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とある第一位の超次元蹴球 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/23(月) 20:32:39.24 ID:G4xaMj2/0

 このSSはとある魔術の禁書目録とイナズマイレブンのクロスです。

 時系列は第三次世界大戦が終結した数日後。

 登場キャラは原作基準ですが、イナズマイレブンのキャラは年齢が変更されています。

 (例) 豪炎寺修也の年齢は17歳


 禁書の比重がかなり大きいので明確にはクロスと言い難いのですが、そこはご了承願います。


 四ヶ月かかってようやく2スレ目です。
 
 一生懸命頑張りますので、何卒よろしくお願いいたします。


 前スレ

 一方通行「超次元サッカーだァ?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1324624869/


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1335180759(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

2 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/23(月) 21:45:20.97 ID:G4xaMj2/0


 前スレまでのあらすじと予告




 全てのはじまりは、打ち止めの何気ない疑問だった


 「あなたは出来るの? ってミサカはミサカはあなたに聞いてみる」

 『妹達(シスターズ)』の司令塔――――打ち止め(ラストオーダー)



 学園都市の『外』の世界には、どうやら“超次元サッカー”と呼ばれるモノが存在するらしい



 「……オイクソガキ、オマエは一体何が言いてェンだ?」

 闇から抜け出した学園都市最強の超能力者(レベル5)――――一方通行



 未知なる“超次元サッカー”の情報を得る為に、とある事情と並行して学園都市中を歩き回った一方通行は、本来の目的から遠ざかっていくのに反比例して、一癖も二癖もある頼もしい『仲間』を手に入れていく――


 「ぎゃははっ、先制点もーらいっ☆」

 『第三次製造計画(サードシーズン)』により生み出された第三位のクローン――――番外個体(ミサカワースト)

 「『常識』が通用しねぇのは何も机の上の理論だけじゃねえって事を教えてやるよ」

 地獄の底より舞い戻った学園都市の第二位――――垣根帝督

 「『窒素装甲』の使い手である私を甘くみたら、超痛い目を見ることになりますよ?」

 『暗闇の五月計画』の元被験者で新生『アイテム』の構成員――――絹旗最愛

 「まだまだテメェはこんな程度で潰れるほど貧弱じゃないわよねぇッ!?」

 新生『アイテム』のリーダーで学園都市の第四位――――麦野沈利

 「はまづら、頑張って」
 
 『八人目』の可能性を秘めた新生『アイテム』の構成員――――滝壺理后
 
 「ああ、任せとけって。滝壺はベンチで俺の活躍をしっかり見といてくれよ」

 第三次世界大戦より帰還した無能力者で新生『アイテム』の構成員――――浜面仕上


 「私の“軍師としての才”と君の“強大な才”が力を合わせれば、学園都市内の頂点を獲る事など容易いと思うけど?」

 学園都市統括理事会の『ブレイン』を務める天才少女――――雲川芹亜



3 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/23(月) 21:46:59.33 ID:G4xaMj2/0


 “感謝の印”として一方通行達のマネージャーに立候補した雲川芹亜の提案により、これより一行が向かうのは超能力者(レベル5)が二名在籍する常盤台中学


 「……出来ればもう二度とアナタに会いたくなかったんだケドぉ、私の縄張りに侵入してきたのなら迎撃するしかないのよねぇ」

 そしてそこで待ち受けるのは、学園都市の第五位――――食蜂操祈


 「オマエが俺を迎撃だァ? ――やれるモンならやってみろ、“コイツ”で白黒つけよォじゃねェか」


  ――――お嬢様学校を舞台に、熾烈な激闘の火蓋が切って落とされる。



     第三章『とある常盤台の女王と取り巻き達』


4 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/23(月) 21:48:33.66 ID:G4xaMj2/0

 人物紹介



【名前】 ―本名不明―  識別名は一方通行(アクセラレータ) 

【所属】 長点上機学園 チーム『フェンリル』のキャプテン

【守備位置】 GK

【備考】 学園都市の誇る超能力者で序列は第一位。『一方通行』と呼ばれる『あらゆるベクトルを操作する』チカラを行使する。その強大過ぎる能力の弊害によって白髪と紅い瞳の容姿を持ち、それゆえに学園都市の人間から怖れられる『最凶の怪物』である。しかし打ち止めに対しては異様に過保護になる事から、一部の人間からは『ロリコン』の疑惑が持たれている。





【名前】 ―本名無し― 識別名は番外個体(ミサカワースト)

【所属】 黄泉川家の居候 チーム『フェンリル』のメンバー

【守備位置】 FW

【備考】 『第三次製造計画』により生み出された新たな『妹達(シスターズ)』。オリジナルである御坂美琴より、数年成長した容姿を持っている。行使する超能力は、最大出力二億ボルトの発電能力系統でレベル4程度。『ミサカネットワーク』を使用した反則的なトレーニングにより、超一流のボールコントロール力を身に付けている。


5 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/23(月) 21:49:22.56 ID:G4xaMj2/0


【名前】 垣根帝督  識別名は未元物質(ダークマター)

【所属】 チーム『フェンリル』の副キャプテン 

【守備位置】 FW

【備考】 学園都市の誇る超能力者で序列は第二位。『未元物質』と呼ばれる『この世に存在しない素粒子を生み出し操作する』チカラを行使する。この能力を使用する際は、基本的に天使のような白い六枚の翼を生やした状態になる。その状態の彼を一方通行は『似合わねェな、メルヘン野郎』と酷評した。ちなみに本人はその自覚がちゃんとあるらしい。





【名前】 麦野沈利 識別名は原子崩し(メルトダウナー)

【所属】 新生『アイテム』のリーダー チーム『フェンリル』のメンバー

【守備位置】 MF

【備考】 学園都市の誇る超能力者で第四位。『原子崩し』と呼ばれる『粒子にも波形にも属さない、曖昧なまま固定された電子を操作する』チカラを行使する。とある事情により右目と左手は義眼と義手である。外見からは非常に冷静な令嬢のような感じが見受けられるが、実は『ボロボロのぬいぐるみを抱いてないと寝むれない』という可愛らしい秘密を持っている。


6 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/23(月) 21:50:07.53 ID:G4xaMj2/0


【名前】 浜面仕上 またの名を世紀末帝王HAMADURA

【所属】 新生『アイテム』の構成員 チーム『フェンリル』のメンバー

【守備位置】 MF

【備考】 愛する滝壺理后のためにならその身を捧げる覚悟を持ち合わせた無能力者。基本は麦野沈利や絹旗最愛のパシリである。滝壺とのデート資金の為にスポーツショップでバイトをしていたが、ちょっとした事件を起こしてクビにされる。




【名前】 滝壺理后 識別名は能力追跡(AIMストーカー)

【所属】 新生『アイテム』の構成員 チーム『フェンリル』のメンバー

【守備位置】 DF

【備考】 浜面いわく、『俺のマイスイートエンジェルで保護欲の掻き立てられる存在!!』。基本はぼーっとしているが、それでも学園都市の超能力者の『八人目』になれる素質をもった大能力者である。常にピンク色のジャージを着用するのが彼女のスタンダート。


7 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/23(月) 21:50:58.84 ID:G4xaMj2/0


【名前】 絹旗最愛 識別名は窒素装甲(オフェンスアーマー)

【所属】 新生『アイテム』の構成員 チーム『フェンリル』のメンバー

【守備位置】 MF

【備考】 ふわふわしたニットのワンピースを着用した中学生であり、小学生ではない。学園都市の『外』で発売された『イナズマイレブン』シリーズのゲームを全てクリアしており、(超次元の)サッカーについての知識は豊富。豪炎寺修也との面識がある。





