクインが指す場所を見ると『高木自動車梶xというダンボールがあった。おそらく何か車の部品を入れていたダンボールであろう。ご丁寧に電話番号まで書いてある。

ジュペッタ「ありがとう」彼女はそう告げるとその場から立ち去った。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 00:57:29.78 ID:4mWTuhEn0
講義が終わると友はパーティグッズを買いにホンキ・ドーテに立ち寄った。

もうすぐ男の誕生日である。男は友の数少ない友人の一人だった。

男は口数が少なかった。だが喋る時はよく喋った。よく喋る時は昔TVでさえ禁止されていたという事実が信じられなかった。

そんな男も20歳である。一足先に誕生日を迎えていた友は酒でも買っていこうかと考える。

ポケットに入っている携帯のバイブレーションが電話である事を告げようと小刻みに振動し始めた。

小さく舌打ちをする。お袋だ。

お袋は子煩悩を絵に描いたような母だった。それも、タイヤ会社の経営で全く私を教育しなかった父の影響でもあるだろう。

父が私に始めて人というものを見る視線で見た目、それは他人へ向けられる無関心の権化のような目であった。数日前、20歳の誕生日を迎えた日である。

仕事疲れで浴びるように飲んだ酒で赤らんだ顔は、20歳になったと聞いて驚愕の表情を示していた。私はムシャクシャしていたせいもあり家を飛び出した。あれ以来友人の家に泊まり続け、家には帰っていない。

息子より仕事の方がいいんだな?と吐き捨てて出て来たものの、恥ずかしかった。我ながら父親には期待していなかったつもりなのに。きっと今までの鬱憤が溜まっていたせいもあるだろう。

友はバイブレーションが鳴り終わるのを待つと嘆息し、男への買い物を続行した。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 00:58:09.74 ID:4mWTuhEn0
この町の地図を手に入れた。

偶然、廃屋を見つけた。偶然以外の何物でもなかった。廃屋には人の気配は無く、長年人がいなかったように思える。

ゴミ捨て場に戻ってきたジュぺッタは行動を開始する。

地図を手に入れすぐに情報を得るため高木自動車に電話しようかと思いたったが、ふと手を止めた。

…いくらなんでも無名のまま電話するわけにはいかない。

名前、名前…いくつもの文字が頭を過る。

しかし何一つ彼女のピンと来るものはなかった。

いつしか彼女はうつらうつらとまどろんでしまった。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 00:59:10.50 ID:4mWTuhEn0
男は帰るとすぐ布団に入った。

PCをする気にもなれなかった。

何故だろうか?寂しい?

ふっとぺタ子の顔が過る。

見慣れた顔がよく思い出せなかった。そんな自分に少し腹が立った。

…明日また、探そう。

そう自分自身に言い聞かせ、寝る。


ジュぺッタ「ふぁ…ん…」

起きた。それだけだった。

はやく電話をしなければ、と思い立つのに数分。もう日は照っている。

彼女は座布団から起き上がった。と同時に足元のガラクタが崩れ盛大に転んだ。

ジュぺッタ「いたたたた…」どうやらCDラックごとCDが捨てられていたようで、その上に足を乗せたため崩れたようだ。

ジュぺッタ「分別は面倒くさいって言うけど、CDとCDラックくらい分けなさいよね…」プンスカ

吹奏楽の全国大会のCDだった。

1つ1つCDラックに戻しつつふと目に留まるCD、タイトルがあった。

2000年の職場部門のCDであった。喜歌劇「メリー・ウィドウ」。

何故この曲が目に留まったのかは分からない。だが彼女はタイトルに一目、奪われた。

可愛らしさを感じると同時に古く、それでいて引かれる名前。

名前はメリーにしよう。こう考えるのに時間はかからなかった。

あたしは…メリー。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:01:54.82 ID:4mWTuhEn0
とりあえず今はここまでで、今日中に帰ってきて続きは書こうかと思っています。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/23(月) 01:16:47.27 ID:ETu1oZKxo
デンチュラの人?
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/23(月) 01:57:16.18 ID:cLrAfnCU0
面白そうだ、乙
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 17:12:33.70 ID:4mWTuhEn0
>>12
そうです。随分と待たせてしまいました。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 17:13:29.61 ID:4mWTuhEn0
そして今の衝撃で幸か不幸か、前の持ち主の名前を思い出した。

男、という名前。私を可愛がってくれた男。

しかしあたしは捨てられたのだ。

どのように可愛がられたのだろうか?覚えていない。というか可愛がってくれた男があたしを捨てるのだろうか?

