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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/05/18(金) 18:37:12.52 ID:C491rmIL0
魔法少女まどか☆マギカ×.hack//G.U.のクロスSS。 


※1.主役勢はまどマギから。ハセヲやアトリなどのG.U.の主役勢は出す予定はありません(サブキャラは出します)

 2.両作品の設定改変及びネタバレ有り。比率的にはまどマギ3のG.U.7ぐらいを予定。

 3.どちらの作品も貶すのは絶対なしでお願いします。

 4.>>1は誤字脱字の常習犯です。ごめんなさい

 5.書き溜めしてしてから投下するので、完結まで長い&超時間掛かります。

 6.さやかわいい


上記のことを了承した上で読むことをお勧めします。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1337333832(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/18(金) 18:40:33.83 ID:C491rmIL0
物語の一ページ目は、とても苦いものだった。


後期の中間テストが終わったその日。見滝原中学に通う鹿目まどかは幼馴染の美樹さやかに誘われ、世界最大級のネットゲーム『The World R:2』に初めてログインした。

自身のPC(プレイヤーキャラクター)、ピンクを主体にした衣装の錬装士(マルチウェポン)『マドカ』を通じて目にした光景は、とても美しく幻想的な世界。

「うわぁ…すごい」

思わず口にした言葉はサングラス型のディスプレイ、M2Dのマイクを通じてメッセージウィンドに表示される。その初心者丸出しの感想にまどかは赤面し口を閉じた。

一呼吸置いて、視界カメラを操作し違う視点からもう一度世界を見回す。ドーム上の建物の中を人間や獣人などの色々なキャラが行き来し、それぞれの冒険を楽しんでいた。

メッセージウィンドに表示さる会話はどれもこれも聞いたことのない言葉が並ぶ。どんくさい自分がそれら全てに目を通そうとすれば、きっとそれだけで一日が終わってしまうだろう。

「お〜い、そこのお主」

「え?」

「キミだよ。マ・ド・カ・ちゃん」

「は、はい!何でしょうか!」

「ハハッ。声が裏返ってるでござるよ」

膨らんだ帽子の被る侍口調の少女PCが苦笑のモーションで告げる。

まどかは慌ててリアルで口を塞ぐ。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

「そう緊張しなくていいよ。キミ、初心者だよね?」

緊張を解そうと、前髪で目元が隠れた青年PCが親しげに話しかける。

今度は声が裏返らないように短くはいとだけ答え、ぎこちない操作でマドカの視線を二人に合わせた。

アスタ Iyoten。オートターゲットで表示されたのは、二人の名前だ。

「誰にでも初めてのことはある。拙らでよければ、色々とThe Worldのことを教えるでござるよ」

「いえ、その、ご迷惑をお掛けするので大丈夫です…」

「遠慮しなくていいさ。初心者に優しくするのは当たり前なんだから」

困った。昔からこういった押しに弱い。特に好意からのおせっかいは尚更だ。

色々と迷った挙句、結局、流される形でまどかは二人の好意を受け取ることにした。

「うんうん。初心者は素直が一番でござる」

「そんじゃ、初心者ツアーいってみよう」 

「よ、宜しくお願いします」

ぎこちない初心者のお辞儀のモーションを、二人は苦笑して見守った。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/18(金) 18:44:43.68 ID:C491rmIL0
熟練者二人の指導の下、まどかはThe Worldでの基本的な知識を少しずつ覚えていく。

名刺代わりのメンバーアドレス。それを使ったパーティの組み方。ドームの中心に在る光の球体、カオスゲートの使い方。違う国に来たような感覚に陥りながら、まどかはそれらをゆっくりと復唱した。

「このカオスゲートに三つのワードを組み合わせることで、様々なエリアに転送できるでござるよ」

やってみるでござる、とアスタに促されら。おずおずとカオスゲートをターゲットし言われるままワードを選んだ。

「『勇み行く』『初陣の』『夢の果て』…よし、そのレベルなら初心者でも大丈夫だろ」

IyotenがOKと指で丸を作る。こういった細かい動作も、熟練者ならではだ。

「では、初の冒険に行って見よう」

指示されたコマンドを実行する。あらかじめパーティを組んでいた二人と共に、マドカは光の輪に包まれた。


Δ 勇み行く 初陣の 夢の果て


暗転した視界が次に映したのは、青々とした草が茂る快晴の平原だった。

「ようこそ、初めての冒険へ」

お嬢様、とIyotenが執事の様なお辞儀で出迎える。

「早速でござるが、あそこのモンスター相手にバトルでござるよ」

アスタの指差した先には、宝箱を軸に数体の小さな影がたむろしていた。小型モンスター『ゴブリンルーキー』。多くの初心者が、一番初めに相手にするモンスターだ。

「バトルのコツを教えるな。まずは敵の背後から攻撃を仕掛けて発動する『不意打ち』から……」

熟練者のアドバイスの元、まどかは戦い方を学んでいく。攻撃の繋げ方。ガードのタイミング。スキルとアイテムの使い方。

成功と失敗を繰り返しながら、徐々にコツを掴んで行く。

「いいでござるよ!」

「そうそう。そこだ!」

声援を背に、まどかはエリアの全ての敵を撃破した。ステータスをみると、レベルもそれなりに上がっていた。

「やったなマドカ」

「はい!お二人のおかげです!」

「礼には及ばんでござるよ」

「さ、獣神殿に行こうぜ」

「獣神殿?」

初めて聞くその言葉。疑問符を付けて繰り返すと二人は微笑んだ。

「お宝でござるよ」

そう言って歩き出す二人の後を、慌てて追いかけた。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/18(金) 18:47:32.92 ID:C491rmIL0
「ときにマドカ。お主はなぜ錬装士を選んだのでござるか?」

「えっと、色々武器が使えた方が良いかなって……」

突然、二人は声を上げて笑い始めた。

「クク……そっか、色々か」

「私、何かおかしなこと言いましたか……?」

「いやいや、実に初心者らしい答えでござったよ」

ひーひー言いながら、アスタが説明をしてくれる。

実は、錬装士という職業(ジョブ)はThe Worldでは1、2を争うほどの不人気だった。

PCの強化に時間が掛かり、育てても能力的に中途半端。その上、複数の武器を使えるようになるにはジョブ・エクステンドという特別クエストをクリアしなければならない。

器用貧乏という言葉がこれほど似合う職業は他にないだろう。

唯一の救いは、初期の武器が比較的に扱いやすい双剣という点のみだ。

「ま、しばらくは茨の道でござるな」

「はい……」

「そう落ち込むなって。ほら、獣神殿に着いたぜ」

獣神殿と呼ばれたその建物は、外国の古代遺跡をイメージさせる神殿だった。入り口の階段を下った先には、巨大な像が目の前の宝を守るように浮遊していた。

「審判の神・アルヴィニル。設定では資格のある人間を神の国に連れて行くかどうかだったが……詳しくは拙も覚えてないでござる」

興味があったら公式のホームページでと、アスタはわざらしくと宣伝口調で告げた。

「俺らはアイテム神像って呼んでるけどな。ほら、お宝取ってきな」

「え、いいんですか?」

「その為に来たのでござるよ」

ほらほらと背中を押され、まどかは像の前の宝箱を開ける。

初めての冒険。初めての仲間。初めてのお宝。それら全ての心地よさに、まどかは顔をほころばせ喜んだ。

「あの、本当にありが……」

感謝の気持ちを伝えようと振り返った時、目に映ったのは鋭く光る大剣の刃先だった。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/18(金) 18:51:08.39 ID:C491rmIL0
「え…?」

備え付けられた無数のノコギリがギィギィと魔物の声の様に神殿に鳴り響く。大剣を持っているのは、アスタだ。

「そのアイテムはキミの獲物」

「そして拙らの獲物はキミ」

「な、なに……?」

「お前みたいなどんくさいバ〜カは、このゲームをやる資格なんかねぇって意味だよ!」

突然の二人の豹変にまどかはたじろぐ。次の瞬間、振り上げられた大剣がマドカ目掛けて躊躇なく振り下ろされた。

「い、いやあああああ!」

恐怖が脳に命令しコントローラーを弾かせる。間一髪のところで、攻撃を逃れた。 

「チッ、外したでござる」

「ひぃっ…!」

殺される。

本能でそれを感じ取ったまどかは、入り口にマドカを走らせた。 外へ、外へ逃げなければ!

