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誓いは空へと、あなたへと - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/22(日) 21:57:16.49 ID:YAGAKWQI0
冬の朝はひどく寒い。
夜から明け方にかけて冷え込んだ空気が、私の身体にまとわりつきコートやマフラーの隙間から入り込んできて知らず知らずのうちに震えている。
けれど、私はこんな朝がとても好きだ。

寒くても平気。
だって、優しい朝の日差しがぽかぽか気持ちいいでしょ。

歌うようにそう言って笑ったあの人のことを思い出し、私は少しだけ幸せな気持ちに浸ることができるから。

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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage saga]:2012/04/22(日) 22:03:01.53 ID:YAGAKWQI0
私には、いくつも歳の離れた姉がいる。いや、正確には「いた」だろう。
彼女は私がまだ幼い頃、事故でこの世を去ってしまった。
なんて、これだけ言えば私は悲しい過去を背負った物語の主人公みたいだ。けれど正直なことを言ってしまえば、私にはあまり姉の記憶は残っていないし、覚えているといえば日差しより優しく温かい声で、歌うように語りかけてくる言葉のカケラくらい。

悲しくないといえば嘘になる。
だけど私が彼女を思い出すとき悲しみより幸せのほうを感じるのは、きっと忘れてしまった姉との日々が本当に温かかったからだろう。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage saga]:2012/04/22(日) 22:22:20.02 ID:YAGAKWQI0

カンカンカンカンカン

踏み切りの音と同時に電車がすごいスピードで通り過ぎていく。いかにも田舎の、野暮ったい電車だ。
私は踏み切りから少し離れた場所に立ち、小さく息を吐いた。
辺りが静かになり、踏み切りがゆっくりと開いていく。それを待ちきれないかのように、通勤や通学に急ぐ人たちはまだ完全には開ききっていない踏切をくぐっていく。

けれど、私の待ち人はまだ来そうになかった。
今日もまた遅刻ギリギリらしい。この積もった雪の上を走ることを覚悟しながら、もう一度視線を踏み切りのほうへ向けたときだった。

「あ……」

思わず上げた声は、白い息と共に空中へと消えていく。
ふらふらと踏み切りをくぐっていく女子生徒が本を一冊、落としたのが見えたのだ。制服から、どうやら同じ高校らしいとわかった。私は転びそうになりながらも慌てて真っ白な雪に埋もれた本に駆け寄って、「あの……!」と声を張り上げた。

「あの、この本――!」
「穂浪、遅くなった!」

けれどその声は別の声にかき消されてしまった。「さくら」と振り向くと、カンカンカンカン、またそんな音がして、踏切が閉まっていく。目を離した、その一瞬の隙に本を落とした彼女の姿は遠くなっていた。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage saga]:2012/04/22(日) 23:09:37.84 ID:YAGAKWQI0
「お?その本どうした?」
「あ、ちょっと」

後姿を追っているうちに、いつのまにか真後ろに立っていた私の待ち人であるさくらが雪に埋もれて少し濡れてしまった本を取り上げた。
今日はなんだか、こんなことばかりだ。一瞬の不覚、とでもいうのだろうか。これが戦場だったらどうとかこうとか。そんなつまらないことを考えながらも、さくらに身体を向けて一緒に本の表紙を覗き込んだ。

「なにこれ」
「さあ」
「あんた、こんなの読むわけ?」

ちがうちがう、と慌てて首を振った。そんなわけはない。私は英語というものが苦手なのだ。さくらだってそれを充分知っているはずだ。「だよね、びっくりした」なんて幾分か失礼な頷き方をしながら、ぺらぺらとページをめくっていくさくら。次々と現れる文字たちに、私たちの口からは「げっ」というカエルが踏み潰されたような声しかでなかった。表紙が英題なのだから、それはきっと当たり前なのかもしれないけれど、現れる全ての文字がアルファベット、つまり英文だ。

「よく読めるよね……」
「うん、さっきの人すごい」
「さっきの人って?」
「あ、これ落とした人で……」

言いながら、私はもう一度踏み切りの向こうに目をやった。いつのまにか電車は通り過ぎたらしく、踏み切りはまたゆっくりと阻んでいた道を開けていく。私はさくらを放って急いで踏み切りを渡り、それから遠くの方まで目を凝らした。けれどやはり本を落とした彼女の姿はない。

「あ、穂浪!」

私を慌てたように追いかけてきながら、さくらがなにか気が付いたように声を上げた。
「これ、うちの図書室の本みたい」そう言って見せてくれた裏表紙には、確かに図書室のものであるという判子がぽつり、と押してあった。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/04/22(日) 23:11:04.79 ID:YAGAKWQI0
今日の更新は以上です
ここまで読んでくださった方ありがとうございました
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/04/23(月) 00:49:08.08 ID:U/PUnZfAO
期待
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/04/25(水) 22:53:56.61 ID:vrpJSJ2do
期待?いや、これは確信だ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/04/27(金) 18:07:55.12 ID:RKWsw5+G0

「し、失礼しまーす……」

学校の図書室というのはなんとなく薄暗く古びたイメージがあるのだが、この学校のそれはまさしくそのイメージどおりの場所だった。元々あまり本を読まないために高校に入学してから一度もここを利用したことのない私は、まるで呼ばれた職員室に入るような心持で扉を開けた。いらぬ言葉もそっと添えて。