そもそも男はどんな顔だっただろうか?身長は?太ってる?イケメン?全く思い出せない。

…何故捨てられたのだろうか?はっきりしない。

覚えているのは棚から落ちる衝撃、何かの割れる音、硬いものと共に何かにつめられ、そして焼け死ぬ地獄の熱さ。

…思い出すのはまだ先でもいい。まず今は行動だ。

名前を決めたところで早速、行動を開始した。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 17:14:19.39 ID:4mWTuhEn0
社員女「はい、高木自動車です」

ジュぺッタ「あたし、メリー。今あなたの会社の前にいるの」ガチャ プーップーッ

社員女「…?」

社員女「なんだったんだろう…」

prrrr

社員女「あっ」ガチャ「はい、高木自動車です」

ジュぺッタ「あたし、メリー。今あなたの会社の10階の社員食堂にいるの」ガチャ プーップーッ

社員女「…一体なんなの…?」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 17:16:18.21 ID:4mWTuhEn0
いつから息子の事に無関心になってしまったのだろうか。

仕事で会社の同期を追い抜き、エリートを出し抜き、会社を乗っ取り社長を追い出した時には既に私は家庭内の事に目を背けていた。

高木社長は町の中枢部を見下ろすビルの窓際に立ってほっと一息溜息をついた。

町はクリスマスが近づいており、イルミネーションが満点夜空の星のように煌びやかに輝いている。だが私の心は暗かった。

息子と喧嘩した。20歳になった彼におめでとうと言いたかった。だから20歳になったのに驚いた様子を装い、後でプレゼントを渡そうと考えていた。

息子が欲しがっていたD-SHOCKの時計である。

だが息子は「息子より仕事の方がいいんだな?」と吐き捨てて出て行ってしまった。

私が悪かった。今まで会社の事にかまけて息子の事に無頓着だった。その反動であった。

息子が帰ってきたらこの時計を渡そう。そして謝ろう。

それ以外に謝る手段を考え付かなかった。

私はプレゼントを鞄に詰め込んだ。と同時に電話が鳴った。

高木「はい、もしもし」

???「あたし、メリー。今あなたの部屋の前にいるの」ガチャ プーップーッ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 17:17:18.85 ID:4mWTuhEn0
高木「…ん?」おいおい、何だ今の悪戯電話は。

しかもこの電話は社内にしか公表していない。社内に悪戯をする奴がいるようだ。

全くけしからん奴だ。見つけたら首かなと思ったときに、また。

prrrr

高木「はいもしもし」

???「あたし、メリー。今」

高木「いい加減にしないか!私にクビを切られたいのか!」思わずストレスからか声を荒げてしまう

???「今あなたの背後にいるの。あなたこそ黙ってください。ナイフで首を斬られたいのですか?」

高木「ヒッ」首に冷たい物が当たる感覚。そうか、私は今背後にいる何者かにナイフで首を…
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 17:18:26.62 ID:4mWTuhEn0
今すぐにでも振り向きたかった。だが"ねんりき"のようなもので封じられているかのように後ろは振り向けなかった。

???「こんにちは社長さん。こちらの要求は一つです。電話帳をちょっと一生借りたいのです」

高木「で、電話帳!?どうしてそんな」

???「言う事を聞いてくれればいいだけなのです。それとも体を2つに分けられたいのですか?」

高木「わ、分かった」そそくさと机の備え付け本棚から電話帳を出す。後ろに向けて電話帳を渡す。顔は見ていない。

???「ありがとうございます。それでは。」ピポパ シュッ

高木「お、おい…」ナイフの感覚がなくなり急いで後ろを振り返る。

しかしそこには何も無かった。

高木「なんだったんだ今のは…」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 17:19:19.29 ID:4mWTuhEn0
冷や冷やした。念力が使えたのは幸いだった。これも"呪い"の力だろうか?ゴミ捨て場で偶然拾ったナイフをしまいつつ考える。

