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のび太(30)「いらっしゃいませ。」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:03:06.71 ID:cvmqAs0AO
スレ立てもSS作成も初めてです。
かなり稚拙だとは思いますが、お付き合いいただければ嬉しいです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1335794586(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:03:53.86 ID:cvmqAs0AO
2012年 東京某所の靴屋

のび太「いらっしゃいませ。」

?「すいません。こちらのお店は靴の修理はやっていらっしゃいますか?」

のび太「はい。当店でお買い上げいただいた商品でしたら。」

?「あ、いや。買ったのは別のお店なんでs・・・・・・のび太君?」

のび太「えっ?」

?「のび太君だよね?」

のび太「はぁ、左様ですが・・・・・・」

?「僕だよ。覚えてない?」

のび太「・・・・・・!? 出木杉君!?」

出木杉「思い出してくれたかい?」

3 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:07:10.11 ID:cvmqAs0AO
のび太「出木杉君!ごめん、一瞬分からなかったよww 久しぶりだねぇ!」

出木杉「ホント久しぶりだねぇ。中学以来かなぁ?」

のび太「そうなるねぇ。僕ら、高校は別々だったから。」

出木杉「懐かしいなぁ。のび太君、靴屋さんに就職したんだ。」

のび太「うん、そうなんだ。」

のび太「あっ、ところでさっき言ってた修理って? ちょっと深刻そうな顔に見えたけど・・・・・・」

出木杉「あぁ、実はね、この革靴の底を張り替えたいんだけど・・・・・・」ガサゴソ

のび太「どれどれ・・・レザーソールか。結構磨り減ってるね。」

出木杉「就職祝いで父に買ってもらった大切な靴なんだ。今までに底は2回張り替えたんだけど、まだ張り替えられるなら張り替えたいと思って。」

のび太「そっかぁ。その2回張り替えてくれたお店ってのは?」

出木杉「会社の近くにあったんだけど、先月に廃業しちゃってね。他に修理してもらえるお店はどこかないかと探してるんだ。」

のび太「なるほどなぁ・・・・・・うん、分かったよ。うちで修理しよう。」

出木杉「えっ? 良いのかい? このお店で買った物じゃないのに。」

のび太「良いよ良いよ。基本、他店の商品は修理中に何かあっても保証ができないから断ってるんだけど、君とは昔のよしみだからね。修理させてもらうよ。」

出木杉「うわぁ、助かるよ。ありがとう、のび太君。」

のび太「どういたしまして。ただ、外底だけの張り替えじゃ済まなさそうだなぁ。」マジマジ

のび太「コルクの交換も必要かも知れない。」

4 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:10:44.05 ID:cvmqAs0AO
出木杉「コルク? 何なの、それ?」

のび太「見たトコロ、この靴はグッドイヤーウェルトという製法で作られてるんだ。グッドイヤーウェルトは両底にコルクのクッションを挟むんだけど」

出木杉「???」

のび太「あぁ、ごめん、ちょっと分かりにくい説明だったねww」

のび太「まず、出木杉君が張り替えて欲しいって言ってた、この地面と直に接する底。靴裏と言い換えても良いね。これを外底と言うんだ。」

出木杉「うん。」

のび太「そして、靴を履いた時に足の裏と接する、靴の内側の底。これを中底と言うんだ。」

出木杉「あぁ、確かにどちらも底と言えば底だね。」

のび太「そうなんだよ。ややこしいよねww」

のび太「それで、さっき言ったグッドイヤーウェルトっていう製法は、この外底と中底の間にコルクのクッションを挟んで作るやり方なんだ。もちろん他にも特徴はあるけど、ここでは省略するよ。」

のび太「コルクのクッションは、持ち主の足裏の形に合わせて変形するから、すごく足に馴染みやすくて履き心地が良いんだ。」

出木杉「確かに。履き始めの頃より今の方が楽だ。」

のび太「そうでしょ? それがグッドイヤーウェルトの魅力の一つなんだ。ただ、あまりに変形しすぎると、外底の張り替えの時に一緒に交換しなきゃいけなくなる。」

出木杉「えっ? どうして? せっかく足に馴染んできたのに?」

のび太「うん、張り替えに使う新品の外底は真っ平らだからね。凹凸の付きすぎたコルクだと、その真っ平らな外底と上手く着かないんだ。」

出木杉「あっ、なるほど!」

のび太「出木杉君のこの靴は、まさに今言った凹凸が付きすぎてる状態なんだ。だから外底と一緒にコルクも替える必要があるんだよ。」

5 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:12:49.23 ID:cvmqAs0AO
出木杉「なるほど、そういう事かぁ。」

のび太「だから外底交換とコルク交換を合わせて・・・・・・うん、10000円かな。」

出木杉「!? そんなに安いの!? 前の修理の時は外底交換だけで15000円ぐらいだったよ!?」

のび太「いや、もちろん普通はそれぐらいするよ、レザーソールだしね。でも、今回はちょっとオマケしとくよ。」

出木杉「いやいやいや、良いよそんなの! ただでさえワガママを聞いて修理してもらうんだから。この上、値段まで負けてもらうなんて・・・・・・」アセアセ

のび太「良いよ良いよ。気にしないで。流石に旧友から利益を取る気になんてならないからww」

出木杉「のび太君・・・・・・」

のび太「大丈夫だよ、ホントに。気にしないで。ただ、今、交換用のレザーソールのパーツがないから、入荷待ちと修理工程を含めて、1ヶ月ほど猶予をもらいたいんだけど、良いかな?」

出木杉「うん、それは一向に構わないよ。こんな格安で修理してもらえるなら、いくらでも待つさ。」

のび太「助かるよ。じゃあ、申込書に名前と電話番号を書いてもらえるかな?」サッ

出木杉「分かった。」サラサラッ

のび太「ありがとう。じゃあ、修理が終わったらまたこの番号に電話するから、そしたらいつでも都合の良い時に取りに来て。お代はその時で良いから。」

出木杉「のび太君、何から何までホントにありがとう。」

のび太「やめてよww 普通に仕事をしただけだからww 照れ臭いよww」

6 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:15:42.32 ID:cvmqAs0AO




出木杉「のび太君、変わったね。」

のび太「えっ? そうかな?」

出木杉「うん、変わったよ。なんて言うか・・・・・・失礼な言い方だけど、すごくしっかりして、頼りになる感じになった。」

のび太「昔は僕、頼りなかったもんねぇww おまけにバカでマヌケでww」

出木杉「その上、ドジでぐうたらだったww」

のび太「おいコラ、言い過ぎだろww」

出木杉「wwwwww」

のび太「wwwwww」

出木杉「でも、ホントにすごいと思うよ。さっきの修理の説明もすごく分かりやすかったし。『プロだなぁ』って感じがしたよ。」

のび太「いやいや、あれは靴屋の基本の“き”だよ。入社1年目で覚える事だから。」

出木杉「そうなんだ。じゃあ8年目の今は、もっとすごい知識を持ってるんだね。」

のび太「僕はまだ5年目だよ。中途入社だからね。」

出木杉「あっ、そうなの? 前は何の仕事を?」

のび太「いや、僕は・・・・・・」



のび太「・・・・・・25歳まで、引きこもりだったんだ。」

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/30(月) 23:25:52.03 ID:W1PGYvb1o
期待
8 : ◆51UnYd7yHM :2012/04/30(月) 23:33:40.20 ID:cvmqAs0AO
>>7
ありがとうございます。
レスもらえると嬉しいものですね。
頑張ります。
9 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:34:31.40 ID:cvmqAs0AO
2002年。のび太20歳の誕生日。

この日、[たぬき]は未来に帰って行った。



高校に入った頃から、のび太は少しずつ[たぬき]の道具には頼らなくなってきた。

部活は弓道部に入った。

幼少の頃よりモデルガンの射撃には定評のあったのび太。

和弓とモデルガンではいささか勝手が違うが、コツを掴めば持ち前の射撃精度を発揮し、メキメキと頭角を表し始めた。

10 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:35:47.64 ID:cvmqAs0AO


人間とは、何か一つでも夢中になれる物が見付かれば変わるものである。

弓道に打ち込み出した辺りから、のび太は学業の成績も少しずつ向上させ始め、3年生の夏頃には都内の比較的偏差値の高い大学にも手の届くレベルとなっていた。

努力する事の楽しさを知ったのび太にとって、[たぬき]の道具はもはや必要ではなくなった。

悩み事があれば必ず[たぬき]に相談する。

だが、道具は借りない。

そして自分の言葉で、体で、意志で解決する。

11 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:37:27.14 ID:cvmqAs0AO




のび太が大学に入った時、[たぬき]は四次元ポケットを未来のせわしの家に預けた。

のび太からそう申し出たのだ。

『まるで[たぬき]自体が道具であるかのように考えていた、当時の自分が許せないんだ。』


こんなにも嬉しい言葉はなかった。

ロボットの人権が認められている22世紀の世界ですら、依然としてロボットをただの道具や機械とみなす人は少なくない。

なのに、100年も前の時代に生きるこの少年の、何と優しい事か。

[たぬき]は泣いた。

僕に涙を流す機能があって良かった。

僕がどれだけ幸せか、彼に伝える事ができる。

そこにはただ、野比のび太と[たぬき]という、
2人の親友だけが残った。



12 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:41:53.47 ID:cvmqAs0AO
しまった。
ドラ〇もんは規制に引っ掛かるんだったorz
すいません。
手直しを加えて、>>9から再投下します。
13 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:43:13.32 ID:cvmqAs0AO
2002年。のび太20歳の誕生日。

この日、ドラエもんは未来に帰って行った。



高校に入った頃から、のび太は少しずつドラエもんの道具には頼らなくなってきた。

部活は弓道部に入った。

幼少の頃よりモデルガンの射撃には定評のあったのび太。

和弓とモデルガンではいささか勝手が違うが、コツを掴めば持ち前の射撃精度を発揮し、メキメキと頭角を表し始めた。

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 23:43:43.66 ID:nVI/nQCIO
たのむ
メール欄にsagaをいれてくれ
たぬきだとシリアスな感じなのに間抜けた感じで吹いてしまうwww
sageじゃなくてsaga(サガ)な
15 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:44:38.81 ID:cvmqAs0AO


人間とは、何か一つでも夢中になれる物が見付かれば変わるものである。

弓道に打ち込み出した辺りから、のび太は学業の成績も少しずつ向上させ始め、3年生の夏頃には都内の比較的偏差値の高い大学にも手の届くレベルとなっていた。

努力する事の楽しさを知ったのび太にとって、ドラエもんの道具はもはや必要ではなくなった。

悩み事があれば必ずドラエもんに相談する。

だが、道具は借りない。

そして自分の言葉で、体で、意志で解決する。



のび太が大学に入った時、ドラエもんは四次元ポケットを未来のせわしの家に預けた。

のび太からそう申し出たのだ。

16 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:46:42.88 ID:cvmqAs0AO
>>14
sagaですね。
分かりました。
アドバイスありがとうございます。

