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御坂「めでたしめでたし……って。終る訳ないじゃない」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/30(金) 15:46:03.59 ID:2641Ju7H0
――0.

 ママ。

 ママ。

 たすけて、ママ。


「いたいよ。くるしいよ」


 パパ。
 
 パパ。

 たすけて、パパ。


 「かなしいよ。さびしいよ」 



 ねえ。

 ねえ。

 たすけて、■■■。


 ねえ。ねえ。ねえ。ねえ。
 たすけて、たすけて、たすけて、たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ――――


 ■■■、わたしを、たすけ



『―――助けて、ミ■■』



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第五十九回.知ったことのない回26日17時 @ 2024/05/10(金) 09:18:01.97 ID:r6QKpuBn0
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ポケモンSS 安価とコンマで目指せポケモンマスター part13 @ 2024/05/09(木) 23:08:00.49 ID:0uP1dlMh0
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今際の際際で踊りましょう @ 2024/05/09(木) 22:47:24.61 ID:wmUrmXhL0
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誰かの体温と同じになりたかったんです @ 2024/05/09(木) 21:39:23.50 ID:3e68qZdU0
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A Day in the Life of Mika 1 @ 2024/05/09(木) 00:00:13.38 ID:/ef1g8CWO
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真神煉獄刹 @ 2024/05/08(水) 10:15:05.75 ID:3H4k6c/jo
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愛が一層メロウ @ 2024/05/08(水) 03:54:20.22 ID:g+5icL7To
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/30(金) 15:50:15.93 ID:2641Ju7H0
――1.八月二十三日@

「またな、御坂」


 背の向こうから放たれた言葉。
 音の発生源は別れの挨拶を済ませると馴れた手つきで松葉杖をつく。
 御坂とは反対方向へ。彼を待つ人が居る家へ。
 感慨深げな様子は見て取れず日常と非日常の行き来が彼にとっての『普通』であると。
 そう、言わんばかりの背中であった。


「……」


 松葉杖がコツコツとテンポよく鉄橋を叩く音が遠のいていく。
 御坂は無言のままその場で立ち尽くした。
 強力な接着剤で靴裏と地面がひっついてしまったような硬直。
 
 眼は見開かれ、彼――上条当麻の放った言葉が何度も脳裏でグルグルと循環する。 

 鼓膜にびっとりと纏わりついた少年の声色。
 それは、『有り触れた』といった形容がよく似合う特徴に乏しい少年にお似合いで。
 人ごみの雑踏の中であったなら即座に雑音の波にのまれてしまいそうな。
 けれど。
 彼女にとっては。
 十四年生きた中で最も身体に激震が走る程に特別な「何か」。

 「ビリビリ」と呼ばれる度に雷撃と共に訂正しつづけた己の名前。
 何度「私の名前は御坂美琴である」と声を荒げた事か。
 物覚えが悪いのかそもそも覚える気がなかったのか。
 今では定かではないが。

 不良に囲まれ「いやーお待たせー」と意味不明な声かけをされた繁華街の夜の救出劇。
 そんな初めての出会いから幾日幾十日。長かったようで短かった日時が流れ。
 ついに昨日。一生記憶に残るであろう八月二十一日。
 
 不幸だと嘆いてばかりの少年に―――、御坂美琴は正真正銘『救出』された。

 御坂のみならず。
 彼女と遺伝子レベルで同質かつ同一の存在、おおよそ一万人すらも救ってみせた彼。
 文句のつけようもない、本物のヒーローと成った上条の呟きに、御坂の全身は焼けるように燃え上がる。


(―――ッ!!!)


 奥底から湧きあがる激流。経験のない浮揚感。五臓六腑の隅々まで侵食していく彼の声。


 『御坂』


 それだけ。たったそれだけ。だと言うに。
 何故。こうも緩む口元を我慢することが出来ないのだろう。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/30(金) 15:52:44.19 ID:2641Ju7H0
 
「大変ですの! お姉さ…、」


 パッ、と。急に風斬り音に似た独特の音が耳元に届く。
 鉄橋で立ちつくす御坂の目の前に、後輩の白井黒子が空間移動で現れた。 


「ま」


 急いだ様子で駆けよってきた白井は、
 茫然と一点を見つめたまま微動だにしない御坂の顔を覗き込む。
 同時にぎょっとした表情浮かべ焦った様子で白井は御坂に質面攻めを浴びせる。


「どうなさいましたのお姉様ッ!? ご気分が優れませんの? 何処かお怪我を? それともおかしなものでも召しあがって?」

「わぁッ」


 白井の鬼気迫るそぶりに圧されようやく覚醒する御坂。


「な…何言ってんのよ。…で、何が大変なわけ?」

「あ、その…」


 御坂が反応を返す。ワンテンポ遅れて白井が当初の要件を口にした。


「先日の無断外泊について寮監から呼び出しが……。納得のいく説明をせよと。
 早急に出頭しないと実力行使も辞さないと…」


 冷や汗を流しながら話す白井の後ろに居もしない寮監が修羅の形相で腕を組む姿が目に移る。
 ……幻覚だ。紛れもなく錯覚なのだが――。
 背中に感じる悪寒が嫌な近未来を約束しているように思えた。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/30(金) 15:55:27.51 ID:2641Ju7H0

「う…。マズイわね。何かアリバイを………」


 早急に考えなければならない。
 噂によれば、寮監は完全武装した警備員三人を素手でのした事がある女傑。
 学園都市内でも有数の実力者である御坂や白井でさえ寮監相手では二進も三進もいかないのだ。
 恐るべし寮監。
 常盤台外部寮内裏規則その一『触らぬ寮監に祟りなし』。

 それにしても、と御坂は思う。


「それをわざわざ伝えに来てくれたの。ありがと。でもよく私がここにいるってわかったわね」


 おい。
 なんだその『ギクリ』という効果音が似合いそうな顔は。


「そ、それは最近お姉様のご様子がおかしかったので、風紀委員の特権を利用してケータイGPSをちょーっと………」


 ドゴリ、と鈍い音が白井の頭上で鳴り。


「今すぐ解除するように」

「あい」


 御坂の鉄拳制裁をあび地面とお友達になっている白井を置いて御坂は駆けだす。
 どうしても走り出したい気分だった。
 風を切り日常へとすぐさま戻りたい想いだった。


「あう…。あの、本当にどこにもおかしな所はありませんの?」

「だから何の事よ! 妙な事置いてくわよっ!」

「だってお姉様が―――……」


 白井の吐露は御坂に最後まで届かなかった。
 風に攫われ風下へと消え去っていくソレは、物語の起承転結を締めくくるに相応しい最後であったのに。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 15:56:12.75 ID:yOg2aSW30
漫画、超電磁砲7巻64ページのとこから始まってるんだよな?
一方通行と戦って病院から退院したとこからだよね?
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/30(金) 15:59:01.98 ID:2641Ju7H0
 
