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アイマス大江戸草子「偶像」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:10:26.96 ID:7uRpHYVh0
こんばんは、
書きためを投下させていただきます。
内容は、アイドルマスターです。
楽しんでいただければ幸いです。

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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:11:55.11 ID:7uRpHYVh0
人生は選択の連続で成り立っている。
人は皆、目の前のあらゆる物事に対して取捨選択を行ない、
得る物の対価としてもう一方を選択する権利を失う。
今を生きるのはその結果であり、
選ばななかった選択肢の先は、

決して自分の前にはない。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:13:52.34 ID:7uRpHYVh0
――江戸

月は朧に、闇深くして一間先見えず
夏の夜に影を残さず駆ける一匹の獣
もとい、素早さのあまり余人の目には映らぬ人間であった

暗がりに光るは鋭き眼光、いや良く見ればまだ幼く見目麗しい小柄な少女か
こんな時分に何用かとは問うまでもなかろう
堅気の者はすでに寝静まって久しい
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:15:54.11 ID:7uRpHYVh0
少女ふと立ち止まる
息は殺したまま

雪歩「な、何奴ですぅ?」

どこからか苦無飛んで来る
鈍い音
身に突き立つ一筋の線

どっと倒れる音

あずさ「江戸を騒がす大泥棒も大したことないのね〜」

先刻までは闇さえそこにはあらずと思えた暗がりに場所に人影一つ

あずさ「何だか今夜は楽なお仕事だったわ〜」

倒れる雪歩の躰に近寄る
が、何かおかしい

あずさ「あらあら〜、うまく逃げられてしまったようね〜」

ぼろをきた木切れ、屋根の上に転がる
一枚の紙
「雪」の一文字

あずさ「ふうん……」

ぞっとするほど冷たく、美しい微笑
音も無く飛び去る
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:18:10.92 ID:7uRpHYVh0
離れた場所

雪歩「あれは、麗文(れいぶん)……?」

得心行かぬ様子
懐には大判がちらと光る
刹那、ふと闇にとけ
この場には誰もいない

変わり身の木切れの直下
屋根裏
黒檀の装束

幕府隠密「た、大変なことになりましたぁー」


第一幕終わり
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:21:18.84 ID:7uRpHYVh0
離れた場所

雪歩「あれは、麗文(れいぶん)……?」

得心行かぬ様子
懐には大判がちらと光る
刹那、ふと闇にとけ
この場には誰もいない

変わり身の木切れの直下
屋根裏
黒檀の装束

幕府隠密「た、大変なことになりましたぁー」


第一幕終わり
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/25(水) 22:25:18.69 ID:7uRpHYVh0
すみません、上、間違えて二度書きました!
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:26:42.37 ID:7uRpHYVh0
活気あふれる昼間
威勢のある大工
恰幅のよい商人
威風堂々の武士 
物売り
物買い
様々な声、音
人々が行き交う


とある大店

商人「そこな嬢ちゃん、坊っちゃん、素通りはいけませんよっ、なんてったってここいらじゃ知らぬ者なしの甘味処、ほら皆さんも、お団子ですよ、お団子!」

上等な着物
頭には、牡丹色のかんざしが目立つ女主人
看板、大きく
天海屋の文字

春香「はいはい、ご注文は?ええ、ええ、もちろんです、今すぐに」

店内、繁盛の様子
忙しく動き回る女主人

春香「ちょーっと失礼、ってあー!」

手に持つ盆をすっ飛ばし盛大に転ぶ
尻もち
頭をかきながら

春香「えへへ、またやっちゃった……」

頬を染める

向かいの川岸
役人風のお侍
見た目は普通の町娘
二人で話している

小声で

役人「何か仕入れたか?」

町娘「天海屋は、表は堅気の普通のお店なんですけど、裏では悪徳な金貸しで大儲けみたいで、うちの貧乏さとは大違いですぅー」

役人「この仕事が終われば奉行様から礼も弾まれようて」

町娘「うっうー!精一杯頑張りまーす」

さらに小声で

役人「よいか、そなたはただの町娘、幕府の隠密などと感づかれることあいならん。」

大声で

町娘「わかりましたぁ!」

役人「も、もうよい、お役目、決して忘れるな。御免」

立ち去る

町娘「まぁ、私が仕えるのはお上で、奉行所ではないんですけどー。久しぶりにお魚が食べられそうですー」

一人呟き、雑踏へと消える
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:31:22.19 ID:7uRpHYVh0
古びた長屋
外で子供らが遊ぶ声がする

