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P「学生生活でもするか!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/07(土) 11:56:46.69 ID:a9ba1g2AO
※転載禁止※

VIPより移行してきました。

元スレはログ速さんの
http://m.logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1333412141/1等で御確認下さい。

765プロダクションのプロデューサーが、ギャルゲ主人公人生を謳歌する物語です。
設定の都合上、極度のキャラクターの人格崩壊が多々見受けられますので、苦手な方は遠慮なさって下さい。

書きたい時、書ける都合が合った時に、書きたいようにながらが続いていきます。
極端な不定期更新になりますので、どうか永い永い眼で御付き合い下さいますよう、宜しく御願い致します。
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/kako/1299631075

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1333767406(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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=^・ω・^= ぬこ神社 Part125《ぬこみくじ・猫育成ゲーム》 @ 2024/03/29(金) 17:12:24.43 ID:jZB3xFnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711699942/

VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711673687/

小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1711622906/

満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/04/07(土) 12:01:50.93 ID:FuZa6+5v0
キター?
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 12:02:39.38 ID:8yax7HJXo
待ってる
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/07(土) 12:05:44.55 ID:HUlg63yQo
期待してる
美希を幸せにしてやってくれっ!
5 :sage :2012/04/07(土) 12:10:25.73 ID:FuZa6+5v0
たのんます
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 12:10:57.20 ID:V5D/+yIDO

これで保守いらなくなったな。気を楽にして書いてくれ
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/07(土) 12:13:52.20 ID:EXS30hAc0
荒らしに気をつけろよ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) [sage]:2012/04/07(土) 12:15:44.88 ID:Qd3GRfYzo
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/07(土) 12:16:14.61 ID:Ah2UTmRq0
期待してるぞ
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/04/07(土) 12:16:40.84 ID:puRdAYX40
引越し支援
初カキ
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) :2012/04/07(土) 12:19:55.55 ID:ltN5Kxvh0
完結まで見続けるぜ
頑張って
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 12:24:58.51 ID:8bp/E2FIO
ゆっくり行きましょう
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/07(土) 12:29:12.65 ID:EXS30hAc0
前スレ>>1000とったど〜
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/04/07(土) 12:29:31.07 ID:MDqnFR+eo
うし
期待してるぞ
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/04/07(土) 12:29:41.20 ID:sn3uZkvO0
期待
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/07(土) 12:31:30.98 ID:I28L9UkW0
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) :2012/04/07(土) 12:32:05.39 ID:CJY0OD7d0

プライベートPの活躍を期待している
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/07(土) 12:40:27.55 ID:kbrdJIKH0
完結するまで応援してる頑張ってくれ!
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 12:50:50.33 ID:ri2XCre1o
ここ荒し多いから注意
まあほとんどかまってちゃんだからスルーが正解
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 13:01:01.79 ID:AcXw558Fo
ss速報は>>1以外はsageなきゃ怒られるぞ
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/04/07(土) 13:06:06.52 ID:BNv/Wpazo
頑張れ〜
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 13:20:59.56 ID:HLGm/m/Xo
sage進行で
あと保守し無くても落ちないよ
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/07(土) 13:55:00.96 ID:WZorNBZ3o
できれな最初から頼む
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/04/07(土) 13:56:19.27 ID:QXvx4uzeo
一応の設定がこれか

曲がり角でぶつかった転校生:春香
別クラスの合唱部の生徒:千早
困っている所を助けた後輩:雪歩
親友の妹の友達:やよい
親友の妹:伊織
腐れ縁の友達:真
委員長:律子
近所のお姉さん:あずさ
田舎に住んでる従妹:亜美
田舎に住んでる従妹:真美
幼馴染み:美希
義理の妹:響
許嫁:貴音
担任の先生:小鳥
校長:高木
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 14:43:44.76 ID:qptfL+AB0
期待
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/04/07(土) 14:44:30.81 ID:IKJFgFlL0
見つけた
C
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/07(土) 15:09:22.80 ID:HUlg63yQo
支援と保守はいらないあとsageろ
こっちでは>>1が投下してる途中にレスすると叩かれることもあるぞ
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 16:41:39.33 ID:xlErJ7iSO
一回下げるか
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 16:57:59.61 ID:9Kd2HXU3o
>>28
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/04/07(土) 17:42:17.75 ID:l1t0WVxMo
期待
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 21:20:45.39 ID:8bp/E2FIO
待つわ〜
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/04/08(日) 01:03:43.95 ID:WJq6jHW+0
まだー
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/08(日) 01:04:34.77 ID:2zIfdbA4o
自治厨は無視していいよ>ALL
黙って支援するのが紳士
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 01:19:20.84 ID:s5nXcyizo
お、おう…
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) [sage]:2012/04/08(日) 01:27:24.99 ID:qXrvNDpRo
sageろ
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 02:04:48.08 ID:WlW2TaVT0
>>33
ここは支援いらん
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/08(日) 03:39:41.16 ID:QGQTquzro
sageない子はゆきぽにケツの穴掘ってもらうからな。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 03:41:50.14 ID:2LY9oLbAo
そんなこというとあえて上げるやつ出ちゃうぞ
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 03:53:17.60 ID:dHml2SHDO
とにかく期待してるぞ
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 05:29:48.45 ID:p44MM0y5o
放置あるで
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/08(日) 09:45:03.59 ID:E4gXPbnZo
主はまだなのか…
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/08(日) 09:55:00.91 ID:gsSjVSfY0
まだー?
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/08(日) 10:31:40.09 ID:2ELSsuJXo
ここはゆっくりやるところだから落ちつけ
あとさげろ
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 11:12:39.14 ID:IoXIoKcIO
落ち着け…ゆっくりやると言っていたんだ…あんな安い挑発に乗るな…うおおおおおおお!!
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/08(日) 11:35:51.21 ID:o9KP3XO5o
>>44
熱いなww
俺も燃えてきたああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/08(日) 11:39:48.07 ID:FwRSadJAo
数か月放置とか普通にあるところだからなあ
やっぱりこっちにくるとこうなるよ
気長に待つしかないさ
47 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 12:36:30.47 ID:fiEkINHAO
P「……キミは、合唱部が無くなってもいいのか?」

千早「よくはありません。…でも、私には部員を集めることができませんから」

P「どうして?」

千早「歌うつもりが無い人を、“歌ってください”と勧誘することに意味があるのでしょうか」

P「それは…」

千早「自分から入ろうとしない人を無理に誘って歌わせても、きっといい結果にはならないと思います」

 千早の言いたいことは、わかる。
 一時の興味だけで入られても、千早にはあまり嬉しくないことなんだろう。

千早「丁度、去年までいた先輩方がそういった経緯の人達でした」

P「先代の部長たちが?」

千早「入学したときに合唱部の見学に行った際、当時の上級生方に半ば無理矢理な入部を勧められたと言います。練習には参加するものの当然身は入らず、楽しくもない部活動に学生生活の時間を割かなければならなくなった、と」
48 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 12:46:08.92 ID:fiEkINHAO
 …小鳥さんから言われた「無理な勧誘をする部」と言うのは、合唱部のことだったのだろうか。

千早「上級生方も、歴代コンクールで受賞を続けていた部だったから、躍起になっていたのかも知れないですね」

P「誉められたことじゃないけどな」

千早「──ですがそんな上級生方も、3年生になったら受験が忙しく、部活動が疎かになってしまったようです」

 部活よりも受験か。
 今の世の中、仕方が無いことなのかも知れないけれど……あまりに身勝手だ。

千早「上級生方は、部活動を先輩方に任せて隠居。でもたまに覗きに来ては、成果の上がらない先輩方を叱咤してストレスの解消をしていたみたいですね」

 うわぁ……なん、というか…。

P「えげつないな」

千早「そうおもいます」

 淡々と語る千早だが、その表情は険しい。

 怒っている、と言うよりは、悲しんでいるように見えるけれど…。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 12:54:31.94 ID:46wI/EMco
お!来たか!
50 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 13:00:57.32 ID:fiEkINHAO
千早「先輩方は、上級生方のやり方に反発してか、一切新入部員を勧誘しなかったそうです。活動そのものも自粛して、自ら入部を希望する人も集まらないよう配慮して」

 話を聞いていると、なんだか段々と先代たちへの印象が変わってくる。

千早「そのことで上級生方に強い叱責を受けたこともあるみたいですが、既に部活動の主導権をもっていた先輩方は、頑なに態度を変えずにいたようです」

 ──これは、俺が壊してまで嫌った『生徒会』の「腐敗した体制」と同じことじゃないか。

千早「無理に勧誘をして、“自分と同じ子ような子はつくりたくない”と、先輩方は常々言っていました」

 先代の合唱部たちは、もう戦っていたのか。
 後輩に楽しい学生生活をおくって欲しくて、自らを捨ててまで「腐敗」と戦ったのか。

千早「去年になって、私が入部したことは、先輩方には予想外だったみたいですけど」
51 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 13:34:24.19 ID:fiEkINHAO
P「……だから、部員は勧誘しない?」

千早「はい。私自身は、歌を歌えればそれで良かったんですが。……そうまでして自分を貫いた先輩方の行為を無駄にすることは、私には出来ませんから」

 先代たちのことを思い出しているのか、千早の表情が和らぐ。
 きっと、千早は先代たちに優しくしてもらったんだろう。
 自分の好きな「歌の歌える場所」を、先代たちのためにこのまま廃部にしてしまってもいいと思えるくらいに。

 それはとても優しい考えで、俺自身、千早がそんなに良い先輩に出逢えたことが羨ましくすら感じる。

 ……でも。

P「そうして廃部したら、千早はどうするんだ?」

 千早はさっき、「私には歌しかありませんから」と言った。
 なら、その千早から「歌」を奪ってしまったらどうなるんだ?
 そうして行き場を亡くしてしまったら、それは先代たちが危惧した「かわいそうな後輩」と同じことになるんじゃないのか?
52 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 14:03:54.46 ID:fiEkINHAO
千早「……先輩方と、同じようなことを訊くんですね」

 初対面の相手としてはかなり踏み込んだ質問だったが、千早はとくに気にしていないようだ。

千早「大丈夫。歌える場所は、どこにでも在りますから」

 それは、そうかも知れない。

 こんな建物の裏でも、鳥や猫や虫や木々が聴いてくれているかも知れない。
 でも、それは──

千早「ありがとう、心配してくれて」

 それはお前が我慢しなくちゃいけないようなことじゃないだろう?

P「あの、待っ──」

千早「くちゅん!」

P「──?」

 ありがとうと礼を述べ、踵を返して帰ろうとする千早。
 それを引き留めようとしたところで……なんか変なのが聴こえた。

 なんだいまの声。やたら可愛かったけど。
 なんかくしゃみしたみたいに聴こえたけど。

千早「……冷えてきましたね」

P「そ、そうだな」

千早「風邪をひかないうちに帰ります。では」

 毒気のようなものを抜かれてしまい、歩き去る千早の背中を追う気力は湧いてこなかった。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2012/04/08(日) 15:48:01.84 ID:lE1jEKEAo
おつ
54 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 16:17:55.25 ID:fiEkINHAO
P「うーん」

 あれから俺は家に帰り、夕食を済ませた後、リビングでソファーに身を沈めながら唸っていた。

響「にぃに、帰ってから“うんうん”しか言ってなくて気持ち悪いぞー」

 義妹の響はそんな俺の脚の間に腰掛けて、背を俺の胸に預けながら編み物をしていた。
 これから暑くなってくるのに夏場毛糸ってきつくないか?

P「寂しいのか?」

響「別にー」

 最近構ってあげてないから寂しがってるのかと思いきやそうでもないらしい。

響「にぃにはこうして傍にいてくれるから、寂しくなんてないさー」

P「……よしよし」

響「な、なに?」

P「今度おやつ奢ってやろう」

響「え、なんで? ほんとに?」

P「響がいい子だから」

響「辛いのはいやだぞ?」

P「ひねり揚げでも買ってくる」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 16:28:35.55 ID:+niNiq7IO
期待
56 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 17:06:10.62 ID:fiEkINHAO
P「なぁ響?」

響「んー?」

P「大好きなモノがあるのに、大切な友達のためにソレを諦めなくちゃいけない。そうなったとき、響ならどうする?」

響「………」

P「……響?」

響「…にぃに、それ何について訊いてんの?」

P「いや、ちょっと学校で友達が悩んでてさ……どうした?」

響「…美希とのこと言ってるのかと思ったぞ…」

 ?

P「何で美希の名前が出てくるんだ」

響「バカなにぃには知らなくていいぞ」

 なんだと。

P「それで…どう思う?」

響「うーん、その“大好きなモノ”にもよると思うんだけど」

P「じゃあ、響がいま思いつく“大好きなモノ”で考えてくれ」

 響だったら、家族のペットたちとかだろうか。
 響は優しいから、相当悩むんでなかろうか。

響「諦めないぞ」

P「即答!?」

響「諦めたらすっごくすっごく後悔する。だから自分、“大好きなモノ”を諦めたりなんかしないし、できないぞ」
57 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 17:17:02.36 ID:fiEkINHAO
 響もちゃんと、確固とした考えをもっていたのか。
 なんというか、兄としては嬉しい感じだ。

P「…ありがとう。変なこと訊いてごめんな?」

 いいこいいこ。

響「ん……悩みは解けたのか?」

P「いや、まったく。でも、」

響「だぞ?」

P「俺が1人で考えてても仕方がないことだってわかった。だから明日、他の友達にも訊いて参考にしてみるよ」

響「……あんまり根をつめすぎちゃダメだぞ? にぃにいつもそうやって抱え込んで、自爆しちゃうんだ」

P「そ、そうだったか?」

 そうは言われても自覚が無い。後悔なんてあまりしないから、自爆した感覚が無いのかも知れない。
 そんなに綱渡りなのか俺の人生。

響「そうだぞ。去年だって何か学校のことでずっとうんうん唸ってた」

P「あー……」

 まぁ、去年はなぁ…。

P「──まぁ気分転換になったよ。ありがとな」

 もう一度頭を撫でてから、響を退かして立ち上がる。
 部屋に戻ろう。

響「おやつ忘れちゃダメだぞー」

P「明日なー」

響「………」

響「……ばかにぃに」
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 18:10:50.67 ID:zNj6tPXco
響はかわいいなあ
59 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 18:21:57.19 ID:fiEkINHAO
美希「話しは聴かせてもらったの」

P「なにそれ怖い」

 部屋に帰ると美希が俺のベッドの上に陣取ってました。
 おかしいな、たしか昨日は鍵を掛けたような気がしたんだが。

P「窓渡りは危ないから止めろって言ってるだろう?」

美希「人が落ちる隙間も無いのに危険なんてないの」

P「それでもだ」

美希「それよりハニー、悩みがあるのよね?」

P「ん、まぁ」

 響との話を聴いていたって言うのなら、この際美希にも訊いてみようかな。

美希「“ミキと結婚したら学業が疎かになること”に悩んでるんだよね」

P「どうしてそうなった」

美希「大好きモノ(学校)を大切なミキのために諦めなくちゃいけない……つまりハニーはミキと結婚して専業主夫になってくれるってことでしょ!?」

P「『友達の悩み』だとも言ったはずだけど」

美希「違うの?」

P「残念ながら」

美希「ミキ、ハニーと結婚できるならバリバリ働くよ? ハニーに不憫な思いなんてさせないよ?」

P「ありがとう。でもいまはそう云う話じゃないんだ…」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/08(日) 20:23:56.33 ID:QGQTquzro
結婚話か…貴音がどうでるか

61 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 20:41:04.22 ID:fiEkINHAO
美希「…話はわかったの」

P「それで、美希はどう思った?」

美希「その前に訊かせてハニー」
P「ん?」

美希「ハニーはその友達に、諦めて欲しくないんだよね?」

P「……うん。自己完結で友達が諦めて、悲しそうにしているのはみたくない」

 正直なところ、もう千早を説得することは出来ないと悟っている。
 1年間、先輩方の無念を感じて、あとは1日経つのを待てば、先輩方の無念を晴らせてあげられるのだから。

 如月千早は、優しい子だ。
 冷たい印象はあるけど、不思議と断言できる。

 優しすぎて、自分を[ピーーー]。

 死んだ自分を、泣くこともなく抱きしめてそれに縋る。

 「好きなことができない」という後悔ばかり押し寄せるだろう。
 それを、「先輩方の為だった」といつまでもいつまでも誤魔化し続ける。

 それはいったいどんな苦行だ。
 あの子は、そんな後悔を負う必要なんてないのに。
62 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 20:49:46.71 ID:fiEkINHAO
美希「ミキは、諦めちゃいけないと思う」

 響と同じことを答えた。

美希「…でも止められないんだよね? 諦めるのを、見てるしか出来ないんだよね?」

 俺の表情から読み取ったのか、美希は続ける。

美希「いまの話をミキはね、こう考えたの。『好きな人が別の人と結婚するのが決まった。じゃあミキはどうするか』って」

 …いやな例えだな。
 なんか聞いたら拙い気がする。

美希「答えは簡単だよ。『奥さんじゃなくてもいい』」

 ヒュウ! 女の子の口から出る言葉じゃないね!!

美希「それは、本当なら奥さんの方がいいよ? でも、それは“どうやっても無理なこと”でしょ?」

 ───。

美希「だから、ミキは別の道を探すの。ミキが欲しいのは『ハニーからの愛情』だから、“奥さんになる以外の方法”でそれを手に入れるの」

 わかった。

 美希の話の『好きな人』が『ハニー』にかわってるのは一時保留にさせてもらって、
 でも美希のくれたヒントから、俺の出来ることがわかった。
63 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/08(日) 21:20:33.34 ID:fiEkINHAO
P「ありがとう美希!」

 喜びのあまり、美希の両肩を掴んで軽く揺さぶってしまう。

美希「み、ミキ、ハニーの役に立てた?」

P「立った立った! 本当に助かったよ! ありがとうな!!」

美希「じゃ、じゃあミキ…なにかご褒美が欲しいなぁ…」

P「──ご、ご褒美?」

 ご褒美って、何かあげればいいのか?
 自慢じゃないけど、美希がいま何を欲しがってるかなんてわからないぞ? この間買い物に行った時は美希自分で買ってたし…。

美希「ミキが欲しいのはね…?」

 ──瞬間だった。

 俺が美希への返答に困り逡巡していた、わずかな隙に。

 チュッ。

P「──なっ…!」

美希「えへへ、今日はほっぺたで許してあげるね」

 すぐに体を離して、踊るように窓枠へと移る。

美希「今度はハニーからしてね? …おやすみっ!!」

 そうして嵐のように、窓から窓へと伝い自分の部屋へ帰っていってしまった。

P「今度っていつだよ……」

 あまりのことに処理が追いつかず、そんなことを呟いてしまう。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/08(日) 21:30:38.99 ID:830Q8CKDO
目欄にsagaで殺すも書ける
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/08(日) 22:27:43.80 ID:QGQTquzro
そういえば876プロはどうするん?
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 22:29:12.37 ID:PIl8nwwU0
876も出るのか?
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/08(日) 22:31:49.67 ID:OkzL6gn8o
876は考えてなかった
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/08(日) 22:52:07.64 ID:e1YkrBYN0
このスレが生きがいなんで頑張って下さい!
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/08(日) 23:50:40.10 ID:dUyj5byvo
まだか
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/09(月) 00:12:07.14 ID:LHtd2Vm70
ちーたんかわいいよちーたん
>>1がんばれ、おやすみ。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/09(月) 01:18:15.74 ID:HKxxDjNd0
いいものですなぁ…
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/09(月) 03:32:04.94 ID:ogkuAfei0
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/09(月) 04:32:27.43 ID:r+TkDUJH0
期待
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/04/09(月) 07:39:48.62 ID:1M1wtPZB0
完結してくれ頼む
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/09(月) 12:22:01.55 ID:s44AC4bjo
まだかな
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 15:14:24.54 ID:hrPcWolIO
下げろっちゅーに
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/09(月) 16:00:13.61 ID:vUklwZylo
自治厨は氏ね
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 16:05:52.66 ID:Yiejt9eIO
この流れ、断ち切る!エアッ!エアッ!
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/09(月) 16:39:10.38 ID:+1zqCqKbo
キモいよお前…
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/09(月) 16:45:15.74 ID:260mjmgIo
別にお前が下げたくなきゃ下げなくて良いんじゃない?
ただお前がどう思われようが俺は知らん
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/09(月) 17:30:33.27 ID:utxjQmX0o
ライブ抽選キタ。
今年の運使い切った。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/09(月) 17:50:04.55 ID:vJBow7/Io
>>80
匿名掲示板で何言ってんのお前w
気持ち悪いよw
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/09(月) 17:54:31.81 ID:s44AC4bjo
いきなり荒れてるよ
これがss速報なのか
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/09(月) 17:58:29.90 ID:7OHQ4m2yo
どうせ厨房だよ
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/09(月) 18:01:32.72 ID:0Qp2HgZvo
単芝の時点で相当臭いけど喧嘩はお門違いだから>>1を待つことにするよ
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/09(月) 18:03:30.85 ID:oahw7Vezo
SS主がさっさと書けばこんなことにはならないのに。。。
待ちくたびれたよ。。。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 18:05:36.11 ID:C6/nyQrIO
>>1は俺たちと違って仕事で忙しいからなぁ。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 18:09:00.57 ID:sIcumkJQo
あげるから荒れるんだろ
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/09(月) 18:10:17.51 ID:7OHQ4m2yo
口調の時点で厨房だと気づけ
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/04/09(月) 18:11:36.09 ID:Gbh+8nhN0
うわ…
なんか荒れてる
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/04/09(月) 18:17:48.63 ID:CcrYUntk0
一日くらいは落ち着いて待てよ
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/09(月) 18:23:13.87 ID:utxjQmX0o
>>7

>>19
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 19:27:56.15 ID:wm6pBKZQ0
SS速報でさっさと書けとか・・・
頼むからこの程度の間で騒がんでくれ
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) :2012/04/09(月) 20:44:43.69 ID:ubo2/LfAO
わかった!!!!!!!
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/09(月) 20:57:40.89 ID:SOvuDBsQo
みんなー!!!騒いじゃダメだぞー!!!!!!!
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/04/09(月) 21:14:15.09 ID:kqjGqBcko
お客さん多過ぎだろ
落ち着けよ
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/10(火) 00:39:08.38 ID:+1VropPto
はい自治厨[ピーーー]ーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/10(火) 00:49:58.56 ID:33wzLMPjo
まだ慌てるような時間じゃない
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/10(火) 00:55:54.61 ID:atuwMqVPo
保守
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/10(火) 04:55:29.75 ID:R3so030Oo
まだかねぇ・・・
101 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/10(火) 06:37:30.67 ID:wOjXto4AO
ごめんなさい。
昨日は仕事が明けてその足で健康診断やら法務局やらと用事を済ませたせいで、書く余裕も無く爆睡してしまいました。

加えて、
本日は自分に新卒者がインターンにつきます故、いつもの様に仕事の合間に…という事が出来なくなってしまいます。

続きを待って下さっている皆様方には、関係の無いことで不快を与えてしまい申し訳有りません。

何卒今暫く御待ち下さい。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 07:05:30.58 ID:whK8Ggplo
きにせんでください
元々ここ週一ペースでもいいから書ける人の場所ですし
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/10(火) 07:13:25.74 ID:LX5Wm3fpo
荒らしは>>1が気にすることじゃないから大丈夫。
仕事頑張って。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/04/10(火) 08:20:13.79 ID:xI+osyc10
気長に待ってるよ
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/10(火) 09:23:11.93 ID:QCRFz7Zho
ここは数か月書けないとかよくあることだし数日書けないくらいなんてことないよ
何より現実が大事だ頑張ってくれ
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 10:02:05.25 ID:6DqWi4bIO
荒らしが嫌になってやめるのが本当に恐ろしいからな…
気長に、ゆっくりやってくれ
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/10(火) 11:26:26.64 ID:WzTqZ9cko
お前ら甘やかしすぎ
スレ主は早く書けよ
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 12:24:51.31 ID:53qsErVa0
甘やかしすぎじゃねーよ
何のためにここがあると思ってんだ


気長に待つからゆっくり書いてくればいいんだぜ
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/10(火) 12:38:48.80 ID:ShgXH6cjo
長屋はかまってちゃんだからスルーしろよ
俺も長屋だけど
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 14:44:23.60 ID:MPvlQojpo
書けないなら書くな
待っててくださいじゃねーだろ
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 16:00:58.33 ID:3Ntw5UbDO
案の定荒れててワロタ

私待ーつーわ
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/10(火) 16:05:58.04 ID:ByLLrMyQo
いつまでもまーつーわ
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/10(火) 16:07:30.59 ID:LX5Wm3fpo
>>1は何度かここで書いた事あるみたいだから、こうなるのは覚悟の上だろ。

vipから来た奴は早く書けなんて言わんし。荒らし君必死すなぁ。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 16:46:13.33 ID:WO5BRqy00
ゆっくりでもいいじゃん完結させてくれるなら
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/10(火) 17:39:09.61 ID:2sMdpy6Ao
>>113
句読点キモいから氏ねよ
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/10(火) 18:21:06.53 ID:jD4RAIif0
完結させてくれればおk
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/10(火) 18:43:37.90 ID:ciAzpWr2o
まだー????
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) :2012/04/11(水) 01:31:02.57 ID:92IA4TXAO
^^
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/11(水) 08:32:23.14 ID:/ESre7TIo
主はもう来ないのかな。。。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/11(水) 13:47:41.89 ID:BfnQc9aDO
ゆっくりじっくり書いていっていいよ
そのためのSS速報なんだから
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/12(木) 21:16:42.04 ID:mJEzLeX60
続きが気になる…
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/12(木) 22:11:57.73 ID:BasAl9QY0
待ってるぞ
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/04/12(木) 22:57:29.46 ID:LLSL1RGE0
リッチャンハ不機嫌デスヨ?
って同人読んだらテンションあがってキタ━(゚∀゚)━!
124 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/12(木) 23:45:08.82 ID:/lfdD6mAO
 翌日。

 晴香と真にことの説明をするため、いつもより若干早めに学校ついて待っている。

 …美希は今朝になったら何てことなかったみたいに普通の態度で接してきてくれた。

 正直、色恋沙汰に疎い俺にはありがたい限りだ。

 美希のことは好きだけど、まだ“そういう”好きじゃない。

 これから“そう”変わるかも知れないけれど、
 俺には、今は今のままが一番ありがたいんだ。

P「……意気地なねぇなぁ」

真「なにが?」

 おわ!?

P「おはよう真」

真「まっこまこり〜ん☆」

P「………」

真「………」

P「ごめん、俺はやく起きて学校いかなきゃ」

 ああ、明晰夢から起きるにはどうすればいいんだ。

 デスリターンでベースキャンプまで戻れるかな?

真「プロデューサー! これは現実だから! だから窓枠から足を退けて!!」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 23:46:49.72 ID:8vQBs8aMo
誰だよ晴香
126 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/12(木) 23:51:51.71 ID:/lfdD6mAO
P「ゴメン、取り乱した」

真「ちょっと可愛いことしただけであの態度はないよ…」

 あ…落ち込んでる…。
 しまったな、真が可愛い仕草を“俺に向けて”やったことに対してフリーズしたんだけど…。

 や、めちゃくちゃ可愛かったし。

P「めちゃくちゃ可愛かった」

真「ほっ、本当!?」

P「信じるか信じないかは、貴方次第です」

 このタイミングで可愛いと伝えても、胡散臭く感じるかもしれないし。

真「信じるよ! だってプロデューサーだもん!」

 “だって”とはなんぞや?

127 :>>125済みません… :2012/04/12(木) 23:59:05.31 ID:/lfdD6mAO
 そして待つこと30分弱。

 クラスは賑わってきたけれど、いまだ春香の姿は見えない。
 遅刻か?

小鳥「みなさん、おはよう御座います」

 HRを始めるために小鳥さんが来てしまった。
 春香…!

律子「起立」

 ガタガタ。

律子「礼」

 ガタガタ。

小鳥「…それでは出席を取ります。あいうえ男さん──」

 よりにもよって春香は呼ばれるのが早い。小鳥さんは仕事に真剣で、呼ばれた時に返事をしないと欠席扱いにしてしまう。
 万事休すか。
128 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/13(金) 00:09:31.21 ID:o10jkQIAO
小鳥「天海──」

春香「はいはいはいはいっ!! 天海春香です!」

 けたたましく、戸を開けて入ってきた春香は息を乱しながらも元気よく返事をした。

小鳥「春香ちゃん、戸はもっと静かに開けてね?」

春香「ご、ごめんなさい…」

小鳥「その様子だとずっと走ってきたようだけど……急ぎすぎても危ないんだから、事故とかには気をつけてね?」

春香「は、はい」

小鳥「それでは続けて──」

 ちょっとしたやりとりだけで許してもらえたようだ。

 遅刻ギリギリなことを怒るよりも、道中を急いだ事による貰い事故について怒るあたり、やっぱり小鳥さんは優しい人だ。

 やがてHRも終わり、土曜日の授業が開始される。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/04/13(金) 01:25:36.49 ID:FCs60nnJ0
意気地なねぇとはなんなんだ…

乙です
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 02:43:42.63 ID:0KuYVeAgP
あいうえ男wwwwww
かつてない酷いモブだwwwwww
131 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/13(金) 14:44:08.69 ID:o10jkQIAO
小鳥「それでは皆さん、楽しく週末を過ごして下さいね」

 ──帰りのHR。小鳥さんは連絡事項を伝え終え、生徒たちも挨拶ののちに下校をはじめる。

 俺は、春香や真と共にクラスメイトたちが居なくなるまで、教室に待機する。
 2人には、休み時間中に「残っていてくれないか」と話しをしておいた。

 1分もしない内に、教室には俺たちと小鳥さん、それに律子を加えた5人だけになる。

P「…悪い、時間を取らせて」

春香「何を言うんですか。私、プロデューサーさんから話しを聞かせてもらえるの、朝からすごく楽しみにしてたんですからね?」

P「え? なんで?」

真「そりゃあ、昨日別れたときに比べて、プロデューサーの機嫌が良さそうだから」

 機嫌が良さそう?
 いや、確かに実際機嫌は良いけど、そんなに見てわかるほどあからさまだったのか?

 なんか凄い恥ずかしいんだけど。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 15:09:56.13 ID:2oChbVWIO
おっ、主戻ったか、仕事乙
133 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/13(金) 15:15:25.64 ID:o10jkQIAO
春香「それで、何か進展が有ったんですよね?」

 春香が瞳を輝かせて尋ねてくる。

P「ああ。昨日、2人と別れた後に律子から決定的に有力な情報をもらうことができてさ」

 なにやら小鳥さんと話しをしていた律子が、俺の声が届いたのか視線を向けてきた。

 愛情の証にウィンクを投げたらものすごい気持ち悪いものを視るような目で見られた。
 投げKISSのほうがよかったのかな?

真「へーっ。それでどうしたの?」

P「いや、さらにその後、帰りの途中で『合宿部最後の1人』と偶然会うことが出来てな」

春香「ほっ、本当ですか!?」

真「ものすごい強運だね…!」

 幸運だった。
 俺はあの時律子から話しが聞けたこと、あの場所であの子と出逢えたことは良かったと思うし、
 響や美希という相談相手が居てくれたことも幸運だったと思う。
 お陰で俺は、『答え』が出せた。

 でもこの『答え』を実行するには、2人の力が必要だ。

 引き受けてくれるくれないは兎も角として、こうやって更に相談出来る相手がいることも俺にとっては幸運だろう。

 数多の偶然が重なった事に普段信じてもいない神様に感謝しながら、俺は2人に伝える。

 ことの顛末、そしてこれから“行いたいこと”を。
134 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/13(金) 15:24:04.24 ID:o10jkQIAO
うがあああああああああああああああ!!!!

久しぶりに書ける時間がとれたからポチポチ書いてたら誤字脱字が激しすぎて死にたいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!

合宿部ってどんな部じゃボケェェェェェェェェェエ!!!!


……済みません。まだまだ書きます。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 15:25:51.99 ID:nbbiWvvDO
合宿部…やらしい感じがするのはなんでだろう
136 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/13(金) 15:34:17.11 ID:o10jkQIAO
千早「………」

 体育館裏。

 土曜日ということもあり、午前中で授業が終わった今日は、まだ明るい内から如月千早の姿があった。

 今日が、部活動の大っぴらな勧誘が許される最後の日。

 今日の夕方までに4人──最低でも2人は勧誘できなければ、『合唱部』は同好会としての体も失う。

 ──でも、如月千早には勧誘する気が無い。

 そもそもとして、部を存続させるつもりが無い。

千早「……ふぅ」

 では、なぜ彼女は“部活動”を続けているのだろうか。

 部を残すつもりは無いのに、なぜその部に縋るようなことをするのだろうか。

 これは彼女自身の問題で、如月千早本人理由は理解している。
 けれど、この問題は解決出来ない。

 先輩方には感謝をしていた。
 廃部を誓っていたところに入ってきた如月千早を受け入れてくれて、廃部への理由を語ってなおも、

 歌が唄いたいという彼女のために、最後の日まで『合宿部』として一緒に活動してくれたのだから。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) [sage]:2012/04/13(金) 15:41:51.78 ID:upxaRMP/o
合宿部クソワロタ
138 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/13(金) 15:47:57.34 ID:o10jkQIAO
 「部活動とは、すべてに於いて生徒たち主導で行うものとする」。

 高木校長が、何よりも大事にする校則の一つ。

 例えどれほどの実績を残した部であっても、生徒が「不要」とすれば存続は難しい。

 だから千早は、こうして合唱部最期の時を待つ。

 彼女の願い。

 「歌がうたいたい」。

 それを叶える場が失われるのを待つ。
 彼女には、我が儘を貫けるほどのチカラがない故に。

 自然と、口から紡がれる歌があった。

 先輩方とつくった歌だ。
 先輩方が、如月千早のために遺してくれた歌だ。

 誰も観客はいない。
 草に、木に。猫や鳥や虫が。目の前に在るものすべてが観客であるとして。

 ──「眠り姫」が、これから眠りにつく合唱部へのrequiemのように響き渡る。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/13(金) 15:57:27.32 ID:SwxV2ixro
guilty…おかえりー
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/13(金) 16:22:24.17 ID:lhOapL22o
まだまだ書くんだろ?
早くしなさい
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/04/13(金) 16:26:39.83 ID:5i9/0LK50
ここから合唱部(アイドル)集めか?
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 16:40:34.12 ID:2oChbVWIO
ここからプライベートさんが合宿部を建て直すのか…
胸が厚くなるな(千早的意味で)
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 17:28:59.30 ID:+EkLd6Pj0
>>1乙!
これからもこのくらいのペースでもいいから書き進めてね
144 :くそぅ…たまの休みにお遣いを頼まれるだなんて…!! [sage]:2012/04/13(金) 18:32:24.58 ID:o10jkQIAO
 パチパチパチと。
 千早が唄い終えた静寂を破いたのは、春香の拍手だった。

千早「あなた達…!?」

 まさか聴かれていただなんて思っていなかったのだろう。
 照れてはいないが、彼女の表情からは困惑しているのが見て取れる。

春香「すごい凄いすごい! 千早ちゃんて本当に歌上手なんだね!」

 しかし春香はそれを知ってか知らずか、足早に千早の傍までいくと手を握りしめブンブンと振る。

P「千早…ちゃん?」

 話しかけようとして、一瞬なんと呼んでいいのか悩み、ついちゃん付けに。

千早「…ちゃんは、よして下さい」

 間違いだったようです。 

千早「あの…これは?」

P「いや、盗み聴き(?)するつもりはなかったんだけど…ここに来れば千早に逢えるとおもって」

真「僕たちは、この人についてきたんだ」

 いま体育館裏には俺、春香、真、千早の4人がいる。

 千早と話しをしに、2人を連れて体育館裏まで来たら、ちょうど千早が歌いたい出すところだったので傍聴していた次第。

千早「私に…何か用ですか?」

P「ああ」

 用件は簡単だ。

 如月千早。
 君から歌は奪わせない。
145 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/13(金) 18:47:09.93 ID:o10jkQIAO
P「やっぱり合唱部は、このままなのか?」

千早「…はい。もう、決まっていることですから」

 やはり彼女は揺るがない。
 元よりいきなり他人が横から口を挟んで揺らぐほど、ぬるい決意ではないのだろう。

P「じゃあ、千早は今日で合唱部じゃなくなる…んだよな?」

千早「…しつこいですね、ですから昨日からそう言っているはずですけど」

 よし。ならその意思は尊重しよう。

P「──俺、部を立ち上げることにしたんだ」

 そして、千早のもう一つの意思も救ってみせよう。

千早「……はい?」

P「春香と、真と、俺で。部活内容は……“観客の前で歌を披露する”ってところか」

千早「え?」

 お。まだ理解が追いついていないな。
 なら畳みかけるとしよう。

P「でも俺は部長兼マネージャーみたいなポジションだから、そうなると歌えるのは春香と真だけになるんだよな」

真「歌だけじゃなくて、踊りなんかもやっていきたいよね」

千早「な、なにを言って…」

 段々と、状況を把握してきたらしい千早は、明らかにさっきより困惑している。無理も無いけど。

P「まぁ、歌が好きな人が、歌が好きな人と趣味で始める同好会みたいなものだと思ってくれればいいよ」
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/04/13(金) 18:52:02.06 ID:xZtWMzNso
そこで合宿部か……
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県) [sage]:2012/04/13(金) 18:54:55.00 ID:PwZUjgRQo
お前らもういじめてやるなよwwwwwwww
148 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/13(金) 19:00:31.85 ID:o10jkQIAO
千早「なんで…そんな話しを、私に?」

P「んー……よし、単刀直入に言おう。…2人とも」

 千早のような人相手に、外堀から埋めるような手は嫌われ兼ねない。

P「──如月千早さん」

千早「はい…」

P「俺たちと!」

春香「一緒に!」

真「部で汗を流しませんか!」

 並んで手を差し出す。
 もちろん3人とも、爽やかな笑顔で。

千早「……どうしてです?」

P「なにがだ?」

千早「どうして……そんな、私を誘うようなこと…」

 さすがにこの部が千早のために考えたものだと言うことはバレてるらしい。

 思いつきは、単なる救済処置のつもりだった。

 でも2人に話したら、思った以上に食いついてきてくれた。

 そしてトドメと言わんばかりに、さっきの千早の歌だ。

 2人とも…とくに春香は、多分入ってくれるまでゴネかねない勢いを感じさせる。

P「それは…ほら。合唱部が無くなると、歌関係の部が無くなるじゃないか」

 先代方としては、それが狙いなのかも知れないけれど。

P「でも、千早みたいに“自分から入りたい子”が入れる部は、在ったほうがいいと思ったんだよ」

 無理な勧誘なんかしない。
 入りたい人が入って、楽しめる人だけ楽しめばいい。

 それが、学生生活の部活動ってものだろう?
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/13(金) 19:02:12.75 ID:y5hZIURfo
部活が作れなかった俺には眩しすぎるぜ
150 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/13(金) 19:14:43.63 ID:o10jkQIAO

千早「……そこは……」

P「うん?」

 暫くの沈黙のあと。

 俯いたままの千早が、ポツリポツリと言葉を漏らした。

千早「そこは……私が歌を唄ってもいいところですか?」

P「いいも何も、コッチから誘ってるわけだしな。唄ってくれなかったらむしろ泣きたくなる」

真「プロデューサーが泣いてるところなんて想像したくないね」

P「イケメンが泣いてるところってやっぱりギャップがあるか?」

真「泣いてそれ以上顔が歪んじゃったら保健所に連れていかれちゃうよ」

 ほっとけ。

 ……わりと本気で傷付いたんですけど?

千早「……ふふ」

 お? ちょっと笑った?

春香「あの…千早さん、どうかな、一緒に部活…してくれませんか?」

 春香がグイグイと攻め続けてる。
 これは惚れたな。千早の歌に。

千早「……そう、ね……合唱部は、先輩方の言うとおりこのまま終わらせるのだから……」

 うん。そうだ。

 先代の合唱部長さんたちも、きっと喜んでくれるんじゃないかな。勝手な、希望的観測だけれど。


千早「──如月千早です。宜しく、御願いします」
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 20:54:27.20 ID:D0lWb0mSO
はい
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/14(土) 01:44:34.97 ID:Rykhj9uz0
盛り上がってキタぁぁぁぁぁぁぁ!!
153 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/14(土) 07:26:57.61 ID:mWzAmJoAO
P「よし」

 取り敢えず話はまとまった。
 あとは……千早が心変わりしてしまわない内に、部の申請書を提出することにしよう。

 部長が俺で、あとは春香、真、千早…っと。

P「“部”にするにはあと1人足らないか」

春香「“同好会”でもいいじゃないですか。私たちが活動出来るなら」

 うん。それもそうだ。

 心当たりが無いわけでもないけど、多分無理だろうしなぁ…。

真「あれっ? そういえば、この集まりはなんて言う名前なの?」

P「名前?」

千早「部ではないにせよ…どのような活動を行うのかが伝わるような、そんな名前が必要だと思います」

 ああ、“合唱”部とかの名前か……そう言えば全然考えてなかった。どうしよう。

P「募集します」

真「ぷりんせす部(同好会)!」

P「それはちょっと…」

千早「……ミューズの奇跡同好会…」

P「うーん…? もう少し解りやすい方が良いかなぁ…」

 ミューズって詩とか芸能とかの神様だよな?
 活動内容には関係あるけど、一見じゃ解りづらいな…。
154 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/14(土) 07:44:46.20 ID:mWzAmJoAO
春香「765歌劇団なんてどうですか?」

 お?
 意外と良い線いってるんじゃないか?

P「そうだな…演劇をやるわけじゃないから少し見送ろう。でも、そういう発想でいいと思うぞ」

 俺も自分でも考えなきゃな…。

 歌って……踊って……出来たら舞台でトークなんかもして……。

 …あれ?

 これってもしかして、やることは『アイドル』と同じじゃないか?


 アイドル、アイドルかぁ……じゃあこの部はアイドルが集まって活動する部になるわけだから、なるほどそうすると──

春香「765…」

P「プロダクション!」

 そうだ。

 俺はプロデューサーなんだから。春香たちをプロデュースするのもいいかも知れない。
 実際、“部長兼マネージャー”ってそういう仕事な気がするし。

P「俺たちはそう、『765プロダクション』だ! この学校で一番の、トップアイドルを目指そう!」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/14(土) 07:47:23.03 ID:OKGryVNyo
765プライベート だ!
156 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/14(土) 08:15:48.56 ID:mWzAmJoAO
真「あ、アイドル…?」

春香「私たち…がですか?」

P「応とも! 学校で行われる様々なイベントに舞台を設けて、そこで歌や踊り、トークなんかを披露する! …ほらっ、テレビで見かけるアイドルたちと、やってる事に大差はない!」
千早「…上手くいくでしょうか」

P「上手くいく! 俺がさせる! この部にはこんなに綺麗どころが集まっているんだから、近隣学校一のトップアイドル不可能じゃない!」

 上手くやれば、町内のイベントなんかでも活躍できるかも知れないな。

 おおぉ…!
 予想もつかない未だ見ぬ未来にテンション上がってキター!!

春香「プロデューサーさんが、私たちを育ててくれるんですか?」

P「ん? もちろん! 本物のアイドルにしてやることは出来ないけど…それでも、有意義な学校生活になることは約束するよ」

真「へへっ、なんかワクワクしてきたなぁ…! 『アイドル』っていうなら、きっと女の子らしいこといっぱい出来るはずだし…!!」

千早「私は…アイドルに興味はありませんけど……唄える機会があるのなら、頑張ります」

 よしよしよしよしっ!!

 みんなの了解も得たところで、さっそく申請書の提出だぁ!
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/14(土) 10:44:30.47 ID:vBaHOf5DO
俺も学生時代にプライベートさんみたいな行動力が欲しかったぜ
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/04/14(土) 11:04:53.31 ID:644s0Uz1o
俺も部や仲間と頑張りたかった
あの先生さえいなけりゃ…
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/14(土) 13:02:25.38 ID:IQVBpbLN0
ゲーム化はいつですか?
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/15(日) 01:25:48.41 ID:wuLo+LFA0
続きがきになるな
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/15(日) 02:59:42.39 ID:8JmviBHAo
このソフトはどこ行ったら買えますか?
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 08:30:16.77 ID:+hksYGsRo
エロゲだとここら辺でOPだな
163 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/15(日) 10:00:46.24 ID:taVTi2YAO
 俺も千早も春香も真も、ほとんど初対面なわけだから、今日はこのまま親睦会も兼ねて飯を食べに行くことになった。

 響に「昼飯食えん」とメールをして、今日中に申請書を出しておこうと、いまは1人ある人物を探して足早に校舎を徘徊している。
 みんなが校門前で待っていてくれているので、出来るだけはやく会いたいのだけれど…。

P「お」

律子「?」

 目標捕捉。
 律子は今日も委員会の打ち合わせだったのか、周りに他のクラスの委員長(と思われる人物)たちを連れながら、校舎を移動しているところだった。

P「おーい律子ー!」

律子「………」

 ……おや?
 無視された?

P「律子ー!」

 ……またも無視。
 声が届いてないと言うことはないと思うが……ふむ。

P「律子さーん!」

 歩み寄りながら呼びかける。
 何故かって? 嗜虐心が擽られたからさ。

P「律子ちゃーん!」

 周りの人たちがヒソヒソと話している。「呼んでるよ?」的な。

P「顔真っ赤なりっちゃんかわいい」

律子「シバきますよ!?」

 目の前まできて呼んであげたらもの凄い怒られた。

 事実を述べただけなのに…。
164 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/15(日) 10:19:26.80 ID:taVTi2YAO
律子「…それで、なんの用なんですか?」

 他の人たちには少し外してもらって、階段の踊場で2人で向き合う。

P「それがさ、色々あって俺部を立ち上げることにしたんだよ」

 鞄から申請書を取り出して渡し、
 律子はそれをやや目を細めて見て、記入されていることを一つ一つ確認した。

律子「…『765プロダクション』って…会社でも立ち上げるつもりですか?」

P「名前は、その、ノリみたいなものだから」

 でも会社か……。
 悪くない選択肢だ。

律子「この人数ですと、部にはならないので同好会止まり。部屋は貰えるかも知れませんが、部費も顧問もありませんよ?」

P「いいんだ。やりたい人が好きでやるだけだから」

 そりゃあ、部費は貰えるに越したことは無いんだけども。

律子「……わかりました。これは私が預かって提出しておきます。…月曜日の放課後には、部室の用意は出来ると思いますよ」

P「ああ、充分だ。…ありがとうな、色々面倒になっちゃって」

律子「私の仕事ですから」

 そう、澄ましたように笑う律子は、何というか…とても頼もしくて、でも背伸びをした子供みたいにどこか愛らしくて。
165 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/15(日) 10:37:22.65 ID:taVTi2YAO
P「……なぁ律子」

律子「はい?」

 見込みは薄い相手だけれど、言ってみる価値はあるだろう。

P「アイドル、やらない?」

律子「………」

 沈黙。すぐには返事がこない。

律子「もー、なに言ってるんですか」

 それでも、平静な様子で返事はきた。

P「委員会が忙しくなければ…何だけどさ」

律子「忙しいですよ、明日も明後日も、生徒会が再編されるまでですけど」

 うぅむ…生徒会の話題を出されると弱い…。

 そもそもこうして会話できている事すら、俺の甘えからくることかも知れないのだから。

 律子から大事な「生徒会」という箔を剥がしてしまった俺は、心の底ではどれほどに怨まれているのだろうか。

 ……やばい。ちょっと無神経過ぎた。

P「その……悪い」

律子「もう済んだことですから」

 苦笑する。その儚さを纏う律子の表情に影がさした気がして、いっそう罪悪感がわいてくる。

P「…ごめん。俺、そろそろ行くな」

律子「ええ。お気をつけて」

 階段を下りる俺と、階段を背に廊下へ向かう律子。

P「──なぁ、律子?」

律子「はい?」

P「律子はきっといい“アイドル”になれると思うから、興味があったら見に来たりしてくれよ。歓迎するからさ」

 返事は、ない。

 止めていた足を進め階段を下りている時に、小さな声で「ばか」と罵られた。
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/15(日) 16:46:16.02 ID:l7hpm1pq0
あーなんかきゅんきゅんするな
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 19:58:14.18 ID:YJNf757SO

スレチかもだが律子しか歌ってないアレンジ曲ってなんかあったっけ?水どうの夢旅人くらいしか分かんねえ
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/15(日) 19:59:36.61 ID:wmdrR0BIo
>>167
東京は夜の7時、空色デイズ
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 23:09:17.60 ID:6IqogpNJ0
>>167
ガンダムDXの後期OP
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 00:43:00.54 ID:G4MeBYGe0
実際にこんな生活を送りたいな・・・
171 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/16(月) 06:53:46.35 ID:g4fLjv7AO
P「ただいまー」

 夕方になって、家に帰り着いた。

 春香たちとファミレスで昼食を採って、その後部員の歌唱力を確認し合うためにカラオケBOXにいき、現在にいたる。

P「みんなけっこう悪くなかったな…」

 掠れ気味の声を漏らしながら、リビングへと向かう。
 テレビの音が聴こえるので、響が居るのだろうと確信しながら。

P「おっすただいまー」

 ソファーでテレビを見てる響にあらためて挨拶。ここからだと後頭部しか見えない。

P「ただいまー?」

 返事がないので、覗き込むようにして様子を窺う。

響「………」

 見れば寝ているわけでもなく、テレビを見ながら膨れっ面をしていた。
 不機嫌そうな視線が、覗き込んだ俺の視線とかち合う。

P「ただいま」

響「……おかえり」

 うん、怒ってる。
 でもなんでじゃ?

P「ほい、おみやげ」

 帰りがけに買っておいた、先日約束したおやつ(ひねり揚げ)を取り出して渡す。

響「……いまいい。もうちょっとしたら晩御飯だから」

 それもそうか。

P「じゃあ戸棚入れておくからな?」

響「ん……ありがと」

 不機嫌でもちゃんとお礼は言える。
 いい子に育ったものだ。
172 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/16(月) 07:20:05.48 ID:g4fLjv7AO
響「にぃに、今日どこ行ってたの?」

P「ん? 学校の友達と飯いったり、カラオケいったり」

響「……その友達って、女の人だな」

 な、なにっ?

P「何故わかる」

響「さっきからにぃに、女の子みたいな匂いがするぞ」

 なん…だと…?

 春香たちとは密着するようなことはしていないのに。
 カラオケでも春香たちはソファーに座らせて、俺は丸イスに座っていたのに。

 …響…わが義妹ながら恐ろしい五感の持ち主よ…。

P「否定はしない。というか俺以外女の子だったしな」

響「!? なんで急ににぃにがモテだすんだ!?」

 モテちゃ悪いんかい。

P「…別にモテてるわけじゃないけど…。俺部活やることにしてさ、それでクラスメイトの子も入ることになったから、親睦を深めに遊び行ってたんだよ」

 これが真実。事実すぎて死に体。

響「……にぃに、部活はじめたのか」

P「応」

 響が、少し寂しげに目を伏せる。

 そう言えば、部活を始めたらこうして夕方に響をかまってやることも出来なくなるのか。
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/16(月) 07:27:36.99 ID:Fq4HfrlAo
来てた
見てるぞ頑張れ
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 07:29:53.85 ID:I0yDxWCDO
朝早くにご苦労様です
175 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/16(月) 07:31:34.00 ID:g4fLjv7AO
P「…よしよし」

 頭を撫でてあげると、ポニーテールが揺れる。

響「……今日、自分はやく帰ったからにぃにとお昼食べようと思ってつくったんだ」

 言われて冷蔵庫をあけたら、ラップに包まれた皿が入っていた。
 響が得意なチャンプルーみたいだ。

 …悪いことしたかな…。

P「ありがとう。…今日の晩飯の時、一緒にいただくよ」

響「本当は出来たてが一番なんだぞ?」

P「ああ、わかってる。今度は、一緒に出来たてを食べような」

 撫でこ撫でこ。

響「ん……ばかにぃに」

P「ごめんごめん」
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/04/16(月) 08:55:30.99 ID:iS0Hxjiw0
響かわいい
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 08:59:56.91 ID:7up1TltN0
なぜこれが貼られていない

曲がり角でぶつかった転校生:春香
別クラスの合唱部の生徒:千早
困っている所を助けた後輩:雪歩
親友の妹の友達:やよい
親友の妹:伊織
腐れ縁の友達:真
委員長:律子
近所のお姉さん:あずさ
田舎に住んでる従妹:亜美
田舎に住んでる従妹:真美
幼馴染み:美希
義理の妹:響
許嫁:貴音
担任の先生:小鳥
校長:高木
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 09:00:48.71 ID:7up1TltN0
ごめん見返したら>>24にあった
吊ってくる
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/04/16(月) 09:15:10.66 ID:LHiDPwwAO
ふああああああああん響かわいいよおおおおおお
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 15:55:40.39 ID:7Uu8ncjSO
律子の曲教えてくれた人サンクス
あと>>1乙←これは乙じゃなくて亜美のポニーテールうんたらかんたら
181 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/16(月) 16:55:30.64 ID:g4fLjv7AO
【4月の5】

 今日は日曜日。
 先日約束した、あずささんの家にお呼ばれした日だ。

 時刻はただいま午後1時。
 特別誰にも声はかけていないので、俺1人きりで玄関先に立っている。

 なんで1人かって?
 そりゃあ、約束を交わしたのは俺なわけだし、美希や響も用事が有ったみたいだから。

 ……美希はまだ寝てて響は宿題やっていただけだけどな…!

 俺だって男の子ですよ。
 期待くらいしちゃってもいいじゃないですか。
 夢くらいみてもいいじゃないですか!

 だってあずささんだよ?

 “あの”あずささんだよ?

