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澪「お試し期間!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/07(土) 09:28:30.45 ID:ypdOa8j/0
注意
・百合です
・数か所語尾にwwwwwwが付いています
・SS初心者です

以上が苦手な方はスルーでお願いします

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秘境 @ 2025/06/10(火) 00:47:53.81 ID:BDVYljqu0
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【安価】上条「とある禁書目録で」鴻野江「仮面ライダー」【禁書】 @ 2025/06/09(月) 21:43:10.25 ID:qDlYab/50
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ツナ「(雲雀さん?!)」雲雀「・・・」ビショビショ @ 2025/06/07(土) 01:30:36.87 ID:AfN9Rsm0O
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【安価コンマ】障害走を極めるその5【ウマ娘】 @ 2025/06/06(金) 01:05:45.46 ID:RaUitMs20
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阿笠「わしの乳首に米粒をくっ付けたぞい」コナン「は?」灰原「は?」 @ 2025/06/04(水) 04:01:13.39 ID:ZjrmryLdO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:30:16.80 ID:ypdOa8j/0
律視点


律「は?」

澪「だから、明日一日お試ししてみてって」

律「何を?」

澪「私を///」

律「いやいや」

澪「いやいやいや」

律「いやいやいやいや!」

澪「いやいやいやいやいや!!」

律「いやいやいや……あいたっ!」ゴチン!

澪「しつこいっ!!」

律「ぶーぶー」

澪「とにかく、明日一日だからな!///」


そう言うと澪は走り去って行った。
数日前からそわそわしていると思ったら、
これを言う為だったとはさすがのりっちゃんでも分からなかったぜ。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:31:23.30 ID:ypdOa8j/0
しかし困ったな。
帰り道。
私の家の前まできたら突然、

澪「律! 明日一日、私と、こここ恋人にならないか?」

だもんな。
澪が言うには、

澪「親友で幼馴染の女の子に突然告白されたら、律困っちゃうだろ?」

澪「だから、明日は一日、こここ恋人お試し期間だ///」

澪「その日の終わりに改めて告白するから、その時に返事を聞かせてくれないか?」

だそうだ。
うーん、お試しも何も、私も澪のこと好きなんだけど。
あいつ全然気が付いてなかったんだな。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:31:52.77 ID:61AtCVhv0
律澪なら全力で応援する
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:32:21.14 ID:ypdOa8j/0
その日の夜

あぁ! 明日は澪とデートかぁ!
楽しみだなぁ。一日のお試しとはいえ恋人なんだろ?
どこまでヤッていいのかな?

手は……繋ぐだろ。
キスは……ギリギリOK?
舌突っ込むのは……ギリギリOUT?……OKでいいかwwwwww
だって恋人だもんな!

そういやどこに行くんだろ。
さっき来たメールには、明日10時に迎えに来るって書いてあったけど。
動物園かな?
いや、春とはいえまだ寒いから水族館かな。
まぁ、澪と一緒ならどこでもいいか。
どんな所でも澪を楽しませる自信あるし。

そういや、澪はその日の終わりに改めて告白するって言ってたけど、
どんな告白すんだろ。
きっとメルヘンで痒くなるような言葉考えてんだろーな。
詩とか朗読したりしてwwwwww
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:33:05.93 ID:ypdOa8j/0
>>4 
ありがとう。がんばる。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:33:55.71 ID:ypdOa8j/0
あぁ、楽しみすぎて眠れないや。
澪でも数えるか。

澪が一人。
澪が二人。
澪が三人。
澪が四人。
澪が五に……

あいたー!!

はあー、ちょっとウトウトしたら、夢の中で五人の澪にゲンコツくらったwwwwww
痛いwwwwwwけど幸せwwwwww

だめだ、余計に興奮して眠れないや。
梓でも数えるか。

梓が一人。
梓がふた……。
あれ?
梓ってどんな顔してたっけ?
たしか目が二つに、鼻の穴が二つで、口が……ZZZZZZZZZ



8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:34:48.50 ID:ypdOa8j/0
翌日

10時になっても澪は迎えに来なかった。
変わりに来たのは「ごめん、ちょっと遅れる」と書かれたメール。
澪が遅刻するなんて滅多に無いことだ。
きっと澪も、興奮して眠れなかったに違いない。
かわいいヤツめ。

しかし30分待っても澪は来なかった。
さすがに心配になってきたな。電話でもするか。

コール音。

コール音。

コール音。

そして留守電のメッセージが流れた。

あれ。うんこ中かな。
もう一度かけてみよ。
やっぱし出ないな。
メールしてみるか。
いや、電話に出られないならメールも返って来ないか。

よし、迎えに行こう!
歩いている間に澪に会うかもしれないしな。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:35:32.59 ID:ypdOa8j/0
家を出て、ゆっくり歩く。
会ったら何て言おうかな。
「うんこ、時間かかったな! 止まらなかったのか?」
イマイチだな。
「りっちゃん様とのデートが楽しみ過ぎて眠れなかったのか?」
いきなり本当のこと言ったらマズイか。

いつもの角。
ここを曲がったら後は一本道だ。
きっとここを曲がったら澪がいる。
ちょっと小走りしながら顔を紅潮させた澪がいる。
そんな気がした。
りっちゃん様は澪のことならなんでも分かるんだぜ!

そしていつもの角を曲がった。

澪はいなかった。

気のせいだったwwwwww
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:36:28.44 ID:ypdOa8j/0
まだ家にいるのかな?
あぁ、なにも迎えに来なくても家電にかければ良かったのか。

家電にかける。

コール音。

コール音。

コール音。

……。

誰も出ねぇ。

何かあったのかな?
不安が腹の奥底から湧き出して、じわじわと全身に広がって行くような気がした。
弾かれたように走り出す。

澪。澪。澪おおおおおおおおおおおおおおおおおう!!!


澪ん家の玄関。
インターフォンを押す。
一応押したから開けてもいいよね?
私はインターフォンを押してすぐにドアを開けた。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:37:31.34 ID:ypdOa8j/0
律「みいいいいいいおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
澪「うるさい!!」

ゴチンッ!!

律「あいたっ!!」

澪「あ、ごめん。つい反射で……」


ドアを開けたら澪が立っていた。
そんで、いきなりゲンゴツをくらった。
心配して走ってきたってのに、愛が痛いぜ澪しゃん……。
頭をさすりながら目線を上げる。
そこには、普段着ないスカート姿の澪がいた。


澪「えっと……遅れてごめん。その、すぐ出るから、ちょっと待ってて!」


そう喋りながらだんだん顔が赤くなった澪は、
言い終わる前に自室へ走って行ってしまった。

ヤベエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!
澪しゃんかわいすぎだろおおおおおおおおお!!
これが漫画やアニメだったら、私、ここで間違い無く鼻血出てるぅwwwwww
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:39:07.53 ID:ypdOa8j/0
澪「律! お待たせ……って、きゃあ! 律! 律! 鼻血出てるぞ!」

律「 」


リビングで30分ほど休ませてもらって、やっと澪ん家を出る。
ありゃりゃ、もう11時になっちゃってるよ。


駅まで10分ほどの道のりを二人で並んで歩く。
澪しゃんのバッグがやけに大きくて重そうだ。


律「澪。持つよ」

手を差し出した。

澪「ありがとう。でも、大丈夫だから」

それでも私は出した手をひっこめない。
だってさ、

律「作ってくれたんだろ? お弁当」


澪がちょっとびっくりしたように眼を開いた。
でも、すぐに顔を赤らめて笑いながら頷いた。
りっちゃん様には何でもお見通しなんだぜ。


律「お礼に、私が持つよ」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:39:46.12 ID:ypdOa8j/0
澪のバッグを掴んで引き寄せる。澪は抵抗せずに渡してくれた。
その時に手が一瞬触れて私も顔が熱くなっていくのが分かったから、


律「よーし、駅まで競争だぁー!!」

澪「お弁当がぐちゃぐちゃになっちゃうだろ!」


二人で笑ってごまかした。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:40:47.64 ID:ypdOa8j/0
電車に乗る。
車内は空いていたので、座ることにした。
先に座った私のとなりに澪が座る。
いつものことなんだけど、
いつもよりちょっと近くに座ってきた澪にドキドキした。
早く着かないかな。でももっとこうしていたいから、
やっぱりまだ着かなくていいや。


そんで。
はい、着きました。
水族館でございます。
りっちゃん当たったwwwwww
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:41:51.29 ID:ypdOa8j/0
律「腹減ったな。見る前に食べよーぜ!」

澪「あぁ、そうだな。じゃあ、外のベンチに行こうか」


澪のバッグから、小さな丸いテーブルにお弁当箱が並べられた。


澪「えっと……口に合うか分からないけど……」

澪「め、め、召し上がれえええええええっ!!!///」


ものすごい勢いでの「召し上がれ」にちょっと笑いそうになったが、
怒られそうなんで我慢。

中身は私の好きな食べ物ばかりだった。
かわいく、彩りよく並べられている。澪らしいや。
澪しゃんの手作り弁当……。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:43:17.43 ID:ypdOa8j/0
律「いっただっきまーす!! うめぇっ!!!」


遠慮なくガッツくwwwwww
朝から走ったから腹ペコだものwwwwww


澪「あ! コラ! 私の分まで食べるな!」


律「御馳走様でした……げふっ。動けない……」

澪「私の分まで手を出すからだ」

律「だって美味しかったんだもーん……げふっ」

澪「///」テレテレ

あ、澪が照れてる。
かわいいなぁ……げふっ。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:45:23.51 ID:ypdOa8j/0
結局、さらに一時間休憩。
どんどん時間が少なくなっていくな。


澪「律! 律! 見て見て! マンボウだよ!」

律「あぁ、マンボウだな」

澪「あ! あっちのお魚、キレイ!! 律! 律! あっち行こう!」


振り回されながらも、それが心地良かった。
楽しそうな澪を見てるとさ、こっちまで楽しくなるんだもん。


最後に、イルカのショーを見ることにした。
本日ラストのショーはすっごく混んでいて、
一番後ろになんとか座ることができた。
一番前で見せてあげたかったな。
そんなことを思いながら澪の横顔を盗み見する。
期待で潤んだ瞳に照明がキラキラと反射して、素直にキレイだなって思う。
本当にキレイだよ、澪。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:46:52.57 ID:ypdOa8j/0
澪「律! イルカだぞ!」

律「あぁ、丸々して美味そうだな」

澪「りいいいつううう!」

律「冗談だってばwwwwww」


ショーが始まると、イルカの動きに合わせて歓声が上がった。
ふと見ると、椅子に手をついている澪の左手が見えた。
あら、無防備だこと。
握っちゃおうかな。
でも澪しゃんってば恥ずかしがり屋だから、
人前でこういうことしたら怒るかな。
でもでも! 恋人なんだし、いいよね?

