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岡部「記憶、時間、想い、その全てを――」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :まゆり「ああー! オカリンの頭にメタルうーぱが!」の立て直し [saga]:2012/05/28(月) 01:55:11.67 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「ハロー、……ん? みんなどうしたの?」

まゆり「く、クリスちゃん……オカリンが、オカリンが……」

紅莉栖「岡部? 岡部に何かあったの?」

ダル「オカリン、オカリン。……あー、ダメっぽい。まゆ氏、どうやらマジみたい」

紅莉栖「何があったのか知らないけど……岡部、説明してくれる?」

岡部「えっ? ……俺が、ですか?」

紅莉栖「あれ……? なんか違和感が……」

岡部「すみません……俺、どうやら……記憶喪失みたいで」

紅莉栖「はあ!? 記憶喪失!?」

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かすみ「侑先輩が歩夢先輩を一週間「上原さん」と呼ぶドッキリ!!!!!!!!!!」 @ 2025/03/26(水) 03:06:37.69 ID:+238iV/UO
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のこたん「お前ネットで鹿の事馬鹿にしてたよな?」 @ 2025/03/24(月) 07:35:21.44 ID:vQZ8JuBbO
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【遊戯王】デモンスミスの依頼記録 @ 2025/03/23(日) 00:03:03.93 ID:lEJGyMFy0
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藤木「同窓会なんかに行くんじゃなかった」 @ 2025/03/19(水) 17:42:53.54 ID:WNvj81r20
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【学マス】篠澤広「負けたら退学?」 @ 2025/03/18(火) 21:33:15.45 ID:p5ftvJd7o
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 01:56:44.16 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「えっ? 冗談でしょ……?」

ダル「冗談だったらいいんだけど……マジなんだぜ、これ」

紅莉栖「ほ、本当に記憶喪失なの……?」

岡部「ええ……どうやら、そうみたいですね」

まゆり「クリスちゃん……クリスちゃんなら治せるよね? オカリンを治してあげてほしいのです……」

紅莉栖「……治してあげたいのは山々だけど、私は医者じゃないから」

ダル「ですよねー……とりあえず、病院に連れて行くってことで」

紅莉栖「……そうね、今はそうするのが一番だと思う」

まゆり「ううー……オカリン、まゆしぃのこと忘れちゃったの?」

岡部「……ごめんなさい、何も思い出せないんです」

紅莉栖「早い段階で治療すべきよ。……ともかく、病院へ連れて行かないと」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 01:57:11.20 ID:wqrbHYVVo
病室

ダル「あっ、オカリン戻ってきた」

まゆり「オカリン……お医者さんに診てもらったんだよね? 治る……よね?」

岡部「……ごめんなさい、今は様子見だそうです」

まゆり「そ、そんなぁ……」

ダル「記憶喪失って……アニメの中だけかと思ってたけど、まさかオカリンが」

まゆり「クリスちゃん……オカリンを治すことはできないの?」

紅莉栖「自然治療、それで治れば何も問題は無いわ。でも、しばらく経っても治らなかったら……」

まゆり「治らなかったら……?」

紅莉栖「ショック療法、投薬、催眠療法、色々と方法はある。……でも、今は医者の言う通りにした方が良いと思う」

ダル「つまり、オカリンはしばらくはこのままってことか……」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 01:57:59.71 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「……気休め程度にしかならないけど、そんなに悲観的になることではないと思う」

ダル「もう一度頭ぶつければ治る、とかそういうことなん?」

紅莉栖「それは最終手段、例えば会話の途中で自然と思い出したりすることもあるの」

まゆり「……オカリンといっぱい会話すれば治るの?」

紅莉栖「その可能性もあるってこと。……でも、無理やり思い出させるのも危険。
     脳に負担がかかり過ぎて、逆効果になってしまう可能性もあるから」

岡部「……ずいぶん、お詳しいんですね」

紅莉栖「へっ? あ、当たり前じゃない! 私が脳科学者ってことを忘れたのか?」

ダル「牧瀬氏、オカリンは記憶喪失なのだぜ」

紅莉栖「あっ……そうだったわね」

岡部「……すみません」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 01:58:30.13 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「ともかく、現時点では今まで通り岡部に接することが一番だと思う」

ダル「大学が始まるまではまだあるし、その間に治るといいけど……」

まゆり「オカリン、まゆしぃのせいで……ごめんね」

ダル「うーん……まゆ氏のせいではないと思われ」

紅莉栖「そもそも、何が原因で岡部は記憶喪失になったの?」

まゆり「それは……メタルうーぱが」

紅莉栖「……メタルうーぱ?」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 01:59:16.05 ID:wqrbHYVVo
数時間前 ラボ

岡部「そうだ、まゆり。渡し忘れていたものがあった」

まゆり「渡し忘れていたもの? なになにー?」

岡部「フッ……括目せよ! まゆり、これに見覚えは無いか?」

まゆり「ああー! メタルうーぱだー!」

岡部「その通り! この鳳凰院凶真、地獄より鋼鉄の球体を取り戻して来たのだ!」

まゆり「やったー! まゆしぃはとっても嬉しいのです」

岡部「いや、待てよ……これは確かプレミアがついているから高く売れるのだったな」

まゆり「ええー? ダメだよ、もうまゆしぃのって名前が書いてるんだよ?」

岡部「そんなことは知らん。さーて、どうしてやろうかな?」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:00:02.51 ID:wqrbHYVVo
ダル「オカリン……意地悪してないでさっさと渡せばいいんじゃね」

岡部「意地悪などでは無い! これは現実の厳しさを教える行為であってだな……」

まゆり「ううー……オカリン、まゆしぃに返してよー」

岡部「欲しいか? 欲しければくれてやる」

まゆり「本当? 欲しい、欲しいよーオカリン」

岡部「……ただし、この鳳凰院凶真から奪えたらの話だがな! フゥーハハハ!」

まゆり「奪うって、どうすればいいの?」

ダル「まゆ氏、力づくで取っちゃえばおk」

まゆり「そっかー。……オカリン、動かないでねー」

岡部「えっ? いや、力づくって……俺はまだ退院したばかりで」

まゆり「えいっ!」

岡部「や、やめろ! 落ち着け、まゆり!」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:01:56.90 ID:wqrbHYVVo
まゆり「早く返してよー!」

岡部「そ、そう簡単には渡せん!」

ダル「傍から見たらいちゃついてるようにしか見えないんですが、それは大丈夫なんですかね……?」

岡部「だ、ダル! くだらないことを言うな!」

まゆり「今だ……えいっ!」

岡部「なっ……! しまった!」

まゆりに隙を突かれ、岡部はメタルうーぱを手から放してしまった。
鋼鉄の球体は宙を舞い、そのまま重力に任せて――

岡部「――うごはっ!?」

まゆり「ああー! オカリンの頭にメタルうーぱが!」

岡部「ぐ、ぐうっ……」

ダル「えっ? オカリン倒れるとかどんだけひ弱……ってあれ? 起きない……?」

まゆり「お、オカリン? オカリーン!」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:02:57.15 ID:wqrbHYVVo
ダル「――という訳」

紅莉栖「……呆れて何も言えないわ」

まゆり「……ごめんなさい」

紅莉栖「ち、違うのよ。悪いのは意地悪をした岡部であって……」

岡部「……すみません、俺の悪ふざけでみなさんに迷惑をかけてしまって」

ダル「うっ……このオカリン、ものすごく違和感が」

紅莉栖「そうね……まだ出会って一週間位しか話したこと無いけど、これは気持ち悪い……」

岡部「すみません……黙っていた方がいいでしょうか?」

紅莉栖「そ、そういう意味じゃなくて……あー、やり辛い」

ダル「ともかく、今まで通りオカリンには接するってことでFA?」

紅莉栖「ええ、岡部もそれでいいわよね」

岡部「はい。みなさん、よろしくお願いします」

紅莉栖・ダル「……やり辛い」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:03:40.12 ID:wqrbHYVVo
ダル「ところで、オカリンの記憶喪失は日常生活に影響があるレベルなん?」

岡部「いえ、そこまででは無いようです。箸の使い方は覚えていましたから」

紅莉栖「でも、自分や他人に関する記憶は無いってことか。ふむん」

まゆり「オカリン……まゆしぃは、オカリンと十年以上一緒にいたんだよ?」

岡部「そうなんですか……ごめんなさい、それなのに忘れてしまって」

ダル「自分の設定とかも忘れてるってこと?」

岡部「設定……? 何のことですか?」

ダル「機関、とか、エル・プサイ・コンなんとかとか」

岡部「エル・プサイ……思い出せませんね」

紅莉栖「……重症ね」

まゆり「オカリン……」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:04:17.18 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖(しばらく会話をしてみたけど、変化は無しか……)

ダル「牧瀬氏、まゆ氏、そろそろ出ないとダメみたいだお」

まゆり「ええー……まゆしぃ、オカリンの側にいてあげたいのに……」

紅莉栖「……気持ちは分かるけど、今日は帰りましょう」

ダル「まゆ氏……明日は休日だしまたお見舞いに行けるから、今日は帰ろう」

まゆり「……オカリン、また明日お見舞いに来るからね?」

岡部「ええ、ありがとうございます。……でも、無理はなさらないでくださいね」

紅莉栖「……行きましょう、まゆり」

まゆり「うん……オカリン、またね」

岡部「はい、……また明日」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:04:45.64 ID:wqrbHYVVo


岡部(あの後、父親と母親と名乗る二人が来てくれたが……何も思い出せなかった)

岡部(今覚えているのは、俺が岡部倫太郎ということだけ……)

岡部(……しかし、「また入院するなんて」と両親は言っていたな)

岡部(この腹の傷……これはいったい、どこで……)

岡部(……ん? メールか……誰だろう)
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:06:28.51 ID:wqrbHYVVo
岡部「閃光の……指圧師?」

『岡部くん、記憶喪失になったって本当? 私のことも忘れちゃったのかな……。
 お見舞いに行くから、その時は私のこと、思い出してね?』

岡部(……指圧師の知り合いがいたのか。しかし、なんで本名で登録していないんだ?)

岡部「またメール……フェイリス? 外国の方なのか?」

『凶真! 記憶喪失って本当ニャのか!? ……フェイリスが油断したばかりに、
 この地に敵が……。って、こんなことを言ってる場合じゃないのニャ……。
 でも、こうしていつも通りに接していれば、きっと思い出すはずニャ!』

岡部(……凶真、って誰だ? 迷惑メール……いや、記憶喪失って書いてあるから俺宛てなんだろうな)

岡部「またメールか。漆原……?」

『岡部さん……記憶喪失ってお聞きして、ボク……こんな時に何もできなくてごめんなさい。
 でも、身の回りのお世話とか、ボクにもできることはあると思います。……だから、何でも言ってください』

岡部(……この子はいい子だな、一人称がボクってことは男なのか)
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:07:17.45 ID:wqrbHYVVo
岡部(また来た。……三通、全部違う相手からか。一つめは、ダル)

『オカリン、記憶喪失とか厨二っぽくていいんじゃね?
 って言っても、今のオカリンにはただの不幸な出来事なんだよな……。
 まあ、この前退院したばかりでもあるし、今はゆっくり休むべきだろ常考』

岡部(……心配、してくれているのか? 次は……まゆり。あの女の子か)

『まゆしぃのせいでオカリンにまた迷惑かけてしまったのです……。
 でも、今はオカリンが困ってるから、まゆしぃは全力でオカリンのことを助けてあげるからね?
 こうなってしまったのはまゆしぃのせいだから……今は、まゆしぃを頼っていいからね』

岡部(……幼馴染、らしいな。十年も一緒にいたのか……もしかして、恋人。いや、そうではなさそうだな)

岡部(最後は、助手? ……助手って誰だ?)

