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「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part6 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/01(木) 17:00:14.01 ID:No0ndXud0
「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」とは
 2ちゃんねる - ニュー速VIPで生まれた
 都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたりそんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
 まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりと色々活動しているスレです。
 基本的に世界観は作者それぞれ、何でもあり。

 なお「都市伝説と…」の設定を使って、各作者たちによる【シェアード・ワールド・ノベル】やクロス企画などの活動も行っています。
 舞台の一例としては下記のまとめwikiを参照してください。

まとめwiki
 ttp://www29.atwiki.jp/legends/

まとめ(途中まで)
 ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html

避難所
 ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/

■注意
 スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
 本スレとはあまりにもかけ離れた雑談は「避難所」を利用して下さい。
 作品によっては微エロ又は微グロ表現がなされていますので苦手な方はご容赦ください。

■書き手の皆さんへ
 書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップ推奨(どちらも非強制)
 物語の続きを投下する場合は最後に投下したレスへアンカー(>>xxx-xxx)をつけると読み易くなります。
 他作品と関わる作品を書く場合には、キャラ使用の許可をスレで呼びかけるといいかもしれません。
 ネタバレが嫌な方は「避難所」の雑談スレを利用する手もあります。どちらにせよ相手方の作品には十分配慮してあげて下さい。
 これから書こうとする人は、設定を気にせず書いちゃって下さい。

※重要事項
 この板では、一部の単語にフィルターがかかっています。
 メール欄に半角で『saga』の入力推奨。
「書き込めません」と出た時は一度リロードして本当に書き込めなかったかどうか確かめてから改めて書き込みましょう。

◆用語集
【都市伝説】→超常現象から伝説・神話、それにUMAや妖怪のたぐいまで含んでしまう“不思議な存在”の総称。厳密な意味の都市伝説ではありません。スレ設立当初は違ったんだけど忘れた
【契約】→都市伝説に心の力を与える代わりにすげえパワーを手に入れた人たち
【契約者】→都市伝説と契約を交わした人
【組織】→都市伝説を用いて犯罪を犯したり、人を襲う都市伝説をコロコロしちゃう都市伝説集団
【黒服】→組織の構成員のこと、色々な集団に分けられている。元人間も居れば純粋培養の黒服も居る
【No.0】→黒服集団の長、つおい。その気になれば世界を破壊するくらい楽勝な奴らばかり
【心の器】→人間が都市伝説と契約できる範囲。強大な都市伝説と契約したり、多重契約したりすると容量を喰う。器の大きさは人それぞれである。器から少しでも零れると…
【都市伝説に飲まれる】→器の限界を迎えた場合に起こる現象。消滅したり、人間を辞めて都市伝説や黒服になったりする。不老になることもある

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1330588813(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/01(木) 17:01:35.66 ID:No0ndXud0
ごめんなさい!番号変えるの忘れてました!orz

前スレ↓
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1328185735/
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 21:47:15.50 ID:r91gspLYo

乙γ⌒^.
  `""""´
こっ、これは乙じゃなくてノロイなんだからね!
4 :花子さんとかの人  ◆nBXmJajMvU [sage saga 某所ではハンドルの前に「罪深い」とついたりする]:2012/03/01(木) 22:01:41.27 ID:nL3rSCBb0
>>1
乙なんだぜ、だぜ!!
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 22:06:00.94 ID:r91gspLYo
前スレに間に合わなかった
前スレの方々投下乙ですー

だめだこの黒服たちはやくなんとかしないと
そういえば、黒服組にショタって少なくないですかね?少なくないですかね?
少年が背伸びして一般人の平和を守ろうと頑張る姿って素敵じゃないでしょうか(訳:ショタ黒服増えろ)

文字通り烈火の如く怒りに燃えるペレさんヒートビューティー
さあ、身勝手な部下に制裁を下すのです
制裁された部下の1割くらいは内心「ありがとうございます!ありがとうございます!」状態じゃないかと思ったり

>>992
>あと、プラスシックスは一応『過負荷』に近い『異常』ですよー
……先生、異常と過負荷の違いがわからないとです
変な能力持ってるのが異常で、ぶっ壊れてるのが過負荷?
なるほどわからん
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/01(木) 22:12:20.22 ID:No0ndXud0
>>3
何このノロイかぁいい


以下前スレの
>>998
>無茶しやがって……彼女はののしると同時に高確率で噴火するんだぜ…
彼女に焼き殺されるというなら、それで良い!(

>ペレ「イクトミが覗いたら報告せよ。奥方に報告すると同時に私が焼く」
(蓮華>えぇ、ついでに協力しますよ(数十種類の植物の種を握りしめつつ

>>999
>やめてくれ そんな現実 聞きたくない (字余り)
でもONE PIECEでも、映画2作目のハニークイーン(トロトロの実)は自然系なのに服脱がなきゃダメだった

つまりそういうことも有り得る(

>許せねえ!!断じて!!組織の板胸ーズは団結して貧乳の権利を守るべきなんだ!!
(ロール>アンタマジ話分かるし! てゆーかチョーイケてるってカンジぃ!
(ラピーナ>貧乳だからって馬鹿にしないで欲しいよー! 貧乳は希少価値だよー!

>>1000
新キャラくるー!!
7 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/01(木) 22:13:17.42 ID:zoJUV0jAO
>>1乙なのですよー
ところで今週末か遅くても来週中に短編一本落とすのだけど、風夜くん達と遭遇させていただくので、予め花子さんの人様に土下座しておく。全裸で。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/01(木) 22:13:45.25 ID:No0ndXud0
>>5
>そういえば、黒服組にショタって少なくないですかね?少なくないですかね?
(日天>全くだ
9 :ソニータイマー/3DS [sagesaga]:2012/03/01(木) 22:18:10.89 ID:jm3NCE5y0
>>5
異常は生まれつき、過負荷は環境や感情によって後天的に発現
異常は説明が付かない、過負荷は理屈が通じない
異常はなんかめっちゃすごい、過負荷はなんかめっちゃやばい
みたいな解釈でいいんじゃないかな?
でも僕は西尾さんじゃないし、もしかしたら間違ってるかも…『でも』『僕は悪くない』(某負完全風に)
まあ、僕から見れば異常も過負荷も平等にただのくだらねーカスなんだけどね(某人外風に)
10 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/01(木) 22:21:26.31 ID:zoJUV0jAO
ぐはぁ書き忘れww
あと花子さんの人様、風夜くん達がо(オウ)-No.と接触しても宜しいでしょうか?
もし無理がありそうなら直接の関わりは持たせない方向で行きます。о(オウ)-No.は「被害者のケア(救護もするかも)」に重点を置いた穏健派です。

そして前スレ>>1000の新キャラに期待
11 :花子さんとかの人  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/01(木) 22:23:31.39 ID:nL3rSCBb0
>>10
あ、問題ないのですぜー!
12 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/01(木) 22:25:41.48 ID:lQLku4c70
改めまして、新スレ乙ですー!
そして恐らく初めてであろう>>1000取ったー!

さあ、本編に登場する日をお楽しみに

>>前スレ996
>あぁん、ショタっ子の筆下ろししてあげたいぃ♪(※ローゼの頭の中はこうなってました
成程www

>やーだぁそんな目で見ないでぇ私イっちゃうよぉ(やっぱりこいつは表に出してはいけない奴でした
くっ、封印さえ出来ていれば……俺が、巫女服に釣られなければ(ry

>ゼロりんのスーツレスは10万で買うぞ(マテヤ
多分、他の会員達による闇討ちの標的になると思われます

>>5
>……先生、異常と過負荷の違いがわからないとです
いや、自分も詳しくは知らないんですけど……(ぇ
とりあえずウィキで調べてみた所↓

異常(アブノーマル)→先天的超能力者
その異常のせいで不幸な目にあい自分を化け物と自覚するが、それでも幸せになりたい前向き奴ら。
その力は基本的に“人間の能力の延長上の力”。プラスシックス?知らんな、作者自身が能力の説明なげてるし(実話)

過負荷(マイナス)→後天的超能力者 
不幸な目にあっていて性格が歪み(あるいは元から性格が歪みきっていて少しだけ不幸になり)、その環境に合わせた力を発現した奴ら。
その力は因果律とか概念的なモノにまで及ぶ。古傷開いたりダメージ移したり何でも腐らせたりと、もはや人間の能力を超えてる。

>>6
>新キャラくるー!!
来ますよー!期待外れになろうと、問答無用で来ますよー!(ぉぃ
13 :花子さんとかの人  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/01(木) 22:27:24.53 ID:nL3rSCBb0
>>5
>少年が背伸びして一般人の平和を守ろうと頑張る姿って素敵じゃないでしょうか(訳:ショタ黒服増えろ)
風夜の復讐対象のとある黒服の世話係がショタの予定だったはず(前スレの最初辺り参照

>>6
>(蓮華>えぇ、ついでに協力しますよ(数十種類の植物の種を握りしめつつ
イクトミ「まさかの三方向方位、だと…」
ペレ「自業自得だ。馬鹿者」
イクトミ「お前くらいは味方してくれよ。お前と旦那の離婚調停で、お前の味方してやってるだろ」
ペレ「それとこれとは話が別だ、馬鹿者が」

>>7
>.ところで今週末か遅くても来週中に短編一本落とすのだけど、風夜くん達と遭遇させていただくので、予め花子さんの人様に土下座しておく。全裸で。
(全裸正座待機の構え)


って、書き込んだはずだったのに書き込まさってなくて俺は
14 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/01(木) 22:37:22.00 ID:lQLku4c70
>>13
>イクトミ「お前くらいは味方してくれよ。お前と旦那の離婚調停で、お前の味方してやってるだろ」
→ペレ「それとこれとは話が別だ、馬鹿者が」
>お前と旦那の離婚調停

…………えっ!?
ペレさん、まさかのバツイチ!?
15 :花子さんとかの人  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/01(木) 22:39:57.24 ID:nL3rSCBb0
>>14
ペレ、ぐぐってみるとわかると思うんですが、神話上で豚の神様と結婚してるんですよ、
が、結婚当初から夫婦生活が最悪でさぁ

ってなわけで、俺が出しているペレは、現在、旦那と絶賛別居中&離婚調停中です。まだ離婚できてないのでバツイチじゃない
なお、離婚調停はもう数百年単位で続いているそうな
16 :犬神憑きと怪人アンサーの人 ◆vQFK74H.x2 [sage saga]:2012/03/01(木) 22:42:26.24 ID:hvcFpBMG0
スレ立て乙ですー

前スレ
プラモデルの人様、単発の人様乙ですー

>>952
おねショタ!おねショタ!
死神猫さんも不死猫くんもかわいいww

>>955
>リーダー…………じゃ(正確には)ないんです実は彼!残念っ!
おうふ、失礼いたしました…orz

>大丈夫です、当時彼女の尻尾に花火を向けやがったクソガキは、次の瞬間天罰を受けました
>花火の熱からか【猫が屋根に上がると火事になる】と契約した彼女に飛び乗られ、全身丸焼きになって死んでます
クソガキに相応しい天罰です…ありがとうございます、プラモデルの人様!

>>983
能力の有効活用というべきか、悪用というべきか…でも、そんな黒服さんが素敵ですww
17 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/01(木) 22:48:27.14 ID:lQLku4c70
>>15
調べてみて吹きました、カマプアア意外とイケメンらしい&強すぎるwww
地底の神々がペレの味方するまで、彼女に対し圧倒的優位とかwww
……あ、イクトミの「お前の味方してやってるだろ」ってそういう意味か

まあこのペレさんは人間(黒服)なので、普通の離婚話なんでしょうが
もし浮気とかだったらこの男、月の無い晩に外歩けないんじゃ(ぇ
18 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/01(木) 22:54:12.73 ID:lQLku4c70
>>16
>死神猫さんも不死猫くんもかわいいww
不死猫→優しいお姉さん
死神猫→不死猫君可愛いよ不死猫君、大きくなったらお嫁さんになってあげるハァハァ(ちょ

>おうふ、失礼いたしました…orz
いえいえ、「私の名に置いて」なんて紛らわしい事言わせた自分が悪いのです
「我ら六匹の名に置いて」と脳内変換していただきたい

>クソガキに相応しい天罰です…ありがとうございます、プラモデルの人様!
まあ、クソガキの内の一人が「組織」の契約者だった為に、彼女は逃亡生活を余儀なくされているのですが……
ガキ共は全員死んでます
19 :花子さんとかの人  ◆nBXmJajMvU [sage saga 現在の作業用BGMは「ルルイエ★ナイトフィーバー」]:2012/03/01(木) 22:57:58.49 ID:nL3rSCBb0
>>17
>調べてみて吹きました、カマプアア意外とイケメンらしい&強すぎるwww
強いですよねぇ、あの豚の神様(しみじみ
神話上では、後でよりを戻したって説もありますが、どうやらうちのペレは、その後も夫婦喧嘩を重ねて離婚調停まで話が進んだようです

もし、イクトミがペレと浮気をしていたら……まぁ、まず、イクトミがワイフに殺されるね!(笑顔
20 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/01(木) 23:03:55.90 ID:lQLku4c70
>>19
>強いですよねぇ、あの豚の神様(しみじみ
まったくですよ……使いたいけど、もう既にA-No.の方にいそう(ぇ

>どうやらうちのペレは、その後も夫婦喧嘩を重ねて離婚調停まで話が進んだようです
ふむ、神話ではペレの方が呼びかけていましたが……離婚できてないという事は夫の方か

>もし、イクトミがペレと浮気をしていたら……まぁ、まず、イクトミがワイフに殺されるね!(笑顔
うん、それは間違いないとwww
後誤解させてすみません、>>17あの男とは、「ペレさんの夫」の事です
ペレさん、組織内でも人気ありそうだし…………
21 :花子さんとかの人  ◆nBXmJajMvU [sage saga 現在の作業用BGMは「ルルイエ★ナイトフィーバー」]:2012/03/01(木) 23:10:54.00 ID:nL3rSCBb0
>>20
>まったくですよ……使いたいけど、もう既にA-No.の方にいそう(ぇ
少なくとも、イクトミもA-No.0も、カマプアアの方は勧誘してないですね
ペレが嫌がるだろうし(何

>後誤解させてすみません、>>17あの男とは、「ペレさんの夫」の事です
おっとと、こちらこそ申し訳ない
確かに、闇討ちとか食らいそうな予感がしないでもないがまぁカマプアアなら返り討ちにできそうな気もww
22 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/01(木) 23:14:29.71 ID:lQLku4c70
>>21
>少なくとも、イクトミもA-No.0も、カマプアアの方は勧誘してないですね
>確かに、闇討ちとか食らいそうな予感がしないでもないがまぁカマプアアなら返り討ちにできそうな気もww
ちょ、旦那さん本当に契約してるんですかwww

何かペレさんと契約した【ペレ】が可哀そうになってきた……伝承から産まれた存在とは言え、同じ相手と二度も別れるなんて
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/01(木) 23:17:07.44 ID:No0ndXud0
ふと思った
そういや、あのペレさん“契約してる”んでしたっけ?
それとも「ペレ」本人?
24 :花子さんとかの人  ◆nBXmJajMvU [sage saga 現在の作業用BGMは「ルルイエ★ナイトフィーバー」]:2012/03/01(木) 23:19:39.07 ID:nL3rSCBb0
あ、俺の出してるペレは本人のイメージ
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/01(木) 23:22:20.36 ID:No0ndXud0
>>24
やっぱりか、それで納得がいったぜ
ペレさん抱きしめたい(ドッカーン
26 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/01(木) 23:30:40.41 ID:lQLku4c70
>>24
>あ、俺の出してるペレは本人のイメージ
そうだったんですか!じゃあイクトミの台詞も言葉通りの意味かwww
つまり神話と異なり「ペレさんが冷静にならず、カマプアアの方が執着してた場合」のIFでおk?
27 :花子さんとかの人  ◆nBXmJajMvU [sage saga 現在の作業用BGMは「ルルイエ★ナイトフィーバー」]:2012/03/01(木) 23:35:45.43 ID:nL3rSCBb0
>>25
無茶しやがって…

>>26
俺のイメージとしては

ペレが冷静になり、一度復縁

が、所詮ペレは火山の女神であり、短気である。そして、カマプアアはやっぱり、所詮豚である

繰り返される夫婦喧嘩

ペレが完全プッツン。カマプアアはちょっと未練がある

数百年間終わる気配のない離婚調停          ←イマココ!

な感じ

なお、離婚調停の裁判官は、公平性を保つための別の神話の裁判官系神様がやってくれている感じですの
28 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/01(木) 23:44:35.03 ID:lQLku4c70
>>27
了解ですー
>が、所詮ペレは火山の女神であり、短気である。そして、カマプアアはやっぱり、所詮豚である
こらwwwwwwお前、確か故郷で新しく嫁さんもらってるだろwwwwww
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 23:53:00.49 ID:r91gspLYo
神々の離婚調停といえば、ネウロの人の読切作品の地球半分こしか浮かばない
30 :神力秘詞 † 芸術四奏  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/01(木) 23:53:57.73 ID:No0ndXud0
町中に屯する人の形をしたジャガー達
その群れの中に、ふわりと羽根が落ちたかと思えば、
純白の翼を生やした少女が、ゆっくりとその場に降り立った
着地の瞬間に翼は消え、代わりに彼女の腕に雷光が宿る

「……ババリ……バリッシュ!!」

じゅるりと涎を垂れ流しながら、1匹のジャガー人間が飛びついた
ばちっ!!という音が響き、ジャガー人間は一瞬にして黒焦げとなった

「…ごめんね、でも…守らなきゃいけないんだ」

再び『神』の字を取り出す
そして空いた手で『火』という字を書き、炎を具現化させる

「戦わなきゃ……僕も……麻夜や裂兄ぃの為に…この町の…世界の為に…!」

襲い来る獣人達に、少女は―――否、少年は反撃を開始する











                   【 神 力 秘 詞 】
                   十三之巻 〜芸術四奏〜










「最後の………1体………!」
「バッ、バリィィィィィィィィィ!?」

全身に電撃が走り、ジャガー人間は力無く倒れ、光の粒子に変わる
ふぅ、と溜息を吐いて、漢は周囲を見渡した
ジャガーの影は、何処にも見当たらない
どうやらこの一帯は全滅出来たらしい

「…また来るかも知れないけど……他のところをあたってみようかな」

『飛』という字を書き、背に翼を生やして、漢は飛び立とうとした
その時だった

「――――――――――――ッ!?」

間一髪で攻撃を回避する
目の前のアスファルトが、巨鎚のような足によって罅割れ打ち砕かれる

「……こ…これは……!?」

ふと上を見上げる漢
そこにはその足の主が悠然と立っていた
漆黒の身体に白い模様、少し長めの鼻

「ぐるるおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

それは巨大なバク―――魔神「トゥクムバラム」だった



   ...物語猶続
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/01(木) 23:54:31.15 ID:No0ndXud0
タイトルに『前』って書くの忘れてたorz
続きは明日書けたら良いなぁ
32 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/02(金) 00:00:45.18 ID:PfOktrN/0
>>30
影の人乙ですー!
ここに来て、魔神が学校町に出現ですと!?
協力フラグとかあるんでしょうか、各作品の
33 :蛍の罪を掘り返す ◆vQFK74H.x2 [sage saga]:2012/03/02(金) 00:04:39.51 ID:RILIfO/g0
・両親の機嫌が悪い時に話掛ける(ちび蛍)

「あ…あのね、お母さん。今日、学校で絵を「うるさいわね…アンタの話を聞いてるほど暇じゃないの」
「で、でも――」
「うるさいって言うのが聞こえないの!?」
(見せようとしていた家族の似顔絵は、この後ビリビリに破かれました


・戦闘能力が無いくせに護るとか大きな口を叩く

「おい…戦闘の度に私の後ろで馬鹿みたいに突っ立っているのはどうにかならんのか?」
「え…?でも、ニャンコ先生、私の用心棒になってくれるって…」
「限度というものを知らんのか馬鹿者!私の力を拡大解釈して使うなり、多重契約するなり、方法はいくらでもあるだろう?」


・愛して貰いたいがために父親にも擦り寄る

「なあ…今日もいいだろう?」(後ろから抱きつく
「――っ!!は、い……お父さんの好きなように、使ってください」(一瞬びくりと体を震わせるが、すぐに父親に体を預けた。


・誰かが助けてくれるのを待ってるだけの他力本願な性格
研究所から一向に逃げ出す気配すら見せないのは
「君が野良都市伝説や契約者を倒せば、その分君の両親が都市伝説関連の事件に巻き込まれることもなくなる」と言われたことや「ここ以外に居場所がない」というものの他に「誰か(ニャンコ先生)が助けてくれるかもしれない」という思いも少なからずあるから。
他の被験体達の事は、「自分には何も出来ないから」と見て見ぬふりをしている。

(終わる)
34 :影陰蔭翳の人 ◆q/mHXhz8AM [sage saga]:2012/03/02(金) 00:06:41.68 ID:kkLt7XbL0
>>32
> ここに来て、魔神が学校町に出現ですと!?
とはいえ、百花やかおるん達が倒した「カマロッツ」や、
裂邪と対峙してる「コッツバラム」と同格のあれなので、大したこと無いんですけどね♪
俺も新キャラ出しますの、かなり前に単発で登場済みだけど
35 :花子さんとかの人  ◆nBXmJajMvU [sage saga 現在の作業用BGMは「ルルイエ★ナイトフィーバー」]:2012/03/02(金) 00:07:48.16 ID:8nq8IjUv0
シャドーマンの人乙でしたー
おぉう……おぉぉう
さてさて、どうなるか…
36 :影陰蔭翳の人 ◆q/mHXhz8AM [sage saga]:2012/03/02(金) 00:10:01.62 ID:balyTYtD0
おっと、おねーちゃん乙です〜
あの時のネタか! ところで『ちび蛍』ってなんかときめいちゃう(
37 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/02(金) 00:11:44.89 ID:PfOktrN/0
>>33
おおぅ……こうして見ると確かに、蛍ちゃんにも原因があったのか……

でも直接的な原因はこの両親じゃ(ry
38 :影陰蔭翳の人 ◆q/mHXhz8AM [sage saga]:2012/03/02(金) 00:12:07.66 ID:balyTYtD0
>>35
> さてさて、どうなるか…
記憶力が凄い人はサブタイで誰がくるか分かるかも知れませんの♪
39 :犬神憑きと怪人アンサーの人 ◆vQFK74H.x2 [sage saga]:2012/03/02(金) 00:14:34.57 ID:RILIfO/g0
シャドーマンの人乙ですー
会いたかったよ漢ちゃん、今日も可愛いn……なんか凄いの出てきたー!?

欲しがってばかりいて何一つ碌に返さなかったからニャンコ先生にも見限られた女の罪を掘り返してみました
改めて掘り返してみると、凄く嫌な奴ですねwww

>>18
>死神猫→不死猫君可愛いよ不死猫君、大きくなったらお嫁さんになってあげるハァハァ(ちょ
死神猫さん可愛いですハァハァ(生きたまま燃やされました

>「我ら六匹の名に置いて」と脳内変換していただきたい
了解であります!
40 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/02(金) 00:15:29.34 ID:PfOktrN/0
>>38
あー、あの単発の四人グループですか?……ごめんなさい名前忘れましたorz
41 :犬神憑きと怪人アンサーの人 ◆vQFK74H.x2 [sage saga]:2012/03/02(金) 00:25:19.16 ID:RILIfO/g0
>>34
>俺も新キャラ出しますの、かなり前に単発で登場済みだけど
wktkしてお待ちしております!

>>36
そんな弟君がすきでs(マテ

>>37
>でも直接的な原因はこの両親じゃ(ry
そんな事はないですよ?
空気を読まず、ニャンコ先生に会っても性格直そうとしなかった蛍の責任ですww
42 :花子さんとかの人  ◆nBXmJajMvU [sage saga …・・・…]:2012/03/02(金) 00:27:03.31 ID:8nq8IjUv0
>>38
>記憶力が凄い人はサブタイで誰がくるか分かるかも知れませんの♪
ーーーーっは!?(気付いた
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 00:36:41.20 ID:5TOaTxgAO
いい加減見飽きたわけだが
蛍はまだ死なないんだな
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/02(金) 01:16:05.25 ID:BetY+Z130
暗がりの中、2つの人影が対峙している
静寂が場を支配している

1人が静かに切り出した

「本当にやるのか?」

「こんな機会は滅多にありません」

「穏健派が黙ってはいないだろう」

「その心配は無いでしょう」

「何故そう言える?」

「彼らは我々が静かに死んでいく事を望んでいる
 所詮は我々と同じですよ
 優位に立った途端、不要な存在は切り捨てる
 我々が互いに潰し合っているのを察知したとしても
 むしろ、それを喜ぶでしょうよ。自ら潰し合って自浄してくれるわけですから」

「我々とて事情は同じだ。同じ派閥とはいえ、不要なら切り捨てる
 ……ふむ、ではこの一件、君に一任しよう」

「ありがとうございます」

「言っておくが、仮に君が死んだとしても私には何の痛手も負わない。留意したまえ」

「そういう台詞は聞きたくありませんね
 我々が勝ちます。奴らを屠りますよ。確実にね」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/02(金) 01:17:11.65 ID:BetY+Z130
組織の一派に属する彼に「仕事」の話が入ってきたのは
丁度、日付が変わった辺りだった

「暗殺任務?」

「ああ、証拠隠滅の事務処理が続いてた所、悪いんだが」

「よりによって、今頃か?
 これまでは大人しくしてたのに、なんで急に」

「確かに穏健派の目は以前より厳しくなってきている
 だが、今回の任務は俺達と同じ派閥内のグループが対象だ」

「……潰し合い、というわけか」

「ああ、これを見てくれ」

手渡されたのは黒のファイルだった
目繰ってみると、暗殺対象と思しき人物の顔写真と
細かく印字された詳細な情報が掲載されている

「これは?」

「対象のリストだ」

「こんなに……。暗殺というよりも
 これはまさか……。グループ単位で潰す気か」

「そうだ
 同じ派閥だ。が、別のナンバーで生体実験を推進しているグループがいる
 はっきり言えば、連中にこれ以上進められると、こっちが困るような類の研究だ
 今回は、そいつらは全員まとめて潰す。研究者も、彼らに関わった関係者も、被験者も含めて、全てだ」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/02(金) 01:18:20.09 ID:BetY+Z130
彼はしばらく沈黙した
ややあって、口を開いた

「一斉に潰すのか」

「同時刻に、一斉に仕掛ける」

「俺の対象は?
 何人を相手する事になる?」

「1人。被験者だ
 そいつを仕留めてほしい」

更に新たなファイルを寄越してくる

「……驚いたな。こんな子どもをか」

「外見で判断すると痛い目を見るぞ
 契約都市伝説は、グループによって新調されている
 射撃系と回復系の能力のようだ。詳しい所までは分からない」

彼はファイルから目を上げ、同僚を見やった

「射撃系、か
 部が悪すぎるだろう
 俺の能力が『ソーセージ詰めの人間ミンチ』なのは知ってるだろう」

「安心しろ、今回の任務ではお前に弾除けの『千人針』が貸与される」

彼は鼻を鳴らして、また沈黙した

「媒体も渡しておく。暗殺対象の動画記録だ。よく見て、覚えてくれよ」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/02(金) 01:18:49.80 ID:BetY+Z130
彼が自室へ着いたのは夜も更けた頃だった
外は雨のようで、室内の温度も幾分か下がっている

息を吐きながらソファに腰を下ろす
テーブルに投げ出したのは、先刻受け取ったファイルとディスクだ

しばらくそのままソファに身を預けていたが
おもむろに上体を起こし、テーブルの脇へ無造作に立てかけていたプレーヤーにディスクを差し込んだ

ディスプレイの電源を入れ、プレーヤーを再生する

ややあって、ディスプレイには闇が映った
光源の少ない環境で撮影されたものだろうか

やがて、映像が鮮明になる
そこにあったのは、横たわった人間と、それを窺うようにして立っている人間だ
横たわっているのは、例の暗殺対象の被験者のようだった。猿轡と目隠しが施されている
立っている人間は白衣を着ている。研究者のようだ。どうやらこの映像は実験の一部を撮影したものらしい

彼はディスプレイを凝視していた
凝視しながら、テーブルに置いておいたミネラルウォーターの封をねじ切り、それをグラスに注ぐ

グラスを持ち上げたとき、少女が大きく仰け反った
慌てる様子もなく、研究者は少女を抑えにかかる
くぐもった声が響く

彼はグラスを口元へ持ってきたまま固まっていた
少女の声が鼓膜を刺し、脳へと響いた
この声は、痛みに耐えきれぬが故の悲鳴か
それとも……

彼は己の下半身が熱を帯びてきていることに、ようやく気付いた
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/02(金) 01:19:21.87 ID:BetY+Z130

思わず嗤いが洩れる

一体、何を考えているのだろうか、と

しかし、彼は頭の中でぼんやりとこうも感じていた
彼女を殺す、その瞬間、この被験者はどのような声で鳴くのだろうか、と

「……馬鹿らしい」

独り言が吐いて出た
口から長く息を吐く

少女のくぐもった声がスピーカーから響き続けている
男はグラスを傾け、口の中を潤した

「ただ、俺は言われた通りにやればいい
 冷静にな、冷静に……。そうだ、ただやればいい。それだけだ」

言いながら彼はピルケースを取り出す
精神安定剤を数錠手のひらに転がした
視線をディスプレイ越しの少女へと移す

「やればいいんだ」

薬を口に含むとグラスを呷り、
冷水と共に喉の奥へと流し込んだ

(終)
49 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage saga]:2012/03/02(金) 01:24:15.78 ID:PfOktrN/0
>>44-48
乙ですー!
ああ、とうとう蛍の最期の時が……でもあの科学者達にも容赦ないようで安心s……って

>彼は己の下半身が熱を帯びてきていることに、ようやく気付いた
>彼女を殺す、その瞬間、この被験者はどのような声で鳴くのだろうか、と
>「やればいいんだ」

前言撤回、この刺客も外道だったよ畜生!?
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 01:27:53.38 ID:BetY+Z130
犬神憑きと怪人アンサーの方、大変失礼しました
1月に「蛍ちゃんを暗殺しにくる黒服の話が書きたい」と言っていた者です
ここまで掲載が長引いてしまい、ご迷惑をおかけしました事を謝罪させて下さい
本当に申し訳ありませんでした

>>44-48はその話です
過去に書いた単発と絡めて、等と偉そうな事を言っていましたが
早さを優先するため、枝葉末節は切り落としてまとめた次第です
とはいえ、犬神憑きと怪人アンサーの方の計画から
遅すぎた掲載であったのだとすれば、切り捨てて下さって構いません
今回、このように書くチャンスを与えて下さった事だけでも
私には大変ありがたい、貴重な経験として学ばさせて頂きました

私事ですが
入院する機会があったにも関わらず
病院設備の描写を蛍ちゃんの実験の映像の描写に生かし切れなかったのは
すごく悔しい部分です
が、それを含めて、書かせて下さってありがとうございますと言わせて下さい
51 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/02(金) 02:11:26.90 ID:QiI0oEMT0
>>11>>13
>あ、問題ないのですぜー!
>(全裸正座待機の構え)
ありがとうございますの、さー本格的に取りかかろう

>>30
シャドーマンの人乙ですー
次回から彼らの登場ですね。wktaしてまってますの

>>33ほ、蛍ちゃん…
彼女は一生懸命生きているだけなのに、何でこんなにうまく行かないんだろう

>>44-48
乙ですー
この男、ヤンデレの匂いがするのは気のせいかな?かな?
52 :影陰蔭翳の人 ◆q/mHXhz8AM [sage saga]:2012/03/02(金) 08:26:17.90 ID:KW9kCdsh0
こ、このディスク欲しい(エロに関しては外道寄りのシャドーマンの人が現れた!

乙です〜
過激派同士の潰し合いか、なるほど…
でもこの黒服とは話が合いそうねン(
ところで上司は中身見たんだろうか
53 :影陰蔭翳の人 ◆q/mHXhz8AM [sage saga]:2012/03/02(金) 12:33:35.45 ID:3XSb04250
>>39 >>41
> 会いたかったよ漢ちゃん、今日も可愛いn……なんか凄いの出てきたー!?
マヤの神話において、最初に創造された人間の骨や神経を砕いたとされるバクの化物「トゥクムバラム」だよ☆
その強靭な足であらゆるものを粉砕☆玉砕☆大喝采♪
因みに鳴き声はポケモンBWに登場したテラキオンのもの(知らんがな

> そんな弟君がすきでs(マテ
えへへ♪(

>>40
> あー、あの単発の四人グル
ープですか?……ごめんなさい名前忘れましたorz
名前はズバリ!………とここで答えても4月からチーム名変わるのであまり意味がないという(何だと

>>51
> 次回から彼らの登場ですね。wktaしてまってますの
やっと漢の初恋の相手が出せるよ!
54 :影陰蔭翳の人 ◆q/mHXhz8AM [sage saga]:2012/03/02(金) 12:34:16.89 ID:+SEvSWtT0
あぎゅ、変なことになっちょるorz
55 :グリーン・ランタンに選ばれた気がする笛 ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/02(金) 13:42:58.01 ID:IDW2PAXc0
【花曇りの日々4〜チョコレイトディスコ〜】

「結局、明日さん家また全壊したんだね」

「ほんとこれで何度目なんだろうね?」

 今日は学校町で事件が起きました。
 なんと明日さんの奥さんと娘さんが誘拐されて人質にされてしまったのです。
 人質をとられ反撃できずに攻撃を受ける明日さんでしたが私と朔夜ちゃんで華麗に二人を救助して反撃しました。
 足止めに一人残ったら触手っぽいものを出してくる敵が来た時は流石に諦めかけましたね、ええ。
 でも魔法少女が触手と戦うよりはマシかなって思ったんですよ。
 まあ絶体絶命の時にスバル君が帰ってきて敵の基地に毒ガス撒いてなかったら本当に私も数の暴力で圧殺されるところでした。
 ……ところで明日さんの奥さん滅茶苦茶強い筈なのになんで捕まってたんだか。
 ……あと助けに来た時若干困った顔してたのはなぜだったんだか。

「で、アジトに篭っていた敵は皆毒ガスで死んだの?」

「死んだり死ななかったり重大な障害が身体に発生したりしてるみたい
 私は能力の応用で毒ガスくらい焼き払えるからさっさと脱出したけどね、脱出路に地雷置きながら」

「あらやだ怖い、スバルもえげつないことするわねえ引くわあ」

 スバル君はわりと人や都市伝説を残酷に殺すこと、汚い手を使うことに躊躇いがありません。
 が、朔夜ちゃんはそういうことを嫌がります。
 正反対な二人ですがそれがタッグとしては丁度良いのだと思うわけですよ。
 そんな感じで話すとお兄さんと明日さんもあまり容赦しません。
 例えば悪いことをしている人が居たとします。
 まず彼らは犯人の事情を聞きます。
 それが同情に値するものだったりすると彼らに自首を勧めて法律の範囲内で彼らを援助しようとします。
 が、今殺さなくては被害が増えると判断するとその圧倒的戦闘力で突っ込んではバイクで頭を削り取ったり全身の骨を隈なく砕いたり平気でします。
 具体的に言うと今まさに人を刺そうとしている人間は最初から殺す気で突っ込んできます。
 彼らの脳内に犯人の人権は存在しません。
 人々を守れるか否かなのです。
 沢山の普通の人々を守るためなら殺すだけ。善良な市民は犠牲にできないけど犯罪者なら心は痛むが犠牲になっても仕方ない。
 そんな感じです。

「まーでもあれだよね」

「なに?」

「朔夜ちゃんが一番善良な正義の味方してるよ、うん」

「え、やだそんなこと言われたら照れるんだけど」

「だって明日さんは覚悟完了パーフェクトヒーローしすぎちゃってて非の打ち所が無いし
 他の契約者の皆様は大なり小なり自分勝手だったりするし、私とか」

「霙はあれじゃない、結構真面目に人のこと考えているじゃない
 学校にケルベロス迷いこんできた時とか」

 もはや学校に野良犬が迷い込んできた感覚で語ってます。
 流石魔都学校町。
56 :グリーン・ランタンに選ばれた気がする笛 ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/02(金) 13:43:44.57 ID:IDW2PAXc0
「まあ結局私が眉毛書いてからおうちに返したけど」

「あのあとの記憶処理が一番面倒だったのは秘密だよ><」

「ところであんた頼むパフェ決めたの?」

「うーん……じゃあこの昇天ペガサスMIXパフェで」

「カロリー高そうねえ」

 胸に行くから気にしてないし。

「あんたがそう来るなら私は抹茶パフェで行くわ」

 普通だなぁ……。」
 
「魔女っ子なのに抹茶って許されるの?
 一応ヨーロッパ出身の魔術の家で日本に帰化したって設定じゃないの?」

「良いよ、ご先祖様は抹茶が好きで日本に帰化したんだから。多分」

「じゃあ良いか」

 まあ一々なんだかんだ言った所で意味ないし。
 朔夜ちゃんはサクサク注文をしてしまう。

「しっかし最近勉強面倒くさいわー
 なにあの二次方程式って」

「とりあえず問題解いてなれたら解けるわよ」

「その問題解くのが面倒くさいのよ!」

「もう……」

 とかやってる内にパフェが来ました。

「いやーやっぱ事件の後にはこれだわ」

「いっただっきまーす」

「駄目よ霙!ちゃんと両手を合わせて頂きますよ!」

 なぜか少々行儀よくいただきますさせられる私。
 若干満足気に頷く朔夜ちゃん。
 一口食べる。
57 :グリーン・ランタンに選ばれた気がする笛 ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/02(金) 13:44:29.62 ID:IDW2PAXc0
「うん、いつも通り美味しい」

「この不健康な味がたまらないわ」

「絶対太るってそれ!」

「そうかなあ?」

「…………ケッ」

 あれ?今一瞬父親と同じドス黒い目をしてたぞー?
 負の感情に飲み込まれかけてたぞー?

「朔夜ちゃんもこれ食べてみる?」

「じゃあ私の抹茶パフェも食べさせてあげるわ」

 ギブアンドテイクなのだろう。

「ほれ、あーん」

 パフェをスプーンで掬って差し出す朔夜ちゃん。
 ほろ苦い抹茶の味わいの中で抑えた甘さが光る逸品です。
 私もスプーンで朔夜ちゃんに食べさせてあげます。
 目を閉じて口を無防備に開く朔夜ちゃんを見ているとやっぱり……母性本能をくすぐられます。
 私きっといいお母さんになれる、信じてる。
 愛されて育った子供は子供を愛せる親になるっておばあちゃんが言っていた。

「ん、むふぅ……甘っ、舌にのっぺりと来る味ねえ。うわ贅沢テイストだわ」

「もう少し食べる?」

「え、良いの?」

「うん、ほらあーん」

「あー……」

 やあん可愛い。
 男の子だったら付き合ってあげたかったわ。
 と、思ったけど私男の子だったらそれはそれで恐ろしいことになってた気がするのでやめておこう。
 とりあえず朔夜ちゃんにパフェを食べさせる。
 ほっぺがふにふにと動いているところも可愛い。
58 :グリーン・ランタンに選ばれた気がする笛 ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/02(金) 13:44:57.33 ID:IDW2PAXc0
「くっ、駄目よこんな贅沢テイスト!精神を堕落させるわ!」

「ふふふ、でももうこの味から離れられないんじゃないの?」

「ち、違うもん!パフェなんかに絶対に負けないもん!」

「朔夜ちゃんさえ良かったら沢山あるしもうちょっと上げても良いんだけどなあ?」

「うっ……」

 自分でパフェを食べて美味しそうな声をあげてみる。
 実際美味しいのだが。

「やっぱりミルクが違うわあ、まろみがたまらないわねえ」

「くっ……負け、負けては……」

「あー最後のさくらんぼが……」

 朔夜ちゃんの大好きなさくらんぼをちらつかせます。
 彼女は口の中でさくらんぼのへたを結べる特技を持ってたりします。
 そこで彼女の限界が訪れたようです。

「……やっぱりさくらんぼには勝てなかったよ」

「ほらほら、これがほしいんでしょう?言ってみなさい?」

「……私は霙ちゃんのさくらんぼとパフェを食べたいです
 どうか食べさせてください」

「ふっふっふ、そんなに欲しがるなら仕方ないなあ」

「わーい」

 パフェの皿を交換する。

「え?」

「あれ?」

「てっきりまた食べさせてくれるものだとばかり……」

「もー……」

 その日は結局最後までお互いにアーンってし合いましたとさ。

【花曇りの日々4〜チョコレイトディスコ〜 続】
59 :グリーン・ランタンに選ばれた気がする笛 ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/02(金) 14:02:08.05 ID:IDW2PAXc0
という訳でちょっくらグリーン・ランタンになったりベヘリット使って一番大事な物を捧げたりしてくる
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/02(金) 16:19:10.22 ID:uzG2lfPR0
何これ可愛い萌える抜ける(マテヤ
くそっ、笛の人が凄い素晴らしい方向に走り出したぞ!
良いぞもっとやれ!いややって下さい!
61 :犬神憑きと怪人アンサーの人 ◆vQFK74H.x2 [sage saga]:2012/03/02(金) 17:15:59.94 ID:RILIfO/g0
単発の人様、笛の人様乙ですー!
うわあぁぁ、ありがとうございます!ありがとうございます!
今まで出した悪役達の一掃フラグにドキドキしつつ…・w・;
黒服さんによる蛍の暗殺、楽しみにしてます&任務の成功と黒服さんの無事のご帰還をお祈りしています!

笛の人様の食事描写、毎回凄くおいしそうなんだよなぁ
二人で「アーン」し合うなんて素晴らしいイチャつきっぷりを見せてくださってありがとうございますもっとやってください


>>50
>とはいえ、犬神憑きと怪人アンサーの方の計画から
>遅すぎた掲載であったのだとすれば、切り捨てて下さって構いません
いえいえ、蛍を暗殺しに来てくれる作者様を無碍になんて出来ません!
蛍の処遇に関しましては、このまま黒服さんが暗殺成功させても構いませんし、無理そうならこちらで始末します

研究者側の反応または他に必要な描写がありましたら書きますのでなんなりとお申し付けください!

>>51
>彼女は一生懸命生きているだけなのに、何でこんなにうまく行かないんだろう
不幸の星の下に生まれた定めにございます…

>>53
>マヤの神話において、最初に創造された人間の骨や神経を砕いたとされるバクの化物「トゥクムバラム」だよ☆
>その強靭な足であらゆるものを粉砕☆玉砕☆大喝采♪
漢ちゃん逃げてー!?
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/02(金) 21:16:57.05 ID:IDW2PAXc0
ああ……蛍ちゃんに誰か訳知り顔で説教するだけして助けない腹立つキャラは出ないものか
そう思う毎日でございます
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/02(金) 21:27:52.15 ID:uzG2lfPR0
>>61
>漢ちゃん逃げてー!?
しぶとく生きるから安心してねっ♪

>>62
>ああ……蛍ちゃんに誰か訳知り顔で説教するだけして助けない腹立つキャラは出ないものか
なんだよそのまどろっこしいキャラwwwww
…ん、待てよ? いつも何度でも使い捨てできるあのキャラなら…
64 :プラモデルの人 ◆GsddUUzoJw [sage saga]:2012/03/02(金) 21:30:07.33 ID:PfOktrN/0
>>55-58
笛の人乙ですー!
相変わらずこの二人が仲良いと2828が止まらない

>もはや学校に野良犬が迷い込んできた感覚で語ってます
野良犬感覚で地獄の魔犬が校庭に入ってくる町、それが学校町!
65 :プラモデルの人 ◆GsddUUzoJw [sage saga]:2012/03/02(金) 22:25:49.47 ID:PfOktrN/0
>>63
>…ん、待てよ? いつも何度でも使い捨てできるあのキャラなら…
幻聴でしょうか、這い寄る奴のやってくる気配が……
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/03(土) 00:00:20.14 ID:qmdjJME90
>>65
>幻聴でしょうか、這い寄る奴のやってくる気配が……
見えない笑顔を振りまいて あいつがあいつがやってくる♪(チョッパーマンの歌風に
67 :夢幻泡影 † 3月3日なので [sage saga]:2012/03/03(土) 00:18:59.75 ID:qmdjJME90
「ミナワ、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます♪ で、でも……このレストラン、かなり高そうですけど;」
「まぁ気にするな、R-No.は給料良いし」
「そういう問題じゃ……それにご主人様と2人きりでこんな」
「おっと、ここで“ご主人様”はやめようぜ?」
「ぁ……れ、裂邪と2人きりでこんなところでお食事なんて…ちょっと贅沢すぎますよぉ」
「ッハハ、偶には良いだろう? いつも喫茶店じゃつまらないし」
「それは美菜季さんのお父さんに申し訳ないです」
「それもそうだな; さてと、今日で……あー、人間年齢3歳だったか?」
「はい、蓮華さんによるとそうなりますね;」
「凄いよな、俺よりも遥かに年下なのに俺より強いし賢いし料理は上手いし美味いし、何よりこの可愛さ」
「もぉ、褒めすぎですよぉ///」
「あと心の美しさかな
 初めて会った時からずっと思ってたんだよ、心の綺麗な子だな、って」
「私だって、裂邪は強くて勇敢で頭が良くてカッコ良くて素敵な王子様だと思ってましたよ♪」
「おいおい、そりゃ盛り過ぎじゃないか?」
「そんな事無いですよ、私の正直な気持ちです!」
「いや、そっちもだけど、お前のそのパスタ」
「こ、これは裂邪と2人で食べるから良いんですぅ!///」
「久々に『あーん』しようか?」
「良いですね、やりましょやりましょ♪」
「それじゃあまずは、愛しの嫁の生誕の日を祝って……」
「「乾杯!♪」」




「……ってこれお酒じゃないれしゅかぁ!?///」
「やべ、店の人間違えたのか?…ひっく」



   終われ
68 :プラモデルの人 ◆GsddUUzoJw [sage saga]:2012/03/03(土) 00:27:37.76 ID:/3738LXl0
>>67
影の人乙です―!
そうか誕生日だったのかミナワちゃん、三歳のお誕生日おめでとうございます!
大盛りのパスタを二人で……某ディズニーのワンコのカップルを思い出したぜ
両側から食べてたらたまたま同じ麺の両端で、お互いがよそ見してるうちに……
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/03(土) 00:35:44.47 ID:qmdjJME90
>>68
>大盛りのパスタを二人で……某ディズニーのワンコのカップルを思い出したぜ
か、隠せ隠せ! 見つかったらやばいぞ!


ってか、そんなのあったのね……裂邪が知ったら3日間落ち込みそうなwww
70 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/03(土) 18:56:54.79 ID:VfsiDMyAO
>>55-58
笛の人乙ですー
いーなー霙ちゃんと朔夜ちゃんのガールズトークはぁはぁ
読んでたらパフェが無性に食いたくなったんだぜ!

>>67
シャドーマンの人乙ですー
ミナワちゃんお誕生日おめ!
それと裂邪はもげておけ
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga ]:2012/03/03(土) 22:33:07.14 ID:7winReg10
死亡フラグの「さしすせそ」、以前のとちょっと違うの見つけた


「さ」先に行け、奴は俺が食い止める
「し」死にたい奴らはここにいろ、俺は部屋に戻るからな!
「す」好きだったぜ、お前のこと
「せ」戦争が終わったら俺、結婚するんだ・・・
「そ」そんなワケねぇだろ、俺が見てきてやるよ
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/03(土) 22:59:15.74 ID:qmdjJME90
>>70
>それと裂邪はもげておけ
(裂邪>何故だ

>>71
>死亡フラグの「さしすせそ」、以前のとちょっと違うの見つけた
『す』と『そ』が違うのね
『す』はやれそうだな………とか考えてたら『俺は幻牙』第1話の二番煎じになりそうで怖いorz
73 :以外と難しい「さしすせそ」 ◆GsddUUzoJw [sage]:2012/03/03(土) 23:51:11.91 ID:/3738LXl0
『逆転フラグ』

「さ」さあ、こっからが本番だ!
「し」しょうがないな……→(力解放)
「す」助太刀するぜ!
「せ」せっかくここまで来て、諦めるものかぁー!
「そ」それはどうかな
74 :ソニータイマー/3DS [sagesaga]:2012/03/04(日) 12:59:15.51 ID:dLrTJxxw0
今即興で思い付いた『生存フラグのさしすせそ』
「さ」先に行け!こいつは俺一人で十分だ!→とは言ったものの…これはちとやべーかな…へへ…
「し」死体は確認できなかったが…この高さでは助かるまい…
「す」好きだよ、新一…
「せ」成功確率は5%未満です
「そ」「そんな装備で大丈夫か?」「一番良いのを頼む」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga ]:2012/03/04(日) 13:44:15.31 ID:MAwBSbg30
>>74
「す」は蘭姉ちゃん限定じゃないかwwww
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/03/04(日) 14:14:58.93 ID:LAVUXH+DO
『敗北フラグのさしすせそ』

「さ」さて、そろそろ終わりにしましょうか
「し」所詮虫けらが猛獣に抗うなど無駄なことよ……
「す」素晴らしい……見るがいい!この圧倒的な力を!
「せ」せいぜい俺を楽しませてみせろ
「そ」そんなものか?つまらん……死ね

何で敵は一々余計なこと言うんだろうね
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/04(日) 16:58:50.31 ID:WCgv7oV/o
>>74
「す」と「そ」がそれだけ個人限定なら
「し」も「死亡確認」(王大人)をですね
78 :神力秘詞 † 芸術四奏:後  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/04(日) 23:04:15.44 ID:p/nmtstK0
「こ、こんな大きなのがどうして…………っ!!」

ふわりと飛んで再び襲い来る巨大な前足を避ける
足元が一瞬瓦礫の山のようになり、砕けたアスファルトは見る見る内に風化して粉微塵となってゆく

(あんなのに踏まれたら……!)

距離を取って着地し、『神』の字を取り出し雷を発生させて「トゥクムバラム」に向けて放つ
しかし「トゥクムバラム」は両前足を上げると、踏み潰すような形で雷を掻き消した
さらにその巨体により地面が振動し、漢のバランスが崩れた

「きゃっ!?」

盛大に尻餅をついてしまい、すぐに立ち上がろうと試みる
突如、周囲が一気に暗くなる
ふと見上げた先、巨鎚のような丸い足
漢の血の気が、さぁっ、と引いてゆく
様々なことが頭の中を駆け巡る

「………こんな…………こんな、ところで…………!!」

右手に『漢』、左手に『神』の字が宿る
迫りくる足に向けて、漢はその2つの文字をぶつけようとした
ぐらり、と足が傾いた

「え…?」

まだ文字は彼の両手に宿ったまま
にも関わらず、「トゥクムバラム」の身体が大きく傾き、轟音と共にその場で倒れこんでしまった
訳も分からず幾つものクェスチョンマークを浮かべる漢

「お前、大丈夫か?」
「Wow,Very CuteなJapanese Girlネ!」

びくっ、と跳び上がり、彼はそっと振り向いた
そこに立っていたのは黒髪を短く伸ばした中性的な人物と、少し長い金髪の外国人らしき少年だった
2人とも見た目だけで判断すれば、年は漢と近そうだ

「………あ、ありがと、ございます……」

黒髪の子供に差し伸べられた手を取り、漢はゆっくり立ち上がった
よく見ると、その子供は額縁に入った絵を持っており、金髪の少年は大事そうにカメラを首に提げていた

「え、えっと……貴方も、契約者、なんですか?」
「Yes,沢山のジャガーからこの町をGuardしていたところネ」
「というか、一般人がわざわざこんなところに出向くと思うか? まぁ、人外ならやると思うが」
「ぐるるおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

2人が話している間に「トゥクムバラム」が立ち上がる
咄嗟に漢は身構えたが、刹那に、ぼうっ!!と「トゥクムバラム」の足元が燃え上がる
と同時に、巨獣の顔面に何かが直撃し、またも巨獣は地面に倒れ伏す

「あぁ、良い絵になりそうだ、この光景…後で描き下ろそうか」
「Youは今日も歪み無いネ;」
「す、凄い……あんなのを一撃で―――――」
「プリキュア! ミラクルハート・アルペジオ!!」
「プリキュア! ハートフルビート・ロック!!」

声がして、ハートの形をした環状エネルギー弾と、青い電撃の塊がそれぞれ叩きこまれる
「トゥクムバラム」の巨体が、ずずず、と地面にめり込んだ
すた、と漢の目の前に2人の少女が降り立った
一方はエレキギターを持った、漢より年下らしきロングヘアの少女
もう一方はどう見ても『スイートプリキュア♪』のキュアメロディだった

「うん!今日も絶好調♪」
「成美、愛恋、遅い」
「ごめんなさい、姉貴の変身に5分もかかって……あれ、彩乃さん、カメラの人、その子は?」
「あのMonsterに襲われてたんですヨ、それとその呼び方はやめて欲しいナ;」
「…イロノ? も、もしかして、女の子ですか?」
「ん? あぁ、僕は女だよ、まぁこの成りなら分からなくとも仕方ないが」

一瞬、漢の思考が止まったが、すぐに「自分も同じか」と思い直して復活した
気がつけば、「トゥクムバラム」が尚も立ち上がろうと、アスファルトを砕きながら震える足で身を起こしている

「っ、まだ、立って……」
「しっつこいなぁ、次はキュアパッションにしよっかな」
「もうそのままで良いじゃん、どーせ変わんないのに」
「うっさいわね!?」
「また姉妹喧嘩のStartネ;」
「全く、絵にもならない」
79 :神力秘詞 † 芸術四奏:後  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/04(日) 23:04:56.91 ID:p/nmtstK0
「あ、あの…そ、そんな呑気なこと言ってる場合じゃ――――――」

言いかけて、ふと彼は耳を澄ませた
とても美しい、ピアノとヴァイオリンの旋律

「…『エリーゼのために』……?」
「安心しろ。俺の曲を聞いても君には影響は無い」

声のした方を見ると、まず目についたのは漆黒のグランドピアノ
それを椅子代わりに座ってヴァイオリンを弾いているのは、後ろ髪を伸ばした黒髪の少年
少年がすた、と跳び下りると、“独りでに演奏していた”ピアノの音が、少しずつ弱くなる

「―――――さあ、フィナーレだ」

曲が終わる
その直後、立ち上がろうとしていた「トゥクムバラム」の身体が、弱々しく崩れ落ちる
それからピクリとも動く事は無く、ただ、光の粒子に変わっていくだけだった
漢は、ぽかん、とその光景を眺めていた

「もー、遅いわよ響介!」
「仕方ないだろう、そういう能力なんだから」
「響兄ちゃんお疲れ様ぁ♪」
「って何くっついてんのよ愛恋!?」
「…昼ドラか」
「Niceですネー、Niceですネー」

―――この人達…強い
心の底からそう思った瞬間だった
だが感心している場合ではない

「っ危ない!」

『漢』の字を具現化し、炎と水の螺旋を作り出す
5人の頭上から襲いかかろうとしていた、前足が無く代わりに鳥の翼が生えた気味の悪いジャガーを弾き飛ばした
見れば周囲には、またもジャガー人間が集っていた
それに、空には気味の悪いジャガー鳥までもが

「う、嘘、まだこんなにいっぱい…!?」
「本当に今日はBad Dayですネ」
「あの、だ、大丈夫、ですか?」
「君、なかなかやるな。どうやらただの女の子じゃなさそうだ」

ヴァイオリンを持った長髪の少年にそう言われ、はにかみながらも『女の子』と呼ばれた事が気にかかる
一瞬、ギターの少女とキュアメロディに嫌な眼で見られたがそれに気付く事無く、漢は左手に『神』の字を宿す

「流石に多いな……君、俺達と一緒に戦ってくれないか?」
「…はい、僕の方こそ、宜しくお願いします…!」
「よし、一応名前を聞いておこうか」
「漢…神崎 漢と、申します」

ジャガー達が動き出す
漢が空に向けて雷を放った後、地を炎が埋め尽くす

「僕は相原 彩乃(アイハラ イロノ)。この「火事を呼ぶ少年の絵」の契約者だ」

アスファルトと共に、ジャガー人間が数匹粉砕される
それは「トゥクムバラム」の一撃と同じだが、その姿は何処にも無い

「Meは緑河(ミドリカワ)ショットと申しマス! 「念写」and「時の重ね撮り」と契約しまシタ!」

拳が突き刺さり、ジャガー人間が吹っ飛ぶ
エレキギターが振るわれ、ジャガー鳥が叩き落とされる

「私は信時 成美(ノブトキ ナルミ)! 契約都市伝説は「なりきりグッズで本物になれる」!」
「信時 愛恋(ノブトキ エレン)、契約したのは「エレキギターで感電死」よ!」

グランドピアノから音楽が奏でられる
ジャガー達が襲いかかろうとするが、それはヴァイオリンから伸びる禍々しい手によって遮られていた

「俺は柊 響介(ヒイラギ キョウスケ)。「ピアノの霊」と「チェリーニのヴァイオリン」の契約者であり…
 この『芸術カルテット』のリーダーだ!」

漢の戦いは、まだ始まったばかりだ――――――

「…四重奏(カルテット)? えっと、1、2、3……」
「あ、私は入ってないよ、響兄ちゃんと姉貴とカメラの人と彩乃さんの4人なの」



   ...物語猶続
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/04(日) 23:05:58.22 ID:p/nmtstK0
前回は>>30

よし、明日は『邪気殺し』だな
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/04(日) 23:51:19.68 ID:1ypp18zb0
>>78-79
影の人乙ですー!
ああそうだ『芸術カルテット』!やっと思い出せた(ぉぃ
しかし弱いと聞いてた【トゥクムバラム】さん……雷を“踏みつぶす”って何気に凄い気がするんですが
伊達に四天王(?)は張ってないという事か、リンチにされたけど;;

そしてまさかのジャガー鳥出現!?よし、これでいーくんだけでなく《盛(もる)》ちゃんの空中戦が書けるぜ!
……まあ余り描写は多くないので、期待しないで下さいorz
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/05(月) 00:02:40.38 ID:u5/aoSBZ0
シャドーマンの人様乙ですー
ミナワちゃん、3歳のお誕生日おめでとう!

漢ちゃんの危機に芸術カルテットさん達が颯爽登場!
協力してトゥクムバラムさんに立ち向かうお姿、かっこいいです

>>81
>そしてまさかのジャガー鳥出現!?よし、これでいーくんだけでなく《盛(もる)》ちゃんの空中戦が書けるぜ!
wktkしてお待ちしております!
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/05(月) 03:17:25.16 ID:WyldTcpAO
シャドーマンの人乙ですー
「芸術カルテット」再来!wktkで待ってましたぜ!
戦いもさることながら4人の人間模様に漢ちゃんがどのように巻き込まれるかそれが楽しみすぎるwwww
84 :影陰蔭翳の人 ◆q/mHXhz8AM [sage saga]:2012/03/05(月) 12:33:03.61 ID:LS+L3A/p0
>>81
> しかし弱いと聞いてた【トゥクムバラム】さん……雷を“踏みつぶす”って何気に凄い気がするんですが
可視の物質、つまり気体液体固体そしてプラズマ体を粉砕及び相殺する能力に致しました♪
不可視なものの例は主に呪いですね、あと地震とか
え?何で雷を相殺できるほどの運動能力と反応速度を持ってるかって?
そりゃまぁ、一応魔神ですし☆

> ……まあ余り描写は多くないので、期待しないで下さいorz
期待しちゃうもん!(っば

>>82
> ミナワちゃん、3歳のお誕生日おめでとう!
何気に誕生日回を逃さない僕
……と思いきや、漢の誕生日祝い忘れてるorz

> 協力してトゥクムバラムさんに立ち向かうお姿、かっこいいです
もうちょっと激しく書きたかったけど断念しちゃったのorz

>>83
> 戦いもさることながら4人の人間模様に漢ちゃんがどのように巻き込まれるかそれが楽しみすぎるwwww
しかし「マヤ」編は今回と次の話で出番終了という(何だと
本格登場は高校入学後ですの♪
因みに響介くんのお姉ちゃんが『邪気殺し』で本編初登場ですの
85 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:15:44.86 ID:GvHxKIFp0
男「おい、もう帰らねぇか?」

ある夜、俺はクラスメイトと共に、墓地へ肝試しに来ていた。……というか。

女生徒A「なにここ、こわぁい……。」フルフル
男生徒A「大丈夫、俺がついてるから。」ギュッ
女生徒B「マジで変なのとか出たら、どうする気……?」ウルッ
男生徒B「その時は、俺が倒してやるよ。」ニッ

……こいつらのデートのお守だ。
まったく、今のご時世に肝試しデートとか流行らねぇだろ。

男生徒A「ところで君、今『帰りたい』と言ったか?」
男生徒B「いいぜ、帰っても。」
男「帰った方が身のためだ、と言ったんだ。」
女生徒A「あぁ、怖いのね。強がらなくてもいいのに……。」
男「怖いか!親の方が数倍怖いわ!」

墓場なんて怖くはない。―――人が眠る所、か。変な気分にはなるな。

女生徒B「つかマジで、こいつなんで来たの?」
男生徒A「あぁ、こいつも彼女連れてくると思って誘ったんだけど……。」
男「はァ!?本気で呼ぶ気だったのか?」
男生徒B「という事は、都合が悪いんじゃなく?」
男「どうせ冗談だ、って言って置いてきたんだよ。」
男生徒A「なんだぁ、それならぜひ来て貰って、トリプルデートしたかったんだが。」
女生徒A「なになに?もしかしてすっごい怖がりなの?」

男「いや、俺の彼女さ、『見える』んだよ。」

そういうと、女生徒2人は声を出して笑う。

女生徒B「なにそれ、『あそこにお化けいます』とか言ってくんの!?マジで!?」ケタケタ
男「こうなると思ったから連れてきたくなかったんだ。」
男生徒B「しかし実際に、学校の奇怪な事件を解決したりと大活躍なんだぞ。」
女生徒A「え、本当?信じられないなぁ。」くすっ
男「まぁ先生の病気がどうとか、トイレの詰まりがどうとかって程度だけどな。」

そう、その程度。その事件には霊も怪物も関与していない。
―――彼等の中でだけでも、そういう事にしておこう。

男生徒A「ちぇ、ここら辺は出るか出ないかぐらい聞いたらよかった。」
男「俺は聞いてるから帰ろうと提案をだな。」
女生徒A「えっ、えっ?どこどこどこどこ!?」
男「えっと……。」

あたりを見渡してみると、数十メートル先に木を見つける。
86 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:16:39.46 ID:GvHxKIFp0
男「あれだ、『あの木には近づかない方がいい』とさ。」
女生徒A「まさか、あそこで誰かが首吊りを……?」
男「そこまでは知らん。あ、あと……」

(女「3、4人くらいかな?ちゃんと眠れなかったみたい。可哀想だね。」)

男「だとさ。」
女生徒B「ま、マジ怖いんだけど。なにそれ?」
男生徒B「大丈夫だって。何が出ても怖くない怖くない。」
男「……何が出ても知らねーぞ。」

言葉では強がりながらも、内心怖がっているのが声で分かってしまった。
口では知らないと言っておきながら、俺の体はあいつ等についていった。

男生徒A「だいぶ近づいたが……。」
女生徒A「何もいないみたい……きゃあ!?」

ふと、物音と共に地面で何かが動いた。思わず全員が地面の様子を見た。
1人が懐中電灯を当てると……花が咲いていた。

女生徒B「……マジ、ビビったし。風かぁ。」
男生徒B「こんなもので驚いているから、幽霊が出るなんて噂が広まるんだよ。」

そう言うと、あいつはゆっくり歩きだし、花の方へ手を伸ばす。

……なんだ、この感覚。何かしてはいけない事をしている感覚。
してはいけない事?花か?花をむしるのを止めろと言うのか?
何故だ?花に何か意味があるのか?花の下に何か……?

不意に、俺はあいつのかばんをつかんでこちらへ引っ張り戻す。
それと同時ぐらいに、花の下から、人の腕が伸びる。
間一髪、なんとかその腕から救出に成功した。

男生徒B「ちょ、は……?」
女生徒B「……マジ……?」

地面から生えてきた腕は、地面を掴んで己の肉体を引きずり出した。その姿はまさしく……。

男生徒A「ぞ、ゾンビ……?」
女生徒A「嘘、でしょ……?」

腐りかけた体、ボロボロになった服、なにより生気の感じられない顔、間違いなく【ゾンビ】だ。
……ちっ、あいつの言った通りだったか。

ゾンビ「ゲヘヘ、ミミック作戦しっパぁい。上手クぅいくト思っタんだガなぁ。」
男生徒B「なぁ、あれだろ、ドッキリだろ?最初に、お化けがどうこう、ありがちな台詞を言ってたし。」
男生徒A「お、俺達を驚かせるにしては、よ、良くできたメイクだな。」
男「あんなハリウッドレベルのメイクができる知り合いが居ると思ったか?」
女生徒A「じゃあ、本……物……?」
女生徒B「マジ……?」

【ゾンビ】は俺達を改めて見定め、不気味な笑みを浮かべる。
87 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:17:29.59 ID:GvHxKIFp0
ゾンビ「うまソぉウ……。」
全員「「ッ!?」」

俺を除く全員が、走り出した【ゾンビ】に背を向けて走り出した。

女生徒B「えっ!逃げるの!?」
男生徒B「当たり前ぇだろ!化け物相手に戦えるかァ!せいぜい不審者が俺の限度だ!」
男生徒A「あ、じゃあ俺はスリまで!」
女生徒A「変な部分で張り合わないでよ!」

……思ったより元気そうだな。しばらく安心か?
そう考えながら追いかけようとした時、ふとあの言葉が頭をよぎる。

―――3、4人くらいかな?ちゃんと眠れなかったみたい―――

男「お前ら止まれ!」
男生徒「「 えっ? 」」

止まったと同時に、木の上から死体が降ってくる。
あいつらの頭上ではなく地面に落ちたみたいだ。間に合ってよかった。

ゾンビ2「……失敗。」
ゾンビ3「おイ何しテンだよ、今ノは上手クいキソうだっタろう。」

……急に増えたし。これで3体。あいつの言った通りか。

男生徒A「上から、ゾン、ビ……。」バタッ
女生徒B「あ、ちょっと!?大丈夫!?」

ちっ、あいつ気絶したか。あ、この状況で度胆座ってる俺がおかしいのか。

ゾンビ「アぁ、ざんネぇン。でモ挟ミ撃チはぁ成功ダナぁ。」
ゾンビ2「結果……オーライ。」
ゾンビ3「何言ってンダよ。作戦ガ成功シタ方が気持ちガいイダろ。」

へぇ、【ゾンビ】って案外個性的だな、なんて考えている場合じゃないか。

男生徒B「いいいだろ、う、ここここうなったら俺1人でも戦っ、たう……。」
ゾンビ3「アぁ、威勢ガいいジャないかコイツ。オまえモ一緒に人を喰オウぜ?」
ゾンビ「オぉ、仲間ガ増エるノハぁ大歓迎ダぁ。さっソク死んでくれぇ。」
女生徒A「こここ、殺され、る……。」がくっ
女生徒B「ちょ、あんたまで、マジで!?」

やばいぞ、既に2人も倒れた!担いで逃げる事もできなくはないが、問題は……。

ゾンビ2「倒れた……。」
ゾンビ3「そウカ、ジゃあマズはこいつかラダ、痛ッ。」

俺はとっさに石ころを投げつけた。どうやら効いたみたいだ。注意がこちらにそれた。
88 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:18:34.56 ID:GvHxKIFp0
ゾンビ3「おイ何すンダよ。弁償できルノか。マッタく。」
男「……は?」
ゾンビ3「石でモ打ち所ガ悪カッタら死ぬんダゾ、弁償できルノか。」
ゾンビ2「……死んでる。」
ゾンビ3「あ、ソウカ。既に死ンデタな、スマんすマん」

なんだこいつら。話しするだけでも疲れる。さっさと倒すか。

ゾンビ「とりアエずぅこいつカラやるカぁ。」
ゾンビ2「コロす……。」
ゾンビ3「へへへ、コイツの方ガ元気がアルな。」
男「くっ……。」

よりによって3体か。ダメ元で塩でも持ってくれば良かった。効かないか。
逃げるにしても、あいつ等は腰を抜かしてて動けそうにない、か。
せめて武器でもあればいいが、バールのようなものでも落ちてないか?

男生徒B「おい、……。」
女生徒B「これ、マジでやばいんじゃない?」
男「さて、どうすっかな……。」

既に頭は回っていなかった。ただ我武者羅に戦う事だけ考えていた。諦めていたんだ。

???「騒がしいなァ。」コッ、コッ
男「なっ!?」

その時だった。向こうから足音が聞こえてきた。俺も【ゾンビ】も声の方を注目する。
そちらには何故か霧が立ち込めていてよく見えないが、男の影がうっすらと見える。
その瞬間、俺はあいつの言葉を思い出した。
3、4人くらい……つまりまだ1人足りなかった。
それにあの影から妙な気配を感じる。これはまさしく……。

男「4体目、か。」
男生徒B「はァ!?まだ増えるのかよ!?」
女生徒B「今度はなんなのよ……。」

足音はゆっくりと、着実にこちらへと近寄ってくる。

???「人を襲う【ゾンビ】……。その凶暴な野性ゆえか、はたまた仲間を欲する本能ゆえか……。」
ゾンビ「誰ダぁ、いっタイぃ。」
ゾンビ2「……知らない。」
男「仲間じゃないのか?じゃあ何者だ……?」

近づいてくると霧が晴れ、男の姿が露わとなった。
翼のように広がるマント、いい音のなる黒い革のブーツ、口からはみ出た鋭い牙。その姿はまるで……。
89 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:19:10.51 ID:GvHxKIFp0
男「…………デフォルメされたコウモリ!?」

さっきまで見えていた虚像はなんだったのか。
そこにいたのは一頭身で大きな目、航空力学を無視していますと言わんばかりの小さな翼。
玩具じゃないかとも疑ったが、すぐにその疑惑も晴れる。

蝙蝠「下らない事は止めろ。そんな事をしても仲間が増えるとは限らないぞ。」
ゾンビ「ウルさぁぁぁイ。」
ゾンビ3「何言っテンだよ、おレ達ノ存在を否定スンじゃネぇよ。」
蝙蝠「聞く耳持たず、か。なら、成仏してもらう!」

そう言うと、蝙蝠はどこからか笛を取り出し、吹き鳴らす。

蝙蝠「スネークチェーン!」ピィロ・ピロピィー♪
ゾンビ「なんダぁ、ずいぶんユカいな音色ぉ鳴ラしてェ、ぬおォ?」
蝙蝠「しばらく大人しくしてろ、すぐに終わる。」シュルルル
ゾンビ2「何……。」ギジギジ

笛の音と共に、鎖らしきものが蛇のように這いまわり、【ゾンビ】達を絡め捕った。

男生徒B「ヘビだあああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!?」バタッ
女生徒B「マジ来ないでぇぇぇぇぇぇええぇええええぇぇぇえ!?」グタッ
男「【ゾンビ】を耐えた精神が蛇に負けた!?」

おいおい、蛇は実在の生命体で、【ゾンビ】は本来存在しないものだぞ?
だいたい、本物の蛇じゃないし、それでいいのか?
……まぁ目の前に【ゾンビ】はいるし、そういう問題じゃないか。

男「おいコウモリぃ!お前はいったい何なんだ?」
蝙蝠「失礼な。俺にだって名前ぐらいある!」
男「なら名乗れよ。」
蝙蝠「……吾輩は蝙蝠である。名前はまだない。」
男「やっぱねぇのか。」
蝙蝠「うるさい、お前もしばらく大人しくしていろ。スネークチェーン!」

うお、俺に鎖を巻きやがった!くそっ、なんか気持ち悪い!

蝙蝠「そうしていたら、命の保証はしてやる。あと血の保証もな。」
男「ふざけんな!捕縛しといて信じられるか!」
蝙蝠「あ、そうだ。もし撃退に成功したら少し血を……。」
男「血の保証は!?」

やばいぞ、これは。早くこれを何とかして逃げないと。
ぐぬぬ、解けろ……って。

男「……解けた」ガシャーン
蝙蝠「なんだと、人間が俺の鎖を……?」

ふぅ、さっさと逃げるか。と思って、あたりを見渡してて気付く。
俺……囲まれてたんだった。どうしよ。
90 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:19:57.69 ID:GvHxKIFp0
ゾンビ「クぅぅ。」ギシッギシッ
ゾンビ2「……。」メキッ

しかも【ゾンビ】も鎖から解放されそうだ。これは本格的にまずい。

男「さて、どうしたものかな。」
蝙蝠「おいお前。話しを聞け。」
男「……。」
蝙蝠「おい、お前だお前。聞こえるなら元気よく返事を!」
男「なんだよ面倒くさい!お前の相手なんかしてる場合じゃないんだよ!」

うるさいなこのコウモリ。変な技も使うし、おとなしく聞くか。……いったいどこのコウモリなんだよ。

男「で、何の用だ?」
蝙蝠「俺と契約しろ。」
男「契約ね、はいはい。……契約?」
蝙蝠「そうだ。まさか知らない訳はないだろう?」

知らねぇよ。お前はどこの会社の社員なんだよ。非合法な売り込みの勧誘か?

蝙蝠「本当に知らないのか……?まったく、なら説明しよう、契約とは。
   都市伝説と人間の間で行われるものである。
   人間と契約した都市伝説は、自身の力をさらに高めることができる。
   都市伝説と契約した人間は、その都市伝説に応じてその力を得る。
   しかし代償として、契約者の都市伝説は半ば運命共同体となってしまう。
   そして都市伝説が契約者を探す理由は……。」
男「あぁ分かった分かったもういいもういい。
  つまり強くなりたいから契約してくださいって事か。」

蝙蝠「都合の悪いところだけ切り取るな!お前、【ゾンビ】共を素手で倒せるのか?
   お前に【ゾンビ】共を倒す力をやろうと言っているんだ。」
男「俺に都合の良いところだけ言って騙そうとしても無駄だぞ。
  俺はここから逃げたいんだ。じゃあな。」

蝙蝠「仲間を置いて、か?まさか人間3人を担いで高速で動けると言い出すんじゃないだろうな。
   お前の選択肢は2つ。【ゾンビ】を倒すか、全員死ぬかだ。」

一瞬たじろぐ。確かに上手く逃げられる保証はない。しかし、こいつと契約して無事である保証もないはずだ。
ならば既に八方塞なんじゃないか。
こう考えている間にも、【ゾンビ】の鎖は今にも解けようとしている。
もう懸けるしかない。





……何に懸ける?

【ゾンビ】が自然消滅する事?そんな奇跡に頼る事しかできないのか。

『正義の英雄』が助けてくれる事?こんな時間に、こんな場所に来るやつが他にいる確率は低い。

奇跡……例えば不意に力がみなぎり、【ゾンビ】を投げ飛ばす事ができれば、助かるだろう。
その奇跡を現実にするためには……あぁ、そういう事か。
91 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:21:05.17 ID:GvHxKIFp0
ゾンビ「喰ってヤルぅ、お前らァ全員ナぁ。」ギジギジ
蝙蝠「ち、仕方がない。お前ももう逃げろ!あとは俺が」
男「待てよ。」



―――そうだ。危うく重大な選択を間違えるところだった。



男「お前やあいつ等を囮にして、俺1人で逃げる事も確かにできる。
  だが、あいつ等はバカで、俺に迷惑ばっかかけてばかりでも、
  俺の……友達だ。」



―――友を見捨てて一生を得るなら、死んでも友を救いたい―――



男「俺と契約しろ!コウモリもどき!」
蝙蝠「……良い眼だ。気に入った!」



その瞬間、コウモリは俺の腕にかみついてきた―――って。



男「痛ってえええぇぇぇぇぇぇ血の保証はぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!?」
蝙蝠「安心しろ、立派な契約の儀式だ。……この血、やはりお前は……。」
男「呑気にテイスティングしてるじゃねぇか!」

ほらこんな事をしている間にも【ゾンビ】が……。

ゾンビ2「……解けた。」ガシャァァァン
ゾンビ「オぉ、俺モだァ。」ガシャァン
ゾンビ3「おイ待テよ。俺も解けタンだよ。」ジャラッ

もう解けてるし。腕痛いし。早くしろよ……。

蝙蝠「よし、契約完了!では、キバって行くぜ!」
男「よし!さっそく俺に力を、ってえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

腕から離れたと思ったら、今度はスライム状の液体となって俺に覆いかぶさる。
そしてそのまま俺は……。
92 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:21:38.96 ID:GvHxKIFp0
ゾンビ「ナンだァ仲間割レカぁ。」
ゾンビ3「おイそンな事よリ早くコロしておこウぜ。」
ゾンビ2「危険……。」



ダッ!――――――










――――――ボゴッ!



ゾンビ「ぐワアアアァァァ!」
ゾンビ2「ッ……!?」
ゾンビ3「ギャヒィ!?」



目を開けると、そこには【ゾンビ】が倒れていた。いったい何が起こったんだ?
ふと手を見ると、自分のものとは思えない感覚に襲われる。
背中にはマントがあり、靴も自分のものではないようだ。
この服装、どことなくあのシルエットを思い出す。

男「これは……?」
蝙蝠「変身完了だ。どうだ、力を得た心地は。」

声の元を探ると、俺のベルトにコウモリがぶら下がっていた。

男「……どうしてそこに?」
蝙蝠「他にいいところが無かったんだ。それより調子はどうだ?体は動かせるか?」

男「今のところ、異常はない。いったいどうなったんだ?」
蝙蝠「説明したいのも山々だが、まずは倒してからだ。」
男「……そうだな。了解、うっ!?」

今度は頭痛が響く。同時に体から力がみなぎり、何かに飲み込まれそうになる。

男「うぅ、あぁぁぁ……!」
蝙蝠「おい、どうした!おい!」
ゾンビ3「おイちゃんすジャネェか、じゃア俺かラバラバラにしてくる。」ダンッ!
93 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:22:16.80 ID:GvHxKIFp0





―――俺が気を失っている間に、何が起こったのか。



ゾンビ3「おイおイおイ。」ズンッズンッ
ゾンビ「終ワったなァ。」





―――あとで蝙蝠が教えてくれた。





男「……はぁぁぁ、だぁ!」ブゥン!
ゾンビ3「」ブチッ!



ゾンビ「ナニ、が、起こっタ……?」
ゾンビ2「……強い。」



蝙蝠「……驚いた。まさかパンチ一発とは。恐ろしい。」
男「……くぅ、はぁあああ……!」
蝙蝠「まずい、力が増幅し続けている!一か八か、スネークチェーン!」


男「うっ、くぅぅぅ……、……あれ?」

気を取り戻すと、今度は腕や脚に鎖を巻きつけられていた。
せっかくの貴族風な恰好がヘビメタ風に豹変してしまった、違う違う。

男「今度はなんだよコウモリもどき!俺に鎖を巻きつけやがって!」
蝙蝠「上手くいったか。」
男「お前、やっぱり【ゾンビ】の仲間だったのか!」
蝙蝠「そんな訳ないだろう。お前が死んだら俺も死ぬんだぞ。
   その鎖は、お前の暴走を止めるためだ。あれを見ろ。」

コウモリが指した方向には、頭を失った【ゾンビ】が倒れていた。
そのまま【ゾンビ】は光となって、消えていった。
94 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:22:59.95 ID:GvHxKIFp0
男「……あれをお前が?」
蝙蝠「お前がやったんだよ。パンチ一発で跡形もなく、な。
   鎖の説明や暴走の分析は後だ。残りを片付けるぞ。」
男「……いいぜ、やってやる。」
蝙蝠「いいか、一度しか言わないからよく聞け。」



蝙蝠「画面上に伸びている緑色のゲージはお前の体力だ。」
男「……は?」
蝙蝠「これが0になったらお前の負けだ。注意しろ。」
男「いや、『画面上』って?」
蝙蝠「次にその横の『○○%』と書かれているのは『BP(ブラッド・ポイント)』。
   お前の血液の量だ。健康的な食生活のおかげか、100%になっている。」
男「褒めてるのかは分からないけど、『その横』って?」
蝙蝠「変身中は俺の血液も貸してやる。これで300%か。」

なんだこのコウモリ。

ゾンビ2「……強い。」
ゾンビ「どうやらァ気ヲ引き締メた方がイイようだナぁ。」

うおっ。ゾンビが急にこっちに向かってきた!本格的な戦闘の始まりだな。

蝙蝠「まずは《回避》だ。Bボタンを押すと前転ができる!」
男「だから『Bボタン』って、うおっ!?」
ゾンビ「チぃ、反応ガいいナぁ。」
男「か、間一髪……。」
蝙蝠「そうだ。タイミングよくBボタンを押すと細かく回避できる。」

だから……誰かこいつを何とかしろ。

蝙蝠「次は攻撃だ。Aボタンで《パンチ》、Xボタンで《キック》だ。」
男「格闘だけか?投げる武器とか無いのか?」
蝙蝠「たしかコウモリを召喚できたと思う。が、やり方は忘れた。」
男「はァ!?格闘なんてやった事ねぇぞ……。あ、コウモリいたぞ。」
蝙蝠「俺を投げようと思うな!」

ゾンビ「ごちゃごちゃァ、ウルサいなァ。」ダッ!

迷ってる暇はないか。俺は渾身の力を振り絞って殴りつけた。

ゾンビ「ぐわぁぁぁ!?」
男「え、効いた!?」
蝙蝠「当たり前だ、お前の身体能力は俺の力で底上げされている。
   鍛えているのか?素の能力のおかげで凄まじい威力だ。」
男「生憎、ケンカでしか人を殴った事はねぇよ。」

そのままキックで【ゾンビ】を吹き飛ばす。おぉ、気持ちいい。
……コウモリが《コンボ》とか何とかうるさいけど気にしない。
95 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:25:02.41 ID:GvHxKIFp0
ゾンビ2「……仕返し。」
男「ぐっ!?ちっくしょう!」ブゥン!

もう1体の【ゾンビ】の後ろからの不意打ちで軽く腕を負傷した。
とっさに回し蹴りで反撃したが、深くは入らなかったようだ。

男「くっそ、変な病気にならねぇよな?」
蝙蝠「いや……回し蹴りのコマンドは、無いんだが……」
男「ゲームっぽい話はいいんだよ!なんか無いのか!?」

蝙蝠「ん?あぁ、怪我をしたのか!ならばRとBボタンを同時押しして、傷口に集中しろ!」
男「なんかよく分かんねぇけど、分かった!」

とりあえずRとBの事は忘れて、傷口に意識を集中させる。
すると、あっという間に傷が治った。しかし、感覚的に自分の中の何かが減った気がした。

蝙蝠「そう、それが《回復》だ。ただし《回復》にはBPを消費する。
   使い過ぎで血が足りなくなって、だけは絶対に避けろ。
   もっとも、怪我を放置していてもBPは減っていく。《回復》をケチるのも良くないぞ。」
男「回復には血を消費するのか。分かった。」

まぁ薄々勘付いていたがな。それで……というわけか。

男「どうやらお前は力自慢のようだな。まずお前から倒す。」
ゾンビ2「やってみろ……。」



殴打を繰り返し、相手が殴り返す瞬間に後ろへステップする。パターンに入ると、案外戦いやすいものだ。

しかし、既に一度死んだ【ゾンビ】。果たしてダメージは蓄積しているのだろうか?
いつまでも変わらない表情に、その疑問は膨らみ続けるだけだった。

蝙蝠「そろそろ良いだろう。」
男「なんだ、まだ何かあるのか!?」

蝙蝠「【ゾンビ】は俺達と同じで、ある程度のダメージに耐性がある。
   しかしこの程度の威力なら既に致命傷のはずだ。」
男「なんでそんな事分かるんだよ。顔色も変わってないぜ?」
96 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:26:18.22 ID:GvHxKIFp0
蝙蝠「【ゾンビ】のほとんどは顔の筋肉が動かない。
   そして直観だが、俺達と同じように回復に制限があるはずだ。
   もしそうなら、この威力で殴ればそろそろ限界が来てもおかしくない。」
男「……参考になる。つまり必殺の一撃で終わらせろって事だな。」
蝙蝠「よく分かってるじゃないか。R+Xボタンで大ジャンプキックだ!」
男「よし、やってやるぜ!」

俺はコウモリの言葉を信じて力の限りジャンプする。まるで翼でも生えたような感覚だ。
地面には【ゾンビ】がいる。狙いを定めて……。



蝙蝠「景気付けだ!」ピィロ・ピロピィー♪

コウモリが笛を吹くと、右足の鎖が解け、全身の力が集中してゆく。
同時に、また意識が飛びそうになる。

男「くぅ、まだだ、持っていかれてたまるか……。」



―――あいつ等を助けるまで、俺は、死ぬわけにはいかない!



ゾンビ2「……来い。」

男「いっけえええぇぇぇぇぇぇ!」



蹴りは【ゾンビ】にクリーンヒットした。
表情の変わらないと言っていた【ゾンビ】が、苦しがっているように見えた。

そのまま【ゾンビ】はだんだんと姿が消えていき、光となって俺の靴に吸い込まれていく。
完全に消えた瞬間、靴についていた石が1つ外れた。



ゾンビ「ばカな、そんナ事ガ……。」
男「……だァ!」

最後の最後で意識が飛び、無意識の内に石を踏み壊してしまった。

男「あ……。」
蝙蝠「なん……だと……?」
ゾンビ「……チクショオオオォォォォォォ……。」

最後に残った【ゾンビ】は、俺に怯えてか、全力で闇の彼方へと走っていった。
97 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:27:19.59 ID:GvHxKIFp0

男「お、おい!ッ……?」フラッ
蝙蝠「血が切れたか。ここで止めておかないと命に係わる。友達を救えたんだろ?」
男「……そうだ、助かったんだ。良かった……。」

一瞬真っ暗になったと思うと、見えるようになった瞬間コウモリが目の前に移動していた。
自分の服装を確認すると、元の服に戻っていた。

男「おぉ。じゃない、あの石すまなかったな。」
蝙蝠「ん、あぁあれか。気にするな。あんな物また探せばいい。
   その様子だと、血の量は50%になっていないようだな。低血量性ショックの様子も見られない。」
男「そうか。すまんな、いろいろと。じゃあな。」

俺はコウモリに別れを告げて、三人を墓場の位置口まで運ぶ。









男「おい、起きろ!」

男生徒A「ん……ここは?」
女生徒A「……墓地の入り口だ。なんで?」
男「何言ってるんだ。『地面が盛り上がった』とか言って全力で逃げてたじゃねぇか。」

男生徒B「……そうだ!ゾンビと蛇は!?」
女生徒B「あ!マジであんなの居たんだ!」
男「何言ってるんだ。気絶しているうちに変な夢でも見たんじゃないのか。」

女生徒A「じゃあ、盛り上がった地面から何が出てきたの?」
男「えぇっと……も、モグラだったよモグラ。」
女生徒B「マジ!?見たかったなぁモグラ。」
男「ははは、モグラは臆病だから、もう逃げたかもしれないな。」

男生徒A「じゃあ、すまなかったな。俺達はもう帰るな。」
男生徒B「また何かあったら宜しくな。気をつけろよ!」
男「またやる気かよ。お前等も気をつけろよ!」
98 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:30:00.84 ID:GvHxKIFp0





こうして、俺はいつも通りの帰路についた。
今日の出来事は夢だった。彼らの中でも、俺の中でも、そういう事にしておこう。
もう二度と、こんな経験はないだろう。化け物を倒して友を救った。本当に夢のような話だ。



……家につけば、またいつも通りの人生だ。それでいいんだ。
あいつ等も、いつも通りの人生を送るだろう。
あのコウモリには、感謝の言葉しかない。



男「コウモリ、ありがとうな。縁があったら、また一緒に戦ってくれ。」



こうして、俺の奇妙で、とても貴重な経験は終わった。






















蝙蝠「何が『縁があったら〜』だ。契約したら運命共同体だと言っただろう?
   まぁいい。積もる話と、血の件もある。話は家に帰ってからにするか。」



―――完―――
99 :生ける屍 [sage saga]:2012/03/05(月) 17:34:56.73 ID:GvHxKIFp0
失礼しました。分かる人は分かると思いますが某仮面ヒーローネタです。

もし人気があればまた書いてみたいなと思いますが、その時は元ネタより戦闘寄りになると思います。
もちろん【狼男】【人魚】【フランケンシュタイン】が出る予定です。

では、感想宜しくお願いします。
100 :ぴーひゃら [saga sage]:2012/03/05(月) 20:25:09.66 ID:Aqmrmg/K0
生ける屍の人乙でした
つまり男は実は母親が都市伝説ですごい力を秘めた一族の生まれなのか
人魚の時とかは銃を使いこなしちゃうわけか
さあ、貴方も都市伝説スレ仮面ライダーの会に入りなさい、入りなさい
101 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/03/05(月) 20:35:57.93 ID:hm2rIvJq0
>>85-98
生ける屍の人乙ですー!
何これ面白い、やけに達観した主人公とU世に近い性格の【蝙蝠】か……
戦闘方法も独特で新鮮でした、でも本当にゲージ何処だよwwwwww
次回も楽しみにしてます!

“見える”能力持ちの彼女も、その内出て来るんでしょうか?
102 :大王の契約者 ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/03/05(月) 20:59:37.01 ID:GvHxKIFp0
生ける屍の人乙でした!良い話ですね。
まさか【吸血鬼】の都市伝説を『契約者を吸血鬼にする』という能力にするとは。
霧の表現や蝙蝠で登場したのは『吸血鬼は姿を変える事ができる』の応用ですね。

しかし笛とヘビの鎖、石に吸いこまれる演出はよく分かりませんでした。
次回にその説明がある事を期待します。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/05(月) 21:02:12.19 ID:NLmeRMrFo
落ち着け
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/05(月) 21:03:54.60 ID:GvHxKIFp0
>>102
素直に『俺が書いた(キリッ』って言えば良いだろwwwww


それはさておき大王の人乙〜
珍しいねお前が彼女持ちの主役って、と思ったが「一人になるな」か何かの契約者もリア充だったか
てかお前の話の主役男ばっかじゃねぇか、おにゃのこ書けよ可愛いおにゃのこの主役を! エロエロにしちゃえよ!
と兄は切に切に願っておりますことよ
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga ]:2012/03/05(月) 21:07:33.24 ID:AN3il9mi0
大王の人様乙でした
都市伝説スレ仮面ライダーの会に新人の予感www

>>104
>てかお前の話の主役男ばっかじゃねぇか、おにゃのこ書けよ可愛いおにゃのこの主役を! エロエロにしちゃえよ!
自分に正直すぎんだろwwwwwwwwwwww
それ言ったら、「ドキっ★男だらけでヒロインどこ行った」なネタばっかりの俺はどうしろってんだよw
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/05(月) 21:09:49.87 ID:NLmeRMrFo
あら、ヒロインが主人公ばりの活躍をする可能性だってあるじゃないですかお義兄さん
ダメージを受ければ服が脱げる仕様のヒロインとか期待しちゃいますぜ?
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/05(月) 21:14:11.74 ID:GvHxKIFp0
>>105
>自分に正直すぎんだろwwwwwwwwwwww
てへっ♪

>それ言ったら、「ドキっ★男だらけでヒロインどこ行った」なネタばっかりの俺はどうしろってんだよw
え? 男のヒロインがいるじゃないですk(焼き殺されました

>>106
>ダメージを受ければ服が脱げる仕様のヒロインとか期待しちゃいますぜ?
プリベルwwwwwwwwwww
てかそれマジで使おうと思ってるんだけどwwwww
108 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/03/05(月) 21:15:25.71 ID:hm2rIvJq0
ちょ、大王の人の新作だったんですかwwwwww新しい作者の方かと思ってたから
「やばい、せっかく来てくれたのに作品の発見遅れた上にあいさつもすんでない」って思ってたのにwwwwwwwwwwww
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga ]:2012/03/05(月) 21:21:59.66 ID:AN3il9mi0
>>106
>ダメージを受ければ服が脱げる仕様のヒロインとか期待しちゃいますぜ?
えっちなのが苦手な大王の人に変わって、この方に言っていただきましょう
         (<、,,> ":::::::::::::::::::::::::::: 、
      〜〈/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::)
       〃:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::<、    ど エ こ
     ~そ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,)   も ロ の
  、_ ,, /::::::::::::::::::::::::、,ゝ===く:::::::,:::::ヽ  め 好
    `V::::::::::::::::::::、_γ      `ヾ,_ < ! き
     l::::::::::::::::::::::く(   r,J三;ヾ   )> く,
 〜v,ん:::::::::::::::´:::::::=; {三●;= }  ,=ニ `/l/!/⌒Y
     l:::::::::::::::::::::::::::::ゝ≡三=イ ´::::゙:::::::::::::::::::::::::::::::
 、m,.. ,ゞ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 ´ " ~ ヘ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


>>107
>え? 男のヒロインがいるじゃないですk(焼き殺されました
無茶…しやがって……
110 :大王の契約者 ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/03/05(月) 21:31:37.59 ID:GvHxKIFp0
……ごめんなさい、まれによくやりたくなるんです。

>>100
>つまり男は実は母親が都市伝説ですごい力を秘めた一族の生まれなのか
はれてさっきそのような設定に(
さすがにそこまで一致にするのは疲れるので無理です。
完璧を追及すると、ブロンブースターあたりで挫折しそうなので。

>人魚の時とかは銃を使いこなしちゃうわけか
蝙蝠「お、銃を手に入れたのか。銃はAボタンで発射だ!
   ただし、チャージしないと威力が低い。気をつけろ。」
男「なるほど、連射にコツがいるな。」

しかし問題は、【フランケンシュタイン】に敵を硬直させるなんて逸話があるだろうか。

>>101
>“見える”能力持ちの彼女も、その内出て来るんでしょうか?
重要なキャラとして登場する予定です。脳内では。
都市伝説が見えるだけでなく、その詳細を理解できる力。それは……。
彼女ではなく、自分が【厨二病】の契約者です。はい。

彼女はメルヘン&天然に挑戦します。有限不実行になるかもです。
111 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/03/05(月) 21:45:11.61 ID:hm2rIvJq0
>>110
>しかし問題は、【フランケンシュタイン】に敵を硬直させるなんて逸話があるだろうか
……感電による一時硬直とかですかね?

>都市伝説が見えるだけでなく、その詳細を理解できる力。それは……。
……何だろう、凄く覚えがある様な……

>彼女はメルヘン&天然に挑戦します。有限不実行になるかもです
wwktkして待ってます
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/05(月) 22:21:05.59 ID:GvHxKIFp0
>>110
>しかし問題は、【フランケンシュタイン】に敵を硬直させるなんて逸話があるだろうか。
どういうフランケンかによるな、例えば笛の人やTさんの人、三面鏡の人が使ってたのは原作通りの死体の継接ぎだったが、
昨今のアニメみたく機械を交えたフランケンでも良い訳だし

雷〜の指〜 触れられ〜た者は〜 自分の〜運命(さだめ)〜 呪うだけ〜♪
113 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/03/05(月) 23:01:28.26 ID:hm2rIvJq0
>>112
>雷〜の指〜 触れられ〜た者は〜 自分の〜運命(さだめ)〜 呪うだけ〜♪
「雷の指 狙われた者は 自分の運命 呪うだけ」じゃなかったですっけ?

というか、原作のアレはドッガのというより、ドッガハンマー自体の能力なきがする
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/05(月) 23:19:31.91 ID:GvHxKIFp0
>>113
>「雷の指 狙われた者は 自分の運命 呪うだけ」じゃなかったですっけ?
そうだそうだ、うろ覚えで書いたから完全に忘れてたorz

>というか、原作のアレはドッガのというより、ドッガハンマー自体の能力なきがする
まぁね!
でも感電で硬直は良いアイディアだと思ったの
115 :大王の契約者 ◆jE0dPlBLZw [sage saga]:2012/03/05(月) 23:36:31.77 ID:GvHxKIFp0
>>113
公式見てみました。
要約すると、『ものすごいエネルギーを浴びせて身体能力を麻痺させる』らしい。
おまけに弱点まで分かる優れもの。

「ドッガハンマー自体の能力」という見解はあながち間違ってないんですけど
となると、武器に別の都市伝説を仕込まないといけなくなる?と思いまして。
やはり電気に関する能力が妥当か……?

勇弥「あれ……?寒気がする……。」
116 :プラモデルの人 ◆Y5QFUmhmw6 [sage]:2012/03/05(月) 23:40:37.08 ID:hm2rIvJq0
>>115
>『ものすごいエネルギーを浴びせて身体能力を麻痺させる』
成程、明確な記述が無いから相手も対応出来ないんですね(ぇ

>勇弥「あれ……?寒気がする……。」
まさかの標的wwwwwwどうなるんだ
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/05(月) 23:46:48.63 ID:GvHxKIFp0
いっそ拘らずにメドゥーサにしちまうとか(マテヤ
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga メドゥーサじゃなくてゴーゴン使おうかどうか悩んで(ry]:2012/03/06(火) 00:03:15.17 ID:CLsVmtRd0
>>117
>いっそ拘らずにメドゥーサにしちまうとか(マテヤ
!!
119 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/06(火) 00:52:50.59 ID:NHocbyKu0
あれ、そういやメドゥーサとゴーゴンって違いあったっけ?
石になるかどうかか?
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/06(火) 01:00:42.16 ID:C0hJfN/SO
ゴーゴン三姉妹ってのがいる
ステンノ、エウリュアレ、そしてメドゥーサの三人姉妹
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/06(火) 01:19:21.27 ID:2FkIxOHko
ゴルゴーンは概ねメデューサを含めた三姉妹を指すけど
メデューサも話によっては姉がいたりいなかったり
ゴルゴーンとして単独の存在で別の妹がいたりまあ色々

メデューサ扱いだと堕とされた女神、ゴルゴーンだと怪物みたいな扱いが多い気がする
122 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/06(火) 01:27:16.41 ID:ALZIk0HY0
>>120-121
なるほどそうでしたか、教えて頂き感謝orz
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/06(火) 13:18:28.42 ID:JKjQ08SV0
>>119
メドゥーサは、ゴルゴン三姉妹の末娘と呼ばれる場合が多いですね
メデゥーサが化け物の姿にされたことに抗議したステンノーお姉ちゃんとエウリュアレお姉ちゃんも「ならお前たちも化け物にな〜れっ★」って化け物にされたのだと伝えられています
ちなみに、上のお姉ちゃん二人は石化能力に加えて、不死であったとも伝えられています。エウリュアレお姉ちゃんなんて、空を飛ぶ翼も持っていたとかいなかったとか
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/06(火) 13:23:48.25 ID:df2r2u5k0
>>123
エウリュアレお姉ちゃん、たしか「遠くに飛ぶ女」って異名があったはずです
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/06(火) 13:42:24.84 ID:JKjQ08SV0
>>124
そう、それそれ。エウリュアレお姉ちゃんだけ飛べるって話があるんだよね、その名前の意味で
なお、ステンノーお姉ちゃんは「強い女」だったかな、名前の意味
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/06(火) 15:09:45.99 ID:C0hJfN/SO
ステンノ(強い女、Sthenno)
エウリュアレ(遠くに飛ぶ女、Euryele)
メドゥーサ(支配する女、Medusa)
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/06(火) 20:08:37.28 ID:GJ5iMZLD0
色んな話があるのねン
しかし末っ子なのに支配する女って不思議よね
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/06(火) 20:57:26.42 ID:df2r2u5k0
>>127
寝室にてポセイドンを支配→神殿で事に及んでしまいアテネらの怒りを買う
魔眼にて人間達の命を支配→ペルセウスに頃された上アテネらに利用されまくる

結論:支配者はいつか倒されると言う事か(違う
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/06(火) 21:52:08.47 ID:GJ5iMZLD0
>>128
>結論:支配者はいつか倒されると言う事か(違う
盛者必衰の理を表しているんですねわかりますwww
130 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/07(水) 04:42:08.38 ID:ucWdwGEAO
>>85-98
大王の人乙ですー
主人公COOLとか思ったらちゃんと熱血バトルヒーローて胸熱でした
次回楽しみにしてますの
131 :老人@葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/03/07(水) 22:34:26.42 ID:Z7dMJMN2o
「ちっきしょー、どうして勝てないんだ」
「それだけわかりやすければ誰でも勝てるわい、阿呆」

 やや大げさとも言える中年男性の声に呆れたように老人が応じる。
 もうそろそろ夕方になりそうというくらいの時間。
 週に一度、老人が通っている囲碁クラブ。

 五十代半ばの男と一局対戦を終えてのことである。
 もう一度もう一度と言われ対局すること六度。――六戦六勝。どちらの勝ち星かはいうまでもない。
 そもそも、男と対戦するのは今日が初めてではない。
 今までに何十何百回と対戦をしており、たまに負けたりはするものの、大体は老人の勝ちで終わっていた。

「いっぺんでいいから爺さんに勘弁してくださいって言わせてえなあ」
「……ま、今日の打ち方見る限りじゃまだまだだ喃」
「本ッ当にムカつく爺さんだなおい、長生きしねえぞ」

 囲碁クラブからの帰り道。
 老人は男と囲碁の話をしながら、軽口を叩きあいながら歩く。
 乱暴な口調だが野卑ではない男を、老人は好ましく思っていた。

 自分の家族と重ねそうになる感情を否定する。
 家族は家族であり、彼は彼。
 もしも重ねてしまったら、老人は戻ることはできない。
 もし甘んじてしまったら、老人は殺すことはできない。
 肉と血の詰まった糞袋に成り果ててしまう。
 日常に戻ってはいけない。死んでしまった息子達のことを思うと自分は決して日常に戻ってはいけない。
 日常という名のぬるま湯に浸ってはいけない。

 何か息抜きでもと黒服に薦められるままにいつの間にか居付いてしまった囲碁クラブ。
 ――近々離れなくては。

「おい、爺さん。あの黒い服着たヤツ、あんたの知り合いかい?」
「――あ。ああ」
「借金の取立てなら追っ払ってやるぞ?」
「ありゃ葬儀屋だ、阿呆」
「葬儀屋って……」
「わしもいい年だ。そろそろ先のことを考えてるころだから喃」

 納得したようなしてないような男を帰し、黒服に近づく。
 名前を知らぬ黒服が姿を現す時――老人の能力を使用しての殺人依頼。

「この時間はやめてくれと言わんかったか?」

 老人が狩る相手の情報提供と見て見ぬ振りをする代わりに黒服の殺人依頼をこなす。――黒服との取引条件だ。
 今まで一度たりとも断わったことはなかったし、情報提供を渋られたこともない。

「次の標的の連絡に参りました」
「写真は?」
「必要ありません。顔は私よりも貴方のほうがご存知でしょう」
「……言ってる意味がわからんな?」
「先程の男性が次の標的です」


132 :老人@葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/03/07(水) 22:39:37.77 ID:Z7dMJMN2o
前回
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1328185735/391

およそ一ヶ月ぶりの爺さんでした
脳内プロットでは比較的早く終わる予定。

タイトルがまだ決まらないためwikiには乗せてません。
決まり次第wikiに乗せます。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/07(水) 23:18:20.67 ID:/7bjlLBa0
くそぅ!くそぅ!心臓が抉られるかと思ったわ!
直接精神を破壊しに来るなんてあんたクトゥルーの眷属か何かか!
どうするんだ爺さん! マジでどうするんだ!
葬儀屋の人乙でした〜
134 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/08(木) 10:30:03.33 ID:B9mOkipAO
>>131
葬儀屋の人乙ですー
これは爺さん辛いなあ
「いつか絶対あんたを越えてやるからな!」
は死亡フラグだったのか…
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage saga]:2012/03/08(木) 10:57:07.10 ID:1VaNew0Z0
>>131
葬儀屋の人乙です
……以前の話から続けて読むと、黒服にとって都合のいい道具として使われてますよね、お爺さん……
しかも次の標的が……駄目だ、この黒服が“爺さんからためらいを消す為に”選んだようにしか思えないorz
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/09(金) 19:46:29.96 ID:g+NGzM4SO
(・∀・)ダレモイナイヨ
137 :吸血鬼達が狩りをする夜、ゴスロリ少女は自由落下する ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/09(金) 20:02:41.35 ID:T8Mnk8eAO
 「マヤの予言」騒動があらかた収束してしばらく後のある夜。
 学校町の外れ。人気のないそこが、彼らの戦場であり狩り場。
 「吸血鬼」ギルベルトとの契約者、藤原風夜と「カラドボルグ」の契約者であるアーサー、そしてギルベルト。
 『組織』過激派や強硬派に属する者に「死」という悪夢を見させるべく、彼らは今日もその力を、刃を振るう。

「今日のは、案外あっけなかったね」
 風夜がお気に入りのマントをばさりと翻す。夜風にふわりとはためく様はいつだってちょっとばかり華麗で、彼は満足げに笑った。
 そんな彼にやれやれと肩をすくめるアーサーと、わずかに残る戦いの影にまだ怯えを隠せないギルベルトと。
 これが幸せかなんてわからない。けれども彼らの心に灯りがともる、ほんの一瞬。

「そこをどけですよおぉぉぉ!」

 どことなく間延びした叫びとともに、彼らのほぼ真上、空中に現れた黒い影
「ひ!?あ、ぅああああ!!!!」
 ギルベルトの絶叫が響き、風夜が彼を背後に庇う動きを見せる。
 とっさにアーサーが差し出した腕をすり抜けて着地したのは、ピンク色の髪の華奢な少女。
 ふんわりと袖がふくらんだ黒いドレスには鮮やかな青色で十字架の意匠があしらわれ、
 ツインテールに結わえられた髪を飾るヘッドドレスと首もとのチョーカーには、青い薔薇と銀の十字架のモチーフ。
 所謂ゴシックロリータ。愛らしさと暗黒の気配が過不足なく両立したその出で立ちは
 可憐でいかにも繊細そうではあるものの、少女らしい天真爛漫さにはどこか欠ける雰囲気のこの少女にしっくりと馴染んでいる・・・けれど。 いきなし空から降ってくる真っ黒いゴスロリ少女というのは可愛い可愛くない以前に不審者としか表現の仕様がない。
(あ、あぅ・・・なん、だろう。すごく派手・・・怖い・・・)
(風夜のマントも悪目立ちすると思ったが・・・まさか、それ以上がいたとは)
 唖然とするギルベルトとアーサー。風夜の表情には好奇心がちらついている。
「いきなり空から降ってくるなんて、危ないじゃないか」
 風夜は言葉でこそ咎め立てをしているがその声色にも表情にも笑いが滲んでいて
ああ面白がっているなと、アーサーは密かに溜め息をついた。
138 :吸血鬼達が狩りをする夜、ゴスロリ少女は自由落下する ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/09(金) 20:05:04.53 ID:T8Mnk8eAO
「てめーらこそ、そんな所に突っ立ってたら危ねーのですよ」
 自らの非常識な登場の仕方はどこぞの超高層ビルより高い棚に放り上げて偉そうに少女が言い募ると同時に。
 空気が揺れた。

「ひゃっ」
「うわ!」
 4人の間を俄に突風が吹き荒れる!
「・・・・・・!」
「あ、あ・・・!」
「アーサー!ギル!」
 立ちすくむアーサーとへたり込むギルベルトの所へ走り出した風夜のマントの布地が、嫌な音を立てて裂けた。
「ちきしょーですよ!」
 幻のドレスもスカート部分と袖だけが器用に切り裂かれ、所々素肌が剥き出しになっている。
 アーサー達を守るように抱きしめた風夜も、切り刻まれたマントに気づくとああと悔しそうに声を上げた。
「ボクは追われてるのですよ。そいつの仕業なのです」
 巻き添えが怖かったら逃げろですよと少女は言うが、マントを切り裂かれては黙ってはいられなくなった。
「アーサー、ギル。少しだけ待ってくれないか?」
 大丈夫。すぐ終わらせるよと言い聞かせ、止めようとするアーサーを制した。
 心配顔のギルベルトともの言いたげなアーサーを庇うように背にして少女に歩みよる。
「そこのお人形のコスプレみたいな人」
「コスプレじゃねーし、ボクには新宮幻という名前があるですよこのマント野郎」
 てめーのそれは何のコスプレですかと睨まれて、風夜の眉が少し上がった。
「失礼だな、靡くマントはロマンだよ!?それに俺だって、マント野郎じゃなくて、藤原風夜って名前がある」
「ゴシック&ロリータだってロマンですよ!
美しいものを愛する乙女がちっとも美しくねー現実と戦う為の戦闘服なのですよ!」

「お前らこっちを見ろおおおおお!」

 当人達は大真面目だけれど不毛なロマン談義は再び吹き荒れた突風と罵声で中断された。
 見れば青年以上中年以下中程度のメタボ、といった雰囲気の男がスルーされた怒りに顔を真っ赤にしている。
「あれが、君を追ってるっていう奴かい?」
「まあそんなとこなのですよ。追っ払っても追っ払ってもしつこくついて来やがるですよ」
 追われる心当たりを問われた幻が「組織」に入手を依頼された品を狙われている、と答えると風夜とアーサーは暫し顔を見合わせた。
 もし彼女の依頼主とやらが「強硬派」「過激派」に属する者ならば、狩ってしまってもよい。
「穏健派あるいは中立派ならば、当たらず障らず・・・かな」
139 :吸血鬼達が狩りをする夜、ゴスロリ少女は自由落下する ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/09(金) 20:07:39.75 ID:T8Mnk8eAO
 とはいえ、向こうに自分達の存在が知れてしまうのは避けたい。
「ねえ幻」
「なんですか」
「俺もマントの仇を取りたいんだけどさ、君の依頼主はどこに属してる?」
 過激派とか穏健派とかには興味はないが、о(オウ)-No.の上位メンバーである。と
 幻の返答を受けた風夜が携帯を開いて何事かを確認するように頷いた。
「情報があった。『被害者のケアに重点を置いている穏健派』か・・・
君の依頼主との接触は避けたいから、俺達はあいつを倒したらすぐ退散する。
何か聞かれても俺達の事を出さないで欲しいんだけど」
 頷いた幻と、風夜が男に向き直る。
「わざわざ待っててくれたんだ。見かけによらず義理堅いね」
「悪役のお約束なのですよ」
「誰が悪役だぁ!」
「もちろん君だよ」
「てめーなのですよ!」
 ますます顔を赤くして怒鳴り、飛びかかってくる男をふわりと避けて、男の喉元に狙いを付けた風夜。
「ははっ、バカめ!」
 刹那、男の姿がかき消え、再び猛烈な風の刃が4人を襲う。「消えた・・・!?」
「これですよ!攻撃しようとすると消えやがるです!」
 そのくせ何時までもついてくるという事は、彼女が品物を渡すまでは諦める気はないのだろう。
「ここまでして欲しがる奴が居て『組織』までが入手したがってる“品物”って?」
「・・・もしそれが何か知ったら、てめーらはくだらねーと笑うでしょーね」
「でも彼等にとってはそれだけの価値のある物か」
 そういうのは嫌いじゃないよと風夜は笑う。
 その間にも絶え間なく襲い来る風を纏った刃。今のところ[ピーーー]気まではないのか、衣服と精々皮膚の表面を浅く傷つける程度に留まっている。
「ふ、風夜・・・!」
「くっ・・・風夜、これは恐らく『鎌鼬』か何かの類だろうが、契約者を見つけない事には!」
『鎌鼬ではない、「鎌風」だっ!これ以上切り刻まれたくなければ、その小娘に品物を渡させろ!』
 相手の攻撃手段が「風」であるだけに、見切りようも捉えようもない。
 そして風夜達が目視で確認できる範囲にはその契約者はいないのだ。
「どこかに隠れたか、何かに擬態しているか、かな」
 風夜の言葉に、幻がはっと反応した。
「そーです!これがあったですよ!」
 言うや否や彼女が取り出したのはコンパクトミラー。黒い地にドレスと同じ、青い十字架の意匠が浮き彫りにされている。
140 :吸血鬼達が狩りをする夜、ゴスロリ少女は自由落下する ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/09(金) 20:09:53.51 ID:T8Mnk8eAO
 鏡を開くと、幻は鏡面をあちこちに向けながら注意深く覗き込む。
「居たですよー!」
 叫ぶと同時に駆け出し、数メートル先で前蹴り一発。
 風夜達の耳にもはっきり聞こえた呻き声と、どさりと重い物が倒れる音。
 幻が3人に示した鏡面には彼女の「照魔鏡」で映し出された「鎌風」の契約者である、あの男の姿が映っていた。
『くそ・・・よくも「透明人間」を見破ってくれたな!しかぁし!』
 言うが早いか鏡の中の男は身を翻して駆け出した。
『これで勝ったと思うなよ!』
「おっと、お前は俺のマントの仇だぞ」
 風夜の姿が消え、その代わりに霧が立ちこめる。
『幻。あの男の位置をナビしてくれないか?』
「りょーかいですよ」
 幻が鏡を見る。釣り込まれるようにギルベルトとアーサーも彼女の背後から鏡を覗き込んだ。
「いましたですよ!あと数メートル位で通りに出るですよ!」
 この辺かな?と風夜の声が辺りに響き、霧が収束する。
「悪いな。今度は俺の番だよ」
 姿を現した風夜の、幻の前蹴りより遙かに強力な「吸血鬼」の怪力を乗せたハイキック。
「うげっ・・・」
 今度こそ男は失神し、「透明人間」の能力が解け、倒れ込んだ姿が露わになる。
 風夜はやれやれと肩をすくめ、このマントどうしてくれる?と男に問いかけたが、返答はなかった。

 風夜に幻達が駆け寄ると同時に、人工的な明かりとヘリコプターのホバリングの音が頭上から降り注いだ。
「今度は何だ」
 アーサーが訝しげに呟く間にヘリは地上に音もなく降り立ち、中からひとりの少女が現れる。
 年の頃なら10歳前後、肩より少し下まで伸ばされた黒髪は縦ロールと言うには些か緩く少女の輪郭を縁取っている。
 纏った滑らかな生地のドレスは漆黒。少女の膝下くらいの丈のそれは控えめなフリルとレース、共生地で作られた沢山のくるみ釦で装飾されていた。
 続いて幾人もの黒服達が降りて来て「鎌風」と「透明人間」の契約者を引っ立てる間に
 少女は幻に歩み寄ったが、傍らの風夜達を認めると、優雅な仕草で一礼した。
「ご機嫌よう。わたくし『組織』о(オウ)-No.3《桐生院るり》と申します。どうぞお見知り置きを」
「そ、『組織』・・・!」
「組織」にトラウマのあるギルベルトは震え上がるが、風夜が大丈夫だよ、と軽く抱きしめて宥めると、彼の震えが少し治まる。
141 :吸血鬼達が狩りをする夜、ゴスロリ少女は自由落下する ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/09(金) 20:12:02.52 ID:T8Mnk8eAO
 るりは幻に向き直り、片手を腰にあて、もう片手は何かを請求でもするように幻に差し出し高圧的に言い放った。
「やああっと捕まえたわよ、さっさと約束の品をお渡しなさい、このお馬鹿!」
「気が変わったですよ。これはてめーには渡せねーですよ」
「えっ」
「えっ」
 言い放った幻に皆の視線が集中する。
「えーと、つまり」
 呆気にとられる3人のうち、風夜が辛うじて口を開く。
「このお馬鹿は、わたしが手に入れてくれと頼んだ品を約束の時間に持って来ずにバックレようとしたのよ」
「あの男が強盗なら、幻は持ち逃げ犯・・・だったわけ」

 3人の視線の先では、追いつめられた幻がなお抗弁していた。
「報酬も経費もいらねーので、これはボクのモノですよ!」
「ふん、これを見てもそんな事が言えるかしら?・・・出ておいでなさい」
 姿を現したのは、年の頃なら二十歳前程の長身の男。革のグローブをはめた両手を降参よろしく上げている。
「嶋・・・君?」
 幻の同居人、嶋貴也はひとつ大きな溜め息をつくと、手を降ろす代わりに肩をすくめた。
「そういう訳で、俺は新宮さんの話には乗らないから」
 貰うものも貰ったしねとポケットから封筒のようなものを出して見せた。
「この裏切り者ですよ!」
 涙目で睨む幻にも動ずる事なく歩み寄り、その肩をぽんと叩く。
「俺は少なくともあんな代物いらないし。新宮さんが持ってる分も報酬貰っちゃったし」
「う、うう・・・」
「ざまー見なさい幻!この世に悪が栄えた試しなんか無いのよ!」
 るりは我が世の春とばかりの高笑い。
「言ってる事は正しいけど、言い方は悪役そのものだね!」
 すっごくいい笑顔で言い放った風夜に
 アーサーは悪の女幹部というものが居るならばまさしくこのような物言いをするのだろうと心の中でだけ賛同し、
 ギルベルトはと言えば先程までの恐怖は薄らいだが、やはり何も言えずに風夜の後ろでおたおたしている。
 ともかく、幻はがっくり項垂れると何処からともなくポップなプリントが施された紙袋を取り出した。
「やっと手に入ったわ!『学校町限定販売・七色B級グルメラムネ7本セット』!

 歓声を上げるるりを恨めしそうに見つめる幻。
 風夜一行は“品物”のとんだ正体に開いた口が塞がらない。
「び、びーきゅうらむねせっと・・・」
「そんな下らない物のために、あれほどの大騒ぎを」
「そ、『組織』、までが一緒に、なって・・・」
142 :吸血鬼達が狩りをする夜、ゴスロリ少女は自由落下する ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/09(金) 20:14:05.08 ID:T8Mnk8eAO
 呆然と呟いた彼らを、るりがきっと睨みつける。
「下らないですってぇ!?」
 貴也がぽつりとその通りと呟いたが、誰にも聞こえる事はない。
「このラムネの販売を全国のお菓子ブロガーがどれほど待ちくたびれていたか!」
 名称から想像するにむしろゲテモノ喰いと呼んだ方が相応しい気もするが、誰もツッコむ者はいない。少なくともこの場には。
「あの強盗は何を考えてそんな物を?」
 首を傾げた風夜たちの耳に、件の強盗未遂男の絶叫が届いた。
「放せええええ!俺は単なるグルメライターだあぁ!あれを記事にしたかっただけなんだああ!」
 徹夜組まで出る程の前評判だったし、なんとしても試飲したかったのねと訳知り顔のるり。
 幻と貴也を並び屋として雇いラムネを入手させたものの、その後幻は現れず
「てめーの分も渡さねーで持って帰って来いですよ」
 との幻からのメールを受け取った貴也がるりに報告、今回の捕り物と相成ったのだった。

「で、俺のこのマントは、誰に弁償を求めたらいいんだと思う?」
 知らねーですよと罵声を上げる幻。
 その背後にいつの間にか、10代半ばと思しきるりによく似た面差しの少年が立っていた。
「それ・・・お困りなら、オイラに任せて下さい」
 風夜からマントを受け取った少年は、既にボロ布と大差ないそれに、ふううと息を吹きかけた。
 マントは見る見るうちに凍りつき・・・
「はい、この通り」
 少年が広げて見せると、新品同様になっていた。
 彼は《о(オウ)-No.0・桐生院蘇芳(きりゅういん すおう)》と名乗り、
 『CDは冷凍させると復活する』と『雪女』の能力を持つ黒服であると自己紹介した。
「幻さんも、明日にでも持ってきてくれれば、そのドレス直すよー」
 ヘリに乗り込もうと身を返した少年にるりが歩み寄る。
「さ、帰ったら試飲をしてブログに記事を書いて・・・兄上、もたもたしている場合ではないわよ」
「オイラはそのラムネいらないなあ。ええと、ご協力感謝します。それじゃ」
 兄妹と黒服達は去り、その場には静寂と4人の男とひとりの少女が残された。
143 :吸血鬼達が狩りをする夜、ゴスロリ少女は自由落下する ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/09(金) 20:15:35.87 ID:T8Mnk8eAO
(・・・もしそれが何か知ったら、てめーらはくだらねーと笑うでしょーね)
 幻の言葉を反芻してホントにくだらなかったなあとごちる風夜に貴也が軽く頭を下げ、変な事に巻き込んで申し訳ないと詫びた。
 幻はそっぽを向いたまま、笑いたければ笑えですよちくしょーとちいさく呟き、風夜はくすくすと笑う。
「言ったろ。そういうの嫌いじゃないって」
 さ、アーサー、ギル。帰ろうか。
 いちどきにふたりに抱きつきながら家路に就く風夜は、苦笑いしながら風夜に抱きしめられているアーサーは、
 最初から最後までおどおどおたおたしているギルベルトは。
 幻と貴也には幸せそうに見えたし、事実彼らは幸せだった。誰にもそれを奪うことは出来ないほどに。

「・・・帰って行きやがったですね」
「俺たちももう帰ろうよ。明日『フェアリーモート』で好きなだけ奢るからさ・・・って!?」
 貴也が幻に視線を向けると彼女は鏡を手にしていて。
 その照準はしっかりと貴也に合わせられていて、彼は冷たい汗を背中に感じながら後ずさりで逃げを図る。
「それで済むとでも思ってんですかてめーは!食い物の恨みはこえーんですよ!」
「いやちょっと待ってごめんやだ熱つつつつ!!」
「そこへ直れですよこんちきしょー!」
 ふたりの追いかけっこは夜明けまで続き、貴也は大火傷、
 幻は晩秋の夜風にあてられて風邪を引くという双方痛み分けの結果に終わったとか。


END
144 :吸血鬼達が狩りをする夜、ゴスロリ少女は自由落下する ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/09(金) 20:20:30.91 ID:T8Mnk8eAO
投下以上です。
毎度バカバカしい幻のお話。やたら長くてすんません。
風夜くんたちの出演許可くださってありがとうございました。
花子さんとかの人に全力で全裸土下座orz
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/09(金) 22:46:44.68 ID:c80t6scB0
乙でありました〜!
ふぉぉう、使いにくい連中でしたでしょうに、使っていただきありがとうございました
後でちょいと反応ネタ考えてみます!