ゴミ捨て場まで何度も電話をかけて戻ってきた。ゴミ捨て場の近隣に警察署があって良かった。

心臓がまだ脈打っている。これが人間か。

でもこれで電話帳が手に入った。

電話帳を手に取り、男の名を探す。あった。大学へは自宅通学してたような気がするから間違いないだろう。

電話をかけるために携帯を開き、指をはたと止める。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 17:21:52.36 ID:4mWTuhEn0
本当に彼を呪う必要性があるのか。

あたしは多分男が好きだった。いや、間違いなく好きだったに違いない。この男を思い出そうとするたびに胸を焦がす感覚がそう告げている。

だからこそ躊躇うのだ。赤の他人であれば躊躇うことなく電話していただろう。

だが今、あたしには命がある。考える力がある。動く肢体がある。

このまま"何者かも分からない者"の命令まま、愛していたであろう人を殺すのがあたしの使命だろうか。

ジュぺッタ(あたしはどうしたらいい?このまま命令のまま殺すべき?男を呪わないで自分が死ぬべき?)

誰か教えてよ。誰か、誰か、誰か…。

月夜をどんなに照らしても、あたしの心は晴れなかった。

…今日は寝よう。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 17:23:32.32 ID:4mWTuhEn0
所用で今続きを書けなくなりました
今日中に必ず戻ってきます
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:36:17.33 ID:iydNXEOb0
長身痩躯のほぼ完全無欠のエリート、そう仲間からはよく言われた。

仕事は完璧である。何一つ余計なものを"運ばない"。

しかしそれを実行するため彼は完璧に完璧を重ねた。

とった行動は『運んでしまった余計なものは焼却する』事だった。

だからこそ彼は仲間からエリートの"空き巣"として仲間から羨望の眼差しを向けられたのだった。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:36:48.61 ID:iydNXEOb0
友が泊まった。久々に64のスマブラをやった。勝率は6割といったところか。

ドンちゃん騒ぎをし、二人でだらしなくコタツで寝た。

男は真夜中にふと起きてしまった。

浮かんでは消えるペタ子の顔。顔は思い出したが、彼は記憶を探ってみてやはり無くすはずは無い。という結論に至った。

じゃあ何処に行ったというのだろうか?まさかペタ子が歩くわけでもあるまいし。

明日は朝早くから講義が入っている。寝ねば。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:37:48.49 ID:iydNXEOb0
ゴミ捨て場の瓦礫が落ちる音で目が覚めた。

ニドクイン「あら、起こしたかしら。ええと…」

ジュペッタ「今はメリーって名なの。言ってなかったね」

ニドクイン「可愛らしい名前ね。」

ジュペッタ「…ねえ。」

ニドクイン「何かしら」

ジュペッタ「もし…好きな人がいたとして、でも告白したらその人に危害が及ぶって分かってて、しかも告白しなかったらあたしが死ぬ時、あなたはどうするの?」

ニドクイン「…難しい質問ね。危害って何?」

ジュペッタ「いや…それは…」流石に『呪い殺す』なんて言える訳が無い

ニドクイン「ふぅん、まあいいわ。私なら告白するわね、その危害が加えられないように。危害って多分ポケ為的なものでしょう?なら気づかれなければいいじゃない」

ジュペッタ「…」確かに。

待てよ。会うだけで駄目なのか?出会ってはいけないのに呪い殺さなければいけない?

今になって疑問が噴出してきた。

『出会うのが駄目』で『呪い殺す』のは不可能ではないか?彼女は使命に従うとしたら『念力で首を絞めて殺そうか』と考えていたが、念力にも有効範囲はある。

『出会う』の範囲は何?例えば『出会って話をする』だとか『出会って体に触れる』だとか…これらでアウトになるはずだ。なら呪い殺す事は可能だ。それなら人ごみに紛れて後ろから有効範囲に入り念力で絞め殺す事で殺せって事…?