 一昨日の夜。
 八月二十一日の夜。
 第一〇〇三二次実験において最弱が最強をうちかましたその時に。
 学園都市第一位の一方通行をレベル6へと進化させる実験は終止符を打たれた。
 既に失われた(――原因は未だ不明――)『樹形図の設計者』による再演算は不可能であり、計画は暗礁に乗り上げたと言える。

 上条当麻によって御坂美琴は救われた。
 約一万の妹達と呼ばれる超電磁砲の軍用型量産クローンも救われた。
 

 昨日の昼。
 八月二十二日の夜。
 御坂は上条当麻への見舞いの後、妹達の一人と真の意味で向き合った。
 妹は言った『生きる意味を見いだせるように、これからも一緒に探すのをつきあって下さい』と。
 嬉しくて涙が出そうになった。『よろしく』と返事をするだけで精いっぱいだった。 

 御坂美琴は妹達からも救われる。
 ……妹達も、御坂美琴によって救われていたのかもしれない。

 
 そうして。
 実験は終った。
 
 終ったと、思っていた。

 
 御坂美琴は隠し消えない笑みを口元に浮かべたまま、自分の住処である常盤台外部寮へと駆けていく。
 
 胸いっぱいの幸福を抱えて。
 裏では償いきれない罪を抱えて。
 欠けたピースの存在を、頭の隅へと追いやって。

 これで終わっていて欲しかった、と。思いたかったのだろう。
 


 大円団で物語の幕をおろせればどれだけよかっただろうに。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/30(金) 16:00:29.32 ID:2641Ju7H0







 ――――――八月二十三日、正午、現在。

              長点上機学園三年生、布束砥信は依然・行方不明である――――――






8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/30(金) 16:08:02.72 ID:2641Ju7H0
――1.八月二十三日@

とある科学の超電磁砲第五十五話『鉄橋は恋の合図』の10P〜14Pまでの全台詞を引用しております。
禁書3巻以降、超電磁砲は第五十五話以降の時間軸。
対一方通行戦より二日後からスタートです。更新は週2−3回程度を予定。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 16:17:29.47 ID:yOg2aSW30

冬川せんせーの美琴と上条さんは好きだぜい
これからの展開に期待
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 16:32:51.86 ID:3GQJ6EMEP
■■で一瞬■■さんが出てくるのかと思ったが。そんなことはなかったぜ。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage ]:2012/03/30(金) 17:43:45.20 ID:9uCyq7lJ0
期待

鬱だったら教えてくれるとありがたい
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 18:19:51.92 ID:Vwz1HOBU0
×:大円団
○:大団円
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 23:52:47.04 ID:m+wee+iNo
期待してる
自分も鬱かどうかは知っておきたいな
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/31(土) 19:20:21.86 ID:Qh34JWxi0
――2.八月二十三日A

 キンッ。

 弾かれた一枚の硬貨が軽快に宙を舞った。
 くるりくるりと回る度、裏表の面が交互にあらわれ日の光を反射する。
 手元から四十センチ程の高さが浮遊の限界点らしく。
 頂点に到達したあとは重力にされるがままだ。
 
 逆U字を描く硬貨に目を細め、銅色の円を弾いた少女本人のか細い喉から流暢な英語が発せられる。


「――,Hey」


 ねえ、と。
 口の端を上げるのはフレンダ=セイヴェルン。

 青にも緑にもみえる碧眼を三日月型に歪曲させ、勝気な口調が彼女らしさを際立たせた。
 逆U字の曲線を追うように動いた顔に付き従う形で、頬にかかる髪束がうねる。
 枝毛一つない金糸の髪。
 彼女の波打つ金糸の髪の滑らかさが彼女の血統が外来のものであることを裏付ていた。

 投薬や洗脳による開発術の影響で生来の毛髪が変色する事例はこの学園都市において珍しくない。
 代表例を上げれば『反射』の影響によって見事な白髪頭へと変貌をとげた『第一位』だろうか。
 街へと足をむければ、金髪、赤髪、白髪に青髪。果てには桃色の髪まで存在する。

 開発術を原因とせずとも、髪を脱色なり染色なりをする愉快な生徒は続出する一方だ。
 
 学園都市は学生の街であり学生を叱責する大人は極少数。
 そんな環境の中、ヤンチャだったりオシャレだったりする学生は、容易に非行や自己主張の一手段として、黒髪からの脱皮をはかる。

 結果。
 二百三十万の都市にはカラフルな頭髪を持つ人々が大量発生。
 生来の髪色を大事にする黒髪派が大多数とはいえ、学園都市外に比べれば色彩の鮮やかさは豊富であろう。
 
 しかし。
 結局は人工モノに過ぎず天然モノの前では無力な訳で。
 その希少性はこの街において原石並……とまで言うと過大評価かもしれない。
 ただ、黒髪を除く毛色の天然モノを持つのはフレンダ=セイヴェルンの他は、
 第七学区に居る銀髪ちびっ子シスターや、最近妙に不良集団と仲良しになっているフレンダの妹があげられよう。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/31(土) 20:12:17.39 ID:Qh34JWxi0

 痛みも汚れもない、天然モノの金糸の髪を惜しげもなく揺らすフレンダは声高に口にする。
 日本語を自由に操る彼女が母国の言語に不自由することはあり得ない。
 立て板に水を流すような。
 他人が聞き惚れそうになる抑揚で。

 再び。
 ねえ、と。


「Hey,missy!」


 己の手元へと舞い戻る硬貨。
 フレンダはタイミングを見計らい右手の甲を差し出して、左手の掌で蓋をした。
 廃れた街のはずれにある賭場の女店主をイメージ。
 すかさず決め台詞。


「Heads or tails?」


 さあ、お嬢さん。アンタの運命は表裏どっち?