幻ちゃん可愛いよ幻ちゃん
学校町限定販売・七色B級グルメラムネ7本セットちょっと気になるwww
146 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/10(土) 00:34:35.99 ID:KmnQrKUAO
>>145
乙ありでした!
吸血鬼トリオのかぁいさをもっと!もっと書きたかった!

>後でちょいと反応ネタ考えてみます!
正座して待ってますの!

>学校町限定販売・七色B級グルメラムネ7本セットちょっと気になるwwww
はじめは某北欧の黒い飴とか某北欧のニシン缶の名を冠したものにしてみようかと思ってたんですが…
そんなあからさまに不味そうな代物より少しミラクルの可能性残そうぜ!って事で。
赤はトマトラムネ、黄色はカレーラムネ、紫は超解釈でたこやきラムネとかね(
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/10(土) 12:40:32.00 ID:YE9HCEkl0
>>137-143
鳥居の人乙ですー!
まさかのコラボ、最高に面白かったです!この二組は思ってたより相性いいなあ
途中で三つ巴になるかと思いきや……ラムネ!?原因ラムネ!?
ああでも、ラムネ好きとしては『学校町限定販売・七色B級グルメラムネ7本セット』は是非食べてみたい!
寧ろ食べさせたい、つーちゃん辺りに(ry
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/10(土) 23:17:28.86 ID:SkT9J19b0
鳥居を探すの人乙です〜
何だそのラムネwwwwwwww飲んでみたいわwwwwwwww
…いや、案外あいつならもう飲んでるかも知れない……



「…何飲んでるんですか?」
「ふえ? あぁこれですの? 美味しいですわよ、一緒に飲みませんこと?」
「そんな毒々しいもの飲みませんよ」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 00:27:01.49 ID:a5fw0IFSO
1.あなたはいつ死ぬか分かりません。私と一緒に戦い続ける事になります。どうか、私と契約する前にそのことを覚えておいて欲しい。

2.あなたが私に何を求めているのか、私がそれを理解するまで待って欲しい。

3.私を信頼して欲しい、それが私の幸せなのだから。

4.私に悪い事をさせたり、無茶な使い方をしたりしないで欲しい。あなたとってそれがやるべき事でだったり、楽しみであったり、理由があるのかもしれない。でも、私はそんな事の為に契約したのではないのだから。

5.話しかけて欲しい。私から伝えられなくても。あなたの声は届いているから。

6.あなたがどんな風に私に接したか、私はそれを全て覚えていることを知って欲しい。

7.私を殴ったり、いじめたりする前に覚えておいて欲しい。私は能力であなたを[ピーーー]ことができるにもかかわらず。あなたを守ると決めていることを。

8.私が言うことを聞かないだとか、能力が使えないとか、役に立たないからといって叱る前に、私がどんな都市伝説か考えて欲しい。
 もしかしたら、情報を収集する能力として使えるかもしれないし、傷を癒す能力かもしれない。それか、使える時期や場所があって、今は全力を出せないのかもしれないと。

9.私が成長しなくても、私と一緒にいて欲しい。外見が変わらないだけで同じように年を取っているのだから。

10.最後のその時まで一緒にいて欲しい。言わないで欲しい、「お前だけは生きろ。」、「契約を破棄する。」などと。契約した時から私とあなたは一心同体なのだから。忘れないで下さい、私はあなたを愛しています。
150 :乙でした [sage]:2012/03/11(日) 10:18:55.39 ID:Va87uKLDO
感動のハートフルムービー
「私と都市伝説の十の約束」
映画化決定
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 11:50:51.77 ID:JL0Et2zDO
ミランダ警告かと思ったら都市伝説の十戒か……
いったい何人の契約者がこれを心に留めているのやら
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/11(日) 13:00:45.34 ID:M/nC5smr0
少なくとも、ほいほい契約都市伝説を交換する人は心にとめてないのでは?
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/11(日) 13:35:55.97 ID:OoC2Iqsi0
都市伝説の十戒……
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 13:40:25.61 ID:Va87uKLDO
その気になっても都市伝説じゃ殺せない人間で
しかも都市伝説変えたり自爆特攻させたりやばくなったら契約破棄しようとする上に悪いことばかりしてる契約者知ってるよ!!

でも良い奴だよ!
はいごめんなさい冗談です
155 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/11(日) 20:45:51.71 ID:nnHHpB/AO
花子さんとかの人に言うの忘れてた
キャラ違うよーとかこんな台詞回ししないよとかあったら指摘お願いしますorz

>……ラムネ!?原因ラムネ!?
それがо-No.と新宮幻クオリティですwwww

>ああでも、ラムネ好きとしては『学校町限定販売・七色B級グルメラムネ7本セット』は是非食べてみたい!
恐らくゲテモノですww

>寧ろ食べさせたい、つーちゃん辺りに(ry
つーちゃんなら…つーちゃんならきっと何でも美味しくいただいてくれる!(食事的な意味で喰われました

>何だそのラムネwwwwwwwwwwwwwwww飲んでみたいわwwwwwwww
このスレの住人の食に対する好奇心ったらwwwwww

>…いや、案外あいつならもう飲んでるかも知れない……
「…何飲んでるんですか?」
「ふえ? あぁこれですの? 美味しいですわよ、一緒に飲みませんこと?」
「そんな毒々しいもの飲みませんよ」
実は2セットのうち1セットはR-No.にお送りしようかなと思ってた

>>149
都市伝説関白宣言かと思って読んだら読み進むうちに泣いた…
こんな契約が交わせたら双方幸せだろうなあ
156 : ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:34:48.99 ID:OxRLiiAb0
【シャベルダケ〜母と子、上田碧と上田明也の場合〜】

「あんた兄弟の中で一番お父さんにそっくりよね
 女性関係とか女性関係とか
 まあ変な女の子ばっかりひっかけてくるところは別か」

「…………」

「貴方もそこそこ付き合う相手は選んでるみたいだから私は気にしてないけどねぇ
 貴方はあんな素敵な女の子達捕まえておいて心が痛まないのかしら
 女の子って大抵好きな男の子を独り占めしたいものだと思うのよねえ……
 口先では大事にするといっておいて皆の優しさに甘えてるだけじゃない」

「……ごめんなさい」

「いや、私は別に良いわよ?
 可愛い孫が沢山いる事自体は喜ばしいことだし?
 それについてはまったく気にしていないから本当に謝る必要は無いわよ?」

「いやほんと、大学勝手にやめたりとか一時のテンションで迷惑かけてるし……」

「私はあんたの起こした事件でまた一儲けしたし損してないから気にしてないわよ?
 ていうかあんた大して悪いって思ってないでしょう?
 自分のやりたいと思ったことをやろうと思っただけなんだからさ
 法律を超える力と法律を超える力を抑えつける力を超える力を持ってて運が良かったわね
 私が誤魔化せるのは表の世界での悪行だけだし」

「…………はい」

「ま、それでも悪名高い殺人鬼があんただったってばれるのは航空機事件の後だし
 それまでは私達に面倒がいかないように立ちまわってたっていうのはまあ心動かされないでもない
 ただ腹を痛めた息子がまっとうな世界ではやっぱり生きていけなかったのはちょっとねえ……
 まあ晶ちゃんといる時に更正しそこなった貴方には……あらごめんなさいハンカチある?」

「こちらでございます」

「いやこれ目にホコリ入っただけよ?
 そんな顔面蒼白にならないで良いからね?
 あんたも私たちの子供だしきっと妙に覚悟とかできちゃってるんだろうなあとは思ってたわ
 あんたの諸々については私達の育て方の失敗だから好きなだけ恨むなり文句言うなりしなさい
 ただし私もお父さんも全力で愛情注いだから後悔は無いけどね」

「……………」

「あんたちょっとなに泣いてんのよほらティッシュ使う?
 もー困った子ねえそんなグスグス泣いたり喚いたりするなら最初からやんなきゃ良かったでしょ!
 っていうかそんだけ動揺するくせになんで平気でやばいことやってのけられるの?
 お父さんもだけど本当にどうかしてるわよあんた達はもう……」
157 : ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:35:10.46 ID:OxRLiiAb0
「だって殺らなきゃ殺られるし……」

「だからいーわよ、五体満足で生きてるし
 あんたがあの都市伝説の言うこと聞いてなきゃ死んでたかもだし」

「………………」

「あーあ、本当にあんた何時まで経っても子供ねえ
 茜ちゃん紹介された時本当に心配だったのよ?
 どっちも子供のくせに子供がもうできちゃってるし……ちゃんとそこらへんは計画的にしなさいって言ったわよね?
 そういう無茶な真似は女の子を傷つけることになるんだから考えてしろって
 お母さんは計画的だったわよ?
 お父さん逃がさないようにあの手この手で縛り付けて……」

「そこらへんは聞きたくないんで勘弁して下さい」

「解ったわ
 とにかく、茜ちゃんも良い子なのは解ったわ
 瞳が綺麗な色をしてたし、私の若い頃に似てるし
 ちょっと常識知らずだから心配だったけどそれも今は問題ないし
 なんていうかあれよ、女の子って成長早いわやっぱ
 良い顔するようになったもん、あれなら孫も任せられるわ」

「…………」

「成長止まってるわよねあんた」

「…………ごめんなさい」

「ま、あれよ
 ここだけの本音言うとあんた達が笑顔で生きてりゃいいわ、ほんと
 ダメダメなところに文句は言うけどね!」

「……グスン」

【シャベルダケ〜母と子、上田碧と上田明也の場合〜 おしまい】
158 : ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:35:49.98 ID:OxRLiiAb0
【シャベルダケ〜父と子、上田明也と朝月朔夜の場合〜】

「おまえの爺ちゃん殺したのサンジェルマンじゃなくてお父さんなんだ……」

「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?
 どういうことよふざけないでよオバアちゃまの大切な人を殺したっていうの?
 事と次第によっちゃ許さないわよ!?」

「満月の美しい夜だった
 俺はあの男を殺せという命令を受けてあいつの病院に上がりこんでた
 あいつ魔術みたいなの使ってたから病院ごと破壊して外に引き摺り出して倒したんだよ
 互いにシェイクスピアの一節を吟じながら剣を交わすそれは優雅な決闘だったっけ
 暗殺者同士で互いにズル連発したからなあ……
 一周回って、まるで互いが騎士かなにかみたいに正々堂々とした戦いだったよ」

「そういうのを聞いてるんじゃないのよ!」

「その命令を出したのはサンジェルマンだ
 理由はお前が祖母から聞いているとおり」

「…………」

「俺も何時かああいう風に死ぬ
 老いてから何かくだらない意地でサンジェルマンあたりと対立して、腕が立ち精気のみなぎる若い戦士に打ち倒される
 負けて、何かを奪われて、何かを残して死ぬ
 戦う為に生まれた男らしい、俺みたいな男にしては良い死に方だ」

「やめてよ、洒落になってないじゃない……
 良い死に方って死んだらなんにもならないじゃ……」

「良く死ぬことはよく生きることなんだよ、覚えておけ
 お前が魔術の家に生まれたように俺やあの人は殺したり殺されたりするために生まれたんだ
 あとお前のお母さんに麻婆豆腐の作り方教えたのはお父さんだ」

「ふざけんな!二重の意味で!」

「太宰龍之介という男は、お前の母という存在を遺した
 そしてお前の母という女性を俺に奪われた
 病院の崩落に偶然彼女だけ巻き込まれてな、そこを俺が助けたのが出会いなんだよ
 それからはなんていうかデートしたり一緒に麻婆食べたりして……」

「やめて、そこらへんは聞きたくない
 ていうか父親の仇と寝るってどういう神経してんのよまじ無いわ信じらんない」

「そう嫌ってやるな、俺ほど(変な女にとって)魅力的な男は少ないからな
 まあ何が言いたいかというとだ
 戦いには善も悪もないんだよ
 醜美と、ついでに強いと弱いが有って、それでオシマイ
 だからお父さんはお前に正義を掲げて戦ってほしくないわけよ
 正義の為に戦うのはまあ構わないけどね
 俺だって悪の為に戦ったわけだから
 ただそれを名乗っちゃうと恥ずかしいし辛いしで良い事ないからさあ」

「自分の娘と同じ歳の女の子に手を出す人間に善悪の話をされるとはね」

「恋愛に年齢なんて無いんだよ
 お前も彼氏くらい作れよ、全力でぶっ殺しに行くから
 お父さんろくに世話もしてないくせにお父さん面しちゃう」

「やだもうこの人」
159 : ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:36:31.51 ID:OxRLiiAb0
【シャベルダケ〜父と子、上田明也と朝月朔夜の場合〜】

「おまえの爺ちゃん殺したのサンジェルマンじゃなくてお父さんなんだ……」

「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?
 どういうことよふざけないでよオバアちゃまの大切な人を殺したっていうの?
 事と次第によっちゃ許さないわよ!?」

「満月の美しい夜だった
 俺はあの男を殺せという命令を受けてあいつの病院に上がりこんでた
 あいつ魔術みたいなの使ってたから病院ごと破壊して外に引き摺り出して倒したんだよ
 互いにシェイクスピアの一節を吟じながら剣を交わすそれは優雅な決闘だったっけ
 暗殺者同士で互いにズル連発したからなあ……
 一周回って、まるで互いが騎士かなにかみたいに正々堂々とした戦いだったよ」

「そういうのを聞いてるんじゃないのよ!」

「その命令を出したのはサンジェルマンだ
 理由はお前が祖母から聞いているとおり」

「…………」

「俺も何時かああいう風に死ぬ
 老いてから何かくだらない意地でサンジェルマンあたりと対立して、腕が立ち精気のみなぎる若い戦士に打ち倒される
 負けて、何かを奪われて、何かを残して死ぬ
 戦う為に生まれた男らしい、俺みたいな男にしては良い死に方だ」

「やめてよ、洒落になってないじゃない……
 良い死に方って死んだらなんにもならないじゃ……」

「良く死ぬことはよく生きることなんだよ、覚えておけ
 お前が魔術の家に生まれたように俺やあの人は殺したり殺されたりするために生まれたんだ
 あとお前のお母さんに麻婆豆腐の作り方教えたのはお父さんだ」

「ふざけんな!二重の意味で!」

「太宰龍之介という男は、お前の母という存在を遺した
 そしてお前の母という女性を俺に奪われた
 病院の崩落に偶然彼女だけ巻き込まれてな、そこを俺が助けたのが出会いなんだよ
 それからはなんていうかデートしたり一緒に麻婆食べたりして……」

「やめて、そこらへんは聞きたくない
 ていうか父親の仇と寝るってどういう神経してんのよまじ無いわ信じらんない」

「そう嫌ってやるな、俺ほど(変な女にとって)魅力的な男は少ないからな
 まあ何が言いたいかというとだ
 戦いには善も悪もないんだよ
 醜美と、ついでに強いと弱いが有って、それでオシマイ
 だからお父さんはお前に正義を掲げて戦ってほしくないわけよ
 正義の為に戦うのはまあ構わないけどね
 俺だって悪の為に戦ったわけだから
 ただそれを名乗っちゃうと恥ずかしいし辛いしで良い事ないからさあ」

「自分の娘と同じ歳の女の子に手を出す人間に善悪の話をされるとはね」

「恋愛に年齢なんて無いんだよ
 お前も彼氏くらい作れよ、全力でぶっ殺しに行くから
 お父さんろくに世話もしてないくせにお父さん面しちゃう」

「やだもうこの人」
160 : ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:37:46.27 ID:OxRLiiAb0
「俺はね、尊敬するあの人と同じように死にたいんだよ
 ぶっ殺されて娘奪われて、娘が幸せになってくれるならそれでいいんだ
 俺を倒す程の男ならきっと守ってくれるって信じられるしな」

「だから死ぬとかなんだとかやめなさいってば
 殺し合って、しかも殺しておいて尊敬してたなんて言うの?」

「分からんだろうな、闘争ってのは芸術なんだ
 距離が0以下になるのはその手で殺しあっている人間と恋人同士だけだぞ?
 俺はあの戦いを通じて彼の気高さや苦悩を知ったんだよ」

「……分けわかんない」

「お前だって一度戦ったら友達、みたいなこと言ってたじゃないか」

「霙に言ったあれは……ほ、方便よ!
 ただあの子がなんかピンチだから助けただけ!」

「そーかいそーかい、まあお前は分からなくて良い
 分からないまま普通に生きて普通に幸せになれ
 無理に強いたりしないけど、幸せの形ってのは限られているんだから普通の幸せを掴んでおかないと幸福なんて一生手に入らないぜ」

「なーんか馬鹿にしてる」

「してないよ」

「馬鹿にしてる馬鹿にしてる馬鹿にしてる!」

「しーてーなーい」

「むぅ……」

「まあとにかくあれだ」

「なによ」

「お父さんはお前のお母さんを愛してるぜ、朔夜」

「無理やりいい話っぽくしようとしてるでしょ」

「うん」

「こんな駄目な男の何処が良かったんだか……」

【シャベルダケ〜父と子、上田明也と朝月朔夜の場合〜おしまい】

161 :書き忘れてましたがこの話は作者の作った二次創作です ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:38:36.04 ID:OxRLiiAb0
【シャベルダケ〜祖母と孫、上田碧と朝月朔夜の場合(シリアス)〜】

「ふふ、まさかあれだけの軍勢を超えてくる子が一人とはいえ居るなんてね」

「追い詰めたわよ、貴方が一連の都市伝説事件の黒幕ね
 さあ正体を――――!?」

「こうやって顔をあわせて話すのは初めてねえ
 そう、全世界の怪異をスカウトして世界に夜の脅威を取り戻す計画を練っていたのはこの上田碧よ
 夫にも息子にも、誰にも言わずに私と、貴方のよく知る妲姫を始めとした力ある数人の怪異でこっそりと今まで活動してきたわ」

「そ、そんなこと出来るわけが!」

「たとえばあの吸血鬼の事件、あれだけの軍を動かす軍資金は一体どこから出たと思う?
 それに夜刀浦で起きた美術館襲撃事件、美術品の中に偶然凶暴な都市伝説が紛れてるなんてあり得る?
 そして極めつけは妲姫ちゃんの覚醒、妲姫の依代となる少女が何故よりにもよって霧雲霙だったのかしら?
 世界中で頻発する数々の怪事件、事件を起こした子たちは互いのことをまったく知らなかったのになんであそこまで同時に起きたのかしら?
 
 そして何故そのどれもが人々の目の前で“正義の味方”による事件解決と相成ったのかしら?

 世界に広まる恐怖、暴動、混乱、そしてその収束
 正義も悪もすべて私の手の中で踊っていたに過ぎないの」

「そん、な…………」

「勿論、貴方さえもね」

「嘘よ!そんな、そんなの!」

「私は無力な老婆よ、貴方ならば簡単に殺せるでしょうね
 でもそれはあなたの思う解決にならない
 もうたった一人の英雄では世界の流れを押しとどめることはできないのよ
 貴方は完全に負けたの……いえこれは勝利かしら?
 だって貴方はもう世界に数多く居る人間の希望の一人なんだからねえ
 夢が叶ったじゃない、私の計画で貴方が演じるのは正義の役
 これは精一杯の愛する孫へのプレゼントよ」

「だとしても……」

「なぁに?」

「私は魔女、ほしいものすべて手に入れるまで妥協はしない
 私が望むのは名声なんかじゃない
 人々の笑顔
 そして明るい光の満ちる世界
 こんな混沌とした世界じゃなくて……、あちらとこちらの分かたれた世界よ」

「それは誤りよ
 この世界は混沌などではない、今まさに新しい秩序が生まれつつ有る美しい世界
 それにあちらとこちらを分ければその間に生きる者が痛みを負わねばならないの」

「それで傷つく人が居るのに!?」

「ええ、私自身も含めて膿は切除しないとね」 
 
「……どういうこと?」

「良いかしら朔夜ちゃん、長い間続くものっていうのは腐敗するの
 私が産み出した秩序もまた腐敗するわ
 しかも、間違いなく私から腐敗する
 だからその前に私は死ぬ
 私も死んで、仲間たちも悪として討伐されて、それで初めて無色の秩序が残されるの
 それすらも何時か腐るでしょう
 でも少しだけ寿命が延びる
 その少しの間に沢山の幸せが生まれる
 私は正体不明の黒幕として名前だけになって世界を監視し続けるわ
 少しでも今のシステムが腐らないようにね」

「――――そんなこと、絶対させない!
 だって貴方だって私のお祖母ちゃんだもん!」
 
「……ああ、これが若いということかしらね」

【シャベルダケ〜祖母と孫、上田碧と朝月朔夜の場合(シリアス)〜 おしまい】
162 :書き忘れてましたがこの話は作者の作った二次創作です ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:39:24.01 ID:OxRLiiAb0
【シャベルダケ〜祖母と孫、上田碧と朝月朔夜の場合〜】

「新年の挨拶に参りました、あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとうございます、とりあえずお年玉渡しておくわね」

「わーい!ありがとうお祖母様!」

「構うこと無いわよ、そういえば霙ちゃんは?」

「え?」

「あの子てっきり貴方と一緒に来るものだとばかり……」

「知りませんよ、私はてっきりもう此処にいるものだとばかり……」

「おっかしいわねえ」

「はぁ……」

「ところでいきなりなんだけど霙ちゃんのご両親を始末するように言ったの私なのよね」

「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

「うん、それが私の会社の名前使って悪いことしてたみたいだからちょっと見せしめにね
 そのあたりの事情は本人から聞いているでしょう?」

「まあなんとなくは……」

「貴方はあの子のことどう思ってるの?」

「え?いや友達というかなんというか……」

「そうじゃなくて印象よ、明るいだの暗いだの、能弁だの寡黙だの」

「私は結構おしゃべりだなーって思ってましたけど」

「そう……それは良かったわ
 あの子ね、家に来たばっかりの時は暗くてあまり喋らない子供だったの
 その上高いお皿割るし」

「……?」

「いやなんでもないわ」

「はぁ……」

163 :書き忘れてましたがこの話は作者の作った二次創作です ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:39:53.86 ID:OxRLiiAb0
「何時からかしらね、あの子があんなに良い笑顔をするようになったのは
 きっとそれは貴方のお陰だと思っているわ
 まだ高いお皿割るけど」

「ちなみにお幾らのを……」

「三十万くらいかな……
 いやあの子が悪いんじゃないのよ?
 ただあの子が皿に触れると野球ボールが飛んできたり地震が起きて皿が割れるだけで
 しかもよりによって大事にしていたコレクションに触れたりする時に」

「……そういえばあの子、くじで当たりを絶対に引きませんね」

「周りに不幸を振りまくのよねえ……」

「お祖母様、一体彼女と居る時に何があったんですか?」

「階段で転んで腕の骨折ったりとか」

「その割にはベタベタですよね」

「だって可愛いんですもの
 あ、可愛いで思い出したわ
 私が昔使っていたアミュレットが有るから持って行きなさい
 お年玉その2よ」

「なんですかこれ」

「猫耳ね、ネコは古来より不思議な力を持つ動物として……」

「それは知ってますけど!なんで猫耳なんですか!」

「知らないわよ、持ち運べて強力そうなのがそれしか無かったんだもの!
 それにこれ未成年の女性にしか使えないレベルのデザインなんだから貴方が使いなさい!」

「そうは言いますけど普段のコスチュームにこれつけたらなんかこう……
 猫耳に魔法少女ってこう……」

「人気投票で上位にあがりたくないの?
 お兄さんに人気を奪われっぱなしじゃあ貴方も収まりがつかないでしょう?
 この猫耳をつけて『チャージアップ!魔法美少女シルバームーン!』とかやったらバカ受けよ?」

「対象年齢層違うじゃないですか!」

「ああ、解ったわ
 兎ね、ウサギの耳がいいのね?
 そうなんでしょう?
 セーラームーン世代ってやつなのね?」

「違いますって!」

「猫耳が許される期間は短いの
 だから貴方も猫耳つけなさあああああいい!」

「あーれー!?」

【シャベルダケ〜祖母と孫、上田碧と朝月朔夜の場合〜 おしまい】
164 :書き忘れてましたがこの話は作者の作った二次創作です ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:41:51.81 ID:OxRLiiAb0
【シャベルダケ〜他人同士、上田明也と金子セージの場合〜】

「男だらけか、萌もエロもなしでどうやって大きなお友達の心をつかめというのだ?」

「は?」

「なんでもない、こちらの話だ」

「はぁ……」

「本編で一切絡まなかったからとりあえず話させてみようぜって企画です」

「話すことなんてあるんですかね」

「ところがどっこい有るんだな、お前ぶっちゃけどうだったよ霙のおっぱい
 あ、お前には美空って名乗ってたんだっけ?
 でっけえパイオツだろ?俺が育てたんだぜ?
 毎晩毎晩それはそれは大切にして……時間かかったわあ」

「え」

「いやほら、俺の差金であいつがお前に爆弾仕込んでたんだ
 ねえねえどんな気分?あとちょいで良い仲までいけると思った女の子が年上の男の愛人で自分が利用されていただけって知った気分を教えてほしいな!
 君が清らかさを感じた唇も、包容力溢れる胸も、夢見た(ドッカーン)も全て俺が堪能済みさ!
 (バッキューン)や(イーヤーサーサー)なんかもしちゃったぞおらぁ!
 へいヘイプリーズテルミーベイベぃ!ねえどんな気分!?N・D・K?」

「ちくしょうがあああああああああああああああああああああああああああ!」

「かかってこいチェリーボーイ!」

※少々お待ちください
165 :書き忘れてましたがこの話は作者の作った二次創作です ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:42:24.19 ID:OxRLiiAb0
「殴り合いってシャベルダケってタイトルガン無視だな
 それでも流石主人公補正というべきか予想外の引き分けだよ
 あれだけ激しく争ってもたった一行で済まされるとはこの李白の目を以てしても見抜けなんだ」

「誰だよ李白って」

「横山作品読めよ」

「それはそうとしてあれですよ
 がっかりだよ色々と
 悲しみを背負いそれでも愛する者を守るために心を殺して残酷に振る舞う歴戦の暗殺者って触れ込みだったのに」

「あれか少年、やっぱ処女じゃあなきゃ駄目な子か」

「聞いてねえし」

「答えろ少年、これは男の器量の問題だ」

「いやそりゃあそっちのが良いっていうか……」

「バカちんがぁ!」

「ぐわああああああああああああ!」

「途中で何があろうとなあ!最後に俺の側で俺を愛していれば良いのだ!
 どんなずぶっずぶのどろっどろでも愛してくれるわ!
 俺を愛するのならば俺もまた愛さねばならんのだ!
 ただし可愛い子に限る!」

「こいつ眩しい!なんか眩しい!」

「でも無垢な子供を俺好みに腹黒で淫らで従順で愛情深い女に育て上げるのも最高!」

「最低だこいつやっぱくたばれ!」

「妻子も居る男のセリフとは思われないよな!」

「清々しい駄目っぷりだあああああああああああ!
 お前絶対人気投票有ったら主人公のくせに一位取れないタイプだよ!」

「……まあ、あれだよ
 お前も本当に良かったよな
 本来爆死エンドだったのにー」

「あ、やっぱそうなの?」

「俺だってあれだもん、愛する者をすべて失って失意の中無意味に生き続けるエンドの予定だったもん」

「でも僕は家族皆殺しですからー」

「それはお前に戦闘能力無いから仕方ない
 ラスト格好良かったけどな」

「ありがとうございます」
166 :書き忘れてましたがこの話は作者の作った二次創作です ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:43:43.23 ID:OxRLiiAb0
「どうなのよお前愛する女の子と」

「あー最近やばいっすね、このままだと他の国の王族と結婚しちゃうんじゃないかなーって
 しかもあいつも乗り気だし」

「ほうほう、そいつは愉快だな
 あれだろ?教会に乗り込んで花嫁ぶんどって逃げ出すんだろ?
 良いぜ、サンジェルマンの邸宅爆破して逃げる隙くらいはつくってやるよ」

「駄目でしょそれ!」

「爆発を背景にして駆け抜ける男女、ラストのキス、浮かび上がるENDの文字
 完璧なハリウッド映画じゃないか」

「人の人生エンタメにするな!」

「解ったよ、真面目にそのあたりのアドバイスしようか
 それはあれだよ、彼女は君の気を引くためにノリ気な振りしてるだけだ」

「えっ!」

「少し憂いを帯びた瞳で
 『ずっと僕の側に居てくれるんじゃなかったの?』
 とか
 ちょっと抱きしめて耳元で
 『誰がなんと言おうと僕は君のことが好きだ』
 とかいえばなんとかなる事のほうが多い
 女ってのは一度好きになった男からそう簡単には鞍替えしないもんだ
 一度鞍替えされたら諦めなきゃだめだけどな
 お前は好意を素直に表せば良いんだよ
 一昔前のラノベの主人公でもあるまいに妙なひねくれ方して」

「なるほど……」

「よし、じゃあちょっと綺麗なお姉さんとお酒飲めるお店行こう
 キャッキャウフフできる店行くくらいなら俺は家で十分だし」

「え?」

「お前はちょっと自信つけなきゃ駄目だ」

「えええええええええ?」

「れっつごー」

「うわああああああああああああ!」

【シャベルダケ〜他人同士、上田明也と金子セージの場合〜 おしまい】
167 :書き忘れてましたがこの話は作者の作った二次創作です ◆2PnxfuTa8. [saga]:2012/03/11(日) 21:44:36.85 ID:OxRLiiAb0
思いついた組み合わせで適当に
霙ちゃん出したかったけどなんかあれなので霙ちゃんを話題にしつつ他のキャラを活かす方式で
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/11(日) 23:16:40.26 ID:OoC2Iqsi0
>>156-166
乙ですー!
うん、上田(明也)はそろそろ爆発してもいいと思います、色んな意味で
まさかセージが出て来るとは思わなかったですし、「ねえねえどんな気分?〜かかってこいチェリーボーイ!」の流れは吹いたwwwwww
というか陛下は政略結婚乗り気なのか……いや、上田(爆)の言うとおりポーズに違いない!
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/11(日) 23:40:09.71 ID:3ZHjrrXh0
ギャグありシリアスありで楽しめる内容だったぜ
まさかこういう形で来るとは思ってなかったよ!
笛の人乙でした! 上田はもげても生えるだろうし爆発しても治るだろうから寧ろ生きろ生き続けろ!どうだ出来まい!(ウザッ
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 19:41:28.05 ID:lKJiCmSj0
避難所ホスト規制かよふぁっく



>寧ろ生きろ生き続けろ!どうだ出来まい!(ウザッ

ドシリアスになってもいいなら
ドシリアスになってもいいならいけるぜ

【なんか雰囲気だけ】

「……ああ、やっとか」

「私は貴方に付き添うだけです」

「嫌だよそんなの!いかないでよ!」

「あー…………もう駄目なの?」

「最後まで勝手ね、私のお父さんそっくり」

「ふーん……そう、なんだ」

「私にあいつを悼む資格はない」

 ――――それは何時か来る終わり
 ――――それは駆け抜けた夢の果て
 ――――それは一人の男の走馬灯

「生まれてきて良かったんじゃねえかなあ、俺」

 だから男は一人、生を肯定し死を肯定した。

「だから、もう死んで良い」

 それはひどく自分勝手な人間賛歌

【なんか雰囲気だけ嘘予告】
171 :朔夜ちゃんを三日間くらい精液風呂に漬け込みたい [saga]:2012/03/12(月) 20:22:54.65 ID:lKJiCmSj0
【花曇りの日々5〜さいしゅうかい!〜】

「くっ……壮絶な戦いだったわ」

「まさか都市伝説戦隊アベンジャーズが半壊なんて……」

 ちなみに真っ先に男性二名が潰されたのは秘密である。
 レッドが倒されて大混乱に陥った味方を無事まとめたのはブルーのお姉さんでした。

「まさか過去からの敵が現れるだなんて思いもしなかったものね」

「最後にあいつが攻撃を躊躇わなかったら私死んでたわあ」

「一瞬優しい心を取り戻した相手に容赦無く必殺技叩きこんだよね朔夜ちゃん」

「え、殺らなきゃ死ぬし」

 そう……ついさっきまで戦隊物でいえば劇場版だったのである。
 そのオチが優しい心を取り戻した敵を必殺技で倒すというものなのだからおかしい。
 そもそもブラックとホワイトが女の子っていうのがおかしい。
 
172 :「もう精液の匂いがとれないわ・・・」って半べその朔夜ちゃんを [saga]:2012/03/12(月) 20:28:27.22 ID:lKJiCmSj0
「とまあそんな訳で私たちはのんびり休憩中ってわけで」

「今度の休みに旅行行きましょうよ」

「どこに?」

「富士の樹海で自殺者を説得しに行こうかな」

「魔法少女と思えない休暇の過ごし方ね」

「冗談よ、冗談」

「旅行はいいけど大人居ないとまずくない?」

「私が不思議なお薬でちょいちょいとやればらくしょうよ」 

「前に幼児化して魔法少女コスで決めポーズとってたよね
 デパートで」

「…………今宵は上弦、月のあかりが目に染みるわ
 遠き日々の記憶の欠片が目に刺さったせいかしら」

「無駄にポエティックよ、やだわもう」

 作者は詩人になりたいと思ってたそうです。
 だから偶にポエムります。

「この欠片、抜きもせずに溶けていけば痛みは何時か癒えるというの?
 きっと違うわ、心臓に突き刺さって一生残るのよ
 でもね
 それは生きた証、過ち悔いた証なの
 誇れはしないが胸に抱くべき痛みなの」

「……そう」

 あらやだ朔夜ちゃん今更恥ずかしいことに気がついて顔赤くしているわ。
173 :おもいっきり抱きしめたい! [saga]:2012/03/12(月) 20:29:08.28 ID:lKJiCmSj0
「呼んでいる
 祖父が、その父がそのまた父が母が
 今は逝ってしまった多くの人が
 私は今宵夜の旅人
 闇を抜けて向かうは月世界
 多くの人が待っている
 人々は彼らをこう呼ぶのだ
 思い出と
 私の旅はこう呼ばれるのだ
 追憶と」

 突っ切ったわ。
 最後まで突っ切ったわ。
 清々しい表情で箒にまたがって……
 飛んでいったわ。
 厨二病の限界を突破したのね。
 さようなら朔夜ちゃん
 さようなら私の物語
 
【花曇りの日々5〜さいしゅうかい!〜おしまい】
【花曇りの日々 おしまい】
174 :尻assを尻られているんだァッー! [saga]:2012/03/12(月) 20:29:52.63 ID:lKJiCmSj0
【次回偽予告「元気系妖怪少女が妖怪マニアの文学青年とわるいやつらをぶちのめして回るようです」】

「ねえ春宵、貴方は貴方の見た夢を覚えている?」

 少年はかつて少女と出会っていた。

「覚えている訳無いだろう」

 少女は少年を忘れなかった。

「そう……当たり前よね」

 これは零れ落ちる夢の雫を掬う物語。

「だから、これから思い出をつくろうぜ」

「春宵は……優しいね」

 舞台を妖怪の集う鳥取県に移して始まる新しい物語。

「ねえ、私は“何を”したの?」

「姑獲鳥か……安心しろ、君は悪くない。人間にとって邪魔なだけだ」

 妖怪マニアの夢生春宵と彼と契約する都市伝説メリーさんが米子の闇に暗躍する妖怪たちを多分やんわり懲らしめる!

「名前はないが……魍魎などと呼ばれている」

「やれやれ、百鬼夜行をぶった斬りましょうか」

 氷木しげる先生監修の元、妖の国鳥取県で今、夢生春宵の冒険が始まる!
 新番組、「元気系妖怪少女が妖怪マニアの文学青年とわるいやつらをぶちのめして回るようです」
 山陰テレビ系列で水曜夜0時00分から!

【次回偽予告「元気系妖怪少女が妖怪マニアの文学青年とわるいやつらをぶちのめして回るようです」 おしまい】
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/12(月) 20:50:17.42 ID:WyYUhqre0
笛の人乙です〜
もう百合百合な朔夜×霙は見られないのか……名残惜しいが良い最終回だったぜ
そして新連載もwktk


ところで笛の人様ー、花子さんとかの人に規制の件を話しまして
今ちょっと試しに対策して頂いてるんですけど、避難所まだ見られませんか?
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/12(月) 20:51:48.30 ID:hBm3S7GK0
笛の人乙…

……ん?
ちょい待ち、笛の人、避難所を見ることすらできない状態なん?
俺がだいーぶ前に設定して放置してたホスト規制なんだが、あの規制、規制されてても避難所を見ることはできるはずなんだ、書きこめはしないけど
もし、避難所自体見れないんだったら、したらば全体で何かが起きていることになるんだぜ?
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/12(月) 21:11:13.57 ID:WyYUhqre0
笛の人の書きこみ成功を確認致しましたの〜と報告
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/12(月) 21:15:18.31 ID:lKJiCmSj0
避難所見れるんだけど書き込めなかったの
ところで俺春から作品の描写の強化の為に太極拳やるんだ……
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/12(月) 21:18:59.43 ID:lKJiCmSj0
sage忘れ><
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/12(月) 21:19:13.43 ID:hBm3S7GK0
>178
あ、それならホスト規制引っかかってただけだわ、すまんすまん
宣伝業者対策にすっげー昔に、一回だけホスト規制やってたんだ
笛の人のホストが、たまたまそれとかぶったんだな。嫌な偶然だ
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/13(火) 04:40:29.36 ID:IMPFeQvAO
>>156-166
笛の人乙ですー
碧さん策士っぷりもハンパなくてすげぇww流石明也の母
朔夜ちゃん可愛いマジ可愛いネコミミつけてぇぇ
そしてセージwwww君は少し上田に「男」を教えてもら…いや性的な意味じゃなくてだよ!?

>>171-
続けて笛の人乙ですー
不思議なお薬でちょいちょいした朔夜ちゃん見たあああい
霙ちゃんも朔夜ちゃんもまた帰って来てね!
新連載楽しみに待ってますの!
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 08:31:22.95 ID:ShunUfkDO
私ぴーひゃら
昨日は鳥取のホテルからアクセスしたの
だから規制に引っ掛かったのかしーら
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/13(火) 15:30:39.76 ID:Y2wOwNyO0
>>171-173
笛の人乙ですー!
朔夜ちゃんは恥ずかしさを厨二病で誤魔化すのかwwwwww何はともあれ良い最終回でした

>尻assを尻られているんだァッー!
こらぁーーー!?
184 :八尺様の人 ◇DkTJZY1IGo () [sage]:2012/03/13(火) 19:13:06.89 ID:b32HAqmj0
学校町の一角には、白い洋館がある。
だがそこが組織の出張所である事を知っているものは少ない。
丁寧に刈り込まれた庭の芝生の上には白いテーブルと日よけのガーデンパラソル
それにアラベスクのデザインのガーデンチェアが何組か置かれており
今そこには青年と少年が座っている。

「……また派手にやらかしたものだな」

そう呟いた青年の方はストライプの入ったオーダーメイドの黒服に身を包んでいる。
彼の髪は特徴的な赤毛で、それが彼が日本人ではないことを示している。
普通の人の目には只の外国人にしか見えないだろうが……
何らかの武術の熟練者が彼を見たら戦慄していただろう。
一部の隙も無ければ重心に一切のブレも無いのだ。
まるで地に根を張る巨木のような雰囲気、何気ない所作の隅々にまで安定感が満ちている。
彼は組織の黒服……だが意思無き下っ端ではない。
元人間の契約者、自らの都市伝説に飲まれかけ死と共に散逸するはずだった意識と自己。
だが彼は組織の黒服となることでかろうじて二度目の生を得た。
彼が人であったときの本名であるエリオットと呼ぶものは今は殆ど居ない。
彼の人としての生も家族も全ては遠い過去に置きざられてしまった。
今の彼は『組織』の上位幹部、黒服集団の長の内の一人。
組織内での立ち居地は中立派。
調査課Explorer - Number、略してE−No
エリオットと呼ばれたアメリカ人契約者の残照は
今では専ら彼の使う都市伝説、第五元素の名前……エーテルと呼ばれている。
185 :八尺様の人 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [saga]:2012/03/13(火) 19:13:57.45 ID:b32HAqmj0


「すみません、エーテルさん」

エーテルの対面に座る高校の制服を着た少年が体を縮こまらせて謝った。
誠実かつ活発そうだがそのほかにこれといって特徴の無い少年だ。
彼のほうは組織の依頼を受けて任務をこなす契約者で、普通の人間だ。
「衛悟が謝る必要は無い」
衛悟と呼ばれた少年は更に恐縮した様子だった。
衛悟の方も中々に波乱万丈といっていい人生を送ってきた。
幼い頃に事故に会い、手の施しようの無いくらいの重傷を負った。
彼が今健常な人間として生活出来ているのは組織が彼に与えた都市伝説のお陰だ。
彼に与えられたのは『水の記憶』
1988年に国際的な学術誌ネイチャーに記載された
バンヴェニスト博士の論文を原型にした空想科学系都市伝説。
「水は以前そこに溶けていたものを覚えている」
この都市伝説との契約により、彼の肉体は再生能力と水を操る力を得た。
そうして衛悟は、命を救われた恩義に報いる為に度々組織の任務をこなす契約者として動いている。
恩義、それだけではなく、エーテルが唱える理想に共感したと言うのもある。
人と共に有らんとする都市伝説とは協調を。人に害なす都市伝説とは戦う。
その綺麗過ぎる理想がエーテルを人で有った時の死の遠因と成った事は衛悟は知らない。
自由と博愛、正義を愛する高潔な精神、理想のアメリカ人。
幻想の中にしか存在しない理想を追い求めたエリオットは悲しいくらいに綺麗に生き過ぎた。
エーテルが穏健派よりの中立派で有った事も衛悟にとっては幸運だっただろう。
闇の世界、裏の世界、それに都市伝説に関わるものは大なり小なり周囲とは浮いた雰囲気を醸し出す。
だが衛悟にそれが無いのは彼には都市伝説に関する悲劇も恨みも無いからであろう。
186 :八尺様の人 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [saga]:2012/03/13(火) 19:14:46.95 ID:b32HAqmj0
その事が、衛悟に普通さが残っている原因であろう。

「夜刀浦市のプラネタリウムが半壊か……だが相手はニャルラトホテプの化身の一つ
この規模の都市伝説と関係して死傷者が出なかった事は賞賛に値すると思うぞ」

報告書を片手にエーテルは衛悟にそう語りかけた。

「無辜なる人々が傷つかなかった、人が生きていると言う事が何より価値があり、大事な事なんだ。
俺達は普通の人たちの普通の生活を守る、例え誰からも感謝されなくても……
人が生きていれば何とかなるものだ。後は保険屋と建築業者の活躍に期待することにしよう」

「ありがとうございます、でも殆ど俺は何も……」

「空野 暦か……」

エーテルは押し黙って何かを考えているようだった。

「あの……エーテルさんは彼女の事をどう考えているんですか?」

衛悟はおずおずとエーテルにそう問いかけた。

「血筋、人格、才能、所持都市伝説、実績、その全てが規格外だ」

エーテルは手を組むと静かにそう呟いた。
187 :八尺様の人 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [saga]:2012/03/13(火) 19:15:18.67 ID:b32HAqmj0
「如何なる運命の悪戯か……血筋は学校町の旧家から弾かれた分家の雑種強勢。
異質な思考と人格、時間を操る都市伝説。
都市伝説を呼び込む絵画の書き手……
ガイア仮説打倒の功労者……
今回もまた、殆ど人に被害を出さずニャルラトホテプの化身の一つを退けた。
上田が一歩引きサンジェルマンが手を出しかねている少女を他に知らない。
俺は……彼女を計りかねているんだよ……もしも彼女が世界のバランスにとって……」

「暦は世界を壊したりしない」

衛悟は力強くそう断言した。

「……どうして、そう言い切れる?」

「上手くいえないけど……俺は、彼女が理解されたがっているように思えるんです。
変わってて……ちょっとついてくのに挫けそうになるときもあるけど……
彼女は絵を描くのが好きなんです。
都市伝説とかに関わらなかったら、そうして過ごしていたかったんだと思います。
芸術って、中々理解されないじゃないですか。
それでも伝えたいから……
暦は自分の見たもの、自分の視点を他の人にも解ってもらいたくて……」

エーテルは虚を付かれた様な表情をしていた。

「ふっ……なるほどな……それはまさしく盲点だった。
衛悟、彼女にそれを伝えたか?」

「いえ……」

「……言ってやれ、そして、彼女を見ていてやれ。
鑑賞者が居る限り最早彼女は世界のバランスを壊す存在にはなり得まい……」

「は、はあ……」

胸の使えが取れたように一人納得するエーテルと
いまいち腑に落ちない感じの衛悟であった。

【続く】
188 :八尺様の人 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [sage]:2012/03/13(火) 19:18:17.50 ID:b32HAqmj0
>>184-187は避難所代理投下スレに投下されたものを代理投下したものです
前の話は、前スレ>>771-773から辿ってご覧ください

引き続き代理投下します
189 :空と海の混じる所 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [saga]:2012/03/13(火) 19:20:52.33 ID:b32HAqmj0
白く、白く、白く。
何処までも、白い病室に、彼女は居た。
いつも静かに微笑んでいたはずの彼女は
切なげに疲れ切った苦笑を浮かべている。
体中傷だらけでボロボロだ。
お気に入りの白いリボンが所なさげに垂れている。
その姿は儚げで、今にも消えうせそうだ。

「絵を描くことは、長く遠く果てしない孤独との戦いである」

彼女はそう独り言を呟いた。
その瞳はぼうっと病室の白い壁を見ているように見えるが
実際は遙かに遠い遠景までもを見通している。
千里眼、思念の色、過去未来、彼女の瞳に見えないものは無い。
時間を知覚する事は全てを見通すことと同義であるからだ。
彼女の名は、暦。空野暦。
ひたすらに都市伝説に抗った少女。
勇敢に、頑迷に、鋼の意思で運命に抗った少女。
シェイクスピアは言った。
偉大な人間には三種ある。
生まれた時から偉大な人、 努力して偉大になった人、偉大になることを強いられた人があると。

「――力があるという意味ではそうかもしれない」
190 :空と海の混じる所 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [saga]:2012/03/13(火) 19:21:55.02 ID:b32HAqmj0

家系と血筋のことについてはサンジェルマンから聞いた。
周囲の過酷な運命に、繰り返しに耐えるように努力した。
そして只ひたすらに強くなる事を強いられた。
ニーチェは言った。永遠の繰り返しを然りと肯定できるものは超人であると。
なりたくて超人になったわけではない。
悲劇に抗っていたらそうなっていた。
いつもどうして私が、と繰り返していた。
生まれ持った宿世が故に、力のほうが彼女に寄り付き、捕らえて離さなかった。
運命にも、星の意思にも、最悪の邪神にも抗うだけの強い力。
それが力のほうから彼女に寄って来た。
普通の凡人は、力を手に入れたことを無邪気に喜び、これで自分の好き勝手出来る!
我侭や拘りを好きなように通す事が出来るようになると思い込みがちだ。

だが暦は見てしまった。

「神の悪意」の名を冠する天使に渡された時を操る都市伝説。
手にすることになった神にも運命にも世界に抗える、それらを変える力の裏には
途方も無い、無限の責任が隠されている事を。
その責任を見落とすほど馬鹿でも盆暗でも凡人でもなかった事が彼女の真の不幸だろう。
力を得た代わりに人類の命運をも左右する強大な都市伝説と戦わなければ成らない事を。

時間の翼、レアード複葉機と契約した時点で、彼女の時間に意味は無くなった。
彼女は遠い未来にも遙か過去にも行ける。
彼女は時間の主人。そして時間の友であると同時に
時間の奴隷、時間の下僕でもあるのだ。

そして彼女は成し遂げた。
同じ時間を百万回でも繰り返す、孤独な時空の観測者。
だが彼女の血と汗と涙で世界の危機が未然に防がれた事など、
この世界に住まう人は殆ど知らない。
191 :空と海の混じる所 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [saga]:2012/03/13(火) 19:22:50.79 ID:b32HAqmj0

「それは、いいんだけど……
苦労したし辛かったけど、自分も生きたかったからやっただけ」
賞賛が欲しかったわけでもない、見返りを求めていたわけではない。

そして暦は今まで関わってきた人達の事を思う。
エーテルや上田は二人とも暦と同じく特異な才能をもっている人だった。
世の為人の為人を止めた黒服と何処までも唯我を貫いた元殺人鬼の探偵。
バランスと平衡感覚の完全掌握と会話と言語の全てを理解しそれを持って支配する。
対照的な生。だけど彼等二人の思念の色は真朱と暗紅、明度だけが違うまるで鏡写しの赤だった。
共存と支配、王道と覇道、理想と欲望、滅私奉公と唯我独尊。
それらは別物に見えて同じコインの表と裏でしかない。
赤の色は怒り、狂奔、狂熱、情熱、欲望を示す。

「二人とも凄く――凄く強い自我――
彼等の渇望、才能、こだわりと生き様がなんて羨ましいんでしょう」

人のためであれ己のためであれ、鮮烈な紅に彩られる人生は美しい。

サンジェルマンの煌く黄金、ワカンタンカの輝ける真正の蒼。
咎利の道を求める碧。イクトミやヘンペルの人を超克した薄墨。
他にも様々な色の人が居た。
全てを奪って返さない黒の人や都市伝説も居た。

「でも――私は空の蒼。忘れな草の青だから、彼等のようにはなれない」

青が示すのは時間、悲しみ、そして理性。
空のとこしえの蒼、海のえいえんの青。
完全な正確な時間は機械的、かつ視覚的にしか理解できない。
そして雪崩れ込む時間は自我を容赦なく削り取る。
この世に絶対の恐怖が存在するとするのならば……
それは緩やかに自我の損耗していく恐怖に他ならないだろう。

「私が消える、消えてしまう」

私の体の一部は116667秒前の空……
海、土、火、鳥、草、花、虫、
かつて人だったものやそうでない物が混在していく…・・・
192 :空と海の混じる所 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [saga]:2012/03/13(火) 19:23:28.11 ID:b32HAqmj0


時間に含まれる莫大な情報。
記憶が増えるたびに、私のこだわりが死んでいく。
私が世界なのか、世界が私なのかわからなくなる。
ありふれた時間を取り込んでは捨てていく。
私と世界の境目は何処なのだろう?

永遠の時間の果てには変わらないものなど何一つ無い。
時間の川の濁流を留めて置けなくなれば私も……

「私の身体」 「私という心身集合体」 「私の魂」

「私は……時間を見つめ過ぎて
忘れてはならないはずの『私』すら忘れ果てる。
からだのうちにひそむ、とこしえの青ゆえに」

思えば初めから私と他の皆の系そのものにズレが生まれていた気がする。

「私が、何にこだわってたか思い出さなきゃ……
このままでは輪廻に還る事すら出来ずに時間に飲まれて――
でも、もう……私は……独りで……
……戦う事にも抗う事にも疲れちゃったよ……」

友達を守る為に戦って戦って戦って最後に一人ぼっちになるなんて笑えない。
暦がネガティブな気分になっているのは
今までの過酷な戦いと無茶な時間操作の残留応力が襲い掛かっているからだ。
時間を操る彼女にとっては皮肉極まりなく間の悪い事に
彼女の戦いの結果である友達や家族は……彼女の病室には居ない。
当然だ。
暦が作った当たり前の世界、その時間の中の殆どを
彼女の家族や友達は、彼女のためではなく、彼等が生きるため学ぶ為に使う。
親には仕事が、彼女の友達である人には学校がある、何時までも彼女の病室を見舞う訳には行かない。
それが暦にはいつか人は居なくなる、死んでしまうと言う事を思い出させる。
だが今の暦は心の力が、契約者としては生命維持に関わる不味い領域まで疲弊している。
常人ならばとっくに飲み込まれて人間を止めている。
それだけ彼女の置かれた戦いが過酷で、限界を遙かに超えたものだった。
暦は酷く寂しげに、哀しげに笑った。
193 :空と海の混じる所 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [saga]:2012/03/13(火) 19:24:11.41 ID:b32HAqmj0


「消えるのは怖くないの、只哀しいの」

「ああ、そうか思い出した……」

「私は、私の見てきた美しいもの、美しい刹那を切り取った事を解ってもらいたかったんだ」

「だから私は、描くことが、好きだったのね」

「力は要らない、けれど、けれど……」

「私の時間を皆の為に使ってあげます……」

「だから」

「私が風に溶ける前に、どうか」

「どうか」

「誰か、お願いですから――」

「私を――理解してください――それだけが私の――」

「――だけど――もう――時間切れかも」

彼女の輪郭が透けかけている。

病室のテーブルに置かれたレアード複葉機の断片で作られたナイフも薄れ掛けている。

「バカヤロウ!!生きる事を諦めるんじゃねえ!!」

病室のドアが荒々しく開け放たれた。

英雄たる彼女のあとを必死で付いてきただけの少年は、今この時に間に合った。

白く、消えかけた世界に、水の蒼が……
194 :空と海の混じる所 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [saga]:2012/03/13(火) 19:25:28.19 ID:b32HAqmj0
世界を救って只独り消えかけていた来た彼女の世界に色が満ちた。

そこに居たのは、何処にでもいるような普通の少年。

普通にもかかわらず異常にて異質極まりない暦の歩む道に

最後まで着いてきて、彼女だけを一途に見守ってきた少年。

暦の瞳に光が戻る。

始まりはエーテルが彼女を危険視して監視につけただけの間柄。

だけど何時しか少年は、衛悟は彼女だけを見ていた。

衛悟は消え掛ける暦の肩をしっかりと掴んだ。

衛悟は暦の瞳を覗き込んで

「一生掛かってても構うものか!!俺がお前をわかってやる!!」

振り絞るように発された魂の底からの叫び。

ぼんやりとした暦の瞳に初めて焦点が結ばれた。

今、彼女は時などは見ていない。

力強くそう宣言した……何処にでも居るような普通の男の子の瞳だけを見ていた。

千の永劫の夜を超え、誰にも理解されなかった少女は、ようやく――

暦は傷が開いて軋るのも構わず衛悟の胸に飛び込んだ。

突然の事に眼を白黒させる衛悟にも構わず暦は呟いた。

「永かった……本当に……本当に……とっても永い間……永く待ったのよ……
私がどれだけ……人に理解して……ほしかったか……」

透明な雫が一滴、衛悟の肩に滑り落ちた。

その雫に触れた瞬間……衛悟の都市伝説が強くざわめいた。

彼の都市伝説の名は『水の記憶』

水は溶けていたものの事を、覚えている。

彼は、口にした約束を、守る事が出来た。
195 :空と海の混じる所 ◇DkTJZY1IGo (代理投下) [sage]:2012/03/13(火) 19:27:01.68 ID:b32HAqmj0
>>189-194も避難所代理投下スレに投下されたものを代理投下したものです
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/13(火) 21:19:55.73 ID:Lix/yzEg0
代理投下乙です!
感想は避難所に書きましたのン
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/13(火) 21:43:15.34 ID:IMPFeQvAO
代理投下乙ですー
198 :吸血鬼、拾いました  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/14(水) 17:05:49.50 ID:SZjQhtsP0
 深夜の学校町、東区…住宅街の一角、知る人ぞ知る喫茶店「閑古鳥」店内にて


「いやぁ、面白い連中だったね」

 はぐ、と、注文したシュークリームを食べながら、そう口に出す風夜
 パリっとした皮の間にふんわりとしたカスタードクリームをサンドイッチにしたような形のこのシュークリ−ムを食べる時、風夜はその上に乗っている皮の部分をとって、分解するようにして食べる癖がある
 先に取ってしまった皮にカスタードクリームをつけながら食べるのならばまだ理解できるのだが、そうする訳でもない。表面にうっすらとシュガーパウダーのかかったそれをさっさと先に食べてしまって、それから、カスタードクリームのたっぷりのった下の土台を食べる、と言った食べ方である
 その食べ方だと手やら口の周りやらが汚れやすいのでやめた方がいいと思うのだが、アーサーが覚えている限り、風夜はいつもこの食べ方である
 ……口の周りを拭くのは、全部食べ終わってからにしてやろう
 そんな事を考えながら、アーサーは砂糖もミルクも淹れていないコーヒーを口にする

「……そ、「組織」の人達、だった……」
「ん〜、まぁоNoは強硬派とか過激派ではないみたいだからね。俺達に危害さえ加えてこなければどうでもいいかな」

 少し怯えている様子のギルベルトに、そう告げる風夜。あまり気にしない方がいい、と言うことなのだろう
 風夜達にとって、敵は「自分達を害する者」であり、特に風夜にとっては「アーサーとギルベルトを怖がらせた者」が敵対対象である
 一番の敵は、自分達に非人道的手術を行ったり、両親の命を奪ったり、いわれのない罪を着せて殺そうとしてきた強硬派や過激派である事実に変わりもない
 特に、その強硬派や過激派の中でも、「組織」内部ですら罰されるような行為…すなわち、A-No.0と言った者達の意にそぐわぬ非人道的行為を行うような連中が、風夜達の敵だ
 それ以外の「組織」の者は、自分達を害してこなければわりとどうでもいい

「それにしても、оNo、か。俺とアーサーが「組織」にいた頃もあったっけなぁ……」

 上の皮の部分を食べ終え、カスタードクリームたっぷりの下の土台にかぶりつき始めつつ、首をかしげている風夜
 …あぁ、案の定、口の周りやら指先やらがカスタードクリームで汚れている

「駄目だな、もっと、今の「組織」の情報が欲しいな…」
「……お前の、情報提供者は、そのあたりは伝えてはくれないのか?」

 少し気になって、そう訪ねてみる
 あー、と、風夜はすぐに答えてくれる

「基本的にはこっちから聞かない限りは、俺達の「狩り対象」の情報しかくれないなぁ…もっと積極的に聞いて行った方がいいな、うん」

 積極的に聞いていったとして、「答えてくれるかどうか」は別問題なのではないか、とアーサーは考える
 …しかし、風夜のこの様子だと、聞けばそれを全て答えてくれるのだろう、その情報提供者は
 「組織」にとっては、完全に裏切者だ

 …まだ、少し不安なのだろうか。時折、窓の外をちらちらと確認しては、小さく震えているギルベルト
 今でも、ギルベルトはどこからか自分を狩ろうと襲ってくる存在がいるのではないか、といつでも不安なのだ
 彼が「吸血鬼」になってしまってから、どのような経験を続けてきたのか……それを感じさせられ、ギルベルトにそれだけの恐怖を植え付けてきた連中への嫌悪感が強まる

「ギル、大丈夫だよ、不安がらなくても。ちゃんと、俺が護ってやるから」
「あ…………あ、あぁ………」

 風夜の言葉に、俯いてしまうギルベルト。やや、頬が赤くなっている…こういう時に、照れる余裕は、何とかできたようだ
 これも、風夜が今回のようなセリフをギルベルトに向け続けたおかげだろう。これでいいのか、と言う突込みはさておき

「………「組織」以外にも、情報源は必要なのだろうか」
「あー、どうだろうな……」

 ぴちゃり、カスタードクリームのついた指先をなめている風夜。その様子が淫靡に見えるのは気のせいか

「……一つ、あてがある」
「…………?」
「情報源として、使えそうな奴が、いる。ただ、うまく関われるかどうか、かな」

 うまくいくかどうかはわからない、と風夜は言う
 だが、そちらと繋がりが持てれば、情報面が以前よりも充実する、とも

「…ど、どんな人、なんだ…?」
「会社社長…に、なる予定と言ったところかな。裏の事情にも詳しいよ…もちろん、都市伝説方向にも」

 ぴちゃり、指先についていたカスタードクリームを舐め終えて、風夜は口元を笑みの形に歪ませた

「まだ、今はこちらから一方的に知っているだけだけど……多分、あの人も「強硬派」や「過激派」に目をつけられる可能性のある人だ。狩りついでに関われるかもしれない」

 関わることができたら、うまく利用していこう、と笑う風夜
 その風夜の言葉に、アーサーはそうだな、と頷いた。ギルベルトも、こっくりと頷く

 ……聞く限りだと、その情報源になりそうな者、と言うそれも、まっとうな者とは思えないが
 それでも、自分達の役に立つというのならば。自分達を害してこないならば、それを利用するだけだ


 全ては、自分達の復讐のために
 全ては、自分の大切な存在を護るために


 その為に手段を選ばないのは、アーサーも風夜も、全く同じなのだ
                                                                                                                                                         to be … ?
199 :吸血鬼、拾いました  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/14(水) 17:07:55.47 ID:SZjQhtsP0
鳥居の人に焼き土下座!!orz
あちらのシーンからの続きっぽいシーンでありました
風夜がоNoについて知らない感じだったので、その辺りについてのフォローっぽい事も兼ねてみた
便利なようでそうでもない情報源。ま、どちらにせよ「組織」的に裏切り者っぽいよねって事で
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/14(水) 17:55:51.70 ID:CgAbIxbH0
>>198
乙ですー!
「社長になる予定」……ああ、あのブラックな所の人かwwww
201 :吸血鬼、拾いました  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/14(水) 19:19:29.30 ID:A2Ra5A8A0
>>200
(言えない……!まだ未搭乗のキャラの事だなんて……!!)
202 :吸血鬼、拾いました  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/14(水) 19:41:22.63 ID:A2Ra5A8A0
搭乗ちゃう、登場だよ俺しっかりしろ俺
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/14(水) 22:00:35.53 ID:EcaGSZkAO
花子さんとかの人乙でしたー
ふおぉ、反応ネタありがとうございましたの
アーサーたんはブラックコーヒー派と(メモメモ
風夜くんのシュークリームの食べ方に無性にシンパシーを感じる
そして新登場の社長さんに期待
204 :吸血鬼、拾いました  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/15(木) 14:53:20.47 ID:N1fg1UPc0
>>203
>風夜くんのシュークリームの食べ方に無性にシンパシーを感じる
(言えない……っ!奴のシュークリームの食い方が、俺の某店のパイシューの食い方にそっくりだなんて……っ!)
(…あ、俺は上の皮食べる時、ちゃんと中のクリームつけながら食ってますからね!?指も口の周りもあまり汚さないよう食べてますからね!!)

社長に関しちゃ、一応設定とネタはできてるんで、しっかりと話の流れができ次第こそっと出したいですね
205 :気分転換 [sage]:2012/03/16(金) 00:50:59.77 ID:OYj4N5jSO
今にも雨の降り出しそうな曇り空だった。
かと言って、傘を持ってない事を気にする余裕もなく、走る。
人がいれば助けを求めるが、残念な事に、ここは学校町北区、所謂田舎であり、山道とも言えるこの場所には農家のおじさんさえ見当たらなかった。
この道に入る前には、轢き逃げの目撃者を捜しているという看板もあったが、こんな場所では絶望的だろう。
「お兄ちゃん!まだ追って来てる!」
後ろから聞こえる声と、しっかり握られた声から、妹の柊子がちゃんといる事を確認する。
「ああもう!何だあれ!?キ○ガイか!?」
「あれ『ひきこさん』だよ!間違いない!」
俺は都市伝説には詳しくないが、柊子はオカルトの知識が豊富だ。
だから、柊子が言うなら、今、俺達を追ってきている、子供を引きずっている顔面がぐちゃぐちゃの女は、その「ひきこさん」とやらに似ているんだろう。
「つまり、その何とかさんに成り切った変人さんって事か!」
「えっと…………そうだと思う!」
頭のおかしい奴に捕まれば、何をされるか分かったもんじゃない。
せめて、警察の一人でもいないかと思っんだが、
「マジかよ……」
「そんな……」
俺達が走って来た道は、突然ぷっつりと途絶え、何処に行くかも分からない申し訳程度の獣道が山へと続いていた。
「柊子!」
「お兄ちゃん!」
「俺」「私」「「が囮になるから逃げ」」「ろ!」「て!!」
「…………」
「…………」
しばし沈黙。
ひきこさんとやらは、何故かのんびりと横向きに歩いてくる。
「妹を置いて逃げる兄が何処にいる!」
「で、でも!あれは、私が!お兄ちゃんじゃ、無理で!私が!」
「ええい!黙って逃げてろ!!」
つべこべ五月蝿い柊子を獣道へ押しやる。
何処へ続くかは知らないが、この辺りで熊が目撃されたという話は聞いた事がない。
キ○ガイを相手にするよりは安全だろう。
「行くぞ!キ○ガイ!」
「待って!お兄ちゃん!」
死ぬ気は無いが、柊子に死なれる気も無い。
ひきこさんに追い付かれない距離を空けつつ、逃げ回る。
そうして、柊子から少しでも引き離す。
人と出会えば助けも求められる。男が二、三人いれば押さえ付ける事もでき、
「つーかまえーたぁー」
……は?
気がつくと、俺の足をひきこさんが握っていた。
おかしい。
俺に意識を向けさせる為に、接近したが、こんな、一瞬で距離を詰められる程ではなかったはずだ。
あんな速度で移動できる人間が、いるはずがない。
「……化け物」
「うひっ……」
奇妙な声を出し、直後、ひきこさんが走りだす。
当然、俺の足を握ったまま。
「お兄ちゃん!?」
「ずっ、ぅおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ…………!!」
一瞬で、柊子の姿が見えなくなる。
206 :気分転換 [sage]:2012/03/16(金) 00:51:56.83 ID:OYj4N5jSO
ひきこさんが、俺を引きずる。
服が破れる。皮膚が削れる。血が滲む。肉がえぐれる。
「ぃっ……っ、っ……!……っ!?………………!っ!?」
言葉になら無い痛み。
何がなんだか分からなくなる。
「ひゃはははははははぁ……」
ひきこさんの笑い声が聞こえる。
そして、

「おい、大丈夫か?」

気がつくと、何処かの部屋にいた。
「……え」
「ひっでえ恰好だな、おい」
部屋には一人の男。
天井から伸びた縄が、男の首にぐるりと輪を作る。
その姿は、自殺にも見えたが、窓から見える三人の男に、今にも開きそうな床は、どちらかと言えば、
「死刑の……?」
「ご名答」
死刑執行直前の犯罪者に見えた。
「お前、助かりたいか?」
「助かる……?」
「お前、生きたいか?」
「何を……」
「今、お前は『ひきこさん』の野郎のせいで死にかけている」
そこで、さっきまでの事を思い出した。
「っ、俺、何やってんだ、こんなとこで」
早く戻らないと、あの女が柊子を襲うかもしれない。
「戻っても死ぬだけだぜ」
「何、……?」
「なあ、俺と契約しないか」
「契約?」
「そうだ」
人相の悪い男はニヤニヤと笑っている。
「死にたくないだろう?助かりたいだろう?守りたいだろう?戦いたいだろう?
 それなら、俺と契約しろ。力を貸してやるよ」
そう言う、男からは、人間とは思えない雰囲気が滲み出る。
夢か、現か、分からないが、今の俺には力がいる。柊子を守らないといけない。
だから、
「分かった。力を貸せ」
あの化け物と戦う為に、この化け物と契約をしよう。
「よおし。坊主。名前は?」
「松ヶ崎 桜太だ」
「オーケーだ。一緒に正義の味方でも目指そうぜい」
突然、ガタンと音がして、床が開く。
そうして、男は吸い込まれるように、階下へと落ちていく。

207 :気分転換 [sage]:2012/03/16(金) 00:52:49.09 ID:OYj4N5jSO
「っ………………っ、!……ぁ……!っ……え??」
気がつけば、俺はひきこさんに引きずられていた。
「今、のは……?」
「…………契約者?」
ひきこさんが立ち止まり、俺を見る。
「………………」
「……?」
なんだか分からないが、悩んでいるように見えた。
まあ、良いや。
とにかく、動きの止まっている間に、逃げ
「……このまま[ピーーー]」
ようと思ったら、ひきこさんが再び走りだした。
「いっ…………?…………あ?…………え???」
服が破れている。皮膚が削れている。血が滲んでいる。肉がえぐれている。
もちろん、それは痛い。
けれど、服が破れない。皮膚が削れない。血が滲まない。肉がえぐれない。
新たな傷がつかない。
ひきこさんがいくら俺を引きずっても、痛くも痒くもない。
「何だ、これ……?」
異変には、ひきこさんも気がついたらしい。
驚いたような目で、俺を見た。
「今だ!」
痛くない。傷もつかない。慌てず、冷静に対処する。
俺の足を握っているひきこさんの腕を掴み、そのまま、引き倒すように腕を引く。
バランスを崩し、倒れかけたひきこさんが、
「ぅおあっ!?」
俺の足を離し、俺の腕を振り払うように、大きく腕を振った。
人間が腕を振っただけではおよそ有り得ない距離を飛び、地面にぶつかる。
「あ、ぐっ……」
普通に痛い。
無敵にでもなったかと思ったが、どうやら違うらしい。
とにかく、すぐに起き上がり、ひきこさんを捜すと
「おい……」
ひきこさんは、全力で走り去ろうとしていた。
「待ちやがれ!……お?」
身体が動かない。身体に力が入らない。
立つ事もできず、そのまま仰向けに倒れる。
「あ、ダメだ。疲れた」
……本当に無理だ。
一瞬だけ、眠ろう。
すぐ起きて、柊子を迎えにいかないと。
そうして、目を閉じかけた俺の視界に
「おーい、生きてますかー」
黒い服を着た、茶髪にサングラスの男が入ってきた。

208 :気分転換に短期連載 [sage]:2012/03/16(金) 14:13:31.72 ID:OYj4N5jSO
「と、いうわけでですね」
黒服の男が喋っている。
「人々に話される事で、都市伝説は形を持ち、信じられる事で力を持つようになるんですよ」
さっき、日付が変わり外は暗い。
「都市伝説の中には、その物語に則り、ただ自分の存在を教えるため、人間が嫌いで、様々な理由から人を襲うモノがいます」
俺としても、愛しの我が家にこんな怪しい男を連れ込みたくはなかった。
「また、人間を守ろうとする都市伝説もいます。彼らは人間と契約し、形を変え、力を得る」
ひきこさんに引きずられた怪我は、この男の持っていた薬であっという間に治った。
その借りもあるから、無下には扱えない。
「都市伝説から人間を守る。害を成す契約者を取り締まる。その他色々。都市伝説と人間の平和を守る為に、我々『組織』は活動しているんです
 分かりましたか?」
「はい!」
柊子は熱心に聞いているが、俺は
「ええと、…………分かってくれました?」
「あ、悪い。聞いてなかった」
どうにも信じて良いのか悩んでいた。
「ええぇ〜、せっかく頑張って説明したのに……」
「結局、お前は俺に何の用なんだよ」
「もう、お兄ちゃん。そんな言い方したらダメだよ?」
「良いんです。慣れてますから。まあ、何の用事かって言うと、つまりですね。
 松ヶ崎さん、貴方、組織に入りません?」
そう言って、黒服の男、D-No.809は握手を求めるように、手を差し出した。

209 :気分転換に短期連載 [sage]:2012/03/16(金) 14:14:08.64 ID:OYj4N5jSO
――――――
――――
――

何処か。組織の支部にて。
部屋に入ると女がいた。もちろん組織にいるのだから黒服の女が、少し退屈そうに何かの画面を見ている。
「んー……」
何か考え事をしているようだ。
「どうしたんですか?」
とりあえず尋ねてみる。
「貴方、この子、誰だか分かるかしら?」
そう言って、女は画面を指差す。
監視カメラの映像だろう。そこに写っているのは一人の黒服の少女。
「誰って?」
黒服だろう。
「ここに出入りしているの誰とも違うのよ」
「誰ともって……」
まさか黒服の顔全員覚えてるのか?
「無個性なお人形どもなんか覚える必要なんかないのよ?それを除けば、ここには能力持ちは五十人もいないんだから、覚えれるわよ」
さいですか。
「まあ、とにかく、俺も見た事無いですよ。他のとこから誰か来るって話も聞いた事無いです」
「そう、じゃあ、少し調べてみましょうか」
退屈そうに女は言う。
「私達のアジトに侵入した人を野放しにはできないわ」
まあ、俺達過激派の住家だしな。色々見られたらマズイ物もあるし。
しかし、あの女に見つかるとはなあ……
あーあ、可哀相に。

――
――――
――――――

210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/17(土) 01:39:18.65 ID:8XBRQRBh0
最近、『摘発を免れた某教団の自動小銃が残っている』の能力を使った後に咳が出るようになった。

指示された都市伝説契約者の処理を終えた後に咳き込んでいると、見慣れたはずの光景に違和感を覚えた。



射殺した討伐対象に抱きしめられるように子供が倒れていた。
穴の開いた小さな体から新しい血溜まりが広がっていく。
空虚な瞳がこちらを見つめていた。


予想外の出来事に頭が真っ白になる。
茫然とする中、義眼が丸くて白い物体を捉えた。

「無関係な人間まで手に掛けるのか…やっている事は野良の都市伝説や『組織』の連中と変わらんな」
懐かしい声が発したのは、欲しかったものとは異なる辛辣なものだった。


「違う…違う…あんな所にいたあの子が悪いの…私のせいじゃない、私は悪くない!」
「ふん…性根まで腐りきっていたとはな。さすがはあの両親の子供といったところか」
「お父さん達は関係な――げほっげほっ
 ……!先生まって…」
「今日はこれだけ言いに来たのだ。不要な人間に都合のいい時ばかり縋られるのは鬱陶しい事この上ないからな。
 そうなっているのはお前の自業自得だ。私を巻き込むな、下種が」
激しく咳き込み、口元を覆っていた掌にわずかに血が混じった。
その場を走り去って行くニャンコ先生の姿が霞み、意識が途絶えた。





「使えない奴め、余計な手間をかけさせやがって」
「我々の実験に支障が出たらどう責任を取るつもりなんだろうな」

数人の研究員が、様々な薬剤を被験体へ投与し、現場の片づけをしている。
それが終わると、意識の無い被験者を引き摺るように車まで移動を始めた。

「安定剤の投薬量が増えてきたか…そろそろ引き継ぎ候補の検体の調整に入ったほうがいいな」
「こいつには、せいぜい壊れるその瞬間まで我々の役に立って貰うとしよう」



―――――



研究所内の休憩室に、甘ったるい匂いが漂っていた。
原因は、ニエヴェスが買ってきた色々な種類のドーナツ。(計三箱)
彼女がドーナツを大量に買ってくるのは、研究員たちへの差し入れだとかポイントを貯めて自室にぬいぐるみを増やす為とか色々と言われている。

甘ったるい匂いに早々に根を上げたレナードを余所に、ニエヴェスは順調に一箱目を攻略している。
「他の派閥の黒服からは、何も言われてない?」
「うん。目立った事も咎められるような実験もしてないつもりだし……穏健派の腰抜け共にとやかく言われる筋合いも無いしね。
 けど、もしここが襲撃されたらニエヴェスも他の皆と一緒に逃げるんだよ?資料と素材、人員がいれば、研究は続けられ――」
「いや」
即答だった。

「君も大事なチームの一員なんだよ?今まで研究を共にしてきた仲間が欠けるのは嫌だよ」
「チームの一員なのは、レナードだって同じ。
 …死ぬつもりはないよ?私にはまだ知らないこともたくさんあるし、実験だって続けていきたいもの。
 あんまり考えたくないけど…私の『心霊医術』ならレナードが怪我したときにも少しは役に立てるから」
「…ニエヴェス……ありがとう」


「ところで……それ、何個目…?」
「7個目。レナードも食べる?」(もむもむもむもむ)
「いや…気持ちだけ貰っておくよ」

続く…?
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/17(土) 01:47:08.45 ID:8XBRQRBh0
皆様投下乙ですー
>>44-48様、申し訳ありませんでした
勝手ながら>>44-48様の時系列前後の話を書かせていただきました
そちらのご都合に合わなければ切り捨てて下さい
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/17(土) 03:13:14.82 ID:3ixJ3pyAO
ああこんな時間にシュークリーム食べたい
ケーキ屋仕様の生クリームたっぷりのやつとか
店頭で実演販売してるパイシュー的なものが

>>205-209
短期連載の人乙ですー
うんあれだ、妹を守るおにーちゃんは浪漫だよ!
吉と出るか凶と出るか、桜太くんの選択が気になりますの
あと謎の黒服少女とか

>>210-211
犬神憑きと怪人アンサーの人乙ですー
とうとう蛍ちゃんに死刑宣告が…
あんなkz両親のためにうら若いお嬢さんが何もかもをすり減らしていいものかいやよくない(反語)
213 :短期連載 [sage]:2012/03/17(土) 12:43:27.74 ID:ufQvCuASO
「いやぁ、ありがとうございます」
茶髪の黒服、D-No.809が、たぶん本人に悪気は無いんだろうが、どこか釈にさわる笑顔で言った。
「ま、その辺のバイトより収入が良いからな」
結局、俺は組織の仕事を引き受ける事にした。
都市伝説の話は信じるか悩んだが、他にひきこさんや、俺の傷を治した薬の説明ができないから、受け入れる事にした。
それに、自分の中にいる「何か」が本当だと語りかけてくるのだ。
本当の事なら、あんな化け物がそこら中をうろうろしている事になる。
そいつらどこかで誰かを襲おうが関係ないが、柊子が襲われる可能性があるなら話は別だ。
しかし、
「それでは、お気をつけて」
「いってらっしゃーい」
おかしいだろ。
「なんで柊子までここにいるんだ!」
「…………?」
不思議そうな顔すんなよ……。
「お前な、ついて来たら危ないだろが」
「えー、じゃあ、お兄ちゃんの目の届かない場所の方が安全?」
「それは……」
どうしよう。良い反論が思いつかない。
「大丈夫ですよ。何かあったら私が守りますから」
「いや、お前信用できないし」
「酷い……」
そんなこんなで、俺の初めての都市伝説退治が始まった。
214 :短期連載 [sage]:2012/03/17(土) 12:44:53.41 ID:ufQvCuASO
路地裏、といっても30分に一人くらいは通る薄暗い道に、女がいた。
真っ赤なワンピースに、大きなマスク、手には赤黒い汚れのついた鋏。
俺が近づくと、そいつは血走った眼で俺を睨み、
「私、綺麗?」
と言った。
「柊子から聞いた口裂け女そのままだな」
「私、綺麗?」
「さて、と」
「私、綺麗?」
それしか言えねえのかよ。
「私、綺麗?」
言えないみたいだな。
仕方ない。
「不細工だな」
「…………」
怒ったか?
とりあえず、挑発して様子を見
「ああぁあぁぁぁあぁああぁ!!」
「っ!?」
ようと思ったがその前に攻撃してきやがった。
動いたのは分かったが、速すぎて動きが見えない。
だから、とりあえず横に跳ぶ。
その瞬間、脇腹を口裂け女の鋏が掠る。
「いってぇ……!!」
腹から血が出る。
と言っても、傷は深くない。せいぜい数ミリ。命にかかわるような物じゃない。
だから
「もう大丈夫だ」
俺は死なない。
口裂け女の動きは速い。その動きに対応できず。気がつくと、鋏が俺の目の前にあった。
俺の頬を裂くように、口裂け女は鋏を振るう。
けれど、
「…………??」
「残念。効かない」
俺は無傷だった。
俺は『死ななかった死刑囚は釈放』と契約した。
能力は、受けた攻撃で死ななければ、次から、同じ人物からの同じ攻撃は効かなくなるという物。
さっき、この口裂け女の鋏による攻撃を受けた。が、掠っただけで死んでいない。
だから、この口裂け女の鋏はもう俺には効かない。
「まあ、攻撃には一切使えないけどな」
「?……??…………?、?……?」
頭にクエスチョンマークを飛ばしながら、口裂け女が鋏を振るう。
もちろん、痛くも痒くも無い。
こいつ、あんまり頭良くないな。狂ったように鋏を振り回すだけだし。
まあ、そのままその場所に立っているならやりやすい。
俺は、ソレを口裂け女の頭に突き付ける。
俺の唯一の攻撃手段、黒服から借りた、組織謹製の、光線銃。
「はい、終わりっと」
……いや、これ本当に借りてよかったのか?
結構な威力あるぞ?
簡単に頭撃ち抜いたぞ。
………………ま、いいか。
悪いのは貸したアイツだ。
こうして、俺の初めての都市伝説退治は、
「あ、終わってる」
………………おい。
「?どしたの、お兄ちゃん」
「柊子。なんでお前がここにいる」
「お兄ちゃんが心配だったからだよ!」
「黒服は?」
「さあ?置いて来ちゃったから」
守るって言っただろうが、あの役立たず……後でぶん殴ろう。


215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/17(土) 13:15:58.19 ID:FmDuXA3S0
>>205-209>>213-214
短期連載の人乙ですー!
一度受けた攻撃が聞かないという事は……即死攻撃でもない限り、絶〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜対に、負けない!と(ぉぃ
それにしても黒服……頼まれたんだったらちゃんと守ってやれよ……
珍しく正統派(?)の黒服みたいですが、「わざとなのか?」とつい勘ぐってしまう……守りながらの戦いになりそうですね

>>210
犬神とアンサーの人乙ですー!
機械的に任務をこなしていて、子供に気付けなかったとは……
ニャンコ先生にも完全に見放され、いよいよカウントダウンが近づいてきましたか
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/17(土) 23:39:24.11 ID:8XBRQRBh0
短期連載の人様乙ですー
初撃をしのげば無敵に…お兄ちゃん、頑張って妹さんを守ってあげてください

>>213
>あんなkz両親のためにうら若いお嬢さんが何もかもをすり減らしていいものかいやよくない(反語)
お、落ち着いてください
自分の過失で子供殺しといて「私は悪くない」とか言うような奴ですよ!?

>>214
>ニャンコ先生にも完全に見放され、いよいよカウントダウンが近づいてきましたか
近づいてきました!ワクワクが止まりません
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/18(日) 01:02:43.13 ID:SVD3Q6Xg0
思えば全然こっちに来てなかった……orz

>>198
花子さんとかの人乙です〜
風夜くんの食べ方可愛いwwww
そして新キャラ来る!wktkせざるを得ない!

>>205-209 >>214
短期連載の人乙です〜
妹ちゃん可愛い、妹ちゃん可愛い
黒服少女も気になるな……
そして便利な能力ねン、光線銃も持ってるし今後が楽しみなの

>>210
おねーちゃん乙です〜
ニャンコ先生のトドメの一言&蛍ちゃんとのお別れの日が近づく、か……
ところでレナードさんとニルヴェスさんの会話がきゅんきゅんするんです、百合妄想が止まらないんです許して下さい(
218 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/18(日) 10:22:00.65 ID:d3LFkCiSO
「………………」
目が覚めた。
時計を見ると、まだ朝の七時。
「………………」
今日は日曜だし。寝ていよう。
「…………おい」
と思ったんだが。
俺の布団が、俺一人とは思えない盛り上がり方をしている。
布団の中を覗けば、
「……おい、起きろ」
「ん〜?今日は休みだよぅ……」
柊子がいた。
「寝るな。起きろ」
なんで柊子が俺の部屋で寝てるんだ。
「むぅ〜……なぁにお兄ちゃん……夜ばい〜?」
「しねえよ!!」
「しないの〜?」
「寝ぼけて無いで起きろ」
こいつは何を言ってるんだ。
「ん………………おに……ちゃん…………」
……ああもう。
良いや。このまま昼まで寝てしまおう。
「……ったく」
そっと、柊子の頭を撫でてみる。
「ん〜♪」
ちゃんと、可愛い妹がそこにいた。
219 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/18(日) 10:22:51.76 ID:d3LFkCiSO
――――――
――――
――

口裂け女との戦いからしばらく後。
「こんなもんですかね」
できた書類を整え、ため息を一つ。
桜太君の任務の報告書だ。
口裂け女以降、数回任務をしてもらいましたが、とくに問題なし。
このまま経験を積めば、充分な戦力になってくれるでしょう。
当面の問題は三つ。
一つは、能力の都合上、必ず敵から一撃喰らう事。
まあ、これは一撃必殺の能力と戦わせなければ良いだけですし、回復用の都市伝説でも常備すれば大丈夫ですね。
もう一つは、彼の妹、柊子さん。
いつまでも、私が守っているわけにもいけませんし。
……急にいなくなるし。
そのたびに桜太君からドロップキックをいただく事になりますし。
最後の問題は、殺人ができるかどうか。
これによって対契約者戦に出せるかどうかが変わりますからね。
「ん?」
ふと気がつくと、後ろから書類を覗いている黒服がいました。
「あの、どうしました?」
「お前の担当してる契約者、松ヶ崎って名前なのか」
「え、はい」
あの、質問に答えてください。
「…………松ヶ崎、兄妹。桜太……柊子……」
「あの……」
「ん、いや、悪い。なんでもない」
えぇー……
そんな思わせぶりな事言って立ち去らないでくださいよ……
ん、まあ、気になるなら後で自分で調べれば良いですよね。
それより、そろそろ報告書を提出しに行きましょうかね。

……………………あれ、今の黒服、過激派?

――
――――
――――――

220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/18(日) 11:18:58.13 ID:SVD3Q6Xg0
ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぅ!!!
俺のシスコン魂を的確に揺さぶりやがるぜさすが!
でも嫌な予感しかしないぜちくしょう!
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/18(日) 11:58:38.77 ID:d3LFkCiSO
そういえば、名前は
サクラタとヒイラギコ
変な名前だな
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/18(日) 14:26:48.06 ID:SVD3Q6Xg0
普通にオウタとシュウコって読んでたぜ…orz
でもそれも新鮮で良いね
223 :邪気殺し † Rangers ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/19(月) 01:04:20.78 ID:iE+eKRlA0
「きりゅりりゅりしぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「よーし、このまま兄ちゃんのとこまで飛べ、「応龍」!」

四枚の翼を広げ、「応龍」は学校町の上空を飛ぶ
その背に立って下を見続け、清太は一人町に残った日天を探していた
町中に溢れ返るジャガー達に戦いを挑んだ彼を手助けする為に

「待ってろ兄ちゃん……絶対生きててくれよ!」

願い、彼は「応龍」で空を翔ける
しかし、その願いは叶わぬものとなる
「応龍」の身体が、がくんと傾き、清太は龍の皮膚を掴んで落ちそうになった身体を支えた

「おわっ!? ど、どうした「応龍」――――――――――――!?」

彼は目を疑った
「応龍」の顔が、無い
何かに抉られたように下顎のみが無惨に残り、赤黒い血をぴゅうぴゅうと噴き出している
思わず口を押さえる精太だったが、直後に死した龍が落下を始めた
当然、飛行能力の無い彼も共に落ちてゆく

「おわああああああああああああああああああああああ!?」

事切れた龍は彼の視界の中、粒子となって掻き消える
この状況をどう切り抜けようかと、頭の中を掻き回した

「ッ清太! 足ヲ水晶ニ変エヨ!」
「お、おう!」

清太はセキエを握りしめると、それは即座に彼の身体に同化して、
2本の足を冷気が下りる透き通った美しい水晶に変化させ、着地の寸前に2本の水晶を突き立てた
びりりっ、と身体が震える

「………いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
 バカ野郎! 滅茶苦茶痛ぇじゃねぇか!」
[知ラン。死ナナカッタダケマシダロウ?]
「この野郎…まぁいいや、それより一体何が起こったんだ?」

足を元に戻してきょろきょろと辺りを見回すと、己の周囲がやけに陰っている
ふと見上げ、思わず目を見張った

「ッ、『イーヴィル・ブレイカー』!」

右手を水晶に変え、頭上に上げる
“影”は迫り清太を襲うが、全ての衝撃を邪気として水晶が吸収し無傷で済んだ
ばさっ、と大きな羽音と咆哮が聞こえた

「ききゅあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
[ム……コレハ……]
「と、鳥!?」

月明かりに黒光りする翼、鋭い爪と嘴、眼は血のように赤く頭に毛は無かった
猛禽の姿をした、あらゆるものを抉り取る魔神―――

[「シェコトヴァッチ」……確カソンナ名前ダッタ筈ダ]
「兄ちゃんの「応龍」を殺したのもこいつか……よくもぉ!!」

「水晶は永久に凍ったままの氷」の能力で作り上げた冷気の塊を発射する
「シェコトヴァッチ」は黒羽を散らしながら闇夜の空へと舞い上がった
冷気の弾丸を何度も射出しても、ひらり、ひらりと躱される
遂には、足で弾丸を空間ごと“抉って”投げ返すという荒技までやってのけた

「うわっ!? くっそ、すばしっこいし強いぞこいつ!」
「ききゅあああああああああああああああああああああああああああ!!」
[仮ニモ“魔神”ダ、油断スルナ……来ルゾ!]

甲高い咆哮をあげ、「シェコトヴァッチ」が爪を振り上げて清太に襲いかかる
が、不意に見当違いの方角へ顔を向けて空中でブレーキをかけたかと思えば、

「石破ァ! 天驚けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

怒号に近い声と共に光弾が飛んできた
真っ直ぐに「シェコトヴァッチ」を狙っていたそれを、いとも容易く足で抉り取った

「『大噴火』ァ!!!」

アスファルトが罅割れ、赤々と煮え滾る溶岩が噴出する
清太は死に物狂いで安全な位置に避難したが、
「シェコトヴァッチ」は掴み取った光弾をぶつけて相殺し、上空へと舞い上がった
224 :邪気殺し † Rangers ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/19(月) 01:05:12.89 ID:iE+eKRlA0
「ぜぇ、ぜぇ……あ、あの技ってもしかして」
「清太ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 大丈夫かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ぞくりと背筋に寒気が走ったのも束の間、彼は目の前に現れた少女に骨が悲鳴を上げる程強く抱きしめられた
ショートパンツを穿いた、短めで赤みのある茶髪の少女
清太のクラスメイトであり、「嘘から出た実」の契約者――空出 実

「うぎゃあああああああああああああああお前の所為で大丈夫じゃないいいいいいいいいいいいいい!?」
「助けに来たぞ清太ぁ!!安心して結婚しよう!!」
「バカバカバカバカバカ放せ放せ放せ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅ!?」
「何をやっちょるんじゃァ!! 下らんもんは後にせェ!!」

そしてもう一人
可愛らしいフロントツインテールだが、目つきが恐ろしく鋭い少女
「ミノア噴火」の契約者にして、空出 実の姉―――空出 火音

「っちょ、火音姉ちゃんまで!?」
「ふん、ワシにとったら貴様がここにおることが不思議で敵わんがのォ?」
「姉者! 清太だって一生懸命戦ってたんだ! そんな言い方は―――――――」
「実!後ろ!!」

清太の声に、彼を抱きしめたまま振り向いた
近付いてくる「シェコトヴァッチ」に咄嗟の反応もできる筈も無く、茫然と立ち尽くした――――

「そうは問屋が卸しやしませんときたもんで」

ぴしゃんっ!!と甲高くも鈍い打撃音が響き、次にぼぐっ、という鈍くしかない打撃音
我に返れば、清太と実の前にいた「シェコトヴァッチ」は彼方へと飛ばされており、
その代わりに2つの人影が映った
内の一つを、清太は見覚えがあった

「も、もしかして、アクセラレーター!?」
「……久しぶりだな」

無愛想にそう答えたのは、男とも女ともとれる顔立ちの人物
あらゆるものを跳ね返す事が出来るその能力から清太に『アクセラレーター』と呼ばれている、天沢 翔騎
その時、翔騎の隣に立っていた、場違いな袴姿の高校生くらいの少年が鉄扇を広げて大袈裟な声を出した

「おやおやこれは驚いた、お前さんにもご友人さんがいらっしゃったとはねぇ
 無口なもんですからてっきりココロちゃんとしか交流がないかと思ってたんですが、へぇ、不思議なこともあるもんで」
「黙れ」
「いやそう硬い事を言わずにどういう経緯で出会ったかくらい話してくれても」
「…兄ちゃん誰だ?」
「おっと良くぞ聞いてくれました、知らざあ言って聞かせやしょう
 あたしゃね、姓は扇ヶ野原宮崎ってんですよ、長いでしょう?
 名はもっと長いんですよ、耳かっ穿ってよぉく聞いといて下さいね?
 寿限無寿限無五劫之擦切海砂利水魚之水行末雲来末風来末食寝処住処藪小路之藪柑子拝歩拝歩拝歩之朱鈴願朱鈴願之紅鈴代紅鈴代之本矛飛之本矛奈之長久命之長助
 全部繋げて名乗りますと、扇ヶ野原宮崎 寿限無寿限無五劫之擦切海砂利水魚之水行末雲来末風来末食寝処住処藪小路之藪柑子拝歩拝歩拝歩之朱鈴願朱鈴願之紅鈴代紅鈴代之本矛飛之本矛奈之長久命之長助ってんですよ
 どうだい、覚えられたかい坊っちゃん?」

清太はぽかーんとしていた
一緒に聞いていた実もやはりぽかーんとしていた

「“Reflector”! “Reader”! 何処ほっつき歩いとったんじゃァ!?」
「おぉっと“Range”ちゃん、それは無いんじゃないですかい?
 あたし達もこのサファリゾーンとなった町をめぐって観光してた訳じゃぁないんですよ
 それに幾ら契約者と言えどあたしだって人間、漫画のスーパーマンのようには―――」
「もういい。喋るな」

呆れたように翔騎が言い放つと、どっと風が押し寄せる
激しい羽音と共に、猛禽がやってくる

「くそっ、しぶとい鳥だな…!」
「よし!行くぞ清太ぁ!!」
「え、何処へッって、おわっ!?」

実に左腕を引かれ、清太は「シェコトヴァッチ」の前に出た
ちらと実に目をやると、左手を掴んだ彼女の右手が何やら燃えている
ハァ、と呆れた様子で溜息を吐いた彼は、何かを理解したようだった

「…………あぁ、分かったよ! 今日だけだからな!」
「有難う清太!じゃあ、せーのぉっ!」
「「俺達のこの手が真っ赤に燃えるぅ!!」」

互いに手を繋いだまま、実の右手は激しく燃え上がり、清太の左手は静かに冷気が下りる

「しあわs「希望を掴めと轟き叫ぶぅ!!」」

熱気と冷気が混じる繋いだ手を差し出し、
225 :邪気殺し † Rangers ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/19(月) 01:06:01.13 ID:iE+eKRlA0
「「爆熱!ゴッド・フィンガァァァァァァァァァァ………!」」

互いの手で作り上げるは、真円
…否、実はハートの片割れのようで、清太は半月のようだった

「ききゅあああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「石!」
「破!」
「ラァb「クリスタル!天驚けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!」」

2人の手から冷熱双方の属性を持った巨大な光弾が「シェコトヴァッチ」に直撃
炎上そして氷結、相反する現象が同時に猛禽を襲い、墜落し、
弱々しくもけたたましい断末魔をあげ、「シェコトヴァッチ」は夜闇に消えた

「っはぁ、よ、よし、倒した………ん、どうした実?」
「…何で一緒に言ってくれないの?」

潤んだ目でそう言われ、清太は一瞬たじろいだ
同時に顔が真っ赤になったが首を左右に振り、怒ったり謝ったりを繰り返した

「ほーぉ、坊っちゃん達もなかなかやるようで
 これはぼさっとしてると早い内に抜かれてしまうかもねぇ、おぉ怖い怖い」
「何を下らん事言うちょる、終わった訳じゃァないけんのォ!!」
「…“Range”の言う通りだ」

木々の軋む音
屋根伝いに人型の、空からは翼の生えた猛獣達が現れる

「っげ、まだいるのか!?」
「んー……ジャガー共とかけまして、10月の稲と解きます」
「…その心は」
「身乗り出して(実りだして)集り(田狩り)始めます。御後が宜しいようで」
「貴様等帰れ!! 何ならワシがあの化物諸共溶岩の海に沈めてくれようかァ!!」
「姉者落ち着け!」

そうこうしている内にジャガー達が一斉に距離を詰めた
唯一清太が戦闘態勢を取ったが、

「「「ババリバ―――――――――リッシュ!?」」」
「……ッ!?」

目の前で、それらは何かに弾き飛ばされた
その何かがようやく人間であることが分かると、ジャガー達は空から降ってきた氷柱に串刺しにされて息絶えた

「………2.64……それがお前達の絶望へのタイムだ」
「みんなー、おーまーたーせー」

ストップウォッチを片手に持った青年と、何故か彼に背負われている肩まで髪を伸ばした女性
「タキオン」の契約者――未央 超(ミオウ コユル)と、「つらら女」の契約者――柊 氷雨(ヒイラギ ヒサメ)

「悪い、遅くなった」
「…問題無い」
「無い訳が無かろうが馬鹿が!」
「お、“Rapidity”の旦那さんと“Refrigerator”の奥さんじゃないですか」
「まだ婚約していないし、するつもりは毛頭ない」
「もー、超くんってば照れ屋さーん」
「降りろ」

渋々超の背から降りる氷雨
その一連でようやく自分を取り戻した清太は、改めて「すげぇ」とだけ呟いた
なんせ、彼は契約者としては半人前であり経験も浅い
師匠である裂邪やその弟、従兄弟、友人以外の契約者と関わったことが無い為、強く目に焼きついた
だが感心している場合でないことを言い聞かせて周囲を見回す
未だにジャガー達がぞろぞろと集まり始めている

「よし……こいつらの邪気をぶっ殺せば、この場は何とか…!」
「清太! 一緒に戦うぞ!!」
「言われなくてもッ…いや一緒ってのは……くそっ、良いよ分かったよ!」

右腕を水晶に変え、戦闘の構えをとる
無論、態勢を整えたのは彼だけではない

「R-No.所属契約者集団『Rangers』が一人、“Rapidity”……“光速”の超、任務を開始する」
「同じく“Refrigerator”、“冷却”の氷雨、いっくよー」
「ふん、“Range”…“火竈”の火音が貴様等を消し済みにしちゃるけェのォ!」
「…“Reflector”、“鏡”の翔騎……出る」
「さてさて、それでは暫しあたしこと“Reader”、“語り手”の寿限無寿限無五劫之擦切海砂利水魚之水行末雲来末風来末食寝処住処藪小路之藪柑子拝歩拝歩拝歩之朱鈴願朱鈴願之紅鈴代紅鈴代之本矛飛之本矛奈之長久命之長助にお付き合い下さいなっと」

7人の戦士によって、戦いの火蓋は切って落とされる
今宵はまだ、終わらない                                                                          ...see you NEXT
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/19(月) 01:06:52.86 ID:iE+eKRlA0
これで…あと18話書けたら完結だ…げふぅorz
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/19(月) 22:47:00.97 ID:iE+eKRlA0
さすがに寂し過ぎやしないか……キャラスレ立てたのは失敗だったかな、あそこまで盛り上がるとは思ってなかった


やられ役に便利な都市伝説誰か知らないかしら
今日明日中に書く単発で使いたいのだけれど
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/19(月) 22:55:11.75 ID:Znf+QQSSO
つ「口裂け女」
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/19(月) 23:04:47.26 ID:fAWhD0JY0
こっちに書くネタ書けてなくて顔出しにくい俺もいるんだ、言わせんなよ心苦しい(書け

>>227
つ 人面犬
つ 注射男
つ 足売りババア
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/19(月) 23:08:44.08 ID:iE+eKRlA0
>>228
「口裂け女」ばっかり殺すのも可哀想じゃない!
って言われると思って訊いたのにwww

>>229
「足売り婆」は未だに使った事無いな……有難う、それにしてみる
よっしゃー美青年×ショタの濃厚キスシーン書くぞぉぉぉぉぉぉ!!
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/19(月) 23:15:15.14 ID:fAWhD0JY0
>>230
足売りババア、って意外と使われてないよな、確か

ちなみに俺は使おうと思ったんですが「あ、想定してるシーン、足売りババアじゃできねぇ」って気付いて没った経緯が(ry

そして、美青年×ショタもいいが逆もよいとは思わんかね?
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/19(月) 23:20:03.10 ID:iE+eKRlA0
>>231
>ちなみに俺は使おうと思ったんですが「あ、想定してるシーン、足売りババアじゃできねぇ」って気付いて没った経緯が(ry
どんなシーンだったんだ………

>そして、美青年×ショタもいいが逆もよいとは思わんかね?
魅力的だが今書きたいのはやっぱり美青年×ショタなんだ!
半泣きの猫耳レンきゅんに萌えちまった今、俺が欲してるのは美青年×ショタなんだ!
あぁんレンきゅんかぁいいよレンきゅん………リンたんとセットでいただきますしたい………
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/19(月) 23:23:37.50 ID:Znf+QQSSO
ロリコンの影の人は歌愛ユキとかが好きなのかと思ってたよ
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/19(月) 23:25:49.86 ID:fAWhD0JY0
>>232
>どんなシーンだったんだ………
前スレに投下したの「吸血鬼、拾いました」のシーン
足売りババアだと軽い出血させるとか無理だって気付いてさ
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/19(月) 23:32:14.28 ID:iq4qBKMZ0
ロリコン影雄は死んでしまったと聞いた
もうこの世のものではないようだ
236 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/19(月) 23:39:49.90 ID:KHMSidaP0
>>233
調べてみた
何これかわWiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!?
もっと早く教えてくれよ酷いなあもう愛してるぅ♪

>>234
あの時かwwwwww
なるほど、足取られたら普通なら失血死するわwww

>>235
ま、まだロリコンは健在だもん!
ちょこっと性の対象の範囲が広くなっただけだもん!
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/19(月) 23:47:57.61 ID:fAWhD0JY0
>>236
ところで、シャドーマンの人、ボカロにはまったんなら、「悪ノ娘」シリーズに関する物語が小説化されて本になって売られてるから、探してみたらどうだ?

>なるほど、足取られたら普通なら失血死するわwww
あぁ、まったくだ
238 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/19(月) 23:56:29.67 ID:NSjOo/z60
>>237
> ところで、シャドーマンの人、ボカロにはまったんなら、「悪ノ娘」シリーズに関する物語が小説化されて本になって売られてる から、探してみたらどうだ?
実は最寄りの書店で見かけてたり
当時『召使』すら未視聴だったので購入控えてたのよね
丁度明日VJ買いに行くし買ってみようかしら、例のラノベと一緒に
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/19(月) 23:58:42.80 ID:fAWhD0JY0
>>238
今んとこ、全部でシリーズ三冊くらい出てるぜー
四冊目もそのうち出る予定だとか
240 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/20(火) 00:06:32.28 ID:70yM0C0o0
>>239
一冊だと思ってた俺死亡orz
小遣い足りるかな……
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/20(火) 00:09:16.87 ID:myrVZpoK0
>>240
ま、一冊目だけ買って、続き買うかどうかは読んでから判断するって手もあるんじゃないか?
表紙だけでもチェックする、って手もあるし
あぁ、それと、小説は三冊だが、他に関連書籍が一冊出てた
242 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/03/20(火) 00:12:36.55 ID:KFWo7cyio
個人的に最近のお勧めはあきこロイドちゃん
https://camp.lawson.jp/krgsong/
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 00:17:53.06 ID:8q/7m8SCo
>>227
>さすがに寂し過ぎやしないか……キャラスレ立てたのは失敗だったかな、あそこまで盛り上がるとは思ってなかった
たとえキャラスレがなかったとしても、あの勢いのベクトルがそのまんまこっちに向くとは限らないものでして
盛り上がれる場所ができたのはいいことだと思うのですよ。需要もありましたし

>>229
その意見には同意せざるを得ない……
4月になったら本気出す

>>230,231
>よっしゃー美青年×ショタの濃厚キスシーン書くぞぉぉぉぉぉぉ!!
>そして、美青年×ショタもいいが逆もよいとは思わんかね?
ちょっとそこのご両人何を話しているのですか私も混ぜなさい
お兄ちゃんにちゅーされてドキドキしちゃうショタはかわいいと思います
思春期前〜芽生えくらいの少年の心を惑わす美青年まじ悪い人。だがそれがいい
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/20(火) 00:19:27.03 ID:myrVZpoK0
>>243
>ちょっとそこのご両人何を話しているのですか私も混ぜなさい
この発言で貴殿の正体を察することができたような気がするのは気のせいか


姉のせいで年下攻め好きな馬鹿が俺だよ!
畜生、はめられた!!
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 00:24:46.01 ID:GrEiHI7I0
>>242
すいませんあのこれ
パンツが見えそうで見えないんですけど
246 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/03/20(火) 00:32:46.35 ID:KFWo7cyio
>>245
はいているかもしれないが、もしかしたらはいていないのかもしれない
実際に中を見てみるまでわかりません

かなり大雑把な意味で量子力学の分野になってしまうのです
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 00:44:42.64 ID:8q/7m8SCo
>>244
>この発言で貴殿の正体を察することができたような気がするのは気のせいか
今の私はネオドイツの名無し……あなたの心に浮かんでいる人物とは何の関係もないただの名無しですよ(目逸らし)

>畜生、はめられた!!
幼いころから特定ジャンルに偏ったコンテンツを繰り返し見せることによって、あたかもそれが自分の性根であると認識させる
なるほど、これが洗脳か……おそろしい
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 00:52:39.07 ID:8q/7m8SCo
>>244
あ、せっかくなのでついでに
まだ未確定で申し訳ないのですが、もしかしたら契約者が一人、首塚にお世話になるかもしれません
その際はまた改めて相談させていただきたいと思いまする……
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 00:54:51.47 ID:EpnMOf2SO
俗に言うシュレディンガーのぱんつである
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/20(火) 07:00:27.70 ID:Cyiv1yGAO
>>213-214
短期連載の人乙ですー
一撃で死ななかったらもうその攻撃は通用しない…
かなーり強力ですね。この先の戦いっぷりに期待です。
そして柊子ちゃんかわゆすー

>>218-219
続けて乙ですー
担当黒服氏はまともみたいだけど、なんだかきな臭くなってきた…

>>223-226
シャドーマンの人乙ですー
Rangers勢揃いきたー
やばい自分長助さん好きだww
251 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/20(火) 09:31:35.49 ID:EpnMOf2SO
――――――
――――
――

どうしましょう……
桜太君の何度目かの任務。
初めての対契約者戦。
目の前には廃病院。
ここに人を殺した契約者が逃げこんでいる。
その契約者を捕縛するのが桜太君の任務。
人殺しは出来る限りしたくないという桜太君でもできる任務。
すでに桜太君は廃病院に入り、契約者を捜している。
問題は
「なんなんですか貴女は!」
「はあ?あんたがなんなのよ。一般人が口出さないでくれる?」
別の黒服と重なった事です。
こんなの初めてですよ。
「お兄ちゃんだけで充分なんだから帰ってください!」
柊子さん、あんまり喧嘩売らないでください。
「あんたらが帰ったら?邪魔なんだけど」
少女の見た目の黒服。
彼女の事は知っています。
彼女は過激派の黒服。
おそらく、私達が捕縛しようとしている契約者を殺しにきたんでしょうね。
「むー!」
「あー?」
「どうしましょう……」
中で彼女が担当してる契約者と鉢合わせたりしていないと良いけれど。

――
――――
――――――

252 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/20(火) 09:32:05.78 ID:EpnMOf2SO
小人がいた。
「捕まえろって言われた契約者か、都市伝説か」
捕まえる契約者は小人とは関係なかったと思うんだが。
とにかく普通の存在ではn
「っ!?」
突然、脇腹から血が噴き出す。
血濡れの刃物を持った小人が、そこにいた。
「んだよこれ!?」
一匹じゃない。五匹、六匹、まだまだいる。
俺を取り囲むように刃物を持った小人が集まってくる。
「やっべ……」
俺の能力は、一撃受ければ、同じ存在からの同じ攻撃に対して無敵になる。
当然、同じ刃物の攻撃でも、別の小人からの攻撃は受けてしまう。
はっきり言って、俺の能力は多人数を相手にするのに向いていない。
小人が一匹飛び掛かってくる。
さっき刺してきた奴だ。
「邪魔だ!」
殴り飛ばす。
刺さらない刃物なんか恐れる必要は無い。
一匹、右から別の小人がくるのを、光線銃で撃つ。
さらに、前から別の小人の刃物をぎりぎり避ける。
「…………あん?」
次、視界の左端で動いた小人を撃ち、右からくる小人の刃物をぎりぎり避ける。
「…………??」
ぎりぎり刃物を避ける。
掠らせるように避ける。
「………………」
真正面からくる小人の刃物をそのまま受け入れる。
果たして、その刃物が俺の腹にズブリと刺さり血が噴き出した、という事はなく、刃物は全く刺さらなかった。
「あー……これは……」
軽く一撃受けておく為に、ぎりぎり、掠る程度で避けていて気がついた。
どうやら、この小人達は一つの攻撃として判定されているらしい。
「なんでだ?」
「うわ、何それ」
俺の疑問に誰かの声が被った。
声の方を見れば、やつれた男が一人。
「何だよその意味不明な能力。こんなの聞いてねえよ俺」
誰だこいつ。
捕まえなきゃいけない契約者じゃ、ない、よな?
不鮮明な写真しかなかったけど、もっと若かったし、こんなに痩せてなかった。
そう、だいたい俺ぐら……い、の…………おい
「あー、帰りてえなあ。でもなあ、今日は珍しくお嬢さんが見に来てるんだよなあ。帰ったら、痛いだろなあ。アレは嫌だしなあ」
おい、まさか、こいつ、人違いしてるんじゃ。
「仕方ないよなあ、痛いのは誰でも嫌だしなあ。いや、アレはアレで我々の業界では、いや、我々の業界でも拷問か。
 あー、駄目だ、もう脳がすっかすかで難しい事考えられね」
「おい!待て、人違いだ!話を聞け!」
「次は挽肉〜挽肉です〜」
俺の話を無視して、男がそう言うと、俺を取り囲んでいた小人達が刃物を捨てる。
そうして、いつの間にか「ウイーン」と妙な音を出す機械を持っていた。
253 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/20(火) 09:33:15.73 ID:EpnMOf2SO
「おいおいおい、マジかよ……!」
攻撃の種類が変わった。
さっきの刃物から考えて、小人の一匹から一撃受ければ、他の小人の攻撃も無効にできるだろう。
こいつらは、全員で一つの都市伝説だ。
ただし、
「痛い、で済みそうにないな」
刃物の一撃もある。この一撃喰らえば、行動不能に陥るだろう。
この状況を打開する一番簡単な方法は、あの男を撃つ事だ。
あの男がこの小人達の契約者なのは明白なのだから。あいつが[ピーーー]ば小人達も止まるだろう。
しかし、撃てるか?
化け物なら、人の形をしていようが撃つ。
しかし、あれは契約者で、人間だ。
「撃てねえよ!」
とっさに、飛び掛かってきた小人を撃つ。
右から左から、四方から小人が飛び掛かろうとしている。
避けられない。撃ち落としきれない数が、来ようとしている。
どうしようもない、そんな状況に
「お兄ちゃん!」
柊子の声が割って入った。
って、なんでいるんだよ!?
「……え?」
小人を操る男も驚いている。
当然だ。俺も男も全く気がつかない内に、柊子は男のすぐ後ろに立っていたんだから。
男の驚きに合わせるように、小人の動きが鈍る。
「今だ!」
小人を数匹撃ち、間を抜け、包囲を脱出する。
そね間に
「お兄ちゃんを虐めるな!」
柊子が男に攻撃した。
人体の急所とは、内臓へのダメージである。そこを攻撃されると、言葉にできない激痛に襲われる。
とはいえ、素人は内臓の位置など正確には知らないし、急所を正確に狙う技術も持たない。一カ所を除いて。
内臓とも呼べる部分が外に出ている、とくに男性にとっては致命的な部分を狙った攻撃。
まあ、ようするに、柊子は、男の股間を蹴り上げていた。
「ごふっ……」
変な声を出し、泡を吹き、白目になり男は倒れ小人が消える。
「ご愁傷様……」
「お兄ちゃん!大丈夫だった!?怪我は……怪我してる!早く黒服さんから薬貰わないと!」
「落ち着け、まだ任務が終わってない」
そんな事を言うと、ガタンッと近くの扉が鳴った。
「……?」
柊子が驚いて、俺の後ろに隠れる。
柊子を庇いながら、扉を開ける。
「ぎゃああああああ!!??ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!金的は止めてええぇぇぇぇぇぇ!!!」
捕獲対象の契約者が、そこにいた。
「任務終了か」
「お兄ちゃん!早く手当てしないと!」

254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/20(火) 12:49:43.00 ID:QuY07heB0
柊子ちゃんマジかぁいい
痛々しいけど「猿夢」契約者羨ましい
桜太くんはもげて良いと思う

>>241
>あぁ、それと、小説は三冊だが、他に関連書籍が一冊出てた
という訳で調べてみた、wiki先生に楽曲ごと紹介されててビックリ
1冊1200円だと……コミックス4冊分か……むぅ

>>242
>https://camp.lawson.jp/krgsong/
おぉ、この子も可愛い
てかローソンだとwwwwwwすげぇなローソンwwww

>>243
>たとえキャラスレがなかったとしても、あの勢いのベクトルがそのまんまこっちに向くとは限らないものでして
それもそうですね;
ところでいつも寝てる間に本スレが盛り上がっちゃうんですけどこれ如何に(知るか

>思春期前〜芽生えくらいの少年の心を惑わす美青年まじ悪い人。だがそれがいい
思春期前と言うと………小学5年はギリギリアウトか?(←まだ年齢決めてなかった
あとタイトルどうしようかなぁ、そのまま『魔法少年』でもいいけど在り来たりだし……

>>249
>俗に言うシュレディンガーのぱんつである
『聞いた事ねぇよw』って書こうとしたらマジであるじゃねぇかwwwwwネット世界広過ぎるwwwww

>>250
>やばい自分長助さん好きだww
にゃん……だと………そんなこと言われると俺が照れちゃう///
明る過ぎてウザいキャラを目指してます、って書こうと思ったけど高校時代の俺じゃねぇかこれorz
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 14:29:52.22 ID:EpnMOf2SO
そうね
桜太は今のうちにもげておいた方が良いかもね
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/20(火) 17:45:22.16 ID:QuY07heB0
>>255
あんたマジでもぎそうだから怖ぇよ!wwww
もがなくていいから、いいからね!?
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 18:09:13.86 ID:EpnMOf2SO
そんな遠慮すんなよ
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/20(火) 18:13:32.56 ID:QuY07heB0
>>257
遠慮じゃねぇwwww

何故だ、あの短期連載の今後が嫌な予感しかしない……
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 18:28:57.76 ID:XIoQ+4fNo
物理的にもぐというのか……ちょっと男の子には刺激が強すぎますね。男の子的な意味で
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/20(火) 18:48:55.84 ID:QuY07heB0
>>259
全くだよ!
小学生の時によく女子に蹴られてたけどやっぱあれは痛ぇよ!
だからって股間を蹴り返す俺もどうかしていた
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 20:07:35.26 ID:0tj3ThE70
これでアカリールが登場すれば確定モノですね
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/20(火) 21:55:17.83 ID:y531MC+N0
>>260
二行目で少し影の人が可哀想に思えたが
三行目を読んで「そりゃ蹴られるよ」と思った自分は悪くないと思いたいです
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/20(火) 21:59:08.06 ID:QuY07heB0
>>261
>これでアカリールが登場すれば確定モノですね
必ず出てくるって俺信じてる

>>262
>三行目を読んで「そりゃ蹴られるよ」と思った自分は悪くないと思いたいです
昔ゃよく女子に殴ったりして先生と親に怒られたよ!
殴った時は怒られたけどスカートめくった時は怒られなかったなぁ、申告しなかったのか?
そしてその女子と普通にはないちもんめやかごめかごめやってた俺
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 22:06:09.66 ID:EpnMOf2SO
じゃあ出すよ
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/20(火) 22:09:06.66 ID:QuY07heB0
やった来た! 脱いで待ってる!!
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 22:15:41.53 ID:XIoQ+4fNo
>>264
股間蹴り上げの話題が並行してたから、いったい何を出すおつもりかとツッコミを入れそうになった
うん、ちょっと頭冷やしてくるよ
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/20(火) 22:25:00.51 ID:QuY07heB0
>>266
>股間蹴り上げの話題が並行してたから、いったい何を出すおつもりかとツッコミを入れそうになった
ヤですわもぉえっちぃ♪
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/20(火) 22:25:31.95 ID:0oNYRkz40
>>266
頭を冷やすのなら、この方にお任せしましょう↓

       .//:.:.:.:.:.: /.:.:.:.:.:.:.:.;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\.:.:.:.:.:.:.:.:ト、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
     ./:.:/:.:.:.:.:.:.:/:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∨.:.:.:.:.:ト、\:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
     /:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:/:.:.:.:.|:.:.:.:.:.|:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.:.:.:.:| \\:.:.:.:.:.: |    
     l:.イ:.!:.:.:.:.:.:./|:.:.|:.:.:.:./!:./l:.:.|:.:.:.:|:.:.:.:|:.:.:.l:.:|:.:.|:.:.:.|:.:.:.:.:∧  | |:.:.:.:.:.:.|    
     l/|:.:|:.:.:.:.:/.:.|:.:.|:.:.:/‐l/-|:.:ハ:.:.:ハ:.:. |:.:.:.|: |:.:.|:.:.:.|:.:.:.:/ |   | l:.:.:.:.:.:.:,   
       V',:.: /:.:.:.|:.:.l:.:.:.|<圷示 ∨|ー-|:./」_:|:.:.|:.:./:.:.:/  :|   | |:.:.:.:.:.:.:',  
       !:∨:.:.:.:.:|:.:.|、.:|l ゞ='   ヘ| 'イ圷示/|: /:/'^レ   ∨  |:.:.:.:.:.:.:.:',   
        |:.:.:.:.:.:.:. |ヽ| ヽ|    ,    ゞ=' ′|/:/|r;/      \. |:.:.:.:.:.:.:.:.:',  
        |:.:.: / ̄ ̄\ヘ.    ′       /イ:.:.|/、   ___ヽ|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:',
        |:/      /|:.:\  ` `     / |:.:/  「|Y´     \:.:.:.:.:.:.:.:.:.',  少し、頭冷やそうか……
      /       //|:.:.| \__ .. イ |,|/  l|:| |      ∧:.:.:.:.:.:.:.:.:',
     ./       /〈. Vリ   | \_>'′  l      |:| |         ∧:.:.:.:.:.:.:.:.',
   ./       / \\  l| !ニニ}   /    ,./ |           \:.:.:.:.:.:.:',
  /.        ;' //  | |::|    /'     \ |           \:.:.:.:.|
 「 \         /  \\   .|/⌒ニニニ/      〉〉 |        /  〉:.:.:|
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/20(火) 22:26:59.22 ID:y531MC+N0
>>263
>殴った時は怒られたけどスカートめくった時は怒られなかったなぁ、申告しなかったのか?
考えられる理由は次のうち3つですね

@単なる子供の悪戯と流された
A「あー影の人君だからねー」と既に諦め状態

Bその女子は怖くて周りに言いだせなかった
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 22:31:49.31 ID:MKD7Vg8Zo
C影の人はその時女子の弱みになる事を握り、女子を脅したのだった
Dパンツじゃないから恥ずかしくないもん
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 22:41:52.77 ID:EpnMOf2SO
じゃあ(貴方の股間に蹴りを繰り)出すよ

今からキャラ増やしてもちょい役にしかならんぜ
ていうか、あれか、もしかしてバッドエンドを期待されてるのか
だったら期待に応えねば
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/20(火) 22:42:30.59 ID:y531MC+N0
E実はDの作者はかつてゾイド少女に嵌っていた
F実は影の人ではなく裂邪が犯人
G実は俺が、俺たちがガンダムだっ!
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/20(火) 22:43:33.78 ID:y531MC+N0
>>271
>ていうか、あれか、もしかしてバッドエンドを期待されてるのか
>だったら期待に応えねば
してない!してないから止めてぇぇぇぇっ!!
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/20(火) 22:43:48.59 ID:0oNYRkz40
おい、誰だ、バッドエンドを期待したのは
この先にハッピーエンドが待っていると期待していたというのに
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/20(火) 22:50:52.53 ID:QuY07heB0
え、あ、ごめんなさい
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/20(火) 22:55:02.97 ID:QuY07heB0
>>269
>A「あー影の人君だからねー」と既に諦め状態
これはあったかm……無いって信じたい

>Bその女子は怖くて周りに言いだせなかった
周りっつうか白昼堂々教室のド真ん中でやってたぞwwww

>>270
>C影の人はその時女子の弱みになる事を握り、女子を脅したのだった
待て待て待てwwwwwwwwねーからwwwwwwwww

>Dパンツじゃないから恥ずかしくないもん
ふふっ、学習能力が可哀想な小学1年生の時だったから皆パンツだったよ!
堂々とこんなこと言ってるけど13年前の話だからね!