自分も後で見返して、たぬきで吹きましたww
17 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:48:32.38 ID:cvmqAs0AO
『まるでドラエもん自体が道具であるかのように考えていた、当時の自分が許せないんだ。』


こんなにも嬉しい言葉はなかった。

ロボットの人権が認められている22世紀の世界ですら、依然としてロボットをただの道具や機械とみなす人は少なくない。

なのに、100年も前の時代に生きるこの少年の、何と優しい事か。

ドラエもんは泣いた。

僕に涙を流す機能があって良かった。

僕がどれだけ幸せか、彼に伝える事ができる。

そこにはただ、野比のび太とドラエもんという、
2人の親友だけが残った。



18 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:50:05.72 ID:cvmqAs0AO
20歳の誕生日。

のび太は大学からの帰り道、パパ・ママ・ドラエもんに、それぞれプレゼントを買って帰った。

ママのお気に入りの洋菓子店のプリン、パパが社会人になった頃から贔屓にしているブランドのネクタイ、そしてあんこがたっぷり詰まったどら焼き。

この20年間、実に19回も誕生日を祝ってもらい、プレゼントを貰った。

ならばたまには、20年目の節目ぐらいは、こちらからプレゼントを渡しても良いのではないかと、のび太は考えた。

産んでくれてありがとう、育ててくれてありがとう、と。

ママもパパもドラエもんも、プレゼントを見て非常に驚き、そして目を潤ませて喜んでくれた。



そしてドラエもんはその夜、未来へ帰る事をのび太に告げた。

19 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:52:48.67 ID:cvmqAs0AO


のび太の成長を目の当たりにし、もう自分の助けは必要ないと確信したと言う。

ドラエもん「君はもう大丈夫だよ、のび太君。」



のび太にはワケが分からなかった。

大丈夫って何が?

僕はもう、ドラエもんに頼ろうなんて思っちゃいない。

ただ、親友とずっと一緒にいたいだけなのに。

なのに帰ってしまう?

なんで?

なんで?



頭の中でいくつもの言葉が飛び交った。

しかし、それは口には出さなかった。

頭は混乱していたが、一方でどこか冷静な自分がいた。

その冷静な自分は分かっていた。

ドラエもんがいつか、未来に帰ってしまう事を。

ふと、高校の卒業式の日を思い出した。

のび太は職員室を訪ね、お世話になった弓道部の顧問の先生に挨拶をした。

あの時、先生は今までに見せた事のない優しい目をしていた。

一人の人間を立派に育てた充足感、その人間の今後の幸せを願う慈愛、そして、愛しているが故の淋しさ。

様々な暖かい感情がない交ぜとなった、とても優しい目。

今のドラエもんは、あの時の先生と同じ目をしている。

ならば、この別れは避けられない。

いや、避けてはいけない。

20 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:55:52.98 ID:cvmqAs0AO


のび太はありったけの言葉で感謝を伝えた。

伝え続けた。

涙が止まらず、嗚咽で声が裏返っても、ドラエもんの丸い手をしっかりと握り、必死にありがとうと言った。

一緒に冒険をした。

一緒に色んな場所に行った。

ケンカもたくさんした。

それと同じだけ仲直りもした。

ドラエもんと出会えて本当に良かった。

ドラエもんと過ごした日々はとても幸せだった。

ドラエもん、ありがとう。

僕はドラエもんが大好きだ。

ありがとう。

ありがとう。

ありがとう。



ドラエもんがのび太に伝えようと思っていた言葉は、のび太が全て先に言ってしまった。

相手に対する想いは、お互い同じだったから。

なので、ドラエもんはただ黙って、泣きながら笑って、のび太の手を握り返しながら、優しく頷いていた。

二人の頭上を、夜がゆっくり流れていった。



やがて、窓の外に広がる空が白み始めた頃、別れの時がやって来た。

21 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/04/30(月) 23:59:00.40 ID:cvmqAs0AO
のび太に見送られながら、ドラエもんは机の引き出しを開けた。

のび太は、泣いていなかった。

最後は笑顔で別れると決めたから。

ドラエもんの体が徐々に引き出しへと入ってゆく。

まるで水平線に沈み行く夕陽のようだ。

ドラエもんの丸い頭が少しずつ、引き出しの中へと消えてゆく。

のび太の脳裏を、狂ったように思い出が駆け巡る。

目に写る映像、写らない映像。



スローモーション。



そしてついに、青い夕陽は沈んでしまった。

引き出しが閉じられる。

静寂が訪れた。



ドスンッ!

のび太は膝から崩れ落ちた。

そして、部屋に立ち込める静寂を追い払うかのように、声を上げて泣いた。

涙は無尽蔵だ。

さっきあれだけ泣いたのに。

こんな明け方に大泣きしたら、きっと近所迷惑だろうな。

でも、止められない。

涙と、悲鳴のような嗚咽は、後から後から沸き上がってくる。



ドラエもんは



もう



いない。











それから1週間後。



のび太は部屋から出て来なくなった。
22 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:09:19.36 ID:Rprb5oyAO
2012年 東京某所の靴屋

のび太「いらっしゃいませ」

?「わぁ! のび太さん! ホントにいたんだぁ!」

のび太「!? じ、ジャイ子ちゃん!?」

ジャイ子「流石のび太さん! アタシの事、覚えててくれたのね!」

のび太「あ、あぁ。まぁね。」

のび太(忘れろって方が無茶でしょ.....)

ジャイ子「出木杉さんから、のび太さんがこの近くの靴屋さんで働いてるって聞いてね。それで見に来たのよ。」

のび太「あぁ、出木杉君が.....って、あれ? 出木杉君とジャイ子ちゃんって、そんなに絡みあったっけ?」

23 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:10:39.17 ID:Rprb5oyAO
ジャイ子「子供の頃はそんなになかったわね。お兄ちゃんが中1の頃、テスト前になると出木杉さんを家に無理矢理連れてきて、その時に何度かお話ししたぐらいかなぁ?」

のび太(ジャイアンェ・・・・・・・)

のび太「じゃあ、出木杉君からどうやって話を?」

ジャイ子「Facebookよ。出木杉さんがこないだ、のび太さんの事を近況に書いてて。」

のび太「あぁ、なるほど。『相変わらずドジでぐうたらだった』とか書いてたの?ww」

ジャイ子「違うわよww のび太さんの事を絶賛してたの! 『親切・丁寧な接客で、まさにプロって感じでした。同じ社会人として見習わねば!』って。」

のび太「大袈裟だよぉww」

ジャイ子「それでね、アタシもちょうどパンプスが欲しいと思ってたから、のび太さんに会うついでに何か選んでもらおうかと思って。」

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/05/01(火) 00:10:40.80 ID:rlr8PR220
wwktk
25 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:12:21.26 ID:Rprb5oyAO
のび太「あぁ、それはもう喜んで。」

ジャイ子「だけどねぇ、アタシの足に合うパンプスってなかなかないのよ。歩いてるとすぐ痛くなってきちゃって。」

のび太「ふむふむ」

ジャイ子「大学の頃は多少痛くても無理して履いてたんだけどね。今はもう痛いのが億劫で。最近じゃ、お店で試着した瞬間から痛かったりもするし。」

のび太「分かるよ。歩く度に痛いんじゃ辛いもんね。」

ジャイ子「そうなのよ。だから今はもう夏はクロックス、夏以外はスニーカーって感じでorz」

のび太「ははっ。確かにクロックスもスニーカーも楽だしね。」

ジャイ子「でも、それじゃ男の子みたいじゃない。もっとヒールの高いカワイイ靴も履きたいなぁと思って。」

のび太「なるほど。じゃあさ、そのイスに座って、靴を脱いでもらえるかな? 足を見せて。」

ジャイ子「分かったわ。」ヌギヌギ

のび太「」ジー

のび太(幅広、甲はまぁ普通、それに外反母子か)

のび太「うん、だいたい分かったよ。じゃあさ、こういう甲にストラップがかかってるのはどうかな?」ヒョイ

26 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:17:29.91 ID:Rprb5oyAO
>>24
ありがとうございます。
スレ立て初めてだから、
すっげぇ緊張してますww
口の中パッサパサww
saga忘れたり誤字脱字が目立ったり、
色々あると思いますが、
よろしければお付き合い下さい。
27 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:20:02.02 ID:Rprb5oyAO
ジャイ子「あっ、カワイイ! でも、ヒールが......」

のび太「うん、確かにヒールは高い。でもね、この靴なら絶対痛くならないよ。理由があるんだ。」

ジャイ子「理由?」

のび太「まぁ、それは追々説明するから、とりあえず履いてみて。これ、24.5センチだから。」

ジャイ子「えっ? どうしてアタシのサイズを......」

のび太「足を見れば分かるよ。」

ジャイ子「!!」ドキッ

ジャイ子(すごい......ホントにプロだ......)スポッ スポッ

のび太「履けたね。じゃあ立って、歩いてみて。」

ジャイ子「あっ、はい。」スタスタ

のび太「」

ジャイ子「」スタスタ

のび太「」

ジャイ子「」スタスタ

のび太「どう?」

ジャイ子「......痛くない。えっ? なんで? 痛くない!」

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 00:21:00.67 ID:cHDiVneIO
これもしかして実体験だろ
29 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:23:16.40 ID:Rprb5oyAO


のび太「ジャイ子ちゃんは足の幅が広いみたいだからね。少し幅が広めのパンプスを選んだんだ。それと、そのパンプスは中が深くてね。深いから外反母子の骨の出っ張りをスッポリ包んでくれる。そうすれば痛くないんだよ。」

ジャイ子「そうなの? 確かに全然痛くないけど。」

のび太「外反母子ってのは、靴の外にハミ出して履き口の淵に擦れると痛いんだ。スッポリ包んじゃえば擦れないからね。」

ジャイ子「そうなんだ。」

のび太「尚且つ、そのパンプスはアッパーに羊の革を使ってるんだ。」

ジャイ子「羊?」

のび太「うん。羊の革は柔らかいから、多少締め付けられても痛くないんだよ。そして、外反が当たる部分にも飾りの縫い目が入ってない。縫い目が入ってると革が伸びにくくて後々痛くなる事があるんだけど、その靴は縫い目がないからよく伸びるんだ。だから、さっき言ってた『歩いてたら痛くなる』って心配もない。」

30 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:25:07.50 ID:Rprb5oyAO


ジャイ子「ホントに!? もうね、靴を買ってもそれだけが心配で心配で。」

のび太「ヒールを履く女性は誰でも経験する事だろうね。それともう一つ。そのパンプスは甲にストラップが着いてるでしょ?」

ジャイ子「えぇ。」

のび太「パンプスはカカトと幅で足を締めて固定するんだけど、特に一番負荷のかかる幅、つまり親指と小指の付け根だね。そこは痛くなりやすいよね。ジャイ子ちゃんみたいに幅の広い人は特に。けど、これみたいにストラップが着いてるタイプは、幅にかかる負担を減らしてくれるんだ。要は負担を、幅とストラップに分散するワケだね。」

