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兄「また妹が誘拐された」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:17:58.80 ID:LvNuVMw7o
グロありエロあり地の文ありキャラに名前あり


第一話『はじまりはいつも意味不明』

兄「またかよ!!」

友「まただな……」

兄「くそぉ……この街に住んでる奴らは理性がないのか?」

友「仕方ないだろ? お前の妹、ありえないくらい可愛いんだから」

兄「だからって誘拐するか? そりゃあ俺も脳内では数え切れないくらいハレンチな行為に及んだが……」

友「お前……」

兄「い、いや、今の冗談だよです? と、とにかく誘拐なんて頭おかしいんじゃねーの?」

友「……仕方ないだろ。車が跳ねた泥でさえ、妹ちゃんの顔を汚さない様によけるんだぞ?」
友「無機物にさえ理解出来る可愛らしさとか、人外だろ……」

兄「俺の妹を悪く言うな!!」

友「悪く言った気はないが……すまんかった。それよりも追いかけなくて良いのか?」

兄「そうだな。善は急げと言うし……すーっ」

兄「 犬 召 喚 !」

 ズダダダダダダダダダダダダダ!!

犬「ご主人様ー!! ご主人様ー! 貴方が、貴方がー!!」

兄「わ、分かった! 分かったから落ち着け! 俺の顔を舐めるな! 靴を舐めるな! ズボンを脱がせようとするな!」

友「いつも思うけど……お前、死ねば良いのにな」

兄「なんだって!?」

犬「ご主人様ーの敵ですか!? 尻の穴に枝でも突っ込んでやりましょう!!」

兄「待て待て。こいつの言い分も聞こうじゃないか」

友「犬耳美少女に、ありえない可愛さの妹、他にも女の子をたぶらかして……羨ましいんだよ!!」

犬「私はご主人様ーにたぶなんとか、されてるのですか?」

兄「俺たちは健全な飼い主と飼い犬だろ? と言うか、犬は買えば良いし、妹は両親に頼めよ」

友「どこに犬耳美少女が売ってるんだよ! 俺に似た妹とかいらねえよ!!」

兄「わがままな奴め……。もう放っておいて、妹を助けに行くぞ!!」

犬「はい! 匂いを辿りますね!!」

 クンクンクンクンクンクンクンクン

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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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2 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:19:03.70 ID:LvNuVMw7o
犬「ここです! ご主人様ー! ご褒美にちゅーしてください!!」

兄「お、おう、どこにすれば良い?」

犬「お腹ー! お腹がいいですー!!」

友(Tシャツ捲り上げて腹を見せただけなのに、エロい!!)

 ちゅう

犬「う……うひほー……」

友「お、おい! 恍惚の表情を浮かべて倒れたけど、大丈夫なのか?」

兄「こいつお腹にキスすると気絶するんだよ。理由は知らないけど……」

友「腹が性感帯なのか……? くっ、興奮してきた……」

兄「獣姦とかありえなしー……」

友「う、うるせえ!! と言うかこの家であってるのか? 普通の民家に見えるけど……」

兄「俺はこいつの嗅覚を信じるぜ!! 突撃!!」

 兄が一歩、その一軒家の庭に足を踏み入れた瞬間!
 あちこちから地面が盛り上がり、何かが這い出てくる!!

友「ひ、ひぃい!?」

骨「うう……あああー……」

骸「……コロス……コロス……」

腐肉「おあああおあああ!!」

兄「ふっ……ゾンビか。この程度、足止めにもならんぜ!!」

友「な、なに言ってるんだよ! やべーよ! やべーって!!」

兄「なーに。心配するな。俺がいる!!」

兄「お兄ちゃんキック!! お兄ちゃんパンチ!! お兄ちゃんチョップ!!」

 ……全ての死体は二度目の死を与えられていた。

友「……すげぇ」

兄「このまま突撃だ! お兄ちゃんピッキング!!」

友「すげぇ! 秒で鍵を開きやがった!!」
3 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:20:22.59 ID:LvNuVMw7o
 その頃、妹は……。

鬼女「ヒヒヒ、ほーら肉男ちゃん、新しいお友達よ」

肉男「おひょっ!? て、天使だ……天使……!! ママありがとう!! 大事にするね!!」

鬼女「ヒヒヒ、それじゃあ古い友達はもういらないわね?」

肉男「うん!! 今日の晩御飯にしちゃおうね!!」

 肉男は拘束された妹の手を引っ張り階段を上がって行った。
 残された室内で、全裸の女が青ざめた顔をしている。

鬼女「さあて……そろそろお夕飯の用意をしちゃおうかね……」

 長い刃渡りの包丁を手に、老婆が女に歩み寄る。
 肉男の体液に塗れた女は後ずさるも、逃げ道はなかった。
 薬により麻痺した体は思うように動かない。

鬼女「さあ! 私たちの血と肉になりなさい!!」

 鮮血が舞った。


 
兄「……迷路か! 迷路なのか!!」

友「迷路だな……つーかどうなってるんだ? どう見ても家の大きさに合わない広さだろ……」

兄「古典的な魔術だよ。そんなのも知らないで、良く俺に付いて来たな」

友「……なんとなく付いてきちまったけど、帰っても良いか?」

兄「庭のゾンビが平気なら、勝手に帰れよ」

友「うぐっ……お前、酷い奴だな……」

兄「そばにいるなら……」

 突如振り返った兄は友目掛けて拳を放った。
 拳は顔のすぐ近くをすり抜けた。

友「な……なにするんだよ!!」

兄「守ってやるよ。ほら」

友「へ、蛇!? どこにいたんだよ!?」

兄「壁に空いた穴からだ。小賢しい真似をしてくれる。大した奴らじゃないようだな」

友「い、いやいや、俺が一人だったら小賢しい罠で死んでたから!!」

兄「だから言ってるだろ。妹を助けるついでにお前も守ってやるって」

友「お前……良い奴だな……」
4 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:21:10.57 ID:LvNuVMw7o
兄「しかし、迷路面倒だなあ……そろそろ終わったかなー……」

友「終わったって何が!? ま、まさかお前! 妹ちゃんの事を諦めるつもりじゃないだろうな!!」

兄「馬鹿かお前!!」

 ドュクシ!!

友「いでっ」

兄「俺が諦めるのは、学校のテストと部屋の片づけだけだ!!」

友「そ、そうか、平和だな……」

兄「……呼んでみるか……すーっ」

兄「い る ん だ ろ ー ! 影 女 !」

友「だ、だだだだ、誰だよそれ!!」

影「は、はい! います。いますよ、兄くんの居るところなら、どこにでもいますよ!」

友「あ、新手の敵か!?」

影「ち、違います……その……私は……私は……」

兄「俺のストーカーだ」

影「は、はい。恥ずかしながら、兄くんのストーカーを生業としています……」

友「マジ?」

影「マジです……えへへ、兄くんの事を25時間監視するのが私の幸せです」

友(なんで一時間多いんだよ、怖いよ、この子怖いよ……!!)

兄「俺を追いかける為に魔術を習得したお前の力を借りたい」

影「は……はい! 喜んで! すでにこの領域の術式は解読済みです。解除しますか?」

兄「当たり前だ!! 早くしろ!!」

影「はぅ……兄くんに怒鳴られると、私、クラクラしてくる……」

兄「早くしろって!!」

影「はいぃぃ……」

友(アヘ顔が現実の物とは知らんかった。もっとも、俺は現実にいるのか疑わしいけど……)
5 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:22:18.34 ID:LvNuVMw7o
友「って、なんだよ今度は! 本から魔法陣が飛び出してきたぞ!?」

兄「触らない方がいいぞ。術式が乱れて、お前一人この空間に残る事になるかも知れない」

友「ひいい!? 触らないぞ!! って、なんかこっちに近寄ってくるんだけど!?」

兄「おい、影、どうにかしてやれ」

影「アフゥウ……兄くんの吐息が私の細胞一つ一つに染み渡って行くのを感じる……アヘェェァ……」

兄「駄目だこいつ。頑張ってよけて!! ふぁいと! だよ?」

友「馬鹿野郎!!」

影「あっ……」

友「え!? ええ!? 俺触ってないよ? 触ってないだろ!?」

影「駄目です……」

友「なんでぇ!? 嫌だよ! 俺こんな所に残されるの! 童貞だって捨ててないのに!!」

影「イっちゃいました……」

友「……どこに? 俺死ぬの?」

兄「いや、こいつがイったんだろ」

影「は、はい、また恥ずかしい失態を……で、でもほら、この通り術式は解けました」

友「はっ!? 普通の家だ……」

兄「普通? どこがだ。良く見ろ」

鬼女「なんだ……お前たちは……!!」

友「ひぃ!? 殺人鬼!?」

鬼女「肉男ちゃんの邪魔をする奴はユゥルサァァナァイイィィイイ!!」

友「ひいいひぃぃ!?」

兄「お兄ちゃん白羽取り! からのお兄ちゃん足掛け! 転んだ隙にお兄ちゃん馬乗り! お兄ちゃんフルボッコ!!」

鬼女「カッ……はっ……」

友「か、顔の原形がもはや分からない……」

影「流石私の好きな人……見事なコンボです……」

兄「……妹が見当たらないな」

友「そ、そうだ! こいつ肉男ちゃんとか言ってたよな。仲間がいるんじゃないのか!?」

影「二階から物音……って、これは地の文に書けば良かったと思います……」
6 :1s [saga]:2012/03/13(火) 02:23:35.88 ID:LvNuVMw7o
兄「二階か! 急ぐぞ!!」

 ドア、バアアアアアン!!

兄「無事か!?」

肉男「にゅ? なんだお前たちは……ボキと天使ちゃんの愛を邪魔する者は……」

肉男「許さん!! はぁ!!」

 肉男が口から何かが飛び出す!!
 兄は首元に、にゅるりとした感触を認めた。

友「これ……舌か!?」

肉男「ボキの舌は特別なんだ……これで女を犯すとひいひい喜ぶんだよ……天使ちゃん、待っててね……ひひっ……」

兄「ぐっ……クソッ……!!」

 兄の体が釣り上げられる。
 もがけど、舌の力は強まるばかり。
 ここで死んでしまうのか、兄よ。

影「兄くんを離しなさい!! この化け物!!」

 影女が本を開くと、火の玉が飛び出した。
 狙いは肉男だが、届くことは叶わなかった。
 彼の目の前で炎は消滅したのだ。

友「そんな……!! 魔術が効かないのか!?」

肉男「初歩的な魔術だなぁ、四大元素を操る程度でボキに敵わうと思わない事だな!!」

 影女の体が壁に突き飛ばされる。

肉男「まずは前菜と行こうか……」

影「ひっ、体が勝手に……!?」

 緩慢な動作で影女は脱衣を始める。
 その顔は羞恥に染まり、友は食い入る様に影女の姿を見つめる。
 
肉男「ひひっ、可愛い下着だねぇ……ほら、脱いで恥ずかしい事、してごらぁん……」

影「い、いやっ……やめて! 兄くんの前では……!!」
7 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:24:29.92 ID:LvNuVMw7o
 その時、友の携帯が振動した。

友(ファック! 今良い所なのがわかんねーのかよ!!)

 毒づきながらも、こっそりと携帯を開く。
 一通のメールだ。

友(これは……!!)

 ちらりと兄の顔を見上げ、友は走り出す。

肉男「はっ!? 貴様何をするつもりだ!!」

 兄から離れた触手の様な舌が友を追う。

友「うおぅ!?」

 すんでの所で回避、妹へ手を伸ばす。
 
肉男「させるかぁああ!!」

 友の胴体は舌に巻き取られた!!

友「こ、これで良いんだろ!? 兄!!」

 宙に持ち上げられた友が兄へ叫ぶ。
 床に倒れたままの兄は、親指を立てた。GJと。

肉男「フヒヒっ、口を塞いでいたガムテープが剥がれただけじゃないか、ふひひ! お話しようか天使ちゃん?」
8 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:25:40.37 ID:LvNuVMw7o
妹「貴方と交わす言葉は持ち合わせておりませんので、ご遠慮します」

 空気が変わった。
 鈴を転がすような妹の声。
 聴く者を夢の世界へ誘う如くの、幻想的な美しき音色。
 影女の手は止まり、友は床に落下した。

妹「まずは私の拘束を解いてもらえますか?」

 従ったのは友だった。
 操り人形の様に、言われるがままに拘束を解く。
 虚ろな瞳に妹の姿は映らない。
 彼女の声に魅了された今の友には、紡がれる言葉だけが全てだった。

妹「……ずっと同じ姿勢だったので疲れました」

 誰一人口を開こうとしない。
 壁が床が天井が彼女の声に聞き入り、異常な程の静寂が辺りを包み込む。
 
妹「罰として、永遠に苦しんでください」

 妹が肉男の顔を覗き込んで笑顔で伝えた。
 
肉男「う……ううう……ああああああ!!」

 肉男の全身から脂汗が吹き出す。
 たっぷりと蓄えられたぜい肉はぷるぷると震える。
 
妹「苦しいですか? じゃあ、死んでも良いですよ」

 にっこりと妹が笑った。
 瞬間、肉男は真っ黒い気体を噴出させ、消滅した。
 黒い霧は天井で渦を巻き苦しい、苦しいと呻き始める。

妹「鬱陶しいので他所でやってください」

 すっと天井に吸い込まれる様に黒い霧は去った。
 苦しいと一言残して。

妹「……兄さん、大丈夫ですか?」

 倒れたままの兄の傍らにしゃがみ込み手を握る。
 握り返してくる気配はない。

妹「……お兄ちゃん、お兄ちゃん起きて」

 ユッサユッサユッサユッサユッサ

兄「はっ!? こ、ここはどこだ!?」

友「むっ!? ここはどこだ!?」

影「あれ……? ここどこですかぁ……?」

妹「お兄ちゃん!!」

兄「おふうっ!? いきなり抱きつかれたぞ! どうなってるんだ!!」

友「羨ましい……」

影「羨ましいです……」

妹「お兄ちゃん、全然起きないんだもん……死んじゃったかと思った……」

兄「お、俺も少しの間、天国に居たような気がする……」

妹「うっ、ううー……」

兄「わー!? な、泣くな! ほら、お兄ちゃんはこの通り無傷だからさぁ!!」

妹「ぐすん、ぐすん……」


第一話『はじまりはいつも意味不明』終了。
9 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:26:16.78 ID:LvNuVMw7o
第二話『悪夢は続くよどこまでも!!』


兄「おはーよーー」

友「おーーはーよ」

嬢「なにそれ。まあそんな事はどうでも良いわ。これ、新兵器」

兄「おー……いつも悪いな」

友「なんだ、それ? モンスターボール?」

嬢「ちょっと違うわね。人工的に作り出した精霊を閉じ込めてあるのよ」

友「は……?」

兄「ほーお……そう言えば精霊に関する研究を進めてるって話だったな」

嬢「まあね。取りあえず実戦で使えるレベルには仕上がってるわよ」

兄「そうか。楽しみだぜ……ま、戦わずに済む日が来るのが一番良いんだけどな……」

友「あのー……お二人は一体何の話を?」

兄「お前、昨日の事も覚えてないのか?」

友「馬鹿なことを言うな! 死にかけた記憶をそう簡単に忘れられると思うなよ!!」

嬢「あら? あなたもとうとうこっち側の人間になったの?」

兄「まあな。成り行きでこっち側を見ちまったんだよ」

友「こっち側? って魔術だのなんだのか? ……まさか嬢も!?」

嬢「私はずっと前から兄に協力してるわ」

兄「うむ。お詫びに時々保健室で添い寝してるんだ」

嬢「もうっ……それは言わない約束だったでしょう?」

友「……兄お前、やっぱり死ねば良いよ」

兄「なんでだよ」

友「なんでってお前!! このクラスで一番美人なお嬢様と添い寝!? しかもお詫び? なんだよそれ!! 不公平だ!!」

兄「お、おいどこに行くんだよ!!」

友「うるせぇ!! 泣いてくるんだよ!!」
10 :1\ [saga]:2012/03/13(火) 02:36:52.91 ID:LvNuVMw7o
兄「……なんだよあいつ」

嬢「ひょっとして、彼も添い寝して欲しいのかしら?」

兄「うげぇ」

嬢「……今のうげぇって顔、なんだか可愛らしかったから、写真撮っても良いかしら?」

兄「えっ……」

嬢「えっ、じゃなくて、うげぇ、よ」

兄「うげぇ」

嬢「ちょっと違うわ。もう一度」

兄「うげぇ」

 …………。
 ……。


 その頃友は……

友「ぐすん、ぐすん……」

?「そこの君、どうしたんだ?」

友「ほえ? あなたは生徒会長じゃありませんか!!」

会長「ああ、生徒会長だ。だからもう一度問う。どうしたんだ?」

友「うっ、ううっ、僕の悩みを聞いてくれますか?」

会長「聞こう。それが私の仕事だ」

友(はうぅ……生徒会長の言葉はいつも力強い……そして俺を撫でる手の優しさと言ったら!!)

友「友達がいつも僕に自慢するんです……」

会長「何をだ? 新しいおもちゃとか、だろうか」

友「女の子ですぅ、女の子といちゃいちゃぬちゃぬちゃしやがるんですぅ!!」

会長「ほう……」

友「それもとっかえひっかえ、色んな女の子を!!」

会長「とっかえひっかえか……」

友「そうなんです、うぐっ、ひぐっ……」

会長「取りあえず、涙を拭きなさい」
11 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:37:19.71 ID:LvNuVMw7o
友「はぅぃ……すんすん」

 生徒会長が手渡したハンカチの匂いを嗅いだ友は勃起した。

友(なんて良い匂いなんだ!!)

