１００万回死んだ君 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]：2012/03/15(木) 16:59:28.63 ID:7hGLa9xWo

※地の文有り

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1.5 ：荒巻＠管理人★(お知らせ) [Twitter]： ID:???

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君が望む永遠〜Latest Edition〜 ＠ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ ＠ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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トーチャーさん「超Ａ級スナイパーが魔王様を狙ってる？」〈ゴルゴ13inひめごう〉 ＠ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「２号線」【コンマ判定新鉄・関東】 ＠ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック ＠ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
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ぶらじる ＠ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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2 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]：2012/03/15(木) 17:03:23.89 ID:7hGLa9xWo

彼の席は、決まって窓側だった。

窓側といっても、廊下の方の窓ではなく、グラウンドに面する方の窓。

彼はもう

「お前の席、ここな？」

既に１００万回死んでいたのかもしれない。

自由と楽しみを奪われた彼は

「・・・・・・」

生きていないのと同じじゃないのかと、私は思う。

3 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/15(木) 17:09:46.32 ID:7hGLa9xWo

彼は人と話すのが下手だった。

「・・・・・・・・・」

いつも無言で窓の外を見て

「・・・・・・・・・」

かと思うと、頭を垂れる。


果たしてその行為に、何の意味があるのかは理解できないが

彼が苦しんでいるのだけは伺えた。


すると、ある一人のクラスメイトの男子が彼に声をかける。

話はよく聞こえないが

「―――っち、早くいけよ」

この言葉で、大体察せれた。


その男子生徒に要するにパシられているのである。

4 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/15(木) 17:15:12.20 ID:7hGLa9xWo

私はこの、男性に多い「パシリ」というのが良く理解出来ない。

女性の場合は、嫌いな奴がいれば無視、又は意地の悪い嫌がらせである。

堂々と、どう見ても悪意のある行動を、皆の前でする必要があるのか。


それとも、見せしめなのだろうか。



多分、見せしめの意味が強いのだろうけど。




そうこうしている内に、彼は教室へと戻ってきた。


彼の目は、虚ろだった。

5 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/15(木) 17:23:58.97 ID:7hGLa9xWo

私は放課後、誰もいなくなった教室に一人残る彼に声をかけた。

パシリでもなく

「ねぇ」

普通に。

「・・・・・・・・・・何」

不愛想。思ったとおりである。

「いや、何でもないんだけど」

「・・・・・・・・・」

ちょっと困惑した表情をした。

「ねぇ」

「次は、何」

「ずっと聞きたかったんだけど、なんで彼らの言いなりになってるの？」

ズバリ、思ってたことを口に出した。

「いつの間にか」

答えは予想外だった

「きっかけとか・・・は？」

ないの？、と。それではまるで

「無い」

最初から虐められる運命であったかのようじゃないの、と

「・・・・・・・」

彼に言いたかったけど

「じゃあ、僕は帰るから」

私には、とても言えなかった。

6 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/15(木) 17:30:14.59 ID:7hGLa9xWo

思い出してみれば、彼が学年始めの自己紹介の時から、クスクスと笑われていたのは気づいていた。

最初からだったのだ。

いつの間にかイジラレ役になって

「おい、次これしてみろよ」

「じゃあこれもほら」

いつの間にかいじめられ役になって

「面白くねーなお前」

「帰れよ」

と、罵られて。


大声で話す男子の声は、女子グループの中にいてもよく聞こえる。

彼の顛末は、大体把握できている。



わかってたのに

彼に聞いてしまった。


「何で言いなりになってるの？」と。


何でも何も、そうするしかなかったのに。



酷いことを聞いてしまった、と、今更後悔し始めた。

7 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]：2012/03/15(木) 23:57:11.63 ID:tcT1sxKIO

張り付きの準備はできたぜ

8 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/17(土) 23:52:57.78 ID:EfTexaQAo

今年も始まって半年が経った。

「・・・・・・」

相変わらず彼の席は窓際だった。



いつも黙ったまま

「ジュース買ってこいよ」

クラスメイトの言いなりになって

「ついでにこれ提出しておいてや」

パシられて

「おせーんだよ」

殴られて。



彼に対する攻撃的行為は、以前よりも酷くなっていた。

私は、別に何もすることが出来なかった。


私が何かすれば、私が被害を被るから。

9 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/17(土) 23:56:50.56 ID:EfTexaQAo

大してクラスの中で権力の無い私が、日に日に酷くなる彼への攻撃的行為を止めるなんて

まぁ、夢物語に等しい。


指をくわえることも出来ず、ただ見てるだけ

そんな日々が続いた。




いつしか彼のあだ名は「窓際」になって、学年中の人間にその噂は広まった。




廊下を歩けばジロジロとみられて、クスクス笑われて


そんな彼を、私は見ることぐらいしか出来なかった。

10 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/17(土) 23:59:08.12 ID:EfTexaQAo

彼が何か悪いことをしただろうか？

彼が誰かを傷つけただろうか？

なんで無関係の人間まで一緒になって笑うのだろうか？


不思議だった。


でも、それがこの【学校】だった。

理不尽で、人を見下して、嘲笑って



それが、【学校】だった。

11 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 00:02:36.96 ID:ofbCBl/No