右手を、澪の左手に重ね……
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:48:49.64 ID:ypdOa8j/0
澪「律! 律! 今のジャンプ凄かったな!」

律「へ!? あぁ、そうだな!!」


急に話しかけてくんなwwwwww
ビックリすんじゃねえかwwwwww

だめだ、緊張してきた。
そっと手を重ねる代わりに、そっと手を横に並べる。
小指だけが重った。
ヘタレりちゃんにはこれが精いっぱいだった。
だってさ、これなら澪が「人前でやめろ!」って言っても、
「誤解だ! 澪しゃんの小指は大きいから椅子のフチだと思ったんだよ!」
なんて言い訳できるし。

視界の端で澪が振り向いたのが分かったけど、
私は、澪に気が付かないふりをしてイルカに集中した。
澪は何も言わずまた正面を向いた。
良かった。どうやら拒否はされないらしい。

と思ったら、そっと左手を引き抜かれた。
ぎゃーーー!!! やっぱり拒否されたああああああ!!!
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:50:30.05 ID:ypdOa8j/0
そして、右手がそっと温もりで包まれた。
右手を見る。
そこには確かに、確かに澪の左手が重なっている。

しっかりと横を向き澪を見ると、
顔を真っ赤にしながらイルカのショーに熱中しているふりをしていた。
今日の澪しゃん、大胆wwwwww
嬉し過ぎるwwwwww
キスしたいです!
君のその綺麗な横顔に、キスをしたいです!


澪「あんまりジロジロ見るなぁ///」カァ


もう押し倒したいです!
今すぐ押し倒したいです!

押し倒せない代わりに澪の指に自分の指を絡めてぎゅっと握ってやると、
澪は幸せそうに笑ってくれた。

やっぱり押し倒したいwwwwww
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:51:40.38 ID:ypdOa8j/0


帰り道。

電車の椅子に並んで座る。
弁当が入っていたバッグを膝の上に抱えた。バッグの下から手探りで澪の手を握る。
一瞬ビクッってなる澪しゃんは本当にかわいい。
顔真っ赤にしながら周りの乗客に気付かれないように自然と喋ろうとするんだけど、
必死なのバレバレな澪しゃんはもっとかわいい。


澪「律」

律「なに?」

澪「律、顔真っ赤だぞ」


私も真っ赤だったwwwwww
必死に余裕な振りしてたけどバレバレwwwwww
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:52:16.36 ID:ypdOa8j/0
澪「律……」

小声で澪が話すから、耳を澪の口元に近づけた。

澪「律、かわいい……」

律「んなっ!?」

やめろおおおおおおおおおおおおおお!!!!
照れるうううううううううううううう!!!!


電車を降り、並んで歩く。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:53:38.46 ID:ypdOa8j/0

律「腹減ったあー! 澪! コンビニ寄ってくぞ」

澪「はいはい。でもあんまりたくさん買うなよ? 夕飯入らなくなるからな」


夕飯の心配までしてくれるなんてさ、私の嫁かっつーの。
全く、澪は良い嫁になれるよ、うん。
きっと、上手くやっていけると思う。

コンビニでからあげ君買った。
歩きながら食べようかと思ったけど、
小さい頃よく澪と遊んでいた公園が見えたんで公園へ。

ベンチに座ると、当たり前のようにいつもより近くなった距離で澪が座ってきた。
あぁもう! いちいちかわいいwwwwww


律「はい、あーん」

そんな澪にからあげ君おすそわけ。
でも、つまようじに差したからあげを手でつまんで食べちゃった。
あーんしてくれなかった……。

さてと。
からあげ君食べたし、本題に入りますか。

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:54:33.97 ID:ypdOa8j/0

律「なぁ、澪?」

澪「ん?」

律「ちゅーしていい?」

澪「な…な…なーーーっ!!!」チーン

ありゃりゃ、気絶しちゃったよ。

律「澪!! 澪!! 戻ってこおーい!」

澪「はっ! 駅か? 降りなきゃ!」

律「ちょっ!! コラ! どこ行くんだよ!! 駅じゃない! ここは公園だ!」

澪「あ、あぁ、律。おはよ」

律「そんなんでこれから先、大丈夫か?」

澪「……相手が律なら、律なら大丈夫……」

律「大丈夫じゃなかったじゃんwwwwww」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:55:38.80 ID:ypdOa8j/0

澪「きゅ、急に言うからだっ!」

律「なんだよ。じゃあ、昨日のうちにメールで言っといた方が良かったのか?」

澪「それはムードが無い!」

律「じゃあ、どーすりゃいいんだよ!」

澪「二人きりで、見つめ合って、なんとなくそんな雰囲気になって……」チーン

律「おーい、澪しゃーん。妄想で気絶すんの止めてもらえます?」

澪「はっ! 駅か? 降りなきゃ!」

律「またそこから!?」


26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:55:49.85 ID:61AtCVhv0
いいよいいよ
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:56:58.58 ID:ypdOa8j/0


言い訳なんだけど、

律「澪、好きだよ」

せめてこれくらいは許してほしいなんて、

律「でもさ、いつも一緒にいるから、この感情がLike なのか Loveなのか分かんないんだ」

澪に甘えてばっかで、

律「ちゅーは友達同士じゃしないだろ?」

頼ってばっかで、

律「だから、ちゅーしたら分かる気がするんだ」

でもこれで最後にするからさ、

律「ちゅー、してもいいか?」

最後のワガママきいてくれ。

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 09:59:04.59 ID:ypdOa8j/0
顔を真っ赤にして俯いてる澪の両肩に手を乗せると、澪の肩がビクっと跳ねた。
触れてみて初めて分かったけど、
澪、震えてる。
緊張してるんだ。
私だって緊張してる。
心臓がうるさいくらいにバクバクしてる。

そっと唇を近づけて、優しくキスをした。


澪「ど、どうだった?」

律「柔らかかった!」

澪「違う! キ、キ、キスの感想じゃない!」

律「へ?」

澪「そ、その。Like か Love か。どっちか分かった?」

律「あぁ」

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:00:10.78 ID:ypdOa8j/0

澪。
私、私ね……。

律「……」

この気持に、

律「いやぁ〜! やっぱナイわ!!」

嘘をつくから、

律「澪しゃん! これからも親友でいてくれよな!」

どうかこの気持に気がつかないでいて、

律「きっとさ、私達いつも一緒だから澪も勘違いしてたんだろ?」

でも、心のどこかで、

律「澪しゃんはモテるんだから、すぐにカッコイイ彼氏ができるよ!!」

澪に気が付いてほしいって思う私は、

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:01:04.31 ID:ypdOa8j/0

律「澪しゃんは綺麗だし頭良いし、良妻賢母になれるって!」

ズルイ人間で、、

律「そんでさ、幸せになれよ……」

どうしようもなく澪が好きなんだ。

澪「私、まだ告白してない。改めて告白するっていっただろ?」

律「その前に答えが出ちゃったんだよ」

澪「私は、私は、ずっとま、前から……」

律「澪っ!! 告白はさ、これからの為にとっとけよ」

澪「この気持、無かったことにしろって言うの?」


大粒の涙が、澪の両眼からぼろぼろとこぼれ落ちる。
拭うこともせずにまっすぐ見つめてくる強い視線に耐えられず、
私は目線を反らした。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:01:49.95 ID:ypdOa8j/0
律「そのうち忘れるよ……。さて! そろそろ帰りますか! 今日の夕飯なんだろな!」


勢いよく立ち上がり、そのまま歩きだす。


律「澪! また明日なっ!」


澪に背を向けたまま走り出した。
もう限界だ。

遠くで澪の嗚咽が聞こえたが無視。
だって、私だって限界なんだよ。


律「腹減ったぁー! えぐ、ぐすん。今日の夕飯、えぐ、なんだろな……ぐすん」


めちゃくちゃに走った。
息が上がって胸が痛かったけど、関係ない。
息が上がったから胸が痛いのか、澪をフったから胸が痛いのか、
自分の気持に嘘をついたから胸が痛いのか、
それともその全部で胸がいたいのか。
もうさ、分かんないんだよ。
ただ分かるのは、澪が好きってことだけなんだ。


32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:02:43.90 ID:ypdOa8j/0
家に着いた。


律ママ「お帰り。ご飯の用意が……」

律「あぁ、ごめん! 澪と食べてきちゃったからいらないや」

律ママ「そういう時は電話しなさいっていつも言ってるでしょ!」

律「忘れてたぁ。ごめんなさーい!」


台所から出てこようとするお母さんと会わないように、急いで二階へ上がった。

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:03:24.53 ID:ypdOa8j/0
すぐに部屋へ入り、ベッドへダイブ。
ぼろぼろと大粒の涙をこぼしながら私を見つめる澪の顔を思い出す。


律「ごめんよ、ごめんなぁ、ごめん……」


泣かせたのは私。
でも、
その涙を止めるのは私じゃない。
その隣にいるのは私じゃないから、
澪を幸せにするのは、私じゃないんだ。


律「これでいい。これでいいんだ」


仰向けに寝転び、先日のことを思い出す……。



34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:04:07.42 ID:ypdOa8j/0


先日


澪ママ「あら、りっちゃんいらっしゃい。今澪ちゃんは用事で出かけていないのよ」

澪ママ「もうすぐ帰ってくるから、上がって待ってて」

律「はーい」

澪ママ「そうだ! 頂いたケーキがあるんだけど、一緒にどう?」

律「わーい! 食べる食べる!」


おばさんと一緒に、リビングでケーキと紅茶をいただく。


律「うまいっ!!」

澪ママ「うふふ、いっぱいあるから食べてね」

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:04:59.68 ID:ypdOa8j/0

律「やった! 澪に見つかったら」

律「『そんなに食べたら夕飯入らなくなるだろ!』って怒られちゃうからな」

澪ママ「あらあら。なんだか夫婦みたいね」

律「澪が夫だったら私、毎日ゲンコツ喰らってそうだwwww」


私と澪が夫婦だったらかぁ。
手料理作ってさ、お風呂沸かしてさ、澪の帰りを待つの?
うわー、楽しそう!
毎日澪と一緒にいられるって、幸せだろうな。


澪ママ「それにしてもあなたたち、もう高校三年生でしょ?」

律「実感無いけどねww」

澪ママ「うふふ、りっちゃんらしいわね。」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:05:32.32 ID:ypdOa8j/0

澪ママ「あなたたち、彼氏いるの?」

律「女子高通ってる私に、それ聞いちゃう?」

澪ママ「澪ちゃんも彼氏いないのかしら?」

律「いないよ」

澪ママ「澪ちゃんは人見知りの恥ずかしがり屋だからねぇ」

澪ママ「でも一人っ子だから、いつか結婚して孫の顔見せてもらわないとね!」

おばさんの言葉は、でっかいハンマーで思いっきりぶん殴られたような衝撃だった。



37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:06:22.42 ID:ypdOa8j/0

目を開けると見えたのはいつもの天井と、
あの日楽しみでしょうがないって顔して笑ってた澪のお母さんだった。
あの日から私は、澪を見るたびに胸が痛む様になった。
これ以上好きになっちゃいけないって、
澪の、私が好きって感情にも気がついちゃいけないって。
そう言い聞かせてきたんだ。

だけど澪は、一日恋人になりたいと言ってきた。
私はそれを利用したんだ。
澪と恋人になる。
それは一生敵わないと思っていた私の願望だった。
それが一日限定で叶うのだ。
楽しい思い出を作ろう。
その思い出を一生大切にして生きようって思ってた。

でもさ、やっぱり辛過ぎるよ。
大好きな澪をあんなに泣かせるなんて。


38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:07:08.47 ID:ypdOa8j/0


その時、部屋にノックの音が響いた。
私はとっさにうつぶせになる。
泣いてる顔を家族に見られたくないから。

ガチャリとドアが開く。


聡「姉ちゃん、風呂空いたよ」

律「うん、すぐ入る」

布団に顔を埋めて返事をした。声がくぐもって涙声をごまかせそうな気がしたから。

聡「姉ちゃん? 泣いてるの?」

ごまかせなかったwwwwww

律「泣いてない! 眠いだけ。早く部屋に戻れよ!」

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:07:49.34 ID:ypdOa8j/0

聡「澪姉とケンカでもしたんだろ?」

律「……」

聡「全く姉ちゃんは変わんねぇなぁ。」

聡「どーせ姉ちゃんが何かしたんだろ?」

聡「早く謝っちゃえよ? 澪姉なら許してくれるからさ」


バタンとドアが閉まった。
聡がいなくなったのを見計らって顔をあげる。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:08:19.40 ID:ypdOa8j/0


聡「やっぱし泣いてんじゃんwwwwww」

律「あ! コラ! てめぇ、部屋に戻ったフリしやがって!!」

枕を勢いよく投げてやった。
でもひょいとよけられた。
コンチクショー!!

