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さやか「あたし……もうゾンビなんだよ!」大道克巳「それがどうした!」 -
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1 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/03(木) 14:46:52.72 ID:jHm1eNTk0
・クロスを円滑にするための俺設定あり
・キャラ崩壊は無い……筈、有ったら作者のミスです
・仮面ライダーW(を中心とした仮面ライダーシリーズ)と魔法少女まどか☆マギカのクロス
・主人公は美樹さやかと仮面ライダーエターナルこと大道克己ですがさやかの出番はラストまでは少なめです
・おりこマギカ組の登場もあり
・ゲストとしてかずみマギカからも一部キャラ登場
・以前一度落とした時とは別の酉でやっていますが本人です
・以前一度落とした時の内容に微妙な修正と描写不足な部分の加筆を行いました
・最後に前回のスレでは言い忘れていた原案を出して頂いた方への感謝をして始めたいと思います
SSWiki :
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■ 萌竜会 ■ @ 2025/07/15(火) 00:40:24.35 ID:LBAUOkqwo
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■ 萌竜会 ■ @ 2025/07/15(火) 00:39:16.20 ID:qbAcbrETo
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猫饅頭 @ 2025/07/14(月) 19:14:21.34 ID:1knELuPaO
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(安価&コンマ)コードギアス・・・ @ 2025/07/13(日) 22:27:49.60 ID:9f2ER2kw0
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KU-RU-KU-RU Cruller!Neo @ 2025/07/13(日) 21:55:45.76 ID:YIcI6tEGo
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ひたむきに! @ 2025/07/13(日) 20:04:58.82 ID:YMv4024Yo
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今日の疑問手 @ 2025/07/13(日) 19:07:12.02 ID:ZqmtXqZ3o
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旅にでんちう @ 2025/07/13(日) 13:03:56.58 ID:cdEpW45FO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1752379436/
2 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/03(木) 14:47:56.91 ID:jHm1eNTk0
【第一話「だから足掻き続けてるんだよ」】
「だってあたし……もう死んでるんだもん、ゾンビなんだもん!」
悲痛な叫びが木霊する。
「こんな身体で抱き締めてなんて言えない。キスしてなんて言えないよ……」
二人の少女。
一人の名前は美樹さやか、何処にでも居る普通の魔法少女。
一人の名前は鹿目まどか、どこにでも居ない特別な只の少女。
美樹さやかはとある願いのために魔法少女になり、結果それを叶えた。
だがその代償はあまりに重く、彼女は人間の体を失った。
もう恋しいあの人に触れられない。
触れていいような自分ではない。
そんな絶望が今まさに彼女を蝕んでいた。
まどかはさやかを優しく抱きしめ、さやかはホロホロと涙を流している。
まどかの眼からも何時の間にか涙が溢れていた。
突然さやかの肩を何者かが叩く。
「それがどうした?死人が夢をもっちゃいけないのか、死人が恋をしちゃいけないのか?」
驚いて彼女は振り返る。
先ほどまで居た筈のQBは消えていなくなり、代わりに整った顔立ちながらどこか危険な雰囲気のする青年が立っていた。
「たとえ死人でも、俺は未来が欲しい。だから足掻き続けているんだ
お前はどうする。そこで立ち止まって朽ち果てるのか?それとも、俺についてくるか」
男はさやかの瞳を見て問いかける。
まどかもさやかも突然の闖入者に呆然としていて彼に上手く反応ができない。
「…………」
「…………」
「ん?」
「え?」
「あの……」
「どちら様ですか?」
当たり前の反応である。
「…………俺は、大道克己。死人だ。そして仮面ライダー」
大道克己、線の細い青年。
あの風都を死人の街に変えんとした悪魔とは姿が違う。
その姿はむしろ、彼を打ち倒した二人で一人の仮面ライダー“W”の片割れ、フィリップにそっくりであった。
3 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/03(木) 14:49:45.49 ID:jHm1eNTk0
「さて、行くか」
大道は二人をリードするかのように歩き出す。
さやかは大道より前に立とうと歩みを早くする。
「待て待て美樹さやか」
「なに?」
「手を組むなら、相手の実力くらい知っておきたいだろう?」
「良いわよ、正義の魔法少女さやかちゃんが今夜もバーンと……!」
「……死ぬぞ」
大道の冷たい瞳にさやかは震える。
そう、大道克己は何よりもまず傭兵である。
だから数多の戦場を駆け抜けた経験上、美樹さやかのようなタイプが一番危険であることを知っていた。
その直後、大道が足を踏み出そうとしていた場所に大量の槍が突き刺さる。
三人が真上を見上げると龍のような影の塊がいくつも浮かんでいた。
「――――使い魔!」
「さやか、まどかを守っていろ。」
「あ、ちょっと!」
大道は床を蹴って一気に飛び上がり、腰からナイフを抜く。
逆手に構えたナイフを二度、三度、振るう。
そのたびに使い魔たちは一匹また一匹と消滅していった。
4 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/03(木) 14:50:18.29 ID:jHm1eNTk0
「――――疾い!」
美樹さやかは思わず感嘆の声を上げる。
しかし使い魔達は自分自身を槍にして大道へと突撃を仕掛ける。
直撃、黒い革のコートから鮮血が噴き出した。
「大道さん!?」
まどかが悲鳴をあげる。
さやかは彼を助けようと構えた。
だがその瞬間、大道は彼らの方を振り向いてニヤリと笑ったのだ。
「この程度で騒ぐなよ」
「え?」
「捕まえる手間が省けたぜ」
ナイフの刃が結界の中の月明かりを反射して辺りに輝きの残滓を撒き散らす。
その幻想的な光景に一瞬だけ目がくらむ。
「と、まあこんな感じだ」
汗ひとつかかずに使い魔を倒してみせた大道。
さやか達が見ることができたのは消滅する寸前の使い魔だけだった。
「お前らと違って俺は魔法を使わずに使い魔を倒せる。
グリーフシードのことを考えればこれだけでも組む価値はあるだろう?」
先ほどまで身体にあった筈の傷は影も形もない。
たった一つ、穴の開いた革のコートだけが今の戦いをを物語っていた。
まどかはちらりとみえる大道の上半身に恥じらって目を背ける。
「さて、行くぞ、魔女はこの奥だ!」
先を行く大道に文句を言う者はこんどこそ居なかった。
三人がしばらく歩くとあたりの情景が単調になり、まるで影絵のような状態に変わっていく。
「……さて、そろそろか」
「そうね」
「え?」
「まどか、下がってて」
「う、うん」
轟音が響き、地面がせり上がる。
小高い崖の頂上に、魔女が立っていた。
「行くぞさやか、下準備が有るから俺の合図まで……」
「なんであんたが仕切るのよ!」
「おい、ちょっとまて……!」
さやかはクラウチングスタートで魔女に向けて駆け出した。
そんな彼女を後ろから眺めながら大道は腰にベルトを巻き始める。
カチッ、と音がしてベルトが大道の身体にハマる。
5 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/03(木) 14:52:46.53 ID:jHm1eNTk0
「しかたねえ、さっさとやるか」
「エターナル!」
大道の手の中で突如として響く電子音声。
永遠を告げるガイアのささやき。
「大道さん何それ!?」
「俺の宝物だ」
声の主は大道の手に握られた“E”の刻印が施されたUSBメモリ状のもの。
ガイアメモリ、エターナルである。
端子は青くない所を見ると第一世代のメモリらしい。
「変、身!」
「エターナル!」
赤光を纏い、大道克己は純白の鎧を身につけた戦士へと変身する。
火の粉が辺りで跳ねまわり、白と黒の世界に鮮やかな彩りを加えた。
「カアッ!」
そして、大道の叫び声に呼応して炎は青く染まる。
これこそが真実の永遠。
仮面ライダーエターナルブルーフレア。
彼の全身に走る稲光は青く染まり、それについで青い炎が彼に従う。
「綺麗……」
まどかはつぶやいていた。
青い炎は大道の背後で漆黒へと変わり、一枚へのマントへと彼を守るために変身した。
ナイフを抜き放つ大道克己。
奇しくものその姿は青い衣装を身に纏い、マントを背中からなびかせる美樹さやかに酷似していた。
「キャァッ!」
大道が変身を終えると同時に美樹さやかの身体が派手に吹き飛ばされてくる。
どうやら魔女の攻撃が直撃したらしい。
しかし彼女の攻撃も無駄ではなかった。
大道の変身は使い魔に邪魔されずスムーズに行われたのだから。
6 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/03(木) 14:56:58.19 ID:jHm1eNTk0
「さやかちゃん!」
「お……っと!大丈夫か?」
吹っ飛ばされてきたさやかをすかさず受け止める大道。
「大道……!?」
大道の変貌に事態が飲み込めないさやか。
「ちょっと赤くなる辺りまだ馴染んでないが……いけるか
さやか、後は俺に任せろ」
「ちょ、まちなさ……!」
「いいや、もう終りだね」
大道はさやかを抱えながらエターナルメモリを自らのナイフに器用に差し込む。
「エターナル、マキシマムドライブ!」
青い雷がナイフに走る。
それと同時に魔女の身体にも稲光が走る。
「さやか、俺の変身の間に魔女の周囲の使い魔を片付けてくれたらしいな」
「え?」
大道はだき抱えていたさやかをまどかに投げつける。
まどかはそれをなんとかキャッチするもののその反動で転ぶ。
「ありがとうよ」
大道は駆け出す。
「大道さんあぶな……うそ!?」
まどかは目の前の光景に驚く。
先ほどまで美樹さやかをあんなに激しく攻撃していた魔女の身体に電流が走って動けなくなっている。
「さあ、地獄を楽しみな」
大道が魔女の目の前でふわりと宙に浮かぶ。
そのまま身体を半分ほど捻って背中を向け、その回転した勢いを生かしてそのまま足を突き出す。
その蹴りが届くか否かの刹那、魔女の姿が人間のそれに変わる。
7 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/03(木) 14:58:17.11 ID:jHm1eNTk0
「ア……リガ、トウ」
大道は少女の瞳をまっすぐに見つめる。
その表情は仮面に隠され伺えない。
「カメンライ……」
その魔女は少女の姿で、血を吐きながら砂のように消滅した。
彼女が消えた後には二個のグリーフシードが転がっていた。
大道はグリーフシードを拾うとまどかに抱えられたさやかにそれを渡した。
「今の……」
「どうしたさやか、まどか」
「な、なんでもないわ」
「大道さん、今の……?」
二人ははっきりと見ていた。
魔女が大道克己の攻撃を食らう直前に普通の少女になっていた所を。
「まどか、今は……」
しかしさやかは其の問題を一旦棚に上げた。
今聞いた所で仕方が無いと判断したのだろう。
「はっきりしねえなあ、まあいい」
結界が消えて行く。
それを確認して大道もメモリをナイフから抜き取る。
純白の鎧と黒いマントは青い炎になって消滅した。
「帰るぞ、お前らの親父もお袋も心配しているだろう。」
バイクが再び大道の元に走ってくる。
「乗りな」
まどかとさやかは生じた疑問をひとまず棚上げして彼のバイクに再び跨るのであった。
【第一話「だから足掻き続けてるんだよ」 了】
8 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/03(木) 15:05:16.25 ID:jHm1eNTk0
【次回予告】
「終わりだ、過去の魔法少女」
「こんな所に居たのか、大道克己」
「お前は必ず始末しろと言われているんだ」
「大道さん危ない!」
「どうした?軽蔑したか?」
「話を、聞かせて」
【次回 第一と二分の一話「許して」 乞うご期待】
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2012/05/03(木) 15:43:24.52 ID:jSHPrMtS0
おかえりー!待ってた!
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(空)
[sage]:2012/05/03(木) 15:49:15.09 ID:6gAsIA6M0
帰ってきても格好いいのね、嫌いじゃないわ!
お待ちしておりました!
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2012/05/03(木) 16:43:10.24 ID:NBEyB6J5o
復活ッ!
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/03(木) 19:00:22.29 ID:GEvSBqVIO
乙
ところでこの
>>1
の前のssって何処かで読める?
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(三重県)
[sage]:2012/05/03(木) 23:19:58.37 ID:Vt1r//Ab0
待ってた! マジで待ってた!
14 :
◆mbgGrCikwU
[saga sage]:2012/05/04(金) 06:09:48.27 ID:B+LrAoH70
良い乙の来る板だ……
(砂になる音)
>>1
の言う前のssは過去ログにございます
それでは本日分投下開始
15 :
◆mbgGrCikwU
[saga sage]:2012/05/04(金) 06:11:03.04 ID:B+LrAoH70
【第一と二分の一話「許して」】
さやかと大道の邂逅から二日後、それは月の美しい夜だった。
「変、身」
赤い火の粉
旋風
赤から蒼への鮮やかな変化を遂げる焔の色
輝く黄金色のEの文字
「終わりだ、過去の魔法少女」
ナイフを片手に純白の闘士は“天蓋の魔女”に立ち向かう。
天蓋の魔女アーデルハイト。
その性質は虚飾。
魔女の結界の中の天蓋こそが彼女の本体。
キィキィと耳をつんざくような悲鳴が大道の耳を刺す。
「KYAHHHHHHHHHHHHHHHHH!」
悲鳴と共に降り注ぐガラス片が大道に降り注ぐ。
大道はマントを使ってそれを振り払い、脚力に任せて思い切り空へ翔ぶ。
それに追いすがるようにしてガラス片の中から使い魔が現れた。
使い魔の名はイワンコフ、役割は照明。
光を反射する物体を用いて高速移動する使い魔。
「こいつでも食らってろ!」
聖堂のような魔女の結界の中に存在する壁を用いてを飛び回る大道。
大道が強く踏みつけて翔ぶ度に壁の破片が飛び散る。
その破片がイワンコフの移動経路を塞ぎ、大道までの道を限定する。
飛び込んできた使い魔。
最初の一匹の眼球を右手のナイフで切り払い、殴り飛ばす。
左右から来た二匹目と三匹目はエターナルローブで突撃の方向を逸らし、四匹目と激突させる。
「はぁっ!」
まとめて蹴り飛ばし、天蓋を叩き割る。
魔女の怒声と共に再び天蓋の中から大量の使い魔が大道を襲う。
「ふん……」
ナイフを振りかぶって一撃、光の束が使い魔を焼く。
群れに風穴が開き、そこから大道は壁を駆け登っていく。
それでもなおその隙間を埋め尽くし、使い魔を出し続ける魔女。
もう一撃、青い斬撃の軌跡がレーザーのように使い魔を焼き払う。
大道はエターナルメモリをエターナルエッジに突き刺した。
カチリ、スイッチが確かに押される。
「エターナル、マキシマムドライブ!」
大地の声が永久を告げる。
魔女の見る悪夢は終わり、永遠の安らぎが与えられるのだ。
ステンドグラスに電流が走り、大道の視線の先のガラスに少女の姿が映る。
大道の表情は分からない。
彼は跳ぶ。
身体を空中で一回転させて跳躍の威力に全身のバネも加えた回転蹴りが少女を映すステンドグラスに突き刺さった。
何が起こったのか分からない。
そんな顔で少女は消え去った。
結界が消える。
その後にはグリーフシードが3つ。
「……終わったか」
変身を解除。
グリーフシードを拾って大道は近くに停めてあったバイクに跨る。
これが今のところの彼としては生命線だった。
16 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/04(金) 06:11:34.85 ID:B+LrAoH70
「こんな所に居たのか、大道克己」
「お前は必ず始末しろと言われているんだ」
背後から突然声がした。
見覚えのある姿の怪物。
マンモス、アンモナイト、二体のドーパント。
小さく舌打ちをすると彼はメモリをベルトに突き刺す。
「この街にまでドーパントだと……?」
カチッ
「変、身!」
白い悪魔の姿で大道はマンモスとアンモナイトの二体のドーパントに跳びかかる。
低く屈んでマンモスの鼻を掻い潜りボディーに拳を当てる。
一撃、ニ撃、浴びせかけるようなラッシュ。
アンモナイトの蹴りは足を掴んでジャイアントスイングで壁に投げつける。
砕ける壁。
「くそっ!死に損ないのくせに!」
「損なってねえ、もう死んでるんだよ」
カチリ
「エターナル!マキシマムドライブ!」
足払いでマンモスの足元を攻撃。
体勢を崩したマンモスの腹にエターナルエッジを突き刺してから、足でそれを押し込む。
マンモスの絶叫と共に身体からメモリが弾き出されて、人間に戻ったマンモスドーパントの男が消滅する。
「まずは一体……!」
大道は辺りを見回す。
居ない。
先ほど投げ飛ばしたアンモナイトが居ない。
「どこに……」
「死ねッ!大道克己!」
背後から現れるアンモナイトドーパント。
その触手が大道に向けて伸びる。
しかしその瞬間、一迅の風がその間を駆け抜ける。
17 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/04(金) 06:12:19.67 ID:B+LrAoH70
「大道さん危ない!」
キラリ、キラリ、と月光を受けて輝く一振りの軍刀。
それが触手をあっという間に切り裂いた。
触手は大道の元に届くこと無く、地面に落ちる。
「美樹さやか……何故?」
「パトロール中に大道さんの姿を見ちゃったからね
この前助けてもらったし……まあお礼はしないと
何やってるのかよく分からなかったけど危ないって思ったから……
なにこの化物、魔女でもないし……」
「そうか」
エターナルエッジを構え直してアンモナイトと対峙する大道。
「あれは俺と同じガイアメモリの力で変身するドーパントと呼ばれる奴らだ
魔女と同じで人間を襲う奴らも多い」
カチリ
「エターナル!マキシマムドライブ!」
その音声と共にアンモナイトのメモリ機能が停止する。
「さぁ、地獄を楽しみな!」
重力なぞ無視したかのように飛び上がる大道。
彼の蹴りが今度こそアンモナイトドーパント、否、ドーパントになっていた男を仕留めた。
「……あのさ、そいつらってもしかして……」
「俺を追う追手の奴らだ、元は人間さ
殺されるわけにはいかないから殺した、悪かったか?」
「…………」
「お前に協力するように言われているが、俺はお前の言う所の正義の味方なんかじゃない」
「…………」
「どうした?軽蔑したか?」
慣れている、とでもいいたげに大道は笑う。
「話を、聞かせて。人を殺したなら許せないけど……その事情は聞かないと」
美樹さやかは少し頭を抱えてから搾り出すように言った。
その言葉を聞いて、大道は深くため息を吐いた。
【第一と二分の一話「許して」 了】
18 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/04(金) 06:19:12.94 ID:B+LrAoH70
【次回予告】
「仮面ライダーエターナルの世界ねえ」
「……カンナギ所長、いらっしゃるならそうと仰ってください」
「地球の記憶の中にはこの世界のすべての情報が溶け込んでいる
ならば大道克己の自我を地球の記憶からこの肉体に呼び込めば、この肉体も意識を取り戻すのでは?」
「ディ、エーンド!」
【第一と三分の二話「仮面ライダーエターナルの世界」 乞うご期待】
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/04(金) 13:28:37.03 ID:RrlYgPnDO
乙!
あれ、前にはなかった新しい展開が…?
これは期待
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/05(土) 08:21:24.03 ID:lEfpWWxIO
乙!
海藤くるー!?
21 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/05(土) 21:56:28.63 ID:XGecTfXT0
【第一と三分のニ話「エターナルの世界」】
「仮面ライダーエターナルの世界ねえ……」
海東大樹はつぶやいた。
この世界の彼の役割は財団Xの研究員。
この世界のお宝であるAtoZのガイアメモリを盗み出す為に彼は静かに研究所に紛れ込んでいた。
「ねえ君」
培養液の中で目を閉じる青年。
大道克己である。
しかしその姿はまだ若い。
「……聞いてないか」
彼は風都の事件で死んだ後、現場に残った細胞片から奇跡的にクローンとして再生。
そのままNEVERにされて財団Xの実験台になっていた。
一度は見捨てられた財団Xを見返すために戦いを始め、
その戦いでほんとうの意味で死んだ後になって財団Xの実験台として蘇らされるとは皮肉としか言いようがない。
「本日も意識不明……っと」
とはいえ、クローンとして蘇り、NEVERとして改造された後も大道は目を覚まさなかった。
原因不明である。
その解明の為に研究をすすめる研究員が彼なのだがいかんせん不真面目な為にまったく進まない。
「あーあ……これじゃあ何時まで経ってもAtoZのガイアメモリセットとロストドライバーなんて手に入らないよ」
T2ガイアメモリ
今までのガイアメモリを超える新機軸のガイアメモリ
……の試作品であるそのメモリは研究所の別のセクターにある。
ドクターマリアの残した技術資料からネクロオーバーに関係する新たな事実の研究を進めていることになっている海東には入れない場所にあった。
そんな時、突然彼の部屋の扉が開く。
「やあ海東くん、何時になったら結果が出るのだね?」
「……カンナギ所長、いらっしゃるならそうとおっしゃってください」
「ふふん、私もアンノウンエネルギー開発担当として早く自分の研究に戻りたいのだが……
いかんせんこの研究所の所長でもある、行き詰まっている部下を助けないわけにもいくまい」
「いやはや……」
演技をしながら海東は心の中で毒づく。
そこで彼は面白いことを思いついた。
「早く結果を出してもらいたいものだよ海東くん
なにやら上は君に期待をしているようだし……」
「ああそうだ、所長。ついさっき面白い予想を立ててみたのですが聞いていただけますか?」
「ふむ、聞かせてくれ」
カンナギの興味有りげな表情に海東は手応えを感じ取った。
「はい、この前頂いたガイアメモリに関する資料で見つけたのですが……
以前データ人間となった園崎来人は地球の記憶の中に自我が溶け込んだそうですね?」
「あ、ああ」
「地球の記憶の中にはこの世界のすべての情報が溶け込んでいる
ならば大道克己の自我を地球の記憶からこの肉体に呼び込めば、この肉体も意識を取り戻すのでは?」
「…………ほう」
「その為にいくらかガイアメモリを使わせていただきたいのですが如何でしょう?
具体的に言えばT2ガイアメモリの試作品、それとロストドライバーもいただきたい」
「君が実績を出していることは上も認識しているからね、申請しておこう」
「ありがとうございます」
去っていくカンナギに頭を下げながら海東は口角が吊り上がるのを抑えられなかった。
翌日、彼の下にメモリとロストドライバーの入ったケースが届けられる。
AtoZ、26のメモリ。
22 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/05(土) 21:56:49.64 ID:XGecTfXT0
「これさえ揃えば用は無いが……あれ?」
海東は顔をしかめる。
メモリが違う。
ルナのメモリがライアーのものになっている。
「……くそ、何の嫌がらせだあの男」
下らない研究の邪魔。
おそらくはその程度のものだった筈だ。
「だけどあとはルナとウェザーとスカルだけか……奪い取れば後はおさらばできるね」
ロストドライバーとメモリを大道の入った実験装置の前に置く海東。
「それなら話は早い」
彼はディエンドライバーを取り出す。
ガシャッ
海東はそこにディエンドのカードを差し込む。
「ディ、エーンド!」
それと同時に大きな音を立ててガラスが割れる。
溢れ出る培養液、伸びる手はたしかにケースのロストドライバーを掴んでいる。
警報が鳴り響き、沢山の足音が近づいてくる。
「――――嘘だろ!?」
ロストドライバーを掴んだその男――大道克己――は、朦朧としながらそれを自らの腰に巻き付ける。
次の瞬間、海東は目を疑う事になる。
ケースの中からエターナルメモリが自らドライバーの中に飛び込んだのだ。
「エターナル!」
ガイアウィスパーが響く。
赤い炎が地面から立ち上って渦を巻く。
Eをかたどった仮面、複眼のようなバイザーは∞を思い起こさせる。
仮面ライダーエターナルレッドフレア。
それが名前。
23 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/05(土) 21:58:33.06 ID:XGecTfXT0
「何があった!?」
「仮面ライダーだぞ!」
「海東研究員は何処に行った?」
「まさか奴がこいつらを研究所に招き入れたのでは?」
マスカレイドドーパントやクズヤミーが大挙して押し寄せる。
海東はここで自らの計画が失敗に終わったことを悟った。
となればここをなんとかして突破せねばならない。
エターナルのメモリは期せずしてこの大道克己の手に落ちている。
ルナのメモリは研究所の本来メモリが保管されているセクションにある。
それらのことから海東は決断を下した。
「大道克己」
その言葉にエターナルは僅かに反応する。
「ついて来い、僕と君でここを突破するぞ」
彼は静かに頷いた。
まだ記憶ははっきりしていないらしいがそれでも敵はわかるらしい。
この男もまた、仮面ライダーということか。
「アタックライド イリュージョン」
電子音声と共にディエンドの姿が幾つにも分身する。
マスカレイドやクズヤミーの狙いが分散して、一瞬隙ができる。
「アタックライド ブラスト」
その隙を突いて紫色の弾幕がディエンドライバーから撒き散らされ
あっという間にマスカレイドドーパントやクズヤミーを撃破していく。
「こっちだ!」
大道は海東の後を追いかける。
海東の背中を見ながら彼はゆっくりと想い出す。
否、彼の身体に地球の記憶へと砕け散った彼自身の記憶が流れこんでくる。
永遠。
初めてこのメモリと出会った日。
彼が悪魔になったあの日。
そこを始点にして、未来へ過去へと記憶の枝は伸びていく。
24 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/05(土) 21:59:11.41 ID:XGecTfXT0
「……俺は」
大道はボソリと呟く。
「俺は何をやっていたんだ……」
「どうしたんだい?」
「なんでもない」
「そうかい、ついたみたいだね。ルナのメモリはここか……」
保管庫の前にたどり着く二人。
銃撃でロックは簡単に外れた。
「海東」
「なんだい?」
「礼を言う」
「僕は僕のために行動しているだけだ、感謝される筋合いはない
感謝してくれるならそこで追手が来ないか見張っていてくれ
なんせ僕らは一蓮托生みたいだしね」
海東はそっけなく答えてメモリの捜索をはじめる。
目的のものは案外あっけなく見つかった。
「有った有った!これだ!」
「見つかったのか」
海東は大道の腰のベルトに突き刺さるEのメモリを眺める。
「これが目当てならやめておくんだな」
「……気づいていたか」
「エターナルのメモリは俺の運命のメモリだ」
「そうかもしれないが僕にとっては掛け替えないお宝だ」
「ふん、そうか」
「だから……」
「取引をしてやってもいい」
「なんだって?」
25 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/05(土) 22:01:30.38 ID:XGecTfXT0
「この世界にはT2ガイアメモリって名前の次世代型ガイアメモリが有る
それと引き換えにならこのメモリを渡しても良い
俺にとって運命の存在は永遠(エターナル)の記憶
ガイアメモリはそれと通じ合う為の扉に過ぎない
そして丈夫な扉であればそれに越したことはない」
「……成る程ね」
「どうだ?それまでは俺に持たせておけばこいつは誰にも破壞されずに済むぞ?」
海東大樹は少しだけうつむいて考えこむ。
「よし、解った」
海東は銃口を大道に向ける。
それと同時に大道もエターナルエッジを投擲する姿勢に入る。
「その宝、僕にくれ」
海東は引き金を引く。
大道はエターナルエッジを投げつける。
悲鳴。
銃撃は大道の背後のオリオン・ゾディアーツを
エターナルエッジは海東の背後のユニコーン・ゾディアーツを
それぞれ的確に貫いていた。
「それは同意したということでいいのか?」
「怪盗としては納得行かないがその前に君に死なれては困る」
「怪盗?勝手にしろ」
すれ違うように二人はゾディアーツに向けて駈け出す。
エターナルエッジが大道の手に舞い戻る。
ユニコーン・ゾディアーツのレイピアが真っ直ぐに大道へ迫る。
大道はエターナルエッジの腹でその刺突を右に逸らして一気に接近。
体重を乗せた一突きを叩きこむ。
さらに怯んだユニコーン・ゾディアーツを追撃、左フックのラッシュを仕掛ける。
ユニコーン・ゾディアーツが間合いを取り戻そうとバックステップをしたところに右後ろ回し蹴りを華麗に叩きこんで、ユニコーン・ゾディアーツを壁に叩きつける。
一方海東は歩きながらディエンドライバーの光線を乱射する。
オリオン・ゾディアーツは激しい連射に耐えられず、一歩また一歩と後ろに下がっていく。
ディエンドが一歩進むごとにオリオン・ゾディアーツが一歩下がる。
オリオン・ゾディアーツが一歩下がるごとにディエンドが一歩進む。
圧倒的な力量差による圧殺。
ガタン、壁にオリオン・ゾディアーツは追い詰められる。
26 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/05(土) 22:04:16.47 ID:XGecTfXT0
「この距離なら防ぎようがないね?」
「ファイナルアタックライド ディディディディエンド!」
「マキシマムドライブ!」
「地獄を楽しみな!」
二体のゾディアーツは見事に爆散。
そして二人はそのまま混乱に乗じて研究所を逃げ出した。
――――
「……で、その後追手を倒したり海東を撒いたりしながら旅している間にQBと出会って今に至るって訳だ」
所変わってファミレス。
ストロベリーパフェが有名なファミレス。
「ふぅん……そんなやばいところに捕まってたんだ」
「悪いやつだから退治しようだなんて、家族が惜しいなら考えるなよ
奴らを追うのは国際特務調査機関の仕事だ
本来ならお前らが俺と一緒に居ることを見られてしまう可能性がある以上、お前らとはあまり接触するつもりもなかったんだ」
「昨日のドーパントってのを殺したのも私を守るためだって言うの?」
「まあ、結果としてそうなるな。それがQBとの契約でもある」
「ふぅん……解った」
「納得したのか?」
「まあ、したかな」
「ならば良い、じゃあ美樹さやか。俺と関わった以上、お前には色々教えなくてはいけないことがある」
「なに?」
「お前を守り、魔女を狩るように言われているが肝心のお前が弱くてはどうしようもないからな
幸い戦闘スタイルが近いし、しばらくの間は俺から戦闘訓練をうけてもらう」
「ええぇ……?」
訓練、それを聞いて一応普通の中学生であったところのさやかは顔をしかめた。
【第一と三分のニ話「エターナルの世界」 了】
27 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/05(土) 22:08:50.92 ID:XGecTfXT0
【次回予告】
「やあ、大道克己」
「きゅぅベエか 」
「あら、鹿目さん、美樹さん、ごめんなさいね心配させちゃって」
「マミさんがお元気そうで何よりです!」
「冷……たい?」
「二人共ごめんなさい」
「 ル ナ ァ ! 」
【次回 第二話「たった今から、お前も死体の仲間入りだ」 乞うご期待】
28 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 07:59:59.27 ID:2BjbY47V0
【第二話「たった今から、お前も死体の仲間入りだ」】
人気の無い路地裏。
一人と一匹は今日もそこで落ち合った。
「やあ、大道克己」
「きゅぅベエか」
「君が回収したグリーフシードを渡してくれないかい?」
「そういう契約だからな」
大道は自らが集めたグリーフシードをきゅうべえに渡す。
きゅうべえはそれを飲み込むとげっぷを出す。
「さて、お前も報酬を渡してもらおうか」
「ああ、そういう契約だからね」
きゅうべえが口から細胞維持酵素の入った注射を何本も吐き出す。
大道はその中の一本を自らに注射してから残りを懐に入れる。
「やはり、グリーフシードより効率は良いのかい?」
「ああ、グリーフシードは細胞内の老廃物を吸い取りはするが完全に消し去りはできないからな。」
「難儀な身体だね」
「宇宙人に心配されるとは俺も焼きが回ったか……」
「ところで君は普段は何処で生活しているんだい?」
「悪魔の住処は地獄さ」
「……ああそうかい、じゃあ僕はもう行くよ」
「ああ、好きにしろ」
「ところで、美樹さやかに対してやけに親切みたいだね」
「……だからどうした?」
「だったら気をつけたほうが良いよ
君を追っている奴らが君の姿が見つからないことに業を煮やして彼女の周りでも動き始めているようだ」
「何故お前がそれを知っているんだろうな?」
「それは……」
大道はQBに背を向ける。
何も言わずに彼は再び街の雑踏の中へ消えていった。
29 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:01:35.25 ID:2BjbY47V0
――――
「というわけなのでこのxに3を代入すると……」
場面は変わってまどか達の学ぶ校舎。
チャイムが鳴る。
「おっと、チャイムか、それじゃあ今日の授業は終わりだ。」
一気に騒がしくなる教室。
まどかとさやかも早々に帰る準備を始める。
「まどかー、今日どっか遊びに行く?」
「良いけど……仁美ちゃんは?」
「良いの良いの、恋人同士はそっとしておきましょ」
二人が大道に会ってから数日後。
大道の言葉に従って美樹さやかは上條恭介に素直な気持ちを伝えた。
残念ながら恭介はさやかを女性として見られないということではあったがそれでも美樹さやかの顔は晴れやかだった。
元々、さやかが魔法少女になったのは巴マミの影響で上条恭介はそのきっかけに過ぎなかったのかもしれない。
少なくとも、今の美樹さやかは大道の導きもあって前向きに正義の味方を続けていた。
「…………」
そんな晴れやかな顔をしたさやかを申し訳なさそうに見つめる仁美。
彼女らの間にできたわずかな溝が埋まるのはまだちょっと先のことなのだろう。
まどかとさやかは二人で連れ立って教室を出る。
廊下は帰りを急いだり部活へ向かう沢山の生徒たち。
一年生、二年生、三年生。
一際大きな三年生の集団。
その中心に、彼女らにとって見覚えがある少女の顔が居た。
「巴さん心配してたんだよ?」
「そうそう!」
「ごめんね皆、私一人ぐらしだから中々連絡できなくて……
声も出なかったのよ?」
「聞いたわよ、隣の人が気づいて救急車を呼んでくれたんでしょう?」
「ええ、大変だったわ……。」
「またケーキバイキングに行きましょうね。」
「ええ、勿論。」
巴マミ。
最近までこの街を守っていた魔法少女。
お菓子の魔女との戦闘で些細な油断から命を落とした筈の少女。
固まってしまうまどかとさやか。
30 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:02:33.22 ID:2BjbY47V0
「どうしたの二人共?」
後ろから話しかけてきたのは担任の教師。
「先生……マミさんって……?」
「ええ、大変だったらしいわね、風邪をこじらせちゃって一人暮らしだから大変だったって。
救急車で運ばれたから学校への連絡が遅れちゃったみたい。
そういえば二人共巴さんが仲よかったよね。
顔を見せてあげたら?」
「は、はぁ……ありがとうございます」
担任の教師はそのままどこかへ行ってしまった。
マミがゆっくりとこちらに近づいてくる。
「あら、鹿目さん、美樹さん、ごめんなさいね心配させちゃって」
ニコリと笑って巴マミはそう言った。
「あ、え、あ、い、いえ!」
「マミさんがお元気そうで何よりです!」
「あらあら、そう言ってくれると嬉しいわ」
“今夜九時に二人であの病院の屋上まで来て”
まどかとさやかの頭の中にマミの声が響く。
二人が振り返るとマミは既に彼女の友達と一緒にどこかに行ってしまっていた。
「今夜九時……」
「うん」
「今夜九時に病院の屋上だって」
「……行くしか無いよね」
「当たり前だよ」
「でもその前に……」
さやかが思い浮かべていたのはこの数日で彼女たちの信頼を勝ち得ていたあの男の顔だった。
31 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:03:20.21 ID:2BjbY47V0
――――
「というわけなんだよ師匠」
「師匠ってなんだ師匠って」
学校から帰るとすぐにまどかとさやかは大道と連絡してファミレスに向かっていた。
二人が来た時に丁度大道も来ていたらしく三人で仲良くストロベリーパフェを頼むことになった。
「だって大道さん、私に剣での戦い方とか教えてくれたじゃん」
「ナイフだ、剣じゃない」
「面倒くさいなあ」
「と、とにかくマミさんは死んでいたはずなんです!」
「死人が動く、それ自体は変わったことじゃない
おれだってそうだ、おい鹿目、俺の手に触れてみろ」
「え?」
「言っただろう、俺も死人だと
さやかみたいな魔法少女よりもずっと死人に近い」
まどかはそっと大道の手に触れる。
「冷たい!?」
驚いてまどかは手を引っ込める。
「最初に言っただろう、俺は死人だ
だから今更死人が起き上がって動きまわることに疑問なんざ覚えねえ
むしろ親近感が湧いているくらいだぜ?
だからここでの問題はその巴マミが生きていることじゃあない
“誰が”巴マミを生き返らせたのかってことだ
生き返らせた相手によっちゃあ相当面倒なことになるぜ」
常に大胆不敵な笑みを浮かべている筈の大道がいつになく真剣な表情だ。
その事実だけで、まどかとさやかは少なからず恐怖を覚えていた。
32 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:04:07.61 ID:2BjbY47V0
――――
「よくやるよ財団X
ガイアメモリ、ネクロオーバー、クオークス、メダル
君たちの持つあらゆる技術を何の罪もないたった一人の少女に詰め込むだなんて」
「ご冗談を、我々の技術はこの程度ではありませんよ」
巨大なモニタを前にイスに座り、黒いスイッチを片手でもてあそぶ男。
半年ほど前、仮面ライダーWによって打倒された筈の男。
加頭順である。
彼の膝の上にちょこんと乗る白い小動物。
きゅうべえ。
「とはいえあの巴マミはよくあのような改造処置に耐え切った
メモリの力に加えてパイロキネシス、そしてネバーとしての超身体能力
私がユートピアを使った時にクオークス能力を発動させていた前例が有ったとはいえ……」
「彼女は強い子さ
そこは多くの魔法少女を見てきた僕のお墨付きを出してもいいよ
寂しがり屋なのが玉に瑕だけどね」
「再利用(ヨミガエラ)された私が
再利用されたメモリやネバー、クオークス技術の複合利用の実験の監督役を任されるなんて……
なんの皮肉なんでしょうかね?」
「地球人にありがちな感傷だね
それは無意味な感情だ、忘れたまえよ
……ああ、君のは振りか、忘れていた」
「私、時々貴方にゾッとします」
「ところで大道克己を追い詰める計画は進んでいるのかい?」
「ええ、巴マミに支給したあのメモリの使い手以外は全員細胞データを回収できています
海東大樹の残した仮説が予想以上に有効だった様子です」
「ふぅん、それは楽しみだ
大道克己の死が美樹さやかの魔女化やまどかの契約に結びつけば僕としては言うことなしだよ」
「後は貴方が大道克己の潜伏先を発見できれば完璧なのですが……」
「そこまで無茶を言ってくれるなよ、彼はとても警戒心が強いんだ
今は巴マミの家に居るがちょくちょく拠点を変えているみたいだしね
それに細胞維持酵素も自力で合成する場所を手に入れたみたいでなおのこと面倒になっているんだ」
33 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:05:53.51 ID:2BjbY47V0
「でしょうね、ところでインキュベーター、例のものを」
「ああ、これだね」
きゅうべえが口からグリーフシードを吐き出す。
それを受け取る加頭順。
「僕も君から受け取りたいものがあるんだが……」
「これかい?」
「ああ」
彼はきゅうべえに細胞維持酵素を渡そうとして……誤って落としてしまう。
「おっと失礼」
「礼を言うよ、僕達の星の新しい研究にそれが入用なんだ」
きゅうべえはそれを拾い上げる。
「魔法少女の身体とネクロオーバーの身体に類似点が有るのは巴マミに施した人体実験で判明していますからね
この程度の援助、同盟を組んでいる以上当然です」
「僕達は中々良いビジネスパートナーになれそうだよ」
加頭順はクスクスと笑う。
「私、ゾッとします」
「訳がわからないよ」
二つの影は闇のなかで何時までも笑い続けていた。
34 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:06:45.80 ID:2BjbY47V0
――――
「来たわね、約束の時間の丁度五分前、正確だわ」
廃病院の屋上。
午後八時五十五分。
まどかとさやかは巴マミに会っていた。
「教えてくださいマミさん!」
「そうです、一体何がどうしてマミさんはここに?」
「私たちこの目で見たんですよ!マミさんが……」
「ごめんね、怖い思いをさせてしまって……
でももうそんな思いをすることないわ、私が貴方達を守るわ」
「そのことなんですけど……」
「マミさん、実はさやかちゃんはマミさんが居なくなってから魔法少女になったんです」
「え?」
「ごめんなさい……マミさんが居なくなった以上、この街を守らなきゃって……」
「早まったわね、と言いたいけれども……でもすこし嬉しいわ」
「マミさん……」
「美樹さんが一緒に戦ってくれるなら怖いもの無しよ」
「それにまどかちゃんだって見守っていてくれるしね」
「マミさん!」
「マミさん!」
二人がマミに抱きつく。
マミは優しく二人を受け止めて頭を撫でる。
しかし、とあることに気がついて二人の表情は固まる。
35 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:07:31.87 ID:2BjbY47V0
「冷……たい?」
「あら?」
「マミさん、身体が冷たい……」
「うっかり体温を調節し忘れていたわね」
マミが指を鳴らす。
すると突然地面から大量のリボンが生えてきてまどかとさやかを拘束する。
「え?」
「これは!?」
「二人共ごめんなさい」
リボンで拘束された二人をそのままにしてマミは後ろを振り返る。
濁った光を湛える双眸が見つめる先には黒い革のコートを纏った青年が居た。
「やっぱり来たのね大道克巳さん」
「こうやって俺をおびき寄せたつもりか?気に入らねえな」
「貴方に話す義理はないわ」
光が巴マミの体を包む。
辺りに満ちる山吹色の清冽な光。
たとえその身を闇に落としてもその美しさは変わりなどしない。
「だって貴方はここで死ぬのだから」
「おいおい、俺は何回死ねばいいんだ?」
「駄目だよ師匠!マミさん!」
「やめてよ二人共!」
マミはマスケット銃を大道に向けて放つ。
弾丸は魔力によりまるで蛇のようにうねりながら大道を狙う。
対する大道は自分の進行方向の弾丸だけをナイフで防御、左右や背後から迫る弾丸はその脚力で回避する。
一瞬でマミの目の前に立った大道はマミの腹に向けて拳を振りぬく。
「あら、やるじゃない。伊達や酔狂で美樹さんの師匠やってたわけじゃないのね」
「やはり、ネクロオーバー!」
マスケット銃をロッドのように扱って大道の拳打を受け止める巴マミ。
そのまま銃身を持ってグルグルと振り回し、左右から大道を殴りつける。
正面の攻撃は止められ、左右はマスケット銃を使った棒術で塞がれ、背後からは弾丸が迫る。
マスケット銃による殴打はナイフでしのぎ、受け流しているが流石の大道もたまらずバク宙で距離を取る。
36 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:07:52.15 ID:2BjbY47V0
「貰ったわ!」
宙を舞う大道を追うようにしてマミも飛び上がる。
そして大道の腹にまっすぐ蹴りを叩きこむ。
受身も取れず地面に叩きつけられた大道に銃弾が突き刺さる。
「ガッ……ハァ!銃撃、蹴りを中心とした格闘技術、棒術、笑わせる
こういう時ばっかりは生きている気分になれるなあ!」
「ごめんなさい大道さん、生きている実感に水を差す結果になるわね
貴方に恨みは無いし、本当はこんなこと嫌なのだけれども……死んでもらうわ」
「マミさんやめて!その人も正義の味方だよ!
マミさんと同じように良い人なんだよ!」
「美樹さん、あなた達に黙っているだけで……そこの大道克己は極悪人よ」
「え?」
「この前テレビでやっていた風都タワー占拠事件、犯人は公開されなかったけど……
彼がそのリーダーなの」
「う、うそですよね大道さん!?」
大道は何も言わずに屋上の床に寝転がったまま天を仰ぐ。
しばしの静寂。
夜の澄み切った空気の中で遠くの音だけがやけに耳に入る。
大道克己はため息を一つ吐いてからハッキリと言い切った。
「本当だ」
「うそ……」
「なんでですか大道さん!?」
「ほら、そこの大道克己は悪人なのよ
あなた達は騙されていただけ」
「違うって言って下さい大道さん!
だって貴方私達にあんなに優しくしてくれて!
私達の目の前で町の人を守ってくれていたじゃないですか!」
「そうさ、でもそれで過去の悪行が消えるわけじゃあない」
大道は立ち上がる。
ネクロオーバーとして得た命。
そして仮面ライダーに撃破されながらも復活したことで得た新しい命“正義”を胸に。
37 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:09:05.54 ID:2BjbY47V0
「だがそれでも……」
大道はメモリを取り出してスイッチを押す。
声が響く。
大地の囁きが。
「 エ タ ー ナ ル ! 」
大道はベルトを自らの身体に巻きつけてメモリをバックルに突き刺す。
声が響く、未来永劫変わらぬ正義の雄叫びが。
「 変 身 」
「 エ タ ー ナ ル ! 」
青い炎が大道を中心に舞い上がる。
内側から目を太陽の色に輝かせて現れるのは純白の装甲に身を包まれた大道克己。
「くっ!」
巴マミがとっさに放つ銃弾をはじき飛ばして炎は大道の背中に集まり、漆黒のマントへと変わる。
先ほどまで彼が使っていたナイフも形態を変えて巨大に、そして鋭利なフォルムになる。
「お前を戦わせている連中を、俺は絶対に許さん」
「―――――――――!?」
「行くぞ」
大道のナイフがマミの顔へとまっすぐに向かう……と見せかけて彼女の腕へと急激に曲がる。
マミの腕が大きく裂けて鮮血が飛び散る。
「顔は狙わないの?」
「隙を突いて腕を潰したほうが早いだろう?」
「あらあら紳士なのね、聞いていた話とぜんぜん違うわ
でもネクロオーバーの再生能力を忘れちゃったのかしら?」
マミは即座に自らの傷を塞ぐと大道の元へ疾駆する。
周囲には彼女が自ら放った弾丸。
38 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:09:47.25 ID:2BjbY47V0
「くらいなさい!」
マミはマスケット銃をエターナルの脳天に叩きつけようとする。
手に走る鈍い衝撃、続いて弾丸が彼に激突する感触。
「悪いわね」
「お前こそ忘れているんじゃないのか?」
マミは気づいた。
マントだ、攻撃はすべてあのマントに当たっている。
「いや、知らないのか。」
マミの腹に鈍い衝撃が走る。
「このエターナルローブはありとあらゆる攻撃を無効化する」
「だったらこれよ!」
大道を包むようにして炎が燃え上がる。
「パイロキネシス……クオークス能力か!」
炎に包まれている間にマミは大道と距離を取る。
「うそ……マミさん!?」
マミは炎を操る魔法なんて使わない。
まどかとさやかは眼の前の光景が信じられなかった。
「うふふ、辛い訓練に耐えたのよ
加頭さんが皆に会えるって言うから……だから……」
聞き覚えがある名前に大道が反応を示す。
「おい待て巴マミ、今加頭……といったか?」
「さあ?話はこの勝負が終わってからよ」
「くそ……気に入らねえな財団X!」
「一気に勝負をつけるわよ!」
謳うは月光の調べ。
覚ますは大地の中に眠る幻惑の記憶。
幻想の思い出と共に少女はその姿を変える。
39 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:10:33.02 ID:2BjbY47V0
「 ル ナ ァ ! 」
「ヘ・ン・シ・ン♪」
マミはLという文字が刻まれたUSBメモリ状の物を天に向けて高々と投げ上げる。
折りしも満月、世界に満ちる月の灯を吸い込んで幻想の記憶はこれ以上ない眩さで輝く。
クルクルと回転してまるで満月のように辺りに黄色い優しい光を撒き散らすルナメモリ。
マミは自らの服の胸元を大きく開けてそれを迎え入れる。
彼女の胸の谷間の中へと吸い込まれるルナメモリ。
澄み切った音と共にマミの眼が黄色く輝いた。
辺りに満ちる光。
それが消えるとそこにはまるで魔女と魔法少女の中間体のような姿の巴マミが居た。
人間の時の美しい面影は無い。
「マ、マミさんが化物に……!?」
さやかのソウルジェムが薄く墨を流したかのように濁り始める。
「おいさやか!?」
「なんでこんなことに……マミさん
……魔法少女には絶望しか残ってないっていうの?」
「さやかちゃん……」
「マミさんが……マミさんが……私たちのせいだ
元はといえば私達が……」
さやかの瞳から輝きが失われていく。
無力感、絶望、憤り、嘆き。
そんなさやかの姿に大道は昔の己を思い出していた。
「……負けたよ財団X、よくこんな仕打ちを思いつくよ
俺としたことがすっかり忘れちまって居たぜ!」
さやかのソウルジェムが濁りきる前に巴マミを倒す。
そして手持ちのグリーフシードを全て使えばさやかはまだ何とか間に合う筈。
それが今の自分にできるたった一つのことだ。
大道は決断した。
40 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:10:59.67 ID:2BjbY47V0
「ようこそ巴マミ!さぁ、地獄を楽しみな!」
大道はナイフを片手にマミへと踊りかかる。
「さやかちゃん」
マミの身体から大量の触手が伸びて大道を取り囲む。
「なに?」
大道は触手を切り刻みながらまっすぐに巴マミの元に向かう。
「今は、大道さんを信じよう」
袈裟懸けに斬りつける。
だがしかしそれは幻影、大道は何時の間にか背後を取られていた。
「え?」
マミのゼロ距離射撃が大道の背中に突き刺さる。
「この距離ならバリアーは張れないわね!」
しかし大道も至近距離からの攻撃であることを逆手にとって後ろ蹴りでカウンターを決める。
「だって大道さん、つい最近さやかちゃんを助けてくれたばっかりだよ
きっと今回も助けてくれるって
今度はきっと……マミさんも」
「まどか……」
さやかのソウルジェムの汚染が止まる。
「そうだよね、まどかの言うとおりだ」
それはまどかの言葉だけが原因ではない。
「今私達にできることは……」
そう、彼女だってわかっていたはずだ。
「“仮面ライダー”の大道さんを信じる事だけだよね」
仮面ライダーが何者なのかを。
「うおおおおおおおお!」
だから信じられる。
41 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:11:38.46 ID:2BjbY47V0
「おねがい!大人しく倒れて大道さん!」
それでは説明しよう、仮面ライダーとは
「行きなさい使い魔達!」
「仮面を被った使い魔……マスカレイドドーパントそっくりじゃないか」
人類の自由と平和、そして幸福を守る
「動くなあああああああああああ!
「縛りが緩いんだよ!」
「嘘でしょ、スペックでは圧倒的にこっちが上の筈なのに!」
「クオークスの弱点を知らないみたいだな」
「え?」
正義の使者なのである!
