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とある後日の幻想創話(イマジンストーリー) - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆jPpg5.obl6 :2012/03/18(日) 23:47:06.81 ID:aMmlt9I+0

※注意
・ジャンルは禁書×東方。苦手な方は注意
・幻想入りや学園都市入りのようなものではない
 もしも東方キャラが禁書の世界の住人だったら・・・・・・という感じで進める
・時系列的には禁書本編終了後。禁書本編は開始から1年で大団円を迎えている
>>1はSSを書くのが初めて。不定期更新
・キャラ崩壊の可能性大。大目に見てくれると助かる

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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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2 : ◆jPpg5.obl6 :2012/03/18(日) 23:48:29.12 ID:aMmlt9I+0




―――― 一ヶ月前 PM8:10




3 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/18(日) 23:49:27.42 ID:aMmlt9I+0
学園都市第7学区の通りを一人の女子生徒が走っていた。
灰色のスカートに袖無しのサマーセーター。
学園都市に住む者なら知らぬ人はいない、常盤台中学の制服だ。


(早く帰らないと寮監にお仕置きされちゃうわ)

(罰則がプロレス技30連発なんて耐えられるわけないじゃない)


常盤台中学の指定している門限は8時20分である。
門限を破ろうものなら、鬼寮監の手でオソロシイ地獄を見ることは確実だ。

何せその寮監はレベル4ならずレベル5すらも素手で取り押さえることが出来るという、怪物とも言える人間なのだ。
一度目を付けられたら最後、逃げることなど不可能である。

しかも最近新しい技を模索中らしく、その実験も兼ねてると学生の間で専らの噂だ。
実験台にされる方の身としてはたまったものではない。
4 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/18(日) 23:50:17.29 ID:aMmlt9I+0

しかし、現在門限の10分前。まともな道では時間内に寮までたどり着くことは難しい。
彼女が持つ超能力はレベル4の『念動力(テレキネシス)』である。
『空間移動(テレポート)』や肉体強化系の能力者が持つような裏技があるわけではない。


(第177支部の白井さんがうらやましいわね)

(私の能力も『空間移動』だったらこんな風に走り回らなくても良いのに・・・・・・)

(・・・・・・愚痴を言ってもしょうがないか)

(仕方ない。 この手は使いたくなかったんだけど)

(路地裏を通って近道するしかないわね)
5 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/18(日) 23:50:48.20 ID:aMmlt9I+0

彼女そう考えて横に見える薄暗がりの道を見る。
路地裏はスキルアウト等のならず者達の格好のたまり場だ。
加えて今は夜。彼らの活動が活発化する時間帯である。
レベル2以下の人や荒事に慣れていない人であれば非常に危険な場所だ。


(まぁ、私の場合ならスキルアウトが多少集まった所で問題はないんだけどね)

(レベル4だし、『風紀委員(ジャッジメント)』だから一応荒事にも慣れてるし)

(いざという時は適当に吹っ飛ばして逃げればいいから、なんとかなるでしょ)

(さっさと走り抜けちゃいますか)


そう思い、彼女は路地裏へと足を踏み込んだ。
6 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/18(日) 23:51:45.19 ID:aMmlt9I+0

(足下が暗くてよく見えないわね)

(まぁ、道ばたに落ちている物は走りながら退かせばいいし、それ程道が悪いわけでもない)

(とりあえずこのペースで行けばぎりぎり間に合いそうね)


路地裏を走り続けること数分、多少は疲れが見え始めているものの軽快な足取りで道を走り抜けていく。
通路に落ちている空き缶や小石は『念動力』で道の脇に飛ばして安全なようにしていく。
もちろん、身の危険を回避するための最低限の警戒は怠らない。
ここは無法者達がたむろする闇の世界。甘く見ているとどんなしっぺ返しが来るのかわからない。
油断大敵。スキルアウトの恐ろしい所は物量で責めてくることである。
数人なら何とかなるが何十人と来られたらさすがに分が悪い。

スキルアウトに鉢合わせしないよう、注意しながら走っていると、

7 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/18(日) 23:52:13.35 ID:aMmlt9I+0

(・・・・・・?)ゾクッ


背筋に妙な感覚が走った。それに思わず足を止める。
ベテランの『風紀委員』である彼女でなければ気づかなかったであろう感覚。
なんだろうか。背中を小さく見えない何かが動き回るような。強いて言うなら――――




誰かに見られているような感覚。




8 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/18(日) 23:52:57.63 ID:aMmlt9I+0

(!?)バッ


咄嗟に振り返るが誰もいない。
考えれば当然だ。尾行するのに相手の目につくような場所に立っているはずがない。
おそらくそこら辺の物陰に隠れて様子を伺っているのであろう。

スキルアウトだろうか。それとも女子を追いかけ回す変質者か?
追いかけてふんじばることも考えたが、ここで時間を食っては門限までに寮にたどり着けなくなってしまう。
捕まえることが出来ないのは癪だが、見逃すことにした。
とりあえず、全力で走って大通りへ出れば不審者を巻くことはできるだろう。
9 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/18(日) 23:53:28.91 ID:aMmlt9I+0

(異性に好かれるのは悪い気はしないけど、ストーカーは勘弁してほしいわね)

(面倒が起こらないうちにさっさと逃げますか)

(自分から危険に飛び込んどいてなんだけど)

(寮も目と鼻の先だし、さっさと帰ってお風呂に入って寝よう)


そう考えて視線を前の戻そうとして――――

10 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/18(日) 23:54:05.64 ID:aMmlt9I+0




――――彼女の意識は途切れた。




11 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/18(日) 23:55:06.79 ID:aMmlt9I+0
短いけど導入部はここまで
感想・質問があればどうぞ
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/19(月) 09:01:20.15 ID:OKIlPkHDO
乙! 世界観クロスか、面白そうだね。

禁書キャラが居るって事は、幻想勢は魔法使い系以外は大体生徒って事で良いのかな?
13 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:14:16.00 ID:mArmuIu30
>>12
その認識で合ってます。
超能力っぽい能力は学園都市、それ以外は魔術側です。
後、大人の立場にいるのも何人か考えていたり・・・・・・
14 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:19:20.02 ID:mArmuIu30
これから投下を開始します。
15 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/03/20(火) 22:19:54.41 ID:mArmuIu30




――――7月25日 AM11:30




16 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:20:51.52 ID:mArmuIu30

黒子「これでとうとう12件目ですわね」


ここは風紀委員活動第177支部。
白井黒子は今日の朝に『警備員(アンチスキル)』から送られてきたばかりの事件の資料を眺めていた。
その内容は一ヶ月前から話題になっている一連の事件の詳細である。


黒子「女子生徒ばかりが12人。 どれも背後からスタンガンで一撃・・・・・・と」

黒子「被害者の中には常盤台中学や柵川中学の生徒もいるようですわね」

黒子「どうやら夏休みが始まる直前の出来事だったらしいですが・・・・・・」

17 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:21:30.26 ID:mArmuIu30

佐天「隣のクラスのケロヨンの髪留めを付けた子だったよ」

佐天「うちの学校じゃ珍しいレベル3の『空力使い(エアロハンド)』だからね」

佐天「あの時はその話題で持ちきりだったなぁ」

初春「私たちの学校では有名人でしたからね・・・・・・」

初春「未だにショックから立ち直れていないみたいですよ」

固法「女子生徒が何者かに襲われたとなれば・・・・・・良い噂はないでしょうね」

黒子「さらには『風紀委員』の方々の中にも被害者がいるとか」

初春「被害者数は3名。 中には高レベルの方もいらっしゃるみたいです」

固法「噂が広まっているせいか、スキルアウトたちの動きが活発化してきてる」

固法「早く手を打たないと二次被害が広がるばかりね」

18 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:22:12.95 ID:mArmuIu30

黒子「この程度ならただの悪質な通り魔事件に見えますが、問題は・・・・・・」


そう言いながら黒子は事件の資料を読み続ける。
そこには普通の通り魔事件ならあり得ない奇妙な事柄が書かれていた。


固法「首筋に何か尖ったような物で刺された傷が数カ所」

固法「これは被害者全員に共通していることね」

固法「そして何よりも謎なのは・・・・・・」





「被害者はいずれも血液を抜き取られていること」


19 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:22:54.07 ID:mArmuIu30

固法「まぁ、軽い貧血になる程度なんだけどね」

黒子「首筋の傷は血を抜き取るためのものと考えた方が良さそうですわね」

固法「事件のことは知ってたけど、まさか血が抜き取られてるとはね。 こんな情報は初耳よ」

黒子「下手に情報を流すと模倣犯が出る可能性があったからでしょうね」

固法「夜の事件は『風紀委員』の管轄外だから、その代わりに昼間の警備を強化して欲しいとのお達しね」

初春「いったい何が目的なんでしょうね? 人から血を抜き取るなんて」

佐天「・・・・・・自分で飲むためとか?」

黒子「何を言ってるんですの。 吸血鬼じゃあるまいし」

黒子「ファンタジーとかメルヘンじゃありませんのよ?」

20 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:23:23.17 ID:mArmuIu30

佐天「んー、でも最近そんな噂を耳にしたような気がしますけど」

佐天「『 現代の吸血鬼、学園都市に襲来! 』ってなかんじで」

黒子「なんですのそれは」ジトー


黒子は目を細めて佐天を睨む。いかにも胡散臭いという目で。
佐天は事あるごとに、どこからか仕入れたのかわからないような噂話を持ってくることがある。

そして、それは決まって非常に胡散臭いかつ悪趣味な物なのだ。
それに今回は、実際に被害者が出ている立派な傷害事件でり、おふざけが出来るような内容ではない。
彼女の趣味にけちを付ける気はないが、少しは自制してほしいと思う黒子である。

この場に黒子のことを知る『読心能力(サイコメトリー)』がいたのなら、
確実に「お前が言うな」と言われそうであるが。

21 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:24:29.18 ID:mArmuIu30

佐天「最近学園都市にまつわる怪談をまとめたサイトを見たんですけど、
確か今回の事件について書かれた項目があったはずです」

初春「え〜っと・・・・・・これですか?」カタカタ

佐天「そう、それそれ」


初春はディスプレイにとあるオカルトサイトを表示している。
「路地裏の不死鳥伝説」、「学園都市最初の能力者『幻想風化(ロストファンタジア)』」、
「光り輝く男」など、非常に胡散臭いタイトルが並ぶ中にそれがあった。


黒子「なになに・・・・・・?

『空に浮かぶ満月が紅色に染まる時、第7学区の公園に吸血鬼が舞い降りる』

・・・・・・この情報はいつから?」

初春「投稿日から考えると8人目の被害者が出たあたりですね」

固法「『吸血鬼』の部分はは被害者の発見時間が夜だから、
学区云々の件は発見場所が第7学区に集中しているのが理由みたいね」

黒子「全く・・・・・・胡散臭いにも程がありますわ」ハァ

22 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:25:37.92 ID:mArmuIu30

佐天「でも『幻想御手(レベルアッパー)』は実際にあったじゃないですか!」

佐天「もしかしたら今回も本当かもしれませんよ?」

佐天「名もなき研究所で作られた改造人間が逃げ出したとか!」

黒子「今回は前回と違って話に信憑性がなさすぎですの!」


吸血鬼などファンタジーの代名詞のようなものではないか。
科学の最先端を走るこの学園都市でそんなものはばかばかしいにも程がある。

とはいうものの、実際はオカルトの神髄とも言える魔術、
そしてそれを扱う人達が頻繁に学園都市と外部を行き来しているのだが、
彼女にとってはあずかり知らぬ話である。


固法「吸血鬼はともかく、自分で飲むために抜き取っているというのはあり得るわよ?」

黒子「固法先輩まで!」

固法「あら。 それなりの根拠はあるわ」

黒子「えっ?」

23 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:26:38.99 ID:mArmuIu30

固法「吸血病。 ヴァンパイアフィリアとも言うんだけど、鬱病などの精神的な原因から
血液を嗜好するようになる病気なの」

固法「基本的には自傷したり付き合っている他人から血液を提供してもらったりするんだけど、
稀に他者の血液を求めて犯罪を起こしたりすることもあるわ」

佐天「それって治るんですか?」

固法「治らないということはないけど、精神病の一種だから回復には長い時間が必要らしいわね」

固法「煙草やお酒のように依存しやすいというのも治療が困難な理由の一つみたいよ」

初春「ということは吸血病を発症した人を中心に調べ上げれば犯人にたどり着けるんじゃないですか?」

初春「結構珍しい病気みたいですし」

固法「犯人が病院にかかっているなら見つけられるかも知れないわね」

24 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:33:42.86 ID:mArmuIu30


固法「でも、精神病というのは他人に知られないように自ら隠してしまう場合が殆どなの」

固法「おかしいと分かっていてもそれを押し殺してしまうのよ」

固法「もしそうであればこの観点で犯人を見つけるのは難しいかもしれないわね」

黒子「そういえば監視カメラに犯人は映っていませんでしたの?」

初春「どのカメラにもそれっぽい人は映っていなかったみたいです」

初春「犯行は路地裏のカメラのない場所で行われていたらしいですね」

固法「もしくはそれをカメラに映らずに犯行を行える超能力を持っているか・・・・・・」

佐天「誰にも見られることなく相手を襲うことが出来るなんて・・・・・・」

黒子「もしかしたら光学系が移動系の能力者の仕業かもしれませんわね」

25 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:34:41.14 ID:mArmuIu30

固法「それなら光学系も移動系も使える人はそんなに多くはないし、犯人が捕まるのも時間の問題かしら」

佐天「ちぇー。 吸血鬼だったらおもしろかったのになぁ」

初春「佐天さん! そんなこと言っちゃだめです!」

佐天「初春、冗談だってば」

初春「もう」


部屋に笑い声が響く。
佐天が悪ふざけをして、それを初春が説教しようとし、黒子があきれた顔で溜息をつき、
固法が微笑みを浮かべながらそれを眺める。
ここ177支部ではよくある光景である。


固法「そろそろ見回りの時間ね」

黒子「もうそんな時間ですか」

固法「佐天さんも一緒に来る?」

佐天「お供させてもらいますとも!」

26 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:35:40.62 ID:mArmuIu30

初春「あまり危険に巻き込ませたくないんですけどね・・・・・・」

黒子(でも、言っても聞きそうにありませんわね)

佐天「何言ってるの初春! 『乱雑解放(ポルターガイスト)』事件の時役に立ったじゃん!」

初春「あのときは仕方がなかったんです!」

佐天「大丈夫! いざとなったら犯人なんかこのバットでけちょんけちょんにしてやるんだから」バーン!

黒子(その金属バット、いつも常備してるんですの!?)

固法「ふふっ。 それじゃあ行くわよ」


こうして一行は177支部を後にした。


27 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/20(火) 22:37:05.09 ID:mArmuIu30
とりあえずここまで。
東方キャラが出るのはもう少し先になります。
質問・感想があればどうぞ。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 08:16:28.75 ID:La1tZx4DO
お疲れです!
吸血鬼、か。本物なら監視カメラに映らないのは当然だが…。三妖精辺りが一緒なら、病人でも頷けるかも知れない。フランちゃんの能力は物質破壊(マテリアル・ブレイク)とかすぐに思い付くんだけど。お嬢様のは…なんだろ?運命掌握(フェイト・ファンブル)とか? たぶん魔法組だろうけどさ。

早苗さん?は早速犠牲に…。ま、奇跡じゃなければこんなものか。

乱雑解放(ポルターガイスト)は虹川三姉妹で、いずれも音系の能力かな?

霊夢の能力はどんなかねぇ?異層次元(イヴェイド又はスルー・ディメンション)?絶対回避(アブソリュート・イヴェイジョン)?接触不可(キャント・タッチ)?まぁまだ秘密だろうけどね。

美鈴だったら…単純に生命力場(ウィルパワー)…とか?
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 17:10:06.42 ID:1FooFeUDO
プロローグの娘の口調は霊夢さんっぽいが…誰で、どうなってしまったやら。
30 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/23(金) 22:32:05.05 ID:nzP2Vi0v0
>>28
『乱雑解放』は超電磁砲本編で起きた事件のことを指しています。
事件に固有名称はなかった気もしますが・・・・・・もしそうだったらごめんなさい。
31 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/03/23(金) 22:32:41.83 ID:nzP2Vi0v0
これから投下を開始します。
32 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/23(金) 22:33:21.74 ID:nzP2Vi0v0

人通りで賑わう街中を117支部+αの4人が歩く。
今日は晴天。空には雲一つない最高の日和だ。

連続通り魔事件は、犯行の時間帯が夜のため『風紀委員』の管轄外である。
しかし、昼間に犯人が行動を起こさない保証はどこにもない。
事件に対して協力ができない以上、昼間の治安を守ることが『風紀委員』が唯一できることである。

今回見回るのは第7学区の商店街付近。
人通りが多いところであるため争い事は滅多に起きないが、
その代わり迷子や落とし物と言った小さい問題が起こりやすい場所である。

33 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/23(金) 22:34:43.90 ID:nzP2Vi0v0

佐天「そういえば白井さん、御坂さんはどうしたんですか?」

黒子「」ピクッ


人混みの中を歩いていると、佐天は何気なしに黒子に聞いた。
平日ならまだしも今日は休日。しかも夏休み中である。
そんな日に美琴と黒子が一緒にいないのは非常に珍しいことだった。

仕事だから一般人の美琴を関わらせないようにしているのかも知れないが、
いかんせん、美琴は自分から荒事に突っ込んでいくタイプである。
それなら露払いである黒子が側にいたほうがいいと思うが・・・・・・。


黒子「お姉様は今日は用事でいらっしゃいませんわ」プルプル

佐天(あれ?もしかして・・・・・・)


黒子の顔に影が差す。その背中に黒いオーラが漂っているのを幻視した。
どうやら地雷を踏んでしまったことに佐天は気づく。
黒子が御坂美琴の話題でこのような顔をするとき、その理由は常に決まっている。

34 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/23(金) 22:35:29.45 ID:nzP2Vi0v0

黒子「何度も止めたんですのよ? それなのにお姉様は嬉しそうに『今日こそあいつとの決着を付けてやるんだから!』とあの憎たらしい類人猿の所にぃぃぃぃぃ!!!」キィー!

佐天「白井さん落ち着いてください!」

初春「あわわわわわわ」


嫉妬に怒り狂う黒子を佐天と初春がなだめる。

御坂美琴に思い人がいることは今までの付き合いから知っている。
美琴本人は否定しているがあんな態度では説得力は皆無に等しい。
思い人のことは詳しく知らないが、男勝りな美琴があれだけお熱になっているのだから、
その男は相当魅力的な人なのだろう、と佐天と初春は結論づけていた。

その一方で、黒子がその思い人に対して良い印象を持っていないことも知っていた。
いささか感情的になりすぎているきらいがあるが。

35 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/23(金) 22:36:44.98 ID:nzP2Vi0v0

黒子「はぁっはぁっ。 あの類人猿め会ったらただじゃおきませんわ」

固法「こんな所で体力を使ったらいざという時に持たないわよ?」

黒子「うぅ・・・・・・お姉様ぁ〜・・・・・・」ガクッ

固法(御坂さんのことになると盲目的になるのが玉に瑕よね・・・・・・)

佐天「まぁまぁ白井さん。 今日遊べない分明日は思いっきり遊べばいいじゃないですか」

初春「そ、そうですよ! 白井さん明日は非番なんでしょ?」

佐天「今日は明日への下見も兼ねてると思って張り切っていきましょうよ!」

黒子「・・・・・・それもそうですわね」

初春(調子元に戻ったかな?)


どうやら佐天と初春の言葉で調子を取り戻したらしい。
その代わり・・・・・・


黒子「ふっふっふっ・・・・・・」

佐天(・・・・・・あれ?)


口元が不気味に笑っているが。

36 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/23(金) 22:38:04.32 ID:nzP2Vi0v0

黒子「お姉様・・・・・・明日は一日中わたくしに付き合ってもらいますわ・・・・・・」

黒子「午前中は新しいパジャマのためにセブンスミスト買い物をして、お昼は最近話題のお店で優雅にランチ・・・・・・」ブツブツ

黒子「午後は恋愛系の映画を一緒に見た後にその興奮の勢いのまま夜はお姉様にあんなことやこんなことを・・・・・・」

黒子「うっへっへっへ」ニタニタ

佐天(うわぁ・・・・・・)タジッ

初春(御坂さん、ご愁傷様です・・・・・・)


こうなってしまった黒子は何を言っても聞く耳を持たない。
悪い意味で他人から一線を画した妄想力である。
超能力者にとって想像する力というものは非常に重要な事柄であるが、
ここまで質の悪い方向に向かっているのは彼女くらいだろう。

佐天と初春の二人は自分たちが燃料を投下したことを棚に上げつつ、
御坂美琴の貞操が守られることを願うのであった。

37 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/23(金) 22:39:30.93 ID:nzP2Vi0v0
すごく短いですがここまで。
質問・感想があればどうぞ。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/03/24(土) 00:35:41.16 ID:YOiK0PkAO


実は既に東方キャラ出てたりする?
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 14:50:33.92 ID:9yHhSDIN0
何日か空けてもいいから、いっきにどばっと投下してほしい(チラッ
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 15:24:38.15 ID:imJ9gezDO
乙っす〜。
まぁ〜だあんな電撃漫才やってんのかあのビリツンコンビはww

乱雑解放については、俺が禁書をよく知らないだけなのでお気になさらず〜。
41 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:39:32.71 ID:Rusgiv/O0
>>38
名前は出てきていませんが、雰囲気を匂わせるくらいには登場しています。
ですが、彼女らが本編に絡んでくるかは今後の展開次第。

>>39
話の区切りが良くなるように投稿していくので、長くなったり短くなったりします。
ある程度書き溜めてはいますが、一気に投稿するとスランプに陥ったときに更新が停滞する恐れがあるので、
新しく書いた分だけ古いものを小出しにしていく形を取っています。
42 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/03/25(日) 22:40:04.79 ID:Rusgiv/O0
これから投下を開始します。
43 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/03/25(日) 22:40:33.87 ID:Rusgiv/O0




――――7月25日 PM3:00




44 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:41:25.80 ID:Rusgiv/O0

佐天「そろそろお腹空かない?」

初春「3時ですからおやつの時間ですね」

黒子「初春〜? あなた確かウエストが結構きついのではありませんでしたの?」

初春「うっ!? だ、だいじょうぶですよぉ〜」アセアセ

固法「近くにクレープ屋があるからそこで一端休みましょうか」


固法は近くの広場を指さしながら言った。
ここにあるクレープ屋は種類が豊富で味も良いと言うことで女子生徒に人気だ。
その代わり少々値が張るが、生徒たちのちょっとした贅沢として楽しまれている。

そのおかげで体重計を前ににらめっこする人の割合が増えているのだが、これは全くの余談である。

45 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:42:07.21 ID:Rusgiv/O0

黒子「レアチーズケーキを一つ」

初春「私はブルーベリーでお願いします」

固法「それなら私はチョコアイスね」

佐天「どれにしようかなぁ・・・・・・」

黒子「後ろがつっかえていますのでさっさと決めちゃってくださいな」

佐天「この悩んでいるときが一番いいんじゃないですか!」

黒子「まだまだ見回らなければならない場所がたくさん残っていますのよ?」

佐天「仕方ないですね〜。それじゃあ――――」


佐天が注文しようとしたその時、

46 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:42:54.69 ID:Rusgiv/O0





バリバリバリィ!!!

バキィン!





広場の向こうから放電音と何かが割れるような音が響いた。

47 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:43:53.45 ID:Rusgiv/O0

佐天「わっ!」

初春「きゃあ!?」

固法「!?」


続いて誰かが言い争う声が聞こえてくる。


「アンタ、今日こそ決着を付けてもらうわよ!」

「おいまて御坂! 近くに人がいるんだぞ!?」

「そんなこと言って逃げるんじゃないでしょうね!?」


見渡すと男女二人が怒鳴り合っているのが見えた。
というよりも女子が男子に一方的に絡んでいるというのが適切か。

女性の方は御坂美琴。学園生徒230万人中の第三位であり、『超電磁砲(レールガン)』の異名を持つ少女。
彼女は目の前の男性をものすごい剣幕で睨みつけている。

男性の方はウニのようなツンツン頭。その名を上条当麻。
長い銀髪で真っ白な修道服を着た少女と金髪で赤服を着た少女を連れている。
彼は目の前の憤怒の形相の女子生徒にどう対応しようか悩んでいるようだった。

48 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:44:39.43 ID:Rusgiv/O0

黒子(お姉様!)シュン

佐天「あれ? 白井さんは?」

初春「あ、あそこに……」


突然黒子の姿が消えたと思うと先ほどの二人(正確には美琴の方)の所にテレポートしたのが見えた。
この後に黒子が行うことはもちろん・・・・・・


黒子「お・ね・え・さ・まぁ〜ん♪」ガバッ

美琴「!? 黒子ぉぉぉぉぉ!!!」バリバリ

黒子「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」ビクンビクン

佐天・初春(ですよねー)


黒子は美琴に抱きつこうとするも、あっさりと電撃で打ち落とされてしまった。
感電させられた黒子は苦しむこともなく、むしろ恍惚の表情を浮かべている。

ぶっちゃけキモイ。

49 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:45:40.72 ID:Rusgiv/O0

黒子「あぁっ。 今回の電撃も刺激的ですわぁ〜♪」ピクピク

初春「白井さん全く懲りてませんね」ヒソヒソ

佐天「むしろ積極的に電撃を浴びてるような気がするんだけど」ヒソヒソ


「あそこに変な人がいるよーってミサカはミサカは指さしてみたり!」

「くォら! 指さすンじゃねェ!」

「おいおい、一体何の騒ぎだ?」

「あまり近づかないほうがいいと思うよ」


その騒ぎに周りの人間の視線が集まる。
が、一瞥した後そそくさと安全圏に移動し始めた。

能力者同士の喧嘩はこの学園都市では見慣れたものであり、別段珍しいことではない。
君子危うきに近寄らず。不用意に危険に近づいて巻き込まれるのは愚か者がすることだ。
すぐに『風紀委員』が飛んでくるだろう、と考えて遠目に見るのが最良である。

ただ今回の場合は『風紀委員』に少し問題があるのだが。

50 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:46:34.59 ID:Rusgiv/O0

黒子「それにしてもお姉様!? またあの類人猿と追いかけっこしていましたの!?」ガシッ

美琴「黒子! 今日こそあの馬鹿に一撃でも入れないと気が済まないのよ!」ジタバタ

黒子「お姉様は常盤台中学の生徒として相応しい振る舞いをしていただかなければ・・・・・・」

美琴「黒子どいて! そいつ殺せない!」ウガー

上条「何物騒なことをおっしゃってるんでせうか!?」

黒子(ああっ。 お姉様の香りがこんなに強くっ。 ぐへへへへ)


鬼のような顔で当麻に噛みつこうとする美琴と、それを羽交い締めで抑える黒子。
その黒子はニタニタした笑いを浮かべながら美琴の髪に顔を埋めている。

『風紀委員』一同がその様子を眺めていると、当麻が少女たちをつれてこちらに駆け寄ってきた。

51 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:47:55.96 ID:Rusgiv/O0

上条「すみませーん! 『風紀委員』の方々ですよね?」

固法「そうだけど・・・・・・ あなたのお名前は?」

上条「上条当麻っていいます。 失礼ですけど少しの間彼女たちを預かってもらえませんかね?」

固法「彼女たちは一体?」

上条「銀髪の方は知り合いで金髪の方は迷子になっていた所で出会ったんです。」

固法(見た目からして・・・・・・小学生かしら?)

固法「ふぅん、わかったわ。知り合いの方はこちらで預かるとして、
   迷子になっていた方は家に送り届けてしまってもいいわね?」

上条「そうしてもらえると助かります。このままだと御坂の電撃の巻き添えになりそうなので」

固法(そっち系の人かと思ったけど、どうやら違うみたいね)

固法(それにしても御坂さんを傷害容疑で拘束すべきかしら?)チラッ


目線の先には未だに暴れている美琴とそれを抑える黒子の姿がある。
レベル5の中で一番の有名人である彼女が、こんなことをしていて大丈夫なのだろうか?
レベル5の権限を使えば不問にすることが出来るかもしれないが、
そんなことでは後々問題になるのではないだろうか。

52 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:48:40.88 ID:Rusgiv/O0

固法「それじゃあ終わったら4時半ごろに177支部まで来なさい」

固法「その時間帯なら帰ってきているから」

上条「わかりました」

禁書「とうま? クレープ食べさせてくれるんじゃなかったの!?」

上条「夕食は奮発してやるから今回は勘弁してくれ!」

禁書「むーっ。 わかったんだよ」

金髪の少女「当麻お兄ちゃん、また会える?」

上条「ああ。 それと俺の名前はもう呼び捨てでいいぞ?」

上条「なんならインデックスにお前の家の場所を教えておけよ」

上条「こいつは普段は暇だから遊びに行ってやれるかもしれないしな」

金髪の少女「うん、わかった!」

佐天(ふーん・・・・・・)

53 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:49:32.42 ID:Rusgiv/O0

その流れを眺め続ける『風紀委員』一行。

本来ならば『次に遊ぶ約束を取り付けている』という場面なのだが、それを演じているのが高校男子と幼女二人なのである。
何も知らない人が見れば確実に変な目で見られること請け合いだ。
その光景に我慢しきれなくなったのか、佐天がちょっかいを出した。


佐天「それにしてもこんなにかわいい少女を二人も侍らすなんて、当麻さんも隅に置けませんねー」ニヤニヤ

初春(見た目からして結構危険な香りがします)

上条「なっ!? 上条さんは健全でとても有名な男子生徒でございますことよ!?」

上条「いくら何でも幼女趣味はございません!」

禁書「とうま!? それってどういう意味!?」

上条「そっ、それじゃあ急ぎますんで! ではっ!」ダッ

禁書「ちょっと待つんだよ!」

金髪の少女「当麻! またねー!」ノシ

上条「おう!」ノシ

54 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:50:16.11 ID:Rusgiv/O0

美琴「あっ待ちなさい! 黒子っ離しなさいよぉぉぉぉ!」バリバリ

黒子「あばばばばbbbbbb」ビクンビクン

上条「やべぇ!?」

美琴「待てやゴラァァァァァァ!!!」バリバリ

上条「不幸だぁぁぁぁぁぁ!!!」バキィン!


当麻と美琴はものすごい勢いで走り去ってしまった。
その後ろ姿が小さくなっても未だに放電音と破砕音が聞こえ続けている。
果たして当麻は無事に戻ってこられるのだろうか。それは神のみぞ知るところである。

まぁ、神が居たとして当麻には救いの手をさしのべることは出来ないだろう。
彼は神の加護も打ち消してしまうのだから。


55 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:50:59.70 ID:Rusgiv/O0

金髪少女「いっちゃったね・・・・・・」

禁書「そうだね」

初春「まるで嵐みたいでしたね・・・・・・」

佐天「そういえば白井さーん? 大丈夫ですかー?」

黒子「」プスプス


さっきの場所に電撃を浴びた黒子が体中から煙をあげて伸びている。
これだけ酷く電撃を浴びせられても命に別状はないらしい。それどころか顔がツヤツヤしている気がする。

変態の執念とは斯くも恐ろしいものなのであろうか。
だが当分の間は目を覚ますことはなさそうだ。

56 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:52:16.99 ID:Rusgiv/O0

金髪の少女「大丈夫なのかな・・・・・・」ジー

初春「いつものことですからほっとけば治りますよ」ニコッ

佐天(初春が黒い!)ビクビク

固法「そう言えばあなたたちのお名前は?」

禁書「私の名前はIndex-Librorum-Prohibitorum。 インデックスで良いよ!」

固法(目次? ずいぶんと変わった名前ね)

初春「その服って修道服ですよね? もしかして・・・・・・」

禁書「私は由緒正しいシスターなんだよ」

佐天「へぇー。 シスターさんなんだ」

初春「初めて見ますね。 宗教の関係者ということは第12学区から来たのでしょうか?」

禁書「ちがうよ。 とうまの所に一緒に住んでるんだよ!」

佐天「えっ」

初春「えっ」

禁書「?」

固法「(聞かなかったことにしよう)それじゃあお隣さんのお名前は?」

金髪の少女「私? 私の名前はね――――」

57 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:52:56.60 ID:Rusgiv/O0





「――――フランドール。 フランドール・スカーレットだよ」





58 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/25(日) 22:54:35.95 ID:Rusgiv/O0
今日はここまで。
やっと東方キャラが出たよ!

とりあえず一区切り着いたので、次回は少し遅れるかも知れません。
質問・感想があればどうぞ。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 01:09:57.90 ID:gE0Oh/RDO
乙〜。
フランちゃんは可愛らしいな。しかしこれからどうなって行くのか…。

このSSの作風は、群像劇って事で良いんですかね?

東方キャラは大体見た目のイメージ年齢で出すんでしょうか?
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 08:43:54.85 ID:PJpRAEUDO
月の人達も出ますか?
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/28(水) 02:37:57.34 ID:41o8uxTDO
大人も能力は使えるん?
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 14:12:20.80 ID:CxBUpQwDO
オリキャラとか、出たりするんでしょうか?
63 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:48:06.52 ID:3Nb3nb250
>>59
身長のイメージは二次創作の物に近いです。

>>60
儚月抄組については正直ストーリーに絡ませにくいのが現状です。
出すとするなら永遠亭組のちょい役としてでしょうか。

>>61
禁書原作では大人の能力者は出てきていませんが、このSSでは二十歳前後ならば能力を使える人がいるとしています。

>>62
東方に関しては有名どころの二次創作キャラが出る・・・・・・かも知れません。
それを書くに至るまで>>1の気力が持てばですけど。
64 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/03/29(木) 22:48:49.88 ID:3Nb3nb250
これから投下を開始します。
65 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:49:21.54 ID:3Nb3nb250




――――7月25日 AM6:45




66 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:50:01.12 ID:3Nb3nb250

時間は早朝まで遡る。


美琴「うーん・・・・・・ いい朝ね」ノビー


ここは常盤台中学学生寮の208号室。

その部屋の住人である御坂美琴は、今日の素晴らしく良い目覚めにちょっとした幸福を感じていた。


美琴(こんなにも気分がいいなら、今度こそあいつとの決着も付けられそうね)

美琴(いい加減あのことを思い出させないといけないし)

美琴(・・・・・・って何で朝一番にあいつの顔が思い浮かぶのかしら)

美琴(まるで四六時中あいつのことを考えているみたいじゃない!)ジタバタ

67 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:50:34.30 ID:3Nb3nb250

あいつとは無論、上条当麻のことである。

1年前に橋の上で出会って以来、彼女と上条当麻は幾度となくぶつかってきた。
とはいうものの、彼女が当麻見つけると同時に突っかかり、それに対し当麻は逃走、
追いかけっこが始まるという一方的なものであるが。

彼女が当麻に突っかかるのはひとえに当麻に認めてもらいたいからである。
その感情の原因になっているのが何なのかは彼女自身理解している。
数ヶ月前に告白までしたのだが、結局答えをもらうことは出来ず有耶無耶になってしまった。
その時は状況が状況だっただけに、当麻本人は美琴に告白されたことをすっかり忘れているらしい。

しかし、『告白(あんなこと)』を繰り返す勇気はさすがに無く、かといって諦めることも出来ないため、
結局以前と同じように追いかけ回して当麻が思い出すのを待つしかなかった。
そのため、現在でも追いかけっこは継続中である。

昨日も当麻がスーパーから帰るところを見つけて追いかけ回したのだが、結局逃げられてしまった。
そのおかげで当麻が買った特売のタマゴ2パックがご臨終となり、
彼はいつもの台詞を叫ぶことになるのだが、彼女にとっては知らない話である。

68 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:51:23.18 ID:3Nb3nb250

美琴(早く朝食食べてあいつを探しに行こう)

黒子「ふぁぁ・・・・・・ あら、お姉様先に起きていらっしゃいましたの?」

美琴「今日はなんだか目覚めがよくってね。 久しぶりに気分がいいわ」

美琴「そうだ黒子。 私今日は用事があるからそこんところよろしくね」

黒子「」


美琴の突然の発言に愕然としている黒子をよそに、美琴はパジャマからの着替えを始めた。


黒子「おおおお姉様!? それはどういうことでございますの!?」

美琴「どうもこうもないわ。 そのままの意味よ」ヌギヌギ

黒子「でも昨日は確か明日の予定は何もないと自分からおっしゃったではありませんか!」

美琴「今日は気分がいいからね。 たまには自分一人で街の散策に出ようと思ったのよ」ゴソゴソ

美琴「それにアンタ、今日は朝から『風紀委員』の仕事があるでしょ。」ゴソゴソ

美琴「毎回厄介になるのもなんだし、邪魔しちゃ悪いしね」バサッ

69 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:51:55.51 ID:3Nb3nb250

ガラガラと音を立てて黒子のスケジュールが崩れていく。
今日は美琴と一緒に『風紀委員』の仕事のついでに色々と見て回りたかったのだが。
昨日の今日の話なのに用事があるというのはどういうことなのだろうか。


黒子(まさかお姉様自ら、しかも一人でお出かけになるとは予想外でしたわ)

黒子(お姉様の行動、発言を考慮して綿密にプランを構築してきましたのに・・・・・・)

黒子(これでは計画が台無しですわ)

黒子「それにしてもどうしてそんな急に・・・・・・まさか」

美琴「ん?」

黒子「あの殿方の所に行くのではありませんわよね?」

美琴「」ギクリ

黒子「お ね え さ ま?」

70 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:52:33.43 ID:3Nb3nb250

美琴「う、うるさいわね!」

美琴「今度こそ殴り飛ばしてでも思い出させてやるのよ!」

黒子「お姉様! そんなことをしては品を疑われますわ!」

黒子「お姉様は常盤台中学のエースでございますのよ?」

黒子「あまり外れた行動ばかりしていては他の方に示しがつきませんわ」

黒子「それに何か最近良くない噂も飛び交っているようですし・・・・・・」

美琴「良くない噂? 何それ?」

黒子「お姉様に彼氏ができたとか、三角関係でドロドロになっているとか」

黒子「挙げ句の果てには既に爛れた関係になっているとか・・・・・・」

71 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:53:01.90 ID:3Nb3nb250

美琴「なななな何よそれ! あいつとはそんな関係じゃないわよ!!!」カァァ////

黒子「そんなことはわかっていますわ(というかそんなことになったらアイツヲコロス)」

黒子「あの殿方はとんでもないほどの朴念仁ですしね」

美琴「うぅ〜・・・・・・ 確かにそうだけど」ブツブツ////

黒子「今の所はそれ程広がってはいないようですが、この状態が続けばいずれ取り返しの付かないことになりますわ

美琴「一体何処の誰がそんな噂を立ててるのよ・・・・・・」

黒子「お姉様の隣のクラスのいつも団扇を持っている女がそのようですわね」

美琴「え、あいつ?」

黒子「一部の生徒ではそれなりに有名ですわよ?」

黒子「彼女の噂によって被害を受けた生徒は数知れず」

黒子「問いただそうにものらりくらりと躱されて相手にしてもらえないそうですわ」

72 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:53:42.79 ID:3Nb3nb250

黒子「何よりも厄介なのは彼女の噂にはある程度の信憑性があるということ」

美琴「どういうことよ?」

黒子「目撃情報があったり、写真があったり」

黒子「つまりは証拠があるということですわね」

黒子「お姉様は近頃あの殿方を追いかけ回してばかりでしょう?」

美琴「ま、まぁ否定はしないけど・・・・・・」

黒子「その光景を写真に納めて虚実を織り交ぜて流せば簡単に噂が立ちますわ」

黒子「目撃者も多いでしょうしね。 お姉様は有名ですから話題性もばっちりというわけです」

美琴「くっ・・・・・・あの女次に会ったら黒こげにしてやろうかしら」ギリギリ

黒子「それに関しては同感ですわね」

黒子「有ること無いこと言いふらして楽しむなんて悪趣味にも程がありますわ」

美琴「はぁ・・・・・・」

73 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:54:30.54 ID:3Nb3nb250

隣のクラスの団扇を持った女。
実際に会話したことはないが、その噂ならよく耳に入ってくる。
なぜならその女は現存する『空力使い』の中で最もレベル5に近い存在と言われているからだ。
似たような能力者に婚后光子がいるが、手のひらに噴射点を作って物体を吹き飛ばす彼女と違い、
広範囲にわたる突風や竜巻など自然現象により近い形で能力を使用するらしい。

固有の能力名を持っており、名前は『局地台風(マクロバースト)』。
そして、付けられたあだ名は『風神少女』。
多少仰々しい気がするが、自然現象を操る彼女には相応しいであろう。

その女の名前は確か――――

74 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:55:08.55 ID:3Nb3nb250

黒子「それはともかくお姉様?」

美琴「え? な、何?」

黒子「あの殿方の所に行くのでしたら見過ごすわけにはいきません」

美琴「なっ!? べ、別にいいじゃない! 私の勝手でしょ!」

黒子「わたくしはお姉様の露払いでございますのよ?」

黒子「あの女たらしの所にいかせるわけにはまいりません」

黒子「それにあの殿方と一緒にいるところをまた誰かに見られでもしたら噂の内容が悪化してしまいます」

美琴「それはそうだけど・・・・・・」

黒子「ですからお姉様! 今日はわたくしと一緒に参りましょう!」

黒子「わたくしの胸の中でお姉様の心を癒してさしあげます!」

黒子「さぁ! 安心して飛び込んできてくださいまし!」

美琴「やっぱりそっちが狙いかい!」

黒子「来られないのでしたらわたくしからお姉様の所にぃぃぃぃ!!!」ガバッ

美琴「いい加減にしろぉぉぉぉ!!!」

寮監「朝からうるさいぞ! 御坂に白井!」バタン!

美琴・黒子「「申し訳ありません(ですの)」」ドゲザ

75 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:55:55.56 ID:3Nb3nb250

そんなこんなで慌ただしい朝を迎えた後、二人は朝食を食べるために食堂へ移動しようとしていた。
黒子はあの後必死に説得を試みていたが、美琴の心を動かすことはできなかった。
そのショックのせいなのか、黒子の顔はまるで生気が抜けたような表情をしている。


黒子「・・・・・・」フラフラ

美琴「まったく・・・・・・シャキッとしなさいシャキッと!」

黒子「・・・・・・」フラフラ

美琴「仕方ないわね・・・・・・気付けにビリッと・・・・・・」

舞夏「おー。 そこにいるのは御坂と白井じゃないかー」

美琴「あ、あら、土御門さんじゃない。 久しぶりね」サッ

舞夏「久しぶりだなー。 ところで白井はどうしたんだー?」

美琴「今日私と一緒に遊べないからって拗ねてんのよ」

黒子「・・・・・・」フラフラ

舞夏「そうかー」

76 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:57:06.56 ID:3Nb3nb250

美琴「そう言えば土御門さん。 今日の朝食はどんなものなのかしら?」

舞夏「一押しはエッグマヨトーストにトマトサラダ、飲み物は牛乳だぞー」

美琴「へぇ〜。 なかなか美味しそうじゃない」

舞夏「料理長が腕によりをかけて作ってるからなー」

「土御門さん、何をしているのですか?」

美琴「ん?」


今日の朝食について話が盛り上がっていると、一人のメイドがこちらに近づいてきた。

見た目的には10代後半だろうか。しかし、その雰囲気にはどことなく古風な物が感じられる。
身長は舞夏よりも頭二つ大きく、髪は銀髪。というよりも限りなく白に近い。
その髪を緑色の小さなリボンで両側に三つ編みにしてまとめている。
顔も色白で整っており、いかにもまじめそうな表情だ。むしろ堅苦しい雰囲気を醸し出している。
肌が白すぎて顔形は日本人なのにまるで白人のような印象を受けた。
色白は女性の憧れであるがここまでになると病気なのではないかと思えてくる。
腰から銀色の小さな懐中時計を下げている。かなりの年代物のように見えた。

77 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:57:52.38 ID:3Nb3nb250

美琴(いかにも仕事が生き甲斐って顔つきをしているなぁ)

美琴(怒らせたらうちの寮監並みに怖いんじゃないかしら)

美琴(それにしても、この人の髪の色を見ていると『あの男(一方通行)』を思い出すわね)

美琴(あーだめだめ、この人は無関係なんだから)

舞夏「おー、咲夜さんじゃないですかー」

咲夜「仕事中はメイド長と呼びなさい。 それで、あなたは何をしているのですか?」

舞夏「このお二人に今日の朝食についてご質問を受けたのでお答えしていたんですよー」

咲夜「なるほど。 あなたが担当している場所の掃除は終わりましたか?」

舞夏「もう少しで終わりますー」

咲夜「わかりました。 そちらが終わり次第他の方々の手伝いをしてください」

咲夜「どこを手伝えばいいかは聞けば分かるはずです」

咲夜「私はこれから朝食の配膳のチェックをしなければなりませんので」

舞夏「了解しましたー」

咲夜「それではそちらのお二方も。 ごきげんよう」


そう言うと彼女は食堂の方へさっさと行ってしまった。
その後ろ姿はまるで隙のない、いわばプロの雰囲気を醸し出していた。

78 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 22:58:39.40 ID:3Nb3nb250

美琴(なんて言うか、クールな人だったわね・・・・・・)

美琴「ねぇ、あの人一体誰なの? 見たこと無いんだけど」

舞夏「今回私たちのメイド長を勤めている十六夜咲夜さん」

舞夏「うちの学校で成績がトップのすごい人なんだぞー」

舞夏「あまりにも成績が良すぎるから先生たちから『完全で瀟洒なメイド(パーフェクトメイド)』って呼ばれてるんだー」

舞夏「年下のメイドたちからも『メイド長』って呼ばれているんだぞー」

美琴「成績がいいってことはそれなりの能力を持ってるのかしら?」

舞夏「うーん、でもあの人が能力を使っているところは見たことがないんだよなー」

舞夏「他のメイドたちもそう言ってるしなー」

美琴「でもあなたの学校の成績トップなんでしょ? レベル4はあるんじゃない?」

79 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 23:00:05.09 ID:3Nb3nb250

舞夏「うちの学校は別に能力が無くても成績は上までいけるんだぞー」

舞夏「見合った技能と仕事への誠実ささえあればなー」

美琴「そうなんだ」

舞夏「でも何かの能力を持っているのは確かかもなー」

美琴「例えばどんな?」

舞夏「噂によるとこの学生寮くらいの広さのお屋敷を15分で掃除したりとかー」

舞夏「50人前の料理を配膳も含めて1時間でやっちゃったりとかなー」

美琴「何よそれ・・・・・・いくら何でもあり得ないわよ」

舞夏「確かに誇張しすぎかもしれないけどなー」

舞夏「噂が立っているってことはそれなりの根拠があるかもしれないなー」

美琴「・・・・・・」

80 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 23:00:57.01 ID:3Nb3nb250

『噂』という単語を聞いてどうやら美琴は今朝の話題を思い出したようだ。
彼女と当麻の付き合いはそこそこの長さがある。
考えてみれば今まで噂にならなかったのがおかしい。何せ隠すつもりが無かったのだから。


美琴「いっそのこと開き直って噂をもっと広げればあいつも気づくんじゃ・・・・・・」

舞夏「御坂ー? どうしたー?」

美琴「な、なんでもないわ! ・・・・・・ところで土御門さん。 咲夜さんは普段何してるの?」

舞夏「最終試験の一環で誰かの専属のメイドとして住み込みで働いているみたいだぞー」

舞夏「月に一度学校に来て見習いメイドの指導もしてるんだー」

美琴「ふーん」

黒子「お姉様、そろそろ行きませんと間に合わなくなってしまいますわ」


いつの間に復活したのか、黒子は時計を見ながら美琴に急ぐように言った。
完全には立ち直ってはいないようだが、これはこれで良しとしよう。


美琴「げっ、もうそんな時間? それじゃあ土御門さん、また会いましょ」

舞夏「おー。 またなー」

81 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/03/29(木) 23:04:14.44 ID:3Nb3nb250
今日はここまで。
咲夜さんと名前を出さなくてもバレバレな方が登場。
でも名前が出てない方は今後出てくる予定がなかったりする。

書き溜めに設定の矛盾を発見し書き直し中。
おかげでモチベが下がりまくり。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 23:20:39.52 ID:bf2gr1udo
おつにゃんだよ!
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 01:24:38.66 ID:xWeMw6VDO
乙っ!
文さん出ないのかww能力強いのに不憫だなww まぁ、きっと情報にゴシップに、と…データ面で登場人物達を大いにサポートしてくれる事でしょう。

時間操作…ま、おおよそ科学とは思えないよね。

ところで、妖夢ちゃんは剣術部(剣道部ではない)部長な気がする。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/31(土) 19:45:55.17 ID:MxxesNIDO
書き溜めてたのに書き直しとか…そりゃあやる気なんて出ませんよねぇ。でも、何とか頑張って頂きたいところです。

そう言えば…超能力と魔法で分けてるって事は、姉妹関係とかは重要じゃないのかな?
85 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:46:17.65 ID:4LZVuOq20
>>84

血縁関係は基本的に原作通りとするつもりです。
86 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/04/01(日) 23:46:46.92 ID:4LZVuOq20
これから投下を開始します。
87 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:47:34.77 ID:4LZVuOq20




――――7月25日 AM8:25




88 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:48:18.05 ID:4LZVuOq20

朝食を終えた後、美琴は身だしなみを整えてロビーに来ていた。
常盤台中学は校則として外出時は制服を着ることが義務づけられているため、
精々薄い化粧をしたり髪留めを選んだりするのが関の山なのだが。


美琴(さーて、今あいつはどこで何をしてるんでしょうね)

美琴(今の時刻は8時半か。 朝食を食べて家でのんびりしているのかな)

美琴(それともあのシスターと一緒に出かける準備をしているのかも)

美琴(もしかしたら補習に呼び出されて泣く泣く学校に登校しているのかもしれないわね)

美琴(むしろそっちの方が有り得そう)


とりあえず当麻の住む寮に行ってみることにした。
この前、こっそり後を付けて調べておいたのだ。
決してストーカーではない。あくまで調べていただけである。

89 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:49:07.93 ID:4LZVuOq20

黒子「お姉様、お待たせいたしましたわ」

美琴「うん。 それじゃあバスも来るし早く行きましょうか」


黒子の落ち込みっぷりが尋常ではなかったので、道中は一緒に行動することにした。
どうやらテンションはある程度は戻ったようだ。
これなら『風紀委員』の仕事には影響は出ないだろう。


黒子「そういえばお姉様、最近はなにやら物騒ですからお気を付けてくださいまし」

美琴「最近起こっている通り魔事件のことでしょ?」

黒子「ええ。 この2ヶ月で女子生徒ばかりが既に11人も被害に遭っていますの」

黒子「『警備員』も調査を進めているようですけど、結構難航しているみたいですわね」

黒子「何せ犯人に関する情報が何一つありませんから」

90 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:49:36.96 ID:4LZVuOq20

美琴「でも被害者が見つかったのは夜なんでしょ?」

美琴「ってことは犯行を行った時間帯もそれに近いはずよね?」

黒子「いくら犯行の時間帯が夜だからといって、昼に襲われないとは限りませんのよ?」

黒子「もしかしたら、昼間は襲う女子生徒の品定めをしているのかもしれませんし」

黒子「気をつけるに越したことはありませんわ」

美琴「とりあえず頭に隅にでも置いておくわ」

美琴(見つけたら私直々にとっちめてやろうかしら)

黒子「お姉様? くれぐれも自分で捕まえようなどとは思わないでくださいね?」

美琴「うっ」ギクリ

黒子「まったく! そのような荒事は『風紀委員』や『警備員』の任せておけばよいのですわ!」

黒子「自分から危険に飛び込むようなことはやめてくださいまし!」

美琴「わかったわよ。 別に怒鳴らなくてもいいでしょ」

黒子「本当にわかっているのですの?」

91 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:52:05.67 ID:4LZVuOq20

そんな他愛のない会話をしている内に無人バスがやってきた。

幸運なことに乗客は殆ど居なかった。普段なら通勤ラッシュやら何やらで混雑するものなのだが。
とりあえず二人は適当に場所を見繕って座ることにした。


美琴「それにしても『風紀委員』も大変ね。休み中もこうやって出勤しなきゃいけないんだし」

黒子「確かに最初の頃は辛かったですけど、慣れればそうでもありませんわね」

美琴「そうはいっても最近は事件が頻発して仕事詰めなんでしょ?」

美琴「通り魔事件だけじゃなくて謎の連続火災事件もあるし・・・・・・」

黒子「そちらは別の学区の支部の方々が担当していますからそれ程ではないのですけれど・・・・・・」

92 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:53:17.78 ID:4LZVuOq20

美琴「あれ? この前犯人が第7学区に潜んでるって聞いたけど」

黒子「そいつは『連続火災事件』の模倣犯でしたの」

黒子「捜査の邪魔をした罰としてきつくお仕置きしてあげましたわ」

美琴「なるほどね」

黒子「その直後に他学区の研究所で火災が起きたので、捜査はそちらの方に任せることになりましたの」

黒子「そうはいってもスキルアウトやらなにやらで仕事がなくなることはありませんが」

美琴「どちらにせよ長期休暇でも休みはほとんど無いってことね」

黒子「まったく勘弁してほしいですの・・・・・・」ハァ


そう言って黒子は己の境遇に嘆息する。
だからといって彼女に仕事を怠ける気は毛頭無いのだが。

この時期になると一部の学生が調子に乗って問題を起こすことが多くなる。
なまじ学生が多い学園都市だからこそ、そのようなことが起こりやすい。

93 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:53:46.45 ID:4LZVuOq20

黒子「・・・・・・そういえば」

美琴「どうしたの?」

黒子「いえ、模倣犯を捕縛する際に少々失敗してしまいまして」

黒子「その始末書を書かなければならなかったのを思い出しましたわ」ガクッ

美琴「まぁ、うん、がんばんなさい」

94 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:54:14.18 ID:4LZVuOq20




――――15分後




95 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:54:49.90 ID:4LZVuOq20

美琴「そろそろね」

黒子「そうですわね。 ・・・・・・お姉様? くれぐれも面倒ごとに顔を突っ込まないでくださいまし」

美琴「そう何度も言わなくったってわかってるわよ」

黒子(少しは心配するこちらの身にもなってほしいですの)


そうして黒子は177支部前でバスを降りていった。

一方、美琴はさらに10分程バスに揺られた後、当麻の住む学生寮前で降りた。
学園の外にあるマンションのような何の変哲もない建物だ。
もちろんそれは『学園の外』から見た場合であり、
学園都市という基準から見れば数世代前の骨董品のような建物である。

96 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:55:27.52 ID:4LZVuOq20

美琴(さて、これからどうしようかしら)

美琴(寮の出入り口で待ち伏せでもしようかな)

美琴(でもそれだとあいつが既に出かけていたら待ちぼうけを食うことになりかねないわね)

美琴(先に家にいるか調べておいた方が良さそう)

美琴(玄関から聞き耳を立てるだけでわかるでしょ)

美琴(あのシスター結構うるさそうだし)

美琴「えーっと、上条、上条・・・・・・ ここね」


当麻の住む部屋の番号を確認しそちらへ向かう。
使い古されたエレベータに乗り、寂れた廊下を歩いていく。
掃除は行き届いているのか、ゴミのような物は見あたらなかった。
おそらく掃除ロボットが常に徘徊しているのだろう。おかげで景観はそれ程悪くはない。

97 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:56:05.82 ID:4LZVuOq20

美琴(それにしてもボロっちいマンションね。私の住む寮とは大違いだわ)

美琴(まぁ、生徒に支給される奨学金はレベルで左右されるし)

美琴(レベル0となるとこういうところにしか住めないのかもね)

美琴(あいつの場合はそれだけじゃないのかもしれないけど。 不幸だし)

美琴(私はレベルなんてあまり気にしたことはないけど、やっぱり他の人にとっては死活問題なのかもね)


と、そこで当麻の部屋の質素な扉が目に見えた。
この扉だけ異様に新しく見えるが気のせいだろうか?

98 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:57:50.12 ID:4LZVuOq20

美琴(誰も見てないわよね・・・・・・?)


周りに誰もいないことを確認し、当麻の部屋を聞き耳立てようとしたとき、


ガチャッ


「ん? そこのお嬢さん、カミやんになにか用かにゃー?」

美琴「っ!?」ビクゥッ


隣の部屋から金髪でサングラスをかけたアロハシャツの男が出てきた。

99 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:58:42.79 ID:4LZVuOq20

美琴「・・・・・・あれ? あんた確かアイツと一緒に連んでた・・・・・・」

土御門「カミやんのダチの土御門元春だぜい」

土御門「そういうおまえこそ常盤台中学の『超電磁砲』じゃないかにゃー?」

美琴「土御門ってことは、あなたが舞夏さんのお義兄さん?」

土御門「その通りだぜい。 お前のことは舞夏からよく聞いてるよ」

土御門「それで、常盤台のお嬢様が『キング・オブ・貧乏』のカミやんに何の用かにゃー?」

美琴「べっ別に近くを通りかかったから、散歩のついでに寄ってみただけよ」

土御門「常盤台の寮から散歩するにはちと遠すぎる気がするけどにゃー」

土御門「それにこんな何もないところを選ぶあたり、相当な物好きな気がするぜい」

美琴「うるさいわね! 私の勝手でしょ!」カァァ////

土御門「それもそうだにゃー」ニヤニヤ

100 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/01(日) 23:59:30.05 ID:4LZVuOq20

美琴は頬を赤らめながら土御門を怒鳴る。

土御門は美琴が当麻に片思いしているのは知っていたので少しからかってみたのだった。
それと同時に朴念仁の親友に呆れも感じる。

このまま美琴をいじり続けるのもいいが、電撃が飛んできそうなので素直に止めることにした。
何事も引き際を見極めるのが大事である。そういうことは彼の十八番だ。


土御門「それはともかく、今カミやんは用事で出かけてるぜよ」

美琴「用事って何の?」

土御門「いつも通りの補習だにゃー。 今朝に小萌先生から朝イチで電話がかかってきたみたいでな」

土御門「朝早くから出かけていったぜい」

美琴「いつごろ帰ってくるかわかる?」

土御門「今日の補習は午前中だけだからにゃー」

土御門「それが終われば帰ってくるかもしれないぜよ」

101 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/02(月) 00:00:25.44 ID:tdfz8Qxr0

美琴「それじゃあお昼にまた来ればいいわね」

土御門「あ、でも昨日はインデックスが小萌先生のところに外泊していたみたいだからにゃー」

土御門「彼女を迎えに行ったらそのまま街に繰り出すかもしれないにゃー」

美琴「そう・・・・・・」

土御門「どうする? 何なら俺が伝言を承ろうか?」

美琴「別にいいわ。急ぎの用事でもないし」

美琴「街に出掛けるんだったらそこら辺を歩いていれば会えるでしょ」

土御門「それならわかったぜい」

美琴「えぇ、ありがとね」

土御門「どういたしまして、だにゃー」


当麻は午前中は補習でいないということなので、仕方なくそのまま街へ出ることにした。
とはいっても美琴は当麻を捜すということを目的としてきたため、彼が学校に縛られている間は何もすることがないのだが。

102 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/02(月) 00:01:01.62 ID:tdfz8Qxr0

美琴(やっぱりというか何というか)

美琴(あいつってどんだけ成績が悪いのよ!)

美琴(機会があったら私が直接勉強を教えてあげようかな)

美琴(以前見た内容を考えると、それほど難しいものでもないみたいだし)

美琴(・・・・・・ってなんで中学生が高校生の勉強を教えるようなことになるのかしら)


それはひとえに当麻が通う高校と常盤台中学の学習の進行度が違いすぎるからである。

当麻の通う高校の教育は学園の外のそれとは大差ない(能力開発の授業などはあるが)。
しかし、常盤台の教育はそれを3年ほど前倒しで教え、さらに自身の持つ能力に応じて化学、物理学、
生物学、脳科学、心理学などの学問を専門的に教え込まれるのである。

その中には学園都市の人間しか知らない新発見の公式、理論も含まれている。
そのような教育を受けた美琴と一般的な教育のみ受けている当麻とでは、知識に天と地の差があるのは当然のことと言えた。

103 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/02(月) 00:03:16.46 ID:tdfz8Qxr0
今日はここまで。
これからリアルが忙しくなるので更新が遅れるかもしれません。

質問・感想があればどうぞ。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 11:30:32.49 ID:eGrxOmyDO
お疲れ様!お仕事頑張って下さいっ!

東方の異変に沿っているなら、今は紅霧異変の扱いなんですかね?
もしそうなら、とりあえずの問題はルーミアちゃんがカニバリストなのか、ただの腹ペコキャラなのかって事だ。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 19:38:14.67 ID:uII8rGhDO
そうそう、重要な事を聞いてなかったじゃないか。これってほのぼのなの?バトル重視なの?それともほのぼのバトルなの?
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/04(水) 08:12:44.59 ID:pcGS/XyDO
不審火ねぇ…もしかして、とある二人の喧嘩(殺し合い?)のせいか?w
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/05(木) 20:17:54.13 ID:80+6ifDDO
旧作東方のキャラは出ますかね?
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 14:41:05.27 ID:7hATUI0DO
チルノと大ちゃんの出番が楽しみだ。でも女の子なのに大ちゃんって名前はやっぱり可哀想に思えるなぁ。
109 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:29:54.09 ID:/EN+lYTJ0
>>104
一応紅魔郷を意識して話を作っています。でも全キャラが出るとは限りません。
出なかったキャラは番外編とかで出そうかなと。

この話が終わったら妖々夢とか永夜抄とかをモデルに書けたらなぁ・・・・・・

>>105
ほのぼのバトルでいきます。
ガチシリアスとか全編ギャグとかを書く力量は>>1にはないです。
ゆるい感じでたまに真面目になったり笑いをはさんでいこうかと。

>>107
全員は無理でしょうけど、もしかしたら出るかもしれません。まだ考えてはいませんが。
夢美とか教授とか苺クロスとか。
110 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/04/08(日) 21:30:31.13 ID:/EN+lYTJ0
これから投下を開始します。
111 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:31:26.77 ID:/EN+lYTJ0

再びバスに揺られること30分。
美琴はセブンスミストの前でバスを降り、昼間をどのように時間を潰すかを考えていた。


美琴「さて、これからどうしようかしら」

美琴(今の時刻は9時半ね)

美琴(黒子にあんなことを言っちゃった手前、『風紀委員』の支部に行くのは気が引けるわね)

美琴(だからといって他に行く当てもないんだけど)

美琴(とりあえずそこら辺でぶらぶら歩いてみましょうか)

美琴(何かおもしろいことがあるかもしれないし)


結局美琴は街中を好き勝手にうろつくことにした。
たまには一人で羽を伸ばしてみるのもいいかもしれない。

普段はレベル5という肩書きのために少し窮屈な思いをしているのだ。
周りからははっちゃけてると思われているかも知れないが、これでも公私の分別は出来ているつもりである。

112 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:32:04.27 ID:/EN+lYTJ0




――――2時間後




113 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:32:38.86 ID:/EN+lYTJ0

それから美琴は2時間半ほどかけて第7学区の街中を探検した。
最近新しくできた商店やレストランなどなかなかの収穫である。

路地裏や使われなくなったビルに入ったりもしたが、彼女には途中でスキルアウトに会わずに行動できる手段がある。
彼女は電磁波を使って周りにある物の居場所を特定できるので、事前にスキルアウトの存在を察知・回避できるのだ。


美琴(こうやって一人で歩いてみると結構いろんな発見があるわね)

美琴(私もここに来て結構時間が経つけどまだまだ知らないことも多いみたい)

美琴(街もいつまでも変わらないというわけでもないし)

美琴(諸行無常ってやつかしら)


そんな年甲斐のないことを考える美琴であった。

114 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:33:36.94 ID:/EN+lYTJ0

美琴「とりあえずおもしろそうな所は見て回ったかな。 後は・・・・・・」


さて、ここまで来て美琴には一つ気になることがあった。それは――――


美琴(さっきから後を付けてきてる奴をどうするか、かしら)


これは路地裏に入る際に電磁波を利用したときに気づいたことである。
大きさから考えて、自分と同じくらいの背の人間が後を付いてきている。

それからというものの、どこへ行こうと一定の距離を保って付いてくるのである。
いつもならばすぐ探し出して電撃を浴びせてやるのだが、今回はそうもいかなかった。


美琴(何でかわからないけど、そいつのいる方を意識するとレーダーにかからなくなるのよね)

美琴(最初は『空間移動』系の能力者の仕業かと思ったんだけどそうでもないみたいだし)

美琴(なんというか、認識を無理矢理阻害されているような・・・・・・)

美琴(『視覚阻害(ダミーチェッカー)』のような能力かもしれないけど、あれは視覚による認識に対する物だし・・・・・・)

美琴「さて、どうしようかしら」

115 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:34:46.95 ID:/EN+lYTJ0

ここで美琴が考えた案は以下の三つ。


@無視をして街中探索を続ける

A全力で走るなどして不審者を振り切る

B人気のないところに誘い込み攻撃する


@は彼女の性格からしてこの状況は耐えきれるものではないため却下。

Aはその場しのぎでは何とかなるが今後も同じようなことが続く可能性がある。
別の視点から考えてみると、もしかしたら今朝話題になった通り魔かもしれない。
もしそうなら、やはり美琴の性格からして到底見過ごすことはできない。

黒子には関わるなと言われたが、彼女はこういう性分なのだ。

となると必然的にBとなるわけだが、周りに迷惑にならないような広い場所はあっただろうか?
考えを巡らせてみるがそんな場所はなかった気がする。

仕方ないから、そこら辺は妥協して近くの袋小路にでも誘い込むことにしようか。
少なくとも人目は避けることができるだろう。
相手の能力の対処方法は後で考えればいい。
俯きながらそんなことを考えていると――――

116 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:35:20.61 ID:/EN+lYTJ0





「そこのあなた、少し聞きたいことがあるのだけど」





117 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:36:10.69 ID:/EN+lYTJ0

美琴「!?」バッ


気がつくと目の前に一人の少女が立っていた。

桃色の服と変わった帽子をかぶり、手には日傘を持っている。
髪は青みがかかった銀色で瞳の色は黒、肌は雪のように白い。

背は低く、遠目で見れば十にも満たない子供のようだ。
それなのに彼女の目は子供のそれとは思えないような大人びた目つきをしている。
見た目は年下なのにまるで年上を相手にしているような印象を受けた。


美琴「な、何よアンタ」

銀髪少女「初対面の人に対してその言い方はないんじゃない?」

銀髪少女「まぁ、自分の名前を最初に名乗るのが礼儀かしら」

銀髪少女「はじめまして。 私の名前はレミリア・スカーレット」

レミリア「あなたのことはかねてからよく知っているわよ、常盤台の『超電磁砲』さん?」

美琴「私はアンタのことは知らないわね」

レミリア「でしょうね」

118 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:36:55.56 ID:/EN+lYTJ0

美琴「・・・・・・ところで聞きたいことがあるんだけど」

レミリア「何かしら?」

美琴「さっきから私の後を付けてきてるのって、もしかしてアンタの仕業じゃないでしょうね?」

レミリア「? 私とあなたは今ここで初めて知り合ったのだけれど?」

美琴「だってさっきから私の後を・・・・・・ってあれ?」


再度電磁波を飛ばしてみると、さっきまでいた不審者は既にいなかった。
突然居なくなったに拍子抜けするが、これは付け回されなくなったことを喜ぶべきか、
捕まえられなかったことを嘆くべきか。

そんなことを考えているとレミリアが冷ややかな目でこちらを見ていた。


レミリア「初対面の人をいきなり犯罪者扱いするなんてとんだお嬢様ね」

レミリア「常盤台の教育はどうなっているのかしら?」

美琴「むっ・・・・・・はぁ、それで? アンタは私に何の用なわけ?」

119 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:37:44.99 ID:/EN+lYTJ0

レミリア「人を探しているのよ」

レミリア「私と同じくらいの背で金髪で赤い服を着た女の子を見かけなかったかしら?」

レミリア「フランドールって言う名前なんだけど、私の妹なの」

レミリア「私のかぶっている物と同じ形をした白い帽子をかぶっているから見分けがつくと思うけど」

レミリア「ちょっと目を離した隙にどこかに行っちゃってね」

レミリア「久しぶりに外に出たからはしゃぎ過ぎているみたい」

美琴「見かけてないわね。 そんな目立つ格好してたら気づかないはずがないわ」

レミリア「・・・・・・そう、まだ会っていないのね」

美琴「というか、人捜しなら『風紀委員』に頼むべきじゃない?」

美琴「いきなり見ず知らずに人に頼み込んでも期待はできないと思うけど」

レミリア「いいえ、そうでもないわよ」

美琴「え?」


美琴は不思議な顔をしてレミリアを見つめる。
彼女の表情を見ると確固たる自信があるようだった。

120 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:38:32.95 ID:/EN+lYTJ0

美琴「どうしてそんなことが言い切れるのよ?」

レミリア「私には視えるのよ。今日中にあなたはあの子に会うことになる」

レミリア「言ったでしょう? 『まだ』会っていないのねって」

美琴「視える? あなたの能力って『予知能力(ファービジョン)』なの?」

美琴「名前だけで実際に使ってる能力者は見たことないんだけど」

レミリア「『予知能力』は傍目からは使ったのかがわからないから、他人からは胡散臭い目で見られることが多いのよね」

レミリア「まぁ、厳密には違うけど私の能力も似たような物と思ってもらってもかまわないわ」

美琴(確かに、1年後の未来を予言してもそれが正しいかわかるのは1年後だしね)

美琴「でもそんな能力があるなら、自分自身の妹が迷子になることは予見できなかったのかしら?」

レミリア「さっき言ったでしょ、私の能力は『予知能力』とは厳密には違うって」

121 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:39:28.13 ID:/EN+lYTJ0

レミリア「『予知能力』というのはそのままの状況が維持されると確実に訪れる未来を視るの」

レミリア「つまりどんな時期に能力を使ったとしても、その未来を知る人が行動を起こさない限り常に同じ未来が見える」

美琴「知ってる人が行動を起こさないと未来は変えられない?」

レミリア「ええ。 そして変えようと思えば未来を変えることができる」

美琴「なるほど、何となくわかったわ」

美琴「それで? アンタの能力はどう違うの?」

レミリア「第一に、私の能力は生き物にしか通用しない」

レミリア「『予知能力』なら指定した『物』や『場所』の未来を視ることができるということね」

レミリア「第二に、映し出す未来は対象となった生き物に簡単に左右されるの」

レミリア「私の妹を例にすると、最初は迷子になるような『未来』は視えなかったわ」

レミリア「その時は私から離れないようにちゃんと言い聞かせてたからね」

レミリア「でもそれを忘れて勝手な行動をすると『未来』が別の物に変わってしまう」

レミリア「つまり未来を知る人の意志に関係なく視る『未来』が変わっていくのよ」

美琴「なによそれ、そんな簡単に視る未来が変わっちゃうなら役に立たないじゃない」

122 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:39:54.98 ID:/EN+lYTJ0

レミリア「確かにこのままだと『予知能力』のような未来を視るのは1分程度先が限界ね」

レミリア「でもね、この能力はただの『予知能力』とはまた違った物を視せてくれるの」

美琴「?」

レミリア「確かに『予知能力』で視た未来は行動を起こすことで『変える』ことができるわ」

レミリア「でもね、『変えた先の未来』が望むような物であるとは限らない」

レミリア「見当違いなところが変わっただけで根本的な解決にはなっていなかったりね」

レミリア「そしてよりよい変革を起こそうと再び未来を変えようとする」

レミリア「そうやって何度も繰り返していくと、やがてどうしても変えられない未来というものが浮き彫りになるの」

レミリア「その絶対に変えられない未来のことをなんて呼ぶか知ってる?」

美琴「それって・・・・・・」


レミリアはクスクス笑いながら続けた。

123 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:40:24.74 ID:/EN+lYTJ0





「『運命』と呼ぶのよ」





124 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:41:08.55 ID:/EN+lYTJ0

美琴「運命・・・・・・ですって?」

レミリア「そう、めぐるましく変わる未来から絶対不可避である運命を見つける能力」

レミリア「それが私の能力、『運命観察(オーディエンス)』よ」

レミリア「まぁ、そんなピンポイントな未来しか視られないからレベル3止まりなんだけどね」

レミリア「絶対に変えられないのなら視る意味がないし、見られる運命も朧気だったりするし」

レミリア「でも、レベルが上がれば運命を自在に操ることができるようになるのかもしれないわ」

レミリア「もしそうなったら『運命改変(シナリオライター)』とでも改名しようかしら」

美琴「そんなのチートでしょ」

レミリア「・・・・・・冗談よ。 私がレベル5になってるような運命は見たこと無いから」

125 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:41:46.90 ID:/EN+lYTJ0

美琴「・・・・・・そういえばアンタ、そんなモノ視て後悔したことはないの?」

レミリア「後悔?」

美琴「だって、絶対に回避できないってことは・・・・・・」


もしもその見た未来が取り返しのつかない物だったとしたら・・・・・・
そしてそれが避けられない物だとしたら、それ以上の絶望はない。

美琴の場合、あの忌まわしい『絶対能力進化(レベル6シフト)』が阻止不可能な運命だったとしたら、
おそらく彼女は絶望のあまり自ら命を絶っていたかもしれない。
もしくは自暴自棄になって『一方通行(アクセラレータ)』に特攻して死体を晒していただろう。

というよりも、実際に特攻しかけていた。
当麻が止めなければ、こうして生きて立っていることは出来なかったに違いない。


レミリア「そうね・・・・・・。 だから私はこの力をあまり使いたくはないわ」

美琴「・・・・・・」

126 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:42:26.85 ID:/EN+lYTJ0

レミリア「未来を無闇に視たら人生がつまらなくなるし」

美琴「そっちかい! ・・・・・・その割には私に対して躊躇なしに使ったわよね」

レミリア「必要なときとそうでないときの見分けぐらいはできるつもりよ」

美琴「それができるほど長く生きてないでしょ」

レミリア「あら、人を見かけで判断するものじゃないわよ?」

美琴「それじゃあアンタいくつよ」

レミリア「レディに対してそんな質問をするなんて無神経ね」

美琴「やかましい」


そこには(見た目は)小学生にいいように言われている中学生の図があった。
端から見ればとても滑稽な光景である。

127 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:43:06.44 ID:/EN+lYTJ0

レミリア「さて、もう用事は済んだしここでお暇させてもらおうかしら」

美琴「もうお昼すぎちゃったわね」

レミリア「それじゃあ、あの子にあった時はよろしくね」

美琴「アンタの能力に関してはまだ半信半疑なんだけどね」

レミリア「それにしてはすんなり受け入れていたみたいだけど?」

美琴「以前にもっと理解しがたい物を見たことがあるからよ」

レミリア「ふふっ、なるほどね」

レミリア「それじゃあまた会いましょう」

美琴「私としては二度と御免だけどね」

レミリア「それはどうかしらね」クスクス


そう言って日傘をくるくる回しながらレミリアは去っていった。

128 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:46:02.52 ID:/EN+lYTJ0
今日はここまで。
おぜうさまが登場。実は彼女の能力名を決めるのに結構手こずってたりする。
質問・感想があればどうぞ。

それにしても書き溜めしてるとストーリーから東方成分が薄くなっていくのは何故なんだぜ?
129 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/04/08(日) 21:52:20.66 ID:/EN+lYTJ0
※補足
東方キャラの能力については禁書原作の『レベル5は7名しかいない』というのを考慮して意図的に弱くなっています。
今回の場合はレミリアの『運命操作』が『運命を見る』程度にといった感じですね。

一応原作通りの能力を持つキャラがいないこともないですが、
強力すぎる能力は何らかの弱体化を受けていると考えてください。

ちなみに禁書原作では正体不明の第6位は東方キャラにしようと考えています。
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 22:12:59.09 ID:4kNqT0jR0
乙!
東方禁書、やはり同じネタの人は参考になりますね
自分も早く書き溜め、加筆修正終わらせねば……
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 00:32:48.59 ID:RzAngj9DO
乙ですっ!
早くも6ボスお嬢様の登場ですと!?ってよく考えたらEXラスボスの方が先に出てたじゃないか…。

オーディエンス…何だかミリオネアを思い出すな〜。
レミリオネア…←うん。言ってみたものの、果てしなくツマランな。

第六位…正体不明って事からあの娘だろうか…?それとも東方の最強である霊夢さんとか…?
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 08:53:29.48 ID:1B8DDjTDO
お嬢様は結構カリスマしてたな。瞳が黒って事は、一応人間なのかな?

今回美琴を付けていたのは、プロローグに出て来た襲撃者なのか…?

東方成文が薄いって?そりゃー下地の世界が禁書だからじゃないの?スペカバトルをさせたいなら、最近流行って事にして…、遊戯王みたいなソリッドヴィジョンで弾幕してみるしかないんじゃない?
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/11(水) 10:35:00.66 ID:K3vtwXbDO
関係者には魔法は認められてるから、ここの教授には可能性空間移動船は必要無いかも知れないけど…あれば幻想郷に行ってたのかな?
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 01:30:31.54 ID:8ZXQg1EDO
むしろ来る側だろ。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/14(土) 14:44:10.99 ID:UOzDwQaDO
岡崎最高オオオオォォォォォォォォゥ!!
136 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/04/15(日) 23:42:21.21 ID:eD1Z77590
これから投下を開始します
137 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:42:53.16 ID:eD1Z77590




――――7月25日 PM2:55




138 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:43:54.06 ID:eD1Z77590

美琴「あーあ、何もすることがないわね」


美琴はレミリアと別れた後、昼食を済ませて再び街を出歩いていた。
とはいっても、見るべきところはほとんど見てしまったので、無気力に歩き回っているだけなのだが。
最初は当麻を捜そうとしていたのだが、その気もだんだん薄れてきている。

それとは別に美琴には、さっきから気がかりなことがあった。


美琴(レミリアが言うには私は今日中にあいつの妹に会うって話だけど、会った後の連絡手段とか何も聞いてないのよね)

美琴(そんな重要なことを簡単に忘れるなんて・・・・・・)

美琴(気づかずに聞きそびれた私が言うのも何だけど)

美琴(レミリアの奴本当に妹を捜す気があるのかしら?)

美琴(それとも私に尋ねてきたのは他に理由が・・・・・・?)

139 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:44:32.32 ID:eD1Z77590

考えを巡らせてみるが答えは見つからない。
美琴とレミリアの間には理由となるような接点があるとも思えないからだ。
そうこうしている内に時刻は3時前。当麻のことはあきらめて黒子の元に行こうかと考えていると、


「あっ!あそこにクレープ屋がみえるんだよ!」

「おいおい、また食べ歩きするつもりか?上条さんの財布の中がそろそろ寂しくなってきましたよ?」

「私もクレープ食べたーい♪」

「うーん、フランちゃんが言うと断れないなぁ」

「なんでふらんにはそんなに甘いのかな!?」

「おまえは少し遠慮しやがれ!」


よく知った声が背後から聞こえてきた。

140 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:45:13.73 ID:eD1Z77590

美琴(!!! ついに見つけたわよ!)


美琴は意気揚々と背後を振り向く。
元は当麻を見つけるために外出したのだ。これで今日一日を無駄に潰さなくて済む。
聞き慣れない声もしたような気がしたが、そんなことはどうでもいい。今度こそ決着を付けてやろう。

そう意気込んで振り向いた先にいたのは――――


一人目がインデックスに噛みつかれて涙目になっている上条当麻。

二人目が文句を言った当麻の頭に囓りついているインデックス。

三人目が――――





『赤い服を着て変わった帽子をかぶった金髪の少女』だった。

141 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:45:46.81 ID:eD1Z77590




















142 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:46:50.57 ID:eD1Z77590

さて、再び時間を巻き戻し、我らが主人公である上条当麻の今朝の行動を追ってみよう。

この日上条当麻はインデックスが外泊したことにより、空いたベットの上で実に一ヶ月ぶりとなる安眠を満喫していた。
さらに、上記と同じ理由で朝早くからご飯のために叩き起こされる心配もない。

したがって、上条当麻は溜まりに溜まった疲れを癒すためにお昼頃まで惰眠を貪る・・・・・・はずだった。

やはりそこは上条当麻と言うべきか、そんな儚い幸福は『いつも通りの』不幸によって打ち砕かれることになる。

朝7時。当麻は突然鳴った携帯電話の音で目を覚ます。
眠い目をこすりながら電話を取ると、受話器の先から、


小萌『上条君はバカだから、朝から補習でーす♪』


と夏期補習(午前中だけなのは不幸中の幸いと言うべきか)のお誘いが飛んできた。
その結果、安眠を妨害されてテンションが奈落の底に突き落とされた。不幸だ。

暗澹たる思いのまま気分転換に水を飲もうとキッチンに行き、蛇口をひねると水が出ない。
そういえば水道管の工事で今日一日水が出ないのを忘れていた。
当麻の部屋の水道管だけが異常に錆びつき破損していたのだ。不幸だ。

143 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:47:25.88 ID:eD1Z77590

仕方ないので朝食を食べようと昨日の食べた残りを冷蔵庫から引っ張り出し、テーブルに持って行こうとする。
ところが足下にあった本を踏んで滑ってしまい、朝食を思いっきりぶちまけてしまった。不幸だ。

さらに、ぶちまけた味噌汁がケータイに被ってしまいご臨終となった。不幸だ。

後片付けをしようにも水が出ないので、隣の部屋に住む土御門に水を借りに行く。
扉の前で呼んでも返事がないのでインターホンを連打したら、土御門が勢いよく開けた扉に吹っ飛ばされた。不幸だ。

土御門に事情を説明し、彼に自分の不幸を笑われながらもバケツに水を汲む。
バケツを持って部屋を出ようとしたところで足下にあったダンベルにまたも躓いてしまい、
部屋にバケツの水をひっくり返してしまった。
そしてその水が土御門の『舞夏写真集 〜いつまでもあなたと一緒〜』に被ってしまい、
無言で笑う彼に一撃KOされた。不幸だ。

最終的には後片付けをすることも朝食を食べることも出来ず、バスの時間が来てしまった。不幸だ。

以上、ここまでが今朝上条当麻が出会った不幸の全容である。

144 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:48:00.69 ID:eD1Z77590




――――7月25日 AM7:45




145 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:49:08.32 ID:eD1Z77590

上条「まったく、上条さんは毎度のことながら不幸ですね」

上条「このままだと鬱病になってしまいそうですよ」ハァ


バスの中で当麻は途中で会った青髪ピアスに言った。
彼もまた補習に呼び出された生徒の一人である。


青ピ「何言ってるんやカミやん。 わいから見ればきれいな娘に囲まれているカミやんは幸せ者やでー」

青ピ「そのフラグ建設能力をわいにも少し分けてほしい位や」

上条「彼女いない歴=年齢の上条さんにとって、そんな桃色イベントは無縁のものですよ」

青ピ「カミやん? それはうちのクラスの男子に対する宣戦布告と見なしてもいいんやな?」ゴゴゴゴ


青髪ピアスは微笑みながらどす黒いオーラを噴出している。
普段から当麻のフラグ乱立ぶりを間近に見ていれば仕方のない反応だが。

146 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:50:20.13 ID:eD1Z77590

青ピ「かぁー! 相変わらず上やんの朴念仁っぷりには呆れを通り越して尊敬の念を覚えるわ」

青ピ「『仁』の文字を『神』差し替えてもかまわないくらいやで?」

青ピ「なぁ、何でカミやんばっかりそんなにモテるん?」

青ピ「僕なら相手が望んだことなら何でもしてあげるっちゅーのに」

青ピ「何でカミやんみたいなニブチンに集まるんやろなー」

上条「おまえは守備範囲が広すぎて軽薄そうに見られてるんじゃないか?」

青ピ「何言うとるやん。僕ほど一途な人は世の中にそうはいないで?」

上条「女の子に手当たり次第ナンパするおまえが言えた義理か!」

青ピ「あれはわいなりの挨拶やで? あ・い・さ・つ♪」

上条(だめだこいつ・・・・・・早く何とかしないと)

147 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:51:08.78 ID:eD1Z77590

そんなこんなで高校前に到着。

今日の補習内容は古典と英語。それぞれ併せて3時間弱のぶっ続けである。
午前中のみとはいえ、なかなかきついものだ。

ちなみに『クラスの三バカ(デルタフォース)』の一角である土御門元春は今日は補習に呼ばれていない。
陰陽師をしている彼は古文・漢文が得意であり、『必要悪の教会(ネセサリウス)』に所属しているため英語が堪能というわけだ。

ただ、『クラスの三バカ』であることに違和感を覚えさせないために、赤点ギリギリにまでテストの点数を抑えている。
まぁ、そんなことを知っているのは上条当麻ただ一人なのだが。

ということで、午前中は青髪ピアスと共に文系の2大科目の補習を受けることになるのであった。

148 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:52:00.87 ID:eD1Z77590




――――7月25日 AM11:30




149 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:53:02.77 ID:eD1Z77590

時は流れ、現在の時刻は午前11時半。
朝食を食べていないため、当麻の胃袋は空腹で酷いことになっている。
さらに補習に疲労も重なっていることもあって、腹痛が治まらない。

ちなみに青髪ピアスは、授業が終わるなり速攻で校舎を飛び出していった。
おそらく『新たな出会い』(青ピ談)を求めて街に繰り出したのだろう。

あの補習を受けても全く動じていないのは、精神が図太いのかただの馬鹿だからか。
いつまでもマイペースな彼をたまにうらやましく思う当麻であった。


上条「うぉぉ・・・・・・上条さんの胃袋が空腹で悲鳴を上げていますよ・・・・・・」グゥゥゥ

上条「とりあえず何か買って食べないとやばい・・・・・・」


足取りがおぼつかないまま10分程歩いて近くのコンビニへ向かった。
とにかく、これからインデックスを迎えに行かなければならないのだ。
さっさと食事を済ませるとしよう。
そう思いながらコンビニの中に足を踏み入れようとすると、

150 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:53:59.71 ID:eD1Z77590

「お嬢ちゃん、こんなところで突っ立ってどうしたんだい?」

「おじさんたちだぁれ?」

上条「・・・・・・」


3人の男が少女に絡んでいるのを目撃した。
当麻は長年喧嘩をしている経験から、直感で彼らがスキルアウトであることを見抜く。

少女の背丈はインデックスと同じくらい、太陽のように明るい金髪である。
奇妙な形をした白い帽子をかぶり紅い服を着ていた。
少女は声をかけたスキルアウトにに対して、あまり警戒感を持っていないように見える。


スキルアウト3「おじさんて・・・・・・」

スキルアウト1「なぁに、怪しいもんじゃねぇよ」

スキルアウト2「で? お嬢ちゃんは一体何をしているんだい?」

金髪少女「お姉さまと一緒に街に来たんだけどはぐれちゃった」

スキルアウト3「何なら、俺たちと一緒に美味しいものでも食べに行かないか?」

スキルアウト1「お姉さんのことは風紀委員に届けておいてあげるからさ」

金髪少女「うーん・・・・・・」

上条「・・・・・・」

151 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:56:46.61 ID:eD1Z77590

――――さて、こんな状況に陥った場合諸君ならばどうするだろうか。

大抵の人間は傍観を決め込むか、できたとしても警察に連絡を入れるだけだろう。
前者は論外として、後者の選択は一般的に見れば正答に近い行動である。

だが、上条当麻にとってそれは正しい行動ではない。

上条当麻は不幸な人間だ。
不幸であるが故に、彼は他人の不幸というものに非常に敏感である。
そして、他人の不幸を見過ごして自分が幸福を享受することに我慢できないのだ。

故に彼は、自分に災難が降りかかると知っていても他人の不幸に首を突っ込む。
まるでその不幸を自分が肩代わりするかのように。

そのおかげで何度も死にかけたが、彼はそれを後悔したりはしない。するつもりもない。
自分が幸福を貪っている周りで罪のない人が絶望に打ちひがれているなど有ってはならない。

自分が不幸になることで他の人間の幸福を守れるなら、彼は迷い無く自分の幸福を差し出すだろう。
それが彼の生き様であり、誇りなのだから。


上条「おーい、久しぶりだなあ」


よって、上条当麻は今回も不幸に飛び込む。
それが見ず知らずの女の子の幸福を守れると信じて。

152 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:57:46.49 ID:eD1Z77590

金髪少女「えっ、お兄ちゃんは・・・・・・」

上条「おいおい、忘れちゃうなんて上条さんショックですよ」

スキルアウト1「あぁ? なんなんだお前!?」

上条「お前たち、こんな子を誑かそうなんて風上にも置けないな」

スキルアウト3「何だぁ? やるってのかお前」

上条「いやいや、上条さんとしてはそのまま立ち去ってくれるとありがたいんですがね・・・・・・」

スキルアウト2「せっかくのところを邪魔されてのこのこと引き下がると思ってるのか?」

スキルアウト1「この落とし前はきっちりと付けさせてやる」

上条(1対3か・・・少しまずいな)

上条(自分一人だけなら逃げ一択なんだけど、今回はこの子がいるし・・・・・・)

上条(こうなったら自分が囮になって彼女を逃がすしかないな)

上条(ははっ、今回もあのお医者さんの所のお世話になりますかね)

上条(インデックスに何を言われるかわかったもんじゃないな)


来るべき戦いに備えて臨戦態勢をとろうとしたとき、

153 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:58:22.81 ID:eD1Z77590




「ふーん、おじさんたち、私をだまそうとしたんだ」


上条「えっ?」

スキルアウト1「ん?」

スキルアウト3「あぁん?」


背後の女の子が鋭い目つきでこちらを睨んでいた。




154 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:59:18.35 ID:eD1Z77590

上条「おい! 何をしてるんだ! 速く逃げろ!」

スキルアウト2「何だぁ?」

金髪少女「・・・・・・」


少女はその場に屈むと地面に手を触れる。
まるで子供が地面で遊ぶかのように。


ピシッ


その直後、突然少女が触れたところに亀裂が入る。


上条「え――――」


ピシピシッビシィ!