>>272
色々待てwwwwwwwwww
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 23:50:26.86 ID:Gyfzm2TDO
小学一年生のときのクラスメイトに、男女の区別なしにクラスメイトの胸と股間を揉みしだいてた男の子がいたのを思い出した
しばらくして「帰りの会」的なもので晒し上げられて、そのあとはおとなしくなってたような

あの子はいったいどんな気持ちであんな行為を強行していたのだろう……
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/20(火) 23:56:20.03 ID:QuY07heB0
>>277
>小学一年生のときのクラスメイトに、男女の区別なしにクラスメイトの胸と股間を揉みしだいてた男の子がいたのを思い出した
すげぇ…………俺でもそこまでしなかったぞ………逆に感心するわ
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/21(水) 00:12:15.03 ID:aGqg4jNI0
くそ……何だかんだで書けなかったよ美青年×ショタ………orz
明日ってか今日こそは必ず…今はもうベッドに横たわりますorz
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 00:21:38.77 ID:mBZEV5K70
桜太とか過激派がなんかハッピーかバッドかに走り始めてるのとほぼ同時刻に
アカリールが宿命のライバルっぽいのと本気で死闘を繰り広げてる展開に期待しよう
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 00:34:32.00 ID:ODWBqVnSO
そんな難しい期待されても……
鉄柱のIFを書き続けてたら主人公達と戦ったけどさ
282 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/21(水) 00:52:07.47 ID:H3pIHmIh0
アカリールは俺の妹
違う違う、アカリールは死闘より不意討ちとかが似合うんだい!
血の臭いより雨の香りが似合うんだい!
自分自身何が言いたいかよう分からん、寝よう
283 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/21(水) 07:09:33.54 ID:ODWBqVnSO
「おにぃーさん」
俺の事か?
と振り返ると、子供がいた。
黒服に身を包んだ女の子。
「さっきはごめんね?」
えっと……誰だ?
「あ、私ね組織の黒服なの。それで、さっきおにぃさんが戦った契約者は私が担当してたの」
「あぁ、猿夢の契約者の」
「そう……。ごめんね、あの人、勘違いで攻撃しちゃったみたいで……」
女の子は泣きそうになりながら、顔を俯かせる。
「あー、うん。気にしてないよ」
怪我も黒服の薬で治ったしな。
「ほんと?ほんとにほんと?」
「ああ、大丈夫だ」
「よかったあ」
女の子は嬉しそうに、ホッとしたように笑った。
「えと、私、何にもできないけど、あの、……これ!」
「ん?」
女の子は、元気良く取り出したのはチョコだった。
「あのねっ、お詫びに!」
「ん、ありがとな」
拒否する理由も無いので貰っておく。
何と言うか、お詫びにお菓子って、子供らしいな。
ていうか組織って、こんな子供もいるんだな。
「じゃあね、おにぃさん!ほんとにごめんね!またね!」
「おう、またな!」
手を振りながら、女の子は去っていく。
こけたりしないだろうな。
「しかし、女子のトイレは長いな」
公園の公衆トイレに入っていった柊子の事を考えながら、女の子に貰ったチョコを口に放り込む。
「甘っ」
284 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/21(水) 07:10:07.68 ID:ODWBqVnSO
――――――
――――
――

ああ、腹が立つ。
あいつが負けるなんて。
しかも、何だ。
一般人の蹴りに負けてるじゃないか。
私の受けた命令はあの契約者を[ピーーー]事だったが、仕方ない。
あいつが負けてしまったんだから。
あの兄妹の方が強かったんだ。
強い者の言う事に弱い者は逆らってはいけない。
この世界の常識だ。
今回は負けたんだ。仕方ない。
ああ、それにしても腹が立つ。
腹いせに、私の能力を付けたチョコを渡してみたが、まだ腹が立つ。
そうだ、負けたアイツより、あの兄妹の方が強いなら、あの兄妹を私の物にしようか。
あの兄妹よりは私の方が強いはずだ。
強い者の言う事は絶対だ。
それが、常識。
……ん?電話?
「はい。はあ……組織に……侵入………………は!?」
…………へええ。そう。

――
――――
――――――
285 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/21(水) 07:57:48.32 ID:kz5WTlkh0
やっぱりロリ黒服はあの単発の娘だったか……
演技だと分かってても可愛いなぁこの娘
そして漂い始める怪しい雰囲気……wktk
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/21(水) 14:10:08.95 ID:O8WQolbAO
>>251-253
乙でしたー
柊子ちゃん今回もかわゆす
ちっちゃなおにゃのこの金的って萌えるわぁ
人間を撃てない桜太くんちょっと甘いねー。まあ少し前までは一般人だったし主人公らしくていいかなと思う

>>283-284
またまた乙ですー
黒服少女曲者ですねー
でもロリっ子は小悪魔なくらいがかわゆいんだよ!チョコに仕込まれてた能力wktk
287 :兄と妹、心は未だ遠くに ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/21(水) 14:13:08.81 ID:O8WQolbAO
―4歳の或る雨の朝、何時もの様に目を覚ますと、独りぼっちになっていた

 親切な男の人が現れて、お父さまとお母さまは車の事故で亡くなったと知らされた
 彼を親代わりとして契約したその日から、外へは出られなくなった
 それなりに広い家と、与えられる本とテレビ。それが世界の全てだった
 8歳のある日知った運命は易しくなかったけど、支えてくれる人が増えた
 都市伝説の呪いを受けたとき、都市伝説の集う町に兄が居ると知らされた
 はじめて会った兄は無愛想だったけれど、自分の家に招いてくれた
 嬉しかった。誰かがただいまと言ってくれる事が。誰かにお帰りと言える事が

 そして世界の破滅が迫った或る日、兄の運命は自分のそれより易しくなかったと知った―

「「「ババリバリッシュ!!!」」」」

―マタタビオフ第一会場、東区中学校。
 ジャガー人間の大群にもなお参加者達は怯むことはない。

「総員、第一種戦闘配置ぃぃ!」
「非戦闘員と回復要員を囲んで防御しろ!」
「オールレンジ攻撃開始ぃ!接近戦は今暫く待て!」
「もう少し引きつけてからだ!」

 オフの参加者はもとより、屋台のテキ屋達や校内の教職員、生徒達も腕に覚えのある者が応戦に集まり
 そこここで戦いの火花を散らせていた。
「テキ屋のおじさんまで契約者なんだ・・・つくづくすごい所だね、学校町は」
「まったく、戦争ごっこをしているのではないんだが」
 感心しきりの柳と、呆れたように溜め息をつくムーンストラック。
 その彼はといえば、先程から姿の見えないノイを探して気遣わしげに周囲を見渡している。
「ノイちゃんなら大丈夫じゃない?極くんも居てくれてるし」
 極くんは歳のわりにしっかりしてるし。ちょっとくらい怪我をしても「ルルドの泉」があるから。
 この時はまだ、柳はのんびり構えていた。

「「「ババリバリッシュ!!!」」」」
「ちっ!」
 赤毛が幾筋か切り飛ばされるのと同時に、ジャガー人間とムーンストラック、
 互いの手が相手に伸び触れると同時に、ジャガー人間の瞳から本能の光が消え去った。
「moonstruck」狂気は月がもたらすもの。月光に打たれた者は既に彼に支配された者。
―何時の頃からだろうか。気がふれた事を「月に打たれた」と呼ぶようになったのは。
「精々同士討ちでもするがいい」
 彼が低く呟くと同時に、ジャガー人間の幾頭かは咆哮を上げ、かつての同胞に躍りかかった。
288 :兄と妹、心は未だ遠くに ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/21(水) 14:14:35.53 ID:O8WQolbAO
 学校に乱入してきたジャガー人間達があらかた片づいた頃、リジーが油断なく斧を構えたまま息せききって駆けつけた。
「お前達!・・・イタル様が何処にいるか知っているか!?先程からお姿が・・・」
「何!?ノイ・リリスも見当たらんのだが」
 飛縁魔も駆けつけ、四人で顔を見合わせたが、誰がふたりの居場所を知っているわけでもなく
 とにかく手分けをして捜すという運びになった。
 柳はさっきまでの楽観論が吹っ飛んで、不安そうな面持ちを隠そうとしない。
「二人で居てくれればいいんだけど・・・」
 それより少し早い時間のこと。

「「「ババリバリッシュ!!!」」」」

 ジャガー人間達が幾重にも取り囲み追いつめた獲物は、少年と少女のふたり。
 背の高い、色素の薄い少年を背に庇うように、小柄な黒髪の少女が立っている。
 今のところふたりに目立った怪我がないのは、ジャガー人間達の側に数に物を言わせた余裕があるせい。
 大勢でかかればいつでもしとめられる。獲物が疲れて動けなくなるまでは精々遊ぶつもりなのは、ふたりにもわかっていた。

「う・・・」
 どうしよう。
 敵はたくさん。
 ムーンストラックも、飛縁魔も、リジーも・・・柳も。誰も今、ここにはいない。
 極は「ルルドの泉」の水で傷を癒すことが出来る代わりに、自身で戦う力がない。
(あたしが、イタルを守らなきゃ)
 けれどこんなに多勢に無勢で戦ったことなんてない。
 たぶん逃げても逃げきれない。戦うにしても、もし取りこぼせばその時はふたりともやられてしまうに違いない。
―それを防ぐには。
 “彼ら”に反撃の隙を与えずに、すべて残らず倒す手段が、自分には、ある。
 
(外の世界を知りたいだろう!?)
(友達が欲しいだろう!?)
(だったら、今、頑張るんだ!)

 昔自分に勇気をくれた言葉を心の中で反芻して。
 何度も何度も深呼吸を繰り返す間にも、ジャガー人間達はじりじりと包囲の輪を狭めてくる。

―だいじょうぶ
―だいじょうぶ
―あたしは頑張れる
 そう自分に言い聞かせてからくるっと振り返り、極に小さな袋を手渡した。
「金魚、持ってて。落としちゃヤだよ?」
289 :兄と妹、心は未だ遠くに ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/21(水) 14:16:25.46 ID:O8WQolbAO
「おいっ・・・?」
 戸惑う極を背にジャガー人間達に向き直り、小さな手をぎゅっと組み合わせて自分の内に眠る都市伝説に語りかける。

(・・・現金な事よな。我が力を厭うているというのに、頼みの綱はその我か)
 都合がよくても何でもいい。今はただ
―あたしを助けて。イタルを守って

「『死神』―あいつらを―やっつけて!」

 ふわりと空気が死の気配を纏い
 現れしは髑髏。朽ちた生命の徴。
 携えしは銀の鎌。「彼」こそは最高神の農夫。そが刈り取りしは生きとし生けるもの総て。

「「ババリ・・・」」
「「・・・・・・」」」
「「「・・・・・・・・・」」」」
 忌まわしくも神聖なる神が音すらも奪ったような静寂が満ちる。
 鎌が振り上げられる様をノイ以外のあらゆる生命がただ茫然と見守っていた。ただ一人を除いては。
 公園のすぐ外。学校の塀の陰にその黒服は身を隠し、通信機を手に取った。
「中学校近辺で、子供の契約者を発見。鎌を持った都市伝説を召喚した模様。
―恐らく間違いない。大至急No.99に知らせてくれ」



続く
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/21(水) 18:38:38.14 ID:aGqg4jNI0
鳥居を探すの人乙です〜
ノイノイカッコいい! でもピンチ!!
どうなる愛しのノイノイ、お兄ちゃん心配です
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/21(水) 22:35:49.48 ID:O8WQolbAO
呼ばれた「No.99」がAなのかо(オウ)なのかで天国と地獄が別れるよ!
しかし中学校のすぐ隣にしたのは失敗だった
これじゃちょっとドンパチしたら誰か来ちゃうじゃないか
292 :戦星術師 [sage saga]:2012/03/21(水) 23:10:24.56 ID:aGqg4jNI0
「ひゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

住宅街で女の子のような情けない声で叫んでいるのは僕だ
僕は逃げている、恐ろしい出来事から
迫りつつある恐怖から

「こらこら坊や、足はいらんかねぇ〜?」

遠くから僕を呼んでいるのはお婆さんだ
でもただのお婆さんじゃない
背負った風呂敷には溢れんばかりの足が包まれている
聞いた事があった
『足はいらないか』と聞かれて、『いらない』と答えたら足を奪われ、
『いる』と答えると無理矢理3本目の足を付けられる――「足売り婆」の話
でも、そんなの都市伝説でしかない、噂の範疇だと思ってたのに

「逃げ足の速い坊やだねぇ、そんな足いらんだろう? あたしにおくれよ〜」

見てしまった
あのお婆さんが、誰かの足を引き千切っている光景を
だから僕は逃げ出した
次は僕があぁなる番だと脳が警鐘を鳴らしたから

(答えちゃ、だめだ…………答えちゃ……………!!)

そう自分に言い聞かせて振り返る
大分引き離しているけど、意外にもお婆さんは、「足売り婆」は足が速かった
追いつかれないようにスピードを上げたかった
息が苦しい
もうどのくらい走ったんだろうか
段々足の感覚が無くなってきた
走ってるのかどうかすら分からない
このまま、どうなっちゃうんだろう

「―――――――ほぎゃっ」

お尻に衝撃が走った
どうやら尻餅をついてしまったようだ
立ち上がろうにも、足が思うように動かず起き上がれない
早く、逃げないと―――

「少年、どうかしたかね?」

低めの男の人の声
ふっと顔を上げると、目に入ったのは火のような真っ赤な瞳だった

「うわっ!?」
「おっと、これは失礼、驚かせてしまったね」

顔を寄せていたらしいその男の人は、そう言って立ち直った
すらりとした身長と、長い真っ赤なマフラーに金色の髪
こんな状況なのに、僕は思わず「かっこいい」と呟いてしまった

「え、あ、ご、ごめん、なさっ………あ、あのっ! 助けて下さい!!」
「…む?」
「おやおや増えているじゃないか。まぁいい、足はいらんかね?」

ゾッとした
いつの間にか追いつかれてる
「足売り婆」はにたにたと笑いながら僕を見つめている
足が動かないけど、何とか逃げようと腕を使って後退る

「……なるほど、そういうことか……少年」
「は、はい?」
「助かりたいかね?」

そう言われた瞬間、急に何も聞こえなくなった
いや、聞こえないのは「足売り婆」の笑い声、家庭の雑音、犬の遠吠え、烏の声
唯一耳に入ったのは僕の心臓が脈打つ音と、男の人の声だけだった
男の人は僕に目線を合わせるように身を屈めて、話を続けた

「生憎、俺が直接助ける事は出来ないんだ…けど、君に手を貸す事、力を与える事は出来る」
「ち…力?」
「そう。あの化物と戦う力
 いや、あれだけじゃない。この町にはあんな化物が他にも沢山いるんだ
 そんな化物達と戦って、これから先も生きていく為の力
 ただしそれを手に入れれば、君が今まで送っていた平穏な日常は二度と戻ってこない
 それでも良いのなら手を貸そう……どうする?」
293 :戦星術師 [sage saga]:2012/03/21(水) 23:11:16.58 ID:aGqg4jNI0
頭の中が真っ白になった
難しい話ではないけど、答えを決めるのが難しい
だけどこの状況で悩んでる暇は無い
答えは一つだ

「それでも良い! 僕に……力を下さい!」
「…分かった。では契約だ」
「ケイヤク?」

「契約って何?」―――――――そう聞こうとした瞬間だった
燃えるような赤い瞳がグッと近づく
温かい
口の中から頭全体へ、そして頭から全身へ向けて、優しい温かさが広がってゆく
次に伝わってきたのは、熱
身体中が焼けてしまうような、血という血が沸騰してしまっているような熱さが全身を廻る
どろどろにとろけてしまいそうな感覚に襲われて、ふと「気持ち良い」という言葉が思いついた
直後、赤い眼が徐々に離れ、つつつ、と糸を引いて僕の口の中から彼の舌が引きずり出される
僕のファーストキスは、こうして迎えられた

「ふえ………あ、あの………」
「終わったよ。立ってご覧」
「え…?」

訳も分からず立ち上がると、まず立ち上がれた事に驚いた
そして、その小さな感動に浸る前に

「……なっ、何これえええええええええええええ!?」

軽いショックに陥った
さっきまで極普通の服装だった僕は、酷く悪趣味な格好になっていたんだ
可愛らしい髪飾り、フリルのついたハーフパンツとヘソ出しルック
そして腰には、プラネタリウムの装置のような、ダンベルのような形の何かがぶら下がっている
一言に表すと
どうみても、『まどマギ』や『おジャ魔女』のような、俗に言う『魔法少女』と呼ばれるものの衣装だった

「むっふふふふ、なかなか似合っているよ」
「い、いや、こここ、これ、これは、は、は………」

涙が出てきた
僕は男の子だ
何が悲しくてこんな格好をしなければならないんだろう

「…うわぁ、最近の坊やの考えてることは分からんのぅ」

「足売り婆」にも馬鹿にされた
死にたい

「だけど綺麗な足だねぇ、やっぱり私におくれよ!!」
「きゃっ!?」

複雑な事を言ってきて、「足売り婆」が駆け寄ってくる
力を貰ったらしいけど、だからってどうすれば…

「少年、腰の『プラネステッキ』を使いたまえ」
「こ、これ? というか、名前あったんですか?」
「今考えたんだ。格好良いだろう」

何なんだこの人は
言われた通りに『プラネステッキ』と言うらしいダンベル型の何かを構えた

「よし、十二星座を思い浮かべるんだ、好きなもので良い」
「え、えっと、十二星座……」

今朝見た星座占いで、牡牛座が1位だったのを思い出した
とその時、『プラネステッキ』が光を放って、空中に牡牛座が映し出されて、
それは泥で出来た牛になって、襲いかかってきた「足売り婆」を弾き返した
その後、泥の牛はぼろぼろと崩れて消えてしまった

「ふがっ!? な、何なんだい今のはぁ!?」
「す……すごい、これ……」
「感心してる場合じゃないよ。今の調子で、牡羊座と双子座をイメージするんだ!」
「は、はい!」

言う通りにイメージすると、また『プラネステッキ』が光り始めて、今度は牡羊座と双子座を浮かび上がらせ、
炎で出来た羊と、風を纏う双子の天使が現れる
羊は激しく燃え上がって「足売り婆」に体当たりした

「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

思わず耳を塞いだ
294 :戦星術師 [sage saga]:2012/03/21(水) 23:11:55.09 ID:aGqg4jNI0
炎の中で苦しげに叫ぶ「足売り婆」に、双子の天使が追い打ちをかけるように風を起こし、
燃え上がる炎がさらに激しさを増してごうごうと唸り始めた
もう完全に「足売り婆」の声が聞こえなくなった時に炎は止み、天使も消える
この場に立っていたのは僕と、僕に力をくれた男の人だけ
その時初めて、「勝った」ということを自覚した

「………い、生きて、る…………良かったぁ……」

嬉しさのあまりに泣きだしそうになったけど、
それより先にやるべき事があったのを思い出した

「ッ! ね、ねぇ、元に戻してよ!」
「言われなくてもそうするつもりさ」
「…え?」
「その状態でいると、君の命が危険な状態になってしまうからね
 常にその姿でいることはできないんだ」
「そうじゃなくてもずっとこんな姿でいたいなんて思わないよ!
 いいから早く戻して!!」
「それじゃ、またキスするけど、良いね?」
「うっ…………」

…僕は男の子だ
もう一度言うけど、僕は男の子だ
だから男の人とキスするなんて嬉しくないし、もう一度したいだなんて思わない
でもこれは仕方ないんだ
仕方ないんだ
仕方ないんだ
これから、必要になるんだから
しなきゃいけないことになるんだから

「…………して……………さい」
「ん?」
「……キス…して、ください!!」
「むっふふふふ……可愛らしい子だ、昔のカラミティ卿を思い出すよ」

また口の中が熱くなる
2回目だからか、さっきよりも短く感じた
口が離れた瞬間に、僕は服が元に戻ってる事を確認した

「……はぁ……良かった」
「そんなにキスが良かったのかね?」
「っち、違っ、違うよ! その、えっと………うぅ///」
「むふふふ、まぁこれから永い付き合いになる。宜しく頼むよ」
「は、はぁ…えっと、お名前は?」
「そうだったね、俺は「アミー」だ」
「アミーさん、だね。僕は天川―――――――」
「―――――――北斗?」

ドキッとして、僕は咄嗟に振り返った
女の子が、口元を手で覆って立っていた
僕と瓜二つの、女の子が

「あ゙………華南……」
「おや…もしかして、双子かな?」
「…北斗、その人と今……」
「あの、違う、これは、その」
「キス、してたよね?」
「あーーーーーーーあーーーーーーーーー何も聞こえなーーーーーーーーーーい!!」

よりにもよって華南に見られるなんて…
頭痛と腹痛が同時に僕に降りかかる

「あぁ、華南ちゃんと言ったね? 俺は―――」
「うっはぁ萌えるわぁ♪ 超萌えるマジ萌えるぅ♪
 まさか北斗がこんなカッコいい人とそんな関係になっちゃったなんて♪」
「だから違うってば!これは――――」
「北斗ナイスマジナイス!
 あー素晴らしい弟を持ったわぁえへへへへへへへ♪」

華南、鼻血がぽたぽた落ちてるよ
そんなことを教えてあげる気力もなくなり、僕の目の前は真っ暗になった




拝啓、天国のお父さん、お母さん
僕―――――天川 北斗は、日常を捨てました


   ...TO☆BE☆CONTINUED
295 :戦星術師 [sage saga]:2012/03/21(水) 23:15:33.04 ID:aGqg4jNI0
まずは花子さんとかの人に盛大に焼き土下座orz

という訳で書いちゃいました、何か新連載になりそうです『戦星術師(スターゲイザー)』
ずっと腐女子キャラってのを書いてみたかったんだよねぇ、あれが腐女子って言えるのかどうか悩ましい所だけど

大まかな設定は避難所の裏設定スレで書くかも知れない
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/21(水) 23:17:53.09 ID:aGqg4jNI0
>>291
>呼ばれた「No.99」がAなのかо(オウ)なのかで天国と地獄が別れるよ!
くそっ!もう早速嫌な予感しかしない!
A-No.99がくる未来しか見えないぜ!

>これじゃちょっとドンパチしたら誰か来ちゃうじゃないか
ちょっとやそっとのドンパチも気にかけないのが学校町クオリティ
ということにすれば何ら問題は無い(
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 09:26:12.48 ID:tfACFe8DO
投下乙ですよー

足売り婆で思い出した
4Uの掲載はいつになりますか集英社さん……
298 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/22(木) 10:14:28.01 ID:xS0+L/zSO
「おっ出かけおっ出かけ〜♪」
楽しそうに柊子が即興の歌詞で歌う。
「お出かけって言っても、買い物に行くだけだろ?」
俺達の住んでいる付近は田舎だ。何せ学校町の北区だからな。
品揃えを求めるなら、都会側にいかないといけない。
今日は柊子が服を買いに行くのについて行く事になっている。
「それでも良いの。お兄ちゃんとデートだもん」
「デートて……」
「む、なぁに、嫌なの?」
「まさか」
頬を膨らませた柊子の頭を撫でる。
んー、髪さらさら。
「可愛い妹と一緒で嫌なわけないだろ?」
「えへへぇ〜」
楽しそうに、柊子が笑う。
最近、組織の任務が多くて疲れたからな、今日は存分に羽を伸ばすとしよう。
そんな事を考えていたのに、
「あら、出かけるの?」
そいつは現れた。
「あ……」
「君は」
黒服に身を包んだ、いつだったかの任務の後、チョコをくれた女の子だ。
「ずいぶん仲良さそうね」
……あれ、何か雰囲気違くない?
こんな子だっけ?
「あ、私、前に貴方と会った時は猫被ってたから」
あ、そう……。
「何の用ですか?」
何故か柊子が敵意むき出しで尋ねる。
「ああ、そうそう。松ヶ崎 桜太……で合ってるわよね、貴方」
「え?ああ、そうだけど」
「そう。それじゃ、その女を引き渡しなさい」
そう言って伸ばされた手の、指の先には、柊子がいた。
「え……」
「何を言って……」
「聞こえなかった?その女を引き渡しなさい、と言ったのよ?」
「断る!」
意味が分からない。
柊子が何をしたっていうんだ。
「断るの?」
「当たり前だ。誰が大事な妹を理由も分からずに渡すか」
「そう」
女の子は、何故かニヤニヤと笑っている。
「お兄ちゃん……」
俺は柊子を後ろに隠し、女の子を睨む。
「あ、そうそう」
女の子が、さっきまでとは打って変わり、世間話でもするような口調で喋る。
「最近ね、組織の支部に侵入した奴がいるのよ」
「は?」
「っ!?」
「そいつは堂々と入口から入ってきて、中を見て回った。まるで工場見学でもしてるみたいにね」
「…………」
柊子の、俺にしがみつく腕に、力が入る。
「その支部は、組織の中でも過激派と呼ばれる連中、まあ、私達なんだけど、そいつらが集まってる場所でね。
 いろいろと、他の派閥に知られたくない物があった。だから、私達は早急にそいつを口封じしないといけないのよ」
「…………っ」
「そいつは『偽の警察官』って都市伝説。元人間の、都市伝説に飲み込まれたタイプね。そいつは『なりきる』能力を持っているわ
 もう見つけたんだけどね」
嫌な予感がする。
これ以上聞いてはいけないと、頭の中で警報がなる。
「そういえば、もう一つ。最近、この辺りで轢き逃げがあって、人が死んだらしいわね」
「ゃめ……て…………それ、以上………………やめ、…………お願い…………もう……」
柊子が何か言っている。
「被害者はある四人家族。その日、風邪のせいで家で寝ていた息子を除いた三人。父親と母親、そして娘」
忘れようと、思い出さないようにしていた記憶を、掘り起こされる。
「その家族、たしか……松ヶ崎、だったかしら?」
気がつけば、女の子はまたニヤニヤとした笑み顔にを浮かべていた。
「ところで、『なりきる』能力を持つ都市伝説が、この辺りにいるらしいんだけど
 貴方、心あたりは無いかしら?」
女の子が、愉快そうに尋ねてくる。
俺は、何も答える事ができず、後ろを見る。
誰かが、俺の背中にしがみついている。

299 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/22(木) 12:51:38.02 ID:1DdtubNM0
ぐはぁ!俺の心臓をごっそりもぎとりやがった!(
さすがだぜアカリールの人……でもこの感覚が堪らないわぁ♪(
しかしどうなる柊子ちゃん、じゃねぇや桜太くん
300 :やる気なさそうな人型 [sage]:2012/03/22(木) 13:35:26.10 ID:FljSYpvDO

来た!
やっぱり都市伝説の恐怖はこうでなくちゃ
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 17:01:29.20 ID:xS0+L/zSO
アカリールの人て
あの子がアカリール自称したの一回か二回のはずなのにどんだけ定着してんだ
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 19:41:51.75 ID:tfACFe8DO
おおう、まさかこう来るとは
都市伝説はあなたのすぐそばに……
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/22(木) 21:15:32.91 ID:aSHRI0n80
なんと……この展開は完全に予想外
304 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/23(金) 03:18:12.35 ID:787EqlKAO
シャドーマンの人乙ですー
なにこの魔法少年可愛すぎ弟萌えしてる華南ちゃんかわゆすだけどその場所ちょっとかわっt(

短期連載の人乙ですー
そうか、そう来たか…
兄妹(?)の先行きが気になるというか桜太くん柊子たん連れて全力で逃げてー
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 03:44:12.38 ID:EDxleknk0
>>211
犬神憑きと怪人アンサーの方、お返事遅くなりました
ここまでお返事が長引いてしまって申し訳ありません
まだ通院中の身で、思う様にいかないのが悔しい所です

投下された話を読ませて頂きました
私のあの書き様に応えて下さってありがとうございます
もし最期まで書いて良いのであれば、是非ご一緒させて下さい

しかし、犬神憑きと怪人アンサーの方に確認すること
質問することが幾つかありますが
申し訳ありません、頭が働いていません
この時間にお返事するのが今の私には精一杯です
また、改めてお返事させて下さい
今は挨拶に代えさせて頂きます
また来ます
306 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/23(金) 15:24:06.62 ID:G3tWwYDSO
その日の朝、目が覚めて、俺は家族を失った事を思い出した。
警察には轢き逃げがあったと聞いた。
目撃者は無し。こんな田舎の人通りの無い道での事件。当然だ。
葬式は終わった。
墓もできた。
そして、そうして……俺はどうすれば良いんだろう。
親父も、母さんも、そして、柊子もいない。
俺一人だけ残され、どうすれば良いんだろう。
そんな事を考えながら、朝食を取ろうと、ふらふらと居間へと歩いていった。
すると、
「あ、おはよう、お兄ちゃん!」
柊子がいた。
「……?どうしたの、お兄ちゃん」
「あぁ……いや、何でもない。おかえり」
「ただいま?」
柊子が帰ってきた。そう思った。
やっぱり、死んでなんていなかった。
それだけ。
それだけの話だ。

女の子が、愉快そうに尋ねてくる。
俺は、何も答える事ができず、後ろを見る。
「誰か」が、俺の背中にしがみついている。
「さあ、その女を引き渡しなさい」
俺は………………
「………………ぃ……ん………………い」
俺は…………
「そいつは貴方の妹じゃない。守る必要も無いでしょう?」
俺は……
「ごめ……い……んなさい、お兄ちゃん」
俺は
「じゃあな」
女の子に背を向け、走りだした。
「ぇ?」
「なっ!?」
「誰か」の手をしっかりと握りしめて。
307 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/23(金) 15:24:43.02 ID:G3tWwYDSO
「どうして。お兄ちゃん、何で!?」
「誰か」が泣きそうな声で言う。
「私は、柊子じゃなくて!お兄ちゃんを騙してて!?」
「お前が柊子じゃないのは、もう分かったよ」
そんな事、薄々分かっていた。
「じゃあ……」
「お前は、柊子じゃない。でも、お前は、俺を兄と呼んだ」
少しの間でも、こいつは俺の妹だった。
謝りながら、こいつは俺を兄だと言った。
こいつが俺を兄だと呼ぶなら、こいつは俺の妹だ。
「妹を守るのは、お兄ちゃんの仕事だからな!」
まったく、どんなシスコンだよ、俺は。


――――――
――――
――

は?
はあ?
はあああああああ!?
意味わかんない。訳わかんない。
何それ?何で?
アレは妹じゃないのよ?何で連れて逃げるの?
「あの、大丈夫ですか?」
「うっさいわね!さっさと、あの二人を捜しなさいよ!」
「はっ、はい!」
声をかけてきた部下の黒服に命令する。
「何にしたって、口封じはしないと。邪魔するってんなら、桜太の方も殺して……」
そうだ、ちょうど良い。あいつらより、私の方が強い事を証明できるじゃない。
「そうよ、あの二人をさっさと見つけて……」
…………あれ?
私、何した?部下に命令?
…………私、部下なんて連れてきてた?
ガチャリと、重い音を響かせて、何かが後頭部に押し付けられる。
「…………っ!?」
目だけを動かし、後ろを確認すると、さっきの部下の黒服が、いや、部下の黒服の恰好をした、松ヶ崎 桜太がいた。

――
――――
――――――

「なんで、あんたがそんな恰好してるのよ」
光線銃を突き付けられた、黒服の女の子が言う。
「『偽の警察官』の能力は『なりきる』事。そう言ったのはお前だろう」
「……あんた、契約したのね」
「ああ」
俺はアイツと契約した。
アイツを、俺の妹を守る為に。そして、共に戦う為に。
「アイツは渡さない。今日は帰ってもらう」
今はとりあえず、アイツだけ逃がした。
だが、逃げても、どうせ追ってくる。
よくは分からないが、こいつは自分を過激派だと言った。
組織内に派閥があるなら、俺の担当の黒服に助けを求めれば、助けてくれるだろう。
あの黒服が過激派とは思えないしな。
「…………く」
ん?
「くくっ……あは、あははははははははは!!」
女の子が突然笑い出す。
そして、
「舐めんな」
身体中に激痛が走った。
308 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/23(金) 15:25:54.45 ID:G3tWwYDSO
「ぐっ……!?が、あ……」
まるで、身体の中を中かに食い荒らされるような痛み。
「なんで私が弱い奴の言う事聞かないといけないわけ?あんたが、私の言う事を聞くのよ?
 私はあんたより強い。強い者の言う事に、弱い者は逆らっちゃいけないの。常識よ?」
「……っ……」
身体中をはい回る痛みに、立つ事もできなくなる。
「ああ、良い眺めだわ」
女の子がニヤニヤと笑う。
「く……」
「さて」
女の子がそう口を開くと、痛みがとまる。
「私は『寄生虫カプセル』と契約していたの。前にあんたにあげたチョコには私の能力で寄生虫が入り込んでいたのよ」
女の子が得意げに説明する。
痛みがなくなったのは、女の子が寄生虫の操作を止めたからか。
ああ、そうか……
「あんたの中は、私の寄生虫だらけ。私の指示一つで、あんたの身体を虫が食い尽くすわ。あんたは、もう私には逆らえない」
この子、俺の能力を知らないのか。
「さあ、アイツを引き渡してもらうわよ。そうね、ついでにあんた、私の物になりなさい」
「断る」
「……よく聞こえなかったわ」
女の子がそう言うと、寄生虫が再び俺の身体を食い荒らす、はずだったんだろう。
「え?」
俺は気にせず立ち上がる。
痛みは無い。当たり前だ。
寄生虫の操作を止めた時点で、すでに彼女の一撃は終わっている。
一度受けた攻撃は、俺には効かない。
「なんで?嘘!?」
「悪いが俺の勝ちだ」
そう言って、俺は光線銃で女の子の頭を
「……っ!?」
コツンと叩いた。
「……え?」
なんていうか、この黒服って連中は人間扱いと化け物扱いのどっちにすれば良いか悩むんだよな。
人間だったら殺したくないし。
「さて、さっき言った通り、今日は帰ってもらうぞ」
「……そう。そうね。貴方の方が強いなら、従わないといけないわね。言う通り、今日は帰るわ。 他に、何かする事は、命令はあるかしら?何でも、言う事聞くわ。貴方の方が、強いんだもの」
……なんか、急に大人しくなったな。
ていうか、さ。
「その思想は何なんだ」
「何?何か、気に触った?だったら、ごめんなさい」
「いや、その強い者に弱い者は逆らっちゃいけないみたいなの。止めないか」
「え……そ、そう。止めましょうか。命令なら仕方ないわね」
「止めてないじゃん……。あのな、そんな考え方、おかしいだろ。」
「おかしい……?」
「ああ。上手く言えないけど、間違ってる」
「間違って……そんな事…………ない…………でも、……強い人が………………そう言って……」
……?
何か、様子が変だな。ぶつぶつ言い出したぞ。
「間違ってる。……従わなくて、良い?嘘だ。嘘だ。逆らっても良いの?ありえない。じゃあ、じゃあじゃあ。私は従わなくてよかった?
 違うよ。従わないといけなかったから。逆らったらダメだったから。間違ってないよ。だって、だって命令だったもん
 そうしないといけなかったから、だから、私は、お母さんも、お父さんも、え?間違ってるの?それじゃ、私は、私はなんで。嘘だよ。殺さなくてよかったの?嘘だ。嘘嘘嘘そんなの違う」
……おい、この子、大丈夫か?
「いや、お前は間違ってない」
「っ!?」
突然、声がした。
「よう」
声の主、いつかの、やつれた男。猿夢の契約者で、柊子……の恰好の奴に股間を蹴られた奴だ。
まさか、またこいつと戦わないといけないのかと思ったが、
「この黒服は俺が引き取るから、お前は行った行った」
「お、おう?」
男は俺を素通りして、女の子の側に立つ。
「私、……間違ってる?そんな事、だって……だって、……正しいよ…………命令だったんだもん………………」
「ほれ、この黒服はもう帰るから、お前も用は無いだろ」
「あ、あぁ」
まあ、到底追っとこれそうにはないな。
これ以上、ここにいる理由も無い。先に行った柊子、の姿の奴を追いかけるか。
「ほーら、お前より俺は弱いぞー?命令しなくて良いのかー?何でも言う事きくぞー?お前は間違ってないんだろー?」
後ろで男が女の子に何か言っている。
……何だか良く分からないが、悪い事した気分だな。
そんな事を考えながら、俺を担当してる黒服を呼び出す為に、俺は携帯を取り出した。

309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/23(金) 18:33:39.39 ID:wShuAukE0
アカリールの人乙です〜(←気に入った
桜太くんカッコいい、兄の鑑だ
だがもげろ(
そして黒服少女ちゃんが壊れかけちゃってお兄ちゃん心配です
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 19:05:14.18 ID:G3tWwYDSO
黒服の女の子はもう出番無いから今後は好きに想像して良いよ
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/23(金) 20:53:51.96 ID:wShuAukE0
>>310
さっすが〜、アカリールの人様は話がわかるッ!
312 :犬神憑きと怪人アンサーの人 ◆vQFK74H.x2 [sage saga]:2012/03/23(金) 21:50:13.14 ID:SMMCjW0m0
>>306
アカリールの人様乙ですー
桜太くんかっこいい…!
>「妹を守るのは、お兄ちゃんの仕事だからな!」
この台詞にキュンキュンきました

…壊れかけてる黒服少女ちゃんも可愛いなぁ

>>305
>まだ通院中の身で、思う様にいかないのが悔しい所です
どうかご無理はなさいませんよう…!
>>305様の体調の回復を陰ながらお祈りしています

>もし最期まで書いて良いのであれば、是非ご一緒させて下さい
そのようなお言葉を戴けるなんて嬉しすぎて涙腺が…!
最期までよろしくお願いいたします!

>また、改めてお返事させて下さい
分かりました
では、後々拙い説明となりますが確認事項やご質問に答えさせていただきます
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/23(金) 22:00:25.96 ID:wShuAukE0
おっとそうだった書き忘れ

>>304
>なにこの魔法少年可愛すぎ弟萌えしてる華南ちゃんかわゆすだけどその場所ちょっとかわっt(
思えば俺が萌え弟を書いたのは今回が初だ!………初だよね?そうだよ初だよそう言う事にしておこう

>>305
通院と聞いて「もしや!」と叫びたくなったが自重しますの
お身体お大事にです、応援してます
だから『最期まで』とか意味深なこと言わないでぇ…
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/23(金) 23:46:20.93 ID:3baEZodF0
アカリールの人(でいいんですよね?)乙ですー!
桜太君にとって「彼女」は、もうとっくに大事な妹だったんですね……シスコン?この場合は褒め言葉でしょう
そして黒服少女……まさか強者絶対理論が、自分の首を絞める羽目になるとは……

「強者の言うことは絶対」→「という理論を強者自身が否定した」→「だから私も従わなきゃ……あれ?」→「マチガッテナイマチガッテナイマチガッテナイ」

桜太君の命令を聞けば、今まで自分の行為を正当化してきた理論が間違いだったと認めなきゃならない
しかし命令に背けば「強者の命令を無視した」→「あれ、強者に逆らってもいいんだ……!?」
結局、どうしても破綻してしまい、思考の袋小路に陥ってしまったんですね
猿夢の黒服が彼女の支えになるのか、それとも……?

>>311
>さっすが〜、アカリールの人様は話がわかるッ!
やめろwwwwww影の人特定余裕でした
……いや、無いですよね?まさか壊れかけてる少女とR-18な展開とかあり得ないですよね?
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 23:59:32.05 ID:G3tWwYDSO
ネームハザードしとる
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 00:06:44.68 ID:ytiRZfiwo
全てのバッドエンドのシナリオをネタバレという形で潰せば、必然的にグッドエンドしか残らないという巧妙な手口
317 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/24(土) 00:43:53.97 ID:IINJQVESO
――――――
――――
――

私には、自分という物がなかった。
都市伝説に飲み込まれた時、人間だった頃の記憶はなくした。
気がつくと、私は能力で誰かになりきっていた。
それが本来の自分の姿ではない事はわかったが、自分の名前も姿も、分からなかった。
だから、探した。
いろんな人や、都市伝説になった。
一つとして、これが自分だと思えるものはなかった。
ある日、組織という集団を知った。
対都市伝説の専門家。
組織なら、私の人間だった頃を思い出す方法を知っているかもしれない。
けれど、組織は都市伝説を退治する集団だとも聞いた。
だから、黒服になって、中に入った。
黒服になりきって、街を歩いていた黒服についていった。
そして、組織でみたのは、非人道的な実験の跡、拷問室、誰かを暗[ピーーー]る話題。
そこが、組織の中でも過激派と呼ばれる派閥のアジトだと、後から知った。
見てはいけない物を見た事だけは理解できた。
逃げなければいけない。身を隠さないといけない。
侵入した事を知られれば、あんな危ない集団、自分を殺しに来るに決まっている。
そんな時、葬式場を見つけた。そこから、ふらふら出てくる人を見つけた。
ちょうど良いと思った。
その人の妹の記憶を素に、その人の妹になった。
「あ、おはよう、お兄ちゃん!」
私が、どれだけ上手くなりきっても、彼の妹がいなくなった事実は消えない。
その事に直前まで気がつかなかった馬鹿な私は、とっさに、挨拶する事しかできなかった。
「……?どうしたの、お兄ちゃん」
返事がなかった。
やっぱり、駄目だったかと思った時、
「あぁ……いや、何でもない。おかえり」
彼はそう言った。
「ただいま?」
よく分からないが、上手くいったようだった。
そうして、彼との生活が始まった。

「柊子、そろそろご飯だぞー」
お兄ちゃんは、とても優しかった。
「柊子!女の子が足広げて座るな!」
お兄ちゃんは、とても厳しかった。
「よう、柊子。もう朝だぞ」
本当は、長く同じ場所にいるつもりはなかった。
「おやすみ……柊子……」
長くいれば、組織に嗅ぎ付けられる気がしていた。
「よーし、ここはお兄ちゃんに任せろ!」
でも、私はお兄ちゃんから離れられなかった。
「どうした、柊子」
本来の自分なんて、どうでも良くなっていた。
「手伝い?んー、じゃあ洗濯物畳むの、お願いしようかな」
ただ、お兄ちゃんと一緒にいたかった。
「俺が囮になるから逃げろ!」
それだけ。
それだけの話だ。

――
――――
――――――
318 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/24(土) 00:44:26.84 ID:IINJQVESO
困った事になった。
あの女の子を追い返し、次が来る前に黒服に助けを求めるつもりだったのに、
「どこで何してんだ、あの役立たずは」
黒服に連絡がつかなかった。
教えられた電話番号にかけても留守。
任務を言いに来る気配も無し。
幸い、まだ過激派の黒服は来ていないが、早めに相談しないと。
「あの、お兄ちゃん」
「ん?どした?」
「一緒に、お風呂入らない?」
「柊、風呂くらい一人で入れ」
「う……ん、分かった」
柊が寂しそうな顔をして風呂場に消えていく。
……ええい!そんな顔すんな!
「柊!後から行くから待ってろ!」
「っ!うんっ♪」
嬉しそうな声が聞こえた。
まったく……。
アイツの事は「柊」と呼ぶ事にした。
アイツは俺の妹だが、「柊子」ではない。
意味は無いが、ただの区別だ。
どっちにしろ、守るべき妹だ。
「で、守りたいんだがなあ……」
駄目元で、黒服に電話をしてみる。
「…………………………………………」
繋がらない。
ああ、もう……!
「お兄ちゃーん……」
ええい!今行くから寂しそうな声だすな!
319 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/24(土) 00:45:44.94 ID:IINJQVESO
――――――
――――
――

「終わった」
目の前には、一台の車。
中にいる運転手は、すでに息をしていない。
こいつは、「ロールスロイスは壊れない」の契約者だ。
人気の無い道で待ち伏せて、やって来た人を轢き[ピーーー]。そんな事をやっていた。
こいつを[ピーーー]のが私の任務だったけれど、車で逃げ回るから、ずいぶん遠くまで来てしまった。
「さすがですね。こんなすぐに終わらせるなんて」
気がつくと、いつからいたのか、黒服がいた。
「すぐ、ね」
こいつを追って数カ月過ぎている。
どう考えても「すぐ」じゃない。
この黒服の言う事はいつも適当だ。
「それで次の任務は?」
「次はですね。日本海で南極ゴジラとニンゲンが喧嘩してるのを止める事ですよぉ」
「……嘘でしょ?」
「嘘ですよぉ」
ああ、もうイライラする。
「本当の任務はですね。一度帰ってこい、だそうですよぉ」
「そう。でも、どうして?」
「それは盆と正月くらい顔を見たいという親心、ではなく」
当たり前だ
「……面白い事になっているからですね」
はっきり言いなさいよ。
ああ、もう、こいつ嫌だ。
少しは楽しそうならともかく、何もかもどうでもいいような目で言うから余計不気味なのよ。
「さて、帰りの準備はできてますか?」
「ええ、大丈夫よ」
帰りましょうか。学校町に。
「あ、待ってください。私が準備できてません」
「そう…………本当に?」
「嘘ですけどね」
ああ!腹立つ!!

――
――――
――――――

320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/24(土) 00:47:44.67 ID:6mMGyaYy0
>>314
>やめろwwwwww影の人特定余裕でした
何故バレたし

>……いや、無いですよね?まさか壊れかけてる少女とR-18な展開とかあり得ないですよね?
『“有り得ない”なんてことは有り得ない』
                    ...byグリード

「ほら、お前より弱い奴もこうしているだろ」
「うるさいわね! じゃあ私を慰めなさいよ!!」

こうすれば自然とエロ妄想できるでしょう?
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/24(土) 00:53:36.48 ID:6mMGyaYy0
危ない………もうちょっとで被るところだった申し訳ない

アカリールの人乙です〜
柊ちゃん可愛いマジ可愛い
胸が締め付けられるくらい可愛い
ご飯3杯食えるくらい可愛い
そしてアカリールキターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
322 :単発 [sage saga]:2012/03/24(土) 22:12:37.56 ID:6mMGyaYy0
真っ赤な空、真っ赤な町
真っ赤っかな太陽
真っ紅っかな路地

「ねぇ、さっきわたしになんていったっけ?」

尋ねる少女
怯える青年

「“やめろ”、って……そういったよね?」

歩み寄る少女
踏まれる女性
真っ赤なコート
落ちたハサミ、マスク
消えた頭、飛び散った血

「わたしは“いやだ”、っていったね
 だって、あそんでくれるっていったのはこのヒトたちだったし
 わたしもあそんでただけだったもん」

指さす少女
胴体の抉れた男
下半身の焦げた男
水浸しで息絶えた男
首の無い身体
よく分からない肉塊
血に濡れた雪の山

「でも、わたしね、いきてるヒトとあそぶのいやなの
 いきてるとみんなみんなわたしのいうこときいてくれないの」

拾う少女
生気の無い生首

「みんなしぬと、わたしのいうこときいてくれるの
 おこったりないたりしないし、どこにもいかない、けんかしない
 わたしにもんくもいわない、めーれーもしない、なぐったりけったりしない」

口づけする少女
物言わぬ生首
恍惚とする少女
顔色変わらぬ生首
落とす少女
転がる生首

「わたし、しんでるヒトだいすきなの
 いきてるヒトきらい、みんなきらい、みんなみんなきらい
 わたしにめーれーするヒトみぃんなきらい、わたしのやることぜんぶだめっていうヒトだいっきらい
 みんなみんなしねば、みんなみんなだいすきになれる
 みんなでいっしょにあそべるの」

笑う少女
声の出ない青年

「ねぇ、おにーちゃんもいっしょにあそぼ?」

無邪気な少女
揺れる大地
倒れる電柱、崩れる家屋、静かな悲鳴
潰れる青年、飛び散る血潮
鎮まる大地
手を取る少女
引きずり出される上半身
踊る少女
振り回される死体
笑う少女
嗤う少女
ワラう少女

「あはは♪ またともだちがふえたよ?
  きょうは25にんもできたね……もうおうちにかえるじかんだけど、あしたはもっともっとつくろうね?」

抱きしめる少女
乾涸びた小さな死骸
二つある頭
四本の腕
災厄の源
「リョウメンスクナ」
                                                     ...了
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/24(土) 22:13:39.65 ID:6mMGyaYy0
たまにはほのぼのとした話も良いよね
たまにはほのぼのとした話も良いよね

良いよね
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/03/25(日) 00:12:40.46 ID:IGIwXyNK0
>>323
OK,しばし待て、今からほのぼの書いてくる
325 :マンドラゴラと○○○の夜  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/25(日) 00:32:06.40 ID:IGIwXyNK0
「ん〜……よしっ、今日の分の作業終わりっ!」

 ぐぐぅ、とパソコンの前で背伸びをする女性。眼鏡を外し、両目の間…鼻の付け根辺りを、軽く揉む
 毎度のことながら、長時間パソコンで文章を書いていくのはなかなかに大変だ。まx、あ好きでこの仕事を続けているのだから、文句は言えないが

「ありがと、くるちゃん。いつも展開を考えるの手伝ってくれて」

 ぴょこぴょこ
 植木鉢にちょーん、と腰かけながら、頭の花を揺らすマンドラゴラ。どういたしまして、とでも言っているようだ
 愛らしいその様子に、女性は幸せそうな笑みを浮かべる

「…さて、と、そろそろ寝なくちゃなぁ……私、シャワー浴びてくるけど。くるちゃんも浴びる?」

 ぷるぷるっ
 首を左右に振るマンドラゴラ。その動きに合わせて、ゆららん、と花が揺れる
 そっか、と頷いて、女性はパソコンを終了させて、立ち上がった

「シャワー浴び終わったらもう寝るつもりだから…くるちゃん、先に寝ててもいいからね〜」

 ぱたぱたとシャワールームに向かう女性を見送ったマンドラゴラ
 んしょ、と立ち上がり、植木鉢の中に戻ろうとして……何かの気配を感じたように、ぴた、と、動きを止めた
 花を揺らしながら、部屋の中をきょときょとと見回す

 女性の一人暮らしの、ワンルーム。人が隠れるような場所はない……いや、ある
 小さな隙間、ベッドの下
 人間はともかく、都市伝説ならば、隠れられる場所は、出現できる場所は、いくらでも、ある

 マンドラゴラなりに、契約者を他の都市伝説から守らなければ、と、考えているのだろう
 てちてち、んしょんしょ、と、マンドラゴラは、自分の植木鉢が置かれていた作業机から降りていく
 てちちちちち、と、マンドラゴラが駆けていくは、ベッドの下
 気配は、そこから感じたのだ
 ベッド、と言えば、「ベッド下の殺人鬼」である
 そんな危険な者が、契約者のベッドの下に潜んでいたら大変である
 自分が、それを退治するのだ!
 気合を入れつつ、ベッドに近づいていくマンドラゴラ
 じ、と、ベッドの下の暗闇を見つめて……

 −−−−−キランっ、と

 何かの目が光ったのが、見えた直後、それは飛び出してきたっ!!
326 :やっと名前が決まったよ ◆vQFK74H.x2 [sage saga]:2012/03/25(日) 00:33:24.82 ID:YGX0u39k0
「ふんふふ〜ん♪」
学校町郊外にある邸の地下室で、少女が死体を縫い合わせていた。
ゴシック風のレースのリボンを付けた少女は、パジャマの上から毛布を羽織っていた。

傍らで三つの顔と一つの胴、四つの手と四つの足を持った異形が、少女を見守っている。
その表情は、まるで玩具で遊ぶ子供を見つめる親のように穏やかなものだった。

少女の名は間宮 灯(まみや あかり)。
「両面宿儺」、「火車」と契約している。

「……出来た!スクナさん、見て。お友達が増えたよー」
こちらに向き直り、新しく出来た友達を披露する契約者を労わるように頭を撫でる。
腕が四本もあるので少々撫でにくいが、契約者の笑顔を見るためならばそんなものは些細な事だ。

「灯ー、そろそろ寝る時間ですよー」
地下室の階段を下りる足音が聞こえ、猫耳と尻尾を生やした女性が顔を出した。
「火車」の正体は化け猫――その説から生まれた彼女は、火の玉と人型を使い分けていた。

「はーい……ねえ、火車お姉ちゃん。お友達をたくさん作れば、さみしくないよね?」
「もちろんですよ。私達の存在意義も果たせますし…灯は、寂しくないですか?」
「だいじょーぶ!お友達やスクナさんも火車お姉ちゃんもいるからさみしくないよ」
笑顔でそう言った灯を思わず抱きしめてしまったのは不可抗力という奴だろう。

……両面宿儺からの『火車ばっかりベタベタしてズルイ、呪うぞ!』と言わんばかりの視線が痛い。

アナタだって今まで灯と一緒に居たじゃないですか、と思いつつも呪われるのは嫌なのでしぶしぶ離れる。

当然のように、両面宿儺が灯を抱き上げて階段を上がっていく。



一人残った火車は、灯のお友達を観察しながら満足げに一人ごちた。
「灯も上手に縫い合わせられるようになりましたね…ふふ、こうお友達がたくさん居ると、成長を感じることが出来ていいですね」

327 :マンドラゴラとひつぢの夜  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/25(日) 00:43:45.31 ID:IGIwXyNK0
「めー!」

 てーん!

 ベッド の した から あいらしい ひつぢ が とびだしてきた !!

「めぇ、めめぇ!」

 …ぴょここん
 びっくりしたのか、マンドラゴラが花を揺らす

「め、めめ。めー、めめめー!」

 何やら、マンドラゴラに主張してくるひつぢ
 その言葉を、マンドラゴラは理解したらしい
 ぴょこぴょこっ!と、花を揺らす。やや興奮しているのか、動きが激しい

「めぇ?」

 愛らしく、首をかしげるひつぢ
 ぴょこん、ぴょここん、マンドラゴラは花を揺らしながら。何かを主張し続ける

「めーめー?」

 ぴょここん

「めぇー………めめ、めぇめ、めーめー?」

 ぶんぶん、ぴょこぴょこん!

「めぇ〜……」

 しょめ〜ん
 何やら、話がついたらしい。ひつぢがしょんぼりとした様子になる
 てちてちてち、っぴょん!と、ひつぢは窓際までジャンプして……悪戦苦闘しながら窓を開けると、外へと飛び出した
 マンションの上の方の階だったはずなのだが、わりと平気で飛び出していった。大丈夫なのだろうか
 てちち、と、マンドラゴラが窓際によるが……マンドラゴラの身長では、窓まで届かない。一生懸命背伸びしても、届かない

「あら?くるちゃん、どうしたの?」

 と、そこに、契約者の女性がシャワーから戻ってきたようだ
 バスタオル一枚の姿で、マンドラゴラを抱き上げる

「あれ?窓開けてたっけ?……ま、いいか」

 ぱたむ、と、窓を閉めた女性
 マンドラゴラは窓から外を見てみたが、ひつぢの姿はもうなかった

「さて、と、くるちゃんは植木鉢で寝ましょうね」

 ぴょこぴょこ

「え?大丈夫大丈夫。ちゃんと髪を乾かして、パジャマに着替えてから寝るから」

 にっこり微笑み、マンドラゴラを植木鉢の上に降ろすと、ベッドに腰掛けて、ドライヤーで髪を乾かし始める女性
 そんな女性をじっと見つめながら、マンドラゴラは契約者を護り切ったことに満足し、植木鉢に戻ったのだった





 一方

「……めーめー!」

 てちてちてちてちてちてちてち

 契約者を得ることに失敗したひつぢは、再び、真夜中の学校町を疾走するのであった






終われよ
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/25(日) 00:47:01.06 ID:YGX0u39k0
>>322様のほのぼの話に便乗したよ、でも都市伝説が被ってごめんなさいごめんなさい

アカリールの人様、s…単発の人様乙ですー
柊ちゃん可愛い…
厳しくて優しいお兄ちゃん、良いと思います!
アカリールちゃん来た!!

これはいいほのぼの…癒されます〜
ナイスなロリッ子可愛いよ!
25人も作ったのか…頑張ったね、偉いね!
この子のお友達がもっと増えますように

>>323
>良いよね
いいともー!

>>325
あ、やべ被ったすみません
329 :マンドラゴラとひつぢの夜  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/25(日) 00:47:34.87 ID:IGIwXyNK0
ほのぼの書いたよ!!
そして、書きながら投下したんで時間かかって御免ね!!
330 :マンドラゴラとひつぢの夜  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/25(日) 00:51:13.35 ID:IGIwXyNK0
乙ですのー!そして、お気になさらずだぜ



ついでに言うと、今回のネタ、浮気先でちょっと罪深い話題をしながら書いてたんだ、この馬鹿をどう思う?
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 00:53:05.94 ID:i8Vr7m/ro
皆様投下乙ですー

ほのぼの……あれ、ほのぼの……?うん、ほのぼの、うん(逃避)
素敵なほのぼの話をアリガトウゴザイマシタ
やっぱり少女には笑顔が似合いますよね
332 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/25(日) 01:03:42.37 ID:b/w7Kxvm0
あれ、もしかしてあの単発あげたの俺だって気づかれてない?(自爆

花子さんとかの人乙です〜
まさかくるちゃんまで再登場するとは思ってなかったよ!
くるちゃんもひつぢもかぁいいなぁ

おねーちゃん乙です〜
灯ちゃん!!灯ちゃん可愛い!!
そして彼女を取り合うスクナさんと火車さんも可愛いよハァハァ
ところで軽くネタ被ってしまって申し訳ないですorz
333 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/25(日) 01:16:53.17 ID:WPGLQMaw0
>>328
> >>322様のほのぼの話に便乗したよ、でも都市伝説が被ってごめんなさいごめんなさい
多分内容がちょこっと異なってると思いますのン
俺が使った「リョウメンスクナ」は洒落怖とかで有名な奇形児の即神仏だけど
おねーちゃんの方は読んだ限りだと日本の妖怪だと思ったの、違ったらごめんなさいorz

> ナイスなロリッ子可愛いよ!
何故ロリだとバレたんだ(
一応ネクロフィリアという設定、表現できてるか不安だけどねorz

>>330
> ついでに言うと、今回のネタ、浮気先でちょっと罪深い話題をしながら書いてたんだ、この馬鹿をどう思う?
凄く……罪深いです……(どういう意味だ
どうやったらそんな会話でこれが生まれるんですかwwww

あ、俺のほのぼのはotetsuさんのカーニバルとかルービックキューブとか聞きまくりながら書きました(

>>331
> ほのぼの……あれ、ほのぼの……?うん、ほのぼの、うん(逃避)
まさかのほのぼの三連続だよ♪(
334 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/25(日) 01:19:23.57 ID:WPGLQMaw0
妖怪じゃねぇ鬼神だったごめんスクナさん
335 :マンドラゴラとひつぢの夜  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/03/25(日) 01:21:54.51 ID:IGIwXyNK0
>>332-333
>あれ、もしかしてあの単発あげたの俺だって気づかれてない?(自爆
何…だと、改めて乙ですの!

>どうやったらそんな会話でこれが生まれるんですかwwww
ほのぼの書き始めたのと、あっちで罪深いシナのありかについての話始まったのがほぼ同時だったんだよwwwwwww

>まさかのほのぼの三連続だよ♪(
俺以外がほのぼの詐欺な件
336 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/25(日) 01:30:20.73 ID:imYLU1bE0
>>335
> ほのぼの書き始めたのと、あっちで罪深いシナのありかについての話始まったのがほぼ同時だったんだよwwwwwww
そうだったのかwwwwww何ちゅう嫌な偶然wwww

> 俺以外がほのぼの詐欺な件
やだなぁ、どれもれっきとしたほのぼの作品ですよぉ(グレースマイル
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/25(日) 01:37:48.57 ID:YGX0u39k0
>>332
>灯ちゃん!!灯ちゃん可愛い!!
>そして彼女を取り合うスクナさんと火車さんも可愛いよハァハァ
可愛いだなんて…「リョウメンスクナ」の契約者のロリッ子やれっきゅん達には敵いませんよ!

>ところで軽くネタ被ってしまって申し訳ないですorz
謝るのは私のほうです!
いや、その…シャドーマンの人様の話を読んで「よし、頑張るぞー!」とこの話のモチベーションが復活したという経緯が(オイ

>>333-334
>おねーちゃんの方は読んだ限りだと日本の妖怪だと思ったの、違ったらごめんなさいorz
>妖怪じゃねぇ鬼神だったごめんスクナさん
おっしゃる通りでございます…

>一応ネクロフィリアという設定、表現できてるか不安だけどねorz

>口づけする少女〜転がる生首
>「わたし、しんでるヒトだいすきなの
>みんなみんなしねば、みんなみんなだいすきになれる
の所で表現出来てると思います!
たとえネクロフィリアだとしてもあの子への愛は揺らぎません!
人それぞれ、色々な愛の形があるのだから何も問題は無いのです

>>335
>俺以外がほのぼの詐欺な件
どちらもれっきとしたほのぼのですが、何か?
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/25(日) 09:15:20.84 ID:ttMXtibC0
おかあさん このすれのじゅうみんがいう「ほのぼの」がしんじられません


まじめにほのぼのっぽいの考えた俺が馬鹿みたいじゃないですか、と眠たい頭ですねた猫のよに丸まりいじけ

迷子になってるメリーさんくれよ
339 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/25(日) 09:21:49.95 ID:v8v5Rqw20
>>338
せかいってひろいね(棒


何故か可愛いげのあるほのぼのが思いつかぬ…猫で出し尽くしたか
340 :ケモノツキ ◆kemono..Qk [sage]:2012/03/25(日) 09:22:16.78 ID:KxusmLmDO
いま猫の話してた?
341 :単発ネタ [sage]:2012/03/25(日) 10:18:40.23 ID:EvV2MEXSO
ミミのついたフードをかぶった女の子が、イヌさんにのって走っていきました。
「……ネコさん、ネコさん。わたしもアレやりたいです」
「無茶言わんでください」
「むりですか?」
「無理だね」
「ですか……」
ネコさんちっちゃいですもんね。
「嬢ちゃんは、どこまでついてくる気ですかい」
「ネコさんのしゅーかいが見たいんです」
「人間の参加するもんじゃありませんぜ」
「だいじょーぶです。ミミついてますから!」
わたしはママにかってもらったミミのついたぼうしを見せます。
「そりゃあ、犬耳ですぜ」
「……あれ?」
ちがいがよく分かりません。
イヌさんじゃダメなんでしょうか。
「もう夜も遅い。帰らないと親御さんが心配しますぜ」
「それもだいじょーぶです。ママは夜おそくまでおしごとです。パパはいません」
「……そうかい」
あと、ママは帰ってきても、すぐねてしまうので、いなくても気がつきません。
「そういえばネコさん」
「なんですかい」
「どうしてネコさんはしゃべってるんですか?」
「今更ですね。『猫は人間の言葉を話せる』からですよ」
「そうなんですか!」
新じじつです!がっかいにはっぴょうすればノーベルしょうです!
わたしもゆうめい人ですね!
「嬢ちゃん」
「はい?」
……あれ?なんだかさわがしいですね。こんなよ中にさわいだら、ごきんじょめーわくですよ!
「そろそろ、猫の集会でさあ。残念だけど、嬢ちゃんはもうお帰り」
……ん、ねむい、です。
……ダメ、です。いっぱいのネコさんと……あそぶんです………………ん……ぅ……、……。

「いやあ、あの家の餌はまずくてね」
「お前ね、あの家は病気の飼い猫用だよ?あんなもん食って、病気になってもしらんよ」

「こないだ、電子レンジに入れられかけてねぇ」
「お前さんの主人は、あいも変わらず、おバカだね」

「こないだ、くーの奴が人間の姿で歩いていてね、塀の上を。人間に変な目で見られていたよ」
「へえ」

「人間のトイレは、あれはどういう仕組みなんでしょうかね。砂が一粒も無いなんて」
「貴方がトイレと水飲み場を間違ったのではなくて?」

「ピップ・パップ・ギー!」
「おい、誰だマタタビ持ち込んだの。こいつ酔っ払ってんじゃねえか」

………………
…………
……

「……んー、おはよう……ございます…………」
ねむいです。
あさなのに、ねむいです。
ユメを見ていた気がします。
ネコさんがしゃべってました。
ネコさんのしゅうかいについて行こうとして、もうすぐのところでユメがさめてしまいました。
ざんねんです。
「にゃあ」
「あ、ネコさーん」
まどの外に、ユメで見たネコさんがいました。
「ネコさーん?」
「………………」
行ってしまいました。
やっぱり、ユメのようにはしゃべりませんね。
んー、たのしいユメでした。

342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/25(日) 13:43:53.87 ID:c5qAqp180
単発の人乙です〜
こ、これはあの伝説のロリ単発『dog days』の派生………!?
可愛い!可愛いけど犬耳だと!?可愛いのに犬耳だと!?あぁ世間はなんて残酷なんだ!(オチツケ

>>337
>可愛いだなんて…「リョウメンスクナ」の契約者のロリッ子やれっきゅん達には敵いませんよ!
いやいやそちらにはほたるんや紗江ちゃん、ユキちゃんもいるじゃないですかー♪

>いや、その…シャドーマンの人様の話を読んで「よし、頑張るぞー!」とこの話のモチベーションが復活したという経緯が(オイ
なん…だとwwwwwwなんだか照れちゃう///

>おっしゃる通りでございます…
でも名前が同じで由来が違うって珍しいですよね
キャラ的にもコラボしやすそう(

>の所で表現出来てると思います!
良かった、かなり安心した;

>>340
確かにネコとは言ったけどwwwww
で、でも単発はネコの話でしたよ!(
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/25(日) 21:20:11.89 ID:YGX0u39k0
単発の人様乙ですー
ミミ付きフードのロリっ子ってひょっとして…
猫様、渋くてカッコイイ…
マタタビで酔ってる猫様も可愛い!

>>342
>いやいやそちらにはほたるんや紗江ちゃん、ユキちゃんもいるじゃないですかー♪
居ることは居ますが、ユキ以外は死にますからー!

>キャラ的にもコラボしやすそう(
おぉう、コラボですか…!(ノリノリである
344 :夢幻泡影 † 書き忘れてたシーン [sage saga]:2012/03/25(日) 22:53:07.24 ID:9eK0gZR00
「…「太陽の暦石」よ………お疲れで御座いますか?」

ぱちり、と麻夜―――を宿主とした「太陽の暦石」が目を覚ます
目の前には赤いダウンコートの壮年の男性―――「ククルカン」が顔を覗き込むようにして立っていた
そして彼女は、自分が今さっきまで木の幹に凭れかかって眠っていた事に気がついた

「っ……我は今眠っていたのか?」
「はい……どうかなさりましたか? これまでそのような事は一度も無かった筈でしたが」
「……くっ」

麻夜は苛立ったような素振りを見せて歩き出し、木陰から出て月の光を浴びた

「未だ完全にこの身体に馴染めていないというのか…?
 やはり何かが……何かが我を拒絶している…この少女の持つ“何か”が」
「拒絶、と申しますと……?」
「どうやら苦労しておるようだな?」

低いハスキーボイスが暗い木々の間を木霊する
ククルカンがその声に反応し、麻夜を、いや「太陽の暦石」を守るようにして構える

「おぉっと勘違いして貰っては困る。敵ではない」

そう言って闇の中から現れたのは1匹のジャガー
だがそのジャガーは、麻夜達に近付くにつれて姿を変え、肌の黒い男になる
全身に動物の骨で作られた装飾品をじゃらじゃらとつけ、獣の頭蓋骨の兜を被り、
右足が月明かりに怪しく輝く鉱物の義足、顔には黒と黄の縞模様の仮面
その姿を確認した後、ククルカンの形相が著しく変化した

「「テスカトリポカ」……!! 貴様、何をしに来た!?」

彼の目が人のもので無くなり、口から牙を剥き出し、身体中に羽毛が生え始める
「テスカトリポカ」はアステカ神話に登場する神であり、「ケツァルコアトル」の天敵
その「ケツァルコアトル」と同一視される「ククルカン」にとって、それは許し難い存在

「だから言っておるだろう? 敵ではない、と」
「黙れ! 今すぐここから立ち去れ!!」
「全く…荒々しい奴だ、昔から何も変わっていない…ならすぐに帰らせて貰うが
 ただ一つ、「マヤの水晶髑髏」を持っているのは誰だ?」

「マヤの水晶髑髏」とは、その名の通りこの世に点在する「水晶髑髏」の内の一つ
マヤの神官が持っているとされていた、が

「ふん、まさか13の「水晶髑髏」を集めて私達の邪魔をしようと言うのか?
 くくるくくくくくく、愚かな、その前にここで返り討ちに――――――」

ぴた、とククルカンの口がそこで止まり、辺りを見回した
彼の眉が一瞬、僅かに動いた

(……イシュムカネーとイシュピヤコックは何処へ………?)
「その様子だとここにはいないようだな
 仕方が無い、探しに行くか…この町で、他の契約者に盗られぬように、なぁ?」

挑発するような「テスカトリポカ」の言葉を受け、
彼の――「ククルカン」の表情が、怒りに満ち溢れた
ごごごごご、と大地が、木々が唸りを上げる
345 :夢幻泡影 † 書き忘れてたシーン [sage saga]:2012/03/25(日) 22:53:34.23 ID:9eK0gZR00
「……顕現せよ、四つの魔神共………愚かな人間を裂き、穿ち、砕き、喰らえ!!」

巨大な黒い影が、宣言通りに4つ現れた
蝙蝠、コンドルのような影は上空へと舞い上がり、
バク、獅子のような影は森林の闇を駆け抜けた

「フラカンっ!!」
「わぁーってるよぉ!! 行きゃ良いんだろ行きゃあよ!!」

近くの木の枝ががさっ、と揺れ、パンクファッションの青年――「フラカン」が降り立ったかと思えば、
とんっ、と跳んで足元に旋風を生み出し、風に乗ってその場を飛び去った

「…「太陽の暦石」、申し訳ありませんが私も…」
「構わん、行け」
「はっ………「テスカトリポカ」、次会えばその時は殺す」

ククルカンの背から純白の翼が生え、ばさりと羽ばたいて飛び上がる
森の闇の中、残ったのは少女と男のみ
ふん、と鼻を鳴らしたのは麻夜だった

「……どういうつもりだ、「テスカトリポカ」……否、貴様の真の名は―――」
「おっと、それ以上は言わないで貰おうか」

彼女の言葉を止め、「テスカトリポカ」はにやっと笑う
瞬間、彼の姿が一瞬にして、黒いローブの男に変わった

「それより「太陽の暦石」……あと1時間も休息を取れば、貴様はその身体を思うがままに操れるようになる
 そしてさらに時が立てば…日付が変わるまでには、この世に人類はいなくなる」
「…何故我にそれを教えに来た?」
「さあな。ある者の意思だ、とだけ言っておこうか? がっひゃっひゃっひゃ……」

ローブを翻し、男は歩き始める

「期待しておるぞ「太陽の暦石」。人類が滅ぶその時を」

後ろ手に手を振りながら、彼は闇に消えていった

「…分かっている…我の予言は絶対だ」

麻夜は――「太陽の暦石」は独り呟く
2011年10月28日、午後7時前――――――



   ...To be continued
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/25(日) 23:00:20.32 ID:9eK0gZR00
裂邪が病院を抜け出した後に書こうと思ったシーン
ここで「カマロッツ」等が召喚されます、あと「マヤの水晶髑髏」がないと13個揃いません、と

そして今ミスに気がついた

× 「それより「太陽の暦石」……あと 1 時間も休息を取れば、貴様はその身体を思うがままに操れるようになる

○ 「それより「太陽の暦石」……あと 2 時間も休息を取れば、貴様はその身体を思うがままに操れるようになる
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/25(日) 23:02:30.46 ID:9eK0gZR00
ごめん書き忘れ

>>343
>居ることは居ますが、ユキ以外は死にますからー!
大丈夫!俺の心の中で生き続けるから!(黙

>おぉう、コラボですか…!(ノリノリである
ただもうすぐ俺がここから消えるかも知れないので出来るかどうかは予定で未定なの…orz
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 23:23:07.93 ID:AlQI/fZD0
おーしおしおし!
影の人乙!暦石イベントが動くぜ!
モチベーション上げてくる!!
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/25(日) 23:28:10.30 ID:9eK0gZR00
>>348
26・27日で10話以上書かないとやばい……
戦闘シーンがくっそショボい話がだらっだら続く事になると思うけど許してくれ、wikiでいつか修正するからorz
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 23:35:03.59 ID:qGktqaJDO

召喚されたときには既に死んでいる魔神ェ……
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/25(日) 23:36:15.24 ID:9eK0gZR00
>>350
全くだよ!
いやまだだ、まだ「コッツバラム」の死亡シーンは書いてない!
352 :仄暗い魂 † Kristall Skelett [sage saga]:2012/03/26(月) 00:47:03.47 ID:JPa1avVu0
「『ギフト・ギフト』ぉ!!」

ドス黒い粘液で出来た蛇がジャガー人間へと向かい、口の中に入り込む
ごぼごぼりとそれを呑みこんだ後、ジャガー人間は痙攣しながら倒れ、光に変わる

「っふぅ、これでお終いっと……日天さん!」

少女――ルート・ライフアイゼンは、血塗れで倒れた少年――栄 日天のもとに駆け寄り、
身を屈めてそっと彼を抱き上げて上着のポケットから取り出した塗り薬を傷口に塗る

「ちょっと痛いけど、我慢しててぇ」
「うぐっ……そ、それは?」
「「河童の妙薬」。少し前に助けた人に貰ったのぉ」

「蝦蟇の油」と同じ薬品系都市伝説である「河童の妙薬」
その効果は確かなもので、日天の身体の傷が見る見る内に治っていく

「……もう、大丈夫みたいだ」
「良かったぁ…でもあんまり無理しちゃダメよぉ、まだ閉じたばかりだかrひゃっ!?///」

ルートの小柄な身体が突如、日天の腕に抱きしめられた
卵を守る親鳥のように優しく、優しく
包まれた卵は、徐々に徐々に熱く、赤くなってゆく

「…有難う。また、助けられたな」
「ひぇ、は、あ、り、りーてぃえ、さ、ぁ…ぁぅぅ………///」
「…あっ、す、すまん、苦しかったか!?」
「っち、違、そ、その………ひゃは///」

誤魔化すように無邪気に笑うルート
そんな彼女の笑顔を見て、日天はふふっ、と笑い、頭を撫でてゆっくり立ち上がった

「…で、状況は分かってるか?」
「うん、エーヴィヒから全部聞いてるぅ
 「マヤの予言」の仕業なんでしょぉ? 迷惑な話だよねぇ…」

日天の問いに、ルートは立ち上がりながら淡々と答えた
感情の切り替えが早いのは、流石元「組織」といったところか

「エーヴィヒ…あぁ、あのネコの都市伝説か
 そういえば見かけないが、何処へ?」
「…あれ? ここに来る途中で逸れちゃったのかなぁ…?」
「悪いね、少し寄り道をしてしまったんだ」

屋根を伝ってちょこちょこと走ってきたのは、白く長めの毛が美しい子猫
その見かけによらず、2つの都市伝説に飲まれた契約猫であり、ルートの相棒――エーヴィヒ

「いたのか、無事で良かった」
「テメェ何処行ってたのぉ? アタシはともかく、日天さんに余計な心配かけさせないでよぉ」
「その彼への優しさの2割でも僕に向けてくれると有り難いんだけどね」

エーヴィヒの言葉に、日天がこっそりと苦笑した
そして、

「さて、隠れていないで出ておいでよ」

何者かに、エーヴィヒが語りかける
咄嗟にルートは身構え、日天もスケッチブックを開いて竜の絵を描き始める

「………「オセ」には何でもお見通し、か」

陰から現れたのは2人の男女だった
冷たい眼の男と、美しい黒髪の女
どちらも物静かで近寄りがたい雰囲気を醸し出していた

「…人間……じゃぁ、ないみたいねぇ?」
「あぁ…都市伝説だ。それも、神話レベルの…」
「「イシュムカネー」と「イシュピヤコック」、で良かったかな?」
「…その通りだ」
「エーヴィヒ、テメェ知ってんのぉ?」
「僕は「オセ」だからね。どんな隠し事も僕の前では無意味だよ」
「…「イシュムカネー」、「イシュピヤコック」……どちらも「ククルカン」と共に人類創造に携わった神の一柱の筈だ
 ローゼさんによれば、「ククルカン」や「フラカン」は「太陽の暦石」を使って人類の破滅を目論んでいた……
 ならお前達はオレ達の敵の筈。どうしてこんなところに、何の殺気も持たずにやってきたんだ?」
「………少し、違う」

髪を揺らして首を振るのはイシュピヤコック
何が違うのかと、そう日天が尋ねようとする前に、イシュムカネーが語り始めた
353 :仄暗い魂 † Kristall Skelett [sage saga]:2012/03/26(月) 00:47:44.93 ID:JPa1avVu0
「…僕達は、本当は神ではない……「太陽の暦石」によって生み出された副産物…」
「副産物ぅ?」
「……「暦石」の、目覚まし時計…」
「意思を持たない「太陽の暦石」の為…人類を滅ぼすか否か判断し……破滅の巫女に相応しい人間を探し出す…」
「つまり……「ククルカン」も「フラカン」も、「太陽の暦石」の意思に従って…いや、則っているだけなのか
 …だが、お前等は……」

イシュムカネーとイシュピヤコックは互いに視線を合わせて頷き、手を繋ぐ
アスファルトが罅割れ、地面から植物が伸び始めた

「…何百年、何千年と…人類を創り…殺してきた…」
「………馬鹿の一つ覚え…」
「この下らない予言(シナリオ)を……終わらせて欲しい」
「……唯一の、希望…」

植物はルート達の元へと伸びて、葉と葉の間に隠されたものを見せた
月光を反射して神秘的な輝きを放つそれは、髑髏の形をした水晶だった

「こ、これって……水晶髑髏?」
「「マヤン・スカル」……本物だね」
「これを持っていけば、人類の滅亡を止められる……本当に、良いのか?」
「…僕達には、これくらいしかできない」
「……無力……」
「…エーヴィヒ…?」
「この2人の言っている事に嘘は無いよ。紛れもない真実だ
 自分達の命を狙われる危険性を冒して、ここまで来たんだよ」
「…ねぇ、えっと……いしゅ…いしゅ……イシュイシュコンビ!」
「ルート、イシュムカネーとイシュピヤコックだ;」
「その願い、受け取ったわぁ!
 テメェ等が出来なかったこと……アタシ達が絶対に成し遂げて見せる!!」

宣誓し、ルートは差し出された「マヤの水晶髑髏」を掴んだ





「ふざけるなぁ!!」





怒号、そして火球

「ルート!!」
「くぅっ!」

日天はルートを抱き寄せて飛び退き、エーヴィヒは豹の姿になってイシュムカネーとイシュピヤコックを突き飛ばした
火球は激しい音と共に着弾し、爆発を起こしながら植物を灰に変えてゆく
ひょう、と空中に飛ばされた「マヤの水晶髑髏」を手にしたのは、翼を生やした赤いダウンコートの男だった



   ...setzen Sie fort
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/26(月) 00:48:24.91 ID:JPa1avVu0
今日はこれが限界か…寒い、もう寝るorz
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 01:50:57.70 ID:HEhYq9vAO
くーが幸せそうで嬉しいなあと、単発の人の出したくーが彼女なのかわからないまま勝手に幸せになってみる
これぞ真のほのぼの

そして一方
マヤの予言が一気に進みそうな勢いですね!
356 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/03/26(月) 04:32:59.96 ID:fitfXO/AO
>>306-308
>>317-319
短期連載の人乙ですー
涙腺決壊しそうでしたの…
桜太くんよくやったよキミは世界一カコイイ兄ちゃんだ
柊子(仮)ちゃんは記憶を取り戻せるのか?
でも彼女の記憶が戻ったら桜太くんの柊子ちゃんじゃなくなっちゃうかも
どっちにしてもせつなすだよー

>>322
シャドーマンの人乙ですー
生首にちゅーとかテラモエス
ネクロフェリアとかサロメとか大好きなのでおなか一杯萌えました

>>325>>327
花子さんとかの人乙ですー
くるちゃんかわゆすー羊さんかわゆすー
契約者さんともどもお持ち帰りぃ

>>326
犬神憑きと怪人アンサーの人乙ですー
再び見られるとは…
灯ちゃんかわいいよ灯ちゃんふひー
個人的には火車のおねーさまも気になる

>>341
単発の人乙ですー
このしゃべる猫様を紹介して下さい(キリッ
>>344-345
シャドーマンの人乙ですー
テスカトリポカかっこよすー!なんかトリックスター的なにおいがするなぁ

>>352-353
またまたシャドーマンの人乙ですー
おお、マヤの予言サイドから寝返り現る!
イシュムカネーとイシュピヤコックがどう動くか注目なのー
357 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/26(月) 14:41:19.45 ID:m79J7KEt0
>>355
> マヤの予言が一気に進みそうな勢いですね!
一気に進ませたいです…せめて『夢幻泡影』だけは終わらせないとここから出ていけない

>>356
> ネクロフェリアとかサロメとか大好きなのでおなか一杯萌えました
そうだったのかwww
俺自身軽いネクロフォビアなのでどんなもんなのかさっぱりなんだけどね♪(

> テスカトリポカかっこよすー!なんかトリックスター的なにおいがするなぁ
実は『テスカトリポカ』も、某這い寄る混沌の化身だったりする

> イシュムカネーとイシュピヤコックがどう動くか注目なのー
片方殺そうと思ったけど二人とも安らかに消えてもらうことにしました(ぁ
358 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/26(月) 21:20:24.54 ID:V1qHYT3SO
――――――
――――
――

仕事が片付きません。
次から次へと書類がやってきて、桜太君に連絡もとれません。
というか、私の携帯電話は何処へ……?
任務は来ないのに、事務仕事は大量に……
というか、これAナンバーの印が押してあるんですが。
もしかして、過激派から仕事を押し付けられてます?
何故?
私、何かしましたっけ?
んー……?
何か、嫌な予感がしますね。
こんな仕事、さっさと片付けて桜太君に会いにいきましょう。

え?は?組織内のトイレの数を調べろ?
……え?私がやるんですか?
…………え?それ必要ですか?
………………え?

――
――――
――――――
359 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/26(月) 21:21:11.07 ID:V1qHYT3SO
相変わらず、黒服に電話は通じず、今日はそろそろ寝ようかと、布団の準備をしていると
「お兄ちゃん」
柊が部屋にやって来た。
「どうした、柊。一緒に寝にきたのか?」
「え!?……ぇと、お兄ちゃんが良いなら、一緒に寝たい、な……」
……一応、冗談のつもりだったんだがな。
「あー、うん。また今度な」
そうは言っても、明日の朝には俺の布団には何故か柊がいるだろう。
いつもの事だ。
「で、本当は?何か用事があったんだろ?」
「あ、あの……え、っと……」
何故か、柊は顔を赤くして、もじもじし始めた。
「どうした?」
風邪でもひいたんじゃないだろうな。
「あの、ね。その……あ、えっと、……おやすみの……」
「ん?」
「おやすみなさいのチュウ、とか、して……ほしいな、って」
…………いや、待て待て。
「それは、兄妹でする事か?」
「す、……するよ!!」
「そ、そうなのか?」
「うん!……………………たぶん」
うーむ、俺は世間の他の兄妹ってのを知らんからなあ。
まあ、柊が言うなら、そういうもんなんだろう。
「じゃあ、まあ……」
取りあえず、キスしてみる、
「ぁ……」
おでこに。
さすがに、口はまずい事くらいは分かるからな。
「これで良いか?」
「うん!」
嬉しそうに、柊が笑う。
「しかし、最近三割増しで甘えん坊だな」
「私は、前から甘えん坊だったよ」
そうだったのか?
「でも、前は本当の妹じゃないって、思ってたから……」
あー、遠慮してたのか。
「ん、まあ、そろそろ寝るか」
「うん!」
俺達は布団に入った。
……あ、やっぱり、本当に一緒に寝るのか。

360 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/26(月) 21:22:25.88 ID:V1qHYT3SO
――――――
――――
――

「いやー、仲良い兄妹ですね」
黒服の男がそう言いながらパソコンを見つめる。
画面は、グーグルストリートビュー。
「でもね?俺、他人のプライベートを見るのは、どうかと思うんだけどなー」
早く帰ってくれないか、という思いを言外に込めて、男は言う。
私は、そんな男を無視して画面を凝視する。
「そうですね。長居するとお仕事の邪魔になりますからね。私達も帰りましょうか」
黒服の女が言う。
「え、嘘だよな」
何故か戸惑ったように、黒服の男が言う。
「本当ですよぉ。すぐ帰りますね」
「え、ちょっ、待って!」
「なんですか?」
「いやー、まあ、来たばっかりなんだし、もう少しゆっくりしていけよ」
そう言って、男が席を立つ。
物音から、コーヒーを入れているらしい。私はずっと画面を見ているので分からないが。
「そして、うん、できれば、その写真は、置いていくか、捨てるか」
「そうですね。私が持っていても、使い道無いですからね」
「そうそう、だから……」
「嘘ですけどね」
「う……」
よく分からないが、この男と会う前に、女が持っていた盗撮っぽいいろんな女性の写真を持っていたから、あれが何かの弱みなんだろう。
まあ、私には関係ない話だ。
それより私に関係あるのは、今、画面に写っているモノ。
私の、次の任務。
次の、コロす相手。
ああ、腹が立つ。

――
――――
――――――


361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/26(月) 22:35:10.09 ID:V+OZrj8S0
アカリールの人乙です〜
良い感じに陰謀が動き始めたか……あぁぞくぞくしてきた(
今日も柊ちゃんが可愛いよハァハァ
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/26(月) 23:06:47.72 ID:V+OZrj8S0
やっべ……百花軍&本条夫妻VSフラカン書こうと思ってたんだけど……
1回DKGとファントムさんの人が『フラカンとの戦い書いて良い?』的なコメくれてたのを思い出した……
どうしよう、書きたいシーンとかあったら悪いよな……確か私立高校の試験が超ハードスケジュールだったし今も忙しいのかも
というか俺自身何も戦闘シーン思いついてないt(黙


と言う訳で、恐らく今から30分後に上げる『花鳥風月』は未完状態で上げる事をお許し下さい
動きがあれば避難所とかに上げるかも知れませぬ
363 :花鳥風月 † 嵐は吹き荒れる(未完) [sage saga]:2012/03/27(火) 00:14:56.98 ID:KJDxaqMK0
走る、走る、走る

「お、おい百花、本当に良かったのか!?」
「店長達の覚悟を無駄には出来ないでしょ! 信じるしかないの!
 信じて、信じて……生き延びる!!」
「そいつの言う通りだ。さっさと親玉を潰して、あの気味の悪いジャガーロードとはおさらばしたい」
「おっと、潰すんじゃなくて「マヤの予言」は俺のもn」
「「黙って先頭を走ってろ!!」」

雄介、薫の激しい怒号は、囮として先頭を走る総司に向けられたもの
ジャガー人間を相手に2人で残った菊と水城の意志を継ぎ、
彼等は「マヤの予言」の本体を叩くべく、ひたすら走る

「ふらっふららららら……こいつぁ、物騒なことを聞いちまったなぁ?」

若い男の声
一同が空を見上げると、パンク風の格好をした金髪の青年が、風に乗って宙を浮いている

「な、何よあいつ……!?」
「気をつけろ、神話系都市伝説だ………マヤ神話の風と嵐と炎を司る神、「フラカン」」
「へぇ、フクロウの分際で詳しいな?
 だが人間如きに手を貸してるようじゃまだまだだ」

すたっ、と「フラカン」は地上に降り立つ
既に変身している雄介と百花はそれぞれ構え、玄鳥はコロとモッケを戦闘態勢につかせ、
薫は銃器を、風音は手裏剣を、総司は御札のようなものを取り出した
そして、

「う、うぅ、えっと、何処に隠れてた方が良いの?」
「はいはーい、月夜ちゃんはこっちで宜しくー」
「ほえ、何――――――――――――玄鳥を虐める人、許さない」

百花に傘を没収された月夜は、月光を浴びて暴走を始める
にやっ、と「フラカン」は怪しい笑みを浮かべた

「あぁ? 俺とやるってかぁ? ふらっふらららららららら!!
 ………どいつもこいつも“神”を侮辱しやがって!! 先にテメェ等から滅ぼしてやる!!」

激昂した「フラカン」は、その右手に炎と風の渦を纏った
神と人間の戦いが今、始まろうとしていた



   ...続く
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/27(火) 00:17:59.56 ID:KJDxaqMK0
アルェー? 1時間以上かかってたorz
ごめん、「カマロッツ」戦以降のDKGとファントムさんの人と花子さんとかの人の話を探してたらそれで60分経っちゃったの(=製作時間:10分orz

今日は寝る…明日書くべきは計何話だ…?
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 00:28:50.61 ID:D3fFr3ww0
先生
みゆきさんを裂かせて
れいかさんを泣かせたいです

先生
ピアスの白い糸の
カオリさんの話はまだですか

先生
>>360の黒服は前に単発で出てて
>>363は神に勝てるんでしょうか

先生?
366 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/27(火) 00:47:12.21 ID:KJDxaqMK0
>>365
色々落ち着けwww

> >>363は神に勝てるんでしょうか
裂邪と戦ってボロボロになったフラカンが勝てるわけg(ミンチより酷いや
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/27(火) 03:08:49.60 ID:JJFGGQGAO
>>358-
短期連載の人乙ですー
いやー桜太くんと柊ちゃんなんてかわゆすなカップル
やっぱ兄と妹はラブラブに限るよね!覗きやってる黒服さんその場所かわtt

>>363
シャドーマンの人乙ですー
フラカンが勝てる気がしないww
368 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/27(火) 07:53:03.50 ID:KJDxaqMK0
>>367
> フラカンが勝てる気がしないww
裂邪戦では5vs1でしたが、今回なんと7vs1というリンチ状態
フラカンには『三人で一人』っていう神話上の設定(「鎌鼬」的な)があったけど、
『何故裂邪の時に使わなかった?』と自問してみたら自答できなかったので没orz
ひたすらフラカンカワイソス
369 :赤い幼星 † 破滅の足音 [sage saga]:2012/03/27(火) 20:15:54.93 ID:TAv+oYOB0
「ローゼさん!」
「くっ、酷い怪我だ……放っておくとまずいぞ」


―――どなた……? 正義さん…それに皆さん……無事に「水晶髑髏」を手に入れられたのかしら


「…勇弥くん、能力で外まで脱出できる?」
「え?……あぁ、外へならいつでも行けるぜ」
「ローゼちゃんを連れて先に戻ってて。僕も後で行くから」


―――え…!? あ、待って


「ち、ちょっと正義くん!」
「奈海、ここはあいつに任せておけ」
「でも!」
「奈海落ち着いて!」
「大丈夫だ心星、黄昏を信じろ。日向、頼む」


―――待って、裂邪さんは………く、ち、血が、足りなく……


「れ………や、さ………」


暗転





     †     †     †     †     †     †     †
370 :赤い幼星 † 破滅の足音 [sage saga]:2012/03/27(火) 20:16:41.58 ID:TAv+oYOB0
「―――――――裂邪さんっ!!」

布団を跳ね除けて、ローゼは勢い良く跳び起きた
目を覚ました時、彼女が見たのは心配そうな表情をしたライサや勇弥達だった

「ローゼお姉様!」
「ライサ…有難う、勇弥さん達も、有難うございます」
「いやぁ、間に合ってよかった」
「…それで、正義さんと裂邪さんは……」
「っ……」
「まだ戻っていない。きっと、2人とも大丈夫だとは思いますが…」
「そう、ですの……あっ、「水晶髑髏」は!?」
「無事こちらに渡りました。晶髏さんとの契約も確認しましたよ」

そう言って病室に入ってきたのは、本部にいる筈のR-No.1――六条 蓮華だった

「蓮華ちゃん? どうしてここへ………」
「…人の気も知らないで……
 No.0が2時間も目を覚まさなかったら、流石の私でも心配の一つや二つしますよ」
「……にっ、2時間!?」

咄嗟に時計を確認する
短針は10を指し、長針は間もなく12を示す

「も、もうこんな時間……は、早く「水晶髑髏」を探しに行かなきゃ…!」
「大丈夫です。もう殆ど集まってますので」

ベッドから飛び降りたローゼは、きょとんとした表情をしている
はふ、と溜息を吐いて、彼女の無言の問いに蓮華が答えた

「貴方が寝ている間に、勇弥さん達が持ってきた「紫水晶髑髏」と契約した時、
 晶髏さんの「ヘッジスの水晶髑髏」の感知能力が強化されて、新たに1つ発見しました
 その後も、契約しては範囲が広がりの繰り返しで、全国にR-No.6達偵察班を散らばらせておいたこともあって、
 迅速に回収を終えました……幾つか、いい加減な探知もしていたようですが」
「そ、それじゃもう……あれ、“殆ど”?」
「まだあと1つ見つかって無いらしいんだ。「マヤの水晶髑髏」、でしたっけ?」
「そうです。マヤの神官が持っているとされるそうですが…」
「マヤの神官……も、もしかして…!?」
「「ヘッジス」によれば、この町にあるそうです」
「コインちゃんも同じみたい。多分、ローゼさんの予想は当たってる……」
「くっ…何とかして取り上げる事が出来れば――――――ッ!?」

強大な気配を感じ取り、ローゼは早々と窓を開けて身を乗り出す

「お、お姉…様?」
「R-No.0、一体何が―――」
「「マヤの予言」……「太陽の暦石」の気配が増幅してる……
 こうしちゃ居られませんわ!」

さらに足を擡げ、背中から赤い翼を広げる
一歩下がりながらも、蓮華達は彼女を引き止める
371 :赤い幼星 † 破滅の足音 [sage saga]:2012/03/27(火) 20:17:20.44 ID:TAv+oYOB0
「止めないで! 「水晶髑髏」が13個揃うまで、ワタクシが時間を稼ぎます!!」
「待てよローゼさん! 幾らなんでも無茶だぜ!?」
「例え同じ世界破滅系だったとしても、1人では危険です!」
「こうしている間にも、多くの契約者達がこの町を守ってくれているというのに…
 ワタクシが行かなきゃなりませんの!!」

全員を押し退けて、赤光の翼を羽ばたかせ、
ローゼが病室から飛び去ろうとした、その時だった

「じゃあ、皆で行こう」

声の主は、さっきまでそこにいなかった筈の黄昏 正義だった
「恐怖の大王」と共に、息を荒げながら、病室に入ってきた

「正義くん!」
「大王様!よくご無事で!」
「あぁ、何とか、な」
「大王も、世界破滅系の都市伝説だ
 ローゼちゃんと力を合わせれば、「マヤの予言」にも勝てるかも知れない」
「正義さん…」
「あっ、2人とも疲れて…私が癒してあげる」

ライサは正義と大王の手を取ると、「マイナスイオン」の能力で青い光を放ち、
2人の疲労と、正義の生傷を回復させた

「ありがとう、ライサちゃん」
「黄昏正義さん、でしたね。失礼ですが、裂邪さんは…?」
「…必ず戻ってくる。少し遅れてくるけど、お兄ちゃんは絶対に来てくれるよ
 だから今はボク達が何とかしなきゃ。奈海、場所は分かる?」
「うん、北区にある山の中みたい」
「勇弥くん」
「あぁ、いつでも飛べるぜ」
「分かった。急ごう、ローゼさん」
「えぇ…でも、無茶はなさらないでね?」
「ほんの少しでも力になりたいのですが…私はここに残って「水晶髑髏」の捜索に尽力します」
「ごめんなさい、「蝦蟇の油」も「河童の妙薬」も皆切れてて……」
「2人ともありがとう。大丈夫、絶対終わらせるから」
「R-No.1、R-No.10、ここはお任せ致しますわ」
「よし、皆行くぞ!」

勇弥の声と共に、一同の姿がパッと消える
正義とローゼ達は舞台へと向かった
悲劇のバッドエンドを、ハッピーエンドに変える為に



   ...To be Continued
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 21:27:14.58 ID:8eeOEczL0
シャドーマンの人乙っしたー
見える…裂野郎が遅れて登場して
美味しい所皆かっさらっていく場面が
ありありと見える…うおおおshado-mannnnnnhhhhhhhhhaaaahh!!
373 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/27(火) 21:51:56.24 ID:l+/DzCMSO
「お兄ちゃん」
街で買い物をしていると、柊がいた。
「柊?こんなとこで何してんだ?」
今日は家で留守番のはずだ。
「何って?お兄ちゃんと同じで買い物だよ?」
そう言って柊は笑う。
「そうだ!お兄ちゃん」
「ん?」
「デートしよ、デート」
「お前な……」
「ほら、行こう行こう」
「お、おい」
柊が俺の腕を掴んで、強引に引っ張る。
……仕方ないな。

その後は
「にゃー!?また負けたぁ!」
ゲーセンに行ったり
「お兄ちゃんは何頼むの?」
飯食ったり
「どうかな?似合う?」
服を見たりした。

そうして、時が過ぎ、日も暮れかかった頃、
「んー、楽しかったぁ」
「そうか、ところで……」
「ん、なぁに?」
「お前は誰だ」
俺は、柊の姿をした誰かに尋ねた。
俺と柊は、契約している。
柊は「偽の警察官」であり、「なりきる」能力を持つ。
それが、契約者である俺にまで作用するとややこしい事になる。
だから、俺には柊かどうかを判別する能力がある。
その能力が告げている。
「お前は、柊じゃない」
と。
「……何、言ってるの、お兄ちゃん」
「一日、様子を見てみたけど、襲ってくるわけでもなし。
 お前は誰で、何をしに来た」
本当に、何もしてこなかった。
料理に毒を入れるわけでもなく、金を盗むわけでもなく、情報を聞き出そうとするわけでもなく。
「……違うよ、お兄ちゃん。違うでしょ?」
「……?」
気がつけば、いつからいたのか、柊の姿の女の後ろに、一台の黒い車が停まっていた。
「誰?って。それは、私に言う事じゃないよね?それはさぁ、今、お兄ちゃんの家にいる女に言う事だよね」
「は…………?」
車のドアが開く。
見た事の無い、女の黒服が乗っているのが見える。
「あぁ、腹立つなぁ」
「……まさか、お前」
柊の姿の女が車に乗り込む。
「ん、大丈夫だよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんを騙してるあの化け物は、ちゃあんと、私が退治するからね」
扉が閉まり、車が動きだす。
窓が開き、女が、……いや、
「じゃあね、お兄ちゃん。久しぶりに会えて嬉しかったよ」
本物の柊子が、手を振った。

374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/27(火) 21:55:32.20 ID:TAv+oYOB0
ここでタイトルが『Sisters』と複数形である理由が判明した訳か…深い
最後の一文でゾクッと来た………うわぁ続き読みたい

>>372
>ありありと見える…うおおおshado-mannnnnnhhhhhhhhhaaaahh!!
何故バレたs(
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 22:43:06.58 ID:l+/DzCMSO
前は冗談のつもりだったんだけど
本当にバッドエンドの方が良かったりするんだろうか
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 22:47:05.27 ID:fO0KgU7S0
影の人乙
そろそろ大きく動きそうね

アカリールの人も乙
本物が偽物の討つ展開か
妹の方も組織所属だったのね

>>375
春が近いのでハッピーエンドを所望する
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/27(火) 22:48:20.12 ID:TAv+oYOB0
>>375
いっそ両方書くとk(

俺はどちらでも受け入れるけど、ここは敢えてハッピーを選ぼう
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/27(火) 23:06:44.43 ID:TAv+oYOB0
>>376
>そろそろ大きく動きそうね
大きく、ね……動かさないとマジで死にそうorz
本当は今日中にでも終わらせたかったんだけど無理っぽいですごめんなさい
明日家出て愛知に引っ越すんで、もしかしたらエターナる可能性もあるけど御了承願いたい
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 23:22:13.04 ID:l+/DzCMSO
愛知は味噌煮込みうどんが美味いぜよ
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 23:23:53.35 ID:o8GxEkgz0
エタっても僕たちの事を忘れないでくれると嬉しい
381 :赤い幼星 † さらば戦士よ:前 [sage saga]:2012/03/27(火) 23:29:32.89 ID:TAv+oYOB0
「…ふん、あの似非邪神が……予定より1時間も遅れた」

森の中、少女は―――麻夜は呟いた
いや、正確には彼女と契約しその人格を乗っ取った都市伝説――「太陽の暦石」が

「まぁ良い。確かに大分慣れてきた……
 試しにジャガー共を人型以外の異形な姿にしてやったが…さて、どうなるか
 気になるとは思わんか? 人間共よ」

彼女が話しかけているのは、その背後に現れた7つの影だった
R-No.0――ローゼ・ラインハルト
黄昏 正義と、契約都市伝説「恐怖の大王」
日向 勇弥
心星 奈海と、契約都市伝説「こっくりさん」のコイン
十文字 楓

「生憎全く気になりませんわ! こんな茶番、さっさと終わらせてさしあげます!」
「本当に、麻夜ちゃんが……その子を返せ!!」
「やっひゃひゃひゃ…威勢は良いな、あの小僧のようだ
 だがそれを勇気などと勘違いして貰っては困るな」

麻夜がカッと目を見開くと、彼女の背後に円形の石板が出現した
文字のようなものや絵が描かれたレリーフで、中央には太陽

「あっ、あれは「太陽の暦石」!?」
「あの都市伝説の本体か…?」
「そう、これこそが我が魂
 そして今、肉体と魂が一つとなる………はぁっ!!!」

麻夜の声と同時に、「太陽の暦石」が砕いたパズルのようになり、
彼女の鎧となって身体に装着された

「うっそぉ!? あんなのありなの!?」
「麻夜ちゃんの幼気が作用している可能性がありますわね…」
「本当に面白い肉体だ……最後に殺すのが勿体ない程になぁ!!」

麻夜の右掌から赤々と燃える火炎が放たれる
それを防いだのは見えない壁―――空気の壁だった

「殺させはしない…絶対に!!」

クレイモア剣を持って正義が飛びかかる
しかし麻夜はひらりとそれを回避してみせた

「ふん…」
「い、避けた!?」
「ちっ、少年!」
「『フォトン・エッジ』!!」

続いて大王も剣を、ローゼは赤い光の剣を振るう
それらもやはり麻夜はいとも容易く回避してしまった
まるで、その攻撃を知っていたかのように

「……そうか、“予言”! 「マヤの予言」だから、これから起こり得る事象を予測できるんだ!」
「もしそれが本当ならかなり厄介だぞ…!? コイン、何とかできないか!?」
「ダメっ! 答えを出してもその一歩先へ行っちゃうからどんどん上書きされて……」
「くっ……恐らく「数秒ルール」も無意味……くそっ、ここで見ているしかないのか…!?」

吹き荒れる突風
正義、大王、ローゼの3人は、木の幹へと強く叩きつけられた

「やっひゃひゃひゃ!! どうした人間共? 先程の威勢はもう滅んだか?」
「つ、強い……このままじゃ、負ける……!」
「でも…本気を出せば……だって、あの身体は……!」

2人の心を揺らすのは、麻夜という存在
今の「太陽の暦石」を倒す事は、その契約者である麻夜にも影響があると考えられる
最悪の場合、死に至る事も

「「フォトンベルト」と「恐怖の大王」……やっひゃひゃひゃ、意外にも大したことは無いな
 少し遊んでやろうか、それとも一気に殺そうか………やぁっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」



   ...To be Continued
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/27(火) 23:32:53.65 ID:TAv+oYOB0
『前』とはっきり書いたからにはすぐに『後』を書きたいんだけど
明日は早いのでもう寝ます……orz

>>379
やっぱり愛知は味噌なのかwww
そういや味噌カツ食べたいなぁ、あとひつまぶし

>>380
忘れる訳ないじゃないですかーやだー(コラコラ
案外普通に来られるかも知れないけど念の為、ね
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/03/28(水) 01:41:06.40 ID:yq9rZgQX0
シャドーマンの人様、アカリールの人様乙ですー
おお、マヤの予言編が動き出したぞ…
柊ちゃんかわいい…お休みのちゅーとか破壊力が高すぎます(グハァ
フラカン様がフルボッコされるよk(*あなたはミンチになった*
正義君とローゼちゃんが「太陽の暦石」を止めに動いた…!
ライサちゃんマジ天使!
柊子ちゃん生きてたんだ…!ちょっと病んでるような気がするのはきっと気のせいだ(個人的に大好物ですけどね!
皆のピンチに我らがれっきゅんが颯爽登場するんですねwktk!

>>346
>ただもうすぐ俺がここから消えるかも知れないので出来るかどうかは予定で未定なの…orz
では、ご縁があった時はよろしくお願いします…orz

>>356
>個人的には火車のおねーさまも気になる
明日辺り、避難所の方にキャラ設定上げておこうかと思います
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/03/28(水) 03:07:44.26 ID:Utepl2L00
シャドーマンの人乙ですー
いよいよ大詰めに入りそうですなのです。麻夜ちゃんが心配だけど
きっとハッピーな結果になると信じてますの。そしてれっきゅんの華麗なる復活に期待
アカリールの人乙ですー
複数形疑問だったけどこう言うことだったのかと納得
みんなが幸せになれるよう祈ってます

>案外普通に来られるかも知れないけど念の為、ね
そうなるよう願ってますの
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/28(水) 09:54:07.29 ID:2YrxT6TDO
皆様投下乙ですー
今更ながら、水晶ドクロの所在が「全世界」じゃなくて「全国」だと知って驚き
読み込みが足りないなぁ……一度復習するべきか
386 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/03/28(水) 14:53:35.74 ID:KhwTWbib0
バイトだと思ってたら正社員だったでござる
試用3ヶ月で入社でござる
来れそうです、良かった良かった(良いのか?

>>385
やっべしくじった、ごめんなさい無かったことに!(
387 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/28(水) 22:36:41.73 ID:BcB50A/SO
――――――
――――
――

「大丈夫ですか?」
顔をあげると、黒い服を着た男がいた。
「……っ、す……て、……助………………」
上手く、声がでなかった。
目を動かせば、お母さんとお父さんだった物が見えた。
二人は息をしていなかった。
身体中が変な方向に曲がっているお父さん。
何も入っていないみたいに、お腹がペッタンコになっているお母さん。
きっと、自分も似たような姿をしているんだろう。
それでも私がまだ生きているのは、私が契約者で、少しだけ頑丈だからだろう。ほんの少しだけだけど。
こんな事になったのは、車に轢かれたからだ。
しかも、何度も戻って来ては、執拗に私達を轢いていった。
「はい、フリーの契約者のようですが、まだ息があります」
黒服の男が、どこかに電話している。
「あ、寝たらダメですよ。死にますから」
黒服の男が、私に何か言っている。
「ええと、貴女、名前は?言えます?」
名前?……名前は
「ひ…………ぃら……柊……子…………」
なんとか言えた。
そうして、私の意識はそこで途切れた。

その後、目覚めた私は組織の為に働きだした。
助けて貰った恩もあるが、何より、私やお母さん、お父さんを轢いた奴が、契約者だと知ったからだ。
あんな危ない奴、放置しておけない。
何処かの誰かが被害にあっても気にしないが、万が一、お兄ちゃんが襲われたら大変だ。
だから、私は組織の命じるまま、人を襲う都市伝説や契約者を殺した。
その間、家には帰っていない。どうやら、私は世間では行方不明になっているらしい。
お母さんとお父さんの葬式には出たかったけど、仕方ない。
お兄ちゃんを守る為に、私は戦い続けなければいけない。
それに、殺した契約者の仲間が逆恨みして、私を襲ってくるかもしれない。そんな時、私と一緒にいたら、お兄ちゃんにも被害が及ぶかもしれない。
戦って、戦って、戦って、戦って。お兄ちゃんを守る。
お兄ちゃんと一緒にはいられないけれど。お兄ちゃんには平和に暮らしていてほしいから。
私は、お兄ちゃんが大好きだから。

それなのに。
お兄ちゃんの為に頑張っているのは私なのに。
私はお兄ちゃんと一緒にいれないのに。
どうして、その化け物が、お兄ちゃんの隣で笑っているの?
どうして、その化け物にキスなんてしてるの?
どうして、私に向かって、「誰だ」なんて言うの?

分かってる。
分かってるんだ。
全部、あの化け物が悪い。
私の姿で、お兄ちゃんを騙しているあの化け物が悪い。
大丈夫。大丈夫だよ。
組織からの命令は、あの化け物を[ピーーー]事。
すぐに、私が退治するから。
お兄ちゃんを助けてあげるから。
だから。だからね。
私にも、おやすみのチュウとか、してほしいな。

それだけ。
それだけの話。

――
――――
――――――
388 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/28(水) 22:37:19.37 ID:BcB50A/SO
電話がかかってきた。
「もしもし……、桜太君ですか……」
聞こえてきたのは、疲れきった黒服の声。
「おっ……まえ……何してやがったああああ!!」
「は、はい!?何、何ですか!?今ちょうど、黒服の好きな動物の統計をまとめ終わったところですが!?」
……いや、本当に何してるんだよ。
「あぁぁぁあぁあもう!!状況を説明するから!よく聞け!?」
「は、はい!」

柊の事。「偽の警察官」の事。過激派に狙われている事。柊子の事。
俺は簡単に説明した。

「なるほど、それはまずいですね」
相変わらず、疲れが滲み出ているが、少しだけ真面目そうに黒服が言う。
「すぐに保護に向かいます。家で待っていてください」
「分かった。なるべく早くしてくれ」
「はい。電球を回すのに何人の黒服がいるか、なんて書類は放り出して向かいます!」
……何か?あいつは組織内で虐められてんのか?
389 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/03/28(水) 22:38:29.95 ID:BcB50A/SO
――――――
――――
――

何処か。組織にて。
「何処行ったんだ?」
人を捜しているんだが、見つからん。
何せ、どいつもこいつも、似たような黒服着てるからな。
「侵入した『偽の警察官』の件、報告に来たってのに」
まあ、松ヶ崎柊子に「偽の警察官」の討伐に向かったって報告だから、必要ないだろうけど。
もう知っているだろうし。
ちなみに、俺が捜してるのは、監視カメラの録画から、侵入者に気がついた張本人だ。
「おーい、そこの奴」
「はい?」
俺は適当に居合わせた黒服に話しかけた。
こいつ感情無しだな。
「この書類、渡したいんだけど。何処に行ったか知らね?」
「先程、出かけられました」
「出かけた?」
「はい。今、任務にあたっている者が失敗したら、自分が行くと言って」
……おい、まさか。
「『偽の警察官』を捜しに行きました」
「マジで?」
「はい。間違いなく。そう言ってA-No.19は出かけました」
…………あっはっはっはっ
俺知ーらね。

――
――――
――――――

390 :舞い降りた大王番外―誕生日 [sage saga]:2012/03/28(水) 23:42:00.22 ID:1HDz8Xqn0
勇弥「話をしよう。あれは今から、約14年前の出来事だ。」
楓「どうしたんだ日向?怪我でもしたか?」
奈海「何よ急に。……って、あぁ分かった。そういう事ね。」
コイン「えぇと、なんだったけ?」
勇弥「さりげなく十文字さんに酷い事言われたけど、誕生日だよ。正義のな。」

これは、2011年3月28日の出来事。その前日、勇弥達は正義にバレないよう密かに集まっていた。

楓「そうだったのか。なかなかその話が来ないから
  てっきり私を放っておいて、もう祝ってしまったのかと思ったぞ。」
奈海「正義くんは明日なのよ。だからクラスの中で1番誕生日が遅いの。」
コイン「つまり1番年下なんだよ。あれ、月下?」
勇弥「それで!今年はどんなものを渡すか、ってなってな。」

ふと、円盤型装置から黒いドレスの女性と、シルクハットの男性のホログラムが現れる。

陰“「それでは、私も知恵を貸してあげましょう。」”
伯爵“「私も、正義くんのお祝いがしたいので。」”
勇弥「あ、[陰]。手伝ってくれるのか。」
楓「おぉ、[カウント]か。助かる。」

この2人は、勇弥の契約している【電脳世界=自然界論】の[陰(イン)]と
楓の契約している【数秒ルール】の[伯爵(カウント)]だ。

コイン「2人が居たら心強いよ。でも、何がいいかなぁ。」
奈海「コインちゃんだったら、コイン10枚とかで済ますんだけど。」
コイン「むぅ。」
伯爵“「では、何か変わった事を催すのはどうですか?」”
楓「変わった事か……。いい案はあるのか?」
奈海「あんまり。子どもじゃないんだから、歌を歌うのもねぇ。」

陰“「では、最高のプレゼントが1番でしょう。彼の好きなものといえば?」”
勇弥「特撮グッズ……は親が買ってるから問題ないな。」
楓「他には無いのか?腕時計とかなら、すぐに情報を仕入れるぞ。」
コイン「あとは……ねぇ?」チラッ
奈海「もぅ!真面目に考えなさい!」

伯爵“「ほぅ……では、手作り料理はどうですか?」”
奈海「それは無理。元々、ケーキは私と正義くんのお母さんとで、ってなってるから。」
勇弥「そうなんだよなぁ。ケーキになんか細工するか?」
陰“「それならカウントの案とも一致して、面白いかもしれませんね。」”

コイン「じゃあ中にプレゼントを、……って、無理か。」
勇弥「ん?その気になれば出来るんじゃねぇか?」
奈海「うぅん、フォーチュンクッキーみたいな感じ?」
楓「そもそもケーキが2・3段なら、普通に入れれるんじゃないか?」

コイン「そうじゃなくて、まだプレゼントも決まってないじゃん。大きさによっては入らないよ?」
陰“「……そうでしたね。そこから考えないといけませんでした。。」”
伯爵“「ふぅむ、意外と難題のようですね。」”
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/03/28(水) 23:43:11.95 ID:S+qjcw0V0
>>387
>助けて貰った恩もあるが、何より、私やお母さん、お父さんを轢いた奴が、契約者だと知ったからだ
……もしかして、「ロールスロイスは壊れない」の……!?
話がどんどん繋がってきましたね
392 :舞い降りた大王番外―誕生日 [sage saga]:2012/03/28(水) 23:44:26.23 ID:1HDz8Xqn0
一同「「……で。」」

不意に、全員がある人物の方を向く。

大王「ん?」
奈海「大王さぁん、寝てるんですかぁ?」
勇弥「オレの調べによると、大王さんは寝ないはずですよぉ?」
大王「あぁ。寝てないが?」
コイン「なら大王も考えてくれないかなぁ?」
楓「大王様、お願いします。」

大王「では言わせてもらうが。」
陰「(正直、期待できませんが。)」
伯爵「(……。)」

大王「少年は、『いつもと違う誕生日がいい』とでも言ったのか?」
奈海「え、言ってないけど……。」
大王「なら今まで通りで良いだろう。」
勇弥「いや、それは極論過ぎるだろ。だからなにか新しい……。」
大王「別にいつも通り接しているだけでも、少年が楽しければそれで良いんじゃないのか?」
楓「……。」

突然、全員が黙り込む。

大王「(ん……?まずい事を言ったか?しまった、早く終わらせるために焦ったばっかりに。)」

奈海「大王さん、たまには良い事言うじゃない!」
勇弥「そうだな、本人が楽しけりゃあそれでいいんだよな。誕生日だし!」
楓「さすが大王様!素晴らしいお言葉です!」
コイン「大王すっごぉい!」
大王「そ、そうか。(どうやら正解らしい……。)」

奈海「んー!いつも通りで良いって思うと、気が楽になったわ。ケーキの材料買いに行ってくる。」
勇弥「おぅ、じゃあオレもプレゼント作ってくるか。」
楓「私も。となると……あれが良いか。」
大王「(ふぅ、一件落着か。)では、帰らせてもらうぞ。」

ふと奈海が立ち止まり、大王の方へ振り返る。

奈海「あ、待って大王さん。大王さんは何をプレゼントするの?」
大王「……は?」
楓「大王様は黄昏に1番世話になっていますからね。どんなものを?」
大王「あ、あぁ。」
勇弥「まさか、大王さん……。」
コイン「もしかして……。」
大王「別にそんなもの、やらなくてもいいだろう?」
一同「「ダメぇー!!」」
393 :舞い降りた大王番外―誕生日 [sage saga]:2012/03/28(水) 23:46:01.86 ID:1HDz8Xqn0
―――そして3月28日当日。

奈海「正義くぅん!」 勇弥「正義ィ!」 楓「黄昏!」
一同「「お 誕 生 日 お め で と う !」」
正義「みんな、ありがとう!」

明美「いつもありがとう。はい、ジュースだけど。」
勇弥「あ、どうも。」
奈海「お待たせぇ。これが、私からのプレゼント。前回より大きいわよー。十文字さんの分。」
正義「うわぁ、ありがとう奈海ちゃ、コホン……奈海。」
コイン「私も手伝ったんだよぉ、ここのデコレーションとか、果物選びとか。」
奈海「(あ、一瞬『ちゃん』付けで呼びそうだった。残念。)」

勇弥「オレはこれと、あとついでで悪いが札も新しいのができたから、ほい。」
正義「ありがとう。修行の時に試してみるね。」
楓「色々迷ったんだが、これが私からのプレゼントだ。おめでとう。」
正義「十文字さんもありがとう。大事に使うね。」

陰“「セイギ、おめでとうございます。」”
伯爵“「これからも楓さんと仲良くしてあげてください。」”
楓「カウント、なんだその保護者のような言葉は。」
正義「うん。陰とカウントも、これからもよろしくね。」

勇弥「―――さて。そろそろ良いよな?」
奈海「遅いぐらいよ。大王さぁん?」ニコニコ
大王「は?……あ、そうだった。が……。」ヒソヒソ
奈海「えぇ、ふざけないでよ!」ヒソヒソ
楓「せめて……ですよ。」ヒソヒソ
大王「はァ!?」
コイン「大王、ファイト!」ヒソヒソ
正義「……?」
394 :舞い降りた大王番外―誕生日 [sage saga]:2012/03/28(水) 23:47:29.61 ID:1HDz8Xqn0
大王「た、誕生日、おめでとう……。」



正義「あ、あぁ。ありがとう、大王。」



その言葉を聞いて、勇弥達もニッと微笑む。

勇弥「おぅ!よくやったな大王さん!」
陰“「あなたの事だから、逃げ出してしまうかと思っていましたよ。」”
奈海「よく言えました。はい、ケーキ。」
コイン「頑張ったね、大王!あ、私ここが良いぃ!」
楓「そうだ、今日を新たに大王様記念日としましょう!」
伯爵“「ほぅ。では、そちらの方も祝いますか?」”

あまり状況が飲み込めない正義だったが、ふと、大王が祝ってくれた事を考える。

正義「そういえば、初めてかな?」
大王「そ、そうなるな。」
正義「……ありがとう、大王。」ニッ





大王「……ふざけるなァァァアアア!!!」





―――こうして、今日もまた、いつも通りの楽しい1日となった。

番外「誕生日」―完―
395 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/03/28(水) 23:50:02.90 ID:1HDz8Xqn0
失礼しました。去年上げてなかったやつを少々。

では、本編と蝙蝠の作業に戻りますん。
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/29(木) 03:11:47.36 ID:uR7f9XVAO
アカリールの人乙ですー
本物の柊ちゃんも警察官の柊ちゃんもどっちも健気でせつなすだよ
しかし桜太くんの黒服さんカワイソスww

大王の人乙ですー
正義くんお誕生日おめ!
いつも通りだけどちょっとだけ特別な一日っていいね
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/29(木) 19:04:31.50 ID:sf/kO2LJ0
まだ感想をあげてなかったぜ……orz

アカリールの人乙です〜(何か定着してしまったが良かったのだろうか
柊子ちゃんは柊子ちゃんのままだったのか! お兄ちゃん大好き的な意味で!!
これは良いな、俺のシスコン力がチャージアンドアップだぜ!(意味不明

大王っち乙です〜
別に今年でも良いじゃんwwwww
しかし平和だ、平和な話も少なくなってきた(←主に自分のことを言ってます
398 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/03/30(金) 00:07:13.45 ID:dbAzpmin0
>>397
>別に今年でも良いじゃんwwwww

色々と矛盾が生じそうだったから去年にした。反省はしている。
そして進まない筆と引っ越しスケジュール
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/30(金) 18:34:09.94 ID:LqjtJdV50
>>398
あー、そういや大王っち明日引っ越しか
不安だわ(

>色々と矛盾が生じそうだったから去年にした。反省はしている。
それもそうか……あれ、何か生じる矛盾あるか?
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 23:43:44.31 ID:o/5fy0Veo
皆様投下乙ですー

>>397
>しかし平和だ、平和な話も少なくなってきた(←主に自分のことを言ってます
平和な話、血で血を洗う話、勧善懲悪する話、どれも大いに結構
都市伝説スレはありとあらゆる都市伝説の形を受け入れます
みんなで語ろう都市伝説
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/31(土) 00:50:55.76 ID:yVmA6HK30
>>400
>みんなで語ろう都市伝説
都市伝説といえば
今俺が住んでる男子寮、事前に聞いた話だと家賃格安だったんだが、実際その5倍だったんだ
話してくれた伯母さんも「あっれーおっかしいなー?」とか言いつつ謝ってくれたんだけど

どうやら女性社員の間ではそういう噂が横行しているようだった
こうやって都市伝説が生まれるんだなぁと思ったら背筋がぞくっとしたよ…
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/31(土) 01:00:59.61 ID:oPcEMGito
私が某所で聞いた興味深い都市伝説は
「都市伝説を紹介するサイトは管理人が失踪しやすく、長期にわたって更新が途絶えているものが多い」
というもの

何が言いたいかというと、避難所管理人さんやwiki管理人さんやロダ管理人さんやロダ(R-18)管理人さんの後ろに立ってるその人は 誰 ?
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/31(土) 01:29:01.51 ID:yVmA6HK30
>>402
>何が言いたいかというと、避難所管理人さんやwiki管理人さんやロダ管理人さんやロダ(R-18)管理人さんの後ろに立ってるその人は 誰 ?
>ロダ(R-18)管理人さん
っちょ、ここにおるがなwwwwwww
しかも誰もおらんshg
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/31(土) 03:32:16.24 ID:8fed2BVB0
古来から日本には伽という習慣があったそうだ

武士の世、夜になると御伽衆が主君と共に語り明かす
今の様に灯りがあるわけではないから寸分の先は闇に溶け合っている
曖昧な向こう側からやって来る恐ろしいモノを祓うには、より恐ろしい語りもので以っておこなわれたというわけだ
この習慣が大衆化していく中で、例えば、寝ずの番の場でそのような話が語られ、幾つかは書き留められて後世に伝わっていく

「怖い話ばかりしてると何かが寄ってくる」とはよく言うけど
科学の発達したこのご時世ではあっても、ある意味、このご時世だからこそ、語りは必要とされるんじゃないか
形を代えて、そう、都市伝説とかいうフォーマットを取ったりな…そういう意味では伽は都市化した世界にも残存してるさ

つまり何が言いたいのかというとだな
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/31(土) 03:39:03.14 ID:6egZKnmm0
>>404
あ、あんた一体……何者なんだ……!?
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/31(土) 08:57:11.61 ID:7awvPQODO
>>404
>武士の世、夜になると御伽衆が主君と共に語り明かす
>今の様に灯りがあるわけではないから寸分の先は闇に溶け合っている
ここから主君と御伽衆の(検閲)展開が繰り広げられるかと思ったら真面目な話だった
毒されてるなぁ……誰に何にとは言わないけれど
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/03/31(土) 10:53:47.72 ID:OzVlAxeX0
>>404
>何が言いたいかというと、避難所管理人さんやwiki管理人さんやロダ管理人さんやロダ(R-18)管理人さんの後ろに立ってるその人は 誰 ?
俺の姉がいますが何か

>>404
>「怖い話ばかりしてると何かが寄ってくる」とはよく言うけど
そういえば、悪魔の類は怪奇番組と言うか、悪魔憑き系の怖い話してるテレビ番組とかを介してやってくるって話があるとかないとか
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/31(土) 12:14:34.94 ID:9cB3PT/SO
可愛い女の子の悪魔とか来ないかな
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/03/31(土) 13:11:19.79 ID:nkkdRthF0
>>408
>可愛い女の子の悪魔とか来ないかな
先生……ニモラップたんが………欲しいです………
410 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/04/01(日) 01:26:39.16 ID:5eRM08nSO
桜太「チクショオオオオ!くらえ柊子!音速光線銃!」
柊子「さあ来いお兄ちゃん!私は実は一回撃たれただけで死ぬぞオオ!」
(バァン)
柊子「グアアアア!こ このザ・ブラコンと呼ばれる柊子が…お兄ちゃんに…バ…バカなアアアア」
(┣¨┣¨┣¨┣¨ド)
柊子「グアアアア」

黒服「柊子がやられたようだな…」
黒服の女の子「ククク…奴は組織の中でも最弱…」
明里「人間ごときに負けるとは組織の面汚しよ…」
桜太「くらえええ!」
(ズサ)
3人「グアアアアアアア」
桜太「やった…ついに組織を倒したぞ…これで柊を狙う奴はいなくなった!!」
A-No.19「よく来たな松ヶ崎桜太…待っていたぞ…」
(ギイイイイイイ)
桜太「ま…まだ敵がいたのか…!感じる…この黒服の魔翌力を…」
A-No.19「桜太よ…戦う前に一つ言っておくことがある。お前は組織過激派が柊を狙っていると思っているようだが…別にそんな事ない」
桜太「な 何だって!?」
A-No.19「そしてお前の両親も妹と同じく実は生きていたので家に送っておいた。あとは私を倒すだけだなクックック…」
(ゴゴゴゴ)
桜太「フ…上等だ…オレも一つ言っておくことがある。柊が人間だった頃の記憶を捜していたが今はそんな事どうでも良くなったぜ!」
A-No.19「そうか」
桜太「ウオオオいくぞオオオ!」
A-No.19「さあ来い桜太!」
桜太の勇気が柊を救うと信じて…! ご愛読ありがとうございました!