 おっとりあらあら大人の魅力全開のお姉さまのあずささんと2人っきりのシチュエーションが手に入るって言うんなら、俺は毎年貯金していたお年玉をつぎ込んでもいい。

 ……夜のお店みたいな表現になってしまった。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/17(火) 02:31:22.12 ID:JoZCjVolo
すごくいいな。いい歳こいて俺の妄想ダイナモがギュンギュンしちゃうわ
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/18(水) 18:28:06.60 ID:XYQ7qJHR0
やっと見れるようになったか
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 19:50:22.16 ID:an64pypzo
生徒会とのくだりはどこで読めますcar?
185 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/18(水) 20:49:03.72 ID:4iTG5K1AO
繋がってる……
申し訳有りません、
「春香zE☆(春風邪)」なんぞをひいてしまいまして、
休めない仕事とのダブルパンチでひぃひぃ言っている次第です。

再三とお待たせして申し訳有りませんが、今暫くお待ち下さい。

あとPのピカピカ一年生話は、いつか未来の律子シナリオ中に少しだけ出す予定ではあります。
この物語は真漢ENDを目指しています。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 20:54:34.82 ID:NkOtTkb3o
真が漢になる…だと…?
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 21:03:55.29 ID:an64pypzo
ss速報は一ヶ月放置とか普通にある板なんだから気楽にやればいいと思うよ
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/18(水) 23:43:23.55 ID:1sSqZ4pHo
がんばって、応援してるよ
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 02:08:43.85 ID:2wNSwIlDO
真漢エンドってなんぞや
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/19(木) 02:41:26.20 ID:xtHTo6S50
しんおとこなのかまこりんが漢なのか
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/19(木) 11:34:11.40 ID:JwmhO1/e0
真・漢ENDってあれだろ、アリスソフトの「ONLYYOU」のやつだろ

本編中はゲーム全体を通してのタイムリミットがあって、それを上手くヤリクリすると全ヒロインが同時攻略できる
各ヒロインはシナリオを最後まで進めると告白してきて、受けるか断るか選べる。受けると自動的に他のヒロインの告白を断る
全ヒロインの告白を断ると、魅力的な脇役だったキャラのシナリオに入れる。この時点でも中々難しい
その隠しヒロインの告白を更に断ってラストを迎えると、『真・漢END』を見ることが出来る

俺は観たことないけど、つまり>>1は「まだ誰とくっつけるか決めてないけど、とりあえず全員フラグ立てときますね」ってことだよな?
ゲームでいうともう美希は攻略完了したんだろうか。
りっちゃんメインでオナシャス
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 15:39:19.86 ID:RlHV8gHSO
お、おう
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/19(木) 19:22:20.70 ID:t9LrGi7h0
詳しすぎだろwww

謎は全て解けたな
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 22:00:48.76 ID:2wNSwIlDO
ピヨピヨENDってことか
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/04/19(木) 22:42:10.54 ID:Y8UHiGzO0
拙いって言葉多用してるとことか佐島を連想する
まこりんエンドでオナシャス
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 17:49:26.11 ID:HYvhSBSIO
まだかしら・・・
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/04/20(金) 22:02:04.23 ID:hpStSiRBo
ググってきたけどだれから告白されても断るってことか
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/20(金) 22:41:15.57 ID:R0Mf26Bko
ONLYYOU調べたら陵辱ゲーでてきてビックリ
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/21(土) 22:01:21.14 ID:I1BHLDzp0
これはあれか
961女学院の義妹と許嫁と幼馴染がライバルになるわけか
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/22(日) 09:01:56.38 ID:dBDKglwto
続き待ってるよ
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/04/22(日) 11:14:42.65 ID:0uf3AFMh0
飽きたか
だからSS速報はだめなんだよ
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 11:16:38.75 ID:Zlxl7lAMo
気長に待てよ、SS速報VIPじゃ2週間後に更新とかもよくある話
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 19:38:45.40 ID:OooOvIf/0
首を長くして待ってるよ
美希ENDオナシャス
204 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/24(火) 13:49:40.36 ID:OFhch9TAO
 ピンポーン。

 暖かな春の日射しの中、呼び鈴を押して待つこと1分。

P「……出ない」

 あずささんの家は二階建ての持ち家で、昔から何度も遊びに来たことがある。

 あずささんの部屋は二階にあって、いつもなら呼び鈴を押すとなんとなく、インターフォンに向かっている気配がわかるのだ。

 でも、今日はその気配がない。

 もう一度、押す。

P「……お?」

 気配がした。
 でもなんだか慌ただしい。

 …あ、もしかして寝ていたのだろうか。
 日曜日だし、約束したのも少し前の事だから、油断していたのかも知れない。

 そうだとしたら悪いことをしたな……。
 せっかくの休日の睡眠が、俺なんかに邪魔されては憂鬱なことだろう。

 どうかあずささんに嫌われませんように…!!
205 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/24(火) 14:05:39.13 ID:OFhch9TAO
あずさ「は、はぁ〜い」

 少し遅れて、やや間延びした声が、玄関戸の向こうから聴こえてきた。

P「あの、俺ですー」

 名前をいう必要もない。
 あずささんは、ご近所の皆さんならみんな声で聞き分けできる。
 これも都市伝説化したあずささんの逸話の1つだが、この逸話に偽りなし。

 おっとりはしてるけれど、詐欺なんかには先ず引っかからないであろうと確信している。

あずさ「ごめんなさいね、ついお日様が気持ちよくって」

P「大丈夫ですよ、俺のほうこそすみませ──ええええええぇ!?」

 玄関から出てきて、にこやかに俺を招き入れてくれたあずささん。

 嫌われなくてよかったと安堵しながら、つい目線を下に向けた瞬間。

 脳が、心臓が、全身の脈が、血管が。

 破裂するかと思った。

P「ああ、あずっ、あずあずっあずささ…!」

 驚きのあまりどもって声が出ない。しまいには裏がえって発音すら怪しくなる。

あずさ「…あら? ──あらあらぁ…!!」

 なんてことはない、パジャマ姿だったのだ。

 ただ、上しか着ておらず、そのうえ第2ボタンまでが外れていた。

 なんてことはない、パジャマ姿だったのだ。

 ただ、あずささんの恰好は余りに刺激が強すぎて、

 俺はあずささんを家の中に押し戻すことしか出来なかったんだ。
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/24(火) 14:07:07.06 ID:asXfTgyTo
キター
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/24(火) 15:11:56.75 ID:BAJbycZM0
キテター
208 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/24(火) 16:23:00.51 ID:OFhch9TAO
 あずささんは昔から、周りの人への面倒見がよかった。

 小さな頃から公園や区民館で友達や年下の子の相手をして、
 みんなもそんなあずささんについて回って、いつも楽しく遊んでいたんだ。

 俺は小学校時代、美希という“仲の良い女友達”がいたから、同い年の男子から「可愛い幼馴染みとかラブコメマンガかよ…[ピーーー]…!」と恨まれていた。

 美希は小学生4年生くらいの頃には隣町の中学生にまで告白されるくらいの美人さんだったので、四六時中傍にいた俺はさぞかし邪魔だったり羨ましかったりしたのだろう。

 突っかかってくる奴は拳で黙らせていたのでイジメられはしなかったけど、
 教員からは「ケンカっぱやい問題児」扱いされ女子からは「草食系の皮をかぶったピラニア」と呼ばれ、男子からは「番長」呼ばわりされてちょっと浮いていた。

 そういう経緯があって俺はあまり男友達とも連まず、よくあずささんに遊んでもらっていたんだ。

 中学に上がる頃に父親が再婚して義妹の響が出来てからは、響の相手をしてもらったり、勉強を見てもらう機会もあった。

 だから、あずささんの家にお邪魔することなんて、本当に今まで何度もあった、はず、なのに──。
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/24(火) 17:05:55.32 ID:ReIO2Isho
メ欄にsagaも一緒に入れたら?
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/04/24(火) 17:35:44.83 ID:Gbra4Ar30
久しぶり。毎日更新されてないかチェックしてるぜ。
211 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/24(火) 20:42:24.69 ID:OFhch9TAO
あずさ「昨日は寝苦しくてつい…」

 着替え終わったあずささんに改めて迎え入れられたあと、
 通されるまま居間にやってきて、いまは卓の前で座っている。

P「休日に済みません」

あずさ「それはいいのよぉ。そもそも、私がプロデューサーさんをお招きしたんですもの」

 あずささんが淹れてくれた紅茶を受け取り、一口飲む。

 葉とか味わい方とかよく知らないけれど、ほのかに果物の香りがして、甘くないのにとても美味しいお茶だった。

P「あずささんも“プロデューサー”って呼ぶんですね」

 発信源は誰だ。
 美希も響も俺をプロデューサーとは呼ばないはずだけども。

あずさ「律子さんからよくお話しを聞かせてもらってるから、うつっちゃったみたい」

 まさかの情報元。

 そう言えば律子の家はこの近所だし、もしかしたら通学路になってるのかもしれない。

 なぜ律子の家を知っているのか。俺はクラスメイトの住所はだいたい把握してるぜ! たとえ行ったことはなくてもな!

 ……本当は去年、『打倒生徒会』の時に同級生全員の家に手紙を送ったことが有って、それでなんとなく覚えてしまっただけです。

 だから春香の家は知らない。
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/04/24(火) 21:16:42.72 ID:OFhch9TAO
あずささんがPを呼ぶ時は「プロデューサー“ちゃん”」でした済みません。

……今年の春風邪はいやらしく、
仕事をしてると体調が良くなって、明けになると発熱しはじめるの繰り返しでした。

今をもって尚全快には至っておりませんが、とりあえず、明日の明けには少しはちゃんと書けるかなと思う次第です。

文章と呼ぶにも覚束無い拙い文字の羅列ではありますが、投げ出す気は有りませんので、
願いましては長い目でのお付き合いの程を宜しく御願い致します…。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/04/24(火) 21:26:00.67 ID:ztPBGOon0
乙です

春風邪大変ですね
お大事に
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/24(火) 21:57:44.33 ID:D/qiUwDL0
期待してる
焦らず頑張ってくれ
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/24(火) 22:26:03.06 ID:Vz3DuTlso
大変だねぇ
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/24(火) 23:04:48.53 ID:DTgu3ROg0
体調を崩さない程度にがんばってくれ。
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/25(水) 00:00:41.91 ID:56QKx6Obo
具合悪いのか…
無理せず治せよ
期待してるから
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/25(水) 00:02:49.85 ID:NO0MrOKgo
無理しないでください
219 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/25(水) 09:24:59.46 ID:ATb5Uo4AO
P「はぁ…身に染みる…」

 紅茶のおかわりをもらい、幸せの吐息がほろりと漏れる。

あずさ「うふふ、プロデューサーちゃんてばおじいちゃんみたいね」

P「老後にこのお茶が飲めるのなら、もっと幸せな気持ちになれるんでしょうね」

あずさ「…あらあら」

 何を観るでもなく、何を語るでもなく。
 2人でお茶を飲みつつも、たまに互いを見ては微笑みあう時間。

 去年からにかけて落ち着くヒマもない日々だったから、こうした安らぎは大切だ。

 あずささんと過ごす時間も、最近では少なくなっていたし。

あずさ「よかったわぁ」

P「なにがですか?」

あずさ「プロデューサーちゃん、全然変わっていなくて」

 変わっていない。…はて、どういう意味でっしゃろか。
220 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/25(水) 09:54:54.50 ID:ATb5Uo4AO
P「まだ子供っぽいですかね?」

 個人的主観だと、成長の度合いというのは認識し辛いものがある。

 高校生になって色々大人に近付いたつもりでも、あずささんから見たら俺はまだ子供っぽいのだろうか。

あずさ「ううん、ちがうの。プロデューサーちゃんはすごく逞しくなっているし、とても格好良いわ」

 ……へへっ、照れる。

あずさ「でも、だからプロデューサーちゃんは、私の知らない『男の人』になっちゃったのかなぁって、すこし寂しく感じちゃってたのね」

P「俺、あずささんに男だと思われてなかったんですか…」

あずさ「うふふ、どうかしら」

 むぅ……なんだか最近は、女の子がずっと傍にいるような生活をしていたから、感覚が麻痺していたのかも知れない。

 ……もっと、男らしくなりたい。
221 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/25(水) 10:16:42.39 ID:ATb5Uo4AO
あずさ「でも、さっき紅茶を飲んだときのプロデューサーちゃんを見てね、嬉しくなったの」

P「紅茶?」

あずさ「“美味しい”って、思ってくれたのよね? むかし、うちに来てお菓子を食べてた時と、同じ表情だったもの」

 本当ですか。
 俺そんなに分かり易い奴だったのか…。

あずさ「…そのままで、いてね」

P「?」

あずさ「あまり大人に大人にって急いでると、きっと大事なものにも気付けなくなっちゃうと思うから」

 大事なもの。

 なんだろう。

 いっぱい有るけど、たくさん在るけど。

 いまの俺に大切なものといったら──

P「大丈夫です、あずささん」

 ──青春、だな。

P「俺は変わりません。見た目や雰囲気は変わっても、“真ん中”に在るのは、いつもあずささんにくっついて遊んでた、ガキの頃の俺のままですから」

 人生とは楽しむものだ。

 むかしから俺は、その考えをモットーに生きてきた…気がする。

 でもそれは自分だけが楽しむものではなくて、
 俺と関わるみんなが須く幸せであればいいと、そう考えているからなんだ。

 俺の『青春』は、きっと楽しくなるだろう。

 そしてその分俺は、周りのみんなをどれだけ楽しくさせられるのか。

 これは俺の命題になりましたよあずささん。
222 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/25(水) 10:33:50.32 ID:ATb5Uo4AO
あずさ「あらあら……それじゃあ、いまでも一緒にお風呂に入ってくれるのかしらぁ?」

P「ブフゥ!」

 い、いきなりなにを言い出すのですか。

P「お風呂って…あの時はまだ子供だったじゃないですか!!」

あずさ「うふふ、“覚えて”てくれてるのねぇ」

 …あ、まずい。藪蛇くさい。

 それは昔。ほんとうに昔のことだ。

 小学4年生のころ中学生とケンカをして、弾みで公園の池の中に落ちてしまった俺は、途方に暮れてしまって、仕方なく美希と2人で、近所だったあずささんの家にお邪魔しにいったんだ。

 あずささんのご両親もあずささんも俺を慰めてくれて、お風呂を貸してもらえることになった。

 何故か全く汚れていない美希まで一緒になって、そのうえ面倒をみる為に

 あ ず さ さ ん ま で 一 緒 に 入 っ て 。

 ……恥ずかしくて死ぬかとおもった。

 あずささんは当時12歳。

 たかだか小学6年生といえども、あずささんは当時からその……なんというか……。

あずさ「えっち」

P「あ痛っ!」

 回想に耽っていたら、あずささんからデコピンを一発。

 いや、その、すみません…。

あずさ「…あのね、いまだから言うんだけど…」

 …?

あずさ「……私も、すごく恥ずかしかったのよ…?」

 はい一名天国逝きー。
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/25(水) 11:02:48.59 ID:N3b6wOm1o
12歳のあずさ……けしからんな
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) [sage]:2012/04/25(水) 17:05:35.52 ID:ISZkHDkDo
うらやま
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/25(水) 21:20:51.70 ID:L7GvrXBT0
あずささんだけではなく美希もとは全くけしからんな
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2012/04/26(木) 14:55:01.37 ID:B0yoCijgo
小学生の頃に、当時中2くらいの従姉と風呂入ったなぁ
正直覚えてねーよ…うらやまP
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/04/26(木) 22:58:44.07 ID:iknri1+U0
12才あずささんの画像誰か
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 01:15:23.15 ID:RJblw6GDO
じゃああずささんも幼なじみみたいなものじゃないか
229 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/29(日) 11:39:38.39 ID:4oN4ZmSAO
 グウゥゥ。

あずさ「あら?」

 お互い恥ずかしくなって沈黙。
 その静寂を切り裂いたのは、俺の腹が鳴った音だった。

あずさ「そう言えばもうお昼だものね」

P「あずささんも、お腹空いてますか?」

 ずっと寝ていたのなら、朝食も食べていないだろう。あずささんが小さく頷く。

 俺は俺で、ろくな朝飯も食べずに身仕度をしていたので空腹感になるのがはやい。

あずさ「…それじゃあ、いまからお昼ごはん作りましょうか」

 あずささんはそう言って冷蔵庫を物色する。
 が、すぐに首を傾げて冷蔵庫を閉じてしまった。

あずさ「困ったわねぇ…お客さまにお出しできるような物がないわ…」

P「あ、何だったら俺材料買ってきます」

あずさ「…そうね、そうしましょうか」

 スーパーまではやや距離があるけど、俺の脚ならそう時間はかからない。

 あずささんの同意を得て、颯爽と玄関から外へ向かう。

あずさ「ふんふふ〜ん」

P「……あずささん?」

あずさ「はい?」

P「買い出しは俺が行きますから、あずささんはゆっくりしていてもらって大丈夫ですよ?」

あずさ「いいの。せっかくなんだから、一緒にお買い物いきましょう?」

 あずささんからそうお誘いを受けては、断るに断れない。

 事実俺自身も嬉しいのだから、ここはお言葉に甘えてみよう。
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/04/29(日) 12:33:35.53 ID:ixPvHNEs0
きたか
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/29(日) 12:44:37.35 ID:XCkrjoEWo
はよ
232 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/29(日) 15:17:00.67 ID:4oN4ZmSAO
あずさ「いいお天気ねぇ」

P「そうですね、なんだか春って感じがします」

あずさ「せっかくだから、お弁当をもってお散歩に行けたらよかったのだけど…」

P「そうしたら、また次の機会にでも」

あずさ「本当?」

P「はい」

あずさ「じゃあ、約束してくださいね」

P「はい。ゆびきりげんまん」

あずさ「…うふふ、約束しちゃった〜」

P「散歩とか、よくしてますよね」

あずさ「ええ、お陰でよく迷子になってしまうけど」

P「ここら辺だと、いい場所とかあるんですか?」

あずさ「あまり人がいない自然のある場所もいいけど、ちいさな子たちが賑やかに遊んでる公園なんかも、見ていて楽しいものよ」

P「…つまり、“いい”と思える場所は自分で見つけるものだと」

あずさ「そうねぇ。そういうのを見つけ出すのも、お散歩の楽しみだったりするから」

 なるほど……深いなお散歩道。
233 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/04/29(日) 15:27:27.38 ID:4oN4ZmSAO
 スーパー到着。
 時刻は12時ジャスト。

P「どうしましょう」

あずさ「すぐに作れるものの方がいいかしら」

 ふむ…となると、米は炊く必要があるから時間かかって×。

 ここは麺類…パスタにでもしようか。素麺なんてのも良いかもしれない。

P「──お?」

やよい「う?」

 あずささんに献立を提案しようとした正にその瞬間、棚の陰からひょっこりと姿を現した少女。

 当然買い物の最中なのか、片手には買い物袋の存在が。

伊織「どうしたのよやよい……」

 続いて現れる2人目の少女。

 なんとも世界の狭いこと。
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 01:54:00.22 ID:b0ZXgCsLP
うっうー
235 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/30(月) 07:53:48.84 ID:l1kKS0UAO
やよい「あずささんにお兄さん、こんにちはですー!」

P「応、こんにちは」

あずさ「あらぁ、伊織ちゃんも偶然ねぇ」

伊織「こんにちはあずさ」

P「こんにちはマイハニー」

伊織「もげろ」

 …それは何に対して?

P「2人とも、昼飯の買い出しか?」

やよい「はい!」

伊織「これからやよいの家に行くことになって、ついでだからって食事にお呼ばれされたのよ」

P「へぇ〜……」

 2人も昼飯か……俺たちも目的は一緒だし、これは…。

P「あずささん。もし、あずささんが良ければ…」

あずさ「うふふ、丁度、私もおんなじ事を考えてたところ」

 マジですか。以心伝心ですね俺たち!!

やよい「?」

伊織「アンタまさか…」

 伊織が訝しんどる……まぁ、その真逆なのですが。
236 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/04/30(月) 08:10:16.53 ID:l1kKS0UAO
やよい「〜♪ 〜♪」

 楽しそうに、鼻歌を唄いながら慣れた手つきで料理を拵えている。

 危なげもなく、2つに束ねた髪をふわふわと跳ねさせながら、軽い足取りで台所を駆るやよい。

 まるで妖精が歓喜して踊っているかのような、錯覚が見えてくる。

P「なにか、手伝おうか」

やよい「いいえぇ、お兄さんはゆっくりとくつろいでてくださいー」

 こう満面の笑顔で返されては、深く食い下がることも気が引ける。

P「じゃ、じゃあやよいが作り終わったら呼んでくれな? 俺も、やよいたちに料理食べて欲しいからさ」

やよい「うっうー! わっかりましたぁ!」

 やよいの独壇場である台所から遠ざかって、廊下の先、賑やかな声がする方へと向かう。

 そこでは伊織とあずささんが、幼いやよいの弟妹たちの相手をしていた。
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 20:46:36.59 ID:1QTuAvtDO
こうやってちょっとずつでも更新してくれるのはありがたい
238 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/01(火) 07:07:26.99 ID:t32Yw8HAO
 俺たちは、やよいの家にお邪魔させてもらっている。

 どうせならみんなでご飯を食べようと思い至り、やよいは家に弟妹が居るというので、俺やあずささんが招待される形になった。

 いまは13:00を回ったくらい。
 やよいの手によって、着々と昼食は用意されている。

伊織「こっ、こら待ちなさーい!」

あずさ「はい、あ〜る〜ぷ〜す〜いちまん、じゃーく」

 パタパタと弟たちと追いかけっこをしている伊織に、
 妹たちと手遊びを教えてあげているあずささん。

 伊織は以前からの知り合いなのか、来るなり弟たちから歓迎を受けた。
 初対面らしいあずささんも流石の貫禄と言うべきか、すぐに打ち解けて心の距離を縮めてしまった。

伊織「あっ、ちょっとアンタ、その子捕まえてよね!」

P「応!?」

 声に反応して顔を向けると、伊織の帽子を奪った次男坊が部屋の外を目指して──つまり俺の方へ向けて、走り出していた。

P「よっと…」

 ただでさえの体格差。子供の全力タックルなら例え死角から受けたとしても、体力バカが揺らぐことは有り得ない。
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/02(水) 20:20:21.37 ID:WkTUrttL0
マダー?
240 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/04(金) 10:01:19.22 ID:PMUBs2oAO
 ぶつかった俺を見上げて、次男坊──浩太郎の表情が、若干ではあるが強張った。

浩太郎「あっ……」

P「ごめんな、おデコのお姉ちゃんが返してほしいんだって」
 軽く頭を撫でてから、帽子を受け取って、それを伊織に返してやる。
 浩太郎はそそくさと離れていってしまった。

伊織「いっ、いまはデコちゃんじゃないわよっ!」

P「ちょっと前まで、カチューシャ標準装備のデコスタイルだっただろう?」

伊織「そうやってアンタがからかうからやめたのよっ!」

 ふむ。つまり俺のために身なりを変えた、と。

 ふふふ、このお嬢さまが他人に合わせてくれるとは。

P「可愛いやつめ」

伊織「どういう思考回路してんの!?」

 頭を撫でた手が払われた。
241 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/04(金) 10:16:58.66 ID:PMUBs2oAO
P「ハロゥ」

長介「…どうも」

 絶賛手持ち無沙汰中なので、兄弟で唯一、遊ばずに洗濯物を取り込んでいた長男坊のとこへ。

P「手持ち無沙汰なんだ。手伝おうか」

長介「いえ、大丈夫…です」

 ……やはりというか、僅かに反応が冷たい。

 嫌われている…というよりも、どう接していいのか解らないみたいな。

P「今日は、急に押し掛けて悪かったね」

長介「………」

 やよい──大好きなお姉ちゃんが、急に男、それも年上なんぞを家に連れてきたものだから、よく思われないのは理解できる。

 俺も響が男なんぞ家に連れてきたら、平静でいられるか危うい。
 多分悶絶死する。

長介「……あの、」

P「おう?」

長介「お兄さん…は、姉ちゃんの友達……なんですか?」

P「あー、友達というほど親しいかは疑問だなぁ…」

 友達の、妹の、友達というポジション。

 俺はやよいを友達と呼ぶことに抵抗は無いけれど、
 やよいからすると、俺はどんな存在なんだろうか。
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) :2012/05/04(金) 10:17:14.33 ID:gNfExeIeo
浩司じゃなかったっけ?
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/04(金) 10:28:12.78 ID:PMUBs2oAO
やよい
長介
浩太郎
カスミ
浩司

だと思うとったのですが……アレ?
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) :2012/05/04(金) 10:37:12.21 ID:gNfExeIeo
申し訳ない
一番下とごっちゃになってた
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) :2012/05/04(金) 10:39:54.75 ID:gNfExeIeo
浩三が一番下か
流れ切って申し訳ないです
246 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/04(金) 10:58:52.87 ID:PMUBs2oAO
P「…あ」

長介「?」

 ふと、タンスの上に載っかっている熊のぬいぐるみに目が留まった。
 この間プレゼントしてあげたやつだ。

P「大事にしてくれてるのかな?」

長介「……それ、姉ちゃんが気に入ってるやつです」

P「そうなのか」

長介「よくは…知りませんけど、毎日一緒に寝てますから…」

 …なん……だと…?

P「た、高いものでもなにのにな」

長介「お兄さんが、姉ちゃんにあげたんですね」

P「伊織にも、色違いをあげたよ」

長介「姉ちゃん──のこと、好きなんですか?」

 いきなり弩直球な質問が。

P「好きだよ」

長介「…!」

P「やよいのほうは解らないけど、俺はやよいのこと友達だと思ってるから」

長介「…そ、そうですか…」

 恋愛感情云々は……やっぱりよく解らないんだよなぁ…。

 いまのやよいを恋愛対象としてOKというのはものすごく犯罪なので、ここはこう誤魔化すしかない…。
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/04(金) 14:47:18.89 ID:+Y1CW7Aa0
キター
これがゴールデンウィークの楽しみなんだ
248 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/04(金) 16:50:12.16 ID:PMUBs2oAO
P「もちろん、キミとも友達になりたいと思ってるよ」

長介「えっ」

P「せっかくの男同士じゃないか。今日こうして逢えたのも何かの縁だし、仲良くしてくれたら嬉しいな」

 この子…長介は長介で、“一番上の男”としての誇りがあるだろう。
 そんな彼を支えたり手助け出来たりすれば良いと思う。

やよい「お兄さーん、わたし終わりましたぁ…うぇっ!?」

 料理が終わったのか、約束通りやよいが俺を呼びにきてくれた。
 でも、俺と長介が並んでいるのを見るや硬直してしまう。

P「やよい?」

やよい「な…だ…や…」

P「?」

 やよいの視線の先を追う。
 乾燥した洗濯物の山。長介。畳み中。手の中。

 女 児 下 着 。

やよい「ダメですうぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

P「ギョハッ!!」

 両手を×の字に交差させての体当たり。

 やよいの繰り出したクロスチョップアタックをもろに受けて、俺は後退り後頭部をタンスに激突させてしまいました。
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/04(金) 20:56:57.90 ID:lJI0xdxvo
ぅゎゃょぃっょぃ
250 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/05(土) 07:46:14.20 ID:1brBHeEAO
やよい「ごめんなさいお兄さん…」

長介「ごめんなさい」

P「いいからいいから。ちょっと意識がとぶくらい日常茶飯事だから大丈夫だよ」

伊織「アンタはどんな世界で生きてるのよ……」

 みんなで昼食を採って、後片付けをしてから少し食休みをした後、
 俺とあずささんは頃合いをみてお暇させてもらう事にした。

浩司「あぅー…」

カスミ「あずさお姉さん…」

あずさ「また遊びにくるからね」

P「伊織はまだ居るんだろう?」

伊織「元々あたしは遊びに来たのであって、ご飯をご馳走になりに来たのが目的なわけじゃないもの」

P「あまり遅くなると兄貴が心配するぞ」

伊織「わかってるわよっ、もうっ!」
251 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/05(土) 08:00:07.79 ID:1brBHeEAO

 もう一度、正面に居るやよいと向き直る。

 まださっきのことを気にしているのか、ソワソワとして落ち着いていない。

P「やよいちゃんや」

やよい「う?」

P「なんていうか…色々ごめんな」

 急にお邪魔しに来たこととか、
 パンツ見ちゃったこととか。

やよい「そ、そんな! お兄さんが謝ることなんてないです! …わたしの方こそ、お料理つくってておもてなしも出来なくて…」

 申し訳無さそうに下へ傾いてしまうやよいの頭。

 ちょうど良い高さにあるそれを、いつもの調子でワシャワシャと撫でる。

やよい「わわわっ」

P「俺は楽しかったよ。もしやよいたちの迷惑じゃなければ、また来てもいいかな」

やよい「──はいっ! もっちろんです、大かんげいですよぉ!」

 元気になってくれたのだろうか。
 挙動に合わせてぴょんぴょことハネるツインテールが可愛らしい。

P「じゃあ、また」

 長介を見る。
 小さくだけど、頷いてくれた。

 最初から親友になれるなんて思ってはいない。

 でも、また来てもいいと許してもらえた。
 少しは仲良くなれたのかな。
252 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/05(土) 08:14:10.77 ID:1brBHeEAO
あずさ「みんな元気いっぱいで楽しかったわねぇ」

P「あずささん、ありがとうございました」

あずさ「あら?」

P「俺のわがままなんかきいてもらっちゃって」

あずさ「……うふふ。でも、それは私も同じだから」

 確かに、やよいたちを食事に誘うとき、あずささんも「同じことを言おうとした」と言ってくれていた。

P「それでも…ありがとうございました。本当は今日は、ずっとあずささんと過ごすつもりでしたから」

あずさ「……そ、そうだったの」

P「えぇ。あずささんと2人で居られる機会って、珍しいじゃないですか」

あずさ「そ、そうね」

 昔からお世話になっている恩人さんだ。

 今日は、日頃のお礼をしようと思っていたんだけれど。

あずさ「…あらあらあら…」

 あずささんが紅潮しはじめた。
 何故だ。
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 09:11:40.40 ID:332FHMEDO
あずささんかわいい
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 16:10:50.43 ID:MLLgnF4DO
天然ジゴロの罪作りな男だぜ
未登場のキャラも楽しみだが義妹響が可愛いです
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/05(土) 16:49:33.38 ID:8NWyzc8s0
相変わらずこいつは・・・実にけしからんな
256 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/06(日) 07:01:48.67 ID:7NWkzKWAO
P「再びおじゃまします」

あずさ「うふふ、おかえりなさい」

 あずささんの家へ戻ってきて一息。
 時刻は16時と少し。

 季節の変わり目ではあるけれど、空はややと薄暗くなってきていた。

P「そう言えば、今日オジさんやオバさんは居ないんですね」

 あずささんは実家暮らしなので、当然ご両親と一緒に住んでいる。
 俺や美希や響なんかは、こうしてよくあずささんの家まで遊びに来ていたので、世間話をするくらいには顔馴染みだ。

あずさ「今日は朝から2人でデートに出掛けてるのよ」

P「デート…ですか」

 なんというか、若いですね。

あずさ「夜には帰ってくると思うのだけど…」

P「ああ、いえ。久しぶりにおじゃましたから、挨拶できたらなと思っただけです。気にしないでください」

あずさ「それじゃあ、帰ってきたら伝えておくわね」

P「はい、お願いします」
257 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/06(日) 07:26:53.91 ID:7NWkzKWAO
 その後、あずささんがいれてくれたお茶をいただきながら雑談を続けていると、
 陽が段々と沈んで空が橙色へと変わりはじめたので、俺は頃合いをみて帰宅の準備をする。

あずさ「もう帰っちゃうのね」

P「あまり長居しても申し訳ないですし」

 今日1日と付き合ってもらっておいていまさら申し訳ないと言うのもおかしいけれど。

あずさ「…ざんねんだわぁ…」

 実はさっきから気が付いていることがあって、俺が帰宅を急ぐにはそれが要因にと言える。

あずさ「…すぅ……すぅ…」

 ……眠たげなあずささん。
 雑談をしている最中から、突然気が抜けたみたいにこっくりこっくりとすることが度々。

 お昼には熟睡中なところを起こしてしまったし、睡眠不足なのであれば、やはり休日はゆっくりと寝かせてあげたい。
258 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/06(日) 07:38:47.51 ID:7NWkzKWAO
P「…あずささん、あずささん」

あずさ「ん……あら…?」

P「俺、もう帰りますから。玄関の鍵だけ閉めてもらえますか?」

あずさ「はい…大丈夫よぉ…」

 ふらつき気味の足取りで、玄関まで見送ってくれる。

 美希ほどじゃないけれど、あずささんも一度眠ると中々起きない。何があっても。

 美希の場合は、好きなものの話とかで釣ると即座に目を覚ましてくれる。二度寝に移行しやすいけれど。
 でもあずささんの場合は、部屋の空気、雰囲気が変われば起きるけれど、そうでなければ何をしても中々起きてくれない。

 何をしても。
 中々起きてくれない。

 ……美希がやった悪戯を思い出してしまった……ふぅ。

P「…あずささん、今日はお邪魔しました」

あずさ「またいつでもいらっしゃぁい…」

 小さく笑みを浮かべて、ふわふわとした口調で手を振ってくれる。

 俺はそれに笑顔とお辞儀で返して、あずささん宅から出る。

 玄関の鍵が閉められるのを音で確認してから、夕暮れのなかを帰路についた。
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/05/06(日) 10:34:29.90 ID:F2FrFDbp0
おぉ、更新されてる
260 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/07(月) 09:53:36.05 ID:FeJDjnWAO
P「たっだいまー!」

響「おかえりにぃに」

美希「お邪魔してますなの」

P「あれ? 美希遊びに来てたのか」

美希「うん。……ハニーと一緒に遊ぼうとおもって」

P「そうか…ごめんな、今日はずっと出掛けてたから」

美希「うぅん、大丈夫だよ。ミキが急に来ただけだから」

P「………」

 撫でこ撫でこ。

美希「ん……」

響「どこ行ってたんだ?」

P「いや、まぁ、友達のところに」

美希「──女の臭いがするの」

P「なに!?」

美希「ミキわかるよ。これって…」

響「あずさのニオイ!」

P「なんでわかるんですか!?」

美希「…ハニー…これはどういうことなの…?」

響「1人であずさのとこ行くなんてズルいぞー!」

P「いやあのその」

美希「──ハニーはミキが“大人の魅力”を手に入れるまで浮気しちゃダメー!」

響「自分もあずさと遊びたかったさー!」

P「I’m Sorry…」
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/07(月) 09:56:31.09 ID:ejAYyefXo
貴音が出るまで見続ける
貴音が出ても見続ける
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/05/07(月) 10:00:34.67 ID:uAMC44aKo
あと出てないのは亜美と真美と貴音だけか?
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 12:19:36.27 ID:51qVlTmDO
やっべ、幼なじみのミキが可愛すぎだろ
264 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/07(月) 19:31:37.35 ID:FeJDjnWAO
【4月の6】

 月曜日だ。

 今日は記念すべき、『765プロダクション』の創立の日。

 放課後までには律子から部室やらの通達が有るだろうから、日中は大人しく授業を受けておく。

P「うっしゃあ! やっちゃるぜぇ!」

 体育の授業。
 他クラスの男子と女子とが合同で体力測定を行っている。

 因みにいまは、男子が校庭で「シャトル・ラン」、女子が体育館で上体起こし等の測定中。

真「プロデューサー、がんばれー!」

春香「ここで頑張ったら、お昼ご飯が美味しいですよーっ!」

 隣接している体育館の方から声援が聴こえる。
 測定の合間に見学でもしているのだろうか。

P「へへっ……シャトルランは体力バカの独壇場ッスよ…!!」

 俺にとってコレは得意競技だし、
 今日これから上に立とうとする子たちの前で、無様な姿は見せられない。

 1人2人と脱落し、死屍累々とばかりに男子たちが倒れていく。
 残っているのは、俺と万能選手の水瀬の他には運動部の人間ばかり。

 ──その水瀬も、少し余力を残したまま脱落した。
265 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/07(月) 19:38:50.96 ID:FeJDjnWAO
 カウントが加速していく。

 体力の玄関を迎えてか、またはスリップなどのアクシデントか。
 残っていた運動部員たちも、次々と脱落。

 最後に残ったのは、俺1人。

 脱落して休憩していた男子、それに真たちにつられて見にきた女子たちの声援が届いてくる。

 なんて言ってるのかはわからない…というかそんな余裕無いけど、注目を集めてしまって切り上げるタイミングが難しくなった。

 千早や、律子なんかも見てくれているんだろうか。

 こうなれば、最後には突っ伏す勢いで続けるしかあるまいて…!!
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/05/07(月) 20:08:48.76 ID:57TQzQHk0
シャトルランは200言ったら化け物
267 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/07(月) 23:22:45.68 ID:FeJDjnWAO

 昼休み。
 結局、へんなところで派手に蹴躓いてしまった俺は、見学者全員から失笑を買っての終了という、何とも恥ずかしい結果に。

P「あぁー…死にそう…」

 疲労と羞恥両方の意味で。

真「でも凄かったよ、あんなに走れるなんてさすがプロデューサーだよね」

春香「150回ですよ150回っ!」

P「正確には146とかだけどね…」

 因みに、運動部員たちの平均は120くらい。

 如何に自分がマゾヒストなのか思い知らされる。

P「腹減った」

真「今日はお弁当なんだね」

P「フハハ、体力測定というイベントデーに購買や学食の食事で満たされるはずも無かろうて」

 ドン! と取り出したのは手製の弁当。重箱二段分くらい。
 朝早く起きて作り、ついでに美希にも朝飯用におにぎりを握ってやったりした。

千早「すごい量……これ、全部プロデューサーが?」

P「応! ウチの両親は放任主義なものでね!」

 朝食は義母さんが作ってくれるけれど、弁当に関しては小学校高学年の頃から自分で作るように、父さんから言われてる。

 曰わく、「お弁当が必要な特別な日くらい、自分の食べたい物を好きに食べなさい」とのこと。

 ……特別な日は特別な弁当が食べてみたいです。
268 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/07(月) 23:33:22.79 ID:FeJDjnWAO
 お陰さまで、随分と料理スキルが上達した。

 美希は俺のつくる飯をかなり気に入ってくれていて、中学の頃からイベントなどで「弁当持参」となると、いつも俺につくってくれるよう頼んできた。
 向こうのご両親も「楽が出来るからいいわぁ」とご満悦。

 いまでは響の分もそうだし、機会があれば両親の分なんかもたまにつくる。

 自分のつくった料理を笑顔で「美味しい」と言ってもらえるのは、やっぱり嬉しいから、つい。

P「春香も自分で作るのか?」

春香「お料理好きなんですよ」

 春香の弁当箱……俺に比べたら小さいけれど、五彩が守られていて綺麗なものだ。

真「僕は母さんに任せっきりなんだよね…」

 学生のうちはそんなものじゃないのかな?
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 23:33:46.03 ID:QXK90Nzmo
相変わらず良いな
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 06:09:20.65 ID:eLVsOK6C0
昼休みに女の子3人と弁当だと・・・
というか千早はわざわざPのクラスまで来てるのか
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/08(火) 08:50:46.57 ID:KY2FJb550
春香あたりが誘ったから来たと考えてみる
272 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/08(火) 14:30:19.07 ID:NFZK/BuAO
P「それで千早は……」

千早「わ、私は…」

 千早の膝元には、購買で買ってきたのであろうサンドイッチとアンパン、そして紙パックの野菜ジュースが。

P「購買部派か」

千早「ある程度栄養が採れれば、問題はありませんから…」

 うーむ。
 確かに幾らかの栄養があれば「死ぬ」ことはないだろうけど、それにしても質素すぎる。
 俺ならおやつでも物足りない…。

P「足りるのか?」

千早「ええ、一応。私、あまり多く食べる方じゃないですから」

真「プロデューサーはよく食べるもんね」

P「食べても食べてもエネルギーとして消費しちゃうものでね」

 千早の食が細いのは、見た目から何となく察しがついた。
 背丈はともかく全体的に細身で、贅肉が無いかわりに筋肉もあまり無い。
 スレンダー、モデル体型と言えば聞こえは良いのだけど、
 制服から覗く手足や全身のシルエットは、例えば俺なんかが抱き締めたりしたら折れちゃうんじゃ無かろうかと心配になってしまう。

 『765プロダクション』のメンバーは、これからは部活動で歌やダンスの稽古などの、激しい運動をすることになる。

 今まででは充分だったとしても、これからはそれ以上の燃費を考慮した食事をしてもらわなければ…!!
273 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/08(火) 14:48:45.00 ID:NFZK/BuAO
千早「……なんですか、プロデューサー」

P「お?」

 呼ばれて顔を上げたら、冷え切ったジト目で睨んできている千早と視線がかち合った。

千早「くっ…」

 ……しまった、考え事しながらだったから千早の肢体をガン見してたらしい。
 蔑みの視線がものすごい痛い。恐い。

P「あ、あぁ〜……アレだ千早、コレも食べなさい!」

千早「はい?」

 苦し紛れというか、話題のすり替えというか。
 取り敢えず、手っ取り早く栄養を採ってもらう方法を実践いたします。

 つまるところ俺の弁当をお裾分け。

千早「え…あの、でも」

P「今日から部活を始めるわけだしさ、なるべく体力つけておいてほしいからさっ」

 箸で弁当箱からから揚げをつまみ上げて、千早の口元に。

千早「なっ…!?」

真「ちょっ…!?」

春香「えぇっ…!?」

 なんか他の2人が驚いてるけど構うものか。

 ほれほれ千早ちゃんよ!
 そのお口を開けてコレを頬張るがいい…!!
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 16:15:46.96 ID:ZOHg+1Bfo
72をするつもりだ!
275 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/08(火) 16:19:16.57 ID:NFZK/BuAO
P「はい、あーん」

千早「………」

P「あーーん」

千早「…あー…」

P「あーーーん」

千早「あーーん…」

P「はいどうぞ」

 大きく開いた口腔に、一口サイズのから揚げをin!

千早「んっ…んむんむ…」

 少し顔を赤くしたままモグモグと咀嚼する様がやたらとかわいい。

春香「…ぃぃなぁ…」

P「どうだい?」

千早「んくっ……お、美味しいです…」

P「よかった。それじゃあ、他のも遠慮無く食べてくれていいから」

 俺の弁当は一段目が「日の丸」、二段目が「おかず」と分かれております。
 二段目の方を俺と千早の間に置いて、懐から取り出したる割り箸を千早に渡す。

真「どうしてプロデューサーは割り箸を持ってるのさ」

P「箸を落として汚してしまった時用に」

真「洗いなよ…」
276 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/08(火) 17:26:58.28 ID:NFZK/BuAO
P「よっと」

 もう一度から揚げをつまみ上げる。

P「ほい春香」

春香「へっ?」

P「いま“いいなぁ”って言っただろ? 春香にも食べてみてほしいからさ、ほら」

 今度は春香の口元へ。
 ほれほれほれ。

春香「あ、あの、そういう意味じゃなかったんですけど…えと、えっと…」

P「ほれ、あーん」

春香「あ、あーん」

 はいin!
 春香は千早ほど抵抗無く食べてくれたな。

春香「むぐむぐ…」

P「真もどうだ?」

真「僕は遠慮しておくよ。プロデューサーが料理上手いのは知ってるしね」

 むう…今日のから揚げは自信あったのんだけどなぁ。

春香「…お、美味しかったです…プロデューサーさん…」

P「ありがとう」

春香「──そっ、そうだ、プロデューサーさんも私のお弁当一口どうですか!?」

P「それは嬉しいけど…いいの?」

春香「はい! どれでも好きなのをどうぞ!」

 どれでもか……だったら、ここは黄色が栄える卵焼きあたりをいただこうかな。

P「じゃあ卵焼…」

春香「卵焼きですね! …はい、どうぞ!」

 言い切るよりもはやく、春香は卵焼きをつまんで俺の口元へ。

 ……お、俺に「あーん」をしろというのか…!?
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 18:17:32.29 ID:yAlnhYgoo
教室内は糖分過多だな…
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 19:30:00.99 ID:YLXsGZVDO
外で食ってるイメージだったんだが
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/05/08(火) 20:06:20.17 ID:1zwOcWL50
水瀬「僕のPに……」ギリギリ
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 20:16:37.31 ID:NguBHMXDO
>>279
あーっ…♂
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/08(火) 23:35:55.37 ID:hhrW4by3o
ウッハウハだけど周りからの視線は痛いだろうな
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/09(水) 03:24:38.03 ID:dtFIPfOQo
>>280
んっ・・・///
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/05/09(水) 12:52:40.28 ID:cBf9+TE20
なんとなくこの真は無印の髪型のイメージがある
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/12(土) 02:40:51.71 ID:ucX8s+yDO
まだか!まだなのか!
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/05/12(土) 22:48:01.84 ID:RArlsukho
やっぱ面白いよおおおお
はよ続き書いてくれえええ
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/13(日) 00:49:38.33 ID:FvxYXtun0
追いついた
続きがんばって
287 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/14(月) 21:12:30.38 ID:IMPaVhhAO
払込用紙をなくして携帯止まってしまってました……。
言い訳の余地も無く申し訳御座いません。

15日には書けます。
本当に済みません。
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/05/14(月) 21:35:54.34 ID:4Q4xKzPco
ドンマイ
明日楽しみにしてる
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/05/14(月) 22:01:54.62 ID:XkLwhrqPo
なんと丁度誕生日に再開か
嬉しいものだ
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/14(月) 22:22:51.42 ID:pFfuo/m40
楽しみにしてるぜ
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2012/05/15(火) 00:13:45.20 ID:9sDpYoqBo
待ってるよー
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/15(火) 16:27:48.81 ID:k01SXm7DO
期待
293 :!ninja :2012/05/15(火) 17:10:06.04 ID:Xv1gkFa80
期待
294 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/15(火) 17:41:47.38 ID:yDfqE0TAO
P「い…いやぁ、それは恥ずかし」

春香「あーん」

P「自分で食べれるから」

春香「あーん」

P「痛い春香痛い箸が刺さってるグサグサきてる」

春香「あーん」

P「だから春ムグゥッ…!!」

春香「素直に食べないから無理やりつっこんじゃいましたー」

 ゴフッ……なんて卑猥な…!!

P「……んっ、美味い」

春香「本当ですか?」

P「本当本当。きれいな黄色だったからただの塩味かと思ったら、ほんのり出汁の味がするんだな」

 だし汁を、色味を損なわない程度に混ぜ合わせたのかな。
 口で言うよりもかなり難しい技術だと思います。

春香「すごい、よくわかりましたね!」

P「隠し味を当てるのって楽しいからさ。…いやそれにしても本当に美味い」

 隠し味は、作り手と食べる人との真剣勝負。

 したり顔で「隠し味は〜」と解説している料理人をみるとガッカリなう。

真「たまご焼きなんて調理実習のときくらいしか作ったことないよ…」

千早「目玉焼きくらいなら…」
295 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/15(火) 17:51:53.43 ID:yDfqE0TAO
律子「ここに居たんですか」

P「お?」

 キィ、と扉を開いてやってきた律子さん。
 ちなみに屋上でランチしてました。

律子「探しましたよ」

P「ムゴムマモマ」

律子「のみ込んでから喋ってください」

 失礼。

P「どうかしたのか?」

律子「例の部活…同好会の件です。活動拠点に出来る部屋と、活動に関する必要書類について伝えにきました」

真「わぁ…!」

春香「部室ですよ、部室!」

P「わざわざゴメンな。教室で渡してくれてもよかったのに」

律子「それが、“必要書類”について少し…」

P「うん?」
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/05/15(火) 18:00:55.17 ID:dvAl69T9o
きたあああああ
297 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/15(火) 18:07:54.42 ID:yDfqE0TAO
律子「いまこの学校はの部活動の一斉点検が行われて、ムダのないキレイな状態になりました。これは、プロデューサー殿のお陰ですが」

P「うむ。頑張った甲斐があった」

律子「この状態を維持しようと学校側で話し合いが行われ、その結果、今年度から『同好会を含めた全部活動は、定期的に学校へ活動記録を提出すること』が義務づけられたんです」

P「…なん……だと…?」

律子「学校側としては、どんなくだらない内容でも構わないので、“私たちはこの部で活動しています”という証拠が欲しいみたいですね」

P「提出が滞った部活はお取り潰し、か」

真「け、結構シビアだね」

千早「特にうちは、活動していないとただのお友達会になりかねないから…」

律子「提出が無ければ即解散、と言うほど厳しくはないみたいですけど、色々と面倒が多くなりますから、気をつけてくださいね」

 そう言って、何枚か刷ってある『同好会・部活動記録報告書』と、『部活動規約』という小冊子を渡される。

 むむ…。
 やるからには、中途半端な報告は続けたく無いな。

 ……これは、ひと月に一度以上のペースでのイベント参加が必要になるかも知れない…!!
298 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/15(火) 18:29:56.07 ID:yDfqE0TAO
 そして、放課後。

千早「ここが…」

春香「私たちの部室なんですね…」

 HRを終えたあと、全員で部室へと直行。

 そこは今は使われていない3階の空き教室で、この棟は1、2階に主要教室(視聴覚室やLL教室、美術室等)が在るため、3階はほぼ空き家状態。一部が倉庫になっていたりするほどで、まさに辺境と言った風。

真「教室からだと少し遠いけど、ここなら発声練習とかダンスの練習とかしても、迷惑にならないよね?」

 そう。
 この棟は学校の敷地内で一番奥端に位置していて、それでいて『特別教室』用に造られた部屋だから、一部屋一部屋がかなり大きく、それでいて壁や床が厚いんだ。

 まさにうってつけ。
 我が「765プロダクション」としてはベストプレイスと言っていいだろう。

千早「よくこんないい場所が残ってたものね…」

春香「ここ、この間きたときには他の部がありましたよね?」
P「部活の一斉点検のあと、新しくできた空き教室に移動したんじゃないかな」

 確かここはこの間までアームレスリング部が使っていたはずだけど、たしか本人達が「広すぎて落ち着かない」と言っていた。
 学校側から話しを受けたかなにかで、移動してくれたのだろうか。

P「…律子と小鳥さんあたりかなぁ…」

 お礼をいっておかなければ。
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/15(火) 18:35:31.71 ID:wA2F/n8So
来てた
読んでるぜ
300 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/15(火) 18:47:50.26 ID:yDfqE0TAO
P「さて、皆の衆。今日が記念すべき初部活動、『765プロダクション』創立の日なわけだが──」

 夕陽によって染められた殺風景な教室の壇上で、春香、真、千早を前にして演説を始める。

 演説内容は「部活動の内容」、「部として目指すところ」、「最終的目標」といった、俺のこの部に対する意思表明が主。

 春香たちも真剣な表情で聴き入ってくれて、俺はスムーズに演説を終えられた。
 3人からささやかな拍手を受け、すこし気恥ずかしくなる。

真「それじゃあ、最初のうちはボイストレーニングとダンストレーニングを続ければいいんだよねっ?」

 爛々と、楽しそうに瞳を輝かせている真。
 そんなにアイドルやりたいのか、可愛い。

P「そうだな。裏方は全部俺に任せてくれていいから、3人は自分に出来ることから始めてくれ。なにか必要なものとかがあったら言ってくれ。手配するから」

春香「大丈夫なんですか…?」
 春香が、少し困ったような表情で心配してくる。
 “何が”とは、訊かなくてもわかる。

P「言い出しっぺは俺だ。無理なことは無理だって言うから、遠慮とか気兼ねとかはしなくていいぞ」

 撫でこ撫でこ。

春香「はぅ…」

 春香は他人に気を遣いやすいから、よけいに心配しちゃうんだよな。
 ありがとう。
301 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/15(火) 19:04:09.17 ID:yDfqE0TAO
千早「ボイストレーニングをするのなら、音程を測るために楽器が欲しいです」

P「楽器か……できたらピアノがいいけど」

 グランドピアノは高いしデカいし重い。

P「電子ピアノかキーボード辺りが落としどころか……」

 音楽室に練習しにいくわけにもいくまい。

千早「それと、課題曲を決めてたりして、私たち3人の歌唱力を一定まで揃える必要があると思います」

P「そうだな。3人で一つの目標を立てるのはコミュニケーションとして有効だと思う」

千早「そうなると教科書に載っているようなメジャーな曲が望ましいですけど、具体的には──」

 いや、すごいな。

 音楽の話をしている千早はすごく活き活きとしてて、普段のクールな千早とのギャップがすごく可愛い。

P「………」

千早「──あの、プロデューサー?」

P「…千早かわいい」

千早「えっ」

P「え?」

千早「あ、あの…」

 わぉ! 口に出てた!!