会長「そうだな……まずは、一つ約束しよう」

 生徒会長が友の手を取る。
 何が起こるのかと、友の鼓動は高まる。
 次いで、生徒会長は小指同士を絡ませた。
 白魚の様な指は、ひんやりとして、作り物の様な印象を与える。
 友は眼前の人物が端整な造りの人形かと疑ってしまう。
 白い肌には染みの一つもなく、陶器の如く滑らかだ。

会長「これで私達は友人同士だ。約束しよう。私は君を裏切らない」

友「は、はい……」

会長「君の友達がたぶらかしている女の子には及ばないかも知れないが、私も一応女だぞ?」

友「は、はい……」

会長「少しか君の心が救われたなら、私は嬉しい」

友「は、はいいぃ……」

会長「しかし、不純異性交遊は捨て置けない問題だな」

友「そ、そうです! バシンと言ってやってください!!」

会長「そうだな。その友達のところへ案内してもらえるか?」

友「はい! 喜んで!!」

 タッタッタッタッタッタッタッタ、ドア、バアアアアアアアアアン

友「兄! お前のハーレムも今日でお終いだ!!」

兄「何の話だ?」

友「うるさい! 黙ってこのお方の話を聞けぇぇぇぇ!!」

会長「……」

兄「あれ? 生徒会長じゃないか、どうしたんだ?」

会長「ううん、どうもしない」

 会長は兄に駆け寄るなり、胸に顔をうずめた。

兄「お、おう? どうしたんだよ」

会長「頭、撫でて欲しい」
12 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:37:57.18 ID:LvNuVMw7o
兄「あ、ああ……?」

友「……」

会長「んー……もっとぉ……」

兄「折角綺麗に梳かした髪が乱れるぞ?」

会長「良いんだ。この髪も体も兄の為にある……と、私は思っている」

兄「……照れるぞ、今の台詞」

会長「……本当か? いつも私が照れてばかりだ。逆襲出来たのなら嬉しい」

兄「……そう言えば、俺に何か話があるんじゃないのか?」

会長「ない」

友「え……」

兄「本当に?」

会長「強いて言えば、謝りたい」

友「え……?」

会長「交際している訳でもないのに、甘えてばかりで……兄に出会って私は弱くなってしまったよ……」

兄「気にするな。お前は今まで頑張り過ぎてたんだよ」

会長「……そんな事はない」

兄「出来れば良い人見つけて、そいつに支えてもらうのが……」

会長「それが兄なら良いのに……」

兄「ん? なんだ?」

会長「何でもない」

 会長が今まで以上に兄に頭を押し付ける。
 兄は困った風な顔で友を見る。

兄「……生徒会長じゃないとしたら、誰が俺に話を?」

友「え……いや、生徒会長! さっき約束したじゃないか!!」

会長「約束は守るが、兄に限って不純異性交遊なんて、有り得ないだろ」

友「え……いやいやいやいや! あっちで不機嫌な顔してる嬢と添い寝とかしてるんだぞ!?」

会長「知ってる」

友「え……」

会長「兄に添い寝してもらうと、凄く安心するんだ。だから仕方がない」

友「え……」

兄「やっぱり生徒会長じゃないのか? 誰が俺に話を……」

友「くっ!! だったら俺が直々に――

 ドア、バアアアアアアアン
13 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:38:28.44 ID:LvNuVMw7o
猿「まずは我々の話を聞いて貰おうか?」

友「え……なに? 猿? デカくねぇ?」

兄「お前は! 先週の週末に妹と遊びに行った動物園の猿か!?」

猿「ご名答」

友「さ、猿ってこんなにデカい生き物だった? 俺、凄く命の危機を感じてます……」

会長「部外者が何の用かな?」

猿「単刀直入に言おう。我々は貴様の妹と交尾がしたい。その一心で進化した猿だ」

兄「やはり進化しているのか。そうでなければ、人語を解せるはずがない」

友「し、進化するの? 動物って進化するの?」

兄「俺の妹と交尾するってんなら、まずは俺を倒してもらおうか?」

猿「もちろんそのつもりだ。だが……貴様と正面からやりあう程、我々は愚かではない」

友「うぉ!?」

兄「友をどうするつもりだ!!」

猿「こいつは人質だ。返して欲しくば裏山へ来い」

 シュタッ! シュシュシュシュシュシュ!!

兄「忍者の様な動き……! あの猿……かなりの使い手と見た……」

会長「兄……どうするんだ?」

兄「答えは決まっている。友達を裏切る様な男と添い寝したいか?」

会長「したくない……でも……!!」

嬢「止めても無駄ですよ、生徒会長」

兄「嬢……」

嬢「私たちに出来るのは彼を助ける事だけ。分かってるはずよ」

会長「そう……だな……」

 会長は自らの毛髪を一本引き抜いた。
 手のひらで黒く艶やかだった髪は色を失い、真っ白に変じた。

会長「これを持って行って欲しい」

兄「……?」

 戸惑いながらも受け取ると、それは自ら動き兄の手首に巻き付いた。

会長「お守りだ。私の力の一部を与えてある」

兄「ん。良くわからんがありがとな。これも」

 嬢へと球状の装置を掲げ、兄は走り出した。
 向かう先は裏山だ。
14 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:39:02.20 ID:LvNuVMw7o
 その頃妹は……

妹「あ、お兄ちゃんだ」

 窓の外、グラウンドを横切り裏山へと走る兄の姿を見つけた。

妹「……どこに行くんだろう。もうすぐ授業が始まるのに……」

妹「……行かなきゃ」

生徒B「い、妹ちゃん、どこへ?」

妹「裏山だよ!」

生徒B「裏山? どうして?」

妹「どうしても、行かなくちゃいけないの」

生徒B「そうなんだ……気をつけてね!!」

妹「うん!!」

 元気に駆け出した妹の背後で生徒Bが失禁している。
 あまりの可愛らしさに全身の力が抜けたのだ。

妹「……裏山になにか……ん? お猿さん?」

猿術師「お猿さんだよ、お嬢ちゃん、こんな所に何か用かな?」

妹「えっ……お猿さんなんで喋れるの?」

猿術師「お嬢ちゃんとお話する為だよ」

妹「そっかぁ……あ! 私もお猿さんとお話したい!」

猿術師「うんうん。どうしてここに来たのかな?」

妹「お兄ちゃんを追いかけてるの!」

猿術師「そっかぁ……妹ちゃんはお兄ちゃんの事、好き?」

妹「うん! 大好き!!」

猿術師「そうなんだ……じゃあ……」

 猿術師の瞳が怪しく光る!!

猿術師「じゃあ、お兄ちゃんの事は殺さないとね?」

妹「……どうして?」

猿術師「好きな人は殺さないと、誰かに取られちゃうんだよ? 良いの?」

妹「……ヤダ」

猿術師「……どうしたら良いか、分かるね?」

妹「……うん」

 妹がおぼつかない足取りで、山を登り始める。
 背後で猿術師の高笑いが止まらない。
15 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:39:30.79 ID:LvNuVMw7o
 気に止める様子もなく、ゆっくりと歩んでいたが、ピタリと止まった。

猿術師「どうしたの? 早くいかないと……」

妹「あのね、お猿さん……お兄ちゃんの事、本当に殺さないと駄目なの?」

猿術師「ああ、じゃないと取られちゃうんだよ、嫌だよね?」

妹「……兄さんを殺す程ではありませんよ」

 妹の声は変わらないはずなのに、猿術師は戸惑った。
 しっかりとした足取りで、妹が猿術師へ近寄る。

妹「残念ながら貴方程は愚かではありませんので。下等なお猿さん?」

猿術師「何を……どうして、私の術が……」

妹「分かるはず、ないですよ。貴方にはそれ程の知能がありませんから」

猿術師「オレ……チノウ……? オレ……オレ……?」

 わずかに残った知性とそれを理解出来ない脳。
 猿術師が苛立ちから頭を掻き毟る。

猿術師「オレ、オレ、オレダレ? ダレオレ? ダレオレオレダレオレダレダレダレ?」

 頭部の毛が抜け、皮が破けようとも猿術師は手を止めない。

妹「哀れですね。……兄さんは大丈夫でしょうか」 


 その頃兄は……

兄「ひぃー!! 三人がかりだなんてずるいぞ!!」

羽猿「ずるい? 勝てば良いんだぎゃ!!」

針猿「死ね!!」

兄「うおっ!! あ、あぶねー!! お前の尻尾はなんだよ!!」

針猿「俺の尻尾には毒があるんだ!! すげーだろ!!」

兄「うおー!! あぶねー!!」

羽猿「おらっ! よそ見してるんじゃねーぎゃ!!」

兄「うおー!! 空から飛んで来るとか卑怯だろ!!」

炎猿「燃え尽きろ……!!」
16 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:40:09.14 ID:LvNuVMw7o
 ブボボボボボボオボボボボボ!!

兄「おあーっ!! 山火事でも起こすつもりか!! ええい! いでよ精霊!!」

水霊「私を最初に呼び出すとは分かってるねー! 分かってる!!」

兄「胸のデカいおねーさん! その炎野郎は任せても良いか!?」

水霊「おっけー!! すぐに鎮火させてやるからね!! お姉さんが!!」

炎猿「くっ……お前ら! その変なボールをぶっ壊せ!!」

針猿「らじゃ! 俺のすげー尻尾を喰らいやがれ!!」

兄「ひぃー!! しゃがんで回避じゃ!!」

羽猿「甘い!!」

 ガシッ

兄「!?」

羽猿「このまま空の旅へと、ほぎゃ?」

 兄が振り返ると、首のない羽猿がゆっくりと倒れた。
 生徒会長の髪が二本の枝の間に張られている。

兄「す、すげぇ……」

針猿「俺の尻尾の方がすげぇって!!」

 兄に飛びかかった針猿の胸から氷柱が生える。

針猿「あ……れ……?」

水霊「尖った物に刺されて死ねて満足だよね?」

兄「おねーさん、強いじゃないか……」

水霊「まあね。お姉さんは強いからね。また呼んでね!!」

兄「……炎の猿も炭の様な物になってる」

 兄は山頂目指して駆け出す。
17 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:40:58.16 ID:LvNuVMw7o
猿「そろそろ来るか……」

女猿「ねえ、この良い男……犯してもいいかしらぁん?」

猿「好きにしろ」

友「ひぃ!?」

猿「怒りに我を忘れた者程、弱い物はない」

女猿「じゃ、遠慮なく……」

友「や、やめろ! 獣姦は認めるが、せめて兄の家の犬くらい可愛い子にしてくれ!!」

女猿「あらぁ……立派な男根ねぇ……早速」

友「い、いやああああああぁあ!!」

兄「友から離れろ!! 淫乱メスゴリラ!!」

猿「来たか……」

女猿「今……なんて……?」

兄「友から離れろ!! 淫乱メスゴリラ!! そう言った!!」

女猿「ゴリラ……? 私は猿よ!! 無礼なガキね!!」

兄「お兄ちゃんデコピン!!」

女猿「ぴぎゃっ!?」

友「やった!! メスゴリラを倒した!!」

猿「ふ……流石にやるようだな。だが、お前はここまでだ!!」

兄「か、体が石に……!?」

猿「魔術を身につけているとは思わなかったか?」

兄「くそ……!!」

友「兄!! しっかりしろ!! 兄!!」

兄「精霊! どうにかしてくれ!!」

地霊「ボクの出番だね!! 石の体でも自由に動ける様にしてあげる!!」

兄「え……石化を治療するんじゃないのか?」

地霊「そんな難しい事、ボクが出来る訳ないじゃーん!! えへへ!」

兄「俺は石像になるのか!? もう添い寝する事が出来ないじゃないか!!」

友「よっしゃ!! ざまぁみろ!!」

地霊「君はどっちの味方なのか分からないね!!」

猿「石の体で向かってくるか……ならばこうだ!!」

兄「ほ……あああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

友「兄の体が斜面を凄い勢いで転げていく!?」
18 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:41:31.47 ID:LvNuVMw7o
地霊「うわー……良く転がっ、あああぁぁぁぁ!! 精霊はあの装置からそんなに離れられないんだったーー!!」

友「新キャラっぽいロリっこも転げていく!?」

妹「あれ? 友兄ちゃん?」

友「このタイミングで現れちゃ駄目ー!!」

猿「ふっ……まさかお前の方から現れるとはな……探す手間が省けた!!」

妹「な、なに!? 離して!」

猿「我と交尾するのだ!!」

妹「い、いやっ!!」

友「ゴクリ……どうせ俺の物にならないなら、陵辱シーンをこの目に焼き付けるしかあるまい……!!」

妹「助けて!! 助けて友兄ちゃん!!」

友「……」

妹「友……兄ちゃん……?」

友「猿! 早くしろ!! 兄は必ず戻って来るぞ!!」

猿「あ、ああ? お前、本当にどっちの味方だ?」

友「俺はエロを愛する読者と自らの性欲の味方だ!! 早くヤレ!!」

兄「おらああぁあぁぁぁぁ!!」

 完全に石と化した兄の体が宙を飛んでくる!!
 生徒会長の髪がゴムの役割を果たし、人間パチンコとなった兄の体だ!!

 グッシャアアァァアアァ

妹「あ……」

友「……」

兄「おお! あいつが死んだからか、体が元に戻ったぞ!!」

妹「ううう、お兄ちゃぁん!!」

兄「よしよし怖かったな……ってあれ? どうしてここに?」
19 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:41:58.69 ID:LvNuVMw7o
妹「お兄ちゃんが裏山に向かってるのを見つけたから追いかけて来たの……」

友「……」

兄「そうか……よしよし……」

妹「うんん……お兄ちゃん……」

友「……」

兄「そこでこそこそ立ち去ろうとしてる友に言いたい事がある」

友「は、はい? 俺は敵の残りがいないか確認をだな……」

兄「もう猿の気配はないぞ」

友「じゃ、じゃあ、俺も去るかな……ごゆっくりと……」

兄「……あとでじっくり話そう。そうしよう」

妹「お兄ちゃん♪ お兄ちゃん♪ だーいすきー♪」

友「……」


第二話『悪夢は続くよどこまでも』終了
20 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:42:26.10 ID:LvNuVMw7o
第三話『俺の拳は鉄よりも硬い、それでいて錆びる事がない』


 大手町の外れに位置する廃工場。
 不良の溜まり場として有名なこの場所に自ら訪れる者はない。
 まして、今や魔術の力を得た不良によって異界と化している。
 助けは絶対にない。

下っ端「へへっ、化け物の餌にされたくなければ、俺を気持ちよくするんだぜ」

女生徒「……」

 女性とは無言のまま下っ端の男根へ舌を伸ばす。
 下半身から伝わる感触に下っ端は身震いした。

下っ端「おふふっ……良いぞぉ……お前ならリーダーも気に入ってくれるかもなぁ……」

 不良を束ねる男に気に入ってもらえれば、死を回避出来る。
 女生徒が舌を絡ませたまま男根を口に含む。

女生徒「んっ……ふ……」

 顔を前後に揺らし、男根を刺激する。
 
下っ端「げへへ、どんな顔で俺のチンポを頬張ってやがるのか、見せてみろ」

 下っ端が女生徒の髪を乱暴に掴み、上を向かせる。
 女生徒は涙を流していた。

下っ端「……おい、止めろ」

 股間にうずめられた顔を強引に引き離す。

下っ端「なんで泣いてるんだよ」

女生徒「ううっ……こんなの惨めで……もう嫌っ!!」

下っ端「そうか。おい、小鬼どもの好きにして良いぞ」

 下っ端の言葉に反応したのは子供と同じ背丈の鬼だ。
 鬼が女生徒に群がる。

女生徒「ひっ、いや!! いやぁ!!」

 衣服を纏っていない小鬼の下半身に小指大の性器がいきり立っている。
 小鬼らはそれを女生徒の体に擦り付ける。

女生徒「ひ、ひぃいいぃい!?」

 衣服が溶け出し、皮膚へと得たいの知れない体液が塗りたくられる。
 熱くぬめった液が体へと染み込むのを感じる。
 女生徒は嬌声を上げた。
 彼女の身はこれまでにない快感を得ていた。
 まるで全身いたるところに性器が現れたかの如く、快楽が湧き出る。

女生徒「ひぁああぁ!? なにこれ……すごっ……いいぃいぃぃ!!」

 女生徒は自身に起こった異変に気づいていない。
 小鬼が性器を擦りつけた箇所に、紛れもない女性器が現れている。
 新たな穴を同時に犯され女生徒はよがり狂う。
 涎と涙が顔を汚し、溢れ出す愛液が体中に滴る。

女生徒「すごォォォォあぁあああぁぁあああ、アガッ!?」

 突如、女生徒は事切れた。
 小鬼が素早く女生徒から離れ、辺りを見回す。
21 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:42:52.05 ID:LvNuVMw7o
下っ端「おや……西瓜さん、どうしたんですか?」

西瓜男「くだらねぇ事やってないで準備をしろ。もうすぐ来るぞ」

下っ端「へへへ……ひょっとしたら俺たち死ぬかも知れないんですぜ? 最後に楽しんだっていいでしょう」

西瓜男「俺はこの戦い、生き延びるつもりだ。まだまだ俺は戦い足りねぇからな」

下っ端「本当にお好きですねぇ、戦いが」

 西瓜男はその名の通り西瓜をかじりながら、来た道を引き返して行く。
 後ろ姿が見えなくなると、小鬼が女生徒の死骸に群がる。
 額に空いた小さな穴から鮮血が溢れ出ているも、気にする様子はない。
 各々好き勝手に哀れな少女を犯している。

下っ端「ま……適当にやりますかぁ……お前ら!! 準備するぞ!!」
22 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:44:00.95 ID:LvNuVMw7o
 その頃兄は……

兄「随分遠くへ来たな」

友「ああ……でも空路を使った訳じゃなくてよかったな」

兄「何がだ? こいつの嗅覚なら地球の裏側だろうとたどり着くぞ」

犬「はい! ご主人様ーの為ならどこまでだって嗅ぎ分けますよ!!」

友「すげぇ……って事はまさか俺のプライベートも匂いでわかるのか!?」

犬「んー……昨日はお一人で三回もなさったのですね!!」

友「ひゃぁあぁ」

兄「顔を赤らめるな。気持ち悪い」

犬「ご主人様ー!! ここですよ!!」

友「おおお……古い工場か……確かここって……」

兄「不良の溜まり場として有名だな」

友「だよなぁ……でも今更不良なんて怖くないぜ!! 何せ俺は猿を倒し! イカレたババアを倒した男だ!」

兄「猿に関しては人質だっただろう?」

友「う、うるせ!!」

犬「あのぅ……ご主人様ー……ご褒美は……」

兄「あーはいはい、どこが良い?」

犬「今日はちょっと運動したいので、お腹以外が良いです!」

兄「じゃあ太ももな」

犬「はいー」

友「なん……だと……?」

 兄が犬のスカートに頭を突っ込む。

犬「はうぅ……はぅっ!? あふっ……んん、んー!!」

 犬の体が数回痙攣する。

犬「はぁ……はぁ……」

兄「腹じゃないからちょっと長めにキスしたが……大丈夫か?」

犬「はぁ……はい……はぁはぁ……」

友(ちっくしょう!! 悔しいけれど今日のオカズゲットしたからまあ良いや!!)