「おいおい、あんま手間かけさせんなよ」

しかしそれはあっさりとIyotenに防がれた。

「いやだ…助けて・・・誰か―」

慈悲を掻き消すように、Iyotenの刀剣がマドカを薙いだ。低レベルのマドカが熟練者の攻撃に耐えられるはずもなく、HPは一瞬にして0になる。

暗転したM2Dが見せたのは、灰色になった自身の分身の姿。

この世界においての灰色が表すのは、死。マドカは殺されたのだ。

力抜ける。今にもコントローラーが滑り落ちそうだが、握る力は出なかった。

先ほどまで満たしていた喜びも、震え上がるほどの恐怖も、今はもう何一つ残っていない。
 
「ああ!?今回は拙に斬らせてくれる約束でござろう!」

「あー、悪い。そうだった」

悪意に満ちた殺人者たちの声も届かない。心はただ虚しく渇いていく。

(こんな思いするくらいなら……The Worldなんて)

虚無から後悔へと変わる……その瞬間だった。眩い閃光がIyotenを消し飛ばすように葬ったのは。

「何だてめぇ―」

突然のイレギュラーに乱暴な口調になったアスタもまた、閃光に葬られる。

獣神殿に静寂が戻った。

視界カメラすら動かせないまどかは、今起きた出来事を把握しきれてない。ただ漠然と、あの二人の殺人者の身に何かが起きたとしか。

カツン―カツン―

入り口のほうから、ゆっくりと足音が近づいてきた。

(誰……?)

天窓から射し込む光が映し出したのは、暗い色ながらも存在を感の在る衣装に身を包む銃戦士(スチームガンナー)の少女。

身長とほぼ同じ大きさの円筒形の金属が、左腕の肩から手先までを覆っていた。肘の部分には南京錠がかけられている。

青い光に包まれた。少女がアイテムを使いマドカを蘇生したのだ。

マドカに生の色が戻る。不思議と、抜けていた力が戻った。

微笑み手を差し伸べる少女。表示された名は―『ホムラ』

「Welcome to 『The World』」

優しく、どこか懐かしい声に誘われ、まどかはその手をとった。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/18(金) 18:54:28.95 ID:C491rmIL0
「それで、そのホムラってのはどこにいったの?」

「わかんない。カオスゲートまで一緒だったのは確かなんだけど、着いた途端に消えちゃった」

「不思議な方ですわね」

学校の帰りに立ち寄ったファーストフード店で、まどかはさやかと、クラスメイトの志筑仁美に昨日の出来事を話していた。

「まどかを助けてくれたのはありがたいけど、その左腕からして改造屋(チーター)だよねぇ」

「あら。悪い人では無さそうですわよ」

「仁美ちゃんもThe Worldやってるの?」

「ええ。お稽古が終わってからなので少ししか出来ませんが……それにしても災難でしたわね。初めて早々PKされるなんて」

「くっそー。補習さえなければあたしがそいつ等をとっちめてやったのに」

昔から非人道的なことが許せない性格のさやかは悔しそうに拳を握る。その牙が親友に向けられたとなれば、尚更だ。

「だ、大丈夫だよ。不用意に着いて行った私も悪いし、さやかちゃんが危険な目に遭う必要なんて」

「どうしてアンタはそう優しいか…なっ!」

「ひゃ!?」

突然抱きしめられた。それは長年受けてきた、さやかお得意のセクハラまがいのスキンシップだ。

「泣くなまどか〜」

「な、泣いてなんかないもん!」

「ほほう、じゃあこれはどうだ!」

もぞもぞとさやかの手がわき腹に回る。

(くすぐる気だ!)

くすぐりが大の苦手なまどかはすぐにその手を引き離そうとしたが、時既に遅し。

「あはははっ!あは、さ、さやかちゃんやめ…あはははは!」

「うりうり〜。ここが良いのか〜?」

「あははははははっ!」

「………コホン」

仁美の咳払いで、辺りの客がこちらを見ていることに、二人はようやく気付くのだった。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/18(金) 19:00:05.61 ID:C491rmIL0
さやかとThe Worldで落ち合う約束を交わしたまどかは、足早に帰宅した。

「ただいまー」

「おかえり。おや、何だか急いでるみたいだね」

出迎えた父の知久。その腕には弟のタツヤが寝息をたてている。

「うん。さやかちゃんとThe Worldで待ち合わせがあるの」

「そうかい。でも、ゲームは程ほどにね」

「はーい」

すぐに着替えを済ませ、まどかはさっそくThe Worldにログインする。

カオスゲートのあるドームの中は、相も変わらず賑わっていた。

「よっ」

短く声を掛けてきたのは、白いマントを着けた藍色の装飾の斬刀士(ブレイド)の少女。

「さやか…ちゃん?」

「いぇーす。でも、ここでは『鞘歌』って呼んでね」

メンバーアドレスを交換した二人は早速パーティを組んだ。

「そういえば、どうして私だってすぐにわかったの?」

「はっはっは。あたしが自分の嫁を間違えるわけないでしょうが」

そう茶化すように言った鞘歌の元に、斬刀士の青年PCが近寄ってきた。昨日のPKが軽いトラウマになったまどかは、思わず鞘歌の背後に隠れてしまう。

「バリウスおっそーい」

「ごめんごめん」

「鞘歌ちゃんのお知り合い…?」

「そうだよ。て言っても、マドカも知ってるんだけどね」

「?」

不意にバリウスの名がステータス画面に追加される。リーダーの鞘歌がパーティに加えたのだ。

『これでよし。マドカ、パーティチャットってコマンド押してみて』

言われるまま、まどかは指定されたコマンドを選択した。

『これでいいの?』

『よくできました。パーティチャットを使えば、この会話は周りには聞こえない状態になるの』

他にも一対一のチャットや同じギルドに所属するPC同士のギルドチャットなどあるが、まあ、あとは追々説明するよと、鞘歌は半ば投げやりに説明を終わらせる。

『それじゃあさっきの答えね。バリウスのプレイヤーは、同じクラスの上条恭介くんでーす』

『よろしくね。鹿目さん』

『上条くんだったんだ』

『少し遅くなるけど仁美も来るから、それまでマドカのレベル上げでも行ってみようか!』

元気いっぱいの動作で、リアルと同じように鞘歌はマドカの手を引くのだった。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/18(金) 19:03:38.62 ID:C491rmIL0
The Worldを始めてから、二月程の時間が流れた。

この日は普段より少し強めのエリアを、まどかに鞘歌、バリウス、そして仁美の操るPC『ユリ』の四人で冒険していた。

場所は洞窟。The Worldは三人までしか組めないため、今回はマドカと鞘歌、バリウスとユリの二組に分かれていた。エリアワードさえ合えばこういった複数のパーティー冒険することも出来る。大勢で強力なモンスターを倒すのも、The Worldの醍醐味だ。

「鞘歌!」

「オッケー!マドカ、いっくよ!」

「うん!」

斬刀士の鞘歌とバリウスの同時タメ攻撃で弾き飛ばされた大型モンスターを、まどかが攻撃スキルを使い地面に叩き落す。 

「ユリちゃん!」

「はいですわ!」

すかさず妖扇士(ダンスマブカル)のユリが攻撃呪紋『レイザス』を唱える。起き上がったモンスターは放たれた魔法の矢に貫かれ、またも地面に伏せ灰色となった。

完璧なコンビネーション攻撃だ。

「いやー爽快爽快!」

「油断してるとやられるよ」

「平気だって。なんたって、最強の斬刀士鞘歌ちゃんですから。そ・れ・に、マドカもいるしね」

「わ、私なんてまだまだだよ」

「あら。そう謙遜しなくても宜しいんですよ」

「確かに、マドカさん凄く上手くなったね」

慣れない賞賛を浴びたまどかの耳はたちまち真っ赤なった。そんな可愛らしい親友を鞘歌は抱きしめ頬ずりした。リアルでもゲームでも、彼女のスキンシップは本人お構いなしだ。

ふわりと、何かが二人の前を横切った。それは淡く蒼白い光だった。



ぽぉーん



「今の…何?」

謎の光と音に気を取られたその時

「きゃああああああああああああ!!」

「うあああああああああああああ!!」

断末魔の叫び。

振り返るとバリウスとユリが重なって倒れていた。その背中には、おぞましく明滅する三角形の赤い傷が刻まれている。

「恭介!仁美!」

ただ事ではないと瞬時に感じ取った鞘歌は二人に駆け寄った。叫ぶように名前を呼び続けるが、二人からは返事はない。

不意に、視線を感じた。

継ぎ接ぎに縫われたオレンジ色の服と帽子。歪な形をした三つ叉の双剣。蒼い炎を纏う少年が、そこにいた。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/18(金) 19:06:20.86 ID:C491rmIL0
瞬間、バリウスとユリのPCがガラスの様に砕け散った。

明らかに異常な光景。全年齢を対象としたThe Worldには、このようなグロテスクな死に方は用意されてない。

「なに…なんなの…」

鞘歌は少年に吼えた。

「アンタの仕業でしょ……恭介と仁美に、一体何したのよ!」

今にも掴み掛かりそうなほど興奮した声で出し問い詰めるが、少年が返したのは沈黙。

「答えろぉ!」

鞘歌は刀剣を手に跳んだ。刃は少年を捉え、しかし、あっさりと弾き返される。

石の壁に叩きつけられた鞘歌は『まるで本当に痛みを感じているかの様に』苦痛の声を漏らし動かなくなった。

継ぎ接ぎの右手が横たわる鞘歌に向けられる。バチバチと音を立て走る紫電が、眩い光が、五つの突起の腕輪を形成していく。

―さやかが危ない!

