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律「九つの、物語」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : :2012/05/17(木) 15:06:29.56 ID:2O9TbrlJ0
しばらくしたら書きます。

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【安価】上条「とある禁書目録で」鴻野江「仮面ライダー」【禁書】 @ 2025/06/09(月) 21:43:10.25 ID:qDlYab/50
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ツナ「(雲雀さん?!)」雲雀「・・・」ビショビショ @ 2025/06/07(土) 01:30:36.87 ID:AfN9Rsm0O
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貴様たちの整備のお陰で使いやすくしてくれてありがとう @ 2025/06/04(水) 20:56:21.03 ID:QjuK6rXtO
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阿笠「わしの乳首に米粒をくっ付けたぞい」コナン「は?」灰原「は?」 @ 2025/06/04(水) 04:01:13.39 ID:ZjrmryLdO
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レッド(無口とか幽霊とか言われるけどまだ電脳世界) @ 2025/06/02(月) 21:21:00.13 ID:ix3UWcFtO
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2 :1 :2012/05/17(木) 16:33:28.30 ID:rp+y4+JO0
本を読んでいたら、澪が部屋に入ってきた。

驚いた。

思わず何度も瞬きを繰り返した。

澪は以前と変わらない様子で私を見て、ため息をついた。

「あのさ、律、勝手に私の部屋に入るなよ。」

呆れた調子で澪が言う。

まぁ、それは怒るよな。

いくら幼なじみとはいえ、不法侵入だな。
3 :1 :2012/05/17(木) 16:38:34.28 ID:rp+y4+JO0
私が寝転んでいるベットは、もちろん澪のベットだ。

室内に私のものは一つもない。

ベットも、たくさんの本も、少し古いパソコンも、

すべてが澪のものだった。
4 :1 :2012/05/17(木) 16:49:55.12 ID:rp+y4+JO0
「前から何度も言ったぞ、勝手に入るなって。」

怒り気味の澪、

「見られたらダメなものでも入ってんのか?」

そんな言葉がつい口から出る。

「そ、そんなことは…な、ないぞ?」

少し動揺してるし。

今度、探してみるか。

「と、ところで何の本を読んでいるんだ?」

「るこうしんそう?みたいなの。」

「あぁ、あれか。」
5 :1 :2012/05/17(木) 16:55:17.38 ID:rp+y4+JO0
あれあれ見たか、
  
  あれ見たか。

二つの蜻蛉が草の葉に、

かやつり草に宿をかり、

人目しのぶと思えども、

羽はうすくものかくされぬ、

すきや明石に緋ぢりめん、

肌のしろさも浅ましや、

白い絹地の赤蜻蛉。

世間稲妻、目が光る。

あれあれ見たか、

  あれ見たか。
6 :1 :2012/05/17(木) 17:00:59.99 ID:rp+y4+JO0
澪は同じ姿勢のまま、そんな言葉を呟いた。

ちょうど私が読んでた本の冒頭部分だ。

試しにページを戻って確認してみたところ、

澪が口にした言葉は一言一句、間違えもなく本文と合っていた。
7 :1 :2012/05/17(木) 17:08:38.96 ID:rp+y4+JO0
「すげーな、澪!」

「ところで律、お前がこんな本を読むなんて珍しいな。」

確かに、そうかもしれないな。

理由なんて特にないけどなんとなくだ。

いや、理由はあるけど…

それを言葉にしていいのか分からなかった。   
8 :1 :2012/05/17(木) 17:13:44.53 ID:rp+y4+JO0
「なぁ、澪?」

「どうした?」

私は澪の手に触れた。

あったかくもない、冷たくもない。






これで、はっきりした。


9 :1 :2012/05/17(木) 17:19:46.54 ID:rp+y4+JO0
確かに澪は実在している。



「どうして澪はここにいるんだ?」



その声はとても穏やかだった。





「澪は二年前に死んだはずだ。」



そう、澪は死んだ。

私は澪の死に顔を見た。

お葬式にも出た。

墓もすでに建てられている。

だとしたら…

この目の前にいる澪はなんなのだろう。



10 : :2012/05/17(木) 17:39:04.45 ID:2O9TbrlJ0





第一話「繢紅新草」 おわり
11 : :2012/05/17(木) 17:40:04.07 ID:2O9TbrlJ0
↑るこうしんそうと読みます。

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 17:43:07.17 ID:NPR7Cxxio
お、おう
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 17:44:23.85 ID:GAPKdEJ90
続き期待してるよ
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 18:36:27.19 ID:9PSvRsuDO
やっちまったな
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 18:46:23.28 ID:1ULByoMTo
鏡花か……
続き期待
16 :1 :2012/05/17(木) 18:47:30.07 ID:rp+y4+JO0
少し時間ができたので一応かいときます。

これは律たちが高3の頃です。

二年前、高1の時に澪が死んだ設定です。

ちなみに初スレなので変な所あったら書いて頂けると嬉しいです。

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 18:56:11.17 ID:F5xBPpaSO
元ネタは橋本紡の『九つの、物語』かな?
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 19:55:41.34 ID:Lv8asFYNP
サリンジャーじゃないのか。読んだことないけど
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/17(木) 19:59:51.10 ID:LDP4WQ9mo
お、おお…
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 20:43:26.23 ID:xlu/1l8ro
>>18
俺もナイン・ストーリーズかと思った
ライ麦しか読んだことないけど
21 :1 :2012/05/17(木) 22:13:45.31 ID:rp+y4+JO0
今からまた書きます。

>>17、そうです!九つの、物語です。
22 :1 :2012/05/17(木) 22:22:48.63 ID:rp+y4+JO0
梓と駅前で待ち合わせをしていた。

私はその辺にあったベンチに腰をかけ、

「待つ」という本を読んでいた。

(省線のその小さい駅に、私は毎日、人をお迎えにまいります。)

最初の一分を目に入った。

梓を待ってる間に「待つ」を読む。

おかしくて少し笑っていたら、

「律先輩!一人で笑ってて怖いですよ?」

「悪いな、いくぞ〜!」
23 :1 :2012/05/17(木) 22:30:01.94 ID:rp+y4+JO0
今日は梓と遊びにいくつもりだ。

ちょっと生意気な後輩だが、可愛い奴だ。

「今日はどこに行くんですか?」

「あー。」

「決めてませんでしたね?」

…怖い、怖い。

「じゃあさ、そこのカフェにいくぞ!」

「はいです!」

24 :1 :2012/05/17(木) 22:32:18.29 ID:rp+y4+JO0
カフェの中は大人っぽい雰囲気だった。

少し暗い…

その暗闇の中、私は昨日のことを思い出していた。
25 :1 :2012/05/17(木) 22:35:43.90 ID:rp+y4+JO0
あ、ミスってた…

>>22の、

最初の一分を目に入った。
     ↓ 
最初の一文が目に入った。

…こうです。

すいません。
26 :1 :2012/05/17(木) 22:42:41.51 ID:rp+y4+JO0
「どうして澪はここにいるんだ。澪な二年前に死んだはずだ。」

澪はすごく落ち着いて冷静に呟いた。

「死んだはずなんだ。」

「…じゃあ、幽霊なのか?」
 
「…」

「…?」

「…」

「澪?」

「…」

気絶してる…

幽霊なのは自分だろ!?

いや、幽霊って気絶するのか? 
27 :1 :2012/05/17(木) 22:48:44.34 ID:rp+y4+JO0
-数分後-

「た、たぶん…わ、私は幽霊…なのか?」

「そうかもな。」

澪の死に顔みたし。

葬式でたし。

墓でお参りもしたし。

確か、澪は…水死だったか?