P「まぁ本当のことだから問題ないか」

千早「…!?」

 まっかな千早。

 やっぱり千早も普通の女の子だ。

 俺の顔も火をふくくらい真っ赤だがな!!!
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/15(火) 19:12:47.93 ID:TYcZdY7l0
ちーたんかわいいよちーたん
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/15(火) 19:15:08.45 ID:EAe9KUPIO
かわいすぎてやばいな
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/15(火) 19:23:29.23 ID:mG7hBkIj0
ちーたん可愛い!
305 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/15(火) 19:24:12.94 ID:yDfqE0TAO
真「プロデューサー」

P「なんだいマコっちゃん」

真「ダンストレーニングするのはいいんだけど、『ダンス』って、何をすればいいのかな」

P「『ダンス』か……うぅむ…」

 ダンスにも色々な種類がある。
 それぞれのダンスにはそれに似合った曲が存在して、また逆にそれぞれの曲にはそれに見合ったダンスが存在する。

 …曲。
 曲か。

P「──わかった。こんど、参考になりそうなダンス本を用意しておくよ。だから最初は、テレビで見るアイドルの真似から始めてみてくれないか」

真「真似?」

P「まずは『もう完成しているもの』を自分で演じてみて、『それ』に自分がどれほどついていけるのかを確認してみて欲しいんだ」

真「なるほど」

P「ちょっとした資料なら俺も持ってるから、今度持ってくるな」

真「あ、やっぱりプロデューサーもアイドルとか好きだったりするんだ?」

P「ん? いや、まぁ……人並みには」

 おっと……いままで秘密にしていたのにバレてしまったでござる…!
306 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/15(火) 19:45:50.04 ID:yDfqE0TAO
真「ちなみにどんなアイドルが好きなの?」

P「な、なんだよ急に」

真「だって、プロデューサーは僕たちをアイドルにしてくれるんたよね?」

P「応」

真「だったら、プロデューサーの好きなアイドルを参考にした方がいいのかなって」

 …違う。
 それは間違ってるぞ真。

P「真には真の魅力があるんだ!!」

真「うぇ…!?」

春香&千早「…!?」

P「ダンスを真似して、それが勉強になってくればいいんだ」

 アイドルにはアイドルの、お前にはお前の良いところ、素敵なところが沢山あるんだから。

P「……自分の魅力を潰してまで、『アイドルらしさ』を真似する必要は無いんだよ」

 俺は、アイドルを吸収して、自分の中で昇華してくれればいいと思ってる。

 だけど、ただ猿真似や模倣をさせるだけなんて、
 そんな真たちの魅力を飼い[ピーーー]ようなことだけはしたくない。

P「焦らなくていい。まずは、自分に出来ることから、な?」


真「う、うん。……そっかぁ…えへへ……」
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/15(火) 19:50:54.90 ID:SSmuzjnJ0
相変わらずピー音入るのな
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/05/15(火) 19:54:26.01 ID:yDfqE0TAO
>>306
 誤って、さ行を連打したつもりで終話ボタンを連打→長文消去というミスを久しぶりにやらかしてしまい、
 速攻で記憶を頼りに打ち直したものの完全ではなく所々表現が変わってしまいました。
 なので自分で気になるくらい文がボロボロです済みません。
 ちょっとテンション回復を…。
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/15(火) 20:07:26.34 ID:yhXwY/O80
冨樫か貴様
はよ書いて終わらせてから氏ね
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/05/15(火) 20:30:55.50 ID:OjFaHAg6o
>>1
まあ気にし過ぎる事は無いと思うよ?
更新してくれるだけでも、ありがたいんだぜ
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/15(火) 21:48:20.42 ID:SlF4s6hDO
メール欄にsagaを入れなさいよ
入れれば殺すもちゃんと出るし
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/05/16(水) 00:03:49.77 ID:9r62dOtao
なんてこったい…
313 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/16(水) 07:33:44.08 ID:xIZEI1yAO
春香「それで?」

P「はい?」

春香「どんなアイドルが好きなんですか?」

P「おぅ!?」

千早「わ、私も気になります」

春香「ほら、私たちってあまりアイドルに詳しくないですから、参考までに教えてもらえないかなぁ〜って」

真「──う、うん! そうだよ! 真似とかはどうでもいいとしても、そこは知っておきたいよ!」

P「な、なんでだよ…俺の趣味なんて関係な」

春香&真「関係なくない!」

千早「重要です」

P「うぅ……えぇと、えぇっと……」

 正直に言っていいのか?
 最近歌で気に入ってるのは新幹少女なんだけど、別にアイドルとして好きなわけじゃ無いんだよな……。

 “アイドルとして好き”な人はいるんだけど……ぐぬぬ。

P「……じゃあ言うけど、ヒくなよ、お願いだから」

春香「ヒきません!」

真「訊いたのは僕たちのほうだもん!」

 まえに水瀬にバレたときは、静かに頭撫でられたんだよなぁ……。

P「……日高舞、さん」

春香&真「……えっ?」

千早「……すこし意外です、ね」

 あーもー絶対そんな反応すると思ったー。

P「お、親父が好きでさ、気付いたら洗脳されてたって言うか…」

春香「ち、ちなみにどんなところが…?」

P「え? ……そうだな、気が付いたらだから特にはないけど……華やかな見た目、とか?」

真「つまりセクシーなのが好きなんだね」

P「まてコラ」

千早「くっ…」

 なんだこの公開処刑。
314 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/16(水) 07:47:42.45 ID:xIZEI1yAO
P「──とりあえず今日は解散しようか」

 結局、殆どの時間を駄弁りで過ごしてしまった。

 部活動初日で準備が足りなかったとは言え、もう少しそれっぽいことをしたほうが良かったかも知れない。

P「じゃあ必要そうなものはピックアップしておいたから、明日か明後日くらいには用意しておくよ」

真「僕、家でアイドルの曲とか見たり聞いたりしておくよ」

春香「私も、ダンスとか頑張らないとっ」

千早「あなたは、まず課題曲を歌えるようにね?」

春香「あぅ…」

 ふむふむ……みんなやる気が出てていい感じだ。
 俺も負けられない…!!

 裏方として、常に彼女たちのサポートを怠らないようにしておかなければ…!!

P「鍵しめるぞー」

 ガチャガチャン、と。

P「もう暗くなってるな……みんな、俺で良ければ送るよ」

春香「私、駅までだから大丈夫ですよ」

千早「私も、駅近くのマンションに住んでますから」

春香「そうなの? それじゃあ、一緒に帰ろう!」

千早「ええ」

真「僕は途中までプロデューサーと一緒だもんね」

P「だな」

 うぅむ…男らしさを披露できない…。
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/05/16(水) 15:04:40.23 ID:aTobvt4vo
きとったか
VIPの頃から読んでるよー
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/05/16(水) 19:56:33.18 ID:6uQkuaNf0
なんかまったりしてていいなぁ
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/19(土) 19:45:45.72 ID:yqEZs0v20
ソーリー、
日高舞って誰だ?  三次?
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/19(土) 19:48:34.75 ID:p1UDEsMu0
>>317
DSで出てた元アイドル
876プロの日高愛のお母さん
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/05/19(土) 19:51:06.35 ID:x1Jlc0fEo
しかもアイマス界最強のアイドル
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 19:55:28.45 ID:ZZAhwOwXo
そして要らない子
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/19(土) 20:48:50.63 ID:yqEZs0v20
さんくす

そんなすごいキャラがいんのか・・・
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/05/20(日) 10:26:52.62 ID:4D+mXCha0
支援
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 12:14:02.29 ID:Ut2/GHJW0
DS知らない人やっぱ多いのな
シナリオはいいから是非ともやってほしい
324 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/22(火) 16:11:17.26 ID:BXql4Q2AO

 翌日。

P「ほい」

千早「はい?」

P「どうぞ」

 昼休みになるや、『765プロ』は屋上に上がって昼食をとる。
 毎日集まる決まりが有るわけでは無いけれど、今日は俺がみんなに声をかけて集まってもらった。

 そして左隣に座る千早に渡したのが、やや小さめの弁当箱であります。

千早「あの…これは?」

P「お弁当です。千早の分の」

 勿論、自分の分の弁当も用意してある。
 千早に渡したのは、俺が小学生の時まで使っていたヤツです。

春香「プロデューサーさん、お昼はお弁当にすることにしたんですか?」

P「うん。千早のついでに」

 千早にはもっとしっかりと食べて欲しい。でも、千早に「料理をしろ」だとか「弁当を作ってきなさい」とか指示、命令するのは間違っている。

 なので、俺に負担をかけることで千早に専用のお弁当を用意することにしました。
 負担と言っても微々たるものだしな。

千早「そんな…、気を遣ってくれるのはありがたいですけど、こんなのは申し訳無いです…」

 伏し目がちに、戸惑いながら手元の弁当を持て余す千早。

P「俺が勝手に作って持ってきたんだから、千早が遠慮することはないよ。変なものは入れてないから、食べれるようなら食べてくれると嬉しいかな」

千早「……、」

真「(…僕取り残されてる…!)」
325 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/22(火) 16:32:30.54 ID:BXql4Q2AO
 正直、このお弁当作戦は気持ち悪がられるかなと、ちょっと不安だった。

 友達になったばっかりの男がいきなり弁当作って持ってくるとかある種のホラー。

 千早の役に立てればと思ってしたことだけど、これが原因で嫌われたりしたら残念過ぎる。

千早「………」

 千早は──内心ハラハラとしている俺の顔を一瞥してから、再び視線を弁当箱に移し──小さく笑った。

千早「ありがとうございます」

P「勝手にしたことだから」

 弁当を受け入れてくれたことに脳内で狂喜乱舞しながらも、なんとかそれだけ言葉を返す。

春香「千早ちゃん、お弁当見せて見せてっ」

 俺の心境を察してくれたのだろうか、
 春香が明るく話題を変えてくれる。

真「いいなぁ、僕もお弁当作ってみようかなぁ」

 真も話の輪に入って、昨日と同じような明るい昼食が始められる。

P「親御さんが作ってくれる内は、遠慮せず親御さんの好意に甘えておきなさい。機会があったら、親御さんから少しずつ教えて貰えばいいさ」

真「──うん、そうだねっ、やってみる!」

千早「………」

P「だから千早の弁当はこれから俺が作る」

千早「えっ」

春香「1人で出来ます?」

P「がんばる」

春香「私も、千早ちゃんのお弁当作ってみたいです!」

千早「春香!?」

P「じゃあ隔週で交代にしようか」

千早「プロデューサー!?」

春香「わかりました。じゃあ今週はプロデューサーさんで、来週は私の番ですね」

P「楽しみだな、千早!」

春香「楽しみにしててね、千早ちゃん!」

千早「どうしてこうなった…」
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) :2012/05/22(火) 16:56:53.08 ID:h0mR4LMbo
きたあああ
327 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/22(火) 20:32:14.48 ID:BXql4Q2AO
 その日の放課後。

春香「おぉー!」

真「物が増えてる…!」

 メンバーを連れて部室にやって来た。
 昨日とは違い、閑散とした部室には少しだけ小物が増えている。

P「昨日用意して、今朝まとめて家から持ってきたんだ」

 MD対応のCDラジカセに加えて、適当に編集したMDを何枚か。
 それに使う機会が有ればと思って、ホイッスルとストップウォッチ。
 あと、ダンスの練習用にゴム製のマット(連結式)を何枚も。
 おまけでベンチブレス2個とハンドグリップ4個、折り畳み式腹筋台1つ。

千早「…これ、全部プロデューサーが?」

P「応。近所から荷車借りて持ってきた」

真「昨日の今日で行動力ありすぎだよプロデューサー…」

 それが取り得ですから。

P「取り敢えずは、そんな感じでいいか? 家で腐らせてたモノをそのまま持ってきたんだけど、一応役には立つだろう」

 ついでとばかりに、鞄からダンスの指南書なんぞを取り出して部室端の机に置く。

P「参考になるようだったら使ってくれ」

 これは響から無期限で借りたもので、破損したりしなければどうしてもいいと言ってくれたので有り難くつかわせてもらう。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/22(火) 20:51:17.63 ID:ptX2Jp520
きてた
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/23(水) 01:38:53.86 ID:zAnuUbKT0
学生なのにPと呼ばれる由縁はこの行動力かwwww
330 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/25(金) 09:31:47.51 ID:VneIF5bAO
P「それじゃあ、みんなはここで準備体操に柔軟運動、思いつくことで良いから、体を動かして『運動すること』に対して体を慣らしておいてくれないか」

春香「あれ? プロデューサーさんどこか行っちゃうんですか?」

P「まだ準備できてない物があるから、それとってくる。すぐに戻ってくるけど、何かあったら電話してくれ」

千早「プロデューサー」

P「はい?」

千早「私も手伝います。たぶん、昨日私が頼んだもの…ですよね?」

P「ああ……気持ちは嬉しいけど、千早はみんなと練習しててくれ。俺じゃないと運べないし、他に用事も済ませるつもりだから」

千早「…わかりました」

真「ねぇプロデューサー」

P「ん?」

真「春香と千早は、プロデューサーのケータイの番号知ってるの? 僕は去年教えてもらってるけど…」

 おう!

 さっぱり失念していた!

P「ごめん、まずは2人にアドレス送っておかないとな」

春香「私も言い出すタイミングがわからなくて……はいっ、プロデューサーさん」

千早「えぇと…こう、でいいのよね…?」

 ピロリン、ピロリンと2人のアドレスが俺の携帯電話へ、俺のアドレスが2人へと交換される。

 一緒に真と千早も交換して、これで765プロのメンバーが全員繋がったことになる。

 春香と千早は、既に昨日の帰り道に交換していたとのこと。
331 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/25(金) 10:26:04.41 ID:VneIF5bAO
 やってきましたのは職員室。

 とある頼み事をしに参りました次第。

P「失礼します」

小鳥「あら、プロデューサーくん」

 戸を開けて中に入ると、入口に近い位置にデスクを持つ音無小鳥先生が反応してくれた。

P「小鳥…音無先生、お話ししていた件はどうなりましたかね」

小鳥「ああ、それなら…えぇっと」

 なにやらデスクをガサゴソとあさりはじめた。
 今朝頼んだのに何故そんな…。

小鳥「……あっ、あった!」

 先生が取りだしたた書類を受け取って、内容を確認する。

P「もう許可がもらえたんですか…!?」

 渡された書類は、とある学校の備品をうちの部活で使用しても良いか悪いかを申請したものだった。

 これは写しだけど、書類下部には確かに「使用を認める」という旨の文字が記されている。

小鳥「えぇ。校長先生にお話ししたら、即断で了承して貰えたわ」

 言われて確認したら、たしかにサインと捺印には校長の名があった。

P「なんででしょう?」

小鳥「さぁ?」

 俺は学校にとって、迷惑ばかり起こす厄介者な扱いなはずだけど。

小鳥「ただ…」

P「ただ?」

小鳥「校長先生は、あなた達の部の活動内容を見て、すごく楽しそうにしてたわ」

 ……楽しそう?

小鳥「期待しているのよ、きっと」
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2012/05/25(金) 10:42:28.65 ID:fUUmQzOAO
つい毎日みにきちゃう
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/05/25(金) 11:53:36.99 ID:QL89z6Lr0
貴音登場マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン小姑響はよ
フェアリー出るまでもう少しかかるかな?
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/25(金) 12:35:45.23 ID:/swPq6pY0
そういえば身の回りフェアリーで固められてるんだっけ・・・
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/25(金) 13:03:48.42 ID:iy63Hkwlo
小鳥先生は歳いくつなんだろう…
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/25(金) 13:12:05.72 ID:kIfrM/dUo
みそj

二十代前半じゃないかなー
337 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/25(金) 13:27:44.02 ID:VneIF5bAO
P「期待されてるのか……うぅむ」

 職員室をあとにして、次の目的の教室へ向かいながら独りごちる。

 嬉しいのと不安なのとが綯い交ぜな感じだ…。

P「──さて、と」

 目的地に到着。
 扉を前にして、中から聴こえてくる音に耳を澄ます。

 音が止み、会話が済まされ、中から緩んだ空気が伝わってくる。
 休憩に入ったのだろうか。

P「失礼します!」

 勢いよく、つとめて爽やかさをアピールしながら、俺は音楽室の扉を開いた。

 中にいる、いままで演奏をしていた吹奏楽部の生徒たちから、一斉に視線が向けられる。

 教室の奥で座ってお茶を飲んでいた部長さんが、何事かと近寄って来てくれた。

P「どうも、お久しぶりです」

 そう言えば、部を設立したことを報告したりしてなかったな。
 千早の歌のファンだったそうだから、合唱部が無くなって残念だったのではないか。

P「今日はその、準備室の方に用があって」

 指差したのは、音楽室と隣接した、黒板の隣の戸から入った先にある音楽準備室。

 普段は音楽の教諭しか立ち入ることのない場所だが、放課後になるとそこは『軽音楽部』の部室となる。

 俺は準備室で長らく使われていないはずの学校の備品──電気オルガンを回収に来た。
 のだが。
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/05/25(金) 13:35:42.37 ID:Yf5yyoAmo
きてれぅ
339 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/25(金) 14:38:06.85 ID:VneIF5bAO
P「廊下側の出入口が開かないから、コッチから通してもらっていいですか?」

 音楽準備室は、本来正規の入口であるところの廊下側通用口に鍵がかかっていて通れなくなっている。
 その上、内側の扉の前には大きな棚が置かれていて中から鍵を開けることも出来ない。
 どう考えても防災の法令だか条令だかに引っかかってるはずだけど、ずっと昔から今日まで、棚が動かされたことは無いらしい。

 部長さんに了承してもらって、まっすぐに歩みを準備室へ向けた。

 ノックをしてから戸に手を掛け、ゆっくりと開いて中に入る。音楽室は防音使用になっている為、別空間への出入りは扉が重くて結構しんどい。

 部屋に入りきる前から「誰?」や「何か用?」と声をかけられるが、ここは爽やかアピールをしながら戸をしめるまで口を閉ざす。
 付き添いのつもりなのか、吹奏楽部の部長さんも一緒に入ってきた。
 両部に迷惑はかけたくないので、早めに用件を済ませてしまおう。

P「『765プロダクション』って部…同好会の者です。ちょっとお願いが有りまして、ここにある電気オルガンを貰いにきました」

 校長のサインがされた許可証(写し)を取り出して、一番近くにいた紅一点の女の子部員に渡す。

 ……どうでもいいけどココ『軽音楽部』ですよね。

 部員さんが全員、聖飢○Uバリのヘヴィーメタルな恰好をなさっているのですが。
340 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/25(金) 17:38:39.11 ID:VneIF5bAO
 了解してもらって、手分けして探してもらっていたら、さっきの女の子がずっと座っていた、布に覆われた物体がソレだった。
 ちなみにこの女の子が軽音楽部のメインヴォーカルらしいです。

 見つかったオルガンは、大きさで言えば教壇ほど。だいたい小学校で使うようなサイズ。
 わりと最近、十数年くらいまえに台頭してきたグランドピアノの登場と共に役目を終えて、以来この部屋で眠り続けていたらしい。

 電源を入れてちゃんと起動することを確認してから、いざ持ってみるとこれが中々重い。

 ……これを隣の校舎の上の階に持って行かねばならぬのか……。
 まぁ、それはそれとして。

 今日ここに俺が来た理由は、他にもう一つあるんだよ。

P「──軽音楽部さんにお願いがあります」

 これは、真剣に「アイドル」を生み出すために絶対に必要なもの。

P「『765プロダクション』に、創作した楽曲を提供していただけませんか」
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/05/25(金) 18:57:03.52 ID:QL89z6Lr0
閣下つながりで聖飢魔Uか
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/25(金) 20:50:50.98 ID:E2RlTknDO
オルガンって一人で持ち運ぶにはちょっと辛いような
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/25(金) 21:17:42.92 ID:yC2jj4Wfo
電気オルガンなら頑張れば一人で行けないこともない
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/05/25(金) 22:36:46.61 ID:Yf5yyoAmo
俺が1階から5階まで一人で運んだことあるからいけるはず
345 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/05/26(土) 10:34:11.21 ID:BYhNT9/AO
 説明することは沢山あった。

 けれど、
 その場にいた誰もが、俺の話しをまっすぐに聴いてくれた。

 俺は、それが所詮擬似的な存在であろうとも、
 『765プロダクション』を成功させたい。

 歌が。踊りが。マネジメントが。舞台が。
 そして何よりもアイドルが。

 アイドルは、もういる。
 磨けば光るどころか、触れる前から熱すら帯びた原石はすでに自らを輝かせはじめている!

 なら俺に出来ることは?

 全部だ!

 原石が飾られ注目されるための、その全ての条件は俺が負う仕事だ!

 ……約束したんだ、あの子たちを立派なアイドルにするって。

 俺は、作曲なんて器用な真似はとても出来そうにない。
 昨日一晩頑張ってみたけど、義妹に「うるさいぞー」と一蹴されてしまった。

 ──だから、軽音楽部のみなさん!!

P「こんなバカの世迷い言に、少しだけ力を貸してください…!!」
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/26(土) 10:58:46.94 ID:ZYoPOaDL0
P男過ぎる、嫌いじゃないぜ
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/27(日) 10:23:17.47 ID:zXGT2Qk9o
あいからわずおもしろい
頑張って
348 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/27(日) 10:30:08.27 ID:Tmv4yyYAO
 途中から、感情のままに喋りすぎて文脈がおかしくなった。

 気持ちは伝わったか? やっばり夢物語だと思われてしまったか?

 頭を下げて一分ほど。
 恐る恐ると顔を上げて、みんなの表情を窺う。

 …すると、なんというか、
 厚塗りの化粧でよく読み取れないけれど、
 軽音楽部のみなさんは…。

P「……照れてる?」

 曰わく、
 「そんな真剣に頼まれるほど、私たちは立派なものじゃない」とのこと。

P「でも、みんなはそんなに真剣に音楽に取り組んでるじゃないか。ただの遊びで衣装を用意したり化粧をしたりはしないだろ?」

 事実、この部のレベルは高い。

 去年あった学校行事の音楽祭では、いまの恰好のヘヴィーメタルだけでなくポップスなども演奏し、在校生を沸かせたものだ。

P「だから俺は、真っ先にココに来たんだ。ウチの曲を御願いするなら、まず軽音楽部に頼もうと思って」

 後ろに吹奏楽部の部長を連れながら言うことじゃないかも知れないが、事実は事実。

 そしてしばらくの、沈黙。

 軽音楽部のみなさんは、無言で視線を交わして、見えない会話を続けている。

 そしてどれほどか経って、全員が俺の方に向き直り。
 代表格らしい女の子部員が、言った。

 「──ちょっと、ガンバってみるよ」と。
349 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/05/27(日) 11:06:32.44 ID:Tmv4yyYAO
P「お邪魔しました」

 馬鹿みたいに重たいオルガンを廊下まで運んでから、見送ってくれる吹奏楽部の部長さんに挨拶をする。

 さっきの説明の際には、端折りながらではあるが千早のことも話してあった。
 俺が話しを続けていたから無言のままだったけれど、千早の所在を聞くとすごく嬉しそうにしていた。

 ──然しながら、いま俺を見送ってくれている部長さんの表情は明るくはない。

 なんというか、プクーっとむくれている。

P「あ、あのですね、俺が吹奏楽部に依頼をしなかったのは、たまたまプロデュースする方向性が噛み合わなかったからで」

 むくれている理由は察しがついていたので、なんとか弁解しようと下手な言い訳を始めてしまう。

 なにも部長さんは、吹奏楽部より軽音楽部を頼ったことを怒っているわけではない。
 一ファンである自分が、千早の役に立てないことに憤りを感じているから…という事らしい。

P「あの…、これから活動を始めていけば、きっと吹奏楽部さんの力を貸してもらいたい時も出てくると思います。ですから、その時は吹奏楽部さんの都合がつけば頼みたいんですが…」

 お願いしてもいいですか?
 というよりも早く、部長さんは俺の前に親指を立てた拳を突き出して、ニッコリと笑ってくれた。

 なんという即答。
 この人ファンクラブとか創りそうだな…。
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/05/28(月) 01:40:18.50 ID:ahJi1osCo
きてたああああ

頑張って下しあ
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/28(月) 22:49:48.84 ID:z1pg8smIO
部長可愛いなおい
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/29(火) 21:40:05.35 ID:bSnTCd1i0
更新遅いなおい
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/05/31(木) 11:00:57.86 ID:uqlPAMU10
VIPの頃のペースで頼む
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/31(木) 11:31:27.21 ID:OyZR0286o
ゆっくりでいいよ
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/31(木) 17:29:32.77 ID:4+9Xpn150
急かして残念な出来になるよりゆっくりでも良作になったほうがいいだろ
というわけでゆっくりでかまわんぞ>>1
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/06/01(金) 10:32:37.03 ID:CjkQqRA10
甘やかすな これはいくらなんでも遅すぎるだろ
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/01(金) 11:14:34.71 ID:tIhUhCQyo
愛知のお前は何様なんだよ
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/01(金) 11:15:22.93 ID:tIhUhCQyo
愛知のお前は何様なんだよ
まあでも、あまり遅いと変なのも沸くしほどほどにお願いします
359 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/06/01(金) 11:42:25.82 ID:AwJVMQUAO
すみません言い訳がましいのですが、風邪をひいてしまいました
それが普通の風邪とはかってが違うらしく、投薬や点滴でも少しずつしかよくなってくれません
ここ一週間ほど、平均体温が38.4℃が続いて、高いときは39.1℃になったりしています
平常時は36.4℃くらいです


仕事はムリをいって、たくさんの人に迷惑をかけながら休ませてもらっています

『風邪ひいた』と逃げないようにしたかったのですが、
体全体が衰弱していて、携帯のディスプレイを見るのも辛く、根性論でどうにかなるものではないみたいです



すみません本当にごめんなさい

360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/01(金) 11:45:03.60 ID:gzmkhZoIo
あったかくして寝ろよ〜(上田)
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/01(金) 11:51:34.12 ID:YIQC0Ijxo
いえいえ、はやく元気になって下さいね
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/06/01(金) 12:11:08.34 ID:5EiCsUnKo
まあそういうこともあるわな
楽しみに待ってるから頑張って治してくれよ
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/01(金) 12:48:56.83 ID:hnJp9c1Y0
それは仕方ないですね。
あったかくしてお大事に。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/01(金) 16:36:39.33 ID:QYWa+cIzo
お大事に
無理はしないで下さいね
大人しく待ってます
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/01(金) 18:46:35.45 ID:MhT1KKDV0
無理せず、完治してからで良いよ。
お大事に。
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2012/06/01(金) 18:57:36.88 ID:8EIW81aAO
ゆっくり風邪を治してください

体が大事だよ
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/01(金) 23:54:56.68 ID:CjkQqRA10
正直嘘だなって思ってるけどエタらなきゃそれでいいや
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2012/06/02(土) 01:27:27.40 ID:gSNxHVdvo
>>367
そういうのいらないです
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/02(土) 01:29:22.97 ID:rfZs33UMo
安価先があぼんで見えない
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/06/02(土) 08:15:05.54 ID:+h/g5Z5Qo
>>367
黙って
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/02(土) 16:41:35.10 ID:zsamflrDO
それは風邪なのか?
病院は行っているみたいだから温かくして、ゆっくり休みなよ
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/09(土) 00:07:11.54 ID:a1OYP1h60
まだ風邪治らないのかー?
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/09(土) 12:03:29.19 ID:VeyKCDWuo
気長に待っとるよー
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/06/11(月) 11:46:19.42 ID:eoajUjjAO
逃げたか
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/11(月) 15:37:22.08 ID:Xl4S/jV80
今までもこのくらいの間はあったわ
逃げたとか勝手に決めつけてんじゃねーよ
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/11(月) 15:53:47.33 ID:tiPo+5eho
流石トンキン、民度が知れてる
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/11(月) 17:40:29.27 ID:yKhwjl140
>>375
上げんなと
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/13(水) 00:23:34.31 ID:R1TdAVPDo
ここで1ヶ月程度なんて普通のことだろ
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/13(水) 01:04:52.66 ID:AxgC1pLKo
そろそろ生存報告くらいはして欲しいな
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2012/06/13(水) 01:11:52.92 ID:adTBOJabo
そうだな
書く時間なくても生存報告ぐらいは欲しいな
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/16(土) 11:04:42.29 ID:u/9ZiX3p0
頼むからエタるなよ
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/17(日) 00:54:46.09 ID:oCU+wNj6o
生きてるかー?
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 05:33:05.15 ID:R4lUZMBuo
リアル事情もあるだろうし、しばらく書けないこと自体はわりとどうでもいい、が
ただ生存報告だけはして欲しいな
384 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/06/18(月) 23:54:25.42 ID:hTR0ZHKAO

 長らくと申し訳有りません、お久しぶりで御座います。

 長期の高熱、風邪の悪化が祟り、肺炎を患ってしまうに至り、現在まで時間を回復に費やしていた次第です。

 御指摘通り、一二言生存を入れておくべきでした、
 本当に申し訳有りません。

 幸いと肺炎の進行は軽度なものであった為、現在を以て残るは日々の投薬で治療は終了となりました。

 つい先日、就労に復帰することが出来たのですが、
 半月ばかりも寝たきりの生活が続いた為、体力が追いつかず業務をこなす事で手一杯となってしまっていました。

 物語の続きを書くには少々余裕が無い現状ですが、近いうちに必ず書き始めます。

 願いましては、それまでの間、いま暫くお待ちいただけませんでしょうか。


 情けない泣き言この上ない限りですが、今ひとつ宜しく御願い致します。
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/18(月) 23:56:31.39 ID:7HPEqGgdo
なんでもいいから早く書いてくれ、楽しみにしてるんだから
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/19(火) 00:00:37.25 ID:zRAWu0WSo
おう、舞っててやるぜ
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/06/19(火) 00:00:55.98 ID:K0wjFteyo
肺炎て・・・大丈夫か
待ってるから体大事にしてください
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/19(火) 00:01:07.63 ID:zRAWu0WSo
おう、舞っててやるぜ
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/06/19(火) 00:23:53.59 ID:plcKd9J5o
まあありがちなコンボですね
なんにせよ治ったならよかったよ
俺も舞ってるからな!
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 00:41:57.30 ID:Zhk+N2bW0
皆舞ってるからな!
体を大事にしてくれ
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/19(火) 07:49:32.24 ID:UYtsk2D4o
おう、舞っててやるぜ
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/19(火) 09:19:07.93 ID:r0q5OyUVo
肺炎って…
頑張れよ
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/19(火) 09:33:45.38 ID:F4ZAIDPR0
待ってるから大丈夫です。
余裕のあるときに書いてください。
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/06/19(火) 10:57:31.60 ID:8vu/sdff0
お大事にな、舞ってるぜ
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/06/19(火) 13:56:28.79 ID:FWIh2F+Uo
ダンサブルなスレですね
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/21(木) 12:06:13.70 ID:LhyCHYE+0
荒らしでも煽りでもなく純然に訊きたい

このスレの何が面白いのか
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/21(木) 13:17:40.15 ID:m6rCBXyDO
設定じゃないか?
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/06/21(木) 18:00:44.51 ID:K2dQAnW/o
いい設定じゃないか
速ささえあれば完璧だが>>1が病弱?だから仕方ない
期待して待つのみ
399 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/06/23(土) 10:32:08.94 ID:UzK7DC4AO
P「わっせ、よいしょ、どっこらしょ」

 電子オルガンを抱えて、がに股になりながらも階段を一つずつゆっくりと“下りて”いく。
P「…まさか空中回廊が塞がれてるとは…」

 音楽室を出た後、俺は3階まで上がってから、棟と棟を結ぶ通路(通称空中回廊)を通って部室まで行くつもりだった。

 けれど、予想外なことに空中回廊は1年生たちが授業で育てている「アサガオ鉢の置き場」になっていて、
 とてもこの重いオルガンをもって通れるほどの幅は存在していなかった。

 なので、
 「一度1階まで下りてから棟を移動し部室階まで上がる」というRPGみたいな遠回りをせざるを得ず、仕方無しにこうして汗を流し続けているわけです。

P「あぁー…」

 いかに体力バカとは言っても、こうもピンポイントに指や腰に負荷がかかるとダメージが出てくる。

P「……なんくるないさー」

 まぁ、いまのは“下り”だったから気を遣いすぎたんだ。
 “上り”は力と勢いに任せて一気に上がりきってしまおうそうしよう。

P「……ハァッ──」

雪歩「…プロデューサーさん?」

P「!? ──グホァッ…!!」
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/23(土) 10:40:15.71 ID:qt6PCrtRo
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
401 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/06/23(土) 10:53:54.80 ID:UzK7DC4AO
雪歩「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!!」

P「ぁぅぁぅぁぅ…」

 いまここぞと言うとき。
 中腰に構えて、両手を添えて、溜めた力を解放せんとした瞬間。
 園芸姿の雪歩が、運が良いのか悪いのか俺を見つけて声をかけてきてくれた。

 雪歩の声は、なんかこう、抗い難い魅力をもっていて、たとえそれが雑踏の中で在っても、名を呼ばれたら反応せずにはいられない。

 そんな魔翌力の持ち主は、オルガンを滑らせて足の指の上に落とした愚鈍の馬鹿の前で必死に頭を下げている。

 「ただの俺の不注意だから」、「雪歩はなにも悪くないよ」。

 それだけの言葉を伝える余裕すらなくうずくまる情けなさから何とか回復して、瞳に涙を浮かべている雪歩の肩に手をおく。
 一瞬ビクりと震えるが、恐る恐ると視線を交えてきた。

P「…ごめん、不注意だった」

 いまのはただの俺のバカだよと告げて、笑顔で念を押した。

 なにか言いたそうにした雪歩だけれど、笑顔が効いたのか、それ以上謝罪や弱音を漏らしたりはしなかった。

 いい子いい子。
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 12:09:07.60 ID:fFv5EIlZo
待ってた
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/06/23(土) 20:13:11.51 ID:eUWHR3SVo
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/24(日) 16:17:12.89 ID:oIpgFcca0
これを待ってた
405 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/06/25(月) 10:28:39.36 ID:pqnWwKPAO
雪歩「これを…運ぶんですか?」

P「うん。一番上の階に部室がもらえたから、そこにコイツを持って行って使えるようにするんだ」

雪歩「部室…?」

 およ。
 雪歩には伝えて無かったっけ?

P「『765プロダクション』っていう、自己流のアイドル事務所みたいな部活を始めたんだ。歌ったり踊ったりして、学校のイベントとかに花を咲かせるのが目的でさ」

雪歩「アイドル……ですか」

P「応。春香たちを俺がプロデュースするんだ。元が良いからきっと人気が出る…いや、出させる!」

 握り拳をつくって、見果てぬ夢へ想いを馳せる。
 雪歩は不思議そうな、でも何かを思案しているような表情を浮かべていて。
 横でそれを暫く眺めてから、そう言えばと春香たちを待たせていることを思い出して、慌てて作業を再開する。

P「じゃあ、コレ持ってかなきゃいけないから、もう行くよ」

 オルガンの前に立ち、抱えて持とうとした片方の取っ手に、白く綺麗な手が添えられた。

雪歩「わたしも、お手伝いします」

P「そんな、悪い」

 遠慮するも、何故かいつもより押しが強い彼女は、揺らごうとしてくれない。

 知り合って間もないけど、きっと雪歩にしては珍しい行動だと思う。

P「これ重いから、雪歩が持ったら危ないんだよ」

雪歩「…じゃあ……2人で持ったら平気…ですよね…?」

 ……どうしたというのだ今日の雪歩さんは……。
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/06/25(月) 10:52:17.93 ID:/MiAmOkzo
ktkr
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 15:19:02.25 ID:DEc2+XgSO
コノシュンカンヲマッテイタンダ!
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/25(月) 17:33:22.04 ID:hqFmJ9xy0
こんなのを舞っていたんだ!
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 18:42:56.07 ID:hSqebP0DO
週刊誌を思い出すな、この更新頻度は
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/06/25(月) 19:13:31.62 ID:1NMAKSqLo
週刊誌ならまだいいがwwwwww
今日はおしまいかな?
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/06/25(月) 19:37:08.70 ID:UeXkYuvg0
この時を舞ってた!!
>>1頑張ってくれ!
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 22:37:02.58 ID:eYDJQk1S0
舞ってた
たのむぜえええええええええええええええ
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/25(月) 22:54:26.20 ID:l7AhLHNE0
舞ってたぜ!
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/25(月) 22:58:40.93 ID:z/ba69xAo
ダンサブルなスレはここですか?
415 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/06/26(火) 10:29:34.74 ID:vnQr2yUAO
P「じゃあ、ゆっくりいくからな? 辛かったらすぐに言うんだぞ?」

雪歩「は、はいっ」

 互いに向き合う様にして取っ手に指をかけて、オルガン運びを始めようとする

P「(最初は少しだけ…雪歩に合わせてほんの少し浮かせるように…)」

雪歩「いっせぇのぉ…」

P「せっ」

 華奢な雪歩の体躯では、きっと2階に上がりきるまで続ける事は出来ないだろう。
 だから、辛かったらすぐに休めるように、
 不意に落としても、オルガンにダメージがあまりいかないように、軽く数センチだけ持ち上げるつもりだった。

 つもりだった。

P「(うお!!?)」

 だが「せっ」の直後、俺の両指にいままでにない負荷がかかる。
 その理由は、理解できた。
 バランスが悪くなって、俺の方が下過ぎてオルガンの重量が必要以上にかけられているんだ。

 けれど、“そうなる原因”を、俺は咄嗟に理解出来ないでいた。

 理解が追いつかず混乱している俺の耳に届いたのは、鈴が鳴るような澄んだ声のつぶやき。

雪歩「あ、かるい…」

 驚愕の反応をするよりも早く指が限界を迎えてしまい、情けなくも「い、一度下ろしてもらってもいいかな…?」とお願いせねばならなくなった。
416 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/06/26(火) 11:03:00.52 ID:vnQr2yUAO
P「ぜぇ…ぜぇ…」

 ほんの数秒の出来事なのに、肩で息をするほど消耗してしまった。
 隣で雪歩が心配そうに見つめているが、大丈夫だよと笑顔で返す。

P「…ゆ、雪歩は、」

雪歩「はい?」

P「けっこう、重いもの持つの慣れてるのかな?」

 変な質問だった。
 でも雪歩は訝しんだりすることもなく、むしろ少し照れたような素振りを見せて答えてくれた。

雪歩「あ…あの…私、ガーデニングとかが好きで……」

 ああ、そういえば。
 はじめて逢ったときも、異様に重い植木を1人で持って町を歩いてたな。

 あの時は雪歩が無理をして重いものを持っているのだと思っていたけれど、
 あれは雪歩にとって大した事じゃないレベルのものだったんだろう。

雪歩「それで、土とか掘ってるうちに、気が付いたら重いものとか気にならなくなってて……」

 それなのに俺は偽善者ぶって雪歩に近付いて…、
 男が苦手な雪歩からしてみたら迷惑千万だった事だろう…。
 ああ、親切良かれと思ってやったことが雪歩を苦しめていただなんて。

雪歩「あ、でも! 辛くないわけじゃなくて、だからプロデューサーさんに初めて逢ったときも、本当はすごく助かったんで…」

P「ごめん雪歩」

雪歩「うぇい!?」
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/06/26(火) 11:34:09.56 ID:yMwxfx0So
うぇい!?
418 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/06/26(火) 11:40:48.28 ID:vnQr2yUAO
 急なネガティブ状態に陥ってしまっていた俺は、
 混乱した末の雪歩から「プロデューサーさんに逢えて嬉しかった」と言ってもらえ、現金なくらいに回復。

 また時間をロスした上に雪歩にまで迷惑をかけたことを反省しつつ、
 今度は変な遠慮をしたりせずに、2人で息を合わせて一気に上り切ることが出来た。

雪歩「はぁ…」

P「ありがとう雪歩。おかげでずっと楽に持ってくることが出来たよ」

雪歩「いえ、そんな、対した事じゃありませんから…」

P「もしよかったらなんだけど、部室によってくれないかな。なんのおもてなしも出来ないけど、きっと春香たちも喜ぶと思うから」

雪歩「は、はいっ」

 もとからその気があったのか、元気の良い返事につい頬を綻ばせて、オルガンを部室前にまで運んで行く。

 ドアの前に立つと、部屋の中からはラジカセ、用意しておいた歌が漏れ聞こえていた。

 ちなみに、この学校の教室にあるドアは基本的に窓は付いていないので、中の様子なんかは窺えないようになっている。
419 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/06/27(水) 08:14:25.95 ID:8HGFazMAO
P「みんな、待たせてごめん──」

 俺は勢い良く、部室のドアを開けた。

 それはもう素晴らしいくらいの爽やかな笑顔と共に、全開にした。

真「えっ?」

千早「───」

春香「ふぇ?」

 故意にじゃない。わざとじゃない。
 中の様子なんか見えなかったんだ、
 これは不慮の事故でしかないんだ。

 だってまさか、ドアを開けたらカーテンを閉めた薄暗い部室で、
 “ジャージ姿の『アイドル』たちが半裸で着替えていた”だなんて誰が予想出来ようか。

 故意じゃない、わざとじゃない。俺は下心で彼女たちに近付いてるんじゃない。

 ただちょっと、今回のコレはいきなり過ぎて、その上3人もの美少女の着替え姿が魅力的過ぎて、脳の思考判断能力が著しく低下してしまって、

 硬直したまま5秒ほど動けなくなっていただけなんだ。

 「──き、」

春香「キャアァァァァ!!」
真「うわあぁぁぁぁ!!」
千早「…ッ!!」

P「ゴッ、ゴメ──!!」

 叫声、怒号。
 春香たちの悲鳴を受けてやっと我にかえった俺は、今更ながら慌ててドアを閉め直そうとした、直後。

雪歩「ダメですうぅぅぅぅっ!!」

 これも反応の遅れた雪歩が、どこから取り出したのか愛用のスコップを振り上げて、その断平で俺の側頭部を殴打した。

 幸い、力は入れてなかったのか打撃そのものはパカーンといった感じで緩かった。

 けれど当たりどころが悪かったのか、はたまた昨夜からの寝不足が祟ってか、

 俺は一瞬の忘我に引きずり込まれるかの様に、そのまま意識を失ってしまった。
420 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/06/27(水) 08:40:11.25 ID:8HGFazMAO
「…びっくりしたぁ…」

 真っ暗な空間。
 右もなく左もなく、そもそも方角の概念が存在しない静かな「黒」に、聞き慣れた女の子の声が聴こえた。

「やっぱり、施錠はしっかりやっておかないとダメね…」
 これは千早の声だろうか。
 施錠…施錠……ああ、そういえば俺、着替えを覗いてしまったんだった。
 みんなには酷いことをしてしまったな…。

「私たちも油断しちゃってたもんね、さっきのはプロデューサーさんのせいじゃないよ」

 わりと近くで聞こえてくるこの声は、春香だろう。
 俺を許してくれるというのか……アンタ女神様や…。

「ごめんなさい、ごめんなさい、プロデューサーさんを殴り飛ばしちゃったりして…」

 涙声。今にも泣き出しそうなか細い声が、俺や春香たちに向けられてるのがわかる。

「まぁ…プロデューサーも反応が遅れてたし、これくらいは悪因悪果ってところだよ」

「そうね……それにしても、全く起きる気配がないのだけど……やっばり、校医さんを呼んできたほうがよかったのかしら…」

「たんこぶにもなってなかったし、軽い脳震盪だとおもうよ? それにほら、昨日から準備してくれてたみたいだから、きっとろくに寝てもなかったんじゃないかな」

「…こまった人ね」

「一所懸命なんだよ。自分のことよりも、私たちのことに」

 暖かいものが触れる。
 これは体温…人の手だ。

 その暖かさが染み渡るように、全身の感覚や方向への認識が回復していくのがわかる。

 俺はいま寝かせられていて、その傍に春香たちが居てくれている──。
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 15:36:31.06 ID:UlBJ3LBko
これはうらやまけしからん
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/06/27(水) 23:16:17.03 ID:012A0CzAO
少しずつでも、読めれば嬉しい。
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/28(木) 19:34:39.26 ID:Ej2HZxRx0
Pはやっぱりラッキースケベだなwww
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/28(木) 20:12:49.62 ID:0n/XW1YUo
Pは故意にセクハラするものだろ
425 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/02(月) 11:03:23.98 ID:oi486CIAO
春香「……気が付きました?」

 瞼を開いたら、すぐ傍に座って顔を覗き込んでいる春香と目が合った。

 いま俺は部室の床に寝かされていて、枕代わりに学生鞄が使われているのがわかる。

 すぐ横にいる春香は、学校指定のジャージを着ている。
 少し距離を置いた窓際に、真と千早。真は同じくジャージ姿で、千早は制服姿に戻っていた。
 そして、出入り口付近の隅っこに雪歩。

P「…ごめん、迷惑かけた」

春香「いいえ、こっちも悪かったですから」

 微かに痛む側頭部を抑えながら立ち上がると、既に空は藍色に変わりはじめているのがわかった。

P「俺ってどれくらい倒れてたんだ…?」

真「30分も経ってないよ。外が暗いのは、プロデューサーの帰りが遅かったから」

P「そっか……」

 あらためてみんなを見ると、やはり少しバツが悪そうな表情になってしまう。
 当然と言えば、当然なのだが。

P「──春香。真。千早。覗いたりしてごめん」

 3人に向き直って、頭を下げた。
 こんな謝罪をされたところで3人にはなんのメリットも無く、だだの俺の自己満足に過ぎない。

 だけど自分なりの、
 今後付き合っていく仲間に対しての誠意だけは、示しておかなければいけなかった。
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/07/02(月) 13:09:54.44 ID:L0SoX+m10
キテタ
427 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/02(月) 15:41:00.63 ID:oi486CIAO
真「い、いやぁ…そんな面と向かって謝られると困るなぁ…」

千早「………」

 真からの反応はわりと柔らかいもので、千早は沈黙したままだった。

春香「わざとじゃ無いんですよね? だったら、今後気を付けてくれればいいですよ。ねっ? 真ちゃん千早ちゃん」

真「うーん……そうだね、今後は鍵の扱い方についてもう少し話し合えたら、こんな事も減るんじゃないかな」

千早「……今回は、許します。私たちにも、非が有りましたから」

 春香の言葉に、2人とも温かい声を掛けてくれた。

 …嗚呼、ありがとう春香。

P「ありがとうみんな…」

千早「ただし! 今回許されたからといって今後明らかな故意で同じ様なことを行ったりした場合…相応の処罰を受けてもらいますから」

P「当然だ。絶対にやらない」

 そりゃあ、女性に興味有る年頃ではありますが、
 相手にイヤな思いをさせてまで満たす欲望なんて持ち合わせておりません。

 …………たぶん。
428 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/02(月) 16:02:28.70 ID:oi486CIAO
P「…雪歩も、ごめんな。俺から誘ったのに、いやな思いさせちゃって」

雪歩「ひぅっ!? い、いえそんな、私のほうこそプロデューサーさんに酷いことしちゃって…!」

 抱くようにスコップを握り締めていた雪歩は、怯えきっていまにも泣き出しそうになっていた。

 着替えの覗きという俺の蛮行を止めてくれる為にしたことなのだが、雪歩は自分を責めている。

P「さっきはあれが適切だったよ。雪歩が俺を止めるためにしたことなんだから、俺が感謝こそすれ、雪歩が謝る必要はないんだよ」

雪歩「うぅ…すみませぇん…」

 いまにも飛び出して逃げてしまいそうな雪歩にゆっくりと近付いて、頭をポンポンと撫でてあげる。

 嬉しい…と言うことはないだろうけど、それで安心してくれたのか、心無し落ち着いてくれたように思える。

P「……今日はもう帰ろうか」

真「そうだね」
429 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/02(月) 16:44:49.70 ID:oi486CIAO
 無理やり連れ回してしまった雪歩を先に部に返してから、
 春香と真の着替えを待つために、俺は千早と共に廊下に出ていた。

千早「…確かに、外からだと中の様子はわからないですね」

P「少し音が聞こえてくるぐらいかな」

千早「えぇ……これなら、ダンスや発声の練習を本格的にしても問題無さそうです」

P「……そう言えば、どうしてジャージに着替えてたんだ?」

千早「プロデューサーが出て行ってからすぐに、ダンスの練習をしていると汗をかいてしまうことに気が付いて…」

P「あぁ…女の子は気にするもんな」

千早「教室まで体育用のジャージを取りに戻ってから着替えて、あとは発声練習と基本的なステップの練習を」

P「……そうなると、『着替える時間』は毎回必要になるわけだよな」

千早「はい」

P「……普段は俺が鍵を持つようにして、部活時は部室に置いておくようにしよう。その際は必ず誰かが部室に居ること、もし全員出る時は、最後の人が鍵を持って施錠して出る。…そんなところか?」

千早「学校の鍵ですからコピーは無理ですし、その位が限界だと思います。不明な点が有れば、各々連絡を取り合うようにして」

P「千早、メールちゃんと打てる?」

千早「は、春香さんと毎晩やり取りしてますから、問題有りません」

 なんだ貴女たち夫婦かなにかか。

P「……部室、暑かったら空調機使って良いんだぞ?」

千早「エアコンは喉を傷めるのであまり使いたくないです……ニオイが籠もるのも嫌でしたから、送風にだけしておきましたけど」

P「そっか…」

 ……じゃあ扇風機でも用意してやらないと…。

春香「──お待たせしました!」

真「それじゃあ、帰ろうか」
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/02(月) 19:55:09.81 ID:dk8+8HFLo
おつおつ
431 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/02(月) 20:30:09.46 ID:oi486CIAO
 4人で昇降口まで向かうと、制服に着替えた雪歩が立っていた。
 もう空はだいぶ暗いのに、わざわざ待っていてくれたようだ。
 揃って下校を始めて、他愛ない世間話をする。

 そして部活動について語っている時に、千早が切り出した話題。

千早「明日からのゴールデンウィークはどうするんですか?」

P「……ゴールデンウィーク?」

真「やっぱり忘れてるよこの人…」

 ゴールデンウィークというとアレか、連休ってことか。

P「部活始めたばっかなのに…」

 仕方ないけど、ここは課題だけ用意して各自練習…とするしかないだろう。
 集まってなにかしようにも、春香は電車で2時間もかけて此処まで来ているのだから、休日にまで呼び出すのは忍びない。

P「えっと……じゃあ、さっきやってたって言う『基本のステップ』を通しで出来るように各自練習しておこうか」

真「僕もう出来るけど」

P「じゃあ、真はダンスを覚える事を優先しようか。逆に千早は、ポップスなんかの歌を苦手じゃ無くすための練習をしよう」

春香「長所を伸ばすんですか?」

P「得意な人が得意の分野を伸ばせば、他の人をフォローすることが出来るようになるだろ?」

 ワンマンプレイをしてほしいわけじゃなくて、そうやって仲間意識を育んだり、仲間の得意不得意を理解し合ってほしいという思惑が有るにはあるのですが。

春香「………」

 春香さんが「私は?」と目を輝かせている…。

P「春香は先ずステップ。それが出来たら課題曲の暗唱」

春香「あ、暗唱?」

P「アイドルは歌詞を見て歌ったりはしないだろ? だから、新しい曲をすぐ覚えられるように鍛えておくといい」

春香「なるほど、力の真ちゃんと技の千早ちゃん、そして知の私ってことですね!?」

P「そんな中二はいらない」
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/02(月) 20:33:00.10 ID:dk8+8HFLo
終わってなかったか
読んでるから続きよろしく頼む
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/07/02(月) 21:10:30.46 ID:+Ejz+sGbo
久々に更新多いな
頑張れ
434 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/02(月) 21:26:32.44 ID:oi486CIAO
雪歩「…みなさん、すごい本格的なんですね」

 俺の隣…のやや後ろをついてきていた雪歩が、ため息を吐くように言った。

P「うーん…本格的というにはまだ始めたばかりだけど…」

 でも、端から観て俺たちのやる気が伝わったのなら、それはとても嬉しいことだ。

 ……雪歩、入部してくれないかなーって気持ちが伝わってくれないだろうか…なんて不謹慎なことを考えてしまったりしている。

 雪歩はガーデニングが好きで園芸部に入ったのに、勧誘なんかしたら悩んだあげくに気を遣って異動してくるかも知れない。

 まだ短い付き合いだけど、雪歩は優しいからそんな俺にもきっと気を遣ってくれる。そんな風に困らせたくはないし、だったら今の距離感のままでいて、
 『765プロ』のファンになってもらった方が…。

雪歩「始めたばかりでも、プロデューサーさんの愛情は感じます」

 零れるように、雪歩が笑う。

雪歩「すごく大事にしようとする気持ちが伝わってきて、見てる私まで嬉しくなってきちゃいます」

 向けられた笑みが、あまりに無垢で、純粋すぎて、
 俺は一瞬で、茹でダコみたいに赤くなってしまった。

雪歩「…?」

 その反応に小首を傾げる姿までかわいくて……。

 ……ああ、雪歩プロデュースしてみたい……。
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/03(火) 02:18:50.06 ID:0nm2QI1ro
さぁ勧誘フェイズだ
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/07/03(火) 10:11:02.53 ID:u29p+psH0
これがリア充というものか…
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 21:14:03.65 ID:hXb9mVxwo
なんで俺の学生時代の思い出が流出してるの?
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/03(火) 22:23:11.40 ID:lEprHSra0
>>437
 こんな妄想ばかり…………泣けるじゃねぇか…!!!
439 : ◆72cuWZiGoBc/ [saga]:2012/07/05(木) 09:43:54.99 ID:tNAJmv4AO
春香「…プロデューサーさんプロデューサーさん…」

 不意に、近くに寄ってきた春香がポソポソと耳打ちをしてきた。

P「ふぉ…!?」

 敏感な耳の中に女の子の熱い息がダイレクトに当てられ、思わず飛び退いてしまう。

千早「…プロデューサー?」

P「い、いや、ごめんなんでもない」

真「?」

 前を行き世間話に興じていた千早と真の2人は俺の奇声に反応するが、首を傾げつつも元に向き直った。

 雪歩もちょうど余所見をしていたのかキョトンとするばかりで、今の奇声について言及はしなかった。

P「……どうしたんだ春香」

春香「…プロデューサー、雪歩ちゃんを狙ってますね…?」

P「…は?」

春香「あれ?」

 今度はどことなく付かず離れずと寄って、小声で会話をする。
 突然の春香の言葉をうまく理解できず茫然としたら、春香も首を傾げてしまった。

春香「…雪歩ちゃんのこと、『765プロ』に勧誘しようと思ってたんじゃないんですか…?」

P「……なぜバレた」

春香「やっぱり…!」

 春香はニヤリと、したり顔を決める。

春香「雪歩ちゃんかわいいですもんねー」

P「ん……まぁ」

春香「私たちにはもう飽きちゃったんですか?」

P「違う、断じて違う。…割と力強い3人とは違うタイプの子だから、こういう子も居てくれたらみんなで高め合っていけるだろうなと思ったんだ」

 雪歩はかわいい。それは揺らがないが、
 だからと言って春香や真や千早がそれに劣るわけじゃない。

 春香だってかわいい。
 真だってかわいい。
 千早だってかわいい。

 かわいさは決して殺し合わない。
 ただしく導いてあげれば、いくらでも相乗効果を得られるはずなんだ。
440 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/05(木) 10:11:52.27 ID:tNAJmv4AO
P「俺はみんなと一緒だとすごく楽しいんだ。飽きたりなんかするわけないだろ」

 去年あまりに大きなことをやり遂げてしまったから、正直今年はなんの期待も望みも持ってはいなかった。

 けれど、こうしてまた、打ち込めるものに出会うことが出来た。
 人一倍体力バカの俺がバイタリティーを全力で解放できるだけの使命を手に入れられた。

 これを幸福と呼ばずになんとするのか。
 僥倖…! 圧倒的僥倖…!!