放課後だった。しかも、もうそろそろ最終下校時間を知らせるチャイムが鳴る直前。
さくらが珍しく早くやってきたせいで悠々と登校したために、部活の先輩に見付かって練習に付き合わされていた朝。もちろん、朝一番に図書室に寄ろうだなんて考えてはいなかったけれど、「昼休みに返しに行こう」と机の中にいれてあったはずが、さくらや他のクラスメイトに誘われふらふら外へ遊びに行ってしまったのだった。いくら華の女子高生といえども、雪と友達がいればはしゃぎたくもなるのだ。そして、はしゃぎすぎてびっしょり濡れてしまうのもまあ当たり前だ。そういうことで、それ以降もストーブを囲みながら教室で喋ったり部室に顔を出したりで結局こんな時間になってしまったのだった。

時間が時間なだけに、人の姿は見当たらなかった。もし人がいたのならさっきの私の「し、失礼しまーす……」という怯えた声を笑われていたかもしれない。そう思うとほっとするけれど、入口付近からもう沢山の本棚の立っている図書室は少し冷たい感じがした。そもそも、大量の本を置いてある本棚はスチール製で、床も木ではなかった。暖房が入っているらしいといえども、だから冷たい感じを受けるのかもしれない。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/04/27(金) 18:17:21.38 ID:RKWsw5+G0
「あのー……」

なんとなく奥へ足を進めることができずに私は、そっとそう呼びかけてみた。そもそも、もう誰もいないのではないか。そんな気さえする。誰もいない図書室は普段鍵をかけられているのかいないのかわからないがそろそろ下校時刻なのだ。いないと考えたほうが自然なのではないだろうか。ただでさえ外も暗く、寒々しい感じの図書室に私は完全に及び腰になっていた。静かな場所というのは、かなり苦手なのだった。

明日、もっと人がいるときにでも出直そうか。利用する人がいるのかどうかは置いといて。

そう思い、背を向けようとしたときだった。
微かに「はい……?」と訝しげな声がした。

「あっ」

思わずそんな腑抜けた声をあげていた。
まさか誰かいるとは思わなくて、突然の声に焦りを隠すことはできない。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/04/27(金) 18:28:41.40 ID:RKWsw5+G0
「えっとその、本を返しに来たんですけど……!」

そこまで言って、そういえば私はここへ本を返しに来たのだと思い出した。この場のなんとも言いがたい雰囲気に気圧され、回れ右して出て行きたい気分に陥ってた私だから、胸の前に抱いている本の存在をすっかり忘れてしまっていた。その声は一瞬の間を置いて、「こっちへ来て」と言った。その一瞬の間と聞こえた声に微かな呆れがまじっている気がして首をすくめ赤面したくなる。

「は、はい」

そう返事をし、私はようやく前に足を進ませることができた。
図書室は意外と広いらしく、縦並びに三つずつ、横並びに四つずつで整然と本棚が並べられていた。そしてさらにその奥は空間になっていて、本が読めるように椅子や机が置いてあり、それらを囲むようにまたその向こう側、同じ風に本棚があった。

そして空間の右奥。
そこに、貸し出しや返却のためのカウンター。

「こっち」

三つ目の本棚からそろそろと顔を出した私を見つけ、その人は言った。「こっちよ、返却」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/04/27(金) 19:31:52.02 ID:RKWsw5+G0
どうも、と口の中でもごもご言いながら私は近付いていった。
図書委員の人だろうか、この図書室には似合わないような明るい茶髪を後ろで二つくくりにしている。そして、真っ赤な縁のあるメガネをかけていた。髪型のせいだろうか、見た感じ同い年くらいに見えるのにそのリボンの色で二つ年上の三年生だとわかった。この学校では一年生が赤、二年生が青、三年生が緑と決められているのだ。

「どれ?」

メガネの先輩は、そう言って私にすっと手を差し出した。
おずおずと本をその手に乗せると、「はい、確かに」と慣れた手つきでICタグにセンサーをかざす。それから「うん?」というような声を漏らし、その人は私を見上げてきた。

「これ、どうしたの?」
「あ、朝に踏み切りの前で拾って……」

もしかしたら、私自身が借りていない本だったから不審に思われたのだろうか。
慌てたように弁解したから、よけい怪訝に思ったのかもしれなかった。その人はくるり、とカウンターの後ろを振り返ると、誰かの、名前を呼んだ。

――ホノカ

「本、見付かったよ」という声とともに、カウンターの奥にうずくまっていたらしい誰かがばっと立ち上がった。
ホノカ。
彼女の名前を聞いた途端、私は全ての動きを停止した。そして、彼女の真直ぐな視線を感じ、思考までもが真っ暗闇に覆われた。

――ホノカ
お姉ちゃんの名前と、同じ。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/04/27(金) 19:33:42.22 ID:RKWsw5+G0
>>11訂正
>「本、見付かったよ」という声とともに、(ry
→「本、見付かったの?」という声とともに、

今日の更新は以上
のんびりとした更新で申し訳ないです。ここまで読んでくださった方ありがとうございました
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 18:51:08.90 ID:WNQqMggDO
雰囲気が好みっぽいので期待
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