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 22:51:11.20 ID:F5xBPpaSO
>>21
やっぱり
ただ、この作品は名前は知ってるが「半分の月がのぼる空」と「リバーズ・エンド」しか橋本紡の作品は読んでない
29 :1 :2012/05/17(木) 22:55:02.88 ID:rp+y4+JO0
「先輩?律先輩!?」

「…」

「律先輩!?」

「あぁ、ボッーとしてた。」

今は梓と楽しまなきゃな。

「このチーズケーキうまそうだな。」

「私もチーズケーキにしようかな。」

………



30 :1 :2012/05/17(木) 23:03:03.00 ID:rp+y4+JO0
「ただいま。」

梓と遊びおわって、家のドアを開けた。

いや、澪の家のドアか。

澪の家に行くのが癖になったな。

「ここはお前の家じゃないぞ?」

階段の所から澪が私がいる玄関にやってきた。

「どこに行ってたんだ?」

「遊びに行ってた。」

「ま、まさかデートか?」

「いや、なんでだよ!?」

31 :1 :2012/05/17(木) 23:09:03.73 ID:rp+y4+JO0
「梓と遊んでたの!」

「誰だ?」

あぁ、そうか。

澪は知らないよな。

澪が死んでから軽音部が廃部になりかけの時、

梓はやってきたからな。

「軽音部の後輩だよ。」

「会ってみたいな…」

「今度、連れてきてやるから。」

「待ってるからな。」




第2話「待つ」おわり
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 02:11:05.26 ID:ioE7jnTSo
元ネタ知らないけど楽しみにしてる
33 :1 :2012/05/18(金) 07:09:28.73 ID:6Y/KppK00
高校の教室で蒲団って本を読んでいたところ、

唯から声をかけられた。

「りっちゃん、おはよ〜!」

「今日は早いな。」

「えへへ、憂がいますから!」

いいな、憂ちゃん欲しい…

34 :1 :2012/05/18(金) 07:17:17.11 ID:6Y/KppK00
「ところで、たやまはなふくろって何?」

「いや、こっちが聞きたいんだけど!」

「それは、たやまかたいって読むのよ。」

「あ、ムギ!」

「そうなんだ、おかしい名前。」

なんだ。

唯は本の作者のことを言ってたのか。

…田山花袋。

蒲団の作者の名前。

「たやまはなふくろの方がおかしーし!」

3人の笑い声が教室に響いた。

………

35 :1 :2012/05/18(金) 14:47:01.77 ID:6Y/KppK00
放課後になった。

「りっちゃん、部活いこ〜よ!」  

「悪い、今日は帰るな。」

「あ…りっちゃん…」

唯には悪いが、澪に会いたい。

せっかく会えたんだからゆっくり話したい。

そう思って私は澪の家へ向かった。
36 :1 :2012/05/18(金) 14:53:21.15 ID:6Y/KppK00
「澪!ただいま。」

「いや、私の家なんだけど…」

「澪に会いたかったからいいの!」

「そうか…」

澪がやってきて一週間は立った。

一人ぼっちの澪が寂しくないように、

しばらく澪の家に泊まっていた。

けど、澪が一番して欲しくなかったことを言ってきた。




「私のママとパパってどこにいるの?」

そう、この家は私と幽霊の澪しかいない。
37 :1 :2012/05/18(金) 14:59:23.48 ID:6Y/KppK00
「…引っ越したんだ。」

「…」

「澪が死んでから引っ越してしまったんだ。」

「そうなのか…」

せっかく戻ってこれたのに両親に会えないのは辛いだろう。

「…」

「…」

この空気、どうにかならないのか?
38 :1 :2012/05/18(金) 15:06:21.54 ID:6Y/KppK00
「薬屋さんかネ……今日はいいがな」

「…は?」

「なんの本でしょう?」

少し考えたあと、澪は言った。

「え、蒲団か?」

「正解!」

「…ふふ。」

「何だよ?」

「そういえば律ってなんで本なんか読んでんだ?」

「それは…」

「秘密だ!」




まだ、言いたくない。

いや、恥ずかしくて言えない。
39 :1 :2012/05/18(金) 15:13:14.55 ID:6Y/KppK00
「…律。」

「何だ…?」

澪が真剣な目で私を見つめる。

何を言われるんだ?








「おなか減った。」



幽霊もお腹、減るのか。



「よし!今日は私に任せろ!」

とっておきのハンバーグつくってやる!!




第3話「蒲団」おわり
40 :1 :2012/05/18(金) 15:18:42.72 ID:6Y/KppK00
あぢさゐって本を読んでいたら、

梓が私の前に現れた。

「すいません、待たせましたか?」

「いや、私も来たばかりだぞ?」 

あれ、梓が緊張してるのか?

「とりあえず行くぞ、近くだからな。」

……… 

41 :1 :2012/05/18(金) 17:25:47.59 ID:6Y/KppK00
「ただいま、澪。」

「おじゃまします…」

今日は澪と約束した日。

澪が前に梓に会いたいって言ってたからな。

「その人が梓ちゃんなのか!?」

「そうだよ。」

後輩ができると嬉しいからな。

澪がはしゃいでるような気がするな。

42 :1 :2012/05/19(土) 17:31:15.44 ID:YxsY6Udh0
梓「初めましてです!」

澪「よ、よろしくな!梓ちゃん。」

梓「呼び捨てでいいですよ。」

澪「あ、梓でいいのか?」

梓「はい!私も澪先輩って呼んでいいですか?」

澪「…先輩///」



43 :1 :2012/05/19(土) 17:36:39.58 ID:YxsY6Udh0
何か梓って澪と話してて嬉しそうだな。

やっぱり、梓には澪のこと言っといて正解だな。

澪も先輩って呼ばれて嬉しそうだし。

………

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 20:52:39.75 ID:Wbw6PoAe0
姿は普通に見えるみたいだね。そして、ご飯も食べるのかww
変わったタイプの幽霊だな。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/19(土) 20:57:42.84 ID:p/OsmCc/o
家に居て、何にもせず腹が減ったら飯を食う

あれ?お前らってもしかしたら澪ちゃんなんじゃね?
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 21:20:48.09 ID:WBu+AfqSO
原作だと主人公が妹で兄が幽霊。
まぁ、原作に沿ってSSが作られてるとは思うなら

>第1話 泉鏡花「縷紅新草」
>第2話 太宰治「待つ」
>第3話 田山花袋「布団」
>第4話 永井荷風「あじさい」
>第5話 内田百?「ノラや」
>第6話 井伏鱒二「山荘魚」(改変前)
>第7話 井伏鱒二「山荘魚」(改変後)
>第8話 樋口一葉「わかれ道」
>第9話 サリンジャー「コネティカットのひょこひょこおじさん」


章分けもこの通りになるんじゃない?
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 23:09:29.02 ID:5ifBB1we0
なんか難しい名前とタイトルみる度
小林多喜二 蟹光線
を思い出す
48 :1 :2012/05/20(日) 11:03:13.63 ID:3QjN7HFb0
「梓、澪のことって知ってるか?」

「澪?…律先輩の親友の人ですか?」

「そうだよ、今度さ会いにいかないか?」

「で、でも唯先輩とかムギ先輩はその人は…」

「いるよ、ちゃんと。」

「…亡くなったって聞きました。」

「いるんだってば!」

「いるわけないじゃないですか…」

「…幽霊だけどな。」

「…え?」

………

49 :1 :2012/05/20(日) 11:09:47.91 ID:3QjN7HFb0
最初は信じてなかったくせに。

私を置いて澪と楽しみやがって!

「お腹すいたー!」

「そうだな、律。」





「…え?私に言ってますか?」




「澪が梓の手料理を食べたいって!」

「お、おい!私はただ律の意見に同意しただけ…」
50 :1 :2012/05/20(日) 11:15:48.00 ID:3QjN7HFb0
結局、澪と梓で作ることになった。

「私も手伝うことないのか?」

それを聞いた澪はやれやれって感じでため息をついた。

「先輩として梓に話があるから。」

「私は邪魔なのか!?」

「うん。」

「…ひどい。」
51 :1 :2012/05/20(日) 11:20:29.93 ID:3QjN7HFb0
そうして、澪と梓はキッチンへ消えてしまった。

…何か落ち着かない。

私はしばらく、うろうろした。

我慢の限界がきてキッチンにひょこと顔を出して、

「私も手伝う!」
52 :1 :2012/05/20(日) 11:31:04.87 ID:3QjN7HFb0
「先輩として梓に話があるって言ったぞ。」

わぁ、澪が冷たい…

「私と梓で十分うまくいってるよな?」

「そ、そうですね。」

梓、戸惑ってないか?

「律は本でも読んでろ!」

「…納得いかないな、梓!」

戸惑ってる梓にわざとらしく話をふる。

「で、でも幸せじゃないですか?」

「何が?」

「親友と後輩の手料理が食べられるんですよ?」

梓が言い切ったって顔してるし。

「…本でも読むか。」

53 :1 :2012/05/20(日) 11:36:42.98 ID:3QjN7HFb0
しばらくして、

「ご飯できたぞ!」

たくさんのごちそうがテーブルに並ぶ。

三人で食えるのか? 

