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美琴「――ばいばい、――番目の、インデックス」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:28:19.73 ID:q76h1QBE0

1巻より1年前に、美琴とインデックスが出会う話です。
何番煎じだよ、と思われるかもしれませんが、どうしても書きたかったんです。
一応いくらか書き溜めはありますが、更新はゆっくりいこうかなと思います。



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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:28:56.12 ID:q76h1QBE0



――――――――――




これは、何度も『死ぬ』少女と、何度も『繰り返す』少女の、悲しい哀しい物語。





――――――――――



3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:29:45.01 ID:q76h1QBE0

ハジメテ
一番目。


「御坂、今日から夏休みだが、くれぐれもはちゃめちゃな行為はしないように」

寮監の忠告に、はいっといい子のお返事。
本日7月20日。夏休み第一日目だ。
世間はすっかりお祭りムードだれど、私はどうにもそんな気分にはなれない。
派閥争い。
それが今、私を悩ませている。
私が二人部屋を一人で使っているのも、それのせいだし。
レベル5の第三位、超電磁砲。
常磐台の一年生にして学校が誇るエース。
そういう肩書きを派閥に取り入れたいのか、派閥に属している人たちは何度断っても何度も何度もしつこく誘ってくる。
私は入る気なんてさらさらないっていうのに。
元同居人も、入学した途端派閥を作り、それに私を毎日のように誘ってきて、最初はルームメイトだしと思って和やかに断っていたのだけど、3ヶ月も続くとさすがに堪忍袋の尾が切れる。ようやくキッパリと断ったら、今度は仲が険悪になってしまって、見かねた寮監が彼女を違う部屋にうつした。だから私は一人でここに暮らしている。

「……なあ、御坂」

「なんですか?」

「誰か、ルームメートになりたいヤツはいないのか?」

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:30:28.94 ID:q76h1QBE0


いつもの質問だった。
だから私もいつものように返す。

「私を“超電磁砲”としてじゃなく、“御坂美琴”としてみてくれる人がいるのなら」

寮監はすまなさそうに黙った。……別に、寮監のせいじゃないのに。
だからといって、この力が悪いとは言わない。これは私の誇りだ。私の努力の結晶だ。
……だけど。
これが原因であることは、まぎれもない事実だった。
しょうがないことなんだ。
しょうがない、ことなんだから。

「寮監、もういいですか?」

「あ、あぁ……もういいぞ」

ありがとうございます、とだけ返して私は部屋の中に入った。
はぁ、とため息をつく。
夏休みといったら、普通心が舞い上がるほど嬉しいもののはずなのに。
なんでこうなっちゃったんだろう。

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:31:23.39 ID:q76h1QBE0

「しょうがない……わよね」

とりあえず、窓の空気でも入れ替えるか。
ぱん、といやな気分を払拭するように頬を手のひらで打ち、窓ガラスへと近づく。
そして、パチン、と窓ガラスの鍵をあけ、開いて――

「え……?」

バルコニーに、白い布切れが落ちていた。
いや、布切れなんかじゃない。
だって、布切れは微かに上下に動いていて、それに、ところどころからきれいな銀髪の髪がはみでていて、それに、白い手も。
……これって、もしかして。

「人間……外国人……?」

私のつぶやきに答えるかのように、"それ”は顔を上げた。
そこにあったのは外国風の眩い美少女。
そして、口を開いた。

「……った……」

「……え?」

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:31:54.28 ID:q76h1QBE0

「お腹……減った……」

まず、何語を喋ってるんだろう、と考えた。
そして、次に日本語を喋ってるんだとわかった。
次に、思考が変わって可愛いと思った。

「お腹減ったって言ってるんだよ?」

ぷぅ、と可愛らしく頬を膨らませる美少女に、私はただ。

「え……? え……?」

驚くことしかできなかった。
周りは私を崇めたて、だれも対等に接してくれようとはしてくれず、しょうがないと呟いて諦めようとしていた暗い気持ちの夏休みの初日。
インデックスとであったのは、そんな日。
そしてこれが。
長い、長い悲劇の始まりだった。




7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:32:32.56 ID:q76h1QBE0





「おいひいんだふぉ!!ありはとうもぐむぎゅ!!」

「……ちゃんと飲み込んでから喋るように」

お腹減ったと繰り返す彼女に、とりあえず部屋においてあったお菓子を渡したら数秒で飲み込まれた。
……結構あったはずなんだけどね?
よく分からない(腹ペコキャラだとは判明したけど)外国人の女の子は、お菓子を飲み込むとにっこりと笑って、

「自己紹介をしなくちゃね、私の名前はインデックス。イギリス清教所属の魔術師で、正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorumだよ」

「Index-Librorum-Prohibitorum?」

「魔道書図書館のことだね」

なんてことないように彼女――インデックスは笑ったけど、ちょっと待って。
魔道書って……あれ? ゲームとかで魔法使いが呼んでいる胡散臭いやつ?

「胡散臭いとは酷いかも。魔術っていうのは本当にあるんだから」

「はぁ? アンタねぇ、ここは科学の街よ? オカルトが入り込む隙なんて一切ないんだけど?」

「魔術はあるもん!」

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:33:09.49 ID:q76h1QBE0

むきになったインデックスは立てあがって胸をはった。
……意外とこの子、私より胸ないか?
なんて思ったのはきっとあれよ!うん、外国人パワー!!

「Dedicatus545」

「……?」

「献身的な子羊は強者の知識を守る、っていう意味だよ。Index-Librorum-Prohibitorumのことをよくあらわしている魔術名かも」

「ま、魔術名?」

そうだよ、とインデックスはまた笑った。
笑った……私に。
なんの敬遠も、崇拝もなく、ただ純粋に、対等に。

「でも……魔術はあるっていわれても信じられないわよ」

「魔術はあるよ!」

「じゃあ、その魔術とやらを見せてみなさいよ」

私の言葉に、うぐ、とインデックスは言葉を詰まらせた。
それから、拗ねたように言う。

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:33:53.00 ID:q76h1QBE0

「私には……魔力がないから無理なんだよ」

「ほら見なさい」

「ううー、魔術はあるもん!だったらほら、包丁持ってきて!!」

「ほ、包丁!?」

「そうだよ、包丁!!私が着ているこの修道服はね、歩く教会っていう物理・魔術を問わずどんな攻撃も無効化する法王級の結界を持つ霊装なんだよ!包丁くらいなら全然突き刺さらないから!!やってみるんだよ!!」