『記憶喪失とか、本当にあるのね。実際に見るのは初めてだったから驚いた。
 えっと……あんたは私を助けてくれたから、今回は私が助ける番なのかもしれない。
 あー、医者の資格も取るべきだった。持ってたらあんたの脳を開いて……冗談。
 でも、早く思い出して欲しいってのは本当だから……。おやすみ、また頭をぶつけるんじゃないわよ』

岡部(多分、心配してくれてるんだよな……本当に脳を開かれたりしないよな?)
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:08:14.83 ID:wqrbHYVVo
翌朝

ルカ子「し、失礼します……」

岡部(……女の子? これは、昨日メールをくれた人の中の誰かなのか?)

ルカ子「岡……じゃなくて凶真さん。ボクのこと、覚えていますか?」

岡部「……ごめんなさい、何も覚えていないみたいです」

ルカ子「そ、そうなんですか……ボク、ボク……凶真さんに、忘れられるなんて……」

岡部「な、泣かないでください。記憶喪失になってしまったのは、俺のせいですから……すみません」

ルカ子「あ、謝らないでください……そうですよね、凶真さんが一番お辛いですよね」

岡部「……ところで、一つお聞きしたいのですが、凶真とはいったい何者なのでしょうか?」

ルカ子「えっ? あっ、そのことに関しても忘れているんですね……」

岡部「はい……できれば、岡部と呼んでいただけますか? その方がこちらも違和感が無いので」

ルカ子「分かりました。岡部さん……今日は、何でも言ってください。ボク、お世話いたしますから」


岡部(……可愛い子だ、女の子だよな? いや、ボクって言ってるから男……? まさかな)
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:08:40.57 ID:wqrbHYVVo
岡部「えっと、俺とはどういった知り合いなんですか?」

ルカ子「ボクは、凶……じゃなくて岡部さんの弟子なんです」

岡部「……弟子?」

ルカ子「はい、清心斬魔流をボクに伝えようとしてくれていて」

岡部(せいしんざんまりゅう……何のことだかさっぱりだ)

ルカ子「でも、このことも忘れてしまっているんですよね……」

岡部「はい……自分のことなのに、すみません」

ルカ子「い、いえ。でも、今こそ岡部さんに恩返しをしようと思います」

岡部「恩返し……?」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:09:38.01 ID:wqrbHYVVo
ルカ子「岡部さんに街で助けていただき、それから稽古をつけていただいて……」

岡部「そうですか……以前の俺、なかなか勇気があったみたいですね」

ルカ子「はい。岡部さんは……ボクの憧れの人なんです」

岡部(なっ……潤んだ瞳、まっすぐと見つめられ、憧れだと言われる)

岡部(こんな可愛い子に言われたらドキッとしてしまうな……だがおと――ッ!?)

岡部「あ、頭が……ぐうっ……!」

ルカ子「お、岡部さん!? どうされたんですか!?」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:10:26.43 ID:wqrbHYVVo
ルカ子「だ、誰か呼んだ方がいいでしょうか?」

岡部「……いえ、大丈夫です。どうやら何かを思い出しかけたようですが……ダメでした」

ルカ子「そうですか……あの、無理はなさらないでくださいね」

岡部「ありがとうございます。……でも、このまま思い出せないなんてことだけは」

ルカ子「ええ、ボクも身の回りのお世話はさせていただきます。何でも言ってくださいね」

岡部「……すみません、よろしくお願いします」

ルカ子「えっと、早速ですが何かして欲しいことはありますか?」

岡部「して欲しいこと……風呂に入れないので、体を拭くタオルがあれば嬉しいのですが」

ルカ子「分かりました、今ご用意しますね」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:10:55.60 ID:wqrbHYVVo
ルカ子「タオルと洗面器を持ってきました。これでいいですか?」

岡部「ありがとうございます。……では、少しだけ部屋を出てもらえますか?」

ルカ子「えっ? どうしてですか?」

岡部「いや、見られるのは少し恥ずかしいので……すぐに終わりますから」

ルカ子「それでしたら、ボクがお拭きしますよ」

岡部「……えっ?」

ルカ子「あまり無理はしない方が良いですよ。まゆりちゃんに頼むのもアレでしょうから……」

岡部「い、いや、だからと言って……」

ルカ子「さあ、脱いでください。まゆりちゃんが来る前に終わらせましょう」

岡部(は、恥ずかしくは無いのか……? いや、俺が過敏に反応しているだけか……)
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:11:22.60 ID:wqrbHYVVo
岡部(半裸の自分、そして可憐な女の子……なんだこの状況は)

ルカ子「し、失礼します」

岡部「……んっ」

ルカ子「どうですか? 冷たくはありませんか?」

岡部「い、いや、大丈夫です」

ルカ子「岡部さんの体……ボクとは違って男らしいですね」

岡部「そ、そうですか? ひ、貧相だと思いますけど」

ルカ子「そんなこと無いですよ。……えいっ、よいしょ」

岡部(傷一つ無い綺麗な手、細い指……だ、ダメだ、考えてはダメだ……)

ルカ子「背中は終わりました。では、次は前を」

岡部「ま、前!? いや、流石にそれは!」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:11:56.99 ID:wqrbHYVVo
ルカ子「どうしたんですか? さあ、こちらを向いてください」

岡部「い、いえ、前は自分でも拭けますから! もう大丈夫です!」

ルカ子「あっ……そ、そうですよね。すいません、ボク……お怪我のことを何にも考えていなくて」

岡部「怪我? あ、ああ、この腹の傷……」

ルカ子「はい……ボク、岡部さんが入院したと聞いた時は……」

岡部「な、泣かないでください。傷の方はもう大丈夫ですから」

ルカ子「ぐすっ……ごめんなさい。でも、今回は少しでも力になれれば……」

岡部「ありがとうございます……では、また何かあったらお願いします」

ルカ子「は、はい! 何でも言ってくださいね?」


岡部(潤んだ瞳、どこからどう見ても可憐な女の子。……でも、何か引っかかる)
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:12:36.84 ID:wqrbHYVVo
ルカ子「あっ、まゆりちゃんが来ましたよ」

まゆり「オカリン、トゥットゥルー♪」

岡部「……とぅっとぅるー?」

まゆり「うん、まゆしぃの挨拶だよ。こうやっていつも通りにすれば、
     何か思い出すかもしれないってクリスちゃんが言ってたんだー」

岡部「なるほど。……まゆりさん」

まゆり「違うよ、オカリン。オカリンはまゆしぃのことを『まゆり』って呼んでたんだよ」

岡部「まゆり、ですか。では……まゆり」

まゆり「なーに、オカリン?」

岡部「えっと、トゥ、トゥットゥルー……これで合ってますか?」

まゆり「……へっ?」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:13:30.92 ID:wqrbHYVVo
岡部「あれ……? 違いましたか? 挨拶だと言っていたので、返してみたのですが」

まゆり「う、ううん。ちょっとびっくりしちゃっただけだから、大丈夫だよ」

岡部「何に驚いたのですか?」

まゆり「ううん、気にしないでオカリン。じゃあ、改めて……トゥットゥルー♪」

岡部「トゥ、トゥットゥルー」

まゆり「違うよー。もっと楽しそうに、トゥットゥルー♪」

岡部「トゥットゥルー?」

まゆり「もっと明るくだよー。トゥットゥルー♪」

岡部「トゥットゥルー♪ こ、こうですか?」

まゆり「うんうん、まゆしぃは満足なのです」


ルカ子(岡部さん、一度もトゥットゥルーって言ってないと思うんだけど……言わない方がいいかな)
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:14:45.54 ID:wqrbHYVVo
まゆり「オカリンのお家から、着替えとかタオルとか持ってきたからね」

岡部「ありがとうございます。そこに置いてくださいますか?」

まゆり「うーん……るかくん、この話し方、変えた方がいいかな?」

ルカ子「そうだね……丁寧な岡部さんいいけど、やっぱり前の方が」

岡部「何の話ですか?」

まゆり「オカリン、まゆしぃたちはオカリンより年下だから、そこまで丁寧に話さなくてもいいんだよ?」

岡部「そ、そうなんですか?」

ルカ子「ええ、以前の岡部さんは、こう……尊大、じゃなくて高慢……でもなくて」

岡部「……あまり良いイメージは無かった、ということですね」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:15:31.44 ID:wqrbHYVVo
まゆり「えっとね、もっと乱暴な話し方をすればいいと思うのです」

岡部「乱暴……まゆり、水を取ってくれ」

まゆり「おおー! オカリン、いい感じだねー」

岡部「そ、そうですか? じゃなくて……そうか?」

ルカ子「では、次はボクに話しかけてみてください」

岡部「分かりまし……分かった。ところで……あなたの名前、教えていただいてもいいですか?」

ルカ子「ボクの名前も忘れていたんでしたね……漆原るかです」

岡部「ありがとうございます。……るか、今日もいい天気だな」

ルカ子「……っ!?」

岡部「ど、どうかしたのか。るか」

ルカ子「い、いえ……大丈夫です」


ルカ子(呼び捨てにされたら少しドキッとしたなんて言えない……。お、落ち着かないと……)
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:16:08.27 ID:wqrbHYVVo
まゆり「オカリン、るかくんのことはルカ子って呼んでたんだよ」

岡部「そうだったのか。ルカ子、……これで良いのか?」

ルカ子「は、はい。それで大丈夫です」

ルカ子(……ちょっと残念な気もするけど、岡部さんには戻っていただかないと)

岡部「なるほど、確かに違和感なく話せるな。……この調子なら、思い出すのも近いかもしれない」

まゆり「本当? でも、無理はしちゃダメだからね?」

岡部「ああ、分かっている」

ルカ子「岡部さん……ゆっくりでもいいから、思い出してくださいね」

岡部「ありがとう、まゆり、ルカ子」

まゆり「うんうん、やっぱりオカリンはその話し方が一番だと思うのです」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:16:36.74 ID:wqrbHYVVo
しばらくして