ジャイ子「そうなんだぁ!」

ジャイ子「すごいわ、のび太さん! ホントに楽! さっきからずっと履いてるけど、全然痛くないもの!」

のび太「このパンプスが、ジャイ子ちゃんの足の形と相性が良いんだよ。相性の良い靴なら絶対に痛くならないからね。」

ジャイ子「決めた。のび太さん、このパンプス買います。もうこれは買うしかないわ。」

のび太「ありがとうございます。」

31 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:28:45.69 ID:Rprb5oyAO
>>28
まぁ、そうですww
32 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:31:47.00 ID:Rprb5oyAO


のび太「じゃあ、14700円で。」

ジャイ子「えっ? さっき、値札には18900円って......」

のび太「マケとくよ。出木杉君の時もこれぐらいマケたからね。」

ジャイ子「ホントに? ホントに良いの? 上の人から怒られない?」

のび太「大丈夫だよww 今月は結構よく売れてるから。ノルマは余裕で達成できそうなんだ。友達の妹から利益を取らなきゃいけないほど切迫はしてないよww」

ジャイ子「助かるわぁ。ありがとう。はい、じゃあこれで。」

のび太「はい、15000円お預かりの300円お返しです。ありがとうね。」

ジャイ子「今日はホントに良いお買い物ができたわ。のび太さん、またちょくちょく来るわね。」

のび太「どうぞどうぞ。来月にレディースの新作をドカッと入荷するから、その時来てくれたら、また何か良いのをご案内させていただくよ。」

ジャイ子「楽しみにしてるわ。ありがとう。それじゃ。」

のび太「どうもありがとう。」

ジャイ子「〜♪」スタスタ

のび太「」



のび太「......ジャイ子ちゃん!」

ジャイ子「なに?」クルッ

のび太「あのさ......」



のび太「......ジャイアン、元気?」
33 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:40:29.39 ID:Rprb5oyAO
2002年

[たぬき]が未来に帰ってから1週間後、のび太は大学とバイトをサボった。

誕生日のあの日、[たぬき]との思い出を胸に、前を向いて生きていこうと心に決めた。

だが、最愛の親友を欠いた日常、そこから生まれる孤独は、誰の手にも負えない驚異的な速さでのび太の心を蝕んでいった。

34 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:42:17.12 ID:Rprb5oyAO
orz
35 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:42:55.67 ID:Rprb5oyAO
2002年

ドラエもんが未来に帰ってから1週間後、のび太は大学とバイトをサボった。

誕生日のあの日、ドラエもんとの思い出を胸に、前を向いて生きていこうと心に決めた。

だが、最愛の親友を欠いた日常、そこから生まれる孤独は、誰の手にも負えない驚異的な速さでのび太の心を蝕んでいった。

36 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:45:05.57 ID:Rprb5oyAO


大学に行っても、講義に身が入らない。

学友の声は上の空。

バイト先ではミスを連発。

そして帰宅し、自室のふすまを開けても、もう部屋には誰もいない。

ヒビが入り、軋み続けるのび太の心。

その心が崩落を始めるまでに要した期間が、1週間であった。

37 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:46:17.46 ID:Rprb5oyAO
以来、のび太は学校にもバイトにも行かず、1日の大半を部屋で過ごす日々を送るようになる。

世に言う引きこもりである。



パパとママも、ドラエもんが帰ってしまった淋しさから来る、一時的な行動だろうと考え、最初は深くは問い詰めなかった。

しかし、1週間、2週間、3週間、そしてついには1ヶ月が経過しても変化が見られない。

大学もこのままでは確実に留年してしまう。

いよいよ両親も業を煮やし、ある夜、のび太をダイニングに呼び出して話を聞こうとした。

38 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:48:48.53 ID:Rprb5oyAO


一体どうする気なんだ。

のび太は、目を合わせず答えた。



どうする気もない。

と言うか、もう“何かをする気”自体、持ちたくはない。



パシンッ!

ほぼ反射的に、パパの右手はのび太の頬を張っていた。

親が子に施す躾としてのそれではない。

同じ人間として許せない発言をした者に向ける、等身大の武力行使。

つい1ヶ月前までは、世界一の自慢の息子だった。

その息子に対して、まさかこんな苦々しい一打を行使する事になるなんて。

のび太は涙を滲ませた瞳でパパとママを睨み付けると、無言で席を立ち、ダイニングの扉を後ろ手で乱暴に閉じながら、部屋へと戻って行った。

ダイニングにはママのすすり泣く声だけがこだまする。

パパは溜め息をつきながらタバコに火を着けた。

しかし一口吸ってすぐ、灰皿へと投げ込む。

火種を消す気力もない。

息子は、我が家は、どうなってしまうんだろう。

39 : ◆51UnYd7yHM [sage]:2012/05/01(火) 00:51:51.91 ID:Rprb5oyAO
今日はここまでにさせていただきます。
レスを下さった方々、ホントにありがとうございました。
明日もよろしくお願いします。
お休みなさい。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/05/01(火) 00:57:27.12 ID:Ca7ZjhnAo
期待
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/01(火) 03:52:09.58 ID:a2qm3aU10
いいね!
気に入ったよ
なんていうのかな、こうジワーッと来るって言うか
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 05:25:28.74 ID:OTIMgurIO
なんかわからんが面白い
そんな事よりもクリスティーヌ剛田は漫画家デビューできたのか!?
43 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 06:53:34.34 ID:Rprb5oyAO
おはようございます。
みなさん、暖かいレスをありがとうございます。

>>40
ご期待に添えるよう頑張ります。

>>41
なんて嬉しいお言葉(´;ω;`)
どうもありがとうございます。

>>42
そうなんですよ。
お会計のシーンに

のび太「ジャイ子ちゃん、こないだCM見たよ。あの漫画、ドラマ化が決まったんだってね。」

的なセリフを挟もうと思ってたんですけど、書き忘れちゃいましてorz
「ジャイ子は現在、漫画家としてプロデビューしていて、作品の1つがドラマ化される事が決まっている」という裏設定にしていただけませんでしょうかwww
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 07:01:58.35 ID:OTIMgurIO
>>43
ま・じ・か!!
そういう裏設定なら全力で支援させていただくwww

それはさておき、のび太の人物設定が好き。好感持てる人になってるのがいいね
45 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:06:44.04 ID:Rprb5oyAO
>>44
では、その裏設定で参りましょうwww

自分も基本、好感度の高いのび太が出てくるSSが好きなんですよ。
マジキチなヤツとか、出木杉と敵対するヤツはちょっと苦手でして。
46 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:07:56.47 ID:Rprb5oyAO
朝食前にちょっとだけ投下します。
47 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:08:54.66 ID:Rprb5oyAO
2012年 東京某所の靴屋 スタッフ控え室

のび太「ふぅ〜。ちょっと食べ過ぎたかなぁ。」

のび太「でも、これでチャージ完了だ。さっ、午後からも売るぞぉ〜。」ガチャッ

のび太「休憩あがりまs」

?「おかしいじゃございませんこと!?」

のび太「!?」

バイト「あっ、えっと・・・・・・」

?「お店の方が商品の説明もおできにならないなんて、どうなってるざます!?」

のび太(“ざます”?)

48 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:09:59.64 ID:Rprb5oyAO
バイト「あっ、あの......すいません僕、バイトでs」

?「じゃあお話のお分かりになる方を呼んで来て下さいまし!!」

サッ


のび太「バイト君、代わるよ。」

バイト「あっ、野比さん。すいません。」スゴスゴ

のび太「申し訳ございませんお客様。いかがなさいましたか?」

?「アタナは責任者ざますか!?」

のび太「はい。副店長の野比と申します。」

?「まったく! 一体こちらのお店は・・・・・・えっ? 野比さん?」

のび太「スネ夫君のお母様・・・・・・ですよね?」

49 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:11:58.99 ID:Rprb5oyAO
スネママ「!? のび太さんざますか!?」

のび太「はい。ご無沙汰しております。」

スネママ「あらぁ、こんなにご立派になられて! お母様はお元気ざますか?」

のび太「えぇ。お陰さまで。」

のび太「それより骨川さん、先ほどは当方のスタッフが不快な思いをさせてしまったようで。」

スネママ「もう良いざます。スネちゃまのご友人のお顔を見たら、少し落ち着いたざます。もう大きな声は出しませんので、聞いていただけますこと?」

のび太「はい。もちろんです。」

50 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:13:19.75 ID:Rprb5oyAO
スネママ「今日はスネちゃまの昇格祝いのプレゼントで、お仕事用のお靴を買いに来たざます。」

のび太「それはそれは。おめでとうございます。」

スネママ「スネちゃまはこういったデザインで、ダークブラウンのお靴がお好きざますの。」

のび太「ダークブラウンのストレートチップですか。カッコイイですよねぇ。当店でも大人気ですよ。」

スネママ「オホホホッ。スネちゃまのファッションセンスは一流ざますからね。」

のび太「はははははっ。」

のび太(まぁ、スネ夫の事だ。きっとスーツも良いの着てるんだろうなぁ。)

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/05/01(火) 07:13:50.93 ID:CvWZD9qIO
sagaいれないからドラえもんがたぬきになっちゃうんだよ
まあ乙
期待してる
52 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:14:07.05 ID:Rprb5oyAO
スネママ「ところがね、のび太さん。こちらの棚の右のお靴と左のお靴。どちらも同じデザインで、お色も同じダークブラウンですのに、10000円もお値段が違うじゃございません事?」

のび太「えぇ。確かに。」

スネママ「そこでワタクシ、先ほどの方に、このお値段の違いは何なのかとお尋ねしたざます。そしたらあの方『こっちの方が履き心地が良いから高いんです』なんて、曖昧なお返事しかして下さらなかったざます。」

53 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:17:30.34 ID:Rprb5oyAO
のび太「あぁ、左様ですかぁ。それは大変失礼をいたしました。」

スネママ「いえ、もうよろしいざますがね。ただ、履き心地が良いから高いのは当たり前でございましょ? ワタクシとしては、具体的に何が違って、どんな風に履き心地が良いのか、そういったご説明をしていただきたかったんざます。」

のび太「おっしゃる通りです。失礼をいたしました。」

スネママ「ワタクシ、質の良い物を手に入れる為にはお金は惜しみません。ですが、その物の質を把握し、それ相応の対価が見出だせなければ決して買わない。それがワタクシのお買い物のポリシーざます。」

のび太「かしこまりました。では、僕からご説明をさせていただきます。」

スネママ「お願いするざます。」

54 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:18:15.00 ID:Rprb5oyAO
のび太「確かにこの両者は似ていますが、アッパーに使っている革の素材がまず違うんです。」