友「くっそー!! 俺だって不良どもを成敗してモテモテになってやる!!」

友が廃工場へと駆け出す。

兄「……俺たちは少し休んでから行くか」

犬「ごめんなさい。ご主人様ー……」
23 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:45:04.41 ID:LvNuVMw7o
 友が工場に入って数秒後。
 血相を変えて友が逃げてくる。

友「人じゃない奴が!! いっぱい! いっぱいいたぞ!!」

兄「そりゃぁな。ここも魔術がかかっているし」

友「それを先に言え!! 普通の不良じゃないなら、俺に勝ち目なんてないだろうが!! 馬鹿!!」

犬「ご主人様ーは馬鹿じゃないです!!」

友「え、いや……その……」

兄「さてと、そろそろ行くか」

犬「はい! 妹様を必ず救出しましょう! ご主人様ー」

友「ま、待てよ! 俺も行くって!!」

 工場内に入る三人……とその後を追う影女。

兄「お兄ちゃんパンチ! お兄ちゃんキック!」

犬「犬神拳奥義……双牙崩落衝!!」

小鬼「ふぎゃああぁああ!!」

友「……俺はSF映画でも見てるのか?」

兄「お兄ちゃん当たると痛いパンチ!! お兄ちゃんとっても素早いキック!!」

犬「犬神拳奥義! 天馬星巡脚!!」

小鬼「ふがあああぁぁ!!」

友「犬耳少女が凄い勢いで小鬼を蹴散らしている!!」

下っ端「ちっ……やっぱり強いぜ……だけどな、こっちの兵力はまだまだ余ってるんだ!! 第二陣! 突撃!」

小鬼「おおおおおお!!」

友「ちっ! 倒しても倒しても切りがない!! 俺は一体も倒せてないけど!!」
24 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:45:42.24 ID:LvNuVMw7o
兄「くそっ……友!! 奥にいる人間をねらえ!!」

友「な、なんで俺が!?」

犬「雑魚は私とご主人様ーにお任せください!!」

友「だからなんで俺が!?」

兄「サポートは任せろ!! 早く行くんだ!!」

友「くっ……ちくしょう!! 死んだら呪ってやるからな!! 絶対にだ!!」

兄「道を開くぞ……! 喰らえお兄ちゃん飛び蹴り!!」

犬「犬神拳! 刃尾一閃!!」

 兄の飛び蹴りと、犬の尻尾を剣の様に硬化させた一撃が小鬼を蹴散らす!!

下っ端「なに……!?」

友「うおおぉおぉおぉ!! もうどうにでもなればいい!!」

 小鬼の群れに開かれた一条の道を友が駆ける!!

友「一般人の拳を喰らええええええぇぇぇぇ!!」

下っ端「ぶっ!」

友「まだまだぁ!!」

兄「良し! 鬼どもの統制が乱れた!!」

犬「逃げ惑う小鬼なんて敵じゃないです! 犬神拳奥義! 刃尾波状斬!!」

小鬼「ぎゃあぁあぁぁ!!」

友「おら! おらぁ!!」

下っ端「ぶひっ! ぶあっ!! がはっ……」

友「おらぁ!! おらぁ!! 死ね!! 早く死んでくれ!!」

下っ端「……」

友「くっそ!! くそぉ!! どうして俺が!! 俺がぁぁあぁ!!」

下っ端「……」

友「このっ……!! このぉ……!!」

下っ端「……」

兄「もう良い! 友!!」

友「兄……」

兄「そいつはもう死んでる!」

友「お、俺……俺……」
25 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:46:28.44 ID:LvNuVMw7o
兄「お前……! 泣いて……」

友「人って、よ……殴るとこっちも痛ぇんだな……知らなかったよ俺……」

兄「友……」

友「怖くて痛くて夢中だった……ちょっとでも隙を見せたら今度は俺が殴られるんじゃないかって……!!」

兄「……悪かったな。こんな事に巻き込んで」

友「いや、良い。良いんだ。悪いのはこいつらなんだからよ……」

犬「……貴方は戦いには向いてないのかも知れませんね」

友「……だとしても俺は行くよ。そうだ、そろそろ例のストーカーを呼んでみたらどうだ?」

兄「ああ。影女、解析は終わったのか?」

友「……反応がない。もしかして、今回は来ていないのか?」

兄「いや、それはない。奴は俺を26時間監視しているはずだ」

友(えっ……なんでまた一時間増えたの!?)

兄「おかしいな……」

犬「くん、くん……影女さんの匂い……!!」

友「えええ!? ひょっとして捕まったのか!?」

兄「その可能性はある……! 急ごう!! あんな奴でも居ないと寂しいからな!」

友「お、おう!!」


 果たして影女は不良の一人に捕らえられていた。


術師「いひひひひっ、俺はお前みたいな大人しそうな女が好きなんだよぅ」

影女「私は兄くんだけが好きです……」

術師「そう言っていられるのも今の内だよぅ」

影女「……!!」

術師「この液体は小鬼の体液を凝縮して作った特性の媚薬だ……さあ飲むんだよぅ……」

影女「や、やめ……!! ん、ぐ……!?」

術師「拒めると思ったか? 自ら動いて口に潜り込む様術をかけてあるのさぁ」

影女「んんんー! はぁ、はぁ……ひっ!?」

術師「どうだぃぃ?」

影女「あつい……お腹が……なにこれ……!!」

術師「その熱が徐々に下半身に伝わってくるんだよぅ……」

影女「ひっ……ああっ……熱い……!」

術師「熱いだけじゃなくて、むずむすしてくるだろぉ」
26 :q [saga]:2012/03/13(火) 02:46:57.64 ID:LvNuVMw7o
影女「はひっ! さ、触って! 触って私の……!」

術師「どこを触って欲しいのかなぁ? 言ってごらん?」

影女「はぁっ、はぁ……わ、私の大事な所……」

影女「なんて言うと思いましたか?」

 声が耳元で聞こえた。
 不良術師が振り返るも影女の姿はない。
 辺りを見渡すも、艶っぽい声を放っていたはずの影女の姿も消えている。

術師「なんだ!? どこだ! どこにいるぅ!?」

影女「ここですよ……」

術師「上か!?」

 見上げた先に影女がいる。
 どうした事か穴の底を覗き込む様な姿だ。

影女「底なしの落とし穴です。さよなら……」

術師「あああぁああ!! 貴様ぁあぁぁぁ!!」

 急速な落下感と共に影女の姿が消える。
 術師の体はどこまでもどこまでも、落ち続ける。
 やがて光が届かぬ闇に飲まれど、底に落ちる事はない。
 発狂が先か肉体の死滅が先か。
 彼のその後は誰にも分からない。
 影女は跡形も残っていない床に小さく手を振った。

兄「お! こんな所にいたのか!!」

影女「兄くん! 今さっき、敵っぽいの倒しましたよ!!」

兄「ん? そうか……お前も随分強くなったな」

影女「えへへ、伊達に兄くんのストーカーやってる訳じゃないですから」

友「良かったな。心配してたんだぜ」

影女「貴方に心配されても嬉しくありません……」

友「……」

兄「俺も心配したよ」

影女「ほ、本当ですか!? 嬉しいです……」

友「ちくしょう! 俺って、なんなんだろ……」

犬「元気出してください。ご主人様ー! 影女さんが見つかったのなら早速試してもらいましょう!」

兄「ああ。影女、妹の居場所はもう分かってるのか?」

影女「はい。いや、元々ここは異界化されていないようなので……ただ強大な魔力の持ち主がこの奥に」

兄「なるほど。恐らくそいつがボスだろう! 行くぞ!!」

 ドア、バアアアアアアン!
27 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:47:26.18 ID:LvNuVMw7o
友「誰だ!?」

西瓜男「そう焦るなよ……まずは俺を倒してもらおうか? しゃりっ、もぐもぐ……」

犬「……ご主人様ーこの人……何かおかしいです!」

兄「おかしい?」

犬「不思議な匂いが……! あぶない!!」

影女「ひゃっ!!」

西瓜男「へぇ、犬耳娘も強かったのか。へへ、これは楽しめそうだぜ……」

友「壁に穴が……!! まさか西瓜の種を勢い良く飛ばしているのか!?」

西瓜男「そうだ。ところでお前は誰だ? ……お前も強いのか!? プッ!!」

友「ひっ!!」

西瓜男「よけたか。お前も強いんだな!! 良いぞ!! 良いぞぉ!!」

友「い、今のは偶然なんで俺は狙わないで欲しいです!!」

兄「お兄ちゃんパンチ!!」

西瓜男「ぐっ!? 貴様……不意打ちとは卑怯だぞ!!」

兄「お兄ちゃんキック!!」

西瓜男「ぐはっ!! ま、待て西瓜を食べる間ちょっとま」

兄「お兄ちゃんラリアット!!」

西瓜男「おぐふっ!? だ、だから、待ってよ!!」

兄「お兄ちゃんかかと落とし!!」

西瓜男「ギャオス!!」

犬「流石ご主人様ー容赦のないコンボ……素敵です……」

影女「はぁ、はぁ……兄くんが格好良すぎてまたイっちゃいました……」

友「……」

兄「……行くぞ!!」

 ドア、バアアアアアアアアン
28 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:47:58.93 ID:LvNuVMw7o
妹「あ、お兄ちゃん!!」

兄「妹! 無事だったのか!!」

妹「うん! でもね、変なの……私をここに閉じ込めた後、みんな居なくなって……」

兄「みんな居なく……? はっ!? あいつらがいない!?」

妹「あいつらって……友兄ちゃんとワンちゃん?」

兄「ああ……一体どこに……」

妹「あっ! お兄ちゃんあのねー!!」

兄「何か知ってるのか!?」

妹「うん! そこで倒れてるお兄ちゃんね、本当はお姉ちゃんなんだよ!!」

兄「どういう……あれ? 顔が変わってる……」

妹「呪文を唱えたらね、男の子に変身したんだよ! すごいね!!」

兄「……確かに女だ。パンツを脱がせて確認したから間違いない」

西瓜「んん……? きゃ、きゃぁぁぁ!! き、貴様! 私に何をするつもりだ!!」

兄「え、いや何も……と言うかお前、女の子だったのか。さっきは悪かった」

西瓜「さっきの事より、今の事を謝って!! 強姦なんて最悪だ!!」

兄「……嫌だね。お前たちが先に俺の妹を連れ去ったんだろーが!!」

西瓜「そ、それは……で、でも! 私は違う! 強い奴と戦いたかっただけだもん!!」

兄「なに……?」

西瓜「だから貴様の妹には正体を明かしたし、酷い目に合わせないと約束した! 覚えてるだろ!?」

妹「うん。お姉ちゃんのおっぱい大きかった!」

兄「お前! 正体の明かし方は他にもあるだろうが!! そんな可愛い面してたら顔だけで分かるって!」

西瓜「か、かわ、かわ……かわ……!? な、なんだよ!!」

兄「お前がなんだよ!!」

西瓜「うー……と、とにかく私は貴様と戦いたいだけだ!」

妹「ねー、お姉ちゃんどうして男の人になってたの?」

西瓜「……それは……そうでもしないとリーダーに目を付けられるから……」

兄「……そこまでして、どうしてお前はそのリーダーに手を貸す?」

西瓜「手を貸せば、強い奴と戦わせてくれるって言うから……」

兄「ならば、俺に手を貸せ」
29 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:48:27.52 ID:LvNuVMw7o
西瓜「なんでだよ」

兄「……戦わせてやるよ。強い奴と」

西瓜「……」

兄「なんなら、俺が手合わせしても構わないが、今は忙しいんでね。……手伝ってくれたら、早く戦えるだろうな」

西瓜「ちっ……良いぜ。リーダーとは気が合わないしな。お前の側に付いてやる」

兄「良いだろう。それで、そのリーダーはどこにいる?」

西瓜「……知らん。私はリーダーの姿を見たことがない」

兄「なんだよそれ!!」

西瓜「用心深いのか誰にも姿を見せていないんだ」

兄「……」

妹「うーん……みんなどこに行ったのかなぁ……」

兄「手詰まり、か。魔術も無ければ犬の嗅覚もないんじゃ……」

下っ端「心配する事はないぜ……?」

西瓜「お前は!! 下っ端!!」

兄「……友が殺したはずだぞ」

下っ端「あの程度で死ぬとでも……? それにしても西瓜、可愛い顔してるじゃねーか……」

西瓜「随分偉くなったつもりでいるな。ボスの居場所を知っているなら吐いてもらおうか」

下っ端「くくくっ……ボスの居場所? お前の目は節穴か?」

兄「……そうか。お前がボスだったのか!!」

下っ端「正解に近いが……少し違うな」

西瓜「どういう事だ!」

下っ端「……誰でもボスになれるのさ!!」

 下っ端の体から力が抜け落ちる。

兄「なに!? ……今のは一体どういう事だ!?」

妹「どういう事なの?」

西瓜「どういう事なんだよ!!」

影女「こういう事さ……」

兄「影女……どういうつもりだ……」

妹「お兄ちゃぁん! 体が動かないよ!!」

影女「この女の力は便利だなぁ……どんな事でも思いのままだ」

西瓜「くっ、来るな!! 来るなよ!!」

影女「君はせっかくの可愛い顔が戦闘狂いのせいで台無しだ」

兄「影女……操られているのか……!?」

影女「戦えなくなれば……少しは可愛いペットになるかな?」

 影女の手が巨大な刃物に変じる!!

影女「西瓜が食べられない様に腕を切り落としちゃおうか……」

西瓜「ひっ……やめろ!!」

 ズブシッ!!
30 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:49:49.52 ID:LvNuVMw7o
西瓜「くっ……」

影女「捕縛の術を破るとはね……」

兄「へっ……あの程度の術でいい気になるなよ……!!」

妹「お兄ちゃん!?」

西瓜「ば、馬鹿!! 貴様何の真似だ!!」

兄「庇ったに決まってるだろ。言わせんな」

西瓜「うぐ……誰がそんな事を頼んだ!!」

兄「体が勝手に動いたんだ。気にすんな」

影女「勇ましいねぇ……でもどうするんだ? その傷で、俺に勝てるとでも?」

兄「へっ、この程度、つばでも付けとけときゃ治るぜ」

影女「そうか……これはどうかな!?」

 落下の術が兄へ牙を剥く!!

影女「落ちろ……永遠へ……!!」
 
 闇が口を開く……!
 兄はこのまま常闇へと消えるのか。

西瓜「この野郎ぅ!! 戦う前に消えるなんて許さねぇからな!!」

 西瓜が捕縛の術を破り、兄の手を掴む!

兄「くっ……すまねぇ、助かった」

影女「……なら、二人仲良く闇に消え――」

妹「兄さん、ごめんなさい」

 小さく謝罪を呟いた妹は影女の眼前にあった。
 可愛らしい小ぶりな唇が、影女のそれに重なる。
 天使の如き少女と、影に潜む薄幸の美女の接吻。

影女「ん……んん……!?」

 戸惑う影女を他所に妹は激しく迫る。
 触れる物へと祝福をもたらす両手で影女の顔を捕らえ、口内では舌を躍らせる。

影女「ん……んぁ……」

 影女は恍惚の表情を浮かべる。
 彼女にトドメを刺すかの如く、妹は激しく吸い付く。

妹「んん……ぷはっ……」

 薄紅の唇を真紅の舌で一周なぞる。
 次いで、レースのハンカチで口元を拭った。

妹「女性とキスしてしまいましたが……吸い出せたので、結果良しとしましょう」

 肉体を捨て、他者に乗り移る力を持つリーダーは妹の内で消滅していた。
 彼女の肉体のみならず、心でさえ汚れる事は許されない。
 世界が彼女に美しくある事を求めているのだ。

妹「兄さんごめんなさい。初めてを貴方に捧げられませんでした……」

 兄と西瓜は極限状態のまま妹の声に聞き入っていた。
 意味を理解する事や記憶する事の出来ない美しき音色に。
31 :1 [saga]:2012/03/13(火) 02:50:25.94 ID:LvNuVMw7o
妹「……お兄ちゃん! お兄ちゃん大丈夫!!」

西瓜「はっ!? い、今引き上げるぞ!!」

兄「ああ……!!」

妹「お兄ちゃんっ!!」

兄「おお、よしよし。お兄ちゃんは大丈夫だよ」

妹「うぐっ、ぐすっ……えうぅぅ……」

兄「よしよし」

西瓜「……」

兄「……ちょっと離れててくれるか?」

妹「えぅぅ?」

兄「約束があるからな」

西瓜「……忘れていなかったようだな」

兄「ああ。約束を守らない男にお兄ちゃんは務まらないからな」

西瓜「……楽しませてもらうぞ」

兄「俺の拳は鉄よりも硬い!! 行くぜ……お兄ちゃんパン……」

西瓜「楽しみは後に取って置くタイプだ。傷が治った貴様と戦う事にするぜ」

兄「……」

西瓜「また会おうぜ! その時はぶっ殺してやるからな! その拳! 錆びない様に磨いとけ!!」

妹「……あのお姉ちゃん、何だか格好良いね?」

兄「風情のある奴だ……さてと、そろそろ影女を起こして犬と友を探し出すか」

妹「うん!!」

第三話『俺の拳は鉄よりも硬い、それでいて錆びる事がない』
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 03:03:50.87 ID:8OFCAQXno
なんだろう…なんかカッコいい
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/03/13(火) 03:50:05.63 ID:ECfzBy31o
こういうぶっ飛んだ設定好きだぜ
更新頑張ってくれ
34 :1\ [saga]:2012/03/13(火) 05:49:35.45 ID:LvNuVMw7o
第四話『宇宙からの使者』


