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芳川「ミサカが一匹、ミサカが二匹……」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : [saga]:2012/04/20(金) 20:08:36.92 ID:rMrBg6Mb0


妹達の話です。短編ばかりを投下します。
それぞれの話は繋がってはいません。
重いのも軽いのも何でもありです。

では、よろしくお願いします。


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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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2 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:10:04.62 ID:rMrBg6Mb0


「ギャハッ!これで終わったなァ」




朦朧とする意識の中で、ミサカは思い出します

アナタの背中を

アナタの声を



「まだ逃げンのかァ?無駄だっつってンだろォがよ!!」


最後の力を振り絞ってミサカは走ります


「はい残念!追いつかれちまったなァ?」


ミサカは思い出します。

一ヶ月前のことを。

アナタと出会った日のことを。





3 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:11:05.41 ID:rMrBg6Mb0

《1182号》

「大丈夫か!?」

確かそんな言葉でした。
子猫を助けようとして、川で溺れていたミサカを助けてくれたアナタの第一声です。寒さに震える子猫を抱いてようやくミサカはアナタを認識しました
おかしな人だと思いました。たった18万円の価値しかないミサカを、体を張って助けるなんて。だから、質問したのです。なぜミサカを助けたのかということを。

「川で溺れてる女の子をほっとけるわけねえだろ!?」

ミサカが思いもしなかった答えが返ってきました。女の子?ミサカが?ミサカはクローンですよ?いくらでも、好きなだけ、同じものが作れるんです。
そう言おうとした瞬間、いたわりの言葉とともに大きな服を被せられ、そんなミサカの思いは結局言葉になることはありませんでした。

引き止めるまもなく、名前を告げることもなく、おざなりな別れの言葉を告げてアナタは去っていきました。
ミサカには大きすぎる特攻服を残して。


4 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:12:24.13 ID:rMrBg6Mb0

《削板軍覇》

「なぜ、ミサカを助けたのですか?」

それがアイツの第一声だった。今でもしっかりと耳に残っている。

今まで何度も人助けをしてきたが、そんなことを聞かれたのは生まれて初めてだった。
驚いたけど、そのまんま答えた。それを聞いたアイツの驚いた顔。
なんでそんなに驚くんだよ。俺のほうがよっぽどびっくりだ。困ってるやつがいれば助けるのはあたりまえだろ。

「ミサカは・・・・・・・・・・」

そういや服も髪も靴もびしょぬれだ。風邪引いちまうな。コレでも着とけばまだましだろ。
川に飛び込む前に脱いでおいた特攻服を急いで羽織らせた。

びしょぬれになった女の子を助けたのは生まれて初めてだった。
正直に言うと、どう対応すれば良いのか全然わかんねえ。
離れたほうが良いのか?それとも一緒についてやっていたほうがいいのか?
脳内会議の結果、離れた所から見守ることにした・・・・・・・・・・ストーカー?何のことだよ。


とにかく、何でかはわからねえ。だけど、なんとなく放っておけなかったんだ。

5 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:13:06.73 ID:rMrBg6Mb0


《1182号》

アナタを探すことにしました。
別に、クローンを助ける彼がどういう人物なのか知りたいとか、そういう理由ではありません。この上着を返すこと。それが目的です。
ミサカネットワークを使って探すことにしました。

現在存在しているミサカは、ミサカを含めたったの432人。今日も2人のミサカたちが実験に使用される予定です。供給よりも、消費が上回っている今、
きっともうすぐ大量生産が始まるのでしょう。実験は加速します。ミサカもすぐに使用されるはずです。