P「…雪歩には、もっと楽しくさせてもらえそうな気がしたんだ。春香と、真と、千早と、雪歩と…みんなで、一緒に」

 まだなにも成し遂げていない内から、贅沢なことだと思う。
 だから、まずは『ある目標』をクリアしてから。
 その後に改めて、雪歩に話しをしてみようと、そう決めたところだった。

春香「……ぽっ」

 ……なんだ。
 何故春香の顔が赤くなる。
 思いの丈を真面目に伝えたつもりだったんだけど。

千早「……プロデューサー」

真「…こんな往来でよくそんな恥ずかしいこと言えるよね…」

P「はい?」

 顔を前──進行方向に向けたら、真と千早が此方を向いて立っていた。
 よくよく考えると、俺と春香の足が止まってる。

 ……ああ、そっか、俺が春香の肩を掴んでるからか。

P「………」

 当然、雪歩もすぐ隣で立ち止まっている。
 ただ、顔が春香以上に赤くなったり涙目になっていたりと表情が忙しい。

P「………」

 俺は……

P「…全部口に出してたのか…?」

真「うん」

千早「急に『断じて違う』と言って春香さんの肩を掴みだしたんですよ」

春香「ぽっ」

 そうか、だから春香は照れてたのか。こりゃいかん。

P「……雪歩」

雪歩「ひゃっ、ひゃい!?」

P「…聴いてた?」

雪歩「うぅ……はいぃ…」

 こりゃいかん。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県) [sage]:2012/07/05(木) 10:45:09.32 ID:ACuUCh9Go
いかん
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/05(木) 17:09:24.63 ID:snc5eL4Q0
こりゃいかん。
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [sage]:2012/07/05(木) 19:04:43.11 ID:I+tTmfSoo
こりゃいかんわ
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/05(木) 19:38:00.68 ID:hqahjDqfo
(アカン)
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/05(木) 20:18:38.74 ID:o3ek+/Ubo
いかんのか?
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/05(木) 21:47:43.19 ID:qaF+/lfho
ええんやで(ニッコリ)
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/07/06(金) 19:51:18.66 ID:SDugeJEF0
(くどいちゃ)いかんのか?
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/06(金) 19:56:34.35 ID:2pk90I29o
かまへん、かまへんねやで
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 23:31:42.20 ID:Q7f8U2Iz0
なんでや!阪神関係ないやろ!
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/08(日) 01:04:27.30 ID:PU7MwvSDO
くっせえからage
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/08(日) 01:13:48.93 ID:fCmq93mh0
>>450
くたばれks
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/08(日) 01:16:55.58 ID:PU7MwvSDO
いやでーすage^^
453 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/08(日) 07:24:13.49 ID:tURwq9qAO
 宥めるように、先ほどのだだ漏れだった言葉に対する説明をした。

 それによって春香、真、千早からは一応の理解を得られたところで、分岐路により3人とは別れてしまう。

 そしていま、並んで道を行くのは己れと雪歩の2人だけ。
 両者の距離は近からず遠からず、
 雪歩が極端に並んで歩くことをしようとしないので、自分の歩幅を緩めることでやっと横並びに持ち込めた。これで会話ができる。

P「雪歩」

雪歩「ふわい!」

P「さっき俺が言った話しはさ……その、今は気にしないでくれていいよ」

雪歩「ふぇ…?」

P「──確かに、雪歩をウチ(765プロ)の部に入れたいと思ってるのは本当のことで、その話し自体は、いつか雪歩に伝えてみるつもりはあったんだ」

 とある、秘中の作戦を果たすことが出来て、それが成功に終わった場合のことではあるが。

P「でも、俺たちはまだ知り合ってそんなに経っていないだろ? 雪歩だって園芸部に入っているわけだから……それはもう少し、お互いの事を知ってからでも良いよなって考えてたんだよ」

 なんか所々告白みたいなことを口走りながらも、必要なことを目を見て、話して、伝える。

 臆病であるはずの雪歩はまっすぐ俺を見返してくれていて、表情には疑問符が浮かべられている。

 ……なぜ疑問符?

雪歩「あっ、あのプロデューサーさん」

P「はい」

雪歩「私……園芸部には入ってないです…」

P「………」

 ……なん……だと…?
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 07:29:55.12 ID:kWfivvSDO
お、更新きてる
455 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/08(日) 08:00:26.12 ID:tURwq9qAO
 雪歩さん曰わく。

雪歩「私、ガーデニングが好きだから体験入部してみたんですけど……園芸部は“実”のなる植物しか育てないみたいで……」

 純粋に花や木を愛でたかった雪歩とは、望むものが違ったので入部は見合わせたらしい。

P「でも、今日って園芸の恰好してたよな? 麦わら帽にぶ厚い軍手に、モンペみたいなズボンとか」

雪歩「あっ…そのぉ…、校舎の裏側にある『校長のお庭』を、校長先生から貸してもらえて…」

 『校長のお庭』、学校の敷地、体育館とは対角的に反対方向にある校舎裏の隅に在る。

 代々の校長が好きに使っていい保有スペースなのだが、そう言えば去年は何も無かった気がする。

P「じゃあ、いまそこは雪歩の独壇場なのか」

雪歩「まっ、まだ種とか植えたばかりですけど…!」

P「いや、俺には出来ないことだから羨ましいし凄いと思うよ」

雪歩「…? 出来ない…んですか?」

P「えぇっと、前に義妹から『にぃにはヒトの気持ちがわからないヤツだから、生き物とか育てるの向いてないぞ』って怒られたことがあって」

 なぜ響があんなことを言い出したのかは未だに不明だが、
 なんとなく自分でも「そうかも知れない」と納得できたので、いまはその忠告を守って生き物の育成はしていない。

 響の家族の世話を少し手伝うくらいだろうか。
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 13:12:45.95 ID:AoarjDKG0
早速残念な勘違いをぶちまけているPだなww
457 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/08(日) 13:46:16.07 ID:tURwq9qAO
P「『0から育てる』より、『既に在るモノを育てる』方が得意なのは確かで、それがいままでの人生で至った結論かな」

雪歩「あるもの…」

 小学校中学年の頃、授業でヘチマを育てることになった。

 何かを育てることが初めてだった俺は、自分の鉢のヘチマが気になって毎日見ては細かに世話をしてあげた。

 ──結果、水や栄養のあげすぎでヘチマは枯れてしまった。

 俺はもう散々に泣いて、それ以降の授業では自らのヘチマをスケッチするみんなを、後ろから眺めることしか出来なかった。

 でもある日、クラスメイトのヘチマがくたびれていて、教員もその原因がわからず投げてしまった。
 泣きそうになって、でも何も出来ずにいるクラスメイトをどうにか助けてあげたくて、俺はアドバイスをしてあげたんだ。

 “それ”は、もう二度とこんな思いをするものかと、涙ながらに猛勉強した植物に関する知識。
 子供ながらに得た知識は功を奏して、そのヘチマは立派な実をつけるほどに回復した。

 嬉しかった。「どうして自分の時は上手くいかなかったのか」、そんな妬みや悔しさなんて、微塵も感じないほど嬉しかった。

 そのクラスメイトの喜ぶ顔が。青々と天にのびる元気なヘチマが。
 その両方を自分が守れた、その事実がただ嬉しかったんだ。

 ひとにアドバイスをする。
 ひとを助けてあげる。
 ひとから頼ってもらえる。
 ひとの笑顔がみれる。
 それが嬉しい。

 ……要するに俺は根っからの『プロデューサー体質』で、いま現在こうやってアイドルをプロデュースする立場に在るのは、いっそ運命といってもいいかも知れない。
458 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/08(日) 17:57:53.78 ID:tURwq9qAO
P「………」

雪歩「………」

 ……まずい。

 雪歩を説得するはずだったのに、なんか恥ずかしい独り語りしてる。

P「だ、だからさ! 雪歩には雪歩の『魅力』が有って、俺はそれに気付けたから、もっと沢山の人に雪歩の魅力を知ってもらえたらなぁって、そう思ったんだよ!」

雪歩「え──ええぇ…」

 雪歩が自分の服、体に視線を落とし、顔を赤くしながらも小さく首を横に振ってしまう。

 自分には魅力なんてない、そう考えているのが見ていてわかる。
 臆病性な雪歩には大勢の観客を前にするなんて、難しいことかも知れない。

 ──だから。

P「雪歩」

雪歩「はっ、はい」

P「こんどウチは、ある学校行事に参加させてもらう」

 いまの時期。とある行事。
 2、3年生なら感づくところだが、1年生の雪歩は小首を傾げている。

P「…もし、もしそれでウチの活動を見て、何か心にのこるものがあったら──」


P「うちの部のドアを、叩きにきてくれないか」
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/07/08(日) 18:47:12.15 ID:OylRIIuNo
支援
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/08(日) 19:32:49.88 ID:NSteK/Sdo
相変わらず面白い
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2012/07/08(日) 20:37:54.33 ID:NAoTQs8Ao
ここは支援要らんと何度いえば
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/07/08(日) 21:20:09.90 ID:3GM8ynafo
知ってるが投下不安定だから何か書くべきか迷った挙げ句とりあえず見てるよアピール
463 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/07/08(日) 21:50:36.13 ID:tURwq9qAO
P「ただいまー」

響「おっす、おかえりにぃに」

P「おっすただいま響。なに飲んでんの?」

響「見てわかるだろー、牛乳」

P「プフー」

響「なっ、なんで笑うんさー!」

P「いやぁ、響はそれ以上大きくならなくていいよ」

響「なっ…!?」

P「いまのままの響が一番さ。無理に他人を比べて気にしたりなんかしちゃいけないよ」

響「ひっ、必要ないし! 自分、これでもクラスじゃ大きいほうなんだからな!!」

P「えっ!? 嘘!?」

響「うう、嘘じゃないぞ!! ……な、なんだったら触ってたしかめてみればいいさー!」

P「え、べつに触らなくても見てわかる」

響「嘘!?」

P「そんな見栄張らなくても、響はちっちゃい方が可愛いぞぉ」

 撫でこ撫でこ。

響「そ、そうなのか…?」

P「“身長”なんて、女の子は気にしなくてもいいんだから」

響「でも、だったら自分かわいくな──なんだって?」

P「ん?」

響「……身長?」

P「えっ? 牛乳飲んでて他になんの話しがあるんだ?」

響「………」

P「…響?」

響「──バカにぃにっ!!」
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 22:12:59.46 ID:KFVK+VlBo
響きは可愛いな
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(和歌山県) [sage]:2012/07/08(日) 22:18:34.25 ID:55WaZuJKo
響はダンスやってるからな
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2012/07/08(日) 23:21:22.71 ID:NAoTQs8Ao
響はかわいいな
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/08(日) 23:29:32.68 ID:ZCtuFySjo
この響はみゃーっぽいな
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/07/08(日) 23:48:46.18 ID:LTrCBIdDo
美也とは胸のサイズがちg
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/09(月) 00:21:35.83 ID:yOTG7gMao
響はかわいいなあ!!!
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/09(月) 02:38:29.09 ID:ydHvuWwgo
響可愛い
471 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/07/09(月) 04:53:32.26 ID:RcFNhsQAO
P「よいしょっ…と」

美希「おかえりなさい!」

 帰ってすぐ晩飯を終えて、一息吐いてから部屋に戻ってきた。

 そしてさも当然のように美希がベッドの上に陣取っている。

P「おにぎり食べるか?」

美希「いただきますなの」

 間。

美希「……このおにぎり、チンジャオロースが入ってるの」

P「今日の晩飯は中華だったからな」

美希「ミキ、おにぎりの具はシンプルなほうが好きだな」

P「じゃあ次は梅干しオンリーで」

美希「これはウンペイローなの」

 間。

美希「ごちそうさまでした」

P「それで?」

美希「の?」

P「今日はどうしたんだ」

美希「…あのね…? ミキ、ハニーに伝えなくちゃいけないことがあって……」

P「うん?」

美希「ミキ……ミキ…!!」

 あまりの剣幕に唾をゴクリと飲み込んでしまう。

 美希がこんな真剣な表情をみせるなんてただ事じゃ…

美希「──ミキ、GWは家族で旅行に行くことになっちゃったの!!」

P「おみやげはキーホルダーでよろしく」

美希「いやぁ〜!! せっかくの連休なのにハニーと一緒に居られないなんてヤなのー!」

P「じゃあ留守番してるのか?」

美希「……パパ、夏休みはお仕事忙しくなるみたいだから、今回の旅行は家族みんなで行きたいって言ってた」

P「じゃあ、行ってあげないとな」

美希「ハニーがミキと結婚すれば『家族』に…!」

P「おやすみー」

美希「いま寝たらミキも布団に入るの」

P「おはよう満月さん」
472 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/09(月) 10:23:30.29 ID:RcFNhsQAO
P「それで結局、美希は俺にどうしてほしいんだ?」

美希「GWを生きられるだけのハニーエネルギーが欲しいの。欲しいミキだね」

P「ハチミツでも買ってくればいいのでしょうか…」

美希「ん」

 ……両腕を前に広げてなにを?

美希「抱っこして」

 Why?

美希「ムギューって、思いっきり抱きしめてほしいの」

 美希がうるうるキラキラと、瞳を潤ませて見つめてくる。
 その様は文句無しに可愛いのだけど、口元に米粒がついているせいで魅力が削がれているのが残念。

P「いつまでも変わんないな……」

 半歩。
 もとから接触しそうなほどの至近距離で向かい合っていたから、それだけ進めば体温は充分に触れ合う。

 美希を腕ごと抱きしめて、自分の腕は美希の腰あたりで軽く繋いだまま固定してしまう。

美希「あふぁぁ…」

 感嘆詞(?)のような声を漏らして、美希はプルプルと震えながら目を細める。
 “気持ちよくて声をあげるのは人間くらいなものだ”と誰かから聞いた事があるけれど、

 もし本当なら、美希はこれで満足してくれているのだろうか…?
473 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/09(月) 10:35:31.02 ID:RcFNhsQAO
 二人静かに、体温を分かち合う。

 美希も手を俺の背中に回して、顔を胸に預けてきた。

美希「…珍しいね」

P「…そうか?」

 ──小さな頃、美希がグズるとこうやってなだめてた事がある。
 何が気に入ったのか、美希はコレ“だけ”をねだってくるようになって、断るとグズるという悪循環が生じてしまうまでになった。

美希「最近はハニー、抱っこしてって言ってもさせてくれなかったの」

 ……まぁ、昔からの慣れがあるとは言え、成長してしまった美希と易々抱き合えるはずもなく。
 お察しください。

P「今日は、色々と…疲れてて…」

 ……昨日から今日にかけて、少し頑張りが過ぎたかも知れない。
 お陰で春香たちに迷惑かけちゃったし、軽音楽部に対しても緊張しっぱなしだったし…。

美希「いいこいいこ。ハニーは頑張りやさんなの。……でも、無理はしちゃダメだよ?」

P「…うん…」

 …ああ……美希の体温があったかい。
 だれかと触れあうっていうのは、やっぱり大切なことなんだなぁ…。

美希「──また頑張りすぎちゃって泣いちゃうハニーは、もう見たくないよ…」

 おれが泣いた……あのへちまの時か…。
 ……そうだな…もう泣いたりなんかしたくないな…。

P「………」

 後悔なんて、してるヒマはないんだから。

P「…Zzz…Zzz…」

美希「ふふっ、ハニーから元気をもらうつもりだったのに、ハニーってば立ったまま眠っちゃったの」


美希「……おやすみなさい、ハニー」
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 11:18:35.03 ID:n97EUYHIO
立ったまま(意味深)
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県) [sage]:2012/07/09(月) 11:24:09.39 ID:8sBnEd1bo
やきうのお兄ちゃんは出てってよー
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/09(月) 11:31:22.94 ID:qxE/CGmRo
おやすみなさい
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 12:21:24.76 ID:eKJDbT7SO
なんかこの美希、覚醒してんじゃね?
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/09(月) 13:16:17.05 ID:RcFNhsQAO
マリオネットの心とアニメライブ回をリピートで再生していたら美希株がおかしなことになってました。

ただでさえおかしな文脈が贔屓のせいで尚もおかしくなっていますが、一時的な熱中症ですのでお許し下さい。

みんなが大好きです。
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/09(月) 13:26:34.86 ID:0CKqZMKCo
いや久々にミキミキ成分を補充できてよかった
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/07/09(月) 13:47:22.67 ID:0yNy0+CRo
誰かが不遇になった訳でもないしもっとやってくれ
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 17:51:39.03 ID:WcUtO6A4o
むしろもっととばしてくれてもいいんだぜ
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 22:06:07.10 ID:FB14P59SO
つかぬ事をお聞きしますが、わた四条貴音の出番はまだなのでございましょうか?
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/09(月) 22:29:59.42 ID:Vt9XRX4K0
まだ出てないちょ→美少女がいるっしょ→?
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2012/07/09(月) 23:04:06.55 ID:/GbhhccAO
やはりこのスレは最高だ
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 17:39:25.03 ID:VKTIieQDO
確認と称しておっぱい触らせにかかる響はかわいいなあ
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/07/10(火) 19:20:50.00 ID:h6wj90Yyo
ああミキミキ可愛いよ俺のミキミキ
487 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/11(水) 08:04:33.74 ID:PxktBRtAO
【5月の1】

 あれから何事もなく、
 強いて挙げるならあずささんの家に響と遊びに行ったくらいで、GWは恙なく終了した。

 そして、連休が明けて最初の放課後。

 既にジャージに着替えている春香たち3人を前に、俺は黒板を背に偉そうに腕を組んで話しを始める。

P「──それじゃあ、今日の活動を始めようと思うわけだけど……みんな、練習は出来てるかな?」

春香「はいっ! 歌もダンスも人並みには上達したと思います!」

真「ダンスの練習は続けてたよ。僕の場合は、上達って言うより動作をスムーズに出来るように気を遣ってたかな」

千早「…私は、歌の上手い下手はよくわかりません。でも、より心に伝わるように、感情を込めれるように気をつけました」

 三者三様、それぞれが自分で思うように練習をしてきてくれたみたいだ。
 「自分でいいと思うようにやる」というのは、いい加減なようでいて結構成果につながりやすい。

 そして、そんなみんなに向けて俺が第一に言うことといえば、

P「ありがとう」

 この一言に尽きる。

 それが多かれ少なかれ、休日の時間を割いてまで練習をしてくれたのだから、感謝より先に述べる言葉なんてない。
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/07/11(水) 08:18:44.85 ID:IRpmsZQS0
このスレを開いて更新されてる瞬間といったらもうね
489 :sage :2012/07/11(水) 08:25:41.29 ID:guyMsOvF0
愉悦
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 08:27:58.01 ID:guyMsOvF0
すまぬ…ボケてた…
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/11(水) 09:54:42.48 ID:53x/QqJAO
>>488
わかる

わかるぞ
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/07/11(水) 11:46:31.45 ID:PxktBRtAO
久し振りにやってしまった「3」のボタンを押そうとして「終話」のボタン連打してしまう愚行……あふぅ……。


>>482-483
 大変なほどにお待ち申し上げて恐縮至極ではあるのですが、
 三名ともに登場の場は相応しいようにと用意しておりますので、どうか長い目でお待ち下さいませ…。
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/11(水) 11:59:48.60 ID:hQ/XYfiIo
初カキコども…

って言ってる間に12時っすよ
これ、携帯の辛いとこね
494 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/11(水) 17:30:27.79 ID:PxktBRtAO
P「……それで、今日は俺から重大発表があるんだけど…」

 そう言って、ポケットから取り出したるは一枚のMD。
 それを定位置にあるラジカセに挿入して、3トラックある中から1曲目を選択し、再生する。
 そしてスピーカーから流れてきたのは、明るいアップテンポな音楽。

春香「曲…?」

 そう。
 でも、ただの曲とは少し違う。

 これは今日の昼休みに渡されたばかりの、『765プロ』の為の“オリジナル曲”。

P「……これは軽音楽部の人たちに頼んで創ってもらった、3人の為の『歌』だ」

 3人が、僅かに驚く。
 俺が勝手に動いていたことだから、無理もなく当然ではある。

P「この歌に、まだ“歌詞”は無い。…ウチのイメージを作りやすくする為に、態とつくらないでくれたんだ」

 本来歌が入るべき場所にリードは入っているけれど、それは曲を纏めるためのものに過ぎない。

P「これからこの歌に、俺たち全員で命を吹き込んでいこうと思う。そうしたら、俺たち『765プロダクション』はその完成した曲を引っさげて──」

 逡巡。
 今更にして、この言葉を告げる事に躊躇いがでる。
 でも、
 俺は、
 ここから始まるために。

P「──6月に行われる、『765音楽祭』に出場する」


 小さくても、踏み出すんだ。
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/11(水) 21:00:36.34 ID:psIYv/NNo
来てる・・・だ・・・と・・?
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/07/11(水) 21:41:05.61 ID:j2JC/HSAO
待ってる
497 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/12(木) 10:29:42.32 ID:lAhOS/3AO
 3人の反応はバラバラだった。
 だけど誰ひとりとして、「イヤだ」とは言わなかった。
 つまりはその瞬間、『765プロダクション』の音楽祭出場は満場一致の可決とされた。

 その日の部活動は、
 ダンス、ヴォーカル共に3人は問題なく通しで行う事が出来、残りの時間は全て作詞に当てられた。
 渡されたMDには同じ曲が3つ、それぞれが細かに別のアレンジが施されていて、
 先ず“どの曲を原曲とするか”選ぶところから始めて、次に曲調を掴むために何度も何度もリピート再生する。

 ……例の軽音楽部の子は、「こういうの初めてだから…なにかおかしなとこ有ったらすぐに言ってね」と、照れを笑みで誤魔化していたけれど。
 この曲の何処に不満を持てようか。
 こんなにレベルの高い曲を貰えるとは思っていなかったので、3人と一緒に初めて聞いた時は鳥肌が立った。
 いや、鳥肌を通り越してピヨ肌だった。

 歌詞は、歌への造詣が深い千早が先導して、音感や語感について3人が話し合って決めている。

 俺は3人がつくった歌詞を見せてもらって、曲や3人のイメージに合うよう意見を出す程度しか手を出さない。
 3人の晴れ舞台を飾る歌なのだから、3人に納得がいくまで話し合ってもらいたいからだ。

 そうこうしていたら陽も沈み、門限が近付いてきたので下校する。

 MDは一度俺が持ち帰って、3人分コピーしてくることにした。
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/12(木) 18:57:03.52 ID:OHl043TP0
IDOLM@STERかGO MY WAYかREADY!!とみた
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 20:10:33.12 ID:pxtLEwGn0
先読みはやめろと何度言えば・・・
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/12(木) 20:46:56.25 ID:4c/QjkEIO
あえて太陽のジェラシーをだな…
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 21:15:01.05 ID:kvVgV1k0o
予想は[ピーーー]
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 01:13:49.39 ID:70sK45ypo
アッノッコハタッイヨーノコマッチ エンジェー
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/14(土) 22:45:19.81 ID:ckYKLq0vo
まだか?
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/16(月) 03:08:46.49 ID:byFYijC8o
( ・_・)
505 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/19(木) 10:53:08.27 ID:JaqOXR3AO
 翌日。

 授業の合間などを利用して、3人にコピーしたMDを渡す。
 千早がMDプレイヤーを持っていないそうだったので、使い古しのコンパクトプレイヤーを一緒に渡して上げた。

千早「あの…でも、こんな高価なもの簡単に借りたり出来ません」

P「高価じゃ無いよ。型落ちも型落ちの、中学の入学祝いに買ってもらった旧式のプレイヤーだから」

千早「だったら、思い出の品じゃないですか」

P「思い出の物が、大事な友達の役に立ってくれるって言うなら喜ぶことじゃないか」

千早「……私には、使い方がよくわかりません。…壊してしまうかも、知れないです」

P「教えるよ、そんな難しいものじゃないから。もし壊れたとしても、それはそれで寿命だったんだよ」

千早「………」

 なおも抵抗感を見せる千早の手にプレイヤーを握らせて、しっかりとその上から手を包み込む。

P「遠慮なんかしなくていいんだ。…俺は俺で千早たちに無理や無茶をお願いしたりする事も有るんだから、千早たちは俺を馬車馬の如くこき使って利用してくれて良いんだよ」

千早「…プロデューサー、もしかしてマゾヒ」

P「相手が千早みたいに可愛い子ならイジメるのもイジメられるのも望むところだけど」

千早「……そうですか」

P「そうですね」

 なんだか納得してくれたようだぞ!

 Perfect communication?

506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 13:05:32.99 ID:qKQwc53Jo
おつおつ
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/19(木) 22:24:12.20 ID:0PTTcB280
ちーたんはとっても可愛い
508 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/21(土) 11:22:00.21 ID:30ye1juAO
 放課後。

春香「え? 今日はプロデューサーさんお休みするんですか?」

P「うん、ごめん。今日はちょっと、水瀬の家に行く約束があって」

真「そうなんだ……それじゃあ、今日の部活はどうしよう?」

P「鍵を渡すから部室を使うなら自由に使ってくれていいし、今日の部活は休みにして、家で曲の歌詞を考えてくれてもいい。そこはみんなに任せるよ」

千早「……部室なら、発声練習も出来るし歌詞づくりの意見も話し合えて合理的じゃないかしら」

春香「──そうだね、みんなで一緒に考えたらきっといい歌詞ができるよ!」

P「それじゃあ…ほい、部室の鍵。明日返してくれればいいから」

千早「明日は土曜日ですよ」

P「……なんでこう休みが続いてるのかな」

真「帰宅部なら喜ぶところだけどね」

P「じゃあ、月曜日にまた」

春香「はい! さようならプロデューサーさん!」

真「水瀬によろしくね」

P「3人も、遅くなりすぎないように気をつけてな。もし何かあったら連絡くれればすぐに行くから」

春香「ありがとうございますっ」

 改めて手を振ってから、校門で待っている水瀬のもとへ向かう。

千早「…ねぇ、さっきから言ってる水瀬さんって誰なのかしら?」

真「……千早と同じクラスだよ…?」

千早「えっ?」

春香「えっ?」

千早「察するに、プロデューサーの恋人…とか?」

真「なにそれこわい」
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/21(土) 11:31:21.71 ID:8RSCHiyzo
いつも面白いが量が星井
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/21(土) 14:23:34.99 ID:XReminqlo
うほっ
511 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/22(日) 07:52:37.35 ID:ucL6afwAO
P「おまたせ」

 まだ青さをのこす夕暮れの空の下、
 校門に背をあずけていた水瀬が、パッと顔をあげて笑顔を見せる。

 そんなに待ってないよとはにかむ水瀬を見て、擦れ違う女生徒たちが頬を染めていく。

P「じゃあ、行くか」

 2人並んで帰路につく。
 が、今日は途中で別れる事はなく、まっすぐに水瀬の自宅を目指す。

P「伊織は元気?」

 何気ない問いに、元気すぎて頼もしいねと返される。
 …今日こうして、俺が水瀬の家に向かってるのはその妹のことが関係している。

 端的に言って、誕生日の祝いをしにいく。

 5月5日生まれの伊織はいつもGWで顔を見せられないうちに誕生日を迎えてしまう。
 GW中は家の事で忙しくなるからと遊びに行くことも憚られ、
 だからGWが明けたら必ずお祝いしにいくと、以前に約束している。

P「誕生日プレゼントって何をあげたらいいのか悩むよなぁ…」

 言いながら、鞄の中に在る物の感触を確かめる。

 祝う気持ちであげるものなら、何だって喜んでくれるよと、俺の内心を汲んで笑う水瀬。
 …俺も友人が悩んでいたら同じことを言うと思うけど、いざ自分の事となると中々どうして…。

 俺自身がプレゼントになれば良いとか宣う水瀬は無視する。
512 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/22(日) 09:45:37.85 ID:ucL6afwAO
P「お邪魔します」

 大きすぎて、世間一般の挨拶を言うことに違和感を覚える玄関。
 それでもと声に出してみると、傍らに立って水瀬の荷物を受け取っていた執事さん(と思われる人)が恭しく御辞儀をして「ようこそお出で下さいました」と応えてくれた。

 ……やっぱりこの瞬間は何度来ていても慣れない。年上の人に頭を下げられるなんて経験、慣れるわけにもいかないけれど。

伊織「──来たわね」

 水瀬の部屋に案内されようとした時、姿を見せた少女が2人。
 本日の主役である伊織と、友人のやよいだ。

P「おじゃまします伊織。それにやよいもこんにちは」

やよい「こんにちはお兄さん!」

 この2人はセットで居ることが多いので、今日この場に居ることになんら疑問は無い。

伊織「性懲りもなく今年も来るなんてね」

P「約束したろ」

伊織「お兄様としたのよ」

P「じゃあ今日から俺はいおりんのお兄ちゃまだ」

伊織「なんでよ!? ていうか『お兄ちゃま』だなんて絶対呼ばないわよ!!」

P「…じゃあお兄たまで許してあげるよ」

伊織「むしろ悪くなってるじゃない! なんでアンタ『仕方ないなぁ』みたいな態度してるの!?」

P「いおりんはワガママだなぁ」

伊織「いおりんて呼ぶな!!」

P「じゃあでこちゃん」

伊織「でちょっ!?」
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/07/22(日) 10:26:46.52 ID:YPqWZCeYo
でちょwwww
514 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/23(月) 07:36:26.78 ID:DvajGUqAO
 凸凹漫才のような遣り取りをしながら、案内された先は伊織の部屋。
 そう言えば水瀬の部屋には何度かあるけれど、伊織の部屋には一度も入ったことなかったな。

P「入ってもいいの?」

 俺の間の抜けた質問に、伊織は呆れたように嘆息する。

伊織「入らなきゃなにも始まらないじゃないの。それともなに? ダメだって言われたらここまで来て帰るつもりなのアンタ」

P「部屋の中で楽しそうにパーティーをしてる3人の名前をつぶやきながら猫のように扉をカリカリと引っ掻き続けるつもり」

伊織「陰険すぎよ!」

 そして、伊織自ら開けてくれた扉を通っていざ水瀬家御令嬢の部屋へと入る。

P「──お?」

 シャンデリアを模した電灯が照らし出した優美華麗な部屋。
 伊織専用なのか、兄の部屋とは雰囲気が異なり、可愛らしい調度品やカーペット等が並べられていた。

 その、部屋のほぼ中央に置かれているガラスを基調としたテーブルに、思わぬ客人がついていた。それも複数。

P「長介たちも来てたのか」

 楽しそうに紅茶を飲みながら談笑しているやよい弟妹’s。

 やよいが戻ってきたのを知るや、笑顔で駆け寄ってその手をひいていく。
 テーブルについたままの長介は、俺の方を見ると小さくお辞儀してきた。

伊織「ほらみんな、もうすぐ始めるからいい子にしてるのよ」

 お姉さん然とした態度で、小さい子供たちを窘めるその姿はまるで聖母さまのよう。

P「…メンバーはこれで全員?」

伊織「そうよ。…ホントはあずさも誘いたかったんだけど、用事があるから無理だって言ってたから」

 あずささんか。
 この間の件、相当気が合ったのかな。
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 08:07:49.51 ID:TbYC/NuRo
おつ
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/07/25(水) 23:29:11.22 ID:IV0XvXlW0
しばらく見ない間に大幅更新。

うれしいね
517 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/29(日) 10:06:11.48 ID:t6jwOb2AO
P「…おや?」

 キョロキョロキョロと、“とあるもの”を探して部屋を見渡す。

伊織「ちょ、ちょっと…レディーの私室をジロジロと見るのはマナー違反よ?」

P「伊織さん伊織さん」

伊織「?」

P「ここって伊織の部屋なんだよな?」

伊織「だから、そう言ってるじゃないの」

P「パーティー出来るくらいに広い部屋なのにベッドとかが無いけど、伊織は普段どこで寝てるんだ?」

 ベッド、タンス、クローゼット、姿見。
 いつもお洒落に気をつかっていて、それでいてお嬢様である伊織には欠かせない物だとおもうのだけど。

 水瀬(兄)の部屋には備え付けてあっただけに、違和感が拭えない。

伊織「……アンタそんなこと気にしてたの? いやらしいわね」

 伊織がジト目で蔑んでくる。
 ご褒美です。

伊織「──そっちに扉があるでしょう? そこから繋がってるのが私の寝室よ」

P「寝室? 水瀬(兄)の部屋にはなかったけど」

伊織「お兄様のお部屋は、お兄様の希望で改装させた特別製だもの」

 なにが誇らしいのか、伊織の説明をうけて胸を張っている水瀬。
 どうやら、友達である俺のような、一般家屋型の部屋にしたかったという理由らしい。

 金持ちすぎるだろ。
518 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/29(日) 10:25:13.82 ID:t6jwOb2AO
P「…ふむ、まぁ納得しました」

伊織「なんなのよいったい、部屋に来るなり寝室がどうこうなんて…」

P「それじゃあ長介! 一緒に伊織の部屋に突撃するぞー!!」

長介「えぇ!?」

 驚きつつも暴れる長介を小脇に抱えて、寝室への扉を目指し駆ける!

P「ロンドンブーツだっ!!」

 ドアノブに手をかけ、掛け声とともに回し──

P「──なっ…、開かない!?」

 ドアノブはビクともしない。
 見れば鍵穴がやんわりと発光している。
 …オートロックか! 小賢しい!

 多少乱暴に扱っても、ハイテクノロジーの塊である扉及びドアノブはピクリともしなかった。

 そして、一連の動作を眺めていた『鬼』が、
 上質なカーペットの上だというのに

 ズシン ズシン

 と音をたてて、ゆっくりと近付いてきていた。

P「くっ…伊織のベッドに飛び込んでゴロゴロする計画がっ…」

伊織「………」

P「えぇぃまだだ、まだ部屋に侵入する手段は…!!」

伊織「黙れ」

P「はい」

伊織「長介を放しなさい」

 言われるがままに、怯えて震えている長介をゆっくりと下ろしてあげる。

伊織「大丈夫よ長介。悪いのは全部この変態だから、気にしないで席に戻りなさい」

 しゃがみこみ、目線の高さを合わせて長介に優しく微笑みかける伊織の神聖さは、慈母、聖母のそれと相違ない。いおりんマジ女神。

 長介が戻り、ゆっくりと立ち上がった伊織は、俺と至近距離で向かい合うたいせいになる。

伊織「──ふんッ!!」

 ドゴォッ! と、
 容赦も躊躇も情けもない神速の踵が、俺の右足指に踏みおろされた。

 たまらず悶絶。
 だが、伊織は足を離すことなくそのまま踏み込み、追撃ダメージを与えてくる。

 踏み込むと同時に襟首を掴まれ顔を引き寄せられると、
 真夏も氷るような微笑をたたえた伊織が囁くように問いかけてきた。

伊織「ちゃんとしたりゆうをいわないところす」

 ご褒美すぎて涙が滲んできた。

519 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/07/29(日) 10:51:37.55 ID:t6jwOb2AO
P「すみませんでした」

 土下座をする俺の背に腰掛ける伊織の図。

伊織「なにもあんなことしてまで隠すこと無いじゃないの」

 伊織がガサガサと検閲している紙袋には、俺の持ってきた誕生日プレゼントが入っている。

P「さ、サプライズでプレゼントしたくて…」

 伊織の寝室に侵入してベッドでゴロゴロするという目的は7割が本当で、残りの目的はその誕生日プレゼントを枕元にそっと設置することにあった。

P「てっきり兄と同じ部屋構造だと思ってて、そんなに難しいミッションじゃないはずだったんだけど…」

伊織「お生憎ね」

 紙袋から包装された箱を取り出すと、外観や重さだけ確認してすぐにしまってしまう。

伊織「…もういいわ。どうせ未遂だったわけだし、今回は特別に許してあげる」

P「…いいのか?」

伊織「これ以上責め立ててたらパーティーが始まらないじゃないの。…それともなに? アンタ、パーティーの間ずっと私のイスになってるつもり?」

 ムチのようにみえるアメですなそれは。

P「ありがと…」

伊織「た・だ・し!」

 膝をつきながら立ち上がろうとした俺に、突きつけられる伊織の細い指先。

伊織「こんどまたいまと同じような変態行為をしたら、水瀬家の地下牢行きなんだから!」

P「ちっ、地下牢!?」

 そんなもの本当に在るのかと水瀬をチラ見すると、なんてこと無いようにコックリと頷かれた。

 怖ェ!

伊織「にひひっ! そのときは徹底的におしおきしちゃうんだからねっ!」

 それはむしろして欲しい。

 ──だが水瀬、お前は駄目だ。

520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/29(日) 11:27:54.79 ID:WNjLJ6fu0
このPは下僕だったか
あとsageを消してから書いてくれるとありがたいです
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/29(日) 11:49:03.22 ID:qoWE6jLv0
日曜日のここを開くのが楽しみですはい
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/29(日) 11:49:41.01 ID:PB8xb9PDo
sageないと使えないワードがあるんだよ
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/29(日) 12:00:42.35 ID:v/OVL1BXo
>>522
それsagaや
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/29(日) 12:01:03.67 ID:1h57bTW3o
そんなものはないsaga単品では下がらんしな
おつおつ
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 10:05:09.44 ID:Zu/kGPrIO
らに
526 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/06(月) 10:10:38.21 ID:CQWAFQ4AO
やよい「はっぴぃばーすでー、とぅーゆー」

P「HAPPY BIRTH DAY to IORI.」

 友達同士で行うささやかなお誕生日会が始まり、
 伊織の合図で沢山の料理が運び込まれてきた。
 そのどれもが“ささやか”で済まされるようなものでは無いことは見てわかったが、

伊織「おいしいものはみんなで食べるともっと美味しくなるのよ」

 と伊織に諭され、遠慮せずにいただくことにした。
 やよい弟妹’sからは絶え間なく歓声や笑い声が聞こえ、お誕生日会としては騒がしいくらいだったが、伊織は始終微笑んだままだった。

 やよいという友達の存在は、伊織の成長に良い刺激を与えているようだ。

P「──お、もうこんな時間なのか」

 時間を忘れて楽しんでいた。
 夕方から始めたこともあり、気がつくと夜の9時を過ぎている。
 やよい達の帰りは送って行こうと考えていたので、流石にそろそろ切り上げる必要がある。

伊織「あら。じゃあ、そろそろおひらきにしましょうか」

 ツイスターゲームを進行役をしていた伊織も、時計を見て同意してくれた。

P「じゃあ俺はやよい──」

伊織「じゃあみんなー、お風呂入りに行くから後片付けするわよー」

 ……なんですと?

P「…伊織さん」

伊織「なに?」

P「風呂とは?」

伊織「アンタの家にはお風呂ってモノがないの?」
527 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/06(月) 10:37:04.68 ID:CQWAFQ4AO
 端的に説明すると、

 やよい達は今日、もとから泊まり前提で遊びに来ていたらしい。
 あれよあれよの間にお誕生日会の後片付けが終わり、
 伊織の部屋から追い出されて、
 水瀬に連れてかれるままに来賓室へ案内されて、
 荷物を置いたあと風呂用具一式を渡されて、
 いまは水瀬大浴場(男)で体を洗っていた。

 なんだこれ。

P「なぜ俺まで泊まる流れに…」

 無駄に感じるほど広い浴室、浴槽が置かれているこの大浴場。
 大きさは下町の銭湯と比べるのは酷という程だが、造りはそれと似ていた。

 つまるところ、天井部分の壁が無くなっていて、向こう側から水瀬大浴場(女)でのやり取りが聴こえてくる。

P「向こうは楽しそうだなぁ……いや、一緒に入りたい訳じゃないけど、なんでか俺いま1人きりだし…」

 水瀬は学校の事でやることが有るから、後で入ると言っていた。
 男同士の裸の付き合いと言うわけにはいかず、俺は独りワシャワシャと体を洗っていく。

P「………」

 思考が、止まる。

P「……“俺1人”、だと…?」

 おかしい。

 絶対におかしい。

 最低でも“あと1人”は、ここで俺と一緒に寂しく体を洗っていないといけないはずなのに。

やよい『ほら長介ー、カスミの頭あらってあげてー』

P「…!!?」

 疑念が確信へと変わる。

伊織『なに恥ずかしがってるのよ。まだ子供なんだから気にするんじゃないの』

 そこは秘密の花園だ。
 あってはいけないラッキースケベだ。
 そんな男子の夢を叶えるようなことをしてはいけない!!

P「──長ぉぉぉ介ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 俺の叫びは、届かない。
 伊織に無視されたから。


 そして俺はその日、長介を心の中で「ラッキースケベ師匠」と呼ぶことを誓った。

528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 10:41:29.20 ID:HWz3epTho
きてたー!
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 12:54:41.44 ID:R+L7th3DO
>「ラッキースケベ師匠」と呼ぶ
お前が言うなのツッコミ待ちですね分かります
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/06(月) 13:34:19.86 ID:rE6IDAah0
長介そこ俺と変われ。変わってください
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/06(月) 21:11:42.39 ID:BKYv8DXHo
長介てめぇ
532 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/07(火) 07:17:38.97 ID:6wetqs5AO
P「…だからな長介、俺は別に怒ってるわけじゃないんだ。ただ、若いうちからそんな幸福な状況を甘受していたら、これからの人生で起こりうる『ささやかな幸福』を、幸せと感じられなくなるかも知れないんだ。俺は長介にそんな鈍感系主人公なんかになって欲しくないんだ、だからこんな説教紛いのことを…」

長介「はい…はい……済みません…」

 風呂から上がって、
 俺たちは睡眠前の一服を味わうために談話室に集まっていた。
 紅茶の薫りが漂う談話室には、子供たちがパジャマ姿でハシャいでいたり、椅子に座りながらもウトウトとしていたりしている。

 俺は部屋の隅で長介と向かい合い、先程の事案について話をしていた。
 …ほぼ俺が一方的に恨み言を連ねてるだけな気もする。

P「それで、どうだった」

長介「ど、どうって…」

P「好きな子と一緒に風呂に入ったんだ。…なんかこぅ、思うところとかあるだろう」

長介「好きな子って…!」

伊織「──アンタたち、風呂から上がるなりなに男同士でコソコソと話してるのよ。…まさか長介をイジメてたりしないでしょうね」

長介「そ、そんな事はないけど…」

P「男には語らねばならぬ時があるのよ」
533 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/07(火) 07:37:42.02 ID:6wetqs5AO
伊織「…まぁいいわ。ほら長介、あなたの分の紅茶、飲み切っちゃいなさい」

 伊織に勧められて、長介は自分の席に戻っていく。
 2人共腕組みポーズでそれを見送ってから、伊織が腰に手を当て向き直ってきた。

伊織「仲良いのね」

P「そうか?」

伊織「遠目で見てて、やよいも驚いてたわ」

P「男同士だからな」

伊織「なにそれ。わけわかんない」

 ちょっとむくれたような表情で、再び腕組み。

伊織「男ってホントわけがわからない生き物ね。そのクセして、男同士では通じ合ったりしちゃって」

P「……水瀬に構ってもらえなくて妬いてるのか?」

伊織「──バっ、バカ言わないでよ! お兄様は関係無いでしょ!」

 図星なのか、頬が染まっていく。

P「……あれ? そう言えば水瀬まだ来てないのか?」

 ずっと長介に構っていたから気付かなかったけど、
 後から追いかけてくる予定だった水瀬(兄)の姿が見えない。

伊織「なんだか、学校のことが調子のってきたから遠慮しておくんですって」

P「学校のって…じゃあアイツ、まだ風呂にも入ってないのか?」

伊織「たぶん。……だからはい、これ」

 言って、伊織が持ち出してきたのはトレイにのったポットやカップといったティーセット。
 いまの一服時には無かった、小さなクッキーなどのお茶請けもある。

 眠りにつくための一服ではなく、休息のための一服のようだ。

伊織「お兄様、夜は部屋に使用人が近付くのを嫌がるの。だから普段は私が差し入れに行くんだけど…」

P「ああ、いいよ。俺が持っていくから、伊織はやよいたちと休みなさい」

 使用人云々は、以前本人から聞いたことがある。年頃だと言うのと、水瀬は気を遣って接されると相手を思ってノっていた思考を中断してしまう。
 だから、気兼ねしない家族や友達が差し入れた方が水瀬のためになると理解していた。

伊織「…悪いわね」

P「友達のためだから、苦でもないよ」

伊織「それじゃ、おやすみ」
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/07(火) 07:58:32.49 ID:/4CWnOp40
いおりんかっこ可愛い
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/07(火) 09:52:02.50 ID:tTlsMdpO0
>>俺は長介にそんな鈍感系主人公なんかになって欲しくないんだ
もう手遅れですね(Pが)
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/08/07(火) 10:08:16.44 ID:XhsLB+c1o
長介「(お前が言うな)」
537 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/07(火) 13:23:52.70 ID:6wetqs5AO
 水瀬(兄)の部屋の前に立ち、
 片手でトレイを持って扉をノッキング。

P「オレオレ詐欺です」

 すぐにどうぞ、という返事がもらえたので、遠慮せずに入室する。

P「伊織からの差し入れ持ってきた」

 机に向かったまま、視線も向けずにペンを走らせている水瀬。
 なるべく音を立てないようにトレイを置いて、同じように紅茶を注ぐ。

P「置いとくな」

 机横にある、こういった物を載せるスペースに紅茶とお茶請けを配置。
 やはり目もくれず、ありがとうとだけ告げる。

 何を熱心にと一瞥してみると、
 6月頭に行われる「音楽祭」のプログラムを作成していた。

P「……ごめん。面倒なこと押し付けて」

 ついそう洩らしてしまったところで、水瀬が顔を上げて視線を交わしてきた。

 引き受けたのは僕だからと、慰めの言葉をもらう。
 ……あぁくそっ。水瀬にこう云う気遣いをさせない為に俺が来たはずなのに。

P「や、やっぱり生徒会長にはならないのか? 水瀬なら選挙しなくても当選できると思うんだけど…」

 このやり取りに、意味は無い。
 俺は、水瀬が生徒会長代行に“甘んじている理由”を、またその決意の程をよく知っているから。

 案の定、水瀬は苦笑しながら首を横に振る。
 次に出る言葉は、友達としてはあまり聴きたくはない。

 「来年度は、留学するつもりだから」

 いまはまだ妹である伊織すら知らない、男と男の秘密。

 やがて友達が遠くに行ってしまう寂しさと、
 いずれは伊織に伝えなければならない苦しさで、
 俺たちはそろって困ったように笑った。
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/07(火) 14:45:42.74 ID:Z3DWFokDO
┌(┌ ^o^) ┐…
539 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/07(火) 15:27:59.66 ID:6wetqs5AO
P「ん?」

 借りたパジャマの胸ポケットに入れていたケータイが震える。
 もう夜の10時過ぎだというのに誰だいったい。

P「……響からですな」

 そう言えば放課後に水瀬の家に遊びに行くとしか伝えてなかった…。

 水瀬がいいよと促してくれたので、悪いと思いながらも着信に出た。

P「あー、響ー?」

響『あ、にぃに? いまどこに居るの?』

P「水瀬ん家。連絡するの忘れてたんだけど、今日このまま泊まることになったから」

響『あー…』

 ウチに遊びに来たとき会っていたりするので、響と水瀬は互いに面識がある。
 実のところお泊まりは今日が初めてと言うわけではないので、察してくれたらしい響はやれやれと言った風な口調になる。

響『そう言うのはもっとはやくに連絡しておくべきだぞにぃに』

P「面目ない…」

 なにせいきなりだったもので。

響『自分はにぃにの事だから心配してなかったけど、いま美希が遊びに来て──』

 言いながら、通話先から聴こえる音にノイズのようなものがはしった。
 どうしたんだと思い耳を澄ませた直後、スピーカーから大音量の声が発せられる。

美希『──ハニーいま何処なの!? 無事!!? 怪我してない!!? どこも純潔!!?』

P「……こ、この声……美希か…?」

 キンキンと音割れした大声量を密着状態で聴いたせいで、右耳がマヒしたように役割を果たしてくれない。

美希『心配したの!! 夕方頃遊びに来たら響から寄り道してくるって聞いて、ハニーのベッドで待たせてもらってたらいつの間にか夜になってて、でもまだハニーが帰って来てなかったから本当に心配したんだよ!!?』

P「ぉぅ……ごめん美希、今日は水瀬って友達の家に遊びにきてて…」

美希『水瀬って誰なの! 女の子!?』

P「男だよ。いま隣にいるけど」

美希『…ミキはハニーのこと信じてるけど、前科があるから言うね?』

P「なにを」

美希『代わって』

P「なんだと…!?」


 結局、水瀬に電話に出てもらって俺の浮気の疑いを晴らしてもらう流れになってしまい、

 気を遣わせないつもりが多大な迷惑を与えることになってしまった。

 ごめん水瀬。
540 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/07(火) 17:33:47.43 ID:6wetqs5AO
 次の日の朝。

 枕元にあった電話機のコールに起こされ、部屋に備え付けてある洗面台で顔を洗い口を濯ぎ、
 昨日入浴の際に回収されていた、クリーニングに出したかのようにピシッとなった私服に袖を通し、
 朝食のために部屋を出た。

 食事をする為の広間まで歩いて3分ほど。
 扉が開放されていないところをみるとまだ誰も来ていないらしい。

 やよいたちは時間かかっちゃうかもな等と考えながら、俺はドアの取っ手に手を──

 ──ドゥッ!

P「ゴハァッ!!?」

 完全な視界外。
 廊下の果てから“光のような速度で走ってきた人物”の攻撃を受け、盛大に倒れ転げる俺。

 “その人物”は攻撃の予備動作から華麗に着地すると、悶絶している俺の襟首を掴んで怒鳴りつけてきた。

伊織「アンタバカぁ!!?」

P「はい!」

 “何故か”顔を真っ赤にしている伊織に馬乗りにされ、ガクガクと揺さぶられる。
 なるほどさっきの攻撃はドロップキックだったのかなとどうでもいい解答を導き出した。

P「あの、いくら俺でも朝一番からプロレスは辛いものが有るのですが…」

 いくら体力バカと言えど、燃料を補給しない事にはその体力の精製すら行えない。
 食は健康の第一。これに重きをおける女性は魅力的だと思います!

伊織「うるさいっ、この変態!!」

P「へ、変態だと!?」

 昨日はあれから伊織にやらしい事をした覚えはないですよ?

伊織「…なんなのよ、なんなのよアレは!」

P「…? アレって?」

伊織「目覚ましよ! アンタが昨日くれた、誕生日プレゼントの目覚まし時計!!」

P「──ああ、早速使ってくれたのか、ありがとう」

伊織「 ど う い た し ま し て ! ! 」

 ガクンガクンガクン。

 何が気に入らなかったのか、伊織は朝から怒り心頭のご様子。
 …はて、そんなに変なプレゼントだっただろうか?

P「俺の生ヴォイスをアラームとして録音しておいた自信作だったんだけど…」
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/08(水) 11:03:38.78 ID:pAsss0bz0
さすがに生ボイス録音はひくわ・・・
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/08(水) 12:25:14.09 ID:lLAR9cGro
これで永遠の世界に連れていかれる事があっても安心だね!
543 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/09(木) 09:35:01.67 ID:wVQUifPAO

 おはよう、お姫さま。

 もうお目覚めの時間だよ?

 ほら、窓の外を見てごらん。

 きっと空は澄み、太陽は大地を照らし、花々は謡うように元気よく咲いているだろう。

 だからほら、君も目を覚まして。

 はやくその笑顔をみせておくれ。

 きっと今日は、君が望む素晴らしい日々になるだろうから…。


伊織「気色悪いったらないわよ!!」

P「応。俺も言ってて吐きそうだった」

伊織「そんな物プレゼントするな!!」

P「いやぁ、朝からいおりんに俺の声を聴いてほしくて」

伊織「もっとましな方法が有ったでしょう!? せめて文章を変えなさいよっ!」

P「いおりんを起こすなら王子様風のが良いかなって」

伊織「あれ王子様だったの!? ていうかいおりんて言うなぁ!!」

P「………」

伊織「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」

P「改めておはよう伊織」

伊織「キーッ!」
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/09(木) 11:33:08.82 ID:Cxj2Y+1h0
ガチで吹きかけた
これはひどい
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/09(木) 13:21:25.99 ID:NkwW5p3T0
センスありすぎ
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage saga]:2012/08/09(木) 14:00:54.15 ID:1aEXBQx/0
ギャグのテンポが良過ぎるぞこの>>1
547 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/09(木) 14:38:58.82 ID:wVQUifPAO
やよい「うっうー! おはようございますー!」

長介「おはようございます」

伊織「みんなおはよう」

P「…おはよう…」

やよい「うえぇ!? なんでまたお兄さんが伊織ちゃんのイスになってるんですかー!?」

長介「(またなにかしたのかな…)」

P「伊織のお尻を温めてるところなんだよ」

やよい「お…しり?」

伊織「フンッ!」

P「グフゥ」

伊織「このバカのことは気にしないでいいから、みんな朝ご飯にしましょ。ビュッフェ形式にしたから好きなものを取って食べていいわよ」

 わーいと、弟妹’sが沢山の料理が列べられたテーブルへと走り寄っていく。

やよい「あ、こらー! ごはんの前で走ったりしたらダメでしょー!」

 やよいも、お母さん代わりにその後ろについていく。

P「……伊織さん」

伊織「イスは喋らないわよ」

P「ぐうぅ…」

長介「……今度は何をしたんですか…?」

P「ちょっと誕生日プレゼントが伊織の好みじゃなかっただけだよ」

伊織「好み以前の問題でしょアレは…」

長介「……あ、あの、」

P&伊織「?」

長介「伊織お姉さんも一緒に食べましょうよ。ね、姉さんもこっちが気になってるみたいですし」

伊織「……そうね、このまま座ってたらご飯食べ損なっちゃうわ」

長介「じゃあ…」

 長介に促されるかたちで、伊織が立ち上がり背中が軽くなる。

伊織「長介に感謝することね」

P「伊織はもっと太りなさい」

 一撃で膝をつかせるローキックが炸裂。
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/14(火) 09:32:53.35 ID:6MUw9bP40
まだか
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/08/14(火) 19:04:05.21 ID:ScjoUR8L0
今更だが、プロデューサーってあだ名の元になった出来事読み返すと
プロデューサーってより、アジテーターだよな
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/08/14(火) 23:40:32.31 ID:/moLg5hj0
アジテーターってよりプライベートさんだよ
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/15(水) 09:11:07.27 ID:UTh2lp7m0
まあ、なんでもいいですけれど。
552 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/17(金) 08:53:24.13 ID:T77Q9BFAO
 まだ眠たそうにしていた水瀬(兄)もやってきて、みんなで囲んだ食卓は笑顔がたえなかった。

 その朝食後。

P「じゃあ、今日はみんなでプールにいくのか」

やよい「はい! 昨日からずっと伊織ちゃんといっしょです!」

 玄関前で支度をする弟妹’sを待ちながら、やよいや伊織と今日の予定について話す。

P「でもまだ5月だぞ? 早過ぎないか?」

伊織「ちょっと行った先に、温水プールのある施設があるの。焼却炉の熱を利用しててお風呂もいっぱいあるわよ」

P「公民館?」

伊織「まさか」

やよい「伊織ちゃんのお父さんがやってるところだってききましたー」

伊織「水瀬グループの事業から派生したゴミなんかを燃やす専用の施設があるのよ。プールとかはその副産物ね」

P「誰でも利用できるのか?」

伊織「役員以上ならいつでも、社員にもチケットが配られてるはずよ」

P「採算無しか……水瀬グループ半端無いな」
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/17(金) 09:27:18.67 ID:dmyje3Ns0
おー、久し振りだな。元気にしてたか?
554 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/17(金) 10:22:49.88 ID:T77Q9BFAO
伊織「それで、アンタも来るわけ?」

P「いや、もう帰るよ」

 準備無しでお泊まり展開になってしまったわけだし、当然水着なんかも用意してはいない。
 多分言ったら用意してくれるんだろうけれど、年下の子にそこまで甘えるのは気が引けた。

伊織「そ。…まぁいいわ」

P「水瀬は?」

伊織「すぐに部屋に戻っていっちゃったわよ。アレは二度寝するわね」

P「そうか……保護者が居なくなるけど大丈夫か?」

やよい「あっ、それなら伊織ちゃんちのお手伝いさんたちがいっしょに来てくれるそーです!」

 お手伝いさん……メイドさんか。

P「水着になるのか?」

伊織「仕事着じゃあいざという時水に入れないでしょ」

P「水瀬家のメイドさんの水着姿か……うぅむ、やっぱり行こうかな」

伊織「来なくていいわよ!」
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/17(金) 10:23:19.67 ID:LO1OQCsA0
約一週間で久しぶりとか言っちゃう人って・・・
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/17(金) 11:37:00.39 ID:Oj6zNqovo
vipper感覚ですね分かります
557 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/17(金) 11:52:32.55 ID:T77Q9BFAO
 宣言しよう。
 今日師匠は絶対にラッキースケベを起こす。

 それもメイドさんたちにたいして!!