兄「昨日のニュース見たか?」

友「おうよ。UFOがこの町に墜落したんだってな!」

嬢「……本物だったら嫌ねぇ」

兄「だよなぁ……見た目も気持ち悪いし、意外と強いし……」

友「ははっ、どうせ人工衛星か何かだろ? お前らなに真面目に語ってるんだよ!」

嬢「ま、ニュースで見る限り、前回よりは少ないでしょうね」

兄「だなぁ。攻めて来たのか、事故か分からんが……戦いにはなるよなぁ」

嬢「でしょうね。あいつら、文明のレベルが低い星ではなにしても良いと思ってる節があるもの」

兄「ああ……早く地球の科学が進歩しねぇかなぁ……」

嬢「でも戦争になっても困るわ。地球人も強欲だもの」

友「……なぁ? お話の邪魔して申し訳ないが、一つ聞いても良い?」

兄「なんだ?」

友「君たち、宇宙人を見たことあるのか?」

嬢「嫌と言うほど見てるわよ」

兄「ああ。姿形が俺たちと全然違うのに、妹を狙うんだよ。なんでだろうな」

友「マジかよ……宇宙人って実在するのかよ……」
35 :1\ [saga]:2012/03/13(火) 05:50:51.98 ID:LvNuVMw7o
 その頃妹は……

妹「ねーねー。生徒Bちゃん。校庭にいるの、なんだろ?」

生徒B「へ? なにあれ……」

妹「大きな虫さんかなぁ……」

生徒B「て、ててて、て言うか、空の色おかしくない!?」

妹「あれぇ? もう夕方になるの?」

生徒B「そ、そんなはずは……っていうか、紫に近い!?」

妹「綺麗だねぇ……」

生徒B「妹ちゃんが純粋過ぎておしっこ漏れた!!」

妹「あ! こっちに来るよ。おおーいー!!」


 兄は戦闘に参加出来うる人物を招集していた。

兄「どうやら、本物だったらしいな」

嬢「そうね。うんざりだわ」

会長「ああ。しかし……影女くんは何時も良い仕事をしてくれるな」

兄「だな。真っ先に奴らに気づいて結界を展開してくれた」

友「その結界って奴のせいで空があんな色に……?」

兄「『可能性の交差点』それがこの結界の名だ」

友「え? なに?」

嬢「言っても仕方ないわ。……兄の家のワンコはいないの?」

兄「流石にな。本物かどうか分からなかったし、連れてきていない」

会長「前回より数は少ないんだ。私たちで何とかして見せようじゃないか」

友「あ、あのさぁ、前回も学校で戦ったのか?」

兄「ああ? ……そうか。お前は前回真っ先に死んでいたな」

友「えっ……」

会長「結界の効果で生きているんだ。影女くんに感謝するんだな」

友「えっ……あの、どういう理屈で……」

嬢「っと。お話してる場合じゃないわね。私は隠れてるわ」

会長「私は先鋒を務めよう。兄は妹ちゃんの所へ急ぐんだ」

兄「そうさせてもらう。悪いな。行くぞ! 友!!」

友「え!? いやいや……全く理解出来ないまま何かが始まったぞ!?」
36 :1 [saga]:2012/03/13(火) 05:52:23.21 ID:LvNuVMw7o
 校舎一階、玄関付近にて。
 会長と対峙するは、異形の集団。

会長「悪いが、お引き取り願おうか」

青目「ほう。わざわざ苗床が出向いてくれるとは」

 先頭に立つ青年は人に近い姿を持っている。
 青い瞳を四つ持つ事を除けば、人と変わらないだろう。

会長「そんな物になる気はない」

 生徒会長が手のひらをかざす。
 虫も殺せぬ様な繊手に青目は怯えた。
 秘めたる力が解き放たれる寸前で、回避する。
 背後に控えていた異形の一部が歪む。
 異形を捉えた見えざる風車が加速度的に回転する!!
 まるでミキサーにかけられたの如く、肢体を細切れにされる異形の集団。

青目「驚いたな。今のは髪を使ったのか?」

会長「見抜いていたとはね。私も驚かせてもらったよ」

 ちっとも驚いた風には見えない生徒会長が肩をすくめた。

青目「厄介だな……虫ども! 散れ!!」

 虫と呼ばれた異形が四散し、校内へと向かう。

会長「逃す訳にはいかないな。生き返るとは言え生徒たちが苦しむ姿は見たくないんでね」

 肩口で切りそろえられた髪が真っ白に染まり、四方に伸びる
 蜘蛛の巣と化した生徒会長の髪に異形がかかる。

青目「ふっ……せっかくの綺麗な髪が、奴らの体液で台無しだぞ?」

 八割近くの異形がその身を切断されていた。
 緑や青の体液が生徒会長が張った蜘蛛の巣から滴り落ちている。

会長「この身も髪も……ある男に捧げていてね。汚すくらいは許してくれるはずだ」

青目「一途だなぁ……。そんな女性を苗床にするのも一興だ。そろそろ僕も本気を出そう」
37 :1 [saga]:2012/03/13(火) 05:53:52.59 ID:LvNuVMw7o
 その頃嬢は……
 二階女子トイレの個室にいた。

嬢「全く。宇宙人も暇なのね……」

 ぶつくさと不平を垂れながら、制服を脱ぐ。
 下着も脱ぐ。

嬢「寒いわ……早く変身してしまいましょう」

 密かに気にしている成長の遅い胸元へ、円盤状の機器を押し当てる。
 真っ白い嬢の肌を黒が覆っていく。
 じわじわと領土を広げ、やがて全身が黒く染まる。
 口元だけが、彼女のままだ。

嬢「エレメンタルガール、参上!! ……なんてね。馬鹿やってないで行きますか」

生徒C「ぎゃああぁぁっ!? くっ、この虫口の中に入りこん……」

生徒D「ど、どうした!?」

生徒C「う……おげええぇぇ」

 ゲロゲロゲロゲロゲロゲロ

人型「うう……ああ……?」

生徒D「ひっ!? もがっ!?」

 にゅるにゅるにゅるにゅる

生徒D「げほっげほっ……何を……ん!? ……ぐぇえぇえぇ」

嬢「……もう始まってるのね」

生徒C「ニンゲン……ナエドコ……!!」

 生徒Cの指が縄の様に伸びる!!

嬢「火のエレメント!!」

 黒い体に真っ赤な模様が描き出される!
 嬢が口を小さくすぼめ、軽く吐息を吐き出す。

生徒C「グ……ギ……!? ユビ、ヤケル!?」

嬢「貴方は何も悪くないけど、今は死んで置く方が幸せよ?」

 業火が生徒二人と人型の異形を焼き尽くす!!

嬢「……風のエレメント!!」

 翼を生やした嬢が兄の元へ向かう。
 
兄「おっと……珍しくデカいのが来たじゃないか」

妹「お、お兄ちゃんーあれなにー?」

友「ひっ、ひぃぃ!!」

棘頭「ぎひひひ……」
38 :1 [saga]:2012/03/13(火) 05:55:03.47 ID:LvNuVMw7o
兄「……逃げるか」

友「えっ……逃げるのか!? 俺は賛成! 大賛成だけど! ここに残ってる生徒たちは!?」

兄「知ったこっちゃない。俺、宇宙人は苦手だ。二回くらい死んでるし」

友「ええっ!?」

妹「お兄ちゃん、幽霊さんなの?」

兄「いや、そういう訳じゃないんだが……とにかく、ここは一般人を盾に逃げるぞ!!」

友「ええっ!?」

生徒F「ひぃ!? な、なにするんですかー!?」

兄「悪く思うな。きっと生き返らせるからよ!!」

棘頭「ぎひ……!?」

兄「その女の子で遊んでろ! じゃあな!!」

 タッタッタっタッタッタった

友「お、おいおい! 良いのかよ!! お前お兄ちゃんなんだろ!?」

兄「だからこそ非道になる必要もある」

妹「んーと……生徒Fちゃんと、とげとげ頭のおじさん、仲良く出来るかなぁ?」

兄「ああ、大丈夫だよ」

友「……」

友(俺のこともあんな風に切る捨てるんだろうな……兄は……)
39 :1 [saga]:2012/03/13(火) 05:56:41.93 ID:LvNuVMw7o
 兄が立ち去った教室では……

棘頭「ぎひひ、俺の苗床になれて幸せ者だなぁ……」

 寄生相手を定めた棘頭は生徒Fだけに集中していた。
 他の生徒はその隙に教室を抜け出してしまった。
 誰一人、生徒Fを助けようとする者はなかった。

生徒F「酷い……みんな友達だと思っていたのに……!!」

 眼前に迫る醜悪な異形よりも、裏切られた事で頭が一杯だった。
 すでに正気を失っているのか。

生徒F「許さない……許さない……」

 床にへたり込んだ生徒はうわごとの様に繰り返す。

棘頭「ぎひっ……まずはここだぁ……」

 人間の倍近くの大きさを持つ手で器用に生徒のスカートをめくりあげる。
 虚ろな瞳はその様子を捉えながら、関心は持たなかった。
 下着の中心を鋭利な爪でなぞる。
 切り開かれた下着から女性器が顔を覗かせる。
 血が滲んでいる。
 その痛みで現実へと引き戻されたのは、不幸と言えよう。

生徒F「ひっ!? な、なに、いやっ……やだっ……!!」

 恐怖から体に力は入らない。
 逃げようにも、手も尻も、床に擦り付ける様な動作を繰り返すばかりだ。
 棘頭が頭部に突き刺さる無数の棘から一つを抜き取る。
 この化け物にも血は流れていた。
 真っ青な液体が栓を失った穴から流れ出ている。

生徒F「ゆ、許して! 許して、ごめんなさい、ごめんなさい!!」

 恐怖から逃れようと生徒は意味もなく謝罪を繰り返す。
 人の心など理解出来るはずもない棘頭が尿を垂れ流す股に手を伸ばす。

生徒F「やだやだやだやだやだやだやだ!!」

 子を成す為の神聖な器官に異形の棘が突き刺さる。
 
生徒F「ひっ」

 棘頭が手を離したにも関わらず、棘自ら膣へと侵入してくる。
 ずぶりずぶりと肉を貫きながら。

生徒F「ひっ、ひあっ、はっ」

 生徒Fは痛みを感じていなかった。
 棘に付着していた棘頭の血液が、彼女を苗床にふさわしい体に作り変えていく。

生徒F「あひっ、なに、これ……良い……キモチイイ……」

棘頭「嬉しいか……?」

生徒F「ウレ……シ……イ……」

 わずかに残った人間の部分が、彼女の瞳から涙を溢れさせた。
 その涙を踏みにじる様、数分後には彼女と棘頭の子が教室を這いずり回っていた。

子「ユルサナイ……ユルサナイ……」

子「ヒドイ……トモダチ……コロス……」

 裏切られた生徒Fの感情を貰い受けた異形の子供達が目を光らせる。

生徒F「ウフ、フフフ……イッパイノンデオオキクナルノヨ……」

 衣服を剥ぎ取られた生徒Fは胸にしがみついた異形を撫でた。
40 :1 [saga]:2012/03/13(火) 05:57:31.07 ID:LvNuVMw7o
 その頃……玄関付近では……

会長「ァ……ァァ……」

青目「ふふ、どうですか? 苗床になれた気分は?」

会長「嫌だ……嫌だ……私の体は……兄に……」

青目「手遅れですよ。……最愛の人を想いながら、僕らの子供を沢山産んでくださいね」

 爽やかな笑みを浮かべ青年は歩き出す。
 残された生徒会長は全裸で横たわったままだ。
 その純白の裸体がびくびくと震える。

会長「アァァ……」

 胎内から這い出んとする異形の子供の存在を彼女は感じていた。
 一際大きく体を震わせると、性器から粘液を噴出した。

会長「アニィ……タスケテ……」

 黄緑の粘液が絶え間なく流れ出す。
 
会長「イヤ……だ……」

 彼女の意思を無視して、粘液に覆われた白い卵が産み落とされた。
41 :1 [saga]:2012/03/13(火) 05:58:40.05 ID:LvNuVMw7o
友「……? 嬢?」

嬢「……誰よそれ」

友「いや、嬢だろ!? 嬢だよな? なんでそんなエロい格好してるの!?」

 全身の凹凸が見て取れる黒いスーツは確かに扇情的だ。

兄「お前! 失礼な事を言うな! この人は宇宙人と戦ってるエレメントガールさんだ!!」

友「えっ……」

妹「初めまして、えれ……なんとかガールさん!!」

嬢「ええ、初めまして。それより、どう? 今回の敵は」

兄「結構ヤバイかも知れない。数は少ないが、強いのが数体いると見ている」

友「あ、ああ……さっきも他人を犠牲にして逃げて来たしな!」

嬢「そう……」

兄「そんなに怒るなよ。友……」

友「うる――」

子「ユルサナイ……ユルサナイ……」

妹「友兄ちゃん!?」

子「ガリ……バリバリ……」

嬢「切り裂け! 風のエレメント!!」

 嬢の指先から放たれた一陣の風が異形の子をまっぷたつに切り裂いた。

妹「うー……友兄ちゃん……ぐすっ、ぐすっ……」

兄「よしよし。大丈夫だ。友は必ず生き返らせるから」

嬢「状況は良くないわね。生徒会長もやられたみたいよ」

兄「くっ……」

嬢「加えて、数も増えて来ている。幼虫が育ち切る前に決着を付けないと不味いわ」

兄「とは言え、さっきの棘頭には俺の体術じゃ……」

嬢「……ちょっと静かに。影女さんから通信が来てるわ」

兄「……」

影(非常に宜しくない状況です。生徒会長さんを殺した宇宙人が屋上に向かって来ています)

影(結界を維持する為にも、至急、排除に向かってください。青い瞳の人型です)

嬢「……らしいわ。私は先に行くけど、出来たら援護をお願いね」

 ヒューンッ

妹「あのお姉ちゃん! 空を飛んでる!?」

兄「……俺たちも急ごう」
42 :1 [saga]:2012/03/13(火) 05:59:55.64 ID:LvNuVMw7o
 タッタッタっタッタ

棘頭「ぎひひひ……いたいた……」

兄「ちっ……急いでるってのに……」

妹「お兄ちゃん……」

棘頭「今度はそっちの可愛い子を苗床にしたい……ぎひひ、寄越せ……」

兄「悪いな。下等な宇宙人の言葉は理解出来ない。何だって?」

棘頭「ギ……ヒッ……!!」

 棘頭の振るう豪腕を何とか回避する兄。

兄「おっと……危ない所だった。おいおい、喋れないのか? 下等な宇宙人ってのはよ」

棘頭「ギギギ!! 死ね!!」

 激情に任せて棘頭ががむしゃらに殴りつける。

兄「お兄ちゃんジャンプ! お兄ちゃん宙返り! お兄ちゃんでんぐり返し!!」

棘頭「ちょこまかと……鬱陶しい奴だ!! ギギッ!!」

 棘頭の攻撃パターンが読めて来た兄は余裕の表情で回避に移る。

兄「ぐっ……」

 兄の腹には巨大な棘が突き刺さる。

妹「お兄ちゃん!?」

兄「逃げろ……!!」

 刺頭が口から棘を吐き出すとは予想していなかった。

兄「う……はや……く……」

 妹へ伸ばした腕が力なく垂れ下がる。

妹「お、お兄ちゃん!! お兄ちゃんヤダよ!! 死んじゃイヤ!!」

棘頭「ぎひっ……無駄だ……もう死んでいる……ギヒヒヒ!!」

 妹の声に変化が起こる事はなかった。
 棘頭が妹へと歩み寄る。

妹「兄さんが……兄さんが……」

 彼女の美しさの根源は愛だ。その対象たる兄がいない世界では輝きを失う。
43 :1 [saga]:2012/03/13(火) 06:01:08.72 ID:LvNuVMw7o
棘頭「ギギギ……!!」

 柔肌に無数の傷を刻みながら、妹の衣服を剥ぎ取る。

棘頭「ギヒ……お前は特別だ……地球人式の交尾で寄生してやろう、ギヒヒ!!」

 世界を支配しかねない美しき少女は今や哀れな存在でしかない。
 小さな体躯に刺頭の無骨な肉体がのしかかる。

棘頭「ギ……!?」

 棘だらけの体が、柔肌を血だらけにする寸前で動かなくなった。

棘頭「ギー!!」

 次いで二つを引き離す様に、刺頭が吹っ飛ぶ!!

兄「……」

妹「兄……さん……?」

 腹にぽっかりと穴を開けた兄が、無表情で立ち尽くしている。
 妹の声には何の反応も示さない。

棘頭「お前は殺したはずだ……!!」

兄「……」

 この侵略者にも恐怖が存在したのか。

刺頭「くっ……ギギ!!」

 吐き出された細かな針が兄の全身に突き刺さる。

兄「……」

 無言のまま、棘頭へとにじり寄る。
 その姿に人間らしさは一つも見当たらない。

妹「兄さん……」

 死してなお、兄は自らに課した使命を忘れていなかった。
 お兄ちゃんである事。
 呪いの様に彼を縛り付けている。

兄「……」

 体の損傷を一切考えに入れていない強襲に、刺頭は追い詰められていた。

棘頭「ギギギ……!」

 肉体が使い物にならなくなろうと、兄の執念は消えはしない。
 削ぎ落とされた指が、歯が骨が、個別に動いて棘頭を内から破壊する。

棘頭「ギ……ィ……アアアァ……」

 だらしなく口を開いた刺頭は青い血液を大量に吐き出し、絶命した。
44 :1 [saga]:2012/03/13(火) 06:02:34.57 ID:LvNuVMw7o
 四階、階段付近にて……

青目「また苗床か。もう十分なのだがね」

嬢「ご安心を。苗床になるつもりはありませんから」

青目「そう言って、僕と戦って痴態を晒した女を知っているよ」

嬢「……彼女はこの世界を活かし切れていないわ。私は違う」

青目「ほう? どうすると言うのか」

嬢「この命。300秒に賭けるわ。エレメント全開ッ……!!」

 嬢の体に張り付く黒き衣が膨れ上がる。
 煮えたぎる溶岩の如く気泡を吹き出し、形を変える!!