その亀裂はスキルアウトのところまで延びていき、そして――――




ガラガラガラガラ!!!


突如足場が崩落した。




155 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/15(日) 23:59:58.78 ID:eD1Z77590

スキルアウト「「「うわあああああぁぁぁぁぁ!!!」」」


スキルアウトたちは為す術無く穴の中に飲まれてしまった。
穴の直径は3m程だ。手を伸ばせば捕まれたかもしれないが、突然のことに対応できなかったらしい。


上条「な・・・・・・な・・・・・・?」


何が起こったのかまるで理解が追いつかない。
当麻はその場で呆然と眺めることしかできなかった。


金髪少女「お兄ちゃん大丈夫?」

上条「えっ? あ、ああ・・・・・・」


振り返るとさっきの少女が不安そうにこちらを見ている。
こうしてみると、年相応のか弱い少女に見えるが・・・・・・。

156 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/16(月) 00:00:54.17 ID:38p2H+j50

上条「俺の方は大丈夫だ。 ・・・・・・ところで、さっきのは君が?」

金髪少女「うん。 私の能力であいつたちが立っていた場所を崩したの。 驚かしちゃった?」

上条「突然あんなことが起こったら驚かない方が不思議ですよ・・・・・・」

金髪少女「ご、ごめんなさい」


少女は深々と頭を下げて謝る。帽子が今にもずり落ちそうだ。


上条「なぁに、こっちは助けてもらったんだから謝られる筋合いはないって」

上条「それにしても奴らは大丈夫なのか?」

フラン「穴はそんなに深くないから大丈夫だよ」

スキルアウト「「「お〜い誰か助けてくれ〜・・・・・・」」」

上条「・・・・・・大丈夫みたいだな」


どうやら大きな怪我はないようだ。
彼らから仕掛けてきたこととはいえ、死んでしまったら大事だ。

157 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/16(月) 00:01:25.35 ID:38p2H+j50

上条「とりあえずこいつらは『警備員』に連絡して・・・・・・と」ピッピッ


後は『警備員』が何とかしてくれるだろう。連絡したら早くここを離れた方がいい。
取り調べまで受けていたらインデックスを迎えに行けなくなってしまう。


上条「・・・・・・っとそれじゃあ、俺は用事があるからっ?」ガクン

金髪少女「・・・・・・」ギュッ

上条「・・・・・・え?」


見やると少女が当麻の服の裾を掴んでいた。
戸惑う当麻だが振りほどくわけにもいかない。とりあえず理由を聞いてみる。


上条「な、なんでせうか?」

金髪少女「わたし実は迷子なの」

上条「あ〜、そういえばそんなことを言ってたな」

上条「お姉さんとはぐれたんだっけか」

金髪少女「このあたりは来たことがないからよく知らないし、どこに行けばいいのかわからないの」

158 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/16(月) 00:02:04.82 ID:38p2H+j50

上条「それなら『風紀委員』に言ってお姉さんを捜してもらえばいいんじゃないか?」

金髪少女「それじゃあだめ」

上条「なんでさ?」

金髪少女「お姉さまはすごく厳しい人だから普段は滅多に外出させてくれないの」

金髪少女「今回外出を許可してくれたのは、自分のそばから離れないって約束させられたからなの」

金髪少女「このままお姉様にあったら無理矢理家に連れ戻されちゃう」

金髪少女「せっかく外に出られたのにそんなことはいや」

上条「ということは・・・・・・?」

金髪少女「だからあなたについて行っていい?」

上条「ええ!?」

金髪少女「・・・・・・だめ?」ウルウル

上条「う・・・・・・」ダラダラ

159 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/16(月) 00:03:28.94 ID:38p2H+j50

少女は涙を浮かべながら当麻を見上げる。

こんな表情をした子供のお願いを断るのはさすがに良心が痛む。
しかしこの子を連れてインデックスを迎えに行ったら、インデックスにに何をされるかわかったものではない。


上条(どうしよう・・・・・・)

上条「・・・・・・」チラッ

金髪少女「・・・・・・」ウルウル

上条「・・・・・・わかったよ、わかりました!」

金髪少女「!」パァァ


とたんに少女の顔が太陽のように明るくなった。
すごくカワイイ。やはり子供は笑顔が一番だ。
160 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/16(月) 00:04:30.21 ID:38p2H+j50

金髪少女「わーい♪ やったー♪」

上条(これはインデックスに会ったとき覚悟しなきゃな・・・・・・)ハァ

上条(今度はどのくらい跡が残るのか、上条さん不安でなりませんよ)


「不幸だー!」と叫びたかったが、彼女に対して失礼なのでやめておく。
朴念仁の彼でも礼儀という物はわきまえているつもりだ。

まず自己紹介から入ろう。お互いを知るための第一歩というものである。


上条「そうだ、俺の名前は上条当麻だ。 君の名前は?」

金髪少女「フランドール・スカーレット。 フランでいいよ」

上条「それじゃあフラン、上条さんの側から離れるんじゃありませんよ?」

フラン「はーい!」

上条(まったく、元気な子だ。 インデックスみたいだな)

上条(インデックスにはもう少しおしとやかになって欲しいんだけどな)


こうして当麻とフランはインデックスの待つ小萌の住むアパートへ一緒に向かうことになった。

161 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/16(月) 00:14:42.78 ID:38p2H+j50
今日はここまで。
上条さんとフランの邂逅。フランについての詳しい話は次回に。
質問・感情があればどうぞ。

やっぱり禁書を主軸にしているためか東方キャラの影が薄くなりがち。
かといって紅魔郷を意識しているので、あまり関係ないキャラを出し過ぎるのも考え物。
禁書の世界がベースなので、スペカなんてものがあるはずもなく。

ということで名前が出ない程度に東方キャラを出せないか考え中。
ただ、東方を知っている人から見れば正体がバレバレになるかも。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 02:02:33.38 ID:yMy74NMCo
乙!
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 21:10:49.30 ID:Mk6REsfDO
お疲れ様!
運命の出会い…なんて書いてみたところで、全然ロマンチックでも何でもないですな。

上条さんは本当に踏んだり蹴ったり七転八倒の泣きっ面に蜂だなぁ。

携帯…壊れたけど後で掛けてたよね?常にスペアを持ってるのか?いや、金的に無理だろうし…公衆電話かな?

何でモテるか?か…ラノベだから?ww

おじさんwwザマァww

性分「知り合いのふり」

可愛い振りしてあの娘 割と[ピーーー]もんだね、と♪
ま、禁書も東方もそんな娘ばっかりだけどなww

さてさて、今のところフランちゃんは可愛いだけだが、これからどうなってゆくやら…。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 14:56:45.28 ID:QIKFYYODO
お姉様は厳しい人だから云々〜。ってフランちゃんは言ってたけど、お嬢様初登場時はそんなに怒ってなかった様な…?
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 16:16:59.76 ID:BQrk4Z9DO
学園都市程のハイテクな所なら… ―電子装飾・幽霊(人魂Ver.)― ホログラムが暗い所を自動でやわらかく照らしてくれます。

とかこんなの売ってそうだな。
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/22(日) 21:55:21.87 ID:NcAJ0IcDo

このトリップ見たことあるっておもったら
前に番外通行書いてた人か
既出だったらごめんね
167 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:32:05.59 ID:oHHjneYt0
>>164
レミリアがあまり怒っているように見えなかったのは理由があります。
またこのスレのレミリアは相手を怒鳴るような怒り方はしません。
平然とした顔をしながらなかなかえぐいことをするようなタイプですかね。

>>165
本編で風斬氷華のことをホログラムと勘違いしている人がいたので、
学園都市ではホログラムはそれ程珍しい物では無いのかも知れません。
実際に市販されているかは疑問ですけど。

にしても冥界組を出すとしたらどんな設定にするべきかな・・・・・・

>>166
>>1はSSを書くのは初めてなので別人です。
トリップが同一になることはあり得るんでしょうか?
168 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/04/22(日) 23:32:57.27 ID:oHHjneYt0
これから投下を開始します。
169 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:34:03.72 ID:oHHjneYt0




――――7月25日 PM0:05




170 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:34:58.66 ID:oHHjneYt0

禁書「とうま、遅いんだよ!」

上条「悪いインデックス。 待たせたな」


現在月詠小萌が住むアパートの玄関前。

時刻は正午12時を過ぎており、丁度昼食を食べる時間帯となっていた。
朝食を食べていない当麻の胃袋は、空腹を通り越して既に感覚がなくなっていたが。

ちなみにこちらに来る途中で、フランにはインデックスのことを(話せる範囲で)話してある。
質問攻めに遭わないか当麻は内心ヒヤヒヤしていたが、フランはそれ程突っ込んだ質問はしてこなかった。
何か訳ありなんだろうと感づいたようで、配慮してくれたらしい。
子供ながらもなかなか侮れない子のようだ。


禁書「とうま! お腹減ったー!」

上条「迎えに来てもらって早々それかい」

上条「このシスター様は遠慮という文字を記憶しておりませんのかね」

禁書「でもあわきが作る料理ってあまり美味しくないからたくさん食べられないんだよ・・・・・・」

上条「あ〜うん。 そうだな・・・・・・」

171 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:36:45.06 ID:oHHjneYt0

フラン「インデックスってすごく食いしん坊なんだね。 太らないの?」

禁書「・・・・・・とうま、この子誰なの?」

上条「え〜と・・・・・・」

上条(さて、どう説明したもんかね)


当麻の背後に隠れて見えなかったフランを見つけたようだ。
インデックスは怪訝な顔をしてフランを見つめている。

ここに来るまでに色々と言い訳を考えてみたがどれもしっくり来ない。
だからといって、下手なことを言えば当麻の全身にインデックスの歯形がつくことになる。


禁書「とうま?」ジロ

上条「う・・・・・・」

上条(このままだと間違いなく噛みつかれる! この前付けられた歯形まだ消えてないのに!)

上条(なにか、何か案はないか!?)

禁書「・・・・・・やっぱいいかも」

上条「え?」

172 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:37:47.08 ID:oHHjneYt0

フラン「よろしくねインデックス」

禁書「よろしくなんだよ」

上条「何も聞かないのか?」

禁書「なんとなくわかるし」

上条「・・・・・・なにがでせうか?」

禁書「また厄介事に首を突っ込んだんでしょ?」

上条「」ギクッ

禁書「とうまが知らない女の人を連れてきたときは決まってそうなんだよ!」

上条「しかたないだろ。 見捨てるわけにはいかなかったんだから」

禁書「とうまのお節介焼きはもう病気のレベルかも」

上条「そう言うなよインデックス。 この子が助かったんだからいいじゃないか」

禁書「そのままだといつか背中を刺されることになるかも」ボソッ

上条「えっ?」

173 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:38:33.09 ID:oHHjneYt0

禁書「そんなことよりもとうま! 早く美味しいものを食べにいくんだよ!」

上条「(なにか物騒な言葉が聞こえたような)はいはい、わかったから引っ張るなって」

フラン「ごはん食べに行くの?」

上条「そうだけど・・・・・・そういえばフランはお金持ってるのか?」

上条「手持ちは少ないけど、無いんだったらおごってやるぞ?」

フラン「大丈夫、お小遣いは持ってるから」ゴソゴソ

上条「げ、上条さんよりもリッチな財布の中身・・・・・・」

上条(子供よりも貧乏な俺って一体・・・・・・)

禁書「とうま!早く来るんだよ!」

上条「バカっ、勝手に行くな! 迷子になったらどうすんだ!」ダッ

禁書「私の力を持ってすれば、そんなことはノープロブレムなんだよ!」

上条「あぁ、そうでござんしたね」

フラン「まってー」タッタッタ

174 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:39:32.32 ID:oHHjneYt0




――――7月25日 PM0:45




175 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:43:51.05 ID:oHHjneYt0

禁書「ねぇ、とふむぁ」ガツガツ

上条「食べながら喋るんじゃありません」

フラン「〜♪」モグモグ


ファミレスの一角でインデックスは当麻に尋ねた。

インデックスはオムレツを口いっぱいに頬張っている。その頬はまるでリスのようだ。
フランはその向かい側で苺パフェ(大盛り)を食べている。
見ているだけで胸焼けしそうだが、子供とは得てしてこういう物を好むのだろう。
当麻は既に天ぷらうどんを食べ終えていた。


禁書「当麻とフランはどうやって出会ったのかもっと詳しく教えて欲しいな」ゴクン

上条「えっとだな・・・・・・」

禁書「いつもの癖で危険に飛び込んだのはもう分かってるから、それ以外のことでいいよ」

上条「うぐ・・・・・・まあ助けるって言っても、俺は何もしてないんだけどな」

禁書「どういうこと?」

176 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:46:57.04 ID:oHHjneYt0

上条「フランが自分で何とかしちまったんだよ」

禁書「ふらんが?」

上条「スキルアウト達が数人いたんだが、フランが起こした地面の陥没に巻き込まれてな」

禁書「地面が陥没って・・・・・・ふらんも超能力者なの?」

フラン「そうだよ?」

禁書「ふーん、どんな?」

フラン「え?」

禁書「ふらんの力を知りたいんだよ!」

上条「お前が超能力に興味を持つなんて珍しいな」

禁書「一応勉強のために滞在してるんだから、いろんなことを見聞きするのは重要なんだよ」

上条「あー、そういえばそうだったな」


以前のインデックスの立場は『いつの間にか居た不法滞在者』と言う位置づけだったのだが、
現在は『勉学のために学園都市に派遣されたイギリス清教の修道女』ということになっている。
もちろん表向きでの話であって、実際は学校に通ってはいないし能力開発も受けてはいない。

一応、学園都市からゲストIDが発行されていたのだが、
それは学園都市側が勝手にインデックスを来賓扱いしたためであるため、
書類上の正式な形として再度学園都市に来訪したのだった。

177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/22(日) 23:49:45.35 ID:NcAJ0IcDo
#○○
の○○が同じなら同一のトリップになるっぽいよ

ガチで同じトリップでビビったwwwwww
178 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:50:48.69 ID:oHHjneYt0

上条「フラン、もし良かったらインデックスに教えてくれるか?」

上条「実を言うと、俺も気になってたんだよな」

フラン「・・・・・・うーんどうしようかなぁ」

上条「あぁ、別に言いたくないなら無理して言わなくてもいいぜ」

フラン「そうじゃないの。 お姉さまに『自分の能力というのは簡単に言いふらすようなものじゃない』って言われたから」

上条「へぇ〜」

フラン「あと『自分の能力を鼻にかけるようなやつには碌な人はいないから、
    貴方はそんな人にはならないようにしなさい』って」

上条「フランのお姉さんってしっかりしてるんだなぁ」

上条(学園都市じゃ超能力を使って悪事を働いているやつなんてごまんといる)

上条(中には八つ当たり気味に能力を振りかざすやつもいるしな)

上条(でもフランの場合はお姉さんが正しく導いてくれるだろう)

上条(そんな人が増えれば学園都市も平和になるのかもしれないな)

上条(会ったこと無いから実際はどんな人かはわからないけど)

179 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:52:08.21 ID:oHHjneYt0

学園都市というのは外部から見れば一見恵まれた世界だと思われるが、
一度道を外れればスキルアウトたちがたむろするスラムのような無法地帯が広がっている。
そこには重火器を武装した人たちや、未認可の違法な薬剤を売りさばく者などが蠢いているのだ。

子供だけでなく研究者(大人たち)にしても『絶対能力進化』や、
『量産型能力者(レディオノイズ)計画』などの非人道的な実験をする人間がいる。

科学技術は外の世界よりも進んでいるが、それを扱う人のモラルは外と同等、
もしくはそれ以下というのが学園都市の現状である。

まぁ子供を人体実験に使い、それを良しとする倫理観が前提である時点で、
外の人から見れば正気の沙汰ではないのだが。
だからこそ、フランの姉のような良識を持つ人は大切にしなければならないのだ。

180 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:53:16.77 ID:oHHjneYt0

フラン「だから本当はだめなんだけど、当麻お兄ちゃんは私の恩人だから特別に教えてあげる」

上条「ん? ああ、そうか」

禁書「・・・・・・とうま、人から教えてもらうのにその態度は失礼じゃないのかな?」モグモグ

上条「いや、ちょっと考え事をしておりましてね・・・・・・」

禁書「言い訳は見苦しいんだよ」ギロッ

上条「すいませんでしたぁ! ってインデックス! 何でお前に謝らなきゃいけないんだよ!」

禁書「自分から勝手に謝っておいてそれはないかも」

上条「ぐ・・・・・・」

フラン「ふたりともすごく仲がいいんだね」クスクス

上条(いやいやこの状況だと上条さん明らかに尻に敷かれていませんか?)

上条(実際仲は悪くないんだけどさ)


本人達にその気がなくとも端から見れば立派な痴話喧嘩である。
当麻のクラスの男達がこの光景を見たら、血涙を流して襲いかかってくるだろうが。
その光景を笑いながらフランは語り出した。

181 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:54:37.44 ID:oHHjneYt0

フラン「私の能力の名前はレベル4の『物質解体(ティアーダウン)』っていうの」

フラン「物質同士の結合を切って、物をばらばらにすることができるんだ」

フラン「切ったり壊したり色々出来るよ」

上条「へぇ〜、すごい能力だな」

上条「レベル0の上条さんとしてはうらやましい限りですよ」

フラン「・・・・・・そうだね」


一瞬フランの顔に影刺したように見えたが、すぐ元に戻る。


上条「・・・・・・ん? 何か気に障ることでも言ったか?」

フラン「ううん、そんな風にうらやましがられるのは滅多にないから驚いただけ」

上条「その年でレベル4なんて言ったらクラスじゃ注目の的なんじゃないか?」

上条「俺の知り合いにも似たような奴が居るけど、後輩からものすごい尊敬されてたぞ」

上条(というよりあれはもう信仰に近いものがあるけどな)

182 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:56:03.55 ID:oHHjneYt0

学園都市において能力の『強度(レベル)』は非常に重要な意味を持つ。
レベルの認定は『能力の強度』を基本とし、次点として『能力の有用性』を考慮して決定される。
レベルが高いほど『強力で有用な能力』であり、学園都市から多大な援助を受けることができるようになるのだ。

高レベルの能力者となれば同世代の人々から羨望の眼差しを受けることとなる。
その代わりに低レベルの能力者は一般に軽視される傾向があり、周囲からの扱いや劣等感から問題行動を起こす者が多い。
もちろん、レベルが高ければ問題を起こさないというわけではないのだが。

自動販売機に蹴りを入れている少女を当麻は思い出した。


フラン「私の能力は壊すことしかできないからね」

フラン「だから大人たちからはあまり相手されないんだ」

フラン「おねえさまから話を聞いただけだからあまり詳しくは知らないけどね」

フラン「・・・・・・たぶんそのせいだと思うよ」

上条「そうか・・・・・・」

上条(本当にそれだけなのか? 他にも理由があるみたいだけど・・・・・・)


フランの能力がうらやましいと言ったときの彼女が見せた表情。
あれは明らかに驚いたときのそれではない。
あの顔は何かに後ろめたさがあるときのものだ。

普通の人ならば知らずに終わるような僅かな変化だったが、当麻はそのことに『気づいてしまった』。
他人の不幸に敏感な彼ならではの観察眼だろう。

183 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:56:59.13 ID:oHHjneYt0

上条(どうする? 話を聞いてみようか?)

上条(でも、ただの勘違いの場合も・・・・・・)

禁書「・・・・・・」

上条「どうした? インデックス」


当麻はインデックスの変化に気づく。
いつもの騒がしさはどこへやら、フランをじっと見つめている。
まるでフランの心を見透かすかのように。


上条「インデックス、何か聞きたいことがあれば聞けばいいんじゃないか?」

禁書「うん。 ・・・・・・あのね」

フラン「なぁに? インデックス」

禁書「ふらん、あなたってもしかして――――」

184 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:57:56.34 ID:oHHjneYt0





「その力で誰かを傷つけたことってある?」





185 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:58:51.95 ID:oHHjneYt0

上条「・・・・・・え?」

フラン「――――!!!」


突如フランの表情が強ばる。
知られたくない秘密を知られてしまったときのような、そんな驚愕と焦燥が入り交じった表情だ。


禁書「やっぱりそうなんだね?」

上条「・・・・・・インデックス、何でそんなことを聞くんだ?」

禁書「私はシスターなんだよ? 彼女に何かがあるくらいわかるんだよ」

上条「お前は聞かれてもいないのに無理矢理聞き出そうってのか?」

禁書「そんなつもりはないんだよ」

禁書「でも、さっき当麻に褒められたとき何か後ろめたいような顔をしたから・・・・・・」

禁書「その原因が彼女の力に関係してると思ったんだよ」


インデックスが持つ『完全記憶能力』。
フランの表情の微妙な変化に気づけたのはこの力があってのことだろう。

だが、そこから相手の心理状況を導き出したのはシスターという職業柄のせいだろうか。

186 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/22(日) 23:59:41.83 ID:oHHjneYt0

上条「だからってその質問はないだろ」

禁書「私は科学のことはよく知らないけど、彼女の能力が『触れた物を壊す』ものだっていうことはわかる」

禁書「そんな力だったら何かあってもおかしくはないんだよ」

禁書「だから私は詳しく話を聞こうと・・・・・・むぐっ」


インデックスの話を途中で遮る。

フランの表情が端から見ればいかにも泣き出しそうなものだったからだ。
これ以上インデックスに話をさせ続ければどうなってしまうかわからない。


上条「とにかくだフラン、もし気分を悪くしたのなら謝る」

上条「これ以上聞くなと言えば聞かないし、忘れろと言えば忘れるよ」

フラン「・・・・・・ううん、いいの。 本当のことだから」

上条「でも・・・・・・」

フラン「このまま中途半端になるより、喋っちゃった方が楽だから」

187 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/23(月) 00:05:28.97 ID:7qt0zZCL0
今日はここまで。
展開が早すぎね?とかインデックスってこんな性格だっけ?とか色々あるけど、>>1の文章力ではこれが限界だった。

フランの能力名は『分解、解体』を意味するteardownからとっています。
原作の能力は『対象が持つ点を自分の手の平に持ってきて、それを握りつぶすことで爆破する』という能力ですが、
それじゃレベル5も余裕じゃね?ということで触った物を分子レベルで分解する能力に変更しました。
それでもかなり強力な能力であることは変わりませんが。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/23(月) 07:12:37.32 ID:Zlx0MYVGo
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/23(月) 07:39:27.74 ID:KzTTkVWIo
おい姉の方がレベルたけーぞ
まあ原作でもフランの方が強かったりするからいいか
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/23(月) 07:39:58.14 ID:KzTTkVWIo
ミスった妹だ
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/23(月) 07:42:46.49 ID:Zlx0MYVGo
じゃあレミリア様は貰って行きますね
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/23(月) 17:00:01.08 ID:gvsl1YzDO
乙!
レミリアお嬢様は中々にちゃんとした教育者をしてるみたいだな。

しかし随分切り込んでってるけど、大丈夫なのかなぁ?
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/24(火) 11:50:21.86 ID:mPgxxhHio
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/25(水) 16:00:08.70 ID:CBWAKjjDO
チルノちゃんが原作っぽかったら、もしかしたら上条さんに対して美琴と似たような事になって…氷と雷の相乗効果が!?ガクガクブルブル
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 08:36:26.13 ID:BKiono/DO
半霊なしの妖夢なんて…
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/28(土) 15:16:05.72 ID:0h6JvUBDO
ゆっくりは、出て来たとしてどんな扱いかねぇ?
新種珍妙饅頭型生命体?
アリスが依頼者の頭に似せて作るぬいぐるみ(主に東方キャラに人気?)とか?
それとも饅頭そのもの?
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/28(土) 15:37:21.43 ID:Lz2GuWF7o
>>195
幽霊自体が能力になりそう
剣術は習ってただけみたいな
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 11:48:51.93 ID:biBQmTaDO
珍種生命体は毛玉の方かも?
199 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:47:43.64 ID:A9AkBjo00
※報告

前回の話をもう一度読み返してみた結果、少々展開が早すぎると判断したため、
フランの過去話はもっと後に書くことにしました。
それに伴い、>>183->>186までの話はなかったことになります。

フランの過去話を楽しみにしていた方には申し訳ありません。
200 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/04/29(日) 22:48:39.33 ID:A9AkBjo00
これから投下を開始します。
201 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/04/29(日) 22:49:11.60 ID:A9AkBjo00

上条(どうする? 話を聞いてみようか?)

上条(でも、ただの勘違いの場合も・・・・・・)

禁書「・・・・・・」

上条「どうした? インデックス」


当麻はインデックスの変化に気づく。
いつもの騒がしさはどこへやら、フランをじっと見つめている。
まるでフランの心を見透かすかのように。


上条「インデックス、何か聞きたいことがあれば聞けばいいんじゃないか?」

禁書「うん。 ・・・・・・あのね」

フラン「なぁに? インデックス」

202 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:50:03.56 ID:A9AkBjo00

禁書「・・・・・・やっぱりいいや」

上条「いいのか?」

禁書「うん。 ・・・・・・ねぇふらん」

フラン「どうしたの?」

禁書「もし悩み事があるなら遠慮無く言ってくれないかな?」

フラン「・・・・・・!」

禁書「私は由緒正しいシスターさんなんだ。 もしかしたら、ふらんの悩みを取り除いてあげられるかも知れない」

フラン「・・・・・・ありがとう。 でも大丈夫だよ」

禁書「ほんと?」

フラン「うん」

上条「・・・・・・」

203 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:50:44.93 ID:A9AkBjo00

当麻は二人のやりとりを黙って見ている。
この時頭の中を巡っていたのは、フランが浮かべた表情の理由。
そして、それを話そうとしない彼女の気持ち。

おそらくインデックスも、フランが何かしらの憂いを抱えていることを予感したのだろう。
だからこそ、シスターである自分に相談して欲しいと持ちかけた。

だがフランが自分から打ち明けない以上、自分たちができることは何もない。
彼女に話す決心が付くまで、自分たちは待ち続けるしかないのだ。


上条「ま、相談したかったら遠慮無く言えよ?」

上条「会って間もない俺達が言うのも何だけどさ」

フラン「うん。 ありがとね」

上条「どういたしましてっと。 じゃ、飯も食ったしどこに行きましょうかね・・・・・・」


話を切り上げ、当麻は今後の予定に頭を巡らせた。

204 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:51:25.38 ID:A9AkBjo00




――――7月25日 PM2:55




205 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:53:01.11 ID:A9AkBjo00

その後三人はアイスを買って食べ歩きをしたり、ゲームセンターで遊んだりして過ごした。
インデックスもフランと打ち解けたようで、楽しそうに会話をしている。

仲良きことは美しき哉。何事も平和が一番だ。


上条(だがこのままフランを連れ回しているわけにも行かない)

上条(さて、どうしたもんかな・・・・・・)


現在の時刻は3時前。そろそろフランをどうするべきか考えなければならない。
今まで先送りにしてきたが、このままだと面倒なことになる。

夜中に少女二人を連れ回す男など不審者以外の何者でもない。
日が暮れるまでにはフランの姉を見つける必要がある。


上条(しかしお姉さんを捜すにしても俺たちだけじゃ無理だ)

上条(『風紀委員』に手伝って貰うのも手だけど、出来れば俺が知ってる奴がいいな)

上条(『風紀委員』に知り合いは・・・・・・白井がいたか)

上条(でも俺のお願いは聞いてくれそうにないしなぁ)

上条(このまま家に送り届けるのもありだけど・・・・・・)

上条(いや、フランはこのあたりの地理をよく知らないみたいだからそれも無理か)

上条「困ったな・・・・・・」

フラン「?」

206 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:54:16.23 ID:A9AkBjo00

なかなかいい案が浮かばない。
当麻が考え込んでいると、インデックスが公園を指さして叫んだ。


禁書「あっ! あそこにクレープ屋がみえるんだよ!」

上条「おいおい、また食べ歩きするつもりか? 上条さんの財布の中がそろそろ寂しくなってきましたよ?」

フラン「私もクレープ食べたーい♪」

上条「でもなぁ、これ以上出費するとさすがに・・・・・・」

フラン「・・・・・・」キラキラ

上条「ふ、フランちゃんが言うと断れないなぁ」

禁書「なんでふらんにはそんなに甘いのかな!?」

上条「おまえは少し遠慮しやがれ!」


全く持ってこのシスターには遠慮という物が存在しない。
日頃の食事が野菜ばかりであることに文句を言うが、それが誰のせいなのかわかっているのだろうか。
彼女を守るという誓いを反故するつもりは毛頭無いが、少しは苦労を労ってくれても良いのではないのか。

そんなことを思っていると、

207 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:55:09.45 ID:A9AkBjo00

禁書「・・・・・・と〜う〜ま〜?」ギロッ

上条「!?」


インデックスが黒いオーラをたなびかせながらこちらを見ている。
どうやら逆鱗に触れてしまったようだ。
今日こそはインデックスの噛みつきを躱せると思ったのに。

所詮は淡い希望でしかなかったのか・・・・・・


上条(ハハ、やっぱりこうなるのね)

禁書「」ガブッ

上条「ギャァァァァァ!!! 不幸だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


当麻の痛々しい悲鳴が学園都市の空に響く。
やはり彼は不幸な運命から逃れられないようだ。

208 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:56:07.42 ID:A9AkBjo00

禁書「」ガリガリ

上条「わかった! わかったから噛みつくのを止め・・・・・・あだだだだだ!!!」

フラン「インデックス、おいしい?」

上条「上条さんの体は食べ物じゃありません! っていたいいたい!」

禁書「うーん、ほのかな酸味とあっさりした塩味がなんとも・・・・・・」ガリガリ

上条(く、喰われる!?)

「ちょっと、アンタなにやってんのよ!?」


突如近くから女性の怒鳴り声が響く。どうやら当麻に対してのものらしい。
今度はどんな厄介事であろうか。今起こっていることよりも恐ろしい不幸が待ち受けているのか?

もしそうであれば、泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目、傷口に塩である。


上条「いだだだ! 上条さんにはこれ以上の不幸を受け止める余裕はないんですけどね!?」


そう言って声がした方を見やるとそこには――――

209 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:57:14.07 ID:A9AkBjo00




美琴「・・・・・・」ジー

上条「」






210 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:58:06.14 ID:A9AkBjo00

『超電磁砲』こと御坂美琴がそこにいた。
当麻にとってこの上ない厄介事である。

どうやら神は当麻のことを見捨てたらしい。
神の加護を打ち消す右手を持っている時点でわかりきったことだが。


上条「げぇっ! ビリビリ!」

美琴「会うなり何なのよその反応は!」

上条「てめぇ昨日はよくも俺の大切な『特売タマゴ2パック』を台無しにしてくれたな!」

上条「お陰で上条さんの食事は向こう1週間もやし炒めだけなんだぞ!?」

美琴「アンタが勝負から逃げなければいい話でしょ!」

上条「お前は俺の都合というものを全く考えてないのか?」

美琴「都合が良くたって逃げるでしょうが!」


この一連の流れは(関係者にとっては)いつもの見慣れた光景である。

美琴が当麻を見つけた瞬間つっかかり、当麻はそれに不平不満を言う。
本来ならここから当麻の発言にキレた美琴が彼に電撃を浴びせ、当麻がそれを打ち消し、
二人だけの追いかけっこが始まるのだが――――

211 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 22:59:28.06 ID:A9AkBjo00

フラン「当麻お兄ちゃん、この人だぁれ?」

上条「ん?」

美琴「え?」


今回はいつもとは違い、『フランドール・スカーレット』という名のイレギュラーが存在していた。
フランは興味津々な目つきで美琴を見つめている。


美琴(こいつ、もしかしてレミリアが言っていた妹?)

上条「ああフラン、こいつは御坂美琴っていってレベル5の『電撃使い(エレクトロマスター)』だ」

フラン「ふーん・・・・・・」ジー

上条(あれ? 思ったより反応が薄いな)

上条(レベル5なんて聞けば驚いたりするもんだと思ってたけど)

美琴「・・・・・・なによ、なんか私の顔についてる?」

212 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:00:33.16 ID:A9AkBjo00

フラン「あなたの着てる服って常盤台の制服だよね?」

美琴「そうだけど、それがどうかした?」

フラン「常盤台ってお嬢様が通う学校だよね?」

美琴「触れ込みではそういうことになってるわね」

上条(『触れ込みでは』って・・・・・・)

フラン「あなたって本当にお嬢様?」

上条(まぁ、そう思うよなぁ・・・・・・)

禁書(やっぱり短髪にはお嬢様なんて似合わないかも)

美琴「何よ、あなたも『学舎の園』の『お嬢様』ってのに憧れてるクチ?」

美琴「そんな幻想に踊らされるなんて、やっぱり子供ね」


やれやれ、といった口調で美琴は言う。

213 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:01:37.22 ID:A9AkBjo00

彼女は基本的に感情にまかせて行動する性格である。
普段人前では『常盤台のエース』に相応しい振る舞いをしているが、根本的なところは変わっていない。
気を許す友人や当麻の前では己の性格を隠そうとはしないのである。
だからこそ、常日頃から黒子に自分の行動を諫められているのだが。

彼女は『学舎の園』で繰り広げられている派閥争いを間近で見ている。
それによって起こる醜い争いも、当事者ならずとも伝聞で知っている。
そのため、『学舎の園』に対して純朴すぎる憧れを持つ人々の気持ちを理解できない。

美琴からしてみれば常盤台の『お嬢様』に憧れている人間というのは子供としか思えないである。
従って、美琴から見たフランの印象は『夢と現実を区別できていないお子様』程度のものなのだが・・・・・・。

その直後、とんでもない発言がフランの口から飛び出した。

214 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:02:24.01 ID:A9AkBjo00





フラン「言っておくけど私、16歳なんだけど」

上条・禁書・美琴「「「・・・・・・え?」」」





その発言に3人が凍り付いた。

215 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:04:39.43 ID:A9AkBjo00

無理もない。フランの容姿はどれほど多く見積もっても小学校低学年、つまり8〜9才そこらのものなのだ。
この容姿と年齢とのギャップに愕然とするのは仕方のないことと言えた。
いくら「月詠小萌」という前例があったとしてもである。

その事実を知った3人の反応はというと――――


―上条当麻の場合―

上条(16!? ってことは上条さんと同じ歳ってことですか!?)

上条(小萌先生みたいなのが他にもいるとは上条さんにも予想できませんよ!)

上条(今まで”ちゃん”付けで呼んでたりしてたけど、これからは”さん”付けにした方がいいのでせうか・・・・・・)


―インデックスの場合―

禁書(ふーん、ってことは私よりも年上なんだ)

禁書(こもえのこともあるからそんなに珍しいことじゃないのかも)

禁書(今まで年下に見てたから後で謝ったほうがいいのかな・・・・・・)

216 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:07:06.97 ID:A9AkBjo00

当麻とインデックスは月詠小萌のことを知っているため、それほど大きなショックは受けなかったようだ。
あらかじめ知っておくということは、冷静に物事に対処するために必要なことである。

それに対して前知識を持たない美琴は――――


―御坂美琴の場合―

美琴(えぇぇぇぇぇ!?!? 16才!?)

美琴(こんななりで私よりも年上だって言うの!? 詐欺よ詐欺!)

美琴(ちょっとまって、この妹が16なら・・・・・・レミリアの奴は一体いくつなのよ!?)

美琴(あいつもせいぜい10才かそこらだと思ってたのに!)


絶賛大混乱中であった。

何せ今まで子供だと高を括っていた相手が自分より年上だというのである。
そのため、年齢という物では態度を変えない彼女であるが、今回ばかりはショックが大きすぎた。
現実が自分の想像からかけ離れるほど、人というのは平静を保てなくなるのだ。

217 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:07:54.32 ID:A9AkBjo00

フラン「見た目で相手をバカにするなんて、『お嬢様』の資格なんて無いよ」

美琴「うぇ?」


素っ頓狂な声を上げて美琴はフランを見る。
それに対してフランは美琴を冷めた目付きで見つめていた。
相手が自分のことを舐めていたとわかれば当然の反応であるが。

その美琴を見てフランは一言、


フラン「あなたには『電波女』の方が似合ってるかも」

美琴「」

上条「」プッ

美琴「笑うなぁぁぁぁぁ!!!」バリバリ

上条「うわ! 止せ!」バッ

218 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:08:23.70 ID:A9AkBjo00





バリバリバリィ!!!

バキィン!





219 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:09:22.70 ID:A9AkBjo00

美琴が放った電撃が当麻の手によって打ち消される。
その音に周りを歩いていた人々の視線が一斉に集まった。

だが美琴はそれを全く気にすることなく、当麻を怒りの目で睨みつけている。


美琴「ちぃ! やっぱりアンタ、今日こそ決着を付けてもらうわよ!」

上条「おいまて御坂! 近くに人がいるんだぞ!?」

美琴「そんなこと言って逃げるんじゃないでしょうね!?」


結局、いつも通りの流れに落ち着いたようだ。
当麻にとってはこれ以上にない不幸ではあるが。

まぁ、当麻なので仕方ない。


上条(チクショー! 結局こうなっちゃうんですか!?)

上条(さっさと逃げないと碌なことにならない気がする・・・・・・)

上条(しかしどうする? 俺一人なら何とか巻くことができるが、今日はインデックスとフランがいる)

上条(こいつらを放っておいて自分だけ逃げるわけにはいかない)

上条(しかも怒りの矛先がフランに向く可能性だってある)

220 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:10:16.99 ID:A9AkBjo00

上条(御坂はそんなことしないと思うけど・・・・・・巻き添えになる可能性はあるな)

上条(何でか知らないけど俺が相手だと手加減を忘れるみたいだし)

上条(まず、先に二人を安全な場所に逃がさなきゃ俺が逃げられない)

上条(くそ! せめて誰かが少しだけでもあいつを抑えていてくれれば・・・・・・!)


鬼のような形相で当麻に飛びかからんとしている御坂美琴。
現状を打開すべく必死に思考を巡らせている上条当麻。
二人の睨み合いが続く。


フラン「ねぇ、二人っていつもこうなの?」ヒソヒソ

禁書「この流れは飽きるくらい見たんだよ」ヒソヒソ

禁書「実はああ見えても短髪はとうまのことが好きで仕方ないんだよ」ヒソヒソ

禁書「だからあの態度も照れ隠しと思っていいかも」ヒソヒソ

フラン「へぇ〜」ヒソヒソ

上条(この事態にちょっとは緊張感を持ってほしいのですが・・・・・・)


その脇で少女二人は井戸端会議を開いていた。当麻の苦労などまるで気にかけていないようだ。
この状況などどこの吹く風といった感じである。

221 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:11:06.62 ID:A9AkBjo00

美琴「・・・・・・ッ」ジリッ

上条「くっ・・・・・・」ジリッ


一方、膠着状態が続く当麻と美琴。
そろそろこの沈黙が辛くなってきた。

打開案が思いつかない当麻に対し、そろそろ仕掛けようかと美琴が思い始めたころ・・・・・・


黒子「お・ね・え・さ・まぁ〜ん♪」ガバッ


突然の乱入者によってその均衡が崩れ去った。


上条(白井!?)

美琴「!? 黒子ぉぉぉぉぉ!」バリバリ

黒子「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」ビクンビクン


美琴に抱きつこうとするもあっさりと電撃で打ち落とされる黒子。
余りにも突然なことに当麻はその場で呆然としていた。


黒子「あぁっ。 今回の電撃も刺激的ですわぁ〜♪」ピクピク

美琴「ハァー、ハァー・・・・・・今回はちょっと危なかった・・・・・・」

222 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:11:54.55 ID:A9AkBjo00

「あそこに変な人がいるよーってミサカはミサカは指さしてみたり!」

「くォら! 指さすンじゃねェ!」

「おいおい、一体何の騒ぎだ?」

「あまり近づかないほうがいいと思うよ」


上条「・・・・・・ハッ!?」


周りの喧噪で我に返る。
知り合いの声が聞こえたような気がしたが、今はそんなことはどうでもいい。

普段は何かと恨み言を言ってくる黒子であるが、今回ばかりは感謝することにした。
おかげでインデックスとフランを避難させることが出来そうだ。


黒子「それにしてもお姉様!? またあの類人猿と追いかけっこしていましたの!?」ガシッ

美琴「黒子! 私はあの馬鹿に一撃でも入れないと気が済まないのよ!」ジタバタ

黒子「お姉様は常盤台中学の生徒として相応しい振る舞いをしていただかなければ・・・・・・」

美琴「黒子どいて! そいつ殺せない!」ウガー

上条「何物騒なことをおっしゃってるんでせうか!?」

223 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:12:53.94 ID:A9AkBjo00

ヤバイ。何がヤバイって美琴の表情がだ。
今にも取って食いそうな表情で羽交い締めにされながらも暴れている。
黒子の抑えもそう長くは続かないだろう。


上条(とにかく、この間に二人を安全な場所に連れて行かないと・・・・・・)


あたりを見渡すと『風紀委員』の一団が見えた。
背の高い眼鏡をかけた人は知らないが、残り二人は美琴と良く連んでいるのを見かけている。
『風紀委員』が近くにいれば二人の身の安全は確保されたも同然だろう。

当麻は二人を彼女らに預けて、その間に美琴から逃げることにした。


上条「すみませーん!『風紀委員』の方々ですよね?」

固法「そうだけど・・・・・・ あなたのお名前は?」

上条「上条当麻っていいます。 失礼ですけど少しの間彼女たちを預かってもらえませんかね?」

固法「彼女たちは一体?」

上条「銀髪の方は知り合いで金髪の方は迷子になっていた所で出会ったんです。」

224 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:21:04.11 ID:A9AkBjo00

固法「ふぅん、わかったわ。 知り合いの方はこちらで預かるとして、
迷子になっていた方は家に送り届けてしまってもいいわね?」

上条「そうしてもらえると助かります。 このままだと御坂の電撃の巻き添えになりそうなので」

固法「それじゃあ終わったら4時半ころに177支部まで来なさい」

固法「その時間帯なら帰ってきているから」

上条「わかりました」


とんとん拍子で話が進んでいく。
最初は不審がられると思っていたのだが、意外と懐が広い人だったらしい。
こちらとしては願ったり叶ったりである。


上条(とりあえずこれで何とかなりそうだな)

禁書「とうま? クレープを食べさせてくれるんじゃなかったの!?」

上条「夕食は奮発してやるから今回は勘弁してくれ・・・・・・」

禁書「むーっ。 わかったんだよ」

フラン「当麻お兄ちゃん、また会える?」

上条「ん?」


フランが名残惜しそうに当麻を見ている。
今日一日だけ一緒にいた仲だが、普段自由に外に出られない彼女にとっては久々に出来た知り合いなのだ。
このまま別れてそのまま疎遠になってしまうことを恐れているのだろう。



225 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:22:32.23 ID:A9AkBjo00

上条「何、学園都市にいる限り絶対に会えるさ」

フラン「ほんと? 当麻お兄ちゃん」

上条「ああ。 それと俺の名前はもう呼び捨てでいいぞ?」

上条(さすがに同い年から”お兄ちゃん”呼ばわりは恥ずかしいからな)

上条「なんならインデックスにお前の家の場所を教えておけばいい」

上条「こいつは普段は暇だから遊びに行ってやれるかもしれないしな」

フラン「うん、わかった!」

上条(見た目小学生の女の子と遊ぶ約束するなんて端から見たら変質者だなこりゃ)

上条(土御門とか青ピに見つかったらただじゃ済まないな)


フランがいくら16才といっても見た目は小学生、しかも低学年なのだ。
こんな状況でなければ周囲の人間に通報されかねない。
そう思っているところに、


佐天「それにしてもこんなにかわいい少女を二人も侍らすなんて当麻さんも隅に置けませんねー」


横から佐天がそんなちょっかいを出してきた。

226 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:23:31.43 ID:A9AkBjo00

上条「なっ!? 上条さんは健全でとても有名な男子生徒でございますことよ!?」ビクゥ

上条「いくら何でも幼女趣味はございません!」

禁書「とうま!? それってどういう意味!?」

上条「そっ、それじゃあ急ぎますんで! ではっ!」ダッ

禁書「ちょっと待つんだよ!」

金髪少女「当麻! またねー!」ノシ

上条「おう!」ノシ

上条(とにかく全速力でここから離れないと・・・・・・!)


逃げ出す準備はすべて整った。後はここから速やかに離れるだけなのだが――――


美琴「あっ待ちなさい! 黒子っ離しなさいよぉぉぉぉ!」バリバリ

黒子「あばばばばbbbbbb」ビクンビクン

上条「やべぇ!?」


既に時遅し。
電撃で黒子を気絶させた美琴が修羅の如き表情で追ってきた。


美琴「待てやゴラァァァァァァ!!!」バリバリ

上条「不幸だぁぁぁぁぁぁ!!!」バキィン!


こうして通算175回目(推定)の二人だけの鬼ごっこが始まった。

227 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/04/29(日) 23:30:20.13 ID:A9AkBjo00
今日はここまで。
質問・感想があればどうぞ。

今の悩みは語彙が少なすぎて似たような文章が並んでしまうこと。
やっぱり文章を書くのって難しい。

今書いている話の他に別の妄想が膨らんで筆が進まない。
外伝でチルノ主人公の話とか、全く別の話で霊夢を学園都市入りさせて本編再構成とか。

誰か書いてくれませんかね?(チラッ
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/30(月) 13:37:47.34 ID:GRy5K0L7o

妹様よりお嬢様の出番を・・・
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 14:55:48.93 ID:Zvflsqm5o
見た目幼女でしかないフランとかなんなの
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 16:09:18.01 ID:zfalTqTDO
合法ロリじゃね?
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 01:11:42.81 ID:YIB+7uL5o
18だろ
精神はロリだろうが
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/01(火) 07:04:20.70 ID:5+P4YNUTo
>>231
新しい合法ロリだな
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 22:43:45.89 ID:LdshL9IDO
チルノ「9才でいい」
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 13:15:50.83 ID:djYJ6bBDO
乙!
金かっつかつ言うわりには結構遊んでるな。そしてそういう事を考えてくれないインさんマジ鬼畜。

血を食うって…インさん…それじゃアンタが吸血鬼みたいやがな…。

神が上条さんを助けるには、周囲が上条さんに向かわない様にしないといけないから、ぶっちゃけ面倒だからやらないんだろうな。

美琴がちゃんとしたお嬢様っぽかったら面倒は減るだろうけど、それは美琴と言えるのか?って問題になるからなぁ。

十…六……だと?  可愛いから良いか。それに東方キャラって大体そんなm(ピチューン!

美琴は中学生だったよな、なら電波でも仕方ない部分はあるか?

美琴さん。八つ当たりは酷いと思います。

女の子って恋バナ好きよね〜。

なんだかんだで白井さんは重要。

一方その頃。

本当に上条さんをころころしたら、後悔するのは美琴さんなんですがね…。

変な事をするから変質者なのであって、変な事をしなければ変質者ではない…アクシデントさえも無ければの話しだが。

折角のクロスものだし、佐天さんにも何らかの能力が欲しいところ。

最近、東方にも電気キャラ出ましたね。空気を読む人も電撃使えるけど。

もはや鬼“ごっこ”で済んでるのか?アレは…。

霊夢さんの学園都市入りは、前に書いてた人が居たんだけどなぁ…あの人は今状態だよ。
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 17:14:46.49 ID:rTl+EIxso
気持ち悪い
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/02(水) 17:32:52.43 ID:3clfve1Ro
一瞬投下かと思って絶望した
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 15:10:05.91 ID:d8vY/gaDO
鬼巫女と鬼美琴
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 20:15:16.15 ID:ETcwK1WDO
ここならさとりんはそんなに嫌われてなさそう。
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/06(日) 15:38:47.39 ID:5/eTxCVDO
ゆゆ様の能力は、対象のカロリーを漏出させるとかかな?
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/06(日) 16:54:41.54 ID:26J/T8WNo
ショボすぎワロチ
241 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/05/06(日) 23:48:25.66 ID:LvCyWjAz0
これから投下を開始します。
242 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/05/06(日) 23:49:13.76 ID:LvCyWjAz0

フラン「いっちゃったね・・・・・・」

禁書「そうだね」

初春「まるで嵐みたいでしたね・・・・・・」


後に残されたのは少女二人と『風紀委員』一行。
その内の一人はだらしない顔をしたまま地面に転がり痙攣している。


佐天「そういえば白井さーん? 大丈夫ですかー?」

黒子「」プスプス

フラン「大丈夫なのかな・・・・・・」

初春「いつものことですからほっとけば治りますよ」ニコッ

佐天(初春が黒い!)ビクビク

243 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/05/06(日) 23:50:24.26 ID:LvCyWjAz0

固法「そう言えばあなたたちのお名前は?」

禁書「私の名前はインデックス!由緒正しいシスター様なんだよ!」

固法(目次? ずいぶんと変わった名前ね)

佐天「へぇー。 シスターさんなんだ。」

初春「初めて見ますね。 第12学区から来たのでしょうか?」

禁書「ちがうよ。 とうまの所に一緒に住んでるんだよ!」

佐天「えっ」

初春「えっ」

禁書「?」

固法「(聞かなかったことにしよう)それじゃあお隣のお名前は?」

フラン「私の名前はフランドール。 フランドール・スカーレットだよ」

固法「フランドールちゃんね」

フラン「私の名前は長いからフランでいいよ」
244 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/05/06(日) 23:51:20.80 ID:LvCyWjAz0

固法「それじゃあフランちゃん、当麻君の話では迷子になっているって聞いたけど?」

フラン「うん、今日はお姉さまと一緒に来たんだけど途中ではぐれちゃった」

固法「あなたはどこでお姉ちゃんとはぐれたの?」

フラン「普段はここにあまり来ないからよくわかんない」

佐天「そうなんだ?」

固法(・・・・・・彼女はたぶん海外からの留学生。 ということは第14学区からきたのね)

固法(それならこのあたりの地理に疎いことも納得がいく)

固法(海外からの輸入品に関してはあの学区が一番品揃えがいいから、こんなところまでは来ないのかもね)

初春「はぐれた場所がわかれば、そのあたりを探せば見つかると思うんですが・・・・・・」

禁書「それは難しいかも」

佐天「どうして?」

245 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/05/06(日) 23:52:33.25 ID:LvCyWjAz0

禁書「私とフランが知り合ってから3時間くらい経ってるし、たぶん他の場所に移動しているかもしれないんだよ」

佐天「そんなに時間が経ってるなら迷子の連絡とか来てるんじゃないですか?」

固法「初春さん、どうかしら?」

初春「うーん、そのような情報は来ていないみたいですね」

固法(ということは、まだ探し回っているのかしら?)

固法(これだけ時間が経っているのなら『風紀委員』なりに訪ねると思うんだけど)

初春「どうします? 他の支部の人たちにも協力してもらいますか?」

固法「そうね・・・・・・とりあえずこの近くにある101支部の人たちに連絡を・・・・・・」

246 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/05/06(日) 23:54:03.89 ID:LvCyWjAz0




「フラン、こんなところにいたの?」




固法「え?」

フラン「!!!」

禁書「・・・・・・?」


突如声をした方向を見ると、フランと同じ帽子を被った少女がこちらを見ていた。

いつ頃からそこにいたのだろうか。
固法はまるでいきなりそこに現れたかような錯覚を覚えながら、その少女に素性を訪ねた。

247 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/06(日) 23:55:09.83 ID:LvCyWjAz0

固法「すみませんが、あなたは・・・・・・?」

レミリア「レミリア・スカーレット。 そこにいるフランドールの姉よ」

固法「フランちゃん、そうなの?」

フラン「うん」

固法「どうしてフランちゃんがここにいるとわかったのですか?」

レミリア「ちょっとした偶然と言ったところかしら?」

レミリア「このあたりは人通りも多いから、いずれはここを通ると思って歩き回っていたの」

レミリア「この子は目を離すとすぐ何処かに行ってしまうのだから」

フラン「ごめんなさい・・・・・・」

固法(・・・・・・人を探したいのなら、一人で探すよりももっと効率的な方法があるはず)

固法(一応確認をしておきますか)

248 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/06(日) 23:56:53.99 ID:LvCyWjAz0

固法「そうですか・・・・・・すみませんがIDカードを見せてくださいませんか?」

レミリア「あら、私を疑っているのかしら?」

固法「最近巷を騒がせている通り魔事件のことはご存じでしょう?」

固法「念には念を入れておきたいのですよ。 気分を害されたのであれば謝りますが・・・・・・」

レミリア「・・・・・・そのような理由であれば気にすることはないわ。 それがあなたの仕事なのだから」


そう言いながらレミリアはIDカードを固法に渡す。
それを受け取った固法は氏名、住所、顔写真などを見つつ、怪しいところがないか確認を取る。
そんな固法を尻目に、レミリアはおもむろにインデックスに近づいた。


レミリア「あなた、この学園都市じゃ随分と見慣れない格好だけど・・・・・・」

禁書「・・・・・・イギリス清教のシスターをしてるインデックスだよ」

レミリア「イギリス清教ねぇ・・・・・・熱心な宗教家は学園都市を毛嫌いすると聞いたけど?」

禁書「確かにここの人たちは余り信心深くはないかも」

249 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/06(日) 23:58:07.54 ID:LvCyWjAz0

禁書「でもここの人たちは神様に祈ったりしないだけで、みんな何かしらの悩みを抱えているんだよ」

禁書「そう言った人たちの助けになれるのなら、私がここにいる意味はあるんじゃないのかな?」

レミリア「へぇ・・・・・・あなたずいぶんと変わってるわね」

レミリア「私も何度か十字教の要人と会ったことはあるけど、どいつもこいつも頭が固い奴等ばかりだったわ」

レミリア「その点あなたは随分ましな人格をしてるみたいね」

禁書「それって褒めてるの?」

レミリア「褒めてるわよ?」

禁書「・・・・・・」


二人の間に何とも言えない空気が漂う。
どうやらインデックスはレミリアのことを警戒しているようだ。

250 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/07(月) 00:00:24.80 ID:lSNGCxZf0

佐天「それにしてもすごく小さいね〜。 まるでお人形みたい」ヒソヒソ

初春「佐天さん! そんなことを言ったら失礼ですよ!」ヒソヒソ

佐天「それにしてもさ、初春。 あの子年齢にしては態度が大きすぎない?」ヒソヒソ

初春「・・・・・・それはそうかもしれないですけど」ヒソヒソ

佐天「ここは大人のお姉さんである私が、あの子に社会の礼儀という物を教えなければ・・・・・・!」ヒソヒソ

初春「ちょっと、止めてください!」ヒソヒソ

レミリア「そこの二人、聞こえてるわよ」

佐天・初春「!?」ドキッ


話していた内容をレミリアに聞かれていたことに二人は狼狽する。
二人がおそるおそるレミリアを見ると、彼女は朗らかな微笑みを浮かべていた。
逆にそれが一層恐怖心を仰ぐことになるのだが。


レミリア「私のことをどう思おうが勝手だけど、これでも貴方たちよりは年上よ?」

初春「ふ、ふぇ?」

佐天「まっさかぁ〜。 そんなことあるわけが・・・・・・」

固法「彼女の言う通りよ」

佐天「えっ?」

251 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/07(月) 00:01:59.57 ID:lSNGCxZf0

固法「レミリア・スカーレット、21歳。 どこかで聞いたことがあると思ったら、
『Cranberry』の編集長だったのですね」

レミリア「まぁね」

佐天「」

初春「『Cranberry』? それって最近話題になっている女性誌のことですか?」

レミリア「学園都市のファッション、スイーツ、その他諸々の流行をいち早くお知らせいたします。
・・・・・・と宣伝文句はさておき、そこのあなた?」

佐天「は、はひ!?」ビクゥ

レミリア「何か言うことは?」ニコォ

佐天「すみませんでしたー!!!」ズサー

レミリア「よろしい」

固法(見事な土下座ね・・・・・・)

初春(洗練されてますね・・・・・・)


不幸少年にも勝るとも劣らない美しい土下座を佐天は披露する。
あまりの美しさに固法と初春は場違いな感想を得ていた。
一方、レミリアは佐天からの謝罪を得ることが出来たので満足しているようだ。

そんなコントのような空気の中、神経を張り詰めている少女が一人。

252 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/07(月) 00:04:35.68 ID:lSNGCxZf0

禁書(さっきから魔術の気配がすると思ったら、ふらんのお姉さんから魔術的な力を感じるんだよ)

禁書(でも能力者は魔術を使えないし・・・・・・魔術師に何かされてる?)

禁書(それにこの魔術は確か・・・・・・)


インデックスはレミリアから魔術の残滓を関知していた。
科学の街である学園都市において、魔術の残滓を感じることはまず無いと言っていい。
なぜなら超能力者は魔術が使えない。魔術の回路と超能力の回路は全くの別物のため、
無理に使用すると暴走を起こし、肉体が爆発してしまうのだ。

それなのにレミリアからは僅かな魔術の力が感じられる。これは明らかに不自然だ。
それにこの魔術の形式はインデックスの脳内に存在する、ある魔道書の物に一致していた。
インデックスはその魔道書の検索をかけようとするが――――


フラン「どうしたのインデックス?」

禁書「え? あ、うん、何でもないよ」


フランに心配そうに顔をのぞき込まれたことでインデックスは思考を一時中断する。
レミリアのことが気になるが、ここで思考を巡らせても問題を解決することは出来ないだろう。
いきなり面と向かって『あなたは操られていますか?』などと聞くことも出来ないため、
ひとまずは誰かに相談するのが最善だ。
後で当麻が迎えに来るだろうから、考え込むのはその後でいい。

下手に首を突っ込めば何が起こるか分からない。
インデックスは10万3000冊の魔道書を持っているが、彼女自身は魔術を使えないのだ。
ある程度の魔術なら干渉することで自分の身を守れるが、言ってしまえばそれしかできない。

とりあえず、今するべきことは――――

253 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/07(月) 00:06:22.21 ID:lSNGCxZf0

禁書「・・・・・・ねぇ、フランが住んでるところを教えてくれる? 今度良かったら遊びに行きたいから」

フラン「うん、いいよ?」

禁書「ありがとうなんだよ」


姉妹の住む場所を知っておくこと。
もしもレミリアが魔術師によって利用されていたとして、魔術師の狙いは十中八九インデックスだろう。
その魔術師はレミリアのすぐ近くに潜伏している可能性が高い。
何かしら異変があった場合、操られているレミリアを捕らえればそこから相手を見つけ出す糸口となる。

フランからは魔術的な反応が見られないことから、現時点では魔術とは無関係な立ち位置にいるようだ。
しかし、場合によっては彼女も巻き込まれる危険性がある。

万が一のためにも、彼女らが普段どこで生活をしているのか知っておく必要がある。
フランを騙しているようで心苦しいが、魔術が絡んできている以上はしかたない。


レミリア「とりあえず、フランも見つかったことだしここでお別れとしましょうか」

固法「そうですね。 今度からは気をつけてくださいね? 例の事件もありますから」

レミリア「肝に銘じておくわ。 さぁフラン、帰るわよ?」

フラン「はい、おねえさま」

禁書「・・・・・・」

フラン「・・・・・・」

254 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/07(月) 00:07:27.45 ID:lSNGCxZf0

フランが名残惜しそうにインデックスを見る。
姉の言いつけを破って勝手に動き回っていたのだ。今後しばらくは家から出してもらえなくなるだろう。
『もしかしたらこのまま二度と会わなくなってしまうのではないか?』と彼女は危惧しているのだ。

見つめ返すインデックスはただ一言、フランに対して言った。


禁書「今度遊びに行くからね!」

フラン「・・・・・・うん!」

レミリア「・・・・・・」


これは二人をつなぐための約束。この出会いを忘れないための物。
そして、再開を望むという意思表示である。
この約束がある限り、二人は必ずまた出会うことになるだろう。

レミリアはそれを、喜怒哀楽のどれともとれない表情で見守っていた。

255 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/07(月) 00:18:34.94 ID:lSNGCxZf0
今日はここまで。
土曜日だと思ってたら日曜日だったでござるの巻。危うくスルーするところだった。

現在若干ふさぎ込み中。
理由は東方のSSを読みあさっていて、その中でキャラ死亡の場面に遭遇したから。
レミリアがフランを含む連中からリンチされて死亡とかマジでへこんだ。
その文章の内容が頭の中で想像できちゃってフラッシュバックしまくり。

私は平和主義者なんです。そういった暗い話は好きじゃないんです。豆腐メンタルなんです。
まぁ、ある程度話の内容を予測できたのに見ちゃった自分の責任なんですけどね。

質問・感想があればどうぞ。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/05/07(月) 00:35:54.83 ID:JLtxfd5ho
21歳で能力者ってありだっけ?
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 08:48:31.92 ID:NJO0GtVAo
クランベリーwwwwwwww
ワロタwwwwww
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 15:28:51.14 ID:joJghT3DO
流行とかは運命で見てるのか?だとしたら、使えなくなったら廃業かね?

クランベリー…美味かった記憶がある。

俺も能力とか使って仕事出来る世界に産まれたかったなぁ。
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/07(月) 23:13:15.57 ID:QbDj+ls2o


有能なインデックスさん久々に見た気がする
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 16:58:37.51 ID:VfbA7cdDO
紅魔で魔術つったらあの人だよな。どうなるのかね?

佐天 涙子の、こんな能力は嫌だ!
美しい土下座を披露する程度の能力。
うん。これは無いわ。
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/09(水) 18:56:24.50 ID:DV7vTTtDO
悩める(小さい)大人の女同盟……
なんてのが創られそうだな。
262 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 21:52:48.07 ID:bDu+4Gb40
>>256
原作には能力の使用に明確な年齢制限があるような描写はありません。
大人は能力開発を受けることは出来ないので能力を使うことは出来ませんが、
能力を持った子供が大人になった場合、能力が消滅したりするのかは不明です。

学園都市では少なくとも20年前には既に能力者が作られていたそうなので、大人の能力者が存在する可能性はあります。
学生の能力者が多い理由は、安定して能力者を生産できるようになったのが最近のことだからなのでしょう。

>>257
名前の由来はフランのスペルカード『クランベリートラップ』から。
レミリアの年齢を二十歳前後にするのは決まっていたのですが、

その年齢なら職に就いてるんじゃね?→なら、女性誌の編集長にするか。良い雑誌の名前はないかな?
→出来れば東方に関連した名前がいいな→クランベリーならそれっぽいかも。スペカに『クランベリートラップ』ってあるし丁度いい

という理由でこの名前になりました。

>>258
能力者が職に就くとしたらどんな職業があるんでしょうかね?
まあ、大半が学園都市の技術研究に携わることになるんでしょうけど。

>>259
インデックスは大食いキャラに目がいってしまうことが殆どですが、実際はかなり高いスペックを持っていると思います。
伊達に1年間もステイルと神裂から逃げ切ってはいません。

>>260
もちろん彼女も出ます。どういう立場になるのかはお楽しみと言うことで。

>>261
上条当麻被害者の会(合法ロリバージョン)ですね。わかります。
263 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/05/13(日) 22:01:24.36 ID:bDu+4Gb40
これから投下を開始します。
264 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:01:57.58 ID:bDu+4Gb40




――――7月25日 PM3:20




265 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:02:58.89 ID:bDu+4Gb40


一方、上条当麻と御坂美琴は・・・・・・


美琴「フフフ・・・・・・ようやく追い詰めたわよ」ジリッ

上条「ふ、不幸だ・・・・・・」ダラダラ


絶賛修羅場状態であった。

ここは第7学区の河原。
当麻の記憶にはないが、1年前に当麻と美琴が決闘を行った場所である。

二人は『風紀委員』一団と別れてから30分もの間追いかけっこを続けていた。
当麻は途中で人混みに紛れたり、狭い小道に入り込んだりして美琴を撒こうとしたのだが、
美琴の電磁波レーダーによってすぐさま居場所を特定されてしまい、その度に全力で逃げ回ることになっていた。

266 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:03:35.13 ID:bDu+4Gb40


美琴「懐かしいわね・・・・・・この感じ」


美琴は懐かしむような顔で河原を見渡す。
1年前は当麻が途中で逃亡してしまったため、決闘の結果はうやむやになってしまっていた。


上条「な、なにがでございませうか?」

美琴「アンタは覚えていないでしょうけどね、ここはアンタと私が決闘をした場所なのよ」

美琴「あの時は私も自分の気持ちが理解できなくて、八つ当たり気味にアンタに決闘を申し込んだんだけどね」

上条「・・・・・・」

美琴「電撃をぶっぱなしたり、砂鉄の剣で斬りかかってみたり色々してみたんだけど。 割と本気で」

上条「容赦ねぇなオイ!?」

美琴「結局その右手には通用することもなく、直接電撃を浴びせてみようとするも右手を掴んでしまったことが運の尽き。 
能力を使えなくなった私は上条当麻に捕らえられてしまったのでした」

上条「なんか引っかかる言い方だなそれ・・・・・・」

267 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:04:20.74 ID:bDu+4Gb40

美琴「最後はアンタが勝負を放棄して逃げ出したせいで中途半端に終わっちゃったんだけどさ」

上条「そうだったのか・・・・・・」

美琴「アンタが気に病むことはないわよ。 その記憶喪失はアンタが自分で道を突き進んだ結果」

美琴「それに対して私がとやかく言う権利はないわ」

美琴「アンタが記憶喪失だと知ったときはそれなりにショックだったけどさ」

上条「すまねぇ・・・・・・」

美琴「だからいいって言ってるでしょ」


当麻は申し訳なさそうに顔を俯く。

268 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:05:10.50 ID:bDu+4Gb40

当麻は1年前の7月28日以前の記憶がない。
その日、『自動書記(ヨハネのペン)』が発動したインデックスから放たれた『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』により、
上条当麻のそれまでの『記憶(おもいで)』は欠片も残さず『破壊』された。

『喪失』ではなく『破壊』。それは二度と記憶が戻らないという意味。
それ以前の『上条当麻』は既に無く、今の彼はその時に生まれた『上条当麻』が過去の当麻を演じているに過ぎない。
今でもそのことを知っているのは、美琴やインデックスなどといった限られた人間だけである。

彼女達は当麻の記憶喪失を気にしないと言っているが、
彼自身としては彼女達との思い出を共有できないことがこの上なく辛い。


上条「でも自分が良かれと思って秘密にしていたことが、結局はお前とインデックスを悲しませることになったんだ」

上条「それは絶対に弁解できないことだし、するつもりもない」

美琴「全く、アンタらしい考え方ね」

美琴(そう言うところに惚れたというかなんというか・・・・・・)モジモジ

上条「?」

美琴「ま、まぁ、せっかくこんな縁のある場所に来たんだし、上条当麻――――」

269 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:05:38.00 ID:bDu+4Gb40





美琴「――――アンタに今一度決闘を申し込むわ。 今度こそ決着を付けるわよ」

上条「――――」





270 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:06:40.71 ID:bDu+4Gb40


上条「いやいや、何いきなりシリアスな雰囲気にしてさらっととんでもないこと言ってるんでせうか!?」

上条「上条さんは無実の女性を殴り飛ばすような外道ではございませんことよ!?」

美琴「チッ・・・・・・これならうまくいくと思ったんだけどね・・・・・・」

美琴「というかせっかくしんみりとした空気なのにその発言はないでしょ?」

美琴「空気を読まない上条さんにマジ引くわー」

美琴「『空気殺し(ムードブレイカー)』に改名したほうがいいんじゃないの?」

上条「・・・・・・お前性格変わってないか?」

美琴「気のせいよ」


せっかくシリアスな雰囲気を醸し出していたのに、これでは台無しである。
でも彼らにとっては、この程度の空気の方が性に合っているのだろう。

271 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:07:28.72 ID:bDu+4Gb40

美琴「と・に・か・く! 私としてはさっさとアンタとの関係をはっきりさせておきたいのよ!」

美琴(つーか、早く思い出しなさいよこの馬鹿!)

上条「ったく・・・・・・お前はどうしてそんなに俺との勝負にこだわるんだ?」

上条「第一、俺とお前は『友達』だろ? そんな行動に何の意味があるんだよ?」

美琴(『友達』ってコイツ・・・・・・私の気持ちも知らないで!)

上条「・・・・・・ん? まてよ、もしかして・・・・・・」

美琴(え・・・・・・?)ドキッ

いきなり神妙な顔つきで考え込む当麻を見て、美琴は一つの期待を寄せる。

当麻は、美琴の恋心をようやく理解して――――





上条「日頃の鬱憤を俺を使って解消しようとしているんじゃ・・・・・・」

美琴「」





――――いるわけがなかった。

272 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:08:39.70 ID:bDu+4Gb40

上条「そうだ・・・・・・レベル5としての重圧、白井のラブコールからのストレス・・・・・・
日頃から相当な疲れが溜まっているはず・・・・・・」

上条「たまには自分の能力を使ってスッキリしたいこともあるかもしれない・・・・・・」

上条「だが御坂はレベル5。 御坂と対等に渡り合える友達は少ないはずだ・・・・・・」

上条「その点、俺は『幻想殺し』のおかげで御坂の電撃にも耐えられる・・・・・・」

上条「つまり俺は御坂の心を知らずの内に癒していたというわけか・・・・・・」フッ

美琴「」

上条「よし! そういうことなら仕方がねぇ! お前の鬱憤この俺が全部受け止めてやる!」

上条「大船に乗ったつもりでドーンと来い!」キリッ

美琴「・・・・・・」

上条「? どうした御坂?」

美琴「こ・・・・・・」

上条「こ?」

273 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:09:18.65 ID:bDu+4Gb40





美琴「このド低脳がァーーッ!」


ドスッ!


上条「ふごぉ!?」





274 : ◆jPpg5.obl6 [sage]:2012/05/13(日) 22:10:52.89 ID:bDu+4Gb40

美琴の鮮やかな跳び蹴りが当麻の腹部に直撃する。
もろに食らった当麻はその場にかがみ込んで悶絶するが、美琴はそれを気にすることもなく当麻の背中を蹴り始めた。

ここまで激情してしまっては、怒りが収まるまで誰の声も届かないだろう。


美琴「黙って聞いていれば自分勝手な妄想をダラダラ垂れ流しやがって!」ゲシゲシ

美琴「てめぇは何か!? そこまでして乙女心を踏みにじりたいのか!?」ゲシゲシ

上条「御坂さん!? 女性にあるまじき言葉遣いをしてますよ!?」

美琴「[ピーーー]!!! ○○○が×××して[ピーーー]!!!」ゲシゲシ

上条「御坂さぁぁぁぁん!?!? そんな言葉使っちゃだめぇぇぇぇ!!!」


ああ、悲しきかな。上条当麻には乙女心がまるでわからぬ。
周りの女性がどのようにアプローチしても、その意をくみ取らずにスルーしてしまうのだ。
彼は『好意掌握(フラグメイカー)』であると同時に『恋愛拒否(フラグブレイカー)』でもあるのだから。

その後当麻は美琴に電撃をたっぷり浴びせられた後、
チョークスリーパーを決められて気絶させられたのであった。


上条当麻の明日はどっちだ!

275 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/13(日) 22:14:04.98 ID:bDu+4Gb40
短いですが今日はここまで。上条さんェ・・・・・・

最近忙しいので書く時間が余りありません。
もしかしたら更新が遅れるかも。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 23:09:48.16 ID:8T0lWxJDO
そっか、忙しいのか。本当にお疲れ様ですね。

にしても、当麻さんの空回りっぷりの見事なことww
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/15(火) 17:29:42.92 ID:wmSrMEkDO
リリーちゃんとか気になるな。
278 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/05/20(日) 22:12:09.87 ID:eeaDOCSF0
これから投下を開始します。
279 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:12:58.69 ID:eeaDOCSF0





――――7月25日 PM3:30





280 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:13:45.55 ID:eeaDOCSF0

レミリア「今日のお出かけは楽しかった?」

フラン「え? ・・・・・・うん」


家へと続く道を歩きながらレミリアはフランに訪ねる。それに対するフランの返事は心許ない。
フランはここに至るまで、これから自分の身に起こることをひたすら思考していた。

姉からどんな風に叱られるのだろうとか、今度はどのくらい家から出られないのだろうとか、
そんなことばかりが頭の中を巡りフランの心に重くのしかかっていた。
ここに至るまで姉が自分に話しかけてくれなかったことも、フランの心を暗澹とさせている原因だ。


レミリア「どうしたのフラン? 顔色が悪いわよ?」

フラン「何でもないよ、何でも・・・・・・」

レミリア「もしかして、私の罰を怖がっているのかしら?」

フラン「・・・・・・ッ!」

281 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:14:25.24 ID:eeaDOCSF0

レミリアはフランの心を見透かすような目でそう言った。
どのような思いでフランが後をついてきてるのか、それを知った上での発言であろうか。
もしそうであれば、この姉はかなり意地悪い女である。


レミリア「フラン、この外出の際にあなたと交わした約束はなんだったかしら?」

フラン「・・・・・・『外出する際はいかなる出来事があってもレミリアの側から離れないこと』」

レミリア「そう、それがあなたと私の間になされた約束ね」

レミリア「それを条件に私はあなたに外出する許可を与えたわ」

レミリア「それがまさかこんな簡単に破られることになるなんてね」

レミリア「あなたはもっと聞き分けのいい子だと思ってたんだけど?」

フラン「・・・・・・」

レミリア「とりあえず、あなたに対する罰はもう決めてあるわ」

フラン「え・・・・・・」

282 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:14:58.60 ID:eeaDOCSF0

レミリア「向こう6ヶ月における外出の禁止、これがあなたに対する罰よ」

フラン「そんな! だって・・・・・・」

レミリア「私があなたから目を離した責任もあるとでも言いたいのかしら?」

フラン「う・・・・・・」

レミリア「確かに私があなたから目を離したことも原因の一部ではあるわね」

レミリア「でも元々あなたが私の側から離れなければ、このようなことにはならなかったはず」

レミリア「私の失敗があなたの罪の帳消しにはならないわよ?」

フラン「・・・・・・」

レミリア「それがわかったなら、おとなしく家でじっとしていなさい」

フラン「うぅ・・・・・・」

283 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:15:58.44 ID:eeaDOCSF0

なんてことだ。確かに私が約束を破ったことが悪いとは言え、そこまですることはないじゃないか。

第一、なぜレミリアがそこまでしてフランを外に出したくないのかがわからない。
確かに『5年前の事件』があった後、フランは学校にも行かずに引きこもり生活を続けていた。
だが、フランは元々アクティブな性格の少女だ。時折外が恋しくなることもある。
今回の外出もレミリアの外出にかこつけてフラン自身がお願いしたものだった。

それに今日の出来事によってフランは今までの自堕落な生活を止める決心が付いた。
上条当麻とインデックスという友達が出来たのだ。

他人から見れば友達と呼べるようなものでは無いのかも知れない。
だが、フランは今まで外界との接触を断っていたがために人とのつながりが薄い。
そんな彼女がやっと出来た知り合いを大切にしたいと思うのは自然なことだろう。

それだというのに、レミリアは何かを恐れるようにフランを頑なに外に出そうとはしない。
数ヶ月前に使用人を雇ってからは、まともに家の中を歩くことも出来なくなってしまった。
レミリアが外出している間の監視を、その使用人に任せているからだ。

284 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:17:41.36 ID:eeaDOCSF0

フランが頼んでもいないのになぜそこまでするのか。
一度問いただしてみたことがあったが、『あなたは知らなくてもいいことよ』と言うばかりで何も話してくれない。

こんな対応をされては、いくら姉といえども反発したくなるものだ。
そもそも、フランがレミリアの側を離れて行動してしまったのは、
レミリアの監視から逃れたいという願望が無意識にそうさせたのもあるのだから。

だが、そんなことを言ったところで現状を打開できるはずもなく。さらに状況を悪化させるのが関の山だ。

彼女の不幸は終わらない。
レミリアはフランの心に更なる傷を刻みつける。


レミリア「それとあなたと一緒にいたシスターのことだけど・・・・・・」

フラン「・・・・・・?」

レミリア「あの子は二度と会わないこと。 これは命令よ」

フラン「な!?」

285 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:18:11.95 ID:eeaDOCSF0

この姉はやっとの事で創ることが出来た友達までも奪おうというのか。
そこまでする権利がレミリアにあるのか?

当然のごとくフランはこの理不尽に対して抗議する。


フラン「なんでよ! おねえさまにそこまでされるようなことはしてないでしょ!」

レミリア「当たり前よ。 このことはあなたの失態とは別の話だもの」

レミリア「例えあなたが私の側から離れていなくても、今後あのシスターに会わせるつもりは毛頭ないのだから」

フラン「どうして・・・・・・どうしてなのよ!」

レミリア「どうして、ね。 あなたに話すべきことは何もないのだけど・・・・・・」

レミリア「強いて言うなら、それがあなたの『運命』というものなのよ」

フラン「!!!」

286 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:19:07.51 ID:eeaDOCSF0

運命?運命だと?
そんな訳のわからない理由でインデックスから引き離されるというのか。

レミリアの能力の名は『運命観察』。その力は他者が辿る絶対不可避の未来を視ることが出来るという。
だがフランはその能力を殆ど信用『していなかった』。
いや、信用『しなくなった』と言った方が正しい。

度重なるレミリアへの不満により、フランは姉を尊敬しなくなってしまったのだ。
フランがかつて持っていた姉に対する羨望の眼差しは既にない。
心に僅かに残っていた『姉を誇る心』も、今完全に霧散した。

後に残るのは形ばかりで中身のない姉妹の関係だけだ。


フラン「おねえさまはいつもそうやって『運命』だなんて言いながら肝心なことをはぐらかすのね!」

フラン「いい加減はっきり説明したらどうなの!?」

フラン「それともおねえさまの能力はただのはったりなのかしら!?」

レミリア「あなたが私のことをどう思おうが関係ないわ」

レミリア「それにあなたに私の能力を理解してもらおうと思わないし、させるつもりもない」

レミリア「どちらにせよ、あなたは私に従うしかないのだから」

フラン「――――っ! お姉さまのことなんかもう知らない!」ダッ

287 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:19:51.34 ID:eeaDOCSF0

フランはレミリアを思いっきり睨みつけた後、そのまま走り去ってしまった。
今回のことが二人の間に更なる深い溝を作り出したのは想像に難くない。
レミリアはだんだんと小さくなっていくフランの後ろ姿をただただ眺めていた。


レミリア「バカねフラン・・・・・・私がただの思いつきでこんなことするはずないじゃない」

レミリア「それにしても、イギリス清教の人間が私たちに関わってきたということは、もうそろそろということね・・・・・・」

レミリア「あのことが本当なら修正は出来るかもしれないし、色々準備はしているけれど・・・・・・」

レミリア「いや、根拠のない期待はするものじゃないわね」


ピピピピッ ピピピピッ


レミリア「あら・・・・・・?」


味気ない携帯電話の着信音があたりに響き渡る。
レミリアはどこからともなく紅い携帯電話を取り出し電話に出た。

288 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:20:56.92 ID:eeaDOCSF0

『お嬢様、私です』

レミリア「あら、オレオレ詐欺は間に合ってますわ」

『冗談はおやめください。 それに私の声を聞き間違えるほど耄碌はしてないでしょう』

レミリア「・・・・・・すこしは私の冗談に乗ったらいいじゃないの咲夜。 あなたって本当にノリが悪いわねぇ〜」

咲夜『これが性分ですので』

レミリア「まったく、仕事熱心なのはいいけどたまには羽目を外してもいいんじゃない?」

レミリア「それだといつかは倒れちゃうわよ?」

咲夜『心配はいりません。 休むべき時はしっかり休んでおります』

レミリア「まぁ、あなたがそれで良いというのなら無理強いはしないわ」

レミリア「・・・・・・それで? なんの用事かしら?」

289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/05/20(日) 22:21:30.54 ID:eeaDOCSF0

咲夜『こちらの仕事が片付きましたので連絡を入れた次第です』

咲夜『私はこれから帰宅致しますが、何か入り用のものはありますか?』

レミリア「そうね、これといったものはないのだけど・・・・・・そうだ」

咲夜『何でございましょうか?』

レミリア「あなた、後どのくらいで家に着くのかしら?」

咲夜『1時間といったところでしょうか。 お望みであれば10分まで短縮することが出来ますが・・・・・・』

レミリア「そう・・・・・・・今フランが家に向かっているわ」

レミリア「ここからも距離だと、そうね・・・・・・あと30分くらいで着くんじゃないかしら?」

レミリア「あなたには先回りしてもらってフランの監視をしてもらいたいの」

レミリア「今あの子は非常に不安定な状態だからね」

レミリア「大丈夫だとは思うけど、万が一家を壊されたりしたら面倒だわ」

290 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:22:18.01 ID:eeaDOCSF0

咲夜『一体どうなされたのですか?』

レミリア「私との約束を破ったから、ちょっとしたペナルティーを与えただけよ」

レミリア「そしたらその内容が相当気に入らなかったみたいでね」

レミリア「私を怒鳴りつけた後そのまま走って行っちゃったわ」

咲夜『・・・・・・そうですか』

レミリア「・・・・・・なによその声色。 あなたまで私を責める気?」

咲夜『滅相もございません。 わたくしはお嬢様の意に従うのみです』

レミリア「ならいいわ」

咲夜『他にご用件はありますか?』

レミリア「・・・・・・一つだけ忘れていたことがあったわ」

咲夜『・・・・・・?』

291 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:22:57.93 ID:eeaDOCSF0

レミリア「紅茶が飲みたいわ。 とびっきり紅い紅茶をね」

レミリア「どのブランドが飲みたいかは私の部屋の机の上にあるから」

咲夜『承知いたしました』

レミリア「寝る前に飲みたいから、それまでに準備をよろしくね」

レミリア「期待しているわよ」ピッ

レミリア「・・・・・・ふぅ。 仕方のないこととはいえ、結構キツイわね」


そう呟きながらレミリアは空を見上げる。
そこには、半ばまで傾いた太陽が地上に最後のとどめとばかりに直射日光を降り注いでいた。
レミリアはその太陽を忌々しげに見つつただ一言、

292 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:23:32.71 ID:eeaDOCSF0





レミリア「『運命の日』はもうすぐそこに・・・・・・」





そう静かに呟いた。

293 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/20(日) 22:28:27.91 ID:eeaDOCSF0
またもや短いですが、今日はここまで。

レミリアとフランの間に不穏な気配が。後伏線みたいな物を少々。
SS初心者の私が上手く複線を回収できるのか、結構不安です。
咲夜さんの名前をここで出すかは結構悩みました。

今回は何とか投下できたけど、次も出来るかな・・・・・・
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 16:32:38.22 ID:zKcTi/NDO
乙っ!
やっぱりスカーレット姉妹は吸血鬼なのか?

そして運命の日とは一体……?
295 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/05/27(日) 20:17:03.90 ID:xk+h+WWJ0
これから投下を開始します。
296 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:17:31.23 ID:xk+h+WWJ0





――――7月25日 PM4:20





297 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:18:10.56 ID:xk+h+WWJ0

上条「」ボロッ

美琴「・・・・・・」ツーン

初春「あ、あはは・・・・・・」

佐天「うわぁ・・・・・・」

固法「あらあら・・・・・・」

禁書「・・・・・・」ジー

黒子「」ギリギリ


所変わってここは風紀委員活動第177支部。
そこにいる面々は現在の部屋の惨状に対して様々な反応を示していた。

床には大量の電撃を浴びて黒こげになった上条当麻が寝転がっている。
どうやら美琴が無理矢理引きずってきたようだ。
これでも何とか生きているらしい。これが主人公補正という奴か。
こんな状態になるような酷い目に遭う主人公であれば、大抵の人は願い下げであろうが。

この惨状を作り出した原因である御坂美琴は『当然の結果よ』と言いたそうにそっぽを向いている。
それに関してはインデックスも同意のようで、『やっぱりこうなったかも』と言わんばかりに呆れた目付きで当麻を見据えている。

当麻のことをよく知らない佐天・初春・固法の三人は、なぜ当麻がこのような状態になっているのか、
彼らと別れた後一体何があったのかを思い描いているようだ。

黒子?彼女ならいつも通りですよ?

298 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:19:01.64 ID:xk+h+WWJ0


初春「上条さん、大丈夫なんでしょうか・・・・・・」

美琴「心配する必要なんてないわ。 コイツは死んでも死なないような怪物並みのタフネスを持ってるからね」

美琴「むしろこれくらいしないと反省しないでしょ」

初春「反省って・・・・・・一体何があったんですか?」

美琴「え!? そ、それは・・・・・・」////

佐天「あれぇ〜? もしかして当麻さんと何か痴話喧嘩でも・・・・・・」ニヤニヤ

美琴「そ、そんなわけないじゃない! コイツが私に対して無礼な口聞いたからお仕置きしただけよ!」

美琴「乙女心なんて全く意に介さない男なんだから・・・・・・女の敵よ敵!」

固法(乙女心って・・・・・・。 それを痴話喧嘩というんじゃ・・・・・・)

黒子(クソックソッあの類人猿めぇぇぇぇ! お姉様にあんな顔をさせるなんて・・・・・・)ギリギリ

黒子(お の れ 上 条 当 麻 !)ギリギリ

初春「白井さん落ち着いてください」

禁書「くろこは少しその劣情を抑えるべきかも」

上条「う〜ん・・・・・・あれ?」


少女達が騒いでいると当麻が呻き声を上げて目を覚ました。
これだけ騒いでいれば目を覚まさない方がおかしいが。『女、三人寄れば姦しい』である。

299 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:19:46.59 ID:xk+h+WWJ0

固法「どうやら目を覚ましたようね」

初春「上条さん大丈夫ですか?」

上条「えーと・・・・・・ここは?」

初春「風紀委員活動第177支部です。 御坂さんに引きずられてきたときはびっくりしましたよ?」

上条「そうだったのか? あんたたちと別れてからの記憶が曖昧なんだが・・・・・・」

佐天「・・・・・・御坂さん?」ジー

美琴「あははは・・・・・・ 大丈夫よダイジョーブ」ダラダラ

上条「とりあえず起き上がらないとっ!?」ズキッ

初春「ああ! だめですよ動いちゃ! 酷いやけどを負ってるんですから」


よく見ると体のあちこちに火傷が出来ている。
ひとつひとつは小さいが、数が多いので見ていて痛々しい。
何もしなくても、ヒリヒリとした痛みが体全体を支配している。

300 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:20:26.02 ID:xk+h+WWJ0

上条「うわーこれは酷いな。 おそらく御坂の所為なんだろうけど」

美琴「フン、自業自得よ」

上条「おまえな・・・・・・上条さんの体は至って普通の高校生なのですから手加減というものをですね・・・・・・」

禁書・美琴(いや、それはない)

固法「救急箱持ってきたわよ」

初春「あ、ありがとうございます」

佐天「初春、私も手伝うよ」

上条「いや、そこまでしてもらう必要は・・・・・・」

佐天「何言ってるんですか。 上条さんは怪我人なんですから、黙ってナースの言うことは聞くべきですよ〜」

初春「誰がナースですか・・・・・・」

上条「・・・・・・それじゃあお願いします」


初春と佐天は固法から救急箱を受け取ると、手慣れた手つきで上条当麻の治療を始めた。
初春が傷口に消毒を塗り、佐天が包帯を巻いていく。
流れるような手さばきで当麻の治療を進めていく。

301 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:21:06.94 ID:xk+h+WWJ0

上条「ずいぶんと手慣れてるな」

初春「けが人の治療は『風紀委員』の必須スキルなので」

佐天「私はよく弟の怪我の手当をしてたからねー。 こういうことには慣れてるんですよ」

上条「なるほどなぁ」

佐天「さぁ上条さ〜ん、上着も脱いじゃいましょうね〜」

上条「ええ!? ちょっとそれは・・・・・・」

佐天「脱いでもらわないと治療が出来ないじゃないですか」

佐天「もしかして『御坂さん』に見られたくない理由でもあるんですか〜?」ニヤニヤ

美琴「な!?」////

上条「いや、確かに『女性』に見せるようなものでもないんですけどね・・・・・・」

美琴「」カチン

佐天「」

上条「?」

初春(御坂さん・・・・・・)

固法(ご愁傷様ね)

禁書(当然の結果かも)

黒子「」ギリギリ

佐天「と、とりあえず治療が進まないので脱いでもらえますか」

上条「はぁ、しかたねぇなぁ」

302 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:21:47.94 ID:xk+h+WWJ0

当麻は渋々と上着を脱ぎ始める。
服が傷口のこすれて痛そうだが、それは我慢してもらうしかない。
当麻がTシャツを脱ぎ終えると、彼の細身でありながらガッシリとした肉体が現れた。

ボディービルダーのような体つきではなく、必要なところに必要な分だけの筋肉がついた肉体。
電撃による火傷がなければ、高校生のとても健康的な体と言える。
おそらく日頃から面倒ごとに巻き込まれている所為なのだろう、体のあちこちに治りかけの擦り傷や切り傷が見られた。


御坂「・・・・・・」////

佐天「おぉ・・・・・・」

固法「へぇ・・・・・・」

上条「あのぅ・・・・・・あまりじろじろ見られると恥ずかしいのですが・・・・・・」

初春「結構しっかりした体つきしてるんですね」

上条「普段から揉め事に巻き込まれてるからな。 いやでも鍛えられるわけですよ」

美琴「大半は自分から首を突っ込んでるからでしょうが」

上条「しかたねぇだろ。 それが性分なんだから」

美琴「ったく・・・・・・少しは自分の心配もしなさいよね」ボソッ

上条「ん? なんか言ったか?」

美琴「なんでもないわよ! アンタは治療に専念しなさい!」

上条「この怪我の原因を作った人が言うセリフじゃないよな・・・・・・」

初春「はいはい、喧嘩は後にしてくださいねー」

303 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:22:28.28 ID:xk+h+WWJ0

このままではいつまで経っても口論したままなので、初春が強引に話の流れを切る。
美琴はまだ何か言いたそうであったが、その光景に耐えきれなくなった黒子が当麻から引き離してしまった。
そのおかげで治療は滞りなく終わったのだが。


上条「・・・・・・よし! だいぶ痛みも取れたしサンキューな!」ゴソゴソ

佐天「どういたしましてっと」

初春「3日くらいは安静にしてたほうがいいですよ?」

美琴「それは無理でしょ。 コイツはそういう奴だし」

美琴「どうせ2、3日したら病院に担ぎ込まれるに決まってるわ」

上条「うぐっ。 否定できないのが辛い・・・・・・」


上着を着ながら当麻は言葉を詰まらせる。
例え松葉杖を付いていても厄介事に首をつっこんでしまうのがこの男である。


固法「・・・・・・あら、いつの間にか下校時刻が近くなってきたわね」

初春「ええ!? もうそんな時間ですか!?」

佐天「いや〜時間が流れるのは早いもんだね」

初春「どうしよう!? まだ提出する資料が出来てないですよ〜!」

佐天「にゃはは♪ これは残業確定かな〜?」

初春「佐天さん! 人ごとみたいに言わないでください!」

304 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:23:03.81 ID:xk+h+WWJ0

黒子「・・・・・・」

美琴「黒子、どうしたの?」

黒子「そういえば今日提出するはずの始末書がまだ出来ていませんでしたの」

美琴「・・・・・・」

黒子「くっ! これもあの類人猿が厄介ごとを持ち込みさえしなければ・・・・・・!」

美琴「アンタ、今の今までずっと歯ぎしりしてたんだけど、その時間で始末書かけなかったの?」

黒子「」orz

上条「そろそろ家に帰らないと・・・・・・」

禁書「とうまー、おなかすいたー」

上条「随分と静かだと思ったら第一声がそれか!?」

上条(でも、今の上条さんの冷蔵庫の中は調味料くらいしか・・・・・・)

上条「今日ってどこか安売りの日だったかなぁ?」

佐天(・・・・・・そういえば今日特売の日だったっけ?)