411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 01:35:34.68 ID:zxWD0P5E0
毎年4月1日はウソつき天使アカリールの日!
みんなも知ってるよね!!
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 03:24:47.32 ID:y3xeJYtw0
>>410
えっ?!

と思いましたが、そうですよね>>411ですね
413 :新番組 [sage]:2012/04/01(日) 03:28:28.36 ID:y3xeJYtw0
http://www.youtube.com/watch?v=mSKLTuGc75M


パーパラッパ パッパパラッパパー (ヒューヒューヒュッヒュヒュー)

明るい笑いを ふりまいて
見積もり片手に お葬式
後ハーイ ちょっと 殴らせて
父さーん すこーし 黙ってて

ときには しくじることもあり (やぁん頭陀袋破いちゃったぁ)
ちょっぴり 悲しいときもある (エスタァクぅー真面目にやってよーんもー)
だけど ウーン だけど

明るーい私は 明るーい私は (ドンッ) エライーさーん!

パッパッパラッパパラッパパー パッパラパー
パッパッパーラパラッパラー パッパッパラッパー (パラッパ)

パラパー パラッパパララッパー (パラッパーララ)
パラパー パララパパラパパパー (パラッパパパッパーァ)

ときには しくじることもあり (持ってくる見積もり書を間違えちゃった★テヘッ)
ちょっぴり 悲しいときもある (お父さん!スト中に電話してこないでよぉ)
だけど ウーン だけど

明るい私は 明るい私は (ドンッッ) エライーさーん!

ヒュルルルパパッパーパー パー (ドンッッッ)


新番組!
あわてんぼうでドジっ娘の葬儀屋社員・エライさんと
相棒のエスターク(エッちゃん)をはじめ、愉快な仲間が繰り広げる
都市伝説ギョーカイ系ハートフルコメディ、「エライさん」! 4月1日限定で公開!





すいませんでした
「連載・葬儀屋と地獄の帝王」が読めるのは「都市伝説と戦う」スレだけです
皆さんも、葬儀屋先生に励ましのお便りを送りましょう
414 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage]:2012/04/01(日) 20:47:42.29 ID:d9P1Domfo
エライ「来週はえ〜となんだっけ、忘れちゃった♪オッケー☆来週もまた見てくださいね\(^o^)/」テヘペロッ
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/01(日) 21:33:11.79 ID:vU1V6hNG0
妹に告ったらOKされた件について


>>410
うぉいwwwwwwwwwww
う、嘘、だよな? 嘘だと言ってくれよアカリール!!

>>413
まさかの女性キャラかいwwww
てか作者までノリノリじゃないすかwwwwww
そしてそんな歌あったんか、初めて知ったわw
416 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage]:2012/04/01(日) 21:57:26.58 ID:d9P1Domfo
火曜日のサザエさんを知らない人も増えているのか
懐かしくて色々とこみ上げてくるものがある自分は年をとったということなのか

心は今もナウなヤングで毎週土曜はサタデーナイトフィーバーだというのに
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/01(日) 22:01:10.61 ID:vU1V6hNG0
>>416
>火曜日のサザエさんを知らない人も増えているのか
そうですねぇ、ちびま○こちゃんの再放送なら幼少期に……
あれ、曜日忘れたが平日夕方は本放送だったか?

>心は今もナウなヤングで毎週土曜はサタデーナイトフィーバーだというのに
>毎週土曜はサタデーナイトフィーバー
一切通じねぇよwwwwwww
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 22:11:28.00 ID:eXwHVLCp0
>>410
ア、アンタ確か1年前か2年前もエイプリルフールネタで書いてたよな…
>>413
なんてこった
>>414
なんてこった!

火曜のサザエさんか懐かしい
俺の地域はその後にドリフを放送してたんだよな

間に合うか分からんが本PCが復帰次第ネタを書けたらなあ…
419 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage]:2012/04/01(日) 22:15:20.45 ID:d9P1Domfo
>>417
芸術はバクハツでゴーゴーダンスだったりヒッピーがいたり涙は心の汗だったりしたのに通じないのか……ちくしょう
でも気にしない気にしない、オッケー☆ウフフ
420 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage]:2012/04/01(日) 22:24:33.46 ID:d9P1Domfo
都市伝説スレに戻すために話題逸らしてみるが、そういや口裂け女はその頃だったような……
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 22:55:41.03 ID:5eRM08nSO
口裂け女はいくつになっても若々しいね
422 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/04/02(月) 16:08:24.03 ID:oj6fT82SO
黒服と連絡はついた。
後は、組織の連中が過激派をどうにかしてくれれば良い。
ただ、問題は
「どしたの、お兄ちゃん」
「ん、いや、何でもない」
柊子の事だ。
柊には、柊子の事はまだ言っていない。
「そう?何かあったら言ってね?」
「おう」
さて、どうしたものかな。
柊子は、柊を退治する気でいる。
だが、柊も柊子も俺の大事な妹だ。
「ぁ……えっと……」
なんとか、柊子と話をできれば良いんだが。
柊を傷つけさせるつもりは無いが、柊子を傷つけるつもりもない。
本当、どうしたもんか。
「…………あぅ」
「ん?どうした」
何故か、柊が顔を真っ赤にしていた。
「えと、……そんなに見つめられると、照れちゃう、から」
「あー、すまん?」
考え事している間、ずっと柊を見ていたらしい。
しかし、そんな事で照れるなんて、柊は恥ずかしがり屋だな。
「あ、あの、私、お風呂洗ってくるね」
「ん、ああ、頼んだ」
柊が部屋から出ていく。
さて、じゃあ俺は
「こんばんは、お兄ちゃん」
……妹の声がした。
「柊子!?」
「ただいま、だね」
何処から、いや、玄関からか、鍵持ってるし。
とにかく、柊子が部屋にいた。
ひどく、悲しそうな顔をして。
「柊子、俺は」
「〜♪」
突然、柊子が口笛を吹いた。
「な!?」
それに呼応するように、部屋に数人の男が現れる。
顔色の悪い、若干、透けた男達。
「夜中に口笛を吹くと〜、てあるでしょ?悪魔とか、蛇が来るってやつ。私はね、幽霊が来るってやつの契約者」
つまり、この男達は、幽霊。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんを傷つけたりしないから」
柊子がそう言うと、幽霊達が襲ってきた。
「待て!柊子!話を、っ、聞け!」
柊子と都市伝説が別々ならやりやすい。都市伝説をいくら攻撃しても柊子は傷つかないのだから。
向かって来た幽霊を光線銃で撃つ。
威嚇し、足止めして、話をする。
そう思っていた。
「何!?」
光線銃は幽霊を擦り抜け、部屋の壁に穴を開けた。
「無理だよ、お兄ちゃん。霊体には触れないよ。あ、でも」
幽霊が、俺の手を、腕を、足を、身体をつかまれ、壁に押し付けられる。
「幽霊の方からは触れるけどね」
「ぐっ、この……!」
身動きが取れない。
どれだけ力を込めてみても、幽霊の方が数が多く、振りほどけない。
「やめろ、柊子!はなせ!!」
「ごめんね。でも、お兄ちゃんは邪魔するでしょう?あの化け物を[ピーーー]のを」
「やめるんだ柊子!柊は俺の妹だ!やめてくれ!!」
「うん。そうだね」
そこで、少しだけ柊子は、笑った。
「あの化け物は、私になりましてるんだもんね。まだ、あの化け物を妹だと思ってるんだよね。お兄ちゃんの妹は、私だけなのに。大丈夫だよ。あの化け物は私が[ピーーー]から。
 そうすれば、うん、大丈夫。ちゃんと、お兄ちゃんも分かってくれる。本当に一緒にいるべきなのは私だって。それにしても、私がいない間に私になりまして……
 ああ、もう…………本当に、腹立つなあ!!!」
「柊……子……?」
それは、柊子が初めて俺の前で見せる、激怒した姿だった。
423 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/04/02(月) 16:10:30.37 ID:oj6fT82SO
――――――
――――
――

「……何、今の声」
どこかで聞いた事のある、女の声。
お客さんかな。組織の人が来るって、お兄ちゃん言ってたし。
……もしかして、組織は組織でも、過激派の人が先に来ちゃった?
「お兄ちゃん!?」
私は慌てて居間へ向かう。
もし、お兄ちゃんに何かあったら、泣いてしまう。
「え……」
脱衣所から、廊下に出ると、何人もの幽霊がいた。
そうして、
「こんばんは、化け物」
さっきの声の主がやって来た。
どうして、何故、彼女がここにいるのか。考える事はいろいろあったけど、まず思ったのは、こんな事。
ああ、どこかで聞いた事のあるって、私の声か。

424 :禁じられた悟りの果報 ◇DkTJZY1IGo(代理投下) [saga]:2012/04/02(月) 20:34:02.32 ID:POvc7JpW0
学校町の一角にある白い洋館がある。
知る人は少ないがそこは組織の出張所となっており
一人の少女と一人の青年が暮らしている。
「最近は平和ね……」
黒いゴシックロリータ調のドレスに身を包んだ銀髪ツインテールの少女が
ガーデンチェアに腰掛けて陽だまりの中で紅茶をたしなんでいた。
彼女の名はマクスウェル。
あどけない見た目だが彼女もまた都市伝説であり
熱と温度そのものを使役するマクスウェルのデーモンそのものであり
また組織の一員である。
「書類仕事も一段楽したし……こんな穏やかな日々がずっと続けば良いのに……」
ふと彼女はそんな事を口にした。
彼女の主であるエーテルはいつも組織関連の仕事で忙殺されているのが常だが
今日は珍しく仕事量も少なく、洋館の中のソファーでしばしの休息を受け取っているはずだ。
天気は快晴で日差しは優しい。
騒がしさがいつもの事の学校町において珍しく平穏と平和を
人であるものもそうでないものも享受しているはずだったのだが……
「ん……鈴の音……?」
チリン、と静寂を押して響き渡る鈴の音をマクスウェルは聞いた。
それとほぼ同時に静かに洋館の正面玄関の扉が開く。
「平穏は長く続かないな……」
マクスウェルが玄関の扉に目を向けるとそこには彼女が敬愛し思慕する青年が立っている。
「エーテル?」
「マクスウェル、何者かがこっちに来る」
エーテルは臨戦態勢だった。
一見リラックスしているように見せかけているが
即座にポケットに入ったレーザーメスを抜き放つことが出来るよう構えている。
マクスウェルはすぐ立ち上がるとエーテルの近くに寄り添った。
425 :禁じられた悟りの果報 ◇DkTJZY1IGo(代理投下) [saga]:2012/04/02(月) 20:34:40.14 ID:POvc7JpW0

程なくして幽鬼のようにぬうっ、と五人の人影が屋敷の敷地には入らず
門の前で静かに止まった。
彼等は時代劇で見る虚無僧そのものの姿をしていた。
白袈裟を纏い、頭には呼ばれる深編笠をかぶる。足には草履を履き、手に尺八を持つ。
一般人の宗教関係者やコスプレイヤーとは明らかに身のこなしも纏う雰囲気が違う。
恐らくは何らかの武術や戦闘技法を身につけている。
気配は人間だが全員明らかに契約者だ。
マクスウェルは平穏な日々が終わりを告げ、また都市伝説に関わる騒動が持ち込まれたことを確信した。
「組織の方々とお見受けいたす。突然押しかける無礼、お許しいただきたい」
編み笠の下から野太い声がエーテルたちに掛けられた。
「何者だ?」
「拙僧は大僧都・華厳と申す。拙らは『上座寺院』の信徒。以後お見知りおきを。
警戒なされずとも拙らはそなた等組織と事を構えるつもりはござらん。
容易ならざる事態が起こったゆえ、そなた達組織と話し合いの席を設けたいのだ」
「俺は『組織』E-No.0のエーテルだ。こっちはマクスウェル。
珍しいな……『寺院』、か……」
「エーテルは知ってるの?私はこの国の宗教関連の結社には疎くて……」
己の教義以外の都市伝説や魔の類を認めない『教会』を思い出したのか
マクスウェルが身を竦ませる。
「ああ。教会と違ってそれほど比較的穏当で攻撃的じゃないとは言われている……
地縁が強く滅多に自らの地域から出てこないから
まず学校町や都市伝説関連の事に積極的に出張ることは無い連中だ」
「御仏の慈悲は深い、善男善女、衆生に仇なさない限りは
たとえ魔物の類であろうとも無理に降魔調伏を行おうは思わん」
虚無僧の華厳は胴馬声を響かせながらそう答えた……
「み、見た目は妖しいけど……異教悪魔の類が問答無用で浄化絶滅が
基本の『教会』に比べたら話がわかるみたいね」
マクスウェルが胸を撫で下ろした。
426 :禁じられた悟りの果報 ◇DkTJZY1IGo(代理投下) [saga]:2012/04/02(月) 20:35:22.30 ID:POvc7JpW0
エーテルは彼等『上座寺院』に関する記憶を素早く思い返す。
影は薄いが彼等は歴史が浅いわけではない。
彼等の教祖が教えを開いてから二千年余り。
現在でも信徒は主にアジアに掛けて四億人居ると言われている。
一般人が知っているのは教祖の教えから分かれた宗派の「大乗」で
葬儀などを執り行う事で商売をしたり一般的な宗教道徳の布教に努める姿が主なものだろうが
歴史が長ければ『教会』と同じく宗教の裏の顔は当然持っている。
そのもう一つの顔が「上座」密教とも呼ばれオカルト色の強い宗派。
血なまぐさい歴史も少なからず持ち古くは戦国大名とも事を構え時には密偵を務めた。
心の力や器を霊力と呼称し
鎮護国家、霊験 神通 加持祈祷などを行う
昔は妖怪とよばれた都市伝説と戦闘で培われた戦闘経験やノウハウは消して侮れるものではない。
上座の方は秘密主義的かつ閉鎖的で如何なる都市伝説を抱えているかの情報が殆ど無い。
今まで沈黙を保ち学校町に出てくる事が無かった彼等寺院が此処に来たことに
エーテルは強い不安を覚えた。彼等が重い腰を上げるに足る何かが起ころうとしているのだ。
「一体何をしに学校町にやってきた?」
「探し物をしている。それさえ見つかれば拙僧らは
あらゆるこの街の勢力と事を構え争いあうつもりは毛頭無い。
我等の探索を妨げる事なきよう話を通しに参ったのだ」
「探し物?……物にもよるな」
どうやら彼等寺院は何か都市伝説を探しているようだが……
「拙ら凡夫が世尊より賜りし無情の悟り、魂の秘密。
輪廻の業を解き明かさんと数えて幾星霜、その一つの成果。
衆生世間に明かすには危うい霊験がこの学校町に流出した」
エーテルは天を仰いだ。
話し振りから察するに『教会』で言う聖遺物やそれに関する都市伝説といった所だろうか。
そういった代物は強力極まりない効力や能力を持っているが常だ。
しかも危険性があるとなると洒落にならない。
427 :禁じられた悟りの果報 ◇DkTJZY1IGo(代理投下) [saga]:2012/04/02(月) 20:35:58.34 ID:POvc7JpW0
「教会で言う聖遺物が流れ着いたみたいなもんか……
詳しく話してもらおうか。どんな効力でどんな形をした都市伝説なんだ?」
「形は無い、そなた等が都市伝説と呼称するこの果報は空が故に実相を持たぬ」
「概念系か……じゃあ名前と能力でいい」
「……法句経にある預流果(よるか)「逆流」(げきる)「七来」(しちらい)
その格に悟りに至りし聖者のもつ神通力を仮初の相と成した物。
運命と生死の流れに違背するなり。それに人を至らせるもの」
「またとんでもないものが……話し振りだと危険性があるみたいだが……
それだけ強力なもの、何らかの代償があるのではないか?」
「運命と生死の流れに違背することが出来るようになる代わり
煩悩と欲望、得たものの自我や魂もまた磨り減る。あたかも灯火が燃え尽きるように。
使えば輪廻が減る。七度輪廻に戻る、故に「七来」
魂の業によって七度を待たず最終的に必ずその魂は寂滅に至る。
それゆえ、それを受け入れられる聖者のみが使うべきもので
資格及び覚悟も得ていない慈悲心なき欲多き凡夫衆生世間のものに使わせる訳には行かぬものだ」
そう華厳は締めくくった。
「運命と生死を変革する『寺院』版の聖杯みたいなものか……
しかも使ったものは何れ魂が消える……最悪だ……」
エーテルは戦慄と共に呟いた。

to be……?
428 :禁じられた悟りの果報 ◇DkTJZY1IGo(代理投下) [sage]:2012/04/02(月) 20:37:57.66 ID:POvc7JpW0
>>424-427は避難所の代理投下スレへ3月23日に投下されたものを代理投下したものです
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/02(月) 20:59:12.09 ID:96ZO7ENZ0
>>422-423
3人いる……だと………
凄い、こんな発想出来んわ、滅茶苦茶続きが気になる
何だろうこの胸躍る感じ……そうだ、好きなアニメを見たような感覚

>>424-428
代理投下乙です!
そういややってなかったな、申し訳ないorz
430 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/04/03(火) 07:50:13.57 ID:W1I7mb2s0
今朝、金縛りに遭った


右脚だけ
どう見ても脚つっただけです、本当にry
431 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ :2012/04/03(火) 11:43:31.60 ID:GBmJgYpAO
>415
>妹に告ったらOKされた件について
えっ…えいぷるるふーるだよね!?

>>422-423
アカリールの人乙ですー
柊ちゃんがもう一人となっ…だんだん混沌としてきたぜ!

>>424-427
代理投下の人乙ですー
432 :死神少女は夜更けに禁断の電波を受け取る ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/03(火) 11:46:13.42 ID:GBmJgYpAO
2012年4月2日 晴れ
あたしはいつも、夜の9時になると、もう寝なさいってしかられちゃう。
イタルはいつもお勉強とか本を読んでて、あたしが寝た後も起きてるのに。
カナタも幻も、もっとおそくまでやってるお笑いとかアニメとか見てるんだって。
あたしだけ見らんないなんて、そんなのつまんないからヤだ!


「ノイ・リリス。もう寝なさい」
「やだ」
 夜9時になると、学校町は新田家の居間で毎日恒例の会話が交わされる。
 自らの契約者、ノイ・リリス・マリアツェルに規則正しく健やかな毎日を送らせるべく日々奮闘する
 ムーンストラックの一日は大抵、ノイをテレビの前から引き剥がす事で終わりとなるのだった。
 新田家に住み着いてまだ一年足らずながら
 座布団を枕に畳の上で寝っ転がってテレビを見る日本式の生活様式に慣れきったノイに
 ウィーン式の行儀作法を躾けるのはなまなかな事ではないだろうと極は生温い気持ちで毎晩の攻防を見守っている。
「この番組最後まで見るのー!」
「夜更かしはいかんといつも言っているだろう!」
「なんでダメなの!?イタルだって起きてるのに!」
 思わぬ形で引き合いに出された極は憮然とした表情。
「極は勉強をしているんだ!お前も起きていたいなら勉強をしなさい!」
 昼間だって嫌がっているものを、どうやって夜起こしておいてまでさせられると思うんだと突っ込みたくなったが
 敢えて黙っていたのは、飛縁魔とリジーの女性陣。
「カナタはいつも夜中までテレビ見てるって言ってるもん!」
「よそはよそ、うちはうちだ!」

 結局。
「わーん、やだったらー!!」
「・・・たまには夜更かしさせてあげたっていいんじゃない?」
 学校に行くわけでなし、朝からすることなんかないんだしさと取りなしたつもりだったが
「貴様が!そうやって甘やかすからノイ・リリスに基本的な生活習慣の大切さが!」
「はいはいそこまでー」
 飛縁魔が柳の襟首を掴んで頭から湯気を噴き上げんばかりのムーンストラックから
 引き離すようにぽいっと投げると、あんたは早く寝なさいとノイの肩に手を置いてくるりと戸口の方に向き直らせる。
「えー」
「えーじゃない。さっさと寝る」
「だいたい寝坊でもしたらお前の分の朝食の支度と後片付けの手間はどうするんだ」
 その分リジーが大変だろう、と極がノイを窘めるとリジーもそれに賛同した。
433 :死神少女は夜更けに禁断の電波を受け取る ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/03(火) 11:46:50.48 ID:GBmJgYpAO
「いったん起きてゴハン食べてから寝るからいーもん」
「布団が干せないだろうが」
「・・・ちぇー」
 ノイが文字通りぶーぶー言いながら引き下がって、新田家の騒々しい一日にも終幕が引かれたのだった。

 その日の深夜。
「ん・・・」
 ノイが目を覚ますと辺りはまだ真っ暗で、時計の針は午前3時を指していた。
「のどかわいたぁ」
 お水とトイレ、どっちを先にしようかと部屋を出ると、居間からわずかに光が漏れていて。
「テレビついてる」
 みんなあたしには9時に寝ろって言うのに、不公平じゃんと襖を開けると・・・
「あれれ?」
 誰も居ない居間をテレビの光だけが照らしていた。既に今日の放送は終わっているらしく、画面は砂嵐になっている。
「消し忘れたのかなぁ」
 まったくしょーがないなーとこまっしゃくれた調子で呟いてリモコンを手に取った、その時。
 画面が不意に切り替わった。前にもテレビで見たことのある「ゴミ処理場」に似た風景と
 なにやら漢字が沢山映し出されている。
「・・・人の名前、かなぁ?」
 日本語の読み書きは不得手だけど、それくらいはわかる。
 男とも女ともつかない無機質なキャスターの声が、画面に表示されているらしい人の名前を読み上げていく。
(・・・なんだろう、これ、スゴく変・・・)
 なんだかとても、見てはいけないもののような気がする。
 それでも何故か目が離せず、ただじっと画面を見つめていると
 見覚えのある字が画面に現れ、キャスターの声がその字を読み上げた。
 「ニッタ イタル」と。
(何だろ・・・今イタルの名前、呼んだよね。あれ?・・・なんだか、眠い)
 目を擦りながらも画面を見ていると、名前の群は唐突に途切れ、無機質な声が無機質に告げた。
「以上、明日の犠牲者をお送りしました。おやすみなさい」
(ギセーシャ?何だっけ?ギセーシャって日本語、なんかニュースで・・・)
 もうなにも考えられないし目が開いていられない。体もぐらぐらする。
 お部屋に帰らなくちゃと思いながらもぱたりとそのまま倒れ込み、意識が遠くなっていった。

 気が付くと居間ではなく寝室の布団の中。時計の針は朝の7時30分を指している。
「あれ?」
 ヘンだな。あたしいつの間にお部屋に帰ってきたんだろ?
 周囲を見回しても、いつもと何の代わりもない、天気のいい朝だ。
434 :死神少女は夜更けに禁断の電波を受け取る ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/03(火) 11:47:41.25 ID:GBmJgYpAO
(夢だったのかなあ?)
 首を捻って考え込んでも、何か答えが出るわけでもない。
「ノイちゃーん、朝ご飯だよー」
 いつもと何の変わりもない朝。何の変わりもない柳の声。
「待ってー、すぐ行くからー!」
 いくら「家族」しかいない朝食の席とはいえ、パジャマ姿のままでははしたないと叱られてしまう。
 慌てて着替えて部屋を飛び出した。
「ノイ・リリス!家の中を走ってはいかん!」

「ねーねー、『ギセーシャ』って、なんて意味だったっけ?」
 朝食の席で誰にともなく聞いてみた。夜中にこっそりテレビを見た事は黙っておこうと思ったけれど、
 みんなに色々踏み込んだ事を聞かれると、つい誤魔化せずに深夜の番組の事を話してしまった。
 夜中にテレビなんか見た事を叱られるかと思いきや、みんなの顔色がなんだか悪い。
「・・・僕、今日学校を休みます」
 極が強ばった表情で呟くと、大人達はみんな、それがいいと口を揃えた。
 ノイだけが、事態を把握できずにきょとんとしたままだったが
 深夜番組を見た事はお咎めなしで済んだので、ほっとしてあまり深くは考えなかった。


2012年 4月3日 晴れ時々くもり

今日、イタルは元気なのに学校をお休みした。
カナタといっしょでずる休みだと思ったけど、みんなもそうしなさいと言って、リジーが学校に電話してた。
そのあと、リジーがケーキを焼くお手伝いをして、みんなでおやつを食べたあと、
ゲームをしたり、イタルといっしょに勉強したりした。
まるで日曜日みたいな、みんないっしょの楽しい一日だった。



END
435 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/03(火) 11:51:06.55 ID:GBmJgYpAO
以上です。
そろそろシリアスなパートも進めようぜ自分!
436 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/03(火) 11:54:26.33 ID:GBmJgYpAO
すみません訂正

×学校に行くわけでなし、
○とは、柳。学校に行くわけでなし、
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 11:57:05.75 ID:rEvgkbaDO
乙でした
彼女の解らないところで進行する恐怖
ラストの日記調がホラーテイストをさらに書き立てる
438 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/04/03(火) 13:50:11.56 ID:ZVpzERDy0
てす
439 :影陰蔭翳の人 ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/04/03(火) 13:51:22.21 ID:ZVpzERDy0
よし書けた、避難所に書いちゃったけど改めて乙ですの
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 14:40:42.96 ID:BZkWM1kDO
投下乙ですー

これは惨劇を回避した……のかな?
人の死という大きな運命の流れを乱したことの帳尻あわせが降りかからないよう祈ります
441 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/03(火) 15:13:10.07 ID:GBmJgYpAO
>>437
>彼女の解らないところで進行する恐怖
まさに「知らぬが花」なんでしょうか
もし初めから気付いていたらどの様なストーリーになっていたのか…

>>440
>人の死という大きな運命の流れを乱したことの帳尻あわせが降りかからないよう祈ります
作者本人もそう思っておりますの(いー加減
これは果たして決まっていたことを乱したのか、酷いアクシデントを回避したのか…

では皆さんお休みなさいの
442 :SS書きにかわりましてグフフフがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 15:43:38.75 ID:nEIB4EOg0
⛩の人乙
ニッタ イタルくんはどうなってしまったのでしょうか
これはもうすごく楽しみですね

4月6日を前後に小中高では始業式が行われるそうです
参考までに
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/03(火) 20:29:19.44 ID:o3ZaGjq30
>>431
>えっ…えいぷるるふーるだよね!?
4月1日時点だったら『へっへーん嘘でしたーwww』って言えたんだけどね

ガチ
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 21:00:12.36 ID:C8V2Qo6ro
その妹とはもしかして以下略
林先生こちらの患者様です
445 :黄昏裂邪にかわりましてオジマンディアスがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 21:54:08.05 ID:mpxAoNci0
>>443
別れの時に言われたんだな…
次逢う時までに男を上げておくのですよ…

A県に行って遠距離になったからといって
浮気とかは許しませんからね!
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/06(金) 23:59:05.77 ID:7Jv7LX6h0
オッケー★
447 :全盲の鬼 [sage saga]:2012/04/07(土) 00:24:40.44 ID:76/sQTh00
「私、綺麗?」

大きなマスクをつけた女性が尋ねる

「えぇ、綺麗ですよ」

サングラスをかけ、長い棒を持った男性は振り返ってそう答えた

「じゃあ……これでもぉ?」

マスクを剥ぎ取る女性
耳元までばっくりと裂けた口……「口裂け女」
包丁を構えて、男性に向かってそれを振り被った
ところが

「えぇ、とても」

予想外の答えが返ってきて、不意にその手が止まった

「………は?」
「綺麗ですよ、貴方は」
「な、なに馬鹿なこと言ってんのよ! 綺麗な訳ないでしょ!?」
「そんな事ありませんよ。とても、美しいです」
「……ハァ、どうやらあんた相当目が悪いようね」
「はい、生まれた時には既に失明してまして」
「え?」
「親の顔も知らない、祖父母の顔も、友達も先生も知らない
 それどころか、自分がどういう顔なのかも、どういうところに住んでいるのかも知らない
 相手がどういう人かを判断するのは、決まって相手の声だけでした
 貴方の声は美しい。だから、貴方はきっと美しい人です」

ぽかん、と口を開けて呆れる「口裂け女」
しかし一変、彼女は急に頬を赤らめてもじもじし始める

「え、あ、そ、その、ふ、ふんっ! 何言ってんのよ、バッカじゃないの!?
 あーぁ! 目の見えない奴に話しかけるなんてとんだ失敗だったわー!!」

厭味ったらしく、「口裂け女」は彼に背を向けた

「……もう良いわよ、何処にでも行くと良いわ、呼び止めて悪かったわね」

彼女の視線の先
全身の白い、辛うじて人の形をした何か
関節を無視して蛇行するように手足を動かすそれの名は、「くねくね」
彼女は包丁を片手に取った
男性に、被害を与えない為に

(初めてあたしを褒めてくれたこいつを……廃人になんてさせたくない……!!)

近付く「くねくね」に狙いを定め、「口裂け女」は大地を蹴った
直後、彼女の動きは長い棒によって遮られる
448 :全盲の鬼 [sage saga]:2012/04/07(土) 00:25:17.64 ID:76/sQTh00
「なっ、どういうつもり!?」
「下がっていなさい、お嬢さん………いや、「口裂け女」」
「ッ!? あ、あんた、目が見えないんじゃ」
「マスクを取る音、包丁を握りしめる音、口の動く音……そして最初の言葉
 君の正体を突き止めるには最高の判断材料だと思ったけど」

男性は「くねくね」に向かって歩き出す
左手には、長い木の棒を持って

「ば、バカ! 発狂するわよ!?」
「その姿を見た場合は、ね」

彼はサングラスのずれを直しながら得意げに言うと、棒を両手で持って自らの前に差し出した
ここで彼女は驚いた
それは木の棒ではなく、長い日本刀だったのだ

「備前長船長光……別名「物干竿」
 佐々木小次郎は巌流島での戦いでこの鞘を投げ捨て、宮本武蔵に『敗れたり』と宣告された」

鞘から刀を抜き取り、長く秀麗なその刃は、「くねくね」をいとも容易く斬り裂いた
全盲であるにも関わらず、丁度真っ二つに
彼の耳は、どんなに小さな足音も聞き逃さない「地獄耳」
視力がない彼は、それを補う為に最強の聴力を手にしていた

「鞘を捨てなければ…僕に敗北は、無い」

ちんっ、と刀を仕舞う男性
ほっと胸を撫で下ろす「口裂け女」は、何かに気付いてぶんぶんと首を横に振った

「やっぱり貴方は美しい人だった」

改めてそう言った男性に、「口裂け女」は「え、」と聞き返した

「ありがとう。さっきは助けようとしてくれたんですよね
 貴方のような人に出会えてよかった
 初めて、全盲である事を恨みましたよ
 せめて、貴方の顔を一目で良いから見たかった」

鞘に納めた「物干竿」を杖の代わりに、男性は歩き出した

「待ちなさいよ!」

ぴた、と男性の歩が止まる

「…あんたが、目が見えなくてどれだけ苦労したのか、あたしは全然知らない
 だけど今、あたしはあんたが目が見えなくて良かったと、そう思ってる
 あたしは「口裂け女」、醜く忌み嫌われて当然の都市伝説……
 そんなあたしに、あんたは心の底から『美しい』って言ってくれた
 あんたは知らなかったかも知れないけど……悪いことばっかりじゃないんだよ、意外に」

すたすたと足早に歩み寄る「口裂け女」
男性の傍に立つと、彼女は彼の腕をそっと抱きしめた

「……あ、あのっ……あ、あんたさえ良かったら……あたしがあんたの目になってあげても、良いんだけどなー?」

顔を真っ赤にしながら提案する「口裂け女」
表情こそ見えないが、声色から照れている事ははっきりと分かった
くすっ、と男性は小さく笑い、

「…じゃあ、これから宜しく」

ゆっくりと、2人で歩き始めた



   ...end
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/07(土) 00:26:34.03 ID:76/sQTh00
なんか書きたかったもんと違う……疲れてるんだな、俺orz



ところでふっと思いついた設定で書いたんだが、何かに似てる気がするんだよなぁ
まさか盗作じゃないよな……?
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/04/07(土) 11:06:39.59 ID:7pKj/HWM0
乙でしたー

どっかの都市伝説を萌え化したようなので、口裂け女と全盲の男性とのネタを見た覚えがある
それを読んだことがあって、無意識に影響受けたんじゃないかな?
451 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/07(土) 11:47:27.00 ID:ox4SbLsAO
>>442
>の人乙
ニッタ イタルくんはどうなってしまったのでしょうか
このお話の新田極くんは都市伝説の魔手を逃れましたが、同姓同名の他人が居た限りにおいては
彼の運命は保証できませんww

>4月6日を前後に小中高では始業式が行われるそうです
春休みの存在をすっかり忘れてました…orz

>>447-448
シャドーマンの人乙ですー
ツンデレな口裂け女さんかわゆす
素直クールな主人公はきっとイケメンに違いない
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 14:44:28.10 ID:whZSTm3Vo
投下乙ですー
これはいいツンデレさん

そういえば、一人の人を都市伝説が襲おうとしたとき、その人を別な都市伝説がさらに襲おうとするパターンはあまり見ないような?
人間が都市伝説に襲われる→別な都市伝説がその人間に契約を持ちかけて倒す、っていうテンプレとはちょっと違う感じで新鮮
453 : 春の雨は少し冷たくて、濡れた段ボール箱の中には ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/07(土) 20:23:48.69 ID:ox4SbLsAO
 子猫が鳴いていた。
 生まれて間もない、ようやく目が開いたばかりの子猫。
 身寄りも親しい友人もなく、ペット禁止のアパートに住んでいる私は、この子と一緒に暮らすことは出来ない。
 もし私がこの場を去ったとして、親切な人が拾ってくれるかどうかもわからない。
 鳴くのにも命がけだろうこの子。
「お前の目に・・・私や、自分を守ってくれない世界はどう映っているんだろうね」
 ゆっくりした口調で話しかけ、触れるか触れないかくらいの力加減で撫でる。
 ここに座り込んで30分。子猫の鳴き声が、心なしか弱くなったような気がする。このまま雨が止まず気温が上がらなかったら夜までこの子は生きていられるのか。
「お前が大人だったら・・・寒くないところも食べるものも自分で探せるのにね」
「みゃぁ」
 はじめて返事が返ってきた。
 ちょっとだけ嬉しくなって、更に色々話しかけながら撫でてやる。
 ・・・それから1時間後。
「じゃあね。ひとりでも頑張って生きるんだよ」
「にゃー」
 私は子猫に・・・子猫だった猫に別れを告げてその場を去った。
 私は「植物は話しかけるとよく成長する」と契約している。
 私が話しかけた生き物は、植物はもちろん動物も、私が自在に成長させることが出来る。
 自然の在り方を、生き物の時間を人が操るという事には自分の力ながら疑問を抱くけれど
 少なくともこれであの子は生きていけるだろう。
「ばいばい」
 私はちいさく呟くと、待つ人のないアパートへの家路についた。



END
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/07(土) 20:41:51.00 ID:lhXE6bmv0
ごふぅっ!? 今日書こうと思ってた単発で使用する都市伝説と見事に被ったwww
何という偶然、先に謝っとくぜorz

鳥居を探すの人乙です〜
良かった……ネコちゃんが無事で良かった………びえええん(

>>450
>どっかの都市伝説を萌え化したようなので、口裂け女と全盲の男性とのネタを見た覚えがある
検索して思い出した、確かに読んだ事あったわ
そう言う事だったのか………でも好評っぽいのでどっかで脇役として出すか連載にするか(もうやめろ

>>451
>シャドーマンの人乙ですー
何故バレたし(避難所でバラしてます

>素直クールな主人公はきっとイケメンに違いない
素直………クール………?
いつかおにゃのこキャラに使おうと思ってたジャンルをこんなところでしかも男で消化してしまったうぎゃああああああああorz

>>452
>そういえば、一人の人を都市伝説が襲おうとしたとき、その人を別な都市伝説がさらに襲おうとするパターンはあまり見ないような?
おぉ、考えてみれば確かに
俺なんでこんな構成で書いたんだろう、途中寝ながら書いてたからあんまし覚えてないのよorz
455 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/04/08(日) 09:19:16.75 ID:rAK5VxhSO
「こんばんは、化け物」
私に似た、……いや、私が似ている女の子は言った。
「本物の、柊子さん」
「違うよ」
「えっ?」
てっきり、そうだと思っていた。
「私は彼女じゃない。私は貴女」
女の子は、よく分からない事を言う。
「本物の柊子もいるけど、貴女の愛しのお兄ちゃんとお話中よ。あ、この幽霊達は、彼女の契約してる都市伝説ね」
女の子は、幽霊達を指さす。
幽霊達は、女の子と私を見比べて、戸惑っているように見える。
どうしたんだろう。
「お兄ちゃんと、お話?」
「そう。ねえ、今のうちに……逃げよ?」
「逃げ、る?」
「そう。彼女は組織の過激派。貴女を殺しに来た」
私を……殺しに……
「逃げるのは簡単でしょ?こんなに幽霊がいるんだもん。一人増えたって誰も気がつかないわ」
「お兄ちゃんを、置いていけってこと?」
「そうだよ。貴女は人間だった頃の記憶を捜していたはず。お兄ちゃんなんて、どうでも良いでしょ」
「良くない」
そんなの、全然良くない。
私が昔の記憶を捜していたのは、自分が誰なのか分からなくて怖かったから、不安だったから。
でも、今は、今なら、私はお兄ちゃんの妹、松ヶ崎 柊だと、はっきり言える。
今の私が優先するのは、自分の過去じゃなく、お兄ちゃん。
「そう。でも、そのお兄ちゃんは、どう思っているの?」
「え……?」
「本物の妹が帰ってきたのに、貴女は必要?所詮、貴女は『柊子』の偽物の化け物」
それは私が思いもしていなかった事。
「彼にとって、貴女はもう用無しなんじゃない?」
私が考えもしなかった事。
「逃げたって、いなくなったって、気にもしないかもよ」
だって、
「お兄ちゃんはそんな事思わないよ」
お兄ちゃんを信じてるから。大好きだから。
私が「柊子」でないと分かっても、私を妹と言ってくれた。お兄ちゃんは、そんな人だ。
「それに、私は『松ヶ崎柊子の偽物』じゃない。私は『松ヶ崎柊』だよ」
間違ってほしくない。
「…………」
「そこをどいて。私はお兄ちゃんの所に行く」
お兄ちゃんと一緒にいる為に、私はもう逃げない。
「……そう。本物の柊子の為に、桜太の為に、死のうとは考えはしないなら、行くと良いよ。私は貴女。いつでも力を貸すわ」
そう言うと、女の子の身体が消えていく。
「さようなら、柊」
消える一瞬、そこには警察官の恰好をした男がいた。
けれど、それは本当に一瞬で、女の子のいた場所には幽霊が残された。
「……?」
幽霊は自分は何をしていたんだというように、辺りを見回し、不思議そうな顔をしていた。
「行こう」
私は、お兄ちゃんと柊子さんがいる居間へ向かう。
あの女の子はきっと、私を心配してくれたんだろう。
私が契約していた、私を飲み込んだ……

――
――――
――――――

456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/04/08(日) 23:47:15.20 ID:7k11n7KB0
柊をのみこんだ、【偽の警察官】……!?
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 01:14:18.70 ID:JsTJox9b0
なんだかこんがらがってきたぞ乙ですアカリールの人
この次の話でもさらに妹が増えるんだろうか
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/09(月) 02:37:03.00 ID:LYyikeRo0
このむが〜っとなる感じがまた良い
上手く言葉に表せないのでこういう表現になってしまったけど気に障ったら申し訳ない
アカリールの人乙です〜、しかしあっちが本物だったとは……
459 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/09(月) 03:02:11.99 ID:mWP+usZAO
>>454
>ごふぅっ!? 今日書こうと思ってた単発で使用する都市伝説と見事に被ったwwwwww
なんという偶然!?自分はいつの間にかシャドーマンの人の脳味噌を覗いてしまったのか…

>良かった……ネコちゃんが無事で良かった………びえええん(
猫様を不幸な目になど遭わせませんよ?

>>455
アカリールの人乙ですー
もう一人は偽の警察官さんだったんだ
柊ちゃんが増えてって最終的には12人になるのかと思ったよ(
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/09(月) 03:04:54.25 ID:LYyikeRo0
>>459
>なんという偶然!?自分はいつの間にかシャドーマンの人の脳味噌を覗いてしまったのか…
しかし書くと言ってる割に未だ筆が進まないorz
敵の都市伝説どうしよう……今日はとりあえず寝ようか

>猫様を不幸な目になど遭わせませんよ?
ネコに優しい都市伝説ryスレはここです(
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 21:03:33.37 ID:2cVQ46nDO
この絡まった糸をほどくのは私には不可能なので、諦めて回答編を正座待機
頑張れ桜田、彼女らの兄として妹を教育するんだ
462 :無 題 :2012/04/11(水) 00:51:35.23 ID:sUj1nRZP0
仕事と一口に言っても、この世には様々な仕事がある
そして、様々な仕事があるという事はつまり、一般の人々にいくら説明しようとしたところで
にわかには理解されがたい仕事というのも、この世には存在する、という事になるのだよなあ

もう2、3時間もすれば日付が変わる、そんな時間帯
オフィス然としたフロアに人目を窺うようにして、その男は入ってきた
よれよれの黒スーツを着た男は、「月見弁当」とプリントされたビニール袋を手に提げている

夕飯時分に食事を取り損ねた彼は、昼から買ってそのまま放置していた弁当を平らげるべく
空いている机を椅子を求めてフロアに紛れこんだというわけである

とはいえ、彼の職場でもあるこの場には、昼と変わらぬほどのスタッフが存在しバリバリと働いている
彼らの脳にはきっと、残業、という語は存在しないのだろう、と思わせるほどだ

男は遂に空いているデスクを発見した。資料が整頓されている所から見て
恐らくデスクの主は既に帰宅したに違いない。男の頬は、やっと弁当にありつける安心感からか、緩みまくっていた
デスクに貼られたダブルピースのOLの写真を尻目に、袋から「ザ・幕の内デラックス」(1,490円、税込)を取り出し、割り箸を引っ掴む

「うっほう、いっただっきま」

プラスチックの蓋を取り去って、まさに箸を付けようとした、その時だった
無機質な電子音が、男の足から響きだした

「なんだ電話か?」

男は箸を置くと、デスクの中に行儀よく収めていた片足を持ち上げた
靴を脱いで、底の部分を思い切りぶん殴り、耳元へと近づける

「もしもs『私だ、南南西の会議室付近、男子トイレ、手前から3番目の個室にて待つ、以上』」

一方的に言い捨てられ、通話は切れた
463 :無 題 :2012/04/11(水) 00:52:16.58 ID:sUj1nRZP0

男が男子トイレの個室をノックした時、腹からはくぐもった悲鳴が上がった
結局、彼は弁当をそのままにしてフロアを飛び出してきたのだった

「カチョー、カチョーっスよね」

ドアの向こうからの返事を待つ間でもなく、男は夜食を食い損ねた苛立ちから、声を発していた

「やあ久しぶりだな、イイヤツ君」

音もなくドアが開くと、中からは七三分けの眼鏡男が顏を出した
トイレの照明を受けて輝くにこやかな顔は、憎たらしいまでに爽やかだった

「13か月も雲隠れして何をやってたんスか」

「なに、『暗黒面』対策のために水面下で工作活動をチョイチョイとね
 『上層部』に我々の動向を大っぴらに晒すのは、まだまだ危険だ」

何を言っているのか分からない
カチョーと呼ばれた眼鏡男は、後ろ手を組みながら悠然とトイレの出入り口へと向かった

「なんか言っちゃって、まーたノーパンシャブシャブで泡銭を捨ててたんじゃねーっスか」

「な、何を言ってるんだねキミは!」

声の調子からして、どうやら図星らしい

「ところで今頃連絡を取ってきたワケは?」

「それが本題だ」

カチョーは男へと向き直った

「我々の仕事を進める」
464 :無 題 :2012/04/11(水) 00:52:39.79 ID:sUj1nRZP0

二人はトイレのすぐ近くにあった会議室へと入った
室内は照明が落とされており、人の気配は無い
カチョーは明かりを付けようともせず、スーツの内側からランタンを取り出した
といっても、油に点火するタイプのものではなく、中の蛍光灯が光るタイプのものだ

カチョーの後ろから付いてきた男は、会議室の扉をゆっくり閉めた
ランタンの明かりの中、二人の姿をぼうっと照らし出される

「仕事っつっても俺達ほとんど仕事らしい仕事はなにもやってなかったっスよね」

「カムフラージュも大切な仕事のうちだよイイヤツ君」

イイヤツはランタンの置かれた会議室のテーブルに目を落とした
どうもテーブルに落書きした不届き者がいたらしい。それは明かりの中でハッキリと確認できた

 "ゼロりん マジで ハァハァ マスク越しに 合体したい"

「カムフラージュするほど俺達ってやばい事してますかね」

落書きを指で撫でながらイイヤツはカチョーに尋ねる
撫でて分かったのだが、どうやらこの落書きは水性マーカーや油性インキで書かれたものではない
何者かが彫刻刀か何かでテーブルに直接彫り込んだものらしい

「いいか、我々の部署は総員が両手で数えられるほどしか存在しない
 さらには、0ナンバーがいないため、『上層部』に参与する資格がないのだ
 言ってしまえば権力がない。だから一部のお偉方が我々を捻り潰すのは造作もない事なのだよ」

「まあ権力関係は、俺、よく分かんねーからいいっス。で、進める仕事ってのは?」

「『スープ職人』に関する情報収集だ」

「スープ職人? なんスかそりゃ」

「あれ、今までに話したこと無かったっけ」

「カチョーが今までに俺に話してきた事って、ほとんどノーパンシャブsh『分かったもういい!!』」
465 :無 題 :2012/04/11(水) 00:54:29.38 ID:sUj1nRZP0

カチョーとイイヤツは会議室の外へ出ると、先ほど居た男子トイレ、のすぐ横の、女子トイレへと侵入した

「おいおいカチョー、いくらなんでもマズくないっスか」

「声を立てるな馬鹿ここに資料を隠したんだよ」

声を殺してカチョーは注意するが、職場内でもこの場所は滅多に人が来ない
故に、男子トイレにも女子トイレにも人の気配はない。ましてや夜中のこの時間である
カチョーがわざわざ、イイヤツを呼び出すのにこの場所を指定したのも、その辺の事情が絡んでいるだろう

手前から三番目の個室を開く
女子トイレは案外に汚い、という言葉もあるが
このトイレも汚かった。具体的には壁タイルの落書きである
色々殴り書きがされていたが、中でも大書されて目を引くものがあった

   "エーテルさんがアタシのことを部下である前に一人の女として見てくれない件について"

  "蓮華さん お願いだから 給料上げて 給料上げろ このココナッツヘッドが"

カチョーは個室の中へと入った
スラックスのポケットからナイフを取り出すと、タイルにあてがい一気に切り裂いた
どうやら壁タイルと思っていたのは巧妙に偽装された壁紙だったようだ
裂け目から茶封筒が引っ張り出された。結構な厚みがある

「数年前、この町とその近辺の市町村で連続して女子高生が行方不明になる事件が起きた」

茶封筒を懐に収め、さらに切り裂かれた壁紙の全てを引き剥がしながら、カチョーは話し始める

「事件の周辺では、必ずラーメン屋台が目撃された。同じ屋台だ
 『上層部』は、我々絡みの事件ではない、つまり、都市伝説絡みではない、そう判断したらしい
 となると、後は警察の仕事となる、はずだった、が、しかし、このラーメン屋台の店主に関しては
 状況証拠が揃っているにもかかわらず、結局、嫌疑不十分で不起訴となった。覚えているかね。この事件について」

「いいえ全然」
466 :無 題 :2012/04/11(水) 00:55:07.19 ID:sUj1nRZP0

壁紙を引き剥がしたカチョーは、イイヤツの方へと向き直る

「一つ。ラーメンのスープは、人肉からダシを取るとコクが出る。こんな話を聞いた事はないか?」

「なんかで読んだ記憶ありますけど。でもソレも都市伝説っスよね」

「調べておけよそのハナシ。実は流行ったんだよ。行方不明になる事件と丁度同じ時期にね
 ついでに言うと、問題のラーメン屋台は事件と前後して繁盛したそうだぞ。『コクがあって美味い』ってね」

カチョーは封筒を押し付けてくる

「それの中身を読めば事件の経緯は大体辿れるよ。ちなみに、ラーメンのダシになる材料って原型を留めないほど崩れちゃうんだ
 そういう要領で死体を隠滅していく仕事を担っているプロをね、『スープ職人』と呼ぶんだよ」

「はあ」

「そしてもう一つ。この屋台ね、今、この町に戻って来てるんだ
 以上の二つが、これから我々が仕事を始めなきゃならない理由」

「都市伝説絡みなんスかね、この事件」

「私はそう睨んでるよ。私はね。フフ、さあ、今夜は解散だ」





あの後、カチョーはどこかへと去ってしまった
まあ、大方今夜もノーパンシャブシャブだろう

イイヤツと呼ばれた男は茶封筒を抱えながら、フロアへと戻っていく
カチョーと会ったのも、本格的に仕事を始めるのも、本当に久しぶりである
あるのだが、今のイイヤツにとっては食い損ねた夜食をしっかり頂くことで頭は一杯だった

「ふーさてさて、気を取り直して、って、アレ? ない。なんで弁当が。ない」

デスクの上から弁当がなくなっていた。ビニール袋ごとである
デスクは間違っていない。貼られたダブルピースのOLの写真があるから、間違ってはいない

「俺の弁当、どこに行ったんスかぁぁぁぁっ!?」

昼と変わらぬ雰囲気で職場のスタッフが働いている中、イイヤツの絶叫がフロア中に響き渡った
467 :無 題 :2012/04/11(水) 00:56:01.42 ID:sUj1nRZP0

仕事と一口に言っても、この世には様々な仕事がある
様々な仕事があるという事はつまり、一般の人々にいくら説明しようとしたところで
にわかには理解されがたい仕事というのも、この世には存在する、そういう事になる

スープ職人だってそうだろう
何者かから依頼された死体を、依頼通りに煮込み尽くして、この世から消してしまう
いや、そんな事が可能だろうか。そんな都市伝説めいたオハナシのように上手くいくのだろうか

もし、もしも
そのような事を、やってのけてしまう者が居るとするならば
そのような仕事によって、法では裁けぬハカリゴトを巡らせる者が居るとするならば

カチョーやイイヤツの仕事は
そんな連中を相手に、この世から消されようとする何がしかの痕跡を辿り、探り、突き止める事である


人は彼らを「組織」の「黒服」と呼ぶ
                        〈 〉
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/11(水) 11:53:33.37 ID:A8DNx6aCo
乙です
黒服かっけえええ
続き気になりまくるわけですが期待してもよろしいのでしょうか?
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/11(水) 19:25:42.38 ID:BMc+bonx0
らwwwwwwwくwwwwwwwwがwwwwwwwwきwwwwwwwww
3つある内2つがNo.0宛てなのに何故蓮華なんだwwww
そしてο-No.0逃げろwwwww

しかしこれは面白い
続きがあるなら読みたいですの、今すぐに(マテ

>>468
お、長屋って俺以外にいたのか
470 :Dendrophilia [sage saga]:2012/04/12(木) 17:11:45.99 ID:xw62DKmP0
「大人しくしていろ。悪いようにはしない」

サングラスをかけた黒いスーツの男が、感情の籠らない無機質な声で言い放つ
周りにも同じような男女が数名
何れもその手には、SFでよく見かけるような形の光線銃が握られていた

「そんな物騒なもん向けといて、よくそんなことが言えるわねぇ?」

標的となっている真っ赤なワンピースの少女は、皮肉たっぷりにそう言った
セミショートの黒髪を彩るのは、一輪の真っ赤なツバキの花

「上層部からの命令だ。お前を捕らえるか、ここで殺せと」

引き金に指をかける黒服達
少女はくすっ、と小さく笑うと、ツバキの花を手に取って、

「馬鹿な人達ね……おいで、カメリア」

ひょい、とそれを己の目の前に投げた
刹那の間に投げられたツバキの花は形を変え、質量を変え、蠢き始め、
全長3メートル程の木の怪物へと変貌する
幹は胴、枝は手、根は足、洞は口
さやぐ緑の髪には、沢山の真っ赤なツバキの花が咲き誇っていた
カメリア―――そう呼ばれたツバキの怪物は、一瞬にして一人の黒服に接近し、腕を振るった
そして一人、また一人とすれ違い様に襲い掛かる
ぼとり、ぼとり、身体から離れたツバキの花が、紅い汁を零しながら地に落ちた

「雑草を撤去しろ」

仲間の死に悲しむ様子も無く、残った黒服達は光線銃で怪物を狙い撃つ
発射された光条は、植物であるカメリアの身体を穿ち、貫く

「……ねぇカメリア、聞いた? カメリアのこと、『雑草』だ、って……」

少女が声を震わせながらカメリアに声をかける
抉れたカメリアの身体が見る見る内に元通りになり、
それどころか全体が大きくなり、花も一層咲き乱れる

「…許せないよねこんな人達!! こんな奴ら、ここで死んで“皆”のご飯にしちゃおうよ!!」

ぽと、とカメリアから落ちる3つのツバキの花
実る3つの果実は徐々に熟してゆき、3体の骸の上に落とされる

「さあ、ご飯だよ。沢山食べて、元気に育ってね」

果実は腐敗し種は芽を出し根を張り、骸を覆い尽くす

「御馳走はまだまだ沢山あるから、焦らなくても大丈夫だよ」

ミイラ化した骸とは対照的にツバキはすくすくと育ち、立派な木へと成長を遂げる

「どうせまた馬鹿な人達が沢山殺しに来るからね…その人達を食べちゃったら良いんだから」

木は尚も成長を続け、僅かに元気が無くなった
かと思えば、カメリアよりも小型だが、同じように根が足となり、枝が腕となり、ツバキの花がぽつぽつと咲き始めた
底の見えない不気味な樹洞は、あたかも笑っているかのように見えた

「私の大事なカメリアを馬鹿にした奴等を……ぐちゃぐちゃにしてあげて♪」

さく、さく、花がさく
あっちでさいて、こっちでさいて
真っ紅な花がさき乱れ
出来上がった、鮮やかな紅いお花畑

「酷いよね、人間って………人が傷つく事、平気で言うもん」

少女が物哀しげに呟くと、彼女は背後から若葉の生えた手で包み込まれた
骸の内臓を貪る怪植物からカメリアへと視線を移すと、少女はその腕のような枝を恍惚とした表情で抱きしめた

「でも貴方達は違う…私の言う事は何でも聞いてくれるし、守ってくれる……それにこんなに温かい……
 人間なんて大ッ嫌いなの………私には、貴方達しか考えられない……」

持ち上げられ、彼女はカメリアの胴体にあたる幹にしがみついた
身体全体をぴったりと幹につけて、僅かに腰を上下に動かしている

「はぁっ……ずっと傍にいて、カメリア……私、貴方の事が…………好き♪」

少女はそっと、カメリアに口付けした

                                                    ...終
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/12(木) 17:20:06.91 ID:xw62DKmP0
http://www.youtube.com/watch?v=rQUjxGgxktY

↑と↓のボカロ曲に感化されて考えた単発。書くって言ってから結構かかっちまったけど許してちょ

http://www.youtube.com/watch?v=ifVEtF6G2ts


タイトルの読みは『デンドロフィリア』。動物に対して性的感情を抱くのは『ズーフィリア』ですが、こちらはその植物ヴァージョン
使用都市伝説は「古椿の霊」と「植物は話しかけるとよく育つ」
前者は女性の霊で描かれる事が多いけど、wikipediaは怪木って書いてたから、「これこそが怪木だろ!」っていうスタイルで
詳細はとりあえず避難所の裏設定に書いときます
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 21:22:04.43 ID:QfdvfyQ1o
皆様投下乙ですー

イイヤツ君……いろいろと哀れだ
トイレの落書きが本人たちの耳に届いたらとか考えそうになったけれどその先の悲劇を考えたくないので思考停止

さすがシャドーマンの人(が書くキャラ)だ、突き抜けてやがる
カメリアが存在することで誰も不幸になってないのになぜDEADorALIVEの命令が下ったのか
これが過激派か……
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/12(木) 22:01:06.06 ID:gCB+avnJ0
>>472
>さすがシャドーマンの人(が書くキャラ)だ、突き抜けてやがる
んふふー、こういうキャラじゃないと覚えて貰えないの、主に俺に(マテヤ
キャラが薄いと存在忘れがちになるのよねぇ、ライサとか藍那とかとかとか(ぁ

>カメリアが存在することで誰も不幸になってないのになぜDEADorALIVEの命令が下ったのか
そうですねぇ、実はまた一つNo.作っちゃおうとか考えてるんですよ、過激派で
474 :赤い幼星 † さらば戦士よ:後 [sage saga]:2012/04/12(木) 22:36:48.58 ID:gCB+avnJ0
「「フォトンベルト」と「恐怖の大王」……やっひゃひゃひゃ、意外にも大したことは無いな
 少し遊んでやろうか、それとも一気に殺そうか………やぁっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
「……卑怯者……せめて、麻夜ちゃんを解放して正々堂々戦いなさい!!」

拳を握りしめ、ローゼは木の幹を強く蹴って麻夜の方へ飛び、殴りかかる
麻夜は肩を竦めて、いとも容易くその拳を片手で受け止めた

「ッ!?」
「卑怯も何もあるまい……これは殺し合いなのだぞ?
 地球人類全ての命と、我とこの娘の命を懸けた、な……」
「くっ……」
「何度も言わせるな!」

そう怒鳴って剣を振り被ったのは正義だった
麻夜はローゼの拳を掴んで彼女を投げ飛ばすと、今度は見事な真剣白刃取りを決め込んだ

「さっき言った筈だよ…! 麻夜ちゃんを、殺させはしない!!」
「やっひゃひゃひゃ、貴様こそまだ戯言を言うか!?
 貴様等如きの力で、我が予言は覆らん!!」
「ふん、自惚れだな」

麻夜の頭上で雷鳴が轟いた
即座に正義を跳ね除け、彼女はジャンプして後退する
地面を眩い雷光が穿つ

「「太陽の暦石」…お前は人間を見縊り過ぎている
 お前が今まで殺した人間がどうだったかは知らんが……少なくとも今の人類は、未来を変える力を持っている」
「っは、「恐怖の大王」ともあろう者が何を言っている?
 人間如きに現を抜かしおって……ふむ」

視線を反らし、彼女が見た先は正義の友人達
その一人、目が合いびくっと跳び上がった奈海を見て、にやりと邪悪な笑みを浮かべた

「やひゃひゃひゃ…滅びの時は来た!!」

指先に洪水を圧縮して、水の弾丸を作り出す
狙うは無論、心星 奈海

「ひっ……」
「や、やめなさいっ!!」

ローゼが止めようとするが、遅かった
水の弾丸は麻夜の指を離れ、奈海の元へと真っ直ぐに飛んでゆく
能力を発動する間もない
弾丸は、身体を貫く





















「………え?」

零れる血
倒れたのは奈海ではなく、少年だった

「う、そ……!?」
「ふむ…予言通りだ」

血を吐き出しながら崩れ落ちる少年を見て、ローゼが心の中で呟いた言葉は、
『ごめんなさい、裂邪さん』、だった



   ...To be Continued
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/12(木) 22:39:29.06 ID:gCB+avnJ0
丁度良く明後日から土日に入る
この後の彼の最期の言葉は大王っちに任せとくよ

かなりの手抜きで申し訳ない、ここまで書いたらもう少しな気がするからもうちょっとだけ付き合って下せえorz
今日はもう力尽きそうだけど…
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/04/13(金) 02:49:12.26 ID:Wl9QKZ9AO
>>462-467の人乙ですー
なんということだ…SSに見せかけた「組織」の内部告発を見てしまった思いだ

>>470
シャドーマンの人乙ですー
この契約者ちゃんかわゆ!連載の予定はありませんか(
カメリアちゃんテラツヨス!

>>474
続けてシャドーマンの人乙ですー
いきゃあああ!正義きゅんがああ!
絶対このまま終わるわけないので正座待機いい!
477 :命消ゆる光の中、死神少女は死を拒む [sage]:2012/04/13(金) 06:38:58.86 ID:Wl9QKZ9AO
 銀の鎌の一振り毎にジャガー人間達が四散する様を、極はただ見つめていた。
(これが・・・『死神』)
 父の実家に代々伝えられた都市伝説。
 朧気な記憶の中に残る「あの男」の話では、七代だか十代前の先祖リリス・マリアツェルが、「彼」と交わした血の誓約。
 それ以来、マリアツェル家に生を受けた少女には、ふたつの道しか存在しなかった。
 ひとつは、「死神」の契約者・・・否、傀儡として心の力が尽きるまで死を振りまきやがて飲まれて一体化するか。
 「死神」との契約を拒み或いは契約を破棄し、その瞬間に命を奪われるか。
 ノイ・リリス・マリアツェルという少女が何れの運命を辿るのか、知る者は未だ誰も居ない。


(どのような心地よなぁ?我が契約者の末裔よ)

(愉しかろう?我に命ずる毎にそなたの敵が消えてゆく)

(我が力を振るえば振るう程、敵を滅すれば滅するほど)

(我が力は高まり、そなたは死の女神に近付くのだ)

―聞いてはいけない

 ジャガー人間。
 都市伝説に存在を与えられた、かりそめの生命。
 きらきら。きらきら。
 さながら舞い散る花のように、彼らは光の粒となり、何処へか消えてゆく。

 彼らは敵だ。
 町の人を、罪のない人を殺し傷つけ、自分やイタルも害そうとした。
 その彼らはもう、みんな光と消えてしまう。

(命ありしものを刈るのが我が務め)

 髑髏の面が、ゆっくりと極に向き直る。

(其処には老いも若きも、男も女も、善きも悪しきも無い)

―だめっ!

 次の瞬間、極の瞳に映ったのは、銀の鎌を振り下ろさんとする死神の手元を、必死で押さえるノイの背中だった。

(我が意に逆らうか・・・我がリリスの末裔)

「あたしは、死の女神なんかにはならないから」

「だからイタルを、なにも悪くない人を殺したりなんか、しない・・・もう絶対」

 真一文字に口を結んで歯を食いしばり、きっと彼女の都市伝説を見上げる瞳には、一片すらも折れる気配はない。
「もしこのまま、イタルを・・・[ピーーー]って言うなら」
 これが所謂「火事場の馬鹿力」か。精一杯の腕力を振るい、鎌の刃先を自らの胸元に引き寄せる。
「その前にあたしを殺せ!契約したまま死んで、あんたも消してやるー!!」

 少年の眼前で、少女と髑髏が睨み合う。
 やがて周囲の空気に生の気配が戻り、髑髏の姿が掻き消える。
478 :命消ゆる光の中、死神少女は死を拒む [sage]:2012/04/13(金) 06:40:02.07 ID:Wl9QKZ9AO
(勝手にするがよい・・・!)
 捨て台詞ともとれる一言を残し「死神」が姿を消すと、ぺたりと座り込んだ少女の背中に向かって、極がぽつりと言った。
「もしあのまま、死神がお前も殺そうとしたら、どうするつもりだったんだ」
「うん。あのね・・・考えてなかった」
 何も考えずに、自分の命を取引材料にしただと!?
 極は仰向けにずっこけそうになった。思わず失笑を洩らしてしまう。
(あ・・・)
 イタルが笑ってる。ちょっと嬉しくなったノイが
(あたしやったよ!)
 と、ピースサインを見せて極を振り返った、その瞬間。

 光線の束が、ノイの肩口を音もなく貫いた。



続く
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/13(金) 07:50:15.46 ID:Mt75O6150
俺のノイノイがあああああああああああああああああ!?
くそう誰だ!? 誰がノイノイを撃ったんだ!?
こんな健気で強かな彼女を誰が撃ったんだちくしょおおおおおおおおお!!
鳥居を探すの人乙でした〜 柳来いよ柳! ノイノイを助けてあげて!!

>>476
>この契約者ちゃんかわゆ!連載の予定はありませんか(
連載の予定はないけど、連載で準レギュラーとしてどこかに登場させたいところ
どうしよっかなー……ネクロフィリア・ズーフィリア・デンドロフィリアの3人で『歪んだ愛』のタイトルでやってみるか?(

>絶対このまま終わるわけないので正座待機いい!
弟との打ち合わせでは、俺も驚いたような展開が待ってます
まさか「恐怖の大王」の“そんな話”を使うとは、って感じ
480 :そして過激な母は復讐者を連れて ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/13(金) 16:28:08.00 ID:Wl9QKZ9AO
「・・・・・・!」
 声も出せずにノイはその場に倒れ込んだ。
 見る見るうちに赤い水溜まりが広がり、額には脂汗が伝っている。
「あ、あ・・・」
 やはり言葉も出ない極の脇をすり抜けて、黒いスーツの女がふたり、姿を現した。
「この子供で間違いないのね?」
 明るいブラウンに染めた髪を隙なく纏めた、日本人の女。
 彼女の名は赤坂千草。「組織」過激派に属するA-No.99である事は、無論極は知る由もない。
 問われたもう一人の黒服姿の白人の女は肯き、憎々しげにノイを爪先で転がすように蹴飛ばすのを千草が片手を上げて制した。
「なっ・・・!」
 女の所業の酷さに、極は青ざめて歩み寄りかけた。
「動かないで頂戴」
 千草の光線銃の銃口が極に向けられる。
「やめ・・・イタル、に・・・乱暴、しないで・・・」
 ノイのか細い声とともに手が僅かに上がりかけるが、果たせずにぱたりと地面に落ちた。
「まさかあの数のジャガー共を片づけてくれるとはね。手間が省けて結構だわ」
 淡々とした態度の千草とは対照的に、白人の女の方はどこか得意気だ。
「久しぶりね、チビ。この間の借りを返してやるわよ」
「こ、ないだ。カナタと・・・にんぎょう、いじめ、てた・・・おばさ・・・」
 さっと女の顔色が変わる。見る間に、等という生易しいものではなかった。
「お・・・おばさんですって!?」
 瞬間湯沸かし器さながらに激昂した女は倒れたままのノイを蹴りつけ踏みにじった。
 ノイはもはや指先一本も動かすことが出来ずにただ女の為すがままになっている。
 それ程までに怒るところだとは理解も共感も出来なかったのは、極が少年である故の事だろう。
「貴女もそこを退きなさい。これより排除を開始するわ」
 止めなくては。
 今まで眼前で見た事もない蛮行に真っ白に染まりかける思考を、震える体を叱咤したその時
「貴方は、この子の関係者かしら?」
 油断なく銃を構えたままの千草に問われ、極は息を呑んだ。
 さっきこの女は、何の躊躇いもなくノイを撃った。そういう人間なのだ。答が拙ければ自分もノイも殺されるだろうか。
 いや、それ以前に―
『なにが妹だ!』
 ほんの少し前に、ノイにぶつけた言葉を思い出す。
 自分たち母子を棄てた男の、母から夫を奪った女の子ども。
481 :そして過激な母は復讐者を連れて ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/13(金) 16:30:30.06 ID:Wl9QKZ9AO
(もし、今の僕の一言が、ノイの命を握っているなら)
 母は何と言う事を望むだろうか?
 母が憎んでも憎み切れなかった「あの女」の子。
(ああ、でも)
 紛れもなく、自分と血を分けている事は真実で・・・それに。
 危険を冒してまで僕の命を護り抜き、自らの都市伝説をすら向こうに回そうとした。
 そんな彼女を、今まさに命を奪うつもりが明白の連中に売るのか?
 女性としての母の敵は討てても、そのような息子に育ったことを、母はかえって悲しむかも知れない。
「その、その子は」
 言わなければ。
 命だけは助けてくれと。
 千草と女の視線が極に向いた瞬間を狙い澄ましたかのように。
 もう一つの黒い影が女を跳ね飛ばして倒れたままのノイの前に立ち、千草に正対した。

「о(オウ)-No.99のご命令により、現時点をもってこの契約者の身柄は、о-Noの管理下に入ります」
 ショートカットの黒髪を僅かに揺らせて、少女は刀を正眼に構える。
「そう・・・あの男も動いていたの」
 о(オウ)-No.99。通称「ウラシマ」
 まさかあの男がこちらの動きを読んでいたとは。
 通信を傍受していたか、こちらの様子が即座に掴めるような能力者を配置していたか。
 どちらにしても食えない男だが、この娘は違う。自分の一睨みで震え上がり尻尾を巻く。そういう風に育てたのだ。
「何も見なかったという事にして立ち去りなさい。今すぐ」
「拒否します」
 少女の瞳には、若干の怯えこそあるものの、迷いも揺らぎもない。
「そう・・・ではここで揃って死になさい」
 千草の威圧的な眼光が更に鋭くなり、周囲に薄い靄が掛かりはじめる。
「・・・!」
「・・・ぐっ!ごほっ、ごほ」
 紫が口元に当てた白いハンカチが見る間に変色し、靄を無防備なままに吸い込んだ極は咳が止まらない。
 気道が、肺が焼けるように熱い。
 千草がかつて契約し、彼女を飲み込んだ都市伝説「コミケ雲」
 夏と冬に行われる某オタク的な祭典では、屋内の会場ですら参加者の汗と熱気で雲が発生し
 酸味のする雨すら降るという。
 千草はその都市伝説を能力として使う。彼女の作り出す雲や雨は全て、人体には有害なものなのだ。
 一瞬動きの鈍った紫に白人の女が光線銃を放ち、紙一重で避け切れなかった光が彼女の太股を抉った
「くふふっ・・・いい気味・・・ね・・・!?」
 一瞬快哉を叫びかけた女の瞳が驚愕に見開かれる。
482 :そして過激な母は復讐者を連れて ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/13(金) 16:31:09.37 ID:Wl9QKZ9AO
 光線が抉った紫の太股の傷は、それこそ見る間に肉が盛り上がり、数秒と掛からずに全て回復した。
「わたしに、物理的なダメージは、無意味です」
 紫の契約している都市伝説「視肉」
 美味な上に切り取る傍から再生する無限の食肉。
 紫はその再生能力を自らの身体に応用し、ほぼ無限に近い回復力を得ていた。
「チグサ・・・あんたの娘が、こんな化け物だなんて聞いてないわよ」
「・・・だからこそ、手を噛むことの無いように、恐怖でもって躾けてきたのだけれど」
 失敗だったみたいねと片頬だけを歪ませて笑うと、周囲の靄が更に濃くなった。
「組織の損傷は回復できても、酸欠はどうにもならないわね?」
「ちょっと、私まで巻き込むつもり!?」
 私は撤退するから、チビの死体を必ず見せてよねと言い残し女は駆け去って行くが、
 千草と対峙し、しかも酸欠になりかかっている紫には追う余力がない。
「くっ」
 手足が痺れて立っているのも辛い。でも刀を落とすわけにもいかない。
 地面に倒れて弱々しく咳込む極をちらと見つめた。
(人を、巻き込んじゃってる・・・どこか、移動、しないと)
 でもどうすればと天を仰ぐと上空には真っ黒い雲が湧いていて、にわかに周囲の空気が紫電を帯びる。
「・・・まさか!」
 千草の呻きと共に、紫がノイを素早く抱え、千草から距離を取るように飛びすさった。
 刹那、耳をつんざくばかりの大音響と、視界を染め上げる雷光が千草の目と耳を封じた。
「ちっ・・・!」
 千草は舌打ちし、周囲の気配に神経を尖らせる。
「あんたはその子連れて撤収!」
 緋色の声を聞き取ったが、立て続けの雷光と千草を狙って降る大粒の雹に動くこともままならない。
「子供の癖にっ・・・」
 千草は思わず歯噛みした。
 何時までも自分に怯え、顔色を伺うだけの子供だと思っていたのに
 何時の間に自分に刃を向け、やり込めるまでに増長したとは。
「あの男・・・」
「お呼びですか?僕の事」
 声のした方を振り向き、漸く僅かに取り戻した視覚を総動員すると
 色素の薄い少年を助け起こす黒服の男。
483 :そして過激な母は復讐者を連れて ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/13(金) 16:32:30.35 ID:Wl9QKZ9AO
「ウラシマ・・・」
 腸は煮えくり返っているものの、千草は表面的には余裕を繕った。
「私の娘たちをどうやって誑かしたものかしらね?」
 一方ウラシマも、どこまで嘘か本当か泰然自若たる態度を崩さない。
「嫌ですね、なんだか僕が性犯罪者か何かのような仰りようです」
「せめてその少年だけでも寄越しなさい。例の契約者との関係について尋問します」
 極は思わずウラシマを見上げる。黒服の男は少年を安心させるように笑顔を向けた。
「それも此方にお任せ下さい」
 恐らく静かに激昂しているだろう千草の周囲に濃い靄が纏い付く。
 ウラシマは何処からともなく小さな箱を取り出した。極には、彼は駆けつけて来た時手ぶらだったように思えたのだったが。
「風向きは僕に有利ですよ」
 貴女の「コミケ雲」と僕の「玉手箱」この風向きなら、玉手箱の煙の方がそちらに届くのが先でしょうね。
「折角まだまだお若いうちに身体の時間は止まったんです。
あたら無駄に失おうと突っかかるのは感心いたしませんね」
 それでは、と折りよく上空より下りてきた小型のヘリに極を乗せ
 自らも身軽に飛び乗ると一目散に、という表現に相応しく飛び去っていった。
「三十六計、逃げるに如かず。という訳?何処までもあの男、バカにしてくれて・・・」



続く
484 :そして過激な母は復讐者を連れて ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/13(金) 16:39:21.38 ID:Wl9QKZ9AO
投下以上です。
ああ、心理描写って難しい…
とくにイタルの葛藤とか葛藤とか葛藤とか

>>479
>くそう誰だ!? 誰がノイノイを撃ったんだ!?
はい、安心の千草ママでしたーww
ちなみに一緒に来た女は「俺の彼女を〜」で柳に追っ払われた黒スーツの女です。
相方のグレイプニル少年をノイに倒されたので復讐心に燃えていたはずなのですが、やっぱし小物でしたwwww
で、この二人ですが今話をもって花子さんとかの人に進呈致しますww
千草ママはペレ様の直属だけあって由緒正しき(?)過激派ですが、一緒にいるオトモダチは三下です。
名前も能力も未定なので使うもよし捨て置くもよしでwwww

>柳来いよ柳! ノイノイを助けてあげて!!
・・・来ませんでしたねえ(他人事か
まあ彼が来ても下手すれば足手まといで終わったかも知れないので彼の名誉のためにはよかったかも(
以降暫く(作中時間で10日〜2週間ほど)ノイの身柄は「組織」預かりとなります。
о(オウ)-Noの保護下なので、メンバーは大人気ないですが、それなりに安全です。

>どうしよっかなー……ネクロフィリア・ズーフィリア・デンドロフィリアの3人で『歪んだ愛』のタイトルでやってみるか?(
明日は関東は寒いけど、すぐ暖かくなると信じて脱いで待ってるから!

>弟との打ち合わせでは、俺も驚いたような展開が待ってます
>まさか「恐怖の大王」の“そんな話”を使うとは、って感じ 発想の豊かさで右に出る者のないシャドーマンの人を驚かすとは…一体何が!?
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/13(金) 21:58:34.45 ID:TZNge6e90
ウラシマンが来てくれた!良かった!
でもノイノイの怪我が心配です
仇を討ってくれ花子さんとかの人!!

>>484
>はい、安心の千草ママでしたーww
ええいあの鬼畜母親め!
ニャル様降臨させたいくらいの精神状態だぜ!(←精神が不安定になるとニャルを出したがる性質

>о(オウ)-Noの保護下なので、メンバーは大人気ないですが、それなりに安全です。
さすがо-No.! そこに痺れる憧れる!

>明日は関東は寒いけど、すぐ暖かくなると信じて脱いで待ってるから!
全裸待機にはまだ早いwwwww
タイトル決まってもストーリーとか全然決まってないし、そもそも愛するものが全然違う彼女等をどうやって引き合わせるかwww

>発想の豊かさで右に出る者のないシャドーマンの人を驚かすとは…一体何が!?
右に出る人いっぱいいるよwwwww
俺より発想豊かな人はこのスレに沢山いるよwwwwwww
486 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/04/14(土) 00:45:50.03 ID:tKnubAgr0
>>474の正義視点、軽く書き上げたよ。
明日推敲できたらこちらに上げます。

ただ、なんでだろう?わらび餅がしょっぱいや。
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/14(土) 00:58:42.32 ID:/LvpGrve0
>>486
おちかれ〜、wktkして待ってるわ
でも作業でミスったら君の所為だからね!(マテ
488 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/14(土) 11:52:15.79 ID:ZqQ4/puAO
>>485
>ええいあの鬼畜母親め!
ニャル様降臨させたいくらいの精神状態だぜ!(←精神が不安定になるとニャルを出したがる性質
落ち着いて下さいなのー
花子さんとかの人が派手に始末してくれますのでご安心をww

>さすがо-No.! そこに痺れる憧れる! なんせ上位No仕事はそれなりですが精神年齢同程度がごろごろと…wwww

>タイトル決まってもストーリーとか全然決まってないし、そもそも愛するものが全然違う彼女等をどうやって引き合わせるかwwwwww
レインコート着てのんびり待ちますとも!

>>486
>明日推敲できたらこちらに上げます。
wktkして待ってますー
489 :静かになった家、静かに泳ぐ金魚 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/14(土) 11:54:10.84 ID:ZqQ4/puAO
 気が付くと、何時もと変わらない部屋の天井が見えた。
 時計は朝の6時30分を指している。未だアラームは鳴らない。
 けれど再び眠ることも出来なくて、極はのろのろとベッドに上半身を起こした。


 昨日、日も暮れそうになった時分に黒服の人に連れられて帰って来ると
 皆ノイが居ないことに驚いていたけれど無事を喜んでくれた。
 ノイの事は言えなかった。叩いてしまった事も、それなのに僕の事を護ってくれて、でも僕自身は何も出来なかったことも。
 黒服の人がノイが撃たれてからの成り行きを話し
 怪我が治るまで責任を持って治療しますと言うと、皆少しはほっとした様子だった。
 7時30分になると、リジーが朝食の支度が出来たと呼びに来たけれど、体がだるいし、食欲もない。
 授業はもう通常通りと連絡は来たけれど、体が動かなかった。
 ベッドの上で文庫本をめくったけれど、集中力が足りないのかどれも頭に入らない。
 目に付いた古いアルバムを開くと、古い写真の中で、母さんと僕と、「あの男」が笑っている。
 僕はあまり覚えてないけれど、この頃は幸せだったのだろうか。母さんも僕も。
 アルバムを学習机の棚に戻そうとして、危うくコップを引っかけそうになる。
「危ないな」
 コップには8分目まで水が入っていて、小さな赤い金魚がのんびりと泳いでいた。

「ねーねー見て、金魚取れたよ!」
 人の気も知らないで脳天気な奴。
 僕から何を奪って幸せに生まれ育ったと思っているんだ。
 父を奪ったお前のことを恨んでるかも知れないなんて考えたこともなかったのか?

「金魚、持ってて。落としちゃヤだよ?」
 それなのに、何で僕の事まで護ったりしようとするんだ。
 僕はそんな事・・・
 いっそあいつが、顔も見たくないくらいに嫌な奴だったらよかったのに。
 わがままなくせにバカでお人好しで・・・
(僕は、どうしたらいいんだろう)
(どうしたらよかったんだろう)


 極の内心の嵐とは正反対に、小波ひとつないコップの水の中で、金魚は無心に泳いでいる。



続く
490 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/04/14(土) 22:54:31.79 ID:732948tY0
正義「か、は……。」

奈海「うそ……。」



―――奈海に向けられた水の弾丸。


その弾速は素早く、動体視力に自信のある楓でも、ある程度予知できるコインでも間に合わなかった。

それを誰よりもいち早く察知できたのは、正義1人だけだった。

正義は奈海の前に立ち、弾丸を剣で受け止める。
しかし、その威力は凄まじく、弾丸は剣を砕き、正義の胸を撃ち貫いた。

胸から、大量の血が噴き出し、正義はその場で膝をついた。


―――わずか、数秒の出来事である―――





勇弥「正義ィィィイイイー!!!」

大王達が正義の元へと駆け寄る。
麻夜、いや、その体を奪った【太陽の暦石】は、不敵な笑みを浮かべていた。

楓「黄昏!まだ意識はあるのか!」
正義「……くっ……。」
勇弥「まだ息がある、なら望みはある!」
奈海「……ッ!ほ、本当!?」

半ば放心状態だった奈海が、勇弥の言葉を聞いて正義の元へ駆け寄る。

勇弥「あぁ。自然治癒力を高めて傷口の細胞を強引に塞ぎ、出血した血液を取り出しながら除菌して注入する。
   注入途中で細菌が入るかもしれないが……、十文字さん!」
楓「あぁ!15秒間までなら細菌を止める事ができる。」
勇弥「十分だ!『いっせーのっで』で始めるぞ!」
コイン「勇弥くん、がんばって!」

勇弥の言葉を受け、奈海の表情に笑顔が戻る。

勇弥&楓「「いっせェーのォー!」」














大王「止めろ。友、会長。」
491 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/04/14(土) 22:58:23.56 ID:732948tY0
もう治療が始まるというタイミングで、【恐怖の大王】が止めに入る。

勇弥「なんだよ、一刻を争うんだぞ!」
楓「大王様、いったいなんですか!?」

2人の言葉に反応せず、大王は無表情のまま正義を見つめた。

大王「少年。」
正義「……。」

何故か、正義は無理やり笑顔を作る。

大王「そうか……。」










―――数秒間か、数分間か―――










―――沈黙の後、大王が静かにつぶやく―――










大王「とうとう、寿命が来たのか。」



勇弥「は……?」



楓「なっ……?」



コイン「うそっ……!?」



奈海「……え……?」




大王の言葉に、全員が耳を疑った。大王は話を続ける。

大王「人間の心の中には《器》というものがあり、都市伝説と契約すると
   その都市伝説の力に応じて、《器》に水が注がれるらしい。」
コイン「そ、そんなの常識でしょ?知ってるわよ!」
492 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/04/14(土) 23:01:56.12 ID:732948tY0
大王「まだ続きがある……。《器》がいっぱいになると、命の危機に陥る。
   しかし人間には、《器》の下に《受け皿》があるらしい。
   そこから溢れない限り、人は死ぬ事はないが、状況によっては生きるために都市伝説と化する。
   生存本能の最後の砦というわけだ。」
勇弥「そ、それはものの例えだろ!?実際に心の中に器や受け皿があるってわけじゃ……。」
大王「俺達都市伝説という非現実的なものが存在しているんだ。心の中に器があっても何もおかしくはない。」
楓「そ、それが今回の件とどう関わってくるんですか!?」



大王「少年には、《受け皿》が無いんだ。」
勇弥「……『無い』?」
大王「おそらく、兄の特異な《器》が原因で、少年の分の《器》と《受け皿》は用意できなかったんだろう。
   そしてどうやら、《器》には『負の感情』というものまで注がれるらしい。
   俺の分で既にいっぱいだった《器》に『負の感情』は収まらず……溢れていった。」
コイン「そうか、前の町では正義くんの性格もあって、別に何の問題もなかったけど
    こっちに来てから色んな事があったからね……。」
大王「溢れた水は留まる場所を知らず、ただじわじわと少年の命を削っていった。
   本当はもっと早く契約解除すれば止められたんだが……少年がそれを拒んだ。」

契約解除を拒む、そんな事は正義なら当たり前の事だった。
正義にとって大王は良いパートナーであり、『戦う力』でもあった。
それを失えば、正義は自分の夢を失う事になる。拒んで当然だ。

全員、何を怨めばいいのか分からなくなっていた。



―――黄昏家という忌まわしい種族を作った先祖なのか



正義の分の器と受け皿を奪った裂邪なのか



中学校の無く、引っ越すしか選択しない自分たちの故郷なのか



正義を苦しめてきた人々なのか



今、正義の胸を貫いた【太陽の暦石】なのか



その前に成す術もない自分達なのか



命を顧みず自分の『正義』を貫いた正義なのか―――



正義「奈海……。」

かすれそうな声で、正義が呼びかける。
493 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/04/14(土) 23:05:01.89 ID:732948tY0
奈海「な、何?」
正義「やくそ、ま、れなッ。」ゴホッゴホッ!
奈海「……。」
楓「正義、無理するな!」



勇弥「まだ何か方法があるはず、そうだ、『寿命の値』を伸ばす事ができれば……!」
陰「(なりません!)」

【電脳世界=自然界論】の陰が、勇弥の心に直接話しかける。

勇弥「(な、なんだよ急に!無理じゃないだろ!)」
陰「(ゲームのキャラクターの寿命や他のエネルギーのような、既に定義されているものとは訳が違うのです!)
  (ほんの数百年前まで熱エネルギーさえ理解できなかった『人間』ごときに)
  (都市伝説か否かさえ分からない『生命力』という存在を、たった数秒で理解し、定義できますか!?)」
勇弥「(そ、そうか……定義できなければ、翻訳に失敗して全く見当違いな値を変えてしまう……!)
   (くそ……どうすればいい!)」



コイン「ママ、ママ!お願い!正義くんを助ける方法を教えて!
    もうママしか頼りがないの!お願い!」



楓「打つ手無しか……。私は、なんて無力なんだ……」
伯爵「(楓さん、すみません。私にもっと力があれば……。)」



正義「大、王……。」
大王「……。」


正義「け、い……やく……。」



















――――――










大王「正義ィィィイイイ!!!」
494 :大王の ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/04/14(土) 23:09:02.64 ID:732948tY0




















(正義「どうしたの?早く帰ろうよ、大王。」 )



(大王「うるさい!お前さえいなければ今頃俺は・・・。」 )



(正義「まったく、だから世界の支配とかしたらダメだって言ってるだろ。」 )



(大王「お前は少し欲望を持て!金が欲しいとかたくさん食い物を食いたいとかあるだろ!」



(正義「ボクは今のままで幸せなの。みんなが幸せだったらそれでいい。」



(大王「だから!・・・もういい、疲れた・・・。」 )



(正義「じゃあ帰ろうか。」 )















(大王「おい。お前は何で、そんなに正義に固執するんだ?」)



(正義「え?ぅうんと……。」)
495 :舞い降りた大王―セイギ ◆dj8.X64csA [sage saga]:2012/04/14(土) 23:11:50.06 ID:732948tY0










(正義「みんながずっと笑顔だったら、ずっと楽しいからかな。」)



(大王「……ふっ、ガキの発想の典型だな。」)



(正義「ガキじゃないもん!命をかけて笑顔を守るのがヒーローなんだよ!」)



(大王「それをガキと言っているんだ!だいたい――――――」)










―――なぁ、正義。俺の言う通りだっただろう―――















―――お前が命を落としたって、誰も笑顔になれないじゃないか―――





マヤの予言編第X1話「セイギ」―完―
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/04/14(土) 23:28:24.20 ID:ZqQ4/puAO
うわああああ涙腺崩壊しそう
正義くんはいい子なのに
みんな頑張ってるのに
こんなの残酷すぎる
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/04/15(日) 01:33:12.55 ID:Sl4nnarAO
すいません書き忘れ
大王の人乙でしたー
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/15(日) 06:51:56.56 ID:sOPtD8sb0
ありがとう大王っち
朝から泣いた
今日は早めに帰れるからささっとこの後の展開書くわ


初めて大王が正義の事を“正義”と呼んだ瞬間、か…
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/15(日) 06:55:03.75 ID:sOPtD8sb0
ごめんちょいとテスト

[ピーーー]
死ぬ
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/15(日) 23:15:43.80 ID:VNR8zVl60
誰もいないので雑談というか体験談
信じようが信じまいが


今日も「シャドーマン」を見かけたんですよ
日の落ちかけた午後5時頃、高架下の影の中
黒い塊がにゅっと現れて、焦点を合わせようとしたらもう消えてた
これで3回目だけど、こっちで見たのは初めてだな……
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 23:39:56.62 ID:Pykvy3pDO

もしかして:飛蚊症
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/04/15(日) 23:55:01.30 ID:Z4tRiEjN0
もしかして:脳炎
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/04/15(日) 23:57:36.12 ID:Z4tRiEjN0
いやいや冗談じゃなくマジマジ
親戚の叔父も脳血管に障害があったらしく黒いもやが見えてたそうだ
不摂生気味の生活続けてるなら人間ドック行った方が良いって
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 00:00:18.50 ID:dw3rDYPAO
新年度で健康診断の季節だな
ちょうどいいし行ってきなさい
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/16(月) 00:06:57.40 ID:Hmq9UXeO0
いーやー!?
そういやどっかでそんな話聞いた事あるよ………
だが健康診断とか行けるような金が無ぇ
506 :赤い幼星 † RRR [sage saga]:2012/04/16(月) 01:06:30.54 ID:rV2+PBqB0
―――――ごめんなさい、裂邪さん



「やひゃひゃひゃひゃ……契約者のいない「恐怖の大王」など恐るるに足らん」



―――――今、はっきりと、貴方の伝えたかった事が分かりました



「貴様等の命は我が予言通りここで尽きる……さらばだ、愚かな人類共よ」

再び放たれる水の弾丸
しかしそれらは一瞬にして、水蒸気になって霧散する

「…むぅ?」

麻夜が視線を向けた先
ばちっ、ばちっ!と赤いスパークを身体中に走らせるローゼの姿が、そこにあった

「何の真似だ? 何をしようが無駄だというのが分からんのか?」
「もう迷わない……これ以上誰も死なせは致しません……!!」

頬から流れる涙一滴
地面に落ちるその瞬間、ぱちんっ、とそれは掻き消えた
音に勢いの増すスパーク
突風に煽られたかの如く乱れる赤髪
背から生える4枚の光の翼
その赤く鋭い眼光は、確実に麻夜を――「太陽の暦石」を捉えていた

「…ワタクシの全ての能力は……もう一段階強くなる」
「ほう、面白い。なら貴様の予言通りこの餓鬼共を守って見せ――――――」

刹那の出来事だった
麻夜の眼前には、赤く輝く拳を構えたローゼがいた

「なっ!?」
「『Rev(レヴ).フォトン・ナックル』!!」

重い拳の一撃が、麻夜の腹部に突き刺さる
吐きそうになり呻き声をあげつつも距離をとったが、もうローゼの姿はそこにない

「何処へ消えた……?」
「『Rev.フォトン・アセンション』」
507 :赤い幼星 † RRR [sage saga]:2012/04/16(月) 01:07:01.75 ID:rV2+PBqB0
背後に現れたローゼは軽やかに空中回し蹴りを決める
吹き飛ばされた麻夜だったが、すぐに態勢を整えて砂埃を立てながら着地した

(何があった…こやつの行動が予言できなくなった……!?)

人類が滅びを迎えるまでの全ての出来事が記されているとされる「太陽の暦石」
世が滅びゆくまでの未来予知によってローゼ達の行動を先読みし続けていたが、
それが突然、出来なくなったというのだ
ローゼは笑うでも無く怒るでも無く、涼しい顔をして立っていた

「くっ、コケにしおって……第一の破滅、『カイーナ』!!」

地に手を添え、泥から10、20体の人型のジャガーを創り出す
牙を剥き出し爪を立て、狙うは無論ローゼ

「「「「「「「ババリバリッシュ!!」」」」」」」
「やひゃひゃひゃ、悪いが我のペット達と遊んでやってくれるか?」
「そんな時間はありませんわ」

右掌を差し出し、グッと握り拳を作ると、ジャガー人間達が急に動きを止め、
きょろきょろと念入りに辺りを見回し始めた
まるで、何かの異変に気付いたかのように

「『Rev.フォトン・アイスエイジ』」

パッと拳を開いた直後、全てのジャガー人間の身体が、ぴしりと凍りついた
月明かりにきらきらと輝く霜は、麻夜の表情を変えさせた

「な………何……っ!?」

一歩、ローゼが歩き出す
ぱんっ!!と氷像が1つ弾け飛んだ
一歩、また一歩と歩けば、氷像が爆裂する
生物が暗闇と無音を恐れるのは、周りに何があるか、誰かいるのか、そういった情報が“分からない”から
今「太陽の暦石」は生まれて初めて、人が暗闇と無音の世界に足を踏み入れたような感覚を味わっている
氷の欠片が舞い散りながら昇華してゆく中、ローゼは悠然とそこに立っていた
ジャガー人間の姿はもう、何処にも無い

「ば、かな……こんな、ことが……」
「もう貴方の好き勝手はさせません
 R-No.0、ローゼ・ラインハルト…「組織」の名において、貴方を―――「太陽の暦石」を消滅致します!!」

パワー、スピード、タクティクス
彼女は己の持てるもの全てを、飛躍的に進化させた
革命的な力を宿した赤く幼い星の名は


Rose

Reinhard

Revolution


“RRR(ドライエール)”



   ...To be Continued
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/16(月) 01:12:00.52 ID:rV2+PBqB0
なんか自分がショックだわ
短っ
超短っ
書かない方がマシだったか……でもこのシーン入れないと問題になるしな……むぅ
まぁいいや、いつかwikiで追加しよう、うん


『ドライエール』はそのまま『3つのR』ってのを独語にした感じ
英読みして『トライアール』でも良かったんだけど仮面ライダーアクセル連想されんのもヤだから没(
trialで裁判・審理って意味だから、「フォトンベルト」の性質に合うのよね
509 :社(トリップ確認かねて) ◆nj5fPres.I [sage]:2012/04/16(月) 01:48:06.85 ID:SBVYN06x0
乙です鳥居の人
ノイちゃん本当に大丈夫だよね
あとイタルくんも心配
金魚に不安煽られたんよ…

そして大王の人と影の人
何でこんな大事に!?と思ったら
太陽の暦石編だったか失礼しました
ローゼさんお仕事頑張ってるんだなあ

そして正義氏はリザレクションするのかな…
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/16(月) 07:43:41.82 ID:yNXDj09o0
>>509
>太陽の暦石編だったか失礼しました
半年もだらだらと続けて申し訳ない、いやホントにorz
多分あとちょっとで終わる筈、何とか今月いっぱいまでには書き終えたい
じゃないと4月からスタート予定だった諸々の作品が……
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/16(月) 07:45:20.65 ID:yNXDj09o0
書き忘れ

>>509
>ローゼさんお仕事頑張ってるんだなあ
この事件の後、報告書地獄を体験することになったというのは秘密の話(

>そして正義氏はリザレクションするのかな…
ゲフンゲフン
512 :ソニータイマー/携帯 [sagasage]:2012/04/18(水) 12:59:09.95 ID:e2juos3DO
「百合夫婦」
やあ、初めましてかな? 私は芙向 姉妹音(ふむかい あねもね)。小百合の母親だ。え? 姉妹音であねもねは無理がある? はは、世の中には波波波と書いてさんばと読ませる者も居るんだ。今更言いっこなしだよ
姉妹音「さて、今日は何故かジャガー人間が大量発生しているからな…。気をつけた方がいいぞ、芳子」
芳子「ええ、そうですね姉妹音。私達も一応契約者ではありますけど、用心に越したことはありませんからね」
紹介しよう。彼女は芙向 芳子(ふむかい かおるこ)。私の妻だ。ちなみに旧姓は一迅(いちじん)だ
姉妹音「ああ、そうだな。だがもしもジャガー人間に襲われるようなことがあったらその時は私が芳子を守るよ。
妻の事を守るのが、嫁の仕事なんだから」
芳子「////…。ふん、守られるのは貴女の方ですよ姉妹音。よ、嫁の事も守れないようでは妻なんて務まりません!」
姉妹音「///…そうか。じゃあ折衷案で…お、お互いに守り合えば良いんじゃないか?」
芳子「そ、そうですね。そうすれば私達は最強無敵にして無限大です///」
姉妹音「/////…なんか自分で言っておいてなんだが恥ずかしいな////」
芳子「もう///…貴女が照れてどうするのですか///は、恥ずかしいのは私の方です///」
全く、相変わらず芳子は可愛いな/// …顔が熱くなってきた
『ババリバリッシュ!』
この鳴き声はジャガー人間!? くっ、今良いところなのに! まったく空気の読めない奴だ。だが現れてしまった以上…
姉妹音「芳子には手を出すな」
芳子「姉妹音に手を出してはいけません」
私たちはお互いに。お互いを庇うように――構えた
『ババリバリッシュ!』
ジャガー人間達が襲いかかってくる。だが無駄だ。芳子には指一本触れさせん!
姉妹音「『生命自然発生説』」
私がそう唱えると、地面から虎が生まれる。そして、ジャガー人間達に向かっていった
姉妹音「ジャガーvsトラの異種戦闘ってとこかな? このジャガー達が雌ならまさにキャットファイトだ」
これは私の契約都市伝説、『生命自然発生説』だ。あらゆる物質から生命を発生させることができる。…紹介が遅れてしまったが、なにを隠そう私は生物学者なのだ
『ババリバリッシュ!』
ジャガー達とトラ達が拮抗している。さて、これで削れれば万々歳だが…
『バリッシュ!』
なっ…!?
私が確認したジャガー人間は6匹。だから私も6匹のトラを生み出した訳だが…まさかもう一匹いたとは…!
力が拮抗している勢力同士なら、当然数が多い方が勝つ。
しかしそれよりもこの状況をどうするか、だ。新しい生物を出すか…ってもうこんなに近くに…!
駄目だ、間に合わな―――
カランカラン。ダメージを覚悟した私の耳に、大きな鈴の音が響いた。すると、どこからともなく斧を持った人が現れ…ジャガー人間に斧を振り下ろした
芳子「言ったはずですよ? 姉妹音には手を出すなと…」
芳子…! 芳子! 助けてくれたのか! ありがとう! 愛してる!
芳子「終末だかなんだか知りませんが、貴方達を断罪します。
動物愛護団体が何と言おうと…お生憎様、ここから先は無法地帯。日本国憲法は適用しません」
追加で紹介しよう。私の妻、芳子は法律家…それも弁護士だ。そして今のは、彼女の契約都市伝説、『犬鳴村伝説』。詳しくはググってくれた方が早いだろうが、斧を持った人が現れたのは『犬鳴トンネルには柵があり、乗り越えた所の紐と缶の仕掛けに引っかかると大きな音が鳴って村人が駆けつける』というものだ
姉妹音「ありがとう、芳子…助かったよ。さて、それじゃあ本気で行こうか…『生命自然発生説』、虎を追加!」
私はジャガー人間の数に合うようにトラを追加する
姉妹音「さて、ジャガー人間。密林の王たる私のトラ達に果たして勝てるかな…?」
『ババリバリッシュ!』
ジャガー人間達とトラ達の戦闘が再開される。噛みつき、引っかき、かわし、かわされ…まさに接戦だった
しかし…
「ガウッ…」
悲しいかな、ここで人型と獣型の差が出る。ジャガー人間達のテクニックでトラ達が切り裂かれてしまった
姉妹音「ほう…コンクリも切り裂く爪を持つだけのことはあるな…実に興味深い」
私は素直に感心する。いやはや、サンプルに欲しいくらいだよ
姉妹音「…で? まさかそれで勝った気になっているのではあるまいな?」
『バリッ…!?』
そこには無傷なトラ達が居て。ジャガー人間達に噛みついた
芳子「私も助太刀します」
そしてその隙に、斧を持った『犬鳴村』の村人達が攻撃する。それで倒せたわけでもないが、かなりの有効打だ
姉妹音「…『細胞サンプル』。病院は入院した患者の細胞をサンプルとして保管しているという都市伝説でな。私は好きな生物にその細胞を適用させられるのだ。
ちなみにトラ達には『A婦人の無限再生細胞』が使われている。欠損程度なら三秒くらいで完治するのさ。…そして」
私は芳子の方を向き、言う
姉妹音「芳子…そういえばホワイトデーのお返しがまだだったな。ふふ、チョコレートを作って来たんだ…食べてくれたまえ」
そして私は口にチョコレートをくわえ、差し出すか
芳子「ふぇ? え、えっと…///」
姉妹音「どうした? 早くしないと溶けてしまうぞ?」
芳子「つ、つまりそのまま食べろと…こ、こんなところで…! 人が見てるじゃないですか///」
姉妹音「ほう…なら人が見ていなければ良いと?」
芳子「なっ…べ、別にそういうわけでは…! ない、こともない、ですけど…」
姉妹音「…できれば早くして欲しいんだ。
…私も、恥ずかしいから///」
芳子「〜〜〜〜〜〜っ///」
何かが吹っ切れたのか、私の顔に顔を近づける芳子。あ、どんどん芳子の顔が近づいてくる…まずい、本格的に恥ずかしくなってきた///自分で誘ったくせに
芳子「んむ…」
姉妹音「んん…」
私の唇に芳子の唇が付き、チョコレートが芳子の唇に移る。これが本当のバードキス? などという駄洒落で気を紛らわせていないとどうにかなってしまいそうだ
芳子「…ぷはっ」
姉妹音「………/// ど、どう、だった……?///」
芳子「ふふ…とっても、美味しかったですよ?」
芳子の美しい笑みが、私の心臓を捕らえる。鼓動が早くなるのを感じる。…さっきまでの弱気はどうしたんだ
姉妹音「あ、ありがとう/// …」
さて、もっと食べさせたいところだがここは我慢だ
513 :ソニータイマー/携帯 [sagesaga]:2012/04/18(水) 13:00:09.99 ID:e2juos3DO
姉妹音「さて…そろそろかなり高くなっているころだな」
芳子「ええ、そうですね」
見ると、いつの間にかあった超高層タワーにジャガー人間達が括り付けられている。これが私の、私達の契約都市伝説…『木間市タワー』だ
『ババリバリッシュ…!?』
流石のジャガー人間達も戦慄しているようだな。まあ、あそこまで百合百合すればかなり高くなる。いくらネコ科といえど恐怖を感じないわけがない。
さて、あとは私達が離れるだけだ。名残惜しいが、私と芳子が一歩、二歩と離れていく。すると…
ガラガラと盛大な音をたて、『木間市タワー』が崩壊した。『木間市タワー』はあらゆる攻撃にも耐えて壊れない頑丈さを持つが、反面百合エネルギーを得られないとすぐに崩壊するほどデリケートなのだ
姉妹音「これで終わりだ、ジャガー人間」
芳子「貴方達に判決を言い渡します。
…『死刑』。私の姉妹音に手を出したこと、地獄で猛省なさい」
姉妹音「ははは、だが安心してくれたまえ。サンプルくらいは採ってやるから」
そしてジャガー人間達は地面に激突し、絶命した
姉妹音「ふぅ。…ありがとう、芳子。助かったよ」
芳子「いえ、助けられたのは私の方です」
姉妹音「はは、まったく…相変わらず可愛いな芳子は」
芳子「なっ…そ、そんなの! 姉妹音の方が可愛いですよ///」
姉妹音「///」
本当に可愛い奴だよ…。まあ、こうして見事ジャガー人間達を倒した私達は、ジャガー人間のサンプルを採った後、いちゃいちゃしながら帰ったわけだ。…周り視線が少し痛かったが。
え? 何故女同士なのに子供が居るのかって? 決まっているだろう、『iPS細胞』と契約したからだ。では、これで…



続く
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/18(水) 18:18:16.06 ID:TZ0MeAw70
ソニータイマーの人乙です〜
なんちゅう夫婦ッ……夫妻ッ………なんちゅう婦妻だwwwwwwww
そりゃあんな娘も生まれるよなぁwww
しかし良いコンビだぜ、もげろもげろ(
515 :単発 [sage saga]:2012/04/18(水) 20:12:29.77 ID:TZ0MeAw70
陽が昇り始めたらお人形遊び
髪の長いお人形
真っ赤なお洋服を着せて、赤い靴を履かせて踊りだす
糸を右に引けば右へ、左に引けば左へ、上へ下へ、前後ろ
お人形は僕の思うがままに軽やかに踊る
一昨日かったばかりだからかな、ちょっと緊張してるみたい
早く仲良くなりたいな


陽が昇りきったらお人形遊び
髪の短いお人形
真っ白なエプロンをつけて、台所に立ってお料理の時間
野菜を切ったり野菜を刻んだり茹でたり煮たり炒めたり
お人形は八つの足で成すがままに昼食を作る
先月かった時は脹よかだったのに、ちょっと細身になってきた
それでも笑顔は綺麗だった


陽が沈みかけたらお人形集め
小さな可愛いお人形
真っ青な顔で逃げるけど、八つの目からは逃げられない
泣き叫ぶお人形を抑えつけて、糸を出してくるくる巻く
お人形は見る見る内にミイラみたいに包まれる
今までかった中で一番可愛いかも知れない、何だか嬉しい
早く帰って遊ぼう


陽が沈みきったらお人形作り
泣きじゃくる可愛いお人形
真っ黒な瞳で見つめられると、今すぐにでも遊んであげたくなってしまう
銀色の水を飲ませて、新しいお洋服を着せてあげる
お人形はまだ泣いてるけどきっと笑顔に変わるよね
僕がかったお人形は皆皆笑顔になるんだ
さあ、一緒に遊ぼう


月が昇りきったらお人形遊び
嬉しそうな可愛いお人形
真っ黄色な光に照らされて、汗だくになって涎を垂らして激しく乱れる
後ろから突いて、下から突いて、身体中を撫でて触って揉みしだいて
お人形はとても嬉しそうに僕を求めてくれた
やっぱり僕がかったお人形は皆笑顔になるんだ
すぐにこわれちゃうけどね
でも死んだりしないよ、お人形だもの
ずっと一緒に遊ぼうね、僕のお人形達


陽が昇り始めたらお人形遊び



   ...end
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/18(水) 20:15:59.34 ID:TZ0MeAw70
たまにはこういうのもどうですか
一応2つ都市伝説使ってるけど、1つは100%正解は無理だろうな…
とりあえず裏設定に書いてくる
517 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/18(水) 21:45:22.75 ID:WcNeF9LAO
>>509
>ノイちゃん本当に大丈夫だよね
あとイタルくんも心配
ノイは取りあえず生きてますー
二人にはもうちょっと悩んでもらいます。
>金魚に不安煽られたんよ…
金魚平和。超平和。

>>512-513
ソニータイマーの人乙ですー
なるほど、この親にしてこの子あり
でもナイス百合っプルでしたー

>>515
シャドーマンの人乙ですー
裏設定スレ見てきてわかった
お人形ってそういう事か!
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/18(水) 21:59:50.02 ID:TZ0MeAw70
>>517
>お人形ってそういう事か!
話の中で5回書いてる『かった』っていうのは『買った』じゃなくて『狩った』と(
そういや裏設定で書いてなかったけど、この主役、小○生なんだよな…
519 :ソニータイマー/3DS [sagesaga]:2012/04/18(水) 22:15:33.35 ID:BudH+VLm0
シャドーマンの人乙ですー!
何の都市伝説だろう…難しいな
『女郎蜘蛛』か『土蜘蛛』と『赤い靴(童話)』か『白雪姫』かなぁ?
いやでも『錬金術』という線も…『水銀は不老不死の薬』とか…うーん、難しいな
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/18(水) 22:51:57.96 ID:TZ0MeAw70
>>519
「女郎蜘蛛」も考えてたんだけど、あっちは女性のイメージがあったから没にorz

>『赤い靴(童話)』
このミスリードは多いと思うな、個人的にww
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/04/18(水) 23:20:07.35 ID:BudH+VLm0
>>520
>女性のイメージ
なるほど…人を操ったという話がある女郎蜘蛛ではなく土蜘蛛を選んだのにはそんな理由が…
裏設定見てきました。6個も都市伝説挙げれば当たるものですね。人間を人形と思い込んで愛でる性癖か…。分からないけど、分からなくもないな

>このミスリードは多いと思うな、個人的にww
本当は恐ろしいグリム童話だかで見た気がするんですけど、童話の『赤い靴』って性欲に溺れた少女の暗示であるっていう都市伝説があるんですよね…
そこもミスリードポイントですね
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/18(水) 23:27:38.54 ID:TZ0MeAw70
>>521
>人を操ったという話がある女郎蜘蛛
え、マジで? ちょっと探してくる

>本当は恐ろしいグリム童話だかで見た気がするんですけど、童話の『赤い靴』って性欲に溺れた少女の暗示であるっていう都市伝説があるんですよね…
そういや、『本当は恐ろしいグリム童話』、まだ2巻読破してなかったな……
あれ当時高1だった俺には刺激的でさぁ、高校の図書館でいっつも下半身元気な状態で読んでたよw(コラ
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/19(木) 19:12:12.59 ID:VHq4nvDj0
「女郎蜘蛛」調べてみた
確かに人を操る話あるな……変えたいけど……むぅ
というかよく見ると「土蜘蛛」も女性に化ける話あるね、男は無いのに
どんだけ疾しいんだよ日本人!(

ついでに書き忘れ
>>521
>人間を人形と思い込んで愛でる性癖か…。分からないけど、分からなくもないな
念の為言うけど、俺もそういう性癖無いし理解も出来ないからね!?
おにゃのこ捕まえてお人形遊びとかやろうと思った事無いからね!?

無いからね!?
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 23:26:09.49 ID:KwZ1AxsDO
皆様投下乙ですー

世の中には二つの性癖(誤用)がある
「理解できない性癖」と「知らない方が幸せな性癖」だ

「理解できる性癖」があるとすれば、それは性癖ではなく、ただの嗜好だ
525 :懐かしい部屋、戻れないあの日の記憶 [sage]:2012/04/20(金) 03:47:00.55 ID:lDGFqIEAO
 目が覚めたら、ウィーンの家だった
 リビングのソファに男の人が座っていて、笑ってあたしの頭をなでている
―お父さまだ
あたしが何か言いかけると、黒髪の女の人が焼きたてのアップルパイを持って入ってきた
―これはお母さま
窓ガラスに映ったあたしは、赤いチェックの柄のワンピースを着ている
―これ、小さい頃お気に入りだった服。なんで今まで忘れていたんだろう
・・・あれ、小さい頃?・・・今っていつだっけ?今は今だけど、今のあたしとは、どこかが、何かが違う

振り返ると、お父さまとお母さまは恐い顔をして何事かを話している
(あの女の・・・あの子どもを引き取るって・・・あなた本気なの!?)
(イタルだって私の子供だ!そんな言い方をするな・・・お前にとっても甥だろう!?)
―イタルを・・・引き取る?お父さまの子どもで、お母さまの甥?
(・・・やっぱり、やっぱりあの女が忘れられないのね!?)
―やめて。ケンカしないで
(だったら何故、私と結婚したの!?)
(・・・子供が出来たからだ!ノイが生まれなければ、お前などを・・・)

―やめてお父さま

(・・・なら私は出ていくわ。ここにあの女と子どもを呼んで、精々仲良く暮らしなさいよ)

―やめて。お母さま

(さ、ノイ。お母さまと一緒に日本へ行きましょう。)
(待ちなさい。その子はマリアツェル家の・・・『死神』の子だ。勝手に連れて行くことは許さん)
(・・・なにを言ってるの!?私を身一つで放り出すつもりなの!?跡取りだけ生ませて!?)
(・・・金の不自由ならさせない)
(当然でしょう!とにかくこの子は連れていきます。話は弁護士にして・・・)

お父さまとお母さまは、しばらく言い争いを続けた末に

(・・・そんなに言うならこの子に決めてもらいましょう
・・・ねえノイ、お母さまとお父さま、どっちと一緒に暮らしたい?)
(ノイはお父さまが好きだろう?このお家が好きだから、出ていったりしないよな?)