嬢「ああぁん……全身がズブズブに焼かれるこの感触たまらないわ……!!」

 黒き衣は無秩序に凹凸をうねらせ、時に水面の様に揺らめき、時に開いた穴から火を吹く。
 地表の変異を凝縮したかの様相を見せていた。

嬢「ふふ……この瞬間だけは貴方に感謝出来るわ……」

青目「ふっ……随分と派手な変化だが……力がなければただの飾りだ!!」

 四つの瞳から放たれた光線が嬢を貫く。

嬢「あはっ……今なにしたの?」

青目「なにっ……!?」

嬢「分からない? 今私は誕生と消滅を繰り返しているの……一度や二度の死はくすぐったいだけよ」

青目「これでもか!?」

 青目の口から青い霧が生み出される。
 それに包まれた嬢は、笑った。

嬢「だから言ってるでしょう? 生徒会長に使った手はなに一つ通じないわ」

青目「くっ……化け物が!!」

 無数に光線を放つ青目だが、その顔は恐怖に歪んでいる。
 いくつもの惑星を蹂躙してきた男が、嬢の前では怪談に怯える子供同然だ。

嬢「そろそろ飽きてきたわね……大人しく、死になさい!」

青目「がっ!?」

 嬢が青目の頭を鷲掴みにする。

青目「あががががががが!!」

 ぷすぷすと音を立て、青目が焼けてゆく。
 断末魔の叫びに嬢は口元を歪めた。

嬢「あふっ……良い気持ち……エレメントを開放すると……私壊れちゃうの……」

嬢「ゆっくりと、時間一杯使って、苦しめてあげる……うふふ……」
45 :1 [saga]:2012/03/13(火) 06:04:56.97 ID:LvNuVMw7o
 やがて、青目にとって永遠と等しい5分間が過ぎ去る。
 残ったのは、頭部を失った青目の死骸と嬢だけだ。
 全身を覆う黒が、ゆっくりと胸元に収縮して行く。
 露になる裸体は目を覆いたくなる様だった。
 ケロイド状に爛れている箇所はマシな方だ。
 黒く焦げた骨が見えるほどに焼けきった部分もある。
 嬢と分かるのは口元のみ。
 毛髪は縮れあるいは焼け落ち、眼球はその全てを空気に晒している。

嬢「影女さん……これで後は任せて良いわね……?」

影女(お疲れ様でした。『可能性の交差点』を作動させます)

 世界がゆっくりと、別の可能性へと移行してゆく。
 残った幼虫どもはそれに干渉する事も出来ずに消える。
 全ての死者はその肉体を取り戻し、消える事のない心の傷は跡形なく忘却の彼方へ消え去る。
 破壊された校内は綺麗に、復元され、時は戻る。
 宇宙人に侵略されなかった場合の、兄妹が通う学校へ、世界は切り替わった。

友「あれ? 俺たち今何を話してた? えーっと、UFO……? なんだ? 俺、何か忘れている気が……」

嬢「終わったようね、兄」

兄「ん。そうだな……」

 世界が復元される際、一部の者は記憶を残されている。
 影女がそうしている。
 次の襲撃へ向けて、知識を貯めるためと生徒会長が提案した。
 
友「なに? 何の話だ?」

兄「そのUFOは偽物って事だ」

友「は……?」

 戦いに参加する兄、生徒会長、嬢のみの記憶が残る。
 死の間際の苦しみや、敗北時の陵辱を除いてだ。
 妹の記憶も綺麗に消えている。
 全てを見届け、記憶しているのは影女のみ。

影女「……」

 彼女が正気を保っていられるのは、ひとえに兄の存在による。
 やや歪んだ愛情だけが、影女の心を支える器だ。

影女「今日は……兄くんのTシャツを抱きしめて眠っても……良いですよね……?」

 悽愴な記憶が生み出す負の感情が器から溢れ出ぬ様、今日も彼女は兄を影から見ている。

第四話『宇宙からの使者』終了
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 08:20:56.82 ID:Jvt/cyODO
なにこれくそおもしれえ
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/03/13(火) 17:24:34.36 ID:ETC7X+URo
一話ごとじゃないんだな
48 :1 [saga]:2012/03/14(水) 05:16:01.23 ID:NLi3QD8+o
第五話『永遠の在りどころ』


 大手町フラワーランド。
 高台に位置するこの観光名所は、鮮やかに咲き乱れた花々が訪れる者を歓迎する。
 
 良く晴れたある日、花は突然つぼみ出した。
 来訪者の一人である、幽玄の美しさを持つ少女の姿を認めた為だ。
 花々は自惚れていた事を恥じたのだ。

妹「お兄ちゃーん!! お花がみんな閉じてるよぉ!!」

兄「……なんだろうな」

犬「ご主人様ー! こんなに沢山あるなら一本くらい食べても良い!?」

兄「こら! それは食い物じゃ……答えを聞く前に食べるな!」

犬「むしゃむしゃ……うっ……不味ぅいです……」

兄「当たり前じゃないか。と言うか、ここの花はどうなってるんだ?」

妹「私、綺麗に咲いたお花がみたいよー!!」

兄「そ、そうだよな! こら! 花!! 咲け! 咲けよ!! 聴いてるのか!?」

犬「……ご主人様ー……みんながこっち見てます……」

兄「俺とした事が、つい熱くなってしまったな……」

妹「うぅうー……お花みたいよぉ……」
49 :1 [saga]:2012/03/14(水) 05:19:15.54 ID:NLi3QD8+o
兄「くぬぅ……お花見せてあげたいよぉ……!!」

 駄々をこねていた妹の顔が冷たい色を帯びる。
 空気が止まる。世界が静聴の佇まいへと直った。

妹「聞きなさい」

 大気が揺らめくのは、照れだろうか。
 天上の音色は、命ずる。

妹「花よ、定められたその使命、果たしなさい。私と兄さんの為に」

 瞬間、花々は満開に。命じられるまま、彼らを祝福する為だけに。

兄「おお!? 急に花が咲いたぞ!? よかったな!」

妹「うん! 綺麗ー……ありがとうお兄ちゃん」

兄「いや、俺は何も……おい! あんまりはしゃぎ過ぎて転ぶなよ」

妹「えへへ! 大丈夫!!」

 園内の隅に建てられた特別展示棟から覗く視線に彼女は気付かない。
 一心に花を愛でている。

 視線の主は興味をなくしたのか、ふっと光届かぬ暗い室内へ消えた。
 万年閉鎖中の特別展示棟に如何なる花が存在するのか、知る者はない。

 一通り見て回った兄妹が去った後、園内の花は残らず枯れ果てた。
 彼女の為により美しく、より華やかにあろうと尽力した結果だった。
 荒涼たる園内に残された人々はその景色に関わらず、心を震わせたと言う。
 物言わぬ植物の献身的な行為は人に理解できずとも伝わっていた。
50 :1 [saga]:2012/03/14(水) 05:19:54.39 ID:NLi3QD8+o
 その翌日。

兄「まただよ……」

友「だなぁ……」

兄「また誘拐だよ!! 本当にもう! 俺にテレビ見る時間くらいくれよ!!」

友「テレビくらい見れるだろ……」

兄「……妹と犬がじゃれ付いて来て、ゆっくり見れた事ねぇよ」

友「自慢か!? 自慢なのか? 歯を食いしばる振りをしろ! 殴る振りをするから!!」

兄「なんでフリだけなんだよ」

友「馬鹿かお前!! 俺がお前に喧嘩で勝てるわけねーだろ!!」

兄「俺も負ける気はしないが……」

友「だろ! くっそー!! せめてもの報いだ! 殴られたフリをしろ!!」

 タッタッタッタッタッ

会長「……校門で頭のおかしい男が騒いで居ると聞いて来た。君か」

友「ど、どうして俺を見るんですかっ!! 兄かも知れないだろ!!」

会長「断言しよう。それはない」

兄「ああ。そうだぞ、失礼な奴だな」

友「むぅ……」

会長「どうした? また誘拐か?」

兄「そうだ。また誘拐なんだ。犬ー! 犬よ来い!!」

 ズダダダダダダダダダダダ

犬「ご主人様ー! ご主人様ー!!」

兄「埃が舞うから俺の周りを走り回るな」

犬「あいっ! 敬礼っ!」

友「ちくしょう……いつ見ても可愛い羨ましい……」

会長「この犬娘、兄と同棲してるのか……羨ましい……」
51 :1 [saga]:2012/03/14(水) 05:20:22.84 ID:NLi3QD8+o
兄「どうして呼ばれたのか、分かっているな?」

犬「もちろんですよ、ご主人様ー」

 スンスンスンスンスンスン

犬「あれ? お花の匂いが強くて、妹様の匂いが……」

兄「まさか、分からないのか!?」

犬「ひゃぅ! 怒らないでご主人様ー」

兄「えっ、いや……別に怒ってないぞ」

会長「……サディスティックな兄も良いものだな?」

友「俺に同意を求めんでください」

友「……兄、どうするんだ?」

兄「匂いが辿れないとなると……いや、待て」

会長「そうだな。花の匂いを辿れば良いのではないか?」

友「そうか! 簡単な事だったなぁ……」

 スンスンスンスンスンスン

犬「ここです! ここです、ご主人様ー! ご褒美っ! ご褒美っ!!」

兄「ああ、はいはい」

 ぷちゅぅ

犬「ふ……ふひゃぁぁ……」

会長「倒れたぞ!? と言うか、兄! 今何をした!?」

兄「腹にキスだが……どうかしたのか?」

会長「む……ぅ……兄!!」

兄「なんだよ」

会長「……後で私にも腹で良いからキスしてくれないか?」

兄「んー? 別に構わないが……」

会長「よしっ!! 今日の私は頑張れるぞ」

友「ぐぬぬぬ……ちくしょぉおぉぉおおぉ……ちくしょぉぉぉ……」

兄「おわああああああ!?」

会長「うわあぁああああああ!?」

友「な、なんだよ!?」

兄「お前がなんだよ!! 血の涙を流して怨霊の様な顔しやがって!!」

会長「敵がいきなり真横に立っていたと勘違いしたぞ」

友「ひどいや……」

兄「……ん。そう言えばここ、昨日来たな」

友「フラワーガーデンに一人で? ぷっ……お前は詩人か何かか? ぷぷ」

兄「いや、妹と犬と一緒に」

友「くそ!!」
52 :1 [saga]:2012/03/14(水) 05:21:27.77 ID:NLi3QD8+o
会長「……ならばその時に妹ちゃんに目を付けたのか?」

兄「かも知れん……。あれ? なんだよコレ……」

友「花が全て枯れているだと!?」

会長「……何があったんだ?」

兄「知らん。と言うか、花が一つもないのに匂いはここからなのか?」

友「おお……それは確かにおかしいな」

兄「ここで本当にあっているのか、確かめようにも……」

 犬はくてっと地面に倒れている。

会長「仕方ない。手分けして、怪しい場所を探してみようじゃないか」

兄「そうだな……」

 …………。
 ……。


会長「どうして君は私に付いて回る」

友「えっ、だって俺戦えないし……かと言って兄に守ってもらうんじゃつまらないし……」

会長「情けないな」

友「お、俺だって好きで弱い訳じゃないぞ!!」

会長「そうか……。とにかく、真面目に探すんだぞ」

友「分かってますよ。おおーい! 妹ちゃーん!!」

会長「一体どこに……」

 舗装された道を外れ、腐葉土に足を踏み入れると同時!!
 生徒会長の足に地中から伸びる蔦が絡まる!!

会長「なにっ!?」

友「せ、生徒会長!!」

 ズブズブと地面にめり込む会長の体。
 並の少女にあらぬ力を持つ彼女が手早く応戦へ移る。
 白い髪が蔦を切り裂かんと牙を剥いた!!

 足首に傷を残しながら、蔦の排除に成功する生徒会長。
 ほっと息を吐く友と対照的に生徒会長の顔に焦りが浮かんだ。
 身体能力の低下を彼女は感じている。
 原因を鼻腔をくすぐる甘い香りと特定するも、成す術は無かった。

 体の力が抜け落ち、意識が飛んだ。
 好機を見逃す敵ではなかった。新たに出現した蔦が、生徒会長を今度こそ、地中へ引き込む!

友「くっ!?」

 次は自分の番かと足元を見る友。
 しかし、彼は相手にされていなかった。
 
友「俺って……いや、ここでメソメソしている場合じゃない!! 兄ー!!」
53 :1 [saga]:2012/03/14(水) 05:21:58.33 ID:NLi3QD8+o

 タッタッタっタッタった

兄「なに……生徒会長が地面に飲み込まれた?」

友「そ、そうなんだよ!! 土の中から蔦が伸びて来て……!!」

兄「……そうか。急がねばな……。ところで友、この展示棟、怪しいと思わないか?」

友「へ? た、確かに怪しいと思うが……」

兄「だろう? だけどな、入口がないんだ」

友「……本当だ」

兄「こういう時は、あいつの出番だな! 影女ー!!」

影女「は、はい! 兄くん! ここにいますよ!!」

友「い、いつも思うけど、意外と近くにいるよな、君……」

影女「えへへ、私の卓越したストーカー技術の成せる技です……」

兄「そんな事はどうだって良い!!」

影女「ひゃ、ひゃぃ!! 入口ですよね……?」

兄「そうだ! 分かってるなら早く答えろ!!」

影女「はぅあぁ……こ、こっちですぅ……」

友「ん? 展示棟から離れるのか?」

兄「どういう事だ!!」

影女「あひゅっ……こ、こっちに隠し階段があるんです……」

兄「だったら早く開けろ!!」

影女「ひゃっ、あっ……怒鳴られ過ぎて、私……あッ……んんっ……ん……はぁはぁ……」

兄「涎撒き散らかしてだらしない顔を晒してる暇があるなら早くやれって言ってるだろ!?」

影女「ひゃ、ひゃぁい……」
54 :1 [saga]:2012/03/14(水) 05:22:27.33 ID:NLi3QD8+o
友「お、おいおい……お前、どうしてこの子にはキツく当たるんだ?」

兄「え? いや、そうしてくれって本人が……」

友「マジかよ……かなりの被虐願望を持ってるんだな……よし! 俺もいっちょやったる!!」

友「オラァ!! メス豚がぁ!! 股開く前に、階段を開きやがれ!!」

影女「……」

兄「……」

友「えっ……」

影女「……聞きました? 今の」

兄「ああ。悪いな、お詫びに頭撫でてやる」

影女「兄くん……いじめられるのも良いけど……これも気持ち良いですぅ……」

友「……」

兄「あいつ……人として大切な物が抜け落ちてるんだ。それに気づかない可哀想な奴なんだ。許してくれ」

友「ひ、人を社会不適合者の様に語るな!!」

影女「……兄くん、ほら、階段の入口が開きましたよ……」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

兄「流石だな。アヘアヘしてるかと思ったら、きっちり仕事してやがる」

影女「えへっ……兄くんのストーカーですから……」

友「こ、この暗い階段を降りるのか? 本気で?」

兄「もちろんだ。展示棟への入口があるのなら、そこに何か居る! 行くぞ!!」

 ズダダダダダダダダダ

友「三段目までしか見えないのに滅茶苦茶な速度で!?」

影女「風よ集え……私を……運んで……」

 スイーッ

友「ふわふわと宙を浮いて降りていった!! ……こ、怖いけど俺も行かなくちゃ……!!」

 トン……トン……トン……
55 :1 [saga]:2012/03/14(水) 05:24:07.40 ID:NLi3QD8+o
 その頃生徒会長は……

会長「薄気味の悪い所だ……」

 地中で気を失い、目覚めたのは見知らぬ廊下だった。
 体に付着した土を払いながら、先の見えぬ道を行く。

会長「……特別展示棟、と言う所か? その割には見たことある花ばかりだ」

 壁には四角い窪みが等間隔に設けられており、その中で鉢に植えられた花が咲いている。
 鉢から土がこぼれ落ちている窪みもあれば、花が枯れてしまっている物もある。
 設備の割に、粗末な管理だ。
 冷ややかな視線の先で、埃が揺れた。
 
 生徒会長は周囲の状況を冷静に見ながら、歩き続ける。
 やがて、巨大な扉の前へ到達した。

会長「……特別展示室・永遠の間、か」

 扉の向こう、人の気配を認めた生徒会長が、力を開放する。
 色素の抜け落ちた真っ白い髪を揺らし、扉に手をかける。
 ゆっくりと、扉を押し開く……。
56 : [saga]:2012/03/14(水) 05:24:34.92 ID:NLi3QD8+o

続く
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 07:45:11.21 ID:tLr7i4/DO
早朝から乙
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/03/14(水) 10:03:09.10 ID:YYjmEsLyo
なんだこれ
おもしろいじゃん
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/03/14(水) 13:14:52.98 ID:GlpccKmHo
友が主人公に見える…苺ノーツ思い出した…
60 :1 [saga]:2012/03/15(木) 05:33:43.38 ID:EnEZ1ZiEo
 円形の室内はいくつもの青白い電球で飾られていた。
 ずらりと並べられた作品が小さく呼吸音を漏らす。

会長「これは……!?」

 一つの後ろ姿が、中央に設けられた台座の奥にある。
 生徒会長が上げた声を無視して、作品の一つに言葉を掛けている。

花男「ふ、ふふ……今日ね、とても綺麗な材料を手に入れたよ……」

 作品は言葉を返さない。あるいは返せない。
 人の形を持つ別の何かか、元は人だったのか。
 並べられしは裸体の若者。
 男女ともに端正な目鼻立ちと、調和のとれた体躯の持ち主だ。
 それらが苦しげに、静かに呼吸を繰り返す。

花男「え、永遠の美しさを……与えてあげるんだ……」

 苦しみをもたらしているのは、花だろう。
 口、性器、肛門、いずれかから一輪の花を咲かせている。
 花を見せる様な体勢のまま、動かない。
 生徒会長は背筋に寒いものを感じた。

花男「あ、ああ……美しい……美しい……」
 
 劣情のまま肉体を貪る訳でもなく、人間を物と扱い愛でている。
 人外の化け物とも引けを取らずに戦って来た彼女が、怯えていた。
 人の心はここまで捻くれるものかと。
 この光景を美しいと感じるのは、言葉を続ける初老の男くらいだろう。