………

54 :1 :2012/05/20(日) 11:47:21.64 ID:3QjN7HFb0
「これで澪のこと信じたよな?」

「はい。でも幽霊には見えないですね。」

確かに見ることができて、お腹とか減って、ご飯を食べたり、作ったり。

それに…

「幽霊が寝るとは思わなかった。」

「私もです。」

あの後、澪はご飯を食べて散々はしゃいで寝てしまった。

おかげで片づけも私と梓で二人で大変だった。

今は、こうして梓を家まで送っているところだ。
55 :1 :2012/05/20(日) 11:56:36.15 ID:3QjN7HFb0
「でも、澪先輩っていい人ですね。

 大人でカッコいいし、

 澪先輩が軽音部にいてくれたら、

 もっと楽しくて…」
 
「大丈夫だ、梓。」

「だって…」

「澪もここまで想ってくれる人がいて幸せだろ?」

「…ありがとうございます。」 

あいつは本当に幸せだよ。

私が梓にお礼が言いたいくらいに。
56 :1 :2012/05/20(日) 12:06:21.89 ID:3QjN7HFb0
「あぢさゐ」って作品は最初はよく理解できなかった。

芸人と芸者の恋話のせいか、

男も女も移り気で、一途とはほど遠い。

それでも彼らは、相手のことを真剣に思い、

時には殺してしまいたいとさえ口走った。

だけど、精一杯生きて、誰かを思っている。

それは、幸せ…だよな。



第4話「あぢさゐ」おわり
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/05/20(日) 12:26:39.95 ID:n0bP3vOAO
俺もリバースエンドしか見たことないけど未だに印象深いわ

期待してます
58 :1 :2012/05/20(日) 12:47:26.88 ID:3QjN7HFb0
ノラやって本を読んでいたら、

澪が話しかけてきた。

「律、家に帰らなくていいのか?」

「あー、しばらく帰ってないな。」

今、みんなは何してんだろ?

「家、近いし大丈夫!」

「バカ律!みんな心配してるぞ?」

澪に怒鳴られたのは久々だな。
 
「分かったよ、澪は一人で大丈夫か?」

「…誰もいない家で一人。」

「じゃあ、私はいくからな!」

「一人か、一人…」 

「いってきます!」



「寂しい。」



梓に電話して澪のことは頼むか…

私は携帯を取り出して、

「もしもし?梓か?」

………

59 :1 :2012/05/20(日) 13:08:04.54 ID:3QjN7HFb0
着いた。

私の家に。

自分の家なのに緊張するな。

澪が来てから、家には帰ってないし。

学校もほとんどサボってたし。

思い切ってドアを開けた。

「…た、ただいま〜。」 






あれ?





無視!?
60 :1 :2012/05/20(日) 13:29:19.90 ID:3QjN7HFb0
「誰もいないのか?」

「いるけど…」

「…聡。」

「今、父さんとか母さんは仕事だから俺しかいないけど…」

「そうか…ごめんな。」

「別に…澪姉の家いけば…?」

「いいのか?」

「父さんも母さんもその辺は理解してるし。」

「なら…しばらくこの家には帰らないぞ?」

「誰もいない家に行くのは意味わかんねーけど、

 学校休むなら無断欠席するなよ。

 毎回、俺が電話でなきゃいけないの大変だから。」

「分かった、休むときは澪の家の電話かりるよ」

「絶対にそうしろ。」

「じゃあ、いってくる!」





「…俺だって澪姉がいなくなって悲しいんだからな。」

………

…  
61 :1 :2012/05/20(日) 13:38:06.56 ID:3QjN7HFb0
聡って以外と大人なんだな。

まぁ、このまま澪の家に行くのは駄目な気が…

「あ、律先輩?」

「お、梓じゃないか。」

「今、澪先輩の所に行く途中なんです。」

「じゃあ、私はコンビニとかでお菓子でも買って帰るよ。」

「それなら私もいきますよ。」

「いや、澪が一人だから。」

「そうですか、じゃあお願いします。」

そう、言うと梓は急いで澪の家に向かった。



よし!

お菓子を買いにいこう。       
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/05/20(日) 13:45:07.37 ID:3QjN7HFb0
-コンビニ-

「どれにするかな。」

「あ、あの律さんですか?」

後ろから聞き覚えのある声がしたから振り返ると、

「憂ちゃん。」

「久しぶりです。

 最近また学校に行ってないみたいですが、

 大丈夫ですか?」

「たぶんな。」

「あの!」

「ん?」

「お姉ちゃんが律さんに会いたいって言ってたので、

 良かったら今から私の家に来ませんか?」

………

63 :1 :2012/05/20(日) 13:51:50.10 ID:3QjN7HFb0
-平沢家-

「どうぞ、今からお茶準備しますね。」

「おじゃましま〜す、ありがとな憂ちゃん?」 

「その声は…りっちゃん!?」

「唯!」

………

64 :1 :2012/05/20(日) 14:01:51.64 ID:3QjN7HFb0
言っちゃた。

唯は一番おおげさだからあまり言いたくなかったのに。 

「澪ちゃんが幽霊!?」

「…うん。」

「澪ちゃんに会いたい!」

「…はぁ。」

「ムギちゃんにも話そう!」

結局、軽音部の全員に言うことになるのか…

学校に行かない理由をごまかしながら話したら、

憂ちゃんに嘘がバレた…

でも、まさか幽霊を憂ちゃんまで信じるとは思わなかった。
65 :1 :2012/05/20(日) 14:06:42.42 ID:3QjN7HFb0
「とりあえず私は澪を待たせすぎたから帰るな。」

「じゃあね!」

ふと、時計を見ると4時間もたってるし。

急ごう。

………

66 :1 :2012/05/20(日) 14:19:46.19 ID:3QjN7HFb0
「ごめん、遅くなった!」

「…遅すぎです、事故にあったんじゃないかし心配しました。」

「ごめんな、澪もごめん。」

「梓、今日は私が家まで送るよ。」

「あ、ありがとうございます。

 律先輩、さよなら。」

「え?おい、澪!?」

バンッとうるさいドアの音が響く。

怒ってんのかな、澪。
67 :1 :2012/05/20(日) 14:28:39.56 ID:3QjN7HFb0
仕方ない。

私は本を取り出した。

さっきまで読んでたノラやだ。


ノラは、わさび漬けが入っていた浅い桶で、ご飯をもらう。

最初こそは家の外だったけど、やがては屋内でもらうようになった。


…だめだ。

澪が心配で文字が頭に入らない。
68 :1 :2012/05/20(日) 14:38:00.37 ID:3QjN7HFb0
しばらくすると、

梓からメールがきた。



律先輩、

澪先輩が律に、

心配させられたから、

今度は律に心配させてやるんだ。

…って言ってました。

今日は帰らないようですよ。

ちなみに私の家に泊まるので。

一応、澪先輩は律先輩に内緒にしてるので、

澪先輩が帰ってきたら心配してあげて下さいね。  



「…はぁ」

何か呆れた…
69 :1 :2012/05/20(日) 17:12:05.66 ID:wEci+3zA0
のんびりとノラやの続きを読んだ。


ある日の午後家を出て行ったきり、

飼い猫であるノラは帰ってこなかった。

最初は冷たい態度を取っていたくせに、

いざいなくなってしまうと、

ノラが帰ってこないと言っては、

ひたすら泣いた。

………

70 :1 :2012/05/20(日) 17:20:27.78 ID:wEci+3zA0
「…?」

どうやら寝ていたみたいだ。

起きたら午前の6時だった。

澪は帰ってきたのか?

「おい、澪?」

言葉を放つも返事はない。

幽霊である澪が、

どんなふうに現れたり、

あるいは消えたりするのか、

私にはよくわからなかった。

詳しく聞けば教えてくれるのだろうけど、

はっきりさせるのが嫌だった。

今は曖昧なままでいい。
71 :1 :2012/05/20(日) 20:18:41.38 ID:wEci+3zA0
澪はいつまでここにいられるだろう。

もしかしたら、このまま消えてしまうかもしれない。

途端に不安が押し寄せてきた。

「澪、ねぇ!?
 
