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門矢士「赤坂美月?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:36:20.99 ID:zgyItUYu0
ユウスケ「かこいめの寝屋?」

士「ああ。その映画の制作を手伝うことになった……らしい。詳しい話は知らん」

栄次郎「大学の前を通りがかったら、いきなりマッチョ二人組とはち合わせて。その人たちがその大学の映画研究部だったんだけど、夏海に『女優をやらないか』と声をかけられたんだよ」

夏海「で、私がそれを引き受けて。その花園さんと剛田さんの話を聞いてると、カメラ関係も欠員が出ていたらしくて……」

士「それもなし崩し的に、光写真館が引き受けることになったらしいんだ。まぁ、ここはじいさんの出番だな。俺の持つカメラは、決まってブレちまう」

夏海「と、言うわけで、士君達にも手伝ってもらう――」

士「いやいや、待て。俺は参加する気なんてまったくないぞ。この世界に来てからもう一ヶ月、この世界に来たってことは、おそらくいつ怪人があらわれてもおかしくないんだぞ?」

夏海「映画ですよ! 映画! 女性なら誰だって、主演女優の座に憧れるはずです! それに、雑用でもう二人連れてくるって、あの筋肉隆々な二人組に言っちゃったんですから」

士「ったく……こんなんじゃ、いつまでたってもこの世界から出れねぇ」

ユウスケ「僕の意見は、聞かないのね……。で、そのかこいめの何とかっていう映画、どんな物語なの?」

夏海「これがシナリオの写しらしいです」


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2 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:37:11.16 ID:zgyItUYu0
ユウスケ「ふーん……ふむふむ……うわぁ、最後で飛び降りるって。BAD ENDじゃん」

士「俺も軽くは目を通したが、要は愛憎劇だな。あるいはサイコパスっていうのか?」

夏海「でも、最後はHAPPY ENDに変更するらしいです。……何か、結構、いわくつきなシナリオらしくて」

士「いわくつき?」

夏海「はい。実は、この映画、10年前にも撮影されていたらしいですけど……最後の飛び降りるシーンで、主演女優さんが本当に飛び降りて死んじゃったらしくて。しかも、その後を追うように、監督も飛び降りて死んじゃったって……」

ユウスケ「怖っ!!」

士「ふーん……なんか、湧いて出たような都市伝説だな。気にすることないだろう、そんなのは眉唾ものって相場が決まってる」

キバーラ「ふふふ! そうだといいんだけれどね」

夏海「キバーラも、怖いこと言わないで下さいよ!」

士「(しかし、この二枚の空白のカードはなんなんだ?この世界にライダーでもいるのだろうか?)」
3 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:38:40.62 ID:zgyItUYu0
【翌日:昼】

遥「……と、いうわけで。無事、夏海さんが、主演女優に抜擢しました!」

映研メンバー達「おおおおおおーーー!!」

遥「まぁ、あんた達の中で確定だったらしいから、どちらにせよ揺るがない感じだったし、候補も一人だったしね。剛田と花園のチョイスも完璧だったね。……で、そちらが」

栄次郎「カメラアシスタント代理の光 栄次郎です」

士「雑用その一になった門矢 士だ(なんでこんなことに……)」

ユウスケ「雑用その二の小野寺 ユウスケです!」

遥「この人たちは光写真館のボランティア様達です。みんな! 今回は外からの協力者も交えたビックプロジェクト! 気合入れていけよ!」

映研メンバー達「うっす!!」

遥「あと忘れていけないことがもう一つ! 善意のスタッフには手を出さないこと! 夏海さんが綺麗だからって、あまり鼻の下伸ばすんじゃないよ!」

映研メンバー達「お、オッス!!」

夏海「……映研って、体育会系なんでしょうか?」

士「主に部長ってやつとその取り巻きにいるマッチョのせいだと思うのは俺だけか?」

4 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:39:27.04 ID:zgyItUYu0
【夜】