花男「美しい……美しいと思っていたのに!!」

会長「!?」

花男「これはただの汚らしい失敗作だった!!」

 花男が大きく股を開く青年の男根に咲いた花をむしり取る。
 
青年「あ、あああぁあああぁぁああぁぁあぁぁ」

 青年の体が溶け出す。
 泥の様に緩慢な動きで、苦しみとも歓喜とも取れる表情が崩れ落ちた。
 後に残るは人の死骸とは思えぬ泥の塊。
 永遠の引換えは、骨も残せぬ死に様か。

花男「うわぁぁああぁぁぁ!!」

 花男が次々と花をむしり取る。
 残虐な児戯の様に、生命がやすやすと踏みにじられて行く。
 そこで生徒会長の体が動いた。
61 :1 [saga]:2012/03/15(木) 05:34:55.46 ID:EnEZ1ZiEo
会長「何をやっている」

 花男のつま先で、床に真っ直ぐの傷が付けられる。

花男「な、なんだ……君は……?」

会長「……そちらが招いてくれたではないか」

 生徒会長は蔦の奇襲を皮肉ってやった。

花男「きゃ、客か……?」

会長「こんな物を喜ぶ客はお前くらいだ」

花男「ざ、材料か……?」

会長「……どちらも違う」

花男「じゃ、じゃあ……」

 先の怯えも手伝い、生徒会長は次の手を決められずにいた。
 狂気を孕んだ柔和な表情に、敵意は見られない事もあってだ。

花男「わ、私が決めてやろうか……?」

会長「……私の事は自分で決める。ある少女を救いに来た、それだけだ」

花男「ち、違うね……君は材料だ……!!」

 会長の肩を掴んだ花男の頬を、白い髪が切り裂いた。
 
会長「ぐ……卑怯者め……」

花男「ふーぅ……」

 花男の吐息に、生徒会長は酷い眠気を覚えた。
 視界が歪む。
 
花男「わ、私が開発した眠り花の花粉だ……良く出来ているだろう……?」

 膝が地に着く。体を支える腕が酷く頼りなく感じる。
 黒く艷やかな毛髪がゆらりと揺れた。
 
花男「あの子で失敗する訳にはいかないんだ……君で予行させてもらうよ……」

 花男が一粒の種を取り出し、瑞々しい唇に押し当てた。
 人形の様な少女は人ととしての生を奪われるのか。
62 :1 [saga]:2012/03/15(木) 05:35:25.24 ID:EnEZ1ZiEo
 その頃兄は……

兄「……明かりが見えてきたな」

影女「長い廊下でした……」

友「光が眩しい……!」

兄「大げさな奴だ。ここも十分薄暗いだろ。陰気でイヤだね」

影女「私は落ち着きます……」

友「そ、そうか……。にしても、特別展示棟と言いながら、大した物はないな」

兄「ああ。外から見ても、窓がほとんどないんだ。ここで花が育つとは思えないし……」

影女「では一体何を展示してるのでしょう……?」

兄「……この扉の向こうに、答えがあるかも知れないぞ」

友「特別展示室……仰々しい名前だぜ」

影女「……開けてください」

兄「ああ、早く開けろ」

友「お、俺が開けるのかよ!?」

兄「お前が一番近くにいるだろう」

友「そ、それはそうだが……扉を開いた瞬間に罠が作動するとか……」

影女「兄君と比べるのが可哀想なほどに男らしくないです……」

友「ぐっ……ああ、もう! 開ければ良いんだろう!?」

 ドア、バアアアアアアアアアン

友「……」

兄「……やっぱり何もないか」

影女「やっぱり罠はありませんでした……」

友「お、お前ら分かってたのか!?」

兄「俺の感覚を舐めるなよ」

影女「私の魔術を馬鹿にしないでください……」

友「うぐぅ……意地悪な奴らだ!!」

兄「見たところ、展示されている物は一つもないな……」

影女「はい。でも……随分と床が汚くないですか……?」

友「言われて見れば……今までも埃が酷かったが、ここは泥だらけだな……」

兄「考えても分からん。次の扉を開けてみるぞ」

 ドア、バアアアアアアアアアアアアン

友「うわあぁぁぁあぁぁぁ!!」

影女「ひゃっ、な、なんですか!?」

友「こ、心の準備くらいさせろよな!?」
63 :1 [saga]:2012/03/15(木) 05:35:55.08 ID:EnEZ1ZiEo
兄「……!!」

花男「う、うるさいなぁ……」

友「い、妹ちゃん!? なんてエロい拘束のされた方なんだ!!」

 巨大な植物がまとわりつく中で、妹は目を閉じて力無げに囚われていた。

兄「てめぇが俺の妹を誘拐した変態野郎かっ!?」

花男「こ、この少女には永遠に美しく存在する義務がある……」

友「訳の分からん事を……兄! こんな年寄り楽勝だろ!?」

兄「おうよ!! お兄ちゃんパンチ!!」

花男「ふーぅ……」

 飛びかかった兄の体が、花男に到達せずに落下する!

友「あ、兄!? どうした!? 奴の魔術か!?」

影女「い、いえ、魔術が作動した様には感じられませんでした……! 兄くん!!」

花男「む、無駄だ……」

泥人形「うばばばば……」

友「い、いつのまに後ろに……!? むがっ!!」

 泥の人形に呆気なく捕まる二人。
 余裕の足取りで、花男が近づく。

花男「う、美しくない……」

友「むっむごっ!(放っとけ)」

 その吐息を吹きかけられた二人は夢の世界へ……。
 役割を終えた泥の人形は動きを止めた。

花男「じゃ、邪魔者はいなくなった……さぁ……永遠に……美しく咲き誇ろう……」

妹(兄さんが呆気なく眠らされるとは……)

 歪な足取りが妹ととの距離を縮めてゆく。

妹(意識ははっきりとしていても、あの子の状態で眠ってしまった体が……)

花男「き、君をずっと待っていた……」

妹(一か八か……ですね……)

 ぴたりと閉じていた瞼が開かれる。
64 :1 [saga]:2012/03/15(木) 05:38:44.61 ID:EnEZ1ZiEo
妹「私を開放しなさい」

 命じる言葉に彼女を拘束していた植物が応じた。
 どさりと床に落ちる美しき体。
 打たずに済んだのは、植物がクッション役を買って出た為だ。
 この怪植物の方が少女に対してずっとまともな感情を抱いている。
 歪な人間は、目を覚ました事に驚いたが、所詮小娘の力、と嘲り歩みを再開した。

花男「お、起きたなんて……びっくりしたよ……」

妹「近……寄らない……で……」

 眠り続ける体に釣られて意識が遠ざかり、消えた。
 最後に口にした酷く弱々しい命令だが、その喉が奏でたとなれば、従わぬものはない。
 だが、花男は笑った。

花男「そ、そうはいかない……」

 美人を作品の原料としか認識出来ない男に、声などあってないものだ。
 妹の美しさが、聴覚を通じた場合にもっとも良く伝わるのであれば。
 花男に従う理由はない。
 いよいよ妹も哀れな若者達と同じ運命を辿るのか。

花男「きゅ……」

 何かを口にしかけた花男だが、それ以上言葉が出なかった。
 ぼとりと、男の首が床に落ちる。

会長「間に合ったか……」

 至る所に真っ赤な線を刻んだ生徒会長が、特別展示室から現れた。
 あの時。
 眠りに落ちる寸前。
 痛みで睡魔を退けようと、自らを髪で切りつけていた。
 効果は期待した程ではなかったが、彼女はこうして人として生きている。
 傷に塗れた体を見た花男が、深いため息を吐き言ったのだ。
「これでは使い物にならない」と。
 廃棄室に放り込まれていた彼女は、目を覚ますと同時にここへ駆けつけたのだった。

 左目を潰す様に刻まれた縦傷が痛む。
 右の視界が捉えた姿に、違和感を覚える生徒会長。
 妹だ。
 見慣れたはずの体はどこにも変化がない。
 それでいて、幼さの残る妹はそこになかった。
 あるのは蠱惑的な肢体と直視すれば気が触れかねない人知を越えた美しき寝顔。
 吸い寄せられる様に生徒会長は歩き出していた。
 夢見心地でその体に覆いかぶさると、唇を重ねた。

妹「ひゃっ!?」

会長「わ、わぁ」
65 :1 [saga]:2012/03/15(木) 05:39:30.15 ID:EnEZ1ZiEo
妹「生徒会長のお姉さん……?」

会長「あ、う……その……す、すまない!」

 慌てて飛び退き、横目でその姿を確認する。
 怪しげな輝きはもうなかった。

会長(今のは何だった……!?)

妹「お姉さん、傷だらけ……痛くない? 大丈夫?」

会長「ん? ああ、大丈夫だ。君のお兄さんも、直に目を覚ますだろう」

妹「う、うぐっ、ぐすっ……」

会長「だから泣かないで。私は大丈夫だから……みんなを起こして――」

「帰ろう」
 言えなかった。
 
妹「ひっ!?」

 切り落とされた生首から木の根に似た触手が生えていた。
 自律した頭部は飛び上がった。
 それが生徒会長の首にまとわりついている!
 
花男「ふーぅ……」

会長「くっ……そ……」

 傷だらけの体に耐え切れる眠気ではなかった。
 生徒会長は花男の意図通り、その身を横たえた。
66 :1 [saga]:2012/03/15(木) 05:40:27.96 ID:EnEZ1ZiEo
花男「ふ、ふひはっ……こうなってしまっては……私が自ら作品になるしかない……」

花男「と、共に永遠に美しく……」

 蠢く触手が妹の身体へ狙いを定める……!

妹「永遠を……お望みですか?」

 旋律の様に紡がれた言葉には、激情が乗せられていた。
 酷く冷たい、怒りよりも狂気に近い敵意。
 作品へと作り替えた人体にしか興味のない花男だが、今や彼女の言葉を受け入れるしかなかった。
 触手は中途半端にその動きを止めていた。

妹「永遠は人の心の内だけに存在します」

花男「う、嘘だ……私の作品は……!!」

妹「全ての物はいつか壊れます。私とて、いつかは死んでなくなります」

 妹が自らの指を強く噛んだ。
 真っ白な指を一筋の血が流れる。

妹「こんな風に……傷つき壊れるのです」

花男「ひ、ひぃ……」

 世界の終わりを目の当たりにしたかの様に、花男は怯えた。
 天上の美しさを誇る肌に傷が付くのはあってはならないのだ。

妹「死んでしまっても、この胸にある兄さんへの想いは永遠です。貴方にも、永遠を……」

妹「それが望みなのでしょう? 与えてあげます」

妹「――怯えなさい。永久に。肉体が滅びようとも、悲鳴を上げて、涙を流し、怯え続けなさい」

花男「ひいぃぃ……」

妹「安息は二度と貴方に訪れない。さようなら」

花男「ひあぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァ!!!!」

 絶叫を残し、首だけの花男は逃げ出した。
 追う者がなくとも、焦燥の表情で後ろを何度も確認しながら。

妹「兄さん……夢に見ていてくれたら、嬉しいです。……私の告白」

 ユッサユッサユッサユッサユッサユッサ
67 :1 [saga]:2012/03/15(木) 05:41:20.32 ID:EnEZ1ZiEo
兄「ん……んむむ……?」

妹「お兄ちゃん早く起きて! 生徒会長のお姉さんが怪我してるの!!」

兄「なにっ……!? そ、そう言えばあいつは!?」

妹「お姉さんがやっつけたけど、その後倒れちゃって……!!」

兄「確かに酷い傷だ……。妹! 影女を起こしてくれ! 応急処置くらい、魔術で出来るはずだ」

妹「う、うん!!」

 …………。
 ……。

妹「よいしょ、よいしょ」

兄「……そこまで生徒会長は重たくないぞ」

妹「良いの! 私も手伝うの!! よいしょ……」

友「ちくしょぉぉ……おっぱい当たってるんだろうなぁ、ちくしょうちくしょう……」

影女「私……全然活躍出来ませんでした……」

兄「気にするな。血が止まっただけでも良しとしようぜ」

影女「はい……」

友「あーあ……しっかし、結局何が飾ってあったんだろうな?」

兄「さぁ? どうせろくでもない物だろ? 見なくて良かったんじゃないか?」

友「かもなぁ……所でさぁ、どう? どんな感じだ?」

兄「何がだよ」

友「背中に当たってるおっぱいの感触だ! それを楽しむ為におんぶしてるんだろ!?」

兄「……馬鹿かお前。けが人相手に変な事を言うな」

妹「お兄ちゃんは友兄ちゃんと違って変態さんじゃないもん!!」

影女「……女の敵です……死んで地獄でたっぷりと苦しめば良いのに……」

友「すみませんでした……」

 …………。
 ……。
68 :1 [saga]:2012/03/15(木) 05:42:52.50 ID:EnEZ1ZiEo
 兄たちが去った後のフラワーガーデン。

犬「むにやぁ……良く寝た……?」

犬「ご主人様ー? ご主人様ー?」

 ……。

犬「帰っちゃったのかな……ん? なんだろ、あの変な……花……?」

花男「ひぃいぃいいぃぃ!!」

犬「逃げちった。……良いや。帰ろっと!」

 ズダダダダダダダダダ

 今日もどこかで、花男は恐怖に苛まれ実体のない「恐ろしいもの」から必死の形相で逃げている。
 それは、ずっと、永遠に続くだろう。彼が望みし永遠は成就した。

第五話『永遠の在りどころ』終了
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/03/15(木) 08:08:06.19 ID:9XQfJDIGo
おつ
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 09:29:51.95 ID:vAF5pS2DO
テンポよくていいねえ。続き待ってる
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 21:05:54.43 ID:4FapYfHIO
お兄ちゃん乙!
72 : [saga]:2012/04/03(火) 03:52:10.74 ID:6z+VAdg1o
第六話『悪魔とか、なんか、そんな、アレ』


兄「……まただ! また妹が誘拐された」

友「どう見ても人間じゃない奴らだったぞ!?」

兄「悪魔だろ? おい、影女!」

影女「はい! お呼びですか!?」

兄「今の悪魔がどこに逃げたか今すぐに調べろ」

影女「分かりました!!」

友(この展開になれて来ている自分が怖い! 恐ろしい子! 俺!)

影女「悪魔が逃げ込んだのは彼らが作った異界のようです。そこに向かう転移の魔法陣を作りましたが……」

兄「なんだよ。何かあるのか?」

影女「……高い魔力を持った悪魔数体の存在が感じられます」

兄「それでも俺は行くぞ」

友「お、俺は今回は遠慮しようかなぁ……悪魔とか怖いし!」

兄「そうだな、無理強いはしない。影女、奴らの具体的な特徴は?」

影女「ええっと、淫魔が数体とそれから――」

 淫魔――その単語を友の脳が認識した瞬間、彼の体は魔法陣へ飛び込んでいた。
 爆発に似た、それでいて緩やかに飛散する光。
 色とりどり残光が消えた時、友の体もそこにはなかった。

兄「あいつ……なんなんだ……」

影女「あれ? 兄くんの他に誰かいませんでした?」

兄(影女にとって友はその程度かよ……まあ良い)

兄「行くぞ。悪魔だか何だか知らんが、俺の妹に手を出す奴は許せん」

影女「それなら、これを」

 黒い外套を兄に差し出す影女。
 懐に隠し持つには無理ある品だが、兄が言葉に反応した時すでに彼女の手にあった。
73 :1 [saga]:2012/04/03(火) 03:52:39.93 ID:6z+VAdg1o
兄「これは?」

影女「悪魔が作った異界は魔術師のそれとは異なり、人体に影響を及ぼします。それを防ぐのがこれと言うわけです」

兄「ふーん……」

影女「因みに、私の手作りです……」

兄「……お前の髪の毛を編んで作った物とかじゃないよな?」

影女「えへへ……」

兄「……」

影女「冗談ですよ! 冗談! 脱がないでください!」

兄「……とにかく、行くぞ」

 宙に浮く魔法陣へ飛び込む兄。影女もそれに習う。
 視覚も聴覚も働かぬ空間を落下する兄。
 しばし落下感が続いた後、彼らは足元に自身の住む街を見ていた。

影女「上空に位置している様ですね」

兄「そうだな……」

 色のない六角形のガラスが連なる床を歩き出す。

兄「まずは友を探そう」

影女「……誰? ですか」

兄「一応俺の友人だ。この異界の構造は把握しているか?」

影女「いえ……小刻みに変化が起きているみたいで……」

兄「役たたずめ」

影女「あんっ……あ、兄くゅぅん……」

兄「仕方ないから、とにかく歩くぞ。役たたず」

影女「ひゃぁい! んっ……!」

 極彩色の壁と透ける床で構築された異界の探索が始まる。
 友の行方と、妹の安否を気遣う兄は、外套を揺らしながら、小走りに駆ける。
 宙を飛ぶ影女は、兄に暴言を吐かれては絶頂し、置いてきぼりを食らっては、加速しながら、後を追う。
74 :1 [saga]:2012/04/03(火) 03:53:16.64 ID:6z+VAdg1o
兄「結構走ったが、一向に誰とも合わない。どうなってる?」

影女「私に聴かれても……って、言ってるそばから魔族の存在を感知しました! 左からきます!」

兄「なにっ……!?」

 カベ、ボオオオオオオオン

淫魔雄「インマァァァァァァ!!」

影女「ひっ……」

 雄の淫魔は全裸だった。小太りで色白の男だが、その背には黒い翼が生えている。

淫魔雄「女の子の匂いがしたインマァァ!!」

 小指程の男性器を勃起させた淫魔雄が近づいて来る……!
 矮小な見た目からは想像も出来ない魔力の持ち主である事を影女は見抜いているが、兄は違った。

兄「お兄ちゃんパンチ!!」

淫魔雄「男には興味なインマァ! これでも喰らえインマァァァ!!」

 淫魔雄の吐き出した桃色の吐息が兄の口へと吸い込まれる。

兄「うぐっ……!?」

影女「あ、兄くん!!」

淫魔雄「これでこいつも俺の仲間だインマァァァ!!」

兄「あひょっ!! えへへ、あばばばばぁ!!」

 軽率な行動の結果、正気とは思えぬ表情で兄が衣服に手をかける。
 外套を脱ぎ捨て、制服のボタンを外して行く。

影女「そ、そんな……!!」

 影女が慌てて手を鼻に当てるが、指の隙間から鮮血が溢れ出した。
 かつてない程の興奮を感じる影女。
 兄の裸体は、28時間彼を監視している影女も見たことがなかった。
 浴室や脱衣場には透視の術を退ける施しがあった。
 誰による物か影女も知らぬが、彼女に破れぬ頑強な守りだ。

兄「あっひょぅぅぅぅ!!」

影女(た、助けなくちゃいけないのに……体が動かない……!!)