聡「なぁ、姉ちゃん。風呂から上がったらさ、久しぶりに対戦ゲームしようぜ!」

中学生のくせに、気い遣ってんのか。
心配してくれてんだな。
でも、

律「忙しいからやらなーい」

さすがにゲームって気分じゃない。

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:08:49.44 ID:ypdOa8j/0

律「ほらほら出てった出てった。下着出すから出てけ」

聡「姉ちゃん、ブラジャーいらないくせに」

律「やっぱゲームやる! ボッコボコにしてやんよっ!!!」

聡「返り討ちにしてくれるわっ!!!」


そうだ、忘れてた。
澪の為に澪をフったんだ。
もう迷わない。
家族にも心配かけない。
大丈夫、大丈夫、私は大丈夫。
きっといつか澪は私を忘れる。
その時までの辛抱だ。

生意気だけど私の大切な家族。
ありがとな、聡。


42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:09:27.97 ID:ypdOa8j/0


翌朝


意外にも、澪はいつもの待ち合わせ場所で待っていてくれた。
ショックで寝込むかと思ったけど、私にフラれたこと、
あんましショックじゃなかったのかな?


澪「おはよ」

律「はよーっス」


昨日のことは触れないでおこう。
無かったことにすればさ、澪の黒歴史が増えることは無いもんな。
私って本っ当! やっさしーい。


澪「昨日のことなんだけど……」

わお。私の優しさ無駄になったwwwwww

43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:10:15.67 ID:ypdOa8j/0

澪「私、やっぱり諦められないよ。この気持に嘘は付けない。」

澪「律は優しいから無かったことにしようとしたんだろ?」

澪「でも、私はちゃんと伝えたいんだ。」

律「私の気持は変わらないよ? 澪は大切な親友だ。それ以上でもそれ以下でもない」

澪「はは、またフラれたな」

自嘲気味に澪は笑った。

澪「それでもやっぱり律を諦めきれないよ。」

澪「あと何回フラれたら私、律を諦められるのかな……」


44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:10:58.87 ID:ypdOa8j/0


悲しそうに笑う澪は儚げで、今にもボロボロと崩れ落ちてしまいそうだった。
でも、私はもう迷わない。
家族って大切だろ?
澪は一人っ子なんだ。
両親の期待を一身に背負ってる。
その震える肩に背負ってるんだ。
だから、私は迷っちゃいけない。


律「澪、止めてくれ。私たちは女同士なんだよ。」

律「まだ私を諦められないってんなら、もう親友じゃいられない」

目を見開いた澪に追い打ちをかける。

45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:11:43.02 ID:ypdOa8j/0

律「澪に、彼氏が出来るまで、私に近づくな」

澪「無理だ! そんなの無理だよ!!」

律「合コンでもなんでも行けばいいだろ! 澪はかわいいんだからすぐに彼氏ができる!」

澪「違う! 律以外を好きになるなんて無理だって言ってるんだ!」

律「無理じゃない! 無理だって思いこんでるだけだ!」

澪「律に何が分かるんだよ?」

澪「小学生の時からずっと律だけを想ってきた私の気持ちの何が分かるって言うんだよ!!」

律「それが迷惑だって言ってんだよ!!」


46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:12:33.71 ID:ypdOa8j/0


澪は泣かなかった。
目はただ開いているだけで何も見てはおらず、
口は一文字に結んだまま何も語らず、
思考は止まり、
体は制止し、
呼吸すらしているか分からない状態に見えた。

気絶してんのか?
立ったまま?


律「澪? みーお? みおっ!!」


ダメだこりゃ。
そうだ、おばさんに電話しよう。


律「あ、もしもし? うん、律だよ。あのね、澪が急に具合悪くなっちゃってさ。」

律「え? 迎えに来てくれんの? ありがとっ! 場所はね……」


47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:13:10.51 ID:ypdOa8j/0

ほどなくしておばさんが車でかけつけ、澪を乗せて走って行った。
終わった。
これで終わったんだ。
私たちはもう、終わったんだ。

よし、学校に行こう。

歩きだそうとしたら、へなへなと座り込んでしまった。
はは、カッコ悪いな。
澪と一緒にいられなくなるって思っただけで、腰が抜けてんじゃん。


小さい時から飽きずにずっと一緒で、
お互いのことはなんでも知ってて、
幼馴染と言うにはちょっと親密過ぎた私たちの関係は終わり、
これからは何の繋がりもなくなる。

澪が居ない生活が始まる。

想像もしたことがなかった生活が、想像もしなかった形で、今、急に始まった。


48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:13:43.70 ID:ypdOa8j/0

澪視点


気が付くと自室のベッドに寝ていた。
あれ? 夢?
嫌な夢だったな。

えっと、律にフラれて……あぁ、思い出したくもない。
例え夢だったとしても、それは私にとって辛すぎる内容だった。

今何時だろ。
あれ? 12時? えっと、今日は何曜日だっけ?


部屋に響くノックの音。

ママかな?
返事を待たずに、そっとドアが開いた。


49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:14:34.39 ID:ypdOa8j/0

澪ママ「澪ちゃん、起きてたの? 具合はどう?」

澪「うん?」

あれ? 私、具合悪いんだっけ?

澪ママ「りっちゃんが電話してきた時はびっくりしたわよ」

澪ママ「朝は何とも無かったのにねぇ……」

律から電話?
はっ、として体を見ると、私は制服姿だった。
まさか……。

澪「ねぇ、ママ。私、今日……学校に、行った?」

澪ママ「澪ちゃん、大丈夫?」

澪「答えてっ!」

澪ママ「……行ったわよ。でも、」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:14:58.96 ID:61AtCVhv0
IPS細胞・・・・・・IPS細胞さえ実用可能レベルにさえなれば・・・・・・
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:15:19.63 ID:ypdOa8j/0

澪ママ「通学途中に澪ちゃんが具合悪くなったってりっちゃんから電話があって。」

澪ママ「迎えに行ったら、歩道で澪ちゃんが立ったまま気を失っていたの」

澪「律は?」

澪ママ「え? りっちゃん? りっちゃんは、」

澪ママ「車に澪を乗せるのを手伝ってくれた後、学校へ行くって言ってたわよ」

澪ママ「澪ちゃん、まだ具合悪そうね。寝てていいのよ?」

澪ママ「お昼ご飯はどうする?」

澪「ごめん、具合悪いから……」

澪ママ「そうね、今は寝た方がいいわ。りっちゃんには私からお礼言っておくから」

澪「止めて!!」

澪ママ「!?」

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:16:04.47 ID:ypdOa8j/0

澪「あ、えっと、私からお礼言っておくからさ」

澪ママ「そう。じゃあ、私は今度りっちゃんが遊びに来る時、」

澪ママ「クッキーを焼こうかしら。」

澪ママ「りっちゃんが遊びに来る時は教えてね!」

澪「うん……。ありがとう、ママ。私、もう少し寝るね」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:16:45.49 ID:ypdOa8j/0

ママは律が大好きだ。
友達がいなくて本ばかり読んでいた私に最初に出来た友達の律。
家にばかりいた私を外に連れ出してくれた律。
友達の中で誕生日プレゼントを最初にくれた律。
ママと一緒に初めて作ったチョコをあげたのも律。

私が律の話をすると嬉しそうに聞いてくれたママ。
私が居ない時に律が来ると一緒にお茶を飲んでいるママ。
律のためにクッキーを焼くママ。
「娘が増えたみたいね!」と笑いながら時々泊まっていく律の夕飯を作るママ。

ごめんねママ。もうね、律はここには来ないんだ。

54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:17:24.61 ID:ypdOa8j/0

好きになっちゃいけなかった。
でも、好きにならないなんてできなかった。
だって、私の中はこんなにも律で溢れてる。
律を忘れるってことは、もう私じゃなくなっちゃうってことなんだよ。

それでも始まった、律の居ない生活。

最も望まない未来が、最も望まない形でやってきた。


55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:18:17.26 ID:ypdOa8j/0


この日、私は学校を休んだ。
ずーっとベッドの中で過ごして、外はもう真っ暗だ。
いつもならそろそろ律と電話を始める時間だった。
私たちは毎日一緒にいても、必ずこの時間にどちらかが電話をかけていた。

今日から……鳴らないのか。

鳴らないって分かっているのに、携帯電話が気になって仕方ない。
もしかしたら律が電話をかけてきてくれるんじゃないかという淡い期待は、
日付が変わったというのに消えなかった。

私は何を期待してるんだろ。

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:18:55.99 ID:ypdOa8j/0

律に、今朝はごめんって、言い過ぎたって言ってほしい。
私のこと好きじゃなくてもいいから、律の隣りにいさせてほしい。

私は、そんな気持ちを律宛のメールに書きつづった。
書き終わると、送信せずに下書き用フォルダに保存する。
行き場の無い想い。
誰にも言ってはいけない想いを、送信されることのない律宛のメールへ閉じ込める。


57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:19:42.25 ID:ypdOa8j/0

翌日も私は学校を休んだ。
軽音部のみんなからは心配のメールが次々届くのに、
一番欲しい律からのメールは未だ無し。


さらに翌日も私は学校を休んだ。
これで三日だ。
それでも律からは何も連絡が無い。

律、本気なんだな……。

相変わらず律宛のメールは貯まり、しかし一通も送信されることは無かった。
いくらメールに気持を閉じ込めても、気持が溢れて来てどうしようもない。
私、どれだけ律が好きなんだろうな。