ニドクイン「メリーさん?どうしたの?」

ジュペッタ「!!ううん。何でもないよ。勇気が出なかっただけ」

ニドクイン「…後悔する前にね」

ジュぺッタ「…?」

ニドクインはそう言ってガラクタ山の向こうへ消えた。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:38:46.25 ID:iydNXEOb0
そういえば、出会ったらどうなるのかが分からない。死ぬのか?それとも…?

生き返らせてくれた何者かの言葉を遮らなかった方がよかった。彼女は今になって後悔した。


―あたしは電話をかけてみる事にした。使命を果たすとも果たさずとも。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:39:51.52 ID:iydNXEOb0
あたしは使命を守らない。そう決意した。

呪うか自分に罰が下るか。自分に罰が下る方法を彼女は選んだ。

ジュぺッタ(一度死んだ身。もはや死ぬ覚悟さえ出来ている。罰でも槍でもギロチンでも、あたしは怯まない。)

ジュぺッタ(男を呪い殺し生き抜く?それが使命?そんな使命燃やしてしまえ。)

だが、納得のいかない事が一つ。

ジュぺッタ(にしても…―誰があたしを殺した…?)

ジュぺッタ(あたしは燃やされて死んだ。)

男はそんなことするはずない。

例えあの生前の仲間たちを入れるスペースがなくなり、金に困ろうとあたしをいまだに身近に置き大切にしてくれていた男なら決してあたしを燃やしたりしない。

なら、誰が。それだけは知りたい。知ってから男を一目見、罰せられたい。

でもどうやって調べる?答えは簡単だ。あたしの記憶は男の部屋で終わっている。男の部屋を調べれば何か分かるかもしれない。

使命を果たすにしろ、男と出会って罰せられるにしろ行くのは男の部屋なのだ。これが皮肉なのか。

あたしは携帯を取り出し、電話帳の番号を探した。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:40:27.23 ID:iydNXEOb0
友「いてててて…寝違えたか…」

友はそういうとムックリとコタツから這い出た。温度は低いままにしてあったが流石に長い間入っていたために体は熱かった。

もう10時を回っていた。長居、寝違えた首、そしてあまりよくない目覚め、居心地の悪さは折り紙付である。

コタツの上には蜜柑を重石として伝言が書かれていた。
「先に講義あるから行ってるぞ。飯はラップしておいた。冷蔵庫のプリン、一つだけ食べていいぞ。一つだけだからな!」

朝飯とも昼飯ともいえない時間に飯を食べた。デザートに伝言は無視して冷蔵庫に入っていたプリン3つパッケージごと、すべて机の上に出した。

友「3つあるのにけちな奴…ま、ちょっとくらいいいだろ」そう言い聞かせつつ2つ目のプリンに手をかけたところ電話が入った。

友「あー…ったく…なんだってのこんな時間に」ガチャ「もしもし」

ジュぺッタ「あたし、メリー。今あなたの家の玄関の前にいるの」ガチャ プーップーッ

友「あ?」寝起きで機嫌が悪い

prrrrr

意を決して出る

友「もしもし」

ジュぺッタ「あたし、メリー。今」

友「るっせーわターコ!間違い電話何度もしてんじゃねぇよ!」ガチャ

友は一息つく。と、その背後から声が聞こえる。嗚呼、それはまるで亡者のような、人間ではないモノの声。

ジュぺッタ「あなたの後ろにいるの。」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:41:27.72 ID:iydNXEOb0
そう一言告げると、彼女は念力で身近にあった電話の子機を浮かせ無慈悲に男の頭に叩きつけた。

?「んがっ…」そういうと男は振り返りもせず左に倒れた。気絶したようだ。

何故そうしてしまったのか。彼女は彼が"男"ではない、違うと知っていたのに。理由は簡単である。"男"の家に無断でこの男はいたのだ。

それはまるで泥棒のような…泥棒?

ジュぺッタ(思い出した…!)

ジュぺッタ(あたしは"男"に捨てられたんじゃない。この家に侵入してきた空き巣によってゴミ袋と一緒に捨てられたんだ…!)