【名前】 豪炎寺修也 またの名を炎のストライカー

【所属】 “元”木戸川清修高校二年生、サッカー部所属
     “現在”第二〇学区のとあるスポーツ強豪校の二年生 サッカー部所属(休部中)

【守備位置】 FW

【備考】 学園都市の『外』から連れてこられた『原石』の一人。『炎を自由自在に操る』チカラを行使する。『外』の日本代表にも選出された彼のボールコントロールは世界最高レベルで、繰り出されるシュートは分厚い土を容易く貫いてしまう。絹旗最愛との面識がある。


8 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/23(月) 21:52:14.35 ID:G4xaMj2/0


【名前】 雲川芹亜 またの名を謎の美人な先輩

【所属】 学園都市統括理事会、貝積継敏の『ブレイン』 チーム『フェンリル』のマネージャー

【備考】 上条当麻の通うとある高校に通う所属クラス不明の女子高校生。その裏の顔は学園都市の深い『闇』と関わる機会の多い学園都市統括理事会の『ブレイン』。あの一方通行も騙されてしまうほど、質の高い『話術』を行使する。


9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/25(水) 18:01:35.65 ID:+0e4TIPO0

楽しみ
10 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:48:03.19 ID:OXXzthZN0
>>1です、こんばんは。 短いですが今回の投下にきました。

それではいきます。
11 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:49:07.26 ID:OXXzthZN0

 常盤台中学の朝は早い。午前七時には起床し、以後三十分以内に身だしなみを見苦しくない程度に整える。そして七時三十分に食堂へ集合し、点呼を取ってから午前八時までに食事を完了させる。

 これは規則正しい生活リズムを形成することによって、品行方正な真人間を育成するために定められた昔ながらの決まりごとなのだが、もちろんそれを遵守出来ない人間も存在する。

12 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:49:42.00 ID:OXXzthZN0


 「…………むにゃむにゃ、あと十五分は……大丈夫、よねぇ……」

 「全然大丈夫ではございませんわよ女王!? 早くお目覚めにならなければ私(わたくし)達は遅刻してしまいますわ!」



 現在時刻は七時二十分。常盤台に所属する二人の超能力者の内の一人、食蜂操祈はいまだに夢の国へ向かったまま帰還していなかった。


13 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:50:54.31 ID:OXXzthZN0


 「――まったく、よろしいですか女王? 今朝はなんとかギリギリ間に合いましたが、女王が遅刻しては派閥の者に示しがつきませんわ」

 現在時刻は八時十分。場所は食蜂がルームメイトである縦ロールの少女と過ごす『学舎の園』の内部に存在する寮の自室。そこでは縦ロールの少女が食蜂の絹のような金髪へ丁寧に櫛を通していた。

14 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:51:32.51 ID:OXXzthZN0

 「むー、私は遅刻ではなくて重役出勤なのにぃ」

 「たしかに女王が仰ることも一理あります。しかし私は時間ギリギリで慌しく食堂へ駆け込む女王の姿など、ヘタな新入社員となんら変わりはないように見えてしまうのです」

 「その新入社員が実は企業の新しい社長だったとしてもぉ?」

 「社長だから全てが許されるというわけではございません!」

15 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:52:18.15 ID:OXXzthZN0


 「ぶーぶー」

 「不満だからといって豚の鳴き真似などおやめください女王!? ――ああっ! 女王の美しいお顔が台無しに!?」



 そしてその二時間後、『学舎の園』に存在する喫茶店で一人黙々とエクレアの早食いに挑戦する少女が目撃されるのであった。




    第三章『とある常盤台の女王と取り巻き達』


16 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:53:30.42 ID:OXXzthZN0


 「……、」

 「……アレイスター……のクソ、野郎は……俺が…………絶対に……」

 「(……コイツ、寝言がうるせェ……)」



 現在の時刻は少し巻き戻って朝の六時三十分。 場所はファミリーサイドの二号棟の十三階、『警備員』である黄泉川愛穂の住居だ。


17 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:54:44.64 ID:OXXzthZN0


 そこには家主の黄泉川を筆頭に芳川桔梗、打ち止め、番外個体という風に女性が多く住んでいる“女の園”である。

 だが、そんな男子禁制の住居には性別不明の少年と地獄の底から蘇った少年が滞在していた。……いや、正確に言うならば“居候している”である。


 「(……黄泉川はなンも言わねェで垣根を居候として迎え入れちまうし、アイツはどンだけお節介が好きなンだっつゥの。あのドレス女がわざわざ『ビジネスホテルを予約してあげる』とか言って垣根の前に現れたのに、隣で寝言を呟き続けるコイツは断っちまうしよォ)」


 「……ったく、そのせいで俺は絶賛寝不足なンだが、どォすりゃイインだクソッたれ」


18 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:55:37.59 ID:OXXzthZN0


 ――第五学区に存在する廃屋を改装した料理店『骨董屋』を崩壊させた後、性別不明の少年である一方通行はひとまず料理長である二メートル近い長身の男に、店の修理費用として三百万円を支払っていた。

 しかも一方通行がわざわざ銀行に向かい、三百万円を口座から引き出して手に入れた札束を料理長へ手渡しで、だ。 さすがにこの状況に料理長は頬を引き攣りながら苦笑いと共に受け取っていた。


19 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:56:08.74 ID:OXXzthZN0


 その後、一方通行は『アイテム』の面々とアドレス交換を済ませて彼女等と別れたのち、地下街にある携帯ショップへと向かった。目的は携帯を持っていないチンピラカップルへの連絡手段の確保の為だ。

 さらにその携帯ショップでは『ハンディアンテナサービス』というモノを実施していた。しかもペアで契約するとカエルのマスコットが貰えるという特典の付いたお店である。

20 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:56:49.80 ID:OXXzthZN0


 とある噂話によると、過去にその店の前で常盤台の女子中学生と学ランの少年が痴話喧嘩を繰り広げていたらしいのだが、その場に現れたもう一人の常盤台の女子中学生が強引に仲介に入って事無きを得たようだった。


21 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:57:40.08 ID:OXXzthZN0

 話は戻って、ペア契約の為にはどうも男女の2ショット写真が必要らしく、チンピラカップル一号こと番外個体は「なんでミサカが第二位と仲良く写真に写らなきゃなんないのさ!?」と揉めに揉めて、彼氏(仮)の垣根を雷撃でノックアウトさせる始末。 


 それでも特典のカエルのマスコットを諦めきれない番外個体は、妥協案で一方通行と2ショット(一方通行は無愛想で番外個体はかなりご機嫌な表情で)写真を撮り、店員に見せに行ったのだが、「これではペアを証明できません、そもそも別人じゃないですか」と当然のごとく却下されてしまう。

22 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:58:31.95 ID:OXXzthZN0

 とりあえず気絶した垣根の復活をベンチに座って待っていると、そこに派手なドレスを着た少女が通りかかった。

 ドレスの少女は垣根の顔を見るなり「久しぶりにあなたの顔を見たけど、まるで別人ね」と言いながら片足のヒールを脱いで額にグリグリと擦り付ける。

 それで目が覚めた垣根は「愉快な目覚ましを起動してくれてありがとよ、おかげでテメェに怒りをぶつけるのになんの躊躇いも持たなくてすむぜ」と言って少女にデコピンを喰らわせる。


23 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:59:04.74 ID:OXXzthZN0


 それを見ていた一方通行が、「もォオマエとそこのドレス女でペア契約しろよ、それで全部問題解決だ」と提案したのでその案に全員が乗っかることに。



 結果を言わせてもらえば、店員に多大な迷惑をかけながらも二人の携帯はなんとか無事に手に入れることができたのであった。



24 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 21:59:56.36 ID:OXXzthZN0