岡部「……もうこんな時間か。二人とも、そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」

ルカ子「そうですね……まゆりちゃん、帰ろうか」

まゆり「ええー? もうちょっとオカリンとお話ししたいのに……」

岡部「今日はもういいだろう? ほら、暗くなる前に帰るんだ」

まゆり「うん……オカリン、寂しくなったら電話してね? まゆしぃならいつでもお話しできるから」

岡部「ああ、そうさせてもらうよ」

ルカ子「あ、あの、ボクもお話し相手でしたらできますから……遠慮なく、お電話してくださいね」

岡部「あ、ああ……ありがとう」


岡部(……女の子に電話してください、なんて言われたら、ドキッとするのも仕方が無いよな)
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:17:21.26 ID:wqrbHYVVo
まゆり「じゃあね、オカリン。何かあったら電話してねー」

ルカ子「さようなら、岡部さん」

岡部「二人とも、気を付けるんだぞ」


岡部(……行ったか。二人から聞いたところ、俺は大学生らしい)

岡部(まゆりは俺の幼馴染であり、ルカ子とは同級生のようだ)

岡部(二人は仲が良く、ルカ子は最近まゆりに勧められ、コスプレを少しずつするようになってきたとか)

岡部(……と言われても、さっぱり思い出せないのが現状か)

岡部(そういえば、さっき頭が痛くなったな……もしかしたら、あれは思い出すきっかけなのかもしれない)

岡部(……少しずつではあるが、これが続けば元に戻る可能性は十分にある)


岡部(そのためには……もっと会話をすべきだな)
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:17:58.42 ID:wqrbHYVVo
翌日

岡部(今日は平日。まゆりもルカ子も学校が終わらないと来られない、と連絡があった)

岡部(……無理をしてまで来なくてもいいのだが、今は甘えておこう)

コンコン

岡部「ん? どうぞ」

萌郁「岡部くん、大丈夫?」

岡部「……誰ですか?」

萌郁「私のこと……覚えていない?」

岡部「……ごめんなさい、そうみたいです」

萌郁「桐生、萌郁。メールは見てくれた?」

岡部「メールって、朝に届いたこれですか?」


『今日はアルバイトが無いからお見舞いに行くね。でも、岡部くん、私のことも忘れてるんだよね……(; ;)』
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:18:31.11 ID:wqrbHYVVo
岡部「つまり、あなたが閃光の指圧師さんですか?」

萌郁「……多分、そうだと思う」

岡部「多分? 指圧師の方なんですよね?」

萌郁「違う、私はブラウン管工房で働いている」

岡部「……指圧師では、無い?」

萌郁「うん」

岡部「それなのに指圧師……どういうことなんですかね」

萌郁「分からない。……でも、岡部くんは私のことを指圧師と呼んでいた」

岡部「じゃあ、指圧師って呼べばいいでしょうか?」

萌郁「その方が違和感が無ければ、そうした方がいいと思う」

岡部「分かりました。よろしく、指圧師さん」

萌郁「……よろしく」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:19:00.06 ID:wqrbHYVVo
岡部「…………」

萌郁「…………」

岡部「…………」

萌郁「…………」

岡部(……会話が、できない。向こうから話しかけてくれれば助かるが……仕方ない)


岡部「……あの」

萌郁「どうしたの、岡部くん」

岡部「何か話そうと思うんですけど、記憶が無いからあなたと話す話題が無くて……」

萌郁「……私も、岡部くんのことはよく知らない」

岡部「よく知らない……?」

萌郁「レトロPCを探すのに、少しだけ協力してもらっただけだから」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:19:33.53 ID:wqrbHYVVo
岡部「レトロPC、ですか」

萌郁「そう、IBN5100」

岡部「IBN、ごせんひゃ――ッ!?」

萌郁「岡部くん……? 大丈夫?」

岡部(あ、頭が……まただ、またこの感じ……何かを思い出しそうだ)

萌郁「誰か呼んだ方が……」

岡部「い、いえ、大丈夫です。もう落ち着きましたから……」

萌郁「……本当に大丈夫?」

岡部「ええ、心配させてしまってすみません」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:20:23.91 ID:wqrbHYVVo
岡部「じゃあ、あなたと俺はそこまで深い知り合いでは無いと」

萌郁「うん」

岡部「でも、その程度の関係なのにわざわざお見舞いに来たのはどうしてですか?」

萌郁「ピンバッジ、もらったから」

岡部「ピンバッジ?」

萌郁「これ、岡部くんが私にくれた」

岡部「……アルファベットが八文字、それに2010」

萌郁「何かあった時は、いつでも頼ってくれって言った」

岡部「そんなことを俺が……」

萌郁「今回は、岡部くんに何かあったから、私の方から動いてみることにした」

岡部「……ありがとうございます、助かりました。……一人だと、やっぱり少し寂しいので」

萌郁「一人だと寂しい……それなら、来てよかった」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:20:49.72 ID:wqrbHYVVo
岡部「…………」

萌郁「…………」

岡部「…………」

萌郁「…………」

岡部(また会話が止まってしまった……しかし、話題が無い)


萌郁「岡部くん、ごめんね」

岡部「えっ?」

萌郁「私、話すのが苦手だから……」

岡部「い、いえ、居てもらうだけでもありがたいです」

萌郁「……本当に?」

岡部「ええ、こうしていれば何か思い出すかもしれないですから」

萌郁「……ありがとう、そう言ってもらえると嬉しい」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:21:16.01 ID:wqrbHYVVo
岡部「でも、メールだと印象が違いますね」

萌郁「……メールなら、直接話さなくてもいいから」

岡部「な、なるほど……じゃあ、メールで会話してみますか?」

萌郁「いいの? ここ、病室だけど」

岡部「許可は貰ってます。電話とかで記憶が戻るかもしれないって言われたので」

萌郁「それなら、メールで」カチカチ カチカチ

岡部(速っ!?)

萌郁「送らなくても、見せれば良い?」

岡部「は、はい」

萌郁「じゃあ、読んで」

岡部「えっと……」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:21:57.38 ID:wqrbHYVVo
『岡部くんって大変だね……最近まで入院してたのにまた入院。
 今度は記憶喪失なんて……岡部くん、可哀想。少しでも私と話して思い出してくれないかな』

岡部「ほ、本当に……全然違いますね」

萌郁「…………」カチカチ カチカチ

『これなら何でも会話できるよ。何の話しようか? あっ、でもエッチな質問とかは駄目だからねw』

岡部「……何となくですけど、あなたが指圧師っていう理由が分かりました」

『えー、なになにー? 教えて教えてー』

岡部「そのメールを打つ速さ、指の動きが指圧師って理由なんだと思います」

『なるほどー。岡部くんって面白いね☆』

岡部「面白いのはそっちだと思いますけど」

『それって褒めてるように聞こえないよ? 馬鹿にされてたら悲しい><』


岡部(真顔でメール打ってるのに内容は……俺はこんな人とも知り合いだったんだな)
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:23:01.78 ID:wqrbHYVVo
萌郁「……私、そろそろ帰らないと」

岡部「そ、そうですか。今日はありがとうございました」

萌郁「岡部くん、さようなら」

岡部「ええ、気を付けて」


岡部(結局、筆談のようなやりとりをしばらくして、あの人は帰って行った)

岡部(……そこまでの知り合いでは無い、というのが分かったくらいか)

岡部(そして、IBN5100……記憶には関係あるのだろうか?)

岡部(まあ、無駄なことなんてきっと無いはず……ん?)

岡部「またメールか……」


萌郁『岡部くん、今日は楽しかったね。また二人でお話しできたらいいなー。
    きっと、岡部くんの記憶も戻ると思う。だから無理せず頑張ってねb』


岡部(楽しかったのか……表情が読めない人だ)
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:23:43.36 ID:wqrbHYVVo
しばらくして

ダル「あれ? オカリン一人とは予想外ですた」

岡部「あなたは……ダルさんでしたっけ?」

ダル「うへっ……寒気がする。僕のことはダルって感じで、それと話し方も乱暴な感じでよろ」

岡部「わ、分かった。ダル、見舞いに来てくれたのか?」

ダル「おっ、オカリンっぽい。まあ、見舞いというか、ナースさんを見に来たというか……ぐへへ」

岡部「……ダル、自重しろ」

ダル「へいへい。……ん? オカリン、自重とかそういう言葉は覚えてるん?」

岡部「自然に出て来たのだが、おかしかったか?」

ダル「いや、その辺の知識? 記憶? みたいなのはあるんだ、って思っただけだお」

岡部「自分のことなのに分からないとは……不思議なものだな」

ダル「ぬるぽ」

岡部「ガッ」

ダル「……なるほど」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:24:48.47 ID:wqrbHYVVo
ダル「で、オカリン何か思い出したん? あれから進展があったのかkwsk」

岡部「進展というものはあまりないな……ただ、会話の途中で頭が痛くなったことはある」

ダル「頭が痛い……もしかして、何か思い出す予兆とか?」

岡部「その可能性はある」

ダル「どんな時に頭が痛くなったのか覚えてる?」

岡部「一度目は……ルカ子が、俺を潤んだ瞳で見つめて来た時だ」

ダル「のろけですね分かります。 いや、でもるか氏だと……いやなんでもない」

岡部「次は、IBN5100の話をしていた時だ」

ダル「IBN5100? 都市伝説の話をされても……」

岡部「共通点はさっぱりだ……現状はこんなところだな」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:26:46.87 ID:wqrbHYVVo
ダル「つまり、まだまだ終わらないよ! ってことでおk?」

岡部「ああ……残念だが、そういうことになるな」

ダル「まっ、そこまで焦る必要も無いと思われ。勉強とかには影響しなさそうだし」

岡部「そういえば、もうすぐ大学が始まるのか……」

ダル「夏休みの半分くらいを病院で過ごすとか、不幸ってレベルじゃねーぞ」

岡部「ああ……この腹の傷、か。いったい、何があったのか……」

ダル「知らないうちに傷を受けていたとか、厨二っぽくていいんじゃね?」

岡部「ダル……どうして俺を厨二にしたがる」

ダル「記憶を失う前のオカリンの半分は厨二で出来ています」

岡部「なっ……俺は厨二病だったのか」

ダル「邪気眼の要素も持つ重度の厨二病患者ですた」

岡部「……忘れているとはいえ、自分のことだと思うと恥ずかしくなるな」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:27:16.08 ID:wqrbHYVVo
ダル「だって、自称がアレだったし」

岡部「アレ? アレとは何のことだ?」

ダル「ほら、狂気のマッドサイエンティスト(笑)っていつも言ってんじゃん」

岡部「狂気のマッドサイエン――ッ!? ま、まただ……」

ダル「お、オカリン?」

岡部「これだ……この痛み、何かを思い出そうとすると……痛む」

ダル「そ、そんなこと考えてる場合じゃないお! ……オカリン、大丈夫?」

岡部「ああ、大丈夫だ……心配させて悪かったな」

ダル「べ、別にオカリンのことなんて心配してないんだからねっ」

岡部「……気持ち悪いからやめてくれ」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:27:57.33 ID:wqrbHYVVo
ダル「さて、と。僕はそろそろ帰るけど、引き止めるなら今のうちなんだぜ?」