「や、やめてぇ!」

まどかは悲鳴にも聞こえる叫びを上げ駆け出した刹那、背後から一筋の閃光が少年目掛け襲い掛かった。右腕の腕輪は形を維持できず消失する。

忽然と現れたのは異形の左腕を持つ銃戦士、ホムラだ。

「逃げなさい」

それだけ言い放ち、ホムラは銃剣を撃ち続け少年との距離を詰めていく。少年は三つ叉の双剣で襲い掛かる閃光を防ぎ、自身もその距離を縮めた。

「あ…あぁ…」

「早く!」

次々に起こる出来事にパニックを起こしたまどかをホムラが一喝する。

我にかえったまどかはいぜん倒れこんだままの鞘歌を抱え、付近の転送装置のタウンへの転送を実行した。




数時間後。まどかとさやかは病院の待合室にいた。

「何か飲むか?」

まどかの母、詢子が尋ねた。二人は無言で首を振る。

帰りのタクシーを拾いに詢子が外に出た直後、さやかは顔を覆い咽び泣いた。堪えていたものが一気に溢れ出したのだ。

「どうしよう……恭介が…仁美が…!」

「さやかちゃん……」

「なんで…なんでこんな事になっちゃったの…?」

その答えを持ち合わせてないまどかはただ、優しく抱きしめることしか出来なかった。

この日、上条恭介と志筑仁美は意識不明となった。

原因は、不明だった。



10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/05/18(金) 19:07:42.67 ID:C491rmIL0
ここまでです。書き溜めが出来次第投下します
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 20:23:13.36 ID:XZo89807o
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 20:24:10.62 ID:BqMbR4Nf0
おつ!
楽しみにしてるよ
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/18(金) 20:50:53.33 ID:Sq23WQsZo
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/18(金) 20:59:44.91 ID:cQaXIHs4o
乙!
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga sage]:2012/05/18(金) 21:11:36.55 ID:mGetNu0Q0
まどか=ハセヲってことは……
まどか「食い殺すぞおおおおお!」
まどか「消えちまえ……」
まどか「チッ、使えねぇな!」

とりあえず、期待!
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/18(金) 23:40:04.61 ID:AbeFSWYAo
キャラ的に「死の恐怖」になるのはさやかなんじゃ……
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/19(土) 00:30:23.03 ID:ennFHcsSo
まどかはアウラポジな気がする
もしくは志乃
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 07:45:08.68 ID:vv10iyiMo
さやかちゃんが死の恐怖ってなんかハマっててやだわww

正直GUはクソゲ…げふんげふん
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/19(土) 08:54:33.22 ID:p/OsmCc/o
ちょっと無駄に引っ張って調子こいて三部作にしちゃって挙句コケただけで断じてクソゲーじゃない 断じてだ
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 09:34:45.61 ID:uAsxWHsAo
G.U.は曲はいいんだよ!
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/20(日) 03:25:11.13 ID:OJtC1Q0ao

G.Uは良ゲーだろ!
前作の方が俺は好きだが
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga sage]:2012/05/20(日) 14:04:37.13 ID:tWojk+uz0
>>16
現状、マルチウェポン職でPKされたのがまどかだからなw
まどか=ハセヲ、ほむら=オーヴァンぐらいじゃね?
さやかちゃん=志乃とか……。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/20(日) 18:27:54.06 ID:bTx1Iu2lo
>>1でさやかわいいって書いてある時点でさやかが酷い目に遭うのは明白
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/20(日) 19:28:59.86 ID:5bqlk8Xzo
>>22
むしろまどか=アトリで
まどかが暗黒盆踊りするのは想像できん
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/20(日) 19:39:23.53 ID:SjrF3UDHo
むしろマミさんが出るのか心配
前作は途中からマミさんが消えてた
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/05/20(日) 21:51:58.52 ID:KC0inyAeo
別に全キャラ出さなきゃいけない訳でもないし…
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 22:03:10.76 ID:MzQ0UI6Uo
>>23
これはガチ
前言い訳だな
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 00:04:50.35 ID:uXYsof44o
ほむらちゃんの出番はすくなそうですね
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/22(火) 03:12:27.44 ID:HZbqbNT+0
―半年後―


荒野のフィールドにゲラゲラと悪意に満ちた笑い声が溢れる。三人の初心者プレイヤーたちが十数人のPK集団に襲われていた。

「た、助け」

茨の刀が命乞いをする魔導士の少女を切り捨てた。

命乞いなど無意味だ。PKたちの目的は金銭でも経験値でもない。自分より弱い存在を無様に這い蹲らせ、己の嗜虐心を満たしたいだけなのだから。

集団の頭、茨の刀を持った赤い髪の女斬刀士は、横たわる死体にぺっと唾を引っかけるモーションを取ると、たった今斬り捨てた魔導士の少女に蘇生アイテムを使うよう手下に指示を出す。

「いや、もうやめて……」

虐殺の場に戻された魔導士の少女は、今、心までも切り刻まれようとしていた。

「最高だねぇ……これだからPKはやめらんない」

涙は美酒。悲鳴は甘味。壊れた心は、最高のご馳走だ。

「そうだろお前ら!」

賛同した手下たちが喝采を浴びせる。

PKは相手の心を殺すことに何の抵抗もない。なぜなら、これはゲームなのだから。

手下の喝采に昂揚した女斬刀士は、少女目掛け茨の刀を振り下ろした。

「なっ…!?」

茨の刀が弾かれる。

踏み留まる女斬刀士の前に立ちはだかるのは、双剣を握る黒衣の錬装士。

「ボルドーさん!こいつ例の!」

「なに…!?」

チョンマゲ双剣士の言葉に、女斬刀ボルドーの声が緊張を孕む。

少女だった。肩まで伸びた淡いピンク色の髪を赤いリボンでツーサイドトップに結び、不似合いな黒のドレスがその身を包んでいた。尾のように長いリボンのチョーカーは、風に吹かれゆらゆらとなびく。

出やがった……手下の一人が絶望の声色で呟いた。

「<死の恐怖>……PKKのマドカか!」

双剣を納めたマドカは、腰から自らの背丈もある大鎌を引き抜き、チョンマゲ双剣士を含む数人の手下をまとめて薙いだ。

即死。ガードをしたにも関わらず、だ。

レベル133。The Worldの全体で五%にも満たないレベル100越えの廃人プレイヤーの攻撃に、初心者狩りをする野良PKが耐えられる筈がなかった。

次に取り出したのは、甲高い音を出すチェーンソー大剣だ。

錬装士の特徴である武器換装。それを最大限まで生かせる3rdフォームまでジョブ・エクステンドを果たしたマドカは今、双剣、大剣、大鎌の三種類の武器を自在に使うことが出来た。

さながら外国のホラー映画の被害者の如く、PKたちは次々にその身をぶった斬られる。

「ちぃ・・・!」

転がる灰色の手下を踏みつけ、ボルドーはトリッキーな動きで仕掛ける。だが、それは軽くあしらわれ宙を舞った。

地面に叩きつけられた直後、起き上がる間もなく喉元にぴたりと突きつけられるチェーンソーの刃。勝負ありだ。

「三爪痕(トライエッジ)を知ってますか?」機械のように感情のない声が、ボルドーに投げられた。

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/22(火) 03:29:00.50 ID:HZbqbNT+0
「なんだって…?」

「蒼炎を纏った伝説のPKの名です。そのPKにキルされたプレイヤーは、二度とゲームに復帰できなくなるとか」

「三爪痕……」

ボルドーは三爪痕の名になにか思い当たる節があるのか、考える素振りを見せ

「BBSの怪談話なんか信じてんじゃねーよ」

頭を指差すジェスチャーをした。一人でイカれてろ、と。

しかしそれを意に介さず、得るものがないと分かるや否やマドカは踵を返し初心者たちのもとへ歩き出す。

まるで子供に興味を失くされ捨てられた玩具のように、ボルドーはその場に一人取り残された。

「どういうつもりだ!おい、聞いてんのかよ!」

見逃されたことでプライドを傷つけられた負け犬(ボルドー)をシカトし、魔導士にいくつかの蘇生アイテムを渡してマドカを荒野から転送させた。


Δルートタウン 悠久の古都マク・アヌ


The Worldにはプレイヤーのレベルに合わせたサーバーが複数用意されている。

そのなかでもマク・アヌは初心者向けのサーバーとあってか、プレイヤー同士の交流は他のサーバーよりも盛んに行われいた。

ドームから出てすぐ噴水のある中央区では、毎日日替わりでギルドのショップが開かれている。

遊び方は人それぞれ。血を滾らせ冒険に出る者もいれば、平和に商人として人との交流を楽しむの者もいる。The Worldの楽しみ方は、プレイヤーの数だけ存在するのだ。