士「無事か?ユウスケ」

ユウスケ「俺、もう、無理ぃ……」

夏海「ま、まさか、クランクイン前の飲み会であんなに飲むなんて……」

遥「あらら、主演女優さんと雑用君は一軒目でアウトか」

夏海「まだ行くんですか!?」

剛田「よし! 次の店にレッツゴーだ!!」

映研メンバー「お、お〜」

士「ユウスケとなつみかんは帰ってろ。俺はもう少し付き合う」

ユウスケ「つ、士はよく飲めるね……」

士「伊達に通りすがりはやってないってこと。それに、機材のうんぬんかんぬんだったり、詳しい日取りをもう少し聞いてみたいからな」

夏海「つ、士君……がんばって」

士「おうよ」

5 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:40:09.26 ID:zgyItUYu0
士「……だが、あの後もう三軒は俺だって許容外だ。終わった後も、結局部長達は平気って、化け物か! あのペースからさらにアップテンポって、中毒者が出るぞ!」

士「や、やばい。声出したらまた吐き気が……」ふらぁ……

???「おっとぉ」

士「……ん?」

???「君、ずいぶんと千鳥足だけど……大丈夫かい?」

士「……少しばかり肩を貸せ」

???「まーた、随分と偉そうだけど……まっ、いいか。ほれ、そこのベンチまで歩ける?」

士「ああ……」

6 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:40:59.12 ID:zgyItUYu0
???「どう?酔いは覚めたかな?」

士「やっとな……」

???「うんうん。どうやらカラスの餌になる前に助けられたようだね」

士「ゴミ捨て場に寝るようなヘマはしねぇよ。……じゃあな」

???「ありゃま?お礼なし?」

士「……あ・り・が・と・よ。そんじゃ、もう会うことはないだろうな」

???「もう、水臭いなぁ。『ここはコーヒーでも一杯おごらせて』なんて気障なセリフとか言えないの? 僕、ちょっとばかしお腹が空いてるんだけどぉ」

士「(……なんか、話し方が女っぽくないな。結構面倒な奴だが、助けられたってのも事実か)……じゃあ、俺の写真館に立ち寄ってくか?この時間でも、コーヒーなら出せるが……」

???「(ズイッ!)いいの!!?」

士「あ、ああ……なんだ、随分と嬉しそうだな」

???「結構のど乾いててさぁ! いやぁー、助かった!」

士「何だ?家出でもしたのか?……名前は?」

???「名前はねぇ……あれ?」

士「どうした?」

???「名前……なんだっけ?」

士「……はぁ?」
7 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:42:46.96 ID:zgyItUYu0
士「じいさん、まだ起きてるか?」

栄次郎「おや?随分と遅かったねぇ。……後ろの子は?」

???「どぉーもぉー!」

士「どうやら、記憶喪失らしい」

栄次郎「ほぉー、そりゃまた苦労して……え?」

夏海「記憶喪失……?」←酔って寝そべってる

ユウスケ「マジか!」←右に同じく

8 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:44:07.13 ID:zgyItUYu0
夏海「へぇ……気が付いたら駅前で放浪してて」

ユウスケ「そこまでの記憶が全くなかった、と……」

士「で、俺と遭遇したわけだ」

記憶喪失の女の子「そう! お金もなーんにもなくてさぁ、家もどこかとか、自分が何者かもまぁーったく」

栄次郎「困ったのぉ。では、これから彷徨うことになるのでは?」

記憶喪失の女の子「そうなんだけどさぁ……あっ、コーヒーご馳走様でした! おいしかったです! では、ちょっと長居しすぎたのでこれで……」

士「……待て」

記憶喪失の女の子「え?」

士「お前がよかったら、なんだが。……記憶を取り戻すまで、ここに住むか?」

9 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:46:22.69 ID:zgyItUYu0
記憶喪失の女の子「い、いいんですか!?」