岡部「言ってろ。さっさと帰れ、暗くなる前にな」

ダル「ウホッ、さり気なく僕の心配するとかオカリンマジ紳士」

岡部「……せっかく来てくれたのだ、心配くらいはする」

ダル「おっ、デレ期キター?」

岡部「う、うるさい! いいから帰れと言っているだろうが!」

ダル「へいへい。じゃ、またなオカリン」

岡部「ああ、……またな」


岡部(また、か。……俺にも頼れる友人は居たようだな)

岡部(……狂気のマッドサイエンティスト。それを自称する痛い男、それが俺)

岡部(確かに痛々しい、だが……不思議と悪い気はしないな)

岡部(少しずつだが確実に記憶は蘇ろうとしている。……それは間違いないはずだ)
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:28:39.36 ID:wqrbHYVVo
次の日

岡部(……誰も来ないと暇だな)

岡部(そういえば、ルカ子と指圧師の正体は分かった。あと残っているのは……)

岡部(フェイリス、それに助手……いったい、この二人は何者なのか)


「凶真ー!」

岡部「……っ!? だ、誰だ!?」

「凶真……やっと巡り合えたのニャ……長き歳月を越え、ついにこの時が来たニャ!」

岡部「何がなんだかさっぱり分からない……えっと、あなたは誰ですか?」

フェイリス「ニャニャ……凶真、本当にフェイリスのことを忘れたのかニャ?」

岡部「ああ……あなたがフェイリス、納得しました」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:29:39.85 ID:wqrbHYVVo
フェイリス「凶真……本当に記憶喪失ニャんて……」

岡部「え、ええ、冗談だったら俺も嬉しいんですけど」

フェイリス「でも仕方が無いのニャ……これは凶真への試練、凶真の運命ニャ!」

岡部「はあ……」

フェイリス「ううー……凶真、ノリが悪いニャ。いつもみたいに乗ってくれニャいと」

岡部「そ、そう言われましても……」

フェイリス「これだと、いつも通りに接しようとしてるフェイリスが馬鹿みたいニャ……」

岡部「俺もいつもそんな感じだったんですか?」

フェイリス「そうニャ! 鳳凰院凶真としてこの世を混沌に導く……って、言っても無駄なのかニャ……」

岡部(そういえば、まゆりの話で聞いたような……。鳳凰院凶――ッ!? こ、これもか……)

フェイリス「きょ、凶真!?」

岡部「はぁ、はぁ……大丈夫だ……気にしないでくれ」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:31:01.26 ID:wqrbHYVVo
フェイリス「凶真……」

岡部「……せっかくお見舞いに来ていただいたのに、申し訳ないです」

フェイリス「気にしないで欲しいのニャ。フェイリスは……凶真を現世に連れ戻すためにやってきた使者なのニャ!」

岡部「な、なるほど……それは、心強いですね」

フェイリス「うニャー……そんな年上の余裕とか出さないで欲しいのニャ……」

岡部「す、すみません。えっと……じゃあ、この凶真を現世に、えーと……降臨させていただければと思います」

フェイリス「凶真……! がってんニャ! フェイリスにお任せニャンニャン♪」

岡部(……本当に任せて大丈夫なのだろうか)

フェイリス「……凶真、疑ってるんじゃないかニャ?」

岡部「えっ? そんなことは……」

フェイリス「凶真、覚えておくニャ。フェイリスには……嘘をついても無駄ニャ」

岡部「わ、分かりました、覚えておきます」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:32:20.50 ID:wqrbHYVVo
しばらくして

フェイリス「――あっ、そろそろメイクイーン+ニャン2に行かニャいと」

岡部(……た、助かった。意味の分からん厨二トーク……さっぱりついていけなかった)

フェイリス「凶真、今日はこの辺にしといてあげるニャ♪」

岡部「きょ、今日は? ってことは……」

フェイリス「まだフェイリスと凶真の共鳴は終わっていないのニャ!」

岡部「……もう十分話したと思うんですけど」

フェイリス「だーめなーのニャー。こうやって会話をすれば鳳凰院凶真に近づくことができるのニャ!」

岡部「そう、ですか……はあ」

フェイリス「……凶真」

岡部「これ以上話すことは……って、ネコ耳を外して何をする気ですか?」

「凶真……ううん、岡部さん」

岡部(……雰囲気が、変わった?)
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:32:56.72 ID:wqrbHYVVo
岡部「ど、どうしたんですか急に呼び方を変えて?」

留未穂「今日は岡部さんを疲れさせちゃったから……最後に謝りたくて」

岡部「そ、そうですか。いや、わざわざ俺なんかのために来ていただいてありがとうございます」

留未穂「……もし、記憶が戻ったら、今こうして話していることは忘れちゃうのかな」

岡部「それは……俺には分かりません」

留未穂「もし忘れられたら、ちょっと助かるかも。……今の私を覚えていられると、少し恥ずかしいから」

岡部「それなら、今もあのままで放し続ければ良かったんじゃ」

留未穂「ううん、こうやって話せば、岡部さんのことを本当に心配してるって伝わるかなって思ったの」

岡部「……大丈夫です、そんなことしなくても俺を元気づけようってのは伝わりましたから」

留未穂「良かった。でも、それだけじゃないの。……何故かはわからないけど、
      岡部さんの前だとこうやって、何も気にせず留未穂になれるから」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:33:34.20 ID:wqrbHYVVo
岡部(この子は……どっちが本物なんだ? ただ、この姿……どこかで見覚えが)

フェイリス「……よいしょっと」

岡部「ネコ耳……それつけたら変わるんですか?」

フェイリス「そういうことニャ。凶真、焦らず無理せず、ゆっくり思い出していってね♪」

岡部「……あまり、ゆっくりとはいきたくないですけどね」

フェイリス「じゃあ、フェイリスは行くニャ。凶真、また会おうニャンニャーン」


岡部(……不思議な子だったが、俺を心配しているというのは伝わってきた)

岡部(ただ、意味の分からん厨二トークは……キツイものがある)

岡部(……今度は俺にもついていけるレベルにしてくれって頼もう)
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:34:09.84 ID:wqrbHYVVo
次の日

岡部(両親が来てくれるから病院生活に困っている訳では無い……)

岡部(まゆりやルカ子が世話に来てくれるのも助かる。……ただ)

岡部(このまま記憶が戻らなかったら……そう考えると、不安なのは間違いない)

岡部(……いくつかのキーワード、それを口にしてももう頭痛は起きない)

岡部(新しい情報、忘れている情報が必要だ……そのためには、誰か)


紅莉栖「ハロー、岡部。少しは記憶が戻ったかしら?」

岡部「あなたは……牧瀬さん、でしたっけ」

紅莉栖「うっ……寒気がする。そんな呼び方されたこと無いわ」

岡部「では、何と呼べばいいんですか?」

紅莉栖「前みたいにクリスティ――はっ」


紅莉栖(ここで教えなければ、助手とかクリスティーナなんて呼び方はされない……?)
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:35:03.08 ID:wqrbHYVVo
岡部「あの、どうかしましたか?」

紅莉栖「えっ? えっと、私の呼び方よね。その、私のことは……く、紅莉栖って呼んで」

岡部「紅莉栖? 呼び捨てでいいんですか?」

紅莉栖「え、ええ。それと、そんな丁寧な言葉遣いじゃなくて、もっと乱暴な感じで」

岡部「では……紅莉栖、これでいいのか?」


紅莉栖(お、おおっ!? な、なんかいい……これは、正直たまらん)

紅莉栖(って、どうして会って間もない男のことでこんな風になるのよ私……)

紅莉栖(そ、それは命の恩人とか、そういうのはあるけど……)

紅莉栖(く、紅莉栖、だって……うひゃー、恥ずかしい……)

紅莉栖(…………何考えてるんだろ、私)


岡部(紅莉栖って呼び方、どうもしっくりこないな……)
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:35:55.05 ID:wqrbHYVVo
岡部「紅莉栖、一つ聞いてもいいか?」

紅莉栖「へっ? な、何かしら?」

岡部「助手、という名前に心当たりは無いか? その人とだけ、まだ会えていないのだ」

紅莉栖「……ああ、それ、私のことみたいよ」

岡部「助手? 紅莉栖が?」

紅莉栖「そう。秋葉原で再会したときはクリスティーナ、
      ラボに案内されたら今度は助手……こっちは何も知らないけどね」

岡部「クリスティ――ッ! こ、これもか……!」

紅莉栖「お、岡部!? まさか……記憶が蘇ろうとしているの?」

岡部「はぁ……くっ……いや、まだだ。まだ思い出すまではいかない……」

紅莉栖「そ、そうなのか。……とりあえず、息を整えて落ち着きなさい」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:36:33.20 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「どう、落ち着いた?」

岡部「ああ……すまないクリスティーナ」

紅莉栖「……なんで呼び方を変えたのかしら?」

岡部「こっちの方がしっくりくる、気がする」

紅莉栖「変なとこだけ戻りやがって……」

岡部「クリスティーナ、先程言っていたことについて聞きたいのだが」

紅莉栖「ティーナじゃねえっつーの。……そういえば、これも自然と出て来たのよね」

岡部「ん? 何のことだ?」

紅莉栖「気にしないで、こっちの問題だから」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:39:55.87 ID:wqrbHYVVo
岡部「クリスティーナ、お前は俺とどういう関係なのか教えてくれるか?」

紅莉栖「それはこっちも知りたいわよ……そのためにこうして日本に居るんだから」

岡部「……どういうことだ?」

紅莉栖「うーん……とりあえず、説明も兼ねてこちらからも質問しても良い?」

岡部「ああ、答えられる可能性は低いと思うが」

紅莉栖「じゃあ、一つ目。……あんたは私を助けてくれた、それは覚えてる?」

岡部「……いや、覚えていない」

紅莉栖「そう……私もそれに関して詳しく聞きたいのだけれど」

岡部「……もし記憶が戻ったら、その時の俺に聞いてくれ」

紅莉栖「そうするわ。で、その後私はあんたにお礼を言うために秋葉原に来た」

岡部「そこで再会した、ということか」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:42:37.26 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「ええ、岡部ったら私の顔を見てしばらくぼうっとして……少し泣いてたかも」

岡部「……身に覚えはないが、少し恥ずかしいな」

紅莉栖「そしてラボに案内され、まゆりや橋田、ラボメンのみんなと知り合ったって訳」

岡部「会ってすぐにしては、ずいぶんとフレンドリーだな」

紅莉栖「私もそう思う。でもすぐに打ち解けたし、それが心地よかったのよ、不思議とね」

岡部「……そして俺が記憶喪失になった」

紅莉栖「そういうこと、流れはこんな感じ。OK?」

岡部「ああ、何も思い出せないのに変わりはないが……」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:43:35.24 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「さて、と。自分のことに関してはみんなから色々聞いた?」