―やめて。仲なおりして

(お母さまがいいわよね?ノイは日本に行ったことがないでしょう?珍しいものが沢山あってきっと楽しいわ)
(ノイ、このお家にいればお母さんがいなくても、
すぐに新しいお母さんと兄さんが出来るから、寂しくなんかないぞ)
お父さまがそういって、あたしの右手を取った

526 :懐かしい部屋、戻れないあの日の記憶 [sage]:2012/04/20(金) 03:48:03.73 ID:lDGFqIEAO
(うそつきなお父さまねえノイ。お父さまは新しいお母さまとお兄さまの方が大事だから
シンデレラのお話みたいに、新しいお母さまにいじめられてしまうわよ)
そう言ってお母さまは左手を

―やめて
―やめて

(さ、ノイ。お父さまかお母さまか、好きな方を選びなさい。まさかお母さまなんて言わないよな?)
(新しいお母さまがくるお家になんか居たくないわね?さ、お母さまがいいって言いなさい)

「やだっ!!!!」
急にお部屋が暗くなった。お母さまの悲鳴が聞こえる
「ノイ、やめなさい!!」
お父さまが叫んで、あたしの肩を揺さぶった

でももうだめ

『お父さまも、お母さまも、大嫌いっ!』


「――!!!!」
ぱちりと目が開いて、知らない真っ白い天井
ひゅっという自分の声が聞こえて、ひんやりした空気がのどを通って、胸の中に広がっていく感じがする

今度こそ本当に、とび起きた
「いまの、夢・・・」



続く
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/20(金) 09:42:41.74 ID:VKSBSRGD0
そうだったのかノイノイ………
ノイノイは悪くないよ、お兄ちゃんがよしよししてあげるから
ノイノイハァハァノイノイペロペロあぁノイノイ可愛いよノイノイ
528 :単発ネタ [sage]:2012/04/20(金) 10:41:48.49 ID:F3QifQBSO
我輩は宇宙人である。
何星で生まれたのかとんと見当がつかぬ。
生まれも育ちも分からぬが、地球を侵略する為にここにいるのは分かっている。
何故ならば、我輩はそう噂された都市伝説だからだ。


「まいったな。真っ暗じゃないか」
学校帰りにゲーセンに寄って、気がつくと夜になっていた。
僕の家までは、この公園を突っ切るのが近道なんだけど、電灯がない。
公園といっても、それなりの広さがあるからな。
んー……まあ、
「大丈夫か」
変質者なんてそうそういないだろ。
そう思って公園に入る。
「……何か、変な臭いするな」
何ていうのか、分からないけど、気持ち悪い臭いだ。
やめといた方が良かったかな。
「そこの人!危ない!!」
「……へ?」
突然、女の子の声がした。
声の方を向くと
「早く逃げて!!」
学校の怪談なんかでよく見る、花子さんみたいな恰好の女の子が走っていた。
そして、その背後から
「……何、あれ?」
3メートルはあるだろう化け物が現れた。
光る目、赤い顔の、スペードのエースのような形状の頭、短い腕に、爪のような手。
そんな化け物が、走るのではなく、少しだけ浮きながら女の子を追う。
女の子は僕の方へ走ってきていて、
「うわぁああああ!!」
僕も化け物に追われるように走りだした。
「何!?何なの!?あれなに!?」
「落ち着いてください!」
花子さんの恰好の女の子がそう言うが、落ち着けるわけないだろ!
「あ、そうだ、契約!人間さん!私と契約してください!」
「は!?何?契約?」
「そうです!ここ学校でもトイレでもないから、私、何もできなくて!でも契約すれば!」
「無茶言うな!そんな事よりあの化け物は何なんだ!?」
化け物は今だ僕たちを追ってきている。
「あれはフラットウッズ・モンスターです!宇宙人で、都市伝説ってやつで、普通の人間にどうにかできるモノじゃないんです!だから、契約……を?」
走り続けて、いい加減、疲れた。
しかし、そうか宇宙人か。
じゃあ、逃げるの終了。
「な、何してるんですか!?」
花子さんが、慌てて戻ってくる。
「※※※※※※※※※※」
意味不明な言語ひ叫びながら、フラットウッズ・モンスターが襲ってくる。
そして僕は
「邪魔」
持っていた光線銃で、フラットウッズ・モンスターを撃った。
「……え」
「※※!?」
「さよなら」
そうして、頭に大きな穴を開け、フラットウッズ・モンスターは倒れた。
「……え……え?人間、さん?……黒服、だったんですか?」
花子さんが見当違いの事を言っている。
まあ、どうでもいい。
僕は、光線銃の先を花子さんの頭に押し付ける。
「えと……あの…………人間さん……?」
「我輩の……おっと、間違えた。僕の正体を見たモノを、生かしておく訳にはいかない」
そうして、僕は光線銃を撃つ。
「知ってた?『すでに宇宙人は人間に化けて、人間社会に紛れ込んでいる』らしいよ?」
見た目も気配も人間だけど、都市伝説同士で契約なんてできる訳がない。


我輩は宇宙人である。
何星で生まれたのかとんと見当がつかぬ。
生まれも育ちも分からぬが、地球を侵略する為にここにいるのは分かっている。
地球を侵略するのは、我々なのだ。
火星人もウンモ星人もフラットウッズ・モンスターも、我々以外は全て[ピーーー]ば良い。

529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/04/20(金) 11:17:38.55 ID:zIKxQtA10
おぉ、まさかそう来るとは思ってなかった
視点が移ったと思わせてずっと語り手目線だったとは……
俺の花子たん……
530 :単発ネタ [sage]:2012/04/22(日) 00:26:14.23 ID:1NK7cg8SO
日本にもこんな場所があるんだな、と思わせる豪邸だった。
豪華でそれでいて派手ではない屋敷。その屋敷まで門から車で15分という広大な庭。
そんな、庭の中にある林を、黒服は走っていた。
「くそ……なんで、こんなことに!!」
ずいぶん長い間走り回ったのだろう。
すでに息も絶え絶えといった様子だ。
『がんばってくださいねー。後3時間逃げ切ったら解放してあげますからー』
木の上に設置されたスピーカーから、ノイズ混じりにそんな少女の声が聞こえてきた。
『αの1から10はCブロックに向かえ。Cブロック周辺の奴は付近を捜索。他は待機だ』
少女の後に、奴らに命令する、男の声が聞こえてくる。
忌ま忌ましいスピーカーを叩き壊してやりたくなったが、黒服にそんな暇はない。
光線銃で撃ち抜こうにも、取り上げられ、手元にはない。
「く、そ……」
すでに、走っているとは言えず、徒歩より遅い。
けれど、足は動かす。
止まってしまうと、力尽き、その場に倒れてしまいそうだった。
そんな事になれば、奴らの餌食だ。
「……っ……く…………、……ぁ…………あっ!?」
上手く足が上がらず、木の根っこに躓き、黒服は転んでしまう。
「く、そ……」
立ち上がる事もできず、黒服は注射を取り出す。
黒服は、注射男と契約していた黒服である。
かれこれ、20時間、その能力で自分をドーピングしたり、奴らと戦ったりしてきた。
「ぁ……く、そ……」
「あれー?お兄さん、もう限界ですかー?」
不意に、少女の声が聞こえた。
スピーカー越しではない、生の声。
なんとか、顔を上げると、小学生程度のかわいらしい少女の姿。
「もうゲームオーバーですかー。でも、すごくすごいですよー。こんなに長生きしたのはお兄さんが初めてですー」
そう言って無邪気に笑う少女の周りには、奴らがいた。
口裂け女でも、テケテケでも、フラットウッズ・モンスターでも、スカイフィッシュでもない。
それは、都市伝説でもなんでもない、犬だった。
ドーベルマン。土佐闘犬。ドゴ・アルヘンティーノ。アメリカン・ピット・ブルテリア。
そして、チベタン・マスティフ。
一匹いれば、素手の人間ではおよそ勝ち目の無い犬が、何匹も、何匹も、庭をうろつき、襲ってくる。
「そろそろ、終わらせるか」
犬に命令していた男の声が、少女の足元から聞こえた。
「そうですねー。もう無理でしょうしー」
「よーし、お前ら、ヤって良いぞ」
声の正体は、一匹の犬。
人の顔を持つ、人面犬。
「お前、ら……こんな、なんで、こんな事して……」
ゆっくりと、犬達が近づいてくる。
「なんでって、お人形遊びなんかより楽しいからですがー?」
犬が来る。
けれど、黒服の身体は立ち上がる事もできず、手の中の注射一本で、どうにかできるはずもない。
「こんな…………事、して……許される、と…………思っ、て」
足に犬の鼻先が当たっているのに気がつき、黒服はそいつを蹴ろうとする。
もちろん、そんな体力は残っておらず、足を持ち上げただけになった。
「……?よくわかんないですよー?人面ワンさん、この人は……」
「ちゃんと過激派だ。そうだろ?」
人面犬が質問する。
質問の答えは、確かに、この黒服は組織の過激派所属だ。
だが、黒服にそんな質問に答える余裕はない。
身体中、臭いを嗅いでいる犬から何とか逃げようと、必死なのだ。
「過激派さんは組織さんの中からも外からも嫌われてるんでしょうー?だったら、何人かいなくなったって大丈夫ですよー」
少女の、そんな無邪気で残虐な微笑みを、黒服は見ていなかった。
ついに、犬が噛み付き始めていた。
肉を食いちぎり。骨をかみ砕き。
黒服の悲鳴が辺りに響く。
飛び散った血が、少女の足に付く。
それを舐め取りながら、人面犬がたずねる。
「楽しいか?」
「はい、とっても……」
うっとりと、少女は不様にもがく黒服を見ていた。
血の臭いに、犬はまだまだ集まってくる。
悲鳴はもう聞こえない。


531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 11:58:14.04 ID:ei8VG71DO
>>530
投下乙です!
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/04/22(日) 20:11:50.15 ID:Zx6BAhcAO
>>528
単発の人乙ですー
なるほどと唸るオチでした
花子さんがひたすら不憫

>>530
単発の人続けて乙でしたー
ここでも過激派狩りが…!
533 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/04/22(日) 20:13:30.49 ID:Zx6BAhcAO
 21世紀初頭のウィーン。
 万聖節前の少し浮き足立った街の中を、ひとりの青年が歩いていた。
 黒髪で、やや切れ長の目。一目で東洋人とわかる特徴を備えてはいるが
 彼が中国人なのか日本人なのか、ウィーンっ子達には区別は付きはしない。
 欧州の慣習には不慣れな青年は格式の高いカフェを避けて、公園でサンドイッチでもと
 市街地を少し外れた静かな道へと入って暫く歩くと
「あーっ!」
 子どもの叫び声と共に飛んできた赤いボールが、青年の頭を直撃した。
 軟らかいゴムボールなので当たっても大して痛くないが、
(俺ってニブいなあ)
 子どものボール程度ならともかく、害意のある都市伝説の攻撃だったら洒落ではすまない。
 やっぱり飛縁魔と一緒に居れば良かったかなあとも思いはするが、
 『珍しい餌』を漁りに行くのに帯同しても楽しいわけでもない…
「それかえしてー」
 声に気づいた青年は考え事を中断し、ボールを拾い上げると
 瀟洒な門扉の内側に立ち、手を伸ばす少女に渡してやる。
「ありがとー!」
 年の頃なら6〜7歳程度か、顎のあたりで切り揃えられた癖のない黒髪に、薄青色の瞳。
 屈託のない愛くるしい笑顔を浮かべてはいるが、何故か色濃い“死”の匂いを纏わせている。
「・・・・・・!?」
 思わず青年が少女をまじまじと眺めていると、少女はきょとんと首を傾げた。
「なーに?」
「あ、いや。お兄さんは旅行でこの辺に来たんだけど、
この辺りにお弁当を食べられそうな公園はないかなあと思ってね」
「旅行?もしかして、おにーさん中国人だ!」
 欧州の人間にとって、東洋人=中国人のステレオタイプは子どもにすら健在なのかと苦笑いを漏らした。
「お兄さんは日本人なんだ」
 少女の瞳が吃驚したように見開かれて、それからぱっと花が咲いたような笑顔がこぼれる。
「ホント!?あたしのおかあさまも、日本人だったんだよ!」
 日本語も知ってるよ、コンニチワって言えるよときゃっきゃとはしゃいで跳びはねながら
 青年を見上げる少女にお利口さんだねえと微笑みかけてさらさらとした黒髪をなでる。
「お嬢ちゃんは何歳?お名前はなんていうのかな?」
「ノイ・リリス・マリアツェル!8さいです」
 青年はしゃがみ込んで少女の目線の高さに、自分のそれを合わせると
「俺は浅倉柳。18歳です」



続く
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/23(月) 21:25:57.94 ID:E6kAHuiSO
(・∀・)ダレモイナイヨ
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/23(月) 23:13:18.35 ID:A0z/6c7p0
口裂け女ってピークは短期間だったはずなのに
なんで後年になって何度かぶり返したんだろう…
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/23(月) 23:20:00.63 ID:BtuLEKkQo
皆様投下乙ですよー

犬単発……いずれ書こうと思ってたネタと被ったかと思って冷や汗
そしてそんなことは無くて安堵

8歳の女の子と18歳の青年……犯罪のかほりg(刈られました)

>>535
世間が恐怖や未知の存在を求めているのですよ
ツチノコブーム再燃しないかなぁ……何県にいるんでしたっけ
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/23(月) 23:38:38.21 ID:A0z/6c7p0
憶測だけどマスコミがその都度喧伝した所為なのかな…
ツチンコは北と南を除いた日本全国、ヒバゴンは中国地方…
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 00:21:26.17 ID:mru+mp0DO
その昔テレビで散々放送されていた、憑き物を祓ったり結界を張ったり霊道を塞いだりしていた霊能力者たち
いったいどこへいったのだろうか
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 00:38:30.57 ID:88FsSGgSO
たまにやってる「ほんとにあった怖い話」とかの誰得な除霊コーナーとか
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 00:55:19.11 ID:VL5do83lo
ずっと再現ドラマだけをやっていればいいものを……
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/26(木) 10:34:15.67 ID:z77wss/J0
あと廃墟訪問だな
面白いんだけどギャーギャー泣くような豚連れてくんな鬱陶しい
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 14:11:50.04 ID:BvVDf/5s0
そういう主張垂れ流す視聴者様()が増えたからその手の番組そのものが減ったんじゃねーの
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/04/26(木) 14:19:00.43 ID:LXva1F4AO
ここに「あなたの知らない世界」をリアルタイムで見ていた世代がどれほどいるだろうか…
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 16:28:36.67 ID:q69G/mXAO
夏休みにやってたな
懐い
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/26(木) 16:52:51.21 ID:7Grxqmw10
>>542
逆っしょ、減ってから除霊だの何だのが増えてきた訳で
要は今の俺達は過去に心霊写真や心霊映像、怪談再現を見て楽しんだ視聴者勢力(?)

>>543
何それ気になる
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/26(木) 16:53:42.40 ID:7Grxqmw10
あれ、ID変わっとる
一応テスト
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 17:41:21.79 ID:88FsSGgSO
USOとか見てたな
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/26(木) 18:46:57.81 ID:Qa+FvPs00
>>547
あれは神番組だった
2001年〜2003年ってぇともう10年経つのか、俺が小3の時だな
『これマジ!?』→『USO!?ジャパン』の流れが土曜日の飯時の鉄板だったな…
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 19:24:15.32 ID:mru+mp0DO
写真の合成技術やネットが発達して、(エセ)霊能力者が「これは危険なものです」って判断した写真が
あとになって「あの写真合成なんですけどプギャー」される危険性が増大したため、迂闊に心霊ものを取り扱うことができなくなった

という邪推
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/26(木) 19:31:32.02 ID:Qa+FvPs00
>>549
>という邪推
UFOとかは合成でも問題ないけど、霊が関わるとお焚きあげとかで金が発生するからな……


最近暑いから涼しくなる動画でもどう?
見たいけど怖いの苦手って人の為にゆっくり実況恐怖映像↓
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm15233571
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/26(木) 20:52:30.67 ID:bY8BWNzho
>>549
その邪推は概ね当たってるのと
一部視聴者の方々が「気持ち悪い番組とか見たくない」とか「子供が怖がる」とかガンガンクレーム入れてたらしいよ
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 21:04:34.03 ID:FvFSMlVIo
>>551
>「気持ち悪い番組とか見たくない」
まぁその気持ちはわからなくもない

>「子供が怖がる」
情操教育って、大事だと思うんだ……
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 21:30:31.89 ID:WEeIRIrJ0
>>552
テレビじゃなくても情操教育はできるだろww

これからは放送禁止シリーズようなのが流行るんじゃないですかね
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/26(木) 21:39:54.71 ID:bY8BWNzho
>>553
> テレビじゃなくても情操教育はできるだろwwww
そうそう
両親手ずから体験したかのように怪談を語ってあげればいいのです

一生残る恐怖と衝撃で
一生残る愛と勇気を
と、富士鷹先生もおっしゃってますので(待て)
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/26(木) 21:47:02.93 ID:Qa+FvPs00
>>552
>情操教育って、大事だと思うんだ……
モンペ達は確実にして着実に子供達から大切な何かを奪っている

>>553
>これからは放送禁止シリーズようなのが流行るんじゃないですかね
アンビリでちょこっとやってたような奴?
USJの裏側とか高いタワーの天辺だとか
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 21:47:51.34 ID:FvFSMlVIo
恐怖番組、学校の怪談、その他もろもろの怖い話
そういったコンテンツに一切触れずに育った子供は暗闇を恐れるのだろうか
「そこにいるかもしれない恐怖」を感じることはできるのだろうか
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/26(木) 21:57:49.86 ID:Qa+FvPs00
>>554
>両親手ずから体験したかのように怪談を語ってあげればいいのです
それはそれで難しいぞwww
やっぱ怪談は自分で体験した奴じゃないと
母上も父上も面白い恐怖体験してるのに俺はどれもちゃっちいのばっかりだしなぁ

>>556
>「そこにいるかもしれない恐怖」を感じることはできるのだろうか
幽霊ではない別なものを恐れたりね
黒尽くめの泥棒とか
迷彩服の暗殺者とか
酒に酔った義父とか
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 23:59:22.70 ID:mru+mp0DO
>>557
そんなリアリストで可愛いげのない子供はいやだー

幽霊が怖くてお兄ちゃんに「トイレついてきて」ってお願いするような子供が好きだー
「幽霊なんか怖くないし」とかいいながら後ろから「わっ!」て脅かしたらかわいい悲鳴あげて涙目になっちゃうような子供が好きだー
心霊番組見て一人で寝るのが怖くなってお兄ちゃんの部屋にこっそり入ってきて布団に潜り込むようなショタが好きだー

そのまま朝になってお兄ちゃんに抱き枕にされてる自分に気づいて慌ててお兄ちゃんを起こさないようにいそいそと自分の部屋に戻って、
目を覚ましたお兄ちゃんに何事もなかったかのように「おはよう」って挨拶するけれどお兄ちゃんは全部わかっててあえて気づかないふりをして、
その様子を見てバレてないと思ってほっとしてるショタください

なんの話だっけ?
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 00:24:23.81 ID:Ovwh9T4SO
モンペ達は確実に
恐怖番組、学校の怪談、その他もろもろの怖い話 、そういったコンテンツに一切触れずに育った
黒尽くめの泥棒とか、迷彩服の暗殺者とかが怖くてお兄ちゃんに「トイレついてきて」ってお願いするような
子供が好きだ

って話
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 00:27:48.15 ID:wwu/YpRMo
モンペ、恐ろしい子……!
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/27(金) 07:45:04.52 ID:aPQgYq5k0
>>559
>幽霊が怖くてお兄ちゃんに「トイレついてきて」ってお願いするような子供が好きだー
>「幽霊なんか怖くないし」とかいいながら後ろから「わっ!」て脅かしたらかわいい悲鳴あげて涙目になっちゃうような子供が好きだー
妹がこういう感じだった俺は勝ち組(キリッ
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 09:54:46.79 ID:dRaA8s3DO
>>559
要約すると、
怖いもの知らずのモンペはかわいい子供が大好きだから自分の子供にキラキラネームとかつけてうちの子が一番かわいいとか言っちゃう
ってことか

モンペこわい
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 12:16:17.34 ID:Ovwh9T4SO
ホラーな番組見てたら怖がりの妹とリモコン争奪戦が始まる
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/30(月) 21:14:32.52 ID:qY5TLJ730
世間じゃゴールデンウィークというものに突入したそうじゃないか
俺にゃそんなもの無いんだけど同志はおらんか
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/05/01(火) 00:03:44.26 ID:zSSBIPPC0
>>564
ノシ
まさに今仕事の最中だ。盆も暮れも正月GWもない
一度でいいからカレンダー通りに休んでみたいものだ
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/01(火) 01:12:51.73 ID:wlZyB5DH0
>>565
おぉう、遅くまでお憑かれ様です
去年のバイトは祝日で休めたんだけどな…まぁその分金入るから良いけど
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 08:30:13.81 ID:dZr6rrxSO
自分もゴールデンウイークとか関係ないな


逆の意味で
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/01(火) 09:47:52.70 ID:PBU6u4GAO
>>566
実は夜勤だったのさ
将来の夢は自宅警備員です(キリッ)割とマジで
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 10:35:16.81 ID:dZr6rrxSO
物書きで食っていけたらなあ
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/01(火) 11:03:55.53 ID:wURPgsLB0
>>567
逆の意味ってのはつまりそういうことかリア充め!(違

>>568
夜勤乙でしたの、夜勤の後って寝ようか否か迷うよね
俺もだんだんニートが羨ましく思えてきた……orz
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/01(火) 11:05:20.44 ID:wURPgsLB0
30分も更新し忘れていただとorz

>>569
何人か実際に喰っていってる方がいらっしゃるぜ
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 11:22:55.06 ID:0RDOAJjDO
>>571
「何人か実際に喰っていってる」を見てレジーヌ様的な意味にとらえてしまったのですがどうしたらいいですかね
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/01(火) 12:54:49.74 ID:wURPgsLB0
>>572
冷静に考えると確かにそうとしか読めねぇwww
あれだ、生みの親だから日常的な思考回路が似通っちゃってるんだ(ぇ
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/02(水) 23:32:56.94 ID:2NYS/wrFo
連休とか、盆とか正月とか、そういう時いつも人がいないよなこのスレ
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 01:19:09.32 ID:9woi/6mSO
リアルが充実してるんだろ
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/03(木) 08:49:20.17 ID:D0v3AE250
一つは里帰り
一つはデート
一つは出勤
一つは昼寝
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 12:01:29.87 ID:FMQvh40DO
GWデートなんて都市伝説ですよ
創作物の中で聞いたことはあるけれど
現実にそんなものが存在してるわけないじゃないですか
GWデートなんて都市伝説ですよ
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/05/03(木) 14:37:00.25 ID:Xh+kiJs0o
>>577
つまりスレ内のキャラカップル達はGWデートでキャッキャウフフだらけですね
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/03(木) 16:22:20.99 ID:6tw6+CPP0
GWでなくともキャッキャウフフしてそうなカップルを数組知ってる気がする
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 18:07:17.29 ID:9woi/6mSO
不純異性交遊及び不純同性交遊は禁止です
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/03(木) 18:21:54.64 ID:6tw6+CPP0
こうして純異性交遊カップルを探す旅が始まった


Tさん×舞ちゃんの他に誰かいたっけ……orz
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/05/03(木) 19:33:57.92 ID:wZJf1uPv0
>>577
GWなので友人のウィンドウショッピングに付き合ってきた俺ならいますが
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/03(木) 19:42:36.16 ID:B6VrN/ny0
>>582
友人もげろ(
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/05/03(木) 20:16:26.34 ID:Xh+kiJs0o
>>581
何を以って純とするかだな
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 20:19:19.70 ID:Z+j03b6Ho
ローペロペコンマでスックスするカポーの中で
ホテル内で都市伝説発動したり黒服が面倒事起こしに来たり
都市伝説絡みの事件おこしたりした奴がいたら
やっぱり江良井のお父ちゃんがすっころしにくるのかな


     \\\
   (⌒\  /⌒ヽ  能力解放とかマジワロスwwwwwwwwwww
    \ ヽヽ(  ^ω^)  おっおっおっおっおっwwwwwwwwwwwwww
     (mJ     ⌒\
      ノ ∩  ./ /
     (  | .|/⌒ヽ ち、違う俺じゃないです!!
  /\丿 | (    )  あの、あの女が、女があああああっ(ブチッ メリメリッ
 (___へ_ノ ゝ__ノ
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/03(木) 20:28:19.12 ID:B6VrN/ny0
>>584
やたらと人前でキスしない
未成年とセックス及びそれに準ずる行為をしない
男の方がロリコンじゃない

このくらいしか思い浮かばなかったぜ、マイルドだろう?orz
とりあえず裂邪×ミナワは絶対不純
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/03(木) 20:32:03.91 ID:B6VrN/ny0
>>585
江良井父最強説誕生の瞬間だった
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/05/03(木) 20:37:11.06 ID:wZJf1uPv0
>>583
人生初のお見合いで玉砕して傷心気味だったからやめたげてよぉ!
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/03(木) 20:42:38.80 ID:B6VrN/ny0
>>588
おぉう、それはまたご愁傷様な…
花子さんとかの人が嫁になれば万事解決するのに!!
でもあの人は僕のry
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/04(金) 20:19:50.98 ID:AL6Csp1Ao
このスレは定期的に江良井の話題が出ますなあ
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/04(金) 21:56:50.81 ID:pqujQv1V0
これは吐き出さずにはいられない
マジ嬉しい
親に内緒で妹に1万円送ったら超喜んでくれた
3DS買ったみたいだ、わざわざ画像付きでメール届いてた
いっぱい「ありがとう」って書いてくれてた
俺もうゴールしても良いよね……
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2012/05/04(金) 22:04:13.94 ID:z5QuH5kA0
>>591
おめでとう
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/04(金) 22:14:00.67 ID:vHsABimAO
むしろ始まりはこれからだろ?
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/04(金) 22:19:13.43 ID:pqujQv1V0
温かいよ皆……(つДT)

>>593
正直言うと妹に会いたいです
会って抱きしめたいです
成長してるかなー何処とは言わないけど豊かになってるかなー
てかデートしたいホテル泊まりたい
595 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage]:2012/05/05(土) 12:29:59.39 ID:HF24IRnho
おまわりさんこの人です
596 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/05(土) 16:22:07.38 ID:U2FBHvjq0
 はらせぬ恨みをはらし 許せぬ人でなしを消す
 いずれも人知れず 仕掛けて仕損じなし 人呼んで仕掛人
 ただしこの稼業 江戸職業づくしには載っていない

「りく、という名前でした」

「…………」

「嫁入りを控えておりました」

「…………」

 とはいえこの物語の舞台は別
 時は明治、場所は活気あふれる江戸ならぬ帝都
 しかしこの繁栄の裏側には汲めども尽きぬ涙があった

「奉公先の阿子木屋という商家の旦那に迫られ無理やり……」

 二人の男が座敷で向かい合っている。

「それは許せませんね」

 無表情のままで片方の男は呟く。
 馬鹿にしているように思われかねないが今の老人にそんなことを気にする余裕はない。
 繁華街の片隅にある小さな駄菓子屋。
 子供たちが店番の女性相手にキャイキャイと騒いでいる頃、その奥では誰かの涙が流れていた。

「今まで懸命に働いてきて稼いだ金です
 あの娘が居なくなった今、嫁入りに使うこともできない
 どうかこれで、この恨みを晴らしてはくださいませんか?」

 小柄な老人は昔気質の職人。
 亡き妻の残した一人娘を生きがいに暮らしていた。
 そんな彼が震える手で差し出したカバンをもう片方の男が受け取る。

「承りました
 ただしこのことは他言無用
 さもなくば……」

 こちらの男はすれ違えば十人中十人は振り返る絶世の美男子。
 名を伊烏善次郎、さる豪商の家に次男坊として生まれ、道楽に駄菓子屋を営んでいる。
 所謂高等遊民といったものであろうか。
 表の商売は親の金を元手にした駄菓子屋の店主。
 裏の商売は金で悪を討つ仕事人である。
597 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/05(土) 16:24:11.08 ID:U2FBHvjq0
「ありがとうございます」

 老人は深く頭を下げる。

「商売ですので」

 青年は無表情のままに頭を下げる。
 老人が裏口から出てしばらくすると子供たちが伊烏の部屋にやってきた。

「お兄ちゃん遊ぼうぜ!」

「いいよ」

「お兄ちゃんどうして働いてないの?」

「兄貴達に迷惑がかかるから働けないのさ」

「お兄ちゃんが表に出てこないからなんだかお姉ちゃん暇そうにしてるよ?」

「あいついつもそんな感じなんだぜ」

「お兄ちゃんなんでいつもおんなじ顔なの?」

「生まれつきなんだ」

「お兄ちゃんとお姉ちゃんって夫婦なの?」

「まあそんなところかなあ」

「ベーゴマやろうぜ!」

「負けるの嫌だなあ」

「カルタが先よ!」

 一人ひとりが勝手に騒ぐ子供たち。

「はいはい分かった分かった、お前たちまずは外に出なさい
 お勉強はちゃんと終わらせてきたのかい?」

「うっ……」

「どれ、まずはそこからやろうか」

 そう言って伊烏は子供たちに宿題を持ってくるように言って一旦家に帰す。
 そのあとは戻ってきた彼らに勉強を教え、ひとしきり遊んでから暗くなる前に子供たちを家に帰した。
 彼が部屋で茶を飲んでいるとこの時代にしては背の高い妖艶な雰囲気を持った女性が部屋に入ってくる。
 
598 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/05(土) 16:24:37.72 ID:U2FBHvjq0
「美登利か」

「主様、店の片付けが終わりました」

「ありがとう、どうにも片づけってのは自分でやると駄目でね」

「主様は何もせずにぶらぶらなさってるのがお似合いでございます」

 女性はお茶を飲む伊烏の横に座る。
 死んだ魚のように精気の無い目だ。
 
「……ああそうだ、仕事だよ」

 なんということもなさげに伊烏は言う。

「まあ……昼の方ですか?」

「うん、今から行く予定なんだけども良いかな?」

「人目についてしまいます、先にお食事にしては?」

「分かった、じゃあご飯を食べてからだ」

「今日はお魚が安かったので沢山買って来ました」

「僕は焼き魚は食べない」

「分かってますよ、ちゃあんと煮付けておきました」

「……うん」

 それは良い。
 そうとでも言わんばかりに基本的に無表情な伊烏の口角が僅かにゆるんだ。
 それを見て美登利は満足な笑みを浮かべて皿に料理を盛り付ける。
 食事を早々に済ませると彼は寝転がって寝てしまった。
599 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/05(土) 16:25:30.09 ID:U2FBHvjq0
「主様ー」

「…………」

「主様ー」

「…………」

「ぬしさまー?」

「…………うるさい、眠れんだろう」

「主様、何時までこのような仕事を続けるのですか?」

「浜の真砂が尽きるまで」

「いくら主様一人がこんなことをしたとて悪党が減るはずもありますまいに」

「…………」

「主様はそこまで頭の悪い男では無いことは分かっております
 教えてくださいな、主様の本当に願うことを」

「ならばお前も俺に素顔を見せたらどうだ」

「いけずな人
 そうしたら抱いていただけなくなりましょう」

「醜いのは俺も一緒だ」

「大層なご器量で一体何をおっしゃるのですか?」

「心根が醜いのだ」

「何故?」

「……化物には一生分からないよ」

 それだけ言うと再び彼は沈黙する。
 美登利はあの手この手で彼の気を引こうとするがピクリとも動かない。
 彼女が半ば諦めかけたところで突然伊烏が起きる。

「そろそろ夜も更けてきた、行くぞ」

「お化粧がまだ済んでません!」

「そんなものしなくてもお前は綺麗だ」

「もう顔色ひとつ変えずにそんなこと言うんだから主様はずるいのですよ」

 阿子木屋の場所は有名だ。
 天から降り注ぐ刺のような春の宵の冷気を浴びて二人は歩く。
 
「…………」

「…………」

 まだ日本に闇が残っていた時代だ。
 人々は細胞で闇の中に潜む怪異を知り、それと触れ合わぬように無意識に行動する。
 あえて目を逸らす、あえて道を変える、なんら意識すること無く。
 ふとした偶然から一瞬だけ触れ合うことはあるがきっとそれだけ。
 それだけじゃなければ死ぬだけなのだから。
 道の向こうから彼らに向けて歩いてくる、顔を隠した破落戸風の男だってその実は怪異。
 のっぺらぼう。
600 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/05(土) 16:26:03.19 ID:U2FBHvjq0
「おいあんた達、こんな顔に見覚えは――――」

 無表情のまま、伊烏はのっぺらぼうの顔面を握り締める。
 地面にたたきつけ、それからもう一度持ち上げる。

「や、やめてくれ俺が悪かった!あんた達が只の人間だと思っ……」

「己が悪いと解ったなら死ね」


 メキッ
 そんな音と一緒にのっぺらぼうの頭部が一回転する。
 

「お美事にございます」

「……うん」

 怪異は無差別に人を襲うのだ、人が無差別に怪異を襲っていけない理由はない。
 とでも言わんばかりの表情だった。
 しばらく歩くと目的地が見えてくる。
 なるほど人から恨みを買っているらしい、屋敷の中には番犬、屋敷の外には人間。
 善次郎は当たり前のように高い塀を飛び越えて中庭に降り立つ。
 犬が吠えるかと思われた次の瞬間、犬たちが糸でグルグル巻きにされて転がる。

「何をやってるのですか主様、見つかったらことですよ?」

 糸が消えるとその中からミイラのようになった犬の死体が現れる。

「いや、犬たちは罪もあるまい
 殺すのもどうかと思ってな」

「…………主様は馬鹿です」

「行くぞ美登利」

 二人は屋敷の奥まで進む。
 人間には彼らのことを感知などできない。
 伊烏はここと思しき部屋の扉を蹴破るとよく肥えた男が寝ていた。
 美登利の服の袖から糸が出て男の首に絡みつく。

「起きろ」

 伊烏が糸に手をかけながら男に声をかける。

「……え?あ、ヒィッ!誰だお前!」

「悪党」

 首に巻きつけた糸を少しだけきつく締める。

「阿子木屋の主人だな?」

「誰か!誰か来い!」

「来ないよ、誰も」

 既にここは怪異の世界。
 居て良い人間は一人だけ、被害者のみ。
 伊烏は首をさらにきつく締める。

「もう一度聞くぞ、お前は阿子木屋の主人だな?」

「そ、そうだ!だ、だから離してく……れ」

 糸が緩む。
 それと同時にまずは指を一本折る。
 悲鳴が響く。
 
601 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/05(土) 16:26:35.14 ID:U2FBHvjq0
「誰だおまっ……」

 もう一本指を折る。
 涙を流して逃げ回ろうとする男の足の腱にドスを突き刺す。

「安心しろ、まだ死なない」

「か、勘弁してくれぇ……」

 痛みが引いてきたのか男はやっと口を開く。
 
「次は骨を一本一本折っていく
 その次は鼓膜を破る
 その次は眼球を裂く
 最後に性器を潰す
 意識を失う度にお前の身体を治して作業を再開する」

「な、なぜ俺がそんなことを!?」

「心当たりはあるだろう」

「な、なんだ!俺に恨みが有るのか!?
 勘弁してくれ!金ならいくらでもあるんだ!」

「金は要らない
 ただ迷惑をかけた人々に謝り、償うことを誓え」

「ご、ごめんなさい……」

「誠意が足りない」

「あ゛ァ!?」

 指がもう一本折れる。
602 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/05(土) 16:27:26.92 ID:U2FBHvjq0
「もう一度」

「ご、ごめんな……」

 悲鳴。

「もう一度」

「ごめんなさ……」

 ボキッ

「もう一度」

 ボキッ

「もう一度」

「ご」

 ボキッ

「ワ、私がわる……」

 息も絶え絶えに男は呟く。

「わる?」

「わるかった……」

「そうか」

 男の首にかかった糸に手を掛ける。

「本当に悪かったと思うか?」

「は……はい」

「分かった」

 糸を解く伊烏。
 男はほっとしたような顔をする。

「反省してるなら死ね」
 
 伊烏の手が男の首にかかる。
 無表情で気管を潰す。
 十分ほどすると既に男の顔は真っ青になって、動かなくなっていた。
 苦しみ、驚き、怒り、哀しみ、それらがないまぜになったような表情だった。

「主様、もう食べてよろしゅうございますか?」

「綺麗にしておけよ」

「わかっております、少しだけ後ろを向いていてくださいな」

「部屋を出ている、何か有ったら呼べ」
 
 伊烏はそう言って部屋を出る。
 扉の中からはバリボリと骨を砕く音やちゅるちゅると血を啜る音が聞こえた。

「終わりました」

「じゃあ帰るか」

 窓から二人は部屋を出る。
 蜘蛛の糸を使い、屋根伝いに歩いて帰った。
603 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/05(土) 16:28:03.76 ID:U2FBHvjq0

――――

 翌日
 伊烏は一人で黙々と米をかきこんでいた。

「おかわり」

「だとおもいました」

 無表情で米を胃袋に注ぎ込む伊烏。
 
「おいしいですか?」

 白米だけを何も言わずに胃袋の中に叩きこみ続ける。
 弼の中の米が恐ろしい勢いで消え去っていくがそれでも顔色ひとつ変えない。
 何杯もお代わりしてから伊烏はやっと呟く。

「…………うん」

 僅かに笑う。

「なら良いんです」

「お前は食わなくていいのか?」

「私は昨日食べたのでしばらく大丈夫です」

「そうか、少し散歩に行こうかな、流石に腹がくちくなった」

「お伴しますわ」

「いんや良いよ、一人で行く」

「まあ、私一人に店番なんて任せていったいぜんたいお一人でどちらへ行くのでしょう?」

「散歩に行き先なんてないよ」

 伊烏は一人で店から出かける。
 背後で文句を続けている彼女は帰りにおみやげを買ってくればどうせおとなしくなる。
 そう思っている時に限って彼はおみやげを忘れるのだが。
 
604 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/05(土) 16:29:46.92 ID:U2FBHvjq0
「あれ?」

 しばらく歩くと民家の前に野次馬が集まっていた。
 
「祭りでもやっていたか……?」

 のんきなことを言いながら彼は野次馬の一人に何があったか聞く。

「一人暮らしの爺さんが死んでたんだよ
 なんでも娘さんも自殺したらしくてねえ
 もしかしたらこれじゃあないかい?」

 男は幽霊の真似をして笑う。
 
「まさか……失礼します」

 人だかりをかき分けて伊烏は進む。

「すいません、もしかしたら知り合いかもしれないんです」

「ちょっとお兄さんやめ……あら美形」

「すいません」

「あんたあの爺さんの知り合いなのか!ちょっと来てくれ!」

 ちょうど運びだされてきたそれは昨日伊烏に依頼をした老人だった。

「おいあんた達、そこのお兄さんが知り合いかもしれないとさ!」

「なんだって?本当かい?」

 伊烏は老人の顔をじっと見つめる。
 間違いなく昨日の老人だ。

「どうだい?」

 しかし知り合いという訳にも行かない。

「すいません、人違いだったようです」

「そうかい
 となるとこの爺さんは無縁仏かねえ……
 娘さんも死んじまってるみたいだし」

 死体を運んでいる男が困ったように呟く。

「あの」

「どうしたんだい?」

「このお金でそこの方の葬式をしていただけませんか?」

 伊烏は懐からポンと金を男に渡す。
 老人からもらっていたお金の一部だった。

「え!?おいあんたこんな大金……」

「よろしくおねがいします」

 それだけ言うと伊烏はその場から走り去る。
 結局何も買わずに帰ってきて彼は美登利に怒られるのだがまあそれはそれである。
 法で裁けぬ悪を裁く、必殺仕掛人は今日もゆく。
605 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/05(土) 16:31:35.65 ID:U2FBHvjq0
伊烏の異常な身体能力&大食いはミオスタチンの異常、見た目ではわからないけど超高密度の筋肉に覆われてます
美登利は絡新婦、ほんとうの姿は大蜘蛛だけどまあそこはそれ
味の好みは腐れ外道ほど美味しいので大好きだそうな
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/05/05(土) 21:21:08.86 ID:wBGjnYs10
パリラ〜〜♪パラパ、パラパパ〜パリララ〜♪パリララ〜♪
デケデ〜ン♪デケデケデケデ〜〜ン♪デケデ〜ン♪デケデケデケデ〜〜ン♪パリラ(ry

このしgゲフンゲフン、仕掛け人の格好よさwwwwww仕置きの場面では↑のテーマが鳴りっぱなしでした
遊び人風の主人公といい、絡新婦との軽妙な掛け合いといい、最後の何ともいえぬ展開といい
まるで本当に時代劇の番組を一つ見終わったかのような、そんな程良い疲れと読後感を味わえました
怨み屋さんの人、本当に乙ですー!

……でものっぺらぼうが少し哀れだったり(ry
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 23:20:18.25 ID:XGecTfXT0
のっぺらぼうは完全に被害者です
いや本当に哀れ
「とりあえずバイオレンス入れとくか」
ってノリで首折られた訳で
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/05/05(土) 23:32:17.11 ID:wBGjnYs10
>>607
>「とりあえずバイオレンス入れとくか」ってノリで首折られた訳で
ちょwwww
近辺の町内噂話(都市伝説の江戸版?)達にとっては、辻斬り的な存在として恐れられてるんじゃないだろうか
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 23:54:47.89 ID:XGecTfXT0
>>608
だと思います
英雄なんて化物にとっては……みたいな
まあ襲いかかられないと攻撃はしないけど大抵一般人と勘違いして皆襲いかかるし
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/06(日) 00:46:13.60 ID:iDBGuKDj0
乙です
勿体ない……GW中且つ本スレ常時人間不足且つ大概雑談入って良作が埋もれる傾向にある現在のこのスレには物凄く勿体ない気がする……
そんな素晴らしい作品でした
>>606も仰ってるがテレビ見てるような感覚ですね、話に引き込まれる
何度かこの現象を経験しているがなかなか自分には書けないのが悔しい
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/06(日) 07:24:43.70 ID:2BjbY47V0
ちゃららーちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ……ちゃららー
お褒めの言葉有難う御座います
自スレの書き溜めが終わってないのに他所で楽しく書いちゃってる馬鹿な作者でございます
濃ゆい感想が続きへの活力でございます
それでは続き
612 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/06(日) 07:26:14.22 ID:2BjbY47V0
「善次郎様」

「お父様」

 善次郎は夢を見ていた。
 妻と娘の夢を。
 彼は夢のなかで妻の実家に自分の父母も招いて共に食事を楽しんでいた。

 ――――やめてくれ

 いくら恵まれた才能を持とうとも彼は長男ではない。
 家を継ぐことができない彼は婿養子としてこの家の一員になり、幸せに生きていた。
 見目も良く、頭もそこそこ切れる彼はすぐに皆から気に入られた。
 普段は口数も少ないし表情の変化にも乏しいがそれも実直な人柄の表れとみなされた。

 ――――やめてくれ

 彼はその時までは本当に幸せだった。
 
「善次郎様、どうしたのですか?
 顔色がわるうございます」

 振り返るとそこには

 ――――たのむから

 爆音

 ――――もう嫌だ

 全てが吹き飛ばされる

 ――――――――もう

 燃えていく、何もできない彼の目の前で
 燃えていく、自らが愛してきたもの全てが
 燃え落ちていく

「うわああああああああああああああああああ!」

 悲鳴を聞きつけて美登利が寝室に飛び込んでくる。

「ぬ、主様!?」

「……なんでもない、少しうなされただけだ」

「少しって程度ではありませんでしたよ?」

「……なんでも、ないんだ」

 自分の中の何かを押さえつけるように、途切れ途切れに伊烏は言う。
 そんな彼の姿を見て美登利は一瞬だけ悲しそうな顔をする。
 彼女もまたそんな表情をすぐに隠してしまうのだが。
613 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/06(日) 07:26:57.82 ID:2BjbY47V0
「辛かったら幾らでも甘えていいんですよ?
 私も甘えますから」

 口元を隠して艶っぽく笑う。
 
「……うん」

 適当にあしらう程元気もない伊烏は僅かに微笑んでごまかした。

「ところで主様、お腹は空いておりませんか?」

「空いた」

「ご飯をお作りしていました
 今日は佃煮が安かったのでそれとお味噌汁で……」

「あさり?」

「海苔です」

「……じゃあいいや、小魚の佃煮だったらどうしようかと」

「主様は食事一つとっても贅沢すぎます」

「お前も贅沢だよ、性根の腐った悪党が好みなんだろう」

「果物は腐りかけが一番おいしゅうございますので」

「ああそう」

 しかし彼にとって一番大事なのは米である。

「ところでお米は……」

「今日は指示通り玄米にしました
 しかし主様なんでわざわざ玄米なんて……」

「分からない、なんとなく健康によさそうだからだ」

「はあ、そうですか
 では早く起きて顔でも洗ってきてください」

「うん」

 伊烏が顔を洗って居間に行くとちゃぶ台の上には朝食が用意されていた。
 味噌汁、佃煮、そしてご飯、それに漬物、以上。
 野菜が足りない気がしないでもないが彼としては大して問題ではない。
 要は米が沢山あるかないかだ。
 彼はちゃぶ台の前に座ると手を合わせる。
614 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/06(日) 07:27:24.24 ID:2BjbY47V0
「頂きます」

「頂きます」

「善次郎、居るかい?」

 食事に手を付ける直前で店の前から声が聞こえてきた。
 それは聞き覚えのある声。

「善次郎様、お兄様のようですが」

「放っておけ」

「善次郎、居るのは知ってるんだぞ」

 黙々と米を掻きこむ。
 美登利も黙って伊烏の茶碗に米をよそう。
 
「ぜ、ぜんじろー?」

「…………」

「兄は寂しいなあ、わざわざ仕事の合間にお前の様子を見に来たのになあ」

「…………」

「あ、違うんです私はここの主人の兄で……」

「…………」

「違うんですって!本当に違うんです!
 やめてください通報しないで!
 違う!連れ戻すとかそういうのじゃない!」

「……主様、そろそろ行かないとお兄さまが」

「……うん」

 伊烏が渋々表に出るとご近所の皆様に取り囲まれている彼の兄が居た。

「兄さん、何をしているんですか」

「善次郎!この人達に私の無実を説明してくれ!」

「あ、駄菓子屋のお兄さん!朝から人の家の前で騒いでて怪しげだったから捕まえておいたよ!」

「家を出たお兄さんを連れ戻しに来たとかそんな感じかい!?」

「駆け落ちした二人を邪魔する悪役ね!そういう展開って素敵!」

「……はぁ」

 善次郎は割と真面目に頭を抱えてしまう。
 とりあえず目の前の男が自分の兄で“危険人物ではない”と説明して皆を宥めて彼を家の中に連れ込んだ。
615 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/06(日) 07:28:01.24 ID:2BjbY47V0
「はっはっは、本当にボロ屋だなあ!
 ちゃんとご飯食ってるのか?」

「やっぱ帰れ」

 お前が邪魔したのだ、とは流石に言わなかった。

「冗談だよ善次郎、お前がちゃんと生きているか心配でな」

「真一郎兄さん、今日は何の用件なんだ?」

「んー、特にこれってことはないんだけどね
 お前が家に戻ってくる気は無いのかなあと思って」

「やめてくれ、僕はここでゆっくり枯れ死ぬつもりなんだ」

「そりゃあお前が一番大変だったのは知っている
 だが親父達が居なくなって私だって社長の仕事を引き継がなくちゃいけなかったんだぜ?
 お前が家の仕事を手伝って欲しいと思ったって良いだろう
 今なんか出来たばかりの陸蒸気で原因不明の事故が起き続けててね
 記者共は面白おかしく書き立てるし本当に困っちまうよ」

「良いさ、良いけど……さ」

「お前にはたっぷり貸しもあるしな」

「それもそうだけど……」

「大体伊烏の家の男がこんな所で腐っていて良いと思ってるのか?
 もうちょっとお前は自分の生まれた家に対する……」

「兄さん、ここは結構良い所なんだぜ」

 真一郎は苦い表情をする。

「ああ、言い過ぎたな」

 善次郎はため息をつく。
616 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/06(日) 07:28:55.19 ID:2BjbY47V0
「話題を変えようか、美登利はどうしている?」

「元気さ、奥にいるよ、呼んでこようか?」

「いや良いんだ
 彼女はあの娘に似すぎている……」

「だからこそ別の人間なんだと思わされるけどね」

「お前はまだあの物騒な仕事を続けているのか?」

「僕の妻子と僕達の両親をを奪った奴を見つけるまではこっちに居る
 だから兄さんは父さんたちが残した物を守っていてくれ」

「……そう」

「貯めた金で信頼出来る情報屋に探らせているんだ
 不平士族の類かと思っていたらどうも違うらしくてね」

「……仇なんて討ったところでどうにもならないぜ」

「解ってるさ、すまないな兄さん」

「なに、良いんだよ。お前がそうしたいってんならそうさせてやる
 辛くなったら帰ってこいよ
 あ、あとこれおみやげの酒、高級品だからゆっくり飲め」

「うん」

 ぽん、と酒瓶を置いて真一郎は帰っていった。
 
「美登利」

「はい」

「これあげる」

「まあ美味しそうなお酒、どうしたのですか?」

「真一郎兄さんから貰った」

「私は出てこなくてよかったのですか?」

「構いはしないさ」

 去っていく兄の背中を見つめながら伊烏はため息を吐いた。

「ああそうだ、忘れていたことがあった」

「どうしたんですか?」

「ちょっとね」

 そう言って伊烏は兄を追いかける。
617 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/06(日) 07:30:22.00 ID:2BjbY47V0



――――


 草木も眠る丑三つ時、善次郎は帝都に出来たばかりの機関車の線路上に居た。
 なんでも居る筈の無い汽車が現れて酔っ払いを轢き殺すのだという。
 今回は旦那を殺された女からの依頼だった。
 家伝の着物を売って金を拵えたのだという。

「偽汽車というそうです」

「……あれが偽汽車か」

「……あれです」

 遠くからもうもうと煙を上げて汽車が走ってくる。
 警笛が幾度も鳴り響いているが周りの建物から人が出てくる気配は無い。
 聞こえていないのだろう。
 つまりここは既に“偽汽車”の領域(トバリ)の内側。
 怪談の世界なのだ。
 伊烏善次郎は袖をまくって線路に仁王立ちする。

「美登利」

「はい」

 線路の外には既に極細の蜘蛛の巣が幾重にも張り巡らされている。
 もし向こうが危険に気づいたとしても逃れられないようにしているのだ。
 今の彼らはあの偽汽車を操る者から見れば只の哀れな被害者にしか見えない。
 煙を巻き上げて善次郎に向けて偽汽車が駆ける。

「うおおおおおおおおおおあああああああああああ!」

 驚くべきことに善次郎は正面からそれを受け止めた。
 ドォン、と爆音がしたと同時に偽汽車の動きは止まる。
 煙は轟々と吹き上がり、車輪の動きは更に加速する。
 美登利は善次郎の周りにも蜘蛛の糸を張り巡らせて彼の体重を支え、また偽汽車を拘束する。
 善次郎がもう一度獣のように吠えると偽汽車はゆっくりとその動きを停めた。

「な、何なんだお前は!?」

 偽汽車が煙を上げて姿を変える。
 善次郎の腕の中で汽車はたぬきのような生き物になっていた。
618 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/06(日) 07:31:25.58 ID:2BjbY47V0
「ムジナか、貴様何人殺した?」

 そう言って善次郎はムジナの首根っこを掴み上げる。

「人間は俺達の家を奪ったじゃねえか!」

「何人殺した?」

「そ、そんなもん一い……ギャアアアアアアアアアアアア!」
 
 伊烏善次郎は生まれた時から異常に力が強かった。
 そしてそれに加えて契約によって怪力を得ている。
 いくら怪異の類といえど彼に力で敵うものはそう居ない。

「答えろ」

「痛い!痛い!やめてくれ!違うんだ!
 俺は言われたとおりにやっただけなんだ!
 人間と契約して汽車に化けて暴れただけなんだよ!
 全部そいつがあああああ!」

 腕の力が緩む。

「そいつは今何処にいる?」

「そ、そいつは……」

「言え」

 善次郎はムジナを力任せに地面に叩きつけて踏みつける。
 
「言わねば貴様の尾を引きちぎるぞ」

「わ、わかった言うよ!」

「それには及びません主様」

「どうした?」

「近くに怪しげな男が居ると蜘蛛達から連絡が有ったので捕まえておきました
 恐らくこの男がそこのムジナの契約者かと」

 そう言って美登利は糸で全身をグルグル巻にされた男を地べたに放り投げる。
619 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/06(日) 07:32:40.29 ID:2BjbY47V0
「そうか……おや?」

 足元を見るとムジナが居ない。

「主様、誑かされておりますよ
 足を動かしてはなりません」

 伊烏が目を凝らして足元を見るとなるほど、まだ確かに居た。

「やはり人間を騙すことしかできないのか」

「そうなのでしょうね」

「や、やめてくれええええ!」

「反省したか?」

「した!したから勘弁してくれ!俺にも家族がいるんだ!
 悪いことしたのは知ってるからさあ!」

「……分かった、美登利、そっちの男を」

 ムジナから足をどけてとりあえず脇に抱える伊烏。

「はい」

 美登利は男の顔にかかった糸を取る。

「プハッ!」

「見たところ記者のようです」

「成程、事件を作って記事を書いていたのか
 おいお前、自分が何をしたか解ってるか?」

「知らねえな」

 とりあえず顔面を蹴りつける。
620 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/06(日) 07:33:17.07 ID:2BjbY47V0
「夜中に酔っ払ってる輩なんてどうせろくなもんじゃねえよ
 そんな奴らが死んだ所で何になるってんだ!
 それよりも世の中は陸蒸気と騒いでいるようだがあれは危険なものなんだよ!
 あれはこの国が軍事国家になるための第一歩なんだ!
 俺はそんな危険な状況を……」

 次に腹を蹴りつける。
 
「話を……」

 鼻の骨を折る。

「知らん、ところで貴様のしたことは善行なのか?」

「あ、当たり前だ!」

「命が惜しくないのか?」

 折れた鼻をギリギリと踏みつける。

「そんなもん……」

 つま先で正確に眼球を撃ちぬく。

「盲てしまっては記者も続けられないなあ?」

「あがっ!?」

「お前が心を入れ替えるならもう片方の目は勘弁してやる」

「…………」

「分かった、じゃあ今度は按摩でもやるとい……」

「解ったよ!悪かった!許してくれ!それだけは困る!」

「……分かってくれたか」

「ああ解ったから!」

 次の瞬間、男のカラダは宙を舞う。

「じゃあ死ね」

 脇に抱えていたムジナをものすごい勢いで男の腹に投げつける。
 グチャと水っぽい音がしてムジナは潰れる。
 男の方はまるで汽車にはねられたかのようにバラバラになってしまった。
621 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/06(日) 07:37:03.55 ID:2BjbY47V0



――――


「兄さん、偽汽車の事件を追っていた新聞記者が怪死したそうだ」

 伊烏は兄に追いついてそう言った。

「そうなのか?」

「線路の近くでバラバラになっていたそうで」

「事件を追っている内に自分が偽汽車にはねられたのかい」

「らしいよ」

「まーた新聞がうるさくなるぞ
 奴ら自分じゃあ何の価値も生み出さないくせに口だけは偉そうだからな」

「大丈夫だよ兄さん、もう偽汽車は出ない
 事件もすぐに忘れられるさ」

「事件で死んだ人の遺族は一生覚えてるよ」

「……違いない」

「じゃ、今度こそ私は帰るよ。お前が元気そうでよかった」

「今度は飲みに来てよ」

「ああ、お前が来ても良いんだぞ?」

「考えておく」

 真一郎は手を振って朝の街の中に消えていった。
 遠くに馬車が見えるところからすると待たせていたのだろう。
 確かに早朝から馬車はうるさいし、この狭い道で子供でも撥ねてしまったら大変だ。
 
「……やれやれ」

 やはり良い兄なのだろう。
 彼はそう思うことにした。

【第二話 おしまい】
622 :街の素敵な怨み屋さん [saga sage]:2012/05/06(日) 07:44:12.85 ID:2BjbY47V0
一話につき一仕掛け
明治時代舞台ですが明治明治と言いながら架空の時代MEIJIくらいに思って頂いた方が良いかもわかりません
とりあえず仇討ち終わるまで書こうかなあと
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/06(日) 12:12:32.58 ID:mLNtuvODO
投下乙ですー
時はMEIJI、所はネオ・キョート、あたりの認識で見ておりまする

仇討ちが終わったら彼らはいったいどうなるのやら
すべてが終わってもお仕事は続くのか、存在意義の消失と共にお休みなさいなのか

始まったばかりで終わりの話というのも無粋ですね
次回も楽しみにしております
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/05/06(日) 12:35:42.93 ID:krx6tc0P0
乙ですー!
>それよりも世の中は陸蒸気と騒いでいるようだがあれは危険なものなんだよ!
>あれはこの国が軍事国家になるための第一歩なんだ!
方法や歪んだ考えはともかく、この記者の危惧していた事は間違ってはいなかったわけだ
でもなあ……冷静に考えれば『存在しない筈の汽車』の怪談が増えるだけで、
陸蒸気自体の危険性については関心が向かない様な気も……

このまま明治→大正→昭和→平成までこのコンビが続きそうな予感がする(寿命を考えれば無理なんでしょうが)
後、「伊烏善次郎」が必殺仕掛人の本名でいいんでしょうか?
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/05/06(日) 13:33:39.57 ID:0p7EyXt00
>>623
だいたいそんな感じでおねがいいたしまする
るろうに剣心ちっくな雰囲気で
ラストはなんとなくきめているけどどうなるやら
>>624
まあぶっちゃけそんな感じです
ネタ欲しかっただけだとおもうよあいつは
仕掛け人さんは伊烏善次郎です
お兄さんは真一郎、弟は美三郎だけど出番があるかどうか
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/07(月) 02:37:20.24 ID:c1xuDAFAO
怨み屋の人乙でしたー!
凄く渋くて読み応えのあるお話でした!
美登利さんもしっとりした女性で、大人のための大人の物語といった感じでした。
続きが楽しみです!
627 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/08(火) 07:36:51.03 ID:L0Hb6t9h0
【第三話】

「これが煮込みハンバーグか」

 善次郎の目の前には煮込みハンバーグとカツレツとエビフライの皿が並べられていた。
 それと大盛りの白米。

「主様は食べなかったのですか?」

「普通のハンバーグは食べたことあるけどこの煮込みハンバーグってのは初めてでね」

 仕掛け人としての仕事はとかく金が貯まる。
 先人たちは色街でパァっと使ったものなのだそうだが善次郎はもっぱら食費である。
 一食でも抜くと忽ち凶暴化して机まで食べ始めると彼の知り合いの間では噂になっていた。

「そっちのオムライスも美味しそうじゃないか」

「あげませんよ?」

「解ってるよ」

 普段から馴染みの洋食屋で美登利と善次郎は昼食を楽しんでいた。
 ここは彼らの住む場所から少し遠くにあり、人目にもつきにくい。
 その上味も良く、大盛りにすれば量もまあ善次郎を満足させることは出来る程だ。

「…………」

 物も言わずに善次郎はハンバーグを食べる。
 口の中で弾ける肉汁をデミグラスソースが統率して旨みの行進が始まる。
 喉奥まで進み行く肉の味はまさしく不沈艦。
 圧倒的破壊力で胃袋を蹂躙していく。
 しかし豪快なばかりでなくわずかに香るバジルがにくい仕事をしている。
 これのせいでついつい箸が進む。

「そういえば主様、そろそろ桜の散る季節ですね」

「…………」

 カツレツもまた素晴らしい。
 決して厚くもなく薄くもなく最適化されたサイズ。
 しっかりと内側まで火が通り、しかし旨みは逃げ出さず、柔らかい。
 下手に分厚くて硬かったり薄くて肉を食ってる感じのしないようなものではない。
 パン粉のサクサクとした食感に少ししょっぱいソースが絡み、油の甘みと相まって口の中だけが極楽となる。

「主様、夜桜でも見に行きませんか?」

「…………」

 エビフライ、これがまた良い。
 タルタルソースにわずかばかりに醤油を混ぜることで油っぽさを緩和している。
 いかにもな洋風のメニューの中に一抹の懐かしさを感じてしまうのはこれが原因だろう。
 エビはプリリとしていて口の中で跳ねまわる。
 タルタルソースとエビのおいかけっこのようではないか。
 どちらの魅力も存分に生かしたまさに逸品。
628 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/08(火) 07:37:17.35 ID:L0Hb6t9h0
「………‥主様?」

「なんだ?」

「聞いてました?」

「食事中だ」

 聞いてるわけがなかった。

「私、ちょっぴり悲しいです」

「食べ終わったから聞かせてくれ」

「味わったんですか?」

「味わったよ、いかに美味しかったか後でゆっくり聞かせてやる」

「はぁ……」

「だからお前もまずは食べるんだ
 美味しい料理を前に余計な雑談など無礼だと思わないか?」

「主様は胃袋にお脳がついているのですか?」

「そうかもしれない」

 美登利がオムライスを食べ終わると会計を済ませて二人は店を出る。
 
「主様、食事の前でだけは良く喋りますよね」

 美登利は若干不機嫌である。

「……すまなかった」

 再び口数の減る伊烏。

「もう……」

「そうだ、今晩は夜桜でも見に行こう」

「え?」

 実は苦し紛れである。
 表情が薄いのはこういう時に便利なのかもしれない。
629 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/08(火) 07:37:47.98 ID:L0Hb6t9h0
「なんだ、主様ったらちゃんと私の話聞いてたんじゃないですか!」

「え、あ、ああまあな。聞いてないわけ無いさ」

「もう、本当に困った人なんだから」

 クスクスと笑う美登利。
 伊烏は美登利に顔が見えないように他所を向いてからこっそりと安堵の溜息をつく。

「……なんて言うと思いましたか?」

 まあ世の中そんな上手く行くわけがないのだ。

「す、すまなかった」

「冗談ですよ、どうせお食事の最中は話してくれないんですから
 だから今日は夜にゆっくりとお話ししましょう」

「夜?」

「見に行くんでしょう、夜桜」

「……ああ」

 子供のようにはしゃぐ美登利を見て伊烏は僅かに笑った。

630 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/08(火) 07:39:42.75 ID:L0Hb6t9h0


――――


「……主様、私はてっきり二人だけの平和な時間を過ごせるのだと思ってました」

「…………すまない、馴染みの情報屋の口添えがあってな」

「辻斬りを探すのは良いですけどそれならそうと言ってくださらないと……
 お洒落してきてしまったから動きづらいじゃないですか」」

「ただでさえここ最近の辻斬り騒ぎで人が居ないのに誰に見せるんだ」

「主様でございますわ」

「それならめかしこむまでもないだろう」

「あらやだ、主様は女心が分かってませんね」

「解るわけあるまい、俺は男だ」

 桜の花びらがひらりひらりと舞い降りる。
 晩春の月下、薫風の宵、静寂に互いの息遣いだけだ反響し飽和する。
 月だけが見ている、風だけが通る、体温が伝わる。

「桜は良い」

 桜の花を摘んで美登利の髪に櫛を挿す。

「良いものは何時までもなくならないのでしょうね」

「笑ってる人間にも泣いてる人間にも、それ以外の生き物にも、この美しさは変わらない」

「ですね」

 春に桜、夏に星、秋には紅葉、冬に雪
 四季折々の美しさを風が運び月が照らす。
 そんな世界はきっと無くならない。
 世界が終わるとするならばそういうものが無くなる時だ。
 伊烏はそう思うのだ。

「それにしてもあの花は何故に美しいのでしょうか」

 伊烏は声の方を見る。
 刀をぶら下げた男が二人。
 伊烏達に近い方の男の目つきが明らかに怪しい。
 予想外の距離まで近づかれたが既に美登利は糸を張り巡らせる準備をしている。
631 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/08(火) 07:43:02.85 ID:L0Hb6t9h0
「それはきっと人の血を吸ったからではないでしょうか」

 恐らくは最初に口を開いた男が驚いて振り返る。
 彼に向けてもう一人の男が背後から刀で突きを放つ。
 速い、しかも流れるように美しい動作だ。
 契約をして身体能力の上がってる伊烏も眼で追うのが精一杯といったところだった。
 男は突きのたった一撃で動かなくなった。
 全てが終わった後に、美登利は振り向いて悲鳴を上げる。
 そしてそのまま気絶した……ふりをする。
 伊烏は素早くそれを抱きかかえる。
 少しは夫婦っぽく見えるだろう。

「これはお騒がせいたしました
 なにしろ最近市中では辻斬りが出ると騒ぎでしてね
 この男が辻斬りだとは我々も掴んでいたのですが中々見つからなくて……」

 男は警官の服装をしていた。
 伊烏はあくまで一般人を装って男に尋ねる。

「え、あ、あの貴方は一体……」

「これは失礼、名乗りが遅れました
 私警官の藤田五郎と申します
 今回の抜刀はお二人を守るためでしたのでどうかお許し下さい」

 辻斬りの腰にぶら下がっている刀はどう見ても妖刀。
 伊烏はこの妖刀の名前を知っている。
 籠釣瓶村正。
 持ち主の正気を奪って殺人鬼に変える妖刀。
 その持ち主に対して背後を取り一声かけてから切り伏せた目の前の男は……

「そ、それはありがとうございます
 妻と二人で散る前に桜をと思ってたんですが……」

「ならばすぐに帰ったほうが良いですよ
 この辺りはまだ物騒ですからね」

「ええそうします、妻もこの様子ですし」

 美登利はショックのあまり卒倒したふりを続行中である。
 そんな彼女を伊烏は背中におぶる。
 美登利の心臓が早鐘を打っているのが解る。
 彼女は伊烏を強く抱きしめる。
632 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/08(火) 07:45:04.82 ID:L0Hb6t9h0
「それにしても……」

 藤田五郎は呟く。

「え?」

「いえ、せっかくの“花”を台無しにしてしまったようで気分を害してしまったかなと」

「危ないところを守っていただいたことを感謝こそすれそのように思うことなんて……」

「危ない所……危ない所ねえ」

 藤田は小さな声で呟く。

「どうしたんですか?」

「いえなんでもありません」

 藤田は美登利の髪に挿してある桜の花を見る。

「桜折る馬鹿梅折らぬ馬鹿という言葉がございます
 その程度なら問題無いですが桜は大切にしてくださいね?」

「……あはは、すいません。つい綺麗だったもので」

「いえ、こちらこそ失礼をば」

 互いに一礼。
 伊烏は藤田の間合いに入らないように神経を研ぎ澄ませる。
 家に戻り、雨戸まで閉めてから初めて彼はため息をついた。
 
「……ふぅ」

「ぬしさま……美登利はあの男が恐ろしかったです」

 美登利は泣きそうになっている。
 端正な顔が台無しだ。

「僕だって怖い、怪異を以て怪異を討つ人達ってのはまあ同業として見ることもある
 陰陽師や僧の類もまたしかりだ
 でもあれは……あれは怪異そのものだ
 人間の体に人外の技量
 剣技だけで怪異を討つなんてできるんだね」

 しかし伊烏はわりと冷静だ。
 藤田は人外に恐れられる体質なのかもしれない。

「今日はもう寝ましょう主様
 ちゃんとぎゅっとしてくれないと駄目ですよ?
 いきなり寝てる最中に居なくなったりしたら泣いちゃいますからね?」

「お化けを見た子供じゃあないんだから……」

「お化けみたいなもんでしょうあれは……」

 お化けはお前だろう、と言うと泣き出しそうだったので伊烏は黙っていることにした。
 布団を敷いて二人は一緒に眠る。
 震える美登利を抱きしめると今は居ない妻と娘のことを思い出して伊烏も涙が出た。
 しかしそれを彼女に悟られぬよう、枕に顔をうずめて彼もゆっくりと意識を闇に落とした。

633 :街の素敵な怨み屋さん [saga ]:2012/05/08(火) 07:48:34.48 ID:L0Hb6t9h0


――――

「藤田くん、今回は辻斬りを始末してくれたようだね」

「ええ、善良な市民を守るのが仕事ですから」

「君の働きには感謝しているよ
 もっと上の地位を用意しても良いと思っているのだが……」

「出世すれば人から恨まれるでしょう
 それに剣の修業もできなくなる」

「そうか……ところで辻斬りに襲われかけていたのは年老いた夫婦だったのだね?」

「ええ、二人共老人でした」

「むむ、そうか……」

「それでは昼の巡回がまだですので失礼致します」

 藤田五郎は温和な笑みを絶やさずに署長室を退出する。
 退出したその瞬間、一瞬だけ彼は凶暴な笑みを浮かべる。

「……馬鹿め」

 そもそも、彼の頭に有るのは悪即斬の三文字だ。
 昔の仲間も警察機構もその為の道具にしか過ぎない。
 故に己が切る相手は組織にかかわらず己が決める。
 道具に指図されては本末転倒だ。

「おや藤田さん、これから巡回ですか?」

「ええ、この街を守るのは我々以外に居ませんから」


【第三話 おしまい】
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/05/08(火) 08:26:23.91 ID:4+g23aav0
明治!といえばこの人
藤田五郎こと斎藤一さん
敵か味方か斎藤一!
みたいなノリで話は進みます
二人よりも圧倒的に強いです、今のところ
都市伝説スレ伝統の契約なしでも最強クラスの人間ってやつです
飢餓状態で凶暴化した善次郎さんなら多分防戦と撤退は可能
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/08(火) 11:01:38.51 ID:mkXPuPAno
情景を目に浮かべることのできる話はいいなあ
その才能に嫉妬、そして続きを期待
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/05/08(火) 20:43:12.10 ID:iL1JbOzl0
乙ですー!
何か「るろ剣」のあの人に似てるなぁ、と思いきや……やっぱり貴方か悪・即・斬!
もう作中の突きが牙突にしか思えなくなったwwww
それにしても、一時は江戸の怪談達に恐れられたであろう仕掛け屋の男女二人
その彼らを持ってして防戦と撤退が“多分可能”とは……恐ろしい
このまま敵対する日が来なければいいのですが

しかし相変わらず引き込まれるような話に、感嘆するやら羨ましいやら
次回も心待ちにしてます
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/09(水) 03:58:38.26 ID:CE3WuvPAO
怨み屋さんの人乙ですー
斉藤さんもカコイイけどそれより…より…

煮込みハンバーグが!
カツレツが!!
エビフライが!!!!
…目の前のカップ蕎麦が空しくなってくる程の描写でございました。ごちそうさまでした(違う)
638 :銀の鍵の男と鏡の少女 [sage]:2012/05/09(水) 03:59:20.42 ID:CE3WuvPAO
「泊まるホテルがねーって・・・どーゆー事なのですか」
 貴也の説明によると、ブッキングしたかなにか、とにかく宿泊予定だったホテルに予約が入っていないという事らしい。
 夜刀浦市への滞在は10日程の予定だったが、明日以降はともかく今晩は何処も無理っぽいというので
 ではネットカフェでも探すかとケーキの箱を手に幻も席を立ちあがりかけた。
「そーいや、昔はよくネカフェに寝泊まりしたですね」
 故郷を逃亡同然に離れ、学校町に辿り着くまでのほんの数年前が、少し懐かしくなって思わず遠くを見た。
(別に帰りたいわけでもねーのですけど)
「あの・・・」
 席を立ったふたりに、ひかるの声が遠慮がちに掛けられる。
「新宮さんへのお礼もまだだし、もしご迷惑でなかったら・・・家に来て下さい」

「わー」
 そこそこ広さのあるマンションの一角。
 シンプルな調度で纏められた、日当たりの良い明るい部屋の隅に、ワンピースを着たトルソーが飾られていた。
「4年前に出た限定品のドレスじゃねーですか」
 ベルベットという季節を選ぶ、すなわち着る機会が相対的に少ない素材の割に値段が高額だったので
 予約で戦争状態の店を黙って後にしたのだが、後日街でそのドレスを着たロリータ少女とすれ違う度に
(○万円が歩いてるですよ)
 といささか品性下劣な感想を心の中で抱いていたのだった。
「好きなんです、こういう服・・・」
 似合わないので着たことはないんですけれどと少し恥ずかしそうな様子のひかるに、幻は微妙に眉を顰める。
「着ないなんてもったいねーのですよ」
「新宮さん」
 そんなの人の勝手だろと貴也が諌めても聞く耳など持たない幻は、とうとうひかるに詰め寄り出した。
「着てみろですよー。似合うか似合わないかは、気合い次第なのですよ!」
「新宮さんっ!」
 とうとう貴也に羽交い締めにされた。
 彼は彼で、恥ずかしさとひかるに対する申し訳なさで内心は修羅場。
 寝室にとあてがわれた部屋に押し込まれた幻の心中に、この時ある計画が芽生えていたことはひかるも貴也も知る由もない。

 ベッドに入って暫くしてからのこと。
「・・・?」
 体も心もふわふわとしている。なんだか水の中にでもいるかのようだ。
(ああ、これは夢なのですよ)
 何か声が聞こえる。よく聞き取れないが頭がぼうっとして、耳を澄ませることも出来ない。
639 :銀の鍵の男と鏡の少女 [sage]:2012/05/09(水) 03:59:47.29 ID:CE3WuvPAO
 声は少しずつ大きくなり、ようやく意味を聞き取れそうというところで・・・
 胸元で、何かが煌いた。
『!?』
 幻の他にも、何者かが驚愕したかのように空気が揺らぐ。
 ぱじゅっと何かが弾ける様な音がして、視界が唐突に明るさに包まれる間際
 昼間鏡に映った豚鼻の怪物が脳裏をよぎったような気がした。
「・・・夢、だったのですか?」
 幻が首を傾げると胸元の小さな丸いペンダントが光を反射して煌いた。絵画の額縁の様なフレームに、ごく小さな鏡がはめ込まれた物だ。
 「鏡は魔を反射する」
 古くからある伝承。鏡は魔除けになるという都市伝説と契約していた幻は、自分に向かってくる「魔」
 すなわち都市伝説の力を弾き返す力を手に入れている。
 直接的な物理攻撃には効果がなく、回復系の能力までもを弾き返してしまう不便さに目をつぶれば、結構使えるものなのだ。―今のように。
「またアイツなのですよ・・・」
 昨日鏡に映った、豚鼻の魔物。鏡に映るべきひかるが映らず、代わりにそれが映る。
(なんだか、厄介事に巻き込まれたのですかね)
 とうに人であることを止めた自分が魔に取り憑かれるとはおかしな話と首を傾げたところで
 貴也が朝食が出来たと告げてきた。一夜の宿の礼にと、彼が支度をしたらしい。
「今行くですよー」
 幻はひとつあくびをすると、かったるそうにドアの外へ向かって告げた。

「お茶会をしようなのですよ」
 目玉焼きとトースト、フルーツヨーグルトサラダの朝食が済み、貴也が用事で出かけると
 学校に行く支度中のひかるに幻がにじりよった。
「お茶会!?え、放課後・・・ですか?」
「今これからなのですよ」
 さあさあこれを着てと件のワンピースをいつの間にやら手に取り詰め寄る幻にひかる一人で抵抗できるわけがなく・・・
「あっ・・・あの、学校!」
「学校はいつでも行けるけど、お茶会は今しかできねーですよ!」
 貴也が聞いたら逆だろうと突っ込みたくなるような台詞と共に
 幻は台風もかくやというような勢いでひかるの着替えとヘアメイクに取りかかる。
 あっという間にひかるは件のベルベットのドレスを着せられ、
 両サイドを纏めた髪の上にレースを何重にもあしらったヘッドドレスが飾られた。
640 :銀の鍵の男と鏡の少女 [sage]:2012/05/09(水) 04:00:15.19 ID:CE3WuvPAO
 幻自身も要所要所が生成色のレースで飾られた黒いベルベットのワンピースに
 カメオのブローチを付けると生成色の薔薇の造花をあしらったミニハットを合わせて
 ひかるの手を掴むようにしてマンションを飛び出した。
「楽しみなのですよー!」
「に、新宮さん!」

 ゴシックロリィタ、あるいはロリィタファッションを愛好する者達がお茶会を好むのは珍しい事ではない。
 大はロリィタファッションの洋服メーカー(彼或いは彼女たちは“メゾン”と呼ぶ)や
 有名なブロガーが主催する大規模なものから、小は友人同士のお誕生会レベルまで
 ゴシック或いはロリィタを好む者は、集まって大抵は紅茶を飲み、お菓子を食べることが好まれる。
 幻とひかるも、そういった少女達と何の変わりもなく、昨日のカフェでお茶とケーキを楽しんでいた。
「ボクはこの、期間限定のイチゴのマッドパイにするのですよ!」
「じゃあ、私は・・・ガトーショコラで」
 学校をサボった後ろめたさからか、或いは着慣れない格好のせいか、ひかるは幾分落ち着かなさげに見える。
「本当に似合ってますか?あの、私・・・」
「言ったじゃねーですか。気合いで似合わせろですよ」
 幻はしれっと言い募ると、ぐっと胸の前で拳を固める。
「世の中何でも気合いなのですよ。経済回復も世界平和も、気合いさえあれば!」
「気合いって・・・新宮さん」
 ひかるがくすりと笑い、彼女の周りの空気が解け掛けたとき。

「何あれ。絶対○障だよねー。○ネよ!」

 あまりに遠慮のない罵声がふたりの空気を凍りつかせ、ひかるの手からフォークが落ちる。
「新宮さん・・・」
 なにがしか言い返すかと思いきや無言のままの幻を、ひかるが見つめる。

 幻の瞳には、ひかるも、罵声の主も映っていない。彼女の心は今、数年前を漂っていた。
 冷笑と罵倒の日々。味方なんか誰もいはしない。
(何よ、好き好んで見せ物になってる癖に、写真くらい何がいけないのよ!?)
(どけよヒラヒラ、マジきもいんだよ!)
(こんな○チガイみたいな格好してご近所を歩く子、生むんじゃなかった)
(はぁ!?生意気なんだよ、メイドの癖に!)
 投げつけられる飲み物の紙パックまで、はっきりと脳裏に蘇る。

(ボクは弱くない・・・ボクは弱くない・・・ボクは弱くない!!)

「新宮さん止めて!」
641 :銀の鍵の男と鏡の少女 [sage]:2012/05/09(水) 04:00:49.58 ID:CE3WuvPAO
 バッグから手鏡を取り出しかけた幻をひかるが止めようと立ち上がり・・・
「・・・!」
 そのままふらふらと倒れ込んだ。
「ひかる!?」
 さすがに幻も我に返り、ひかるの体を支えてやる。
「・・・ごめ、なさ・・・急、に・・・眠く・・・」
「眠く!?」
(急に、倒れ込むほどの眠気?)
 言いしれぬものを感じた幻の足下でいつの間にか床に落ちた鏡が
 幻と、彼女に支えられている“なにか”を映し出していた事に気づく者は誰もいなかった。

 半ば意識を失いかけているひかるを公園のベンチに横たわらせると
 水でもあった方が良いだろうと自販機でペットボトル入りの水を買う。
 お釣りと商品を取って振り返ると
「てめーは・・・」
 昨日「鍵を手渡せ」と彼女の『精神』に話しかけた、初老の白人の男が、そこにいた
「私はランドルフ・カーター。作家にして、哲学者。夢の旅人にして、カダスの王者。『銀の鍵』の正当なる持ち主だ」



続く
642 :銀の鍵の男と鏡の少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/09(水) 04:01:25.21 ID:CE3WuvPAO
えー、日にちが開きすぎてしまいましたが「銀の鍵〜」の続き。あったんですごめんなさい。
今回幻の過去なんかちらっと出してみたり。
そしてもうしばらく続きます。長々書いた割にあんまり話進んでないじゃん!
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/05/09(水) 21:54:30.01 ID:jvMY8wji0
乙でした
クトゥルフってますなあ
婆娑羅の神ですなあ
GoToYUMENOKUNI!
Naminoyukusaki!
644 :“更生者” [sage saga]:2012/05/10(木) 10:38:56.37 ID:dQ1bksGW0
「……した………の、に……」

住宅街の一角にて
両手を目に当て泣きじゃくる少女
溢れては流れ、拭われる涙は夕陽を反射して美しく輝いていた

「約束、したのに……どう、して……?」

手と手の間から目を覗かせて見た先は、眼前の男
腰を抜かしてキョロキョロと周囲を何度も見回している

「お、おおお、お、おま、お前、今何しやがった!?」

彼の傍で浮いている棒状の身体に大きな鰭のついたものは、恐らく「スカイフィッシュ」
そして彼の周りには、身体の中から大量の縫い針が溢れ出て破裂した「スカイフィッシュ」の死骸が散乱している
光となって消えゆく死骸を目にしながら、男は涙声で訴え始めた

「ふ、ふざけんなよ!? 「スカイフィッシュ」のスピードについて来れる訳ないだろ!?
 何だあの針は!? あんなもんいつ細工しやがったんだ―――――」
「昨日約束したのに……人はもう襲わないって、言ってたのに……」

ぐしぐしと、少女は尚も涙を拭って男に歩み寄る
ひっ、と情けない声を上げて男は逆に後退った

「く、来るな」
「ちゃんと指切りして、約束したのに……」
「来るんじゃねぇ、来るなっつってんだろ!?」
「指切りしたのに……」
「わ、分かった、もう、人は襲わない!心から誓うから、頼むから許しt」
「嘘吐き」

豹変
少女はアスファルトを蹴って男に急接近し、拳を振り上げる
危険を察知した男は、まだ残っていた「スカイフィッシュ」に指示を与えようとした

「や、やれっ!あいつを切り刻め―――」
「“指切拳万”」

彼が指示を出す前に高くジャンプした少女は、高く振り上げた拳を勢い良く男の脳天に叩きつけた
まるで突風にでも煽られたかのように、はたまた鉄の塊にでもぶつかったかのように、
男の身体は強く地面に叩きつけられた

「か、は………!?」
「“嘘吐いたら針千本飲ーます”」

指示を待たずに動き出した「スカイフィッシュ」が、体内から縫い針を剥き出しにして破裂
力尽き、ゆっくりとその小さな身体が落下し始める
少女は男の傍でしゃがみ込み、小ぶりのナイフを取り出すと、
彼の右手を押さえ込んで手を無理矢理に広げさせ、

「“指切った”」

小指に、ちく、と切っ先を刺した
じわりと血が溢れだすと同時に、ぷつん、と男の中で何かが切れた
と同時に、彼はぐったりと、眠るようにその場で気絶した
ぺたん、とその場に座り込むと、少女は再び大粒の涙を溢れさせながら携帯電話を取り出した

「ぐすっ………もし、もし、黒服、さん? 嘘、吐いた、悪い人、殴っちゃった、から……うん、東区……
 ちゃんと「ゆびきりげんまん」したのに…………なんでみんなうそつくの?ねぇ、黒服さん……」

泣きじゃくって訴えかける少女の持つ電話の向こう側から、黒服と呼ばれた人物のおろおろした声が聞こえた



   ...end
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/10(木) 10:41:19.00 ID:dQ1bksGW0
ふむ、相も変わらず酷ぇ出来だorz
本編も展開が上手く想像できず完全ストップだし……新しいことがどんどん浮かび上がってくる…
だれかたちけて


「ゆびきりげんまん」って由来が混在してるのね
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/10(木) 11:07:44.95 ID:AG82cnDAO
シャドーマンの人乙ですー
泣きながら戦うおにゃのこかわゆ。なにげに強いし。で、黒服さんはだれなのかな?かな?
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/10(木) 11:15:59.39 ID:YHJ4Luy+0
しまった、お二方乙ですの
感想書きたいところだがもうすぐ友人との約束の時刻なので後程orz
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/10(木) 11:17:10.96 ID:YHJ4Luy+0
これだけでも

>>646
何故バレた!?
黒服さんはねー………R-No.ってこと以外考えてない(ぁ
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/05/10(木) 14:17:44.19 ID:d5MD6h6t0
黒服め……少女を泣かすとは許しがたいな
目から覇王翔吼拳を使わざるをえない
乙でした
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/10(木) 16:29:03.55 ID:d5MD6h6t0
【第四話】

 駄菓子屋の奥の小部屋。
 そこでは二人の男が膝を突き合わせて話していた。

「旦那、仕事の最中に警官に獲物を横取りされたそうで」

「ああ、藤田五郎と名乗っていた」

 一人は帝都でも五本の指に入る腕利き、眉目秀麗にして怪力無双の仕掛け人、伊烏善次郎。

「藤田五郎……ですか」

 もう一人はメガネをかけて常に薄ら笑いを浮かべる男。
 名前は松としか呼ばれないし名乗らない。

「そうだ、知っているのか?」

「知ってるも何も有名ですよ旦那、維新の生き残りじゃあないですか」

 笑ったままに神妙そうな表情になる松。
 器用なものだと伊烏は感心する。

「え?」

「新選組をごぞんじでしょう?」

「その時分にはまだガキだったけどね
 あれの生き残りなのかい?
 集団戦闘に秀でていたとは聞くが個人レベルだと……」

「旦那、本当に世間知らずでらっしゃいますね」

「当たり前だ、僕は箱入り息子だったんだぞ」

「まあ良いや、旦那みたいな仕掛け人に死なれたらこっちも大変ですからね
 教えておきますけどその藤田五郎ってのは新選組の三番隊長
 つまりは斎藤一の偽名なんですよ
 新選組は確かに集団戦闘の強さがウリでしたがその中で斎藤一は個人の戦いに於いて最強を誇った」
 
「おいおい、ごっこ遊びにしか出てこない人物と現実に出会っちゃったってのかよ」

「彼らの活躍した京都の街では夜毎怪異が蔓延っていたと聞きます
 恐らく斎藤一は契約者や怪異と相対して戦い続けていた筈でございます
 噂に聞くところでは千の人妖の血を浴びると人の身にして人を超えるそうな
 戊辰戦争を終えてからも斎藤一が戦い続けていたとするならば……
 まあとっくに千体は切っていると考えて良いでしょうな」

「……美登利が異常に怯える訳だ」

「そういうことですから旦那
 あの男に会ったら戦う前に御逃げなさい
 勝ち目が有るなんておもっちゃあいけません」

「解ってる
 ところで依頼だけど結局達成出来なかったからお金は返そうと思うんだけどどうかな」

「向こうさん何やら満足しちゃったみたいですし
 返す必要は無いんじゃないでしょうかねえ」

「……じゃあ貰っておくか
 そういえば僕の頼んでいた調査はどこまで進んでる?」
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/10(木) 16:29:43.90 ID:d5MD6h6t0
「それが妙なことが解りました」

「なんだ?」

「あの日、旦那の居たお屋敷の近くで武器商人が新兵器の実験を行なっていたそうなんですよ」

「ふむ……」

「その中には恐らく最新式の爆弾もあった筈です
 もしかしたらそいつが実験のために旦那の家に……
 まだ推測の域を出ないのですが少々調べてみたいと思います」

「分かった、ありがとう」

「お二人とも、お茶が入りました」

「おや美登利さん、今日もお美しい」

「あらいやですわ松さん、褒めたって何も出ませんよ
 それでは店番に戻らせて頂きますね
 あ、お茶請けに駄菓子を少し持ってきたのを忘れてました
 よろしければどうぞ」

 伊烏は一瞬で有平糖を口の中に運び、幸せそうにそれを舐める。

「……あれ?」

「あら?」

「……うん」

「主様、お客様のものを……」

「僕が先に食べたほうが松さんも気兼ねなく食べられるだろう」

「…………」

「…………」

「さあ松さんもどうぞ」

「そ、それでは遠慮無く」

「……じゃあ私は失礼しますね」

 表から子供たちの騒がしい声が聞こえる。
 そしてそれを嗜める美登利の声。

「いやしかし美しい人だ
 上品で落ち着きが有って仕事もできる
 まさに理想の女性でございますね」

 他人から見れば確かにそうなのだが、あれでまだまだ子供っぽいんだ。
 などと言う程伊烏はおしゃべりではない。
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/10(木) 16:32:30.32 ID:d5MD6h6t0
「僕には過ぎた女性だよ」

 これで済ます。

「旦那、それは謙遜が過ぎますよ」

「そうかねえ
 そういえば今日は依頼は持ってきてないのかい?」

「そう仰ると思いましたよ
 確かに伊烏の旦那でなきゃあ無理な仕事が一件入ってる」

「世間には悪人は尽きないし、そうなれば自然僕の仕事も増える
 だから今日だって仕事の話は転がってるでしょう」

「そのとおりでございます
 ただ私が行うのはあくまで仲介
 依頼は直接依頼主からお受けください」

「うん」

「それでは明日にでも依頼人の方をこちらにお連れしますので仕事の準備をば」

「うん」

「じゃあ今日のところはひとまず退散させて頂きましょうか」

「送っていこうかい?」

「人目につくのも良くないでしょう」

 そう言って松はメガネを指差しておどけてみせた。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/10(木) 16:32:57.68 ID:d5MD6h6t0



――――

 依頼人はもう60になろうかという女性だった。
 顔には疲れの色が濃く、大切な人を失った哀しみからか白髪が目立つ。

「私の息子は越後屋という米問屋で働いていました」

「…………」

「しかし最近あの子の様子がおかしいものだから問い詰めたんです
 そしたら私には分からない、聞くだけ無駄だといって何も言わない
 何か悪いことをさせられてるんじゃないかって聞いても首を横に振るばかり
 心配で心配で仕方なくなっているところであの子が殺されて……」

「どのようにですか?」

 既に彼は松からの情報で知っている。

「店で働いている最中に突然倒れてそのまま起き上がらなかったそうです
 これはどう見ても店の主人が殺したとしか思えません
 どうかあの男を裁いてはくれませんか?」

 越後屋の主人が“ヒダル神”と契約していることを。

「……ふむ」

 そして近隣の人々の腹を少しずつ空かさせて米を大量に売りつけていることを。

「お金はあの子が私と旦那のために送ってきてくれたものを貯めたものがあります
 払えないという心配はございません」
 
「解りました、それならばお受けしましょう
 一週間あれば全て終わると思いますのでどうぞお待ち下さい」

「ありがとうございます」

 哀しみを押し殺そうとしても震える声。
 伊烏は何も言わずに頭を下げた。
654 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/10(木) 16:34:06.23 ID:d5MD6h6t0


――――


「今日は雑穀入りの米と塩引きの鮭とひじきの油漬にネギのお味噌汁でございます」

「……焼き鮭か」

「お嫌ですか?」

「美登利の作ったものならなんでも美味しいよ……」

 表情が明らかに悲しそうである。

「申し訳ございませんこれ以外無くて……」

「骨が……」

「え?」

「焼き魚は骨が苦手なんだ……
 柔らかく煮てしまえば骨も気にならないんだが」

「なら私が解してあげましょうか?」

「いや、それはなんというか……」

「主様、解させてください」

「わ……分かった」

 静かな時間が流れる。
 器用に取り払われる骨。
 小骨も大きな骨も一つも残らない。
 身を箸で摘んで口に向ける。

「…………」

 伊烏はそれを食べる。
 塩辛い。
 兎にも角にも塩辛い。
 急いで米を口に入れるとその塩辛さはそのまま米の甘みを喚起する薬に変わる。
 そうして塩味が気にならなくなると申し訳程度の鮭の脂の香りがする。
 彼の兄が見れば涙を流す程粗末なものだ。
 だが彼は満足している。
 
655 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/10(木) 16:36:38.55 ID:d5MD6h6t0
「なんでお前は嬉しそうなのだ」

「……だって主様が美味しそうに食べてくださるんですもの」

「骨がないからな、それに……」

「それに?」

「なんでもない」

「なんですか教えて下さいな」

「なんでもないんだよ」

「教えてくださらないなら身をほぐしてあげませんよ」

「むぅ……」

 本当に困った表情をする伊烏。
 それが愛らしくて美登利は笑う。

「冗談ですよ」

 パッと笑顔が戻る。
 それがまたおかしくて愛らしくて美登利は口元を隠して笑った。


656 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/10(木) 16:38:18.95 ID:d5MD6h6t0



――――



 真夜中。
 街灯もまだ普及し切らない時代のことだ。
 近代化されていく街並みに魑魅魍魎が跋扈する帝都。
 文明の光が闇を駆逐し、事態がもっとややこしくなるのはまだ少し先のことなのである。

「ここが越後屋か」

 伊烏善次郎は特に人目を気にすることもなくここまで来た。
 必要がないのだ。
 街灯もまだ普及し切らない時代。
 闇の中には数多くの怪異がうごめいていた。
 それを見つけてしまえば何がしかの厄介に巻き込まれる。
 だから人は怪異を無意識に避ける。
 闇の濃い時代の人々の知恵である。
 伊烏はそれを利用して仕事を済ませていることが多い。

「警備はありませんけど戸締りは厳重ですね」

 美登利は雨戸をコツコツと叩く。

「商家だからな」

「どうします?」

「戸締りが厳重で諦めるのは人間の泥棒だけだよ」

 伊烏は雨戸に手を掛ける。

「ふんっ……!」

 グイグイと力を込めて押すと雨戸は音もなく破壞された。

「まあ」

 怪異よりも怪異のような人間だ。
 美登利はそう思う。
 
「何を呆けている、行くぞ」

 招かれた客でもあるかのように越後屋の中を進む。
 ガタッ
 何かの物音。
657 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/10(木) 16:44:06.11 ID:d5MD6h6t0
「え?」

 偶然、厠にでも起きたのか店の男が二人を見つけてしまう。
 
「お、おいなんなんだあんた……」

 キラリ、ヒラリ、空中に糸が舞う。
 
「たっ―――――」

 糸の切れた人形のように男は倒れる。
 実際、彼を死に追いやったのは蜘蛛の糸なのだ。
 超極細の蜘蛛の糸、それは彼の脳内に入り込み、破壊する。

「勝手に始末させて頂きました」
 
「……まあ好きにしろ」

「うん、甘くてクリィミィ
 好みの味ではないけど嫌いじゃあ無いわ」

 糸を通して脳漿を啜る美登利。
 仕事の最中に何をやっているのだ、とは思うのだが伊烏は一々口にだすのも面倒なのでそのまま歩いて行く。
 
「待ってくださいよぅ主様
 ちょっとお腹が空いちゃっただけなんですぅ
 決して仕事をサボろうとかそういうのじゃあ……」

 静かにため息を吐いた。
 広く、複雑な廊下。
 店の最奥部にその男は居た。
658 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/10(木) 16:45:43.58 ID:d5MD6h6t0
「やっと来たかい」

「あんたが越後屋の主だな」

「おうともさ」

「お前のしたことは解ってるな?」

「勿論」

「償う気は?」

「ない」

「お前は……」

「聞かせてくれ、俺は悪いことをしたのか?」

「は?」

「俺はあの青年以外誰一人殺した訳じゃあない
 恐らく君はあの青年の縁者の類なのだろうが……あれだって秘密を守るために殺しただけだ
 人が死なない範囲で暴利を貪るくらい許してくれよ」

「知らん、俺はお前が幾ら阿漕な商売をしようと一切構わん」

 越後屋はやれやれとため息をつく。

「いやはや一族郎党皆殺しにしておくべきだったか
 生半な情けをかけたのが災いしたのかねえ」

「そうだな、それならば俺が動くこともなかっただろう」

「済まなかった、反省はしているんだ
 殺すことはなかったかもしれないとは思ってたんだよ
 ただ一番簡単な口の封じ方だからさあ」

「解ってるんじゃないか、ならば死ね」

 伊烏が腕を振り上げる。
 しかし、突如として身体が動かなくなる。
 その姿勢のまま彼は動きが止まる。
659 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/10(木) 16:46:35.85 ID:d5MD6h6t0
「ところでそこのお嬢さん、何か体調に変わりは?」

「―――――」

 何かの糸が切れたように美登利が倒れる。
 
「途中で何か食べてきたのかい?
 例えばうちの人間とかさあ……
 “腹を減らす”までに随分時間がかかったじゃないか」

 低血糖性昏倒。
 ヒダル神の力は都市伝説にすら有効だった。
 伊烏も美登利も腹を減らして動けなくなってしまっているのだ。

「さて、君の方も恐らくそろそろ限界だろう」

 伊烏もまた床に頭をぶつける。

「腹を減らすだけの能力
 それだけの能力と知ってたからこそ侮ったのかね
 オサラバだよ殺し屋さん」

「……腹を減らすだけの能力」

 それを聞いた美登利は呟く。

「おや、怪異ってのは丈夫だねえ
 もう動けなくなっても良い筈だが」

「どんな生物でも腹は減る、ある面最強と言っても良い
 しかしその能力では絡新婦に勝てたところで私達には勝てない」

 そう、実際に帝都でも最強の一角に入る能力ではあったのだ。
 建物にこもりながら能力で相手が倒れるのを待つだけ、それだけで大概は勝てるのだから。
 だからこそ松という情報屋はこの仕事を伊烏達に任せた。
 ヒダル神の能力は、伊烏善次郎という男に対してはほんの少し隙ができる。

「は?」

 伊烏は生まれつき力が強い。
 それは取りも直さずかれの異常な筋肉の量に原因がある。
 筋肉の成長を抑制するミオスタチンの突然変異による停止を原因とする際限ない筋肥大。
 この時代の医学では説明不能な事態。
 常人の七倍の筋密度、そして常人の二倍の筋肉量を可能にする突然変異。
 その代償は常人の数倍でのカロリーの消費。

「ていうか、あれです」

 故に伊烏は空腹の危険に常に悩まされている。
 そして本当に喰うものが無い時、彼の肉体はとある選択をする。

「――――あなた、死にましたよ」

 伊烏がムクリと立ち上がる。
 それと同時に美登利は俯せになって一切の動きを止める。
660 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/10(木) 16:48:52.71 ID:d5MD6h6t0
「……は!?」

 オートファジー
 細胞が自らを分解して栄養に変化する作用。
 伊烏の肉体はこの仕組みが異常に発達している。
 筋細胞を分解することでまずは最低限の栄養を補給。
 同時に肉体にかかっているリミッターが外れて普段の彼の怪力を超える力を発揮させる。

「……お腹がすいたな」

 目にも留まらぬ速度で伊烏が男に向けて走る。
 助走をつけた拳打。
 壁をぶちぬいて吹き飛ぶ男。
 この時点で既に男の命は無い。
 そしてその吹き飛ぶ男よりも早く動き、男を地面に叩きつける。
 床が破壞されて一気に一階まで叩き落される。
 物音で起きてきた男達は血に濡れた伊烏の姿を見てしまう。
 見てしまった。

「お腹が空くと主様はひどく荒れなさる……
 余計なことをしてくれましたね……」

 一階まで開いた穴からその様子を眺めながら美登利は呟く。
 天井を歩き、壁を走る。
 宙を舞って、大地を砕く。
 伊烏が腕を振るい、無造作に蹴るだけでボロ布よりあっさり吹き飛ぶ男たち。
 逃げ惑うもの、動くものを無差別に襲う狂戦士。
 手負いの野獣でもああまで凶暴ではない。
 それになまじ人の形を保ってる故に野生の獣よりもなお悪い。
 あの状態になった伊烏は今の美登利には止められない。
 咆哮と共に辺りに糸が張り巡らされる。
 あの状態の伊烏は身体強化以外にも絡新婦の力を使えるのだ。
 怪異との契約で得る力とは心に起因する力である。
 心のタガが外れた人間はそれだけ大きく力を使える。

 伊烏が手に持った糸の束を思い切り引く。
 それと同時にグルグル巻になった幾つもの死体が宙吊りになった。
 伊烏が糸の束に向けて思い切り拳を当てると死体がバラバラになり、砂と変わって消える。

 美登利は己の腹が膨れるのを感じた。
 だが伊烏はあれでは腹は膨れない。

「主様!」

 その声でピタリと伊烏の動きは止まる。
 焦点のボヤけた虚ろな目で美登利の方を見る。
 冗談じゃなく食べても良いのか判断しているのだ。

「新しいご飯です!」

 おにぎりを投げつける美登利。
 迷わず食べる伊烏。
 食べ終えたきっかり三秒後、伊烏は動きを停めた。
 事前の調査でこういう事態は予想できていた、だからこんな時のために彼女は睡眠薬入りのオニギリを持っていたのだ。

「……やれやれ」

 完璧な仕事からは程遠いが全ては終わった。
 美登利は倒れている伊烏を背負うと人気のない夜道を歩き始めた。
661 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/10(木) 16:50:34.26 ID:d5MD6h6t0


――――


「お父さん!」

「なんでこんなことに……」

「良い人だったのにねえ……」

 ボロボロになった越後屋の前で泣き崩れる子供。
 越後屋の主の息子。

「立派な人だったそうじゃないか
 子供の頃は貧乏のどん底に居たのに一生懸命働いて大店の主にまでなったそうなのに
 店の男達数人と神隠しだろう?」

「犯人は誰も見ていないんでしょう?
 本当に神隠しなの?こわいわあ……」

「これからどこでお米を買えばいいの!?
 うちにはまだ沢山子供が居るのにあの店がなきゃやりくりできないわ!」

 近所でも良い米を安く売ってくれる良心的な店と評判だった越後屋。
 その主が神隠しにあった。
 幼い息子は親戚筋が何とかするらしいが、残された人々は悲しみに暮れていた。

「……ああ」

 そんな様子を物陰から見る老女。
 
「なんでこんなことに……」

 こうなるだなんて思ってなかった。
 ただ自分は許せなかっただけで……
 何もここまですることは……
 そんなことを思っていた。

「皆さん離れてください!」

 警官が現場を調べている。
 あの警官に声をかけてしまえば……
 全てを話してしまえば……

「奥さん、何をなさってるんですか?」

 メガネをかけた薄笑いの男。
662 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/10(木) 16:53:10.08 ID:d5MD6h6t0

「――――!」

「そいつはいけませんぜ、いけません
 それもまたあんたの招いた結果だ
 コメを大量に仕入れて大量に売りつけることで良心的な値段を可能にしていた米屋の主を殺すように頼んだのはあんただ」

「わ、わたしはあんなことになるとは!」

「それもまたあんたが望んであんたが招いた結果だ
 俺達は手を貸したにすぎない
 俺達は正義の味方じゃあ無いんだ
 何もかも都合よくあんたの望みを叶えると思ったら大間違いさ」

「そ、そんなこっ――――――――」

 松は眼鏡の中に仕込んだ針を老女の胸に突き刺す。
 老女は声を上げるまもなく倒れた。
 
「人を呪わば穴二つ……ってね」

 松は針を眼鏡のフレームにしまうとその場を去っていった。


【第四話 おしまい】
663 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/10(木) 16:56:39.62 ID:d5MD6h6t0
絶妙な胸糞悪さを目指してます
読み終わった後に波止場で一服できる感じの

あとイガラスジョーとか言わない
怒ジョーとか言わない
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 22:46:13.26 ID:PkZdoDoU0
>>642
まさかのカーター御大登場!?
カダスの王って事は、原作後ですよね……
>>644
指切拳万かっけぇwwwwwwしかも契約者自身は気絶で済ませている辺り、根は優しい子なんでしょうね
“黒服さん”って事は、この子も『Rengers』の一員なんでしょうか?
>>663
今回もまた、色々と考えさせられる話でした
人を呪わば穴二つ……復讐で周りが見えなくなっていたとは言え、このお婆さんも哀れな人でしたね

しかし、松さんが格好いい
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 22:47:57.92 ID:PkZdoDoU0
×『Rengers』
○『Rangers』

素で間違えました……orz
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/11(金) 21:16:03.40 ID:0g4GBdfro
皆様投下乙ですー

「新しいご飯です!」とか、小ネタが憎いぜちくしょうwwwwww
667 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/12(土) 20:21:11.28 ID:Kn2SNBAAO
亀ですが
>>643
>クトゥルフってますなあ
実は幻主役の短期連載2本目の構想も、クトゥルフのアイテムが軸だったりww

>>664
>カダスの王って事は、原作後ですよね……
ですねー。カーターではなくチャンドラプトゥラ師で出しても面白かったのかも。

>>650-662
乙でしたー!
「戦っても勝てないから逃げろ」は勝利フラグですか?
「新しいご飯よ!」は笑ったけど、最後何というどんでん返し!実は善人だったのか越後屋…
668 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/12(土) 20:25:05.05 ID:Kn2SNBAAO
 小さい子なら公園くらいは知っているかと思ったあては外れた。
 ノイという少女は物心ついた頃から自宅の外に出たことがなく、公園どころか自分の家の外は見たことがないと言った。
「何で外に出られないのかな?」
「しらない。お外はテレビで見るとキレイだけど、ホントはこわいからダメなんだって」
 彼女にとっては公園も、学校も、そこで遊ぶ同じくらいの子供達も全て
 テレビや本でしか知らない、お伽話のようなものなのだ。
 まだ数日しか見たことのないウィーンの街並みやら、柳がやってきた日本という国の自然や景色、
 子どもたちの遊びについてやら話してやると、目を輝かせて聞き入り、もっともっとと次から次へと話をせがんだ。
(なんで・・・こんな子どもが、外も見た事ない、監禁同然の生活を?)
 親は何をしているのかと思いきや、彼女は4年前に両親を亡くしその両親の記憶は彼女には無い。
 でも写真で見るおとうさまとおかあさまはとってもキレイなんだよと
 にこにこ笑いながら話す少女がなおさら不憫に思えて
 柳はその場に座り込んでサンドイッチの包みを広げ、少女にも食べさせてやった。
 好奇心も食欲も旺盛な少女が目を輝かせてフルーツサンドを摘んでいると二人の頭上に影が落ちた。
「ここで何をしている」
 厳しい眼差しと声音。明らかに好意的ではないそれに柳は怯み、危うくチーズサンドを喉に詰まらせ掛ける。
「あ、えっと・・・むぐっ」
(この人、都市伝説だ・・・それも、結構強い力を持ってる)
「ムーンストラック!」
 ノイがしがみついたその人影は、青年と言うにはやや年嵩の、長身の赤毛の男。グレーの眼光が柳を鋭く見据えている。
「ヤナギはここでお弁当食べてるだけだよ」
 あたしももらったよ、おいしかったよとノイが弁護するが、ムーンストラックと呼ばれた男の眼光はますます厳しくなる。
「知らない人から物など貰ってはいかん」
 来なさいと手を引かれて連れ戻されるノイが柳に向かって叫んだ。
「さよなら」でも「ありがとう」でもなく
「そのサンドイッチ、おいしいからまたちょうだい!」
 これは婉曲的な「また来てね」だろうかと、一人になった門の前で柳はくすりと笑った。
 その翌日、辻弾きのヴァイオリンに耳を澄ませる柳の服の裾を誰かが引いた。
「あ・・・」
「しーっ!・・・あのね、こっそりお家から出てきちゃったんだ」
 昨日の少女、ノイがそこにいた。



続く
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/12(土) 22:49:31.23 ID:Obqi99jx0
さて、何日ぶりかの感想をば

>>612-621 >>627-633 >>650-662
怒り喰らう伊烏さんの人乙です〜(マテヤコラ
やっぱり読み入っちゃうぜ、何処で修行したらこんな技術身につくのさorz
ところで善次郎さんの「……うん」の台詞がなんか好きなの
俺の脳内では少し子供っぽい感じがして可愛くて好きなの、きゅんきゅんしちゃうの
だから善次郎さんは俺のむk(喰われました

>>638-641 >>668
鳥居を探すの人乙です〜
幻ちゃんの話は胸が抉られそうだぜ……だが凄い進展が…!?
ノイノイ可愛いよノイノイ、この娘俺にくれ(

670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/12(土) 22:58:31.75 ID:Obqi99jx0
>>649
>目から覇王翔吼拳を使わざるをえない
目からハイドロポンプよりも威力ありそうwwwww
じゃなくて黒服逃げてー!?

>>664
>“黒服さん”って事は、この子も『Rengers』の一員なんでしょうか?
むふふふ、詳しくは裏設定スレで♪
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 12:44:55.89 ID:MBsC8X6DO
投下乙ですー

これは囚われの姫君を救い出す王子様か
悪い王様はしまっちゃおうねー
672 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/14(月) 15:40:34.82 ID:6Z1gTNeAO
>>669
>幻ちゃんの話は胸が抉られそうだぜ……だが凄い進展が…!?
「銀の鍵〜」は幸せ脳な作者が普段よりペシミスティックな展開を予定しております

>ノイノイ可愛いよノイノイ、この娘俺にくれ(
譲渡と販売は承っておりませんがレンタルは応相談とn(ぇ

>>671
>これは囚われの姫君を救い出す王子様か
悪い王様はしまっちゃおうねー
お脳のあったかい姫君とロリコンお花畑王子様に、一番まともなのが悪い王様…
ヒロイックファンタジーとしては失格だwwww
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/18(金) 22:42:47.88 ID:7lnlHKwAO
誰も居ないね
落ちないか心配だな
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 23:46:18.45 ID:CndNtPzho
週に一度、単発を投下する義務を自らに課すか
土日どちらか丸一日費やせば、都市伝説の選定から作品の完成までたぶん可能だろうし
ついでに速筆練習にもなるし
675 :モデルケース [sage]:2012/05/19(土) 04:29:18.86 ID:nlrMG+PKo
 上野小竹がターボババアと出会ったのは、ちょうど町に高速道路ができ始めたころだった。当時小竹は旅館の女将を引退し、隠居生活を送ろうとしていた。速さを求め、止まることを嫌って

いた小竹ではあったが、体がついていかないのだ。どれだけ動きたくても体は老い続け、次第に動かなくなっていく。小竹にとってそれは死にも勝る苦痛であり、そのため死ぬまで止まること

なく働くつもりであったが、ある時気が付いてしまった。自分が老い、遅くなっていくことでどれだけの人間が苦労するかを。
 小竹は女将であったが、女将の仕事と仲居の仕事の両方をやっていた。ずいぶんとキツイ仕事であったが、やりがいはあった。しかし、体が動かなくなることで仕事の進みは遅くなった。小

竹はそれを認めず働いていたが、逃れようのない現実だった。仕事が滞らないようほかの従業員がサポートに回ろうとしたが、答えは今までやってきた矜持があるがゆえにそれを認めず拒

否を続けた。女将である小竹に逆らうことのできる者は居なく、仕事の滞りは日に日に増えていった。
 ある日、それを息子に諭された。

「お袋、あんたがいるとみんながうまく動かねぇ」
「気づいてるだろ?女将の仕事だけでもきついぐらいだ!もうお袋は前みたいに働けねんだ」
「お袋のせいで、みんなの足並みが揃わなくなる。みんなが遅れるんだ!わかるだろ!」
「もういいんだよ母さん。あとは、俺に任せて休んでくれ」

 実の息子に言われては、さすがの小竹も認めざるを得なかった。その日を境に隠居を決意した。
 隠居生活はずいぶんと味気のないものだった。小竹の人生はとにかく走り抜ける人生だった。彼女にとって隠居というのは止まってるに等しい。しかし、齢70を超えた今、まともに働くことは

不可能だった。彼女の日々は急速に色あせていき、頭もどこかぼんやりとしていった。楽しみといえば町近くで出来上がっていく高速道路を見ながら、速さに思いを馳せることぐらいであった。
 しかし、1年ほど経てば高速道路はすっかり出来上がり、小竹の楽しみはなくなってしまった。そのころからだろか。小竹の頭は霧がかったように働かなくなり、すっかりボケが始まってきてし

まった。気力もなくなったせいか、体力もめっきり落ち込み、家を出ることもほとんどなくなってしまった。それを心配した息子と娘は小竹を旅行に連れてくことにした。息子は旅館の運営が忙し

いため、小竹と娘だけで行くことになった。
 行き場所はある有名なサーキット。そこでF1のグランプリレースをみることが目的だった。世界選手権をかけた国内レースだからこそ、それは見応えがあるものになるはずだ。小竹のボケ

かけた頭でもそれは理解できた。それだけで、小竹は自分の視界に色が再び戻ってきたのを感じた。
 そして小竹の予想通り、レースは実にすばらしいものだった。ボケから回復はしなかったものの、興奮し、立ち上がってみるほど小竹はレースに魅了された。それに娘も喜び、ともにレース

を楽しんだ。楽しみ過ぎて帰るのが遅くなってしまった。それがいけなかった。
 娘が小竹を乗せて家へ帰る。時間はすでに9時を回っており、あたりに車はなく明りは道路照明灯のオレンジ色の光だけ。そんな暗い景色の中、車内はいまだにレースの興奮に冷めやら

ぬ小竹と、その相手をする娘との会話で明るく弾んでいた。久々に楽しそうな母との会話を楽しむ娘の視界の端に、ふと、何かが映った。最初は別の車かと思ったがライトの明かりは全然見

えない。少し気になりしっかりとサイドミラーを覗き込む。
676 :モデルケース [sage]:2012/05/19(土) 04:30:46.35 ID:nlrMG+PKo
「ひっぃ!!!」

 サイドミラーに映ったもの正体が分かった瞬間、娘の口から思わず息が鋭く漏れる。ボケた小竹にもそれは伝わり、ふと後ろの座席からサイドミラーを覗き込んだ。その光景に思わず小竹も目を疑った。顔を皺くちゃにゆがめた老人が手足を振り乱しこちらに走ってきているのだ。その速度は異常なほど速く、車のすぐ横を走っている。車の時速は60キロ以上は出ており、横を走

る老人もそれと同じ速度で走っているのだ。娘はその光景に恐怖した。そして思わずアクセルをさらに踏み込んでしまった。別に急停止しようとも車は自分以外には走っていないのだから構わなかっただろうが、この時ばかりは冷静な判断ができていなかった。車は速度を上げ、70キロ、80キロと次第に速度を上げていく。しかし外を走る老人はその速度に平気についていく。
 ふいに老人は腕を車へと伸ばし、窓ガラスへと手を触れた。小竹が乗る後部座席の窓ガラスへと。顔もしっかりと小竹のほうへ向けられている。小竹も老人を見返す。目が合った。老人はよく見ると老婆であることが分かった。手足を異常な早さで動かし、車と並列している。その光景をまじかで見た小竹が思い浮かべたのは憧憬だった。速くあることを体現したがごときその老

婆は、小竹にとってはまさに理想だった。昔から自分の体の中で暴れていた出所不明の速さへの憧憬。それを体現する眼前の老婆。小竹は窓ガラスに触れている老婆の手へ、自分の手を重ねた。

「……どうしてあたしはこ〜じゃないんだ?」

 口からこぼれおちたのは憧れと、それが手に入らないことに対する諦念、そして失意。思いのすべてが口から漏れ出した。
 老婆が窓ガラスへ手を伸ばしたのと、小竹がそこに手を重ねたのは、小竹の体感時間ではひどく長いものだったが、実際の時間ではほんの数秒の出来事であった。

「きゃあああああああああああああああああああああああ!」

 外を走る老婆が自分の母へと手を伸ばしている。そう思った娘は思わずハンドルを切った。それは自分の母を理解不明なナニカから守ろうとする行為だったが、それを行うには車のスピードはあまりにも出すぎていた。車の速度はすでに時速90キロ後半である。そこから急にハンドルを切ればどうなるか。車はすぐさまバランスを崩し、遠心力に引っ張られガードレールへと激突

した。それだけにはとどまらない。ガードレールを突き破りその奥にあった岩肌へとその車体を打ち付けた。
677 :モデルケース [sage]:2012/05/19(土) 04:31:58.83 ID:nlrMG+PKo
モデルケース『ターボババア』C


 「うおぉ!!おい!あのババア転んだぞ!」

 後部座席に座っていた坂本は無様に転ぶ小竹の様子を眺めながら興奮した様子で前に二人へと言葉を贈った。坂本にしてみればようやく退屈な日々から抜け出すことができたのだから、交付するのも当然だろう。しかし、そんなことどうでもいいのか前に二人はしょうもない芸人のギャグを見ているかのごとく冷めた様子である。

「それはサイドミラーで確認した」
「あの人はターボババアと契約してるんですから、それぐらい問題ないですよ。きっと」

 その二人の様子に、坂本はひどく不快気に眉を歪めた。実際坂本は不快であった。二人の冷めた態度が自分を馬鹿にしているように思えてならない。つい最近、都市伝説と契約したことによって己の欲望を解放したことによって、坂本は異常に感情的な人間へと変化した。不快だということを隠そうともせず態度に出し、それを二人に暴力としてぶつけようとする。たとえそれが自分の契約した都市伝説だろうと、死にかけの自分を救ってくれた恩人だろうと。
 麦野は後部座席の坂本がポケットからナイフを取り出すのをバックミラーで確認しながら、さらにその先。ターボババアへと目を向けた。ターボババアが扱けただけで戦意が無くなるとは思えない。

(それじゃあ、あまりにも拍子抜けだわ)

 しかし、そうはならなかったことに対し、思わず口角がつり上がる。まだまだ楽しめそうだと。視線の先のターボババアは体を起こし体勢を立て直すと再び前進を始めた。先ほどよりもその初速は速く感じる。初速の時点で200キロは超えているだろう。ターボババアは車を追い抜く都市伝説。それが速くなくて何がターボババアだろうか。
 バックミラーにはナイフを振り上げる坂本が映っている。それを確認しながら麦野は口を開いた。

「坂本君。そんなことをしている暇があったら生き残ることを考えたらどうかな?」
「……はあぁ!?」

 坂本は振り上げたナイフを下すことなく制止し、さも意味がわからないという風に眉をハの字にする。当然だろう。命の危機が迫っているような状況でもないのに、急に生き残ることを考えろなどと言われてもピンと来るわけがない。急に言われてわかるものは1を聞いて10を知れる人間か、1分の隙もないほどの馬鹿だけである。

「ハァ。光輝君、もう忘れたんですか?この車がなんなのか」

 そんな坂本の様子を見てため息をついたのは、坂本と契約している都市伝説『口裂け女』であるジュリアナである。体勢を変え、体ごと坂本のほうへ向けその目を見据える。
678 :モデルケース [sage]:2012/05/19(土) 04:32:49.32 ID:nlrMG+PKo
「今私たちが乗っているのは『白いソアラ』。事故によって首を切断する都市伝説」
「あ、」

 坂本は思い出したかのように目を見開き、腕を下ろした。その顔は幽鬼のように真っ青に染まっていく。

「このスピードを出して走っている状況なんて事故を起こすにはもってこいの状況でしょ?どんなことが起こってもおかしくない」
「お、おれは降りる」
「どうやって?」
「こうやってだよぉおおお!!」

 坂本は勢いよく振りかぶると、勢いをそのままにこぶしを窓ガラスに向かって振りおろす。坂本は契約によって口裂け女の超人的な身体の能力をその身に宿している。いくら車の中で体勢が悪かろうと、全力で殴ればたとえそのガラスが防弾ガラスであろうと突き破ることができるほどの身体能力がある。しかし、

「わ、割れねぇ」

 そんな力で振り下ろされた拳をソアラの窓ガラスはものともせず受け止めた。ガラスには罅一つ入っていない。普通の車のガラスは強化ガラスであり、もちろん強化ガラスは防弾ガラスほど耐久力があるわけではない。そもそも防弾ガラスでさえ、割れて衝撃を逃がす作りになっている。だというのに、罅ひとつはいらない。坂本はこの事実に口の中が急速に乾いていくのを感じた。それと同時に体に悪寒が走る。逃れられない死へのイメージ。それが急速に自分の中で拡がっていくのだ。

「うわああああああああああああああああああ!!!」

 それを振り払おうと全力で、何度も何度も窓ガラスを、天井を、ドアそのものを殴りつける。しかし、ソアラは壊れることはなく、自分の手がむやみに傷ついて行くだけだった。なおも殴り、蹴ろうとする坂本の手足を、いつの間にか背もたれを下ろしたジュリアナが身を乗り出し抑える。

「落ち着いて光輝君!大丈夫だから!そんな光輝君が死にそうなのに私が何もしないわけないでしょ!?」
「お、おまえ!おまえぇええ!!そもそもお前なんかと契約しなけりゃ!」
「私と契約できたからクラスメイトだって、母親だって殺せたでしょ?」

 ジュリアナの言葉に坂本のこうどうがぴたりと止まる。
679 :モデルケース [sage]:2012/05/19(土) 04:33:29.67 ID:nlrMG+PKo
「私がいれば、光輝君の望みはかなえてあげられる。死にたくないと願えば、私が命をかけて守ってあげる」
「ジュリアナ…」

 見つめあう瞳と瞳、そして顔面にめり込む拳。ジュリアナの顔が陥没する。鼻からは噴水のように鼻血が飛び出し、坂本の手を赤く汚した。

「そもそもお前が俺の前に現れたから悪いんだよボケエエエエエエエ!!!」

 先ほどまでソアラに向けられていた暴力が、ジュリアナへと転換された。

「なんとかできるんだったらドアの一つや二つぶっ壊してみろよ!」
「ふぁいふぁい」

流れ出る鼻血を指で押さえつつ、ジュリアナは無造作に腕をふるった。

「OH!?」

 その瞬間爆発音かのごとき音が車内に響き渡り、車体が大きく横に揺れる。その衝撃によるものか、麦野の口から思わず悲鳴がこぼれ出た。見ればジュリアナが乗っている助手席の窓ガラスが元からないかの如くはじけ飛んでいる。その光景に坂本は今まで以上に目を見開き、体から力が抜けたのか体制を崩した。

「次からはもう少し優しくやってくれないかジュリアナ。今運転を失敗したら追いつかれてしまうのよ」

 ジュリアナが窓を破壊したこと自体は何も思っていないのか、麦野はのんきな様子でしゃべっている。

「ああ、すみません。次からはもう少し優しくします。あれ、それにしてもターボババアのほうはずいぶんと遅れてますね。まだ私たちに追い付いていないなんて」
「様子見をしているんだろう」
「様子見?そんなことしていると我々はゴールしちゃいますよ?」
「ハハハハハハハ。あなたたちは気づいていないようだけど、実はこの車、もう600キロは出てるのよ?」
「え?うそ?」
680 :モデルケース [sage]:2012/05/19(土) 04:34:37.44 ID:nlrMG+PKo
###########################################################

『ひと泡吹かせるのはいいけど、少し様子見したほうがいいねぇ。追いつくんじゃないよ』
「あん!?なにゆ〜ちょなこと言ってんだい?」

 怒りと、それ以上の勝負に対する高翌揚を抱え走り出した小竹をターボババアは諌めた。しかし、小竹はそれに反論する。小竹が扱けた分、ソアラからは引き離されている。小竹にとってそれは屈辱である。いくら高翌揚感が勝っているとはいえ、屈辱を抑えることはできない。この溜飲を下げるには、相手の澄ました顔を思いっきり破顔させること、度肝を抜くこと以外ない。その思いもあり、小竹は初速を300キロ以上も超えて走り出したのだ。ターボババアの悠長な戯言につきあう気持などなかった。
 しかしその思いに反し、体の動きはだんだんと遅くなり、250キロをキープするぐらいにまで抑えられてしまう。契約者に力を与えるのは都市伝説だ。この場合小竹に力を与えているのはターボババアであり、ターボババアが与える力を抑えれば自然とスピードが落ちるのは自明の理である。

「こんのくそバア!あたしの速さをかえせ!」
『おまえは知らないかもしれないけどねぇ!あのソアラはやばいんだよぉ!やばい気配は感じたぁろ!?』
「そんなもんしら…あん?あのソアラ」

 最初に気がついたのは小竹であった。小竹の夫はレーサーであり、小竹自身はレースファンである。車を見るのは好きだし、基本的にその車種がどれほど速さが出るのかは見れば自然と頭に浮かんでくる。麦野たちが乗るソアラは改造車だということは明かされていた。改造車である以上、元以上の速度は当然出るだろう。麦野は小竹とサリーンの勝負も見ている。自分に勝つためにはサリーン以上の速度を出すしかないはずだと気づいていると小竹は考える。つまり400キロを超える速度。速度を出すためにはフォルムのことも考えなければいけないが、よほど強力なエンジンなどを使えば、車体の安全を守らなければいけるだろう。しかし、しかし、しかし、しかし、しかし、

「500は超えてるよ!?」

 いくらなんでもそれはありえない数字なのだ。高々普通の乗用車のフォルムに、それに収まりきるエンジンを積んで、破壊されず500キロを突破することなど普通の車にできるわけがない。ましてソアラなどでは!

