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栄子「イカ娘が本気出した」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:15:09.41 ID:MtQyl+al0
イカ娘単体SSです
内容は少し重め
書き溜めてあるぶんまでは一気に投下

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1328152509(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:15:59.19 ID:MtQyl+al0
―米国・ニューヨーク あるビルの一室

イカ娘「途中経過を聞かせるでゲソ」

黒服「yes mam.
    連邦議会での我々の発言力は増しています。
    上院、下院ともにイカ娘さまの息のかかった議員を大量に送り込みました。」

イカ娘「海軍の方は?」

黒服「オンステージ中の戦略原潜は全艦、
    イカ娘さまの命令どおり動かすことが可能です。」

イカ娘「よくやったでゲソ・・・計画を実行に移す頃合じゃなイカ・・・」

黒服「イカ娘さまの侵略計画・・・必ずや実現させます。」

イカ娘「愚かなる人間どもに、今こそ思い知らせてやるでゲソ・・・!!」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:16:45.12 ID:MtQyl+al0
―後日、ニューヨーク

たける「わぁ!お姉ちゃん!ここがニューヨーク!?」

栄子「たける、あんまりはしゃぐと迷子になるぞー?」

たける「お姉ちゃんだって飛行機の中でやたらハイテンションだったでしょ」

栄子「いや、だって空飛んでるんだぜ!空!」

 私とたけるは、姉貴に誘われて、秋のニューヨーク観光にやって来た。

栄子「タクシーの運ちゃんに地図見せたから、この辺で合ってる思うんだけどなぁ・・・。」

 慣れない街並みに戸惑いながらも、姉貴との待ち合わせ場所を探す。

たける「さっき橋を渡ったところだから、もうちょっと歩くと思うよ。」

栄子「あの運転手め、適当な所で下ろしやがって・・・」

 たけるは小学生ながら、ずいぶんと頼りになる子になった。

栄子「あ、あそこのオープンカフェだ!姉貴が座ってる!」

たける「千鶴姉ちゃーん!」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:18:02.55 ID:MtQyl+al0

千鶴「たける、栄子ちゃん、アメリカへようこそ。ニューヨークはどうかしら?」

栄子「いやーすげぇよ、映画かゲームみたいだ。」

千鶴「へぇ、どんなところが?」

栄子「歩いてるの皆外人だし。みんな英語喋ってるし。」

たける「当たり前だよ・・・お姉ちゃん・・・」

栄子「トゥルークライムみたいで感動したんだよ!」

千鶴「ふふふ。たけると栄子ちゃんのやりとりが懐かしいわ。」

たける「千鶴姉ちゃん、久しぶりだけど全然変わってないね!」

千鶴「たけるは少しお兄さんになったわね。もう旅行慣れしてるみたい。」

たける「へへへ、色んなところ行こうね、お姉ちゃん!」

栄子「たけるぅ、久しぶりだからって姉貴に甘えちゃって」

たける「あ、甘えてなんてないよ!僕もう子供じゃないんだから。」

 しかし、たけるが姉貴に甘えるのも無理はない。
 こいつは、もう長く母親という存在に触れていないのだ。
 それに、私にたけるの母親役は務まらなかった。

栄子「姉貴、こっちの仕事は順調か?」

千鶴「まずまずってところね。ここ最近は少し忙しいけれど」

 姉貴は1年前、突然アメリカで働くと言って家を出て行った。
 私もたけるも最初は反対したが、結局は笑顔で送り出すことに決めた。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:19:03.44 ID:MtQyl+al0

千鶴「今日は家族水いらず、旅行を楽しみましょう。」

たける「イカ姉ちゃんもいたら・・・最高だったのに・・・」

千鶴「・・・」
栄子「・・・」

 気まずい沈黙が流れる。

千鶴「イカ娘ちゃんの話は・・・止めておきましょ・・・?」

 アイツがいなくなってから2年ほどになる。
 以前のように、しばらくすれば帰ってくるかと思ったが、
 今回は事情が違うらしい。

栄子「そうだよな!辛気臭くなっちまう。それより私、自由の女神が見たい!」

千鶴「いいわよ。案内してあげる。」

栄子「一度あれの前で『ここは地球だったのかぁあああ!』ってやってみたかったんだ。」

たける「恥ずかしいからやめなよ・・・お姉ちゃん・・・」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:20:28.36 ID:MtQyl+al0
―リバティ島へ向かうのに、栄子たちは地下鉄を使うことにした。
  3人は歩いて地下鉄の駅へと向かう。

栄子「さっきの店のシーフードパスタ、あんまり美味しくなかったなぁ。
    アメリカはメシがまずいって本当だな。」

千鶴「最近シーフードは高いのよ。いい食材が料理に使えないわ」

たける「お姉ちゃんのエビピラフ、また食べたいな」

栄子「姉貴のファンも同じこと言ってたよ」

千鶴「あら、誰かしら?」

栄子「決まってるだろ、ゴローだよゴロー!」

 私の周りで変わらないのはアイツぐらいだ。
 早苗はイカ娘がいなくなった後にどこかへ転校してしまったし、
 3バカとシンディもいつの間にか見なくなった。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:21:53.53 ID:MtQyl+al0

 そうこうしているうち、地下鉄の駅に着き、薄暗い階段を下って行く。

栄子「へー、これがアメリカの地下鉄かぁ。意外と客がいないなぁ。」

たける「千鶴姉ちゃんはよく乗るの?」

千鶴「・・・・」

栄子「どうした姉貴?」

千鶴「誰かに見られてる気がする・・・」

栄子「気のせいだろ?だってホームには誰もいないぜ?」

千鶴「そうね・・・」

 しかし、よくよく考えてみればこの時間に乗客が誰もいないというのも不気味だ。

たける「あ、電車が来たよ」

 車両に乗り込むが、やはり乗客の姿は見えない。
 電車がゆっくりと動き出した。

栄子「どうした姉貴、座らないのか?」

千鶴「・・・・まずいわ」

栄子「?」
たける「?」

千鶴「殺気よ」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:24:05.92 ID:MtQyl+al0

 姉貴の発言に驚いていると、車両の両側から黒いスーツの男たちが乗り込んできた。

 5、6人があっという間に3人を囲む。
 男たちは全員、黒のスーツで身を固めており、何人かはサングラスもかけている。
 そして胸元には稲妻のような形のピンバッチを付けていた。

 私と姉貴で、たけるを挟むようにして男たちに対峙する。

たける「お姉ちゃん・・・」

たけるが私の手を強く握ってきた。

千鶴「あなたたち誰?何が目的?」

黒服「・・・我々と来てもらう。抵抗すれば、死ぬことになる」

男はジャケットの内側へ手を滑り込ませた。

栄子「くそっ・・・」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:25:45.03 ID:MtQyl+al0
千鶴「わかったわ・・・言うとおりにするから・・・」


 その言葉を聞いて男が少し気を緩めた瞬間だった。

 姉貴が右脚で強く床を蹴り、男との距離がゼロになる。

 姉貴の左膝は男の腹部に深く突き刺さっていた。

 男はうめき声さえ上げられず床に崩れ落ちる。

 その後ろに控えていた男が拳銃を抜こうと右手をホルスターへ伸ばしたが、

 姉貴が素早く腕を掴み、そのまま背負い投げた。


 姉貴の反対側、私の前面にいる男が私に掴みかかろうとする。

千鶴「伏せて!」

 私とたけるが身を屈めると、

 姉貴の足が私たちの頭上を掠め、死神の鎌のように男の首を薙ぎ払った。

 狭い電車内で各個撃破され、3人目の男が倒れると同時に電車のドアが開いた。

 千鶴「後は私が引き付けるわ!たけるを連れて逃げて!」

 私はたけるの手を握り、駅のホームへと飛び出した。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:27:54.65 ID:MtQyl+al0

 死に物狂いで走った。

 後ろを振り返る余裕もない。

 階段を駆け上がり、改札をくぐり抜ける。

 たけるが最後の階段で転げそうになりながらも、駅の外へと這い出た。


 キキキッ

 しかし、私たちの行く手を阻むように1台の車が目の前に急停車する。

栄子「しまった!先回りされた!?」




 車の窓が開き、




 懐かしい、声がした。




「栄子!早く乗るでゲソ!」




TO BE CONTINUED⇒
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/02(木) 12:33:35.97 ID:MtQyl+al0
読んでくださった方、ありがとうございます
続きは明日にでも
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/02/02(木) 22:23:15.66 ID:azpikdJ+0
期待
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/02/02(木) 23:20:27.61 ID:e+UrwPt4o
期待しておく
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/03(金) 18:41:38.41 ID:rhj5GYv70