スネママ「えぇ、えぇ。」

のび太「右の安い方の靴はキップと言いまして、生後半年から2年以内の若い牛の革を使っています。」

スネママ「キップ。存じているざます。あっ、では、左の高い方のお靴は・・・・・・」

のび太「はい。カーフを使用しております。」

スネママ「生後半年以内の幼牛の革ざますね。」

55 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:19:33.75 ID:Rprb5oyAO
のび太「流石、よくご存知で。牛革は牛の年齢が若ければ若いほど、伸縮性、通気性、汗の吸収力が良くなります。しかし、若い牛ほど体の面積が小さいので、採れる革の量も少なくなります。それ故、カーフの方が高いんです。」

スネママ「なるほど。」

のび太「それともう一点。こちらのカーフの革は、一旦、ダークブラウンで均一に染めた後、わざと色を落として色ムラを付けているんです。」

スネママ「なぜそのような事を?」

56 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:20:33.42 ID:Rprb5oyAO
のび太「そうする事によって、渋〜い濃淡が現れるんですよ。どうぞ、手に取ってご覧下さい。」サッ

スネママ「」マジマジ

スネママ「確かに。まるでマホガニーのテーブルのような、気品のある濃淡ざますね。」

のび太「そうなんです。本当に綺麗でしょ? ただ、その濃淡を出すための脱色の工程は、全て手作業で行われていますので、均一に染めているタイプと比べると生産量が下がります。そのため・・・・・・」

スネママ「お高い、と。」

のび太「はい。」

57 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:21:44.44 ID:Rprb5oyAO
スネママ「なるほど。実によく分かったざます。品質とデザイン、両方の面でこちらが上手なのでございますね。」

のび太「その通りです。」

スネママ「分かったざます。では、のび太さん。こちらのカーフのお靴をいただくざます。」

のび太「ありがとうございます。」

スネママ「スネちゃまのお足は25センチざます。25センチをご用意下さいまし。」

のび太「かしこましました。」

スネママ「10足。」

のび太「10足!?」

58 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:24:22.54 ID:Rprb5oyAO




のび太「はい。ではカードご一括にて、52万5千円ちょうど、頂戴いたしました。こちらにご署名をお願いいたします。」

スネママ「はいざます。」サラサラッ

のび太「お手数おかけいたしました。こちら、レシートとカードのお控えでございます。」スッ

スネママ「では、のび太さん。残りの8足は入荷次第、送って下さいまし。」

のび太「分かりました。どうもすいません、2足しか在庫がなくて。」

スネママ「いえいえ。それが普通ざます。こちらもそういう状況には慣れてるざますよ。」

のび太「恐れ入ります。」

のび太(骨川家パネェ!)

59 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 07:27:13.65 ID:Rprb5oyAO
朝食を食べるんで、
ここで一旦止めます。

>>51
そうなんですよね。
しっかり勉強してからスレ立てるべきでしたorz
どうもすいません。
ご支援ありがとうございます。
60 :black@hydroex :2012/05/01(火) 07:36:03.93 ID:2obupJUf0
靴屋をやったことがあるのかい?
61 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 08:28:40.56 ID:Rprb5oyAO
>>50
はい。ってゆうか、今も靴屋です。
62 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 08:35:19.57 ID:Rprb5oyAO
のび太「あと、もしスネ夫君が足を通されて、幅や甲の高さ等が合わないという事がありましたら、お手数なんですが、すぐご連絡の上、当店までご送付下さい。違うサイズの物と交換させていただきますので。ただ、手前勝手を申しますが、その際はできるだけ新品の状態で交換させていただきたく存じますので、できれば購入後すぐに一度、玄関で足を通していただいt」

63 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 08:36:57.17 ID:Rprb5oyAO
スネママ「オホホホホッ。ご心配無用ざますわよ、のび太さん。スネちゃまのお靴は、幼少の頃よりワタクシが選んでまいりましたざます。今では、お靴を見ただけで、それがスネちゃまのお足の幅や甲の高さに合うかどうか、すぐに分かってしまうざます。」

のび太「そうなんですかw」

スネママ「このお靴は間違いなくスネちゃまのお足に合うざます。そうでなくては、ワタクシも購入などいたしませんことよ。」

のび太「なるほどw さすがですねw」

のび太(まぁ、僕が靴のプロなら、この人はスネ夫のプロだからなぁ。ここはプロの言う事を信じよう。)



64 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 08:38:26.92 ID:Rprb5oyAO


のび太「スネ夫君は骨川グループに就職されたんですか?」

スネママ「はいざます。今は大阪支社で課長をしているざます。」

のび太「大阪ですか。」

スネママ「大阪支社長さんは夫の同期のお方でございましてね、それはそれは厳しい事で有名でございますの。スネちゃまは将来の社長さんざますからね。その方の下で、同い年の社員さん共々、ビシバシ鍛えていただいてるざます。」

のび太「そうなんですか。スネ夫君、頑張ってるんですねぇ。」

のび太(意外だなぁ。てっきり、親の七光りで幹部にでもなってるのかと思ったのに。骨川家も仕事にはシビアなんだなぁ。)



65 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 08:40:20.33 ID:Rprb5oyAO




スネママ「・・・・・・ところで、のび太さん。」

のび太「はい?」

スネママ「気を悪くなさらないで下さいましね。確かのび太さんは、大学をおやめになって、その・・・・・・おニートをなさっていたとか?」

のび太「うっ!」ギクッ

のび太(恨めしや狭いご町内)

のび太「えっと、お恥ずかしながら、その通りですw」

66 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 08:40:58.16 ID:Rprb5oyAO


スネママ「色々あったんざますね。でも、そこから立ち上がって、こんな立派な販売をなさっているんですから、その経験も決して無駄ではなかったんざますね。」

のび太「いやいや。あれは黒歴史ですよ。ホントに、人生を無駄使いしてしまいました。」

スネママ「いえ、のび太さん。人生に無駄なんてございませんことよ。」

のび太「えっ?」

67 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 08:42:00.74 ID:Rprb5oyAO
スネママ「過ちを受け入れ、自分を許す。そうやって人は一回り大きくなるざます。だから、人生には過ちも必要ざます。その過ちとて、決して無駄ではないのざます。」

のび太「骨川さん・・・・・・」

スネママ「オホホホッ。年寄りのお節介ざます。どうぞお聞き流し下さいまし。まったく、年は取りたくないものざますね。」

スネママ「では、のび太さん。ごきげんよう。」

のび太「あっ、はい! ありがとうございました!」

スネママ「〜♪」スタスタ



のび太「・・・・・・“過ちとて、決して無駄ではない”、か。」
68 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 08:43:00.81 ID:Rprb5oyAO
また一旦、ここでストップさせていただきます。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 09:03:54.17 ID:YIB+7uL5o
なんか>>1が引きこもりを更正させようとしているように見える

あと会話途中に芝いれるのはやめとけ
ギャグssの永遠に笑い続けるやつなら許されるがそれ以外では叩かれる原因になる
70 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 09:33:08.43 ID:Rprb5oyAO
>>69
いえいえ、そんな高尚な考えは持ってませんよ。
自分もニートやってた事あるんで、
当時の経験と、その経験を今の立場から客観的に見た感想とを織り混ぜて書いてるだけです。

芝の件は了解しました。
ご指摘ありがとうございます。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/01(火) 09:48:58.49 ID:MpBE8+rEo
そろそろsagaいれた方がいいぞ
sageじゃなくてsagaな

あと草は生やさないほうがいい
叩かれるから
72 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2012/05/01(火) 10:10:10.89 ID:Rprb5oyAO
>>71
ご忠告ありがとうございます。
草の件は注意します。

sagaっていうのは、
メール欄にsagaと打ち込む事ですよね?
一応、今そうしてるんですけど、
これで合ってますでしょうか?
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/01(火) 10:39:03.31 ID:5RUxxZCho
>>72
それで良いと思う
たぬきになってたらかっこつかないからな
二次創作ならなおさら
74 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:02:28.43 ID:Rprb5oyAO
>>73
ありがとうございます。
saga忘れないように気を付けます。
たぬきじゃ台無しですもんね。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/01(火) 12:05:53.08 ID:7FLNvMzYo
sagaってSS速報だと意味あるの?
ただの愉快犯のような気がするんだが
76 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:11:25.40 ID:Rprb5oyAO
先ほど、自分のこの作風が、
引きこもりの方々を更生させようとしてるように見えるとのご意見をいただきました。
今から続きを投下しますが、
もしも自分のこの作風から、
そういった上から目線の啓蒙思想を感じて気分を害した方がいらっしゃったら、
今から投下する内容はより一層不愉快な物かも知れません。
自分は決してそういうつもりで書いたんじゃないんですが、
捉え方は人それぞれなので何とも言えません。
なので、先にことわりを入れさせていただきました。
ご了承下さい。
77 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:18:30.66 ID:Rprb5oyAO
2007年 のび太の自室

のび太「Zzz。Zzz。」

のび太「Zzz。Zzz。」

のび太「Zzz・・・・・・んっ」パチッ

のび太「・・・・・・ふあ〜」ノビー

のび太「・・・・・・何時だ?」ガサゴソ

のび太「午後3時か・・・・・・」

のび太「・・・・・・いつもより早く起きちゃったな。」



のび太、現在25歳。

平手打ちを喰らったあの日以降も、何度となく両親とは衝突した。

でも、その度に互いの意見は平行線で、一向に交わることはなかった。

そして、ついに両親は何も言ってこなくなった。

78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/01(火) 12:20:19.40 ID:7FLNvMzYo
>>75だがよく調べたらSS速固有のコマンドなんだな、失礼した。
79 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:20:53.67 ID:Rprb5oyAO


大学は留年、退学。

バイトも無断欠勤が続きクビ。

もう最近では、引きこもっている事に対して何かを感じる事も、あまりなくなってきた。

それと比例して、徐々に昼と夜の活動時間も逆転し始めた。

5年目の現在では、180度反転。

朝刊が届くと同時に寝て、夕刊が届いた頃に起きる。

そんな生活を送っていた。

80 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:22:33.34 ID:Rprb5oyAO


のび太「何か良い腹筋スレは、っと。」カチカチ

のび太「なになに?『彼氏がチ〇ポにファンタかけてる(´;ω;`)』『ファンタスティック』」

のび太「ぶはっはははは!」

のび太「おっさん絶好調だな。」



チクリ



のび太「・・・・・・絶好調、だな・・・・・・」



引きこもっている事に対して何かを感じる事も、あまりなくなってきた。

そう、あくまで“あまり”。

“まったく”ではない。

81 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:23:37.15 ID:Rprb5oyAO


小さな焦りの気持ちは、常に心の片隅でのび太を監視していた。

ソイツは小さい癖に、1日に何度か、のび太の心の最深部へ土足で上がり込んでくる。

しかし、一度知ってしまったこの生活には、如何ともし難い魅力があった。

1日はあっとゆう間に過ぎていった。

82 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:24:44.52 ID:Rprb5oyAO


カチャッ ブロロロロ

のび太「あれ? もう朝刊の時間か。1日早いなぁ。じゃあ、ネットニュース見てそろそろ寝ようかな。」カチカチ

寝る前にネットでニュースをチェックするのが、のび太の日課だった。

のび太「『京都府亀岡市で小学生に車が突っ込む。容疑者は無免許の未成年(18)』だって?」

のび太「うわぁ、ひどい事件だなぁ。DQN死ねよ。」

のび太「あぁ、胸糞が悪い。ちょっと芸能ニュースでも見て気を紛らせよう。」カチカチ

のび太「なになに?『あのカリスマラッパーがメジャーデビュー』?」

83 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:25:41.19 ID:Rprb5oyAO


普段は芸能ニュースと言っても、もっぱらアイドル関連の記事しか読まない。

ネットでアイドルヲタを煽る時に役立つからだ。

全く興味のないヒップホップの記事をクリックしたのは、単なる気まぐれだった。

だが後年、のび太はこの記事を読んだのは、何かの導きだったのではないかと考えるようになる。

のび太「どれどれ。」

84 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:29:21.61 ID:Rprb5oyAO


PC(アンダーグラウンドヒップホップシーンでカリスマ的な人気を誇るラッパー・ZAKK Da GGG(ザック ダ スリージー)さんのメジャーデビューシングル『My name is G』が本日発売となる。そのPR活動として本日の午後2時頃、渋谷のタワーレコードでZAKKさんの無料ミニライブが開かれる。)