ママもさすがに心配しているし、明日は学校へ行かなきゃ。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:20:42.81 ID:ypdOa8j/0

翌日。

朝、洗面所の鏡の前。そこに映ったのは、
瞼は腫れ、目の下には大きなクマ、頬はこけ、目は落ち窪み、髪はボサボサな自分だった。
そりゃそうだ。
何も食べてないんだもの。
律にフラれた日から眠れず、食事も固形物が咽喉を通らなくなっていた。
寝不足で頭がボーっとする。
でも、学校に行かなきゃ。

朝食を食べようとしたけれど、気持ち悪くなって食べられなかった。
なんとか牛乳だけ飲み、身支度をする。

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:21:21.06 ID:ypdOa8j/0

澪ママ「澪ちゃん、まだ体調悪いんじゃない? 食欲も無いし。」

澪ママ「病院に行った方が……」

澪「大丈夫だよ。ほら、動いてないからお腹空いてないんだ。」

澪「それじゃ、遅刻しちゃうから行って来ます!」

澪ママ「行ってらっしゃい。って、まだずいぶん早い時間じゃないの……」

60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:22:07.51 ID:ypdOa8j/0

久しぶりに家を出た。
外は春らしく強い風が吹いていた。

しばらく歩くと、律との待ち合わせ場所に到着した。
ここで、律を待つ。
律はここを通らないと学校には行けないから、ここで待ってさえいれば、
必ず律に会えるはずだ。

何十分経ったのだろう。
最初は通勤する大人たちがちらほらと足早に過ぎ去って行くのを眺め、
少しすると、通学のピークを迎えたらしく学生がたくさん通った。
時計を見ると、そろそろ行かないと遅刻になってしまう時間が迫ってきている。
私は想いを込めて、律がいつも走って来る曲がり角を眺めた。

会いたい。
でも、会うのが怖い。

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:22:49.39 ID:ypdOa8j/0

ほどなくして、見慣れた背格好の女子高生が走ってきた。

あぁ、まだ顔ははっきり見えないというのに、なんでこんなに愛おしいんだろう。
心臓がドキドキと脈を打ち始める。
それまでは死んだように冷たかった私の体に、
脈々と温かい血液が流れ込んでいくのが分かった。


澪「律!」


律ははっと顔を上げ、私を見た。
返事は無いが、こちらに近づいてきて、私の前で止まった。

62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:23:26.89 ID:ypdOa8j/0

澪「律、おはよ」

律「彼氏はできたのか?」


律の鋭い眼差しが私を射抜く。
その目からは、強い決意が覗えた。
私に彼氏が出来ないと、挨拶もしてくれないのか。

私は、あの日の律がフィードバックする。

律『澪に、彼氏ができるまで、私に近づくな』

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:24:01.47 ID:ypdOa8j/0

澪「えっと……その……」

律「まだできてないのか?」

澪「そんなすぐにできるわけないだろ!」

律「じゃあ、私に近づくな」


私の前を通り過ぎようとする律の腕を掴む。
あれ? 律の腕、こんなに細かったっけ?


律「なんだよ?」

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:24:46.12 ID:ypdOa8j/0

澪「もう、律のこと諦めたよ。もう好きじゃない。気の迷いだったんだ。」

澪「身近な人を好きになっちゃうっていう、思春期特有のあれだったみたい。」

澪「だから、だからさ、親友に戻らないか?」

澪「親友じゃなくても、ただの友達でもいいから」


カッコ悪いなって自分でも思うけど、もうなりふりなんて構っていられなかった。
どんな形でもいいから、律の隣りにいたいんだ。

ふいに呼ばれた、私の名前。


律「澪?」


それだけで私は、こんなにも胸が弾むんだ。

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:25:42.43 ID:ypdOa8j/0

律「本当は私、澪が好きなんだ。私と付き合ってよ」

澪「え? 本当?」

律「うん」

澪「本当にいいの?」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:26:25.19 ID:ypdOa8j/0

律「……お前、なんで断らないんだよ」

澪「え?」

律「私のこと、もう好きじゃないんだろ?」

律「なのに、なんで断らないんだよ?」

律「やっぱり、まだ私のこと諦めてないんじゃん」

澪「」

律「彼氏ができるまで、私に近づくな」

掴んでいた手を振りほどき、律は行ってしまった。
騙されたのか、私。
断られることは予想してたけど、騙されることは予想してなかったよ。
そうか、律。
そうまでして私を諦めさせたいんだ。
本当に本当に本気なんだな。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:27:21.48 ID:ypdOa8j/0

学校


学校に到着したのは、一時限目が始まって少し経ってからだった。
教壇に立つ先生と軽く言葉を交わし、
一番前の席に座っている律の横を通り過ぎて行く。
律は顔を伏せていたから、どんな表情なのか分からなかった。



休み時間

律はすぐに教室を出て行ってしまった。
トイレかな。

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:27:56.08 ID:ypdOa8j/0

いちご「ねぇ、律はどこ?」

私に聞かれても困るんだけどな。

澪「さぁ、トイレにでも行ったんじゃないかな?」

いちご「……」

澪「えっと……何?」

いちご「澪にも分からないことってあるんだ」


そんなにいつも一緒にいるわけじゃないと思うんだけど、
そういう風に見られてるのかな。
ちょっと嬉しいけれど、今は胸が痛む方が大きかった。

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:29:06.25 ID:ypdOa8j/0

結局、律が戻って来たのはチャイムが鳴って先生が入ってくるギリギリ前だった。

次の休み時間も、その次の休み時間も、お昼休みも、
休み時間は全てこの教室から出て行った。

私を避けている。
そうとしか思えない。
でもね。
私には分かるんだ。
律が教室から出て行くのはね、優しさなんだってこと。
私を避けていることを他の友達に知られないように、
そして私がクラスの友達と話せるように、自分から出て行ったんだろ?
教室から出て行く律の後ろ姿は、いつもより小さく見えた。

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:30:02.62 ID:ypdOa8j/0

部活の時間


休もうかと思ったけど、唯に手を引かれてついつい音楽室まで来てしまった。

しばらくするとムギや梓も来て、ティータイムが始まった。
みんなの話は頭に入ってこなかった。
こんな時も考えるのは律のことばかり。

律が来たら、みんなの前でも私のことを避けるのかな。
不安で胸が押しつぶされそうだ。
やっぱり帰ろう。
まだ病み上がりだからって言えば、きっとみんなも分かってくれるだろうし。


澪「あの……みんな、私……」

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:31:12.41 ID:ypdOa8j/0

その時だった。勢いよくドアが開かれたのは。
ドアに背を向けていたけれど、こんな乱暴に開けるのはアイツしかいない。
私はとっさに顔を伏せた。


律「おっちゃん! まだやってる?」

唯「あ! りっちゃーん! よく来たね。ささ、お入り」

律「おお、懐かしいな!」

ムギ「りっちゃん! いつものアレでいい?」

律「おう!」

梓「どんな設定なんですか、それ?」

律「故郷の飲み屋!」

唯「同窓会!」

ムギ「さびれた中華料理屋さん!」

梓「バラバラじゃないですか……」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:31:50.81 ID:ypdOa8j/0

律が目の前の席に座った。けど、私は伏せた顔を上げられないでいた。
朝の言葉がフラッシュバックする。

律『彼氏ができるまで、私に近づくな』


73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:32:29.74 ID:ypdOa8j/0

唯「りっちゃーん! 今日はちっとも私の所にきてくれないじゃない!」

唯「あなた、他のクラスの子と浮気してるんでしょ?」

律「そんなわけないだろ? 唯だけだよ」

唯「りっちゃん!」

律「唯!」

唯「りっちゃーん!」

律「ゆーいー!」

唯「りーーーっちゃーーーんっ!!!」

律「ゆーーーっいーーーっ!!!」

唯「……」

唯「あれ? 澪ちゃんのツッコミがこない!?」

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:33:12.23 ID:ypdOa8j/0

一斉に視線が私へと集まる。
恐る恐る律を見た。
でも、律は、律だけは、私を見ていなかった。


唯「澪ちゃん、どうしたの? 具合悪いの?」


私に彼氏が出来ないと、目も合わせてくれないのか……。
数日前まではあんなに仲が良かったのに。
もう戻れないの?
好きって気持ち、隠しておけば良かったのかな。
でも、律なら大丈夫って思ったんだ。
律なら、例え私のことをフっても、変わらずに親友でいてくれるって。

あぁそうか、私、ただ、律に甘えてただけだったのか。

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:34:04.26 ID:ypdOa8j/0

唯「澪ちゃん。保健室、行こ?」


気が付くと私は、隣りに座っていたムギにハンカチで涙を拭かれ、
唯が背中から抱きついていた。


澪「ご、ごめん。私、まだちょっと具合悪いみたいだ。帰るな。ごめん」

唯「私も一緒に帰るよ!」

澪「大丈夫だよ、唯。一人で帰れるから」

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:34:38.48 ID:ypdOa8j/0

唯「あー! 私、用事あったんだぁ。忘れてたよ!」

唯「だから澪ちゃん、一緒に帰ろ?」

梓「あ、あの! 私も用事あったの忘れてました。だから私も一緒に帰ります」

唯「澪ちゃん! 私、エリザベス持つよ!」

梓「あ、じゃあ私はバッグを持ちますね」

澪「いや、荷物くらい持てるんだけど……」

唯「いいからいいから! じゃ、みんな、また明日ねぇ!」

梓「さよならデス!」


77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:35:21.54 ID:61AtCVhv0
胸が痛いぜ・・・・・・
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:35:31.26 ID:ypdOa8j/0

帰り道

唯「澪ちゃん。大丈夫?」

澪「うん、もう大丈夫だよ」

梓「澪先輩。病み上がりなんですから、無理しないでくださいね」

澪「ありがとう、二人とも」

唯「あのね、澪ちゃん。もしかして、りっちゃんと何かあった?」


律の名前が出て、ドキっとしてしまった。
言葉に詰まる。


梓「また律先輩が何かしたに決まってます!」

梓「澪先輩、気にしないでくださいね。」

79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:36:19.01 ID:ypdOa8j/0

梓「今日なんて廊下を歩いてたら、律先輩に後ろから膝カックンされたんです。」

梓「膝がカクってなった拍子に持っていた教科書を律先輩の足に落としてしまって。」

梓「そしてら律先輩『いってえええええええ!! 絶対血ぃ出た!」

梓「絶対血ぃ出た!』って騒ぐから、私ビックリしちゃって、」

梓「ゴメンナサイゴメンナサイって謝ったんです。」

梓「それで律先輩が廊下で靴下脱いで足を確認したら血なんて一滴も出てなくて、」

80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:37:01.76 ID:ypdOa8j/0

梓「血、出て無いですねって言ったら、」

梓「律先輩『そういやそれほど痛くないやwwwwww』」

梓「って言って、そのまま走って行っちゃったんですよ!?」

梓「気が付くと周りは私にすっごく注目してて、」

梓「本当に恥ずかしい思いをしたんですから!」

唯「あはははは!!! りっちゃん面白い!!!」

梓「笑いごとじゃないです! 同じクラスの子には漫才部にでも入ったのかって言われるし!」

81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:38:18.51 ID:ypdOa8j/0

休み時間になると教室から出て行っちゃうから、
どこで何をしていたか分からなかったけど、そんなことをしていたのか。
律らしいというか、なんというか。
律に避けられてるのにそれでもこういう話を聞くと嬉しく思ってしまう私は、
もう色んな意味で手遅れなのかもしれない。