佐天(帰りにスーパーに寄ってこ)

305 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:24:42.57 ID:xk+h+WWJ0

こうしてそれぞれの思いを乗せて学園都市の一日が過ぎていく。
ここでの会話はどれもこれも他愛のないものではあるが、それ故に貴重であり大切にしなければならない。
この平和がいつまでも続くとは限らないのだ。

前任の統括理事長、アレイスター・クロウリーがその座を退き、
親船最中と貝積継敏の二人が中心となって学園都市を運営するようになったことで、
以前まで学園都市に巣くっていた闇は殆ど駆逐されるに至った。
しかし、未だに学園都市の闇はあちこちで生まれ、その身を巧みに隠している。
彼らが闇の拡大を防いでいるとはいうものの、それを完全に消し去るのは難しい。

不幸とは前触れなく訪れるものである。
彼らが討ち漏らした闇がいつ自分たちに襲いかかるかわからないのだ。

306 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/05/27(日) 20:29:07.66 ID:xk+h+WWJ0
今日はここまで。
現在の学園都市の状況を少々。☆は学園都市から去って、親船最中と貝積継敏が学園都市を運営してます。
☆の身に何があったのかは、この物語の中では詳しく描写するつもりは今の所ありません。

だんだん書く速度が遅くなってきました。忙しいから仕方ないことなんですけどね。

質問・感想があればどうぞ。
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/27(日) 23:46:52.89 ID:+h7jixgro

舞ってたよー
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/28(月) 11:20:11.45 ID:wW8HRDKDO
お疲れ様!
上条さん…今度はどんな傷を負う事になるのやら。
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/01(金) 15:48:26.49 ID:PpSPyPWDO
チート巫女じゃなきゃ霊夢さんが空気になるのは仕方ないな。
そもそも博麗神社があるのかどうか……。
310 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/06/04(月) 01:25:03.20 ID:+Td3Ubp20
これから投下を開始します。
311 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/06/04(月) 01:25:50.27 ID:+Td3Ubp20





――――7月25日 PM5:00





312 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/04(月) 01:26:25.15 ID:+Td3Ubp20

上条「インデックス、今日は楽しかったか?」

禁書「うん! でもやっぱりお腹が空いたかも」グゥー

上条「わーったから家に着くまで我慢しなさい」

禁書「うー」

上条(とは言ったものの、家に帰っても材料はない・・・・・・)

上条(早いとこ店に寄って食べ物を買わないとな)


美琴達に別れを告げた後、いつもの帰り道を歩いている上条当麻とインデックス。
インデックスはおやつのクレープを食べ損なったために、いつも以上に食べ物を催促してくる。

しかし、昨日特売で買った卵2パックが美琴との追いかけっこで台無しになっているため、
このまま帰っても冷蔵庫は空っぽ、『いつも通り』の食事すら出せない。
とりあえず何かを買って食料を補充しないとインデックスに体の一部を『捕食』されかねない。
そう考えてスーパーに足を向けようとしたときにふと気づいた。

何か大切なことを忘れているような・・・・・・

313 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/04(月) 01:29:03.03 ID:+Td3Ubp20

上条「そういえばインデックス、フランはどうしたんだ?」

禁書「ふらん? ふらんならお姉ちゃんが迎えに来て一緒にかえっていったんだけど・・・・・・」

上条(ん? 歯切れが悪いな)

上条「どうかしたか?」

禁書「そのお姉ちゃん、れみりあって言うんだけどね・・・・・・ 少しだけど魔術の反応があったんだよ」

禁書「本当に微かだったから最初はわかんなかったけどね」


その言葉に当麻は体を硬直させる。


上条「・・・・・・え? でもフランのお姉さんって」

禁書「とうまが言いたいことはわかるよ」

禁書「れみりあは学園都市に住んでいるから間違いなく能力者」

禁書「でも能力者は魔術を使えない。 無理に使おうとすれば体のあちこちが壊れて死んじゃうんだよ」

禁書「でも、れみりあからは魔術の反応があった」

禁書「となると考えられるのは・・・・・・」

314 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/04(月) 01:29:59.82 ID:+Td3Ubp20

上条「フランのお姉さんの近くに魔術師がいる・・・・・・か」

上条「そいつがフランのお姉さんに何か魔術をかけているのか?」

禁書「そうなるかも」


スカーレット姉妹の身近に魔術師がいる――――。

学園都市に魔術師がいることについてはそれ程問題ではない。
当麻の悪友である土御門元春は魔術師であるし、インデックスの同僚の神裂火織やステイル=マグヌスも、
仕事の合間を縫ってちょくちょくインデックスに会いに来ている。

少し前であれば考えられないことではあるが、学園都市と十字教間のいざこざが落ち着き、
両者のトップが互いの関係の改善を進めた結果、お互いの確執はほぼ無くなった。
仲が良くなったというわけではないが、一触即発の状態でなくなっただけ大きな進歩である。

では何が問題なのか。それは、学園都市に来る理由だ。

いくら学園都市と十字教の蟠りが少なくなったとはいえ、未だに学園都市を快く思わない者は多い。
学園都市に対して敵対心を持つ者達がいる以上、おいそれと魔術師を受け入れるわけにはいかないのだ。

イギリス清教にとっては学園都市にインデックスがいるため、
彼女の身の安全のためにも学園都市に入る魔術師に関しては細心の注意を払う必要がある。

315 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/04(月) 01:31:59.43 ID:+Td3Ubp20

したがって、魔術師が学園都市に入るにはイギリス清教などから発行される身分証明書が必要になる。
自身の氏名、生年月日はもちろんのこと、己の属する宗派、組織、使用する魔術体系、
学園都市に行く動機などを事細かに質問された後、厳密な審査の後に複数枚の契約書を書かされた上で初めて許可が下りるのだ。

もちろんこれで終わりではない。
学園都市に入った後は、定期的に学園都市で何を行ったのかを報告する義務があり、
学園都市から離れた後もその期間中行ったことを資料にまとめて提出しなければならない。

しかしこれはフリーの魔術師や少数派の組織に所属する魔術師のための処置であり、
イギリス清教などの大規模宗派と学園都市からお墨付きをもらっている者に関しては、
各組織のトップから許可をもらいさえすれば比較的容易に出入りすることが出来る。
ステイルと神裂が頻繁に来られるのもそのおかげだ。

現在の魔術師と学園都市の交流についての話はここまでにして話を元に戻そう。
ここで問題になっていることとは、ここ最近は魔術師が学園都市に来ていないため、
現在学園都市には魔術師はいないはずだということだ。

当麻は学園都市にやってくる魔術師の情報を、土御門元春から逐次提供してもらっている。
インデックスは103000冊の魔道書を記憶しているため、魔術師に常に狙われる立場にある。
予防線を何重にも張り巡らせているとはいえ、インデックスを目当てに侵入してくる魔術師がいないとも限らない。
インデックスを守るためにも、学園都市に来ている魔術師の情報は常に知っておくべきことであった。

316 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/04(月) 01:32:51.23 ID:+Td3Ubp20

いないはずなのに存在している魔術師・・・・・・
彼が何の目的で学園都市に潜伏しているのかを早急に調べる必要がある。

害意がなければそれに越したことはないが、正規の手続きを踏まずに侵入してきている以上、
十中八九何かよからぬことを考えているだろう。

相手が行動を起こす前に先手を打たなければなるまい。


上条「それにしても、土御門に気づかれずに学園都市に侵入するなんて・・・・・・」

上条「こいつは相当手練れの魔術師かもしれない」

禁書「どうしよう、とうま?」

上条「そうだな・・・・・・とりあえず土御門に相談しなきゃな」

上条「俺たちだけで考えて行動するのは少し危険だ」

上条「下手に相手を刺激すれば、フラン達に被害が出るかもしれない」

上条「その点あいつならこういうことに慣れてるからな」

上条「何か良い案を出してくれるだろ」

禁書「じゃあ、急いで帰って相談したほうがいいかも」

上条「あぁ」

317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/06/04(月) 01:33:52.35 ID:+Td3Ubp20

土御門元春。
彼は学園都市のスパイであると同時にイギリス清教のスパイでもあるという、
いわゆる二重スパイと呼ばれる人間だ。

科学サイドと魔術サイドの両方に精通しているため、
魔術サイドで何らかの有事があった場合にいくつかの支援を受けたことがある。
その代わり、何も知らないところに無理矢理事件の解決に付き合わされたりもしたが・・・・・・

とにかく彼は、そういった危うい立場で動き回る人間であるため、
大抵の荒事に関して対処の仕方に心得がある。
いくら当麻がいくつもの死線をくぐり抜けてきたとはいえそれは戦闘に関することであり、
相手との駆け引きや戦術的な策を練ることに関しては不得手である。

自分が行き当たりばったりで行動するよりも、土御門に指示を仰いだ方が何かと良いだろう・・・・・・
そう考えた当麻は早く帰るべく足を急がせた。

ちなみにスーパーで食料を買うことをすっかり忘れてしまい、
インデックスによって全身に歯形を付けられることになったのは全くの余談である。

318 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/04(月) 01:37:29.66 ID:+Td3Ubp20
今日はここまで。
そろそろバトル描写が挟まる予感。すごく不安です。

テリワン3D買いました。
時間が食われすぎてヤバイ。今回短いのはきっとそのせいだ。

質問・感想があればどうぞ。
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/04(月) 20:56:35.29 ID:X8wpmNVAo
320 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/06/17(日) 21:32:38.32 ID:U+rAl0+H0
これから投下を開始します。
321 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:33:12.77 ID:U+rAl0+H0





――――7月25日 PM6:10





322 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:34:01.72 ID:U+rAl0+H0

黒子「やっっっと終わりましたの・・・・・・」グデー

美琴「コラコラ黒子、だらしないわよ」


始末書を書き終えた黒子が机に突っ伏す。

先日の事件を追っていて犯人と戦闘になった際に、
自分の不注意で戦闘範囲を拡大させて被害を大きくしてしまった。
相手が高レベルの『発火能力者(パイロキネシスト)』であることも相まって、
攻撃のせいであちこちで小火が起きることになったのだ。


黒子「あの量の始末書を1時間半で書き上げたことを少しは褒めてほしいですの」

美琴「それはあなたの自業自得でしょ」

美琴「そもそも始末書書くようなことをしているのがいけないんじゃない?」

美琴「自分から仕事を増やしてちゃ世話ないわよ」

美琴「それにアンタ、いつも私の行動を諫めるくせにアンタ自身がそんなことでいいわけ?」

黒子「あぅ〜」ダラー

美琴「あ〜もう! 何か奢ってあげるからシャキッとしなさい!」

黒子「そんなものよりもお姉様の熱い抱擁さえあれば・・・・・・」チラッ

美琴「・・・・・・一体何アンペアの電流まで耐えられるかしらね」

黒子「冗談ですの」ケロッ

美琴「ったく・・・・・・」

323 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:34:42.26 ID:U+rAl0+H0

初春「電子機器があるところで電撃は止めてください」

美琴「そんなことわかってるわよ初春さん」

美琴「いくら黒子が相手だからってそこまではめ外したりはしないわ」

黒子(あの類人猿に対して平静を保てない時点で説得力がありませんの)

固法「うーん・・・・・・」

初春「固法先輩? どうしたんですか?」

固法「いやね、佐天さんを一人のまま帰してもよかったのかしらね・・・・・・」

初春「・・・・・・そうですね・・・・・・」


現在、風紀委員支部に佐天涙子の姿はない。
風紀委員の仕事に夜遅くまで付き合わせるわけにもいかないため、固法が気を利かせて先に帰らせたのだ。

その際美琴が護衛を申し出たのだが、涙子自身が遠慮したので結局一人で帰らせた。
ちなみに美琴がまだ残っている理由は、帰ろうとしたときに黒子が血涙を流しそうな勢いで引き留めたためである。

一応まっすぐ帰るようには言いつけてあるが、あの佐天のことだ。
気まぐれで何処かに寄り道している可能性も捨てきれない。

324 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:35:48.32 ID:U+rAl0+H0

固法「やっぱり連絡を取った方が・・・・・・」




〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜♪




初春「あ、電話・・・・・・佐天さん?」

黒子「噂をすれば、ですの」


携帯電話の画面には『佐天涙子』と文字が映し出されている。
今の今まで彼女のことを話していたため、わずかな不安が心に芽生える。


初春(気のせい気のせい。 いくらなんでもそんな・・・・・・)


その不安を振り払いつつ初春は通話ボタンを押し、携帯電話を耳に押し当てた。


初春「もしもし、佐天さん?」

佐天『やっと出た! 出るの遅いよ初春!』

初春「ど、どうしたんですか?」

黒子「!」

美琴「どうしたの?」


携帯電話から聞こえてくる佐天の声で初春に注目が集まる。
初春にしかわからないが、どうやら佐天は走りながら通話しているようだ。

325 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:36:43.79 ID:U+rAl0+H0


佐天『とにかく白井さんたちを呼んで!』

初春「佐天さん落ち着いて・・・・・・」


初春は叫ぶ佐天を宥めようとして――――





佐天『私追われてるのよ! だから早く・・・・・・きゃ!』


ガシャン!





突如何かにぶつかる音が聞こえ、そのまま通話が途切れた。

326 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:37:28.20 ID:U+rAl0+H0

黒子・美琴「――――!」

初春「佐天さん? 佐天さん!?」

固法「初春さん! 急いで佐天さんの居場所の特定を!」

初春「は、はい!」

黒子「行きますわよお姉さま!」

美琴「わかってる!」


佐天の声を聞き取った黒子と美琴は弾ける様に立ち上がり、『空間移動』で支部から消え去った。
初春はすぐに佐天の携帯電話の電波の発信源を特定する作業に取り掛かる。
学園都市に点在する電波塔にアクセスし、発信場所の検索をかける。


プルルル、プルルル


すると今度は黒子から電話がかかってきた。
初春は片手でパソコンを操作しながらヘッドフォンを装着し、黒子との通話を開始する。


黒子『初春! 佐天さんの居場所は!?』

初春「今調べてます!」

黒子『早くするですの!』

初春「あと少し・・・・・・分かりました!」

黒子『どこですの!?』

327 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:38:05.86 ID:U+rAl0+H0

初春「発信源は第7学区○○番道路です!」

黒子『了解ですわ! お姉さま、捕まって下さいまし!』

美琴『よし来た!』


プツッ ツー、ツー、ツー


黒子との通話が途切れる。
おそらく『空間移動』の演算に集中するために電話を切ったのだろう。
パソコンのモニターには黒子の現在位置が表示されている。
能力を使っているため、位置がコマ落ちしたようにとびとびで移動していた。


初春「佐天さん・・・・・・」


初春はじっとモニターを見続ける。
分かってはいたが、やはり佐天を自分の手で助けられないのがとても悔しい。

初春が持つ能力は『定温保存(サーマルハンド)』。荒事を解決できるような力はない。
なのに事件の犯人との戦闘がほぼ確実に起こる『風紀委員』の仕事に彼女が抜擢されたのは、
『他の誰よりも情報戦に長けている』という一芸があったからだ。

328 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:38:46.03 ID:U+rAl0+H0

一部では『守護神(ゴールキーパー)』とも揶揄されている彼女は、
その情報収集・処理能力を駆使して177支部の司令塔として働いてきた。

自分では犯人に力で渡り合うことはできない。
ならば、力のある味方を補助する裏方になる。
それが彼女の『風紀委員』としてのあり方だ。

自分の役割は十分に分かっているつもりだ。
だが、いざこういう状況になってみると自分の無力さを思い知らされる。


固法「落ち着きなさい。 司令塔のあなたが慌てちゃだめでしょ?」

初春「固法先輩・・・・・・」

固法「白井さんと御坂さんならきっと大丈夫よ」

固法「あの二人なら佐天さんを助け出せる」

初春「はい・・・・・・」

固法「私は『警備員』に連絡を取る。 その間二人は任せたわよ」


そう言って固法は自分の机に戻っていく。
初春は再びモニターに視線を戻し、黒子からの連絡を待ちつづけた。

329 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:39:59.37 ID:U+rAl0+H0





――――7月25日 PM6:00





330 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:40:40.79 ID:U+rAl0+H0

佐天「いやー、今回は大漁、大漁っと♪」


両手にスーパーの買い物袋を持って意気揚々と帰路につく佐天涙子。
袋の中には特売で買い占めた戦利品が山のように入っている。

今日の特売は缶詰何でも100円均一だった。
しかも詰め放題だったため、戦利品の大半が缶詰である。
そのため買い物袋の重量がものすごいことになっており、端から見るとふらついて非常に危なっかしい。


佐天「っととと、結構重いからバランスを取るのが難しいなあ」

佐天「でも、これなら当分は食事に困ることはないだろうし・・・・・・」

佐天「缶詰だから保存が利くのも利点だよね〜」

佐天「・・・・・・なんだか貧乏くさいこと考えちゃったな」

佐天「貧乏生活が終わるのはいつになるのかなぁ」ハァ


と、佐天は柄にもなく溜息をつく。
彼女が貧乏なのは能力のレベルで奨学金が決まるという現行の制度のためである。
そして彼女のレベルは言うまでもなくゼロ。
学園都市に滞在する学生の内の8割に相当する、有象無象の人間の一人に過ぎない。

331 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:42:33.47 ID:U+rAl0+H0

かつて彼女は、己の才能のなさによる絶望と才能のある人間への嫉妬から、一度犯罪に手を染めたことがある。
現在では『幻想御手事件』と呼ばれているものがそうだ。

裏で取引されていた「使えば簡単に自身のレベルがあがる」という『幻想御手』を用いることで、
彼女は確かに能力を使うことが出来るようになった。
しかし、そのツケは脳に対して過大な負担がかかったことによる昏睡という形で払わされることになる。

その後、彼女の友人達が事件の解決のために動いていたようだが、
眠ったままの自分がそのことを詳しく知る術は殆ど無かった。
ただ一つだけわかったことは、事件の首謀者が木山春生であることを突き止め、
『幻想御手』によって発生していた集団昏睡事件の原因を排除したということだ。

友人達の尽力により、何とか無事に目を覚ますことは出来たものの、大きな迷惑をかけてしまった。
あの時ほど自分の行動の軽率さ、それによって友人の心に傷を付けてしまったことを後悔したことはないだろう。

その事件以降、彼女は他人に嫉妬したまま自分を腐らせるのを止め、人並みに努力するようになった。
とはいっても、『自分だけの現実』とかそれに用いる計算式とか言われてもピンと来なかったので、
『幻想御手』で能力が使えるようになったときの感覚をひたすらイメージしていただけなのだが。

ちなみに、このトレーニング方法の発案者は美琴であり、「一度でも能力が使えたのなら、
それを土台にイメージする訓練をすれば能力が使えるようになるかもしれない」と言っていた。
なるほど、超能力の源泉は『自分だけの現実』、すなわち『常識』にとらわれない『妄想』である。
より強力な妄想を抱くことが出来れば、それだけ能力のレベルが上がるのだ。

332 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:43:13.95 ID:U+rAl0+H0


だが人間は社会的生物である以上、共通の知識である『常識』を易々と捨て去ることは出来ない。
理論上誰でも超能力が扱えるようになるはずである能力開発を行っても無能力者が多いのは、
そういった『常識』捨てることの困難さから来ているのだ。

また、『○○なんて非常識な現象を自分が起こせるはずがない』と心の何処かで思っているのも原因の一つだろう。
しかし、彼女の場合は『幻想御手』の補助があったとはいえ、一度能力を使ったことがある。
自分にも能力が使えたのだ。後はそのことを当然だと信じてイメージすれば、いずれは超能力を使えるようになるはずだ。

とはいっても最初の頃は本当にこんなことで超能力が使えるようになるのかと半信半疑だった。
だが友人達の応援もあって、超能力を用いる感覚というものをおぼろげながら掴んできた気がする。
実際『身体検査』でも能力上昇の兆候が見られた。

あの事件から丸1年かかったが、超能力を使えるようになるまであと少しというところだろう。
後何かきっかけさえあればおそらくは――――


佐天(まぁ、きっかけって言ってもよくわかんないけどね)

佐天(う〜ん、やっぱり重いなぁ。 調子に乗って買い過ぎちゃったか)

佐天(ここからだとまだ家は遠いし・・・・・・かくなる上は)チラッ


佐天は脇にある薄暗い細道を見る。
確かこの道を通れば寮までの道のりをショートカットできる。
初春と一緒に何度か通ったことがあるので道順も把握済みだ。

問題があるとすれば今の時間帯は夕方。いわゆる逢魔時である。
この時間帯になるとスキルアウト達のような闇の住人が動き始める。

本当なら近づくべきではないが・・・・・・。

333 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:43:56.73 ID:U+rAl0+H0

佐天(少しくらいなら良いよね?)

佐天(初春は真っ直ぐ帰るように言ってたけど、これは寄り道じゃないはず)

佐天(家に帰るために手段なんだから。 うん、きっとそう)


多少の無茶は物ともしない彼女である。
何度か修羅場をくぐり抜けてきたこともあってか、以前よりも大胆に行動するようになっていた。

少しくらいなら大丈夫だろう――――。
そう考えて佐天は細道に足を踏み込んでいった。

334 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:44:27.11 ID:U+rAl0+H0





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





335 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:45:35.19 ID:U+rAl0+H0

佐天(・・・・・・やっぱり暗いなぁ)


夕日の光が僅かに差し込む通路を歩いていく。

分かっていたことだが、視界がとても悪い。
夕日のおかげで真っ暗闇というわけではないが、それでも不安感を煽るには十分な暗さだ。
むしろ、中途半端であるが故に一層雰囲気が出ていると言える。

しかも今日の夕焼けはいつも以上に紅い。まるで壁一面にペンキをぶちまけたかのようだ。


佐天(う〜、分かってたけどやっぱり不気味だ・・・・・・)

佐天(なんか明らかに『出そう』って感じがする)

佐天(早いとこ抜けた方がよさそう)


ここまで雰囲気が出ていると流石に怖い。
科学の天下である学園都市で幽霊を信じるなどと笑い話でしかないが、
やっぱり『いるかも知れない』と思ってしまうのが人の性というものか。

『ある事実・現象が全くない』ということを証明するのは難しい。
俗に言う『悪魔の証明』であるが、それは科学が発達した学園都市でも言えることである。

336 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:46:26.51 ID:U+rAl0+H0

佐天は目の前のT字路を見る。
左を進めば比較的大きい道に出ることが出来るはずだ。

佐天は道を曲がろうとして、





ドサッ カランカラン・・・・・・





遠くから何かが落ちる音と転がる音が聞こえた。

337 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:47:29.07 ID:U+rAl0+H0

佐天「――――ん?」


佐天は右の道を見る。自分の気のせいだろうか?


ズッ、ズズッ


佐天(・・・・・・?)


続いて何かを引きずる音がした。
これは気のせいではない。道の先に何かがいる。


佐天(なんだろう、気になる・・・・・・でも・・・・・・)


佐天の心に不安と好奇心が芽生える。怖い物見たさという奴だ。

人間は常に日常に刺激を求める。
平和はそれで結構なことであるが、それが長く続きすぎると『退屈』という別の苦痛が生じる。
それを改善するために人々は娯楽を求めるわけだが、それが必ずしも楽しみや喜びを得るためであるとは限らない。

娯楽を求める動機は『単調な日常生活では味わえない感情を経験したい』から。
それこそ負の感情――――恐怖や不幸もその中に入る。

338 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:48:10.41 ID:U+rAl0+H0

佐天(・・・・・・やっぱり気になる)


不安に対し好奇心が勝ってしまった。

佐天は買い物袋をその場に置き、右側の道を進んでいく。
好奇心の赴くまま一歩ずつ、ただし足音は立てずに慎重に音がする方向へ歩いていく。

やがて佐天は、ある廃屋の前に辿り着いた。


佐天(音はこの建物の中から・・・・・・?)


建物の内部から物音が聞こえる。
ただし既に何かを引きずるような音は止んでおり、ゴソゴソと何かを漁る音が聞こえてきていた。
佐天はヒビが入った窓から中の様子を観察する。


佐天(! 誰か倒れてる・・・・・・)

佐天(それに、近くにしゃがんでるのは・・・・・・?)


そこにはうつぶせに倒れた女性と、その女性に側にかがみ込んでいる黒いコートを着た人間がいた。
フードを被っているため、顔はよく見えない。
この真夏に季節にコート、しかも黒地を着るとは酔狂な人間がいたものである。

その人間は足下に置いてあるケースから何かを取り出していた。
暗くてよく見えないが、針のようなものを手に持っている。


佐天(手当てしようとしてるのかな? それなら手伝った方がいいのかな?)


佐天が協力しようと身を乗り出そうとしたとき、

339 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:48:44.99 ID:U+rAl0+H0





黒いコートを着た人間が、手に持った針を倒れている女性の首筋に突き刺した。





340 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:49:40.30 ID:U+rAl0+H0

佐天(――――え?)


その針は足下の透明なビニール袋に繋がっている。
そのビニール袋はみるみるうちに赤く染まっていった。

佐天は慌ててその場にしゃがみ込む。
自分は知っているはずだ、この行動の意味を。
今日の昼、風紀委員支部で話題になっていた事件。
あの事件の特徴は確か――――





固法『そして何よりも謎なのは、被害者はいずれも血液を抜き取られていること』





佐天(――――まさか、『連続通り魔事件』の犯人!?)

佐天(ど、どうしよう・・・・・・)

341 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:50:37.91 ID:U+rAl0+H0

自分が事件の犯人の発見者になるとは夢にも思わない。
そんなこと人生に一度や二度あればいい方だ。


佐天(早くここから逃げないと・・・・・・でも動けば見つかっちゃうかもしれないし)

佐天(かといって、ここにずっといたらいずれは・・・・・・)

佐天(と、とにかく初春達に連絡しないと!)


佐天はポケットの中に腕を突っ込む。
自分一人ではどうすることも出来ない。とにかく助けが必要だ。
初春達さえ来てくれれば今の状況を打破することが出来る。

そう思った佐天だが、如何せん、慌てて腕を動かしたのが不味かった。


ガッ!


佐天(――――! やばっ!?)


佐天の腕が立てかけてあった木材にぶつかる。
バランスを崩した木材はそのままスローモージョンのごとく倒れていき――――


ガランガラン!


大きな音を路地裏に響かせた。

342 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:51:31.85 ID:U+rAl0+H0

黒コート「!?」

佐天(――――!)


佐天はそれと同時に全速力で逃げ出す。

推理小説や漫画で犯行現場を目撃した人間はどうなるか。
大抵は口封じのために殺されるか、良くても何処か知らない場所に監禁されるのが一般的だ。


佐天(冗談じゃ無いわよ!)


佐天は携帯電話を取りだし、初春に電話をかける。

ワンコール、ツーコール・・・・・・この待っている時間が非常に長く感じる。
1秒が5倍にも10倍にも引き延ばされているかのようだ。


佐天(早く! 早く出てよ!)

初春『・・・・・・もしもし、佐天さん?』

佐天「やっと出た! 遅いよ初春!」

初春『ど、どうしたんですか?』


焦燥感に駆られながら佐天は電話先の初春に叫ぶ。
自分の背後が今どうなっているかは分からない。
だが、おそらくあのコートを着た人間が佐天を捕まえるために追ってきているはずだ。

343 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:52:11.54 ID:U+rAl0+H0

佐天「とにかく白井さんたちを呼んで!」

初春『佐天さん落ち着いて・・・・・・』

佐天「私追われてるのよ! だから早く・・・・・・きゃ!」


ドサッ! ガシャン!


急ぐあまり、佐天は足をもつれさせて倒れ込んでしまった。
携帯電話は佐天の手を離れ、大きな音を立てて地面を転がっていく。
佐天は慌てて携帯を拾い上げるが、落とした衝撃で携帯電話は故障してしまった。


佐天(そんな! こんな時に・・・・・・!)


何も映らない画面を見て佐天は悪態をつく。

だが、壊れてしまったものは仕方ない。
佐天は初春達に連絡を取ることを諦め、再び全力で走り始める。

さっきコートを着た人間との距離は?
後どれだけ走れば人目のつく場所に出られる?
黒子達はまだ到着しないのか?

様々な思考が佐天の頭の中をぐるぐると駆け巡る。
何度も通路の角を曲がり、建物の中を通り抜け、真っ直ぐな道を走り抜ける。

しかし――――

344 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:53:20.06 ID:U+rAl0+H0

佐天「――――! そんな!」


佐天の目の前に現れたのは大きなコンクリートの壁。

行き止まりだ。


佐天「っ!」


佐天は慌てて背後を振り返る。
そこにはコートを着た人間が平然としたように立っていた。
逃げ道をふさがれた。

佐天はコートを着た人間を注意深く観察する。
自分は全力で走っていたというのに相手は息切れ一つしていない。
まるで歩いてここまで追ってきたかのように見える。
おそらく何かの能力者なのだろう。


黒コート「・・・・・・」

佐天「こ、来ないで!」


佐天は叫ぶが、相手はまるで微動だにしない。
じっと遠くから佐天を見つめ続けるだけだ。
こちらを警戒しているのか、それとも佐天を値踏みしているのか・・・・・・。

すると、コートを着た人間が突如佐天の視界から消え失せた。

345 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:55:00.14 ID:U+rAl0+H0

佐天「・・・・・・!」バッ!


ブォン!


咄嗟に佐天は前に飛ぶ。その直後、背後で何かが空を切る音がした。
振り向くと背後に、消えたはずのコートを着た人間が立っている。

その腕の先には、先端がクワガタのような形をしている機械――――スタンガンが握りしめられていた。
もし、あと少し動くのが遅かったらそのスタンガンで気絶させられていただろう。


佐天(今のは『空間移動』!?)

佐天「このっ・・・・・・」

黒コート「!」バッ

佐天「うぁ!」


ドサッ!


佐天は慌てて体勢を立て直そうとするが、直ぐにコートを着た人間に押し倒されてしまった。
不意打ちを諦め、確実に気絶させようという魂胆らしい。
相手の方が上になって跨っているため易々と逃げることは出来ない。


黒コート「・・・・・・」ブン!

佐天「くっ!」ガシッ!


その人間がスタンガンを持った腕を振り下ろすのを見て、佐天はその腕を受け止める。
だが反応が遅れてしまったため、スタンガンの位置は佐天の首筋ギリギリだ。

346 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:57:14.06 ID:U+rAl0+H0

力負けするのも時間の問題。佐天はフードで隠された犯人の顔を見上げる。
案の定、顔が分からないようにマスクとサングラスを付けていた。
かろうじて見えるのは雪のように真っ白な髪だ。


佐天「あ、ぐ・・・・・・」

黒コート「・・・・・・」


やがて佐天の腕は犯人の腕を支えきれなくなり、スタンガンは首筋に――――


佐天「あ、あああああぁぁぁあああぁぁああぁあ!!!」

黒コート「!」


轟ッ、と突如佐天の場所を基点として突風が吹き出す。
その風は竜巻のように吹き上がり、佐天を取り押さえていた人間を吹き飛ばした。

347 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/06/17(日) 21:59:34.61 ID:U+rAl0+H0
今日はここまで。

更新が遅れてすいません。今後もこれくらいのペースになりそうです。

質問・感想があればどうぞ。
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/17(日) 22:10:49.07 ID:NaedL04k0
黒コートは東方?
佐天さん能力は空力使い?
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/06/18(月) 00:06:37.54 ID:h7dEEIklo
あややややかな
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/06/18(月) 00:16:17.15 ID:ArGnTIXho
どう考えても○○さんじゃないですかー
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 09:47:43.98 ID:GyiJVS4DO
もしかしたらイヤボーンの可能性も微粒子レベルで……。
そうだとしたら、やったね♪佐天さん!
352 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/07/01(日) 20:53:38.47 ID:obslrncZ0
これから投下を開始します。
353 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 20:54:10.57 ID:obslrncZ0





――――7月25日 PM6:15





354 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 20:55:05.38 ID:obslrncZ0

美琴「――――黒子! あれ!」

黒子「あの煙は・・・・・・!」


学園都市上空で美琴と黒子は一角で粉塵が舞い上がるのを視認した。
その場所で風がものすごい勢いで吹き荒れているようだ。

二人は直感で佐天があの場所にいると確信する。


黒子「しっかり捕まってて下さいまし!」

美琴「了解!」


黒子は『空間移動』を駆使しつつ、現場へと急行した。
塔酌した頃には風は既に弱まっており、そよ風程度の強さしかない。
地面に降り立つと通路の奥に佐天が倒れ伏しているのが目に入った。


黒子「佐天さん! しっかりして下さいまし!」

佐天「・・・・・・」


黒子がそばに駆け寄り揺り起そうとするが、目を覚ます気配はない。
どこか怪我をしていないか調べてみたが、軽い擦り傷程度で大きな怪我は見られなかった。
355 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 20:56:08.21 ID:obslrncZ0

黒子「とりあえず重大な外傷はないようですわね・・・・・・」

美琴「とにかく救急車を呼ばないと!」

黒子「分かってますわ」


黒子は携帯を取り出し病院に連絡を取り始めた。
その間美琴は周辺の様子を確認する。

足元のゴミや空き缶は佐天がいた場所を中心にして外側に散らかっていた。
相当な強さの風が吹いていたようで、かなり遠くまで物が運ばれている。


美琴(さっきの風を起こしたのは佐天さんみたいね)

美琴(でも佐天さんにこれだけの力はないはずだし・・・・・・何が起こったの?)

美琴(考えられるとするなら・・・・・・)

黒子「お姉さま、後十分ほどで救急車が来るそうですわ」

美琴「わかったわ。 その間変な奴が来ないように見張りを・・・・・・!?」


その時、美琴の電磁波ソナーに何かが引っ掛かった。
背後の通路に蠢く物体が1つ。大きさは大人の人間一人分だ。
こちらの様子を伺っているのか、動く気配はない。

356 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 20:56:58.58 ID:obslrncZ0

美琴「――――そこ!」

黒コート「!」バッ


バリバリバリィ!

ドォン!


美琴はとっさに電撃を放つ。電撃が当たった建物の壁が吹き飛んだ。


黒子「お姉さま!?」

美琴「黒子! あそこの通路に誰かいるわよ! 佐天さんは私が見てるから後を追って!」

黒子「分かりましたわお姉様!」ヒュッ


その言葉を聞き、黒子はすぐさま美琴が指定した場所へテレポートする。
二人分の人影がソナーの範囲から外れていくのを感じた。

後に残された美琴は、スキルアウト達が近くにいないか継続して周りに電磁波を張り続ける。
救急車の到着まで後数分。それまでに黒子は片を付けて戻ってこれるのか。
黒子の腕前は『空間移動』という能力も相まって、そこらの人間では太刀打ちできないほど強い。
しかし『空間移動』はその力の代償として、非常に繊細な演算を必要とする能力でもある。

一度平静を失えば能力を制御できなくなり、そのまま自滅してしまう可能性もあるのだ。
ベテランである黒子なら早々自分を失うようなことは無いであろうが、
相手がどんな人物なのか分からない以上、万が一ということも考えられる。


美琴(しくじるんじゃないわよ黒子・・・・・・!)


友人を傷つけた人間を追っていった後輩を思いつつ、美琴はその場で救急車が到着するのを待ち続けた。

357 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 20:57:29.03 ID:obslrncZ0





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





358 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 20:58:02.12 ID:obslrncZ0

黒子「待つんですの!」ヒュン

黒コート「・・・・・・!」ダッ


目の前を走り続ける人間を時折テレポートを駆使しながら追い続ける。
本来ならもうすでに追いついているはずなのだが、相手の走るスピードが予想以上に速い。
色々とものが落ちている狭い通路を一級アスリート並みの速さで駆け抜けていく。
その身のこなしを見るに、かなりの手練れであることが読み取れた。

その気になれば相手の進路上にテレポートすることも可能だが、走りながらの能力の使用はかなりのリスクを伴う。
下手をすれば地中や壁に自分の体が埋まるどころか、相手と『合体してしまう』ことも考えられる。


黒子(かくなる上は・・・・・・!)


黒子は自分の太ももに手を伸ばす。
そこには金属矢が治められた専用のホルダーが装着してある。
数に限りがあるのであまり使いたくはなかったが、このまま追いかけっこをしていては埒があかない。

359 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 20:58:45.46 ID:obslrncZ0

黒子「逃がしませんわ!」ヒュン


ガガガガガ!


黒コート「!!!」


コートを着た人間の進路に金属矢をテレポートして足止めをする。
テレポートした金属矢はまるで地面が豆腐であるかのように易々と突き刺さる。

テレポートした先に何かしらの物体がある場合、テレポートした物はその物体を押しのけるようにして出現する。
つまり相手の硬度を無視することができ、その気になればただの紙切れで鋼鉄を切り裂くことも可能なのだ。

地面に突き刺さった金属矢を見て逃げるのを止めた相手は、ゆっくりと黒子に向き直った。
暗がりでよく見えないが、体格から女性であることが読み取れる。
マスクをしているため素顔は分からないが、辛うじて白い髪と鋭い眼光だけは見ることが出来た。
まるで血のように紅い瞳孔。普通の人間ならその目を見ただけで言い様のない恐怖に駆られるだろう。

360 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 20:59:39.60 ID:obslrncZ0

黒子(随分と趣味の悪いカラーコンタクトをしていますわね)


だが黒子はそんなことくらいでは動じない。
確かにあの目は不気味ではあるが、アレよりも酷い風貌をしたスキルアウトなら掃いて捨てるほど見てきている。
顔中にピアスを付けていたり、全身におぞましい柄のタトゥーをしていたりと様々だ。
黒子にとっては全く理解できない、そして理解しようとも思えないセンスであったが。

黒子は相手より数m離れた場所にテレポートして着地する。


黒子「何処のどなたかは存じませんが・・・・・・」スタッ

黒コート「・・・・・・」

黒子「わたくしの大切な友人を傷つけた罪、償っていただきますわ!」ヒュン

黒コート「!」


黒子はコートを着た人間の背後にテレポートし、強烈な回し蹴りを浴びせる。
完全な不意打ち。普通の人間であれば反応することすら出来ず直撃を受ける。

だがその蹴りが届く前に相手の姿は消失し、少し離れたところに現れた。

361 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 21:00:48.95 ID:obslrncZ0

黒子(『空間移動』!?)

黒コート「・・・・・・」ヒュッ


コートを着た人間はいつの間にか手に握られていた一本のナイフを黒子の投降した。
刃渡り10cm程のそれは、ぶれることなく黒子めがけて飛んでいく。
全くナイフが回転していないのを見るに、相当扱いに長けているのだろう。


黒子「!」ヒュン


黒子はテレポートしてナイフを躱す。

再びコートを着た人間を視界に納めると、自分に向かって走り込んでくるのが見えた。
動作すら見せず両手に三本ずつナイフを指の間に挟み込み、黒子めがけて素早い突きを繰り出す。


黒子(いつのまにそんなにナイフを取り出したんですの!?)ヒュン


先ほどと同じように能力を使って回避する。単なる突きでは黒子を捕らえることなど出来はしない。
『空間移動』は攻撃の面だけではなく、回避の面でも優れた能力だ。
自分の動体視力で対処できる速さなら大した脅威にはならない。

だが――――

362 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 21:03:22.51 ID:obslrncZ0

黒コート「・・・・・・」


ヒュヒュン!


黒子「!」


今度は何処に現れるか知っていたかのように、両手に持ったナイフを現れた黒子に投げつけてきた。
突然の不意打ちに驚愕するが、すぐさまナイフの回避行動に移る。


黒子「くっ!」


『空間移動』は、連続で使用する場合いくらかのタイムラグが発生する。
移動してから次の移動地点を設定する際に、再び演算する必要があるからだ。

能力を使えない黒子は、間髪入れずに飛んできたナイフを身をよじって回避する。
だが全て躱しきることは出来ず、左腕に切り傷を負ってしまった。

感覚から傷は浅いと判断し、腕から感じる鈍い痛みを無視して黒コートを見据える。


黒子(・・・・・・最初はわたくしと同じ『空間移動』の能力者と思いましたのですけれど、どうやら少し違うようですわね)


黒子は最初、はじめの回し蹴りを躱されたときの相手の動きから、相手の能力は自分と同じ『空間移動』だと当たりを付けていた。
だが『空間移動』と断定するにはまだいくつかの疑問が残る。

363 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 21:07:00.73 ID:obslrncZ0

それはナイフを直接投げつけてきている点。
『空間移動』の能力は自分自身よりも手に触れた物を飛ばす方が簡単だと言われている。
自身をテレポート出来た時点でレベル4は確実だという所に、その難しさが現れていると言えるだろう。

だがコートを着た人間は自分を飛ばすことが出来ているのにも関わらず、ナイフは手に持って投げている。
黒子であれば、ナイフをテレポートさせて相手の手足に打ち込むくらい造作もないことだ。


黒子(出来ないのか、ただ使わないだけなのか・・・・・・)

黒子(いずれにせよ、相手の気が変わらないうちに早くけりを付けるべきですわね!)


出来ないのであればその弱点を突けばいい。
だが慢心しているのであれば本気になる前に叩き伏せるに限る。

黒子は相手に見えるようにして金属矢を相手の頭上に飛ばす。
能力を使わなくては回避できないように、ただし能力を使う猶予はあるように、高所の広い範囲にばらまく。

364 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 21:08:51.50 ID:obslrncZ0

黒コート「・・・・・・!」フッ


すると黒子の予想通りに、上から金属矢が降ってくることに気づいた相手は姿を消失させた。
矢はそのまま地面に落下し、金属音を派手に響かせる。
コートを着た人間は矢の範囲外である通路の奥に姿を現した。


黒子(今ですわ!)ヒュン


姿を現したことを視認した黒子は、すぐさまコートを着た人間の頭上へ。

『空間移動』は連続して自分を飛ばす場合、必ずラグが発生する。
それは黒子だけではなく、他の同様の能力者にも言えること。
ならば、同じ『空間移動』の能力者であるはずコートを着た人間も、移動した直後は能力を使えない。

黒子は相手の脳天めがけてかかと落としを繰り出す。


黒子(これなら・・・・・・!)

黒コート「ッ!」


ガッ!


果たして、黒子の考えは的中した。

能力を使えないコートを着た人間は体を動かして回避しようとするが、躱しきれずに肩に黒子のかかと落としを食らった。
肩から来る痛みに体を揺らがせる。そしてその隙を黒子は見逃さない。

365 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 21:10:16.38 ID:obslrncZ0

黒コート「ぐっ・・・・・・」

黒子「まだですわよ!」ヒュン


黒子は間髪入れずにテレポートしつつ、コートを着た人間の背中、脇腹、腹部に蹴りと拳を入れていく。
『空間移動』の能力を使うには精密な演算が必要だ。痛みで集中力を途切れさせれば能力を使って逃げることは出来ない。

連撃を食らった相手は耐えきれずにその場にうずくまった。


黒コート「がふっ・・・・・・!」

黒子「これでトドメ!」


最後の一撃とばかりに、黒子はコートを着た人間の顔面に拳をたたき込もうとする。
が、またしても相手の姿は消失し、再び離れたところに現れた。

しかし相当のダメージを受けた様子であり、腹部を殴られたことでむせかえっている。


黒コート「げほっげほっ!」

黒子「・・・・・・どうやら、わたくし方が一枚上手のようですわね」

366 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 21:11:12.19 ID:obslrncZ0

同じ『空間移動』を用いた戦いであれば、黒子の方が数段上だ。
『風紀委員』に所属しているうちに、戦闘時の観察眼や思考力は自然と身についていた。
そうしなければ、様々な能力を持つ犯罪者達と渡り合うことが出来ないからだ。

女としてそのような戦闘の技術を身につけるのはどうかと思うが、
色々と争い事の多い学園都市では、少なくとも自分の身を守る術くらい持っておいた方がいい。

強くなりすぎて嫁のもらい手がいなくなるかも知れないが。


黒子「大人しく捕まってくだされば、これ以上痛くはしませんわ」

黒子「それでも抵抗するようであれば、少しの間眠っていただくことになりますが」

黒コート「・・・・・・」

黒子「・・・・・・どうやら、諦めてはくださらないようですわね」


相手が息を整えるのを見た黒子は再び臨戦態勢を取る。
最後の忠告はした。それを無視するのであれば手加減する必要はない。

『空間移動』で相手の足に金属矢を打ち込み、怯んだところを顎に一撃入れれば、相手を行動不能にさせることが出来るだろう。

そう考えて行動を実行しようとしたとき――――
367 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 21:15:44.32 ID:obslrncZ0

黒コート「――――」


ブン!


黒子「――――?」


コートを着た人間は手に持っていた何かを頭上に放り投げた。
黒子はそれに釣られて投げられた物体を目で追う。

宙を舞っているのは一本のナイフだった。
ナイフはそのまま回転しながら自由落下しはじめる。
だがこの軌道だと自分に当たるとは思えない。フェイクか?

黒子が再び視線を戻すと――――




相手の姿は跡形もなく消えていた。




黒子(――――しまった!)


ナイフが落ちる音が路地裏に響き渡る。
黒子は慌てて身構えるが、どこからも襲ってくる気配はない。
どうやらコートを着た人間はこの場から逃げ出したようだ。

それに気づいた黒子は急いで初春に連絡を取る。

368 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 21:16:51.41 ID:obslrncZ0

初春『白井さん? どうし――――』

黒子「初春! 直ぐに周辺の監視カメラのチェックを! 犯人は黒いコートを着ていますわ!」

初春『わ、わかりました!』


初春からの報告を待つ間、目に付いた中で一番高い建物の上へ移動し周囲を見渡す。
だが、それらしき姿は何処にも見あたらない。
建物が乱立しているのも相まって、目視で発見するのは困難だろう。


黒子「どうですの?」

初春『・・・・・・32ヶ所全ての監視カメラを見てみましたがそれらしい姿は見あたりません』

黒子「逃げられたか・・・・・・」

初春『いま『警備員』が向かっているところなので、到着次第周辺の捜索をお願いしますか?』

黒子「望み薄ですけれど・・・・・・お願いしますの」

初春『わかりました』プツッ


黒子は携帯電話をしまいつつ、これからのことに頭を悩ませる。
犯人を逃がしてしまったのは、間違いなく油断した自分の責任。
固法に大目玉を食らうのは間違いない。


黒子「はぁ、これじゃお姉様にどやされますわ・・・・・・」

黒子「それに、また始末書を書かなければなりませんの・・・・・・」

黒子「あ〜、お姉様と過ごす時間がどんどん削られていく・・・・・・」ハァ

369 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/07/01(日) 21:20:25.33 ID:obslrncZ0
今日はここまで。

×塔酌 ○到着 誤字ったorz

戦闘描写を書くのが難しい。こればっかりは他の作者さんの描写を参考する必要がありそう。
質問・感想があればどうぞ。
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/01(日) 21:27:46.08 ID:/EyOAHbyo
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/01(日) 21:28:03.97 ID:9qqrsbajo
で、さてんさんが助かった風はあややややじゃなかったのかな
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 09:38:27.84 ID:BGhBw6HDO
時間停止って便利よね〜。
早めに老けるだろうけど。
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 17:00:32.09 ID:lvaMuUSs0
374 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/07/15(日) 20:38:07.87 ID:xfgj2whN0
>>371
残念ながらあややではありません。突風が起こった理由については後ほど。
それと、この話は基本的に紅魔郷をベースにしているので他のキャラが積極的に絡んでくることはありません。
あややの役目は一応考えてあるのでご安心を。かなり先になると思いますが。
375 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/07/15(日) 20:38:35.90 ID:xfgj2whN0
これから投下を開始します。
376 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:41:19.97 ID:xfgj2whN0





――――7月25日 PM8:12





377 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:42:47.90 ID:xfgj2whN0


『とある高校』の学生寮。その寮の住人である、土御門元春が暮らす部屋。
その部屋に上条当麻、インデックス、そして家主の土御門元春が集まっていた。

スカーレット姉妹の身近に魔術師が潜んでいる可能性を危惧した当麻とインデックスは、
当麻の友人であり、同時にイギリス清教の魔術師でもある土御門元春の下を訪れた。
もし魔術師と敵対することになった場合、二人だけではかなり不安が残るからだ。

当麻は日頃から喧嘩に巻き込まれたり、美琴の雷撃を受け止めたりしているおかげで荒事には慣れている。
しかし、魔術に対して絶対的な力を発揮する『幻想殺し』を持っているとはいえ、
魔術については囓っている程度のものであるため、初見の魔術に対応しようとすると後手に回ってしまう。
それに相手が力押しのタイプであるのならまだ何とかなるが、策を弄するタイプであった場合、
当麻では相手の罠に陥ってしまう事は十分に考えられる。

インデックスは10万3000冊の魔道書のおかげで、魔術の知識については他の追随を許さない。
だがその知識を使って魔術を行使することは出来ないため、自ら前に出て戦うことは殆ど無い。
たとえあったとしても、専ら後衛で自分の知識を使って味方のサポートするのが普通である。

このように二人とも特徴が一長一短であり、得意不得意がはっきりしている。
二人セットならば互いの特徴を生かせる気もするが、当麻が右腕一本でインデックスを守りつつ、
相手に接近して殴り飛ばすというのはかなり現実味に欠ける戦い方だ。

この二人の穴を埋めることが出来る、魔術に精通していて戦い慣れている人間が必要だと考え、
その役に適しているであろう土御門に協力してもらうために彼の下を訪ねた。
彼の部屋をノックした時はどうやら取り込み中だったようなので、力を貸してもらえるか若干不安になったが、
事情を説明すると快く協力を承諾してくれた。

土御門にとっても学園都市に魔術師が侵入してきているという情報は初耳だったらしく、
いつものような人を食ったような性格ではなく、仕事の時に見せる真面目な顔で当麻の話を聞いていた。

378 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:43:23.05 ID:xfgj2whN0

土御門「なるほど・・・・・・つまりこういうことか?」


土御門は何も言わずに当麻の話を一通り聞き終わると、少し考えた後に口を開いた。


土御門「カミやんとインデックスはレミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットに遭遇した」

土御門「インデックスはその時に姉であるレミリアから魔力の残滓を嗅ぎ取った」

土御門「しかし、能力者であるレミリアは魔術が使えない」

土御門「そのことから、レミリアは魔術師に何らかの魔術をかけられていると推測」

土御門「でも俺からは魔術師のことは連絡が来ていないから、もう一度確かめに来た・・・・・・と」

上条「そういうことだな」

土御門「ふむ・・・・・・所でカミやん?」

上条「なんだ?」

土御門「その全身の歯形はどうしたんだにゃ〜?」ニヤニヤ

上条「・・・・・・ほっとけ」


現在、当麻の体には夥しい数の歯形がくっきりとついている。
言うまでもなく、インデックスに付けられたものだ。

家に帰宅した時に当麻は、食事を作ろうと冷蔵庫の中を開けてみて食料がまるでないことに気づき、
食料を買いに行くことをすっかり忘れていたことを思い出す。
そして運悪くその様子をインデックスに見られてしまう。
烈火のごとく怒る彼女を沈めようと、当麻は様々な手段を用いて謝罪したが、
空腹の野獣を落ち着かせるには至らず、最終的に体のありとあらゆる場所を噛みつかれてしまった。
さすがに自分の息子は死守したが、昼にもインデックスに頭を噛みつかれていたこともあり、
いきなり立て続けに起こった災難に心の底から自分の不幸を嘆くしかなかった。

379 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:44:12.39 ID:xfgj2whN0

禁書「とうまったらひどいんだよ、もとはる!」

禁書「夕食は美味しいものをたくさん食べさせてくれるって約束してたんだよ!」

禁書「それなのに、そんな大事なことを忘れるなんて・・・・・・」

上条「仕方ねぇだろ! こっちだってな・・・・・・」

禁書「・・・・・・」ギロッ

上条「ごめんなさいすいませんでした私が悪うございましたお願いですからもうこれ以上は噛みつかないでぇぇぇぇ!!!」

土御門「どうどう、二人とも落ち着くんだにゃ〜」

土御門「今はそんなことしている場合じゃないはずだぜい?」

上条「お前が話を振ってきたんだろうがッ!」クワッ

土御門「ところでだ、インデックス」

禁書「なにかな?」

上条(スルーされた!?)ガーン

380 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:44:50.54 ID:xfgj2whN0

必死の抗議を流れるようにスルーされた当麻は、ショックでその場に硬直してしまった。
一方、そんな彼を無視してインデックスと土御門は会話を続行する。


土御門「もう一度確認するが、レミリアから魔術の力を感じたというのは本当なんだな?」

禁書「間違いないんだよ」

土御門「そうか。 それじゃあその魔術の形式とか体系とかは分かるか?」

禁書「うーん・・・・・・わかるような、そうでないような・・・・・・」

土御門「どうした? 随分歯切れが悪いみたいだが・・・・・・」

禁書「たしかにあの時感じた魔術の雰囲気は私の知ってる魔道書の中にあるんだよ」

上条「・・・・・・雰囲気? なんだそれ?」

禁書「あ、もどった」


インデックスの言葉に当麻は疑問を呈する。
魔術に系統があると言うことは前々から知っているが、『雰囲気』という曖昧な言葉で表現したのは何故だろうか?

381 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:45:30.84 ID:xfgj2whN0

土御門「魔道書のレベルになれば使われる魔術にもそれぞれ個性ができるんだ。 おそらくそれを嗅ぎ分けたんだろうさ」

禁書「本当は目で直接見るのが良いんだけど、周りに漏れ出す魔力からある程度推測することも出来るんだよ」


魔術には様々な形式があり、その多くが伝説や神話、寓話などをモチーフとして作られている。
それは聖書であったりギリシャ神話であったりと多種多様であるが、
人々の間で語り継がれているような物語を基盤としているところは共通している。
魔術を使用するためには『コマンド』となる特定の手順が必要であるため、
長い年月淘汰されなかった『最適な手順』が記されている伝説や神話を利用した方が、
新たにゼロから開発するよりは遥かに効率が良いからである。

だが魔道書ともなると、それを記した魔術師の個性が記される魔術に影響を与えるため、
形式化されたものと比べると一風変わった魔術が生まれることがある。
そのため、魔道書の魔術をそのまま用いている場合は他に比べて特定が遥かに容易なのだ。


上条「なんだ、それなら問題ないじゃないか。 どんな魔術なのかわかるんだろ?」

禁書「でも、あの魔道書は魔術を使うためのものじゃないんだよ」

上条「? どういうことだ?」

土御門「・・・・・・その魔道書の名前は?」

禁書「・・・・・・『ヴォルデンベルクの手記』」

上条「ヴォルデンベルク?」

禁書「ヴォルデンベルクっていうのは19世紀頃に生きてたって言われてる人だよ」

禁書「でもいろいろと謎が多くて、形として残されているのはその人が書いたっていう魔道書だけなんだ」

上条「なるほど」

382 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:46:02.59 ID:xfgj2whN0

19世紀という比較的最近の人物であるにも関わらず、情報が殆ど無いというのは少し奇妙な気もする。
魔道書を制作するほどの腕のある魔術師なら、魔術サイドでもそれなりに知られていた人間のはずだからだ。
だが、今となってはヴォルデンベルクの人物像を知る術はもうない。

土御門はインデックスに話の続きを促す。


土御門「それで、何が問題なんだ?」

禁書「『ヴォルデンベルクの手記』っていうのは魔術を使うための魔道書じゃないんだよ」

禁書「魔道書っていうのは普通『異世界の法則』が記されているものなの」

禁書「でもこの魔道書は中身が読まれないように認識阻害の魔術が使われてるだけで、
法則どころか魔術の使い方すら全く書かれてないんだよ」

禁書「私が知ってる魔道書の中ではかなり安全な部類に入るかも」

上条「魔術の使用方法が書かれていない魔道書? それって矛盾してないか?」


魔道書の定義は『魔術の使用方法が記されている書物』である。
その根本を満たしていない『ヴォルデンベルクの手記』は果たして魔道書と呼ぶべきなのだろうか?

383 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:47:59.29 ID:xfgj2whN0

禁書「たしかにそれだけだと矛盾してるかもしれないけど、そうじゃないんだよ」

上条「そうじゃない?」

禁書「『ヴォルデンベルクの手記』は吸血鬼のことを記されてるんだよ」

上条「・・・・・・はぁ!?」

土御門「吸血鬼だと?」


『吸血鬼』という意外な言葉に当麻と土御門は驚く。
当麻にとってその言葉を真面目な意味で聞いたのは三沢塾の一件以来だ。
まさか、再び耳にするとは思わなかった。


禁書「うん。 これを読めば吸血鬼のことがすべて解るっていうくらい細かく書かれてるんだよ」

禁書「魔道書には『自身の知識をより広める者に協力する』っていう性質もあるから・・・・・・」

土御門「吸血鬼の情報が無闇矢鱈と広がらないように魔道書扱いしたということか」

禁書「そうだよ」


吸血鬼は魔術サイドではある意味有名な存在である。
本当にいるかどうかは疑わしいが、いるとしたら魔術サイドに激震が走る。
最悪の場合、魔術組織間で戦争が起こることも十分に考えられるのだ。
だからこそ、吸血鬼の情報が伝播しないように魔道書として隔離しようとしたのだろう。

384 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:49:37.72 ID:xfgj2whN0

上条「じゃあその時にインデックスが感じたのは・・・・・・」

禁書「『ヴォルデンベルクの手記』の使われてた認識阻害の魔術かも」

禁書「あの魔術の形式はその魔道書にしか使われてなかったからね」

禁書「たぶんヴォルデンベルクが自分で作った魔術だと思う」

上条「へぇ〜・・・・・・」

土御門「・・・・・・」


内容を守るための手段としては、認識阻害の魔術のみというのは随分とお粗末な気がする。
ヴォルデンベルクはそれ程魔術に精通していなかったのだろう。
だが他の魔術師に協力してもらうとか、色々手段はあったのではないのか?
それとも『認識阻害の魔術だけで十分』だと判断したのか?疑問は尽きない。

考えていても埒があかないので土御門は強引に話を進める。


土御門「つまりだ、正体不明の魔術師は『ヴォルデンベルクの手記』に縁のある人間の可能性が高いな」

土御門「少なくとも一度は内容に目を通したことがあるはずだ。 その魔道書が誰の手を渡ってきたのか調べてみる」


魔道書、しかもその類の中では特に珍しい部類に入る『ヴォルデンベルクの手記』。
そこまで特徴のあるものであれば、それに関係してくる人間は自ずと限られてくる。
イギリス清教に問い合わせれば意外と簡単に正体が判明するかもしれない。

385 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:51:33.52 ID:xfgj2whN0

土御門「俺はイギリス清教に連絡を取ってその魔道書の出所を聞いてみる」

土御門「もしイギリス清教の管轄内で管理されているのならすぐにわかるだろうからな」

土御門「その後はレミリア・スカーレットの監視だ。 インデックス、レミリアの住所はわかるか?」

禁書「ふらんからどこに住んでるかは聞いたけど・・・・・・」

土御門「ならいい、教えてくれ。 情報が入り次第連絡する」

上条「俺たちはどうすればいい?」

土御門「当分の間は待機だな。 下手にリアクションを起こせば何が起こるか分からない」

土御門「出来るだけ普段通りに生活してくれ」

禁書「ふらんと今度遊ぶ約束しちゃったんだけど・・・・・・」

土御門「その程度なら問題ない。 妹にも何か仕掛けられるかもしれないから、異常があったら教えてくれ」

禁書「わかったんだよ」

土御門「じゃあ今日はこれで解散だ」


話し合いを終えると当麻とインデックスは自分の部屋へと帰っていった。
インデックスはまだ当麻に夕食の文句を言っていたが。

それに対して当麻は非常に対応を困らせている。
返答を間違えればインデックスからの『咀嚼(オシオキ)』が待ち受けているのだ。
だが彼の不幸フラグの建設ぶりを見れば、どのような結末を迎えるかは想像に難くない。

哀れ、上条当麻。

386 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:54:47.30 ID:xfgj2whN0

学園都市のセキュリティは鉄壁だ。
生半可な方法では外部から侵入するどころか近寄ることすら出来ない。
もちろん内部から外に出ることも非常に困難である。

不審な動きを見せれば、学園都市外壁の監視カメラから個人情報を事細かく調べ上げられた上で、
最先端の武装に身を包んだ学園都市の部隊が捕縛しにやってくるだろう。
時期が時期ならば暗部の者達に問答無用で始末されているかもしれない。

前は外部の魔術師が比較的簡単に侵入してきていたが、
それはアレイスターが自身のプランのためにわざと見逃していただけだ。
決して当時の学園都市の監視網がザルだったわけではない。
実際、学園都市に侵入したり逆に逃亡を企てた者は大半が焼却炉行きになっているのだから。


土御門(まず、十字教側の刺客という線は薄いだろう)

土御門(先のごたごたが収まってから、まだ殆ど時間が経っていない)

土御門(戦後処理に追われているはずだから、こちらに人員を割く余裕はないだろうな)

土御門(まぁ、それは学園都市にも言えることなんだが・・・・・・)


学園都市と十字教の戦争が終わってから早数ヶ月。
表には出ない水面下でのことであったが、双方に浅くはない傷跡を残した。

現在はある程度マシになったとはいえ、今でも細部で混乱が続いている。
本来相容れないはずの『学園都市(科学サイド)』と『十字教(魔術サイド)』が友好な関係を保っているように見えるのは、
これ以上自身の体力を消耗すると第三者からの侵略に対応することが出来なくなるため、
利害の一致で一時的な休戦状態になっているだけなのだ。

上条当麻は前戦争の首謀者であるアレイスターを打ち倒すことで、
双方がいがみ合うことはなくなったと思っているようだが、現実はそう甘くない。
時間が経てば以前よりは規模が小さくなるであろうが、再び争いが起こり始めるだろう。
インデックスを目的とした干渉も多くなるかもしれない。

その時に上条当麻は再びインデックスを守り抜くことが出来るのか。いや、守ってもらわなければ困る。
そうでなければ、役に立たないと判断されてインデックスを回収されてしまうに違いない。

387 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:55:47.61 ID:xfgj2whN0

土御門「とにかく、イギリス清教に連絡を取らないとな」

土御門「今イギリスは昼を過ぎたところか・・・・・・」

土御門「昼食を取ってるだろうが仕方ない。 あいつにはちょっとだけ働いてもらおうかにゃ〜」


意地悪い顔をしながら土御門は携帯電話を取り出す。
連絡先は彼が最もよく知る魔術師の一人。そして上条当麻とは未来永劫相容れないであろう男。





『ルーン魔術の天才』ステイル=マグヌスである。





388 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/15(日) 20:56:57.34 ID:xfgj2whN0
今日はここまで。
魔術の個性云々は自分の想像なので、もし違ったらすみません。

質問・感想があればどうぞ。
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 23:10:39.39 ID:xgrcgqJIO
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 09:08:37.31 ID:UnWYtx3DO
乙!
上条さんが噛まれても面白く感じないのは俺だけか?
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 17:28:48.36 ID:7eN2cZwho

東方知らないけど面白いよ
ただ、上条さんがやたらと「当麻」表記なのが気になる
ロクに面識ないはずの177支部組が「当麻さん」呼びとか気持ち悪い
土御門の「俺」とか青ピの「ワイ」とか小萌先生の「上条君」とか
1人称2人称が間違ってるのもちょっとイヤだ
細かくてごめん
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/07/16(月) 17:34:35.12 ID:NaKSl7Qqo
■■が大変な目に遭わなければいいんだが…
393 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/22(日) 21:15:38.91 ID:AiTzbqG70
>>390
すまぬ・・・・・・貧相な>>1の脳みそじゃ上条さんとインさんのネタと言ったら
腹ぺこか噛みつきしか思いつかなかったんだ・・・・・・

>>391
いや、細かくなんて無いですよ?一人称二人称は重要ですから
自分のイメージで喋らせてしまっているからこんな事になるんだ・・・・・・
もしまた間違っていたら遠慮無くダメな>>1を罵ってください

>>392
■■をどう扱うか今の所は不明。でも空気にはならない・・・・・・と思う


投稿は来週になります。色々と書き足したいこともあるので
でも問題なのは次出てくるのがヘンテコ日本語の筆頭である最大主教なんですよね
正直あの独特な口調を表現できる自信がない。どうしたものか・・・・・・
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 21:19:38.74 ID:UV8dp82IO
>>393
全力で舞ってる
395 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/07/29(日) 19:51:43.25 ID:0dEX4sX40
これから投下を開始します
396 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 19:52:18.11 ID:0dEX4sX40





――――7月25日 AM11:46





397 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 19:52:55.58 ID:0dEX4sX40
イギリス・聖ジョージ大聖堂――――

ここはイギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会』の元本拠地。
ロンドン中心街、ウォータールー駅からそれほど遠くない場所に存在する、そこそこの大きさを持つ教会。
『大聖堂』の名とは裏腹に、魔女狩りや異端審問などの宗教裁判が行われた血に染まった聖域である。
現在『必要悪の教会』の頭脳として稼働しているこの場所にその男は居た。

彼の名はステイル=マグヌス。ルーン魔術を極めた天才魔術師である。
身長2メートル以上。派手なアクセサリーを身につけ、長い髪を燃えるような赤で染め上げている。
煙草を口に加えて吹かし、右目の下にはバーコードのような入れ墨。さらには耳にピアスまで付けている。
知らない者が見れば、思わずそっち関係の人だと勘違いするくらいチンピラじみたファッションだ。
そんな姿をしていながらこの男、十字教の神父をしているというのだから世の中分からないものである。

彼だけでなく他にも露出狂の気があるのではないかと思えるような人もいれば、
けばけばしいゴシックロリータ服を身に纏っている人間もいるのだから驚きである。
十字教の人員の選定方法は一体どうなっているのか気になるところではあるが、ここはイギリス清教でも異色な部署である『必要悪の教会』だ。
しかも数ある部署の中でも最も力があるため、実質的にイギリス清教の中核となってしまっている。
そのおかげである程度の勝手は押し通すことが出来るのだろう。

ステイルは教会の一室で非常にめんどくさそうな顔をしながら、マグカップに入ったコーヒーを飲んでいた。
本来ならば久々の休暇ということで自分の部屋に籠もりながら新しいルーン魔術の作製にでも取り組んでいるはずなのだが、
今日は前触れもなくこの場所、聖ジョージ大聖堂に来るよう呼び出されたのだ。
そのため彼が立てていたスケジュールは無駄になってしまい、現在非常に不機嫌になっている。
テーブルの上に山積みとなった煙草の吸い殻を見れば一目瞭然だろう。

さて、ステイルを自分の都合で勝手に呼び出した人物とは――――
398 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 19:53:48.07 ID:0dEX4sX40


ステイル「まったく、こちらは戦後処理で忙しいというのに『ランチに付き合え』とは・・・・・・」

ステイル「一体どういう風の吹き回しですか? 『最大主教(アークビショップ)』」

ローラ「単に私が貴方と食事がしたいと思うただけなりけるの」

ローラ「別にあなたを嵌めようなどとは微塵も思ってはなくてよ?」


そう言いながらティーカップの紅茶を飲んでいるのは、
『必要悪の教会』のトップに君臨する『最大主教』ことローラ=スチュアートである。
車椅子に座っているあたり、自力で歩くことが出来ないようだ。

そんなローラを見てステイルは隠そうともせずに溜息を吐く。
随分失礼なように見えるが、この光景は別段珍しい物でもない。
むしろこれ以上の粗相を働いたこともあるのだから今更だ。


ステイル「そんなことで呼び出さないで欲しいですね。 貴方が怪我で療養中の今、
『必要悪の教会』を維持しているのは誰だと思っているのですか?」

ローラ「仕方ないであろ! こんな狭苦しい部屋で一人で居たるのはとても退屈のことなりけるのよ?」

ローラ「こんな陰鬱な気持ちが続いては、治りたる病気も治らなきゆえ」

ローラ「私の気持ちをリフレッシュするためにも、貴方の助力が必要でありけるの」

ステイル「はぁ・・・・・・」

399 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 19:55:19.41 ID:0dEX4sX40

実は彼女、先の戦争の最中に重傷を負ってしまい、ここ数ヶ月部屋に籠もりきりの生活が続いている。
その理由は、成り行きとはいえ単身でアレイスターに戦いを挑んだのが原因だ。

イギリス清教に保管されている聖遺物や様々な魔術を駆使して渡り合ったのだが、
アレイスターの『複数の場所に同時に存在できる』という力を用いた全方位からの掃討魔術を食らい、
その攻撃から身を守るために自身の魔力を枯渇寸前まで用いたことで、衰弱死一歩手前まで追い詰められた。

途中で駆けつけた上条当麻達に保護されたことで一命を取り留めたが、
限界まで肉体を酷使したことで半身が麻痺してしまい、現在はそのリハビリのために療養中である。


ステイル「しかしなぜ僕なんです? そのくらいなら他の人にでも出来るでしょう?」

ローラ「あら、今日は貴方の担当であるからに決まっているが為でありけるの」

ステイル「・・・・・・は?」

ローラ「一月ほど前に『必要悪の教会』のメンバーが交代で私のお世話をすることが決まりたるの」

ステイル「いやいや、待て! そんな話初耳だぞ!?」

ローラ「一昨日はシェリー、昨日はアンジェレネ、そして今日は貴方であることよ」

ステイル「最近休む奴が多いと思ったらそういうことか・・・・・・」

ローラ「『必要悪の教会』全員に私の名義で通知しておきしはずなのだけれど?」

ステイル「え?」


そういえばだいぶ前にローラ=スチュアートが差出人の手紙が来ていたように気がする。
あの時はどうせくだらないことだと思って(実際くだらないことなのだが)、適当に流し読みをしてそこら辺に放置していたような・・・・・・

400 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 19:58:18.57 ID:0dEX4sX40

こうなってしまったのであれば仕方がない。今から抗議しても無駄だろう。

この女、時たまとんでもないことを閃いて『必要悪の教会』の人々を引っかき回すのだ。
それでいて、真面目なときは底が見えないくらい腹黒くなるのだから始末に負えない。
一時期はその得体の知れなさに背筋が寒くなったこともある。

なにせ、彼女の行動原理はイギリス清教の益となるかならないかが基準なのだ。
イギリス清教のためなら、たとえ村一つ灰燼に帰すことでも微塵も躊躇いはしないだろう。

以前はインデックスに記憶を消さないと死に至る首輪を付け、
インデックスのパートナーに記憶を消させることで双方が『必要悪の教会』から離反しないようにしていたのだ。
そのことを問い詰めてもまるで悪びれた様子がなかったのがこの女の残虐性である。

最近はその腹黒さも形を潜めているが、その代わり彼女の厄介事に振り回されることが多くなった気がする。
おそらく、というか絶対に暇をもてあましているせいであるが、
変に計略を仕掛けられて神経をすり減らされるよりは遥かにマシというものである。

それでもかなり精神が疲労するのだが。

401 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 19:59:14.82 ID:0dEX4sX40

プルルルルル・・・・・・プルルルルル・・・・・・


ステイル「っと、すいません電話です」ゴソゴソ

ローラ「あら、その携帯電話はどうしたること?」

ステイル「土御門からもらったんですよ。 あった方が何かと便利だからとね」

ステイル「まぁ、少々細工をさせてもらっていますが・・・・・・」


ステイルの持つ携帯電話にはルーンが刻まれたストラップがぶら下がっている。
このルーンは遠距離通話を行うためのもので、対になるルーンを付けた携帯電話から情報を受信して会話を行うものだ。

例え地球の裏側にいようとも通話が出来、尚かつ盗聴されないという優れものであるが、
指定した携帯電話以外のものと通信するためにはルーンを別のものに取り替える、
もしくは個別に携帯電話を用意する必要があるため、多人数に一度に情報を伝達する目的には向いていない。


ステイル(どうやら土御門からみたいだな。 今の日本の時刻は・・・・・・午後9時頃か)

ローラ「ほらほら、早く出てみよ」

ステイル「・・・・・・何でそんなに乗り気なんですか?」

ローラ「立場上そのような機器には滅多に触れることがない故、それを使っている感想を聞きたきけるの」

ローラ「使い心地の如何によっては『必要悪の教会』への普及も考えたることよ」

ステイル「魔術サイドと科学サイドの相互不干渉はどうしたんですか」

ローラ「そ、それはほら、学園都市とは協定を結んでおるゆえ」

ステイル「はぁ・・・・・・?」

402 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 19:59:55.29 ID:0dEX4sX40

それにしても歩み寄りすぎではないのか。
千年以上にわたって続いてきた魔術と科学の確執をこんな簡単に水に流して良いものか。

最近、彼女の科学に対する態度が若干柔らかくなったような気がする。
変化の兆しが現れた時期は、先の戦争で病院に入院した頃からだ。
その頃から時たまボーッと呆けて何も反応がないことがある。

何処か体の調子がおかしいのではないかと一度訪ねてみたのだが、顔を真っ赤にしてなんでもないと言うのだ。
その姿たるや、まるで恋する乙女のようであった。

彼女の実年齢を知る者であれば、頭がおかしくなったと思って真っ先に精神病院に連絡するだろう。
アレイスターの魔術の影響で何処かの頭のネジが飛んでしまったのだろうか。

少しは自身の年齢を鑑みてほしいものである。


ステイル(ま、面倒事を起こさなければどうでもいいな)

ステイル「はい、こちらステイルだ」ピッ

土御門『お〜ステイル。 元気にしてるかにゃー?』

ステイル「ああ、忙しすぎて病気になる暇もないくらいだよ」

土御門『そいつは結構だ。 それならオレからの依頼もこなしてくれそうだな』

403 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 20:00:44.38 ID:0dEX4sX40

ステイル「僕が今言ったことが聞こえなかったのかい? 本当なら今すぐにでも君の手を借りたい所なんだがね」

土御門『そいつは無理だにゃー。 オレには『学園都市とイギリス清教の橋渡し』っていう大事な仕事があるんだぜい?』

ステイル「それならこちらにいても出来るだろう。 それに今は長期休暇中のはずだ」

ステイル「大方、妹さんの身が心配でそっちに残ってるんじゃないのか?」

土御門『そりゃもちろん。 舞夏のためならば例え火の中水の中・・・・・・』

ステイル「まったく、いい加減妹離れしたらどうなんだ?」

土御門『インデックスに対してあんな誓いを立てちゃうお前には言われたくないにゃー』

ステイル「ほっとけ」


土御門は電話の向こう側でケラケラと笑っている。
もしかしてからかうためだけに電話してきたのか?

あながち否定できないところが恐ろしい。


ステイル「いたずら電話なら切るぞ」

土御門『まてまて、こっちの近況報告がてら聞きたいことがあって電話したんだ』

ステイル「ならさっさと報告しろ。 こっちは忙しいんだ」

土御門『わかったにゃー』

404 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 20:02:24.57 ID:0dEX4sX40

土御門はそう言うと、自分が調査した内容の報告を始める。
ここ最近は状況の変化が著しいため、こうして定期的に報告しなければ情報に齟齬が出てくることがある。
情報伝達の遅れや食い違いは組織に甚大な被害をもたらしかねない。
報告する頻度は3日に1度。戦争が終結した直後は1日に2、3度報告することもあったため、これでもだいぶ楽になった方だ。

今回の内容は主に学園都市内部の状況と学園都市外部、特に日本に存在する魔術組織の情報だ。
アレイスターがいなくなり、現在の学園都市は魔術組織からの防備が手薄になっている。
その隙を突こうとしている魔術組織がいないが調べ上げ、危険と判断されたものを特定して対処するのが目的である。

学園都市、そしてアレイスターの存在は日本国内の魔術師に対する一種の抑止力の働きをしていた。
魔術師と呼ばれるものは基本的に科学を毛嫌いする物であり、日本の魔術師も例外ではない。
当然、日本の中心部に鎮座している科学の最高峰たる学園都市に対しても不満があった。

しかし、学園都市の存在は外部の魔術師から日本を守る一種の防壁となっていたのも事実だ。
もし学園都市を破壊してしまうと十字教系魔術組織より規模が劣る日本の神道・仏教系魔術組織は、
その圧倒的な数の暴力により瞬く間に蹂躙されてしまう可能性がある。
日本の魔術組織は損と得を天秤にかけた結果、不満を押し殺して学園都市の存在を認め、不干渉を徹底する方針をとることにしたのだ。
その影にアレイスターの影響が少なからずあったことは間違いないだろう。

そして今回、アレイスターが行方不明になって抑止力が無くなったことにより、
今まで抑圧されてきていたものが一斉に表面化してきたのである。
今でこそまだ規模は小さいが、このまま放置すれば『日本魔術組織vs十字教』の大きな戦争に発展する可能性がある。
小規模の魔術組織については神裂火織率いる天草十字清教やアニェーゼ部隊の面々が対応に当たっているが、それでもかなり逼迫している。
もしイギリス清教に相当するような国家規模の魔術組織まで飛び火することになったら取り返しのつかないことになる。
もちろんそのようなことが起こらないよう魔術組織の動向については常に目を光らせてはいるが、
何時、何処で、何が起こるのか分からない以上、一瞬たりとも油断できないのが今の状況だ。
こうして会話している間にも何処かで争いが起こっているのかもしれないのだから。

405 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 20:03:26.64 ID:0dEX4sX40

土御門『・・・・・・と、まあこんなところだな』

ステイル「やはりアレイスターがいなくなったことによる影響が出始めているな」

土御門『特に中央の動きが怪しくなってきている。 今後はこいつらの監視の強化が必要だろう』

ステイル「そうか・・・・・・早々下手な行動は起こさないと思うが」

土御門『そうとも限らないぞ? なんせ奴等は300年近くの間十字教の布教を拒み続けたんだ』

土御門『その内100年は十字教の徹底的な排斥を行っていたからな。 注意しておくに越したことはない』

土御門『それに、オレ個人の問題もあるしな・・・・・・』


土御門の声色が厳しくなる。
彼と日本の魔術組織との因縁は置いておくとして、現在の状況はやはり芳しくないようだ。

あつめた情報を総合すると、日本を根城にしている大型魔術組織の活動が活発化してきているらしい。
いままでは、十字教の魔術師が日本にいくらやってこようと彼らは何の動きも見せて来なかった。
その魔術師の殆どが学園都市を目的としてしているわけだが、本来ならばこれはかなり異常なことである。

自分の領域に他の魔術師が入ってくるとなれば、相応の警戒をするものなのだ。
例えそれが自分たちを目標としていなかったとしてもである。
おそらく、事前に学園都市と何か契約を交わしていたのだろう。
だから学園都市を目的として日本に来訪した魔術師を見逃したのかも知れない。

406 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 20:04:18.27 ID:0dEX4sX40

ステイル「・・・・・・そちらの事情は解った。 それで、お前が聞きたいこととはなんだい?」

土御門『あぁ。 ・・・・・・実は魔術師が許可無く学園都市に侵入してきているっていう情報を掴んだ』

ステイル「なんだって!?」


予想外の発言にステイルは思わず声を荒げる。
学園都市に魔術師が侵入している。それはインデックスに危険が迫っていることと同義だ。
もちろん『禁書目録』を目的として来ているとも限らないのだが、彼にとっては侵入者の意図などは二の次であり、
彼女の近くに見知らぬ魔術師がいるということ自体が容認しがたいことなのだ。

そんなステイルの声色を聞いて、土御門は彼を落ち着かせようとする。


土御門『落ち着いて最後まで聞け。 騒いでも何にもならないぞ』

ステイル「くっ・・・・・・わかった、続けてくれ」

土御門『このことはカミやんから聞いて判ったんだが、そっちから送ってくる魔術師の招待リストに記入漏れはないよな?』

ステイル「そんなものあるわけ無いだろう。 その査定に何人の審査官が着いていると思っている?」

土御門『何、試しに聞いただけだ。 その審査がどれだけ厳重かは知っている』

土御門『そっちが把握してる情報の中で魔術組織が不穏な動きをしているとかの情報はあったか?』

ステイル「そんなものなら掃いて捨てるほどあるよ。 ありすぎて数えるのも億劫なくらいだ」

ステイル「その処理のせいで今の『必要悪の教会』は慢性的な人手不足の状態だからね」

ステイル「隙に乗じて良からぬことを起こそうとする輩の対処に皆追われてるよ」

土御門『そうか・・・・・・』

407 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 20:05:03.86 ID:0dEX4sX40

十字教の一角であるイギリス清教は、その周辺に常に大きな影響を与え続けている。
そのイギリス清教が弱体化しているとなれば、今まで大人しくしていた輩が暴れ出すのは判りきったの結末であろう。
どのくらいの頻度で争い毎が発生しているのかは不明だが、ステイルの心労具合を見ればおおよそ予想がつく。


ステイル「それで? その侵入している魔術師が何者かはわかっているのかい?」

土御門『いや、オレもついさっき聞いたばかりだから確定的な情報はないんだが・・・・・・』

ステイル「その様子だと何か手がかりを掴んでいるようだね」

土御門『ああ、実はその魔術師が学園都市の住民に何らかの魔術をかけている可能性がある』

ステイル「その情報の出所は?」

土御門『インデックスだ。 魔術をかけられている可能性がある人物に会ったみたいでな』

土御門『学園都市に魔術師が潜んでいると気づいたのも、彼女が魔術をかけられている人物から魔術の力を感じ取ったおかげだ』

ステイル「とすると、その魔術がどんなものか見当はついているんだね?」

ステイル「インデックスの知識があればこの世に現存する大半の魔術を知ることが出来るからね」

土御門『ついているっちゃあついているが・・・・・・』

ステイル「何だ、歯切れが悪いな」

408 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 20:06:04.46 ID:0dEX4sX40

土御門『その魔術っていうのが特殊なものみたいでな。 ある魔道書だけにしか使われていない形式らしい』

土御門『だから今回の魔術師はその魔道書に縁のある人物じゃないかという推測を立てた』

ステイル「ふむ、確かのその発想は一理あるな。 魔道書というのはそう簡単に手に入る物じゃない」

ステイル「だから、それに係わった人間も自ずと限られてくる。 つまり、僕への依頼というのは・・・・・・」

土御門『その魔道書がどこから出てきたのか調べて欲しいってことだ』

土御門『魔道書を持っていた人物が分かれば、かなり相手の正体に近づくことが出来るからな』

ステイル「了解した。 その魔道書の名前は?」

土御門『『ヴォルデンベルクの手記』だ』

ステイル「ヴォルデンベルク・・・・・・か。 聞いたことがないな」

土御門『インデックスが言うにはかなり変わったものらしいぞ? 『魔道書の定義に当てはまらない魔道書』だと言う話だ』

土御門『本来の魔道書にあるような外敵に対する防衛機構は一切無いそうだ』

土御門『だからそれ程危険な物じゃないみたいだが、一応警戒しておいてくれ』

ステイル「あぁ、とりあえず大英魔術図書館に問い合わせてみるよ」

土御門『よろしく頼む』ピッ


土御門から突然連絡が来たと思えば学園都市への侵入者が現れた。
この忙しいときに仕事を増やすなとその侵入者へ直訴に行きたいところだが、愚痴を漏らしても物事は解決しない。
今の自分がするべきことは、一刻も早く土御門からの依頼をこなし、早急に事態を収拾できるように全力を尽くすことだ。

だが行動を起こすためには一つ、大きな障害が残っている。

409 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 20:06:33.06 ID:0dEX4sX40

ステイル(とは言ったものの、どうやって『最大主教』から逃れるか・・・・・・)


正直『最大主教』にはあまり関わって欲しくない。乱入されたら何が起こるか見当もつかない。
今は何か策謀を張り巡らしている気配はないが、何時気が変わるのかも判らないのだ。
できれば何も知らせずにこちらだけで事を済ませたいが、彼女の目をごまかせるとも到底思えない。

というか、彼女は非常に面白そうにこちらを見ている。
普段が退屈極まりないために、尚更事件に興味が引かれるのだろう。
前言撤回。『到底思えない』ではなく『絶対に不可能』だ。

ステイルは心の中で溜息をつきつつ、『最大主教』の言葉を待った。


ローラ「どのような連絡でありけるの?」

ステイル「どうやら、我々に無許可で学園都市に侵入した魔術師がいるみたいですね」

ステイル「その魔術師の正体を割り出すために調べ物をして欲しいと土御門が」

ローラ「ほう。 して、その調べ物の内容とは?」

ステイル「『ヴォルデンベルクの手記』という魔道書の出所ですね」

ステイル「とりあえず大英魔術図書館に掛け合って同じ名前の魔道書が保管されていないか調べてもらおうかと思っていますが」

ローラ「その必要はないでありけるの」

ステイル「・・・・・・は?」

ステイル(必要がない? 一体どういうことだ?)

410 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 20:08:15.80 ID:0dEX4sX40

ローラ「その魔道書なら知っておる。 確か今は大英魔術図書館の『封印指定区域』に保管されておるの」

ローラ「その区域の管理人に言えば探してきてくれるであろ」


どうやらこの女、件の魔道書のことを知っているらしい。だが彼女であれば知っていてもおかしくはないと思えてしまう。
何年『最大主教』の座についているのかは詳しく知らないが、少なくとも相当な年数が経っていることは確かだ。
今回の魔道書を知っていても不思議ではないのかもしれない。

だが、一体どのような経緯で知ることになったのだろうか?