しかしまどかは、黒衣の錬装士の少女は、それら全てに興味など無かった。

「噂通り、殺気の塊の様なPCだね。<死の恐怖>のマドカくん」

噴水前。錬装士マドカの道を阻んだのは、長髪をつむじで束ね、時代劇の武士を思わせる化粧と格好をした切れ目の青年撃剣士(ブランディッシュ)。

「PCをキルするPC…すなわちPKが横暴する昨今のThe Worldは実に嘆かわしい。だが、それを力でねじ伏せるキミたちPKKの行いにも果たして利はあるかね?」

「何か御用ですか?」

だからどうしたと、まどかは問いた。煩わしいのはごめんだ。用があるならさっさと言ってれ。

「憎しみが憎しみを生むその連鎖は断ち切らねばならぬ。故にこの『月の樹』二番隊隊長―『七枝会』の榊、キミの行動を見過ごすことは出来ないな!」

「………『月の樹』?」

巨大ギルド『月の樹』。The Worldの中でも指折りのそのギルドはプレイヤー同士の交流を尊重し、初心者サポートなどの活動をしている。

なかでも特に目立った活動の一つがPK廃止運動だ。プレイヤーの心を傷つけるだけのPKなどという野蛮なシステムは不要とCC社へのシステムの廃止を求め、サイトで電子署名を集めている程だ。

そういった自治組織気取りのお節介な行為を『宗教団体』と比喩し嫌う者も多かった。

要するに、この榊という幹部はその政策にあやかり、PKKを繰り返すまどかに説教しようと声を掛けてきたのだ。

「興味ないです」

率直に素直な感想を述べ榊の脇を通り過ぎた。以前の自分なら話を聞き曖昧な態度でやり過ごしたろうが、生憎、今はそんな余裕も時間も無い。

「人の話は最後まで聞くもんだぜ?」

「お話、まだ終わってないよ」

新たに現れた二人組みに、また道を阻まれた。

明るい髪をリボンで縛り、赤い修道服の着崩した重槍士(パルチザン)少女と、猫耳を模った帽子をかぶるアニメキャラのような子供の呪療士(ハーヴェスト)だ。ターゲットに表示された名は『キョーコ』と『癒魔』。この二人も『月の樹』か。

「それともなんだ。アンタも『月の樹』は嫌いな質か?」

「別に。ただ、貴女たちみたいに暇じゃないだけ」

「んだと……?」

「キョーコ、やめなさい」

堪え性の無い部下を榊がたしなめる。チッと、聞こえるように舌打したキョーコは、懐から果物の形のアイテムを取り出すと、口を大きく開けかぶりついた。

設定をいじればこういったモーションも可能だと聞いたことあるが、実際にやっているプレイヤーを見たのはまどかも初めてだった。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/22(火) 03:34:22.42 ID:HZbqbNT+0
不意に電子音が鳴る。ショートメールの受信音だ。

『Δ 隠されし 禁断の 聖域で待ってるわ』

その短いメールの差出人の名は―

「ホムラちゃん……!?」

コントローラーを弾いた。道を塞ぐ榊を突き飛ばし、カオスゲートにマドカを走らせる。

「いきがるなよ!いかに正義を気取ろうと、PKもPKKもその行為の本質は同じ悪だ!」

榊が高らかに叫ぶ。その役者じみた行為に、薄っぺらい自己満足の言葉に、まどかはイラつきを覚えた。

(何も知らないくせに…)

だからと言って、自分の常識でしか物事を見れない他人に教える気など毛頭無かった。







The Worldには『ロストグラウンド』と呼ばれる。通常とは異なるエリアが存在する。

試作段階のThe World、通称『fragment』から『The World R:1』へのバージョンアップに伴い消えたはずの遺産がそれだ。

『R:2』に以降後、プレイヤー達により次々と発見されたそこには、イベントはもとより、モンスターも宝箱も設置されていない。

なぜこのように無意味なエリアが存在するのか。プレイヤーの中にはその謎を解明しようとするマニアも多い。

だがThe Worldを管理するCC社にとってもロストグラウンドは未開の地。十数年前に失踪したThe Worldの開発者、ハロルド=ヒューイックの無き今、秘密を解明するのは事実

上不可能だった。


Δ隠されし 禁断の 聖域  グリーマ・レーヴ大聖堂

このエリアもまた、数あるロストグラウンドの一つだった。

石造建築が織り成す聖堂の名に相応しいその神秘的な雰囲気から、観光気分で訪れるものも少なくない。


―だから私は、彼女をアウラと名づけよう

 君なしに、この子はありえなかった
 
 光り輝く子、アウラ
 
 彼女に私たちの意志を託そう…

 彼女に私たちの未来を託そう…

 彼女こそ私たちの…―


「久しぶりね、マドカ」

聖堂の奥。柵で区切られた鎖が散る祭壇で詠うは左腕が異形の少女、ホムラだ。

「いえ、今は<死の恐怖>と呼ぶべきかしら?」

「ホムラちゃん……」

「強くなったわね。あの時より、ずっと」

訪れたマドカに、ホムラはあの時と同じ優しくも懐かしい声と微笑みを向け出迎えた。

安堵の表情を浮かべたまどかは、思わず息を呑んだ。

祭壇に、あの焦げ付く様に赤い三角形の爪痕が刻まれていた。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/22(火) 03:38:50.99 ID:HZbqbNT+0
(ここにも…三爪痕が…!)

「Aura(アウラ)―昔、ここにあった女神の像はそう呼ばれてたわ」

困惑するまどかを気に留めず、銃戦士の少女は視線を祭壇に戻した。

「二人……いえ、鞘歌も含めて三人かしら。貴女の前からいなくなった友人は」

「どうしてそれを」

「さあ。何故かしらね」

教えてあげないと、黒髪をなびかせ答えをはぐらかす。このもどかしく難解な言葉のやりとりが彼女と会話することだと、まどかはなんとなく理解した。

祭壇の爪痕を指でなぞり、そして、少女は唐突に話を切り出す。

「三爪痕とまみえる勇気はあるかしら?」

どくんと、心臓が鼓動する。

三爪痕―まどかの脳裏に、あの日仁美と恭介を意識不明にした少年PKの姿が鮮明に映し出された。

長い黒髪をなびかせホムラは祭壇からマドカへと振り返った。漆黒の瞳。その奥にいるホムラのプレイヤーが、マドカを通しプレイヤーのまどかを見据える。

「愚問だったわね。そのために、貴女はPKKとなったのだから」

そう。この半年間、まどかはリアルを犠牲に三爪痕を追っていた。

襲い掛かるPKを斬り、言われもない誹謗中傷を浴び、それでもThe Worldに固執した。

仁美と恭介を、あの日々を取り戻すために。

「もうすぐ奴は戻ってくる……この悲劇の舞台に」

「三爪痕が…ここに…」

爪痕に一瞥をくれた後、身廊に靴音を響かせホムラはマドカの脇を通り過ぎた。

「これは、貴女にしか託せないことよ」

去り際にそう言い残し聖堂を後にするホムラを見送る。その直後、


ぽぉーん


背後であの音が静かに鳴り響いた。

祭壇に振り返るマドカの前に、蒼白い光がゆらゆらと舞い降りる。

光が轟音を伴い爆発した。爆風で吹き飛ばされたマドカを立て直した時、三つ又の双剣を携え、少年は蒼き炎と共に現れる。

「三爪痕……!」

緊張、怒り、恐怖、歓喜。半年間捜し続けた相手を前にして生まれる様々な感情は、混ざり合い、全てがまどかの心を昂ぶらせる。

「返して・・・…仁美ちゃんと上条くんを……」

コントローラーを弾いた。

「返せぇええーっ!!」

双剣を抜刀しマドカは身廊を駆ける。ぶつかり合う刃が金属音を鳴らし、火花を散らした。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/22(火) 03:50:58.92 ID:HZbqbNT+0
幾重にも攻撃を重ねるマドカに対し、少年が行うのはガード。しかも、片腕のみでだ。バックステップで一度間合いを開け、武器を双剣から大剣に持ち替えた。

跳躍し振り抜かれた大剣は、またもに防がれる。鍔迫り合いの硬直状態が続く。

破ったのは、三つ叉の双剣による一閃。

「えっ……!?」

信じられないと、まどかは動揺し声を上げた。三つ叉の双剣が、マドカの持つ大剣を粉々に粉砕したのだ。

有り得ない。The Worldに武器破壊のスキルなど無かったはずだ。

(それならどうやって………っ!?)