別にどうとも思いません。ミサカたちは実験のためだけに作られ、実験のためだけに存在しているのですから。

検索すると、彼はすぐに見つかりました。第7学区の路地裏。
たくさんの妹達がアナタを目撃していて、ミサカはすごく驚きました。

ともかくそこに向かうことにしました。

6 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:14:10.48 ID:rMrBg6Mb0

《削板軍覇》

この日も俺は路地裏のパトロールをしていた。

女を連れ込んで嫌がらせするやつ、脅して金を奪うヤツ、
そして弱い者を憂さ晴らしの名の下にぼこぼこにして付け上がっている馬鹿。

そんな根性のないやつらを幾度見たのか。幾度倒したのか。
数え切れない。数え切れるわけがない。・・・数える気にもならない。

いくら倒したところで、いくら助けた所で、そういうやつらが消えるわけじゃない。そんなことは分かっている。
だけど放っておけるわけがないだろ?

とにかく、弱いものイジメなんかやるやつは根性がないやつだ。

「何をしているのですか?」

そんなことを考えながら歩いていた俺の背中に、聞き覚えのある声がかけられた。


7 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:14:46.89 ID:rMrBg6Mb0

《1182号》


振り向いたのはやはりミサカを助けた男でした。
・・・グッジョブです、ミサカネットワーク。

それから、お礼を言っていなかったはずです。きちんと礼儀作法に従ってお辞儀をしました。

頭を上げるとあっけにとられたようなアナタの顔。なぜ驚くのでしょう。ミサカが上着を返すのを忘れるとでも思っていたのでしょうか。
それにしても、上着を着ていないアナタは思っていたよりダサいですね。
上着を着せてあげました。これでいくぶんかマシになります。

「・・・ありがとな」

なぜミサカがお礼を言われるのか全く分かりませんでした。しかしアナタは笑っていました。
それならそれでいいとミサカは自分を納得させます。

・・・・・・おもしろい人です。そう思いました

8 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:15:26.01 ID:rMrBg6Mb0

《削板軍覇》


振り向いてみると、思った通りあの川で見つけた女の子だった。にしても相変わらず特徴的なしゃべり方だな。
なんで戻ってきたんだ?また困ったことでもあったのか?疑問符が頭いっぱいに広がる。
しかし、アイツが発した言葉は俺が予想もしなかった言葉だった。

「この前はありがとうございました。」

正直驚いた。
女の子がたった一人で俺を見つけ出してこんなところに来ているということもだが、俺が一番驚いたのは礼を言われたことに対してだ。
今までに何十人と助けてきたが、その中で一度でも礼を言われたことなどなかった。
たいていのヤツは俺がレベル5だと知るとすぐに逃げていった。
・・・・・・そしてそれは、”助けたやつ”に限った話ではない。
でも俺はそれでいいと思っていた。悪いやつを懲らしめて、弱いやつを守れるなら。

上着を着せられた。

珍しいことに、俺としたことがうまく言葉が出てこなかった。やっとのことで搾り出せたのは、たったの五文字。
アイツはそれを聞いて不思議そうな顔をしていた。そりゃそうだろうな。

おもしろいヤツだ。そう感じた。

9 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:16:10.27 ID:rMrBg6Mb0

《1182号》


「パトロールしてたんだ。」

ミサカが繰り返した同じ質問に対し、アナタはそう答えました。パトロール?どういうことでしょう。
「根性の無えやつらをぶっ飛ばすんだよ」
・・・・・・なるほど。人助けということですか。なかなかかっこい・・・・・・

「すごいぱーんち!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・かっこいいとちょっとでも思ってしまったミサカが馬鹿でした。
その後もアナタはすごいぱんちとやらを繰り返しながら、スキルアウト達を倒していきました。
ミサカに向かってきたやつも、全てぼこぼこです。――結局隠し持っていたライフルの出番はありませんでした。

そして、

『943号の実験が開始されます。それぞれの持ち場に待機してください。』
ミサカネットワークからの指示がありました。
ミサカも回収に行かなければなりません。
しかし・・・・・・なんでしょうか、この気持ちは。
表現するとすれば・・・・・・・・・・・・名残惜しい・・・・・・が一番近いかもしれません。