岡部「ああ、……ずいぶんと痛い男のようだな」

紅莉栖「ええ、街中でも白衣を着たり、繋がってもいない電話に出るふりしたり」

岡部「……典型的な厨二病だな」

紅莉栖「まあ、それも個性よ、今は気にしなくてもいいわ。……で、話はここから」

岡部「話?」

紅莉栖「しばらくホテルで考えてみたのよ、そんな簡単に記憶喪失になるのかって」

岡部「簡単にって……俺はメタルうーぱとやらが頭に当たり、そのショックで記憶喪失になったのだろう?」

紅莉栖「でも、たかが小さな鉄製の球体がそこまで脳にショックを与えるかしら?」

岡部「何が言いたい、クリスティーナ。原因が他にあるというのか?」

紅莉栖「ええ、その衝撃は――ただのきっかけだったのではないか、ということ」

岡部「……きっかけ?」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:45:33.07 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「心的外傷後ストレス障害・PTSDって言って通じるかしら」

岡部「いわゆる、トラウマというヤツか?」

紅莉栖「それは心的外傷のこと。私の言っているのはそれによって起こるものの話」

岡部「トラウマによって起こるもの?」

紅莉栖「自分が傷ついたり、衝撃を受ける事件を目撃したり、それによって心的外傷が生まれる」

紅莉栖「起こった出来事が心の傷となった場合、その時のことがフラッシュバックしたりする」

紅莉栖「何度もその時の出来事が脳裏に呼び戻されたり、更にこれらの記憶を引きずり出すような事案に遭遇すると、
      極端な恐怖心が起こったりもする。その辛い記憶を呼び戻させてしまうものを特に避けるようになる」

紅莉栖「この避ける行動は、部分的な記憶喪失といった形式で示されることもあるの。
     その他、心的外傷後ストレス障害では不眠や、覚醒亢進、感情が麻痺したり、それを失ったりすることもある」

岡部「産業で」


紅莉栖「辛い体験を思い出したくない
      記憶喪失になれば思い出さない
      だから岡部は記憶喪失になった」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:46:51.05 ID:wqrbHYVVo
岡部「つまり、俺は……何かを思い出さないために記憶喪失になっている?」

紅莉栖「そういうこと。まあ、これはあくまでも一つの仮定に過ぎない」

岡部「だが、可能性はある……」

紅莉栖「本当にそうなのかは分からないけどね。ただ単純に、受けた衝撃が強かったのかもしれないし」

岡部「それならばいつかは記憶が戻るだろう。だが、お前の仮説が正しければ……」

紅莉栖「そう簡単には戻らないかもしれない……ってことになるわね」

岡部「……その場合、どうすれば記憶が戻る?」

紅莉栖「投薬、心理療法、音楽療法なんてのもある。……ただ、言えるのは」

紅莉栖「その心的外傷、その記憶を思い出さないと根本的な解決にはならない」

岡部「記憶を取り戻すには、記憶を思い出さないといけない……無茶苦茶だな」

紅莉栖「……そうね。まあ、一つはもう心当たりがあるのだけど」
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:48:20.23 ID:wqrbHYVVo
岡部「何? それは本当か?」

紅莉栖「ええ、……心的外傷になるには十分すぎる程の出来事がね

岡部「……十分すぎる程の出来事」

紅莉栖「……そのお腹の傷、私を助けるために受けた傷」

岡部「この傷か……」

紅莉栖「……ナイフか何かで刺されて、さらに抉ったような傷跡」

岡部「確かに、これ程の傷なら……心的外傷となってもおかしくは無いな」

紅莉栖「……私は、ある程度は覚えている。それを話せば、記憶が蘇るかもしれない」

岡部「……よし、話してくれ、クリスティーナ。記憶を取り戻すためだ、協力してくれ」

紅莉栖「それは……よく考えてからにした方がいいと思う」

岡部「何故だ?」

紅莉栖「この話をすると、もしかしたら……あんたの身体に色々な異常が出てしまうかもしれない」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:51:28.32 ID:wqrbHYVVo
岡部「身体に異常……?」

紅莉栖「パニックを起こしたり、麻痺したりする可能性もある。
     それに、あんたが本当に心的外傷後ストレス障害とは決まった訳じゃない」

岡部「だが、思い出す可能性もある。それならお前の話を聞こう」

紅莉栖「……こういうのは長期的に解決した方が良いと思う、焦るのは危険よ」

岡部「構わん。いつかは思い出さなければならないなら、今聞いても後で聞いても結果は変わらない」

紅莉栖「言ったでしょう、焦る必要は無いって。……無理はしちゃダメ」

岡部「……正直に言うと、不安で仕方ないんだ。もしこのまま、何も思い出さずにいてしまったらと考えるとな……」

紅莉栖「……そうよね。何も覚えていない不安、辛いに決まってるか」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:52:19.00 ID:wqrbHYVVo
岡部「俺のためにも、頼む。……お前の持つ俺に関する記憶を教えてくれ」

紅莉栖「……後悔、しない?」

岡部「お前は後悔するか?」

紅莉栖「する、かも……」

岡部「ならば任せる。話したくなければ、何も話さなくて良い」

紅莉栖「……分かった。安心しなさい、何かあったら最先端の脳科学チームが結集してあんたを救ってあげるから」

岡部「頭とか開かれたりしそうで逆に怖いな……まあいい、話してくれ」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:52:52.20 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「いい? リラックスして、余計なことを考えない」

岡部「ああ、……始めてくれ」

紅莉栖「一か月半くらい前……ドクター中鉢のタイムマシン講演会があった」

岡部「ドクター中鉢……」

紅莉栖「そこにあんたは居た。ドクター中鉢に対して質問、というか罵詈雑言?
     ともかく、あんたは講演会をメチャクチャにした。その後――」

岡部「……その後」

紅莉栖「私は、ドクター中鉢に……父親に、自分の論文を……」

岡部「父親……論文――ッ!? ぐ、ぐうっ……!」

紅莉栖「お、岡部!?」

岡部「あ、安心しろ……頼む、続けてくれ……」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:54:11.16 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「私は……父親に、パパに首を絞められて……そこにあんたが現れた」

岡部「……俺が、助けに来たのか」

紅莉栖「そう……あんたは私を助けるために……パパに、刺された」

岡部「――ッ! ぐ、ううっ……あ、頭がぁ……!」

紅莉栖「も、もうやめた方が……岡部、無理しちゃ駄目!」

岡部「続けろ……続けてくれ……! もう少しで、後少しで思い出せそうなんだ……」

紅莉栖「……あんたは、血だらけになりながらも……私を庇って、パパを脅して……」

岡部「がっ……はぁ、はぁ……! そして俺は……」

紅莉栖「……私は、そこで気絶した。だから、覚えているのは……ここまで」

岡部「俺は……お前の父親を、追い払った……そして、自らの傷に、手を……」

紅莉栖「お、岡部……?」
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 02:55:02.73 ID:wqrbHYVVo
岡部「傷を、広げ……血を……」

紅莉栖「あ、あんた……思い出したの? でも、傷を広げるなんて……どうして……」

岡部「言ったではないか……お前は、お前は……」

   「お前は……俺が、助ける」

紅莉栖「それ……私が気を失う前に、あんたが言った……」

岡部「……ああ、その通りだ助手よ」

紅莉栖「お、岡部……記憶が」

岡部「……思い出したよ。……だが、お前のことだけだ」

紅莉栖「私のこと、だけ……?」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/05/28(月) 03:03:35.03 ID:m6JONrIlo
支援
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 03:08:32.95 ID:wqrbHYVVo
岡部「……お前が牧瀬紅莉栖であるということ、それを思い出した」

紅莉栖「私のこと……それなら、なぜ私を助けたのかも思い出したの?」

岡部「いや……そこまでは思い出していない。俺が思い出したのはラジ館で何があったのか、
    ドクター中鉢とのやり取り、自らの傷を広げ血を流したこと、……それだけだ」

紅莉栖「他には、それ以外は何も思い出せなかった?」

岡部「……一人、女が居た。お前では無い他の誰かだ。だが、顔も声も名前も思い出せない……。
    そしてあの鉄製のメタルうーぱ。それと……サイリウム・セーバーという名前の何か」

紅莉栖「……断片的にしか記憶が戻っていないみたいね」

岡部「ああ……これだけでは何も思い出せていないも同然だ」

紅莉栖「焦らないの。今のであんたが記憶を思い出したという事実が生まれた。
     つまり、あんたが他の記憶もちゃんと思い出す可能性は高いということ」

岡部「……そうだな、不安は少しは解消された。ありがとう、紅莉栖」

紅莉栖「へっ……? きゅ、急に名前で呼ぶとか卑怯よ!」

岡部「何が卑怯なのだ……?」

紅莉栖「う、うるさいバカ岡部!」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 03:15:45.03 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「……でも、私の考えていたのとは少し違うのよね」

岡部「違う? 何がどう違うのだ?」

紅莉栖「あんたが私を助けてくれた話をすれば、もっと記憶を取り戻すと思っていたのよ。
     ……自分が刺されるなんて壮絶な体験、それを思い出せば元に戻るきっかけになると思ったのに」

岡部「だが、戻った記憶は断片的なものであり十分では無かった」

紅莉栖「そう、もしかしたら時間が経てばさらに記憶は戻るかもしれない。……あるいは」

岡部「あるいは、何だ?」

紅莉栖「……もっと辛い体験をあんたはしているのかもしれない。
     刺されるよりも辛いこと……それを思い出さないと全ての記憶が戻らない可能性もある」

岡部「この傷以上の辛いこと……そんなもの、あるとは思えないが」

紅莉栖「……そうよね。ともかく、記憶に関しては今日はこの辺にしておきましょう」
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 03:23:34.65 ID:wqrbHYVVo
紅莉栖「……そろそろ時間か。岡部、私はもう帰るけど最後に何かある?」

岡部「そうだな……次会う時は、お前の知っている俺に関する情報を全て教えてくれ」

紅莉栖「分かった。でも、あんたに関する情報なら私が欲しいくらいなのだけど」

岡部「命の恩人、か……なぜ、俺はお前を助けたのだろうか」

紅莉栖「さあね、それは記憶を取り戻さないと永遠に謎のままよ」

岡部「……少しでも早く、記憶が戻ればいいのだが」

紅莉栖「無理して脳がパニックを起こす可能性もある、ということだけは覚えておきなさいよ?」

岡部「あ、ああ、そうだったな……」

紅莉栖「じゃあ、私は行くから。……何かあったら、電話位なら対応してあげるわよ」

岡部「フッ……お前もみんなと同じことを言うのだな」

紅莉栖「みんな? ……ったく、どうしてこんなヤツが」

岡部「どうした、クリスティーナ?」

紅莉栖「……何でもないわ。じゃあね、岡部」

岡部「ああ、気を付けて帰れよ」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 03:29:35.79 ID:wqrbHYVVo


岡部(断片的ではあるが、記憶が戻ったのは間違いない。……少しずつ、元には戻っている)

岡部(だが、紅莉栖の言うことが正しければ……刺される以上の体験をした可能性がある)

岡部(自分が死にかけるよりも辛い経験、そんなものがあるのか……?)