梓「だから、きっと澪先輩は悪くないです!」

梓「律先輩が何かしたに決まってます!」


これは梓の優しさ。
きっと私を元気づけようとしてくれてるんだ。


82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:39:01.91 ID:ypdOa8j/0

澪「ふふ。ありがと、梓。でもな、律は悪くないんだ」

唯「あ! 笑った! 今日初めて澪ちゃんの笑顔を見たよ」

唯「澪ちゃんを泣かせるのも笑わせるのも、りっちゃんなんだね!」

澪「え!? ちちち違う! そんなんじゃない!!」

澪「私が具合悪かっただけで、何でもないから!!」

唯「そっか、何でもないのかぁ」

83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:39:30.57 ID:ypdOa8j/0

唯「休み時間になるとどっか行っちゃうし、」

唯「澪ちゃんの涙を見ても何もしないなんてりっちゃんらしくないと思ったんだけど、」

唯「澪ちゃんがそう言うなら、きっとそうなんだね」

これは唯の優しさ。
澪ちゃんが言いたくないなら、もうこれ以上は聞かないよって。
そう言ってくれているんだろう。

私、みんなに甘えてばかりだ……。


84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:40:16.88 ID:ypdOa8j/0

澪宅

澪「ただいま」

澪ママ「おかえりなさーい。早かったわね?」

澪「うん。まだ本調子じゃなくてさ。部活しないで帰ってきちゃった」

澪ママ「そうだったの。あら? りっちゃんは?」

澪「え? 律? 居ないけど?」

澪ママ「澪が具合悪い時はいつも送ってくれていたから、一緒だと思ったわ」

澪ママ「お夕飯になったら呼ぶから、それまで少し休むといいわ」

澪「うん、そうするよ」


ここでも律か。
私の中は律で溢れてると思ってたけど、
私の周りも律で溢れてるんだな。
嬉しいな。
でも、胸が痛いよ。

85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:40:57.87 ID:ypdOa8j/0

今日はたくさんみんなに心配かけて、たくさん甘えちゃったな。
みんなごめんね。
でも、もう大丈夫。
私決めたから。

律が好き。

やっぱり律がいないと私、上手く笑えないんだ。
だから、どんな形もでいいから、律の傍にいさせて。


86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:41:28.80 ID:ypdOa8j/0
翌日

律視点

朝。

洗面所の鏡の前に立ち歯を磨く。
あぁ、寝不足だ。
眠い。

澪があんな涙みせるから、眠れなくなっちゃったじゃないか。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:42:14.72 ID:ypdOa8j/0

澪と唯と梓が帰った後の教室に残された、私とムギ。

律「さて、二人じゃあ練習にならないし、私達も帰るか」

ムギ「りっちゃん。澪ちゃん、泣いてたね」

律「あぁ、そうだな」

ムギ「なんで泣いてたのかな?」

律「具合が悪かったからじゃないのか?」

ムギ「そうね」


沈黙が流れる。
あぁ、きっともうみんな気が付いてる。
何があったかまでは分からないだろうけど、
私と澪の間に何かあったってこと、気が付いてるんだ。

88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:42:57.33 ID:ypdOa8j/0

ムギ「りっちゃん」

律「ん?」

ムギ「私ね、最初、合唱部に入ろうと思ってたの」

律「あぁ、そうだったな」

ムギ「でも、軽音部に入った」

律「ありがとな、ムギ」

ムギ「ううん。私ね、りっちゃんと澪ちゃんを見て、楽しそうだなって思ったの。」

ムギ「それから、羨ましいなって思ったの」

律「私、ゲンコツされてたのに?」

ムギ「うふふ。そうよ、それが羨ましいなって思ったの」

律「ムギ、あのゲンコツはゲンコツなんてもんではなく、鉄拳制裁だぞ?」

89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:43:44.95 ID:ypdOa8j/0

律「こう、タンコブなんてぷくーって膨らむし、頭の芯まで痛むしぃ……」

ムギ「でも、りっちゃんは嬉しそうだったよ?」

律「いやいやいや!! 私、そういう趣味無いから!」

ムギ「趣味? 趣味でそういうことをやってる人がいるの?」

ムギ「ちょっとその話、詳しく聞かせてもらえないかしら?」

律「知らん! 私は知らないぞ!! そんな所に食いつくなよぉ!」

ムギ「うふふ、冗談よ。でも、羨ましいって思ったのは本当。」

ムギ「イタズラされても、ゲンコツされても、」

ムギ「それでも二人は仲良しでしょ?」

90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:44:31.61 ID:ypdOa8j/0

ムギ「それはね、お互いのことを知ってて、信頼し合ってなきゃできないと思うの。」

ムギ「許すとか許されるとかじゃない、もっと固い絆で結ばれてるって感じね。」

ムギ「私は、そんな二人が大好きなの」

律「……」

ムギ「りっちゃん、何かあったらいつでも相談に乗るから、」

ムギ「私達に出来ることがあったら何でもするから、」

ムギ「無理しちゃダメよ?」


ムギは優しくほほ笑んだ。

私は、涙をこぼさないようにするのが精いっぱいだった。


91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:45:08.76 ID:ypdOa8j/0


気が付くと聡が私と鏡の間に割って入っていた。


律「邪魔だからあっちに行け」

聡「姉ちゃん、いつまで磨いてんだよ!」

聡「そんなに磨いても美人にはならないんだからな!」


全く生意気なヤツめ。
聡が左手に持ってるコップの水を口に含み、うがいしてやった。


聡「あ! きったねぇ! 自分のコップ使えよ!」


朝からテンション高くて、小学生かっつーの。

準備をすませ、家を出る。

92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:45:55.01 ID:ypdOa8j/0

律「いってきまーす」

律ママ「あ、律! 午後から雨降るらしいから、傘持って行きなさい!」

律「いらなーい。降ったら澪の傘に入れてもらうから」


言って、自分でハッとした。
そうだ。
今は澪を避けなくちゃいけないんだった。


律「やっぱり傘……」

律ママ「まったくアンタは澪ちゃんにお世話になってばかりなんだから!」

律ママ「澪ちゃんが居なかったらどうするのよ!」

律「あはは。行ってきまーす」

93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:46:45.18 ID:ypdOa8j/0


通学路。

あの先の角を曲がれば、いつも澪が待っていた。
今日は……さすがに居ないかな。

角を曲がると、見慣れた背格好の女子高生が立っていた。

澪しゃん、健気過ぎだろ!!

昨日あからさまに澪を避けてあんなに泣かせたのに、
それでもこんな私を待っていてくれるのか?
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:47:13.68 ID:ypdOa8j/0

『彼氏が出来るまで、私に近づくな』

あれ、撤回しようかな。
さすがの澪でも、そんなすぐに彼氏できるわけないし。
親友でいても、きっといつか澪には良い彼氏ができるよな。

澪は私に気が付くと走り寄って来た。


澪「律! おはよ。あのさ、私、か、か、かかか彼氏が出来たんだ!」

95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:47:50.78 ID:ypdOa8j/0

律「おはよ、あぁ、彼氏ね……ええええええええええええええ!!!!!」

澪「きゃあ! 急に大声出すな! びっくりするだろ!」

律「澪、今、なんて言ったの?」

澪「だから、えっと、そのぉ、私、彼氏が出来たんだ」


96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:48:41.49 ID:ypdOa8j/0

はぁ、びっくりした。
なんだ嘘か。
澪、目が泳ぎまくってるじゃんwwwwww
バレバレだぞwwwwww
面白いから、からかってやろーっと。
私達は歩きながら話した。


律「んで、どこで知り合ったんだ?」

澪「えっと、去年の夏期講習で知り合ったんだけど、」

澪「先月の三月にやってた春期講習でまた会ったんだ」

律「ふーん」

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:49:18.86 ID:ypdOa8j/0

澪「えっと、それで、昨日、告白されてさ。」

澪「良い人だったし、その、OKしたんだ」

律「そっか。んで、彼氏が出来た御感想は?」

澪「え? えっと、えっとぉ、昨日の今日だから、まだ実感湧かないっていうか……」

律「んで、澪は今、幸せ?」

澪は私の目を真っすぐに見つめて言った。

澪「うん。幸せだ」

その真っすぐな目は自信に溢れ、
そのしっかりとした声は嘘が混じる隙も無い程だった。

98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:50:05.74 ID:ypdOa8j/0

それは、いつもの澪だった。
さっきまできょどってた不安定な嘘っぽい澪なんかじゃなく、
自信のある時の澪そのものだった。

そして今、澪の口元にたたえる微笑。
もはや疑う余地など無かった。

澪に彼氏が出来たんだ。

あぁ、良かった。
これでもう澪を避けなくてもいいんだ。
これでもう澪が泣くこともないんだ。
これでもう私の恋が叶うことはないんだ。
良かった…、
良かった……。

99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:51:06.55 ID:ypdOa8j/0

放課後

今日はほとんど寝て過ごした。
授業も、休み時間も。
いや、本当は寝てなんかいない。
寝たフリをしていただけなんだ。

澪に彼氏ができたことに、私は想像以上にショックを受けていた。

私ってバカだなぁ。
自分で言ったんじゃないか。

『澪に彼氏ができるまで、私に近づくな』

まいっちゃうよなぁ。
澪を幸せにするのは私じゃないって。
これでいいんだって。
いっくら言い聞かせても、ちっとも心がついてこないんだ。

100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:51:38.23 ID:ypdOa8j/0

あぁ、部活行きたくないなぁ。
そうだ、ちょっと遅れて行こう。
暇潰しにクラスメイトとおしゃべりでもすっかな。

律「よっ! いちご!」

いちご「何?」

律「今日も体操服姿がかわいいね!」

101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:52:16.75 ID:ypdOa8j/0

いちご「律……」

律「ん?」

いちご「キモイ……」

律「」

いちご「早く秋山さんと仲直りしなよ。じゃ」


暇潰しにならなかったwwwwww
ってか、なぜかダメージ喰らったwwwwww

はぁ……。

やっぱ帰ろっかな。


のそのそ準備。
廊下をダラダラと歩く。

102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:53:05.96 ID:ypdOa8j/0

立ち止まり窓の外を見ると、雨が降り出していた。
あちゃー、本当に雨降ってきちゃったよ。
傘持ってないなぁ。

突然膝に衝撃が走る。
そのまま膝から崩れ落ちそうになるのをなんとか堪えた。


梓「ぷくく。見事にカックンってなってましたね。ぷくく」

律「梓! コラ!」

梓「きゃーっ!」ダダッ!