 私とたけるは車内で荒い呼吸を繰り返した。

イカ娘「栄子・・・たける・・・大丈夫だったでゲソ・・・?」

 白いワンピースに長い髪、白い被り物を被った少女が私たちに話しかける。

たける「イカ・・・姉ちゃん・・・!」

栄子「イ・・・イカ娘!お前・・・今まで何を・・・!」

 私の非難混じりの問いかけに、イカ娘は冷淡に答える。

イカ娘「決まってるじゃなイカ・・・人類に対する侵略でゲソ」


たける「どうしてアメリカにイカ姉ちゃんが・・・?」

イカ娘「アメリカの侵略によって得られる軍事的、経済的なアドバンテージは、
    世界への影響力として強大でゲソ」

栄子「・・・聞かせてもらうぞ、何があったのか」

イカ娘「・・・いいでゲソ」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/03(金) 18:50:37.16 ID:rhj5GYv70

 少女は淡々と話し出した。

イカ娘「私は人間社会で暮らすうち、人類の支配を成し得る社会背景は
    ファシズムやデスポティズムではなく、キャピタリズムだと気付いたでゲソ。」

イカ娘がわけのわからないことを言い出した。

たける「人類の経済的支配・・・ってこと?」

イカ娘「正確には資本主義と民主主義の構造的欠陥による政治支配・・・ってところでゲソ。」

たける「侵略者のイカ姉ちゃんが有権者の支持を得られる訳ないよ!」

イカ娘「たける、甘いでゲソ。支持母体さえ押さえれば支持を得る必要さえないじゃなイカ。」

たける「そんな・・・でもどうやって・・・」

イカ娘「私はまず人間のエネルギー依存に目をつけたでゲソ。」

たける「エネルギーって・・・電気やガソリンのこと?」

イカ娘「そうでゲソ。人間はエネルギーへの過剰な依存を知りつつ、
    ろくに対策もしてこなかった愚か者じゃなイカ。」

 どうやら話に全くついて行けないのは私だけのようだ。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/03(金) 19:01:20.33 ID:rhj5GYv70
イカ娘「たける、メタンハイドレートって知ってるでゲソ?」

たける「海の底にあるエネルギー資源・・・かな?」

イカ娘「そのとおりでゲソ。私は海のどこに何が埋蔵しているか、だいたい把握していたでゲソ」

たける「まさか・・・メタンハイドレート採掘で資本を・・・!」

イカ娘「それだけじゃないでゲソ。海底油田の採掘妨害を行うことで株価を操作して、
    中東を除く世界の石油利権の殆どを手に入れたでゲソ。」

たける「メタンハイドレート採掘量の急増・・・石油価格の高騰・・・どれもここ数年のニュースだ・・・!」

イカ娘「あとはアメリカの2大政党に標的を絞って、支持母体である組織を買収して行ったでゲソ。
    もうすぐこの国は私のものになるでゲソ・・・」

「イカ娘さま、もうすぐ着きます。」

助手席の、口ひげを生やした男が後部座席を振り返って言った。

イカ娘「栄子、たける、もうすぐお前たちのホテルでゲソ。」

私たちが泊まる予定のホテルをどうして知っているのか、聞く気もしなかった。

たける「イカ姉ちゃん!こんなことやめて、また僕たちと・・・」

イカ娘「もうお前たちの知っているイカ娘はいないじゃなイカ・・・
    私のことは忘れて、二度と関わるなでゲソ」


 私たちはそれ以上何も言うことができず、車を降ろされた。

 しばらく、呆然と立ち尽くしていた。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/03(金) 19:02:46.94 ID:nI3hhy8Bo
そういやイカちゃん頭良いんだよな
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/03(金) 19:10:40.43 ID:rhj5GYv70




「きゃっ!」

 道の真ん中で棒立ちしていた私に、女性が勢いよくぶつかってきた。

たける「お姉ちゃん!大丈夫!?」

栄子「いてて・・・」

女性「す、すみません!私、急いでて・・・」

 女性と顔を見合わせて、お互い目を丸くした。

栄子「早苗!」

早苗「栄子!?」

栄子「な、なんでアンタが」

早苗「追われてるの!かくまって!お願い!」

 私たちはホテルのラウンジへと早苗を呼び入れた。




>>17
たぶん経済学もいけるでゲソ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/03(金) 19:15:41.09 ID:rhj5GYv70

早苗「イ、イカちゃんに会ったって本当!?」

栄子「お前、相変わらずだな!」

早苗「私は2年間、ずっとイカちゃんを追いかけ回してたのよ!世界中!」

栄子「まぁ・・・なんとなくそんな気はしてたよ」

早苗「今日だってこの辺にイカちゃんがいるって情報を聞きつけたから来たんだけど・・・
   誰かに襲われそうになって逃げてたってわけ。」

たける「僕たちも電車で襲われそうに・・・何か関係が?」

早苗「その話だけど、きっとそれはSSの連中よ。
   栄子が稲妻型のピンバッチを見たって言ってたし」

たける「SSって・・・親衛隊・・・?」

SS速報の連中か!?と言いかけたが、やめておいた。

早苗「まぁそんなところね。"Squid Squad"・・・直訳するとイカ分隊よ」

栄子「イカ・・・?」

早苗「イカちゃんの親衛隊兼、実行部隊って感じ。
    分隊って言われてるけど規模は結構なもんよ」

栄子「イカ娘の部下に襲われたってことか!?」

たける「ちょっと待ってよ、僕たちイカ姉ちゃんに助けられたんだよ!?」

早苗「そうね、何かの手違いか・・・もしくは 『別の誰か』 を狙ってたのか・・・」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/03(金) 19:20:09.07 ID:rhj5GYv70

栄子「早苗、お前もそのSSに狙われたのか?」

早苗「え?違うわよ?こっちは 『反イカ派』 の連中に決まってるわ。」

栄子「反イカ派・・・?」

早苗「議員とかで、イカちゃんを支持する人のことを『イカ派』って言うのね。
   その対抗勢力が『反イカ派』。」

 コイツは元祖・イカ派と言ってもいいだろう。

たける「安直だね・・・」

早苗「タカ派やハト派がいるんだからイカ派がいてもいいじゃない。」

栄子「一理あるな」

たける「一理たりともないよ・・・」

早苗「ここのところ、イカ派と反イカ派の抗争が激化してるから、
   巻き添えくったんだと思う。」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/03(金) 19:24:50.84 ID:rhj5GYv70

 携帯電話の呼び出し音が鳴る。

栄子「姉貴からだ!」

 姉貴のことをすっかり失念していた。

千鶴『二人とも無事?今どこにいるの?』

栄子「姉貴!私らは大丈夫だ!今ホテルにいる!」

千鶴『そう!よかった!私もすぐそっちに向かうわ。』

早苗「・・・私はもう行くわね。今回の件、何か裏がありそう。
    イカちゃんのこと、誰にも話さない方がいいわよ。」

栄子「ああ・・・そうだな。早苗も気をつけて。」

 私とたけるはチェックインして部屋に向かった。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/03(金) 19:32:45.45 ID:rhj5GYv70

 特に豪華でもなく、かといって質素すぎもしない部屋だった。

たける「イカ姉ちゃん・・・一体何をしようとしているんだろう・・・」

栄子「あいつのことだ、どうせロクなこと考えてないだろ」

たける「本当にそうかな・・・それに助手席に座ってたヒゲのおじさん、
    どこかで見た覚えがあるけど・・・思い出せない」



 しばらくして、ドアをノックする音が響く。

千鶴「・・・栄子ちゃん、この部屋であってるかしら?」

たける「千鶴お姉ちゃん!」

私は姉貴を招き入れた。

千鶴「ふぅ・・・なんとか追っ手をまいて来れたわ」

栄子「やっぱり、警察とかに通報した方がいいかな・・・?」

千鶴「いいえ、それには及ばないわ。それより・・・栄子ちゃん?」

栄子「ん?」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/03(金) 19:40:41.02 ID:rhj5GYv70

千鶴「何か・・・ここに来るまでに何かなかった?」

早苗との会話を思い出し、イカ娘のことは伏せておくことにした。

栄子「いや・・・普通に逃げてきただけだよ」

千鶴「・・・誰かに会ったんじゃない?」

栄子「ああ、そうそう!偶然、早苗に会ってさぁ!あいつったら・・・」

千鶴「そんなことはどうでもいいの」



 嫌な、予感がした。


24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/03(金) 19:51:38.68 ID:rhj5GYv70

千鶴「・・・たける、私は栄子ちゃんと大事な話があるから、少し外に出ていてくれない?」

たける「う・・・うん」

たけるが、すごすごと部屋を出て行った。

千鶴「栄子ちゃん、イカ娘ちゃんに会ったわね?」

栄子「・・・」

千鶴「どうして黙っていたのかしら?」

栄子「・・・姉貴、イカ娘の件はヤバい、これ以上関わらない方が」

千鶴「そうはいかないわ。あなた、イカ娘ちゃんと何を話したの?
   イカ娘ちゃんは今どこにいるの?答えなさい」

栄子「姉貴、どうした?なんか変だぞ?」

千鶴「質問に答えて。作戦に不確定要素を残すわけにはいかないの。
   イカ娘の行き先は?あなたどこまで知ってしまったの?」


 姉貴の目は


 私に向かって


 大きく見開かれていた


栄子「姉貴、何言ってるんだ!?怖いよ!」

千鶴「栄子ちゃん、私のこっちでの仕事、教えてなかったわよね?」



千鶴「私、反イカ派に雇われた工作員よ。」



 いつの間にか姉貴の手には小型のナイフが握られていた。




TO BE CONTINUED⇒
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/02/03(金) 20:19:16.29 ID:f7kaxVOoo
千鶴が反イカなのか…
ん?おれ?イカちゃん大好き派だけど?
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/04(土) 21:37:50.42 ID:FMwWa64l0
>>25
俺はイカちゃんの次に千鶴さんが好きです
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/04(土) 21:38:35.33 ID:FMwWa64l0

栄子「冗談、だよな?」

千鶴「私は冗談で人にナイフを向けないわ。」

 姉貴のナイフを握った拳が私の首に押し当てられる。

 拳は私の頚動脈の鼓動を捉えているのだろう。
 姉貴が手首を返せば、私は簡単に致命傷を負ってしまう。

千鶴「栄子ちゃん、私、本当はこんなことしたくないのよ?でもね、」


 ヤバイ


 殺られる・・・・!