布団からむくりと起き上がる
畳まずに
外に出る

雪歩「みんな、おはよう」

子供壱「ねえちゃん、もう日が暮れるぜ」

子供弐「いつものこったよ」

雪歩「何か変わったこと無かった?」

子供参「今日はね、少し遠出して、河岸の先の甘味処でお団子食べたんだよ」

子供弐「なんつったっけ」

子供壱「天海屋だよ、天海屋!」

雪歩驚くが顔には出さない

子供参「あの女の人の言い方、うつっちゃってるよ」

雪歩「へえ、そうなんだ、よかったね。これ、みんなにお駄賃。」

子供弐「わあ!いつもありがとう」

子供参「今度、あたしのお母っさんが、大根の煮つけでも持っていくって」

雪歩「ありがとね。それじゃ少し町のほうに出てくるから」

その場を去る
この少女が江戸中に知れ渡っている大泥棒だとは、子供らにどうして分かろう

独り言

雪歩「次のお仕事先ね……」

また長屋にて

子供壱「いつも、この金どこからもらってんのかな?」

子供参「穴を掘るのが大の得意、って言ってたから、大工の棟梁んところにでも雇われてるんだろうよ」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:37:36.03 ID:7uRpHYVh0
夕暮れ

蒼みがかった黒く、長い髪
紅い瞳
暗殺集団、麗文の一員
この場にいる誰一人として、それは知らない
茶屋の前で誰かを待っている様子

道を歩いてきたのは昼間町娘と密談していた侍一人
今日の仕事は終わったとみえる

あずさ「お兄さん、お兄さん」

この時間にしては少し蒸し暑い

役人「何か用か」

珠のように美しい姿態に目が泳ぐ
悲しいかな、これが男の性

控えめに開いた胸元から覗く遠慮のないふくらみ
艶やかなうなじ
女子らしい腰の曲線
艶のある手足

あずさ「ご忠勤、ご苦労様です〜。私とたまった疲れを癒しませんか〜?」

一寸、返事を躊躇い

役人「よかろう。存分に可愛がってやろう」

あずさ「わあ、うれしい」

両人、人気の少ない路地その裏へ
いざ、ことに及ばんとするに
あずさ、胸の間に隠した寸鉄を役人の首筋へあてがう

役人「お、おまえ、何者……?」

ただ者ではないと今気づいたところで
時はすでに遅し
覆水盆に返らず
後悔が汗となり、額から流れる

あずさ「その前に、こちらの質問に答えてくださいな〜。今度あなたのところであずかることになった隠密さんは、どんな子なのかしら〜?」

物腰は柔らかだが、瞳は爛々と妖しさを放ち恐怖さえ感じる

役人「言える、も、ものか!おまえは誰だ!」

武士の意地
脇差に手を伸ばす

あずさ「わたしの名前は、あずさです〜」

言い終えたと同時に
役人の躰はくずれ落ちる
あずさ、役人の脇差にふれる
開いた鯉口を戻し
静かに立ち去る

じわりと路地裏に広がる紅
男が一人殺されているのが知れるには
しばらくかかろう
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:43:49.88 ID:7uRpHYVh0
かごめかごめ
籠の中の鳥は

少し後のこと

幼子の唄う声

一人歩いていると
思い出される
父母を亡くした
殺されたあの晩のこと
考えまいと、いくら思えど

鶴と亀と滑った

弱く目をつぶる

あずさ「後ろの正面だあ……」

背後に

幕府隠密「動かないでくださいねーっ。死んじゃいますよぉ」

背筋に冷たいものがふれる

あずさ「あらあら〜……」

幕府隠密「大泥棒、雪歩には手を出さないでくださいっ、奉行所が何もできず麗文にかかって死んだとあっては、お上のご威光に傷がつきますからー」

あずさ「その程度で傷になるのなら、どの道永くはないわね〜」

形勢逆転の機会をうかがう

幕府隠密「そうさせない為に私がいるんですーっ」

隙が無い
一分の隙もない

あずさ「お名前、教えてくれるかしら〜」

首筋を汗がつたう
不利な状況
命を奪われる立場
普段とは逆の位置

決して振り向かないでという声

風とともに消える気配

あずさ「やよい……」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/25(水) 22:46:10.55 ID:7uRpHYVh0
上の最後に

第二幕終わり

を付けたしておいてください、
またもやすみません。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:50:49.39 ID:7uRpHYVh0
三日の後