「エターナル、マキシマムドライブ!」
「くっ!思うように力が……!」
蒼い雷と共にマミの身体からメモリが排出される。
魔法少女の衣装も砂になって崩れ落ち、そこには普段通りの制服を着た只の少女が立ち尽くしていた。
そんな彼女を覆う影。
上を見上げる。
彼女が一度死んだ時を思い起こさせる情景。
恐怖が口を開けている。
大道の蹴撃が目の前に迫ってくる。
「私、まだ死にたくないのに!」
彼女は泣いていた。
「ハァッ!」
次の瞬間、彼女の立っていた場所の隣のコンクリートが吹き飛ぶ。
人間の姿に戻った巴マミの隣に大道克己が立っていた。
42 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:12:13.24 ID:2BjbY47V0
「…………え?」
「戦いたくもないのに戦わされている奴なんて殺す価値もない。」
「あ、え、あ…………」
そう言って大道は変身を解除する。
恐怖でマミは其の場にぺたんと座り込む。
「大道さん!」
「マミさん、良かった……」
大道は彼女に手を伸ばす。
「おい、立てるか?」
「助けてもらえると……ありがたいです」
「だろうな、おらよっと!」
大道はお姫様抱っこでマミを抱きかかえる。
マミは顔を真赤にして抵抗しようとするが身体に力が入らない。
「お前には色々話してもらわないといけないことがあるんでな」
「で、でも……」
「良いじゃんマミさん、お似合いだよ」
「そうですよマミさん」
「や、やめてよ二人共」
実際、今の大道は何故か十六歳ほど、丁度フィリップとそっくりな背格好だ。
十五歳の巴マミと一緒に居てもそれほど不自然ではない。
「よし、それじゃあとりあえず帰るぞ」
「どこにですか?」
「……とりあえずこいつの家かな」
「そうはいきません」
突然、大量の炎が四人を包む。
とっさに大道が身を呈して残りの三人を庇ったためにまどか達には傷ひとつ無い。
「……加頭順!」
大道が吠える。
恐怖からマミは小さく声を上げる。
43 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:13:27.22 ID:2BjbY47V0
「巴マミは我々の貴重な実験兵器です、返していただけないと……私困ってしまいます」
大道はナイフを構えて加頭と対峙する。
「巴マミとの戦闘で疲弊した貴方ならば仕留めることも容易い」
「私が居るよ!」
「待てさやか!お前じゃまだ荷が重い!」
とっさにさやかが加頭順にむけて跳びかかる。
大道から仕込まれた短剣さばきで加頭順の頬を切り裂いた。
しかし彼にカウンターの蹴りを直接貰って、床にたたきつけられる。
「やれやれ……仕方ない、代わりにこの娘を実験台に持って帰りましょうか
癒しの魔法とやらがあれば少々無茶をした所で構いますまい
巴マミと同じように徹底的に改造手術を施して……」
「さやかちゃん!」
まどかが叫ぶ。
彼女の視界の端にきゅうべえの姿が映る。
「こうなったら私が……!」
「それには及ばないわ」
しかしその時突然、銃弾が加頭の足の関節に当たる。
崩れ落ちる加頭順。
「祭りの会場は、ここかい?」
その隙を狙うようにして紅の槍が彼の腕を斬りつける。
「さやか、少しはマシになったと思ったけどやっぱりトーシロだね」
「杏子……!」
月の光を背に受けて二人の魔法少女が並び立つ。
暁美ほむら、佐倉杏子。
共に歴戦の魔法少女としていくつもの戦いをくぐり抜けてきた強者である。
加頭順も彼らの実力を人目で理解した。
「増援……まさかあなた達が手を組むとは、私、びっくりです」
斬撃から遅れて加頭の腕がゴトリと落ちる。
44 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:14:11.13 ID:2BjbY47V0
「ほむらちゃん!杏子ちゃん!」
「佐倉さん、貴方この街に来てくれていたのね?」
「ようマミさん、事情の説明は後だ、ここはあたし達に任せてあんた達は一旦逃げな」
「事情は解らないが恩に切る」
「良いの、大道さん?」
「覚えておけ、自分たちでは無理だと感じたら迷わず逃げるのも戦いだ」
「でもほむらちゃん達が……!」
「あいつらには、勝算がある。そして今の俺達はあいつらにとっちゃ足手まといだ
さやか、まどかを連れてついてこい!」
「はい師匠!」
大道はマミを、さやかはまどかを抱きかかえて病院の屋上から飛び降りる。
さやかの着地地点にはバイク。
「私運転したことないよ?」
「任せろ」
大道が指を鳴らすとバイクが勝手に動き出す。
大道が走るのについてバイクも驚くべき早さで走りだした。
「うわ、なにあれ!?」
まどかが驚いて声を出す。
先ほどマミが出したような仮面の使い魔が彼らの前を塞ぐ。
「今度こそさやかちゃんに任せなさい!」
さやかが腰の鞘から剣を引きぬいて使い魔達に剣を向ける。
「大道さん!練習していたアレ、使って良いよね!」
「好きにしろ」
「それじゃあ……必殺!」
バイクに乗ったままのさやかの剣から何本もの青い光が飛び出して
細いレーザーのようになって使い魔たちを切り裂く。
45 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:14:44.89 ID:2BjbY47V0
「さやかちゃんブレード!」
巴マミは思わず吹き出した。
大道克己はため息を吐いた。
「さやかちゃん格好いい!」
「でしょ?師匠のナイフ裁きを参考にしたんだよ!」
※大道克己は美樹さやかにビームなんて教えていません
「ね、ねえ美樹さん」
「どうしたのマミさん?」
「良ければ私にその技の名前考えさせてくれないかしら」
「ふっふっふ、さやかちゃんブレードを超える技名なんて……」
「そうね、スクワルタトーレ……とか」
「かっこいいいいいいいいいい!」
大道は静かに頷いた。
そしてため息を吐いた。
中学生のセンスなんて所詮こんなものである。
【第二話「たった今から、お前も死体の仲間入りだ」 了】
46 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/06(日) 08:15:46.03 ID:2BjbY47V0
【次回予告】
「NEVER?」
「私に仕込まれた技術は元々別人の物だったっていうの?」
「懐かれちまってさ」
「ゆまはね!杏子お姉ちゃんといつも一緒なんだよ!」
「ありがとう恩人、一ついいことを教えてあげよう」
「良い事だぁ?聞かせてみろ」
「愛は無限に有限なんだ」
「切り札は左翔太郎……仮面ライダージョーカー、ねえ」
「レディの頼みとあらばこのハードボイルド探偵が……」
「こんなハーフボイルドで大丈夫かしら?」
「ってうぉい!」
「助太刀するぜ!大道克己!」
「お前は……!」
【次回第三話「現れたJ/探偵はたった一人」 乞うご期待!】
47 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/06(日) 09:58:25.01 ID:McSlJxMOo
もうね、台詞以外の文章がね、心を刺激してやまないですよ!!乙でした!続き楽しみにしてるから無理すんなよ!
48 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/06(日) 14:46:19.91 ID:qOmx6hDDO
乙
MEGAMAXネタとか、前のやつとは細部が違うから更に楽しい
49 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/07(月) 10:47:28.56 ID:biORYVTDO
あぁ、黄色い人はセイヤーされたからデータ回収不可能なのか
50 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:10:38.60 ID:4+g23aav0
黄色い人は爆破+亜空間送りみたいなイメージです
あくまでイメージですけど
それでは第三話
51 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:11:05.55 ID:4+g23aav0
【第三話「現れたJ/探偵はたった一人」】
大道たちを無事に逃がした暁美ほむらと佐倉杏子は時間稼ぎのために加頭との戦いを続けていた。
戦闘が長引いたことを理由に加頭はユートピアのメモリを使用、二人は想定外の力に少しずつ追い詰められていた。
「さて、逃げられてしまいましたか……私、ショックです」
ユートピアドーパントの姿で加頭は呟く。
落ちた腕を拾い上げて、押し当てるとあっという間に断面がつながった。
「ガイアメモリ……こんな力予想してなかったわ」
「そうだな、しかし巴マミってのとはちょっとした腐れ縁なんだ
ここでみすみすあの野郎にくれてやれる獲物じゃないし……もうひと頑張りだ!」
「貴方の因縁など知ったことではありません」
加頭の念動力が杏子を襲う。
「ほむら!」
「任せて」
時間停止。
暁美ほむらを除いた其の場に居る全員の動きが止まる。
彼女は杏子を一生懸命加頭の右隣まで運んでから彼の左隣にピアノ線を張り巡らせる。
「頼んだわよ、佐倉杏子」
時はまた動き出す。
「セイヤァ!」
杏子は槍の柄で思い切りよく加頭を殴りつける。
加頭はピアノ線の張り巡らされた中に叩きこまれ、派手に血しぶきをまき散らした。
「その厄介な力をこれ以上使われる前にこのままトドメと行かせてもらうぜ!」
加頭が動けないと判断した杏子は槍を伸ばして彼にトドメを刺そうと駆け寄る。
迫る穂先、それを見据えて加頭は確かに笑った。
パチン、と指を鳴らす。
それと同時にマミを殺したお菓子の魔女そっくりの怪物が杏子の槍を受け止める。
52 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:12:10.41 ID:4+g23aav0
「―――――なんだこいつ!?」
「私びっくりです、あなた達は見慣れていると思っていましたが?」
「佐倉杏子!それは魔女の使い魔よ!」
「―――――――遅い!」
「うわぁっ!」
佐倉杏子を捕まえる加頭の血まみれの腕。
「ユートピアドーパントの力、お見せしましょう」
加頭の右腕に白い光が集まる。
「ぐっ、あ゛ああああああ!?」
割れんばかりの絶叫を始める杏子。
「杏子!?」
長い時間彼女を見てきた暁美ほむらは動揺する。
普通ならばどんなダメージを受けてもあんな声をあげる少女ではない。
「――――嘘!?」
ほむらは気づいた。
ユートピアドーパントに捕まった杏子のソウルジェムが恐るべき早さで濁りはじめているのだ。
「ユートピアドーパントの能力は相手の希望を吸い取る能力」
その言葉を聞いたほむらの行動は早かった。
自らのソウルジェムへの負担も構わずに時間を停止。
隠し持っていたマチェットを何度も叩きつけて加頭の腕を再び切断、杏子を連れて逃げ出す。
「あなた達魔法少女から希望を奪い取れば……さてさていったいどうなるのでしょ――――なに?」
きゅうべえから聞いていた魔法少女の特性を利用した攻撃。
確かにそれは普通なら決まればすべての魔法少女を打ち倒せる攻撃だった。
しかしながら彼と相対したのはすでに一度絶望を知った魔法少女と魔法少女にして魔法少女にあらざる異端の魔法少女。
加頭順のアイディアは完璧であった。
ただ彼は運が悪かった。
「いつの間に……私、びっくりしました」
ゴトン、とユートピアドーパントの腕が再び落ちた。
呆然と立ち続ける彼の周囲をお菓子の魔女にそっくりな怪物が何時までもグルグルと回っていた。
53 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:13:46.35 ID:4+g23aav0
――――
「くっ……今回はイレギュラー尽くめだわ!」
それから数分後、杏子を抱えてほむらは走る。
目指すのは仲間との合流地点。
「キョーコ!」
声の方を振り向くほむら、彼女こそがその仲間である。
彼女もまた今回現れたイレギュラーだった。
「お、おう……ゆま」
佐倉杏子との共同生活を提案してすぐ、彼女が連れてきた少女。
なつかれちまってさ、と照れくさそうに笑っていた姿を彼女は覚えている。
「大丈夫キョーコ?どこか痛いの?」
「千歳ゆま、貴方に預けておいたグリーフシードを急いで杏子に渡して
肉体的なダメージは無いけどソウルジェムが危ないの」
ほむらのただならぬ剣幕に驚きながらもゆまは手持ちのグリーフシードを杏子に渡す。
三つほどグリーフシードを使ってやっと杏子のソウルジェムの穢れは消えた。
「ホムラお姉ちゃんは大丈夫なの?」
優しい子だな、とほむらは思う。
自分がなくしてしまったものだろうな、とも思う。
だからこの少女がほむらは苦手なのかもしれない。
「私は……」
虚勢を張っている場合でもないか。
ほむらはゆまからグリーフシードを一つ貰って自らのソウルジェムを回復させた。
「おねえちゃん怪我してるよ?ゆまが直してあげようか?」
「いいわこの程度、あなたの回復魔法はギリギリまでとっておきたいの」
「そうだぜゆま、お前の力は私たちの切り札なんだからな」
「ゆまは役立たずじゃない?」
「勿論さ」
杏子は弱々しく笑う。
ほむらも一応は空気を呼んで頷く。
「それじゃあ帰ろうか」
「うん!」
「帰るって私の家よ……」
「お前が提供するって言ったんだろうが」
「ゆま、ちゃんとお皿洗いしておいたんだよ!
“やちん”の分働いたもん!」
ほむらはやれやれと肩をすくめてから杏子に肩を貸して自分の家への道を急いだ。
「ガイアメモリ、ね。調べる必要がありそうだわ」
ほむらは小さくつぶやいた。
54 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:14:28.22 ID:4+g23aav0
―――――
「さて、巴マミ、俺はお前に聞いておきたいことがある」
「先ほど話した通り答えられる範囲では答えるつもりです」
二人きりの部屋。
さやかとまどかは既に帰っていた。
そうなるように大道が仕向けたのだ。
彼女らの前ではマミだって話したくない話も多いことを大道はわかっていた。
「美樹さやかと鹿目まどかの前で、話さなかったことについても聞かせてもらうぞ」
「ええ、“貴方も”同じような目に遭ったんでしょう?
今更黙っている必要もありません
あの子たちの前では聞かないでいてくれたことを感謝しています」
「巴マミ、お前が受けた改造手術、そして戦闘訓練について聞かせてもらおう」
「貴方も聞いたかもしれませんが私は魔女によって首を食いちぎられました」
マミは紅茶を飲む。
「しかし魔法少女はそれだけでは死ねない、ソウルジェムを破壊されなければ死なないのです」
「それは聞いている」
「私の魂の入ったソウルジェムは何者かの手引きでこの街に潜入していた財団Xによって確保された
そして新しく用意されていたこのクローンの身体に移し替えられました」
「この身体に移ったときには既にネバーになるための手術は済んでいて、私が意識を取り戻してから受けていたのはクオークスとしての訓練です
ものすごい早さで飛んでくる鉄球をサイコキネシスで止めたり、訳のわからない仮面の人達を殺すように命令されたり……
あと銃の扱いや棒術、鞭と体術の練習をさせられました
どこかの国の傭兵集団のDVDを嫌になるまで見せられて真似させられて……
その訓練は元々私の戦闘スタイルに馴染んでいたんで楽だったんですけど……」
「練習の間、的として使っていた……マスカレイドドーパントって言うんですか?
あの人達が殺すときに、命乞いをするんですよ」
カップがカタカタと震える。
「それで私が戸惑っていると……」
「もう良い、俺と同じだ」
しかし、最初から躊躇わなかった自分より、まだ彼女のほうが人間に近い。
俺はどこまで行っても悪魔なのだ、と大道は自らを嘲る。
「怖かった……」
巴マミの声が震えている。
おそらくは後輩たちの前で気丈に振舞っていたのだろうが、一人に戻れば彼女とてまた普通の少女である。
大道には母親が居た、しかし彼女にはそれが居なかった。
それ故に彼女は大道が味わった以上の孤独と絶望を味わったのだろう。
55 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:15:04.54 ID:4+g23aav0
「う、ひっく……グス……」
何時の間にか、巴マミの目からは涙があふれていた。
「でも俺がネバーとして訓練させられていた時には、俺のおふくろが側に居てくれた」
「え?」
「おふくろがな、俺をネバーに改造したんだよ」
「そんな……」
残酷な、と言いかけた巴マミを大道は制する。
「良いんだ、俺におふくろの気持ちは解らないが俺は不満に思っちゃいない」
そう思う心すら既に無かった。
「大道さん……」
「でも巴マミ、お前は違う」
大道はマミの肩を掴む。
「おふくろが俺の側に居てくれたように、せめて今からは俺がお前を守る、仮面ライダーとしてな」
マミが驚いたような表情で大道を見つめる。
「良いな?」
「え、と……」
「良いな?」
「……はい、助けてください、仮面ライダーさん」
巴マミはその日初めて、心の底から少しだけ笑った。
その笑顔は大道がかつて守れなかった少女のそれにそっくりだった。
じゃあお近づきの印と紅茶のお礼だ、そういって大道は細胞維持酵素をマミに渡した。
56 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:15:53.15 ID:4+g23aav0
―――――
「おはよう鹿目さん」
「おはようほむらちゃん!」
「おはよー転校生」
「おはよう美樹さん」
「大丈夫か転校生?眼の下にクマができてるぞ?」
「少し調べ物をしていたの、気にしないで」
「ほむらちゃん、あの後大丈夫だったの?」
「ええ、大丈夫よ、佐倉さんも一応無事だから安心して」
この時間軸においてほむらはまどか達の交流を保つスタンスをとっている。
故に学校においては基本的に彼女たちと話をしている時間が多い。
「良かったー!」
「昨日は助かったよ、悔しいけどさやかちゃんからもお礼を言わないとね」
「あの……」
「どうしたの?」
「大道克己って人は一体何者なの?」
「へへーん、仮面ライダーさ!」
「説明になってないわ」
「えっ」
「えっ」
「さやかちゃん、ちゃんと話聞いてた?」
「そんなぁ……」
「じゃあ鹿目さんに聞くわ、大道克巳さんって何者なの?」
「分からないの、急に現れてさやかちゃんと魔女を狩るための同盟を提案してきて……
その後の戦いで魔女を一瞬でやっつけちゃったしさやかちゃんの悩み事も解決しちゃったし……」
「ほむ……じゃああの白い鎧はなんなのかしら?」
「あれは仮面ライダーエターナル!“がいあめもり”で大道さんが変身した姿なんだってさ!」
57 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:16:21.86 ID:4+g23aav0
「ほむほむ……あれもガイアメモリなのね」
「ほむらちゃん、真面目な顔でほむほむとか言わないで」
「あらごめんなさい鹿目さん、癖なの」
「ところで二人共昨日のバク宙ブルーカーペット見た?」
「見てないわよ、杏子がうるさくて眠れないって文句言うんだもの」
「私も興味無いかな……?」
「なんだよもー!じゃあその後の題名だけない音楽会!」
「ごめんなさい」
「悪いわね」
「もー……」
「ところで美樹さん、質問ばかりで悪いから貴方に一つ忠告」
「え?」
「最近魔法少女狩りをする魔法少女が居るって噂なの、気をつけることね」
「へえ、師匠やマミさんは知ってるの?」
「私も最近杏子から聞いたばかりよ、だから二人にも早く知らせておいて」
「おっけー」
そのあとは只の雑談。
その日の学校は何の事件も起きずにオシマイ。
ほむらは一人家路に着く。
58 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:16:54.12 ID:4+g23aav0
―――――
「大道克己の目的を探るべきかしら……」
コンビニを何気なく眺めるほむら。
そう、今日は杏子とゆまが食べたがっていた新しいアイスの発売日なのだ。
「食費のかかる同居人だわ……、その分働いてくれるけど」
彼女がコンビニに向けて歩む方向を変えた時だった。
「危ない!」
誰かの声。
降ってくる看板。
彼女は一瞬だけ時間を止めてそれを回避する。
目の前で粉々になる看板。
その破片の中から何か光るものが彼女に向けて飛んでくる。
「これは!?」
とっさにつかみとった彼女は驚いて目を見開く。
青い端子のUSBメモリ状の物体。
ガイアメモリである。
彼女が見たユートピアとは違うがYの文字が刻まれたそれは間違いなくメモリだった。
「大丈夫かい?」
赤いジャケットを着た男が駆け寄ってくる。
「大丈夫です」
良い物を手に入れた、そう思ってそそくさと其の場を立ち去ろうとするほむら。
「ちょっと待ちなさい、その手の中に隠した物を出してもらおうか。」
逃げるか?
いや、暗示の魔法でこの場はごまかそう。
彼女は目の前の男に暗示の魔法をかけようとした。
「俺は警察だ、怪しいものじゃない」
警察手帳を見せつける男。
暗示はまるで効いていないようだ。
「そのUSBメモリを渡してくれないか?」
時間を止めるか?
いや、やめておこう、ソウルジェムへの負担は避けたい。
この男の名前は覚えた。
欲しくなったら取り返せば良い。
その気になればこの子は何時だって私の手の中に帰ってくる。
なぜだか分からないが謎の確信に動かされてほむらは素直にメモリを男に渡した。
59 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:18:29.76 ID:4+g23aav0
「ありがとう、これはガイアメモリといってとても危険なものなんだ」
「そうなんですか?なんだか綺麗でつい掴んじゃったんですけど……」
「綺麗に……見えるのか」
「え?」
「いや、なんでもない
それよりも、もし次にこれに似た物を見つけたらこの名刺に書かれた男に連絡してくれないか?
あときみの友だちがこれに似た物を持っていた場合も連絡してくれ
……約束できるかい?」
名刺を渡される。
「貴方に連絡しては駄目なんですか?」
「それでもいいんだが……ガイアメモリは揉め事を起こしやすい
警察よりも身軽に動けるその男に連絡したほうがいいだろうな」
「分かりました」
暁美ほむらは赤い革ジャンの男から“左翔太郎”と書かれた名刺を受け取った。
その時に偶然彼の左手薬指に光る指輪を彼女は見つけた。
「刑事さん、結婚しているんですか?」
意外だ、と思った。
「俺に質問……しないでくれるかな」
照れ隠しの柔和な笑顔でそれだけ言い残すと男は立ち去った。
新婚さんかしら、とほむらはつぶやいた。
携帯電話を取り出し、ほむらは早速その番号に電話した。
開口一番、彼女はこういった。
「エターナルメモリを使う、大道克己という男が見滝原に居ます
潜伏先はおそらく……」
巴マミの住所を告げる。
さやかとまどかの会話からそれは既に知っていることだった。
電話の先の所長と名乗る女性の返事も聞かずにほむらは電話を切った。
60 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:19:12.29 ID:4+g23aav0
―――――
「誰この娘!」
大道克己が巴マミの家に帰ってきたのは夜遅くのことだった。
しかしそれだけで語気を荒げる巴マミではない。
大道克己は気を失った少女を連れ帰ってきたのだ。
「大道さん!誰なんですかこの娘は!」
彼女はジーっと大道の連れてきた少女の胸を見つめる。
「行き倒れていたんだ、魔法少女の気配がしたから連れて帰ってきた
グリーフシードは持ってきたからお前の治癒魔法をかけてやってくれ」
「……分かりました、ていうか一人で魔女を倒したんですか?」
「いや、そいつが沢山持ってたんで少しくすねた」
「…………」
「治療費だ」
マミは少女の服を脱がせて傷を塞ぎ、包帯を巻く。
「中々良いスタイルしてるじゃない、ねえ大道さん?」
皮肉たっぷりにマミは言う。
「なんだ、俺は年下には興味が……」
「私のほうが……おっぱい大きいわ」
「え?」
「私のほうが!おっぱい大きいわ!」
ああ、ネクロオーバーになったことによる人格の崩壊か。
こいつルナ使ってたしなあ……と自分の率いていた部隊の副隊長を思い出す大道。
当然、彼のキャラに慣れていた大道はマミの奇行程度では動じなかった。
母子ともに無駄にCOOL。
正にツッコミ不在である。
「さて、治療が終わったわよ」
「すまないなマミ」
61 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:19:37.30 ID:4+g23aav0
「同じ魔法少女だしね、起きたらこの子に事情を聞きましょう
さて、紅茶でも飲みましょうか……あら」
大道とマミは顔を見合わせる。
「魔女の気配ですね」
「ああ、近いぞ」
「……ふぁあ」
二人は声の方を振り返る。
「魔女かい?それなら私も手伝おう」
大道の拾ってきていた少女が起き上がっていた。
「私の名前は呉キリカ、魔法少女だ。よろしく」
「え、ええよろしく」
「さて、包帯が動きづらいな、少し着替えたいので部屋を開けていてくれるかい?
「解ったわ、同じ魔法少女として貴方を信頼するけど……
まあここは私の家だし、妙な動きをすればどうなるかは分かってる筈よね」
「恩人達はすぐに追いつくから先に行っていてくれよ」
「恩人?」
「私をたすけてくれたんだろう?ならば恩人さ」
「……なるほどね、じゃあ先に行っていましょう大道さん」
「ちょいと待った、そこの恩人は魔法少女じゃあないんじゃないのか?」
「詳しくは聞くな」
「解った、人間誰でも事情はある。その事情があるなら聞かないよ」
大道と巴マミは急いで魔女の気配のする場所まで向かう。
走る二人の後ろ姿を見てキリカはニヤリと笑った。
62 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:20:05.23 ID:4+g23aav0
――――
「マミ!使い魔は任せたぞ!遠距離からの牽制をメインにして俺がマキシマムドライブを叩きこむ隙間をこじ開けろ!」
二人はその後すぐに魔女のいる場所までたどり着いた。
それほど強力な魔女ではない。
彼らはキリカを待たずして戦闘を開始することを決めた。
「分かりました」
マミの進行方向上にずらりと並ぶマスケット銃。
彼女はそれを片っ端から拾っては引き金を引き、投げ捨てる。
大道の進行方向に居る使い魔は銃声が一発轟く度に倒れ、マミに向かう使い魔は彼女の体術、あるいは弾切れのマスケット銃で殴り倒された。
「ほう……」
大道は驚いていた。
さやかと一緒に戦っている時に比べて明らかに戦いやすい。
考えてみればそれも自然なことなのだ。
大道にと同じレンジを持つさやかよりも中距離や遠距離の攻撃でサポートをできるマミの方が戦闘は楽に決まっている。
それに加えて財団Xにおける訓練で巴マミは大道率いるネバー全員の戦い方を模倣するような戦い方を学んでいる。
故に彼も指示をあたえやすかったし、彼女も大道の指示の的確さに驚いていた。
「右側の弾幕を厚くしろ、一気に突っ込むぞ!」
「はい!」
マミのマスケット銃から飛び出た弾丸がぐにゃりと曲って魔女の本体を叩き始める。
魔女はマミに気を取られてその方向にむけて列車砲に使われるような巨大な鋼鉄の弾丸を撃つ。
自らの使い魔さえ蹴散らしながら弾丸はマミの元に飛ぶ。
「この程度……!」
大道の背後で爆音が響く。
丁度マミのいる辺り、だが彼は振り返らない。
「少しは心配して欲しかったな」
鋼鉄の弾丸は止まっていた。
巴マミが止めたのだ、おどろくべきことに素手で。
彼女は弾丸を片手で掴んで魔女に投げ返す。
魔女は弾幕を貼ってそれを迎撃、なんとかして撃ち落とす。
だがしかし
「マキシマムドライブ」
「これで終わりだ」
大道の蹴りが魔女に直撃する。
魔女はいつもどおり一瞬だけ人間の頃の姿に戻り、大爆発を起こして消滅した。
「キリカちゃんは間に合わなかったのかしら」
「らしいな、まあ怪我していたし当然といえば当然だろう」
「そうね……」
そこまで話した所で違和感に気がつく。
「おい、魔女の結界が崩れないぞ」
「そうみたいね……おかしいわ」
次の瞬間、大道の足元に影が映る。
とっさに大道はマミを突き飛ばした。
肩口に突き刺さるような痛み。
63 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:20:41.82 ID:4+g23aav0
「とっさに庇ったんだ、やるね」
隙の生まれた大道に追い打ちで爪を突き刺してからバク宙。
二人と距離をとって爪を構える少女。
呉キリカである。
「貴方は!?」
「呉キリカ……何故だ?」
「悪いが恩人といえども理由は言えないよ
強いて言えば……愛ゆえに、かな」
「くそ……つまらない拾い物をしてきちまった」
「行くよ恩人!」
キリカはマミに向けてまっすぐ走る。
マミはそれに対してカウンターを決めるように回し蹴りを放つ。
が、明らかに遅い。
技に普段の切れが無い。
すれ違いざまに足を斬りつけられる。
「疾い!」
「おいマミ!なにをやっているんだ!手加減している余裕はないぞ!」
「え?そんな馬鹿な……あっちが急に加速して、まさか!?」
「うーん、やっぱ二対一だとすぐにネタが割れちゃうか……」
そう、呉キリカの能力は“速度低下”
自身の周囲に存在する、あらゆるものの速度を低下させる。
相手は動きも攻撃も鈍るため、キリカ自身は相対的に高速となる。
勿論、魔女の結界の崩壊もスローになるのだ。
「でも関係無い、すでに手負いの二人組程度、私の敵ではない」
五本の爪が舞う。
漆黒の影が疾走する。
その度に二人の体は徐々に徐々に傷が増える。
回復速度も徐々に落ち、マミにいたっては手の血管がボコボコと異様な動きを始める。
「酵素切れ!?」
ネクロオーバーになって日が浅かったがゆえの失敗。
大道も巴マミをかばっているせいか明らかに動きが鈍い。
「そろそろ体力切れって感じだねえ恩人!」
キリカが両手の爪を合わせてドリルのように回転を始める。
「こいつでお終いだ!」
大道はすばやくマミの前に立ってエターナルローブを展開、彼女をかばう。
64 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:21:17.19 ID:4+g23aav0
「アハハハハ死ねええええええええええええええ!」
「おっと、そこまでだぜ」
「え?」
突然現れた黒い影が高速で回転するキリカを捕まえて其の場に叩きつける。
「まったく……訳のわからない電話が気になったから留守をフィリップに任せて来てみれば……」
左手でJの文字をかたどってみせるお決まりのポーズ。
「仮面ライダージョーカー参上、助太刀するぜ!大道克己!」
「お前は……!」
漆黒の闘士。
風都の切り札。
ハーフボイルドの名探偵。
「左翔太郎!」
「事情は解らないが、そこのお嬢さんを庇っている姿を見ちまった以上……な
それにアイツから聞いちまった話も有るしよ」
「アイツ……?」
「まあとにかく話は後だ、まずはこのお嬢ちゃんからも話を聞かないとな!」
「おっと、何処の誰だか知らないけれどそうはいかない
私の口から秘密が漏れちゃったらコトだからね」
キリカは速度低下を生かしてジョーカーに一気に接近して彼を斬りつける。
だがしかし、まるでその攻撃を予見でもしていたかのように翔太郎はそれを回避してみせる。
速度は勿論キリカのほうが圧倒的だ。
しかしながらこのジョーカー、“技”に特化した仮面ライダーである。
自分より遥かに強い相手や遥かに疾い相手など既に何十何百と屠ってきた。
そういう意味で相手に対して速度でアドバンテージをとって打ち倒すキリカとは相性が最高である。
「くっ……!ちょこまかちょこまかと!」
突きを受け流し、斬撃を回避し、いつのまにやら背中に回って手刀を叩きこむ。
蹴りを蹴りで止め、殴ればクロスカウンター、つかみかかった所で逆に関節を取りに来る。
その変幻自在な戦いぶりは大道と戦った時を遥かに超えていた。
「やれやれ、厄介な能力だな嬢ちゃん、なんのガイアメモリかは知らないが……一気に決めさせてもらうぜ。」
「左、そいつは魔法少女だ」
「え!?ドーパントだとばかり……」
「隙あり!」
翔太郎の一瞬のすきをついてキリカは逃げ出す。
翔太郎がそれに気づいて後ろを振り返ったときには、既にキリカの姿はなくなっていた。
65 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:21:38.13 ID:4+g23aav0
「ハーフボイルドなところは変わらないらしいな……」
呆れ気味に大道はつぶやいた。
「魔法少女ってどういうことだよ大道?」
「お前にこの街のこと、そして俺のことを聞かせる必要があるみたいだな
マミ、先に帰っていてくれ、俺はこの男に話がある」
「待てよ大道、怪我している女の子を一人で帰らせるのか?」
「……それもそうか、ならば家まで送れ、その道すがら話はしよう
それでいいか?巴マミ」
「私は、大丈夫ですけど……」
まさかこの客もろくでもないのじゃあないだろうな。
と、巴マミは少しだけ心配になっていた。
【第三話「現れたJ/探偵はたった一人」 了】
66 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 08:23:20.31 ID:4+g23aav0
これから家を出なくちゃならないから次回予告はまた後なんですよ
次は加筆話に入るのでお楽しみに
67 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/08(火) 13:17:30.79 ID:6xJH10UDO
乙
加筆部分にも期待してます
68 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/08(火) 17:57:26.85 ID:lrJqAkdSO
今旧作見たよ
いいねぇ。Wは敵サイドが魅力的だったから楽しみだ
上がってた宣伝スレ見てよかった
69 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 21:50:37.00 ID:mpGaWW5V0
【次回予告】
「なーんで私の知らない魔法少女がこの町に居るのかね」
「へぇ、今のを躱すんだ」
「鉄爪の魔法少女か……グリーフシードが狙いかい?」
「君に答える義理はない」
【次回第三と二分の一話『邂逅、杏子とキリカ』 乞うご期待!】
70 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/08(火) 21:52:17.05 ID:mpGaWW5V0
ageて自演してみるものですね
宣伝スレから来ていただけるとは……
精進していきたいと思います
しかし旧作の方見られたの恥ずかしいなあ
色々とあらが有って……
71 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/09(水) 08:11:36.59 ID:2qPGjLqDO
フォーゼ分の追加があるのかな
楽しみに待ってます
72 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/10(木) 14:01:39.86 ID:d5MD6h6t0
【第三と二分の一話『邂逅、杏子とキリカ』】
ユートピアドーパント戦の前日。
杏子は一人で魔女を狩っていた。
それ自体は大したこと無い相手、弱い相手だった。
「ちぇっ、しけてるなあ」
そもそも一人で戦っていた時間が長い杏子だ。
難しいことではない。
たった一つしか出なかったグリーフシードを拾い上げると彼女はそれを懐にしまった。
「……さて」
いつもならば魔女の結界が崩壊するはずなのだ。
しかし今は違う。
なぜだかはわからないが気味の悪い魔女空間がいつまでも展開されている。
「おっかしいなあ?」
そう言って首を傾げる杏子へと背後から振り下ろされる十爪の斬撃。
金属音が魔女空間に響き渡る。
「なーんで私の知らない魔法少女がこの町に居るのかね」
杏子はその十爪を見ずして槍で受け止めていた。
「へぇ、今のを躱すんだ」
不思議そうに呟く声。
露出の多い漆黒の衣、鉄爪の魔法少女、呉キリカである。
「鉄爪の魔法少女か……グリーフシードが狙いかい?」
「君に答える義理はない」
「はん、それもそうか」
杏子は爪を払いのけると槍を頭上で回転させてから左半身の構えをとる。
73 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/10(木) 14:02:11.32 ID:d5MD6h6t0
「やっぱり魔法少女同士はこれじゃなきゃな!
良いぜ、来いよ!」
「話が早いのは良いことだ!」
先手をとったのは杏子だった。
槍の間合いを生かしたシンプルな突き。
シンプル故に何よりも疾く、また如何様にも変化しうる故に回避しがたい。
が、キリカはそれを簡単に回避する。
「――――嘘だろ!?」
キリカの爪が杏子の顔面を裂く。
顔を抑えながら杏子は後ろに飛び退いて間合いを詰め直そうとする。
「しかしそれは予想の範囲内だ」
キリカは飛び退いた杏子を追うように一気に駆ける。
おかしい。
飛び退くスピードが妙に早い。
速度低下こそが呉キリカの能力で、近くにいるものはその効果から逃れられない。
だというのに何故彼女の目の前に居る杏子はスピードを落とさずに一気に飛び退いた?
「――――まさかそれは!?」
「おせーよ、ばーか」
キリカは口から血を吐く。
彼女の腹には深々と槍が突き刺さって、貫通していた。
「じゃあ私は、幻を追っていたというのかい?」
「そんなんじゃねえよ」
そんなものではない。
彼女は自らの能力を封じているのだから。
傷ついた顔を手でなぞる杏子。
傷は見る間に塞がっていく。
「だが勝負はこれからだ」
キリカは槍を掴んで笑う。
「むしろもう終わったというべきかな?」
彼女は右手でゆっくりと槍を引きぬく。
74 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/10(木) 14:03:03.47 ID:d5MD6h6t0
「だって武器無しじゃあ戦えるわけがないんだからね」
「それについては概ね同意だ」
杏子はキリカの右側面に回りこんで殴りかかる。
無論速度低下を受けているために近接戦中心で戦う杏子でも動きはスローなものだ。
躱せない道理は無い、筈だった。
「――――う゛っ!?」
そう、杏子の槍が多節棍のように分解して主の意のままに動く特殊な武器でなければ。
杏子の槍はバラバラになってキリカの右腕と胴体に絡み付いて彼女の動きを拘束していた。
その拘束で出来た隙に杏子の拳がキリカの脇腹に突き刺さる。
「悪いね、それ槍なんだけど槍じゃあないんだ」
ローキックがキリカの脹脛を打つ。
キリカは右腕と胴体に絡みついた槍を放っておいて、このレンジでは邪魔な爪を外した左腕だけで殴り返す。
速度低下の効果を受けた杏子では反応できずに顔面を正面から捉えられた。
大きくのけぞる杏子、鼻血が吹き出す。
キリカはそこから更にニーキックを杏子の顎にかます。
このようなシンプルな殴り合いでは速度がそのまま戦闘力の差になる。
そういう意味ではこの状態では杏子に勝ち目はないように思える。
だが、キリカに食い込んだ多節棍状の槍はその優位を無意味に変える。
杏子に殴りかかりながらもキリカの顔色はどんどん悪くなっていた。
槍によって肺と肋骨を絞めつけられているのだ。
長引けばキリカの方も危険な状況。
「さっさと落ちろぉ!」
キリカの肘が杏子の鳩尾に突き刺さる。
だがそれと同時に杏子のカウンターパンチがキリカの肋骨を襲う。
それが恐らくは止めだった。
先ほどから圧迫されていた肋骨が限界を迎えたのだ。
「ゲプホッ!」
杏子の血まみれの顔面にキリカの血が降り注ぐ。
折れた肋骨が肺に突き刺さった証拠。
キリカは限界を悟って真後ろに飛び退く。
「今日はこの程度にしておいてあげるよ」
「その言葉、そのまま返してやるよ」
キリカに近づけば速度が低下する。
それはそのままキリカを追撃することが杏子だけでは不可能なことを意味する。
魔女の結界が崩壊すると同時にキリカは全速力で走り去っていってしまった。
「くそっ、ゆまに治してもらわねえと……
それにしても魔法少女狩りの魔法少女か……気をつける必要があるな」
服に付いていたフードを被り、人目を避けながら杏子はほむらのマンションまで急ぐことにした。
【第三と二分の一話『邂逅、杏子とキリカ』】
75 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/10(木) 14:08:54.88 ID:d5MD6h6t0
【次回予告】
「お前その姿……」
「ああ、生き返らされた時に若返っていたみたいでな」
「こんばんわ、探偵さん」
「……あんたが所長の言っていたタレコミしてきた女の子か」
「大道克己が何者か確かめたかったの
善人なのか、悪人なのか、巴マミや美樹さやか、そして鹿目まどかにどんな意図を持って接触しているのか」
「成程、俺を利用してたって訳か?」
「怒る?」
「随分弱っているわね」
「弱っているんじゃない、なんか思考がぼやけているっていうかさ……
なーんも感情が持てないっていうか」
「ほむぅ……まあいいわ、とりあえずメモリの専門家に会ってきたわ
貴方にも聞いておいてほしい話が有るんだけど良いかしら」
「ああ、構わないよ」
【次回第四話「現れたJ/名探偵左翔太郎」 乞うご期待!】
76 :
◆mbgGrCikwU
[saga sage]:2012/05/10(木) 14:13:31.03 ID:d5MD6h6t0
ちょっと制作裏話
某ライダーの影響でプリキュア見るようになりまして
最初から丁寧に見ないと我慢出来ない性質でDVD借りて見るようになって
「女の子の殴り合いSUGEEEEEEEEEE!」となって影響されて殴り合い書いてみました
あと魔女は最初以外は大抵オリジナルです
列車砲の魔女とかステンドグラスの魔女とか考えてて楽しかったり
77 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/10(木) 17:25:43.35 ID:Pvxom6hSO
カチッ \乙/
78 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2012/05/10(木) 18:11:43.16 ID:tOirCm260
乙!
79 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 21:56:55.58 ID:AXQ3rUFX0
さて、本日の投下
例のギャグ回が迫っていると考えるだけで胃がもたれます
80 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 21:57:39.16 ID:AXQ3rUFX0
【第四話「現れたJ/名探偵左翔太郎」】
「さてと、周囲に敵の気配は無しか」
大道はベルトからメモリを取り外して変身を解除する。
マミもそれに合わせて魔法少女の衣装から普段の服装へと戻った。
翔太郎も当然変身を解除する。
「――――え!?」
そして、大道の姿を見て素っ頓狂な姿を上げる翔太郎。
それもそのはず、今の大道の姿は彼の相棒である園咲来人、あるいはフィリップにそっくりだったからだ。
「どうした左」
「いや、お前、その姿……」
「ああ、生き返らされた時に若返っていたみたいでな」
「生き返らされた?」
「ここだと誰かに聞かれているかも解らん、話は帰った後だ」
「私の家は結界が張ってあるので私が認めた人以外はこの家に入ることも近づくこともできないんです」
「ああ……」
だから家にたどり着けなかったのか。
翔太郎は得心……
「結界?」
「魔法少女ですから」
「魔法少女ってなんだ……」
できなかった。
そもそも魔法少女などという非日常的な単語を聞かされてしまって当然のように順応できる訳がないのだ。
彼の反応は至極まともと言えるだろう。
「そこから説明しなきゃ駄目みたいですね……」
マミもやれやれといった感じである。
どうも翔太郎のことを好きになれない、といった雰囲気が伝わってくる。
81 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 21:58:06.70 ID:AXQ3rUFX0
――――
さて、十分後。
「……というわけだ、これで俺の知っていることは全部
次はお前が話してもらう番だ、何故この街に来たんだ、左翔太郎」
マミの家に到着してからすぐに大道は今まで有ったことや魔女についての知識を翔太郎に伝えた。
無論、自分ときゅうべえの関係は隠した上でなのだが。
「魔法少女に、魔女ね、しかも財団Xの暗躍……信じがたいがまあ見ちまったもんな」
左はマミに出された紅茶を口元に運ぶ。
「俺は……オワッチ!」
熱かったらしい。
床を汚しはしなかったものの紅茶を噴き出す。
慌てて自分のハンカチでテーブルを拭くがマミの表情は引き攣っていた。
82 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 21:58:44.85 ID:AXQ3rUFX0
「俺は“大道克己が見滝原に居る”って話を聞いたからここまで来たんだ」
「誰からだ?」
「わかっていたらまずそいつに会っていたよ」
「依頼って訳ではなさそうだな……」
「ああ、依頼じゃねえ」
大道克巳は少し考えこむような素振りをする。
「じゃあ左翔太郎、お前に依頼がある」
「え?」
「先ほどの少女、暮キリカというのだがそいつの身元の調査をして欲しいんだ」
「いや、おまえいきなり……」
「左さん」
マミは深刻そうな顔を作ってみせる。
「なんだいお嬢ちゃん?」
「お金の心配は無いので依頼を受けてはいただけませんか?
私たち魔法少女の安全に関わっているんです……」
女性からの頼みを断れる左翔太郎ではない。
「喜んでご依頼をお受けしましょう、レディー」
マミは大道の方を見てにやりと笑った。
83 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 21:59:20.94 ID:AXQ3rUFX0
「ありがとうございます」
「それじゃあお前の口座に前金は振り込んでおこう」
「念のために確認しておくが傭兵稼業で貯めた金じゃあないよな?」
「安心しろ、工事現場でアルバイトして貯めた俺の金だ」
二人が驚いて大道の方を見る。
「ガテン系ライダー……?」
「イメージできない……」
「すぐに工事現場に追手が来たからやめたけどな」
「ま、まあ依頼を受けたからにはささっと調べに行かせてもらうぜ!」
「あ、左さんよろしければこれ、見滝原の地図です」
「ありがとうお嬢さん、大事に使わせてもらうぜ」
左翔太郎は地図を眺めながらマミの家を出ていった。
マミはとりあえず何事も無く客人が帰っていったことに安堵の溜息を吐いていた。
84 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 21:59:46.75 ID:AXQ3rUFX0
――――
マミの家を出て停めてあったバイクに跨る翔太郎。
「こんばんわ、探偵さん」
そんな彼に後ろから声をかける少女。
暁美ほむらである。
「……あんたが所長の言っていたタレコミしてきた女の子か」
「あの人所長だったんですか」
「まあな、それで一体何の用なんだ?
俺と大道を争わせようってんなら筋違いだぜ?」
「いえ、貴方がこうしてここに来た時点で私の目的は達せられたわ」
「……なに?」
翔太郎は怪訝そうな顔をする。
既に何か仕掛けられたのかと思ったからだ。
一応、彼は風都で嫌というほど女性に騙されている。
だから対応も慣れたものなのである。
「大道克己が何者か確かめたかったの
善人なのか、悪人なのか、巴マミや美樹さやか、そして鹿目まどかにどんな意図を持って接触しているのか」
「成程、俺を利用してたって訳か?」
「怒る?」
翔太郎の顔に笑顔が浮かぶ。
「踊らされ上手も男の美徳さ、やるじゃねえかお嬢ちゃん」
「あら、嬉しいわ探偵さん」
左翔太郎、彼は女性に騙され続けている。
それ故に対応も慣れたものだった。
そんな彼の姿にほむらは少しだけ好感をもった。
85 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 22:02:24.32 ID:AXQ3rUFX0
「流石ハードボイルドね」
「まあな」
「これから予定は有るの?」
「呉キリカについて調べているんだが……何かしらないか?」
「呉キリカ?誰それ」
「魔法少女なんだが妙な奴で……他の魔法少女を襲っているらしいんだ。」
依頼人の身元がわからないように一定の配慮をしながらほむらに話す翔太郎。
そこはやはり探偵である。
そしてそんなところもほむらにとっては彼が信用に足る大人だと思わせる一因になった。
「呉キリカ……魔法少女狩りの話は私も調べているところよ
それが彼女の名前ならばありがたい情報ね」
「何か解ったら俺に教えてくれ
黒い服を着てて、武器は爪、なんかあいつの近くだと動きが鈍くなったなあ……」
「色々と悪いわね、探偵さん」
「情報を提供してもらえるかもしれないからな、お互い様さ」
「じゃあ親切ついでに一つ質問していいかしら、ガイアメモリが意思を持つことってあるの?」
「……なに?」
翔太郎の表情が変わる。
そんなメモリが有るとしたらT2ガイアメモリ。
あれは全て破壞された筈だというのに……
「そんなメモリが有ったのか?」
「いえ、なんでもないの」
「見たのか?」
ほむらとしては嘘を吐くことが得策とは思えなかった。
左翔太郎に話さないことはあっても良いが、嘘をついてしまえば今の関係が崩れかねない。
「……ええ、もう赤いコートを着た警察の人に渡しちゃったけど」
「照井か、仕事と言っていたがまさか……T2はすべて廃棄処分された筈じゃないのか?
お嬢ちゃん、そのガイアメモリの端子の色は?」
「青い端子だったわ、Yって書いてあった」
「ありがとう、調べなきゃいけないことがあるんで失礼するぜ」
「え、ええ」
翔太郎はバイクのアクセルを踏み込んでその場を去ってしまった。
その様子がほむらは少しだけ恐ろしかった。
86 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 22:02:55.59 ID:AXQ3rUFX0
――――
「これはこれは織莉子さん、今日も励んでいらっしゃるようですね」
「あら加頭さん、できたガイアメモリの回収ですか?」
「そんなところです」
「どうぞ」
織莉子は加頭にメモリを差し出す。
「素晴らしい能力ですね、その……」
「予知(プレコグニション)です」
「ええ、予知」
加頭は青い端子のメモリを受け取って彼の背後に控えていた白服の男女にそれを預ける。
「地球の記憶を直接読み取れなくてもそれに類似したものを予知してデータとして取り出す
園咲来人によって製造されたオリジナルと異なって過去の記憶は引き出せませんが未来における地球の記憶を引き出せる
目を瞠る能力ですよ
メモリの品質も完璧で……誰か貴方に教授している人が居るのではないかと疑うほどです」
「お褒めいただいて光栄です。ところでこの前話した忠実な兵隊をいただけるお話はどうなったのですか?」
「丁度連れてきたばかりですよ、クローン人間を使ったネクロオーバー
しかも単純な戦闘が得意な人材をね」
部屋の扉が開く。
全裸にベルトを巻いただけのの男が惜しげもなく股間を晒して堂々と部屋に入ってきた。
唯一の救いは彼が中々にイケメンだったことである。
さもなくば流石の織莉子も容赦なく彼に光弾を叩き込んでいたことだろう。
「…………」
流石の織莉子もこれには閉口である。
織莉子に恭しく一礼をしてから男は自らのベルトの中に青い端子のメモリを差し込む。
87 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 22:06:02.61 ID:AXQ3rUFX0
「ナスカ!」
大地の声と共に男の体表を空のような青い色をした鎧が包みこむ。
彼を守るように突如として吹き始めた旋風は何時の間にか白く染まりマフラーとなって彼の首にまとわりついた。
「はじめまして織莉子さん、自慢の騎士の誕生です」
ボロン
男は不敵に笑った。
「レディーの前で裸を晒すナイトなんて見たことないわ」
「ごもっとも、しかしどうしても見ていただきたいと……」
ナニを?
織莉子は加頭順の方を睨みつける。
「腕は確かです」
「そうじゃなかったら今すぐあなた達との協力関係を終わらせているわ」
織莉子の目とて節穴ではない。
彼の実力は見るまでもなく理解できた。
「さて、ナスカの騎士さん、私は貴方をなんと呼べば良いのかしら」
というかむしろ見たくなかった。
「……そうですね、キリヒコと呼んで下さい」
「解ったわキリヒコ、今すぐ服を着てきなさい」
園咲霧彦そっくりの青年、キリヒコを退室させて織莉子は改めて加頭との会話を再開させる。
「それでは兵隊は頂きましたし、お願いした鹿目まどかの暗殺、しっかりお願いしますよ
なんなら家族ごと殺しても構いません」
「分かっています、しかし依頼に対する報酬は先払いと約束しましたよね?