のび太「はんっ。カリスマって。」

胡散臭い言葉だと思った。

どうせまた、リア充やスイーツ()御用達の、ラブソングラッパーだろう、と。

のび太「一体どんな奴だろ? 写真は・・・・・・」スクロール

のび太「!!!?」

85 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:30:17.64 ID:Rprb5oyAO


スクロールした画面の下からせりあがって来たカリスマラッパーの写真。

そこには、のび太のよく知る人物が写し出されていた。











のび太「・・・・・・ジャイアン。」

86 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 12:32:08.08 ID:Rprb5oyAO
一旦中断します。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 12:45:14.74 ID:YIB+7uL5o
実際にあったこと載せて大丈夫なのかな
あと>>80ワロタ
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/01(火) 12:47:15.18 ID:Z3O/Sl1Mo
あのおっさんスレ見てたのか…
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/05/01(火) 13:14:53.36 ID:Rprb5oyAO
>>87
実際にあったとは言っても、
特定のお客さんとのエピソードじゃないんですよ。
靴屋で働いてますと、
こーゆー出来事は日常茶飯事ですから。
今までにいくつもあった案件をミックスしつつ、
こーゆースタッフになりたいなってゆう僕の理想をのび太に投影しましたww

>>88
見てましたww あのシリーズの中でもこのファンタスティックが一番好きですww
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 14:35:08.13 ID:tWgqLXEIO
俺のクラークスとジョージコックスのソール張り替えてくれ
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 14:45:27.49 ID:MTLiYhT2o
俺に素敵なハイヒールを見繕ってくれ
92 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 16:01:05.50 ID:Rprb5oyAO
>>90
アッパーに亀裂が走って無ければ、基本的には張り替えられますよ。
ただ、張り替えたてのソールは固くて曲がり癖もついてないから、
最初の内は履いていて違和感があると思いますが、
しばらくすれば解消されますのでご安心下さい。

>>91
特注になりますねw
多分高くつきますよw
実際、オネェ系の方達御用達のメンズパンプスを作ってくれるお店ってのは、
わずかながらあるようです。
ミッツさんやマツコさんは多分そーゆートコで特注で作ってるんでしょうね。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 16:04:15.00 ID:MTLiYhT2o
MAJIレスされたが、やはり男性で女性用の靴は特注なのか…
94 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 16:33:29.34 ID:Rprb5oyAO
>>93
MAJIレスですいませんw
でも、『良いですよ〜』とか言うのも変だろうと思いましてw
婦人靴のバレェシューズみたいな形の物で、
オペラパンプスという紳士靴があるんですが、
それもヒールは高くないですしねぇ。
紳士靴で正規販売してるヒール物ってゆうのは、
僕は見たことないですねぇ。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 16:38:33.47 ID:MTLiYhT2o
>>94
いやマジレスを咎めたわけではない、教えてくださってありがたい気持ちを書き込んだだけなのだ。

よいですとも!と言われたらダブルメテオだったが

ふむ、紳士靴でヒール物販売してるのは確かにみかけないよねww
ほら興味はないんだけど…靴の疑問って結構あるじゃん、なんで質問させていただきました///
96 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:32:43.57 ID:Rprb5oyAO
>>95
あっ、そうゆう事ですか。
なら良かったですw
若輩者ですので、
まだまだ知らない事の方が多いですけど、
質問を下さったら、答えられる限りはお答えいたしますよ(^ω^)
97 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:33:13.42 ID:Rprb5oyAO
では、続きを投下します。
98 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:33:58.40 ID:Rprb5oyAO


2012年 東京某所の靴屋 スタッフ控え室

コンコン

のび太「失礼します。」

店長「おう、野比副店長。座ってくれ。」

のび太「はい。それで、お話とは?」

店長「あ〜、なんだなぁ。単刀直入に言うぞ?」

のび太「?」

店長「野比君よぉ、ここで店長やってみない?」

のび太「えっ? 僕がですか?」

店長「あぁ。つまり俺の後釜だな。知っての通り、俺は来月から横浜の新店に異動だからな。」

のび太「でも確か、店長の後任は・・・・・・」

99 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:34:55.44 ID:Rprb5oyAO


店長「あぁ。本部としちゃぁ、銀座店の広田副店長をうちに移して、店長に昇格させたいみたいだがな。」

のび太「ですよね。」

店長「だがなぁ、俺はそれには反対なんだよ。うちにとっても、銀座店にとっても、あまりよろしくはない。それは銀座店の中条店長も同じ考えだ。」

のび太「どういう事ですか?」

店長「広田君を店長にするのは、時期尚早だと思うんだわ。別に広田君が仕事できないって意味じゃないぜ? けど、広田君もまだ若いからさ。もう少し中条さんの下で修行した方が良いと思うんだわ。中条さんも広田君をもう少し育てたいって言ってるし。」
100 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:36:36.21 ID:Rprb5oyAO


のび太「そうなんですか。」

店長「うちはここ2、3年で売上が伸びてきてるだろ? 本部としちゃぁ、期待の新店で俺に手腕を発揮してもらいたい。けど、一方でうちの快進撃も止めたくない。そこで、繁盛店の副店長である広田君をうちに投入したいワケさ。」

のび太「えぇ。真っ当な判断かと。」

店長「違うんだなぁ。」

のび太「えっ?」

店長「俺はね、うちがこの2、3年で伸びてきてるのが俺のお陰だとする、本部のその読みが間違ってると思うワケ。」

のび太「はぁ。」

101 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:37:23.28 ID:Rprb5oyAO
店長「もちろん俺だって努力はしてきたけどね。でも、一番の理由は野比君だと思ってる。」

のび太「えっ!?」

店長「気付いてないかも知んないけど、うちのお客さんの中には野比君のファンが多いんだ。」

のび太「いやいや、そんな事はn」

店長「ある。ホントなんだ。野比君が休みの日に、お客さんで『あのメガネの人は?』って聞いてくる人がすごく多い。」

のび太「そう・・・ですか。」

店長「『あのメガネの人に勧めてもらった靴、すごい履き心地が良いんだ。今度お礼言っといてくれ。』とかね。」

のび太「」

102 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:38:07.54 ID:Rprb5oyAO


店長「極めつけはこないだの10足買い52万円の大量得点!」

のび太「あっ、あれはその、一種のチートみたいなモンで・・・・・・」

店長「チート? 何それ? まぁ、良いや。とりあえずさ、野比君の親切丁寧で笑顔の接客と膨大な商品知識は、確実にこの店に常連を生み出してるワケよ。」

のび太「はぁ。」

店長「まぁ、その膨大な知識を教えたのは俺だけどな!」キリッ

のび太「あはは。分かってますよ。もちろん感謝してます。」

103 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:39:31.96 ID:Rprb5oyAO


店長「でもな、それも野比君に熱意があったからだ。俺はこういう性格だからな。新人にベッタリ張り付いて『大丈夫?分からない事はない?』なんて性に合わないのよ。分からない事があったら自分から訊きに来い、と。『見て盗め』とは言うが、盗むだけじゃ足りるワケがない。訊きに来た奴には何だって教えるが、訊きに来ない奴には一切教えない。成長ってのは会社の為じゃなく、自分の為にするモンなんだから。そうだろ?」

のび太「そうですね。」

104 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:40:31.71 ID:Rprb5oyAO


店長「その点、野比君ときたら、入社初日から質問攻めじゃん? メモとペン持ってず〜〜〜〜〜っと俺の後ろついてきてよぉ。」

のび太「ふふ。今思うと、お恥ずかしい限りですね。」

店長「他店の店長連中が野比君の事、何て呼んでるか知ってるか?」

のび太「いえ、知りません。」

店長「ゴルゴと一緒にいたら確実に殺される男。」

のび太「いやいや、バカにしてるでしょ!」

105 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:42:27.86 ID:Rprb5oyAO


店長「ガハハハッ。まぁ、それだけ真面目で有名って事だよ。上から良く思われたいってゆう、新人にありがちな三日坊主のファイティングポーズかと思ったら、1年経っても2年経っても、相変わらず質問攻めだ。しかも、質問の内容も回を負うごとに高度になっていってる。明らかに“分かってる奴じゃないと気付かない疑問”だ。今使ってるメモ帳、何冊目?」

のび太「多分、11冊目ですね。」

店長「すげぇ量じゃん。KOKUYOから感謝状もらえるレベルだよ。それだけの努力をしてきたワケじゃん。だからあれだけの知識を披露できる。そして顧客さんを掴めるってワケだ。」

のび太「店長の教え方はすごく分かりやすいから、質問するのが楽しくて。」

106 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:43:24.00 ID:Rprb5oyAO


店長「へへへっ。さすが俺だな。だからよぉ、そんな野比君なら、俺はこの店を安心して任せられると思ってるワケさ。正直、本部の連中は野比君の事を、中途採用だからって過小評価しすぎなんだよ。」

のび太「光栄ですけど・・・・・・自分が果たしてそこまでの人間なのか、自信が。」

店長「何言ってんだよ。自信なんざな、やり遂げた後についてくるモンなんだよ。経験を伴わない自信なんてのはただの付け上がりよ。俺はそんな奴にこの店を任せたりはしない。確かな実力があるのに傲らない野比君だから言ってんだ。」

のび太「店長・・・・・・」
107 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:45:48.38 ID:Rprb5oyAO


店長「まぁ、最終的な人事の決定まで、まだ1週間ある。それまでに考えて、答えを聞かせてくれ。」

のび太「分かりました。でも、店長。もし僕がそのお話を受ける気になったとしても、本部の意向を変える事はできるんですか?」

店長「そこは中条さんにかかればイチコロよ。あの人は現場が大好きな人間だから、エリアマネージャーへの昇格も蹴って、かれこれ30年近く銀座店を仕切ってるんだ。その甲斐あって、銀座店は今や全店舗中1位、2位を争う、まさに金の卵を産むガチョウだよ。本部の中でも、中条さんに楯突ける人間なんざそうそういないからな。」