 その別れ際、垣根がドレスの少女に「お前『幻想御手』事件って知ってるか?」と訊ねてみたところ、ドレスの少女は「ビジネスホテルを予約してあげるから、そこで話してあげる」と返答したのだが、垣根はそれをすっぱりと「ならいいや、さっき電話したのもそれだけの用件だし」と断った。 

 ドレスの少女は「ふーん」とつまらなそうに鼻を鳴らすと、「ならあなたが暇な時にでも私を呼んでよね。その時の気分で話してあげるかもしれないし」と言い残して去っていった。


25 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 22:00:52.15 ID:OXXzthZN0


 そしてそのまま黄泉川家に帰宅した三人の能力者は、リビングで殺人事件を捜査する『警備員』ごっこを繰り広げていた黄泉川と打ち止め、さらにソファーで顔面蒼白の芳川を発見して呆然とその光景を眺めていた。

 その時の番外個体は「最終信号に『バストプレス』じゃー!」とよく分からない叫び声をあげながら打ち止めに突っ込んでいった。 

26 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 22:01:34.24 ID:OXXzthZN0


 ソファーで横たわる死体に巨乳に押し潰される幼女、家主はごっこ遊びに疲れたのか冷蔵庫からビールを取り出して一気飲みを始める。場は混沌を極めたが、それも深夜の時間帯に差し掛かれば自然と沈静化していった。

 

 そうして夜は更けて朝日が昇る。  


27 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 22:02:23.65 ID:OXXzthZN0


 「(……昨日は馬鹿みてェに賑やかな一日だったなァ)」

 一方通行は寝不足で鋭さ三割り増しの紅い瞳でぐぅすか眠る垣根を一瞥し、首筋のチョーカーに繋いであった充電器を外した。

 「……、あン?」

 その直後、ベッドの傍に置かれていた一方通行の携帯が振動する。 

 一方通行は怪訝な表情を浮かべながら、携帯を手に取り液晶画面に視線を落とす。

28 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 22:03:03.85 ID:OXXzthZN0


 届いたメールの差出人は【君だけの天才美少女】と悪ふざけ全開の登録名、もちろん一方通行はこんなふざけた人間を登録した覚えはない。

 登録した覚えがないのなら、それは知らぬ間に自身の携帯へ登録されていたという事実を暗に物語っている。

 「…………、雲川の野郎だな……ッ」

29 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 22:03:59.91 ID:OXXzthZN0


 そしてその事実に、一方通行はひとつだけ心当たりがあった。 

 昨日の『骨董屋』で、学園都市統括理事会の『ブレイン』を務める天才少女こと雲川芹亜との連絡先交換の際だ。


 「……頭ン中腐ってンじゃねェのかアイツ? 自分の事を『美少女』って呼ぶとか、どンだけナルシストなンだっつゥの」

 ブツブツと愚痴をこぼしながら、一方通行は届いた新着メールを開いた。

30 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 22:08:16.22 ID:OXXzthZN0


差出人:君だけの天才美少女

件名:食い逃げしてすまなかった

本文: 『フェンリル』は本日、常盤台中学へ向かってもらう。目的は『学園都市の第一位と第二位による超能力講座と   いう“名目”での食蜂操祈との接触』だ。
   
    学園都市統括理事会の権限で色々と裏で手回しはしているが、私が全てをカバーできるわけではないのを忘れる   な。

    常盤台中学の備品はどれも高価で弁償するのには莫大な金がかかる。くれぐれも『骨董屋』のように瓦礫の山に   するんじゃないぞ。

    あと、私は少し野暮用で今日は君達と行動することができない。だがその代わりに私の妹を向かわせる、困った   時は妹に頼ってくれ。


   それと、食蜂操祈に操られないように警戒を怠らないこと。  君達の健闘を祈る。
  

31 :ミスったのでもう一度 ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 22:11:08.55 ID:OXXzthZN0


差出人:君だけの天才美少女

件名:食い逃げしてすまなかった

本文:今日は君に常盤台中学へ向かってもらう。目的は『学園都市の第一位と第二位による超能力講座という“名目”での食蜂操祈との接触』だ。
   学園都市統括理事会の権限で色々と裏で手回しはしているが、私が全てをカバーできるわけではないのを忘れるな。
   常盤台中学の備品はどれも高価で弁償するのには莫大な金がかかる。くれぐれも『骨董屋』のように瓦礫の山にするんじゃないぞ。

   あと、私は少し野暮用で今日は君達と行動することができない。だがその代わりに私の妹を向かわせる、困った時は妹に頼ってくれ。


   それと、食蜂操祈に操られないように警戒を怠らないこと。  君達の健闘を祈る。
32 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 22:12:41.10 ID:OXXzthZN0


 「(……ふン、そもそもこの俺があンな器の小せェ女王に操られるワケがねェだろォが)」

 メールを読み終えた一方通行は、携帯を閉じてベッドから起き上がる。

 そして床で寝ている垣根を踏まないよう注意しながら、自室から出て行く。

 「(……シャワーでも浴びるか、なンか服が妙に酒臭ェし)」

 歩行補助用の杖を右手でつきながら、空いている左手で一方通行は脱衣所に繋がるドアを開ける。

 するとそこに。

33 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 22:13:24.96 ID:OXXzthZN0




 「むー、早くこのギブス取れないかな。ミサカが風呂に入る度にジャマで仕方がないんだけど……」

 「……、」


 

 黄泉川の愛用している緑色のジャージを肩で羽織った半裸の番外個体がいた。



34 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/04/27(金) 22:22:57.46 ID:OXXzthZN0
今回はここまでです。 

ダイジェストで話を補完し、一方さんのラッキースケベが発動して、雲川鞠亜の登場フラグが立ちました。

それと>>30でさっそくミスってしまい申し訳ございませんでした…。


さて、次回の投下ですが、大型連休中のバイトやら学校の課題やらで少し未定です。

でも出来るだけ早く皆様にお届けできるように頑張る所存ですので、それまで待っていて下さると幸いです。

それではまた。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/28(土) 00:48:43.70 ID:jmJ0WBWa0
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/28(土) 09:13:33.27 ID:N/MaBiAs0
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 17:06:57.77 ID:gbURXprAO
38 : ◆phLlq2zEWI [sage]:2012/05/07(月) 16:54:44.56 ID:Z/pJk3HAO

>>1です、こんにちは。

一週間近く間を空けてしまい申し訳ございませんでした。

バイトの連勤は終了したので、今日から投下を再開します。



また夜の8時以降に来ます、それでは

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 18:12:13.15 ID:bq5w6OX70
待ってた
40 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:31:02.43 ID:hnVvpH5g0
>>33 続き





 「起きろ垣根、出掛けるぞ」

 「……ん、…………あ?」

 「二度は言わねェ、さっさと支度しろ」

 「…………、出掛けるのは別に構わねぇんだけどよ、――――なんなんだよ、その頬に刻まれた真っ赤な紅葉は?」

 「うるせェ、そンなに気になるならオマエにも同じ痕を付けてやるよ。イイからさっさと右頬を差し出せ」

 「うぉい!? 朝っぱらからいきなり理不尽全開だなテメ――へぶっ!?」



41 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:31:50.31 ID:hnVvpH5g0


 「なんだかあの人の自室が騒がしいかも、ってミサカはミサカはご飯にふりかけをかけながらあの人の自室のある方角へ視線を向けてみたり」

 「朝から喧嘩とは、随分と元気があり余っているみたいじゃんよー」

 「(……ミサカつい気が動転して第一位をぶったけど、頬骨が折れていたりしないよね……?)」



 番外個体の着替えと遭遇し、渾身の平手打ちを喰らった一方通行が腹いせに垣根を殴った現在の時刻は七時十五分。

 黄泉川家のリビングでは、起床時刻の遅い芳川を除く三人の女性陣が朝食を摂っていた。


42 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:32:36.32 ID:hnVvpH5g0


「ところで、なんで番外個体はヨミカワのジャージを着ているの? ってミサカはミサカは訊ねてみたり」



 可愛らしい茶碗を持ちながらぱくぱくと白米を口の中へと放り込んでいく打ち止めは、左手で握ったフォークで卵焼きに突き刺している番外個体に訊ねる。

43 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:33:15.25 ID:hnVvpH5g0


 「ふふん☆ ミサカは幼児体型で運動性能の低い最終信号とは違ってその対極に位置しているから、その性能を遺憾なく発揮するのに最適なのがこのジャージってわけ。それに貰ったアオザイだと、ちょっと過度な運動にも限界があるし」