岡部(……いや、ある訳が無い。明日になればまた何かを思い出すはずだ)

岡部(……眠り、起きた後に全てを思い出していれば最高だな)

岡部(よし、今は休もう。……脳を休め、リラックスさせるんだ)

岡部(牧瀬紅莉栖、ドクター中鉢、そして謎の女……)

岡部(……眠れ、今は休む必要がある。明日もきっと進展があるはずだ、そう信じよう)
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 03:37:08.82 ID:wqrbHYVVo
翌日

萌郁「岡部くん、いる?」

岡部「あなたは……指圧師さんでしたね、丁度いいところに来てくれて助かりました」

萌郁「丁度いいところ?」

岡部「ええ、外出の許可が降りたのですが……どこに行こうか決められず困っていたのです」

萌郁「外に出たいの?」

岡部「はい。外に出て見覚えのある風景があれば、何か思い出すかもしれませんから」

萌郁「……それなら、良い場所がある」

岡部「良い場所、それはどこなんですか?」

萌郁「それは――私の部屋」

岡部「……はい?」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/05/28(月) 03:42:14.55 ID:wqrbHYVVo
VIPに投下したのに加筆修正したもの、それと数レスだけ
アニメなら最終話後、ゲームならトゥルーエンド後

VIPでのスレはこれ
まゆり「ああー! オカリンの頭にメタルうーぱが!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1337784015/

また今日か明日に
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/05/28(月) 03:50:20.42 ID:um7My+/Vo
乙!
SS速報では少ないシュタゲスレ、期待してる
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/05/28(月) 07:38:41.31 ID:CWq5m0aco


期待してるぜ
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/28(月) 08:53:42.78 ID:CWLnaN+oo
がんばれ
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 10:45:49.62 ID:+BvYeCH7o


岡部(……部屋? なぜ部屋に連れて行く必要がある?)

萌郁「…………」

岡部(まさか、指圧師さんと俺は……こ、恋人だったりするのか?)

萌郁「岡部くん、どうかした?」

岡部「い、いえ! 何でもありません!」

萌郁「……着いた、あそこが私の部屋」

岡部「あそこ……えっ? あの古そうなアパートがですか……?」

岡部(……少なくとも、若い女が一人暮らしをするような場所ではない気がする)

萌郁「こっち、私の部屋は二階だから」

岡部「あ、ああ、すみません」


岡部(……本当に古いアパートだな。だが、この場所も……なぜか引っ掛かる)
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 10:50:20.10 ID:+BvYeCH7o
十分後

岡部「……あの、指圧師さん」

萌郁「何?」

岡部「まさかとは思いますけど、俺をこの部屋に呼んだ理由って……」

萌郁「うん、部屋の掃除を手伝って欲しかったから」

岡部「それ位自分でできるでしょうが!?」

萌郁「……一人でできたら岡部くんを呼んでいない」

岡部「そ、それはそうかもしれませんけど……でも、いくら何でも俺に頼まなくても」

萌郁「岡部くん、言ってくれた。何かあったら頼ってくれって」

岡部「……前の俺はどれだけお人よしだったんだ」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 10:55:26.23 ID:+BvYeCH7o
それから数十分後

岡部「はー……大体片付きましたね」

萌郁「ありがとう、岡部くん」

岡部「今度からは一人でやってくださいよ」

萌郁「……頑張る。でも、ダメだったら、お願いすると思う」

岡部「……まあ、頑張ってダメだったら協力はしますけど」

萌郁「岡部くん。お腹、減ってる?」

岡部「ええ、掃除で動き回ったおかげで腹は減ってますね」

萌郁「分かった。ちょっと待ってて」

岡部(待っててってことは、何か用意してくれるということか? 料理くらいはできるのか)
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 10:59:03.96 ID:+BvYeCH7o
萌郁「今から買ってくるから部屋で待ってて」

岡部「買ってくる……?」

萌郁「うん、すぐ戻ってくるから」

岡部「はあ……行ってらっしゃい」


岡部(女の部屋に男一人で居ていいものなのか……?)

岡部(……まあ、この殺風景な部屋なら問題は無いか)

岡部(しかし、この部屋……見覚えがある……気がする)

岡部(あまり良い気分がしないのも気のせいだろうか……それとも、記憶に関する何かが……)
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 11:03:30.77 ID:+BvYeCH7o
しばらくして

萌郁「お待たせ」

岡部「いえ、……ん? 材料を買ってきたにしてはずいぶん荷物が少ないような」

萌郁「材料? 何のこと?」

岡部「えっ? 俺に料理を作ってくれるんじゃないんですか?」

萌郁「違う。これ、食べて」

岡部「これは……その」

萌郁「ケバブ。美味しいから、きっと気に入ってくれると思う」

岡部「……どうも。いただきます」

岡部(手料理、という訳では無かったのか……どれ)

岡部「あむ……んぐ、んっ……! う、美味い!」

萌郁「気に入ってくれて、良かった」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 11:11:44.90 ID:+BvYeCH7o
岡部「ごちそうさまでした、本当に美味しかったです」

萌郁「部屋掃除のお礼だから。……メール、誰から」

岡部(……確かこの携帯は、最新モデルの)

萌郁「迷惑メールだった……岡部くん? 私の携帯を見てるけど、どうかしたの?」

岡部「その携帯、最新モデルのヤツですよね。液晶部分が入れ替えられるとか」

萌郁「うん、触ってみる?」

岡部「良いんですか? じゃあ、少しだけ……」

萌郁「どうぞ」

岡部「では……へえ、人気が出る理由が分かりま――ッ!?」

岡部(な、なぜ……ただ携帯を持っただけなのになぜ、記憶が蘇ろうとする……!?)

萌郁「……どうしたの?」

岡部「がっ……! あ、ああっ……ぐっ……!」

萌郁「……! 岡部くん!」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 11:29:34.91 ID:+BvYeCH7o
岡部(この携帯を……俺は、手に入れようと……なぜだ? なぜ……この携帯を?)

岡部「……はぁ、ぐっ……! 頭が……割れ、る……」

萌郁「しっかりして、岡部くん……救急車を」

岡部(この携帯が無いと、メールが……メール? メールとは何のことだ……)

岡部「がっ……は、はぁ……だ、大丈夫です、そこまでの必要は無いです、から……」

萌郁「……本当に? 無理はしない方が……」

萌郁は心配そうに岡部の顔を覗き込んだ。まっすぐに相手の瞳が向けられたとき、
岡部の記憶がまた一つ蘇ろうとしていた。そのきっかけは、目があったという単純なこと。

岡部(……! 桐生、萌郁……! お前が、お前が……何を、した?)

岡部(何も……していない? いや、この女は……何かを、して……誰かを――ッ!)

岡部「……っ! ぐ、ぐああっ!」

岡部は絶叫しながらその場に立ち上がった。だが、体全体に力が入らず、
足を滑らせそのまま倒れてしまった。その倒れた先は畳ではなく――

萌郁「……っ! お、岡部くん……」

萌郁のいる場所に倒れ、そのまま押し倒すような形になってしまった。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 11:41:30.71 ID:+BvYeCH7o
岡部(し、しまった、これでは押し倒しているようにしか……)

萌郁「…………」

岡部「す、すいません! 今すぐどきますから……」

萌郁「岡部くん、そのまま」

岡部「えっ?」

萌郁はそう言うと岡部を優しく抱きしめた。
突然のことに岡部は反応できず、言葉を失ってしまった。

岡部「急に、何を……」

萌郁「今は、こうした方がいいと思ったから。……今だけ、落ち着くまで」

岡部「あ、ありがとうございます……」

萌郁「……苦しくない?」

岡部「だ、大丈夫です……」

岡部(……柔らかい、というのは黙っておこう)
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 11:50:05.00 ID:+BvYeCH7o
岡部「あの……どうしてその……抱きしめようと思ったんですか?」

萌郁「……分からない、自然とこうしよう思ったから」

岡部「自然と、ですか」

萌郁「でも、あえて言うなら……赦して、ほしかったから」

岡部「……えっ?」

萌郁「……岡部くんに赦してもらいたいと思ったから。でも、それがなぜかは分からない」

岡部「それは俺の記憶に関係しているのでしょうか?」

萌郁「それも、分からない。……ごめんなさい」

岡部「い、いえ、謝らないでください」

萌郁「……こうされるのは、嫌だった?」

岡部「そんなことは……むしろ落ち着くので、有難いというか、不安が薄れるというか」

萌郁「不安?」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 11:57:10.83 ID:+BvYeCH7o
萌郁「記憶を失ったことが不安?」

岡部「それもあります。……それと同時に、思い出すことにも不安があるんです」

萌郁「どうして? 元に戻りたくはないの?」

岡部「……何もない状態から、いきなり辛い記憶が蘇ろうとするんです。
    今まで知らなかったことが急に現れて、俺を不安にさせて……」

萌郁「岡部くん、無理して丁寧に言わなくても良い。思ったままを、言って」

岡部「……ありがとう。萌郁、俺は……本当に思い出すべきなのだろうか」

萌郁「……私には分からない。岡部くんが決めることだから」

岡部「ああ……そうだな、俺が決めることなんだ。思い出さないでいるのも、辛いものがあるからな……」

萌郁「……辛いの?」

岡部「俺が知らない人が俺を心配してくれている。それはありがたいが、
    その相手を俺は良く知らない……周りの人間の記憶が無い、まるで世界に一人取り残されたようだ」

萌郁「世界に、一人……」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/28(月) 12:14:21.56 ID:+BvYeCH7o
岡部「……済まない、そんなことは無いというのは分かっている。
    周りの人は俺のことを本当に心配してくれている、不安に思う必要などない」

萌郁「それでも、自分は一人かもしれないと不安になった」

岡部「……その通りだ」

萌郁「大丈夫、岡部くんは一人じゃない。……絶対に」

その言葉には、なぜか説得力があった。
理由は分からないが萌郁の言葉は重く、岡部の不安を和らげるには十分だった。

岡部「……お前がそう言ってくれるなら間違いないな、ありがとう」

萌郁「岡部くん、落ち着いた? もう大丈夫?」

岡部「ああ、もう大丈夫だ。……一つ、聞いてもいいか?」

萌郁「何?」

岡部「俺とお前は……どういう関係だったのだ?」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/28(月) 17:11:07.81 ID:SH8Fm11j0
なぜか本編では萌さんルートがないんだよなぁ・・・・
最初知ったときは絶望した!と絶望先生みたいに言ったものだ。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/28(月) 20:43:42.83 ID:LOLCzYfXo
VIPのあれか
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/28(月) 23:42:05.84 ID:QQdm1KaKo
萌郁「前も言った通り、一緒にレトロPCを探しただけ」