困惑で動きが止まるマドカを、継ぎ接ぎの手が捕らえた。

目が眩むほどの光が視界を覆った直後、脳を揺さぶる衝撃がまどかを襲う。

混乱と顔面に広がる痛みに、頭の中をぐちゃぐちゃに掻き回される。

(痛い……?)

なぜだ?これは、The Worldはゲームの筈だ。どうしてリアルの自分が痛みを感じているのだ?

いや、それならどうして仁美と恭介は意識不明になった。

(The Worldは……ゲームじゃない……?)

なら、もしこのままマドカが死んだらどうなる。



―私も……死ぬの?




朦朧とする意識を覚ましたのは、死の恐怖だった。

「あ……ああ……」

虚空を仰ぎいた右腕が、マドカに向けられる。迸る紫電と閃光が形成するのは、あの時鞘歌に向けた腕輪だ。

「うわぁああああああああああああああああああああっ!!」

大鎌を手に飛び掛った。

纏わりつく死の恐怖を振り払うかのようにがむしゃらに振り回すが、刃は腕輪が展開するデジタルの紋様に阻まれ少年に届かない。

腕輪から放たれる無数のデータの奔流が、マドカを貫いた。


―ごめんね


消え行く意識の中、誰かの泣きそうな声が聞こえた気がした。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/05/22(火) 03:55:18.87 ID:HZbqbNT+0
やっとこさ序章終了。次はさやかちゃんが出るよ!(ちょっとだけ)
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/22(火) 04:05:43.63 ID:1hYSWllYo

杏子が誰かの下で収まってるとも思えないけど何か考えがあるのかね
もっとも設定が違う以上性格もちょっと違ってるのかもしれないが
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/22(火) 04:37:30.85 ID:oGYYdw2do
乙!
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/22(火) 12:38:58.48 ID:naPXGkp1o

しかし100人切りしたまどかとか想像できないなぁwwwwww
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga sage]:2012/05/24(木) 20:29:48.68 ID:Avko5muD0

マミさん=クーンは違和感なさそうだなw
絶対、マミさんはカナードでドヤ顔初心者講習、
レイヴンでアバター使って厨ニ患者になってても違和感が無いw
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/24(木) 22:13:05.10 ID:xXGxdzfEo
俺の揺光ちゃんがそのままなのかだれか配役がいるのが気になるところ
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/26(土) 01:19:35.89 ID:sqd6qzgbo
パイは誰がやるんだろう
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/27(日) 09:24:35.90 ID:dVn/343p0
そりゃあパイのおっきい人だろ
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/30(水) 11:55:42.52 ID:qEA0fYRh0
M2Dが映すのは、果ての無い暗闇だった。

壁にかけられた時計の針が指す時刻は、午前十時過ぎ。外は肌が焼け付くほどの快晴だ。

夏休みを利用し連日夜更けまでThe Worldをプレイしていたまどかは軽い眩暈に苛まれながら、机に突っ伏していた頭を起こした。

「うっ……」

M2Dを外した直後、窓から差し込む陽に照らされ吸血鬼のように怯む。

(私……いつ寝落ちしたっけ……?)

時間の感覚を失った脳を動かし、額を人差し指で押し記憶を辿るが全く思い出せない。

何故か床に転がっていたコントローラーを拾い、もう一度M2Dを付ける。

以前、映るのは暗闇だけだ。

「ここは……?」

「気が付いたようね」

暗闇の中から声が投げられた直後、マドカの周囲に複数のウィンドが展開される。

その一つ一つが映したのは、赤毛のPK集団を狩り、タウンで『月の樹』のメンバーと口論になり、ロストグラウンドの大聖堂でホムラと対談する<死の恐怖>マドカの姿。

「っ……!」

ストーカーに付き纏われたかのような不快感に背筋が凍る。

「『知識の蛇』へようこそ」

正面の暗闇に根のように広がる複雑に光。その中心、光玉を軸に巨大なウロボロスの壁画は廻る。

頭上から降りてくる蓮華座には、ショール付きの帽子を被る純白のドレスの魔導士が乗っていた。

「私は『織莉子』。この『知識の蛇』の責任者」

「ボクは『キュゥべぇ』。よろしくね<死の恐怖>マドカ」

その肩に乗る見たことも無い小動物がにこりと笑顔を向けた。

驚を衝かれたまどかだったが、ここがゲームの世界だと思い出し、すぐに警戒の色を戻す。

「警戒しなくても大丈夫。ボクたちはThe Worldを運営するCC社の者さ」

「CC社の……!?」

織莉子が宙に浮く球体型の操作盤に手をかざすと、ウロボロスの前に一際大きいウィンドが開く。

再生された映像は、大聖堂で繰り広げられたマドカと三つ叉の双剣の少年が戦いだ。

(三爪痕……!?そうだ、私はあの時)

ホムラに呼び出されたロストグラウンド、グリーマ・レーヴ大聖堂で遂にあの少年PC……三爪痕と再び対峙した。

持てる力全てを出し戦いを挑むも不様に敗北。そして眩い閃光に襲われ………記憶はそこで途切れる。

「昨晩、データドレインにより意識の失った貴女のPCを『知識の蛇』で保護させてもらったわ」

「データドレイン?」

「仕様外のスキル」

ウィンドが激しく明滅する。少年が放つ閃光に貫かれ、絶叫するマドカの身体からデータが飛び散る。<死の恐怖>と畏怖された黒衣の錬装士は消失し、聖堂に残されたのはピンクの衣装の少女PCが

「!?」

改めて自身のPCを確認したまどかは言葉を失う。ステータス、装備、アイテム、スキルは初期状態。メンバーアドレス、The World連動のメーラーは共に空。

「レベル1!?」

八ヶ月に及ぶマドカの全てが消えていた。残ったのはあの日と同じ失意と虚無感だけ。

全て0に戻された。いや、三爪痕どころか野良PKすら相手に出来ない今の状態は寧ろマイナスか。

「データドレインによるデータの改竄ね」

織莉子は色の無い声で呟く。映像はそこで終わり、砂嵐を映すウィンドはぷつりと閉じた。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/30(水) 12:02:51.44 ID:qEA0fYRh0
「The Worldには仕様から逸脱したイリーガルなモノが存在する。それは事象であり、対象であり、様々な表出の仕方で現れる……それらを総称して私たちは『AIDA』と呼んでいるわ」

「あいだ……?」

「ボクたち『プロジェクトG.U.』はAIDA対策の為に結成された特別組織なんだ」

また新しくウィンドが開かれた。そこには黒い泡のような斑点が心臓のようにごぼごぼと鼓動し、おぞましく蠢いていた。

「The Worldをプレイ中に貴女と同じように意識を失い、今もなお目覚めないプレイヤーを私たちは『未帰還者』と称してる」

「キミが追う三爪痕とAIDAの関係は調査中だけど、活動の時期からして無関係ではないはずだ」

「そんな危険なものがいるって分かってて……なんであなた達は、The Worldを閉鎖しないんですか!」

声を荒げまどかは叫んだ。

「またどこかで誰かが意識不明になるかもしれない……それなのに!」

「意識不明の原因がThe Worldだという証拠はない」

「!?」

織莉子の放つ耳を疑う一言に、まどかは言葉と詰まらせる。

「AIDAと意識不明者の関係はあくまで『仮説』。織莉子の言うとおり、ボクたちCC社がThe Worldを閉鎖させる理由は無いと思わないかい?」

「あたな達は……!」

灼熱のような怒りが身体から噴きあがる。仁美の、恭介の、AIDAの犠牲になった意識不明者たち苦しみを足蹴にするその言葉を許すわけにはいかなかった。

激しく打たれる心臓の鼓動が、抑え付ける理性のタガを内側から壊そうしているかのよう錯覚する。

「キミにはボクたちと共に行動してもらいたかったけど、その様子だと今は無理そうだね」

「当たり前でしょ……」

「それなら好きにしたら良いわ」

向けられた敵意をを織莉子は軽くあしらう。まどかはM2Dを投げ捨て、パソコンの電源を落とした。

窓の外から、近所の子供たちの笑い声が聞こえた。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/30(水) 12:08:22.54 ID:Hr6Nuc2ro
CC社とキュゥべえのコンビとか信用のしの字すらできない
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/05/30(水) 20:29:24.88 ID:6kZ84nTAO
なるほど、預言者か
だとすると復讐者は……
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/30(水) 23:19:09.55 ID:hiT+p5buo
単なるキャラの置き換えじゃなくて(今後あるかもしれない?)オリジナル展開に期待してるぜ
なかったらなかったで楽しむのは変わらないんだけどなwwww
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/03(日) 13:34:02.42 ID:0o/44Epm0
Δ 隠されし 禁断の 聖域 グリーマ・レーヴ大聖堂