我々としても今回の技術供与が最大限の譲歩なのですから」
「ええ、解っているわ、でも次のエターナルのメモリを作り終わればAtoZのすべてのメモリが揃う」
「それは分かっています、既に準備は整っておりますので
それでは失礼致します」
加頭は白服の男女を従えてその部屋を出ていった。
「覚えてろよあの能面……」
織莉子はとんでもないモノを見せつけられたことに怒りを覚えていた。
キャラ崩壊してとんでもないこと口走る程度には。
88 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 22:06:45.13 ID:AXQ3rUFX0
――――
「ただいま」
「おかえりなさーい!」
元気よくゆまがほむらを迎える。
「あら、杏子は?」
「まだベッドで寝てるー」
「そう、じゃあ私少し様子見てくるからゆまちゃんはリビングで大人しくしててね?」
「わかったー!」
ベッドルームにノックも無しで入るほむら。
普段なら怒る筈の杏子がベッドの中でうつぶせになって何も言わない。
ユートピアドーパントと戦って以来ずっとこれだ。
「杏子、大丈夫?」
「……?」
ほむらに声をかけられても無反応な杏子。
普段の彼女からは考えられない。
「杏子?」
「なんだ、ほむらか……」
「随分弱っているわね」
「弱っているんじゃない、なんか思考がぼやけているっていうかさ……
なーんも感情が持てないっていうか」
「ほむぅ……まあいいわ、とりあえずメモリの専門家に会ってきたわ
貴方にも聞いておいてほしい話が有るんだけど良いかしら」
「ああ、構わないよ」
ほむらは杏子の寝ているベッドに当然のように入り込む。
89 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 22:08:04.20 ID:AXQ3rUFX0
「で、何故ベッドに侵入する」
「いや、見下ろすのもあれかなあと思って」
「何故私の背中から私に腕を回す」
「いや、近くで話した方が聞き取りやすいと思って
私ってボソボソ喋っちゃう癖があるじゃない?」
「抱きしめる必要は無い筈だ」
「普段と違って殴り飛ばさないのね」
「いや、え、ちょ……」
「彼ならもしかしたらユートピアドーパントの攻撃について何か知っているかもしれないわ
大丈夫よ杏子、私が貴方も守ってあげる
今週のほむらちゃんはハーレムの形成を夢に見てるの」
「いやだから」
「最初はちょっとびっくりするかもしれないけれど力を抜いて、すぐに気持ちよくなるわ」
「待って、待ってちょっと……」
「ユートピアは希望と一緒に感情を奪い取る能力が有るのかもしれないわ
貴方が完全に心を折られなかったのは元々貴方が精神感応系の能力を持っていたからかも……」
「それとこれが……」
「豊かな感情の代表と言えば恋よ!キスから始まる恋もある!」
「待って、ねえ頼むから待って」
「大丈夫、私も実は初めてだから!」
「え、ちょ、ま……むぐうううううううううう!?」
ホムホムアンアン
ベッドが軋む。
その音を聞きつけて気になったゆまは部屋へ向かう。
ガチャリと音を立てて扉が開く。
扉を開けたゆまが目にしたのは逃げようとしている杏子とそれを後ろから捕まえるほむらだった。
90 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 22:09:26.19 ID:AXQ3rUFX0
「どうしたの二人共?」
「……プロレスごっこよ!」
髪をファサリと掻き上げて無駄にクールな表情を装い答えるほむら。
心の底から安堵の溜息を吐く杏子。
「ふたりだけで遊んでるのー?ずるーい!」
「ゆまはまだ子供だからプロレスごっこはねえ……
もう少し大人になったら混ぜてあげるわ
あ、でも今くらいペドペドしいのも悪くはないわね。どの道ハーレムに迎えるなら早いほうが……
おばあちゃんが言っていたわ
女を愛する女が居ても良い、それが自由というものだってね」
「馬鹿やめろ、本当にやめろ」
「とりあえず少しは回復したようね、良かったわ」
「二度と立ち直れないと思う」
「でしょうね
さてそこまでユートピアドーパントの攻撃の後遺症が大きいなんて……となると、特訓ね」
むしろ重たいのは同性に襲われたトラウマであろう。
「“とっくん”ってなにー?」
「いっぱい訓練することよ、この前杏子がやられた敵は魔法少女にとって脅威だわ
皆で協力して対抗策を練っておかないとあいつ一人のせいで私たちは全滅しかねない」
「わかった!ゆまも“とっくん”するよ!」
「よく言ったゆま、じゃあ一緒に頑張ろうなー」
「となるとやはり左さんに連絡が必要ね……」
「その左ってのが専門家なのか?」
「ええ」
「私も会ってみたいんだが良いよな?」
「問題ないわ」
「解った、じゃあそいつにアポ取っておいてくれ」
「ええ、それじゃあ早速、その間に夕ごはんつくっておいて」
「はいよー」
ほむらは携帯を取り出して電話帳にある左翔太郎の番号に電話をかけた。
91 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 22:10:19.84 ID:AXQ3rUFX0
――――
さて、大道が左翔太郎に依頼をした翌日、その日は土曜日でマミは割と早く家に帰ってきた。
そして大道は帰ってくる彼女のためにシチューを作っていた。
「ただいま克巳さん」
「帰ったか、シチューを作っておいたぞ
あとその“さん”っていうのはやめろ」
「わかったわ、じゃあ別の呼び方考えておきます
ところで私シチューよりケーキの方が良いんですけど」
「バランスの良い食事をしっかりとらないと戦えないだろうが
昔はよくお袋に作ってもらったっけか」
大道は母親の顔を思い出す。
自らが手に掛けたのだ、忘れるわけがない。
感情を忘れかけている彼がその事実に悲しみを感じることはない。
ただ、ほんの少しだけ悔いている。
それもまた事実。
「どんな人だったんですか?研究者としての業績は教えられましたけど」
「世話好きでな、情にもろくて、でも几帳面で、努力家で……」
二人共黙りこくる。
そう、二人共親とはトラックによる交通事故で死別している。
大道は自らの死によって、マミは両親の死によって。
「ああ、そうだ」
マミは重くなった空気を変えようと努めて明るい声を出してみせる。
92 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 22:12:41.55 ID:AXQ3rUFX0
「友達から水族館のチケットをもらったんですよ」
「それで?」
「近くに私の大好きなラーメン屋さんの新しいお店ができたんですがその……」
マミは恥ずかしそうにもじもじする。
「女性一人では行き辛いと」
「……はい」
「仕方ないな、この前の戦闘で頑張ってくれたお礼だ、ついていってやる」
「ありがとうございます!」
「ところで美樹や鹿目は呼ばなくて良いのか?」
「二人は……えっと、その……」
「まあ良い、今晩は美樹にナイフの戦い方を教える予定だがお前も来るか?」
「はい、それには行きます!彼女の技もまだ未完成ですから!」
「なんだっけ、スクアーロターレ?」
「スクワルタトーレです!」
「スペルビ・スクアーロ?」
「何処の雨属性の剣士ですか
個人的にはやっぱりボスとの絡みが……」
「はいはいスクワルタトーレ」
「魔法少女にとって必殺技とその名前はとても重要なのに美樹さんったら適当なんだからもう……
昔もう一人弟子みたいな娘が居たんですけど彼女もねえ……
せっかく紅赤朱とか格好いい名前パクってきてあげたのに」
訳がわからない。
とは思ったのだが大道は突っ込むのをやめることにした。
なんとなく彼女を怒らせそうだと思ったのだ。
「そういえば大道さんはなんで美樹さんにあんなに丁寧に戦い方を教えているんですか?
貴方もきゅうべえと何か契約みたいなことをしているのは知ってますけど……」
「俺の母親の名前がな」
「え?」
「美樹っていうんだよ」
「ああ……」
93 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 22:13:25.46 ID:AXQ3rUFX0
「最初はきゅうべえに雇われただけだったがな、情が移っちまった
それになーんかガキの頃のおふくろの写真に似てるから」
「成程……」
そうか、埋め合わせをしているのか、と巴マミは一人得心する。
彼は自分の母親を怒りに任せて手にかけている。
それを少なからず後悔しているのだろう。
彼女はそう推測した。
事実は少々違うのだが彼女はそれで納得した。
「……大道さん、良い人ですね」
「……シチューが冷めるぞ」
「はいはい」
マミは台所に走ってシチューを二人分よそう。
そして大道を席に座らせると両手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます」
本日の巴家は平和だった。
【第四話「現れたJ/名探偵左翔太郎」 了】
94 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/11(金) 22:13:56.21 ID:AXQ3rUFX0
【次回予告】
「ラーメン屋か……醤油しかないのか?親父、大盛……」
「ダメよ大道さん!ちゃんと食券買って!」
「え?」
「大豚ダブルにしますね、大道さん結構食べられるし……大丈夫よね?」
「は?まあ俺の身体はカロリーの消費が……(ていうかダブルってなんだ、奴らか、奴らのことなのか)」
「それではトッピング、リピートアフタミー」
「お、おう(トッピングってどういうことだ?)」
「ニンニクチョモランマアブラマシマシカラメ」
「ニンニクチョモラム……(噛んじまった)」
「……」
「……」
「彼と私のは全マシで」
「なんだったんだ今の呪文……」
「はいおまちっ!」
「なんじゃこりゃ……」
「いただきます!」
「…………リア充爆発しろオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「 ス パ イ ダ ー ! 」
【次回第五話「本当の豚W全マシと向き合えますか?」 乞うご期待!】
95 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/11(金) 22:29:03.71 ID:Db5/60tDO
乙
次はあの次郎回かwwww
96 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/11(金) 22:36:45.74 ID:+YyGhPjSO
やっぱりあのネタww
乙です
97 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/12(土) 13:18:43.64 ID:73UEf5oDO
>>95
それを言うなら二郎だ
次郎だとなんかメテオが来そうだぞ
98 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/05/12(土) 20:41:17.36 ID:+c9XVwiA0
※現実のラーメン屋とは一切関係ございません><
二郎はラーメン屋じゃないとか言わない
99 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:11:32.19 ID:oktdI4Nh0
【第五話「本当の豚W全マシと向き合えますか?」】
「見て克巳さん!イルカショーもうすぐ始まるんですって!」
「ん?ああ、じゃあ見に行ってみるか」
大道克己と巴マミは美樹さやかの涙の染みこんだ入場券で水族館を堪能していた。
彼としては魚になど興味は全くないのだがはしゃぎまわるマミを見ているだけでわりと充分らしい。
そもそも大道克己は他人に興味のない人間に見られがちだがそれは間違いだ。
大道克己は生者に興味がないだけで、自分と同じ死人は仲間と認め、その行動やかすかに残る感情をある程度は大事にする。
NEVERの頃もこうやって京水と何度かデートに行ったことはあった。
もっともそれをデートと認識していたのは京水だけで、大道としては副隊長との様々な調整ついでに外に出かけていただけに過ぎないのだが。
「こっちこっち!急がないと座れないですよ克巳さん!」
「おう……だからそのさん付けをやめろと……」
「じゃあ克巳ちゃん」
「それでいい」
「解ってますよ冗談ですって……え?」
「そう呼ばれていたこともある」
「じゃ、じゃあそれで」
思わぬ展開に慌てるマミ。
じゃあそれで、などと言っても本当に良いのかなんて分からない。
そもそも異性とどこかに出かけるなど彼女にとっては初めてでわからない事だらけなのだ。
「急がないとイルカショーに遅れるぞ?」
「は、はい!」
「そうだ、飲み物を買っていこうか」
「ああ……そうですね!」
近くの売店でアイスコーヒーを買ってから二人はイルカショーに向かう。
マミが財布を出そうとすると大道に止められた。
100 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:12:03.35 ID:oktdI4Nh0
「こういう時は男が払うもんだ」
普段先輩として振舞っている彼女はこういう扱いに弱い。
ちなみに京水も大道とデートに行った時に「こういう時は上司である俺が払う」と言われて更に惚れたのだが本当にどうでもいい話である。
イルカショーの席はまだいくつか残っていて二人は隣同士に座ると開演の時間を待った。
「克巳ちゃんって趣味はあるんですか?」
「そうだな、カラオケは得意だな。カラオケというか歌か」
巴マミも友人とカラオケに行くときはある。
今度一緒に行くのに誘ってみようか、などと考えて彼女はさらに質問をする。
「へえ……どんな曲歌うんですか?」
「SOPHIAってバンドがあってな、そこの曲ばかり歌ってたらしくて……
死んじまった筈なのに身体が覚えているんだ」
「意外ですね、なんていうかこう……ロックよりもっとゆったりした曲が好きかと」
「ピアノも弾く、クラシックの曲は昔結構練習したんだ」
「へえ……美樹さんクラシック音楽好きなんですよ?」
「そうなのか、自慢するほどのものでもないがそのうち話してみるか」
「美樹さん、あの短期間の間によくあそこまで強くなりましたよね」
「才能は無いわけじゃない、能力と性格も合っている
自暴自棄にさえならなければ前衛としては優秀だろう
一応あの剣の本当の使い方も教えたし……落ち着いて戦えば一般的な魔女なら一人で簡単に倒せはするだろうさ」
「克巳ちゃんとどことなく戦闘スタイルが似てるから教えやすかったんじゃないですか?」
「ああ……お、イルカ」
「わぁ!本当だ!可愛いわ!」
年頃の少女らしくはしゃぐマミ。
こんなところを他の魔法少女や学校の友人に見られたら恐らく彼女は頭を壁に打ち付け始めるだろう。
しかしそれは大道の前でだけは素の彼女に戻れるということでもあった。
そう考えると少々うるさいが大道としても悪い気はしなかった。
一人ではしゃぐマミに適当に相槌を打っていると何時の間にかイルカショーは終わっていた。
101 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:13:07.84 ID:oktdI4Nh0
「あー……すごかった、イルカのイルちゃんルカちゃん
まさか空中三回転半アドミラルターンからのサイドキックステップチューンを合わせられるイルカがこの街に居るとは思わなかったわ」
ほぼ早口言葉だ。
何を言いたいのか大道には分からない。
「克巳ちゃん分からないの?」
「分からん……」
流石の大道さんも苦笑いである。
ちなみに、正直言えば彼としてはちゃんも恥ずかしいらしい。
「それじゃあ見たい物を全部見られたんだし時間も丁度いいし……
ご飯にしましょう、ラーメン食べたかったの」
「そうだな、それじゃあそうするか」
この時点で気を緩ませていた二人は気づいていなかった。
水族館を出る二人の背後を付ける人影が居たことを。
少し歩くと二人はすぐに其の店にたどり着いた。
大道は驚いた。
並んでいる。
人、人、人、筋肉か贅肉かはそれぞれだがとにもかくにも分厚い肉につ包まれた人々。
あたりに漂う濃厚なニンニクスメル。
絡みつくような、まるで油の浮いているような、ネッッットリとした空気。
看板に輝いているのは“JERO”の文字。
「何なんだこの店は……本当にラーメン屋なのか?
そのなんというかあまりにも……」
禍々しすぎる。
地獄の住人を自認する大道克巳ですらその異様な風体に恐怖を抱いていた。
「大丈夫ですよこれくらいすぐに座れますから」
「どういうことだ?」
「基本的に皆早めに食べてもらえますから」
そこで大道は初めて周囲からの視線に気がつく。
周りの全員がマミの方を見ていた。
どうにも彼女はここでは有名人らしい。
102 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:13:33.82 ID:oktdI4Nh0
「常連なのか?」
「いえ、この店は初めてですよ、一人じゃ行きづらかったので……」
「お、おい……あれは“見滝原の魔女”じゃ……」
「“メンヌ・ダルク”が男を連れている……?」
「遠征してきたってことは久しぶりに“マシマシ公”の戦いを見られるのか……」
全員何やらつぶやいているが大道には意味のわからない単語ばかりである。
「な、なあマミ」
「克巳ちゃん、声を出しちゃ駄目」
頭の中に直接響く巴マミの声。
とりあえず大道は従っておくことにした。
「JEROで食べるときはまず並んでいる間に精神統一が必要なの」
「精神統一?」
心のなかで声を出してマミに問いかけてみる。
どうやら魔法少女の念話魔法で彼の声も聞こえているらしい。
103 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:14:00.22 ID:oktdI4Nh0
「ここがJEROか!楽しみだぜ!
お前ら二人だけで何処かに食いに行ってたから気になってたんだぜ?」
「おい如月、あまり大声を出すな」
「すまねえ賢吾!いやあ楽しみだぜ!」
「いや意外だったよ、賢吾もジェロリアンだったなんてね」
「そういう朔田もな」
「俺は稽古の帰りに二郎と一緒に良く行っていてな……」
「成程、早く完全に回復するといいな」
「男同士のラーメン大盛りは青春のチャーシューだ!」
「「静かにしろ」」
「ほらさっさと食券を買え」
「えーっとじゃあ最初は小で……」
「お兄さん大三つ!」
「おい流星!?」
「弦太朗、僕には君を軟弱な小から守る義務がある
全増し豚ダブル以外に選択権は無い!」
「そうだぞ弦太郎!」
「お前の盛りは」
「俺達が決める」
「賢吾も流星も変だぞ……」
声を出しちゃ駄目。
そう言われた直後に彼らの前の方に居た三人組が騒いでいた。
104 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:14:27.60 ID:oktdI4Nh0
「あれはどうなんだ?」
「イケメン執行猶予かしら」
「成程、ならば仕方ないな
ところでマミ、一体何なんだこの店は」
「この店はJERO、大食いラーメンの店よ
念のために言っておくけど現実に存在する一切のラーメン店と関係ないわ」
「ただの大食いラーメンにしては雰囲気がおかしくないか(現実に存在する一切のラーメン店……?)」
「JEROにはね、独特のルールが有るの」
「ルール?」
「追々説明するわ、まず黙って私に付いてきて」
「お、おう」
前にいた行列は何時の間にか消えていた。
マミは大道の手を引いて券売機の前に立つ。
マミは念話魔法を切って大道に普通に会話で質問をした。
「克巳ちゃん、普通のラーメンなら二杯いける?三杯半以上いける?」
「一杯って選択肢は……」
「ないわ、五秒で決めて」
「じゃ……」
「お兄さん大2つ!」
どこぞの紫ドラゴン顔負けの“答えは聞いてない”である。
マミは店の人にそう叫んでから食券を二枚買った。
105 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:14:57.33 ID:oktdI4Nh0
「食券を買うのにわざわざ麺の量を言う意味があるのか?」
「ええ、前もってお店の人が麺をゆでておけるようにする為にね
これは店によるけど、ある初心者(
>>1
)のホームのインスパイア(笑)店舗では違うみたい」
「インスパイア?」
「違うわ、インスパイア(笑)よ
そうそう大道さんそこで水を準備しておいて、食べている途中に席を立つのは駄目だから」
「お、おう」
大道は二人分のコップに水を入れてマミの後ろを大人しくついていく。
マミが座った場所の隣に大道も座る。
学生と思しき三人組もその近くに座っていた。
「全増しで!」
「全増しで!」
「ふつ……むごぉ!?」
「全増しで!」
リーゼントの学生の口を同じ制服を着た青年が塞ぐ。
その間にもう一人が彼の分までトッピングを注文してしまった。
「今日はラッキーね、席が二人分空いてたから並んで座われたわ
店員さんが気を利かせてくれる時もあるけどこの店では空いた側から座るのがルールだから気をつけてね」
「…………(恐らく他の奴らとは行かないと思う)」
「何時か鹿目さんたちとも行きたいわあ」
「…………(犠牲は俺一人だけで良い……)」
大道が水に手を伸ばすとマミがその手を掴む。
106 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:15:35.68 ID:oktdI4Nh0
「お水は飲んじゃ駄目よ、ラーメンが入らなくなるから」
「あ、ああ……」
「それしかお水は無いんだから大切に使わないと」
「ところでインスパイア(笑)ってのはなんなんだ?」
「ええ、それはね……」
「聞き捨てならないわねマミさん、JEROisJERO、これが理想じゃなくて?」
振り向いたマミの目がいつになく真剣である。
そして突如店内がざわめく。
白を基調としたお洒落な服に身を包んだ少女が、スーツの男性を伴って店内に入ってきていた。
「見滝原の女神だ!女神まで供回りを連れているとは……」
「魔女に続いて女神まで現れるとは……女子JEROが盛んと言われているこの土地も戦国時代に突入か……?」
「魔女だけでなく聖女も来たか……まずいぞ朔田」
「そうだな賢吾、こっちは初心者を連れている以上神々の戦いの邪魔をする可能性が……」
「なあ賢吾、水飲ませてくれよ……」
「駄目だ」
「流星……」
「良いか、水を飲んだら苦しむのは弦太朗なんだ
分かってくれ」
「わけわからねえ……」
織莉子はマミに向けてにこりと微笑む。
「こんにちわ、マミさん」
「あら、織莉子さん。インスパイアの多くは三流以下よ、あれをJEROと呼ぶのは認められないわ」
「いいえ、どこぞの初心者(
>>1
)みたいに道民や東北の人達ははインスパイアしか行けないの
そんな人達の心を折らないためにもインスパイアを蔑む態度はやめるべきよ
どこぞの初心者なんて某掲示板で道民を名乗っただけで馬鹿にされて泣きそうになったらしいわ」
外野達がざわめく。
107 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:16:27.47 ID:oktdI4Nh0
「何たる慈悲……さすが女神」
流星は呟く。
「いいや、俺は魔女さんの言うとおりだと思う
これ以上JEROを汚されちゃたまらない
インスパイアなんてJEROじゃない」
賢吾はあくまで否定的なスタンスを崩さない。
「ここで初めて意見が違ったな、朔田」
「残念だよ賢吾」
まったく関係ないところで喧嘩が始まりそうなのを無視して二人は挨拶を交わした。
「知り合いか?」
「ええ、私のブログと相互リンク貼ってて……ラーメン仲間というか
織莉子さんそちらのお兄さんは?」
「親戚のキリヒコ叔父さん、この街の観光ついでに連れてきていたの」
嘘がナチュラルである。
「こんにちわ、いつも織莉子がお世話になっています」
「そう……この人はハトコの克巳さん」
こちらも嘘がナチュラル。
「これはどうも……」
大道はとりあえず軽く会釈をする。
キリヒコは大道の隣、織莉子はマミの隣に座る。
「マミさん……折角私達二人が出会ったんだから、ねえ?」
「そうね、でもこちらの克巳さんは素人なの」
「じゃあキリヒコさんと同じよ、勝負はあくまで私たちだけでやりましょう」
「そうね、でもバトルするなら先にお腹空かせておけば良かったわ……」
「あら、マミさんったら負けた時の言い訳なんてしちゃあ駄目ですよ」
「そちらのお客様ニンニク入れますか?」
「克巳ちゃん」
「キリヒコさん」
「「Repeat after me」」
綺麗にハモった。しかも発音が無駄に良い。
大道はキリヒコという男を顔を見合わせて首を傾げる。
108 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:17:09.60 ID:oktdI4Nh0
「マミさん、この店ではマシマシなんて言っちゃ駄目よ。だから気をつけてね」
「解ってるわよ、それに私たちの顔見て只のマシを出す人も居ないわ
「違いないわね、それじゃあ……」
「「全マシ」」
綺麗にハモった(二度目)。
大道も続く。
「ぜ……全マシ」
「全マシ」
「トッピングについて説明するわね」
再び念話に切り替える巴マミ。
「この店ではニンニク入れますか?と聞かれたらニンニク、野菜、アブラ、カラメみたいな感じでトッピングについて答えるの」
「成程、アブラとカラメってのはなんだ」
「アブラは背脂、カラメっていうのは味を濃くしてもらうようなものだと思って」
「了解した」
あっさり念話に慣れている辺り大道も大したものである。
「だから野菜多めで味濃いめなら野菜増しカラメ
ニンニクをつけてもらいたいならニンニクヤサイマシカラメ
大量に持ってもらいたくてニンニクチョモランマとかいって図に乗っている人も多いけど……
ありゃあ下品だわ、言うまでもなく大量に盛ってもらえるのが本物でしょう?」
「そうなのか……」
正直知ったこっちゃ無いのだがとりあえず相槌を打つ。
109 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:17:37.73 ID:oktdI4Nh0
「あと、ハッキリ言って私長い注文が嫌いなの」
「というと?」
「トッピングはね、全マシか全マシマシしかないと思うわ
それこそがJEROに来ている意味、上の二つ以外は所詮初級者の為の練習用
昨今の長い注文を言ってみたくて食べに来ているだけの素人どもは滅べとさえ思うもの」
「……訳がわからないよ」
大道が小さくつぶやいた所で“ソレ”は運ばれてきた。
“ソレ”は高かった。
うず高く積まれたもやしとキャベツでおそらくは三十センチもあるだろう品だ。
“ソレ”は厚かった。
丁寧に敷き詰められたチャーシュー、通称“ブタ”がサイドからの箸を阻むようにそびえている。
“ソレ”は臭かった。
地獄が如きニンニクの悪臭が大道の脳髄を直に揺らす。
“ソレ”は大きかった。
最初の時点で大道克己には杯の中の麺を見ることがかなわなかったのだから。
その異常すぎる有様に、大道克己はそれを“ラーメン”と呼ぶことを拒否した。
「克巳ちゃん、まずはチャーシューから食べて」
隣の巴マミはすでにブタを一つ腹に収めていた。
大道は彼女の言葉に従って腹の中にブタを叩きこむ。
幸運なことに彼のブタは“当たり”で中々に柔らかく、また味も最初からそこそこ染みている。
「食べる直前にスープの中に一度押し込んでから食べるといいわ。」
マミの言うとおりにして次々ブタを食べる大道。
「チャーシューだけ先に食って良いのか?」
念話で問いかける。
110 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:18:18.70 ID:oktdI4Nh0
「今食べないと普通の人には後で食べられないの
私にはその順番をわざと崩した“天乃逆月(フリーフォール)”って技もあるけど使わないわ
チャーシューを食べたら野菜の山を崩すなりひっくり返すなりして麺から食べて」
「解った」
巴マミはすでにブタをすべて平らげた。
織莉子はまだ少し手間取っている。
「さて……織莉子さんはここからが怖いのよ。今のうちにリードを稼がせてもらうわ」
巴マミはブタの消えた杯の上で野菜の山を突き崩す。
無駄のない動作、それは古いお伽話に伝えられる釜をかき混ぜる魔女を思わせる箸さばきだった。
「――――――是即、荒噛む戦塵(バイツァダスト)」
野菜の山は刹那の内に崩れて巴マミの箸が麺に至るまでの道を開ける。
しかしながらスープの一滴たりとも外に飛ばしていない。
これこそが彼女が“魔女”と言われる所以の一つであった。
不可能を可能にする、まさしくおとぎ話の魔女である。
「ふぅ……」
マミの様子を見て織莉子が小さくため息を吐く。
「来るわよ」
「え?」
「織莉子さんの秘技が」
織莉子は野菜から先に食べ始めた。
「あんなことをしたら麺が伸びるんじゃ……?」
「化物じみた胃袋を持つ彼女にそんなこと関係ないわ、急ぐわよ」
マミは勢い良く麺をすする。
大道もやや遅れてそれにつづく。
旨い。
やはりあの醜悪な見た目に反して旨い。
大道はハッキリとその事実を認めた。
※それと同時にこれをラーメンと二度と呼ぶまいとも思った
111 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:20:05.73 ID:oktdI4Nh0
「ああ、遂に始まってしまったわ」
何やらマミがつぶやいている。
彼は何気なく隣のマミの表情を見る。
麺は半分といったところか、これは彼女の勝だろうと大道は思った。
しかしそれは過ちだったことに彼は気がつく。
「――――――織莉子式天乃杯(フェイタルアトラクション)」
織莉子は自らのどんぶりにしっかりと手をかける。
そしてものも言わずにそれを口に当てて中身を飲み始めた。
「嘘だろ……麺ごと飲んでやがる、糖尿病にでもなる気か!?」
※織莉子のやっている行為は創作世界だから可能な行為です
※絶対に真似しないで下さい
※絶対に真似しないで下さい
※現実の某ラーメン屋では絶対に絶対に真似しないで下さい
「ねえ克巳ちゃん」
「な、なんだ」
「私も本気だすから……見ないでね」
マミは杯の中身を箸を器用に用いて麺と野菜をひっくり返し、なんどか回転させてものすごい勢いで冷ましていく。
周りで見ていた人々は驚嘆の声を上げる。
「あ、あれはマミさんの“終の健啖(ティロ・フィナーレ)”!」
「両方ともありゃあ完全に本気だぜ!」
無論、大道の理解を完全に超えている。
マミはまるでショパンの一節のように悪魔的な高速啜り音を展開させて麺を腹に流しこんでから野菜を食う。
スープの熱で小さくなった野菜はすでに彼女の敵ではない。
彼女もまた織莉子に遅れてスープを飲み始める。
二人がどんぶりを置いたのは同時だった。
「こいつは……引き分けか!?」
「いいえ違うわ」
織莉子が呟く。
112 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:20:45.78 ID:oktdI4Nh0
「どうやら私の負けね」
織莉子のどんぶりの底には麺の切れ端が一本だけついていた。
「いい勝負だったわ」
「そうね、話の続きは店を出てからにしましょうか」
「まったくだわ、食べ終わったら自分の食べたテーブルを拭いてさっと店を出る
これがマナーですものね」
「そのとおり」
なぜそんなに説明口調なのかが大道には理解できなかった。
もうこの部分だけ切り取ってvipでやれとか思わなくもなかった。
とにかく頑張った結果、キリヒコと大道も三分後にスープを残して完食に成功する。
ごちそうさまでした、の言葉と共に店主に会釈してから二人は店を出る。
店の外では二人が彼らを待っていた。
「二人共お疲れ様でした」
「これは私達からののプレゼントです」
大道とキリヒコは青い顔をしていた。
どちらも胃がもたれて吐きそうなのだ。
そんな彼らに織莉子とマミは店の外に置いてある自動販売機で黒烏龍茶を買っていた。
「やっぱりこの店では良いブタが出るなあ……」
「地獄だ、楽しめねえ……」
正に瀕死である。
113 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:21:20.63 ID:oktdI4Nh0
「いいからお飲みなさい」
「そうですよ大道さん、後で何が有っても知らないんですから」
二人は無慈悲にも大道とキリヒコの口の中に黒烏龍茶をつっこんで注ぎこむ。
最初は抵抗して暴れていた二人だったが次第に大人しくなって烏龍茶を受け入れる。
遠くを眺めるとまったく同じえげつない行為が如月弦太朗に対していとも容易く行われていた。
「もう腹いっぱいだ……食えねえ」
「落ち着け如月、三回食えば楽になれる」
「弦太朗が食べ残した分は食べておいたから安心してくれ」
「助かったよ朔田」
賢吾と流星は固く握手を交わしていた。
そして弦太朗を抱え上げて二人はえっさほいさと駅の方に歩いて行く。
その様子を見て大道はやっとこさ人間が悪魔だということを思い出していた。
「克己ちゃん」
その声で我に返る。
「口の中が……」
「すっきりしてる?」
「そうよ、最後に烏龍茶、できれば黒烏龍茶を飲んで口の中をすっきりさせるところも含めてJEROなの」
微笑むマミ。
頷く織莉子。
正に天使である。
ダブル天使全マシである。
そう、神は居たのだ。
「魔女と女神が男を連れていたってどういうことだ!
うそだ!ウゾダドンドコドーン!」
「ギルティー!ギルティー!」
その時、彼らの背後で奇声が上がる。
四人がその方向を振り返ると、並んでいる人々をかき分けて店に入ろうとしている高校生位の青年が居た。
114 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:21:58.72 ID:oktdI4Nh0
「まあ、割り込み?」
「マミさんきっと貴方のファンよ、ファンの教育ぐらいしっかりしなさいよね」
「いえ織莉子さん、貴方のこと呼んでたわ、前から思っていたんだけど貴方のファンこそマナーが悪いと思うわ
女神なんて言われているけど寛容すぎるのも問題だわ」
「ギルティー!ギルティー!」
捕まる青年。
彼らは青年を荒縄で縛りつけようと抑えつける。
「マミ……あのギルティーってのはなんだ?」
「ギルティー……ルール違反と考えていいわ
即時土下座あるいは……他の客たちによってスープを胃袋の中に強制的に流し込まれる罰を受ける……」
※現実ではこんなことありません
「可哀想に、暴走するあまり彼もまたマシマシの理に導かれて行ってしまったわ」
「ギルティー!ギルティー!」
青年は荒縄でぐるぐる巻きにされながらも必死に抵抗を続ける。
そして、ついに彼はマミ達の存在に気付く。
「オンドゥルルラギッタンディスカー!」
青年は泣いていた。
「彼氏が居たなんて!嘘だ!そんなの嘘だあああああああああ!」
「いや違いますし」
「そんなのじゃないですよ」
無論、発狂したアイドルのファンが人の話なんて聞くわけがない。
彼らはむしろノリノリでCD割ったり写真引き裂いたりしているのだ。
お前らマジ頭おかしいだろって言われて喜んでるのだ。
115 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:22:36.65 ID:oktdI4Nh0
「くそおおおお!どうせ年齢=彼女居ない歴ですよ!
女性と話したことなんて無い!ずっとあの二人を眺めているだけだった!
でも!それでも俺は!認めたくないんだあああああああああああ!」
悲しき雄叫び。
「リア充爆発しろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおもごおおおおおおお!」
猿轡を噛まされる青年。
まさしく絶体絶命。
その時だった。
天から舞い降りるガイアメモリ。
刻まれているのはSの文字。
人々の隙間を縫うようにしてそのメモリは青年の首に突き刺さる。
「 ス パ イ ダ ー ! 」
青年の姿はあっという間に醜悪な蜘蛛の怪人――スパイダードーパント――に変身する。
彼は自分を縛り付けていた周りの人々を怪力ではじき飛ばして吼えた。
「みなぎってくるう!燃えてきた!妬ましい!愛しあう人々が妬ましい!」
スパイダードーパントは辺りの人々を網で捕まえると四人に向かってまっすぐに突っ込んでくる。
「さあ覚悟しろ!愛しあう恋人達なぞ皆爆発してしまえ!」
この程度のドーパント、無論彼らの敵ではない。
だがお互いがお互いに正体を明かすことを恐れて全員の変身のタイミングが一瞬だけ遅れてしまった。
しかしその一瞬、その一瞬のうちに……
116 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:23:02.73 ID:oktdI4Nh0
「おっと、そこまでだぜ?」
「マキシマムドライブ!」
「ライダーパンチ!」
左翔太郎の変身する仮面ライダージョーカーが参上、漆黒の拳がスパイダードーパントを捉えた。
悲鳴と共にスパイダードーパントは爆発。
転がってきたスパイダーメモリを翔太郎は持っていたケースにしまう。
その後すぐに警察が駆けつけて青年を拘束し、クモの網に捕まった人々を助けた。
人々を網から助ける手伝いを終えた翔太郎は変身を解除する。
「やはりT2ガイアメモリがこの街に出回っているみたいだな……」
「左、お前こんな所で何を?」
「調査だよ、T2ガイアメモリを調査して回っていたのさ」
そう言って翔太郎が手に持っていたケースを開くとその中には大量の青い端子のガイアメモリが入っていた。
オーシャン、エナジー、イエスタディ、様々なT2メモリがそのケースの中に入っていた。
「どうにも誰かこれを作っている奴が居るみたいだ。前回無かったメモリがいくつかT2の形式で生産されている
そういうお前らはどうしたんだ?」
「ラーメン食ってた」
「notラーメン、yesJERO」
翔太郎はすぐそばのJEROの看板を見てため息を吐く。
「JERO……噂のあれか、とにかく二人共無事そうでよかったぜ
二重の意味で」
「二人?」
「……あら、織莉子さんとキリヒコさんが居なくなっているわ」
「霧彦?」
「ええ、キリヒコ、って呼んでいたわ。お知り合い?」
「知り合いに同じ名前の奴が居たんだが……少し気になるな」
「とりあえずこんな所で立ち話をしていてもなんだ、どこかで少し情報を交換しよう
頼まれていた呉キリカの情報も入ったしな」
「ほう」
「それはありがたいわ、じゃあ一旦私の家に戻りましょう」
三人は一度マミの家に向かうことを決めた。
【第五話「本当の豚W全マシと向き合えますか?」 了】
117 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/13(日) 23:28:21.29 ID:oktdI4Nh0
【次回予告】
「二人が使っているチケットは元はといえばさやかちゃんが上條くんとデートに行くために用意してたものだと知ったら居た堪れなくてそんな遊びできないよ……」
「……おーとーこーなんてしゃーぼんだまー♪」
「二人共、イチャついているのは良いけど遅いわよ」
「鳴海探偵事務所に所属する私立探偵、左翔太郎だ
ガイアメモリ犯罪の専門家にして……仮面、ライダー」
「こいつはフィリップ、俺の相棒だ」
「よろしく」
【次回 第五と二分の一話「本当の敵と向き合えますか?」 乞うご期待】
118 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/14(月) 00:44:39.38 ID:06j1J/uSO
最近のライダーがキターッ!
乙です
119 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/05/14(月) 08:28:19.36 ID:8yJiPEf70
時間軸的には
大道が研究所脱出→MEGAMAX→本編
みたいな感じになっている筈
だからフォーゼ組は見滝原まで応援にはコレないかなあと
120 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/14(月) 10:14:04.73 ID:IsCVuFeho
こまけえこたあ(ry
乙でした!あと、貴様のせいで二郎に行きたくなったぞどうしてくれる!!これでは中毒者ではないか
121 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長崎県)
[sage]:2012/05/14(月) 21:53:05.65 ID:r3gPryPYo
おもしれえ
しかし翔太郎が普通にハードボイルドだ
122 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2012/05/15(火) 10:50:46.54 ID:XKQpu9/30
弦ちゃんカワイソスwwwwww
123 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/15(火) 22:03:58.40 ID:Q725Lx4A0
【第五と二分の一話「本当の敵と向き合えますか?」】
ゆるやかな階段を登る二人組。
「……ねえ大道さん、素敵でしょう?この水族館」
「ああそうだな巴(棒)」
「やだ、マミって呼んでください……」
「…………はぁ」
「…………こんなのぜったいおかしいよ」
「テレビの前の皆さん!マミさんだと思った?残念!さやかちゃんでした!
ていうかまどかあんたノリ悪いわよ、せっかく“水族館でいちゃつく師匠とマミさんごっこやろうって言ったのに
それでも子供の頃から国民的人気特撮番組に出てたベテラン!?」
美樹さやかと鹿目まどかである。
「さやかちゃん、メタな話すると時空が乱れるよ?」
「どーせこの街にはオルフェノクなんて出ませんよ」
「たっくんオルフェノク!」
「うちの弟はファイズのベルトなんて使えないよ……」
「ですよねえ」
「二人が使っているチケットは元はといえばさやかちゃんが上條くんとデートに行くために用意してたものだと知ったら居た堪れなくてそんな遊びできないよ……」
「……おーとーこーなんてしゃーぼんだまー♪」
半笑いでさやかは歌ってみせる。
ちなみに音痴。
※ちなみにJASRACからは一切の許可をとってません
124 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/15(火) 22:07:10.53 ID:Q725Lx4A0
「…………さやかちゃん」
「……うん、いいんだ今は、魔法少女としてがんばろうと思ってるし
どうしようもなくなったらまどかにお嫁さんになってもらおうかな」
「うぇひひ……」
それにあれだ、あいつの演奏もまた聞けたしさ、と自分に言い聞かせるように呟く。
「ほら、杏子が前言っていたじゃん、釣銭取り返せってさ」
「うん」
「あれ、よく考えると間違いじゃあ無いよね」
「どういうこと?もしかしてさやかちゃんも自分のために……」
「違うよ、私にとっての釣銭ってのはさ、守った人達の笑顔」
「さやかちゃん……マミさんみたいだね」
「憧れの人ですから!」
「そうだね!私はまだ決心がついてないけど……せめて側で見守っているからね」
「ありがとうまどか、やっぱりあんた最高の友達だよ」
「ウェヒヒ、そんな事言われたら恥ずかしくなっちゃうよ……
でも私もさやかちゃんが一番の親友だからね」
「まどかったら……惚れちゃうぞー」
「ウェヒヒヒヒ」
階段を登り切るとほむら、杏子、ゆま、そして左翔太郎が犬の石像の前で歓談をしていた。
特にゆまは翔太郎に懐いてしまったらしく彼に肩車をしてもらって遊んでいる。
仲良さそうにやってきたまどかとさやかを見て、ほむらの嫉妬の炎が燃える。
「二人共、イチャついているのは良いけど遅いわよ」
ほむらとしてはまどかが奪い取られた気分になった。
学校では三人で行動しているだけになおのこと疎外感は強い。
だからどことなく言い方にも棘が混じっていた。
125 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/15(火) 22:08:58.20 ID:Q725Lx4A0
「ごめんごめん!」
「ほむらちゃんごめんね!」
「いや、別に、別に気にしてないわよ!
そもそも集合時間まではまだ有るくらいなんだから!」
まどかの済まなさ気な顔を見て慌てるほむら。
こういうところはまだまだ少女らしい。
「ところで……そこのお兄さんだれ?」
さやかは翔太郎の方を指さす。
それに気づいた翔太郎は肩にゆまを乗せたままさやかとまどかの側に近づいてキザに一礼してみせる。
翔太郎の肩に乗っていたゆまがちょうど彼の首に乗りさやか達と目が合う。
キャッキャと喜んでいる。
「鳴海探偵事務所に所属する私立探偵、左翔太郎だ
ガイアメモリ犯罪の専門家にして……仮面、ライダー」
「じょーかーだよ!」
指でJの文字を作って再びキザに微笑む翔太郎。
肩に乗っているゆまが翔太郎のポーズを真似していた。
仮面ライダー、聞き覚えのある言葉にさやかとまどかは反応する。
「あの、仮面ライダーって!」
「もしかして大道さんみたいな!?」
翔太郎は一瞬だけ複雑そうな顔をする。
「え、あ…………まあそういうことにしておいてくれ」
「二人共、左さんは……」
「良いんだほむらちゃん、今あいつが真っ当に人々を守っているなら俺はそれで」
「…………そう」
「ところでよー特訓って何するんだい?
何かやるってんなら休日の朝の駅前なんかに集まっても不便にしか思えないが……」
「ふふふ、ところがどっこいそうでもないのさ」
「大道さん!?」
「師匠!?」
「え?」
さやかとまどかは素っ頓狂な声をあげる。
それもそのはず、彼らの目の前には彼らが知る所の大道克己とまったく同じ顔の青年が立っていたのだから。
126 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/15(火) 22:10:06.51 ID:Q725Lx4A0
「こいつはフィリップ、俺の相棒だ」
「よろしく」
「特訓の為に呼んでもらったの
彼はガイアメモリのことについてならば能力やそれを生かした戦法、それに弱点まで何でも知っているわ
今日は彼からガイアメモリの知識やドーパントとの戦い方について徹底的に教えてもらうわよ」
それを聞いた瞬間、顔色を変えた魔法少女が二名
「おい、おいおいおいおい」
「なあに杏子?」
「特訓っていうから私はてっきり肉体系なあれだとばかり……」
「あら、敵の弱点を学んで効率的に戦えるようになるのも一種の特訓よ」
「わ、私も……」
「ダメよ美樹さん、一日二日で強力な魔法が使えるようになるとでも思ったの?
ジャンプの漫画でも今時そんなチープでチートなパワーアップ方法なんて無いわ」
「oh…………」
「とりあえずどこか適当な喫茶店にでも入りましょう」
「俺は犯罪者扱いされたくないからこの街の調査でもさせてもらうぜ」
「えーショータロー行っちゃうの?」
「悪いねゆまちゃん、また今度遊ぼうな」
「うん!」
それじゃあ、と翔太郎はその場から去っていく。
後にはフィリップと魔法少女達が残された。
「さて、それじゃあ行きましょうか
フィリップさんだけじゃなくて皆にも話したいことがあるし
巴先輩は?」
「あの人なら用事で出かけているよ、話したいことって?」
「この街に接近が予想される魔女よ」
「魔女、おもしろそうだね
しかし魔法少女というのも興味深い……
魔法少女の皆、こちらからも質問させてもらうから覚悟してくれよ?」
集団でスター●ックスに向かう六人。
彼らの中でフィリップが一番嬉しそうな様子だったことは言うまでもない。
スター●ックスの中でまず最初にほむらが触れたのはワルプルギスの夜のことについてだった。
127 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/15(火) 22:10:37.75 ID:Q725Lx4A0
「ワルプルギスの夜?」
「ええ、それが最強の魔女、そして二週間後にこの街に来ることが決まっている存在」
「なにそれマミさんから聞いてないぞ?」
「当然よ、私以外で襲撃を前もって知ることのできる人間なんて居るわけないもの
今日あなたとマミさんを呼んだ理由もこのことを話したかったからよ」
「キョーコとゆまは“すけっと”としてとなり町から呼ばれているんだよ!」
「ふうん……まあ、あんたには助けられたこともあるし一応は信じるけど……」
場所は某ファミリーレストラン。
「ところで暁美ほむら、勝算はあるのかい?」
「ええ、魔法少女、あるいはそれに相当する戦力が十人以上居れば勝機はあるわ」
「今のところは六人か」
「私、杏子、ゆま、さやか、マミ、大道さん、それにあなた達が加われば……」
「八人、ね」
「二人足りないじゃん」
「うぅ……」
「わ、私が契約すれば!」
まどかが手を上げて発言する。
だがほむらは首を横に振る。
128 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/15(火) 22:11:08.98 ID:Q725Lx4A0
「貴方は……強力すぎる、もし貴方が契約してしまえば……」
「しまえば?」
ほむらは口ごもる。
「言えないのかい?」
「それは……危険としか言えないわ
大きな力には大きなリスクが伴うのはあなた達だってわかるでしょう?」
「そうだな、ワルプルギスの夜についてはあたしも信じても良い
だが何故まどかの契約をそこまで回避しようとするのかはハッキリ詳しく教えてもらいたいね」
言えない。
“魔法少女はいつか魔女になる、まどかが魔女になってしまえば誰にも止められない”
そんなこと、暁美ほむらには言えなかった。
それが発覚した瞬間、美樹さやかや巴マミが暴走する姿を彼女はループの中で何度も見ていた。
気まずい空気があたりに漂う。
そんな時、鹿目まどかの携帯電話が愉快なメロディーで着信を知らせる。
「あ、お母さんからだ」
「もうまどかったら……」
「ウェヒヒ、ごめんねみんな」
一瞬だけ空気が和む。
「もしもしお母さん?」
「鹿目まどか、君のご両親と弟さんは預かりました」
「え?」
電話の向こうから聞こえてきたのはくぐもった声。
「返してほしかったら、これから一時間以内に君の家の側の公民館に来てくれ。
君以外に誰かが来たと我々が判断した場合、人質はこちらで処分させてもらう」
「い、イタズラならやめてください!」
「そう思うならば仕方がないですね、私残念です」
「うえぇぇえええええええん!」
聞こえてきたのは彼女の弟の鳴き声。
「――――――たっくん!?」
通話が途切れる。
携帯を取り落とすまどか、その様子をきゅうべえが遠くから見つめていた。
129 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/15(火) 22:11:42.96 ID:Q725Lx4A0
【次回予告】
「呉キリカのパートナーである美国織莉子の父親は財団によって嵌められていたんだ」
「……なに?」
「騙しやすいのは助かりますね」
「僕達は最高のビジネスパートナーだ」
「キリカ、キリヒコと一緒に準備を急いで」
「あとは魔法少女を排除するだけだ」
「財団X、やはり君たちは愚かな人間だよ」
「“彼”を実体化させるわよ」
「油断するから悪いのよ」
「すまねえなあ!」
「行くわよ」
「おう!」
「ヒート!」
「メタル!」
「恭介さん助け……」
「仁美いいいいいいいいいい!」
【次回第六話「Xの悪意/交差するマリス」 乞うご期待!】
130 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)
[sage]:2012/05/15(火) 22:33:22.05 ID:6wKI6uD+o
乙
手でJの文字表すとか仮面ライダーJ思い出したわ
131 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/15(火) 23:21:03.92 ID:UPmxgWPpo
ジョーカー?
……封印しなくては
132 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/15(火) 23:37:31.60 ID:+KgXr4ZDO
乙
>>131
(#<::V::>)ヒトヲオチョクッテルトムッコロスゾ
133 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2012/05/16(水) 07:42:28.72 ID:iivviPJDO
あまねちゃんの次はゆまちゃんか…
134 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/16(水) 08:08:01.61 ID:igOC2DDio
あらら
まぁわかめちゃんなら良いや
135 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/17(木) 07:50:11.60 ID:IjcC1iyL0
【第六話「Xの悪意/交差するマリス」】
「まずは、呉キリカについての情報からだ」
翔太郎は大量の書類を大道達の前で広げる。
「美国織莉子のために魔法少女狩りを行なっている黒の魔法少女
変身前の見た目はボーイッシュな黒髪の少女で、魔法少女時は白と黒を基調とした服に眼帯をつけている
年齢は15歳、通っている中学校は……市立見滝原中学校」
「え!?」
「同じ中学校らしいな」
「そんな……」
「信じられないかもしれないが……」
「いえ、そうではなくて、今美国織莉子と言いましたか?」
「あ、ああ……」
「美国織莉子とは……私面識があります」
「なんだと?彼女は今、何者かの仲立ちで財団Xと同盟関係を結んでいる」
「そんな……」
「しかももっと悪いことに彼女の父親は財団Xに嵌められて汚職の罪を着せられている
どうやら彼女はそれを知らないようなんだ……」
「……ならそのことを教えれば!」
その時突然巴マミの携帯電話が鳴った。
「あら、さやかちゃんからだわ。少し失礼しますね」
「おう」
「はいもしもしどうしたの美樹さん、え?」
「鹿目さんのご家族が攫われた!?」
そのことを聞いた瞬間、大道と翔太郎は立ち上がる。
「どこ?どこなの?解ったわ、今から行く……いや、違うわね、こっちに来て
街中は危険過ぎるわ、こっちも魔法少女狩りの正体が分かったの
左さんならこっちに居るわ、ええ」
通話を終わらせてマミは二人の目を見てハッキリと言った。
136 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/17(木) 07:50:47.79 ID:IjcC1iyL0
「かなりまずい事態になりました」
「俺たちも聞いていた」
「鹿目まどかの家族が攫われたんだろう?」
「しかし何故鹿目まどかが狙われたのかだな……」
大道は考える。
鹿目まどかの家族を誘拐する相手。
恐らく狙いは魔法少女。
まどかの為に集結する魔法少女達を一網打尽にするつもりなのだ。
まだ彼以外誰も気づいていないが、現時点において彼女はこの街に集まる魔法少女の繋がりの中心に居る。
多くの魔法少女とコネクションを持つ巴マミに寵愛され、
左翔太郎を手駒として使う暁美ほむらにも付きまとわれている。
魔法少女を狩る者が居るならばこの機会を逃しはしないだろう。
犯人は魔法少女狩りの可能性がある。
「理由はいろいろと考えられるな」
左翔太郎は考える。
鹿目まどかの家族をさらう相手。
彼も誘拐事件解決の経験は多いが、営利目的というのは意外と少ない。
さらに状況から考えれば犯人は鹿目まどかに何がしかの害意を持つ相手と考えていいだろう。
だがなんだ?
暁美ほむらがまどかを守ろうとしている理由は不明だ。
それと同じ理由なのか?
鹿目まどかを狙う相手……、鹿目まどかを殺そうとしている相手が居る?
思い出すのは財団Xだ。
暁美ほむらによれば鹿目まどかの魔法少女としての素質は抜きん出ているという。
それがあの財団Xにとっての脅威であるならば……鹿目まどかを確実に殺すために財団Xが非道な手段をとってくることはありうる。
「でも……この事件変ですよ……?