岡部「……だが、俺はこの部屋に見覚えがある。入った……気もする」

萌郁「それは無いと思う。岡部くんをこの部屋に呼んだのは、今日が初めてだから」

岡部「それならば、この記憶は……」

萌郁「……詳しく聞かせて、何を思い出したの?」

岡部「俺は……この部屋で……」

岡部(……この部屋で、萌郁を……押し倒した? な、なぜそんなことをした!? いや、そんなはずが……)

萌郁「岡部くん?」

岡部「な、なあ、指圧師よ……俺とお前は」

萌郁「岡部くんと、私が……何?」

岡部「恋人……ということは無いよな?」

萌郁「……えっ?」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/28(月) 23:47:43.83 ID:QQdm1KaKo
岡部「す、済まない、忘れてくれ」

萌郁「どうして、そう思ったの?」

岡部「それは……俺は、この部屋で……お前を押し倒し、その」

萌郁「……思い出すためにも、ちゃんと言った方が良いと思う」

岡部「わ、分かった。……俺は、お前に……き、キスを」

萌郁「……っ!?」

岡部「か、勘違いだろうが、……何となく、そんなことをしたような気がする」

萌郁「わ、私……キス、したこと、……無いから」

岡部「……えっ?」

萌郁「あっ……ち、違うの。その、岡部くんとは、キスしたこと無いって意味で……」

岡部「そ、そうだよな。キスの一つや二つ、その歳なら当然……」

萌郁「…………」

岡部(な、なぜ黙る……まさか。いや、これ以上は流石に聞けないな……)
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/28(月) 23:53:12.69 ID:QQdm1KaKo
岡部「そ、そろそろ病院に戻らないとな……今日は世話になった」

萌郁「私の方こそ、手伝ってもらって助かった。ありがとう」

岡部「ああ。また会おう、指圧師よ」

萌郁「岡部くん」

岡部「うん? どうした?」

萌郁「また、いつでも来ていいから」

岡部「天手部屋掃除なら手伝わんぞ」

萌郁「一人でできなかったら……お願い、するかもしれない」

岡部「……仕方ない。分かった、その時はケバブも用意してもらうぞ」

萌郁「うん、絶対用意する」

岡部「その言い方だと手伝うのは確定事項のようだな……まあいい、またな」

萌郁「岡部くん、気を付けてね」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/28(月) 23:58:02.74 ID:QQdm1KaKo
街中

岡部(暑いな……夏はいつになったら終わるのか)

岡部(……桐生萌郁。そこまで深い知り合いでは無い、だが)

岡部(俺は……あの女との記憶がある、これは間違いない)

岡部(それは、思い出すべきだが……なぜか思い出すのを躊躇ってしまう)

岡部(……訳が分からないな。その記憶が何かも分からないのに思い出すのを躊躇うとは)

岡部(桐生、萌郁、お前は何者だ? それよりも、俺は……何をしてきた?)

岡部(……一人で考えても仕方ないか、今は病院に戻るだけだ)
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 01:34:26.35 ID:BcWfUTJKo
翌日 岡部の病室

まゆり「オカリン、トゥットゥルー♪」

岡部「まゆりか、トゥットゥルー」

まゆり「おおー、オカリン、トゥットゥルーって言うのが上手くなったねー」

岡部「そ、そうか?」

まゆり「それよりもオカリン、もう退院できるって本当?」

岡部「ああ、医者から自宅療養でも良いと言われてな。病院に居るよりはその方が俺も嬉しい」

まゆり「じゃあ、ラボにオカリンが戻ってくるんだね。まゆしぃは嬉しいのです」

岡部「ラボ、か。……記憶喪失になってからが一度も行ってなかったな」

まゆり「きっとクリスちゃんも喜ぶよー」

岡部「助手が? どうしてだ?」

まゆり「クリスちゃん、毎日ラボで難しい本読んでるの。えっと、記憶に関するうんたらかんたらって」

岡部「記憶に関する……それは、まさか」

まゆり「うん、きっとオカリンのためだと思うのです」

岡部「……よし、明日はラボに行ってみるか」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 01:47:06.22 ID:BcWfUTJKo
まゆり「あっ……オカリン、まゆしぃはそろそろバイトに行かないといけないのです」

岡部「そうなのか? 済まないな、忙しいのにわざわざ来てもらって」

まゆり「ううん、オカリンに会えるならまゆしぃはどこへでも行くよ」

岡部「そ、そうか……ありがとう、まゆり」

まゆり「じゃあね、オカリン。明日はお荷物を運ぶの手伝うからまた来るね。トゥットゥルー♪」


岡部(椎名まゆり、俺の幼馴染……本当に良い子だ、俺もずいぶん助けてもらっている)

岡部(あの子のためにも、早く記憶を取り戻さなければな……しかし、あの子の記憶は一つも戻らない)

岡部(……いや、焦る必要は無い。記憶は戻る、それを疑うな) 


岡部(しかし、明日退院なら外出許可を取る必要も無かったな……)

岡部(……せっかくだ、外に出てみるとするか)
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 02:02:31.68 ID:BcWfUTJKo
街中

岡部(平日の午後だというのに、それなりに人はいるな……流石は秋葉原、ということか)

岡部(チラシを配るメイド、アニメやゲームのキャラ、萌え産業の中心地とはよく言ったものだ)

岡部(……もし、萌えが無かったらどうなるのか、少し気になるな)

岡部(パーツを求める者、それを売る者が溢れる街、今とは大分様子が違うだろう)

岡部(その光景を見た俺は、……何? 光景を、見た……?)

岡部(落ち着け、そんな光景は見ることはできない。そんな記憶は無いはずだ……)

岡部(……記憶をただ思い出すだけではなく、様々な記憶が混じりながら想起されているのか?)

岡部(いや、考え過ぎるのは良くないな……。ん? 足の向くままに歩いてきたが……ここは)

岡部(柳林神社、か。……神頼みでもしてみるか)
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 02:10:30.80 ID:BcWfUTJKo
岡部(静かだな……さっきまでの喧騒が嘘のようだ)


「いーち……にーい……ふぅ」


岡部(ん? あれは……ルカ子?)


ルカ子「はぁ、はぁ……ちょっと休憩」

岡部「ルカ子、何をやっている」

ルカ子「えっ……? お、岡部さ……じゃなくて、凶真……でもなくて、岡部さん」

岡部「……名前を呼ぶだけでずいぶん遠回りしたな」

ルカ子「すみません……あの、どうしてここに?」

岡部「外出許可をもらって外を歩いているところだ。秋葉原の街を歩けば何か思い出すだろうと思ってな」

ルカ子「そうでしたか。岡部さん、あれから何か思い出せましたか?」

岡部「断片的には、といったところだな。……まだ完全回復には遠そうだ」

ルカ子「そうですか……」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 02:17:14.23 ID:BcWfUTJKo
岡部「ところでルカ子、お前は何をやっていたのだ?」

ルカ子「えっと、岡部さんに言われたように修行を……あっ、これも忘れてしまったんですよね」

岡部「そうだな……しかし、その刀はいったい」

ルカ子「これは岡部さんに頂いたものです。妖刀五月雨といいまして」

岡部(……どう見てもレプリカだな。俺はいったい何をしたかったのだ?)

ルカ子「これを毎日素振りして、修行をしているんです」

岡部「そ、そうか。今後もその気持ちを忘れないようにするのだぞ、ルカ子よ」

ルカ子「は、はい! ……不思議ですね、岡部さんは記憶喪失なのに、今の言い方は前と全く同じでした」

岡部「俺も自然と口から出ていたな……もしかしたら、少しずつ気付かないうちに思い出しているのかもしれない」

ルカ子「もしそうなら、ボクも嬉しいです……でも、無理はなさらないでくださいね?」


岡部(くっ……だからそう見つめられるとドキッとしてしまうではないか)
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 02:23:54.88 ID:BcWfUTJKo
岡部「ルカ子、俺が他に行きそうな場所に心当たりは無いか?」

ルカ子「岡部さんが行きそうな場所、ですか?」

岡部「ああ、柳林神社に来ただけでも少し成果があった。
    それなら他の場所も巡れば、他にも何か思い出すかもしれない」

ルカ子「なるほど……分かりました、ボクで良ければご案内いたします」

岡部「済まないな、ルカ子」

ルカ子「い、いえ……岡部さんのためになるのなら、何でもします」

岡部「そ、そうか……では、早速行くとするか」

ルカ子「あの、すいません……少しだけお待ちいただけますか?」

岡部「どうした、忙しいのなら無理をしなくても良いぞ」

ルカ子「いえ……その、巫女服のままでは……流石に」

岡部「それもそうだな……分かった、ここで待っている」

ルカ子「はい。すぐ戻ってくるので待っていてくださいね」
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 02:38:24.45 ID:BcWfUTJKo
ルカ子「岡部さん、お待たせしました」

岡部「なに、そこまで待っては……おおっ」

ルカ子「ど、どうかしましたか?」

岡部(改めてこう見ると……この子はやはり可憐だな)

ルカ子「岡部さん? 大丈夫ですか?」

岡部「す、済まない。少し見とれていた」

ルカ子「えっ……? 見とれてって……その……」

岡部(しまった、思ったことをそのまま……)

ルカ子「あの……」

岡部「済まない……急にそんなことを言っても困るだけなのに」

ルカ子「い、いえ、気にしないでください……」

岡部(……顔を真っ赤にして俯いてしまった。これから案内をしてもらうというのに、俺は何てことを……)
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 03:10:46.87 ID:BcWfUTJKo
暑さのピークが過ぎたとはいえ、この時期では東京はまだ暑い。
日差しも強く、じっとしていても汗がにじんでくる程だ。

その暑さの中、柳林神社には岡部とルカ子の二人しかいなかった。
大きな木の木漏れ日の下、俯いたルカ子に岡部は何を言っていいのか迷っている。

岡部「る、ルカ子……その、済まなかった」

ルカ子「いえ……大丈夫です、少し驚いただけですから」

そう言うとルカ子は顔を上げ、岡部をまっすぐと見つめた。
そして岡部は萌郁の時と同じように、記憶を取り戻す。

岡部「ぐうっ……!? な、なぜ……何を、思い出す……!」

ルカ子「お、岡部さん!? 大丈夫ですか!?」

岡部(柳林神社……そこで、俺は……ルカ子に呼ばれて)
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 03:16:47.70 ID:BcWfUTJKo
『……に、なってください』

岡部(何だ……聞こえない……この声は、誰だ……)

ルカ子『……こ……とに、……ってください』

岡部(これは、ルカ子……今蘇ろうとしているのは、ルカ子との記憶か……)

ルカ子『こ、恋人にっ、なってください……!』

岡部(コイビト……? こいびと……恋人!?)