後日、ログインしたまどかは忌々しき戦いの場に赴いた。

祭壇に刻まれた傷跡(サイン)は、惨めな姿のマドカを嘲笑うかのように赤く明滅する。マドカの人差し指がそれをなぞると、リアルの人差し指が火で炙られたかのような痛みを感じた。

そうすることでまどかはようやくAIDAが常識の外側の存在だと認識することができ、同時に、それが自らの力の及ばない存在だと思い知らされた。

「私の……」

半年間は無駄だった。正真正銘の怪物相手に、ハリボテの力が通用するわけがないのだから。

進むべき道は断たれた。踏み外した道を戻ることは出来ない。

「どうすればいいの……?」

絶望の中をまどかは独り彷徨うしかないのか。



「へぇ。意外な奴がいたもんだな」

入り口から茶化すような声が上がった。スティック菓子をくわえた、『月の樹』のキョーコだ。

祭壇前の椅子にどかっと腰を下ろすと、夕暮れ色に染まるマドカになにかを投げた。

豚のキャラクターが描かれたスナック菓子のアイテムだ。その意図がわからず、きょとんと、まどかは目を丸くした。

「食うかい?」

屈託のない笑みが向け、そう言った。

「ロストグラウンドってのは初めて来たけど、ホントに何もねーんだな」

「……」

「でも不思議な所だな。なんか、優しい雰囲気っていうか」

「……」

「あのさ、なんか言いなよ。これじゃアタシが無駄にお喋り好きみたいじゃん」

「違うの?」

「気を使ってやってんだよ!」

憤慨しながら、キョーコは食べ物の形のアイテムを次々に口に放り込む。傍から見ればアイテムの無駄遣いにしか見えないその行為は、彼女にとって何の意味があるのだろうか。

「ねぇ、私の姿見てなんにも思わないの?」

「はぁ?」

<死の恐怖>と呼ばれたレベル133の姿から、たった数日で初心者同然の姿になったマドカ。誰もがその経緯を気になる筈だが、何故キョーコは聞いてこないのか……卑屈な質問だと自分でも分っている。

「やっと話しかけたと思ったら、なんだそれ」

しかし、キョーコはくだらないと切り捨てた。林檎の形をしたSP回復アイテムをかじり、呆れた様子でマドカと視線を合わす。

「『事情は知りませんが大変ですね』って慰めて欲しいの?」

「そんなんじゃないよ……」

「だったら気にすること無いじゃん。アンタがアンタなのは変わりないんだし」

宙に放り投げられた林檎の芯が、重槍の一突きで光の粒子に変わる。

ポイ捨てはやめましょうと、キョーコは八重歯を見せにやりと笑った。

その破天荒な動作と言葉は彼女なりの冗談だったのか。まどかはつい、吹き出してしまった。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/03(日) 13:37:37.68 ID:0o/44Epm0
「ここ、思ったより良いところだけど、アレはどうにかなんねぇのかな」

槍の先端を祭壇の傷跡に向けキョーコは不服を漏らした。確かに、神聖な雰囲気の聖堂にこの禍々しき傷跡は不釣合いだ。

「これがなにかわかるの?」

「いや、知らねーんだけどさ」

なんて言うかなと、頬を掻き言葉を模索する。

「嫌な感じっつーか…『味』っていうか……」

「『味』?」

味のある建物などの意味合いで言ったのだろうが、キョーコの声色にまどかはどこか違和感を覚えた。

その時、傷跡が激しく明滅した。

「なんだ!?」

「サインに……!」

外側からの視えざる手がまどかを傷跡に引き寄せた。抗うことも出来ず、ノイズと共に視界は白く染まる。


Δ 隠されし 禁断の 冥界樹 死世所エルディ・ルー


視界が明けると、そこは白き大樹がそびえる地底湖だった。BGMはなく、モンスターも宝箱も無い。

「ロストグラウンド…?」

「ったく、なんだよ」

天井から挿す僅かな光を取り込み、結晶石の大樹は淡く発光している。その光に照らされる地底湖は生を感じさせず、死世所の名の通り、まるで死後の世界だ。

「誰かいる」

島のように成長した大樹の根元に人影を見つけた。幹に全身を預け、虚ろな瞳で天を仰ぐ藍色の斬刀士は

(鞘歌ちゃん…!?)

親友、美樹さやかの操る鞘歌であった。

遠い湖岸にいるまどかの声が聞こえたのか、鞘歌は頭だけを動かし虚ろな瞳を向ける。


―どくん


視線を交わした瞬間、まどかの心臓は奇妙な鼓動を打った。先日、知識の蛇で怒りを覚えた時とは、明らかに違う。


―ココニ


声が聞こえた。それは傍にいるキョーコでも、遠く離れた鞘歌でもない。では一体誰のだ?


―ココニイル


誰かに手を引かれた。それは、三爪痕の傷痕に引き込まれた時の感覚に酷似していた。

ただ一つの違いは、それが誘うのは外側ではなく内側……意識は下へ下へと落ちていく。

(私は……ここを……)

内側の底。エルディー・ルーの湖畔より澄んだ水面に映るは―
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/03(日) 13:44:16.80 ID:0o/44Epm0
「鞘歌のやつ、こんな所で何やってんだ?」

はっと、まどかは混濁していた意識を覚ました。

今のは何だったのか。いつの間にか白昼夢でも見ていたのか?

「どうした?」

「……何でもない。それより、鞘歌ちゃんを知ってるの?」

「ちょっと、な。そう言うマドカこそ」

「私は鞘歌ちゃんの……」

一瞬、その先を口にするのを躊躇った。その時。


―ごぼっ


目の前の水面がごぼごぼと黒い泡を噴いた。黒い泡は一ヶ所に集まり、空間に開く大きな『穴』に変わる。

『向こう側』から訪れたのは、巨大な微生物だ。おぞましく蠢く触手。吐き気からか、キョーコが口を押さえる。

「危なかったわね」

蛇に睨まれた蛙のようにその場から動くことが出来ない二人の背中に、落ち着きのある声が掛けられた。その直後、ふわりと現れた一人のPCが、二人を庇う形で巨大微生物の前に立ちはだかる。