 そしてその卵焼きを豪快に開けた大口に運んで咀嚼し、口の中が空になった後に舌でぺろりと唇を舐める番外個

44 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:35:12.48 ID:hnVvpH5g0


 そしてその卵焼きを豪快に開けた大口に運んで咀嚼し、口の中が空になった後に舌でぺろりと唇を舐める番外個体。

 「昨日の夜中に番外個体から『ジャージを一着貸してくれない?』って頼まれたじゃん。まあ、そのジャージはサイズが合わなくなって着れなくなったヤツだから、もう私は番外個体にあげるつもりじゃんよー」

 焼き魚の骨を箸で器用に取り除きながら黄泉川が二人の会話に混ざる。 ちなみに卵焼きと焼き魚のどちらもとも、昨日一方通行(正確には浜面)が買ってきた炊飯器で作った品である。

45 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:36:16.53 ID:hnVvpH5g0


 「……またオトナが乳の自慢をしている、ってミサカはミサカは親の仇を見る様な眼で二人を睨んでみたり……っ」

 「あはは。今度打ち止めには新品のジャージを買ってあげるじゃんよ、それで番外個体と一緒に外で遊ぶといいじゃん」

 「ふん! 話題逸らしと平行してミサカをモノで釣ろうなんて百年はや――」

 「たしか、『ゲコ蔵』のジャージが新商品として入荷したとか広告で見た覚えがあるじゃんよー」

 「『ゲコ蔵』じゃなくて『ゲコ太』だよ! ってミサカはミサカはヨミカワに重大な間違いを指摘してみる!」

46 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:36:56.59 ID:hnVvpH5g0


 「ちょっ! 最終信号の口からミサカに白米弾が飛んできたんだケド!?」

 「打ち止め、お行儀のよくない子には買ってあげないじゃんよー」

 「……はーい、ってミサカはミサカは背筋を伸ばしてお上品に食事を再開してみる」

 黄泉川の忠告に渋々といった具合で打ち止めが返事をし、“正しくない”箸の持ち方で卵焼きを摘もうとしたその時だった。


47 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:37:49.70 ID:hnVvpH5g0




 『――おはようございます。姉である雲川芹亜の依頼で馳せ参じた、繚乱家政女学院の雲川鞠亜と申します。一方通行様はご在宅でございましょうか?』



 リビングから玄関へと続く扉の傍に設置されたインターフォンのスピーカーから、可愛らしい少女の声が響いた。



48 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:38:34.86 ID:hnVvpH5g0


 「……、」

 「一方通行、お客さんじゃんよー」

 「(……雲川芹亜の依頼? そもそも雲川芹亜って昨日のアレだよね、食い逃げ犯)」

 和気藹々としていたリビングに、なんとも形容し難い空気が流れ出す。


49 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:39:37.33 ID:hnVvpH5g0


 「むー……」

 打ち止めはかなり不機嫌な顔を浮かべ、一方通行のいる部屋の方へ視線を向ける。

 そしてその室内では、一方通行と垣根が「右頬の次は左頬だ、ついでにその間から真っ赤な滝も流してやンよ」「テメェ理由は知らねぇが完全に俺へ八つ当たりしてんだろ!? っつーか、そう何度も喰らってたまるかよ!!」といった具合のじゃれ合いを繰り広げている。

 
 もちろんそんな状況では先ほどの黄泉川の呼びかけが聞こえるわけもなく、当然二人は部屋から出て来ない。

50 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:40:22.37 ID:hnVvpH5g0


 『居留守ですか? それとも私との面会を拒んで……ってやめたやめた。別に私がこんなに畏まらなくてもいいんじゃないかな?』

 一方で、スピーカーから響く少女の声は畏まった口調からかなり砕けた感じにシフトしたようで、話題を自己完結して勝手に会話を始める。

51 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:41:18.37 ID:hnVvpH5g0


 『えっと、今日は「第一位と第二位による超能力講座〜in常盤台中学〜」という事で、私はそのガイド役だな。わざわざ私が出張る意味はないと思うんだけど、姉の頼みなら仕方がないかな』

 そう言葉を紡ぎ続ける雲川鞠亜は、玄関の扉をしつこい新聞会社の勧誘の如くドンドンと叩き始める。 どうやら外は寒いらしく、“いいからさっさと家の中に入れろ”と言外に語りかけているようだ。


52 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:45:27.73 ID:hnVvpH5g0


 「……まったく、困った奴じゃんよー」

 呼びかけても返事のない一方通行に痺れを切らし、黄泉川自らが玄関の方へと歩いていく。

 黄泉川が鍵を開けて扉を開くと、そこには奇妙なメイドが立っていた。 

 髪は黒髪の縦ロールで、装いはどこかの電気街でチラシでも配っていそうな、胡散臭いデザインで蛍光イエローのメイド服。『警備員』が目撃したら、不審者として同行を願うレベルである。

53 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:52:00.94 ID:hnVvpH5g0

 「お、ようやく開けてくれ――って待って待って閉めないで! そしてその疑惑に満ちた瞳はなにッ!?」

 「……はぁ、イマドキはこんなイタい子がいっぱいいるのか。この国の未来はお先真っ暗じゃんよー……」

 「人を見た目で判断するな! これでも私は繚乱家政女学院におけるトップクラスの才女なのだけど!?」

 「はいはい、そういうのはもっとマシな格好をしてからにするじゃんよー」

54 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:53:08.00 ID:hnVvpH5g0


 「信じる気ゼロ!? ううむ、これは私の沽券に関わる重大な問題だ。早急な解決が求められるが――――才能溢れる私にとっては些末事なので、その解決策として即刻この場で私の才能を披露してみせよう!」



 と、唐突に訳の分からない事を宣言した雲川鞠亜は左足で地面を蹴った。 スカートの裾が乱れる事など気にせずに跳躍する彼女の右足は、黄泉川が閉めようとしていた扉の僅かな隙間に入り込む。

