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ハルヒ「神の右席へ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/02/11(土) 11:31:01.84 ID:GqBTWdje0

 ポルトガルの、とある街だった。
 一〇〇年を優に超えるであろう歴史を持つ、田舎の小さな街。
 レンガ造りの建物がまだあちこちに残るこの街は、何故か水を打ったような静けさに包
まれていた。まだ夕方なのにも関わらず、通行人一人として見当たらない。まるで廃村の
ような雰囲気だ。
 いや、違う。
 この不自然なまでの静寂の中にあって、一際異彩を放っているものがある。
 一言でいえば『火事』だ。だがここにも輪をかけておかしな所があった。
 まずは燃えている物。これはまた古そうなレンガ造りの家だった。だが家の中の家財道
具やら何やらで、内側から窯のように燃えているのではない。
『レンガそのもの』が燃えているのだ。まるで蛇が絡み付くように、焦げたレンガの表面
から炎が渦を巻いている。
 そしてもう一つ。
 オレンジ色に輝く建物の前に、一人の少女が立っていた。
 歳は一五、六といった所だろうか。周りの景色にそぐわない東洋的な顔立ちに、セミロ
ングの黒髪を、特徴的な黄色いヘアバンドで留めている。
 服装はどこかの学校のブレザーだが、そのいたるところからウェデイングドレスのよう
な薄い衣がヒラヒラと伸びている。
 遠目に見れば、絵巻に出てくる天女のようにも見えるこの少女。ここの家の住人だと判
断するには、少し様子がおかしい。
 というのは、嘆き悲しんだり、絶望している雰囲気が全く見受けられないのだ。かとい
って、あまりの衝撃に唖然としている訳でもなさそうだ。
 制服の少女の表情を文字で表すと、『不機嫌』という言葉がピッタリ当てはまる。
『人気のスウィーツを並んで買ったら、思ったほどおいしくなかった』とでもいうような
様子だった。
 そしてこの不可解な現象を前にして、少女の視線は燃え盛る建物ではなく自分の右手に
向いていた。正確には、右手が掴んでいる細い剣のような物体に。
 その刀身にあたる部分には、六枚のルーンが並べて貼り付けられてあった。それぞれに
記された文字は『sowulb』『gebo』『kenez』『ansuz』『lagu
z』『uluz』、文字列を強引に読むと『sgkalu(スグクアンウ)』、『魔術を使
って太陽を得た松明』という意味になる。

「う、うぁ……」


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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/02/11(土) 11:32:03.33 ID:GqBTWdje0

 少女が不満そうに剣を眺めていると、ふと家の方から男の声がした。目線を向けると、
火だるまになった家の玄関から、今まさに男が這い出ようとしている所だった。

「へえ……」

 少女は感心したような声を出して、男に歩み寄っていく。
 酷い有様だった。
 髪は燃えて散り散りになり、靴は片方しかなく、黒い修道服は焦げて皮膚にへばり付い
ていた。元は神父だったようだが、今となってはもう見る影もない。

「た、頼む……、助けてくれ、み、見逃してくれ。できる事なら、何でもする。イ、イギ
リス清教の、犬になってもいい。だから……頼む」

 悲痛な叫びだった。
 立ち上がる事すらできない男は目に涙を湛えながら、物乞いをするように少女へと手を
伸ばす。
 救いの手を、慈悲の手を。
 対して、少女のとった行動は単純だった。
 右手の剣の先端を、黙って男に向ける。

「そ、そんな―――ッ!」

「なぁにあたしが悪者みたいに言ってんのよ」

 男の訴えを遮るように言って、少女は鼻で笑う。

「あんた、自分が何やったか分かってんでしょ? そんであたしが何しに来たのかも分か
ってるわよね? じゃあ結末は一つじゃない」

「そ―――」

 男が必死の形相で何かを叫んでいたが、もはや彼女は聞いてなどいなかった。
 極めて事務的に最後の言葉を告げ、その切っ先に命令を下す。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/02/11(土) 11:32:43.96 ID:GqBTWdje0