中世ヨーロッパの砲撃手をイメージさせる、マドカやキョーコとそう変わらない歳の少女PCだ。花のような形の髪飾りには翡翠色に輝く宝石が付けられている。


―どくん


その姿を見たとき、まどかの心臓はさっきと同じ奇妙な鼓動を打った。

「下がってて!」

髪飾りの翡翠色の宝石が輝きを放った。少女の手に移ったそれは、驚くことに、エメラルドの刃を備え付けたマスケット銃へと形を変えたのだ。


「憑神銃(メイガス)!」


死世所に生の光が満たされる。微生物にとってそれは猛毒に等しいのか、身を捩じらせキィ!と苦しそうに悲鳴を上げた。

光を消そうと触手から放たれたプラズマの塊は、輝く刃の一振りで打ち消された。余裕の笑みを浮かべ掲げた銃口が、デジタルの紋様を展開する。

まどかは息を呑んだ。それは三爪痕から受けたスキル……マドカをレベル1へと変貌させたデータドレインではないか。


「はぁあああああああああああああああ!!」


データの光弾に捕らえられた微生物は、翡翠色の銃剣――憑神銃にデータを奪われ、黒い泡と共に消失した。

湖はもとの静寂さを取り戻した。銃剣から戻った宝石を髪飾りに填め、唖然とする二人に少女は温かく微笑む。

「もう大丈夫よ」

安堵するまどかだったが、改めて、目の前にいる正体不明の少女に疑問を抱いた。一体この少女は何者だ。そしてあの光り輝く銃剣は。

『安心して。少なくとも、敵じゃないわ』

少女は一対一のチャットで言葉を投げてきた。心情を見透かされ、まどかはぎくりと言葉を詰まらせる。

『その様子だと、貴女にも視えたのね。碑文の力が』

『碑文……?』

『AIDAに対抗する唯一の力。そして視えたのなら、貴女にも素質が有るという事よ。<死の恐怖>のマドカさん』

自己紹介がまだだったわねと、少女は腕を組みウィンクした。

『私の名前はMAMI。碑文と契約した魔法少女よ』

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/06/03(日) 13:47:07.35 ID:0o/44Epm0
さやかちゃん出せた(歓喜)
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/03(日) 14:05:38.32 ID:WroP3R/co
マミさんきた!(歓喜)
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/03(日) 14:42:56.30 ID:qGoKWaIK0
おりこは前作の.hackのメンバーとは何の面識もないの?
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/06/03(日) 21:36:48.43 ID:7qsppZgAO
増殖ネタで神那だと思ったんだがなぁ
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 19:42:04.98 ID:WmUE6YBZ0
さやかがエンデュラスのポンジョンなのか?
タイプ的には真逆だがww
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/10(日) 01:55:00.50 ID:sYBP+8gW0
朔望=暁美ほむらで朔=ほむら、望=メガほむだと思ったけど、ほむら=オーヴァンなんだよな。
朔望は一体誰になるんだろ、二重人格になるキャラクター……。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/06/10(日) 09:25:08.32 ID:OySCcs0AO
かずみのキャラも出るなら結構ハマるのいそうだな
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/06/10(日) 22:30:05.82 ID:NQv0MSlQo
>>55
二重人格とは違うけどキリカが当てはまりそう……。
朔=契約後、望=契約前と考えれば丁度織莉子も出ているし。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/06/15(金) 22:36:38.60 ID:cgN2G9jAO
>>1です。ミスって書き溜めを消してしまいました。筆の乗りも悪いし、待っててくれた人には大変申し訳ないが過去ログに送ってもいいかな……?
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/06/15(金) 22:44:39.63 ID:NBGFhOtXo
は?(威圧)
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/15(金) 23:33:44.58 ID:T1kIzzybo
本当に本人かー?なんか怪しいぞ
名前欄の表示もいつもの投下時と違うし
トリあれば分かりやすいんだがなぁ
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/15(金) 23:42:51.02 ID:QvY0RldSo
名前欄が違う時点で偽者確定
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2012/06/16(土) 17:59:59.45 ID:JBvA+Epz0
『魔法…少女?』

訝かしむまどかに微笑を返すと、MAMIは視線をキョーコに向けた。

「久しぶりね、キョーコさん」

「MAMI……」

「無事で何よりだわ。元気にしてた?」

「ああ……」

どうやら、二人は顔見知りのようだ。しかしその雰囲気はどこかおかしく感じる。

「悪い。落ちる」

短く告げ、キョーコはログアウトした。MAMIは「まだダメか」と困ったように呟くと、ふと、横目で大樹を見る。

根元にもたれていた鞘歌の姿は無かった。

「鞘歌ちゃん……」

「PC鞘歌。プレイヤーは見滝原に所在する中学生、美樹さやか。PCマドカのプレイヤーである鹿目まどかとは小学校五年生から友人関係を築くも、半年前から自宅に引きこもるようになり、現在では絶縁状態」

聞き覚えのある声が鞘歌のプライベートを明かす。ひょい、とMAMIの肩に乗った白い小動物は、G.U.のキュゥべぇだ。

「こーら。女の子の秘密をべらべらと喋らないの」

「秘密じゃなくて情報だよ」

「同じことです」

キュゥべぇとの親しげな会話。このMAMIという人物もG.U.のメンバーということか。

「そういう無神経なところが彼女を怒らせたのよ」

「ボクと織莉子は事実を言っただけ」

「ごめんなさい。悪気は無いんだけど、この子デリカシーが無くて」

淡々と話すキュゥべぇの口を人差し指で押さえ、MAMIはマドカに謝罪の言葉をかけると、お詫びにとメンバーアドレスを渡してきた。

魔法少女やAIDAついて後日詳しく話すと、MAMIはキュゥべぇを連れエルディ・ルーを去った。

「魔法少女……」

まどかは湖畔に目を向けた。そして先程の戦いを思い返す。

黒い泡。その奥から出てきたPCの何倍にも相当するあの巨大微生物。明らかにイリーガルなそれを討ち滅ぼした、光り輝く銃剣。

『視えたのなら、貴女にも素質が有るという事よ』

MAMIは自分にも素質があると言った。G.U.のキュゥべぇと織莉子がレベル1に成り下がったマドカに協力を持ちかけたのも、魔法少女の素質とやらがそれが理由なのだろう。

「魔法少女になれば……」

期待に胸を高まらせ、残されたまどかもまた、その場を後にするのだった。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2012/06/16(土) 18:21:36.75 ID:JBvA+Epz0
Ωルートタウン 闘争都市ルミナ・クロス



闘争都市ルミナ・クロス。その名の如く、対人用の施設、闘宮(アリーナ)を備えたルートタウン。

通り魔殺人のPKと違い、ここでは両者の合意と幾つかのルールに従うことで正当な決闘が出来る。

闘宮は元々はPKの傍若無人な行為の鎮静化にCC社が設けた、いわゆる掃き溜めの施設だったが、アクション性の高いThe Worldの戦闘システムと上手くマッチし、意外にも人気を博した。

今日は闘宮『紅魔宮』のタイトルマッチの日。試合を待ちわび賑わう観客席とは別に、魔法少女MAMIとマドカはシステム権限で二人だけの特別な場所からバトルフィールドを見下ろす。いわゆるVIP席だ。

「AIDA=PC?」

「AIDAに感染したPCのこと。精神に異常が生じ、良くも悪くも感情が増幅される」

試合が始まるまでの間、まどかはMAMIからAIDAについての説明を受けていた。

AIDAの活動が確認されたのはThe World R:2が公開されて間もない頃。初めはThe Worldを媒介にしたウィルスと思われていたが、その特異性はすぐに明らかになった。

「ネットのウィルスがプレイヤーに影響を?」

「理屈も原因もわからないけどね」

ホラー映画さながらの設定だが、それが今現実となって起こっている。

「感染したPCに攻撃されると、受けたプレイヤーはリアルで痛みを感じるわ。貴女も知っているわよね」

MAMIに同意を求められたまどかは無言で肯定した。

指で三爪痕の傷跡をなぞった炙られたような痛み。大聖堂で継ぎ接ぎ少年から受けた顔中の痛み。そして半年前、少年により壁に叩きつけられた鞘歌もまた、痛みを感じていたのではないか。

「それに対抗できるのが、私たち魔法少女が持つ碑文の力だけなの」

「あの、そもそも碑文って何なんですか?」

「PCと精神を繋げるブラックボックス」

答えたのは、VIP席の入り口に佇む拳術士(グラップラー)の少女。襟を立てたスーツと右目を覆う眼帯は全て黒で統一させれている。


―どくん


またも、心臓があの鼓動を打った。

「初めまして新人さん。私はキリカ。MAMIと同じ魔法少女だ」

軽い会釈で挨拶を交わすと、キリカはマドカの隣に腰掛ける。

「碑文の本当の名前は『モルガナ因子』。CC社のとあるプロジェクトでネットワークの海からサルベージされた特殊なデータ」

「キリカさん。それ以上は」

「大丈夫」

これ以上はキミが契約をしてからだと、キリカは視線をバトルフィールドに移した。

「始まるよ」

ふと、観客席の明かりが消える。

『お待たせいたしました!これより、闘宮・紅魔宮のタイトルマッチを開始いたします!!』

実況者のアナウンスを合図に、観客席からわぁと歓声が上がる。

『それでは宮皇チームの入場だぁ!!』

円形のバトルフィールドに二人のPCが転送される。赤い双剣士の少女、揺光。その傍らに立つ藍色の斬刀士は、鞘歌だ。

『現宮皇・鞘歌と前宮皇・揺光の怒涛のタッグチーム!果たして、挑戦者に勝機はあるのかぁー!?』

(鞘歌ちゃんが……宮皇!?)

「反応有り、か」

驚愕するまどかの隣で、キリカがぽつりと呟く。

「間違いない。彼女たちはAIDA=PCだ」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/06/16(土) 18:27:55.43 ID:JBvA+Epz0
非常に申し訳ないけど、>>58の書き込み完全に私です。うん、ごめん。データ消えて頭おかしくなってた。ちゃんと完結させます。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/16(土) 19:59:12.40 ID:YSB4JQbto

知らなかったのかよwwというツッコミは……原作でもよくあったね!
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/19(火) 10:26:15.55 ID:eC4QJ+cIO
それでこそ、我が愛する作者よ!
立ち向かう作者はカッチョ良くアンチと戦いカッチョ良く完結する。
だか、あんたが弱音吐くだけで印象が変わっちまう
投げ出した作者、ヘタレの根性無し豚のように泣き、過去ログに行く
冗談じゃねえ!あんたにはカッチョ良く完結して貰うぞ
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 21:18:03.26 ID:4g3WxuaX0
待っている
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/07(土) 00:06:25.59 ID:ic8l8uqD0
鞘歌は口から黒い泡を吹いた。紛れも無く、エルディ・ルーでこちから側と向こう側を繋いだ穴……AIDAだ。