「んなばかな」
『いったろう?様子を見よってさあ』
「あ〜あ、見るべきだったねぇ見るべきだった」

 ありえぬ光景を目撃し、それでもなお小竹の目から活力は失われない。むしろ増してきている。嬉々と口角はつりあがり、その顔をは年季の入った梅干しのように皺くちゃにゆがんだ。

「こんなにも心躍るんだからさ!!!!」

 小竹は力強く一歩前に足を出す。その勢いでアスファルトはひどく飛び散った。小竹の体に再び抑えられぬ速さが舞い戻ってくる。300、400。ソアラの窓が飛び散り揺れるが気にしない。

『こたけぇ。あんたほんとにばかさ』

 ターボババアは小竹と同じような顔をして、楽しげにつぶやいた。



登場人物
麦野アブラカダブラ……海外の都市伝説を研究する集まりの元一員
坂本光輝……高川高3組皆殺し事件の犯人
ジュリアナ女……飲み込まれた女
上野小竹……主役だが活躍少なめ



681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 17:59:18.09 ID:sGHPx2Reo
お懐かしやー
そして投下乙ですー

老人から楽しみを奪ったらボケるわな……
そんな彼女は自らの望む力を手に入れたわけですが、はたしてこれが幸せといえるのか
おとなしく人として生きて人として死んだ方が幸せだと思うのは、私の脳が平和ボケしているからでしょうか

>上野小竹……主役だが活躍少なめ
小竹さん、あんた主役だったのか……
てっきり力を手に入れた坂本光輝くんがヒャッハァーする話だと思ってたよ……すみませぬ
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/19(土) 23:46:44.32 ID:aKX1uC1S0
遅ればせながらモデルケースの人乙です〜
泣いた。小竹さん切なすぎる………
しかしこのスピードバトル、果たして勝敗は如何様になるのか……wktkせざるを得ない

そして小竹さん主役だったのかwww
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/20(日) 00:25:39.78 ID:YdK/pNeAO
モデルケースの人乙ですー
最速のターボババア小竹さん燃え!車とかレース題材の話好きだー
ジュリアナさんなんか不憫ww
684 :幸運押し付け人の恐怖 [sage saga]:2012/05/20(日) 15:53:56.51 ID:Q8oIWhTd0
 それは、もう桜も散り切ってしまった頃

「〜〜〜〜♪」

 鼻歌を歌いながら、彼女は帰路についていた
 つい一か月ほど前に、学校町に引っ越してきた彼女。越してきた目的はまだ果たせていないものの、だいぶこちらの生活にも慣れてきた
 今日も、可愛らしいビーズを安価で取り扱っている手芸屋さんを見つけることができて、何とも機嫌がいい。鼻歌の一つも歌いたくなるものである

「学校町って物騒だ、って聞いていたけど……それほどでもないしね」

 そりゃあ、狼みたいな犬を見かけてみたり、ガスマスクをかぶった不審な人物を見かけてみたり。まるでライオンのような愛らしい猫を2匹程見かけてみたり、何かを追いかけているパトカーから、箱乗りした警察官がロケットランチャー的な何かを構えている様子を見かけたりはしているが。それくらいである。特別、物騒な雰囲気は、まだ味わっていない
 この調子で、平和でいられればいい、と、思う。探すべき相手は、探さなければいけないけれど……それが終わったら、少し、この街でのんびりしてもいいかもしれない
 そう考えていた彼女、しかし………平和、と言うものは、突然に、あっさりと、破壊されてしまうものだ

「そこのレディ!!」
「!?」

 十字路に差し掛かった辺りで、突然、声をかけられて。彼女は、ぴたり、と、足を止めた。正面に現れたのは………どこか、古き時代を思わせる、和装姿の男性。彼女の前に立ちはだかるようにして、道の真ん中をふさいでいた
 辺りに、他に人影はいない。自分に声をかけてきたのだろう、と判断し、彼女は警戒を強めた

「…何か、ご用ですか?」
「レディ、君は幸せかね?」
「………?」

 ……突然、何を?
 さらに、警戒を強める彼女。その、彼女の目の前で

「もし、幸せではないのならば」

 和装の男は、自身の服に手をかけて

「この某の契約都市伝説能力にお任せあれっ!!!」

 っば!!!と
 服を、勢いよく脱ぎ払った!!!

 突然の展開に、ぴしり、と、固まる彼女
 和装の男は、その服を脱ぎ払い………真っ赤な褌一丁となった!!

「某は「飛脚のふんどし」の契約者っ!!さぁ、某の褌に口づけを!!」

 ずずい!!と、迫ってくる変た……「飛脚のふんどし」の契約者
 ぴしり、と、固まっていた彼女は、正気に戻って

「っいやぁあああああああああああああああああああああっ!!??」

 盛大に、悲鳴を上げた
 当たり前である。どう見ても変態かつ痴漢かつ変質者です、本当にありがとうございました

「さぁさぁさぁ!!褌への口づけが恥ずかしいならば、尻でも構わんっ!!」
「変態ぃいいいいいいいいいいいいっ!!??」

 ますます変態です、本当にありがとうございました。なお、「飛脚のふんどし」と言う都市伝説自体は、某宅配便のトラックに描かれている飛脚の褌、もしくは尻に触れると幸運が得られる、と言う都市伝説であり、間違っても口づけして幸運を得るものではない。良い子は決して勘違いしてはいけない
 この恐るべし変態を前にして………彼女は、盛大に身の危険を感じた。故に、呼び出す。己の契約都市伝説を

「クロスさん、助けてーーーーーーーっ!」
『呼ばれずともっ!!!』
「……む!?」

 ず、と、十字路から姿を現す、影。それに、「飛脚のふんどし」の契約者は、身構えた
 現れたのは、ギターを担いだ、西洋人を思わせる男性。しかし、その頭からは角が、背中からは蝙蝠のような被膜付きの翼が生えている……「クロスロード伝説」、とある有名なギタリストに音楽の才能を与えたという、悪魔。それが、彼女が契約している存在であった

『俺の契約者に何させようとしてんだ、この、ど変態がっ!!』

 男からの攻撃を予測し、構える「飛脚のふんどし」の契約者。手にしているギターから、なんらかの攻撃を発してくる……そう、予測したのだろう
 が、呼び出された、と言うより半ば自らの意思で姿を現した悪魔は、低空を高速で飛行し、「飛脚のふんどし」の契約者の懐まで一気に潜り込む。そして

『消え失せろっ!!!』

 ずごすっ!!

「うぼぁ!?」

 ギターで持って、殴りつけた!!悪魔の持つギターは、普通の素材ではできていないのだろうか……いや、ギターで殴りつけられたら、普通にこれくらいのダメージは受けるだろうか。よりによもって股間を盛大に殴りつけられた「飛脚のふんどし」の契約者は、もんどりうって倒れ、そのまま意識を失った

『よし……大丈夫か、つばめ』
「…………」

 ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる
 純な乙女には、先ほどの変態は衝撃が強すぎたようだ。ぷるぷる震え続ける己の契約者の姿にクロスロード伝説の悪魔は小さく苦笑すると、彼女を無事、家まで送り届けるべく、そっとその体を抱き上げたのだった                                                                                                                                           終われ
685 :幸運押し付け人の恐怖 [sage saga]:2012/05/20(日) 15:56:35.83 ID:Q8oIWhTd0
しばらくネタが書けていなかったので、リハビリかねて書いた結果がこれである
正直反省している
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/20(日) 16:01:04.98 ID:YdK/pNeAO
>>684
乙ですー
腹筋返して下さい…
ギターから特殊攻撃するのかと思いきや殴るの?殴るの?
しかし飛脚可哀想だけど自業自得wwwwww
687 :幸運押し付け人の恐怖 [sage saga]:2012/05/20(日) 16:22:34.80 ID:Q8oIWhTd0
書き忘れー

飛脚のふんどしの契約者は扱いフリーです。おでんの具にするなりなんなりご自由に

>>686
>ギターから特殊攻撃するのかと思いきや殴るの?殴るの?
クロスロード伝説の悪魔は、本来、音楽の才能を人に与える悪魔ですから
きっと、音楽を利用して相手を攻撃という事は主義に反してできないんだよ

Q じゃあ、楽器を武器に使うのはいいのか
A 壊れてないから大丈夫
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 17:16:35.55 ID:0kBB3ytpo
投下乙ですー

大丈夫、楽器(ギター)をへし折る叩き折るのはRockではよくあること
十分音楽の範疇です

>それくらいである。
十分すぎるほど特別物騒な雰囲気である


そして投下
689 :駄犬夜遊 [sage]:2012/05/20(日) 17:17:05.55 ID:0kBB3ytpo

 我輩は犬である。名前は白墨。
 「ちょーきんぐどーべるまん」なるものと存在を一にする我輩は、その力で日々ご主人をお守りしている。
 しかし今日はすでに日も暮れ、ご主人と共に居間でくつろいでいる最中である。

「くー……すー……」

 そしてそのご主人はというと、静かな寝息を立てながら寝椅子に横たわっている。
 寝るのならば布団で寝るべきだ、とご主人を起こすため立ち上がる。

 だがそれと同時に窓をコツコツと叩く音が聞こえた。
 その音の正体を予想してご主人を起こすのをやめ、窓を覆う布の向こう側へともぐりこむ。

「よう、俺だ。ここ開けてくれや」

 予想通り、そこには気さくな笑みを浮かべる人面犬がいた。
 我輩はため息を吐きながら窓の鍵を開ける。

「いやぁ悪いね急に邪魔す――――」

 べふ。
 上がり込もうとする人面犬の鼻っ柱に前足をお見舞いした。
 もんどりうって庭に転がる人面犬を追い、我輩も窓の外に出る。

「いってえ!何すんだ!」
「貴様のような存在を我がご主人の家に上がらせるわけにはいかぬ」
「なに言ってんだよ、俺とお前の仲だろうが」
「ご主人と貴様の間に仲など存在しない」
「なんだよ、お前ばっかりかわい子ちゃん独り占めしやがって羨ましい。俺にも紹介しろっての」
「そのような下心を聞いてなお上がらせると思うか不埒者」
「けっ、お堅いこって」

 庭にあぐらをかいて座り込む人面犬。犬の癖に器用なものである。
 先ほど出てきた窓を閉めた後、我輩も「お座り」の姿勢でその場に座る。
690 :駄犬夜遊 [sage]:2012/05/20(日) 17:17:33.31 ID:0kBB3ytpo

 我輩の前に座るこの人面犬、一応我輩の友である。
 性格に難があるためご主人には絶対に会わせぬと心に決めているが、一応我輩の友である。
 目論見が外れてふて腐れる人面犬に、仕方なしに声をかける。

「ところで友よ、息子殿はご健勝か?」
「あぁまったくクソ生意気に育ちやがったもんだ。今日もどこほっつき歩いて夜遊びしてんだか」
「なるほど父親似だな」
「ばっかやろう、俺ほど真面目で誠実な人面犬が他にいるかってんだ」
「はて、そのように真面目で誠実な人面犬を友に持った覚えはないが」
「ひひっ、言うようになったじゃねーの。川原できゃんきゃん泣いてた頃が懐かしいぜ」
「……昔の話だ」

 野良時代を思い出して目を伏せる。
 我ながらあのころの我輩はとても弱く、情けないことこの上なかったと思う。
 その様子を見て人面犬は愉快そうに笑ったのち、静かに言葉を続ける。

「今日で一年だ」
「……そうか。早いものだな」
「あいつは覚えてねえだろうがな。俺は忘れねえよ」
「我輩も忘れぬ」
「そりゃどーも」

 ひひっ、とおちゃらけたように笑う人面犬。
 心なしか悲しそうに見えたのは気のせいだろうか。

「あれを恨んでいるのか?」
「昔も言っただろ、所詮事故だ。野良に生きる以上、覚悟の上よ」
「……貴様は強いな」
「なに、能天気なだけだ」

 そう言うと人面犬は立ち上がり、我輩に背を向け塀の方へと向き直った。
691 :駄犬夜遊 [sage]:2012/05/20(日) 17:18:00.22 ID:0kBB3ytpo

「……さてと。湿っぽくなっちまったところで、ちょっくら気分転換といきますか」
「ふむ、貴様も気づいていたか」
「野良暦ウン十年をなめんじゃねぇよ」

 言うが早いか家の塀を飛び越えて道路へと躍り出る。
 そこには驚いた表情で立ちすくむ警官の姿があった。
 それは普通の警官ではなく我輩たちと同じ存在。いわゆる「偽警官」である。
 偽警官も我輩たちが都市伝説であると気づいたようで、その目には敵意を宿している。

「ようよう兄ちゃんお疲れさん。こんな夜更けにパトロールかい?」
「何もせぬなら見逃してやろう。即刻ここから立ち去れ」
「……ふん、犬風情が生意気な。犬は警察官の命令に従ってりゃいいんだよ!」

 偽警官は腰からすばやく拳銃を抜いて我輩たちに向け――――

「……あ?」

 次の瞬間、その拳銃は我輩の口の中にあった。
 偽警官の指ごと噛み千切って奪い取るという形で。

「ぎゃ――――」
「近所迷惑だ」

 偽警官が声を上げようとした刹那、人面犬が偽警官の喉笛に食らいついた。
 そしてそのまま噛み千切ると偽警官は声もあげずにその場に倒れ伏した。
 我輩は口の中の指と拳銃を吐き捨て、光となって消える偽警官を尻目に人面犬を見やる。

「助かった。礼を言う」
「お、じゃあこのお礼はお前のご主人に抱きしめてもらう、ってことでよろしく」
「前言撤回だ。このような輩に助けられたことを心から恥じる」

 軽口をひひっと笑い流し、人面犬はきびすを返して歩き出す。

「そろそろお暇するぜ。じきにあいつも戻るころだ」
「ああ。次は息子殿も連れてくるといい」
「じゃあ次こそはお前のご主人を紹介してくれよ?」
「くどい」

 ひひっと笑いながら、人面犬は宵闇の中へと消えていった。
 我輩はそれを見送った後、静かにご主人のいる家の中へと戻った。
692 :駄犬夜遊 [sage]:2012/05/20(日) 17:18:28.03 ID:0kBB3ytpo

    ・
    ・
    ・


 外のいざこざには気づかずに、未だ寝椅子に横たわるご主人。
 その様子に安心と呆れの混ざった感情を抱きながら、我輩はご主人を前足でやさしく小突く。

「ふぁ……んっ……。ん、あれ、寝ちゃってた?あ、白ちゃんおはよー」

 「おはよう」ではなく「おやすみ」だご主人。そして寝るのならば布団で寝るべきだ。
 そう戒めるようにご主人を見据える。

「んー、もうこんな時間かぁ……白ちゃんおやすみー……」

 ちらりと時計を見て、再びご主人は寝椅子に横たわる。
 ため息を吐きながら、再び我輩は前足でご主人を小突く。

「んんー……わかったよ、お部屋戻るよぉ……。白ちゃんおやすみー」

 ご主人は観念したように寝椅子から起き上がり、わしわしと我輩を撫で回す。
 ひとしきり我輩を撫で終えると、眠い目を擦りながらも満足した様子で自室へと歩いていった。
 我輩はそれを見届けると、直立して壁の釦を押して居間の電気を消す。
 そして暗闇に包まれた居間の片隅、我輩の寝床へと潜り込み、静かに目を閉じた。

 今日も無事にご主人をお守りすることができた。
 返しても返しつくせぬ恩を返すため、我輩は明日もご主人を守り続ける。
 我輩を救ってくれたご主人に生涯をかけて報いる。それが我輩の生きる道なのだ。



【終】
693 :駄犬夜遊 [sage]:2012/05/20(日) 17:19:22.40 ID:0kBB3ytpo
白墨が出入りした掃き出し窓には足拭きマットが備え付けてあり、
白墨はちゃんとそこで足をきれいに拭いてから家の中に戻ってます。
白墨は賢い子。

私信:犬の話でごめんなさい。
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/20(日) 17:29:48.44 ID:YdK/pNeAO
>>689-692
投下乙ですー
白墨ちゃんいい子だ名犬だ
なんだかんだ言って人面犬もいいやつだ
ほっこりなお犬さんのお話乙でしたー
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 01:43:00.82 ID:QGdDBaYlo
自分の過去作を超えられる気がしない

テーマやネタは、自分のやれる範囲では大差ないだろうし
技術面は、考えて練って行けば超えられるはずなのに
文から熱情が滲み出てこない
青臭さが足りない

ああ、そうか
違う方向に超えて行くしかないのか

違う方向って何処に向かえば良いんだ?

寝よう
696 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/21(月) 07:51:00.54 ID:dl91JpBAO
「こっそりお家を出てきちゃったんだ」
 しいっと指を唇にあててにかっと少女が笑った。
 その人懐こい笑顔に柳の胸がほっこりと暖かくなる。
 お家の人に黙って出てきたら良くないよ、と言うべきなのだろうが、
 今までこの子が送ってきたであろう生活と、昨日の赤毛の男の態度を考えるとノイを叱る気にはなれなかった。
「じゃ・・・ちょっとだけ、街を歩いてみる?俺から離れないようにね?」

 それからはもう大騒ぎだった。
 物心ついてから初めて外の世界を見たノイは大はしゃぎで公園の鳩を追いかけ回したり、
 アイスクリーム売りの車から生まれて初めて買い物をしてみたり。
「あたしね、おかねだして『これください』っていうのはじめて!」
 それは嬉しそうにアイスクリームをぱくついては、お家で食べるのよりずっと美味しいと
 口の周りをべたべたにして笑って話すノイの顔を拭いてやったり。
 木漏れ日がきらきらする川べりで裸足になって水遊びをした。
 子供らしく小魚を追いかける様は無邪気そのもので、なぜこのような少女がと
 彼女の送ってきた、否、送らされてきた生活に改めて柳が不審に感じると同時に、不意に思い出した事。
「わーん!」
 急にノイの泣き声が上がり、吃驚した柳がノイに小走りで近寄ると・・・
「かにさんがはさんだのー」
 ちいさな人差し指を柳に示す。幸い血などは出ていないようだ。
「・・・あれ?」
 カニを摘み上げた柳は、それが既に動かなくなっていることに気づいた。
(死んでる?)
 死んだカニが挟む訳はない。ノイの指を挟んだ時は生きていて、柳が駆け寄るまでのわずかな間に死んだ・・・としか思えない。
(そんな・・・でも、まさか)
 先ほど不意に思い出した、ノイが漂わす『死』の匂い。

「かにさんしんだ?」
 その一言に柳はぎょっとしてノイを見つめる。
 ノイはにこにこ笑ったまま
「かにさん、しんだ?」
 ノイは今までと何も変わらない、人懐こい笑顔で柳を見上げている。

697 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/21(月) 07:52:31.01 ID:dl91JpBAO
「そうだよ。カニさん死んじゃったんだ」
 可哀想だね。お墓を作ってあげよう。
 やっとのことでそれだけを言うと、ちょっと離れた木陰を選び、カニを埋めてその上に石を置いた。
「カニさんかわいそうなの?」
「そうだよ」
「しんじゃったから?」
「・・・そうだよ」
「しんじゃうとかわいそうなの?」
「・・・生き物は、生きていれば、いずれは死んでしまうんだ」
 だめだ。てんで答えになっていない。なんて説明すれば良いんだろう。
「うん。知ってるよ」
 しにがみがね、教えてくれるよ。生きものはしぬとやすらかになるんだよ。
「死神・・・」
 この子は契約者なのか。それも、命を奪うためだけの存在との。
 こんな・・・まだ「死」の意味も現実も知らないような幼子が。
「カニさん、やすらかになったかなあ」
 やすらかになればかわいそうじゃないよね。
 ちょっとばかり心配そうに表情を曇らすノイに、柳は震えそうになる己を叱咤して尋ねた。
「ノイちゃんにそれを教えてくれた『死神』は・・・お家にいる赤毛のおじさんかな?」
「ううん」
 少女が頭を振ると、それに合わせて黒髪がさらさらと揺れる。

「ここにいるよ」

 柳は慄然とした。
 周囲を見回しても、自分と彼女以外の人影はない。
 だが少女の周囲にたゆたう死の匂いを柳はいっそう色濃く感じていた。



続く
698 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/21(月) 08:02:28.59 ID:dl91JpBAO
日食に紛れて投下終了ー
あれです、この頃のノイは死神の操り人形に近い状態です。
とてもではないけど外に出せたものではありません。
ムーンストラックは彼女が無意味に殺しをしないよう、自宅に軟禁しつつ必死に弱者を労ること、命を大事にすることを教育しています。
彼の教育が報われるかどうか…
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 13:12:12.06 ID:asWC90uDO
投下乙ですー
「死」が当たり前な環境で育った子供に死生感や生命倫理を説くとは……なかなかに高難度な教育ですね
一度身近な人が死んだらいえなんでもないですすみません
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 17:11:38.89 ID:nlGRhI9DO
>>695
似たような悩みを持ってる人が居るとは
とりあえず自分は書きたいものができるのを二次創作書きながら待ってる
今やってる自スレ終わったらこっちでまた書こうかと
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 17:57:06.95 ID:nlGRhI9DO
乙でした
あれよ
子供が生まれたら犬を飼うって話思い出した
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 22:40:32.70 ID:xD7ViSuLo
まず今の連載を終わらせなければ…うごご…
703 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/22(火) 06:30:42.86 ID:ZFBQoql50
【第五話】

 時はだいぶ前に遡る。
 女に酌をされて飲む男。
 場所は帝都の遊び人には名の知れた花街のとびきり高級な店。

「旦那様は無口なお方ですね」

「……ああ」

 伊烏善次郎はしたたかに酔っていた。
 妻子を亡くし、何時まで経っても元気を取り戻さない彼を、空気の読めない兄が花街に連れてきたのがそもそもの始まりだったのだ。
 伊烏は飲んだ。
 前後不覚にこそならないが――ならないからこそ怖いのだが――常人ならば死ぬ量を平然と飲んだ。
 それはひどく緩慢な自殺にも見え、彼の顔貌の良いことを知って寄ってきた女たちは何時しか一人を除いて誰も居なくなっていた。

「ああ、困ったお客様ですわ」

 彼女の名は美登利。
 一昔前に大人気だった芸妓にそっくりだということで話題になり、
 彼女に勝るとも劣らぬ芸であっという間にこの街の上位まで上り詰めた天才芸妓。
 
「何故お前はいつまでもここに居る」

「あら、初めて“ああ”以外の返事をしてくださいましたね」

「貴様のような口の悪い女は今まで見たこともなかったからな」

「ご覧のとおり、口は悪いが心根は良い」

 勝るとも劣らぬ。
 当たり前だ。
 彼女こそがその“一昔前に大人気だった芸妓”なのだから。

「……僕はな、妻子を亡くしたのさ
 どこぞの不逞の輩が家に爆弾を投げ込んできてな」

「…………」

「その後バカな兄貴が人の気持ちも考えずにここに僕を連れてきてね
 断ることも出来なかったから我慢して酒を飲み続けてるのさ
 とんでもない酒代の請求が家に行ったら流石のあいつも俺を連れ戻しに来るだろう」

 彼女の正体は絡新婦。
 蜘蛛として歳を重ね、人の姿になることを学び、芸妓として生きて正体がばれそうになったり美味しそうな男を見つけると食って、しばらく行方をくらます。
 そして何食わぬ顔でまた歓楽街の中に紛れ込んで美味そうな人間を探す。
 それが美登利という女だった。
704 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/22(火) 06:31:11.55 ID:ZFBQoql50
「お言葉ですが旦那様、実はそのお酒、既にお水に変えております」

「え」

「嘘です」
 
 クスクスと笑う美登利。
 無表情だった伊烏が一瞬だけ口角をあげた。

「……おまえ、今の話の後でそんなバカなことを」

「適当な生き方しているものですから」

「面白いな、おまえ」

「あらやだ褒めて頂けるなんて」

「褒めてない褒めてない」

「あら」

「ところでおまえは何が出来るんだっけ」

「歌も踊りも三味線もお琴もできます」

 百年も練習していればなんでもできるようになる。
 彼女が人気な原因もこの“なんでもできる”ところにある。
 
「じゃあ一つ歌でも歌ってもらおうか」

「それでは失礼……」

「吾は官軍我が敵は
 大地容れざる朝敵ぞ
 敵の大将たる者は
 古今無双の英雄で
 これに従うつわものは
 共に剽悍決死の士
 鬼神に恥じぬ勇あるも
 天の許さぬ反逆を……」

 無論美声である。

「おい」

 だからツッコミが遅れたのだ。

「え?」

「何故それになる」

「いや流行に……」

「いやそれ……いやいやいやいや
 違う、何かが違う」

「では……」

「今度はなんだ」
705 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/22(火) 06:31:47.69 ID:ZFBQoql50
「てぃやらっぱっぱーたてらりぃってゃとぅらたったったらたー
 まっくちょっとたかすぎきぎょうどりょくがたららたったったたー
 とぅるるっとぅとーどっぴおがでぃあぼろとかきいてないったったったたー」

 無駄に美声。

「まって、なんだその節、その歌詞」

「今考えました」

 美登利は怪異である。
 人間なぞ怖くない。
 相手が怒りだしたら食い殺してまた姿を晦ますだけである。
 前に人間の振りをしていて姿を晦ました時は心中するふりして男を滝に突き落としたのだ。
 もう何も怖くない。

「はぁ……まあいいや、続き」

「え?」

「いやだから続き」

「……」

「まさか考えてない」

「正解です」

「……ひっでえな」

「これをお聞かせするのは素敵な人にだけなんですけどね
 デレ期の証ですよ?
 新しい属性としていけるとおもうんですよね、ヘンデレ」

「なんだそれ」

「変デレ、変な子だけど一度デレ期に入ると止まらない、みたいな
 ただしテンションは変なまま」

「デレ期ってなんだ」

「心奪われちゃったみたいな?
 あと百年もすれば分かりますよ」

 伊烏は額に手を当てる。
706 :街の素敵な怨み屋さん [saga]:2012/05/22(火) 06:33:02.26 ID:ZFBQoql50
「……あーあ」

「陰鬱な気分もぶち壊しですか?」

「まあな」

 そんな時、部屋に店の男がやってくる。

「お代なら家に……」

「いえそれがその……旦那様の家の方からそろそろ帰ってきてくれと」

 善次郎はそれを聞いてニヤリと笑う。
 そう、今の彼は酔っている。
 前後不覚にこそなってないがかなり酔っている。

「紙と筆はあるか?」

「は、はぁ?」

 何事かを紙に書きつけると伊烏は店の男にそれを渡す。

「そいつを兄貴に届けてくれ」

「は、はぁ……」

 男は首を傾げながらも言われたとおりにするために部屋を出る。

「なんと書いて送ったのですか?」

「美登利と言ったな」

「え?はぁ……」

「デレ期だかなんだかなんだろう?」

 伊烏善次郎は酔っている。

「もう良い、僕と一緒に暮らそう」

 わりと悲壮な“もうどうにでもなれ”から来た発言なのだが基本無表情なので良く分からない。
 酒のせいでむしろ機嫌がよさそうに見える。

「妖怪もお金様には勝てやしない」

「え?」

「なんでもありません
 別に構いませんよ
 旦那様、すごく素敵ですし
 正直言えば……キャッ」

 顔を赤らめる美登利。
 こういった女性の反応に慣れている伊烏は

「あーはいはい」

 冷たいものである。

「やだなんか適当にあしらわれちゃってる……」

 飽きたら殺せばいいし
 そんな軽いノリで美登利は善次郎についていくことを決めた。
 そんな彼らの昔話。

【第五話 了】
707 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/22(火) 23:36:30.20 ID:81NBweMAO
恨み屋さんの人乙ですー
美登利ちゃんww歌wwwwww
ヘンデレ可愛いよヘンデレ

>>699
>なかなかに高難度な教育ですね
>一度身近な人が死んだらいえなんでもないですすみません
それは考えてはいるんですが…今出してるキャラで殺してもいいのが居ないのでいっそ半殺しくらいならまあいいかとか(オイ

>>701
>あれよ
子供が生まれたら犬を飼うって話思い出した
やっぱり子供の情操教育にはペットですよねー
でもそれすら死んでしまってる場合どうしたららら
708 :本日、くしゃみ後キス ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/23(水) 00:03:10.27 ID:4ANFoUkAO
「・・・くしょっ!」
「・・・大丈夫?」
 風邪なんか引くような人じゃないと思っていた、と言うと
「てめーはボクの事をバカだと思ってるんですかこんちくしょー・・・くしょん!」
 事実その通りですとは言えないから丁重に目をそらすだけに留めて、新しいティッシュの箱を開ける貴也。
「うう。鼻水もひどいし、涙も止まらねーのですよ。ぐすっ」
 くしゃみの度に生成色のドレスに併せた白薔薇のコサージュをあしらったミニハットがずり落ちて、
 清くも正しくもなくていいから美しくあるべきロリィタがこれでは台無しと幻は鼻をぐすぐす鳴らせた。
 鼻のかみすぎで鼻もその下も真っ赤になってしまい、ティッシュが触れるだけでも痛い。
「まるで・・・はっ・・・花粉症なのですよ・・・くしゅっ」
「まるでじゃなくて、花粉症そのものだよ。マンションの隣の松の木じゃない?」
 確かに窓の外に目をやれば、隣のお屋敷の松の木々が傍迷惑な黄色い粉を風に任せて振りまいていた。
 都市伝説でも花粉症になるのだなあと、改めて感心しながら貴也は冷蔵庫の扉を開ける。
「はい、ヨーグルト。花粉症にいいらしいよ」
「それこそ都市伝説じゃ・・・はっ・・・」
 くしゃみが途中で止まったらしく、もどかしげに鼻をぐすぐすいわせる幻の前にヨーグルトのパックを差し出すと
 玄関から響いた軽快なチャイム音に返事をしながら貴也が出て行く。
 それを見送った幻はヨーグルトを一口ぱくり。
「勝手にシリアルを入れんななのですよ・・・くしゅ!」
「・・・あれ、桐生院さん」
 玄関に立っていたのは、黒髪の兄妹。「組織」о(オウ)No.に属する桐生院蘇芳と、その妹のるりだった。
「何か?」
「聞いたわよ〜」
「幻さん、花粉症なんですってー?」
 物見高いるりがどこからか聞きつけたものらしい。抱えた書類らしき紙袋を貴也に向かって突き出した。
「ささやかだけどお見舞いよ。貴也、あんた仮契約ぐらいは出来るわね?」
「・・・仮契約?」

 幻がくしゃみと共に3個目のヨーグルトのパックを開封した所で
「新宮さん」
「るり達くしゅっ!帰ったのですか。何しに・・・ずびっ来やがったですかあいつらくしゅん!」
 貴也はそれには答えず
「俺と・・・あの・・・」
「早く言えですよ」
「えーと・・・俺と、キスしよう?」
「・・・・・・」

 中身入りのヨーグルトのパックが、貴也の顔面を直撃した。
709 :本日、くしゃみ後キス ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/23(水) 00:03:40.67 ID:4ANFoUkAO
「ちょっと!これ非道い!」
「ひどいのはてめーの脳味噌ですよ!ぐすっ・・・何寝言言ってんですか!」
 「キス」なんて甘い単語が何光年の彼方に吹っ飛ぶような色気のない罵倒に、貴也の反論もしぜん声が高くなる。
「ちがっ・・・違う!」 何が違うのか彼自身にもわからないまま一枚の書類を突きつけた。
「・・・都市伝説・・・仮契約書?」
 桐生院兄妹が持参した『お見舞い品』
「『花粉症はキスで治る』・・・!」
「・・・治療行為の一環で仕入れた都市伝説のモニターになれってさ」
「ふざけやがってですよー!くしゃん!」

「じゃ、・・・そーゆー訳で」
 幻の腰掛けている椅子の前に立ち、片手は彼女の肩に、もう片手は顎にそっと触れる。
「どーゆー訳ですか!どけですよふざけんなですよ!」
「いやあの・・・大丈夫だから。ちょっと目瞑っててくれれば、すぐ終わるから」
 これからキスをする男女、というよりむしろ歯医者の治療台に乗っかる子供を宥めるような口調だが、今はお互いそれどころの話ではない。
「すぐ終わりゃーいーってもんじゃねーですよ!ずびっ・・・嫌なもんは嫌なのですよ!」
 尚も近づいてくる同居人の頭をぐいぐい押して遠ざけようとはするものの
 目は痒いし涙は出るし鼻水が出る。それだけで集中力はがた落ち。押しのける力もいつもの3割減と言ったところだ。
(やべーですよ!)
 このままではいずれ力負けしてしまう。
「わかったのですよ・・・・」
「新宮さん?」
 急に体の力を抜いた幻を、貴也は訝しげに見下ろした。
「さっさと済ませろですよ。・・・ぐしゅっ」
「あ、ああ・・・」
 幻の態度の急変には不審を抱いたものの、貴也はあまり遠慮せずに幻の両肩に手を掛け、そっと顔を近づける。
「てめーも目を瞑れなのですよ。くしゅん!」
 言われたとおりに目を瞑ると・・・
「えい!!」
 ごがっという鈍い音と衝撃の中、貴也の意識は遠のいていった。
 テーブルの上の一輪挿しで殴られた事を知るのは、彼が目を覚ましてからの事となる。

「・・・てゆーわけなのですくしゅん。るりにも嶋くんにも困ったものなの・・・はくしゅん!」
 幻が『避難先』に選んだのは新田家だったが、正直これは失敗と言わざるを得なかった。
710 :本日、くしゃみ後キス ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/23(水) 00:04:25.27 ID:4ANFoUkAO
 わりかし広い日本家屋である新田家の、それなりに広い庭には
「ここにも松の・・・くしゅっ!まさかあるなん・・・は、はっ・・・」
「幻、だいじょーぶ?」
 ノイがいたわしげに背中をさするが、吐きそうとかそういう訳ではないのであまり役には立っていない。
「早く治してもらえばいーじゃないの」
 飛縁魔はによによと笑いを浮かべて携帯を手に取る。貴也を呼ぶつもりなのだ。
 やめろですよーと飛縁魔から携帯を取り上げようと詰め寄る幻を羽交い締めにすると、柳に携帯を放り投げる。
「はやく貴也を呼びなさいっ」
「オッケー!」
 柳の方も飛縁魔に負けず劣らず、表情から野次馬根性があふれ出ている。
「やめなよ、幻がいやがってるよー」
 ちなみに極とリジーは無視を決め込み、新田家一番の常識人ムーンストラックは外出中。
 この場で幻の味方をしているのは最年少のノイだけという有様だ。
(どいつもこいつも、大人気のねー連中なのですよ!)

 此処にいてはかえって危険と新田家を早々に辞すると、マンションに帰る事もできず
 アイスクリームショップに立ち寄るとそこには先客が。
「やあ、幻」
「・・・てめーらですか」
 其処にいたのは藤原風夜。と彼の連れであるアーサー、ギルベルト。
 とある事件で幻が知己を得た契約者達だ。
「買い出しの帰りにさ、甘いものが欲しくなっちゃって」
「そ、そーなので・・・くしゅん!ボクは今追われはくしゅん!」
「また追われているだと?」
「ど、どうか、したのか・・・?」
 幻がこれまでの経緯を粗方話すと、風夜がくすくす笑い出す。
「笑うんじゃねーですよ。ずびっ・・・ボクは深刻に切羽詰まってるのですよ。ぐすっ」
「いや、悪い・・・でもさ、ホントにそんなに嫌なのかい?」
「嫌に決まってぐしゅっ・・・だって」
「で、でも、幻は・・・貴也のこと、そんなに、嫌じゃないように、見える・・・俺には」
 やっとという体で言葉を紡ぎ出したギルベルトを、幻がじとーっと睨む。
「ひ!ご、ごめん・・・」
「ギルを怖がらせないでくれよ。俺もそう思うよ」
 嫌いだったら一緒に住んだりしないだろ?と震えるギルベルトを抱きしめつつ風夜。
 それは正論ではあるのだが・・・
「まほろー!」
 ミント色のワンピースに白いベレーを合わせた少女が、大声と共に店に飛び込んできた。
711 :本日、くしゃみ後キス ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/23(水) 00:04:55.97 ID:4ANFoUkAO
「ノイ・・・ぐしゅっ」
「あのね、貴也がうちに来たの」
 無理強いして悪かったって。柳と飛縁魔も、ちょっとははんせーしてるって。
 聞きながら幻は鼻水がまた出てきたのでぢーんと鼻をかみ、
 物を食べてるところでとアーサーが辟易した表情で幻を見やる。
 風夜が肘で幻をつついた。
「愛されてるじゃないか?」
「うるせーのですよこのやろー」
「いいじゃないか。嫌いじゃないなら」
 花粉症治したいから。今はそれでいいじゃないか。
「・・・幻ってさー、もしかしてキスしたことないの?」
 だからもっとロマンチックなのがいーのと聞かれて内心大いに慌てたが
「秘密なのですよー」
 と誤魔化しておいた。もっとも、風夜はによによと笑っていたので、彼に通用したかは定かではないが。

「ずびっ、くしゅっ」
 帰ってきてからもひっきりなしに鼻をかみ、くしゃみを連発する幻と文庫本に
 交互に視線をやっては、何事かを言いあぐねて口を閉ざす貴也。
 そしてそんな貴也の隣に腰掛け、横目でちらちら様子を伺う幻。

(ホントにそんなに嫌なのかい?)
(幻は・・・貴也のこと、そんなに、嫌じゃないように、見える・・・俺には)
(だからもっとロマンチックなのがいーの?)
 皆の言葉が次々に胸中に蘇る。
 ボクはこいつが・・・
 どうなんだろう。
 風夜の言うとおり、嫌いではない。
 でも、「嫌いじゃない」と「好き」はきっと、たぶん違う・・・

(花粉症治したいから。今はそれでいいじゃないか)

「そーですね・・・『今は』それでいーんですね」
「?どしたの?新宮さん」
 貴也が幻を振り返った瞬間。
 本日2度目の一輪挿しが、貴也の側頭部を直撃した。
「いって・・・っ!!」
 その一言を残して気絶した貴也をそっと覗き込めばゆっくり重なり合う互いの顔。

 ぎゅっときつく目を閉じて、唇に、柔らかく触れる感触。

「起きろなのですよー」
「・・・!ちょっ、新宮さん!」
「モニターのお役目終了なのですよ。ご苦労さんなのですよ」
 腰に手を当て言い募る幻の涙と鼻水は既に綺麗に止まり、くしゃみももうする様子すら見せない。
「え・・・いつの間に!?ちょっと待って!」
 もう一回試させてと叫ぶ貴也にふざけんなとばかりに蹴りが入り、本日3度目の気絶と相成った。

712 :本日、くしゃみ後キス ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/23(水) 00:05:28.68 ID:4ANFoUkAO
 同じ頃、学校町内のо(オウ)-No.本拠地。
「るりさん、なんであっちの方を渡したのー」
 そう呟く蘇芳が手にしているのは「ヨーグルトを食べると花粉症が治る」の仮契約書。
「あのふたりにあれ渡したら、揉めるの見えてるけどなー」
「あら、だって兄上」
 苺の柄のティーカップにカモミールティーを注ぎながら、るりが意味ありげに笑う。

「今日は『キスの日』なんですってよ」



END
713 :本日、くしゃみ後キス ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/23(水) 00:06:49.54 ID:4ANFoUkAO
キスの日一番乗り成功…かな?
とりあえず花子さんとかの人には焼き土下座しまっす!
714 :見送った後に  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/05/23(水) 00:42:31.16 ID:CSTE8T6W0
 幻とノイを見送った後、風夜はにこにことした表情で、アーサーとギルベルトを見た
 びくっ、と、ギルベルトが小さく体を跳ねらせる

「ねぇ、アーサー、ギル」
「…………ギルベルトが恥ずかしがるから、せめて、人目のない場所でやるように」

 先手を打ってのアーサーの言葉に、えー、と、不満そうな表情を浮かべる風夜
 ギルベルトが、少し、ほっとしたような表情を浮かべる

「まだ、何も言ってないじゃないか」
「……大方、想像がつく」

 むしろ、宣言してからやってこようとしただけ、まだマシか
 しばし、子供っぽく不満そうな表情を浮かべていた風夜だったが、仕方ないか、とやっと諦めてくれたようだ
 アーサーも、ほっとする

 ………が
 直後、アーサーは、己の失言に気づかされる

「それじゃあ、帰ってからたっぷりと、二人にキスしてあげるね」

 ………
 ……………
 …………………

 !!!

 「人目のない場所でやれ」、と、アーサーはそう言ってしまった
 つまりは、そういう事になってしまう

「……待て、風夜。さっきのは……」
「それじゃあ、帰ろうか」

 ぎゅ、と、アーサーとギルベルトの手を、上機嫌で握った風夜
 …………逃げられない

「………………すまない、ギルベルト」
「あ、ぅ、ご、ごめんなさい……ア、アーサーは、謝らなくて、いい」

 にこにこと、上機嫌な風夜に、半ば引きずられるような体勢で、アーサーとギルベルトは家路につくことになってしまったのだった








続き?誰得だよ。だから終わる
715 :見送った後に  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/05/23(水) 00:44:04.67 ID:CSTE8T6W0
鳥居の人乙!!
やだもう可愛いなぁもう


そして、三人を使ってくださったお礼というわけでもありませんが、野郎ともでキスの日
駄目だあいつ、早く何とかしないと
716 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ :2012/05/23(水) 02:28:06.91 ID:sWclysu10
>>714
花子さんとかの人乙ですー
相変わらず3人は可愛い…ほのぼのラブラブかわゆすぐる
>「…………ギルベルトが恥ずかしがるから、せめて、人目のない場所でやるように」
アーサーってば彼自身は人前でもいいのねとk(真っ二つになって転がっている

717 :[  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/05/23(水) 16:51:09.14 ID:xRGIuoYa0
 学校町の商業地区に店舗を構えているブティック「カナリア」。店内は、いつも女性客でごった返している
 店長である獄門寺 菊は、無口なうえに説明ベタ、コミュニケーション能力もやや欠落しているふしがあるのだが、不思議と接客をこなせている
 一体どうして、菊のような人間に、このような接客業がこなせるのか。菊の契約都市伝説である「死ねば良かったのに」こと紫苑は、前々から不思議でならない
 客である若い女性達の言葉に「……ん」と、小さく頷いたり、時折短く返事を返しているだけなのだが、ちゃんとコミュニケーションがとれている
 まぁ、紫苑も、菊と契約したての頃は、菊が何を主張しているのか、何を言いたいのか、判断しきれずに困った事は何度でもあったのだが、流石に契約から一年以上が過ぎて、ある程度は判断できるようになってきた
 この店の客は常連が多いようなので、客の方も菊に慣れているせいなのかもしれない。店で働いている女性等、「何故、その指示で理解できるのだろう」と不思議に思うような指示でも、きちんと理解して働いている

(ほんっと〜に、不思議よね……こんな不思議が許されるのも、学校町だからかしら、ね)

 他の土地よりも、不思議や非日常が見逃されやすい街、学校町。菊のような存在がごく普通に生活できるのも、学校町だからなのかもしれない
 そんな事を考えながら、紫苑は紫苑なりに、店を手伝っていた。己は菊と契約しているのだから、これくらいは手伝う事は当たり前である、と考えている
 都市伝説は、人間と契約したのならば、出来る限りその契約者の力となってやるべきである。少なくとも、紫苑はそう考えている。もちろん、ただ尽くし続けろ、とは言わない。だが、契約者の身に危険が訪れようとしていれば助けるべきであると考えているし、不幸な境遇にあるというのならば、そこから脱出する手助けをするべきであると思う
 契約者からの見返りを、要求するつもりも期待するつもりもない。そりゃあ、あった方が嬉しいかもしれないが、契約する事によって、その存在が強固なものとなっている時点で、ある程度の見返りはもらっているようなものなのだ。それ以上を望むのは、欲深ではないかと思う
 契約者の奴隷となれ、とは言わない。理不尽な要求をされれば、突っぱねても問題はない。契約者と都市伝説は対等か、都市伝説が少し契約者に対して尽くして見せるくらいがちょうどいい………それが、紫苑の考えだ。奴隷や道具のように扱われるのはまっぴらである
 その辺、菊は都市伝説である紫苑に対して、ややどころかだいぶ甘い扱いだ。家族も同然に扱われるのは、紫苑としては、どこかくすぐったいというか、まだ少し慣れない感覚がする
 都市伝説として生まれ、都市伝説として生きてきた紫苑には、家族と言う者も存在しない。そんな紫苑を、まるで家族のように迎え入れてきた菊。都市伝説と言う異質な存在を、そのようにあっさりと受け入れてきた姿勢に対しては、やや危機感が足りないとも思うのだが
 その分、自分がしっかりするべきだ、とも紫苑は考えている。実際、菊は平気で変な生き物(都市伝説)を拾って帰ってきたりと、危機感が足りなすぎる。危険な生物だったらどうするつもりなのか、全く………

「…………紫苑」
「あら、どうしたの?」
「……時間、休憩」

 菊に言われて時計を見ると、確かに、そろそろ紫苑の休憩時間だ
 新商品を並べる作業も一段落した事だし、休ませてもらおうか

「じゃあ、休憩してるわね。あんたも、頃合い見てちゃんと休みなさいよ?」
「………ん」

 こくん、と、紫苑の言葉に頷く菊
 この店での仕事中、菊が休んでいる姿、と言うものを、紫苑はほとんど見たことがない。それでも、疲れた様子もなく見えるのは、菊が無表情だからなのか、本当に疲れていないのか。前髪で目元が隠れた菊の表情や考えは、いつだって読めないままだ
 店の奥への休憩室へと向かおうとする紫苑、そうすると

「………」
「?」

 つ、と。菊が、軽く紫苑の腕をつかんで、止めた。休めと言ったくせに、どうしたというのか。紫苑は首をかしげて、菊を見上げた

「何よ、どうしたの?」
「…………ん」

 ぱさり、と、一瞬、長い前髪の間から、菊の目が、見えた。どこか眠たそうな、何かをしっかりととらえているようで、しかし、何も見ていないような、不思議な眼差しが、見えて
 その、直後

 額に感じた、柔らかな感触

「……………は?」

 触れてきたのが、菊の唇であると
 気づくのに、そう時間はかからず

「っな、何すんのよ!いきなり!!」
「……………キスの日」
「は?」
「今日は、キスの日、だと。客から、聞いた」

 ぽつ、ぽつ、と。紫苑の疑問に、菊はきちんと、答えてくる

「額への、口づけは。祝福や友情を意味する、とも、聞いた」
「…………………それで?」
「だから」

 ……うん。だから、口づけたの、だろう。多分、それだけだ。今日が「キスの日」と言う日だから、誰かに口づけた方がいいだろうと、判断したのだろう
 菊の判断基準は、時として常人には理解不能である

 とりあえず
 紫苑がすべきことは、一つ

「大勢の人間が診てる前で、いきなり不意打ちで何してくんのよっ!?」

 ばっちーーーーーーん!!!と
 盛大に菊に平手打ちをした後、ダッシュで休憩室へと逃げて行った紫苑
 その後姿を見送って、自分は何か悪いことをしたのだろうか?と、菊は不思議そうに不思議そうに、首をかしげたのだった




 その日の夜、「組織」での訓練から帰ってきた水城が紫苑と同じ被害にあったり、「結局、菊の性別は男なのか女なのかどっちなんだ」と言う疑問が紫苑と水城の間に浮かんだりもしたのだが
 蛇足にしかならないしどうでもいい事なので、語られる必要は特に存在しない

終われ
718 :「死ねば良かったのに」と、彼女は久々に呟いた  ◆nBXmJajMvU [sage saga]:2012/05/23(水) 16:52:25.94 ID:xRGIuoYa0
痛恨のタイトル入力ミス。正確なタイトルはこの書き込みの名前欄に書かれたものになります

キスの日なので、菊達の様子
菊の行動を理解する事なんて菊以外には無理に近いですよ、俺だって理解できません
719 :キスは都市伝説の味 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/23(水) 17:07:35.34 ID:4ANFoUkAO
2012年5月23日の中央高校。
 体育館の裏では男子生徒が女子生徒を手紙で呼びだすという、有り体な告白の風景が繰り広げられていた。
「・・・好きな人がいるんです。ごめんなさい」
 少女の言葉に男子はがっくりとうなだれかけたが、振られたとはいえ好きな女子の前でみっともない所は見せたくない。
「そっか・・・残念だよ」
 誰が好きなの?と彼はなるべく嫉妬を見せないように聞き出す。
「隣のクラスの新田君」
「・・・・・・」


 新田だとおぉぉぉ!!
 中学の頃から、俺はアイツが嫌いだった。ああ嫌いだったさ!
 確かにアイツは勉強もスポーツも出来るし顔もいいよ。言っとくけど別に嫉妬じゃねえぞ。リア充度は断然俺のが上なんだからな。
 ただ俺がせっかくみんなと、もちろん女子も交えて遊びに行こうぜと言っても
「別にいいです」
 とまあ、お高く止まりやがってそれがムカつくんだよ。試験前にノート貸してくれって言っても冷てー返事しか返ってこねーし。
 中学じゃ、男子どころか女子も寄りつかねーで、イケメンの無駄遣いもいいとこだったヤローだぜ?今だって愛想ねーのは変わってねーし。
「よぉし・・・」
 この時、俺は決意した。
 今こそ俺の都市伝説の能力を解放する時だとな・・・
「はーっはっはっは!!」
「あ、あの・・・」
 気づけば、告白の途中だった愛しの彼女はドン引きしていた。・・・泣かねぇよ

 放課後を待ってアイツの教室へ行く。あ、居やがった。
「お。なー新田!」
「・・・何ですか」
 ノートなら貸しませんよとにべもなく言われ、心の中の殺意メーターがちっとばかり上がる。
「そんなケチくせーこと頼まねーよ」
「手短に済ませて下さい」
 くくうぅ・・・相も変わらず可愛げのねえヤツだよこいつは!まあコイツが愛想良くても、俺は可愛いとは思わねーけどな!

「ちょっと俺とキスしてくんねー?」

 あ、待て待て、誤解すんじゃねーぞ!?
 俺の契約都市伝説は「キスすると顔が似てくる」
 元は「テレゴニー」とかいうらしくて、他にも色々使い道があるらしいが、よくわからなかったので、至ってシンプルに使っている。
 ただし「キスすると顔が似てくる」という使い方に特化しているので、キスするだけで相手そっくりの顔に変化することが出来るのだ!
 すげーだろ!俺を誉めろ讃えろひざまづけ!
720 :キスは都市伝説の味 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/23(水) 17:08:11.46 ID:4ANFoUkAO
 幸い身長や体格は俺と新田はそう変わらない。制服だから顔さえ変われば見分けはつかなくなる。
 新田そっくりに化けて彼女を改めてデートに誘ってもいいし、思いっきし冷たくしてヤツの株を下げてから改めて俺がアプローチしてもいい。俺って頭いーな、おい!
「・・・僕もそういった相手は、選びたいのですが」
 気がつくと、新田のヤローはじりじりと後ずさりしている。あれ、なんかコイツ顔が赤い。

 ・・・・・・あああああ!!なんか俺ものすごい誤解されてる!?

「いや違うんだよ、待ってくれよ、話聞いてくれ」
「知りませんでしたよ・・・てっきり女性が好きなのだと」
 言いながら、ふいっと顔をそらしやがった。
「いやいやちげーって!ちょっと頼まれて欲しいだけなんだって!」
 俺だって好きでヤローとキスする訳じゃねーよ!俺が欲しいのはてめーの唇じゃなくて、そのいけすかねー顔なんだよ!
「普通『ほんのちょっと頼まれるだけ』でそんな事言いませんよ!」
 ヤバい俺完全にホモだと思われてる。
 釈明したくても俺のナイスアイデアが今こいつにバレたら水の泡になるに決まってる。
 とりあえず俺は新田と距離を詰めるべく、歩み寄ろうとした。
「いちいち顔赤らめてんじゃねーよ!まぎらわしーだろ!」
なんとか誤解を解きつつコイツとキスする方法はねーもんか。
 新田は日頃の澄ました顔はどこへやら、がたがたとやかましく机やら椅子を押しのけて逃げ出した。
「待てってばおい!てめーにそんな感情持ってねえから安心しろよっ」
「なおの事願い下げですね!」
 あーもう何で俺ら狭い教室の中で机や椅子蹴倒して追っかけっこなんかしてんだ馬鹿らしいっ。
 そのうち廊下から女子達の声が聞こえてくる。
 この声は・・・確か。「ごめんね、待ってて貰って」
「う・・・ううん、ぼ・・・私も今日は裂兄ぃと別に帰るし」
「仲良いもんねー、別に帰るの珍しくない?」
 神崎漢と、愛しのあの子!ヤバい!早く新田に化けてあの子を捕まえないと帰っちまう。
「か、神崎さん」
 一瞬だけ、新田の逃げるスピードが緩む。
「新田、スキありぃっ!!」
 俺は机に飛び乗ると、更にそこからジャンプして新田に空中から跳びかかるっ!!
「うわっ!」
「新田、覚悟おおお!!!」
 
721 :キスは都市伝説の味 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/23(水) 17:11:35.56 ID:4ANFoUkAO
 がたたーんという派手な音とともに床にひっくり返った新田を押さえつけて素早く唇を重ねる。
 ・・・これがあの子ならいーけど、新田のヤローじゃふにふにして気持ち悪いとしか言いようがないぜ正直・・・
「やだっ、今の何の音?」
 声とともにがらりと開いた扉の方を振り返ると・・・
「にっ・・・新田・・・さん」
「いやああー!!」
 硬直した神崎と・・・あの子。
「にっ・・・新田さんが・・・男子と」
 そこで俺は、今自分がキスの効果で新田の顔であること、さらに床に仰向けにひっくりかえったホンモノの新田の上にのし掛かるという
 ひじょーにいかがわしい体勢であることに思い至った。
 廊下からひっくり返っているホンモノ新田の顔が見えているかはよくわからん。
「いや待ってこれ誤解!誤解!」
「新田さんが、男性が好きな人だったなんて・・・」
 それだけ言い残して、俺のあの子はあっという間にきびすを返して去っていった。
 ぼーぜんと立ち尽くしていた神崎もやがて我に返ったようで
「あの・・・お邪魔してす・・・済みません」
 それだけ言うと、扉を静かに閉めた。ぱたぱたと足音が去ってゆく中で新田が
「か、神崎さん・・・」
と、ぼーぜんと呟くのが聞こえた。

「どっ・・・どうしてくれるんですかっ!!」
 今まで見たことない新田、本日2回目。血相変えて俺の胸倉を揺さぶってる。
 俺の顔が新田であることなんか、既にどーでもよくなっているらしい。
「誤解された・・・」
 今すぐ釈明しに行けとは詰め寄られたが、俺にとってはあの子に誤解された方がより重大だ。
 俺自身は振られ、切り札の新田はホモ扱い。
 ・・・待てよ。
 新田がホモなら、あの子も俺になびいてくれるかも!!
 そうと決まれば早速アタックだ!
「俺ちょっとヤボ用!お前神崎の誤解は自力で解けよ!じゃーな!」
 無責任だとわめく新田の声を背後に、俺はウキウキと教室を飛び出し・・・
 うっかり能力を解くのを忘れて新田の顔のまま彼女をデートに誘ってひっぱたかれた。
 畜生!次回こそ!


「・・・てことがあってね、裂兄ぃ」
「なんだよ、あいつも済ました顔してやることやってんじゃねーか。でもあいつ、そーゆー趣味があったのか」
「じゃ、にぃにぃが男の娘だってバレたら、かえってキケンなのね!大丈夫!にぃにぃは私が守るから!」
 という会話が、黄昏家で交わされたとか。



END
722 :キスは都市伝説の味 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/23(水) 17:16:01.11 ID:4ANFoUkAO
キスの日2本目投下。
シャドーマンの人に焼き土下座あああ!
せっかく漢ちゃんをお借りしたのに可愛く書けなくてごめんなさいなのです
おまけにれっきゅんと麻夜ちゃんまでお借りしてしまったorz正直不憫な極を書きたくて書いた。本当はもっと可哀想にしたかったのー
極は両刀だから別に男でも恋愛対象になるけど、それだけに好きでもない男とはキスなんかしたくないのです。
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/23(水) 17:21:10.29 ID:4ANFoUkAO
>>717
花子さんとかの人乙ですー!
無口な菊様らしい親愛の表現にほっこりしましたの。
水城さんにはどこにするのかなーと思ったら同じとこだったか。そうだよね家族だもんね!
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/05/23(水) 19:47:55.08 ID:p00HOa8B0
乙でしたー
これはwwwwwwww
ある意味すごい能力だけどキスしなきゃいけないという時点でネタに使われる予感しかしないというwwwwww
いいぞもっとやれ

>>723
おでこ以外のどこにやれと言うのですか

ちなみに、キスした箇所による対応感情はこれらしいという情報を得ておいたのでそっとはっておきますね↓

髪:思慕
額:祝福、友情
瞼:憧憬
耳:誘惑
頬:親愛、厚意、満足感
唇:愛情
喉:欲求
首筋:執着
背中:確認
胸:所有
腕:恋慕
手首:欲望
手の甲:敬愛、尊敬
掌:懇願
指先:賞賛
腹:回帰
腰:束縛
腿:支配
脛:服従
足の甲:隷属
爪先:崇拝
725 :キスの日合同ショートショート [sage saga]:2012/05/23(水) 23:03:11.98 ID:OJvZb5Ia0
【夢幻泡影】
(裂邪>…ミナワ、今日はキスの日らしいな
(ミナワ>だからって体育倉庫になんか誘って……裂邪ってば大胆なんだから///

(ミナワ>漢さんの誘いを断ってたのはこの為だったんですか?
(裂邪>まぁな、ゆっくり楽しもう、ぜ

(ミナワ>んむっ、ふぁ、れ、れつ、やぁ……♪
(裂邪>ミナワ………
ヴー,ヴー,ヴー...

5時間後―――
(ローゼ>《遅いですわ!今まで何してらしたの!?》
(裂邪>すまん、感情が高まった



【赤い幼星】
(蓮華>「キスをすると妊娠する」と契約した男性が学校町内で女性を襲っていると連絡が
(ローゼ>キスの日に酷い事件ですわね…同じ女として許せませんわ

(ローゼ>丁度放課後でしょうし、れつ……“Rainbow”に出動要請致しますわ
(蓮華>そういう事は自分でしないで部下に任せて下さい

プルルルルルルルル...
(ローゼ>………あら?出ませんわね……?

5時間後―――
(裂邪>《こちら“Rainbow”、何があった?》
(ローゼ>遅いですわ!今まで何してらしたの!?
(蓮華>(今更……フリーの契約者によって解決したから良かったものの)



【邪気殺し】
(清太>(姉ちゃん来た! 今日はキスの日だからあの柔らかいほっぺにちゅぅしても怒られない筈!)

(清太>おーい姉ちゃッ―――(あれ? 後ろに誰か………)

(藍那>? 何か御用ですか?
(男性>お嬢さん、僕の子供を―――――――

5分後―――
(藍那>こら清太! 知らない人を殴っちゃダメでしょ!!
(清太>違うんだ姉ちゃん! これには深い訳が!
(男性>こ……こど、も……産ん、で………ガクッ



【神力秘詞】
(漢>(新田さんがあんな事…………ううん、きっと、何かの間違いだよ、きっと)

(漢>(何か、理由があって……えっ、と倒れた拍子に、とか……
   う、うん、そうだよきっと、あの時の裂兄ぃも――――)

(漢>(……ぁ、ち、違ッ、あれは、その、キスじゃ、なくて、その………///
   そんな、別に、僕はキスしたかっただなんて考えて……///
   う、うぅ、何であの時のこと思い出しちゃったんだろう…///)

(女子>…どうしたの神崎さん? 顔真っ赤だよ?
(漢>ふえ!? あ、あはははは、き、今日は暑いね;
726 :キスの日合同ショートショート [sage saga]:2012/05/23(水) 23:03:58.19 ID:OJvZb5Ia0
【仄暗い魂】
(ルート>あ、日天さん…!
(日天>ルート…!

「「あのッ………あ、」」

(ルート>え、っとぉ、日天さんからお先にぃ
(日天>いや、レディファーストだ、ルートから話してくれ
((と言われても…))

(ルート>(『キスの日だからキスして』なんて言えないよぉ///)
(日天>(『キスの日だからキスしよう』なんて言う訳には……///)
(エーヴィヒ>(全く、何をやってるんだろうねあの2人は;)



【俺は幻牙】
(光陽>なぁ美菜季、俺達ってまだキスしてないよな
(美菜季>ひぇ!? な、何よいきなり!?

(光陽>いや、その、今日はキスの日らしいし、これを機にと思って……ダメか?
(美菜季>え………ぁ、ううん……いい、よ?///

(光陽>……美菜季…///
(美菜季>光陽……///

(苑樹>いよっ! 熱いねお二人さん! ヒューヒュー!
(光陽>げっ、おやっさん何時の間に!?///
(美菜季>も、もぉ! 良い所だったのに邪魔しないでよお父さん!!///



【戦星術師】
(北斗>んんっ…………んぅっ…………んっ………

(北斗>ぷへぁっ…ち、ちょっとアミーさん、キスが長すぎるよぉ……
(アミー>ははは、ごめんごめん。キスの日だから張り切ってしまってね

(アミー>でもそろそろキス以上のこともしてみたいところなんだけど
(北斗>ひゃんっ!? ど、どどどどこ触ってるんですか!ダメですよそんなの!!

(華南>……どうして断ったの…………?
(北斗>そんなことで泣かないでよ!? 泣いたってしないから!!



   終わっちまえ
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/23(水) 23:07:43.61 ID:ry8AgkyNo
皆様投下乙ですー
甘い、ただひたすらに甘いぞ
これがキスの日の能力か……恐ろしいいぞもっとやれ
あ、リクエスト採用感謝ですー

>>724
Auf die Hande kust die Achtung, 手なら尊敬。
Freundschaft auf die offne Stirn, 額なら友情。
Auf die Wange Wohlgefallen, 頬なら厚意。
Sel'ge Liebe auf den Mund; 唇なら愛情。
Aufs geschlosne Aug' die Sehnsucht, 瞼なら憧れ。
In die hohle Hand Verlangen, 掌なら懇願。
Arm und Nacken die Begierde, 腕と首なら欲望。

Ubrall sonst die Raserei. それ以外は、狂気の沙汰。

原典って大事だと思うんだ
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/23(水) 23:14:54.46 ID:feq2n0Byo
>>727
前に花花の人が10のお題で書き切ってた
あれは凄かった
729 :誰がために [sage]:2012/05/24(木) 00:12:06.59 ID:eqretpHDo

「もうやめにしよう」

 離れた唇から紡がれた言葉に、一瞬胸が詰まる。

「もう、何言ってるのよ、冗談ばっかり……」
「まじめな話だ。こんな関係、もうやめにしよう」

 病院のベッドの上、彼はそう私に告げた。

「……あなた、自分が何言ってるかわかってるの?」
「わかってるさ。明日からはもう、ここには来ないでくれ」
「わかってないじゃない……あなたは私のキスがないと……死んじゃうのよ」

 『キスをすると免疫力が高まる』。それが私の都市伝説。
 キスをすることで自分のみならず、相手の免疫力も高めることができる。
 今彼が生きているのも、数日おきにキスをして免疫力を高めて、なんとか病魔と闘っていられるから。

 それなのに――――

「無駄な延命に、助かる見込みのない命。うんざりなんだよ、正直な話」
「でっ、でも!あと何年かしたら治療法が見つかるかも、って先生も――」
「君には言ってなかったけれど、最近は君のキスを貰ってから1日も経たないうちに症状がぶり返して来るんだよ」
「っ……!そんなに酷くなってたのに、何で言ってくれなかったのよ!?」
「言えば君は毎日でもキスをしに来るだろう?」
「当たり前じゃない!あなたは自分の体を何だと――」
「悪いが俺は、君に依存してまで生きたいとは思わない」

 心臓をナイフで刺されたような痛み。

 自分は彼に必要とされてると思っていた。
 でも彼はそんなの望んでいなかった。
 それは私の独りよがりだった。
 私はなんて身勝手で、なんて嫌な人間だったのだろう。
 私が彼を「生かしている」、彼には私が必要なのだと思い込んでいた。

 それはすべて「彼のため」ではなく、「自分が満足感を得るため」でしかなかったのだ。

「今日はもう帰ってくれないか。明日からはもう、来ないでくれ」

 そのあとのことはよく覚えていない。
 気づいたときには家のベッドの上にいて、そこで私は声を上げて泣いた。
730 :誰がために [sage]:2012/05/24(木) 00:13:02.53 ID:eqretpHDo

    ・
    ・
    ・

 彼女が帰ってからしばらくたった病室。
 ただひたすらに静かなその部屋に、カラカラと台車の音が響く。

「点滴の時間ですよ。調子はどうですか」
「……今日で終わりだと思うと、寂しいものがありますね」

 鎮痛剤交じりの点滴をさしながら、医者は男に話しかける。

「あの子、ね……残される人の気持ちも考えたらどうです?」
「……俺はそんな器用な人間じゃないです」
「馬鹿な人ですね」
「ええ。冷たく突き放して、忘れてくれることを祈るしかできない、大馬鹿者ですよ……」

 男の目じりを涙が伝う。
 医者はそれに気づかないふりをして沈黙を保つ。

「彼女なしで、俺はあとどのくらい生きられるんです?」
「早くて3日、もって1週間。ですがおそらく地獄の苦しみが予想されるので、早めに死んだほうが楽かもしれません」
「上等。医療の発展のために、少しでも長く生きて臨床データを残してやりますよ」
「……あなたは本当に、馬鹿な人ですね」
「先生、遺書の件……よろしくお願い、しますね……」

 男は力なく笑い、目を閉じる。
 まぶたに浮かぶは彼女の姿。
 俺がいなくなっても、彼女が幸せになれますように。
 そう祈り、男の意識は深い眠りへと落ちていった。


【終】
731 :誰がために [sage]:2012/05/24(木) 00:15:12.74 ID:eqretpHDo
キスの日に間に合わなかったー
とまれ甘さを中和すべく、ビターな何かをひとかけら
……ごめんなさい石投げないで痛いですごめんなさいごめんなさい

心理描写(特に女性の)って難しいです
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/05/24(木) 07:59:22.37 ID:ry4LQT6W0
どうやら上げた後に寝落ちしてたらしい、まぁいいや誰も読まんだろう
皆様キスの日乙でした、感想は後々程書きますの
今日はお出かけしますの
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/05/24(木) 22:25:44.36 ID:EcKvqabv0
さてと、改めまして投下された皆々様方に乙を

>>684
流石は花子さんとかの人、変態キャラを書かせたら右に出る者はいませんね!!
つばめちゃん可愛い
「クロスロード伝説」もカッコいい、だがギターを武器にするなwww
つばめちゃん可愛い(

>>689-692
白墨さんか、久しいわね
飼い主さん可愛い
しかし良いチームワークだなぁ
飼い主さん可愛い(

>>696-697
あぁ………なんかゾッとしたぜ
ノイノイ可愛い
ホラーなロリもまた魅力的よね
ノイノイ可愛い(

>>703
お、あの2人の出会いの話か!
美登利さん可愛い
色々ツッコみたいところだらけだwwwでもヘンデレは良いな俺も使おうかしら
美登利さん可愛い(

>>708-712
初っ端からなんて災難なwww
幻ちゃん可愛い
しかし敵が多過ぎる……てか貴也くんもげたまえ
幻ちゃん可愛い(

>>714
アーサー自爆したwwwwww
ギルたん可愛い
この後の展開は投下できないスレですね分かります
ギルたん可愛い(

>>717
お菊さんktkr!! そして大胆wwwww
紫苑ちゃん可愛い
マジで性別何なんだろうねお菊さん…
紫苑ちゃん可愛い(

>>719-721
男子wwwwwそして道連れにされる極きゅんwwww
極きゅん可愛い
そして漢達を使って頂いて感謝感激
極きゅん可愛い(

>>729-730
くそっ、最後の最後に泣ける話を投下してくるなんて……
彼女さん可愛い
彼氏くんの判断は正しいんだろうけど、遺された彼女さんが可哀想すぎて俺………ぐすん
彼女さん可愛い(
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/05/24(木) 22:28:32.93 ID:EcKvqabv0
>>695
>自分の過去作を超えられる気がしない
超えられなくなるような壮大な作品を1本すら書いた事の無い俺は勝ち組の仮面を被った負け組orz
裂邪越えとか余裕です(キリッ
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/05/24(木) 23:01:20.26 ID:wlCV8L6a0
キスの日ネタ豊作ホクホク乙!!
当日から一種刊はロスタイム許されると思うからみんなちゅっちゅしあえよ

>>733
>流石は花子さんとかの人、変態キャラを書かせたら右に出る者はいませんね!!
意義あり、異議あり!!
変態キャラ書いたら俺以上にすごい人がこのスレにはたくさんいすぎる!!
736 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/25(金) 10:13:28.81 ID:c4cr6WQAO
>>733
>ホラーなロリもまた魅力的よね
ホラーというか、少女の魅力は時に残酷だったり、毒があったりするのが魅力と思っているので。
ゾッとした、というのはこれ以上ない誉め言葉を頂いてしまいました。ありがとうございます。

>しかし敵が多過ぎる……てか貴也くんもげたまえ
貴也や柳は正直恵まれすぎと作者も思っておりますwwww

>男子wwwwwwwwwwそして道連れにされる極きゅんwwwwwwww
極きゅん可愛い
そして漢達を使って頂いて感謝感激
こちらこそリンクしていただいてありがとうございます。画面の向こうから改めて土下座をお送りします。
737 :ソニータイマー/3DS [sage]:2012/05/25(金) 18:02:27.89 ID:fIdbBkCX0
皆さん投下乙ですー

シャドーマンの人の「キスの『日合』同」が「キスの『百合』同」に見えた…orz
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/05/26(土) 17:04:29.09 ID:fSHzXmiW0
大変遅くなりました、投下された皆さん乙です!

>>684
いきなり吹いたwwwwwwこれは女性の方にはショックが大きすぎる
そういえばレッドクロスも「新年だよ!入試だよ!とにかく忙しい雑談スレ」で
三面鏡の人に許可を頂いたから産まれたんでしたっけ…………あれ、これってレッドクロスの評判が(ry

>>689-692
>我輩を救ってくれたご主人に生涯をかけて報いる。それが我輩の生きる道なのだ。
忠犬だ……格好いいですね、白ちゃん
【チョーキングドーベルマン】と契約してるみたいですが、犬種は何を想像してましたか?

>>696-697
おおぅ……無邪気とは「邪気が無い」と書きますが、それ故にたちの悪い場合も
そしてまだこの時の柳は一般人に近い反応ですね……

>>703-706
ちょ、歌詞が微妙に未来予知wwwwww
それはともかく、相変わらず二人の描写が目の前に浮かぶようです
ヘンデレいいですねヘンデレ

>>708-712
幻ちゃん可愛い、それしか言う事が(ぉぃ
……ちなみにこちらの女子陣はまだ参加不可ですね。恋愛経験値が足りない

>>714
自爆wwwwwwたまに性別が行方不明になる
落ち着けー、落ち着けー

>>717
しまった、この方法なら恋でもできた(ぉぃ
どの道インターネットに繋がれませんでしたけどorz

>>719-721
うわぁ何このカオスwwwwwwとりあえず少年よ、ドンマイ
……あれ?新田君が漢に見られた事でショックを受けてるって事は……

>>725-726
裂邪とミナワは平常運転
日天とルートには2828が止まらない
光陽と美菜季は親公認
北斗とアミーは……身の危険……!?

こんなに小ネタが湧き出てくる影の人が、正直羨ましいですorz

>>729-730
……最後の最後で油断した……まさか、こんな切ない話でキスの火祭りが締めくくられるとは
この男性、心から彼女の事を想ってたんですね……;;
739 :どんな祭りだよ…… [sage]:2012/05/26(土) 17:08:33.73 ID:fSHzXmiW0
キスの火祭り×
キスの日祭り○

読み返して気づきましたm本当に申し訳ありませんorz
740 :葬儀屋の場合ーキスの日ー ◆yeTK1cdmjo [sage]:2012/05/26(土) 20:15:14.68 ID:eTZVlDwDo
「先輩、キスの日って知ってました?」

「いや」

「そんな先輩に、ベタですが鱚の天ぷら弁当を買って来ました!」

「いらん」

741 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage]:2012/05/26(土) 20:18:00.33 ID:eTZVlDwDo
こんなベタなネタが精一杯
色恋沙汰とは縁遠い面子過ぎて泣いた
742 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/26(土) 20:55:35.87 ID:Pf2a4MCAO
>>738-739
>そしてまだこの時の柳は一般人に近い反応ですね……
これからたった4年であんな救いようのないお花畑になるとは誰が予想できたでしょうww

>……ちなみにこちらの女子陣はまだ参加不可ですね。恋愛経験値が足りない
経験値が足りない男女薔薇百合が事故でちゅーしちゃうのって萌えだと思うの

>……あれ?新田君が漢に見られた事でショックを受けてるって事は……
極は性別にこだわったりしませんから(ニコッ

>読み返して気づきましたm本当に申し訳ありませんorz
キスは燃える愛の火ということでそれもありさ!

>>740
葬儀屋の人乙ですー
後輩くん地味にいい味してるなあ
実は結構彼のファンです
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/26(土) 21:52:50.32 ID:sSjA5Ufko
葬儀屋の人、投下乙ですー
江良井さんも後輩君もいいキャラしてるわぁ
もし後輩君の性別が女だったらとか思ったけれどこのスレにおいて性別なんて飾りだったから何の問題もないな
いいコンビだ

>>738
>【チョーキングドーベルマン】と契約してるみたいですが、犬種は何を想像してましたか?
白墨は雑種です。誰が何と言おうと雑種です。ただの真っ白な雑種犬です。
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/28(月) 12:50:00.97 ID:5BcCPrgDO

>>740
くそぅ
誰も鱚の話しなかったら
誰か一人くらいすると思ったのにーって書き込もうと思ったのに
745 :ダンタリアンの契約者は無茶振りがお好きなようです ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/28(月) 21:50:29.35 ID:aL5mUL8AO
「・・・わたし、キレイ?」
「いいえ」
 あまりにも身も蓋もなく、男は答えた。
 当然ながらそれは「口裂け女」のひどい怒りを買い
 彼はあっという間に地面に押し倒され、振りかざされた鎌が黄昏時の光を受けて鈍くきらめく。
「僕は」
 恐れるでなく彼は続ける。
「貴女の容姿ではなく、その心根こそを美しくないと言うのですよ」

 彼にとって、美しくないものは悪だった。
 彼の「美しさ」に対する持論は見目形だけでなく精神的なものにも及び
 彼の世界と生活は彼の、彼による、彼のための美に満ち満ちている。
 その美の中心たるものは「アイデンティティ」
 自分が如何なる者であるかを自覚する事が彼にとっての「美」の始まりであり
 他者の事もその者が持つ自己認識と美意識によって測っている。
 そんな彼を人は「あの男は偏っている」と言うが、彼がその評価に耳を傾ける事はない。

「貴女は、自分が美しいか否か人に問うばかりだ。
 僕は自我や美と云うものについて、他人任せにする人が一番嫌いです。
他ならぬ貴女自身は、自分をどうお思いなのですか」
「私、キレイ?」
 その問いこそが「彼女たち」の存在意義であると言うに、容姿どころか内面まで否定された上
 問いに問いで返された口裂け女は暫し言葉を失い、振りかざされた鎌は行き場を失う。
「・・・・・・!!」
 ややあって彼女の眉が下がり、目には大粒の涙が光り、表情がくしゃくしゃに歪む。
「・・・大っ嫌いよ!こんな醜い自分!」
 声が震えるのを堪えきれない。
「私だって・・・好きでこんな風になったんじゃない!」
 ただ綺麗になりたかっただけ。皆が羨むくらいに。
 洋服屋に入っても店員に
「あんなブスがうちの服を着るの?」
 なんて嗤わせない為に。何の気後れもなく美容院に入る為に。
「ただ、それだけだったのに・・・」
 女の嗚咽が夕闇に虚しく響く。
 彼女は「口裂け女は整形手術に失敗して生まれた」説から生まれていたのだろう。
「貴女は、何故に自分が嫌いなのですか?」
 知らないわそんなの。手術に失敗したせいで益々笑い者なのに。どこにも私の居場所なんてないの。
 「存在意義」に従って子供たちに声をかければ、醜いばかりか害あるものとしてますます忌み嫌われ排除される。
746 :ダンタリアンの契約者は無茶振りがお好きなようです ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/28(月) 21:54:50.58 ID:aL5mUL8AO
「・・・人は言うわ。親から貰った身体にメスなんか入れるからって。偽りの美しさを手に入れようとした罰なんだって」
 でも、生まれつき理想の容姿で生まれてくる人がどれだけいるの?
 私だって好きで美しくなく生まれた訳じゃなかった。親に貰った身体と言われる度に両親に対する恨みが募ったわ。
 一方的に要らない容姿を押しつけておいて、そのくせ人は結局容姿で判断する。
「ありのままの自分が一番美しいなんて嘘よ!」
「その通りです。ありのままの自分なんて、けして美しいものではない」
 思わぬ肯定の言葉に、口裂け女はもう一度呆気にとられて男を見た。
「ありのままの自分が美しくも強くも賢くもないからこそ、
人は努力する。美も知も力も磨く必要があるのです」
 貴女が間違えたのは、手術の下手な医師を選んでしまった事だけだ。
「とはいえ、過ぎたことは仕方有りますまい。
今更貴女が口裂け女を止められる訳でもないのですから」
「私、これからどうしたらいいんでしょう」
 呆然と呟く口裂け女に
「僕と・・・契約しませんか?」
 契約すれば、それだけで貴女の存在は強化される。もう人に自分が美しいか否かを聞かずに済むようになるのですよ。
「じゃあ、私・・・これからは何て言えばいいのかしら」
「別に人に聞いて回る必要はないでしょう」
 美しいなら美しいなり、醜いなら醜いなりのアイデンティティを持てばよい。
 名乗りなど貴女が「口裂け女」であると判りさえすれば何でも良いのですよ。
 「私、キレイ?」こそが口裂け女のアイデンティティではなかったかしらと
 女は煙に巻かれたような心持ちだったが、それでもこの男に着いていきたいという気持ちが芽生え始めていた。
「わかりました。契約成立です・・・お名前は?」
「竹下棘(たけした いばら)と言います。ただのしがない作家ですが・・・僕で宜しいですか?」
 喜んで。と口裂け女は答え、何故私と契約を?と問うた。
「貴女の考えが気に入ったからです」
「何と呼べば宜しいの?」
「そうですね・・・主様やご主人様も素敵ですが、普通に棘ちゃんで結構です」
 サイン会などでも、よくそう呼ばれますので。
 そうして男と口裂け女は、互いに手を取り夜の闇へ消えていった。

「あれ、今日は古書店へお取り置きの品を引き取りに行くつもりだったのにな・・・
もう仕舞ってしまったでしょうか」



続く
747 :ダンタリアンの契約者は無茶振りがお好きなようです ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/05/28(月) 21:58:41.74 ID:aL5mUL8AO
投下完了。
かなり無茶苦茶なキャラと展開だけど反省も後悔もしていない。
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 21:20:54.61 ID:WmIt0VcSO
(・∀・)ダレモイナイヨ
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/30(水) 22:34:02.38 ID:K3XE3JU/0
(・ω・)イタヨ
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 23:54:36.26 ID:IkR+sCH2o
Σ(゚д゚)
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/31(木) 20:10:23.44 ID:x3M59XPDO
 (゚д゚)
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/31(木) 20:32:56.93 ID:bEKTnAWSO
こっちみんな
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/31(木) 20:54:52.50 ID:NL4viceoo
[壁]-;)
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/31(木) 21:07:36.73 ID:bEKTnAWSO
[壁](∵)[壁] ←隙間女
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/31(木) 22:27:01.24 ID:qo2x64ULo
( ・∀・)つ[壁])∵)[壁]


      [壁])∵)[壁]


      [壁](∵)[壁]
756 :帰ってきた死亡フラグのさしすせそ [sage saga]:2012/05/31(木) 22:56:31.56 ID:Goi0bJRw0
『さ』先に行け!奴は俺が食い止める!!
『し』死にたい奴らはここにいろ、俺は部屋に戻るからな!
『す』好きだったぜ…お前のこと
『せ』戦争が終わったら俺、結婚するんだ…
『そ』そんなワケねぇだろ、俺が見てきてやるよ
757 :一部ちょっと強引 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/01(金) 00:42:31.60 ID:ipcjOBxAO
『さ』
柳「先に行って!奴は俺が食い止める!!」
ノイ「柳だけ残すなんてヤだ!あたしも残るの!」
ムーンストラック「柳!貴様とノイ・リリスだけにする訳にはいかん!俺も残る!」
飛縁魔「なんか間違ったらあんたに柳が殺されそうだからあたしも残るわー」
幻「こっちの方が面白そうなので僕も残るのですよー」
貴也「え・・・新宮さんが残るなら、俺も」
極「ちょっと待って下さい!僕とリジーだけで先に行くのは手薄すぎますので、僕たちも残ります」
リジー「・・・で、結局誰が先に行くんだ?」

『し』
「死にたい人はここにいればいーよ、あたしは部屋に戻るから!」
極「・・・そんなに『学校の怪談』のビデオが怖いか?」

『す』
貴也(瀕死)「す、好きだったよ…新宮さんのこと」 幻「ボクはてめーなんか嫌いなのですよばーか」
貴也「そんな!判ってたけど非道い!きっと俺なんて新宮さんのクローゼットのあの服とかあの服とかあの服より価値がないんだ!新宮さんにとって俺って何!」
ノイ「・・・貴也、元気じゃん?」

『せ』
幻「戦争が終わったらボクは結婚するのですよ・・・」
貴也「予約戦争が起きるほどの人気ロリィタ服が町中で何人もかち合うっていうのは、所謂『ケコーン』とは違うと思う」

『そ』
ノイ「そんなわけないじゃん、あたしが見てきてあげるよ」
極「とか言って、割った花瓶の証拠隠滅してくる気だろ」


本当にコメディしか似合わない連中だwwwwww
758 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/01(金) 00:54:37.73 ID:ipcjOBxAO
おっと忘れてた。
使い方が被ってしまった葬儀屋の人に土下座!大変失礼しました
759 :モデルケース [sage]:2012/06/01(金) 04:04:31.83 ID:yrG/rhEdo
 眼前に迫る岩肌をまるでこの世の出来事ではないかのように小竹は見つめていた。すべてがスローモーションに感じる。人は死の間際、刹那の時間が大きく引き伸ばされるといわれている。小竹は現在進行形でその現象に直面していた。
 しかし、できることは何もない。このスローは永遠ではないし、この時間の中を自由に移動できるわけでもない。岩肌に車が激突する。車体はゆっくりとひしゃげていく。フロントガラスにはゆっくりと細やかな線が入り始めた。
 『死』の一文字小竹の頭の浮かび上がる。だが、今更死を恐れるほど小竹は未練を持ち合わせていなかった。その最後こそ失速したものの、駆け足で走り抜けた人生だったと自負している。幸せだったかと聞かれれば、結婚し、理解ある夫ゆえに働くことができ、子も息子娘とでき、ともに結婚し、孫もできた。最後に床で囲まれながらではないにしろ、走りながら死ぬなんて自分らしい。幸せな人生だったと自覚して死ぬことができる。
 小竹には死を受け入れる準備はとっくの昔からできていた。

『おい、あんた!』

 死に向かう小竹を邪魔するがごとく何者かが語りかかけてくる。甲高いが老人特有の声色で、小竹と違い声はあまりしゃがれていない。声はすぐ近くから聞こえた。小竹は声が聞こえるほうへ目をやる。目をやった場所はすぐ隣の座席。そこには何も乗っていないはずだった。
 乗っていないはずの席に、これ見よがしにふんぞり返るように座っている存在を彼女は発見した。その存在は手入れなどしていないかのように荒れた灰色の髪、まっさらなランニングシャツにクリーム色のチノパンを履いている。その存在はパッと見れば老人で、よく見れば老女であることがわかる。
 小竹はすぐに気が付いた。この老女こそが、さっきまで自分たちのとなりを走っていた存在なのだと。この老女の、ババアのせいで自分たちは死ぬのだと。

『お〜よかったよぉ。こっちに気が付いてくれてぇ」
「あんたの……」
『ん?』

 不思議と声は出せた。驚くほど頭の中は冴えわたり、もはやボケなど治っている。死ぬ間際だからだろうか。それとももう死んでいて、これは自分が見ている夢だからだろうか?それはわからない。声が出せるだけで体は動かすことはできない。ならば、あふれる胸の激情を小竹は言葉に出すしかない。
760 :モデルケース [sage]:2012/06/01(金) 04:05:45.56 ID:yrG/rhEdo
「あんたが現れなけりゃ娘は!直美は死なずにすんだんだぁ!!」

 自分が死にはもはや逃れることなど出来ないことだ。ずいぶんと前からわかっていた。納得していた。受け入れていた。だが、だが娘が死ぬのは納得もしてないし受け入れられない。この老女が現れなければ娘は死ぬことはなかっただろう。いつも通り家に帰り、いつも通りの日常へと帰っていけたはずだ。
 そんな小竹の激情など我関せずといった風の顔を老女はし続けている。ずいぶんと冷めた顔をして小竹を見つめ、口を開いた。開いた口は歯も見えず、舌も見えず、見据えることができない闇のように黒く見えない。

『そいつは悪かったよ。でもさぁ。あんた居たからしょうがないじゃぁあないか』
「あ、あたし……が?なんのことだい!?」

 老女の言葉によって、小竹の心に少なからず動揺が走る。

『都市伝説って知ってるかぁい?口裂け女とか人面犬とかああいうのさ。あたしもその都市伝説でね。ターボババアっていう都市伝説なのさ』
「そいつがなんだって〜んだぁ?」
『ここの交通量は最近とんと少なくてねぇ。都市伝説ってやつはうわさされないと生き残れないのさ。でも!!』

 老女、ターボババアが目を見開き小竹に体を近づける。

『契約すれば話は別さね。その存在を確立することができるのさ』
「け、契約?」
『もちろんあんたにもメリットはあるさぁ!悪い話じゃない。なぁ、契約してくれないかい?出なけりゃここに来た意味がない』
「な〜にを言ってんだい!わけがわからん!」

 小竹の叫びにターボババアの言葉が返される。

『あんたに惹ぃかれたぁあ!!ぅあんたに引ぃき寄せらぁれた!!会って!見て!分かった!』
「……な、なんだいそりゃぁ」

 目の前のお化けは自分に引き寄せられたのだという。なんなのだそれは。自分が引き寄せたのかこの化けものを。もしそれが本当なら、

「それがほ〜となら、あたしのせいで直美は死んだってのかい……?」
761 :モデルケース [sage]:2012/06/01(金) 04:06:51.03 ID:yrG/rhEdo


モデルケース『ターボババア』D


「メーター見る限りまだ450キロですよね?」
「もう振り切ってるよ。上限たくさんね」
「上限いっぱい?」
「それそれ。目測で換算するとわかるが、もう600を超えて、700に入ったわね」

 いかにも口裂け女という格好をした口裂け女ジュリアナは、困惑気味に麦野に訊ねていた。彼女の知識では車とは上限速度までしか出せないものということになっている。450と書いてあれば、450キロまでしかでない。それがジュリアナの中にある車の知識であった。しかし、車は自分の上限速度をはるかに超え、700キロという異常すぎるスピードを出して走っている。驚かないわけがない。それでも麦野は平然とした顔をしていた。
 ジュリアナにはそれがわからない。

「なんでそんなにもスピードが出てるか不思議じゃないんですか?」
「いや、およその原因はわかってるつもりよ」

 麦野は口元を釣り上げる。

「私たちが死ににくいせいだ」
「死ににくい?」
「このソアラの力は強力だ。でも、坂本君以外は私たちだって負けてないわ。正直なところただ車で事故したぐらいじゃ死にはしない。ジュリアナ。あなたもでしょう?」
「そりゃそうですけど」
「ソアラも私たちを乗せてそう感じたんでしょう。だったらどうしますか?決まってる。殺せるぐらいの力を出す」
「なるほど」

 麦野がミラーを覗き込む。後方にいた小竹はすでにずいぶんと近い距離を走っている。話している間にもソアラの速度は出続け今では800キロに達しようとしている。しかし小竹も尋常ではない。小竹の速度もすでに700キロを超えている。その加速度はソアラなど比ではない。いずれ追い付かれるのも時間の問題だろう。

「すでに何度かブレーキを踏んでいるのだけど一切効かない。さすがだよ。しかし、この調子なら勝てるかもしれない。今のターボババアを見る限りもとのままでじゃ勝てなかっただろうし」
「おい麦野さんよ……。ターボババアなんかおかしくねぇか?」

 これまで口を開かなかった坂本が急に喋る。その様子に麦野は意識を意識をしっかりターボババアに向けるべく、ミラーを注視する。そして気がついた。

「Jesus Christ!!」

 坂本が何に反応したのか。ターボババアがどんな存在なのか。それを一目で確認できるほどの変化をターボババアは起こしていた。

762 :モデルケース [sage]:2012/06/01(金) 04:08:09.78 ID:yrG/rhEdo
##############################################################

 走る小竹はその瞳を爛々と輝かせ突っ走っていた。その顔はもはや年相応には見えず、人によっては30代とも見間違うかもしれないほど生気に満ち満ちている。これまで小竹は幾度も走り、何百キロもの速度を出してきた。しかし、今以上の速度を出したことなど一度もなく、自分の速度の最高値を上回ろうとなお追いつけぬ対象に会うのは初めてだった。速さは自分との比較対象があればあるほど引き立つものだと小竹は考えている。だからこそ、自分の速さを自分に知らしめるために幾度も車を抜き去っていた。
 しかし、何度も繰り返せばそれはただの作業となってしまう。自分より格下の存在を抜き去っても高翌揚をほとんど得られないようになってしまった。そんな折に現れたのが白いソアラに乗った麦野たちであった。ソアラは予想よりも早く、いや、それをはるかに超えて走り続けている。
 獲物が速ければ速いほど、小竹の心は熱く滾った。その滾りは小竹のすべての感情を一つにした。

「あれを抜く!抜く!抜く!抜く!ぬぅううううううくぅうううううううううう!!!!」

 眼前の対象物を抜き去ることこそすべて、それ以外が一切の不純物。しかし、小竹の力はそれを良しとはしなかった。

『小竹、待ちなってこたけぇ!!』
「あああああぁん!?」
『これ以上のスピードは出せないよ!』
「はあぁ!?何言ってんだいこれからって時にぃ!?」

 いや、良しとはできなかった。

『限界なんだよぉ!これ以上のスピードにゃあんたの体はたえらんねぇのさ!』
「なんだってぇ!?」
『だからぁ!これ以上力を貸すのはできないよ!死なれちゃ困るからねぇ』
「ふ〜ざけんじゃないよぉ!!」

 感情のすべてが怒りに変化し、そのすべてはターボババアへと向けられる。それは人一人が出しうる最大限の気持ちの荒ぶり。普段から小竹の体内に潜み、シンクロしているターボババアはその感情の波になす術もなく呑み込まれた。この感情を物理的に具現化したのなら、このあたり一帯は残らず焦土と化しているだろう。
 そんな感情をダイレクトに受けたターボババアはそれでもなお力を制御し続ける。肌が焼けつき、髪が乱れてもなおその制御を手放したりはしない。こんな思いをするのなら、契約を打ち切り、別の人間と契約しなおせばいいとターボババアは頭の片隅で考える。しかし、それ許さぬ月日が、小竹とターボババアの間に流れていた。ヵ月数年の付き合いではない。それだけの時が経てば、どんなものにでも情は移る。特に、ターボババア自身が小竹に惹かれ契約を迫ったのだ。これ以上の人間には出会えぬと。
 今制御を崩せば小竹は死ぬだろう。ここまで力を出していれば、急に力弱めても、これ以上力を入れても、小竹は死ぬ。ターボババアは小竹を殺したくはなかった。だからこそ、絶え間ない苦痛の波を耐え、制御を続けている。
 しかし、小竹はにはそんな思いは伝わらない。伝わるわけがない。
763 :モデルケース [sage]:2012/06/01(金) 04:09:25.92 ID:yrG/rhEdo
「目の前の車一つ抜けなくて何がターボババアだぁ!!あたしがなんでお前みたいなババアと契約した思ってるんだい!?お前みたいなくそったれな化け物と!!」

 小竹の怒りは次第に憎悪へと変質していく。

「自分の娘を殺した仇となんで契約したと思ってる!!??速いからさ!!!あたしゃ娘と一緒に死ぬより速さを選んだ!!お前を選んだぁあああ!!!なんでだぁ!?」

 不意に小竹の耳から血が流れ始める。その血は風により後ろへ流れ飛んで行った。それだけではない。目から、鼻から、口から、股から、血が流れ始める。

「速いからだぁ!!あたしは肉親より速さを取ったぁ!!だからあたしは負けちゃい〜けないんだぁ!!負けらんないんだよぉお!!」

 その憎悪の力か、はたまた所以もわからぬ速さえの執着ゆえかはわからない。しかし、小竹の感情はターボババアの制御を振り切り、力を自分のほうへ奪い始めていた。しかし、ターボババアが言っていたように小竹はすでに限界であった。限界とは、容量の限界。『都市伝説』が『契約者』に与える力。それが水だとすれば、容量はさながらコップだろう。そのコップの空き以上は入れることができない。そしてそのコップはひどく脆い。少しでも水が零れ落ちようものならすぐさま壊れて砕け散ってしまう。これ以上水を注げばすぐにでも小竹というコップは砕け散ってしまうだろう。

「死んでもいい!!勝つ!!抜く!!あああ!勝つために死んでやるぅ!!」
『…………死なせてたまるかぁっってんだぁあ!!!』

 ターボババアは憎悪の波から手を伸ばし、飲み込まれかけていた自分自身を引き上げる。

『恨まれて結構さぁ!!ただあたしゃあんたの速さに対する執着に惚れ込んでんのさ!!あんた以上は二度と見つからない!!あんた以外は楽しくない!!あたしゃターボババア!!』

 小竹は感じた。これまでのようにターボババアが自分の中にいるのではない。ターボババアの手が、足が、体が、顔が、その視界、音、すべてが小竹と一つに重なっていく。壊れかけていたコップが変質していく。

『車を追い抜く都市伝説!!」
「ババア、あんた……』
764 :モデルケース [sage]:2012/06/01(金) 04:10:12.61 ID:yrG/rhEdo
 これまで、ターボババアは単純に小竹に力を貸していただけであった。しかし、今は違う。小竹にターボババアの力を使わせるのではない。ターボババア自身が自分の意志によって力を操っている。その力を小竹に向け、小竹の肉体を変質させた。小竹の速く走るという意思に沿い、小竹の体は人間を離れていく。肌に皺はなくなり、より前傾姿勢へ、腕が動くことはなくなり、平たく変化し風をつかみダウンフォースにより体を地面へ押さえつける。服はいつの間にか脱ぎ去られている。小竹の体はもはや人とは言えぬ体へと変化していた。地面を走る人型飛行機とでもいうべきだろうか。
 体の変質はターボババアの力によって行われたが、その意思自体は小竹によるものだった。いまや小竹とターボババアは完全に近い状態で合一していた。小竹の考えることはターボババアの考えること。その逆もまた然り。その肉体はターボババアとの合一によって人ならざるものへと変質を遂げるほどの異を得ている。

「は、ははははははははあはははははははああああ!!!!』

 小竹はそれをすべて理解し、走った。大きく笑いながら、笑顔で走る。それがなんと幸せなことか。それがなんと心地よいことか。ターボババアはひた走る。風を切り、アスファルトを砕き、散らし、その目を前へ。


##########################################################

「素晴らしい!あれがターボババア!」
「うわー。一体化しちゃってますよあれ。肉体レベルで。ああいうのすると精神も変質したりするんですよ」

 坂本には信じられなかった。小竹の体の変質が。頭の中にある言葉が駆け巡る。

「あ、あんなの、人間じゃねぇよ。化け物じゃねぇかよ……」

 坂本の体に怖気が走る。しかし、そんなことは前の二人は気にしていない。

「なんて速さだ!もう2秒もしないうちに並走されるわ!」
「え、あれ何キロ出てるんですか!?てかこの車も!」
「ほら見ろ!並ばれた!もっと早く走れこのソアラ!こんな速度で私が殺せると思っているの!?馬鹿め!」
765 :モデルケース [sage]:2012/06/01(金) 04:10:45.84 ID:yrG/rhEdo
 ソアラの速度も、ターボババアの速度もまだまだ上がる。外から聞こえてくるのは風の轟音と随分と楽しげな笑い声。速度が上がることによって発生する死の恐怖と、肉体すら変質する都市伝説の力。死を眼前にしてもなお一切怯えを、それどころかそれを楽しんでいる目の前の女。坂本にはすべてが狂って見える。

「なん、なんであんたそんなに楽しそうなんだよぉ。なんで俺を巻き込んでんだよぉ」

 自然と、弱気になってそんな言葉が漏れた。その問いかけは、以外にも返事が返ってきた。

「私は君が使えると思った。だから巻き込んでいる」
「お、俺が使える?」
「ああ、そうですけど。使えるようになるためにはもっと都市伝説を知らないといけない」

「君もきっと、楽しいと思える時が来るさ。これ以上の命の危険がこれから先も待っているんだから」



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766 :モデルケース [sage]:2012/06/01(金) 04:11:36.33 ID:yrG/rhEdo
「それで、結局ターボババアとはどうなったんですか?」
「負けたよ。ターボババアは車を追い抜く都市伝説だからね。変質した後のターボババアは私たちがスピードを増すたび、それよりも速くなるという概念と化していた。そんなものに勝てるわけがない」
「それって反則じゃないですか?純粋なスピード勝負で勝てるわけありませんよ」
「そういう都市伝説がいるっていうのが見れただけでも収穫なのよ。私にとってはね」

 本を漁ることすらやめ、二人は隣り合い壁に背を預けすっかり話しこんでしまっていた。開けられた窓から外を見ればすでに日は落ち始めている。それが今日の探索が終わりだということを告げていた。 

「ところで、私とターボババアを見たと言っていたけれど、いつ見たのかしら?」
「ああ、ちょうどそのころにですね。私家族と一緒に温泉旅行に行ってたんですよ。その時にです。
私がちょうど帰るとき、最後に温泉に入っていたんですけどそこに麦野さんが入ってきました」
「……すごいわね。とっても記憶力がいいのね。光輝君に見習わせたいぐらいだわ」
「そんな。でも、自分でも不思議なくらいあなたは印象に残ってたんです。なぜだかわかりませんけど。そしてその帰りにターボババアを見たんです。
姉といっしょに」
「なるほど。偶然ではあるけれど、それも立派な縁ね」

 麦野は立ち上がり背中とお尻の埃を払う。そして篤子へと手を差し出した。ありがとうございますと一礼し、その手を取って篤子も立ち上がる。麦野が埃を払ってくれたが、えらくお尻を重点的に、ソフトに触ったのが篤子は気になった。
 きちんと施錠を施し家を出る。探索はまた明日することとなった。二人とも元来た道を歩いていく。来た時よりも二人は明るくしゃべっている。しかし、ふと篤子の顔に影が宿る。思い出したのだ。自分がここへ来た理由。麦野へと近づいた理由を。

「麦野さん。一つおたずねしてもいいですか?」
「ん?どうしたの改まって」

 麦野が篤子へと足を止め向き直る。篤子も足を止め、その瞳を見つめる。

「麦野さんは今回この街で起こった口裂け女事件での被害者の、共通点ってわかりますか?」
「……私は、眼鏡をした女の子って大好きよ」
「きゅ、急になんですか!?」

 篤子は眼鏡を抑え、少なからず動揺する。
767 :モデルケース [sage]:2012/06/01(金) 04:12:20.43 ID:yrG/rhEdo
「そんな大好きな人の質問だから、答えてあげよう」

 口は冗談のようなことを発するが、その顔は真剣そのものへと変化した。それを確認し、篤子は唾をのむ。なぜだかわからないが、変な予感がした。

「被害者の共通点は、彼ら、あるいは彼女らが契約者。あるいは契約者候補という点だ」
「け、契約者!?契約者候補!?まさかそんな!」
「いや、間違いない。私は口裂け女の被害者の死体を見たけど、そのうち3人が契約者だったわ」

 その事実に篤子は動揺した。契約者などという非現実的なものが、町に3人もいるとことに。

「契約者候補っていうのは、経歴から予測できる。これは単純に経験則ではあるけれど結構な割合で当たるわ。まぁ、契約なんて万人ができるんだから万人が契約者候補って言えるけどね。
どうして口裂け女が契約者や契約者候補を知っていて、彼らを狙ったのかはさすがに知らないけれどね」

 篤子の頭に、よみがえるのは共通点に自分たちが含まれていたというもの。まさか、

「私も、契約者候補、なんですよね。坂本さんがナオコにそう言ってたって」
「そうね。契約者に近い位置の人は結構な確率で契約者候補になりやすいわ。同年代は感化されやすいから特にね」
「近い位置って……」

 足元がふらついた。予感がする。

「今までの君の様子から見て、知らなかったようだけどあなたの友人のクワムライトコは契約者だ。そして、そのイトコさんはまだ生きている」

 足から感覚がなくなり、そのまま落下するかのように腰が落ちた。そのまま地面に尻が落ちる。冷たく、はいずりまわるような感覚が臀部を刺激する。

「君たちが見た死体は都市伝説によるものね。ドッペルゲンガーだわ。同じのを前に見たことがある。あれはたぶんそのイトコさんの契約したものではないと思うけれど……って
聞いてるの?もしもし?もしも〜し」

 篤子はただ茫然とその場にへたり込んで宙を見た。

 (伊斗子は、生きている)



麦野アブラカダブラ……眼鏡フェチ
坂本光輝……ふくらはぎフェチ
ジュリアナ女……M
上野小竹……かるくM
櫛間篤子……何それこわい
768 :モデルケース [sage]:2012/06/01(金) 04:13:10.83 ID:yrG/rhEdo
ターボババアとその契約者はどうぞご自由にお使いください
769 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ :2012/06/01(金) 05:07:00.31 ID:7S50zVA80
モデルケースの人乙ですー
小竹カッコいいまじカッコいい…自分すら犠牲にするとはまさにレーサーの鏡!
スピードに生きた小竹さんを俺達は忘れない!
…で、あれ?つまりイトコさんは…あと篤子さん可愛い。メガネッ子は俺も好き
770 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/01(金) 05:25:05.35 ID:ipcjOBxAO
「ここにいるよ」
 慄然とした柳が周囲を見渡しても、目に見えての周囲の変化はない。
 ただ、周囲に漂う「死」の気配がなお一層強くなるのは感じ取れた。

「ノイ・リリス!」
 大声で少女を呼ばわり駆けつけたのは、長身に暗めの色のスーツを纏った赤毛の男。
「ムーンストラック」
「家から居なくなったと思ったら!心配させるのではない!」
 帰るぞとノイの手を取ろうとする男の手を、ノイが振り払った。
「やだっ!!」
「ノイ・リリス!我が儘を言うのではない」
「やだ、やだ!!あたしだって・・・あたしだってテレビにあるみたいなお外に行ってみたい、
お友だちとあそびたい、学校に行ってみたい!
・・・どうしてあたしはみんなだめなの?」
 大粒の涙を青い瞳一杯に溜め、柳たちが止める暇もなく、ノイは駆け出して行ってしまった。
「待ちなさい・・・!」「待って下さい」
 身を翻し掛けたムーンストラックを、柳が制した。
「あの子を外に出しづらい理由は、一緒にいて解りました。でも・・・それでも可哀想です」
 せめて時間を限って、大人の厳重な監視のもとでいいから、外に出してやってはどうかという柳の提案は、一言の下に却下された。
「・・・それで万一人死にが出た場合、貴様はその命とあの子の将来に対して責任が取れるのか」
 柳には返す言葉もない。あの少女の将来に対してなら責任を取れても
 失われた命に対しての責任など誰にも取りようがないではないか。
「家を脱走したあの子を保護してくれた事には感謝する。
だがお前の同情の為にあの子の未来を台無しにするようなことは出来ん」
 厳しく言い捨て、今度こそムーンストラックが駆け出した瞬間

「やだ!やめてぇ!!」

 ノイの悲鳴が響き、柳も弾かれたように、声の方向へ向かって駆けた。
771 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/01(金) 05:26:23.41 ID:ipcjOBxAO
 カニを埋めた木陰から少し離れた、開けた河原。
 何人かの少年たちが、小さな手を上げて身を守ろうとするノイに、てんでに石を投げつけているのを見て
柳は全身の毛が逆立つほどの怒りを瞬時に覚えた。

「やだやめて、いたいっ!!」
「こいつ知ってる!町外れのオバケ屋敷にいるの見たぞ!」
「家の人がみんなオバケにとり殺されちゃった家だろ?」
「こいつもチビだけど、きっとオバケだぞ!」
「やっつけろ!」
 地元の悪童共らしい少年は口々にノイを罵ると、わあわあと歓声を上げて石を投げつけた。
 すでにノイの子供らしくふっくらした、滑らかな腕には幾つもの青あざが出来ている。
『やめろ!!』
 ほぼ同時に駆けつけたムーンストラックがノイを石礫から守るように抱きかかえ、柳は少年達を怒鳴り飛ばした。
「こんな小さな子に何してるんだ!!」
「何だよ、お前」
「なーんだ、中国人じゃん」
「化け物退治のじゃまするなよ!」
「中国に帰れー!」
 柳にも石が飛んできたものの、それが却って幸いして、ノイに投げられる石の数は減る。
 が・・・ノイの怪我を確認しようとのぞき込んだムーンストラックは
 彼女の瞳から常の活発な光が消えていることに気がついた。
「ノイ・リリス?」

(痛いの、やめて、いじめないで)
(ヤナギとムーンストラックにらんぼうしないで)
(お外ってホントにコワいところなの?)
(ずっとずっと、たのしみにしてたのに)
(キライキライキライ。つまんないお家も、コワいお外もキライ)

「みんな、みんなだいっキライ!!!!」

 ノイの絶叫と共に、驚いて飛び立とうとした鳥たちがばたばたと地面に落ちる。
 川は細波が連なり膨れ上がって川岸を打ち、何十匹もの魚が腹を見せて打ち上げられた。
「ノイちゃん!」
「ノイ・リリス!」
 ムーンストラックがノイを揺さぶり声を掛けるが、青い瞳は焦点が定まらず、おそらく何も見えていない。
 明るかった川辺は光すらが死んだかのような薄暗がりと化し、少年たちの悲鳴が上がった。
「ヨハン!おい、しっかりしろよ!おい!」
「い・・・息してない、ぞ」
「死んでる!」
「・・・うわあぁぁ!本物の化け物だあ!」

「キライ、キライ、キライ・・・」



続く
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/01(金) 20:55:16.75 ID:mRtWL7Azo
皆様投下乙ですー

これはいい口裂け女と契約者
もっと口裂け女は恵まれるべき!
いっぱい活躍すればいいと思うよ!

小竹さん、人間やめたっていうか存在すらやめて、もはや概念と化したのか……
これがスピード狂の末路なのね

ああ、ムーンストラックが危惧してた事態が……
もうこれは全員ころころしちゃって目撃者をいやなんでもないですすみません
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/01(金) 22:31:54.25 ID:8jYUorkDo
乙です

ジュリアナはマゾっぽいと思っていたがやはりか
そしてまさかここでイトコちゃんが生きてる可能性が出てくるとは!

ノイちゃんはこれからアンナ事になるんでしょうか
おじさん興奮のあまり口がにやけてきたよ
774 : 【ピョン吉】 [sage]:2012/06/01(金) 22:41:13.17 ID:8jYUorkDo
気付いてしまった
気付いてしまったんだ
775 :ολυμποσ〜聖地〜 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/02(土) 23:46:48.72 ID:mAiEVo7k0



―――聖地『ολυμποσ(オリンポス)』―――



そこは、ギリシャ神話の世界。

人間界とは隔離されているため、通常の手段ではこの聖地への進入は許されない。
逆に、人間界へ移動するのも神々の権限が必要となる。


生まれるものは、ギリシャ神話が語るもの。兵士も、動物も、植物も、神も。
語られるものは全て生まれ、ここで育つ。


その世界は大きく3つに分かれている。

その1つは、獣の区域。山の麓にある自然、動物や植物が育つ場所。
その1つは、民の区域。山の中にある町々、兵士達が育つ場所。
その1つは、神の区域。山の頂にある居城、神が育つ場所。

そしてその城の最上階こそが、オリンポス十二神の座。



―――この世界で、私は生まれた―――



私は【タナトス】。死の神として神の区域で生を受けた。
つまり私は、生まれながらにして絶対的な力を手にしていたのだ。

しかし、私は何をするべきかだけ教えられていなかった。
神話通りの生き方をすればいいのか?
それとも、我々が生まれた意義や使命が他にあるのか?

私は、先人達に訊ねる事にした。
776 :ολυμποσ〜聖地〜 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/02(土) 23:52:04.46 ID:mAiEVo7k0
タナトス「【クロノス】、私は何をするべきなんでしょうか?」
クロノス「……。」

最初に訊ねたのは【Χρονοσ】。時を司る神。
彼は時間―つまり、全てのものの動き―をコントロールできるらしい。
その力を行使すれば、恐らくどんな屈強な戦士だろうと手も足もでないだろう。

いつも懐中時計を持っていて、眺めていたり、磨いていたり。
能力と関係があるのかもしれないが、詳しくは知らない。

彼は『καθιστικο(居間)』の椅子に腰をかけていた。
机の花瓶に刺さった花は、少ししおれていた。

クロノス「あなたのやるべき事、ですか?」
タナトス「はい。」
クロノス「さぁ?私は時の神なので、そんな事は知りません。」

タナトス「……いえ、仕事があるなら手伝わせてくれませんか、と……。」
クロノス「私は時の神。貴方は死の神。できる事が違います。」

そう言うと、【クロノス】は懐中時計の針を動かす。
同時に、この城の全ての時計が動き、花瓶のしおれた花が徐々に元気を取り戻していく。

クロノス「貴方には、この時計を動かす事も困難でしょう。」
タナトス「……失礼します。」

流石は時を司る神。彼には何人たりとも触れられないだろう。
彼の手伝いは、不可能だろう。そう思うのに時間は必要なかった。



しかしそんな彼も……私のやるべき事を告げてくれなかった。
777 :ολυμποσ〜聖地〜 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/02(土) 23:58:06.77 ID:mAiEVo7k0
次に訊ねたのは【ヘラクレス】。彼は神と人の子。
人の血を持った彼は、神として扱われるために10の―実際は不正などの理由で12となった―試練を課せられる事となる。
故に、彼は多くの試練にも耐える肉体を持つ。
彼の死にも諸説あり、ヒュドラの毒で死んだとする説がよく聞かれるだろうか。

死後、彼は神の座に上がりオリュンポスの十二神の一柱として迎え入れられた、とする説もある。
おそらくここに彼がいるのは、その説を受けてだろう。

彼はいつも庭で、ある男と拳闘の訓練をしていた。
その男の名は【アキレウス】。彼は神話が誇る英雄。
子供のころ、母である海の神テティスが彼を不死身にするため冥界の川スティクスに浸し、
そのとき彼女がつかんでいた彼のかかと以外のところは不死身となった。

アキレウスの葬儀や武具の分配をめぐる争いについては語られても、その死の真相には触れられていない。
主に何者かにかかとを射られて死んだとされている。
彼は本来ここに入るべき存在ではないが、【ヘラクレス】が迎えたものと思われる。

ヘラクレス「はっはっはァ!技のキレがだいぶ上がってきたなァ!」
アキレウス「まだお前には負けるぞォ!」
タナトス「失礼します。」

ヘラクレス「おォ!?新入りかァ!」
タナトス「【タナトス】です。修行ですか?」
アキレウス「あぁ!サボると鈍るからなァ!」

お前に訊いていない、と私は心の中で呟いた。
ギリシャの英雄と言えども、仮にも一兵士。神と会話するなら、敬語が望ましいはずだ。

タナトス「しかし何故、こんな所で?修行なら他に相応しい所もあるでしょう?」
ヘラクレス「あァ!あんな所で修行したら息が詰まるからな!外の方が落ち着く!」
アキレウス「おぉい!俺達が修行すると全壊するから、と怒られたからだろう!?」
ヘラクレス「おォ!そうだったかなぁ!?はっはっは!」

うるさい。……しかし伊達に英雄の名は語れんか。
修行するだけでも周りに被害を与えかねない、彼らの力……。
本当の戦闘なら、いったい相手はどうなるのだろうか。

タナトス「毎日そうやって修行するのも、世界を守る使命からですか?」
ヘラクレス「はっはっはっ、はァ!?使命!?」
アキレウス「なんだァ、使命とは!?」
タナトス「……は?」

アキレウス「俺達はただ、修行をしたいから修行しているんだ!」
ヘラクレス「誰かに命令されてやっているのではないッ!では続きだ!」
アキレウス「おうっ!」

そう言って、彼らは修行に戻った。……『したいから』という野蛮な理由で。

やはり所詮は兵士という事か。恐らく重要な命を与えられる資格もないのだろう。
期待した私が間違っていた。
778 :ολυμποσ〜聖地〜 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/03(日) 00:01:06.09 ID:3ICyIsD80



―――その後も私は―――



エロス「使命ィ?そんなの知った事か。あ、あのカップル腹立つから別れさせよっと。」



―――先人達の言葉を訊いて周った―――



バッカス「ひっく、なんだぁてめぇ、ガキじゃあるまいし。ひっく。」



―――しかし、その答えは全て―――



ポセイドン「はっ、やるべき事ォ?そんなの知った事か。俺は忙しいんだ。帰りな。」



―――私の求めたものではなかった―――



私は庭で地に腰を下ろした。

訊ねた神全員が、私の質問にまともな答えを示さなかった。
それどころか、全員はまるで勝手気ままに過ごしている事まで分かってしまった。

……それを知って、私は悩んでいた。
これからどうすべきか、何に従うべきか……。

その時だった。
779 :ολυμποσ〜聖地〜 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/03(日) 00:06:13.25 ID:3ICyIsD80
ゼウス「ここに居たか。」

彼が、【最高神】が私に話し掛けてくださったのだ。

タナトス「ぜ、【ゼウス】様……!?」
ゼウス「【タナトス】、神々を訊ねて周っているらしいな。」
タナトス「はい……。」

その時は、少し失礼だとも思ったが、私は【最高神】に率直な意見を述べた。

タナトス「【ゼウス】様。私が訊ねた神々は神としての自覚がありません。」
ゼウス「ほぅ……厳しいな。」
タナトス「事実を言っているだけです。全員自分勝手に行動していて、お世辞にも統率がとれているとは……。」
ゼウス「まぁ、待て。」



―――この後の言葉が、私の運命を大きく動かすものだったと、その時は気付かなかった―――



ゼウス「空を見てみろ。」
タナトス「空……?」
ゼウス「あの雲は、誰かが願ってあの形になったのか?」
タナトス「……神ならば、可能でしょう。無駄だと思いますが。」
ゼウス「そう考えるか。」

しばらく沈黙が続いて。



ゼウス「私は、全てが雲と同じだと思うんだ。」



タナトス「は……?」

ゼウス「人も、動物も、植物も、神も、決まった生き方なんて決められてはいない。
    雲のように、時にある形を保ち、時に形を変える。
    【タナトス】の言葉を借りるなら、それを他人が意のままに決めるのは無駄な事だろう?」

タナトス「しかし……。」
ゼウス「雲は雲のままに、空は空のままに。なら人も人のまま、神も神のままでいいじゃないか。」
タナトス「……。」

それだけ言い終えると、【最高神】はその場から立ち去った。
780 :ολυμποσ〜聖地〜 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/03(日) 00:12:32.31 ID:3ICyIsD80
タナトス「……最高神が最高神なら、下の神も、という事か。」

失望した。最高神さえも、使命を忘れて勝手気ままに過ごしていたとは。
それ故に他の神もあのような始末だったのか。

このままでは私も自堕落な神になってしまう。
……しかし、それでは、私は何をするべきなのだろうか……?