こんなことして鹿目さんが契約してしまえば逆に殲滅されるだけなのに……」
巴マミは考える。
最悪の可能性を。
その契約こそが狙いなのではないかと。
思えば最初からおかしかった。
私が一度死んで財団Xの手で蘇った時、彼らにソウルジェムの知識を与えたのは誰だったのか。
キュゥべえとは自分も長い付き合いだから分かるが彼らは人間とは別の価値観を持っている。
信用はできても信頼はできない。
キュゥべえは鹿目さんにやたらこだわっているし最悪彼が“ノルマ”を達成する一番楽な方法として、まどかを契約させるために財団Xと組んでこの事件を……
三人は黙りこくってしまった。
137 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/17(木) 07:51:23.13 ID:IjcC1iyL0
財団Xのオフィス。
加頭順は鹿目まどかを呼び出している公民館の様子をモニターで眺めていた。
きゅうべえはそんな加頭の膝の上に座って尻尾をペチペチと振っている。
「鹿目まどかに対する工作は終わったみたいだね」
「ええ、簡単でしたよ。素人三人を捕まえるだけでしたから」
「それは良かった」
「これで我々の契約は完遂されましたね」
「配備したスナイパーによる暁美ほむらの暗殺も含めて契約だよ
これで鹿目まどかは契約せざるを得ないし止めるものも居ない
ただ時間を止められる相手の持つ小さなソウルジェムを撃ち抜ける程の狙撃手なんて居るのかい?」
「ええ、人間というのは音によって視界の外からの攻撃に対応しますが
狙撃による銃声というのは実弾の到着に比べて遥かに遅い
如何に時を止められようともはるか遠距離から狙撃されれば少なくとも最初の一撃は回避できないでしょう」
「成程……人との戦いは人に任せて正解だったらしいね
僕らは物理的にこの世界に干渉できない以上、君たちというビジネスパートナーがやはり必須だったんだ」
「ふふ、我々は……本当に良いビジネスパートナーですよ。インキュベーター」
「ああ、ほんとうに助かったよ。財団X、いいや加頭順」
「こちらこそですよ、ソウルジェムの技術によってネクロオーバー技術は更に進化した
貴方の提供してくれた巴マミに施した実験の成果はすべて大道克己以外のネバーのメンバーへの復活に用いさせて頂きました」
「それは結構、織莉子の製造したガイアメモリの調子も良いんだろう?」
「ええ、完璧です。それこそまるで誰かに調整方法などを指導されているみたいにね
美国議員同様、使える駒ですよ」
「僕は君たちが少し恐ろしいよ」
そう言ってきゅうべえは加頭順の膝上から飛び降りる。
138 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/17(木) 07:54:14.78 ID:IjcC1iyL0
「ハハ、ご冗談を。どちらへ?」
「契約を取り付けるのが僕の仕事だからね」
「……なるほど」
きゅうべえはハイジャンプしてドアを開けるとそのままポキュポキュという音を立ててどこかに行ってしまった。
それからしばらくすると、加頭順の持つ携帯電話が鳴る。
「加頭さん」
「おや、織莉子さん」
「契約通りに鹿目まどかの暗殺をお願いしますよ」
「ええ、インキュベーターが契約を行う前に鹿目まどかを殺害すればいいのでしょう?」
「はい」
「ならば腕の良いスナイパーを配備しております
待ち合わせに鹿目まどかが現れた瞬間、暗殺することなど容易いことですよ」
「しかし待ち合わせ場所に来る前に契約をされては……?」
「其の心配は無いでしょう、インキュベーターによれば暁美ほむらが居る限りまどかの契約はありえないとのことですから」
「……確かにそうね」
「とはいえ、彼女が暴走して契約する可能性も高い」
「何か手は打っているの?」
「無論ですよ、インキュベーターの技術と海東研究員の理論を応用して元ネバーのメンバーを蘇生させました」
139 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/17(木) 07:54:46.91 ID:IjcC1iyL0
「ああ、大道克己の時と同じように?」
「彼には逃げられてしまいましたがね
記憶や一部の感情を取り戻していた原因はまだ分かっていません」
「確か、大道克己が蘇生された際にエターナルメモリを使用したのですよね?」
「ええ」
「その中に大道克己の記憶が混じっていたのではないですか?」
「馬鹿な、一個人の記憶や意思がメモリに交じるなどありえないですよ
海東大樹の理論には後々様々な穴が見つかりましてね、大道の復活は何がしかの別の偶然も関わっていたとしか思えないのですよ」
「そうですか……」
「ええ、ところで織莉子さん」
「なんですか?」
「私は来週の日曜がオフなのですが……良ければランチなど?」
「そうね、キリカの負傷もお陰様で治りましたからそれも悪く無いですわ」
「それは嬉しい、私も個人的に貴方に興味が有るのでね」
「ただし……私の指定したラーメン屋さんで良いでしょうか?」
「え、ええ……」
何故ラーメン屋なのか。
悩む加頭順。
「それでは電話を切らせてもらいます」
「はい」
「エターナルメモリの発送は鹿目まどか殺害の確認を得てからにさせていただきますね?」
「分かっていますよ、鹿目まどかの殺害は我々にもメリットがある」
通話を切る美国織莉子。
奇しくも彼女と加頭順は通話を切った後同時に呟くことになる。
「本当に騙しやすい相手で助かるわ」
「親子共々愚かなのは……利用する分には幸運でしたね」
織莉子の右手に握られているのはゾーンのメモリ。
財団からは織莉子に存在を知らされていない筈のメモリである。
財団が彼女に製作を依頼したのはゾーンではなくゼロ。
彼女の行為は明らかな裏切りだった。
「キリカ、キリヒコと一緒に“彼”を実体化させる準備を」
「解ってるよ、あのキリヒコってのは気に入らないけど織莉子の命令だ」
加頭順の手元のIPadに映るのは魔法少女殲滅作戦の指令書。
「残念ですね……好みのタイプなのですが」
その中には織莉子とキリカの名前もしっかりと記してあった。
140 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/17(木) 07:56:10.55 ID:IjcC1iyL0
――――
「恭介さんが映画に興味を持っていたなんて意外ですわ」
「うん、仮面ライダーアギトのスタッフが沢山出演していたドラマの映画版でね」
「ああ、そういうことでしたか。どんな雰囲気の映画なのかしら……」
「面白いよ、色々と」
さて、まどかへの電話の数十分前。
日曜日ということで上條恭介と志筑仁美は映画館に向かっていた。
美樹さやかの犠牲の上で成り立つ平穏な日常。
仕方が無いのだ。
誰かが得れば誰かが失う。
エントロピーを凌駕する奇跡が無い限り、この世界のルールは変わらない。
二人は映画の席について開演を待った。
ブザーの音。
幕が開く。
警備員の怒声。
悲鳴。
肉の焦げる香り。
臓腑の引き裂かれる音色。
映画館の一室のドアを蹴り飛ばして、男女が入ってきた。
「ハーッハッハー!ここだな!?」
血の着いた長い棒を振り回す男。
気だるそうな表情をした女性。
二人共真っ白な服を身につけていた。
「そうみたいね、さっさと済ませましょう」
「待ちなさい!」
その時、二人の男女の前に一人の少女が立ちふさがる。
彼女はも魔法少女、偶然にもこの街を訪れて映画を見に来ていた所だったのだ。
「なんだぁ、このガキ?」
「さあ?」
「事情は知りませんが犯罪行為は許せません!」
少女は茜色の光に包まれる。
光の中から出てきたのは橙色のエプロンドレスを身にまとった少女。
武器は持っていない。
彼女は懐から只のメリケンサックを取り出して指に嵌めた。
141 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/17(木) 07:58:23.67 ID:IjcC1iyL0
「ふーん、やるっていうんだ」
「……レイカ、こいつはお前に任せるぜ」
「あら?戦いたかったんじゃないの?」
「いや、ガキ相手って……なあ」
メリケンサックに茜色の光が流れ込み、一瞬の内にそれの形状が極悪なものに変化する。
「ガキではありません……!」
高速移動。
一瞬の内に少女は二人の視界から消える。
「おや?」
「魔法少女です!」
メリケンサックが男の頭蓋骨を捉える。
「うぐぉ!?」
悲鳴を上げて吹っ飛ぶ男。
「もう一発!」
男が吹き飛ぶより速くその方向に先回りして、少女は男に拳を叩きこむ。
一撃、また一撃、攻撃を当てるごとに少女の動きは加速していく。
これこそが彼女の魔法、“加速”
時間が経てば経つほど彼女の動きは速くなり、速さの事情に比例して攻撃力も上がる。
アッパー、飛び上がってストレート、魔力で空中に足場を形成して蹴りで追撃。
「これでオシマイよ!」
少女は懐から手錠を投げつけて男を拘束する。
「破滅る天球(アイゼン・メテオール)! 」
加速が最高潮に達したその魔法少女は真上から男の腹に渾身の右ストレートを叩きこむ。
地面にめり込む男。
少女がメリケンサックを外して指を鳴らすと同時に彼は大爆発を起こした。
142 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/17(木) 07:58:55.11 ID:IjcC1iyL0
「油断しているからこうなるのよ……」
やれやれといった風情でレイカと呼ばれた女はつぶやく。
少女はボクシングの構えをとってレイカと対峙する。
「ここの人達をこれ以上傷つけはさせません」
「剛三、メモリを使うわよ」
「え?」
「しかたねえなあ、まじめにやるか」
爆発の後から起き上がる剛三と呼ばれた男。
「最初からそうすればいいのよ」
カチッ、スイッチが鳴った。
「ヒート!」
「メタル!」
レイカと剛三はそれぞれ赤と灰色の怪人へと姿を変えた。
ヒートドーパントとメタルドーパント。
風都を恐怖に陥れた怪人である。
「な……なにこれ!?」
「私は上條恭介の確保と目撃者の抹殺をするから、あとお願い」
「任せな!」
「そんなことはさせません!」
少女はメリケンを嵌め直してレイカに殴りかかる。
が、その途中にメタルドーパントが立ちふさがる。
火花を上げてぶつかるメリケンとロッド。
「もう一発!」
「遅い!」
ロッドが少女に迫る。
彼女はエプロンドレスの中から特殊警棒を取り出して間一髪で捌いた。
加速能力はじわじわと体格と耐久力の差を埋めていく。
少女はスタンガンに魔力を注ぎ込んでメタルドーパントに向けて電撃を放つ。
ロッドをアースにしてなんとかそれを凌いだメタルドーパントだったがその隙に再び少女が至近距離まで迫る。
メリケンによる連撃。
右フック、左フック、肘打ちからの右ストレート、勢いよく飛んで靴に仕込んだナイフを顔面に突き刺す。
メタルドーパントが若干とはいえ押されている。
143 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/17(木) 07:59:44.34 ID:IjcC1iyL0
「くそっ……ちょこまかしやがって!」
メタルドーパントが遅いわけではない。
鍛え抜かれた棒術の達人であるところの彼の技の冴えが鈍いなどありえない。
はっきり言えば最初の油断が良くなかったのだ。
戦闘が長引けば長引く程に強くなる彼女の特性上、最初からクライマックスで決めておくべきだったのだ。
「……まったくもう」
見かねてヒートドーパントが映画館の人々に向けて炎弾を放つ。
やまぬ悲鳴、焦げ付く異臭。
「やめて!」
それに気を取られた少女の鳩尾に全力で放たれたロッドが直撃した。
「お゛えッ!」
あまりの衝撃に崩れ落ちる少女。
「こいつをいただけばよかったんだよな?」
メタルドーパントはロッドを器用に使って少女のソウルジェムを奪い取る。
糸が切れた人形のように少女は動かなくなった。
「ハッハッハ!こっちは終わったぜ!」
「そう」
羽原レイカは上條恭介の前に立っていた。
「付いてきてもらうわ」
恭介は仁美を庇うようにしての前に立つ。
ヒートドーパントの足が恭介の脇を抜ける。
ものすごい勢いで壁にたたきつけられる仁美。
腕はあらぬ方向に折れ、脚はどこかでぶつけた勢いでちぎれている。
「恭介さん……たすけ」
メタルドーパントのロッドが投擲されて彼女の心臓を貫いた。
「仁美いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
恭介は後頭部に手刀を当てられて気絶する。
「さて、これで終わりね」
「おう!完璧だぜ!次は巴マミだかの家だな!」
【第六話「Xの悪意/交差するマリス」 了】
144 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/17(木) 08:00:42.11 ID:IjcC1iyL0
【次回予告】
「お父さん、お母さん、たっくん……!」
「まずい状況ね」
「……私にアイディアが有る」
「囲まれている!?」
「これじゃああいつらと合流できないぞ……」
「それはどうでしょう?」
「え?」
「まどかだと思った?残念!さやかちゃんでした!」
「ゲーム……スタート」
「ガハッ!この狙撃は……!?」
「このままだと皆死んじゃう!」
「それなら、ボクと契約して魔法少女になってよ」
「私は……」
「さぁ!」
「まどかああああああああああああああああああああああああああああ!」
カチッ!
「イエスタディ!」
「ほむらちゃん!?」
「変身!」
【次回第七話「Tの恐怖/極大射程」 乞うご期待!】
145 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2012/05/17(木) 11:06:26.03 ID:B7IcuH7B0
乙!
財団X本気出してきたな
146 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:34:22.95 ID:D70iE7aX0
【第七話「Tの恐怖/極大射程」】
「うわー!すごい!」
街の中を疾走する巨大な車両。
その中に乗っているのはフィリップ、そしてほむら以下四人の魔法少女と鹿目まどか。
向かう先は巴マミの家。
「だろう?これが僕達の所持する秘密兵器、リボルギャリーさ!」
「でもこれ公道走っていいんですか?」
「大丈夫さ」
「え!?道交法に楽勝で抵触してるんじゃ……」
「警察に知り合いがいるのさ!」
「え」
「え」
そう、バリバリ違法である。
それにしてもこのフィリップ、いい笑顔である。
「とにかく任せてくれよ皆、僕達は探偵、誘拐事件の解決には慣れている」
「え、あ、はぁ……」
いい笑顔である。
「それよりもこれから集まる巴マミの自宅は本当に安全なのかい?」
「え?」
「どういうことかしら」
「鹿目さんのご両親が攫われた以上、美樹さやかの両親や巴マミの家も危険だろう」
「あっ……!でもうちの両親は今旅行に出てるから多分……」
「まあそれを仮に大丈夫としてもだよ、家に集まった所を襲撃されては敵わない」
「その心配なら無いよ」
今まで黙っていた杏子が口を開く。
「どういうことだい佐倉杏子?」
「私は独り立ちするまで巴マミと組んでいた時期がある
だから知っているんだがあいつは驚くほど臆病なんだ
私があいつの家で三食ケーキと引き換えに働かされてた時点では確か……
魔力炉五基、自律機動魔法陣二十基、汎用結界十三層、巡航ミサイルに耐えるパニック・ルーム
あとは緊急脱出用の転移魔法陣もあった」
「ふむ……検索が終了した、軍隊でも攻め落とすのが難しいだろうね」
「知らない単語ばっかりだ……」
147 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:35:10.90 ID:D70iE7aX0
「当たり前だよ、ぼんくら
あいつとあんたじゃキャリアも素質も違う
真似しようとしたら危険だから教えなかったんだろうさ」
「な……!」
「考えても見ろ、巴マミの戦闘スタイルを」
「マミさんの……?」
「魔力によるマスケット銃の生成、発射した銃弾の魔力による操作
とてもじゃないけど考えられない魔力の消費だわ、しかもワリと無駄な
浪費といってもいいレベルよね」
「そういうことだよほむら、しかもそのスタイルで戦闘が成り立ってしまっている
その上銃関係は後付の魔術だからな、大したものさ」
「すごかったんだマミさん……」
「とにもかくにも、あの要塞に引きこもっている限り巴マミに負けはない」
佐倉杏子は断言した。
148 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:35:43.63 ID:D70iE7aX0
――――
その頃、巴マミの家では大道と翔太郎とマミがフィリップ達の到着を待っていた。
「さて、あとどれくらいであいつらは来るんだ?」
「リボルギャリーでならあと十分ってところだろう」
「約束の刻限まではあと五十分。相談する時間はありますね」
「だといいがなあ……、俺が財団Xだったらここを急襲するぞ」
「大丈夫ですよ、この家の周りには対魔法少女を想定した汎用結界二十七層
私の魔術行使を支援する魔力炉十基
それに使い魔を自動で迎撃する魔法陣をおおよそ百基
さらにはドーパントにも対応できるように警備会社にも赤外線セキュリティーを頼んだ上で強力な人払いの魔術を張り巡らせています
最悪の事態に備えてパニック・ルームも完備していますしね
とにかく、ほとんどの敵は気付くことさえできませんよ」
と、まあ巴マミがそこまで言った直後の出来事だった。
最初に目を焼くような光。
次に鼓膜を裂く轟音。
そして最後にやっと爆風が家を揺らす。
「なんだ!?」
光が消えたのを確認してから翔太郎が窓からあたりを見回す。
「成程、まあ定石か」
大道もその後ろから辺りの光景を見て頷く。
「嘘、でしょ……!?」
規格外の防御力を誇る巴マミの魔術要塞に対して財団Xがとった策は単純かつ効果的だった。
空爆、巴マミの家が有ると予想される周囲一帯に爆弾を投下したのだ。
これで破壊されない家が巴マミの家である。
ここまで盛大にやってしまえば人払いも意味を成さない。
「キャアアアアアアアアアア!」
続いて聞こえてきたのは悲鳴。
外には圧倒的な数のドーパントの群れ、群れ、群れ。
それが自宅から焼けだされた人々を襲っているのだ。
「合流は諦めたほうがいいらしいな」
大道はやれやれといった顔をして呟く。
翔太郎はフィリップ達に電話をかけて合流が不可能になったことを伝える。
その二人の間を魔法少女に変身した巴マミが風のように駆けていった。
149 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:36:12.13 ID:D70iE7aX0
「おいちょっとまて!」
「こうしてられません!今も誰かが泣いているんです!」
「行っちまったぞ……」
「仕方ない、俺たちも追うとしよう」
二人は同時に表に出る。
そこに巴マミの姿は居ない、おそらく人々の避難誘導に向かったのだろう。
彼女の治癒魔術ならば大怪我している人でも救いだすことはできる。
大道はそう考えた。
「大道克己!左翔太郎!」
「我々財団Xが!ここで貴様らを仕留めてくれるわ!」
「ここが貴様らの墓場だ!」
二人を包囲するドーパント達。
T―REX、アイスエイジ、マンモス、ビーン、ケツァルコアトルス、マグマ、そして数えきれないマスカレイドドーパント
一体一体は大した脅威でなかったかもしれないが数が数だけに脅威である。
「敵は多いな、大道」
だが左翔太郎は恐れない。
150 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:36:42.69 ID:D70iE7aX0
「ふん、大したことはない」
大道は不敵に微笑む。
「それもそうか、今日は俺とお前で……」
二人はまったく同時にガイアメモリのボタンを押した。
「ジョーカー!」 「エターナル!」
高らかに響く正義の声。
「「変身!」」
白と黒。
二人の仮面のヒーローが降り立つ。
「 テ ィ ロ ・ フ ィ ナ ー レ ! 」
声のする方向を振り向く大道。
左もそれに続く。
極太のレーザー光線が二人を避けてあっという間にドーパント達を焼き払ってしまった。
空気読め。
「…………」
「…………」
「それじゃあ私!取り残された人達を救助してきますね!」
「…………ああ」
「…………頼んだ」
二人は深くため息をついた。
「イイイイイイイイイイイヤアアアアアアアアア!」
その時突然、翔太郎の脳天に鋼鉄のロッドが振り下ろされる。
それと同時にエンジンの爆音を伴って巨大なバイクが大道に向けて突撃してくる。
151 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:38:30.30 ID:D70iE7aX0
「ぐぉ!?」
間一髪でそれを受け流す翔太郎。
「お前は……マッチョマン!?」
「あぁん?誰だてめえは」
大道は走ってきたバイクを受け止める。
するとそのバイクに乗っていた女性がバイクから飛び降りて大道の頭上から何発もの蹴りを彼に浴びせかける。
「……レイカ!?」
「貴方が大道克己ね、財団Xの命令よ、貴方には死んでもらうわ」
「ヒート!」 「メタル!」
レイカと剛三が同時にメモリを投げ上げる。
「隙だらけよ!」
パチィン!パチィン!
人命救助に当たっていたマミがさり気なくメモリに向けて発砲。
メモリは宙を舞っている所を弾き飛ばされる。
「そのメモリさえ何とかしてしまえばこっちのものよ!」
マミがニヤリとした時だった。
銃声。
彼女の額に風穴が開く。
「マミ!?」
続いて大道に向けたもう一発の狙撃。
エターナルの装甲の関節部分を貫通して大道の腕を負傷させる。
「――――――!」
彼らは二人共ネクロオーバーだ。
額や腕を銃弾で撃ち抜かれたくらいでは致命傷になど成り得ない。
だがしかし、傷を塞いだ後の二人の様子が明らかにおかしかった。
「おい二人共!」
「ぐっ……こいつは?」
「細胞分解酵素……みたいね」
「なんだと……!?」
翔太郎はあたりを見回す。
狙撃手は陰も形も見えない。
152 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:39:44.23 ID:D70iE7aX0
「……賢!来てたのか!」
コートを脱いで上半身裸になった剛三が叫ぶと同時にどこからか目にも留まらぬ速さでメモリが剛三に向けて飛んでくる。
「メタル!」
「私も頼むわ」
そう言ってレイカがコートをはだけると彼女の胸にもメモリが打ち込まれる。
「ヒート!」
爆風を伴ってレイカと剛三の姿がドーパントのそれに変身する。
「さーて、形勢逆転らしいな!」
「さっさと決めさせてもらうわよ」
「グッジョブ、賢!」
物陰から男が一瞬だけ現れてサムズアップをする。
男は大道とマミが弱っていることを確認するとそそくさと其の場を離れた。
左翔太郎は大道とマミを守るようにしての前に出る。
「そうはいかないぜ?」
「安心しろ左、俺はまだ戦える」
大道が左翔太郎の隣に立つ。
「私も……魔力である程度ならカバーできます
町の人を一人でも多く逃さないと……」
マミがマスケット銃を杖代わりにして立ち上がる。
「虚勢も何時までもつかしら?」
レイカが指を鳴らすと再び大量のドーパントが現れる。
完全に囲まれた三人。
「ハッハァ!精精楽しませてくれよぉ?」
「さぁ、死神のパーティータイムだ!」
三人は敵の群れの中に飛び込んでいった。
153 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:40:11.95 ID:D70iE7aX0
――――
翔太郎たちの連絡を受けたフィリップはリボルギャリーを公民館近くの公園に停車していた。
フィリップはホワイトボードに今までの状況をメモして魔法少女に説明をしていた。
「……という訳だ、翔太郎たちは財団Xの襲撃を受けているらしい
突破にはどうにも時間がかかるから合流せずにそのまま現地に向かってくれと」
「え!?」
「マミさんは!?」
「おいおいどういうことだ……」
「信じられない数のドーパントが向こうへ向かっているらしいんだ」
「……困ったことになったわね」
「ああ、財団Xは本格的に僕達を叩き潰しにかかっているみたいだね」
「ねえキョーコ!マミおねえちゃんを助けに行かなくていいの?」
「うーん……」
「彼らならばおそらく大丈夫よ、ゆま」
「師匠ならどんな敵が来ても大丈夫だとは思うけれども……」
「聞く限りでは手助けは見込めなさそうね」
「ああ、そういうことになる」
車内に絶望的な空気が広がる。
「どうしよう……」
まどかは呟く。
「…………私に策がある、あんまり使いたくはなかったけどね」
杏子は嫌そうにつぶやいた。
154 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:40:39.44 ID:D70iE7aX0
――――
それから十分後。
「これは驚きました、ほんとうに一人で来るとは」
加頭順は安いパイプ椅子に腰掛けて壇上から一人の少女を見下ろしていた。
赤いリボン、ピンク色の髪。
「お父さん、お母さん、たっくんは無事なの?」
「ええ」
加頭が指を鳴らすと同時に薬で眠らされた三人が壇上に転がされる。
「これこのとおり」
「……約束通りに一人出来ました、家族を返して下さい」
「どうぞ、ご自由に、我々は約束は守る主義ですから」
彼女が足を一歩踏み出した瞬間だった。
窓ガラスが割れる。
その音が響くより先に少女の頭蓋がはじけ飛ぶ。
断末魔の叫びすらあげることなく、少女は地面に伏した。
「……ここまで簡単に事が運ぶと、逆に不自然に感じますね」
加頭順は首を傾げる。
「さて、後は本部に報告を……」
加頭がそこまで言いかけた時だった。
そこで倒れていたはずの少女の頭部が再生される。
「まどかだと思った?」
少女の髪の色が青く染まる。
どうやら幻術でそう見せかけていただけだったようだと加頭は気付く。
「残念!さやかちゃんでした!」
さやかはあっという間に魔法少女に変身して加頭に向けてサーベルの刃の部分だけを射出する。
「ぐわっ!?」
不意討ちによって一瞬隙が出来た加頭。
そんな彼の目の前に何時の間にか大量の手榴弾が展開される。
派手に吹き飛ばされる加頭。
彼が周りを見回したときには既に人質にしていた鹿目まどかの家族も美樹さやかも居なくなっていた。
155 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:41:06.35 ID:D70iE7aX0
「馬鹿な……」
「彼らを乗せて急いでリボルギャリーを発進させるんだ!」
「ああ!」
しかし、外から聞こえる大声に加頭はニヤリと笑う。
「キャッ!」
タイヤの破裂する音。
彼がここに連れてきていた狙撃手の仕事だ。
「リボルギャリーのタイヤが破裂した?」
「―――――皆、リボルギャリーから離れて!」
爆音。
加頭はゆっくりと起き上がってユートピアドーパントに変身。
公民館の外に出る。
「これはこれは皆さんお揃いで」
「――――加頭順!」
「おや、園崎来人くんですか」
大破したリボルギャリーを背にフィリップが自らの腰にロストドライバーを巻く。
「皆、鹿目まどか達を狙撃手から守りながらできるだけ遠くに逃げてくれ」
「でもフィリップさんは!?」
「僕は……大丈夫」
加頭がフィリップに向けて火炎放射を放つ。
それと同時に再び狙撃手からの銃弾も。
が、二方向からのフィリップへの攻撃をすかさず防御する恐竜型のロボットが突然現れる。
156 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:41:38.43 ID:D70iE7aX0
「いくよ、ファング」
そう言ってフィリップは懐からサイクロンのメモリを取り出す。
「サイクロン!」
「変身!」
吹き荒れる旋風。
悪を許さぬ正義の疾風がフィリップの体を包み、彼をガイアの戦士へと変身させる。
大地に映える緑で染め上げたかのようなボディー、風になびく日本のマフラー。
これこそがフィリップ・ライト、否、仮面ライダーサイクロン。
そしてその傍らにはファングメモリ。
「ほう、少女達を守るために貴方一人で戦うと?」
「フィリップさん!」
「ダメよまどか、ここは一旦引きましょう!」
「待った、フィリップさん一人に任せておくわけには行かないよ!」
「美樹さやか、貴方一体何を!?」
「しかたねえなあ……、ゆま!ほむらとまどかの側についていてくれ!」
「わかった!」
「佐倉杏子!貴方まで……!」
「今ので狙いはまどかって解ったんだ。お前の能力なら狙撃手は完封できるだろう?」
「……まどか、行くわよ」
「でも!いいから速く!」
ほむらとゆまは強化した身体能力でまどかの家族を運ぶ。
どんどん小さくなっていく影を見てさやかは微笑んだ。
「よし、それじゃあ行きますか!」
「ああ」
「頼んだよ杏子」
「任せな、こいつには借りもあるしね」
「それじゃあ加頭順、覚悟はいいか?」
「まどかを傷つけたことは絶対に許さないんだから!」
「「「さあ、お前の罪を数えろ!」」」
フィリップが回転しながら加頭に飛び蹴りを叩きこむ。
すかさず強烈な重力をかけてフィリップを地面に叩きつける加頭。
その背後からさやかが加頭を斬りつける。
とはいえその程度なら加頭にだって簡単に反応できる。
加頭は斬撃を華麗に躱してさやかの腕に手を伸ばす。
だがその手は彼女をすり抜ける。
157 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:42:12.67 ID:D70iE7aX0
「消えた!?」
次の瞬間、同時に杏子とさやかの攻撃が加頭を襲う。
「……そちらの赤いほうが幻を見せているのですか」
「さあ、どうだろうねえ?」
ロッソ・ファンタズマ
バリバリの武闘派である佐倉杏子は好んで使おうとはしないが、彼女の本来得意とする魔法は相手の五感に訴えかけて幻を見せる魔法だった。
「先ほどの鹿目まどかが美樹さやかと入れ替わっていたのもそういう理由ですね?」
「好奇心を発揮している場合かな?加頭順」
フィリップが疾風を纏った腕で拳打を加える。
思い切り壁にたたきつけられた加頭はノソリと起き上がるとニヤリと笑う。
「ククク……、貴方に言われるだなんて、私悔しいです」
「何がおかしい!?」
「いえ、どうやら私の戦闘能力では貴方がたに敵わないようですからね」
加頭は懐からipadを取り出す。
そこに映っているのは美樹さやかのよく知る人物だった。
「……恭介?」
「考えてみれば彼も哀れな少年だ」
そう、上條恭介だ。
手錠で全身を拘束されている。
すでに暴れる元気もなくなったのか彼はうつろな表情でベッドに寝そべっていた。
「そう、上條恭介。美樹さやかさん、貴方のお友達です」
「恭介に指一本でも触れたら許さない!」
「貴方に腕を治されなければこんな思いもしなかったのですがね、美樹さやかさん」
「財団X!人質をとって僕達を無抵抗のままなぶり殺す気か!?」
「いえ、そんなことしません」
加頭はipadのタッチパネルを押す。
「ただシンプルに」
ipadの向こう側から聞こえる耳障りな機械音。
チェーンソーだ。
「美樹さやかに絶望して頂くだけです」
悲鳴。
液晶の向こう側からと、フィリップと杏子の間から。
聞こえてくる、二つの悲鳴。
さやかの身体を真っ黒な霧が包む。
158 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:42:48.21 ID:D70iE7aX0
――――
「ゲームセット」
見晴らしのいいビルの屋上で呟く青年。
芦原賢である。
彼の眼下では二人の仮面ライダーと一人の魔法少女が地に伏していた。
同僚のメタルのメモリの使い手とヒートのメモリの使い手、それに多くの雑兵が死んだがそんなことは関係ない。
財団からの命令は“いかなる犠牲を払っても左翔太郎と大道克己を抹殺せよ”だ。
彼の心には任務達成の穏やかな満足感しか無かった。
その時、彼の目に三人の少女の影が映る。
どうやら人質はどこかに隠したらしい。
「ゲームスタート」
青年は自らの身体にトリガーのメモリを差し込む。
青年の右腕がライフルに変化して片目がスコープとなる。
将を射んと欲すればまず馬を射よ。
彼は目標である鹿目まどかを守る戦士と思しき黒髪の少女に向けて銃弾を放った。
「……!?」
一瞬の違和感。
時間が止まったような感覚さえした。
その違和感が消えると少女達の姿も見えなくなる。
賢は強化された視力で再び彼女らを探し、銃撃する。
結果は同じ。
そんなことを何回か繰り返している内に黒髪の少女がスコープ越しにハッキリとこちらを見た。
その直後、鉛玉が彼の頭部に直撃する。
「…………」
無論、そんな攻撃がドーパントに通用するわけもない。
彼は直接にあの少女を仕留めることにした。
そうと決まれば行動は速い。
芦原賢はビルからビルへと飛んで先ほどまで少女達の居た辺りまで急接近する。
適当な所で彼が飛び降りると目の前に目標の少女が居た。
「キャッ!」
「まどか!」
「ほむらちゃん!」
「ゲームセッ……」
この時点で芦原賢はやっとほむらの能力の正体を特定した。
まあ止まった時間の中で時点も何も無いとはよく言われる話ではあるが、
彼ほどのエキスパートならばこれだけの回数見ることが出来ればどんな突飛な能力でも正体を見破れる。
159 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:44:59.26 ID:D70iE7aX0
「それには及ばないわ」
自らを同時に襲う数十発の蹴りの衝撃。
そして銃弾。
派手に吹き飛ぶ賢。
「ゆま!」
血まみれになったほむらの足。
ゆまが賢の起き上がる前にほむらの足を治療する。
「……成程、時を止める能力か」
「――――!?」
「目の前であれだけ使われればわかる」
無限に武器を出す能力でないならば、打つ手はいくらでもある。
賢はこの時点で勝利を確信した。
眼の前のこの少女は今までかなり時間を止めている筈だ。
それなのに自分を仕留めそこねているのは守りに回っているからだけではない。
――――――そう
暁美ほむらに攻撃力は殆ど無い。
再び数十発の蹴りを叩きこまれる賢。
勢い良く吹き飛ばされるがドーパントの身体にダメージなど無い。
しかしそれで再び出来た隙に暁美ほむらはなおも逃走を選択する。
行き先など思いつかない。
暁美ほむらは秀才でこそあれ天才ではない。
予想を超える事態には本当に弱いのだ。
「ほむらちゃん……」
「泣き言を言っている暇はないわ!今は走って!」
「もう駄目だよ……」
「そんなことないわ!」
「私のことなんて放っておいて皆で逃げて……!」
「そんなことしたら貴方が!」
「……ほむらちゃんなら今から、皆を助けられるでしょう?
だから……お願い、私一人さえ切り捨てれば皆助けられるんだから……!」
ほむらのソウルジェムがゆっくりと濁り始める。
「それに、いざとなったらキュゥべえに助けてもらえば良いし……
今も近くで見ているような気がするんだ、キュゥべえ」
「ダメよ!それはダメ!」
「……ねえほむらお姉ちゃん、なんでダメなの?」
ボソリとゆまが呟く。
「私だってキョーコを助けるために契約したのに」
子供とは思えない濁った瞳。
不信に染まった瞳。
160 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:46:35.18 ID:D70iE7aX0
「キョーコは聞かないけど……なんでまどかお姉ちゃんを契約させたがらないの?」
恐怖でほむらは足がすくむ。
「ねえ、なんで?」
「それは……」
ほむらが口を開いた瞬間だった。
「ゲームセット」
「――■■■■■―――――■Z______■■■―――――z_______!」
冷徹な死刑宣告と、狂獣の吠え声と、どちらが先立ったろうか。
なんにせよ、芦原賢は突然の闖入者によって排除されることになる。
「これは……魔女の結界!?」
ほむらはこの魔女の姿に見覚えがあった。
幾度もループの中で見ている姿。
魔女、オクタヴィア。
美樹さやかが魔女化した姿である。
「ほう、絶望が深ければ深いほど魔女として強化されるみたいですね
私、びっくりです」
「魔女……?絶望……?」
「おや、何も知らないようですね鹿目まどか」
魔女の結界に現れる一人の白服。
加頭順だ、彼は片手にフィリップのものと思しきロストドライバーと壊れたファングメモリを手にしていた。
「待ちなさい加頭順!」
「これはこれは暁美ほむら、思い出しました。貴方の雇った探偵ですが……やはり一人だと大したことないですね」
ロストドライバーとファングメモリをほむらに投げつける加頭。
「フィリップさん……そんな!?」
「大道克己と左翔太郎も死んだと報告が来ていましたし……魔法少女の魔女化の実験もできました
あの状態の佐倉杏子も放っておけば治療が間に合わず死ぬでしょうし……
我々の為すべきことはあと一つ」
ゆっくりと近づいてくる加頭順。
ほむらは時を止めて逃げようとするがすでに魔力が足りなくなっていた。
「鹿目まどかの抹殺」
「やらせない!」
ほむらはまどかの前に立ちふさがる。
「……キョーコ!」
ゆまが魔女の結界から全速力で逃走を開始する。
加頭順はにやりと笑う。
161 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:47:15.15 ID:D70iE7aX0
「ゆま!?」
「ふふふ……随分人徳が無いようで」
「くっ……!」
オクタヴィアは結界内の別の場所で人を襲っているらしい。
幸いだ、とほむらは笑う。
「もうやめてほむらちゃん!このままじゃ皆死んじゃうよ!」
後ろからのまどかの声に耳をふさぐ。
こうやって彼女を守り続けてきた。
彼女の意思など知らずに、自らのエゴで。
戻りはしない昨日を追い求め続けて。
暁美ほむらは自らの愚かさがむしろ愉快ですら有った。
「そうですよ、暁美ほむら。我々とて鬼ではない
もし貴方がまどかを諦めるというならば……我々は貴方を実験台(ナカマ)として迎え入れても良い」
「愚問ね」
「貴方の能力をそれだけ評価しているのですが?」
「それが愚かなのよ」
「は?」
「どれだけ素晴らしい能力を持っていても大切な人を守れない能力になんて意味が無い
大切なのは……守りたいものを守るために何度でも何度でも立ち上がる心
たとえあなた達がどんなに強大な悪でも、まどかを泣かせるなら許さない
体ひとつになっても食らいついて倒す
その心が魔法少女を魔法少女たらしめているの
貴方が何故愚かなのか教えてあげる
まどかを守る魔法少女、暁美ほむらがいるからよ!」
時間を止めて加頭順にありったけの魔術で強化した拳と蹴りを叩きこむ。
ゆまはもう居ない、だから一回限りの自爆技。
時間が動き始めると同時に彼女の手足から血が吹き出して加頭順は近くの壁にたたきつけられる。
「ほむらちゃん!やめてよ!ほむらちゃん死んじゃうよ!
私そんなの嫌だよ!」
「ならば僕と契約して魔法少女になってよ」
「インキュベーター!」
そこに居たのはきゅうべえだった。
全員の視覚が一瞬だけそこに注がれる。
その隙を突いて壊れていた筈のファングメモリがほむらに向けて何かを投げ飛ばす。
ほむらはそれをすかさずキャッチする。
フィリップから送られた一枚のメモと、一本のガイアメモリ。
ほむらはそれを見た瞬間、不思議な、懐かしい感情がこみ上げてきた。
メモはもはや読むまでもなかった。
足元に転がっていたロストドライバーを拾い上げて腰に巻き付ける。
162 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:49:06.00 ID:D70iE7aX0
「――――ほむらちゃん!」
「……大丈夫」
女神のようにほむらは笑う。
するとほむらの目の前で剣は止まり、まるで時間が逆再生しているかのごとくオクタヴィアは剣を振り上げる。
そして今度はその場で苦しみだしてみるみるうちに小さくなり、美樹さやかの姿に戻ってしまった。
「さやかちゃん!?」
「う、うーん……まどか!?何があったの!大丈夫なの?」
「さやかちゃんこそ、なんで!?なんで魔女に!?」
「なんでって……魔女?私が……魔女?」
ほむらは二人の会話も気にせず加頭に飛びかかる。
加頭は重力操作、火炎放射、放電、ありとあらゆる攻撃でほむらを攻めるが彼女には傷ひとつつかない。
すべてが彼女に届く前に“巻き戻されて”いるのだ。
「馬鹿な!?」
「貴方は何処まで愚かなのかしら」
「マキシマムドライブ!」
「な!?」
ほむらを中心に時間の逆流範囲が広がっていく。
それは逃げようとした加頭すらあっさりと飲み込んで見滝原町一帯を包み込む。
逃げようとした加頭は逆にほむらに近づき、そしてまた離れていく。
太陽がおどろくべき速さで西から東へと移動してもう一度天高く上る頃、彼女のマキシマムドライブは終了した。
「……良かった」
それだけつぶやいてほむらはその場に倒れ伏した。
【第七話「Tの恐怖/極大射程」 了】
163 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 21:54:33.50 ID:D70iE7aX0
【次回予告】
「……夢か、そうだあれは夢だったんだ。嫌な夢だったなあ……」
「おい、さやか」
「師匠!?」
「どういうことだよ、ほむら」
「……今言った通り、魔法少女のソウルジェムが真っ黒になると魔女になるの」
「そんなことあたしは聞いてないぞ!」
「魔法少女の願いの先には絶望しかないって言うなら……もう死ぬしか無いじゃない!」
「私は既に死んでいるけどね」
「馬鹿やめろ!」
「この曲の意味が、俺にはもうわからない
でもこの曲を美しいとお前らが思えたのならば……」
【第八話「俺にはもう分からない」 乞うご期待!】
164 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/18(金) 22:03:20.23 ID:D70iE7aX0
後少しすると再び加筆部分に突入です
前回フォローできなかったあの二人のあの後とか
165 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2012/05/18(金) 22:06:33.87 ID:H9EY1yx3o
オツゥ!!マキシマムドライヴ!!
166 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/18(金) 22:13:25.97 ID:dUYfpdfSO
乙
話が進む…
167 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/05/18(金) 22:29:54.39 ID:D70iE7aX0
そういえば投下ペースなんですけど2日に一回と一日一回のどっちがいいですかね
3日に一回くらいのほうが読みやすいかもとも思ったり
話のほうは十六話までは書きためてあるのでご安心を
ワルプル倒すところまでは書いてあるんですけどその後がちょっと悩んでて……
168 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/18(金) 23:14:23.93 ID:5YTcsWETo
話として区切りの良いところまで投下出来るのなら
毎日でも隔日でも特に問題は無い気はします
169 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 16:32:46.45 ID:cZyqfEBK0
了解しました
では早く書き溜め分投下開始してしまいたいので今日は九時くらいから投下したいと思います
隔日だったり毎日だったり安定シないと思いますがよろしくお願いします
170 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/19(土) 20:02:25.75 ID:yv5oadHDO
乙!
投下は
>>1
のペースで構わないけど、単純にいっぱい読めるなら、それはとっても嬉しいなって
ところで誤字とは分かるが、
>日本のマフラー
で旭日旗マフラーたなびくサイクロンを想像してしまったww
171 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2012/05/19(土) 20:26:11.17 ID:/I9UjhpEo
なんていったらいいのかわからなかったけど、
>投下は
>>1
のペースで構わないけど、
>単純にいっぱい読めるなら、それはとっても嬉しいなって
それだ
172 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 20:39:10.51 ID:cZyqfEBK0
最終回まで書き溜め終わったよ\(^o^)/
これで心配せずに連日投下できるね!
とりあえず今日の分は九時からです
>>170
逆に考えるんだ
そのフィリップは強化外骨格で変身しているのだと
覚悟完了しているのだと
ごめんなさい脳内修正お願いします
173 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 20:58:24.96 ID:cZyqfEBK0
【第八話「俺にはもう分からない」】
「あれ?」
さやかが目を覚ますとそこは勝手知ったる自らの部屋だった。
「どういうこと?」
時刻は真夜中。
彼女の記憶が正しければつい先程まで彼女は財団Xの加頭順と戦っていた筈である。
なのに今どうして彼女はここに居るのだろうか?
「訳がわからないわ……」
そもそも自分は戦っていて、戦いの最中に加頭順が何かを……
「……夢か、そうだあれは夢だったんだ。嫌な夢だったなあ……」
彼女は一番簡単な結論で自らをごまかした。
携帯電話で時刻を確認する。
「あれ?今日が昨日になってる?」
驚くさやか、カレンダーはちょうど彼女が夢だと思い込んでる日の一日前の日付を示していた。
「予知夢……だったりしないよね」
その時彼女の部屋の窓が鳴る。
「おい、さやか」
「師匠!?」
「早く来い、今他の魔法少女達も巴マミの家に集まっている
魔法少女にだけ重要な話があるんだそうだ」
「え?は、はい!
あの……それってまどかは?」
「鹿目まどかとあいつの家族は左達に任せて警察に保護してもらった」
「保護……?」
「とにかくさっさと着替えてついてこい」
「はい!」
さやかは急いで着替えて窓から部屋を出る。
大道と一緒にいくつもの家の屋根を飛び回りながら彼女は巴マミの家に急いだ。
174 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 20:59:32.18 ID:cZyqfEBK0
――――
ほぼ同時刻。
巴マミの家に集まった魔法少女達は全員が今回あった事件についてほむらを問い詰めていた。
ただしゆまは隣の部屋でスースー寝ている。
「どういうことだよ、ほむら」
「……今言った通り、魔法少女のソウルジェムが真っ黒になると魔女になるの」
「そんなことあたしは聞いてないぞ!」
机を叩く杏子。
普段の飄々とした様子の彼女からは想像もできない姿である。
「やめなさい杏子、ゆまが起きるわ」
「お、おおすまん」
「あなた達は新婚夫婦かなにかかしら?」
軽くジョークを飛ばす巴マミ。
「マミさん貴方はのんきすぎです」
「そうね、巴マミ。貴方はもっと感情的な人間だと思っていたけど」
「あら、そう思ってたの?知らなかったわ
ところでほむらさん、そろそろ貴方の能力の全容を明かしてくれてもいいんじゃないかしら?」
対照的に落ち着いた態度の巴マミ。
紅茶を一息で飲み干すとため息を吐く。
「私たちの理解を超えた事態が起きているわ
時間を巻き戻す能力だなんて私聞いたことも見たこともないもの」
「マミさんなんであんたはそんな落ち着いていられるんだ……
私たち魔女になっちゃうんだぞ、怖くないのかよ?」
「あら、佐倉さん。そんなに動揺してらしくないわ」
「だってあんたは怖くないのかよ、あんな化物になることが!」
うーん、と巴マミは首をかしげて不思議そうな顔をする。
ネクロオーバーになったことにより徐々に徐々に彼女は人間性を失っていた。
今の彼女からは明らかに“恐怖”や“絶望”の感情が読み取れない。
175 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:00:11.24 ID:cZyqfEBK0
「なるほどね、美樹さんが魔女になったって聞いた時は耳を疑ったけどそういうことだったのね」
「目の前で好きだった男、しかもピアニストだっけ?が四肢を切り落とされたら……まあ魔女化もするか」
「そういうことね、しかも彼の腕を治すために美樹さんは魔法少女に……」
ガチャン
ガラスのコップが砕ける。
三人がドアの方を見ると大道に連れてこられたさやかが立っていた。
「ねえ三人とも、どういうこと?」
声が震えていた。
「魔女化ってなに?」
「しかも私が?」
「恭介の腕がどうなったの?」
「……あちゃあ」
「ねえ皆、教えてよ。私、戦ってた途中から記憶がないの」
三人ともがうつむく。
当然だ、誰が彼女をもう一度絶望させたいと思うだろうか。
「ねえさっき言ったことってなんなの?
悪い冗談か何かだよね?
私が魔女?恭介が腕を切られた?ま、まるで私がさっき見た悪い夢みたいで……」
「それは現実だ、美樹さやか
お前は目の前で上條恭介の四肢を切断する所を見せられて絶望のあまり魔女となった
幸運にも暁美ほむらの進化した時間操作能力で助けられたがな」
美樹さやかの後ろからヌッと現れる人影。
大道克己だ、先ほどは暗くて分からなかったが幾分疲れた様子である。
176 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:00:41.45 ID:cZyqfEBK0
「や、やだなあ師匠までななななにを言ってるのさ!
時間が巻き戻るなんてありえないって!
皆冗談なら怒るよ?」
「お前だって魔法少女ならば覚えている筈だろう、美樹さやか」
「……いやいやいや、だって明日なんて」
「あれが財団Xの本気だ、その気になればああいうことができる組織にお前たちは目を付けられたんだ」
「ああそうだドーパントの対策の特訓を明日やるんだったよね!
それの打ち合わせの集まりか何かなの?
いやーもうやる気満々だからねさやかちゃん!」
「美樹さやか」
「大道さんも特訓一緒に……」
「さやか、現実から目を背けるな」
「……やだ」
「あれは悪夢なんかじゃない、悪夢よりなお悪い現実だ、地獄だよ
俺と魔女を倒した時に、俺のマキシマムドライブで倒された魔女が一瞬だけ人間の姿になっていただろう?
あれは……そういうことだ」
「おい……」
あまりに酷い。
杏子が声をあげようとした時、マミとほむらに同時に制される。
177 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:01:25.81 ID:cZyqfEBK0
「大道さん一人が嫌われ役をやってくれるのよ」
「そうよ、佐倉杏子。彼の意思を無駄にしちゃだめ」
「……わかったよ」
それきり杏子は黙りこくる。
「やだよ、魔法少女が魔女になるなんて
恭介まで傷つけちゃうし……
私が魔法少女になったことは無駄だってことになっちゃうよ……」
「無駄ではないだろう、お前が救ったものもある」
「意味ないよ!願いと引き換えに魔法少女になったのに!
その願いのせいで絶望させられるなんて!」
「落ち着けさやか」
「魔法少女の願いの先には絶望しかないって言うなら……もう死ぬしか無いじゃない!」
「私は既に死んでいるけどね」
そう言ってさやかは自らのソウルジェムを取り出して強化された握力で握りつぶそうとする。
「馬鹿やめろ!」
大道はすかさずそれを奪い取る。
すんでのところでソウルジェムは破壊を免れた。
「返してよ大道さん!私の生き方くらい私が決めさせて!」
「おいおい、もう死んでるんじゃなかったのか?」
「じゃあ言い直すよ、私はもう居なくなりたいの!魔女になる前に!」
「……マミ、ピアノを借りるぞ」
「はいどうぞ」
「美樹さやか、ソウルジェムは返してやるから少し座れ」
「…………本当ですか」
「ああ、その前にこいつを聞いてもらうがな」
大道はマミの家にあった電子ピアノの前に腰掛ける。
彼の細い指が勢い良く鍵盤を叩き始める。
ポロポロとこぼれて辺りに溢れる美しい音色。
それは互いにぶつかり合ってからみ合って響き合い、美しい曲に変わっていく。
美樹さやかは音楽が好きな少女だった。
しかしそんな彼女もこの曲は聞いたことがない。
何時の間にか彼女は大道の演奏に聞き入っていた。
いいや、美樹さやかだけではない。
佐倉杏子も暁美ほむらも大道の見事な演奏に心奪われていた。
しかし大道は途中で演奏を止める。
178 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:02:26.29 ID:cZyqfEBK0
「なあ、美樹さやか」
彼はさやかに尋ねる。
「お前はこの曲を聞いてどう思った?」
「え?」
「感想だよ」
「感想っていうか……最後まで聞いてないから分からないかなあ
今までその曲を聞いたことも無いし……ああ、でも」
「でも?」
「いい曲だと思いました」
「そうか」
大道は悲しげな瞳で笑う。
「この曲は、俺のおふくろが好きだった曲なんだそうだ」
「大道さんの……?」
「大道美樹って名前さ」
「美樹……」
179 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:03:25.65 ID:cZyqfEBK0
「しかしこの曲の意味が、俺にはもうわからない
おふくろが好きだった、俺がよく弾いていた、ってのもおふくろの日記を見て知ったことさ
でもこの曲を素敵だとお前が思えたのならば……それはきっと、少なくとも俺よりは幸せだろうなって思うんだ」
さやかはため息を吐く。
「……師匠より先に音を上げるな、とでも?」
「ん?まあな」
「…………そう言われちゃうとなあ、しかたないか
もうちょっと頑張ってみます」
「そいつは良かった」
「だから……もし私が魔女になったらその時は」
「安心しろ、俺が始末をつけてやる」
「お願いします、あとマミさんや杏子もお願い」
「大丈夫よ、私が美樹さんを守るわ」
「やれやれ、本当に危なっかしくて見てられないぜ」
さやかと大道は互いに笑顔を見せて拳をつき合わせた。
【第八話「俺にはもう分からない」 了】
180 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:03:52.94 ID:cZyqfEBK0
【第八と二分の一話「魔人復活」】
そんなことがあった二日後。
財団Xの計画は左翔太郎が国際特務調査機関に連絡をしたことで頓挫。
約定を果たせなかった件についての説明役として、
そして用済みとなった織莉子の抹殺を命令されて加頭順は彼女の元にやってきていた。
「織莉子さん、加頭様を連れて参りました」
「ありがとうキリヒコさん」
織莉子はキリヒコに向けて優しく微笑んでから加頭に向けてまるで養豚場の豚を見るような視線を送る。
「これはこれは加頭さん、鹿目まどかを取り逃がした貴方がたが一体何の御用でしょうか?」
「いやはや、申し訳ございません。思わぬ邪魔が入りまして……」
「理由は聞いてませんわ、この埋め合わせをどうやってしていただけるかが問題なんです」
「おい貴様!自分の立場が解っていっているのか!」
「こちらに居るお方は財団Xの……」
加頭の連れてきた二人の財団Xの人間が織莉子の態度に怒りを見せる。
「やめなさい」
「…………」
「…………」
「我々が失敗したのは紛れも無い事実です」
ちなみにこの時加頭は沈痛な面持ちをしているつもりである。
そうは見えないのだが。
181 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:04:28.60 ID:cZyqfEBK0
「ですが、埋め合わせなどする必要はあるのでしょうか?」
「と、言いますと?」
「埋め合わせをする相手さえ居なくなってしまえばそんなこと考える必要も無い」
加頭の表情は若干微笑んで見えた。
「ユートピア!」
加頭は一瞬の内にドーパントに変身して織莉子に火炎放射を放つ。
しかし彼女も予知能力でそれを回避。
「ナスカ!」
キリヒコも一瞬遅れて変身を完了。
「マンモス!」
「アイスエイジ!」
加頭の連れてきた二人もドーパントに変身する。
「遅い!」
が、それは無意味だった。
ナスカドーパントになったキリヒコの剣が二人を両断する。
「それはレベル3!?」
「キリヒコさんが勤勉な方で助かりましたわ
ネクロオーバーの身体は苛酷な鍛錬も際限なく行えると喜んでましたよ?」
加頭は驚愕する。
それもそのはず、彼のデータでは園咲霧彦が到達したナスカはレベル2。
色も青いものだったはずなのである。
しかし今眼の前に居るナスカは赤。
園咲冴子が使用していたレベル3と同じ色だった。
「貰った!」
驚くべき速さで加頭の眼前まで近づくキリヒコ。
加頭はとっさに重力操作を行なってキリヒコを真上に打ち上げる。
動きを止めたキリヒコに火炎放射が直撃する。
182 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:04:54.96 ID:cZyqfEBK0
「隙だらけですよ?」
しかし、その瞬間背後から織莉子の操る光弾が加頭に直撃する。
「この程度、隙とは言わないのですよ?」
しかし明らかに彼女の攻撃は威力が足りない。
その程度ではドーパントにかすり傷ひとつつけられない。
「ハァッ!」
雷が織莉子の身体を貫く。
絹を裂くような悲鳴。
織莉子はそのまま床にのめり込む。
「……貴方は中々好みのタイプだったのですがね、残念です」
そう言って加頭は織莉子の頭をつかむ。
「さようなら」
神に捧げる供物かのように加頭は織莉子を持ち上げる。
黒く染まり始めるソウルジェム。
目と目が合う。
「なに?」
その瞬間、織莉子は確かに笑っていた。
「これじゃあ死んでしまうわね
仕方ないか。先生、そろそろおねがい致しますわ」
織莉子はキリヒコに斬られて転がっていた半死半生の財団Xの一人にゾーンメモリを投げつける。
それは彼に突き刺さりその身体に吸い込まれていく。
「ゾーン!」
マズイ、加頭は直感的に察知した。
されど時既に遅し。
「キリヒコさん」
先ほど加頭にその身を焼かれたはずのキリヒコが跳ねる。
驚くべき速度でユートピアの腕に斬撃を叩きこむ。
183 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:06:32.56 ID:cZyqfEBK0
「アクセル!バード!サイクロン!ダミー!」
思わずのけぞる加頭。
織莉子を逃してしまう。
しかしそんなこと問題ではない。
「エターナル!ファング!ジーン!ヒート!」
響き合い共鳴し木霊するガイアウィスパー。
これだけの量のメモリが一所に集まるなど明らかに異常事態だ。
この間にキリヒコは織莉子を抱えて一気に安全な間合いまで飛び退く。
「アイスエイジ!ジョーカー!キー!ルナァ!」
苦し紛れに念動力でメモリが集まる元となっている男を攻撃する。
もはや自分の部下だとかそういうことは関係なかった。
「おっと、危ない危ない」
しかし念動力はあっさりと弾き返される。
そして雷は雷を以て、焔は焔を以て、疾風は疾風を以て、冷気は冷気を以て、全て封じられる。
「エクストリーム!イエスタディ!ゾーン!」
「 ウ ェ ザ ー ! 」
「フアッハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
哄笑する魔人。
血の紅を背中に背負いし純白の怪物。
万能の災厄。
最悪の天才。
ガイアメモリの化物。
184 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:07:00.81 ID:cZyqfEBK0
「ありがとう美国織莉子!礼を言おう!」
井坂深紅郎、ここに復活。
「な、馬鹿な……!?」
雷が加頭の身体を貫く。
痺れて一瞬動きが止まった彼の身体があっという間に半分ほど凍りづけにされる。
さらには首にナスカの剣までも突きつけられる。
織莉子はお気に入りの高い椅子に座ってわざわざ加頭を見下す位置についてから声をかける。
「加頭さん、ここで貴方にご相談があるんですけどよろしいでしょうか?」
加頭には既に拒否する権利が与えられていなかった。
「あなたには私の救世を手伝って欲しいんです」
かくて彼女の救世は始まる。
【第八と二分の一話「魔神復活」 了】
185 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/19(土) 21:11:49.99 ID:cZyqfEBK0
【次回予告】
「……ひどい夢を見たぜ」
「あの口が魔女の本体か……お兄さん大丈夫でしたか?」
「プ、プリキュア!?キュアなんなんですか!?サインください!