55 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:54:21.24 ID:hnVvpH5g0


 「な――ッ」

 「私を入れてくれないのなら強行突破あるのみ!」

 さらに雲川鞠亜は同時に扉の隙間へ右手を滑り込ませて、右半身を大きく後方へ捻る様にして扉を強引にこじ開ける。

 「対テロリストの軍事訓練すらも経験済みの私に隙はないのだ! いつでもどこでもどんなときでも! あなたの万能メイド雲川鞠亜は、ただ今絶賛無能で愚鈍なご主人――」

 そうして完全開放された玄関へ転がり込み、決めポーズと共にご近所迷惑極まりない宣言をかます雲川鞠亜だったが、それは最後まで紡ぐ事が出来なかった。

56 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:56:39.46 ID:hnVvpH5g0


 その原因は進入した雲川鞠亜の背後から響き渡った轟音が原因だ。 まるで巨大な鉄槌でも振り下ろされたかのような壮絶な破壊音が二人の鼓膜に叩き付けられる。


 「不満があるなら俺じゃなくてボールにぶつけろよ一方通行! 俺はテメェのサンドバッグになったつもりはねぇんだよ!!」

 「……、ならボールで発散するからちょっと付き合え。オマエの寝言が今の俺のコンディションと深く関わってンだから、オマエに拒否する権利はねェがなァ」

 「……んなもんお安い御用だっつーの。俺も身体を動かしたかったから丁度いいしな」


57 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:57:22.01 ID:hnVvpH5g0

 そういがみ合いながら玄関へと歩いてくるのは、学園都市の第一位と第二位、チーム『フェンリル』のキャプテンと副キャプテン、この世界の一端を掌握する者とこの世ならざる異界の一端を掌握する者。

 先程の破壊音と共に吹き飛んだ一室の壁の瓦礫の上を、蹂躙しながら歩み寄る二匹の怪物。

58 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:57:54.76 ID:hnVvpH5g0


 常にお互い喧嘩腰であるこの二人の人間を表現する言葉は、どれも適切でどれも不適切だ。 

 ならば彼等のその“本質”を理解しているのは誰なのかと訊かれれば、それは本人ではなく銀河系宇宙の悪鬼のみだろう。 人間には決して“自分”という存在を完璧に理解することが出来ないからである。

59 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:58:34.41 ID:hnVvpH5g0


 「先に宣告しておくが、手加減ナシの本気で来いよ垣根。ヘタに手ェ抜いたらオマエに全力で『自転砲』喰らわせてやるからよォ」

 「……あのな、テメェその『自転砲』ってのはそうヒョイヒョイと使っていい技じゃねぇからな? 自転速度が遅くなると生態系に甚大な影響を及ぼすし、ヘタすりゃ気候も変わっちまうんだぞ?」

 「ふン、まァ確かにその日の時間は遅くなっちまうが、次の日に自転速度を操作して遅くなった分だけ早めれば問題ねェだろォが」

 一方通行は右手で杖を突きつつ、その左脇に表面がボロボロのボールを抱えながらゆっくりと歩く。


60 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 20:59:51.86 ID:hnVvpH5g0


 「……。なんか、ホントにやる事為すこと滅茶苦茶な野郎だよなテメェは」

 「安心しろ、オマエに比べたら俺ァまだ結構“まとも”な部類だ」

 「そいつはどの口が言ってんだ!? 少なくとも朝っぱらから人をぶん殴る奴が“まとも”なのはありえねぇ!」

















 「――――そうそう、朝っぱらから人様の自宅に強制侵入する奇天烈メイド、さらに居候の分際で人様の家を壊す愚か者共は確かに“まとも”じゃないじゃんよー…………!」


61 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:01:01.79 ID:hnVvpH5g0

 そして玄関の入り口で地獄の門番のように立ち塞がり、憤怒の炎を静かに燃やす体育教師兼『警備員』のお姉さんこと黄泉川愛穂。

 「……ン? なンだ黄泉川、いたのか」

 「そりゃあ私はこの家の家主だからいるのは当然じゃん……!」

 額に青筋を浮かべ、背後に回した右拳を強く握り締めてニッコリと微笑むジャージ美人。

 一方通行が第三次世界大戦から帰還した際に本気でぶん殴られたレベル以上の一撃が炸裂するまであと三〇秒。


 その間に、垣根はすぐ近くでヘンテコな決めポーズをして固まっていた雲川鞠亜に声をかける。

62 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:01:44.42 ID:hnVvpH5g0


 「? っつーか誰だお前?」

 「あ、え……えーっと、雲川鞠亜です。以後お見知りおきを」

 視線をあちこちに彷徨わせながら、とりあえず佇まいを直立に正して雲川鞠亜は返答する。

 それと同時に表情も先程まで浮かべていたどや顔から、キリっと引き締まった仕事モードに移行している。 スカートの裾がかなり乱れてしまっているのを気にせずに。


63 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:02:27.35 ID:hnVvpH5g0

 「ふーん、とりあえず随分とまぁ派手な格好したお嬢さんだこと」

 垣根は値踏みするように雲川鞠亜の全身を見ると同時に、みっともない欠伸をひとつかいた。 どうやらこの少年はまだ寝たりないらしい。

 「残念だが、私を褒めても何も出ないよ第二位」

 「残念も褒めるも何も、俺は見返りなんか求めてねぇよ。そもそも俺のストライクゾーンにお前は入らねぇ」

64 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:03:11.22 ID:hnVvpH5g0


 「流石は第二位、それが一般論における正しい解だね。でも世間では残酷な事に、中学生や小学生をお金や暴力で恐喝して、不純異性交遊をしようとする大きな子供がたくさんいるみたいだよ。……まあその逆もあるんだけどね」

 「知るか、っつーか知っててもどうでもいい」

 「だよね、私もそう思うよ。そもそも自分の身は自分で守らなきゃいけないし。それに私はその辺のスキルアウトにだって負ける気はしないよ、――だって私は才能溢れる人間だから」

65 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:03:58.35 ID:hnVvpH5g0


 自分の控えめな胸に手を当て、堂々と己の才能に寄せる絶対的な自信を言い放つ雲川鞠亜。

 彼女は見た目こそは可憐な少女だが、その内に秘める性能はそこら辺にいるスキルアウトを軽く凌駕する程に天才的で圧倒的だ。
 
 どんな事態にも対処する術を持ち、どんな状況であっても常に進化を求める天才こそが雲川鞠亜という人間。

 「あっそ。……んで、才能溢れる人間様はどうしてこんなトコにいるんだ?」

 それを垣根は心底つまらなそうに一瞥し、皮肉を込めた言い方で雲川鞠亜に疑問を投げ掛ける。


66 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:04:30.82 ID:hnVvpH5g0

 「あー、それは私が姉の依頼で常盤台中学内のガイドを頼まれたからだね」

 「ガイド?」

 「そう、『第一位と第二位による超能力講座〜in常盤台中学〜』のガイド役がこの私」

 「……なんだそりゃ、今日の俺達はそんなクソみてぇな堅苦しい事しなきゃいけねぇのかよ」

 「“常盤台の『女王』である食蜂操祈と接触を図る為の体のいい口実”って姉からは聞いているけどね」

67 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:05:28.64 ID:hnVvpH5g0


 「そういや常盤台中学といえば、学園都市の中で五本の指に数えられるお嬢様学校だよな。そもそもそんな男子禁制の『女の園』に、講義の為とはいえ男が足を踏み込んでいいのかよ?」

 「うん、特に問題ないと思うよ。現に過去にはとある男子高校生が常盤台中学女子寮のベッドの下に潜んでいた事があったようだし」

 「それは踏み込むというより忍び込むだよな? そいつからはまるっきり犯罪者のニオイしかしねぇんだけど」


68 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:07:06.56 ID:hnVvpH5g0

 「まあ細かい事を気にしたら負けだよ第二位。ともかく、私は姉から『一方通行と垣根帝督+αの面倒』を頼まれたから、その間は私が責任を持って君達の身の回りの世話を焼かせてもらうよ」