・・・・・・名残惜しい・・・・・・?そんなはずはありません。
ミサカは実験のために作られ、実験のために殺されます。
ミサカの存在意義は実験のみにあり、実験はミサカの最優先事項です。

だからミサカはアナタに「さようなら」と言いました。
――この人を巻き込むわけにはいきません。そう思ったからです。

そして、「もうきっと会うことはないでしょう。」そう続けようとしました。
――この人は何も知らなくていいんです。

そう。そのはずでした――――

10 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:17:26.56 ID:rMrBg6Mb0

《削板軍覇》


「ミサカには行かなければならない所があるので、そろそろ失礼します。」

パトロールを開始して小一時間がたったころ、アイツはそう言って持ってきていた大きな鞄を手に取った。
そういえばアイツは、名前は忘れたが結構有名なトコの制服を着ていた。
学生っていうのもなかなか大変なモンなんだな。改めてそう感じた。まあ俺が言うのもおかしな話だが。

「だからミサカは・・・・・・ミサカは・・・・・・」

目の前でアイツはなにか葛藤しているようだった。
なに悩んでるんだ?悩み事があるならなんでも言えよ。根性の無えやつがいるなら、俺がまとめてぶっ飛ばしてやる。


――「また、アナタのパトロールとやらについていってもいいでしょうか。」


「・・・・・・は?」

ついつい口に出てしまった。いったい何回目だったんだろうか。アイツの発言に驚いたのは。
そのとき、俺は断るべきだったんだろう。
いくら生徒の多い第7学区とはいっても、路地裏には学生狙いの根性無しがうろついている。
俺がついていたとしても危ないことに変わりは無い。

だが、もし時間を巻き戻したとしても俺はイエスと答えただろう。


理由の一つは俺が素直に嬉しかったから。そしてもう一つは――


なんでだろうな。本当になんでそう感じたんだろうな。
――常時ぼんやりとしているアイツの目に、どこか悲壮感がただよっていたような気がしたんだ。


11 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:18:25.28 ID:rMrBg6Mb0

《1182号》


そうして、実験の合間をぬってパトロールについていくようになって三週間が経ち、ミサカは気づいてしまいました。
まず、アナタはとても優しい人なのだということ。
アナタは誰でも助けます。事件に巻き込まれている人。困っている人。みんな助けます。

そして

「おまえ、学校行かなくて大丈夫なのか?」

ミサカがクローンであることを知らないこと。言いそびれたのだから、知るはずが無いという事実。
そして、もしクローンだと知ったときアナタはどう思うのか、という疑問

この人はミサカを普通の女の子だと思っています。だからミサカにも優しいのだ。そう思いました。
だからもしミサカがクローンであると知ったら。たった18万円の価値しかない人形だと知ってしまったら。
――それでもアナタはミサカを普通の女の子として扱ってくれるのでしょうか。

ミサカの答えはノーでした。実験動物に対して進んで優しくする人間など存在しません。

他のミサカにはなぜミサカがこんなことを思うのか分からないでしょう。
ミサカ自身にも分かりません。
ミサカが分かるのは――いえ、知っているのは、ミサカがクローンだと知られたとき全てが終わる。
ただそれだけです。

だからミサカは思いました。


アナタには決して知られてはならないと。ミサカがクローンだということだけは、絶対に。


12 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:19:36.40 ID:rMrBg6Mb0

《削板軍覇》


そうして、アイツがパトロールの際俺についてくるようになって三週間がたったころ、俺は気づいた。
アイツがなんらかの事情を抱えているということに。

まず初めに抱いたのはふとした疑問。

なんでアイツは学校に行かないのか、なぜ夜遅くでも外出できるのか。
だから聞いてみた。平日なのに学校に行かなくて大丈夫なのかと。

別にどうってことの無い、単純な疑問。

サボっているならそれはそれでよかった。俺自身も学校に何日も行ってないしな。
それだからこそ一ヶ月経つまでそのことを疑問に思わなかったのかもしれないが。

「ミサカは・・・・・・」

しかし、質問をしてからその日はずっとアイツは何も話さなかった。
何か言っても上の空だ。
やはり、質問が悪かったのか?いわゆる地雷というやつを踏んでしまったのか?
正直不安だった。そして心配だった。