無意識の内に、私は城に戻っていた。
ふとその目に、自分がまだ訪ねていない部屋が映った。
半ば諦めていたが、念のためその扉をノックし、中に入った。

タナトス「……何の部屋だ?」

薄暗くて周りが良く見えかったが、壁には何かが掛かっているらしい。
部屋の真ん中では蝋燭が点いていて、誰かが作業をしている事が分かった。
音から推測すると、機織りだろうか。

タナトス「こんなくらい部屋で何をしているんだ?」

その時は、既に多くの神に期待を裏切られていたせいで、礼儀を忘れて乱暴な口調で訊ねてしまった。
しかし、彼女は私の質問に丁寧に答えてくれた。

???「……できました。」
タナトス「……?」

彼女は織機から出来立ての布を取り外し、それを広げて私に見せた。

―――その布はとても色鮮やかだった。暖色と寒色が交互に入り混じり、まるで虹のように輝いて見えた。
たった1つの色でなく、多くの色で作られたそれには、何か意味があるのだという事ぐらいは、私にも分かった。

タナトス「これは、いったい何ですか?」



???「『Μοιρα』……。」



タナトス「『モイラ』?」



モイラ「私の名でもあり、この布の意味でもあります。」
781 :ολυμποσ〜聖地〜 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/03(日) 00:17:43.83 ID:3ICyIsD80
―――モイラ―――それは人のさだめ。そしてそれを司る神。

未来を予言するその能力は、最高神に匹敵する、いやそれを上回るものと言ってもいいだろう。
……正直、現在でもそう思っている。



モイラ「この布は人の一生をあらわしたものです。私が糸を切った瞬間から、その布の果てまでの人生が始まるのです。」
タナトス「……布の色は何を意味しているのですか?」
モイラ「色はその時の感情を表しています。
    最初は生まれた喜び。その後喜びと悲しみを繰り返し、最期に……。
    その全てがこの1枚の布に記されているのです。」

【モイラ】が手を振り上げると、全ての蝋燭に火を点いた。
その灯りのおかげで、壁に掛かっているものが、いや、この部屋中にあるものが、人々の『モイラ』だと分かった。
【モイラ】はさっき出来た布を空いていた壁に掛け、また最初の場所に腰を下ろし機織りを始めた。

モイラ「この部屋にある全ての布が、私が紡いだもの。私が紡ぎ終えて始めて、命が生まれるのです。
    そして私の紡いだ糸をたどって、生きていく……。」
タナトス「……私と似ている、いや、あるいは対になるという事ですか。」
モイラ「……?」

タナトス「『タナトス』。私の名であり、命の終わりでもあります。」

モイラ「……なるほど、似ているかもしれません。」

少しの間、私達は微笑みあっていた。しかしその時間を引き裂くように、その時はやってきた。



急に【モイラ】は顔色を変えて、壁の布を見つめた。
私もそちらに視線を移すと、恐ろしい事が起こっていた。

ある布の真ん中の、赤みがかった部分がだんだんと紫色に変色しだした。
それと同時に、下の方がじわじわと光になって消えていく。

……やがてその現象は紫の所まで到達して止まった。
その頃には、元の半分ほどの長さになっていた。

タナトス「今のは……?」
モイラ「また、ですか……。」
782 :ολυμποσ〜聖地〜 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/03(日) 00:21:16.71 ID:3ICyIsD80
【モイラ】はその光景を、寂しそうに見つめたまま、話を続ける。

モイラ「私の紡いだ【モイラ】は不完全……ある存在なら簡単に変える事ができるのです。」
タナトス「い、いったい誰がその様な事を?」

モイラ「都市伝説……人でないものの『モイラ』は、元々私が紡ぐべきものでもないのです。」
タナトス「さっきのも、トシデンセツが何かをしたという事ですか……。」
モイラ「……死んだのです。無論、形はどうであれ、都市伝説が関与しています。」

私は耳を疑った。まだ【モイラ】の話は続く。

モイラ「昔は、私が紡いだ通りに幸福もあり、不幸もあり、そして人は定められた死を迎えました。
    しかしいつからか、私を無視して彼らは行動を始めました。それ以来、多くの人が……。」

しばらくの沈黙の後、【モイラ】はまた機織りを始めた。
邪魔にならないために、私はその部屋を後にした。










あの日の事を、今まで忘れる事などできなかった。
その真意だけは、未だに分からない。ただ……。



―――【モイラ】が紡いだ本来の『モイラ』を、こうもあっさり変える事ができてよいのか―――



―――あの美しい布を汚し、さらに掠めるものを、どうして許せるか―――



―――あの時【モイラ】が見せた、あの顔を、何故思い出してしまうのか―――



それらが頭を巡って、酷い時は呪われたように苦しんだ時もあった。

その時は本当に呪いと疑い、真っ先に浮かんだのは、あの悪戯者の顔だったか。
783 :ολυμποσ〜聖地〜 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/03(日) 00:25:36.10 ID:3ICyIsD80



そして、私は決心した。



私が【モイラ】を救おう、と





私は剣を封印した。その代わりに、巨大な鎌を造った。
そうする事によって、私は【死神】の力を取り込む事ができ、より強大な力を得た。
もっとも、当時は『都市伝説を倒すためなら都市伝説の力だって得よう』程度の考えだったのだが。

その後は鍛錬の毎日だった。来る日も来る日も、扱い辛い鎌でどのように戦闘するかを考えていた。
鍛錬の内に、鎌を変形させてハルバートにする機構を組んだ。
このおかげで勝ち筋が見えてきた。

ハルバートを振り回しながら戦術を考える。
ハルバードを振り下ろす、少し上げて突く、横へ逃げた所を薙ぐ、また突く、或いは……、そして最後に……。
途中、怪力兵士の妨害も受けたが、ついに並程度だがこの武器を使いこなせるようになった。



とうとう時が来た。

私は今日、【死神】となる。


都市伝説を狩る【死神】に。



彼らは私を恐れ、逃げ惑い、命乞いをするだろう。




しかし絶対に彼らを許してはならない。





―――【モイラ】様のために―――
784 :ολυμποσ〜聖地〜 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/03(日) 00:29:57.47 ID:3ICyIsD80
―――その日、翼を真っ黒に染めた神が地上に降りた―――





―――その神は手に持つ巨大な武器で、来るものも去るものも等しく裁いた―――






―――後に……風が、虫が、人が、それを伝え―――





―――【都市伝説の死神】の名は広く知れ渡ることになる―――










―――それを喜ぶ神が1柱―――










―――悲しむ神も、また1柱―――





Σχεδιο編番外「聖地」―完―
785 :大王の ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/03(日) 00:33:02.60 ID:3ICyIsD80
お粗末さまでした。

そして全国のタナトスファンに謝罪。
自分の中のタナトスは幼いのです……。
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/06/03(日) 21:59:45.99 ID:8QAuttVco
大王の人、乙
なんか某ロックオペラを思い出した
実は聞いたことが一度も無いんだけれど
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/06/03(日) 22:00:38.74 ID:8QAuttVco
なんかまた沖縄とか出てるんですけお…
788 : [sage saga]:2012/06/03(日) 23:33:31.35 ID:u+zKopvd0
>>786
>なんか某ロックオペラを思い出した
元ネタがそれだから仕方ない(ぁ
789 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/04(月) 02:35:36.86 ID:dHbtCyLJ0
大王の人乙ですー
タナトスの真面目さと、モイラへの気持ちが胸に痛い…
彼がゼウスの言葉の意味に気づく日は来るのでしょうか…
人は人のまま、神も神のまま。都市伝説も都市伝説のままに。
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/11(月) 00:38:33.35 ID:OnalaFlSO
かくして一週間がたとうとしている
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/11(月) 03:11:31.52 ID:Uf4pbfxDO
連載・企画物にうんうん唸って足りない頭で下手な考え巡らすよりも、
適当な単発ネタをコンスタントに投下していく方が建設的なのだろうか
792 :舞い降りた大王―気付いた日 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/11(月) 17:56:30.95 ID:BZfaMA8P0
勇弥「……なぁ、急に襲ってこねぇよな?」
正義「大丈夫だよ。しばらくは戦えないはず。」
楓「そうは言うが……。」
奈海「わ、私は正義くんを信じるよ。信じる……。」

【タナトス】を倒し、俺達は一旦、友の家で【タナトス】を休ませていた。
不安だったが、少年の性格を考えると、止める事は不可能だった。

勇弥「しかしまぁ、また暴れだしたら、正義と大王さんに任せりゃいいか。」
奈海「それにしても、神様を倒すなんて、私達も強くなったわね。」
正義「あ、それは違うよ。」
楓「どういう事だ?現に倒したじゃないか。」

この様子だと、少年も気付いていたのだろう。むしろ、少年こそそれに気付きやすかったか。

正義「タナトスには何か迷いがあったというか、自分の意志で戦っていないというか……。
   そこを突いたから、なんとか勝てたんだよ。」
大王「確かに、途中から心理戦になっていたな。」
正義「もし、本気で戦っていたなら……きっと負けていたと思う。」
コイン「ふえぇ、その迷いってやつに感謝しないとね。」
楓「あと、黄昏のあの技にもな。あれが無ければ心星は……。」
奈海「そうだったわね。本当にありがとう、正義くん。」



正義「え?何が?」



一瞬、全員固まった。まさか少年が無意識の内にあれを放ったとは思わなかったのだろう。

あれは……少年が少女を助けるために放ったあの技は、確かに俺も使える技だ。
相手の精神に恐怖を見せつけて怖気つかせる、というちょっとしたテクニックだ。
或いは俺でなくとも、誰でもできる技なのだろう。

だが、この技には重大な欠点がある。
この技は相手の度胸などの要素に依存するため、相手が自分の事を怖くないと思われていると全く効果が無い。
例えば【タナトス】が相手なら、「自分より恐ろしいものは無い」と思っている限り無効だ。
他にも赤子のように無知な人間にも効果が無かったりする。

……よって、俺はこの技を全く使っていなかった。
無駄な戦いで体力を消耗しないなどの時にはそれなりに使えるが、戦闘に組み込めるほどの技でもないと思っていたからだ。
【タナトス】は違ったが。奴は敵の動きを一瞬止め、すぐに鎌で切り裂くという戦術で戦ってきたのだ。


やはり【タナトス】は強かった。



それだけに、この負け方はあっけなかった。
793 :舞い降りた大王―気付いた日 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/11(月) 18:02:42.01 ID:BZfaMA8P0
ふとその時、部屋をノックする音が聞こえた。

メイド「おぼっちゃま、お飲み物をお持ちしました。」
大王「まずい、隠れないと……。」
コイン「え……?あ、そうだった。」
勇弥「いや……もう隠れても無駄だと思うぞ。」

俺がとりあえず隠れた後に、友は扉を開けさせた。

メイド「あれ、おぼっちゃま、黒いマントの方と狐耳のカチューシャの子はどちらに?」
勇弥「あ、えっと、トイレに行ったみたいです。」
メイド「そうですか、では。いつもありがとうございます。」
奈海「いえ、こちらこそ。」
正義「ありがとうございます。」

メイドの女は深く礼をして、この部屋から去った。

勇弥「さて……。」

コイン「わぁい、ジュースだぁ!」
大王「今回は、俺の分は?」
奈海「紅茶みたい。もちろんタナトスの分もあるわね。」
楓「じゃあ私が飲みますね。」
大王「すまない会長。」
正義「……本当に見えてるんだね。」

理由は分からないが、あのメイドの女も都市伝説を認識できるらしい。

楓「やはりあの、『ウエイトレスがメニューを1つ多く持ってくる』タイプの都市伝説じゃないか?」
勇弥「おいおい、あのメイドさん都市伝説なのか?それとも契約者なのか?」
大王「人間というのは、時に【タナトス】以上の脅威になりうるな……。」
奈海「背筋がヒヤっとするレベルの脅威だけどね。」


タナトス「ッ……。」


人間の恐ろしさの片鱗を味わっていると、【タナトス】が意識を取り戻したようだ。

正義「気がついたみたい。」
奈海「ごめん、ちょっとトイレ。」
コイン「あ、私も。」
勇弥「じゃあオレも。」
大王「全員、逃走を図るな。」
楓「黄昏を信じると言ったのはお前達だぞ。」
勇弥「じょ、冗談だよ冗談。」
奈海「少し怖いんだもん、仕方ないじゃない。」
794 :舞い降りた大王―気付いた日 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/11(月) 18:05:14.20 ID:BZfaMA8P0
【タナトス】が目を開け、体を起こす。まだ傷が癒えていないようだった。

正義「あ、まだ動いちゃだめだよ!」
タナトス「ここは……?」
勇弥「俺の家だ。雷で瀕死になってたから、休ませてやったんだ。」
タナトス「そうか……。」


タナトス「私は『θεοσ(ゼオス:神)』なのか……?」


正義「え?」
タナトス「私はゼオスでありながら、『ο υπερτατοσ θεοσ(最高神)』にも、
     他のゼオスにさえも命を与えられなかった。
     そして、私は負けた。もう私にゼオスを、【タナトス】を名乗る資格は無いのか……?」
勇弥「【タナトス】……。」
タナトス「私はただ、【モイラ】様を救いたいと思った。
     そのためならどんな労苦も惜しまないと誓った。なのに、何故……?」

ふと、少女が【タナトス】をたしなめるように話しかける。

奈海「まったく、いつまでも『ママ』、『ママ』って。子どもじゃないんだから。
   それに、やりたい事ぐらい自分で決めなさいよ。」

一瞬、部屋に沈黙が走る。

コイン「『ママ』って……。」
楓「【モイラ】、だろ?運命の神の。」
勇弥「聞こえても『ミラ』だろ。」
奈海「え?……え?」

奈海が聞き間違いに気づいてあたふたしていると、急に【タナトス】が笑い出した。

タナトス「そういう……事だったのか……。」
正義「タナトス……?」
タナトス「やっと分かったぞ、『ολα(オラ:全て)』……!ふふ、ははは……。」
795 :舞い降りた大王―気付いた日 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/11(月) 18:06:38.78 ID:BZfaMA8P0










全員は現在の状況を理解できなかった。






その時はまだ知らなかった。






その笑い声の意味も










その涙の意味も――――――
796 :舞い降りた大王―気付いた日 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/11(月) 18:09:35.55 ID:BZfaMA8P0










――――――【タナトス】の体調はすぐに回復した。

長居は無用と判断したのか、【タナトス】はもうここから立ち去ると言った。

もちろん正義達も見送るためについていく事にした。


勇弥「ったく、せめて3日間ぐらいくたばってくれよ。恐ろしい生命力だな。」
楓「できれば、神の住む世界の話も聞きたかったんだが……残念だ。」
奈海「じゃあ、他の神様にもよろしくね。」

自分の置かれている状況に違和感を覚えたらしく、【タナトス】は正義に尋ねる。

タナトス「少年達よ、何故私を恐れない……?私はお前達をコロそうとしたんだぞ……?
正義「そんなの簡単だよ。」
コイン「だって私たち、あなたの事を理解できたから。」

【タナトス】は改めて勇弥達の方を向く。

奈海「あなた、思ったより優しかったのね。」
勇弥「お前にも、人間みたいなところがあったんだな。」
楓「お互いに分かり合えば、怖いものなんて何もない。」

大王「そういう事だ、【タナトス】。もう誰もお前を怖がらないだろう。」
タナトス「……それはそれで悲しいものだな。」

【タナトス】は漆黒の翼を広げる。

正義「タナトス!これからどうするの?」
タナトス「……安心しろ。無闇な行動はもうやめる。」


タナトス「これからは、人を往くべきところへ導く神になる。
     それが今まで私がしてきたことへの償いになるかは分からない。
     それでも私はやる。【モイラ】様や、他の神達と共に。」


勇弥「へっ。」
楓「それがいい。」
奈海「がんばってね、応援するわ。」
797 :舞い降りた大王―気付いた日 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/11(月) 18:11:42.57 ID:BZfaMA8P0
タナトス「それは【タナトス】らしくない事だと思うが……」
正義「ううん!そんな事無いよ。」

【タナトス】の言葉を不意に正義が遮った。


正義「ボクは、とっても[タナトス]らしいと思う!」

奈海「私も!」
コイン「じゃ、じゃあ私も!」


タナトス「……では行こう、『μελλον(メロン:未来)』へ。」










タナトス「『σασ ευχαριστω(サス・エフェリスト)』。」










タナトスは漆黒の翼を羽ばたかせて、空の彼方へと飛んで行った。
あっという間に、その姿は見えなくなった。



奈海「行っちゃったね。」
コイン「また来るんじゃない?困った時にでも。」
楓「その時こそ、他の神様の話を聞き出したいな。」

ふと、勇弥が少し心配そうに呟く。

勇弥「しかし、【タナトス】は上手くやっていけるのか?
   他の神ともケンカしていたみたいだが……。」
正義「できるよ。タナトスなら、きっと。」

正義は、地面に落ちていた羽根を拾う。

正義「未来は誰かから貰うものじゃない。皆が一生懸命探して、見つけるもの。
   だから、皆が平等に未来を掴む権利を持っているんだ。」
大王「……。」
正義「今のタナトスなら、もう『未来』に屈する事もないよ。
   彼だって知ったんだもん。『人の命』を。」


全員が空を見上げる。
798 :舞い降りた大王―気付いた日 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/11(月) 18:14:14.63 ID:BZfaMA8P0






―――ねぇ、タナトスは最後になんて言ったの?―――






今日の空は夕焼けで綺麗な赤に染まっていた。






―――『ありがとう』、だって。―――






その空に向かって、正義は……。






手に持っていた羽根を、力いっぱい投げ返した。















白い羽根は、夕日に溶けて、消えていった―――
799 :舞い降りた大王―気付いた日 ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/11(月) 18:14:48.25 ID:BZfaMA8P0















―――これは、1つの物語の終章であり―――















―――これから始まる、未来の物語の序章でもある―――













Σχεδιο編第7話「気付いた日」










舞い降りた大王・Σχεδιο編―終―
800 :大王の ◆dj8.X64csA [sage sage]:2012/06/11(月) 18:27:55.05 ID:BZfaMA8P0
失礼しました。
これが、大王と正義の物語の一区切り……

……のプロローグとなります。えぇプロローグですはい。
これから、第一部の開幕のための準備に取り掛かろうと思います。


ギリシャの神々が登場し、正義達に挑戦するというΣχεδιο編。どうでしたか?
といっても、まだ2、3話抜けている話がありますが。余裕があったら書いていきたいです。

その物語の裏の目的として、タナトスの成長もあったりします。
とても強い神でも、若さゆえの悩みを抱えている。それが『死』の神。
その成長を後押しするのが、生きている人間。不思議な因果です。

本当に伝えたいメッセージは……きっと気付かれていると思いますので、書きません。
気付かれていないなら、その程度の文才です。
了承を得れるなら、Wikiにあとがきをずらずら書かせてもらいたいです。


それでは、これからもどうかよろしくお願いします。
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/06/11(月) 18:49:00.67 ID:k/DE1l670
乙乙
携帯のバッテリが切れかけだから感想は後で書くとして

>>800
> 了承を得れるなら、Wikiにあとがきをずらずら書かせてもらいたいです。
否定意見すら上げもしないで書いた後からしかも地味なところで文句言いやがるヘタレがいるから裏設定とかチラ裏の方が良いよ
802 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/11(月) 23:36:55.74 ID:aYxurmdNo
 横たわる男と、傍らに立つ黒服。
 高校生らしき少年と人の顔をした犬。
 黒服――江良井が何か言うよりも早く少年は走り出していた。
 すでに事切れている至村の元ではなく、真っ直ぐに江良井の元へ。

「バカ、早まるな!」

『人面犬』の制止も聞かず、江良井へ走り出した少年の胸中を数字にするならば、八割が恐怖であり、残り二割が正義感であろう。
 恐怖と対面した時、人が取る選択肢は単純に分けるとふたつ。
 逃げるか、立ち向かうか。
 江良井へと走り出した少年の行動は恐怖へと立ち向かう姿そのものと見える。だが、実際に少年の取った選択肢は逃げである。
 恐怖で何も見えなくなり、直線上にいた江良井の元へ走り出した――ただそれだけのこと。

「落ち着け」
「ぁ……あ……ああ……」
「この男はすでに――」

 常々聞いていた黒服の話。
 目的のためなら殺人すら厭わない連中――過激派。
 殺し屠る者が纏う黒服と、葬り弔う者が纏う黒服。同じ色ではあるが全く異なる色。
 少年の目には、江良井の着る黒服は同じ色に映っていたのだろうか。

「う……あ……あああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!」

 江良井の言葉は耳に入らず、拳を握り、殴りかかろうとする少年。

「俺が来た時には死んでいた――」

 恐怖に駆られ走り出す少年に江良井の言葉は届かない。
 都市伝説『人面犬』との契約により自らの基本性能も底上げされているのであろう右拳も、また。
 今までどれだけの都市伝説との戦闘をこなしてきたのか。
 ――それまで積み重ねてきた経験も虚しく。

 ただの一撃。

 諦念の表情を浮かべ振り下ろした手刀により、少年の首はころりとアスファルトに転がった。

「くそったれ……」

 契約者と都市伝説との繋がりが強ければ強いほど、能力はより強固なものになる。
 反面、結びつきが強さければ強いほど運命を共にする確率も高くなる。
 少年と『人面犬』の間の繋がりがどれほどのものだったのか――『人面犬』は幾つもの光の玉となり、その場から消え去った。

 死因不明の中年男性と、首と胴が離れた少年。
 この場に残る遺体はふたつ。
 立っている黒服はひとり。
 首の無い死体を優しく寝かせ、江良井は立ち去った。
 江良井は振り返らない。胸中を表すように。
803 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/11(月) 23:38:09.50 ID:aYxurmdNo
「新居が死んで至村も死んだ。今日でちょうど四十九日だ」

 錨野の言葉に、集まった面々は言葉がない。
 ただ眼を瞑る者、ちらりと錨野を見る者、携帯ゲームを弄ぶ者。
 三者三様ではあるが、錨野も含めて感じられるのは怒りと悲しみ。目には見えない気のようなものが彼ら四人の中に漂っている。

「で、どうする?」
「総攻撃だ」
「どっちに対して?」
「ぼくらの――いいや、ぼくの敵にだ」
「またあいつらが邪魔してきたら?」
「殲滅だ。ぼくらの邪魔をする連中が何であろうと、難であろうと」
「侍には借りがある。侍は俺達がもらうが他はどうでもいい」
「それじゃ忍者は任せてもらおうかな」
「援護に回る」
「すまないが、ぼくはひとりだけ相手させてもらうとするよ」
「ラスボスか」
「……八回逃げて強くなりたいものだけどそうはいかないだろうねえ」
「諦めるべきですね」
「以前の敗因は?」
「ぼくの能力が破られた。あれから改良を重ねはしたが、彼もまた進化しているだろうね」

 三人の顔を見る。
 気負いすぎた様子もなければ気弱になっている様子もない。
 自然体。
 最後の戦いに丁度いいほどのリラックス加減だ。
 これなら彼に届き得る。

「今日ラスボスを倒せば後はエンディングまで一直線か」

 三人の仲間に自分を足して四人。
 まるで一昔前のRPGのようだと苦笑する。

 錨野蝶助。
 嘉藤千也。
 中元浩志。
 高城楓。
 彼ら『ゲーム王国』の面々が最後の戦いに身を投じるまで、残り九時間。
804 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/11(月) 23:39:13.66 ID:aYxurmdNo
「あれはどうなった?」
「今のところは順調です」
「恐らく今日だ。間に合うか?」
「さすがは〈暗部〉の技術力。ここまで高性能な人型はFナンバーでも無理でしょうね。――と言いたいところですが」
「問題が?」
「都市伝説の魂魄を、都市伝説の意思と記憶である魂と都市伝説を構成する魄とに分離し、魄を結晶化。
 結晶化した魄を注入すると若干の拒否反応はあるものの変質したまま一体化。
 ここまではどこかの〈悪の秘密結社〉なる組織が、〈第三帝国〉の医者の技術を下に行なったこと。
 しかし、変質した人型は暴走状態に陥って使いものにはなりません。
 原因は方法ではなく〈暗部〉の人型であるところに依るものが大きいかと思われます」
「ふむ」
「都市伝説の人間化には構成エネルギーである魄を基盤として人体構成をするわけですが、あえて魂で人型を作成。
 そこに結晶化した魄を人型へ注入。若干の拒否反応が見られましたが、魂を人型に構成した際の不純物――記憶や意識を核として搭載しました。
 能力として見るなら、前回の魂魄を人型に内蔵させた状態よりは三割増での結果が出ています」
「では問題はないということだな」
「完全に定着していないため、通常の契約者でいうところの拡大解釈を十全に行なうと稼働時間は約五二〇秒、九分弱のみです」
「時間に不安があるがいいだろう。早速今夜投入する」
「平時では問題ありませんが知性に若干の不安が」
「暴走状態ではないのだろう? ならば何も問題はない」

 それがどうしたとでも言いたげに。
 自分の頭を指で叩きながら笑う。

「狂っていようがいまいが、A-0への忠誠以外は何も要らん」
「103はいかがいたしましょう」
「殺されたから仕方ない。調整しておけ」

 十数分後、集められた黒服達に今夜の人員が伝えられる。

 A-102。
 A-104。
 A-109。

 A-100を筆頭に集められた、〈組織〉の中でも異端の過激派。
 彼らが江良井と〈ゲーム王国〉の面々と矛を交えるまで残り七時間。
805 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/11(月) 23:39:54.41 ID:aYxurmdNo
「んで、お前はどうすんだ?」

 学校町南区の繁華街よりも少し外れたところにあるラブホテル、ローペロペコンマ。
 余程の事情がない限り、本来の目的以外で訪れる者は少ない。
 本来の目的ではなく訪れた黒服を前に、ホテルのオーナーである中年の男はにやにやと笑みを隠さない。

「錨野は俺の敵となった」
「だから殺す、か。どこぞの箱庭にいる学生みたいだな」
「阿房。俺はただ静かに暮らしたいだけだ」

 呆れるような父親の言葉に顔色ひとつ変えることなく江良井卓は応じる。
 それが当たり前とでも言うように。
 それこそが、己の生き方だとでも言うように。

「で?」
「で、とは?」
「最終決戦を前に何しに来た?」
「帰宅中の俺を見つけてここまで引っ張って来たのはお前だ、阿房」
「ここは盛り上がるところだと思ってよ。よくあるじゃん、最終決戦前に仲間が集まってよっしゃいくぜ! みたいなノリ。ベタだけどあーゆーのは好きなんだよな。燃えるじゃん?」

 熱が入ったのか何やら語りだし始めた漫画の読み過ぎであろう父親に、隠すことなく溜息をひとつついて江良井は立ち上がる。

「それでよ、今まで戦ってきたライバルっぽい敵がお前を殺すのはこの俺だ的なさあ」

 何気なく目に入ったのが事務所内に置いてあるテレビ。
 関東地方の天気予報が映っている。

「前夜にヒロインと語り合ってたら仲間がニヤニヤしながら覗いてましたってのもよお」

 各地域の天気が映し出される中、唯一映らない地域。

「それぞれ最終調整してますってのも悪かないんだが、仲間全員集合はやっぱり外せねえよなあ」

 違和感を覚えたことがないといえば嘘になる。

「敵側の様子を描くのもまたありだよな」

 気にならなく――気にしなくなったのはいつからか。

「……待てよ、ラッキースケベもありだな!!」
「お前ちょっと黙れ」

 学校町――否、『学校町』。
 誰もが知らずと禁忌としているモノに錨野は触れようとしている。
 その最終的な壁は自分。
 錨野にとって最後に立ち塞がる最大の障害。
 禁忌に触らぬままがいいのかどうか、江良井は考えない。

「行ってくる」

 殺す。
 ただそれだけのために。
 自分の敵を排除する。
 ただそれだけのために。
 目的も理由もなく。

「どこにだ?」

 数多の血が流れる死地へ。

 江良井卓。
 たった独りで。

 戦闘開始まで――残り三十分。


806 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/11(月) 23:41:54.54 ID:aYxurmdNo
前回の続き
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1324651745/502-507

色々とパクらせていただきました。
土下座しつつも後悔はしない。
807 :老人@葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/12(火) 00:24:10.06 ID:9kU8+xuco
「もうやめてくれよ、爺さん。わかってんだろ? あんたじゃおれには勝てねえよ」

 悲痛な叫びを上げたのは五十代半ばの中年男性。
 対するのはその手にスマートフォンを握る老人。体のいたるところから出血しているのは全て中年の男につけられたものだ。

「おれの正体をあの黒ずくめの野郎から聞いたんだろう? 人は神に勝てねえんだよ。爺さん、おれはあんたを殺したくはねえんだ」

 ――先程の男性、彼は人ではありません。人に化けた神。ナイアーラトテップと呼ばれる邪神です

 ナイアーラトテップ。
 ホラー作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが生み出した、創作神話の中に出てくる邪神にしてトリックスター。
 数いる〈旧支配者〉の中でも人間と直接コンタクトを取り、全てを引っ掻き回し、時には己の主人すら嘲笑う神。

 創作上の登場人物が意思ある存在として現れることは珍しくないと知っている老人に驚きはない。
 黒服の言葉に嘘偽りがないことは、男の衣服の下で不定形の何かが蠢いているのを見れば明らかだ。
 衣服の下の肉の塊で殴られても鉤爪で裂かれても、老人が満身創痍で済んでいるのは、男が手を抜いているからに他ならない。
 それでも老人の心は折れない。
 神の有する絶対の力は老人の体を傷つかせることはできたが、心まで傷つけることはできていない。
 老人の胸にあるものはひとつ。

 だから満身創痍にも拘らず、老人は武器を手に取る。
 老人が持つには珍しい最新のスマートフォンを。
 カメラを男に向け、ボタンを押す――画面に指先が触れる直前、老人の体を肉塊が襲う。

「……ここまで差があるか……」
「諦めてくれよ、どれだけ早く襲うとしてもおれのスピードに敵うわけがないだろうが」

 不適に笑う老人と今にも泣き出しそうな男。
 しかし実際に追い詰められているのは老人であり、優位に立っているのは男である。

「どうしてあんな奴の言いなりになってんだよ」
「奴と交わした約定よ」
「そのせいで死んじまうんだぞ」
「まだ死ぬとは決まっとらん」

 老人の手が動く瞬間、男の肉塊が腕を絡めとる。
 自らの腕の軋む音にも苦痛の色を隠さず、だがそれでも老人は笑う。

「人を殺す気概のない落ちぶれた神如きに殺されるわけもないわ、阿呆」
「あんただけは殺したくはねえんだ……」
「――殺す度胸もなく神を名乗るな、小僧!」

 老人の怒号と共に体が光り、肉塊が弾かれた。
 男の肉塊を弾いたものは老人の体の周りに現れた淡い光球。
 それはまるで――

「これは、この光は……」
808 :老人@葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/12(火) 00:24:47.04 ID:9kU8+xuco

『写真に写ると魂が抜かれる』

 都市伝説。

『写真に写る』

 都市伝説本来の力。

『魂が抜かれる』

 都市伝説の新たなる力。

『魂』

 拡大解釈。

『抜かれる』

 ――抜かれた魂はどこに?
809 :老人@葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/12(火) 00:25:22.13 ID:9kU8+xuco
「まさか、まさか――!」
「そのまさかよ。人間を舐めるなよ、糞神」

 ある光は螺旋を描くように、ある光は上下に、ある光は動かずに。
 それぞれ別の動きをとりながらも、老人の体を取り巻く無数の光の球が宙に浮かんでいる。あたかも老人を守るように。

「去ねい!」

 宙を漂う光球が、文字通り目にも留まらぬ速さで男へと向かう。
 肉塊を硬質化させて防いだものの、光球が直撃した跡からは淡い煙が立ち上る。

 老人の手の動きにあわせ、光球が男を襲う。
 ある球は肉塊を硬質化して防ぎ、ある光球は鉤爪で裂き、ある光球は蝕腕で軌道を逸らす。
 時間にするとわずか十秒にも満たない。
 一方的な連射に見えるが、それでも男の傷は少ない。

「……くそっ」

 男の後退に合わせて老人も前に出る。
 老人のものとは思えぬ速度で光球を操る手を動かしながら。
 撃ち、弾かれ、撃たれ、防ぐ。
 ただがむしゃらに撃っているわけでも防いでいるわけでもない。
 どちらも最善の一手を模索しつつの攻防。

 しかし、流星の如き光はいつしか数が減り始めた。
 数こそ少なくなったとはいえ、老人の唯一の武器である光球はまだ浮かんでいる。
 ただ、その使い手である老人の体力が尽きた。
 戦闘向けではない都市伝説同様、老人もその年齢を考えると戦闘に向いているとはいい難い。

「地力が、違うか……」

 老人と男。人と神。
 結果を見れば自明の理。
 それでもなお、手を止めぬ老人を賞賛すべきであろう。

 手を動かすのがわずかに遅れた、瞬きよりも短い一瞬。
 致命的な隙は――絶好の勝機であった。

「しまっ……」

 光球を掻い潜り、男が肉塊を放つ。
 叩きつけられた体は簡単に皹が入り、小さな体は宙を飛び、地面に落下する。
 常人でも耐えかねる衝撃に口から体中から血を流し、弾かれた体は無機質なアスファルトの上で何度も踊る。
 当然といえば当然の結果。
 ――勝負あり。

 ゆっくりと、静かに老人の下へと歩み寄る男。
 今にも泣き出しそうなその顔はとても勝利者のものではない。

「どうしてだ?」
「どうしてもだ」
「わからねえよ、おれにはわからねえ……」
「お前が勝ってわしが負けた。それだけのことよ。気に病むことはない。――殺せ」
「……そればっかりはできねえ」
「言うと思ったわ、愚か者が」

 満身創痍どころか、死にかけの老人はにやりと笑う。
 その手には男を相手に最後まで押すことができなかったスマートフォン。

「……何をする気だ?」
「――負けて生きるは恥よ喃」
「バッ……」

 震える手でどのような操作をしたのか、老人の顔がスマートフォンの光で照らされる。

「沢山殺してきたが、わしの死はわしだけのものだ。人を殺せぬへたれた神にくれてやるつもりはないわい」
「やめ――」

 かしゃり

 音が鳴り、光が弾け――暗転。
 ただそれだけの呆気なさで大正生まれの老人はこの世を去った。
 何もできなかった神を独り残して。
 老人の操るスマートフォンは最初からカメラを内側に設定していたのかどうか――知る由もなく。


810 :老人@葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/12(火) 00:27:46.81 ID:9kU8+xuco
前回の話は>>131参照。

ようやく邪神投入&決着。
次の投下でお終いです。折角なのでwikiには完結してから載せます。
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 00:34:50.90 ID:f9SnjDNlo
乙でした
人のいい邪神はやるせないことになってしまったなぁ
のんびり碁を打っていられなかった巡り合わせにしんみり
812 :老人@葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/12(火) 01:03:40.98 ID:9kU8+xuco

「どうしておれの下へ爺さんを寄越した」

「無論、あなたを殺すためです」

「どうしておれの命が欲しい」

「無論、あなたが見るに耐えないからです」

「おれは知りたかっただけだ、人というものを」

「あなたは知らなすぎる、神というものを」

「だが、おれはお前を良く知っている」

「勿論、私はあなたを良く知っている」

「おれはお前だ、無貌の神」

「私はあなたです、這い寄る混沌」

「……もう問答は終わりだ。決着をつけよう」

「……では始めましょうか。同族の決着を」

「終わると思うか、おれ達の戦いが」

「いつもどこかで終わっています、私達の戦いは」

「おれ達はどこに行こうとしているんだ?」

「私達はすでに行き着いたのかもしれません」

「終末に、か」

「果てに、です」

「おれは知りたかった、人のこころを。それを知れば、おれ達は先へ行ける」

「神には必要ありません、人のこころは。知ってしまうと行けなくなってしまう」

「おれは人に生まれるべきだった」

「あなたは神に生まれるべきではなかった」

「だから殺してくれ、人として」

「だから殺しましょう、神として」

「そして、人として生まれ変わりたい」

「そして、神として再び生まれなさい」

「これで終わりか?」

「これで終わりです」

「さらばだ、Nyarlathotep」

「さようなら、Nyarlathotep」


813 :老人@葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage saga]:2012/06/12(火) 01:05:10.87 ID:9kU8+xuco
老人のお話はこれで終わり。

投下は明日に回すつもりだったけど投下しました。
最後どうなったのかは皆さんのご想像にお任せします。
814 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/12(火) 02:48:01.70 ID:guFEA1aAO
大王の人、葬儀屋の人おつですー
ちょっとこれから遠出なので帰ってきてから感想書きます
815 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/13(水) 01:08:30.28 ID:X1qUd+9AO
大王の人乙ですー
正義くん一行だけでなくて、タナトスもがんじがらめの運命から解き放たれたんですね…
いつの日か彼が味方として現れてくれることを祈ります。

葬儀屋の人乙ですー
おおぅニャル様光臨…と思いきや爺さん死んでるー!!
でもこれはなんだかニャル様もかあいそうだ
816 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/13(水) 01:09:13.71 ID:X1qUd+9AO
「キライ、キライ、キライ・・・」
 薄青い瞳をぼんやりと彷徨わせ、ただ拒絶の言葉を紡ぐ少女。
「いかん!」
 ノイの自我が危うい状態であると悟ったムーンストラックは彼女の肩を揺さぶり反応を見て、おもむろにノイの額に手を当てた。
「ムーンストラック・・・・さん、いったい何を?」
 彼は元々、生物の精神に干渉する都市伝説。
 力の源泉たる月光を欠いている今は最大に力を振るえるわけではないが、契約者の精神を引き戻す程度の事なら出来るはず。

(邪魔をするでない・・・)

 だがそれを阻むかのように、ひとつの影がノイの背後に現れる。
 巨大だが瀟洒な銀の鎌を携えた、黒い襤褸を纏った骸骨。 その眼窩はただ暗く虚ろ、その鎌は精神の弱い者なら見るだけで命を奪われそうに冷たく鋭く輝いていた。
「これが・・・『死神』」
 柳は元来神経が鋭い質ではないが、それでも肌が粟立ちぴりぴりする程の生あるものを拒絶する気配に半ば圧倒されてしまう。
 こんな幼い少女が、なぜこんな禍々しい都市伝説を。

(人間、そちもだ・・・死に行く定めの者が)

(死を司る我に刃向かうでない)

 死神。死を司る“神”柳は心の中で、その名を反芻する。
 だったら何をしてもいいのか?命を奪うことが存在意義として、それを幼い子と契約して行う必然性は?
「お前が死神でもなんでもいいけど」
 いったん言葉を切って呼吸を整える。

「こんな小さな子供に、殺しなんかさせるなっ!!」

 肺の中の空気を全て目前の骸骨に叩きつける勢いで、柳は怒鳴った。

(そちの与り知るところではない。)

(“これ”は我が契約者、リリス・マリアツェルが末裔)
(生まれながらに我がもの。死の女神たるを運命づけられし存在)

「生まれながらに・・・お前のものだって!?」
「・・・そうだ」
 小さなノイを抱えたまま、ムーンストラックが消え入りそうに呟く。
 その昔「死神」と契約したリリス・マリアツェルという女がいたという。
 彼女は自分の直系の血に連なる女子を捧げる事で契約を強化し、自らが「生ける死の女神」となった。
 生まれながらに死神に捧げられた子供。それがノイ・リリス・マリアツェルの、契約者としての存在意義。
817 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/13(水) 01:09:58.45 ID:X1qUd+9AO
「・・・だからノイちゃんは、『死神』と契約しなくちゃならないって?」
 顔も知らない先祖の為にしたくもない契約をし
 死の意味も知らずに“命を奪う”という行為のために心身を―自らの“器”を捧げなければならない?
「それがこの子の運命だと!?ふざけるなっ!!」

「やなぎ・・・?」
「ノイ・リリス!?」
「ノイちゃん!・・・気が付いた?」
 意識は戻ったものの、依然茫洋と青い瞳を彷徨わせるノイの顔を二人が覗き込むが、反応はあまり芳しくない。
「これで・・・いいのかな・・・?」
「お魚も、とりさんも、やすらかにしたよ・・・あたし、いいけいやくしゃ・・・?」
『・・・!!』
 二人の見たところ、ノイは死神の操り人形として“飲まれ掛けて”いる。
 このまま本人が自我を取り戻さねば行き着く末は明白だった。
「やめなさい、ノイ・リリス。お前がしているのは・・・悪いことだ」
 ぎゅっとムーンストラックがノイを抱きしめた。呼び掛ける声がどうしても震えてしまう。
「ノイちゃん」
 もう見えていないかも知れないと思いつつ、柳はノイの青い瞳を見つめた。
「あの子たちも、やすらかにしなく、ちゃ・・・」
「ノイちゃん」
 きゅっと、力の入らないちいさな手を握りしめて続ける。
「死神の言うことを聞けば、いい契約者になれるかも知れない。でも」
「そうしたら、ノイちゃんは独りぼっちになってしまうんだ」
「生き物を安らかにするっていうのは、死なせることなんだ。
理由もないのに、ただ死神が言うからって、生き物を死なせては駄目なんだ」
 変化があった。
 青い瞳が僅かに震え、暖かく透き通るものが、柳の手を濡らす。
「ひとりは、いや・・・」
「ひとりは、いや。あそんでくれた犬さんも、お庭の鳥さんもみんないなくなっちゃったの。
さみしいの。だれかもとにもどして・・・ひとりぼっちは、いや・・・!」
 ぱたぱたと滴が落ちる。水滴の反射だけでなく、瞳がはっきりと、元の光を取り戻しつつあった。
 ノイの手が柳の手を強く握り返す。
「ノイ・リリス!」
「ノイちゃん・・・!」
(余計な真似をしおって・・・!)

 ふたりの頭上に、黒い影が落ちた。



続く
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/06/15(金) 00:50:31.07 ID:KBlYiAqJo
じじい乙
じじい…さよなら(´;ω;`)ゝ

ノイちゃん乙
ノイちゃんノイちゃああああああん!!
このねグリムリーパーね、俺の知ってる人にそっくりで何かむかつくの
やなぎんコイツをボコボコにして
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/06/15(金) 00:51:22.89 ID:KBlYiAqJo
まだ沖縄かよ
もういい酒買ってくる(´・ω・`)
820 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/15(金) 17:29:42.49 ID:Q1dBs0cAO
>>818
>やなぎんコイツをボコボコにして
奴は…あの3人の中でも…最弱ッ…
と思ったけど、まだこの頃のノイは地獄の声ないんだった
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/15(金) 21:53:40.18 ID:d/k6tjIoo
皆様投下乙ですー

なんだか暗いよー明るい話の後に暗い話はギャップが凄いよー
誰かこの流れをぶった切る話を……
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/16(土) 14:51:35.64 ID:p4ea/AXSO
819 都市伝説は名前がない:2008/05/01(木) 16:40:48 O

このスレで聞くのも恐縮なんですが、都市伝説ってどういう契約システムなんですかお?( ^ω^)
多重に契約とかできるんですかお?( ^ω^)
いろんな都市伝説と契約してみたいんだお( ^ω^)
 

821 都市伝説は名前がない:2008/05/01(木) 16:44:15 0

>>819
物品系と呪い系は契約し放題だお( ^ω^)
片っ端から契約しまくるといいお( ^ω^)


885 都市伝説は名前がない:2008/05/08(木) 20:48:15 0

>>821
てめえ、一生恨んでやる
あやうく 容量オーバーだ
823 :葬儀屋 ◆yeTK1cdmjo [sage]:2012/06/16(土) 16:00:25.52 ID:LyZF+qPPo
改変うめえwwwwww
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/06/16(土) 17:34:28.76 ID:K0azC1xAO
>>822ワロタwwww
早く明るいパート書きたいよ
もういっそ6月終わるまで馬鹿馬鹿しい短編ばっかり書いてようかな
825 :ダンタリアンの契約者は無茶振りがお好きなようです ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/16(土) 17:37:36.20 ID:K0azC1xAO
「でもさー、実際どうかと思うよ」
 古書店「カムパネルラ」の店内。店の片隅には控えめにテーブルセットが置かれている。
 無論店内での飲食は出来ないが、本をじっくり吟味できるようにとの店主の気遣いで置かれたそれは
 専らただ一人のアルバイトがサボって本を読むためか、常連客とのお喋りの場と化していた。
 そのアルバイト「ダンタリアン」の契約者たる水上怜奈が
本も何も置いていないテーブルの上にダージリンの注がれたカップを並べていく。
「ふつー美を磨くっていったら、アンチエイジングとか基礎化粧じゃん」
 いきなり整形ってどーよ。怜奈の言葉に口裂け女は縮こまった。
「怜奈さん」
 穏やかに彼女と契約したばかりの棘が口を挟む。
「たとえば怜奈さんが車を買ったとして
エアロパーツを新たに付けるなり痛車にカスタムしたら工場の人に申し訳ないのかとか
ベーシックな性能こそが車の命だと言われたら、どうします?」
「さあ?あたしは車乗んないから知らない」
 棘は椅子からずり落ちそうになった。質問の意図がまるで解っていない。
「・・・質問の内容を変えましょう。もしお洋服を買ってきて、それを怜奈さんなりにコサージュやレースを付けて
リメイクしたところ、デザイナーさんに謝れとかお洋服本来の美はシンプルイズベストとか
全く何の関わりもない人に言われたら、何と思いますか?」
 因みに今日の怜奈はといえば、裾に様々なお菓子の柄が並んだ、胸当てのついたエプロン風の水色のスカートに
 ピンク色のリボンタイ付きのブラウスを併せた目がちかちかしそうな出で立ち。
 両サイドをそれぞれ高い位置で纏めた髪にはビスケットのモチーフが付いたアクセサリーが付けられていて、
「そんな阿呆のような服装で店に立たせられるか」
 と危うく店から追い出されそうになった、シンプルイズベストとは対極にある身形だった。
「うーん・・・それはそうかもしれないけど、あたしは好きでこうしてるんだから、どうこう言われても困るとしか」
「でしょう」
 顔の造作なんてものもその程度ですよと言われ、困惑したように黙り込む怜奈。
826 :ダンタリアンの契約者は無茶振りがお好きなようです ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/16(土) 17:38:08.52 ID:K0azC1xAO
「顔を変えたくらいで生まれ持った個性は失われないし、親に感謝していないという事にはなりません」
「う、うむー・・・」
「怜奈、もうその辺にしておけ。この男の屁理屈にお前如きが太刀打ちできるものか」
 それより本の整理でもしておけと店の奥から青年以上少壮未満、といった男が姿を現した。
 男性にしては長めの黒髪を適当に纏め、チャイナ風の立ち襟の黒いシャツに、ややシルエットのルーズな黒いズボン姿の彼が
 古書店「カムパネルラ」の店主、九頭竜 神(くずりゅう じん)その人だった。

「えー、もう10時になるじゃんか」
「だったら外の掃除と閉店の支度だ。働け馬鹿者」
 店主と雇われバイトとはあまり思えない応酬がその後も続く。
 やがて
「わかりましたー」
 と気のない返事の後、怜奈が独り言と共に遠ざかる。
「ふふ」
「竹下、何が可笑しい」
「いえね、九頭竜君は昔から偏屈で人嫌いだったのに、随分とあの子には甘いんですねぇ」

「ったく、給料の割にこき使いすぎだっつの」
 ぶつぶつ言いながらも店の前を丁寧に掃く。ゴミでも落ちていたら後で何を言われるかわかったもんじゃない。
 掃き掃除を終えると道路に打ち水をしていく。
 初夏にしては高い気温が幾分か下がるが大気中の水分が増して行くようで、怜奈は僅かに眉をひそめた。
 ふと、立ち上る水蒸気が揺らぎ、ひとりの男の姿が顕わになる。
「お嬢さん…注射をしても宜しいかな」
「ふざけんな!」
 みなまで聞かず、男は注射器を構えて突進してくる。
 怜奈は慌てることなく男の注射器を持った手首を掴むと、素早く身を翻した!
 どさっと鈍い音がして、注射男の体は仰向けにひっくり返り。
 なにが起きたのか解らないといった表情でひたすら目を瞬いている。
「人の仕事の邪魔すんな。以上!」
 きぱっと言い捨てて注射男に背を向け、再び閉店の準備に取りかかった。

 その日の深夜。
 学校町内にあるо(オウ)-No本拠地内にて。
「重症の貧血が・・・頻発?」
「ええ、若い女性を中心に。それまでの健康状態には全く関連のようなものはありません」
「このところ頻発してる『キャトル・ミューティレーション』との関連はどうなのかしらねぇ」
「なんにせよ、重篤な被害が出る前に何とかしないとねー。引き続き捜査してねー」
「了解」
「さて、何が目的なのかしらねぇ・・・」



続く
827 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/06/16(土) 18:04:14.16 ID:K0azC1xAO
しまった。夜10時に打ち水してどうすんだ。wikiでは訂正します…orz
828 :怨み屋さんはよみがえる [saga ]:2012/06/16(土) 22:13:59.62 ID:lwvnFWzE0
【第二.五話】

「善次郎さん、遊びに来ました」

「おや真美ちゃん、今日は一人かい?」

「いいえ善次郎さん、友達の喜久恵ちゃんも連れてきたのよ」

「こ、こんにちわ」

 とある昼下がり、善次郎の家に二人の少女が訪れた。
 女学校に通う姪の真美、そしてその友達喜久恵。
 
「こんにちわ喜久恵ちゃん」
 
 善次郎は喜久恵ににこりと微笑む。
 喜久恵は顔を真赤にして小さく頭を下げた。

「おや、おとなしい子なんだね」

「善次郎さんが男前だから緊張してるのよ」

「ハハッ、そう言われると悪い気はしないな
 だがあと十年くらいしないと僕としてはねえ……」

「まあ、善次郎さんったら」

「ははは、冗談だよ
 美登利なら多分奥で待っているから上がると良い」

 二人は今日、美登利に琴の稽古をつけてもらいに来ていた。
 元芸妓だけあって美登利の技術は確かに一級品で、近所の少し裕福な家の子供達の中にも彼女に琴を教えられている少女は多かった。

「おじゃましま〜す!」

「お……お邪魔します」

「どうぞ」

 二人の少女は静かに歩いて行く。
 その後ろ姿を見て善次郎は自分の娘のことを思い出していた。
 生きていればそろそろ稽古事を始める年齢だったろうか。
 いやまだ少し早いか。
 少しだけおかしくて、喩えようなく悲しかった。
 善次郎は三人分のコーヒー豆を用意する。
 種類は今で言うところのモカ。
 熱を持たないようにゆっくりと専用の装置で挽いて木綿布に乗せ、少量のお湯を注いで若干蒸らし、それから珈琲を淹れる。
 蒸らすと粉が膨らんだ所を見るとかなり新鮮な豆だったらしい。
 始末屋なんて商売をしていないと到底手に入らない代物だろう。
 彼は珈琲を湯のみに入れて盆に載せ、運ぶ。
 美登利達の居る部屋からは楽しそうな声が聞こえた。
829 :怨み屋さんはよみがえる [saga ]:2012/06/16(土) 22:14:26.92 ID:lwvnFWzE0
「それで学校の先生ったらうっかり教科書を間違えてて、私たちの方を逆に叱ったんですよ!」

「まあそれは大変だったわね、困った先生も居るものね」

「でも教科書を間違っているって言ったら顔を真赤にしちゃって!」

「あら可愛いわ」

「それで今度は謝ってるんですよ」

「あらあら、それなら素直でいい人じゃない」

 どうやら学校の話で盛り上がっているようだった。
 先ほどはおどおどしていた喜久恵も楽しそうに話している。
 伊烏は自らの顔を煩わしく思った。
 女性に要らぬ緊張を強いるのは気分が良くない。
 なんて思うのだ。

「皆、お茶でも飲まないかい?」

 戸を開いて努めて明るく声を出す。

「まあ素敵」

「旦那様、そのお茶は……」

「舶来の豆茶(コーヒー)だよ
 ここで挽いたばかりだから香りもいいはずだ
 茶請けは駄菓子くらいしか無いから良い所のお嬢様には満足できないだろうが許してくれ」

「まあすごい!」

「豆茶なんて初めて飲みます……」

「それじゃあ僕は店番が有るから、三人でゆっくりしてくれ」

「あら、善次郎さん、そんな冷たいこと言わないでください」

「そうですよ旦那様、演奏というのは聞いてくれる人が居た方が集中できますから」

「あ、あの……よろしければ私の演奏を聞いてもらいたいかなって……」

 あまり物をハッキリ言わなさそうな喜久恵までもがそう言うとは善次郎は思わなかった。
 そこまで言われるとどうしようもないので善次郎は素直に座ることにする。

「そういえば、私も喜久恵ちゃんも駄菓子って食べたこと無いよね」

「う、うん」

「あら緊張しなくて良いんですよ、この人顔は綺麗だけど案外抜けてて親しみやすい人ですから」

「抜けててとはなんだ」

「そう言ってる側から指が真っ黒です」

「あ……!」

 コーヒー豆を挽いた時のものだ。
 うっかり忘れていた。
 女性三名はあくまで上品に笑う。
830 :怨み屋さんはよみがえる [saga ]:2012/06/16(土) 22:14:58.50 ID:lwvnFWzE0
「……あ、洗ってくる」

 しょぼくれた子犬のような顔をする善次郎。
 
「あの、これで拭いてください」

 喜久恵がすかさずハンカチを出す。

「良いのかい?」

「はい、せっかくこんな素敵な物を出してくれたんですからこれくらい当たり前です!」

「そうか……せっかくのご好意に甘えるとしよう」

 善次郎はそそくさと指を綺麗にする。

「このハンカチは洗って返すよ」

「いえ、悪いですよ!」

「遠慮しない遠慮しない」

「そうよ喜久恵、どうせまた来るんだし、それで良いじゃない」

「うーん……それじゃあお願いします」

「ああ、それより早く豆茶を飲むと良い
 苦ければミルクと砂糖も……」

「苦っ!」

「真美……」

「えへへ……」

「はいどうぞ二人共、私のも使っていいわよ」

「ありがとうございます先生!」

「あらやだ先生だなんてそんな立派なものじゃないわ」

「先生はミルクとか砂糖って要らないんですか?」

「違いの分かる大人の女ですから」

「……ふっ」

「旦那様、今笑いましたね」

「わ、笑ってない!笑ってないぞ!
 ちがっ、ちょ……待て!俺が悪かった!
 目が!目が笑ってに゛ゃああああああああああああああああ!」

 伊烏善次郎撃沈。
831 :怨み屋さんはよみがえる [saga ]:2012/06/16(土) 22:16:58.60 ID:lwvnFWzE0
「そういえばこっちの駄菓子も食べて頂戴」

「は……はい」

「いただきま……す」

 描写するも憚られる状態なので善次郎についての描写は割愛させていただく。

「あら、美味しい」

「駄菓子ってあんまり良いものって思ってなかったんですけどこれは……」

「うふふ、びっくりしたでしょ。実は私が作ってるのよねこれ
 ほら、普通の駄菓子ってあんまり良いもの使ってないし
 技術さえあれば材料から買って作った方が手間はあるけど実は安いし」

「これってなんですか、はちみつっぽいのは分かるんですけど」

「それは蜂蜜に秘密の粉を混ぜて固めてから杭を打ち込んで穴を開けて何度も何度も伸ばしたの
 昔旅行に行った先で見つけて真似して作ってみたのよね
 一本一本は蜘蛛の糸みたいに細い蜂蜜の糸なのよん」

「わあすっごい……!」

 名状しがたい状態になっている伊烏を放置したまま女性三名のコーヒーと琴の時間は過ぎていくのであった……。

832 :怨み屋さんはよみがえる [saga ]:2012/06/16(土) 22:17:24.87 ID:lwvnFWzE0




――――



 その日の晩。
 食事もすでに終えて二人は仕事の準備をしていた。

「いやぁ……良い子でしたね、喜久恵ちゃん」

「そうだな、友達を連れてきたいと言われた時はちょっと心配だったけど
 会ってみると良い子だったし……」

「筋も良かったですよ」

「ああ、僕に音楽は解らないが気持ちは篭ってるなあと」

「すごいわ主様褒めてない」

「え、これだめ?」

「気持ちは当たり前
 その上で技量について褒めて欲しいのよ」

「そっかあ……」

 善次郎は花柄のハンカチを室内に干す

「主様、それどうしたの?」

「昼のハンカチだよ、洗って今干しているところさ」

「まあ武器の側に置くなんて」

「不味かったかな」

「駄目ですよそれは……なんとなく」

「そっか」

「今日の仕事はなんでしたっけ?」

「通り魔の始末だそうだ
 依頼人は娘を全員殺されたそうな」

「ああー各所で恨み買ってそうですもんね
 女の人ばっかり狙うんですって?
 ひどいわ、女の敵だわ」

「女……?」

「ん?」

「な、なんでもない!
 とにかく俺以外にも奴を狙っている存在は居るらしいし
 遅かれ早かれそいつは八つ裂きにされてお終いだろうな
 己の欲望のままに殺して死ぬ悪党の末路なんてそんなもんか……」

「主様がそいつを殺す前提ですね」

「無論」

「……欲望で殺しているのは人は皆同じ、なのに」

「その通り、だからきっと」

 僕もろくな死に方はしない。
 そう言って善次郎は皮肉たっぷりに微笑んだ。
833 :怨み屋さんはよみがえる [saga ]:2012/06/16(土) 22:18:11.37 ID:lwvnFWzE0
「主様……」

「さ、行くか」

「……はい」

 扉を開けて一歩踏み出せば、そこは闇と怪異の支配する魔都東京。
 薄っぺらな扉の一枚が大きく世界を隔てていることを改めて実感させられる。
 そんな、嫌な空気のする夜。
 静かな街路にはサクサクと履物の音だけが響く。
 行く場所も無く歩きまわる二人。
 何気なく止まって月を見上げる。
 
「あれを見ろ、日輪の忘れ物のようじゃないか」

「酔っておられるのですか主様」

「俺だってこんな夜はセンチになる」

「はぁ……」

「まあ、ある意味間違いじゃないですけどね
 月明かりは日光を反射しているわけですから」

「そうなの!?」

「知らんかったのか……」

「お前すごいな、なんでも知ってるんじゃないの?」

「知ってることを知ってるだけです」

 二人は笑う。
 そんな時、遠くから銃声が聞こえた。
 ほんのわずかに混じる血の匂い。
 うなぎ屋の前を通りかかったような表情で美登利は振り返る。

「あっちです主様」

「了解」

 二人は駆け出す。
 すぐに音の元は分かった。
 一人は少女。
 顔は解らないが地面にへたり込んで、足から血を流している。

「安心しなお嬢ちゃん、すぐに楽にしてやるぜ」
 
 もう一人は男。
 拳銃を少女に向けて構えている。

「少しお楽しみの後になりそうだがな!」

 下卑た笑みを少女に向ける男。

「おいおま――――」

 一歩踏み出そうとした善次郎を美登利が制する。

「主様、なーんかおかしいですよ」

「え?」

 銃声、直後に金属音。
 鉈だった。
 少女が鉈で銃弾を弾いたのだ。
 男が小声で悪態をつく。
 少女は手に持った鉈で男の右手を狙う。
 男はとっさに右手を引っ込め、がら空きになった少女の脇腹を思い切り蹴る。
 吹き飛ばされた少女は空中で姿勢を制御、壁に着地して三次元的機動で男に再び迫る。
 もう一度響く銃声、スローに見える世界。
 刃には当てない。
 鎬に当てる部分で僅かに軌道を逸らしながら真っ直ぐに近づいていく。
 もう一発、銃弾が放たれる。
 少女の額に向けた一撃。
 最高のタイミングで放たれた一撃。
 躱す術は無い。
 少女は額を思い切り突き出す。
 跳躍の勢いとその振り下ろした額が弾丸を捉えて地面に叩き落とす。
 そのまま真っ直ぐに伸びる鉈は男の腕の肉をごっそり削いでいった。
 男の表情は歪む。
834 :怨み屋さんはよみがえる [saga ]:2012/06/16(土) 22:18:52.41 ID:lwvnFWzE0
「不味い!」

「主様、ありゃあもう駄目ですよ」

 少女は姿勢を低くして男の足元に滑りこむ。
 鉈を逆手に持ち替えてすれ違いざまくるりと一回転。
 鉈の刃が男の足を通り抜ける。
 順手に持ち替えて袈裟懸けに一度、逆袈裟にもう一度。
 下段回し蹴りで先ほどすでに切断された男の足が飛ぶ。
 自由落下する男の頭部が少女の目の前まで来た時、少女は鉈を振り下ろした。
 完熟トマトが一つ破裂したような、そんな光景。

「あれが通り魔ですか」

「らしいな」

 少女は伊烏達を見かけて逃げ出す。

「ぼーっと見てたわけじゃああるまいな」

「勿論」

 辺りにはすでに大量の糸が張ってある。
 逃げられはしない。
 そのことに気がついて少女は足を止める。

「……さて、さっくり仕掛けといきますか」

 少女は見る。
 善次郎と美登利の方を。

「…………ああ」

「どうした?」

「今日のは私がやりますよ
 人間の主様では少々分が悪い」

 言うやいなや美登利は駆け出す。
 動きにくい和服と思えぬ疾走。
 初撃は履いてた下駄を飛ばしての奇襲。
 無論鉈で弾き飛ばされる。
 しかしその時点ですでに美登利は跳躍を開始していた。
 見上げる少女、足が顔面に迫る。
 地面にたたきつけられる少女。
 追い打ちをかける好機、だが美登利は飛び退いた。
 伊烏は目で追うのがやっと。
 気づくと彼女の服は下の部分が滅茶苦茶に切り刻まれていた。
 足も少し怪我している。
835 :怨み屋さんはよみがえる [saga ]:2012/06/16(土) 22:19:20.48 ID:lwvnFWzE0
「主様、こっちを絶対見ないでくださいね!
 ていうかそっち見てて下さいそっち!」

「あ、ああ……」

 何時も見ているじゃないか……と思いつつ背を向ける。
 それを確認した美登利は少女に向き直る。
 もう一本鉈を出して構える少女。
 明らかに殺し慣れている。
 少女が今度は鉈で斬りかかる。
 美登利は悲しげな表情でそれを見ていた。
 真上から振り下ろされた一撃を手足の長さの違いで上手く受け流す。
 続いてくるもう一本にあえて片腕は切らせる。

「――――!?」

 傷口から溢れる無数の蜘蛛。
 それが少女の顔に向けて飛び散る。
 視界0。
 長く伸びた爪で美登利は少女の首を裂く。
 心臓が脈打つごとに派手に流れる血飛沫。
 それでも少女は戦うことをやめず、両手で抱きつくように彼女に向けて鉈を振るう。
 美登利は少女に背を向けながら踏み込む。
 少し屈んで両足をバネにしながら、腕を鉈の軌道から外す動きで振り回しながら、全体重を乗せて体当たりを決めた。
 人外たる美登利の力で放つ只の体当たり。
 全身の力を綺麗に一箇所に集約して放ったそれは少女の肋骨を一気に持っていった。
 倒れ、起き上がろうとする少女の顔は苦痛にゆがむ。
 歳相応の少女らしく泣いている。
 美登利はそんな彼女に向けてトドメの拳を放った。
 鈍い鈍い音が善次郎の耳に届いた。

836 :怨み屋さんはよみがえる [saga ]:2012/06/16(土) 22:19:46.15 ID:lwvnFWzE0


――――


「善次郎さん……」

 数日後、真美は使用人を連れて再び善次郎の家を訪れていた。
 何故か浮かない表情で。

「あれ、喜久恵ちゃんは?」

 善次郎はなんだかんだで気に入ってたあの少女のことを尋ねた。

「通り魔に殺されちゃったって……」

 善次郎の顔に映るのは哀しみ。
 もっと早く動いていればという後悔。

「……何時?」

 念の為に時間を確認する。
 ことによっては事態はもっと面倒になる。

「あの日……私と別れた後に
 警察の人の話だとわりとすぐだったみたいで……」

 そうなると美登利が始末する前か、と善次郎は思って後悔を加速させる。

「ああ、だから今日は送ってもらってたのか」

「うん……」

「そっか……」

「ねえ善次郎さん」

「なんだ?」

「まだ、泣き足りないの」

「…………おいで」

 善次郎は優しく真美を抱き寄せる。
 低く低く押し殺した泣き声が何時までも何時までも続いた。

【第二.五話 おしまい】
837 :怨み屋さんはよみがえる [saga ]:2012/06/16(土) 22:20:36.69 ID:lwvnFWzE0
敵に向けて鉄山靠叩きこむヒロイン
まったく需要が無くても俺は書く!
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/06/16(土) 22:33:11.24 ID:K0azC1xAO
怨み屋さんの人乙ですー
美登利さんにシメられる善次郎さんかぁいい
美登利さんも強いしかこいいよ。鉈少女強かったからもっと〔ピー〕するとこ見たかったな
最後もしや喜久恵ちゃんが鉈少女なのかと思って少しビビった
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2012/06/16(土) 23:03:45.39 ID:Ce8OTUiU0
>最後もしや喜久恵ちゃんが鉈少女なのかと思って少しビビった
美登利さんは目がいい
特に夜目が効きます



効きます
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/06/16(土) 23:15:33.02 ID:K0azC1xAO
>美登利さんは目がいい
>特に夜目が効きます
>効きます

おkわかった…うん
841 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:18:05.68 ID:aK1ydoYP0
・“人間の”主様では少々分が悪い
・絶対見ないでくださいね!
・暗闇でハッキリ見えていたのは美登利さんだけ

……うん
842 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:37:16.44 ID:aK1ydoYP0
ここで善次郎さんが切り裂きジャックだった喜久恵ちゃんをあれしてるとルート分岐なんですよ
真美ちゃんルートなんですよ
843 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:37:42.65 ID:aK1ydoYP0
【第六話】

「――――今だ!」

 闇夜に響く怒号。
 それと同時に四方八方から飛び出す蜘蛛の糸。
 月光を受けて飛ぶ影を絡めとり、地面に叩きつける。
 糸でぐるぐる巻きになったソレ目掛けて善次郎は屋根の上から飛び降りながら拳を振り下ろす。
 しかしその刹那、黒く丸められたソレは無数の蝙蝠になって彼の拳から逃れる。
 衝撃で周囲の地面がめり込むほどの拳打。
 それを外した代償は決して小さくはない。
 隙だらけになった彼の背後でソレは怪物としての姿を取り戻す。
 白い肌、赤い目、この世の人とも思えぬ美貌、背は高く、グラマラスな肉體にはぴっちりとした黒の洋服がよく似合っていた。

「あらおじさま、なんで私に意地悪するの?」

「お前が人間を襲って回ってるからだよ!」

 くるりと反転しながら裏拳を放つ善次郎。
 だが怪異はそれにタイミングを合わせてスルリと身を躱し、善次郎の肩にしなだれかかる。

「他人様の血を吸うが駄目なんですか?」

「しまっ――――!」

「じゃあ私に少し吸わせてくださいな」

 彼女の牙が善次郎の首筋に伸びる。

「人の男に手を出すなああああああああああああああああ!」

 蜘蛛の糸が怪異の顔の前を飛ぶ。
 一瞬動きが止まった彼女に向けて美登利はスパイダーマンよろしく糸の伸縮を利用して飛び蹴りを放つ。
 
「やんなっちゃうなあ、意地悪なおばさんなんだから」

 しゃがんでその蹴りを回避。

「カッチーン、主様、こいつぶっ殺しましょう」

「そういう仕事だからな」

 善次郎の肘鉄が姿勢の低くなったその怪異に向けて振り下ろす槌のように飛ぶ。
 美登利は回避先を読んで銀のナイフを投げつけた。
 果たして彼女は肘鉄を回避、美登利の読み通りの位置に移動。
 銀のナイフの餌食となる。
 響く悲鳴、善次郎はすかさず追い打ちをかけようとするが今度は女性が霧になって攻撃を躱す。

「また会いましょうお・じ・さ・ま」

 屋根の上に現れる女性。

「今度は、二人きりでね」

 それだけ言い残すと彼女はあっという間に姿を消した。

「なんなんですかあの女はあああああああ!」

 朝日の迫る帝都に、美登利の叫び声が谺したとかしてないとか。
844 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:40:02.90 ID:aK1ydoYP0


――――





「善次郎さん、遊びに来たよ!」

「こら真美、おじ様だろうに」

「はーいお父様」

「いらっしゃい、でもおじ様は勘弁してくれ兄さん
 割と洒落にならない」

「あれ?なんか不味かった?」

「い、いやなに俺もまだおじ様と呼ばれる歳だなんて思いたくないんだ……」

 結局吸血鬼を逃したその日の昼。
 善次郎の駄菓子屋には兄の真一郎が娘を連れて遊びに来ていた。

「ところで義姉さんはどうしたんだ?」

「うーん、なんだか今日は体の調子が良くないみたいでな」

「ならば側に居てやれば良いのに」

「この子が言うことを聞かなくてな
 お前の所に遊びに来たかったんだとよ」

「善次郎さん、美登利おばさんは?」

「お、おばさん!?」

 奥から素っ頓狂な声が聞こえてくる。
 どれだけおばさん呼ばわりにダメージを受けているのだ、と善次郎は苦笑する。

「だ、だ、だ、だれがおばおあばおばさんですって!?」

「え!?え!?どうしたんですか美登利おばさん!?」

 奥で針仕事をしていたらしい美登利が扉を開いて出てきた。

「落ち着け美登利、真美ちゃんだ」

「あら……ごめんなさい」

 割とあっさり落ち着く美登利。
 彼女の顔を見て真一郎は一瞬だけ表情を曇らせる。
845 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:40:30.70 ID:aK1ydoYP0
「じゃあ僕は一旦帰ろうかな
 時間になったら誰かに迎えにこさせるよ」

「兄さんもゆっくりしていかないのか?」

「私は仕事があるんでね」

「そうか、そりゃあ残念」

「ぜひとも今度はゆっくりしていってくださいね?」

「ああ、そうさせてもらうよ
 それじゃあ真美、おじさ……」

 迸る殺気。
 これでも実はついさっきのおじさん扱いを気にしてるのだ。

「お兄さんにいっぱい遊んでもらいなさい」

「遊んでもらうなんて……そんな歳じゃあないけれどね」

「はいはい、なんかこの子、お前に相談があるみたいなんだよね
 まあ若いの同士色々お願いするわ
 ……あっ、男の話だったら後でこっそり俺に教えろよ」

「あらもしかして好きな人でも?」

「えっ、それは……」

「教えてどうする気だ兄さん」

「決まってるだろ!」

「やめてくださいお父様!何を馬鹿なことを言ってるんですか!」

「冗談だよ、それじゃあな」

 ニヤニヤとした表情のまま、伊烏真一郎は馬車に乗って会社に戻っていった。
846 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:43:59.04 ID:aK1ydoYP0


――――

 善次郎は真美を奥の部屋に通す。
 薄い座布団の上に真っ直ぐに正座する真美は叔父である彼が言うのもなんだが心惹かれるものがあった。
 立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花。
 つい最近までキャーキャー騒いで走り回っている娘だと思っていたのだが中々どうして育ったものである。
 可愛らしさはこの娘の母親譲りだろうか。
 などと善次郎はとりとめもなく考える。

「ああそうだ。美登利、お茶を淹れてきてはくれないか?」

「もう淹れました
 はいどうぞ、真美さん」

「ありがとうございます」

「善次郎さんに相談なのですから私は店番でもさせてもらいましょうかね
 もうそろそろ町の子供達も来る時間でしょうし」

「いや、女性同士のほうがそういうのは良いんじゃないのか?」

「どうでしょう?真美さんとしてはあくまで善次郎さんにご相談なさりたいのでしょう?」

 そう言って美登利は真美の方を見る。
 真美は恥ずかしそうに頷いた。

「ほら、じゃああやっぱりそうしたほうが良いですよ」

「そうか……」

「こっちは善次郎さんのお茶ですよ」

「む、ありがとう」

「ではでは〜」

 そう言って美登利は店番に行ってしまった。

「……さて、それで悩みって?」

「最近寝不足なんですよ」

「ほう」

「なんかこう……海の底に沈むような夢を見て
 眠りが浅いというか……」

「それは参ったね……だがそれは」

「でも毎回その海の底に王子様が来て助けてくれるんです!」

「ん?」

「……ええ、実は好きな人がいるんですよ」

「―――――――おい」
847 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:46:41.51 ID:aK1ydoYP0
「私、お父様にも叔母様にも嘘は吐いてません!」

「とんだ叙述トリックだよもう
 どんな人なんだ」

「背が高くて」

「ふむ」

「顔立ちがまるで西洋の彫刻のように整っていて」

「ふむ」

「優しい人で」

「ふむ」

「力持ちで」

「ふむ」

「年上なんですけれどもそれを感じさせないくらい若々しくって」

「年上ってどれくらい?」

「十二、三くらいでしょうか」

「具体的に名前は?」

「それは……」

 恥ずかしそうに目を伏せながらチラチラと善次郎の方を見る。
 
「年上なことはこの際良いとして……誰かわからないとどうにもなあ」

「……善次郎さんの意地悪」

「何を言っているんだ?」

「もう、良いですよ!
 じゃあ質問を変えます!」

「あ、ああ……」

 最近の若い子は分からない。
 と心のなかでつぶやいておいて自分はそんな歳じゃないと一人で勝手に怒る。
848 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:47:33.01 ID:aK1ydoYP0
「男の人ってどんな女の人が良いものなのでしょうか?
 善次郎さんの好みの女性みたいなのを教えていただけませんか?」

「僕の好みか……」

「はい!」

 身を乗り出す真美。

「ご飯をいっぱい作ってくれる人かな」

 そのままずっこけた。

「ご飯……ですか」

「うん、料理の上手な人は素敵だよ」

「琴とか……は?」

「うーん、偶に美登利がやってくれるが僕に音楽は分からん」

「そんなぁ……」

 真美はガックリと肩を落とす。

「でもね」

「なんです?」

「真美ちゃんみたいな良い子が好きになる人ならきっと素敵な人だよ
 胸を張ってお父さんにでもお母さんにでも相談してみなって
 そうだな、特に真美ちゃんのお母さんが良い
 兄貴はどうにも人の心に疎いところが有る」

 人のことを言えない善次郎である。
849 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:48:30.81 ID:aK1ydoYP0
「……良い子?」

「ああ、気立てもいいし、器量も人一倍
 その上賢いんだから
 案外その相手も君のことが気になってるかもしれないよ?」

「そ、そうですかね!?」

「ああ、案外積極的にいったら相手もクラっと来るかもな」

「うそ……どうしよう、なんかそんな気がしてきました!」

「はっはっは、応援してるぞ」

「善次郎さんに応援してもらえれば百人力です!」

「それは良かった」

 懐中時計を見るといつの間にかだいぶ時間が過ぎていた。
 
「そういえば時間はそろそろかい?」

「あら本当ですね、もうそろそろ誰かが迎えに来る筈なのですが……」

「そうか……また来るといい、今度は兄さんも君のお母さんも一緒にね
 最近ゆっくり話す時間がないから」

「あの……」

「なんだい?」

 馬車の音が聞こえる。
 真美はそれを聞いてほんの少しだけ残念そうな顔をした。

「また来ればいい」

 それを聞いて真美は嬉しそうに笑った。
850 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:49:09.60 ID:aK1ydoYP0

――――



 時は少しだけ遡る。
 松は善次郎の家に依頼を持ってきていた。

「田舎から送り出した息子が冷たくなって帰ってきた、ね」

「なんでも結構な旧家だったそうで今は大変なことになってるそうですよ
 跡継ぎで揉めて揉めて人死まで出たとか
 今回依頼してきたのはその息子の母親だそうです」

「……しかし吸血鬼か、増えたら面倒なことになるな」

「それなんですが旦那」

「なんだ松」

「今回の吸血鬼、繁殖能力が無いようなんですよ」

「……どういうことだ」

「できそこないか、増やす意思が無いか
 眷属の発生が確認されておりやせん
 縄張りを作るなら眷属を増やす筈ですし多分眷属を作れないんじゃないでしょうかねえ」

「ふむ……」

「旦那くらいのお方じゃないとあいつらと殴りあうなんて無理ですし
 今回も旦那にたのめませんかね?」

「構わん」

「そいつはありがたい」

「だが前に依頼していた件についてそろそろ結果は出ないのか?
 流石に待ちくたびれる」

「それなんですがね、旦那
 旦那の家に仕掛けられた爆弾ってのを作ったらしい男を見つけました
 今回の依頼が終わったらお話する予定だったのですが……」

「解ってる、今回の依頼はきっちりこなすさ」

「この依頼が終わりやしたらあっしの家まで来てくだせえ」

「ああ」

「それじゃあ……」

「ああ、気をつけて帰れよ」

 
851 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:50:32.17 ID:aK1ydoYP0


――――

 
「さて、糸で捕まえるのも失敗したし
 次は一体どうする?」

「うーん、どうしましょうねえ」

 すでに月が高く登りはじめた頃、善次郎と美登利は作戦会議を行なっていた。
 食事中に善次郎が喋るのは珍しい。
 それだけあの怪異を脅威に感じているということなのかもしれない。

「あ、おかわり」

「はーい」

「この米は良いな、固めに炊いてあるおかげで熱く感じない
 柔らかい米だとどうにもへばりついて口の中で熱くなる気がしてな」

 ゆっくりと噛むとふわりと甘みが広がる。
 これは良いものだ。

「お、分かっていただけましたか
 主様の好みに合わせて炊いてみました」

「さすがだよ、ありがとう」

「えへへ……」

 しばし沈黙。

「まあ吸血鬼ならば招かれない限り家の中には入れませんし」

「糸で縛るから駄目だったんじゃないか?」

「え?」 

「なんていうかこう……布で包み込むような感じで……
 糸を編み込んだものが布なんだろう?」

「それはまあ……そうですが」

「布で動きを止めて杭で撃ちぬく
 これでいいんじゃないかな」

「杭?」

「ああ、吸血鬼に効くらしい」

「なるほどねえ……じゃあそれで」

 その時だった。

「すいませーん、お醤油貸していただけますか?」

 雨戸を叩く音。
 鈴のような声。
 誰かは分からないが聞き覚えのある声だ。
852 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:51:27.45 ID:aK1ydoYP0
「こんな暗くなってから醤油?」

「でも多分近所の人だぜ?」

「行かないわけにもいかないですよねえ」

「……ちょっと行ってくる」

「ええ」

 善次郎は扉を開いて顔を出す。 

「お醤油ですか?」

 彼は凍りついた。
 




「会いに来ちゃいました、おじさま」





 微笑みに染まる薔薇一輪。
 それと同時に鋭く伸びた爪が善次郎の首に伸びる。
 反射的に首を引っ込めた一瞬後に爪が虚空を斬る。

「おじ様、冷たいんですね」

 善次郎は家の中に飛び退く。
 ここには入ってこれない。
 反撃に出るより生き残るための安全策。
 防御は最大の攻撃。
 それが善次郎の始末屋としての経験から得たやり方だった。

「美登利!敵―――ー」

 すでに怪異が怪異として現れたこの場所は異空間。
 人払いはなされていると考えて良い。
 ならばいくら声をだそうと何をしようと問題ではない。

「――――――――!?」 

 拳が腹に突き刺さる。
 意識が遠のいていく。
 眼の前に居るのは吸血鬼のはずだ。
 吸血鬼は招かれねば家に入れない。
 招いた覚えは無い。
 思考回路が高速回転する。 
 導き出されるのは最悪の可能性。
 まさか……

「私、おじ様のことが大好きで……独り占めしたかったんですよ」

「真美……?」

「やっと気づいてくれましたね」

 そのまま彼の視界は真っ暗になった。
853 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:52:20.23 ID:aK1ydoYP0


――――


「嘘……」

 美登利が駆けつけた時点で、すでにそこには誰も居なかった。
 
「主様?」

 返事を返すものは居ない。
 一瞬の出来事。
 契約により心の力が流れ込んでいる以上、善次郎はまだ死んではいない。 
 だが、誰が、何処に、どうやって、連れだしたかは分からない。

「……どうしよう」

 善次郎を一瞬で連れ去ることのできる相手。
 強い敵であることは明らかだ。
 果たして勝ち目はあるのか?

「困っちゃいました」

 勝ち目、あることにはある。
 絡新婦としての本来の姿に戻って戦えば、十分に勝ち目は有る。
 なにせ本邦でも美登利ほど長生きした絡新婦は珍しいのだから。
 大きくため息をして座り込む。
 だが蜘蛛の姿で戦う所を善次郎に見られたくはない。
 人間から見ればあれは化物だ。
 あの姿を見られたせいで想い人に拒絶されたことも一度や二度ではない。
 何かの間違いで善次郎にそれを見られたら……考えるだけで震える。
 
「いや、それでいいのかしら」

 拒絶されるべきなのかもしれない。
 そうも思う。
 つい最近、彼は仇の手がかりが見つかったと喜んでいた。
 彼のような善人には、せめて平穏に幸せに生きて欲しいとも思うのだ。
 その為には自分がそばにいては何かとまずい。
 だから仇討ちが終わってから彼の元から未練なく離れられるように、わざとあの姿を見せても良い。
 それに、惚れた腫れた以前に、彼には恩がある。
 恐れられようとも拒まれようとも恩を返すだけ返す時が今なのかもしれない。
 とりあえず助けに行くだけ行ってから決めよう。
 生来前向きな美登利は結局そういう結論に至った。
 
854 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:54:59.30 ID:aK1ydoYP0
「でも困ったわ」

 そしてそこで、何の手がかりも無いという現実にぶち当たるのである。
 
「……一歩遅かったか」

 そんな時、目の前に現れたのは警官姿の男。

「藤田さん?」

 藤田五郎、刀一本で怪異を狩る異端の剣士、怪異である美登利は恐怖に身をすくませる。

「これはこれは奥様」

「い、いったいこんな夜中にどのようなご用件で?」

「いえなに、不審者を追っていましてね
 肌は白くて瞳は赤い、西洋の吸血鬼みたいな妙な女です
 どうにもこちらの方に逃げてきたようなのですが……」

「吸血鬼?」

「なにか見ていませんか?」

「私は何も……」

「旦那様は?」

「主人は急に居なくなってしまって……」

「……ふむ」

 藤田は家の扉を何気なく見る。
 爪か何かで引っ掻かれた跡が有った。

「ご主人がさらわれたというのは?」 

「ま、まさか!」

 美登利の声は震える。

「そうですか……それは失礼いたしました
 何か有ったらこちらの方に連絡お願いします」

 藤田はメモの切れ端を渡して去っていった。
 美登利はメモを見る。

「…………うそ」

 そこには警察署の所在、そして例の怪異の根城と思しき場所が記されていた。
855 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:55:25.81 ID:aK1ydoYP0



――――



「おじ様、ねえ起きて、おじ様」

 頬をペチペチと叩かれる。
 
「ん……」

 ゆっくりと目を覚ます。
 鎖でグルグル巻きにされている。 
 走ることはできるがこれでは彼が逃げられる目は薄いと言わざるを得なかった。

「良かった、死んでしまっていたらどうしようかと……」

「真美……なのか?」

 目の前に居る女性は彼の知る真美とは違う。
 まだ幼さを残した自分の姪とは違う。

「そうよ、おじ様」

「なんでこんなことを……」

「この家に生まれて不自由だなと思ったことはない?」

「え?」

「私はある
 不自由な身の上も、世間の倫理も、何もかも捨てて思うままに生きたいと
 ずっとずっと思ってた
 愛する人を自分だけのものにしたいとずっと思っていた
 だけど世間は絶対にそんなこと許さない」

「待て、お前が何を言っているのか……」

「好きよおじ様」

 真美は善次郎の耳元でそっと囁く。
 自らの言葉に酔って、恍惚で身を震わせる。
856 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:55:59.32 ID:aK1ydoYP0

「狂って狂って化物になるくらい
 迷って迷って夜の闇に溶けるくらい
 月より紅く目を血走らせて血より熱く焦がれるくらい」

「馬鹿なことを……言うな」

 善次郎の声が震える。

「愚かで結構」

「僕は真美ちゃんの気持ちを受け入れる訳にはいかない
 そんなの間違ってる」

「そうですよね、確かに間違っています」

 真美は鎖に縛られて身動きの取れない善次郎を抱きしめる。
 
「でも間違っているものが悪いのですか?
 狂っているものが邪なのですか?
 人間に生まれたというだけで何故他の人間が決めたルールに従わなくちゃいけないんですか?
 好きなものを好きと、愛しているものを愛していると言えなくてそれが人間なのですか?」

「人間だから言っちゃ駄目なんだろう」

「ならば幸い、今の私は人間じゃあありません」

 善次郎の頭を掴み、正面から向き合う。
 目を逸らす善次郎。

「こうなってしまえば人の世の理なぞ気にしなくて良い
 こうなって、成り果ててしまえば人間の気持ちなんぞ気にする必要がない
 思うままに奪って喰らってこの乾きを存分に癒してしまえる!
 私は悪くない!悪いのは全部貴方だ!私はここまで頑張って綺麗になったのに貴方は振り向いてさえくれなかった!
 いつまでも幼い子供としてしか扱って来なかった!」

「それは誤解……」

「うるさい!」

 耳元で叫ばれて顔をしかめる善次郎。

「とにかく、首を縦に振ってくれるまでおじ様を離しません
 これから血を吸っておじ様を私だけのものにして、ずっと私の側にしか居れないようにする
 私の初めての眷属は貴方と決めていたんですよ?」

 荒い息遣いが善次郎に伝わってくる。
 冷たい体であることを忘れさせるように紅く燃える瞳。
857 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:58:18.35 ID:aK1ydoYP0
「私の初めてを貴方に捧げます、善次郎さん」

 犬歯がむき出しになった唇が善次郎の口に触れる。

「やめるんだ!君はもう何処にも後戻りできなくなるぞ!」

 悲痛な声で懇願する善次郎。
 彼がほとんど諦めかけたその時だった。
 真美の首に細い蜘蛛の糸がかかる。
 あっという間に天上に釣り上げられる真美。
 霧になろうとするやいなや今度は超高密度の蜘蛛の糸から編んだ布で完全に絡めとられる。

「翡翠の色の蓮の葉や
 
 白銀色を括り染め

 極楽の香で染め上げて

 地獄に垂らす蜘蛛の糸」

 歌が聞こえてくる。
 釈迦のおわす極楽の迦陵頻伽(かりょうびんが)の声。
 
「始末屋美登利、只今参上」

 本当に一歩手前で、彼女はここに駆けつけた。
 
「美登利!?」

「危ないところでしたね、主様」

「その姿は……!」

 彼女の姿は蜘蛛と人間が混ざる怪物のそれになっていた。
 人間の上半身に蜘蛛の下半身をつなぎあわせた怪物。
 長く伸びる髪に黄色と黒の混ざった毒々しい腹の色。
 尖った足先は人など一瞬で突き殺せそうだった。

「本当は主様にはお見せしたくはなかったのですが……」
 
 吸血鬼レベルの圧倒的なパワーとスピードに対抗し、感知能力を掻い潜るために美登利はこうするしかなかった。
 自らが完全な怪異の力を発揮し、奇襲を仕掛けられるこの姿に戻るしか。
 美登利は糸を更に引っ張って暴れる真美を更にきつく拘束する。
 
「少しばかり力を奪わせてもらいましょうか」

 糸を通じて真美の体内の心の力を吸収する。
 しだいに暴れ方は弱まり、ついに真美は動かなくなった。

「それでは……始末、つけさせていただきます」

 彼女は真美を絡めとった糸を指で弾こうとした。

「やめろ!」

 だが善次郎はそれを止める。
 
「やめてくれ!」

 叫びに涙が混じる。

「でも主様!この女が!」

「その子は……真美だ」

「何を言っているんですか、真美さんならこっちですよ?」

「……は?」

 美登利は善次郎の側に寄って糸でグルグル巻きになった少女を差し出す。
 
858 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:58:45.18 ID:aK1ydoYP0
「……え?」

 見慣れた姿。
 それは間違いなく伊烏真美だった。

「主様、ここがどこだか分かってますか?」

「どこって……知らんよ」

「女学校の寄宿舎です」

「女学校って……」

「帝国女学校、真美さんの通ってる女学校の寄宿舎です
 あらかた吸血鬼に襲われた後でしたけど真美さんだけは何故か無事だったので連れてきたところですよ」

「……なんだと」

 善次郎は蜘蛛の糸で出来た布に包まれた怪異の方を見る。

「じゃあそこの吸血鬼は……」

「適当に嘘吐いてただけじゃないですか?」

 それを聞いて善次郎はため息を吐く。

「……やれ、美登利」

 どこか安堵の色が見える。

「あらほらさっさ」

 美登利は糸をパチィンと弾く。 
 それと同時に糸にグルグル巻きにされた真美が悲鳴を上げた。

「――――え!?」

 目を覚ます真美。
 化け物の姿になった美登利と目が合う。
 もう一度悲鳴。

「ば、化物!」

「っ!」

「なんで私の邪魔をするの!?
 私よりずっと化物のくせに!
 その醜い姿を隠しておじ様の機嫌をとって!
 なんでよ、なんで貴方なのよ!なんでなのよ!
 私のほうが若くて綺麗でおじ様のことを本気で慕っているのに!」

 怒声。
 美登利に浴びせかけられる容赦も品性もない罵倒。
 突然の出来事に二人は事態を掴めない。
 糸を引きちぎる真美。
 そこでやっと我に返った美登利は真相にたどり着く。
859 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:59:22.81 ID:aK1ydoYP0
「吸血鬼じゃなくて……もしかして夢魔!?」

 真美は確かに人を襲っていた。
 夢魔の力で夢を現実に侵食させて、吸血鬼の振りをして人々を襲っていたのだ。
 変身能力はそもそもが幻影の存在なのでできて当たり前。
 吸血鬼が血を吸わなくては当然眷属も生まれない。
 眷属にするなどといって、そんな事出来る訳がなかったのだ。

「夢を現実にできるなんてどれだけ化物じみた能力を持っているのよ!
 どっちが化物だかわからないわ!」

「うるさいうるさいうるさいうるさい!」

「血を吸われてたら……俺死んでた?」

「ええ」

 ポスン、間抜けな音を立てて蜘蛛の糸に包まれた真美が消える。
 それと同時に真美の姿が吸血鬼に似た姿に変わっていく。
 思念だけで出来た夢の具現ではない。
 本当の肉を持つ怪異として、彼女は今存在していた。

「頼むから死んでよ!」

「それは駄目だ、真美」
 
 真美は糸を引きちぎって美登利に飛びかかる。
 だがその目の前に伊烏が立ちふさがった。
 貫手が、伊烏を縛る鎖に突き刺さる。
 砕け散る鎖。

「そんな!?あんな重い鎖を引きずったままどうして動けるの!?」

 丁度、伊烏の空腹は限界に達していた。
 理性をギリギリ保った上で動ける限界点。
 
「真美、きついの一発いくぞ」

「ひ……」

 すでに本体を持ってしまった以上、変化能力には限界ができていた。
 霧になって逃れることはできない。
 善次郎の拳骨が真美に突き刺さった。
 轟音とともに吹き飛ぶ真美、彼女はそのまま壁すら突き抜けて外の地面に叩きつけられる。
 一瞬だけ善次郎の姿を見て、真美はその場から逃げ出した。
 彼女は泣いていた。
860 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 08:59:55.10 ID:aK1ydoYP0
「……帰るぞ、美登利」

 すでに人間の姿に戻った美登利に向けて言う。
 
「主様、良いのですか?」

「しばらく放っておけば頭も冷えるだろう
 ……いくら愚かでも可愛い姪だ
 死んだ妻子のために今生きている姪を殺すわけにもいくまい
 これについては明日にでも兄貴に報告するとしよう」

「……ですよね」

 美登利は寂しそうに笑う。

「ありがとうな、美登利」

「見られてしまいましたね、あの姿」

「構わない、俺はお前の見てくれに惚れたわけではない」

「主様……」

「だから……その、なんだ。ご飯食わせてくれ」

 そう言って善次郎は倒れた。
 美登利は無言で握り飯を彼の口にぶち込んだ。

「がっかりだよ色々と!」

861 :怨み屋さん [saga ]:2012/06/17(日) 09:00:22.28 ID:aK1ydoYP0


――――


「旦那……そいつはルール違反だ」

 遠くからその様子を眺めていた松は呟いた。

「まあ旦那の始末はあとでつけるとして……
 まだ弱っている筈だろうし、あっちはあっしが殺るしかないかねえ」

 眼鏡のフレームから細い針を取り出す。
 それを真っ直ぐ、自分の心臓に突き立てて眼鏡にしまう。

「――――え?」

 彼は自分の行動が理解できなかった。
 
「なんで……」

「駄目駄目、人間ごときが妖怪様を始末しようだなんて」

 いつの間にか松の目の前にいた男。
 伊烏善次郎にそっくりな美形の男。

「あ、あんたは……」

「それにほら、娘を殺させるわけにも行かないしね」

「伊烏……真一ろ……」

「私の最愛の弟をたぶらかしてたのはお前だったみたいだな
 楽に死ねることを感謝してくれよ」

 目の前の男の魔眼が光る。
 松は自分の体が操られていることにやっと気がついた。

「へへっ……」

 最後の瞬間、松は自らを嘲るように笑っていた。

「ああ……しかしなんて辛いのだろう
 最愛の弟に、愛娘が惚れていただなんて……
 許さない、そんなの絶対に許さないぞ
 善次郎は私の、私だけのものなんだ
 また……悪い虫を駆除しなきゃ」

 伊烏真一郎の瞳は誰から見ても分かるような憎悪に燃えていた。
 
 

【第六話終わり】
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/06/18(月) 10:38:36.78 ID:It+VOjRY0
乙でしたー
うぉぉう…………(やるせなさとかいろんなものでごろごろ悶えている
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 11:25:24.72 ID:zweo5RISO
組織、穏健派との派閥争い。
夢の国の損害、首塚からの呪いに始まる転落。
組織本部に響く過激派のため息、どこからか聞こえる「また任務失敗か」の声。
次第にいなくなる黒服達の中、過激派幹部の黒服は独り会議室で泣いていた。
数々の任務で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる仲間……
それを今の過激派で得ることは殆ど不可能と言ってよかった。
「どうすりゃいいんだ……」
黒服は悔し涙を流し続けた。
どれくらい経ったろうか、黒服ははっと目覚めた。
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい会議室の空気が現実に引き戻した。
「やれやれ、帰って報告書をまとめなくちゃな」黒服は苦笑しながら呟いた。
立ち上がって伸びをした時、黒服はふと気付いた。

「あれ……?契約者がいる……?」
会議室から飛び出した黒服が目にしたのは、廊下を埋めつくさんばかりの契約者だった。
命も惜しまない、組織に絶対の忠誠を誓う契約者に都市伝説達だ。
どういうことか分からずに呆然とする黒服の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「どーしたの?任務だよ、早く行こ」

声の方に振り返った黒服は目を疑った。
「は……花子さん?」
「なんだ黒服、居眠りでもしてたのか?」
「じ……人面犬?」
「なによ、かってに私ををかませにしないでよね」
「口裂け女……」
黒服は半分パニックになりながら所属している契約者名簿を捜した。

花子さん、人面犬、口裂け女、メリーさん、ひきこさん、こっくりさん、テケテケ、怪人アンサー
地震発生装置、サンジェルマン、吸血鬼、フォトンベルト、マリー・セレスト号、アカシックレコード

暫時、唖然としていた黒服だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった。

「勝てる……勝てるんだ!」
魔女から報告書を受け取り、学校町へ全力疾走する黒服、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった……

翌日、会議室で冷たくなっている黒服が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った。
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/06/19(火) 01:37:44.47 ID:jfPK+AFV0
>>863
過激派幹部……どうしよう、過激派フルボッコの話書こうとしてたのに(´;ω;`)
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 06:57:27.06 ID:SN8YTh6SO
■一般人の認識
 
花子さん:トイレにいる女の子
口裂け女:私、綺麗?
人面犬:犬
ひきこさん:知らん
怪人アンサー:携帯電話を用いた儀式で呼び出せる怪人。
10人が円形に並び、同時に隣の人に携帯電話を掛けると、すべてが通話中になるはずである。
ところが、一つだけ別のところにつながる電話がある。それが怪人アンサーだ。
呼び出せばどんなことでも答えてくれるが、最後にアンサーから質問してくる。
問題に答えられないと携帯電話から「今から行くね」と声が聞こえ、決して逃げることはできず体の一部分を引きちぎられてしまう。
アンサーは頭だけで生まれてきた奇形児で、そうやって体のパーツを集めて完全な人間になろうとしているから。
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/06/19(火) 13:22:35.16 ID:HSJjaWdV0
過激派、および強硬派所属の黒服にとって、A-No.7の副官に任命される、という事は死を意味する
なぜならば、彼女と同じ執務室で仕事をしなければならないからである
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 19:37:04.26 ID:SN8YTh6SO
気がついたら台風通り過ぎとる
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/19(火) 22:56:52.35 ID:HlT+Lg9X0
>>裏山
こっちは今まさにピークだ
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/06/20(水) 22:37:28.92 ID:O5S20VE90
>>865
なんで怪人アンサーだけやけに詳しいんですかwwwwww
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 22:38:43.95 ID:ElXbtPUao
停電してびっくらこいたぜ
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 22:56:50.62 ID:tGWz4T1SO
コピペ改変ネタ切れ
872 : [sage saga]:2012/06/21(木) 08:49:33.48 ID:dbwjU7nr0
>アンサーは頭だけで生まれてきた奇形児で、そうやって体のパーツを集めて完全な人間になろうとしているから。
そんな話あったのか
なんか久々に創作意欲がわいてきた
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/06/21(木) 13:14:35.82 ID:45LGcU5t0
ちなみに、アンサーは意図的に作られた都市伝説だった、ような?

誰かが創作で作って、どれだけ広がって信じられるかー、みたいな実験した結果定着した都市伝説だったようなうろ覚え
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/06/21(木) 18:07:08.26 ID:eJnqk0st0
>>873
つ ttp://www5d.biglobe.ne.jp/DD2/Rumor/column/netlore8.htm
要するに、人為的に誕生させられた最初の都市伝説?
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/06/21(木) 18:27:02.26 ID:gVSuOXJjo
>>873
> 誰かが創作で作って、どれだけ広がって信じられるかー、みたいな実験した結果定着した都市伝説だったようなうろ覚え
>>874で書かれてる通りで、当時ネタばらしの記事もちゃんと見た覚えがある
のだけれど、肝心の作者サイトの部分がゲーム日記で上書きされちゃってるっぽくて記事自体は無くなってた
どっかに残ってないかなぁ

> 要するに、人為的に誕生させられた最初の都市伝説?
意図的に広められた、というのなら多分最初じゃないかと

創作であるにも関らずオリジナルであるかのように広まってしまったものは
伊集院光さんの赤いクレヨンの方などもっと古いものもありますけどね
876 :『吾輩は怪人である、名前は―――』または、衝動的な小ネタ [sage]:2012/06/21(木) 19:37:37.39 ID:eJnqk0st0
「……と、よし。後は通話ボタンを一度に押して、っと」ピッ


プルルルルルル……プルルルルルルル……プrガチャッ


『…………』

「初めまして、怪人アンサー。……ん?」

『…………』

「ふむ。返事は無い、しかし電話は繋がっている。これはつまり……」

『…………』

「は、あは、あはははは!まんまと罠に落ちたな怪人アンサー、貴様はすでに死んでいるっ!」

『…………』

「もう君には聞こえていないだろうが、冥土の土産だ。種明かしをしてやろう」



「我が能力の名はデスボイス!口から発した『し』という言葉を聞いた者に、逃れられない『死』を与える能力!…………………………………

…………うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


ピッ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「何が怪人アンサーだコラァ!わざわざ皆の携帯集めてまで実験してやったのに、所詮この程度か!というか何口走ってんだよ俺ー!」

「畜生!俺がこんな思いをしたのも、元はといえば全部あいつが……!」


『なーなー引人、【怪人アンサー】って知ってるか?』
『ん?ああ、何でも質問に答えてくれるっていうアレか?』
『それそれ!せっかくだから確かめてみようぜ、9番目に“10番目の答え”を聞けば絶対大丈夫だからさ!』
『マジで!?やるやる、帰ったらすぐやる!』


「潘の奴、明日学校であったら覚えてろよ……さてと、そろそろ片づけるか」


ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ


「あー、無駄な時間だった。さて、これで最後の…………いっ、こ…………?」






≪―――通話中―――≫






「……なん、で……?他の携帯、全部、切ってる、筈、なのに……!」

≪いえいえ、『何で?』はこちらの台詞ですよ。“繋がってない他の携帯”を手に取られても、会話出来るわけないじゃないですか≫

「えっ…………あ、あ、ああ…………」

≪あ、ようやく繋がりましたね!よかった、これで質問が聞けます!いy−、一時は本当にどうなるかと……こほん≫

「(あれ?あれ?嘘だろ、何だよコレ、切れない、電源、切れない、何で、何で、何で何で何で何でなんでなんでなんd)」



≪では……初めまして、名も知らぬ少年君。私の名前は怪人アンサー、何でも質問してくれたまえ!≫         
                                                           (終)
877 :『吾輩は怪人である、名前は―――』または、衝動的な小ネタ [sage]:2012/06/21(木) 19:45:42.13 ID:eJnqk0st0
ゲリラ投下失礼しました、練習がてら思いつき短編
…………うん、やっぱり一時のテンションで描くもんじゃないねorz

>>875
>意図的に広められた、というのなら多分最初じゃないかと
>創作であるにも関らずオリジナルであるかのように広まってしまったものは
>伊集院光さんの赤いクレヨンの方などもっと古いものもありますけどね
そうなんですか……勉強に鳴りました、ありがとうございます
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/06/21(木) 20:36:39.53 ID:gVSuOXJjo
>>877
投下乙でございます
一時のテンションで書いてこそだとは思いますよ
そこから積み重ねたり練ったりするのもまた楽しいもので

伊集院さんは創作怪談が趣味なんだそうですが
テレビやラジオでそれを披露すると心霊タレントみたいな扱いにされるので
内輪の番組以外ではやらなくなってしまったとか
879 :単発ネタ [sage]:2012/06/24(日) 15:28:25.64 ID:Pqe6WtXSO
薄暗い部屋でDVDプレイヤーがカリカリと音をたて、テレビは目を背けたくなるような残虐なシーンを映していた。
「…………」
少女は、ぼんやりとテレビを眺めている。
「何を見ている」
ちゃぶ台の下にうずくまり、無理矢理身体を押し込めている男、都市伝説「ベッドの下の殺人鬼」が尋ねる。
「悪魔のいけにえ」
「ホラー映画か」
「んー、スプラッター映画」
そう言って、少女は再び映画鑑賞に戻る。
ホラーと何か違うのだろうかと、男が考えていると、ガチャリと居間の扉が開いた。
「……んー…………」
入って来たのは小さな女の子。寝ぼけているらしく、足元がおぼつかない。
「……お姉ちゃん……何してるのー…………」
目をこすりながら、女の子は言う。
「んー、眠れなくてね」
あまり、小さい子に見せる映画ではないなと思い、テレビの電源を切る。
「ほらほら、もう夜遅いんだから、ベッドに戻りなさい。明日、起きれなくなるよ」
「……ん、んー…………?」
少女は女の子の手を引き、居間を出ていった。

「ただいま」
「おかえり」
しばらくして、戻ってきた少女がテレビを点ける。
再び、凄惨なシーンが映し出された。
「んー、そうだ」
「どうした」
「貴方もチェーンソーを武器にしない?」
画面で振り回されるチェーンソーをみながら、少女は男に尋ねる。
「ベッドの下から出る時につっかえそうだな」
「んー、それもそっか」
それっきり、会話も無く、映画は終わった。
「んー、帰ろう」
「分かった」
そう言って、二人は家を出る。
後には、積み木遊びでもしたかのような、二人の男女の死体が残された。



『――今朝、S県で冬目 梓さん(24)と栄志さん(33)が殺害されているのが見つかりました。
第一発見者である、娘の知枝ちゃん(5)が、夜中に知らない女性が家にいたと証言しており、警察では……………………』

880 :単発ネタ [sage]:2012/06/25(月) 01:16:21.20 ID:mZu1gJ3SO
逃げる。逃げる。
欝陶しい。逃げずに、さっさと[ピーーー]ば良いのに。
潮風が髪を揺らす。欝陶しい。
敵はただの小型の漁船のくせにやたらと速く、そしてたまに見失う。
よもや都市伝説通りにアメリカへ向かうつもりなんだろうか。
「黒服さん、まだですか」
船の運転をしている黒服に、早くしろと催促する。
「もうちょっと待っててねぇ」
あぁ、欝陶しい。黒服がのんびりと喋る間にまた見失った。
自分から遭難するなよ。欝陶しい。
イライラしていると、黒服の携帯電話が鳴った。
「はいもっしー、はいはい……」
二言三言話して、黒服は電話を切る。
「黒服さん、今の電話は……」
「うん、存分にやれって」
「そう、じゃあ、行こうか『クイーン・メアリーホテル』」
次の瞬間、敵の漁船の前に、巨大な客船が出現した。
突然の事に避ける事もできず、漁船は客船にぶつかる。
そして当然の事ながら、そんな大きな物にぶつかった漁船は真っ二つになり沈没した。
「おや、もう終わったのか」
のんびりとした黒服の声が欝陶しい。
それに、まだ終わってない。船は沈めたが敵はまだ生きている。
ほら、パチャパチャと水をかいて助けを求めている。
黒服の運転で、敵の近くまで船を寄せる。
近づくにつれ、助けてくれ、許してくれという声が聞こえてくる。欝陶しい。
「こんにちは」
「た、助けて、くれ!」「濡れ衣だ!はめられたんだ!」「わ、悪かった!もう二度としない!助けて!」
そこにいるのは、数人の黒服と契約者。
過激派を自称していたが、実際は金を貰って悪を見逃したり、気に入らなかった連中を悪にしたてあげ、殺したりしていた、ゴミだ。
こういう奴らはさっさと処分しなければならない。
泥水にワインが一滴あっても泥水だが、ワインに泥水が一滴あっても、それは泥水だ。
こんなゴミどもと私達を一緒にされてはたまらない。泥水は一滴もあってはならない。
と船を運転しているのとは別の過激派黒服が言っていた。
ああ、欝陶しい。そんな事は私にはどうでも良い。
「うわっ!?」「な、な……!!」「助け、っ、助けろ!」
敵が悲鳴を上げながら、海に沈んでいく。
「クイーン・メアリーホテル」の幽霊どもに足を引っ張らせているだけだ。
これで全員[ピーーー]ば良いのに。欝陶しい。
黒服と契約者が数人いれば、対霊用の能力を持った奴もいるのだろう。沈んですぐ、二、三人が水から顔を出した。
「……は?」「え……」「ひっ!?」
顔を出した連中が、驚き、困惑し、硬直する。
奴らが顔を出した目と鼻の先には、一部分だけ召喚したクイーン・メアリー号。召喚したのは機関砲。
「[ピーーー]」

「お疲れ様」
のんびりとそう言って、黒服が私の肩に手を置く。欝陶しい。
「触らないでください」
黒服の手を叩いて、除ける。
「むう、気難しいなぁ」
私はこいつが嫌いだ。
こいつらが嫌いだし、さっきの奴らだって嫌い。
組織そのものだって、首塚だって大嫌いだ。
黒服も、契約者も、都市伝説も、[ピーーー]ばいい。
当然、契約者である以上、自分も欝陶しい。
都市伝説の関係者は全員、この世から消えてしまえばいい。
とくに「ベッドの下の殺人鬼」とその契約者はこの手で一人残らず消してやりたい。
「まあまあ、知枝ちゃん。そんな怖い顔しないで、仲良くしようよ」
私の気持ちを知っているのか、いないのか、黒服はのんびりと、にこやかに言う。
けれど、薄汚れたサングラスの向こうの目はまったく笑っていない事を、私は知っている。
あぁ、欝陶しい。

881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 10:25:23.16 ID:DGNlnXYAO

ああ……いたいけな幼女が
こんなに擦り切れてしまった
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/06/25(月) 11:37:33.18 ID:af4pfEYd0
>>879-880
乙ですー
人を殺した直後に、その家でスプラッター映画鑑賞……正気の沙汰とは思えないです
そして一人の少女が復讐の権化へと……

>都市伝説の関係者は全員、この世から消えてしまえばいい。
>とくに「ベッドの下の殺人鬼」とその契約者はこの手で一人残らず消してやりたい。
紫亜逃げてー!超逃げてー!!
でも万理ママと意見合いそうですよね、この子
883 :単発ネタ [sage]:2012/06/25(月) 12:49:32.04 ID:mZu1gJ3SO
最近、私の契約者の様子がおかしいんです。
たまに、黒服と会っているんです。
いえ、黒服と会う事は別に良いんですよ?
私達は組織に所属していますから。私達の担当の黒服ですし。
しかし、何故、私に黙ってこそこそと会いに行くのでしょうか。
しかも、しかもですよ!その黒服は女なんです!!
これは浮気ですよ!浮気!
……いえ、まあ、私と契約者は恋人ではありませんけど。
……付き合ってくれとか、言われたわけじゃありませんし……言われてませんし。
……でも、好きだとは言ってくれて…………もしかして、友達とか、仲間的な意味…………?
……でもでも…………私の事、綺麗って…………綺麗って……言って……。
ま、まあ、とにかく!契約者と黒服が何をしているのか突き止めなければなりません。
というわけで、契約者の後をつけてみたんですが……。
何故、黒服と仲良くカフェで談笑しているんですか!デートですか!?浮気ですか!!?あぁもう!!!!
……いえ、落ち着いてください、私。まだ、まだデートと決まったわけじゃないじゃないですか。
おや、黒服が何か紙を取り出しましたね。
なになに…………ぇ…………………………婚姻届…………?
……………………帰ろう。


「ただいま」
家でボーッてしている間に、契約者も帰ってきたようですね。
心なしか、嬉しそうです。そんなに黒服との結婚が嬉しいんですかね。
 ふんだ。
「どうした?何か怒ってる?」
 何ですか。怒ってませんよ。何を怒る必要がありますか。私達は都市伝説と契約者という関係でしかありませんから、怒る事など何もありませんよ。
「……?えーと……どしたの?」
 何でもありませんとも。怒ってなどいません。契約者が黒服と結婚しようと、私には何の関係も無いのですから。
「……?あ、あー……あれを見られてたのか」
 やっと気がついたようですね。まったく、いつから交際していたのやら、全然気がつきませんでしたよ。
 好きだの綺麗だの言われて浮かれていた私が馬鹿みたいですよ。
「なあ、口裂け女」
 なんですか。私は怒ってませんよ。
「結婚しよう」
 結婚ですかそうですか、まったく何を……………………はい?
「これ、今日黒服さんから貰ってきた」
契約者が取り出したのはさっきの婚姻届でした。
そこには、契約者と全く知らない女の名前が書いてありました。
「この女がこれからのお前の名前だ」
 …………はい?
「黒服さんに戸籍を偽造してもらってな」
 ……はい。
「これでお前と結婚できる。だから、結婚しよう」
 はい!
当然ですよ。いったいどこに拒絶する理由がありますか?いや無い!
 契約者!私も、私も貴方が大好きです!愛してます!結婚したいです!
「うん。俺も愛してる。」
 契約者、愛してます!!
「ははは、俺はずっと契約者って呼ばれるの?」
あ、それもそうですね。夫を契約者と呼ぶのは変です。
……では
 ……栄志さん。愛してます。
「俺もだよ、梓」
栄志さんは、私を婚姻届に書かれた私の偽名、いえ、私のこれからの名前で呼びました。
後で知ったのですが、この私の名前は栄志さんはが考えたそうです。黒服さんに相談し、3時間近く付き合わせて。

884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/06/25(月) 13:50:27.28 ID:af4pfEYd0
>>883
>……栄志さん。愛してます。
>「俺もだよ、梓」
うわぁぁぁぁぁぁ;;
この女黒服、まさか未来で知枝ちゃんと組んでいる……?
885 :単発とは言えないネタ [sage]:2012/06/26(火) 00:24:40.60 ID:aDfeRj9SO
男が持っているのは、妖刀のたぐいなのだろう。
男が刀を振るうたび、禍禍しい気配を放ち、触れた物を斬っていく。
また、男の技量も高かった。
そんな男に襲われる事になってしまった少女は不幸と言うしかない。
ただし、刀を延々とナイフで逸らし続ける少女はまったく不幸には見えないが。
「んー、飽きた」
少女がそう呟くと、男の肩に斧が突き刺さった。
少女の契約している都市伝説「ベッドの下の殺人鬼」の仕業だ。
契約により得た能力は、敵の死角に出現する事。
突然の奇襲に男はなす術なく、倒れた。


「さて、次の任務の説明は以上です。何か質問は?」
黒服は言いながら、少女を見る。
辺りには、ベキリ、ボキリ、と何かが折れる音が響く。
音の原因は少女であり、先程殺した男の間接を片端から無理な方向に曲げている音だ。
男はすでに息絶えており、そんな事をしても拷問にはならないし、当然叫び声もあげない。
はたして、いかなる論理が彼女のその行動に繋がるのか、黒服には皆目見当もつかなかった。
「んー、変な任務ですね。わざわざ、殺人に見せかけるなんて。どして?」
そんな事聞かずにさっさと任務に行ってくれれば良いのにと、この不気味な少女が苦手な黒服は思った。
けれど、それを言う事は無い。この少女に臍を曲げられると面倒臭い。万が一、組織を離反するような事があるとさらに厄介だ。
この少女は奇襲と逃げ回る事に関しては天才的なのだから。
何故、上の連中もこんな奴を組織の一員にしているのかとイライラしながら、黒服は説明の為に口を開いた。
「最近、我々はある都市伝説を手に入れました。
 しかし、この都市伝説は強力ですが高燃費でして、よほど容量がでかいか、相性がよくないと契約できません
 しかし、我々は運が良かった。すぐに契約できそうな容量の人間を見つけました。それが、貴方が次の任務で[ピーーー]夫婦の子供です」
「んー、面倒臭なあ。適当に誘拐してきたら良いのに」
「その夫婦、元組織所属の契約者と都市伝説なんですよ。穏健派の、ですが。
 ですから、当然、我々過激派が手を出すと面倒な事になります。そして、我々でなくとも都市伝説により彼らが[ピーーー]ば、穏健派連中が捜査を始めたり、子供を保護してしまう」
「ふぅん」
「ですが、もし、ただの頭のおかしい殺人鬼の仕業なら……都市伝説が関係していないのに、組織が介入などできはしない。
 後は、たまたま、我々は素質のある子供を発見し、その後、たまたま、子供の両親を殺したのが契約者だと発覚し、たまたま、子供は親が悪い契約者に殺された事を知る。
 後は、我々が悪い契約者を倒す力と意志を与えれば良い。それだけです」
「ふぅん」
興味なさげに返事をしながら、少女は死体で遊んでいる。
自分で聞いた癖にと、黒服はさらにイライラした。
「んー、その夫婦はどうして組織を止めたの?」
「寿退社みたいなものですよ。過激派だったら絶対許しませんけどね」
「んー、幸せ家族なんだね。[ピーーー]ばいいのに」
飽きたのか、少女は死体を手放し、立ち上がる。
「任務は了解、今夜で良いよね」
「ええ、よろしくお願いしますよ」
立ち去る少女を、やっと何処かへ行ってくれたと黒服は安心しながら少女を見送った。
「ふーぅ、つっかれるわー」
薄汚れたサングラスを拭きながら、黒服はのんびりとそう言った。

886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/06/26(火) 13:20:37.47 ID:4nHNdDu70
>>885
全て……仕組まれていた、だと……!?
この黒服は真実を知った知枝ちゃんの手で惨たらしく[ピーーー](ぉぃ

にしてもこの少女、『家族』に何か良くない思い出でもあるんでしょうか
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/06/26(火) 13:54:06.62 ID:YNpABxjAO
>>843-861
怨み屋さんの人乙ですー
吸血鬼の真実ちゃんなんという魔性…どうしようこんなおにゃのこ大好きだ

>>863
乙でしたー
なんという儚い夢…

>>876
乙でしたー
なんというホラー。この後彼はきっと…

>>879-885
単発の人連作乙でしたー
これは何もかもはじめからこの黒服の掌の上…だった…
888 :単発ネタ [sage]:2012/06/28(木) 23:23:03.33 ID:bf6O/XsSO
私の記憶に、親から愛された記憶はなかった。
お父さんは愛人がいたらしく、家には滅多に帰ってこなかった。
私の事は嫌いだったらしく、よく殴られた。
お母さんはお父さんを家に引き留める事のない私に興味はないらしく、私を無視した。
私に話しかけてくるのは、機嫌が悪く、八つ当たりする時くらい。
友達、というのもいなかった。
幼稚園や保育園に行った事は無い。小学校というのは何歳になったら行くんだったか。
私の日々にはテレビを見、本を読み、冷蔵庫を漁る事しかなかった。

その日は、とても珍しい日だった。
普段は愛人達の家を転々としているお父さんが、家に一日いた。
お母さんはとても上機嫌で、八つ当たりされる事もなく、お父さんは視界に入らなければ殴ってこなかった。
お母さんとお父さんは、何年かぶりに同じベッドで眠り、私はいつも通り自分の部屋、という名の物置で眠った。
その夜、悲鳴が聞こえた。お母さんとお父さんのいる寝室からだった。
いったい何事だろうと、私はふらふらと寝室へ向かった。
寝室の扉を開けた途端、私の視界は暗くなり、何かが私にのしかかってきた。
……お母さんだった。
首から血を吹き出し、意識も力もなく、私に覆いかぶさっていた。部屋を見れば、お父さんも同じように血を流していた。
何が起きているのか分からなかった。その時考えていたのは、一つだけ。
暖かいな、と。
お母さんの体温が、血液が、暖かかった。
殴られた痕や、タバコの火のように熱くない。浴びせられた水や、罵声と呪詛の言葉ほど冷たくない。
私は、この暖かさを知っている。知識として。本に書いてあった。
「愛」は暖かい物だと。
今、お母さんは私の肩に顎を起き、私の背中に手を回している。
私は知っている。これは「抱きしめられている」というやつだ。本に書いてあった。
私はふと思いつき、お父さんのところへ行く。恐る恐る、お父さんに触れてみる。
暖かかった。
お父さんの手を私の頭に乗せ、動かす。
私は知っている。これは「撫でられている」というやつだ。本に書いてあった。
「……何をしている」
突然、声がした。
驚いて辺りを見回すと、何故かベッドの下に男の人がいた。
「何してるの?」
思わず尋ねる。数週間ぶりに人に話しかけた。
「隠れている。お前は何をしている」
「ん、」
何を聞かれていて、どう答えれば良いのか、少し考える。会話なんて何年ぶりか分からない。
「撫でて貰っているの」
家族の団欒とか、愛されているとか、いろいろ考えたすえに、そう答えた。
「そうか」
男はそう言ったきり、何も言わず、ベッドの下でじっとしていた。
私はお母さんとお父さんの死体を運び、並べた。そして、二人の間に入り、私は眠った。
これは「川の字で寝る」というやつだ。本に書いてあった。
二人の間はとても暖かかった。
お母さんとお父さんは、死んで、初めて私を愛してくれた。

けれど、翌朝、二人は固く、冷たくなっていた。
もう、二人から愛を感じる事はできなくなっていた。
ベッドの下を見れば、まだ男がいた。
なんとなく、手をのばしてみる。男は特に何をするでもなく、私を見ていた。
男の顔をぺたぺたと触る。
冷たかった。
男から愛は感じられなかった。
生きてる人は私を愛してくれなかった。
「ん、」
男に話しかけようとして、少し考える。
「貴方が、お母さんとお父さんを殺したの?」
「そうだ」
「ん、」
男の答えは早かった。
「どうして?」
「そういう存在だからな」
「ん、」
少し考える。
「これからも人を[ピーーー]の?」
「ああ」
「ん、」
少し考える。
「じゃあ、私も連れて行って」
そして、私に愛を、ぬくもりをちょうだい。
今日は、とても寒いから。




「幸せ家族なんだね。私の事も愛してくれるといいな」
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/06/28(木) 23:51:27.55 ID:CTD5VcfAO
単発の人乙ですー
「ベッドの下の殺人鬼」の契約者ちゃんにこんな過去が…うるる
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/06/30(土) 00:18:06.91 ID:N3P0PEsH0
>>888
乙ですー
歪んでしまっているだけで、この子もまた『愛情』に飢えていただけだったとは……;;
二、三度読み直すうちにまた涙が……;;

こんな子を>>885で「幸せ家族、ピーーー」とまで吐き捨てるほど乾いた存在にした過激派は許すまじ
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/30(土) 00:26:39.70 ID:tDwKlt4jo
やはり過激派・強硬派は潰すしかない
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/30(土) 00:37:25.45 ID:5w6zH2eSO
組織のせいで助長されたけど本質は何も変わってないよ

「愛してください」と「死んでください」が同意義になってる子だから
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/30(土) 00:46:42.50 ID:tDwKlt4jo
なぁ単発のおっちゃん
単発のおっちゃんに電波送ってくれへん?
sistersはどないしてん?って
あれの続き結構気になってんねんけど
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/30(土) 00:49:21.00 ID:stRJ6NXDO
「愛」という概念のゲシュタルト崩壊
895 :短期と言うにはもはや無理がある連載「Sisters」 [sage]:2012/07/01(日) 01:45:16.75 ID:fYHYjdBSO
――――――
――――
――

Sisters
前回までの3つの出来事
一つ、柊子は本当の妹じゃなかったけど柊って名付けて妹にしたよ!
二つ、柊子が嫉妬して柊を殺しに来たよ!
三つ、時間と視点の違いだったけど「柊子」が三人いるみたいに見えたらしいから、一人強引に消したよ!