「神は全てを知っています。あとは最後の審判で」


 轟!! と先端から炎が噴き出した。火先はあっという間に男を飲み込み、勢いを保っ
たまま玄関から中に入り、部屋中を蹂躙する。


「うーん」

 耐え切れなくなったようにレンガが音を立てて崩れ落ちても、少女は特に表情を変えな
かった。

「やっぱ所詮はレプリカって感じなのよねー。多分こんなもんじゃないと思うのよ、『破
滅の枝(レーヴァテイン)』って。ねえ、あんたもそう思うわよね、‘土御門’」

 そう言って、少女は勢いよく振り向いた。
 そこに立っていたのは金髪グラサンの大男。意外にも顔立ちは幼い。齢は、少女と同じ
くらいだろうか。

「やっぱリチャードを脅して本物を手に入れようかしら。こんな出力じゃステイルにも劣
るんじゃない?」

 土御門と呼ばれた少年は少し苦笑いをして、

「一応アイツは既存のルーン二四文字を完全に解析して、加えて新たに文字を六つも生み
出した天才なんだがにゃー」

「それは何度も聞いた。でもそれが何よ? そんなの『あたし達』の間じゃ何の自慢にも
ならないじゃない」

 たった今人を殺したばかりだというのに、少女の声は驚くほどあっけからんとしている。
『破滅の枝』をプラプラと上下させながら、彼女は呆れたように言った。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/02/11(土) 11:33:13.95 ID:GqBTWdje0

「ねーちんは聖人、インデックスは一〇万三〇〇〇冊の魔導書図書館、リチャードは『コ
レ』を完成させたし、あんただって陰陽道の最高位じゃない」

「今はただの無能力者(レベル〇)だけどにゃー」

「と・に・か・く! あたし達は『必要悪の教会(ネセサリウス)』なの! 『対魔術師
を専門にした魔術師集団』なの! ‘天才’だの‘優秀’だの、そんな言葉に一喜一憂し
てるようじゃ三下よ」

(……一応オレの方が先輩なんだがにゃー)

 と、土御門は心の中だけで呟く。
 長年一緒にいると、何と言えば何と返ってくるのか大体想像できてしまうのだ。

「それにしてもハルが『必要悪の教会』にそんな愛着を抱いてたなんて驚きだぜい。てっ
きり、隙あらば乗っ取ってやろうとでも考えてるのかと思ってたんだがにゃー」

「あたしもそこまで子供じゃないわよ。居心地は悪くないし、第一、これだけアクの強い
仲間を完全に掌握できるとも思えないしね。あとハルって呼ぶな。あたし名前を略される
のって好きじゃないのよね」

「じゃあハルっぺとかどうかにゃー」

「『涼宮』、もしくは『ハルヒ』」

「えー? 長い付き合いなのに堅いぜよ。しゃあない。じゃあハルにゃ―――」

「ブチ、殺す!」

 ギブギブ! と土御門は『破滅の枝』を振り回すハルヒを何とかなだめて、

「それで、どうだった? 何か情報は見つかったのか?」

「ダメね」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/02/11(土) 11:33:55.98 ID:GqBTWdje0

 土御門の口調が急に真剣なものに変わるが、ハルヒは特に臆する様子もなく切り捨てた。

「ただのロリコン野郎の集まりに過ぎなかったわ。だから言ったじゃない。こんなヤツら
が『刺突杭剣(スタブソード)の情報なんか握ってるはずないって』

 まるで子犬が失踪しました、とでも言わんばかりの軽さに、土御門は眉をひそめる。

「ちょっとは緊張感を持ってほしいんだが……、お前、あれが何か分かってるのか?」

「『聖人殺し』の霊装でしょ? 今頃上層部はパニックでしょうね」

 オレ達も十分上層部だと思うぞ、と土御門は言って、

「ってか、分かってるなら何でそんなに落ち着いてるんだよ!」

「確証があるからよ」

「確証?」

「ええ」

 彼女は続けて、

「『刺突杭剣』が今どこにあるかなんて知らないわよ。あたしが聞いたのは、連中がそれ
を持ち出したって事だけだしね」

 言いながら、ハルヒは『破滅の枝』の先で、地面に何かを描き始めた。

「でもこの効果は分かってるでしょ? ならローマ正教の目的も明らかじゃない」

 完成したのは細い十字架のような絵だった。恐らく『刺突杭剣』を想像して描いたのだ
ろうが、それにしてはえらくリアルなタッチだ。本物を見た事あるはずはないのだが……。
 土御門が疑惑めいた視線を向けると、彼女は腰に手をあててこう言い放った。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/02/11(土) 11:34:39.89 ID:GqBTWdje0