 いるんだろ!?

 返事くらいしろよ…」












「…律?」   
72 :1 :2012/05/20(日) 20:21:32.70 ID:wEci+3zA0
「勝手にいなくなるなよ!?」

「…ご、ごめんなさい。」








「…許す!」



第5話「ノラや」おわり
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/21(月) 11:01:34.41 ID:/DJhlQEzo
なんか可愛い
74 :1 :2012/05/22(火) 19:59:36.83 ID:ZCuqflA10
山椒魚って本を読んでいるうちに眠ってしまったらしい。

重い体を起こしてあくびをした。

「ねぼすけがようやく目を覚ましたな。」

「あぁ、澪か。おはよ〜。」

ただ普通に喋っただけなのに澪の機嫌が悪くなった気がする。

「何をのんきにおはよ〜なんて言ってるんだ!?」

「あぁ、昼だね。じゃあこんにちは〜。」

あれ?ますます澪の機嫌が…

「違う!?違うぞ!?」

「あれ、もしかして…こんばんは?」

あ、何かものすごい殺気が。
75 :1 :2012/05/22(火) 20:17:46.14 ID:ZCuqflA10
「…た」

「…は?」









「お腹へった!?」



76 :1 :2012/05/22(火) 20:24:28.71 ID:ZCuqflA10
「…へ?作るの私?」

「べ、別に律が嫌ならいいけど…」

「い、いや作るけど二人で一緒に作るって選択は?」

「…律のご飯が食べたい。」



めんどくさいだけじゃ…?

将来はニートになってそうだな。

いや、死んでるけど。



「じゃあ、今日の昼ご飯はハンバーグ。」

「やった!」
77 :1 :2012/05/22(火) 20:31:53.10 ID:ZCuqflA10
………




「ごちそうさま」

さて、山椒魚の続きを読むか。

この話の筋は簡単だ。

一匹の山椒魚が、岩屋に閉じこめられてしまう。

頭がつっかえて、出るに出られない。

山椒魚は目高を見る。蛙を見る。

彼らは自由に水を行き来している。

「あ!梓と約束してたんだった、急がないと…」
78 :1 :2012/05/22(火) 20:37:37.01 ID:ZCuqflA10
………



「梓、ごめん。」

「…大丈夫です。」

「本当にごめんな。」

「…行きましょうか。」

目があったけど、梓は笑ってくれなかった。

自分でも驚くほど傷ついた。

澪と似たような顔して、そんなことするなよ。

しかも、どうして今日に限って髪を下ろしてるんだよ。

余計に澪を意識しちゃうだろ…
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/26(土) 21:36:12.28 ID:JBVYKVPEo
続きまだかな
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/02(土) 21:39:46.20 ID:t6lpN0rQ0
なかなか焦らすじゃないか
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 22:55:08.74 ID:dfBNdrIK0
ばぁさんや、続きはまだかのぅ?
82 :1 :2012/06/17(日) 16:21:05.34 ID:Con0I6Yv0
しばらく放置してすいません。

今から書きますね。
83 :1 :2012/06/17(日) 16:30:17.07 ID:Con0I6Yv0
「あのカフェのケーキ美味しいみたいですよ。」

そうなんだ、と私は頷いた。

歩くたび、足を進めるたび、気持ちが落ちていく。

平気な振りして、会話を続けた。

「ムギのオススメのカフェなんだよな。」

「はい、ムギ先輩のお父さんの系列のカフェみたいです。」

梓はどんどん歩いていく。

振り返りもしない。

いつもなら肩を並べて歩いたのに…
84 :1 :2012/06/17(日) 16:34:24.30 ID:Con0I6Yv0
小走りで梓を追いかけているうちに、

いつのまにかカフェを追い越していた。

「こっちですよ。」

梓の呼びかけに思わず言葉が出た。

「ごめん。」

「お店、入りましょう。」

「ごめん」

何度も謝ってしまう。
85 :1 :2012/06/17(日) 16:38:40.89 ID:Con0I6Yv0
カフェは豪華で綺麗だった。

中に入るとたくさんの店員さんが、

口を合わせて言う。

「いらしゃいませ!」

客席はざっと見るかぎり二百くらいか。

窓の側の席に私たちは静かに腰かけた。
86 :1 :2012/06/17(日) 16:42:53.51 ID:Con0I6Yv0
「すごいな、いろいろと…」

「さすがムギ先輩ですね。」

「そうだな。」

席についてから、

私たちはたくさん喋った。

楽しく話してるわけではなく、

間を埋めるため、口を動かしてるだけだった。

87 :1 :2012/06/17(日) 16:47:21.90 ID:Con0I6Yv0
梓との関係がおかしくなったのは、

この間のことだった。

軽音部のみんなに澪のことがバレて、

みんなでパーティーを開こうってことになった。
88 :1 :2012/06/17(日) 16:50:37.28 ID:Con0I6Yv0
パーティーは澪の家でやった。

メンバーは私、梓、澪、唯、ムギだ。

憂ちゃんも誘ったが、

せっかくなので軽音部の皆さんでやって下さい、

…そう言われた。
89 :1 :2012/06/17(日) 16:53:56.66 ID:Con0I6Yv0
「「澪ちゃん!」」

最初に唯とムギが澪を見た瞬間、

すごい盛り上がったんだ。

梓も澪の隣で笑ってた。

そしたら、

「あずにゃんと澪ちゃんって似てるね!」

…唯がこう言った。
90 :1 :2012/06/17(日) 16:58:52.90 ID:Con0I6Yv0
「そうだ!梓ちゃん、髪を下ろしてみてよ!」

ムギも言う。

「…えぇ!?嫌ですよ。」

たぶん、日本人形みたいだからって気にしてるんだろう。

だけど、

唯が無理矢理言って、

結局、梓は髪を下ろしたんだ。
91 :1 :2012/06/17(日) 17:02:29.45 ID:Con0I6Yv0
髪を下ろした梓と澪はよく似ていた。

「りっちゃん、似てるよね!?」

確かに似ている。

でも私は前から思ってた。

梓が軽音部に入部した時から澪と似ているなって。

だから、

「やっぱりな!梓が入部した頃からそう思ってたんだ。」
92 :1 :2012/06/17(日) 17:08:28.09 ID:Con0I6Yv0
そしたら唯は、

「だからすぐに元気になったんだね!」

「…ん?」

「澪ちゃんがいなくなってから、
 りっちゃんって元気なかったじゃん?
 でもあずにゃんが入部してから元気になったから!
 あずにゃんと澪ちゃんが似てるからなんだ〜」

「そうなんだ、りっちゃんって澪ちゃんのこと好きなんだもんね!」

唯もムギも悪気はなかったと思う。

悪いのは私だ、

澪のことが好きって言葉で、

顔が熱くなった。

きっと顔を真っ赤にしてたんだ。
93 :1 :2012/06/17(日) 17:13:35.70 ID:Con0I6Yv0
「あはは!りっちゃんってば、顔が真っ赤!」

この時、気がつけば良かった。

澪が怒っている顔だったこと。

梓が下を向いていたこと。

だけど私は、

「そうだよ!澪のことが好きだ、悪いか?」

めっちゃ冗談っぽく言ったはずだった。

94 :1 :2012/06/17(日) 17:18:52.74 ID:Con0I6Yv0
「じゃあ、なんなんですか?」

「…?」

「私は澪先輩の代わりなんですか!?」

「…あ、」

「私は律先輩がこんなに大好きなのに…!」

「…っ!」

「律先輩の馬鹿ッ!」

梓はそう言って外に飛び出た。
95 :1 :2012/06/17(日) 17:25:22.47 ID:Con0I6Yv0
私は、

梓とよく遊んだりすることが多かった。

理由は…好きだから。

澪に似てるからじゃない。

ありのままの梓が好きだ。

同姓を好きになるなんておかしいよな?