P「……羨ましい」

響「帰ってくるなり何言ってるんだにぃに…」

 あのあとすぐに、プールへ向かうやよいおり達と別れ水瀬家を後にした。
 いまは家のリビングで扇風機の前に陣取り、のんびりテレビを見ている。

P「親友が1人増えたんだよ。……殺意すら湧くラッキーボーイの親友が」

響「ふーん?」

P「……にしても今日は暑いな」

響「まだ夏前なのになー」

 本格的な夏になったならともかく、5月に於ける我が家ではまだエアコンは解禁されていない。

 なので窓などを開けて通気をよくして、扇風機で空気を掻き乱して熱が籠もらないようにする必要がある。
 …その扇風機は俺が1人占めしているわけですが。

P「あついー」

響「だらしないなぁにぃには」

P「──アイスか! いいな! 響、俺にもくれ!」

響「これは昨日から楽しみに取っておいた奴だからダメ」

P「…俺の分は…?」

響「本当は有ったんだけど、昨日美希が遊びにきたとき食べちゃった」

 ……ほほぅ?
 わたしのオニギリメーターが少しばかり上昇しましたよ。

 ちなみオニギリメーターが上がれば上がるほど、今度作るオニギリを作る際の具材が好き嫌いのハゲしいものになります。
 蜂の子の佃煮とか。

P「そんなこと言わずに一口だけ」

響「にぃにの一口は大きいからダメー」

P「スプーンの先っちょ! 先っちょだけだから!」

響「いーやーだー!」

美希「ハニーが響きを襲っていると聴いて飛んできたの!」

P「帰りなさい!」

美希「アイス買ってきたよ?」

P「くつろいでいきなさい!」

響「…手のひらの返し方が堂に入ってるぞ…」
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/08/17(金) 11:59:43.82 ID:wQeVN+qco
頑張れ
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県) [sage]:2012/08/17(金) 12:11:05.16 ID:9dppYXYio
先っちょだけてww
560 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/17(金) 12:27:11.06 ID:T77Q9BFAO
 休みも明けて、幾日か経って。

真「1、2、3…1、2、3……春香、いまのステップは右足からだよ」

春香「う、うん。…右足から、右足から…」

千早「ちょ、ちょっと春香…!?」

春香「ふぇ──きゃあ!?」

 真に指摘された足にばかり気を取られて、春香は右隣にいた千早を巻き込んで転んでしまう。

P「だ、大丈夫か2人とも」

春香「あ痛たた……ご、ごめんね千早ちゃん」

千早「大丈夫よ…」

 いまは部活の時間。
 曲にあった歌詞はなんとか作れて、次の課題は歌に見合ったダンスを作ることだった。

真「…やっぱり、いまのところは別の動きにした方がいいのかな…?」

P「一番難しくなったところだよな…?」

真「うん」

 基本的に素人の集まりであるので、3人が同時に同じように踊ることで華やかさを見せようということになった。

 それはそれで充分に難しいことだし、たしかに揃った動きというのは見ていて面白い。

 でも一箇所だけ、欲を出して3人が立ち位置を踊りながら移動するステップを考案してしまった。俺が。

 3人も乗り気になってくれて、ステップの動作も考えて、
 いままさにそれの練習をしているところなのだけれど…。

春香「だっ、大丈夫です! やれます!」

P「でも、このままじゃ春香が大変すぎるだろう」

 件のステップはセンターである春香が、左右の2人をかわさなければいけないので一番難しい。
 千早は目立ちたがらないので右後ろに。
 真は一番上手いのでフォロー出来るように左後ろに。
 そして一番やる気があって、明るい笑顔が可愛い春香がセンターと落ち着いているので、配置は変えられない。

 ……ならばやっぱり、ステップを変えて妥協したほうがいいのだろうか…。
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/17(金) 18:56:29.08 ID:/3EfDwUKo
ふむふむ
562 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/20(月) 08:09:05.44 ID:ClqwFpBAO
春香「…私って、いつも何にもないところで転んじゃうんですよ」

 改善策を思案していたところに、練習に疲れて座り込んでいた春香が、俯きながら言った。
春香「それは私がドジなだけだし、気をつければいいだけのことで、辛かったりするわけじゃありません」

 独白。

春香「転んだくらいで、めげたりしません。だってまた立ち上がれるから、また歩き出せるから」

 自嘲ではなく、自信のこもった笑みを浮かべている。

春香「私はまだプロデューサーさんと、765プロのみんなと歩き出してもいないんです! だから…」

P「……だから…?」

春香「──こんな、最初の一歩でつまづいてるわけには行きませんっ!」

 そう言って、立ち上がった。
 背をまっすぐとのばして、胸を張って。

 堂々たる佇まいをもって、スタートのポーズを決める。

春香「もう一度、最初からお願いしますっ!」

 負けない。
 折れない。
 挫けない。

 ただ俺が誘っただけの、遊び気分でやっても文句一つ言われようはずがない『部活動』に、
 どうしてこれほど打ち込んでくれるのか。
 多分答えとしては、春香が「何事にも一所懸命であること」が起因するんだろう。

 気がつけば、休憩していたはずの真と千早も春香と並んでポーズをとっていた。

 春香だけでなく、気概はみんな一緒だと、そう伝えてくれている。

P「それじゃあ、最初から通しで一回。その後、ゆっくりと順に演技確認をしていこう」

 返事を聴いて、CDの再生ボタンを押した。
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/08/20(月) 12:24:52.86 ID:ngb/9mUEo
面白いが投下が気まぐれ過ぎる
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/20(月) 16:17:14.12 ID:/GQXhwP50
あとsage進行だから来てても気づかない人いるんじゃないかな
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/08/20(月) 18:40:33.15 ID:+7UneVx9o
専ブラ入れてる奴のが多いだろうしあんまり関係なさそう
投下終了が読めないからいつ乙と言って良いか分からん
566 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/20(月) 21:25:32.07 ID:ClqwFpBAO
 更新遅くてごめんなさい…。

 仕事が忙しく疲れてしまっていることも原因ではあるのですが、
 調子が良い時に書かないと、ただでさえ汚い文章が
 肥溜めに落としたように汚物まみれになってしまいとても読めたものでなくなってしまうことが、気にしいな私を苛んでしまい、それが遅れてしまう最大の原因となっています。

 本当なら、こんな言い訳を書き連ねる時間を更新に当てるべきなのですが、
 普段から、読んで感想を下さっている皆様方に反応を返す機会があまりにも有りませんでしたので、この時この場を以て改めて御挨拶申し上げます。


 VIP板より読み続けて下さっている皆様、
 SS速報より読み始めて下さった皆様、
 筆舌に尽くしがたい程に、心より、感謝御礼申し上げます。

 ほんの些細なことでも、レスが貰えると本当に嬉しいです。
 早く続きを書かねばと励みになります。ありがとうございました。

 身勝手で、ノロマな更新速度ではありますが、「書き終える気概」だけはちゃんとありますので、
 月一で結構です。たまにフと思い出した時に覗きにきて下さいましたら、それだけで四条の喜びです。

 更新がsage進行なことが多いのは、たかだか1レス2レス投下しただけでageてしまうと、更新を期待して開いてくれた気持ちを裏切ることになることが多発してしまうと考えたからです。
 私自身が「そ、そろそろ落ちたりしないかな…?」とビビりますと普通に投下したりします。

 沢山の人に読んでもらえて、沢山の反応をいただけるのはそれは幸せなことなのですが、
 寄り道ばかりでストーリーが全然進まないこの状況では「完結第一」を目標にしていますので、あまりagesageは気にしないでいただけると幸いです。

 最後に。
 >>1に書きましたとおり、このスレッドの更新はすごく気まぐれに左右される体系となっております。
 レスがいただけるのは嬉しいのですが、「乙」といった内容のものは、どうか完結した時までとっておいてもらえませんでしょうか。

 完結させなければ、駄文は駄文のままゴミ箱いきになるだけです。
 ですので、いつか完結した日がきたその時に、賞賛でも罵倒でもどちらのものでも構いませんので、労いの言葉をいただけたらなと願う次第です。


 長文乱文失礼いたしました。
 質問等有りましたら、今後は答えられる範囲でレスしていきたいと思います。
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 21:30:43.64 ID:UHcBo25zo
いまさら気にするな
こちとらそれを分かって読んでるんだ
1の好きにするといいさ
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/20(月) 21:32:34.01 ID:xRXUYPRUo
そういう長文を書く時間を話を書く時間にあてろよと小一時間(ry
まあお好きなように
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/20(月) 21:35:11.56 ID:ipToRBYlo
クオリティーには満足している
量はもう少し欲しいが
最初っからずっとみてるから頑張ってくれ
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/20(月) 23:18:46.18 ID:NP2YUjNd0
vipの時からずっと応援してるぞ
ゆっくりでもいいから最後まで頑張って
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/20(月) 23:40:31.55 ID:x9ZYni7O0
VIPからずっと見てる
クォリティーが最初からずっと高水準なのが嬉しいな
完結まで応援してるぞ
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/20(月) 23:45:49.45 ID:CZSH7MyP0
がんばれ。楽しみにしてるから。
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 00:26:30.94 ID:8aDaHutro
こっちに来てから読み始めて応援してる
更新が遅かったり量が少なかったりするけど、その分高クオリティーだし、放置して投下しないより全然良い
がんばれ
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/08/21(火) 00:45:18.24 ID:3MrwzycZo
四条の喜びなのかw

まあ、ペースについては、あまり気にし過ぎないようにね?
陰ながら応援してる!
575 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/21(火) 03:27:59.44 ID:IDxI+DdAO
【5月の2】

 練習に費やしていた時間は瞬く間に流れていき、
 遂に今日は本番前日。

 やれるだけの事はやってきた。
 親バカながら、素人が発表するものとしては最高位の完成度になったと胸を張って言える。

 それだけ春香たちは苦労を重ねたし、
 それだけ真たちは練習に励んだ。
 俺の成功させたい想いに応えてくれるように、千早たちは頑張り続けてくれた。

 今日は骨休みといったところで、柔軟運動だけしてあとはだらだらと部室で談話をするだけ。
 明日は土曜日で、学校が休みの日にではあるが、我が校伝統の音楽祭は近くの地区民館ホールを借り切っての大イベントとして行われる。

 先ずは1年生から各学年が各クラス毎に、クラスで決めた課題曲を合唱する。

 そうしたら次は、各学年毎に選抜された生徒たちが、やはり学年毎に決めた課題曲を今度は演奏込みで披露する。

 そうして順調な盛り上がりを見せたら一度昼食用の休憩をとり、

 次はある意味でこのイベントの目玉ともいえる教員方によるショートオペラで会場は爆笑と熱気の渦に包まれる。

 それが終われば、次のプログラムは『有志の部』と言われる事前申請さえすれば自由参加OKの時間になる。

 部活動による歌唱、演奏もここに分類され、
 つまりは、その時間こそが、

P「『765プロダクション』の初披露ということになる」

千早「………」

真「うぅ……もう緊張してきちゃったよ…」

春香「あの、プロデューサーさん」

P「ん?」

春香「『有志の部』での私たちの順番って、どうなってるんですか?」

P「ああ、それは水瀬が気を利かせてくれてさ」

真「真ん中あたりだとやりやすいのかな」

千早「そうね…会場も暖まっているでしょうし、変に気負う必要がないから──」

P「大トリだぞ!」

春香「………」

真「………」

千早「………」

 3人から一斉にものすっごい冷たい視線が向けられる。
 やめたまえ興奮するじゃないか。

P「音楽祭は学校外の人たちも自由に観覧できる大イベントだからな! 『765プロダクション』の名前を町中に広めてみせよう!」

 本番前に元気を出して貰えると思って教えたのに、3人はゆっくりと溜め息を吐くばかりだった。
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/08/21(火) 06:39:50.63 ID:BGbeyFuRo
最初から読んでる
まだ出てすらいないキャラもいるし急いで終わらせたりする必要はないよ
まあ欲を言えばもう少し量が欲しいけどクオリティは高いし何とかなってる
頑張ってくれ
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/21(火) 08:24:36.10 ID:hYWfEV3g0
vipからずっと読んでるぜ。
設定の「許嫁:貴音」がずっと気になってる。
578 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/21(火) 10:39:11.20 ID:IDxI+DdAO
P「ただいまー」

響「おかえりにぃに」

P「お、響がまだ制服のままなのは珍しいな」

響「さっき帰ってきたばかりだからなー。…にぃにも、こんなに早いの最近だと珍しくないか?」

P「明日のために部活早めに切り上げた」

響「あした…?」

P「ほら、音楽祭だよ。うちの学校の」

響「あぁー、あの面白い劇のヤツか」

 去年の音楽祭では、教員方は女性教諭が少ないくせに何を血迷ったのか「シンデレラ」なんて披露して下さって、
 主役のシンデレラ役が小鳥先生という以外、あとはオール男性教諭というカオスな配役で物語は進められた。

 普段は真面目に、真剣に教鞭を振るっている教員方がオネエ言葉で声高らかに謳って踊る様は実に愉快で、
 外部からの見物客たちも大いに楽しんでいた。

 毎回第一土曜日に行う決まりらしく、休日である親御さんたちや他校の生徒なども結構見物にくることが多い。

P「あれはあくまでもプログラムの一部で、本当は歌を聴くイベントなんだからな?」

響「にぃに今年はなに歌うんだー?」

P「うちのクラスは『しおまねきのサンバ』」

響「…ちょっと意味不明な選曲だぞ」

P「い、いい歌だろ?」

響「それはそうだけど、小学生の発表会じゃないんだから…」

P「歌に貴賤は無いからさ」

 ……このクラスの課題曲を決める談になったとき、クラス中の人間が俺に意見を訊いてきた。

 俺は部活のことで頭がいっぱいでそんな重要なことを求められても真剣に答えられる余裕が無かったので、何の気なしに小学校のころ好きだった曲の名前を挙げて場を濁した……つもりだったのだけど…。

 いまさら小学生?
 でも面白そう!
 プロデューサーがオススメするならイケるんじゃね?
 だよね、プロデューサーくんなら。
 オレたちで音楽祭に嵐を巻き起こしてやろうzE!

 気づけば御輿だワッショイワッショイ。
 持ち上げられて担ぎ上げられた俺の意見はクラスの総意で決定され、現在にいたるというわけで御座います。

P「…どうしてこうなった…」

響「(珍しくにぃにが後悔してるぞ…)」
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/08/21(火) 12:28:35.25 ID:ObaF1RkKo
>>577 俺もずっと登場を待ってる
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/08/21(火) 14:43:00.25 ID:lw2W30UAO
>>577,579
俺がいる


気長に物語の行く末を見守っておりますので、身体に障らぬような範囲で書いていただけると嬉しいです。
毎度更新の度に嬉々として読ませていただいてます。
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 15:06:28.46 ID:eP+evO8/o
変に広がってストーリーが乱れそうなのにうまくまとめられててすごいなぁ
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/21(火) 18:43:48.16 ID:T0UuQpNM0
なんだこのヌクモリティーwwwwwwww
「待つのは構わない」には同意だけど、そんなマンセーするほどのクオリティー(笑)じゃないだろwwwwwwwwwwww

でも待つわ
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/21(火) 21:24:36.78 ID:X43EcX8v0
舞ってるよ
584 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/22(水) 10:36:54.77 ID:jBKgimrAO
P「ただいま」

 電気の点いていない真っ暗な部屋に帰ってきて、一言つげる。

P「…おろ?」

 部屋やベッドの中などに人気はなく、
 「たぶん美希がいるだろう」と思っていたのでやや拍子抜けしてしまう。

 俺の部屋と美希の部屋は狙いすましたかのような真隣で、窓の高さや幅までピタリと合致する仕様になっている。
 木製の窓枠が互いに張り出していて、窓と窓の隙間は実に3cmも無い。違法建築過ぎる。

P「今日は自分の部屋にいるのか」

 美希の部屋の窓はカーテンがしめられているものの、遮光性ではないので明かりの有無は明白で、
 さらに言うと美希のであろうシルエットが動いてるのがぼんやりと理解できた。

P「おーい、美希ー」

美希『…! ハ、ハニー?』

P「ちょっと話しておこうと思ったんだけど、いま大丈夫か?」

 こういうとき、即座にカーテンが開かれて美希が俺の部屋目掛けて飛び込んでくるのが日常ではある。

美希『あ…うん、その…』

 だけど今日は美希にしては端切れが悪く、何か抵抗が有るような反応。

P「どうかした?」

美希『いや…あのね? 美希ちょっといまハニーに見せられない恰好だから、ちょっとだけ待っててもらっていい?』

P「お、応。ごめん」

 見せられない恰好ってなんだ…!?
 下着姿なのか…?
 でも一緒に買い物に出たときランジェリーショップを連れ回したりするくせに今更…!?

 そりゃあ、下着だけ眺めるのと装着姿を見られるのとじゃ全然違うかも知れないけど……。

 と、珍しい美希の反応に狼狽えたりしていると、パジャマに着替えた美希がカーテンを全開にして、開きっぱなしの窓からモソモソと侵入してきた。

美希「お待たせしましたなの!」

P「入ってこいとまでは言ってないのに……」
585 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/22(水) 14:34:43.46 ID:jBKgimrAO
美希「それで、どうかしたの?」

P「ああ、えっと。明日ってウチの高校の音楽祭があるじゃん?」

美希「うん」

P「実は、俺の入ってる部活がそれで歌の発表をするんだよ」

美希「おめでとうハニー!」

P「いやぁ……だから、美希も明日ヒマだったら見に来てもらいたいなって」

美希「おやすみなさい」

P「寝るなよ」

美希「明日は土曜日だよ?」

P「うん」

美希「グッスリ夜まで寝ててもいい日だよ?」

P「せめて昼には起きなさい」

美希「いくらハニーのお願いでも、ミキの安眠を妨げることは出来ないの」

P「そうか……残念だ」

 幼馴染みだし、普段学校のことで話す機会も少ないから、
 俺のこととかをもっと知ってもらういい機会だと思ったのだけど。

P「……まぁ、俺が歌ったり踊ったりするわけじゃないしな」

 無理に誘う事もないか。
586 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/22(水) 14:50:04.92 ID:jBKgimrAO
美希「…歌ったり踊ったり…?」

P「ん? うん、なんというか、アイドルの真似事みたいなことをする部活で、俺は裏方の『プロデューサー』だから」

 改めて、我が部は余所様に対して説明がし難いのだと認識する。

美希「……いく」

P「Why?」

美希「行く。よく考えたら、学校でハニーの周りにいる女の子を確認しにいくいいチャンスなの」

 おまえは何を言っているんだ。

P「ま、まぁ、見に来てくれる分には嬉しいよ。それじゃあ、ほい」

美希「の?」

 足元に置いていた鞄から、
 一枚のチラシと10cm程度の紙切れを取り出して美希に渡す。

P「明日の会場案内とプログラムが載ってるプリントと、関係者用客席のチケットな」

美希「あの駅に近い区民館ホールなんだね」

P「贅沢だよな」

 これでチケットは美希と、あと響にも渡せた。
 2人とも感性が良いから、765プロの演目を観てもらったら是非感想が訊きたかったんだ。

P「明日の昼は弁当用意しておくから、昼休憩に入ったらケータイに連絡くれな」

美希「了解したの〜」
587 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/23(木) 11:01:19.96 ID:eoo59+fAO
【6月の1】

 音楽祭当日。

P「緊張する……」

 観客席から1年生による合唱を俯瞰しながら、溜め息を一つ。

律子「なんだか似合わないですね」

 俺の呟きを拾った律子が、隣の席で小さく笑った。

 春香や真、他クラスの千早とは席が離れていて様子は窺えないが、きっと3人も3人で緊張しっぱなしであることは想像に難くない。

P「だがこの緊迫感がたまらない」

律子「いつも通りじゃないですか」

 律子の隣に来たのは偶然だけど、事情がわかっている人と普通の会話が出来るというのは、この緊張中では非常に有り難かった。

律子「プロデューサー殿は困れば困るほど……追い込まれれば追い込まれるほど熱くなるタイプなんですよね」

P「自覚はないけど、そうなのかもな」

 事実、「緊張する」と呻きながらも、心臓や脈拍は大きく素早く鼓動しているのが自分でもよくわかった。

 自分が演技するわけでも無いのに、どうしてこうも興奮するのだろうか。


 ──今日と云う日が境となって、俺の学生生活が大きく変わっていくことに、この時はまだ誰も、気が付いていなかった──。

律子「なにを恥ずかしい寝言呟いてるんですか」

P「おっと、妄想が漏れ出してた」
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/23(木) 13:52:05.24 ID:fdQlrGHc0
来てたか
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/23(木) 21:42:21.21 ID:+3b09lTM0
なんか展開サクサク?
ところで>>1の下に張ってあるSSってなに?続き読みたいんだども
590 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/24(金) 12:19:23.40 ID:KJxK4kJAO
小鳥『──次は──組による──』

P「あ、雪歩のクラスだ」

 いま歌を終えたクラスが右舞台裏へと退場すると同時に、左舞台裏から出てスポットライトの下へ整列を開始するクラス。

 それは以前に訊いていた雪歩のとこで、つい彼女が居ないかと探してしまう。

律子「新入生代表だった子ですか?」

P「そうそう。俺の学生手帳拾ってくれた子」

律子「ああ…」

 話しながらも捜索を続けるが、困ったことに全員が全員同じ衣装を纏っていて、遠目からだと見分けがつき辛い。

P「あれなんて言うんだっけ……ガウン?」

律子「そうですね、聖歌隊なんかが着てたりする正装だと思いますけど」

 男子も女子も、制服を上からすっぽりと覆い隠すような水色のガウンで衣装が統一されている。
 衣装などの規定は特に出されていないが、『有志の部』ならともかくクラス合唱は所詮学校の一行事なので、大体は制服で済ませてしまう。

 こうして準備して揃えているのは全校クラスを探しても珍しい。

P「あ、雪歩発見……おぉ?」

 水色の一団が緩い弧を描くように並んでいる、その前列中央に、探していた少女はたっていた。

 目立つことが恥ずかしいのか、俯き気味。
 だが溢れ出る美少女オーラは隠し切ることは出来ず、また新入生代表として有名でもある彼女を見つけて、途端に観客席がざわつき始める。主に男子が。

P「曲はなんだっけ……『天使の糧』…?」

律子「賛美歌ですよ。有名なものだと思いますけど」

P「へぇ……だからガウンなのかな」

 正装した担任の教員がステージに上がり、伴奏者、観客席へとお辞儀をして、指揮者台に立った。
 歌が始まるのだと、会場全体が静まり返る。

 ──突然、思いもよらなかったことが起きた。あまりに突拍子のないことだったので、一瞬思考が停止してしまった。

 雪歩が、前に出たのだ。

 指揮者がタクトを持ち上げると同時に、ゆっくりと一歩前へ踏み出した。

 それは、つまり、

P「雪歩のソロパートから始まるのか…!!」
591 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/24(金) 12:54:39.48 ID:KJxK4kJAO

 驚いた。

 雪歩を知る人なら、きっといまこの瞬間に驚かずにはいられないだろうと思った。

 消極的で、いつも周りから一歩退いた行動をとる雪歩が、まさかこの晴れ舞台で自ら注目を浴びるようなことをするとは。
 驚きは隠せない。
 だけどその実、内心はこの上ない程に高ぶり始めている。
 雪歩の歌に、興味が湧いて好奇心が擽られ胸の高鳴りが治まらない。

 雪歩が小さく、だけど深く呼吸をするのが見えた。

雪歩「───」

P「───」

 息を吸う瞬間、目が合った。
 気の所為かも知れないが、雪歩がピンポイントで俺を見にきた気がした。

 ドクンと、一段と強く心臓が脈打ったような。

 錯覚だと、考えるよりも早く、
 曲の始まりと共に、雪歩の歌声が会場に響き渡った。

律子「……凄い…」

 そう、律子の呟きが聞こえた。

 鈴の鳴るような、硝子が響いたような、透明な声が観客に息を呑ませた。

 純粋な白色。

 色にしてそれ想わせる歌声。

 雪歩のソロパートが終わり、続いてクラス全員が加わった合唱となるが、
 俺の耳にはずっと雪歩の声だけが聴こえていた。

 その曲が流れている間、雪歩しか見えていなかった。

592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/24(金) 14:35:58.77 ID:HhwqZ5Eo0
俺はこの時のためにここにいるのかもしれない…
593 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/24(金) 15:48:01.50 ID:KJxK4kJAO
P「あーびっくりしたぁ」

 1学年全クラスの発表が終わったので、玉突きのように今度は2学年の発表が始まる。
 今は、舞台裏まで移動している最中だった。

真「プロデューサー、雪歩の歌のあと暫く放心状態だったもんね」

P「いやまったく、雪歩があんなに大胆なことをするとは思わなかったから」

春香「すごく上手でしたよね!」

 気付けば隣にやってきていた春香と真。
 2人も、さっきの雪歩の歌に感じるものがあったようだ。
 こういうとき、クラスの違う千早と話せなくて寂しい。

P「すごい不意打ちだったからなぁ。今日のこのイベントに個人評価がついてたら、いま雪歩はMVPに一番近いポジションだと思うぞ」

真「確かに…」

春香「でも、今日は勝負するわけじゃないし」

P「何を言ってるんだ」

 先程の雪歩に関して。
 俺の感想と、春香たちの感想に若干の食い違いを感じたので釘を刺しておく。

P「先の雪歩の独壇場、俺は雪歩からの挑戦と受け取った」

春香「えぇ!?」

P「まぁ、雪歩自身が『俺たち』に勝負を持ちかけてきたわけじゃないけどさ」

真「じゃあ?」

P「俺はこの前雪歩に、“『765プロ』が凄いものだと感じたら入部してくれ”と勧誘したわけだ」

真「うん」

P「つまるところ、雪歩を含めた観客全員を魅了すれば良いってことなんだよ」

春香「ハードル高くないですか!?」

P「──でもそれを、雪歩はやってみせたんだ。勝ち負けを競うことはしないけど、なら俺たちだって、やってみせなきゃ嘘ってもんだろう?」

 これは、「雪歩にできたことが俺たちにできないわけない」だなんて驕りではなくて、
 「挑戦することに意味がある」という、やる気の話し。

P「本当に観客全てをとは言わない。春香たちはただ全力を出し切ってくれればいい」

 そうすれば、俺たちの熱意はきっと届いてくれる。

P「そうして、今日居る内の何人かにでも『765プロ』の存在が認められたらそれで御の字なんだ。…上だとか下だとかは、結局他人が勝手に決めることだから」

 勝ち負けでやっいるんじゃない。
 商業目的で始めたんじゃない。

 ただ観てくれた人に笑顔を与えたかったから、
 ただ聴いてくれた人に幸せを届けたかったから。

 それがアイドルだから、
 アイドルを目指したからこそ、今日『765プロダクション』は、舞台の上に降り立つんだ。
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/08/24(金) 15:56:10.36 ID:KJxK4kJAO
×勝ち負けでやっいるんじゃない。
 ↓
○勝ち負けでやっているんじゃない。




>>589
 前に書いていて、完結前に落としてしまったSSです。
“自分はこんな駄文ならかけます”という挨拶のつもりだったのですが、不快になられたようでしたら申し訳有りません。
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/08/24(金) 21:24:38.81 ID:OW/Kkp3/o
熱い展開だな、やっぱりPは根っからプロデューサーやでえ…
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/25(土) 17:21:52.58 ID:Pn3aq48L0
>>594
なるほどサンクス

双海姉妹はよ
597 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/08/26(日) 11:08:40.28 ID:IXI/jfwAO
P「………」

春香「お、落ち込んだらダメですよプロデューサーさん!」

真「そうだよ、みんな“アレ”でも一所懸命に歌ったんだからさ…!」

P「……舌が痛い」

真「くぬっ……だ、大丈夫? 先生にみてもらいにいく?」

P「真いま笑っただろ。笑っただろ!?」

春香「もぉ、しっかりしてくださいよ!」

 ──第2学年の発表が終わった。

 他のクラスが「遠い日の歌」や「マイバラード」などの正統派合唱曲を唄っていたなか、
 ウチのクラスは「しおまねきのサンバ」と異色過ぎる選曲だった。

 ステージに並んでプログラムが曲名を発表したら明らかに、観客の見る目が変わったのがわかった。
 対抗や競争をしてグループ単位での優勝を目指すイベントなのに、
 「このクラスは勝つ気が無いのでは?」、「受け狙いで選んだのか?」と、笑われている気がした。

 やめろ。
 みんなは真剣に臨んでいるて、この曲を選んだのは俺だ。
 それに期待してくれて、俺を信用してくれたクラスメイトをバカにするな!

 …なんて、怒ることも出来ず、ただ笑っている観客たちにガンくれることしか出来ない。

 「おーおー、笑われてんなオレたち」
 「まーわかってたことだからいいけどねー」

 担任の小鳥先生が壇上に立って曲が流れ始めるまでのわずかな間に、整列してるクラスメイトたちが小声で会話をしていた。

 「いまさら小学生の歌だもんねぇ」
 「でも、聴くまえからバカにされるってのは納得できねぇよなぁ」

 観客席の雰囲気はみんなにも伝わっていたようで、みんなのなかで沸々と、何かがざわめいているのがわかった。

 隣に立っていた男子が軽く俺の肩を叩いて、
 「──オレたちがバカに出来ない存在だってこと、観客席でナめ切ってるヤツらに思い知らせてやろうzE!!」と、

 そう、言ってくれた。
598 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/26(日) 11:24:56.55 ID:IXI/jfwAO
 もっと真面目な曲にした方がよかったのではと、今更後悔しかけていた自分に、
 クラスのみんなが笑いかけてくれていた。

 この曲を選んだのはみんなの総意なんだからと。
 俺が気に病む必要はないと。

 みんなの励ましと気遣いに思わず目頭が熱くなるのを頭を振って誤魔化し、
 真っ直ぐに、みんなの視線を見つめ返した。

P「みんな、信じてくれてありがとう」

 よせやぃと、照れ臭そうな反応がくる。

P「──じゃあ俺たちの実力で、存分に魅せてやろうベッ…」

 最後の一文字で盛大に噛んだ。

P「…痛ぇ!」

 一拍間を置いて、みんなが爆笑した。

小鳥「えっ? えっ? みんなどうしちゃったの!?」


 もう、合唱どころじゃなかった。

599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/26(日) 13:36:36.27 ID:bNFMgAHjo
おいしいなwwww
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/26(日) 18:52:05.51 ID:1QKcJXQ80
おいしいな、だがあざといのは春香のポジショ――うわなんだなにをするやめ
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 21:18:53.80 ID:5cdBd1BUo
のヮの …ウフフ
602 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/08/27(月) 09:39:28.97 ID:QUE4eRIAO
 三年生の発表、そして各学年代表に依る発表が滞りなく行われて、今はお昼休みとなった。

 同じクラスから真と春香、別クラスから千早と水瀬(兄)と綺麗どころを引き連れて、
 昼食を採るのに適した外の広場へと歩いている。

真「お腹減ったなぁ」

春香「そうだね、午後には大事な発表があるんだから、しっかり食べて元気ださないと!」

千早「でも、あまり食べ過ぎると声色が変わってしまったり、ダンスをするのが辛くなってしまったりしないかしら」

春香「あ…そっか」

P「そんなに深く考えたりしなくていいんだよ。個人での健康管理は大切なことだけど、やっぱりみんなはいつも通りでいいんだ」

 全力を出すには、いつものままで在ることが大事なのだから。

伊織「───」

 ふと、視線の先にウサギのヌイグルミを抱いた少女が現れた。
 昼食に向かう人々による雑踏の中、向こうはキョロキョロとして、誰かを探しているように感じられる。
 少女は、まだコチラに気付いていない。

P「やあ伊織」

伊織「っ!? ……あ、居たぁ!」

 肩を叩いた瞬間ビクリと強張ったが、恐る恐ると振り返って俺と、背後にいる水瀬(兄)を認めた途端に、少女──水瀬伊織は安堵した様子で抱きついた。
 兄に。

P「わざわざ探しに来たのか。待ってたら迎えに行ったのに」

伊織「べつにアンタに会いにきたわけじゃないわよっ」

 水瀬(兄)の腰に腕を回して甘えている体勢のまま、ツンケンとした視線を向けてくる伊織。デレツンだろうとはわかってはいても、俺はそんな嫌われるようなことをしたのかと心配になってしまう。

P「…まぁ、ともあれコレで揃ったな。あとは、先に広場の方で待ってる妹たちと合流すればランチタイムだ」

 足取りも軽く、俺は先導を切って行く。


 ……その先に、修羅場を生み出す邂逅があることにも気付かずに……。

603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/27(月) 11:44:36.30 ID:mDdqZIy30
これは……あかん
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/08/27(月) 15:42:54.69 ID:GmvrYN+AO
こりゃいかん
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/27(月) 16:53:49.42 ID:+yLYyLEB0
それでも期待する俺達
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/08/27(月) 18:07:19.00 ID:vTaHJrx9o
早く…
こんないいところで止めるなんて殺生な
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/28(火) 15:00:56.41 ID:M8pe4suIO
頼む
早く続きを・・・
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 16:43:49.24 ID:EfDll761o
作者のペースでたのむ
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/08/29(水) 11:49:44.80 ID:9i9khoCr0
よく見たら、>>1のトリップって

「酉(鳥)」で「72」で「くっ」って3つもかかってたんだな


‥‥‥>>1が如月千早な可能性微レ存‥?
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/08/29(水) 16:21:26.15 ID:olPHmpGd0
>>609
sageろ
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/29(水) 16:22:16.07 ID:olPHmpGd0
ありゃ、またsage消えてた
ageてすまん
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 02:22:43.33 ID:S4tvqrnDO
まだか…
613 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/02(日) 08:05:49.56 ID:7VvYUJ2AO
響「にぃに〜!」

P「お、居た居たやっほい」

 事前に待ち合わせ場所を決めていたので、人混みの中でも響たちはすぐ見つけられた。

 木陰の無い芝生の上だが、陽が強くなく暑すぎない今日なんかは問題無くベストプレイスだ。

真「やぁ響」

響「おぉ〜! 真、久しぶりだぞー!」

 既知の仲である2人が挨拶をして、それに続くように他のメンバーを紹介する。

P「えっと、部活仲間の天海春香さんと如月千早さん。それに友達の水瀬と、その妹の伊織」

春香「どうも、こんにちは」

千早「初めまして」

伊織「はじめまして」

響「お…おぉ……にぃにの周りに女性がたくさん…」

P「それでこの子が義妹(いもうと)の響。961女学院の1年生」

春香「響ちゃん、て呼んでもいいかな?」

響「………」

P「…響?」

響「! なな、なんくるないさー! 自分も、仲良い友達は名前で呼ぶからよろしくなっ!」

千早「(…名字で呼ぶとプロデューサーと混同してしまうし……私も名前で呼んだ方がいいのかしら…)」

P「──それで、そこで横になってる女の子が…」

美希「…Zzz…Zzz…」

P「……幼馴染みの星井美希さん。響と一緒で、961女学院に通ってる2年生デス」

 レジャーシートの上で丸まりながら、周囲の視線などお構い無しに気持ち良さそうに寝ている金髪の物体。

P「ほら、起きなさい美希。お昼にするぞ」

美希「うぅん……」

 ゆさゆさと、肩を揺すって起こしにかかる。
 いつもならご飯(=手製おにぎり)と聞くとすぐに目を覚ますのに、今日は休日の朝から出掛けたこともあってかイマイチ反応が鈍かった。

美希「……おにぎりは…?」

P「あるぞ。梅から鮭から昆布に高菜明太まで」

美希「梅干しの種は抜いてある…?」

P「応。食べやすいように全部抜いてある」

美希「おはよーございますなの」

 ムクリと。その答えが聞きたかったとばかりに即座に上体を起こして挙手注目の敬礼をしてくる美希。…いつものことですけれど。

美希「…の?」

 周囲に、見慣れない生徒の姿を確認して小首を傾げた。

P「ああ、この人たちは──」

 改めての友人紹介。

 美希の春香たちを見る眼が、どこか変わった気がした。
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 08:56:40.43 ID:zk+z+1cI0
待ちわびたぞ!主!
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/02(日) 09:49:33.19 ID:8uCGAI/Yo
修羅場はよ
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/02(日) 10:44:38.12 ID:+YwPmZyx0
ああ、待ちわびたぞ
617 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/02(日) 11:56:14.83 ID:7VvYUJ2AO
P「いただきます!」

 俺に続いて、みんなが合わせて弁当を開いた。

真「プロデューサー、今日のお弁当は力入ってるね」

P「フフン! みんなで食べれるように朝4時起きで頑張ったぜ! あ、これが千早の分ね」

千早「あ、ありがとうございます」

 俺が用意したお弁当は、おにぎり二段にオカズが二段の計四段の重箱。
 俺が持ってたのは千早に渡す小型お弁当だけで、重箱の方は響に持ってきてもらった。

響「重かったんだからな」

P「ありがとうな、よしよし」

響「…へへっ」

 和気藹々と、食事を始める。
 大量のオカズを分けたり、時にはもらったり。

伊織「……アンタ、料理上手だったのね」

P「この間食べさせましたよ?」

真「あっ、すごい! 水瀬がハフハムしてる!」

P「水瀬は甘い玉子焼き好きだって言ってたもんな」

春香「プロデューサーさん、これよかったらどうぞ」

P「お、ありがとう」

響「──酸っぱ! このおにぎりの中身酸っぱすぎるぞ!」

P「それはアレだよ、ザワークラウトだ」

千早「何故そんなものをおにぎりの中に……」

P「なんか閃いちゃって」

 楽しく、ランチタイムは過ぎていたのだけれど。

美希「じぃー」

 ……見られてる。

美希「じぃー」

 擬音を口に出すくらい凝視されてる。

 何故?
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/09/02(日) 12:50:37.19 ID:R0iVqpMto
美希は可愛いな
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/02(日) 14:27:40.10 ID:krnKjHT/o
ザワークラウトの不味さはガチ
620 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/02(日) 14:43:00.00 ID:7VvYUJ2AO
P「どうした美希」

美希「うん?」

P「初対面の人間ばかりだろうけど、みんな良いヤツだから美希ならすぐ友達になれると思うぞ?」

美希「あー……うん。それはハニーを見ててわかるよ」

 一瞬、なにか考えるような素振りをしてから、笑顔で答える。

春香「あの、美希ちゃん…て呼んでも良い?」

美希「呼び捨てでいいよ。ミキも……えっと、…ハルカさん?」

春香「うんっ。気軽に呼んでね」

美希「よろしくなの」

 言うが早いか、春香が気を利かせて美希との距離を縮めてくれた。

 …のるしかない、このビッグウェーブに!!

美希「ねぇねぇ春香?」

春香「うん?」

美希「春香はハニーのこと好きなの?」

P「ブフゥ!」

春香「ええぇ!?」

美希「アレ? 違ったかな」

P「なな…何を訊いてるんだ!?」

美希「ハニーが女の子にモッテモテだから、みんなどれくらいハニーのこと好きなのかと思って」

春香「ど、どれくらい…」

 いえ、反応しなくてもいいですよ春香さん。

伊織「…アンタ、自分のことハニーだなんて呼ばせてるの? …変態」

P「ち、違う! これは美希が自発的に呼んでるだけで…!」

千早「あの、プロデューサーと星井さんは…その、そう言った御関係で…?」

P「そういったって…?」

美希「未来のお嫁さんなのっ」
千早「…!?」

響「いまはただ仲の良い幼馴染みなだけさー」
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/02(日) 14:49:48.25 ID:ozthAegeo
火花が散りまくってんな…
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/09/02(日) 14:52:41.96 ID:PHo7ywxIo
いいぞーもっとやれ
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 15:15:12.54 ID:+2cEreBp0
動揺しちゃうちーちゃんかわいい
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/02(日) 16:13:02.08 ID:ZQPH7NXLo
んあー(狂喜)
625 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/02(日) 16:27:45.65 ID:7VvYUJ2AO
P「……混沌とした昼食だった…」

 あの後、
 美希が女性陣全員に同じ質問を繰り返して、
 照れた伊織が怒ってド突いてきて、
 質問されなかった水瀬(兄)も何故か怒ってなって俺に密着してきて、
 それに対抗した美希が膝枕を要求してきて、
 それに甘えたがりの響まで参戦してきて。

 平和だったはずのランチタイムはものの数分で混乱に陥ってしまい、沈静化された頃には昼休憩が終わる時間になっていた。

 救いだったのは、みんな隙を見てつまんでくれたお陰で、重箱弁当に残りが出なかった事か。

真「ず、随分と強烈な子だったんだね、美希って」

 会場に戻る途中、並んで歩く真が照れくさそうにしながら言った。
 いやなんかもう本当に済みません。

P「……そう言えば、真も水瀬も美希には逢ったことなかったんだよな」

 昔から両者とも結構遊びに来ていたりした筈なのに、不思議と鉢合わせたことはない。

 神様のイタズラかなにかか。
真「仲良くできるといいな」

P「真なら大丈夫だろ」

真「どうしてさ」

P「俺よりもイケメ」


 音声と映像が乱れております。今暫くお待ち下さい。

626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/02(日) 17:21:50.53 ID:TpZ7k2EHo
何故自らサンドバッグになろうとするのか
627 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/02(日) 17:27:43.86 ID:7VvYUJ2AO
P「……“イケてる面(つら)”という意味であって、“イケてるメンズ”という意味では無かったのに…」

律子「なにをブツブツ言ってるんですか」

P「そういえば律子もイケメンだよな」

律子「はぁ」

P「やっぱストレートに可愛いって言われた方が嬉しい?」

律子「イヤな気はしないと思いますけど…」

P「そっか……あ、教員方のお出ましだ」

 席について雑談をしていたら、客席のライトが落ちて明かりが舞台を照らす1つのスポットライトのみとなった。

 その中心に居るのが、白いドレスに着飾った小鳥さん。

 演目は、『白雪姫』。

P「………」

 次々と展開されていく劇を、ただ一心に眺め続ける。

 素人劇と言えど、これだけ大きな舞台で備えてやれば充分に迫力が有る。

 舞台の立ち回りや視線移動など、『765プロ』の参考になりそうな情報は山とあった。

 今日の舞台には間に合わなくとも、別の機会があった時にコレを活かせるように、

 静かに真剣に、舞台の全てを頭に叩き込んでいく。
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/02(日) 18:47:12.91 ID:Jawfgdlpo
さり気なくウェーブに乗ってる水瀬(兄)に吹いた
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/02(日) 22:13:43.90 ID:+YwPmZyx0
乗るしかないと思ったんだろ
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/09/03(月) 07:31:42.99 ID:CTmnjDqNo
水瀬(兄)には流石に張り合わなくて良いと思うぞ美希
631 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/09/03(月) 09:45:22.99 ID:xjYTOblAO
響「なぁ美希」

美希「んー?」

響「さっきはどうして、“あんなこと”したんだ?」

美希「んー……」

響「うぉい。寝るな」

美希「…えっとね、対等に戦うため…かな」

響「戦うって…、誰もにぃにの事好きなんて言ってなかったぞ?」

美希「“いまは”べつに好きじゃないかも。でも確実に好きになっちゃうよ。だってハニーだもん」

響「うぅん…否定できない」

美希「でしょ? だからミキは、はやい内から意識させておこうとしただけだよ」

響「それって、自分でライバルを増やすってことじゃないのか?」

美希「そうだよ。でも『ライバル』になったら、正々堂々と負かしてハニーを手に入れられるって思うんだ」

響「負ける可能性は考えないんだな…」

美希「勝負だったら、ミキは必ず勝つ自信があるの。響だってそうでしょ?」

響「う……ま、まぁ自分完璧だからな! にぃには誰にも渡さないさー!」

美希「その意気なの! 昔から、ずっと前から好きだったのに、後から出てきた子が知らないうちにハニーを取っていくなんて我慢ならないの!」

響「な、なるほど…だから“ライバルがいる”って宣言したわけか…」

美希「なの! ハニーを好きな子なんていくら現れても関係ないの。全部打ち負かして、最後にはミキがハニーと一緒にみんなから祝福されるの!」

響「なぁっ! だ、だったら自分だって、いつかにぃにの隣で白無垢を着てみせるぞ!」

美希「……フフッ」

響「……ハハッ」

美希「流石はミキの最初のライバルなの」

響「美希とは何があっても友達だぞ」

響&美希「あははははっ」



 「(なんかすごい話ししてるなぁ)」
 「(誰か知らんが男もげろ)」
 「(芝居みろよ)」


632 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/03(月) 10:34:12.78 ID:xjYTOblAO
 教員方による演劇が終わり、
 遂に始まる『有志の部』。

 先ず始めに「吹奏楽部」が口火を切り、続いて数人単位の生徒たちによる「モノマネ歌合戦」が会場を盛り上げた。

 吹奏楽部は10分ほどの創作組曲を2つ続けて演奏し、歌合戦はサクサクと30分ほどで締めくくられた。

 間を置いて、『有志の部』の大本命とも言える「軽音楽部」によるバンド演奏が30分以上に渡り繰り広げられる。

 MCを交えての全5曲。そのうち1曲はこの音楽祭にあわせて用意した新曲だという。
 『765プロダクション』のために曲を提供してくれたにも関わらずこのパフォーマンス。
 これ程の存在なら、熱狂的なファンの生徒たちが気分が悪くなるくらいヘドバンして医務室に運ばれてしまうのも納得だった。


 ──そして、『765プロダクション』の出番が。

 音楽祭の最後の出し物となる舞台が、やってきた。

P「みんな、体調は大丈夫か? 衣装とか、問題が無いかもう一度お互いに確認しあってみてくれ」

 持ち時間は、紹介のトークも含めて精々20分弱程度。
 他に比べて明らかに少ない。ちょっと手洗いに抜けたら見逃してしまうかも知れない。

 つまり、印象に残り辛い。

P「じゃあ、進行は打ち合わせ通りに頼む。…春香!」

春香「はいっ!」

P「真!」

真「はい!」

P「千早!」

千早「はい!」

P「上手くみせようとしなくていい。ここは会場じゃなくて、いつもの部室だと考えていい。全力を、いま出来る最上を、体の中から発散するつもりで挑んできてくれ!」

 顔を見合わせて、力強く頷き合って。

P「765プロ──」

 合わせた手のひらに、思いも願いもすべて詰め込んでみんなを送り出す。

P「ファイトー、オー!」


 「オー!!」

633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 10:42:07.91 ID:BXt4974io
初ステージ来たか
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/03(月) 11:10:40.61 ID:Gw8OGJ590
このSS始まってから5ヶ月でやっとかよ‥‥‥

はよしろボーケー
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 13:10:06.60 ID:N5cZZU/To
許嫁がでるまであと何か月かかるんだよ
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2012/09/03(月) 14:32:33.33 ID:GrS79lNno
なんだかんだ長編になるな(内容的にも期間的にも)
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/03(月) 14:42:30.30 ID:j/oOByTbo
この遅さだから信頼できる確実なクオリティ
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/03(月) 17:19:16.50 ID:dj2wwJ3a0
長編万歳。
早くしてクオリティ下がったら意味ないだろうに
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 19:35:17.69 ID:alf8obT7o
別に1年かかろうが2年かかろうが完結さえすれば構わない
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/04(火) 01:47:27.50 ID:NNcSvYYL0
言いたくわないけど甘やかしすぎだろ
もっと「はやく書かないと見限るぞ」って危機感を持たせたほうがいい

この分だと2スレ目は確実、もしかしたら完走に3スレ目まで使うかもしれない
そうなったらもう本当に誰もついてこないだろ 絶対にダレて読むのやめる

おもしろいものはおもしろいからこそ鮮度を大事に勢いにまかせてサクサクっと進めるべきなんだよ

転載禁止って書いてあるから誰もまとめないだろ?そしたら2スレ目3スレ目には最初からついてきてるヤツしかいなくなるじゃん?
それで無人になったスレにだれが好き好んで投下するとおもう?