 その時、ドアが勢い良く開け放たれ、誰かが突っ込んで来た。

「栄子!」

それは早苗だった!

 姉貴が素早く振り返り、早苗にナイフを向ける。

 早苗は背後からのアドバンテージを活かし、向けられたナイフを払い落とした。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/04(土) 21:39:39.43 ID:FMwWa64l0

 さらに、黒い塊を姉貴の首元に突きつけ、


 バチチチチチチッ


 強烈な音が部屋に鳴り響いた。

 早苗のスタンガンが姉貴を襲ったのだ。


 しかし、姉貴は体が弛緩するまでの一瞬をついて、
 早苗の鳩尾に拳をえぐり込んだ。

早苗「ぐっ・・・がっ・・・」

たける「お姉ちゃん!こっち!早く!」

 たけるがドアを開いて私を呼んだ。


 床に突っ伏した姉貴をまたぎ、早苗の肩を持ちながら部屋を出た。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/04(土) 21:41:46.82 ID:FMwWa64l0


 早苗を支えながら、私たちはホテルから逃げ出す。

栄子「何で!?どうして姉貴が!?」

 私の頭は混乱していた。

早苗「聞いた・・・でしょ?あの女・・・反イカ派の・・・エージェント・・・」

栄子「それになんで早苗が部屋に!?」

早苗「千鶴さんが・・・怪しいことに気付いたからよ・・・
   SSがあなたたちを襲ったんじゃなければ・・・
   狙いは残った同伴者・・・つまり千鶴さんってこと」

栄子「姉貴とイカ娘が敵対しているって言うの・・・?」

早苗「証拠もあるわ・・・あの後しばらくホテルの外を監視してたの・・・
   そしたら千鶴さん、ある男の車から出てきた・・・」

栄子「男の・・・?」

早苗「CIAのジェイムス・ブレックナーって男よ・・・反イカ派の作戦立案・責任者」

栄子「姉貴が・・・CIAに・・・?」

早苗「あとは気づかれないように部屋までつけて行ったら」

たける「僕が出てきた」

栄子「そんな・・・」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/04(土) 21:42:50.60 ID:FMwWa64l0

 私は必死の形相で、ふらつく足取りの早苗に肩を貸しながら歩く。
 その光景を見て、何人かの通行人が声をかけてきた。

 しかし、その好意に甘えてぐずぐずしている訳にはいかない。
 姉貴があの程度の攻撃で無力化できるとは思えないからだ。
 一刻も早く遠くへ逃げなければ・・・

 誰かが通報でもしたのだろう、前方にパトランプを光らせたパトカーがとまる。


警官A「おい、あの3人じゃないか?」

警官B「どうやらそうみたいだな。」

警官A「おーい、あんたら、大丈夫か?」

 私と早苗は顔を見合わせたが、選ぶ余地はない。
 彼らに助けを求めることにした。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/04(土) 21:43:45.16 ID:FMwWa64l0

 たけると早苗が拙い英語で事情を説明してくれた。

 私は一生懸命、全力で見守った。

 どうやら、警官二人は警察署で詳しい話を聞かせろ、と言っているようだ。

 ”NYPD”と書かれた青いデザインのパトカーに乗り込む。

 警官の一人は褐色の肌、金髪だ。
 もう一人は私たちと同じアジア系の黒髪。
 なんだかライフセイバーの二人組を思い出して親近感が湧いた。

黒髪の警官「あんたたち、せっかくのNY旅行なのに、災難だ」

金髪の警官「あとは俺たちに任せな、安心してくれ」

 二人が私たちにもわかる英語で話しかけてくれる。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/04(土) 21:45:09.41 ID:FMwWa64l0

たける「早苗姉ちゃん、大丈夫?」

早苗「だいぶマシになったけど・・・」

 早苗はまだ辛そうにしている。

金髪の警官「気分が悪いのか?ほら、これでも飲みな」

助手席の警官が鮮やかな液体の入ったボトルを渡してくれた。

早苗「ありがとう・・・」

 早苗はキャップを開け、少しだけ口にした。

たける「すごい原色ジュース・・・」

金髪の警官「坊やとそちらのお嬢さんは、これ食べる?」

 警官がドーナッツの入った箱を差し出した。

たける「わぁ!もらおうよ、お姉ちゃん!」

 礼を言って、私たちはドーナッツを頬張った。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/04(土) 21:45:54.04 ID:FMwWa64l0

たける「警官とドーナッツなんて、本当に映画みたいだね、お姉ちゃん」

栄子「ニューヨーク市警だとジョン・マクレーンだな」

金髪の警官「お、ダイハードの話か?」

黒髪の警官「いいね、ダイハードは2が最高だ」

 二人が食いついてきた。

金髪の警官「バカ、2はロス市警だ!」

黒髪の警官「何言ってる、マクレーンはずっとNYPDだ」

金髪の警官「あのハゲ、2だけはLAPD所属なんだよ!」

黒髪の警官「2の頃はまだハゲてないだろ!」

金髪の警官「とにかくNYPDだ!賭けるか?」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/04(土) 21:47:01.85 ID:FMwWa64l0

 盛り上がっている二人とは裏腹に、隣の早苗はいつの間にか寝息をたてていた。
 色々と危険な目にあったが、ここにきて安心したのだろう。

 外に目をやると、少し落ち着いた、田舎道のような風景になっていた。

栄子「へぇ、警察署はこんな所にあるんだな」

 しかし、私の言葉に反応する人は誰もおらず、

栄子「ん?たける?」

 たけるも、うとうと船を漕いでいた。

栄子「やっぱりまだ子供だな、さっきまであんな元気だったのn・・・」


 そのとき、強烈な眠気が私を襲った


 これは・・・まさか・・・!


栄子「何か・・・盛ったな・・・!」

 歪んだ視界の中で二人の警官がこちらを覗き込み、にやりと笑った。

「good night...」

 どちらかの警官が言ったその言葉を最後に、
 私の意識は溶けて消えた。


TO BE CONTINUED⇒

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/05(日) 07:00:48.04 ID:cTCwNtVKo
乙〜
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/02/05(日) 07:22:35.53 ID:KQKteZcMo
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/05(日) 20:10:36.60 ID:ODI0V2tSo
レイプされるな
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/05(日) 20:56:36.25 ID:FvQLKFZh0
>>37
なぜ分かったし
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/05(日) 20:57:53.15 ID:FvQLKFZh0

栄子「うう・・・ん・・・」

気がつくと、私はどこか薄暗い室内の、金属でできた柱にもたれかかっていた。

 両腕は後ろ手に、手錠で柱に繋がれている。

 振り返ると、たけると早苗が同じように繋がれていた。

 意識がないようだ。

 私と同じならば、飲料水とドーナッツに睡眠薬を盛られて、まだ眠っているのだろう。

 周囲を見渡すと、かなり広い倉庫か作業場のようだ。コンテナや何かの工具が置かれているが、最近人が使った様子はない。

 少し離れたところで、三人の男が英語で何か話している。

 そのうち二人は見覚えがあった。

 私たちを拉致した警官2人組だ。

栄子(おい!たける!早苗!起きろ!おい!)