ここにきてはっきりした彼女が捨てられた理由。それは"余計な物を持ってきてしまった"ただそれだけであった。

彼女は空き巣に袋に詰められ、ゴミと一緒に焼却されたのだ。

彼女はそう気づくと、ついさっきまで応対をしていたこの男に途端に感謝したくなった。まあその彼を無慈悲に気絶させたのは彼女なのだが。

彼をコタツまでねんりきで移動させ、彼女は"男"を待った。もう死んだ理由は分かったのである。あたしを捨てたのは彼でも"男"でもない。空き巣が悪いのだ。

絶対に"男"を殺すわけにはいかない。"男"は何にも悪くないのだ。

"男"…。完全に顔まで思い出した。イケメンではないけど、あたしをめいっぱい愛してくれた"男"。

ジュぺッタ(完全に好きだったんだな…"男"の事)

男が来るまでに思い出そう。最高に幸せな笑顔で男を迎えれるように。

出会った時の男の笑顔、あたしが笑われたら怒って部屋に閉じこもった男の顔、親に言われてもあたしを捨てなかった真剣な男の顔、撫でてくれた微笑み、あの物語、あの台詞、抱きしめた温もり。

その時、ガラス窓の向こうに…空き巣が見えた。

あたしを捨てた空き巣が。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:42:57.44 ID:iydNXEOb0
空き巣は一度もそれまでは余計なものは運んだ事の無い人間だった。だからこそ部下や仲間から羨望の眼差しで見られたのだ。

偶然この部屋で壷を落としてしまい、やむを得ず落ちた壷と人形を持ち帰るまでは。

だからこそもう一度男はリベンジにこの部屋を選んだ。リベンジのために、"失敗した"部屋ではなく"失敗したが2度目は成功した"部屋として自分の記憶に残すために、そして自身のプライドのために。

緊張感の欠如は失敗もとい死に直結する。落ち着いて深呼吸する。

やがて慣れた手つきでスピーディに窓を切り道具をポケットにしまい、鍵をこじ開け部屋に入る。


ジュぺッタは据え置き電話の横に座った。いつでも目の前の諸悪の根源を取り除けるよう電話子機を飛ばす念力を集中させられるように。

あの男のせいであたしは男の前から離れなければならなくなってしまった。

絶対に許さない。絶対に許さない。絶対に許さない!絶対に。

2メートル以内に入ったら子機を飛ばす。全力で。

だがさっきと同じようにすぐ気絶するとは限らない。隙をつかねば倒れないだろうと踏んで彼女はそのときを待った。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:43:37.61 ID:iydNXEOb0
空き巣はクローゼットを物色しようとした時、咄嗟に何かが飛んでくるのを感じた。

空き巣「!?」サッ

飛んできたのは電話の子機だった。誰かいる!?

空き巣「おい、出て来いよ」


外した!まさか全力の一撃が外れるなんて!

こうなったら念力だけには頼ってられなかった。彼女は死角から果物ナイフを念力で飛ばし掴んだ。

一瞬の静寂。やがて声がする。

諸悪の根源「おい、出て来いよ」言われなくても出て行こう。ただしお前もこの世から出て行かせてやる。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:44:44.49 ID:iydNXEOb0
待った挙句、ドアの隅から出てきたのは小さな果物ナイフを持った人形だった。人形!?

空き巣「人形が動いてる!?ひゃああああああああああああああああああああああああ!!!」

何故こんなにも空き巣が驚き慌て叫んだか。

実はこの空き巣、小さい頃インフルエンザで生死の境を彷徨ったのだがその時、毎晩人形がマグロ包丁を持って幼い空き巣を殺そうとして追いかけてきた夢を見たことがあるのである。

人形嫌い、ただそれだけが彼を完全無欠の空き巣とさせない理由であった。

だからこそ目当てのトロフィーを持ち帰ったとき、間違えて壷と人形を一緒に持ち帰ったと気づいた時、気味が悪くて恐ろしくなって人形も壷と一緒に焼き捨てたのだ。

人形、しかも焼き捨てたはずの人形が復活して果物ナイフを持ってひょっこり現れた。このことは空き巣にとってはもはや発狂物である。

空き巣「わ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁあああぁああぁぁああああああぁああぁあああああぁぁああぁあああああああああぁぁあぁあ!!!!!!!」