「……」


 遊び感覚が抜けきれないニヤけ顔でフレンダに答えを求められたが、問われた布束は応じずに黙りこくった。
 ただ『お嬢さん』とに呼ばれたことが少し可笑く、柄にもなく吹き出しそうになる。
 
 目の下にある消えない隈や、幼年から大人に囲まれた環境に居たおかげで得た落ち着きは年にくらべ不相応。
 自分でも所属する長点上機学園の制服よりも研究員用の白衣のほうが適切であると感じることすらある。
 青春を謳歌する若々しさは『学習装置』及び関連の研究の対価として消失したのだろう。
 故に。
 布束の実年齢を知らぬ人物からは、いくらか年をかさ増しされることが常。
 
 だから、知人の域にもいないフレンダが呼んだ『お嬢さん』のフレーズは、新鮮さを通り越しある意味珍妙であった。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/31(土) 20:28:12.46 ID:Qh34JWxi0

 希有な体験をしたと考えるが、
 布束がフレンダの芝居がかった(実際、彼女にすれば『寸劇』にも近く)問いに答える気は更々なく。
 己の運命は裏か表か。
 考察するのも馬鹿馬鹿しい。
 もっと面白いお題を持ってこい。
 決まりきったアンサーは実にツマラナイ。

 硬貨――、コイン。
 日本で発行されている硬貨は、植物や建築物が描かれている面が『表』、鋳造年数が表記されている面が『裏』とされている。
 フレンダが両手の間に隠した銅色の円・十円玉には正しく表面と裏面がある。
 一方。
 布束の『コイン(運命)』に裏表はない。
 八月十九日に『暗部』へと転落したその日から、裏表の選択肢すら用意されていないのだから。

 コインにあるのは。
 裏、それのみである。

 布束は茶番に付き合う義理は毛頭ない。
 そもそも『無駄』を好む性分はこれっぽちもない彼女は、この場の誰もがわかり切っているアンサーに答えてやる気はなかった。

 勝手に映画のワンシーンのヒロイン役を押し付けられた布束も。
 昨日のテレビの再放送で見た映画の女優になりって挑戦的な視線を向けてくるフレンダも。
 沈黙を続ける二人のやり取りを遠目で見守る他の三人の女性たちも。
 
 その背にある運命は、『裏』。
 お情けで与えられた居場所が『暗部』である以上、表を堂々と闊歩する権利はとうに失われた。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/31(土) 20:47:06.65 ID:gqpihNnAO
おお、期待。

鬱の有無とかは今後のストーリーの方向性見えちゃうから言わなくていいよ。
振り回されずに続けてくれ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/03/31(土) 21:44:30.96 ID:Qh34JWxi0

「超ダメダメです。まったく似ていませんよ、フレンダ」

「えー? 私の演技は完璧なはずだけど」


 布束のかわりに、フレンダへ反応したのは、少し離れた場所で二人を眺めていた絹旗最愛だった。
 ノースリーブ型パーカのフードを深く被り、崩れ落ちたビルの瓦礫に腰かけ足を組んでいる。
 
 空気中に散る埃で咳をせぬ様にフードで防御する。
 痺れた足を組み換えると同時にパチャリと水はけの音。
 靴裏に真っ赤な液体がへばり付くがお構いなし。
 絹旗の中で今最も問題にしなければいけない事は、
 お気に入りのB級映画の名シーンを完璧に再現しきれなかった同僚へと文句である。
 
 女店主フレンダを、どうやら絹旗はお気に召さなかったらしい。


「テスティーナはもっと歪んだ顔でヒロインに『表か裏か』をつめよるんです。
 超迫力が足りません。私が監督ならばすぐさまNGを出しますね。やり直しを要求します!」

「そこまでの再現は無理な訳よ」

「だったら表情筋を鍛え直しやがれ、ですね」

「イーヤッ。眉間に常に皺がよっちゃうようにはなりたくないもん」

「むーっ」


 外見年齢が十二歳程度の少女は、埃まきれの瓦礫の山に自然と馴染み風景と同化していた。
 天真爛漫さを漂わせる絹旗(子ども)が、血で出来た水たまりを踏み、数分前まで人間だった肉の塊を気にも留めない。
 フレンダがなりきっていた『賭場の女店主・テレスティーナ』の形相に凄みが足りない事に不満を垂れる。
 ブーブー、と。幼稚なブーイングをするばかり。

 ここは『アイテム』構成員にとっては当たり前の日常であり風景である。
 初恋に胸躍らす年ごろの少女が哀れみすら湧かせずに素通りする光景が今日も『当たり前』に繰り広げられる。
 血を恐れず屍へ送る追悼はない。するだけ『無駄』なのだ。
 布束がフレンダとのやり取りを無駄と思うのと同様の間隔で。
 絹旗やフレンダ、『アイテム』構成員は名も知らない屍へ慈悲を抱く事を無駄と断する。 

 目の前でじゃれあうフードの少女と金糸髪の少女。
 どこにでもありそうな。それでいて異様なやり取りに布束は眩暈を覚えた。
 小柄な少女たちの掛け合いの後ろに、学園都市『暗部』の底知れぬ暗さを垣間見た気がした。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/04/01(日) 00:35:13.53 ID:Xt3irLYZo
もう、いいやの人だろうか
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/01(日) 15:26:14.49 ID:D5Kx6IWS0

「つーかさー」


電話の女との通話を終えた麦野沈利が二人の会話に割り込む。
二つ折りのケータイ電話はパタリと畳まれポケットへの中へ。

彼女はつい先日調達したばかりの白とベージュを基調としたワンピースを身に纏っていた。
今夏の流行を抑えたお気に入りの一着は前回の侵略者(インベーダー)戦で汚れに汚れ、燃える火のゴミの日に捨てた。
ボレロに似た上着付の服。薄ピンクでなかなかに可愛かったから実に残念である。
ヘビーローテーションするつもりだったのに。可愛かったのに。
服の廃棄の原因を作った『超電磁砲』に出会うことがあるならば、顔面に一発ストレートを決めるのもありかも。

定期的に美容院に通いエアウェーブでふるゆわパーマを保持する髪を、右手で耳にかけながら不吉な思惑を企てる麦野。
その隣では見知らぬ誰かのAIM拡散力場に身を委ねる滝壺理后が、顔を僅かに斜めに傾けボーっとしている。
肩口で整えられている黒髪に癖はない。生まれて時から癖毛で悩み続けている布束には大変羨ましい毛質だ。