栄次郎「そうじゃのぉ。若い女の子を一人にするのは危険じゃ」

ユウスケ「ここだったら、今さら一人増えても問題ないし!」←サムズアップ

夏海「そ・れ・に! この話を聞いて、一層ほっとくわけにはいきません! 士君が自分から心配してくれるなんて、滅多にないことなんですよ?」

士「なんだ? 俺が無愛想だって聞こえるんだが。……まぁ、なつみかん達の言うとおりだ。子供は大人に甘えてろ」

記憶喪失の女の子「士さんだって、僕と対して歳変わんないじゃないですか! ……でも、ありがとうございます! 家事手伝いは頑張っていくので、よろしくお願いします!」

夏海「大丈夫ですよ、そんなに気張らなくて。……でも、名前がないと困りますね」

記憶喪失の女の子「そうですよねぇ、名前、名前、名前……月……! 美月……」

ユウスケ「美月?」

美月「そう、そう! 美月、赤坂美月! なぁーんだ、意外と早くに思い出しちゃった!」

士「赤坂美月? それがお前の名前か……他の記憶は?」

美月「は、まだだけど……でも、やっと光が見えてきました!」

士「まったく、能天気なのか、幼いのか……」

夏海「(やっぱり、士君も記憶喪失だったから、放っておけないのかな……)」
10 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:47:46.45 ID:zgyItUYu0
【翌日:朝】

ユウスケ「ああ……二日酔いがひどすぎる」

夏海「左に同じく……」

栄次郎「それじゃ、今朝の朝食は優しめなのがいいかな?」

美月「おかゆがいいですかね?」

士「早速手伝ってるようだな」

美月「居候で食いっぱぐれってわけにもいきませんからね! 僕も早くバイトなんかを見つけないと!」

栄次郎「別にいいのにのぉ。美月ちゃんも、記憶を失って大変だろうし……」

士「じゃあ、あれだ。写真館で働けばいいさ。俺達は今日から用事があって、しばらく写真館で働けないから、その代理でよろしく頼む。もちろん、働いた分は衣食住を提供するし」

美月「え、その……館長さんがいいのなら?」

栄次郎「私は大歓迎だよ。看板娘がもう一人増えるなら」

美月「ありがとうございます! しっかり働かせてもらいまーす!

ユウスケ「元気だねぇ……少しだけ分けて欲しいよ」

士「俺達雑用だろ? 少し元気出せ」

11 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:49:06.26 ID:zgyItUYu0
【昼】

二村「……大丈夫ですか?」

ユウスケ「アウトかも……うぅ……」

二村「ユウスケさん達はまだ軽い方ですよ……僕の荷物なんて、夜逃げでもしてきたのかって言いたいくらいですよぉ」

夏海「あのぉ……荷物、半分持ちますか?」

二村「い、いえいえ。女性につらい思いをさせるわけには……」

剛田「そうそう! 男は黙って汗をかくに限る!」

花園「うむ、その通り!」

ユウスケ「うへぇ……にしても、士は随分と平気そうな顔してるね」

士「お前みたいに二日酔いをずるずる引きずってないからな。……だが、この階段の先ってなにがあるんだ?」
12 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:49:36.91 ID:zgyItUYu0
士「……墓?」

遥「そう、ここは先代の主演女優の墓さ」

夏海「主演女優……さん?」

遥「理由は分からないにしろ、制作途中で死んじゃったんだ。まだ成仏できてないかもしれないだろ? だったら、せめて霊前の報告と、無事に完成することへのお願いってね」

ユウスケ「なるほど、ゲン担ぎってやつか」

遥「まぁ、丁度墓場でのシーンがあるから、撮影にも丁度良かったしね……それじゃ、映研一同、墓掃除を始めて!」

士「(ここが、ねぇ……ん?)」
13 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:50:21.92 ID:zgyItUYu0
遥「栄次郎さん! カメラOKですか? 佐久間の方は?」

栄次郎「こっちは大丈夫だよ」

二村「機材も準備完了です!」

佐久間「こっちも問題ない」

士「……ちょっとこの墓、見せてくれないか?」

二村「え、ええ? 構いませんけど……」

士「(赤坂家之墓……記憶に関係あるかと思ったが……さすがに考え過ぎか?)……ん?」

――平成××年 赤坂 美月――

士「……何?(……さすがに偶然か。実際に、赤坂美月という人物は生きているはずだからな)」
14 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:51:15.65 ID:zgyItUYu0
士「(まぁ、普通にクランクインしたのはいいんだが……)」