淫魔雄「今からこいつと一緒にお前を犯してやるインマァァァ」

 操られるままに痴態を晒すのか、兄よ。
 影女が垂らす血と涎が床に広がる。彼女の期待が最高値に達した時だ。
75 :q [saga]:2012/04/03(火) 03:53:42.75 ID:6z+VAdg1o
 カベがボカァァアアァァンと壊れた。

黒鎧「う……うう、ああ……?」

影女「こ、今度は誰ですか!? と言うか今良い所なので邪魔しないでください!!」

 そこに立つは黒い鎧姿。壁を叩き壊したのはその豪腕だ。
 彼も兄と同じく正気ではないのか、頭を抑えて呻きを漏らしている。

淫魔雄「誰だか知らないが、お前もこうなるでインマァ!」

黒鎧「……!!」

 鎧袖一触。吐息を吹きかけんと近づいた淫魔雄の体は二つに引き裂かれた。
 剣も持たぬ黒鎧はその腕を振り下ろしていた。
 淫魔の死により、吐息の影響を失った兄が倒れる。

影女「ひっ……」

 黒鎧が腕にまとわりつく紫色の鮮血を垂らしながら、ゆっくりと影女へ近づく。
 彼の正体は友なのか。

影女「こ、こないで下さい!!」

 防護結界を張る影女だが、その努力は無駄に終わった。
 黒鎧はいとも簡単に内部に踏み込んだ。
 攻撃魔術を数種、その身に叩き込んでも、傷の一つも付かなかった。
 ゆっくりと歩みを進める黒鎧。
 影女が諦めに至り、兄の手を握る。死ぬならせめて彼と一緒にと。
 しかし、黒い鎧姿はぼやけて見えた後、消えた。

影女「!?」

兄「う……俺は、一体……?」

 兄が立ち上がる。その身に、脱ぎ捨てはずの外套を纏って。

影女「あ、兄くん……ですよね……?」

兄「あ、ああ……? そうだ、淫魔はどうした!?」

影女「それが……」

 影女の指す先で、淫魔雄の体は無残な死に様を晒していた。

兄「お前がやったのか?」

影女「い、いえ……外套が黒い鎧に変わって? いや、でもそんな術をかけた覚えは……」

兄「……?」

影女「とにかく、なんとかなりました」

兄「……そうか。気を取り直して、行くぞ!」
76 :1 [saga]:2012/04/03(火) 03:55:01.21 ID:6z+VAdg1o
 その頃友は……

淫魔牝「あらあら。折角人間に生まれたのにこんな所に来るから……」

友「ひぎぃー!」

 異界の影響をもろに受けて異形と化していた。
 その身に足は無く、胸から腕を生やしている。三本の腕が何かを揉む様に動く。
 毛で覆われた異形の身体を淫魔が抱き上げる。

友「すひぃー、すひぃー」
 
 どこにあるかも知れぬ鼻孔で淫魔牝の香りを吸い込む。
 一つだけの目のすぐ上にある性器がピンと上を向いた。

淫魔牝「ふふ、可愛い子ね。ペットにしちゃいましょう……」

 …………。
 ……。


兄「おらぁ!! お兄ちゃんキックだ!!」

影女「貫け、魔力の槍!」

雑魚悪魔「もぎゃー!!」

兄「お兄ちゃん回し蹴り!!」

影女「押しつぶせ、魔力の大槌!!」

雑魚悪魔「ひゃぁぁぁ!!」

兄「お兄ちゃん当たると向こうの壁まで吹っ飛ぶパンチ!!」

影女「喰らいつくせ、魔力の狼!!」

雑魚悪魔「ぴゃぁぁ!!」

兄「雑魚は粗方片付いたな」

影女「はい! 相変わらず兄くんは素晴らしくお強いです!」

兄「そう褒めるな。して……次の相手はお前か?」

影女「え?」

羊悪魔「気がついていたのかメェ」

兄「あまり俺を舐めるなよ、羊野郎!!」

羊悪魔「メェメェ!! 羊を馬鹿にするなメェ!!」

影女「気をつけてください! この悪魔も見た目と違って強力な……」

 やせ細った身体に申し訳程度に羊の毛を生やしたその悪魔、誰が強敵と思うだろうか。
 兄の体は影女の言葉を無視して飛び出していた。

兄「お兄ちゃんパァァンチッ!!」

羊悪魔「メェェェ!!」

 胸にたくわえられた羊毛が爆発的に拡散し、兄の身を包み込む。
 ふわふわの毛は触れる者に安らぎを与え、眠りへと誘う。
 超気持ち良いと言い残し、兄は意識を失ってしまった。真っ白な天然の布団で、兄は幸せそうな寝顔を浮かべている。

羊悪魔「メェメェ! この気持ちよさ、人間に耐えられる物ではないメェ!!」
77 :1 [saga]:2012/04/03(火) 03:55:45.82 ID:6z+VAdg1o
影女「むぅ……兄くんが気持ち良さそうに眠っている……!!」

 あまりの表情に、影女は状況を忘れて羊毛の感触に関心してしまう。
 すやりぬすすやりぬすと寝息を立てる兄の顔は赤子が母に抱かれている時のそれに似ている。
 最上級の安堵を浮かべる想い人の姿に影女の心はときめいた。
 同時に、自分も眠ってみたい、その欲求が影女の中で膨らんで行く。

羊悪魔「さぁ、お前もこっちに来て見るが良いメェ!!」

 心地よさげな羊毛の魅力は、ついに影女を行動へと移らせた。
 夢見心地の表情で、羊悪魔へと歩み寄る。

影女「あ、兄くんと一緒に眠れるなら……!!」

羊悪魔「メェ?」

淫魔牝「あら? 羊悪魔、どうしたの?」

 新たに現れた淫魔牝にも影女は気がつかない。

羊悪魔「侵入者の一人を捕らえたメェ。お前が抱いているのも侵入者だった物かメ?」

淫魔牝「そうよぉ。可愛いでしょう?」

羊悪魔「か、可愛いかメェ……? 気持ち悪いメェ……」

淫魔牝「可愛いわ!! ああ、そうそう。大将が探してたわ。あの子が目を覚ましそうって」

羊悪魔「ならば、俺はそっちに向かうメェ。あの女の始末はお前に任せたメェ!!」

 羊悪魔の姿が一瞬で消え去り、後に残されたのは、影女と淫魔牝のみ。

影女「はっ!? あ、あれ? 兄くんと羊は!?」

淫魔牝「もう行っちゃたわぁ」

影女「!?」

 ようやく新たな敵の存在に気がつき、防御結界を張ろうとするも、手遅れだった。
 淫魔牝の放り投げた、ハートを象られる魔力の塊が影女に衝突する。

影女「ひゃっ……? な、なにこれ……あんっ……んんー!」

淫魔牝「ふふっ、部分的に貴女の身体を淫魔と同じ構造に変化させてもらったわ」

 影女の脳が蕩ける。淫魔の語りは一切頭に入らない。

淫魔牝「私達の仲間になれば、もっと気持ち良くなれるわよぉ……?」
78 :1 [saga]:2012/04/03(火) 03:56:46.48 ID:6z+VAdg1o
 惚けた顔に細い指が触れる。

影女「ひゃっ!?」

淫魔牝「顔に触られただけで、イっちゃいそうでしょ?」

 怪しげに誘惑する淫魔牝。
 小刻みに震えていた両足はついにその役目を諦めた。
 透明な床に影女の股から流れ出した愛液が広がり始める。

淫魔牝「くすっ……クスクス……」

影女「うっくぅぅ……」

 性感に支配された身体と頭では、魔術の一つも使えそうにない。
 焦らす様にゆっくりと広がる快楽に、影女が屈服するのも時間の問題だろう。
 毛むくじゃらの異形が意外な行動を取らなければ、それは間違いはずだった。

友「もひっ!!」

 淫魔の胸元から飛び降り、影女を守る様に立ちふさがる友。

淫魔牝「なんのつもり……? まさか私に歯向かう訳じゃないわよね?」

友「もひー!! ひぃー!!」

 三本の腕で床を叩き反動で跳ね上がる毛玉。
 威嚇なのかも知れないが、ただただ気持ち悪いだけだ。
 しかし、どこかおかしな感性の淫魔牝は、

淫魔牝「可愛い!! 可愛いわ!! 今のもう一度やってちょうだい!!」

 興奮した様子で鼻息荒く友に迫った。

友「も、もひ……」

影女「戦いの最中によそ見とはいい度胸ですね!!」

淫魔牝「なに!?」

 影女は淫魔牝の背後にいた。
79 :1 [saga]:2012/04/03(火) 03:57:41.30 ID:6z+VAdg1o
淫魔牝「ど、どうして!? 私の術を解いたと言うの!?」

影女「ふふっ、その気持ち悪い生き物が――」

淫魔牝「気持ち悪くないわ! 可愛いわよ!!」

影女「と、とにかく、その生き物が作ってくれた隙を利用して、私は兄くんを想い自慰に励みました」

淫魔牝「そ、それと術の関係は!?」

影女「妄想の中で兄くんにたっぷり出してもらい、すっきりした私は冷静になったのですよ!!」

淫魔牝「だ、だからそれがどうしたら術の解除に……」

影女「冷静にさえなれれば、術を解く事なんて簡単です」

 悪魔の使う術は人間の用いるそれよりも、はるかに高度だ。
 並の術者には扱う事も、解除する事も出来ない。
 兄をストーキングする事への情熱だけで魔術を習得した影女の高い学習能力が、不可能を可能にしていた。

淫魔牝「そんな……!!」

影女「同じ手は喰らいませんが……どうしますか……?」

淫魔牝「……諦めるわ。別に大将がどうなろうと知った事じゃないし。じゃ!!」

 淫魔牝が手を上げると同時に、その姿は霧と化して消えた。

友「も、もひっ!!」

影女「ところで貴方は……? 微かに兄くんの匂いがしますけど……」

 …………。
 ……。
80 : [saga]:2012/04/03(火) 03:58:29.45 ID:6z+VAdg1o
 その頃、悪魔の大将は……

大将「貴様ァ……!!」

 満身創痍の体で悔しげに歯を食いしばっていた。
 傍らには首と胴を分けられた羊悪魔の死骸が転がっている。

大将「その力……奴の作品だな!?」

 悪魔大将が睨みつけた先に、黒い鎧姿がある。
 
黒鎧「……」

 鎧は何も答えず、その手をゆっくりと持ち上げる。
 魔力がその手から放たれるのを、大将が感じ取る。

大将「クソッ!!」

 妹を捕らえてあるこの広間には幾つかの術が施されていた。
 それらは大将の力を増幅させ、侵入者の身を貫き、強敵を退ける頑丈な結界を張る仕掛けだ。
 兄や影女とて、簡単に捻り潰すはずだった。
 しかし今や一つ残らず、黒鎧の手により、無力化されていた。

大将「この化け物が!!」

 悪態をつき、攻撃魔術を放つも、それは鎧にかすり傷さえ付けなかった。
 仕掛けの無力化と同時に、自身の魔力を奪われていた事に、悪魔大将が気がつく。
 羊悪魔の死で、黒鎧が如何な豪腕の持ち主であるかは、分かっている。
 術の使えぬこの状況下で、大将に勝ち目はない。

大将「殺せるものなら殺して見ろ!! 俺はそう簡単には死なんぞ!!」

 彼は最期の時まで、悪魔を束ねる者として生きる事を選んだ。
 言葉を受けて、黒鎧は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに行動に移った。
 素早い身のこなしで、大将に突っ込む。
 漆黒の拳が悪魔の身を貫いた。
 一撃で息の根を止めながら、黒鎧は攻撃を止めない。
 原形が分からぬまでになっても、殴り続ける。
 その姿はいつかの友に近い。

 …………。
 ……。

妹「……ん、んんー。兄さん?」

 妹が羊悪魔の毛で作られたベッドで目を覚ますと、兄の姿が目に入った。
 眠っている様だ。
 
妹「ここがどこであれ、このベッドは大変に心地よいです」

 妹の声に反応したのか、兄の寝顔が恍惚に染まる。
 
妹「私も、まだ眠っていても良いですよね」

 部屋の惨状を見渡してなお、妹は顔色一つ変えなかった。
 慣れしたたしんだ寝室にいるかの様に、彼女は眠りへと入った。
 影女と、彼女の術により元の姿を取り戻した友が到着するまで、兄妹は静かな寝息を立てていたと言う。

第六話『悪魔とか、なんか、そんな、アレ』
81 : [saga]:2012/04/03(火) 03:59:03.07 ID:6z+VAdg1o
第七話『姫と兵士』


友「よう! 今日も可愛いな!!」

兄「えっ……」

妹「友兄ちゃんになんか、お兄ちゃんはあげないもん!!」

友「えっ……」

兄「お前がホモだったなんて、知らなかった」

友「ちげぇよ!! 妹ちゃんに言ったんだよ!!」

妹「そうなんだ……えへ、ありがとう」

兄「……俺の妹に変な気を起こして見ろ。俺の総力を持ってお前を苦しめてやる」

友「わ、わかってるって……そ、そうだ!」

妹「友兄ちゃん、声が裏返ってるよ」

友「ははは……。兄、聞いたか? 留学生の話」

兄「竜が臭え?」

妹「何の話?」

友「……そのボケ、必要だったか? 本当に必要だったか?」

兄「悪かった。……留学生が来るのか?」

友「ああ、何でもヌップ王国からって話だぜ」

妹「ヌップって、ナニオー教で有名な?」

兄「そうだ。良く知ってるな」

妹「うん。テレビで見たから知ってるよ、えらい?」

兄「ああ。えらいえらい」

妹「えへへへ」

友「……くそ!! 羨ましい!! 何故俺には妹がいないんだ!!」
82 :1 [saga]:2012/04/03(火) 03:59:47.37 ID:6z+VAdg1o
兄「で、どんな奴か知ってるのか?」

友「まさか。どうせ俺は曲がり角でぶつかれないタイプの人間だよ」

兄「……転校生とぶつかって、スカートの中身が見えて、朝のHRで「あんたは今朝の変態男!?」とか言われるアレか?」

友「そうだよ、それだよ。まっ、その様子だと……」

妹「じゃあ、あのお姉ちゃんが留学生なのかな?」

友「ふぁーーーー!?」

兄「いや、ぶつかったけど……なんか暴漢に襲われてたし」

友「ぱ、ぱぱぱ、パンツは見えたのか!?」

兄「いや……」

妹「あ、あのお姉ちゃんだよ!!」

 校門付近に人だかりが出来ている。
 その中心に、彼女はいた。

友「なんだと!? 滅茶苦茶な美人じゃないか!!」

兄「……まあ、妹には劣るけどな」

友「いや、もう妹ちゃんは除外だよ。殿堂入りだろ」

兄「……確かに美人だとは思うが」

妹「へぇ……思うんですね……」

 兄と友の時間が止まった。
 ぼそり吐かれた言葉だが、人を殺せる威力の美声によれば、身も凍る思いだろう。
 内容は理解は出来ずとも、声色が冷ややかであるのは本能が感じ取った。
 友は呼吸も難しいのか、口をぱくぱくとしている。
 隣に立つ兄は、青い顔をして滝の様に冷や汗を流した。

妹「うん! あのお姉ちゃん美人だね!」

友「あ、あー……そ、そうでもなくない!?」

兄「そ、そうだな!! 言うほどでもないよな!! うんうん!!」

 ヌップからの留学生とそれを取り囲む人だかりが脇を過ぎる中、友と兄は必死に前言を撤回していた。

 …………。
 ……。
83 :1 [saga]:2012/04/10(火) 00:04:48.12 ID:p/Ac5Yfho
 その頃保健室では……

会長「何の真似だ」

嬢「何って治療でしょう?」

 大手町フラワーランドにて、軽くない傷を負った生徒会長の治療は嬢が行なっていた。
 当初は気乗りしない様子の会長だったが、兄の勧めもあり、嬢の提案を受け入れる事にした。
 四六時中、衛星人工精霊は生徒会長にまとわりつき、全身に刻まれた傷を治療していた。
 一週間経ったこの日は最後の仕上げが予定されていた。

会長「その姿はどういうつもりだ」

 嬢の体は水によって構成されていた。
 姿形は嬢そのものだが、後ろの壁が透けて見えている。

嬢「人工精霊に私の精神を移したのよ。精神転移は普通の人間には出来ないと思ってる?」

会長「そのはずだ。転移にしくじり発狂した者も少なくないだろう」

嬢「それは転移先が元の肉体から程遠いから駄目なのよ。これは私と瓜二つでしょう?」

会長「確かにそうだが……。転移の為に人工精霊までこしらえて、何をするつもりだ?」

嬢「治療の為の精霊よ」

 言うなり嬢は、ベッドに腰掛ける会長にのしかかる。
 真っ白なシーツと同化した会長の髪が押し退けるに留まらぬ速度で嬢へと伸びる。
 差し込む日差しの中、目に見えぬ凶器に貫かれた嬢は、しかし笑った。