「ほ、包丁ってアンタねぇ……!!冗談にしちゃあたち悪いわよ」

「冗談じゃないもん!!」

なんでこんなむきになっているのやら。
呆れてため息をついたら、今度はじたばたと足をばたつかせた。下に響くっての。

「まったく……そうね、魔術はあるとしましょう。それはどうでもいいとして」

「どうでもよくないもん!」

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:34:29.25 ID:q76h1QBE0

「なんでアンタはうちのバルコニーに落ちてたわけ?」

インデックスが黙った。
すこしだけ視線をさ迷わせて、ぼそりと返す。

「失敗……したんだよ」

本当は、建物の間を飛び越えるつもりだったんだけど。
撃たれちゃってね、とインデックスは言った。
私は怪訝そうに眉をよせる。

「なんで、そんなことするのよ」

「追われてた……から」

「追われてた?」

「……魔術師に」

「……魔術師、に? なんでよ?」

また、沈黙。
インデックスは、話すのをためらっているらしかった。
それはまるで……そちら側に、巻き込まないようにするかのような。

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:35:56.45 ID:q76h1QBE0

「私が、Index-Librorum-Prohibitorumだから」

魔道書図書館だから、とインデックスは付け加えた。
私の背筋がびくりと震える。
インデックスのそのエメラルドの瞳は、真剣そのものだった。

「……多分、私が10万3000冊の魔道書を持ってるからだよ」

「10万……3000冊?」

「そう、10万3000冊。常人が一目見たら発狂するほど危険な「原典」であり、世界の常識を変え、手に入れた者を「魔神」にするほどの価値がある魔道書の保管場所。それを私が持っているから」

「……アンタ、そんなちっこいのに図書館とか持ってたの?」

「……そういう、わけじゃないかも」

インデックスの話は要領がつかめないけれど、とにかくその10万3000冊の魔道書があるから追われているらしい。
……本当なのか、本当じゃないのかはともかく。
たとえ魔術関連の話が嘘だったとしても、他人のバルコニーに落ちるような事態に巻き込まれているのは事実なのだから。

「アンタさ、その……追われてるってことは、逃げ続けてるってことで……家とか、ないんでしょ?」

「……そんなことはないんだよ。イギリス清教の教会にいけば匿ってもらえるはずだから」

「それは……どこにあるわけ?」

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:36:41.38 ID:q76h1QBE0

「ん? バチカンだよ」

バチカン……!?と絶句する私。
誰かに追われながらバチカンまで逃げるとか。
そんなの……不可能じゃ、ないのかしら。

「とはいっても、日本支部にあるものに行けばいいって話だから。大丈夫」

「日本支部って……私あんまり教会を見たことがないんだけど、そんなぽんぽんあるもんなの?」

「あー、ちょっと難しいかも。日本は宗教観念が希薄だから」

「じゃ、じゃあどうするのよ……!」

大丈夫だよ、とインデックスは笑った。
屈託のない笑みで、大丈夫だよ、と。

「私は1年間も逃げ続けてきたんだから」

「……1年前に、その魔道書図書館っていうのを手に入れたわけ?」

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:37:10.48 ID:q76h1QBE0

「んー、どうだろうね」

「どうだろうねってアンタ……」

そして、インデックスは言った。




「私、1年前から記憶ないから」




記憶喪失。
なんてことないように、本当に、先ほど魔道書図書館だね、といったときと同じように、インデックスは。
がた、と音がした。
インデックスが、立ち上がった音だった。

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:37:42.59 ID:q76h1QBE0

「ちょっと長居しすぎちゃったかも。連中がここにいることを察知して襲ってくるかもしれないしね。私はもう出て行くよ」

「え……ちょ、アン、タ……その、私の部屋に、いてもいいのよ? バチカンっていったって遠いし……日本支部だってそんなそこらへんにあるものじゃないんでしょう!? だったら……」

インデックスは拒むようにふるふると首を横に振った。
そして、さらりといいのける。

「君だって、自分の部屋を爆破されたくはないよね?」

「……っ」

「じゃあね」

私の息が詰まった隙に、インデックスはそれだけ言って出て行ってしまった。
後には、よくわからない虚脱感だけが残って――
彼女の出て行った扉を、私はずっと見つめていた。




15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 22:39:46.86 ID:q76h1QBE0

こんな感じで続けていきます。
ところでなんですが、インデックスが美琴にあだ名をつけるとしたら何になると思いますか?
みぃしか思いうかばないんです。でもそれだと先輩とかぶるし……
というわけで募集です
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 22:42:01.47 ID:sowxU2oxo
これは期待


しかし、何故バチカン?
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 22:46:12.48 ID:COGSF/FDO
普通にみことでいいと思う
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/24(金) 22:59:26.32 ID:5iU1Ezmho
常盤台外部寮にバルコニーてあったっけ?

それとも内部寮?
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/24(金) 23:04:16.69 ID:q76h1QBE0

>>18 うわ、そういう設定ですっていっとくの忘れてましたっ。すみません
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 23:06:32.95 ID:BWKmwPTUo

一年前ってーと上条さんも黒子も登場なしかな
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 23:07:17.58 ID:OvKwk3nU0
みこと、あるいは短髪

なにげに期待
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/02/24(金) 23:09:25.00 ID:CroOVIIVo
また楽しみが一つ増えたぜ
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 23:41:48.91 ID:oT51KMzIO
乙!最近美琴が主人公の再構成増えてきて嬉しいぜ

原作でのあだ名はいかんの?ビリビリとかミコっちゃんとか短髪とかお姉様とかおねーたまとか
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/02/25(土) 00:06:46.48 ID:ge+8oFtAO

美琴が魔術師相手にどう戦うのか気になるな
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 01:47:54.05 ID:yPzCt+YIO
インは基本名前を平仮名にして呼ぶからみことでいんでね
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/02/25(土) 09:58:55.39 ID:SDCLXcpi0
「みこと」か「短髪」でいいかと
27 : [乙]:2012/02/25(土) 15:27:03.80 ID:8dvIOjdy0
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 18:58:03.68 ID:yhHD8Uhp0
美琴のあだ名を考えてほしかったのは「もう絶対にあの子は○○と呼んではくれない」的な展開をしたいので。
じゃあ投稿です。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 18:58:58.29 ID:yhHD8Uhp0



何もすることがないので、私は部屋でごろごろすることに決めた。
漫画はあらかた読みつくしたものばかりで正直つまらないけど、しょうがない。
……しょうがない、が口癖になっちゃってきてるなぁ。

「はーぁあ」

ごろん、と横向きに一回転。
先程の、インデックスのことを思い出す。

「……魔術師、か……」

まさか、本当に魔術とやらがあるとは思わないけれど。
ちょっぴり、心配だ。
多分――追われていたという部分は、本当だろうから。

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 18:59:29.74 ID:yhHD8Uhp0

「……あー、もうっ!!」

私はばっと飛び起きた。
むしゃくしゃする。すっごくすっごくむしゃくしゃする!