このSSをおもってこそ、オレは心を鬼にしていうぞ

さっさと書けノロマ遅漏
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 02:37:47.91 ID:K+bB071IO
このSSをwwwwおもってこそwwww心を鬼にしてwwwwww言うぞwwwwwwww

だってよwwww
お疲れ様wwwwww
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/04(火) 02:41:41.14 ID:inxi//V+o
まあ誰かが見限ったところでこのスレを見つけた初見の誰かがまた待ち続けるだけだからあんまり意味ないかなーって
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2012/09/04(火) 03:00:40.75 ID:UQg13IFRo
どこ縦読みだよ
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 03:11:04.63 ID:iqFpVbZ9o
新たなコピペ誕生の瞬間
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/09/04(火) 05:32:28.90 ID:+xkphu49o
勝手にしろ
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/09/04(火) 06:13:36.09 ID:04Y0giBCo
新しいコピペが出来たと聞いて
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/09/04(火) 06:43:59.19 ID:Cwm1ypCSo
流行らないコピペじゃないのかよ…
648 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/04(火) 07:20:03.52 ID:qFm1DpIAO
 『765プロダクション』。

 ただその一文だけが、プログラムには書かれている。

 客席が僅かにざわめくが、舞台の明かりが消えた事で静かになった。

 そして会場は、客席間の足下を照らす淡く弱いランプと、非常口の誘導灯だけを残して暗闇が満ちた。

 一拍の後、舞台を真上から射し照らすスポットライト。
 そしてその下に、如月千早が立っていた。

 そう、如月千早ただ独りで。

千早「………」

 一瞥。
 これから自分が歌を聴かせる相手を、
 歌を届かせるべき相手を一度だけ見据えて、目を閉じる。

 息を吸い、曲も伴奏もなしに、千早は歌い始めた。



 ──第一曲 『眠り姫』──



649 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/04(火) 08:24:39.13 ID:qFm1DpIAO
 千早が完全なアカペラから入ったこの曲は、「先代の合唱部」の人たちが、千早のために作詞曲されたもの。

 『765プロ』として用意出来た曲は、軽音楽部の人たちに創ってもらったただ一曲だけ。
 それを少しでも印象強く鑑賞してもらうために、舞台最初に千早の独唱の場面を用意した。

 捨て駒としての意味じゃない。
 すべては如月千早の歌唱力に託しての采配。
 初めは校歌である『蒼い鳥』を唄ってもらうつもりだったのだけれど、
 独唱の場面を相談したら、本人から「この曲では駄目でしょうか」と提案された。『眠り姫』という題名は知らなかったけど、千早をこの部に勧誘したときに唄っていた歌だと説明されたら、是非も無い。

 千早の歌に惚れ込んでいる春香や真もとても賛成してくれて、出し物の展開としては

 ・千早の独唱
  │
 ・部活動紹介
  │
 ・オリジナル曲披露

 となる。

 千早の歌には観客を惹かせる役割を“ある理由の副産物として”持たせてある。
 …が、仲間を利用して損得勘定をする自分への自己嫌悪が半端じゃない。
 事実として、この企みは成功した。

 観客は千早の歌に、存在感に釘付けとなって、舞台裏から観ている限りでも身動ぎ一つする人は居ない。


 ……そして、『眠り姫』がサビに入ると同時に、

 舞台のライトを全て展開させ、
 舞台脇に待機していた“軽音楽部と吹奏楽部の合同バンド”が伴奏を開始する。

P「……ぃよしっ…!!」

 タイミングは最高。
 これ以上は望むべくもない。

 舞台裏にある装置小屋でライトを操作しながら、小さくガッツポーズをする。

 そして『眠り姫』は、最高のかたちで観客の印象に残ることになった。


650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/04(火) 08:41:53.68 ID:oaCaY0oQo
校歌が青い鳥とか…
春香さんにはハードル高いな
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/04(火) 12:44:13.11 ID:yjkKAwqRo
とても高校生に歌わせるような歌じゃねえよwwwwww
校長でてこい
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/04(火) 12:49:28.62 ID:inxi//V+o
愛する人との別れの歌が校歌wwwww
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/04(火) 16:45:23.74 ID:MlGFXrPC0
蒼い鳥が校歌とは・・・恐ろしいな
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/04(火) 16:46:02.89 ID:zschxWVf0
春香さんは青い鳥最後の数秒しか本気出さないからな
・・・決して下手なわけではないはず
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/04(火) 21:16:46.37 ID:Fmf803T80
これか「眠り姫(アカペラ入)」
ttp://www.youtube.com/watch?v=Flm_rASpihE
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 01:48:11.49 ID:pusaaWPSO
経験が生きたな
お前には褒美として水無瀬兄を好きにできる権利をやろう
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/05(水) 11:37:49.22 ID:h0LshQo6o
水瀬(兄)はおねツイの島崎のイメージ
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/05(水) 11:39:32.61 ID:hSbT4II20
アカペラってテレビ版てことなのか
あれは泣ける
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/06(木) 13:36:54.10 ID:7wjad7am0
だれかこれノベマスにしてくれないかしらー
660 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/09/09(日) 11:01:04.62 ID:EXKw4WzAO
 歌が終わる。

 ステージのライトを点灯させ、中央に立つ千早の後方に待機する春香、真の姿が照らし出される。

 ステージ両サイドにはバンドが目立たない位置で控えているが、そちらも充分見えるように照らした。

 観客からの拍手は万雷。
 中には心打たれたのか、涙を拭う姿まで見える。
 でも装置小屋から観客すべてを眺めている暇もなく、大急ぎで俺は舞台まで駆け下りていく。

 舞台脇、乱れた制服を整えて、ゆっくりと深呼吸をし観客の前へと歩いていく。

 いまだおさまらない拍手が俺の出現によって徐々に静まり、俺はステージ中央の前の方に立つと、傍にいた千早がマイクを渡してくれて、お礼を言ってからもう一度観客に向き直った。
 千早も後ろへ下がり、春香たちと並ぶ。

P「……皆様、初めまして。私は765高校2年生で、この『765プロダクション』の部長を務めさせていただいている者です。みんなからは、プロデューサーと呼ばれてます」

 先ずは挨拶。小さくお辞儀をすると、観客席から「知ってるー」、「あの人がそうなんだ」と言った声が聴こえた。
 ……「さっき爆笑してたクラスにいたよな」とも聴こえた。

P「──この部では、“プロダクション”という名前の通り、『アイドルを育てて活動させること』を目的としています。素人の集まりではありますが、今日の音楽祭、文化祭などの学校行事などに少しでも華をそえられたらと、心から願う次第です」

P「…ですから私は部長と言ってもただの裏方で、ここにいる3人が、この『765プロダクション』で頑張る『アイドル』たちになります!」

 立ち位置を横へズレて、後ろにいた3人を前に呼ぶ。

 ひらひらとした衣装を身に纏った姿は、ステージの上でいつもより何倍にも輝いて見える。
661 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/09(日) 11:50:33.54 ID:EXKw4WzAO

春香「あ、天海春香です!! きょ、今日が初舞台で、まだ緊張で胸がドキドキしちゃいっぱなしなんですけど……精いっぱいガンバりますので、どうか最後まで観ていってくださいっ!!」

 一番手は、センターの春香。
 ガチガチに緊張したままで声もやや震えていたが、最後に見せた笑顔はとても自然な、明るい楽しそうなものだった。
 観客席から、パチパチと拍手が聴こえる。

真「えっと、菊地真といいます。この部にはプロデューサーに誘われて入りました。アイドルって、可愛いですよね。僕もテレビで観るアイドルみたいに可愛くなれたらいいなと思ってます。これから頑張っていくので、みんな応援よろしくお願いしますっ!!」

 春香がマイクを渡して、真に代わる。
 確かに緊張はしているはずなのに、それを極力面には出さず、砕けた様子で手を振っている。
 観客席からキャーキャーと声援が聴こえる。

千早「…如月千早といいます。私は、アイドルというのがよく解ってはいないのですが、歌を唄えるようにとプロデューサーたちが誘ってくれたので、入部しました。宜しくお願いします」

 最後に、先程観客を魅了したばかりの千早。
 先に舞台に立ったことであまり緊張した様子も感じられず、いつものように淡々と喋っている。
 観客席は、静かに耳を傾けていた。


 3人が並んで改めて礼をすると、再びの拍手喝采。

662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/09/09(日) 12:54:05.83 ID:bLdUyFwWo
次の曲はなにかなあ
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesaga]:2012/09/09(日) 13:08:18.49 ID:2ovvZBc5o
次の曲よりもキャラ早く揃って欲しいな
664 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/09(日) 15:17:25.70 ID:EXKw4WzAO
P「──今日『765プロダクション』がこの舞台に立つにあたり、沢山の人から協力、手助けをしていただきました」

 改めて前に出てマイクを持ち、
 後ろに控えてくれている合同バンドの人たちの方を向く。

P「楽曲を提供してくださった軽音楽部の皆さん。そして軽音楽部さんと一緒に、伴奏を引き受けてくださった皆さんに、改めての御礼を。…本当にありがとうございます」

 頭を下げる。
 それに合わせて、観客からも拍手がおくられた。
 姿勢を正す際に、照れ臭そうにしているのを見てつい微笑んでしまう。

P「練習をする為にとてもいい部室を与えてくださった、校長先生をはじめとした教員方にも。ありがとうございました」

 観客席の最前列には、学校長方や教育委員会の人、町内会長さんや市長さん等が座っている。そこから小鳥さんと、その隣にいる真っ黒な人へ、お辞儀。
 …真っ黒な人こと765高校の校長の隣になんだか同じくらい真っ黒な、
 温厚そうな校長と較べるとややワイルドな印象の男性が偉そうに構えているけど……誰だっけあの人。

P「それから、この3人が着ている衣装を作るのに協力してくれたひび──義妹(いもうと)とその友達にも、心からの感謝を」

 露出が多い訳でなく、動きやすさを重視しつつ可愛さを併せ持ったデザインの衣装。
 これは編み物とか女の子らしいことが得意な響に相談して、961女学院の友達の協力も得て完成させてもらった物だ。
 俺は最初の大雑把なラフを渡しただけで、完成品は驚くほどに出来が良かった。

 響が居てくれなかったらこの衣装は存在せず、今日の舞台は制服姿で出ることになっていたかも知れない。
 そしたら、どんなに凄いステージを見せたとしても、観客は「所詮ごっこ遊び」程度にしか思わないかも知れない。

 今日この日。『765プロダクション』のデビューが成功するためには、やはりなくてはならないものだ。

 近いとは言えない一般客席。それでもその中から響と、その隣にいる美希を見つけ出して、笑いかける。

665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 15:21:44.84 ID:fdIHmyqSO
>>663
慌てるな。まだ焦るような状況ではない
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/09(日) 18:47:14.03 ID:0kRonGli0
おお来てた
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/09(日) 23:40:24.21 ID:2R8BkUD30
>温厚そうな校長と較べるとややワイルドな印象の男性が偉そうに構えているけど……誰だっけあの人。

あら、これは今後の展開に期待
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/09/10(月) 00:09:30.61 ID:Dfi/Zwu0o
今回の衣装はどれを使ったのかな
669 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/11(火) 10:26:58.38 ID:X5nAdstAO
P「そして改めて、今日のステージのために、毎日一所懸命に練習を重ねてくれたアイドル3人に感謝を」

 そう、最後に締めくくって、観客に対し礼をする。

 回れ右をして3人のもとへ向かい、腰に引っ掛けていたインカムをそれぞれに手渡す。

P「本当に、ありがとう」

春香「も、もうっ、まだ気が早いですよ」

真「そうだよ、お礼ならステージが成功してからじゃなきゃ」

P「それじゃ成功しなくちゃお礼が言えないみたいじゃないか。…俺は、今日まで練習を頑張ってくれたみんなにお礼を言いたいんだ」

千早「それは、ステージ自体が成功しようが失敗しようが構わない、と?」

P「まさか」

 意地悪く言う千早からマイクを受け取って、3人の横を通り過ぎる。

P「頼んだ」

千早「頼まれました」


 舞台脇に消えた後は、急いでまた舞台装置小屋に戻る。
 手伝ってくれる人もいるんだけど、やはり大部分の演出効果は俺自身でやらないと意味がない。

P「インカムは…よし、3人とも繋がってるな」

 3人に渡したインカムは、本物のアイドルがライブなどで使うプロ仕様品。
 知り合いから安く譲ってもらったと嘘を吐いたけれど、実は良い値段がして小遣いが数ヶ月吹っ飛んだ。

 インカムと言っても会話が出来るようには設定しておらず、曲を流して唄を拾うだけ。
 ステージならそれで充分だろう。


春香「…いまから唄うのは、軽音楽部さんからいただいた曲に、私たち765プロのみんなで歌詞をつけた歌です」

 ステージの上、ライトの下で、春香が観客に話しかける。

春香「振り付けもみんなで、観てくれる人たちが楽しくなってくれようにって意見を出し合って決めました」

 この話が終わると同時に、曲を流してステージは始まる。

春香「曲名は、今日の初ステージで765プロダクションは動き出すんだから。そういう気持ちを込めて──」

 3人が、配置につく。


春香「──『READY!!』、聴いてください」


 そして、全てが動きだした。

670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/11(火) 10:30:15.34 ID:aKiLfWLRo
おお
いいね
671 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/11(火) 11:09:20.50 ID:X5nAdstAO

 それはあまりに圧倒的な。

 演奏してくれているバンドの皆さんには、歌が聴こえやすいようにと音量を低く調節してもらうよう、お願いをしてあった。

 だが、この様子はどういうことなのか。

 マイクの音量は平均値。決して五月蝿く感じたりするレベルじゃない

 けれど、バンドの皆さんが“本気で演奏しなくちゃいけないくらい”、3人の歌が圧倒している。

 歌と振付とが綺麗に合わさり、耳と目と肌で感じる印象が統一されているからか。

 たった3人なのに。

 なんて存在感。

 今一度、認識する。
 これが、俺のつくりたかったアイドルなんだと。

 観客は唖然とし、ただアイドルの存在にのまれている。
 演奏しているバンドの人たちがのまれそうになっているのだから、それは至極当然のこと。

 時間にして5分に満たない曲。
 練習で何度も何度も繰り返し聴いた曲。

 けれど、いまこの時間は剰りにも濃密で、剰りにも衝撃的で、
 終わるまでが10分にも感じられるし、半分を過ぎれば3分の曲のようにも感じられる。


 そして、
 会場中の視線も意識も全てをのみこんだ一曲が終わった。


 すぐには拍手はこなかった。

 春香たちはポーズをとってこそいるが、肩で息をして、全力を出し切ってくれたことが理解出来た。

 そこに、小さな拍手が一つ。

 最前列に座っていた小鳥さんが、3人の努力を労るように、拍手をおくっていた。

 続いて、隣にいた校長も。そして波紋が広がるように次第に、観客から拍手が聴こえてきた。

 割れんばかりの拍手に、溢れんばかりの歓声。

 止みそうに無かったそれらを受けて、3人は並んで一礼し、舞台脇へと消えた。


 合同バンドの皆さんもその場で拍手しステージには誰も居なくなっても、拍手と歓声はなかなか止むことはなかった。

672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 12:50:59.91 ID:Ahm+vIT3o
唄は拾えるけど会話できないインカム?自分の声は流れないって事だろうか
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/09/11(火) 13:11:56.62 ID:fGEFRY+v0
最近読み始めたけど、面白いね。
ただ正直な話、※転載禁止は変えた方が良いと思うんだよな。
せめてここのサーバ支援をしてくれている
【SS宝庫】みんなの暇つぶし、エレファント速報
以外の転載を禁止って感じに。流れ的にこのスレだけじゃ完結しないだろうし
色んな意味でまとめは必要だと感じる。
674 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/11(火) 13:59:38.61 ID:X5nAdstAO
>>672
 アイドルの声だけを拾って、Pの持っているマイクとは繋がっていないという意味でした……
 わかり辛くて済みません。

>>673
 ニュース速報VIPから移ってくる際に、「転載禁止って書いておいた方がいいよ。まとめサイトから荒らしが来る事があるから」と教えていただいたのでその通りにしたのですが、

 やっぱり自分でまとめるのでなければ、「転載禁止」は外しておいた方がいいのでしょうか…?
 >>640の御意見も有りますし…。
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 14:17:22.86 ID:/Iw0kVIpo
転載禁止つけとかないとまた長屋見たいなことが起きるから私はこのままでいいかな。

まとめに乗ると恐ろしい勢いで雑談とかが始まるし、荒らされる
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/11(火) 14:43:32.80 ID:kNsa58Hxo
こんなめんどくさいことになるまで長々と続けた結果だな、未だに出てないキャラがいるわけだし
まあ、あんまり否定的なこと言うと外野がアレだからこの辺で
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/11(火) 15:35:28.20 ID:aKiLfWLRo
完結するまでは禁止で、完結したら自由にどうぞって感じにしたらいいんじゃね

いつになるか分からんがww
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/09/11(火) 15:57:00.43 ID:G/jS0aFm0
「小遣いが数ヶ月吹っ飛んだ」
漢すぎるP
ちょっと千早と春香と真でアイマス始めてくる
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/11(火) 16:19:43.33 ID:tp7MQQm40
長編書くためにこっちに来たんだろ?
最後までつき合わせていただく
がんばってくれ
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/11(火) 17:03:41.04 ID:UvR6RfAco
>>677
これで良いと思われ

まとめから人が来すぎると絶っっっっっっっ対に荒れるし

自分のペースで書きたいなら完結するまでは転載禁止で良いと思う

内容は素晴らしいんだし、出来上がった物を多くの人に読んで貰うっていう感じで
681 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/12(水) 10:46:08.36 ID:gNm7ljrAO
高木「──どうだね黒井院長、ウチの生徒たちは!」

 スタンディングオベーション。
 騒音にも近い拍手の嵐の中、観客席その最前列に座したままの壮年の男性が2人。

 威厳を秘めながらも柔和な笑みを浮かべて拍手をしているのは、高木順一郎。
 765高校の校長であり、その人望と人格から多くのコネクションをもつ大人物である。

黒井「フン、貴様も今日まで観たことがなかったのだろう。意味のない上から目線は止めろ」

 そしてその左隣。
 肌が色黒いことで「黒い」印象を与える高木校長とは違い、険しい顔つきと常に怒ったように眉間にシワを寄せている表情などで“雰囲気が黒い”と思わせる男性。

 彼は黒井崇男。
 美希や響の通う961女学院の創立者にして総責任者。
 普段は院長として学院に君臨する、女学院の生徒たちの親と様々なコネクションを持っている彼もまた大人物といえる。

高木「んっふっふ〜。私にはティン! ときていたのだよティン! とね!」
682 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/12(水) 10:57:34.87 ID:gNm7ljrAO
 『765プロダクション』による出し物が満足いくものだったのか、右隣に座る音無小鳥がひくほどの上機嫌ぷりを見せる校長。

黒井「………」

 そんな高木校長に呆れ、視線をステージ上へ向ける黒井院長。

 ステージでは、3人の『アイドル』が並んでお辞儀をしているところだった。

黒井「──確かにな」

高木「うん?」

黒井「一考の余地は有るかも知れん。生徒が主導で客引きをするのなら、学び屋としての評価も上がるやもな」

 院長の、たったいま全力を見せて感動を与えてくれた生徒を「見世物」のようにいう言い草に小鳥は物申そうとしたが、
 校長の手に阻まれおとなしく佇まいをなおす。

高木「……君は、まだそんな風に考えているんだな」

 一拍の沈黙。

黒井「……学び屋で学んだことを全て忘れ、それでもなお身に残っているのが“教養”だと謳ったのは誰だったか」

 “過去の話”が話題に出掛けて、それを避けるように院長は呟いた。

黒井「生徒共は私の言う通りに教育を受けていればいい。一から十まで徹頭徹尾“教養”を叩き込まれた生徒が社会に出て、それが社会的な活躍をみせ、そうすることで我が院の評価を上げるのだ」

 生徒とは学び屋の株を上げるための手段に過ぎず、学び屋の株が上がれば、卒院した生徒たちの評価も上がると。
 すべてはギブ・アンド・テイクなのだと。

 そう言い残して、拍手喝采の中、黒井院長は振り返る事無く会場を後にしてしまった。

 高木校長は黒井院長の突然の退場を非難することも無く、静かに着席した。

 すぐに小鳥が「私が進行役だった!」と慌てて舞台脇へ駆けていき、
 両隣が空いた席に独り、沈鬱そうな表情の校長が残される。

高木「……それでは、教師と教え子の関係があまりに悲しすぎるじゃないか……」

 小さく漏れ出た言葉。
 けれどそれを拾う者はおらず、
 やがて音楽祭は終わりを迎えた。
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/09/12(水) 19:40:34.63 ID:JFkP2ga90
朝から入れなかったがおっさんsきてた。
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/12(水) 19:53:14.12 ID:5afFHzYYo
社長‘sの紹介文新しいな
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 22:44:26.96 ID:xXOsABxuo
961女学院にいる美希・響がどうなるのか・・・
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/09/12(水) 23:31:57.61 ID:4OrT8PxUo
まさか貴音…
おっとこれ以上はいかんな
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/09/12(水) 23:32:02.26 ID:NcehCEcmo
フェアリーか?フェアリーなのか?
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/13(木) 01:05:42.60 ID:GbeJRtGm0
>>684
新しいってか、若干不自然?
>>1はアイマスよく知らないのか?
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/13(木) 01:23:39.43 ID:X4YbLVJAO
>>688
おっさんの紹介文だけで>>1がアイマスよく知らないとかないわ

社長が影絵なのをネタにしてんだろうよ
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/13(木) 16:40:30.53 ID:KeO7n1ok0
高木社長だと思っていたら高木会長だったのか、お久しぶりです。
691 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/13(木) 17:57:19.34 ID:a6BTp72AO
P「お疲れさまでしたー!」

一同「でしたー!!」

 音楽祭が終わった帰り道。

 閉幕の言葉が終わったあとは現地解散という流れなので、
 そのままランチを一緒にしたメンバーを引き連れて駅近くのファミレスにやって来ていた。

 軽音楽部や吹奏楽部の人たちにも声を掛けたんだけど、
 「楽器を持って帰らなくちゃいけないから」と断られてしまった。

 手伝うよと申し出たら、『765プロダクション』に興味をもってくれた生徒たちから出マチを食らうまえに帰った方がいいよと勧められた。

 事実閉幕直後はアイドル3人、特に千早がとんでもないくらいの“ファン”に囲まれて身動きが取れなくなっていたので、無礼を承知で蹴散らしながら救出し、全員集めて一気に外へ出てきてしまった。
 バンドのみんなへのお礼は、また後日改めてすることにしよう。


 そして、夕方前で中々空いている店内。
 奥の方にある広いボックス席に案内してもらって、いまはドリンクバーのジュースで乾杯をしたところだった。

伊織「100%じゃないのね」

 飲んだらクーと言っちゃうジュースを飲んで、伊織が呟いた。
 なにかこだわりでもあったのか。

響「やー、でも凄かったな! にぃにからちょっとだけ話しは聞いてたけど、あんなに凄いものだとは思わなかったぞ!」

 興奮冷めやらぬ様子で、目を輝かせながらフンスフンスと鼻息を荒立てている義妹ちゃん。

真「そ、そんなに良かった…? 確かに、いままでで最っ高の出来だったとは思うんだけどっ!」

 当事者である真もまだ興奮がおさまらないのか、響と2人でハイテンショントークを繰り広げている。

美希「千早さん千早さん!」

千早「なに?」

美希「ミキ、千早さんの歌すっごく感動したの! ひとりでもキラキラしてて、とっても、とってもキレイだったの!」

千早「あ…ありがとう…」

 純粋に愛情をぶつけてくる美希に戸惑う様子の千早だが、頬は綻んでいるし、照れくさそうにはにかんでいて可愛い。

692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/09/13(木) 21:21:01.78 ID:RCTlNXqio
美希かわいい
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/13(木) 23:20:55.53 ID:AvTc9z18o
694 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/14(金) 10:17:59.44 ID:9OiGotxAO
美希「ハニー!」

P「なんじゃらほい」

美希「ミキも! ミキもプロデュースしてっ!」

P「うぅん…? 申し訳無いけど、それは無理です」

美希「どーして?」

P「だって学校が違うじゃないか。『765プロダクション』はあくまでも“部活動”なんだから、他校の美希は参加させられないって」

 …そりゃあ、美希は言うまでもなく可愛いし、ポテンシャルも高いからプロデュース出来たら楽しそうだなとは思うけれど。

響「そっか…そうだよね…」

 同様の理由で自分も駄目なのだと悟り、響が落ち込んでしまう。

 お前もアイドルしてみたいのか……ごめんな。

P「よしよし」

響「うきゅう」

美希「……またハニーはそうやってミキを置いてけぼりにするんだ」

 また、とは。
 高校に受験した時の事を言っているのか。

P「置いてけぼりになんてしてないから」

美希「ミキも千早さんたちみたく、歌ったり踊ったりしてキラキラしてみたいの」

P「ああ……なんだ、いつか機会があったら、美希たちもゲストで入ってくれないかなって考えてはいるから」

美希「──ホントに?」

P「嘘じゃない。今はまだ始まったばっかりの『765プロ』だけど、今後もっと余裕が出来て、沢山のイベントに出られて知名度が上がれば、ゲストをゲストとして呼ぶだけの意味も生まれてくるだろうから」

 響の頭を撫でながら、近い未来の想像に思いを馳せる。

 実はもうそのつもりで目を付けている外部員候補はいらっしゃるので、この案は確実に成功させてみせる。
 と俺は心に刻み込んだ!


伊織「…ちょっと寒気が…」
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/09/14(金) 10:28:48.69 ID:zERtKXPDo
フェアリーがゲスト参戦フラグか
696 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/14(金) 11:23:01.60 ID:9OiGotxAO
P「大丈夫かいおりん」

伊織「冷房効かせすぎなんじゃないの? あといおりん言うな」

P「水瀬伊織さん冷たい」

伊織「ああもぅ! フツーに呼びなさいよ! ていうかなんでアンタがわたしの隣なわけ!?」

P「美希がアッチ行っちゃったからなぁ」

 初めは、響と美希が俺を挟むように座ろうとしていたのだけど、
 美希が「千早さんとお話ししたい!」というので変更がなされた。

 このボックス席は大きな“コの字”をした全席ソファーで、
 席順は左辺が美希、千早、真。
 真ん中が響、俺、伊織。
 右辺が春香、水瀬(兄)となっている。

 俺が女子に囲まれているのは上座であるから勧められただけで、水瀬(兄)が端っこなのは入ってすぐに手洗いに行ったから。

 断じてハーレムだなんて思っちゃいない。
 決して両手に花だなんて浮かれちゃいない。

P「で、伊織は?」

伊織「え?」

P「伊織は、今日のステージを観てどうだった?」

伊織「どうだったって……そうね」

 伊織はなにか、多分いつもの様にツン要素多めの御言葉を放とうとしていた。
 でもたまたま、隣でメニューを読んでいた春香と視線が合い、硬直してしまう。
 どんな人でも誰とでも仲良くなれる春香が、ただニコッと微笑む。
 すると伊織は……多分、あれだけ頑張っていた春香たちを貶める言葉を言うのが憚られたのだろう。顔を赤くして、いつもの尊大さを引っ込めて大人しくなってしまった。

伊織「……悪くはなかったと思う……わよ」

 デレ要素の御言葉いただきましたー。

P「ごちそうさまです」

春香「えっ? まだなにも来てないですよ?」

 おっと声に出てた。
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/14(金) 11:51:15.70 ID:stcW0v3Go
ごちそうさまです!
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/14(金) 17:14:12.59 ID:MQ11wR1+0
ごちそうさん。律子参戦まだー?
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/15(土) 02:48:41.55 ID:3ep7cNh/0
>>693
ここは気まぐれ投下だから乙いらねって言ってたぞ
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/15(土) 02:55:44.30 ID:3ep7cNh/0
連投スマソ

はじめから読み返してみたら、>>473マデの美希ってNTRされそうなのを、Pに助けを求めてるように感じない?
GWの間じつはずっと家にいて、ちょっとまえから家に上がり込んでた親戚のオジさんに朝から晩まで……
って、そんな深読みもできるよなーとおもったんだ それだけ
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 02:57:33.78 ID:P2669svvo
お、おう
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/15(土) 03:00:59.65 ID:0+wiYW0ro
とりあえずドン引きしとけばいいの……?
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/15(土) 03:01:30.04 ID:E6rDDjayo
NTRなんか誰も得しないよ!
704 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/15(土) 08:25:03.65 ID:6v/3egBAO
P「けっぷい」

 並べられた料理を食べ終え、あとは女の子たちがデザートを食べ終えるのを待つばかりとなる。
 横にいる伊織が、食後の紅茶を飲んで溜め息を吐いた。

伊織「よく食べたわね」

P「外食ってつい食べ過ぎちゃう」

真「プロデューサー、お昼もかなり食べてたと思うんだけど」

P「あれから何時間経ってると思ってる?」

真「えっと……四時間くらい?」

P「なら仕方ないね」

真「仕方ないんだ…」

伊織「燃費悪すぎよ」

響「にぃにはこの後晩ごはんも食べるぞ」

伊織「嘘でしょ!?」

P「そんなにドカ食いはしないけど。家に居るんだったら、少しでもいいからちゃんと食べておかないと体のサイクルが狂うというか」

春香「そ、そんなに食べたら太っちゃいますよ?」

P「あぁー、確かに最近張ってきて痛いんだよなぁ」

春香「やっぱり」

P「筋肉が」

春香「ただの筋肉痛!?」

P「体脂肪率が一桁いきそう」

真「なんでダンスしてる僕たちより引き締まってるのさ…」

響「にぃに食べる時は食べるけど、食べない時は1日1食を少しだけなんて時もよくあるぞ」

P「修行がマイブームの頃があった」

千早「極端なのもどうかと思います」

美希「ハニーは定期的に悟りをひらいたみたいになるの」
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/09/15(土) 09:21:33.87 ID:iEl4MMTPo
高校時代ってやたら腹へるよな……
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/15(土) 10:06:15.85 ID:yNpd5M88o
まあ学生時代は食ってナンボ
体も動かす年齢だしな…
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/15(土) 10:10:20.38 ID:aurBo3Jdo
千早は人に偏食云々言える立場なんだろうか?ww
708 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/09/15(土) 10:25:45.32 ID:6v/3egBAO
春香「それじゃあ、また学校で」

真「明日は振替休日で休みだから登校してこないようにね」

 ファミレスを出て、駅の前で春香と別れ、
 そこからすぐ近くのマンションの前で千早と別れた。

P「ここに暮らしてるのか?」

千早「はい。一応、一人暮らしです」

P「なんだと!」

千早「セキュリティーはしっかりしていますから、そこまで危なかったりはしないです」

P「でも心配だな……定期的に遊びに行っていい?」

千早「……なにも有りませんよ?」

P「女の子の部屋に行くことに意味が痛い痛い痛い」

美希「ならミキの部屋に遊びにくればいいって思うな」

千早「……まぁ、なんでもいいですけど」

 そして帰路の途中で水瀬兄妹と別れて、
 響と美希と真を連れて夕暮れの中を歩く。

伊織「暖かくなってきたからってお腹出して寝るんじゃないわよ」

P「伊織ってよく別れ際にカーチャンみたいな心配してくれるけど、母性に目覚めたりしてるの?」

伊織「ただの挨拶でしょうが…」

P「なんだ俺に惚れてるのか」

伊織「ウチの犬に食い千切らせるわよ」

P「なにを!?」
709 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/15(土) 10:43:11.68 ID:6v/3egBAO
真「あ」

P「い?」

美希「う?」

響「え」

真「しまったなぁ、そう言えば今日父さん帰ってないんだった……」

 真と別れる分岐路一歩手前といったところで、何かを思い出したのか困り顔で真が立ち止まった。
 あとは「お」と繋げればコングラッチェレイションだったのに……意味は無いけど。

P「親父さんがどうかしたのか」

真「いや、それが今日父さんと母さんも帰りが遅い日でさ」

P「ほうほう」

真「でも僕この前、父さんが家鍵亡くした時に、代わりに貸したまままだ返してもらってないこと思い出して……」

響「えっ、じゃあ真家帰れないんじゃないか?」

真「そう思って困ってたんだよ」

P「じゃあウチに遊びにくるか? 帰りが遅いだけで、帰ってこないわけじゃないんだろ?」

真「えっ……でも悪いよ、今日は音楽祭で疲れてるだろうし」

 それは真も同じだろうに。
 俺は体力バカだから良いけど、真は女の子だし、直接舞台に立ったんだ。疲れていない筈がない。

P「そんなこと言って、じゃあ親御さん帰ってくるまでどうする気だよ」

真「うーん……公園でもいこうかなぁ」

P「連行決定だな」

真「え!?」

響「真が遊びにくるのも久しぶりだな!」

真「ちょっと!?」

美希「真くんだったら大歓迎なの!」

真「僕の意志は!?」

P「ひあうぃーごー」
710 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/15(土) 12:21:14.16 ID:6v/3egBAO
P「ただいまー」

響「まー」

美希「ただいまなのー」

真「お、お邪魔します…」

 玄関の扉を開けて我が家へと入る。
 靴を脱いで、手を洗って、ウガいをして、
 茶を淹れて、リビングで一息落ち着いて。

P「美希は自分の家に帰りなさい」

美希「あはは、冗談キツいの」

 そして、俺たちは限りある時間を有意義に過ごそうとゲームを引っ張り出してきた。


P「はい次! 右手を緑!」

美希「やぁ〜ん、真くんにあたっちゃうのー」

真「まって待って美希近いってば近あぶぶ」

響「…に、にぃに……はやく、次を読み上げて…!」

P「ほい! ……左足を赤!」

響「うぎゃー! そんなのタコじゃないと無理だー!」

P「ガンバれガンバろうガンバるときガンバるなら!」

響「あ…あ…あ……」

P「よし! よくガンバった! じゃあ次、右手を青な!」

真「うぅうぃうう!」

美希「ひゃん! …真くん、胸元でそんなにしたらくすぐったいの」

真「むぐー!」

P「諦めんな! たぶん無理だろうけど諦めんなよ!」

真「………」

響「え、ちょっと真──!!?」

 プルプルと、
 美希の胸で覆われて視界ゼロのなかなんとかのばした真の右手は、
 響がアンバランスな姿勢の体重を預けていた左足を足払いしてしまい、

 人間知恵の輪と化していた3人は崩れ落ちてしまった。

美希「…うぅ…」

響「あがー…」

真「つ…疲れた…」

P「お疲れ様でした」

真「なんでこんな疲れるゲームを始めたんだろう…」

P「みんなで出来るテレビゲームが無かったからかな」

響「素直にモノポリーにすればよかった…」

美希「ミキは楽しかったよ?」

 朗らかに笑う美希。

P「俺も楽しかったよ?」

 下衆顔で笑う俺。

 ドつかれた。
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 12:34:51.71 ID:tbrdP7cDO
真と美希は今まで面識無かったのにえらい早く仲良くなったな
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/15(土) 14:15:31.12 ID:asxS00nl0
そりゃ真と美希だからな
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/15(土) 14:40:34.21 ID:+oG7TfSq0
真はダンスをやってるものな
714 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/15(土) 16:14:31.95 ID:6v/3egBAO
何か変だと思ったら、>>708の真の台詞は
「“明後日”は振替休日で休みだから登校してこないようにね」でした。

“明日”は日曜日なんだから休みで当然じゃろがい……。
715 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/15(土) 16:28:55.16 ID:6v/3egBAO
真「…あ、もうこんな時間だ」

 今度は粛々とモノポリーに興じていたら、手洗いから戻ってきた真が時計を見て呟いた。

 時刻は午後7時。
 真の両親は、8時頃に戻るとのこと。

P「ご両親そろって旅行かなにかなのか?」

真「父さんが仕事で地方に遠征しに行ってて、今日母さんが迎えにいって一緒に帰ってくるはずなんだけど」

 今までは母親が家に居たから鍵が必要無かったのかな?

真「そういえば、オジさんとオバさんも遅いんだね」

 この場合のオジさんオバさんとはウチの両親のことか。

P「ウチはプチ旅行してるから」

真「旅行?」

響「夫婦水入らずで、昨日から鬼怒川に2泊3日の小旅行に行ってるんだー」

P「マイペースな人たちだから、家のことは俺と響に丸投げ」

美希「だからミキ、ハニーたちが寂しくない様に泊まりに来…」

P「美希ん家もう夕食時だろ。はやく帰って食べなさい」

美希「むー、ハニーのケチー!」

響「じ、自分はにぃにが居れば寂しくなんかないぞ!」

P「まぁ俺もそうだな」

真「仲良いんだね」
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/16(日) 09:44:41.84 ID:shPgXkA50
俺も響がいれば寂しくないよ!
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/16(日) 10:01:44.28 ID:G3W/rw1K0
だって仲いいもんな
718 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/16(日) 11:07:23.56 ID:s7J2LbrAO
 適当に切り上げたモノポリーをしまい、また今度続きをやろうと話し合う。
 そうこうしているうちに午後7時も半分経過してしまっていたので、俺は真を送っていこうと一緒に玄関に立つ。

響「にぃに、今日はもう晩ごはんは無しでいいのか?」

P「んー、そうだな、やめておこう」

 ちなみに美希はお家に返してあります。

真「……あれ?」

 鞄から携帯電話を取り出した真が、呆けた様な声をあげる。

P「どうした?」

真「いや、母さんから留守電が入ってて……」

 説明しながらも携帯電話を操作して、録音された留守電に耳を傾ける。

 暫しの間。

真「──うえぇ!?」

P「ど、どうした真」

真「…あ、あの……母さんたち、今日帰って来れないって……」

響「え」

P「帰れないって…大丈夫なのか? 事故とかそう言うのじゃ…」

真「それが、父さんてば打ち上げで呑みすぎて動けなくなっちゃったみたいで…」

P「………」

真「………」

響「じゃあさじゃあさ! 今日は真はお泊まりだな!」

真「うぇっ!?」

P「まあ…確かに、放っておくことも出来ないしな」

真「いやいやいや! 僕…僕ほらっ、着替えとか持ってないし!」

響「自分の貸してあげるさー」

P「明日は日曜日だし、真がイヤじゃなければ」

真「い、いやって事はないんだけど……ぁぅぁぅ…」


美希「真くんがお泊まりすると聞いて飛んできたの!」

P「盗聴器でも仕掛けてるのか」

美希「ねぇハニー、ミキも泊まってもいいよね?」

P「それだけ準備万端で尋ねられても……ダメって言ったらどうするんだ」

美希「答えはきいてないかな?」

P「なんたる傍若無人」
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/16(日) 12:42:27.54 ID:G3W/rw1K0
響の服だと小さいし、一部ぶかぶかになりそうだ・・・
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/16(日) 12:51:10.06 ID:enjEeGT8o
なお胸だけはブカブカな模様
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/16(日) 13:10:32.63 ID:M5OluuCEo
??「(違う、誰も私の事など言ってない)…」
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/16(日) 14:30:09.55 ID:nOmYuknA0
とゆうことはノーブラまこちん待機
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/09/16(日) 17:08:28.51 ID:gZ98O5Dwo
最近更新多くて嬉しいこれからも期待してる
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [age]:2012/09/16(日) 18:36:44.20 ID:qQS9+ORT0
寄り道してないではやくせくちーツインズ出せよ!!!
と思ったけど、アイドルの扱いが偏らないように調整してるのか?
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/16(日) 20:08:52.01 ID:G3W/rw1K0
田舎住みのとかちはまだ出てくるの先だろうさ。
座して待て
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/09/17(月) 05:12:01.06 ID:VgElqF5E0
作者はちゃんと各キャラの出番を考えてる様だし
期待しておとなしく待ってようぜ。
下手に煽って焦らせて駄文になっても困るし
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 22:33:24.80 ID:PJlWDcvho
今は部活動の基盤づくり重視しているのでは?
オレも寝て待つ
728 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/20(木) 18:03:37.16 ID:L3a2IxyAO
P「……うむ」

 時刻は21時と言ったところ。
 いまは女性陣が、3人そろって入浴中。

P「3人も入って狭くないのかな」

 我が家の風呂は2人までなら割りと余裕な大きさだけど、3人となると例え女性でもギュウギュウになってしまうと思う。

P「……ハッ!」

 一瞬ピンク色な妄想をしてしまい、慌てて煩悩を振り払って消し去る。

P「…何を考えていらっしゃいますか俺は! “ともだち”や“いもうと”をそういう目で見ちゃいけないだろ…」

 やはり私も男の子。
 エッチなことには興味ある。
 でも身近な人でそういうのは……なんかこう、違うんだ。

P「俺には憧れることしか出来ないアイドルが丁度良いのかな…」

 アイドルが丁度良いのかな。

 『アイドル』が丁度良いのかな。

 ……他意は無い。

P「お──」

 トテトテと、部屋の外から階段を駆け上ってくる音が聞こえた。

 響は家の中を無闇に走らないし、真もひとの家を走ったりはしないだろう。

 消去法でいってこの足音の主は1人。

P「美希かっ!」

 ダッシュ。
 ドアノブをロック。
 ボディーをドアに密着させて体重を預ける。

美希『ハニ…!』

 強い衝撃。だが怯まず全身を石像のように硬直させる。

美希『ハニー! 開けて欲しいのー!』

 ドンドンドンと、ドアが叩かれる。

P「美希、いまどんな格好しています?」

美希『バスタオル一枚だよ?』

P「服を着なさい」

美希『ちょっとハニーに見て欲しいものがあるのー!』

P「タオル一枚で何を見ろと!?」

美希『それは開けてからの秘密だよっ』

P「………」

 美希は俺が“こういうこと”をされると困るのを知っている筈だし、
 美希が無闇に肌を晒すような浅薄な子じゃないことを俺は知っている。
 ……大丈夫かな…?

美希「お邪魔します」

 ドアから手を放して離れると、しずしずとした様子で美希が入ってきた。

 なんて言うのか、小学生がプールの時に使う筒状になるタオルで首からすっぽりと身を包んだ状態で。

729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 18:32:25.49 ID:WNStwkte0
きたか
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/09/20(木) 22:20:24.06 ID:9MxCqJX0o
はやくううううううあああああ
美希は俺の嫁
731 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/21(金) 00:57:28.20 ID:5w7SvCuAO
済みません……、
先日少しばかり他のSSを書いてしまったらPの性格がそちら寄りになりやすくなってしまって……

本当に申し訳有りません。
朝仕事が明けたら書き始めます…
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/21(金) 01:00:00.84 ID:h8URyy29o
そのSSのタイトルおくれ
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 01:06:52.31 ID:Aumur+cQo
タイトルはよ
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/21(金) 01:11:20.61 ID:oHjU942oo
>>731
他のSSkwsk
735 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/21(金) 01:20:07.31 ID:5w7SvCuAO
P「何がぽえーだ!いい加減にしろ!」

済みません済みません…!!
さっさとこちらを書くべきですのに本当に申し訳有りません…!!
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/21(金) 01:29:14.47 ID:oHjU942oo
あれあんただったのかw
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 02:07:56.67 ID:F19KwDgro
ゆきぽは可愛いからな、仕方ない

あのスレ、読んでたんだけど途中から用事で見れなくて気付いたら落ちてた
どっかにまとめられたら見直す
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/09/21(金) 02:27:18.03 ID:Cu8C7dlNo
こっち進めなさいよ!!



まあ息抜きは大事だよ・・・ね?
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/21(金) 06:54:20.57 ID:5VaujOIso
なんだ探すまでもなく見てたわ
あれも良かったよ
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/21(金) 10:59:13.90 ID:zHt7CIWp0
あーやっぱりあんただったか
言いわけの仕方がなんかデジャビュったんだよなー

でもわざわざ(宣伝)とかかまってちゃんすぎうぜくっせー
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 12:00:54.65 ID:F19KwDgro
>>740
なにこいつ、くさい
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/21(金) 12:15:41.98 ID:zHt7CIWp0
>>741
響の悪口はよせよ!!
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 12:23:52.48 ID:TcWcfZI9o
東京在住のID:zHt7CIWp0くんの釣り堀
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/21(金) 12:27:45.77 ID:qGexxp/xo
めんどくせえから触るなよ
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/21(金) 12:56:59.06 ID:hJd6Awr+o
めんどくさいのが湧くようなことをしたのもアレだけどな
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/21(金) 13:11:11.82 ID:zHt7CIWp0
言っとくけどこのスレじたいわ好きなんだからな
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/22(土) 00:33:03.36 ID:xW94/Fvi0
わとか打っちゃってる時点で・・・
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/23(日) 00:51:34.34 ID:SBRFfw090
私まーつーわ
749 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/09/24(月) 10:41:34.64 ID:8/9H9fyAO
P「それは、なにか下に着てるんだよな?」

美希「そうだよ?」

 素直に肯定してくれた。
 その言葉で安心は出来たけど、タオルは小さめで上は鎖骨が見えているし下は太ももの半分くらいの丈しかない。
 これでいったい何を着ているというんだ。

P「…それで、いったいその下は何を着てるんですか?」

美希「ふふふ……ジャジャーン!!」

P「うぇ…!?」

美希「ねぇ見て見てハニー。今年はね、一緒に海に行こうと思って新しい水着買ったの!」

 水着。

 そう、水着。

 下着と布の面積がほぼ同じの、あの水着。

美希「ミキのイメージに合うライトグリーンなのー! ねぇねぇハニー、こっちむいて?」

P「あ…はい……うん」

 直視出来よう筈も無く。

 だってビキニですし。
 パレオ付いてても下着とあんま変わりませんし。

P「か、可愛いんじゃないか…?」

美希「──本当っ!?」

P「う、うむ。嘘はつかない」

 横目でチラチラっと見ることしか出来ないヘタレぶりだが、
 それでも十分に美希と水着の魅力は伝わってきた。

 自室という日常に水着という非日常。

 ミスマッチし過ぎてなんか妙に興奮する。

 ……性的な意味での興奮ではないです。多分。

美希「ありがとハニー! ……えへへ、この間は着替えてる途中でハニーに呼ばれちゃったからドキドキしたけど…いまでもドキドキは変わらないね」

 嬉しそうに、照れくさそうに笑う美希。
 見ているだけでコレだけ恥ずかしいのだから、着ている美希はもっと恥ずかしいのだろう。

P「……わざわざありがとう」

美希「ミキのおニュー水着を一番に見てもらいたかったからっ」

 互い、笑い合う。
750 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/24(月) 11:08:39.87 ID:8/9H9fyAO
P「あ」

美希「うん?」

 まさに阿吽!

P「俺夏休み入ったら父さんの田舎行くんだ」

美希「えぇっ!?」

P「毎年だけどさ、従妹たちにも会いたいから」

美希「むむむ…例のイタズラっ子だよね……うぅじゃあ、いつ帰ってくる?」

P「夏休み入った日の朝から出て、帰るのは7月の末か8月の1日くらいだと思う」

美希「と…10日も……」

 フラフラと、美希はその場にへたり込んでしまった。

美希「ゴールデンウイークより長いの!」

P「だから毎年のことだって!」

美希「ミキのハニータンクは年々大きくなってるの! 10日もあったら空っぽになっちゃう!」

P「大きくなってたらむしろ保たないか? あと胸を強調するのやめなさい」

美希「燃費も年々悪くなるの」

P「成長がマイナス方向…!!」

響「にぃにー、美希が来てない……なにやってんの?」

P「ヘイ! マイシスター、このワガママプリンセスのなだめるのをヘルプしてくれないか!」

響「美希なにしたのさ」

美希「ハニーってばミキ“たち”を放っておいて今年は10日間も田舎に帰るっていうの!」

P「俺の田舎じゃないから帰るわけではないですが」

響「にぃにのバカっ!」

P「敵が増えてる!?」
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/09/24(月) 11:59:38.80 ID:KKCX0U4qo
きてるうううう
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/24(月) 12:44:28.49 ID:6397yEZyo


P単身で行くのか?
753 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/24(月) 13:08:22.28 ID:8/9H9fyAO
 混乱の末。

 真が仲裁に入ってくれて、なんとか2人は落ち着いてくれた。

響「自分はいぬ美たちの世話があるから中々遠出できないのに…」

美希「ミキは宿題済ませてからじゃないと夏休み遊びに行っちゃダメって言われてるの…」

真「あはは…」

 響は自分で面倒を見ることを前提にいぬ美たちの飼育を許されているので、家族旅行でもない限りペットホテルを利用するという選択肢は無い。

 美希は、まぁ……自業自得といいましょうか。
 始めればあっと言う間なんだろうけど、如何せん俺の出立日が早いので間に合わない。

P「今年は親父仕事で行けないらしいけど、俺独りでも行かないと」

 祖父はもう亡くなっていて親父の実家には祖母だけなのだが、
 親父の弟さんが田舎で開業医を営んでいて、医院から離れた学校に通うために、双子の娘……「従妹」が2人いっしょに暮らしている。

 昔から、遊びにいく度に「おじいさんの若い頃に似ている」と可愛がってくれた祖母(祖父とは幼馴染みだったらしい)。

 1年に唯一会いに行ける機会なんだから、俺だけでも行って、顔を見せてあげたいんだ。


 響は家族の大切さをよく知っている。
 美希も俺の気持ちは汲んでくれる。

 「お土産」と「毎日のメール」を約束して、俺の夏休みのプランは完成することが出来た。

754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 13:09:20.19 ID:Y+MrQQYSo
ついに登場か

物語も中盤位になってるのかな?
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/09/24(月) 16:47:42.29 ID:V1vkCjYbo
貴音ってVIP時代含めて出たっけ?
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/09/24(月) 17:04:02.12 ID:KC2kDVEN0
出てない
双子フラグキタ
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/09/24(月) 17:04:26.29 ID:OSp2H3dto
これで役者は(ほぼ)揃った
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 17:31:49.07 ID:3/p0+1qJ0
お姫ちんはまだだね。
双子はやはり夏休みだったか
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/24(月) 18:12:03.63 ID:KrpZNxX+0
来てるんかいっ!

おいまてたしかまだ6月だぞ……
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/24(月) 19:29:31.75 ID:dd6FrqH7o
高2の6月か
一番弾けれるときやな
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/24(月) 19:57:09.94 ID:OSp2H3dto
>>757
うわ上げてた死にたいごめん

支援と称して謝罪
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/09/24(月) 21:47:12.52 ID:HIAntfbLo
おひめちん登場フラグかっ
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/25(火) 00:13:35.21 ID:VA5fp8YTo
お姫ちんはまだかしらん
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/09/25(火) 02:10:53.98 ID:pXJWqanao
今更だが、Pと真って中学からの腐れ縁だよね?美希も同じ中学だよね?美希と真は初対面…なの?
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/25(火) 03:06:45.54 ID:Mio3WDvxo
>>764

>>625あたりをどうぞ
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/25(火) 05:48:30.57 ID:nXJ36bFf0
まぁあってないってんだから深く考えずにみようぜ
767 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/25(火) 06:53:44.89 ID:haewQbXAO
 シャワーだけで済ました俺の入浴も終わり。

 お休みと、寝間着に着替えた3人と別れて1階に下りる。

 さすがに響の部屋に3人寝るのは、不可能ではないにしろキツい。
 だから俺の部屋を貸してあげて、俺自身は1階にある両親の寝室で寝る事にした。

 入るなと普段は注意されているが、今日はこの部屋の主がいないのでクィーンサイズのベッドでのんびり出来る。

P「ふぅ……」

 柔らかいマットレスに腰を下ろしただけで、全身から吹き出るみたいにドッと疲れが襲ってきた。

 空調をきかせた部屋で掛け布団も掛けず、そのまま倒れ込むように眠りにつく。

P「……今日は疲れたな……」

 だけど、とても楽しかった。

768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/09/25(火) 07:04:08.58 ID:5V/YToxco
こんな早朝からッ
貴音と双子早く見たいわ
769 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/25(火) 07:18:41.51 ID:haewQbXAO
 ───。

P「Zzz…Zzz…」

 ───。

P「Zzz……ぬ…」

 さ…寒い…。

P「…うぅ〜…トイレトイレ…」

 もそりと起き上がって、手洗い場に。

P「………」

 …あれ…? もうトイレについた……俺階段おりたっけ……。

P「…ぉぅふ…」

 トイレ…そうトイレに行きたかったんだ……。

P「………」

 すっきりして、手を洗って、退場。

P「…あふぅ…」

 そうとう疲れてたのか、まだ眠気で頭がボゥっとしてる…。
 はやいとこベッドにもどって二度寝がしたい…。

P「………」

 いま何時なんだろう……まだ外は真っ暗なままだけど…。

 階段を上って、廊下を少し歩いて、自分の部屋に。

 真っ暗でも気にせず進んで、愛しのベッドに入る。

P「……うん…?」

 なんか妙にあったかい。
 誰かいるのか……あぁそっか…また響のやつが潜り込んできたんだな……仕方の無いやつめ…。

 …今日はすごく眠いから……朝まで湯たんぽ代わりに置いといてやろう…。

P「……Zzz…Zzz…」

真「スー…スー…」

P「Zzz…Zzz…」

真「スー…スー…」

770 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/25(火) 08:24:08.17 ID:haewQbXAO
 開幕悲鳴と申しますか。

 まさか女の子の叫び声で起こされるとは思ってもいませんでした。

真「なんでっ…なんでプロデューサーがベッドの中にいるのさぁ!!」

 ベッドから突き飛ばされて床に転げると、立ち上がるよりも先に土下座の姿勢に移る。

P「夜寝ぼけて自分の部屋に入っちゃいましたごめんなさい」

 叩き起こされたとはいえ、今朝は充分な就寝により思考はスッキリ。
 お陰で自分のおかれた状況をすぐに理解できた。

真「うぅ〜〜!」

 真の顔が真っ赤。
 恥ずかしいか…そうだよな。

P「本当にごめん」

真「……はぁ…もういいよ」

 落胆か、幻滅か。

 何にせよ真が溜め息まじりに許してはくれたので、立ち上がって部屋を出た。

 朝からどうしてこうなった。

 ……そういえばどうして真が俺の部屋で寝ていたんだろう…?

 てっきり部屋割りとしては、美希か響が寝ているのが普通だと思うんだけど……はて?
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/25(火) 14:25:31.32 ID:Rb9zNMsSO
おい、そこかわってくれ
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/26(水) 01:22:33.54 ID:SQwkizgH0
真かわゆす
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/09/26(水) 08:35:37.46 ID:YdMV4K/r0
意外と『会わせよう』と言う意識がないと
不思議と遭わないもんだよ
774 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/26(水) 09:42:57.21 ID:tT/WmTyAO
響「にぃにの部屋って階段よりにあるよね?」

P「うん」

響「もし美希がにぃにの部屋で寝ることになったら、気付かない間に1階に下りることもできるよね?」

P「あぁ、うん」

響「美希ってば、夜中ににぃにのとこ行く気満々だったから。…だからにぃにの部屋には真に行ってもらって、美希は自分といっしょに寝たんだ」

P「なるほど…」

 兄妹並んで朝食を作りながら、今朝のことについて話す。

響「にぃにがそんな事するなんて珍しいけど、ちゃんと真に謝っておかないとダメだぞ」

P「うん。わかってる」

 焼いて煮て、簡単な朝食を拵えたら真を呼んで食事にする。
 改めて今朝の話をしたけど、もう気にしてないよと言ってくれた。
 ちなみに美希はまだ寝ている。

響「いつになったら起こす?」

P「もうちょっと寝かせておいてあげたいんだけどな。今日は休みだし、昨日も眠いところ来てくれたから」

響「それじゃあ美希に部屋が占領されっぱなしになっちゃうぞ…」

P「じゃあ俺の部屋に移すから。抱っこすれば苦でもないし」

響「やっぱ美希はこのまま寝かせてあげよう」

P「応?」

真「わかりやすいなぁ…」

 なんのこっちゃ。

775 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/26(水) 10:09:19.06 ID:tT/WmTyAO

 結局その日は陽が沈む──真の両親が帰ってくる時間まで、ずっと遊び通しで過ごした。

 夕方になってご両親から連絡がきたので、真を見送る為に2人で黄昏路を歩く。

P「いやぁ、あんなアナログに遊び尽くしたのは久しぶりだったなぁ」

真「ボク、ジェンガが人の高さを越えるの初めて見たよ」

P「俺はハイパーヨーヨーでドラゴンループ出来る人間を初めて見た」

真「響って体軟らかいよね」

P「運動が得意な子だからかな」

真「兄妹そろって運動が得意だと楽しそうでいいなぁ」

P「真だって、ダンスかなり凄かったじゃないか」

真「へへっ…そうだね、運動っていうと男の子っぽさが際立っちゃうから敬遠してたけど、ダンスなら女の子っぽいからヤル気が出るかな」

P「そっか。じゃあ次はもっと格好良いダンスを盛り込まないとな!」

真「かわいい系のにしてよ」

P「……かわいいダンスってどんなだ?」

真「えっ……う〜ん……なんだろう…」

P「かわいい子がダンスをしてれば、それだけで結構可愛く見えたりするんじゃないか?」

真「そう…かな?」

P「だったら、真も春香も千早もウチの子たちはみんな可愛いんだから問題無いな」

真「またプロデューサーはそういう……」

 呆れられた。

 ...Why?

真「あっ。じゃあここまででいいよ」

P「家まで送るつもりだったんだけど」

真「まだ家に美希も居るんだからはやく帰ったほうがいいって」

P「うぅむ……」

 確かに、早いところ帰って晩飯の準備もしないといけない。

P「それじゃあ…」

真「うん、また明後日に」

 いつもの分岐点から、真の後ろ姿が見えなくなるまで見送り、帰宅する。

 明日は振り休で学校がない。

 月曜日なんて怖くないぞひゃっほい!

776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/09/26(水) 10:56:07.00 ID:MvtWH0Hbo
きてるうううう
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 14:42:15.63 ID:Nj5T/98SO
真可愛いよ真
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/09/26(水) 14:59:57.28 ID:TKg7Oy5w0
「ボク、ジェンガが人の高さを越えるの初めて見たよ」
ジェガンと誤読した俺はガンダム脳
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 16:20:51.30 ID:8RMXX9Wy0
??「月曜日だよー!」
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/26(水) 18:02:36.31 ID:FioBEJB90
ドラゴンループって8の字ループのことだっけ?
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/09/26(水) 23:03:55.86 ID:CLjkuDML0
真かわええ
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/09/27(木) 02:22:59.48 ID:4Q3eb9a80
>>778
同志よ
俺も( ゚Д゚)ハァ?ジェガンが人の高さを越えてるのは当たり前だろう
と思ったぜww
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/27(木) 03:51:44.20 ID:bQPX2sNyo
今のところあずささんと雪歩が目立たないのう…P達と同学年じゃないから仕方ないが

このPは鈍感系主人公なのに嫌味がないのは何故だろうwwww
784 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/27(木) 08:15:32.90 ID:TNB0dlHAO
 翌日。

響「いってきまーす!」

P「気をつけて」

美希「じゃあ美希は二度寝するね」

P「学校へ行こう!」

響「未成年の主張」

美希「週7日休制にしたらみんな幸せになれるって思うな」

P「アホだな〜」


 サボタージュの理由を捏造しまくる美希を響が連行していき、朝の楽しくも騒々しい時間は終わる。

 今日は月曜日、しかし休日。

P「ふふんふんふん」

 世間様が働いている時間に、悠々自適となにをして過ごすか!

 惰眠を貪る?
 ゲームで遊ぶ?
 ネットサーフィン?

 数多の脳内選択肢の中、俺が選んだのは…!!