嬢「水が相手じゃ、貴方も無力よね……」

 狂気を孕んだ眼差しを受け、会長は無駄と知りながら、髪を使わずに居られなかった。
 本来であれば、全身血だらけで倒れるはずの嬢はやはり無傷。
 
嬢「諦めなさい。私が痕が残らない様に治してあげるから」

会長「諦める? お前、やはり治療をする気はないのか!?」

嬢「治療はするわよ? ただね。治療費はきっちりもらおうと思って」

 反論を紡ぐはずの口を塞いだのは、嬢の手だ。
 液体状の手のひらに対し、固く唇を閉じる会長だが、意味はなかった。
 こじ開ける様に、液が侵入する。粘着質でぬるい温度の液体は舌を這いずり、喉の奥へ。
 得たいの知れぬ液体が体内に入り込んだ。
 戦場であれば致死的な失態だが、ここは――いや、すでに空気はそれと同じ。
 嬢の手が離れると、会長は咳き込んだ。
 動きに合わせて揺れる白い毛髪は、無意識に嬢を貫くが、彼女を喜ばせるに過ぎなかった。
84 :1 [saga]:2012/04/12(木) 03:16:50.83 ID:47h0Sg9Zo
 窓際に飛びのいた会長が、外へ向けて数本の凶刃を放つも、ガラスには傷ひとつ付かない。
 脱出の案は、先に手を打たれているらしい。
 振り返った先で、嬢が当然でしょうと笑った。
 実力行使でこの場を逃れる事は出来ないと分かった会長は言葉をなげかけた。

会長「何を飲ませた。何をするつもりだ」

 どちらも良からぬ話だろうが、聞かずにはいられなかった。

嬢「教えてあげるわ。服を脱いで」

会長「何を馬鹿な」

 言いながらも、手はしっかりとネクタイを緩め始める。会長は不愉快な顔をした。
 飲み込んだ液体に心当たりがあった。
 いつか嬢に聞いた話だ。
 他人を操る薬が作ったが、悪意ある相手に飲ませるのは不可能に近く、実戦には使えない。そう言っていた。
 その欠点を人工精霊の体に組み込む事で克服したようだ。
 発想は素晴らしいが、使い方が最低だ。
 会長は言ってやったが、嬢は嬉しそうに微笑んだ。
 極端な嗜虐性と被虐性、両方を持ち合わせるお嬢様には、罵倒は刺激剤にしかならなかった。
 下着姿になった会長を手招きする。
 会長は無駄と知りつつ足に力を込める。僅かに動きが緩慢になった。
 支配は完全ではないらしい。そこに一縷の希望を見出し、抵抗を続ける。
 嬢は胸の高鳴りを覚えた。薬の効果を甘く設定した判断に間違いはなかった。
 必死に抵抗する相手を屈服させる方が、楽しい。

嬢「さ、横になって。そうそう、抵抗も諦めずにね? 運が良ければ治療費、踏み倒せるかも知れないわよ」

 言葉の意味を悟り、会長は気落ちしたが、抵抗を止めるのも癪に障るのだろう。
 結果として嬢の言葉に従う形で、反発を続ける。
 会長のしなやかでありながら、微かな傷跡の残る肢体が、ぎこちなくベッドに横たわった。
85 :1 [saga]:2012/04/12(木) 03:17:35.10 ID:47h0Sg9Zo
嬢「下着も外してくれる? その黒い下着も良く似合うけどね」

会長「いい加減にしろ!」

 怒声と共にこれまでで一番の抵抗を示した。
 後ろ髪がぐんと伸び、結束した。それは刃に変じて、嬢の胴体を一文字に切り裂く。
 液状の体に伝わるはずのない痛みと熱を嬢は感じた。

嬢「精神まで切り裂くなんて、凄い能力……これは、もう駄目ね」

 横たわれと言う命令が今も効力を持っているのか、上体を起こすのに、会長は難儀している。
 床では嬢の体が崩れつつあった。氷が溶ける様に液体が広がってゆく。
 会長が上体を起こし終えた時、嬢は何とか顔だけ形を留めていた。

会長「諦めて元の体に戻らないと、精神も消えてなくなると思うが?」

嬢「そうねえ。でも、貴方の勝ちじゃないのよ。あれを飲んだ時点でね」

 嬢の悪巧みに抜かりはなかった。
 気持ちよくなりなさい、と言い残して完全に水溜りと化した。
 なんなのか、と身構える間もなく異変は起こった。
 むずむずとした感触に全身を覆われる。途端、力が抜け先の命令通りに体が動き出す。
 ブラジャーを外し、形の良い胸を外気に晒す。
 絶え間なく続く感触の為にか、薄紅色をした乳輪の中心で乳首が立っていた。

会長「くっ……ふ……嬢め……!!」

 恨み言のつもりで名を口にしたが、余計に屈辱を感じさせた。
 彼女の成すがままに身悶えしていると改めて認識させられた為だ。
 体は時折震えながらも命令を実行する。
 ショーツが脱がされ、毛髪と同じ真っ白の恥毛が露になった。
 人の目がないとは言え、学校の保健室で全裸になってしまった。会長の顔が赤く染まる。
 どうにかこの窮地を抜けなければと、体を動かすも微弱な快感に上手く動かない。
 その足元にひやりとした物が突然触れる。目をやると、件の嬢だった液体だ。
 意思を持っているかの様に、それはゆっくりとベッドに上ってくる。
 奇怪な光景に慣れている頭は現実的にそれの行動を予測する。
 嬢の性格を踏まえた上で、これがろくでもない事をするに違いないのは明白だ。
 何とか体を転がし、這う様に動き出すが、その足に粘着質な液体が纏わり付く。
 冷たかったはずのそれは、人肌程度の温度を持っており、妙な心地よさを感じさせた。力が更に抜ける。
 好機と言わんばかりに会長の体をゆっくりと上り出す。
 
会長「んっ……」

 微かなそれでいて確かに性感を覚えてしまう会長。
 気持ちよくなれと命じられた体はゆっくりと高まり続けている。
 熱に浮かされされるがままによじ登らせていたが、程よい肉付きの尻の手前に迫った時、声をあげた。

会長「何をするつもりだやめろ!! この身は兄の所有物だ!」

 やめるはずがなかった。液体は谷間への侵入を開始する。
 必死に体を動かすも、悪い寝相の様にしかならなかった。
 会長は、異物の侵入を感じた。それは、予期していた箇所ではなかった。
 性器には触れもせず、尻の穴に入り込んでくる。

会長「なんて変態なんだ! 嬢!」

 思わず口にしたが、それどころではない。
86 :1 [saga]:2012/04/12(木) 03:18:21.12 ID:47h0Sg9Zo
 高められた体に不浄の穴を逆流する感触は甘美であった。
 腸内に温かさが広がる。液体は粘性を増し肛門が広げられている。どちらも会長に嬌声を上げさせた。
 擬似生物に尻を犯されて悦んでいる。傍から見れば他に言い様がない。
 本人は断じて違うと、声を殺しているが、体は着々と牝の悦びを受け入れてゆく。
 液体による責めも体の感度も高まり続け、会長は惚けた様な顔をする。
 時折体を震わせながら、口元を枕に埋め押し寄せる快感に耐えるも、命令の効力は絶大だった。

会長「はぁっ、はぁ……んっ、んんーっ」

 息苦しさから顔を上げた途端、桃色に染まったよがり声が飛び出した。
 思考も同じ色に染め上げられたか、快楽を肯定する論が立てられていた。

会長(嬢が見ている訳でもないし、全ては薬と命令のせいだ。諦めたとて、私は淫乱な女ではない)

 口の端から涎が一筋流れ、諦めの言葉を口にした。

会長「もう良いや……」

 受け入れると、液体の感触だけでは物足りないのか、自ら腕を下半身へ伸ばした。
 命令に背いていないからか、手はすんなり白い茂みの奥へ達する。
 抵抗を諦めた彼女は、自ら快楽を貪ろうと考えている。
 すでにたっぷりと蜜を漏らした秘部は簡単に指を飲み込んだ。

会長「んっ、んんん……」

 男根の代わりに突っ込まれた白魚の様な指を、膣は悦び震えて歓迎した。
 ねっとりとまとわりつく媚肉を押し進み膣壁を撫でる。そして指を引き抜き、また中へ。
 繰り返す内に尻を高く突き上げる様な姿勢になりながら、自慰にいそしむ。
 粘着質な音と会長の荒い息が保健室に響く。液体は音もなく侵入を続けている。
 すでに半分は腸に収まったか、と言うところだ。
 腹が膨らんでいる事に気が付いた会長はその量にうっとりとした様子だ。
 嬢の意図通りか元来の性癖か、被虐の味に酔いしれていた。
 
会長「あんっ、ん、良い、お尻気持ち良い……もっとぉ……」

 性器を弄っていた繊手が次は肛門に触れる。
 周囲のぬめりを楽しむ様に撫で回した後、指を肛門に突き立てる。
 液体には媚薬の効果もあるのか、そこは性器以上の性感帯となっていた。
 侵入を続ける液体にかまわず、立てた指をずぶりとねじ込む。

会長「あ、ああっ……凄い……良い……」

 突き入れた瞬間の充足感と快感に瞬時で虜となった嬢は指を前後に動かす。
 出し入れする度に排泄に似た快楽を覚え、その身を昂ぶらせてゆく。
87 :1 [saga]:2012/04/12(木) 03:19:29.66 ID:47h0Sg9Zo
会長「んっ、ん、ん……はぁ、はぁはぁ……」

 指をより奥へ突っ込み、腸壁を撫で回す。
 侵入を続ける液体を擦り込む様に、指を動かしていたが、何かを思い立った様子の会長は手を離した。
 後ろ髪は先とは違った様を見せた。男根を模した張型だった。
 髪束とは思えぬ程の滑らかな表面のそれを自ら肛門に挿入する。

会長「はっ、ああっ、あんっ、これ良いっ、あん」

 被虐心からか、乱暴に張型を動かす。
 雁首に引っかかった液が外に出されて飛び散る。それらはシーツを濡らす事なく、使命を果たそうと塊へと戻ってゆく。
 会長は膨らみつつある腹が苦しくなり、仰向けになった。
 そこで、一瞬我に返る。視界に入った窓ガラスがそうさせた。
 しかしそれは、室内の様子を鮮明に映していた。
 嬢が破壊を不可能にすると同時に施していた術だった。自らの痴態を見せつけて楽しむ為にだ。
 堕ちたる会長は乗った。
 鏡と化した窓ガラスに向かい、股を開き、白の張型が腸を往復する様を映し出す。
 激しい動きに泡立った液体が尻を汚し、膣からはとめどなく淫液が滴り落ちている。
 自らの姿に恥じると同時に興奮を禁じ得ない。
 人にはとても見せられない、兄になら別だが、と想い人の顔が頭を過ぎる。

会長「んっ、あ、兄……」

 身を捧げると宣言していながら、半強要されたとは言え自慰に耽る自分に罪悪感を覚える。
 だが、すぐにそれは刺激剤となり、兄の名を何度も呼びながら、ピストンを繰り返す。
 手は再び膣をほじくり、白く濁った淫液を垂れ流している。
 
会長「駄目だ、駄目なのにっ、兄っ、あにっ、イ、イく、イっちゃう! あっあああっ……!」

 名を呼びながら、彼に見られていると妄想している内に会長は果てた。
 その身が後ろに倒れる。
 多幸感にあふれた表情で脱力する会長に眠気が襲う。
 服を着なければならない。いつ保健室を覆う術が解けるかも分からないのだ。
 しかし、抗いがたい眠気は彼女を蝕みついに意識が遠のく。
 液体は仕上げとばかりに素早く腸内に収まり、更に腹を膨らませた。
 妊婦の様な腹で、全裸で眠りこける生徒会長。その肢体からうっすらとした傷跡が消えてゆく。
 嬢が用意した通りの結末だ。治療の仕上げとその費用の請求は済んだ。
 人工精霊は始めから腸に収まる予定だった。
 つまり、元の肉体から遠のくが故に、遅かれ早かれ嬢は途中退場が決まっていた。
 制服や下着に仕込まれた小型の精霊が会長に服を着せてゆく。
 腹はすっかり凹んでいる。
 後に残った光景は安らかに眠る生徒会長の姿だけだった。

 …………。
 ……。
88 :1 [saga]:2012/04/12(木) 03:20:22.05 ID:47h0Sg9Zo
 その頃教室では……

友「ひっ! 嬢が死んでる!!」

 兄と友は教室に入り、嬢が机に突っ伏している姿を発見した。
 保健室での一件で精神に負荷がかかり、人工精霊が治療中なのである。
 意識は無いようだが、

兄「ちゃんと息してるって」

 死んではいない。

友「ど、どれどれ……もっと顔を近づけなければ……」

兄「……」

友「……」

兄「……」

友「……」

兄「……」

友「……」

 ………………。
 …………。
 ……。

友「……」

兄「……」

友「早く俺の背中を押せよ!! 事故を装ってキス出来ないだろうが!!」

兄「アホか。もうHR始まるぞ」

友「ファック!! マジかよ!! ……と言うか、嬢が全然起きないぞ」

兄「疲れてるんだろ。そっとしておけ」

友「ああ……」

 ドア、バアアアアアアアン

担任「オラァッ!! 席に座ってくださいやがれだクソガキ共ォ!!」

 …………。
 ……。
89 :1 [saga]:2012/04/12(木) 03:21:53.05 ID:47h0Sg9Zo
副担任「えっと、みんな知ってると思うけど、ヌップから留学生が来ます。来てます」

副担任「そこで、今日はヌップに付いて少しお話しようと思います」

友「副担任って可愛いよな。なんか俺たちと歳が変わらない様に見えるし」

兄「……まあ、そうだな。所でお前、ヌップに関してどれくらい知っている?」

副担任「兄くん! 先生が喋ってる時に喋らないで!! 声が裏返るから」

友「なぜ裏返るのですか」

副担任「兄くんの格好良い声が聞こえたら、緊張するからです! じゃ、続き話すよ」

友「……兄、お前やっぱり死ねば良いのに」

兄「黙れ」

副担任「実は留学生と言いながら、ヌップ国のお姫様とその護衛の二人だったりします」

友「はあ。なるほど、美人なわけだ」

副担任「あー……護衛は男女それぞれ居るけど、異性は近づかない様にね」

友「なんでだ」

兄「ヌップで広く信仰されているナニオー教では男女間の交流を禁じているんだ」

副担任「流石あたしの兄くん! 物知り〜! 優等生ポイント10点加算!!」

友「優等生ポイント?」

兄「俺も良く知らないけど、ポイントが貯まると良いことしてくれるって」

副担任「も、もうっ! みんなの前で言わないの!!」

友「先生!! 俺にもポイントカードを作ってください!!」

副担任「嫌です。はい、じゃあ続き話すね」

友「……」

副担任「これは伝承でしかないのだけど、王室の護衛隊に入るにはより深く、異性を遠ざける必要があって。
    言い伝えでは20歳を過ぎても性行為の経験がないと魔法が使えるようになるとかで……」

友「……ヤラハタで魔法使いだっけ? と言うか、そんな事せずとも魔法使ってる奴は結構いるよな」

副担任「友くん。今はヌップの文化に関して話しているんです。ゲームの話はやめなさい」

友「……」
90 :1 [saga]:2012/04/12(木) 03:22:21.56 ID:47h0Sg9Zo
兄「ヌップの魔術は独特でな。魔法剣や魔法銃と言った特定の形で魔力を具現化させるんだ」

副担任「流石アタシの兄くん!! ディープなところまで調べたのね!! 先生の事もじっくり調べてみない? ね?」

兄「結構です」

副担任「あんっ、つれない兄くんも好き!! ……それで護衛の人たちは魔法剣士と呼ばれているの」

友「格好いいじゃん。でも童貞かぁ……。あれ? それと異性が近づいちゃいけない理由は?」

副担任「魔法剣士となった後に異性と性行為を体験すると、悪しき者に堕ちるとされているの」

兄「リア・ジウと呼ばれる暗黒の戦士だ。彼らは男女問わず妖艶な魅力を持ち、変身能力を持っているとされる」

副担任「もうっ! 兄くんったらさっきから私の台詞を奪ってばっかり! ついでに先生の初めても奪って!!」

兄「嫌です。先生も魔法剣士になれば?」

副担任「……あれ? 知らない? ヌップ人の血を引く者にだけ許された能力とされているのよ?」

兄「知ってます。話が脱線しないようにわざと言いました」

副担任「きゃーっ!! 兄くんがデレた!! 嬉し恥ずかし! この滾る感情をトイレで鎮めて来ます!!」

 ドア、バアアアアアアン

担任「よぉし! お前ら! 今ので良く分かったろ! じゃ、今の話を頭の片隅に置いて、体育館に行くぞ!!」

友「なんでですか。と言うか、今ので分かったのって俺と兄くらいなんじゃぁ……」

担任「良いから廊下にならべ!! 体育館で留学生の挨拶があるんだ!! オラァ!!」

 …………。
 ……。

 壇上に並ぶは海を越えてやって来た異国の姫とその護衛。
 右に立つ男はとても童貞とは思えぬ精悍な目つきの屈強な肉体の持ち主だ。
 左に立つ女もまた処女と思えぬ整った風貌の持ち主で長身だ。
 両者共に物々しい銀色の鎧を纏っている。
 女性の方はビキニ型だ。80年代に日本で流行したが、現代の若者達は物珍しそうにしている。
 いや、露出の多さにばかり目が行っている気もするが。

友「嬢、全然起きなくて置いて来たけど、良かったのか」

兄「疲れてるんだろう。そっとしておけ」

友「……ああ、お前が言うならそれで良いのかな。しかし、やっぱり美人だよな! あのお姫様!!」

兄「やめろ! 俺がその手の発言をすると、怖い目に合う気がしてならないんだ!!」

友「俺もそんな気がして来た。止めよう、うんうん」

 …………。
 ……。


嬢「ん、んー……良く寝た……」

 誰もいない教室で嬢は目を覚ました。
 半開きの眼を擦り、辺りを見回すが、兄がいない。
 兄がいないなら良いやと二度寝を決めた嬢だが、違和感を覚える。

嬢「……あ、私がここに居るのなら、会長の治療は終わったのかしら」

 元来より、記憶を残さずにいるつもりだったのか、嬢は陵辱の記憶が無い事を深く考えはしなかった。
 
嬢「なんかこう、悔しさだけが残ってるけど、まあ良いわ」

 独りごち、会長の様子を見に行こう立ち上がる。
 ふと窓の外に目をやる。
 見知らぬ人間の集団が校庭にあった。
 加えて、携帯型人工精霊が悪意と魔力を伝えるアラートを鳴らしている。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/12(木) 07:49:33.16 ID:3ZCaCDvy0
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