「追いかけるか……」

今どこにいるのかは分からないけれど、とりあえず、もう一度会って話をしよう。
そしたら、このむしゃくしゃした気分も晴れるかもしれない。
だから私は追いかけた。
多分これが――分岐点だったのだと、今にして思う。
インデックスと、私の、物語が始まるか始まらないかの――重要な分岐点。


31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 19:00:10.68 ID:yhHD8Uhp0


結局、2時間街を走り回ってもインデックスは見つからなかった。
あの子にあったのは朝なのに、もう昼だ。
……もう、街の外に出てしまったのだろうか。

「はぁ……はぁ……」

さすがに2時間ぶっ通して走り続けるのはしんどい。
私は近くの公園のベンチで休憩をとることにした。

「つ、疲れた……」

一人きりの公園で、私はふぅ、とため息をつく。
……なんで、私、走り回ってるんだろう。
あんな、今日はじめて会った子のために、真剣になっているんだろう。

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 19:00:42.67 ID:yhHD8Uhp0

「……、」

……それは、多分――、
私が結論を出す、その直前に。



爆発音がなった。



「……っ!?」

思わず体を竦ませる。
爆発音がなった方へ振り向くと、そこには、

「……インデックス?」

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 19:01:14.36 ID:yhHD8Uhp0

整った白い顔、
輝くばかりの銀髪、
コーヒーカップのような修道服、

間違いない、インデックスだ。

「――げん、あきらめて――だよ!!」

「それ――文だ――、禁書目録」

途切れ途切れの会話が聞こえる。
インデックスから少し視線をずらすと、そこには煙草を加え、嫌な笑いを浮かべた赤髪の男がいた。
そして、その横には、炎の塊のようなものがゆらゆらと蠢いている。

「……あ」

間抜けな声を出した。
インデックス――Index-Librorum-Prohibitorum。
禁書目録。

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 19:01:58.13 ID:yhHD8Uhp0

『追われてた……から』

朝のあの子の言葉を思い出す。

『……魔術師に』

諦めたようなあの声を。

『……多分、私が10万3000冊の魔道書を持ってるからだよ』

10万3000冊の魔道書というものはいまだによく分からないし。
魔術師というのも未だに胡散臭いけれど。

「こん――炎を――馬鹿げてる――も!!」

――けど、あの子を助けない理由にはならない。
いつの間にか、私の体は動いていた。
磁力を使った高速移動で、私は一直線にインデックスの元まで行く。
そして私はインデックスと赤髪の間に強引に割り込んだ。

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 19:02:34.66 ID:yhHD8Uhp0

「あなた……っ」

後ろから聞こえたインデックスの驚いたような声は無視して、私は赤髪を睨み付ける。

「アンタ、この子に何してんの?」

赤髪は最初は吃驚したような顔をしていたけど、すぐにまたあの嫌な笑みを浮かべると、

「何って――追いかけてただけだけど?」

「追い……っ」

「こっちにもこっちの事情があるんでね。さっさと回収したいんだ。だから退いてくれると助かるんだけどね」

「……ふざけてんの、アンタ」

「ふざけてなんかないさ。至極まじめだ」

もう限界だった。
私はインデックスの手をとると、先程と同じように磁力で高速移動をした。

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 19:03:22.12 ID:yhHD8Uhp0

「なっ――」

赤髪を置いて駆け出す私に、インデックスは慌てたように言う。

「ああああなたっ何してるんだよっ!?」

「助けにきたわ」

「……っ」

「追われてるんでしょ。大丈夫。匿ってあげるわ」

「なんで……」

「……ほんと、なんでかしらね」

私は笑った。
自嘲気味に、でもどうしようもなく嬉しそうに。

「なんで、こんなに助けたいって思うのかしらね」

37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 19:03:56.45 ID:yhHD8Uhp0

「……あなたが」

私の問いのような言葉に、インデックスは答えた。

「あなたが、とっても、優しいからなんだよ」

……優しい、か。
ふぅ、と息を吐き出し、そろそろ撒けただろうとブレーキをかけた。
若干前のめりになりつつ、きちんと停止する。

「ねぇ、インデックス」

「何かな?」

「魔術は……あるのよね?」

私の問いに、びっくりしたように目を開いたインデックスは、すぐにこくりと頷いた。
真っ直ぐな、真摯な目で、言う。

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 19:04:30.75 ID:yhHD8Uhp0

「勿論、あるんだよ」

「そっか。さっきの炎も魔術?」

「うん。あれはルーンを……」

「いや、解説はいいわ」

インデックスの解説を制止したら、なんだかちょっぴり怒ったように顔を膨らませられた。
……なんだか小動物みたい。
私がふふ、と思わず笑うと、インデックスも笑い返した。


39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 19:08:00.41 ID:yhHD8Uhp0
時間がないのでここまでです。もしかしたらまた夜更新するかもしれません。
魔術師ですか……どうだろう。あくまで『美琴とインデックスの物語』として書きたいので、出てきても少しだけかもしれませんね。まあ現時点ではわからないんですけども。
>>20 一応出てくる予定……はあります。でもちょびっとかもしれない。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 21:11:06.33 ID:yhHD8Uhp0
もうみぃでいいか……ってことで、更新ー。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 21:11:50.10 ID:yhHD8Uhp0


「そういえば、あなたの名前はなんていうの?」

「私? 美琴。御坂美琴よ」

「みこと……うん、なら、みぃだね」

何やらインデックスはこくこくと頷いている。
私は尋ねた。

「みぃ?」

「うん。あのね、私、ずっとずっと誰かにあだ名って言うものをつけてみたかったんだよ」

「……あだ名……」

「えへへ、最初がみぃで良かった」

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 21:12:20.50 ID:yhHD8Uhp0

そういって、インデックスは幸せそうに笑う。
その笑顔に癒されながらも、私はじくりと胸の痛みを堪える。
記憶喪失。
そして、ずっとずっと追われてきた。
あだ名すら、つけることを許されなかった。
そんなの、酷すぎる。

「……ごめんね、みぃ」

「何が?」

「巻き込んじゃって」

「……」

インデックスは申し訳なさそうに俯いた。
私は、少しだけ黙って、それからぴん、と彼女の額にでこピンをした。

「い、痛っ」

43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 21:13:00.70 ID:yhHD8Uhp0

「ばーか」

私は笑う。
本当に、馬鹿馬鹿しくて、思わず笑ってしまう。

「こんなの、巻き込んだうちにも入らないわよ」

「……みぃ」

インデックスは俯いた顔を上げ、はにかんだように笑った。
……ああ、この子は。
きっと、誰からも愛される子なんだろうな、となんとなく私は思った。
そのときだった。

(――、!!)