でも、

梓の可愛らしいしぐさも、

いつも笑顔にしてくれる声も、

梓の何もかもが好きなんだ。

両思いだったんだ。

だけど嫌われちゃった。

でも、同姓を好きなるのおかしーし。

いろんな考えが頭の中をかけ巡り、

私はただ泣いていた。
96 :1 :2012/06/17(日) 17:30:13.84 ID:Con0I6Yv0
今、目の前にいる梓は…

「…どうしたんですか?」

…違う。

「私、律先輩のこと嫌いです。」

…やめて。

「二度と私の前に現れないで下さい。」

………

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 22:35:09.43 ID:LCcAZ0Rao
おつー
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 23:58:37.46 ID:0ONy2tEi0
ヤター続きだー
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/06/18(月) 17:11:00.69 ID:H8jNqMDK0
…律?

…律ってば?

「…律?いないのか?」

「あぁ、いるぞ?」

澪の部屋で山椒魚を読んでいたら、

澪が部屋に入ってきた。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/18(月) 21:26:08.41 ID:0TE9voeIO
ハッピーエンドがいいなあ
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 21:51:53.12 ID:8i64Su2SO
元ネタってどんなんだったかな
流石に元ネタはレズとかそんなんじゃないけど
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/19(火) 08:20:45.92 ID:bDYbEDhIO
なんだよ律梓かよ
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 00:38:00.12 ID:UCAUvD3L0
続きキター
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 10:58:15.87 ID:JXe/XyEDO
続き楽しみに待っています。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 03:58:28.45 ID:T4QzoAnDO
続きに超期待しています
頑張って下さい。
106 :1 :2012/07/01(日) 10:34:36.24 ID:MPf2lALe0
>>101元ネタの主人公は普通に彼氏がいます。

>>102私が律梓が好きなんです、申し訳ない。


今日の間に続き書きますので。

もう、しばらくお待ち下さい。
107 :1 :2012/07/01(日) 12:58:20.65 ID:MPf2lALe0
「何か眠そうだな?」

「あぁ、さっきまで寝てた。」

梓と気まずい雰囲気でカフェにいる夢をみた。

そして、唯の家でパーティーしたことを思い返せば、

涙が自然と溢れてきた。
108 :1 :2012/07/01(日) 13:05:37.54 ID:MPf2lALe0
「どうした、律?」

「別に。」

「そうか…」

静かな部屋の中、

澪はどうしたらいいか戸惑ってる。

私はただ澪を困らすだけ。

109 :1 :2012/07/01(日) 13:09:32.99 ID:MPf2lALe0
そんな中、

口を開いたのは澪だった。

「山椒魚を読んでたよな?」

「…うん。」
110 :1 :2012/07/01(日) 13:14:39.10 ID:MPf2lALe0
「どうだった?」

「…うらやましいなって思った。」

「うらやましいって話じゃないだろ?」

「ほら、山椒魚も蛙も穴から出なかったじゃん。
 だけど、蛙の最後の言葉って、ある種の許しだと思って。」

梓の顔が浮かんだ。

なんで、こんな話したんだろ。

私は黙り込んだ。
111 :1 :2012/07/01(日) 13:18:18.15 ID:MPf2lALe0
「律、間違ってないか?
 山椒魚と蛙って最後まで喧嘩してたぞ?」

「え?澪の方が違うと思うけど?」

「だって、睨み合ったままで…」

112 :1 :2012/07/01(日) 13:24:58.91 ID:MPf2lALe0
あ、と澪が声を漏らした。

「どうした?」 

「思い出した!
 私と律が読んだのは結末が違うんだ。」

「…違う?」

「作者は山椒魚を書き直したんだ。
 確か、最後の方を大幅に削ったって。」

「でも、この本は澪の部屋から持ってきたけど。」

「確か、マ…お母さんに貸したままだな。」

「…えー。」
113 :1 :2012/07/01(日) 13:30:21.88 ID:MPf2lALe0
「…あ。」

「今度は何だ?」

「お腹すいた。」

「…」

「また何か作ってくれよ?」

「…仕方ないな。」

涙はいつのまにか消えていた。

山椒魚は結局、どうしたんだろう。

蛙は許したのか、許さなかったのか。

わからないまま、私はキッチンに向かう。





第六話「山椒魚(改変前)」  おわり
114 :1 :2012/07/01(日) 13:33:25.91 ID:MPf2lALe0
-部室-

「りっちゃん隊員!」

「りっちゃん!!」

「…」

「我々、軽音楽部は旅に出ることを誓いまーす!」
115 :1 :2012/07/01(日) 13:36:17.02 ID:MPf2lALe0
「…あの、練習は?」

「あずにゃん!休みも必要だよ?」

「そうよ、梓ちゃん!」

「よーし、いくぞー!」

「「はーい!」」
116 :1 :2012/07/01(日) 13:39:48.68 ID:MPf2lALe0
梓とはまだ喧嘩したままだ。

そこで、唯とムギと澪の提案が旅行。

ついでに澪のお母さんの家で、

山椒魚の改変後を返してもらう。

そんな計画だ。
117 :1 :2012/07/01(日) 13:44:02.53 ID:MPf2lALe0
旅行に行く前に澪が、

部屋にこいって言ってたな。

「諸君!まずは秋山家からだ!」

「「了解!」」

「…」

ノリノリな唯とムギ。

黙り込んでる梓。

頑張って楽しませないとな!
118 :1 :2012/07/01(日) 13:47:39.94 ID:MPf2lALe0
-澪の部屋-

「みんな、よく来てくれたな!」

「「澪ちゃん!」」

唯とムギが澪に抱きつく前に、

「澪先輩!」

梓が澪に抱きついた。

澪は梓の頭をなでていた。

それをムギが目をキラキラさせながら見てる。

唯はふられた〜なんて言っている。

私はただ笑顔でそれをみるだけ。
119 :1 :2012/07/01(日) 13:51:18.79 ID:MPf2lALe0
「実はみんなに手伝ってほしいことがあるんだ。」

「なになに!?」

「旅行に行くなんてお金がないだろ?」

「はい、そうですね。」

「お金なら斉藤に頼むけど?」

「ムギ…大丈夫だ。」
120 :1 :2012/07/01(日) 13:54:19.09 ID:MPf2lALe0
「みんなに宝探しをしてもらいたいんだ!」

「…宝探し?」

「ねぇ?それって楽しいの?」

「ムギ先輩、宝探さしって言うのは…」

「隠したものを探すことだよ!」

「何か澪らしいな。」
121 :1 :2012/07/01(日) 13:57:28.08 ID:MPf2lALe0
「私の部屋に本棚があるだろ?
 本の中にお札が挟まってるんだ!
 それを探してほしい!」

「このたくさんの本の中ですか!?」

「ああ。」

澪の部屋の本は多すぎだろうな。

まぁ、頑張るか!
122 :1 :2012/07/01(日) 14:03:33.70 ID:MPf2lALe0
-探し中-

「あったわ!」

ムギが千円札を見つけた。

「あっ、私も見つけました!」

梓も千円札を見つけた。

「えへへ、私の方にはお札が2枚!」

唯は千円札を2枚も見つけた。

「本によっては、一万円札も挟んであるぞ!」

澪はそう言って千円札を見つけていた。

あ、私だけだ。

見つけてないの。 
123 :1 :2012/07/01(日) 14:07:56.18 ID:MPf2lALe0
本に隠されたお金を探すのは楽しく、夢中になった。

そして私はやっとお札を見つけた。

「やった一万円札だぞー!」

「えー、りっちゃんズルい〜!」

「何の本に挟んであった?」

「影の獄にて…だな。」

「あぁ、それはとても面白いんだ。」
124 :1 :2012/07/01(日) 14:09:38.34 ID:MPf2lALe0
結局、合計で…

八万六千円を見つけた。

澪って金持ちだな。
125 :1 :2012/07/01(日) 14:12:34.32 ID:MPf2lALe0
「これで旅行ができるな!」

「よーし、行こう!」

澪も連れて、

5人で電車に乗った。

そして、

着いたのは自然豊かな場所だった。
126 :1 :2012/07/01(日) 14:15:27.38 ID:MPf2lALe0
「あとは歩くだけだな。」

自然に囲まれながら

ゆっくりと歩く。

景色のいい眺め。

小鳥たちの鳴き声。

全部がとても心地良かった。
127 :1 :2012/07/01(日) 14:17:11.76 ID:MPf2lALe0
そして着いたのは澪の両親の家。

何故か姿が見える澪は隠れていた。

ドキドキしながらチャイムを押す。

128 :1 :2012/07/01(日) 14:19:58.51 ID:MPf2lALe0
ドアを開いて出てきたのは澪のお母さん。

「あら、澪のお友達の皆さんに律ちゃん。」

「えっと、どうも。」

「せっかく来たんだから家の中にどうぞ?」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 23:19:28.86 ID:h8c4lufX0
続きキター
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 23:32:15.12 ID:lXiIKP/A0
マダー
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/17(火) 23:54:46.04 ID:eKNhtiAdo
キタかと思ったじゃんよ
マダー
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 22:44:31.14 ID:9+BObYa20
ばあさんや、続きはまだかのぅ?
133 :1 :2012/08/03(金) 22:51:31.29 ID:3OuDWpn10
「お、おじゃましまーす!」