「コインの面を当てたら解放してあげる、なんて賭けにもならない賭けをすんじゃないわよ」


巻き上げられる金がある訳でもなし。
そう付け足し、麦野はフレンダのいつものおふざけに釘をさした。
フレンダの遊び心はやっかいな事案へと発展するケースが稀にあるのだ。
懸念事項は出来るだけ潰しておきたい。これからしばらくはド派手な活動は難しくなるから余計に。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/01(日) 15:47:43.01 ID:D5Kx6IWS0

 八月十九日において滝壺は『体晶』を服用し暴走状態での能力行使をしている。しかも超能力者相手に。
 大きめの組織を駆除する際に『体晶』使用機会はなかったが、今日の仕事で疲労が増したのは確実。

 『アイテム』として重要度が高いのは『AIM追跡』という特別な能力を持つ滝壺他ならない。
 
 圧倒的な破壊力を持つ『第四位』麦野の火力も、『アイテム』の活動内において滝壺以上の価値は持ちえず。
 極端な話になるが。第四位が使い物にならなくなろうと、替わりは幾人か用意できる。
 上位三名やナンバーセブン。もう少し幅を広げれば空間移動系最強でもいいだろう。
 超能力者級の使い手は両手程度は確保できる。
 それに比べ『AIM拡散力場』に直接介入できる能力者は片手程。大能力まで使いこなせるものは今の時点では滝壺しか確 認されていない。
 替わりがきかない。だからこそ滝壺という『使い手』の価値は増大する。
 
 滝壺がいないだけで、学園都市内での内部粛清や治安維持の仕事はその難易度が最上級までになってしまう。


「超能力者のAIM拡散力場を相手にしたんだ。念を入れてあと二、三日は滝壺の回復にまわしたいわね。
 あーあ、うまくいかないもんね。滝壺の体調管理を問題なくできる研究畑の人間を私らの下におけると思ったのに」
 

 体調が崩しやすい滝壺が安定するだけで『アイテム』の不安定性は大分欠如する。

 やっと、『能力結晶体』と『被験者』をまともに管理できる研究者を確保できたと思ったのだが。
      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「布束。あんたの所属が正式に決まった」


 自分たちにとって有用であった道具を横取りされた事が少し面白くない。
 麦野は不機嫌さを隠しもせずに多少棘が混じった声で、電話の相手から頼まれた伝言を伝える。


 「生き延びたスライムどもの世話係」

 「……なっ!!」

 「なんだ。でかい声でんじゃねーか」


 予想外の展開に布束の声が詰った。
 『暗部』に落下して以降、言葉らしい言葉を発していなかった布束の大きな動揺の声に、麦野は意外なものを見たと言いたげに眉をあげた。

22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/01(日) 16:20:57.46 ID:D5Kx6IWS0

「それなんていうドラクエ? てか、外部に引っこ抜かれんの?」

「超マジですか? 男ばっかのむさ苦しい下部組織にようやく貴重な女性構成員が増えたのに」

「ぬのたば、アイテムの下につくんじゃなかったの?」


 布束への正式な勅命に対して、三名それぞれが口を開いた。
 AIM拡散力場浴を堪能していた滝壺でさえも会話に加わってくる。
 彼女ら全員、『暗部』における布束の居場所はアイテムの権限の下だと思っていた故の反応。

 正式な処遇が決まるまで布束は、彼女を妨害し捕獲したアイテムの監視下に置かれていた。
 布束は無能力者であるが、頭脳だけで超名門校長点上機学園の壁を突破した人物。
 一線級の研究者として残した功績は『木原』一族の面々に見劣りはしないはず。
 研究者として有能な彼女は、短期間でアイテム下部組織で重要な人物として目されるまでになった。

 アイテムは実働部隊あり、同程度の機密・権限を持つ暗部組織『メンバー』等と比較すると、研究方面でのサポートは見劣りする。
 『アイテム』の名が示す通り、フレンダが使う戦闘用ツール、麦野が使う『 拡散支援半導体(シリコンバーン) 』等の攻撃・能力補助の道具作成の幅が大きい。
 能力者そのものを管理できる研究者はおらず、その空席を布束が埋める形でアイテム下部組織は編成されようとしていた。

 上から一週間以上も音沙汰が無かった為、そのまま布束の残留が決まったものと勘違いしていたのだ。

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/01(日) 16:35:57.53 ID:D5Kx6IWS0

「これからは『電話の女』がアンタの直属の上司になる。
 スライム二万匹ぶっ潰し計画の関係者は、スライム共や第三位に近ければ近いほどその処分が軽い傾向にあるみたいだぞ?
 ……まあ、一万匹の保護・検査するにはそれなりの数の研究者が必要っていうのもあるんだろうけど。
 よかったな。人を殺せっつー命令よりかは手は血に染まらない」


 気の毒にね、と。
 麦野は続ける。
 

「ぶっ殺す前提で作ったスライム共に、イイコイイコしてあげないといけないんだもの」


 踏み潰すはずだった存在に、今度は優しく手を差し伸べなくてはならないなんて。


「本当に、お気の毒様」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/01(日) 17:04:26.41 ID:D5Kx6IWS0

 呆然とした表情で布束は言葉をこぼす。


「…………eventually」


 八月十九日。妹達へ感情(データ)を入力をしようと試みたあの時。
 布束砥信は理解していたはずだった。
 
 『これは本来、私達が背負うべき罪』、と。

 理解していたはずなのに。今の今まで覚悟が足りていなかったらしい。
 罪があるならば、それ相応の罰があって当然。むしろ必然。
 

「コインに選択肢はない。あるのは『裏』。それだけだ」


 絶対能力者進化計画の後始末に布束をあてがうのは実に正しい。
 『妹達』というかつて救いたかった対象は彼女の両手足を縛る鎖になるだろう。
 
 どのような思惑があるか布束には定かではないが、
 第三位、御坂美琴は世界の『表』に居てもらわなければならない『役』なのだろう。
 先ほどのフレンダとのやり取りの影響だろうか。そんな言葉選びがストンと心におちてくる。
 