 私は小声で二人を起そうと話しかけた。

 何としても三人でここを脱出しなくてはならない。

 しかし、二人は深い眠りから覚めることはなく・・・

 それに気づいた一人の男がこちらに歩み寄って来た。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/05(日) 20:59:37.05 ID:FvQLKFZh0


男「お目覚めかな?お嬢さん」

男は日本語で話しかけた。

 スーツに身を包み、痩せており、目付きが鷹のように鋭い男だった。

栄子「お前・・・日本語喋れるのか・・・?」

男「職業柄というヤツでね。私の名はブレックナーと言う」

 聞き覚えがあった。

早苗が見たという、恐らく姉貴の仲間だ

栄子「ジェイムス・ブレックナー、あんたCIAだろ?」

 男は少し驚いた様子だった。

栄子「それだけじゃないぜ、あんたや、あんたの仕事のことなら何でも知ってる。」

 咄嗟にハッタリをかます。

栄子「もし私たちに何かあれば、私の仲間が情報を全部流すことになってる。」

J.B.「くは、くははははははは」

 男は笑い出した。

J.B.「諜報員に諜報戦を挑もうというのかね?相沢栄子さん?」

栄子「・・・」

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/05(日) 21:01:54.78 ID:FvQLKFZh0

J.B.「君に仲間などいない、そればかりか、NYまで呑気な旅行に来た気でいる。本当の役割も知らないで。」

栄子「役割・・・だと・・・?」

J.B.「一つはSSに対するカモフラージュだ。千鶴が動きやすいようにね。」

栄子「最初から姉貴はそのつもりで・・・?」

 SSの目を欺くのには失敗したようだが。

J.B.「それだけではない。イカ娘を誘き出すエサ、抑止力、交渉材料・・・使い道はいくらでもある」

栄子「クソッ、つまり私たちは人質ってわけか」

J.B.「その通りだ。しかしもうすぐ用済みになるがな」

栄子「どういうことだ?」

J.B.「今日中に、イカ娘の暗殺計画が実行される。私の指揮でね。」

栄子「なんだと!?」

J.B.「実行するのはお前の姉、相沢千鶴だ」

栄子「クソッ!やめろ!この人でなし!殺人鬼!」

J.B.「おやおや、これは心外だ。イカ娘は人類を侵略しようという存在、

  合衆国にとっての脅威だ。侵略者に肩入れしようとする君の行為こそ、人類に対する裏切りではないかね?」

栄子「くッ・・・それでも・・・何も殺さなくたって・・・」

J.B.「なぜ侵略者にそこまで味方する?アレは人類滅亡を望んでいるのかもしれないのだぞ?」

栄子「イカ娘は・・・お前の言うような冷酷な侵略者なんかじゃない・・・あいつは・・・私にとって・・・」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/05(日) 21:03:30.05 ID:FvQLKFZh0

J.B.「何だ?アレがお前にとって何だと言うんだ?」

栄子「か・・・家族なんだ!」

J.B.「はぁ?」

栄子「種族も違う・・・侵略者かもしれない・・・共に過ごした時間も短い・・・!」

J.B.「・・・」

栄子「でも・・・紛れもなく家族だった・・・!いっしょに生活した家族だったんだよ・・・!!」

J.B.「くは・・・くはは・・・くははははははははははははははは」

J.B.「家族!あの気色の悪い触手女が家族!笑わせる!これは傑作だ!くはははははははは」

栄子「笑うな!こっちだって恥ずかしいの我慢してんだ!」

J.B.「お前のそれは感傷だよ。ただの家族ごっこだ。」

栄子「お前に何がわかる・・・」

J.B.「わかるよ。CIAだもん。」

 自信たっぷりに言った。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/05(日) 21:05:13.55 ID:FvQLKFZh0

J.B.「それに、お前が家族だと言った女を、お前の姉が[ピーーー]ぞ。」

栄子「・・・頼む、やめてくれ。少し時間をくれるだけでもいい」

J.B.「嫌だ。『家族』同士の殺し合いだよ?最高のショーだと思わんかね?」

栄子「てめぇッ!!!」

 男に掴みかかろうとしたが、手錠の鎖がジャラリと邪魔をした。

J.B.「もうこんな時間か・・・ショーに遅れてしまう・・・」

ブレックナーは腕時計を見ながら言った。

J.B.「おい、こいつらを見張っていろ。」

 警官服を着た二人にそう命令すると、ブレックナーはもう一度こちらを振り向き、

J.B.「そこで全てが終わるまで待っているがいい。己の無力さを呪いながらな・・・くはは」

 そう言うと、倉庫を出て行った。

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2012/02/05(日) 21:06:33.05 ID:FvQLKFZh0

私たちをまんまと騙した、黒髪と金髪がこちらに近づいてくる。

金髪「やっと終わったか。あのオッサン話長ぇんだよ」

黒髪「あとはこいつらを見張るだけ、簡単な仕事だ」

金髪「簡単すぎて暇じゃないか?」

黒髪「なんだと?」

金髪「こうして見るとアジア人も可愛いもんだなぁ?そう思わんか?」

黒髪「お前、ブロンドの女にしか興味ないって言ってなかったか?」

金髪「こういうのは別腹だよ。なぁ、俺たちで味見しちまおうぜ?」

黒髪「バカ、ブレックナーさんにばれたら俺たち殺されるぞ?」

金髪「暴れたら撃っていいって言われてるし、そっちの眠ってる女はどうせ[ピーーー]予定だ。
   1人死ぬのも3人死ぬのも変わんねーよ」

 英語は分からなくても、なんとなく状況はわかってしまう。
 とってもヤバい状況ってことが・・・
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/05(日) 21:09:28.49 ID:FvQLKFZh0


黒髪「・・・俺が仕事中、女に手を出すとでも?」

金髪「さっきの賭け、俺の勝ちだったろ?」

黒髪「・・・」

金髪「じゃあ俺から選ばせてもらうぜ?」

 金髪がこちらを向く。

栄子「おいやめろ!お前ら!ふざけんな!」

金髪「俺はこの威勢のいい女にする。お前はそっちの」

黒髪「俺はそこの男の子をもらうわ。」

金髪「お・・・おう・・・」


へ、変態だァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/05(日) 21:10:06.78 ID:FvQLKFZh0
NGワード忘れててピー入ったけど気にしない
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/05(日) 21:10:58.90 ID:FvQLKFZh0

金髪「さぁ、脱ぎ脱ぎしような」

栄子「やめろ!クソ!触るな!」


 ガシャーン

 その時、どこかでガラスの割る音がした。

 男二人と私は、音がした方を向く。

 間もなく、コンテナの影から、目と口だけが露出した覆面を被った男が拳銃を構え出てきた。


覆面男「全員そこを動くな!両手を頭の後ろで組んで膝をつけ!」

黒髪「クソっ!」

黒髪の男は腰の拳銃に手を伸ばす

バン バン

覆面の男は容赦なく、黒髪の男の両肩を撃ち抜いた。

パパンッ

両肩に続いて両膝も撃ち抜かれた黒髪は、
その場に倒れてもがき始めた。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/05(日) 21:13:13.58 ID:FvQLKFZh0

一方、金髪の男は、グロックを抜き取り、覆面の男に向けた。

金髪「やりやがったな!」

バン

金髪「ぐ」

金髪と覆面は、ほぼ同時に撃ったが、撃たれたのは金髪だった。
飛び散った金髪の血が私の脚にもかかり、ゆっくりと倒れ込んだ。


一瞬で偽警官二人を倒し、覆面の男はこちらに銃を構えて近づいて来る。

覆面男「相沢栄子、だな?」

栄子「ちょ、ちょっと待て、私たちは連れて来られただけで・・・」

 コンテナの影からもう一人、女性が出てきた。

鮎美「お父さん・・・終わった・・・?」

 鮎美さん、海の家『南風』の店員だ。

栄子「あ、鮎美さん!?それにお父さんって・・・」

 男が覆面を取った。

栄子「南風のオヤジ!」


その時、金髪の男が突然立ち上がり、警棒で鮎美に襲いかかった。

が、鮎美は警棒を持った腕をさらりと受け流し、
そのまま捻り倒した。

南風店主「おお、すまん鮎美。いつぞやの護身術が役に立ったようだな!」

南風のオヤジはそう言うと豪快に笑った。

49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2012/02/05(日) 21:18:35.30 ID:FvQLKFZh0

 南風の二人が私たちの手錠を外してくれた。
 早苗とたけるを起こし、全員にこれまでの経緯を話した。

たける「でもどうして南風の店長さんが・・・?」

南風店主「俺は元・連邦捜査官だからな。
      千鶴に依頼されてお前たちを保護しに来たって訳だ」

栄子「姉貴に!?」

早苗「そんなの有り得ない!あの人、栄子を殺そうとしたんですよ?」

南風店主「殺そうと・・・?それこそ有り得ないな。俺の知る限り、あいつは
      ずっとお前たちのために動いてきたはずだ。」

栄子「でも・・・姉貴は私にナイフを向けて・・・」

南風店主「ふん、あいつも相当追い込まれてる様だな。お前たちを守るためなら
      文字通り『なんでも』するだろうよ。」

栄子「何でも・・・?」

南風店主「イカ娘暗殺に加担しても、だ。
      千鶴は1年前、ある人物にスカウトされたんだ。対イカ娘戦闘のスペシャリストとしてな」

早苗「イカちゃんの暗殺・・・と栄子たちを守ること、どう関係してるって言うんですか?」

南風店主「お前たちはイカ娘に対してだけじゃなく、千鶴に対する人質でもあるってことだ。」

栄子「CIAの男が、姉貴は暗殺計画のために私たちを呼んだって・・・」

南風店主「千鶴がお前たちを呼んだのは、自分の目の届く範囲に置いておきたかったからだ。
      恐らく、セーフハウスにでも監禁しておくつもりだったんだろう。」

栄子「じゃあ反イカ派は私たちを人質に姉貴を脅迫してるってことか・・・」

南風店主「もし俺がキム・・・じゃなかった、鮎美を人質に取られたら、同じことをするだろう。」

鮎美「娘の名前・・・間違えないで・・・」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [saga]:2012/02/05(日) 21:19:43.96 ID:FvQLKFZh0