空き巣はポケットからサバイバルナイフを取り出し振り回しつつ、恐怖のあまり叫びつつ半狂乱で突進した。

空き巣「人形!人形!人形!ついに来た!俺を殺しに!俺が空き巣になってしまったがために!焼いてしまったがために!!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」ブンブン

空き巣「ごめんなさいごめんなさいいいごめんなさいごめんなさいごめんごめんごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんんんごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめごんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃいいいいい!!!!!!」ブンブンブンブン

人形は恐ろしくなったのかナイフを投げたが肩を掠めただけで終わった。

そしてサバイバルナイフは人形の腹を貫通した。そして頭を叩きつけられる感覚。最後に見たのは苦悶の表情を浮かべる人形の表情だった。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:45:37.92 ID:iydNXEOb0
それは一瞬だった。諸悪の根源があたしの姿を見るなり突進してきた。まさか突進するとは思わなかった。

だから焦ってナイフを首めがけて投げてしまった。そのナイフは肩を掠り外れた。

どうしようかと咄嗟の対応が遅れ、奴のサバイバルナイフはあたしの腹に突き刺さった。

鈍い痛みが走る。そしてあたしは諸悪の根源をありったけの念力で持ち上げ、壁に叩きつけたのだった。諸悪の根源は気絶したであろう、動かなくなった。

静寂はまた訪れた。だがあたしは鈍い痛みを腹に抱えていた。意識が、意識が遠のいていく

ジュぺッタ「死ぬのかな…あたし。」

でも、それでもよかった。諸悪の根源を撃退し、この部屋にいた男(友人だった気がする)を守り、仲間の人形や男の持ち物を魔の手から救ったのだ。

ジュぺッタ(最後に…わがままを言えるのなら…)

ジュぺッタ(男に抱かれながら、死にたかったな…)

ジュぺッタ「あたし、メリー。今愛するあなたの部…屋で…死…」消える意識。次第に自分の体が消えつつある感覚。

最後に聞いたのは、ゆっくりと扉が開く音だった。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:51:08.49 ID:iydNXEOb0
男「まさか誕生日に空き巣が入るとは思わなかったわwwwしかも帰ってきたらお前倒れてるわでビビッたわwww」

友「俺もまさかだと思ったよwwwしかも起きてみたら空き巣壁に頭ぶつけて伸びてやんのwww」

男「テラ天罰wwwwwざっまぁwwwwwww」

友「しかもあの空き巣、空き巣する前に電話してきたんだぜwwww」

男「マジかよwwwどんな内容だったんだ?w」

友「覚えてないwww俺テラアホスwwwwwwwwwwwww」

男「もしかしてこんなんだったんじゃねーの?『もしもし、俺俺ー!!』」

友「『もしもし、あのー誰ですか?』」

男「『俺だって俺俺!実はさぁ妊婦間違って公道で轢いちゃってさぁ…示談に持ち込もうとしてるんだけどさぁ…』」

友「『はぁ〜?インプ間違って剛健で引いちゃってジ・アースと洒落込もうとしている?一体誰なのよ?』」

男「『違うって俺だよ俺俺!』」

友「『誰だよ!誰だお前は!』」

男「『私だ』」

友「『なんだお前だったのか』」

男「『暇をもてあました』」

友「『神々の』」

男&友「『遊び』」

男&友「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:51:40.79 ID:iydNXEOb0
友「…まあ、なんにせよ何も盗まれなくてよかったな」