何かが私たち高速で近づいてくるのをレーダーで察知した。
私が反射的にインデックスを突き飛ばしたのと、“誰か”から攻撃を受けたのは、ほぼ同時。
そして、





「が、ぁあああああああああああああああああああああっ!!!」








44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 21:13:38.23 ID:yhHD8Uhp0

耐え切れない痛みが全身を襲う。
肉が切れた感触がした。
血が絶えずあふれ出る。
必死で涙をこらえて、私は歯を食いしばる。
私に攻撃を加えた(正確にはインデックスになのだろうが)“誰か”は来たときと同じように去っていった。
そして、目の前でインデックスは。

「み、ぃ……?」

信じられないとでも言うように。
私の姿を見て、泣きそうな顔で。

「……っで……す……」

安心させてあげないと。
私は大丈夫って言ってあげないと。
なのに、体は動かない。
インデックスを抱きしめることはおろか、笑みを浮かべることすらできない。

45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 21:14:04.90 ID:yhHD8Uhp0

「みぃ、みぃ、みぃ……!!!」

私はもう立つこともできずに、地面に倒れふした。
インデックスはやっぱり泣きそうな顔でしゃがみこみ、私の体を小さくゆすぶる。

(……ああ、誰か……)

私は願う。
どうしようもなく、願う。

(誰だっていいから……お願いだから……)

インデックスの顔をみて。
痛みさえ感じなくなって。
それでも。

46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 21:14:32.78 ID:yhHD8Uhp0

(この子の涙を……止めてください……)

そして、薄れ行く意識の中。

「……御坂?」

はっ、と小さく目を見開いた。
苦労して上をむくと、そこには、驚愕を顔に貼り付けた寮監がいた。




47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/25(土) 21:16:26.84 ID:yhHD8Uhp0
ここが一番きりがいいので、終わりー。

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 21:18:12.06 ID:Vey9MOsuo
寮監ンンンンンンンンン‼

49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 21:38:34.59 ID:3l/MzMNxo
寮監ktkrwwwwwwwwwwww
勝ち確定じゃねーかwwwwwwwwww
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 22:39:54.48 ID:RBXoWqc1o
寮監「異能の力など花拳繍腿!関節技こそ王者の技よ!」

ステイル「」コキャッ

ねーちん「」コキャッ

ペンデックス「」コキャッ


おかしいな、話が終わってしまったぞ
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 22:58:24.68 ID:yPjS7C0IO
寮監来たってことは人払いしてないのか
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 01:55:04.44 ID:DtpwcKKYo
>>51
寮監は人払いをものともしないんだよ!wwww
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:02:30.29 ID:8OJ6S6Nm0
えwwwなにみんな寮監好きですねww
しかし寮監はあんまりでないのであった。
じゃあ投下ー。書き溜めが1番目終わって2番目に突入したぜ!!
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:04:11.68 ID:8OJ6S6Nm0


「……ん、」

私は目を覚ました。
きょろきょろと辺りを見渡すと、そこは見知らぬ家の天井。
……どこだろう、ここ。
何があったんだっけ。

「そうだ……私……」

“何か”から攻撃を受けて。
インデックスが泣いていて。
泣いてほしくないって、願って。
そして――寮監が、来た。

「みぃ?」

がちゃり、と扉を開けられた。
不安そうな顔を浮かべたインデックスが、こちらを見ていた。

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:04:35.74 ID:8OJ6S6Nm0

「みぃ……? 起きた……?」

「うん、インデックス」

「……よ、よかったんだよぉ……」

へなへな、と力が抜けていくようにインデックスは床にぺたりと座り込んだ。
私は苦笑して、インデックスのほうへ駆け寄った。

「インデックス、あれから、何があったの?」

「みぃのりょーかんが、たすけてくれたんだよ」

「寮監が?」

インデックスの話では、“回復魔術”を寮監に教えて、私のあの怪我を治したらしい。
……魔術って本当にあるんだなぁ、と実感。
信じてないわけではないけど、こういうのを見せられると、ね。

「今日、何日?」

「へ? 20日だけど……」

半日も眠っていたのか。外を見ると真っ暗だった。
インデックスは私の体をぐいぐいと押す。布団にもどれということらしい。

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:05:10.92 ID:8OJ6S6Nm0

「寮監は?」

「りょーかんは、晩御飯を買いにいくっていってたんだよ。3人分のご飯はないからって」

「……ってことは、ここ、寮監の家なんだ」

「うんっ」

……初、寮監の家。
寮監、家持ってたんだなぁ。
いやまあ、普通はそうなんだろうけど。

「……ねぇ、みぃ」

「なぁに? インデックス」

「……ごめんね」

私のせいで、そんな傷を負っちゃってごめんね。
インデックスは、そう――言った。
俯いて、泣きそうな顔で。
その顔を見て、私は思う。
ああ、私は――
――きっと、この子の泣きそうな顔を、見たくないんだって。
だから、ああやって、命だって投げ打てるんだって。

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:05:38.02 ID:8OJ6S6Nm0

「……みぃ、私は――」

「私は第3位の超電磁砲なのよね」

この街で、3番目に強いのよ、と。
私はインデックスの言葉を遮って、そういった。
ほへ、という顔でインデックスは私のほうを見た。
私は不敵に笑ってみせる。




「だから、どんな奴からだって、どんな強敵からだって、私はアンタを守ってみせるわよ」




それはつまり、

巻き込んでもいいということ。
助けを求めてもいいということ。

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:06:03.59 ID:8OJ6S6Nm0

その言葉を聞いて、インデックスは。
ふぇ、と。
まるで氷が溶けたように、目尻から涙を流した。

「みぃ、みぃ、みぃ……!!」

私の名前を何度も呼びながら、インデックスは泣きじゃくる。
それは年相応の少女のようで。
私はインデックスの頭を撫でながら、言う。

「少しくらい、人を頼んなさいよね」

「みぃ、みぃぃ……」

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:06:51.78 ID:8OJ6S6Nm0

多分、きっとこの子は、ずっと誰にもたよらずに生きてきたのだろう。
『君だって、自分の部屋を爆破されたくはないよね?』
ああやって、優しい言葉で拒絶して。
誰も巻き込まないように。
誰も傷つかないように。

ああ、なんてどうしようもなく優しい子なんだろう。

「私、私、みぃに言わなきゃいけないことがあるんだよ……っ」

「インデックス、何?」

「Index-Librorum-Prohibitorum」

インデックスは言った。

「魔道書図書館――私が、追われる理由を」



60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:07:55.51 ID:8OJ6S6Nm0



インデックスは、10万3000冊の魔道書を持っている。
その、持っている場所は――彼女の頭の中。
インデックスには、完全記憶能力という特異体質があり、それを使って10万300冊もの魔道書を記憶しているらしい。