 筋は、通っている。が、納得はできない。


栄子「・・・だからって・・・姉貴にイカ娘暗殺なんてさせない。」

早苗「そうよ・・・なんとか防がなきゃ・・・」

たける「南風の店長さん、何かイカ姉ちゃんに関する情報はないんですか?」

南風店主「・・・残念だが、君たちに情報は一切与えられないし、
      行動の自由も制限させてもらう。」

栄子「どうしてだよ!放っておけって言うのか!?」

南風店主「俺の任務は、お前たちの身柄の確保だ。危険な行動は許可できない。
      本当にすまないと思っているが、分かってくれ。」

栄子「クソ、イカ娘・・・どこにいるんだ・・・このままじゃ姉貴が・・・」



たける「国連本部。」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [saga]:2012/02/05(日) 21:20:51.81 ID:FvQLKFZh0

南風店主「ん!?」

たける「イカ姉ちゃんが今いるの、国連本部ビルでしょ」

南風店主「なぜそう思う?」

たける「思い出したんだよ。イカ姉ちゃんの車の助手席に乗ってたヒゲのおじさん。
    あの人、アメリカの国務長官だった。」

南風店主「だったらどうしたと言うんだ?」

たける「それに今は9月、ちょうど国連総会の会期中だよね?
    イカ姉ちゃん、国務長官と国連総会に出席するんじゃないの?」


南風店主「ふ・・・・・やはりお前は千鶴の弟だな」


栄子「でかしたぞ!たける!さすが私の弟!」

南風店主「たぶんお前は別ん所の子だ」

栄子「なんだと!」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [saga]:2012/02/05(日) 21:21:30.81 ID:FvQLKFZh0

南風店主「しかし・・・居場所がわかったなら尚更お前たちを自由にする訳にはいかない」

早苗「私とイカちゃんの恋路を邪魔するとただじゃおかないわよ!?」

南風店主「・・・恋路ってお前・・・」




私は・・・覚悟を決めた。

金髪の男の手にある警棒を拾い上げ、

ゴッ

南風店主「ぐえ」

ドサ

南風のオヤジの後頭部を殴った。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [saga]:2012/02/05(日) 21:22:34.44 ID:FvQLKFZh0

たける「姉ちゃん!?」

栄子「私、ちょっと行ってくる。たけるのこと、お願い。」

早苗「行くってどこに・・・?」

栄子「決まってるだろ。国連本部だよ。姉貴を止めて、イカ娘を家に連れ戻す。」

早苗「危険よ・・・?」

栄子「覚悟の上だ。イカ娘はもっと危ないんだろ。それに・・・」

栄子「あのブレックナーって男、一発殴らないと気が済まない」

早苗「・・・栄子、私も行く。イカちゃんのためだもん。」

たける「僕も!」

鮎美「あの・・・」

栄子「どうした?今更止めたって」

鮎美「これ、使ってください・・・」

鮎美さんが車のキーを投げ渡してくれた。

栄子「おう・・・ありがとう。親父さん殴って悪かったな。」

鮎美「大丈夫・・・頑丈だから・・・」



3人は、眩い屋外へと歩き出した。


TO BE CONTINUED⇒
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [saga]:2012/02/05(日) 21:24:12.89 ID:FvQLKFZh0

―倉庫には、南風の親子が残された。

鮎美「お父さん・・・やられる演技・・・下手すぎ・・・」

南風店主「ん?お前にはバレてたか」

―南風店主はむくりと起き上がる。

鮎美「家族だから・・・」

南風店主「ふ・・・家族、か。あいつら家族を取り戻すのに必死で・・・
      つい見逃しちまった。千鶴に後で怒られるな。」

鮎美「手助け・・・してあげれば・・・いいのに・・・」

南風店主「俺がどうこうして何とかなる問題じゃないからな。
      あいつら自身の目で見届ければ納得できることもあるだろうさ。」

鮎美「・・・?」

南風店主「さ!帰って新しいイカ娘ヘッドでも作るか!」

鮎美「あ・・・車・・・ない・・・」

南風店主「・・・クソォ!CTUに連絡してヘリを要請する!」

鮎美「たぶん・・・無理・・・」

南風店主「クソォ!」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2012/02/13(月) 14:12:08.32 ID:hY7GqWFAO
これはもっと評価されるべき
56 :フリッケ福祉員 :2012/02/17(金) 16:45:38.19 ID:lNtdilz10
最初ちょっとだけ見て忘れていたが、通して読むと面白い
気長に続きを待とう
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/27(月) 09:32:05.85 ID:Kb9HpMWQ0
密かに続きを待ってるでゲソ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/02/29(水) 20:33:32.57 ID:CVzIl5UNo
みーとぅーでゲソ
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 22:53:23.24 ID:3Tmn+dCU0
遅くなって申し訳ない
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 22:55:18.03 ID:3Tmn+dCU0
 ―国連本部ビル前

栄子「この中にイカ娘が・・・」

早苗「警備が厳重すぎるわ。対テロ部隊までいるじゃない」

たける「これもイカ姉ちゃんの影響・・・なのかな」

早苗「今は会議中のはずよ?なんとか中に潜り込まないと。どうする、栄子?」

栄子「・・・」

たける「まさか・・・何も考えて無かったの?」

栄子「い、今考えてるところだよ!」

早苗「あそこの車見て」

栄子「車?」

たける「CNN・・・マスコミの中継車だ。国連総会の取材だね、きっと」

早苗「私はここで降りるから、車をビルの裏に回しといて。」

 そう言うと早苗は中継車に向かって行った。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 22:56:42.23 ID:3Tmn+dCU0
 ―ビル裏
 しばらく待っていると、さっきの中継車が現れ、私たちの車の後ろにつけた。
 中から出てきたのは・・・ラフなジャケットとキャップ、そしてビデオカメラを担いだ早苗だった。

早苗「お待たせ!」

栄子「早苗・・・なんであんたがその車から・・・」

たける「その格好は・・・?」

早苗「私は天才カメラマンの早苗ちゃんよ!」

栄子「・・・どうしてカメラマンが片手に鉄パイプを持ってるんだよ」

早苗「『借りる』のに手間取ったのよ!で、栄子はリポーター!」

 そう言って早苗は私にスーツとマイクを投げ渡した。

早苗「たける君は助手ね!」

たける「つまり僕達は取材クルーに変装するってこと?」

早苗「そういうこと!これ、首から下げといて。」

 早苗が私とたけるに個人認証用のIDカードを渡した。

たける「・・・顔写真がちゃんと僕達のに変わってる・・・」

栄子「お前、こういうのどこで覚えるんだよ」

早苗「蛇の道は蛇、ってね!」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 22:58:41.53 ID:3Tmn+dCU0

 ガードマンに訝しがられながらも、私達は本部ビルの中に入ることができた。

早苗「この先が総会議場ビルね・・・」

栄子「なぁ・・・早苗・・・」

早苗「なに?今更怖くなった?」

栄子「イカ娘の目的は何だと思う?」

早苗「目的・・・?」

栄子「あいつは既にアメリカの侵略を完了しつつある・・・
    このタイミングで表に出てくる意味・・・あるのか?」

早苗「・・・人類への脅迫か・・・宣戦布告か・・・いえ、もしかしたら・・・」

栄子「テロ・・・国連総会出席者を目標にした攻撃の可能性だってある」

たける「そんな・・・」

早苗「対テロ部隊が待機してるのも頷けるわね」

栄子「早苗、会議室へは私が行く。早苗はサポートと、たけるのこと頼む。」

早苗「栄子・・・イカちゃんを必ず助けだして。」

栄子「おう」

早苗「私達は撮影用のブースに行くわ。連絡はインカムで取りましょ」

たける「お姉ちゃん、気をつけて」

栄子「安心しろ、たける。全部上手く行くさ」

 自分自身に言い聞かせる言葉だった。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 22:59:57.86 ID:3Tmn+dCU0

 会議室の重く大きい扉が近づく。
 私の心臓は痛いほどに高鳴っていた。手に汗が滲む。
 警備員が私のIDを確認してきたので、無理やり笑顔を作った。
 警備員はIDと顔を交互に見た後、

 扉をゆっくりと押し開いた。

 迫力のある、空気だった。

 こんな場所に来たのは初めてだが、明らかに異常な空気を感じた。
 ドンと広い空間に、少し窮屈に思えるほど人が並び、座っている。
 壇上ではどこかの国の偉い人がスピーチしていたが、
 誰もその話を真剣に聞いている風ではない。
 各国の要人は、そろって『何か』を警戒し、ピリピリと気を張り詰めいている。
 理由は明白だ。

 イカ娘がこの中にいるからだ。

早苗『栄子、聞こえる?』

早苗からインカムで通信が入った。

栄子「早苗か?会議室に潜入できた」

早苗『バッチリ見えてるわよ』
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:00:51.79 ID:3Tmn+dCU0