「つまり、他宗派の聖人を殺す事よ!!」


「……、」

 ババーン! という効果音が出そうなほど元気よく言ってくれたが、対する土御門は困
ったような顔になった。

「いや、その……」

 彼は小さな子を諭すように、

「そんな事はとっくに分かってるんだが……。問題はその『聖人殺し』をどうやって防ぐ
のかって事で」

「上層部が何とかするでしょ」

「だからその‘上層部’ってのは誰の事を言ってるんだにゃー!! 『最大主教(アーク
ビショップ)』か!? 『騎士団長(ナイトリーダー)』か!? それともまさかのエリ
ザード女王かああぁぁ!? ってかお前自分が動きたくないだけだろ!」

 ヒートアップして詰め寄る土御門をまあまあとハルヒが落ち着かせる。
 何だかさっきと立ち位置が逆になっていて、彼としては腹立たしい事この上ない。
 彼は勘弁してくれといった表情で、

「『刺突杭剣』は切っ先を向けるだけで効果が出る。距離も相手の強さも関係なしだ。そ
してお前の言うとおり、ヤツらの目的は他宗派の聖人を殺す事だ。これは必要悪の教会
(ウチ)だって例外じゃない」

「つまり、ねーちんが危ないって事ね」

「本当はこんな事、いちいち確認するまでもないんだぞ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/02/11(土) 11:35:23.42 ID:GqBTWdje0

 土御門は小さく息を吐いて、

「どっちみち、オレはすぐに『学園都市』に戻らないといけない。だからこっちでの事は
お前やテオドシアに任せるしかないんだ。頼んだぞ。コレは魔術サイド全体を揺るがす大
事件なんだからな」

「その『大事件』が『大惨事』になるのを未然に防ぐ事があたし達の役目よね」

 だったらもう少し真剣になってくれ、と彼は吐き捨てる。
 ハルヒはそれを無視して適当に手をプラプラと振りながら、

「ま、何か分かったら真っ先にあんたに伝えるわよ。『最大主教』はいまいち信用できな
いしね」

 そう言ってどこかへ行ってしまった。恐らく聖ジョージ大聖堂か『必要悪の教会』の女
子寮だろう。
 土御門は彼女が生み出した‘残骸’を見る。
 既に鎮火しているが、家具は焼けて炭化しており、それがレンガの表面にかかって、全
体が黒々とした色で覆われている。もはや原形など留めていない。

「―――って、片付けは人任せかよ!!」

 土御門は思わず振り返るが、そこに人影は見当たらなかった。
 悔しさ半分悲しさ半分といった様子で、彼は肩を落として舌打ちをする。だが、そんな
事をしたってどうしようもない。
 彼女が人払いを解除すれば、ここにもじきに人がやって来る。結局、彼がすべき事は決
まってしまった。

「はぁーあ……、うまくいく気が全くしないぜよ」

 ポツリと呟いた声に返事はない。本当に勘弁してくれと彼は思う。
 腐っても、彼らはイギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会』のメンバーなのだから。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/02/11(土) 11:36:11.68 ID:GqBTWdje0
思いつきで立ててみました。不定期で更新していきます。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/11(土) 13:34:12.56 ID:cyffOOUWo
期待

完結させてくれ……
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/02/11(土) 15:24:03.18 ID:f/L7QXnH0
これは期待です・・・
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 16:49:40.50 ID:3pJ1RgP0o
これはなかなか面白いチームかも。
ハルヒはねーちんにセクハラして毎回キレて斬りかかられて楽しそうに逃げ回ってそうww
あと、インデックスはきっとマスコット扱いで餌付けしてるな。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/24(金) 21:44:08.62 ID:eCT0rG6g0
お願いしマース
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 17:19:56.76 ID:WzDlc8X3o
まだー?
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