『常人が一目見たら発狂するほど危険な「原典」であり、世界の常識を変え、手に入れた者を「魔神」にするほどの価値がある魔道書の保管場所』

インデックスは、そう言った。
そんなものを、彼女は抱えているのだ。
インデックスは、「怖い?」と尋ねた。
そんなものを、抱えて、怖い?と。

「……ほんと、馬鹿ね、アンタ」

「みぃ?」

「その程度で、私が怖がるとでも?」

インデックスはあう、と声を出した。
それから、ごめんなさい、と。

「もう、謝ってばっかりね」

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:08:29.79 ID:8OJ6S6Nm0

「……ごめんな……って、あ」

くく、と二人で笑いあう。
ああ、なんて幸せなんだろう。
ずっとこの時間が、続けばいい。

「……みぃはずるいんだよ」

インデックスは言った。

「みぃは、私がずっと言って欲しかったことばっかり言うから」

「……うん、そうね、私はずるいわ」

「でも、そんなみぃが、私は好きなんだよ。
 まだ出会って1日もたってないけれど。
 それでも、大好きなんだよ」

62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:09:16.22 ID:8OJ6S6Nm0

……うん、インデックス。

「私も、大好き」

「……私を助けてくれてありがとう、みぃ」

「どういたしまして。……えへ」

そのとき、玄関の鍵があけられる音がした。

「りょーかんかも、私いってくる。みぃは絶対寝てるんだよ!」

「はいはい」

ぱたぱたと慌ただしくインデックスは駆けていった。
私は嘆息する。

「……これが、友達、なんだよね。きっと」

小さく笑って、私はインデックスのいた辺りをさする。
そこは、まだ温もりが残っていた。



63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/26(日) 20:11:17.63 ID:8OJ6S6Nm0
ここで今日は終わり。
一回にどれくらい投下すればいいんですかね。ふーむ。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/02/26(日) 20:13:49.13 ID:0uEgJ/090
バチカンじゃなくてイギリスだし、ところどころに違和感がある。
二次創作書くなら原作をよく読んでおこうよ

後、みぃじゃ固法先輩と被ると思う。まぁ頑張って
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/26(日) 23:30:46.63 ID:0xJzirdIo
みぃってペットみたい
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 23:34:16.06 ID:eQoMLEXN0
乙。
>>8だが、「魔術名」じゃなくて「魔法名」だぞ。
これも独自設定だったらスマン。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 01:35:21.21 ID:OG7i71cJ0
とりあえず、一一番目のインデックスに見える
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 12:00:39.59 ID:jKVY2rAXo
ひとつい
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:48:43.67 ID:rCGcH3e00


寮監が作ってくれたご飯を食べ、一緒にお風呂に入って、私達は寝ることにした。
もうこの時間だし、病人は安静にしてろ、と寮監が言ったのだ。
寮監がそれでいいのか、と一瞬思ったけど、多分それは気遣いなんだろうな、って察して、私はインデックスと寝ることにした。

「えへへ、みぃはあったかいんだよー」

ぎゅう、と私に抱きつきながら、インデックスは言った。
ついでに、寮監の家には布団は2枚しかなかったので、寮監で一枚、私とインデックスで1枚だ。
さらに言えば、寮監は隣の部屋で寝ている。「友達同士、仲良くやればいい」、とのことで。

「アンタのほうが温かいわよ」

「そうかな?」

「子供だもんね」

「な、何なのかなその言い草は!」

ふん、とむくれるインデックスの頭を撫でると、すぐに機嫌を治した。
まったく、扱いやすいのかにくいのか。

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:49:15.49 ID:rCGcH3e00

「……ねーえ、インデックス」

「なぁに?」

「明日、どうする?」

「……」

「いつまでも、寮監の世話になるわけにはいかないし。でも、さすがに寮は目、つけられてるだろうし」

「……みぃ、ごめ――」

「ま、お金ならたっぷりあるし、ホテルにでも寝泊りしますか」

「……みぃ」

インデックスの私を抱きしめる力が強くなった。
私はインデックスの頭を撫でつつ、じっとインデックスが寝るのを待つ。

「……もう、いい……かな?」

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:49:48.14 ID:rCGcH3e00

数分後、インデックスはすうすうと健やかな寝息をたてて眠りの世界へ入っていった。
私はインデックスを起こさないようにしながら、そろそろと布団からでる。
そして、寝巻きである(寮監から貸して持った)ちょっと大きいジャージのままで、外に出た。
外には誰もいない。あたりまえか、もう10時だ。
でも、普通なら、夜遊びしている中高生がいるはずなんだけど。
これも魔術――なのかな。

「そうなの? インデックスを追ってる人」

「……人払いのルーンですよ。第3位の超電磁砲」

私がそう言って振り向くと。
長い刀を持ったポニーテールの女が立っていた。



72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:50:16.70 ID:rCGcH3e00


「へぇ、私のこと知ってるんだ」

「ええ、調べさせてもらいました。こちらは神裂火織と申します。まったく、どうしてよりによってあなたと……」

はぁ、と嘆息する女。

「ねえ、昼間私を襲撃したの、アンタ?」

「ええ、あの子にあてるつもりだったんですが。そこは謝罪します。すみません」

そういって、神裂火織は深々と頭をさげた。
気にしてないからいいのに。
どうやら礼儀正しい人らしい。

「それで、用はなんなのかしら?」

「用――用、ですか」

「そ、後をついてきたってことは何かあるんでしょ?」

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:50:44.69 ID:rCGcH3e00

「そうですね、単刀直入にいいましょう。彼女を私達に渡してください」

「……は、そんな用だったらお断りよ」

私は突き放すように言った。
やっぱり、そうか。
でも、神裂火織はさらに言葉を重ねた。

「それが、あの子を救う唯一の方法だとしても――ですか?」

「……は?」

私は思わず間抜けな声を出した。
神裂火織は、私から目をそらす。

「どういうことよ? アンタ達、あの子の敵なんじゃないの?」

「敵……そうですね、そのように振舞ってきましたから」

いいことを教えてあげましょう、と神裂火織は自嘲気味に笑った。

「私、インデックスとはかつて親友だったんですよ」

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:51:26.82 ID:rCGcH3e00

「……は、あ……?」

「大切で大切な――親友、でした」

「……なら、どうして追ってるわけ?」

「……、知りたいですか?」

神裂火織は――冷たい目で、そういった。
その目に、一瞬だけぞくりと背筋が寒くなったけど――私は頷く。

「知りたい」

神裂火織は少しだけ視線をさまよわせて、それから口を開いた。

「あの子の頭の中に、魔道書が詰まっているということは、知ってるようですね」

「ええ」

「あの子には、完全記憶能力があるということも」

「ええ」

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:53:41.78 ID:rCGcH3e00

「……あの子の頭の中にある、魔道書は、あの子の脳の85パーセントを占めています」

神裂火織は、どこか哀れむような目を私に向けて。
彼女の抱える残酷な真実を私に伝えた。

インデックスが“記憶”に使えるのは、脳のたった15パーセントだけ。
そして、あの子の完全記憶能力せいで、その15パーセントの部分でもつのは、たったの1年だけ。

『私、1年前から記憶ないから』

インデックスは、1年周期で記憶を消さなければ、生きていけない。
そして、その1年周期がくるのは――8日後。

「私達は、かつてインデックス一緒にいました」

神裂火織は言う。

「春を、夏を、秋を、冬をすごして――そして、消えるんです。全部」

泣きそうな顔で。
苦しそうな顔で。
神裂火織は、私に言う。

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:54:14.05 ID:rCGcH3e00

「……経験者の私だからこそ、忠告しましょう。あの子から、あなたは離れるべきです」

「……そん、な」

「あの子との別れは――本当に、本当に……死ぬほど辛いです」

『経験者』だからこそ――神裂火織の言葉は、胸に突き刺さるほど、重く、深い。
もう別れは辛いから。
だから、その辛さを少しでも軽減させるために――神裂火織達は、あの子の敵になった。
それしか、できなかった。
               