夏海「あなたが私を捨てたいことくらい気づいてるわ。そして、憎んでいることも。でもそれは無理って事にあなたは気づいてる。そうでしょ? 私は捨てられないわ。あなたが望んだことだもの。あなたが最初に私を受け入れたんだもの……ねっ?=v

ユウスケ「(すっげぇ……あんなに演技うまかったんだ)」

士「(夏海の奴、いつの間にこんな演技派になったんだ?文字通り……鬼気迫るってやつなのか、これが。まるで……いや、前代主演女優の墓前だから張り切ってるのか……)」

遥「カァーット!」

二村「いやぁ、夏海さん! 演技上手ですねぇ! 意外と、元演劇部だったりして!」

夏海「へ? あ、ああ、いえいえ、元TG部ですよ。さっきのは、なんか……感覚?」

二村「ってことは、所謂、天性ってやつ? すごいなぁ!(TG部ってなんなんだろう? マイノリティな文化部かな?)」

※TG部とはT(退)G(学)部です
15 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:52:11.78 ID:zgyItUYu0
士「確か、佐久間だったか?」

佐久間「え? あ、はい。ああ、写真館のお手伝いさん」

士「どうした? 墓の前で辛気臭い顔して……って、まぁ、あれか。知り合いの墓でもあったっていうところか」

佐久間「……ええ。まぁ、少しだけ知り合いって感じですけど」

士「ふーん……。まぁ、いい心掛けだな」

佐久間「そう言ってもらえると……今頃どうしているか(ボソッ)」

士「? 何か言ったか?」

佐久間「あっ! いえ、何にも」

二村「佐久間さーん! 部長さんが、スタンバイしてくれ、らしいです!」

佐久間「ああ! 分かった」
16 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:54:18.66 ID:zgyItUYu0
士「帰ってきたぞ」

夏海「ただいまぁ!」

ユウスケ「た、ただいまっ……」

栄次郎「おう、お帰り」

美月「お疲れ様でーす!」

士「今日の夕食は……煮物か?」

栄次郎「まだ作り始めだよ。……あれま、砂糖が切れているわい」

美月「あっ、それじゃあ僕、買ってきます!」

士「おいおい、お前はここらへんの地理を知らないだろ。俺が行く」

美月「んぅ〜……じゃあ、士さん! 僕も付き添うので、ここらへんの地理を教えてください!」

士「……まぁ、いいか」
17 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:55:09.48 ID:zgyItUYu0
士「だが、近くの商店が五時閉まりだったのは予想外だった……。おかげで遠出する羽目になっちまった」

美月「夏だから助かりましたねぇ。日もまだ沈んでないし。でも、涼しげで結構いいかも」

士「……なぁ」

美月「ん? なんでしょうか?」

士「ああ、まずは、もう少しなれなれしくてもいいってことを言いたかった。歳は近いはずだからな」

美月「そうですか……んん! りょうかーい!」

士「いきなり近づいてきたな……。じゃあ、聞きたいことが一つ。……どうだ、記憶は戻りそうか?」

美月「うん……まだ時間はかかりそうかなぁ。あまり写真館の人達に迷惑はかけれないから、できれば早く思い出したいところだけどねぇ」

士「……まぁ、焦るのもゆっくりするのもお前次第だ。何がきっかけになるか分からないからな」

美月「きっかけ……かぁ……」

士「ああ。俺も……! 美月、先に帰ってもらえるか?」

美月「へ?」

士「……少し買いたいものがあったのを忘れてた。みんなには、ちょっと遅くなるって伝えといてくれ」

美月「? はぁ……分かりました!」

タッタッタ……

士「行ったな……。おい、俺達をずっと尾行してたのは分かっている! 顔を出しな!」

シーン……――

士「……挑発に乗らないってことは評価してやるか。目的はなんだ!」

……サッ……――

士「……逃げたか。敵、なのか?」
18 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 06:58:19.07 ID:zgyItUYu0
【一週間後:昼】