しかし次の日の朝、待ち合わせ場所にいたアイツはいつもと変わらない様子だった。
むしろ普段よりもよく話す気がした。
だが何かが頭に引っかかる。それがなんなのか・・・・・・全く分からねえ。

でもそのときの俺にも、一ヶ月パトロールについてきたアイツについて一つだけ分かっていることがあった。
アイツは優しいやつだということ。悪いことなど出来っこない。できるわけが無い。


たとえどんな事情を抱えていたとしても、俺はアイツの味方になってやれる。

そう思った。

13 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:21:03.15 ID:rMrBg6Mb0

《1182号》


ミサカはその日からむしろ積極的に接するように心がけました。

アナタが何も気づいていないことを願って。

そのせいか、アナタもミサカに対して普段と同じように接してくれていました。
そのことに安堵を覚える自分がいることに疑問を感じながら、ミサカはすごいぱんちを繰り返すアナタをぼんやりと眺めていました。

『1180号の実験が開始されます。』

そんなときにミサカネットワークからの連絡が入りました。
一日に1、2人だったペースが一気に加速して今では一日に五人が使用されるようになり、新たな妹達が大量生産されているようです。
アナタに用事があるとだけ伝えて、ミサカは実験場へと走りました。



もうすぐ全てが消えてしまうから。
最後までなにも気づかないでほしい。終わってもなにも知らないでいて欲しい。

そんなことを考えていました。

14 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:22:12.38 ID:rMrBg6Mb0

《削板軍覇》


あの日から一週間が経った。
最近アイツがパトロールから抜けることが多くなってきた。

いったい何をしているのか。
いったいアイツは何を思っているのか。


どうしても気になった俺はついていくことにした。・・・・・・ストーカー?違えよ。何度も言わせんな。

ともかく10mほど距離を開けてアイツを追っかけた。アンチスキルに見つからないことを願いながら。

しばらく走ると、突然アイツは曲がった。俺も一緒に曲がる・・・・・・
なんでこんな所に一人で行ったりなんかするんだ。危ないだろうが。

またしばらくして曲がる・・・・・・俺もそのあとに続いた・・・・・・



・・・・・・そこで見たのは不思議な光景だった。アイツとそっくりなやつらが六人、俺を取り囲んでいた。



15 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:23:22.68 ID:rMrBg6Mb0


《1182号》


「おまえ・・・・・・」

アナタに見つかってしまいました。とうとう気づかれてしまいました。

絶対にアナタにだけは知られたくなかったミサカの正体。

妹達が説明を始めました。
ミサカたちがクローンだということについて。

ミサカたちが普通の女の子などではないということについて。

説明が終了し、他の妹達が背を向けていく中、ミサカは一歩も動けませんでした。
アナタの顔が見られませんでした。
気持ちが悪い。信じられない。悪夢だ。恐ろしい。イヤだ。逃げたい。
きっとアナタはそういう顔をしている。

だって、ミサカはそんな人の顔をネットワークを通じてたくさん見てきましたから。
だから、全て終わったと思ったのです。



しかし――――

「おまえ、なんでこんな危ない所でうろうろしてんだ!?」

そのときアナタが発した言葉はミサカにとって信じられないものでした。
聞き間違えたのかと思いました。本当は何も分かっていないのではないかとさえ思いました。
ミサカはクローンですよ?実験動物なんです・・・・・・無意識のうちに呟いていました。
でも、やはりアナタが発したのはミサカを否定する言葉ではなく――――