天海屋にて

春香「頼んだ仕事のほうはどうなんですか?」

あずさ「ちょっと、邪魔が入っちゃって〜」

春香「契約に変更はありません。こそこそと鬱陶しい雪歩を消してくれれば約束通り……」

この娘、余程の憎しみがあるよう

あずさ「その訳は〜なにかしら?」

春香「他人の金はいくら盗まれようが構いませんよ。
   ただ、いつか私の番が回ってくる。
   人から巻き上げ貯まった私の懐にふれられるのが耐え難く気分が悪くて……。
   だからです。
   あいつがいなくなれば胸のつかえがとれるじゃないですか」

あずさ黙っている
人はこれ程までに
裏表を際立たせることができるのか

甘味処は店じまい
今は博打に興じるやくざな者たちが大勢

牡丹色のかんざしを外し
髪をおろす
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 22:57:31.31 ID:7uRpHYVh0
深夜
長屋にて

戸をたたく音

雪歩すでに起きているが
腰はあげない

やよい「気付いていたんだから、声かけてほしいですーっ」

雪歩「ぐっすり、眠っていましたから」

立ち上がる

やよい「戻ってきませんかあ?」

雪歩「隠密にですか……」

やよい「そうですー。昔みたいになれたらいいなあって」

かつての仲間

それより前のことは誰も知らない

知る者はもういない

雪歩「わ、私は、だめだめだから……」

俯き加減で
髪を払う

やよい「言うのが遅くなりました、今晩はー。
    それじゃあ、次に会うときは、あなたが無事かは分かりませんよお!」

元の静けさに戻る
別に先程までがうるさかった訳ではないが、
やっと
心の波風がおさまるのを感じた

雪歩「やよいちゃん」


第三幕終わり
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 23:03:36.67 ID:7uRpHYVh0



二日の後

流れる血が止まらない
そして涙も

どうして泣いているのか
自分でもわからない
自分にはわからない

ただ、脇腹から流れ出る紅だけが
今の自分がどうしたのかをはっきりさせるものだと分かり、
安心した

雪歩「うう、もう逃げられない。夢中でたどり着いた先がお家だなんて……」

喘ぐ
また喘ぐ

こうなってしまえば疲労など関係のないことだが、
今はとても疲れた

あずさ「きれいな道案内ね〜」

雪歩「ええ。それと、言うのが遅くなりました。今晩は」

あずさ、雪歩に跨る
もうはねのける力は残っていない

あずさ「あなたの分まで私が生きてあげるから」

雪歩「本当、で、すか?」

今夜は月明るく、
星の輝きが褪せるほどである

あずさ「ええ」

微笑

雪歩「ああ、よかった。
   死んだら、何も、残らないんじゃないか、と思って……。
   私、それだけが怖くて」

微笑が凍り、
驚きの顔
しばし考える

あずさ「私はあなたの命を奪って生きる。
    ……こんなこと普段考えたことなかった。
    今まで気がつかなかった。
    なんて……なんて、悲しいのかしら」

雪歩「あなたの、名前を聞きました、あずささん。
   私の魂を、あなたにあげます」

涙が止まる

あずさ「こんな素敵な贈り物、生まれて初めて……」

頬をつたう一筋の光

今夜は月が美しい

そして、命は


終劇 壱
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 23:08:41.15 ID:7uRpHYVh0



二日の後


あずさ「油断、しちゃだめよ〜」

深々と
やがて貫く、短剣

やよい「そん、な……」

雪歩ちゃん

あの日から、どこか抜けていた
注意も
思考も

会わなければよかった
いや、
それは嘘

この失敗は、自分のせい

やよい「お願い、あの子を殺さないでください」

勝手な願いだとはわかっているが、
それでも言う

あずさ「それで私は何を得るのかしら〜?」

やよい「いいえ、何も。
    それでもお願い、です。
    この命を代価に……。
    雪歩ちゃんと、あなたの両親を殺した天海屋で、あの子は待っています。
    これからは、あなたがっ」

雪歩ちゃんのそばに

あずさ、何も言わない

いつしか、
足は天海屋のほうへ
向いていた

何も言わない


終劇 弐
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 23:12:04.11 ID:7uRpHYVh0



三日後の朝


人が集まっている

見たこともない程
綺麗な娘が
壁に寄りかかり、死んでいる

本当は生きているのかもしれない
しかし、首元から散ったであろう飛沫が、
後ろの壁を紅に染めていた

昨夜の月は、とてもとても、輝いていた

やよい「忠告しましたよーっ、あずささん」

少女の呟きは、ほかの者には聞こえまい

もう慣れたことだ、
人の命は何物よりも軽い
いつからか数えるのをやめたし、
いまさら何も感じることはない

が、一つ分からない
陽の下にいても、
胸のうちで、光の当たらない部分がある

最後の言葉
ありがとう、と

それだけが分からない


終劇 参
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 23:16:30.54 ID:7uRpHYVh0