 一瞬といえ、御坂と共闘関係を築いた布束は『第三位』の視界に入ってしまった。
 優しい彼女だからこそ。
 御坂に情報を与え手を貸した結果の暗部落ちと彼女に知られれば、御坂はあっさりと対立してはいけない暗部と火花をちらす。
 


 御坂が暗部に落ちてくる要素を省き、
       一線級の研究者の才能を無駄にせず、
              布束の罪悪感を刺激し裏切りを防ぐ。



 ああ、なんと胸糞悪い。

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/01(日) 17:12:06.73 ID:D5Kx6IWS0

 ようやく帰ってきた答えにフレンダは笑みを浮かべ左手の蓋を外した。


「おっ、正解!」


 せっかくだから最後まで。
 入りの合図も無いままにフレンダは再び『テレスティーナ』の仮面をかぶる。
 生きるか死ぬかの賭けに勝ったヒロインに最大の祝福を。
 

「Congratulations!」


 これで、アナタは救われる。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/01(日) 17:16:44.89 ID:D5Kx6IWS0







 ――――――八月二十三日、午後二時、現在。

          布束砥信のアイテム下部組織離脱、

             『妹達』残存個体の保護・検査協力施設への派遣決定――――――







27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/01(日) 17:31:12.55 ID:D5Kx6IWS0
―ー2.八月二十三日A

アイテムと布束さんでした。
とある科学の超電磁砲第二十九話『八月十九日C』の七ページ目より『これは本来〜』の部分を引用。
とある世界の残酷歌劇の作者さまとは別人です。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 22:11:04.68 ID:FrK5X2Xs0
面白そう

楽しみなスレが増えた
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/02(月) 02:12:10.90 ID:N7nW9eRAO
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 13:04:59.53 ID:hn/ebIsAo
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 18:53:40.97 ID:l7Y1gNXW0
――3.八月二十三日B

 東京西部を開拓して作られた巨大都市、学園都市。
 
 ぐるりと円を描く様に都市を囲う外壁に守られた箱庭の街は、
 壁の外の世界より数十年先をいくと言われる最先端科学と、
 「超能力開発」の特別カリキュラムを受ける百数十万にものぼる学生達で活気づいている。

 世界中の知恵と金と技術が集結する学園都市は、誰でも一度は憧るであろう超科学や超能力が現実になった不思議なところ。

 投薬。
 洗脳。
 開発術。
 時間割(カリキュラム)に組まれた科目から、人に語るのも憚れる手段まで。
 
 親元を離れ故郷を離れ。
 生徒達は多大なる汗と努力と血反吐と微かな夢を注いで、科学的な奇跡をその身に宿らせた。
 けれど。心底満足できる夢を叶えられた少年少女はどれだけいよう。

 最低でも、六割の人間には無能の烙印が押されている、この街で。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/08(日) 18:42:47.05 ID:S9PRpqQT0

「……何の用だ?」


 先に痺れを切らしたのは華奢な体躯の少年だった。
 その身は遠目からだと少女と見間違う程に線が細いが、不機嫌そうな彼の声は紛れもなく男性のもの。
 前髪の間のぞく両眼は赤い。視線を右から左へ。牽制の意も込めて周囲を睨みつける。
 
 真夜中の歩道の中、恥も外聞も気にせずに一人の少年を取り囲む集団の人数を数える。
 釘バットにスタンガン。欠片の友好さもみせない装備を纏った十代の男が八人。
 死角――ビルの屋上、建物の間にある路地裏、蓋の仕舞ったマンホールの中など、見えない位置で待機している臆病者は度外視。
 どうせ、目の前にいる八人を生贄にして逃亡をはかるに決まっている。
 
 鬼ごっこまで興じる気にはなれない。
 数日前までは『狩りだ』と興じれた物事がどうしようもなく下らなく思えた。
 添え物の暴言すらも今日は出てこない。必要性すら湧いて来ず、……語ることすら無価値となったか。
 ため息ともに、先に口を開いた少年が片手で乱雑に頭をかいた。
 もう片方の手にはコンビニの袋が握られている。
 空になった自室の冷蔵庫に押し込む為の大量の缶コーヒーが中に入っている。
 

「三度目」

「あ?」

「何でもねェよ。独り言だ」

 
 今日だけで見知らぬ誰かに襲われるのは三回目。
 襲撃されることは大して珍しい事でもないがここ二日のエンカウント率は異様だ。
 弱過ぎて経験値稼ぎにもならないスライム以下との戦闘は厄介なだけだというのに。

 コンビニ帰りの人影のない夜道。
 勝気な笑みを張り付けて影から湧いて出てくる不良集団(スキルアウト)と囲まれる自分。
 と言うか。こういう状況になるのはいったい何度目だ。同じ展開は飽きる。
 俗に言う“お約束”やら“テンプレ”というものなら、別のものを用意しろ。
 実験材料を値踏みする研究者も、打倒最強に挑戦する能力者も十分だ。腹八分目はとうに達している。
 いっそ空から落ちてくる系ヒロイン並の意外性が欲しいものだ。今なら姫様だっこでキャッチしてもいい。 

 今はただ、さっさと終らせてコーヒーを飲んで死んだように眠りたかった。


「完全下校時刻はとっくに過ぎてンぞ。警備員にしょっ引かれたくなかったらさっさと帰って糞して寝ろ」


 “少年にしては”という前提はあるが。優しい語り口だっだ。
 これほどまでに力の抜けた自然な声色で言葉を紡いだのはいつぶりか。
 
 本人すら内心で驚く。

 
(―――、らしくねェな)

 
 そう、知りつつも。絶対に起こりうる最低限の争いすら彼は回避しようと試みた。

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/08(日) 19:55:27.83 ID:S9PRpqQT0

けれど。

「ハッ。“たかが”無能力者に怖気づいてんのかよ、オマエ」

色好い返事はない。
当たり前だ。ことさら論ずるまでもない。
少年のなけなしの好意が周囲に肯定された事はないのだ。

いつだって彼の眼前には後退しか生まぬ現実のみが現れる。こちらを歩めと指を指す。

彼に好都合な現実は訪れない。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage ]:2012/04/09(月) 16:58:50.08 ID:tVXeH7Lf0
速度が……

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/13(金) 13:52:38.23 ID:i1aznLUL0