「なに言ってんだ。そんなこと関係ねえよ!!!」

普段と変わらない、暖かくて、やさしい――――

「おまえがクローンだったっていいじゃねえか!!」


そのとき、ミサカは――――


「そんなことを気にする根性のねえやつら、俺がまとめてぶっ飛ばしてやる。それに、」


――――――ミサカは何も言えませんでした。なぜなら――


「おまえは俺が見る限りすげえイイヤツだ!!!」




ミサカは泣いていたから――――



16 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:24:07.57 ID:rMrBg6Mb0


《削板軍覇》


アイツにそっくりなヤツが6人もいた。一瞬だけ驚いた。
しかしアイツとそっくりな一人が説明を始めてなんとなくは分かった。

・・・・・・クローン?なんか聞いたことがあるな。
よく分からないが、それがアイツの抱えている事情だったのだろうか。


――――なに悩んでんだよ

関係ないだろ。
おまえが何であろうと、優しくて、子猫一匹見捨てられないようなやつであることは変わらないんだからな。


だからそのまんま伝えた。

初めにあったときと同じように、自分の思っていることを全部。





・・・・・・なんで泣くんだよ。当たり前のこと伝えただけだぜ?





17 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:25:29.92 ID:rMrBg6Mb0

《1182号》


ああ、アナタはこういう人でしたね。

誰でも助ける人。
ミサカはそのことを知ってはいながら、本当には分かっていませんでした。
アナタは本当に誰でも助けます。たとえ、価値の無い人形でも。

そしてそのことを知っているからこそ、これから起こることをアナタに知らせてはいけないと思いました。
きっとアナタが実験のことを知れば、勘違いをして首を突っ込んでくるでしょう。
アナタは絶対に巻き込んではいけない。そう思ったのです。


だから、今度はしっかりと言えました。

今度はきちんと伝えられました。


『1182号の実験は明日の4時23分に開始されます。それぞれの持ち場を・・・・・・』




別れの挨拶を。アナタに。


18 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:26:02.12 ID:rMrBg6Mb0

《削板軍覇》


アイツは俺の手を握って、ずっと黙って立っていた。

まるでなにかをこらえるように。

だから俺も頭をなでてやった。


そして、




「さようなら」


アイツの声が聞こえたその瞬間


バチッという音とともに俺の体の中を衝撃が走りぬけた。




19 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:26:49.07 ID:rMrBg6Mb0

《1182号》


そして今ミサカは走り続けています。


白い影がミサカを追い抜き――

「これでトドメだなァ」

――もう走れなくなりました。

足から真っ赤な血が流れ出します。


――――辺りの壁が、崩れ落ちます。

上から降り注ぐコンクリートと、それを呆然と眺める自分

次第に遅く、鮮明になってゆく時間の中で

ミサカはそれをどこか人事のように感じていました。

ミサカの役目はもうすぐ終わります。

だから、これでいいんです。



アナタにお願いがあります。

ミサカのことは忘れてください。

出遭ったことも、話したことも、――――ミサカがクローンだということも

全部。全部です。




そして

もう一つだけ願いが叶うなら、最後にアナタに伝えたい。



ミサカと子猫を助けてくれたこと

パトロールに連れて行ってくれたこと

ミサカを認めてくれたこと



ミサカのことをイイヤツだって言ってくれたこと



本当にありがとうございました






20 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/20(金) 20:28:04.49 ID:rMrBg6Mb0













そして今俺は走り続けている


体がしびれる。感覚が麻痺しているようだ。

いつかの子猫が前を走っている。

雲川のやつには止められた

だけど、放っておけるわけがねえだろうが。





そして

見てしまった。


崩れ落ちたビルの横にあるコンクリートの山。

その中にアイツが埋もれているのを。



急いで駆け寄る。

コンクリートを吹き飛ばす。

体はボロボロだった。

何があったんだよ。何されたんだよ。

いくら話しかけても、何も答えない。答えてはくれない


病院に連れて行こうと抱き上げたそのとき、唇がかすかに動いた。



「――――」



大丈夫だ。

言っただろ?