栄子「ブースに入ったのね?イカ娘はどこにいるか分かる?」

早苗『ええ、見つけた。私のイカちゃんセンサーに狂いはないわ』

栄子「よし、どこだ?」

早苗『はぁ・・・イカちゃぁあああん!久しぶりに見たイカちゃん可愛いぃぃいいいいい!』

栄子「おい!早くしろ!」

早苗『ハァハァ・・・ええと、栄子の反対側、前から・・・6列目よ』

 私は早苗に指示された方に目を移した。

 ・・・・いた。

 スーツの男達に囲まれ、少女の白い服が輝いていた。

 イカ娘は車で見た口ひげの男・・・ナントカ長官と話している。

栄子「確認した。今から近づいてみる」

 私はゆっくりと、壁沿いに会議室を大回りする。

 目立たないように、ゆっくり、ゆっくりと。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:02:09.47 ID:3Tmn+dCU0

 警備員の横を通り過ぎる度、心臓が飛び出そうになる。

 会議室の後部まで到達した。

 薄暗く、人目の少ないため、少し安心して早歩きになった。

 しかし

早苗『 栄子!! 』

 そのとき、早苗の声を押し殺した叫び声がインカムから響いた。

早苗『ヤバイ栄子!下向いて!』

 私は咄嗟に顔を伏せた。

 そして、聞き覚えのある声が聞こえた。


「千鶴、準備しろ」


 内蔵が締め上げられる感じがした。


 声の主はブレックナー、イカ娘暗殺を計画するCIAの男だった。


 男が私の横を通り過ぎる。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:03:14.91 ID:3Tmn+dCU0

 気付くな、気付くな、気付くな、気付くな!


J.B.「おい」


 全身の筋肉が硬直するのを感じた。
 後ろから呼びかけられた私はぎくりとして足を止めた。

J.B.「ここは今、記者立入禁止だ。すぐ出て行けよ」

 そう言うと、ブレックナーは歩き去った。

 私は胸を撫で下ろすと同時に、今の一瞬でどっと汗をかいたこと気付く。

早苗『ヤバかったわね・・・大丈夫?』

栄子「なんとかやり過ごしたみたい。それよりアイツ、無線で『千鶴』って」

早苗『やっぱり千鶴さんもここにいるのね・・・時間が無いわ、急いで栄子』

 私は、ブレックナーが遠くに行ったことを確認し、再び歩き始めた。

 イカ娘の懐かしい後ろ姿を見つめながら、一歩一歩近づいて行った。

 姉貴たちがすぐに行動を起こすことは無さそうだ。

 隙を見てイカ娘を連れ出す。私にできるだろうか。
 しかしこのまま放っておけばイカ娘の身が危ない。
 躊躇している訳にはいかなかった。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:04:27.49 ID:3Tmn+dCU0

 もう少し、もう少しだ。
 イカ娘まで10メートルという距離まで近づいたそのとき、
 今まで話していたイカ娘とヒゲが急に立ち上がった。

栄子「まずい!」

二人は前方の扉に歩いて行く。

栄子「出て行く前に確保する!」

 私が駆け寄ろうとした瞬間、

早苗『栄子!待って!』

栄子「でも!」

早苗『千鶴さんを見つけた!二階、中央の個室フロア』

 私は振り返り、2階部分を見た。

 ガラス張りの内側に姉貴はいた。
 黒いニット帽と手袋、シューティンググラスをかけているが、
 それは紛れも無く姉貴だった。
 そして、手にはボルト駆動式のライフルを構え、
 スコープでイカ娘を捉えている。

栄子「姉貴・・・!」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:05:52.06 ID:3Tmn+dCU0

早苗『今動くと確実に見つかる・・・部屋を出る前に取り押さえられるわ』

栄子「くそ!」

私はイカ娘たちを見送ることしかできなかった。

早苗『千鶴さんに見つからないように追いかけられる?』

栄子「ちょっと待って・・・様子がおかしいわ」

 会議室内が異様にざわつき始めたように感じた。
 先ほどまでと違い、全員が前方に気を取られている。

栄子「これは・・・まさか・・・」

 間もなく、ざわめきが一層大きくなった。
 要人達の注目を一手に集める壇上に目をやる。

 イカ娘だった。
 イカ娘が壇上に現れたのだ。
 手にはアタッシュケースが握られている。

早苗『イカちゃん・・・』

 要人達の反応は様々だった。
 携帯電話で連絡を取るもの、イカ娘を凝視して微動だにしないもの、
 逃げるように会議室から出ようとするもの。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:07:23.21 ID:3Tmn+dCU0

イカ娘「静粛にするでゲソ」

 イカ娘の一言で、会議室内はシンと静まり返った。
 今や会議室内の全ての人間は、その小さな侵略者に注目を集めている。
 アメリカ全土を支配し、今まさに世界に対して行動を起こそうとしている少女の言葉を、
 今か今かと待ち受けているのだ。

イカ娘「愚かなる人間ども、私は海からの使者にして人類の支配者、イカ娘でゲソ」

イカ娘が口を開いたことで、緊張が一気に場内を包む。

イカ娘「腐敗した人間社会を破壊し、理想の世界へと作り変える。
     私の真の侵略計画は今、実行に移されるでゲソ!」

 イカ娘がスーツケースをドン、と壇上に持ち上げた。

栄子「早苗、あれって」

早苗『スーツケース爆弾・・・?まさか・・・自爆テロ・・・!』

栄子「させるか!」

 私は演壇に向かって走りだした。
 もう時間がない。いつ姉貴が撃ってもおかしくない。


 前方に警備員はいない。届く!辿りつける・・・!



 私は不意に肩を捕まれ、そのまま地面に叩きつけられた。

 腕を背中で組み伏され、私は身動きが取れなくなった。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:08:20.92 ID:3Tmn+dCU0

栄子「い、いででで」

「大人しくしていろと言ったはずだぞ、お嬢さん」

栄子「お前は・・・ブレックナー・・・!」

J.B.「素人め、こっそり動くときは通常周波数のインカムなんて使うもんじゃない」

栄子「くそ・・・傍受されてたのか・・・!」

J.B.「お前の友人と弟も、じきに捕まる。」

栄子「離せ!イカ娘は爆弾テロを起こすかもしれないんだぞ!」

J.B.「爆弾なんて持ち込ませんよ。まぁテロの危険を報告したのは私だがな」

栄子「なに・・・?」

J.B.「お陰で動きやすくなったし、射殺する口実もできた。」

栄子「イカ娘は殺させない!」

J.B.「なぁに、すぐには終わらせないさ。聞こうじゃないか」

栄子「聞く?」

J.B.「あの侵略者の言い分だよ。脅迫か、宣戦布告か、降伏勧告か・・・
   ふふ、私は楽しみでならないんだよ」

 この男は・・・楽しんでいるのか・・・?
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:09:04.78 ID:3Tmn+dCU0

 イカ娘「人類よ、よく聞くでゲソ!」

 イカ娘は、スーツケースから1枚の紙切れを取り出した。
 原稿か・・・メモだろうか。

 イカ娘はその紙をじっと見つめ、

 意を決したように口を開いた。


イカ娘「今日は、お前たちに」


イカ娘「『お願い』があって来たでゲソ」


お願い・・・?イカ娘は・・・そう言ったのか?


イカ娘「1つ、国連に海洋汚染などを監視する、環境アセスメント機関の設立」

イカ娘「1つ、原潜の艦数削減条約の締結」

イカ娘「1つ、海産物の水揚げ量の国際的な管理」

イカ娘「1つ、個人、法人問わず海洋汚染の厳罰化」

イカ娘「以上を各国の人間たちで話し合いの上、検討して頂きたいでゲソ」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:11:40.85 ID:3Tmn+dCU0

 会議場内がまた、ざわつき始めた。
 それは、侵略者と言うには余りに紳士的であったからだ。

 強大な権力を持ちつつあるその少女は、
 人類に対していかなる脅迫も要求もせず、「お願い」を申し出たのだ。

J.B.「な、なぜだ・・・なぜそんなことを言うんだ!侵略者!何を企んでいる!」

 ブレックナーが叫んだ。


イカ娘「・・・何も企んでなんでいないじゃなイカ・・・」

イカ娘「力による支配は、いずれその力が弱まった時に、自らが生んだ反対勢力に圧倒され、
     本来理想とした思想も、信念も、否定される結果になるでゲソ。
     それは人間の歴史で繰り返し証明されているじゃなイカ。」

人々は彼女の弁に聞き入っていた。

イカ娘「人類は愚かで、野蛮で、無知で・・・でも、1つだけ誇るべきことがあるでゲソ」

イカ娘「それは、言葉によってお互いを理解できる・・・理解しようとするところでゲソ」

イカ娘「だから・・・私はお前たちを信じて、『お願い』するでゲソ」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:13:21.04 ID:3Tmn+dCU0

 人々は唖然としながらも、彼女の意思を理解し始めている。
 そこにはそれまでの緊張感は無く、イカ娘との「対話」を求めていた。


 ただ一人、私の上に乗る男を除いて。


J.B.「詭弁だ・・・結局、立場を利用して人間に要求を飲ませているだけではないか。」

栄子「何言ってやがる!もういいだろう!」

J.B.「侵略者に死を。千鶴、やれ。これは射殺命令だ」

 なん・・・だと・・・!?