「お茶でも準備しようかしら?」

「あ、おかまいなく…」

「お茶!飲みたい!」

「唯先輩、少しは遠慮しましょうよ。」

「えー、代わりにあずにゃんをぎゅ〜!」

「あらあら!」

何か3人でじゃれあってるし。

134 :1 :2012/08/03(金) 23:00:28.63 ID:3OuDWpn10
「あの、澪のお母さん!」

「何かしら?律ちゃん。」

「山椒魚の改変後ってあります?」

「…あぁ、澪の貸してくれた本?」

「そうです。」

「…どうかしたのかしら?」

「返して頂けませんか?澪の部屋に…」

-その頃、唯達は…-

外で…

「澪ちゃん!」

「わぁー!くるなー。」

「待てー!」

「…なんですか、これ?」

「お茶を飲んだ唯ちゃんが運動してるのよ。」

「…鬼ごっこって子供みたいですよ。」

「…そうね、ねぇ、梓ちゃん…」    
135 :1 :2012/08/03(金) 23:05:38.82 ID:3OuDWpn10
「律ちゃん、私は澪に借りたままなのよ。」

「だから、わたしが…」

「貴方は澪じゃない!」

「…知ってます。澪の代わりにです。」

「澪の代わりなんかいないわよ!」 

「私は親友として…!」

「…人殺しのくせに。」

「えっ?」

「澪を死んだのはアンタのせいだ!」

「そ、それは…」

136 :1 :2012/08/03(金) 23:11:25.42 ID:3OuDWpn10
「梓ちゃんの方が子供よ?」

「どうしてですか?」

「りっちゃんと喧嘩して意地はってるじゃない。」

「それは…律先輩が。」

「人に押しつけるのも子供ね。」

「…私が嫌いな律先輩なんかいらないです。」
137 :1 :2012/08/03(金) 23:32:23.31 ID:3OuDWpn10
「私は…」

そう…

澪が死んだのは…

私のカチューシャが無くなったのが原因だ。

澪が必死に探してくれた。

だって、澪からもらった大切なカチューシャだから。

カチューシャは河原にあった。

澪が見つけてくれた。

なぜ、河原にあったかは…

私がよく昼寝していた場所で

カチューシャが寝てる間にとれたんだ。

なんで勝手にとれたかは分からないけど。

138 :1 :2012/08/03(金) 23:37:11.67 ID:3OuDWpn10
その日は台風が近づいて、

雨が降り出す。

風が強くなる。

雷が鳴り出す。

澪は普段だったら怖がるはずなのに。

私のために探してくれた。

携帯で澪から河原にあったって連絡を聞いたあの時。

雨がもっと強くなった。

河原の水は溢れだし、

澪は流された。
139 :1 :2012/08/03(金) 23:42:02.88 ID:3OuDWpn10
「アンタのせいで澪は…!」

ぶたれるな、これ。

私は人殺しか。

梓に嫌われても仕方ないな…

ぶたれる瞬間。

「やめて下さい!」

涙声になって叫んだ梓がいた。
140 :1 :2012/08/04(土) 00:08:14.09 ID:dbC2CBHg0
「梓…え?」

「誰なのよ…え、澪?」

「ママ…久しぶり。」

「澪先輩…」 

梓の後ろには澪が立っていた。

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/04(土) 04:19:21.45 ID:kj0qTI3DO
乙です。続きを待っていました、これからも頑張ってください応援しています。
142 :1 :2012/08/05(日) 16:16:05.02 ID:4B1XGM580
「ママ、話があるんだ。」

「…澪なの?本当に澪なの?」

澪のお母さんは信じられない目で、
澪を見ていた。

「…律先輩、外に出ましょう?」

「分かった。」

今は澪と澪のお母さんを
二人きりにさせた方がいいよな。

それよりも、
梓が私に話しかけたことに驚いた。
143 :1 :2012/08/05(日) 16:19:13.94 ID:4B1XGM580
外に出た。

唯と紬が楽しそうに鬼ごっこをしていた。

「…律先輩。」

「なんだ?」

「聞いてほしいことがあります。」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage ]:2012/08/06(月) 00:30:31.68 ID:BFAA9J/d0
待ってました!!

作者さん頑張って下さい!!
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/07(火) 07:43:08.64 ID:OAqnB95qo
なんで澪死んでもうたん
死澪萌え
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 12:06:49.74 ID:fPD08N6DO
乙です。
続きを楽しみにしています。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 23:35:35.22 ID:1Z+7YTWa0
マダー
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/08/29(水) 21:20:08.09 ID:7CUAWzQxo
澪「なぜ殺したし!」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 21:22:32.20 ID:rxd25S8SO
勝手に上げんな長屋
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 14:54:10.72 ID:GZCCvlF+0
律澪以外のカップリングにおける澪の扱いって犠牲にされるってのがある意味ワンパターンだよね
今回は死んでるし…SS速報ではこれがまだいい扱いなんだろうけど
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 20:23:43.43 ID:FAuoHQlDO
続き待っています。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 06:42:51.44 ID:6CTLxdF80
mada-
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/22(土) 07:11:01.45 ID:y8UFhsdDO
いつまでも待っています頑張ってください。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 23:00:05.71 ID:ravDJQP60
まだー
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/03(水) 11:32:26.87 ID:++6WBbZDO
スレが落ちない内にせめて何かしら報告ください。このまま落とされるのはもったいないですから。
156 :1 :2012/10/07(日) 08:54:48.11 ID:GjkxAV7O0
1です。

しばらくスレ放置して申し訳ないです。
今日の夜に続き書く予定です。
人がいるか分からないけど…
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/07(日) 09:07:49.02 ID:XMNj4i1xo
お帰り
期待してまってる
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage ]:2012/10/07(日) 13:49:03.36 ID:TCK6/sUe0
お帰りなさい。
続き楽しみに待ってます。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 18:00:48.62 ID:u/W+SaiDO
お帰りなさい。
続きを楽しみに待っています。
160 :1 :2012/10/07(日) 20:21:09.41 ID:GjkxAV7O0
「私は律先輩のことが…」

「いえ、律先輩の…」






「馬鹿っー!!」  



「…え。」

やっぱり、嫌われてる!?
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/10/07(日) 20:26:58.83 ID:GjkxAV7O0
「律ー!」

梓の馬鹿っー!!って声を和ませてくれるような声。

「澪!」

「あ、澪先輩…」

「梓…私もそれには同意できるぞ?」

「…ば、ばーか!律先輩の馬鹿///」

「律のば〜か!」

何かいじめられてる…

和ませるなんか嘘だったな…
162 :1 :2012/10/07(日) 20:30:03.25 ID:GjkxAV7O0
遠くからも声がする。

「りっちゃんの馬ー!」

「りっちゃんの鹿〜!」

なんだ…この二人。

「唯には馬って言われたくないな…」

「ムギだって鹿みたいにぽわっとしてるじゃん…」
163 :1 :2012/10/07(日) 20:40:51.23 ID:GjkxAV7O0
その後…

澪から山椒魚の改変後をもらった。

「ママは私を信じてくれなかった。」

「幽霊なんて信じないって。」

「本を投げつけられたんだ。」

「お前みたいなのが来たら祟りがある。」

「もう来ないでってな。」

寂しく俯いた澪に私はどうすることもできなかった。

でも澪は笑って…

「律さえいてくれればいいんだ。」

「…馬鹿澪。」

沈黙が続く。



その沈黙を壊した声が…

「馬鹿なのは律先輩です!」

梓の声が…

みんなを笑わせた。

「軽音部諸君!帰るぞー!!」

「おー!」

164 :1 :2012/10/07(日) 20:47:59.60 ID:GjkxAV7O0
山椒魚…

結局は、
山椒魚と蛙は岩屋から出るべきなのか…
出られないまま終わるべきなのか…

岩屋に閉じこめられたみたいな私の想いは、
きっともう少しで出られるだろう…

(梓、大好きだ。)