――
――――
――――――

幽霊達を振り払おうともがく。
が、一人一人はたいしたことないが、何人ものしかかるように捕まえにきていて、身動きがとれない。
もう数週間はこうしている気がしてくる。当然、数分しかたっていないはずだが。
「こ、んのおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺は早く柊と柊子のとこへ行かなければならないというのに、まったく動けない。
柊は、柊子は、無事だろうか。
不安になり、焦る。が、状況は変化しない。
そんな時、
「邪魔です!!」
俺を押さえ付けていた幽霊の一人が吹っ飛んだ。
一人、二人と吹き飛ぶ。
そうして、あっという間に、幽霊どもを一人残らず、吹き飛ばし、そいつは、
「桜太さん、助けに来ましたよ!」
黒服はそう言った。
「お前、どうやって……?」
こちらからは触れない幽霊を吹き飛ばす、いや、よく見たら殴り飛ばす黒服に茫然とする。
「私は魔除けの『馬の蹄鉄』と契約していたんですよ」
黒服がそう説明する間に、吹き飛ばされた幽霊が再びこちらに飛び掛かってくる。
「だから、幽霊が相手なら……破ぁーーーーー!!」
黒服が叫ぶと、幽霊どもは吹き飛び、消えていく。
「このようにTさんごっこができるんですよ」
蹄鉄ってそんな使い方する物だったか?
……ていうか、こいつ、もしかしてかなり強いのか?
「幽霊以外には無力ですけどね……」
…………そうでも無い、のか?
「って、こんな事してる場合じゃねえ!」
俺は慌てて、居間を飛び出した。

――
――――
――――――

896 :短期ではない連載「Sisters」 [sage]:2012/07/01(日) 01:46:04.84 ID:fYHYjdBSO
「こんばんは、柊子さん」
「こんばんは、化け物」

あの後すぐ、お兄ちゃんの本物の妹、柊子さんが現れた。
出会って、感じたのは、柊子さんから私に向けられている、怒り。
当然だと思う。私は、お兄ちゃんを取ったも同然だから。
私だって、いきなり現れた知らない人にお兄ちゃんを取られたら、怒る。
だから、
「柊子さん」
まずは、
「ごめんなさい!」
謝る。
「…………」
柊子さんは何も言わない。
「ごめんなさい」
それでも、私は謝る事しかできない。
「謝るなら、出ていってよ……お兄ちゃんから、離れてよ」
「それは……できません」
私は、お兄ちゃんと一緒にいたいから。お兄ちゃんが大好きだから。
たとえ私が悪くても、我が儘な女だと言われても、それはできない。
「ああ……腹立つなあ……」
柊子さんの、私を見る目がさらに厳しくなる。
「そうだよね。離れるわけないよね。わざわざ私のいない間にお兄ちゃんをたぶらかしたんだし。何をしたいのか知らないけどさ。
 そうだよね。やっぱり、初めから、こうすればよかったんだよ。お兄ちゃんは怒るかもだけど、すぐ分かってくれるよね。
 今は化け物に騙されてるだけだもの。こいつを殺せば、いつも通り。私はただいまって言って、お兄ちゃんはお帰りって迎えてくれる。
 すぐ、もうすぐだよ。待っててね、お兄ちゃん。私の名を騙る化け物はすぐにいなくなるから。私が守るから。お兄ちゃん、待っててね……」
柊子さんの言葉を聞けたのはここまでだった。
周りにいた幽霊達が私を襲いだしたから逃げなければならなかったから。
本当は、私の能力と、柊子さんの能力は相性が良い。
柊子さんの操る幽霊の一人にでも「なりきれ」ば、簡単に柊子さんまでたどり着ける。
けれど、たどり着いてから、どうすればいいのか、私には分からない。
柊子さんは、お兄ちゃんの妹だ。
柊子さんが傷つけば、お兄ちゃんは悲しむだろう。
お兄ちゃんが悲しむ事は、したくない。
だから、逃げる。逃げる。
私に幽霊と戦う手段は無いし、柊子さんを傷つけるわけにはいかない。
だから、狭い廊下で逃げながら、柊子さんに話を聴いてもらうしかない
「ごめんなさい、柊子さん!私は、」
謝って、謝って、謝る。
ただ、分かってほしい。私は、柊子さんからお兄ちゃんを取りたいんじゃない。
私も、二人と一緒にいさせて欲しいと、そう願う間もなく、
「ああ、もう、腹立つなあ」
「……え」
気がつけば、幽霊達はナイフを持っていた。
そうして、それは、殴られるくらいは仕方がないと、覚悟していた私には唐突で、振り下ろされるナイフを理解できず、
それを避けないといけないと理解した時には
「柊!」
お兄ちゃんが目の前にいた。
柊子さんの横を駆け抜け、幽霊を無視し、まっすぐに私のもとへと来てくれた。
そして、それが、私をナイフから守る為だと気がついて、
「っ!!お兄ちゃん!?」
「ダメっ!!!」
私はお兄ちゃんを、引き寄せ、
「なっ!?」
すぐに、横に押しのけた。
目の前には、ナイフが迫っていた。

――
――――
――――――

897 :略して短期連載「Sisters」 [sage]:2012/07/01(日) 01:46:47.89 ID:fYHYjdBSO
沈黙。
柊に、突き飛ばされ、尻餅をついた状態で動けない。
柊の目の前には、ナイフがあった。
そこから、幽霊は動かない。
柊子が、止めたんだろう。
俺を、刺しそうだったから。
「あ……ぁ……お兄、ちゃん……?」
口を開いた柊子の声は、震えていた。
「大、丈夫……?け、怪我、……してない?」
「……大丈夫だ。それより、……柊子、幽霊を退かせろ」
「ぁ……でも、でも」
「柊子」
立ち上がり、柊を守るように、前に立つ。
「……ぅん、ごめんな、さい…………」
柊子がそう言うと、幽霊どもは消えた。
「ど、して……どうして、邪魔するの……お兄ちゃん。もう少しで、偽物を、そいつを殺して……お兄ちゃんを助けられたのに」
柊子は、泣きそうになりながら、……まるで小さな子供のように、泣きそうになりながら、そう言った。
「柊子。柊は、偽物じゃない。俺の本物の妹だ」
「違うよ……。本物は、私で、そいつが、偽物で、お兄ちゃんは、騙されてて、だから、私が、助けないと、いけなくて……」
「違う。柊子!お前も俺の妹だ!」
「だから、私が、妹で、そいつを、殺して、………………え?」
本物も、偽物もあるものか。
二人は、俺の妹だ。俺の家族だ。
「俺は、どこにも行かないから。お前は、ちゃんと俺の家族だから」
だから、
「おかえり、柊子」
「お兄、ちゃ……ん……、ただ、いま……うぇ、……ぅ……う……」
柊子は、涙をこらえようとしながら、それでも、涙は頬を伝い、泣きじゃくる。
柊子は、もう大丈夫だろう。
俺を刺しそうになった時、俺を守ったのは、柊だ。
それは、柊子も見ていたはずで、柊が悪い奴じゃないと分かってくれるはず。
時間はかかるかもしれないが、話し合えば、二人とも仲良くできるはずだ。
「お兄ちゃん……」
くいくいと、袖を引っ張られ、振り向くと、柊が床にへたりこんでいた。
「腰、抜けた……」
涙目になりながら、そう言って、柊は微笑んだ。
「お疲れ様」
俺は苦笑しながら、柊の頭を撫でてやった。
後で、柊子も撫でてやらないとな。

898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 01:48:25.75 ID:fYHYjdBSO
単発のおにぃさんから電波を送られたので
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 18:49:31.08 ID:Lbme77xy0
シスターズが終わってしまっていた…
お兄ちゃん頑張ったな、というより太っ腹だなお兄ちゃん
柊も柊子も俺の妹です宣言するとは…でもこれ絶対あと一悶着あるよね…?
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 19:07:55.98 ID:DZrwb2Xco
二人まとめて愛してね?
END希望!
901 :たんぱつ :2012/07/01(日) 20:04:08.54 ID:Lbme77xy0
その廃屋に辿り着いたのは夕暮れ時分だった

男「ここか?」

T「ああ…」


竹林を抜けた先にある、薄気味悪い廃屋を
こうして俺と友人のTが訪ねてきた理由というのは
もう一週間も学校を休んでいる級友の安否を確認するためだ

奴は担任に一切の連絡をしなかったようだが
俺がためしにメールを送った所、「生きている」とだけ返事を寄越してきやがったのだ


男「本当にここなのか?」

T「担任から聞いた住所じゃ、ここで間違いない」


廃屋のあちこちに蔦が絡まり付いている
まだ陽があるというのに、不気味という言葉がぴったりの場所だ


T「おーい上辺、いるか?」 ドンドン

ギッ ギィィィィィ

友「…やあ、お前らか。入れよ」


久々に見た野郎の顔はどこか青白かった



友「悪いな、茶も出せんが」

T「これが担任に渡されたプリントの類だ」

友「明日夏ちゃん、元気?」

T「お前のこと心配してたぞ。ただ、お前んちが不気味だからっつって、家庭訪問は俺達に押し付けたがな…」

男「具合が悪かったのか?」

友「違うんだ」


友「実は、妻を見つけたんだ」


T・男「…は?」

友「早々にめおとのちぎりを挙げてな」

男「いや、ちょっと待て」

友「簡単に言うと、結婚の前契約みたいなもんさ」

友「だが、普通の結婚と勘違いしてもらっても困る」

友「なにせ僕と妻は契約なんてもんじゃない、魂の絆で結ばれたんだからね!」

友「まあ、こうしてお前らが来てくれたわけだし、ちょっと僕の妻に顔を見せてあげてくれよ」


そう言うと、級友は立ち上がり、ふすまを開けて奥の部屋へ入っていった
902 :たんぱつ :2012/07/01(日) 20:05:53.73 ID:Lbme77xy0

男「妻、つま、ツマ、とか何か突飛な話になってるな…」

T「……」

男「どうかしたか?」

T「分からん。空気が妙に重い」


『おとよ、僕の友達が来てるんだが、ちょっと会ってもらえないかな、ああ、ありがとう』


級友はすぐに戻ってきた


男「うっ!?」


思わず変な声が出てしまった

級友が大事そうに抱えて持ってきたのは、人形だった
正座している格好の、和服を着た子供の、多分少女の人形だ

ただ、普通の人形とは明らかに違っていた
首の部分が異様に長く、頭の部分は重心が安定しないようでゆらゆら揺れている
人形の顔は笑顔を浮かべているのだが、その眼は中身が真っ黒で、口もぽっかりと三日月状の穴が開いている

そのにっこりした人形と、級友が戻ってきた瞬間、首筋を冷たい何かがなでたような気がして
思わず声が出てしまった


友「紹介するよ。僕の妻、『渦人形』の『おとよ』だ」


男「お、おう…」

T「……」


俺もTも人形を凝視していた
声も出せなかった
人形の頭は相変わらずゆらゆら揺れている


友「どうだ、可愛いだろう?これでいて寂しがりやで、僕が外へ出るのを嫌がるんだよ」

男「あ、ああ。そう…」

友「まあ、来週から学校に通えるように説得するよ」

T「そうか、邪魔したな」

男「ええ、ああ、じゃあ俺達も、そろそろ、か、帰るわ…」

友「明日夏ちゃ…担任にもよろしく伝えておいてくれよ」

903 :たんぱつ :2012/07/01(日) 20:07:40.94 ID:Lbme77xy0

俺達が廃屋を後にしたのは夕日が沈みかけた時分だった

背中を向けた廃屋の方から、いきなり「ホホホ、ホホホ」と抑揚のない声が響き
続いて「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」という
級友の笑い声が聞こえたのだが、努めて平静に無視した


男「…」

T「夕焼け空が綺麗だな」

男「ああ…」

T「…」


何だか雰囲気に当てられてしまったようだ
足元がどうしようもなくふらふらする


男(あの人形、絶対今夜あたり夢に出てきそうだな…)





























男「ちょっと待てよ!!俺達、なんか大切なことを落っことしてないか!?」

T「あいつの人生だ」

男「いや、アイツはあのままでいいのかよ!?」

T「友は幸せそうだった。それでいいじゃないか」

男「いや、いやしかし、なんか、なんか引っ掛かるんだよおお!!」
904 :たんぱつ :2012/07/01(日) 20:22:03.92 ID:Lbme77xy0



結局、俺達は廃屋へと引き返していた

男「おい、友!お前本当に大丈夫か!?色々と!!」

友「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

人形「ホホホ…ホホホ…」

男(うっ、あの声出してたの、人形だったのかよ…)

 ≪つかぬ事をお聞きします。明日夏ちゃんという方はどなたなのですか?≫

男「何だ今の!?」

T「恐らく、この人形が俺達の頭の中に直接語りかけてるんだろう」

男「さ、さすが寺生まれ…ビビりもしないとは」

T「その呼び方はやめろ。おとよ、だったか?明日夏ちゃんというのは俺達の担任、学校の先生だ」

 ≪明日夏ちゃんという方は、男の方ですか?≫

T「いや、女だ」

 ≪旦那様…私しか見えないっておっしゃったじゃないですか…すぐに心移りしてしまったのですか…≫

友「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

T「ああ、友は以前から担任が好みのタイプだったそうだ」

 ≪Tぃぃぃぃぃぃぃぃ!!貴様、余計なことをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!≫

男(なんか友の声まで聞こえ始めたぞ…)

 ≪旦那様は、旦那様は…想い人がありながら、私を妻に迎えたというのですか…旦那様の心は私の方を見ていなかったのですね…≫

 ≪ち、違う誤解だ信じてくれ!おとよ!!俺はお前をウボギャアアアアアアアアアアアス!!!≫

 ≪グスン…ひどい、ひどすぎます、旦那様…お恨み申上げます…≫

人形「ホホホ…ホホホ…」

友「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

T「やはり俺達の出る幕じゃなかったな、帰るぞ男」

男「え、いや、友はこのまま?」

T「自業自得だ。それに人の恋路を邪魔するものは、って言うだろう。行くぞ」

男「うむ…」



905 :たんぱつ :2012/07/01(日) 20:24:03.42 ID:Lbme77xy0


俺達が本当に廃屋を後にしたのは、夕日が沈み切った時分だった

背中を向けた廃屋の方から響いてくる、級友の狂ったような笑い声は
どこか俺達に助けを求めているかのようにも聞こえたが
努めて平静に無視した





















後になってこの一件が……いや、よそう
とにかく、この話はこれで終わりだ
誰が何と言おうとこれで終わりだ
御清聴感謝する

906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 22:12:41.04 ID:DZrwb2Xco
心の浮気もだめなのか
おとよさん手厳しいwwwwwwww
907 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/07/02(月) 00:27:54.17 ID:3svyrEaSO
――――――
――――
――

お帰りと言ってくれた。
私も妹だと言ってくれた。
お兄ちゃんは、お兄ちゃんだった。

正直、呆れた話だと思う。
私も、あの化け物も、同じ妹だって、あんなはっきり言い切るなんて。
自分を兄だと慕う者を全員妹にする気なんだろうか。
お兄ちゃんにとって妹は、そんな簡単な繋がりなのかと、怒りたくなる。
でも、きっと私は、そいつらは妹じゃないと突き放すお兄ちゃんを見たら、もっと怒るんだろうな。
そんなのは、お兄ちゃんじゃないって。

化け物は………………
ん……、柊さんは、私からお兄ちゃんを取ろうとしたわけじゃなかった。
ただ、柊さんも寂しかったんだ。
誰かと一緒にいたかっただけ。

妹が一人増えただけ。
私は今も昔も、これから先だってお兄ちゃんの妹だ。

あの日、お父さんもお母さんも死んで、
お兄ちゃんを守るんだって、お兄ちゃんのいる世界から危険な物をなくすんだって
そう思った。
けれど、その道は、お兄ちゃんのそばにいられなくて。
寂しくて、それでも、お兄ちゃんの為だって、思って。
それなのに、お兄ちゃんは、私を褒めてくれる事はなく。
私以外の妹の頭を撫でていて。
それが、とてつもなく嫌だった。

なんで気がつかなかったのか。
寂しいなら、一緒にいればよかったのに。

組織はやめよう。
これからは、お兄ちゃんのそばでお兄ちゃんを守る。
……違うな。
お兄ちゃんのそばで、お兄ちゃんと一緒に戦う。

うん、でも今は、久しぶりに甘えさせてね?
お兄ちゃん。

――
――――
――――――
908 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/07/02(月) 00:28:47.39 ID:3svyrEaSO
――――――
――――
――

怖かった。
死ぬかと思った。
お兄ちゃんが死んだら嫌だと思ったけど、ナイフが目の前に来て、とたんに怖くなった。
死んで、お兄ちゃんともう一緒にいられなくなる事が、怖くなった。
私は、お兄ちゃんのそばにいたい。
大好きなお兄ちゃんのそばに。
そばにいれるだけで良い。
できれば、お兄ちゃんの役に立ちたい。
お兄ちゃんが私のために何かしてくれたら、とても幸せだ。

お兄ちゃんと、一緒にいたい。
これから先、ずっと。

でも、それは、私の仕出かした事に付き合わせる事になる。
組織の過激派の支部に侵入した事。
きっと、柊子さんが失敗したと分かれば、別の過激派の人達が私の命を狙ってくる。
穏健派の人に守ってもらうと言っても、実際、どこまでの事ができるか。

私と一緒にいると、巻き込んでしまう。
きっと、お兄ちゃんは気にしないと言うだろう。
そして、本当に気にしないんだろう。
妹のためなら、と。

でも、私はお兄ちゃんに迷惑をかけたくない。
私は、選ばないといけない。

お兄ちゃんと一緒にいて、お兄ちゃんに迷惑をかけ続けるか。
お兄ちゃんに迷惑をかけないよう、お兄ちゃんと別れるか。

できるだけ、早く。
うん、でも、今日は疲れたから、もう少し一緒にいて欲しいの。
お兄ちゃん。

――
――――
――――――
909 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/07/02(月) 00:29:21.91 ID:3svyrEaSO
「ええっと……大丈夫ですか?」
黒服が、尋ねる。
「まあ、うん」
俺は答える。
テーブルを挟み、黒服と向かい合っているのだが、俺の右には柊子、左には柊。
柊子は俺の腕をがっしりと掴み、猫のように肩にほお擦りしている。
柊は俺の肩に頭を乗せ、うとうとしている。
何だこれ……。
まあ、良いか。
さっきからしている黒服との話に戻ろう。
「つまり、柊子が組織をやめるのは難しいんだな」
「ええ、穏健派ならともかく、柊子さんのいるのは過激派です。彼らは組織を裏切る者を許しません」
「だ、そうだが?柊子」
「んー?でもやめるよ?お兄ちゃんと一緒にいたいもん」
「そうか」
さて、どうしたもんか。
俺だって、妹をそんな危険な奴らのいるところで働かせたくはない。
これからの事を考えないとな。

「まったく」
そんな時、
「本当に」
いつの間にか、
「どいつもこいつも」
部屋に、
「何をしているのかしらね」
黒服の女がいた。
「!!?」
「え!?」
「こんばんは、鍵開いてましたよ」
驚く俺達を気にせず、黒服の女は言った。
黒服の女は退屈そうな目をしながら、柊子と柊を見る。
「松ヶ崎柊子は任務失敗、と」
そう言って、ため息を吐く。
「仕方ないわね。もう、終わりにしましょうか」
そして、俺達を激痛が襲った。

910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/02(月) 01:06:43.18 ID:UwlCRljAO
Sistersの人と単発の人乙ー
ごめんちょっと個別には書けないや
911 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/02(月) 22:52:10.15 ID:bL3ldFRc0

―――これは、誰にも気付かれなかった町での―――



―――悲劇の物語―――



男A「状況は?」

とある公園。サングラスをかけた男が、数人と何かを話していた。
公園には数千の人が集まっていた。どうやら彼等はその代表のようだ。
まず男の問いかけに答えたのは、ジャージを着ている体型のガッチリした男。

男B「はい、はっきり言って悪化しています。
   難民が毎日数十単位で増えています。食料が持つかどうか……。」

それに続いて、スーツの女が報告する。

女A「仮住居にも限界があります。さらにさっきも、そこで小さな諍いがありました。
   住民のストレスが溜まれば、治安維持も困難を極めるでしょう。」
男A「そうか……。」

どうやらこの場所に集まっているのは、何かの被害者達らしい。
その数や状況からして、天災に匹敵する被害だったのだろう。
そこへ、短パンの女がある提案を出す。

女B「ところで、これ以上の土地の確保は?」
男A「リスクが大きすぎる。上空に建物を建てる方法のを考えた方がマシだ。……あれの数は?」
女A「100ほどです。とても太刀打ちできる質と量ではありません。
   その上、現状を解決できるものは……。」
男B「捜索はしているんですが……やはり……。」
男A「……そろそろ、限界か……?」



???「諦めるぐらいなら、戦おうよ!」



男A「……また君か、タケルくん。」

その声の主は、まだ小学生ぐらいの少年だった。

タケル「ここに居たって、いつか皆死んじゃうんだろ!?
    だったら戦って死んだ方がマシだ!」
女A「もう、大人の話に子どもが入り込まないの!」
タケル「子どもじゃねぇ!オレには『力』があるんだ!あんた達と一緒だ!」
女B「確かにそうだけど……ねぇ?」
女A「どうせ、そんなたいそうな『能力』じゃないんでしょう?!」
男B「それ以前に経験がなさすぎる。返り討ちにあって終わりだ。」
912 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/02(月) 22:54:55.20 ID:bL3ldFRc0
男A「だが、力を蓄える時間もない。」



女A「え……?本気ですか!?」
男A「もはや『子どもだから』などと言っていられる場合ではない。
   相手も正気とは思えないような連中だ。こちらも非情になるべきだろう。」
男B「ッ……、保護したものは全部、望んだ者に渡してあります!」
女B「はぁ!?また勝手にそんな事して……!」
男B「早い方が良いと思ったんだ……!その方が『成長』も早くなると思って……。」
男A「丁度いい。その人達をここへ呼べ。
   そして覚悟があるものだけ、戦おう。」

サングラスの男の声に、タケルは大きな声で返す。

タケル「オレは行くぜ!絶対に!」
男B「戦いに付いて行かなかったら、何のために自分がいるのか分からなくなるんで。」
女B「わ、私も行く!……行きます。」
女A「まったく、みんな死にたがりなの!?」

男A「この中で一番戦力になるのはお前だが……。」
女A「うっ。」
男A「ここの防衛を頼んでもいい。怖がっているなら……。」
女A「い、良いですよ!行きます!死にたがりだけ行かせて、帰ってこなくて困るのはここの人たちですよ!」

目的が決まり、笑みを浮かべるもの、気を引き締めるもの、頭を悩ませるもの……。
また、かつての平穏な日々を取り戻すために……。



男A「全員、明日に備えるぞ!」



一同「「はい!」」






これから、彼らの戦いが始まる――――――









???「『来年の事を言えば鬼が笑う』とは、よく言ったものだな。」
913 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/02(月) 22:55:44.26 ID:bL3ldFRc0
女A「えっ!?」
女B「はぁっ!?」
男B「なッ……!?」

男A「まさか……!?」

声の方を向くと、ビルの屋根に人影が見えた。
よく見ると、ノートパソコンを片手に携えた中学生ぐらいの少年がいた。
その傍らには……得体の知れない、大きく『10』と書かれた、円形のロボットがあった。

住民達「あ、あいつは……。」「ま、まさかこんな日が……。」「嘘でしょ……?」
   「で、でも1人だぜ?」「リーダー達が追い払ってくれるはず……。」



少年「【鬼】には寿命が見えるらしい。例えば『明日から頑張る』と言って……明日になる前に死んだら?
   いい言葉だ。やれる事はすぐやろう、そう思い知らされる。」



少年の言葉には耳も傾けず、サングラスの男は少年に問いかける。

男A「貴様……!どこから来た!?何故ここが……?」
少年「それはこっちの台詞だ。どう計算しても町の人口と死体の数が合わない。
   そして何度もこの付近で通信機器が途切れる不具合……。
   それで調査を始めたら、ここに信じられない数の人間がいた。
   ……まぁ聞いても教えてくれないよな。」
ロボット「チャリンチャリーン!なんでも知ってる!お前達の居場所も!能力も!
     だから十円玉よこせ!」

動く度にチャリンチャリンと発言するロボットに向けて、少年は十円玉を弾く。
十円玉は、ロボットの体に空いていた硬貨投入口のような穴に吸い込まれていった。

ロボット「チャリーン!あの男は【バミューダトライアングル】の契約者!
     3つの点で指定した空間を、機械でも人間でも認識不可能な空間へ変換する!」
少年「なるほど……。敵を幽閉するはずの【バミューダトライアングル】を
   逆に自分達の隔離施設に変換すると……。頭がいいな、仲間になるか?」
男A「いいだろう。お前達が我々に降伏し、もう人を襲わないと誓ったら!」
少年「拒否、と。じゃあそれ相応の対応をさせて貰おう。で、出口は……?」

改めてみてみると、この空間の端は暗く、何かが渦を巻いている模様の不思議な壁で囲まれている。

男A「あると思ったか?ここを出るには俺の許可が必要だ!
   知っての通り、ここでは外世界への通信はできない。仲間は呼ばせん!
   俺を信じないなら境界に触れてみろ。この世界の狭間から帰れなくなるだろうがな。」

その言葉を聞き、少年は木の枝を拾っておもむろに境界部分に突き刺す。引き抜くと、先端部分が消えていた。

少年「……狭間へ行くと言うより、蒸発すると言った方が良さそうだな。」
914 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/02(月) 22:58:51.11 ID:bL3ldFRc0
下の方では、現状を上手く呑み込めていなかった男の仲間たちが、やっと理解していた。

男B「そうか!仲間は呼べない、あるのはロボット1機のみ……。」
女B「これなら勝てるんじゃない!?」
女A「ちょっと、相手は子どもよ!?なに倒そうとしているのよ!」
タケル「姉ちゃんこそ何言ってんだ!
    あいつは『魔王』の直属の部下、『悪魔』の1人だ!」

その言葉が出た一瞬、場の空気が一瞬固まった。
『魔王』と『悪魔』。よくは分からないが、この被害の原因なのだろうか。

女A「えっ……あんな子どもが?」
男B「念のため言っておくが、『悪魔』は全員『魔王』と同級生だという情報もある。」
女B「今まで敵も知らなかったの?」
女A「う……私は……『悪魔』とは違う奴らに襲われたから……。」


改めて『悪魔』と呼ばれる少年を見る。思考はどうであれ、とても強そうには見えない。
その少年は、辺りをぐるりと見渡すと、改めて口を開く。


悪魔「なるほど、仲間を呼ぶのは不可能か。では……。」

すると少年は、男達には見えない辺りで何か作業を始めた。
そしてビルの手すりに、表は赤、裏は青の布をかける。

悪魔「これでよし、と。」
男B「なんだ、洗濯でも始めたのか?」
女A「何かのおまじない?……まさかッ!?」



悪魔「仲間が居ないなら、作ればいい。」

男A「なに!?」



少年が後ろへ下がると、ノートパソコンを開いて左手に持ち、懐からカードを取り出した。

悪魔「ウルヴ……《抜き取る》。インストール!」

するとマントが動き出し、形状を変え、やがて人型のロボットへと姿を変えた。



ロボット2「ヒャッハアアアアアアァァァ祭りだァァァ!」



生まれた瞬間そう叫んだロボットは、そのまま布をマントのようにたなびかせて地に降りた。
915 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/02(月) 23:00:13.07 ID:bL3ldFRc0



住民達「「   あ 、 悪 魔 だ ァ ァ ァ ァ ァ ァ !   」」



   「逃げろォ!」「子どもを隠せ!」「ママ、ママぁぁぁ!」



男A「まさか、この空間内でも転送できたとは……!?」
悪魔「大はずれ。『転送』ではなく『作成』。ある都市伝説によって、さっき生まれたロボットだ。
   さらにリモートコントロールではなく自律行動。故にこの世界の影響を全く受けない。」
男A「なん……だと……?」

マントのロボットがサングラスの男にずんずんと近づいてくる。

ロボット2「まずはお前からだアアアアアアァァァ!」

その瞬間、ジャージの男が信じられない速度でロボットに向かって飛び蹴りした。

ロボット2「ぐわァァァ、き、貴様アアアアアアァァァ!」
男B「こいつは自分に任せて、あなたは住民の避難を!」
男A「お前……すまない!」

サングラスの男は、住民達の方へと走っていった。

悪魔「さっきの超身体能力……都市伝説か。まだ残っているのか?」
男B「さぁな。お前達がどうしようと、都市伝説は生まれ続けるんじゃないか?」
悪魔「……まぁいい。要はここにいる全員……。」
ロボット2「皆ゴロしだアアアアアアァァァ!」

マントロボットは狂い叫びながら右腕の刃物を振り回す。
しかし、まるで人間を超えた速度のせいで、その攻撃はジャージの男に届かなかった。

男B「どうした、止まって見えるぜ!」

マントロボットの攻撃を避けながら、男はパンチを繰り出した。
そのあまりの威力に、マントロボットは吹き飛んだ。

ロボット2「ぐおアアアアアアァァァ!?……。」
男B「どうだ!?」

少年は半ば驚いたような顔をしながら、ノートパソコンのキーボードを叩く。

悪魔「驚異の身体能力……速度・パンチ力・キック力全てが人間の限界を超えている……。いや丁度、限界値ほどか。
   待てよ、もし『止まって見える』が事実だったら……身体能力だけでなく五感も高まる都市伝説、それは……。」
916 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/02(月) 23:02:08.66 ID:bL3ldFRc0
少年は上空に向けて十円玉を弾く。そこへ最初からいたロボットが飛び込む。

悪魔「【ゾーン体験】。奴の契約都市伝説はそれで合ってるな?」
ロボット1「チャリーン!正解、【ゾーン体験】!身体能力を極限まで高める!
      攻撃翌力・防御力・持久力・回避能力、全て上位クラス!」
悪魔「都市伝説化していたとは……。サンプルに貰おうか。」
男B「『サンプル』?何の事だ!?」
悪魔「お前にはどうでもいい事だ。じゃあ、コロさない程度でやるんだぞ。」
男B「は?」



ロボット2「再ッ起ッ……動ォアアアアアアァァァ!」



男が驚いて振り向くと、さっき吹っ飛ばしたマントロボットが立ち上がっていた。

ロボット2「よくもやってくれたなァァァ!お前の血は何色だァァァ!
      お前の血を抜き取って調べてやらアアアアアアァァァ!」
男B「ち、ふざけんな……!……血、赤と青のマント……?まさか、そんなッ!?」









ロボット2「赤と青……どっちが好きだアアアアアアァァァ!?」









悪魔「さてと、避難はどれほど終わったか。」
女B「待ちな!」

次に少年に話しかけたのは、短パンの女だ。
917 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/02(月) 23:04:54.73 ID:bL3ldFRc0
悪魔「おや、どこで会ったか?」
女B「アンタが憶えてなくても、アタシは憶えてる!アンタが目の前で……アタシの妹を……!」
悪魔「あぁ……生憎、コロした人間の事をいちいち憶える趣味はないんで。」
女B「いつかアンタに会ったら、って誓ったんだ。アンタに会ったら……!」



―――この多くの人の家族を引き裂いたバケモノの身体を―――



女B「五体バラバラに引き裂いてやるってね!」



その瞬間、どこからか現れた刃渡りの長い刃物を振りかぶる。

ロボット1「チャリーン!危ない!」

その間に、十円玉のロボットが割って入る。
短パンの女が刃物を振り下ろした瞬間、何も起きていないようだったが……。

ロボット1「あれ、あれれ!腕が!脚が!」

急に十円玉ロボットの腕と脚が外れてしまい、胴体も地面に落ちてしまった。

ロボット1「チャリーン!う、動けない!困った!」
悪魔「おぉ、怖い怖い。五体バラバラ……胴体……これは。」

キーボードで何かを打ち終えると、少年は十円玉をロボットに投げつける。

悪魔「【ダルマ女】。」
ロボット1「チャリーン!正解、【ダルマ女】!どこからともなく刃物を取り出す!
      その刃物は一振りで相手を五体バラバラにできる!身をもって知った!」
悪魔「とても厄介だ。だが既にストックがあるから要らないな。」
女B「『ストック』?どういう意味?まぁ言わなくてもいいけどさ!」

答えを言わせる間もなく、女は刃物を振り下ろす。その太刀筋は衝撃波となって少年に襲いかかる。
しかし衝撃波は少年の前で四散してしまった。

女B「えっ!?」
悪魔「家族を殺されたって理由で、オレをコロしていいんなら……テメェ等にもコロされる道理があるぞ?」
女B「な、何……?」
悪魔「おいお前、飛べるだろ?そのまま戦え。手加減しなくてもいいから。」
ロボット1「チャリーン!そうだった!倒すから、たくさんコイン!」
悪魔「仕方ない、5枚でいいか?」

少年はロボットに十円玉を5枚投入する。するとロボットは胴体だけで浮かび上がった。
918 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/02(月) 23:06:23.15 ID:bL3ldFRc0
ロボット1「チャリンチャリンチャリンチャリンチャリーン!分かった!全部分かった!倒す!」
悪魔「ではバラバラにされる前に。」
女B「ま、待ちな!」
ロボット1「チャリーン!体当たり!」
女B「くぅ、邪魔!」

突っ込んでくる十円玉ロボットを受け止め、払いのけるが、ふわふわと浮いているため手応えが感じられなかった。

ロボット1「チャリーン!緊急回避!」
女B「ったく、いちいちうるさい奴ね!……って、え?」

十円玉ロボットが見せた背中に、一瞬女は戸惑った。

女B「(あれ……五十音表?なんであんなものが?)」
ロボット1「チャリーン?疑問あるのか!十円玉があれば答える!なんでも答える!」
女B「誰が敵に!……十円玉?五十音表……質問に、答える……。
   ……まさか、え、でも……。もしそうだとしたら……!?」









ロボット1「十円玉あれば鳥居まで行く!それから質問、答える!」









悪魔「ふむ……どうやら想像以上の数を匿っていたようだ……。逃すと面倒だ。」

ふと少年が足元を見ると、1匹のネズミが走っていた。

悪魔「おや、ネズミか……。この世界が作られた時に出られなくなったのか?
   可哀想に、仲間と離れ離れになったのか……。」

そう言いながら、少年はカードの束を取り出した。
919 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/02(月) 23:09:18.62 ID:bL3ldFRc0
悪魔「まだテストを行っていないのは……丁度いい、これにしよう。
   生物での使用はデータが少ないからな……。」

少年はネズミを掴み、ノートパソコンのUSBアダプタから伸びたコードの先端を貼り付ける。
もはや『道具』を見ているような目で、少年は1枚のカードを手に取った。






悪魔「複合都市伝説【ウルヴ】……タグ、《導く》。インストール。」






ノートパソコンに備えられたカード読み取り装置に、そのカードを読み込ませる。
するとネズミは悲鳴を上げながら巨大化し、形状を変え、やがて人型の怪物となった。



怪物「グオォォォオオオオ!!!」



悪魔「おぉ、『拒絶反応(エラー)』ゼロ!スペックも上等。なかなか良いじゃないか。
   さて……肝心の能力は……?」



―――その少年の笑みは……その2つ名に恥じぬものだった―――









to be continued...
920 :どこか遠い、どこか馴染みある場所で [sage sage]:2012/07/02(月) 23:15:12.59 ID:bL3ldFRc0
……と、一旦切らせてくださいorz
本当は日曜日に上げたかったんですけど、今日になってしまいました。

後編では、『魔王』と『悪魔』の謎が明らかになる!……といいですね。
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/07/03(火) 20:02:40.18 ID:BmPW7dlR0
乙ですの
複合都市伝説か……何を足してるのかが気になるな
毎週日曜朝7時半の番組を見る気持ちで続きwktk
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 21:06:48.49 ID:rdHxKQzDO
投下乙ですー
地の文は誰が語っているのか気になるところ
ニチアサに照らし合わせるなら、さしずめ神の視点をもった視聴者様だろうか

無駄に深読みしてる感があるけれど気にしない
後編お待ちしております
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2012/07/04(水) 20:56:38.53 ID:o3dbM9kB0
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/05(木) 12:01:42.27 ID:06aicr2AO
投下乙でしたー
敵の能力に気づきそうな女Bさんに希望になってほすぃ
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/05(木) 12:44:46.45 ID:PYCFhicM0


朝寝坊して歯を磨いていると、トイレの方からゴボゴボと音が鳴った。
花子さんがやって来る合図だ。今日は僕のためにカレーを作ってくれると言って聞かなかったんだ。


「ゴボゴボ……。こんにちわあーご主人様あー!」


2週間も前に僕と契約した花子さんは、テリトリー外にもかかわらず、僕の部屋へとやって来る。
そう、僕の部屋のトイレを介して。

便器の中からやって来るんだけど、何故か花子さんは濡れていない。とはいえ、この登場の仕方は衛生上どうかと思う。


「ご主人様ー今起きたんですかー?寝ぼすけさんは良くないですよー」

「花子さん、カレー作りの前にちょっと、これに着替えてもらえないかな?」

「?……いいですけどー」


花子さんは僕のことをご主人様と呼ぶ。最初は名前で呼んでくれていたんだけど、僕が強制した。
僕は花子さんに新型のスクール水着を渡すと、リビングの座布団に腰を下ろした。
何か静かだなと思って花子さんの方を見ると、こっちをじっと見つめていた。


「どうかしたの?」

「わたしが着替えてるの、見ちゃやぁですよお?」

「後ろ向いてるよ」


僕は、床に投げ出していた読みかけの本を手に取り、パラパラめくった。
「今日から実戦!都市伝説の戦いマニュアル」。花子さんと契約したときにもらった本だ。
この本は都市伝説に向けて書かれた本だけど、契約者にとっても重要な情報が記されている。
契約にまつわる注意事項や、都市伝説のタイプごとの紹介、
都市伝説や契約者に襲われたときの対処法、戦いのための注意点や方法などだ。


「ご主人様ー着替え終わりましたよー」


そう言って、花子さんが僕の前にとてとてやって来た。
思った通りだ。花子さんの体型にピッタリとフィットしている。


「どう?狭くない?」

「大丈夫ですよお」

「うーん」


僕は花子さんの身体を改めて眺めてみた。
小学生低学年を思わせるほどの見事なお子様体型だ。
不意に、平坦ながら綺麗な曲線を描いた胸に頬ずりして、
ついでに可愛いお腹とデリケートな場所であるお股をスリスリフニフニしてみた。


「やぁ、くすぐったいですよお」

「ごめん、つい。それじゃあこれ持ってお風呂場に行ってよ。身体をシャワーで濡らしたらこれを着けて待っててね」

「カレーは作らないんですか?」

「カレーを作る前にレクレーションだよ花子さん。好きでしょ?」

「うん。好きー」

926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/05(木) 12:45:58.12 ID:PYCFhicM0

花子さんの身体から身を離すと、大き目のアイマスクを渡して風呂場にうながした。
風呂場に入って、シャワーの音が聞こえ始めたのを確認すると、僕は本のあるページを開く。
そこにはこう書かれていた。


    都市伝説や契約者との戦いで、最も気を付けなければならないことは契約者の身の安全です。
    特に、契約者自身が契約した都市伝説の能力を行使できない場合、戦いの場からは距離を取り、
    自分の生命の確保を優先して行動しなければなりません。
    "契約者が死んでしまうと、契約した都市伝説も消滅してしまうからです。"


最後の一文は赤文字のゴシック体で書かれている。
このマニュアルには、あちこちに、契約者が死ぬと契約した都市伝説は消滅してしまうと注意書きがされている。
でも、だ。その逆――つまり、契約した都市伝説が死んでしまった場合、どうなってしまうのかははっきりと書かれていない。
それを匂わせる記述はあるにはあるけど、契約者に直接的な害は及ばない、という情報以外、詳しいことは何も記されていない。

試してみる価値はある。僕自身に直接害が及ばないのなら、なおさら。

僕は立ち上がって、キッチンへ近づいた。流し台の上に置いてある食器乾燥機から牛刀を取り出した。
3日前にホームセンターで買ったものだ。結構な長さがあり、切れ味も店に置いてある中でも最高だと店員が言っていた。

風呂場の扉をスライドする。
花子さんはシャワーだけじゃなく、浴槽に水を貯めてジャブジャプ遊んでいた。
それも、律儀に目隠しをしたまま。


「あれ、ご主人様ですかー?」


無邪気な女の子の声が僕の脳味噌の中を甘くこだまする。


「今からどんなことするんですかあ?」


何も無ければ、後で花子さんに謝ればいい。
死んだままなら、別にそれでいい。

それ以上に、僕は今からやるつもりのレクレーションを思うと楽しくなってきた。
僕の愚息も既に凄い勢いでエレクチオンしている。
こんなに興奮しているのは、小学生の時に隣の家のお姉さんの風呂上りの着替えをのぞき見した時ぐらいだ。

僕は風呂場の扉を閉めた。


                               おしまい
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/05(木) 19:10:01.83 ID:heSthOqDO
なんといえばいいんだろう……
まずい、非常にまずい気がする
この文体で、この筆力で、この題材で、こんな作品を仕上げられたら、とてもまずいような気がする
なにがどうまずいのかはわからないけれど、少なくとも、良くも悪くも、心に響きました
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/06(金) 07:30:40.44 ID:0Ij4szREo
ここのところ面白い話ばかりで俺得
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/06(金) 10:00:50.27 ID:4CxwIEjAO
投下乙ですー
なんというデンジャラスな契約者
花子さん逃げて超逃げてー
930 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/06(金) 10:46:54.74 ID:4CxwIEjAO
「ひとりは、いや・・・」
 ぱたぱたと暖かい滴がこぼれ、瞳の光が力を取り戻してゆく。

(余計な真似をしおって・・・!)

 嗄れた呻きと共に、銀の大鎌が振り上げられた。

「させるかっ!!」
 

(契約者よ、我に命ぜよ!彼奴らの命を刈り取れと!)

 ぴくんとノイの身体が強張った。
「ノイちゃん!」
 振り下ろされんとする鎌を必死に阻みながら柳が叫ぶ。
「『死神』の言うことを聞いちゃダメだ!」

(契約者よ・・・よもや我に逆らおうとは思うまいな?)

「あたし、やだ・・・だって。あたし・・・」
「いうこと、きかなくちゃ・・・あたし・・・けいやくしゃだから・・・でも・・・」
「ノイちゃん!」
 びくっと電気にでも撃たれたかのように、泣き出しそうに少女が柳を見つめる。

「ひとりは・・・嫌だろう?」

「友達が欲しいだろう?」
 こくんと弱々しく、少女が頷く。
「外の世界を知りたいだろう!?」
 今度ははっきりと、少女の頭が縦に揺れた。
「だったら、今、頑張るんだ!」

 両の手をぎゅっと握りあわせて、少女はふたりの男と骸骨を代わる代わるに見つめた。
「ノイ・リリス。大丈夫だ」
「命を奪うのは嫌だ。そう死神に言いなさい」
 例えノイが逆らっても、今の「死神」にはノイをどうこうは出来ない。
 いかな死を司る存在とは言え契約者の命を自ら奪うことは文字通り自殺行為。
 むしろ契約が破棄されれば、死神は心置きなく自分に逆らう者の命を自由に出来るのだ。
 契約を維持したまま、ノイの自我を取り戻す。
 ムーンストラックにとって薄氷の上を歩くように困難だった業を、ひとりの東洋から来た青年が実現させつつあった。
「あたし」
 少女がぎゅっと拳を握る。
「もう死神のいうことはきかない!だれのこともあたしは、死なせない!」

(この・・・っ)

 黒い眼窩が少女を睨むが、もはや怯む事はない。

「あたしは、あなたの力は、いらないの!!」

(・・・・・・!)

 ぎり、と歯噛みをするような耳障りな音を残して、死の化身は消え去った。
 後に残ったのは静寂のみ。
 ふらふらと倒れ込んだノイは、それでも少しばかり誇らしげに笑った。
「あたし、がんばったよ・・・!」
931 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/06(金) 10:47:25.73 ID:4CxwIEjAO
 数日後、死神によって命を落とした少年のお葬式を、ふたりは遠くからノイに見せた。
「みんな、泣いてるね・・・」
「・・・うん。どんなに好きな人でも、死んでしまったら、もう二度と会えなくなってしまうからね」
 柳は苦い表情で、ノイの頭にそっと手を置いた。
「・・・前に、教えただろう?死んだものには、神様に召されるまでは、会うことは出来ないのだ」
「だからといって、自分で自分の命を絶っても、天国へは行けないから誰にも会えない」
「命が尽きると決まっている日までは、誰でも一生懸命、生きなくてはいかんのだ。」
 それが人間の役目なのだ。そうムーンストラックに説かれたノイの瞳から、一粒の涙がこぼれた。
「あたしも、かなしいの。さみしいの・・・」
「あの子は、あたしに石を投げたのに」
「あたしのこと、オバケっていったのに。あたしをいじめたのに。おそうしきを見てるとかなしいの。なんでだろ・・・」
 柳はノイの頭に置いた手をゆっくり動かす。
「もう、仲直りが出来ないから、じゃないかな」
「なかなおり?」
「どんなにひどい喧嘩をしても、生きてさえいれば、いつかはまた会える」
「たとえ会えなくても、いつかはお互いを心の中で許せる日が、来るかもしれない」
 ぽろぽろと、続けざまにノイの瞳から涙が溢れ出てきた。堪えかねた嗚咽が漏れる。
「あたし・・・もう、あの子にゆるしてもらえない?なかなおりできない?」
 あたし、オバケなんかじゃないって、わかってもらいたかった。
 ムーンストラックにしがみついて泣くノイに掛ける言葉は、大人ふたりにも見つからなかった。


 柳の帰国の日。
「わざわざ空港まで見送りに・・・ありがとう」
「この子が、空港に行きたいと聞かなくてな」
 とりあえず少女の意志が死神をねじ伏せた事で、一安心したのだろう彼の表情は、幾分穏やかだった。
「柳、あのね・・・これ」
 お庭でつんだの、と一輪の紅いバラを差し出した。棘を引っかけたのだろう、小さなふっくらした手に、幾筋かの傷が付いている。
932 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/06(金) 10:47:59.55 ID:4CxwIEjAO
 ありがとう、と受け取った柳に、ノイが深々とジャパニーズオジギをして言った。
「あたしとけっこんして下さい」
 ムーンストラックは苦笑いして、ノイの頭を撫でる。
「まったく。テレビばかり見せていたもので、おませなことを言いたがって困る」
 彼は子どもの言うことと簡単に捉えていたが、柳はこれまた深々と頭を下げた。
「不束者ですが、どうか末永くよろしくお願いします」


「まさか、あれが本気だったとはな・・・」
「どーしたの?ムーンストラック」
「リジーさんが夕飯だって呼んでるよ」
「今日はね、ハンバーグなんだって!柳、ちっちゃく切るのはあたしがやるから、あーんして食べさせてね?」
「もちろん。ノイちゃんも俺にあーんで食べさせてよ?」
 深く溜息をついた彼の平和な悩みは、今のところ尽きる気配はない。



END
933 :死を携えし少女 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/06(金) 10:50:07.87 ID:4CxwIEjAO
これにて前章とりあえず終了です。
都市伝説に操られていたとは言え人一人殺した彼女の処遇がこれでいいのかとは作者も悩んでいますが、
とりあえずこんな感じで落ち着きました。
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 16:00:23.69 ID:PHsH1HeX0
ノイちゃんは相変わらず可愛いですね
それもあってか柳んはなんかこうこのイケメンが!と叫びたくなりますね
それにしてもノイちゃんは本当にかわいい…ストさんには悪いがこうアレしたくなりますね

ノイちゃんは可愛い…やなぎんおまえ…
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage やなぎんおまえはやなぎんぎんふおああああああ]:2012/07/06(金) 16:26:55.49 ID:PHsH1HeX0
違うそんな話をしたいんじゃない
ノイちゃんの凛とした勇気で死神を抑えたのは
ノイちゃんの今後にとってかなり大切な行為だったのですね
ストさんからもそんなノイちゃんに付き合っていこうとする優しさが溢れてていいですよね
936 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/06(金) 17:25:34.31 ID:4CxwIEjAO
>>934-935
>それもあってか柳んはなんかこうこのイケメンが!と叫びたくなりますね
かっこいい柳は後にも先にもこれだけ!wwwwww

>ストさんには悪いがこうアレしたくなりますね
その前に柳が黙ってないですが、彼もまだまだ婿としては扱ってもらえないのですwwwwww

>ストさんからもそんなノイちゃんに付き合っていこうとする優しさが溢れてていいですよね
生さぬ仲ながら、少しずつ「親子」になっていってる途中です。
937 :>>925-926 :2012/07/06(金) 23:06:40.54 ID:PHsH1HeX0
盆地の夏は蒸し暑い。
太陽は天高く昇り、強い日差しが照りつけてくる。
アスファルトが陽炎を作り出す中、アーケード下の商店街は今日も人でごった返している。

その男は、夏日にもかかわらず黒のスーツの上から黒の外套を羽織っていた。
商店街の人ごみの中を縫うようにして歩くその男の顔は人形のように白く、
黒のおかっぱ髪、切れ長の双眸も相まって、だいぶ人目を引いた。

もっとも人目を引いたのはそれだけではないだろう。
男の片手には、かなり大き目の書物が掴まれていたが、
その書物は何故か表面が赤い液体で濡れていた。まるで血のようだ。

男は不意に立ち止まった。横へ向き直り、視線を向けた先は、レコード屋だった。
店の規模は小さく、Tシャツ姿の老人がパイプ椅子に座って俯いている。
店舗内部に据え付けられたモニタースピーカーからは重低音の効いた、
ラテン系の音楽が聞く者を殴り付けるかのように鳴り響いている。
この音量では商店街全体に響いているようにも思え、
事実、スーツの男がアーケード下に入った時から、既に音楽は聞こえていた。


「おじいさん、来ました」


男が老人に歩み寄り、話しかけた。それは小さな、かすれた声だった。
声は大音量の音楽に飲まれていたが、老人はすぐさま顔をあげた。
口元をぐっと引き上げたような笑みを浮かべている。


「来てるよ。店の裏だ」


どうも、とだけ言って、スーツの男は店の奥へと入っていった。



店を抜けると、外に出た。
アーケードはなく、ただ建築物の庇だけが照りつける日差しを遮っている。
目の前に広がるのは、高く、横へどこまでも続くコンクリブロックの塀だ。
誰が貼ったのかは知らないが、タギングが描かれた無数のステッカーで覆われている。
しかし、その中の幾つかには、墨書きの悉曇文字が大書された半紙が混じっている。


「よお、遅せえぞ」


横から声が掛けられる。
男がパイプ椅子に座って煙草を吹かしていた。
巨躯と呼ぶべき男だ。黒のTシャツにジーパンというラフな格好のこの男は、
一目見れば、これほど筋骨隆々という表現が似合う男もそうそういないだろう。
おかっぱの男は、一瞬、体重で椅子が壊れはしないのか、などと余計な事を考えていた。


「すみません兄者、仕様書の入手に手間取りました」

「悪りな三郎。で、これがその、"東"の最新版か」


おかっぱの男は片手に持っていた大きな書物を、大男へ手渡した。
その書物は電話帳ほどの大きさだが、厚さはその2、3倍はある。
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/06(金) 23:08:27.78 ID:PHsH1HeX0

「して、三郎よ。なんでこれが血に濡れてんのか、聞いていいか?」

「申し訳ありません。ここへ来る途中、"式"に付きまとわれて……
 その、つい頭に血が昇り……、脳天をかち割りました。この血はその時の……」

「お前の手が早いのは知ってるよ。まあ、中身が読めりゃいいんだけどよ」


大男がバラバラ頁をめくるたびに、ビタビタと血の飛沫が飛びまくっている。


「兄者、知ってるとは思うが、中身の殆どは――」

「広告だろ?しかしまあ、人間社会で生きる都市伝説は商売熱心だねえ」


大男はそのままバラバラ頁をめくっていたが、書物の紙質が変わった辺りで手を止めた。
眉間に皺を浮かべながら、印刷された文字を眼で追っている。


「ったぁく、"東"の連中は、またしょうもない事に精を出してんなぁ」


その直後に、嫌いじゃないけどよ、と唇の片方を吊り上げて付け加えた。
おかっぱの男は、外套のポケットから懐中時計を取り出し、時間を確認し、
庇と塀の隙間に広がる、空の青を見上げたまま、大男に声をかけた。


「兄者、今回の一件には、"東"の連中が絡んでいるのでしょうか」

「どうだかな、お前はどう思う」

「出回ったのは、"スパニッシュ・フライ"。数年前に"東"で結構な群体が発生していたでしょう」

「確かに、あれだけ発生したうちの一部を捕獲しても、結構な額にはなるな」

「……兄者はどう考えているんです」

「誰かが、そう思わせたいだけかもしれんぞ」

「……?」
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/06(金) 23:13:12.21 ID:PHsH1HeX0

おかっぱの男は横眼で大男を見やった。
兄者と呼ばれた大男は、先ほどのように書物の頁と睨めっこしている。


「どういう事です」

「惚れ薬って言っても、かなりの数がある。
 その中で、今回流行ったのは"スパニッシュフライ"だった。
 俺達は"東"で"スパニッシュフライ"が流行った事を知ってる。
 一方、先方は俺達がそう思い込むと踏んだうえで選択・行動しているかもしれん」


そう言うと大男は頁から顏を上げた。
悪戯小僧のような笑いを浮かべている。


「つまり、詳しく調べるまで分からんって事だ
 小悪党どもの営利目的の活動って線も消えたわけじゃない
 だが、今回の一件には何か別の意図を感じる
 ってのが、おじき殿の考えだ
 でなけりゃわざわざ俺達に直接『調べてみろ』なんて命令は出さん」

「その部分には同感なのですが」

「お前、"東"は嫌いか?」

「"東"の犯罪者は許せません。やり口が陰険で、ねじ曲がっています」

「同感だ。連中は伝統ってモンを軽んじる。
 土足で他所を踏み荒らすなんて事もしょっちゅうだ。
 だがな、それは俺達も同じかもしれんぞ」


大男は、一旦言葉を区切った。


「いいか三郎、俺達は今、まさに先方を追いつめようとしている。
 そして、それは、連中も同じなんだ。俺達の動きを物も言わず観察している。
 俺達を嵌めようとしているのかもしれん。短気は禁物だ、手前の思い込みにも気を配れ。いいな?」


そう言って大男は立ち上がった。パイプ椅子がきしみをあげる。
咥えていた煙草は殆どが灰と化していた。そのまま脇の消火バケツへと投げ込む。


「さて、そろそろ時間か。乗り込むぞ」


大男は大きく伸びをすると、手に持っていた書物をパイプ椅子へと放り出した。
おかっぱの男は、口を真一文字に結んだまま、書物の表面に付着した血糊を見つめていた。
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/07(土) 01:25:25.71 ID:YRLreJi60


おかっぱと大男は、繁華街のとあるビル、とある階に来ていた。
SM系デリバリーヘルスの事務所がある階だ。
事務所の規模は小さく、趣味の悪いインテリアが空間を更に圧迫していた。


「で、アンタら、何?ケーサツ?それとも、ヤクザさん?」


カウンター越しに応対している白Yシャツの青年はヘルスの事務員らしいが
その口ぶりから、たとえ相手が警察だろうがヤクザだろうが怯むつもりは毛頭ないらしい。
垂れ目の青年の表情は、おかっぱと大男に対して、敵意を過剰なまでに剥き出しにしていた。
もっともそれは後ろめたい何かを隠す為に、敢えて大げさなまでに張った虚勢なのかもしれないが。


「じゃあもう一度聞こうか。
 お前さん方ンとこで使ってた消毒用のイソジン、
 あれから多量の脱法ドラッグが検出されて、お客も、お嬢さん方も軽い中毒症状を催した。
 あれな、お前さん方が思ってるほど、チャチいもんじゃ無えんだよな、分かるだろ?
 お兄さんがこの店のオーナーって言うんなら、あのドラッグ、どこから手に入れたのか教えてもらえんかね?」


大男は表情を崩すことなく、事務の青年の眼を見据えたまま、最初に尋ねたのと同じ質問を繰り返す。


「おお俺はオーナーじゃねえよ」

「おいおい、オーナーが直接対応だから初心者でも安心って謳い文句は大法螺でしたってか?」

「うううるせえ黙れ!冷やかしならとっとと帰れよこっちは忙しいんだ!」

「落ち着けよ、カマカケ以前のザレゴトでこんなにビビってんなら、ウソは吐かずに素直に喋った方が身の為だぜ?」

「うう、うううう」


大男はカウンターから身を乗り出し、青年の顔面に自身の鼻っ面を突き出した。


「さあ、吐いちまえよオーナーさんよ。あの"スパニッシュフライ"の媚薬を何処で手に入れた?」

「うう、ううう……
 うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
 サク、サアアアアアアアクッ!!来てくれッ!早く!!
 "あれ"使って!!早く、"虫"だ!!!殺せ!!!いいッ俺が許すからッ!!!
 早くしろ!!!サクゥッ!!!"虫"を殺れぇエッ!!!"あれ"使って!殺れぇエッ!!!」

941 :>>937-939ね :2012/07/07(土) 01:27:05.97 ID:YRLreJi60


事務の青年は出し抜けに、すぐ背後の壁へへばり付いたかと思うと、
今度は顔を引きつらせながら絶叫し始めた。

大男は突然の青年の反応にカウンターから身を引いたが、
おかっぱの方は、生年の叫びと同時に身を翻していた。

後方の事務所の入口に、男が立っている。
歳は事務の青年と変わらない若者のようだが、
肌の色も、眼の表情も、日本人のそれには見えない。
この男は、首元に手をやっていた。何かに触れている。

次の瞬間だった。

入口の男が膨張した。
膨張した、というのは正しくない。
肉が、男の肉が、膨れ上がり始めたのだ。
男の着ていたTシャツと白のパンツは弾け飛び、
その内側から発達した筋肉が更に膨れ上がっていく。
ベキボキという何か骨の鳴るような音と共に、男の身の丈も変わり始めた。
通常の事態ではない。まるで、内側から筋肉が、骨格が、組み替えられていくかのようだ。

変化はそれだけではなかった。
男の顔面もまた肌の下を何かが波打ち、
その額から二本、角のようなものが生え始めた。
それと同時に、男の唇からはみ出るようにして、鋭い犬歯が覗き出した。


「おいおい」


その様を見ていた大男の方がようやく口を開いた。


「天狗か?それとも、鬼か?
 どっちにしろだが、都市伝説でも現代妖怪でも
 そんなキャラクターのやつはなあ、いくら発祥がこっちだからって
 最近じゃあんまり聞かねえぞ?やめとけって、負担はエラいもんだろうに」

「ひゃは、ひははははは!!
 お前らここで死ぬんだよ、死んでくれよ頼むから!俺達まだ死にたくないんだよおおおお!!」


同時にその様子を凝視していた事務の青年も壁にへばり付いたまま絶叫していた。
その表情は嗤っているのか恐怖しているのか分からないほどに歪んでいたが、
おかっぱも大男も、最早、その青年の方には一瞥もくれなかった。

942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/07(土) 01:28:11.38 ID:YRLreJi60

「三郎、お前ンとこに突っ込んでくるぞ」

「まかせて下さい」


大男とおかっぱの囁きめいたやり取りの直後、角の生えた怪物と化した男が突如、吼えた。
腹の底が揺さぶられるような響きと共に、雄叫びそのものが圧となって真正面から二人を殴り付ける。

まなじりのつり上がった怪物の両眼が、おかっぱを捉えた。
刹那、怪物は地を蹴っておかっぱへと突っ込んだ。一気に距離が詰まる。


空間が爆ぜた。


吹っ飛んだのは怪物の方だ。
事務所の入口に衝突した。事務所全体が揺れる。
ガラスは派手な音を立てて砕け、怪物の巨体は前のめって地に崩れ落ちた。

おかっぱは倒れ伏した怪物へ歩み寄ると、手を差し出した。
その片手は白手袋に覆われており、いつの間にか、白の封筒が握られている。
そのまま、おもむろに封筒を怪物の背に張り付ける。

怪物の巨体がガクガクと痙攣し始めた。
ガスの抜けた風船のように、発達した筋肉に覆われていた身体は、元の男の体型へと萎み始めた。


「へ?」


間の抜けた声を発したのは、件の壁にへばり付いた事務の青年だった。
何が起きたのか、事態を飲み込めないというような青年の反応を見やりながら、大男は唇の片方を吊り上げた。


「怪物化した兄ちゃんは、サクって言うのかい?オーナーさんよお。
 アンタ、この兄ちゃんが俺達ぶっ殺してくれるのを期待してるような口ぶりだったが、
 そう上手くいくとでも、本気で思ってたってか?ええ、どうなんだよ?」

「ひっ、ひぃぃぃ」

「いっとくがな、このおかっぱのあんちゃんも、"契約者"なんだよ。
 お前さん、"本当に危険な心霊写真はオカルト番組で放送されずにお蔵入りになる"って話、聞いた事あるかい?
 このあんちゃんはな、それと契約してんだよ。本当にアブない心霊写真からにじみ出る霊障の作用をな、制御する能力なんだ」

943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/07(土) 01:30:06.14 ID:YRLreJi60

事態を理解しかけたのか、今度は甲高い悲鳴を漏らし始める。
カウンターに片手をサッと伸ばし、何かを取ろうとした。


「この期に及んで、まだ足掻くつもりか?見苦しいぞこの野郎!」


大男はそう怒鳴り、カウンターに伸びた青年の手を片方の掌で叩き付け、押さえ込んだ。


「う、うわあああ!クソォァッ!!」


まるで泣き叫ぶような悲鳴と共に、青年のもう片方の手が、大男の顔面へと突き出される。
が、男はその手も、もう一方の手で易々と捕まえた。

大男は、事務の青年をカウンターから引きずり出すように腕を引き寄せると、
そのまま勢いづけて、投げ飛ばした。

青年の身体は宙を浮き、カウンターを飛び越える。
そしてそのまま悪趣味な調度品に激突した。
床に叩き付けられた青年の身体に、調度品が耳障りな音を立てて倒れる。
青年の履いているベージュのスラックスは、みるみる内に股間からの小水で汚れ始めた。失禁してしまったらしい。


「止めて下さい!命だけは!!命だけは許してください!!殺さないで下さい!!殺さないで!!!」

「おいおい、どの口がそう言うか」


大男は呆れ顔だ。
その手には、バタフライナイフが握られている。
先ほど、青年が大男の顔面に突き刺そうとしたものだ。


「今時バタフライナイフとかさあ、お前はどこぞのチンピラかよ、ああ?」


手首のスナップでナイフを揺すると、グリップへと収納されてしまった。
大男は興味無さげにナイフを打ち捨て、改めてカウンターを覗いた。
青年がカウンターに手を伸ばして取ろうとしていた何かを見つける。
指で摘まみ上げてみた。ぐるぐる巻かれた黒革のアクセサリ。


「チョーカーか」

「兄者」


おかっぱから声がかかる。


「府警に応援を要請しました」


おかっぱは大男に向けて手を持ち上げた。
その手にもチョーカーが握られていた。


「怪物化した彼の首に巻いてあったものです」

944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/07(土) 01:30:38.27 ID:YRLreJi60

応援はものの数分で到着した。


「また派手にやってくれたな」

「悪ィな、安中のじいさん」


大男とおかっぱは、現場の後処理を制服の警官に任せ、デリヘルの事務室を後にした。
今は、階下にて応援と共に駆けつけた初老の刑事に状況を報告している。


「まあ何はともあれご苦労だったな」


安中と呼ばれた初老の刑事は、ねぎらいの言葉と裏腹に深刻な面持ちを浮かべている。


「このチョーカーは一体……」

「これで2件目だよ」


おかっぱの問いに、安中は溜息を吐きだした。


「以前の暴行事件の時に証拠品として押収された物と似ている。
 これから詳しく調べなければならないが、大方、同じ型の物だろうな」

「暴行事件?」

「ああ、"スパニッシュ・フライ"の惚れ薬絡みの事件だよ」
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/07(土) 01:31:43.93 ID:YRLreJi60

「これを装着した被疑者は、一時的に体格が変化しました。
 あれは都市伝説に由来するものでしょう。このチョーカーが――」

「これはな、首輪型の"契約書"だよ」


安中は一旦言葉を区切った。大男の方を睨み付ける。
大男はしばらく安中の眼を見つめていたが、押し黙ったまま煙草を取り出した。


「只の"契約書"ではない。
 大本である都市伝説、あるいはその契約者は別にいるのだろうが、
 この首輪型の"契約書"は、遠隔か何かでそれら特定の都市伝説の能力をバイパスして行使できる代物らしい。
 一番危険なのは、都市伝説への"適性"のない一般人であっても、装着したならば、ある程度能力を操ることができる点だ」

「何ですって?そんな物、聞いた事ないですよ?」

「数が出回っていない事を祈るばかりだ。
 少なくとも、こんな代物の製作は、凡百の"契約者"には無理だ。
 "契約"のシステムを熟知し、都市伝説の様々な"ルール"に精通した者で無ければ」


再度、安中は大男を睨み付けた。
男は眼を閉じたまま煙を吐き出したが、やがて眼を開き、安中を見た。


「倉橋トヲコ。お前は知っているはずだ」

「安中のじいさん。それは有り得ん。アイツはそんなタマじゃあ無い」

「スギヒコ!!」


大男の言葉を遮るように、初老の刑事は怒鳴った。
歯を剥き出しにし、怒りが顏の皺に現れている。


一瞬、沈黙が場を支配した。


「じいさん、後、任せたぞ」


大男はそれだけ告げると、おかっぱと安中に背を向け、ビルの外へと出て行った。
初老の刑事は立ち去る男の背中をなおも睨み続けている。


「倉橋……トヲコ……」


おかっぱは、聞いた事のないその名前を、口の中で繰り返していた。
                                                おしまい
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/07(土) 07:31:23.78 ID:IYWtvziAO
>>937-945
投下乙ですー
気が付いたら引き込まれるように読んでいたぞ!
あのおかっぱと大男、警官だったのね。てっきりヤの字の人かと…
チョーカー型の契約書とか格好いい。装着しただけで使えるなら無理矢理契約させて…とか用途が広そう
すごく面白いです
947 :7月7日、晴れ。 [sage]:2012/07/07(土) 07:33:00.43 ID:IYWtvziAO
「これでいーのー!?」
 7月7日夕刻。学校町の一角にある新田家は、いつにも増して騒がしかった。
「願い事というのは、日本語で書かねばならんのか?」
 ノイとムーンストラック。七夕初心者の親子は片やわくわくとちいさな笹を握りしめ
 もうひとりはテーブルに置かれた短冊を前に首を捻っている。
「ノイちゃん、お願い事何書いたの?」
「飾るまでナイショなのー!」
「ボクは『とりあえず金くれ』と書いたのですよー」
 いつの間にやら幻までが短冊を手にノイや柳と談笑している。貴也はその間、台所でリジーと夕飯の支度。
「あの娘は台所に立たんのか?」
「俺が三食用意しないと、今頃あの人飢え死にです」

「でもさー、織姫と彦星って、ケッコンしたのに遊びまくってて引きはなされちゃったんでしょ?」
 いかにも疑問、といった表情のノイ。
「しんこんせーかつから夫がにーとなんて、織姫はなんも思わなかったのかなあ」
 少女は夢多くあるべき、と考えるロマンチストが聞いたなら
 小一時間ほど説教かましたくなるような夢もへったくれもない話題は
 生活力において彦星と大差ない柳の溜息とともに井戸端会議的に膨らんでいく。
「織姫も彦星も、結婚してから遊びを覚えて駄目になる典型だったんだねえ」
「やっぱり若いうちからある程度遊んでおかなきゃ駄目なのですよー。遊び大事なのですよ」
「でもさー、織姫と彦星もこんじょーないよね。あたしが柳とケッコンした後、リコンしろって言われたら、そのままカケオチしちゃう!」
 過干渉の父親と、生活力のない恋人。
他人事ではないノイだけは鼻息荒く理想論をぶっちゃける。
「二人が引き離された最大の問題は、案外親の過干渉かもね。ところで家事はどう分担してたのかな」
「それはボクも気になるのですよ。織姫は働く主婦なのですから、彦星も風呂掃除とゴミ出しと食事の後かたづけ位はすべきなのですよ」
「その中のどれか一つでも、自分でやってから言ってよね」
 冷たいサイダーの載ったトレイを手に貴也が現れると薮蛇を悟った幻はささっと席を立つ。
「新宮さん?」
 廊下で出くわした人影を見て、幻はによっと笑いを浮かべた。

948 :7月7日、晴れ。 [sage]:2012/07/07(土) 07:34:13.66 ID:IYWtvziAO
 嫌な人物に会った、と極は微妙に眉をしかめた。
 彼の手にはやはり短冊があり、出くわしたピンクの髪の少女がその内容を知りたがることは明白だ。
「てめーでも、七夕にお願いなんかするのですねー?」
 口元ににやにや笑いを浮かべて、黒い涼しげなシフォンのドレスに併せた
 ヴェールを飾る紅い薔薇を揺らせてすすっと歩み寄る幻を、しっしっと追い払おうとする。
「趣味が悪いですよ」
 後で笹を飾れば嫌でも見られるというのに、それでは気の済まない幻は、にじりにじりと極に詰め寄っていく。
「止めて下さい」
「てめーはバカですか?」
 口元をいっそう吊り上げて幻が取り出したのは、掌サイズのコンパクトミラー。
 鏡の都市伝説である幻が、その力を使い、何を見るのか。
 悟った極は顔色を変えて幻から鏡を取り上げにかかるものの・・・
「乙女に気安くさわんじゃねーですよ!」
 とても乙女とは呼びがたい蹴りに胸元を捉えられ、あらぬ方向に極がひっくり返る音が廊下に響いた。
「・・・げほっ、げほ」
「何?今の音」
「イタル様!何事ですか!?」
 大音響に引き寄せられて廊下に集まった一同が見たものは、鏡を取り合い極と幻が取っ組み合う姿だった。
「柳さん!嶋さん!お願いですから彼女から鏡を取り上げてくださ・・・」
 みなまで極が言う前に、今度は顎に幻の蹴りが入る。
「新宮さん!何してるの!?」
「極くんも、ちょっと落ち着いて!?」
「この小娘!イタル様に何をする!!」
 貴也とリジーが幻を、柳が極をそれぞれ引き剥がした。
「あれれ?」
 ふたりから少し離れたところに、薄い青色の紙が落ちているのを見つけたのはノイ。
「短冊じゃん」
 ぺらっと紙をひっくり返すと
「あ・・・!!」
 ノイの表情がいっぱいの笑顔に変わる。

『“家族達”ともっと親しくなれますように』

「家族たちって、あたしたちの事、だよね!」
「極くん・・・」
 柳がふふっと笑い、ムーンストラックが極の肩にぽんと手を置いた。
「・・・そのような事、わざわざ短冊に書かなくとも、言ってくれれば良いのだ」
「・・・はい」
 わーいと歓声を上げたノイが極に思いっきり抱きつく。
「・・・・・・」
 極はそっぽを向いたものの、振り払おうという気までは、何故か起きなかった。
949 :7月7日、晴れ。 [sage]:2012/07/07(土) 07:34:40.69 ID:IYWtvziAO
 夜になってから、極のもう一枚の短冊『神崎さんとデート出来ますように』がノイに見つかり、
 またしても極が一同の好奇心の犠牲になったことは、おまけ程度に。

「嶋くん、てめーの『捜し物が見つかりますように』って何なのですか?」
「・・・別に」

 その同時刻、学校町内ο(オウ)No.本拠地では―
「いい天気だねー。星が見えるよー」
「ひ、緋色ちゃん、いいのかな・・・今日の天気予報、雨だよ・・・」
「いーんじゃないの?一年に一度のことだもん」
「ほら緋色、きりきり雲を追っ払いなさい、折角の七夕なんだから快晴にするのよ?」
「はいはーい」
「皆さん、五色そうめん上がりましたよ。こういうのはみんな僕に押しつけるんですから」
 至って平和な七夕の夜が更けつつあった。



END
950 :7月7日、晴れ。 [sage]:2012/07/07(土) 07:36:04.90 ID:IYWtvziAO
投下以上。
時系列があれだから本編のネタバレっぽいけど、今更気にする事じゃない
951 :7月7日、晴れ。 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/07(土) 07:44:27.76 ID:IYWtvziAO
また酉入力忘れちゃったよ
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 18:05:30.77 ID:YRLreJi60
そうか今日は七夕か
道理で外が騒がしかった訳だ

イタルくん…
胸中はさぞかし複雑だろうな
これから良くなっていくようにお祈りしておこう
今年の学校町の七夕は一応、雨か
そして赤坂姉がHAARPで局所的に晴にしたと…よし

そして、>>950を踏んだそこのあなた
おめでとうございます
どうか次スレ立ての準備をよろしくお願いします
老婆心ながら付け加えますと、次スレはPart 8だったはずです
953 :やぁっ!今日は七夕だね!! :2012/07/07(土) 20:06:43.52 ID:AKKHGI3J0
 今日は7月7日である
 七夕である
 1年に一度、織姫と彦星が出会える日である

 すなわち
 1年に一度、織姫と彦星がイチャつける日である










「降れーーーーーーーっ!雨よ降れぇえええええええええええっ!!!!天の川なんざ氾濫しちまええええええええええええええええええええっ!!」

 その日
 ビルの屋上にて、叫ぶ男が一人
 男が叫ぶたび、空を暗雲が覆っていっている
 男は、契約者
 「雨男」の契約者だ
 契約者となり、雨を降らせる降らせないをコントロールできるようになった男
 ひたすら叫び、雨雲を集める

「リア充のイチャつきなんざ、邪魔してやるぅううううううううううううっ!!リア充滅べ!!!」

 どう考えても僻みです、本当にありがとうございました
 空に立ちこめる雨雲、まさに、雨が降り出そうとした、その時


 −−−−ッカ!!と
 雨雲の切れ目から、太陽の光が溢れ出した!


「……何っ!?」
「甘い、甘いぜ。砂糖たっぷりマシュマロたっぷりのココアよりも甘いぜ、お兄さん」

 ざっ、と、男の背後に現れた青年
 男は、すぐに気付く
 こいつは、己と対になる能力を持つ男だ、と

「貴様……っ「晴れ男」か!」
「その契約者だ!家庭の洗濯物を護る為にも、天気予報は外させないぜ!}
「おのれ………っ!リア充のいちゃつきを邪魔する事を、邪魔するか!」

 にらみ合う二人
 そして、「晴れ男」の契約者は、静かに、「雨男」の契約者に告げる

「………ちなみに。いくらお前が雨降らせても、雲の上は晴れてるわけで。普通に織姫と彦星は1年ぶりに出会っていちゃつくと思うぞ」
「……何………だと……」

 …あぁ
 己には、リア充のイチャつきを邪魔する事すら、できないというのか
 己は、そんなに無力なのか


 雨男の契約者は、その場に膝をつき……その痛々しい姿を、晴れ男の契約者は同情するように眺めていたのだった



終われよ
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/07(土) 20:09:30.11 ID:IYWtvziAO
>イタルくん…
胸中はさぞかし複雑だろうな
これから良くなっていくようにお祈りしておこう
次回から時系列がいきなしジャガー騒動直後に戻り、二人には(以下自重)

>どうか次スレ立ての準備をよろしくお願いします
>老婆心ながら付け加えますと、次スレはPart 8だったはずです
うまく立てられるかなー
何かありましたらSOS出すかも
こちらがどれくらい行ったら立てたらいいですか?
955 :やぁっ!今日は七夕だね!! :2012/07/07(土) 20:11:08.24 ID:AKKHGI3J0
ノリと勢いだけで書いた
正直反省している
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/07(土) 20:14:49.07 ID:IYWtvziAO
割り込んじゃった。すいませんです。
そして雨男…お前の気持ちは痛いほど分かる。その心意気無駄にはせんぞ!(
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 20:51:42.44 ID:YRLreJi60
>>953
いいじゃんかよお雨男さんよお
好き合ってる男女は一年に一回しか逢えない(って設定な)んだからよお
いいじゃんかよ…察したげようよ…

>>954
ジャガー騒動と言ったら嗚呼そういう
>何かありましたらSOS出すかも
どんとこいよ!!
>こちらがどれくらい行ったら立てたらいいですか?
このスピードだとぶっちゃけ>>960>>970で立てても文句は出ない、はず


お花子さんの人
占い師の人をちょっと拝借します
先に土下座を打っておくorz
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 20:58:00.56 ID:YRLreJi60
お花子さんの人
やっぱり無理そうです
ごめんなさい土下座しますorz
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2012/07/07(土) 21:01:55.49 ID:AKKHGI3J0
>>957-958
好きに使っちゃっていいのよ
諦めたらそこで試合終了だぜ

>好き合ってる男女は一年に一回しか逢えない(って設定な)んだからよお
雨男「その一年に一回の日に(隠喩)しまくってんだろ畜生ぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 22:33:33.86 ID:YRLreJi60
あかんもうだめもちたくない
はなこちゃんごめん
こんかいかんそうかけんかったにいちゃんがたもほんまごめん

>>925-926>>937-939>>940-945
さきはみえてるのであとあと
かってにおわらせますん

もうやだ
うちにげる
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/08(日) 00:24:53.32 ID:1fY+3XtAO
すんません眠気もう限界
明日日のあるうちには新スレたてます
962 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/07/08(日) 01:50:16.09 ID:86YTMl3SO
痛い。痛い。痛い痛い痛い痛いイタいイタいイタいイタいいたいいたいいたいいたいいたいいたい………………!!!??
足が床についている事が痛い。
息をすると痛い。
何か考えると痛い。
とにかく、痛い。
俺も、柊も、柊子も、黒服も、全員が激痛に悲鳴をあげる事もできず、うずくまる。
立っているのは黒服の女だけ。
おそらく、この痛みはこの黒服の女の仕業。
「そうそう、自己紹介がまだだったわ。私はA-No.19よ」
退屈そうな目で俺達を見回し、黒服の女、A-No.19はそう言った。
「用は簡単。任務に失敗した松ヶ崎柊子の回収と、組織に侵入した『偽の警察官』の処分よ
 と、いうわけで」
そこで、痛みが止んだ。
「っ……ぁ……」
「ハッ……ハッ……」
「い、た……」
呼吸ができるようになる。
思考力が戻る。
視線が定まる。
「何を、しやがった……」
俺は、なんとか口を開いたが、A-No.19はあっさりと無視した。
「これは最後通牒よ。松ヶ崎柊子と『偽の警察官』を引き渡しなさい」
それは、つまり、断れば[ピーーー]という事。おそらく、さっきのとは比べ物にならない痛みが来るんだろう。
いや、もしかしたら、頷くまで痛みを与え続けるのかもしれない。
どちらにしても、思わず差し出してしまいたくなる。
銃やナイフ、敵の能力が、目の前でちらつかされて怖いのは、その痛みを想像するからだ。
逆に言えば、想像しなければ恐怖は無い。
が、この女は、痛みそのものを武器とし、その恐怖を覚えさせる。
いったい何の都市伝説だよ。
とにかく、一度攻撃を喰らえば、しばらくは逆らいたくなくなる。
だが、だからと言って、
「やなこった」
大事な妹達を渡せるか!
俺がA-No.19の要求を断ったのを聞くと、黒服が何かを取り出した。
「幽霊以外と戦う事になった場合の………………虎の子!」
そう言って、黒服の投げた丸い……パイナップルみたいな…………!?
「手榴弾!?」
室内でそんな物使うな!

そして、手榴弾が爆破すると、辺り一帯が煙りに包まれた。
「煙り玉です!?」
「紛らわしいな!!」
そして、A-No.19の目をくらます。
柊子の口笛が聞こえる。
柊が俺のもとへ近寄る。

そして、再び激痛が襲う。
963 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/07/08(日) 01:50:53.24 ID:86YTMl3SO
――――――
――――
――

煙の中、柊、柊子、黒服の声にならない悲鳴と、倒れる音が聞こえる。
煙でわかりにくいが、足元に幽霊が痛みで倒れているのに気がつく。
柊子の幽霊だろう。
視認してなくても攻撃できて、幽霊にも効果ある。どんなチートだよ。
おそらく、今立っているのはA-No.19と、俺だけ。
そう、俺は平気だ。
俺は一度喰らった攻撃は効かない。
今、A-No.19に勝てるのは俺しかいない。
俺は手にナイフを握りしめる。
煙の向こう、A-No.19のいる場所へ走る。
柊子達を長く苦しめるわけにはいかない。
一瞬で終わらせる。
煙を抜け、A-No.19のもとへ。
その腹に、ナイフを……
「甘いわ」
刺そうとしたが、あっさりと、避けられる。
問題無い。どうせ相手の能力は効かない。
このまま、近接戦でナイフを刺せば良い。
そう思った時、ちらりと見えたA-No.19の顔は少し楽しそうで、その左手にはいつの間にかナイフが握られていた。
「終わりね」
「マジかよ」
勢いよく刺そうとしたナイフを避けられ、体勢の崩れていた俺にA-No.19のナイフが振り下ろされる。
そして、ナイフが俺の喉を裂く。
俺は死んだ。













あ、俺、最初から死んでたわ。

――
――――
――――――

964 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/07/08(日) 01:51:30.06 ID:86YTMl3SO
焦る必要は無い。
ただ、落ち着いて、光線銃をA-No.19に向ける。
少しだけ晴れてきた煙の向こうでは、
柊の能力によって「松ヶ崎桜太」になりきっている、柊子が口笛で呼び出した幽霊が喉を裂かれていた。
自分とまったく同じ姿の奴が喉から血を出しているのはあまり良い光景ではないな。
そんな事を考えながら、光線銃の引き金を引く。
「っ!?」
A-No.19が、俺に気がつく。
そして、ギリギリのところで避けられた。
胸を狙った銃は肩を掠め、壁に穴を開ける。
大丈夫だと、気を落ち着ける。
A-No.19が持っているのはナイフ、距離的に俺の光線銃の方が有利だ。
そう思った時、A-No.19の右手に光線銃が握られている事に気がつく。
それは、すでに俺に向けられていて……。
光線銃が俺の足を貫いた。
「ぃ……ぐ、ぁ……っ…………!?」
A-No.19の能力とは関係ない痛みに、うずくまりたくなる。光線銃を持つ手の力が抜ける。目に涙が浮かぶ。
それでも、銃を持ち上げる。
ここで倒れては、柊が、柊子が、連れていかれる。そんな事は絶対にさせない。
そうして、銃で狙った先では、
「く…………くっ……くく……………………く……」
女が、とても楽しそうに、必死で笑いを堪えるように、肩を震わせていた。
「何が……何がおかしい!!」
必死の頑張りを笑われたようで、腹が立ち、声をあらげる。
「いっ……」
足に響いた。
「ああ、失礼。ああ……今のはよかった。久々に命の危機を感じたわ」
「……は?」
「……楽しかったぁ」
意味がわからなかった。
「帰るわ」
「…………はあ!?」
「久々に楽しませてくれたお礼よ。見逃してあげるわ」
「そんな、馬鹿な話がありますか」
気がつけば、黒服が起き上がっていた。
見回せば、柊と柊子も、息を切らせながら、起き上がろうとしていた。
どうやら、A-No.19が能力を止めたらしい。
「お礼?貴女達過激派が、そんな簡単に敵や裏切り者を見逃すわけがない。何が狙いなんですか」
黒服は息も絶え絶えといった様子だったが、それでもA-No.19を睨む。
「敵?裏切り者?何を言っているの?」
A-No.19がそう言って黒服を見ると、黒服はビクリと奮えた。
どうやら、怖がっているらしい。
「松ヶ崎柊子は過激派から穏健派になる。組織を裏切るのではない。
 『偽の警察官』は組織穏健派所属の契約者の都市伝説だった。組織の人間が組織に出入りする事に問題は無いでしょう?
 最初から、どっちでもよかったのよ」
どっちでもよかった。
その言葉に、なんだか腹立たしい気持ちになりながらも、体から力が抜けるのを感じた。
もう柊が襲われる事はない。もう柊子が危険な事をさせられる事はない。
そう思って、安心したら
「――――っ、」
足に開いた穴が目茶苦茶痛くなってきた。
……あれ、ていうか、なんか……ふらふらする…………?
「ああ、そういえば、足とは言え、太めの血管を撃ち抜いてるから。早く治療しないと出血多量で死ぬわよ」
…………先に言えよ。

そこで、俺の意識は途絶えた。

965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/08(日) 16:14:01.04 ID:1fY+3XtAO
新スレ立てましたー

「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part8-SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1341731297/
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 00:36:33.32 ID:hJjliqfSO
(・∀・)ダレモイナイヨ
967 :無題 ◆vQFK74H.x2 [sage saga]:2012/07/10(火) 01:36:42.95 ID:NDQ6cntg0
ファミレス内で紗奈は一人の青年と話をしていた。

眼鏡をかけた茶髪の青年の名は、設楽恭也。
以前、助けてもらった恩人だ。
山中にある工房で陶芸家をしているらしい。

「喧嘩、したの?お姉さんと」
「喧嘩じゃ、ないです…今までの不満が爆発しちゃて…八つ当たり、みたいなものだと思います」
「…あまり日を置くと、謝りづらくなっちゃうよ?……すぐには、顔あわせ辛いかい?」
恭也の問いに、紗奈は小さく頷いた。

「ネットカフェとかで少し落ち着いて…決心が付いたら、会いに行こうかと思います」
「女の子がそういう所で寝泊まりするのは危ないよ。
…もし良かったら落ち着くまで僕の工房に来ない?」
「でも、設楽さんのご迷惑になるんじゃ…」
彼の迷惑にならないかと気にする紗奈に

「気にしないで。知り合いが困ってたら助けになりたいし、一人より二人のほうが楽しいもの」
「…そう、ですか?えぇと…不束者ですが、お世話になります」


―――


倒れた椅子や観葉植物
カーテンレールから外れかけ、大きく引き裂かれたカーテン
月に照らされたその部屋は、竜巻か他の災害の被害にでもあったかのようだった。

本来段ボールに仕舞われていたはずの本は一冊残らず執拗に破かれていた。
そんな中、散乱している粉々に割れたグラスや皿の破片も意に介するそぶりも見せず、この惨状をを引き起こした張本人が座り込んでいた。


『同じじゃない!一緒に産まれてきたかもしれないけど、私達は別々の人間なの!いつまでも一緒に居られるわけないでしょ!?』
昼間の紗奈の言葉が蘇る

その言葉を振り払うように、足元に置かれた中身が出てボロボロになったクッションになおも包丁を突き立てる。

両親を亡くして、最近は従兄弟とも連絡がつかなくなって、もう頼れるのはお互いしか居ないのに何故妹は自分と一緒に居るのを嫌がるのだろう?
双子なんだから、私たちは同じはずなのに
二人は一緒に居なくちゃダメなのに

『――双子になんか産まれてこなければ良かった…!』

自分は間違っていないのに、妹の言葉が離れない。


そんな契約者のすぐそばを犬神が通り過ぎ
キッチンから、犬の唸り声が聞こえ
寝室から何かが落ちた派手な音が響いた


以前にも味わった、自分という存在が薄れていくような感覚を覚えながら、今や十数頭にまで数を増やしている犬神の群れを見つめていた。


それが、天倉紗江という人間が見た最期の光景となった。


その日を境に、部屋の住人が戻って来ることは二度となかった。

続く…?
968 :無題 ◆vQFK74H.x2 [sage saga]:2012/07/10(火) 01:44:17.46 ID:NDQ6cntg0
皆様投下乙ですー
スレ立て乙ですー

姉が人間を辞めたぞー
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/10(火) 02:00:13.17 ID:rohWiEfAO
Sistersの人乙ですー
このまま大円団?それとももう一山ある?

犬神憑きと怪人アンサーの人乙ですー
あれ…設楽って…?
970 :戻れない家 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/10(火) 17:02:38.49 ID:rohWiEfAO
「いまの、夢・・・」
 あれは確かに、お父さまとお母さまだった。直接は覚えていないけれど、写真を見ているから間違いない。
 今の夢はなんだろう。夢にしては、はっきりしすぎていて。
「もしかして、あたし・・・」
 そこまで思って身震いをすると、ようやく自分が知らない部屋にいて、自分に何が起きたかを思い出した。
 ジャガー人間。黒服の女たち。自分は撃たれたけど、イタルも同じ目に遭わされただろうか?
「イタル!」
 慌ててベッドから下りようとして
「いたたっ!」
 足に力が入らず、ものの見事に転んでしまった。
 直後、部屋のドアが控えめにノックされ、かちゃと軽い音を立ててドアが開いた。
「あ、あの・・・気が、ついた・・・かな」
 年格好は中学生くらいの、制服のようなブレザーとプリーツスカート姿の女の子。赤坂紫だ。
 黒い服だけど、自分を撃った女の人たちとは少し、いや、だいぶ違うようでノイは少しほっとした。
「き、気分は、どう、かな・・・」
 そっと差し伸べられる手はひんやりして、でもどこか優しかった。
「お腹、空いてないかな。痛いところは?」
 そういえば、傷も痛いけれどなんだか体中が軋むように痛い。
「3日も寝てたから・・・それで、体が痛いのかも。でも、まだ寝てた方が」
「イタルは?イタルはどうしたの?」
「あたしと一緒にいたの!あたしの・・・!」
 勢い込んで尋ねたノイが、急に元気を無くす。

(なにが妹だ!)

(みんな、お前のせいだ!)

 そうだ。イタルも言っていた。そして―あの夢。
 あの夢が正しかったなら、あれが本当に、あたしが小さい頃の出来事だったなら。
 お父さまは、本当にイタルとイタルのお母さまを捨ててしまったのだろう―あたしが生まれたために。
 そして、あの夢の最後。

(お父さまも、お母さまも、大嫌いっ!!)

 その後に何が起こったか、わからないほど愚かではない、今は、もう。

(あたしの、せいなんだ・・・)

(お父さまが、イタルを捨ててしまったのも)

(そのお父さまが、死んだのも)

 みんな、みんな、あたしが

 涙が止まらなかった。知らない人の前だから、泣き声こそ出さなかったけど、シーツがみるみる生暖かく湿ってゆく。
971 :戻れない家 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/10(火) 17:05:38.86 ID:rohWiEfAO
「ど、どうしたの・・・!?」
 もしやどこか酷く痛むのかと、あちこちをさすってみたりするがその甲斐はなく、紫もおろおろするばかりだ。
 その時、紫によく似た黒と赤のうさ耳パーカー姿の少女が、「組織」支給の携帯電話を手に入ってきた。
「保護者さんから定時連絡ー」
 ノイの保護者、即ちムーンストラックからは
 ノイの容態を問い合わせる電話が、毎日決まった時間に掛かってきていた。
 ウラシマや紫はともかく、緋色は少々辟易していたが、
 心の奥底ではいささか羨望の念を抱いていた事は、本人もうすうすは気づいていた。
「あんた、心配されてんのねえ」
 うちの親もまともなら、そうやって電話してくるのかな。
 緋色は心の中に僅かに浮かんだ考えを、そもそもまともな親なら
 子供のうちから「組織」入りはさせないだろうという自己ツッコミで打ち消した。
 ノイは震える手で電話機を受け取る。
 イタルのことはともかく、両親のことはムーンストラックも知っているはず。
 そもそもノイに「両親は事故で死んだ」と教えたのは他ならぬ彼なのだ。
「・・・もしもし」
「ノイ・リリス!」
 気がついたのか、よかったと電話口で泣き出さんばかりのムーンストラックは
 彼女がこれから聞こうとしている内容など知る由もない。
「ムーンストラック」
 声までが震えてきた。
 聞くのが、怖い。本当のことを決定的に知るのは。
 でも、気づいてしまった以上。聞かずにはいられない。
 自分の罪について。
「ノイ・リリス・・・?」
 声が出ず、出せず、黙ったままのノイをいぶかしんだのかムーンストラックの声も幾分か曇る。
 とうとう、ノイの喉から震える声が押し出された。

「お・・・」
「お父さまと、お母さまは、事故で死んだんじゃなかったの・・・?」
「あたしが・・・あたしが殺してしまったの!?」

 電話の向こうでムーンストラックがひゅっと息を呑む声が聞こえた。
 暫くは、どちらも声が出せず、電話機はただ沈黙を伝え続け・・・先に声を絞り出したのは、『保護者』の方だった。
「・・・ノイ・リリス・・・よく聞きなさい」
 だが、ぶつりという音が彼の声を伝えることを阻み、電話は完全な沈黙をもって少女と保護者を引き離した。

(やっぱり、あの夢は本当なんだ)
(あたしのせいで、お母さまもお父さまも死んだ・・・)
(イタルから奪ったお父さまを)

(あたし・・・もう・・・帰れない)

972 :戻れない家 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/10(火) 17:29:00.99 ID:rohWiEfAO
投下以上ですー
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/10(火) 22:37:20.90 ID:NDQ6cntg0
鳥居の人様乙ですー
ノイちゃんが真実に気づいてしまった…!
柳さんもムーンストラックさんも極くんも近くにいない…どうなっちゃうのー!?





紫ちゃんと緋色ちゃん、お姉さん可愛いよprpr(

>>969
>あれ…設楽って…?
珠洲達のお兄ちゃんですー
後ほど簡単な紹介を裏設定スレに書いておきます
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 09:14:15.55 ID:0A6b0rBDO
皆様乙ですー

このスレの女の子は悲劇のヒロインにある運命なのだろうか……
乗り越えてくれることを祈りますよ
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/07/11(水) 13:43:11.18 ID:1MgCWEjy0
>>974
>このスレの女の子は悲劇のヒロインにある運命なのだろうか……
なぁにミナワは大丈b―――――じゃないわorz
976 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/07/11(水) 23:25:50.23 ID:BeFaDnkSO
――――――
――――
――

「貴女、いったい何の都市伝説なんですか」
隣の席に座るA-No.19に尋ねます。
「痛みの基準はハナゲ」
……そんなギャグみたいな都市伝説があんな強さになってたんですか。

黒塗りの車が夜の闇に紛れながら走る。
組織まで送る、と言われほとんど強制的に乗せられたんですが、
過激派に連れていかれたりしませんよね?
もしくは、このまま殺されるとか。
「貴方に危害を加えたりしないから、安心しなさい」
どうやら、自分で思っているよりも、びくびくしていたようですね。

「実際、どうして見逃してくれたんですか」
「言ったでしょう。最初から、どっちでもよかったのよ」
「…………」
「納得できないって顔ね」
当然です。
過激派の話を聞いた事があるなら、何か裏があると思いますよ。
「『偽の警察官』は我々の支部に侵入した。けれど、何か盗ったわけでも、重要な書類を見たわけでもない。彼女が見たのは実験と拷問室の、跡。
 今は使われていない場所。言い訳なんていくらでもできる。
 だから、組織所属の契約者の都市伝説だと分かった時点で、どちらでもよくなったのよ。でも『寄生虫カプセル』の子の強い要望があったからね」
あー……
あの女の子が原因ですか。
「松ヶ崎柊子はべつに組織を裏切るわけでもなし、どうでもいいわ。何か重要な秘密を知っているなら話は変わるけれど」
「……意外ですね。過激派を裏切る者は許さない人達だと思ってましたが」
「私は過激派の味方ではなく、組織の味方よ。
 ……それに、下手な事をして、これ以上過激派への風当たりが強くなると困るのよ」
それは困りますね、予算にも響きますし。
「恋する乙女のごとく、愛しい組織に尽くし、組織の為に動く過激派の人間達。
 その恋が報われないと、自分は必要とされていないと思った時、恋する乙女が何をしでかすか、わからないもの」
……どんな心配ですか。何しでかすんですか。
「因みに、私も恋する乙女だから、何するかわからないわよ?」
乙女という字が全く似合っていません。女傑って感じなんですもん、この人。

「ついたわよ」
結局、いつも自分のいる支部へと送ってくれました。
車を降り、振り返って、一応お礼を。
「ありがとうございます」
襲わないでくれて。
「お構いなく」
そう言って、A-No.19は扉を閉めました。
……あれ?窓が開いた?
「そうそう、あの桜太って契約者の能力、なかなか強力ね。妹の為なら世界をも敵に回しそうな過激な考えも気に入った。ウチに欲しいわ」
「……は?」
A-No.19の少しだけ楽しそうな目を、閉まっていく窓が遮ります。
「…………え?」
そして、車は動きだし、
「………………いや」
車は夜の闇へと消えていきます。
「あげませんからね!!」
あぁ、またなにか面倒な事になりそう。

――
――――
――――――
977 :短期連載「Sisters」 [sage]:2012/07/11(水) 23:26:58.30 ID:BeFaDnkSO
「お兄ちゃん、起きて。もう朝だよ」
首吊ってる男に命を大事にしろと説教されるという、変な夢は妹の声によって中断された。
「ん……おはよう、柊子」
「違うよ、お兄ちゃん。私は柊だよ!」
「んー……?いや、柊子だろ」
「……あれー、なんで分かっちゃうの?見た目完全に同じなのに」
「分かるよ」
兄をなめるなよ?
「ところで柊子」
「何?」
「なんでお前まで、俺のベットに横になってるんだ」
「お兄ちゃんと一緒に寝ようかと思って」
「起こしにきたんじゃないのか」
「んー?まあ、細かい事は気にしない、気にしない」
「……ま、いっか」
このまま二度寝を
「よくなーい!!」
「うわっ!?」「きゃあ!!」
いきなり、布団を引っぺがされた。
「柊子さん!お兄ちゃんを起こしてって言ったじゃないですか!?」
「まあまあ、柊ちゃんも、一緒に寝る?」
「……え、じゃ、じゃあ……じゃなくて!朝ごはんできたから、二人とも起きるの!!」
朝から騒がしいな。仕方ない、起きるか。
ベットから出て、床に足をつく。
数日前には、穴が開いていたとは思えないほど、足は綺麗に治っていた。

あの日以来、柊を狙った黒服や契約者は来ていない。
柊子を返せとも言われていない。
どうやら、もう本当に大丈夫なようだ。
黒服の持ってくる仕事を三人でしながら、平凡な非日常をすごしている。
特に悩みも……あー、いや、悩みはあるか。

「お、お兄ちゃん!」
「ん?どうした柊」
「お、おは、おはようの……ちゅう、とか、して……ほしいな、って」
……これ、柊子は要求してこないんだが。
やっぱり、兄妹でする事じゃないんじゃないか?

978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 23:28:02.70 ID:BeFaDnkSO
眠い
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 23:32:23.21 ID:E+rr5jFB0
乙です
A-No19って前に避難所で読んだ事あると思ったらあの屑女だったか…
ところでアカリールの暗躍ぶりがあまり見れなかったのは残念です
今後の活躍に期待します
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/12(木) 00:02:48.21 ID:diP6+jSz0
わたしは猫が嫌いだった
パパもママも猫が好きで家には猫がいた
丸っこい顔と柔らかい体と甘えるような鳴き声
そのどれもが気持ち悪いし吐き気がする
機会があるならわたしは猫を[ピーーー]だろう
家を出るまでそう思っていた

大学を出て職に就いて良い人に巡り逢った
でもその人も猫が好きだった
別にどうでも良かった
猫を飼っていたわけではないから

でも生まれた娘は二人とも猫が好きで
とうとう猫を飼う事になった
わたしは嫌とは言わなかった
ただ言わないだけ
本当は猫なんか[ピーーー]と思っていた

娘が連れてきたのは鉤尻尾の黒い猫だった
わたしの顔を見て甘えたような鳴き声を立てる
やめろ、聞きたくもない、こっちを見るな
わたしが猫に耐えがたくなったとき
わたしは黒服の人に出逢った

わたしには才能があると黒服の人は言った
わたしは黒服の人から契約書を貰った
わたしの心は途端に猫への嫌悪から解放された気がした
今のわたしならきっと猫を愛することができる

夕方になって娘たちが帰ってきた
下の子がそわそわしている
もうすぐご飯よ

「おかあさん、ナナちゃん見なかった?」
夕飯を食べながら下の子が聞いてくる

「きちんと見てなかったの?」
上の子が下の子を叱り付けるように言った

「だってナナちゃん、よくお外に出ちゃうんだよ」

いいじゃない、ナナちゃんが外へ出たって
ナナちゃんはいつもあなたと一緒なんだから


嬉しくて嬉しくて口元が緩んでしまう
わたしは娘たちが口に運ぶハンバーグを見ながらそう言った
981 :鳥居を探すの人 ◆12zUSOBYLQ [sage]:2012/07/12(木) 02:12:33.82 ID:VsUYjtZAO
>>973
>柳さんもムーンストラックさんも極くんも近くにいない…どうなっちゃうのー!?
果報は寝て待て、夢でも見てるうちに何とかなりますの

>紫ちゃんと緋色ちゃん、お姉さん可愛いよprpr(
好きなだけprprしてくださいなー(

>珠洲達のお兄ちゃんですー
まさか犬神になった紗江たんが設楽家に乗り込みとかgkbr

>>974
>乗り越えてくれることを祈りますよ
なんとかかんとか。本人の資質はともかく、周囲には恵まれていますから…

>>975
>なぁにミナワは大丈b―――――じゃないわorz
ミナワたんを悲劇が襲うというのか!?

>>976-977
Sistersの人乙でしたー
A-No.19なんだか最後にオイシいキャラになったな…
二人まとめて愛してENDでめでたしだし、次作にも期待してます

>>980
ね、猫様…(涙
982 :ケモノツキ ◆kemono..Qk [sage]:2012/07/12(木) 19:17:53.52 ID:7p6HYDGDO
皆様投下乙ですー

最近は電子レンジだけでいろいろな料理ができるらしいですね
便利な世の中になったものです
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 19:49:08.71 ID:NiXFy9PSO
猫を乾かす機能もいつか
984 : [sage saga]:2012/07/12(木) 22:58:36.09 ID:GoNL/acF0
>>981
>ミナワたんを悲劇が襲うというのか!?
というか人間としての出生時が悲劇
両親も自身も殺されてるし
985 :単発ネタ [sage]:2012/07/13(金) 01:07:36.93 ID:SnplQOBSO
世の中、男と女が二人いれば恋が始まるものでございます。
それは都市伝説と人間だって同じ事。
とある契約者なんかは、自分の契約都市伝説である口裂け女に恋をいたしました。
口裂け女の方も、契約者の事は憎からず思っておりまして。
そんな二人は、いつしか恋人に。
リア充ですな。[ピーーー]ばいいのに。
恋人となりゃ、次は結婚ですな。
結婚すれば、じきに子供が生まれてまいります。
二人の元にも、元気な男の子が生まれてまいりました。

契約者「これが俺達の子か。可愛いじゃないか」
口裂け女「当然ですよ。ほら、見てください。目元なんかあなたにそっくり」
契約者「ややっ、それを言うと、口元なんかは君にそっくりだ」
口裂け女「嫌ですよ、あなたったら。口元が私に似てたら可哀相じゃないですか」
契約者「そうかな。俺は君の口元は好きだぞ」
口裂け女「あら、あなたったら。……そうそう、あなた」
契約者「何だい。どうした」
口裂け女「この子に名前をつけませんと」
契約者「おっと、そうだった。しかし、どんな名前が良いかな」
口裂け女「強い子に育って欲しいですわね」
契約者「そうだなぁ……うーん……」
口裂け女「……うーん。まあ、今はよろしいでしょう。また、次に来た時までに考えておいてくださいな」
契約者「うん、まかせたまえ」


契約者「と、いうわけなんですがね」
黒服「それを私に話して、どうしろと」
契約者「いやね、黒服さんなら何か良い名前をお知りでないかと、そう思ったんですよ」
黒服「何故、私と名前が結び付くのかは分からないのですが、まあ良いでしょう。それで?どのような名前が良いのですか」
契約者「そうですね、こう強い子に育って欲しいですよね」
黒服「強い子、ですか」
契約者「そうそう。そりゃもう、組織すら簡単には手を出せないくらい強く」
黒服「貴方、組織の人間を目の前にして言う事ですか」
契約者「おっと、これは失礼しました。で、何かないですかね。組織すら怯むような名前」
黒服「じゃあ、ノストラダムスとでも名付けては?世界を滅ぼすような都市伝説は下手にちょっかいをかけれませんからね」
契約者「へえ、しかし、それは外国人の名前じゃないですかね」
黒服「大丈夫でしょう。最近はピカチュウやエンジェルなんて名前の子供がいるそうですから」
契約者「はぁ、そんな子供がいるんですか」
黒服「ええ、ですから、その子が大きくなった頃には、ノストラダムスだって普通の名前ですよ」
契約者「なるほどなるほど、それはたしかに。それで、他にはどんなのがありますか?」
黒服「他?そうですね……ああ、そういえばハレー彗星で人類が滅ぶとかありましたね。ハレーとかどうです?」
契約者「良いですね。他には……おっと、すいません。名前の候補をこの紙に書いてくれますか。妻にも相談したいので」
黒服「良いですよ。ええと、まずはノ、ス、ト、ラ、ダ、ム、ス、と。次はハ、レ、ー、と。ええと、他にはどんなのがありましたっけ……」

契約者「やあやあ、名前を考えてきたぞ」
口裂け女「あらあなた、本当ですか?」
契約者「本当だとも。メモしてきたから見たまえ」
口裂け女「こんなに沢山。どれが良いか迷ってしまうわ。人間の名前はよく分からないし」
契約者「なに、どれを選んだって強い子になるさ。……うん、しかし、この中から一つだけとなると、迷うな……」
口裂け女「そうですねえ……」

契約者「黒服さん、こんにちは」
黒服「おや、こんにちは。子供の名前は決まりましたか」
契約者「ええ、今日はそれを言いに来たんですよ」
黒服「ほう、それは楽しみですね」
契約者「聞いてください。子供は『ノストラダムスハレーハルマゲドンのカリ・ユガ カリ・ユガのラグナロクドゥームズ・カルトデーのキバヤシの最後の審判の百王説』に決まりました」
黒服「長いですね。いや、まあ、それは良いのですが……」
契約者「どうしました。何か気になる事でも?」
黒服「気になるといえば長い事ですが、それより『ノストラダムスハレーハルマゲドンのカリ・ユガ カリ・ユガのラグナロクドゥームズ・カルトデーのキバヤシ』のキバヤシについてです」
契約者「それですか?それは妻がですね。『何度も世界を滅ぼそうとした人間の名前らしいですよ』と言ってまして。これはさらに強そうだぞと思いまして」
黒服「しかしですね。キバヤシは都市伝説ではありません。その中にあると浮きます。『ノストラダムスハレーハルマゲドンのカリ・ユガ カリ・ユガのラグナロクドゥームズ・カルトデーの最後の審判の百王説』にするべきです」
契約者「いやいや黒服さん、それを言ったらラグナロクだって都市伝説じゃありませんよ。『ノストラダムスハレーハルマゲドンのカリ・ユガ カリ・ユガのラグナロクドゥームズ・カルトデーのキバヤシの最後の審判の百王説』で問題ないはずです」
黒服「ラグナロクやハルマゲドンは神話級の都市伝説です。キバヤシは漫画です。『ノストラダムスハレーハルマゲドンのカリ・ユガ カリ・ユガのラグナロクドゥームズ・カルトデーの最後の審判の百王説』にしなさい」
契約者「漫画だって良いじゃないですか強そうで。やっぱり『ノストラダムスハレーハルマゲドンのカリ・ユガ カリ・ユガのラグナロクドゥームズ・カルトデーのキバヤシの最後の審判の百王説』ですよ」

二人がそんな長い争いをしていると、黒服の電話が鳴りだします。

黒服「はい、もしもし、……何ですって?はぁ……新しい、都市伝説?……はいはい……『マヤカレンダー』ですか。……内容は?…………はあ」
契約者「何です。どうかしたんですか」
黒服「やれやれ、あんまり名前が長いんで新しいのが生まれてしまった」

986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/14(土) 14:22:04.98 ID:+K45gaAC0
sisterの人様、単発の人様投下乙ですー

>>976
A-No.19さんの恋が成就するよう草葉の陰より応援しております!
妹二人とイチャラブエンドですか…羨ましい、羨ましいです


> その恋が報われないと、自分は必要とされていないと思った時、恋する乙女が何をしでかすか、わからないもの」
ヤンデレにクラスチェンジする可能性もあるということでしょうかwktk

>>980
うわあああああああ!!
猫様!猫様!うわああああああああああああああ!!(血涙

>>981
>果報は寝て待て、夢でも見てるうちに何とかなりますの
>好きなだけprprしてくださいなー(
よかった…
ノイちゃんが真実を乗り越えて笑顔を取り戻してくれる日を、紫ちゃんと緋色ちゃんを心行くまでprprしながらお待ちしております!(オイ

>まさか犬神になった紗江たんが設楽家に乗り込みとかgkbr
ヤンデレものならそれが王道なのかもしれませんが、紗江の場合はそんな事はないですww
むしろ、斜め下へ下方修正が必要な展開に…

>>984
おぅふ…なかなかにヘヴィーな過去を持っていた…だと

>>985
都市伝説版の寿限無〜みたいな話ですね
987 :ロリ巨乳×幼女ってどうよ?  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/14(土) 22:34:59.13 ID:g3Q5u1YR0
「……ふぅ、一仕事終えた後のシャワーは最高だな」

美しい絹のような白髪の水気をタオルで拭っているのは、バスローブを羽織った豊満な胸の少女
今にも肌蹴てしまいそうな谷間からは、幾何学模様のような刺青がちらりと覗かせている
R-No.4にして事後処理班のリーダー、レクイエム・リッケンバッカー
先程の発言の通り、彼女はある都市伝説事件の事後処理を終え、仕事の疲れを汗と共にシャワーで洗い流した後だった

「熱いシャワーを浴びた後は、冷たいミルクをごくり、と……ふふふ、最高の贅沢だ」

冷蔵庫から取り出した牛乳パックを開封してグラスに注ぎ、
ぼふ、とソファに腰かけて幼くも艶めかしい脚で十字を組み、グラスに口をつけようとした時だった
コンコン、と弱々しくドアをノックする音が聞こえた

「っと………女なら入れ、男ならそこで要件を言え」

がちゃりとドアが開いて現れたのは、紺色のパジャマを着た青い髪の小柄で幼い少女だった

「お姉様ぁ……」
「あぁライサか、どうした?」

彼女はR-No.10――ライサ・ルイプキン
不機嫌そうな彼女の声にレクイエムも半ば心配気味に声をかけたが、ライサが大事そうに持っているものを見て要件を解した
彼女が持っているもの、それはどうやら絵本らしかった

「…今日も眠れないのか?」
「うん、それで、その………絵本、読んでほしいの……ダメ?」
「良いよ、入っておいで」
「わぁい♪ ありがとぉ、お姉様♪」

ドアを閉め、ライサはレクイエムの元に駆け寄る
そしてレクイエムが組んでいた脚を戻すや否や、ライサは滑り込むように彼女の膝の上を占領した

「ん…ふふ、貴様はここが好きだな」
「うん、ここが落ち着くの」
「そう言ってくれると有り難いな。じゃあ、読むぞ」

レクイエムはテーブルの上にミルクの¥が入ったままのグラスを置くと、ライサから絵本を受け取って、ぺらり、表紙をめくる
ライサはにこにこしながら、むにゅ、と彼女の乳房に頭を埋めた

「えへへ、お姉様のおっぱい、柔らかくて気持ちいい…」
「…そうか? 私としては邪魔で仕方ないんだが」
「えー!? と、取っちゃダメだよ!? お姉様がお姉様じゃ無くなっちゃう!!」

じたばたとライサが暴れ出す
あまりに意外な行動に出たので、レクイエムは大いに驚いた

「わ、っちょ、分かったから大人しく――――――」

ライサの足がテーブルにぶつかり、ガタッ、と大きく揺れる
置かれたグラスが大きく傾き、2人の脚を白く濡らした

「あ……ぬ、ぬれちゃったぁ……」
「ほら、言わんこっちゃない…ちょっと待ってろ、着替えを持ってくる」

ライサを膝の上から降ろすと、レクイエムは立ち上がってクローゼットの中身を漁り始める

「うぅ…ごめんなさい、お姉様ぁ……お仕事終わったばかりで、疲れてるのに……」

じわり、サファイアのような瞳に涙を溢れさせるライサ
振り向き、ふふっ、と笑って、レクイエムはそっと彼女を抱きしめた

「ぁ……」
「気にするな、このくらい。それに、私は貴様といる時間が楽しくて仕方ないんだ
 たとえ疲れていようとも、自然と癒されるんだ……貴様の能力じゃなかったのか?」

そっと身体を離して、微笑みながらライサの表情を窺うレクイエム
ぐしぐしとライサは涙を拭って、彼女に飛びつき、ぎゅっと抱きしめ返した

「っえへへ……大好き、レクイエムお姉様♪」
「……ふふふ、可愛いな、ライサは」

ぽふぽふ、優しくライサの頭を撫でた後、「ほら、早く着替えないと風邪引くぞ」と言いながら新しい服を出してやり、
レクイエムは改めて、彼女に絵本を読み聞かせてやった




「ジュルリ…………ロリ巨乳と幼女の新カップル……………テケリリリリリリリリリ………」

部屋の外ではとんでもない妄想が繰り広げられていたということを、2人は知る由も無かった                                     終わっちまえ
988 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/14(土) 22:38:31.76 ID:g3Q5u1YR0
まずは投下された皆々様方に乙を



チラ裏でソニータイマーの人達が百合百合言ってるからこんなのが思い浮かんだんだ
『2人が性的に愛し合ってる訳じゃないけど傍から見たらどう見ても百合ップル』っていう展開にしたかったんだけど、
こりゃどう見ても相思相愛だよな……ダメだな、黒歴史(=wiki未掲載)にするか
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/14(土) 22:51:20.10 ID:z7M22uvAO
>>985
単発の人乙ですー
こwwれwwはwwwwww

>>987
シャドーマンの人乙ですー
ロリ百合けしからんもっとやれじゅるり
990 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/14(土) 23:05:57.91 ID:g3Q5u1YR0
>>989
思えばバスローブ×パジャマってすげぇせくしぃな組み合わせだなぁと我ながら(
しまったな、このまま一緒にバスタイムでも良かったか




あれ、レジーヌに襲われてライサとレクイエムが互いにファーストキスとかいう『お前マジで猥談スレに籠ってろよ』と言われ兼ねない展開がががが
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/14(土) 23:49:05.95 ID:+K45gaAC0
シャドーマンの人様乙ですー

ふぅ…ロリ巨乳と幼女のカップル、いいと思います!
男女のカップルも素晴らしいが、やはり百合は最高でござるな…癒される

>>988
>『2人が性的に愛し合ってる訳じゃないけど傍から見たらどう見ても百合ップル』っていう展開にしたかったんだけど、
>こりゃどう見ても相思相愛だよな……ダメだな、黒歴史(=wiki未掲載)にするか
素敵な百合話を黒歴史にするなんてもったいないです!

>>990
ささ、猥談スレ、もしくは投下できないスレに!(
992 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/15(日) 00:17:43.35 ID:WBd0w69F0
微エロのリハビリはこれで大丈夫かな
次回は戦闘のリハビリを……さて、何書こう


>>991
お褒めの言葉頂き感謝感激に御座りまする
未だこの程度しか書けませんが、いつかはおねーちゃんのように素晴らしい百合ップルが書ける作者になれるよう尽力致しますの

>素敵な百合話を黒歴史にするなんてもったいないです!
了解ですのン、書くべきものを書いた頃に改めて上げますぜ

>ささ、猥談スレ、もしくは投下できないスレに!(
よくよく考えたらレクイエムはともかくライサを泣かすのは心苦しいです、先生orz
レクイエムは幾らでも泣かせちゃうよー
各方面から怒られる覚悟で言うと、巨乳キャラはレ○プされて輝くと思ってます(逮捕
993 :ソニータイマー/携帯 [sage]:2012/07/15(日) 11:55:01.84 ID:aghB/VuDO
シャドーマンの人キマシタワー! じゃなくて乙です!
ふむ、やはりろりゆりは良いものだ…
これはもう対抗して姉妹百合を投下するしかないな
994 :単発ネタ [sage]:2012/07/15(日) 14:49:36.01 ID:wGl+4bQSO
「好きです」
「黒服と恋愛なんて不毛ですから、やめておきなさい」
私の精一杯の苦悩の末の告白は、あっさりと拒絶された。

             §

「知ってますか?」
任務へ向かう途中、黒服さんが話しかけてきた。
「黒服を好きになると、その黒服は自分より若い女に取られるそうです」
「……何ですか、それ」
「ジンクスです」
「やめてくださいよ。都市伝説として力を持ったらどうするんですか」
「そうですね」
そう言って、黒服さんはクスクスと笑った。
黒服さんが好きな私からしたら、全く笑えない話だ。
……あ、まさか。
「好きな人でもできたんですか!?」
「いえ、そんな事はありません」
どうやら、深い意味はなかったらしい。
よかった、と私はため息を吐いた。
不安になりながら、背中まで伸びてきた髪に触れてみる。もうすぐ腰に届きそうだ。
「さて、報告ではこの辺りをうろついているそうなんですが」
髪を弄っている間に、目的地に着いたらしい。
私の今日の任務は
「私、綺麗?」
口裂け女の討伐だ。
「早速お出ましか」
「では、お任せしますね」
後ろで、黒服さんが遠ざかる声が聞こえた。
黒服さんは戦いでは邪魔になる。戦闘に使える能力じゃないし、黒服さんに何かあったら、私が泣いてしまう。
「私、綺麗?」
「知りませんよ」
口裂け女なんてたいして珍しくもない都市伝説、苦労する事もないだろう、
「私、綺麗?綺麗、きれ……き……………………[ピーーー]」
「うえぇっ!?」
と思っていたが甘かった。
目前まで迫っていた鋏をぎりぎり避ける。
「あっぶな、っ!?」
喉を目掛けて、噛みつこうとしていた口裂け女を蹴り飛ばす。
995 :単発ネタ [sage]:2012/07/15(日) 14:50:08.43 ID:wGl+4bQSO
「こいつ……」
目茶苦茶速い。
100m3秒だとは聞いた事あるが、実際に対峙すると、まさかここまで速いとは思わなかった。
口裂け女のくせに、口じゃなく、いきなり目を狙ってくるし、口の中は鋸みたいな歯をしてるし、怖いったらない。
「また来たっ!」
口裂け女が走りだそうとしたのを見て、慌て横に跳ぶ。
その次の瞬間には、さっきまで私の胸のあった位置には、口裂け女の鋏があった。
そして、口裂け女の周りには、赤、紫、緑、様々な色の丸い、飴。
「ドカン、と」
私の都市伝説「爆発キャンディ」の能力が、口裂け女を吹き飛ばした。
「……よし、終わった」
「大丈夫ですか?」
「あ、黒服さん。危なったけど、怪我一つありませんよ」
いつの間にか、黒服さんが近くまで来ていた。
あれ?なんか困ったような顔してる。
「そうですか。怪我がないなら良いのですが、あれは……」
黒服さんが、指を向けた場所には、黒い物が落ちていた。
ていうか髪の毛だった。
……髪の毛?誰の?
「ええっと……」
恐る恐る、自分の髪に触れてみる。
「あー……」
触って確かめたところ、左は背中まであるが、右側は首までしかない、奇抜な髪型になっていた。
「……嘘、え?なんで……え!?いつ!!?」
「最初の攻撃を避けた時です」
「えぇ〜……」
なんて事だ、ここまで伸ばすのにどれだけかかったと……。
うぅ……。
「ええと、そんなに落ち込まないでください。何か願掛けでもしていたんですか?」
「違いますよ。違いますけどぉ……」
「なら……」
「黒服さんが、長い髪の方が好きだって言うから……」
「あー、……そうですか」
黒服さんは、困ったように微笑む。この後、言う事はいつも一緒だ。
「黒服と恋愛なんて不毛ですから、やめておきなさい」
これだ。
この言葉を言われるたび、私は悲しくなる。
そして、この言葉のせいで、私は諦めきれない。
「黒服さん」
「なんでs、おっと……」
黒服さんに抱き着いてみる。こうすると、私より背の高い黒服さんから、顔を隠せる。
顔を見ないよう。泣いてしまっても、泣き顔なんて見せないよう。
黒服さんは、無理に引きはがすような事はしなかった。
「嫌なら、もっとはっきり言って下さい。迷惑なら、遠慮なんてしないで下さい」
いっそ、気持ち悪いでも良い。
そうすれば、諦めが……いや、つかないけど。
それでも、言ってくれた方が……。
「これでも、はっきりと、遠慮なく言っているつもりなんですが」
黒服さんの困ったような声が聞こえる。
どうやら、黒服さんの中では、人間と黒服である事が最大の問題らしいのだ。
「じゃあ、諦めません」
そんな事は、私にとっては些細な問題だ。
……いっそ、私が黒服になるという手もあるのだし。
それまでに、黒服さんがどこかへ行ってしまわないよう。
黒服さんを強く抱きしめる。
私より少し大きめの、やわらかい、黒服さんの胸が顔にあたった。
…………あ、いい匂い。

996 :影  ◆7aVqGFchwM [sage saga]:2012/07/15(日) 23:09:04.54 ID:CrgZh8x90
何て素晴らしい百合単発、乙ですの
もういっそ皆で百合色に染めちゃおうぜ(

>>993
ロリ百合良いよね、年齢が離れていれば尚良し
そして姉妹百合wktk
997 :七夕の日の事  ◆nBXmJajMvU :2012/07/16(月) 16:11:49.81 ID:iIHCr5Rl0
 それは、七月七日の七夕の事


「ギル、短冊書けた?」
「……ぁ……ま、まだ……」
「………お前は?」
「ん、俺はもう書けたよ」

 ひらり、願い事を書いた短冊をアーサーに見せた風夜
 アーサーは、そこに書かれた文面をじっと見て………そっと、風夜から取り上げると、くしゃりと握りつぶした

「あ」
「………人目につく、ところに飾る物に書くべき内容では、ない」

 むー、と、抗議の視線を向けてくる風夜に、ぼそりと告げるアーサー。ほんのりと、頬が赤い
 しばしむーむーしていた風夜だったが、仕方ない、と、新たに短冊を書き始めたようだ
 今度は、公共の場に飾られても問題ない、年少の子供が見ても問題のない願い事を書いているようで、アーサーはほっとした
 今、彼らが書いている短冊は、よく買い物に行く商店街の人から渡された物だ。商店街にかざる笹に吊るすから書いておいで、と
 アーサーは、既に当たり障りのない願い事を書き終えている。が、ギルベルトは、初めての体験だというせいもあるのか、なかなか書くべき願い事が決まらないらしい

「ギル、難しく考えなくてもいいんだよ。なんでもいいんだから」
「……風夜のように、人目について恥ずかしくない願い事であるならば、な」
「えー。別に、あの願い事は問題ないと思うけど」
「………勘弁してくれ」

 ギルベルトは、風夜が最初に書いた願い事を見ていなかったようだが………多分、見ていたら、真っ赤になって恥ずかしがって、困っていただろう
 自分達とて、一般人とは感覚がずれている自覚はあるが。風夜は自覚がないうえに、そのズレがかなりひどいような気がするのは気のせいか

 しばし、悩んでいたギルベルトだったが……ようやく、決まったのだろう
 慣れない日本語で、ひらがなばかりではあるが、丁寧に願い事を書いて行っている

「……書けた」
「よし、それじゃあ。商店街に持っていこうか」

 ついでに夕飯の材料も買いに、と、風夜は立ち上がった
 アーサーも、すくりと立ち上がる
 おたおたと、ギルベルトも立ち上がり……そして、こそり、アーサーに話しかけてくる

「………短冊……これで、大丈夫、か?」
「…?…………あぁ、問題、ない」

 ギルベルトの短冊を見て、そう告げてやると、ギルベルトはほっとしたように笑った
 どうした?と首をかしげている風夜に、なんでもない、と告げると、アーサーはギルベルトと共に、風夜について家を出た



【 いつまでも さんにんで いっしょに いたい 】



 子供が書いたような願い事
 それが数百年生きてきた吸血鬼の願い事だと気づく者は、そうそういないだろう






to be … ?
998 :七夕の日の事/同日  ◆nBXmJajMvU :2012/07/16(月) 16:20:04.69 ID:iIHCr5Rl0
『………はい、何か御用でしょうか?』

『……………監視、ですか?対象は……………』

『……吸血鬼の契約者 藤原 風夜、カラドボルグの契約者 アーサー、吸血鬼 ギルベルト……』

『監視だけでよろしいのですか?処分は………必要、ないと。保護の、必要は?』

『……………了解しました、仰せのままに』




『S-No.15、これより、任務に移ります』





to be … ?
999 :七夕の日の事/同日  ◆nBXmJajMvU :2012/07/16(月) 16:21:00.27 ID:iIHCr5Rl0
百合の流れをガン無視するバカが俺ですよっと
一週間以上過ぎて七夕ネタとか馬鹿か俺
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [ saga]:2012/07/16(月) 16:25:39.07 ID:TLm7JjOSo
ラストォー
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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【安価で】桃?太郎?が鬼?退治? @ 2012/07/16(月) 16:08:11.41 ID:Mi4qBeHU0
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綾野「綾野彩、15歳」恒一「榊原恒一、31歳」 @ 2012/07/16(月) 15:24:10.88 ID:cmZP5otm0
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今日のゲストは田井中律さん @ 2012/07/16(月) 15:05:21.35 ID:TIvwQcQm0
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ここだけ財宝が眠る古代遺跡 コンマ00で即死 @ 2012/07/16(月) 14:46:23.86 ID:Gtq/jjsI0
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ここだけ財宝が眠る古代遺跡 コンマ00で即死 @ 2012/07/16(月) 14:44:00.76 ID:2R4kYHs10
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ヘラクレス「君が僕のマスターかい?」 @ 2012/07/16(月) 13:51:49.74 ID:6bO58C960
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神浄討魔「キチデレなフィアンマを安価で愛でる」フィアンマ「俺様は正常だよ」 @ 2012/07/16(月) 13:21:40.64 ID:V7FcZp5AO
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「5円置くじゃないんだよ、5億円」「ハフハフハフハフハフ」 @ 2012/07/16(月) 12:50:33.31 ID:bIDXj5YOo
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