俺が絶対に助けてやるって。



21 : [saga]:2012/04/20(金) 20:29:23.82 ID:rMrBg6Mb0

失礼します
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2012/04/20(金) 20:33:15.36 ID:w9rfojlto
期待期待
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/04/20(金) 20:52:15.68 ID:srKfWdUGo
救われなさっぷりが好きだ わくわく
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/20(金) 23:58:53.46 ID:z1D9dPGd0
やばい、超期待してるけど、なんだこのタイトルwwwwww
この削げなら第1位にだって勝てるに違いない
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/04/21(土) 01:26:33.82 ID:iHPpZdSAO
削板もヒーロー属性だからなあ
てか助けても感謝されないってカワイソス
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/21(土) 01:49:47.97 ID:2yPc2h4Ho
タイトル吹いたwww
期待
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/21(土) 10:07:01.85 ID:shBeItMIo
1182といいやつかけてんのか
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) [sage]:2012/04/21(土) 19:00:37.73 ID:EteU9diV0
すげえ……期待
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 21:46:28.40 ID:2CEGb3+R0
少年マンガなら削板が主人公だよな
30 : [saga]:2012/04/29(日) 18:24:05.12 ID:8bH+SKVE0
遅くなりました
投下します
31 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/29(日) 18:25:19.28 ID:8bH+SKVE0

《1182号》


ミサカは生きているのでしょうか

それとも死んでいるのでしょうか

それすらもわかりません



ふらふらと揺れる狭い視界
靄がかかったように白く濁った世界
ぼやけてふやけてゆがんで流れ出す思考

そんな中にアナタは現れました。そんなミサカの前にアナタは立っていました。

信じられませんでした。
だから、質問しました。

なぜ来てしまったのですか、と。

聞こえにくいはずなのに、アナタはしっかり返事を返してくれました。

「俺はどんなときでもおまえの味方だ」

でも、本当は

「困ったときはいつでも助けるって決めた。」

分かっていたんです。

「それに」

アナタの答え。

「言っただろ?根性のねえやつら、みんなぶっ飛ばしてやるって。」

――――アナタはそういう人ですから。



なぜでしょう。
本当になぜなんでしょう。

絶対に来て欲しくないと思っていたはずなのに
絶対に巻き込みたくないと思っていたはずなのに

アナタがここにきてくれたことに対して、心のどこかで安心している自分がいました。


32 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/29(日) 18:26:09.31 ID:8bH+SKVE0

《削板軍覇》


息が荒い。
コイツの体から気持ちの悪い汗がふきだしているのが分かる。

その状態は俺が想像していたより酷いものだった。
とりあえず、ありあわせのもので応急手当をする。

体のあらゆる部分からの出血
コンクリートはコイツの血で真っ赤に染まっている
そして、ボロボロの足に目をやると、白いもの――――骨が見えた




なんでだよ

何でこんなことに――――


「早く――――逃げてください」

声が聞こえた瞬間、大きな笑い声とともにコンクリートの塊が降ってきた。

とっさにコイツを抱えてよける。

振り返る。
俺たちのいた地面には、クレーターのような穴が開いていた。

「ぎゃはっ!随分運のいいやつらだなァオイ。今のがぶち当たってたらお陀仏だったのによォ!」

目の前で笑っているやつ

「なンなンですかァオマエ。いわゆる部外者ってヤツか。そンな粗大ゴミ抱えて何やってンだァ?」

今の攻撃を躊躇無く仕掛けてきた野郎

「ソイツぶっ殺す予定だったのによォ、オマエが邪魔するってンなら」

コイツをこんなにまでボロボロにした根性無し

「オマエもろとも殺るしかねェよなァ!!」




――――俺の中で、何かがプツンと音を立てて切れた





33 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/29(日) 18:26:55.28 ID:8bH+SKVE0