ステイル「なぜそんなことを知っているのですか?」

ローラ「10年ほど前に、私が直々に命令して回収させたことがありたるの」

ローラ「あの時は色々と苦労したのを今でも覚えておる」

ローラ「あれのために『異端抹消(アナテマ)』がほぼ半壊となったからの」

ステイル「あの『異端抹消』が半壊? 一体何が・・・・・・」


『異端抹消』。
それはイギリス清教から出た『異端者』、その中でも特に重罪と考えられる者を確実に葬るために設立された部署だ。
この部署は決まった人員が存在せず、行動を起こす際は『必要悪の教会』の面々の中から最も実力のある精鋭達が選ばれる。

彼らに標的にされることは死刑宣告を受けたも同然であり、
宗教裁判にかけられることも『処刑塔(ロンドンとう)』に幽閉されることもない。
その者に待つのは速やかな処刑のみである。

とは言うものの、『異端抹消』が動く程の重罪人が現れるのは非常に稀なことであるため、普段は名ばかりの部署となっている。
しかし裏を返せばこの部署が動き出すということは、イギリス清教の身内から絶対に許されざる裏切り者が現れたことを示しているのだ。

411 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 20:09:08.74 ID:0dEX4sX40

ローラ「その魔術師・・・・・・いや、魔術師一族は500年近くにわたってある魔術の研究をしていたにけるの」

ローラ「『異端者』の烙印を押されたのもその研究が原因でありけることよ」

ステイル「その魔術師達は一体何をしていたんです?」

ローラ「それはのう・・・・・・」

ステイル「・・・・・・」

ローラ「向こうに着いてから教えるかの」

ステイル「いやいや、ここでも教えることは出来るでしょう!?」

ローラ「そう焦るでない。 実際に魔道書を見た方が理解が早いであるの」


ここでもったいぶるとは、全く持ってこの女狐は自由な人間である。
『禁書目録』の危機が迫っているのかもしれないというのに全然緊張感が感じられない。
仮に危険が及んでもどうにでもなると考えているのか、それとも・・・・・・


ステイル「そんな簡単に見られるものなのですか? 仮にも魔道書でしょう?」

ローラ「その心配は無用のこと。 魔術の類は書かれておらぬから、手順さえ踏めば子供でも目を通すことができけるの」

ステイル「・・・・・・分かりました。 それでしたら早速行ってきます」

ステイル「仕事も山積みですし、こんな所でもたもたしていられませんからね」

ローラ「わたしも、散歩の代わりに行くとしようかの」キィコキィコ

ステイル(やはり一緒に来るつもりなのか? 僕個人としては大人しくしていて欲しいのだが・・・・・・)


目指すは大英魔術図書館。
イギリス清教が保有する魔術図書館の中で最大級の蔵書を誇る図書館だ。
『ヴォルデンベルクの手記』とはいかなる魔道書なのか・・・・・・
ステイルは一抹の不安を抱えながら、聖ジョージ大聖堂を後にした。

412 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/07/29(日) 20:11:06.57 ID:0dEX4sX40
今日はここまで。
最大主教の口調これであってるかな?正直自信がない

質問・感想があればどうぞ
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 00:01:17.76 ID:SoCcbzPIO

ローラはどっちかというと無理に古典に出てくる文法とか単語を使うから
私も、散歩に行きになりにしけるのよ
みたいな感じかも
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 09:02:31.98 ID:aYbU3RWDO
ノーレッジ一族かどうかは分からないけど、凄かったんだな。
415 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/08/05(日) 22:21:47.57 ID:pQXo9UG60
>>413
もっと古文を勉強してくれば良かった・・・・・・

今回は早めに書き溜めることが出来たのでいつもより一週間前倒しで投下開始
416 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:22:28.24 ID:pQXo9UG60





――――7月25日 PM?:??





417 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:23:05.10 ID:pQXo9UG60

「・・・・・・ただ今戻りました」

「ご苦労様。 少し遅かったわね」


学園都市に存在する、とある建物の一室。薄暗い部屋の中で二人の女性が会話をしている。
部屋の中の光源はたった一つのカンテラのみ。
しかも電気式ではなく骨董品屋で売っているような蝋燭を用いた構造である。
科学の街である学園都市において、このようなアナログ式の照明器具の存在は珍しい。
そもそも、学園都市に骨董品屋があるのかも甚だ疑問である。
そしてそのような店がたとえあったとしても、学園都市に住む学生が買うような代物ではない。
確かにアンティークとして欲しがる人間はいるだろうが、それは極々例外の存在であろう。
もしかしたら、二人の内のどちらかがその例外に入るのかも知れないが。

二人の内、片方はくるぶしまで達する長さを持つ黒いコートを着た女性。
無実の女性から血液を採取し、さらには佐天涙子にも同様の凶行を行おうとした人間である。
手には小さなジュラルミン製のケースが携えてある。その中には採取した血液が修められているのだろう。

もう片方は薄暗がりのせいで顔はよく見えない。だが、彼女から感じる雰囲気はただならぬ物がある。
まるで全てを見透かすかのように、視線がコートを着た女性に注がれている。


「それで、今回も上手くやったかしら?」

黒コート「はい。 目的は達成致しました。 ・・・・・・少々手こずりましたが」

418 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:24:45.05 ID:pQXo9UG60

どうやら二人は互いに上司と部下の関係にあるらしい。
コートを着た女性に血液を集めるように命令したのがこの女なのだろう。
そしてコートを着た女性は任務を完遂し、自分の上司の下へ戻ってきたということだ。


上司「目的『は』達成した・・・・・・? 何か不都合なことでもあったのかしら?」

黒コート「それは後でお話しします。 今はこれを・・・・・・」

上司「・・・・・・」


上司の疑問を一端制し、ケースから包み紙を取り出して渡した。
上司は手渡された包み紙を丁寧に開き、中身を手にとって確認する。
それは鮮やかな赤の液体に染められたビニール袋。被害者女性の血液が入っている。
容量にして大体200ml程。献血などで採取する量とほぼ同じだ。
上司は数秒ほど血液が入った袋を見た後、何も言わずにそれを元に戻す。どうやら十分に満足の出来る代物だったようだ。
中身を包み直すと、包み紙をテーブルの上に置いてコートを着た女性に向き直った。


上司「とりあえず何があったのか簡潔に、わかりやすく話しなさい」


上司は出来るだけ部下を怖がらせないように話しかけた。
任務中に何があったのかは判らないが、恐怖のせいで嘘をつかれては後々面倒なことになる。
嘘をつくのは大抵の場合が保身によるものだからだ。子供が親に怒られないように嘘をつくことと同じことだ。
ただ、彼女に関しては上司に嘘をつくことなど万も一つもあり得ないのだが、そこは一応念のためである。

419 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:26:15.07 ID:pQXo9UG60

黒コート「はい・・・・・・わかりました」


しかし、上司が穏やかに話を聞こうとしているにも関わらず、それでもコートを着た女性は後ろめたそうにしていた。
上司に目を殆ど合わせることはなく、ソワソワしながら落ち着かない様子で焦点を虚空に漂わせている。
どうやら上司の心遣いはあまり効果を見せなかったようだ。


上司「・・・・・・もう少しリラックスしなさい。 貴方から話を聞かなければどうしようもないわ」

黒コート「す、すいませ・・・・・・!」

上司「だ〜か〜ら、落ち着きなさい! 貴方らしくないわよ!」ガシッ

黒コート「ひゃい!」


身を竦める部下を見かねて上司は椅子から立ち上がり、部下の肩を叩いて活を入れた。
このまま怯えられては全く話が進まないし、自分自身そういうことはあまり好きではない。
忠誠を誓わせるのなら恐怖によってではなく、信頼によって行った方が後々都合が良いからだ。

ただ、普段は気丈である部下の怯えた顔を見たいという嗜虐心が無かったわけではない。


上司「・・・・・・どう? 落ち着いたかしら?」

黒コート「・・・・・・すみません。 見苦しい所を・・・・・・」

上司「別に大したことではないわ。 それよりも早く報告しなさい」

黒コート「承知しました」


部下はどうやら落ち着いたようであり、いつもの鋭い目を上司に向けた。
その様子を見て上司は、内心やれやれといった感じで椅子に座る。

420 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:27:08.55 ID:pQXo9UG60

彼女が生真面目で非常に優秀であることは上司も認めるところである。
部下にしたのは数ヶ月前のことであり、それ以前から彼女を知っているわけでもない。
だが、その短期間でも彼女が他の人間よりも頭一つ飛び出ていることを知るには十分な時間であった。

しかし、そんな部下にも欠点が存在していると上司は考えている。
それは逆境に直面した時、例えば仕事に失敗すると非常に精神が不安定になることだ。
特に、上司がその出来事に関わっている時が一番その傾向が強い。
部下が失敗をしたことなどそれこそ片手で数えられる程度なのだが、その時のうろたえ具合は尋常ならざるものがあった。

最初は彼女の優秀さから来るプライドが原因だと思っていた。だが、どうやらそれだけではないらしい。
彼女は上司に少し依存し過ぎているきらいがある。もし上司が彼女を見捨ててしまったら、
ショックのあまり自ら命を絶ってしまいかねない。

いずれは矯正してやらねばならないと考えながら、上司は部下の言葉に耳を傾けた。


黒コート「実は作業の途中の姿を一般人に目撃されてしまいまして・・・・・・」

上司「目撃された? ちゃんと対処したのでしょうね?」

黒コート「殺すわけにはいきませんでしたから、私の誤った情報を与えた上で眠ってもらいました」

黒コート「直接顔を見られたわけではないので、そこから辿られることはおそらく無いはずです」

黒コート「それと身元がわかるような物品も全て回収しました。 髪の毛一本残してはいません。 ただ・・・・・・」

上司「ただ?」

421 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:27:37.65 ID:pQXo9UG60

黒コート「その場に駆けつけた『風紀委員』と戦闘になりました。 かなりの時間接触していたので私の特徴を把握しているかもしれません」

黒コート「彼らから『警備員』に情報が漏れる可能性は十分に考えられます」

上司「なるほど・・・・・・」


上司は部下の報告を聞き、現状についての考えを巡らせる。
一見平静を保っているように見えるが、内心がかなり動揺していた。それは何故か?

いまここで問題なのは、『部下の作業を一般人に見られたこと』でも『部下の能力を『風紀委員』に見られたこと』でもない。
その程度の問題ならば、いくらでも対処方法を考えることが可能だ。
自分の力を持ってすれば造作もないことである。

『未来を予知する力』。それが彼女の持つ力だ。しかし今回はその力を当てにすることは出来ない。
なぜなら、『そもそもこのような状況が起こることはあり得ない』はずだからである。


上司(私が見た未来にはこの結末は存在していない。 こんなことが初めて起きたのは確か、去年の夏頃だったかしら?)

422 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:28:39.18 ID:pQXo9UG60

このようなことが去年の夏にも一度あった。

その時期、彼女は一人の少女の破滅を予見した。それは回避することは不可能である『死』という名の結末。
その少女は一人の男の手によって、無残に命を散らすことになるはずであった。
守ろうとしたものを何一つ守ることは出来ず。それを奪った男に一矢を報いることも出来ず。
薄暗い蛍光灯に照らされた操車場で、絶望で顔を染めながら自らの血の海に沈んでいくその姿を見たのだ。

それを予見したのは丁度彼女に初めて接触した時だった。
その頃の少女といえばエリート校に在籍し、周囲の人にも恵まれており、
絶頂とまではいかないにしてもそれなりの幸福の中で生活していた。

その幸福から一気に地獄にたたき落とされるのだと思うと、何とも言えない気持ちになった。
しかし、自分にはどうすることもできない。それどころか誰も対処することなど不可能だろう。
彼女が見る未来は誰も回避することは出来ないからである。

何もこのような出来事は初めてではない。
この能力を手に入れてからというものの、彼女は様々な人間の未来を見てきた。
ある人間は天に見初められたかのように幸福の道を歩み、またある人間は全てから見放されたかの如く不幸の奈落に墜ちていった。
例えばこの学園都市の要職に就いた人もいれば、肉体を腰から分割されて絶命した人もいる。
もちろんこのような人生を左右する未来だけでなく、○○という教師は帰りにどこそこの店で買い物するだとか、
△△という学生はこの日に登校中に転倒して足を怪我するだとか、そういった他愛のないものも数え切れないほど見た。
しかし、いずれにも共通していることは『自分が見た未来は必ず起こる』ということだ。

423 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:29:51.54 ID:pQXo9UG60

能力を手に入れて初期の頃、自分が見た未来を変えることが出来ないか試したことがある。
その時自分が見た未来とは、自分の友人が帰りに車に轢かれて病院に運び込まれるというもの。
その未来を回避するべく、友人に普段とは違う道を辿って帰宅するよう注意を促した。

このまま何もせずにいたら友人はいつもの帰り道を通って事故に巻き込まれてしまう。
ならば別の道を通るようにすればそのようなことは起こらないのではないか。
交通事故が起こるはずの道路を通らなければ、そういった出来事には遭遇しないと考えたからである。

だが、その未来を回避することは叶わなかった。
翌日自分の友人が交通事故に遭って病院に運び込まれたということを聞かされて彼女は驚愕した。
彼女が驚愕した理由は、何も注意を促したにも係わらず友人が事故に巻き込まれたからというだけではない。
もし単に事故に巻き込まれたというのなら、不幸に不幸が重なった結果だと思ったであろう。
しかし友人を轢いた車は『自分が見た未来に出てきた車と全く同じ』だったのだ。

話を聞く所によると、運転手はその日に限って『たまたま』いつものルートを通ることはせずに、
友人が通っているルートを『偶然』選択したらしい。
このようなことが果たして本当に起こりえるのだろうか?

その後も未来を見るたびにそれを回避しようと行動したが、いずれも失敗に終わることになった。
どのような手段をとっても、まるでその行動を嘲笑うかのように必ず予知で見た出来事が起こるのだ。
十回ほど未来を変えることに失敗した彼女は、とうとう自分の力の本質を確信したのである。

自分が見た未来は変えることは出来ない。
たとえどんな方法を用いたとしても、まるで鎖に引きずられるかのようにその結末に引き寄せられてしまう。
それこそ、その出来事の当事者となる人間が巻き込まれる前に死にでもしない限り、阻止することは不可能だろう。

それを知った彼女は、たとえ他人の破滅の未来を見たとしても傍観に徹することにした。
無駄だと判りきっている行動を続けることほど愚かなものはない。それどころかその不幸に巻き込まれることもあり得る。
だからこそ今回も、多少心残りがあるとしてもただの観測者であろうとしたのだ。

424 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:30:20.90 ID:pQXo9UG60





だが、その結末は回避された。その少女の生存という形で。





425 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:31:06.94 ID:pQXo9UG60

街中で再び少女が五体満足で立っているのを見た時、まるで質の悪い夢の中にいるのではないのかと思ったほどだ。
自分は確かに少女の最期を見たはずだ。まさか他人の空似というわけではあるまい。
いや、似ている人はいるが予知で見た彼女は紛れもなく本人だったはずだ。

自分の予知は外れたことは今まで一度もなかった。そして、そのことに対して全く疑いを持ってなどいなかった。
なにせ百を優に超え、千に到達するほどの未来を見て、その悉くが外れることがなかったのだ。
自分の予知が必ず当たると思っても仕方がないだろう。

けれども、たとえ千回外すことがなかったとしてもその次も外れないという保証は何処にもない。
未来とは本来不確定な物だ。例えその一場面を観測したとしても、それは現在の変化で如何様にも左右されてしまう。やはり必ず的中するというのはただの思い込みだったのだろうか?

しかし予知を外したのはそれ一回きりであり、その後は相変わらず自分の予知は正確な未来を見せ続けた。
こうなればあの出来事が例外中の例外だったのだろう。
自分の予知を覆すような何かが起こったのだ。それが少女によるためのものなのか、それとも自分自身が原因なのかは未だに判らないが。


上司(どちらにせよ、私の予知が外れる原因となるような事が再び起こったということは間違いない)


過去の回想を中断し現状の分析を続行する。
今やらなければならないことは過去を思い出すことではなく、これからどのような行動を取るべきか考えることだ。
過去を振り返ることを絶対に悪いこととは言わないが、そこから解決策を見いだせない以上、
未来の視点に立って行動することの方が遥かに有意義である。

426 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:32:26.70 ID:pQXo9UG60

上司(このままだと予定が大幅に狂う可能性がある。 最悪破綻することも考えられるわね)

上司(それだけは避けたいところだけれど、原因がわからない以上それを取り除くのは不可能に近い)

上司(手がかりになりそうな物は見つけたけど、それにそれを元に探すほどの時間もないし)

上司(幸い血液の採取を見られたことによる未来の変化は観測できていないから、今の所は現状維持ね)


対策がとれない以上、今の状況を悪い方向へ転がさないように努力するしかないだろう。
受け身にならざるを得ないのが癪だが、愚痴を言っても仕方がない。

人間の血液を集め始めてそろそろ一ヶ月。
その切欠となったのは『とある未来』を見たからであるが、もうまもなくその未来が訪れると予想される。
期間が短かったために十分な血液が集まったとは言えないが、少なくとも最悪の事態を避けることは可能だろう。
『自分が見た未来の先』は未だ見えていないので、全てが終わった後に何が起こるのかは未知数であるが。


黒コート「どうなさいますか?」

上司「とりあえず何があったのかはわかったわ。 今の所はそれが原因で何かが変わったというわけでもないから、
貴方には引き続き血液の採取をお願いするわね」

黒コート「了解しました」

上司「とは言ってもまだ以前集めた物もあるから、次は少し先になりそうね」

上司「久々の休暇よ。 しっかり休む事」


部下は普段の仕事だけでも十分忙しいのに、それに加えて血液の採取にまで手を貸してもらっている。
頼んだ時は本当にやってもらえるとは思わなかったが、彼女は上司に心酔しているようにも見受けられた。
何故彼女が自分をここまで慕うのかは判らないが、それで事が上手く運んでいるのだから深く詮索するのは止めておく。
そういったことは全てが終わった後にすればいい。今の関係を壊すような行動を取るのは愚の骨頂だ。

427 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:33:04.08 ID:pQXo9UG60

上司「今日はお疲れ様と言ったところかしらね。 今日の所はもう用事はないから下がっても良いわよ」

上司「寝る前の仕事をきちんとこなしたら就寝しても良いわ」

黒コート「寝る前に何かお飲みになられますか?」

上司「いや、貴方は早く寝て疲れを取りなさい。 明日の仕事もあるのだから」

黒コート「・・・・・・はい」


コートを着た女性は無言のまま上司の部屋を退出する。扉を閉める時に不安が残る表情をしていた。
何に対して心配しているのかは判らない。自分の失敗がお咎め無しだったことに対してか、
それとも血液を集めさせる上司の思惑に対してか。もしかしたら、もっと他のことかもしれない。
だがそれを口に出すようなことはしない。彼女にとっては上司に忠誠を尽くすことが最大の生き甲斐であるのだから。


上司(・・・・・・行ったわね)


上司は部下の足音が聞こえなくなり、完全にこの部屋の周囲から離れたことを確認する。
これから自分が行おうとしている事は他人には見られたくない。特に部下が見たら取り乱す事は目に見えて明らかだからだ。
そうなったら完全に収拾がつかなくなる事は必至である。


上司(まぁ、人の血を飲むなんて普通の人が見たらドン引きするのは当たり前なんだけど)

上司(あの子に関して言えばそれはあまり問題じゃないのよね。 むしろ・・・・・・)

428 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:36:03.38 ID:pQXo9UG60

上司は物思いにふけりながら棚から一個のワイングラスを取り出す。
そして血液の入った袋を開き、中身を静かにグラスの中に流し入れた。
静かな音を立てて鮮血がグラスの底に溜まっていく。それと同時に血液独特の鉄さびの匂いが鼻をついた。
グラスの四分の一ほど流し入れると、空気を抜いた上で自前の保存液を入れて厳重に封をする。
血液の保存期間は献血用の物だと採血後21日が限度とされる。
素人が作った保存液ではその期間は大幅に短くなるだろうから、精々一週間持てばいい方だろう。

ブドウ糖とクエン酸ソーダがあれば擬似的な抗凝固薬を作ることは出来る。しかし化学薬品をそのまま購入するのは悪手だ。
学園都市では化学薬品の情報は徹底的に管理されている。超能力開発の使う薬品が多く存在するため、
技術漏洩の防止のためにそのようなことをする必要があるわけだ。

ブドウ糖は健康食品として市販されているが、クエン酸ソーダは一般人が手に入れるには専用の業者に頼む必要がある。
そんなことをすれば足がついてしまい、『警備員』に見つかる可能性は少なからずあるだろう。
クエン酸ソーダを用いた血液保存法は、『保存血液』による輸血法を生み出す切欠になった物だ。
その気になれば一般人でも使える方法のため、当然『警備員』も予想しているはずである。

だからこそ薬局で売っているクエン酸とスーパーで買える調理用の重曹でクエン酸ソーダを作っているわけだが、
それでは質に問題が生じるのは当然のことである。
化石と比喩できるくらい時代遅れの方法なのだ。輸血用よりも日持ちはしないのは当たり前だ。


上司「・・・・・・」


ワイングラスを手に持ち、テイスティングをしながら血液を眺める。
最近になってやり始めたことだが、これがなかなか面白かったりする。
同じ血液でも微妙に色や粘度が違う。血液はその人の食生活を知るにはこの上なく有効だ。
不健康な生活をしていれば血液は赤黒くドロドロした物になり、健康であれば鮮やかな赤でサラサラした物になる。
「お前の血は何色だ?」という名台詞があった気がするが、その台詞は相手の健康状態を知る上でも使えるのではないかと思う。

そして、今回の血液の評価は――――
429 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:36:44.57 ID:pQXo9UG60

上司(・・・・・・かなり黒いわね。 それにこれでもかっていうくらいドロドロ。 どうやら碌な食生活を送ってないみたい)

上司(健康に無頓着な学生か、元から学生生活を放棄しているスキルアウトか何かかしら?)

上司(まぁ血を採られた人は病院送りになってるだろうし、たまには健康的な食事をさせたと考えればいいわね)

上司(病院食では物足りないでしょうけど)


そんなことを思考しながらグラスをテーブルの上に置く。
別に本当に良いことをしたと思ってるわけではないが、そのことに対して負い目を感じているわけでもない。
自分がこれからなす事を考えれば、これくらいの犠牲など大したことではない。
実際に身を削っているのは自分ではないのだが。


上司(まぁいいわ、そろそろ始めますか。 ・・・・・・少し気が引けるのだけど)


考えるのを止め、意を決したようにグラスを再び持ち上げる。
そして彼女はグラスを持ったまま自分の部屋を出て行った。

430 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/08/05(日) 22:38:42.63 ID:pQXo9UG60
今日はここまで。

なんかもう全然隠れてないなこれ。いっそのことばらした方が良いんじゃないか?

質問・感想があればどうぞ。
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/08/05(日) 23:14:59.19 ID:wHB77swbo
乙乙
形式的に隠すだけでも雰囲気は違うと思いますよ
とはいえ、そろそろばらした方がいいかもね
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/08/07(火) 18:53:39.78 ID:Y6FkLRHDO

ってかそこで飲むんじゃないのかw
433 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/08/12(日) 20:46:14.77 ID:kyGuTOnD0
>>432
その場で飲まなかったことにもちゃんと意味があるんです
理由は言いませんが

これから投下を開始します。
434 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/08/12(日) 20:47:18.14 ID:kyGuTOnD0





――――7月26日 AM8:30





435 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/08/12(日) 20:48:51.40 ID:kyGuTOnD0

美琴「佐天さん、大丈夫かしら・・・・・・」

黒子「寮を出る前の初春からの電話ですと、まだ意識は戻っていないようですが」


美琴と黒子は『冥土返し(ヘヴンキャンセラー)』が経営している病院の中を歩いていた。
目指している場所は佐天にあてがわれた病室である。

あの事件の後、佐天は意識不明のままこの病院に搬送された。
初春は佐天の容態を見るために病院に行き、そのまま病室で一夜を明かしたらしい。
美琴と黒子もそうしたかったのだが、いきなりの外泊申請を常盤台中学に通すことは出来ず、
仕方なく次の日に見舞いに来ることになったのである。

相変わらず常盤台中学の規律は少し厳しすぎると思う。
学校の方針が『義務教育終了までに世界に通じる人材を育成する』ことなのだから当然のことなのかもしれないが、
今に限っては自分を縛るものに対して恨み言を言いたい気分だった。

なぜなら、そのせいで大切な友人の側にいることが出来なかったのだから。


美琴「まったく、少しくらい融通を利かせても良いのにね」

黒子「でもいきなりのことでしたし、仕方ないのでは?」

美琴「私たちのメンタルと規律、どっちが大事なんだか・・・・・・」

黒子「ルールとはそういう物ですの」

美琴「めんどくさいったらありゃしないわ・・・・・・」

436 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/08/12(日) 20:50:39.24 ID:kyGuTOnD0

愚痴をこぼしつつ歩いていたが、しばらくすると目的の佐天の病室が見えてきた。
扉に近づいてくるにつれて、部屋の中から話し声が聞こえてくる。
どうやら誰かが部屋で世間話をしているらしい。ということは・・・・・・


黒子「どうやら、目を覚ましているようですわね」

美琴「・・・・・・!」ダッ

黒子「お、お姉様!?」


ガラガラ!


美琴「佐天さん!」

佐天「おぉ、御坂さん」モグモグ


美琴が勢いよく扉を開けると、佐天が気の抜けた返事を返した。

患者衣を来てベッドの上に座っているが、具合が悪いようには到底見えず、健康そのものに思えた。
どうやら差し入れであろうカットされたリンゴを口に頬張る様は、心配していたのがバカバカしくなるほどである。

ただ、頭には脳波を測るための簡単な機器が取り付けられており、まだ体調が万全でないことが伺えた。

437 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/08/12(日) 20:52:40.76 ID:kyGuTOnD0

冥土帰し「御坂君? 病室で騒いではいけないよ。 患者さんの迷惑になるからね?」

美琴「す、すいません・・・・・・」

黒子「心配だったことはわかりますけれど、少し落ち着かれては?」

美琴「うぅ・・・・・・」

御坂妹「お姉さまはもう少し感情を制御すべきです。 と、ミサカは治るはずのないお姉さまの性格に無駄な非難を浴びせます」

美琴「アンタは一言多い」チョップ

御坂妹「あうち」


佐天の隣に携わっていたのはこの病院の院長である冥土帰しと、ナース服を着たミサカ10032号こと御坂妹。
冥土帰しは測定機器に映し出される情報を読み取り、御坂妹はその情報をカルテに書き込んでいる。

やがて測定を終えた冥土帰しは機器の片付けを御坂妹に任せ、心配そうに様子を見ていた御坂達に向き直った。


美琴「それで・・・・・・佐天さんの容態は?」

冥土帰し「脳波に異常は無し。 身体にもほぼ外傷はなく健康体。 これなら今日の昼にでも退院できるね」

初春「よかった・・・・・・」

黒子「大事にならなくてよかったですの」


冥土返しの言葉に一同は安堵の溜息を漏らした。
何せ気絶までしていたのだから、何か良くない後遺症でも起こしているのではないのかと心配していたからだ。


438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/12(日) 20:54:22.48 ID:9agzTbdWo
来たか…(ガタッ
439 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/08/12(日) 20:55:12.20 ID:kyGuTOnD0

美琴「それにしても昨日佐天さんに身に何があったのかしら・・・・・・」

冥土返し「昏睡状態になっていた理由であれば僕が説明しよう」

美琴「先生・・・・・・」


冥土返しは佐天のカルテを美琴に見せる。
それには運び込まれてから測定されたのであろう、様々な診療データが書き込まれていた。
そのデータの一つ、脳の活性度を視覚化した写真を指して説明を始める。


冥土帰し「運び込まれたときに検査をしたんだがね、脳の一部に異常な活性が見られた」

冥土帰し「活性した部位から考えると、どうやら何かが理由で能力が暴走したみたいだね?」

冥土帰し「その時に脳に急激な負担がかかって意識が昏倒してしまったんだろうね」

冥土返し「彼女を発見するとき何か変わったことはなかったかい?」

黒子「確かに突風のような現象が起こってましたけれど・・・・・・」

美琴「けど、佐天さんは・・・・・・」


佐天はレベルで言えばゼロである。
能力の区分では『空力使い』のカテゴリに入るが、彼女は能力を発現することが出来ないのだ。
しかし、あの場所で起きた突風は少なくともレベル3以上でなければ作り出すのは難しい。
能力を使えないはずの佐天が、暴走したからといってあれだけの風を生み出すことは出来るのだろうか?

440 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/08/12(日) 20:58:03.29 ID:kyGuTOnD0

冥土帰し「確かに佐天君は区分ではレベル0のようだね。 でも、だからといって能力が絶対使えないわけではないよ?」

冥土帰し「能力の暴走によって自身のレベル以上の力を扱えるようになることは、稀ではあるけど全く無いというわけじゃないからね」

冥土帰し「その代わり脳を酷使するわけだから、体や『自分だけの現実』に後遺症を残すことがある」

黒子「例えばどんなことですの?」

冥土帰し「身体に関しては記憶喪失や言語機能の異常、『自分だけの現実』に関してはレベルの低下や変質といったところだね」

初春「それじゃ・・・・・・」

冥土帰し「それなら心配いらないね? 彼女の場合、暴走していた時間が短かったこと、
扱える力がそれ程大きくなかったことから脳にかかる負担が少なくて済んだ」

冥土帰し「その点に関しては運がよかったということだろうね?」

初春「よかった・・・・・・」


その知らせを聞いて一同は安堵の表情を浮かべる。

なにせ、佐天は1年前にも一度昏睡状態になったことがある。
前回は何事もなく回復したのだが、それはたまたまそのような状況だったというだけであり、
今回も同じ様になるとは限らなかった。

441 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/08/12(日) 20:59:17.83 ID:kyGuTOnD0

佐天「にしても、レベルが低かったおかげで無事でいられるなんて、世の中分からないもんだね〜」

黒子「ま、それについては佐天さんにツキが回ってたということですわね」

美琴「それを言うなら『不幸中の幸い』ってとこじゃない? 襲われたんだし」

佐天「ハハハ・・・・・・」

黒子「とりあえず、佐天さんの健康状態がわかったところで、本題に入りましょうか」

初春「そうですね」

冥土帰し「ふむ。 僕達は一度席を外した方がいいね?」スタスタ

御坂妹「そうですね。 と、ミサカは空気気味な自分の立場に寂しさを感じながら返答します」スタスタ


黒子は話を切り替え、真剣な表情で佐天を見据えた。
その顔は『風紀委員』としての顔。これから話される内容はお世辞にも平穏とは言えない内容だ。

佐天涙子の身に何が起こったのか。
このことを病み上がりの佐天に聞くのは酷だが、これだけは聞いておかなければ。

原因は色々とあるが、能力の暴走は余程のことがなければ起こりえない事態だ。
それ相応の出来事が佐天の身に降りかかったことになる。

442 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/08/12(日) 21:00:44.98 ID:kyGuTOnD0

黒子「佐天さん、あの場所で何があったんですの?」

美琴「確か追われてるって聞こえたけど」

佐天「・・・・・・実はね、私、見ちゃったんだ」

初春「何をですか?」

佐天「・・・・・・『連続通り魔事件』の犯人」

黒子「それは本当ですの!?」

初春「白井さん! 声が大きいです!」

黒子「す、すみませんですの。 で、それは本当に・・・・・・」

佐天「うん。 倒れてる女性にかがみ込んで血を抜き取ってたから間違いないと思う」

美琴「・・・・・・! それじゃあ、黒子が取り逃がしたって言うのが」

黒子「・・・・・・犯人ですわね・・・・・・」ドンヨリ


黒子は自分の失態の大きさに心が暗くなる。
あの時犯人を捕まえておけば、一連の大事件を終結させることが出来たのに。


美琴「じゃあ佐天さんは犯人に見つかって追われてたの?」

佐天「そういうことですね」

黒子「なんて無茶を・・・・・・」

美琴「私たちが到着するのが遅れてたらどうなっていたか・・・・・・考えたくもないわね」


あの時到着するのが遅れていたら、佐天はあの路地裏に無残な亡骸を晒していたかもしれない。
考えただけでぞっとする。

443 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/12(日) 21:02:02.13 ID:kyGuTOnD0

初春「それよりも佐天さんはなんで路地裏に行こうなんて思ったんですか!?」

初春「あそこはとても危険だっていつも言ってますよね!?」

佐天「何でって・・・・・・近道?」

黒子「何ですのその理由は・・・・・・」

佐天「いやぁね、荷物が重くてしんどかったから早く家に着こうと・・・・・・」

初春「そんな理由で行かないでください!」

佐天「わ、わかったよ初春・・・・・・もう行かないから・・・・・・」

初春「・・・・・・本当ですよね? そう言っていつも無茶するんですから」

佐天「うぐっ」


ぷりぷり怒る初春の前で縮こまっていく佐天。
自分の不用意な行動が原因なのだから同情の余地はないが。

それにここまで初春が怒っているのも佐天の身を心配しているからこそである。


黒子「初春、とりあえずそこまでにしておくんですの」

初春「でも・・・・・・」

黒子「説教は後でいくらでも出来るでしょう?」

初春「・・・・・・わかりました」

黒子「よろしい。 それじゃ佐天さん次の質問に移りますわ」

佐天(助かった・・・・・・)

黒子「佐天さん、犯人顔とか何か見てませんの?」


既に『連続通り魔事件』の犠牲者が10人を超えている。
何せ、今まで犯人の正体につながるこれといった情報が得られていないのだ。
『風紀委員』や『警備員』としてはどんな小さなことでもいいから情報が欲しいのが本音だ。

444 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/12(日) 21:05:33.73 ID:kyGuTOnD0

佐天「顔か、見たには見たけどサングラスとマスクをしてたから・・・・・・」

佐天「わかったのは精々髪が白かったくらいかな?」

初春「そうですか・・・・・・」

黒子「となると、わたくしが見たものを合わせたのが現状でわかる犯人像ですわね」

佐天「白井さんは見たんですか?」

黒子「えぇ。 マスクはしていましたが、サングラスはかけてなかったんですの」

黒子「おそらくサングラスは佐天さんが起こした風で飛んでしまったのかもしれませんわ」

佐天「そうなんですか。 ・・・・・・犯人ってどんな顔だったんですか?」

黒子「『白い髪』というのは佐天さんが見たものと一致してますわね。 わたくしが見たものがそれに加えて『瞳孔が紅い』ということですの」

佐天「瞳孔が紅い? 瞳孔って目の黒い部分だよね?」

黒子「漫画やアニメで良くある表現ですわね。 おそらくそれらに影響されて赤のコンタクトでもしてたのですわ」

美琴「・・・・・・」

黒子「お姉様? どうされたんですの?」


腕を組んだまま床を見て黙っている美琴を見て、どうかしたのかと思い問いかける。
なにやら難しような顔をしていたので、また無茶な事をしでかそうとしているのかと心配になる。

445 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/12(日) 21:06:50.84 ID:kyGuTOnD0

美琴「・・・・・・犯人は白髪で瞳孔が紅いのよね?」

黒子「確かにそうですけれど・・・・・・」

美琴「それならアルビノって奴じゃない?」

初春「アルビノ?」

美琴「正式的には『先天性白皮症』って言うらしいんだけど、遺伝的疾患の一種みたいよ?」

美琴「先天的にメラニンが欠乏する病気で、髪の毛とか肌が生まれつき白いんですって」

美琴「瞳孔は血管の色が透けて赤くなるんだってさ」

佐天「生まれつき色白かぁ・・・・・・でも白髪っていうのも・・・・・・」ムムム

美琴「メラニンが無いせいで紫外線に弱くて皮膚病になりやすいらしいから、羨むような物じゃないんだけど」

初春「それにしても、やっぱり御坂さんは物知りですね」

黒子「さすがはお姉様ですの」

美琴「まあね」

美琴(一方通行のことを調べたときに知ったんだけどね)


一方通行も血にように赤い目を持ち、真っ白な髪をしている。
確証があるわけではないが、もしかしたら彼もアルビノなのかも知れない。

ふと、一方通行がベクトル操作の中で早期に『反射』という能力を会得したのは、
本能的に紫外線等の脅威から身を守ろうとした結果なのだろうかと思った。

446 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/12(日) 21:08:33.80 ID:kyGuTOnD0

佐天「そう言えば倒れてた女の人ってどうなったのかな?」

美琴「佐天さんが発見した人? たぶん『警備員』が発見して保護してるんじゃない?」

黒子「もしかしたら支部の方に連絡が来てるかもしれませんの」

初春「それなら私が行ってきます。 丁度仕事もありますし」

美琴「初春さんは休みじゃないんだ?」

初春「そうですよ。 早く行かないと固法先輩になんて言われるか・・・・・・」

黒子「あー、確かにそうですわね」


固法美偉は一見温厚そうに見えて、その実怒らせるととても怖い女性だ。
怒りのボルテージが一線を越えると、躊躇無く関節技を決めてくる。しかも微笑みながら。
実際そんなことは滅多にないのだが、出来る限り彼女の琴線に触れないように行動するのがいい。
固法を怒らせたときの恐ろしさは、自身の身を持って体験している。


初春「たぶん今回の事件についての情報が送られてくるかもしれませんし」

黒子「ふむ。 ならばその情報整理は初春にお任せしましたの」

黒子「何か解ったらその都度連絡をくださいまし」

初春「了解しました」

447 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/12(日) 21:09:28.27 ID:kyGuTOnD0

初春「たぶん今回の事件についての情報が送られてくるかもしれませんし」

黒子「ふむ。 ならばその情報整理は初春にお任せしましたの」

黒子「何か解ったらその都度連絡をくださいまし」

初春「了解しました」

佐天「えー。 初春がいなくなると寂しくなっちゃうなぁ」

初春「佐天さんは仮にも患者さんなんですから、少し安静にしていてください」

佐天「でもまだ初春の『挨拶(スカートめくり)』をまだやってないし」

初春「そんなことしなくても結構です!」

佐天「そんな! あれは私と初春の友情を確かめる神聖な儀式なんだよ!?」

佐天「それを やらないなんて とんでもない!」

初春「いい加減にしてください!」


佐天の趣味には困ったものだ。

初春に対するスカートめくり――――
佐天が言うにはスキンシップの一環だそうだが、余り褒められたものではない。
だが、初春から積極的な拒絶の意志が見えないことを考えるに、まんざらでもないのかもしれない。
既に諦めている可能性もあるが。
とにかく、佐天に対して何を言っても意味がないことは明白だ。

結局、残りの時間はそのことでぎゃあぎゃあ騒いでいたのだが、


冥土帰し「佐天君、そろそろ検査の時間だよ?」

御坂妹「相変わらず周りの迷惑を考えませんね。 と、ミサカは呆れながらこの騒ぎに愚痴をこぼします」


医師と看護師が戻ってきたことでお開きとなった。

448 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/12(日) 21:15:03.04 ID:kyGuTOnD0
今日はここまで。

『妹達』の口調って結構文章が長くなるんですよね。まぁ、>>1としては文字数が稼げるからありがた(ry

次は紫色のあの人が出ます。
でも8月末から9月にかけて忙しくなるので、少しペースが落ちるかもしれません。
もちろん投稿出来るようには努力しますが。

質問・感想があればどうぞ。
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 21:53:08.24 ID:ZWXn+iLvo
紫色って誰だ
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 02:03:24.47 ID:2t45dtbDO
この場合もやしだろ?
451 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/08/26(日) 22:50:23.56 ID:+Ici/ZdQ0
これから投稿を開始します
452 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/08/26(日) 22:51:07.25 ID:+Ici/ZdQ0





――――7月26日 AM9:00





453 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 22:52:38.25 ID:+Ici/ZdQ0

『とある高校』の学生寮 土御門の部屋――――


ピリリリリ、ピリリリリ


土御門「はい、土御門だにゃー」

ステイル『ステイルだ。 お前に頼まれてた調べ物が終わったぞ』

土御門「・・・・・・随分と早いな」

ステイル「今図書館の中にいるんだが、『最大主教』が魔道書のことを知ってたみたいでね」

ステイル「件の魔道書のことはすぐにわかったよ」

土御門「『最大主教』が、か・・・・・・」

ステイル「この場に居るから、ついでに意見を聞いてみたらどうだい?」

土御門「そうか。 とりあえず、調べてわかったことを報告してくれ」

ステイル「ああ、まずは――――」

454 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 22:53:37.35 ID:+Ici/ZdQ0





――――7月25日 PM3:00





455 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 22:55:07.89 ID:+Ici/ZdQ0

イギリス・大英魔術図書館――――

地下100メートル。蔵書量100万冊。
ブルームズベリーに所在する『大英博物館(アーセナル)』の真下に位置するそれは、
世界中から集められた魔術書・魔道書を保管するために設立されたものだ。

その中にはインデックスが保有する10万3000冊の魔道書の一部も存在する。
その歴史は古く、イギリス清教が成立したとほぼ同じ時期に建設された。

『大英博物館』のスタッフは全てが魔術とは無関係の一般人であるが、
ここで働いている人達の全てが、魔術に何かしら関わりがある人間である。
保管している物が物のため、非常時の際に的確に対処できる知識を持つ人間が必要だからだ。

魔術に対抗できるのは魔術のみ。
『悪い魔術師から市民を守る』という理念掲げたイギリス清教は、
それを確実に遂行できるようにするために、あらゆる手段を用いて霊品法具を収集してきた。

その方法には窃盗や略奪も含まれており、とても口に出せないような手段を用いたこともある。
そのため、一部の人間からは『血の祭壇』とも呼称されている。

だが、それ故にこの図書館は、世界に存在する半分以上の魔術に対して有効な手段を構築することが出来る。
人の命を奪って手に入れた物で人の命を救う。
それが良いことなのかはわからないが、『守るべき物を守る』という点では正しいのだろう。

456 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 22:56:46.14 ID:+Ici/ZdQ0

シェリー「ん? そこにいるのはステイルか」

ステイル「仕事は捗ってるかい?」

シェリー「可もなく不可もなくって所かね」

ステイル「それは何よりだよ」

シェリー「っつーか、何で暗号解読班の私が実働班に回されなきゃならないんだ?」

シェリー「そりゃ、私は一応戦闘も出来るけどさ」

ステイル「仕方ないだろう。 正規の実働班はみんな出てしまっているからね」

ステイル「重要な拠点を守るためにも、無理矢理人員を確保しないといけないのさ」

ステイル「それに、暗号解読班はこの図書館が主な仕事場だろう?」

ステイル「仕事場所が一致してる分、他の人達よりはマシだと思うがね」

シェリー「私が心配しているのは、オルソラが一人で仕事をしていることなんだけどね・・・・・・」

シェリー「マイペースすぎるから手綱を握る奴がいないと不安で仕方がない」

ローラ「ステイル〜? 早く行きたるわよ〜」

ステイル「おっと、僕は用事があってここに来たんだった」

シェリー「ああ、仕事の邪魔だからさっさと行きな」

ステイル「無論、そうさせてもらうよ」

457 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 22:58:13.71 ID:+Ici/ZdQ0

ローラの車椅子を押しながら、図書館の最深部に進む。
自分の背丈の倍以上の本棚が一斉に建ち並んでいる光景には圧倒される。
しかもここにある書物の9割以上が魔術に関するものなのだ。
魔術に関わる人間がこの光景を見たのであれば、茫然として見入ってしまうことは請け合いだ。

奥に進むにつれて本棚に埃や蜘蛛の巣が目立つようになってくる。これだけの広さになると管理するのも一苦労なのだろう。
しかもこの近くは危険な封印指定とまではいかなくとも、危険な魔術書が陳列されている書架なのだ。
易々と立ち入ることができる区画ではない。

しばらく歩いていると、やがて大きく古びた木製の扉が目の前に現れた。
この扉の先が曰く付きの物品が保管されている『封印指定区域』だ。


ステイル「さて、『封印指定区域』に着いたわけだが・・・・・・『最大主教』、本当にここに?」

ローラ「全く、心配性でなりにけるわね。 この私が言うのだから間違いなしにありけるの」

ステイル「だといいんですがね」

ローラ「とにかく管理人に話を通さないと・・・・・・」

458 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 22:59:46.76 ID:+Ici/ZdQ0

『封印指定区域』とは内容、もしくは本そのものが非常に危険である書物を、魔術の心得が全くなかったり、
または未熟な人間が好き勝手に読まないように隔離して保管している区域である。

その内容は、例えば十字教に仇なすような思想が書かれてある物であったり、
目を通したら最後、理性を修復不能になるまで破壊してしまう物であったりと様々であるが、
それとは別に、『イギリス清教にとって不都合かつ容易に抹消できない物』を秘匿するための場所でもある。

それ故に『最大主教』の許可がなければ立ち入ることは出来ず、普通の魔術師にとってはほぼ無縁の場所だ。
もちろん、ステイルもここに来るのは初めてである。

扉を開き、かび臭い本棚の間を縫うようにして通り抜ける。
歩いている途中で収められている本の背表紙を一瞥してみるが、かすれていて読めない物がほとんどだった。
つまり、ここに保管されている書物は相当古い年代の代物であることが読み取れる。


途中で鉄製の箱が整然と並べられている通路があったが、おそらく特に危険度の高い書物を個別に封印しているのだろう。


ローラ「うーむ。 なかなか見あたらざりけるわね」

ステイル「侵入者用の簡易トラップが多いですね。 一つずつ見つけるのは骨が折れる・・・・・・」

ローラ「極秘文書もとても多き場所なるから、仕方なきことでありけるの」


30分ほど歩き回ってみたが、目的の人物は見つからない。
何せただでさえ広い上に、盗難防止のためのトラップが敷設されているため、
その対処をしながらの探索にならざる終えない。

書物を守るには仕方のないことではあるのだが、ここまで厳重だとかえって煩わしくなってくる。

459 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 23:01:58.99 ID:+Ici/ZdQ0

ステイル「見つかりませんね。 用事があって居ないんでしょうか?」

ローラ「しかし、彼奴がこの場所から離れたることは考えにくい・・・・・・」

ローラ「もしや自室に戻っておるのか?」

ステイル「管理人とは一体どのような人物なのですか?」

ローラ「どのような、か。 一言で表したるのであれば、『本の虫』でありけるわね」

ステイル「『本の虫』・・・・・・?」

ローラ「なにせ彼奴は三度の飯よりも本が好きと豪語したる奴でありけるの」

ローラ「だからこそ、ここの管理人に相応しいと思って任命したるのだが・・・・・・」

ステイル「何か問題が?」

ローラ「彼奴は一度本を読み始めると、周りで何が起ころうと一切反応せずになりけるの」

ローラ「それに加えて図書館の管理人に命じてしまいたるがゆえに、
本を読むことにのめり込みすぎて業務に差し支えが出てきたるのだが・・・・・・」

ローラ「かといって、本を読むことの邪魔をしたると烈火のごとく怒りたるの」

ステイル(・・・・・・かなり厄介な人みたいだな)

460 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 23:05:00.07 ID:+Ici/ZdQ0

ローラ「一度収集の呼びかけに応じなきことがありてな。 いい加減更生させようと本を取り上げたるのだが・・・・・・」

ステイル「・・・・・・取り上げたら?」

ローラ「私に向かって全力で魔術をぶっ放してきたりけるのよ」

ステイル「はぁ!?」

ローラ「いやはや、その時は本当に肝を冷やしたることよ」ハァ


たかが本が読めなくなったことぐらいで『最大主教』に攻撃を仕掛けるとは・・・・・・
その人物は『読書』という事柄に対して並々ならぬ感情を抱いているらしい。
当麻がこのことを聞けば、「ご飯を奪われたインデックスみたいだ」と言うだろう。

だんだんその管理人のことが不安になってきた。
こんな体に悪そうな場所に好きこのんで居座っている時点で、変人であることには変わりないのだが。


ローラ「おや?」

ステイル「どうしたんですか?」

ローラ「どうやら見つかるやもしれぬ」


ローラの視線の先を見ると、赤髪の少女が本棚の整理をしているのが見えた。
身長は低く、女学生が着ていそうなシンプルな服装だ。
学校の図書館ならば様になっているところだが、いかんせんこのような場所で働くような姿ではない。

461 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 23:09:14.82 ID:+Ici/ZdQ0

ローラ「そこのお主、少し聞きたきことがありけるの」

赤髪の少女「え? あ、『最大主教』様!? 何か御用でしょうか?」

ローラ「ここの管理人はどこにいたるかしら?」

赤髪の少女「管理人ですか? 今の時間であれば自室で休憩を取っているところでしょうか」

ローラ「案内したりてくれるかしら?」

赤髪の少女「はい、かしこまりました」


どうやらこの少女は管理人の居場所を知っているらしい。
彼女に会うことが出来なければ留守と判断していたところだ。
この広い空間で彼女に会えたのは運が良かったと言えるだろう。


ステイル(自分で言うのも何だが、こんな子供が『封印指定区域』の本棚を整理していて大丈夫なのか?)

ステイル(ここには危険極まりない書物がごまんとあるはずだが)

ローラ「難しき顔をして、どうしたりけるのステイル?」

ステイル「いえ、何でもありません」

赤髪少女「ではこちらです。 遅れずに付いてきてください」


ステイルとローラの二人は少女の後について行く。
どうやらこの場所で働いているだけあって、侵入者用の罠の位置は把握しているらしい。
大した労力も無く、部屋の前までたどり着いてしまった。


462 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 23:12:33.24 ID:+Ici/ZdQ0

赤髪の少女「パチュリー様、私です」

「何かしら? まだ執務の時間ではないはずだけれど」

赤髪の少女「パチュリー様にお客様がいらっしゃったので、引率して参りました」

「・・・・・・わかったわ、通しなさい」


ドアの奥から少し眠たげな声が聞こえてきた。おそらく管理人のものだろう。
部屋の中に入ると、紫髪の女が椅子に腰掛けて黙々と本を読んでいた。
着ているローブも紫、奇妙な形をしている帽子も紫。身につけている物の殆どが紫で統一されている。

ネグリジェを着ている為か、正確な体型は分からない。だが、雰囲気から成熟した肉体であることが予想できる。
被っている帽子には赤と青のリボンが結びつけられ、大きな月の装飾が施されていた。

その女は本を見ながらステイル達を一瞥したが、再び視線を本に戻して読書を再開した。
『最大主教』を前にしても本を読み続けようとするところを見るに、やはり相当な読書愛好家らしい。


紫髪の女「お久しぶりね、『最大主教』。 最後に会ったのはいつだったかしら?」

ローラ「相変わらずでありけるわね、パチュリー・ノーレッジ。 たまには日の光に当たらぬと、体にカビが生えることよ?」

パチュリー「ほっときなさい。 好きでこうしているんだから」

赤髪の少女「そんなこと言って、ここ一週間碌にお風呂に入っていないじゃないですか」

赤髪の少女「こんな不衛生な生活を続けてたら持病が悪化してしまいます」

パチュリー「リトル、あなたは黙ってて」

リトル「えぇー・・・・・・」

463 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 23:14:41.62 ID:+Ici/ZdQ0

ローラ「あなた、喘息のほうは大丈夫たるのかしら? 発作が起こったら大変なることよ?」

ローラ「それに、お風呂に入らないのは女性としてどうかと思いたるの。 私など、毎日欠かさず湯船に浸かっておるのに」

パチュリー「いいじゃない、別に入らなくても死ぬ訳じゃないんだし。 それをするくらいなら本を読んでいるほうがいいわ」


パチュリーは最後に小さい声で「めんどくさいし」と付け加えた。

それはかなりの問題発言ではないのか。世の女性達が聞いたらショックで卒倒してしまいそうな会話である。

女性というのは余程のことがない限りは毎日風呂に入り、長時間かけて念入りに体を清める。
それは女性が持つ「美しさ」に対する欲求の現れであり、その欲の強さは計り知れない。
過去においては、それが原因で国が傾いた事例が数多くある。
女性の『美』に対する執念とはかくも恐ろしいものなのだ。

その点、パチュリーという女性は『美』に対する感情が希薄のようだ。
意識が強すぎないことはいいことだが、なさ過ぎるというのも困りものである。
素質は十分にあるのに、本人がこれでは宝の持ち腐れもいいところだ。
俗に、『残念美人』と呼ばれる部類であろう。


ステイル「『最大主教』、我々がここに来た目的を忘れてはいませんか?」

ローラ「おお、そうでありけるわね」

パチュリー「・・・・・・あなたは?」

ステイル「初にお目にかかります。 ステイル=マグヌスという者です」

パチュリー「マグヌス・・・・・・『ルーン魔術の天才』と言われているマグヌスかしら?」

ステイル「図らずも、そのようなことになっていますがね」

パチュリー「なるほど。 どうやらかなり急いでいるみたいだけど、今度会ったら是非ともご教授願いたいわね」

ステイル「若輩者ですが、それでもよければ」

パチュリー「謙遜しなくてもいいわよ。 あなたにはそれだけの力があるのだから」

ステイル(・・・・・・その力を持ってしても、あの子を救うことは出来なかったけどね)
464 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 23:16:00.84 ID:+Ici/ZdQ0

ローラ「パチュリー、あなたこれ以上使える魔術を増やしていかにするつもりなりけるの?」

ローラ「あなたには『精霊魔術(イノセンス)』がありたるのに」

パチュリー「ただの興味本位よ。 私が使うのは『精霊魔術』だけだし、これ以上手数を増やしても意味ないわ」

ステイル(『精霊魔術』・・・・・・か)


ステイルはパチュリーが扱う魔術の特性を思い返していた。

『精霊魔術』とは自身が生み出した魔力に属性を付け加えて行使する魔術である。
一般の魔術との異なる点は、魔術を用いる際のプロセスの部分だろう。

ステイルを例に取ると、彼の魔術はまず自身の生命力で魔力を生み出した後、
その魔力をルーンが刻まれたカードで作られた結界内で目的に応じて変換することで、
『炎剣』や『魔女狩りの王(イノケンティウス)』を生み出している。

しかし『精霊魔術』は、魔力にあらかじめ属性を付加させてから魔術に用いる。
属性が関係する魔術を用いた場合、魔力が持つ属性によって術式が強化され、さらにランクの高い魔術に昇華する。
ステイルが用いれば『炎剣』の数を増やしたり、『魔女狩りの王』をさらに巨大化させることが出来るようになる。

だが『魔力に属性を付加する』という行為は簡単なことではない。
その技術を習得し、完璧に使いこなせるようになるには相応の時間と労力がかかる。
そのため、『精霊魔術』を用いる人間は、大抵の場合かなり年を食った人達だ。

しかしパチュリーの場合、彼女の外見は二十代前後の姿をしている。
どう考えても、『精霊魔術』を習得できるほどの年月を重ねているとは思えない。

信じられないことだが、おそらく一般にかかる年月の半分以下の長さの修練で習得したのだろう。

465 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 23:18:34.95 ID:+Ici/ZdQ0

パチュリー「まぁ私の話はここまでにして、ステイル? あなたの用件は何かしら?」

パチュリー「ここは『封印指定区域』。 この場所にある書物を利用することが何を意味しているのか、分からないわけではないでしょう?」

パチュリー「知りたい物によっては、最悪イギリス清教を敵に回す可能性だって十分に考えられるわ」

ステイル「ええ、存じています。 ですが、私の求める情報がここにあると『最大主教』が自らがおっしゃられたのでね」

ステイル「イギリス清教の内部機密に関わるようなことではないでしょう」

ステイル「それに、私が調べる書物はそれ程危険ではない代物であることが既に分かっています」

ステイル「ですからその心配は無用ですよ」

パチュリー「そう、ならいいわ。 ここを利用した結果、あなたがどうなろうと私は一切関知しないから」

ステイル「分かっています」

パチュリー「よろしい。 で、あなたが知りたいことは?」

ステイル「『ヴォルデンベルクの手記』と呼ばれる魔道書です。 どこに保管されているか分かりますか?」

パチュリー「・・・・・・今調べるわ」


パチュリーは部屋の本棚にあった分厚い本の一つを手に取ると、目的の魔道書を検索し始める。

待っている間部屋の中を見渡してみると、部屋の壁がほぼ全て本棚で埋め尽くされているのがわかった。
収められている本は、魔術の教本や世界の伝承・童話、果てにはどこから仕入れたなのか分からないものまで様々である。

さすがに漫画の類までが本棚の隅にひっそりと置かれているのを見たときは、複雑な気持ちになったが。

466 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 23:20:09.68 ID:+Ici/ZdQ0

パチュリー「・・・・・・」パラパラ

ステイル「どうですか?」

パチュリー「・・・・・・あった。 Aランク区画の21番目の箱に保管されているわね」

パチュリー「リトル、案内してあげなさい」

リトル「かしこまりました」

ローラ「ステイル、私はここで待ちたるでありけるの」

ステイル「・・・・・・何故?」

ローラ「彼女とは久々に会いたりけるゆえ、たまには世間話でもと思いたるだけでありけるの」

ステイル「・・・・・・変な騒ぎは起こさないでくださいよ? 後始末をするのは私なんですからね」

ローラ「本当に信用がなきにありけるわね。 と言うかお主、最近私を子供扱いしておるのではないか?」


ステイルは少し肩をすくめた後、リトルの後について部屋を出て行った。
残されたのはローラとパチュリーの二人のみ。
パチュリーはステイルの後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。

467 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 23:22:39.04 ID:+Ici/ZdQ0

パチュリー「・・・・・・」

ローラ「どうしたりけるの、パチュリー?」

パチュリー「まさか、またあの魔道書の名前を聞くことになるとはね・・・・・・」

ローラ「ああ、あなたの父親も関わっていたでありけるわね」

ローラ「未だに引きずっておりたるのかしら?」

パチュリー「冗談。 もう全て終わったことなのだから、今更どうこう言うつもりはないわ」

ローラ「そう・・・・・・」


そこで二人の会話は途切れる。
だが、その部屋に流れた雰囲気にはまだ言葉に表されていない思いがあるように思えた。

468 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/08/26(日) 23:24:04.02 ID:+Ici/ZdQ0
今日はここまで。
質問・感想があればどうぞ。
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 23:59:55.87 ID:s4CtoNXIO
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/27(月) 04:21:05.47 ID:tGDqzcSxo
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 10:32:03.09 ID:mf/I91wDO
レミィ側では無い……のか?

それにパチェさんが…成…熟?
構わん。続けてくれ。
472 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/09/02(日) 20:27:46.61 ID:EkPzwhUs0
これから投下を開始します。
473 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/09/02(日) 20:28:18.02 ID:EkPzwhUs0





――――7月25日 PM4:00





474 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:29:17.36 ID:EkPzwhUs0

ステイルとリトルは目的の魔道書の保管場所に向けて黙々と歩いている。

パチュリーの部屋を出てから今まで一度も会話をしていない。
出会ってからそれ程経っていないのだから、会話をする内容がないのだろう。
互いのことを何も知らないのだから当然のことと言える。

ステイルもそれ程気にもならなかったが、このまま会話がないのもあれなので、
先ほど自分が疑問に思ったことを目の前の少女にぶつけてみることにした。


ステイル「少し聞きたいことがあるのだが」

リトル「なんでしょう?」

ステイル「どうして君はこんなところで働いているんだい?」

リトル「そんなに不思議なことですか?」

ステイル「不思議も何も、この場所は多くの魔道書を保管している危険な区域だ」

ステイル「パチュリーは相当な実力者のようだからここを任されているのだろうけど、君はそれ程熟練した魔術師とは思えない」

リトル「そうですか? もしかしたら実力を隠しているのかも知れませんよ?」クスクス

ステイル「それはないな。 君からは魔術師特有の匂いを感じない」

ステイル「魔術師というのは術の力を上げるために色々薬品を使うことがあるからね」

ステイル「何より――――」





ステイル「君はまだ人を殺したことがないだろう?」

リトル「・・・・・・」

475 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:30:00.03 ID:EkPzwhUs0

『必要悪の教会』というのは魔術師に対抗するために作られた組織である。
『対抗』と言っても様々な方法があるが、基本的に荒事になることが殆どだ。
そのため、ここに所属する人間は一部の例外を除いて『殺し』の術を持っている。

ステイル自身、数こそ少ないものの人を殺したことはある。
それは仕事のためであったり、己の信念のためであったりと理由は様々であるが、
いずれにせよ彼は人一人の人生を自分の手で奪っているのだ。
『殺人』という行為は相応の覚悟を持たなければ出来るものではない。

しかし、目の前の少女からは魔術師が持っているべき覚悟が感じられないのだ。
『一部の例外』に入る人物なのかも知れないが、魔道書を隔離保管しているこの区域でそれはあり得ない。

魔術師でないとするならばそれ以外の、例えば聖人のような生まれついての体質が理由でここに配置されているとするのが妥当か。
だが聖人は世界で数十人しかいないほどの希有な存在だ。
このような薄暗いところで飼い殺しにしておくのは考えられない。

他に理由があるとすれば・・・・・・


ステイル「『悪魔憑き』・・・・・・か?」

リトル「・・・・・・」

ステイル「・・・・・・そうか」

476 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:30:46.75 ID:EkPzwhUs0

一般的な『悪魔憑き』というのは憑依の一種であり、悪霊または悪魔が人間に取り憑く現象のことを指す。
悪魔憑きの者は行動が凶暴になり、自身にとって邪魔な人物を滅ぼしたり呪いをかけたりなど、
本来ならば決して起こさないような行動を取る。
最終的には周囲との人間関係が破綻し、その本人は自殺などの破滅を迎えると言われる。
彼らの治療は『悪魔払い(エクソシズム)』の専門家によってなされるが、ここでは割愛しよう。

以上が一般に認知されている悪魔憑きであるが、魔術師にとってこの言葉はそれとはまた別の意味となる。
魔術師の世界における悪魔憑きとは『生まれながらにして異世界の法則を理解できる者』を指す。
つまり、特別な訓練を受けずとも魔道書を閲覧できる人々のことを言うのだ。

世界には、聖人ほど少なくはないが数百人の悪魔憑きがいると言われている。
だが、一般に認知されている悪魔憑きとは違い、見た目は正常な人間そのものであり、
聖人のような強靱な肉体を持っているわけではないため、魔術に関わらずに一生を終える者が多い。
しかし、強い魔力を浴びると肉体に変調をきたすため、魔術師にとっては判別は容易だ。

魔女狩りが盛んであった時代は、一般であれ魔術的であれ悪魔憑きの疑いがあるだけで処刑される事例が多々あったが、
現在においては『魔道書を扱える人材』として少数ながら組織に雇われている者がいるらしい。

だが、そうした人達は組織の底辺に位置されるのが殆どだ。
さらに内部からの迫害もあるため、聖人とは違いその存在自体が秘匿される。
今まで『必要悪の教会』の中で情報が広まっていなかったのもそれが原因であろう。

477 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:31:34.35 ID:EkPzwhUs0

ステイル「まさか、この目で見ることが出来るとはね」

リトル「軽蔑しますか?」

ステイル「してほしいのかい?」

リトル「え・・・・・・?」

ステイル「ここの仕事を任されているんだろう? 何故君を見下す必要がある?」

ステイル「君はここにいる資格がある。 それに関して僕がどうこう言う必要はないだろう」

リトル「・・・・・・変わった人ですね」

ステイル「自分の信念に基づいて行動しているだけさ」

ステイル「僕の進む道を邪魔しない限りは、僕は何もしないよ」


『仕事になったら話は変わるけどね』とステイルは最後に付け足した。
478 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:32:23.90 ID:EkPzwhUs0





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





479 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:33:40.30 ID:EkPzwhUs0

その後、何も会話することなく彼らは目的の書架に付いた。
目の前にあるのは頑丈な鉄の箱。箱の蓋には大きく『21』と刻まれている。
錠のような物は見あたらないが、おそらく魔術で錠が施されているのだろう。


ステイル「これがそうかい?」

リトル「はい、今からロックを外すので少し離れていてください」


リトルはそう言うと、懐から金属製の板を取り出した。
薄暗がりでよく見えないが、ルーンらしき文字がびっしり刻まれているのが見て取れる。
その板を箱の上にのせ、さらにその上に手を置くと、彼女は微かな声で呪文を唱え始めた。


リトル「――――」ボソボソ

ステイル(なかなか複雑な呪文だな。 保存されている物を考えれば当然のことかもしれないが)

ステイル(ヘブライ語、フェニキア語、アラム語の複合か・・・・・・? そんなめちゃくちゃな呪文を覚えられるとはね)


ステイルがそんなことを考えていると、突然『カシャン』と何かが砕けるような音が聞こえた。どうやら解錠が終わったらしい。
リトルは重そうな鉄の蓋を開けると中身の状態を確認し、一冊の古いメモ帳を丁寧に取り出した。

そのメモ帳は相当痛んでおり、あちこちに茶色いシミを作っている。一般人が見たら問答無用でゴミ箱に捨ててしまうだろう。
これの持ち主は相当ぞんざいな扱いをしていたのか、もしくは何度も手にとって眺めていたのか。

リトルは『ヴォルデンベルクの手記』を中身を流し読みしている。
『流し読み』と簡単に言うが、魔道書を相手にそれが出来るのは、彼女が悪魔憑きだからに他ならない。

480 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:34:32.40 ID:EkPzwhUs0

ステイル「どうだい?」

リトル「認識阻害の魔術が使われているみたいです。 レジストできないと中身が読めないですね」

ステイル「術式はどんなものかわかるかい?」

リトル「そこまでは・・・・・・でも、この魔道書独自のものである可能性があります」

ステイル「ふむ。 『最大主教』のところに戻って色々試してみよう」

ステイル「幸い、レジストに失敗しても危険は無いみたいだからね」


おそらく、この魔道書を一番知っているのはローラだろう。
これを所持していた魔術師のことも未だにはぐらかされたままだ。
さっさと戻って話を聞いてみるとしよう。

481 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:34:59.48 ID:EkPzwhUs0





――――7月25日 PM4:20





482 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:36:10.15 ID:EkPzwhUs0

ステイル「さて、教えてもらいますよ」

ローラ「そんなに慌てなくても教えるでありけるの」


部屋に戻ってきたステイルは開口一番で問い詰めた。
魔道書の方は施されている魔術の解除に時間がかかることが予想されたため、
それが終わるまでの時間にローラから話を聞くことにしたのである。

その作業にパチュリーが協力を申し出たのは意外だったが、
彼女であれば書物というものに興味を引かれるのは当然のことかもしれない。
それならばということで今は彼女に作業を任せており、ステイル自身はローラの話を聞いてから加わるつもりだ。

二人がかりで無理なら暗号解読班の人達に協力してもらう必要がある。
丁度シェリーがここにいることだし手間はかからないだろう。

ちなみにローラは戦力の内には入っていない。
おそらくめんどくさがるだろうし、彼女に貸しができたら何をされるか分からないからだ。


ローラ「ステイル、この魔道書に書かれているのは何かわかりけるかしら?」

ステイル「それを聞こうとしてあなたがはぐらかしたんでしょう?」

ローラ「そうだったかしら?」

ステイル「・・・・・・」

ローラ「まぁよい。 おぬし、この魔道書を見て何か疑問は沸きたるかしら?」

ステイル「疑問、ですか? それなら見る前からありますが」

ローラ「ほう?」

483 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:36:46.70 ID:EkPzwhUs0

ステイル「土御門の話では、魔道書の定義である『異世界の法則』が書かれていないどころか、魔術そのものすら書かれていないらしいこと」

ステイル「他者の閲覧を防ぐための方法が認識阻害というぬるい魔術であること等色々とね」

ステイル「ここまで来ると本当に魔道書なのか疑問ですね」

ローラ「その通り。 あれは魔道書として分類されているが、魔道書ではない」

ステイル「それはどういう・・・・・・」

ローラ「内容が内容でありけるから、魔道書扱いにして厳重に保管したるの」

ステイル「何故その必要が?」

ローラ「この本には『吸血鬼』のことが書かれておるからな」

ステイル「吸血鬼・・・・・・」


吸血鬼。魔術師の間では『カインの末裔』と称される血を啜る怪物。

不老不死であり、血を吸った人間を同じ吸血鬼にしてしまうと言われているが、真相は定かではない。
なぜなら、そこまで強力な存在であるにもかかわらず、今まで吸血鬼の存在が明確に確認されたことがないからだ。
言ってしまえば『未確認飛行物体(UFO)』や『未確認生物(UMA)』の類のものである。
そんなものであるから、オカルトを扱う魔術師にとってもオカルトじみた存在だ。

実はステイルは吸血鬼が関係した事件を追ったことがある。1年前の三沢塾の一件がそれだ。
その事件の中心人物に『吸血殺し(ディープブラッド)』と呼ばれる力を持つ少女がいた。
なんでも、『吸血鬼を呼び寄せて自分の血を吸った吸血鬼を灰にする力』らしいが、その力を見ることは叶わなかった。

そもそも、それを阻止することが目的だったのだから当然のことではあるが。

484 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:38:02.84 ID:EkPzwhUs0

ステイル「とすると、その魔術師達というのは吸血鬼の研究をしていたのですか?」

ローラ「うむ」

ステイル(まさか、あれを大まじめに研究している人がいるとはね)

ローラ「本当ならば荒唐無稽な研究として無視しているはずのものだったのだがな」

ローラ「『吸血殺し』は知っておろう?」

ステイル「当然ですよ。 当事者だったんですから」

ローラ「あの力は吸血鬼を殺すもの。 もし本当にそのような力が在りしことになりけるなら、逆説的に吸血鬼の存在が証明されたることになる」

ローラ「存在せざるものを殺すことはできぬことでありけるの」

ステイル「だから万が一、吸血鬼と魔術師が接触することがないように私が派遣された」

ローラ「こちらで保護せざれなかったのは残念なりしことではあるが、『吸血殺し』の封印は果たすことができた」

ローラ「これで仮に吸血鬼が存したりことにしても、呼び寄せられて他の魔術師の目に付くことはなかろう」

ステイル「ええ。 インデックスが渡したケルト十字架は、簡易的な『歩く教会』ですからね」

ステイル「自分から外したり、故意に破壊されない限りは大丈夫でしょう」


ケルトの十字架は少女の力を封印することに成功した。
その結果、少女は今まで通っていた学舎を去ることになったのだが、彼女にとってはそれで良かったのだろう。

485 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:39:03.67 ID:EkPzwhUs0

ローラ「とりあえずこの話は終えるとして、本題に入りにけるかの」

ローラ「ここでの問題は、今まで完全に絵空事と伝えられし吸血鬼が、『存在するかもしれない』という域にまでになりけりたること」

ローラ「研究したる魔術師一族が吸血鬼の力を得にしこととなれば、十字教全体を揺るがす大事となる」

ローラ「その可能性が出てきた以上、見過ごすわけにはいかなかったでありけるの」

ステイル(魔力は術者の生命力に比例する)

ステイル(つまり、不老不死になることは無尽蔵に魔力を生成できるようになることと同義だ)

ステイル(無限の魔力を持つ魔術師が現れるとなれば、当然の行動か・・・・・・)

ローラ「幸い、奴等があの魔道書を使って研究をしたることは把握していたるからの」

ローラ「研究内容を含めてこちらに提出するように持ちかけたるのだがな・・・・・・」

ステイル「素直に言うことを聞かなかったと」

ローラ「500年近くに及ぶ研究成果を他人に見せたくなかったのであろうな」

ローラ「いずれにせよ私は彼らを『異端者』とし、魔道書を回収せんとしたのだが、想定外の事態が発生してのう」

ステイル「魔術師の抵抗が予想以上だった?」

ローラ「それならまだ良かった。 なぜなら――――」

486 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:39:30.94 ID:EkPzwhUs0





――――7月26日 AM10:00





487 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:40:47.73 ID:EkPzwhUs0

土御門「・・・・・・俄に信じられないな」

ステイル『それは僕も同じだよ』


電話越しに二人はそう言いあった。

その顔に見えるのは危機感。
『最大主教』が言ったことが事実ならば、そして『それ』が魔術師達に認知されたら、
世界中の魔術組織が学園都市に殺到することになる。
もし『それ』を手に入れることができれば、一気に魔術サイドの覇権を握れるかもしれないのだ。
そうなれば魔術サイド内で、『それ』を巡った血で血を洗う抗争が繰り広げられることになる。

現在の魔術と科学の膠着は、自分自身の戦力の回復に専念する結果で成り立っている。
いま魔術サイドで戦争が起これば、戦力の回復が遅れて科学サイドに大きな隙を晒すことになりかねない。

それだけではない。学園都市にはインデックスがいる。世界中の魔術組織が、彼女をみすみす見逃すはずがない。
いくら上条当麻でも、一人では複数の敵を相手に彼女を守りきることはできない。


土御門「『最大主教』は何と言っている?」

ステイル「こちらからは一人派遣するそうだ。 今日の夜にでもそっちに着く」

488 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:41:40.63 ID:EkPzwhUs0

土御門「一人? いくら何でも少なすぎるだろう。 最低でも三人は送ってくれると思ってたんだが?」

ステイル「確かに複数人いれば足止めしながら攻略できるだろうが、生憎こちらも人手不足だ。 
重要な箇所の守りを緩めるわけにもいかないだろう」

ステイル「『最大主教』の権限で無理矢理集めることはできるかもしれないが、そんなことをしたら王室派や騎士派が黙っていない」

土御門「・・・・・・仕方ない、人員はこちらで集める」

ステイル「必要はないと思うがね。 どうやら『そいつ』はまだ完全じゃないみたいだし」

ステイル「そもそも完全だったらこの程度の騒ぎじゃ済まないんだけどね」

土御門「・・・・・・海原あたりに声をかければいいかにゃ〜」

ステイル「後はよろしく頼む」


その言葉を最後に、ステイルと土御門の会話は終わった。
魔術による通話なので、電話の通話終了音は聞こえてこない。

外では遠くから街の喧噪が響いてきている。本格的に1日が始まったようだ。

自室で土御門はただ一人、


土御門「にしても、カミやんにどう説明しようか」

土御門「どうしてこうも立て続けに面倒事が起こるんだろうにゃ〜・・・・・・」


と、ぼやいた。

489 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/02(日) 20:51:09.92 ID:EkPzwhUs0
今日はここまで。

そろそろ半年ですね。ここまででスレの半分を消費したということは大体一年で1スレ消費ということでしょうか。

実のところ、書き溜めしてある文章量で言えば半分も進んでいないという現実。
完結するのは何時になることやら・・・・・・

まだ手は付けてないけど、この後に妖々夢編と永夜抄編も書くつもりなんだぞ?こんなペースで大丈夫か?
妄想ばかり膨らんでも全く文章に書き起こせない。どうしてこうなった。

霊夢さんが学園都市にやってくる再構成の話とかすごく書いてみたい。


質問・感想があればどうぞ。
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 20:54:39.33 ID:V4Qh3fQIO

そういやスレ立てから半年か…
ゆっくりでもいいので頑張って頂ければと
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 02:39:28.43 ID:C6Q9i0FDO
乙!
ようやく話が大きく動き出すのかな?

一人の応援者ってのは…、
紅魔で、魔術で、解決側なら…やっぱり彼女なんだろうか?
492 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/09/09(日) 23:47:18.78 ID:Xh4CHKiB0
これから投下を開始します。
493 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:47:52.09 ID:Xh4CHKiB0





――――7月26日 AM10:30





494 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:48:47.74 ID:Xh4CHKiB0

上条「お〜い、そろそろ行くぞ〜」

禁書「もうちょっと待つんだよ!」ゴソゴソ


当麻とインデックスは出かける準備をしていた。
今日は補習のお誘いが来なかったので、こうして二人で外を出歩くことがことができる。

どうして出かけるのかと言われれば、冷蔵庫の中身の補充だとか、壊れた携帯電話の修理だとか色々あるが、
一番の目的は昨日出会ったフランドール及びその姉の様子の確認である。

そうはいっても少しだけ彼女の家に立ち寄るだけだ。さすがに昨日の今日でいきなりお邪魔しては失礼であろう。


上条(でもフランなら気にしないような気もするけどな)

禁書「〜♪」

上条(それにしても、何でこんなに嬉しそうにしているんだ?)


それはここ最近当麻が補習に付きっきりなおかげで、余り一緒に出歩くことがなかったからである。
昨日にしても、途中で第三者(御坂美琴)の乱入があったために、満足することができなかったのだ。

495 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:49:18.77 ID:Xh4CHKiB0

上条「えーと、フランに家の住所どこだっけ?」

禁書「第14学区の●●地区××番地だよ」

上条「ケータイ、ケータイっと・・・・・・」

禁書「何に使うの?」

上条「端末を使ってフランの家を特定するのさ。 道順は・・・・・・」

禁書「そういえばどうまのけーたいっていつ変えたの?」

上条「昨日の朝に味噌汁ぶちまけちまって故障した。 これは予備だ」

禁書「とうま、『また』けーたいを壊したんだね」

上条「俺だって壊したくて壊した訳じゃねぇよ・・・・・・」シクシク

上条(できれば今日中にケータイを修理したいところだけど・・・・・・)


当麻の携帯電話は味噌汁を被ったままなので、普段は使っていないスペアを使うことになっている。
一応友人達にはスペアの携帯電話の電話番号を教えてはいるが、なるべく早く修理したいところだ。

496 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:50:14.93 ID:Xh4CHKiB0

ところでインデックスが学園都市に来てから早一年が経つが、どうやら彼女は携帯電話を自由に使いこなせるようにはなったようで、
最近は『打ち止め(ラストオーダー)』と頻繁にやりとりをしている。

彼女は元々学園都市外部の人間であり、魔術サイド側の人間でもあるため、学園都市の学校に通うことはできない。
学園都市の超能力開発を受けてしまうと魔術が使えなくなってしまうためだ。
彼女自身は魔術を使うことは出来ないのだが、肉体に刻まれている『自動書記』や、
彼女の様子をイギリス清教に伝える術式などに何らかの悪影響が出ないとも限らないのである。

学校に通うことの出来ない彼女は『学友』というものが作れない。
その結果、学生が大半を占める学園都市では自然と孤立してしまうことになる。

確かにステイルや神裂、風斬氷華という知り合いはいるが、前者の二人は海外で仕事、
後者は滅多に会うことは出来ず、しかも今は行方不明の状態であるため、もっぱら彼女は当麻と一緒に行動していた。

だが、当麻が一方通行と接点を持つようになったことで、彼の家族である打ち止めや『番外個体(ミサカワースト)』、
その保護者である黄泉川愛穂や芳川桔梗と知り合った。
今ではたまに家に遊びに行ったり、遊びに来たりする仲にまでなっている。


上条(でも、頻繁に電話をかけるのはいかがなものかと思うのですよ)

上条(このままだと上条さん、インデックスの将来が心配です)

上条(・・・・・・何ジジくさいこと考えてんだ俺)

禁書「あ、とうま、何か出たよ」

上条「ん、何々・・・・・・?」

497 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:51:58.85 ID:Xh4CHKiB0


当麻は画面に表示された文面を読み取る。
どうやらフランの家に着くまでにかかる時間はおおよそ3時間強。途中で休憩することも考えると、もう少し時間がかかるだろう。
道中で昼食を取ってから向かったほうがいいかもしれない。


上条「41分のバスに乗ればいいかな。 インデックス、準備はできたか?」

禁書「できたよ!」

上条「ならばよし! それじゃあ、未知なる世界へ向けて出発だ!」

禁書「レッツ・ゴーなんだよ!」


目指す先は第14学区西欧圏。
あの場所は海外からの留学生が居を構えている区画であるため、当麻は一度も立ち入ったことがない。
記憶を失う前は定かではないが、おそらく行ったことはあるまい。

海外の文化が密集する地区に期待を膨らませながら、二人は意気揚々と部屋の外に踏み出した。


姫神「上条君。」

上条「おっと・・・・・・?」


が、いきなり姫神秋沙と遭遇した。
意外な人物との遭遇に、当麻は驚きの声を上げる。

498 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:52:59.41 ID:Xh4CHKiB0

上条「ど、どうしたんだ姫神、何か用か?」

姫神「うん。 上条君に用があるの。」

上条「え?」

禁書「・・・・・・」


姫神が何かの用事で当麻の部屋に来るのは非常に珍しい。
学校ではそこそこ会話することがあるが、こうして寮の中で会話することはほぼ皆無と言っていい。
当麻自身も(色々不幸が起こるので)女性に部屋にお邪魔する勇気はないし、彼女の方も特に何もないようなので、当然のことだろう。

・・・・・・というのは当麻の勘違いであり、姫神は何度も当麻の部屋を訪問しようとしているのだが、
恥ずかしくて後一歩を踏み出せないでいるだけである。

そのおかげでいろいろなライバルに先を越されているようであるが。


姫神「ねぇ。 昨日変なこと無かった?」

上条「変なことって・・・・・・どうしていきなり?」

姫神「答えて。」ズイッ

上条「う・・・・・・」

上条(まいったな・・・・・・。 まさか魔術師がやって来てるかもしれないなんて言えるわけないし)


何故彼女がここまで真剣な顔をしているかは分からない。
でも本当のことを喋れば姫神を魔術サイドのいざこざに巻き込むかもしれない。
彼女も魔術とは無関係とは言えないのだが、実質一般人と同じようなものだ。

返答に窮した当麻は・・・・・・

499 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:53:50.01 ID:Xh4CHKiB0

禁書「何もないんだよ」

上条「インデックス?」

禁書「とうまはこれから私と一緒にお出かけするんだよ。 だからこの話はこれでおしまい!」

姫神「・・・・・・私は上条君に聞いているの。 話の腰を折らないで。」キッ

禁書「私ととうまは急いでいるんだよ。 だからお話はまた今度にして欲しいな」ジロッ

姫神「・・・・・・」ゴゴゴゴ

禁書「・・・・・・」ゴゴゴゴ

上条「あの・・・・・・お二人さん?」


インデックスが助け船を出したかと思われたが、かえって状況が悪くなっている。
二人の間に視線の火花が散っているのを幻視できそうだ。
状況が掴めない当麻はその場であたふたするばかりである。

このまま上条争奪戦が始まるかと思われたが・・・・・・


姫神「・・・・・・ふぅ。 インデックス。 あなたは勘違いしている。」


姫神は自分から怒りの矛先を納めた。

500 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:54:55.38 ID:Xh4CHKiB0

姫神「私には。 今すぐ聞かなくちゃならないことがあるの。」

禁書「・・・・・・例えば? 」

姫神「私の力に関することだとしても?」

禁書「え・・・・・・」

上条「・・・・・・何だって?」

姫神「上条君。 私の力がどんなものか知ってるよね?」

上条「ああ、『吸血殺し』だろ? 自分の血を吸った吸血鬼を灰に還すっていう・・・・・・」


『吸血殺し』。
姫神秋沙がもつ『吸血鬼を引き寄せ、死に至らしめる能力』。かつてはその力を巡って錬金術師と激突したこともある。
その効果を実際に見たことがあるのは姫神本人だけであり、本当にそのような能力なのかは定かではないが、
それでも魔術師が手を出そうとするには十分な代物である。
もしその力が本物であるのなら、幻とも思われている吸血鬼に会うことが出来るのだから。


姫神「そう。 それが私の力。 でもこの力には副産物のようなものがある。」

上条「副産物?」

姫神「血液のことに詳しくなったり。 血の匂いに敏感になるの。」

上条「へぇ〜、そうなのか」

姫神「ここまでは蛇足。 本題はここから。」

501 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:55:23.71 ID:Xh4CHKiB0

姫神「昨日。 ものすごく強烈な血の匂いが街の方角から流れ込んできた。」

姫神「あれだけ強い血の匂いを感じ取ったのは10年ぶり。」

上条「何でそんな?」

姫神「わからない。 学園都市に来てから何度か濃い血の匂いを感じ取ったことはある。」

姫神「でも。 あそこまでの匂いを嗅いだことはなかった。」

姫神「あれはもう。 人間が出せるようなものじゃない。 もっと根本的に違うもの。」

上条「じゃあ一体・・・・・・」

姫神「・・・・・・吸血鬼。」

禁書「え?」

姫神「あれは吸血鬼の匂い。 吸血鬼の肉体から漏れ出している鮮血の香り。」

禁書「ちょ、ちょっと待つんだよ! いきなりそんな・・・・・・」

姫神「これは間違いないこと。 私は10年前。 故郷で実際にその匂いを嗅いだのだから。」

禁書「本当に会ったことがあるの?」

姫神「うん。」

上条「・・・・・・」

502 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:56:50.85 ID:Xh4CHKiB0


姫神が自分の能力を自覚することになった10年前の事件。
彼女からは直接語られていないために、その事件のことを詳しく知っている訳ではないが、
彼女の表情からは本当にその事件があったのではないのかと思えるほどの憂いを感じることが出来た。


姫神「もう一度上条君に聞く。 昨日何か変なことなかった?」

上条「・・・・・・ああ、あったよ」

禁書「とうま!」

上条「インデックス、昨日の話覚えてるか?」

禁書「どうしたのいきなり」

上条「あの話に出てきた魔道書、確か吸血鬼のことが書かれてるって言ってたよな?」

禁書「確かにそうだけど、でも・・・・・・」

上条「今の俺達には情報が圧倒的に少ない。 僅かでも手がかりになるのなら、それを逃す手はない」

上条「それに、姫神の話・・・・・・何か関係があると思うんだ」

禁書「・・・・・・わかったんだよ」


今回侵入してきている魔術師に関係があるであろう、吸血鬼の生態を記した『ヴォルデンベルクの手記』と呼ばれる書物。
そして魔術師の存在の発覚と同時に、姫神は吸血鬼の気配を感知した。
この二つの事柄に何らかの因果関係を見出そうとしてしまうのは、ある意味必然とも言える。

503 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/09(日) 23:57:27.70 ID:Xh4CHKiB0

姫神(私は。 上条君に質問に来ただけのつもりだったのだけど。)

姫神(私の想像以上に。 危ないことになってるみたい。)

上条「姫神、俺達も用事があるし、良かったら一緒に来るか?」

上条「それなら道中で説明できるし」

姫神「わかった。」


姫神が感じたという吸血鬼の気配。
そして学園都市に侵入した魔術師に関係があると思われる、吸血鬼の情報を記した魔道書。
何となくではあるが、この二つにはつながりがあるように思えた。


禁書「はぁ・・・・・・」

上条「分かってるさインデックス。 姫神が必要以上に関わらないようにするから」

禁書(当麻は何も分かってないかも)


インデックスが溜息をついたのは別の理由からなのだが、当麻はそれに気づくことはない。
相変わらず女心には鈍い男である。

504 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/10(月) 00:04:55.12 ID:U/ZE8N4K0
今日はここまで。

姫神さんが登場。まぁ吸血鬼と言ったらこの人は外せませんよね。

質問・感想があればどうぞ。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/10(月) 15:35:15.09 ID:uYGFGfDDO
吸血鬼消されてまうん?
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 06:32:07.34 ID:Fy7rzZlDO
今更だけど、一瞬だけでも強い能力使えて良かったね。佐天さん!
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 10:01:42.41 ID:2tJKKFwj0
魔術師の言う悪魔憑きとやらが嫌われてるのには、僻みだとかも含まれていそうだな。
508 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/09/17(月) 17:58:49.78 ID:4MF8VVK20
これから投下を開始します。
509 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 17:59:31.26 ID:4MF8VVK20





――――7月26日 AM10:50





510 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:00:21.98 ID:4MF8VVK20

〜〜♪ 〜〜〜〜♪


黒子「はい、こちら白井ですわ」

初春『初春です。 白井さん、今回の事件の情報が来ましたよ!』

美琴「来たみたいね」


冥土帰しの病院の屋上。黒子と美琴は佐天が最後の身体検査を受けている間、初春からの連絡を待っていた。
待っていた連絡とは、風紀委員支部に届いているであろう今回の佐天が襲われた事件の情報だ。

今回の事件は初めて犯人の姿を確認できた案件である。当然『警備員』はその情報を纏めるために奔走しているだろうし、
『風紀委員』の方にも『警備員』から何らかの指示が通達されているかもしれなかった。
初春は佐天の見舞いを終えた後に速やかに支部へ向かい、事件の情報を整理した上で二人に連絡をしてきたのである。


黒子「それで、どんな情報ですの?」

初春『最初に佐天さんが発見した人のことなんですけど、被害者はその近辺を根城にしているスキルアウトの女性ですね』

初春『現在は目を覚まして佐天さんとは別の病院で治療を受けています。 後遺症とかもないみたいですね』

511 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:01:20.93 ID:4MF8VVK20

黒子「治療を受けていると言うことは、やはり血を抜き取られていたんですの?」

初春『そうですね。 搬送されたときは若干血圧が低下していたようですし』

初春『首筋にも刺し傷が付いてたそうなので間違いないと思います』

美琴(それにしても被害者の血が抜き取られている・・・・・・か。 まさか・・・・・・)

美琴「ちょっと黒子」

黒子「何ですのお姉様?」

美琴「佐天さんも言ってたけど、血が抜き取られてるって何よ。 そんな話初耳なんだけど?」

黒子「お姉様には伝えていませんでしたわね。 本来ならば一般人に教えるような内容ではありませんし」

美琴「・・・・・・教えなさい」ガシッ

黒子「お、お姉様? そんなに必死になられてどうしたんですの?」

美琴「いいから早くしなさい!」

黒子「わ、分かりましたから落ち着いてくださいまし! これでは話せませんわ!」

美琴「・・・・・・ごめん」

512 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:02:32.83 ID:4MF8VVK20

美琴の脳裏に苦い記憶が蘇る。
『絶対能力進化』のために生み出された自分のクローン体である『妹達』。
彼女達を生むために必要なDNAマップを提供したのは、他ならぬ自分だ。

もちろん美琴自身は実験に協力する意志があったわけではない。
そもそも難病である筋ジストロフィーの治療な為にと称して、DNAマップを提供する案を持ち込まれたのである。
だいぶ幼い頃のことであったし、他人のことを疑うことなど無かった時期だ。
善意でその案に同意してしまったのも無理もない話である。

だが、その結果2万人に及ぶ自身のクローンが生み出され、その半数近くが実験の犠牲になったのは否定しようのない事実だ。

もしも、採取された血液を使ってクローンが作られていたら・・・・・・
そしてクローンを使ってあのような実験が行われていたら、あの悪夢がまた再来することになる。


美琴(あんなこと・・・・・・絶対に繰り返させたりなんかしないんだから!)