 ブレックナーが手に持つ無線で姉貴に連絡を入れる。

栄子「くそォ!やめろ姉貴!撃つな!」

『わかりました』

 無線から姉貴の声が聞こえた。機械のように無機質な声が。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/01(木) 23:16:07.13 ID:3Tmn+dCU0

 ブレックナーが無線を手にとったため、私の半身は自由になっていた。
 私は右腕を、関節が外れるかと思うほど後ろに振った。

J.B.「がっ!」

 肘鉄がブレックナーの顎に入り、仰け反った。
 その隙にブレックナーの拘束を振りほどき、前に向かって走った。

 走った。少女の立つ演壇に向かって必死に走った。

 イカ娘が私の存在に気づく。


栄子「イカ娘!伏せろ!」


 イカ娘は私を見て、


 笑った。


 それは、己の運命を悟り、それを受け入れたような


 悲しい笑顔だった。


 次の瞬間、二発の銃声が会議場に響いた。


TO BE CONTINUED⇒



次回がラストです
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/03/01(木) 23:22:03.91 ID:4vAQI4SR0
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 00:10:03.45 ID:z2IqpSrAo
いかちゃん
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/03/02(金) 13:44:29.00 ID:O7CaPwfAO
待ってたぜ
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/03/03(土) 01:21:31.91 ID:iqFAuy1zo
乙早いな
79 :フリッケ福祉員 :2012/03/05(月) 00:36:35.54 ID:PUcZ8i840
待ってたかいがあったぜー

シリアスな展開の中、早苗がかいまみせた本性にワロタ
最終回待ってますぜー
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/03/06(火) 03:18:10.10 ID:6AJiFE+AO
乙 めっちゃ楽しみにしてるよー
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 21:36:13.54 ID:G2z/ulIp0

 全てがスローモーションに見えた。

 私の目の前で

 純白のワンピースに身を包む少女の胸から

 真紅の血が飛び散った

 少女はゆっくり

 演台の後ろへ

 どさりと倒れ込んだ


栄子「イカ娘・・・!」


 警備員が、たじろいだ私の両腕を掴む


栄子「離せ!離してくれ!」


 会場は悲鳴にも似た喧騒に包まれ、

 イカ娘はピクリとも動かなくなった
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 21:37:36.44 ID:G2z/ulIp0
 そこへ一人の女性が歩み寄る

 女性は演壇へと登り

 イカ娘の確認を始めた

 女性には見覚えがあった

栄子「シンディ・・・さん?」

 女性はサングラスを外し、こちらを見た

シンディ「・・・栄子、久しぶりね」

栄子「シンディさん!お願いだ!イカ娘を助けてくれ!」

シンディ「それはできないわ」

シンディ「残念だけど・・・もう死んでる」


 シンディに続き、3人の男が演台へと近づいた

シンディ「片付けて。撤収よ」

 白衣を着ていないが、あの3バカ達だった。

 3人は手際よくイカ娘を死体袋に包んだ

栄子「シンディさん・・・あなたは」

シンディ「sorry,栄子、私もCIAの人間なの」

 そう言うと4人は、死体袋を持って足早に場を去っていった。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 21:40:15.71 ID:G2z/ulIp0
 全てが夢の中のようにボヤけていた

 私は2人の警備員に腕を掴まれ、会議場の外へと連行される。

 途中、私と同じように警備員に捕まったたけると早苗を見た

たける「お姉ちゃん!」

栄子「たける!」

 私がたけるの方へ歩み寄ろうとするも、
 腕を掴む警備員に阻まれた。

 早苗は・・・

 生気のない目を、宙に向けていた。

 呼びかけても何の反応も示さない。

 早苗も見たのだろう

 イカ娘の顛末を・・・

 私は、2人とは別の車に載せられ

 どこか遠くのビルへと運ばれた
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 21:44:21.05 ID:G2z/ulIp0
 そこがFBIのNY支局取調室だと知ったのは、
 部屋に到着してしばらくしてからだった。

 その間、私にはテロ共犯者の嫌疑をかけられていること、

 黙秘権、証言、弁護士についての説明を受けた。

 そして、取調官として私の前に現れたのは

 あのブレックナーだった。

 ブレックナーは、嫌味たらしく私が殴って腫れた右頬を見せ

J.B.「『ご家族』のこと、心からお悔やみ申し上げるよ」

 と、最悪の皮肉を言った。

 それから、ブレックナーによる取り調べが何時間も続いた

 私は何も喋らなかった。もうどうでも良かった

J.B.「黙っていようが、裁判になればお前らは寿命の2倍の刑期を言い渡されるぞ!」

 苛立ったブレックナーは1枚の紙切れを取り出した。

J.B.「証拠はこれで十分だ」

 紙に見覚えがあった。

 イカ娘が演説する前に見つめていた紙切れだ。

 それはメモや原稿ではなく

 写真だった。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 21:45:49.81 ID:G2z/ulIp0

 赤黒い血がべったりと付着していたが、

 それはいつか海の家で撮った集合写真だった。

 私がいて、姉貴がいて、たけるがいて、早苗がいて・・・そして中央にイカ娘がいて

 皆笑っていた。

 イカ娘はこの写真を見つめ、どんな気持ちで最期の演説に望んだのだろうか

『お前たちの知っているイカ娘はもういないじゃなイカ』

 嘘だ。あいつは最期まで私の知るイカ娘だった。

 私の目は不意に濡れ、写真を見る視界が滲んだ。

 ブレックナーは写真をひったくるように奪うと

J.B.「しかし、私も鬼じゃない」

J.B.「もしお前が私の言うとおりに裁判で証言したら」

J.B.「お前や弟、お友達の無罪を保障しよう」

 私はブレックナーをキッと睨んだ。

 誰が。

 誰がお前の言うことなど聞くか。

 私がそれ以降も黙っていると

J.B.「まぁいい、どっちにしろ裁判になれば我々に損はない」

 そう捨て台詞を吐いて部屋を出ていった。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 21:48:43.09 ID:G2z/ulIp0

 次の日も、その次の日も、その次の日もブレックナーの尋問は続いた。

 私は精神的に限界に近づいていた。

 もうどうにでもなれ

 そう思い始めていた

 今日も取調室の扉が開き・・・

 ブレックナーの尋問が始まる。

 私はうんざりした気持ちになった。


 しかし、そこから出てきたのはブレックナーではなく


「ハァイ、栄子」


栄子「シンディさん・・・」

シンディ「あら、知ってた?それ、取調室に来て初めての発言よ」

そう言うとシンディはにっこりと笑った。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 21:50:05.25 ID:G2z/ulIp0

栄子「ブレックナーは・・・?」

シンディ「クビになったわ」

栄子「クビ!?」

 予想外の連発だった。

シンディ「あいつ、無茶しすぎたのよ。イカ娘関連で。」

 会議場での射殺命令、一般人の拉致監禁、その他強権の行使・・・

 ブレックナーは責任を求められてその地位を追われたそうだ。

シンディ「本人は怒って喚きちらしてた。自業自得ね。
      まぁトカゲの尻尾切りとも言えるでしょうけど」

栄子「たけるは・・・早苗は無事なの?」

シンディ「ええ、あなたも含めて無罪放免よ」

栄子「どうして急に・・・」

シンディ「ある男が・・・いえ、南風の店長さんが大統領に直訴してくれたのよ」

栄子「!?」

シンディ「大統領とは古い付き合いみたい。ほらこれ、大統領の恩赦状。
      ブレックナーの更迭も彼の口添えのおかげよ。」

 ・・・・帰ってから彼に感謝しなくてはいけないようだ。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 21:51:54.84 ID:G2z/ulIp0

栄子「それで・・・イカ娘は・・・」

シンディ「・・・」

 沈黙が物語っていた。もはや議論の余地もないことを。

栄子「シンディさん・・・なんであなたがこんな仕事を・・・」

シンディ「・・・叔父がね、ロイおじさんって人が諜報工作部隊の司令をやってて、
      その影響でCIAに入局したの。任務はイカ娘の監視」

栄子「じゃあ・・・宇宙人の研究員ってのは・・・」

シンディ「そんなの嘘に決まってるわ。宇宙人なんている訳ないじゃない」

栄子「そんな・・・」

シンディ「あなたのお姉さんをスカウトしたのも私。」

 全てはシンディさんや姉貴、CIAの掌の上。
 私は無力だった。イカ娘を守ってやることはできなかった。

シンディ「そんなに睨まないで・・・さぁ、扉の外でたける君が待ってるわ」

 恐る恐る扉を開けると、心の底から安堵した様子のたけるが顔を出した。

たける「お姉ちゃん!」

栄子「たける!」

 私はたけるをギュッと抱きしめた。

シンディ「帰りの飛行機は手配してあるわ。早苗さんはもう少ししてから釈放されるはずよ。」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 21:54:14.42 ID:G2z/ulIp0