もしかしてビューティーちゃんとお知り合いですか?」
「ああ畜生ねたましいいいいいいいいいいい!」
「 ス パ イ ダ ー ! 」
「変!身!」
【次回 第八と三分のニ話「people with no name」 乞うご期待】
186 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/19(土) 21:17:43.23 ID:RQv5GWoSO
またスパイダーww なんか愛されてるな
そして井坂先生ふっかーつ!
なにしでかすか解らないのが魅力だ
乙っす
187 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2012/05/19(土) 23:55:02.80 ID:mxotijbz0
乙!レベル3ナスカに井坂先生まで!
さて次回は照井さん活躍回なのか、アクセル的な意味で
188 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga ]:2012/05/20(日) 08:37:15.44 ID:q8vv30bp0
スパイダーはねえ……リア充爆発しろ!って言わせておけば良いから書いてる方としても楽だったり
あとモブのオリキャラメインの回だからpeople with no nameってだけなんです
照井の出番は後少しなので勘弁してつかぁさい
照井も今回はわりと出番あります、ACXも出す予定です
189 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:09:05.38 ID:R4+1mK3n0
【第八と三分のニ話「people with no name」】
「……ひどい夢を見たぜ」
草臥れたダークグリーンのコートを着て咥えタバコをする青年。
彼は本来なら今日、JEROに行きギルティーされ、スパイダードーパントになる予定だった男だ。
「やっぱあれか、いまどきの女子中学生だもんな、彼氏くらい居るよな
こんな冴えない男に振り向いてくれるわけねえわな……
いやでも夢だし、俺は認めねえ。絶対認めねえ」
彼の体内ではスパイダーメモリの毒素とイエスタディメモリの力がぶつかって中和され、記憶改変の影響がなくなっていた。
しかし彼はそれを現実とも思えずに夢だと思い込んでいる。
この夢が、ほんの僅かに彼の運命を狂わせる。
「……なんかJEROに行く気にもなれねえや
映画見に行こう、プリキュアオールスターズやってるみたいだし
頑張った自分へのご褒美だ」
煙草を携帯灰皿に突っ込んでiPodのイヤフォンを耳に挿し込む。
「あー、でも夢の俺凄かったなあ。なんだったんだろうあのUSBメモリ」
映画館は彼の住む寮のすぐ近くだ。
日曜の映画館には人が多い。
チケットを買ってから行列に並ぼうとすると行列は二列になっていた。
前はカップル。
気づくと後ろもカップル。
二列なのに彼の隣だけ一人分余ってる。
「…………ファック」
涙が零れた。
「…………」
この映画を一人で見に来ているのは彼だけらしい。
皆友達や恋人、あるいは家族と映画を見に来ている。
皆楽しそうに笑っている。
誰も彼も、誰も彼も、青年以外は皆幸せそうだ。
190 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:10:43.01 ID:R4+1mK3n0
書き直し前と書き直し後混ざってたのでもう一度最初から
191 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:13:12.79 ID:R4+1mK3n0
【第八と三分のニ話「people with no name」】
「……ひどい夢を見たぜ」
草臥れたダークグリーンのコートを着て咥えタバコをする青年。
彼は本来なら今日、JEROに行きギルティーされ、スパイダードーパントになる予定だった男だ。
「やっぱあれか、いまどきの女子中学生だもんな、彼氏くらい居るよな
こんな冴えない男に振り向いてくれるわけねえわな……
いやでも夢だし、俺は認めねえ。絶対認めねえ」
彼の体内ではスパイダーメモリの毒素とイエスタディメモリの力がぶつかって中和され、記憶改変の影響がなくなっていた。
しかし彼はそれを現実とも思えずに夢だと思い込んでいる。
この夢が、ほんの僅かに彼の運命を狂わせる。
「……なんかJEROに行く気にもなれねえや
映画見に行こう、プリキュアオールスターズやってるみたいだし
頑張った自分へのご褒美だ」
煙草を携帯灰皿に突っ込んでiPodのイヤフォンを耳に挿し込む。
「あー、でも夢の俺凄かったなあ。なんだったんだろうあのUSBメモリ」
映画館は彼の住む寮のすぐ近くだ。
日曜の映画館には人が多い。
「プリキュアオールスターズチケット完売かよ……いいや、じゃあこれにしよう」
映画版SPEC天のチケットを買ってから行列に並ぼうとすると行列は二列になっていた。
前はカップル。
気づくと後ろもカップル。
その後ろは仲の良い友人同士。
更にその後ろは……彼は見るのをやめた。
二列なのに彼の隣だけ一人分余ってる。
「…………ファック」
涙が零れた。
「…………これカップルで見に来る映画かよ」
しかしこの映画を一人で見に来ているのは彼だけらしい。
皆友達や恋人、あるいは家族と映画を見に来ている。
皆楽しそうに笑っている。
誰も彼も、誰も彼も、青年以外は皆幸せそうだ。
「――――――――嗚呼」
青年は呟く。
みんな、爆発してしまえば良いのに。
心の中で呟く。
そんな時、足元にUSBメモリのような何かが転がってきた。
192 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:13:41.19 ID:R4+1mK3n0
「いつか夢で見たような……」
運命のガイアメモリ、スパイダーメモリ。
彼はそれの使い方を既に理解していた。
彼はゆっくりと自らの右手首に向けて突き刺そうとする。
その時、映画館内に悲鳴が響く。
「なんだよあれ……」
天井を歩きまわる何体ものピエロの人形。
魔女の使い魔だ。
地面にポッカリと開いた口。
瞬く間に広がるサーカスのテントのような異空間。
明らかな異常事態。
だというのに誰も逃げようとはしない。
全員虚ろな瞳で天井を見つめている。
「おい、おいなんだこれおい」
「キャハハハハハハハハハハハハハ!」
大きな口から笑い声が響く。
それと同時に地面がゆっくりと動き、口の中へ人々を飲み込んでいく。
「待て待て待て待て!俺まだ死にたくないの!
なんかよく知らないけどこれやばい!やばいって!
助けて!誰か助けて!」
青年は必死で助けを求めて逃げ出す。
映画館を元にしているだけあって扉があったので彼はそこに手をかけた。
しかし当然開かない。
「ギャハハハハハハハハハ!」
笑い声が真上からする。
ピエロだ。
「うわやめっ……」
ピエロが天井から飛び降りてきて彼を蹴飛ばした。
真っ直ぐに口の中へと吸い込まれていく身体。
どうすることもできない。
193 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:14:51.10 ID:R4+1mK3n0
「――――危ない!」
口に飲み込まれる直前、誰かに突き飛ばされる。
気づくと彼はふりふりのエプロンドレスを着た少女にお姫様だっこをされていた。
「あの口が魔女の本体か……お兄さん大丈夫でしたか?」
少女は彼を地面に降ろして揺さぶる。
「プ、プリキュア!?キュアなんなんですか!?サインください!
もしかしてビューティーちゃんとお知り合いですか?」
時間と曜日が違う。
「は?お兄さん何を言っているんですか?」
「……ごめんなさい」
「とにかく、お兄さんはあそこに隠れててください」
エプロンドレスの少女は目にも留まらぬ速さで空間の中央にある大口に飛び込んでいく。
「うわすっげぇ……」
口の中から爆音と生々しい打撃音が響く。
それに混じって悲鳴、時々人が中から飛び出てくる。
気絶しているところから見ると先程の少女に助けだされたらしい。
「ギャハハハッハハハハッ!」
しかし助けだされた人々にピエロの使い魔が飛び蹴りを放つ。
先ほどの青年と同じように彼らは穴の中に吸い込まれていく。
これではいくら助けた所で意味がない。
「ギャハハハハ!」
青年のところにもピエロが天井から降りてきて飛び蹴りを放つ。
しかしそれは一度食らった技。
194 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:15:42.32 ID:R4+1mK3n0
「聖闘士に同じ技は二度通じない(キリッ」
真っ直ぐに飛んでくるピエロの使い魔を、体を捻らせて回避。
狙いを外して地面に蹴りを叩き込んだピエロの使い魔を今度は逆に踏みつける。
「ギャハハッ!?」
「ペガサス流星脚」
踏みつける。
「流星脚」
踏みつける踏みつける踏みつける。
「流星脚流星脚流星脚」
踏みつける踏みつける踏みつける踏みつける踏みつける。
ピエロの使い魔はすぐに動かなくなった。
「見たか聖闘士の力……」
チラリと大穴の方を見る。
未だに人が叩き出されたり蹴り入れられたりしている。
「もしかしてあの女の子は馬鹿なのだろうか」
使い魔達の力自体は大したことはない。
自分は安全だと思った青年は大穴の中を見に行ってみる事にした。
漂う甘い臭気。
ヤスリのように並ぶ細かい歯。
その奥にポツンと転がっている子供の人形。
摂食の魔女ハンナ、その性質は貪欲。
道化の使い魔イザーク、その役割は給仕。
無抵抗な人々を消化して生きる魔女。
「…………!」
彼は驚いた。
血まみれになった少女が自らの身体も顧みずに穴の中に落ちた人々を救っていた。
「何やってるんだあんた!何時か死ぬぞ!」
そう叫んだ瞬間、歯の一本が伸びて青年の肩を掠る。
驚いて青年は後ろに飛び退いた。
「何やってるんですかお兄さん!隠れていてくださいって!」
「それは良いけどあんたもさっさと逃げろよ!
あんたがいくら救ってもこいつらはそこに引き寄せられて落ちていくんだ!」
青年の声に反応して再び歯が伸びてくる。
だが口の中に居ない青年に対しては狙いが甘い。
いずれも見当はずれな方向に伸びていく。
195 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:17:39.65 ID:R4+1mK3n0
「目の前で危ない目に遭う人達を救って何が悪いんですか!
そう思うことが、そうできる力を願って何が悪いんですか!
――――それに!」
ここでついに、少女の持つ“加速”の魔法が完全に発動する。
「私の魔法ならこれくらい楽勝なんで邪魔しないでください!」
穴の中の打撃音が増える。
一度、二度、音がつながり切れ目が分からなくなる。
それと同時に穴の形も歪み始め、さらには使い魔が蹴り落とすペースを人が飛び出すペースが上回る。
そしてついに
「破滅る天球(アイゼン・メテオール)!」
口の中からとてつもない量の光があふれる。
口は光の粒になって消滅し、後にはグリーフシードだけが残った。
「……ざっとこんなもんですかね」
特殊警棒をクルクルと回してから縮め、ポーチに入れる少女。
ポーチの中からはスタンガンやメリケンなど色々と物騒なものが見えた。
「最近のプリキュアって物騒なんだな……」
「だから私はプリキュアじゃないです!」
先程から迷惑をかけられているため少々怒っている少女。
「あ、プリキュア知ってるんだ」
「むしろなんで貴方の方がプリキュア知ってるんですかぁ!」
「大きいお友達がプリキュアを買い支えてるんだよぉ!」
「……うわ」
「くそっ!馬鹿にしやがって馬鹿にしやがって馬鹿にしやがって!」
「子供相手にムキになるなんて小さいですね、色々小さい、要するに小さい」
「俺はチビじゃねえ!」
「そっちじゃないですって」
「ところでどうやったら出られるんだここ?映画見に行きたいんだけど」
「お兄さんまだ映画見る気になれるんですか?」
「この騒ぎの間にプリキュアオールスターズを上映している部屋に紛れ込めるかなって
キャンセルで空いた席に紛れ込めるかなって
SPECはDVDで見るから良いよもう」
「駄目だこいつ、本当に駄目だこいつ
説明だけするとここは魔女の結界と言いまして、魔女を倒したら自然に出られる筈なのですが……」
「出られないじゃん」
「おかしいなあ?」
「なんだよぉ!プリキュアならプリキュアらしくご都合主義でなんとか……」
「だからプリキュアじゃな――――」
青年の肩を飛び越えて黒い影が躍る。
196 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:18:30.48 ID:R4+1mK3n0
「――――え?」
少女の鮮血が青年の顔にかかる。
「あれぇ?今の躱しちゃったの?」
少女が倒れたのと声は同時だった。
「うわっ、ダークプリキュア!?」
「プリキュア?」
黒い魔法少女――呉キリカ――は小首を傾げる。
「おいあんた大丈夫か!」
「他の魔法少女の乱入……油断したわ」
青年は気絶した橙の魔法少女の側に駆け寄る。
派手に出血しているが致命傷にはなっていない。
抱き上げるふりをしながら色々触っておこうか悩む青年。
「魔女の結界に居るのに魔女の口づけをされてない一般人?」
少女からはシャンプーの良い香りがする。
「まあ良いや、ねえお兄さん、その子をこっちに渡してよ
そしたらお兄さんを返してあげるから」
ゆらぐ理性。
197 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:19:12.94 ID:R4+1mK3n0
「どうする俺……」
「お兄さん?」
「な、なんだよ!」
「お兄さんだってさっさとマトモな世界に帰りたいでしょう?
こんな見ず知らずの子供に義理立てする必要なんて無いだろうしさ」
「え……」
それは確かにそうだけど。
そうなのだけど。
青年の心は揺れる。
確かに早く元の世界に戻りたいのだ。
だがこの少女を信じられるかは怪しいし……。
「それに、お兄さんにも待っている人が居るだろう」
キリカのこの言葉で青年の中の何かがぶち切れた。
「どいつもこいつも……」
「え?」
「どいつもこいつもリア充しやがってあああああああ!妬ましい妬ましい!
どーせ俺は講義復習予習寝るしかしてねえ駄目学生ですよ!
彼女なし!友達なし!趣味は日曜朝7:30〜9:00までの子供向け番組とラーメンJEROだけ!
実家に居場所なぞ無い!
初恋の女の子は中学の時年上の男を家に連れ込んでた!
友達と思ってた奴らはここのところ音信不通!
講義は真面目に受けてるけどもそれは単に時間があるからだ!
表面上友達っぽくしてる相手は居ても本音では付き合えない!
そうだ俺には待つ人も帰る場所もねえ!
有るのは寮のベッドとネットにつながったパソコンだけだ!」
「は?え、ちょ、ちょっと……」
「うわああああああああああああ!
今お前お兄さん“も”って言ったよな?
どうせお前ら彼氏とかも居るんだろちくしょうめ!
友達にも恵まれてるんだ!
信頼出来る人、待ってる友人、帰るべき家があるんだ!
俺には何もない!何もないんだ!
なんでだ!なんでなんだよおおおおおお!」
息を吸い込む。
198 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:20:12.36 ID:R4+1mK3n0
「ああ畜生ねたましいいいいいいいいいいい!」
カチッ
「 ス パ イ ダ ー ! 」
ガイアウィスパーが高らかに響く。
青年はスパイダーメモリを真上に投げ上げるとそれに向けて手首をひねりながら手を伸ばし
自由落下で落ちてきたメモリの端子を右手首に挿す。
右の手の甲に浮かんだ蜘蛛の紋章を見せつけるようにしながら手のひらで顔を覆い、呟く。
「変!身!」
この青年、清く正しい(おおきな)ニチアサキッズであった。
ポーズについてはどこぞのクローバーな仮面ライダーを意識したらしい。
焦茶色と深草色を合わせたような色合い。
伸びる六本の手足。
かつて、そして今もなおその爪痕を風都に深く残す蜘蛛の怪人“スパイダードーパント”
彼が変身したのはまさにそれだった。
「ド、ドーパント!?」
「ふんっ!」
中指と薬指を折りたたみ親指人差し指小指を伸ばして手首から糸を飛ばす。
その先は血を流して倒れている魔法少女。
糸は傷口に張り付いて包帯のように変化した。
「悪いがこの子とは十分ほど前からの長い付き合いだ、渡すわけには行かないな」
「言ってることが分けわからないや、メモリの毒素で頭をやられちゃったのかな?
幸運なことにスパイダードーパントの性質は既に予習済なんだよね」
キリカは速度低下の効力でスパイダードーパントの背後に回りこんで斬りかかる。
速度が落ちている上に元々戦闘経験の無いスパイダードーパントは爪の攻撃を諸に受ける。
「ハハハハッ!今ならまだその子を渡せば見逃すよ!」
「知るか!よくも俺の心の傷を抉りやがって!
貴様にボッチの苦しみを教えてやる!」
「…………」
一人ぼっちの苦しみ、キリカにはそれが分かる。
しかしだからといって彼を救えるという訳ではない。
むしろ苦笑いしかできない
199 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:20:46.77 ID:R4+1mK3n0
「これでも喰らえ!」
圧倒的密度を以て蜘蛛爆弾がキリカに襲いかかる。
しかしキリカの速度低下の魔法の範囲に入っている以上、それが彼女に当たることはない。
再び近づいてキリカは爪をスパイダードーパントに突き立てる。
しかしそれと同時に、スパイダードーパントも巻き込む形で爆弾が爆発する。
自爆する形となり自らの肉体から黒煙をあげて立つスパイダードーパント。
「……いいよなあ、お前はよお
俺なんかどーせ名前も無いモブキャラですよぉ……」
心底恨めしそうにキリカを睨みつけるスパイダードーパント。
キリカはその視線に何故か悪寒を感じてしまった。
「お前がどんな過去を持ってるのか知らないけどあんたはきっと今、輝いてるんだろう?
そんな不思議な素敵な魔法少女になっちゃってさあ……
恐らくは魔法少女狩りの為に暗躍する謎の魔法少女とかいってさあ……
なんだよ、楽しそうじゃねえかよちくしょう……」
ブツブツとスパイダードーパントが恨み言を呟く度に蜘蛛爆弾の威力が増していく。
彼の中にある負の感情に呼応してメモリが力を発揮しているのだ。
「……さっさと片付ける!」
キリカは全速力でスパイダードーパントに向けて突っ込む。
まずは飛び蹴り、さらに両足で首を掴んで地面に叩きつける。
そして倒れたスパイダードーパントを斬りつけた。
悲鳴と共にスパイダーメモリが排出される。
「なんだったんだ一体」
彼女が青年に背中を向けたその時、彼女は足を掴まれた。
「待てよ、まだ俺の嫉妬は終わってないんだ……」
「スパイダー!」
「もっと俺を妬ませてくれよ!」
再びスパイダードーパントとなった青年。
先ほどよりもさらに凶悪な姿になっている。
「面倒な人だな……」
キリカは彼を蹴り飛ばすと今度こそ橙の魔法少女にトドメを刺そうとする。
が、その直前で彼女は気づいた。
「……糸?」
蜘蛛の糸が辺りに張り巡らされている。
爪で触れてみるが切れない、むしろ張り付いて動きを止められる。
先ほど攻撃を受けていた間に既に仕掛けていたらしい。
「……鶏肋鶏肋」
爪を外して考えこむキリカ。
彼女は遠距離攻撃を持っていない。
となればこの糸の隙間を縫って攻撃を仕掛けるのは無理だ。
糸を切るにしても面倒な事この上ないしその間に敵が復活された日には返り討ち。
それに相手はまどかに関連する魔法少女ではないだろうし、倒した所でそれほど旨みも無い。
いや織莉子の言う救世の一貫として倒す必要は有っても命をかけて倒す必要は無い。
命をかける必要があるのは別の時だ。
彼女は一つ大きなため息をつくとその場からそそくさと離脱した。
結界が解けると徐々に正気を取り戻した人たちが異常事態に気づき
青年と少女も彼らと同じように病院に運ばれることになるのだがそれはまた別の話である。
【第八と三分のニ話「people with no name」 了】
200 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/20(日) 12:21:23.66 ID:R4+1mK3n0
一応この二人が無事だったということだけは書きたかったんです
ぶっちゃけ蛇足です、なんか色々ごめんなさい
201 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/20(日) 12:53:52.09 ID:nBAZmFy7o
なんかどこぞの非公認戦隊おもいだした
202 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/20(日) 13:25:05.07 ID:0GlOFc9DO
ロスドラとT2スパイダーがあったなら鎧みたくきれいな特オタに…やっぱ無理か
203 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/20(日) 22:40:35.01 ID:c8jbu6rh0
地獄から来た男、スパイダーマッ!!
が浮かんだwwwwwwww
204 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/21(月) 07:51:09.24 ID:utZ+i+y70
完全に次回予告忘れてた
ごめんなさい
最近非公認戦隊チェックしてたのが流石にバレる内容だったかも
205 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/21(月) 07:54:06.58 ID:utZ+i+y70
【第九話「美国さん家の事情」】
「全マシで」
「全マシで」
「全マシで」
「全マシで」
「全マシで」
音を立てて五人の前に置かれる五つの丼。
Theコンモリ
山が如くうず高く積み上げられるもやし、もやし、もやし。
「キリカも来てくれるなんて嬉しいわ」
「喋るのはギルティーじゃ……」
「もう食べ終わったわ」
「…………」
「お先に失礼するわね」
「こんなの絶対おかしいよ」
キリカは必死で麺を掻きこむ。
キリヒコは余裕でスープまで完飲、微妙に慣れたような顔している。
伊坂はノリノリでお代わりを頼んでいたし、加頭は無表情でひたすら野菜を食べている。
206 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/21(月) 07:54:35.94 ID:utZ+i+y70
さて、十分後。
四人は織莉子の秘密基地でデザートを食べていた。
ちなみにキリカは奥のベッドで寝ていた。
「さて、加頭さんが我々のメンバーに加わったことを記念しての祝賀会の二次会をこれから始めたいと思います」
キリヒコは勿論いい顔をしていない。
伊坂は我関せずでワッフルを若干スマッシュ気味に胃袋に叩き込んでいる。
「質問なのですが織莉子さん」
「あらなんでしょう?」
「何故私を味方に勧誘したのですか?てっきり私はあのまま井坂さんの力を見せるついでに殺されるものだと
いやまあ、帰った所で処刑確定なのでありがたいんですけれども」
「そうですね織莉子さん、理由をお聞かせ下さい」
キリヒコは生前の記憶を失っている筈なのだ。
なのに彼の加頭に向ける視線には明らかに敵意が混じっている。
「ええ、そうね。キリヒコさん。あなたには聞かせなくてはならないわ」
伊坂はモシャモシャとワッフルを食っている。
「我々の……真の敵のことをね」
「あ、ワッフルお代わり下さい」
「はいはーい」
織莉子は伊坂にお代わりを差し出す。
伊坂は再び食べ始めた。
207 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/21(月) 07:59:06.24 ID:utZ+i+y70
「真の敵?鹿目まどかじゃなくて?」
「おや、メープルシロップ味」
「ええ、そっちも重要なんだけど……今回は私達魔法少女にとっての本来の敵、魔女」
「こっちははちみつ味ですか」
「最強の魔女、ワルプルギスの夜、放っておけば被害はこの街一つでは済まない
鹿目まどかは世界を滅ぼしますがワルプルギスはこの国を滅ぼす」
「じゃあ鹿目まどかはどうするのです?」
「おかわりが欲しいのですが」
「ええ、鹿目まどかにさしあたっての危険性は無くなったわ
ワルプルギスのついでに叩けば良い程度の認識です」
「どういうことですか織莉子さん?」
「あなた達財団Xのおかげよ加頭順」
「あのーおかわり」
「は?」
「あなた達がなりふり構わない手段で鹿目まどかを追い詰めてくれたお陰」
「おーかーわーりー」
「どういうことですか?」
「それは……」
「 お か わ り 」
「はいはい」
織莉子はジェラートを出してきて伊坂に食べさせる。
「あっそれ私のジェラートだよ!」
「安心なさいキリカ、たくさん作ってるわ」
奥で寝込んでいたキリカが部屋から出てくる。
織莉子はキリカを膝枕してあげながらキリカにジェラートを食べさせてあげる。
まるで猫を可愛がる悪の軍団の長だ。
208 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/21(月) 08:01:09.15 ID:utZ+i+y70
「さて、財団Xはインキュベーターと共謀して鹿目まどかを窮地に追い込んだ
ここまで私の読み通り、きゅうべえの邪魔なんぞ振り切ってあなた達がまどかを殺せば正直それでよかった」
「……失敗しましたがね」
「イエスタディのメモリでしょう?」
「ええ」
「あれね、予測されていた事態なの」
「……我々が失敗するのを見越していたと?」
「ええ、こちらの伊坂先生によれば……」
。 _|\ _
。 O / 。 u `ー、___
゚ 。 \ヽ / u ⌒'ヽ゛ u / ゚
- ・。 / ; ゚(●) u⌒ヽ i @ 。
, ゚ 0 ─ { U u r-(、_, )(●) .| / 。 ,'´ ̄ ̄`',
゚ ,,、,r-'⌒l u //トェェェ、 ) 。゚ / o ,! ハ ハ !
。 ゚ r-'⌒`ー-'´ヾ,. ir- r 、//u / 。 ・゚ l フ ム l
ヾヽ、_,,,、-、/ミ,ヽヽ/ ノ_, -イ-、\ ハ ッ j
ー = ^〜、 ̄r'´ ̄`''jヽ、 〃ヾ ゚ 。 ヽ フ /
jヽjvi、人ノl__ / / ヽ´{ミ,_  ̄`'''-ヽヾ ` ̄ ̄
) ハ 7 / / `'='´l  ̄i'-、_,,ン ノ 。
) フ て / / !。 l l - ニ
7 ッ ( __ヽ、__l ___ .!。 l__l__,-=-,___
) !! ( ,-=-, 浴Sゞゝヽ ,--,l l-=二=-,
^⌒~^⌒^~⌒^└==┘  ̄ ̄ ̄ ヽ==ノヽ=ノ\__/
※ジェラートなんぞ無視して織莉子の炊いた全員分の米を食べております
「……お腹がすいてらしたようなので勝手に話を進めますね」
「そうしてください」
さすがのキリヒコもこれには苦笑いである。
「こちらの伊坂先生によれば暁美ほむらはイエスタディメモリの完璧な適合者
彼女の身体はあれと適合するために作られたといっても良い
あれを研究対象にする手伝いをすることを条件に私は彼の協力をとりつけたの
そして私はメモリの制作について彼の指導を仰ぎつつ、理由は知らないけど星の記憶に散らばった彼の自我をサルベージして様々なメモリに仕込んでいたって訳」
「なんと……」
209 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/21(月) 08:01:40.14 ID:utZ+i+y70
「財団Xの研究でも解っていたように魔法少女の力とメモリの力は似ている
魔法少女システムは一人の人間に眠る記憶や感情から彼女に最も適した力を引き出して彼女らに行使せしめ
ガイアメモリは星の記憶から力を引き出して人間をドーパントにする
故に魔法少女が完璧に適合したメモリを使ったその時、破壊力は計り知れないの
今回の暁美ほむらの件みたいにね」
「そういうことだったのか……」
「魔法少女やメモリの力を持った人間以外今回のことを誰も理解していない
出来事が起きたとも思っていないでしょう」
「しかしあれだけ巨大な力を持っている相手が守るまどかを殺すなど不可能なのでは?」
「ところがどっこいそうでもないの」
「というと?」
「暁美ほむらは適合しすぎたのよ、あのメモリにね」
「……まさか、過剰適合者?」
「そういうこと」
織莉子はにやりと笑う。
「暁美ほむらはロストドライバーを使っていてもメモリの毒素に耐えられず記憶障害を起こし始めている筈よ
さらにいえばメモリそのものも壊れているだろうしドライバーも故障した筈
彼女はしばらくあの能力どころか魔法も使えない」
「その状態ならば倒すのは簡単だね」
「そういうことよキリカ」
「しかしそれなら彼女を治すためにまどかがインキュベーターと契約……!」
「そう、絶好のチャンスよ。インキュベーターにとっては」
織莉子はそれはそれは嬉しそうに笑う。
210 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/21(月) 08:02:06.98 ID:utZ+i+y70
「でもね、今回のことで完全にあの子達の信頼を失ったインキュベーターは……」
「他の魔法少女、そして鹿目まどか自身に完全に拒絶される」
織莉子の高笑いが部屋に響く。
尚も米を食う伊坂。
「あとはゆっくり殺して後顧の憂いを断てば良い
それは井坂先生と貴方に任せようと思っています
仮面ライダーや魔法少女達もワルプルギスに兵力を裂きますしね」
驚いたような表情で織莉子を見つめる加頭順。
同じ顔のキリヒコ。
キリカはとりあえず何でもいいので織莉子の膝枕でぐっすり寝ていた。
「キリカ、大事な話があるから起きなさい」
キリカはピョコンと跳ね起きる。
「まどかを守る魔法少女達、そしてワルプルギスの夜と正面から戦う際のフォーメーションをお話させていただきます
まずはキリヒコさん、貴方はキリカと組んで近接戦闘を行う前衛
そして加頭さん、貴方魔法少女が弱った頃合いを見計らいソウルジェムを一気に濁らせて魔女化させてください、中衛です
そして私と伊坂先生は、私のプレコグニションと伊坂先生の雷撃を利用して上空からピンポイントでの援護射撃
この陣形でワルプルギスの夜と魔法少女達の戦闘中に横合いから思い切り殴りつけます
鹿目まどかの契約はありえないし、あったとしても伊坂先生のウェザーメモリの全力を持ってすれば充分倒せます」
「成程……そのために我々を集めたのですか?」
「はい、遠近中の戦力に万全を期したかったので
我々はワルプルギスの夜が来るまでは基本的に待機ということで」
「わかりました」
「私、ゾッとします」
「解ったよ織莉子」
「ハッフ!ホンム!マッグマッグ!モフモフビャアウマイ!」
「それでは私の救世の為に皆さんよろしくお願いしますね」
織莉子は歳相応の少女らしく、可愛らしく、頭をペコリと下げた。
【第九話「美国さん家の事情」 了】
211 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/21(月) 08:05:40.68 ID:utZ+i+y70
【次回予告】
「あれ、二人は?」
「居ないわ」
「ほむらちゃん、少し話があるんだ」
「どうかしたの探偵さん?話って……」
「君の能力についてだ」
「俺の知ってるイエスタディメモリの持ち主は兄貴を殺されて、その仇討ちの為にイエスタディのメモリを使った
お前にもそういう事情があるのかもしれない
でもそんなことしたって……」
「だからなんなの!?」
「貴方に私の何がわかるの!」
「うぇひひ、二人共私の最高の友達だよ」
【次回第十話「Wはここに/暁美ほむらの友人」】
212 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/21(月) 08:07:38.37 ID:utZ+i+y70
ついにきた……前回エタった場所まで……
行こうぜ、エターナルの向こう側!
それもこれもみなさんの応援のおかげです
この前乗っけていったプロットとは完全に別展開でお送りさせて頂きます
213 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/21(月) 09:16:22.39 ID:fEQAX/tlo
乙でした!さあ、(HTML化の向こうまで)振り切るぜ!
214 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2012/05/21(月) 10:20:02.15 ID:nlGRhI9DO
スレは落ちない
この板に最終話を書き込むまで!
永遠に!!
カチッ
\エターナル!/
215 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/21(月) 17:07:28.14 ID:sunfqTOj0
乙←ルナメタルのメタルシャフト
216 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/21(月) 20:51:09.98 ID:2tX6UeIDO
今さらですが、ほむらが変身するシーンが抜けているような……
217 :
◆mbgGrCikwU
[sage]:2012/05/21(月) 21:24:18.60 ID:J+x6LMbC0
>>216
「
>>1
といえど、罪は償わなければならない。ミスは罪だ。罪は許されない。」
とイケメンのお兄さんに説教されてボタンむしられたので償いに何かリクエストあればおまけ的なものを書かせて頂きます
すいません
218 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/21(月) 21:26:31.03 ID:J+x6LMbC0
※
>>161
と
>>162
の間に以下の文が入ります
「僕と契約すればきみの友だちを救うことだって容易いよ?」
まどかがゴクリとツバを飲み込む。
「私は……」
「それには及ばないわ」
カチャッ
「 イ エ ス タ デ ィ ! 」
使い方は本能、否、メモリが教えてくれる。
すっからかんだった彼女の身体に魔力が満ちる。
次元がきしみ、彼女の身につけている砂時計の中の砂がめちゃくちゃに乱れ飛ぶ。
「暁美ほむら!何をした!
君の力がエントロピーを凌駕し始めている!」
狼狽するキュウベエ、ほむらは振り向いて勝利の笑みを浮かべる。
傷が癒えていく、衣装がより豪華になり、まさしく魔法少女と呼ぶにたるものへと変わっていく。
髪には白のリボンが巻かれ、首からは漆黒のマントがひらめく。
「おや?何か細工をしたようですね?」
瓦礫の中から加頭が起き上がる。
「インキュベーター、財団X。さあ、貴方達の罪を数えなさい!」
ほむらの激変を察したきゅうべえは迷わず逃げを打っていた。
「一を殺して百を救うことが罪なのですか?度し難い」
加頭はユートピアの力を奮ってほむらにおそいかかる。
「■■■■■■■■!」
イエスタディのメモリから発されたガイアウィスパーに引き寄せられるが如くオクタヴィアも近づいてくる。
加頭はそれを察知して一歩後ろに下がる。
振り下ろされるオクタヴィアの剣。
ほむらはそれに手をかざす。
219 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/21(月) 23:14:09.19 ID:j3+mdUUDO
乙!
メモリーメモリでほむほむの過去ループ上映会とかどうでしょう
おまけの範疇ではないならスルーして
220 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/21(月) 23:18:47.58 ID:hxyy2yFoo
乙。
おまけ?決まっている。今まで出たキャラ(無論非リアスパイダー含む)が二郎にいった場合の反応だッ!!
221 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2012/05/21(月) 23:42:35.12 ID:N9ce701N0
乙!
こないだの仮面ライダー部の面々がまたJERO行って、織莉子達と出くわした時のお話を一つ…
222 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/21(月) 23:55:09.25 ID:At1w3TTL0
了解しました
それでは今日からコツコツ書き始めます
全十九話になったので9日なら終わるまでにいけるはず……
メモリーメモリはわりとガチな話になりそうなのでもうしわけございません……
もしかしたら別の話でメモリーメモリネタはやるかもしれません
223 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/22(火) 06:35:02.66 ID:ZFBQoql50
【第十話「Wはここに/暁美ほむらの友人」】
前回の事件から数日後。
ほむらの家のチャイムが鳴る。
ドアを開けると翔太郎が立っていた。
「あれ、二人は?」
「居ないわ」
「ほむらちゃん、少し話があるんだ」
「どうかしたの探偵さん?話って……」
「君の能力についてだ」
しばしの沈黙。
意を決したように彼女はフィリップを自宅に通す。
カタン、紅茶の入ったティーカップの音と時計の針の音色だけが響く。
「単刀直入に言わせてもらうぜ、ほむらちゃん」
「なに?」
「フィリップがあんたの使ったロストドライバーを検査して解ったんだが……
おそらくあんたのソウルジェムにはガイアメモリの毒が混入している」
「…………そう」
「すぐに病院に行こう、警察病院なら……」
「気にしてないわ、わかっていたことだから」
ほむらは髪をかきあげる。
「それはどういう……!?」
「メモリを使った後から、なにか体調が優れなかったし
記憶力も低下しているわ」
「……そこまでわかっているならば、何故今まで俺達に何も言わなかった!」
「もうすぐ……もうすぐワルプルギスの夜だから、それが終わったらね」
「待てほむらちゃん、今すぐ治療しなければ大変なことになるんだ
お前と同じようにイエスタディの毒素を受けてしまって記憶をなくした奴が居る
俺はお前にそいつみたくなって欲しくないんだ」
翔太郎はほむらの瞳を真っ直ぐに見据える。
ほむらはその真っ直ぐな視線に耐え切れないで目を逸らす。
224 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/22(火) 06:36:58.07 ID:ZFBQoql50
「もう病院の手配はしている、だから……」
「だから何?」
「あ?」
「私は構わない、まどかを守り、ワルプルギスの夜を倒せるなら
私の望む魔法少女になれるなら記憶なんて……弱かった私の存在なんてどうでもいい」
ティーカップを握り締めるほむらの手が震える。
思いつめた表情。
春先の薄氷のように脆く、青く、怯えた唇。
「……ハァ」
翔太郎はため息をつく。
「なあほむらちゃん」
「なに?」
「俺の知ってるイエスタディメモリの持ち主は兄貴を殺されて、その仇討ちの為にイエスタディのメモリを使った
お前にもそういう事情があるのかもしれない
でもそんなことしたって……」
「だからなんなの!?」
ほむらは語気を荒げる。
「貴方に私の何がわかるの!」
翔太郎を睨みつける。
翔太郎は何も言わずに彼女を見つめる。
何も言えない。
「大切な人を奪われ続けた悲しさ!
大切な人を守れなかった無力感!
貴方みたいな立派な探偵には分からないでしょう!?」
「……わかるね」
「どういうこと?杏子辺りから私の話を聞いたの?」
「俺には師匠が居た
しかし依頼の最中に俺が足を引っ張っちまったせいで死んだ
俺がもし、あの時俺の師匠の足を引っ張らない男だったら……と思う時は今でもある」
「…………」
「悔しいだろう、悲しいだろう、でも今はお前ができることをやってくれ
今お前が無茶をすれば誰が悲しむかもわかるだろう?」
「…………あぁ」
ほむらはため息をつく。
225 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/22(火) 06:38:29.30 ID:ZFBQoql50
「でも私は……」
その時、扉が開く。
そこに立つ人影は二つ。
「ほむらちゃん!」
「まどか!?」
鹿目まどか。
「転校生、一人で何でもかんでも背負いこむことないんだぞ」
「美樹さやか……!」
「さやかちゃんって呼んでも良いんだぞ」
美樹さやか。
「マミさんから話を聞いてきたんだよ!」
「あれが現実だって言うなら助けてくれたのはあんただしね
今度は私達があんたを助ける番でしょう?」
「そうはいってもあなた達だけじゃワルプルギスの夜なんて……!」
「それはそうでもないぜ?」
遅れて出てくるもう一人。
226 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/22(火) 06:38:56.54 ID:ZFBQoql50
「……大道克己」
「子供二人のお守り役なもんでな」
「子供ってなんですか!」
「そうなると美樹さやか、佐倉杏子、千歳ゆま、巴マミ……魔法少女で今のところ当てになる戦力はこんなものかしら」
「仮面ライダーは俺を含めて仮面ライダーWの二人と大道か」
「やっぱり戦力が足りないじゃない」
「最近までもう一人こっちに別件で捜査に来てたらしいんだけどな
俺達と入れ違いになる形で向こうに戻ってたし」
「……戦力の不足は問題だな、しかも魔法少女狩りまで暗躍している」
「そう考えるともっと戦力が欲しいくらいよね」
「美国織莉子に接触してみるっていう手は?
確か巴マミは彼女の知り合いの筈だ
何故美国織莉子が魔法少女狩りをさせているのかも解るし、止めることだってできるだろう」
「それがまあ無難か
俺はマミと一緒にそいつとの交渉か
交渉が成功しようが失敗しようが何がしかの打開策ができるだろう」
「じゃあ頼んだぜ、大道」
「待って師匠、私もついていく!」
「財団Xと協力関係にあった相手だ、油断はできない
もし何かあったらお前を守れない可能性もあるしな」
「…………」
大道克己、巴マミ
美樹さやかにとって先輩であり師であるこの二人はいつも彼女のずっと先を行っていた。
彼女はその背中を見つめることしかできない。
少し修行して強くなった所でそれは一緒。
いつかあの二人に並んで戦いたい。
そのためにも今は……
「解った」
「それにお前にしかできない事もある」
「なに?」
「お前の友達の側に居てやることだよ」
大道はそう言って部屋を出た。
227 :
◆mbgGrCikwU
[saga]:2012/05/22(火) 06:39:24.20 ID:ZFBQoql50
「左さん、少しだけ三人だけにしてくださる?」
「俺は構わないぜ、廊下で待ってるから何か有ったら言ってくれよ」
「すいません」
部屋にはほむら、さやか、まどかの三人だけになる。
最初に口を開いたのはまどかだった。
「ほむらちゃん」
「なにまどか?」
「この前は助けてくれてありがとうね……
ほむらちゃんが居なかったらママもパパもたっくんも危ない所だったし……」
「礼には及ばないわ、貴方を助けただけよ
でもなんで今?」
「うぇへへ……ちゃんとお礼言えてなかったなと思って」
「あ、それなら私もお礼言わないとね
あんたのお陰でまだなんとか魔法少女で踏みとどまれているみたいだし……」
「そ、それだってたまたま……」
「たまたまでも助けてくれたのはあんただよ、ありがとう転校生」
「…………どういたしまして」
「それでねほむらちゃん、さっき左さんから聞いたんだけど」
「貴方達が気にすることじゃないわ
これは私が好きでやっていることでそのせいで私に何があろうとそれは私の問題なんだから」
「そんなことないよほむらちゃん!
だって私達友達でしょう?
私達を助けるために頑張ってくれたほむらちゃんに何かあったら私達は悲しいよ!」
「でも私はまだ貴方を守れたわけじゃ……」
「もう十分守ってもらったよ
ほむらちゃんは私を助けるために何度も時間を巻き戻したんでしょう?
ほむらちゃんはもう十分すぎるくらいに私を守ってくれたよ
だから次は……」
言葉を濁すまどか。
彼女自身には何の力もない。
「まどか、転校生だけじゃなくて私だって貴方に助けてもらったんだよ」
「え?」
「私が泣きたい時に泣かせてくれたのはまどかじゃん」
「……あ」
「だから魔女はこの天才魔法少女さやかちゃんに任せなさい!
転校生が居なくなった穴を埋めるくらい働いちゃうんだから!」
そんなさやかの様子を見てほむらは静かに笑う。
「貴方って本当に馬鹿ね……」
「ば、バカとはなによ!バカとは!
私だって今どんどん強くなってるんだからね!」
「でもそういう愚かさは……素敵よね」
さやかの顔が一気に赤くなる。
「な、なななな何言ってるのよ!
友達同士だし、助けるのは当たり前でしょ!」
「うぇひひ、二人共私の最高の友達だよ」
三人は笑いながら泣いていた。
【第十話「Wはここに/暁美ほむらの友人」 了】
228 :
◆mbgGrCikwU
[saga sage]:2012/05/22(火) 06:41:07.66 ID:ZFBQoql50
さやかちゃん、ここ数日で設定的には滅茶苦茶強くなってます
恭介を守れなかったあれとかあれとかで気合入ったのとやっとこさ修業の成果が出てきて
後少ししたら大活躍の予定
229 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2012/05/22(火) 09:23:37.44 ID:foPZ3DmDO
乙
>>223
でほむら家に来たのって翔太郎一人だよね?
フィリップ通してるけど
230 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/22(火) 10:57:54.72 ID:iL4AGC3u0
申し訳ありません
完全にミスです
最初の時点ではフィリップが説得に来たことにしようとしてたのを後から書きなおしてこうなってしまいました
お詫びも兼ねて今晩キュゥべえが居なくなった後のグリーフシードの処理の話投下しますね
231 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2012/05/22(火) 12:14:37.23 ID:X0UQXQk60
乙乙
ミスに逐一お詫び+αくれるあたり、
>>1
の誠実さが伺えるわ
読んでて好感持てる
232 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/22(火) 15:04:19.52 ID:OO7xKV5ho
┌─< ⌒ヽ
| \
/ | | \ \ \ ,
/ / |、 \ ', , ′
' / i | \ -─- ミ | |_ ',
// 八 { \_\\`ヽ | |フノ
/⌒i |/ __\ \ ⌒/_ノ>x.i | |フノ !
| | 〃;ハ \{ {:::::ノイ::}〉 ′ 「 , へ. |
| i i. { {::/j 乂:し゚ソ/ /; |/ ) ハ |
| | 八 Vソ // / / } ん,ノ/ 八
八 } |/ / ` ノイ / / ⌒ノ イ /⌒ヽ
| | ノイ //¨´} / j/
| |> ‘` | 〃 //
| }i > ., _, | / i //
| /八 / jノイ ア¨ | ∨ |ノ
∨ ∨ハ/ |/ /| |ーヘー‐......__
r──;/7¨::;ノl `ーx \::::::::::::::::::}
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/:::::< <::::::::/ |::::::> >/:::::::::〉
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|:::::::|::/, イ\ / |\\::::|:::::::′
∨//::::ハ\`二二二二´//|::::::\\::::::{
i:{ {::::::::| | 〃|:::::::::::} }::::::}
|:\\:::| | { |:::::://:::::ノ
233 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/22(火) 20:04:46.83 ID:uvYYqMPM0
>>1
待っているぞ!!
>>1
ィイイイイ
234 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/22(火) 20:48:40.79 ID:y3qiwaZI0
何が起きたと言うんだ……
何故か
>>232
に天使がいるし
というわけで投下開始
235 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/22(火) 20:56:48.37 ID:y3qiwaZI0
【第十と二分の一話「Jの来訪/もう一人のインキュベーター」】
「さて、今回も例によって魔女は楽勝だったが……」
ネバーになったことでグリーフシードの消費が少ない巴マミ
戦闘スタイル上、肉体強化と自己再生のみに自らの魔法を絞れる美樹さやか
そもそも時間停止しか使えない暁美ほむら
彼女たちと違って杏子もゆまも戦闘時には魔力の消費が激しい。
とくにゆま、彼女の魔法は驚くほど強力な反面そこまで連続して使えない。
リスクとか効率なんてものを考えないシンプルで強力な効果。
それはそのまま彼女の精神的な幼さのあらわれと言え無くもない。
「どーしたのキョーコ?
今回はいっぱいグリーフシードも出たよ?」
佐倉杏子は悩んでいた。
そう、グリーフシードはこのところ異様に増えている魔女のおかげで大分楽になった。
一つの地域に少なくとも五人以上の魔法少女が居て、なおかつ全員がグリーフシードに悩まなくて済んでいる現状は良い。
巴マミや美樹さやかのような正義の味方でもない限り、魔女が多すぎるなどと危惧したりはしない。
「ああ、そうなんだが……」
「あ、ブランコだ!キョーコ!これで遊ぼう!」
「え?いやあたしそーいうので遊ぶ歳じゃあねえしなあ……ゲーセンじゃ駄目か?」
「またえーてぃーえむ壊して遊ぶの?」
「馬鹿やめろ、解った。一緒に遊ぶから、な?」
「わーい!」
彼女が危惧しているのは使用した後のグリーフシードだった。
今回の事件でキュゥべえと魔法少女達の間の亀裂は決定的になった。
あと少しのノルマを達成するためなら彼らは、否、彼はどんな手段も使う。
それを知った時、杏子は正直怖かった。
他の魔法少女も、巴マミを除けば同じ感情を抱いていた。
彼女も今になっては彼(?)に使用後のグリーフシードを預けようなどとは思えなかった。
236 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/22(火) 20:57:45.92 ID:y3qiwaZI0
「ほら、私の膝の上に乗りな」
「うん!」
二人でブランコに乗る。
何時ぶりだろうか、こんな穏やかな時間は
理想に燃えて戦い続け
家族を失い理想に裏切られて戦い続け
生にしがみつき、死を厭うて
師と離別し、再開して
師とそっくりな事を言う癖に弱い後輩を見つけて
妹のような少女に慕われて
魔法少女として同格と認められなくもない仲間も居て
「ああなんだ、今の私って結構悪くねえじゃん」
膝の上でニコニコと笑う子供。
彼女を抱えたまま空中で三回転くらいしながらブランコから飛び降りる。
おかしそうに笑ってる。
細い腕、白い肌、甘い香り、柔らかな頬、目立たない傷跡、古い傷跡。
「……帰るか」
「うん!」
「あんたが佐倉杏子だな?」
「あ?」
杏子は振り返る。
何時でも戦闘には入れる。
ゆまも臨戦態勢に入っていた。
そこに居たのは黒いインキュベーター。
237 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/22(火) 21:01:13.82 ID:y3qiwaZI0
「どうも俺達の仲間が色々やらかしたらしいからな、その埋め合わせを兼ねて俺達の星から俺が派遣されてきたのさ」
「私のことは知っているらしいから名乗りは省かせてもらうが……あんたは一体何者だ?」
「俺はジュゥべえ、キュゥべえと同じ星から来た
あんたなら冷静に話を聞いてくれると踏んでやってきたんだ」
キュゥべえ
そう聞いた瞬間に杏子の纏う殺気が濃密になる。
「さっさと要件を言いな」
杏子はジュゥべえを睨みつける。
「ただでさえインキュベーターには殺されかけているからな
妙なこと抜かしたらあんたも危ないぜ」
「伝えたい事は二つ
第一にインキュベーターも一枚岩ではないこと
第二にあんた達のグリーフシードの処分を俺達にさせてくれないかってことだ」
「なんだ、感情が無い種族の癖に内部分裂なんてあるのか?」
「俺達は感情で分裂したんじゃない
魔法少女を使い捨てて早急にこの星でのノルマを達成すべきだとする派閥と
魔法少女や人間との良好な関係を保ち、この星を半永久的にエネルギーソースとして使うべきだとする派閥
どちらも自らの星の利益のために自らの主張を通そうとしている」
「どのみちてめえの為に魔法少女を利用するんじゃねえか
私達が絶望すれば魔女になることには変わりない」
「それは間違っているな」
「どういうことだ」
238 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/22(火) 21:01:45.48 ID:y3qiwaZI0
「たとえば、だ
俺の担当する魔法少女には小説家をやっている奴が居る
そいつは俺に“自分の才能を理解する編集者”との出会いを願った
最初の契機は契約によるものだったとしても成功は彼女のチカラ
願いそのものに対して絶望なんてするはずない
キュゥべえの担当した魔法少女にも居た筈だ
自らの命を願った奴がさ
そいつだって契約がなきゃどのみち絶望の中で死んでいただろうさ
千歳ゆまだったっけか
あんただって契約しなければ杏子のピンチを救えなかっただろう
絶望して魔女になることは事実だが絶望するもしないもあんた達次第だぜ」
「ゆまは……」
「ゆまは関係無いだろう」
「済まなかったな
とにかく俺が言いたいのは魔法少女になるための願いってのは使いようなんだよ」
「絶望するような願いをかけるほうが悪いってか?」
「そこらへんの解釈はお前に任せる
ただ俺達はお前たちの使い終えたグリーフシードを処分する
あんた達が呼べば何時でもな」
「解った、とりあえず感情の問題は別としてだ
私たちは私たちの利益の為にお前たちを使わせてもらうとするよ」
杏子はとりあえず使い終えたグリーフシードを三つほどジュゥべえに投げつける。
「おう、好きに使え」
ジュゥべえは口でキャッチする。
それを飲み下すとジュゥべえは消えてしまった。
「三つか、三つも欲しいのかこのいやしんぼめ」
「どうしたのキョーコ?」
「……なんでもない、さて帰るかゆま」
「うん」
「今日はゆまも頑張ったし……アイスでも食っていくか?」
「……うん!」
【第十と二分の一話「Jの来訪/もう一人のインキュベーター」】
239 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/22(火) 21:02:17.05 ID:y3qiwaZI0
正直ジュゥべえのキャラがつかみきれてないので誰てめ絵になってしまったかもしれませんすみません
240 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/22(火) 21:19:46.95 ID:uvYYqMPM0
乙←クレーンアーム
241 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/23(水) 11:00:13.82 ID:NKEdiifDO
乙
まさかこんなところでジュゥべえさんを見るとはww
242 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2012/05/23(水) 12:31:25.50 ID:2nM37MQDO
今晩は
おまけ+本編になりそうです
長くなりそうですがご容赦をば
243 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 21:23:47.52 ID:VyT0WN4u0
という訳で今日の投下
244 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 21:25:54.82 ID:VyT0WN4u0
【第十一話「吹き荒れるW/本日は大乱なり」】
「探偵さん、良いかしら」
「なんだいほむらちゃん」
「今回は私の友達に任せて私は治療に専念するわ」
「……良かった」
「探偵さんのお知り合いも同じような目にあってるのでしょう?