初春『白井さん? 何かありましたか?』

黒子「え? あぁ、何でもありませんわ」

初春『そうですか?』

黒子「初春、固法先輩に変わっていいただけません?」

初春『わかりました。 固法先輩、白井さんが替わって欲しいそうです』

513 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:03:21.76 ID:4MF8VVK20

黒子としてはこれ以上美琴を事件に関わらせたくはない。
だが、正義感が人一倍強い美琴を説得できるとは到底思えない。
ならば事件の情報を教えるべきか?しかしそれを自分が決めてしまっても良いのだろうか。

彼女自身、自分の判断だけで行動をするようなことは度々あるが、
それは独断専行による責任を全て自分が引き受けるという覚悟があるからである。
しかし今回は自分の決定が他の人間に影響を与える場面だ。そのような重大な決断まで自分勝手にすることはよろしくない。
せめて自分の上司である固法に話を通した方が賢明である。


固法『はい、固法よ。 何かしら?』

黒子「実はお姉様が『連続通り魔事件』の情報を詳しく教えて欲しいと・・・・・・」

固法『あら? どうして御坂さんが?』

黒子「それは分かりませんわ。 でも、かなり深刻な顔をしておりましたし・・・・・・」

固法『何か心当たりでもあるのかしら?』

黒子「それは分かりませんわ。 問い質しても、たぶん教えてはくれませんでしょうし・・・・・・」

固法『そう・・・・・・』

黒子「それで、お姉様にこの事件の詳細を教えてよいものかと相談を・・・・・・』

固法『いいんじゃない?』

黒子「え?」

514 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:04:22.23 ID:4MF8VVK20

固法『御坂さんはかなり頑固だし、教えなくても自分から事件に突っ込んでいきそうだし』

黒子「・・・・・・否定はできませんわね」

固法『それなら事件に協力してもらった方がこちらで手綱を握れるでしょう?』

黒子「たしかに・・・・・・」


自分勝手な行動を起こされるよりは、自分たちの目の届く範囲においた方が何かと安心だ。
何かあった時にすぐ連絡が取れるし、一緒に行動を起こす時も色々と都合が良い。
問題としては荒事になった時に巻き込まれるかもしれないという所だが、美琴の場合はその心配はないだろう。


固法『だから、あなたの口から事件の詳細を話しなさい。 何かあったら私が責任を持つから』

黒子「・・・・・・わかりましたわ」

固法『お願いね。 それじゃあ初春さんに電話戻すわ』

黒子「了解ですわ」

黒子(それにしても、結局こうなるんですのね)


初春に電話が替わる間、黒子は心中で大きな溜息をついた。
こうも簡単に一般人を『風紀委員』の仕事に参加させては、もはや規律も何もないような気がする。

まぁ、一年前の時点で既にこんな状態なのだから、今更何を言っても手遅れなのだが。

515 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:05:22.23 ID:4MF8VVK20

美琴「それで、固法さんはどう言ってたの?」

黒子「この事件に協力することを許可してくれましたわ」

美琴「そう・・・・・・」

黒子「その代わり、あまり無茶な行動は慎んでくださいまし」 

黒子「と・く・に、自分勝手に行動するのは禁止でございますわ」

美琴「わかってるわよ」

黒子「そうだと良いのですがね・・・・・・初春?」

初春『はい』

黒子「それで、他の情報のことなのですが・・・・・・」

美琴「黒子、その話の続きは支部の方に行ってから聴きましょ」

黒子「お姉様?」

美琴「佐天さんの診察もそろそろ終わるだろうし、準備ができ次第そっちに行く」

516 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:06:13.07 ID:4MF8VVK20

黒子「・・・・・・仕方がありませんわね。 初春?」

初春『何ですか?』

黒子「佐天さんが退院できたらそちらに行きますわ」

初春『え? でも白井さんは今日は非番じゃあ・・・・・・』

黒子「本当はいけないことですけど、遊びに街に出てきたついでということにしておきましょう」

黒子「それに、そちらで直接情報を聞いた方が色々と都合がよいでしょうから」

初春『わかりました。 固法先輩にそう言っておきます』

黒子「お願いしますですの」ピッ

美琴「それじゃあとりあえず、あまり時間がないけど佐天さんの診察が終わるまで事件のことを粗方教えなさい」

美琴「現状を知らないことにはどうしようもないからね」

黒子「わかりましたわ、お姉様。 それでは最初の事件から・・・・・・」

517 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:07:40.97 ID:4MF8VVK20





――――7月26日 AM11:45





518 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:08:58.46 ID:4MF8VVK20

上条(なんだ、この状況・・・・・・)


現在、上条当麻一行はとあるレストランにいる。
何故かと言えば、それはもちろん食事をするためだ。

第14学区で海外の文化料理を食べるのも良かったが、結局インデックスが我慢できなかったので、
こうして近場で済ませているという訳である。
全くもって、彼女の胃袋には困ったものだ。もう少し燃費を良くすることはできないのだろうかと思う。
それに、ここで食べたとしてもお昼を過ぎれば第14学区の方で食べ歩きすることになるであろうということは目に見えていた。
果たして自分の財布の中にはいくら入っていたか。もし必要であれば、この後に銀行でお金を下ろさなければならなくなる。


上条(いや、そんなことはどうでも良いんだ。 重要なことじゃない)


インデックスによって財布の中が壊滅的な打撃を受けることは、彼女と一緒に外出すると決定した時点で確定していることだ。
それを予想して多めの金額を財布の中に入れているが、正直に言って今回、
インデックスがどのくらいの金額を食べることになるのかは予想が付かない。
第14学区には、他での学区では食べられないような面白い料理が所狭しと並んでいるだろう。
それを前にしてこの『白い暴食獣』がどんな行動を取るのか?まぁ、それは最初から考えるまでもないことだが。

さて、上記のように自分たちがレストランにいること自体は何ら不思議なことではない。
だが、上条当麻は今の状況に酷く困惑していた。それは何故か?

519 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:10:42.94 ID:4MF8VVK20

打ち止め「わぁ、このイチゴすっごく美味しいよってミサカはミサカは!」

一方通行「オイ、クソガキ。 飯食ってるときは静かにしろォ」

打ち止め「むー」

一方通行「ったく、落ち着いてコーヒーも飲ませてくれやしねェ」ズズー

姫神「このサラダのドレッシング。 なかなかいける味。」

禁書「」ガツガツ


打ち止め、一方通行。
この二人が自分たちと一緒に昼食を食べているということである。

インデックスと姫神は食べることに夢中になっており、この状況を戸惑っているのは当麻だけだ。
一方通行に至っては、打ち止めの兄と見間違えんばかりの保護者っぷりを見せつけている。

ぶつくさ言いながらも、打ち止めの口に付いた生クリームを拭き取ってあげている様はまさしく『優しいお兄さん』。
その野獣のような顔でなければ、尚良かっただろうに。


上条(これが『あの』一方通行か? だいぶ前から性格が丸くなったとは思ってたけど)

上条(人も変わろうと思えば変われるんだな)

一方通行「オイ、三下ァ。 なァにジロジロ見てるンですかァ?」

上条「あ、すいません・・・・・・じゃなくて!」

一方通行「あァ?」

上条「一方通行! 何でお前がここにいるんだよ!」ビシィ!

520 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:11:42.76 ID:4MF8VVK20

一方通行「なンでって、飯食いに来たからに決まってンだろォが」

上条「お前ってそんなキャラだっけ?」

一方通行「俺だって好きで来てる訳じゃねェっての」

打ち止め「私がお願いしたんだよってミサカはミサカはヒーローさんに教えてみる!」

一方通行「チッ、こっちは色々やることがあるのによォ・・・・・・あ、ウェイトレスさン、コーヒーのブラック追加で」

店員「はい、畏まりました」

上条(一方通行も苦労してるんだな・・・・・・)

一方通行「ンでだ。 俺達がここを通りかかったのをお前が連れてるガキが発見して、なし崩しにこンな状況になっちまったわけだ」

上条「ああ、そうでござんしたね・・・・・・」

一方通行「ただでさえクソガキのお守りに手ェ焼いてンのに、これ以上面倒を増やすなっつゥの」

上条「それって上条さんのせいでせうか?」

一方通行「お前じゃなかったら誰なンだよ」

上条(ふ、不幸だ・・・・・・)


謂われのない批判を浴びせられて上条はがっくり肩を付く。
もちろんそのことを気にするような人物はここにはいないが。

521 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:13:14.76 ID:4MF8VVK20

店員「コーヒーのブラック、お持ちしました」

一方通行「どォも」

禁書「そういえば、大きい短髪は一緒じゃないんだね」

一方通行「番外個体のことかァ? アイツならバイトに行ってる」ズズー

上条「バイト?」

一方通行「芳川が社会勉強にってなァ。 アイツは打ち止めと違って肉体は成熟しているンだ」

一方通行「他の『妹達(シスターズ)』の連中は仕事してンのにアイツだけニートなのは不味いだろ」

上条「へぇ、心配してるのか?」

一方通行「・・・・・・ちげェよ。 ニートを二人も抱え込むほど余裕がねェだけだ」

上条「ハハハ、ご冗談を」


学生に支給される奨学金は、能力のレベルによって上下する。
学園都市の第一位ともなれば、世の中のサラリーマンが泡を吹いて卒倒するような金額が毎月転がり込んでくるのだ。

そんな男が金に困るなんてことはあり得ない。おそらく照れ隠しだろう。

522 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:15:00.61 ID:4MF8VVK20

一方通行「つゥか、仕事をしなきゃならねェのは芳川の方だろォが・・・・・・」ブツブツ

一方通行「番外個体に職を紹介できンなら、自分がまずその仕事に就けっつゥの」ブツブツ

上条「でも、良くバイトに付くことが出来たな。 身分証明とかはどうしたんだ?」

一方通行「その心配はいらねェ。 冥土返しも協力して探してくれたみたいだからなァ」

一方通行「大方、冥土返しに縁のある研究所とかじゃねェの?」

上条「そうか。 なら安心だな」


番外個体も御坂妹と同じく御坂美琴のクローンだ。
下手なことをすれば、心ない研究者達の目にとまって実験道具にされる可能性もある。

だが、冥土返しが関わっているとなれば心配は要らないだろう。
そんな素振りは見せないが、彼は学園都市の中でも相当な権力を持っている。
それこそ、前統轄理事長に意見を言えるくらいの身分はあるのだ。


打ち止め「それにしてもあなた、またお肉しか注文しなかったんだねって、ミサカはミサカはあなたの偏食を指摘してみたり」

一方通行「黙ってろクソガキ。 これは俺の原動力なンだよ」

打ち止め「でも、ちゃんと野菜を取らないと体に悪いよってミサカはミサカはあなたの健康を心配してみる!」

一方通行「俺は今まで病気らしい病気にかかったことはねェンだ」

上条「もう通常の状態が既に病人みたいなんだが・・・・・・」

一方通行「うるせェ。 それに体の調子が悪くなっても血流なりなンなり操作すればどうにでもなるしな」

上条「何という能力の無駄遣い・・・・・・」

523 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:15:43.47 ID:4MF8VVK20

一方通行「有効活用だろォが。 使えるときに使わないでどォすンだよ」

上条「いや、だってお前、明らかにチョーカーの電池の無駄遣いだろ」

一方通行「それは大丈夫だァ。 ここに歩く充電器があるからなァ」

打ち止め「ひどい! そんな風に見てたのってミサカはミサカは憤慨してみる!」

一方通行「オマエのためにこっちは色々苦労してンだ。 少しは役にt」バタン

打ち止め「ふーんだ!」

一方通行「」ガタガタ


演算補助を切られた一方通行は机に突っ伏して激しく痙攣を始めた。
今の彼の頭の中は、さぞグロッキーな状態になっていることだろう。
こうなってしまっては、もはや自分の足で歩くことも、喋ることも、考えることすら出来なくなってしまう。
ある意味、打ち止めの尻に敷かれている状態と言える。

今回に限っては彼の自業自得なのだが。

524 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:17:46.48 ID:4MF8VVK20

上条「これは一方通行が悪い。 女の子の気持ちは尊重しないとな」

禁書・姫神(お前が言うな!)


そして、人のことを言えない当麻にインデックスと姫神は心の中で盛大なツッコミを入れた。
だが、その思いが彼の心に届くことはない。この男の女心に対する鈍さは学園都市の医療技術でも治療不可能な域にある。
冥土返しであっても彼を更生するのは不可能だ。

しかし、このまま放置したら彼の行き着く先は鮮血の結末だけだ。むしろもっと酷いことになるかもしれない。
彼を狙う女性は学園都市内外を合わせて膨大な人数に膨れあがっているだろう。
それら全員に度を超した愛を向けられては、いくら彼でも無事では済むまい。


上条「そう言えばさ、最近どうなんだ?」

打ち止め「え?」

上条「一方通行のこと。 元気にやってるのか?」

打ち止め「・・・・・・最近は仕事が忙しくてあまり相手してくれないんだよって、ミサカはミサカは悩みを打ち明けてみる」

上条「仕事、ねぇ・・・・・・」

打ち止め「夜遅く帰ってくるし、聞いても何も教えてくれないし・・・・・・」

打ち止め「また私の知らないところで傷ついてるんじゃないかって・・・・・・」

上条「・・・・・・」

525 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:20:49.97 ID:4MF8VVK20

一方通行が今、どのような仕事をしているのかは詳しく知らない。
親船統括理事長の下で何かをしているとは聞いているが、未だによく分からない。
土御門に聞いたりもしたが、上手くごまかされて結局話してもらえなかった。

だが一つだけわかることは、土御門と一方通行は未だに危険な仕事を請け負っているということである。

彼らが自分たちに事情を話さないのは、自分の戦場に『守るべき人達』を関わらせないためだ。
例えそれで『守るべき人達』の心に不安の種を巻いてしまったとしても、彼らは真実を語ろうとはしないだろう。

ならば、残された人達にできることは――――


上条「待っててあげればいいんじゃないか?」

打ち止め「・・・・・・?」

上条「話そうとしないのは君を危険から遠ざけるためだと思う」

上条「こいつは面と向かって『君を守るためだ』なんて言えるような奴じゃないし」

上条「だからさ、こいつが帰ってきたら精一杯の笑顔で迎えてあげるのが一番いいと思う」

上条「たぶん、それがこいつにとっての最高の安らぎだ」

打ち止め「・・・・・・うん」


当麻は自分が思ったことをそのまま打ち止めに告げた。彼女はその言葉を聞いていくらか安心したようだ。

こういう時、特に女性の場合においては、こうも的確な助言が出来るのだから上条当麻という男は侮れない。
この方法で何人もの女性を堕としてきたのだ。もちろん彼にそのつもりはない。

526 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:21:52.49 ID:4MF8VVK20

禁書(それだけ的確なアドバイスをしておきながら、なんでそんなに鈍感なのかな!?)

姫神(それが上条当麻。 だからこそ堕としがいがある。)

一方通行「」ガタガタ

上条「あ〜、そろそろ戻してやってくれないか? 視線も集まってきてるし」

打ち止め「そうだねって、ミサカはミサカはヒーローさんの意見に賛成してみる」


さすがに涎を垂らしたまま痙攣している人間を放置するのは、いろいろな意味で注目の的になる。
変な騒ぎが起きる前に元の戻したほうがいい。


一方通行「・・・・・・ぷはァ! クソガキ何しやがる!」ガバッ

打ち止め「当然の報いだよって、ミサカはミサカはあなたに冷たい目線を送ってみる」

一方通行「何なンだよ・・・・・・」

打ち止め「・・・・・・」ツーン

527 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:22:46.66 ID:4MF8VVK20

上条「飯も食ったし、そろそろ行くか?」

禁書「ごちそうさまなんだよ!」

一方通行「・・・・・・コーヒーまだ残ってる。 勿体ねェ」グビグビ

上条「それにしても、コーヒー好きだなお前」

一方通行「うるせェ。 コイツは俺のガソリンだ」

上条「さいですか・・・・・・あ、会計は別々でお願いします」

一方通行「めんどくせェから、俺が払ってやる」

上条「いいのか?」

一方通行「学園都市第一位の財力を舐めンな。 この程度の値段なら一生かかったって尽きたりしねェよ」

上条「くっ、これが経済格差か・・・・・・」

一方通行「世の中は不平等で成り立ってるンですよォ」


インデックスが食べた分を払わなくて済むようになったことは嬉しいことだが、
その代わり男としての言い様のない敗北感を当麻は味わうことになるのであった。

528 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:23:39.14 ID:4MF8VVK20

カランカラン アリガトウゴザイマシター


上条「それじゃあ、俺達は行くから」

一方通行「あァ、何処へなりと行っちまえ」

禁書「またね!」

打ち止め「うん!」

上条「そうだ、一方通行」

一方通行「なンだよ」

上条「お前がどんな物を背中に背負っているかは分からない」

上条「だけど、たまには周りを頼ったほうがいいと思うぞ?」

一方通行「・・・・・・そっくりそのままオマエに返すわ」

上条「はは、それは言えてるな。 また一緒に飯食いに行こうぜ!」

一方通行「・・・・・・フン」


小さく鼻を鳴らした後、一方通行はこれ以上は言うことはないといった感じで去っていった。
相変わらず無愛想な奴だとは思うが、だからといって不快に感じることはない。むしろ彼らしいと言える。

だが、今の彼の背中には何かを背負っているような、重い雰囲気を感じ取れた気がした。
彼が今、どのような状況に立たされているのかを知る術はない。
それに手をさしのべてもきっと拒絶するだろう。彼はそういう男だ。

ならば彼の方から助けを求めてきたとき、それに全力で答えられるようにすればいい。

529 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:24:31.33 ID:4MF8VVK20





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





530 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:25:31.73 ID:4MF8VVK20

一方通行「ったく、また余計な時間を食っちまった」


一方通行はサンサンと輝く太陽の光を浴びながら愚痴をこぼした。

やはり人が密集した場所にいるのはどうも落ち着かない。
打ち止めに強請られたために仕方なくこうして外を出歩いているが、本当の所はさっさと家に帰って昼寝をしたいというのが本音だ。
自分はあまりにも目立つ容姿をしているが為に、大通りを歩くとどうしても奇異な目で見られることになってしまう。


一方通行「何で俺がこんなくだらねェことをしなきゃならねェンだよ・・・・・・」ブツブツ

打ち止め「その割には楽しそうだったって、ミサカはミサカは自分の感想を言ってみる」

一方通行「あァ? 何言ってンだオマエ」

打ち止め「あなたがあんな風に他人と話してるところ久しぶりに見たよって、ミサカはミサカはあなたの普段の様子を報告してみる」

一方通行「会話ならいつも黄泉川の奴等としてるじゃねェか」

打ち止め「でもヒーローさんみたいなお友達とお話しすることなんてあまりないでしょって、
ミサカはミサカは人付き合いの悪い貴方を心配してみる」

一方通行「ほっとけ」


番外個体が聞いたらやれぼっちだの『ウサギさんなのに大丈夫?』だの言い出すのは目に見えている。
彼女は一方通行を弄ることに関しては類い希なる才能を持っているからだ。

531 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:27:56.96 ID:4MF8VVK20

一方通行(その才能をもっと別のことに活かせってンだ・・・・・・いや、そもそも活かせるのかァ?)


ブルルルルッ ブルルルルッ


一方通行(・・・・・・電話?)

打ち止め「どうしたの?」

一方通行「ちょっと待ってろ」


ズボンのポケットから携帯電話を取りだし、着信を確認する。

一方通行が持つ携帯電話には一般用と仕事用がある。
一般用は自分の身内、黄泉川や打ち止めと連絡するためのものであり、仕事用は仕事の依頼の連絡を受け取るためのものだ。
今回は仕事用に電話がかかってきた。しかし今日は仕事の予定は入っていなかったはずなのだが。


一方通行(海原か。 一体何の用だ?)

一方通行「(ピッ) ・・・・・・俺だ」

海原『あ、一方通行さんですか?』

一方通行「何の用だァ? 今日は仕事は何も無ェはずだぞ?」

海原『それがですね、ついさっき仕事が入ってきたんですよ』

一方通行「・・・・・・チッ、さっさと話せ」

海原『では――――』

532 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:30:13.49 ID:4MF8VVK20

海原から舞い込んできた仕事の内容を聞き出す。
どうやら、とある研究所で未認可の人体実験が行われているという情報が流れてきたそうだ。
海原が確認に出向いたところ、どうやらクロらしい。


一方通行「毎度毎度、懲りねェ奴等だな。 この類の話は今年で何度目だァ?」

海原『93回目です。 もうすぐ通算100回目の大台に乗りそうですね』

一方通行「笑えねェ冗談だ」

海原『全くです』


統括理事長が替わってから早数ヶ月、親船素甘直属の部下として一方通行たちは、
現在に至るまで相当な数の学園都市の闇を掃除してきたが、この手の話は未だに尽きることがない。

自分達の噂はかなり広まっているはずだが、今も尚そういった行為をしているということは、
その研究者は余程の馬鹿か自分たちは大丈夫だと思っている楽観者なのだろう。

いずれにせよ、害虫は即刻駆除するに限る。


一方通行「で、俺達は何をすればいい?」

海原『『警備員』に先んじて研究所内の情報を抑えることですね』

海原『今回の件は他の案件にも繋がっている可能性がありますので、こちらの動きに気づいて痕跡を消されないようにするのが目的です』

海原『『警備員』の行動というものはどうしても読まれてしまいますので』

一方通行「了ォ解」

533 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:31:27.47 ID:4MF8VVK20

海原『あぁ、言い忘れましたが今回は土御門さんは参加しないので』

一方通行「ハァ? なンでだよ?」

海原『どうやら個人の事情やらなにやらがあるようでして、それが片付くまでは別行動になるそうです』

一方通行「あのバカ、またシスコン症候群を発症した訳じゃねェよなァ?」

海原「私からは何とも。 でもそれはないでしょう。 彼は公私の区別をはっきり付けられる人ですから」

海原「自分が守りたい物を守るための仕事を蔑ろにはしないでしょう」

一方通行「ったく・・・・・・結標の方はどうだ?」

海原『彼女は少々不満を言っていましたがOKだそうです』

一方通行「そォか。 じゃァいつもの場所に集まるぞ」

海原『了解です』ピッ

一方通行「面倒くせェったらありゃしねェ」ゴソゴソ

534 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:34:11.03 ID:4MF8VVK20

携帯電話をポケットにしまいつつ、一方通行はそう愚痴をこぼす。
仕事のこともそうだが、いくら潰しても蛆のように沸いてくる闇に対する苛立ちが収まらない。
一体上層部は何をしているのだろうか。このまま対策を取らなければ完全にイタチごっこである。


打ち止め「またお仕事?」

一方通行「あァ。 オマエを家に届けたらすぐに向かうつもりだ」

打ち止め「大丈夫だよね?」

一方通行「オイオイ、俺は学園都市の第一位サマだぜェ? 心配するだけ無駄ってモンだ」

打ち止め(でも心配なものは心配だよってミサカはミサカは心の中で自分の思いを言ってみる」

一方通行「口に出てるっつゥの」ガシッ

打ち止め「痛い!」

一方通行「ガキはガキらしく今日の晩飯のことでも考えてろ。 俺の心配をするのは10年はえェンだよ」グリグリ

打ち止め「う〜・・・・・・」

一方通行「さっさと帰るぞ。 遅くなると芳川の奴がうるせェからな」

打ち止め「は〜い」

一方通行「ったく、たまには自分で飯を作れってンだ」


こうして帰路につく白ウサギと電気娘。
奇妙な組み合わせではあるが、意外と似合っているのは気のせいであろうか。


535 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/17(月) 18:36:45.88 ID:4MF8VVK20
今日はここまで

質問・感想があればどうぞ
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 20:26:47.33 ID:VAXAIh5DO
乙です。
幻想郷では人間を弄るのは妖怪だし、そういう要素が混ざっていると
したら、今回話に出たマッドサイエンティスト共は、モブ妖怪だった人達だったりするのかねぇ?
537 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/09/23(日) 21:47:43.98 ID:Eohaj/u10
>>536
妖怪は人を食べる存在ですけど、マッドサイエンティストのような存在って居るのでしょうかね?
むしろ娘々とかそういう系列の存在が当てはまるような気もします

これから投下を開始します
538 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/09/23(日) 21:48:09.53 ID:Eohaj/u10





――――7月26日 PM1:05





539 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/09/23(日) 21:49:16.61 ID:Eohaj/u10

佐天「たっだいまー!」バタン!

黒子「佐天さん!? 病み上がりなのですから無茶しないでくださいまし!」

佐天「大丈夫だいじょーぶ! 白井さんも心配性なんだから〜」

美琴「はぁ、今までの不安な気持ちを返してほしい気分だわ」

初春「はは・・・・・・でも、何事もなくて良かったです」

固法「まったくね。 佐天さんが『また』事件に巻き込まれるなんてね。 あなたはそういう体質なのかしら?」

初春「何処の少年探偵ですか・・・・・・」ハァ

黒子「勘弁して欲しいですの・・・・・・」ハァ

佐天「あははー・・・・・・」タラー


とはいっても、常日頃スキルアウトやら何やらのいざこざが頻発している学園都市では、
騒動に巻き込まれて病院に厄介になることは珍しいことではなかったりする。
少なくとも、各学校の学年に一人や二人はそのような経験をした生徒がいるはずだ。

だからこそ『警備員』だけでなく『風紀委員』まで設立しなければならなくなっているのだが。

540 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/09/23(日) 21:50:09.17 ID:Eohaj/u10

美琴「ところでさ、佐天さんの事件の情報ってどうなってるの?」

黒子「そうでしたわ。 初春?」

初春「はい、今出しますね」


初春は机の中から厚い紙の束を取りだして黒子に渡した。
その中には佐天の事件だけでなく、今まで起こった『連続通り魔事件』の資料も含まれている。


美琴「それが事件の資料?」ガサッ

黒子「本当は一般人に見せるような物では無いのですけどね。 でも、諦めてはくださらないのでしょう?」

美琴「当然よ」ペラペラ

黒子「本来ならこの件は『風紀委員』の出る幕ではないのですが・・・・・・」

固法「『警備員』も犯人の尻尾が掴めずに焦っているみたいね」

初春「本当ならば猫の手でも借りたいでしょうから」

固法「そのせいなのか知らないけど、『警備員』から流れてくる情報が多くなってきてる」

美琴「・・・・・・」ペラペラ


黙々と資料のページをめくり続ける美琴。
その姿からは、何かを恐れているかのような感情を見出すことが出来る。
だが幸運なことに、風紀委員一同は彼女の様子は事件を解決したいという志からくるものだと思っているようだ。

541 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 21:50:44.50 ID:Eohaj/u10

固法「随分と熱心ね。 何か思うことでもあるのかしら?」

美琴「それは、まぁ・・・・・・」ガサッ

固法「正義感が強いことはいいことだけど、あまり無茶しちゃだめよ?」

美琴「わ、わかってますよ」

黒子「そう言って、いつも誰にも言わずに一人で抱え込んでいるのですからお姉様は」

佐天「御坂さんは何でもできそうなイメージがあるからねー」

初春「レベル5にもなるとやっぱり使命感みたいなものが出ちゃうんですか?」

美琴「あー、ないない。 私みたいに誰かのために〜なんて奴は殆どいないから」

初春「そ、そうなんですか?」

美琴「そうよ。 少なくとも私が今まであったレベル5でまともな奴はいなかったわね」

佐天「誰に出会ったんですか?」

美琴「第2位と第6位以外」

佐天「結構多いですね・・・・・・」

542 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 21:51:54.39 ID:Eohaj/u10

レベル5の人間は美琴と正体が分からない第6位を除いてネジが飛んだ人達ばかりである。
背中から変な羽をはやしたり、ドン引きするほど下品な単語を連発したり、
相手の精神を操って陰湿ないたずらをしたり、ただの根性バカだったり。

歴史を紐解いてみても、天才と呼ばれる人間は一風変わった人格をしている人が多い。
『バカと天才は紙一重』とはこのことを指しているのだろうか?

ちなみに美琴は自分にとっては関係ないかのように話しているが、端から見れば彼女も十分変わった人種である。
周りが酷すぎて相対的に『穏当』に見えるだけだ。


美琴「んー、だいたいわかったわ」パタン

初春「もう読み終わったんですか?」

美琴「重要なところだけ選別して読めばそんなに多くはないでしょ」

美琴「それに、自分が思ってたほど『警備員』の捜査は進んでいないみたいだしね。 どれも同じような内容だったわ」

黒子「知っておりますように、今回の事件の犯人は佐天さんの事件を除いて痕跡を一切残しておりませんでしたの」

初春「捕まえようにも、手がかりがなければどうしようもありませんからね」

美琴「犯行現場が監視カメラに映ってなかったんだっけ?」

初春「はい。 犯人らしい目撃情報も一切ありませんでした」

黒子「いくら人気のないところで犯行を行っていたとしても、ここまで情報がないというのはかなり異常ですわ」

美琴「うーん」

543 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 21:53:28.27 ID:Eohaj/u10

10を超えるほどの犯行が行われているにもかかわらず、今まで犯人は誰にも目撃されず、証拠も一切残していなかった。
こんな事は本来ならば起こりえることはまず無いのだが、それを可能にしてしまう手段があるのが学園都市である。
ここでは外の世界の常識は全く通用しないことを頭に入れておかねばならない。


美琴「でも、今回は佐天さんが犯人の顔を見てるわよね? アルビノで検索すれば直ぐに分かりそうなものだけど」

初春「そのことについては私も調べてみましたが・・・・・・」

黒子「どうしたんですの?」

初春「アルビノに関する情報は規制されているみたいで表には流れていないみたいです」

固法「アルビノは目立つ容姿をしているからね。 おそらく無用な軋轢を起こさないための処置でしょうね」

初春「本格的に調べようと思ったら、病院のネットワークに侵入する必要がありますね」

初春「こうなると『警備員』の管轄になってしまいます」

美琴「そう・・・・・・じゃあアレについては調べたの?」

佐天「アレって何ですか?」

美琴「犯人の能力についてよ。 黒子の話だと『空間移動』の能力者らしいけど」

初春「それについても調べたんですけど、結局わかりませんでした」

黒子「わからなかった?」

544 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 21:54:18.41 ID:Eohaj/u10

初春「『空間移動』を持つ能力者の中には『先天性白皮症』の方はいなかったんです」

黒子「ということは、犯人が使っていた能力は『空間移動』ではなかったということですの?」

初春「そういうことになりますね」

美琴「それ以外の能力で『空間移動』みたいなことをしてたってことか・・・・・・」

佐天「一体どんな能力なんでしょうね?」


『空間移動』以外で自分の体を瞬時に移動させることが出来る能力。
『空間移動』のイメージが強すぎて、それ以外と言われると咄嗟には思いつかない。


美琴「『書庫』に登録されてないとかは考えられない?」

黒子「『空間移動』は稀少ですから、それはあり得ないと思いますの」

美琴「そうよねぇ・・・・・・」

美琴(でも、もし暗部みたいな人間と関わりがあるとしたら、可能性はなくはないわよね・・・・・・)

美琴(奴等なら情報の改竄くらいは平気でするだろうし)

545 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 21:54:59.04 ID:Eohaj/u10

初春「『書庫』を全部検索すればわかるかもしれませんけど、いつ終わるか見当もつきませんし・・・・・・」

黒子「やっぱりキーワードが必要ですの」


詳しく調べるためにはその鍵となる単語が必要だ。
今自分たちがわかっているのは、犯人が『先天性白皮症』の患者であることと、
犯人が持つ能力で『空間移動』と同じ事が可能であるということの2点のみ。
前者は『風紀委員』だけでは調べることは出来ず、後者だけでは調べるための情報としては心許ない。
もっと明確で具体性のある情報を手に入れる必要があった。

しかし、手に入れたくても肝心の情報源がない。
街中で聞き込みをしたとしても、有力な情報が集まるのは一体何時になる事やら。自分達だけでは到底無理な話である。
せめて犯人の能力を連想できるようなヒントのようなものがあればいいのだが、そんな都合の良いことなどあるはずもなく。
しばらく全員で考え込んでいたが結局良い案は浮かばず、見回りの時間が来たこともあって一端お開きとなった。

546 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 21:55:32.32 ID:Eohaj/u10





――――7月26日 PM2:05





547 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 21:56:46.81 ID:Eohaj/u10

禁書「おぉ〜・・・・・・」

上条「で、でかい・・・・・・」

姫神「・・・・・・」


電車やバスに揺られて2時間。上条当麻一行は第14学区の一角に存在する、ある建物の前に来ていた。

その建物の姿を一言で表せば『中世の洋館』。
少し赤茶けた風貌をしているその建物は、周りに建っている近代的な家と比較して異様な雰囲気を醸し出していた。

建物をよく見ると所々建物の壁に蔦が這っていたり、壁に罅が入っていたりしている。
遠目で観察すると、相当な年月が経っているようにも見ることができる。
まるで西欧の国に建っていたものを、そっくりそのままこの場所に持ってきたかのようだ。

だが、おそらくこの古くさい雰囲気も学園都市の建築技術で再現されているのだろう。
その証拠に、鉄柵の正門の横には学園都市製のセキュリティ装置が設置されている。
無理に押し通ろうとしたり、塀を乗り越えようとすればすぐさま警報が鳴るに違いない。


上条「まさか学園都市でこんな立派な洋風建築が見られるなんてなぁ」

禁書「うーん、でも門の横に付いてる機械が雰囲気を壊しているかも」

上条「防犯のためなんだから仕方ないんじゃないか?」

禁書「でも、もっと目立たないようにできなかったのかな?」

上条「見たところインターホンも兼ねてるみたいだし、わかりにくかったら不便だろ」

548 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 21:57:55.13 ID:Eohaj/u10

姫神「・・・・・・」

上条「どうした姫神?」

姫神「この建物。 僅かだけど血の匂いがする。」

上条「・・・・・・本当か?」

禁書「・・・・・・!」


当麻とインデックスに緊張が走る。まさか本当にこの場所に吸血鬼が居るのだろうか。
いや、むしろフランとレミリアに魔術をかけた魔術師が原因かもしれない。
魔術を用いるために大量の血液を使用したとするのであれば、その匂いを姫神が感じ取ることが出来たとしても不思議ではない。


姫神「本当。 でも吸血鬼の匂いかと言われれば答えられない。」

禁書「どういうこと?」

姫神「この建物。 いろんな血の匂いが混ざって一つに絞りきれない。」

姫神「それに。 匂いも本当に僅かだからっていうのも理由の一つ。」

上条「直接中に入らないとわからない・・・・・・か」

姫神「そういうこと。」

549 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 21:58:47.95 ID:Eohaj/u10

禁書「魔術的な力は今のところ感じられないよ」

上条「そうなのか?」

禁書「うん。 どうするの、とうま?」

上条「・・・・・・」


元々はフラン達の身の安全を確認することを目的としてここに来るはずだった。
だが姫神の言う『血の匂い』、それから関連づけられる魔術師が存在する可能性。

もし魔術師がこの建物を根城にしているとすれば、このまま訪問するのは非常に危険だ。
相手は侵入者の迎撃のための策を何重にも巡らしているはず。それこそ『飛んで火にいる夏の虫』にもなりかねない。


上条(迂闊に入って攻撃を受けたらインデックスと姫神を守るのは難しい)

上条(俺の力は右手にしかないからな。 数で責められたらどうしようもない)

上条(ここはいったん土御門に報告するべきか?)

上条(でも魔術の力が感じられないとなると、ここを根城にしていない可能性も・・・・・・)

「そこで何をしているのですか?」

上条「え?」

550 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 22:01:52.60 ID:Eohaj/u10

背後を振り返るとコスプレでよく見るような、模範的なメイド服を着た銀髪の女性が後ろに立っていた。
白色と紺色と言うシンプルな色であしらわれた服は落ち着いた雰囲気を漂わせ、
頭につけられたカチューシャは彼女がメイドであることをより一層際立たせている。
素人の目で見ても、彼女がその手の仕事のプロであることがわかるだろう。

彼女はこの家の関係者なのだろうか。非常に不審そうな目でこちらを見ている。


上条「・・・・・・コスプレ大会の帰り?」

銀髪の女性「なんですかそれは。 これは正装です」ギロッ

上条「す、すいません・・・・・・」


思ったことがつい口に出てしまったようだ。鋭く睨まれた当麻はすぐに謝罪の言葉を口にした。
他人に謝ることに関して言えば、他の人の追随を許さないであろう事は自信を持って言える。

・・・・・・あまり誇るべき事ではないのかもしれないが。


銀髪の女性「用がないのであれば早急に立ち退いてもらいたいのですが?」

上条「あ、いや、知り合いの家を探していたもので」

銀髪の女性「知人の家ですか?」

551 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 22:05:24.25 ID:Eohaj/u10

上条「はい。 つかぬ事をお聞きしますが、ここはフランドール・スカーレットさんのお宅でしょうか?」

銀髪の女性「えぇ。 妹様が住んでおられるのはこの家ですが・・・・・・どのようなご用件で?」

上条「えーっと、それは・・・・・・」

禁書「今日遊ぶ約束をしてたからみんなと一緒に来たんだよ!」

銀髪の女性「・・・・・・あなたのお名前は?」

禁書「インデックスだよ」

銀髪の女性「・・・・・・なるほど」

姫神「そう言うあなたは誰? 見たところ使用人みたいだけど。」

銀髪の女性「申し遅れました。 スカーレット家の専属メイドをさせてもらっております、十六夜咲夜と申す者です」


咲夜と名乗るメイドは恭しく丁寧に一礼をした。その様子だけでも相当な気品を漂わせている。
当麻としては土御門の妹である舞夏とある程度会話することがあるので、
メイドに会うことはそれ程珍しくもないのだが、ここまで完璧な身のこなしのメイドを見るのは初めてのことである。

552 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 22:06:53.22 ID:Eohaj/u10

上条「咲夜さんですか。 俺は上条当麻って言います」

禁書「突然で悪いんだけど、今ってふらんはどうしているのかな?」

咲夜「妹様なら今日は用事で一日中おられませんわ」

上条「用事?」

咲夜「はい、レミリアお嬢様の付き添いですね」

禁書「ふーん」

上条「困ったな・・・・・・」


どうやらフランとレミリアは外出中で家にはいないらしい。
本当ならば何処に行ったのかを問い詰めるべきのだろうが、初対面の相手にそれをするのは些か不味い。

レミリアの『専属』メイドだというのだから、相応の立場にいる人物のはずだ。
下手に警戒されてしまっては、今後接触することすら難しくなってしまう。


上条「仕方ない。 今日は帰るとするか」

禁書「えー・・・・・・」

上条「思えば昨日の今日だし、フランもいきなり来るとは思ってなかったんだろうさ」

上条「こうして家の場所もわかったんだし、また来ればいい」

禁書「むぅ・・・・・・」

上条「だだをこねてもフランは帰ってきませんよっと。 姫神もそれで良いよな?」

姫神「・・・・・・わかった。」

553 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 22:08:04.94 ID:Eohaj/u10

姫神は咲夜を見続けながら当麻の問いに返答した。
さっきからずっと彼女に注目し続けているのだが、何か気になることでもあるのだろうか?
ただ単にメイドという存在が珍しいだけかもしれないが。


禁書「あ、そうだ! さくや!」

咲夜「・・・・・・何でしょうか?」

禁書「ふらんが帰ってきたらインデックスが遊びに来てたって伝えておいてくれないかな?」

禁書「何も言わないで帰っちゃうのもだめだと思うし」

咲夜「わかりました。 伝えておきましょう」

上条「じゃあ用事も済んだし帰るかな」

禁書「早く美味しいものを食べに行くんだよ!」ワクワク

上条「はいはいっと」

姫神「・・・・・・」

上条「? 姫神、行くぞ?」

554 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 22:09:31.58 ID:Eohaj/u10

当麻が急かすが、姫神は一向に咲夜から目を離そうとはしない。彼女は何かを疑うような、疑惑の目をしていた。
その視線に気づいた咲夜がどうしたのだろうといった顔つきで声を掛ける。


咲夜「どうしたのですか? 何か気になることでも?」

姫神「・・・・・・あなた、血の匂いがする。」

上条「え?」

咲夜「・・・・・・女性に対してその発言は失礼ではないかしら?」

姫神「私の能力だから。 こういうことには敏感なの。」

咲夜「なるほど。 貴方の疑問に答えるのであれば、先ほど料理の下ごしらえをしたときに魚を捌いていましたから、その匂いが残っていたんでしょう」

咲夜「手は念入りに洗っておいたはずですが」

姫神「・・・・・・そう。」

上条「・・・・・・姫神、いいのか?」

姫神「うん。」

上条「それじゃあ咲夜さん、俺達は帰りますんで」

咲夜「ええ」


二人は軽く会釈を交わし、当麻達はその場を後にした。
その後、彼らがインデックスのわがままで学区内の料理店を練り歩くことになったのはまた別の話である。

555 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 22:10:01.22 ID:Eohaj/u10





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





556 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 22:11:01.31 ID:Eohaj/u10

咲夜「インデックス・・・・・・お嬢様がおっしゃった通りね」


遠ざかっていく当麻達の姿を見ながら咲夜は呟いた。


咲夜(今日インデックスという名の少女が来るからうまく追い返すように言われたけど、未だにお嬢様の意図が掴めない)


咲夜は「フランはレミリアと一緒に外出中だ」と言ったが、実際のところフランは家にいる。
レミリアは今朝出かけるときに、フランを家から出さない、インデックスを家に入れないように命令して出て行った。
何故そのような命令を下したのかは分からないが、命令に逆らうつもりも毛頭無い。、
よって、レミリアの指示通りに当麻達を言いくるめ、家に立ち入らせることなくそのまま帰したのだ。

だが目的が理解できない命令となっては、さすがに気になるというもの。
咲夜はレミリアの命令の意図を理解しようと、これまでの間ずっと考え事をしていた。
従者というのはいつでも主の考えを理解し、主の求める行動をし、主の望む結果を出さなければならない。
そのためにも、レミリアの考えを知ることは急務である。


咲夜(一見、何の変哲もないただのシスターに見えるし、危険人物には見えないけど)

咲夜(外見だけで判断すると痛い目を見るのが学園都市。 警戒するに越したことはないわ)

咲夜(こちらで独自にあのシスターの素性を調査するべきかしら?)

557 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 22:12:01.04 ID:Eohaj/u10

あのシスターのことを詳しく知れば、自ずと主が考えていることもわかるかもしれない。
だが、その行動が主の意向に沿っているとは限らない。最悪、直接的な形でなくとも主を裏切る形になるかもしれない。
そのリスクを考えるとしたら、自分勝手に情報収集するのは望ましくない。レミリアの許可は取っておくべきだろう。

それに調査するとしても、実際に自分ができる行動は限られている。
咲夜は『警備員』や『風紀委員』のような人間ではなく、あくまでも一般人である。
『書庫』のような学園都市のデータベースにアクセスする権限があるわけではない。

とすると、彼女ができることと言えば地道な聞き込みくらいのものなのだが、それを行うことも難しい。
数日早ければ繚乱家政女学校の生徒達に聞き込みをするのだが、生憎それはできない。
咲夜が学校に行くのは月に一度。それ以外はレミリアの下で研修を受けることになっている。
無断で学校に顔を出せば不審な目で見られることになるだろう。
かと言って仕事を放り出して街に繰り出し、見知らぬ人に聞いて回るのも考え物だ。


咲夜(いっそのこと彼らの後を尾行するべきかしら?)

咲夜(さすがに今は無理だけど、あのシスターは今後も来るようだし、機会はいくらでもありそうね)

咲夜(仮に彼女の素性がわかったとして、もしお嬢様達に害をなす存在だったとしたら――――)

558 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 22:13:01.25 ID:Eohaj/u10

その時は相応の対処をしなければなるまい。
自分の主に危害を加えるような人間は、あらゆる手段を用いて排除する。
例えその過程で人道に反するような行動を執らざるを得なくなったとしても、それを行うだけの覚悟は既にある。


咲夜(とりあえず、お嬢様が帰ってくる前に仕事を終わらせないと。 まだやらなければいいけないことは山ほど残されている)

咲夜(それが終わったら、妹様の様子も見に行かないとね・・・・・・)


咲夜はこれからの仕事の計画を頭の中で組み立てながら、赤茶けた館の中に入っていった。

559 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/23(日) 22:13:45.36 ID:Eohaj/u10
今日はここまで

質問・感想があればどうぞ
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/25(火) 15:03:23.37 ID:EEjplJTf0
今回のメンバーで突撃したって、ろくな事にはならなかったろうね。
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 13:46:44.40 ID:ofZu+R360
しれっとした嘘も流石に見える咲夜さん
562 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/09/30(日) 22:53:05.47 ID:mSJL/wZm0
これから投下を開始します。
563 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 22:53:50.34 ID:mSJL/wZm0





――――7月26日 PM3:13





564 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 22:54:49.87 ID:mSJL/wZm0

黒子「初春ー?」

初春「何ですか白井さん?」カタカタ

黒子「何か情報は掴めましたの?」


風紀委員支部で黒子と初春の二人は、それぞれ自分のパソコンに向かいながら調べ物をしていた。
犯人の情報の当てがないにしても、それが何もしなくても良いという理由にはならない。
例え当てずっぽうでも、何かしらの情報を集める必要があった。


初春「一応『書庫』を調べてますが、今のところは掴めていませんね。 もう少し条件を指定しないと・・・・・・」

初春「やっぱり『警備員』に任せた方がいいと思うんですけどね」

美琴(でも『警備員』だけだと、もし犯人の裏に何かあった場合手がかりを失うかもしれない)

美琴(『警備員』の情報はすぐに広まるだろうし、そうなったらすぐに逃げられる)

佐天「・・・・・・」

初春「佐天さん? 何してるんですか?」


佐天を見ると椅子に座って漫画を読んでいた。昼頃に一緒に見回りに行ったときに買ってきたものである。
『風紀委員』ならば勤務中にそのようなことをするのは御法度であるが、彼女は一般人であるためおそらく問題はないだろう。

565 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 22:56:43.06 ID:mSJL/wZm0

佐天「さっき買ってきた漫画を読んでるんだよ」

黒子「こちらが必死に情報を集めているというのに、暢気なものですわね」

佐天「だって役に立ちそうもないし、邪魔しちゃ悪いじゃん?」

初春「それでも犯人捜索のアイデアなりなんなり考えることくらい出来るんじゃあ・・・・・・」

美琴「ところで佐天さん、どんな漫画を見てるの?」


美琴はそう言いながら佐天が読んでる漫画をのぞき見た。

その漫画と一言で表すなら、『画風がとても濃い漫画』だった。
それなりに有名な漫画なら一つや二つは知っている美琴だが、ここまで濃い顔立ちをしているキャラクターを見るのは初めてだ。

かと言ってリアルというわけではなく、独特の雰囲気を持つ画風であった。
特徴的すぎて一回見たらそう簡単には忘れられないだろう。


美琴「すごい絵柄の漫画ねぇ」

佐天「数十年前に流行った漫画ですから、結構人を選ぶかもしれないです」

美琴「結構有名なの?」

佐天「連載されていた当時は相当なファンが居たらしいですよ」

佐天「何度か再販もされていますし、その時代の人達にとっては需要があるんじゃないですか?」

566 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 22:59:01.98 ID:mSJL/wZm0

初春「佐天さん、最近その本の話をよくしますよね?」

佐天「なんて言うかさ、この漫画の中に出てくる『能力』が学園都市の超能力に似てるんだよね」

美琴「ふーん。 貸してみて」

佐天「いいですよ」


美琴は佐天から本を受け取るとあらすじを見た。
どうやらこの巻では長旅の末に主人公の一族の宿敵である吸血鬼に対峙し、仲間と共に死闘を繰り広げているらしい。


佐天「この漫画の登場人物はいろいろな能力を持っているんですけど、その力の源は『精神力』らしいですよ?」

黒子「精神力って・・・・・・根性とかそう言うものなのですの?」

佐天「根性と言うよりも『自分が持つ信念』みたいなものだね」

佐天「能力をうまく使うには『出来て当たり前』と思うことが大切みたいです」

美琴「確かに超能力の基になる『自分だけの現実』も『信じる力』のことだけど」

黒子「どちらかというと『精神力』というより『妄想力』と言った方が正しい気がしますわね」


超能力の源である『自分だけの現実』を構成しているものが『信じる力』であることは、能力開発者の間では常識である。
『○○することは可能である』と思い込むことで、確率が限りなくゼロに近い事象を現実へと引っ張り出すことが出来るようになるのだ。

567 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:01:31.63 ID:mSJL/wZm0

美琴(『出来て当たり前』と思うことが大切・・・・・・か)

美琴(『大人になると常識に縛られて頭が固くなる』って子供の頃先生が言ってたけど)

美琴(大人が能力開発を受けられないのは『常識』のせいで『自分だけの現実』を構築できないからなのかもしれない)

美琴(『あり得ないものはあり得ない』って考えちゃうのかしら)

佐天「御坂さん、気になります?」

美琴「え? あ、うん」

佐天「読みたいのであれば貸してあげますけど」

美琴「いいの?」

佐天「私はもう読みましたし、家にもいくつか読んでない本があるので」

美琴「じゃあ、お言葉に甘えて」

黒子「お姉様? 借りるのはよろしいですけれど、寮監の方にはばれないようにしてくださいまし」

美琴「わかってるわよ」


美琴はそう言うと、漫画を自分のバックの中に入れた。
寮に帰ったら早速見てみることとしよう。

568 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:02:15.16 ID:mSJL/wZm0





――――7月26日 PM4:35





569 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:03:16.75 ID:mSJL/wZm0

ガタンガタン、ガタンガタン・・・・・・


上条「あ〜、疲れた」グデー

姫神「大丈夫?」


第7学区行きの電車内で当麻は溜息をついた。
フランへの用事を済ませた後、第14学区の探索にしゃれ込んだ訳なのだが、
日本文化とのあまりにも大きな違いを見せつけられて、精神的にかなり疲労していた。


上条「異文化交流って結構大変だな。 上条さん、カルチャーショックで少し驚きすぎましたよ・・・・・・」

禁書「でもとうまっていろんな国に行ってるよね?」

上条「あの時は観光目的で行った訳じゃないし、戦争とかクーデターとか色々あったからなぁ」

上条「こうやって落ち着いて異文化にふれあうのは久しぶりですよ」

姫神「その話は初耳。」ズイッ

上条「突然のことだったし、クラスの奴等にも言わなかったからな。 気にしなくていいぞ姫神」

姫神「・・・・・・そう。」

570 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:05:58.22 ID:mSJL/wZm0

思えば激動の1年を送ったものだ。
学園都市と十字教の戦争のまっただ中で、当麻は世界を縦横無尽に駆け回ってきた。
それと同時に何度も生命の危険にさらされた。彼ほど修羅場をくぐってきた人間はそう多くはあるまい。

それでも彼が今こうやって学生生活を満喫できているのは、果たして偶然なのか必然なのか。
全く持って『運が良かった』というしかない。『不幸属性』持ちの彼にしたら笑い話にしかなりそうもないが。


禁書「それにしてもやっぱり機械が多かったかも」

上条「何がだ?」

禁書「第14学区のこと。 せっかくいろんな国の町並みを再現してるのに、
   あちこちでお掃除ロボットが走り回ってるから台無しなんだよ」

上条「でも、それのおかげで街は綺麗だっただろ?」

上条「景観を重視して街が汚くなるのはどうかと思うけどなぁ」


学園都市は四六時中お掃除ロボットが走り回っており、道ばたに落ちているゴミを回収している。
そのおかげでいつでも街は綺麗なのだが、それに頼りすぎてゴミをポイ捨てしている人が多くなってきているらしい。
そんな状態でいきなりお掃除ロボットを廃止すればどうなるか・・・・・・想像に難くない。


禁書「むー」

上条「ま、街を開発してる人がお掃除ロボットを必要ないと感じたら廃止になるだろうさ」


マモナクダイナナガックエキマエー オオリノカタハアシモトニゴチュウイクダサイ


上条「お、着いたみたいだな。 降りるぞ二人とも」

571 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:06:35.59 ID:mSJL/wZm0





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





572 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:08:44.60 ID:mSJL/wZm0

姫神「上条君。」

上条「どうした、姫神?」


寮までの帰り道で姫神は当麻を呼んだ。
この時間帯ならば帰宅する学生で道は混み合うはずなのだが、不思議なことに今は通りに誰もいない。


姫神「私。 今まで考えてたことがあるんだけど。」

上条「なにがだ?」

姫神「咲夜っていう女の人について。 あの人は魚を捌いたって言ってたけど。 あれは絶対嘘。」

姫神「あの人は短い期間に。 多くの人の血に触れているはず。」

上条「・・・・・・そうか」


実際、当麻も咲夜に対して僅かな違和感を感じていた。。
漠然とした感覚ではあるが、咲夜には何か裏があるような気がしてならなかった。
最初は魔術師のことに気が向きすぎていて、無関係な彼女まで疑っているのだと思っていた。
だが、彼女と別れた後も違和感を払拭しきれていない。

573 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:11:18.42 ID:mSJL/wZm0

姫神「あなたはどう思う?」

上条「そう、だな。 何処かしらよそよそしい感じはしたけど。 俺達のこと警戒しているような気もしたし」

姫神「・・・・・・」

上条「まぁ、何かあったら俺が何とかするから。 姫神は心配しなくても・・・・・・」

姫神「それは駄目。」

上条「え?」

姫神「そうやって。 自分一人で何とかしようとするのが。 あなたの悪いところ。」

上条「だがな・・・・・・」

姫神「あなたは今朝。 吸血鬼のことを話していた。」

姫神「そんな話が出ている以上。 私も無視するわけにはいかない。」

上条「さすがにこれ以上関わるとお前の身に危険が・・・・・・」

姫神「それなら。 最初から私を関わらせなければ良かったはず。」

姫神「上条君が何を言っても。 私はあなたについて行くから。」

上条「・・・・・・!」


姫神の強い意志が宿った目で見つめられた当麻は思わずたじろいでしまった。
どうしてここまで強気に出ているのだろうか。その理由を知る術は当麻にはなかった。

574 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:12:21.54 ID:mSJL/wZm0

上条(誤算だった・・・・・・姫神がここまで強情だなんて)

禁書(やっぱりあいさを関わらせるべきじゃなかったかも)

禁書(っていうか『何を言ってもあなたについて行く』ってどういうこと!?)

上条「・・・・・・それでもお前を関わらせることは出来ない」

姫神「上条君・・・・・・。」

上条「でももし、俺がどうしても姫神に頼らなきゃならなくなったときは必ず連絡する」

上条「それで許してくれないか?」

姫神「・・・・・・絶対に。 自分一人で何とかしようしないで。」

姫神「あなたのことを。 待っている人がいるんだから・・・・・・。」

上条「ああ、わかったよ」

禁書(なんなんだよこの空気!?)

575 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:13:30.29 ID:mSJL/wZm0

嫉妬しているインデックスはさておき、一行は分かれ道にさしかかる。
片方は当麻が住む男子寮。もう片方は姫神が住む女子寮に通じている。


上条「・・・・・・分かれ道か。 送ったほうがいいか?」

姫神「その心配はいらない。 一人で大丈夫。」

上条「そうか。 それじゃあここでお別れだな」

姫神「本当に。 無茶はしないでね。 上条君。」

上条「じゃあな、姫神」


姫神は自分の住む寮へ向かって歩いていく。
当麻は姫神の後ろ姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。


上条「そういえば土御門の奴、今何してるんだ? 今日のことを教えないと・・・・・・」

禁書「知らないよ」

上条「いや、お前に聞いた訳じゃないんだけど」

禁書「知らないよ」

上条「・・・・・・インデックスさん? どうしてそんなに怒っていらっしゃるのでせうか?」

禁書「ふーんだ」

上条「はぁ。 とりあえず土御門に電話だ」

576 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:20:10.35 ID:mSJL/wZm0

聞く耳を持たなくなったインデックスを置いて、懐から携帯電話を取り出す。

生憎、フランやレミリアに会うことは出来なかった。
しかしフランの家で会った咲夜という名のメイドはいかにも怪しい。
彼女はレミリアの専属メイドと言っていたが、本当にそうなのだろうか?
むしろ彼女が魔術師の可能性も・・・・・・


プルルルル、プルルルル・・・・・・


上条「・・・・・・でないな土御門の奴。 何やってるんだ?」

禁書「お仕事してるんじゃないかな?」

上条「仕方ない。 家に帰って戻ってくるのを待つか・・・・・・」


土御門はああ見えて結構忙しい男である。おそらく手が離せなくなるような用事を片付けているのだろう。
今すぐ情報を伝えたいのが心情だが、こればかりは仕方があるまい。
先に戻って彼が帰ってくるのを待つとしよう。

577 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/09/30(日) 23:22:13.60 ID:mSJL/wZm0
今日はここまで

佐天さんが読んでる漫画の元ネタは言うまでもなくアレ
まぁ東方原作者がファンだし、咲夜さんのスペカなんてそのまんまだし、別にいいよね?

質問・感想があればどうぞ
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/10/01(月) 05:53:36.99 ID:rtuVUUbDO
佐天さんや……ジョジョで能力開発なんですかァ〜ッ!?w
579 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/10/08(月) 01:23:36.94 ID:IAgE9Omx0
これから投下を開始します
580 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/10/08(月) 01:25:26.34 ID:IAgE9Omx0





――――7月26日 PM6:21





581 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:26:32.23 ID:IAgE9Omx0

土御門「・・・・・・来たか」


土御門は一人、第23学区の空港前に来ていた。
今日の夜に到着するとステイルに聞かされている、魔術師の協力者を出迎えるためだ。

この学区は学園都市の中でも特に機密性が高く、一般の人間は立ち入ることが出来ない。
学園都市の最新鋭の技術を反映させた様々な物品が行き交うためだ。
その他にも要人を学園都市内外に行き来させる拠点でもあり、そう言った人々を保護する目的もある。

今回協力してくれる魔術師も、名目上は『学園都市とイギリス清教の友好を深めるための大使』としての役割を持つ。
故にこうして第23学区まで遙々出迎えに来ているというわけである。


「へぇ、ここが学園都市ねぇ」

土御門「ご感想はいかがかにゃ〜?」

空港の建物の中からローブを着た一人の女性が出てくる。どうやら慣れない長旅に疲れたようで、少し眠そうな顔をしていた。
しかしその反面、初めて見る学園都市の機械に興味深々の様子だ。

無理もない。そもそも魔術師という人種は科学を毛嫌いすることが多い。
そのような環境の中で暮らしていれば、自ずと科学の知識を用いて制作された機械に対して疎遠になってしまうのだろう。

582 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:27:27.24 ID:IAgE9Omx0

ローブの女「噂には聞いていたけど、実際見るとなかなか感慨深い物があるわね」

土御門「お気に召したようで良かったぜい」

ローブの女「ええ、やはり百聞は一見に如かずと言ったところかしら。 こうして経験するために外へ出るのも悪くないわ」

土御門「それにしても、変わった人だなアンタは」

ローブの女「何がかしら?」

土御門「普通の魔術師ならこんな科学だらけの街なんか毛嫌いすると思うんだがな。 お前さんも例外じゃないと踏んでいたんだが」

ローブの女「別に私は科学を嫌っているわけではないわ」

ローブの女「私の行動原理は『未知の事柄を既知とすること』。 つまりは知識欲。 本質的には科学者と似たようなものよ」

土御門「他の魔術師が聞いたらどんな顔をするやら・・・・・・」

ローブの女「好きなように言わせておけばいいわ」

ローブの女「私は魔術の全てを否定しているわけではないし、科学の全てを肯定しているわけでもない」

土御門「そんなことだといつか孤立するぞ? パチュリー・ノーレッジ」

土御門「現にローマ正教の連中からは白い目で見られているそうじゃないか」

パチュリー「スパイのあなたには言われたくないわね。 それに頭が凝り固まった古くさい奴等のことなんてどうでも良いでしょ」

土御門「随分と辛辣なことを言うにゃー」

583 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:28:16.24 ID:IAgE9Omx0

土御門の言葉に対してローブの女――――パチュリー・ノーレッジは皮肉で返した。
土御門はイギリス清教と学園都市を二股している多重スパイ。片やパチュリーは魔術と科学の両方を容認する求道者。
お互いに周りから信用されないであろう人間であるという点が似ているのかもしれない。


土御門「それにしても驚いたぞ? 『動かない大図書館』なんて言われてるお前さんがこうして自ら協力を申し出るなんてな」

パチュリー「・・・・・・最大主教にたまには外に出ろと言われただけよ。 私も吝かではなかったし、承諾したのだけれどね」

土御門「ほうほう」

パチュリー「それに勘違いしているようだけど、私が積極的に動かないのは『その必要がない』からよ」

パチュリー「『めんどくさいから』とかそう言う理由じゃないわ」

パチュリー「同じ結果が得られるのなら、手順は短いほうがいいでしょう?」

土御門「たしかに無駄の無いように効率的に行動するというのは理にかなっているな」

土御門「でもある程度余裕があるというのも必要なことだと思うぜい?」

パチュリー「・・・・・・まあね」

土御門「まぁ、お喋りはここまでにして本題に入ろうか」

土御門「車を待たせてあるから付いてきてくれ。 詳しいことは中で話そう」

パチュリー「ええ」

584 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:29:07.16 ID:IAgE9Omx0





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





585 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:30:25.85 ID:IAgE9Omx0

土御門「現在わかっていることだが・・・・・・」

パチュリー「待って」

土御門「・・・・・・どうした?」

パチュリー「運転手に聞こえないかしら?」

土御門「その心配はない。 運転席と後部座席を隔てているのは特殊な防音ガラスでな」

土御門「大声で喋ったとしても向こうに聞こえることはないぞ」

パチュリー「へぇ、便利ねぇ」

土御門「それに運転しているのは俺の知り合いだ。 信用していい」

パチュリー「知り合い?」

土御門「同僚で同族さ」

586 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:31:12.29 ID:IAgE9Omx0





海原(まったく、仕事が終わった矢先に土御門さんから電話が来たと思ったらこれですよ)

海原(ま、彼にも事情がありそうですし、深く詮索はしませんがね)

海原(しかし頼み事がただの送迎要員とは・・・・・・学園都市には魔術関係の仲間がいないので、
しょうがないことなのかもしれませんがね)

海原(本来ならば断るべきなのでしょうが、今回は相応の報酬がちゃんとありますからとりあえずは良しとしましょう)フフッ





587 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:32:36.16 ID:IAgE9Omx0

土御門「これまでの調べでわかったことだが、まず『標的(ターゲット)』は件の一族の生き残りであることは間違いない」

パチュリー「・・・・・・そう」

土御門「イギリス清教の攻撃からどうやって生き残ったのか、どんな経路で学園都市に来たのかまでは残念ながら分からなかった」

土御門「だが、記録では9年前から既に学園都市にいたようだな」

パチュリー「9年前、ね。 あの事件から1年後といったところかしら」

土御門「俺は『標的』が侵入していることを聞いたとき監視網に穴漏れが無かったかチェックしたんだが無駄だったわけだ」

土御門「最初から中にいるんだからな」

パチュリー「気づいたときには既に・・・・・・ってことね」

土御門「ただ、9年前といえばまだ魔術サイドと科学サイドの相互不干渉を徹底していた時期だ」

土御門「非正規の方法で入ってきたとは考えにくい。 おそらく逃亡していたところを学園都市の関係者から招かれたんだろうな」


一体誰が『反逆者』としてイギリス清教から追われている人物を、学園都市に招き入れるなどという暴挙を行ったのだろうか。
そんなことをすれば、魔術サイドと科学サイドの均衡が崩れるのは火を見るよりも明らかである。
もしかしたらその人間は『標的』の事情を知らなかったのかもしれないが、それはただの憶測に過ぎない。

588 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:33:37.04 ID:IAgE9Omx0

パチュリー「貴方さっき、『標的』の侵入経路がわからないと言っていたわよね?」

土御門「ああ、全くだ」

パチュリー「でも学園都市のセキュリティってかなり強固だという話を聞いたことがあるわ」

パチュリー「魔術と科学が全く干渉しないようにしている時代であれば尚更。 正規に入ったのであれば資料が残っているだろうし、
逆に侵入したとしても何かしらの痕跡が残っているはずでしょ?」

パチュリー「それなら経路を特定できないのはおかしいんじゃないかしら? そんなことでスパイが務まるの?」

土御門「手厳しいご意見をどうも。 だがいくら俺でも情報を完全に抹消されたら調べることはできない」

パチュリー「抹消? ということは『情報があったという事実』はあるのね?」

土御門「ああ、あまりにも完璧に消されすぎててかえって不自然なくらいだ」

土御門「『正式で秘密裏に招かれた』と考えた方がいい」

パチュリー「矛盾してるわね。 そんなことしたら誰か気づきそうなものだけど」


『正式』かつ『秘密裏』。一見相反する言葉であるが、そこには主語が抜けている。
『誰かにとって正式』であり、『それ以外にとって秘密裏』であれば一応筋が通る言葉だろう。

589 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:35:04.34 ID:IAgE9Omx0

土御門「確かに。 だがそれが出来る奴がいることもまた事実」

土御門「そして仮にこの考えが正しければ、この取引に関わった奴は相当限られてくる」

パチュリー「・・・・・・統括理事長、もしくはそれに準ずる権力者」

土御門「そしてその時代の統括理事長はアレイスター・クロウリーだ」

土御門「統括理事が独自に行っていたとしても、奴がこのことを知らなかったはずがない」

土御門「十中八九関わっていたと考えていいな」

パチュリー「だけどアレイスターは・・・・・・」

土御門「残念ながら、あの事件以来生死不明。 イギリス清教の探知機からも生命反応の消失が確認された」

土御門「以前のようにうまく擬態しているとも考えられるが・・・・・・生きている可能性は低いだろう」

土御門「『最大主教』も死んだと思っているようだしな」

パチュリー「とすると、彼に直接聞くのは諦めたほうがいいわね」

土御門「ああ」


このようなことは関係者に直接聞くのが一番手っ取り早いのだが、行方不明の人間を当てにするのは愚かだろう。
仮に出会えたとしても、アレイスターからその答えを聞けるのかと言われれば疑問だが。

590 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:37:54.44 ID:IAgE9Omx0

パチュリー「じゃあ、どうやって学園都市に来たのかは『標的』に直接聞くしかないのかしら?」

土御門「いや、他に手はいくつかある」

パチュリー「へぇ。 どんな?」

土御門「考えてみろ、あのアレイスターが自ら外に出て『標的』を招き入れると思うか?」

パチュリー「・・・・・・なるほど。 彼の駒となった人間がいるということね?」

土御門「そうなるな。 9年前の時点でアレイスターと親交があって、
    尚かつ学園都市外部で行動していた人間は片手で数えるくらいしかいない」

土御門「そこから調べればおそらく目標に辿り着くことができるだろう」

パチュリー「そう。 色々長くなったけどそっち方面の捜査の心配はなさそうね」

土御門「ああ。 とりあえず『標的』の経歴についての話はここまでにしようか」

土御門「次に『標的』の現在の状況なんだが・・・・・・」

591 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:40:47.24 ID:IAgE9Omx0





――――7月26日 PM8:33





592 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:42:21.81 ID:IAgE9Omx0

黒子と美琴はパソコンに向かって『連続通り魔事件』の資料の再確認をしていた。
もちろん犯人の素性を絞り込むためである。

とは言っても、可能性のありそうなことは殆ど調べ尽くしてしまったため、現在行っていることの大半が徒労に終わっていた。
後は、非正規の方法でネットワークを粗探しするしかない。
だがその方法はリスクが大きいので、出来るだけ使いたくないのが本音だ。


美琴「どう? 何かわかった?」

黒子「やはりこれ以上情報を洗い出しても犯人を絞ることは出来そうにありませんわね」

美琴「やっぱり駄目か・・・・・・わかってたことだけど、確定的な情報がないと無理そうね」

黒子「そうですわね。 悔しいですけれど・・・・・・」

美琴「ま、これ以上急いでも良い結果はでないわ。 少し休みましょ」

黒子「・・・・・・仕方ありませんわね」フゥ


黒子は想うところがあるようだったが、美琴の言い分に素直にしたがった。
寮に帰ってきてから2時間以上も資料とにらめっこしていたのだ。
これ以上続けても集中力が低下してまともな思考は出来ないだろう。

美琴は佐天から借りた漫画を鞄から取り出す。
寮に帰ってくる間に我慢できずにある程度読み進めてしまっていたので、今度はその続きからだ。

593 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:45:03.60 ID:IAgE9Omx0

美琴「・・・・・・」ペラッ


こうして読んでみるとなかなか味のある漫画だと美琴は思った。
美琴は基本的にカワイイものが好きな性格だ。この漫画のようなやたら濃いデザインはあまり興味がない。

自身が着る下着やパジャマは何処か子供っぽいものであるし、持ち物に付けているストラップはゲコ太で全て統一されている。
ゲコ太については何故か周りからは不評であるが、自分はカワイイと思っているので気にしない。

そんな美琴ではあるが、この漫画については素直におもしろいと思えた。
重厚なストーリー、登場人物の心理描写、迫力のある戦闘シーン・・・・・・
読者を引き込むには十分な要素が揃っている。

ただ、漫画に登場する独特の効果音についてはなかなか慣れなかったが。ウケ狙いなのか真面目なのか判断に困る。


美琴(この吸血鬼、なかなかの外道ね)

美琴(それと同時に強者の余裕っていうか、妙な威厳があるわね)

美琴(これが『カリスマ』っていうやつかしら)

美琴(それにしてもまだ吸血鬼の能力を明かさないなんて、作者も結構じらすわね)ペラッ

美琴(あ、ミドリが必殺技を仕掛けるみたい)


ページをめくると、主人公の仲間である緑服の男が吸血鬼に攻撃を仕掛けるところだった。
未だに分からない吸血鬼の能力の正体を探るため、己の出しうる全てを用いた総攻撃である。

594 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:46:13.53 ID:IAgE9Omx0





緑服の男「全方位からの広範囲爆撃! 避けられるか――――!」

吸血鬼「――――」


上下前後左右、あらゆる方向から緑服の男が作り出したエネルギー弾が迫り来る。

その一つ一つが必殺の一撃。まともに食らえばいくら吸血鬼といえど重傷は免れない。
そしてこの攻撃を避けることは不可能。なぜならその弾幕には回避できるような隙間はないからだ。

緑服の男は勝利を確信した――――その時。


吸血鬼「時よ、止まれ」


吸血鬼が小さく呟く。するとどうだろう。
世界は色を無くし、そこにある有象無象全てが石のように動かなくなる。
その中で唯一動けるのは吸血鬼のみ。なぜならこの世界はその吸血鬼そのものだからだ。

吸血鬼はその中を悠々と動き回り、緑服の男が生み出したエネルギー弾をゴミをどけるように移動させる。
人一人分が通れる隙間を作った吸血鬼は、自分の家の玄関から出るように優雅に檻から抜け出した。

吸血鬼はそのまま時が止まった緑服の男の前に立ち、そして――――





595 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:47:37.37 ID:IAgE9Omx0

突如、美琴の脳内に電流が走る。この漫画の中の吸血鬼は時間を止めて物を動かしていた。

時間が止まっている間に物体が動けば、あたかも瞬間移動したかのようになる。
もしかしたら犯人は時間を止めて動き回っていたのではないか。


美琴(でも『時間を操る能力者』なんて存在するのかしら?)

美琴(『時間停止(タイムストッパー)』なんて下手すれば私以上の能力者じゃない)

美琴(少なくともレベル5、私が知らない第2位か第6位?)


『時間停止』。その力の前には並みの能力者では相手にすらならない。
時間を止めて心の臓に刃物を突き立てればそれで済む話なのだから。

だがそれ程までに強力な能力を持っているのならば、噂くらいは聞こえてきそうなものである。
余程自分の能力を隠したいのか、それとも情報規制がなされているのか・・・・・・

596 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:48:29.17 ID:IAgE9Omx0

美琴「ねぇ、黒子」

黒子「何ですのお姉様?」

美琴「『時間を操る能力者』っていると思う?」

黒子「時間操作ですの? わたくしはそのような能力は存じませんが・・・・・・」

黒子「でも、どうしてそのようなことを?」

美琴「いやね、もしかしたらそれがあれば『空間移動』を再現できるんじゃないかな〜って」

美琴「まあ私もそんな能力は聞いたことないし、思いつきだから確たる証拠もないし」

美琴「一応念のためって所かしら」

黒子「初春に電話します? まだ起きていると思いますから調べられると思いますが?」

美琴「そう? じゃあお願い」


黒子は携帯電話を手に取ると初春に電話をかける。学園都市のデータベースを参考にしたいときは初春に頼めばほぼ確実だ。
この学園都市において、情報戦で彼女の右に出る者はいないだろう。
実際過去に美琴とやり合ったときは、初春の方に辛勝ながらも軍配が挙がっていた。

597 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:48:59.51 ID:IAgE9Omx0

初春『もしもし〜?』

黒子「あ、初春ですの?」

初春『どうしたんですか白井さん、今お風呂の途中だったんですけど?』

黒子「それは失礼。 後でかけ直しますわ」

初春『いえ、急ぎの用だったのなら良いですけど』

黒子「でしたら、お姉様が貴方に調べて欲しいことがあるそうですの」

初春『調べ物ですか?』

黒子「今お姉様に替わりますわ」


黒子は自分の携帯電話を美琴に手渡した。
それを受け取った彼女は電話の向こうにいる初春に事情を伝える。


美琴「あ、初春さん? いきなり電話をかけたりしてごめんね」

初春『大丈夫ですよ。 ところで調べたいものって何ですか?』

美琴「お昼の事件のことなんだけど、『時間を操る能力者』について少し調べて欲しいのよね」

初春『時間・・・・・・ですか。 何か手がかりを掴めたんですか?』

美琴「わかったと言うより、ただの思いつきね。 でも今はとにかく情報が欲しいでしょ?」

初春『確かにそうですけど・・・・・・わかりました』

598 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:49:25.53 ID:IAgE9Omx0

美琴「どのくらい時間がかかりそう?」

初春『そうですね・・・・・・まともに調べれば結構時間がかかりますけど、今晩寝ずに調べれば明日には報告できると思います』

美琴「そこまでしてもらわなくても良いんだけどね」

初春『いえ、今夜は徹夜します。 折角御坂さんがアイデアをくれたんですから、私も頑張らないと』

美琴「無茶言ってごめんね。 じゃあ明日、風紀委員支部で会いましょ」

初春『了解しました〜』


プツッ ツー、ツー、ツー

599 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:50:43.61 ID:IAgE9Omx0

黒子「初春は何と?」

美琴「明日には調べ終わるみたいだから、支部のほうで結果を聞くつもり」

黒子「そうですか。 良い結果が出るといいですわね」

美琴「そうね。 今回のお礼に黒蜜堂のお菓子でも買っていこうかしら」

黒子「それなら私は餡蜜をお願いしますわ」

美琴「初春さんへのお礼なのに何でアンタに買わないといけないのよ」

黒子「あら、お姉様がこの事件に関われるのは『わたくし』や固法先輩のおかげですのよ?」

美琴「・・・・・・それもそうね。 固法先輩の分も買わないと」シレッ

黒子「わたくしの分は?」

美琴「あーもうわかったわよ! 買ってあげるわよ! 佐天さんも入れて餡蜜4人分で決定ね!」

黒子「さすがお姉様。 器も広いですわ」

黒子(あぁん! お姉様からのご褒美なんて! 黒子感激!)クネクネ

美琴(・・・・・・一発シメといたほうがいいかしら?)

600 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/08(月) 01:51:14.49 ID:IAgE9Omx0
今日はここまで

質問・感想があればどうぞ
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 02:40:37.45 ID:dAlH8KMDO
乙!
まさかのパチュリーさんだった。となれば霧雨氏の暴れは永夜からかな?

子供ってのは影響されやすいらしいからな。ジョジョを
読んだミコっちにも心境の変化とかは起こるんだろうか?
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 10:11:31.58 ID:W7M6/PBio
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 12:09:05.13 ID:7+1NJXBE0
MMDのパッチェさんには大人っぽいやつもあるから、それでイメージすれば良いのかな?
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/10(水) 14:55:40.82 ID:PfO+QfEb0
そういえば、霊廟組ってどうなるんです?
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 16:26:53.26 ID:0qVFNDVB0
>>1さんは霊夢さんってどう思います?
606 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:14:23.25 ID:PROX3MpW0
>>601
どうでしょう?ジョジョの口調バリバリな美琴も見てみたい気もしますが
ですがたぶん自分にはあの独特な口調を再現することは・・・・・・

>>603
パッチェさんは着痩せするのがジャスティス。異論は認めない

>>604
妖々夢、星蓮船、神霊廟組は魔術サイドで出したいところですが・・・・・・
正直に言ってストーリーがなかなか浮かんでこない
禁書SSで魔術サイド側の本格的な話が少ない理由がわかるような気がします
魔術って超能力とは違って神話や御伽話といった明確な土台があるので、
それらに詳しくないと設定を考えるのが難しい
超能力については意外と何でもありな側面もありますからね

>>605
自分の中では2種類考えています
一つ目が他人に対する反応は冷ややかだけど、実際はかなりの情熱の持ち主というタイプ
公式で霊夢さんは何事に対しても平等に興味がありませんが、
ただ淡白な性格だと誰にも好かれないような気がします
人妖問わず好かれているそうなので、それなりに感情は表に出す人であると思います
ぶっちゃけツンデレ

もう一つが本当に冷酷無比な性格で何事にも関心がないタイプ
それこそ他人からの好意も一刀両断しちゃう感じ
でも実際は他人から向けられた好意に対してどう答えればいいのかわからないだけで、
彼女自身としてはかなり人との繋がりに飢えている。しかしそのことに全く気づいていない
ぶっちゃけ寂しがり屋


ふと思ったんだけど霊夢さんって

空を飛ぶ程度の能力=超能力
夢想封印、封魔陣、陰陽宝玉その他スペカ=魔術

と考えれば超能力と魔術両方使えるんじゃね?
霊夢さんマジ最強
607 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/10/14(日) 19:15:27.53 ID:PROX3MpW0
これから投下を開始します
608 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:16:07.10 ID:PROX3MpW0





――――7月26日 PM10:46





609 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:17:46.59 ID:PROX3MpW0

咲夜「失礼します。 お嬢様、飲み物をお持ちしました」

レミリア「いいわよ。 入ってきなさい」


レミリアが許可を出すと、咲夜がマグカップを乗せたコースタートレイを片手に持ちつつ部屋の中に入ってきた。
レミリアは洋風の寝間着を着て、自分の部屋の机に向かってパソコンに何かを打ち込んでいた。
十にも満たない、しかも中世ヨーロッパの箱入り娘のような少女が、巧みに文明の利器を使いこなしている姿は異様に見える。
だがこう見えても彼女は立派な社会人。この現代においてパソコンも使いこなせないようでは生きてはいけない。
外よりも技術が進歩している学園都市においては尚更だ。ここでは小学生でも携帯端末を使いこなすことが出来るのだから。


咲夜「失礼します・・・・・・」コトッ

レミリア「ん・・・・・・」


咲夜が温めたミルクが入ったマグカップをレミリアの目の前に置いた。
液面から立つ湯気に乗せられて届くバニラの香りが心を落ち着かせてくれる。
これだけでも軽い睡魔に襲われそうだが、今は仕事中だ。やるべき事が終わるまでは眠ることは許されない。
それならばコーヒーを飲めばよいと思うが、そうすると今度は眠るのが難しくなる。
徹夜しなければならないほどの仕事は溜まっていないので、そこまでする必要はない。

レミリアはマグカップを手に取りミルクを少し口に含む。
舌の上にシロップな甘い味が広がる。それを口の中で少しだけ転がすと、静かに飲み下した。
ミルクの温かさが体の内部から広がり、体の隅々にまで行き渡る。
このままベットに横たわれば、そのまま夢の中に埋没できてしまうだろう。

610 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:18:53.99 ID:PROX3MpW0

レミリア「ふぅ・・・・・・とてもおいしいわよ、咲夜」

咲夜「お褒めに預かり光栄です」

レミリア「本当、毎回ベストな飲み物を持ってきてくれるわね。 これも一種の才能かしら?」

咲夜「私の取り柄はこれくらいしかありませんから」

レミリア「謙遜するんじゃないの。 その技術は一朝一夕で身につく物では無いのだから」

レミリア「これなら他の場所に勤めても十分にやっていけるでしょうね」

咲夜「私はお嬢様以外には仕えるつもりはありませんよ」

レミリア「そう言われるのは悪い気はしないけど・・・・・・」


確かに今の所はレミリアと咲夜は主従関係にあるが、これは咲夜の実地試験を行っているためである。
繚乱家政女学校では現在、実験的に『メイドを雇いたい人を募集し、その場所に生徒を送り込んで働かせる』という試験を行っている。
この試験は学校のカリキュラムを修了し、優秀な成績を修めたメイドの最終試験として行われる予定だ。
試験を合格して尚かつ雇い主のお気に召せば、そのまま雇われることになっている。
この試験の利点は卒業後の勤め先を探す手間を省けることと、
1年間の間でメイドと雇い主の相性関係を知ることが出来るという所だろう。

611 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:19:30.14 ID:PROX3MpW0

メイドというのは特殊な業種である。
古代ローマにおいては奴隷の仕事であり、中世において『使用人』としての立場を獲得した。
近代以降は中流階級の拡大と共にメイドの人口も増加し、19世紀の後半から20世紀の初頭において全盛期を迎えた。

日本でも昔においては庶民層の娘が富裕層に雇われるということは決して珍しいことではなく、女性の就職先としてはありふれた存在だった。
工場での労働に比べて身元のしっかりした家庭で働くことは、女性の両親としても安心出来ることなのだ。
今でこそ『メイド喫茶』だのなんだので不純なイメージがつきまとっているが、本来ならば健全で由緒正しい仕事なのである。

しかし、第一次世界大戦において『女性労働力の再評価』による女性の社会進出が始まると同時に、
メイドの文化は目に見えるように急速に衰退していった。
今ではメイドを本業として働いている女性はごく僅かしかいない。

そのため、今ではメイドの仕事先を見つけることは困難を極める。そもそも需要が殆ど無いからだ。
仮に働き先を見つけたとしても、そこの職場に適合できなければ彼女達にとって悲惨なことにもなりかねない。
メイドは雇われているという関係上、雇用主に私物化される可能性が十分に考えられる。
実際に雇用主による性的搾取が問題となり、それによって裁判が引き起こされた事例も存在しているのだ。

それだけでなくメイドによる犯罪も起こっており、雇用主の財産に対する窃盗や横領が起きたり、
最悪雇用主がメイドに殺害されてしまうという事件もある。
合衆国ではメイドによる盗難被害が問題視され、全裸で仕事をすることで盗難被害を防止するサービスが行われているほどだ。
流石に学校側は生徒達を裸にして働かせるようなことしないだろうが、
メイドが真に信用されるにはそこまでする必要があるということなのである。

見知らぬメイドに対する雇用主の信頼を如何にして獲得するか。
いきなり彼女達を現場で働かせるのは、メイドとしても雇用者としても少々リスクが大きい。
本来ならばメイドはどのような場所であっても働くことが出来るということが理想であるが、
出来るだけ彼女達の肌にあった職場に就かせたいというのが学校側としての願いだ。
それにその方が仕事中のトラブルも少なく、雇用主側としてもメリットがある。

612 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:21:01.19 ID:PROX3MpW0

一端短期間メイドに働かせてみて、雇用主に可否を判断させた方が良いだろう――――
この最終試験はそのような構想を土台として生み出されたものだ。

そして試験の有用性を確かめるために実験を行うことになり、その対象となったのが十六夜咲夜であった。
彼女は学校始まって以来の好成績を収めたメイドであり、学校では教師、同期、先輩、後輩といった、
あらゆる学校関係者からメイドとしての腕を認められている。
メイドの教科書とも呼べる彼女を用いて実験を行えば、最終試験の有用性を正しく評価できるのではないか。
そのような意図から彼女が被験者として抜擢されたのであった。


レミリア(でも、この子ったら私に過剰に忠を尽くしすぎているのよね)

レミリア(あまり主人に依存しすぎると私物化される恐れがあるのに・・・・・・まぁ今更か)


確かにメイドは『雇用主の使用人』という立場である。しかしそれは、『雇用主の道具』であるという意味では決してない。
メイドは人間であり、その人権は保障されるべきものなのである。

しかし咲夜の場合は、レミリアに陶酔とも言い表せるほどの忠誠を誓ってしまっている。
このままでは実験の結果に悪影響を及ぼすのではないだろうか。学校側としてはあまり望ましくないことだろう。


レミリア(私が説得するのもいいけど、それをしてしまうと余計に状況が悪化しかねないし・・・・・・)

レミリア(咲夜は私に絶対的な忠誠を誓っている。 それこそ私に仕えることを自分の存在意義にしてしまっている)

レミリア(そんな咲夜を私が突き放してしまったら・・・・・・『忠誠を誓うな』なんて言ったらどうなるか・・・・・・)

レミリア(最悪この子のアイデンティティーの崩壊に繋がる。 そうなったら、碌なことにはならないかもね)


そんなことを考えながらホットミルクの最後の一口を飲み干した。
咲夜はその間も自分の傍らに立ち、微動だにせず主の命令を待っている。
こうしていると精巧なマネキンを見ているようだ。ここまで来ると感心を通り越して不気味に思える。

613 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:22:52.55 ID:PROX3MpW0

レミリア「・・・・・・ふぅ、ごちそうさま。 もう片付けても良いわよ」

咲夜「畏まりました」


テキパキと食器を片付けていく咲夜を尻目に、レミリアは目の前のパソコンのモニターに向かった。

モニターには明日の仕事の予定がずらりと並んでいる。
彼女は一出版社の編集長をしているのだ。企画を立てたり、雑誌の原稿を整理したりと仕事は山積みである。
会社は比較的最近設立されたものなので規模は小さいが、レミリアの手腕によって経営は徐々に軌道に乗り始めている。
経営の好調による仕事量の増加は、彼女にとっては喜ばしいことと言えるかもしれない。


レミリア(さて、明日の予定は・・・・・・ん?)