「まあ。見逃してほしいっつー、オマエの気持ちはよくわかるがよ」


 集団のリーダと思しき青年が愉快そうに喋る。
 まわる口は止まらない。思いついた誘い文句を品のない笑みと一緒にぶつけてくる。


「だがそれじゃあ駄目だ。全、然ッ! 駄、目、だ!
 せっかく同僚が飲み会に誘ったってのに『業務外ですから』って無表情で一刀両断する奴みたいじゃん? 
 上司とかならともかくよ。これから『仲良くガンバロー』と握手求めてくれるオトモダチの掌を全力で叩く行為ってどーよ」

「つまンねェ例えだ。提案した側が決める事か? ソレ。握手を交わすも拒むも、最終的な決定権は受けた側にあるってモンだろ」

「確かにそうかもしれねえ」


 けどよ、と。いっこうに終りが見えない青年の語りが続く。
 重なるように他七人の嘲笑がバックコーラスと成って、集団リーダの背中を後押しする。


「人様からの好意は素直に受け取っておけよ。
 犬は尻尾を振るから人間に愛される。愛嬌ってやつだな。そいつがあるからこそ庇護の下で暖をとれるのさ。
 愛嬌……、いた、愛想でもいい。そーいう大事な事を忘れたら人間だって社会では生きていけないんだぜ、“第一位さま”よ」


 一人の少年に向けられる眼光は光りを浮かべる。
 発売日当日にお目当ての新作ゲームソフトをせしめた子供のように輝く瞳だ。
 ただし。微々たる月額の小遣いをせっせと貯める忍耐もなく、ボーナス目当ての家事手伝いに勤しむ労力もなく。
 「欲しい! 欲しい!」と願望をぶつけ喚き駄々こねて母親を困らせる、そんな子供の瞳に似て。
 それが全部で八人分、十四。
 やけに人の癪に障る眼光だ。


「……ンだよ。やっぱオマエらはオマエらでしかない、っつー事かァ」

 
 ――同じ無能力者でも、こうも違うか。

 こめかみが痛い。
 外界からの攻撃は完璧に防げても、内からのものは防げない。
 もしかしたらという期待。
 やはりかという失望。

 自分自身でも望むものの概要すらも分らずに、アイツだけが特別製なのだと再認識。

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/13(金) 15:27:06.79 ID:i1aznLUL0

「何、分かりきった事言ってんだ? オイオイオイ頭は大丈夫か? テストは先月の末に終ったばっかだろう」


 この街において強度判定は絶対だ。
 学期末毎に実施される身体検査で出される課題をクリアし基準を満たしてはじめて強度は変動する。
 次の強度上げ機会――二学期末の身体検査は十二月でありそれまで、七月末に行われた身体検査の結果は覆す事は不可能。
 最低でも四カ月間に強度は変動しない。
 無能力者は無能力者。
 それ以上でもそれ以下でもない。


「ああ。そうか、そうだよな。オマエはどうせ超能力者だ。テストごときに興味はねえか。
 ちょっくら風紀委員のオトモダチにお願いして『書庫』のデータを見せてもらった事があるが、
 さっすが第一位様は俺らとは段違い。最低でも超能力者、最高でも超能力者。安定して優秀なご成績だ、実に羨ましい限りだ」

 
 無能力者が無能力者であるように。
 彼らが彼らであるように。
 少年も少年でしかない。
 それだけでしかない。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 16:03:49.06 ID:i1aznLUL0

「なあ? 一方通行(アクセラレータ)」

 
 ケラケラと男は笑う。
 恐れはみられない。
 これから起こると予想している一方的なコミュニケーションしかみえていない態度。
 
 言葉遊びはただのきっかけ探し。
 気にくわない相手を徹底的にいたぶる為の前哨戦。
 余裕も持たず前戯なしに行為をするのは経験のないガキのすることだ。
 夜はこれからだ。焦る必要は無い―――と、口角を上げる集団を見て、少年の額に青筋が浮かぶのは当たり前の結果であろう。


「珍しく人が穏便に事を済ませてやろォと優しくしてやればコレ、か」

 
 せっかく売られた喧嘩を買わねェで、無視してやったつーのによォ。


「俺の事を駄目だと言うがなァ、いやいや、オマエらのほうが駄目人間じゃねェの?
 つーかよォ。脳味噌ン中十八禁なお年頃ってわりには口説き文句が下手過ぎ。
 安い挑発で興奮する前に交わってくれる女捜せよ。青春は短けーぞ? 時間は無駄にすンなって。
 
 ま、オマエらみたいな三下共でもヤらせくれる奇特な女は、そォそォ居ねェだろォがなァ」

「――ッ! テメェ!!」

「この程度でノッてくンのかよ。堪え性がないヤツ」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 16:34:10.63 ID:i1aznLUL0
 
「そンな態度でイイと思ってんのか? 泣いて土下座しても見逃してはやんねーぞ」

「気遣いは無用。俺もそこまで鬼じゃねェからな。余裕もねェ度量もねェ早漏君にこれ以上の負担をかけるのは酷ってモンだ」

「余裕ぶっこいてんじゃねーぞ敗北者ぁああっ! 
 オマエがたった一人の無能力者にぶちのめされたってのは知ってんだよ、無様にノされた最強さんよ!」

「……」

「どうした、図星で反論すらできないか?」

「……」

「そうだ、そうだ! オマエはこの街にウジャウジャ居る無能力者に負けたんだ。
 学園都市第一位の名は地に落ちたな。ハッ。核兵器を打たれても大丈夫ってキャッチコピーは嘘だったてワケだ。
 なんてったって、第一位様は『能力すらない無能な人間』に負けたんだからな!! アレか、顔面でもぼこられたか?」

「……で?」

「あ"あ?」

「だから、それがどォしたっつーンだよ」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 16:57:53.36 ID:i1aznLUL0

 だからどうしたと言うんだ。
 どいつもこいつ『学園都市第一位が無能力者に負けた』という事実しか見やしない。


「確かに俺は負けたな」


 あらゆるベクトルを観測し操る能力の影響で色褪せた白い髪に白い肌。
 従来のカラーコンタクトレンズでは表現しきれない、独特の色合いを見せる赤い瞳。
 個性という個性が乱立する学園都市だが、アルビノのような特徴をもつ者は一人しかいない。