男「おう。ん?友。それ変えたんか?」腕を指す。

友「ああ、こいつはまあ親父が…な。俺、親父の事何も解ってなかったよ。」

友「親父の事、話もせずに最低だって思ってたけどな。話してみて親父も仕事にかまけちゃってて、俺の事を何も知ってなかった。」

友「お互いに話し合って、決めた。俺親父の会社継ぐわ。これはその誓いの証みたいなもんかな」

友は腕に光っているD-SHOCKをチラリと見た。

友「だからこれは一生大切にしようと思うんだ。誰にだって大切にしたいモンの一つや二つくらいあるだろ。」

友「俺はD-SHOCK。そしてお前は…きっとその人形だろ?」

男「ああ、もう二度と無くさん。」腕の中のぺタ子を抱きしめた。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:53:26.01 ID:iydNXEOb0
事件はすべて空き巣の仕業ということでカタがついた。

しかし俺はふと疑問に思うのだ。何故空き巣が電話をしてきたのだろうか?そして誰がぺタ子をここに連れてきたのだろうか?

空き巣ではない、とするなら一体誰が。

事件の日、帰宅時大きな音がして俺は部屋に戻ってみると空き巣、友がのびていてそしてペタ子にナイフが刺さっていた事を思い出す。

空き巣は頭をぶつけて事件の日のことを全く覚えてはいないが、もしかしたらペタ子が空き巣を撃退してくれたのかもしれない。

そしてあのかかってきた電話は空き巣を察知したペタ子からの友への警告だったのかもしれない。

…なんて、都合が良すぎるか。まさかペタ子が動くなんて思えないし。

でも俺には空き巣がぺタ子を戻しに来た(わざわざ犯行現場まで?)とも友がぺタ子を隠していた(人形趣味はないのに?)とも単に俺がぺタ子無くしててひょっこり出て来た(アレだけ探したので一番可能性としては低い)とも思えない。

何はともあれ戻ってきたペタ子、痛ましい傷が残ったが、こいつはもう一生無くさないようにしよう。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:54:32.35 ID:iydNXEOb0
あたしは男と目が合った瞬間体の痛みが消え、喋れなくなり、動けなくなった。これが出会ってしまった場合の代償なのかもしれない。

一体あのあたしを現世に蘇らせてくれたのは誰だったのか、ニドクイン達やあたしが子機で気絶させた男、そして諸悪の根源がどうなったのか。

そんな事は今のあたしにはどうでもいいのだ。呪わなくて約束を破って男に会った。それは事実なのだ。

あたしに残ったあたしと男の思い出と、この腕の温もりさえあればまたあたしは頑張れる。

好きだよ、男。愛してる、愛してるよ…。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:55:15.21 ID:iydNXEOb0
ボーンボーン

柱時計が5時を告げる。急がねば。

あの空き巣騒動から何十年と経った。俺と友は大学を卒業して、もう齢60を数える。

俺は社会人をしていたが、ある時ひょんな事から応募した毎月新聞主催吹奏楽コンクールの課題曲で、見事作曲者賞を手に入れ今では吹奏楽界の作曲の重鎮として君臨していた。

友は親父の会社を継いだらしい。なんでも有名自動車メーカーの下請けでタイヤを作ってるらしいが。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:56:23.76 ID:iydNXEOb0
そうそう、最近突如として"ポケモン"と呼ばれる生き物が発見されたらしい。

彼らはどこから来たのか?どんな生活をしていたのか?記録によると昔発電所などで大量発生したポケモンもいたらしく、息子はポケモンの保護の仕事をしている。

どこから来たのかについては『ロケットで宇宙から飛来した』なんて論理を展開する学者もいて興味深い。

因みに息子によるとタマムシに大学を設けてポケモンを研究するんだとか。

さて、俺は何故この話をしたのか?それは突拍子もない思い付きからである。

このポケモンと呼ばれる生き物たちの中には、物の形を模した種類もいるらしい。イシツブミ?だったかコイレ?だったか…

さて思いつきというのは"もしかしたらぺタ子は、ポケモンだったのではないか?"という話である。馬鹿げているとかついに耄碌したかとか言われそうな突拍子もない話である。