まだ、声にはならないけど。

岩屋の鍵を渡してくれた澪…

ありがとう。


第7話「山椒魚(改変後)」  おわり
165 :1 :2012/10/07(日) 20:51:07.58 ID:GjkxAV7O0
-澪の家-

わかれ道って本を読んでいた。

ため息が出る。

澪は死んでいるんだ…
166 :1 :2012/10/07(日) 20:57:23.23 ID:GjkxAV7O0
河原で寝ていた私に澪はイタズラをしたんだ。

寝ている私のカチューシャをはずしたのは澪だ。

それを、隠して私を驚かせようとしたみたいだ。

私が寝ている間にカチューシャは飛ばされたのか、
澪は必死になって探していた。

勝手にとれたんじゃない。
澪がとったんだ。
167 :1 :2012/10/07(日) 21:07:20.02 ID:GjkxAV7O0
そんなくだらないイタズラで自分を殺した澪…

「…馬鹿澪。」

「本当に馬鹿なのは私だったな…」

「馬鹿!」

「水に呑まれるのは苦しかった…」

「…」

「水に体を激しく叩かれて、口に水が入ってきた。
 肺らへんに水が入ってきた時はたまらなかった。
 痛いし、早く死にたいと思った。」

「…やめろよ。」

「律は人殺しじゃない!」

「…澪。」

「お前は悪くないんだよ…」
168 :1 :2012/10/07(日) 21:11:21.51 ID:GjkxAV7O0
なんて言えば澪は救われるんだろう。

そこで、私はある可能性に思い当たった。

それは恐ろしいことだった。

慌てて澪の顔を見る。

涙をこぼした情けない澪だった。
169 :1 :2012/10/07(日) 21:18:44.60 ID:GjkxAV7O0
そんな澪に縋るように尋ねた。

「澪は本当にいるのか…?」

その質問に戸惑う澪の顔を見つつ、
…私はひたすらに恐れた。

もしかすると、この幽霊と言い張る澪は…
私の自己満足のための幻じゃないか?

澪が死んで寂しくなった私の心を埋める幻。

澪の顔を疑う。

そして、その顔に触れた。

うるうるした目。
綺麗な髪。
鼻も口も顎も手も肩も足も…

その顔も…

170 :1 :2012/10/07(日) 21:21:36.29 ID:GjkxAV7O0
ぎゅっと澪を抱きしめた。

…温かい。

それでも、
澪が信じられなくて。

自分の正気を疑った。

嫌だ。

疑いたくないよ…

171 :1 :2012/10/07(日) 21:24:16.45 ID:GjkxAV7O0
私は狂っているの?
何が正しいの?
澪は実在しているの?
何を信じればいいの?


ああ、そうだ。わかったよ。
ふいに悟った。





狂ってしまった方が楽なんだ。
172 :1 :2012/10/07(日) 21:28:52.67 ID:GjkxAV7O0
私と澪は今までみたいな生活を送る。
それは間違いなのか?
正しいのか?


何も知らない方がいいのか?



いつの間にか、仲直りした梓は言った。

「澪先輩はあれで幸せなの?」
173 :1 :2012/10/07(日) 21:39:11.14 ID:GjkxAV7O0
梓の言葉に私の何かが切れた。

「お前に何が分かるんだよっ!?」

「…分かりますよ。」

「私は澪と何年も一緒にいたんだ…!
 私が澪のことを分かってやれんだよ…」

「最近の律先輩はおかしいですよ?
 一人で抱え込まないでよ…」

「はは、私はおかしいんだな…」

「…やめて下さい。」



私は狂ってる。
174 :1 :2012/10/07(日) 21:42:24.25 ID:GjkxAV7O0
くだらない喧嘩をして、
仲直りできたのに…

「…私の馬鹿。」

澪からもらった岩屋の鍵も使い方が分からないんだ。

「…馬鹿野郎。」

175 :1 :2012/10/07(日) 21:48:34.00 ID:GjkxAV7O0
澪が死んだって分かった時。
すでに私は狂っていたかもしれない。

泣き叫ぶ。
喚き、嘆く。

最後は泣き叫ぶ。

澪に会いたくて、でも会えなくて。
最初に澪の部屋に依存した。

澪みたいに本をたくさん読んだ。
一応、勉強だってした。

澪の気持ちが知りたくて、
澪になりきろうとしてた。
176 :1 :2012/10/07(日) 21:53:33.25 ID:GjkxAV7O0
そしたら軽音部に梓が来た。
澪と入れ替わるように。

梓は澪みたいだった。

真面目で、少し厳しくて、
だけど優しくて、愛らしくて…


梓に夢中だった。

いつの間にか、
私の中で「恋」が芽生えた。


177 :1 :2012/10/07(日) 21:57:08.93 ID:GjkxAV7O0
「…律。」

その声で目を覚ます。

「何?」

澪の部屋は真っ暗だ。
窓の外もあの時みたいに大雨が降っている。

嫌な感じだ。




「私の心残りを聞いてくれないか?」
178 :1 :2012/10/07(日) 21:59:58.47 ID:GjkxAV7O0
「…聞きたくない。」

「そうか、なら私はもうダメかもしれないな…」





「私、本当に死ぬかもしれない。」
179 :1 :2012/10/07(日) 22:07:40.83 ID:GjkxAV7O0
「澪、何も考えるな…」
 
「もう、いいよ…」

澪は部屋から出た。

「今のままでいいよ。こうして、ずっと過ごそうよ。」

声が少し震えた。

「いや、駄目だ。そんなの間違ってる。」

ドアの向こうから聞こえた声は掠れていた。

「だけど、私は楽しかった。
 それでいいだろ?
 澪が幽霊だってかまわないよ。」
180 :1 :2012/10/07(日) 22:15:32.82 ID:GjkxAV7O0
いくらか沈黙が続く。
ドアを開くと涙目の澪が悲しそうな顔で私を見ていた。

「律。」

「なに。」

「私はもう死んでいるんだ。生きているわけじゃない。幽霊なんだ。」

「幽霊でも澪は変わらないじゃん。」

「変わるよ。私はいつ消えるか分からない。
 ただ私がこうして存在するのは難しいんだよ。
 律を永遠に見守れないんだ。
 本当はね、律の一生を見守りたかったよ。
 律が大切だから。
 でも、それが出来ないんだよ…」  

181 :1 :2012/10/07(日) 22:18:17.30 ID:GjkxAV7O0
「そんなの分かりたくない。」

「私は死んだんだ。もう、いいだろ…」

すると、澪は走り出した。

大雨の中を…

私も追いかける。

靴もはかず裸足で。
182 :1 :2012/10/07(日) 22:21:29.28 ID:GjkxAV7O0
澪が走った先はあの河原。

「澪、死なないでよ…」

「私はもう死んでるだろ…」

雷が鳴る。
河原の水が溢れ出す。

澪は最後に言った。
幸せそうな笑顔で。

まるで天使のような微笑みで。
183 :1 :2012/10/07(日) 22:29:54.65 ID:GjkxAV7O0
「律には梓がいるじゃないか。
 梓を愛しているんだろ?
 律は追いかける人を間違ってるぞ!
 あれ…もう時間だな。
 最後に伝えたいことがある。」