 と、雲川鞠亜が腰に両手をあてて言い放った直後に、いつの間にか一方通行の胸倉を掴んでいた黄泉川が近隣への迷惑など顧みずに吼えた。



 「二日続けて家主に迷惑かけるお馬鹿さんは、当分の間この家に帰ってくんなじゃん!! ――あとついでにそこの垣根もなんとなく同罪に処すじゃんよ!!」


69 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:07:52.29 ID:hnVvpH5g0

 「……オイ、待て黄泉川オマエふざけンなオイ待――――!」


 黄泉川は胸倉を掴んでいた一方通行を、先程の一件で開け放たれた玄関の扉へオーバースローで放り投げた。

 一方通行の華奢な身体は放物線を描くことなく、最大限に弦を引いて放たれた矢の如く直進する。

 そしてその途中にいた二人の少年少女を巻き込んでも失速することなく、一方通行は暖かかった屋内から昨日ほどではないが肌寒い屋外へと放り出される。

70 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:08:38.79 ID:hnVvpH5g0


 「頭が完全に冷えたらウチに帰ってきてもよし、でもそれ以外で戻ってくることは、緊急時以外絶対に許さないじゃん」

 そう宣告した黄泉川は乱暴に扉を閉めた。 もっとも、こんな鉄でできた扉など学園都市最強である一方通行にとってみれば、一瞬で紙屑みたいにする事など容易いのだが――

71 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:10:00.16 ID:hnVvpH5g0


 「……ッ、なん、なんだよいきなり……!?」

 「痛っつつ……、まさか人間砲弾がこんなに威力が強いなんて……っ」

 「――――」

 「…………んあ? なんか下が柔らかい――――って一方通行!?」

 「第二位の下に第一位が敷かれているとか、一体どんな下克上をしたらそうなるのかな?」

 「んな事言ってる場合じゃねぇ!! おいどうすんだコレ、こいつ呼吸してねぇぞ!?」







 「………………やれやれ、まさか私の“初めて”を第一位に捧げる事になるとは思いもしなかったよ」





 それは黄泉川に投げられた勢いそのままで通路の壁に激突し、そのはずみで第二位に下敷きにされた第一位には非常に困難を極める行為であった。



72 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/07(月) 21:13:28.05 ID:hnVvpH5g0
 今回の投下は以上です。

 一方通行のラッキースケベの件は時間の都合上カットさせていただきましたが、皆さんの要望があれば投下するかもしれません。

 次回の投下は三日以内に出来るように頑張ります。

 それではまた。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/07(月) 21:56:55.98 ID:iYtYz83d0
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 17:49:23.45 ID:lELW8+K20
75 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/09(水) 23:57:57.42 ID:ntUBt6fc0
>>1です。短いですが今回の投下にきました。

しばしお待ちを
76 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 00:54:44.80 ID:/1moswsZ0


 ――――第七学区 常盤台中学学生寮・二〇八号室


 現在の時刻は八時十五分。第七学区に存在する常盤台中学の女子寮には、二人の少女が生活を共にしている。

 「お姉様、本日もやはり……?」

 「…………うん、ごめんね黒子」

 「了解ですの。寮監にはわたくしから説明しておきますので、お姉様はゆっくり休息をおとりになって下さいまし」

 ツインテールの少女はルームメイトであり先輩である少女に一礼すると、ドアノブに手を掛けて部屋から出て行こうとする。

77 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 00:55:33.90 ID:/1moswsZ0


 「――そういえば、本日は急遽講座が開かれる事になりましたの」

 と、ふと思い返したようにツインテールの少女は閉めようとした扉の隙間から、ベッドで布団を被って小さく丸まっている少女に声をかける。

 「……?」



 「その講座はお姉様より上位の超能力者である学園都市の第一位と第二位が、わたくし達に教鞭を振るって下さるそうですのよ」



 「ッ!?」

78 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 00:56:34.80 ID:/1moswsZ0


 (……う、嘘でしょ!? なんでアイツがウチの学校に来るのよ! 一万人もの『妹達』を惨殺してきたあの殺人鬼が!! どうしてッ!?)
 


 ツインテールの少女の話を訊いて、布団の中で顔面が蒼白になる茶髪の少女。だが布団に包まっているせいで、ツインテールの少女はその事に気が付かない。



79 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 00:57:11.44 ID:/1moswsZ0

 「それではわたくしはもう行きますの。講座の内容はわたくしが帰ってきてからお話させていただきますのでご安心を」

 茶髪の少女に配慮してそっと扉を閉じてツインテールの少女は学校へと向かう。



 実際にそこで行われるのは講座ではないのだが、その事実をこの時の少女が知る由もなかった。



80 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 00:58:02.95 ID:/1moswsZ0


 ――――第七学区 常盤台中学・正門前


 現在の時刻は八時四〇分。 鋼鉄製の柵が厳重に侵入者を拒絶するかのように並び立つ常盤台中学の正門の前には、二人の少年と三人の少女がいた。

 「…………で、『動きやすい服装で常盤台中学の正門前に集合』って連絡をよこしたのは別にいいんだけどさ、なんで帝督の背中で第一位様は気絶しているのよ?」

 腕を組み、ジト目で絶賛気絶中の第一位をおんぶしている垣根を見詰めるのは、黒のロングパンツに淡いピンクのパーカーを着用した麦野沈利である。


81 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 00:59:20.22 ID:/1moswsZ0


 「詳しい理由は超不明ですが、何やら朝からひと悶着があったとみていいようですね」

 その隣には、ホットパンツに黒のニーハイ、白のロングシャツとフード付きのオレンジ色のベストを着用した絹旗最愛が立っていた。

 「ひと悶着どころか、私の“初めて”が奪われる大事件だ。第一位には責任を取ってもらわないといけないな」

 「オイ、あれは人工呼吸だからノーカンだノーカン。頼むからその話はこいつが目覚めた時にするんじゃねぇぞ? ――八つ当たりで俺が確実になぶり殺される」

 黄泉川家から追い出されて路頭を彷徨う事が確定してしまった垣根と、人工呼吸で消えそうになった尊い命を救済した雲川鞠亜。

 そして未だに気絶したまま目を覚まさない一方通行を合わせた五人が、学園都市でも指折りのお嬢様学校の前で会合していた。


82 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 01:00:06.66 ID:/1moswsZ0


 「えー、私の名前は雲川鞠亜。以後お見知りおきを」

 「……、私は麦野沈利よ。学園都市の第四位って言えばあとは分かるでしょ」

 「私の名前は絹旗最愛です。こちらこそよろしくお願いしますね、雲川さん」

 雲川鞠亜は初対面である麦野と絹旗にぺこりと小さく頭を下げて、簡単な自己紹介をする。

 それを麦野はぶっきらぼうに、絹旗は丁寧にお辞儀をして雲川鞠亜に返事をした。 実に彼女らの性格が一目で理解出来る行動である。


83 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 01:00:48.93 ID:/1moswsZ0


 「さて、さっそく本日のスケジュールを伝えておくとしよう」

 雲川鞠亜は四人(一方通行は垣根の背中)の中心に位置する場所に立つと、姉である雲川芹亜から直々の依頼を遂行していく。

 「今日は学園都市統括理事会が主催した緊急の『第一位と第二位による超能力講座』という“口実”で、我々は目の前の常盤台中学へと足を踏み入れる」


84 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 01:01:37.36 ID:/1moswsZ0


 「“口実”と言っているので頭の回転が速い君達には不要な説明だが一応説明しておくと、我々の目的は『超能力講座』ではなくこの常盤台の『女王』と称される超能力者、食蜂操祈との接触だ。こういった機会でなければ、常日頃から厳重なセキュリティが敷かれている常盤台中学に入る事は叶わないからね」

 世界でも有数のお嬢様学校である常盤台中学は、学園都市でもトップクラスのセキュリティを誇っている事で有名だ。

 そのセキュリティというのは、この街で常に躍進し続ける『科学』によるものでもあるし、在学する200人弱の生徒によるものでもある。

85 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 01:02:41.59 ID:/1moswsZ0