 七人しかいない天才、超能力者の第一位。
 最強の能力者『一方通行』こそが少年の正体だ。

 二百三十万人の烏合の衆からなる三角形。その頂が彼が箱庭で築いた全て。
 超能力開発機関学園都市おける、姓二文字・名三文字の本名すら遠い過去に捨ててきた彼の存在価値。
 本人曰く『最強、さいきょう、サイキョー』それ以上でもそれ以下でもない。


「第一位は無能力者の最弱に負けた。それは真実だ。今更隠すつもりも無ェ」


 八月二十一日の夜。
 第一〇〇三二次実験において最弱が最強を倒した。……最強の中の何かも、砕いて。

 あの夜以降研究者たちからの連絡は一切ない。けれど。
 一方通行と名も知らない無能力者の闘いの場となった第十三学区の場に、警備員と風紀委員の調査が入ったという情報を風の噂で聞いた。
 表の介入が入った時点で、最強を無敵に押し上げる為の実験は凍結したと考えていい。
 
 最強は、最強でしかない。
 それが突きつけられた現実だった。


「けどよォ」


 第一位を地に叩きつけたのは、最弱(さいきょう)の無能力者だ。


「俺をぶっ倒したのは、オマエらじゃァねェだろォが」

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 17:03:14.70 ID:i1aznLUL0











要したは、三分にも満たない時間。









41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 17:26:50.95 ID:i1aznLUL0

「呆気ねェな」


 一方通行の周囲には血を流して痛みにのたうち回る男たち八人丁度転がった。
 サバイバルナイフを持っていたヤツの腕を“軽く”折った時に、死角で呑気に胡坐をかいていた下衆は逃げた。
 

「……あ、がァ…っ!」

「有難く思え。骨は綺麗に折ってやったンだ、すぐにくっつくだろ」


 折れ曲がった釘バットを踏みつける。
 靴裏についた赤い血をいちいち気にはしない。
 衣類や靴に赤い液体が付着する事には馴れていた。


「オイ」

「ひっ」

 
 比較的軽症(それでも全治二週間程度の怪我だろうか)の集団のリーダに声をかける。
 一方通行を罵っていた時の張りのいい声は聞こえない。
 威勢だけはよかったんだが……。リーダは、ズサリと、抜けた腰を必死に奮い立たせ両腕の力だけで歩幅一歩分後ろに退く。
 

「とりあえずは全員死んじゃいねェ。このまま路地裏に隠れるも、病院に行くも、後は勝手にしろ」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 17:35:35.41 ID:i1aznLUL0

『生徒同士の争いを確認。生徒同士の争いを確認。至急、「風紀委員」及び「警備員」は――、』


 サイレンの音が鳴った。向こうに見える十字路の角からこちらに移動してくる物体が一つ。


「チッ」


 近くを徘徊していた掃除ロボに見つかったようだ。
 生徒同士の抗争を確認し、学園都市の治安維持を務める風紀委員と警備員へ通報。


「温くなってンだろォなァ」
 

 体感温度で汗一つかかないが、昼間のテレビ番組のお天気おねえさんは今夜は熱帯夜だと言っていた。
 コンビニ袋の中の缶コーヒーは全部温くなっているだろう。
 やはりさっさと返ってしまえばよかった。

 これ以上面倒事に巻き込まれるのは御免だ、と一方通行が舌打ちを残して、その場から立ち去ろうとした間際。




「…………この、化け物がっ……!!」




 カタカタと震える歯を隠しもせずに吠えた負け犬の言葉が、微かに一方通行の鼓膜を掠った。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 17:46:19.56 ID:i1aznLUL0

 聞き飽きた罵声だ。
 超能力者とはたった一人で軍隊と戦えるほどの力を持つ存在。
 人間の枠から離れ過ぎているからには、それに相応しい渾名がつく。
 いい加減なれた、と気にしない素ぶりをして無視したが、


(化け物、ねェ)


 さきほどの無能力者の男が最後の足掻きとして唸った言葉が、脳裏に浮かんでは消えていく。

 二三十万人の頂点。
 七人しかいない超能力者の第一位。
 最強の能力者、『一方通行』。


(ハッ、やっぱ『最強』の価値なんて高がしれてンな)


 ハイエナの如く群がってくる研究者。
 『最強』というレッテルに、勝手に怯え勝手に嫉妬する学園都市の生徒。

 何も、かわりはしない。

 どれほどの称号を得ようと。
 どれほどの強さを手に入れようと。
 日常は変わらない。動じない。

 死に物狂いで一を手中に収めれば、その分、今まで抱えていた十が自分の手から滑り落ちていく。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 17:56:05.39 ID:i1aznLUL0
 
 無能力者であろうが超能力者であろうが、この街で生きている以上、共通する事はある。


「くそったれの人生に変わりねェンだ」


 夢を謳い憧れを誘う。
 甘い蜜をこれ見よがしにみせつけて無知な獲物を魅了する。
 夏夜を流離う蛾が街角の灯に吸い寄せられるように、少年処女は闇に浮かぶ白光に夢中になる。
 そうして。
 誘惑の熱から冷めれば、喉の奥がカラカラと渇いて水を欲する事実に目を痛くするのだ。

 心臓をギュッ押さえつける圧迫感が、一方通行にそう思わせてならなかった。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 18:00:16.98 ID:i1aznLUL0






 ――――――八月二十三日、午後十一時、現在。

          絶対能力者進化計画凍結後、対人における一方通行による殺害行為は無し――――――








46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 18:07:17.13 ID:i1aznLUL0
――3.八月二十三日B

一方通行さんでした。八月二十三日は以上となります。
更新速度ですが、今後は宣言通り週二-三でまとまった投下が出来ると思います。

誤字訂正
少年処女は闇に浮かぶ白光に夢中になる → 少年少女は闇に浮かぶ白光に夢中になる。

47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/04/13(金) 19:58:09.37 ID:VN02oSgAO
乙ー
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 22:17:01.08 ID:4YZ132Un0
――3.5

 こんにちは。

                       コンニチハ。


 今日は何して遊ぼうかの。


                       ナンデモイイヨ。


 じゃあ、達磨さんがころんだでもしようかね。 


                       ソレジャアオソトデアソビマショウ。
            
 
 いいとも。お外で遊ぼう。

 
                       アリガトウ、センセイ!