澪は私を抱きしめながら耳元で呟いた。

「律のことが本当に好きだった。誰よりも愛していたよ。」
184 :1 :2012/10/07(日) 22:34:11.42 ID:GjkxAV7O0

気がつくと、私は河原で座り込んでいた。
すぐ目の前を水が勢いよく流れている。

私と澪が立っていた場所は水に呑まれていた。
どうして安全な場所に移れたのか、私には理解できなかった。

きっと澪の手引きだ。

その澪はどこにいるんだ…?
185 :1 :2012/10/07(日) 22:39:07.09 ID:GjkxAV7O0
「澪。」

叫んだ。
喉が張り裂けるくらいに。

「澪!」

雨の音で声はかき消される。
もう、知ってるよ。
澪はこの世にいないって。

だけど、
最後に耳元で呟かれた時の澪の吐息の温もりがまだあるんだ… 

信じたくなくても、信じなきゃいけない。

186 :1 :2012/10/07(日) 22:46:27.92 ID:GjkxAV7O0
「大丈夫ですか!?」

やがて、大きな声がした。
振り向くと、そこに梓が立っていた。

梓は私を急に抱きしめた。

「ごめんなさい、律先輩。」

「え…?」

「律先輩をこんなに追いつめていたなんて、気づかなかった…」

少し戸惑った。
私が自殺でもするのかと誤解したのか。

私は梓に抱きつき、大声を出して泣いた。
私は誰かの胸を必要としていた。

あれほど溜めていた涙がいきなり溢れてきた。



澪は本当に去ってしまったのだ。


第八話「わかれ道」 おわり
187 :1 :2012/10/07(日) 22:55:05.24 ID:GjkxAV7O0
コネティカットのひょこひょこおじさんを読んでいる途中、
ふと顔を上げたらあの人と似た顔。

梓が立っていた。

「何を読んでいるんですか?」

「なんとかのひょこひょこおっさん!」

梓は呆れた顔をして、

「それ、コネティカットのひょこひょこおじさんですよね?」

「あー、そんな感じ!」

「ナイン・ストーリーズの中でそれが一番好きなんです!」

「おー、読んだことあるんだな。」

共通の話は少し嬉しい。
188 :1 :2012/10/07(日) 23:02:00.12 ID:GjkxAV7O0
澪が去ったあの日。
雨の中で何が起きたんだろう。

私と梓が体験していたことはまったく違っていた。

「律がいないんだ。」

いきなり電話が来て梓は戸惑うことしかできなかったそうだ。

「いないって…?」

「分からない。ただ、いなくなる前、思い詰めた顔をしてた。
 嫌な予感がするんだ。雷が鳴っているし、たぶん河原にいると思う。
 一緒に探してくれないか?」

ここでも矛盾しているが、
私は河原でぼんやりしながら一人で立っていたみたいだ。

私は最後まで一人だった。
189 :1 :2012/10/07(日) 23:05:39.46 ID:GjkxAV7O0
「水に飛び込むかと思った。」

梓は言う。

梓の言葉が本当なら澪との別れはなんだろう。

真実はないのだろうか。
まぁ、それでいい。
今は思う。
それでいい。

それ以来、澪の話は聞かない。
少し寂しい…
190 :1 :2012/10/07(日) 23:11:27.38 ID:GjkxAV7O0
そう思っているうちに、
私の家に着いた。

梓は楽しそうな顔で笑っている。

「おじゃましまーす!」

「おじゃまされまーす!」

上の方からガタガタとすごい音がした。

今まで澪の家にいたからな。
自分の家が懐かしい…

「姉ちゃん!?…と誰ですか?」

「中野 梓です。よろしくね!」

「田井中 律で…「黙れ。」
191 :1 :2012/10/07(日) 23:15:42.63 ID:GjkxAV7O0
「まぁ、りっちゃん様のハンバーグは絶品だぞー!」

「期待してます!」

「俺が作る方がおいし…「律先輩、可愛いな///」

「…部屋に戻ろう。」

「律先輩ー、聡君が泣いてますけど…」

「…毒舌は怖いな。」

192 :1 :2012/10/07(日) 23:23:15.32 ID:GjkxAV7O0
「りっちゃん、きたよー!」

よだれを垂らしている唯。汚いぞ?

「ケーキもあるの〜」

デザートを持ってきてくれたムギ。

「私もお手伝いします!」  
料理上手な憂ちゃん、期待だな!

「律が料理!?」

以外と失礼な和。

「梓ー!憂ー!」

佐々木…じゃなくて鈴木さん。

「たくさん人きましたね。」

そして、梓。

「馬鹿律。」

最後に澪。
193 :1 :2012/10/07(日) 23:28:06.63 ID:GjkxAV7O0
馬鹿騒ぎのお祭りっぽい。

それが終わった静かな夜。

私と梓は二人ぼっちだ。

澪の部屋で…

澪、岩屋の鍵の使い方。
今なら分かるよ。




「梓、大好きだ!」


最終話(第九話)「コネティカットのひょこひょこおじさん」  END
194 :1 :2012/10/07(日) 23:30:01.91 ID:GjkxAV7O0
ENDです。
もう眠いよ…
何かあれば明日に見ますね〜
読んでくれたおまいらに感謝。

ありがとうございました。
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 23:42:17.51 ID:EdUAvLLjP
乙乙
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 23:45:41.58 ID:u/W+SaiDO
乙でした。
これからもまた素晴らしい作品を書いていってください。
197 :1 :2012/10/08(月) 10:28:45.59 ID:yG+kBOaIO
しまった最後だけ訂正





馬鹿騒ぎのお祭りっぽい。

それが終わった静かな夜。

私と梓は二人ぼっちだ。

澪の部屋で…

澪、岩屋の鍵の使い方。
今なら分かるよ。
今だからこそ分かるよ。

自分の本当の気持ち。




「澪、大好きだ!」


最終話(第九話)「コネティカットのひょこひょこおじさん」  END
198 :1 :2012/10/08(月) 10:29:49.07 ID:yG+kBOaIO
今度こそENDです。
ねぼけていたみたいですね

ありがとうございました。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/08(月) 10:38:24.81 ID:vT+WfHwCo
>>1
そして ID:yG+kBOaIO 作者なりすましをやり過ぎ
携帯だと携帯固有番号からピンポイントで規制されちゃうぞ
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 10:48:07.91 ID:yG+kBOaIO
全くだな
まったぶん知らないんだろうしスルー推奨だね
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 10:50:32.15 ID:yG+kBOaIO
      /
 わ あ  \
 ん か   )――……― 、
 わ り  /          > 、
 ん    く           ( {三>
 だ     \二^ヽ . /  <;;;>\―''\
 |      )三.} } /   人,,イ_|__\
 !    /ミニソ !二コ~ |  |\:.:.:.:.:\|
\    く       /|:.:.:.:.乂_ノ:):.:|:.:.:.\:.|
/三三へ_>  /|:.:.:.!:.:.:.::|:.:.:.:.:.:/ート:.:.:.:.:r}
i三三/    .イ:.:.:.ヤ丁~Vヽ:.:.:./ >=ミv:.:.:.:|ム
.三三{   .イ:.|:.:.:.:i|≫≠ミ 人/ ハノ;;}〉:.:.:.:!三!
.三三{  ./:.:|:.:|:.:.:.:.|Λノ;;;,}`   弋ソ }:|ハ|三}
.三三{ .7.:.:.:.:.ト、:.:.:|! 乂.ソ      ,,, |:.:.:|ノニノ
ハ三ハ |ミ:.|:. !:.ヽ:.:\ ,,,   _ '  .ィ'|:.:.:!リ
   く  >リヽ\:.\:.:フ  ( ノ  ィ<ノ:ノ|
    Y^ィ^t\:.:.:\:.ヽ≧==≦ヲ /ヽ
    ヘ| / //)-.…\ヽ  >厶    ' r-、r-、
  /三ニヽ  /       /○ \     \/i三i}
 ./三三三)ニ)     /  | |   \ ⊂/三三}
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 10:52:06.62 ID:yG+kBOaIO
           / ̄ ̄\
           Il(itノヽヽヽl
          ノリ(l|#` q´ ノi ゆいのうんちくりゃえ〜!●ミヽ(`q´#)
     (⌒⌒ヽ  /  、 つ
    (  ブッ!! ゝ (_(__ ⌒)ノ
     丶〜 '´   ∪ (ノ
 

           / ̄ ̄\
           l(itノヽヽヽl
          ノリ(l| ´ q`;ノi <あぅ…、でなかったれす('q';)
           /  、 つ
           (_(__ ⌒)ノ
            ∪ (ノ
 
203 :1 :2012/10/08(月) 17:03:12.92 ID:4MRHsvvu0
<<197の終わり方の方が良い感じするのは気のせいか?
何か悔しい…
何か死にたくなるわ…

204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 21:19:54.19 ID:4QZsxamSO
知らないよ
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 07:19:02.48 ID:g7S8Bug2o
ずっと楽しく読んでました!
>>1おつ
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