なら同じような状態に目の前でなられるのも嫌でしょうし……
ただ一つお願いがあるんです」
「なんだい?」
「まどかの家族は国際特務調査機関に保護されるんですよね?
警察病院ということは私も似たような形になるのでしょう?」
「あ、ああ」
「まどかにだけ今までのループについて全て伝える必要があるんです
私と一緒に保護という形にしてもらえませんか?
もし保護先で何か有ったとしても私が最悪の事態は止められると思いますし」
「しかし……」
「最悪の事態は皆避けたい筈です」
「翔太郎さん、これはあたしとまどかと転校生で話し合って決めたことなんだ
なんとかならないかなあ?」
「解った、じゃあそれも向こうに話してみるよ」
「良かったね転校生、積もる話も有るんでしょうしゆっくり話してきなよ
その間にワルプルギスは私達がなんとかするからさ」
「ありがとうさやか」
「これからは一緒だよほむらちゃん」
「ええ、そうねまどか」
「じゃあ病院にはこれから向かうということで手続きをしておく
警察のガイアメモリ犯罪対策課から照井竜って奴が迎えに来る筈だから俺やまどかちゃんと一緒に病院まで行こう
それまでに他の友達に一旦お別れをしておくといい」
「ありがとうございます探偵さん」
「当然のことをしたまでさ」
翔太郎は格好つけてニヤリと笑った。
245 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 21:26:21.42 ID:VyT0WN4u0
「ほむらただいまーって、どうしたんだなんか沢山人が来てるみたいだけど」
「あ、探偵のおにーちゃんだ!」
「おうゆまちゃん!」
そこに杏子とゆまが帰ってくる。
「今日はおにーちゃん遊んでくれるの?」
「ごめんなゆまちゃん、お兄ちゃんこれからお仕事があるんだ
遊んであげるのはまた今度でいいかな?」
「えー……うん、わかった」
「よし、ゆまちゃんは良い子だな
ご褒美にこれをあげよう」
そう言って翔太郎は風都君キーホルダーをゆまに渡す。
「なぁにこれぇ?」
「風都君だ、俺の住む町のマスコットキャラクターさ」
「ありがとう!大事にするね」
「おう、それじゃあな」
左翔太郎はニコリと微笑むと集った魔法少女達を置いて何処かに行ってしまった。
その後ろ姿はこれから戦いに向かうようなどこか緊張した雰囲気を漂わせていた。
246 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 21:28:37.36 ID:VyT0WN4u0
――――
「イエスタディメモリの過剰適合者……実に興味深いですね」
伊坂は先日起きた戦闘についての報告書を眺めながら舌なめずりしていた。
暁美ほむら、彼女は非常に興味深い存在だ。
ガイアメモリが地球の記憶を力の源にするならば、魔法少女は個人の記憶を力の源にしているといっても良い。
地球の記憶は人体にとって有害だが個人の記憶から生まれた力ならばそのリスクは軽減できるのでは?
ソウルジェムとは極論たった一人にしか適合しないガイアメモリなのでは?
魔女化というのは実は自らが行なっていたガイアメモリの力を内部に取り込むということに近いのでは?
伊坂の頭の中に様々な仮説が渦巻く。
「何やってるのさ伊坂さん」
「おやキリカさんですか」
「悪いけど魔法少女は捕まえてきそこねたよ
オレンジ色の魔法少女だったんだけどなんかスパイダードーパントに邪魔されてね
あ、例の爆弾みたいな奴は仕掛けられてないから安心して」
「おや、それは大変でしたね。それよりキリカさん、貴方は魔法少女の魔女化についてどう思いますか?」
「え?魔女化?」
「魔法少女にとってそれは死と考えられていますが果たしてどうなのでしょう
私はどうにも違うことのように思えてなりません」
「……ふぅん、井坂さんもそう考えていたんだ」
「ええ、魔法少女としてのゴールは絶望と聞きました。しかしゴールが絶望などと医者としては認めたくはないですし……
魔女としての形態の方が個人の願いや記憶の力を色濃く反映している気がします
まるでガイアメモリを直挿しした時のようにね
ドライバーを使用しているドーパントを魔法少女だとすれば、直挿ししたのが魔女
自我を失うのは弱いだけなのではないでしょうか?」
「私もそう考えていたんだ
願いが使い方次第であるように絶望も使い方次第ってね」
「私も資料にあった魔女の力を見ましたが久しぶりに感動させられましたよ」
テラードーパントを初めて見た日を思い出す伊坂。
資料通りに魔女がその力を発揮できるならば彼にとって魔女は非常に面白い研究対象になる。
247 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 21:29:56.42 ID:VyT0WN4u0
「魔法少女の比ではない……理性を保ちながらあの力を使えればと思ってしまいますよ」
「話が合うね伊坂さん」
「あら二人共楽しそうね」
「やあ織莉子」
「これはこれは織莉子さん」
「何を話してらしたの?」
「大したことじゃないよ」
「魔法少女の性質について二三質問させていただいてました」
「……そう、ところで予知によると暁美ほむらと鹿目まどか及びその家族が国際特務調査機関の庇護下に入るという話です
さらに暁美ほむらと鹿目まどかは病院に入院という体で一時期この街を離れるとか……」
伊坂は椅子から立ち上がる。
「どうしたんですか伊坂さん?」
「暁美ほむらにこの街を出られると少々困りますのでね」
「分かってます、しばらく待機しておいていただくつもりでしたが予定が変わりました
鹿目まどかの殺害を私達が先に行う必要が有りそうです
そういう訳なので……」
その時、織莉子の家の電話がなる。
「少々お待ちください」
織莉子は話を中断してそれに出た。
電話口から聞こえてきたのは
「俺の名は大道克己、仮面ライダーエターナルと名乗った方が早いか?
美国織莉子、鹿目まどかの扱いについて交渉の場を持ちたい」
仮面ライダーエターナル
キリカはその単語に驚きを示す。
伊坂は呑気にチョコバーを齧っている。
248 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 21:30:57.31 ID:VyT0WN4u0
「場所と時間を指定させて頂けるなら考えても良いですが」
「そうはいかないな、前回はお前たちに全部決められたんだ」
織莉子は驚いた。
財団Xとのつながりも既に見ぬかれているらしい。
「はて、前回とは?」
「しらばっくれる気か、まあ良い
時間と場所は……」
織莉子の家の壁が爆音と共に吹き飛ぶ。
もうもうと瓦礫から煙が上がる向こうには四人の影。
「――――嘘!?」
織莉子の予知は一瞬前にその映像を彼女に与えた。
とっさにキリカだけを庇って彼女は真横に飛び退く。
彼女が見た映像通りのことが現実になる。
「――――今、ここだ」
大道克己
巴マミ
左翔太郎
フィリップ・ライト
「さあ話し合いを始めようか、美国織莉子」
織莉子は家の中を見回す。
伊坂がいつの間にか居なくなっている。
その意図を察知して肝心な時にしか役に立たない男だと織莉子は心の中で笑う。
「話し合い?それだけの暴力を背景にして話し合いだなんて素敵な提案ね」
さり気なく魔法で壁を直すマミ。
「分かってないようだな美国織莉子、話し合いなんてのは暴力無しじゃ成立しない
暴力を持たない相手ならばねじ伏せれば良いだけなんだからな
対話ってのはお互いに使われたくないレベルの暴力を持った者同士にのみ許される行為だ」
「所詮元は戦争屋ということですか」
「ふん、解ってるじゃないか」
「じゃあまずはそこにお掛けください」
テーブルを挟んで向かい合う織莉子と大道達。
「そちらの代表は……」
「まどかを守る魔法少女側としての代表は巴マミ
ガイアメモリ関連の事件についての代表は左翔太郎だ
俺は只のボディーガードに過ぎない」
「……そう」
「織莉子さん、貴方も魔法少女だったなんて知らなかったわ
もっと早く言ってくれれば一緒に戦えたのに……」
マミは残念“そうな”顔をして嘆く。
249 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 21:33:01.64 ID:VyT0WN4u0
「織莉子ちゃん、君が財団Xと手を組んでいたことは既に解っている
さらにガイアメモリの製造に絡んでいたこともだ」
翔太郎とフィリップは何か思うところがあるらしい。
憂鬱そうな表情をしている。
「それで……私は鹿目まどかの扱いについての交渉と聞いていたのですが
そちらから一体どのような提案があるのかお聞かせ願えますか?」
「どこまで貴方が絡んでいたかは知らないけれど先日の事件のせいでキュゥべえは完全にまどかちゃんからの信用を失ったわ
そして彼女が契約することの危険性を彼女自身も知った
もうまどかちゃんが契約する可能性は殆ど無いといって良い
だからまずはまどかちゃんのことを棚にあげて近々接近が予想されるワルプルギスの夜を倒すために協力しないかしら?
勿論、魔法少女狩りは中止してもらうわ」
「成程、解りました
そしてそちらの探偵さんの方からは?」
「ガイアメモリの製造の即刻中止だな」
「それと今まで製造したメモリのデータの提出もだね」
「その二つと引換に君達の保護、そして美国議員の死の真相を教えよう」
「成程……そちらの方がフィリップさんかしら?」
「ああ、僕がそうだよ
経験者として言わせてもらえばメモリの製造なんてろくなことにならない
ガイアメモリ犯罪予防も確かにそうだけど君みたいな未来ある少女がむざむざその未来を捨てる必要は無いからね」
「あら、お優しいのですね」
「相棒に影響されたのかもわからないね」
「まずはワルプルギスの夜撃破までの一時的な同盟ですがこれは考えても良い
ただし魔法少女のシステムについて貴方達がどこまで知っているかによります
だからこその魔法少女狩りな訳ですし」
「魔法少女が魔女を生むことは私達全員が知っているわ」
「ならば構いません
その上で貴方達が人としての死を拒絶するなら私は何も言いません
「良いのかい織莉子」
「ええ、どのみちワルプルギスの夜の前に戦闘を増やすわけにもいかないしね
差し当って魔法少女狩りは一時停止させていただきましょう」
「それは嬉しいわ、じゃあ同盟は……」
「ただし同盟にあたっては一つ条件があります」
「なにかしら?」
「鹿目まどかをこちらに渡して頂けるならば全面的に協力しましょう」
「できない相談ね、まどかさんの問題は話すにしたってワルプルギスの後
今は完全に居ないものとして考えてもらわないと困るわ」
「でしょうね、でも彼女こそが本当の脅威だと思いません?
ワルプルギスで滅ぶのは精々この街程度
鹿目まどかの力で滅ぶのは世界です」
「そうならないように私達が守るのよ
貴方達も一緒に彼女を守る気は無い?」
「冥府が一番安全な避難場所だと思いますが」
「そう、見解が違うようね」
250 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 21:36:53.44 ID:VyT0WN4u0
「非常に残念です
次に探偵さんの提案ですがガイアメモリの製造中止とデータの提出はできます
ただデータは既に財団に渡っていますからそのバックアップですがよろしいでしょうか?
ガイアメモリの製造は財団Xがこの街から手を引いた以上私達には旨みもありませんしね
というかもう既に辞めてますし
ただ父の死の真相についてはもはや興味はありませんし警察の保護も特に必要だとは思いません
ガイアメモリはもう街中に散らばっているようですがそちらの回収についてはどうぞお好きになさってください」
「……成る程ね、じゃあ後はまどかちゃんの話だけか」
「あら貴方達もまどかさんのことについては反対なのですか?」
「当たり前だ、何の罪もない女の子を犠牲にするなんて良い訳が無い」
「そのために何の罪もない沢山の人々を犠牲にしうる可能性を保つのですか?
何時また絶望的な状況が訪れて彼女が契約しないとも限らないのに」
「そうならない為の仮面ライダーだ」
「成程、解りました」
いつの間にか窓の外は激しい雨。
時折雷まで降っている。
長い“話し合い”になりそうだ。
織莉子は予知を使わずともそれを察した。
【第十一話「吹き荒れるW/本日は大乱なり」】
251 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 21:39:55.24 ID:VyT0WN4u0
次は二郎短編なのですが三十分ほど休憩
252 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2012/05/23(水) 21:40:12.78 ID:XW+40PQ+o
乙
253 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:08:10.35 ID:VyT0WN4u0
【おまけ〜Jのラーメン/大豚W全増しキター!〜】
「いやー今日のJEROは学園都市本店か、腕が鳴るぜ!」
「慣れてきたみたいじゃないか弦太朗」
「ああ!俺は全てのJEROの店主と友達になる男だ!」
先日の惨劇から既に一週間。
弦太朗は驚くべき速さでJEROに適応していた。
「ふふっ、弦太朗も慣れてきたみたいだし今度は二郎も連れてきて良いかな」
「おう!二郎もJEROが好きなんだろう?」
「ああ、稽古が終わった後二人で良く行ったもんさ
二郎のやつ、JEROに行く時に限って金が無いって言うから良く貸してやったっけ……」
「ハハハハ、うっかり屋さんだな」
無論、全力で逃げようとしていただけである。
「まったくだよ」
だからといって逃す流星ではないのだが。
「JEROに行くなら前日から食事のメニューは調整しねえとな!」
「それは違うぞ弦太朗、本物のジェロリアンなら当たり前のように三食JEROさ」
「なんてこったい……俺はまだJEROの真髄を極めて無かったのか!」
「俺達はまだ登りはじめたばかりなんだ……」
「このJERO坂をな……」
「――――あ!」
「どうした流星?」
「二人とも見てくれ……!」
流星が遠くを指さす。
254 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:10:09.55 ID:VyT0WN4u0
「あ、あれは!」
「もう再会できるなんて感激だぜ……俺、友達になりに行っていいかな!?」
「やめておけ、軽々しく話しかけるのは無礼に当たる」
「賢吾……」
「ただ、今から走れば彼女らと同じロットに入れるかもな」
「賢吾……!」
「そうと決まったら急いで行こうかふたりとも」
流星が満面の笑みを浮かべる。
「ああ勿論だ!」
駆け出す三人。
その視線の先には二人の少女。
一人は白、一人は黒、織莉子とキリカであった。
「さてキリカ、今日は全増しよね?」
「え?」
「大よね?」
「え?」
「Wよね?」
「え?」
「さあ、貴方のブタを数えなさい!」
「細切れチャーシューマシマシですか」
「そのマシマシ言うのをやめなさい!
マシといってマシマシにしてもらえるようになれと言ってるでしょう!」
「せっかく二人で外出だと思ったらコレだもんなあ……」
「いてっ!」
「あ、すいません!」
キリカが誤って男性とぶつかってしまう。
枯れ草色のコートを着て黒縁の眼鏡をかけた冴えない男性。
何時かのスパイダーのメモリの適合者だ。
ぶつかると同時に彼は何かを落とす。
255 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:10:53.50 ID:VyT0WN4u0
「あ、なにか落としましたよ?」
「あわわわ、すいません」
スパイダーの青年はそれを急いで拾い上げ、懐にしまう。
丁度弦太朗たちからは見えない角度だった。
「大事なものだったんですよね、ハハハ……危ないところでした」
そう言って織莉子達の方を見る青年。
その顔を見てキリカはギョッとする。
何時かのスパイダーメモリの男だ。
向こうは私服のキリカに気づいていないようだが、もし気づかれたら面倒なことになる。
そう思ったキリカは織莉子にさりげなく念話で事情を伝えた。
「……」
「……」
織莉子は黙って首を横に振った。
なんとしてでもここで食べたいらしい。
そんな彼女らの様子を見てスパイダーの青年は思う。
おそらく、俺と同ロットなのが嫌に違いない。
そうだ、それは当たり前だ。
こんなキモヲタデブメガネと同じロットなんて可憐なお嬢様方が嫌がるのも当たり前だ。
しかもかの有名な麺☆聖☆女。
彼女と同じロットという栄光を手に入れたいジェロリアンはたくさんいる。
その中でよりによって底辺ジェロリアンの俺。
同じロットで食べるという行為が一種の共同作業である以上、迷惑に決まっている。
何故俺は生まれてきた。
何故俺の顔面偏差値は低い。
俺だってイケメンになりたかった。
俺だってベルト巻いて変身して怪人と戦いたかった。
くそっ、どいつもこいつも俺のことを笑ってるんだバカにしやがって!バカにしやがって!
あの後ろの方の三人のイケメンも俺を馬鹿にしているんだ。
とりあえずすれ違うだけでクスクス笑ったりキモッとか言うのが奴らみたいなリア充の習性なんだ!
うわああああああああ!
そんな時、洒落た服装の二人の男が近くを通りかかる。
速水公平と立神吼、天ノ川学園校長と理事長秘書。
実は一緒に酒を飲みに行ってお互いの欠点等を罵り合う仲である。
「―――むっ」
「どうしたんだ速水」
「……今一瞬あの青年の星の運命が」
「本当か?ぱっと見冴えない男って感じだが……」
二人が青年の様子を観察しようとしたその時、織莉子は青年に話しかけてみる。
256 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:13:22.46 ID:VyT0WN4u0
「そういえば前にもお会いしませんでしたか?」
「き、きのせいで、でですよ!」
CDとかをスクラッチしてるみたいな喋り方だ。
織莉子に話しかけられた途端、青年の中に黒い感情が消えて行く。
「いや気のせいだったみたいだよ、立神」
「なんだ、驚かせやがって」
「済まなかったな、さて今日はオフだ
さっさと二人で飲みに行こう」
「ああそうしよう、我望様は飲めない方でな」
「あ、やっぱり?」
プライベートでは割りと打ち解けている二人であった。
ちなみに織莉子とスパイダーの青年も打ち解けていた。
「雲居利明さんと言うのですか?」
「は、はい」
「ね、ねえ織莉子」
引くから面倒になるのよ。
念話で織莉子は言う。
素直に仲良くお話すればなんていうことないわ。
キリカはそれを聞いてため息をつく。
あんな不気味な相手に対して気楽なものである。
まあ得体のしれなさで言えば織莉子の方が上なのかもしれないが。
257 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:14:27.49 ID:VyT0WN4u0
「同じロットみたいですけどお手柔らかにお願いしますね
なにせ私達ふたりともかよわい女性ですから」
かよわい(笑)
「え、あ、は、はあ……」」
「くっ……羨ましいぜ、あの人話しかけてもらってるぞ!」
「落ち着け弦太朗、あの男、かなりの使い手だ
恐らくは女神の御眼鏡にかなう食べっぷりを見せたのだろう」
「ここにおいてはいかによく食べるかだけが全てだ
弦太朗、俺たちもここで男を見せれば……」
「まさか麺ぬダルク(織莉子のブログ)や魔女の拉麺会(マミのブログ)に載れたり……」
静かに頷く流星と賢吾。
「……やるしかねえ」
弦太朗の闘志に火がつく。
「大きさは?」
「大!」
スパイダーの青年はハッキリとよく通る声で答える。
流れるような食券購入。
それだけで彼が一定の使い手であることがわかる。
キリカを除く全員が不敵な笑みを隠せなかった。
「大2つです」
続いて織莉子がキリカの口を防ぎながら食券を購入。
既に目のハイライトが塗りつぶされているキリカ。
出荷される寸前の子牛でもこんなこの世の全てに絶望した表情はしない。
「大三つだぜ!」
最後に弦太朗達が食券購入。
奇しくも丁度六つの席が空く。
背後には行列、ロットも完璧。
最高の舞台がここに完成した。
258 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:15:11.23 ID:VyT0WN4u0
「おい、聖女だぞ……」
「それだけじゃねえ、あの朔田が来てやがる」
「朔田と一緒の男は……ロットプロフェッサー歌星じゃないか
あいつらならもしかしたら聖女を……」
「馬鹿やめろ、恐れ多いだろうが」
「あれ……あの地味な眼鏡の人ってとっしーじゃね?」
「うわほんとだ。ブログでまったく見ないから知名度は低いが実力は一級
他の若手ファイターとは違う腰を据えた粘り強い戦い方から蜘蛛に例えられているとっしーじゃないか」
「なんで説明口調なの?」
「尺の問題、あの人のホームはここからだいぶ遠い筈なのに……」
「聖女とプロフェッサー歌星、麺聖朔田……それに一匹狼(ボッチ)のとっしーが混ざるか」
「今日の天ノ川学園都市は荒れるぞ……」
ギャラリーがざわめく。
一方、ボッチとか聞こえてきてスパイダーの青年は瞳を曇らせていた。
「もう便所飯は嫌だお……」
彼の隣には瞳が曇ったキリカが座る。
「キリカ、解ってるわね?」
「ゼンマシゼンマシゼンマシゼンマシ……」
機械のように繰り返すキリカ。
スパイダーの青年と二人で君の瞳曇らせ隊結成である。
「ニンニクは?」
「「「「「「全増し」」」」」」
即座に差し出される豚ダブル大ラーメン全増し
別の店ならばチョモランマ、マシマシだの言わねば出ない量。
しかし店員にはわかっていた。
今ここに並ぶ者共いずれ劣らぬ一騎当千のジェロリアン。
この規格外の量を以てしても1ロット以内に食い切る狂人どもだ。
259 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:17:48.77 ID:VyT0WN4u0
「全増しキター!」
弦太朗は笑みを浮かべる。
「俺のロットは嵐を呼ぶぜ」
それはラーメンというにはあまりにも大きすぎた。
「やれやれ、あまりはしゃぐな」
油っぽく、濃く、重く
「ゼンマシマシマシマシマシマシマシ…………」
そして大雑把すぎた。
「あ、あのキリカさんでしたっけ?大丈夫ですか……
あの織莉子さん、キリカさ……」
それは正に麺入りモヤシだった。
「ライザーウィーン♪かけぬけーろー♪」
「だめだこりゃ」
全員が同時に動き出す。
だがそれぞれに向かう場所は違う。
賢吾とキリカ、そしてスパイダーの青年は定石通りのブタ狙い。
「割って……差す」
賢吾は小さくつぶやいた。
無論、麺をひっくり返して野菜を熱で小さくすることも忘れない。
織莉子と弦太朗は真上の野菜から食べていく。
しかし流星、麺聖と呼ばれたこの男だけは違った。
「――――なんだあれは!」
「おまえ知らないのか?」
流星は麺を避け、自前のレンゲでそのままアブラやニンニク、ブタを掬って口に運ぶ。
そのレンゲはレンゲと言うにはあまりに大きすぎた。
長く、厚く、重く、そして大雑把すぎた。
これが麺聖、朔田流星の武器“ブタ殺し”
彼は武術の鍛錬の過程で舌の熱を感じる神経を一時的に遮断させることができる。
それ故にスープごと麺以外の全てを前もって流しこんでしまえるのだ。
この異形のファイティングスタイルはプロフェッサーと呼ばれた賢吾の天敵だった。
賢吾は近くの人間のファイトスタイルを極限まで真似することにより相手のペースをかき乱して自由に操るタイプのファイター。
真似しようのないこの戦い方に彼は毎回手を焼いていた。
そこで彼は流星と自分の間に弦太朗を配置する。
これによって弦太朗のペースを操りながら間接的に流星にゆさぶりをかけられる。
――――だがしかし、今回は事情が違う
流星は感じていた。
今回は賢吾のロットジャミングを感じない。
むしろ最適速度、100%に調整されている。
一瞬だけ二人の視線が合う。
そう、邪魔だけでなく、最良のコンディションに持っていくこともまた可能。
それ故のプロフェッサー。
今回ばかりは普段鎬を削る彼らと言えども休戦せざるを得ない敵が居るのだ。
美国織莉子、否、聖女。
しかし彼らはその影に隠れる2つの恐怖に未だ気づいていなかった。
そして、気づいた時には既に遅い。
260 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:19:45.84 ID:VyT0WN4u0
「プロフェッサーが同じロットの同じスタイルの奴より遅れてる?」
「普段のプレッシャーのかけ方じゃないな……」
「変則タイプの攻め方か……?」
賢吾は気づく。
織莉子の向こう側の二人は二本の箸を用いた天地返しを起点にしたベーシックスタイル。
自分と同じだ。
なのに、自分より早い。
「マシマシマシマシ……」
「ボッチじゃないボッチじゃないボッチじゃない……」
キリカからは既に表情が消えている。
まるで感情のない機械のように食べ続けている。
スパイダーの青年も同じ。
無我の境地。
奇しくも二人は同時に其処に至っていた。
青年は積み重ねた年月が
キリカは近くで見続けた織莉子や他のロティストの食べ振りが
意識を0にした極限状態で理想のフォームを彼らの中に形成していたのだ。
彼らは無意識の内に理を手にしていたのだ。
心を殺せば、もう何も怖くない。
大量のブタを顎が砕けんばかりの勢いで噛みちぎって飲み込んでいく。
「――――――――!」
一方、正々堂々真上からブタや野菜を食べていく弦太朗と織莉子。
彼らの速度はほぼ同じ。
若干、弦太朗が後手に回っているように見えなくもない。
そして勝負はこの瞬間においても加速する。
織莉子がブタと野菜を排除して、丼を正面からつかむ。
261 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:20:11.75 ID:VyT0WN4u0
「来るぞ!織莉子さんのあの技が!」
「――――飲んだ!」
その様子を見て弦太朗は賢吾の方を一瞬だけ見る。
「お前の非常識はそんなもんじゃないだろう、見せてやれ弦太朗……」
流星も静かに頷く。
「JEROのラーメンとすら友達になると言い切ったお前ならやれる」
弦太朗も一瞬遅れて丼をつかむ。
「置いて」
割り箸を置く。
「飲む!」
丼を直接口に運ぶ。
麺とスープを同時に受け止める。
JEROのラーメンだって、彼には友。
友なら全てを受け止めるべきなのだ。
織莉子は静かに驚嘆する。
まさか自分と同じことが出来る人間が居るとは。
「さて、更に加速していくぜ」
自分を挟む二人の様子を見て流星はレンゲを置く。
箸に持ち替えた。
そう、彼が相対するのは後はモヤシ混じりの麺だけ。
賢吾と勝負している時の彼よりも遥かに早い。
明らかにオーバーペース。
弦太朗と織莉子という二人の天才に挟まれて彼もまた明らかにペースを崩していた。
「マシマシマシマシ……‥‥」
誰かキリカちゃんを救ってあげてください。
キリカとスパイダーの青年のたどり着いた境地は同じだった。
しかし、体格には圧倒的な差がある。
キリカでは無我の境地の時に与えられるJEROラーメンの速度に耐え切れないのだ。
これこそ積み重ねた年月の差。
キリカの箸が止まる。
そこを賢吾が追い抜いていく。
「ごめんね……織莉子」
まず真っ先にキリカがファイトから脱落した。
262 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:24:03.27 ID:VyT0WN4u0
「くっ……」
次に流星の箸が目に見えて遅くなり始める。
「点滴、岩をも穿つ……!」
一歩ずつ、進んでこそいる。
あと僅かな麺が食べられない。
「んぐっ、んぐっ、……あっ、あついわ、それに喉に絡んで……」
無駄にエロいのは気のせいだ。
織莉子はこの激しい戦いのさなかにおいても我関せずで丼の中身を飲み込み続ける。
残りあと僅か、デッドヒートは続く。
コトン
弦太朗が丼を置く。
「…………」
顔面蒼白。
限界は明らか。
彼もまた散りゆく星の一つになるというのか?
「弦太朗、君の非常識はそんなものじゃないだろう」
しかし天はそれを認めない。
「受け止めてくれ、俺たちの友情」
「え……?」
両脇から賢吾と流星が弦太朗の丼をつかむ。
「「抜いて」」
賢吾と流星が丼から割り箸やレンゲを抜き取る。
「やめろ!」
弦太朗の悲鳴。
「「さす!」」
「許してくれ二人とゴボガバ!?」
「「みんなの力で!丼(ウチュウ)を掴め!」」
こんな友情勘弁してくれ。
二人は弦太朗の口の中に無理やりラーメンを注ぎ込む。
「……馬鹿な、この私が、負けるなんて」
最後の最後で織莉子を追い抜いた。
弦太朗は勝ったのだ。
織莉子は空の丼を置く。
263 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:26:00.81 ID:VyT0WN4u0
「ごちそうさま」
流星と賢吾がコントかましている間にスパイダーの青年も完食。
横で気絶しているキリカを心配そうにチラチラ見ている。
「あらすいませんお兄さん、キリカを自動販売機まで運んでくれませんか?」
「え、あ、はぁ……」
「わたし、この子が残した分を食べないといけないので」
その場に居た全員が凍りつく。
このあとまだ食べるのか。
織莉子を残して、五人は店の外に出た。
「さて、弦太朗がこんな状態だし、今日は一旦帰るか」
「ああそうだな」
賢吾と流星は口に黒烏龍茶の刺さったままの弦太朗を担いでどこかに行ってしまった。
「キリカさん大丈夫っすかー」
「もっと増さないと……織莉子に迷惑かけちゃ……」
青年は面白い悪戯を思いついた。
「……ギルティー」
「ひゃあ!?」
キリカが飛び起きる。
「あ、あれ!?織莉子!織莉子は!?」
「向こうで食べてますよ」
「あ!」
「あ、食べ終わったみたいですね」
青年は黒烏龍茶を2つ買ってキリカに渡す。
「熱いバトルをさせて頂いたお礼です
ありがとうございました」
そのままスパイダーの青年も駅の方に行ってしまう。
「……キリカ」
灰のようになっていたキリカの前に織莉子が立つ。
「ごめん織莉子、迷惑をかけてしまったみたいだ……」
「ううん、貴方は頑張った」
キリカに手を差し伸べる織莉子。
「さ、帰りましょう?」
二人の手が確かに繋がる。
二人はまだ登りはじめたばかりなのだ。
この果てしなく続くJERO坂を……
※こんなこと現実のラーメン屋でやった場合警察を呼ばれかねません
※絶対に絶対に絶対にやめましょう
※あと現実のラーメン屋では白黒の美少女に出会うこともありません
【おまけ〜Jのラーメン/大豚W全増しキター!〜 了】
264 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/23(水) 22:27:13.33 ID:VyT0WN4u0
正直反省してる
265 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/23(水) 22:33:14.51 ID:2W5vzAkSO
本編なみに気合い入ってね?
俺もオマケ暴走派なんで…
乙っす
266 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/23(水) 22:37:41.28 ID:NKEdiifDO
乙wwwwww
JEROとすら友達になるとは…流石弦ちゃんやで
267 :
◆mbgGrCikwU
[saga sage]:2012/05/23(水) 22:50:32.79 ID:VyT0WN4u0
むしろこれが本編……!
いやなんでもないですほんとごめんなさい
268 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/24(木) 01:05:53.81 ID:xDoYfUxbo
井上ライダーではよくあること
269 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:00:55.18 ID:/h6pdrez0
何故俺が井上信者だとしってるんですか!
答えてください!タチバナさん!
というわけでやっとこさ動きの出そうな本編です
270 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:01:54.51 ID:/h6pdrez0
【第十二話「Tの向こう側/極限を求めるもの」】
「君が伊坂真紅郎だね」
「……はて、君はたしかインキュベーターでしたか」
「ああ、そうだよ」
「私に一体何の要件が?」
大道達の襲撃の気配を察知した伊坂はその直前に美国邸を抜け出していた。
向かう先は暁美ほむらの家。
AtoZのメモリの力を手に入れた今の自分ならば暁美ほむらの確保も容易い。
それに仮面ライダーも今なら織莉子達に釘付けになっている。
そう思っての行動だった。
「僕と契約して魔法少女になってよ」
「はぁ?」
そもそも井坂深紅郎は少女ではない。
「魔法少女のシステムは少女のためのものではない
運用に一番効率が良いから少女を用いているだけさ
だからその気になれば成人男性だって契約はできる
無論、魔女になることもね」
「論外ですね、リスクが多すぎる
そもそもそれでメリットは有るのですか?
私からとれるエネルギーなど微々たるものでしょう」
「君が魔女になれば世界は絶望に包まれる
多くの少女達が君を倒すために魔法少女になるだろう
そうすれば多くのエネルギーが僕達の元に入る
こうしてこの星は僕達にとって用済みになり、もう二度と魔法少女は生み出されない
魔法少女システムのせいで絶望する子供達はいなくなるんだ
人類の自由と平和を守るために一番良い手段だと思ったんだけどね」
「……なるほど
しかしインキュベーターはそのような感情を持つ種族ではないと聞いてましたが」
「君たちだって家畜を効率良く処理するために痛みを感じない処置をするじゃないか」
「解りました、考えておきましょう」
「よろしく頼むよ」
そう言ってキュゥべえは何処かに行ってしまった。
伊坂は歩き続ける。
ポツリ、ポツリと雨が降ってきた。
コンビニでビニール傘を買っていく。
一人で差す傘はなんとはなしに虚しかった。
271 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:02:36.91 ID:/h6pdrez0
「冴子さん……」
ため息をつく。
しばらく歩くと彼は目的の場所にたどり着いた。
「ここが暁美ほむらの家ですか」
エンジンの音。
通常は犯人を護送するために使われる警察の車だ。
遠くでその車は止まり、中から赤いコートを着た男が歩いてくる。
「地獄より這いでてきたか……井坂深紅郎!」
「照井竜……!」
それ以上の言葉は要らない。
カチッ、とガイアメモリのスイッチが鳴る。
「アクセル!」
「ウェザー!」
「変、身」
仮面ライダーアクセル
ウェザードーパント
家族を奪われたものと奪ったもの
時を変え場所を変え姿を変え、再び両者の戦いは始まる。
【第十二話「Tの向こう側/極限を求めるもの」 了】
272 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:03:25.06 ID:/h6pdrez0
【第十三話「お茶会」】
「マミさんに連絡つかないよ?」
「えー、マミのやつが一番こういうの好きなのに」
「そういえば杏子あんたマミさんとどういう関係なの?」
「まあそれは後で語ってやるよ」
大道達が織莉子と接触し、照井竜が復活した伊坂と熾烈な戦いを繰り広げていた頃、
魔法少女達はほむらとまどかとのしばしの別れを惜しむための茶会を開いていた。
「ケーキが足りないわ……」
「誰か買ってこいよ」
「待った」
「どうしたさやか?」
「ケーキって、魔法で……出せる?」
「…………いや、できるだろうけど
つーか前にマミがやってた」
「どれくらい魔力使うの?」
「……本当に少しだけだが」
「だが?」
「良いのだろうか、そんなことに使って」
「じゃあゆまがやるー!」
「いや確かにゆまの魔力量なら問題ないけど……」
魔法の燃費の悪さを補うようにゆまの魔力量は膨大だ。
だが良いのだろうかそんなことをして。
杏子は悩む。
273 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:03:51.26 ID:/h6pdrez0
「じゃあここはさやかちゃんが!」
「私もやってみようかしら」
「転校生は今魔法使っちゃ駄目」
「私買ってくるから良いよ」
「まどか、今は外で何があるか分からないからここに居なさい」
「もー……ほむらちゃんったら心配性なんだから」
とも言い切れないのはわかっているのだが。
「さやかちゃんがやるって!」
「ゆまだよ!」
さやかとゆまが竜虎の構えをとって相対している。
「待て待てお前ら、分かった。アレは意外と難しいから経験者である私が……」
見かねた杏子が間に入ると
「「どうぞどうぞどうぞどうぞ」」
完璧だった、色々と。
「うぇへへ、ダチョウ倶楽部みたいだね」
「なにそれ?」
「ん、なんでもないよ」
「じゃあやるぞ、絶対に笑うなよ」
「え?」
「いや、私ケーキを出したことはあるんだけどな……」
「あるんだけど?」
「教えてもらった人に言われたとおりにしかできないんだ……
その方法がちょっと……」
「良いから早くー!」
「わ、解ったよ」
杏子はテーブルに手をかざす。
「ラミパスラミパスルルルルル!ストロベリーパイよ出てきなさい!」
人数分出てくるストロベリーパイ。
全員がキョトンとする。
274 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:04:17.36 ID:/h6pdrez0
「…………笑えよ」
「あなたがそんなユニークなキャラクターをしてるなんて知らなかったわ
魔法で食べ物出さなかった理由ってもしかして……」
ほむらは真顔である。
「い、いや美味しそうだし、いいいいい、良いんじゃないかな」
さやかは目が泳いでる。
「キョーコ面白い!」
無邪気に笑うゆま。
「そ、そういえば紅茶淹れておいたよ!」
フォローするまどか。
「……これを私に教えた奴の名前を知りたいか」
「だ、誰……?」
「巴マミだ」
本当に絶句する一同。
「その上これを私に教えた一週間後
『やっぱり時代はマジカルステージね!』といって今度は私に別のやり方を強要してきた」
「え、ちょ、ちょ、ちょっと待って
それじゃあマミさんの弟子だったのあんた?」
「そうだよ、この際だからぶちまけてやらあよ
私があいつに振り回されていかに酷い目にあったか……」
「……ゴクリ」
「まず私は必殺技に名前をつけることを強要された
ロッソファンタズマ……それが私の魔法に与えられた名前
だがそれは地獄の始まりに過ぎなかった」
「かっこいいじゃん!」
「ゆまも必殺技欲しい!」
「お前らのセンスにはついていけなさそうだ」
「それでそのあと貴方はどんな目に遭ったの?」
「ある日巴マミは『聖堂教会秘蹟蒐集課所属“幻奏者(ザ・クリエイター)”佐倉杏子』と書いたノートを持ってきた
そしてこういったんだ
『読み仮名はロッソファンタズマで決定だけどどうやって書くことにする?』
当時のノートを保管してある」
そう言って杏子はノートを差し出す。
赤光幻想
最後の審判
疾風迅雷
紅赤朱
魔女に与える鉄槌
断罪の磔柱
異端審問
縛鎖結界
その他もろもろ見ているだけでそこらへんに頭を打ち付けたくなる単語が羅列されている。
オススメ!と右に書かれていたりするともういたたまれない。
275 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:04:48.16 ID:/h6pdrez0
「うわなにこれすごい!」
「ゆまこれにする!」
「さやかちゃんもゆまちゃんも絶好調すぎだよ……」
「あら杏子貴方泣いてる?」
「心の汗だよ」
「ねえ杏子、この浄罪の大炎って?」
「自らのソウルジェムの限界を超える魔力量をわざと暴走させて大爆発を起こす必殺技
マミさんが『自爆技って格好良くない!?』ってことで無理やり……」
「キョーコ!この紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)って?」
「浄罪の大炎の上位互換」
「そういえばあのティロ・フィナーレってどう書くの?」
「ノートの最後の方に見本としてあいつのノートのコピーが貼ってあるはずだ」
「あ、あった」
「第百八式殲滅魔弾(ティロ・フィナーレ)……」
「とりあえず数字をつけたかったらしい」
「無限の銃声(アンリミテッド・バレット・ワークス)」
「声ってなっているのは砲火の表現らしい
英語はその時の気分だそうだ」
「終焉を喰らう者(ティロ・フィナーレ)」
「別バージョンだな、なんだかに目覚めた時にのみ撃てる究極のティロだそうだ」
「ティロ……?」
「いや、言いづらいじゃんティロ・フィナーレって
だからティロ
ティロるティロッたティロらない」
「やっぱりマミさんは最高です!」
「私もマミお姉ちゃんに必殺技の名前つけてもらう!」
「ゆま、お前まで闇に堕ちることは無いんだよ」
「さやかはもう色々手遅れね」
「何言ってるのさ転校生!このセンスが分からないの!?」
「はぁ……」
「あら、なにこれ?」
「秘密の特訓……開けてみよう!」
「……ほむ?一日一時間の醤油買い出し?」
「私もやればいいのかな」
「やってもお前の因果値は溜まらないんじゃないかな」
「因果値?」
「お前の陰我は俺が切る」
「ぃゆっけー風の如くー」
「まかいーのー」
ピンポーン
その時、突然チャイムが鳴る。
インターフォンをとるほむら。
向こう側から聞こえてきたのは聞き覚えがある声だった。
276 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:06:38.79 ID:/h6pdrez0
「ガイアメモリ犯罪対策課の照井……」
「刑事さん!?」
「もしかしてその声は……?」
ほむらが玄関まで走って扉を開けるとボロボロの姿の照井が立っていた。
「刑事さん一体何があったんですか!?」
「君だったのか……
それよりもここは危ない、早く車に乗ってもらえるかい?」
恥ずかしそうに笑って見せる照井。
「え、あ、今まどかを呼んできます」
リビングに戻ってくるとほむらの分のケーキが誰かに食べられてた。
「もう行くのか?」
「杏子、貴方食べたわね。私の分のケーキ」
「帰ってきたらまた出してやるよ、それまでおあずけってことで」
「……帰ってきたらつねってあげる」
「まどか、あんたが帰ってこないとかなり寂しいんだからね
あとさっさとまどか連れて体治して帰ってくるのよ転校生
さすがのさやかちゃんでもやっぱりあんたが居ないと不安かなって」
「おいおいそれはあたしが頼りないってことかい?」
「うぇへへ、さやかちゃんったら」
「わかってるわ」
「……その、あの」
「ゆま、別にこの前のことは気にしなくて良いわ」
「帰ってきてね?」
「ええ」
「じゃあもう行くの?」
「そうよまどか」
三人を残してまどかとほむらは照井の車に乗り込む。
「お別れは言えたのかい?」
車の中で照井は尋ねる。
「言う必要が無かったので」
「また会えるもんね」
「そうか」
今度は守れた。
そう思って照井は少しだけ笑った。
いつの間にか空は晴れ渡っていた。
【第十三話「お茶会」 了】
277 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:07:23.62 ID:/h6pdrez0
【第十三と二分の一話「死闘」】
前回の話の前に時間軸は遡る。
運命の戦いの幕は切って落とされた。
「伊坂あああああああああああああああああああ!」
エンジンブレードを唸らせ、照井がウェザーに斬りかかる。
ウェザーはすんでのところでそれを回避し、至近距離から火炎を照井に浴びせかけた。
そのはずだった。
照井が狙いを外して空振ったエンジンブレードが地面に突き立てられる。
伊坂の攻撃が直撃する寸前、照井は確かに笑った。
「……全て、振り切るぜ」
「――――消えた!?」
「トライアル!」
一瞬だけ視界に映った青い閃光。
それは彼を冥府に送りった極限への力。
アクセルトライアル。
「エンジンブレードは囮か!」
とっさにアイスエイジの力で自らの身体を冷気で覆う伊坂。
しかし、それに触れて手足が凍りつくより早く照井は攻撃を仕掛けられる。
疾走する拳撃、加速する蹴撃。
だが伊坂も負けてはいない。
そのメタルの力を使って軽くなったトライアルの攻撃の全てに耐えている。
「この程度では傷一つ付けられんよ?」
「ならこれでどうだ!」
顎に突き刺さる拳。
伊坂は吹き飛ばされるがやはりダメージはない。
「エンジン!」
「――――――――なに!?」
吹き飛ばされた先には先程囮で捨てられたエンジンブレード。
アクセルは既にトライアルから通常状態に戻っている。
278 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:09:03.52 ID:/h6pdrez0
「マキシマムドライブ!」
「うおおおおおおおおおおおおお!?」
流石にあれはまずい。
伊坂は吹き飛ばされながらもバードのメモリを使って空へ舞い上がる。
エンジンブレードによるマキシマムドライブが彼に掠る。
「バードの力まで手に入れているだと!?」
次の瞬間、照井のもとに大量の雷が降り注ぐ。
絶叫する照井。
「ハハハハハ!私は既にAtoZ全てのガイアメモリの力を宿し完璧となった
お前が私に勝てる道理はない!」
「それはどうかな?」
「アクセル、アップグレード!」
「なんだそれは!?」
「お前が眠っていたらしい間に新しく出来たものさ!」
「ブースター!」
アクセルの紅い身体が黄金色に染まっていく。
丁度通常の形態とトライアルの中間のようなその姿。
アクセルブースター。
「行くぞ伊坂!」
照井もまた空へと舞い上がる。
蛇のようにうねる雷を回避しながら伊坂の近くまで翔ぶ。
近づかれては危険と考えた伊坂は背中の翼でどこまでも飛んでいく。
雨だれを躱し、雲を破り、二人は見滝原の上空まで飛び上がった。
「これでも喰らえ!」
足元の雲が突然照井を包み、全方向から雷を放つ。
しかし照井は体捌きだけでそれを躱してみせる。
279 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:10:59.71 ID:/h6pdrez0
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「エンジン!マキシマムドライブ!」
「くそっ!」
飛びかかる照井。
躱す時間はない。
伊坂は全ての力を集めて掌から雷を出す。
ぶつかり合う雷と雷。
やはり僅かに伊坂の力のほうが強い。
だがしかし、照井には負けられない理由がある。
仮面ライダー。
それは人の自由と平和を守る正義の味方。
ならば魔法少女もまた守らなければならない存在。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
一刀両断。
衝撃で辺りの雲が全て吹き飛ぶ。
伊坂の雷を断ち切り完全に彼を捉えたのだ。
しかし照井は自らも雷を浴び、伊坂と二人気絶しながら別々に地面に自由落下する。
落下地点は丁度ほむらの家の近くの路上。
照井は変身を解除すると照井は暁美ほむらの家までエンジンブレードを杖に歩き始めた。
280 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:11:36.01 ID:/h6pdrez0
――――
ぼろぼろになって路地裏で仰向けになる白衣の男。
井坂真紅郎。
その瞳は怒りに燃えていた。
「馬鹿な……この私の新しい力が破られるとは」
「やあ伊坂真紅郎」
「インキュベーター……!」
「君が死んでいた間に仮面ライダーは力をつけている
今の君程度では勝てるかどうか怪しいと思うけど……?」
「今のはまだ蘇ったばかりで力が足りなかっただけのこと
君たちの星の技術に興味はありますが君と契約しようなどとは思わない」
「そうかい
ぼくは君が首を縦に振ってくれるまで待っているよ」
「勝手にすると良い……」
キュゥべえは伊坂に背を向けて何処かに行ってしまう。
そんな背中を見送りながら伊坂は壁に拳を叩きつけた。
壁はあっさりと崩れたが伊坂の心は晴れぬまま。
いつの間にか空だけは晴れ渡っていた。
決戦の夜は近い
【第十三と二分の一話「死闘」 了】
281 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/24(木) 08:19:57.42 ID:/h6pdrez0
【おまけその一】
マミ「克己さん紅茶飲みますか?」
大道「俺はコーヒー派だ」
マミ「マミィ……」
【おまけそのニ】
まどか「ビアンカかフローラで言えばビアンカだよね」
杏子「あの腹黒ブルーは無いわ、ブルーなんて大抵ろくなもんじゃ……」
さやか「サヤァ……」
ほむら「い、いや、フローラでしょ!」
マミ「そ、そうよ!幼馴染ってだけで縛られる必要hhhhhhhhhhhhhhhhhh」
さやか「サヤァ……」
マミ「もうデボラしかないじゃない!」
ほむら「貴女は何処まで面倒なの!?」
282 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2012/05/24(木) 10:35:21.38 ID:VnBn9lDw0
乙
ベリーソード…
283 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)
[sage]:2012/05/24(木) 13:01:00.93 ID:3GjP+DTv0
ウェザープラスAtoZのメモリとかチートだな
284 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/24(木) 13:43:59.98 ID:JgG9JUzDO
ビアンカは選ばないと罪悪感がやばい
つまり上条はお前の罪を数えろ
285 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/25(金) 07:29:44.48 ID:3PxMWVOZ0
【第十三と三分の二話「停戦」】
雨が降っている。
風は強く、雹さえ降っていた。
「ところで織莉子さん、何時か一緒に食べたJEROの味を覚えてる?」
「ええ……全マシでね」
「この前、鹿目さんも含めて五人でJEROのラーメンを食べたわ」
「……それで?」
「鹿目さんは普通、美樹さんはカラメ、佐倉さんは大盛りアブラマシヤサイマシ
暁美さんはなんだったかしら……ああ小盛りだったかしら」
小盛りと聞いて鼻で笑う織莉子。
二人以外の全員が沈痛な面持ちでうつむいている。
地獄しか想像できない。
「ねえ織莉子さん」
「なに?」
「私ね、魔法少女を初めて以来、ずっと一人だった
佐倉さんと出会って、他の皆と出会って、私はすごく嬉しかったの
だからあなた達とも手を繋ぎたい
魔法少女同士だもの、きっとどこまでも手をつないで一緒に戦えるわ」
「手を……つなぐ?」
その言葉に織莉子は反応する。
そんな様子を見て翔太郎は彼の後輩を思い出した。
「ねえ左さん」
「なんだい?」
「仮面ライダーと魔法少女って似ていると思わない?」
「え?」
「本来敵の持つ力を扱って、何時か自分が怪物になるかもしれない恐怖とも戦わねばならない」
「…………」
「そんな仮面ライダーは皆手を取り合って戦ってるわよね」
「手をつなぐか……俺の後輩にそんなこと言ってる奴が居たよ
仮面ライダーOOO、火野映司って名前だったな」
そういえばあいつも議員の子供だった。
そんなことも思い出す。
286 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/25(金) 07:30:11.51 ID:3PxMWVOZ0
「エイジ……?」
織莉子がわずかに反応する。
それを翔太郎は見逃さなかった。
彼の中で交渉後の行動指針が決まる。
「仮面ライダーが一緒に戦えるなら、魔法少女だって一緒に戦える
それって素敵なことじゃない?」
「……素敵ね、美しいわ、でも無意味よ」
「何故?」
「貴方はそんなことを思っていない」
「どういうことかしら」
「貴方は既に死んでいる、そんな感情論で動けるわけがない
そもそも財団Xと組んであなた達を危険に追い込んだ相手にそこまでのんきなこと言えないわ」
フィリップが一瞬だけ怒りの表情を見せる。
だが翔太郎はそれを抑える。
「…………まあそうね」
「私達への協力要請は感情的なものじゃなく
至って冷静な戦況への推察から行われたもの」
織莉子は時計を見る。
「そう思う?」
伊坂が失敗したにせよ成功したにせよ、ここがタイミングだろう。
成功したならばそのまま目的達成。
失敗しても停戦は成立しているから伊坂と織莉子の関係が発覚するまでに逃げを打つ時間はある。
「ええ、だから良いわよ別に
見滝原上空にスーパーセルの発生が予測されています
本格的な災厄はおそらく明後日
まずはそれまでお互い不戦条約を結ぶとしましょう」
「そう、嬉しいわ」
マミと織莉子は同時に笑う。
「ところで織莉子さん?