AIDA=PC。即ちそれは、あの三爪痕同様、鞘歌が未帰還者を生む脅威ということ。

なぜ彼女がAIDA=PCになったのか。この半年の間に彼女の身になにが起こったのか。どうして今まで彼女との繋がりを絶ったのか。

疑問と後悔の念が渦を巻く。

挑戦者チームが入場した。期待の新星の登場に観客たちが激励を飛ばす。

「止めさせなきゃ!」

まどかが叫ぶ。AIDAに一般PCが敵うはずが無い。このままでは彼らは未帰還者になってしまう。

「残念だけど、それは無理だね」

キリカが冷たく言い放った。耳を疑うその言葉に反論する間もなく、試合は無常にも開始する。

揺光が双剣で挑戦者チームに斬りかかる。元宮皇の猛攻に戸惑いをみせる挑戦者チームであったが、すぐさま体制を建て建て直し応戦する。

そんな中、宮皇鞘歌はふらふらとフィールドを歩いていた。それを見た観客達は戦えと野次を飛ばすが、鞘歌は夢遊病者のようにただ歩き続けた。

揺光の不意をつき、挑戦者チームのリーダーが鞘歌に襲い掛かった。鞘歌は武器を持たず丸腰の状態。誰もが彼女の負けを確信する。


時が止また。


観客も、バトルフィールドの揺光も挑戦者も、石のように色褪せ固まる。

その異質な世界で色を持っているのは、まどかと両隣の魔法少女。そして、鞘歌だ。

「よく視てて」

MAMIが緊張が交え声を出した。

突如起きる激しいノイズの直後、まどかのM2Dに映ったのは








灰色の死体がバトルフィールドに転がる。それは挑戦者チームであった。

静寂。

みながことを理解できていない。瞬きをする暇も無く、試合は終わったのだ。

「し、試合終了―――っ!」

やがて割れんばかりの喝采がバトルフィールドに注がれた。実況放送も興奮さめやらぬといった感じで宮皇チームを称える。宮皇チームの圧倒的強さに、誰もが酔いしれる。

ただ一人、まどかを除いて。

「一般PCのM2Dには映らない。だから観客たちには『アレ』が視えていない」

けどキミは視えるだろ? キリカが呟くように言った。

バトルフィールドに佇む鞘歌の背後に君臨する影。

仮面をつけた花嫁姿の猫人の上半身と、逆さ吊りにされ開花した巨大な薔薇の下半身を合わせたモンスターであった。

まどかは視た。あの巨大な猫人が、挑戦者チームを切り刻むのを。

「アレは魔女。AIDAと魔法少女が一つになった姿よ」


AIDA=PC=魔法少女。


歓声の中、微かに聞こえた身も凍るような渇いた笑い声が耳に入った。

その声は鞘歌のか、それとも別の誰かなのか、まどかには分からなかった。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 19:32:37.57 ID:9aRSgMg70
おつ
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/08(日) 01:19:18.54 ID:8/caKMLNo
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 02:42:15.37 ID:p1aeBY2SO
練装士はたしかポイント制で全武器選べるんだよな


ハセヲは一回目は痛みの森でジョブエクステンドすっ飛ばしたんだっけ?
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/09(月) 07:54:18.08 ID:wwOpnXqTo
>時が止また。
ワロタ
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/11(水) 21:01:30.17 ID:iwqExhCT0
「AIDAと碑文を宿したPCか。厄介だね」

キリカはやや冷えた眼差しで言葉を漏らすと、宙に浮くモニターで二人のAIDA=PCのデータ解析を始める。

「そういえば、新人さんは?」

「試合が終わってすぐログアウトしたじゃない」

「あれ?そうだっけ」

「友達がAIDAに感染したのが、相当ショックだったようね」

悲しげに言いながらも、MAMIの声には警戒の色が混じる。バトルフィールド。試合が終わったにもかかわらず、鞘歌は未だ魔女を具現化させていた。

「なぜ魔女を出したままなの……?」

「魔法少女の存在を感じ取っているからよ」

こつり。靴音が背後で響く。

「貴女は……!?」

それは異形の左腕、ホムラであった。

MAMIの警戒対象が鞘歌からホムラに切り替わる。どうやってこの管理者専用席に入ったのか。

手は無意識に髪留めの宝石、碑文の力が込められたアイテム『ソウルジェム』に伸びる。

「私が招待したのよ」

制したのは白の魔導師、G.U.の織莉子。彼女がホムラの入室を許可したのだ。

二人はMAMIの間をすり抜け最前列の席に腰を下ろす。

「ねぇ、どうしてCC社もG.U.も彼女を野放しにしているのかしら?」

胡桃ほどのカプセルをからりと手の中で転がし、ホムラが不適に笑い織莉子に問う。

「AIDA=PC=魔法少女。彼女はThe Worldでかつて無いほどの脅威。未帰還者、そして感染者を生む存在」

前回のタイトルマッチ。挑戦者である揺光は鞘歌にAIDAを植え付けられAIDA=PCと化した。

AIDA=PCの発生は今までにもあったが、AIDA=PCがAIDA=PCを作り出すのは鞘歌が初めてのケースだ。

「干渉したくても出来ない。彼女はシステム上はロストした状態。それはつまり」

「亡霊……ね」

織莉子は、自らの答えに思わずといった感じで吹き出した。

「ならその亡霊の正体を明かさなくてはいけないわ」

暗闇を照らすには光が必要だ。より深い闇なら、比例して、より強い光を。

「酷い人。親友同士を戦わせるなんて」

それは非難か、それとも賞賛か。

ホムラの言葉の意図は、誰にも解らなかった。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/11(水) 21:06:57.09 ID:iwqExhCT0
小学五年生の頃。見滝原に引っ越してきたばかりのまどかは、引っ込み思案な性格から周りとは馴染めず、心に不安を抱える日々を送っていた。

ある日、登校中に躓いてすっ転げたまどかは、ランドセルから教科書と父の知久のお手製弁当が道端にばら撒いてしまう。前日の雨で作られた水溜りが教科書もお弁当の包みを濡らす。膝も擦り切ってしまった。

情けなさと痛みが涙を滲ませる。そんなまどかに手を差し伸べたのが、同じクラスのさやかだった。

『美樹さやか。よろしく』

その日からまどかの隣にはさやかがいた。正確にはさやかの隣にまどかがいたのだが、それはお互いに些細なことだった。

何をするにも二人は一緒。見滝原に来て最初に出来た友達は、いつしか一番の親友になっていた。

この半年間。まどかが戦い続けたのは他でもないさやかの為だ。

勿論、恭介と仁美を助けたい気持ちもあった。だがそれ以上に、笑顔を失ったさやかを助けたかった。

「魔法少女……」

窓辺を照らす三日月を見上げ、まどかは力を求める。AIDAも三爪痕も捻じ伏せる力を。

太陽のように輝く彼女の隣に、再び立つために。





Δルートタウン 悠久の古都マク・アヌ

「魔法少女のなりかた?」

「私にも素質があるんですよね。それなら今すぐにでも魔法少女なりたいです」

レベル上げの帰りに偶然にもMAMIと出会ったまどかは、出会いがしらに訊ねた。

困ったようにうーんと腕を組むと、もしかしてと前置きをいれ質問を返した。

「もしかして、裏技みたいなものだと思ってる?」

「違うんですか?」

MAMIは苦笑しながら、マドカを連れ転送装置のあるドームと中央広場を繋ぐ橋を歩いた。

「魔法少女になるためには願いが必要なの」

「願い?」

「ええ。それも強いものよ」

プレイヤーの精神がゲームキャラクターに影響を? 捨てたはずの常識が疑問を抱かせる。

「MAMIさんは何を願ったんですか?」

魔法少女になるための参考として聞いた質問は、優しく微笑んでいた彼女の顔に影をさした。

「生きたい」

ボイスチャットから聞こえるその一言は、暗く沈んでいた。

後ろめたさを感じたまどかだったが、MAMIはまたすぐに優しい微笑を見せた。

「碑文が契約に値する願いを持ったとき、素質を持った子は魔法少女になれるの。契約した私は巫器(アバター)を手にした」

奇妙な当て字で表示された言葉は、あの光り輝く銃剣のことだろう。

「けど、人の思いなんて形の無い曖昧なもの。どんな願いで契約できるかは魔法少女の私やキリカさんにもわからないわ」

結局、これといった方法はないようだ。落胆するまどかを慰めようとしたMAMIは、ふと足を止めた。

「?」

中央広場。噴水の前でギルドショップを開いているのは、以前キョーコと共にいた幼い呪瞭士。確か名前は、癒魔だったか。

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/07/11(水) 21:08:53.38 ID:iwqExhCT0
ちょっとした鬱期を抜け調子が出てまいりました。そして誤字。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 22:08:44.41 ID:JnK0NPzgo
頑張って
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/12(木) 18:59:24.94 ID:5NhMOjPn0
待ってる
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 15:38:04.85 ID:ysXEFZBpo
まだー
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/04(土) 21:02:39.10 ID:Rz5gAGPS0
まだか
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 16:29:03.74 ID:2FgROFE5o
リオレウスさん空中でも地上でもこっちの攻撃に対して的確にバックスジャンプor後退しながらブレスを撃つのはもうやめてください
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 16:29:57.60 ID:2FgROFE5o
誤爆
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