のび太「そうなんですか。分かりました。1週間以内に必ずお返事させていただきます。」

店長「頼むよ。おっと。そうこうしてる間にもう昼か。よし、野比君。飯行ってこい。俺は売り場にもどるわ。」スタスタ

のび太「分かりました。」







のび太「僕が店長か・・・・・・」

108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 17:46:12.12 ID:MTLiYhT2o
流石静かなる中条…
109 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 17:49:34.46 ID:Rprb5oyAO
一旦中断します。
ちょっと早いけど晩御飯食べてきます。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 17:50:15.01 ID:MTLiYhT2o
いってらっさい
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 17:51:23.19 ID:tWgqLXEIO
おつ
ジョージコックスのオールソール張替えで相場いくらくらい?
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/01(火) 18:44:49.70 ID:fX5oqa660
これは珍しくマジキチじゃない[たぬき]
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/01(火) 18:50:54.21 ID:HivFtNVPo
おつ

>“分かってる奴じゃないと気付かない疑問”

これよく分かるわ。質問の内容でそいつがその仕事をどれだけ理解してるのか測れるよな。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/01(火) 18:55:13.30 ID:a2qm3aU10
いいね
キャラクターが誠実だと気分がいい
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/01(火) 19:29:29.79 ID:7FLNvMzYo
追い付いた
素晴らしいSSだ
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/05/01(火) 19:31:30.95 ID:Rprb5oyAO


戻りました。
皆さん、こんな僕のスレに暖かいコメントを下さり、
ホントにありがとうございます。

>>111
すいません、僕の店舗ではジョージコックスは扱ってませんので、
正確なトコロは分かりません。
ただ、今しがたググってみたトコロ、
HPにラバーソールの張り替え価格だけが載ってまして、
12000円〜みたいですね。
レザーソールの張り替えはやってないのかなぁ?
もしやってるとするなら、ラバーで12000円だから、
レザーだと16000円前後でしょうかね?
一般の修理屋さんなら、
純正ではなく代替パーツだからもう少し安くつくかと思います。

>>112
[たぬき]・クレヨンしんちゃん・サザエさん等は、
そもそも本家がほのぼの系だから、
その対比を狙ってか、
マジキチやサイコなSSが多いですよね。
それも嫌いじゃないんですけど、
僕はやっぱりこういう感じのSSが大好きです。

>>113
ホントそうですよね。
質問ってゆうのは一種のバロメーターだと思います。
だからこそ『良い質問だねぇ』って言葉が広く受け入れられてるんじゃないかなぁなんて、
思ったりもします。
って、すいません生意気言いましたww

>>114
ありがとうございます。
僕もキャラクター1人1人が良心的で自立してる感じのSSが好きなので、
ついつい、こうゆう感じで書いてしまいます。
喜んでいただけて嬉しいです。
117 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 19:37:23.70 ID:Rprb5oyAO
すいません、>>116は僕です。
酉もsagaも忘れてしまいましたorz
実は今、ちょっと酒が入ってましてw
やっぱり酒飲みながら書き込みとかするモンじゃないですね(´・ω・`)
酔いが覚めるまで投下は控えます。
しばしお待ち下さい。

>>115
僕なんかのSSには勿体無いお言葉ですよ。
ホントにありがとうございます(;_;)
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/01(火) 19:40:40.44 ID:50W57k3po
当日中ならID見りゃわかるからはよ!
足が寒い
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 19:48:08.76 ID:0uVq1ev0o
靴下まで脱いで待機してやがるな?
120 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 19:48:28.16 ID:Rprb5oyAO
>>118
分かりましたw
できるだけ注意しながら再開します。
121 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 19:49:41.58 ID:Rprb5oyAO


2007年 のび太の自室

のび太「・・・・・・ジャイアン」



ジャイアンは中学の時、交通事故に遭い、右足に軽度の後遺症を負う。

それにより、幼少時代からの夢だったプロ野球選手への道は閉ざされてしまった。

失意のドン底にいた彼を救ったのは、音楽であった。

野球と対を成す、彼のもう一つの生き甲斐。

お世辞にも上手いとは言い難い歌唱力であるが、全くその自覚のないジャイアンは小学生の頃、プロ野球選手と歌手のどちらを目指すか、本気で悩んでいた。

中学に入り、野球部に入部した事で、その悩みは解消される。

122 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 19:50:22.80 ID:Rprb5oyAO


自分から捨てた、もう一つの夢。

しかしその夢は、不貞腐れる事なく自分を待ち続けていてくれた。

そして、迎えに来てくれた。

ならばもう、これしかない。

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/01(火) 19:51:30.87 ID:0EdoBfxAO
よっしゃ!調度再開した所だ。
支援支援
124 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 19:51:35.94 ID:Rprb5oyAO


小学生の頃のジャイアンは、発声法や衣装、ステージパフォーマンス等、全てにおいて大きくロックに傾注していた。

だが、中学で彼を救った音楽はロックではなく、意外な事にヒップホップだった。

メロディを排除し、リズムを究極まで突き詰め、己のメッセージを放つ音楽。

特にジャイアンが影響を受けたのは、90年代後半の日本におけるインディーズヒップホップだった。

サンプリングによる単調なトラックに、一切飾り気のない剥き出しの言葉で紡いだリリック、そして、叩き付けるように踏むライム。

全てが未知の領域だった。

没頭した。

125 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 19:54:43.76 ID:Rprb5oyAO


ルーズリーフにペンを走らせ、オリジナルのリリックを書き始めるまでに、そう長い時間はかからなかった。

中学3年生の時、文化祭でラッパーとして初舞台を踏む。

披露した3曲は全てオリジナル。

と言っても、機材を買うお金はなかったので、トラックはBUDDHA BRANDのベストアルバムに入っているインスト曲を拝借した。

学ランのボタンを全開にし、野球部の帽子を被り、祭りの夜店で買ったメッキのドッグタグを首から下げた。

思い出しても恥ずかしくなるような、手作り感満開のB―BOY。

だがそれでも、まずまずの手応えだった。

空き地で開いていたリサイタルの時とは、明らかに違う反応だった。

元々、低音の利いたハスキー声であり、肺活量も豊かなジャイアンの声質は、ラップという手法とは極めて相性が良かった。

126 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 19:55:48.93 ID:Rprb5oyAO


中学卒業後は進学せず、実家の家業である雑貨屋と夜間のバイトを掛け持ちし、お金を貯めてクラブへ通った。

様々なイベントに積極的に参加し、場数を踏んだ。

当時のステージネームはMC Ωkiller(エムシー オメガキラー)。

特に意味はない。

ただ、何となく強そうな言葉と悪そうな言葉を繋げればカッコイイだろうと思っただけ。

127 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 19:57:10.26 ID:Rprb5oyAO



そして17歳の春。

単身渡米。

ニューヨークで本場のヒップホップを学ぶ。

現地での初ステージにおいて、MC Ωkillerというステージネームがオーディエンスに大爆笑された事は言うまでもない。

現在のZAKK Da GGG(ザック ダ スリージー)というステージネームは、この大爆笑の直後に泣きながら決めた。

実家の家業である雑貨(ZAKKA)を文字ってZAKK、剛田・ジャイアン・ガキ大将の頭文字をそれぞれ取ってGGG。

念のため、現地のクラブで知り合ったDJに、このステージネームで大丈夫かどうか確認をとった。

そこでOKが下りたため、現在までこれを名乗っている。

128 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 19:58:56.21 ID:Rprb5oyAO


それから3年後、帰国したジャイアンはアメリカから持ち帰った経験を武器に、東京のクラブというクラブを渡り歩き、その名を轟かせた。

インディーズからリリースした唯一のアルバムも上々の売れ行きだった。

そしてついに5年後、メジャーからオファーが舞い込む。



129 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 19:59:56.84 ID:Rprb5oyAO




のび太「ジャイアン、ホントに歌手になったんだ。」

のび太「夢・・・・・・叶えたんだ。」



気が付くとのび太はmoraを開き、ジャイアンのデビューシングルを探していた。

のび太「ざっく、ざっく・・・・・・あったZAKK Da GGGの『My name is G』。へぇ、インディーズ時代の楽曲も配信されてるのか。まぁ、それは今度にしよう。とりあえず今日はこのメジャーデビュー曲を、っと。」カチカチ

のび太「よし、ダウンロード完了。再生。」

130 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:01:29.26 ID:Rprb5oyAO


PC「『Check me now! Fucker! 俺はgian da ガキ大将。マジ最高なshow caseの始まりを告げるゴング鳴る。dope rap song書く。G・G・Gと連なりthree G。green leaf着火で目玉が真っ赤なmother fuckerに聴かすlike a gas burner。』」

リア充・スイーツ()御用達のラブソングラッパーだろうという、のび太の当初の予想は盛大に覆された。

低音の利いたマッチョイズムに溢れたトラックの上を、スラングを交えたハードなリリックが暴れまわる。

かつてのリサイタルのように、乱暴に声を荒げる歌唱法ではない。

緩急をつけ、変幻自在のリズムを生み出す、本場のフロー。

ヒップホップに興味のないのび太の耳すら惹き付ける、本物の威厳がそこにはあった。

131 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:03:34.10 ID:Rprb5oyAO


鳥肌が立った。

のび太「・・・・・・すごい!」

次々に飛び出してくるリリックの中でも、のび太の心に特に深く刺さったフレーズがある。

『いずれは巨匠。だがまだ序章。今は帰れんぜ、あの故郷。』

挫折から這い上がり、修行を積み、ついにメジャーと契約を結んだジャイアン。

しかしそれは始まりに過ぎない。

俺の人生はここからだ。

ヒップホップへのリスペクトと、生きる喜びがそのフレーズには詰まっていた。



気が付くと、3分半の楽曲は終了していた。

PCの前に呆然と座るのび太を、再び静寂が包む。

窓の外は明るくなり始め、朝を告げる雀達の声が響く。

いつもののび太なら、とっくに布団の中だ。

だが、今日は寝ない。

いや、今日からは寝ない。







のび太「たまにはハロワに行こうかな・・・・・・」

132 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:08:03.81 ID:Rprb5oyAO
すぐに次の投下へ移ります。
しばしお待ちください。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 20:10:46.60 ID:tWgqLXEIO
丁寧にありがとね
靴の知識だけじゃなくヒップホップの知識まであんのか
まさか単身渡米してラッパーやってんのも実体験か
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/01(火) 20:18:41.99 ID:0EdoBfxAO
青[たぬき]はニート化してる時に一体何をしてたのか…その辺りも書いて欲しい気も
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 20:19:36.57 ID:YIB+7uL5o
俺が実際にあったこと載せてっていったのは亀岡とかのことな
136 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:21:53.72 ID:Rprb5oyAO
>>133
ヒップホップは好きです。
高校の頃、
自作のリリックを友人達と書き合って、
それを録音して遊んでました。
渡米はさすがにしてませんw
ってゆうか人前で歌った事もありませんww
もちろん事故にも遭ってませんwww