視線を感じたので背後を振り返ると、そこには咲夜がこちらを見て立っていた。
食器の後片付けは既に終わっている。もはや彼女にはこの部屋にいる理由はないはずなのだが。

よく見てみると、彼女は何かを言いたげな表情をしている。
こちらが気づいても一向に話しかけてこないのを見るに、おそらくレミリアに話しかけるべきかどうかの判断に迷っているのだろう。


レミリア「どうしたのかしら、咲夜?」

咲夜「・・・・・・お嬢様、一つお聞きしたいことがあるのですが」

レミリア「・・・・・・何かしら?」


従者としての領分をわきまえている彼女が、主であるレミリアに質問をしてくることは非常に珍しい。
レミリアは滅多にない出来事に興味を抱きつつ、椅子を咲夜の方向に向けた。

614 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:24:06.65 ID:PROX3MpW0

咲夜「今日の朝にお嬢様に頼まれたことについてです」

レミリア「今朝の・・・・・・あぁ、あのことね。 上手くいったかしら?」

咲夜「はい。 お嬢様が仰った通り、シスターと思われる少女が妹様に会いに家に訪問して来たので、
妹様はお嬢様と一緒に外出しているということにして帰らせました」

レミリア「そう。 そのシスターは何か言っていたかしら?」

咲夜「いえ、得には・・・・・・シスターの付き添いで来た男の方は何かを考えていたように思えましたが」

レミリア「男・・・・・・? そのシスターには付添人がいたの?」

咲夜「はい。 その男以外にも同年代と思われる女も一緒にいました」

レミリア「ふぅん・・・・・・」


椅子に深く座り、レミリアは咲夜からの報告に思考を巡らせる。
シスター――――インデックスがここに来ることは自分の能力で事前に察知しており、
彼女とフランが会わないように咲夜を使って策を施した。
優秀な従者のおかげで自分の目論見は成功した。しかし、また別の問題も浮かび上がってきている。

615 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:27:25.76 ID:PROX3MpW0

レミリア(インデックスの付き添いの男と女、か。 誰かがついて来るという未来は見えてはいなかったのけれど)

レミリア(いや、私が見たのはあくまで『インデックスがこの家にやってくる』という未来のみ)

レミリア(『インデックスに誰かが付いて来る』という事象はもしかしたら私の能力の範囲外・・・・・・)

咲夜「お嬢様? どうなされたのですか?」

レミリア「ん? あぁ、何でもないわ」

咲夜「・・・・・・? そうですか」


咲夜に話しかけられてことで慌てて思考を中断する。
目の前の会話している相手がいきなり無言になったら不安にもなるだろう。
あれこれ考えるのは全ての話を聞いてから。そうしなければ最も重要な点を聞き逃してしまうことになる。


レミリア「そういえば、フランの様子はどうかしら?」

咲夜「妹様は自分の部屋でお休みになられています。 お嬢様が出掛けている間もきちんとお嬢様の言いつけを守っておられました」

レミリア「そう、なら良いわ。 正直そのことが一番気掛かりだったから」

咲夜「はい・・・・・・」


いくら自分達がインデックスをこの屋敷に中に入らないように策を施しても、
フランが自らこの家を出ようとしてしまったら全く無意味な話になってしまう。

いくら優秀な従者である咲夜でもフランを止めることは不可能だ。
無理矢理取り押さえることは出来るかもしれないが、フランは主であるレミリアの妹である。
そんな彼女に対して力をもって押さえつけるなど、従者という立場上あまり褒められたことではない。

616 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:31:17.00 ID:PROX3MpW0

咲夜「・・・・・・お嬢様。 無礼を承知でお聞きしたいのですが」

レミリア「何かしら?」

咲夜「どうしてあのシスターと妹様を会わせないのですか? 正直に申しますと、お嬢様の意図が掴めません」

レミリア「あら、これはフランに対するお仕置きなのだけれど?」

咲夜「それであれば、妹様がお仕置きを受けていることをあのシスターに伝えないのは何故なのですか?」

咲夜「私としてはその必要は全くないように思えるのですが」

レミリア「フランの沽券のためだとは考えないの?」

咲夜「妹様に対するお仕置きなのであれば、むしろ沽券を貶める方が理に適っているかと」

レミリア「・・・・・・」


なるほど、咲夜は確かに優秀だ。
ただ主の命令に従っているだけではなく、しっかりと自分の考えを持ち行動している。
それでいてその考えをやたらと主に押しつけるのではなく、あくまで従者の考えとして謙虚に述べている点も好感が持てる。
従順であるだけならば犬でも出来る。そこに意志を持ってこそ、人間の従者であると言えるだろう。

617 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:39:20.77 ID:PROX3MpW0

レミリア(これじゃあごまかしきれないわね。 でも『あの事』を全て喋るわけにもいかないし・・・・・・)


おそらく彼女は、フランの罰にはもっと他の理由が絡んでいることに気がつき始めている。
流石は家政繚乱女学校始まって以来の天才と言うべきか。洞察力も他とは一線を画しているようだ。

だが、だからといって全ての真実を暴露するわけにもいかない。
だいぶ巻き込んでしまっているのは事実ではあるが、最低限の線引きはしておかなければならない。
『表』の人間を『裏』の深部まで踏み込ませてしまったら、取り返しの付かないことになる。
かつて自分が見た『闇に沈んでいった者達』のように彼女も――――


咲夜「お嬢様」

レミリア「ん?」


再び視線をやると、そこには咲夜が自分の足下に跪いていた。
いきなりのことに内心動揺しつつも、平静を装って咲夜の姿を見つめる。
確かに彼女は自分の従者ではあるが、彼女がここまでするのを見るのは初めてだ。
何故自分に対してここまで忠誠を誓えるのか。私はこの子に『あんなこと』をさせているというのに。


咲夜「未熟な私ではお嬢様の意図をくみ取ることは出来ません。 そして私とお嬢様の関係は一年だけの短期契約のものです」

咲夜「そんな私に対して全面的な信頼を寄せるなど、絶対に無理であろう事は重々承知しております」

レミリア「・・・・・・」

咲夜「ですが私は、例え微々たる力しか持っていなくともお嬢様の役に立ちたい」

咲夜「お嬢様のためならば、どんな命令でもこなしてみせる所存です。 例え――――」

618 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:40:41.94 ID:PROX3MpW0





咲夜「夜な夜な人間から血を集めて回る、吸血鬼紛いのようなことであっても」





619 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:43:03.06 ID:PROX3MpW0

レミリア「――――!!!」

咲夜「ですからお嬢様、どうか私めに本当のことを教えてはいただけないでしょうか?」

レミリア「咲夜、それ以上言う必要はないわ」

咲夜「お嬢様・・・・・・?」


レミリアは足下で必死に懇願する咲夜の言葉を制止する。
このまま彼女を放置していたら、最終的には頭をこすりつけ始めたりするかもしれなかったからだ。
レミリアが欲しいのは『従者』であって『下僕』ではない。彼女に奴隷紛いのことをさせてしまうのはこちらとしても気分が悪い。
それに、今までの言葉で彼女の気持ちは十分にわかった。これ以上彼女を跪かせることは無意味だ。


レミリア「あなたの気持ちは十分にわかったわ。 そこまで言うのであれば教えましょう」

咲夜「・・・・・・! ありがとうございます!」

レミリア「それに、このまま放置したら何を言い出すかわからなかったからね」

レミリア「咲夜あなた、自分がさっき何を口走ったのか自覚はあるのかしら?」

咲夜「え・・・・・・あ!?」

レミリア「まったく、ここが私の私室だったから良かったものの・・・・・・もし誰かに聞かれていたらどうするつもりだったの?」

咲夜「も、申し訳ありません!」

レミリア「ま、今回は不問してあげるわ。 あそこまで忠誠を誓われちゃったら、私も何かしないと釣り合いがとれないし」

咲夜「ありがとうございます・・・・・・」

レミリア「最後の確認だけれど、本当に教えて欲しいのね? これ以上踏み込んだらもう後戻りは出来なくなるわよ?」

咲夜「二言はありません。 お嬢様の為であればどんなことでも受け入れましょう」

レミリア「良い返事ね。 じゃあ教えてあげるわ――――」


620 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:44:40.59 ID:PROX3MpW0





「どうして私が貴方に血を集めさせているのか。 その理由をね」





621 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:48:25.26 ID:PROX3MpW0





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622 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:50:21.63 ID:PROX3MpW0

フラン「・・・・・・眠れない」


フランドールは自室で一人、ぽつりと独り言を言った。
自分の部屋にあるふかふかのベッドに寝そべっているのだが、どうにも眠気がささない。
先ほど従者のミルクを飲んだというのに、全く睡眠欲が沸き上がってこないのだ。
おそらくこのまま横になっていても、無意味に時間が過ぎるだけだろう。

原因はわかっている。自分の姉から課せられた罰のせいだ。

今日は一日レミリアからのお仕置きによって、一歩も家の外に出ることは叶わなかった。
家から出られないということ自体は過去に長らく経験しているのでそれほど苦痛ではないが、
今はむしろインデックスに会えないという事実が心に深く突き刺さっている。

一体罰はどれくらいの期間続くのだろうか。
もしかしたらこのままインデックスと疎遠になり、また一人になってしまうのではないのか。
そんなネガティブな考えばかりが頭の中に浮かび上がる。


フラン(大丈夫・・・・・・そんなことない。 そんなこと・・・・・・)


そしてその度に、フランはその悲観的な思考を否定しようと頭を振りかぶる。
この動作も今日だけで何回行ったのだろうか。もしかしたら十回は超えているかもしれない。
その他にも、この状況にいても立ってもいられずに自分の部屋から出て家の中を徘徊したり、
何を見るわけでもなくテレビをつけたり消したりするなど、無意味な行動を何度も繰り返していた。

だがそんなことをしても彼女の心が安まるはずもなく、重くのしかかるストレスで全く眠れないのが現状である。
この状況が続いたら一体どうなってしまうのだろうか。

623 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:51:21.59 ID:PROX3MpW0

フラン「・・・・・・」


ぼんやりと窓から外の様子を眺める。
もう夜中に近いためか、外を出歩いている人間は見あたらない。時々車が通るくらいである。

フランの家は住宅の密集地に建てられている。しかもマンションではなく立派な一戸建てだ。
一際土地の事情が切迫しているこの街で個人の家を持つことがどれほどのことなのか、推して知るべしであろう。

しかし一つだけ不可解なことがある。この家に住み始めたのは学園都市に来てまもなくのことだ。
お金もコネもないその時期に、姉がどうやってこれほどの屋敷を購入できたのか未だにわからなかった。
だがこの家に住むことには何ら不満はないので、姉に追求するようなことはしていない。


フラン(おとうさん、おかあさん・・・・・・)


そこまで考えた時、ふつふつと自分の両親のことが頭に浮かぶ。過去のことを思い出してしまったせいだろう。
もしかしたら『孤独』を恐れるあまり、無意識に親の温もりを求めてしまったのかもしれない。

フランの記憶の中には自分の両親のことはほんの僅かにしか残っていない。
しかもかなり朧気であり、顔を思い出すためには唯一残った写真を見ることしか方法がないのだ。

そして再び会おうと思っても、それは二度と叶わない。両親は自分が学園都市に来る前に事故で死んでしまっている。
姉が言うには両親が死んで私達が孤児になったところに、親と親交のあった人物の計らいで学園都市に来ることになったそうだ。

624 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:52:12.80 ID:PROX3MpW0

フラン「・・・・・・寝よう」


フランは昔に思いを馳せることを止め、再び寝る準備に入る。
思い出に縋っても現状が良くなることはない。そのことは彼女自身が一番よく知っている。
『あの事件』を起こしてしまった時に何度も心の中で懺悔を繰り返したが、結局日常が元に戻ることはなかった。
過去を見つめるのは構わないが、そればかりに囚われては一歩も前に進むことは出来ない。
自分もあの時後悔ばかりして現状から逃げだそうとしなければ、もっと変わった未来を歩めていたのかもしれない。


フラン(そう言えばあれ、結局何だったんだろう?)


ふと、今日に昼に奇妙な出来事があったことを思い出した。
大体2時頃だっただろうか。突然屋敷の中にとても美味しそうな香りが漂い始めたのだ。
最初は従者が夕飯の仕込みをしているのだと思ったのだが、台所に行っても料理をした形跡は全くなかった。
その香りがどこから来るのか突き止めようと家の中を歩き回ったのだが結局見つけることは出来ず、
香りは漂い始めた時と同じように突然消え失せてしまったのである。


フラン(ま、いっか)


実に不思議な出来事だったのだが、今となってはその原因を知ることはもう出来ないだろう。
フランは思考を切り替え、何とか眠りにつこうと再びベッドに潜り込んだ。

625 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/14(日) 19:54:24.49 ID:PROX3MpW0
今日はここまで。
次は門番さんが出るんですが、美琴のお母さんと字が被ってるんですよね
どうしましょう?

質問・感想があればどうぞ
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/10/14(日) 20:21:07.82 ID:Io8QUj6AO

片かなでメイリンとかかな?中国は断固無しで
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 20:22:20.57 ID:hc/RMlnDO
乙乙!

咲夜さんは、既に全てを知っていたという訳では無かったのか。

っていうか……全………裸……だと…?

美鈴さん?カタカナで良いんじゃないかな?
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 20:52:29.84 ID:KLId88FIO

美鈴(御坂)の方と同時に出さないなら漢字でもいいのでは?
でも一言くらい言わないとごっちゃになるかもしれんしな…
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 22:14:11.85 ID:Jy/pjyu40
血に惹かれしフラン……


呼び方か、門番美鈴 とか、
もしくは GK(ゲートキーパー)美鈴
なんてのもアリかも?
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 12:45:25.40 ID:9IF67ruM0
霊夢さんの考察、随分しっかりしてるな
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 21:15:10.35 ID:aIV2GIGz0
咲夜さんはどうしてここまでするのか……

それにしても、俺もあのホットミルク飲みてー。
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/16(火) 15:59:31.70 ID:4hC+eS8+0
>>1さんもメイドって欲しいと思う?
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/17(水) 12:14:45.48 ID:avpVj+Mk0
そうだよねー、”使いこなせれば”楽しいだろうね〜。パソコンは
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/18(木) 23:58:02.09 ID:ffWu+yAa0
どう収まるのか見もの
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 10:59:33.85 ID:6/ZemhOY0
ファッション界は物の名前がすぐにコロコロ変わって困る
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 11:01:45.12 ID:V/asG3D40
完璧過ぎるのも問題という事か。
637 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:42:44.35 ID:cSE8Oo820
>>626, >>627, >>628, >>629
考えた結果、漢字で行こうと思います

>>632
コミュ症の自分に女性を雇うなんてこと出来るわけ無い
と言うか、真剣にメイドを欲しがっている人なんて実際にいるのか?

>>633
パソコンを使いこなしていると言えるのはどのくらいの技量がある場合なんでしょうかね?

>>634
出来るだけ綺麗に収まるように努力します・・・・・・

>>636
何でも完璧にこなせている人がいざ困難にぶち当たるとパニックに陥るというのはよくある話


急にレス数が増えた・・・・・・
嬉しいけどプレッシャーがががg


638 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/10/21(日) 20:43:35.51 ID:cSE8Oo820
これから投下を開始します
639 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:44:03.84 ID:cSE8Oo820





――――7月27日 AM6:02





640 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:44:57.26 ID:cSE8Oo820

上条「む・・・・・・?」パチッ


上条当麻は自宅の風呂場の浴槽の中で覚醒した。
起きるにしては幾分時間が早い気もするが、そういう日もあるだろう。

彼が風呂場に寝泊まりするようになったのは、インデックスに出会った1年前からである。
学生寮は基本的に1部屋にベッドが1つであり、そのままでは必然的にインデックスと当麻は同じベッドで寝ることになってしまう。
健全な男子高校生である彼としてはそれだけは何としてでも避けたかったため、自主的に浴槽で就寝するようになった。

インデックスはもちろんそんなことは気にしてはおらず、むしろ一緒に寝て欲しいとまで言っていたのだが、
地雷原でフラメンコを踊るようなことをする勇気が彼にあるはずもなく、今でも浴槽に布団を敷いて寝ている。

この前土御門からは『カミやんは相変わらずニブチンだにゃ〜』と言っていたが、
何のことを言っているのか皆目見当も付かなかったので無視した。


上条「よいしょっと。 いつつつ・・・・・・ちょっと右肩が硬くなってるな・・・・・・」

上条(インデックスもまだ起きないみたいだし、外で運動でもするか)


流石に1年間同じような生活を続けていれば慣れたものではあるが、それでも窮屈であることには変わりなく、
こうして寝起きに体を動かさないと節々が痛くてしょうがない。
もちろんインデックスの前ではそんなことを口に出したりはしないが。

641 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:45:32.89 ID:cSE8Oo820

上条「・・・・・・これでよし」


風呂場から出た当麻はテーブルの上にインデックスへの書き置きを書き、散歩に出掛けてくる旨を伝える。
すぐ戻ってくるつもりであるが、自分が居ない間にインデックスが目を覚まして心配されるのも不味い。


禁書「んぅ・・・・・・。 とうま〜、おなかすいた〜・・・・・・」

上条「・・・・・・まったく、夢の中でも食べ物の話か?」


眠り姫は夢の中でも当麻にご飯を強請っているようだ。ここまでぶれないと呆れを通り越して感心する。


上条「全く、美味しそうに食べてくれるから作りがいはあるけど、もう少し遠慮してくれてもいいんじゃないですかね・・・・・・」

スフィンクス「なーぉ」

上条「はは、お前もそう思うか? スフィンクス」


当麻はインデックスと同じ部屋の居候であるスフィンクスと共に笑い会う。
彼女が拾ってきた捨て猫であるが、この猫も今では上条家の立派な一員だ。

その後彼はインデックスを起こさないように静かに部屋を出て行った。

642 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:46:13.34 ID:cSE8Oo820





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





643 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:47:21.15 ID:cSE8Oo820

当麻は散歩がてらに学生寮の周辺を歩き回る。朝早いため、道にはあまり人がいない。
精々、学校の部活でランニングしている人をたまに見るだけだ。


上条(それにしても、結局土御門の奴は帰ってこなかったな)

上条(インターホンを鳴らしてみたけど返事は無かったし・・・・・・)

上条(何か厄介事にでも巻き込まれてるのか・・・・・・?)


あの土御門のことだ。当麻の知らない間に事件に巻き込まれていたとしてもおかしくはない。
いや、むしろ彼は厄介事に巻き込むタイプだったか。

彼が持ってきた依頼でどれだけ当麻が苦労したか分からない。半ば強引に連れ去られて、戦地の放り込まれたこともあった。
だが恨んではいない。あの状況を解決するためには自分の力が必要であったことは事実であり、
事件を解決するために自ら率先して動いていたのだから。

どちらにせよ、魔術師が侵入してきているこの状況で連絡が取れないのは心配だ。
彼に限ってはないと思うが、深入りしすぎて捕縛されたのではないかと考えてしまう。


上条(ま、あいつのことだからヘラヘラしながらいきなり目の前に現れるかもしれないけど)

上条(とにかく、情報がないと迂闊に動けないからな)

上条「早いとこ連絡しないと・・・・・・ん?」

644 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:48:40.62 ID:cSE8Oo820

ふと気がつくと、当麻は近くの公園まで来ていた。
考え事をしている内に少し遠いところに足を運んでしまったらしい。

通学時にはよく通りかかる場所ではあるが、実際にここで遊んだことは全くといって良いほど無い。
ここの近く住んでいるのは大半が高校生であり、高校生ともなれば公園で遊ぶよりは市街地に出るのが殆どだからだ。
遊具があるわけでもなく、無駄に面積が広いため、この場所を使って自分の寮を新築してくれはしないかと考えたこともあった。


上条(誰かいる? こんな朝早くから?)


だが今日に限って、その公園には一人の人影があった。
ジャージを着たかなり長身の赤髪の女性がラジオから流れる音楽に合わせて変な踊りを踊っている。
背格好から見て大人のようだ。端から見るとかなり怪しい。
だがよく見ると、その動きは香港映画などでよく見るものであった。

太極拳。
東洋哲学における重要な概念である『太極思想』を取り入れた拳法であり、日本でも有名な武術の1つである。
他の武術とは違い、健康・長寿に良いとされているため、格闘技や護身術ではなく一種の健康法として習っている人が多い。
中国では市民が朝早くから公園に集まって練習するのが普通の光景となっている。


上条(でもなんでこんな所で・・・・・・?)


彼女を公園で見るのは初めてだ。
当麻の記憶は1年分しかないのでそれ以前のことは分からないが、たぶん見かけなかったはずであろう。

最近この近くに引っ越してきたのだろうか?
しかし、このあたりは研究者や教職員が住めるような場所は殆ど無かったはずであるが。

645 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:51:26.29 ID:cSE8Oo820

赤髪の女性「ふぅ〜・・・・・・。 これでよしっと」


眺めている内に体操が終わったらしい。
ラジオの電源を消し、大きく背伸びしている。


赤髪の女性「帰ったら仕事の支度しないと・・・・・・ん?」

上条(あ・・・・・・やべ)


どうやら見ていることに気づかれたらしい。女性は当麻の方にスタスタと一直線に歩いてくる。
その歩き方に淀みは一切無く、やはり何かの護身術を修めているようだ。


赤髪の女性「君、どうかした?」

上条「あ、いや、その・・・・・・」


こうして近くで見るとかなり背が高い。少なくとも当麻よりも頭一つ分は超している。
近くに来られると自然と見下ろされる形となってしまうため、妙な威圧感を感じた当麻は少しまごついてしまった。
何と言えばいいか、自分が通っている学校の体育担当である鬼教師と姿がダブっているのである。

ついでに言うとアレも大きい。

アレって何かって? それは女性が持つアレだ。
多くの思春期の男子高校生を虜にするあのメロン(比喩)である。

646 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:53:19.76 ID:cSE8Oo820

上条(でかい・・・・・・黄泉川先生くらいあるんじゃないか?)

上条(というか、雰囲気も何となく黄泉川先生に似ているような・・・・・・)

上条(黄泉川先生をもう少しおっとりした感じにすれば同じようになるか・・・・・・?)

赤髪の女性「黙ってたらなにも分からないんだけど・・・・・・?」

上条「え〜っと・・・・・・」タジッ

赤髪の女性「もしかして、何か悪いことでも考えてるのかな?」ズイッ

上条(近い近い! しかも胸元のチャック閉めてないから見え・・・・・・)


数多の恋愛フラグを叩き折ってきている当麻といえども、元はと言えば多感な男子高校生なのだ。

熟れた肉体を持つ女性に近寄られればどうしても意識してしまう。
それに彼の好みは『年上のお姉さんタイプ』。この女性は彼のストライクゾーンの範囲内だ。
このままでは色々な意味で危険だ。


赤髪の女性「なんてね。 君みたいな真っ直ぐな目をした子が悪いことするはずないし」スッ

赤髪の女性「このあたりを散歩してたんでしょ?」

上条「あ、はい、そうです・・・・・・」

上条(助かった・・・・・・)

赤髪の女性「早起きとは関心関心!」

上条(今日たまたま早起きできただけなんだけどな・・・・・・)


快活に笑う赤髪の女性。こういった所が黄泉川愛穂に似ている。
髪の色を黒にしてじゃんじゃん言わせればもっと似せられるだろう。
当麻としてはあの鬼教師が二人もいる場面など絶対に見たくは無いが。


647 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:54:42.49 ID:cSE8Oo820

赤髪の女性「そういえば名前を聞いてなかったね」

上条「・・・・・・上条当麻ですけど」

赤髪の女性「上条くんね」

上条「・・・・・・」

赤髪の女性「・・・・・・」


不自然な沈黙が二人の間に流れる。これは何か、こちらからも訪ねろということなのだろうか?
このまま沈黙か続くのも気まずいので、当麻は意を決して話しかける。


上条「え〜・・・・・・貴方のお名前は?」

赤髪の女性「ふっふ〜ん。 当ててみたら?」

上条「え?」


名前を尋ねたら今度は自分の名前を当ててみろと言ってきた。初対面の人間の名前を当てろなどと無茶ぶりにも程がある。
そんなことが出来るのは『読心能力』を持つ人間だけだろう。生憎、当麻はそんな便利なものは持っていない。

648 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:55:37.61 ID:cSE8Oo820

上条(いくら何でも無理ゲーでしょうそれは・・・・・・ん?)


女性の体をよく見ると、着ているジャージの胸元に『紅美鈴』と書かれている。
そのまま読むなら・・・・・・


上条「『くれないみすず』さん、ですか?」

赤髪の女性「ぶっぶ〜。 は〜ずれ〜」

上条「えぇ!?」

赤髪の女性「罰ゲームとして、ヘッドロックの刑だ!」ガシッ

上条「のわぁ!」


赤髪の女性は罰ゲームと称して当麻の頭を脇に抱えて締め上げる。
それと同時に彼女のメロン(比喩)が上条の顔に当たった。
うらやまけしからん。

649 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:56:32.37 ID:cSE8Oo820

上条「いだだだだだ! 割れる割れる! 不幸だー!!!」

赤髪の女性「人の名前を間違えちゃう悪い子は君かな!?」ギリギリ

上条「それじゃあ何なんですか!? 上条さんの貧相な脳みそでは皆目見当も付きません!」

赤髪の女性「『ほんめいりん』って読むの!」ギリギリ

上条「ほんめいりんさんですね!? わかりました! わかりましたからぁ!」

美鈴「よし、いいわよ」パッ

上条「いっつ〜・・・・・・本当に割れるかと思った・・・・・・」

美鈴「あははは、ごめんごめん」


紅美鈴と名乗る女性に解放された当麻は、頭の形が変わっていないか手で触りながら確認する。
誇張無しに頭蓋を粉砕されるかと思った。見かけによらずかなりの力の持ち主らしい。
それに実際に腕に触れてみてわかったことだが、彼女は相当鍛え上げられているようだ。

頭の歪みを確認していると、ふと、当麻はあることに気がついた。

650 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:57:15.60 ID:cSE8Oo820

上条「あれ? ということは、美鈴さんは中国出身なんですか?」

美鈴「生まれは中国だけど、育ちは日本かな」

美鈴「中学生のときに学園都市に来たんだよね」

上条「そうなんですか」

美鈴「そういえば上条くんはこのあたりに住んでるの?」

上条「はい、近くの寮に住んでます」

美鈴「この近くの寮っていうと・・・・・・○○高校の寮?」

上条「そうです。 俺は2年生ですね」

美鈴「もしかして、その高校に黄泉川って人いない?」

上条「黄泉川先生? 知ってますけど・・・・・・」


美鈴と黄泉川が似ているとは思っていたが、どうやら二人は知り合いのようだ。
どう言った関係なのだろうか?

651 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 20:58:13.20 ID:cSE8Oo820

美鈴「あの人、私と同期なのよ。 『警備員』のね」

上条「同・・・・・って、えぇ!?」

美鈴「そんなに驚くことないじゃない」

上条「いや、『あの』黄泉川先生と同期ですか?」

美鈴「『あの』って・・・・・・そんなに評判悪いの?」

美鈴「黄泉川さん、結構生徒に好かれるタイプだと思ったんだけどなぁ」

上条「いや、別にそういうわけじゃないですけど・・・・・・」

美鈴「あ、そう? びっくりした」


黄泉川愛穂といえば、当麻の通う高校ではいろんな意味で有名な女性教師である。
科目は体育を担当しているが、そのスパルタたるや、それなりに鍛えているはずの当麻でさえかなりキツイ。

とはいっても、それは彼女なりの生徒に対する接し方であり、
困っているときは親身に付き合ってくれるため人望は厚いという、優しくも厳しくもある教師だ。

当麻も喧嘩に巻き込まれたときはたまにお世話になっている。
もちろん補導されているという意味ではない。

652 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 21:04:20.02 ID:cSE8Oo820

美鈴「どう? 黄泉川さんは元気にしてる?」

上条「そりゃあもう元気ですよ。 というか、病気になったことあるんですかあの人?」

美鈴「う〜ん、そういえば無いような・・・・・・」

美鈴「あ、でもべろんべろんになるまで酔って、次の日二日酔いでふらふらになりながら任務に当たってたことはあるわね」

上条「マジですか?」

美鈴「本当よ。 でも昔のことだから、今はそんなヘマしないんじゃないかな」

上条「まあ、そうですよね」


鬼教師の意外な一面を聞いて当麻は心から驚愕したが、それも昔のことのようだ。

あの教師も若い頃は色々とやんちゃをしていたのだろうか。
確かに快活な性格であるが、他人に迷惑をかけるような人手はなかったはずである。
長い年月が彼女に立派な正義感と義務感を芽生えさせたのであろう。

653 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 21:05:06.02 ID:cSE8Oo820

美鈴「黄泉川さんも昔は色々無茶しててね〜。 いつも隊長に怒られて始末書書かされてたなぁ」

美鈴「居眠り常習犯だった私が言えることじゃないんだけどさ」

上条「・・・・・・黄泉川先生の意外な過去を知ってしまったような気が・・・・・・」

美鈴「黄泉川さんには言っちゃ駄目よ? 私が怒られちゃうから」

上条「じゃあ最初から言わなきゃいいんじゃ・・・・・・」

美鈴「あら、上条くんは女の人との約束も守れないの?」

上条「へ? いや、そんなことは・・・・・・」

美鈴「ま、ばらしたら上条くんも道連れだしね」

上条「ふ、不幸だ・・・・・・」


黄泉川からの制裁など考えただけでも恐ろしい。
このことは墓場まで持って行くことを誓う当麻であった。

654 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 21:14:06.43 ID:cSE8Oo820

上条「そういえば、美鈴さんはどうしてここに? このあたりの人じゃないですよね?」

美鈴「あまり詳しいことは言えないんだけど・・・・・・最近起こってる通り魔事件、知ってる?」

上条「女子生徒ばかりが襲われてるっていうアレですか?」

美鈴「そう、それ。 私はその事件の解決のために協力しに来たの」

美鈴「本当は第7学区の『警備員』だけで対処するはずだったんだけどね」

美鈴「なかなか捜査が進展しないから他学区の『警備員』にお呼びがかかったってわけ」

美鈴「で、その間の住む場所を確保するために近くの宿を取ったんだけど・・・・・・」

上条「そんな場所ありましたっけ?」

美鈴「学生には知られてないけど、教職員用のボロいアパートがあるのよ。 その分格安なんだけど」

美鈴「今はそこで寝泊まりしててね。 今やっているのは寝起きの準備体操なの」

上条「なるほど」

美鈴「本当は黄泉川さんの所に泊まりたかったんだけど、既に誰かと一緒に住んでいるみたいだったから諦めたのよね」


美鈴の言葉から、何故彼女がこの場所に来ているのかは知ることが出来た

『連続通り魔事件』が発生してから一ヶ月。捜査が難航している現状に『警備員』もかなり焦っているようだ。
出来れば当麻も協力したかったが、『幻想殺し』を持っていても所詮一般人。
『警備員』は彼が捜査に加わることを認めはしないだろう。

ふと、美鈴が公園の時計を見る。時計は6:50を指していた。

655 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 21:19:43.17 ID:cSE8Oo820

美鈴「あ、もうこんな時間か」

上条「え? あ! インデックス!?」

美鈴「ん? どうかした?」

上条「ヤバイヤバイヤバイ! 早く帰って飯作らないと・・・・・・!」


そろそろインデックスが目を覚ます時間帯のはずだ。
一応書き置きはしてあるが、待たせすぎるのも良くはない。何より寝起きの彼女はかなり飢えているのだ。


上条「それじゃあ、俺はもう帰りますんで! さよなら!」ピュー

美鈴「あ・・・・・・」


当麻はハイエナに追いかけられているシマウマのようなスピードで走り去ってしまった。
また歯形を付けられるのは勘弁願いたいのだろう。


美鈴「変わった子ね・・・・・・ま、いっか」

美鈴「さ、戻って仕事の支度をしないと・・・・・・」


美鈴はラジオを手にぶら下げると、陽気に鼻歌を歌いながら公園を去っていった。

今日も慌ただしい一日が始まる。

656 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/21(日) 21:20:27.02 ID:cSE8Oo820
今日はここまで

質問・感想があればどうぞ
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/21(日) 22:50:11.47 ID:qYamziCIO

美鈴警備員か
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/22(月) 13:57:06.77 ID:E7drlGpH0
美鈴さんが大人している……

美鈴さんの名前を、いっつも みすず で変換してるのは内緒だぞ☆
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 10:47:40.45 ID:nLaAtuFy0
この分だと、こまっちゃんは葬儀屋(霊柩車の運転手)とかかな?
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 15:49:40.02 ID:HxcopeQx0
チルノ&大ちゃん+三妖精で、日曜朝の番組ごっことかやってるんだろうか?w
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 17:13:10.46 ID:45YRKh3DO
↑見た目通りの年齢ならやってるかもな。
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/24(水) 11:23:19.56 ID:AYSZPnDo0
今後どう絡んでくるか……
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/25(木) 12:38:14.19 ID:d3s5Y7MG0
ゆうかりんランドだかフラワーショップゆうかだかに行ってみたいぞ
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 16:54:33.17 ID:T/hmqwfT0
プロローグの人が襲われたのが既に一ヶ月前か……安否はどうなっているのやら
665 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:12:58.48 ID:QwkRdq8W0
>>658
めいりん でも変換できるようにしてるけど以前の癖でつい みすず で変換してしまう・・・・・・

>>659
葬儀屋なんてあるんでしょうかね?
学園都市は宗教観が薄いのであまりそういったものは少ないような気もします
葬式なんて挙げずに燃やして埋めてお終いなんてこともあり得るかも・・・・・・

そう言えば学園都市で死んだ子供の遺体はどうなるんだろう?
本来ならば親の元の届けられるのでしょうが、学生の肉体は超能力開発の技術の欠片が残っているかもしれないし、
もしかしたら学園内で火葬なりなんなりされないと許可が下りないかも

>>660, >>661
H「あたいって、ほんとバカ」

・・・・・・魔法少女ものだけど、これは朝じゃなかったですね

>>663
ゆうかりんとむぎのんを会わせてみたい
居合わせた浜面の胃にストレスで穴が開くな・・・・・・

>>664
襲われた人達は献血程度の血を抜かれただけなので、少し入院した上で退院してます
まぁ、身体面では大丈夫でも精神面では・・・・・・
666 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:17:51.89 ID:QwkRdq8W0
これから投下を開始します
667 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:18:26.88 ID:QwkRdq8W0





――――7月27日 AM10:13





668 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:19:00.26 ID:QwkRdq8W0

美琴「黒子、初春さん、いる?」ガチャッ

初春「いますよ〜」カタカタ

黒子「お姉様、遅いですわよ」


ところ変わって177支部。
美琴は黒蜜堂が開店するまで店前に並んでいたため、黒子よりも少し遅れて来ることになった。

美琴が中に入ると、黒子と初春がパソコンに向かって資料を作っているのが見える。


美琴「昨日お願いしたのわかった?」

初春「後もう少しで調べ終わります」カタカタ

初春「やっぱり『書庫』のデータ全てに検索をかけるのは時間がかかりますね」カタカタ

初春「おかげでちょっと寝不足ですよ」

美琴「そんな初春さんにお土産」

初春「お土産? 何ですか?」

美琴「はい、黒蜜堂の餡蜜。 これでも食べて元気出しなさい」

初春「えぇ!? もらっちゃっても良いんですか!?」

美琴「もちろんよ。 日ごろの感謝を込めてってやつね」

美琴「はい、黒子の分も」

黒子「ありがとうございます、お姉様」

669 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/10/28(日) 20:19:36.96 ID:QwkRdq8W0

美琴は二人に餡蜜が入った箱を手渡していく。
一箱二個入りで1800円。五人分で計9000円の買い物である。
中学生としては随分と高い買い物であるが、『学園の園』に住む生徒にとってはそれ程でもなかったりする。

この餡蜜にしても店で扱っているものとしてはそこそこ安い部類に入る。
一個2000円以上もするデザートが店内に並べられていることもあるので、この程度の値段では驚きもしない。


黒子「これはあの店の中でもお手頃な価格のものですわね」

美琴「何よ、文句ある?」

黒子「滅相もありません。 お嬢様がくださったものであれば、安物のスナック菓子でも喜んでいただきますわ」

初春「でもお手頃と言っても黒蜜堂だからかなり高級な部類に入るんじゃ・・・・・・」

美琴「レベル5を舐めるんじゃないわ。 この程度なら朝飯前よ?」

美琴「それに、最近使わないからお金がどんどん貯まっちゃっててね。 たまにはパーっと使わないとね」

初春「羨ましいです・・・・・・」


レベル5の美琴はそれこそ宝くじ並みの金額の奨学金を毎回もらっている。
しかし、中学生である美琴がそれ程のお金を全て使い切れるはずもない。
ブランド物のバックやら何やらを買うなら別だが、残念ながら美琴にそういうものには興味はない。
車や家などを買う年齢でもないため、美琴の預金残高は増え続ける一方である。

三つ目の箱を取り出そうとしたところで、美琴は佐天と固法が部屋にいないことに気づいた。

670 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:20:37.18 ID:QwkRdq8W0

美琴「ところで佐天さんと固法さんは?」

初春「佐天さんはちょっと学校に呼ばれて来られないそうです」

初春「『連続通り魔事件』に巻き込まれたから、それに対するカウンセリング見たいなものですね」

美琴「カウンセリング? でも佐天さんには必要ないんじゃない? 気にしてなさそうだし」

黒子「とは言いましても、先生方も一応話を聞いておきたいのでは? 柵川中学にはもう一人被害者がいることですし」

美琴「ふ〜ん・・・・・・」

初春「お昼頃には終わるそうなので、終わり次第来るの思いますよ?」

美琴「わかったわ。 じゃあ固法先輩の方はどうしたの?」

黒子「固法先輩なら『風紀委員』の会議があるそうなので、そちらに行きましたわ」

初春「『連続通り魔事件』、『研究所の連続火災』・・・・・・」

初春「大きな事件になかなか進展が見られないので、一度『警備員』と一緒に会議を開くことになったそうです」

黒子「実質、共同戦線を張ることと同義ですわね」

美琴「『警備員』が管轄のはずの事件に『風紀委員』を本格的に介入させるということは・・・・・・」

黒子「いよいよ本腰を入れる必要があるということです」


671 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:23:17.28 ID:QwkRdq8W0

『警備員』としては自分の管轄の事件に『風紀委員』を介入させたくはない。
彼らの目的の中には単に学園都市の治安を守るためだけではなく、学園都市に住む生徒を危険から守ることも入っている。
守るべき生徒を自身の戦場に介入させてしまっては本末転倒もいいところだ。

だが、『警備員』だけではどうにもならないことが明確になってきた以上、『風紀委員』の協力も検討しなければならなくなったのであろう。


初春「・・・・・・よし! 終わりました!」

黒子「ご苦労様ですわ、初春」

美琴「ごめんね、無理させちゃって」

初春「えーっと後はプリントアウトして・・・・・・」カタカタ

美琴「ところで、何人くらい該当してた?」

初春「一人だけです。 『時間操作(クロックオペレーション)』はかなり稀少な能力みたいですね」

美琴「まぁ、私自身聞いたこともないしね」

黒子「印刷が終わったみたいですわ・・・・・・あら? この人は・・・・・・」

美琴「どうかした・・・・・・!?」


黒子の持つプリントを横からのぞき込む。
その紙に印刷されている写真の顔は――――

672 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:24:01.17 ID:QwkRdq8W0





検体名:十六夜 咲夜(Sakuya Izayoi)

能力名:懐中時計(ルナダイアル)

強度:大能力者(レベル4)





673 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:24:37.99 ID:QwkRdq8W0

銀髪で両側に三つ編み。限りなく白い肌。そして何よりこの生真面目な表情。
カチューシャを付けていないという違いこそあれど、二日前に会ったメイドで間違いない。


美琴「この人は・・・・・・」

初春「御坂さん、知ってる人ですか?」

美琴「・・・・・・ええ、知ってるわ」

黒子「会ったのは二日前でしたかしら?」

美琴「私たちの寮で仕事してたわ。 メイドとしてね」

初春「メイドですか? ということは繚乱家政女学校?」

美琴「ええ。 土御門さんがそう言ってたし、間違いないと思う。 この人が持つ能力ってどんなものなの?」

黒子「えぇっと・・・・・・『時間の流れを、加速または減速させることができる』と書かれていますわ」

美琴「『時間』か・・・・・・」

黒子「どうしますのお姉様? 犯人の特徴は『白髪で赤い瞳孔』ですけれど・・・・・・」

美琴「・・・・・・」

674 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:25:04.39 ID:QwkRdq8W0

希望的観測で初春に捜査をお願いしたつもりだったのだが、
まさか自分の身の回りにいた人物が該当するとは夢にも思わなかった。

さて、その希望的観測は当たったわけだが、いきなり咲夜を捕縛するわけにもいかない。
確かに咲夜の能力は時間に関係があるので『連続通り魔事件』の犯行を行うことは可能かもしれないが、
それはあくまで可能性の話であり、犯行を裏付ける証拠が何一つ無いのだ。
普段の目が黒いのはカラーコンタクトをしているからだとすれば佐天が見たという犯人像とも一致しているが、
それだけでは彼女が犯人であると証明できる確たる証拠とは言えない。

今分かっている情報だけでは彼女が事件の犯人だと断定することは危険だ、
もしかしたら自分たちが見逃しているだけで、他にも同じようなことを出来る人間がいるかも知れない。

ここは本人に直接話を聞いてみるのがベストかもしれない。
そうと決まれば、まずは・・・・・・


美琴「とりあえず、土御門さんに聞いたほうがいいかも」

初春「土御門さんですか。 まあ妥当ですね」

黒子「お姉様なら真っ先に突っ込んでいくと思っていたのですけれど」

美琴「アンタ、私を猪か何かと勘違いしてるんじゃないでしょうね・・・・・・」

黒子「冗談ですわ。 お姉様のような聡明な方がそのような愚行を起こすはずがありませんの」

美琴「まったく、調子いいわね」

黒子「ですが、土御門さんは今は仕事中ではありませんの?」

黒子「メイドという立場上、仕事中に携帯電話をいじくり回すのは問題があるはず」

黒子「電話で話を聞くというのは難しいと思いますが」

美琴「そうね・・・・・・どうしようかしら?」


675 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:26:38.63 ID:QwkRdq8W0

今、土御門舞夏が何処で働いているのかは分からない。
彼女の仕事場は一定期間ごとに変わり、複数の仕事場をローテーションすることになっている。
今朝の時点で寮の中で彼女の姿を見ることはなかったため、おそらく別の場所で仕事をしているのだろう。


初春「学校の方に直接聞いてみますか?」

美琴「そうするのが一番手っ取り早いけど・・・・・・」

黒子「果たして情報を開示してくれるかどうか・・・・・・守秘義務というものがあるやも知れませんし」

美琴「ま、その時はその時ね。 でも何もしないよりはマシだし」

初春「事件の捜査に必要なら協力してくれると思いますが」

黒子「・・・・・・それもそうですわね。 とりあえず、十六夜咲夜が今どこにいるのかだけは聞いてみます」


そう言うと黒子は支部に付属されている電話の受話器を手に取った。
電話をかける場所は繚乱家政女学校の事務部である。本当は固法に指示を仰いだ方が良いと思うのだが、
彼女は現在会議中の身。携帯電話の電源は切っているだろうし、この方法を使うことは出来ない。

だからといって無断で行動するのもどうかと思うのだが、目の前にある可能性をただ黙ってみていられるほど出来た人間ではない。
美琴も黒子も正義感が強い方だし、その二人を初春だけで引き留めるというのも酷な話だ。
今回の場合は初春も佐天が襲われているということがあって、他二人に肩入れしている気がしないでもないが。

676 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:27:27.75 ID:QwkRdq8W0

黒子「もしもし、繚乱家政女学校事務部の方ですか?」

美琴「果たして上手くいくかしらね。 黒子なら粗相のあるようなことはしないだろうけど」


通話を開始した黒子を見て美琴は初春にこの作戦の成功の可否を聞いてみる。
黒子は美琴が関わると見境が無くなるが、普段は非常に真面目な『風紀委員』である。
さらに、お嬢様学校の集まりとも言える『学舎の園』出身の学生だ。
社交辞令なんてものは既に完璧にこなせるし、外国語も三ヶ国位なら現地人並みに話せるので、
その気になれば世界に通用するビジネスマンにもなれるだろう。

交渉でヘマをして失敗するようなことはまず起こりえない。しかし・・・・・・


初春「確率としては五分という所でしょうか」

美琴「ネックなのはそいつが事件の犯人かもしれない可能性があるという事実ね」

美琴「学校側としては自分の生徒が犯罪者かもしれないなんて意地でも認めたくはないでしょうし」

初春「一般的な学校なら、悲しい話ですけど学生の不祥事なんて珍しい物でもありませんからそれ程問題はないのですが・・・・・・」

美琴「繚乱家政女学校は名門校の部類に入るからね。 それに泥が塗られるともなれば・・・・・・」

初春「相手側が情報の開示を拒否することは十分考えられます」


学校側としては自分の生徒に要らぬ疑いをかけられるのは避けたい。
事件の関係有る無しに関わらず、疑われたという事実が不味いのだ。それだけで学校のイメージが悪くなるのは必定である。
例え冤罪だったとしても、それが原因で発生した噂により被害を被ることはよくある話だ。

677 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:28:15.21 ID:QwkRdq8W0

美琴「でもそれをやっちゃうのも悪手だと思わない?」

初春「そうですね・・・・・・隠蔽していると思われたら、それはそれで評判が悪くなりますね」

美琴「でしょ? だから学校側も拒否することはないと私は思うんだけど」


学校側が今回の事件のことを認めようと認めまいと、学校の評価が落ち込むことは避けられない。
だが認めて協力した方が認めないよりも、犯罪の解決に協力したという意味では評価の被害が少ない。
もし仮に情報開示を拒否して『やっぱり犯罪者でした』ということにでもなってしまえば信用は地に墜ちる。
それであれば、学校は必ず捜査に協力するであろうと美琴は踏んでいた。


黒子「○○校長ですか? お忙しいところすいません・・・・・・」

美琴「どうやら校長先生まで話を通すことが出来たみたいね。 以外だわ」

初春「事務から資料を受け渡される程度で終わると思ってました。 まさか校長先生が直々に出てくるなんて・・・・・・」

美琴「向こうもこの事件には頭を悩ませているのかしら?」

初春「被害者の中に繚乱家政女学校の生徒はいなかったはずですけど・・・・・・」

美琴「誰かが犠牲になる前に早く解決して欲しいのかもね」


そう言いながら校長と会話を続けている黒子を眺める。
流石に学校のお偉いさんともなれば緊張は隠せないらしく、少し顔を強ばらせ気味に応対していた。
それでも言葉が詰まらないあたりは流石と言うべきか。

678 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:28:53.88 ID:QwkRdq8W0

黒子「はい、はい、お忙しいところすいませんでした。 それでは失礼します・・・・・・」ガチャッ

美琴「お疲れ様。 どうだった?」

黒子「どうやら、学校の方にはいないみたいですわね。 何処かで住み込みで働いているとか」

美琴「そう言えば土御門さんがそんなことを言ってたわね・・・・・・」

黒子「月に一度は学校の方に来られるみたいなのですが、つい先日がその日に当たっていたらしいですわ」

美琴「私達に会ったときか。 うーん、このままだと学校で会えるのは一ヶ月後になるのか・・・・・・」


一ヶ月。流石にそこまで待っていられるほど余裕のある状況ではない。
『連続通り魔事件』の被害者の数は最初の発覚から一月で10人を超えているのだ。
このままさらに同じ期間放置するとなると、単純計算で被害者数は2倍、悪ければもっと増えることになる。
こうなったら直接職場に赴く必要があるのではないか。


美琴「咲夜さんに職場に訪問することって出来るかしら?」

黒子「今すぐには無理ですわね。 流石に先方の許可を取る必要がありますし・・・・・・学校側も協力はしてくれるみたいですが」

初春「そもそも何処で働いているかわかるんですか?」

黒子「それは学校の方から送られてくる資料に記載されているはずですわ。 ただ、少し遅れるかもしれないとは仰っていましたが」

美琴「つまり情報待ちってことか・・・・・・待たされるというのは歯がゆいわね」

679 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:29:41.85 ID:QwkRdq8W0

初春「でも『少し遅れる』ってどういうことなんでしょうか? 勤め先の住所なら簡単に纏められると思うんですけど」

黒子「それは仕方ありませんの。 プライバシーというものがありますから」

黒子「それに繚乱家政女学校の中でもトップに君臨する人のようですからね」

黒子「学校の顔も同然の人物ですから、出来るだけ慎重にならざるを得ないのでしょう」


おそらく十六夜咲夜は繚乱家政女学校の広告塔だ。
そうともなれば彼女の扱いに関しては万全を期したいというのが学校側の考えだろう。


美琴「『完全で瀟洒な従者』だっけ? 思えばかなり破格な扱いよねぇ」

初春「パーフェクトって呼ばれるくらいですから、それはもうすごいんでしょうね」

初春「メイドさんの仕事って詳しくは知らないので何とも言えないんですけど」

美琴「まぁ、土御門さんの話だとかなりの完璧超人らしいって事は確かみたいね」

美琴「今なら土御門さんが言っていたこともわかるわ。 50人分の料理を1時間で作るなんて、
それこそ『時間を操る』位しなきゃできっこないもの」

初春「50人を1時間・・・・・・ですか? なんというか、想像できません・・・・・・」


十六夜咲夜がどのように能力を駆使して仕事をしているのかは判らない。
残像が見えるほどの速さで動きながら作業している可能性もある。だが時間を操作できるなら朝飯前だろう。
もしかしたらもっと他にも有効な使い方があるのかもしれない。

680 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:30:24.77 ID:QwkRdq8W0

初春「白井さんはそろそろ・・・・・・」


初春が部屋にかかっている時計を見て黒子に巡回の時間であることを教える。
今日は初春は支部に残って色々作業をしなければならず、固法は会議で出払ってしまっている。
つまり、黒子一人で街を見て回らなければならないのだが・・・・・・


黒子「そうですわね。 午前の見回りに行くとしますわ」

美琴「私も行く。 ここに残っててもすることないしね」


暇をもてあましている美琴が必ず付いていくだろし、心配は無用だろう。
一般人が『風紀委員』の仕事に参加するのは本来ならば褒められたことではないのだが、美琴に関しては今更な話である。


初春「留守は任せてください。 学校の方から連絡が来たら報告しますので」

黒子「よろしくお願いしますわ。 では行きましょうお姉さま」

美琴「それじゃあ、ちゃちゃっと終わらせますか」

黒子「早く終わらせたいのは山々ですが、手は抜かないで欲しいんですの」

美琴「わかってるわよ」

681 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/10/28(日) 20:32:17.80 ID:QwkRdq8W0
今日はここまで。

黒子と家政繚乱女学校との電話の遣り取りも詳しく書いてたんだけど、
正直あまり面白いものでもなかったのでばっさりカットしたという裏話があったりする

質問・感想があればどうぞ
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/28(日) 21:12:57.64 ID:NclyjgqIO

学園都市で死んだ場合は普通に親族に引き渡されるって原作で明言されてた希ガス
置き去りに関しては火葬後に集団墓地に入れられる事になってる
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/29(月) 13:02:10.02 ID:XSIjh95m0

料理に関しては、煮込みとか漬けおき、加熱・冷却、作業速度の加減速でどうとでもなるんだろうな。
それか”料理を作るという作業全体を加速”てな感じでいけるのかも知れないけど。
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/30(火) 10:57:59.17 ID:SjZLqz1T0
導入部の寮監って本当に鬼だったりするんじゃなかろうな?w
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/31(水) 14:18:43.42 ID:IhraLoni0
時間停止か……早く老けるぞ?
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/01(木) 11:37:47.16 ID:4XfQsPWS0
萃香とかどんな扱いなのかねぇ
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 10:59:50.34 ID:YlJJEj+M0
会議の結果も気になるな
688 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/11/04(日) 21:35:53.66 ID:ZnljL1bX0
>>682
学園都市なら情報秘匿のためにそれくらいしそうだと思ってたんですが・・・・・・

>>683
時間操作があれば熟成・発酵の時間も余裕で短縮できますね
実際に原作でも彼女が保管しているビンテージワインは、能力で丁度良いくらいに熟成しているみたいです

>>684
あの鬼の面々の性格を考えると『学舎の園』の寮監が務まるとは思えないw

>>685
周りの時間を遅らせた分だけ自分の時間も遅らせればプラマイゼロです

>>686
番外編に出すつもりです。この話が終えたらになると思います

>>687
ちゃんと会議風景も描写するので楽しみに待っててください
689 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/11/04(日) 21:48:05.13 ID:ZnljL1bX0
※注意
今回の話は所謂番外編のような扱いであり、部分的には繋がっていますが物語の根幹に関わってくる程ものではありません
ぶっちゃけると>>1がふと思いついたネタを自重しきれずに書いてしまった話です。
そんなものなので、一部の人々には不快感を与える内容になってしまっているかもしれません

では投下を開始します
690 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/11/04(日) 21:48:51.34 ID:ZnljL1bX0





――――7月27日 AM10:45





691 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 21:50:23.53 ID:ZnljL1bX0

佐天「う〜ん・・・・・・やっと終わったか」ノビー


佐天が今いる場所は柵川中学校の玄関前。
先日不幸にも事件に巻き込まれてしまった彼女は、その後の体調や精神状態を確認するために学校に呼び寄せられていた。

佐天自身は大丈夫だと思っているのだが、学校側としてはそうもいかないらしく、
せめて形だけでもということで渋々カウンセリングを受けることに相成ったのである。


佐天(私は大丈夫だって言ってるのにね。 先生達も心配性なんだから)

佐天(でも、そんなに質問されることもなかったし、その辺は気遣ってくれたのかな?)


カウンセリングで聞かれたことといえば、体の調子はどうだとか、時折頭痛が起きることはないかだとか、
そういった簡単な内容の質問をいくつかされただけだった。
そのおかげでカウンセリングは意外と早く終わり拍子抜けしたわけだが、
彼女としてはせっかくの夏休みを学校で過ごしたくはなかったので結果オーライである。


佐天(はやいとこ初春の所に行こうっと。 ここ数日『挨拶』してなかったからなあ)

佐天(初春、どんな顔するかなぁ・・・・・・)ニヤニヤ


最近は色々と忙しかったので、『挨拶』をする暇がなかった。
佐天にとっては初春との親交をはかるための大切なコミュニケーション手段である。
一日一回は行わないとむずかゆくて仕方がない。めくられる初春としては堪ったものではないのだが。

692 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 21:51:51.85 ID:ZnljL1bX0

佐天(あれ・・・・・・?)


玄関を出ると向こうから一人の少女が歩いてくるのが見えた。
緑色の髪にケロヨンの髪飾り。あの姿は確か――――


佐天(この前事件に巻き込まれたっていう隣のクラスの子かな?)

佐天(確かレベル3の『空力使い』だったよね・・・・・・)

緑髪少女「・・・・・・」トボトボ


少女の足取りはおぼつかない。今にも躓いて倒れそうだ。
髪はボサボサ、目の下に隈ができており、若干やつれているように見える。
どうやらかなり憔悴しているようだ。見ているだけで非常に痛々しい。

このまま放置したら非常に危険な気がする。
理由はないが、佐天はそう思った。


佐天「・・・・・・あのっ」

緑髪少女「・・・・・・誰、ですか?」


少女は虚ろな目で佐天を見据える。
どうやら目の前に来るまで佐天のことに気づかなかったらしい。かなりの重傷だ。

693 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 21:53:11.73 ID:ZnljL1bX0

佐天「どうしたんですか?」

緑髪少女「・・・・・・ですか」

佐天「え?」

緑髪少女「あなたも、私を嗤いに来たんですか」

佐天「どういう――――」

緑髪少女「――――」ギロッ

佐天「!!!」ビクッ


少女は濁った目で佐天を睨みつける。佐天はそれに思わず竦み上がってしまった。
誰も信用しようとしないその眼光が佐天の体に突き刺さる。
一体何があったらこのような視線を創ることが出来るようになるのだろうか。


緑髪少女「・・・・・・みんなで寄ってたかって私を哀れんで。 鬱陶しいったらありゃしない」

緑髪少女「普段はコソコソと私を避けてるくせに」

佐天「・・・・・・」

緑髪少女「でも、私は知ってるんです。 影では私のことを嘲笑ってることを」

緑髪少女「ええ、普段自分の能力を鼻にかけてたのは認めます。 私は学校でただ一人のレベル3ですからね」

緑髪少女「それを誇りに思ってたし、そのおかげで他の子から慕われてました」

緑髪少女「ですが、結局それだけなんですよ」

佐天「え・・・・・・?」
694 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 21:54:51.15 ID:ZnljL1bX0

緑髪少女「レベル3だから。 学校で一番のトップだから」

緑髪少女「私の友達『だった』人達は、そんな考えですり寄って来てただけなんです」

緑髪少女「私が襲われた途端に、近寄らなくなりましたからね」

緑髪少女「それどころか遠くから珍獣みたいに眺める始末」

佐天「そんな・・・・・・そんなこと」

緑髪少女「もう騙されませんよ私は。 あなたもそうやって弱みにつけ込もうとしているんでしょう?」

佐天「私はそんな――――」

緑髪少女「もう誰も信じない。 私を陥れようとしているに決まってる! みんなみんなみんなみんナみンナミンナミンナ――――!」

佐天「――――!」
695 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 21:55:24.92 ID:ZnljL1bX0





バシン!





696 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 21:56:43.11 ID:ZnljL1bX0

晴れた空に乾いた音が響く。
狂ったように同じ言葉を紡ぐ少女を見て、咄嗟に佐天が彼女の頬を叩いた音だった。
突然のことに少女は呆然としているが、おかげで正気に戻ったようだ。


佐天「・・・・・・大丈夫?」

緑髪少女「・・・・・・すいません。 取り乱してしまったみたいで」

佐天「結構危険な気がしたから思わず叩いちゃったけど・・・・・・」

緑髪少女「・・・・・・ごめんなさい」


しおらしくなり、顔を俯く少女。
錯乱しているときはかなり人間不信になっていたが、実際は礼儀正しい性格のようだ。
だいぶ落ち着いてきたようだし、今の所再び取り乱すようなことはないだろう。


佐天「落ち着いた?」

緑髪少女「・・・・・・はい。 あの、あなたは・・・・・・?」

佐天「佐天涙子。 隣のクラスだけど、わかる?」

緑髪少女「・・・・・・いえ」

697 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 21:58:27.32 ID:ZnljL1bX0

佐天「・・・・・・あ〜もう! 私が気にしないって言ってるんだからいいの! じゃあ、あなたのお名前は?」

緑髪少女「私の名前、ですか?」

佐天「そうそう! 私だけ自己紹介するのは不公平でしょ?」

佐天「だから、あなたの名前を教えてもらうことで初めてに同じ土俵に建つことが出来るんだよ?」

緑髪少女「はぁ・・・・・・?」

佐天「ほらほら、早く教えて!」

緑髪少女「・・・・・・東風谷早苗です」

佐天「早苗さんね。 うん、覚えた」


自己紹介を終えた後、佐天は早苗の手を引いて玄関の階段に座らせた。
地べたに座るのはあまり褒められたことではないが、彼女の様子を見るに一度休ませた方が良いと佐天は考えたからだ。

698 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 22:00:26.69 ID:ZnljL1bX0

佐天「・・・・・・で、早苗さん。 どうして学校に来たの? 今は夏休み中だし、今日は補習とか無いみたいだし・・・・・・」

早苗「今日は先生に呼ばれて・・・・・・」

佐天「早苗さんもそうなの?」

早苗「え?」

佐天「・・・・・・まあ、よく考えてみれば当然か」

早苗「あの、話が見えないのですけど・・・・・・」

佐天「私も襲われたの。 早苗さんと同じ」


早苗は佐天の同じように『連続通り魔事件』の被害者だ。佐天は事件の被害者として学校に呼ばれた。
ならば、同じ境遇にある早苗も呼ばれるのは当然のことと言えた。


早苗「そうなんですか・・・・・・?」

佐天「うん、二日前にね」

早苗「・・・・・・」

佐天「・・・・・・どうしたの?」

早苗「・・・・・・あなたは平気なんですか?」

佐天「ん?」

早苗「襲われたのに、あなたは平気なんですか?」

佐天「ん〜、そうだなぁ・・・・・・」

699 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 22:02:21.41 ID:ZnljL1bX0

佐天はふと考える。
思い返してみれば『連続通り魔事件』に巻き込まれたことは、確かに不幸な出来事であったことは間違いない。
だが、佐天は事件に巻き込まれたことに早苗ほどショックを受けてなどいないし、気にしているわけでもない。

それは何故か?


佐天「うーん、なんて言うか、『またか!』っていうのが正直なところかな」

早苗「・・・・・・え?」

佐天「実は私、結構面倒事に巻き込まれやすい体質みたいなんだよね。 友達もそう言ってるし」

佐天「以前も大きな事件に関わったことがあってさ。 たぶんそれで耐性が付いちゃったんじゃないかな?」

早苗「・・・・・・佐天さんは、強いですね」

佐天「でも、あまり嬉しくない強さだよね」

早苗「ふふ、そうですね・・・・・・羨ましいなぁ」

佐天「ん?」

早苗「佐天さんは酷い目にあっても挫けずに常に前を向いて歩いてる。 うじうじしてる私とは大違い」

早苗「何が学校のトップなんだか。 情けない限りです・・・・・・」

佐天「ん〜、でもね。 私も昔は下を向いて歩いてたんだよね」

早苗「そうなんですか?」

700 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 22:04:23.36 ID:ZnljL1bX0

佐天は1年前のことを思い返す。

今となっては笑い話で済ませられるが、当時の自分はコンプレックスの固まりだった。
それこそ、劣等感のあまり犯罪に走ってしまうくらいに。


佐天「私ってばレベル0だからさ。 能力が全然伸びないことに嫌気がさしてたんだ」

佐天「友達はみんな高位の能力者だったり、『風紀委員』でがんばってたり、何か一つは取り柄を持ってたからね」

佐天「無力な自分が恨めしかったんだと思う」

早苗「・・・・・・」

佐天「そのせいで道を踏み外しちゃってね。 『幻想御手』って知ってる?」

早苗「1年前の、使うとレベルが上がるっていう? クラスの人がよく話題にしてましたけど」

佐天「私、それを使ったことがあるんだよね」

早苗「え・・・・・・」


701 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 22:05:02.34 ID:ZnljL1bX0

佐天「おかげでその時は能力を使えるようになったんだけどさ」

佐天「副作用で昏睡状態になっちゃってね。 悪いことした罰なのかもしれない」

佐天「私が眠ってた間何があったのかは分からないけど、友達がその事件を解決してくれてさ」

佐天「そのおかげで、無事目は覚めたんだけどね」

早苗「そんなことが・・・・・・」

佐天「で、その時思ったんだ。 『私は一人じゃない。 支えてくれる人がいる』って」

佐天「今まで一人で抱え込んでたけど、私を助けてくれる人がこんな近くにいたじゃないかってね」


佐天はあの事件で自分は一人ではないことを知った。
昏睡状態になる直前、自分の罪を懺悔しレベル0の自分は欠陥品なのかもしれないと、
今まで胸中にため込んでいた打ち明けたとき、泣きながら自分を必ず救うと約束してくれた『友達』。

絶望の闇から引き上げてくれたかけがえのない親友を心配させないためにも、佐天は挫けずに一生懸命生きていこうと決めた。

702 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 22:06:13.41 ID:ZnljL1bX0

早苗「・・・・・・私も」

佐天「・・・・・・?」

早苗「私もそんな友達が欲しかったなぁ・・・・・・」

佐天「・・・・・・」


寂しげな表情で空を見上げる早苗を、佐天は横から静かに見つめる。

目に映るのは心の支えを失い、孤独の中にいる少女が一人。果たしてこのまま彼女の側を去って良いのか。
佐天と早苗は同じ事件の被害者ではあるが、それ程深い関係というわけでもない。
ここで話を終えて別れてしまえば、再び何の繋がりもない赤の他人同士になるだろう。

しかし、『このまま彼女を一人にしてはならない』という感情がふつふつと沸き上がってきた。
それが彼女の正義感から生まれたものなのか、それとも同じ境遇の者を見捨てたくないという心から派生したものなのかはわからない。
しかし今、早苗を見てどうにか助けてあげたいと思っていることは事実であり、それに理由を付けるのは無意味なことだろう。


佐天「ねぇ、早苗さんは確か『空力使い』だったよね?」

早苗「え? そうですけど・・・・・・」

佐天「実は私も『空力使い』なんだよね。 レベル0だけど」

佐天「だからさ、私に能力の使い方を教えてくれないかな?」

早苗「どうしていきなり・・・・・・」

佐天「あ〜もう! しょうがないなぁ!」

早苗「わ・・・・・・!」


佐天は早苗の肩を掴み、視線を合わせた。
早苗の深緑色の瞳に佐天の顔が映り込む。戸惑いの色が消えない早苗に佐天は――――


703 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 22:08:27.70 ID:ZnljL1bX0





佐天「私が、友達になってあげるって言ってるの!」

早苗「――――!」





笑顔で力強く告げた。

704 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 22:10:58.36 ID:ZnljL1bX0

早苗「・・・・・・ごめんなさい」

佐天「何で謝る必要があるのさ?」

早苗「でも・・・・・・」

佐天「な〜に遠慮しちゃってるのよ! 私が友達になりたいんだから気にすることないじゃん」

佐天「そういえば早苗さん、先生に呼ばれてるんでしょ?」

早苗「え・・・・・・・、あ!?」

佐天「私も付いていってあげるからさ、一緒に行こ!」

早苗「・・・・・・ありがとう、ございます」

佐天「気にしない、気にしない!」

705 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/04(日) 22:16:06.86 ID:ZnljL1bX0
今日はここまで
佐天×早苗・・・・・・これは流行る!
結構二人って馬が合いそうなのは気のせいなのだろうか

質問・感想があればどうぞ
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/04(日) 22:19:56.40 ID:fMpvGxvK0

常識に囚われてる頃の早苗さんだな
これがああなると思うと少し複雑で胸厚
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/11/04(日) 22:44:46.92 ID:GDLif2JRo
幻想郷じゃないから常識から解き放たれることはないのか?
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/05(月) 12:00:40.36 ID:CwguPhML0

”巻き込まれやすい”体質?おいおい佐天さんよ、貴女は大体自分から突っ込んでってるだろうに

>>707
学園都市の人も大概おかしい奴ばっかじゃないかw
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/06(火) 10:04:27.14 ID:VjH0vZYe0
二柱とやらはどうなってるのか
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/07(水) 10:14:40.70 ID:msnAMWms0
早苗×佐天でツヴァイウィングとかどうよ(ドヤァ
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/08(木) 21:19:33.64 ID:71utUhBA0
能力の上昇しやすさは、東方パワーのおかげで上がってるのかな?
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/08(木) 22:09:10.65 ID:5/R2yW6o0
佐天「学園都市では常識に囚われてはいけないんですね!」
早苗「幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!」

どういうことだおい……全く違和感がないじゃないか。生き別れた姉妹とかじゃないのかww
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 11:24:44.26 ID:QIJHIZuC0
>>710
それを言うならツヴァイウィンド(二つの風)だろ?ウィングじゃ翼だ。一応風を起こすものではあるが
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 17:10:06.93 ID:qpxuQFn20
早苗さんは自分の能力が、幻想郷では奇跡でもなんでもないって悩んでたみたいだからな。
このSSでは、その辺が今回のみたいな問題に変わった訳か。
715 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:00:01.95 ID:konE1+9Q0
>>706, >>707, >>708
超能力の源は『自分だけの現実』。そして『自分だけの現実』とは妄想力
つまり超能力者は基本的に妄想癖持ちということです
何処かネジが飛んだ人間が多いのはきっとそれのせい

>>709
出せたら出したいです

>>710, >>713
何と言う中二病・・・・・・というか、このスレの佐天さんと早苗さんはリアル中二だった

>>711
東方キャラって大半がレベル3以上に相当する能力持ちのような気がします
中にはレベル0としか解釈できない子も当然いますけど。わちきとか

>>712
二人が非常識に囚われるかは今の所不明。早苗さんと初春のフルーツ(笑)談義でも書いてみようか・・・・・・

>>714
二次創作では逆に、外の世界では自分だけ神様が見えることに悩んでいたような描写も見かけますけどね
このスレの早苗さんは友達選びに失敗したみたいな感じでしょうか
716 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/11/11(日) 21:00:52.92 ID:konE1+9Q0
これから投下を開始します
717 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/11/11(日) 21:01:38.19 ID:konE1+9Q0





――――7月27日 AM11:09





718 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/11/11(日) 21:03:45.48 ID:konE1+9Q0

美琴「・・・・・・暇ねぇ〜」

黒子「お姉様、そんなことを言ってはいけませんの」


第7学区の通りを美琴と黒子の二人が歩く。

支部にいてもやることがないからという理由で黒子に付いてきた美琴だが、
だからといってそう変わった出来事が起きるわけでもなく、いつも通りの平和な街中を歩き回っていた。

もちろん手を抜かないように黒子から釘を刺されてはいるので、不審者がいないか目は走らせている。
しかし退屈な物は退屈だ。別に平和が嫌いというわけでもないし、
起きた事件の犯人にレールガンをぶっ放してストレスを発散したいという危険な願望があるわけでもない。


黒子「油断した途端に事件が起こるやも知れませんのよ?」

黒子「常に周りに気を配っておかなければ・・・・・・」

美琴「確かにそうだけどさ、気を張り詰めっぱなしにするのも疲れるのよねぇ」

黒子「まぁ、お姉様は本来部外者ですから無理強いはしませんけれども・・・・・・」


黒子には悪いが流石にこのまま一日を過ごすのは気が進まない。
何か面白い出来事でも転がってはいないだろうか。
例えばウニ頭のヒーローが目の前をほっつき歩いているとか。

そんな風に思い始めた美琴であったが―――――

719 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:05:37.16 ID:konE1+9Q0

「オイ、そんな強く引っ張るんじゃねェよ!」

「でも、あなた歩くの遅いんだもんって、ミサカはミサカは未だに目的地に付けないことに不満を言ってみる」

「俺は一応病人なンですがねェ?」

「何なら車椅子でも調達してあげよっか? 10032号に頼めば嬉々として持ってきてくれるだろうし。
『最終信号(ラストオーダー)』に押させれば様になるんじゃない?」ケラケラ

「オマエは黙ってろ。 この阿婆擦れ女が」


遠くから聞き慣れた声が美琴の耳に聞こえてくる。
見やると一方通行が打ち止めと番外個体を連れて歩いていた。


美琴「アンタ・・・・・・こんな所で何してんのよ」

一方通行「あァン?・・・・・・チッ、『超電磁砲』か・・・・・・」

打ち止め「あ、おねえさま」


美琴と一方通行の間に妙な空気が流れる。二人の間にあった出来事を考えれば当然か。

当麻の仲裁で和解は出来ているが、美琴はあの悪夢を忘れることが出来ず、
一方通行も美琴に対して強い負い目を感じている。

会っていきなり憎まれ口の応酬に発展しなくなっただけ、関係はマシになったと言えるだろう。

720 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:06:55.11 ID:konE1+9Q0

美琴「・・・・・・」

一方通行「・・・・・・」

美琴「・・・・・・何か言いなさいよ」

打ち止め「この人は私たちと一緒にお買い物に来たんだよって、ミサカはミサカはおねえさまにこの人の外出した目的を教えてみる!」

一方通行「クソガキ、余計なこと言うンじゃねェ」

打ち止め「でもこのままだと全然話が進まないよって、ミサカはミサカは未だにおねえさまに遠慮してるあなたに言ってみたり」

一方通行「クソッ、やっぱり黄泉川に任せておくべきだった・・・・・・」

番外個体「とか何とか言っちゃって、最終信号がおつかいに行くって言ったとき一番反対してたのは誰だっけ?」ニヤニヤ

一方通行「オマエはもう一発ぶちのめされねェと気がすまねェらしいなァ? あの時は腕だったから今回は足でもいってみるかァ?」

一方通行「キャタピラに押しつぶされたような前衛的な美脚に仕上げてやるぜェ?」

番外個体「お姉さま〜、白もやしが虐めるよぅ〜☆」ダキッ

美琴「ちょ、ちょっといきなり抱きつかないでよ!」

一方通行「・・・・・・」イライラ

721 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:08:29.28 ID:konE1+9Q0

美琴に抱きつく番外個体。
番外個体の方が背が高いので、姉が妹に甘えているような奇妙な構図ができあがっている。
しかも顔があまりにも似ているものだから視覚効果は抜群だ。
そのせいでいくらかの通行人が二人の方を振り返った。


美琴「と、とりあえず離れなさい! 通行人が見てるでしょ!」

番外個体「お姉さまとミサカは姉妹なんだから、別に遠慮することはないんだよ?」

美琴「アンタの方が大きいんだから! 私の方が妹みたいじゃない!」

番外個体「まったくぅ〜、美琴ちゃんは恥ずかしがり屋なんだからぁ〜♪」

美琴「調子に乗るんじゃないわよ!」

打ち止め「ミサカもミサカも〜」ダキッ

美琴「こら、アンタまで抱きつくんじゃない!」

黒子(あぁっ、お姉様達がくんずほぐれずしているですの・・・・・・)ピロリン

黒子(天 国 は こ こ に あ っ た !)ピロリン

美琴「そこっ! ケータイで写真撮るの止めなさい!」

一方通行「どうすンだこれ・・・・・・」

722 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:09:33.99 ID:konE1+9Q0

その光景を見て一方通行はゲンナリとしている。彼としてはさっさと買い物を済ませてしまいたいのだ。
だが自分が介入して収拾がつくような事ではないし、二人を美琴から引き離すためだけに貴重なチョーカーの電池を使おうとは思えない。
打ち止めに充電してもらうのも手だが、充電器扱いすると怒るのでそれだけはしたくない。
詰まるところ、結局は美琴が一人で何とかするのを待つしかなかった。

しばらくの間二人に抱きつかれていた美琴だが、電気で自分の筋肉を強化して無理矢理二人を自分の体から引き離した。
夏だというのに二人もの人間に抱きつかれては暑苦しいことこの上ない。

引き離された二人はブーたれて文句を言っていたが。


美琴「やっと自由になれたわ・・・・・・」

番外個体「ちぇっ、お姉さまのケチぃ〜」

打ち止め「もっとおねえさまに抱きつきたい〜」ジタバタ

一方通行「ちったァ俺の苦労がわかっただろ?」

美琴「・・・・・・アンタ普段から二人に抱きつかれてるの?」

一方通行「バッ・・・・・・ンな訳ねェだろォが!」

723 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:10:40.89 ID:konE1+9Q0

番外個体「でも昨日も自分のあぐらに最終信号を座らせてたよね?」

打ち止め「この人のあぐらはミサカの特等席なんだよって、ミサカはミサカはお姉さまに自慢してみる!」

一方通行「おォォォォふたァァァァりさァァァァン!? 余計なこと言わないでくれませンかァァァァ!?」

美琴「うわっマジ引くわ・・・・・・」タジッ

一方通行「やめろォ! そンな哀れみの目で俺を見るなァ!」

打ち止め「私は別に気にしてないよって、ミサカはミサカはあなたの趣味を肯定してみる」

一方通行「その発言はかえって誤解されるだろォが!」

番外個体「ぎゃはははは!」

一方通行(コイツハイツカマジデコロス)ギリギリ

美琴「どうどう」


腹を抱えて笑う番外個体を睨みつつ歯ぎしりする一方通行を美琴はなだめる。
擁護するなら彼は別にロリコンではない。ただ、『打ち止めLOVE』なだけである。

え?その時点でロリコンだって?

724 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:12:09.34 ID:konE1+9Q0

黒子「お姉様、そろそろ見回りを再開しないといけませんわ」

美琴「・・・・・・いや、アンタはそのまま見回りに行きなさい。 私は大丈夫だから」

黒子「ど、どういうことですの!?」

美琴「少しコイツに聞きたいことがあるからね。 それが終わったら支部の方に戻るわ」

黒子「それなら白い殿方と一緒に・・・・・・」

一方通行「オマエ、打ち止めと番外個体から離れたくねェだけだろ」

黒子「えっ」

美琴「まぁわかってた」

打ち止め「お仕事はサボっちゃいけないんだよって、ミサカはミサカは社会の常識を教えてみる」

番外個体「流石に変態と一緒になるのはちょっと・・・・・・」

黒子「」

一方通行「アホはほっといて『超電磁砲』、とりあえず店の中にでも入るかァ?」

美琴「そうね、さっさと行きましょ」

打ち止め「はーい!」


棒立ちになっている黒子をその場に放置し、一同は店の中に入っていった。
ちなみに黒子が正気に戻ったのは、それから5分後のことである。

725 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:12:51.02 ID:konE1+9Q0





――――7月27日 AM11:22





726 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:14:09.85 ID:konE1+9Q0

商店の中を美琴と一方通行が並んで歩いている。
打ち止めと番外個体は店のショーケースを眺めながらあちこちを走り回っていた。

背は倍近く違うというのに、二人とも子供のようにはしゃいでいる。
番外個体の感情が打ち止めの方に引っ張られているせいだろうか?
いや、番外個体がミサカネットーワークに感情を引っ張られるのは負の感情の時のみなので、おそらくあれが素面なのだろう。


美琴「そういえば、今日は何を買いに来たの?」

一方通行「炊飯器だァ。 後は食材とかいろいろだなァ」

美琴「炊飯器って・・・・・・アンタのとこ、確かもう4台くらいなかった?」

一方通行「なんでも最新型の奴が出るンだと。 それで今ある奴を一新しようって話だ」

美琴「炊飯器ってそうポンポン取り替えるような物じゃないでしょ・・・・・・」

一方通行「これまで使ってた炊飯器は欲しかったらくれるらしいぜェ? オマエの知り合いに欲しい奴はいねェのか?」

美琴「知り合いって言っても・・・・・・そうだ」

一方通行「いるのか?」

美琴「アイツなら喜んでほしがりそうね・・・・・・」

一方通行「アイツって三下のことかァ? それだったら食材を分けてやった方が喜びそうなンだが」

一方通行「炊飯器があっても米がなかったらどうしようもねェだろ」

美琴「・・・・・・それもそうね」

一方通行「世界を救ったヒーローの天敵が貧困だなンて笑えない話だとは思うがなァ」

727 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:15:21.42 ID:konE1+9Q0

当麻の功績は、それこそ人類史に未来永劫書き残されるほどのものである。
しかし残念ながら、その功績が世界に人々に評価されるようなことは決してない。
あの事件は公表されるべき物では無いし、彼自身も感謝されるために行動したわけではないので、
全てが収束した後も特別なことが起きるわけでもなく、何事もなく自分の日常に還っていった。


美琴「・・・・・・やっぱりお金とか援助してあげたほうがいいんじゃないの?」

美琴「私たちアイツに借りを作りっぱなしじゃない?」

一方通行「オイオイやめとけ。 三下の奴はそんなこと望ンじゃいねェよ」

美琴「じゃあ、家に行って何か食べ物を作ってあげるとか・・・・・・」

一方通行「・・・・・・『超電磁砲』、自分が何言ってるか分かってンのかァ?」

美琴「へ?」

一方通行「家に出向いて飯作るとか、それ完全に『通い妻』だろォが」

美琴「!?!?!?」カァァ////

一方通行「まァ、自分がそうしたいってンなら俺は止めねェけど」

美琴「〜〜〜〜〜!」ガンガンガン!

一方通行「って、柱に頭ぶつけンな!」

728 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:17:11.61 ID:konE1+9Q0

恥ずかしさのあまり近くの柱に頭を殴打し始めた美琴を見て、一方通行は慌てて柱から引き離そうとする。

だが彼は松葉杖をつく程の重度の病人であり、尚かつ筋力も殆ど無いためそう上手くはいかない。
仕方なくチョーカーのスイッチをONにして何とか事なきを得た。


一方通行「ったく、余計な仕事増やすンじゃねェよ!」ゼェゼェ

美琴「はぁッ、はぁッ」

一方通行「どォだ、落ち着いたか?」

美琴「ふぅ〜・・・・・・アンタに心配されるなんて、私も墜ちたものね・・・・・・」

一方通行「それだけ減らず口をたたけるなら大丈夫だな」

美琴「もうこの話は止めましょ・・・・・・で、何の話をしてたんだっけ?」

一方通行「俺達は炊飯器を買いに来たンだ」

美琴「そう、そうだったわね・・・・・・私も荷物運び手伝うわ」

美琴「アンタの所は大所帯らしいし、人手があったほうがいいでしょ?」

一方通行「それは願ったり叶ったりなンだが・・・・・・」

番外個体「あなたはもやしだから力仕事は無理だもんね☆」

一方通行「やかましいわ。 つゥかいきなり出てくンな」

729 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:18:27.50 ID:konE1+9Q0

脇から話に割り込んできた番外個体を睨みつける。

美琴の申し出はこれからのことを考えるとありがたいことは事実なのだが、
一方通行としては手助けをされるということに若干気後れしてしまう。

以前よりは改善されたが、やはり他人からの厚意というものには未だに慣れない。
その親切の裏に何かあるのではないかと警戒してしまうのだ。
幼少期や暗部時代の癖というものはなかなか抜けないもので、例え知り合いであったとしても心の何処かで相手を疑ってしまう。

今の所、打ち止めだけが表裏なしに付き合うことが出来る人間である。


番外個体「あなたが亀みたいにちんたら歩くからいけないんじゃない」

番外個体「ウサギなんだからもっときびきび動かないと♪」

一方通行「・・・・・・これ以上好き勝手言うならこっちにも考えがあるンだが?」

番外個体「へぇ、非力なあなたに何ができるっていうの?」

一方通行「オマエらの小遣いは誰が出してると思ってるンですかァ?」

一方通行「なんなら全部没収してもいいンだぜェ?」

番外個体「ミサカはもうバイト始めたから、そんなのは痛くもかゆくもないんだけど?」

一方通行「分かってねェなァ? その給料が誰の通帳に入るのか知らねェのかァ?」

番外個体「・・・・・・ちょっとそれってまさか」

一方通行「正解は俺の通帳でェす」

番外個体「」

730 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:19:44.42 ID:konE1+9Q0

衝撃の事実に番外個体の頭の中が真っ白になった。

自分の給料が一方通行の通帳の中に振り込まれる。
つまり、いくら働いても一方通行の許可が下りなければお金使うことが出来ないのだ。


番外個体「なっ・・・・・・なにそれ!?」

一方通行「0歳児のオマエにそう簡単に金を持たせるわけねェだろ」

一方通行「一応これでも保護者だからなァ。 オマエの給料のことはしっかり把握する義務があるンだよ」

一方通行「ちなみにこれは黄泉川と芳川も承諾済みだァ。 」

番外個体「ミサカの父親気取りってわけ? あなたにそんな役は似合わないよ?」

一方通行「どうとでも言え。 どんなに喚こうがオマエの給料は俺が握ってるンだからなァ」ケケケ

番外個体「ちくしょう・・・・・・」ガクッ

美琴「まぁまぁ、何か奢ってあげるからさ・・・・・・」

番外個体「やっぱりミサカの味方はお姉さまだけだよ・・・・・・」

一方通行「自業自得だ」


いつも一方通行を弄っている番外個体であるが、今回ばかりは地雷を踏んだらしい。
だからといって改心するわけでもないが。

731 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:20:28.50 ID:konE1+9Q0

美琴「でもバイトかぁ。 どこに勤めてるの?」

番外個体「え? んーっと、確か冥土帰しの病院と提携してる製薬会社かな?」

美琴「ふーん、なら安心かしら」

一方通行「冥土帰し直々の紹介らしいからなァ。 まァその辺は大丈夫だろ」

番外個体「でもあの会社、従業員がすごく少ないからさぁ。 忙しいのなんのって・・・・・・」

美琴「へぇ、あの先生の病院と提携してるって言うから、結構大規模だと思ったんだけど」

番外個体「なんでも薬剤の調剤とか調合とかはそこの所長が一人でやってるらしいよ?」

番外個体「ミサカも面接で一回会ったきりで詳しくは知らないんだけどさ」

一方通行「でも給料は良いらしいじゃねェか」

番外個体「あなたがミサカの給料を握ってる時点で何も嬉しくないんだけど」

一方通行「ハッ、精々独り立ちできるように社会勉強をがんばるこった」

番外個体「そんなの『学習装置(テスタメント)』で大方知ってるんだけど?」

一方通行「オマエのその口調なンとかしない限り一般社会には溶け込めねェっつゥの」

番外個体「それをあなたが言う? あ、顔の時点で論外か♪」

一方通行「・・・・・・給料」ボソッ

番外個体「スイマセンでした」ドゲザ

美琴(まるで私が土下座してるみたいで複雑な気分になるわね・・・・・・)


美琴は自分が一方通行の前に跪いている光景を想像する。

・・・・・・ちょっと寒気がした。

732 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:21:22.13 ID:konE1+9Q0

打ち止め「ねぇ、早くお買い物しようよって、ミサカはミサカはみんなに催促してみたり」

美琴「それもそうね。 で、どこの店に入るの?」

一方通行「ニ○リだ」

美琴「は?」

一方通行「聞こえなかったんですかァ? ニト○だっつってンだろ」

美琴「ちょっと待ってよ。 家電量販店って言ったらケー○とかヤ○ダとかでしょ?」

美琴「あの店ってってそういう所じゃなかったはずだけど」

一方通行「知らねェのか? 学園都市に出店してる○トリは学園都市製の家電製品の販売を一手に請け負ってるんだぜェ?」

一方通行「そンじょそこらの店なンか相手にすらならねェよ」

美琴「いつの間にそんな店に・・・・・・」

一方通行「ほら、さっさと行くぞ」

733 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/11(日) 21:25:46.01 ID:konE1+9Q0
今日はここまで

残念ながら、お値段以上の方は今回は出てきません。名前だけです

質問・感想があればどうぞ
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/11(日) 21:30:18.67 ID:DReHeC/s0
おつ
製薬会社とかお値段以上とか2828できてなんかいいなw
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/11(日) 21:45:02.90 ID:wnkZzK890


魔改造された家具と電化製品ですね
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 00:30:05.14 ID:jmCQ607B0

少しずつ明るみに……これからも楽しみだ
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 10:00:50.39 ID:kBbjZK5s0

みとりさんは居るんだろうか?
そして製薬会社は後々問題を起こすのか?
色々と興味は尽きない
738 : ◆HTlu27uC.s [sage]:2012/11/12(月) 20:49:15.40 ID:CiJjR7Q00
経営者が人見知りって大丈夫か?ww
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/11/12(月) 22:25:56.51 ID:OpGKKhCm0
そういえば、ひゅい!?症を患ってるんだったかwww
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 20:57:43.94 ID:aT/Supse0
そういやぁ漫画版レールガンのプール掃除の時、水流操作の能力者居たな……
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/13(火) 21:50:49.17 ID:7VzCjLPzo
水を操るのと水流を操るのは違うような
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 14:44:17.90 ID:DgAUfWCx0
製薬会社とかも気になるが、まずはスカーレット家をどうにかしないとな。
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 12:14:26.01 ID:2lSNRhek0
●〜
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 21:01:43.66 ID:BSoQsvv40
↑飛べないんだから ●... じゃないの?
745 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:18:43.21 ID:3INmyHKb0
>>734, >>735
「いちごおでん」なんて商品を出しちゃうくらいだから、電化製品も相当カオスなはず
魔改造された機械が陳列されてもそんなに違和感ないかもしれない

>>737
二次創作で一番有名であろうみとりさん。私も大好きです。特にテーマ曲が

>>738, >>739
技術部に属しているから部屋に引きこもっていろんな機械を造ってるよ!人見知りでも安心だね!