美月「僕と一緒に出かけるんですか?」

士「ああ。今日は撮影もないし、丁度いい。記憶を取り戻すには、何より き っ か け が必要だ。きっかけはどこに落ちているか分からない。だから探すんだ。まずはであった駅前、そこを中心に巡って行く。知り合いに会えたら幸運、まぁ、手掛かりの一つでも見つかったらそれでいい。まずは行動することが大事だからな」

美月「いいんですか? だって、少ない休日なんじゃ……。それに写真館の方も……」

栄次郎「私は構わんよ。美月ちゃんの第一目標は、何と言っても記憶を取り戻す事だから」

士「じいさんもそう言ってるんだ。来る客は少ないし、それに……」

ユウスケ「いててててて……」←重なる雑用で筋肉痛

夏海「ううぅ〜……」←昨日の撮影で風邪引いた

士「湿布と風邪薬も買わなくちゃいけないしな(まったく、なつみかんの風邪のせいで撮影が中止になるとは、情けない話だ)」

美月「う〜ん……分かりました! それじゃあ、準備してきます!」

栄次郎「おお、美月ちゃん、ちょっと待っておくれ。……ほい、ここ一週間分のお給料」

美月「へっ!? で、でも、居候させている身ですし、さすがに、衣食住も提供させてもらった上では……」

栄次郎「何、正当な報酬だし、まだ安いほうだよ。まーだ遊びたい盛りの女の子なんだから、遊んできなさい」

美月「……それじゃあ、遠慮なく! ありがとうございます!」

19 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 07:05:00.90 ID:zgyItUYu0
季節をーだーきしめてー♪

美月「いやぁ……これぞラブロマンス!」

士「何故、俺は映画を見ているんだ……?(買い物を済ませて、一通り巡って、手掛かりないなぁ……と思ったら、強制的に連行されちまった。まぁ、一人で映画ってのも寂しいものか)」

美月「でも、手掛かりは見つからなかったなぁ……。一日中付き合ってもらえたのに……」

士「お前が気に病むことはない。好きでそうなったとは思わないからな」

美月「……でも、このままじゃ、なんか、ずーっと、思い出さないままうやむやになってしまいそうで……」

士「……お前は、それを望んでいるのか?」

美月「……記憶を思い出さないまま、こうして写真館で暮らしていくことを、ですか?」

士「ああ。……もしかすれば、お前が思い出そうとしている記憶ってのは、辛いものだったり、お前が思い出す事を望んでいないかもしれない」

美月「私が、望んでいない……?」

士「たとえば、さっき見た映画は、ヒロインが自らの事を思い出したことで、永遠の別れを決意させられてしまった。……世の中には、触れない方がいいことがたくさんある」

美月「……士、さん……?」

士「それをどう捉えるかはお前次第だ。……だが、今の内に考えてみてくれ。思い出した後のことを、な……」

士「……夕日が眩しいな。帰るぞ、薬と湿布を待っているやつらがいるからな」

美月「……私……」ギュッ

士「ん? どうした、置いてくぞ」

美月「え? あ、ああ……今行きます」

士「……?」
20 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 07:06:06.32 ID:zgyItUYu0
PiPiPi……

士「はい、もしもし」

遥《あ、もしもし! 士さんでいいのよね?》

士「ああ。……少し待ってろ、外に出る」

ガチャ……

士「待たせたな」

遥《はいはい! まず、主演女優さんの調子はどうかしら?》

士「明日には治ってるだろう」

遥《それはよかった。そうそう、撮影の日程なんだけど。四日後から、私の別荘で撮影することになったので、それの連絡と参加の是非を聞きたかったんです》

士「四日後か。ああ、大丈夫だ。全員OKだぞ」

遥《分かりました。準備物の指定は機材以外特にないので、後は自由にお願いします》

士「了解した」

Pi……

PiPiPi……

士「ん? また部長さんか? ……はい、もしもし」

???「……門矢士さん、ですよね?」バタバタバタ……

士「その声……もしかして、お前か?」

???「すいません、電話越しで。今から指定された場所に来てくれませんか?」ドンドン……

士「……この世界に、何か紛れ込んだのか?」

???「詳しい話は来てから、ということで……って、ああ!?」ドンガラガッシャーン!