では、続きを投下します。
137 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:23:07.84 ID:Rprb5oyAO
2012年 東京某所 のび太行きつけのダイニングバー

カランカラン

?「いらっしゃいませ。あっ、のび太さん!」

のび太「やぁ。」

?「いらっしゃい。お仕事の帰り?」

のび太「うん。」

?「お疲れさま。さっ、カウンターにどうぞ。」

のび太「ありがとう。」ゴトッ

?「今日は見ての通り、閑古鳥だわ。」

のび太「貸し切りだね。」

?「ふふふ。そうね。ご注文は?」

のび太「ジャックダニエルをロックで。」

138 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:23:58.79 ID:Rprb5oyAO


?「あら? 珍しいわね。いつもはハイボールなのに。」

のび太「『男には飲みたい夜がある』ってね。」

?「何かの歌?」

のび太「いや、今思い付いた。」

?「ふふふ。でも、良い言葉ね。」

のび太「えへへ。」

?「はい。ジャックダニエルおまちどおさま。」コトッ

のび太「ありがとう。」カラン

?「恋の悩み?」

のび太「いや、仕事の悩み。」

?「そう。私で良ければ、いくらでも聞くわよ?」

のび太「ありがとう。」



のび太「・・・・・・ねぇ、しずかちゃん。」

139 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:24:43.30 ID:Rprb5oyAO


しずか「なぁに?」

のび太「しずかちゃんは、このお店を先代のマスターから引き継いだんだよね?」

しずか「えぇ、そうよ。」

のび太「マスターからは何て言われたの? 『俺の後を頼む』とか?」

しずか「やぁね、のび太さん。そんな遺言みたいな言い方じゃないわよ。『誰も継ぐ人間がいないなら、このまま廃業しても良いけど、もし源さんがやってみたいなら、譲るよ?』って。」

のび太「そっかぁ。」

しずか「それが、どうしたの?」

140 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:25:30.53 ID:Rprb5oyAO


のび太「来月、うちの店長が横浜の新店に異動になるんだ。で、代わりに僕が今の店で店長やらないかって言われた。」

しずか「すごいじゃない! 昇格するのね!」

のび太「そうなんだけど・・・・・・何か、自信なくてさ。」

しずか「そうなの?」

のび太「うん。そりゃね、僕だって昇格はしたいよ。ってゆうか、もう30だし、そろそろ店長ぐらいなってなきゃいけない頃合いだってのも分かってるんだ。だけど・・・・・・」

しずか「その店長さんに追い付ける気がしないんだ?」

のび太「・・・・・・うん。」

141 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:26:24.85 ID:Rprb5oyAO


のび太「店長の仕事を見れば見るほど、自分が情けなくなるよ。膨大な知識に機転の利いた接客。怒鳴り込んできたクレーマーでさえ、最後には笑顔にしてしまうんだ。敵わないよ。」

しずか「分かるなぁ。私も、マスターから打診された時、のび太さんと同じ事を思ったもの。」

のび太「しずかちゃんでもそう思う事、あるんだ?」

しずか「それはあるわよぉ。ましてや当時、私はまだアルバイトの大学生だもの。お店が混んだ時、マスターみたいに手際良く調理できるかとか、酔っ払ったお客さんが暴れたらどうしようとか、色々考えたわ。」

142 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:27:06.54 ID:Rprb5oyAO


のび太「それでも、引き継ぐ事を決めたんだ。」

しずか「えぇ。元々、いつかは自分のお店を持ちたいって思ってたから。ここでアルバイトをしようと決めたのも、ここが私の理想とするカワイイお店のイメージにピッタリだったからなの。」

のび太「確かに、何かファンタジー映画に出てくる魔法使いの家みたいな内装だもんね。」

しずか「ふふふ。マスターは大のRPG好きだったから。それとね、マスターはこのお店が大好きだったの。それは一緒に働いてた私が一番知ってるわ。だから、マスターの愛したこのお店を、私は守りたかった。」

143 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:28:09.65 ID:Rprb5oyAO


のび太「・・・・・・マスター、癌だっけ?」

しずか「すい臓癌よ。私がこのお店を引き継いだ半年後に亡くなったわ。」

のび太「そっか・・・・・・ねぇ、もし良ければ、その話、もう少し聞かせてもらえないかな?」

しずか「・・・・・・良いわよ。でも、その前に私もちょっと飲もうかなぁ。のび太さん、おかわりはいるかしら?」

のび太「あっ、お願いします。ジャックダニエルを・・・ハイボールで。てへへ。ロックはやっぱりキツいや。」

しずか「ふふふ。じゃあ私もハイボールにしよっ。」カチャカチャ

のび太「」

のび太(しずかちゃんと二人でお酒を飲むなんて、小学生の頃の僕には到底想像がつかなかったなぁ。)

144 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:29:18.94 ID:Rprb5oyAO




しずか「おまちどおさま。」コトッ

のび太「ありがとう。乾杯。」スッ

しずか「乾杯。」チンッ

しずか「」グビッ

しずか「ふぅ。えっとね、マスターの癌が見つかった時、私は大学4回生で、卒業まであと3ヶ月って時期だったの。」

のび太「うん。」

しずか「その時点でもう癌は結構進行していて、マスターは余命半年と宣告されたわ。」

のび太「半年・・・」

145 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:30:19.47 ID:Rprb5oyAO


しずか「私は就活で内定がもらえていなくて、就活浪人が確定していたの。マスターは『内定が取れるまで、ずっといて良いよ。』って言ってくれてた。その矢先に、癌が見付かって。」

のび太「」

しずか「マスターは『もし源さんが店を継いでくれるんなら、卒業までの3ヶ月で全てを教え込む。継がないんなら今すぐ廃業する。そのどっちかだね。』って笑いながら言ってたわ。私がこのお店に憧れてる事も、全てお見通しだったみたい。」

のび太「そこでしずかちゃんは、前者を選んだ。」

しずか「えぇ。」

146 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:32:02.56 ID:Rprb5oyAO
理由は3つあるわ。2つはさっき言った通り、元々お店を持ちたいと思ってた事と、マスターの宝物を守りたかった事。後の1つは・・・・・・」

のび太「」

しずか「」

のび太「」

しずか「」

のび太「・・・・・・マスターの事が、好きだったんだね。」

しずか「・・・・・・うん。」

のび太「そっか・・・・・・」

しずか「叶わぬ恋だったわ。マスターには、奥さんも息子さんもいたから。」

のび太「」

147 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:32:50.05 ID:Rprb5oyAO


のび太「実際、引き継いでみて、どうだった?」

しずか「そりゃあ大変だったわよ。想像以上に。でも、それと同じぐらい、やり甲斐があったわ。」

のび太「夢が叶ったんだもんね。」

しずか「ところがね、やればやる程、私はまだまだ夢を叶えてないなって気付かされるの。」

のび太「どうして?」

しずか「アイデアが次々に湧いてくるのよ。『こんなソファを置いてみたい』『あんなメニューはどうかしら』『ホームページにこんな機能をつけてようかな』ってね。」

のび太「うん。」

148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 20:36:06.40 ID:tWgqLXEIO
しずかちゃんは小雪になったのか・・・
149 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:37:11.85 ID:Rprb5oyAO


しずか「そうゆうアイデアの1つ1つも、私は夢だと思うの。小さな夢。『お店を持つ』ってゆう大きな夢は、この小さな夢がたくさん集まってできてるんだと思うわ。」

のび太「なるほど。」

しずか「だから私はまだ、夢の途中。私の夢は、まだ終わってないの。」

のび太(それって・・・・・・)

(いつかは巨匠。だがまだ序章。今は帰れんぜ、あの故郷。)

150 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:37:56.34 ID:Rprb5oyAO


しずか「だからね、のび太さん。店長昇格の話は、受けてみるべきだと思うわ。失敗だってするけれど、失敗せずに人生を送る方が、よほど損だもの。」

(過ちとて、決して無駄ではないのざます。)

しずか「失敗を乗り越えた時、その経験は必ず自信に繋がるから。」

(自信なんざな、やり遂げた後についてくるモンなんだよ。)

しずか「のび太さんなら、絶対大丈夫よ。」



のび太「・・・・・・うん。ありがとう。」







(君はもう大丈夫だよ、のび太君。)

151 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:39:30.47 ID:Rprb5oyAO


2022年 東京某所の靴屋

のび太「いらっしゃいませ。」

男性客「こんにちは。」

のび太「あっ、こんにちは。先日はどうも。」

男性客「こないだアナタに選んでもらった革靴、すっごい履き心地が良いんですよ。」

のび太「ありがとうございます。」

男性客「もうね、今まで履いてきた靴は何だったんだって感じで。」

のび太「はははっ。光栄です。」

男性客「また何か良いのを選んでいただきたいんですけど。」

のび太「分かりました。先日はストレートチップでしたよね? じゃあ、今回はモンクストラップなんてどうですか?」

男性客「あ〜、カッコイイですねぇ。サイズ、出していただけますか?」







のび太「〜というワケで、この靴はお客様のお足と相性が良いんです。」

男性客「なるほどなぁ。分かりました。こちら、いただきます。」

のび太「ありがとうございます。」

男性客「しっかし、前回もそうですけど、アナタの説明は分かりやすくて、ホントにすごいですね。」

のび太「いえいえ、まだまだ勉強中の身ですよ。」

男性客「アナタは、ここの店長さんですか?」







のび太「はい。店長の野比のび太と申します」



Fin

152 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:40:08.60 ID:Rprb5oyAO
以上です、
お付き合い下さって、
誠にありがとうございました。
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 20:41:03.52 ID:YIB+7uL5o
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/01(火) 20:43:16.60 ID:50W57k3po
おつ
物足りないけど乙
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/01(火) 20:46:57.91 ID:0EdoBfxAO

青[たぬき]の天の声が聞こえて安心した。
次回作も見たい。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/01(火) 20:47:33.42 ID:ZvyxHTZDo
乙乙!
すばらしいSSにめぐり合えた
157 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:49:03.78 ID:Rprb5oyAO


>>134
一度は挫折するだろうけど、
それでも必ずまた立ち上がって生きていくだろうと、
全てお見通しで帰っていったんだと、
僕はそういう設定で考えています。

>>135
そうですね。
僕もアナタにレスをした後、
もしかして事故の方の事かな?と思いました。
あれは軽率でした。
やめれば良かった。

>>148
まさにそういう感じですね。
おしゃれな飲み屋の美人店主ってイメージです。
158 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 20:59:22.46 ID:Rprb5oyAO
皆さん、改めまして、
短い間でしたが、
お付き合い下さって、
ホントにありがとうございました。
SSを書くのは初めてで、
自分的には結構な長さの書けたんじゃね?とか思ってましたが、
実際載せてみると全っ然大した量じゃなかったですね。
良い勉強になりました。
最後に、僕が生まれて初めて読んで、
そして衝撃を受けたドラ系SSをこちらにご紹介しておきます。

http://moemoe.homeip.net/i/index.php?ac=view&aid=16033

ホントに面白いので良かったらご一読下さい。
もう既にご存知の方はごめんなさい。

では、失礼いたします。
重ね重ね、ありがとうございました。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/01(火) 21:01:16.57 ID:50W57k3po
このまま帰るなどこの俺がゆ"る"さ"ん"