 意外なほど、たけるは動揺していなかった。

 まだ状況を飲み込めていないのか、考え込んだ様子のまま、

 日本への帰路の間、殆ど無言だった。


 私とたけるが家に帰ると


 そこには姉貴がいた


千鶴「おかえりなさい」

栄子「姉貴・・・」


 しかし

 私達のもとに日常が帰ってくる訳もなく


 私とたけるは戸惑った。


 この女とまた家族に戻るなど無理だ。


 今まで家族同然にしてきた少女を犠牲にするような女と。


 もしこれが家族だと言うならば、それこそブレックナーの言ったように

 それは家族ごっこに過ぎない。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 22:00:49.60 ID:G2z/ulIp0

 数日後、姉貴は久々に海の家を見たいと言い出した。

 仕方なく、私たちはシーズンオフで閉ざしていた海の家を訪れた。

千鶴「うん、何も変わってないわね。」

 何事も無かったように振る舞う姉貴を尻目に

 私はテーブルに項垂れた。

 全て変わってしまったよ、姉貴。

 もう元通りなんて不可能だ。



 その時、たけるが口を開いた


たける「イカ姉ちゃんは?」


 私も姉貴も面食らった。

千鶴「・・・たける、イカ娘ちゃんは・・・もう・・・」

たける「死んでなんかいないよ、生きてる。そうでしょ?」

 痛々しかった。

栄子「たける、イカ娘はもういないんだ!もう、姉貴が・・・」

千鶴「栄子ちゃんの言うとおりよ、辛いでしょうけど・・・」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 22:02:25.63 ID:G2z/ulIp0

 たけるは、じっと姉貴の顔を見つめた。

 自信と使命感に溢れた目で。

たける「千鶴姉ちゃん。そろそろ本当のこと話してくれてもいいんじゃない?
     『ヒント』まで残してくれたんだから」

千鶴「ヒント・・・?」

たける「まず・・・銃声」

栄子「何言ってるんだ?たける!?」

たける「栄子姉ちゃんも聞いたでしょ?『2発』の銃声」

 確かにあのとき、会議場に銃声は2回鳴り響いた。

たける「なぜ『2回』だったのか。イカ姉ちゃんに着弾したのは1発だったのに」

千鶴「・・・初弾は外したの。だからすぐに2発目を・・・」

たける「千鶴姉ちゃんが初弾を『外す』?あの距離で?僕はそうは思えない」

 たけるが姉貴に歩み寄る。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 22:05:01.59 ID:G2z/ulIp0

たける「それに。決定的なのは『血』。」

栄子「血・・・?」

たける「そう、イカ姉ちゃんの胸から出た、『真っ赤』な血。」

 姉貴が椅子に座り、「ふぅん」と呟いた。

栄子「たける・・・どういう意味だ・・・?」

たける「あのね、お姉ちゃん」


たける「イカの血って、青いんだよ」


 青い・・・血が・・・青い・・・?

たける「イカの血にはヘモグロビンじゃなくてヘモシアニンが含まれているから。
     恐らくイカ姉ちゃんも同じだろうね」

 ではイカ娘の胸から溢れたあの液体は・・・

たける「血糊・・・2発目はペイント弾・・・でしょ?千鶴お姉ちゃん」

千鶴「で?」

たける「そして・・・あの1発目の銃声は麻酔弾。これなら辻褄が合う。」


 たけるの詰問に

 姉貴はただただ微笑むだけだった。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 22:06:21.54 ID:G2z/ulIp0

千鶴「ここまでね。シンディさん」



シンディ「もうバレたの?千鶴?腕が鈍ったんじゃない?」



 海の家の外からシンディさんと



 そして



 白い少女が顔を出した。



 二度と会えないと思っていたその少女が。



「今日からまたここを人類侵略の拠点にしてやるでゲソ!」


 聞き覚えがあった。


 少女が初めてここに来た時に言った台詞だ。


 少女はそう言うと


 入り口で仁王立ちになった。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 22:07:14.71 ID:G2z/ulIp0

栄子「イカ娘!」
たける「イカ姉ちゃん!」

 私とたけるは少女に飛びついた。


イカ娘「あゎ、くっつくなでゲソ!苦しいじゃなイカ!」

栄子「バカ野朗、心配させやがって!」

たける「良かった・・・無事で・・・」


イカ娘「お前たち・・・・・・・・・悪かったでゲソ」


 イカ娘は触手で私達を軽く抱き寄せた。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 22:10:28.27 ID:G2z/ulIp0

 つまり

 国連本部で起こったあの事件は

 イカ娘を助け出すための、姉貴とシンディさんによる狂言だったのだ。

千鶴「1年前、シンディさんからイカ娘ちゃんの置かれた状況と暗殺計画を教えられて、
    なんとか救出する作戦を立てたの」

シンディ「イカ星人が死んだことにして連れ出すのには骨が折れたわ」

イカ娘「気づいたらシンディ達の研究所にいたでゲソ」

シンディ「まぁいい機会だったから『隅々まで』じっくりと観察させてもらったけど」

イカ娘「決して人前では言えない所まで調べられたでゲソぉ・・・」

 イカ娘はそう言うとゲッソリして目を伏せた

栄子「あの、シンディさん、取調室で宇宙人はいないって・・・」

シンディ「ああ、アレ?あんなの嘘に決まってるわ。宇宙人が『いない』訳ないじゃない。」

 ・・・食えない女性だ。

シンディ「CIAには、ブレックナーの後釜に当てられたから、表向きは『海の家れもんの監視』
      って名目でここに居座ることにしたわ。」

 つまり

 全ては元通りということか


 ・・・何か忘れている気がする


たける「そういえば・・・早苗さんは・・・?」

シンディ「ああ・・・あの娘は・・・イカ星人の希望で、釈放した後、嘘の情報を流しておいたわ」

千鶴「イカ娘ちゃんはロシアに亡命した、って」

イカ娘「もしかしたら、今頃モスクワに潜入しているかもしれないでゲソ・・・」

 恐ろしいやつだ・・・いずれ本当のことを嗅ぎつけて帰ってくるだろう
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 22:12:03.55 ID:G2z/ulIp0

悟郎「なんだか賑やかだなぁ」

 ライフセイバーの悟郎が店に現れた。
 海水浴客がいないため、今は私服だ。

悟郎「ち、千鶴さん!お、おおおお久しぶりです!」

栄子「ゲ、悟郎!」

悟郎「お、栄子・・・なんでたける君を隠すんだ?」

栄子「近づくな!変態!」

 完全な言いがかりである。

悟郎「へ、変態!?俺なんかしたか!?」

イカ娘「悟郎!私にも随分会ってないじゃなイカ!」

悟郎「ああ、お前はどうせロクでもない事でもしてたんだろ?」

イカ娘「ふん、知らないなら教えてやろうじゃなイカ!私は・・・」

千鶴「あら・・・ふふふ」

 姉貴の目が光った。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 22:19:04.16 ID:G2z/ulIp0

千鶴「栄子ちゃん、私たちがニューヨークで食事した時のこと、覚えてる?」

栄子「ああ、シーフードパスタを食べたんだっけ?」

千鶴「そう。シーフードが値上がりしてるって話、したわよね?」

イカ娘「ち、千鶴、その話はまたにしなイカ?」

 イカ娘が何かに気づいて慌てだした。

千鶴「その原因はね、イカ娘ちゃんが世界的にエビを買い占めていたからなのよ」

 私はイカ娘の方をジロリと睨んだ。

イカ娘「違う!違うでゲソ!ちょっとした味見で・・・」

栄子「お前は・・・スケールがデカくなってもやってること同じじゃねぇか!」

イカ娘「ごめんでゲソ!もうしないでゲソ!」

栄子「されてたまるか!」




 こうして海の家れもんに、騒がしい家族と日常が戻ってきた。




おわり
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/03/12(月) 22:20:26.03 ID:G2z/ulIp0
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました

稚拙な文章でしたが、少しでも楽しんで頂けたならば幸いです
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/12(月) 22:29:53.54 ID:xKW6et5Co
乙!
>宇宙人なんている訳ないじゃない
これでこいつはシンディの偽者か、演技かと確信できたww
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 01:15:20.67 ID:t3NJfm6IO
たける△
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 11:31:55.03 ID:K4h7Pscvo
綺麗なハッピーエンドだ
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/03/13(火) 16:21:57.74 ID:IG7RMIVCo
乙!
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/16(金) 06:36:39.88 ID:73ImxZBg0
設定もシリアスもギャグも伏線回収も何から何まで凄い。
こういったSSが書けるのが羨ましい。
乙!
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 14:44:09.48 ID:ozsN5J7DO
中々の良作であった
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 20:50:34.24 ID:FRolCu+DO
今日スーパーでイカ娘の食玩売ってた
106 :イカ娘 :2012/04/09(月) 03:06:03.98 ID:DGAp6UJAO
>>98
かなりいい話だったでゲソ!お主のシナリオをいただいてハリウッドに打って出ようじゃなイカ!
乙でゲソ!
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