>>740, >>741
『水』の意味が液体のことを指しているのか、水分子のことを指しているのかで意味合いが変わってきますね
液体のことを指しているのであれば『水流操作(ハイドロハンド)』と同じ能力になると思います。
でも水分子のことを指しているのであれば、液体の水はもちろん、氷も水蒸気も操れることになりますね
氷の場合は自然に液体が気化して出来る水蒸気とは違って熱を奪う必要があるので、
水分子の位置を固定して氷のように見せかける方法をとると思いますが

>>742
製薬会社が本格的に絡んでくるのはおそらく第三章・・・・・・何時になるのか・・・・・・

>>743, >>744
●<とべないのかー

魔術側だったら出来たかもしれないけどね。でもこのスレの●は能力者なんだ。すまない
746 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:19:40.87 ID:3INmyHKb0
これから投下を開始します。
747 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/11/18(日) 21:21:04.88 ID:3INmyHKb0





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





748 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:21:53.33 ID:3INmyHKb0

美琴「本当に家電量販店になってる・・・・・・」


美琴達は某有名家具店の店内に来ていた。

見渡す限りの家電製品の群れ。所狭しと電子レンジやらオーブンやらが並んでいる。
別のブースには本業である家具が並んでいるそうだが、それにも匹敵するほどのスペースが家電製品販売に当てられていた。

科学が発達した学園都市では、その有り余るほどの技術力を何かに使いたいという技術者達の欲求が強い。
そのため毎日のように色々な製品が彼らによって世に送り出され、受け入れられなかったものは消えていっている。
そしてそのサイクルが学園都市外部のそれよりも遥かに早いというのが特徴だ。

作られたばかりの製品が一週間後には廃棄処分にされているなどということは、ここではさほど珍しいことではない。
大量生産・大量消費社会を極限まで突き詰めたようなとんでもない街ではあるが、
廃棄物の9割以上をリサイクル出来る程の技術力も持っているため、資源の枯渇や最終処分場の寿命を気にする必要はないのである。


一方通行「炊飯器はこっちか」スタスタ

美琴「あ、待ちなさいよ!」

打ち止め「こっちだよって、ミサカはミサカはみんなを呼んでみたり!」

一方通行「わかったから一人で行くなァ! 迷子になったらどうすンだ!」

美琴「・・・・・・随分と面倒見が良いわよねアイツ」

番外個体「そりゃあぞっこんだしねぇ」ニヤニヤ


打ち止めの元に向かって走る一方通行を見て、美琴はそんな感想を漏らした。
普段の無愛想な彼からは想像できない行動である。ギャップのせいで違和感がありすぎだ。

まぁ、美琴としては打ち止めを大切にしてくれるのであれば文句はないのだが。

749 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:23:02.16 ID:3INmyHKb0

美琴「ちゃんと見てくれてるのはありがたいけど、あれじゃちょっと過保護過ぎない?」

番外個体「それだけあの人がロリコンってことじゃない?」

美琴「・・・・・・アンタ、それじゃいつまで経っても給料渡してもらえないわよ?」

番外個体「あ〜、でもこれって一種の本能みたいなものだから。 そもそもミサカの製造目的が『一方通行の抹殺』だったし」

一方通行「オイ、置いてくぞオマエら」

番外個体「はいよー」

美琴「・・・・・・」

番外個体「な〜に辛気くさい顔をしてるのさ?」

美琴「・・・・・・いや、なんでもないわ」

番外個体「まったく、くよくよ悩んでるよりもいっそのこと割り切っちゃったほうがいいと思うんだけどな」

番外個体「ストレスで太るよ?」

美琴「なっ・・・・・・」パリッ

番外個体「おお、こわいこわい」ダッ


口角を釣り上げながらそのまま走り去る番外個体。
美琴はここが家電製品売り場だったことに気づいて、慌てて電気を収めた。

一方通行を殺すために生み出された存在だというのに、彼女の素振りにはそんな出生の影は微塵も見えない。
十年来の友人のような口調で話しかけ、あまつさえ軽口までをも平気で叩いているのだ。
あの剛胆さを見ていると、一方通行に対して引いている自分が滑稽に思えてくる。

750 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:24:21.13 ID:3INmyHKb0

美琴(はぁ、あそこまで綺麗に割り切れたらどんなにいいか・・・・・・)

美琴(同じDNAのはずなのにどうしてこうも違うのかしら)スタスタ

打ち止め「おねえさま、遅いよ!」

美琴「ごめんごめん」

一方通行「『お米を入れれば米とぎから炊飯までボタン1つ』・・・・・・? 便利っちゃァ便利だが・・・・・・」

打ち止め「お水たくさん使うかもって、ミサカはミサカは水道代のことを心配してみる」

一方通行「別に金のことは心配いらねェンだけどな。 黄泉川の奴が五月蠅いからなァ」

番外個体「それにモード切替がないのが欠点だね。 私たちが入れるのは米だけじゃないし」

美琴「炊飯器でステーキを作ってるのはアンタ達の家だけよ」

打ち止め「でも美味しくできるよって、ミサカはミサカは炊飯器の万能さを自慢してみる!」

美琴「いや、それがおかしいんだってば」

一方通行「議論するだけ無駄だァ。 ありゃァ七不思議の1つに入る代物だ」

美琴「そんなのが七不思議って・・・・・・」

番外個体「『全ての料理が作れちゃう魔法の炊飯器』・・・・・・意味不明すぎる・・・・・・」

751 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:25:54.77 ID:3INmyHKb0

そんな炊飯器があったら他の調理器具はお役御免である。

他の商品を探そうと辺りを見回していると、この店で一押しとなっている炊飯器が目に入った。


一方通行「・・・・・・ン? 『河城製造長監修 多機能付き炊飯器』・・・・・・?」

美琴「多機能って・・・・・・お米を炊く機能以外に何つけてんのよ」

番外個体「えーっと、炊飯機能、5段階の温度調節機能、レンジ機能、グリル機能、オーブン機能・・・・・・」

打ち止め「焼き魚から煮物まで全てこれ一品でOKって書いてあるよって、ミサカはミサカはこの炊飯器の多機能さに驚愕してみたり・・・・・・」

一方通行「まるで俺達のためにあるような炊飯器だなァ。 買うのはこれで決まりか?」

美琴「どういうことなの・・・・・・」


どうやら『全ての料理が作れちゃう魔法の炊飯器』は実在していたらしい。
さようなら、フライパン。さようなら、お鍋。


番外個体「・・・・・・ん? これって・・・・・・」


番外個体はふと炊飯器の紹介に書かれている一文を見つけた。
その文章を見て番外個体は凍り付く。

そこに書かれていたのは――――


番外個体「ねぇ、『この商品は消費者のリクエストに基づいて制作されました』って書いてあるんだけど・・・・・・」

一方通行「・・・・・・黄泉川ァァァァァァァァ!!!」

打ち止め「ヨミカワ以外あり得ないかもって、ミサカはミサカはバレバレな消費者に溜息をついてみる・・・・・・」ハァ


こんな炊飯器を制作できるとは学園都市、恐るべし。
というかよくそんな企画が通ったものだ。
出来ることが多すぎるこの炊飯器を完璧に使いこなせる人間は果たしているのだろうか?

結局その炊飯器を5台購入し、黄泉川宅に郵送することにした。


752 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:27:00.53 ID:3INmyHKb0

一方通行「ここら辺で昼飯にするかァ」

打ち止め「お子様ランチ食べたいって、ミサカはミサカはかっこいいあなたにお願いしてみる!」

一方通行「おだてても駄目だっつゥの。 そればっかり注文しやがって」

一方通行「それにファミレスに行くって決まった訳じゃねェンだぞ?」

打ち止め「え〜・・・・・・」

美琴「そうよ。 あなたも他の『妹達』みたいに大人にならないとね」

番外個体(この姿で大人っていうのも変だと思うけど)

打ち止め「でも今日お子様ランチを頼むとゲコ太のおもちゃがついてくるんだよって、ミサカはミサカはおねえさまに耳寄りの情報を教えてみる」

美琴「よし、ファミレスに行くわよ」

一方通行「御坂さァァァァン!? さっきのセリフはなンだったンですかァァァァ!?」

美琴「ゲコ太は全てにおいて優先されるのよ」キリッ

番外個体「お姉さまの方がよっぽど子供じゃない・・・・・・」

753 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:28:02.42 ID:3INmyHKb0





――――7月27日 PM12:35





754 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:29:33.85 ID:3INmyHKb0

一方通行「オイ、『超電磁砲』」

美琴「なによ」ニヤニヤ


とあるファミレスの一角で、一方通行はゲコ太人形を眺めてニヤニヤしている美琴に訪ねた。
子供用のおもちゃをものすごく嬉しそうに手に取っている彼女を見ると、
一年前に自分と対峙したときの気迫は何だったんだと思えてくる。

ちなみに頼んでいる料理は、美琴がペペロンチーノ、
一方通行が生姜焼き定食+コーヒー(ブラック)、
打ち止めがお子様ランチ(オムレツ)+ショートケーキ、番外個体がドリアである。


一方通行「オマエ、俺に聞きてェことがあったンじゃなかったのかよ」ズズー

美琴「そういえばそうだったわね」

番外個体「お姉さまがこの人に聞きたいことがあるなんて珍しいよね?」

打ち止め「どんなお話が飛び出てくるのか、ミサカはミサカは期待の眼差しを送ってみる!」

美琴「そんな期待するほどのことじゃないわよ」

一方通行「とにかくさっさと話せ。 内容によっちゃあ協力してやる」

美琴「・・・・・・ねぇ、『時間操作』の能力のこと、詳しく知らないかしら?」

番外個体「『時間操作』? 漫画にある時間を止めたりする奴?」

打ち止め「時間を止めるときは『ザ・ワールド!』って言うんだよって、ミサカはミサカはヨシカワが見てた漫画の真似をしてみたり!」

一方通行「オマエらは黙ってろ。 ・・・・・・で、どうしてそんなこと俺に聞くんだァ?」

美琴「ちょっとね、少し調べ物してたときに気になっただけよ」

一方通行「・・・・・・」

755 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:31:06.92 ID:3INmyHKb0

一方通行の問いに美琴はにべもなく答えた。
美琴が一方通行に対して質問してくる時点でかなり異常であるが、それ以上に『時間操作』の能力を聞く理由を喋らないのは怪しい。
明瞭な理由を提示しないのは決まって何か後ろめたい感情があるからだ。本来ならばその場で断る所である。

しかし目の前の女は、ある意味一方通行にとってのアキレス腱とも言える存在だ。
それに加えて、自分の周りにはその女の親類縁者である少女が二人。
しかも小さい方は彼の口から『時間操作』について語られるのを今か今かと待ち構えている。
無視しても良いのだが、そんなことをすれば厄介なことになるのは目に見えて明らかだ。
彼女の機嫌を直すために無駄な労力は使いたくないので、自分の知っている範囲のことを話すことにした。

それに美琴は仮にも学園都市第三位の能力者。この話を聞いて何か厄介事に巻き込まれても自分で何とか出来るだろう。
彼女が事件に巻き込まれた時は手助けしてやるが、自分から危険に突っ込んでいくのであれば止めるつもりはない。


一方通行「・・・・・・まァいい。 その能力についてなら噂くらいは聞いたことがある」

美琴「本当に?」

一方通行「1つ聞いておくが『超電磁砲』、『時間操作』ってェのがどんな代物なのか分かってるのかァ?」

美琴「え? そりゃあ時間を速くしたり遅くしたりする能力なんじゃないの?」

一方通行「ったく、その程度の認識たァ呆れるな」

美琴「むっ・・・・・・」

一方通行「一言で『時間操作』って言うけどなァ、実際に行うのは簡単じゃねェンだぞ?」

番外個体「そんなに難しいの? 漫画とかだと結構簡単に使ってるイメージがあるんだけど」

756 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:32:28.42 ID:3INmyHKb0

一方通行「まずオマエら、時間について知ってる知識を上げてみろ」

番外個体「えーっと、『時の長さの単位』?」

美琴「1秒の定義は『セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細準位間の遷移により放射される電磁波の周期の9192631770倍に等しい時間』ね」

打ち止め「おねえさまが言ってること難しすぎてわかんないよ・・・・・・」

一方通行「まぁそんなモンだろォな」

美琴「で、アンタは何が言いたいの?」

一方通行「まず『時間操作』を理解する上で一番重要なのは、『時間はスカラー量』だってことだ」

番外個体「スカラー量?」

一方通行「『スカラー量』っつゥのは、ざっくり言えば『大きさのみを持つ量』のことを指すンだ」

一方通行「これには時間の他に質量、長さ、エネルギー、電荷、温度なンかが含まれるな」

一方通行「ちなみに俺が操る『ベクトル』は『大きさと方向を持つ量』のことだ」

番外個体「なるほど」

757 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:34:41.60 ID:3INmyHKb0

一方通行「このベクトルやスカラーみてェな幾何概念を一般化したのが『テンソル』っつゥンだが、今は関係ねェからそこまでは説明しねェ」

美琴「ちょっと待って、時間は『流れる』んだから方向があるでしょ? それならベクトルのような気がするんだけど?」

一方通行「確かに時間は『流れる』という表現を使われちゃァいるが、その方向が複数ある訳じゃねェだろ?」

一方通行「『過去から未来へ』とか『未来から過去へ』とか捉え方は色々あるが、時間の流れる方向は一つに決定づけられる」

一方通行「だから時間はスカラー量として扱うのが普通なンだ」

一方通行「で、時間操作のことなンだが、コイツは『時間』っつゥスカラー量を操作する能力だ」

美琴「ふーん、でもそれが能力を扱うの難しさとどういう関係があるのよ?」

美琴「『電撃使い』は電荷を操る。 電荷だってスカラーでしょ? それなら時間を操ることだって簡単に出来そうなものだけど」

一方通行「確かに、単純に時間を操るだけならそンなに難しいことじゃないかもしれねェ。 だがそれだけじゃ不十分なンだよ」

打ち止め「不十分ってどういうことなのって、ミサカはミサカは続きを促してみる!」

一方通行「『時間の停止』を例に考えてみろ。 今自分以外の時間が止まったらどォなる?」

美琴「え? えーっと・・・・・・」

一方通行「正解は『全く身動きがとれなくなる』だ」

一方通行「光も見えねェし音も聞こえねェ。 『空気の塊』に完全に閉じ込められる」

美琴「・・・・・・確かに。 物体が動けるのは時間が流れるからだもんね」

一方通行「だから時間停止っつゥのは簡単なことじゃねェンだよ」

758 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:35:40.78 ID:3INmyHKb0

美琴「じゃあ『時間の操作』はどうなのよ? 加速したり減速したりは難しいことじゃないでしょ?」

美琴「周りを限界まで『遅く』したり、逆に自分を『速く』すれば擬似的に時間停止も出来るんじゃない?」

一方通行「確かに、単純な時間停止よりは現実味があるなァ。 だがそれでも色々問題がある」

一方通行「周りの時間が遅くなればなるほど自分の周囲にある空気の『粘度』が増大するンだ」

打ち止め「ねんどってなーにって、ミサカはミサカは質問してみる!」

一方通行「『粘度』ってのは流体の粘り気のことだ。 粘度が大きいほどドロドロした流体ってことだなァ」

美琴「空気と水を比べた場合は水の方が粘度が高いってことになるわね。 水の中は動きづらいでしょ?」

一方通行「わかりやすい例えをどォも。 話を続けるぞ」

一方通行「周囲の時間が遅くなるってことは、本来の1秒が能力者にとっては2秒にも3秒にも『増える』ってことを意味する」

一方通行「粘度の単位は『Pa・s(パスカル秒)』だ」

一方通行「単位から考えれば時間が増えると粘度が大きくなるのは一目瞭然だなァ」

一方通行「つまり周囲の時間を遅くすれば遅くするほど・・・・・・」

番外個体「空気の粘度が大きくなって仕舞いにゃ動けなくなるね」

一方通行「そォいうことだ」

759 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:37:13.79 ID:3INmyHKb0

打ち止め「じゃあ『時間操作』って使い物にならないのって、ミサカはミサカは少しがっかりしてみる・・・・・・」

一方通行「そう結論づけるのは早計だ。 これはあくまで操作対象を『自分とその他』の二つに限定した場合の話だからなァ」

美琴「つまり?」

一方通行「自分と周りの空気の時間の流れが違うから身動きがとれなくなるンだ」

一方通行「だったら自分と周囲の時間をまとめて操作しちまえばいいだろォ?」

美琴「あ、そっか」

一方通行「おそらく『時間操作』の能力を持つ奴はそォやって使ってるはずだ。 どうだ、理解したかァ?」

打ち止め「あなたってやっぱりすごい物知りって、ミサカはミサカは羨望の眼差しを送ってみる!」

一方通行「そりゃどォも」

一方通行(本来なら地球の自転とか公転に対する対処も必要なンだが、説明するのも面倒だ)

美琴「それにしても、噂を聞いた程度にしては随分と詳しく知ってるじゃない」

一方通行「そんなにおかしいことかァ?」

美琴「・・・・・・それもそうね。 第一位だし」

一方通行「オマエにその理由で納得されると違和感しかねェンだが」

美琴「ま、ありがとね」

一方通行「・・・・・・そろそろ店出るぞ。 飯食い終わったのに席占有してたら何言われるかわかったもんじゃねェ」

番外個体「あなたの顔って凶悪だから、誰も怖くて声かけられないんじゃないの?」

一方通行「・・・・・・給ry」

番外個体「スイマセンデシタ」ドゲザ

美琴(懲りないわねぇ・・・・・・)

一方通行(ぶっちゃけこの脅し無駄なンじゃねェか?)

760 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:39:42.88 ID:3INmyHKb0

カランカラン マタオコシクダサイマセー


番外個体「でさ、実際の所はどうなのよ?」

一方通行「あァ? 何の話だ?」


番外個体は歩きながら美琴に聞こえないように一方通行に聞いた。
美琴は打ち止めと一緒に前を手をつないで歩いている。打ち止めに強引に引っ張られている感じにはなっているが。


番外個体「『時間操作』のこと。 単に噂に聞いたってだけじゃないでしょ?」

一方通行「・・・・・・チッ。 やっぱりオマエにはばれるか」

番外個体「お姉さまも気づいてると思うよ? あれは自分から手を引いただけ」

一方通行「そォか。 ・・・・・・教えて欲しいのか?」

番外個体「そりゃあもちろん☆」

一方通行「仕方ねェ。 言っても聞かねェだろォし、オマエにだけは教えてやる」

番外個体「やった♪」

一方通行「最初に言っておくが、面白いもンじゃねェぞ?」

番外個体「いいから早く!」

761 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:40:46.61 ID:3INmyHKb0

一方通行「・・・・・・俺が『時間操作』のことについて知ったのはつい最近だ」

一方通行「俺が過去に関わってた実験の資料を漁ってたときに見つけた物なンだよ」

番外個体「へぇ。 あなたが関わってたってことは碌でもないものだったんでしょうけど」

一方通行「あァ。 俺にとっちゃ慣れたクソみてェな実験だよ」

番外個体「で、その内容って?」

一方通行「・・・・・・『RSP実験』だ」

番外個体「RSP?」

一方通行「”Reproduction of Scarce Power”。 日本語で言えば『稀少能力の再現』ってェところだな」

一方通行「コイツは『特力研』と提携してた研究所で行われてた実験らしい」

番外個体「特力研・・・・・・正式名称は『特例能力者多重調整技術研究所』だっけ?」

一方通行「まァな。 この実験の目的は『脳の開発方法とそれに伴って発現する超能力の因果関係を調査すること』だが、
     本命はそれを元にして『数ある超能力の中から希少性の高い物を狙って発現させること』だ」

一方通行「最終的には俺の能力を量産できるようにするのが目的だったみてェだ」

762 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:42:03.84 ID:3INmyHKb0

番外個体「でも失敗したんでしょ?」

一方通行「でなきゃ『一方通行』なんざありふれた能力になってるだろォな」

一方通行「もしかしたらレベル5が全てベクトル操作関連の能力になってたかもなァ」

番外個体「そりゃつまんないわね」

一方通行「脳に電極ぶち込んだり劇薬を大量に投与したり色々したみてェだが、案の定無駄だったてェわけだ」

一方通行「で、この方法はダメだってことで俺の演算方法を直接脳に植え付ける『暗闇の五月計画』に実験はシフトしたそうだ」

番外個体「ああ、アレね・・・・・・」

番外個体(そういえば最近クロちゃんに会ってないなぁ・・・・・・)

番外個体(今度また弄りにいこ♪)

763 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:43:17.72 ID:3INmyHKb0





黒夜「・・・・・・!?」ゾクッ

絹旗「超どうしたんですか? 顔が少し青いですよ?」

黒夜「いや、さっき変な悪寒がしたンだが・・・・・・」

絹旗「それよりさっさと中に入りましょうよ。 映画が超始まってしまいます」

黒夜「・・・・・・これ以上B級映画は見たくねェンだけど」ゲンナリ





764 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:46:37.55 ID:3INmyHKb0

一方通行「・・・・・・だが俺の能力は再現できなくとも、希少価値の高い能力を発現した奴は僅かにいたらしい」

番外個体「その一つが『時間操作』ってこと?」

一方通行「あァ。 他にも色々あったが、実用性がねェってことで処分されたそうだ」

番外個体「じゃあ『時間操作』の能力者は処分を免れたんだね」

一方通行「一応、時間について研究してる奇特な奴等もいたらしィからなァ」

一方通行「RSP実験に関わってた奴等もある程度成果が欲しかっただろォし、そういう意味では貴重なサンプルだろォな」

番外個体「で、その能力者はどうなったの?」

一方通行「知らねェ」

番外個体「・・・・・・は?」

一方通行「どうやら研究所が『警備員』に見つかってしょっ引かれたらしい」

一方通行「まァその時には大方証拠隠滅も終わってたから、『特力研』の方には何もダメージは無かったみてェだが」

一方通行「能力者も処分されたのか『警備員』に保護されたのかは分からず仕舞いだ」

765 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 21:47:16.19 ID:3INmyHKb0

番外個体「わからないって訳? つまんないの」

一方通行「文句言うんじゃネェよ。 ま、俺としては保護されてると思うがなァ」

番外個体「どうして? 生かしておく必要ないじゃない」

一方通行「生存者がいれば、事件が終わったよォな雰囲気を出せるだろ? そうすれば深入りされずに済む」

番外個体「確かに安心しちゃうかもね」

一方通行「そォいうことだ」

番外個体「で、話はもう終わり?」

一方通行「俺が知ってるのはこれくらいだ。 もっと知りたかったら黄泉川にでも聞けばいいだろ」

一方通行「アイツのことだから何か知ってるンじゃねェか?」

番外個体「教えてくれない気もするけどね」

一方通行「まァな」

打ち止め「早くお買い物にいこって、ミサカはミサカは歩くのが遅い二人に叫んでみる!」

美琴「早く来なさいよ! アンタがいないとどこに行けばいいのかわかんないでしょ!」

一方通行「チッ、ほっとくとうるせェから早く行くぞ」

番外個体「はいはーい」

766 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/18(日) 22:00:55.14 ID:3INmyHKb0
今日はここまで。

時間の説明だとかベクトルとスカラーの違いだとかこれで合ってるよね?
間違ってたらごめんなさい

原作の方でフレ/ンダさんが生きていたみたいですね
クローンかもしれないのでまだ本人かどうかは怪しいみたいですけど
ていとくんの再登場フラグもそうですが、このスレみたいに原作が完結した後の後日談みたいな話を書いている場合、
書いている途中で『死んだ人が実は生きていた』みたい展開になるとそれに沿うように書き直すべきかどうか非常に迷う

書く量と投下する量のバランスが崩れて書き溜めが少なくなってきたので、来週はお休みにしたいと思います


質問・感想があればどうぞ
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga sage]:2012/11/18(日) 22:51:08.40 ID:QTmlxx8N0
>>766
既にこのスレで”死んでる”って描写しちゃったりとかこのキャラ死んで無いと別のキャラの設定に影響しちゃうとか
物語が破綻しない程度なら出してもいいんじゃない?

まぁ、ゆっHり考えっていってね!
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/18(日) 23:11:27.36 ID:nSKVQ3Ep0
乙!
実用性が無い能力?   小傘ちゃんの事かあああぁーーー!!
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 10:28:51.41 ID:Q8V5qW7k0

ベクトルもスカラーも、詳しく理解してる人なんてそうそう居ないだろうから大丈夫っしょ。
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 14:01:35.92 ID:UBFjGR1O0
ほうほう、ルーミアは能力者か。出て来る時が楽しみだ。
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 16:30:18.69 ID:/raFQzuK0
時計が出来る前は、時間ってのは”状態が変化してゆく事”でしかなかったのかもな
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 12:32:50.87 ID:O6AcerIV0
あんな炊飯器を作れるとは……流石は技術チートのにとりだ。
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 16:06:09.45 ID:pI7Awaqu0

霖之助氏は出るんだっけ?
774 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/11/25(日) 20:25:25.49 ID:RBMqgJMJ0
>>767
アイテムの面々が出てくるのはもっと先なので修正はいくらでも利くのですが、
フレンダさんが退場したままの方が面白い話を作れそうかな〜と思ってました
まぁ、そこまで話が進むまでには次巻が出てるかもしれないので、詳細が判明するまでは保留しておきます

>>768
?「私も『人を驚かす程度の能力』っていう似たような能力だけどね」
?「あんたはまだ魔術側で出番があるかもしれないだけマシでしょ。 あたいなんて『死体を持ち去る程度の能力』っていう誰特能力だし・・・・・」
?「『春が来たことを伝える程度の能力』というのもありますよー」

>>769
結構こういう設定にはこだわってしまう性格。超科学が跋扈する学園都市でそんなこと気にしてどうするんだって言われたらそれまでですが
常識に囚われない発想が出来る原作者さんには驚きを禁じ得ません

>>770
他のバカルテット共々登場予定です

>>771
現代人にとっての時間は追われるものですかね?
>>1は書き溜めをする時間がもっと欲しいです・・・・・・ありすぎてもかえって筆が進まなかったりしますけど

>>772
?「ニ○リの科学力は世界一イイイイ!!」

>>773
科学側で出すか魔術側で出すか検討中。たぶん魔術側が濃厚
なぜならDAZE☆が関わってくるから


とりあえずレス返しだけ。来週になったら再開します
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/26(月) 10:54:36.28 ID:H1rfqR8ro
白黒……
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 13:12:34.37 ID:HRaQ0O3F0
レス返し乙
最近レティさん荒ぶってんなー。寒い事寒い事
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 12:06:45.69 ID:SJpoSBqA0
>>770へのレス返
ほぅほぅ、それはそれは。楽しみだな
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 15:26:47.82 ID:GDWXbmaG0
春を伝えるってのは、リリーだと癒されるから良いじゃん?
それともハイテンション弾幕の代わりに、ハイテンション体当たりでもかましてくるのか?それだとちょっと……
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 11:42:42.36 ID:2T00txSW0
上海人形可愛いよね。あれって売ってるとしたら、一体幾らなんだろ
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 13:43:11.71 ID:2RguhZJB0
神霊廟の電撃さんは絡むんですか?
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 20:40:05.93 ID:3uPFf2gn0
死体を持ち去る……闇病院の裏スタッフとかで活躍してそうだ
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/01(土) 12:22:53.92 ID:ZqPAhfUL0
脳に電極とかサイバーパンクな
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 17:04:45.57 ID:qWCv8WCt0
チルノ達が出てくるなら、霧の泉とかあるのかな?学園都市風に表現するとどうなるんだろう
784 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/02(日) 19:32:54.58 ID:2hIMO8fo0
>>776
部屋のストーブが壊れたので毛布をかぶって作業してます。本当は炬燵がいいんですけどね

>>778
リリー「我が世の春が来たぁ!」とか言いながら回転タックルを繰り出してくるのか・・・・・・

>>779
上海人形がどんな人形なのかで変わってくると思います。ただのぬいぐるみであればそんなに高価ではありませんが、
球体関節人形のような精巧なものになると、オーダーメイドのものは数百万の値打ちが付くそうです
アリスの人形の場合槍とか弓とか平気で使うので、球体関節のような気もします

>>780
絡ませたいけど、相当先になると思います。そこに至るまでにエタる可能性が高いのであまり期待しないでください

>>781
もうただの猫でいいんじゃないかなと思ってたりもする。古明地姉妹のペットで彼女達とは会話できるとか
でも『肉体変化(メタモルフォーゼ)』という能力もあるし、そっち方面もありえるかも

>>782
一方さんなら能力開発でそれくらいされたんじゃないかと思いまして
RSP実験は『能力開発の方法と発現する能力の因果関係を調査すること』であり、『一方通行』を生み出すことが最終目標なので
一方さんに対して行った開発方法をRSP実験の被験者に対しても行ったというわけです

>>783
学園都市に霧の湖に相当する大きさの湖はあるんでしょうかね? 公園で見かける程度の大きさならばあるいは・・・・・・
むしろ通っている学校に備え付けられた池程度にまで小さくなるかも
785 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/12/02(日) 19:33:44.48 ID:2hIMO8fo0
これから投下を開始します
786 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/12/02(日) 19:34:26.71 ID:2hIMO8fo0





――――7月27日 AM10:30





787 : ◆jPpg5.obl6 [saga ]:2012/12/02(日) 19:38:41.49 ID:2hIMO8fo0

鉄装「えー、これから『第7学区警備員・風紀委員合同対策会議』を始めます」


『第7学区警備員統轄支部』にある大会議室。
そこで第7学区に所属している『警備員』と『風紀委員』の各支部長が一堂に会した会議が開かれようとしていた。


鉄装「今回の会議の議長を務めさせていただく第73活動支部所属の鉄装綴里です。 今回はよろしくお願いします」

鉄装「では、時間も押していますので早速議題に入りましょう。 黄泉川さん、お願いします」

黄泉川「わかったじゃん」


黄泉川がスクリーンの脇に立つと、『第7学区連続婦女暴行事件対策会議』と銘打たれたスライドが映し出された。


黄泉川「まず始めに夏休み中の警備で多忙な所、多くの『警備員』や『風紀委員』に集まっていただき感謝している」

黄泉川「同じく学園都市の治安を守る者として誇らしく思うじゃん」

黄泉川「それじゃあ鉄装が言ったように時間も押していることだから、早速本題に入るじゃんよ」


黄泉川はそう言って話を続ける。

788 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/02(日) 19:40:28.22 ID:2hIMO8fo0

黄泉川「今回集まってもらったのは他でもない、今巷で起こっている『連続通り魔事件』のことについてじゃん」

黄泉川「『風紀委員』には先日詳細が伝わったかも知れないが、この事件は今から約一ヶ月前の6月25日に発生して以来、
週に1〜2回のペースで被害者が出続けている」

黄泉川「つい一昨日も被害者が2名発生し、これで被害者数は計14名になったじゃん」

黄泉川「一度に2名の被害者が出たのはこれが初めてじゃん。 このまま続けば事件がエスカレートする可能性があるじゃんよ」

風紀委員「週1〜2回ですか・・・・・・かなりのペースですね」

黄泉川「この事件の問題は最新の事件が起こるまで犯人の手がかりが一切掴めていなかったことじゃん」

黄泉川「本人を特定できる物的証拠はなく、監視カメラにも姿が確認されていない。 これが原因で犯人の特定が難航してるじゃんよ」

黄泉川「最新の事件でわかったことはいくつかあるが、決定的な情報がないために捜査は進展していない」

黄泉川「そこでより多くの情報を集めるために『風紀委員』諸君にも協力してもらうことになったじゃん」

黄泉川「とは言っても、昼間の見回りのついでに情報収集をしてもらう程度じゃん。 
『風紀委員』に仕事に支障が出るようなことはないと思うじゃんよ」

黄泉川「今回の会議で『警備員』が把握している『連続通り魔事件』の詳細、
そして君たちにどんな行動をとってもらうかを説明するから心して聞くように」

黄泉川「ここまでで何か質問は?」

一同「・・・・・・」

黄泉川「無いのであれば現在の状況の説明はこれで終わりじゃん」

黄泉川「次に犯行状況について説明するじゃんよ」


黄泉川はスクリーンに映っている映像を切り替える。
次は今まで起こった事件の犯行場所、時間帯、発見時の状況などが纏められたスライドが映し出された。

789 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/02(日) 19:48:30.22 ID:2hIMO8fo0

黄泉川「手元に配られた資料を見てくれるとわかると思うが、この表は今まで起こった事件を纏めた物じゃん」

黄泉川「今回に事件の発端は、先に話したように6月25日に常盤台中学学生寮周辺の路地裏で女子生徒が襲われたのが始まりじゃん」

黄泉川「犯行時刻は8時半前後。 女子生徒は犯人によって背後から首筋にスタンガンを押し当てられて気絶させられた」

黄泉川「その後、女子生徒に付けられた傷と女子生徒の血圧が正常値と比べて低下していたことから、
女子生徒は気絶させられた後に血液を抜き取られたと推測されたじゃん」

風紀委員「犯人はどのように血液を抜き取ったんですか?」

黄泉川「先日送った資料に記載しているように、被害者の女子生徒には針による刺し傷が見つかっている」

黄泉川「おそらく注射針を使って何かの容器に詰めたと思われるじゃん。 まぁ十中八九輸血用のパックだろう」

黄泉川「その日に使いでもしない限り、どうしても長期保存のための容器が必要になるじゃん」


血を抜き取ったのであれば、必ずそれを保管するするための容れ物が必要だ。
血液は生ものであり、しかるべき方法で管理しなければあっという間に使い物にならなくなってしまう。

何の用途も考えず単に血液を抜き取ることだけが目的なのであれば、そのような準備をする必要はないかもしれない。
それでこそ、ただのビニール袋でも十分こと足りるだろう。

しかし『血を抜くこと』だけを目的にしてこのような犯行を及ぼすとは考えにくい。
必ず何か目的が存在しているはずだ。その目的が何なのかはまだ知りようがないが。
790 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/02(日) 19:50:49.54 ID:2hIMO8fo0

黄泉川「最初を含めて現在に至るまでに13回の事件が発生しているわけだが、
    その殆どにおいて犯行時刻は6時から8時、つまり日没前後に集中している」

黄泉川「犯行現場についてもその大半が人気のない路地裏じゃん」

黄泉川「路地裏での犯行が多いのは監視カメラが殆ど無いからというのが現在の見解じゃんよ」

風紀委員「それは十分納得できる話ですね。 わざわざ監視の目がある場所で犯罪を起こす人間なんているわけがありません」

黄泉川「路地裏は今でも監視カメラが設置されていない場所が多い」

黄泉川「設置しても殆どがスキルアウトに破壊されてしまう。 再三申請してはいるがなかなか進展しないのが現状じゃんよ」


スキルアウト。正式名称『武装無能力集団』。
自分の能力に劣等感を感じ、非行に走ったならず者達。

学園都市には潜在的に1万人のスキルアウトがいるが、実際にその定義に当てはまるのは全体の1%にも満たない。
しかし、公共物の破壊や一般人へ危害などの『良くある犯罪』を起こしているのは、残り99%の定義に当てはまらない者達だ。
『風紀委員』は彼らに対処するために設立されたと言っても過言ではない。

彼らのような人種が生まれてしまうのは、学園都市の極度な『能力重視』やそれに伴う『無能力者蔑視』が原因だとされる。
それらの問題を解決するために上層部では色々な案が出されてはいるが、
『学園都市の思想』になりかけている物を打ち壊すことは容易ではなく、今でも有効な打開策は講じられていない。

791 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/02(日) 19:53:12.43 ID:2hIMO8fo0

風紀委員「ここでもスキルアウトが関わってきますか・・・・・・」

黄泉川「こればかりは難しい問題じゃん。 スキルアウトは学園都市が抱える病気みたいなものじゃんよ」

黄泉川「意識改革とか法整備をしない限りは、いくら検挙してもまた新しいスキルアウトが生まれるだけじゃん」

黄泉川「それに力を持つスキルアウトの組織同士が牽制し合うことで、かえって安定化している場所も存在している」

黄泉川「そういった所は下手に手を出すと治安の悪化に結びつくことになるじゃんよ」

風紀委員「具体的な案がない以上、無理に刺激しない方が良いということですね」

黄泉川「その通りじゃん」


大きなスキルアウトの組織がその場所を支配していることで、かえって損害が出ていない区域も存在する。
そういった存在まで排除してしまうと、今まで抑制されていた小規模のスキルアウトの集団が暴走し、
かえって被害を拡大させることにもなりかねないのだ。

792 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/02(日) 19:53:52.19 ID:2hIMO8fo0

黄泉川「犯行状況に関する説明はここまでじゃん。 質問はあるか?」

風紀委員「犯行は無差別と聞いていますが?」

黄泉川「被害者は一般生徒から『風紀委員』まで様々だが、実際はある程度規則性がある」

黄泉川「襲われるのは中学生、もしくは高校生の12歳から17歳くらいの女子生徒じゃん」

風紀委員「犯人は何故その人達を限定的に狙っているのですか?」

黄泉川「この年齢を選んで襲っている理由は今でも分かっていないじゃん」

黄泉川「そういう性癖なのかも知れないが、所詮想像の域を出ない。 犯人を捕らえなければ目的は分からないじゃん」

風紀委員「そうですね。 今は犯人を捕らえるのが先決です」

黄泉川「他に質問は?」

一同「・・・・・・」

黄泉川「無いようだから、次は現在分かっている情報から推測される犯人像を説明するじゃん」

黄泉川「皆が分かっているように、犯人は物的証拠は残さず、監視カメラにも映らないというかなりの手練れじゃん」

黄泉川「したがってこれから話す犯人像はその殆どが推測になるから、それを心に留めておくように」


『風紀委員』達は一様にうなずく。

これから話されることは想像の中でのものが多い。その犯人像が合っていると断定できる証拠は無いのだ。
もし真実だと盲信してしまえば、犯人の逮捕から遠く離れてしまうことになる。

793 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/02(日) 19:56:07.65 ID:2hIMO8fo0

黄泉川「まず犯人の容姿についてじゃん。 これは最新の事件で殆どのことが判明している」

黄泉川「犯人に応戦した『風紀委員』とその事件の被害者の情報によると、身長は大体170cmの細身の女性じゃん」

黄泉川「顔についてはマスクをしていたためはっきりとは分かっていないが、白髪に赤い瞳孔の目を持っているようじゃん」

風紀委員「それだけ特徴的ならすぐわかるのではないのですか?」

黄泉川「確かにこの情報が本当なら相当犯人を絞り込むことが出来るじゃん。 
    だが、犯人が『本当にそのような顔をしているのか』はわからない」

黄泉川「裏では容姿を簡単に偽ることが出来るキットみたいなものが流れていることもあるじゃん」

黄泉川「そういった可能性を考えると、見た目だけで犯人を特定するのは危険じゃんよ」


科学技術が進んだ学園都市では、自分の容姿を変えることはそれ程難しいことではない。
それこそ、かの有名なアニメの主人公である大怪盗もビックリ仰天の手軽さだ。

もちろん、そのような物品が表で堂々と売られていることなどあり得ないのだが、裏側ともなれば話は別。
学園都市の裏は『何故このような物がこの世に存在するのか』と頭を抱えたくなるような危険物が行き交う魔窟である。
犯人がそのような場所に人脈を持つ人間なのであれば、『容姿を偽る道具』などそれ程苦もなく手に入れることが出来るはずだ。

794 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/02(日) 19:59:59.36 ID:2hIMO8fo0

黄泉川「それに本当に犯人の容姿が情報通りだったとしても、それは別に新たな問題を生むことになるじゃん」

風紀委員「新たな問題・・・・・・?」

黄泉川「この『白髪で赤い瞳孔』という容姿。 これは『先天性白皮症』というれっきとした病気じゃん」

黄泉川「こういった見た目に影響がある病気は迫害や差別の原因になりやすいから、その情報は基本的に管理されている」

黄泉川「『警備員』でもその情報を得るためには色々手続きをとる必要があるじゃん」

黄泉川「だからそれについては確信を持ってから調査したいと思っているじゃんよ」


『先天性白皮症』は学園都市外部でも色々問題となっている病気の一種である。
アフリカでは、アルビノの体には霊的な力が宿ると信じられているため、
臓器売買の目的とするアルビノをターゲットとした殺人が後を絶たない。

さらに学園都市は人間の生体を調べ、超能力を発現する研究をしている。
比較的珍しい遺伝的疾患であるアルビノを用いて、非合法の研究をする輩が出ないとも限らない。
そういったことを阻止するために、遺伝子に関係する情報は高度なセキュリティで厳重に管理されている。

遺伝子情報についての情報開示の許可は、そう何度ももらえる代物ではない。
『警備員』としては『犯人が先天性白皮症である』という確たる証拠を手に入れてから許可の申請をしたかった。

795 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/02(日) 20:03:14.43 ID:2hIMO8fo0

黄泉川「犯人の容姿に関する話は以上だ。 次は犯人が持つ能力についてじゃん」

黄泉川「犯人が能力を持っていると判断した理由は、監視カメラに全く映っていないという点じゃん」

黄泉川「知っているように、路地裏や裏道などを除いて全ての道には死角ができないように監視カメラが設置されている」

黄泉川「だが、犯行現場の周辺に設置されている監視カメラでは犯人らしき人物は確認できなかった」

黄泉川「事件が起こるたびにチェックをしたが、全ての事件で共通して映っているような人物は確認できていないじゃん」

黄泉川「このことから犯人の能力は光の屈折で自分の姿を隠すことが出来る『光学操作(リフレクション)』か、
    監視カメラの目をかいくぐって移動できる『空間移動』であると結論づけたじゃん」

黄泉川「自分自身を移動できるレベル4以上の『空間移動』の能力者は28人。
    自分の姿を完全に隠すことが出来る『光学操作』の能力者は47人。 合計で75人じゃん」

黄泉川「この中で今まで起きた全事件の犯行の時間帯にアリバイがなかったのは25人」

黄泉川「さらに最新の事件で犯人の能力は『空間移動』であると予想されているから、12人にまで絞り込むことが出来たじゃん」

風紀委員「そこまで絞れているのなら、犯人逮捕までもう少しということですか?」

黄泉川「最初に言ったように、これらの推理は状況証拠によるものであって、物的証拠はまだ何も掴んでいないじゃん」

黄泉川「全く別の可能性も考えられるから留意しておくように」

黄泉川「これで事件の説明については終わりじゃん。 次は今後の捜査の計画についてじゃんよ」


黄泉川は再び新しいスライドを映し出した。

796 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/02(日) 20:03:55.34 ID:2hIMO8fo0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 22:32:43.79 ID:f7E+mAjf0
乙!
導入部の娘は今回の会議に参加してるの?
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 16:41:56.31 ID:zmrOl0wDO

170……身長結構高いな
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/04(火) 15:12:43.82 ID:YdpSDVcL0
俺も、特殊能力欲しい!とか思うタイプだから、無かったらグレそうだな……
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 00:30:24.61 ID:lOwlXhhD0
ここのりぐるんは妖怪ではなく人間の女の子だから、虫を操って自分達に近付けさせない様にしてたり?ww
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 12:33:25.21 ID:EEJnESAf0

三妖精はグループで登場?
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 12:44:36.19 ID:htlQSRvr0
秋姉妹は無農薬で美味い作物を育てる係りなんですね分かります
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 16:13:11.36 ID:5HqAdm4w0
メディって暗部臭そうじゃね?
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 13:37:13.91 ID:tPLmwCYb0
対策会議も良いが…そっち側で解決されると、穏便な終わりとは言えなくなるだろうな…
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 00:47:29.25 ID:6wcwl8BM0
文が居るならはたてさんは?
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 11:39:32.32 ID:bhIc8kCi0
じゃん語とか、現実に会議とかで使われたら絶対ウザがられるよなw
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 16:40:49.46 ID:ESNTi6cr0

藍様って九尾属性が無いと、超演算美女ってだけに……
808 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/09(日) 22:50:02.49 ID://72uYRy0
>>797
導入部の子は支部長ではないので会議には参加していません
というより、>>1としては今のところはただのモブという扱いです

>>798
まぁあの人ならそれくらい身長があっても不自然じゃないかなぁと・・・・・・

>>799
学園都市はより強い超能力を持っている子供ほど優遇させる傾向にあります。奨学金なんかについては特に顕著ですね
逆に全く能力を持たない子はぞんざいに扱われがち

>>800
そうなりますね。ただ、原作では生き物を操る能力はまだ未登場なんですよね
あったとしてもかなり希少な能力になりそうな予感

>>801
バカルテットと一緒に登場・・・・・・かも?

>>802
超能力について妹の方はまだ何とかなりそうだけど、姉の方は・・・・・・

>>803
彼女を超能力者にするなら『毒』についてよく考える必要があると思います
ある意味この世に存在するすべての物質は毒ですし。水や酸素もありすぎると人体に有害ですからね

>>804
犯人に辿り着くのが美琴が先か『警備員』が先かで話が変わってくるでしょう

>>805
話を読んでもらうと文の所属は常盤台であることがわかりますが、はたてをどんな立場に位置付けるかはまだ未定
はたての能力を考えると常盤台に入学するのは難しい気もします
彼女の能力は超能力としてはありきたりな『念写』ですが、禁書原作では似たような能力は出てきていないんですよね
というより『念写』ってレベルが上がるとどう変わるのかわからない

>>806
本当は使うの止めさせたいんだけど、何度言っても治らなかったからみんな諦めていると妄想

>>807
魔術的には玉藻前の伝承を利用した何かを使わせたら面白そうだなーと考えてます
禁書原作では神道とか陰陽師とか日本になじみ深い魔術の話は全くと言っていいほど出てこないんですよね
学園都市成立の際に日本の魔術組織とひと悶着あっただろうとは思うのですが。もしかして既に壊滅して無くなってたとか?
今後語られたりすることは無いんでしょうかね?
809 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/09(日) 22:50:45.85 ID://72uYRy0
これから投下を開始します
810 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/12/09(日) 22:52:02.99 ID://72uYRy0





――――7月27日 PM0:30





811 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/12/09(日) 22:54:05.79 ID://72uYRy0


美鈴「お久しぶりですね、黄泉川さん」

黄泉川「おお、『みすず』じゃん。 久しぶりじゃんよ」

美鈴「『めいりん』ですってば!」

黄泉川「あっはっはっは! このやりとりも久方ぶりじゃん!」

美鈴「まったく、相変わらずでなによりです」


第7学区警備員統轄支部の敷地内にある食堂。
会議を終えた黄泉川は食事をしている途中で昔の同僚である美鈴に出会った。

美鈴とは『警備員』になったときからの知り合いであり、それから数年の間は相棒として一緒に行動していた。
所属が分かれた後も同じ仕事で一緒になることがあり、その都度協力し合う仲だった。

しかし今年度の始めに別の学区に転勤することになったため、こうして会うのはそれ以来のことである。


黄泉川「それで、新しい支部の雰囲気はどうじゃん? うまくやれてるのかい?」

美鈴「はい。 向こうの人たちには良くしてもらってますし、問題は無いです」

美鈴「ただ第13学区は幼い子供が通う学校が多いので、常に24時間体制で活動してるんですよ」

美鈴「そのおかげで十分に睡眠がとれなくて最近寝不足なんですよね・・・・・・」

黄泉川「昼寝好きのアンタとしては厳しいかもしれないじゃん」

美鈴「一応休みはもらっているんですけどね。 やっぱりそう簡単に生活習慣を変えることはできないというか」

美鈴「このままだとまた勤務中に居眠りしちゃうかもしれません・・・・・・」


812 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/09(日) 22:55:25.37 ID://72uYRy0

黄泉川「まぁ、ここに仮配属されている間はゆっくりしていくじゃんよ。 アンタが居なくなってから変わったところはあまりないし」

黄泉川「あ、でも居眠りは御法度だから注意するじゃん」

美鈴「わ、わかってますよ」

黄泉川「ほんとかぁ〜? かつてのアンタを知ってると易々と信用できないじゃん。 昔は色々と手を焼いたからねぇ」

美鈴「過去のことはあまり掘り返さないでください・・・・・・」

黄泉川「でも仮に居眠りしても大丈夫じゃん。 私が直々に叩き起こしてやるじゃんよ」

美鈴「それだけは勘弁してください。 半端じゃなく痛いんですよアレ」

黄泉川「ならいつもシャッキとしてるじゃん」

美鈴「はーい」


美鈴は気の抜けた返事をする。

彼女は『居眠り常習犯』として第7学区の『警備員』の間では有名だ。
最近はそうでもないのだが、昔は勤務中に居眠りをして咎められているところをよく見ていた。
美鈴が言うには昔からよく昼寝をする性質だったらしく、その癖がそのまま現在まで来ているのだろう。
身に染み込んだ癖を直すことは簡単なことではない。

黄泉川の口癖もだいぶ幼少のころについたものである。教師を志す際に先生に言われて矯正しようとはしたのだが、
長い間使いなれてきた言語を元に戻すことは容易ではなく、結局はそのままになっている。

813 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/09(日) 22:57:05.30 ID://72uYRy0

黄泉川「そういえば転勤したときに新しい学校に赴任することになったけど、そっちの方は大丈夫じゃん?」

美鈴「いや〜そっちの方もすごく大変でして。 ついこの間も初等部の子が悪ふざけで水道管を全部凍らせてしまって・・・・・・」

美鈴「その修理のために連絡を取ったりなんなり色々してたんですよ」

美鈴「ま、その子は後で担任にお仕置きの頭突きをかまされていましたけどね」

黄泉川「ほう・・・・・・」

美鈴「その前には『第7位(ナンバーセブン)』が高等部の子に腕試しと称して殴り込んできたんですよ」

美鈴「これは私が来る以前からあったことらしいんですが・・・・・・」

美鈴「相手になった子もレベル4の『肉体強化(ビルドアップ)』なので、舞台になったグラウンドが半壊状態に・・・・・・」

黄泉川「へぇ、そっちは結構面白そうじゃん」

美鈴「後始末する身としてはたまったものじゃないですよ・・・・・・」

黄泉川「子供の尻ぬぐいを知るのは大人の役目じゃん。 しっかりするじゃんよ」

黄泉川「私の所なんか、私の言うことを素直に聞く子ばっかりで面白くないじゃん」

814 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/09(日) 22:59:49.98 ID://72uYRy0

美鈴「あ〜黄泉川さんって電話のたびに『自分のクラスは真面目な子ばかりでつまらない』とか愚痴こぼしてましたっけ」

黄泉川「私としては少しやんちゃな子の方が教え甲斐があるんだけどねぇ。 担任になるとみ〜んな真面目な性格になっちゃうじゃんよ」

美鈴(黄泉川さんってスパルタだからね。 そりゃ大人しくなるか)

黄泉川「今年は1年に続いて2年生の担任になったんだけど、クラスの半分以上が去年担当した子だったじゃん」

黄泉川「そして案の定、新しく担当になった子も全員真面目になっちゃったじゃん。 これじゃ去年の二の舞じゃんよ」

美鈴「他の先生が聞いたらすごく羨ましがりそうですけどね」

黄泉川「私が求めてる教師生活はこんなものじゃないじゃん! 生徒と拳で語り合って、
一緒に夕焼けに向かってダッシュするような生活を送りたいじゃんよ!」

美鈴「いつの時代の熱血教師ですかそれ」


両手のこぶしを握って悔しそうにする黄泉川の姿を、美鈴は呆れた目で見る。
黄泉川は今の時代となっては珍しい、『情熱』という言葉が人と形になったような教師である。
その『情熱』はあらゆる場所で発揮されており、特に教育において顕著である。

子供たちのために一生懸命になれることは素晴らしいことなのだが、彼女の場合はそれが行き過ぎてしまうことが多々ある。
特に『警備員』の仕事で犯罪を起こした少年少女に対する更生を担当した場合、その子供達には容赦のないしごきが待っているのだ。
そのため第7学区のスキルアウト達には非常に恐れられている。

815 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/09(日) 23:01:47.59 ID://72uYRy0

黄泉川「あ〜! 小萌先生の所の『クラスの三バカ』の担当になれなかったことが悔やまれるじゃん!」

美鈴「でるたふぉーす? 何ですかそれ?」

黄泉川「うちの学校じゃ有名な大馬鹿トリオことじゃんよ。 毎回テストで赤点をとってる補習常習犯じゃん」

黄泉川「それ以外にも色々騒ぎを起こしてるなかなかの猛者じゃんよ」

美鈴「やっぱりそういう子って学校に一人くらいはいるものなんですね」

黄泉川「アンタの学校にも似たようなのがいるのかい?」

美鈴「ええ、初等部に『バカの四重奏(バカルテット)』って呼ばれてる女の子の四人組がいます」

美鈴「さっき喋った水道管を凍らせた子もその一人なんですよ」

美鈴「騒ぎを起こす度合いから考えれば、その子がリーダーって言われてたりもします」

黄泉川「ふーん。 うちの三バカとどっちが上なのかねぇ?」

美鈴「勝っても全然喜ばしいことじゃないと思いますけど」


迷惑度を競い合ってどうするというのか。
そんなことをしても担任達の心労をさらに増やすことになるだけである。

816 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/09(日) 23:02:58.23 ID://72uYRy0

黄泉川「ところで、その『バカの四重奏』ってどんな子達なんだい?」

美鈴「いや、私は中等部の体育の担任なので風の噂くらいでしか聞いたことがありませんね」

美鈴「あ、でも有名な子は二人知ってますよ。 チルノちゃんとルーミアちゃんですね」

黄泉川「ほほう。 有名ってことはその二人のどちらかが水道管を凍らせた犯人かい?」

美鈴「それはチルノちゃんのことですね。 たしか能力名はレベル4の『完全冷凍(パーフェクトフリーズ)』・・・・・・だったかな?」

黄泉川「小学生でレベル4かい。 しかも物を凍らせる能力なんて聞いたことがないじゃん」

美鈴「『発火能力(パイロキネシス)』みたいな『熱を生む』能力は良くありますけど、逆に『熱を奪う』能力って聞きませんからね」

美鈴「そのおかげで研究者の間では結構有名みたいです」

黄泉川「そんな子がバカ呼ばわりされてるとは、なんだか変な感じがするじゃん」

美鈴「でも実際レベルの割には頭は良くないみたいなんですよね。 何というか、
演算みたいな理屈じゃなくて感覚で能力を使っているような・・・・・・」

黄泉川「また随分と変わった子みたいじゃんよ。 で、もう一方の方は?」

美鈴「ルーミアちゃんですか? 彼女はレベル2の『暗黒空間(ダークフィールド)』ですね」

美鈴「自分の周囲を真っ暗にする能力みたいですよ」

黄泉川「なんだいそれは。 また奇天烈な能力だねぇ」

美鈴「この能力は単に光を遮るんじゃなくて、周囲の光子を消滅させてるそうなんですよ」

美鈴「チルノちゃんと同じくらい珍しい能力かもしれませんね」

817 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/09(日) 23:03:56.53 ID://72uYRy0

黄泉川「そこまで変な物揃いだと霧ヶ丘女学院とタメを張れそうじゃん」

美鈴「実際勧誘がすごいそうですよ。 でも校長が許可しないんですよね」

黄泉川「それはまたどうしてじゃん? 特殊な超能力の開発ならあの学校の右に出るのはいないと思うけど・・・・・・」

美鈴「子供達には研究漬けじゃなくて普通の学校生活を送ってもらいたいかららしいです」

黄泉川「ふーん。 この学園都市じゃかなり変わった学校じゃん」

美鈴「ここでは『能力の研究』がまず第一に掲げられますからね。 そういった意味では異端ということでしょうか」

黄泉川「ま、私が勤めてる学校も『普通を極める』のがモットーだからどっこいどっこいじゃんよ」

美鈴「はは、確かに」


学園都市において『学習』は『能力開発』のことを指すと言ってもいい。
実際は国語や数学などの一般教育も行ってはいるが、学園都市の成り立ちが『能力を開発する』ことである以上、
どうしてもそちらの方を意識した勉学になってしまいがちだ。

そういう意味では、学園都市外にあるような『普通の高校』を目指している黄泉川の高校や、
『普通の学生生活を送る』ことを主軸としている美鈴の学校はかなり特殊だと言えるだろう。
変則的な学校が大半を占める学園都市では、少しくらいそういった学校があった方が良いのかもしれない。

その後、黄泉川と美鈴の二人は『警備員』の出動命令が出るまで食堂で語り合ったのだった。

818 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/09(日) 23:06:24.47 ID://72uYRy0
短めだけど今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 23:21:17.53 ID:cxwERRodo
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 23:58:03.54 ID:5uguZfhJo

チルノちゃん強すぎやろ
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 00:55:28.10 ID:Ic26Amd/0

校長って竜神だったりすんのかねぇ?w
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 08:17:45.58 ID:IcOB2NuDO
乙!
チルノちゃん…水道管凍結とか、マジ学校の全員が困る
だろうから止めたげて…。ヘタしたら給食が食べられないぞ。
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 13:22:06.57 ID:aZ6dHSV/0
はたてさんの念写の変化を考えてみた

Level.1 知りたい光景が静止画で頭に浮かぶ

Level.2 平面に静止画像を映すが、固着されない

Level.3 所謂念写

Level.4 空中ホログラフ(平面)

Level.5 立体静止画を周囲に展開

こんな感じでどうなんでしょうか?
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 11:52:24.28 ID:shTeigIu0
曖昧かつ大雑把な記憶で申し訳ないが確か虫って微弱な電気で方向転換程度なら操ってた
動画見た事ある。触覚切ったり電極みたいなの刺したり基盤みたいなの乗せてた。たしかゴキだったね
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 13:55:52.55 ID:h/iKqai60
光子を消滅……つまり光子力ビームが効かなかったり、光通信を阻害したり出来る訳か
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/12(水) 12:37:03.34 ID:1mOVQSf40
角は無くとも喧嘩の鬼。やはりあの二人はぶつかり合うかwww
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 23:57:37.70 ID:58o4nqAm0
個人的には、彼女のTNTNネタはあまり好きではない。
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 15:24:36.95 ID:ysm3gXQ30
>>824
それに限らず、生き物は大体電気信号で動いているみたいだしね
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/15(土) 11:10:18.82 ID:lSTs5nmm0
担任に角まで生えてなくて良かったな。チルノちゃんw
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 13:30:21.95 ID:+uogo8lS0

八目鰻はどうなるのか
831 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/16(日) 20:30:42.19 ID:ZC2hAIH50
>>820
レベルが高いからと言って強いとも限りません。どんなに強力な能力でも使いこなせなかったら宝の持ち腐れです
それにレベルは、その強さの他に研究に応用できるのかも評価されます

>>821
?「それはどうでしょう? ンフフ・・・・・・」

>>822
それで先生に文句を言って「お前のせいだろうがっ!」と言われて再び頭突きされるんですね、わかります

>>823
もう「隠者の紫」みたいな仕様でいいんじゃないかな? それともレベルに応じてより遠い光景が見られるとか?

>>824, >>288
思えば『心理掌握』も『人間という名の生物』を操る能力と言えなくもないか・・・・・・
でも人間を操るのと蟲を操るのではかなり勝手が違うような気もする

>>825
『光子』は光を含むすべての電磁波の量子状態である。(Wikipedia)
紫外線がカットできるからお肌は真っ白。放射線も完全に遮断可能。結構すごい

>>826
腕っ節だけを競う殴り合いならかなりいい戦いするかもしれない
ドラゴンボール並みの戦闘を見ることができるかも

>>827
まぁここのみすちーは夜雀じゃありませんから、そのネタは無理があるような気がしますね

>>829
Caved!

>>830
みすちーの好物とかかな? ヤツメウナギって東北では結構食べられてるみたいです。初めて知りました
832 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/12/16(日) 20:35:49.40 ID:ZC2hAIH50
これから投下を開始します
833 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/16(日) 20:36:27.17 ID:ZC2hAIH50





――――7月27日 PM0:10





834 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/16(日) 20:37:41.74 ID:ZC2hAIH50

上条「見つからないか・・・・・・」

禁書「やっぱり無理があるんだよとうま」


上条当麻とインデックスは第7学区の街中に来ていた。一向に連絡をよこさない土御門を見つけるためである。

友達に連絡したり、彼が寄りそうな建物内を探索してみたが、
ただでさえ広い学区内を何の当てもなく探し回ったところで得られる情報もたかが知れている。
一応一方通行に連絡を取ってみようとも考えたが、彼が土御門のプライベートのことを逐一把握しているとも思えないため、
それは最後の手段として保留してある。


上条「しかしなぁ、こうも音信不通だと親友である上条さんとしては不安で不安で仕方ないわけです」

禁書「もとはるのことだから、どこかで元気にやってると思うんだよ」

上条「だといいけどな・・・・・・」


やはり、大人しく彼が帰ってくるのを待つ方がいいのだろうか。それも土御門に対する一種の信頼の形ではある。
それに彼の場合死んでも死なないような人間なので、この心配も杞憂のような気がしてきたというのも一つあるが。

そんなことを考えていると――――


御坂妹「おや、あなたはこんな所で何をしているのですか? と、ミサカは戸惑いを感じながらも声をかけてみます」

禁書「あ、クールビューティー」


御坂妹がいつもの常盤台中学の制服を着てこちらに歩いてくるのが見えた。
相変わらず美琴とそっくりな風貌である。少し周囲の視線も集まっているようだが、本人には特に気にした様子もない。

835 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/16(日) 20:38:54.61 ID:ZC2hAIH50

上条「御坂妹か。 お前こそ何してるんだ?」

御坂妹「ミサカは冥土帰しに休暇をもらったので、日用品の買い足しにきました。 と、ミサカは外出目的を伝えます」

上条「へぇ。 そういえば今は寮で暮らしてるんだっけか?」

御坂妹「はい。 冥土帰しの紹介で近くにある寮で一人暮らししています。 
    と、ミサカは始まったばかりの一人暮らしに対する不安を滲ませながら説明します」

御坂妹「他の同僚である10039号、13577号、19090号も別の部屋で生活しています。 と、ミサカは仲間達の近況も説明してみます」


彼女達は事情が事情のため、以前は冥土帰しの病院で寝泊まりしていた。
第三位である『超電磁砲』のクローン。その事実だけでも学園都市の心無い輩に狙われるには十分すぎる理由である。
冥土帰しの庇護の下でなければ瞬く間に攫われていたかもしれない。

だが、御坂妹としてはいつまでも冥土帰しには甘えていられないという考えもあった。
そこで冥土帰しに自立したいという旨を伝えた結果、彼のつてで近辺のマンションに一人で住むことになったのである。


御坂妹(ですが、本当は彼の心を射止めるための布石なのです。と、ミサカは自分の真の目的を心の中で暴露します)

御坂妹(悔しいですが、私たちはあらゆる面でお姉さまよりも劣っています。
    と、ミサカはお姉さまのチート過ぎるスペックに嫉妬の心を覚えます)

御坂妹(しかし超能力の面は仕方ないとしても、家事スキルに関しては逆転の目があります。
    と、ミサカは一筋の希望が見いだされていることを自分に言い聞かせます)

御坂妹(お姉さまは素直ではありませんからね。 吹っ切れてアタックでもしない限りは今後の進展はないでしょう。
    と、ミサカは鈍感すぎる彼に呆れを感じながらも感謝します)

御坂妹(ですから、お姉さまがその気になる前に家事スキルを磨きあげ、同じ土俵に立たなければなりません。
    と、ミサカは自分の立てたプランを確認します)

836 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/16(日) 20:47:19.18 ID:ZC2hAIH50

御坂妹(そのために一人暮らしを始めたわけですが、他のミサカ達がミサカの後を追って一人暮らしを始めたことには驚きを禁じ得ません。
    と、ミサカは脅威になるであるであろうライバル達に対抗心を燃やします)

御坂妹(そのおかげでミサカが住む寮は一種の冷戦状態になっています。 と、ミサカは冥土帰しのいらないお世話に怒りを覚えます)


つまり御坂妹の抜け駆けを阻止せんと、同僚の『妹達』も同じように冥土帰しに直談判したのだ。
冥土帰しはそのことを知ってか知らずか、御坂妹と同じ建物に彼女達を住まわせた。
その結果として何が起こったのかは彼女の言葉の通りである。


上条「そういえば、暮らしてて何か困ってることとかあるか? あるんだったら協力してやらないこともないけど」

御坂妹「お気遣いはありがたいですが大丈夫です。 と、ミサカは独り立ちできていることを自慢してみます」

御坂妹「ミサカネットワークで学外のミサカと頻繁に情報交換してるので、一人暮らしする上で必要な情報はすぐに集めることが出来ます。
    と、ミサカはミサカネットワークがただの雑談広場でないことをアピールします」

上条「へぇ、上手くやってるみたいだな」

御坂妹「他の同僚達に遅れを取るわけにはいきませんから。 と、ミサカは心に炎を灯します」

上条「俺も応援してるから、負けるなよ?」

御坂妹「もちろん、負けるつもりは毛頭ありません。 と、ミサカは自分の向上心の高さを誇示します」フンス

837 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/16(日) 20:48:28.56 ID:ZC2hAIH50

一人暮らしできていることに胸を張る御坂妹。当麻としても御坂妹がこうして独り立ちしようとしているのは喜ばしいことである。
現状では『妹達』は冥土帰しや学外の研究所でお世話をしてもらっているが、
いずれ自分一人で生きていかなければならなくなる時が来るだろう。


禁書「とうま〜」

上条「なんだ、インデックス?」

禁書「もとはるも見つかりそうにないし、クールビューティーのお買い物のお手伝いしたらいいんじゃないかな?」

御坂妹「私としてもまだ買うべき物が残っていますので、荷物持ちとしてついてきてくれるならば嬉しいのですが。
と、ミサカはただ働きをさせようとする魂胆を隠しながら誘ってみます」

上条「・・・・・・確かになぁ」


このまま探し回ったとしても、土御門を見つけることができる可能性はかなり低い。一日が無駄になる事態も十分に考えられる。
それならば一旦切り上げて御坂妹の手伝いをするのも一つの考えであろう。


御坂妹「そういえば探し人がいるそうですが。 と、ミサカはあなたの悩み事の相談を受けてみます」

上条「いや、お前が心配する必要はねぇよ。 相談しようにも情報がないし」

上条(それにあまり魔術に関わらせるわけにはいかないからな)

御坂妹「ならいいのですが。 と、ミサカは一人で行動しがちなあなたのことを心配してみます」

上条「大丈夫さ。 で、御坂妹はこれからどこに買いに行こうとしてるんだ?」

御坂妹「そうですね。 私が必要なのは日用品ですから、それを考慮するならば・・・・・・」

上条「まず行くべき所は雑貨店か」

838 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/16(日) 20:50:03.33 ID:ZC2hAIH50

御坂妹「そういえば、『いぬ』の餌も買わなくてはなりません。 と、ミサカは愛する猫の顔を思い出します」

上条「御坂妹が住んでる寮って、ペットOKなのか?」

御坂妹「冥土帰しに無理を言って許可してもらいました。 むしろあなたの方が問題なのでは?
と、ミサカはあなたの住む寮がペット禁止であることを指摘します」

上条「いや、それは・・・・・・」タラタラ

禁書「スフィンクスは私たちの大事な家族なんだよ!」

御坂妹「というよりむしろ、年頃の女子と同棲している方が倫理的にも危険だと思うのですが?
と、ミサカは見た目が幼女と一つ屋根の下で暮らしていることに背徳的なものを感じます」

上条「ハハハ、ナンノコトカワカリマセンネ」

禁書「子供なんかじゃないよ! ちゃんと成長してるよ! この前測ったときにちゃんと胸が大きくなってたんだよ!」

上条「ちょっとインデックスさん!? 公衆の面前でそんなことを言ってはいけません!」

御坂妹「見て変化がわからなければ意味がありません。 と、ミサカは非情な現実を突きつけてみます」

上条「って、お前も煽るんじゃねぇぇぇぇ!!!」

禁書「むぅぅぅぅ!」

御坂妹「ふふん」

上条「お願いですからこんな人の往来が多いところで言い争わないでくれませんか!? そうじゃないと――――」

839 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/16(日) 20:52:15.31 ID:ZC2hAIH50





        ヒソヒソ・・・・・・

                           ヒソヒソ・・・・・・


「やぁねぇ、こんな所で喧嘩だなんて」

「それにしても、側にいる男の人って彼氏かしら?」

「ってことは・・・・・・二股!?」

「女の風上にも置けないわね」

「美少女に二股かけるとは・・・・・・上条マジで爆発しろ!!!」

「カミや〜ん? 今度会ったら覚えときぃな」


                    ヒソヒソ・・・・・・

  ヒソヒソ・・・・・・





840 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/16(日) 20:54:10.11 ID:ZC2hAIH50

上条「やっぱりこうなったじゃないですかァー!!! 不幸だー!!!」


周りからの蔑みの視線が当麻の身に突き刺さる。おまけにクラスメイトの声も聞こえてきたような気がした。
もちろん気がするだけだ。そうに決まってる。この状況をクラスの男どもに見られたら何をされるかわかったものでは無い。


上条「と、とりあえず御坂妹! 上条さんは早く荷物持ちの仕事をしたいな〜なんて!」

御坂妹「それもそうですね。 時間は有効に使わなければなりません。と、ミサカは『時は金なり』という格言を思い出します」

上条「そうそう! とりあえずそこのダ○ソーにでも入ろうか!」

禁書「ちょっととうま! 邪魔しないでよ!」

上条「インデックスさん、こういう仕事は早めに終わらせておくことに限るんですよ?」

御坂妹「苦労を先に延ばすと碌なことがありません。 と、ミサカは仕事をする上での鉄則を述べます」

禁書「むっかー!!!」

御坂妹「どうやらミサカの方が彼と息が合っているようですね。 と、ミサカは自分が彼の側にいるのがふさわしいことを示します。」

上条「お願いですから挑発しないでもらえませんか? せっかく仲裁できたと思ったのに・・・・・・」

御坂妹「それは無理です。 そもそもの原因はあなたでしょう? と、ミサカはこの行動に意味はないと思いながらあなたに自身の罪を教えてみます」

上条「え? 俺のせい?」

御坂妹「そこで疑問を感じている時点で本当に救いようがありませんね。 と、ミサカは予想通りの答えを返すあなたに呆れます」

上条「ふ、不幸だ・・・・・・」

841 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/16(日) 20:56:40.82 ID:ZC2hAIH50
今日はここまで。
質問・感想があればどうぞ
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 21:10:27.15 ID:EUJquidU0

お姉様の吹っ切れ発言はフラグですよ妹さん?俄然アリだが
そして女の風上に置けないのは上条さんに対してなのか二人に対してなのか。前者ならカマいぞ
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 01:52:56.29 ID:51yNs8E80
たまに 〜ませんの事よ」とか言うしな、上条さん。
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 21:07:52.76 ID:DsSoRAT+0

つっちーは今、パッチェさんとデート中だっけか
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 11:01:24.50 ID:e+e0lw/20
ンフフ……だと……!?
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 16:23:02.21 ID:6ExFHQmP0
酒じゃー!酒を貢ぐのじゃ〜!
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 13:57:16.57 ID:SWWDXPGQ0
地味に青ピww
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 12:11:44.62 ID:9eIrZ/ET0

パッチェさんがガチバトル用に魔法を使うとなると、聖剣シリーズの精霊魔法みたいなイメージになるのかな?
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 20:09:37.00 ID:C8Yyg7N30
ここの世界の小萌先生は何か能力持ってたりして?
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/21(金) 10:16:10.26 ID:bIjie4w40
スフィンクス(人型)「身体変化っっ!」
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 12:11:02.90 ID:VxFM5uLh0
パワードスーツのにとりカスタムとかあったら面白そうだな
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 17:23:52.91 ID:Ff7Rk7sj0

ここの空も鳥頭なんですかねぇ?
853 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/23(日) 19:57:15.90 ID:RRT5/2hr0
>>842, >>843
その台詞を言った女性が上条さんの大ファンで、上条さんを誘惑しようとしている二人をそう表現したとすれば・・・・・・
・・・・・・うん、無理ですね。素で間違えてました。すいません

>>844
パッチェさんと二人きりで仲良く作戦会議してます

>>845, >>846
?「とりあえずピッチャー二つで」

>>847
果たして上条さんの耳に聞こえた声は夢か現か

>>848
一般的な魔術:魔力をルーンなどの媒介を通して属性を付加する
精霊魔術:媒介を通さずに属性を付加して使用する。魔力の属性と魔術の属性が一致すれば威力が倍増
     その代わり、属性を付加した時点で使える魔術が限定される

イメージとしてはこんな感じ。属性を付加した魔力を道具に受け渡すことができれば魔法剣も夢じゃないかも

>>849, >>850
禁書キャラは基本原作通りにしてます
本編に明記されてないからこういう設定もあり得るはず!っていうものを付ける可能性はあると思いますが

>>851
のび〜るアームが連結された駆動鎧ですね。結構需要ありそう

>>852
それは後々のお楽しみということで
854 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/12/23(日) 19:58:04.84 ID:RRT5/2hr0
これから投下を開始します
855 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 19:59:12.77 ID:RRT5/2hr0





――――7月27日 PM1:13





856 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:02:32.74 ID:RRT5/2hr0

上条「なぁ、御坂妹って服とか買わないのか?」


当麻は日用品が入った買い物袋を手にぶら下げなから御坂妹に聞いた。
両手に二袋ずつ。結構な重さのはずであるが、平然としているあたり彼がどのくらい鍛えられているのかが垣間見られる。


御坂妹「あなたは女性の下着コーナーに入りたいのですか? と、ミサカは鈍感でありながらスケベなあなたにドン引きします」

上条「ちげぇよ!」

御坂妹「冗談です。 ですが何故そのようなことを? と、ミサカはそれなら他にどのような意味があるのか聞いてみます」

上条「御坂妹って仕事の時以外は御坂と同じ常盤台中学の制服を着てるだろ?」

上条「別に俺達はいいんだけどさ、間違われるってことはないのか?」

御坂妹「いえ、その時は他人のふりをしていますが。 と、ミサカはお姉さまに間違われたときの処世術を説明します。」

禁書「でも『ミサカは〜』っていつも言ってるからあまり意味ないかも」

上条「それじゃ御坂の知り合いか何かかと思われてる可能性はあるかもな」

御坂妹「・・・・・・それを言われるとぐぅの音も出ません。 直した方がいいのでしょうか?
    と、ミサカは自分の口調を矯正することを検討してみます」

857 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:03:45.36 ID:RRT5/2hr0

当麻からもらった髪飾りを付けてはいるものの、御坂妹は美琴と区別がつかないほど似ている。
もちろんそれは御坂妹だけでなく、他の『妹達』についても同じことだ。
同じDNAなのだから仕方ないことなのだが、何度も美琴に間違われるのは流石に問題だろう。


上条「だからさ、間違えられないためにも自分の服を買っておいたほうがいいと思うんだけど」

上条「御坂は常盤台中学の制服以外の服は滅多に着ないだろうし、区別は付くんじゃないか?」

御坂妹「確かに一理ありますが、ミサカは自分にどのような服が合うのか分かりません。
と、ミサカは自分におしゃれの知識がないことに気づきます」

御坂妹「19090号ならその手のことに詳しいのですが、おそらく教えてはくれないでしょう。
と、ミサカは一歩先を行っているライバルに嫉妬心を燃やします」

禁書「短髪に聞けばいいんじゃないかな? 短髪に似合うのならクールビューティーにも似合うだろうし」

上条「確かにそれも一つの手だな」

御坂妹「・・・・・・いえ、その必要はありません。 と、ミサカは手っ取り早い方法があることに気づきます」

上条「何か案があるのか?」

御坂妹「それは――――」

858 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:04:43.85 ID:RRT5/2hr0





御坂妹「あなたがミサカに似合う服を見つければいいのです。 と、ミサカは我ながら素晴らしい名案を提案します」





859 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:06:02.60 ID:RRT5/2hr0

上条「・・・・・・へ?」

禁書「」

御坂妹「そうと決まったらファッションセンターに行きましょう。 と、ミサカは棒立ちになっているあなたの腕を引っ張ります」グイッ

上条「ま、まてまてまてまて! 上条さんに女性ファッションの知識は皆無なのですが!?」

御坂妹「それは私も同じです。 というより、女性と同棲していてそのような知識もないのですか?
と、ミサカはどこまでも女性に無関心なあなたに溜息をつきます」ハァ

上条「いや、だってインデックスはいつも修道服だし・・・・・・」

御坂妹「ならばこの機に女性のファッションというものを知るべきでしょう。と、ミサカはさらに強く腕を引っ張ります」グイグイ

上条「引っ張るな引っ張るな!」


強引に当麻を引き摺って行く御坂妹。その光景を見て、インデックスが即座に制止をかける。


禁書「ちょっと待つんだよクールビューティー!」

御坂妹「なんでしょう? と、ミサカはせっかくの所を邪魔するシスターに不満の目を向けます」

禁書「当麻がそんな所に行ったら絶対不幸なことが起こると思うんだよ!」

上条「そ、そうなんです! 上条さんの不幸センサーがビンビン来てるんですよ! そんな地雷が見える所に行きたくありません!」

860 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:07:30.60 ID:RRT5/2hr0

御坂妹「ふむ、それならミサカは一人で行きますが、あなたはそれでいいのですか? と、ミサカはシスターに疑問を投げかけます」

禁書「え?」

御坂妹「あなたもミサカと同じくファッションについては疎いでしょう。 ですがここでミサカを一人で行かせれば、
    ミサカが一人だけファッションの知識を得ることが出来るのです。 と、ミサカは自分が一歩リードできる事実を教えてみます」

禁書「む・・・・・・」

御坂妹「それならばミサカと一緒に買い物に行き、ファッションについての知見を得る方があなたにとっても悪い話ではないと思うのですが。
    と、ミサカは揺さぶりをかけてみます」

禁書「むむむ」

御坂妹「なにがむむむですか。 考えてる時間はないですよ。 と、ミサカはさらに追い打ちをかけます」

禁書「わかったんだよ! 私も行く!」

上条「イ、インデックスさん!?」

禁書(とうまが選んだ物がクールビューティーに渡っちゃうのは仕方ないけど、私も同じように買ってもらえば問題ないんだよ)

禁書(・・・・・・着る機会があるのかはわからないけど)

御坂妹「話も纏まったようなので、早速セブンスミストにでも行きましょうか。 
と、ミサカは自分が知っている洋服屋にとりあえず目標を定めます」

上条「ちょっと!? 上条さんの意見は無視ですか!?」

御坂妹「末期は潔くする物です。 と、ミサカは往生際が悪いあなたを諭します」グイグイ

上条「これから死ぬみたいなことを言わないで!」

禁書「大丈夫。 当麻の『不幸耐性』なら何があっても生き残れるんだよ」

上条「インデックスまで!? ちょ、待って、引っ張らないでぇぇぇぇ!!!」ズルズル

861 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:09:13.71 ID:RRT5/2hr0





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





862 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:11:03.78 ID:RRT5/2hr0

上条「で、結局来てしまったわけですが・・・・・・正直嫌な予感しかしません」

御坂妹「まだ言っているのですか。 もう諦めてください。 と、ミサカはいい加減腹を括ることを勧めます」

禁書「往生際が悪いんだよとうま」


3人はセブンスミストの女性服コーナーの前に来ていた。

セブンスミストの品揃えは、利用者曰く『普通』。
飛び出て質が良い物がない代わりに劣悪な商品もないという、良くも悪くも平凡な服が販売されている。

他人に見せるような服を買うのならもっとランクの高い店に行くべきなのだが、そういった店は例外なく当たり外れが大きい。
それは単に洋服そのものに限ったことではなく、その服が着る人に合うかどうかという点にも言えることだ。
女性服のことについて詳しく知らない3人にとっては本格的な店に行くのは博打に等しい。
したがって、セブンスミストのような普通の洋服店に足を運ぶのはある意味正解と言える。


御坂妹「まずはどの服を買いましょうか。 と、ミサカはどのような服を買うのかを思案してみます」

上条「そうだな・・・・・・そういえば普段着以外に必要な服ってあるか?」

御坂妹「そうですね・・・・・・強いて言うならパジャマでしょうか。
と、ミサカは寝るときはこの服のまま布団に入っていることを教えてみます」

上条「ならまずはパジャマを選ぶか。 普段着は後でいいだろ」

上条「普段着は色々吟味しなきゃいけないから時間がかかるだろうしな」

御坂妹「わかりました。 と、ミサカはその案を承諾します」

禁書「パジャマのコーナーはあっちなんだよ」

863 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:13:40.05 ID:RRT5/2hr0

インデックスの後についていくと、花柄やハート柄が施された服が見えてきた。
普通の店ならどこにでも売っているような、やはり普通の代物である。だが洋服の専門店とあってか、種類は非常に豊富だった。


禁書「いっぱいあるね」

上条「これだけあれば似合うやつの一つや二つあるだろ。 インデックスは何か気に入った物はあるか?」

禁書「あんまり装飾華美じゃないほうがいいかな。 あ、あの青っぽいのがいい!」

上条「これか?」

禁書「ピンク色のはもうあるからそれが良いんだよ!」

上条「値段もそんなに高くはないし、これなら大丈夫かな・・・・・・」

御坂妹「・・・・・・」ジー

上条「・・・・・・どうした?」


御坂妹はとあるパジャマを食い入るように見つめている。
当麻が近づいてみると、そこには少しは名の知れたキャラクターが刺繍されているパジャマがあった。


上条「こいつは・・・・・・ゲコ太か?」

禁書「短髪の持ち物にたくさんついてるよね?」


『ゲコ太』と呼ばれるカエルのマスコット。ラヴリーミトンと呼ばれる会社から発売されている、子供向けの人形の一つである。
黒地の制服を着て髭を生やしているのが特徴。乗り物に弱く、乗るたびにゲコゲコと声を漏らしてしまうことからその名がついたらしい。

美琴がこのシリーズの大ファンであり、身につけているもの全てにストラップが付いていると言っても過言ではないのだが、
当麻にしてみれば自分の琴線には触れない代物であるため、この奇妙なカエルを眺める度にどこが良いのだろうと首を傾げている。

864 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:15:06.02 ID:RRT5/2hr0

御坂妹「魅力的ですが・・・・・・しかし・・・・・・」ブツブツ

上条「気に入ったんなら買えばいいじゃないか」

御坂妹「いえ、確かにこの手の物は好きなのですが、ミサカの容姿でこれを着るのは些か抵抗があります。
    と、ミサカはお姉さまには持ち得ない羞恥心をさらけ出します」

上条「へぇ、そういうのは気にしないものだと思ってたけど」

御坂妹「以前ならば臆面もなく着ていたでしょうが、今のミサカには相応の感情が宿っています。
    と、ミサカはこの感情を教えてくれたのはあなたであることを教えます」

上条「え? そうだっけ?」

御坂妹「ええ。 あの夜、私の部屋であなたが・・・・・・」

禁書「とうま、それってどういう意味なのかな!?」

上条「ちょっと!? 上条さんにはそんな記憶はないのですけど!?」

御坂妹「冗談です。 あなたにそんなイベントが起こるはずがありません。 
    と、ミサカは女性が絡むと碌な目に会わないあなたを笑ってみます」ハハッ

上条「ぐ・・・・・・それを言われると言い返せない・・・・・・」

禁書(でも、その大半が当麻の自業自得な気がするんだよ)

865 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:16:48.18 ID:RRT5/2hr0

当麻の女運の悪さは自他共に認めるほどのものであり、それを語り始めたら終わるまでに半日はかかる。

彼は一般の男子高校生と比較すると、かなりの人数の女性と知り合いになっている。
しかし彼女達との出会いの殆どが、全くと言っていいほど穏便ではないものであった。
知り合うタイミングは事件に巻き込まれる間際、もしくは既に巻き込まれた状態であることが多く、
出会った直後に命のやり取りにまで発展した例も片手では数えきれない。

ここまで聞くだけであれば誰もが『なんて女運が悪い少年だろう』と思うだろうが、
実の所、彼に降りかかる女性が関与する不幸の原因は彼自身によるものが大部分である。
女子更衣室に誤って踏みいれてしまったり、お風呂に入ろうとして扉を開けたら先客がシャワーを浴びている途中だったり、
転んだ先がボンッキュッボンッな女性の胸元だったりと、いわゆる『幸運な不幸(ラッキースケベ)』が大半だ。
彼には悪気は一切ないが、大方が本人の不注意によるものであるため、
お決まりの台詞を叫びながら被害者に殴り飛ばされるのがテンプレとなっている。

被害者の一人であるインデックスが呆れ顔になるのも致し方ないことだろう。


御坂妹「それはいいとして、ミサカはお姉さまとは違いこのような子供っぽい服を堂々と着る勇気はありません。
    と、ミサカはお姉さまが重度の子供趣味であることを暴露しながら自分が大人であることをアピールしてみます」

上条「まぁ、御坂が子供っぽい物が好きなのは知ってるけどさ・・・・・・じゃあどんな柄が良いんだ?」

御坂妹「そうですね、ミサカの大人っぽさを際だたせるためにはなるべく落ち着いた柄が良いでしょう。
    と、ミサカは自分の希望を述べます」

上条「ふーん・・・・・・じゃあこんなのとかがいいのか?」

禁書「灰色の水玉柄なんだよ」

御坂妹「ふむ。 確かに落ち着いた柄ですが、少し地味な感じは否めません。
    と、ミサカはもう少し良い物があるのではないかと期待してみます」

上条「えーっと、じゃあこれなんかは?」

禁書「今度は青のチェック柄だね」

御坂妹「それは少し男性っぽい柄のような気がします。 と、ミサカは女性の柄の物を希望します」

866 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:19:49.72 ID:RRT5/2hr0

あーでもないこーでもないと議論しながらパジャマを次々と見比べていく。
吟味するのは必要なことだが、それよりもこうして悩みながら買い物するのも楽しいんじゃないかと当麻は思い始めた。

商品の前で悩み抜いて自分が本当に欲しい物を見つけ出したときの快感。
女性の買い物が長いのはそれが原因なのかも知れない。


上条「お、これなんか良いんじゃないか?」


見比べたパジャマの数が10を超えた頃、当麻は花柄のストライプが施されたピンク色のパジャマを手に取った。


御坂妹「胡蝶蘭の花柄ですか。 良いセンスをしてますね。 と、ミサカはあなたのファッションセンスもまんざらではないことを褒めます」

上条「そうか? 直感でこれがいいかなって思ったんだけど」

御坂妹「私も異論はありません。 と、ミサカはそのパジャマを買うことを肯定します」

上条「じゃあ決定だな」

禁書(胡蝶蘭って確か・・・・・・)

御坂妹(・・・・・・おや?)


インデックスが何かを必死に思い出そうとしている脇で、当麻は買い物かごにパジャマを入れた。
とりあえずはこれで一つ目の目的を達成したことになる。
867 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:21:00.44 ID:RRT5/2hr0

上条「じゃあ次は普段着だけど、こればっかりは直感で決めるわけにはいかないな・・・・・・」

御坂妹「ミサカが思うにあなたのファッションセンスもそれ程酷くはないと思いますが。
    と、ミサカはあなたに服を選んで欲しいことを隠しながら感想を述べます」

上条「隠せてないから。 まぁ、褒めてくれるのは嬉しいんだけど、
   やっぱりこういうのは詳しい人の意見を聞いたほうがいいと思うんだよなぁ」

御坂妹「具体的にはどういう人ですか? と、ミサカは若干不安を感じながら聞いてみます」

上条「そりゃあ御坂とか? 容姿は同じなんだから結構的確なアドバイスがもらえると思うんだけど」

御坂妹(やっぱり予感は当たりました。 と、ミサカはわかりきった結末に対して嘆息します)ハァ

上条「? どうした?」

御坂妹「いえ、何でもありません。 今からお姉さまに連絡を取るので少しの間待っていてください。
    と、ミサカは携帯電話を取り出しながら女性服コーナーから離れます」

上条「・・・・・・? まぁ、待っててやるからちゃんと聞いて来いよ」

禁書(胡蝶蘭、胡蝶蘭・・・・・・たしかいつわが何か言ってたような気がするんだよ・・・・・・)

868 : ◆jPpg5.obl6 [saga sage]:2012/12/23(日) 20:24:42.66 ID:RRT5/2hr0
今日はここまで
クリスマスですね。まぁ、自分には予定なんてないんですが

質問・感想があればどうぞ
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 20:41:17.15 ID:+ZdoC4Wh0

ここで胡蝶蘭の柄を選ぶあたりがフラグ野郎たる所以だな
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 20:56:06.35 ID:ApIkHojw0
乙!
それなりに楽しそうに過ごしてるねぇ〜
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/25(火) 13:57:05.37 ID:DysJswJR0
東方側にも、シスターズとかそんなのが出来たりするんだろうか?
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/26(水) 15:46:28.04 ID:JXlxBxfo0
ここの学生は贅沢さえしなけりゃ金に困る事なさそうで良いよなぁ
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/27(木) 23:06:57.45 ID:ZY0M+dk20
茹でジャガにマヨだけで十分行ける
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 12:29:07.84 ID:s+QsNAAL0
紅美鈴「学園都市?」

こんなスレ出来てたっすね。お仲間っすね
あれ?もしかしてこれも>>1
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/29(土) 22:13:34.59 ID:NV6Mpl5d0
ミスチー親「ヤツメウナギだと思った?残念!普通のウナギでした!」
876 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 20:53:30.48 ID:Q544H66F0
>>869
上条さんのフラグ建築能力は他の追随を許さない
もちろん立てた後は責任を持って打ち壊していくという親切さ

>>870
親に縛られないで好きなようにできるという点ではそうかもしれません
裏を返せば何かあった時に容易に親に頼ることができないということでもありますが

>>871
東方キャラでクローンが出てきても違和感無いのは誰だろう?
・・・・・・マミゾウさん?(分身的な意味で)

>>872
学園都市は学業に関係ないものには法外な税金を掛けているらしいです。その代わり学業で使うものは安いとか
上条さんみたいな奨学金が底辺の部類に入る人たちでなければ、それなりに満足できる生活ができるかもしれません

>>873
じゃがバターも捨てがたい

>>874
別人ですよ。見てますけどね

なんだか東方クロスSSが増えてきたみたいで嬉しい限り
良く考えればこのスレも現存する東方クロスSSの中では古参の部類に入ってきたのかな?
一方通行幻想入り、東方×ナムカプに続いて三番目?

>>875
おいしいウナギを食べさせてくれるんですか? やったー!