P「散歩行ってきまーす」

 準備を調えて、家の中に居る母親に行き先を告げる。

 ちなみに両親は昨日の夜帰ってるよ。

P「天気は快晴、夏の暑さを思い出させるこの陽気。絶好の散歩日和だな」

 体を動かすことは趣味みたいなものなので、お手軽に出来る散歩は大好物です。

P「今日はどこまで行けるかな。…帰りの体力を気にしなければ、果てしなく限界を目指せるんだけど」

 ロード欲しいなぁ…でも高過ぎて高校生に手が出せるものじゃないしなぁ……。

P「……無い物ねだりをしても仕方がないか」

 水筒、弁当、おやつ、財布、地図を持って、いざ「プロデュー散歩」のはじまりはじまり。

 「ぴぃ散歩」でもよし。
785 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/27(木) 13:46:12.38 ID:TNB0dlHAO
P「からぁ〜げ美味しくつっくるっならっ」

 もみっもみ〜。

P「もみっもみ〜」

 小さな路地や、ちょっとした脇道なんか。
 知ってる町の、知らない道を見つけて歩く。それが楽しい。

P「ごっはんがごっはんがススムくんっ」

 とは言え、小さい頃から暮らしているこの町で散歩を趣味にしていると知らない道なんてなかなか無くて、
 現状は他人より近道に詳しい程度に落ち着いてしまっている。

 ちなみにあずささんは近道を知り尽くしている俺よりも早く移動を行う。
 …あの人はきっと妖精かなにかなんだろうと、中学生の時ひとり納得した。

P「伝説〜の〜コンビニ〜」

 陽気に歌を口ずさみながら、たまに会う顔見知りのオジさんオバさんたちと挨拶をする。

 大分歩いたかなと路地裏を抜けると、商店街の真ん中に出た。
 お昼やや手前といった時間で、立ち並ぶ店からは美味しそうな匂いが漂ってきている。

P「腹減った……でも弁当があるから買い食いは出来ないか…」

 そもそも現在の所持金は無いに等しい。
 部活のために家の手伝い等を理由に前借りを許可してもらったので、次に小遣いが支給されるのは秋頃になる。

 アルバイトをしたくても部活をしていると余裕が無いし、
 『765プロ』の財政事情は中々厳しい状況にあるわけですよ旦那。

P「真たちからカンパしてもらうっていうのは間違ってるしなぁ……おや?」
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県) [sage]:2012/09/27(木) 14:00:09.58 ID:UeFqS2Hoo
独りでテンション高すぎだろww
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 15:46:55.82 ID:LGt+CaHco
本当ランダムワープ持ちだよなあずさん
788 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/27(木) 17:53:29.48 ID:TNB0dlHAO
 その儚そうな外見には似合わぬ大きなリュックサックを背負った後ろ姿。

 手には沢山の苗木の入った木箱を弁当売りのように持って、危なげなく商店街を歩いている。
 心無しいつもよりも雰囲気が明そうに見えるのは、いまが平日の昼で商店街の人通りが少ないからだろうか。

P「こんにちは」

雪歩「ふぇ…?」

 横に並んで声を掛けると、不思議そうな顔をして見上げてきた。

雪歩「…! プ…プロデューサー…さん…?」

P「そう、僕だ」

 などと有名テレビプロデューサーの真似を。

P「でも“さん”はいらないよ、雪歩」

雪歩「あ…はい…プロデューサー」

P「今日はまた園芸の買い物?」

雪歩「はい、あの。父が、音楽祭でがんばったからって、家に小さなビニールハウスを造ってくれて」

 ……学校行事のご褒美にビニールハウスとな?

P「じゃあ、そこで育てるんだ」

雪歩「はいっ」

 とても、嬉しそうに笑う。
 俺には一つ一つの苗がどんな物なのか解らないけれど、
 雪歩はその一つ一つの苗がどう育つのか、またどう育てるのか、今から楽しみで仕様が無いのだろう。

P「…それ、よかったら持たせてもらってもいいかな?」

雪歩「え?」

P「あ、その、散歩してただけで暇してたから、もし良かったら雪歩のお手伝いさせてもらえないかなぁ…なんて…」

 素直にもう少しお話ししたいと言えれば良いんだけど、
 如何せん雪歩の男性恐怖症を気にしてしまって積極的になり辛い。

 音楽祭の話がしたかったんだけど…。
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 18:09:06.94 ID:NOH2vukx0
ここで雪歩の呼び方矯正か
流石>>1はできるな
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/28(金) 04:43:27.85 ID:tVYuSp3No
さすがパパだな
791 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/29(土) 10:15:10.04 ID:zsT9r9gAO
雪歩「……いいです、よ?」

P「本当?」

雪歩「は、はい。…退屈させちゃうかもしれないですけど…」

 退屈だなんて。

P「雪歩と一緒ならそれだけで楽しいよ」

雪歩「……!?」

 無人島でも半日遊び倒す自信がある俺ですから。

P「じゃあ、それ貸して」

雪歩「あっ、あのっ! ……はいぃ…」

 木箱を受け取る。
 いつぞやの植木と違って、かさばるだけで全然重くない。

P「雪歩の家にいくんだよな?」

雪歩「そ、そうですぅ」

 …なにか急に距離を感じる…。

P「雪歩の家にお邪魔するのははじめてになるなぁ」

雪歩「はいですぅ」

P「初めて見たときは大き過ぎて驚いたよ」

雪歩「ち、父が昔から建設業をやっていて、会社も兼ねた家何です…」

 建設業……萩原……萩原組…?

P「ああ、そう言えば名前を何度か見かけたことがあるな」

雪歩「本当ですか?」

P「うん。もしかしてこの町の建物ってほとんど雪歩の家が建ててるんじゃないか?」

雪歩「そ、そこまでは……どうなんだろぅ……」

 多分、誇張にはならないんじゃなかろうか。
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/09/29(土) 10:26:56.36 ID:oqlruhD2o
ひょおおお
きてるうう
793 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/29(土) 11:02:52.76 ID:zsT9r9gAO
P「着いた」

雪歩「いま開けますね」

 木製の、俺の身長もゆうに越えた門戸。

 そのすぐ隣の壁にひと1人が通れる程度の勝手口が取り付けられていて、先ず雪歩が鍵を開けて入る。
 インターホンが有るから普段はここから出入りしているようだ。

 木箱を持ったままだと勝手口は通行出来ず、
 少しの間の後、門戸の片方がゆっくりと開いて、雪歩が顔を見せてくれた。

雪歩「こちらからどうぞ…」

P「ありがとう」

 はじめて踏み込む、雪歩の家の敷地。

 入ってすぐ目につくのは、大きな日本家屋。
 塀が高すぎて外からは見えなかったが、存在感が圧倒的すぎて気後れしてしまう。

 門戸から石畳が家屋の右手まで続いていて、その奥には車庫が見える。

 門戸を閉めた雪歩は家屋の方には向かわず、左手にある芝生の生えた庭へと歩いていた。

雪歩「こちらの奥になります…」

P「あ、うん。わかった」

 なんと言うか、豪邸だった。
 「お金持ちの家」というより、「豪」とした家という意味で豪邸。

 自分があまりに場違いではないかと困惑してしまうが、“雪歩の手伝い”として来ているんだと気合いを入れて、雪歩についていく。

 そんな俺の様子を見て、雪歩が小さく笑ってくれた気がした。
794 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/29(土) 11:51:22.61 ID:zsT9r9gAO
 庭を歩いてしばらくすると、雪歩の言っていたビニールハウスが見えてきた。

P「おぉ…」

雪歩「2人も入ると狭いかもですけど…どうぞ」

P「おじゃまします」

 四畳ほどの空間に、左右の壁に5段の棚のように区切られた畑(?)が設置されている。

 外に機械が有って室内の温度は一定に保たれていて、各棚には霧状に水吹きかける装置まで有り、かなり本格的な設備が整っていた。

 これほどの物をポンと用意してしまうのも凄いけど、何より半端な物は与えたくないという親心を感じる。

 雪歩のお父さんは、雪歩をかなり溺愛しているんだろう。

P「…まぁ雪歩相手ならそうもなるな…」

雪歩「…?」

P「ああいや、はやくこの子たちをお家に入れてやらないとって」

雪歩「はいっ」

 まずやり方を教わって、ある程度覚えたら左右に分かれて苗を植えていく。

 なんの苗なのかは特に教えてもらってないけれど、このチビっ子たちがどんな風に育つのか、ワクワクしてくる。
795 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/29(土) 15:06:36.68 ID:zsT9r9gAO
P「これ手造りなの!?」

雪歩「は、はい……お、お父さんと会社の人が昨日1日かけて…」

P「急造りにしてはよく出来ててすごいと思う」

雪歩「会社の人たちが、色々調べてくれたらしくて」

P「会社の人たちって、男の人?」

雪歩「あ…はい。……お父さんなら平気なんですけど、やっぱり少し恐くて……それでもみなさんは気を遣ってくれて、こんな私なんかにも優しくしてくれるんですけど……」

P「建設業だし、ガテン系は男っぽさが一際強いから恐いのはわかるよ。俺も昔のトラウマで少し恐い」

雪歩「…トラウマ…ですか?」

P「いや、くだらない話しなんだけど。昔、小さい頃に秘密基地が欲しくなった時期があってさ」

雪歩「はぁ…」

 う…あまり理解されてない……秘密基地って男特有の思い入れなのかな。

P「それで、解体予定の小さなビルを見つけて、その中でよく遊んでたんだよ」

 美希にも秘密にして、お菓子なんかを持って行って。

P「そしたらある日遊びに行ったら解体する当日で、慌てて中に隠してた物を取りに入ったんだけど」

雪歩「あ、危ないです…!」

P「うん、まぁ、出るときに見つかってこっぴどく怒られてさ。親に連絡するから作業が済むまで待ってろーなんて言われて」

 そう言えば、結局あの時の事は親にバレなかったんだよな。なんでだっけ?

P「……あ! そうだそうだ、たしか大人しく待ってたら、関係者の子供っぽい女の子が逃がしてくれたんだった」

 「もう二度としちゃダメですよ」って、年下の子に窘められた記憶がある。

雪歩「女の子、ですか」

P「そうそう。なんでか小さなシャベルを持ってて、大人の人が誰もいないうちに抜け道を教えてくれたんだよ」

 小柄でわりと可愛かったと思うんだけど、不思議と顔が思い出せない。
 響がうちに来るよりも昔の話だから、当然と言えば当然だけど。

雪歩「シャベルを持った…」

P「建設関係の親がいる子」

 懐かしいなー。
 いまならすごい美人になってるかも知れない。
 もう一度会って、あの時のことお礼が言いたい。

 ……向こうが覚えているとは思えないけど。

雪歩「………」
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/29(土) 15:12:00.91 ID:QDCYY/Pto
流石に気付けよwwww
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/29(土) 15:57:48.58 ID:CFPNVdz/o
Pwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/09/29(土) 15:58:08.98 ID:5KGrucajo
Pェ……
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/29(土) 16:04:19.13 ID:AmgKwoKNo
いやいやいやいや
800 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/09/29(土) 16:29:21.62 ID:zsT9r9gAO
P「えっと、コレで完了かな?」

雪歩「はい。あとは私が手入れを怠らなければ、ちゃんと咲いてくれるはずです」

 よかったよかった。
 畑仕事なんてあまりやらないから、俺としても楽しい経験になったな。

P「…お、もうこんな時間だ」

 時計を見たら、13時になろうとしている。
 このままだとお昼を食べるタイミングを逸してしまう。

雪歩「──あ、あのっ」

P「ん?」

雪歩「よよよ、よかったらお昼ごはん、たっ食べていきませんか…!?」

P「な、長居すると悪いから。それに、弁当作って持ってるんだ」

雪歩「うぅ…でしたら、お茶だけでも……ダメ、ですか…?」

 ダメなはずは無いんだけど、やっぱり長居したら雪歩への負担になるんじゃないかと心配なんだよな…。

P「……それじゃあ、お茶だけいただいていこうかな」

雪歩「…は、はいっ! すぐに煎れてきますぅ…!」

 言うな否や、飛び込むような速さで家の中に入っていく雪歩。

 …やっぱり気を遣ってくれすぎている気がする……申し訳ない…。
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/09/29(土) 18:21:27.23 ID:aFEl5Qd+0
Pが予想以上にPだった
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/29(土) 18:33:54.68 ID:1nKzPY+Wo
ああ、まさしくPだな
803 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/29(土) 19:21:16.30 ID:zsT9r9gAO
 『御詫びと諸注意』

 このスレッドに足をのばして下さる皆様方に於きましては、昨今台風の影響により天候が優れぬ中、御足労の程誠に有り難う御座います。

 この度、アイドルマスターの二次創作SSである“P「学生生活でもするか!」”を読むに当たっての注意事項、ないしは懸念事項が追加されましたので、御報告させていただきます。


 率直に申し上げますと、
 今後このSSには「オリジナルキャラクター」が登場することになります。

 オリジナルとは言いましても名前のあるキャラクターを出すのではなく、

不良A「」

愚民C「」

 といった、所謂“モブキャラ”の類になります。

 いままでも通行人の生徒や同級生などが多少出演しましたが、
 特別な呼び名名前を与えられたものはほぼ居りませんでした(あいうえ男を除く)。

 個人的な考えでは、これはアイドルマスターのSSで在る以上、ギャグでもない無駄なキャラクターは作り出すべきでは無いと考え、またそれに努めてきました。

 ですが今後、物語をテンポよく進めるに当たってどうしても“モブキャラ”の存在が必要になってしまいました。

 これは開始当初から懸念してきた問題点であり、
 長考の末、「モブキャラを使用する」ことを決断致しました。


 基本的なスタンスはいままでと変わらず、
 『極力喋らせない』
 『出しゃばらせない』
 のままです。

 どうしても必要になったシーンのみ会話をさせる程度に抑えていきますので、
 どうか御理解御容赦いただけますよう、宜しく御願い致します。

 また、以上の決定事項に不満、不快感を感じる方が居られましたら申し訳有りません。
 ここまでのお付き合いとなりましたら、今まで本当に有り難う御座いました。またの機会がありましたら、宜しく御願い致します。


 長文乱文失礼しました。
 御質問等御座いましたら、答えられる範囲で極力答えていきたいと思います。

 これからも宜しく御願い致します。
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/09/29(土) 19:25:44.07 ID:aFEl5Qd+0
構わんよ。最後までつきあうぜ。
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/29(土) 19:25:59.45 ID:s2MU/0vwo
あまとうやらで変えられないならそれで良いんじゃないか?
出しゃばらないならモブと変わらんしね
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/09/29(土) 19:27:46.69 ID:1nKzPY+Wo
ご丁寧にありがとうございます。

自分は気にならないですよ
少なくとも>>803で書かれている程度ならどうって事ないです
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 19:28:08.40 ID:ASftothao
そんなクッソどうでもいい注意書き書いてる暇があるなら
さっさと書きためられるだけ書き溜めて出来るだけ早く終わるように努めてくれませんかね?
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/29(土) 19:50:42.17 ID:JInBJPoNo
構わん。続けろ

水瀬兄の謎の存在感が問題ないし、というか>>1のお好きなように書けください
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/29(土) 20:02:33.66 ID:GEDAIG8X0
大丈夫だ、>>1の好きなようで問題ない
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 20:08:03.02 ID:QCyUlurIO
これはお前の(書いている)物語だ
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2012/09/29(土) 20:46:52.71 ID:bIcHQc3zo
所詮>>1の暇つぶしの書き物を俺らが暇つぶしに読んでるだけだろ
やりたいようのやってくれ
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/29(土) 21:20:47.00 ID:AmgKwoKNo
問題ない 頑張れ
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/09/29(土) 22:29:17.62 ID:oqlruhD2o
まあ注意書き書くのもいいが
さっさとそこまで進めてくれるとさらにありがたい
最近ちょっとしか投下してくれないから…楽しみに待ってるよ
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/09/29(土) 22:41:46.65 ID:Hi9x7Lj+o
最近は多くなった方だろ
まあがんばれ
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 01:29:17.17 ID:a8y2yWe0o
モブ程度のオリキャラならなんら問題ない
流石にモブなのに存在感ありすぎたらあれだが
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 01:35:44.75 ID:vbA0MCr90
進行上必要なら出すべき、勿論匙加減は大事だけども
これからもファイトです
817 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/30(日) 01:41:52.40 ID:FiUBJSJAO
P「ところで、なんだけど」

雪歩「はい…?」

 雪歩のお茶を飲んで落ち着いたところで、庭に置かれていた木製の長椅子に腰掛けながら、話題を振った。

P「音楽祭、雪歩凄かったよ」

雪歩「あっ……ありがとうございますぅ……」

P「曲も、衣装も、歌声も、全部が綺麗で調和されてて、見惚れた」

 回りくどい言い回しはせず、率直に自分の思ったことを言う。

 見る見るうちに雪歩の顔が赤くなっていって、まるで駄菓子屋で売ってるスモモのお菓子みたいだと意味不明なことを考えてしまった。

雪歩「でっ、でも」

P「…?」

雪歩「あの、プロデューサーたち…『765プロダクション』の皆さんの方が、とても綺麗だったと思います…!!」

 グッと手に力を入れて、強い眼差しを向けてくる。

P「ありがとう」

 行事としての勝ち負けは有ったものの、
 雪歩とウチの部とは比べて良いものなんかじゃない。

 『765プロ』は素晴らしいエンターテイメントを提供出来たと思っているし、
 雪歩のクラスもまた素晴らしいものだったから。

雪歩「あぅ…」

 指先が少し触れる程度に頭を撫でて、湯のみに残ったお茶を飲み干す。

P「あの…それでさ」

雪歩「あ…はい…」

 肝心なこと。
 雪歩に会えたら、尋ねようと心に決めていたこと。

P「……『765プロ』は、雪歩に印象を残すことは出来たかな」

 先程までの会話とは本質が違う、意図の違った質問。

 「萩原雪歩」という少女が、『765プロダクション』へ入ってくれるや否やの問い。

雪歩「……あの音楽祭で、皆さんの歌を聴いた瞬間、から、もう答えは決めてたんです……」

 口にすることを少し恥じらうような素振りを見せたが、頭を振って、まっすぐに俺の顔を見つめてくる。

雪歩「私──」

818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 03:12:22.61 ID:vbA0MCr90
「――穴掘って埋まってきますぅー!(><)」
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 03:20:54.95 ID:EJi5U9MGo
ちょw
いいタイミングだな
820 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/30(日) 07:53:11.30 ID:FiUBJSJAO
 「お嬢ー、お嬢いらっしゃいますかー?」

 不意に、家屋から聞こえてきた太い声。

 何事だと視線を向けてみると、長身でやや痩せぎすな男性が出てくるところだった。

萩原組構成員A「…あっ! お嬢、こんなところに居らしたんですか!」

 因みに髪型はパンチパーマ。

 お嬢──雪歩を視界に捉えた男性は、強面な顔を柔らかく崩して、努めて朗らかな態度で近寄ってきた。

雪歩「あ、あのっ、どうかしたんですか…?」

 若干縮こまりながら、それでもいきなり逃げる事はせずに、対応して見せる雪歩。
 確かに、家の人相手なら少し慣れが感じられる。

構成員A「や、それが奥方さんから伝言を頼まれやして。『庭いじりもいいけどごはんもちゃんと食べなさい』ってな感じっす」

 あ、と。
 そう言えば、雪歩はずっと作業していてお昼ごはんをまだ食べていなかった。

雪歩「す、すぐに行きます……けど…」

 チラリと、一瞥される。
 大事な話しの途中だったし、ここで別れるのは確かに寂しい。

P「いいよ。俺もここで弁当食べて待ってるから、ゆっくり沢山食べておいで」

雪歩「うぅ……すみません、すぐ戻ってきますから…!」

 申し訳なさ全開な表情のまま、家の中へと駆けていく。
 慌てて食べても体によくないから、本当にゆっくり食べてきてほしいんだけど…。

構成員A「いやぁ、やっぱりお嬢はいつも可愛いなぁ」

P「同感です」

構成員A「あと10年も経ちゃあ美人さんになって、オレもほっとかねぇんだけどなぁ」

P「そこは『あと10年若けれゃ』じゃないんですか?」

構成員A「バカヤロウ! そしたらオレがロリコンみてぇじゃねぇか! オレはなぁ、“可愛い”より“綺麗”派なんだよ!」

P「ほほぅ…」

構成員A「……ところでよ」

P「はい」

構成員A「お前はなんなんだ?」

P「………」

構成員A「いや待て! 待てよ、当ててやる。……その動きやすそうな格好…弁当に水筒、タオルという用意のよさ…」

P「勝手にリュックを漁らんでください」

構成員A「──わぁったあぁ!! お前、ウチの見習いにきたアルバイトだろっ!」

P「……なん…ですと…?」
821 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/30(日) 08:10:19.90 ID:FiUBJSJAO
萩原組構成員A「──じゃあまず手始めに、この木材を線の通りまっすぐに切ってみな!」

 ここは家屋裏手、つまり『建設会社萩原組』の作業場。

 大量の木材の中、鋸一本渡されて立たされている。

P「…どうしてこうなった…」

構成員A「ブツクサ言ってねぇではやくやってみろって! 新人はみんなこれから始まるんだからよっ!」

 バンッと景気よく背中を叩かれて、仕方無しに言われたとおりにしてみせる。

構成員A「…おお? 上手いじゃねぇか」

P「体動かすのは得意なんで」

構成員A「よっし、じゃあ同じようにココに置いてある木材全部切っといてなー」

 そんなバナナ。
 いったい何本あるんですかコレは。
 しかも1本につき1回じゃなくて斜めとか水平とか色々あるんですけど。

P「…あの、俺は雪歩の」

構成員A「なに馴れ馴れしく呼び捨てにしてんだお前。この萩原組に入るからにゃあ、組長は“オヤジ”! 奥さんは“奥方”! 娘さんは“お嬢”って呼ぶのがオレたち“兵隊”での暗黙の了解なんだよぉ!」

 単語がどんどん建設業から離れている気がする。

P「お嬢……お嬢、か…」

構成員A「ホレホレ! 口じゃなくて手を動かせ! じゃっ、終わったら呼べよな! 寝てたら起こすなよ!」

 起きるまで待てと?

P「…作業見てくれないんですか?」

構成員A「そうしたいのは山々なんだけどよ、そろそろレースの時間でな」

 そう言って取り出したのは携帯ラジオとイヤホン。

 アルバイトに作業丸投げして自分はギャンブルですか。

 横暴すぎる。
822 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/09/30(日) 08:40:57.58 ID:FiUBJSJAO
P「はぁ…はぁ…」

 作業場は効率良く換気されている筈なのに、汗が次から次へと滴り落ちてくる。
 もとから汗っかきな部類ではあるけど、まさか土木作業がこんなに疲れるものだったなんて…。

萩原組構成員A「……おお? お前もう全部終わらせちまったのか?」

P「…はい……まぁ…」

 あれから結構時間経ちましたし。

構成員A「こいつぁ中々便利…役立……利用できそうなヤツじゃねぇか」

 言い直したらより悪い言葉になった!
 この外道!

P「…あの、もう帰ってもいいですか?」

構成員A「あぁん? 帰るって、まだオヤジに評価ももらってねぇし明日以降の予定も言ってねぇだろうが」

P「ですから、俺はアルバイトしに来たわけじゃなくて…」

 こういう勢いの強い人は相手にし辛い…。

雪歩「──プロデューサー…!?」

 作業場と家とを繋ぐ廊下から姿を現した少女。
 その表情から、彼女がすごく驚いているのがよくわかる。

P「やあ、お疲れ様ですお嬢」
雪歩「おじょっ…!?」

 あ、いけない。

雪歩「あ、あの、どうしてここに……お昼ごはん食べ終わって庭に戻ったら居なくなってたので、もう帰っちゃったものかと……」

 珍しく饒舌に喋り、必死に状況を理解しようとしている雪歩。
 混乱してしまうのも仕方が無い。

 だって別れてからゆうに3時間は経っていますもの。

構成員A「おおお? なんですかい? お嬢はコイツとお知り合いで?」

 状況が呑み込めていない人物ば追加される。

 でも鋸を持って木屑にまみれた俺と、後ろに並ぶ切りそろえられた木材とを眺めて、雪歩は何となく事情を察してくれたようだ。
 雪歩の目元に少しだけ力が入って、目つきが僅かにキリッとなった。

雪歩「こ……この人は……私のぉ……お客様ですぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 一際。普段の雪歩からは聞けないような大声量が作業場に響き渡り、
 一拍おいた後、構成員の男性がマンガみたいにのけぞった。

構成員A「えええええええええええぇ!!?」

 交互交互に、俺と雪歩が見比べられる。
 多分雪歩の男性恐怖症は組のみんなが知るところで、
 そんな雪歩が男性である俺を家に招いたという事実が信じられないのだろう。

 やっと、
 やっと誤解から解放された。

 ありがとう雪歩。本当にありがとう。
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/09/30(日) 09:56:05.94 ID:K4BwUAa6o
頑張れ
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 14:46:05.85 ID:hf8zoQe1o
構成員Aェ・・・埋められるなよ
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 15:03:33.31 ID:jbd37kxSo
マスオさん乙
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [おsage]:2012/09/30(日) 18:23:53.95 ID:ywu2G8Xn0
雪歩が初登場時からPに好意持ってる気がしてとんだビッチだなと思っとったけど理由があったんだな

にしても>>807はよく言ったわ 批判がこわくてお断りを入れるとかとんだチキンハートだよ
さっさと書けや〜 見捨ててまうど〜?wwwwwwwwww
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/30(日) 18:27:59.48 ID:LDpyjLOto
見捨てれば?
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/30(日) 18:43:48.50 ID:oRZue2X2o
見捨てろよ
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県) [sage]:2012/09/30(日) 18:47:18.56 ID:l51ySMGlo
見捨てなさい
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 18:51:57.84 ID:CgNgIpnDO
見捨てるしかないね
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/30(日) 19:07:40.37 ID:ywu2G8Xn0
おい……あまりいじめてくれんなよ…
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 19:08:18.42 ID:Ja00bu7Zo
>>831
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/30(日) 21:09:46.45 ID:d6+wu170o
伸びてると思ったら半分は駄レスとか…
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/01(月) 19:39:53.00 ID:MsVveA0Lo
馬鹿が駄レスしてると聞いて
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 07:55:57.01 ID:CP6v9/0g0
>>807
どうでも良いと言うことは無いだろ
>>1の配慮からくる対応なんだろうし
逆にちゃんと書く気があるからでしょ

現状の話の流れを見るにこのスレだけじゃ書ききれないのは明白
元々長期化すると云ってるんだから急かす位なら読まなきゃ良いだろ

>>1マイペースで頑張って下さいね。
エタらなければそれで良いので
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/02(火) 07:59:45.68 ID:/uaWxVgno
VIPの投下速度見るともう少し早くならんかなと思わんでもないな
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 08:09:06.32 ID:DXRBn6JXo
VIPのときは2年くらいかけて書き溜めたんだよ
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/02(火) 08:16:08.75 ID:PnLstWjQo
まあ面白いから多少遅くても良いんだけどな
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/03(水) 03:36:31.37 ID:PoiRsl2co
注意書きは長すぎ
内容はともかく無駄に長文を読まされるのはちょっとね
もっと事務的に、長くても5行くらいにして欲しい
840 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/03(水) 10:11:47.15 ID:TQAhzpEAO
P「どうもお邪魔しました…」

雪歩「お邪魔してもらいましたぁ…」

 俺はくたびれていて、
 雪歩は申し訳なさを感じていて、
 お互い元気のない挨拶をしてしまう。

 すぐそこまで見送ってくれるという雪歩と一緒に、勝手口から外へ出た。

萩原組構成員A「その…なんだ、悪かったな兄ちゃん」

P「いえ、俺も強く言えなかったのが悪いですから…」

 バツが悪そうに、敷地に留まったまま見送りをしてくれるオジサンに軽く笑い返す。

構成員A「これ、受け取ってくんな」

 言われるがまま、オジサンの懐から取り出された茶封筒を受け取る。
 手紙、と言うには少々厚い。

構成員A「さっきの事をオヤジに話したらどやされちまってよ。仕事をさせた以上キッチリ払えって」

P「払う……!? ちょっ…、こんな沢山…!!」

構成員A「オレの気持ち分、少しイロ付けといたからよ」

 渡された茶封筒の中身。
 それはどうみても福沢諭吉が印刷されているようにしか見えなくて、
 一介の高校生には高価すぎるモノだった。

 日給としても金額が大きい。インカムがまた3人分は買えてしまいそうだ。

P「気持ちはありがたいですけど、こんなに受け取れないですよ。ただ木を切っただけなのに」

構成員A「お嬢のツレをこき使ったんだ、これぐらいしねぇとオレも気持ちが休まらねぇ」
841 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/03(水) 10:21:17.18 ID:TQAhzpEAO
 漫然と、腕を組んで頑なに返却を拒むオジサン。
 そりゃあ、いまはお金が有って困る事はないんだけど…。

雪歩「──受け取ってもらえませんか?」

P「え?」

雪歩「あの、この人…なりの、ケジメの付け方だと思うんです…。……でもプロデューサーさんに仕事をさせちゃったのをお金で解決しようなんて、虫のいい話しですよね……」

P「いや、そんなことは…」

雪歩「あ、あのっ! 私に出来ることならなんでもします! だから…その…!」

 焦ってとんでもない事を口走っている雪歩の前に手をかざして、言葉を遮ってしまう。

P「わかった。もうゴネたりなんかしないから。雪歩はなにもしなくていいから」

雪歩「……はぅ…」

P「──それじゃあ、有り難く貰わせていただきます。済みません」

構成員A「応。こっちも悪かったな」

P「また何か、手伝えそうなことがあったら呼んで下さい。えっと、お礼とかは無しで。」

 何やかんやと、終わってしまえば結構作業は楽しかったし。

 俺は頭より体を動かす方が好きな人間だから、将来はこんな仕事も悪くないかも知れない。

 色んな未来の可能性に、夢が広がりんぐ〜!!


 ……日高舞さんの真似でしたごめんなさい。
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/03(水) 10:43:18.52 ID:NjabjsWjo
オヤジさんは姿見せずか、次回に期待ダナ
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/03(水) 16:33:33.36 ID:SNRMWz6K0
舞さん何言っちゃってんのさww
844 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/03(水) 20:57:17.32 ID:TQAhzpEAO
 帰り道。
 それほど長くはない距離を、雪歩と2人並んで歩く。

P「今日は楽しかったよ、ありがとう」

雪歩「うぅ…すみません…」

 お礼を言ったのに泣かれた!?

P「あの苗、早く育つといいなぁ」

雪歩「あ…はい、がんばりますぅ」

 小さく笑顔を返してくれて、また2人は沈黙。

P「………」

雪歩「………」

 なんか気まずい。

雪歩「あ……あのっ!!」

P「はい!?」

雪歩「部活のことなんですけど!」

P「イェア!」

雪歩「こ……こんなちんちくりんな私でも良い…ですか…!?」

P「雪歩だから誘ったんだよ!!」

雪歩「……はぁ…はぁ…」

P「ゴホッゴホッ」

 これはいけない。
 テンションに任せて喋るとろくなことにならないぞ俺!

845 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/03(水) 20:59:02.44 ID:TQAhzpEAO
雪歩「…私…男の人が苦手です」

P「うん」

雪歩「犬も苦手なんです…」

P「そうだったんだ」

雪歩「なにをやってもダメダメで、きっと迷惑かけちゃうと思います……」

 自分を過小評価する。
 それは雪歩の美徳で、“抜けきらない癖”だ。
 でもそれは別に、雪歩の本質を示すものではない。

雪歩「──でも私、みんなとっ……プロデューサーから誘われた『765プロ』のみんなと、あんな風にがんばってみたいです…!!」

 「一歩」を踏み出せる強さをもっている人。
 その「一歩」の重さをわかっている人。
 「一歩」の恐怖と、それに必要な勇気を知っている人。

 それが、出逢って間もない俺が萩原雪歩という人物に抱く、
 アイドルの素質。

雪歩「……うぅ…」

 空は薄い雲により見事な夕焼け。
 照らされた雪歩の顔は、とても赤い。

P「嬉しいな」

雪歩「……え…?」

P「雪歩が、そんな風に思ってくれるくらい、音楽祭では観てくれた人の心を打つことが出来たんだ」

 膝を曲げ、同じ高さに目線を合わせた後に、そっと掌を雪歩の頭の上にのせる。

P「ありがとう雪歩。俺は、『765プロダクション』は、心から君の入部を歓迎させてもらいます」

雪歩「───」

 茫然とした沈黙。

 けれどすぐに立ち直った雪歩は、満面の笑顔を向けて元気に応えてくれた。

雪歩「はいっ…!!」


 翌日、765プロダクションは、同好会から部へと昇格されることとなった。


846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/03(水) 21:37:22.45 ID:uVBdocgr0
雪歩が仲間になった〜♪〜
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/03(水) 22:40:36.50 ID:SNRMWz6K0
同好会からレベルアップか
848 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/10/04(木) 10:36:02.14 ID:oCd5FiRAO
【6月の2】

P「──というわけで! 今日から『765プロダクション』に所属することになった萩原雪歩さんです!」

雪歩「よ、よろしくお願いします…」

春香「わー!」

千早「歓迎するわ、萩原さん」

 休みが明けた日の放課後。
 雪歩を連れてきて、改めての顔合わせをする。

真「よろしく雪歩っ」

雪歩「あ…はいっ、真、さん…」

真「うぅ〜ん…?」

 真が、何やらむず痒そうに首を傾げる。

真「ボクたちの方が学年は上だけど、そんなに畏まらなくていいよ?」

雪歩「え…でも…」

春香「じゃあ“さん”はやめて、“ちゃん”で呼ぶようにしたらどうかな」

真「あっ、それいいね!」

雪歩「えぇぇ…!?」

千早「私も構わないから」

 早速というか、前に一度会ったことがあるからなのか、
 はやくも打ち解けてくれているようで、安心した。

 これからも「メンバーの加入」は色々と考えていきたいところだったので、
 こうして打ち解けることに馴れてくれるのは部長として有り難いことこの上ない。

千早「…そう言えばプロデューサー」

P「うん?」

千早「萩原さんが入ったということは、もしかして…」

P「──ああ! 本日を以て我らが『765プロ』は、晴れて同好会から“部”へと昇格いたしました!」

雪歩「ふぇ…!?」

春香「わっ、本当ですか!?」

P「雪歩から貰った入部届は小鳥先生に渡したし、校長にも挨拶したから間違いない。功績如何によっては、部費の工面に気を遣ってくれるそうだ」

真「へへっ、やーりぃ!」

春香「でも、次の行事って言ったら2学期の文化祭とかになるんじゃ…」

 そう。
 音楽祭を終えてしまった1学期には、もうイベントらしいイベントがない。
 進学校だからか「中間試験」が無いのはありがたいんだけど、あと学生的に心踊るものといったら「プール開き」くらいしかない。

 …だが!

 そこは俺がプロデューサーたる腕の見せ所と言うもので!

P「実は昼休みに校長とお茶飲みながら話ししてて、次のステージについての目星はつけてあるんだ」

真「はやっ!」

千早「いつからそんなに校長と仲が良くなったんですか…」
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 12:17:46.82 ID:/6rakREDO
なにその交渉力
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 13:40:45.17 ID:rRU0Lh5do
むしろ校長がティンときちゃったんだろうな
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/10/04(木) 13:54:41.74 ID:yi44tSoto
そんときの校長
すげえいい顔してそう
852 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/04(木) 17:55:57.21 ID:oCd5FiRAO
P「7月にさ、町内会で企画した町を盛り上げるためのイベント、『夏を楽しもうキャンペーン』て言うのを商店街でやるらしいんだよ」

春香「はい」

P「だからその開催初日、具体的には7月14日の日曜日に特設ステージで『READY!!』を披露しようかなと」

真「えっ…期末は!?」

P「校長と相談して、試験勉強期間中も部室に居てもいいとお許しを貰えました」

真「…たしか今回は15、16、17日が期末の日取りだよね?」

春香「たしか始業式に貰った年間行事表だとそうだったはずだけど…」

真「日曜日って、テストの前日じゃないかぁ!」

雪歩「べ、勉強出来るか不安ですぅ…」

P「だから、今回のイベントはまだ決定じゃないんだ。やっぱり学生の本分は勉強だし、部活動が成績に関わってしまうようなら教員方から辞めろと言われかねないから」

千早「難しいわね…1人だけが良くても、ステージにはみんなで立つのだから……」

 みんなが、一様に顔を俯かせる。

P「無理なら、無理でいい。ただ今回の話しは校長の発案ではなくて、音楽祭でステージを観てくれた町内会長さんからのものだってことは伝えておく」

春香「ちょ、町内会長さんですか?」

P「音楽祭が盛り上がってたから、商店街のイベントも盛り上げられるかもって校長に話してたらしい」

真「……プロデューサーは、ボクたちにやれると思う?」

 みんなの視線が集まってくる。

 迷っている。
 俺の返答次第で、賛成も却下も自由に決められる。
 でも俺は4人に無理をして欲しい訳じゃない。辛いことはさせたく無いし、苦しいことは取り除かせたい。

 でも、だからこそ俺は、素直に自分の気持ちを言葉にして4人に伝えなければいけないんだ。

P「思う」

千早「即答、なんですね」

P「一度成功したからってわけじゃないけれど、試験と両立させて舞台に立つことは考えるほど難しいことではない気がするんだ」

雪歩「あ…あの、私……」

P「もちろん、雪歩のカバーも踏まえた上で」

真「ボク、正直勉強の方は自信が無いんだけど…」

P「俺が教える。…偉そうに言えるほど頭が良いわけじゃないけど…」

 でも、みんなが練習に集中しても良いように、授業で習ったことを効率良く教えたりすることは出来るはずだ。

P「みんながみんなで助け合えば、支え合えば、期末試験なんて大した障害だとは思わない」

853 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/04(木) 18:32:22.56 ID:oCd5FiRAO
春香「………」

真「………」

千早「………」

雪歩「………」

 沈黙。
 きっとみんな頭の中で、“参加を決めた未来”のことを思い描いている。

P「あくまでも俺個人の見立てだから、必ずどこかに穴はある。それを考えてもらった上で、改めて訊きたい」

 賛成か、見送りか。

真「……プロデューサーにそこまで言われちゃあ、ねぇ?」

春香「まずは、やってみないとわからないよ、ね?」

千早「私は、みんなが良ければ構わないわ。どう?」

雪歩「あっ…あのぉ……がんばって……みたい、です…」

 満場、一致。

P「言い出しっぺの俺が言うのは間違ってるけど、本当に大丈夫なのか?」

真「まあ、みんな一緒ならなんとかなるよ!」

千早「私もそれ程出来るわけではないですけど、少しくらいなら勉強を教えられると思います」

春香「毎日練習の前に、少しずつ一緒に勉強をするのはどうかな? それでわからないことが多かったら、その日は練習をやめて勉強会にするの」

P「ああ、それは良いかも」

雪歩「わ、私だけ学年は違いますけど…がんばりますぅ…!」

真「雪歩、そこはむしろ教えられる人が4人も居るんだから大丈夫だよ!」

P「あれ、真も教える側なのか?」

真「そうだけど? ……プロデューサー、まさかボクが1年の勉強もわからないほどバカだと思ってる…?」

P「ハハハ、ナニヲ冗談ヲ」

春香「目が笑ってない…」

真「うわーん! なんだよプロデューサーのバカー!」
854 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/04(木) 18:36:12.69 ID:oCd5FiRAO
P「ごめんごめん、ほんのジョークだよジョーク」

 真をなだめて、全員を前にして今一度。

P「……それじゃあ、7月の町内会イベントは参加することに決定するな」

春香「はいっ!」

P「そうした上で、これからの目標としては先ず雪歩を交えた4人での『READY!!』のフォーメーションの構成」

真「ダンスだとスペースの使い方に気を使うね」

P「ダンスはみんなで練習するとして、雪歩は歌詞を覚えなくちゃいけない。でもこれはみんなで唄う歌だから、そんなに気張り過ぎないでいいよ」

雪歩「はっ…はいぃ…!」

千早「萩原さん、大丈夫よ。みんなでゆっくりやっていけばいいから、肩の力を抜いたほうがいいわ」

雪歩「あ……はい、千早…ちゃん…」

千早「──あ、あまり“ちゃん”付けはなれていないから…恥ずかしいわ…」

春香「あれー? 私いつもよんでるよぉ千早ちゃーん」

千早「春香はいいのよ」

春香「差別だ!」

千早「だっ、だっていつも一緒にいるから、当たり前というか……」

春香「…千早ちゃん…!」

千早「ひぁっ!? ちょっと春香!?」

P「………」

真「プロデューサー、気持ち悪い顔になってる」

P「生まれつきだよ?」
855 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/04(木) 18:45:55.14 ID:oCd5FiRAO
 千早たちがイチャイチャしているのを暫し堪能して、
 本題に戻って今日の総括をする。

P「じゃあ、明日からはダンス中心の練習とヴォーカル中心の練習を日毎交互にやっていく感じにしよう」

春香「はい!」

千早「わかりました」

雪歩「よろしくおねがいします」

真「よーっし、また張り切るぞぉ!」

 みんなからの返事を聞いたところで、時計を見て時刻確認。

P「…よし、今日はこの辺で引き上げよう」

春香「へ? でもまだ大分早いですよ?」

P「雪歩って新メンバーも加わったんだし、吹奏楽部や軽音楽部の人たちに挨拶して帰ろうと思って」

真「あ、じゃあみんなで行こうよ」

千早「そうね、音楽祭のお礼もちゃんとしておきたいし」

雪歩「わ、私も…」

 そういうことで、美少女4人を引き連れ挨拶回り。

 音楽祭で有名になったばかりだから、すれ違う生徒も手を振ってくれたり応援してくれたりする。

 みんなは少し照れくさいようだけど、俺はすごく誇らしい。

 もっともっと、彼女たちの魅力をみんなに伝えていっていきたい。

856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/10/04(木) 20:41:53.38 ID:5QVun11/o
頑張ってますねえ
その調子でオナシャス!
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/04(木) 21:02:20.78 ID:WXA0W4DWo
Pの切り返しが面白いwwww
858 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/05(金) 11:54:56.17 ID:+MYP/IBAO
【6月の3】

P「おわわわわわ!」

 6月も半ばを過ぎた土曜日。
 今日は、ちょっとした用事があったから放課後の部活には顔を出していない。
 断りはいれておいたから問題は無いはずなので、みんなと会えるのはまた月曜日になってからだ。

 そして、用事も済ませて家に帰る途中、突然の雨に見舞われてしまった。
 空は青く、雲はうっすらと覆うくらいにしか無いのに、それでも雨はシトシトと制服や鞄を濡らしていく。

P「──カバン!!」

 濡れるのはまずい。
 折角買ったものに浸透して濡れてしまう…!

 腹に抱え込むようにして、鞄を庇いながら帰路を急ぐ。
 梅雨の時季とはいえ、こんな日に勘弁してもらいたいな……くっ! 雨が強くなってきた!

 この辺でどこか雨宿りできるところって…。

 走りながらも周囲を見渡す。だが残念なことに住宅が密集した地帯で、軒先すら借りれそうな場所は無い。

P「家まで遠いよなぁ……あれ、そう言えば……」

 思い出したことがあり、家路から離れて角を曲がる。

 その先には小規模な公園があり、
 そこには本来なら陽射しを避けるために建てられた、小さな櫓がポツリと存在している。

 あそこなら雨を凌げるよな…!

 子供の頃見たままの姿で残ってくれていた公園に感謝して、俺は飛び込むように屋根の下に入り込んだ。
859 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/05(金) 11:55:23.35 ID:+MYP/IBAO
P「ふぅ……酷い目に遭った…」

 鞄をコンクリートで均された地面に置いて、体中にまとわり付いた雨水を外にむかって払い落とす。

 いまだシトシトと降り続ける雨。
 でも、やはり空は青く晴れていて雲の姿は視認し辛い。

P「こういう天気ってなんて言うんだっけ」

 なんか小学校のころ何かの本で読んだような気が。

P「お天気雨じゃなくて、『ナントカの輿入れ』みたいな」

 「──それはもしや、“狐の嫁入り”では?」

P「あぁ、そうそう! 彼女はこんと咳をしてって……」

 何時の間に。

 瞬く間に。

 背後に立っていた人物が、やんわりと声を掛けてきた。

P「……えぇっと?」

 振り返る。
 広くも無い櫓の屋根の下、音もなく現れて俺の背後に居たのは。

貴音「これは。突然声を掛けてしまったせいで驚かせてしまったでしょうか」

 ……とんでもない美女さまでござんした。
860 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/10/05(金) 11:55:53.38 ID:+MYP/IBAO
P「………」

貴音「もし…?」

P「あっ、ああ……だ、誰も居ないと思ってたから、少し驚いちゃって」

貴音「ふふっ、私はあなたが来るよりも先に居ましたよ」

P「えっ!?」

 言われて、改めて目の前の女性を見やる。

 纏め上げられた銀色の頭髪。
 華美ではない、けれど優雅に満ちた高級そうな和服。
 外見に決して負けはしない、令嬢然とした佇まいと物腰。

 …どこからどうみても良いとこの御令嬢様です。

 対して俺はどうでしょう。どこからどうみても凡人です。

 この2つを掛け合わせてみるとどうでしょう?

 逮捕フラグが立ちます。

P「許してください悪気は有りませんでした」

貴音「は、はて…? 何故私は初対面の男性に頭を下げられているのでしょう…?」

 ……ん? 銀髪?

P「が、外国の方なんですか?」

貴音「私、ですか?」

 そう、あなたです。

貴音「……それは、秘密です」

P「え?」

貴音「いわゆる、とっぷしーくれっとと言うものです」

P「あぁ〜…」

 そりゃ、初対面の人間に身の上話なんかするはずないか…。

 ただ1つ言えるのは……帰国子女ではないなこの人!
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 12:13:59.76 ID:je7LAytd0
ついに貴音登場か…
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 12:25:28.19 ID:ualiHSuMo
貴音きたー!
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/05(金) 12:28:27.78 ID:2EFP9bPRo
双子より後かと思ってたら先に来たか
設定はいつ出てくるんだろ?
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 12:29:02.64 ID:PZkRlEFvo
TAKANEKITAー!!
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/05(金) 12:33:36.47 ID:phErZUgB0
貴音登場か
待ちわびたぜ
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 13:57:18.30 ID:hjhUNnY3o
曲がり角でぶつかった転校生:春香
別クラスの合唱部の生徒:千早
困っている所を助けた後輩:雪歩
親友の妹の友達:やよい
親友の妹:伊織
腐れ縁の友達:真
委員長:律子
近所のお姉さん:あずさ
田舎に住んでる従妹:亜美
田舎に住んでる従妹:真美
幼馴染み:美希
義理の妹:響
許嫁:貴音
担任の先生:小鳥
校長:高木
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/10/05(金) 14:21:39.63 ID:9Tbfl/ODo
このゲームどこで売ってますか
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/05(金) 14:34:34.22 ID:c9MmSKa9o
誰かこの同人ゲー作れ下さいお願いします
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/10/05(金) 16:56:54.01 ID:lnaICMQAO
貴音きたあああああ
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/05(金) 18:21:54.96 ID:2JNobHuR0
今更だが>>866の設定はどういう流れで作られたんだ?
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/10/05(金) 18:26:10.74 ID:SKDilXlVo
VIPで誰かが呟いた設定を使ってこのSSを書いとるんどす

貴音きてるぅーーーーー
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) :2012/10/05(金) 22:36:37.74 ID:21HFSLQMo
お姫ちんきたー
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/05(金) 22:38:34.98 ID:HZztdbxgo
お姫ちんが出る
ただそれだけのことに一体どれほどの月日を費やしたのだろうか
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/10/05(金) 23:56:44.13 ID:+MYP/IBAO
>>870
 元々VIPで建っていた
 『P「姉は貴音、妹は伊織」春香「なにしてるんですか?」』
 と言うスレで、何の気なしに>>866と書き込んだあと、そのまま調子にノって代行を頼み始めたがこのSS開始までの経緯になります。
 完全に見切り発車で始めてしまったのですが、日に日に妄想は募り脳内では大変な規模にまでなってしまっている現状です。引き延ばし引き延ばしの展開、重ね重ね申し訳有りません。
875 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/06(土) 00:21:46.23 ID:VAbzMSTAO
貴音「今日は、とある方の御自宅を訪ねるようとひとり向かっていたのですが、慣れない道に迷ってしまいまして…」

P「あー…、この辺は初めてだと迷い易いかも知れないですね」

貴音「ひと休みしようと、この場で空を眺めていたら雨粒が降りてきたのです」

 それじゃあ、本当に後から俺が来ただけなのか。
 確かに着ている和服は濡れていないようだし、足下も泥で汚れた様子はない。
 そしてこの通り雨では、足留めを喰らうのは必然だな。

P「急に現れた気がして、宇宙人かなにかかと勘違いしちゃいましたよ」

 なんつって!

貴音「なんと…!」

P「え」

 なにその反応。こわい。

P「……えっと、そう言えば道に迷ってたんでしたっけ」

貴音「お恥ずかしながら…」

P「良かったら、雨があがったら道案内しますよ」

貴音「真ですか?」

P「この町のことだったら知らない道はないと思いますから、多分役に立てるんじゃないかと」

貴音「その申し出は大変喜ばしいのですが、出逢って間もない方にそのようなこと、迷惑ではないでしょうか…?」

P「俺の方から言い出したことだから、気にしないでください」

 あからさまに困ってる人を放っておくのは気分が悪くなるし、
 それになんだかこの人は放っておくと危なっかしく感じる。この感覚は、散歩中のあずささんと会った時の感覚に似ている。

貴音「お優しいのですね」

P「あなたが美人だから、鼻の下をのばしてるだけですよ」

貴音「……“鼻の舌”がのびる…?」

P「あ、なんでもないです気にしないで下さい」

 ウケを狙ったら素で返されちゃったよ……恥ずかしい。
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/06(土) 00:40:48.73 ID:C+ghkKMe0
876
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/06(土) 00:41:40.68 ID:FiwinOuio
宇宙人要素が許婚要素より強そう
878 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/06(土) 00:46:15.51 ID:VAbzMSTAO
P「なにか住所がわかるようなものって有りますか?」

貴音「それならばこちらの紙に…」

 女性が、手に持ったポーチから1枚のメモを取り出したので、見せてもらう。

貴音「七の二拾二の六というので、この辺りだと思ったのですが…」

P「………」

 メモを読んだ。
 この町の名前と、丁と番地が書いてあるだけのものだった。

P「あの…」

貴音「はい?」

P「これ、1丁目だと思いますよ?」

 ×7−22−6
 ○1−22−5

貴音「……なんと」

P「さらさらっと書いてあるから読み間違えますねこれ…」

 この町は6丁目までしかないんですよね。
 ちなみにここが6丁目。

貴音「で、では1丁目というのは…」

P「ずっと向こう。と言うかウチの近所じゃないかなこの住所」

 懸賞品生活とかしている訳ではないので、自分の家の住所もあやふやな現代っ子なぼくです。

貴音「そうなのですか、なにやら不思議な縁が有るようですね」

P「そうですね。これだったら本当、俺も帰り道なんで一緒に行きませんか?」

 話している間に、雨も止んできたようですし。

貴音「そうですね、それではご厚意に甘えさせていただきます」

 実に自然な、しなやかな動作で頭を下げられて、慌ててお辞儀を返す。

 条件反射みたいな。
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/06(土) 00:51:10.98 ID:EsUg/oByo
7丁目から1丁目になるついでに最後6から5になってるよ
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 01:12:23.02 ID:N+HVsoNDO
まあ5と6も形は似てるっちゃ似てるな
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/06(土) 01:38:13.15 ID:8B7WBuUAo
ほら・・・・貴音は近眼だから
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 02:17:44.04 ID:l4u5g4YTo
おっ、来てたー
883 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/06(土) 07:15:44.31 ID:VAbzMSTAO
P「へぇ、じゃあ隣の町から」

貴音「はい。駅までは家の者に送ってもらったのですが、そこからあの公園まで迷ってしまい…」

 駅からあの公園まで歩いたのか。でも更にウチの近くまでって、結構距離があるぞ。

 駅の位置を頂点aとしたら、さっきの公園はbで我が家がcの正三角形になるくらい。

P「足痛くないですか?」

貴音「これしきの事、あの方に出逢える喜びと比べましたらいか程にも」

 凛と澄ませた笑顔で、苦を苦とも思わず歩いている。
 カジュアルな恰好と言うわけでは無く、行動が多分に制限される和服を着ていての歩み。

 いったいどれほどの想いがあって、この人はここまでやって来たのだろう。

P「多分、もうすぐ着きますよ」

貴音「真ですか…?」

 大分家に近付いてきて、あとは我が家までなら曲がり角1つというところで、
 3歩後ろを歩いていた女性に声をかけた。

 女性はゆっくりと深呼吸をすると、また深くお辞儀をしてくる。

貴音「斯様に入り組んだ道程、私ひとりでは到底辿り着けなかったことでしょう。真になんとお礼を申せば良いのでしょうか…」

P「いやいやいや、実は入り組んだ道を歩いてたのは近道するためで、直線距離ならもっと解りやすいですよ」

 わかる限りの全力でショートカットを歩いてきた。あたかもサンダードリフト走行のような道筋だったけれど、時間で言えばかなり短縮になったはず。

貴音「その様な気遣いまで…」

 うぅん…。
 古風な人だとは思っていたけれど、このひとは恩や義理をとても大事にするひとらしい。

 格好つけて道案内を申し出ただけの自分としては、ここまで感謝されてしまうと何やら後ろめたさを感じてしまう…。

P「──ほ、本当にあと少しですから、行きましょう」

貴音「はい。最後まで面倒をお掛け致します」
884 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/06(土) 07:50:36.36 ID:VAbzMSTAO
P「えっと、メモの通りだと住所はこのへんのはずなんですが…」

 1−22−5。

 「1」が「7」に見えてしまう達筆さもさることながら、
 後ろの「5」も字が丸く荒れていて、注意深く見ないと「6」と間違えてしまう。

 辺りを見渡す。けれど該当する住所は我が家しか見当たら無い。

 あっれぇ〜…?
 裏側なのかな……それとも「5」じゃなくて本当に「6」なのか?