 常盤台中学の生徒は全員が強能力者(レベル3)以上であるのが在学の条件であるため、それ故に全生徒の能力干渉レベルを総合すると生身でホワイトハウスを攻略できると噂されるほどだ。

 そんな国家レベルの脅威を兼ね備えたお嬢様方に真っ向から関わるのには、正直な話をすればかなり無理がある。

 いくら超能力者である一方通行や垣根が『災害級』と比喩されるほどの圧倒的な力を有していたとしても、その力を操る人間はたったの一人なのだ。 

86 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 01:03:42.15 ID:/1moswsZ0


 それを極端な話で例えるならば、いくら喧嘩の強い人間でも『一対一〇〇』という数の暴力の前では勝ち目がないということである。 

 まあ全盛期の一方通行ならそんな危機的状況でも、某無双系ゲームの如き荒業を達成できそうなものだが……。


87 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 01:04:36.41 ID:/1moswsZ0

 
 「食蜂操祈との接触が図れたら、おそらくそこで食蜂側からのアプローチがあると姉は予想していた。最悪の場合、自身の能力である『心理掌握』で周囲の人間の記憶を改竄し、私達を『侵入者』に仕立て上げて攻撃してくるかもしれないともね」

 「ハッ、そいつはそれで随分と愉快な事になりそうだな。常盤台のお嬢様との戦闘なんざ、そうそう出来るモンじゃねぇぞ」


88 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 01:05:33.38 ID:/1moswsZ0


 「……はあ? 最強の次に君臨するテメェの場合、戦闘もなにもないでしょうが。帝督が起こせるのは一方的な猛攻じゃないの」

 「違ぇよ沈利、戦闘ってのは能力者同士のぶつかり合いだけじゃねぇぞ?俺のさっき言った戦闘ってのはサッカーの事だ。サッカーなら平和的に勝敗を決める事が出来るだろ?」







 「――――そォだな、昨日のオマエが言った通りだ。何も命の削り合いだけが戦闘じゃねェ、それに攻撃と防御を繰り返す行為を『戦闘』って言うならサッカーも同じなハズだ」


89 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 01:06:15.53 ID:/1moswsZ0


 「……ようやくお目覚めかよ一方通行。まさか今まで狸寝入りしていたとか言うんじゃねぇよな?」

 「してねェよ、ただ俺ァ不足していた睡眠を補っていただけだっつゥの。イイからささっと俺を地面に下ろせ」

 「へいへい。ったく、労いの言葉もなしかよ。これじゃ骨折り損のくたびれ儲けだぜ」

 垣根はぶつぶつと愚痴をこぼしながら、目覚めた一方通行をそっと地面に下ろそうとするのだが――



90 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 01:07:41.48 ID:/1moswsZ0













 「ごきげんいかがかしらぁ? 一方通行さんに垣根さんに麦野さん、それと絹旗さんと雲川さん? 私はアナタたちを見て不快力が絶賛急上昇中なのよねぇー」



 突如、鈴の音を転がしたような甘い少女の声が、五人の視線を一斉に引き寄せる。 

 そこに立っていたのは常盤台の『女王』食蜂操祈。  女王単身のこの行動が、この物語を加速させる。


91 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/10(木) 01:09:09.86 ID:/1moswsZ0

今回の投下は以上です。

次回の投下は出来れば今週中にもう一度来ますね。

それでは。

92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 17:14:37.50 ID:NrMz8Q1X0
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/10(木) 18:38:50.28 ID:mRIvKLuB0
94 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:38:31.13 ID:I6NI6GbO0
>>1です、こんにちは。 今回の投下に来ました。

今回は食蜂さんがイロイロとやってくれます、お楽しみに。

それではいきます。
95 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:41:01.57 ID:I6NI6GbO0



 「……よォ、女王サマがわざわざ出迎えてくれるなンて気が利いてンじゃねェか」

 一方通行は垣根の背中から降り、右手でいつものように現代的なデザインの杖を掴む。 ちなみに何処からともなく現れた杖は、先程まで雲川鞠亜が伸縮した状態で携帯していた。

 「そうねぇ、珍しくというか初めて私がお迎えにあがってみたのだけどぉ……面白くもなんともないわねコレはぁ」

 「ハッ、出迎えに面白味を見出そうとするとか馬鹿じゃねぇの? やる前からつまらない事ぐらい分かるだろうが」


96 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:41:46.00 ID:I6NI6GbO0


 「それはお嬢様だから仕方ないんじゃないの? 『心理掌握』は初めて見たけど、見るからに世間を知らなそうな風貌だし」

 「その点、男の味は知ってそうなビッチっぽいですよね。超見た目で判断してますけど」

 「清清しいほど本音をぶちまけるね君達……。でもせめてもう少しオブラートに包むべきじゃないかな?」


97 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:43:51.49 ID:I6NI6GbO0


 雲川鞠亜は苦笑いを浮かべながら、配慮する気配すらない四人に苦言を呈する。 

 しかし、当の罵詈雑言を受けた食蜂はたいして気にしていないのか、クスクスと含み笑いをして五人にこう言い放った。























 「私の外見力がアナタ達よりずば抜けて高いからって理由でぇ、そんな酷い事を言ったらダメなんだゾ☆」



 「「黙れクソビッチ!」」

 そして間髪入れずにシンクロして反論する麦野と絹旗。 食蜂から明確に喧嘩を売られた両者の額には、ハッキリと青筋が浮かび上がっている。



98 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:44:38.87 ID:I6NI6GbO0


 「……、見なかった事にするか」

 「……、そォだな」

 その一方で、男性陣二人は頭の悪い子供を心配そうに見る保護者のような目で食蜂を見ていた。 正直なところ、ドン引きである。

99 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:45:16.99 ID:I6NI6GbO0


 「くっ、……今まさに私は超能力者(レベル5)の片鱗を味わった気がする……。プライドが結晶化していないとあの発言は出来ないな……」

 と一人ぶつぶつと冷静に状況を分析しているのは雲川鞠亜。 彼女も食蜂に喧嘩を売られた内の一人なのだが、圧倒的なプライドの塊を垣間見てしまった今はそれどころではないようだった。



100 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:46:15.11 ID:I6NI6GbO0


 「きゃっ、また辛辣なコメントもらっちゃったぁー」

 「……超すみませン、そのふざけた口を超早急に閉じてもらえませンか?」

 「それじゃダメよ絹旗、私があのクソビッチの頭ごと吹き飛ばす」

 「やぁ〜ん、麦野さんと絹旗さんって意外と野蛮なのねぇ」


101 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:46:50.89 ID:I6NI6GbO0


 食蜂は火に油というより大量の爆薬を惜しみなく投下していく。 

 煽り耐性が普段は高く設定されている麦野と絹旗でも、目の前で猫を被る女に嫌悪感が溢れ出していくのを止めることが出来ない。
 
 同族嫌悪ではなく、王族嫌悪。 自分には絶対的な力があり、それで他人を常に見下す王族のような態度が二人は気に食わなかった。


102 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:47:27.17 ID:I6NI6GbO0


 「……ふざけるのもいい加減にしろよ『心理掌握』? そのすっからかんの頭を私の『原子崩し』で蜂の巣にされたくなかったら、いいから黙って大人しくしなさい」

 そして麦野の許容量が早くも限界に達する。 彼女はなんとか怒りが噴火するのを抑えて口調も比較的おとなしく心掛けているのだが、それでも僅かに殺意がこぼれ出してしまっていた。