流石に彼は学校をやめるだろうと思った。

少なくとも、私ならそうする。


こんな過酷な環境に敢えて身をやつすなんて、正気の沙汰じゃないから

辞めるか、来なくなるか。





そう、思ってた。









けど現実は違った。

彼はそれでも毎日学校へ来た。


今日は来ないだろう、今日は来ないだろうと思っても。

彼は毎日来た。

毎日、欠かさずに。




ずっと。

12 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 00:05:04.46 ID:ofbCBl/No

毎日毎日

「ﾁｯ・・・」

近くで舌打ちされ

「臭くない・・・？」

変な噂を立てられ

「お前まだ死なないの？」

目の前で、[ﾋﾟｰｰｰ]と言われても。

彼は、学校へ来続けた。






何故だか、私には全くわからなかった。

最早、彼が怖かった。

13 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 00:09:56.67 ID:ofbCBl/No

あと少しで、卒業という時期に迫った。

「・・・・・・・・・」

あの時と同じ状況

「ねぇ」

最初に話しかけた時と同じ、私と彼しか居ない教室で

「・・・・・・何？」

私はまた、彼に話しかけた。


どうしても、話しかけられずには居られなかった。



「・・・・・・・・・・」

でも

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

言葉が浮かんでこない。


何を話したらいいか

何を聞けばいいのか

何を聞きたいのか

わからなくて




「・・・・別に目的があるわけじゃない」



唐突に口を開いたのは彼だった。

14 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 00:14:31.81 ID:ofbCBl/No

「えっ？」

意味がわからなくて、思わず声が出る。

思い出した。彼は口下手だったんだ。


「・・・・・君が、聴きたそうな事」


彼なりに、私にアプローチしてくれたらしい。


「どういうこと？」


私なりに、彼に相槌を打つ


「学校に来続けること。別に、目的があるわけじゃない。かと言って、目標があるわけでもない。」

じゃあどうして、と。私が聞き返そうとした時

彼が遮るようにして


「でも、これが社会」


彼は小さな声で言った。

15 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 00:22:13.31 ID:ofbCBl/No

「僕は見てきた」

彼は通常の声の大きさに戻して、窓の外を見て

「人が苛められる様を」

懺悔してるように言った。

「僕は何も出来なかった。親友だといってくれたアイツに・・・何もしてやれなかった」

普段は話さない彼が、まるで宛然・・・普通の人のように

「だから、決めたんだ」

喋っていた。

「僕が【苛められる役】になるって」

はっきりと、喋っていた。


私はそこで、自分が全く喋ってないことに気づき

「うん」

とりあえずな挨拶を返した。

彼は私の適当な返事も気にせず、「卒業するまで秘密だから」と言って、私に話してくれた。


色々なことを。



彼の言う【苛められる役】について、も。

16 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 00:30:54.69 ID:ofbCBl/No

別に難しいことじゃない、と彼は言う

「誰かが苛められる役になれば、みんなはそいつを苛める。そうすれば、もしかしたら苛め

　られる筈だった人も、苛める方に居れる。そうすれば」


そうすれば、みんな幸せだ、と。

彼はそう言った。


笑いながら。



私に、そう言って聞かせた。




彼の言う【みんな】には、彼は入っていない。




自分を犠牲にしてまで



誰かを助ける



それが彼だった。

17 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 00:36:29.12 ID:ofbCBl/No

「これは僕の勝手な自己満足で、勝手な行動で」


「懺悔。」

だから

「秘密な？」


と。



いつもの表情に、彼は戻って


「じゃあ、また」


教室を出ていった。









一人残された私は、呆然と、自失していた。






何故か、涙が溢れていた。

自分でも意味がわからなかった。

18 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 00:44:26.30 ID:ofbCBl/No

卒業式当日。



教室に、彼の姿はなく



そして、男子生徒数名の姿もなかった。









担任が教室に入ってきて


「昨日の事だが・・・」

と口を開き、言った言葉は


彼が死んだ、という趣旨のものだった。


唖然として、良く話を覚えていないけど

彼は、今日欠席している男子生徒数名に

暴行され

暴行され

暴行され

死んだ。



そういう事らしかった。

19 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 00:58:23.83 ID:ofbCBl/No

何でこんなことになったのか

何でこんな結末になったのか






彼の言った【懺悔】とは、こういうことだったのか。

今ではもう、わからない。

20 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 00:59:07.09 ID:ofbCBl/No

私は、今年も彼の墓の前で懺悔し続ける。

21 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) ：2012/03/18(日) 01:00:34.35 ID:ofbCBl/No

読んでくださった方、お付き合いいただきありがとうございました。




http://blog.livedoor.jp/sumokutizu/

22 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]：2012/03/18(日) 03:46:57.58 ID:+2sanqAIO

はい

23 ：バクラ ◆jPpg5.obl6 [sage]：2012/04/24(火) 20:49:46.37 ID:xoR0wHiL0

ふーん

24 ： ◆kkShkZ5gbM [sage]：2012/04/24(火) 20:50:50.93 ID:xoR0wHiL0

ふーん

25 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]：2012/04/27(金) 01:34:20.93 ID:zEAkWXxt0

重苦しい気分になったが面白かった