この思いつきは"もし仮にポケモンだったとしても今その人形は動かないではないか"と言われれば苦しい。

だがもし彼女がポケモンだったとすればあの空き巣事件、何故いきなり彼女が部屋に現れたのか説明するのは難くない。彼女は会いに来たのかもしれない、俺の元へ。

・・・なんて、考えすぎだろうか。我ながら自身の妄想癖を笑い飛ばしたくなる。

だが、それももうどうでもいい話だ。

俺はガンを患っている。もって今年中らしい。

因みに今日はクリスマスイヴだ。すぐにでも入院させようとする医者を振り切って25日まで入院は待ってもらう事になっている。

つまりこれがぺタ子と過せる最後の時間だった。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:57:08.88 ID:iydNXEOb0
俺の決意、それはぺタ子との決別だった。彼女は妻以上に俺に付き添ってきた。だからこそ、だからこそ俺は最期を見せたくなかった。

ようやく筆を置いた。メッセージカードを書き終えたのだ。

ぺタ子は孫に譲るつもりだった。それが、俺にとっても彼女にとっても幸せだろう。

一人、部屋で「じゃあな、ぺタ子」と呟いた。彼女が喋るはずないのに。

一人、部屋でさめざめと泣いた。彼女が別れを惜しんでくれるはずもないのに。

…いや、生きていたとしても別れを惜しんでくれるとは限らないのに。

涙を拭い、ゆっくりと箱に彼女を入れ、丁寧にデコレーションをする。

「さよなら」なんて声が聞こえた気がした。いよいよ、このジジイは耄碌してきたようだ。

柱時計が6時を知らせる。

孫「おじいちゃーん!ごはんだよー!」

孫の声で、ゆっくりと箱を持ち階下へと降りていく。

息子「親父、最後の日なんだから早く」

男「はいはい…全く最近の若いモンはせっかちで困るわい」

息子「やっときたか。ほら座って座って」

男「待て、おーいユキナリ。ちょっとこっちにこい」

孫「どうしたのー?おじいちゃん」トテテテ

男「クリスマスプレゼントだ。開けてみなさい。」

孫「何何ー?ジンテンドーDSA?プレイスマート7?」

男「それは開けてからのお楽しみだ。」

孫が期待のこもった手つきで箱を開ける。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 22:57:59.56 ID:iydNXEOb0
孫「何これ。お人形さん?」ガシッ

男「そうだ」

孫「ありがとうおじいちゃん!丁度爆攻神隊マジカミジャーレッドと戦わせる奴がいなかったんだよね!」ダキッ

男「そうだ、一つおじいちゃんが面白いお話をしよう」

孫「?」

男「この人形はな、生きてるんだよ」

孫「えー!?ホント!?すごーい!!」

息子「こらこら…ジジイそろそろ耄碌したんじゃねぇか?」

男「何を!俺はまだ若いわ!」

息子「冗談だよ冗談!ハハハハハ」


食卓の笑いは小さくとも、楽しそうに。今夜は楽しくなりそうだ。

少年の腕の中の少女が、小さくクスリと笑った気がした。


終わり
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 23:10:02.54 ID:iydNXEOb0
終わりました。例の如く1週間放置してからHTML化スレに報告しようかと存じます。
前々作のデンチュラで書くと書き込んでから4ヶ月、練りすぎました。
途中で一回スレ立てして、念願のまとめ化されました。まあ『コメント欄でボロクソ書かれてた』のですがね…
そしてこのSS、何度も何度も書いたりやめたりしてとうとうここまで来てしまいました。億が一待っていた皆様、すみません。
書いてて継ぎ足していった結果が後半の冗長さを助長させてます。そこはごめんなさい。

さて、書き込んですっきりしたところで受験勉強頑張ってこようと思います。
ではまた。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 15:36:44.36 ID:KEq3LDOG0
びっくりするほど作品への反応が皆無でこのSSが時空の狭間にでも置いてかれたのかと思いましたが何はともあれ報告してきます

何がいけなかったのか…自問自答し反省して次につなげようかと思います
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 16:16:50.81 ID:yA0a43mDO

前作のデンチュラのスレタイ教えて
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 18:40:38.20 ID:pgQrp7Zc0
>>44
デンチュラ「お前の愛液を吸い尽くしてやろうか?」 です
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 19:15:40.52 ID:yA0a43mDO
>>45
サンクス
そっちも読んでみるよ
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