103 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:48:07.36 ID:I6NI6GbO0


 「んー、そうねぇ。まだ私は“これから”やらなきゃいけない事があるからぁ、ここは大人しく麦野さんの言う事を聴いておこうかしらねぇ」

 それに対して食蜂は、人差し指を下唇に当てて可愛らしく小首を傾げてみせた。 

 暗部に身を置く人間でも恐れ慄く学園都市第四位の圧力を、屈するのではなく受け流せるほどに食蜂は落ち着いていた。


104 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:48:55.05 ID:I6NI6GbO0


 彼女も伊達で学園都市の第五位を名乗っているのではない。学園都市の第五位と認められた彼女には、常にその利便性に富んだ能力を求めて数多の科学者や『闇』が擦り寄って来ていた。

 少なくとも、『妹達』の件で学園都市の『闇』に初めて触れた御坂美琴より遥か過去から、食蜂操祈という少女は『闇』と関わっている。 



 万人を等しく自分の手駒にしてしまう悪魔のような能力を発現したその時から、――学園都市に蔓延る『闇』と。

105 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:49:45.78 ID:I6NI6GbO0


 「……“これから”?」

 「そんなに怖い顔しないで絹旗さん。別にアナタには関係のない事だから……ね?」

 「それは随分と超含みのある物言いですね、それでは自ら『疑ってください』って言っているようなものですよ?」

 「ええ、たしかに疑われてしまうのは無理もないケドぉ、実際“アナタ”には迷惑がかからないしー」


106 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:50:50.72 ID:I6NI6GbO0


 「……、私の身内に手を出すつもりなら、私は超容赦しませんよ?」



 「――――――『豪炎寺修也』」



 「ッ!?」

 「私の調べによると、絹旗さんとこの男の関係はほぼ『赤の他人』。身内でもなんでもない『赤の他人』を改竄しても、絹旗さんに迷惑なんてかかりようがないわよねぇ?」

 常盤台の女王は薄く引き攣った笑みを浮かべる。 まるで自分の巣に掛かった獲物を狙う蜘蛛のようにじわじわと忍び寄り、動揺で崩した相手の心の隙間へと浸蝕していく。 

107 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:52:01.38 ID:I6NI6GbO0


 「どうやらその男は『原石』と称されているらしいけど、それでも私の改竄力の前ではただの石ころと変わらない。 ……でもその男が優秀な人材であるという事実に変わりはないのよねぇ」

 「待て、黙って聴いてりゃ何さらっとふざけた事ぬかしてンだオマエ。 “あの件”でちったァ反省したのかと思ってみたが、蓋を開けたら微塵も変わっちゃいねェじゃねェか」

 と、ここで不穏な空気の流れを察した一方通行がすかさず会話に口を挟む。 



 一方通行と食蜂操祈は、過去に一度だけ接触したことがあった。

 
108 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:52:37.41 ID:I6NI6GbO0


 九月の中旬頃に学園都市の全域で行われた大規模な運動会である『大覇星祭』。 学園都市に住まう生徒が青春の汗を流していたその裏側で、食蜂は『妹達』を利用した“ある計画”を企んでいた。

 その頃一方通行は、病院から外出許可を得て打ち止めと共に『大覇星祭』が行われている学園都市内を歩き回っていたのだが、そこで打ち止めが唐突に『一〇〇三二号が危ない!ってミサカはミサカはあなたにエマージェンシー!!』と叫んだのが事の始まり。


109 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:53:16.07 ID:I6NI6GbO0


 そうして様々な経緯を経た後、学園都市の第一位と第五位が直接的な戦闘を繰り広げたのは、『大覇星祭』最終日の日没後に行われたフォークダンスの真っ最中だった。

 甘酸っぱくてせつない様々な感情が揺れる炎の傍らで踊る男女達の反面で、苦くて殺伐とした不快にまとわり付く『闇』の中で躍る超能力者達。


110 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:54:06.85 ID:I6NI6GbO0


 彼女が使用する『心理掌握』は、一方通行の通常生活レベル(赤外線の反射など)の『反射』でも簡単に無力化され、食蜂はその後一方通行が繰り出した情け容赦のない重い一撃を顔面に喰らって地面を無様に転がった。

 自慢の能力も通じず、その時従えていた数十名の駒も瞬殺され八方塞がりとなった彼女は、最後の手段として一方通行へ金輪際『妹達』には関わらないと彼に誓った。

111 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:54:46.97 ID:I6NI6GbO0




 そしてその日以降、第一位と第五位が遭遇することはなかったのだが、今現在こうして相対する二人の間には明瞭な溝が存在している。 それも深く、深く深く不快であり不愉快極まりない巨大な溝が。




112 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:55:38.21 ID:I6NI6GbO0


 「クスッ、『女の子の顔面を容赦なく殴って説教垂れてハイ改心』なんていう、アナタの想像する漫画みたいな展開力は私にはなかったのよねぇ。“あの件”で私は『妹達』には関わらないと誓っただけだし、それ以外の考えを改めたつもりはないのよ」

 「……、」

113 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:56:51.20 ID:I6NI6GbO0




 「それにこの常盤台の『女王』である私を屈服させる黒歴史を刻んでくれたアナタとは、……出来ればもう二度とアナタに会いたくなかったんだケドぉ、私の縄張りに侵入してきたのなら迎撃するしかないのよねぇ」




 「ふン。何だ何だよ何ですかァ、オマエが俺を迎撃だァ? 無理に決まってンだろそンなモン、オマエみてェな身の程知らずは一生その狭い園の中で『女王』(笑)でもやってるンだな」



114 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:57:28.91 ID:I6NI6GbO0


 「……、ええ、アナタの言うとおり私という“一個人”でアナタ達の迎撃なんて不可能ね。でもぉ――」

 食蜂は間延びした声と共に星印の付いたカバンから長方形のリモコンを取り出して、その一番上に配置されたボタンを押した。




 するとその直後、一陣の暴風が虚空から発生する。


115 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:58:10.14 ID:I6NI6GbO0


 「――ッ」

 食蜂と一方通行の間に割り込むように出現した暴風は、一斉に五人へ襲いかかろうとするが――





 「甘ぇよクソボケ」

 同時に背中から神秘的な光をたたえた六枚の翼を展開した垣根が、絹旗と一方通行の前に飛び出して同威力の烈風を発生させる。


116 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:58:51.51 ID:I6NI6GbO0


 真っ向からぶつかり合う暴風と烈風は拮抗し、双方の風の流れは互いに譲るように直進から直角へ変化する。

 これにより横一線に風のカーテンが出来上がるのだが、それは数秒も経たないうちに消滅していく。

 そうして五人の前に再び姿を現した食蜂の両隣には、“四人の少年”が立っていた。


117 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 11:59:38.07 ID:I6NI6GbO0


 一人はオレンジ色のバンダナを付けた少年。

 一人は水色の髪をポニーテールに纏めた少年。

 一人は一つ縛りのドレッドヘアーにゴーグルをかけた少年。

 一人は緑色の瞳と色白の肌に赤い髪を持つ少年。



 順に円堂守、風丸一郎太、鬼道有人、基山ヒロトという、U-14の日本代表に選出された過去を持つ少年達が、そこにいた。

118 : ◆phLlq2zEWI [saga]:2012/05/13(日) 12:06:28.36 ID:I6NI6GbO0

今回の投下は以上です。

次回の投下は来週になりますが、もうすぐ>>1はテストが近いので明確な日付は言及できません、すみません…。



では今回はこの辺で失礼します、それでは。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/13(日) 15:13:26.05 ID:IyjkEOwi0
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 17:04:36.15 ID:8Tj/NUhn0
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/02(土) 09:46:11.31 ID:vfdP8WAX0
まだかなー
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 18:13:54.39 ID:NVnZvQOf0
まだかな
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/07/19(木) 16:36:19.93 ID:gxUHQgm/o
そろそろ
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