私達に色々迷惑をかけてくれたわけだし……」
「な、なにかしら?」
「良ければ貴方の予知能力を少し使わせてくれないかしら?」
流石に断れない。
「織莉子」
「構わないわキリカ、何に使うのかしら?」
「ワルプルギスの夜の進行コースと時刻の予想」
「それなら言われなくても教えようと思っていたわ」
「そう」
いつの間にか外は晴れ上がっていた。
【第十三と三分の二話「停戦」 了】
287 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/25(金) 07:30:51.17 ID:3PxMWVOZ0
【第十四話「決戦前夜/V戦前夜」】
「おう、映司か」
「あれ?左さんどうしたんですか?」
左翔太郎は電話をかけていた。
「……お前、美国議員の娘さんと面識はあるか?」
「美国……まあ、一応。もしかして彼女がガイアメモリに!?」
「事態はもっとまずい、いや解決したというべきか……」
「はっきりいってください」
「美国織莉子は財団Xに加担してガイアメモリの製造に関わっていた」
「なんですって……!?
あんなに良い子だったのに」
「親父さんのことがあったせいじゃないか?」
「あの時俺が日本に居れば……」
「今からでも遅くないだろう?」
「―――――――――はい」
電話の向こうで火野映司は頷く。
その声を聞いて、翔太郎は静かに微笑んだ。
288 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/25(金) 07:31:18.49 ID:3PxMWVOZ0
テーブルを囲むのは三人の仮面ライダー。
そして三人の魔法少女。
左翔太郎、フィリップ・ライト、照井竜。
美樹さやか、佐倉杏子、千歳ゆま。
大道とマミはほむらが対ワルプルギス用に準備していた兵器の点検中である。
「伊坂真紅郎が復活していた?」
「ああ、間違いない
しかも大量のメモリを取り込んでパワーアップしていた」
「厄介なことになったな……」
シリアスな顔をしている翔太郎だがゆまを肩車しているので色々台無しである。
そのゆまはといえばすっかり翔太郎に懐いており、翔太郎の頭にしがみついたままうつらうつらしている。
「僕達が加勢すれば倒せるだろうけどワルプルギスの夜も有るし……」
フィリップは悩む。
戦力の分散はこの状況下で明らかに悪手だ。
「伊坂真紅郎って?」
「俺の家族を奪った男さ
既に地獄に行った筈だったんだが……」
「……となるとまどかが危ないかもね」
「どういうこと?」
「一応織莉子陣営との不戦協定は結んだ
だが織莉子陣営には正体不明の剣士が居るって話じゃないか
そいつ以外にも織莉子が兵隊を抱えている可能性は……」
「だとすると事態は厄介だな
俺達の戦ってる間に何食わぬ顔して織莉子がまどかを襲う可能性は有るのか」
「この隙にまどか達が狙われる可能性も有るだろう」
「そうだね」
「でも、逆に考えれば織莉子達は見滝原に居続ける筈よね?」
「どうしてだ?」
「協力してワルプルギスに当たるって約束したじゃない」
「まあわざわざそれを反故にしてくる可能性は低いが……」
「なんにせよだ、もっと戦力が欲しい、そう思わないか翔太郎?」
「ああ、映司だけじゃあ足りないかもな」
「おい翔太郎、彼はまだ高校生で……」
「良いか照井、ライダーは縦社会だ
先輩の言うことならばたとえ七人がかりでリンチされようと文句を言ってはいけないんだ」
「…………」
「俺は弦太郎に連絡をつけてくる」
ゆまを杏子に返すと翔太郎は再び電話に立つ。
289 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/25(金) 07:34:43.09 ID:3PxMWVOZ0
「ああ、頼んだよ翔太郎」
「ところでその伊坂真紅郎を始末する算段はついているのかい?」
「それなら心配ないよ佐倉杏子
対ウェザードーパント戦用に僕にはアイディアが有る」
「聞かせてもらいたいね」
「その為にはまず明日の戦闘における全員の配置を僕から提案させてもらわなくてはいけない」
「待ってました」
「まず美樹さやか、君は左翔太郎、佐倉杏子、千歳ゆまと共に病院を固めてくれ
最悪の事態――まどかの契約の阻止――とまどかの襲撃へ備えてもらおう
ざっくり言うと見滝原魔法少女組+探偵」
「病院までは結構距離がある
あたし達はワルプルギス戦を手伝えないけどいいのかい?」
「問題無い、暁美ほむらの用意した兵器に巴マミが魔力を込め、大道克己に運用させればワルプルギスは十分撃退できる
もし耐え切られてもその時はそれぞれに高出力の遠距離技で街に近づかれる前に倒せるだろう」
「その計算は正確かい?」
「僕の計算に狂いはない」
「なら信じるよ」
「私としてはまどかや転校生の側に居られる方が良いし
フィリップさんの提案に文句はないよ
いざとなったら身体張ってまどかも転校生も守るからさ」
「君が二人を一番近くで守る役目になる
頼んだよ美樹さやか」
「任せて!」
「幻惑一名、回復二名、よくよく見ると防御には隙がないな
左が居ることで不測の事態にも備えられるだろうし……
防御に徹する分には完璧か」
「ああ」
「となるとウェザー対策にあれを使うのか?」
「よろしく頼むよ照井竜
問題は鹿目まどかとワルプルギスのどちらに伊坂真紅郎が興味を示すかだが……」
「もし私が織莉子なら、伊坂だけは近くに置いて監視するね
話で聞いている限りではそいつは危険過ぎる」
「確かにそれもそうか……」
「だから街には新生NEVER組、仮面ライダー組ってところか」
「完璧だね」
「完璧であったと言えることを願おう」
ワルプルギスの夜襲来まで、あと十二時間。
290 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/25(金) 07:35:15.63 ID:3PxMWVOZ0
「予定が変わりました、当日は霧彦さんと加頭さんで病院へ襲撃を仕掛けてください
無論最優先の対象は鹿目まどか」
「私は?」
「ワルプルギスの夜を差し上げますので暁美ほむらは又の機会に」
「……仕方ありませんね」
「それに」
「なんですか?」
「暁美ほむらの兵器群が何時私達に向けられるか分からない
そうなった時に、井坂先生を温存しておかないとどうなるか……」
「ふふ、そういうことにしておきましょう」
「鹿目まどかを守るのは魔法少女中心の布陣になる筈
それならばその弱点を突ける私の出番
そしてキリヒコさんは……」
「なにせ信頼できますから
それに大道と巴マミと顔を合わせる可能性が少ない方で戦っていただきたいですし」
「成程、表面上は私達との繋がりを見せたくないと」
「ええ、できればね
疑われても言い逃れできる範囲に留めておきたいんです」
「解りました
では私はキリヒコさんと一緒にまどかの居る警察病院に向かいます」
「じゃあ私達の行動の方針は決定か」
「ではそういうことで」
ワルプルギスの夜襲来まで、あと九時間。
【第十四話「決戦前夜/V戦前夜」】
291 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/25(金) 07:47:58.16 ID:3PxMWVOZ0
次回からはバトル展開です
そしてこのバトルが終わるとこの話もオシマイです
続編書くか別のまどマギクロスやるか
それとも別のライダークロスやるか
アイディアはあるけど迷ってます
292 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/05/25(金) 07:58:09.62 ID:edZvMRCA0
乙。
井坂先生がたまにクジャクの方の伊坂になってますぜ。
293 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/25(金) 08:18:31.26 ID:+g/J27HDO
じつはギャレンが出るフラグ…
嘘ですごめんなさい
誤字だらけでほんとごめんなさい
弦太郎か弦太朗かも怪しくなります
294 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/25(金) 10:19:28.60 ID:e90OcuWTo
7人リンチとか今やったらうるさそうだなww
295 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/25(金) 17:51:04.07 ID:FWqBJgWDO
乙乙
今回はオーズとフォーゼいるから、前回とは結末ガラッと変わるんだろうなぁ
GIGAMAXスレもクライマックスだし、あちこち楽しみで仕方ない
296 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/25(金) 19:59:11.93 ID:PIEltOmN0
次回予告忘れてました
今から次回予告投下しますね
>>294
まあ昭和のライブ感も捨てがたいんですが時代がねえ……
規制だ何だとうるさくなったものです
>>295
勘弁して下さいGIGAMAXスレさんには勝てません色々と
さやかちゃんと大道さんが出番多いってだけですほんと
……あれ?
さやかちゃんと大道さんメインって時点で地味……いやなんでもないです俺得だから!
俺得だから良いの!結局自己満だし!
297 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/25(金) 20:04:32.86 ID:PIEltOmN0
【次回予告】
「らしくないですね克己さん」
「結局呼び方はそこに落ち着くのか」
「この年でちゃんは無いかなあと」
「ようやく解ったか」
「はい」
「じゃあやるか」
「ああ、照井竜」
「サイクロン!」
「アクセル!」
「「変身!」」
「――――来るわよ、キリカ」
「最後は結局二人きりなんだね」
「――――z_____■■■____!」
【第十五話「地獄を楽しみな」 乞うご期待】
298 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(三重県)
[sage]:2012/05/25(金) 20:12:06.78 ID:I0+4wA9Zo
サイクロンアクセルだと…?これは期待せざるを得ない
299 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/25(金) 21:21:33.00 ID:56l+9H4q0
>>1
乙!!サイクロンアクセルエクストリームに期待しているぞ
300 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2012/05/25(金) 22:38:54.23 ID:bPtcte8g0
乙
サイクロンアクセルと聞いちゃあワクワクするねぇ
301 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 15:47:57.02 ID:mCGYh8Uo0
恐ろしいことに気づいた
このスレ
>>300
まで伸びてるじゃないですか
びっくりですよ
>>300
って
というわけで今日も投下
302 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 15:51:09.56 ID:mCGYh8Uo0
【第十五話「地獄を楽しみな」】
「現在見滝原上空にスーパーセルが発生……」
ラジオは先程から同じニュースばかりを繰り返す。
既に全ての住人が体育館等に避難を終えたという連絡が翔太郎達から入り、大道は安堵の溜息を吐く。
「らしくないですね克己さん」
それを聞いた巴マミが無線越しに彼をからかう。
「結局呼び方はそこに落ち着くのか」
「この年でちゃんは無いかなあと」
「ようやく解ったか」
「はい」
この数日間で巴マミは変化してきている。
大道はそう思う。
以前より更に感情が薄れてきた。
「こちらフィリップ・ライト、ワルプルギスの夜が接近している
美国織莉子の言った時間通りの到着になるだろう」
「了解、こちらも兵器の準備は完了している
美国達は現場に出ているのか?」
「ああ、君たちの兵器に巻き込まれないように少し離れた場所に陣取っている」
「……不都合だな」
「なにか言ったかい?」
「いいやなんでもない」
大道とマミは交渉が始まった時点で既に暁美ほむらの用意した兵器を利用してこのタイミングで織莉子とキリカを殺すことを決めていた。
彼女らは生かしておけば逃げてマドカを狙い続けるだろう。
それに彼女が抱えている謎の兵力も今ならまどかに集中して、彼女らを守るものは居ない。
織莉子を失って統率をなくした敵を一体一体狩っていけばすべてが終わる。
「それでは通信を切るよ、幸運を祈る」
「任せろ」
感情のない死体らしく。
非情な手段を取る覚悟が大道とマミにはあった。
303 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 15:52:47.87 ID:mCGYh8Uo0
――――
「……不安かい、照井竜」
「そんなことはない、むしろもともとその為の仮面ライダーW
俺とお前でも存分に戦える筈だ
ただ……」
戦いの気配に、照井は武者震いが収まらなかった。
対照的にフィリップはどこか楽しそうである。
「憎しみを克服した今の君も、恐怖を克服した翔太郎と同じように僕のパートナーたりうる
僕はそう思っているよ
美国織莉子と呉キリカのことなら既に手は打っている
心配するな」
「そうか……」
その時突然スタッグフォンが鳴り響く。
「フィリップさん!」
「歌星賢吾、一体どうしたんだい?」
「サジタリアスのゾディアーツの正体が解った、我望光明だ!」
「なに……それじゃあつまり……」
「そちらの救援には行けそうにない」
「やはり予定外の出来事が起きたか……
構わない、弦太朗君に健闘を祈ると」
「ありがとうございます
それでは」
「ああ」
フィリップはため息を吐いた。
304 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 15:53:27.10 ID:mCGYh8Uo0
「じゃあやるか」
「ああ、照井竜」
「サイクロン!」
「アクセル!」
追い風を受け、加速は最初から最高潮(クライマックス)。
憎しみから生まれた最強のライダーは今、人々を守る盾として生まれ変わる。
「「変身!」」
緑と赤の仮面ライダー。
仮面ライダーサイクロンアクセル。
進化はここで止まらない。
天空より降り注ぐ声。
エクストリームメモリ。
フィリップの肉体を吸収してダブルドライバーと合体する。
「エクストリーム!」
ゆっくりとからだの中央が分割されていく。
星の輝きにも似たクリスタルサーバー。
ここからありとあらゆる情報を引き出し、それを用いて戦うのがエクストリームの特徴だ。
「なんて力だ……ゴールドエクストリームよりも出力だけならば……」
「ふむ……これが仮面ライダーW」
「負ける気がしないね、行くよ照井竜」
「ああ、フィリップ」
CAXの背中から六枚の翼が生える。
それは絶望に染まった見滝原の涙を拭う三色のハンカチ。
彼らは今ワルプルギスの夜に立ち向かうべく飛び立った。
305 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 15:54:55.38 ID:mCGYh8Uo0
――――
嵐。
逆しまな魔女。
圧倒的な力を誇る舞台装置。
その接近。
「――――来るわよ、キリカ」
「最後は結局二人きりなんだね」
既に彼女らの視界の中にはワルプルギスの夜が存在していた。
「井坂さんにはこの近くで待機してもらっているわ、魔術的に拘束しているから私の指示無しじゃあ動けない
それとも私だけじゃ不安?」
「いいや、私は織莉子が居れば世界とだって戦える」
その言葉を聞いて織莉子は優しげな笑みを浮かべる。
「……ありがとう」
「え?」
「今まで私と一緒に戦ってくれてありがとう」
何処か遠くから何かが翔ぶ音が聞こえる。
「きゅ、きゅうに照れるじゃ無いか」
「戦いはまだ続くけれど……」
第一打、都市ゲリラに使われる小型の巡航ミサイルが数発、ワルプルギスの夜に接近した。
轟音とともにワルプルギスが悲鳴を上げる。
それも当然、巴マミの膨大な魔力が込められて強化されたミサイルなのだ。
通常の近代兵器が通らないワルプルギスの夜にも有効な攻撃になる。
「それが終わるまで……私を助けてね」
「終わっても助けるよ、織莉子が私の居場所だから」
「そう……私の居場所は貴方よ」
たまらず逆さな状態から通常状態に戻り、地面に降り立つワルプルギス。
それと同時に辺り一帯を巻き込む大爆発。
92式対戦車地雷、ミサイルで損傷したワルプルギスの足回りを確実に破壊していく。
306 :
ミスしたけど気にしないでくださいごめんなさい
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 15:55:31.82 ID:mCGYh8Uo0
「こんな時にこんなことを言うのもあれだけどさ」
「なに?」
「っていうか、きっと変だし、気持ち悪いかもしれないけど……」
織莉子はキリカの唇に指を当てる。
「私もよ」
地響きを上げてワルプルギスが倒れた。
307 :
ミスしたけど気にしないでくださいごめんなさい
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 15:56:36.83 ID:mCGYh8Uo0
―――――
ワルプルギスの夜が完全に体勢を崩す。
このタイミングを待っていた。
一機の戦闘用ヘリから覗く白い影、緑の光。
全身にこの街で、そして財団Xから回収されたガイアメモリを装着した姿。
「アクセル!バード!サイクロン!ダミー!」
仮面ライダーエターナル。
オーラエターナルウェーブ。
「俺の攻撃を合図に行動を開始するように奴らに伝えておけ」
「解ったよ、大道克己」
無線越しにフィリップが答える。
「エターナル!ファング!ジーン!ヒート!」
エターナルローブを纏う彼ならば近代兵器による攻撃のど真ん中に居ても問題ない。
美国織莉子、呉キリカの両名をわずかに残したミサイルでなぎ払う。
その為の囮になる覚悟だった。
「アイスエイジ!ジョーカー!キー!ルナァ!」
「お前たちは……」
「もう準備完了さ」
「ならば良い」
「メタル!ナスカ!オーシャン!パペティアー!」
「翔太郎達が財団Xと交戦を始めている
急いで片を付けよう」
「なに?分かった」
結論から言えばフィリップ・ライトは大道達の企みを看破していた。
そしてそれを覆す術、美国織莉子と呉キリカの完全な説得の手立ても用意していた。
「クイーン!ロケット!スカル!トリガー!ユニコーン!」
「メモリの数が違う」
ワルプルギスがヘリに向けて使い魔を放つ。
「バイオレンス!ウェザー!エクストリーム!イエスタディ!ゾーン!」
「カァッ!」
大道がエターナルエッジを振るう。
緑色のエネルギーが刃の軌跡を描いて飛んでいく。
ブラッディヘルブレイド
使い魔たちを簡単に薙ぎ払い、光の束は進む。
それと同時に織莉子の居た方角から大量の光弾が
フィリップ達の居た方向からビッカーファイナリュージョンが
ワルプルギスの夜を囲むようにして直撃する。
308 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 15:57:45.24 ID:mCGYh8Uo0
「やったか……」
ワルプルギスの夜の動きが止まる。
「■■■■■―――――――z/\_______________!」
大地を揺らす咆哮。
正位置となったワルプルギスの夜。
ダメージを受けてようやく本気を出したといったところか。
「くそっ!化物かよ!」
「克己さんそいつ化物です」
「こんな時に冷静に突っ込むな」
「もう一発ミサイル行っておきますか?」
「織莉子達だけ動きが遅いな、呼び出しておけ、サボってたら今のをぶち込むぞってな」
「サボらなくてもぶち込むくせに」
マミが大道の言うとおり織莉子達を呼び出そうとした時だった。
「ハァッ!」
ヘリコプターの隣を飛翔する赤と緑の影。
「なに?」
あれは確か仮面ライダーWCAX
あれが居た方向は大道の居た方向の逆だ。
耳をつんざく悲鳴。
ワルプルギスの腕が飛んでいる。
「フィリップ!照井!」
「やあ大道克己、応援を呼ぶ必要は無いよ」
「俺達がすぐに倒してしまうからな」
「さあ行こうか照井竜」
「ああ、限界すら……振り切るぜ!」
ワルプルギスが大量のレーザーや使い魔でCAXの通り道を妨害する。
だがCAXは背中の翼を用いて自由自在に空を舞い、天を駆ける。
エンジンブレードとプリズムソードの二刀流がワルプルギスの夜を次々切り刻んでいく。
大振りな魔女の攻撃はことごとく外れ、まさに一方的な戦いになっていた。
309 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 15:59:00.95 ID:mCGYh8Uo0
「もう一本!」
「エンジン!マキシマムドライブ!」
「「ダブルスラッシャー!」」
エンジンブレードが輝き、Wの軌跡を描く斬撃が放たれる。
残りの腕があっけなく胴体と別れる。
「続けていくよ」
「サイクロン!マキシマムドライブ!」
「アクセル!マキシマムドライブ!」
「「プリズムブレイクフルスロットル!」」
今度はプリズムソードが輝く。
絶叫するワルプルギスに真正面から飛び込む。
全ての攻撃を二刀でいなし、全身全霊最高速度の正面突破。
今、加速は極限を超える。
「■!■■\/\/Z____________■―――――!」
ワルプルギスの夜の額にプリズムソードがめり込む。
「さあ、お前の絶望はここでゴールだ」
一刀両断。
ワルプルギスの夜は光の粒子になって消えていく。
それと同時に空もまた晴れ渡る。
「こんどこそ終わったみたいですね」
無線越しにマミの声がする。
「ああ、あれがCAXか……シュラウドがこだわった理由も理解できる」
「シュラウド?」
「そのうち教えてやる」
そう呟いて大道は織莉子達の居るであろう方向を振り向く。
顔に冷たいものが当たる。
雨。
「なに?」
そこにあった筈の地形が全て消滅している。
圧倒的破壊の中央で一人哄笑う男、否、怪物が居た。
「おい、マミ。すぐに来い、こいつは仮面ライダーだけじゃあ手に余る」
「え?」
「――――z_____■■■____!」
ウェザードーパントとは似て非なる禍々しい姿。
完全なる怪物。
魔女と化した井坂真紅郎が其処には存在してた。
【第十五話「地獄を楽しみな」 了】
310 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 16:01:39.45 ID:mCGYh8Uo0
パワーインフレはバトル物の華
昔エライ人が言っていました
というわけで次回予告とおまけ
311 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 16:08:45.98 ID:mCGYh8Uo0
【次回予告】
「へっ、ようやっとお出ましか」
「おやおや、見覚えのある顔ですね」
「俺の顔はどうだ?加頭順!」
「――――――――左翔太郎!」
「今は……仮面ライダージョーカーだ」
「そうはさせないよ!」
「さやか!」
「良い剣筋だ、名前は?」
「魔法少女、美樹さやか」
「子供だというのに君はなぜ戦うんだ?」
「正義の為に」
【第十六話「Wの思い出/いつか誰かが守ったもの」 乞うご期待】
312 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/26(土) 16:29:12.86 ID:mCGYh8Uo0
【マミさんのスーパーゲーム教室】
【おまけ1】
さやか「ふられたー……」
まどか「こういう時は恋愛ものを見るのが良いって保健室の先生が言ってたよ!」
さやか「恋愛ものって……」
マミ「じゃあこれはどうかしら」
さやか「沙耶の唄……」
マミ「事故で重い障害の残った青年と彼に献身的に尽くす妹のような少女、そして彼の友人達を巡る純愛ストーリーよ」
まどか「流石マミさん!」
【おまけ2】
杏子「今でも妹のことを思い出す……」
まどか「そんな時は小説を読むと良いって!」
杏子「いや小説なんて柄じゃあ……」
マミ「そんな時はノベルゲーム!」
杏子「え?」
マミ「この装甲悪鬼村正はお父さんに素直になれない妹と、妹との仲が上手くいかない兄を中心にした感動巨編よ!」
まどか「流石マミさん!」
【おまけ3】
ゆま「BLってなぁに?」
まどか「そんな時は(ry」
マミ「ゆまちゃんにはこれをおすすめするわ」
ゆま「刃鳴散らす?」
マミ「貴方も腐りきった世界にようこそ!」
【マミさんのスーパーニトロプラス教室、おしまい】
313 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/26(土) 17:33:49.42 ID:3Tk39lRn0
マミさんェ…
>>1
乙
314 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/26(土) 17:42:42.82 ID:7C7XIt9oo
ああ終わってしまうのか…なんか寂しいな。もっと特撮SS増えねえかな〜
おまけも乙だが、なんかこう…耐性ない人を巻き込むのはモウヤメルンダァ
315 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/26(土) 17:59:56.24 ID:ovNu4rTSO
乙!
>>314
大丈夫さ!
なんたってこのSSの作者は一度エタったのを
死者蘇生兵士のように甦らせたんだ!
また特撮で書いてくれるよ
でもこの板、結構特撮SSあるよね
316 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/26(土) 20:26:47.44 ID:1l2ygi4DO
乙!CAX恐るべし…そりゃシュラウドも翔太郎別れさせようとするわ
完結しちゃうのは寂しいが、せめて良き終末を
317 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:14:29.65 ID:6bmGqi0I0
個人的には次の作品候補が沢山あるのでこの話が終わったら皆さんにどれが良いか聞いてみたいと思ってます
それでは投下開始
318 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:18:14.02 ID:6bmGqi0I0
【第十六話「Wの思い出/いつか誰かが守ったもの」】
警察病院。
警備の厳重な施設ではあるがそれはあくまで人間に対してのみ
ドーパントや魔女、魔法少女に対しては為す術がない。
故に魔法少女達がこの中に居る暁美ほむらや鹿目まどかを守るためにここに居た。
「ねえまどか……」
「どうしたのほむらちゃん?」
「私……やっぱり卑怯よね」
「どうして?」
「思えば私は結局他の人を犠牲にして貴方を守ろうとしている
見滝原から貴方を引き離したのだってそう
他の人がどうなっても良いから貴方だけでもワルプルギスの夜に巻き込まないようにしただけ
探偵さんも、他の皆も利用しただけよ
あれだけ協力してくれた皆を……私ってほんと馬鹿よね」
「そんなことないよ
皆ほむらちゃんが必死だから協力してくれただけだよ」
「……」
ほむらは深くため息をつく。
「大丈夫、全員で見滝原に帰って、今度はマミさんも一緒にパフェでも食べに行こう
きっと皆で仲良く笑えるよ」
まどかはニコリと笑う。
「…………ええ」
その直後、爆音が響いた。
319 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:19:44.33 ID:6bmGqi0I0
――――
「へっ、ようやっとお出ましか」
杏子は静かに槍を構える。
左翔太郎、佐倉杏子、千歳ゆま、既に全員の変身は完了している。
「おやおや、見覚えのある顔ですね」
ユートピア・ドーパント、ナスカ・ドーパント。
二人が廊下の向こう側から歩いてくる。
地下に作られた警察病院の出入口は其処しか無いのだから当然だ。
「俺の顔はどうだ?加頭順!」
「――――――――左翔太郎!」
その名前にナスカ・ドーパントと化したキリヒコが僅かに反応する。
「今は……仮面ライダージョーカーだ」
「ジョーカーだよ!」
翔太郎とゆまが同時にポーズを決める。
「やれやれ……キリヒコさん、ここは私が食い止めるので早くこの先へ」
「キリヒコ!?」
その名前に翔太郎は動揺する。
キリヒコは無言で頷き、加速能力で翔太郎たちの横をすり抜けた。
「しまった!」
「疾すぎて反応できなかったぞ!」
その時だった。
「そうはさせないよ!」
キリヒコの前に躍り出る影。
「さやか!」
さやかのサーベルが振り下ろされる。
当たれば致命傷。
キリヒコはとっさに剣でそれを防ぎバックステップで間合いをとる。
それと同時に病室へ繋がるルートが防火扉によって閉ざされた。
320 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:20:55.97 ID:6bmGqi0I0
「良い剣筋だ、名前は?」
そこで初めてキリヒコは口を開く。
その声は確かに左翔太郎の知る園崎霧彦。
「魔法少女、美樹さやか」
「おい霧彦!お前何をやっているんだ!」
「子供だというのに君はなぜ戦うんだ?」
「正義の為に」
「おい霧彦!」
「そんなことをしている暇があるのですか左翔太郎」
ユートピアの豪炎が翔太郎を襲う。
「くっ畜生!ぐあああああああぁぁぁあおらぁっ!」
翔太郎はそれに構わずに直進、ユートピアを殴り飛ばす。
「ゆま!」
「任せて!」
翔太郎のダメージが一瞬で回復する。
千歳ゆまの回復魔術。
「――――なるほど、そちらから仕留めるべきでしたか」
剣と剣がぶつかって火花を散らす。
その背後では炎が雷が竜巻が舞い踊る。
「死ね!」
雷がゆまを貫く。
が、貫かれた筈のゆまは霞となって消失する。
「残念、そいつは幻だ」
「よそ見している暇はないぜ加頭!」
突如として加頭の背後から現れた翔太郎が彼の胴体に拳をめり込ませる。
怯んだ隙に肘打ちで顎、膝蹴りで鳩尾、顔面の中央に吸い込まれるように右ストレートが叩き込まれる。
「おのれ!」
「疾風迅雷!」
反撃に移る加頭を取り囲むように槍の穂先が躍る。
彼の身体をなぞるように動き、切り刻む。
321 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:21:42.03 ID:6bmGqi0I0
「鉄砕鞭!」
槍の柄で殴りかかる杏子。
カウンターで加頭も電撃を食らわせるがそれと同時に高速回復が発動し、ダメージにならない。
「異端審問!」
ノーモーションで地面から槍が伸びる。
「こいつはおまけだ!」
さらに翔太郎が大量のガジェットをばら撒いて加頭の退路を防ぐ。
「しまっ――――」
「きゃああああああああああ!」
さやかがキリヒコに吹き飛ばされてくる。
さやかにぶつかった加頭は間一髪で槍から逃れる。
「おいさやか!」
「ごめん!」
「いやそうじゃなくて大丈夫か!?」
「あーこれくらい平気平気」
頭から大量の血を流しながらさやかは笑う。
痛覚を遮断しているらしい。
「痛覚を遮断したら技の精度がおちるんじゃなかったのか?」
「師匠から教えてもらったとおり“痛みがあることだけはわかる”状態にしたら問題ないよ」
痛覚マスキングと呼ばれる技術だ。
大道がさやかの能力に目をつけて独自に指導した魔法である。
「ふぅん」
「今のでも倒れないなんて随分しぶといじゃないですか」
キリヒコが剣から血を滴らせて構える。
さやかはサーベルをナイフに持ち替えてマントに魔力を注ぎ込む。
巨大化したマントを靡かせるその姿はまるで仮面ライダーエターナル。
322 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:22:13.27 ID:6bmGqi0I0
「悪いけど一度死んでてね」
クラウチングスタートの構え。
「死にづらいんだ!」
背後では再び加頭による攻撃、爆音。
さやかはそれを背後の三人が食い止めてくれていることを確信して振り返らない。
キリヒコの剣の一撃。
マントで受け止める。
小さな体を生かしてキリヒコの股下に滑りこみ、足元をナイフで切りつける。
高速自己再生、及び痛覚マスキング、そして人体のリミッター解除。
魔力的には消費の少ない3つを同時に使用した超近距離戦闘。
それが美樹さやかと大道克己のたどり着いた回答だった。
「その身体、真っ二つにでもしないかぎり治ってしまうらしいね」
「ならどうする?」
「真っ二つにしてみたいね」
至近距離のさやかに向けてキリヒコは光弾をばらまく。
至近距離に居たさやかは肉体強化を最大限までかけてなんとか回避した。
しかし何故か遠くに居た杏子が流れ弾をくらってしまう。
無論その傷は治療されるが……
「……そこか」
「――――まさか!」
翔太郎は気づいた。
現在ゆまは杏子の幻術で隠れている。
とはいえ、回復魔術をかけるにはある程度近くに居なくてはならないのだ。
そう、視界の内側くらいには。
それを探るためにキリヒコは光弾をばらまいたのだ。
「ゆまちゃんはやらせない!」
既に幻術を破ったキリヒコには見えていた。
杏子の影に隠れるゆまの姿が。
「どうかな?」
ナスカの高速移動。
さやかも負けずに移動速度を再び上げる。
だが、一歩追いつけない。
短くて遠い積み重ねた歳月の差。
「さ……せるかああああああああああああ!
シューティングスティンガー!」
ドシュッ
さやかのナイフから刃だけが飛び出す。
「しまっ――――」
足の腱に突き刺さり、キリヒコは体勢を崩す。
「――――絶唱え、ローレライ(klingen Loreley) 」
極限まで強化した声帯と腹筋により腹の底から声を叩きだす。
それは回避も防御も不可能な超音波攻撃。
323 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:24:17.73 ID:6bmGqi0I0
「ぐああああああああああああああ!」
キリヒコの絶叫。
加頭はその様子を見て静かに呟く。
「今ですね」
超音波ということは指向性がある。
攻撃範囲が限られているのだ。
その隙を加頭は突いた。
重力操作で翔太郎たちの頭を飛び越え、さやかの懐に飛び込む。
「これで捕まえましたよ?」
腕が伸びる、捕まれば一撃。間一髪で後ろに飛び退くさやか。
しかしジリジリと加頭に追い詰められる。
音波攻撃による拘束を解除されたキリヒコは一気にゆまに向けて飛びかかる。
「ゆまちゃあああああああああああああああん!」
「ゆまああああああああああああああ!」
翔太郎と杏子ではナスカの速度に追いつけない。
翔太郎に限って言えばカウンターは狙えるがそれはあくまで彼に攻撃が向けばの話。
間に合わない。
振り下ろされる剣、しかしそれはゆまの目の前で止まる。
「…………風斗くん」
キリヒコ、否、霧彦はつぶやいた。
彼の視線はゆまがアクセサリーのように身に着けていた風斗くんキーホルダーに注がれる。
「風斗、くん」
「おい霧彦!お前記憶が……」
園崎霧彦は振りかぶって背後に向けて剣を投げる。
それはさやかに襲いかかる加頭を貫く。
「馬鹿な!?」
加頭は動きを止める。
「スパークエッジ!」
その瞬間、さやかのナイフから稲妻が走る。
走る一閃。
それは違うこと無く加頭の胸を貫く。
「そういうことですか……!」
「それは妻の仇だ」
霧彦はゆまに向けて少しだけ微笑み、虫の息の加頭に歩み寄る。
「そしてこれは……俺の分だ!」
霧彦の拳が加頭を捉える。
「ガハッ!?」
「霧彦お前……」
「迷惑をかけた」
「く……あなた達、再開を楽しんでいる暇はあるのですか?」
突如として地面が揺れ始める。
これもまたユートピア・ドーパントの力。
「これで皆生き埋めとなる、そうでしょう?」
「加頭順!」
「まずいぞ!まどか達が!」
「任せろ翔太郎」
ナスカの剣が閃く。
防火扉は瞬時に真っ二つになり、道が開ける。
324 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:25:34.92 ID:6bmGqi0I0
「早く二人を」
「おう!」
崩れゆく地面が加頭を飲み込んでいく。
霧彦の助力もあって翔太郎たちは地下の警察病院からまどか達を連れてなんとか逃げ出すことに成功した。
杏子は今後についてほむらと話し込んでいる。
「おい霧彦……」
病院を抜け出し、変身を解除した園崎霧彦に翔太郎は話しかける。
「……随分長い夢を見ていたようだ」
「翔太郎さん、その人は……」
「その人ももしかして……」
まどかとさやかが戸惑いながらも尋ねる。
「こいつもまた、風都を守る仮面ライダーだった男」
「よしてくれ、そんな立派なものじゃあない」
霧彦はニコリと笑う。
そしてゆまの方にゆっくりと歩いて行って屈み込む。
「ゆまちゃん、だったね?」
「は、はい……」
「怖がらせて済まなかった
そのキーホルダーを見せてはくれないか?」
ゆまは翔太郎の方を見る。
翔太郎は黙って頷く。
ゆまはゆっくりと霧彦にキーホルダーを……
「ユートピア!」
瓦礫が突如として浮かび上がる。
霧彦はとっさに翔太郎とゆまを庇う。
飛来する無数の瓦礫。
杏子はほむらを、さやかはまどかを、それぞれ庇う。
「まだ生きていたのか!?」
瓦礫の向こうで砂になって消滅しつつあるユートピア・ドーパントが見える。
完全に捨て身の攻撃だった。
瓦礫の一つが生身の霧彦に直撃、霧彦は口から血を吐いて倒れる。
325 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:26:24.69 ID:6bmGqi0I0
「私、残念です」
まどかを仕留めそこねた。
織莉子の命令をこなせなかった。
そのことにほんのすこし残念そうな顔をしながら加頭順は完全に消滅した。
「うそだろ……ゆま、回復魔術を!」
突然の出来事に動揺する翔太郎。
「できないよ翔太郎さん!」
「駄目だもうグリーフシードが無い!」
杏子とゆまは叫ぶ。
「そんな……まだ息があるってのに!」
「私が彼の時間を停滞させれば……」
「君は……イエスタディのメモリの少女か
メモリの後遺症が抜けなければ大変だ
無茶はやめなさい」
「霧彦さん!」
「良いんだ……構わない、僕はもう既に死んだ身
為すべきことも終えた……ゴフッ!」
「おい霧彦!お前妹に会わなくて良いのかよ!」
「ああ……うっかりしてたな
あいつにも、よろしく言っておいてくれ」
ため息をつく霧彦。
彼は妹の身に何があったのかを既に知っている。
知った上で
「頼んだぞ、翔太郎……」
そう呟いて目を閉じる。
「そういえば風都にもしばらく帰ってないや」
「霧彦!目を閉じるな!」
「ゆまちゃん、時間ができたら風都に来てくれ
お国自慢ってわけじゃないがあそこは……見滝原よりもずっと良い風の吹く……街、なん……」
言葉は続かなかった。
翔太郎の絶叫だけが空に木霊した。
【第十六話「Wの思い出/いつか誰かが守ったもの」 了】
326 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:28:49.16 ID:6bmGqi0I0
【次回予告】
「さやかを除く戦闘要員全員が負傷
回復魔法は使用不可能、状況は良くないね」
「ゆまが役立たずだから……」
「馬鹿、お前は充分頑張ったよ」
「う……ぐすっ」
「遅いぞ映司!」
「すいません」
「タカ、クジャク、コンドル!」
【第十六と二分の一話「美樹さやか、出撃」 乞うご期待!】
327 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/27(日) 08:29:22.97 ID:6bmGqi0I0
【おまけ】
亜樹子「りゅーくんりゅーくん!」
照井「どうしたしょ……亜樹子」
亜樹子「そろそろ子供が欲しいと思わない?」
照井「ブボォ」
亜樹子「キャアアアアア!コーヒー!コーヒーが!」
照井「だ、大丈夫だ!今すぐ拭くから!」
亜樹子「それで名前なんだけどー私そういうの考えるの苦手だからりゅーくんに頼みたいな!」
照井「え?そうだな……」
亜樹子「…………」ワクワク
照井「男の子なら荘吉」
亜樹子「うん!」
照井「女の子なら……みゆき」
翔太郎「ちょーっと!」
フィリップ「待ったぁ!」
翔太郎「それならば俺はあかねを押すぜ」
フィリップ「あかねも良いがなお、というのも捨てがたい」
門矢士「ならば俺はやよいだ」
照・亜・翔・フ「「「「誰!?」」」」
門矢士「通りすがりの仮面ライダーだ」
翔太郎「なら問題無いな」
フィリップ「ああ」
照井「まったくだ」
亜樹子「良いの!?」
照井「とにかく、お前らは何もわかっていない。みゆきしか無いだろ」
翔太郎「いや、亜樹子のキャラクター的に娘はあかねだろ。二人でたこ焼きのかぶりもの被れそうだし」
フィリップ「なおは僕の母親になる女性なんだ!」
門矢士「いや、やよいちゃんが一番だろ!」
亜樹子「あのー……」
照・翔・フ・門「え?」
亜樹子「みゆきはポンコツそうだしあかねはいかにも過ぎてちょっと引く
やよいはあざとすぎてなんだかイマイチだしなおは悪くはないんだけど地味っていうか……
どうせなられいかが良いな、なんでもできそうだし」
照・翔・フ・門「――――え?」
【おまけ おしまい】
328 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)
[sage]:2012/05/27(日) 09:13:11.91 ID:M2Xv7K640
やはり霧彦さんの最期はかっこいいな
329 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/27(日) 10:14:17.57 ID:oHJ5FQ1DO
乙!
霧彦さんが正気に戻ってくれたよ(´;ω;`)
オーズキター!
330 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/27(日) 15:55:47.24 ID:die2wH280
>>1
オーツ!!!
タジャドルだあああああああああああああああ
331 :
◆mbgGrCikwU
[saga sage]:2012/05/27(日) 18:57:36.37 ID:DvhUTh/e0
もうすぐ最終回なのかと思うとあれです
泣けます
霧彦さんのラストはもう本当に初期の初期から決まってて
書き直しの際にゆまちゃんを絡めようと思ったっていう経緯があります
あとタジャドルの出番はこのパワーインフレのせいで既にほとんど無いんだ!ごめん!
332 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/27(日) 19:20:52.86 ID:die2wH280
>>331
タンジャチッオオオオオル!!!(涙)
333 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/27(日) 20:46:07.40 ID:oHJ5FQ1DO
いや待て、タジャドルの出番がないだけで
都合良くスーパークジャクとスーパーコンドルを携えているかも知れない
334 :
◆mbgGrCikwU
[saga sage]:2012/05/27(日) 20:49:35.07 ID:0xTnyUBV0
映司さんは次回作の主人公になるかもだからあまり強くなりすぎると……ね
335 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/27(日) 20:51:32.64 ID:dQHc6zaIo
VIPに剣とまどかのクロスがあるから余裕があったら保守してくれ
336 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/28(月) 07:40:48.82 ID:M2yLpUhL0
保守、支援しようと思ったらSS速報に来ていた
何を言っているかわからないが云々カンヌン
本日の投下開始
337 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/28(月) 07:42:35.87 ID:M2yLpUhL0
【第十六と二分の一話「美樹さやか、出撃」】
「さやかを除く戦闘要員全員が負傷
回復魔法は使用不可能、状況は良くないね」
杏子はため息をつく。
「ゆまが役立たずだから……」
ゆまは大粒の涙をこぼして泣いている。
これでは戦うどころではないだろう。
杏子は彼女を戦闘要員として数えていない。
「馬鹿、お前は充分頑張ったよ」
ゆまの頭を撫でる杏子。
「う……ぐすっ」
「さっきからフィリップ達と連絡がつかない
見に行きたいところだが……」
「翔太郎さん!」
遠くから一人の青年がバイクに乗ってやってくる。
「遅いぞ映司!」
「すいません」
翔太郎にペコペコ頭を下げる映司という青年。
どうやら彼が翔太郎の呼んでいた仮面ライダーらしい。
338 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/28(月) 07:43:04.24 ID:M2yLpUhL0
「頼んでおいたあれは?」
「完璧です、あの二人は既に安全な場所に連れていきました」
「よし……ならあと一つ頼みごとがある」
「なんですか?」
「そこのさやかちゃんって女の子を連れて見滝原まで行って欲しい」
「え?」
「今完全に無傷なのは彼女だけだ
ワルプルギスみたいな相手じゃ俺は戦えないしな
さやかちゃん、行ってくれるか?」
「え、あ、はい!」
「そうか、ありがとう。頼んだぞ映司」
「任せてください先輩!
じゃあ行こうかさやかちゃん」
「はい!」
「――――変身!」
「タカ、クジャク、コンドル!」
映司の身体を紅いメダルのビジョンが包み込む。
内側から出てきたのは大きく翼を広げた真紅のライダー。
仮面ライダーOOO、タジャドルコンボ。
「失礼するよさやかちゃん!」
「きゃっ!」
映司はさやかをお姫様抱っこして空へと飛ぶ。
翔太郎達はその姿をいつまでも見送っていた。
【第十六と二分の一話「美樹さやか、出撃」 了】
339 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/28(月) 07:46:52.57 ID:M2yLpUhL0
投下のバランス上、今日はここまで
明後日はマミさん大活躍
明明後日はさやかちゃん大活躍の最終回
その後はエピローグ1,2
で、完全におしまい
340 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/28(月) 10:54:17.51 ID:+CHHgA3DO
乙
始まったものいつか終わりが来るから〜♪
じゃないけど、最終回見えてくると寂しいな
341 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/05/28(月) 21:07:37.64 ID:NnMXkGaI0
【次回予告】
「…………」
「やあ、井坂真紅郎」
「また貴方ですかインキュベーター」
「さて、引きますよキリカ」
「ワルプルギスに止めをささなくていいのかい?」
「ワルプルギスを倒せば次に狙われるのは私達
別に呼ばれているわけでもないし適当に言い訳をして逃げれば良い」
「さようなら、美国織莉子、呉キリカ」
「織莉子だけは……!」
「嘘だ!」
「いやあああああああああああああ!」
【次回第十七話「魔法少女井坂真紅郎」 乞うご期待】
342 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/28(月) 21:08:28.97 ID:NnMXkGaI0
次回予告完全に忘れてました
几帳面なうっかり屋はただただ面倒なだけだなあとほんと
343 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/28(月) 22:13:43.11 ID:kqyFdriSO
なんだろう 今、見てはならないタイトルを目にした気がする
\乙/ カチッ
344 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2012/05/28(月) 22:34:15.60 ID:cPN/wp4DO
プリベルの衣装を着る井坂さん…
345 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/29(火) 07:26:12.35 ID:yPoLJiU5o
せめて魔法中年・・・
346 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/29(火) 08:04:19.67 ID:PME49gTk0
魔中年井坂真紅郎
ガンダムみたいじゃないですかやだー
そんな訳で投下開始
347 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/29(火) 08:06:45.19 ID:PME49gTk0
【第十七話「魔法少女井坂真紅郎」】
「…………」
「やあ、井坂真紅郎」
「また貴方ですかインキュベーター」
「織莉子の監視付きで家に閉じ込められているだなんて随分大変そうじゃないか」
「構いません、この戦いさえ終われば……」
「ねえ、君はワルプルギスの夜を生で見たいとは思わないのかい?」
「…………」
「きっと君の問に答えを出してくれるよ」
「…………」
「そうしたところで私にはここから出る方法が……」
「魔法少女の力は僕達の技術を元にしている」
井坂の居た部屋の扉が開く。
「僕達に干渉できない理は無い」
「…………」
「今行かなければ、本当の魔女の力を見られないと思うよ?
僕らの技術なら織莉子や仮面ライダー達の目を欺けるし悪い話じゃない筈だ」
井坂は立ち上がる。
「……解りました」
キュゥべえに導かれるままに、井坂真紅郎は歩き始める。
しばらく歩くとすぐにそれは姿を見せた。
「これが……ワルプルギスの夜」
まるでサーカスの一団のような使い魔の群れの中をインキュベーターと井坂は歩く。
極彩色の死の舞台装置が今、井坂真紅郎一人の為に駆動を続けている。
それは彼が初めてテラードーパントを目にした時と変わらぬ感動を彼に与えた。
348 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/29(火) 08:13:32.84 ID:PME49gTk0
「これが人間の持つ心の力だよ
君の内側にだって有るはずなんだ
君自身の願いが、思いが」
「私は……」
井坂真紅郎は自らの生きる意味を探求してきた。
そしてガイアメモリに魅せられたのが十年ほど前。
地球の記憶の中に自らの真実が隠されている。
そう思ったのだ。
しかし答えは未だ見つからない。
ならばそこには答えはないのではないか?
自らの生への答えは自らの内にこそあるものではないか?
「私は!」
「さあ願いを言うんだ井坂真紅郎!」
恐らくはこれこそが答え。
井坂真紅郎は確信した。
「私は私の生まれてきた意味を知りたい!」
「君の願いは聞き届けられた!君は今から魔法少女だ!」
――――今ここに、最新最強の魔法少女(成人男性)が誕生した
「…………」
「どうだい?井坂真紅郎、生まれてきた意味を知るというのは」
「…………」
井坂真紅郎のソウルジェムが驚くべき早さで黒く染まっていく。
彼は空に向けて大きくため息をつきながらその場に崩れ落ちる。
「やはり、そうでしたか」
「ああ、何故僕に聞かなかったんだい?」
「知って尚生き続けることに耐えられなかった
もし解答が私の予想するものならば……そのまま私が死ねるように貴方の提案に乗ったのかもしれません」
「そうか……」
「絶望しましたよ」
「ならば魔女となれば良い」
「ですね」
「井坂真紅郎、君は何故泣いている?」
「こんなことならば、彼女ともう一度……いや、詮なき話ですね」
「――――さん」
少しだけ晴れやかな表情で笑い、井坂は人間を捨てた。
それと同時にワルプルギスにミサイルが直撃する。
爆音で、井坂の最後に呼んだ名前は誰にも聞こえなかった。
349 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/29(火) 08:15:33.77 ID:PME49gTk0
―――――――
「さて、引きますよキリカ」
「ワルプルギスに止めをささなくていいのかい?」
「ワルプルギスを倒せば次に狙われるのは私達
別に呼ばれているわけでもないし適当に言い訳をして逃げれば良い」
「なるほどねえ……」
崩れ落ちるワルプルギスを背景に歩き始める二人。
その先には人影。
「…………え?」
「なんで貴方がここに……」
「魔女となるのは、中々快いものですね」
わずかに溶け残った理性が人間だった頃のように魔女を喋らせる。
それもじきに消え去るものだが。
「答えなさい、井坂真紅郎!」
「僕と契約して魔法少女となったのさ」
「インキュベーター!?」
「あなた達は既に用済み……」
井坂真紅郎はウェザードーパントそっくりな“何か”に変身する。
「さようなら、美国織莉子、呉キリカ」
魔女“井坂真紅郎”の背後に26の影が現れる。
それらは織莉子とキリカに向けて一度にレーザーを放つ。
「織莉子だけは……!」
キリカは速度低下でレーザーを止めようとする。
しかし、レーザーは速度を落とさずに織莉子達に真っ直ぐ向かう。
「嘘だ!」
「いやああああああああああ!」
光が、織莉子達を包んだ。
350 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/29(火) 08:17:57.82 ID:PME49gTk0
―――――――
「終わったか……」
遠巻きにクレーターを眺めながらキュゥべえは呟く。
「そういう訳でノルマも9割は回収成功だ
おめでとう美国織莉子、これで僕らはもうまどかと契約を狙う必要はなくなった
思えば君とも短くない付き合いだ、せめて君の遺志を尊重して僕はまどかの前に姿を表さないことを誓おう」
美国織莉子達の居た場所にできた巨大なクレーター。
そこにいるのは探求の魔女“井坂真紅郎”、性質は“盲目白痴”
そして二十六体の記憶の使い魔“AZot”、役割は“演奏”。
「何が起きた!?」
遠くから聞こえてくる大道達の声。
もうキュゥべえはこの物語に関わるつもりはない。
彼はそそくさとその場を離れた。
「――――魔女!?」
大道の命令で駆けつけたマミが悲鳴を上げる。
「まさか……あの姿は?」
大道は危惧する。
ウェザードーパントの面影を残す魔女。
それは……
「これはこれはみなさんお揃いで」
魔女“井坂真紅郎”は嗤う。
「おい一体何が――――!」
異変に気づいて駆けつけたフィリップと照井は絶句する。
「見ての通り、最悪の事態だ……」
大道は力なく呟く。
「皆さん、来ますよ!」
井坂真紅郎が無造作に腕を振り上げる。
AZotの内、数本が彼らに向けて光を放つ。
回避が間に合わない。
とっさに大道は一番前に立ってエターナルローブで攻撃を受け止める。
刹那、大道の背中に激痛が走る。
351 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/29(火) 08:18:27.48 ID:PME49gTk0
「エターナルローブ越しにでも攻撃が貫通するというのか!?」
「メモリの力を解析して無効化している!?」
「なんだと……くそっ、俺に構うな!今のうちに早く奴を倒せ!」
仮面ライダーWCAXに向けて大道が叫ぶ。
マミは既に大量のマスケット銃を召喚していた。
「――――無限の魔弾(パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ)!」
無数の弾丸がAZotを撃ちぬく。
生まれる一瞬の隙。
――――ここしかない――――
CAXの足元の車輪が唸る。
追い風を享けて加速する力。
出力だけならば黄金のエクストリームにすら勝る一撃。
空を奔り、大地を砕き、轟音を上げて振り下ろされるエンジンブレード。
エンジンブレード、そしてダブルドライバーのスロットをフル活用した一撃が今放たれる。
「アクセル!」
「ジェット!」
「スチーム!」
「エレクトリック!」
「サイクロン!」
「極大出力(マキシマムドライブ)!」
「「エクストリームフルブレイク!」」
届いた。
魔女の身体に確かに突き刺さるエンジンブレード。
だが足りない、魔女は不敵に笑ってみせる。
動き出す使い魔達。
しかしヒーローに奥の手は付き物。
「やるしかないぞ、フィリップ」
「ぶっつけ本番か、ゾクゾクするね」
「いくぞ!」
「ああ、もう一本だ!」
「マキシマムドライブ!」
ダブルドライバーが狂ったように連呼を始める。
352 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/29(火) 08:19:01.70 ID:PME49gTk0
「サイクロン!」
「マキシマムドライブ!」
「ヒート!」
「マキシマムドライブ!」
「ルナァ!」
「マキシマムドライブ!」
「アクセル!」
「マキシマムドライブ!」
エンジンブレードを投げ捨ててプリズムビッカーを取り出す。
メモリは既に装填済み。
「「ビッカーファイナルグランツァー!」」
突き刺さるプリズムソードとエンジンブレード、それをCAXは足で押し込む。
内側で膨らむ膨大なエネルギー、今度こそ魔女の顔から笑顔が消える。
ツインマキシマムを超える力をノーリスクで
それがサイクロンジョーカーエクストリームの売りだった。
確かにサイクロンジョーカーエクストリームの力ならば十分に制御できただろう。
しかし、アクセルとサイクロンの組み合わせは相性が良すぎた。
エクストリームにも制御しきれない膨大な力が今、彼らの中を駆け巡っている。
「おいお前らまさか!?」
「――――え?」
「しまっ――――――」
もう一度、クレーター内部で大爆発が起きた。
【第十七話「魔法少女井坂真紅郎」 了】
353 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/29(火) 08:21:52.75 ID:PME49gTk0
【次回予告】
「ちょっとそこの小娘!」
「ひっ!」
「なによなによなによなによ!