「あの子を救うためにも、あなたが傷つかないためにも……あの子を、私達に渡してください」

そう言って――神裂火織は、私に頭を下げた。
理屈は分かっている。
理由も分かっている。
だけどそれでも、納得は、できない。
ううん――したくない。

「……いや……」

「……は?」

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:54:47.80 ID:rCGcH3e00

私は、思わず呟いていた。
神裂火織は、驚いたように目を開く。

「あなたは……あの子を助けたくはないのですか!? あの子が、死んでも……いいんですか!?」

神裂火織の悲鳴のような叫びに、私は、しゃがみこむ。
……いやだ。
……いやだよ。

「ねぇ……、神裂、さん」

「……はい」

「私、何度忘れられても、傍にいるから。ちゃんと、その日になったらあなたたちにインデックスを渡すから。だから、お願いだから」

今度は、こちらが頭を下げる番だった。




「お願いだから……私から、インデックスを……奪わないで――ください」





「……っ」

神裂火織は、たじろいた。
私の脳裏に、あの子の顔は浮かんだ。
あの笑顔を、
あの泣き顔を、
インデックスの全てを。
――私は、手放したくない。

78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:55:31.35 ID:rCGcH3e00

「……私たちは、インデックスにとっての1年が終わる頃になると――思い出作りに必死になりました」

「……」

「そして、忘れたくないと泣きじゃくる彼女に、魔術をかけて、記憶を奪いました」

「……」

「そしてね、次に目をさました彼女に、アルバムを見せて、わからない? と聞きました。今思えば……とても、滑稽……ですね」

「……」

「……そうすると、あの子は……『ごめんなさい』っていうんです。ごめんなさい、分からないって。何度繰り返しても。彼女は、全てゼロになるんです」

「……っ」

神裂火織はじっと私の顔を見据えた。
私は、逸らしたいのをこらえて、神裂火織の顔を見る。

「あなたには、それが耐えられますか?」

「私、は……」

79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:56:22.96 ID:rCGcH3e00

「もう、以前の彼女は戻ってこない。こんなに似ているのに、どこまでも違う。それに――あなたは、耐えられるのですか」

その問いに、私は――。

「そう、ね。私は、何度も何度もインデックスに『死』なれたら、心が壊れちゃうかもしれないわ」

「……なら」

「それでも」

私は、言い返す。
きちんと、心の中で反芻しながら、きちんと伝える。

「それでも、隣にいたのには変わらない」

「……、」

「だから私から、インデックスを奪わないで」

そう言ったら、神裂火織は――

「8日後に」

そういい残して、去っていった。
……あと、たったの8日。
残された猶予は、あまりにも短い。


80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/27(月) 20:57:37.35 ID:rCGcH3e00
>>64 >>66 ごめんなさい、それは誤字と勘違いですっ本当にすみません……。
うう、恥ずかしい。
今日の投下はこれで終わりです。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 21:01:29.16 ID:z2hlVuHNo
此処の美琴は脳みそ容量の説明に納得したの?
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/27(月) 21:39:28.03 ID:FwIJzVCto


>>80
知っているのに黙っていた可能性もあるな……
理由はわからんが
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/27(月) 21:40:04.18 ID:FwIJzVCto
>>81だったorz
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 21:42:09.07 ID:5rzf4bN6o
まず安価なおすなら数字半角にな

見れば見るほどみぃって言い方ペットみたいだな
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/02/27(月) 23:42:25.94 ID:w/w1naey0
>>81
今まで知らなかった魔術という法則や、その実体が何だかまだ理解していない魔道書の情報を
ほぼ初めて耳にしたような、ほぼ何の情報も無い何も分からない状態なら、反応はそんなもんじゃない?
まあ8日間もあるからインデックスからより詳しい話を聞けば気付くチャンスはいくらでもあるでしょ。
それに他のSSと同じような「定番」な話の流れじゃつまらんでしょ。


と、一応フォローしておきます。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 08:19:59.19 ID:tyoUeCaa0
固法先輩にしかみえん
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/28(火) 14:49:23.82 ID:vLGktRXAO
みぃはない
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/28(火) 15:01:03.30 ID:Vqe9h84Eo
お前等落ち着けよ
>>28みたいな大事なシーンをサラッと言えるってのがどういう事かわかるか?
もっとグッとくるシーンが用意されてるって事だぜ
これは期待して待つしかないだろ
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 16:16:45.16 ID:CTnlVZbIO
ただ過去と未来で呼び方を変えたいだけだったら別にみこと→短髪でもよかったわけだしな
つか今さらの疑問なんだが美琴って原作じゃあだ名で呼ばれるの嫌ってなかったっけ?
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 21:50:12.44 ID:wWNfOmVyo
原作で使われてるあだ名に限って酷いからなだけじゃね
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/29(水) 00:26:46.72 ID:cHgyfVAf0


寮監の家に帰ると、インデックスは起きていた。
って、……え?