二日後の夜


やよい「ごめんね、雪歩ちゃん」

雪歩「ううん、いいの。でもどうして?」

胸に突き立った苦無はその先から、
まるで泣いているように
涙を流すように
彼女の血を滴らせていた

やよい「私、雪歩ちゃんがいないと、生きていけないんだあ。
    でも、それはいても、きっと同じ……」

うん、と頷く

やよい「だからね、だから、殺すの」

無邪気な笑顔
人の命を手に掛ける
幾度となくそうしてきた者が
こんなにも素敵に
笑う


雪歩「ねえ、命は、消えるときが一番綺麗だと、思わない?」

肩で息をしながら

雪歩「私のは、どうか、なあ」

血を吐き、
儚げに
本当に、
儚げに
微笑む

月の光は眩いばかりである

死ぬ前の人間とこれ程話したのは
間違いなく初めてだろう

ましてや、
たった一人の親友の死をみるのも
たった一人の親友を殺すのも

間違いなく、初めてだった

やよい「雪歩ちゃん……。ううん、全然」


終劇 肆
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 23:21:30.11 ID:7uRpHYVh0



二回夜が過ぎた夜


話し声
ささやくように
闇にとけ、遠くまでは聞こえない

あずさ「ね、ねえ、見逃してくれないかしら〜」

雪歩「残念ですけど、長屋の子供たちをあんな風に扱った人に、そんな気は起きないです」

右足の腱は斬ってある

私は人を殺さない
いままでそうしてやってきた
でも
どうしてあなたは

あずさ「ね、何も殺さなくても〜」

雪歩「よくそんな口がきけますね。
   人の命は簡単に奪っておいて、自分は死にたくないんですか?」

あずさ「そういうあなたは、今から私を殺そうとしてるじゃないの」

雪歩「あなたは許せない、許してはいけない。
   たった一度だけ、私は人を殺します。
   このことはあなたとの秘密であり、約束でもあります」

閃く刃
鍛えた鋼の白さに、
紅の線が
この夜空に浮かぶ月に映えて

雪歩は目をそらす


終劇 伍
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga]:2012/04/25(水) 23:25:57.18 ID:7uRpHYVh0



最近頭が、ぼうっとする
自分が一つではないような
そんな感覚
そもそも人は、どこまで一つかなんて分からないが

あの子と会ったのは久しぶりだった
いままでほとんど忘れかけていた
と、思っていた
今まで

唐突に理解する

雪歩「やよいちゃんは、私……?」

とても恐ろしくなって、
少しでも落ち着こうと、
外の空気を吸いに、
どこへともなく走りだした

その時に、
目の前に現れる

やよい「どこに行くんですかあーっ?」

ああ、この子は私を
いや、私は、私を
捕まえにきたんだと
そう悟った

雪歩「い、いやあっ。やめて!」

一瞬の動きで
刀を抜いて
懐に飛び込む

やよい、大きく目を見開いて
困惑の表情

雪歩「私の中から、いなくなってえ……」

ようやく、
軽くなった気がした
今まで自分を、自分も知らない奥底から、
繋いでいた鎖を
断ちきって

つくりあげた幻想を
迷いを

全て振り払うことができた

雪歩「でも、おかしいなあ。どうして……」

どくどくと
紅が占めていくこの掌も
困った顔で、
倒れていく体も
ゆっくりと感じられなくなっていく体温も

目の前のやよいは

紛れもない現実なのであった


終劇 陸




21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/25(水) 23:28:21.54 ID:7uRpHYVh0
以上で終わりです。
SSは初めてだったので、何か意見・感想等がありましたら
遠慮なくお願いします。

少し席はずしますね。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/26(木) 00:24:17.80 ID:1wZVWoKK0
今日はこれで寝ます。
閉めるのはもうしばらく待つつもりです。

ありがとうございました!
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2012/04/26(木) 07:47:45.02 ID:bVHSlfQo0
読ませる文章だねえ。時系列がわかりにくいのが残念だが。
面白かったです。乙。
24 :1です、こんにちは。 [sage]:2012/04/26(木) 15:49:50.94 ID:1wZVWoKK0
>>23
うわあ、感想ありがとうございます!
なんて嬉しいのでしょう、生きる糧になります。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 21:25:36.69 ID:qhmDoL/5o
がんばれ
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2012/04/28(土) 00:28:04.23 ID:cKumoGQH0
まだまだ引き出しがありそうだな。
もう一本くらい書いてみたら?
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