《1182号》


「ここで待ってろ。すぐに終わらせてやる。」
アナタがそういってミサカをコンクリートの影に隠してから、きっと一分も経ってはいないでしょう
ミサカの逃げてくれという必死の頼みも虚しく、アナタは彼の前に立ちふさがりました。
彼の――――そう、学園都市の頂点、一方通行の。

ミサカは本当に馬鹿でした。
もしかしたら、本当に奇跡が起こって逃げ切れるかもしれない。そんなことを考えるなんて。

とうとうアナタを巻き込んでしまった。
あの時ミサカさえアナタに近づかなければ、
あの時アナタに声をかけなかったら
あの時ミサカが溺れなければ
アナタはこんなことに巻き込まれませんでした。

ミサカのせいで、ミサカが声をかけてしまったせいで、ミサカが変な期待をしてしまったせいで、アナタは――――





「心配ねえよ。なんてったって俺は――――」








目の前の出来事が信じられませんでした。

まさか


アナタが


あの学園都市第一位を


圧倒しているなんて――――





「すごいぱ――――んち!!!」

それでも、アナタはいつものアナタでした。
路地裏でスキルアウトたちを倒しているときと同じ顔です。
いつもと同じ、あまりのダサさに思わずふきだしてしまいそうな掛け声とともに
いつもと同じ、田舎くさい特攻服を身にまとって
ミサカと子猫を助けてくれたときと同じ、真剣な顔でアナタは戦っていました。



「なあ、もう終わりにしないか?」

34 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/29(日) 18:27:39.19 ID:8bH+SKVE0

《削板軍覇》


気がつくと、アイツが目を丸くしてこっちを見ていた。
――――もしかして心配とかしてくれてんのか?

必要ねえよ。なんていったって俺はレベル5だからな。


「余所見するたァ余裕だなァ三下!」

一瞬で現実に引き戻される。


とにかくコイツは根性こめてたたき直してやらねえとだめだ。
何よりも俺は見過ごせねえ。許せねえ。アイツをあんなふうにしたこの馬鹿野郎を。



罵声とともに飛んできた拳をかわす。

「あァ?」

悪いな、接近戦には自信があるんだ。
なんてったって毎日根性こめてパトロールやってたんだからな。

だけどなんでだ?なんでこんなことやってんだよ。
俺には分からねえ。
女の子をボロボロにして、あんなにまで傷つけて、なにがやりたいんだ?なにが楽しいんだ?なんであんな顔で笑ってたんだよ

後ろに回りこむ。
飛んでくる鉄筋コンクリートの塊を粉々に砕く。
腹にパンチを叩き込む。もちろん根性をこめて。




――――なあ、もう終わりにしないか?


もういいだろ。もう止めようぜ。あんなことをするのは。
俺にはおまえらの事情なんて全然わからねえ。だけどなんとなく予想はつく。
アイツのほかにもいっぱいいたんじゃないのか。自分からわざわざ殺されにいくようなバカが。

なあ、もう終わらせようぜ。もう止めにしないか。もういいんじゃないのか。
俺はもう見たくねえんだ。
アイツの泣く顔
アイツの絶望に打ちひしがれたような顔
そして、俺が路地裏で何度も見すぎて、見飽ききった光景
――――アイツみたいないいやつらが根性無しの犠牲になる姿を


――――――――これで終わりだ

35 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/29(日) 18:28:32.87 ID:8bH+SKVE0

《1182号》


視界が白い。

煙でむせこみます。

すべてが終わりました。

「言っただろ?すぐ終わらせるって。」

アナタが目の前で笑っていて、

ミサカは今も生きています。

これを奇跡とでも呼ぶのでしょうか。

目の前がかすみます。

視界がぼやけます。



ミサカは泣き虫ですかね

「いいや、おまえは根っからのいいやつだぜ」

やっぱりどこかずれています。

じゃあアナタは――――


36 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/29(日) 18:29:16.64 ID:8bH+SKVE0

《削板軍覇》


やっぱり泣くのかよ。

でもおまえは根っからのイイヤツだぜ。

そういって頭をなでてやると手をはたかれた。なんでだ?