士「……お前の取り巻きは相変わらず騒がしいな」

21 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 07:08:03.81 ID:zgyItUYu0
【明後日:昼】

美月「ええ!? 南の無人島に撮影旅行ですか!?」

士「ああ。部長の許可は取り付けた。お前も要!参加だぞ。まぁ、休暇半分、それに記憶を取り戻すきっかけ探し半分、だな。記憶にまつわる何かだけじゃなくて、デジャブってのも結構当てになる。今は手探りの時期、まずは行動ってことだ」

夏海「夏はやっぱり島でバカンス! 部長さんに事情はある程度説明して、快く協力してくれました。あっ、でも条件として……」

美月「条件?」

栄次郎「なんでも、映研の活動を写真で収めてくれ、だそうだ」

美月「仕事ですか! だったらお任せを! がんばらせてもらいまーす!」

士「(……さぁ、お前らには美月はどう見えたか)」

22 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 07:13:17.15 ID:zgyItUYu0
【明後日:昼】

美月「海だぁ!!」

士「はしゃぐ前に写真撮れよ」

ユウスケ「荷物多すぎ……てか、最近ずっとこんな感じだなぁ、トホホ……」

遥「ほれ! 撮影はすぐに開始! 各自すぐにスタンバッて!」

映研メンバー達「オッス!!」

佐久間「あ、あのぉ……」

美月「へ? えーと確かぁ……」

佐久間「あ、ああ、主演の佐久間です。……あの、お名前は?」

美月「あ、自己紹介してませんでしたっけ? 美月、赤坂美月です!」

佐久間「美月、さん。赤坂……」

美月「? もしかして、どこかでお会いしましたか?」

佐久間「……あ、ああ。ごめんね、いきなり呼びとめちゃって。じゃあ、熱中症に気をつけてね」

美月「は、はぁ……お気づかい、ありがとうございます」

士「(佐久間……?もしかすれば……)」

栄次郎「しかしこのカメラ、随分と年季が入っておるのぉ」

二村「十年前から使われてるらしいですよ。映研の宝って感じですかね」

栄次郎「いやぁ、このカメラを見ると、懐かしい気持ちになって来るのだよ」

ユウスケ「楽しそうだなぁ……。でもやっぱり、俺の扱いはひどいままなのかねぇ……」
23 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 07:13:52.72 ID:zgyItUYu0
【夜】

トントン……

佐久間「はい。どなたでしょうか?」

ガチャ……

士「……今、話出来るか?」

佐久間「士さん?ええ。話は出来ますが……」

士「……お前、赤坂美月、という人物について、何か知っているな?」

24 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 07:14:20.77 ID:zgyItUYu0
【翌日:昼】

夏海「あなたが私を捨てたい事くらい気づいてるわ。そして、憎んでる事も=v

美月「……」

士「……(赤坂美月……本当に、お前は何もの何だ?)」
25 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 07:15:02.80 ID:zgyItUYu0
【夜】

ザザーン……――

士「寝付けずに、結局夜の海に来ちまったわけだが……これはこれで悪くないかもな」

ジャリッ……――

士「……誰だ?」

美月「え、えーと……お邪魔でしたか?」

士「何だお前か。……少し、話に付き合えるか?」

美月「もちろん」ペタン

ザザーン……――

士「……信じられないかもしれないが……」

美月「?」

士「……俺は昔、お前と同じ『記憶喪失』だったんだ」

美月「え……?」
26 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 07:17:45.65 ID:zgyItUYu0
士「いきなり記憶がまったくない中、街をさまよい続けていた。そう、まさに出会う前のお前のようにな。……で、その時に出会った、というより、拾ってくれたのが、光写真館のじいさんとなつみかんだった。ユウスケとは、色々とあってあいつも住み込むことになったんだが」