「……みぃ、どこ行ってたの」

「……えーっと、インデックスさんはなんで起きてるのかなー? なんて」

「トイレに行こうと思って起きたら、みぃがいなかったんだよ」

あははー、と乾いた笑みを浮かべてみる。
インデックスは大層お怒りのようです。

「そ、その、コンビニ行ってたのよ」

「嘘! みぃのお財布、机の上においてあるまんまだし!」

92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/29(水) 00:27:19.03 ID:cHgyfVAf0

「ぐ……、その、夜のお散歩ってのがあるじゃない? それよそれ」

「……胡散臭いんだよ」

じとー。
そんなテロップがつきそうな顔で見られましても。
インデックスからの重圧がどんどん耐えられなくなってきて、私は思わず叫ぶ。

「ま、魔術よりは胡散臭くないわよ!」

「みぃー!!」

なんか猫の鳴き声みたいだ。
と思った瞬間、インデックスが飛び掛ってきた。

「ちょ、インデッ――」

直後。
がぶり、と頭を齧られた。



93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/29(水) 00:28:20.87 ID:cHgyfVAf0


「うう、痛い……」

「みぃが最初から事情を話さないのが悪いんだよ」

私が頭をさすると、インデックスはそういってぷぅ、と顔を膨らませた。
まったく、可愛いったら。

「……で、刀女と会ってきたんだね?」

「……うん」

神裂火織と別れて、寮監の家に帰るまで。
私はずっと考えていた。
この子に、記憶を奪わないことを、話すべきか、話さないべきか。
答えはまだ出ていない。
早くださないといけないと、わかって――いるのに。

「……ねぇ、みぃ」

インデックスは、さきほどとはうってかわった、静かな声で私に話しかけた。

「なにか、あったんだよね?」

「……」

「大丈夫。話してみて?」

「でも……」

「私のことなんだよね?」

「……」

「なら私には知る権利があるんだよ。みぃ」

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/29(水) 00:28:53.31 ID:cHgyfVAf0

インデックスは、真摯な瞳を私に向けてきた。
……もう。
私が、アンタに弱いことくらい、すでにお見通しの癖に。

「……はぁ」

そして私は話した。
神裂火織が、かつてインデックスの親友であったことを。
インデックスは、1年ごとに記憶を消さなければ、生きていけないんだと。
そして期限は――8日後だと。
その、全てを知って。
残酷な、自分の運命を知らされて。

「……分かったんだよ」

インデックスは、きちんと、受け止めた。

「さすがに、いまからじゃあかたなおんな……ううん、かおりと仲良くなるのは難しいから、“次”の私とは、仲良くしてほしいな、って伝えてほしいかも。勿論、無理に、じゃなくて」

「……うん」

「後ね……みぃ」

「ん?」

「ごめんなさい」

95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/29(水) 00:29:28.73 ID:cHgyfVAf0

そういって、インデックスは頭を下げた。
深々と、本当に、申し訳なさそうに。

「私は全部忘れて、みぃの苦悩を知らないで、多分ずっと……生きていく」

「そんな――」

「でも」

インデックスは私の声をさえぎって、宣言した。



「インデックスは、ずっとみぃと一緒に居たいんだよ」




インデックスは――、
インデックスも――、
私と、ずっと一緒にいたいの……?

「ごめんなさいなんだよ、一人だけ全部背負わせちゃって。……それでも、このわがままだけは、どうしても聞いてほしいんだよ」

「……うん」

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/29(水) 00:29:58.68 ID:cHgyfVAf0

私は、笑っていた。
例え、この先が苦しいものだとしても。
死にたいほど辛いものだとしても。
なんて、幸せなんだろう!!
こんな、こんな幸せなこと――
本当に、存在、するのか。

「私も、ずっと一緒にいたいから」

インデックスは、うる、と目を潤ませて渡しに飛びついてきた。
私はそれを受け止めて、頭を撫でる。

「明日、どこかいこっか。思い出作り――したい、もんね」

「……私、遊園地に行きたいかも」

「遊園地?」

「うん。ジェットコースターに乗りたいんだよ」

「うん、わかった。じゃあ、最近立てられた、学園都市の技術を詰め込んだ遊園地に行きましょ」

「えへへ、やったぁ」

インデックスの笑みに、私も笑みで返す。
……本当に。
本当に、この時間がずっと続けばいいのに。



97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/29(水) 00:31:08.31 ID:cHgyfVAf0
書き溜めがなくなっていく現実。
みぃが不評なのがちょっぴり悲しい。可愛いと思ったんですけどねー……
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 08:02:24.30 ID:wvFqotDAO
mixi
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 08:46:25.89 ID:F0OTml8No
完全記憶能力うんぬんはどうなるのやら
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 19:20:30.12 ID:ygosuuLIO
>>1がどうってより美琴がみぃってあだ名に対しどう思ってんのかが重要だよね
そのへんの描写抜けてるから違和感あるんだと思うの
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/03/01(木) 17:49:46.56 ID:fFknycbAO
数少ないみこインスレだし期待してるよ
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 00:27:37.95 ID:sjOXe3Ls0
短髪ってのは蔑称みたいなもんだからあだ名で呼ばれるのが嫌だったんじゃないかな
みぃってのは猫を連想させるから美琴は愛称として受け入れそう 
>>1は気にせず書けばいいと思う
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/03/02(金) 19:53:10.64 ID:RO5jUIeX0
>>99
完全記憶そのものが害を及ぼしてるんじゃなくて記憶した魔導書による精神汚染と思ってるんじゃないかな。
魔術がどこまで出来るか読みあぐねているから美琴としても脳医学でアプローチしたらとはおいそれと言えないでしょ。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:41:28.31 ID:1pWf3JI30

「遊園地、楽しかったわね」

「うん、箱がぐるぐる動いたんだよ!!すっごく早かったかも!!」

「ジェットコースター好きなのね。明日はどこに行く?」

「えーっとね、美琴と食べ歩きがしたいな!!」

もう神裂火織たちから襲撃をうける心配はない。
だから、寮に帰っても大丈夫。
というわけで、私達は寮のお風呂に入っていた。
今はインデックスの髪の毛を洗ってあげている。
すっごくさらさらで、それにふわふわで、触っていると気持ちがいい。
シャワーをかけて、ジャー、と髪にこびりついた泡を落としていく。インデックスが、泡が目に入らないように目をつぶったのが目の前のガラス越しにわかった。

「食べ歩きねぇ……いいわ、そうしましょ。パフェの大食いとか行っちゃう?」

「パフェくらいなら何杯だっていけるんだよ!!」

「あはは、インデックスの食欲は底なしだものね」

「えへへー、いいでしょー」

インデックスは得意そうに笑う。
まあ確かに……羨ましいかも。

105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:42:11.05 ID:1pWf3JI30

「はい、インデックス。髪終わったわよ」

「わーい、みぃありがとうなんだよー!!」

屈託なく笑うインデックスは本当かわいい。
抱きつきたくなるくらいに。

「というわけで抱きついてみる。うりゃー」

「わわっ!? みぃ、くすぐったいんだよっ!!」

おりゃおりゃーとさらに強く抱きしめてみる。
インデックスはじたばたと暴れていたけど、私から逃れられないとしると、おとなしくなった。

「もう、みぃ」

「えへへ。ねぇインデックス」

「なぁに?」

「大好き」

「うん、私もみぃのこと大好きなんだよ」



106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:42:41.51 ID:1pWf3JI30


今日は約束の通りインデックスと食べ歩きをする。
気分はるんるんだ。

「まだかなぁ……」

インデックスはトイレに行っている。
並んでいるのか、帰ってくるのが遅い。
と、そこへ。

「オイオイにーちゃん財布だしな」

「へへっ、素直に言うこと聞けば何もしねーからさ。な?」

「か、かかか上条さんはたいした額をもっていないのですが!!」

……なにアレ。かつあげ?
ったく、人の前でかつあげなんてするんじゃないわよ。みっともない。
私は不良たちに近づくと、一言。

「みっともないわね」

挑発すると、すぐに不良たちは私のほうへ噛み付いた。

「ああん? なんだこらぁ!!」

「なめんじゃねぇよ!!」

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:43:23.96 ID:1pWf3JI30

はぁ、と嘆息する。それが気に入らなかったのか、不良たちはさらに鼻息を荒くして私に怒鳴る。
あー、そろそろ焼くか。
インデックスが帰ってきて、これに首をつっこまれても困るし。