「じゃあアナタは大馬鹿の根性野郎ですね」

ん?

「ミサカを助けるなんて本当に大馬鹿です。しかも史上最高の。」

なんだよそれ。史上最高の大馬鹿の根性野郎?長すぎるだろ。ほめ言葉が。

ああ、そうだな。俺はただの大馬鹿根性野郎だ

じゃあそろそろ病院に・・・






「ぎゃはっ」






体を引き裂かれるような痛みが俺を襲った


37 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/29(日) 18:31:01.32 ID:8bH+SKVE0

《1182号》


ミサカには一瞬なにが起こったのか理解できませんでした。
笑っていたアナタがコンクリートの上で血まみれになって倒れて――――

「クカカ、クカカカ!」

白いナニカがアナタを踏みにじって――――

「三下ごときがこの俺に説教?笑わせンじゃねェよ、このクソッタレがよォ!!!」

ソレがアナタを蹴るたびにコンクリートが消滅して
ソレがアナタを傷つけるたびにあなたの体から、血が、真っ赤な鮮血が、あんなにもあふれ出て――――

「はっ!この俺にンな手間かけさせンじゃねェよ!!」

やめてください
もうやめてください

叫ぼうとしても声が出ません。手を伸ばしても届きません。

目の前が真っ赤に染まっていきます――――

「終わったなァ三下さンよォ」

やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください
やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください
やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください
やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください
やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください
やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください
やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください



「死ね」






やめ――――――――――――――――――――













『1183号の実験が開始されます。準備をお願いします。』








38 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/29(日) 18:31:51.13 ID:8bH+SKVE0

「ッチ」

ソレは去っていきました。真っ赤に染まったアナタとミサカを置いて。
涙があふれます。

ハッピーエンドはありえない。分かっていたはずなのに。

まさか、こんな・・・

お願い。

お願いだから。

本当にお願いだから。

助けてください。

彼を。

ミサカを助けてくれた、彼を。







そのとき


「こんなに派手に戦って、結局怒られるのは私なんだけど」

声が聞こえました。

上を向きます。




そこにいたのは

カチューシャの

へそをだした

きれいな

女の子


39 : 1182号と根性野郎 [saga]:2012/04/29(日) 18:33:30.58 ID:8bH+SKVE0




そしてミサカの頭の中は白く――――








40 : [saga]:2012/04/29(日) 18:38:08.04 ID:8bH+SKVE0

次で完結です。
このタイトルには実は大きな秘密が隠されて――――無いです。超適当。

では失礼します。






41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/29(日) 21:36:43.29 ID:z9RIRHGl0
やべぇ、超乙過ぎる
そぎーがカッコイイSSはいいな
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/29(日) 21:56:50.45 ID:ECE3u6wR0
乙乙!!!
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/04/30(月) 00:43:11.80 ID:8VPXKEmL0
乙です
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/04/30(月) 12:57:13.28 ID:tLlJcwzq0
雲川さんキタ!これでかつる!
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 21:17:30.61 ID:cqSJyptDO
なぜあげた
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) :2012/05/05(土) 16:42:58.97 ID:tGYc5awX0
乙です
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 17:18:17.13 ID:iFR+gL540
>>46自分の好きなSSアピールしたいのかし知らんが無意味にあげるのは止めろ。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 18:34:02.41 ID:kbY3JiM30
好きなSSが全部上がってたでござる
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 23:05:49.75 ID:Ho2DXDwDO
これは原作に従うか従わないかでエンドがまるっきり違うな
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) [sage]:2012/07/07(土) 18:43:36.57 ID:oFEIUQsd0
二か月なんですけどーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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