あんただけさも克己ちゃんの相棒みたいな顔して戦っちゃって!」
「私のほうがおっぱい……くぅっ!互角ね!」
「言っておくけど!サイズじゃ互角でも私の方が揉みごたえあるんだからね!」
【次回第十七と二分の一話「NEVERENDING」 乞うご期待】
354 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/29(火) 08:56:48.81 ID:PME49gTk0
【おまけ】
【巴マミ先生のスーパーニトロプラス教室】
杏子「……ウツダシノウ」
さやか「ああ窓に!窓に!」
ゆま「┌(┌^o^)┐ホモォ...」
まどか「ああ!マミさんの紹介したゲームのせいで皆が大変なことに!」
マミ「心配ないわ、こういう時はこれよ」
まどか「こ、これは!」
マミ「そう!デモンベイン!」
まどか「ちょくちょく奈良原さんとか鋼屋さんの作品挟んでるけど私達虚淵さんに怒られないの?」
マミ「タイトルがニトロプラス教室だからね」
まどか「このデモンベインってよく考えたらループものなのよね……」
ほむら「調子のって契約するんじゃなかった……」
まどか「―――――!」
マミ「さあ暁美さん!これをやりなさい!」
――――数日後――――
杏子「鬼に逢うては鬼を斬る。仏に逢うては仏を斬る。ツルギの理ここに在り」
まどか「杏子ちゃんの武器が日本刀に!?」
さやか「人間の姿を捨てちゃえば戦うのも楽だよね!」
まどか「ああ!さやかちゃんの武器が触手のようなものに!」
ゆま「伊烏攻めか伊烏受けか……それが問題だ」
まどか「ああ!ゆまちゃんの武器がGペンに!」
マミ「あら、暁美さんは?」
ほむら「憎悪の空より来たりて─
正しき怒りを胸に─
我等は魔を断つ剣を執る!
汝、無垢なる刃デモンベイン!」ガシャンガシャン
マミ・まどか「「どっから盗ってきたあああああああああああ!」」
355 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/29(火) 09:41:01.85 ID:Fjxo8/mzo
乙。腐ったクズのことデジルっていうのやめろよ!
この伊坂cv中田譲二でも驚かねえぜ。そしておりキリ逝ったのか?…いい悪役でした。
デモンペイイイイイインはいいゲームですよ?ヒロインが惨たらしく死んだりするけど
356 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/29(火) 09:41:05.19 ID:Fjxo8/mzo
乙。腐ったクズのことデジルっていうのやめろよ!
この伊坂cv中田譲二でも驚かねえぜ。そしておりキリ逝ったのか?…いい悪役でした。
デモンペイイイイイインはいいゲームですよ?ヒロインが惨たらしく死んだりするけど
357 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/29(火) 09:41:33.25 ID:Fjxo8/mzo
連投すまんね
358 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/29(火) 22:16:21.05 ID:9AXY9Ec80
>>1
もつ
ルナァ!!ルナァ!!
359 :
◆mbgGrCikwU
[saga sage]:2012/05/29(火) 22:24:18.74 ID:RpYgVN560
何故俺が譲二さん大好きなことを知っているんだ!
ところで献血行ったら肝臓に異常が見つかったんだ
明後日精密検査だよ……
オリキリはまあ見てのお楽しみというかね、うん
360 :
◆mbgGrCikwU
[saga sage]:2012/05/29(火) 22:24:56.29 ID:RpYgVN560
最終回までは即入院になっても投下できるから安心してね!
361 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/29(火) 22:37:24.05 ID:Fjxo8/mzo
肝臓か…ミトコンドリアが異常に大きいっていう診断をされたことはないか?
とりあえず無理すんなよ。頑張ってくれ
362 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/29(火) 22:57:45.98 ID:g+HHRuYDO
俺も献血行ったら「肝機能検査の値が高く、肝機能障害の可能性が高い〜」って書面が医療機関紹介状セットで送られて来た事ある
後日改めて検査して何ともなかったけどね
激しい運動や飲酒のせいで一時的に数値が高くなるらしいよ
だから平気じゃないかな?と楽観視してみる
363 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/30(水) 06:13:17.17 ID:Wx/pDaId0
だよね!平気だよね!
なんかすげえ心配になったわもう
というわけで投下
364 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/30(水) 06:14:03.24 ID:Wx/pDaId0
【第十七と二分の一話「NEVERENDING」】
「うっ……ここは?」
巴マミは目を覚ます。
「どこかしらここ……」
そこは見覚えのない風景。
無限に続く花畑。
「ちょっとそこの小娘!」
後ろから甲高い男の声が聞こえる。
「ひっ!」
振り返るとぬるぬるした動きのオカマが居た。
「なによなによなによなによ!
あんただけさも克己ちゃんの相棒みたいな顔して戦っちゃって!」
やたら胸を強調する動き。
対抗しているのだろうか。
もっとも彼の場合胸とは大胸筋のことである。
「私のほうがおっぱい……くぅっ!互角ね!」
「え、あ、あの……」
「京水、今はそんな馬鹿なこと言っている場合じゃないだろう」
横から割って入る大柄な男。
「そうよ、克己がピンチなんだからね」
「…………」
モデルのような体型の女性。
静かに頷く銃を持った男性。
365 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/30(水) 06:14:33.64 ID:Wx/pDaId0
「くっ……仕方ないわね、そこの小娘!」
「は、はい!?」
「よぉくお聞きッ!
残念だけど克己ちゃんは今ピンチよ、貴方にしか助けられないわ!」
「え、それは一体……」
「目が覚めれば分かるわ!良いからこれを受け取りなさい!」
京水以外の三人から渡される三本のメモリ。
トリガー、ヒート、メタルのメモリ。
「三つ?」
「あたしのメモリはもう持っているじゃない!」
「ルナのことですか?」
「そうよ!まったく腹のたつ小娘!私のメモリを勝手に使うなんてうんんもおおおおおおう!」
「そもそもな」
大柄な男が京水を遮る。
「おまえたちには恩がある」
「私たちの偽物を倒してくれたことには感謝してるのよ」
「グッジョブ」
銃を持った男性が親指を立てる。
「だから今回は克己ちゃんを守るためにも特別に力を貸してあげる」
鞭を噛みながら悔しそうに地団駄を踏む京水。
「私達の力、任せるわよ」
「さあさっさと行ってきな」
「言っておくけど!サイズじゃ互角でも私の方が揉みごたえあるんだからね!」
他の三人が同時にオカマをど突く。
スリッパで。
「……待ってください、もしかしてあなた達―――――」
巴マミの視界は白く染まった。
366 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/30(水) 06:19:39.42 ID:Wx/pDaId0
―――――――――
「――――ハッ!
今!行ってた!三途の川行ってた!
デスとデスで死んでしまうんです!」
ちょくちょくボケを挟む辺りルナメモリの毒素に汚染されているかもしれない巴マミであった。
「…………」
くるりと振り返っている。
こっちの方を見ている。
気絶している大道にとどめを刺そうとしていた井坂真紅郎。
「……あっ、どうしましょう」
使い魔が光を放つ。
マミはとっさに飛び上がり、ルナメモリを自らの身体に突き刺す。
服の隙間から二本のリボンが伸び、一本が大道を安全な場所へ逃した。
もう一本は瓦礫にひっかかり、彼女を其処まで引っ張る。
彼女が居た場所にはすぐに小爆発が起きた。
「――――これは!」
先ほどまで大道が装着してたメモリ。
ヒート、メタル、トリガー。
無傷で瓦礫の隙間に落ちていた。
「これを使えってことかしら……」
三本を拾い上げてじっと見つめる。
「■■■■■■――――z___________!」
井坂がマミの方に迫る。
「それならば!」
「ヒート!」
「メタル!」
「トリガー!」
三本同時に身体に突き刺す。
「ルナァ!トリガー!」
使い魔たちからのレーザー。
それに構わずにマミは井坂に飛び蹴りを放つ。
さらにマミの右足が銃に変化。
マミは空中で回転しながらウネウネとよく曲がるレーザーを撃つ。
相殺し合うレーザー。
367 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/30(水) 06:20:34.58 ID:Wx/pDaId0
「やっぱりいくら強力でも一本一本はメモリ単体レベルの力しか無い!
レーザー同士が交差する前にルナトリガーで全て相殺すれば勝てる!」
銃身と化した右足で飛び回し蹴り、それに加えて至近距離から弾丸を叩きこむ。
「_____?_________/■――――!?」
「ヒート!メタル!」
さらにマミの熱を帯びた鋼の左足が井坂の顔面を的確に捉えた。
空中二段蹴り。
「ヒート!トリガー!」
魔法で銃を生成。
超至近距離からの熱線で井坂を焼き払う。
だが井坂も負けずにカウンター気味に彼女に拳を突き出す。
マミの腹に突き刺さる拳。
「……っ!攻撃は使い魔頼りだから大したことないと思ってたけど……効くわねえ」
マミはわずかに体を捻り衝撃を逸らす。
が、耐え切れずに腹筋がえぐれ血肉が飛ぶ。
「NEVERになってなかったらそうとう危なかったわね」
「――――――!」
「でも捕まえた」
いつの間にかマスケット銃の変化した鉄の輪が井坂を拘束していた。
「この距離なら厄介な使い魔も攻撃できない
貴方を巻き込まないためにね」
マミの拳が両腕を塞がれた井坂を抉る。
井坂もすぐに拘束を弾き飛ばしてマミに襲いかかる。
掠る打撃。
あと一撃。
直撃すれば巴マミの命は刈り取られる。
「ルナァ!」
「メタル!」
再び巻きつく鉄の輪。
すぐさま狂獣は檻の中に閉じ込められる。
368 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/30(水) 06:21:01.08 ID:Wx/pDaId0
「はああああああああああああ!」
巴マミの体内で魔力が躍る。
叫び声に呼応して現れる数多の鉄輪。
井坂を完全に拘束する。
生まれつき与えられた膨大な魔力によるシンプルな強化、狂化。
さらにはルナ、ヒート、トリガー、メタルのメモリも最大限まで起動させる。
「これが本当の!」
「ルナァ!」
全身の関節を軟化させ、強化した体中の運動エネルギーを拳まで運び
「メタルゥ!」
その最大出力に耐えられる肉体へと自らを作り替え
「ヒートォ!」
最大であった出力に更なる属性付加を与え
「トリガァ!」
最高速度で撃ちだす。
「ティロ――――――――」
マミの拳が真っ赤に燃える。
悪を倒せと轟き叫ぶ。
「――――――――フィッッッッナーレ!」
殴られた井坂は土煙をあげて地面深くめり込んでいく。
後に残るのは巴マミの荒い息遣いだけ。
その攻撃の威力に比べれば驚くほど静かな終末だった。
しかし
「――――ッ!?」
地底からの断末魔の一撃
レーザーが巴マミの胸に突き刺さる。
彼女は糸の切れた人形のように崩れ落ち、動かなくなってしまった。
【第十七と二分の一話「NEVERENDING」 了】
369 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/30(水) 06:29:35.11 ID:Wx/pDaId0
ティロ・フィナーレ(物理)
ネタじゃなくティロ・フィナーレ(物理)
370 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/30(水) 07:21:05.08 ID:D/9D+ihD0
【次回予告】
「嘘……でしょ?」
「師匠!マミさん!嘘だ!嘘だよそんなこと!」
「映司さん!ちょっと映司さん!」
「……うわあああああああああああああ!」
「師匠……見ててください」
「変、身!」
「エターナル!」
【次回最終話「仮面ライダーエターナル」 乞うご期待】
371 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/30(水) 13:25:07.50 ID:wVDyyILDO
乙ダドンドコドーン!
372 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/30(水) 21:50:54.76 ID:FmLII1Ndo
乙。バキには見えねえから安心しな。
ついに最終回か…
373 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/30(水) 22:20:12.19 ID:q95NZOP00
だから見ていてください!!俺の
>>1
乙!!!
374 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/30(水) 22:34:40.11 ID:ZcCHTWPSo
>>373
もっと強くなって、もっと僕を笑顔にしてよ
375 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2012/05/30(水) 23:20:46.75 ID:5X55VEju0
乙、最終回まで長かったなぁ
>>374
笑いのツボ!
376 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/31(木) 07:56:13.58 ID:PYIyZk7O0
皆の乙さえあれば私何時までだって戦える!
とはいえもう最終回だけど!
これが終わってもエピローグが有るから
377 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/31(木) 07:56:51.14 ID:PYIyZk7O0
有るからまだちょっと続くのだけれども
378 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/31(木) 08:00:28.18 ID:PYIyZk7O0
【最終話「仮面ライダーエターナル」】
「嘘……でしょ?」
美樹さやかはクレーターの前で崩れ落ちた。
足元に転がるエターナルのメモリとロストドライバー。
そこで大規模な戦闘が行われたことは明らかであった。
「師匠!マミさん!嘘だ!嘘だよそんなこと!」
「諦めるのは早いよ、さやかちゃん」
映司はさやかの肩を叩く。
「最後まで手を伸ばし続けないと」
そう言って映司はクレーターの中に向かう。
さやかもメモリとドライバーを拾い上げてから映司の後を付いてクレーターを歩きまわる。
「あっ」
視界の隅で何かが動く。
「どうしたんだいさやかちゃん?」
「今あそこで何かが!」
「よし、行こう!」
二人は何かが動いていた場所まで走る。
「これは……」
「エンジンブレードとプリズムビッカー……まさか!?」
「ちょ、火野さん!?」
映司は素手で地面を掘り起こそうとする。
今は変身している以上中に人が埋まっていれば大変なことになるのだが、その行動はつまり彼も動揺しているということだろう。
そしてさやかが上記の理由でそれを止めようとした時だった。
ゴトリ
二本の剣が倒れる。
中から伸びる腕。
二十六の使い魔。
379 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/31(木) 08:00:56.14 ID:PYIyZk7O0
「――――魔女!?」
「そんなバカな!」
映司とさやかの行動は早かった。
「スプラッシュスティンガー!」
「セイヤァ!」
乱れ飛ぶ刀剣、そして羽のような形のエネルギー弾。
だがそれらの全てを弾いてソレは地面から這い出る。
意味不明な叫び声を上げて、ソレ――井坂真紅郎――は使い魔をさやか達にけしかけた。
「危ない!」
オーズはとっさにさやかを庇う。
すべての攻撃が彼に直撃、変身は解除され、映司はその場に倒れる。
「映司さん!」
「まだ生きていたのか……」
「え!?」
「コイツの相手はまずい、逃げて……さやかちゃん
そして応援を呼んで……」
そう呟いて映司は目を閉じる。
ゲラゲラと笑う井坂真紅郎。
「映司さん!ちょっと映司さん!」
いくら揺さぶっても映司は起きない。
「……うわあああああああああああああ!」
さやかは叫びながら滅茶苦茶に井坂真紅郎を切りつける。
井坂真紅郎は笑顔を浮かべてさやかに切られ続ける。
そして、まるでハエでも払うかのようにさやかを弾き飛ばした。
弧を描いてさやかは吹き飛ばされる。
「あぐっ!」
肋骨が折れて再生する。
先程まで持っていたロストドライバーとエターナルのメモリがすぐ側に散らばる。
笑い声が近づいてくる。
魔女、井坂真紅郎の声。
さやかの脳裏に走馬灯が映る。
大道との出会い。
マミとの再開。
絶望、希望、戦い。
中でも特に強く焼き付いた風景が有った。
「エターナル!」
彼女の手の中で響く電子音声。
永遠を告げるガイアのささやき。
380 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/31(木) 08:01:22.19 ID:PYIyZk7O0
「師匠……見ててください」
声の主はさやかの手に握られた“E”の刻印が施されたUSBメモリ状のもの。
ガイアメモリ、エターナルである。
「変、身!」
「エターナル!」
赤光を纏い、美樹さやかは純白の鎧を身につけた戦士へと変身する。
火の粉が辺りで跳ねまわり、土色の世界に鮮やかな彩りを加えた。
「ハアッ!」
そして、さやかの叫び声に呼応して炎は青く染まる。
これこそが真実の永遠。
仮面ライダーエターナルブルーフレア。
彼女の全身に走る稲光は青く染まり、それについで青い炎が彼女に従う。
「死神の茶会よ」
さやかはエターナルエッジを井坂真紅郎に向けた。
叫び声とともに向かってくる井坂真紅郎。
それに伴って二十六の使い魔が彼女に向けてレーザーを放つ。
姿勢を低く、クラウチングスタート。
大道のそれを超える速度でエターナルは井坂に迫る。
停止性のまま井坂を蹴りあげる。
それを追いかけるように飛び上がる。
先程まで居た場所が使い魔達の攻撃で爆発する。
爆風を受けて彼女は更に高く飛ぶ。
「これは……師匠の分!」
かかと落とし。
「これは……マミさんの分!」
エターナルエッジの刃が飛んでいき井坂に突き刺さる。
空中に浮かぶさやかに再び使い魔のレーザーが飛ぶ。
しかしエターナルローブによる防御+痛覚遮断+高速再生がそれをダメージにすることはない。
更に言えばこの井坂真紅郎は先程の大道達との戦いで体力が残っていない。
「これはフィリップさん!」
地面に倒れた井坂を踏みつける。
井坂も対抗して拳を振るうが驚くべき速さでそれを回避してカウンターを決める。
「これは照井さん!」
井坂を今度は思い切り蹴り飛ばす。
井坂も空中で体勢を立て直し、使い魔達によるレーザーバリアを張る。
さやかは正面からそれに突っ込む。
381 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/31(木) 08:01:53.94 ID:PYIyZk7O0
「これは映司さん!」
エターナルの装甲が吹き飛ぶ。
バリアを超えて魔法少女姿のさやかが現れた。
普段のそれとは違う、ティアラと大量のリボンに包まれた優雅な姿。
手の中にはサーベルが輝く。
それを魔女に突き立てる。
よろめく井坂。
彼の背後には大量のサーベルが地面に突き刺さっている。
それは大量のマスケット銃を用意する巴マミの戦い方を思い起こさせた。
一本、また一本、地面に突き刺さっていたサーベルが井坂に突き刺さる。
邪魔をする使い魔達もサーベルを投げつけて動きを止めていく。
「―――――z_____________!」
しかし井坂の絶叫と共に使い魔たちは再び駆動する。
さやかを取り囲み、光を放つ。
「変身!」
だがそれより早く、さやかは再び変身。
さやかはエターナルメモリをエターナルエッジに差し込む。
「エターナル、マキシマムドライブ!」
青い雷がナイフに走る。
それと同時に井坂と使い魔の身体にも稲光が走る。
使い魔達は発光を止め、その場で落下する。
「さあ、地獄を楽しみなさい」
さやかが井坂の目の前でふわりと宙に浮かぶ。
身体を半分ほど捻って背中を向け、その回転した勢いを生かしてそのまま足を突き出す。
その蹴りが届くか否かの刹那、魔女の姿が人間のそれに変わる。
「これで――の元に……」
崩れ落ちる井坂。
さやかは背を向けて彼から歩いて離れる。
変身を解除。
それと同時に人間――井坂真紅郎――は爆散した。
382 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/31(木) 08:02:37.51 ID:PYIyZk7O0
「終わったよ……みんな」
さやかは静かにつぶやいた。
「おいおい勝手に殺すな」
「え?」
「そうね美樹さん、ひどいわ」
「え?」
振り返るとボロボロの姿になった巴マミと大道克己がそこには居た。
「え、あ、ふたりとも……!」
「何とか助かったよ、コイツのお陰でな」
「君に死なれると取引が台無しになるからね」
「もしかして貴方は……」
「海東大樹、怪盗さ」
青い端子のエターナルメモリを見せびらかすようにしながら青年は笑う。
「さやか、そいつを俺に返せ」
「あ、はい!」
さやかはドライバーとメモリを大道に渡す。
大道はメモリを海東に差し出す。
海東はそれを見つめてため息を吐く。
「駄目だね」
「は?」
「僕は怪盗だ、やっぱり取引なんてのは性に合わない」
「なに?」
「正々堂々と盗ませてもらわないと……」
三人は海東に向けて身構える。
「と、思ったんだが」
T2メモリを大道に投げ渡して海東は三人に背を向ける。
383 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/31(木) 08:03:03.96 ID:PYIyZk7O0
「このお宝は大きすぎて僕には盗めないようだ」
「アタックライド、インビジブル」
「あ、ちょっと待て!」
「礼はいらないよ」
すぐに海東の姿は消えてなくなる。
「おーい!」
後ろから声が響く。
照井竜、左翔太郎、フィリップ・ライト、火野映司。
後ろからは遅れてきた他の魔法少女達。
照井とフィリップが“フリキレナカッタヨ……”とボソボソ言ってるのが不気味だ。
「ああ……」
「なにをしてるの美樹さん
このあとは皆でお茶会と洒落こみましょう?」
「さっさと行くぞさやか」
「…………あたしって、ほんとバカ」
大道とマミに手を引かれて、二人と並んで歩き始める。
泣きながら、さやかは笑っていた。
【最終話「仮面ライダーエターナル」 了】
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm17482961
すいません、つべで見つからなかったので勘弁してください
384 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/05/31(木) 08:05:20.07 ID:PYIyZk7O0
というわけでおしまいです
明日はエピローグ二本投下してそれで本当におしまいです
やはり最終回にはコネクトだよね!ってことで上のスペシャルバージョンのコネクト
聞きながらさやかちゃんの活躍を眺めると面白いかもしれません
これ聞きながらさやかちゃんの活躍書いてましたし
385 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/31(木) 12:35:55.83 ID:/VCs52mDO
乙!乙!乙!乙!
386 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/05/31(木) 18:31:09.96 ID:CthA5lv/0
みんな
>>1
乙するしかないじゃない!!
387 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:19:24.29 ID:goEjtxks0
【エピローグ1「コネクテッド/コネクティング」】
「というわけで今回の事件は一件落着
キュゥべえの姿も見つかってないし、しばらくあの街は平和なんじゃないかな」
「しばらくなの?」
「何時どんな敵が現れるかわからないからね」
「うーやだやだ、もう戦いなんてごめんだよ」
「そんなこといってるけどキリカちゃん、織莉子ちゃんと毎晩魔女を探してパトロールしてるくせに」
結論から言えば
井坂による攻撃の直前、映司はバースの力を使って穴を掘り、二人を地下から避難させていた。
井坂もキュゥべえも二人が跡形もなく消滅したと誤認したのはそのせいである。
本来大道とマミの作戦から二人を守るためにフィリップと映司がこっそり計画していた行動だったのだがそれが思わぬ形で役に立ったのだ。
今彼女らは夢見町の魔法少女として戦っている。
「な、なんで知ってるのさ!
さては織莉子、君が映司さんに!」
「うふふ、ごめんなさい」
「もう!恥ずかしいから言わないでよね!」
「ごめんごめんキリカちゃん、はい、ジャムティー」
ワルプルギスの夜の襲来から半年後。
美国織莉子と呉キリカは転校して夢見町のクスクシエでバイトしながら学校に通っていた。
織莉子の父と親交の深かった映司の父親が、二人の事情を配慮して別の名前で学校に通えるようにしてくれたのだ。
「ジャムティーに免じて許してあげるんだよ」
「本当に甘いモノが好きだね」
「甘味は世界を救うね、うん」
「程々にしないと太っちゃうわよ?」
「太って織莉子に嫌われるのは嫌だなあ」
「私はどんなキリカも大好きよ」
「やめてくれ、照れるじゃないか」
「……しかし、あの事件からもう半年か」
「そうね、ところで、大道克己は今なにしてるのかしら?」
「さあ?世界中を旅してるって話だけどね」
「また傭兵稼業でも始めるんじゃないの?」
「どうだろう」
「しかしまさか私達の居る所にミサイルを叩きこむ計画だったなんて……」
「ま、ミサイルくらっても文句言えないけどね」
「あいつも大概悪党だよ」
388 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:20:18.78 ID:goEjtxks0
「うーん……大道さんは悪い人って訳ではないんだよね」
「どういうこと?」
「一度、俺がアフリカでゲルダム団ってテロ組織の人質にされた話ってしたっけ?」
「ええ」
「あの時に助けてくれたのが大道さんとNEVERの人たちなんだ」
「へえ……」
「その時は二人で来てたっけか……マッチョな人と大道さんと
確かにあの人のしたことは悪いことさ、でもあの人自身はどちらかって言えば……ね」
「そうだったんだ」
「なんだかねえ」
「マミちゃんは世界中の魔法少女と友達になるって言って世界中を旅してるみたいだよ
この前絵手紙が届いてたから」
「あら、なんだか嫉妬しちゃうわ
私も旅に出ようかしら」
「お、織莉子!?」
「冗談よ」
織莉子はいたずらっぽく笑う。
「ほら三人とも!のんびり話してないでお店の準備して!」
「あ、知世子さん!」
知世子が慌てた様子で二階から降りてくる。
「ただでさえ比奈ちゃんがフランスに留学してて忙しいんだから!
テキパキしなきゃダメよ!お店の準備できてる?」
「はい、大丈夫ですよ」
「あら、まだ一番大事な準備ができてないじゃない
あ、それと織莉子ちゃん、キリカちゃん、これ着て!」
「こ、これは……」
「今日は……アフリカフェアよ!
はい、ライオンコスチューム!」
「……がおー」
キリカはナイス!とでも言わんばかりにグッと拳を握りしめた。
「映司くんはトラ!」
「カマキリじゃ駄目ですかね」
「え?」
「いやなんでもないです」
そもそもアフリカにトラは居ただろうか?
そんなことを気にしてしまう。
389 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:21:57.31 ID:goEjtxks0
「次はキリカちゃん!貴方はチーター!」
「知世子さんなんかエロいですこれ」
「若い内じゃないと着れないわよ」
「…………」
チラッと映司の方を見るキリカ。
視線をそらす映司。
「さあて今日は予約のお客さんが来てるから気合入れてくわよ!
私の友達の娘さんとそのお友達がねえ……」
「すいませーん」
「あらもう来たの?開けて、映司くん
織莉子ちゃんとキリカちゃんは急いで着替えてきて」
「はい!」
映司が扉を開く。
「あ」
「ああ!」
「あああ!!」
「ええええええ!?」
扉の向こうに居たのは美樹さやか、鹿目まどか、暁美ほむら、志筑仁美
「「「ええええええええええええええええええ!?」」」
クスクシエに少女達の叫び声が木霊した。
「どうしたんですか皆様?」
わけがわからないよ、といった表情の仁美。
「すいません知世子さんちょっと体調が……」
「わ、わたしも!」
逃げ出す織莉子とキリカ。
今日もこの国は平和である。
「映司さん、ちょっとこの件についてはゆっくりお話させてもらわないと……」
「ま、待って欲しいんだほむらちゃん。これには色々と事情が……!」
平和である?
「事情を聞くまでもないよ転校生……!」
「さやかちゃん駄目!暴力駄目!」
平和であれ
【エピローグ1「コネクテッド/コネクティング」 了】
390 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:22:40.77 ID:goEjtxks0
【エピローグ2「黄金の別離/Eの暗号」】
「さて……そろそろ飛行機の時間か」
「そうね」
「良いのか?見滝原に残らなくて」
「私が居なくてもあの子達は立派にやっていけるわ」
空港のベンチに並んで腰掛ける大道とマミ。
財団Xによって引き起こされた事件の後、彼らは国際特務調査機関に特別調査員としてスカウトされた。
「そうか……本当にお前は来ないのか?」
それを受けた大道
それを蹴ったマミ
「ええ、イタリアで美術の勉強をしようと思って」
「……はぁ」
「残念?」
「ふん、足手まといが居ない分身軽なくらいだ」
アナウンスが響く。
大道の乗る飛行機の時間だ。
「それにね」
マミは自嘲気味に続ける。
「もう、だいぶ記憶が無くなってきてるの
杏子さんと組んでいた頃とか、魔法少女になった時とか
そういう時の記憶が」
「それなら、なおさら俺と来た方が」
「今はまだ駄目、今克己さんと一緒に行ったら甘えてしまうもの
それにもうちょっと自分の夢を追いかけてみたいしね
それが人間である証のような気もして」
「……何か有ったら連絡しろよ」
「ええ、何か有ったら助けてもらうわ、仮面ライダーさん」
大道は振り返らずに歩いて行く。
人ごみに紛れて何時しかその姿は遠くなっていく。
391 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:23:10.07 ID:goEjtxks0
「克己さん!」
人目もはばからず大声をあげるマミ。
大道は振り返る。
マミは顔を真赤にしている。
「…………」
まだ真っ赤にしている。
周りの人々が彼女の方をチラチラ見ている。
「………………やっぱなんでもないです!」
大道は呆れたように笑うと彼女に背中を向けてサムズアップをする。
今度こそ、彼の姿は見えなくなる。
「はぁ、やっぱり駄目か。私も美樹さんのこと笑えないわね」
「マミさん、あんた何やってるんだ?」
「マミお姉ちゃん!見送りにきたよ!」
「あら佐倉さん、ゆまちゃん
なんでここのことを……」
ゆまを連れる杏子。
何かに似ている。
一瞬だけフラッシュバックする。
昔の杏子、自分と一緒に戦っていた少女。
「一応あんたとずっと一緒に居たこともあったしな
あんたのやりそうなことくらい解ってるよ」
消えゆく記憶。
「……そうよね」
「良いのかよ、マミさん」
「な、なにが?」
「あの大道って奴についていかなくて」
「それは……その」
マミの乗る飛行機のアナウンス。
「あらいけない。も、もう行かなくちゃ!」
駆け出そうとするマミの肩を杏子はつかむ。
392 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:23:51.51 ID:goEjtxks0
「あんたは何時もそうだった
良いお姉さんでなくてはいけない
良い先輩でなくてはいけない
私は確かにあんたがそうあることを願った
魔法少女になりたてで不安だったしな」
「佐倉さん……」
「でも、よく考えればあんただってあの頃、いや今でもガキだよ
私たちはガキだ、先輩でもお姉さんでも同じガキだ
思えば父親の無理心中に巻き込まれかけた子供を救えなんて中学生にできるわけがねえよ
ましてやあの頃のあんたは私より年下だ
私はあんたにとてつもない重荷を背負わせていたんだ」
「………………」
マミの悲痛な表情は、それを思い出したからではない。
それを思い出せなかったから。
「あの時あんたが何を考えていたのかは分からない
でももし、今も良いお姉さんであろうと、良い先輩で居続けようとしてるなら……そんなのやめてくれ
甘えてくれ、わがまま言ってくれ、振り回してくれ
できないことがある、決意できない何かがあるって弱音を吐いてくれ
頼むよマミさん……」
何があったのか、実は何もわからない。
でもそれを懸命に隠す。
「……佐倉さん」
記憶は失われても、想いは消えない。
何があったか分からなくても目の前で自らを見つめる少女への懐いは変わらない。
「ありがとう」
「ああ、じゃあなマミさん」
「じゃあねマミお姉ちゃん!」
巴マミは駆け出した。
その視界の遠くに見える背中。
彼女は今度こそ、それを捕まえる。
「じゃあな、マミさん……いや師匠」
名残を惜しむようにその様子を眺める杏子。
「どうして泣いているのキョーコ?」
杏子はゆまの頭に手を置く。
「ゆま“は”私が死んでも泣くなよ
きっとそういう時は泣いている暇の無い時だ」
「そうならないようにゆまは頑張るもん!」
あの距離はどうあがいても届かない距離だ。
だから、佐倉杏子は今自分の隣にいる少女の手を強く握った。
【エピローグ2「黄金の別離/Eの暗号」 了】
393 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:24:18.79 ID:goEjtxks0
ED→
ttp://www.youtube.com/watch?v=xZiJwasME2o
394 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:27:52.61 ID:goEjtxks0
【ニセ予告】
「夢見町に?」
「私達以外の魔法少女?」
「魔法少女リリカル☆メズール、水産よ」
「メズールー!お菓子食べるか?」
「このままでは済まさん……」
「やれやれ、困ったことになったね」
「僕は……なんでここに居るの?」
「またヤミーが現れるなんて……」
「映司さん!このメダルを使って!」
「このバースドライバー、私が使っても良い?」
「紫色の……グリード!?」
「ねえ、僕と契約して魔法少女になってよ」
「―――――変身!」
「タカ!トラ!バッタ!」
「タ・ト・バ・タトバ!タ・ト・バ!」
「セイヤアアアアアアアアア!」
【新スレッド 映司「タカ!」織莉子「トラ!」キリカ「バッタ!」 乞うご期待!】
395 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:28:55.93 ID:goEjtxks0
【偽予告】
「――――問おう、貴様が俺のマスターか?」
「あ、あんたは一体?」
「俺の名前は大道克己、セイバーのサーヴァント」
「邪魔なんだよ……俺を好きにならない奴は!」
「グチャグチャ言ってないでさっさと戦いなさいアーチャー!」
「勿論さ、真理」
「ナ、何故令呪が通じん!?」
「残念だが俺は仮面ライダー1号
だから間桐臓硯、貴様のような悪に屈したりなどはせん!」
「なんだと!?」
「ライダー!キィック!」
「やっちゃえバーサーカー!」
「ま、まずは話しあおうよイリヤちゃん」
「良いから私の言うこと聞きなさい!」
「やれやれ……超変身!」
【新スレッド 大道克己「問おう、貴様が俺のマスターか?」士郎「なんでさ……」 乞うご期待!】
396 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:29:26.52 ID:goEjtxks0
【偽予告】
「僕と契約して魔法少女になってよ」
「そうしたら、郁紀は治せるの?」
「うん、そして君も周りの人間に邪魔されずにずっと郁紀くんとやらと一緒に入られるよ」
「それなら私……」
「変身!」
「新手の魔法少女……」
「魔法少女リリカル☆沙耶!」
「さやサヤコンビ結成だね!」
「沙耶、最近夜中に家を抜けているようだけど何をしてるんだ?」
「ちょっとお散歩!」
「――――魔女を、食ってる!?」
「おいしいよ、さやかも食べる?」
「――――ッ、この……化物ォ!」
「沙耶……」
「お休みなさい、郁紀」
【新スレッド QB「僕と契約して魔法少女になってよ!」沙耶「良いよ」 乞うご期待!】
397 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/01(金) 06:39:50.08 ID:goEjtxks0
今までこのような駄スレに付き合って頂き誠にありがとうございました
素晴らしい原案を劣化させていっているのではないかと心配になりながらもとりあえずは完走させていただきました
良いスレは沢山あるけど完結したスレは少ないなんて言いますし
とりあえず完結しただけでもマシと思って筆の拙さについてはどうぞお許し下さい
あ、あとこの前の肝臓は普通に食べ過ぎでした
何を食べ過ぎたのかまで言うとこのスレにぴったりなオチがつくので言わない
398 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/01(金) 07:32:18.75 ID:xTGeV+vIO
>>1
乙
偽予告のクオリティぱねぇ
399 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/01(金) 07:53:32.04 ID:rVPAO/OSO
乙です!
仮面ライダーほど召喚すると面倒な奴らはいないわww
完結までありがとう!
400 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/06/01(金) 08:25:42.48 ID:ewgsJLBG0
>>398
偽予告
こじんてきには織莉子の話が一番書くことになりそうかなあと思ってます
もしやるとしたらですが
沙耶だけは
>>1
が原作やってないからちょいと怪しい
>>399
ちなみに言峰とディケイドが無双するzeroバージョンもございます
間桐さんところはマジで哀れ
令呪効かない鯖とか考慮しておらんよ誰だって……
完結できるとはおもいませんでしたよほんと
皆様の応援のおかげです
401 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/01(金) 09:44:28.53 ID:uv11lu9Wo
このスレに出会えたことがひとつの奇跡でございます。面白かったですお疲れさまでした!
ぶっちゃけ、2つめの嘘予告の続きがすんごい見たい。次回作期待してますんでよろしくb
402 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/06/01(金) 11:00:13.72 ID://a3LpX50
>>401
ありがとうございます
そう言っていただけたことが何よりの喜びです
二つ目の方はもう鯖データまでできているし一つ目はプロットくみあげているのでお楽しみに
403 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/01(金) 11:21:43.05 ID:xTGeV+vIO
>>402
マジかよ…
めっちゃ期待します!
404 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/01(金) 15:35:33.17 ID:0E1OUCj70
>>1
乙!!新作上げたら連絡くれよな…
405 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/01(金) 19:31:28.21 ID:T0k3A2HDO
完結乙!
前回未完で落ちてから今まで長かった…ここ1ヶ月の間、スレ更新されるのがずっと楽しみだったよ
これが良き終末ってやつか、読み切って満足したぜ
予告も楽しみにしてます!
406 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/06/01(金) 20:09:15.94 ID:rnAYQFlB0
>>403
どっちをやるかが問題だ……
全部やる時間は無いからまどマギキャラをマスター枠で混ぜるか悩んでいるところです
>>404
基本出たがりなのでめっちゃ宣伝します
ステルスじゃないマーケティングです
ご安心ください
>>405
ありがとうございます
そう言っていただけることが励みになります
ぶっちーや三条さんの域にははるか遠いですが自分のような者でも人を物語で楽しませられたならSS書き冥利に尽きるというものです
407 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/06/01(金) 21:37:46.31 ID:DTER6c200
乙乙
ああ、終わっちまったか…
それにしても最後のマミさんが悲し過ぎるんだが
そりゃNEVERになった以上この運命は決まっていたものだけど
そりゃそうだけど…もうちょっと待ってくれたっていいじゃないか…(;ω;`)
大道さんの記憶は結構長く保たれてたのに、マミさんはいいとこ一ヶ月じゃん…うう
408 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/01(金) 22:26:02.96 ID:VpXSD9X1o
さて読み返すか
409 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/06/01(金) 22:38:37.92 ID:ET/DMpS+0
>>407
ラストはあの切なさで終わらせないと駄目かなあと思ったんですよ
死人は死人っていうのだけはしっかり描いておかないとNEVERになることは不幸なことなんだって言うのをちゃんと書ききれないような気がして
でもマミさんは新しい明日があるしまあ悪くはないというか
ここらへんは虚淵さんがインタビューで言ってた「極寒の中でおしるこ一杯出したら心あたたまるかな」っていうあれでしょうか
とにかく杏子が可哀想で……
>>408
第一話の大道さんの変身とラストのさやかの変身の描写を意図的に似せていたり
映司の台詞の端々に既に魔女井坂さんを見てきたような素振りがあったり
二週目読むと面白い小ネタがあるはずなのでお楽しみに
410 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/02(土) 16:12:40.25 ID:iKsAUpnDO
さて、HTML化してくる
411 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/02(土) 17:20:15.52 ID:a4jRvkFfo
次はまどかに仮面ライダーをクロスさせるのではなく、
逆に仮面ライダーにまどかやほかの作品をクロスさせたりしてみるのはどうですか?
例えば
ほむら「バトルファイト?」
ほむら「私がヒューマンアンデット?」
とか
412 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/02(土) 21:23:58.19 ID:6XWmidfl0
>>411
ダリナンダアンタイッタイ
413 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga ]:2012/06/02(土) 21:38:37.92 ID:mux8pSPd0
問題はねえ
それだと某スレとかぶっちゃうのがねえ
同じWとクロスするスレでも大道さんメインにしたりして差別化図ってただけにまずいと思うんですよ
被り、駄目、絶対
ライダーfateも被りそうだけどね
そろそろHTML化されると思うのでご要望質問意見苦情ございましたらどうぞおねがいします
414 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/02(土) 22:06:15.12 ID:3NL1iFsDO
一つだけ質問
そんな気にするほどでもないんだけど、最後の井坂戦でさやかの魔法少女衣装が変化したのはなんで?
415 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/06/02(土) 23:16:52.41 ID:uFiBlHeH0
あっ、俺も
>>413
が気になります〜ノシ
ともあれ、差別化とかは気にしなくていいと思いますよ?
>>1
程の人なら、書きたいときに書きたいものを書いてくれれば読者はきっとついてきますから
少なくとも俺はついていきます
416 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/06/02(土) 23:17:23.84 ID:uFiBlHeH0
>>413
じゃなかった
>>414
だしにたい
417 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga ]:2012/06/02(土) 23:34:20.55 ID:mux8pSPd0
>>414
イエスタディほむらとかルナマミに近い理屈かなあ
メタ的にはサイクロンジョーカーゴールドエクストリームと同じ原理
モモタロスが戦いはテンションだって言ってたじゃないですか
つまりちゃんと考えてないんだ……
>>415
いやいや
自分はまだまだ修行が足りません
人とかぶれば負けてしまう気がします
418 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/02(土) 23:53:18.74 ID:CRq/u/DSO
楽しませていただきました
Wでクロスはあったけど、大道とのクロスはなかったから新鮮でした!
とあるリンカレより。
419 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/03(日) 00:34:43.39 ID:SnChc4J/0
>>418
うひょう
貴方の話の続き楽しみにしてます!
シャーリーの出番増えたら面白いなって
あ、次回作の試作品できたのでちょいと投下しますね
420 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/03(日) 00:36:58.51 ID:SnChc4J/0
【大道「問おう、貴様が俺のマスターか」士郎「なんでさ!?」】
【第一話「永遠のライダー」】
まず初めに願いがあった。
願いは祈りを生み、祈りは奇跡を生んだ。
奇跡は希望を作り出し、希望は欲望を招いた。
欲望は争いを、争いは憎しみを、そして奇跡も願いも漆黒に染まった。
――――しかしそれでも
それでも尚戦い続ける人の手にのみ、あと一度だけ奇跡は起こるのだ。
「問おう」
「貴様が俺のマスターか」
暗い土蔵
月光だけが差し込む。
そしてそれを背に立つ悪魔。
彼が見つめているのは赤毛の青年、血まみれだ。
どうにもこの青年こそが彼の今回の主らしかった。
「な……あんたは!?」
刹那、刺すような殺気。
誰かが居る。
「ふん、聞いている暇もねえみたいだな
どうやら死んでも戦場からは抜け出せないらしい」
殺気に背を向けたまま黒い革のジャケットを羽織った男――悪魔――は自嘲気味に笑う。
男は懐からUSBメモリのような物を取り出した。
「エターナル!」
天地に満ち充つ大地の囁き。
「 変 身 ! 」
月光より尚蒼き炎。
月光より尚眩き瞳。
月光より尚白き躯。
仮面ライダーエターナル。
此度の第五次聖杯戦争、剣の英霊としてここに推参。
「……マスターだったか」
そこで初めて殺気の主は姿を現す。
黄色と黒のラインが全身に走っている。
「ふん、こいつが敵のサーヴァントか」
「いかにも、俺は仮面ライダーザビー
槍兵のサーヴァントとして此度は現界した」
「……ふん」
「名乗らないのか?無粋な奴だ」
「名乗らぬのならばその程度の相手ということ
早々に叩き潰してしまいましょう、ランサー」
ランサーの背後から長身の女性が現れる。
バゼット・フラガ・マクレミッツ。
伝承保菌者と呼ばれる凄腕の魔術師。
421 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/03(日) 00:39:19.66 ID:SnChc4J/0
「しかし……事情が変わってしまいましたね
記憶を消す程度にするつもりだったのですがこれでは……」
彼女は手袋を嵌め直す。
「死んでも恨まないでくださいね」
「悪いがこっちは死ねない身でね!」
先手をとったのはザビー。
腕から伸びるパイルバンカーでエターナルの頭部を狙う。
だがエターナルはナイフでそれを僅かに逸らし、腹部に一撃を叩き込む。
一瞬の隙を突いてバゼットのジャブがエターナルの顎を捉える。
わずかによろめくエターナル。
彼は素直に驚いた。
只の人間が仮面ライダー相手に有効な攻撃をできる。
土蔵の出入口に陣取る地理の都合上、同時に攻撃を受けないのが大道にとっては幸運だった。
「っらあ!!」
バゼットに対してカウンターの蹴りを浴びせかける。
軽く吹き飛ばされるバゼット、わざと吹き飛ばされて衝撃を逃したらしく致命傷になってない。
「思ったよりも面倒な相手ですね……」
「やれやれ、調和が崩れてしまったな」
「仕方ありません、ランサー。宝具の開帳を許可しましょう」
「承った」
「こちらも使うしか無さそうだな」
二人は大道から距離を取る。
大道はそれと同時に自らの常時発動型宝具を展開し始める。
しかしそうはさせまいとランサーもすかさず宝具を発動させた。
『固有時解放(クロックアップ)』
魔力がランサーの身体を奔る。
それは彼の体内のタキオン粒子を操作し彼の体内の時間だけを魔法の域まで加速させる。
こうなったランサーを捉えることはもう誰にもできない。
「これで終わりだ、名も無きサーヴァント」
一人だけ加速された時間の中でランサーは大道の目の前に立つ。
『刺し穿つ死蜂の棘(ライダースティング)!』
刺し穿つ死蜂の棘(ライダースティング)
ゼクターニードルによる必殺の一刺。
その正体は、クロックアップによる高速移動を生かした強烈な一撃。
そしてそれと同時に発生するタキオン粒子による攻撃だ。
攻撃自体は至ってシンプル。
しかしその一撃は不可避にして不可防……の筈だった。
「……馬鹿な」
漆黒のマントが、その一撃を止めていた。
「残念だったな、ランサー」
そして固有時開放が終わる。
422 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/03(日) 00:39:51.64 ID:SnChc4J/0
『突き穿つ聖獣の角(ユニコーンマキシマムドライブ)!』
エターナルの拳に緑色の光が灯る。
それは螺旋の形になり、ザビーを貫く。
「ガハッ……馬鹿な
ランサーでもないのにそんな技……」
「ランサー!一度引きますよ!」
「くそっ……」
「ランサー!」
「解っている」
二人は同時に衛宮家の塀を乗り越えてその場から撤退する。
大道はため息をついて彼らの後ろ姿を見送った。
「おいお前、生きているか?」
「な、なんとか……」
虫の息だが生きているらしい。
先程まで流れていた血も止まっている。
「お前、名前は?」
「衛宮士郎……」
それだけ答えると赤毛の青年――衛宮士郎――は気絶した。
【第一話「永遠のライダー」 了】
423 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/03(日) 00:41:52.11 ID:SnChc4J/0
一応今書いた試作品です
おそらくもうそろそろHTML化されるのでお早めに
あとザビーは使いづらいのでフォーゼに変更予定です
それとアサシンはゼクロスで行こうかと思っています
これ以上はネタバレかつ物語の核心なので勘弁
424 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/03(日) 00:43:23.35 ID:SnChc4J/0
【CLASS】セイバー
【マスター】衛宮士郎
【真名】大道克己
【性別】男性
【身長・体重】205cm・90kg
【属性】秩序・悪
【ステータス】筋力B+ 耐久A 敏捷B+ 魔力E 幸運E− 宝具A++
【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
近代兵器を自在に操れる。
【固有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
戦闘続行:A
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
死人なので肉体が破壞されない限り戦闘は続行できる
カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。
【宝具】
『約束された永遠の剣(エターナルエッジ)』
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
久遠を分かつ漆黒の帳(エターナルローブ)を封印することによって使用可能。
永遠の属性を持つ短剣。人造による武器ではなく、地球の記憶に鍛えられた星造兵装。
魔剣というカテゴリーの中では頂点にかぎりなく近い宝具。
エターナルメモリから生み出される地球のエネルギーを光に変換し、収束・加速させる事により運動量を増大させる。
それと同時に相手の持つライダー能力を一時的に封印する。
『久遠を分かつ漆黒の帳(エターナルローブ)』
ランク:B+ 種別:結界宝具 防御対象:1人
エターナルに変身する時に現れる漆黒のマント。
その正体は永遠という概念を物質にした概念兵装。
あらゆる熱・冷気・電気・打撃を無効化する。
ただし装備中は筋力と敏捷を二段階下げる。
425 :
◆mbgGrCikwU
[saga ]:2012/06/03(日) 00:44:07.52 ID:SnChc4J/0
【元ネタ】仮面ライダーカブト
【CLASS】ランサー
【マスター】バゼット・フラガ・マクミレッツ
【真名】矢車想
【性別】男性
【身長・体重】192cm・127kg
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具A
【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【固有スキル】
パーフェクトハーモニー:B
同じ相手に同じ技を何度使用しても命中精度が下がらない特殊な技能。
攻撃が見切られなくなる。
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
【宝具】
『刺し穿つ死蜂の棘(ライダースティング)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2〜4 最大捕捉:1人
ゼクターニードルによる必殺の一刺。
その正体は、クロックアップによる高速移動を生かした強烈な一撃。
そしてそれと同時に発生するタキオン粒子による攻撃。
クロックアップから放たれるライダースティングを回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、タキオン粒子を無効化する能力が重要となる。
『突き穿つ翔蟲の棘(ゲイ・ボルク)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:5〜40 最大捕捉:50人
タキオン粒子の力を最大限に開放し、渾身の力を以ってゼクターニードル射出する特殊使用宝具。
もともとゼクターニードルの使用法はこちらが正しい。
死蜂の棘と違い、こちらは破壊力より射程と範囲を重視し、一回の射出で一部隊を吹き飛ばす。
『固有時解放(クロックアップ)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:1 最大補足1人
超高速の特殊移動方法。
ワーム成虫体や各ライダーフォームが、体を駆け巡るタキオン粒子を操作し、時間流を自在に行動できるようになることで行う。
ワームは自らの意思で、ライダーの場合は腰部のベルトにあるスイッチに触れることにより発動する。
スイッチはバックル中心部の両脇にあり、カブト・ガタック・ダークカブトはプッシュ式のスラップスイッチ、他ライダーはスライド式のトレーススイッチである。
426 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/03(日) 00:49:55.54 ID:BTCzY29So
おおお!Fateらしくていい!期待してます。
間違いなく、このランサーは幸運E、ただしイケメンでもなければ性格男前でもないな。…ドンマイバゼット、多分またダメットだよ
427 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/03(日) 00:54:12.71 ID:BTCzY29So
と思ったら幸運C……だと……!?こ、これはどうなっているんだ!不幸じゃないランサーなんてスープが飲める二郎並みにおかしいはずだぞ(偏見)
428 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/03(日) 01:00:29.06 ID:/kFLWAjSO
ライダー戦争!
いいね〜 昭和も出すみたいだし、楽しみです!
429 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/06/03(日) 01:51:40.79 ID:4u8fOA510
このスレをアルカディアに転載させてもらいますが構いませんよね!
これの転載終わったら新作本格始動の予定です
>>426
>>427
そこらへんどうしようか考え中なんですよ
あと矢車さんはイケメン
イケメンなんだ!
>>428
昭和勢は大活躍の予定です
あまり誰を出すかはハッキリ言えませんが大活躍します
430 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2012/06/03(日) 08:33:44.05 ID:pgwObd4O0
何故かpass受け付けないし転載諦めてさっさと次回作書いてきます……
431 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/06/04(月) 07:54:07.13 ID:Z1vMRDZDO
完結乙
読んでてすげえ長く感じたのに、実質350レスぐらいしか使ってないんだな
432 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2012/06/04(月) 19:02:59.28 ID:nOUZHNHDO
>>431
多分地の文書き込んでるからじゃないかねえ
二郎ラーメン並みにずっしり来る
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