 
 なに、かわいい■■■の為さ。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 22:46:50.13 ID:4YZ132Un0

はじめの一歩 
――――――――――――――――――――――――――――――――

 よろけても踏ん張る。
 転んでも諦めない。
 苦しくても泣き言を言わない。

 スゴイな。
 カッコいいな。

 …………。

 私にもお手伝いできること、ないのかなぁ。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 22:48:14.41 ID:4YZ132Un0

「しかし、たとえどんなに努力しても筋力の低下は止まらない」


 えっ。それって、どういう。


「最後は自力での呼吸も、心臓の活動さえ困難に…」


 そんな。心臓が止まっちゃうなんて、そんな。


「だが、それもあくまで今現在の話だ。
 君の力を使えば彼らを助ける事ができるかもしれない」


 私の力。……電撃使い(エレクトロマスター)のこと?
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 22:49:40.88 ID:4YZ132Un0

「君の電撃使いの力を解析し『植え付ける』事が出来れば、
 筋ジストロフィーを克服できるかもしれないんだ」


 それ、本当?
 みんなの頑張りは報われるの? 
 私の力がみんなの役に立てる?


「君のDNAマップを提供してもらえないだろうか?」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 22:52:24.14 ID:4YZ132Un0
 
 みんな頑張っててすごいって思った。
 一生懸命で力強くて。
 

『絶対、病気になんかに負けないんだもん!!』

 
 って、私より小さな女の子。


『僕、お兄ちゃんなんだ。だから、頑張んないと』

 
 って、リハビリに励む男の子。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 22:57:45.38 ID:4YZ132Un0
 
 いいよ。
 いいに決まってるじゃん。

 私、みんなみたいに強くないけど。
 
 少しでも役に立てるなら嬉しいな。
 みんなが笑顔なら嬉しいな。


「…うんっ」


 照れくさかった。
 けれど。
 それ以上に。
 誇らしかった。

 電撃使いで幸せ、ってはじめて思ったんだから。


「ありがとう」


 ううん、お礼の言うのは私の方で。 
 学園都市に来てよかった。
 ありがとう、誰かの役に立てて嬉しい。

 元気になった一緒に遊ぼうね。

――――――――――――――――――――――――――――――――
                      達磨さんが、転んだ。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 23:04:42.46 ID:4YZ132Un0

 おやすみなさい。

                       オヤスミナサイ。


 今日は久しぶりに一日遊んだね。楽しかったかい。


                       エエ、トッテモ。トッテモ!


 さあ、明日から忙しくなるよ。


                       アシタカラマタガンバッテケンキュウスルワ。
            
 
 今日新しい材料が手に入ってね。

 
                       ホントウ?

 
 もっと沢山の事をお勉強できるぞ。


                       タノシミダワ。


 期待しているよ。

 
                       センセイ、ワタシガンバルネ!

 
 いい子だ。■■■。ゆっくりとオヤスミ。 


                       オヤスミナサイ。


 よい夢を。                   
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/13(金) 23:15:45.28 ID:4YZ132Un0
――3.5
とある科学の超電磁砲第十八話『八月十話@』P3-P5から引用有
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/01(火) 17:39:57.39 ID:i5Tj2oKN0
――4.八月二十四日『似寄』

 室内には最低限の照明しかない。
 コンクリートむき出しの壁が不気味に光で露になった。
 薄暗い空間は酷く無機質で、一切の温かみを遮断したような造りだが、布束の心に不快感はない。
 幼い日より様々な研究機関に在籍してきた彼女にとっては慣れ親しんだ空間であり、落ち着きさえ感じる。
 天井高くにある排気口からもれる風音にも懐かしさすら覚える。

 何も知らず、知らされず、漠然と学校生活を過ごす学生には縁遠い場所でも。
 布束が驚愕してしまうことは要素は、この室内において皆無にも等しかった、はず―――だった。

 ただ、一転を除いて。 

 室内の中央。人形用の培養器。
 ソレを視界に入れた瞬間、布束は息を呑んだ。


「……For what?」

 
 口にせずにはいたれなかった。
 何故、ココにいる?
 
 絶対能力進化計画に彼女の存在は必要ないはずだ。
           ̄ ̄ ̄
 
「どうして、貴女がココに居るの」


 円柱の培養器は透明な液体で満たされて。
 成人した人間一人が楽々と収容できる大きさの円柱培養液の中に、一人の少女が力なく漂う。
 女性的な丸みは乏しく、瞼が閉じられた顔には幼さが十分に残っている。
 実年齢は兎も角。
 見た目だけで判断すれば十歳くらいの少女だ。 

 これといった変化は見受けられない。
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「―――、試験固体」


 フルチューニング。
 布束は小さな声で呟いた。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/01(火) 18:19:08.74 ID:i5Tj2oKN0

「フルチューニング? ……ああ、天井亜雄が一番最初に製造したクローン体の事ね」


 後ろから放たれた言葉に振り返る。
 布束を円柱培養器がある部屋へ案内した白衣の女がこちらに近寄りながら、興味深げに問いかけてきた。


「試作個体、試験個体、プロトタイプ。彼女には色々な呼び名があったらしいけど。
 ミサカ〇〇〇〇〇号の別名はフルチューニングというのね。ならば、調整個体、とも呼ばれていたのかしら」

「彼女に正式名称は無かった。〇〇〇〇〇号という識別番号だって絶対能力進化計画につけられたものに過ぎない」

「そうね。万を超えるクローンにだって区別方法が無ければ現場は混乱してしまうわ。
 たとえ量産型能力者計画で開発された試作型のクローンにだって、便宜上の名は必要だった」

 
 円柱培養器の前に立つ布束の隣まで女は近づいた。
 ドアをノックするように培養器を軽く叩く。
 これはね、と中で眠る少女を指す。


「二万飛んで一人目の妹達よ」


 見間違ってしまうほどに試作型となった個体に似ているのね、と。
 

「正式名称、ミサカ二〇〇〇一号。ちょっと特殊な個体でね。
 最終信号とも打ち止めとも呼ばれているわ。今になってみれば、その通称を使うのも私くらいなものよ」


 実験停止して、私以外の研究者は逃げちゃったから。
 白衣の女――、絶対能力進化計画にかかわり未だに残留し続けている研究者・芳川桔梗は小さく笑った。


58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 20:54:36.03 ID:9PSeLhiIO
まだかなー
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