律「あ! 待てーーー!!!」

なんて追いかけてたら、ついつい音楽室まで来てしまった。
今なら引き返せる。
よし、帰ろう。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:53:49.25 ID:ypdOa8j/0
音楽室の中から梓の声が聞こえる。

梓「律先輩来ましたよ」


手遅れだったwwwwww

音楽室に入り、しぶしぶ澪の前に腰かけた。


澪「遅いぞ! 律。何してたんだ?」

律「あぁ、ちょっとな」

梓「律先輩は廊下で雨を眺めていましたよ」

唯「りっちゃん、雨は食べられないよ?」

律「食べんわい! 唯と一緒にすんな!」

唯「ヒドイ!!」

ムギ「あらあら」
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:54:24.53 ID:ypdOa8j/0

澪「律。傘忘れたんだろ?」

律「う……うん」

澪「仕方ないなぁ、律は。帰りは私の傘に入ってきな?」ニコニコ

律「う……うん」


澪のヤツ、やけにニコニコしやがって。
彼氏ができたことがそんなに嬉しいのか。
なんか分かんないけどイライラする。


105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:54:54.65 ID:ypdOa8j/0
澪「律、今日の授業寝てただろ?」

唯「そうそう。一番前なのによく眠れるね」

ムギ「あら、唯ちゃんもよく寝てたわよ?」

唯「でへへ」

梓「律先輩も唯先輩も受験生なんですよ? そんなことで大丈夫なんですか?」

唯「大丈夫だよ! なんてったって三年生は始まったばかりだからね!」

106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:55:29.83 ID:ypdOa8j/0
みんなが喋っている中で、澪が目配せしてきたので小声で話す。

律「なんだよ」

澪「ノート、貸そうか?」


なんなんだ、なんなんだ、いったいなんなんだ!!
澪からノート貸してくれるなんて、有り得ない!!
これが、彼氏ができたヤツの余裕なのか!?
余裕って言うヤツなのかあああああああ!?


律「ムギ! 悪いんだけどさ、ノート貸してくんない?」

ムギ「えぇ、いいわよ」

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:56:02.56 ID:ypdOa8j/0

ムギが長椅子に置いたバッグから、今日受けた授業のノートを貸してくれた。


律「うわあー!! ムギの字は綺麗だな!!」

唯「見せて見せて! わあ! 綺麗!」

梓「あ、私も見たいです。本当だ、綺麗ですね。それに、なんだか良い匂いもします」

ムギ「そんな、恥ずかしい……」

律「これはラベンダーの香りかな?」

唯「えぇ、フローラルだよ!」

梓「え? 私はローズだと思いましたけど」

律「バラバラじゃん!!」

108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:56:30.12 ID:ypdOa8j/0

ノートを急いで写す。
ついでに隣りに座ってる唯もムギから借りたノートを写していた。


澪「律、それ終わったら練習するからな」


私は澪の目も見ずに、生返事を返した。



練習を始めたが、
早く帰りたいと思うからなのか、自分でも分かるくらいに私のドラムは走っていた。

梓「唯先輩。Aメロの出だしなんですけど……」

ムギはキーボードで何かを弾いて遊んでいる。


109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:57:05.56 ID:ypdOa8j/0
澪「律、ドラム走ってるぞ」

律「これくらいがちょうどイイんだよ」

澪「もうちょっとリズムをキープしないと……」

律「あぁもう、分かったよ。ゆっくりやるよ」

澪「……律」

律「分かったってば」

澪「律……私を見てよ。私の目を見て、話をしてくれないか?」

スティックを見つめていた視線を、ゆっくりと上げた。
澪が、真っすぐに私を見ている。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:57:41.38 ID:ypdOa8j/0

やめろ。
見るな。
その目で彼氏を見つめて、
その唇で彼氏に愛を囁いて、
その手で彼氏に触れて、
その胸の中は彼氏への想いで溢れているんだろ?

律「ああああああああああああああ!!!! 用事があったんだ!! 帰る!!」

乱暴に荷物を掴むとスティックをねじ込み、


律「ごめん! またな!!」


111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:58:09.53 ID:ypdOa8j/0
みんなに背を向けたまま音楽室を出る。
すぐに澪の足音が聞こえた。
アイツ、追ってきたのか。
放っといてくれ!

私は全力で走った。

下駄箱に脱いだ上履きを乱暴に詰め込み、
靴をつっかけて雨の中走り出す。
が、走り出してすぐに腕を掴まれた。
足元に目線を落とすと、上履きのまま泥だらけになった澪の足が見えた。
バカ、靴履き替えないなんて反則だろ。

112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 10:59:10.22 ID:ypdOa8j/0

澪「律! なんで? なんで私のこと避けるの?」

律「」

両腕を掴まれた。

澪「目を見て! 私の目を見てよっ!! お願いだよ、りつうう……」

涙声に訴える澪。
未だ澪を見れずに俯く私。

雨は何もかも濡らしていく。
私も、澪も、髪も、服も、涙も、心も。


澪「私に彼氏ができたら親友に戻ってくれるんじゃなかったのか?」

律「ごめん。用事があるから、帰んなきゃ……」


そう言うと澪の腕は力なく垂れさがり、私の腕は解放された。
背を向けて歩きだす。

もう、戻れないかもしれない。

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/07(土) 10:59:43.97 ID:ypdOa8j/0
私って、ワガママだなぁ。
自己中でさ、ガサツでさ、サボってばっかでさ。
だけど、どうしようもなく澪が好きでさ、
誰よりも好きでさ。
例え澪に彼氏が出来ても、私が一番澪のこと好きなんだ。
絶対誰にも負けない自信があんだ。
だからさ、澪を見てるのが辛いんだよ。
誰かのものになっちゃったんだと思うと、
胸が痛くて苦しくて息が出来なくなっちゃうんだ。
親友ならさ、一番澪の幸せ願ってやんなきゃいけないのに、
なんでだろうな。
こんなはずじゃなかったのにな。

今頃軽音部のみんなどうしてんだろ。
空気悪くしちゃったな。

ごめんよ、澪。
もう私、どうしたらいいか分かんないや。


114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:00:34.02 ID:ypdOa8j/0

トンちゃん視点


澪ちゃんがりっちゃんを追いかけて教室を出て行った。
教室に残された三人は、窓から校庭を眺めている。


唯「あ、りっちゃん……」

梓「走って帰っちゃいましたね」

ムギ「あ、澪ちゃんも歩いて帰って行くわ」


三人同時に溜息が洩れた。


115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:00:54.25 ID:ypdOa8j/0

唯「あの二人に何かあったのは確実だね」

梓「でも、何があったんでしょうか?」

唯「りっちゃんはずっと澪ちゃんを避けてるし、澪ちゃんは元気無いし」

ムギ「ケンカ、かな?」


また三人同時に溜息が洩れた。


116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:01:30.54 ID:ypdOa8j/0
梓「こんな酷いケンカは初めてですね。」

梓「二人とも止めちゃって軽音部が廃部に。なんて、なりませんよね?」

ムギ「きっと大丈夫よ。あんなに仲良しの幼馴染なんだもの」

唯「りっちゃん家に行こ!」

梓「え? 律先輩、用事あるって言ってましたけど?」

ムギ「澪ちゃんを避ける為についた嘘。なんじゃないかしら」

梓「でも、行ってどうするんですか?」

梓「私達に話してくれるでしょうか?」

唯「澪ちゃんが忘れていった荷物をりっちゃんに渡すんだよ」

唯「そうすればりっちゃんは、澪ちゃんに荷物を届けなきゃいけなくなるでしょ?」

ムギ「そうね。あの二人にはじっくり話し合う機会が必要よね」



三人は荷物をまとめて出て行ってしまった。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:02:02.78 ID:ypdOa8j/0

りっちゃんは昔、
俺の水槽についているコンセントが抜けていたのを真っ先に見つけてくれたことがあった。
水温を調節するコンセントだったから、
もう少しで寒くて死ぬところだった俺を助けてくれた、いわば命の恩人だ。


そんなりっちゃんが、最近元気がない。
どうやら原因は澪ちゃんにあるらしい。

118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:02:35.09 ID:ypdOa8j/0

この二人に何があったのか。
スッポンモドキの俺には分からないが、
りっちゃんに恩返しがしたい。

俺は生まれて初めて、人間の為に何かしたいと思った。
スッポンモドキの俺に、いったい何が出来るのだろうか……。


119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:03:20.02 ID:ypdOa8j/0

澪宅

澪ママ視点

澪ちゃんがずぶ濡れで帰って来た。
しかも泥だけの上履きで。
今はお風呂に入って温まっているけれど、明らかに様子がおかしかった。
いえ、様子がおかしかったのは今に始まったことではなかったわね。
日曜日、りっちゃんとお出かけしてくるって行った日。
あの日帰ってきてからずっと、澪ちゃんは食欲が無い。
今では、一目で分かるくらい痩せてしまった。

そして何より、りっちゃんの話をしなくなった。
りっちゃんに出会ってから毎日りっちゃんの話をしていた澪ちゃんが
りっちゃんの話をしないなんて。

きっと、りっちゃんと何かあったのね。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:03:56.62 ID:ypdOa8j/0

最初はケンカかと思ったわ。
でも、いつもなら翌日には仲直りするのに、
あれから5日も経っている。


澪「ママ、お風呂ありがとう。やっと体が温まったよ」

痛々しい笑顔に、思わず目をそむけたくなった。
ダメ。
私だけは何があってもこの子から目を離したらダメ。

澪ママ「ねぇ澪ちゃん。駅前のケーキ屋さんが新作のプリンを出したのよ」

澪ママ「買ってあるから一緒に食べましょ?」


121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:04:37.98 ID:ypdOa8j/0

澪「……」

澪ママ「澪ちゃん?」

澪「え? 何?」

澪ママ「手が止まってるけど、プリン美味しくなかった?」

澪「美味しいよ。でも、部活でお菓子をたくさん食べすぎちゃってさ、」

澪「お腹いっぱいになっちゃった。ごめんね」

澪ママ「いいのよ。じゃあ私、そろそろお夕飯の支度するわね」

澪「……」

澪ママ「澪ちゃん?」

澪「え? 何?」

澪ママ「ううん、何でもないわ」

122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:05:17.05 ID:ypdOa8j/0

真面目で優しくてしっかり者の澪ちゃん。
何でも私に話してくれたのに、こんなことは初めてで。
正直、どうしていいか分からない。

ただ。
例えどんなことがあっても、私だけはこの子の味方でいよう。
そんなことを考えながら料理を作っていた。


澪ママ「澪ちゃーん。出来たわよお」


後ろを振り返ると、澪ちゃんはリビングのソファーで眠っていた。
仕方ないわねぇ。
大きくなったと思っても、まだまだ子供なんだから。

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:06:11.89 ID:ypdOa8j/0

二階から毛布を持ってきて澪ちゃんに掛けようとした時、
ふと床に落ちている携帯電話が目についた。
澪ちゃんの携帯電話。
メールでも見ながら寝ちゃったのかしら。

毛布を掛けて、携帯電話を拾い上げた。
その拍子。何かのボタンを押してしまったのか、
真っ暗だった画面が光り、文字が現れた。

いくら我が娘でもこれはプライバシーだ。
だから読まないようにしようと思ったのに、
目に飛び込んできた『律』という文字。
いけないいけないと思いつつ、私はメールを読み始めてしまった。

124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:06:38.21 ID:ypdOa8j/0

そこには、りっちゃんへの溢れる愛がこもっていた。

ショックは無かった。
薄々気がついていたから。
でも、予想外だったのはその愛の深さ。
思春期の一時的なものと捉えていたけれど、
こんなにもりっちゃんのことが好きだったなんて。


私は携帯をそっと澪ちゃんの横に置き、立ちあがる。
キッチンへ行こう。
料理しなくっちゃ。
久しぶりだから上手にできるかしら?