 首を傾げていると、後ろで女性の弾んだ声が聴こえた。

貴音「あ…ありました、この家です…!」

P「本当ですか──」

 振り返る。

 女性が嬉々として指差しているのは、我が家。

 我が家。

貴音「住所も符合しておりますし、何より名前が間違い有りません」

 ああ、そうか名前か。

 俺は訊いてなかったけど、訪ねるなら名前くらい知ってるよね。でもそこは、

 我が家。

貴音「えい」

 驚きと困惑のあまり思考停止状態に陥っている俺を余所に、躊躇せずインターホンを押す女性。

 今日はなんかの記念日で学校が休みの響が家に居るはずだから、インターホンを押したら出てくるはずだ。

響「──はいさーい、どなたー!」

 インターホンにも出ず直接玄関を開けて出てくる義妹。
 その対応は危ないからやめろと教えたでしょ!

響「あ?」

貴音「おや?」

 響の視線が、門の前にいる女性の視線とかち合う。

響「あーっ! 貴音ー!」

 …うん?

貴音「これは、響ではありませんか。どうしたのです、この様なところで」

 …知り合い、だと…!?

響「どうしたって、ここ自分の家だぞ」

貴音「なんと…!? ……よくよく考えてみれば、響はあの方と同じ名字なのでしたね」

 どう言うことだ思考が全く追いつかない…!!
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 08:45:52.45 ID:g+7cCKguo
まさか響の許嫁という可能性が微レ存?
886 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/06(土) 08:46:37.11 ID:VAbzMSTAO
貴音「あの、響の家に、私と歳の近い男性は居りますか?」

響「えっ? 貴音って高校3年生だから、にぃになら1つ下で歳が近いと思うけど…」

貴音「…! そ、その方とお会いすることは出来ますか?」

響「それがにぃには今日学校でまだ帰ってきてないんだ……ん?」

 塀の陰に隠れて様子を窺っていたのを発見されてしまった!

響「なんだ、にぃに帰ってきてたのか!」

 響の言葉に、驚いた様子で振り向く、貴音と呼ばれていた女性。

 そこに居るのは当然俺なわけで、貴音さんはキョトンとした、呆気にとられた表情になる。

響「あぁもう、雨に濡れてびしょびしょじゃないかぁ! ……はいにぃに、タオルっ!」

 やれやれと怒りながらも、玄関にタオルを置いて待っていてくれたのだろう。
 近付いて受けとりありがとうと伝えると、響は満足そうに頷いた。

響「にぃに、前髪が顔にへばり付いててお風呂上がりみたいだぞ」

 ああ、そう言えば。気障った感じの髪をかき上げる動作を貴音さんの前でやりたくなかったので、濡れたまま気にしてなかった。

 一昔前の恋愛ゲームの主人公みたいになってる。

貴音「…あの、もしやあなた様は…」

 グシグシと頭を拭いていたら、恐る恐るといった具合で、貴音さんが声を掛けてきた。

P「済みません、じつはここ俺の家で…」

 水気が取れたところで、タオルを下ろしてもう一度向き合う。

 目と目が逢う。
 髪の毛が邪魔をしないから、今度は鮮明に女性の姿が見れる。

 妖艶な銀髪を結い上げた着物姿。
 和服の上からでもわかる、日本人離れした身長とスタイル。

 そんな女性が、わずかに涙を滲ませながら接近してき──

貴音「あなた様ぁっ!」

 ええええええええええええええええぇ!!?

P「ええええええええええええええええぇ!!?」

響「うええええええええええええええええぇ!!?」
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 09:45:36.24 ID:m7L0fYeWo
これはマジ麺YO
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/06(土) 09:46:55.07 ID:aeF8c97Wo
お姫ちんとひびんきんが知り合いってことは、やっぱり961に通ってるのかな
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/10/06(土) 10:48:41.09 ID:nxD7Jlwno
うわああああ
続きはよおお美希との修羅場ああああ
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/06(土) 12:08:35.21 ID:EsUg/oByo
+   +
  ∧_∧  +
  (0゚・∀・) ワクワクテカテカ
  (0゚∪ ∪ +
  と__)__)   +
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/06(土) 12:28:56.44 ID:C+ghkKMe0
どう自分の住所を間違えたかkwsk
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/10/06(土) 12:56:26.48 ID:5wLMS0aso
Pは自分の住所は正確には覚えてないって言及してるよ
893 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/06(土) 13:28:11.92 ID:VAbzMSTAO
貴音「先ほどは取り乱してしまい申し訳有りませんでした」

 突然強く抱きしめられ困惑したものの、
 状況の説明が互いに必要だと気付き、取り敢えず家に上がってもらう事にした。

 リビングに向かい合い響が煎れてくれたお茶を飲む頃には、高ぶりを見せていた貴音さんの態度も沈静化した。

響「どうしたんだ貴音。急に…うちのにぃにに抱きついたりするなんて」

貴音「まさか、偶然に出逢ったあなた様があなた様だっとは思いもよらなかったので……はしたない処をお見せ致しました」

 そもそもあなた様ってなんなんだ。

P「えぇっと……響はこの人とお知り合い?」

響「貴音は961女学院の友達だよ」

貴音「四条貴音と申します。961女学院で高等部3年、生徒会に所属して居ります」

 四条、貴音、さん。
 ……うーん、やっぱり記憶に無い名前だな……。

響「貴音は高等部入ってから、もう3年間も生徒会長やってるんだぁ、凄いよね!」

貴音「それを言うなら、響こそ中等部で有りながら立派に書記の仕事を果たして居るではありませんか」

 そっか、生徒会か。
 響は誰とでも仲良くなれる子だけど、だからと言って高等部の人間と交流を持つのは難しい。
 けれど生徒会ならば、納得と言うものだ。

 生徒会なら……。

P「響って生徒会入ってたのか!?」

響「な、なにさ今更。制服の襟に生徒会の証の『961バッジ』付けてたでしょ!?」

 ああ、あのバッジ。
 あれ生徒会役員の印だったのか。

 たしか初めて見たとき「う○こみたい」って言って、響にグーで殴られたから意識するのやめてたよ。

894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 13:54:29.29 ID:JX+TU+GAo
う○こwwwwwwww
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/06(土) 13:57:38.23 ID:7GJoF0xUo
う〇こに見えるようなデザインにする学校側が悪いのか
直感的にう〇こだと思うPが悪いのか
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 14:28:50.62 ID:MB+5hNh+0
両方じゃね
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/06(土) 16:09:22.53 ID:8B7WBuUAo
取り合えず961の性にしとけばウィ
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 22:56:02.49 ID:JNJjCmlBo
貴音も年上か
899 :VIPにかわりましてRIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 04:37:44.65 ID:6PpAKyhW0
まぁ主人公が中学年(2年生)とすれば貴音の様なキャラは先輩(一学年上)ポジは妥当だろうな年齢的にも
あずささんが先輩ポジなら同学年でも良い感じがするけど……Σ(゚д゚) エッ!? りっちゃん?
72云ってやがる主人公のクラス委員長以外のポジなんて有り得んだろう!!!!リッチャンハ、カワイイデスヨ
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 06:22:16.82 ID:97PwfSoxo
りっちゃんは年上でむタメでもイケる不思議な子
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/07(日) 07:10:44.73 ID:lUClBQxho
>>899
高校じゃないっけ?
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/07(日) 08:21:09.79 ID:2FnRqbTTo
>>901
18だけど卒業後じゃなかったっけ?
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 12:26:43.45 ID:fdGsbkCDO
>>901
〇中学年
×中学生
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/07(日) 14:14:14.30 ID:8uh9JovVo
高音がきてて思わず小躍りした
905 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/08(月) 07:23:45.74 ID:BnX/H8fAO
P「それで、今日は響を訪ねて来たわけじゃ…ないですよね」

 玄関で響を見て驚いていたし。

貴音「本日は、『六月の花嫁』として良い機会に恵まれましたので、兼ねてより一度御挨拶差し上げようと思って居りましたので、こうして参りました次第です」

響「『六月の花嫁』ってなんだ?」

P「海外のジューンブライドとか言う風習で、6月に結婚した女性は幸せになれるって縁起話だよ」

貴音「そのとおりです」

響「ふーん……で?」

貴音「はて?」

響「貴音はなんで結婚するためにウチに来たの?」

貴音「ですからそれは、未来の旦那様に一度御挨拶をしておかなければと思いましたので」

P「未来の?」

響「だんなさま?」

貴音「はい」

 つまりあれですか、伝説に語られる「許嫁」的な。

P「……誰が?」

 まさか、親父、再婚しておきながらこんな若い許嫁がいたとかほざくなよあいつ。

貴音「この場に居られる男性は、あなた様しか居られませんが」

P「うん……うん?」

 ちょっと待った。

 ちょっと待った。

 また思考が追いつかなばばばばばば

響「じょ、冗談…だよね?」

貴音「この様なこと、偽りや嘘になんの意味がありましょうか」

P「ばばばばばばば」

響「に、にぃに?」

 ばばばばばばかばかばかなばかなばかなそそそそそんなはずははははは

P「ハーハッハッハッハッハ!!」

響「きゃあ! にぃにが壊れちゃったぞー!!」

P「HA−HAHAHAHAHAHA!!」

貴音「笑い方が海の向こうの者たちに……なんと面妖な…」

美希「てい」

P「ごふぅ」

 突如現れた美希に後ろから肝臓を突かれて、意識を失う俺。

美希「ハニーは体の内側に攻撃するとよく効くよ」

P「よく効かない人間を俺は知らない……ぐふ」

美希「……えっと、ちょっと遊びにきただけだったんだけどね? 『花嫁』とか『結婚』とか、ミキ的に放っておけない言葉が出てきてたからね?」

 堂々と立ち尽くす美希。
 崩れ落ちた俺をソファーに寝かせる響。
 呆然と成り行きを眺めていた貴音さん。

美希「──説明、してもらってもいい?」

貴音「何故美希がこの場に現れたのかは不思議でなりませんが…お望みとあらば」

 互いの、笑顔が、こわい。
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 08:32:52.75 ID:H9fq9I3DO
美希とも知り合いか
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 08:48:18.90 ID:iewhJY260
そりゃ961学園だからな
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/10/08(月) 10:40:08.73 ID:Sl3pp8jro
修羅場!修羅場!!
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/08(月) 11:13:48.78 ID:eUs9mbDM0
コレガシュラバトイウモノカ
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/08(月) 11:21:42.27 ID:JfDgB/QNo
しゅらば♪しゅらば♪
911 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/08(月) 11:28:28.22 ID:BnX/H8fAO
P「……ハッ!!」

 回復する意識。
 直前のことを鮮明に覚えていたので、急いで現状確認をする。

 ここはリビングで、俺はソファーに寝かされていた。
 時間はあれから3時間は経過していて、美希の姿も、貴音さんの姿もいなくなっていた。

響「起きた?」

 台所で調理をしているらしい響が、エプロンで手を拭きながら心配そうに近付いてくる。

P「…2人は?」

響「美希と自分とで貴音と話しをしてたんだけど、しばらくしたら美希が急に帰ってさ」

 話って…許嫁のことだよな……。

響「そしたら貴音も、『目的は果たせましたから、今日のところはお暇させていただきます』っていって帰っちゃったんだよ」

P「……そっか……」

 夢ではなかった。

 急に許嫁とかおかし過ぎるだろと思ったけれど、少なくともあの女性が家を訪ねてきたのは夢では無い。

 『許嫁』……。

P「そうだ、今日は親父たちと家族みんなで外食しようって決めてたんじゃないか」

 『許嫁』って、互いの親同士が決めてたりするもののはず。
 だったら、ことの元凶は親父に他ならない。

響「いやー、それがさー…」

 響が困ったような表情で溜め息を吐いた。
 そう言えば、外食の予定なのに夕飯を作ってるのは何でだ?

響「美希から話しを聞いたお父さんが怒っちゃって、さっき帰ってきたお義父さんを連れて行っちゃったんだー…」

 なん……だと…?

響「いっしょに帰ってきてたお母さんもついて行って、取りあえず今は駅前の居酒屋にいるらしいぞ」

P「普段温厚な美希の父さんが怒るなんて……朝までコースだろ…」

響「だから、今日の外食は無しにしてまた今度ねって」

P「くぅ…! それじゃあ貴音さんのことを訊けないじゃないかっ…!!」

 ノコノコと居酒屋に行ったら美希の父さんに「ウチの娘とどっちを取るのかね!」とか迫られ兼ねないし…。

響「……にぃにはさ、知らなかったんだよね? 貴音のこと」

P「あの人のことどころか許嫁の話すら知らない」

 現在進行形で。

響「結婚…する気?」

P「“しろ”と言われてする気は無いけど……今後の話だと正直わかんないな…」

 貴音さんかどうかは兎も角、結婚そのものとなると……うぅむ…。


912 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/08(月) 13:49:18.08 ID:BnX/H8fAO
P「──へっくしょい!」

響「風邪?」

P「そう言えば服濡れたままだった……」

 流石にいまは乾いてるけど、空調から出ている風は肌寒く、ちょっとまずい感じがする。

響「ごはんの前に先お風呂入ってきたら?」

P「そうする…」

 再び台所に立つ響に給湯のスイッチを入れてもらって、俺は部屋に着替えを取りに行く。

P「……いらっしゃい」

美希「……なの」

 部屋に入ると、美希が俺の枕を持って体育座りしていた。

P「………」

美希「………」

 何も悪いことはしていないはずなのに、なぜか後ろめたさを感じる。
 交わす言葉もなく着替えを取り出していると、美希の方から声が掛かった。

美希「ハニーに『いいなずけ』がいるだなんて知らなかったな」

P「…俺も知らなかった」

美希「それもまさか、相手があの貴音だったなんて、本当に驚いたの」

P「そうか、美希もあの人のこと知ってるんだな」

 961女学院の生徒会長ともなれば、美希が知らないはずがないか。

美希「貴音はよく一緒にごはん食べたりお昼寝したりする友達だよ」

 生徒会長要素がねぇ。

美希「……さっき、貴音から何となく事情は聴いたよ」

P「事情というと…」

美希「うん、『いいなずけ』の話は、2人のお父さん同士が勝手に決めたことなんだって」

 そんな大事なことをなぜ親父は黙っていたんでしょうかねぇ…。

美希「2人が結婚出来る歳になったら教えてあげる約束だったみたいだけど、貴音は小さい頃にハニーのこと教えてもらってたんだって言ってたの」

P「…いいのか? 勝手に貴音さんのこと話しちゃって」

美希「貴音が、あとでハニーにも伝えておいてって言ってたから」

 そうなのか……。

美希「だから今日逢いに来たのは貴音のドクダンで、急に押しかけてごめんなさいって」

P「……美希は、途中で一旦帰ったんだよな?」

 いつも……こんな、俺のことを慕ってくれているのに、そんな美希から説明させてしまうなんて…。


美希「話しが難しかったから家でメモに書くために帰ったよ?」

 メモ!?

美希「それをお父さんが勝手に見ちゃって……ハニーのお父さんを連れて行っちゃったの」

 Oh...
913 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/08(月) 14:57:08.30 ID:BnX/H8fAO
美希「ミキ、負けないからね」

 美希がグッと手に力を込めて、瞳に闘志を宿す。

美希「『いいなずけ』って、親が決めた相手なら子供は結婚しなくてもいいんだよね?」

P「たしかそんなこと聞いたことがある」

美希「なら何も問題はないかな。貴音はすごい手強い相手だけど、勝てない相手じゃないってことだから」

 自信満々に、腕を組み胸を張ってみせる。

美希「だから、ハニー」

P「うん?」

美希「ミキに遠慮したりしないで、ちゃんと貴音のことも見てね?」

 ───。

 美希はにっこりと、とても優しい表情をしている。

 ……どうしてお前は、そんなに明るいままで、そんなに強くいられるんだろう。

P「……ま、まずは友達からだな」

美希「それがいいの」

 いつかの未来。
 俺の隣にいてくれる女性が例え美希ではなかったとしても、美希は今みたいに笑ってくれるんだろうか。

 それは、考えるだけで、とても辛い──

 グウゥゥゥゥ。

美希「あ」

P「………」

美希「……あはっ!」

 いや、べつにそんなてへぺろみたいな顔しなくても。

P「……夕飯食べにきなよ。そっちも両親とも居酒屋なんだろ?」

美希「そうなの! だから御相伴にあずからせていただきますなの!」
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 16:00:52.62 ID:vAg4akVLo
美希はなんて男前なんだ

これは前、中、後編の3スレぐらいになりそうだな
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 17:44:26.98 ID:iewhJY260
いや、これ2スレ目だし
もっと行くだろ
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/10/08(月) 17:55:39.64 ID:Sl3pp8jro
構わん
もう一生だらだらやってなさい
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/08(月) 20:16:06.16 ID:eUs9mbDM0
おぉ気づいたら900突破しとる
918 :VIPにかわりましてMIKIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 01:52:05.59 ID:vtmCacTm0
美希、何てイイ女…P結婚して幸せにしてあげて下さい。
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/09(火) 02:22:32.01 ID:o6uKdA3Vo
やっぱり美希はいい子だ!

というかフェアリー組は正義
920 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/11(木) 17:31:00.67 ID:c746IuOAO
響「4月になってから、にぃにの周りにはいつも女の子がいる気がする」

美希「それはミキも思うな。ハニー、こんなに可愛いいもうととおさななじみが居るのに欲張り過ぎなの」

P「女の子と接するのが増えてるのは確かだけど、欲張ってなんかないです」

 帰ってこない両親のことは忘れ、3人で響の作った夕飯を食べながらの雑談。

 「アイドルをつくる部」と言うのを立ち上げてしまったんだから、女の子と接するのは当然と言うもので。

 …え? 部にマネージャーは入れないのかって?

 女の子目当てに近寄ってくる輩が多いから、男子部員の入部は華麗に断ってるよ。
 春香たちからもなるべく断って下さいって頼まれてるし。

 女子からも話は来ているけれど、現状4人で様子を見たいので、これもやはり断っている。

 結果、俺が部活にかこつけて女子を囲っているだけだのどーのこーのいう噂までたっているらしい。

P「俺がモテるとか馬鹿な話だよなぁ」

 特別ひとに好かれるようなことをしている訳じゃない。
 自分のしたいことをする為に努力することはあっても、ひとの為の努力なんて、多分片手で数えられる位しかない。

 そんな、自分で自覚があるくらい自己中な奴がモテたりするなんて“おかしい”。“ありえない”。みんななにかを“勘違いしている”だけだ。

 モテようと努力しているひとに、本当に失礼な話だ。

響「……なんだろう、すごくにぃにを殴りたいぞ」

美希「ミキもなんかムラムラするの」

 ムラムラってなんだ。

 でも2人は俺のこと好きだと言ってくれるから、それは嬉しいんだよ。
 ほんとだよ。
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/10/11(木) 17:38:55.41 ID:y7EwSnywo
キター
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/11(木) 18:09:08.08 ID:7hSRfz3Do
俺もP好きだわ
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/11(木) 19:38:51.14 ID:mtc8bSi3o
961は女子校だけどジュピターはどうするんだろ。あまとうが親友ポジでも面白そうだけど
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/10/11(木) 19:48:10.24 ID:KrvtWbeso
ただでさえ数が多いのにこれ以上増やしてもただ出ただけで終わるような
>>1が適役があると思えば出してなければ無理に出さんでもええねんで
925 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/11(木) 20:38:59.14 ID:c746IuOAO
 翌日、日曜日。

 朝帰りしてリビングで無様に寝転けている親父にタオルケットだけ掛けてやって、何故か同じ朝帰りなのにピンピンしているお義母さんと響とで朝食を採る。

 『許嫁』のことは「おとうさんから直接訊きなさい」と言われ、
 起きるのは夕方だろうと推測して、それまでは家で過ごすことにした。

 散歩に行ってもよかったのだけど、さすがに人生を左右しかねない問題を抱えている状態で暢気になどしていられなくて。

 夕飯だと声をかけられるまでほぼ部屋に籠もりっきりで、気がついたら授業の予習が来学期分に突入していた。


P「さて親父様」

 夕食も済んだ時分。
 気怠そうに、ヨレヨレのワイシャツから寝間着に着替えていた親父がリビングのテーブルについている。

 長方形のテーブルの上座に義母。その右前に響、俺の順に並んで、俺たちの対面には親父。
 これが我が家の基本配置。

 夕食からずっと俯いたままの親父を冷ややかな目で見ながら、食後のお茶を一口飲んで話題を切り出した。

P「『許嫁』について…率直に訊くけど、忘れてただろ」

 親父は少しの沈黙の後、顔を上げて小さく頷いた。

響「なんで忘れてるって思ったのさ」

P「だって、『許嫁』がいる息子に“美希ちゃん嫁にもらっちゃえよ〜”とか言わないだろ普通」

響「あー……」

 推測を聞いて親父も意を決したようで、次の言葉は俺の質問より早く告げられた。

 曰わく、
 「お前に男の夢、ハーレムを叶えてやろうと思って」。


 ドつかれた。
 俺に。
 響に。
 義母に。

 まだ酒抜けてないなこの人。

926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/11(木) 21:01:07.01 ID:eLBh2CGho
親父GJ
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/11(木) 21:20:29.17 ID:4sQgiHqZo
親父wwwwwwwwwwww
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/11(木) 21:24:10.20 ID:TIJ6Hp9io
ダメだこの親父早く何とかしないと…
929 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/11(木) 21:26:36.07 ID:c746IuOAO
 意識がはっきりしてきたところで、家族会議を再開。
 今度はわりと真面目に答えてくれた。

 親父と貴音さんの父…四条パパは幼馴染みの親友だったそうで、高校どころか大学までずっと同じ学校にするくらいの仲だったらしい。

 お調子者の親父と、由緒正しい家柄から真面目気質な四条パパは何故かひどくウマが合ったそう。
 けれども2人は昔から共通の悩みが有って、「恋人が出来ないこと」が凄く悲しかったという。

 「お前が女だったらな…」が互いに口癖だったらしい。

 そんな2人はモテない男の情熱を注いで、2つ約束を作った。

 「相談無しに童貞を棄てないこと」。
 「互いに子供が出来てそれが男女であったなら、成人を機に許嫁として出逢わせる」。

 ……なんとも下衆な約束だけれど、ふたつ目の方は昨日美希から教えてもらっている。

 仲が良かったはずの2人は、然しこのお調子者のせいで喧嘩別れになってしまったという。

 つまるところ、親父がひとりで先に“卒業”してしまったらしい。後に俺の母になる人と。

 約束を破られ、あまつさえそれを自慢しやがった親父に怒り心頭となった四条パパは、拳一発喰らわせたきり、親父の前に姿を現すことは無かったという。

 そして月日は経ち、お見合いで結婚したという四条パパ。
 結婚式には喚ばれなかったものの、何か想うことが有ったのか、第一子である娘──つまり貴音さんの誕生を、手紙に写真を添えて教えてきたらしい。

 文通が続いたわけではなかったけれど、やがて俺という息子が生まれたので、親父は四条パパ宛てに、写真と手紙を送った。

 そのやり取りにより「約束のふたつ目」は成立され、貴音さんは俺の、俺は貴音さんの『許嫁』ということになったらしい。
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/11(木) 21:27:20.60 ID:FWCxMZTD0
親父殿・・・
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/11(木) 21:54:02.54 ID:cpJEZpcT0
これ昼ドラいけるで
932 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/11(木) 22:26:22.43 ID:c746IuOAO
P「うん、そこまでは良いよ。言いたいことも有るけど、過ぎたことだから我慢する」

 『許嫁』まではまだ赦せるよ。
 でも問題はその後だよ。

 親父はその後、まぁなんやかんやあってお母さんと離婚した。
 深く相談し合った結果、親権は親父が持つことになった。
 いまは互いに別の家庭をもっているが、それでもお母さんは俺の誕生日には電話を一本くれたりするマメな人だ。

 そしてしばらくは男手ひとつで頑張ろうとしてくれたが、限界。
 外回りのとき偶然喫茶店で相席になった響の母…つまり義母さんと意気投合し、瞬く間に結婚してしまった。
 義母さんもバツイチだったので、そうして連れ子である響が俺のいもうととなった。

 そんな、慌ただしい毎日のせいで、親父は忘れていたんだ。

 昨日、美希のお父さんから『許嫁』という言葉を聴くまで、スッカリスッキリと。

P「…我ながらなんてダメな父親だ…!」

 家族のことを悪くいうのは嫌いだけれど、いまばかりは愚痴を零さずにはいられない。

 だって、あんまりじゃないか。

 そりゃ約束とは違ったかも知れない、成人してからの話しだったかも知れない。

 でも、それでも、貴音さんは、

 ずっと俺のことを『許嫁』として考えてくれてたんじゃないか。

 あんなに、所在を訊くだけでしどろもどろになってしまうくらい、良くも悪くも思ってくれてたんじゃないか。

 …それなのにのうのうと生きてきた自分が恥ずかしい。
 貴音さんの人生を散々縛っておきながら、何も知らず自由に生きていた自分が情けない。

 誰が悪いわけでも無いはずなのに、何故だかとてもやるせない。


 謝ろう。
 次に貴音さんと会ったら、先ず謝ろう。

 それから、これからについて話してみよう。

933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/11(木) 23:15:43.83 ID:LD/vziQ2o
Pが謝るのは筋がちと違う気もするんだが・・・まぁ、性格かな
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/11(木) 23:38:31.42 ID:f527nusUo
責任とって結婚するしか
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 07:56:16.00 ID:ZtGY7+mgo
凄いなあちこちでフラグたちすぎてPの旅立ちの未来しか見えない
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 13:29:02.55 ID:UVdAFUGN0
悲しみの向こうに旅立つんですね、わかりません
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/12(金) 22:52:37.45 ID:Y5DSEicro
貴音「中に誰もおりませんよ」
938 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/14(日) 00:53:44.69 ID:CqpQadLAO
P「いってきまーす」

 朝。朝食を食べて、制服に着替えて、家を出る。
 貴音さんとは自力で会う方法がわからないので、取り敢えず保留ということにした。

貴音「おはようございます」

 そしたら門の前に居た。

響「たっ、貴音!?」

P「おはようございます貴音さん」

響「普通に返した!?」

 朝からテンション高いな響。
 俺は面喰らってるだけだよ。

P「…えっと、今朝はどうして?」

貴音「昨日は押しかけるような真似をして迷惑をお掛けてしまいましたので、学校までの道すがら、もう一度お話しが出来ないものかと…」

 貴音さんは、響と同じ961女学院の制服を着ている。
 その後方で存在感むき出しに停車しているのは、リムジンというヤツではなかろうか。

美希「ハニーが誘惑されてるっ!」

 珍しく自分で家から出てきた美希が、俺と貴音を見るや誤解たっぷりの発言を。

貴音「おや、美希ではありませんか、おはようございます」

美希「おはよう! それでなんで貴音が朝からハニーの家に来てるの?」

貴音「それは私の方から訪ねたので……あぁ、なるほど」

 少し何かを考えるような素振りをして、貴音さんはポンと手を叩いた。

貴音「いつも美希の話していた、将来を添い遂げたい御方とは…」

美希「──ダメっ、黙るの貴音! それ以上なにも言っちゃダメ!!」

貴音「申し訳ありません…」
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/14(日) 00:55:56.20 ID:eHarTk7fo
珍しいなこの時間は
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 01:20:52.71 ID:wgPVl7Y30
寝ようと思ってたらきてた
941 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/14(日) 02:11:57.33 ID:CqpQadLAO
P「あの…」

 朝の忙しい時間帯。余裕をもって行動しているつもりだけど、あまり時間はかけられない。

貴音「話が逸れました。……私がお伝えしたかったのは、学校に着くまでの、ほんのわずかな時間だけで構いません。いま暫く、話しを聴いていただくことは出来ませんでしょうか?」

 真っ直ぐに瞳を向けて、こちらを見てくる貴音さん。
 それに圧し負けたりすることもなく、俺は、

P「お話をすること自体は構わないんですけど、道が逆方向ですよ…?」

 ただ事実を告げた。

貴音「……なんと」

 961女学院はウチを出て左。
 765高校はウチを出て右。

P「どちらかがどちらかの学校まで見送りをしてたら、確実に遅刻をすることになります」

 961と765は喧嘩でもしてるみたいに極端に離れた位置に存在しているので、迂闊なことは出来ない。

貴音「それでしたら、車で遅らせていただきます」

P「リムジン、女学院方向に向いてますけど」

 この辺りは住宅地だから、リムジンのような車が周り込める場所は中々無い。

貴音「困りました……」

美希「じゃあとりあえず今日はハニーを諦めておいて、美希たちを乗せて学校まで行っ…にゃのっ!?」

響「バカなこと言ってないで、はやくしないとバス乗り遅れるぞ」

 美希の頬を軽くつまんだ響が、俺や貴音さんなど意に介さないと言った様子でスタスタと歩き始めた。

響「…にぃに」

P「お、応?」

響「にぃにに出来ることをすればいいよ」

 立ち止まり、俺と貴音さんとを交互に見比べて、小さく笑う。そしてすぐにまた歩き出した。

 …流石いもうと。俺がひとつの案を思いついたことに感づいたのか…。

美希「にゃのぉぉー……」
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/10/14(日) 02:20:58.11 ID:QOKezW42o
頑張れ見てるぞ
943 :VIPにかわりましてMIKIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 06:44:54.48 ID:w6DQPykv0
>美希「にゃのぉぉー……」

ミキミキ可愛い過ぎ(・∀・)
944 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/14(日) 10:29:02.00 ID:CqpQadLAO
 響と美希が去ったあと。
 2人立ち尽くしている理由はなく、俺から話しを切り出した。

P「途中まで、歩いて行きませんか?」

貴音「歩いて…ですか?」

P「歩きながらでも話をして、区切りが良いところで貴音さんは車に乗って、俺は走っていく。それなら、なんとか」

 多分遅刻ギリギリになるとは思うが、サボりにさえなければ問題は無い。
 それにこの方法なら、貴音さんは確実に間に合う。

貴音「……わかりました。では、その様に致しましょう」

 そういうと、運転手に一言二言を告げて、先に発進させた。

 これで本当に2人だけが残されて、2人同時に歩き出す。

 俺は左へ。
 貴音さんは右へ。

P「うん?」

貴音「おや?」

 振り返り、互いに顔を向き合わせる。

P「途中までって言うのは、961までのことですよ?」

貴音「ですが、そうしますとあなた様がとても遠回りになるでは有りませんか」

P「それは、まあ、ご愛嬌で」

貴音「なりません」

 凛とした声で、窘められる。

貴音「昨日も今朝も、私個人のわがままに依る行為。これ以上あなた様に迷惑をかけてしまっては、私の立つ瀬がなくなってしまいます」

P「話がしたかったのは、俺も一緒ですから」

貴音「ならば尚更のこと、私があなた様について行きましょう。車はあなた様の通学路へ先回りさせておりますから、私はいつでも学院に向かえます」

 涼やかな表情。
 これは、たぶん何を言ってもきかないのだろうと、直感で認識した。
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/14(日) 11:01:29.14 ID:4joF82Xe0
た・か・ね!
946 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/14(日) 11:29:14.63 ID:CqpQadLAO
 結局、765高校までの通学路を、2人並んで歩くことに。

 だが何から話を切り出せばいいのかがわからず、しどろもどろに言葉を発した。

P「『許嫁』の話、昨日親父から聞きました」

貴音「……そうですか」

P「俺、何も知らなくて、昨日も貴音さんから会いにきてくれたのにろくな話しも出来なかった…」

 不意に、思ったままに言葉を発していた口に細い指が当てられる。

貴音「どうかなにもおっしゃらないでください」

 少し悲しげに、瞳に憂いを湛えた貴音さんの指が、離れる。

貴音「わかってはいたのです。父からは“本当は成人してから”という前提のもと、お話を伺ったのですから」

 言いながら、内胸のポケットから取り出されたパスケース。
 開かれた中には、俺だと思われる赤ん坊の写真が入っていた。

貴音「夢見がちだった、まだ空想や物語に胸を躍らせていた女の子には、『許嫁』というものがどれほど素敵に感じたのか。今ではもう、思い出すことも難しいほどに昔のことですが」

 また、大事そうに、写真を胸ポケットにしまう。

貴音「あなた様」

P「はい」

貴音「私は、あなた様が好きです」

 歩みは止めずに、けれど真っ直ぐにこちらを見つめて、彼女は言った。

貴音「ですが、だからと言ってあなた様が私を好きになる理由は無いのです」

P「な、なんでですか…」

貴音「私も、あなた様も、等しく人間。よく思うところもあれば、わるく思うところもありましょう。そんなとき私は、あなた様を縛る鎖にはなりたくはありません」

 “許嫁だから好きでなくちゃいけない”。
 “むこうが好きだからこちらも好きでなくちゃいけない”。

 そんな思考に陥らないようにと、貴音さんは言った。

 ……なんだこれ。
 なんで俺はまた、貴音さんに気を遣わせているんだ。


 俺は俺の言葉を、俺の気持ちを伝えたくて話しがしたかったんじゃないか…!
947 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/14(日) 12:35:11.45 ID:CqpQadLAO
P「貴音さん!」

貴音「はい?」

P「お、お友達からはじめませんか!?」

貴音「…お友達、から…?」

P「お互いにまだ若いんですし、色恋沙汰…まして結婚について話し合うなんて、結論を出すなんて、早すぎると思うんですよ!」

貴音「ですが…」

P「だから、友達から。貴音さんの言うとおり、まだ互いの良いところも悪いところも知らないから、まずは仲良くすることから始めましょう」

貴音「……“約束”を破り、自分の抑えがきかず遂に家に押し掛けて来てしまうような私が、あなた様のお側にいてもよろしいのですか…?」

P「約束って…成人してからってことですか?」

貴音「はい」

P「それは、そもそも父親同士が勝手に交わした約束なんですから、たとえば罰が与えられるならお父さんだけだと思いますよ」

貴音「…そのような考え、思いもよりませんでした」

P「……それで、もし貴音さんにもっと好きな人が出来たのなら、俺は友達として応援できます。約束を破った罰なんかも、必要ありません」

 だれよりも“約束”に縛られているのは貴音さん自身だ。

 恋愛っていうのは、もっと自由で良いはずなんだ。

貴音「──他の誰かを好きになることなど、私には決して有り得ないことです…」

 貴音さんが、小さく笑った気がした。

貴音「友達というものは、どれほどの距離感で居ればいいのでしょう」

P「え? ……えぇと、互いがイヤだと思わないくらい…?」

 “友達であること”を意識したことなんて無かったから、中々難しい質問だ。

貴音「なるほど……あなた様がイヤだと言わなければよいのですね」

P「え──」

 返す間も無く、歩幅を合わせてピッタリと寄り添ってきた。
 制服越しに、貴音さんの温もりが腕に伝わってくる。

貴音「夢のようです。こうして、あなた様と共に歩けることが…」
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/14(日) 13:05:40.76 ID:4joF82Xe0
こうも更新が多いのが夢のようです
949 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/14(日) 14:41:04.30 ID:CqpQadLAO
 落ち着けオチつけオチを付け。

 女の子同士だと密着するのが親愛表現なのかも知れないじゃん!
 いやそんなわけねぇ!

P「たかかたかたか貴音さん」

貴音「はい」

P「もうすこし離れてもらえると助かります」

貴音「あっ……申し訳ありません…」

 うぉぉなにこの罪悪感…!!

P「あの、それと呼び方もすこし…かえてみません?」

貴音「呼び方……そうですね、それは私も思っておりました」

 あ、そうなんだ。
 とはいっても名字呼びは他人行儀すぎるし…だからといって名前呼びは恥ずかしい……となると…。

貴音「あなた様には是非、“貴音”と呼び捨てにしていただきたいのです」

P「プロデューサーってあだ名があるから、そう呼んでもらえると嬉しいです」

貴音「………」

P「………」

 ……うん?

貴音「ぷ、ぷろでゅうさぁ……ですか?」

P「たか、貴……音?」

 ……こっぱずかし!!

貴音「…ふふふっ」

P「な、なにか?」

貴音「いえ、なんだかとても楽しくて…」

 ニコニコと、まるで花が咲くように笑う貴音さ……貴音。
 大人びた雰囲気とは違った少女らしさが、

 なぜだかとても可愛くて。
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/14(日) 14:48:09.88 ID:GmseP8d+o
お姫ちん可愛いよ、お姫ちん
951 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/14(日) 14:51:48.85 ID:CqpQadLAO
貴音「それでは、“あなた様”という呼び方は2人きりの時だけに致します、“プロデューサー”」

P「あ、はい。そうしてもらえると、精神的に楽になります。ありがとうございます」

貴音「プロデューサーも、もっと気楽にしてくださいませ。それほど殿方に畏まられると、こちらも気がひけてしまいます」

P「う…うん。それじゃあ、これからよろしくお願いします、貴音」

貴音「こちらこそ、いつまでもあなた様のお側に」

 互いに改まった挨拶をして、会釈。

 また会う話をしてから、貴音は手を挙げて遠方にいた車を招き寄せた。

P「気をつけて」

貴音「それはこちらの言葉です。…長々とありがとうございました」

 今一度会釈をして、ウィンドウが閉じられる。
 車は土埃も立てず静かに走り去っていった。

P「……四条貴音さ……貴音、か」

 想像してたのとは大分違う関係に落ち着いてしまったけれど、
 これで彼女が喜んでくれるなら、よしとしよう。

P「……なんだろう、途轍もなくどうしようもない感じに底無しの泥沼に足を突っ込んでる感じがする……」

 もちろんそんな経験はないけど、感覚的に。

P「……学校いこう」

 貴音が合わせてくれたから、まだ遅刻までにはたっぷりの余裕がある。
 散歩気分で気を紛らわせながら登校しようそうしよう。


 ──だが。

 ──このとき。

 「………」

 ──俺は気付いていなかったのだ。

 ──貴音とのやり取りの間。

 ──認識外の場所から、ずっと様子を窺っていた彼女の存在に。

 「……え……」

 ──彼女は、髪に結えてある赤い布をはためかせながら、別の道から俺を抜き去り、一足先に学校に辿り着いていた。


春香「えらいこっちゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/10/14(日) 15:01:16.11 ID:QOKezW42o
すごい…
こんなに更新があって夢のようです
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 15:13:10.85 ID:5swnX49Wo
いやぁー面白い

がんばってください
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/10/14(日) 15:22:13.68 ID:PSRXogRbo
修羅場が始まるぞ・・・
955 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/14(日) 15:34:12.72 ID:CqpQadLAO
 おかしな連勤が祟って体調がすぐれないなか書いてしまいましたので、読み辛い部分多々全面だと思われます、申し訳ありません。

 もう50を切ってしまったのですが、そろそろ次を用意して移行するべきなのでしょうか…?
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/14(日) 15:36:36.75 ID:LHPLfJPqo
このペースなら980ぐらいで良いと思うます
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/10/14(日) 15:39:29.48 ID:QOKezW42o
まだ大丈夫だと思うから続きはよ!
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 15:48:05.76 ID:FX2JyTypo
980くらいになったら新スレ立てて、誘導したら埋めで良いと思う
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/10/14(日) 16:16:47.29 ID:83pJ9UB50
春香さんはどこから聞いてたんだろう
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/14(日) 17:14:13.67 ID:DzCULAS7o
貴音無双わっほい
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/14(日) 17:18:08.70 ID:4joF82Xe0
                             __-=ニ二二二ニ=-__ `  、
                              __-=二 ̄ ̄ ̄ ̄二ニ=-__  \
                        /               ̄ニ=-   \
                       /    ′              ̄| \   ヽ
                      /    ′ l  | |i    l     !   丶   ’,
                        /  /    |   l  | |l    l     |       ‘
 >>961です、あなた様      '  /  l|  |   l  iN|l    |     |     !    ‘
                    /|  l   | !|l|     斗-t==ミ刈l   |     |    ‘,
                        |  | ⌒ |从L -‐‐┘ ` ̄ ̄└┬‐┤    |  |   ′
                        L |イ⌒^       厂杯癶   八  |  l   !   |   ,
                   `丁i{ ノ杯Y       ヒZりノ   \|  l   |  |    ,
                        |i圦 Lり         〃〃      /      |  |   ′
                        |  〃ノ              ,′    |  |     ’
                         |  {  ヾ                   ′  |  |    ,
                    l 八              /   /    |   ,     ′
                     l/   丶   `こ゚´        /        |   ′   ‘
                      | i   }ヘ           /{   ′   │   ,      丶
                       | l   | 个o。 ___    ´  {   {       |   ′       \
                        | l   l i |   ⌒ヽ     {  八    │    \       \
                         | l   | l |    く⌒Y⌒Y´{    \____乂__   丶      \
                    | l   | | |      )⌒⌒⌒ \      ∠二二二ヽ  \      \
                   /| l   |   乂___/: : :}:o: : : : .:.\___∠二二二二二\   丶      \
                  //| l   人_____/ : : : : : ノ:o : : : : : : : : ∠二二二二二∠三\  \       丶
                 // 人     /: : : : -=≠=- : : : : : : : /二二二二二∠二二二 寸
                // / /\___/: : : : : : : :/ o: : : : : : : : :.:/ 二二二二∠二二二二三}\        }
                 / /   /ニ二三/: : : : : : : :/ o : : : : : : : ∠二二二二 / ニ二二二二三}  \
              /    /ニ二三/: : : : : : : :/ o: : : : :_∠二二二二三/二ニニ=-=ニ二三}  ノ )      ノ
.           (   (    ∠ニ二三/: : : : : : :/ : : : : :.:/__-=ニニニニニ三{二ニニ=- =ニ二三}/ /     /
.             )   )   {ニ二三/⌒U⌒U⌒U⌒U⌒{__-=ニ二二二三三{二二ニ=- =ニ二三} /     /
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 17:30:19.82 ID:jY1JVyl1o
アイマススレの誤爆したかと思ったら違う人が使っただけだった
貴音なでなでちゅっちゅ
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/10/14(日) 17:32:00.84 ID:A/Og6AcZ0
>>951
この春香さんは腹巻きして後ろから刺すタイプ
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/14(日) 18:58:33.12 ID:wgPVl7Y30
えらいこっちゃ!
大変やでPはん、修羅場が始まってまう!
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 20:50:56.96 ID:z6U17h50o
このPは一昔前のギャルゲの主人公っぽい
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/14(日) 20:51:24.50 ID:AMWcKtzRo
というかそれそのものだと思う
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/10/14(日) 23:04:36.84 ID:4T/VPoVAO
いつも更新の度に楽しく読ませてもらってます!
次も楽しみにしてますー!
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 00:33:11.28 ID:iFuqIRsoo
楽しみにしてます。無理せずゆっくり続けてください、応援してます!
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 12:40:07.33 ID:Qg8Yo9j8o
このPは腹にジャンプを挟んで生活するべき
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 13:05:42.79 ID:iItaJt8ko
なんか腹巻き巻いたリボンの似合う女の子に刺されそうだな
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/15(月) 23:56:02.62 ID:/sV+kGPz0
最近は更新多くて嬉しいな
ずっと応援してるから頑張ってくれ
972 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/18(木) 07:37:17.19 ID:fIeE0rLAO
P「おはようございまーす!」

 HR前で賑わっている教室に入ると、クラスメイトたちから挨拶が返ってくる。
 けれど、その中に真と春香の姿はなかった。

 …そう言えば、いつも行きは出くわすはずなのに春香と会わなかったな。

P「2人そろって遅刻? …なんだ、鞄はあるのか」

 じゃあ手洗いにでも行ってるのかな。

 そんなことを考えて荷物整理をしていると、教室の出入口に見知った人影が。

真「…じゃあ千早、またあとで」

千早「ええ、わかったわ……口うるさく言うのもなんだけれど、話し合っておく必要があるもの…」

春香「本番は放課後にね。それじゃ」

 真に、千早に、春香。
 そうか、千早のクラスに行ってたのか。

 なぜか3人は真剣な表情で話し合って、そして解散した。
 席に戻る真と目が合う。

P「おはよう、朝から千早のクラスに行ってるの珍しいな」

真「おはよう。そうかな」

 ……超素っ気なく返された。

 無視されるよりは全然良いけど。
 いや、そもそも悪いことした記憶がないですけど。

P「…あ、春香。おはよう」

 隣の席に着いた春香へ挨拶。
 すると春香はにっこりと笑って、

春香「おはようございます」

 と言ってくれた。
 すぐに無表情になって授業の準備を始めてしまったけど。

P「……?」

 なにか怒らせるようなことをしたか?
 それも本気で怒るほどじゃなく、態度を冷たくさせるレベルの怒りを。

 記憶がない。
 身に覚えがない。

 首を傾げて悩んでいると、小鳥さんが教室にやってきてHR開始となった。

 結局2人の態度は、放課後まで続くことになる。
973 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/18(木) 07:38:02.81 ID:fIeE0rLAO
 昼休み。

 声をかけるよりも早く、春香と真はお弁当をもってそそくさと教室を出て行ってしまった。

 授業中も必要最低限の会話しかしてくれない対応ぶりに、なんだか涙が出てきそうになる。

P「女子には女子だけの時間も必要なのかな……仕方ないし1人で食べよ……ん?」

 弁当箱を取り出して教室を出ようとしたところで、扉から顔だけだして中を覗いている女の子を発見。

P「どうしたの雪歩。お昼は?」

雪歩「あぅ!? …あ、プロデューサー…」

 視界外から声をかけたので驚かれたが、顔を見てすぐ安堵してもらえた。

雪歩「あっ、あの、もし良かったらお昼ごはん一緒にどうかなって…」

P「そうなんだ。…でも真たちもう教室から出ちゃっててさ」

雪歩「ふぇ? 真さ…ちゃんたちなら、向こうから来ますよ?」

 なに?

真「よかった雪歩、ここに居たんだ」

雪歩「う、うん。みんなでお昼食べようとおもって……」

 廊下の向こうからやってきた真。その後ろに控える春香、そして千早。

 千早を誘いに行ってたのかな?

真「そのことなんだけどさ…雪歩、耳かしてくれる?」

雪歩「う、うん…?」

 言われるがまま、片耳を向ける雪歩。真はそれを手で覆い隠すと、耳元で何かを話しはじめた。

雪歩「ひゃぁ…んっ…」

 反応がやらしい。

真「──てことなんだけど、いいかな」

 要件を伝え終えたらしい真が顔を離しながら問う。

 何を言われたのか、雪歩はしばらく考えこむように俯いた。
 チラチラと、俺と真の顔を交互に見比べている。

雪歩「……わかり、ました。そういうことなら……」

 結論が出たらしい。
 すると真が雪歩の手を握り、

真「じゃあごめんプロデューサー。ボクたちお昼食べにいくから、またあとでね」

 と言って、自然な流れで雪歩を連れていってしまった。

P「お、応…?」

 雪歩が頭だけで会釈をして去り、それに春香がついていく。 千早も俺の前を過ぎるときに会釈はしてくれたが、足早にいなくなってしまう。

 ……いったいなにがおこっているというんだ……。
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/18(木) 08:15:10.86 ID:DTVm22ih0
修羅場♪修羅場♪
975 : ◆72cuWZiGoBc/ [sage]:2012/10/18(木) 08:23:37.06 ID:fIeE0rLAO
P「ららるー、ららるー…」

 屋上で独り、青空の下もそもそとお弁当を食べている。

律子「なに黄昏てるんですか。まだお昼ですよ」

 不意に掛けられた声。
 俺以外に誰もいないはずの屋上に聴こえてきた肉声に驚いて、くわえていたエビフライを弁当の上に落としてしまう。

P「あ…エビフライ…」

律子「ケンカ売ってんですか」

 滅相もない。

律子「そんなあだ名がついたから今年は髪型変えたのに…」

P「うん。どっちの髪型も好きだよ俺は」

律子「それはどーも」

 去年の髪型はピョンピョンハねるおさげが可愛いかったし、
 今年の髪型は理知的な感じで、本来なら“綺麗”って印象になるはずが、律子の身長だと“可愛い”が増すことになっている。
 つまるところ

P「律っちゃんはかわいいですよ」

律子「はいはいありがとうございます」

P「リッチャンハカワイイデスヨ?」

律子「だから! なんで繰り返すんですか!」

 そのムキになる反応が見たかったからさ。

律子「はぁ…もー、今日は部活のみんなとは一緒じゃないんですか?」

P「ん…まぁ、たまには」

 自分自身理由がよくわかっていないので適当に流すと、
 少し離れた隣に律子が腰掛けた。

P「珍しいな」

 いつもは1人ですぐに食べて委員会やらの仕事をはじめるか、委員長同士で食べていることが多いのに。
 因みに去年だと生徒会。

律子「夏休みも近くなって、やること少なくなりましたから」

P「そっか」

 まぁ青空の下ってのは楽しい気分になるしな。

 ……あ、そう言えば忘れるところだった。

P「ほい」

律子「…? なんですかこれ」

 弁当を食べ終えたらそのまま本でも読もうと思って鞄ごともって来ていたので、
 中にしまっていた小さな包みを取り出して、律子に渡した。

P「誕生日プレゼント。もしよかったら」

 俺の言葉に、キョトンと目を瞬かせる。

律子「……知ってたんですか…?」

P「去年の生徒会メンバーなら、一応調べたから」

 我ながら気持ち悪い行為だと思うが、日頃の感謝の気持ちとして用意せざるを得なかったというか。

 ただの名前入りのハンカチだけど。

律子「ありがとうございます。ありがたく、受け取っておきます」

P「──うん、喜んでもらえたならよかったよ」
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/18(木) 10:08:47.06 ID:bDXjCW3To
リッチャンハカワイイデスヨ
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/10/18(木) 16:41:31.33 ID:M+cdDwjao
リッチャンモカワイイデスヨ
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/10/18(木) 17:06:56.00 ID:YOkz+EP8o
名前入りハンカチって……
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/18(木) 17:14:38.11 ID:u6tqPqRko
さらっと誕プレ渡しやがったw
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/18(木) 17:21:21.32 ID:vvYK0vq8o
名前入りって確かに凄いな、実際どういう関係の人が渡す物なんだ?
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/18(木) 17:55:00.54 ID:yY//eugu0
髪形変えたっていうとパイナッポーか
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/18(木) 18:46:05.05 ID:QgSfZw360
入学、入社、新婚などこれから新生活を送る人へ名入りの日用品を贈ることは多いが……
まあ深い意味はないんだろう
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/10/18(木) 21:01:56.64 ID:47vAqT6Mo
投下乙でした。
次スレは主が立てるのかしら?
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/18(木) 22:26:54.37 ID:nnglEbeIo
>>1が立てるべきだろうな
他のやつが立てても荒れるだけ
985 : ◆72cuWZiGoBc/ :2012/10/20(土) 07:34:28.98 ID:J103+JwAO
遅れて申し訳有りません、
次スレを用意致しましたので、以降はそちらにて続きを書かせていただきます。

P「学生生活でもするか!(2学期)」
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/1350685202/

意味もなく分別致しますと、
VIPの頃のスレッドが「入学式」、
このスレッドが「1学期」ということになります。
ですが「2学期」の間に本編内での2学期が終了するという断定ではありませんので、あくまでも分別上の呼び方と言うことで宜しく御願い致します。


ここまでの御付き合い、本当に有り難う御座いました。

文面では幾らもお伝えすることは出来ないとは思いますが、本当に、本当に心より感謝して居ります。

もしもまだ、いま暫くの御付き合いをしていただけますならば、「2学期」でも引き続き、宜しく御願いいたします。


by private.



残りのレスは、皆様の御意見、御感想等で埋めて下さると参考にさせていただけるやも知れません。宜しく御願い致します。

986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/20(土) 07:38:01.40 ID:TyMsjEdEo
>>985
おつ
さて、ここまで溜まったところで今から一気に読む
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/10/20(土) 07:55:03.48 ID:Y4zOZ6Rco

VIPの最初期から見てるが非情に面白かった
次スレでは過度な焦らしプレイはやめてね///
VIP並みの投下速度とは言わないから適度に…
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/20(土) 08:46:39.64 ID:A7e3a37ao
ここは初期から見てるが前スレ探して見といた方が楽しめるのかな?

とりまいつも楽しませて貰ってます乙乙
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 10:41:50.00 ID:pU4Lvqumo
専ブラだと読み込めないから貼り直しとく

P「学生生活でもするか!(2学期)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1350685202/
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/10/20(土) 12:08:28.74 ID:X1IE2AL9o

そういや高二からスタートだけど卒業までやるのかな?
アイドル全員と絡ませるなら二年分でも足りない気はするがwwww

>>988
このスレも中途半端な部分から始まってるから前スレ探して見ておく方がよいと思われる
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 17:56:47.58 ID:KhX/Otlwo
うめ
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 18:03:35.15 ID:nXqsHUJ0o
うめ
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 18:04:58.92 ID:hhxemYEfo

次スレも楽しみにしてる
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 20:03:43.05 ID:hkGW2eHDO
>>1000ならPが同級生に刺される
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 20:19:10.86 ID:bMfgLxCIO
1000なら俺がP
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 20:19:55.08 ID:mTg/j6gmo
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 20:20:31.96 ID:mTg/j6gmo
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 20:21:16.16 ID:mTg/j6gmo
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 20:22:03.34 ID:mTg/j6gmo
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 20:22:31.01 ID:mTg/j6gmo
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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.     =@>‐'´`   l   ノ   ヽ_/          ノ:
      ,ノ      ヽ =@           _,イ:
    '.o  r┐   *   ヽ、 ヽ、_     ,..-=ニ_
    =@   ノ       ノヽ、,  !..□ /     ヽ
     ヽ        .ィ'.  ,!    ハ/    、   `!、    七夕に…
      `ー-、_    く´ =@    /     ヽ  
         ,!     `!  l              ヽ、__ノ    このスレッドは1000を超えました。もう書き込みできません。
         l     `! `! !              l
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【魔法少女まどか☆マギカ】神名あすみ〜6人目の少女〜part1【SS】 @ 2012/10/20(土) 20:19:17.25 ID:VNPhlMIl0
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架空過去形<禁厭>まじない @ 2012/10/20(土) 20:18:43.16 ID:WDhd8kKQo
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姫小路秋子ちゃんが可愛すぎて生きるのが辛い @ 2012/10/20(土) 19:49:41.29 ID:C6fmfAc20
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【セプ子】カルドセプト総合スレ inごみ箱【ペロペロ】 @ 2012/10/20(土) 19:30:47.11 ID:pUIspeJgo
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やよい「jubeat sauser」 @ 2012/10/20(土) 19:29:29.89 ID:IvjcuHvo0
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ここだけ能力者の集まる高校 さらにコンマゾロ目で異能の力に覚醒 191 @ 2012/10/20(土) 19:11:20.58 ID:8bJLn8ino
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久「自動車部の活動をはじめるわよ!」  @ 2012/10/20(土) 19:01:33.61 ID:3eTMboAf0
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