いつでも良いのでHTML依頼を出してから帰りましょう
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 21:04:03.84 ID:keCLmPVIO
ウイスキ〜は、お好きでしょ〜?うぃう〜
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/01(火) 21:16:21.61 ID:7FLNvMzYo
乙!
すげー良かった!
162 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 21:50:32.16 ID:Rprb5oyAO
HTML出したけど、まだ間に合うかな?
163 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 21:51:46.63 ID:Rprb5oyAO
よし、間に合う!
すいません。
実はこんなのも書いてたんです。
ついでに載せさせて下さい(>_<)



1997年 剛田雑貨店

母ちゃん「はぁい、お待たせ。200円お返しだよ。奥さん、いつもありがとうね。」



ズズッ ズズッ

母ちゃん「! あっ、たけし・・・・・・」

ジャイアン「」

母ちゃん「・・・・・・おかえり。」

ジャイアン「・・・・・・ただいま。」ボソッ

ズズッ ズズッ

母ちゃん「あっ、た、たけし! 戸棚にみたらし団g」

ジャイアン「いらねぇ。」ボソッ

ズズッ ズズッ



母ちゃん「たけし・・・・・・」



164 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 21:52:22.14 ID:Rprb5oyAO
間もなく中学2年生を迎えようとしていた1996年2月、ジャイアンは交通事故に遭う。

一旦停止を無視して飛び出してきたオートバイとの接触事故。

数百キロの鉄の塊は自転車に乗っていたジャイアンの右足に直撃。

命に別状はなかったが、右足を複雑骨折するに至った。

医者はリハビリをすれば、元通り歩けるようになる“可能性もある”と言った。

ジャイアンはその可能性を信じた。

もう一度あの場所に帰りたい。

野球がしたい。

1年に及ぶ必死のリハビリにより、日常生活に支障がないレベルにまで回復する事ができた。

165 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 21:52:53.04 ID:Rprb5oyAO


しかし、軽度ではあるが、後遺症が残った。

右足をほんの少し、引きずってしまう。

日常生活においては軽度であっても、プロのスポーツ選手を目指す者にとっては致命的だった。

その上、他の部員より1年のブランクがある。

プロへの夢はおろか、部活のレギュラー復帰も絶望的だった。

夢は、完全に指の間をこぼれ落ちてしまった。



当時のジャイアンの落胆ぶりは、目も当てられないほどに痛ましかった。

家族、部活仲間、顧問、担任、のび太をはじめとする旧友達。

誰一人として、かける言葉を見付ける事ができなかった。

166 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 21:54:01.94 ID:Rprb5oyAO


のび太はドラえもんに頼み、ジャイアンを励ませる道具を借りようとした。

しかし、

ドラえもん「道具を使えば、そりゃ、一時的には元気にする事もできるよ? けどね、それは応急処置でしかない。ジャイアン自身が希望を見出だして立ち上がらない限り、根本的な解決にはならないんだよ。」







ゴロン

ジャイアン「はぁ・・・・・・。」

学校から帰ると、自室の畳に寝転がって天井ばかり眺めていた。

机と本棚だけの殺風景な部屋。

かつて壁を埋め尽くしていたプロ野球選手のポスターやカレンダーは、全て捨てた。

『週刊 ベースボール』も捨てた。

もう野球中継も甲子園も見ない。

日常から野球を排除したかった。



ジャイアン「」

ジャイアン「・・・・・・お〜れ〜はジャイア〜ン。ガ〜キだいしょ〜う。」

ジワァ

ジャイアン「うぐっ。て、て〜んか・・・む〜てき、の・・・ヒック。お〜どごだ、ぜ・・・・・・」

ジャイアン「うっ・・・うっ・・・・・・」



ジャイアン「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」







167 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 21:55:19.39 ID:Rprb5oyAO







ジャイアン「Zzz・・・・・・」

ジャイアン「Zzz・・・・・・」

ジャイアン「んっ。」

ジャイアン「・・・・・・寝ちまった。」

ムクッ

ジャイアン「あっ、あ〜。」

ジャイアン(もう夜か。ってゆうか何時だ?)チラッ

ジャイアン(午前1時か。随分寝たもんだなぁ。)

ジャイアン(飯食わなきゃ。それに風呂と歯磨き・・・・・・)

ジャイアン「」

ゴロン

ジャイアン「もう良いや、面倒くせぇ。」



ジャイアン「・・・もう全部、面倒くせぇ。」

168 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 21:56:27.87 ID:Rprb5oyAO


カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ



ジャイアン「・・・完全に目ぇ覚めちまった。」

ジャイアン(帰って来たのが4時だろ? そんで、市役所の5時の鐘を聞いたのは覚えてるから・・・・・・うわぁ、下手すりゃ8時間も寝てるじゃねぇかorz もう朝まで寝られそうにねぇなぁ。)

169 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 21:58:10.06 ID:Rprb5oyAO


ジャイアン(漫画はもう何回も読んだのばっかだしなぁ。かと言って、こんな時間に居間に降りてテレビ見るワケにもいかないし。)

ジャイアン「ん〜。」

ジャイアン(そうだ、ラジオでも聞くか。)ゴソゴソ

ジャイアン(夜中だしヘッドホンを挿して、っと)グサッ

ラジオ「〜さんからのリクエスト、お送りしました。さて、続いてのリクエストは、ラジオネーム・ブタゴリラさん。昨年リリースされ、既に『ジャパニーズヒップホップのクラシック確定』と話題の超問題作。」

ジャイアン(んだよ。ヒップホップかよ、つまんねぇ。『だよね〜♪ だよね〜♪』とか下らねぇんだよ。ロック流せよ、ロックをよぉ。ヒップホップなんて邪道だっつうの。)

ラジオ「LAMP EYEで、『証言』。」

RINO「要件1。投げんなサジ。ことの重要性理解してない腑抜け恥じな。マリアッチ。一番手は俺RINO。バンデラスよりもド派手に登場。」

ジャイアン(!?)

170 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 22:01:29.51 ID:Rprb5oyAO


RINO「飲み込んでやるぜ大東京。行く先々で巻き起こす大騒動。大膨張し止まらない勢い。衝突は避けられない。平成8年。形勢は逆転。準備万端はっちゃけて行くぜ。」

ジャイアン(何だよ、これ・・・・・・)

YOU THE ROCK★「邪魔させん。割り込みはいけません。俺たちの文化着火MAKE A FIRE。電光石火かっ飛んできた。仲間と常に魂燃やし、焦がし、笑い、力となってく俺の肥やし。言葉の力俺の言霊がみなぎるパワー。うわー。真っ赤な目をしたフクロウ。俺登場。証言2放つ。」

ジャイアン(ヒップホップなんて邪道なのに・・・・・・)
171 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 22:02:03.92 ID:Rprb5oyAO


G.K.MARYAN「敵は我なり。届けKAMINARI。狙いすました第三の証言。心にしまわず吐いたあの暴言。裏を返せばシネマのような名言。雑念ぶっ飛ぶ一直線。進むリズムに乗るこの光線の中、何小節かの旅。バッチリ、ガッチリ行きますか?」

ジャイアン(カッコイイ・・・・・・)

Zeebra「ハァ! 証言4番。大判小判に目眩み悪魔に魂売る奴のたくらみ。Mc DADDY気取りのボケ。HIP HOP使っていっちょ金儲け。ハン! 不純な動機。シーンに対すRESPECTなど放棄。俺のタケボウキで大掃除。暴走しかけたその張本人。よく聞いとけ。俺らコケにした奴。今時計が処刑の時刻を指す。」

ジャイアン(カッコイイじゃねぇか・・・・・・)

172 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 22:03:02.56 ID:Rprb5oyAO


TWIGY「ハイ! 証言5。テンコ盛りの話要らねぇぜ。弁護連動無理ならば戦闘開始か。仕掛けるか。願えるか意思。お主、弱ぇし早ぇしコエーくらいドケチ。セージでも焚いてココロ開いてないね。大抵、喜んで御来店。ったくもう本音は冴えない改善。」

ジャイアン(すげぇ・・・・・・)

GAMA「時間がねぇよ。証言6。ウダダダ寝てられねぇぞ。動いてる。ジタバタしたってムム。ブルブル。レッドゾーン振り切る加熱。」

ジャイアン(これが、ヒップホップ・・・・・・)

173 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 22:03:42.06 ID:Rprb5oyAO


DEV LARGE「煮えくり返る熱湯のごとく、氷のごとく冷たく落とす。HA! Bring damage Hit'ya 直撃。ポンコツ頭にゃチト難しい話。Fuckコケおどし。Fuck子供騙し。Real見えない遠視近視乱視達。Never立ち往生。Fuck for the love of money。怯まねぇ。怯むワケにゃいかねぇ。証言Seven。」

ジャイアン(ヤベェ・・・・・・)

174 : ◆51UnYd7yHM [saga sage]:2012/05/01(火) 22:04:46.24 ID:Rprb5oyAO


ラジオ「深夜にふさわしい、Do〜peなナンバーですね。僕も昨年、この曲を聴いた時は衝撃を受けました。ラジオネーム・ブタゴリラさん、どうもありがとうございました。お送りしましたナンバーは、LAMP EYEで『証言』でした。CMの後も、リクエストまだまだ続きます。」

ジャイアン「LAMP EYE・・・『証言』・・・・・・」



ジャイアン「すげぇ・・・・・・」









ジャイアン「俺も、こんなカッコイイ音楽、やってみてぇ・・・・・・」



Fin



すいません、今度こそ終わりです。
余計なモン書いてすいません。
ありがとうございました。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 00:46:06.58 ID:hncldrEIO

今度スネ夫も書いてくれ
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 01:08:59.33 ID:lwqR3lLIO
乙でした
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 01:17:29.87 ID:0C2vUOjIO
実写化キャスト
のび太→加瀬亮
しずか→小雪
ジャイアン→zeebra
スネ夫→大泉洋
ジャイ子→仲里依紗

スネママ→宮崎美子
のびママ→森雅子
のびパパ→大杉漣
ジャイママ→北斗晶

青[たぬき]→ジャン・レノ
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 01:23:06.45 ID:E8h30sZDO

>>158のSSも神だった
179 : ◆lGP5NIvhf2 [sage]:2012/05/02(水) 22:47:05.76 ID:6lnsYEQ+o
てす
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 23:16:50.53 ID:TfvC2j45o
面白かったよ1乙
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