125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:07:18.22 ID:ypdOa8j/0
律宅


律視点


帰宅してみると、家には誰もいなかった。
都合が良い。
こんなびしょ濡れの姿家族に見られたら、イジられるもんな。

制服を洗濯機へ放り込み、スイッチを押す。
雨で濡れた体は冷え切っていたが、お風呂を沸かすのが面倒くさい。
自室に戻り、頭まですっぽりと布団にもぐりこんだ。

寒いな。
ちっとも温まらないや。

ここには雨が降っているのかもしれない。

126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:07:51.67 ID:ypdOa8j/0
玄関のチャイムが鳴った。

あぁ、家に誰もいないって面倒くさい。
布団から出たくない。
まぁいっか。
誰もいませんよおー、っと。

しかし玄関から聞き覚えのある声が聞こえた。


唯「りっちゃーーん!!」


あぁ、何か言いに来たのかな。
会いたくないなぁ。
やっぱ居留守使おう。

127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:08:31.20 ID:ypdOa8j/0

梓「ちょっ! 唯先輩!! それはマズイですって!」

唯「あれ? 靴があるよ?」

律「うおおい!! 勝手に玄関開けるなっ!!」

唯「あ、りっちゃん! ほら、やっぱり居たよ?」

ムギ「あら、本当ね」

律「無視かい……」

ムギ「りっちゃん、あのね? これ」


ムギが手に持っていたのは、澪のベースとバッグだった。
三人もいるのに、一人で持ってきたのか!?

128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:09:28.65 ID:ypdOa8j/0
ムギ「澪ちゃん、荷物置いて帰っちゃったの。」

ムギ「それで、三人でここまで持ってきたんだけど、重くって」

唯「りっちゃん、澪ちゃんに届けてくれないかな?」


ここまで来たんなら頑張れ。
澪の家はすぐそこだぞ。
なんて言えなかった。

だってこれは、私を澪の家に行かせたい為の口実なんだろ?
つまりこれは私に、澪と話し合えってことなんだ。
用事があるって言って帰った私の家に来るなんて、
まるで私が家に居るって分かってたみたいじゃないか。
やっぱし私が澪を避けてること、バレバレなんだな。
でも、そこを責めないでいてくれるみんなに感謝しなきゃな。

129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:10:21.28 ID:ypdOa8j/0
律「しょうがないなぁ。そこに置いといて。みんな、上がってく?」

唯「ううん。今日はいいや。それよりもりっちゃん!」

唯「早く荷物を届けてあげて! きっと澪ちゃん、困ってると思うから」

梓「絶対届けてくださいね! 律先輩にベースを預けたままだと不安なんで」

ムギ「りっちゃん! ふぁいとおー!!」


三人は玄関を閉め、帰って行った。
と思ったらすぐにドアが開き、唯が顔を出した。


唯「りっちゃん! 今度遊びに来た時には上がってくからね!」

律「ん、またな」

唯「りっちゃん隊員、ご武運を!!」


ゆっくりとドアが閉まった。
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:10:59.83 ID:ypdOa8j/0
今度は私がそのドアを開ける。

外には道路を歩く三人の姿があった。


律「みんな! ありがとな!!」


三人は振り向き、手を振ってくれた。

131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:11:43.41 ID:ypdOa8j/0

澪宅

通い慣れた道。
見慣れた家。
押し慣れたインターフォン。
聞きなれたチャイム。

もう来ることは無いと思っていた場所は、
ひどく懐かしく、
とても愛おしかった。


澪ママ「あら、りっちゃん。いらっしゃい」

律「おばさん、久しぶりっ!」

澪ママ「どうぞ、上がって」

律「ありがと」


家の中は甘い匂いが漂っていた。
くんくん、良い匂い。
私、この匂い知ってる……。


澪ママ「りっちゃん、犬みたいね、ふふふ」

132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:12:23.03 ID:ypdOa8j/0

玄関で靴を脱ごうとしてハッとした。
隅に、泥だらけになった澪の上履きがあったのだ。
あのまま帰ったのか。
だから荷物を唯達が持ってきたんだな……。


リビングに行くと、澪がソファーで寝ていた。
澪を見ただけで胸が痛む。


澪ママ「りっちゃん、ちょっと」

ダイニングキッチンに通されると、テーブルには焼きたてのクッキーがあった。


澪ママ「今ちょうど焼けたところなのよ。一緒に食べましょ?」

律「ありがと! えっと……」

私は澪をチラと見た。

澪ママ「澪ちゃんはもう少し寝かせておきましょう」

133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:13:03.67 ID:ypdOa8j/0

二人向かい合わせになり、おばさんが淹れてくれた紅茶でティータイムが始まった。
クッキーを一口かじると、懐かしさが込み上げてきた。
このクッキーは、私が小学生の時に初めて御馳走になったもの。
あんまりにも美味しくて、動けなくなるまで食べたっけ。
それから時々おばさんはクッキーを焼いてくれるようになった。
でも最近はなかったから、久しぶりだな。


澪ママ「ねぇ、りっちゃん。おばさんの昔話、聞いてくれる?」


134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:13:39.41 ID:ypdOa8j/0

澪ママの回想


澪ちゃんが生まれ、5年が経った頃。
昔から子供は二人欲しいと思っていた私は焦っていた。
なかなか妊娠しないのだ。

ある日。
産婦人科にて。


医師「検査の結果なんですが、子宮の中に腫瘍が見つかりました。」

医師「腫瘍が悪性なのか良性なのか調べますので、検査室へどうぞ」


目の前が真っ暗になった。
腫瘍って何?
私、死ぬの?

135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:16:16.51 ID:ypdOa8j/0
不安なまま時は過ぎ、検査結果を聞きに再度来院した私は、
今までで一番衝撃的な事実を突き付けられることになる。


医師「残念ながら腫瘍は悪性でした。」

医師「しかし早期発見できたので、」

医師「子宮を摘出してしまえば命にかかわることはまず無いでしょう」

医師「これからの治療計画をお話します」


その後の話は一つも頭に入ってこなかった。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:16:47.59 ID:ypdOa8j/0


手術は成功した。
私は助かったのだ。
二人の子供という昔からの夢と引き換えに……。

絶望。
そんな言葉じゃ言い表せない感情が体を支配する。
手術は成功したというのに体はなかなか元気にならなかった。
その為入院は伸び、毎日点滴を受ける日々がダラダラと続いていた。

137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:17:17.72 ID:ypdOa8j/0

ある日。

母がお見舞いに来てくれた。
病院の方針で子供は面会に来られないため、
澪ちゃんを預けていた母から近況を聞く。


母「昼間は私と遊ぶんだけど、あの子、」

母「夜になると毎日布団をかぶって泣いてるんだよ。」

母「私にバレないように声を押し殺してね」


138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:17:44.70 ID:ypdOa8j/0

胸が締め付けらる。
ごめんね、澪ちゃん。
お母さん、早く元気にならなきゃね。


母「これ、澪ちゃんがママにって」


丸めた画用紙を手渡された。
画用紙を広げると、私と、夫と、その間には澪ちゃんが描かれている。
絵の中の三人は、笑っていた。


回想終わり
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:18:18.98 ID:ypdOa8j/0


澪ママ「りっちゃん。私ね、その時に誓ったの。」

澪ママ「澪ちゃんの笑顔を守ろうって。」

澪ママ「この先どんなことがあっても、この子の味方でいようって」


知らなかった。
おばさん、そんな苦労があったんだ。
私は何も言えずにいた。

140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:18:55.56 ID:ypdOa8j/0

澪ママ「澪ちゃんが初めて出来たお友達はりっちゃんだったわね」

澪ママ「それからよく遊びに来てくれて、私、本当に嬉しいの」

澪ママ「だって、子供が増えたみたいでしょ?」


澪ママは笑った。
その笑顔が澪に似てて、余計に胸が締め付けられた。


澪ママ「だからね、私はりっちゃんの味方でもあるのよ?」

澪ママ「私、何があっても、二人の味方だから」

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:19:30.28 ID:ypdOa8j/0

私は泣いた。
いろんな感情がごちゃまぜになって、涙は止まらなかった。
それを見ておばさんも泣きだした。
そしたら笑えてきて、二人で泣きながら笑った。
泣きながら笑って、泣きながらクッキーを食べた。
おばさん。涙でしょっぱいけど、クッキー美味しいね。
私が言うとおばさんは、あら、じゃあ今度塩クッキー作ってみようかしら。
次は三人で作りましょうね。
なんて言うから、私はまた泣いた。


142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:19:59.44 ID:ypdOa8j/0

澪「律? え? ママ? なんで二人とも泣いてるの?」

後ろを振り返ると、澪が目を真ん丸くして立っていた。

律「みいいいいいいいいおおおおおおおおおお!!! うえーーーーーん!!」


愛おしいぜ、コンチクショー!!
私は立ち上がり、澪をギュッと抱きしめた。


澪「え? ちょっ!? 律? 何? なんなの?」

143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:20:31.97 ID:ypdOa8j/0

それを見ていたおばさんも立ち上がって、澪を私ごと抱きしめた。
ちょっと痛いけど、すっごくあったかい。


澪ママ「澪ちゃーーーん!!! りっちゃーーーん!!! うえーーーーーん!!」

澪「は? なんで二人とも泣いてるんだよ!」

澪「なんか分かんないけど、私まで悲しくなっちゃうだろ……うえーーーーーん!!」


澪にも涙が移ったwwwwww
そんでやっぱり、泣きながら笑った。

おばさん、
唯、
ムギ、
梓、
聡、
いちご……?
とにかく、みんなに迷惑いっぱい掛けちゃったな。

144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:21:04.25 ID:ypdOa8j/0

澪ママ「じゃ、お夕飯の支度するから、ちょっと待っててね」

澪「うん。じゃあ私、律と部屋に居るね」


澪の部屋に入り荷物を隅に置くと、いつもの定位置にそれぞれ座った。
私はベッドの上。
澪はベッドの下。


澪「それで、なんで泣いてたんだ?」

律「私も、おばさんも、澪が大好きってことだよ」

澪「え? りりりりりつううう?」

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:22:07.55 ID:ypdOa8j/0

律「私、みんなに迷惑掛けたくないって、みんなに心配させたくないって思ってた。」

律「そんで澪を守るんだって、澪の幸せ見守るんだって思ってた。」

律「でも、私は何から澪を守れたのかな?」

律「たくさん傷つけて、たくさん泣かせて。」

律「守るどころか、私が一番澪を傷つけてたんだ。」

律「澪。もう一回。もう一回だけチャンスをくれないか?」

律「明日ってお休みだけどさ、何か用事ある?」

澪「えっと、11時から用事が……」

律「そっか……。もしかして彼氏?」

澪「え? いや、その、かかか彼氏……」

律「まぁいいや、それまで一緒にいられるなら」
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:22:41.97 ID:ypdOa8j/0