877 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 20:54:24.49 ID:Q544H66F0
これから投下を開始します
878 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 20:55:29.05 ID:Q544H66F0





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





879 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 20:56:23.71 ID:Q544H66F0

女性服コーナーから少し離れた場所――――


御坂妹(お姉さまに彼が一緒にいることを知られると何を言われるか分かりませんからね。
    万が一にも彼の声が聞こえないように離れた場所で電話しましょう。 と、ミサカは面倒事を避けるための策を巡らせます)ピッピッ


プルルルル、プルルルル 


美琴『もしもし? 御坂ですけど?』

御坂妹「10032号です。 今暇ですか? と、ミサカは間髪入れずに予定を聞きます」

美琴『随分いきなりね。 暇なわけじゃないけど・・・・・・まぁ、いっか』

御坂妹「ミサカの情報だと今日は何もなかった思いますが。 と、ミサカは自分の情報網の正確さに不安を覚えます」

美琴『アンタがどうやって私の予定を調べてるか気になるんだけど・・・・・・』

御坂妹「ミサカの中にはそういった情報収集が得意な個体も存在します。 と、ミサカは個体毎に得意分野があることを説明します」

美琴『まあいいわ。 今手が離せないって言ったのはちょっと買い物の途中だったからなのよ』

御坂妹「奇遇ですね。 ミサカも同じです。 と、ミサカはお姉さまに自分も同じ境遇であることを告げます」

美琴『そうなの? 物欲に乏しいアンタが買い物をするなんて珍しいわね』

御坂妹「自分でもそう思います。 ところで、お姉さまは何を買っているのですか? と、ミサカはお姉さまに聞いてみます」

美琴『私? そうね・・・・・・』

880 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2012/12/30(日) 20:57:14.62 ID:Q544H66F0

打ち止め『おねえさまってもしかして10032号と電話してるの? って、ミサカはミサカはズバリ言い当ててみたり!』

御坂妹「ふむ、どうやら最終信号が近くにいるようですね。 今はネットワークから切断されているので気づきませんでした。
    と、ミサカは意外な人物がお姉さまの近くにいることに驚きます」

美琴『そんなに驚くこと?』

御坂妹「最終信号がいるということはあの白もやしも同じように近くにいることと同義です。
    と、ミサカは過保護なロリコンであるもやしを電話越しに笑ってみます」ハハッ

一方通行『オイオマエ! 今なンて言った!?』

打ち止め『きゃ! あなたったら地獄耳!』

番外個体『ぎゃはははは! やっぱりロリコンじゃん!』

一方通行『いい加減その口を閉じろよ番外個体ォォォォ!!!』ウガー


電話越しに騒がしい声がこちらに響いてくる。黄泉川家はいつも通り平常運転しているようだ。
一方通行は相変わらず『妹達』二人組に振り回されているらしい。
日ごろの不健康な生活も相まって、そろそろ胃に穴が開くのではないかと思う。
もちろん御坂妹に同情する気は微塵もなく、むしろ積極的にちょっかいに参加しているのだが。

881 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 20:58:51.05 ID:Q544H66F0

美琴『ちょっと落ち着きなさいよ! ・・・・・・確かにアンタが言うように一方通行もいるわ』

美琴『街中で会ってね。 買い物するって言うから手伝ってるって訳。 コイツは普段は病人だし、人手は必要だと思って』

御坂妹「あの一方通行の手助けをするとはお姉さまも随分と変わりましたね。 と、ミサカはお姉さまの心境の変化に感慨を覚えます」

美琴『勘違いしないで。 コイツの不甲斐なさのせいで二人に力仕事させるような事態にしたくないだけよ』

一方通行『・・・・・・悪かったなァ、松葉杖ついててよォ』

御坂妹「お姉さまの事情はわかりました。 で、今回ミサカが電話したのはお姉さまに聞きたいことがあったからです。
と、ミサカはお姉さまに質問があることを説明します」

美琴『質問? 今日の晩ご飯の材料とか?』

御坂妹「いえ、私が着る普段着のことです。 と、ミサカはそこで食べ物を真っ先に出すお姉さまに暴食シスターの面影を見ます」

美琴『あそこまで食い意地は張ってないわよ。 というかアンタも普段着買うことにしたの?』

御坂妹「『アンタも』とはどういう意味ですか? と、ミサカは意味深な発言に疑問を呈します」

美琴『いやさ、この間も他の子からも似たようなこと聞かれてね。 おすすめの洋服店を知らないか〜とか』

御坂妹「・・・・・・やはり同じ考えの個体もいましたか。 と、ミサカは先を越されたことに焦りを覚えます」

美琴『ま、私としてもアンタ達がおしゃれをするのは良いことだと思うし、文句はないわ』

882 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 21:00:19.99 ID:Q544H66F0

美琴『で? アンタは私にどんなことを聞きたいの?』

御坂妹「はい、普段着を買うと言ってもミサカにはどのような服が合うのか分からないのです。
と、ミサカは自分のファッションセンスのなさに苛立ちを覚えます」

御坂妹「そこてお姉さまならミサカにどんな服が合うか知っていると思って電話したのです」

御坂妹「お姉さまとミサカの外見は同じですからね。 と、ミサカはお姉さまに電話した理由を話します」

美琴『なるほどね。 でも常盤台って基本制服だから私も普段着買わないし、
精々雑誌とか見るだけだからあまりアドバイスは出来ないわよ?』

美琴『それだったらアンタ達の中のそういうことが詳しい個体に相談したほうがいいと思うけど』

御坂妹「それではダメなのです。 と、ミサカはお姉さまの提案を却下します」

美琴『なんでよ?』

御坂妹「その方法では着る服が似たり寄ったりになってしまいます。 と、ミサカはその提案の欠点を述べます」

美琴『それもそうか。 アンタ達にももっと個性があったほうがいいもんね』

美琴『わかったわ。 自信はないけど相談に乗ってあげる』

御坂妹「ありがとうございますお姉さま。 と、ミサカは心強い方の助言が得られることに歓喜します」

883 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 21:01:44.55 ID:Q544H66F0

美琴『まず洋服の種類なんだけど・・・・・・』

御坂妹「お姉さま? その話はどのくらい長くなりますか? と、ミサカは長時間束縛される予感からお姉さまに質問します」

美琴『そうね、30分くらいあればだいたいは大雑把に説明できるかしら』

御坂妹「一応こちらも予定があるので、簡潔にどんな服が合うか答えてくれませんか?
    と、ミサカはお姉さまが長い蘊蓄話をするのを阻止します」

美琴『仕方ないわね。 そうね・・・・・・冬とかだったら桃色のパーカとかが良いんだろうけど、
   今は夏真っ盛りだしワンピースがいいんじゃないかしら?』

御坂妹「海賊になるつもりはないのですが。 と、ミサカは一昔前のボケをかましてみます」

美琴『一応つっこんどくけど『ワンピース』違いよ。 それは置いといて、通気性を考えると麻とかポリエステルとかの材質がいいわね』

美琴『麻製品を買うなら洗濯の時は注意してね。 縮んだりシワになったりするから』

御坂妹「ありがとうございますお姉さま。 と、ミサカはお礼を言います」

美琴『がんばんなさいよ』ピッ

御坂妹「ワンピースですか。 ミサカの知識によれば上衣とスカートが一体となった服ですね。
    と、ミサカは19090号が読んでいた雑誌を思い出します」スタスタ


ワンピースと言えば、女性が着る夏服としてはポピュラーな部類に入るものである。
白のワンピースに麦わら帽子のセットは良く見かけるものであるが、
黒髪のロングではない御坂妹では少し魅力が半減するかもしれない。

美琴の親友にワンピースが似合いそうな人いることを思い出しながら、御坂妹は当麻のもとへ戻った。

884 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 21:03:44.63 ID:Q544H66F0

上条「どうだ御坂妹。 決まったか?」

御坂妹「はい。 お姉さまの意見を考慮し、通気性が良いワンピースを買うべきだと結論づけました。
と、ミサカは先ほどの電話により導き出された答えを述べます」

上条「ワンピースか。 確かに御坂妹には合いそうだな」

御坂妹「あなたがそう言うのであれば間違いないでしょう。 ワンピースが売られているエリアはどこでしょうか。
と、ミサカは店内の地図を思い出そうとします」

上条「インデックスなら覚えてるだろ。 インデックス?」

禁書「・・・・・・」ブツブツ

御坂妹(ふむ、やはり知らないようですね)

上条「インデックスさーん? 聞こえてますかー?」

禁書「え? どうしたのとうま?」

上条「御坂妹が買う服が決まったからさ。 ワンピースが売られてるエリアってどこかわかるか?」

禁書「それならここから真っ直ぐ行って突き当たりだよ」

上条「そうか。 じゃあ行くか御坂妹」

御坂妹「はい」

上条「インデックスも行くぞ」

885 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 21:05:17.84 ID:Q544H66F0

目的地に向けて移動を始める3人。
当麻を先頭にして、インデックスと御坂妹が後ろを並んで歩く。


禁書「・・・・・・」ブツブツ

御坂妹「・・・・・・」チラッ

禁書「・・・・・・む、どうしたの? クールビューティ」


御坂妹の視線に気づいたインデックスは、怪訝そうにその顔を見つめた。

御坂妹のその口元は片側の口角がつり上がっており、少し怪しい雰囲気を醸し出している。
なぜ彼女がそんな顔をしているのかと言えば、インデックスが何について悩んでいるか知っているからだ。


御坂妹「教えてあげましょうか? 胡蝶蘭の花言葉」ニヤリ

禁書「!?」

御坂妹「ピンク色の胡蝶蘭の花言葉は『あなたを愛します』ですよ。 と、ミサカはミサカネットワークで得た知識を披露します」

禁書「」

御坂妹「フフフ。 これでミサカはあの人に告白されたも同然です。 と、ミサカは勝利宣言します」

禁書「そ、そんなの無効なんだよ! そもそもとうまにその気はないんだよ!」

御坂妹「確かにそうでしょう。 ですが、『ピンク色の胡蝶蘭の服を選んでもらった』という事実が大事なのですよ」
    
御坂妹「少なくともあなたよりはリードしているはずです。 と、ミサカは不敵の笑みを浮かべなから告げます」

禁書「ぐぐぐ・・・・・・」

886 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 21:07:32.67 ID:Q544H66F0

上条「? どうした二人とも?」

御坂妹「いえ、何でもありません。 と、ミサカは何も異常がないことを伝えます」

上条「そうか?」

禁書「・・・・・・」ムスッ

上条(インデックスは何で不機嫌になってるんだか。 お昼は食べたよな?)

上条(上条さんに飛び火しないことを祈りますよ・・・・・・)


そして若干の不安を残したまま目的地に到着。
目の前に広がるのは色とりどりのワンピース。この中から御坂妹に合うものを選び出すわけだが・・・・・・


上条「ワンピースに限定してもやっぱり多いな」

御坂妹「試着してみてどれが自分に合うのか見極めねばなりません。 と、ミサカは目に前に広がる洋服群を眺め高揚します」


やはり一口にワンピースと言っても、デザインの種類を考えればそれなりの数になる。
実際に人前で着るものなので、試着してみて自分に似合っているか確かめる必要があるだろう。

887 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 21:08:55.37 ID:Q544H66F0

御坂妹「まずは、この深緑色の服からですね。 と、ミサカは最初に目に入った服を持って試着室を探します」

上条「俺はここで待ってるから」

御坂妹「何を言ってるのですか。 あなたも来るんですよ。 と、ミサカはあなたの腕を引っ張ります」

上条「いやいや! 俺がついていったら間違いなく不幸なことが起こるから!」

上条「自分から死地に飛び込みたくはありません!」

御坂妹「むしろあなたが考えているような不幸なら年頃の男子は喜びそうなものですが。 と、ミサカは青年男子の性事情を考えます」

上条「一部の人なら『我が生涯に一片の悔い無し!』とか叫ぶだろうけどさ・・・・・・」

上条「上条さんとしては、その先にある不幸は是非とも回避したいのですよ」

御坂妹「ですが、あなたも目線からの評価も欲しいのです。 ミサカだけでは似合っているか分かりませんから。
と、ミサカはあなたが持つ重要な役割を提示します」

上条「たしかにそれもそうだけど・・・・・・」

御坂妹「それにミサカがあなたと一緒に服を買っていることもお姉さまはご存じです。
もしミサカに似合わない服を買ってしまったらどうなるんでしょうね。 と、ミサカは脅迫じみた発言をしてみます」

御坂妹(もちろん嘘ですけどね。 と、ミサカは心の中で暴露します)

888 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 21:09:36.52 ID:Q544H66F0

上条「御坂の奴はこのこと知ってるのか!?」

御坂妹「はい。 ミサカとあなたが一緒にいることに怒っていましたが、ミサカがあなたが必要だと言って認めてもらいました。
と、ミサカは涙ぐましい努力を思い返します」

御坂妹「このままですと、ミサカを悲しませたとしてあなたにはお姉さまの制裁が訪れるでしょう。
と、ミサカはあなたの運命はBADEND直行になることを告げます」

上条「まじか・・・・・・」

上条(やっぱり腹を括るしかないのか!?)


トラブルで御坂妹の裸体を見てインデックスに裁かれるか、それとも御坂妹を悲しませたとして美琴の裁きの雷を落とされるか。

選べるのは二つに一つ。


上条「あーわかったよ! 俺がお前の服を選んでやる!」

御坂妹「ありがとうございます。 あなたなら安心して任せられます。 と、ミサカはおだてます」

上条「おうよ! 最高の一品を選んでやらぁ!」

禁書(半ばやけくそ気味なんだよ)

御坂妹(ちょろいですね。 と、ミサカは黒い笑みを浮かべながらその様子を見ます)

889 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 21:11:08.62 ID:Q544H66F0

禁書「でも、どうして私の意見は聞かないのかな?」

御坂妹「あなたのファッションに対する知識などたかが知れています。 と、ミサカはあなたの無学を指摘します」

禁書「それはとうまも同じなんだよ!」

御坂妹「ですが、彼の場合は実績がありますので。 と、ミサカはあなたと彼の格の違いを教えます」

上条「この服なら良いか? いや、こっちも捨てがたい・・・・・・」


掛けられている服を次々と手に取り、どの服が御坂妹に似合うのか考え込む当麻。
下手なことをすれば美琴の恐ろしい罰が待ち受けているのだ。真剣にもなる。
だがどんなにセンスが良くても所詮当麻は素人である。簡単にはどの服が良いかを判断することはできない。

その結果1時間近く考え込んでいたが決まることはなく、
業を煮やしたインデックスが介入することで無事服を選ぶことが出来たのだった。

その後、御坂妹が試着しているときに『不幸にも』足を滑らせて試着室に突っ込んでしまったことは言うまでもない。

890 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2012/12/30(日) 21:19:11.04 ID:Q544H66F0
今日はここまで

今年最後の投稿。これで書き溜めの半分くらいを消化。しかしまだ紅魔郷編を書き終わってないという・・・・・・
ちなみに書き溜めの方は東方キャラの過去話を絶賛展開中。絶賛過ぎてページ数が全体の一割に及ぶ勢い
話が膨らんじゃうんだからしょうがない

それでは皆さん、良いお年を・・・・・・
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 13:46:48.48 ID:FsUzNw3O0
御坂妹「妹より(恋愛で)優れた姉はいねえ」
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/01(火) 08:57:26.15 ID:9GN4v6VJ0
あけましておめでとう!今年も更新をよろしくお願いします!

しかし、本当に鉄板だな奴のラッキースケベは……パルパル...
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/02(水) 07:56:41.47 ID:qXT/LyvDO
たくさん居てもおかしくない東方キャラねぇ……

・毛玉orモブ妖精…ザコ過ぎて論外
・罪袋…むしろ居ないでくれw
・上海が、単なる人形ではなく…オートマータ扱いなら、いっぱい居ても不思議じゃない、か?
・どこにでも居る鬼…って事で、萃香でもいけるかね?

>>1が言ったマミゾウさんみたいな能力者がたくさん居たら、
諜報活動とか、捗りそうだなぁ。(尻尾とか無ければ、だけどw)
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/03(木) 13:28:44.53 ID:ELMc1mMDO
パズル「ワンピースと聞いて」
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 10:09:26.76 ID:SfhtdZbN0

>>1さんは女の子ファッションに明るいんですか?
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 16:14:34.78 ID:zSf5cxUT0
>>876フランちゃんの見滝原入りも来たね
897 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:23:34.80 ID:7x3X3J2a0
>>891
番外個体「ってことは、恋愛については私が一番優れてるってことだよね?」

一方通行「それは万に一つもありえねェよ」

>>892
あけおめことよろ
今年もエタらないように頑張ります

>>893
月のモブ兎をクローン兵隊にしよう(提案)

>>895
ネットで集めた情報を繋ぎ合せただけです。そもそも知ってても使う機会が(ry

>>896
布都ちゃんの話もなかなか面白いです。東方のクロスオーバーSSってなかなか見かけないので楽しみにしてます
898 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2013/01/06(日) 19:24:29.74 ID:7x3X3J2a0
これから投下を開始します
899 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:25:52.24 ID:7x3X3J2a0





――――7月27日 PM3:54





900 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:26:38.70 ID:7x3X3J2a0

美琴「ただいまー」

初春「お帰りなさい、御坂さん」

佐天「おかえりなさーい」


一方通行一行と火通り買い物した後に彼らと別れた美琴は、そのまま単身で『風紀委員』の支部の元に帰ってきていた。
黒子に連絡を取ろうとも思ったのだが、仕事の邪魔をしては悪いと考えて一人でここまで戻ってきたのである。
電話に出た途端に黒子が半狂乱になるかもしれないというのも理由としてはあるが。


美琴「佐天さんじゃない。 学校はもう終わったの?」

佐天「はい。 簡単な質問をされて終わりましたよ。 ちょっと拍子抜けしました」

初春「その割にはここに来るのがやけに遅かったんですよね。 来たの3時頃でしたし」

佐天「ここに来る途中で友達と駄弁ってただけだよ?」

初春「本当にそれだけですか? かなり嬉しそうな顔をしてましたよ?」

佐天「それはアレだよ、友達がたまに出向いてる和菓子店に案内してもらったからだよ」

初春「ほう・・・・・・穴場の和菓子店ですか? 聞き捨てなりませんね。 今度、佐天さんが案内してください。」

佐天(やば・・・・・初春はお菓子に目がないのを忘れてた)

901 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:27:49.57 ID:7x3X3J2a0

思わず失言してしまった自分に対して、佐天は心の中で溜息をついた。

初春はかなりの甘党であり、パフェやクレープが大好物だ。
ファミレスで頼むデザートは決まってパフェの大盛りだし、見回り中もアイスやソフトクリームを買い食いすることがよくある。
年頃の女の子というものは大半が甘い物好きだが、彼女ほど甘い物が好きな人間は珍しい。
だが、缶ジュース二大地獄の一つと言われる『いちごおでん』が大好物というのはいかがなものか。

そんな彼女が『穴場の和菓子店』というフレーズを聞き逃すはずもない。
あの場所はできれば二人だけの秘密にしておきたかったのだが。


美琴「そういえば黒子は?」

初春「白井さんならお昼頃に一度戻ってきて、『お姉さまはどこですの!?』って叫んでました」

初春「『今すぐ監視カメラの確認を!』って、ものすごい剣幕で命令されたときはヒヤヒヤしましたよ」

初春「でも会議から帰ってきた固法先輩に無理矢理午後の見回りに連れて行かれましたけどね」

美琴「なにやってんのよアイツ・・・・・・」

初春「それにしても御坂さん、白井さんから離れるなんて一体どうしたんですか?」

美琴「どうしたって、知り合いにあったから見回りは黒子に任せてそいつに付いていっただけよ」

美琴「私は部外者なんだし、別に問題はないでしょ?」

初春「自分の都合の良いときだけ部外者になるのはどうかと思いますが」

佐天「御坂さんってもうここの常連みたいになってるからね〜」

美琴「それを言うなら佐天さんもでしょ?」

佐天「あはは〜」

902 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:28:48.94 ID:7x3X3J2a0

美琴も佐天も暇があればこの177支部にやってきてお喋りしている。
美琴は黒子が、佐天は初春が『風紀委員』していたため、その縁として来ているわけだ。

本来ならば支部に入るには指紋、静脈、指先の振動パターンを認証しなければ入ることは出来ないが、
レベル5の『電撃使い』である美琴と『守護神』の異名を持つハッカーである初春の前にしては、
そのようなセキュリティは無いに等しい物である。


初春(でも、佐天さんと御坂さんがここに入り浸るようになってから1年以上経つのに、
未だにばれていないというのは一体どういうことなんでしょうかね?)

黒子「ただいまですの〜」

固法「今戻ったわよ」

佐天「白井さんに固法先輩! お邪魔してます!」

固法「あら、佐天さん。 それに御坂さんも」


初春がそんなことを考えていると、見回りを終えた固法と黒子が支部に戻ってきた。
固法は『警備員』との会議が終わった後にすぐさま見回りに向かったため、顔に少し疲労の色が見えている。
黒子は言わずもがな、美琴のことが気になりすぎて疲労どころの騒ぎではないようだが。

部屋に来た直後は虚ろな目をしていた黒子だが、部屋に居た美琴を視認すると、その場に駆け寄って大声で捲し立て始めた。

903 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:29:31.24 ID:7x3X3J2a0

黒子「お、お姉様! 置いてきぼりにするなんて酷いですの! この黒子、お姉様のことが心配で心配で・・・・・・」

美琴「あーもうわかったから落ち着きなさい。 それにアンタ、初春さんにまた迷惑かけたでしょ?」

黒子「へ? 迷惑とは・・・・・・?」

美琴「個人的な理由で監視カメラを利用しようとするなんて、何考えてるのよアンタは!」

黒子「それはお姉様を心配するあまり・・・・・・」

美琴「はぁ・・・・・・そんなことしたら始末書だけじゃ済まなくなるでしょ!」

固法「監視カメラの無断閲覧は謹慎処分になる可能性があるわね」

美琴「危険なことを強要される初春さんの身にもなってみなさい!」

黒子「うぅ・・・・・・すみませんですの・・・・・・」

佐天(やっぱり御坂さんが相手だと白井さんも弱くなるね)


流石の黒子も『お姉様』と敬愛している人物に頭越しに叱られては、意気消沈せざるを得ないようだ。
今回のばかりは完全に黒子に非があるので、弁明することは不可能である。

904 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:30:34.07 ID:7x3X3J2a0

美琴「全く、私のことを心配するのはかまわないけど、周りに迷惑をかけないようにしなさい」

黒子「はい・・・・・・」

美琴「ほら、初春さんに早く謝って・・・・・・」

初春「別にいいですよ御坂さん、そんなことしなくても」

美琴「え?」

初春「白井さんが御坂さんのことになると見境が無くなるのはわかりきったことですし」

初春「それに、よかれと思って無茶をすることも多いですからね。 なんて言うか、もう慣れました」

美琴「いや、慣れちゃダメでしょ」


美琴が関わっていることに限らず、黒子は独断的な行動をとることが多い。
もちろんそれは彼女の正義感によるところが多いのだが、それが災いして毎回始末書を書かされることになっている。

自分の正義を信じるままに行動するか、それとも『風紀委員』としての規律を守るべきか。
その二つに板挟みになっているのが彼女だろう。
今回についてはそんな綺麗な理由による行動ではないが。

905 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:31:39.09 ID:7x3X3J2a0

初春「でも、白井さんには感謝しているんですよ?」

初春「うちの支部で高位の能力を持つ犯罪者に対抗できるのは白井さんだけですから」

美琴(確かに初春さんは戦闘向きの能力じゃないし、固法先輩は体術はすごいけど高位能力者には力不足か・・・・・・)

初春「だから、荒事は白井さんに押しつける形にいつもなってしまってるんですよ」

初春「御坂さんが来てからは白井さん一人で戦うことは減りましたけど」

固法「最近は御坂さんに白井さんがべったりついてることが多いからね。 それが原因でしょうね」

美琴「す、すいません・・・・・・」

初春「いいんですよ御坂さん。 そのおかげで白井さんも必要以上に怪我をすることが無くなりましたし」

初春「白井さんが無茶な行動をすることも少なくなりましたしね」

固法「本当は御坂さんが『風紀委員』の仕事に関わるのは良くないことなのだけれど、もう既に1年にもなるし今更って所かしら」

初春「いつも能力者と戦って傷ついてるんです。 だから今回はそれに免じて大目に見てあげます」

黒子「う、ういはるぅ〜、やっぱりあなたは最高の親友ですの〜」ダー

初春「はいはい、泣かないでください白井さん」


初春の膝にすがっておいおい泣き出す黒子。
いい話のようにも感じるが、実際は黒子は自分が暴走したことを初春に謝らなくていいというだけである。
いままでの流れに感動するべき要素はどこにもなかったりする。

906 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:32:26.05 ID:7x3X3J2a0

初春「白井さん、今度美味しいお菓子屋にでも行きませんか?」

初春「佐天さんが新しくできたお店を知っているみたいなんですよ」

佐天「へ? あ、うん・・・・・・」

初春「日頃の白井さんの苦労をねぎらって、美味しいものでも食べに行こうと思うんです」

初春「割り勘になっちゃいますけど、いいですよね?」

黒子「もちろんですの!」

美琴(初春さん、割り勘にしてめいいっぱいスイーツを食べまくるつもりね・・・・・・)

固法(少し考えればおかしいと分かりそうなものだけど、今の白井さんじゃ気づくのは無理かしら?)

佐天(相手をおだててつつ、自分は最大の利益を得られるようにする・・・・・・初春! 恐ろしい子!)


腹黒い初春。いわゆる黒春である。
この状況を利用して自分の欲しいものを手に入れるとは・・・・・・伝説のハッカーの頭脳は伊達ではなかった。

907 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:33:20.02 ID:7x3X3J2a0

美琴「ところで初春さん、アレはどうなったの?」

初春「アレ、ですか?」

美琴「繚乱家政女学校の資料よ。 もう来てると思うんだけど・・・・・・」

初春「あ、はい、それならここにあります」ゴソゴソ

美琴「初春さんはもう見たの?」

初春「いえ、まだです。 ちょっと手が離せない仕事があったので」

美琴「そう。 なら私が先に見るけど、いいわよね?」

初春「いいですよ」

固法「その紙束はどうしたの? 繚乱家政女学校って言ってたけど」

黒子「そういえば、固法先輩はご存じないのでしたわね」


二人のやり取りに疑問を持った固法が質問をぶつけてくる。
十六夜咲夜についての話は固法が会議で不在の最中に話題となった話であるため、知らないのは当然の事である。
この支部の長を務めている彼女には知らせておかなければなるまい。既に彼女抜きで話を進めてしまっているが。

908 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:34:43.01 ID:7x3X3J2a0

初春「御坂さんの案で『連続通り魔事件』についてちょっと調べ物をしたんですよ」

固法「へぇ、どんなことを調べたのかしら?」

美琴「犯人の能力についてですよ。 黒子が言ったことだけだと『空間移動』の能力に感じますけど、
もしかしたら他の能力も考えられるんじゃないかと思いまして」ペラッ

固法「『空間移動』以外の能力か・・・・・・『警備員』は『空間移動』を中心に調べているそうだけど」

初春「そういえば会議の方はどうなったんですか?」

固法「そうね、これといった新しい情報はなかったわ」

固法「最新の事件の情報が説明されたけど、そもそも私たちが当事者だったし」

固法「『警備員』がだいたい私たちと同じ考えを持って犯人を追っていることくらいかしら」


今ある情報を考えれば、誰だって犯人が『空間移動』の保持者であるという視点で調べ始めるだろう。
一番怪しいものから調べ始め、違っていたら別の視点で考える。ある意味王道の調査の仕方である。

わざわざ捻くれた視点で犯人探しをするのは、推理小説でもなければあり得ない。
個人で動くのであればそれなりに許される行動であるが、大きな組織がそれを行うと組織の内外から反発を受けてしまうのである。

909 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:35:31.82 ID:7x3X3J2a0

固法「そういえば、『先天性白皮症』の話も出てきてたわよ?」

美琴「そうですか・・・・・・まぁ、白髪で赤い瞳孔を持つと聞いたら真っ先に思い浮かぶ病気ですからね」

固法「それについて調べるのは難しいとも言っていたわね・・・・・・それで、御坂さんの案の『空間移動』以外の能力って何かしら?」

美琴「『時間操作』の能力ですよ。 佐天さんから借りた漫画を見ててふと思いついたんです」

佐天「え、あの漫画ですか?」

美琴「あの漫画のラスボスって時間を止める能力を持ってたでしょ?」

美琴「あれみたいな能力なら『空間移動』に似たようなことを出来るんじゃないかな〜と思って」ペラッ

佐天「あ〜時間を止めて移動すれば『空間移動』みたいなことが出来ますもんね」

佐天「でもそんな能力を持つ人っているんですか?」

美琴「いたわよ一人だけ。 私も半信半疑だったから結構驚いたわ」

美琴「しかも一度会ったことがあるのよね」

佐天「マジですか」


つい先日見知った人間が凶悪犯罪の犯人かもしれないなど、本来ならば早々ある話ではない。
だが、美琴は『幻想御手』事件や『乱雑解放』事件で実際にそういった状況に遭遇している。

当麻ほどではないが、彼女も色々と事件を呼び込みやすい体質のようだ。

910 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:36:05.22 ID:7x3X3J2a0

固法「それで、その能力を持つ人が繚乱家政女学校にいるということね」

美琴「そういうことですね。 その人が犯人と決まったわけではないのですけど」ペラッ

初春「固法先輩が会議に行っているときに学校の方に連絡して聞いてみたんですけど、どうやらすぐに会うのは難しいらしくて」

初春「とりあえず資料だけ送ってもらったんですよ」

黒子「どうやら学校の外で住み込みで働いているみたいでして、会うには働いているところの主人の許可が必要らしいですの」

黒子「どこで働いていらっしゃるのかを認知しておけば、もし許可が下りたときにすぐに行動できると思いましたので」

固法「なるほどね。 でもこんなことする前に連絡ぐらい入れてくれても良かったんじゃない?」

固法「学校に直接連絡するなんて結構危ないことなのよ?」

初春「その時には既に会議が始まっている時間帯でしたので・・・・・・」

固法「しょうがないわね。 でも今度からはちゃんと連絡するように」

911 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:37:14.56 ID:7x3X3J2a0

美琴「・・・・・・」

固法「・・・・・・どうしたの、御坂さん?」


繚乱家政女学校の資料を見て固まっている美琴を見て、固法はどうしたのかと尋ねる。。
書かれている一文を穴が空くくらい凝視しているのだ。何かあったのかと勘繰らない方がおかしい。

そこまで興味を引くような情報が資料に書かれていたのだろうか?


美琴「・・・・・・」

黒子「どうしたんですのお姉様?」


黒子は美琴が持っている資料をのぞき込む。
十六夜咲夜が働いている場所の責任者の欄。そこには、こう書かれていた。

912 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:37:50.98 ID:7x3X3J2a0





最終実地試験臨時審査員および現場監督:レミリア・スカーレット





913 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:39:12.10 ID:7x3X3J2a0

黒子「この方は・・・・・・」

美琴「黒子も知ってるの?」

黒子「はい、2日前に。 お姉様が類人猿めを追いかけて行ってしまった後ですが」

美琴「あの後? ということはニアミスか・・・・・・」

黒子「というよりも、お姉様もこの方のことをご存じで?」

美琴「アンタが会ったのと同じ日にね。 街中を歩いてたときに会ったんだけどさ」

黒子「まさかお姉様もお会いになっていたとは驚きですわ」


美琴が当麻を追いかけていった後、黒子はレミリアに会った。
あの時の美琴にはレミリアに聞きたい疑問がいくつかあったので、その意味では運が悪かったと言える。

二人の様子を見ていた固法が黒子と同じように資料をのぞき込む。

914 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:40:08.96 ID:7x3X3J2a0

固法「レミリア・スカーレット・・・・・・まさかあの人が・・・・・・」

初春「レミリアさんですか?」

佐天「え?」

美琴「・・・・・・どうやらみんな知ってるみたいね」

佐天「私はできれば思い出したくなかったなぁ・・・・・・」ブルブル

初春「すごいインパクトでした。 あの姿で大人だなんて普通は信じられませんよ?」

美琴「まぁ、そうよね・・・・・・私も結構驚いたし」


小学生のような姿でありながら、齢が二十歳を超えているのである。驚かない方がおかしい。
人によっては病気ではないのかと疑うであろう異常さだ。


佐天「でも似たような噂ってあるんだよね」

初春「そうなんですか?」

佐天「確か虚数学区って所では不老不死が完成していて、そのサンプルが学園都市で生活しているとか何とか」

初春「不老不死ですか? もしかしてレミリアさんがそのサンプル?」


しかし学園都市においては、そんな異常さも『あり得るかもしれない』という域にまで落ち込んでしまったりする。
発達し過ぎた科学技術にが身近にあるためなのか、例え荒唐無稽な話でもこの街では妙な信憑性を持つのである。
そしてその噂は『都市伝説』という形となって、一部の学生達の中で広まっていくのだ。

915 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:41:29.07 ID:7x3X3J2a0

黒子「不老不死なんてあるわけがないですの。 そんなものは所詮噂なのですから」

佐天「全く、白井さんは夢がないなぁ〜」

黒子「佐天さんが言っているのは『夢』ではなくてただの『妄想』ですの」

佐天「手厳しいですね」

黒子「あるかどうかも分からないことに現を抜かしているよりも、その時間を使って研鑽を積んだ方が遥かに有意義ですわ」

佐天「じゃあこれは研鑽している時の息抜きということで」

黒子「あなたは息抜きに時間を割きすぎですの!」

佐天「白井さん? 人が必要な休息は個人で差があるんですよ?」

黒子「何いきなり悟ったように言ってるんですの!?」

美琴「はいはいそこまで。 話が脱線してるわよ」

固法「御坂さん、その資料が読み終わったら貸してくれる? 私も読んでみたいから」

美琴「それならもういいですよ。 大方は把握しましたし」バサッ


固法は美琴から資料を受け取ると、それを真剣な眼差しで読解していく。
彼女は177支部の頂点に立つ人間だ。上に立つ人間が『そんなことは知りませんでした』などということはあってはならない。
未熟な上司のツケを払わされることになるのは、他でもない部下なのだから。

916 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:42:16.23 ID:7x3X3J2a0

黒子「それでお姉様、もし訪問の許可が学校から下りたとして、一体どのような形で咲夜さんに話を持ちかけるつもりですの?」

美琴「そりゃあ、穏便に話し合いでしょ。 別に咲夜さんを捕まえることが目的じゃないんだし」

初春「本当に穏便に済むんでしょうか? あまり平穏な話ではありませんし・・・・・・」

美琴「その辺なら大丈夫でしょ。 犯人じゃないならそう言えばいいだけだし」

美琴「疑われた程度で癇癪を起こして危害を加えるような人じゃないはずよ」

初春「でも万が一犯人だったとしたら、その場で暴力沙汰になることも考えられますよ?」

美琴「仮にそんなことになっても、私と黒子がいれば取り押さえることくらいわけないわ」

美琴「レベル5を舐めるんじゃないわよ」


実際、美琴は学園都市にたった7人しか居ないレベル5の第三位だ。
生半可な能力では相手にすらならないほどの力を秘めている。
そんな彼女にレベル4の黒子がくっつけば、まさに怖い物なしだろう。

それに相手の能力は割れているのだから、能力で不意を突かれることもない。
油断や慢心さえしなければ後れをとるようなことはないだろう。

917 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:43:15.58 ID:7x3X3J2a0

美琴「ま、今は学校から連絡が来るまで待ちましょ。 いつになるかは分からないけどね」

黒子「そうですわね。 それでは――――」

初春「佐天さんが知ってるお菓子屋さんにいつ行くか決めましょうか」

佐天「えっ?」

初春「佐天さんが新しく見つけたお店・・・・・・ワクワクします」

美琴「それは私も興味あるわね。 佐天さんのお菓子のセンスってどのくらいの物かしら?」

黒子「たしかに、そういった情報はいつも初春が持ってくるものですし」

佐天「あ〜・・・・・・」

美琴「佐天さん、期待しているわよ」

佐天「いつも美味しいものを食べてる御坂さんと白井さんを満足させるものなんてそうそう無いんじゃ・・・・・・」

黒子「そんなことはないですの。 佐天さんが選んでくださった物なら喜んでご馳走になりますわ」

918 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:43:56.94 ID:7x3X3J2a0

佐天「うーん・・・・・・わかりました。 でも先に言っておきますけど、みんなが一斉にあのお店に行くのは無理だと思います」

初春「どういうことですか?」

佐天「なんでも朝早くから並ばないと売り切れちゃうらしいよ。 あ、その店で売ってるのは羊羹なんだけどね」

佐天「限定150本だから、朝の5時とかから並ばないといけないんだって」

初春「ひゃくごじゅっぽん!? そんなに少ないんですか!?」

佐天「うん。 でもこの売り方って学園都市が出来る前から続いてたらしいよ?」

美琴「・・・・・・私もそんな店の噂を聞いたことがある。 安くて美味しい、そして数が限られてるからかなり人気らしいわ」

美琴「しかも店頭販売限定だから、お金持ちでもそう易々と買える代物じゃないらしいわ」

初春「そんなに人気ならたくさん作れば良さそうな物なんですけどね」


919 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:44:59.25 ID:7x3X3J2a0

美琴「そうでもないわよ? たくさん作るってことは材料の量から使う調理器具まで全部変わっちゃうってことだし」

美琴「そんなことになったら『味』が変わっちゃう可能性があるもの」

美琴「それじゃ固定客が離れちゃうかも知れないし、それくらいだったら150本の限定販売を続けた方がいいわ」

初春「へぇ〜、そうなんですか」


小さい規模ながら評判だったラーメン屋が、規模を拡大した途端味が悪くなった。
そんな経験をした方はいないだろうか?

その理由はより大量の麺を茹でるがために『鍋』が変わってしまうことが原因だ。
鍋が変われば火の調整から湯の温度、麺を茹でる時間、茹でた麺をどうやって湯切りするかまで全てが変わってしまう。
小規模で経営していた頃のノウハウを全く生かすことが出来ないのだ。

小さい店舗を複数作ってそれぞれの店で味が変わらないようにすれば問題はないが、
無計画な店の拡大はその店の持ち味を大幅に劣化させる可能性があるのである。


初春「でもそんなことまでわかるなんてすごいですね。 常盤台って経営の知識まで教えるんですか?」

美琴「大企業の娘とかたくさんいるからね。 そういった人達のための授業があるのよ」

美琴「私には関係ないことだけど」


920 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:45:58.32 ID:7x3X3J2a0

黒子「お姉様は庶民の出ですものね。 それ故にいろんな意味で注目の的になるのですけれど」

佐天「そういえば、御坂さんの実家ってどんなところなんですか?」

美琴「別に普通よ。 お父さんは仕事で海外を飛び回ってて、お母さんは家を守りながら大学に通ってるの」

美琴「お母さんはたまに学園都市に来るし、お父さんも仕事の合間を縫って電話してきてくれるし」

美琴「どこからどう見ても普通の家族よ」

初春「お子さん思いの両親なんですね。 いいことです」

佐天「初春、その台詞はなんだか年寄り臭いよ」


父親の御坂旅掛の母親の御坂美鈴は二人揃って子煩悩である。
美鈴の方は過去に美琴を危険から遠ざけるために『回収運動』の代表的立場になったことがあるし、
旅掛も『妹達』についてアレイスターに啖呵を切ったことがある。
娘のためにはどんなことにも全力を尽くせるほど、彼らは美琴を溺愛しているのだろう。

もちろん、美琴は両親がそんなことをしていたことなど全く知らない。


921 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 19:50:38.25 ID:7x3X3J2a0

美琴「たぶん今年の大覇星祭にも来るだろうし、会ってみる?」

初春「いいんですか? せっかくの親子水入らずを邪魔しても」

美琴「お母さんなら気にしないでしょ。 結構破天荒だし」

佐天「それは楽しみですね」


御坂美鈴は大覇星祭には必ず学園都市にやってくる。
美琴にとっては数少ない、親と触れ合える機会だ。

たぶん去年と同じで母親に振り回されるかもしれないが、美琴はそれでもいいと思っている。
向こうは愛娘に会えないことにいくらか寂しさを覚えているだろうし、
少しくらいは我儘をにつき合ってあげてもいいかもしれない。



922 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/06(日) 20:00:45.39 ID:7x3X3J2a0
今日はここまで。

新年一発目の投稿。少しだけボリュームアップしてみた
ちなみに後半の雑談に出てくる和菓子の店は実在のものをモデルにしてます。どこだかわかるかな?

来週は忙しくなるので休みたいと思います
質問・感想があればどうぞ
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 20:18:25.04 ID:d2MPJB3d0


実はさてはると美鈴さんは超電磁砲の漫画で出会ってたりゲフンゲフン
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 20:33:10.37 ID:UFk3Vilxo
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 21:28:21.50 ID:9Mv7agpH0
リリー・ブラック「(頭が)春だな」

黒春「(貴女の白い方も)そうですね」
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 00:35:16.11 ID:jYcmgg5SO
蓬莱人組関連がちょっと出たかな?
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 10:02:58.44 ID:5V5jjle/0
三人ほど、心当たりがあるね?
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/09(水) 11:37:11.01 ID:j0qIJ4aJ0
その和菓子店の羊羹、霊夢さんだと、順番とか気にしないで裏口から強引に買っていきそうな……(汗
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 15:18:14.96 ID:Kclyssy/0

東方キャラの過去……良いね。どんどん掘り下げちゃってくれ
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/19(土) 12:04:02.93 ID:kC1KQRwH0
ちっさい大人の専売特許を奪われたと考えるべきか……仲間がたくさん増えたと喜ぶべきなのか
931 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:09:59.85 ID:0gd/hlT/0
>>923
なん・・・だと・・・?
物語に影響は有りませんが、流石に誤魔化しがきかないので書き直しました・・・・・・

>>926, >>927
実は不老不死云々の噂話は禁書原作でもあるんですよね。ちなみにそのサンプルと言われているのが小萌先生
他にも一方通行が言っていた『二五〇年法』というものもあります

>>928
むしろ買って行った妖怪を退治して強奪すると思う

>>929
OK。自重しない

>>930
お友達が増えるよ!やったね小萌ちゃん!

932 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2013/01/20(日) 19:11:38.43 ID:0gd/hlT/0
これから投下を開始します
>>920の修正からです
933 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:12:57.83 ID:0gd/hlT/0

黒子「お姉様は庶民の出ですものね。 それ故にいろんな意味で注目の的になるのですけれど」

初春「そういえば、御坂さんのお母さんって今年も大覇星祭に来るんですか?」

美琴「え?」

佐天「確かに、後一ヶ月ちょっとすればそんな時期だね! あちこちでポスターも見かけるようになったし!」

佐天「御坂さん、そこの所どうなんですか?」

美琴「あ〜うん・・・・・・」


一年前の大覇星祭での出来事。あれはある意味、美琴にとっての最大の危機だったかもしれない。

大覇星祭の種目の一つである『二人三脚』を終えた時のこと。
種目中の一波乱に巻き込まれた美琴は、汚れた体育服を取りかえるために佐天や初春と相談をしている最中、
観光客として学園都市に訪問していた自分の母――――御坂美鈴と出会った。
その時の佐天達の驚きようは尋常ではなく、特に美琴の姉としか思えないその若さには興味津々であった。

934 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:13:47.59 ID:0gd/hlT/0

そこまではなんてことは無い、『自分の母親を友達に紹介した』というだけの話である。問題はここからだ。
替えの服を学校に置き忘れた美琴は、取りに行く間に代理の人間に次の種目に出場してもらうことを佐天に提案されるが、
上条当麻に『勝負をして負けた方がなんでも言うことを聞く』という約束をしてしまっていたため、その提案に悩むことになった。

その過程で当麻を指す『アイツ』という言葉を零してしまったのが運のつき。
美琴が漏らした言葉を聞き逃さなかった美鈴は『アイツ』とは誰なのかと詰め寄り、
朧気ながら『アイツ』の正体に感づき始めていた佐天が当麻の情報を提供。
そこに初春も加わったために『美琴が気になっているのは誰なのか』という恋バナにまで発展してしまったのである。

もしかしたら今回も同じようなことが起きるかもしれない――――
今度は『どこまで関係が進んだのか』とか、『初キスはもう済ませたのか』など、もっと踏み込んだことを聞かれる可能性もある。
去年は次の競技に出ることを理由に何とか逃げ出すことができたが、今年も同じ手を使えるとは限らないのだ。
できれば三人を一緒にしたくないのが本音である。


美琴「た、たぶん来るんじゃないかな? いや、絶対来ると思う・・・・・・」

佐天「本当ですか! いや〜、大覇星祭の楽しみが一つ増えましたよ」

初春「お父さんの方はどうなんでしょうかね?」

美琴「お父さんは難しいと思う。 普段は世界中を飛び回ってるから、都合がつかない限りは無理だと思うわ」

佐天「そうなんですか・・・・・・残念。 一度でいいから会ってみたいなぁ」

美琴「まぁ、お母さんなら大覇星祭中はずっといるだろうし、退屈はしないと思うわ」

美琴「それで勘弁してくれないかしら?」

初春「御坂さんのお母さんすごく楽しい人ですし、十分ですよ」

935 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:14:33.33 ID:0gd/hlT/0

美鈴は普段会えない美琴に対して、これでもかというほど甘えてくる。
その光景を見るだけでも十分に楽しめるだろう。巻き込まれる美琴としては堪ったものではないが。


美琴(それにしても不味いわね・・・・・・あの場面にお父さんまで入ったら何が起こるかわからない・・・・・・)

美琴(お父さんはアイツのことをまだよく知らないだろうし、もし変な噂が耳にでも入ったりしたら・・・・・・)


万が一『美琴と当麻が既に一線を越えている』なんて噂話を父親――――御坂旅掛が聞いたらどうなるか。
愛する娘に寄りつく虫を排除せんと、当麻の所に殴りこみに行くかもしれない。
本当にそうなるのかは過去に事例が無いので不明だが、子煩悩であるあの男なら無いとも言い切れないのも事実である。

できれば何事も起きませんように――――美琴はそう心の中で願った。

936 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:15:20.82 ID:0gd/hlT/0





――――7月27日 PM2:48






937 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:15:49.83 ID:0gd/hlT/0

御坂妹「・・・・・・」トボトボ

上条「御坂妹、まだ気にしてるのか?」

御坂妹「いえ、そんなことはありません。 気になんてしていませんよ・・・・・・」フフフ

上条(いつもの語尾がない時点でかなり重傷だな、こりゃ)

禁書(無理もないかも)


御坂妹は自嘲したような笑いを浮かべながら歩いている。
ただでさえ無感情な目をしているのに、それに加えて影まで差してしまっているため、かなりの悲壮感が漂っている。

御坂妹は何故ここまで落ち込んでいるのか?
その答えを知るには10分程前まで遡らなければならない。

938 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:17:02.34 ID:0gd/hlT/0





――――10分前





939 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:17:45.85 ID:0gd/hlT/0

服の買い物を終えた一同は、荷物を届けるために御坂妹の家に向かっていた。
流石に当麻一人では手が足りないため、服が入った買い物袋は御坂妹が持っている。
しかし、その量は当麻が両手にぶら下げている数から考えれば微々たるものだ。

御坂妹は、


御坂妹『自分も一応鍛えているので二人で手分けして半分ずつ持つのがいいと思います。
とミサカは好感度アップのために提案をします』


と言ったが、それに対して当麻は、


上条『女性の荷物を持つのは男性の役目なのですよ。 だから俺ができるだけ持ってやるよ』


と言って御坂妹の提案を拒否した。

他者から見れば明らかに『気が合う男女の微笑ましい謙遜のしあい』に見えるが、
実際には当麻が、御坂妹が服を試着している所に突っ込んでしまったことに対して負い目を感じているため、
その償いとして大量の荷物を持っているだけである。

別に御坂妹は見られたことについては全く気にしてはいないのだが、当麻の申し出を無碍にするのも何なので、彼の意向に従った。

940 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:19:08.15 ID:0gd/hlT/0

上条「・・・・・・」スタスタ

御坂妹「重くないのですか? と、ミサカは平然として歩いているあなたに驚きを覚えます」

上条「ん? ああ、これくらいの重さなら特売で買い物した時いつも持ってるし。 むしろ軽い位なんだけどな」

御坂妹「これより重いとなるとかなりの量になるのでは? と、ミサカはあなたの家のエンゲル係数を心配します」

上条「いや、たしかエンゲル係数って生活費の中に占める食費の割合だろ?

上条「大半がもやしとか卵とか安い奴だし、それ程でもないんじゃないか?」

御坂妹「・・・・・・わかっていたことですが、本格的にあなたの食生活が心配になってきました。 
と、ミサカはあなたの健康状態を気にします」

上条「いや、心配する必要はねぇよ。 卵って結構栄養あるんだぜ?」

御坂妹「むしろカロリーが心配なのですが。 と、ミサカは1日3食が卵であろう食生活なのに太らないことに疑問を覚えます」

上条「その分ちゃんと燃やしてるから大丈夫だ。 いつも御坂に追いかけ回されてるから運動には事欠かないし」

御坂妹(そういう問題では無いと思いますが。 と、ミサカは心の中でツッコミを入れてみます)

941 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:20:24.23 ID:0gd/hlT/0

いくら運動しているからと言って、今の彼の食生活では栄養に偏りが出てしまうことは想像に難くない。
貧乏学生であれば『もやし炒めに醤油』とか『キャベツの千切りにマヨネーズ』とかの生活は当たり前なのであろうが、
たまにはきちんとしたものを食べなければ、栄養不足で免疫力が低下して病気に罹ってしまう。
あのような粗末な食事で驚異的な身体能力を維持できる当麻は、ある意味人間離れしていると言ってもよい。

しかし頑丈な彼の肉体でも、いつかは限界を迎えるはずだ。
『倒れた時には既に手遅れ』ということにでもなれば目にも当てられなくなる。
そういう事態にしないためにも、何とかまともな食事をさせてあげられないものかというのが御坂妹、
ひいては『妹達』の中でしょっちゅう議論されている事柄であった。


上条「あ、言っておくけどインデックスにはちゃんとした物食わせてるからな? そうしないとステイルがうるさいし」

禁書「なんだか棘がある言葉なんだよ・・・・・・」

御坂妹「それはあなたが彼の分の食事まで食べてしまうからでしょう。
と、ミサカは居候のくせに全く遠慮しないシスターを責め立てます」

禁書「しょ、しょうがないんだよ! お腹は減る物なんだし・・・・・・」

御坂妹「本当に、この小柄な体のどこにあれだけの食物が入るのかが分かりません。 あなたの胃袋はブラックホールですか。
と、ミサカはシスターに人外の可能性を見出してみます」

禁書「私は人間なんだよ!」

御坂妹「人間にしてはエネルギー効率が悪すぎですが。 良くてハツカネズミですね。
と、ミサカはシスターの怪物っぷりを生物学的視点から評価します」

942 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:21:37.91 ID:0gd/hlT/0

上条「確かに、あれだけ食っても太らないんだから不思議だよなぁ」

上条「インデックスさんの体の中ではどんな化学反応が起こっているのでせうか・・・・・・」

禁書「と〜う〜ま〜!!!」ガバッ

上条「うお!? もう今日は噛みつきだけは勘弁!」ヒョイッ


インデックスの噛みつきを間一髪で躱す。
当麻はもう数え切れないほどインデックスに噛みつかれてきているため、その気になれば回避するのは余裕だ。
伊達に体一つで死線をくぐり抜けては来てはいない。

それでもときどきインデックスの噛みつきを食らってしまうのは、相手がインデックスだからなのか、それとも――――


禁書「か〜わ〜す〜な〜!!!」

御坂妹「それだけの荷物を持っていながらその身のこなし、流石ですね。 と、ミサカは脅威の身体能力を賞賛します」

上条「褒めてないでこの状況を何とかしてくれませんか!?」

御坂妹「不用意な言葉を口走ったあなたの自業自得です・・・・・・おや、あれは・・・・・・?」

上条「どうした? って、ちょ、ま・・・・・・痛っ!」ガシッ

禁書「つ〜か〜ま〜え〜た〜」ニタァ

上条「ちょっとタンマタンマ! 御坂妹さんが・・・・・・」

禁書「クールビューティーがどうしたって・・・・・・」

943 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:23:07.94 ID:0gd/hlT/0

御坂妹の視線の先を見ると、異様な一団が近づいてきていた。
何が異様かと言われれば、その一団の大半が『人間ではない』と言う点である。

犬、猫、鼠、鳩、烏・・・・・・学園都市で見られるあらゆる動物が一ヶ所に集まって行進している。
ここまでくれば、ちょっとしたアニマルパレードだ。

動物たちは周りの人間の視線に全く怯えることなく、何かを守るようにして寄り添いながら歩いている。
地面を歩いている動物は絶えず周りを警戒し、空を飛んでいる動物は空中から地上を監視している。
もしなにか異常があれば、すぐにでも行動を起こしそうだ。まるで、統率された軍隊のようである。

そしてその動物たちの中心に、一人の桃色髪の少女が居た。
『風紀委員』の腕章を付けているため、おそらく見回りをしているのだろう。


上条「・・・・・・これはすごいな」

禁書「こんなにたくさんの動物、学園都市じゃ見たことないんだよ」

上条「ああ。 見たところ野生動物みたいだし、こんな風に一ヶ所に集まっているところはまずお目にかかれない」

上条「あの女の子の能力なのか・・・・・・?」

944 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:23:58.64 ID:0gd/hlT/0

動物を操る能力など聞いたことはないが、もしかしたらあり得るかも知れない。

例えば精神系能力。その中には人間の記憶を改ざんしたり、思考を操って思いのままに動かしたりする能力が存在する。
『人間』も元を正せば『動物』だ。人間を操ることと同じように、他の動物を自在に操作する能力があってもおかしくはない。

しかし彼女の場合、操っていると言うよりも動物が自分の意志で少女を守っているようにも見えるが・・・・・・


御坂妹「・・・・・・」ウズウズ

上条「どうした御坂妹?」

御坂妹「一匹くらいお持ち帰りしてもいいですよね? と、ミサカは許可を求めます」

上条「いや、俺に言われても・・・・・・」

禁書「クールビューティーって能力のせいで動物に避けられてるんじゃなかったっけ?」

御坂妹「ふっ、『いぬ』の前例もあります。 愛さえあればそんなものは問題では無いのですよ!」


持ち帰りはしないだろうが、抱きかかえる気は満々のようだ。その様子を見るに、おそらく止めても無駄だろう。
意気揚々と動物たちに近づいていく御坂妹。だが一定の距離に近づくと――――

945 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:25:01.90 ID:0gd/hlT/0










動物たち「!!!」


ザザザザザザ!










動物たちはまるで海が割れるようにして御坂妹を避けていった。

現実は非情である。

946 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:26:41.37 ID:0gd/hlT/0

少女「ふむ、どうやらあなたは『電撃使い』のようですね?」

御坂妹「・・・・・・私のことをご存じで?」

少女「いえ、この子たちがここまで過剰に反応するのはそれしか理由がないと思うので」

御坂妹「そうですか・・・・・・」

少女「ならば、この結果は予見できたことなのではないのですか?」

御坂妹「それでも・・・・・・私は動物たちと一緒にいたいんです! と、ミサカは自分の夢を吐露します!」

少女「・・・・・・あなたは一匹の猫だけでは満足できませんか?」

御坂妹「そういうわけでは・・・・・・」

少女「それに、あなたではそれ以上の数を世話するのは難しいでしょうね。 わかってはいるのでしょう?」

御坂妹「はい・・・・・・」ズーン

少女「ならばその一匹を大切にしなさい。 それ以上高望みする必要もないでしょう」

少女「では私はこれで。 あなたたち、行きますよ」


少女が号令をかけると、動物たちは再び集まって行進を始める。
御坂妹の近くにいた動物は居心地悪そうであったが、気を振り絞るようにして少女の後を付いていった。

947 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:27:32.04 ID:0gd/hlT/0

御坂妹「・・・・・・」

上条「・・・・・・行こうか」

御坂妹「・・・・・・はい」



心配している当麻の言葉に力なく返事をする御坂妹。
当麻は御坂妹を慰めつつ、一同は微妙な空気を漂わせながらその場を後にした。

948 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:28:11.31 ID:0gd/hlT/0





――――そして最初の場面に戻る。





949 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:29:27.71 ID:0gd/hlT/0

上条「でも気にすること無いんじゃないか? 野生動物に近寄れば逃げられるのが殆どだし」

御坂妹「しかし、あそこまで露骨に避けられては哀しみを禁じ得ません。 と、ミサカは自分の心境を告白してみます・・・・・・」

上条「まぁな・・・・・・」


動物が好きなのに動物に避けられてしまう彼女に姿には同情を禁じ得ない。
だがそれは、言ってしまえば『電撃使い』の宿命のようなものである。
『いぬ』という例外が居るだけでも良しとしなければならないだろう。


禁書「そういえば、あとどのくらいでクールビューティーのお家に着くのかな?」

御坂妹「それなら、そこの角を曲がってすぐです。 と、ミサカは曲がり道を指さします」

950 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:30:06.49 ID:0gd/hlT/0

御坂妹に言われた通りに道の角を曲がると、そこそこの大きさのアパートが目の前に現れた。
どうやらかなり最近建てられたようで、外観はシンプルではあるが綺麗である。


上条「なかなかいい物件じゃないか」

御坂妹「はい、私もこのような建物が近くに立っていると聞いたときは驚きました。
と、ミサカはこれを知ったときのことを思い返します」

禁書「当麻が住んでるところよりもずっと綺麗なんだよ」

上条「上条さんのボロマンションと比べないでください」


御坂妹に案内されてアパートの中に入っていく。
やはり最近建てられたためか、当麻のマンションのように壁の塗装が剥がれているようなことはなく、
通路は埃が無くとても清潔で、非常に管理が行き届いている。

951 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:31:29.66 ID:0gd/hlT/0

上条「そういえば御坂妹以外の『妹達』も住んでいるらしいけど、一般の人って住んでいるのか?」

御坂妹「そうですね。 冥土帰しの知り合いが住んでいると聞いていますが、実際に会ったことはありません。
と、ミサカは見知らぬご近所さんのことを考えてみます」

上条「まぁ、先生の知り合いなら悪い人じゃないと思うけど・・・・・・」

御坂妹「しかし、私がここに住み始めて2ヶ月になりますが、未だに顔を合わせたことがないのは何故なんでしょう?
と、ミサカは一番の疑問点を挙げてみます」

上条「うーん、仕事が忙しすぎて帰って来れないとか?」

御坂妹「それでも週に一度は家に戻ってくると思いますが。 
と、ミサカは2ヶ月も家に帰れないなんてどんな職場なんだよとツッコミます」

禁書「何処かに旅に出てるんじゃないかな?」

上条「それはさすがにないだろ。 学園都市の外に出るにはそれなりの理由が必要だし、その程度じゃ外出許可は下りない」

上条「まさか学園都市内を旅してるっていうのか?」

御坂妹「外から来た観光客ならまだしも、学園都市の住人が2ヶ月もかけて見て回るような名所はないでしょう。
と、ミサカは学園都市には文化的な観光名所が少ないことを思い出します」

952 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:32:16.44 ID:0gd/hlT/0

上条「まぁな。 昔は結構たくさん神社とか自然公園とかあったらしいけど、学園都市の開発で殆ど潰されちまったらしいし」

上条「精々残ってるのは規模の大きいやつくらいか」

禁書「自国の文化を簡単に潰しちゃうなんて褒められたことじゃないよ」

禁書「神社まで潰しちゃうなんて、そんなに宗教が嫌いなのかな?」

上条「嫌いって訳じゃなくて、何というか意識していないって感じか?」

上条「学園都市でも正月は祝うし、お盆とかお彼岸になれば実家に帰る奴も少なからずいるし」

禁書「でももうそれってただの風習みたくなってるよね? 行事を行う意味をちゃんとわかってるのかな?」

上条「それを言われると自信がないな・・・・・・」


果たして、お盆やお彼岸の意味を正しく理解している人間は、この学園都市でどのくらいいるのか。
ただ単に『そういうもの』として意味も考えずに参加している人が殆どだろう。
科学至上主義の学園都市で育ったのであれば、そういった物に無関心になるのは仕方ないことなのかもしれない。

953 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:33:44.40 ID:0gd/hlT/0

禁書「もう! 本当に日本人って宗教に関心がないんだね! 自分の国の行事のことがわからないなんておかしいよ!」

上条「いや、上条さんはこれでも色々と知識は身につけてるんですよ?」

上条「でもやっぱり学園都市で宗教って言われてもいまいち有り難みがないっていうか・・・・・・」

上条「別に卑下するつもりはないんだけどさ」

禁書「お家に帰ったらとうまにはたっぷりと宗教の存在意義を教えるべきかも」

御坂妹「お喋りはいいですが、ミサカの部屋に着きました。 と、ミサカは宗教談義に熱中している二人を現実に引き戻します」


当麻の寮にあるものと殆ど変わらない鉄製の扉が目の前に現れる。
ただ一つ違うことは、自分の部屋に入るためには生体認証が必要だと言うことだ。

指紋、虹彩、静脈・・・・・・
住宅に用いるにしてはやり過ぎのような気がしないでもないが、
御坂妹の生い立ちを考えれば、むしろこれくらいした方がいいのだろう。

954 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:35:10.37 ID:0gd/hlT/0

上条「相当厳重だな。 ここまで厳しいセキュリティはそうそう見ないぞ」

御坂妹「このアパートのセキュリティの程度は風紀委員支部のものと同等に設定されています。 
と、ミサカはこの建物の防犯レベルを説明します」

禁書「すごく窮屈な気がするんだよ」

御坂妹「慣れてしまえばどうということはありません。 この程度なら昔に経験済みですから。
と、ミサカは自分が居た研究所のセキュリティも厳重であったことを教えます」


カチャン!と、何かが外れる音が通路に響く。
どうやら認証が成功し、扉の鍵が外されたようだ。


御坂妹「とりあえず中にお入りください。 お茶でも出しましょう。 と、ミサカは二人を部屋に招き入れます」

上条「いいのか?」

御坂妹「別に誰かに見られて困るような物は置いてはいません。 それとも、そのような物が見たいのですか?
と、ミサカはあなたが部屋を漁り始めないか心配します」

上条「なわけねーだろ! いやさ、女の子の部屋に男を連れ込むなんてちょっと不味いんじゃないでしょうか・・・・・・」

御坂妹「幼女と同棲している時点でその議論は無意味です。 と、ミサカはお前はどの口でそんなことを言っているんだと非難します」

禁書「私は子供じゃないよ!」

御坂妹「子供というのは往々にして自分が子供だと認めようとはしないものなのです。
と、ミサカは思春期に真っ直中にいる幼女を諭します」


955 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:36:44.15 ID:0gd/hlT/0

ぎゃあぎゃあ騒ぐインデックスを無視し、当麻と御坂妹は部屋の中へと入っていく。
スッキリとした玄関を通り過ぎると、小さな丸テーブルが置かれた部屋にたどり着いた。

部屋に置かれているのは料理雑誌が収められている本棚と、当麻の部屋にある物と同じくらいの大きさのテレビだけだ。
後はベッドが部屋の隅に設置されているくらいである。


上条「何というか、結構さっぱりしてるな」

御坂妹「自分が必要だと思った物しか置いてはいませんので。 そんなに不思議なことですか?
と、ミサカはあなたの女性の部屋に対する知識を聞いてみます」

上条「実際に入ったことはそんなに無いんだけどさ。 他に比べれば随分と殺風景だなって」

上条「御坂に至っては自分のベッドの下にぬいぐるみ隠してたしな」

「ミサカ達の部屋が殺風景なのは、そういった物に対して疎いからでしょう。 もちろん個人差はありますが。 と、ミサカは答えます」

上条「そういう物なのか・・・・・・って、あれ?」


背後を振り返ると御坂妹が後ろに立っていた。
だが、自分の前方にも御坂妹が存在する。

これが意味することは・・・・・・

956 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:37:53.38 ID:0gd/hlT/0

「ミサカネットワークで報告を受けていたのでそろそろ帰ってくる頃だと思っていました。
と、ミサカは抜け駆けした10032号を睨みつけながら言います」

御坂妹「抜け駆けではありません。 彼とは偶然出会っただけです。 と、ミサカは13577号に弁明します」

13577号「彼を買い物に誘ったのはあなたからでしょう。 その弁明は受け付けません。 と、ミサカは10032号の言い訳を却下します」

御坂妹「先に手伝いを提案したのはそこのシスターです。 と、ミサカは13577号の認識の誤りを指摘します」

13557号「あなたもそれに便乗していたでしょう。 そして無言の承諾をしていたではありませんか。 
と、ミサカは10032号の責任を問い質します」

御坂妹「相手の善意を蔑ろにするのは褒められたことではありません。 それよりも、どうしてそのようなことまで知っているのですか。
と、ミサカは何故13557号があの時の状況を知っているのかを質問します。」

13557号「あなたはミサカネットワークとの接続を切っていましたが、17600号の助力によりあなたの今日の行動は全てのミサカが把握済みです。
と、ミサカは10032号の行動は筒抜けであることを告げます」

13557号「もちろん、あのセキュリティをかいくぐってこの部屋にいるのも彼女のおかげです。 と、ミサカは17600号の手腕に感心します」

御坂妹「チッ、余計なことをしてくれますねあの個体は。 と、ミサカはストーカーの17660号をミサカネットワークを通して非難します」

13557号「あなたも時々お世話になっているでしょう。 自分に都合が悪くなったら切り捨てですか。 
と、ミサカは10032号の傍若無人ぶりに呆れます」


お互いに主張をぶつけ合う二人の『妹達』。彼女達の間にかなり険悪なムードが漂い始めた。
当麻とインデックスがいることも忘れて口論に没頭している。

957 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:39:38.60 ID:0gd/hlT/0

上条「上条さん、もう完全に蚊帳の外になっているのですが・・・・・・」

禁書「女の人の口喧嘩って、白熱すると周りを置いてきぼりにしちゃうんだよ」

上条「なぁ、帰ってもいいかな・・・・・・もう用事は済んでることだし・・・・・・」

「騒ぎの中心が居なくなっては場を納めることが出来なくなります。 と、ミサカはあなたが帰宅するのを阻止します」

上条「うわっ! って、お前は・・・・・・」

「どうも、ミサカの検体番号は19090号です。 と、ミサカは自己紹介をします」

上条「あ、これはどうも・・・・・・上条当麻です」

19090号「あなたのことは既に知ってるので、改めて自己紹介をする必要はありませんよ。
と、ミサカはあなたの行動は無意味であることを説明します」

上条「いや、でもやっぱり礼儀としてやらないといけないだろ?」

19090号「本当に律儀ですね。 だからこそ魅力的なのですが。 と、ミサカはあなたの謙虚さを褒めます」

958 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:40:17.53 ID:0gd/hlT/0

禁書「・・・・・・このクールビューティは他の人達と随分違う気がするんだよ」

19090号「あなたが噂のシスターさんですか。 ミサカネットワークでも色々有名ですよ。
     と、ミサカはネットワーク内で嫉妬の対象になっている人物に頭を下げます」

禁書「よろしくなんだよ。 ところで、19090ごうって他のクールビューティよりも痩せてるのは気のせいなのかな?」

19090号「気のせいではありませんよ。 ミサカは一時期ダイエットに勤しんでいたことがありますので。
と、ミサカは実験から解放された頃のことを思い出します」

上条「ダイエットぉ? お前達には必要ないと思うんだけど」


『妹達』は御坂美琴のクローンである。そしてその美琴は非常にスレンダーな体系をしているのだ。
美琴のボディを受け継いだ彼女達が、自身の容姿を気にする必要性など微塵も感じられない。
下手にこれ以上ダイエットしたら『痩せている』のではなく、『やつれている』状態になりかねない。

959 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:40:58.73 ID:0gd/hlT/0

19090号「確かに、ミサカ達の体格は一般の女子中学生の物と大差はありませんので意味はないのかもしれません。
と、ミサカは自分の行動に疑問が残ることを肯定します」

上条「じゃあなんでだ?」

19090号「それは口では言い表せないのですが・・・・・・何と言いますか、
色々と知識を身につけていくうちに急に『ダイエットがしたい』と思いまして」

19090号「他の『妹達』に隠れてダイエットに勤しんでいました。 
と、ミサカは自分の突然の心境の変化に戸惑いがあったことを思い出します」

上条「あー、確かどこかで『女性は本能で美しさを求めるものだ』って話を聞いたことがあるな」

19090号「ですが、当時そのことに自覚があったのはミサカだけなのですが。 
と、ミサカは他の『妹達』と何処かが違うその理由を考えてみます」

上条「別に深く考えなくてもいいんじゃないか? 女の子がおしゃれをするのは変なことじゃないし」

上条「上条さんとしては女の子らしくなってくれるなら大歓迎ですよ」

上条(御坂の奴も少し大人しくなればいいのにな。 アレじゃ彼氏が出来ても上手くいかないだろ)

19090号「女の子らしく・・・・・・ですか」

上条「ああ、『妹達』もいつかは誰かと付き合うことになるかもしれないだろうし、
今のうちに自分を磨くのは悪いことじゃないと思う」

上条「恋愛経験ゼロの上条さんがこんなこと言っても、説得力なんて皆無なんですけどね」

960 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:42:17.07 ID:0gd/hlT/0

いずれ『妹達』にも思い人ができるはずだ。その時のために『女の子らしさ』を学んでおくことは悪いことではないだろう――――
というものが、『上条当麻』という名の恋愛未経験男性が考える意見であった。

ところが『妹達』には既に『思い人』が居ること、そしてその『思い人』が他でもない、当麻であることに彼は全く気付いていない。


19090号(もし付き合うのなら、あなたが一番最初に・・・・・・)モジモジ

上条「どうした? 顔が赤いぞ?」

19090号「あ、いえ、ちょっと考え事をしていました。 と、ミサカは必死に言い訳します」ワタワタ

上条「? ならいいけど」

禁書「・・・・・・」

御坂妹「」ガミガミ

13577号「」ガミガミ


三人の会話をよそに、未だに口論を繰り広げている御坂妹とミサカ13557号。
このまま待っていても終わりそうにない。むしろ白熱してきているように見える。

961 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:44:32.38 ID:0gd/hlT/0

上条「あっちは終わりそうにないな・・・・・・」

19090号「他のミサカ達がネットワーク上で煽っているのでますますヒートアップしているようですね。
と、ミサカはネットワークが祭り状態になっているのを見て少し引きます」

上条「やっぱり帰った方がいいんじゃ・・・・・・」

禁書「でも、このまま帰ったらもっと酷いことになるかも」

上条「じゃあどうすればいいんだよ」

19090号「一端ミサカの部屋に来てほとぼりが冷めるまで待つのはどうでしょう? と、ミサカは下心を隠しながら提案します」

上条「確かにそれはいい案だな。 じゃあ案内して・・・・・・!?」


当麻達が移動し始めようとした途端、猛烈な悪寒が彼らの背筋を走る。
見やると、御坂妹とミサカ13577号が鋭い目でこちらを睨みつけている。
その視線は特にミサカ19090号に向けて注がれていた。

962 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:45:18.98 ID:0gd/hlT/0

御坂妹「19090号! 何抜け駆けしようとしてるんですか! と、ミサカは19090号の暴挙を阻止しながら言います!」ガシッ

19090号「ひゃい!?」

13557号「どうやら少しお仕置きをする必要がありそうですね。 
と、ミサカはネットワークで他のミサカ達に19090号に対する処罰の案を募ります」

御坂妹「最新の情報ですと、また新しいダイエット法を編み出したようですからね。是非とも触診してその効果の程
を確かめる必要があると思います。 
と、ミサカは両手を動かしながら19090号に接近します」ワキワキ

19090号「や、止めてください! 彼が見てるんですよ! と、ミサカは10032号のセクハラ行為を断固として拒否します!」カァァ////

御坂妹「そんな真っ赤になって拒否するとは・・・・・・20000号ではありませんがそそられますね。
と、ミサカは恥じらう乙女の破壊力に驚きます」

13557号「ミサカ達の間でもソッチ系に走り始めてる個体がちらほらいますからね。 流石に20000号のように極端ではありませんが。
と、ミサカは百合に目覚めた個体を思い出しげんなりします」


963 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:46:21.30 ID:0gd/hlT/0

御坂妹「ちなみにここまでの一連の流れは生中継ですので、これまでの19090号の反応は全ミサカに知られています。
と、ミサカは19090号の痴態が現在進行形で広がっていることを告げます」

19090号「な、何をしてくれるんですか! と、ミサカは外道な二人に抗議します!」

御坂妹「このまま放置すれば百合に目覚めた個体達が押し寄せてくるでしょうね。 
と、ミサカは19090号に訪れる哀れな末路に憐憫の目を向けます」

19090号「いやぁぁぁぁぁぁ!?」

上条「・・・・・・なんだかよくわからねぇけど」

禁書「ご愁傷様?」

19090号「お願いですから見てないで助けてください! と、ミサカはヒーローさんに懇願します!」

上条「そんなこと言われても・・・・・・」

20000号「なんだかセンサーにビビッときたので来てみました。 と、ミサk」

御坂妹・13557号・19090号「「「帰れ!!!」」」


964 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/01/20(日) 19:48:51.35 ID:0gd/hlT/0
今日はここまで
そろそろ次スレを建てなきゃいかんなぁ・・・・・・
とりあえず2週間後に次を投稿するつもりなので、その時にどうするか考えます
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 19:52:47.76 ID:tdqdT2gX0
おつ
相変わらず上条さん紳士。ミサカかわいい
さとりん出たけどお空燐はどうなってるんだろ
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 22:20:24.62 ID:EfdJtcZ10
ちょっとしか出てないのに目立つ古明地姉妹…
逆に本編に関係なさそうだから目立つのか?

あとこのスレに存在していない東方勢はキスメとヤマメと映姫様と椛と…

キスメは出てくるとすればmother3のアンドーナッツ博士みたいな仕様かな?
ヤマメは能力が危険だがどうなることやら

…よく考えたら映姫様ととあるの世界観は相性が悪すぎる様な…
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/22(火) 20:06:43.50 ID:/ksUTU2Qo
東方厨がウザすぎる上にキモい
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/23(水) 07:52:45.84 ID:k0I2BGiYo
>>967
なんで今まで荒れないように我慢してきたのにそんなこと言っちゃうかな
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/01(金) 08:25:49.30 ID:j8u95RhAO
妹達が楽しそうでなによりです
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/01(金) 20:57:21.06 ID:lrb/HQUU0
あれ?さとり達って魔術サイドとかどっかで言われてた様な気が……
971 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 21:53:20.52 ID:z3Gd++TS0
>>966
東方キャラの能力については、強すぎたり理屈付けが難しい場合は、弱体化させたり若干の変更を加えたりしています
場合によっては全く別の能力になることもありえますので、その時はご了承ください

>>970
超能力っぽい能力→科学サイド
それ以外の能力→魔術サイド

基本的にはこの考えです。ただし例外も十分にあり得ます
972 : ◆jPpg5.obl6 [saga]:2013/02/03(日) 21:54:25.39 ID:z3Gd++TS0
これから投下を開始します
973 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 21:56:36.04 ID:z3Gd++TS0





――――7月27日 PM3:40





974 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 21:58:37.67 ID:z3Gd++TS0

当麻とインデックスは御坂妹の部屋で揉み合っている『妹達』をそのままにし、そそくさとアパートを出た。
20000号と言う名の『妹達』に「ミサカと一緒に百合の花園を堪能しませんか?」と言われて引き留められたが、
彼女は直後他の『妹達』に電撃を浴びせられてノックダウンさせられた。
その時なにやらすごく嬉しそうな顔をしていたように見えたのは気のせいだろうか?


上条「それにしても、あいつらも随分と騒がしくなったなぁ。 最初会った時とは大違いだ」


当麻はしみじみとしながらそんな言葉を呟く。
彼が初めて会った『妹達』は御坂妹であるが、その時は随分と変わった子だなぁと思っていた。
平坦の声色で言葉を話すならまだしも、文頭に『ミサカ』と付けて自分の心情を逐一説明するのである。
この他にも猫なのに『いぬ』と名付けてみたり、羞恥心が全くないような仕草をしたりするなど、
当麻が彼女のことを変人だと思うには十分すぎるほどの奇行を行っていた。

その頃と比べると、今の『妹達』はだいぶ社会で生きるための身ぶりというものを覚えてきており、
感情表現についてもかなり上手くなっているように感じる。
口癖は未だに治ってはいないが、その程度ならこの学園都市で普通に暮らすのであれば大丈夫だろう。


上条「あの様子だと大分社会にも馴染んでいるみたいだし、心配はなさそうだな」

禁書「でもあの20000ごうって言うクールビューティ、すごくくろこに似てきてる気がするんだよ」

上条「・・・・・・前言撤回、もう少しよく考える必要があるな」


流石に『あの』黒子が増殖するのは勘弁願いたい。色々な意味で危険であることは確かだ。
このままミサカ20000号放置したら、『妹達』どころか美琴にまであらぬ世間の誤解が降りかかるかもしれない。
最低限の常識というものは理解していて欲しいものである。

しかし黒子を矯正できていない以上、あのミサカ20000号をまともにすることは望み薄かもしれないが。

975 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 21:59:44.01 ID:z3Gd++TS0

禁書「・・・・・・・?」

上条「どうしたインデックス?」


突然インデックスが忙しなく周りを見渡し始めた。
目に見えない何かを探すように、自分の周囲全体を細かく注視している。
その表情は普段の彼女らしからぬ真剣なものだ。


禁書「・・・・・・魔力を感じる」

上条「・・・・・・なんだって?」

禁書「あっちのほうなんだよ!」

上条「あっ! おい待て!」


突然走り出したインデックスを当麻は慌てて追いかける。

彼女は『魔力を感じる』と言っていた。もしかしたら学園都市に潜んでいる魔術師のものかもしれない。
このままインデックスを見失うことになれば大変なことになるかもしれない。

通りを歩く人々を避けながら前を走るインデックスを追う。
背が低いインデックスは人の間を簡単にすり抜けていくが、当麻の場合そうはいかない。
時々通行人にぶつかりそうになりながらも、辛うじて彼女に追いすがっていた。


禁書「・・・・・・!」

上条「インデックス!?」


突然インデックスが立ち止まるのを見て、当麻は慌てて走る速度を落とす。
少々息を整えながら彼女の隣に立ち、彼女の視線の先を見やると――――

976 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:00:52.25 ID:z3Gd++TS0










知人である眼鏡をかけた黒髪の女性と、紫色のワンピースを着た女性が歩いているのが見えた。










977 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:02:15.28 ID:z3Gd++TS0





――――7月27日 AM10:13





978 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:05:20.86 ID:z3Gd++TS0

第3学区のとあるホテルの一室。
そこで土御門とパチュリーは、学園都市に潜む魔術師をどのようにして捕縛するかについて議論を重ねていた。

魔術師の正体は既に割れているが、相手がどれくらいの力量を持っているのかについては全くの未知数だ。
油断してかかれば返り討ちなる可能性も十分考えられる。そうならないためにも、挑む前に入念に準備をしておく必要があった。

相手の本拠地に直接乗り込むべきか。それとも何処かにおびき寄せるのか。
おびき寄せる場合、どの場所を指定するのか。その場所は戦闘になった時、自分にとって有利に働く地形なのか。
魔術師と対峙する際に持参するべきものは何か。戦闘時はどのように立ち回るのか――――等々。

もちろん今ここで議論したこと全てが、必ずしも役に立つというわけではない。
想定外の出来事などいくらでも考えられる。その時は最初の計画を捨てて、柔軟に対応する必要があるだろう。


パチュリー「土御門。 一つ頼みたいことがあるのだけれど・・・・・・」

土御門「ん?」


その議論の最中、パチュリーは突然土御門に対して頼みごとを始めた。

彼女はこの作戦における唯一のまともな戦力である。
土御門も魔術や銃器を使えるが、彼にとっての魔術は命を賭けた博打そのものであり、
銃器もマシンガンのような大型のものではなく、持ち運びが楽な小型の拳銃なので、魔術師を相手するには力不足だ。
つまり、戦闘に関しては彼女に一任する他ないのである。

よって今回の土御門の役目は作戦の要であるパチュリーをサポートすることである。
自分自身も戦闘に参加するかもしれないが、あくまでもメインとなるのは彼女だ。
作戦を確実に成功させるためにも、彼女が必要とするものは手を尽くして揃えるつもりだったのだが・・・・・・


土御門「どうした? 何か必要なのであれば、こちらで用意できるものなら用意するが・・・・・・」

パチュリー「そう。 なら――――」

979 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:07:11.19 ID:z3Gd++TS0










パチュリー「土地の調査がてら、学園都市の観光がしたいわね」










980 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:09:17.97 ID:z3Gd++TS0

土御門「・・・・・・は?」


その言葉を聞いたとき、普段は飄々としている土御門も流石にあっけにとられた。

『土地の調査』に関しては、これから起きるであろう事の準備のためには必要だということはわかる。
魔術はその土地にある霊地や地脈に影響されることがよくある。
その地脈が自身の魔術行使に何らかの弊害を及ぼすならば、『陣地』を敷いて修正を施さなければならないからだ。

だが、それに加えて『学園都市の観光』まで行おうというのはどういうつもりなのだろうか?


土御門「いきなり何を言い出すんだ。 観光なんてしている暇があるわけないだろう」

土御門「したいのなら、全てが終わった後にしてくれ」

パチュリー「あら、むしろ今しかチャンスはないと私は考えてるのだけれど?」

土御門「何?」

パチュリー「事が終わった後にのんびり観光している暇なんて無いと思うのよね」

土御門「どうしてそう思うんだ?」

パチュリー「あなたとステイルの話を聞いた限りだと、どうやらこの件には『幻想殺し』が絡んでいるそうじゃない」

パチュリー「どんなに情報を遮断しても、あの厄介者がこの事件に首を突っ込んでくるのは確実でしょう」

パチュリー「それに正義感が強いみたいだし、私たちがすることに指を咥えて見ているとは思えないもの」

981 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:11:05.32 ID:z3Gd++TS0

土御門「随分と『幻想殺し』のことを知っているようだが、誰に聞いたんだ?」

パチュリー「ステイルよ。 あなたたちが電話を終えた後に聞いたの」

土御門「なるほどな」

パチュリー「それと『禁書目録(インデックス)』も劣らずそうみたいだし、
流石にあの二人に睨まれたまま観光するのは勘弁願いたいわね」

パチュリー「あの二人のことに関しては、あなたも思うところがあるんじゃないかしら?」

土御門「・・・・・・はぁ」


実際、現在土御門を悩ませていることは結構ある。
その中で最も早急に解決したい事柄は、『どうやってこれから起こることついて上条当麻に説明するか』だった。

本当ならばこの作戦のことは二人が知らないうちに完遂させてしまうのが最も良い。
『禁書目録』もそうだが、友人として当麻には必要以上に危険に関わって欲しくない。

しかし、残念ながらそれが出来ないのが実情だ。
なぜなら、二人はこの作戦の『標的』に深くとまではいかなくとも繋がってしまっているからである。

おそらく二人は今回の作戦のことを認めようとはしないだろうし、だからといって無断で遂行すれば、
土御門だけでなくイギリス清教とも決定的な亀裂を作ることになるだろう。

982 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:13:10.61 ID:z3Gd++TS0

土御門(本当にどうするべきか・・・・・・)

パチュリー「どうしたの?」

土御門「いや、こっちの話だ。 ・・・・・・本当に行きたいのか?」

パチュリー「当然」

土御門(まさかとは思うが、『学園都市の観光』がメインのつもりで来たんじゃないだろうな?)


パチュリーが仕事よりも、知識の探求を優先するような人間であるということはステイルの話から既に知っている。
そしてそれを考えれば、向こうから折れることは決してないと断言してもいいだろう。
なにせ『最大宗教』に対して魔術をぶちかますような女だ。拒否すればその場面をこの場で再現することにもなりかねない。

だが、だからといってこちらも易々とその願いを聞くことは出来ない。
仕事だからということもあるが、魔術師である彼女を学園都市内でウロウロさせるのは色々と危険すぎる。
もちろん『彼女が』ではなく、『彼女に群がる有象無象が』である。

もしも近寄ってきたスキルアウトに魔術を行使されたら、その後の処理が面倒になることは請け合いだ。
十字教と学園都市の間に良くない雰囲気が流れるだろうし、何より彼女の責任者である土御門への風当たりが強くなる。

双方どちらも簡単に意見を曲げることはできない。
つまり、この場を丸く収めるには双方が納得する妥協案を探さなければならない。

983 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:15:36.67 ID:z3Gd++TS0

土御門(まずはこちらから妥協案を提示する必要があるか・・・・・・)

パチュリー「で、どうなのかしら?」

土御門「仕方ない・・・・・・見て回れる場所は制限されるが、それはかまわないな?」

パチュリー「かまわないわ。 無茶を言っているのは重々承知しているし」

土御門「それなら最初から言わないで欲しいんだが」

パチュリー「それは無理ね。 せっかくの機会をフイにすることなんて出来ない」

土御門「そうかい。 ・・・・・・正直なところ、第14学区位しか当てがないな。
これからの下見という観点ならここ以外には考えられない」

パチュリー「確かに仕事のためならば行くべきなのだけれど、正直学園都市に来てまで見に行く場所じゃない気がするのよね」

土御門「少しは仕事のことを考えろ。 遊びで来たんじゃないんだろう?」

パチュリー「仕事の準備なら当日でも出来るわ。 それに、『あいつ』の相手をするのに小細工はしたくないのが本音ね」

土御門「・・・・・・それはお前の私情か?」

パチュリー「確かにそれもあるわね。 でも『あいつ』の力を考えれば前準備なんて無意味なんじゃないかしら?」

パチュリー「それについては深く知っている訳じゃないんだけど」

土御門「・・・・・・」

984 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:17:52.72 ID:z3Gd++TS0

『標的』が持つ力・・・・・・
それが『どこまでできるのか』を完全に理解するには、前もって集めた情報だけでは少なすぎる。
こればかりは実際に対峙してみないと分からないだろう。


土御門(無駄だと割り切るか、それとも意味があるものだと信じるか・・・・・・)

パチュリー「ん〜、そういえば『幻想殺し』にも会ってみたい気がするわね」

土御門「・・・・・・いや何言ってるんだ。 思わず聞き流しそうになったぞ」

パチュリー「『幻想殺し』がどこに住んでいるのか知ってる?」

土御門「人の話を聞け! さっきの話の流れからどうしてその考えが出てくるんだ!」

土御門「アンタはもっと慎重に行動する性格だと思ったんだが?」

パチュリー「結局彼が絡んでくるなら、最初から全部喋ればいいんじゃないかと思ってね」

土御門「・・・・・・俺がどうやって『幻想殺し』に説明するか迷っているときに、そんな簡単に結論を出さないでくれ・・・・・・」

パチュリー「『案ずるより産むが易し』。 悩んでいるよりも行動すべきだと私は思うわ」

土御門「『引きこもり少女(ラクトガール)』のアンタには言われたくないな」

パチュリー「あら、なかなか的を射たネーミングね」

土御門「自覚ありか」

パチュリー「当然。 でも、改めるつもりはないわよ? 面倒だし」


どうやら彼女は自分が意味の無いと判断したものに対しては、とことん無関心になるらしい。
だからこそ『最大主教』を前にしても我を通すことが出来るのであろうが。

985 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:20:01.65 ID:z3Gd++TS0

土御門「・・・・・・先に言っておくが、俺から『幻想殺し』に会わせることは出来ない」

土御門「奴が関われば『禁書目録』も巻き添えになる可能性があるからな。 『最大主教』がそれを許すわけがない」

パチュリー「でしょうね・・・・・・でも『意図的に』会わなければいいだけの話でしょう?」

パチュリー「それに、こちらから『幻想殺し』を釣り上げる方法がない訳じゃないしね」

土御門「正直かなり際どいんだがな。 だが、こんな所で堂々巡りはしたくない」

土御門「関わったら関わったで、何かの役に立つかもしれないからな。 そうなったら追々考えるさ」

パチュリー「交渉成立ね。 偶然に頼らなきゃいけないのが不満だけど」

土御門「もし『最大宗教』にばれたらお前にも責任をとってもらうぞ?」

パチュリー「スパイのあなたなら二枚舌くらい出来るでしょうから、その心配は無用ね」

土御門「調子のいいことだな」

パチュリー「それはそうよ。 自分の願いが叶ったんだから」

土御門「まったく・・・・・・」

986 : ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2013/02/03(日) 22:28:14.38 ID:z3Gd++TS0
今日はここまで

次の話を投稿するには残りのレス数が際どいので、このスレはここで終わりにしたいと思います
次スレは次回投稿時に建てたいと思うので、このスレは埋めてしまってもかまいません
埋まる気配が無い場合はHTML化依頼を出します

質問・感想があればどうぞ
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/03(日) 22:51:06.18 ID:UxRyNvhm0

パチュリーさんヒッキーだけど殴り合いは好きみたいだよなあww
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/03(日) 22:53:01.86 ID:4OPY7NaJ0

そして出会うか……ってかデートじゃん!やっぱりデートじゃん!   パルパルパルパルウウゥー!
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/08(金) 15:19:20.94 ID:lvz4iALl0

新しくスレを立てたら
こっちに新スレのタイトルとリンクを載せてからhtml化してくれると非常にありがたいな
990 : ◆jPpg5.obl6 [sage]:2013/02/11(月) 00:33:54.74 ID:6G4uUxGj0
次スレ立てました
とある後日の幻想創話(イマジンストーリー)2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360510325/
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 19:58:10.92 ID:6qS/1sed0
うめ
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 19:58:43.77 ID:6qS/1sed0
あーどうでいい
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 19:59:20.81 ID:6qS/1sed0
メガトン
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 20:00:48.61 ID:6qS/1sed0
ハイパー・ノヴァ
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 20:02:48.59 ID:6qS/1sed0
極超新星爆弾
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 20:03:46.57 ID:6qS/1sed0
クーロン力
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 20:05:00.20 ID:6qS/1sed0
アトモスフェア
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 20:05:57.16 ID:6qS/1sed0
リソスフェア
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 20:07:40.22 ID:6qS/1sed0
クー・リ・アンセ
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/13(水) 20:09:26.69 ID:6qS/1sed0
久遠第四加護
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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