美月「士さんも、だったんですか?……そうか、だからあんなに的確なアドバイスをくれて……」

士「経験者は語るってやつだな」

美月「……じゃあ、士さんは記憶を取り戻したんですか?」

士「……一応な。俺の家にも辿りついたし、唯の肉親である妹にも出会った」

美月「じゃあ、なんで今も写真館に?」

士「……俺は記憶を取り戻した。だが、その記憶は、写真館のやつらと対立するきっかけになっちまったんだ」

美月「?」

士「……まぁ、そこは言わないでおこう。とにかく、その記憶を取り戻した俺は、人の道を外し、仲間を裏切る道を選ぶこととなった。……けれど、裏切りを選んだ俺は、他の奴に裏切られ、地に落ちた。だが、そんな俺にも、あいつらは手を差し伸べてくれたんだ」

美月「……」

士「そして俺は妹と別れて、写真館にまた住み込んだ。妹も、1人で旅立つって決心したから、禍根なく別れられた。……まぁ、そのあともひと悶着あったんだが、大まかに言えばそんな感じだな」

美月「……士さん」
27 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 07:18:18.66 ID:zgyItUYu0
士「ん?」

美月「……私、たまに『もう、記憶を思い出さないままで、ずっと写真館で暮らしていきたいな』って思っちゃう時があるんです」

士「……」

美月「士さんの話を聞くと、その思いが強くなっちゃって。……士さん言ってたじゃないですか。『思い出そうとしている記憶が、望んでいない記憶かもしれない』って。私、その言葉を聞いた時、妙にしっくりきたんです。もしかして、私が記憶喪失になったのは、そういう記憶だったから、自分自身で封印したんじゃないかって。でも、思い出さないと、今まで迷惑をかけてきた士さん達には申し訳ないことは分かってるんです。けど……」

士「つまり、思い出すのが怖いんだな」

美月「……」コクッ

士「……『記憶を思い出したい』という気持ちと、『思い出すのが怖い』っていう気持ちがせめぎ合っているわけだ。そりゃあ、俺の話を聞けばそう思ってもおかしくない」

美月「……」

士「だが……お前は、それでいいのか?」

美月「え?」

士「記憶を置き去りにしたまま、生活しても、そりゃあ、お前の選択だ。だが、置き去りにしたままだろ、お前はおそらく、後悔することになる」

美月「矛盾、してますね……」

士「人って、そういうものだと俺は思うぜ。知らないという罪と、知りすぎる罠、この二つがせめぎ合っている。でも……それを迷ってちゃ、動けなくなっちまう。だから、動けなくなる前に……走り出せ。自分の信じる道を、な」

美月「結局、自分で選ばなくちゃいけないのか……」

士「……だが」

美月「?」

士「……お前の選んだ道を、お前が走るのを、俺たちは全力で応援する。これだけは確かだな」

美月「……ありがとう、士さん」

士「……湿っぽくなっちまったな。寝るか」

美月「はい」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/07(土) 08:33:29.39 ID:IZMBb2Yeo
俺得支援
29 :|0M0)<やぁ :2012/04/07(土) 08:37:33.09 ID:zgyItUYu0
>>28

それはよかった。
ダブルキャストって、今の子知らんから不安だったんだ。
やるドラって言われても、今の子たちはわからんからなぁ……時代を感じる。
書き溜めを吐いただけなので、ここから超スローペース。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/04/07(土) 10:42:34.91 ID:UfDHJO2AO
士が記憶喪失ってことは劇場版前か
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 15:58:34.73 ID:VSPuFL0m0
知らなくても>>1がきっかけになりました
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/04/07(土) 16:52:56.57 ID:0HYArin+o
>>30
ナニイッテンダ
記憶喪失“だった” って言ってるから劇場版後じゃないか?
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/08(日) 10:06:54.36 ID:zAk3aLfko
ダブルキャストとか懐かし過ぎてワロタ
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 21:34:03.03 ID:j9yIk0Oso
美月に撲殺されるエンドだったな、最初は
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 17:37:51.50 ID:WKxGHYQS0
ダブルキャスト懐かしいな、やるドラで一番好きだった。
二村が地味に恐かったよ。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/04/12(木) 17:43:57.27 ID:S3cN08Pn0
面白そうなスレ発見

ダブルキャストとか懐かしいな…
どこでライダーの怪人を出すのか?はたまた◯◯が怪人になるのか?
凄い気になります
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