律「今日さ、泊まってってもいい?」

澪「うん、いいけど。あの、展開が早くて頭が追いつかないんだけど……」

律「あのさ、今から明日の11時まで、一緒にいてくれないか?」

律「澪には彼氏がいるから、恋人お試し期間ってのはできないけど、」

律「明日、彼氏の所に行く前に私が改めて告白するから、」

律「その時に返事を聞かせてほしい」

澪「あの、かかか彼氏は……」

律「大丈夫だって! ちゅうしたりしないからさ!!」



澪ママ「お夕飯できたわよぉ! りっちゃんもおいでぇ!」

律「はあ〜い!! 行こうぜ、澪!」


私は戸惑う澪の手を引いて、階下へ降りて行った。

147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:23:35.60 ID:ypdOa8j/0

食事と入浴を済ませ、澪の部屋でテレビを観ながらまったり過ごす。


澪「あ! 律! 律! これ、この間一緒に行った水族館じゃないか?」

テレビでは先日行った水族館の特集が流れている。

律「本当だ。あの水族館だな」

澪「あ! 律! 律! このイルカのショー、見たよな!」

律「そうだな、相変わらず丸々して美味そうなイルカだな」

澪「りいいいつううう!?」

律「冗談だってばwwwwww」


今まで当たり前だと思ってたこと。
それが出来る幸せ。
うん。今、私、間違いなく幸せだ!


148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:24:07.92 ID:ypdOa8j/0

澪「楽しかったよなぁ。また行きたいなぁ……」


澪。今さ、誰と行きたいって思ってる?
やっぱ彼氏かな?
望みは薄いだろうけどさ、
一緒に行きたいって思ってる相手が私だったらいいな。
なんて、さんざん傷つけた私が言う資格なんて無いかもしんないけど。
それでもズルイ私は願ってしまうんだ。
私と一緒に行きたいって、そう思ってくれって。

149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:24:41.00 ID:ypdOa8j/0

澪「そうだ。ベースと荷物、持ってきてくれて、ありがとな」

ベースをケースから出そうとしている澪の背中に話す。

律「いや。その荷物、持ってきてくれたのは唯とムギと梓なんだ」

澪「え!?」

律「三人がさ、私の家まで持ってきてくれたんだよ。」

律「ここからはりっちゃんが持って行けってさ」

澪「そうか……あれ?」

律「どした? どっか濡れてたか?」

150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:25:10.08 ID:ypdOa8j/0

ベースの弦の間に手紙が挟んであった。
中を開くと、似顔絵や落書きがたくさんしてあって、
メッセージが書かれていた。

唯『ごぶうんを!!』

ムギ『澪ちゃん! ファイト!!』

梓『律先輩のことなんで、ベースに傷がついていないか後で確認してください。』


澪は手紙を抱きしめて、嬉しそうに笑った。
そんな澪が愛おしくて、後ろから抱きしめた。

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:25:38.89 ID:ypdOa8j/0

澪「りりりりりり……つ……」


彼氏がいるんだもんな、こんなことしちゃいけないよな。
でも、彼氏君、すまん。
たくさん我慢したんだから、一つだけワガママ言わせてくれ。


澪「コラ!! 胸を揉むな!!!」


ゲンコツ喰らったwwwwwwww痛いwwwwwwでも幸せwwwwww


152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:26:17.53 ID:ypdOa8j/0

その後もまったり過ごし、就寝時間に。
いつものようにベッドには澪が。
その下に布団を敷いて私が寝ていた。


律「みぃおー? 起きてる?」

澪「起きてるよ」

律「あのさ、そっちに行ってもいい?」

澪「律、寝ぞう悪いからヤダ」

律「大丈夫大丈夫! 私、もう子供じゃないんだぜ!」


無理矢理澪のベッドに入る。

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:27:19.86 ID:ypdOa8j/0

澪「ちょっ! 律! 狭いって! おーりーろー」

律「いーやーだー」

澪にしがみつき、なんとかベッドから落とされそうになるのを堪える。


澪「本当に律は自分勝手だな」

律「ごめんな?」

澪「そんなこと言って、直す気無いんだろ?」

律「バレたwwwwww」

律「でもさ、好きな子にはワガママ言いたくなるんだよ」


澪、大人しくなったwwwwww
絶対照れてるwwwwww


澪を抱きしめてると、ほどなくして眠気がやってきた。
ずっと寝不足だったから、久しぶりにぐっすり眠れそうなきがs……zzzzZZZ


154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:27:56.56 ID:ypdOa8j/0

翌朝。


澪「律。律。りーつー。……。律!! コラ!! 起きろ!!」

目を覚ますと、目の前に澪しゃんのお顔があった。

律「ちゅうううう」

澪「やーめーろー!!」

澪「私、そろそろ準備しないと間に合わなくなっちゃうから、律、そろそろ離して?」


あれ、澪しゃんを抱っこしたまま寝ちゃったのか。
私は澪を抱きしめる手に力を入れ、さらにギュッと抱きしめた。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:28:41.35 ID:ypdOa8j/0

律「ヤダ。離したくない」

澪「でも、遅刻しちゃうから。また、今度な?」

律「……」

澪「……律?」

律「行くな。彼氏の所になんか行くなよ」

律「一緒に居よう。ずーっとこうしてさ、今までと変わらない生活を」

律「恋人として、私と一緒に過ごしてくれませんか?」


あれ? 反応が無いな。
恐る恐る澪を抱きしめる力を抜き、私の肩に埋めている澪の顔を肩から離した。
澪は、大粒の涙をボロボロとこぼしていた。

156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:29:17.17 ID:ypdOa8j/0

澪「私、律の隣りに居ていいの?」

律「居てくれなきゃ困る」

澪「私、私なんかでいいの?」

律「澪じゃなきゃダメだ」

澪「本当に?」

律「澪」

澪「騙してない?」

律「みーお」

澪「からかってない?」

律「澪!」
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:29:53.27 ID:ypdOa8j/0

澪「だって、だって、律、私のこと、好きじゃないんでしょ?」

律「好きだよ」

澪「え? 聞き間違いかな? 今何て言ったの?」

律「愛してるYO!」

澪「チャラい!!」

律「冗談だってwwwwww」

澪「え? 冗談? やっぱり騙してたの?」

律「違う違う! そっちが冗談じゃない!」

158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:30:30.85 ID:ypdOa8j/0

律「ふざけてごめん。ホラ、私も照れくさかったからさ。」

律「もう一回、今度はちゃんと言うから聞いててね」

澪「うん」

律「澪」

澪「は、はい///」

律「澪が笑ってると、私まで楽しくなっちゃうんだ。」

律「私がいつでも笑わせてあげる。」

律「だからさ、ずっと私の隣りで笑っててよ。」

159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:31:18.21 ID:ypdOa8j/0

澪のお母さんが澪の笑顔を守るなら、
私が澪を笑顔にするから。


律「澪、大好きだっ!」

澪「律……。ごめん、録音するからもう一回言って?」

律「ムリムリムリ!!」

澪は笑った。
そして、

澪「律、愛してるよ」

律「んなっ!? なあああああああああ!!!///」


悔しい。
恥ずかしくて愛って言葉使わなかったけど、先に使われてしまった。
でも嬉しいからいっかwwwwww

160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:32:05.28 ID:ypdOa8j/0

澪「じゃ、私、でかけてくるな」

律「えええええええ!? さっそく浮気!?」

律「いや、まだ彼氏と別れてないからこっちが浮気なのか!?」

澪「いや、歯医者さんに行くんだけど?」

律「へ?」

澪「あの……昨日言おうと思ってたんだけど、律が話を遮るから言えなくて。」

澪「えっと、私、彼氏、いないんだ」

161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:32:40.56 ID:ypdOa8j/0

律「えーと。うん。うん? え?」

澪「だから、彼氏はいないんだってば。あれは嘘だったの!」

澪「だって、そうでもしないと律の隣りにいさせてもらえなかったでしょ?」

律「わあああああああああああ!!!!」

律「騙されたああああああああ!!!!」

律「でも嬉しいいいいいいいい!!!!」

澪「うるさいっ!!」


朝っぱらからゲンコツ喰らったwwwwww
痛いwwwwwwでも幸せすぎるwwwwww

あ、澪が笑った。
ホラね。
この笑顔を見ると、私も楽しくなっちゃうんだ。

162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:33:13.64 ID:ypdOa8j/0

澪「あ、そうだ、律。前に告白できなかったから、私からも告白していい?」

律「どーんと受けるから、言ってみるがいい!」

ベッドから降りると、机の引き出しから手紙のようなものを持ってきた。

澪「律のために詩を書いたんだ。聞いてくれ!」


出たーーー!!! 痒くなるポエムーーー!!!
りっちゃん当たったwwwwww
澪のことなら何でもわかるんだぜ!


終わり

163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:34:35.32 ID:ypdOa8j/0
以下、おまけを書きます。

映画のネタバレが少々含まれていますので、
ダメな方はスルーでお願いします。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:35:06.81 ID:ypdOa8j/0
おまけ

トンちゃん視点


ある日の部室

カップが俺の水槽の中に沈められた。
カップにはそれぞれ、ヨーロッパ、ドバイ、ロンドン、温泉と書かれていた。

俺は泳いだ。

しかしみんなに八百長がバレてはいけない。
俺はなるべく自然に見えるように、一生懸命演技しながら泳いだ。

そして、
ロンドンと書かれたカップに触れた。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:35:33.71 ID:ypdOa8j/0

澪「ロロロロロ……ドンドン!!」


澪ちゃんの笑顔を見て、りっちゃんが笑った。
俺の恩返しが達成された瞬間だった。

幸せになれよ、お二人さん!


166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:36:40.92 ID:ypdOa8j/0
本当におしまいです。

お目汚し、失礼ました。
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 11:37:55.19 ID:ypdOa8j/0
やべ、字間違いwwwwww

失礼しましたwwwwww
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 13:15:26.14 ID:y+oh9bmwo
よかったよ
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 13:31:54.98 ID:OTIIRAWsP
ちょいちょい台詞に違和感あったけど良かったで
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 14:41:11.29 ID:igRENDmH0
おつー
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 15:25:45.84 ID:61AtCVhv0
よかった。二人が結ばれて本当に良かった
久々にいい律澪が見れたよありがたう
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/07(土) 23:44:07.50 ID:KSDfhj3eo

このりっちゃんの語りとテンションどっかで...

あずにゃん可愛い
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 23:45:49.28 ID:eAoS7jwSO
SS全盛期の律澪はこんなんが多かったな
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