「じゃ、ちょろっと歯を食いしばりなさいよ」

「は?」

不良たちが呆けた顔をした瞬間、私の額から紫電が飛び散った。
次の瞬間には、不良たちは地面でピクピク動いていた。

「はー。みっともないわねぇ……」

「あ、あの……」

「ん?」

私に話しかけてきたのは、先ほど絡まれていた年上の男子。

「アンタまだいたんだ。さっさと逃げなさいよ」

「えっと……その、助けてくれてありがとな」

「べつにそんな言葉をかけてほしくてこいつらを粛清したわけじゃないわ。見てられなかったからよ」

私がふん、と吐き捨てた時、

108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:43:53.22 ID:1pWf3JI30

「みぃー!!」

「インデックス!!」

私の名前を呼びながら、インデックスは飛びついてきた。

「ごめんなさいなんだよ、人が沢山並んでて……って、何なのかなこの黒こげになってころがってる人たちは」

「あー、気にしない気にしない」

「??」

インデックスは首をかしげた。
私はインデックスの手をとると、「じゃあいきましょうか」と言う。
インデックスは「うんっ!」と笑った。

「……?」

視線を感じて振り返ると、さっきの男子が私のほうをじろじろと見ていた。
私が振り向くと、慌てて視線をそらしてどこかへ行ってしまう。

「……???」

なんだったんだろう、と一瞬疑問に思ったけど、すぐにインデックスのことで頭がいっぱいになった。
その日は、二人でたくさんいろんなものを食べた。
とってもとっても、楽しかった。


109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:44:22.84 ID:1pWf3JI30




次の日。
二人でビデオをとった。日記をかって、私は日記をつけることにした。インデックスとの、大切な思い出を。





110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:44:49.83 ID:1pWf3JI30




そのまた次の日。
今度は水族館に行った。帰りに温泉に行った。温泉は気持ち良かった。湯上がりにアイスを食べた。私は抹茶、インデックスはバニラとキャラメルのダブルのやつ。




111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:45:29.92 ID:1pWf3JI30




更に次の日。
プールにいった。行く前に二人で水着を選びっこした。私はインデックスにワンピース型のを、インデックスは私に背中が大きくあいた水着を選んだ。




112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:46:10.60 ID:1pWf3JI30




そして次の日。
インデックスが頭がいたいと言い出したので、家でゆっくりしていることにした。
二人で映画をみて、たくさん笑った。
終わりが近づいてきたのだと、悟った。





113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:47:35.44 ID:1pWf3JI30

そして。
7月27日。
現在、午後11時55分。


114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:48:19.95 ID:1pWf3JI30

神裂火織達は、あと五分で迎えに来る。
最後の別れを、私達はしていた。

「……みぃ、大好き」

インデックスはポツリと言う。
だから私も返す。

「……私も、大好きよ、インデックス」

インデックスは泣きじゃくりながら、私に言う。

「……忘れたく、ないよう……忘れたく、ない、よう……!みぃ……!」

視界が滲んだ。
もっとインデックスの顔を見ていたいのに。
どうして。
私はインデックスを強く抱きしめる。
離したくない。
離れたくない。

「みぃ……っ」

インデックスは顔を上げた。

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:49:12.62 ID:1pWf3JI30

「あのね、ひとつだけ、約束してほしいんだよ」

「なに……?」

「ずっと、私と一緒にいてくれるって」

ごめんね、残酷な願いだね。
そういいながら、インデックスはまた泣いた。

「……大丈夫よ、インデックス」

「……ふぇ?」

インデックスは呆けた声をだす。



「アンタが全てを忘れたって、私のことを何一つ分からなくったって、私はずっとアンタのそばにいるから」


インデックスはその言葉をきいて――笑った。
ぼろぼろの笑みだったけれど。
泣き笑いにしか見えないけれど。
確かに笑った。
良かった。
私は、この子を笑わすことができる。

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:49:55.68 ID:1pWf3JI30

「……何も出来なくて、ごめんね」

私が謝ると、インデックスはふるふると首を横に振った。

「ううん、みぃは沢山私に幸せをくれたよ。 私、みぃに出会えてよかった!私はみぃに出会えて幸せだった!みぃは私に楽しいこと嬉しいこと沢山教えてくれた!みぃは……っ」

言葉を詰まらせたインデックスを、私は更に強く抱き締める。

「……ありがとう、インデックス」

私と対等に接してくれて。
私の親友になってくれて。

「こちらこそ……ありがとう、みぃ」

カツカツという足音が近づいてくる。
ああ――もう、さよならか。
私は更にぎゅっとインデックスを抱き締めると、インデックスから離れた。

117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:50:22.74 ID:1pWf3JI30

「……ばいばい、インデックス」

「……ばいばい、み……ぃ……」

部屋の扉が開かれた。
そこには、神裂火織と、赤髪がたっていた。
私は一瞬だけ神裂火織と目をあわせると、無言で部屋から出ていった。

「……インデックス」

一人きりになった私は、小さく呟く。
さよなら、インデックス。
……大好き。



















こうして。
1番目のインデックスは、死んだ。




118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 21:51:34.51 ID:1pWf3JI30
ようやく1番目は終わりました!そして書き溜めも消えました!
2番目は妹編とみさきちだぜ!!
みさきち……も、多分。うん、多分。

119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 22:59:29.75 ID://LIQQ2F0
ほんとにただ可哀想がるだけのSSなの? 気持ち良く悲劇にひたれるだけひたり続けるSS?
美琴がこの惨状を覆そうとしないなんて、そんなこと思いたくないんだけど   まさかね? 
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 23:16:18.32 ID:PctuIQD5o
……うわあ
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/03/04(日) 11:20:37.37 ID:GOwinMGAO
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/09(金) 02:27:43.48 ID:7xi+AYF7o
乙です

それにしてもここは読者様の多いインターネッツですね
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) [sage]:2012/05/01(火) 10:49:10.17 ID:kNz1mnb/0
あさってで2ヶ月経過。

124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/05/05(土) 01:26:38.06 ID:cf/qsmVio
書き逃げかよ
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