岡部(俺は……ルカ子に、告白され……そして……)
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/05/29(火) 03:24:45.87 ID:BcWfUTJKo
岡部「があっ……! あっ、ぐうっ……!」

ルカ子「岡部さん! しっかりしてください、今救急車を……」

岡部「はぁ、はぁ……だ、大丈夫だルカ子。その必要は無い」

ルカ子「ほ、本当ですか? でも……」

岡部「いや、ただ思い出しただけだ。……お前との記憶をな」

ルカ子「ボクとの記憶、ですか……?」

岡部「ああ……ルカ子、一つ聞いても良いか」

ルカ子「は、はい。何でしょうか?」

岡部「お前と俺はその、恋人……なのか?」

ルカ子「えっ? こ、恋人、ですか……?」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 03:41:24.03 ID:BcWfUTJKo
岡部「お前のメールで俺はこの神社にやって来た……そして、この木の下で」

ルカ子「メール……木の下……?」

岡部「ああ、そしてお前が……俺のことを、好きだと」

ルカ子「ぼ、ボクが岡部さんに告白を!? そ、そんな訳……」

岡部「何……? だが、俺が思い出した記憶では確かに……」

ルカ子「で、でも……」

岡部「告白し、照れているお前に俺は……愛おしさを感じた」

ルカ子「愛おしさ……お、岡部さん」

岡部「そして俺は、お前の告白を受け入れた……恋人になったはずだ」

ルカ子「な、何かの間違いです……そんなはずが……」

岡部「いや、断片的とはいえ思い出した……ルカ子、答えてくれ。お前は俺の彼女なのか?」

ルカ子「……だって、ボクは……その」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 03:48:08.97 ID:BcWfUTJKo


ルカ子「ボクは……男、ですから……岡部さんの恋人では、無いと思います……」


岡部「………………えっ?」


103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 04:00:43.84 ID:BcWfUTJKo
岡部「えっ? あっ、えっ? 嘘、えっ、マジで?」

ルカ子「は、はい……」

岡部「声も仕草も、女にしか見えない。というか女よりも女らしいのに?」

ルカ子「でも男です……」

岡部「まゆりより背は高いが、身体付きはとても細いのに?」

ルカ子「でも男です……」

岡部「巫女服が似合っているのに?」

ルカ子「でも男です……」

岡部「暑さのピークが過ぎたとは言え、まだ暑いのに?」

ルカ子「でも男……ってそれは関係ないです……」
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 11:41:54.07 ID:B5kZbRAWo
岡部「本当に……男なのか?」

ルカ子「は、はい……ごめんなさい」

岡部「い、いや、謝らなくても良い。……では、この記憶は」

ルカ子「他の方との記憶が混じってしまっているとか……」

岡部「……そうかもしれないな。いったい、誰の記憶と混じっているのか」

ルカ子「それはボクには分かりません……岡部さんに恋人がいらっしゃったとは聞いていませんから」

岡部(本当に他の誰かなのか? 鮮明に思い出すことができる……あの声は、間違いなく)

『―――だったボクのこと、覚えていて……くれますか?』

岡部(ルカ子の声だ、間違いなくルカ子と俺は付き合った。……萌郁の時と同じ、食い違い)

岡部(……この記憶は、本当に正しいのか?)
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 12:03:00.42 ID:B5kZbRAWo
ルカ子「岡部さん、大丈夫ですか……?」

岡部「……ああ、大丈夫だ。それよりもルカ子、……済まなかった」

ルカ子「えっ? 岡部さんは謝るようなことなんて……」

岡部「いや、男のお前に対して散々女らしいだの何だのと言って、不快な気持ちにさせただろうから」

ルカ子「い、いえ。岡部さんの言ってくれた通り、そんなことはどうでもいいんです」

岡部「俺が言った……?」

ルカ子「はい。ボクが街中で絡まれているところを岡部さんが助けてくれて……」

岡部(記憶に無いな……忘れているだけなのだろうが)

ルカ子「男だろうが女だろうが関係ない。そう言ってくれたから、
     今は外見を気にすることなく自信を持って生きていることができるんです」

岡部「ずいぶん大げさだな。……まあ、手助けになったのなら良いが」

ルカ子「大げさなんかじゃありません……。だからボクは、岡部さんのことを好きに…………えっ?」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/29(火) 12:13:38.15 ID:B5kZbRAWo
岡部「る、ルカ子? 今、お前……」

ルカ子「あ、あれ? どうして……今、ボクは何を……」

岡部(聞き間違いでは無い、よな……確かにルカ子は今、好きだと言った)

ルカ子「ご、ごめんなさい……なぜかは分かりませんが、自然にそう言ってしまって……」

岡部「自然にって……それは、無意識にという意味にも取れるが」

ルカ子「違うんです……そういう意味ではなくて……」

岡部「わ、分かった。何かの間違い、お互いにそう思うことにしよう」

ルカ子「……はい」

岡部「……一応確認しておくが、お前は同性愛者では無いよな?」

ルカ子「そ、そんなことは……無いはずです」

岡部(では、俺の方が同性愛者だったのか……? いや、まさかそんなアッー!なことがある訳が……)
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 19:45:29.37 ID:5FyUZpGlo
面白いなこのスレ
頑張ってくれ
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 19:50:55.19 ID:kMw876LJ0
ブラウンと綯に遭遇したらやばそうだな
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 00:14:13.59 ID:70/aySZ9o
まだまだ続きそうだな
頑張ってね
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 02:28:40.92 ID:vUq0lLiOo
ルカ子「…………」

岡部(ルカ子は完全に黙ってしまった……案内は今日は無理そうだな)

岡部「ルカ子、今日はその……済まなかった。案内はまた今度頼もうと思う」

ルカ子「は、はい……ごめんなさい、岡部さん」

岡部「悪いのは俺の方だ、お前は何も気にしなくても良い。
    ……記憶さえ戻れば、こんな事にならずに済むのだがな」

ルカ子「あの、今度は岡部さんをキチンと案内します。……今日は、すみません」

岡部「ああ、よろしく頼むぞ。どこへ連れて行くのかも考えておくのだ、分かったな?」

ルカ子「分かりました。また、岡部さんとお出かけできるなんてボクも嬉しいですから……」

岡部「また? 前はどこに行ったのだ?」

ルカ子「ええと、前は……あれ? ボク、岡部さんとお出かけしたことなんて……」

岡部「どうした、思い出せないのか?」

ルカ子「ごめんなさい……今日のボク、何だかおかしくて」

岡部「い、いや、無理に思い出さなくても良い。……今日は帰る、また会おうルカ子よ」

ルカ子「は、はい、お気をつけて」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 02:35:57.04 ID:vUq0lLiOo
夜 戻って病室

岡部(今日戻った記憶、これは間違いなくルカ子との記憶だ……そしてその関係は)

岡部(ルカ子が俺に告白し、俺はそれを受け入れた。つまりは……恋人だ)

岡部(しかし、ルカ子はそれを否定した。そしてルカ子は……男だ)

岡部(……だが、気になるのはルカ子の方だ。ルカ子の方も覚えのない記憶があるかのようだった)


岡部(何が起きているんだ? 単純に俺が記憶喪失というだけでは無かったのか?)

岡部(もし、ルカ子との記憶が真実であれば……俺は萌郁とキスをし、さらにルカ子と恋人同士ということになる)

岡部(浮気? 二股? ……いや、それだけは流石に無いと信じたい)


岡部(岡部倫太郎、お前は何者だ? ただの痛い男なのか? 紅莉栖を助けたのはなぜだ?)

岡部(……いや、思い出せば全て分かる。明日は退院なんだ、今は休んでおこう)
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 02:48:14.60 ID:vUq0lLiOo
翌日

まゆり「オカリン、トゥットゥルー♪」

岡部「トゥットゥルー。済まないな、せっかくの休みなのに来てもらってしまって」

まゆり「大丈夫だよー。まゆしぃは今こそオカリンのために頑張るのです!」

岡部「……ありがとう、まゆり」

まゆり「えっと、オカリンの荷物は……あれ?」

岡部「ああ、荷物なら親が運んでくれたんだ。だから、まゆりにやってもらうことは……実は無い」

まゆり「ええー……? まゆしぃ、オカリンのために何かできると思って来たのに……」

岡部「す、済まない。……そ、そうだ、お前に頼みたいことが一つある」

まゆり「本当? 何をすればいいの?」

岡部「ラボまで俺に付き合ってくれないか? 忙しかったら無理はしなくて良いから」

まゆり「ううん、大丈夫だよー! じゃあ、オカリン。まゆしぃがラボまで案内してあげるねー」

岡部「ああ。よろしく頼むぞ、まゆり」


岡部(……場所はちゃんと覚えている、というのは内緒にしておこう。
    それに、二人で歩けば昨日の様に記憶が蘇るかもしれないからな)
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 02:56:55.89 ID:vUq0lLiOo
街中

まゆり「そっかー、昨日はるかくんのことを思い出したんだね」

岡部「ああ、クリスティーナ、ルカ子、桐生萌郁。少しづつではあるが思い出してきている」

まゆり「じゃあ、オカリンと一緒にいればまゆしぃのことも思い出してくれるかなー?」

岡部「そうかもしれないな。……済まないな、まゆり」

まゆり「えっ? どうして謝るの?」

岡部「お前は幼馴染で、俺のことを本当に心配してくれているのに……まゆりのことは何も思い出せていない」

まゆり「ううん、大丈夫だよ。きっとオカリンは思い出す、まゆしぃはそう信じてるから」

岡部「……そう言ってくれると助かる。そういえば、今日はバイトは無いのか?」

まゆり「実は、今日もあるから……オカリンとは途中でお別れしないといけないのです……」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 03:03:22.46 ID:vUq0lLiOo
岡部「時間は大丈夫なのか?」

まゆり「えっと、オカリンをラボまで案内したらすぐに行かないとダメかな」

岡部「あまり時間は無いのか……よし、それならお前のバイト先に行くとしよう」

まゆり「ええー? どうして?」

岡部「お前の話では、そのメイクイーンとかいうメイド喫茶には俺も行ったことがあるのだろう?」

まゆり「うん。オカリンはダルくんと一緒にお茶してたりもしてたんだよー」

岡部「……なぜダルと俺がそんなことを。まあいい、そこに行けばまた何か思い出すかもしれない」

まゆり「じゃあ、まゆしぃのメイド姿を見たら何か思い出すかなー?」

岡部「メイドか……ふむ」


岡部(幼馴染とはいうが、普通に可愛い子であるのは間違いない。)

岡部(メイド服も似合いそうで……って違う! それが目的ではなく……あくまでも記憶のためで)
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 03:22:12.65 ID:vUq0lLiOo
メイクイーン+ニャン2

まゆり「とうちゃーく。ほら、ここだよオカリン」

岡部(……ここに見覚えはある、場所に関する記憶はやはりあるようだ。何か思い出せればいいのだが)

まゆり「じゃあ、まゆしぃは先に行ってるねー」

岡部「ああ。しっかり働くのだぞ、まゆり」


岡部(さて、俺はどうやらメイド喫茶に何度か行ったことがあるらしい)

岡部(いわゆる……オタクなのだろうか。と、ともかく、中に入るとしよう)
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 03:32:14.27 ID:vUq0lLiOo
店内

フェイリス「お帰りニャさいませ。ご主人様♪」

岡部「ふぇ、フェイリス?」

フェイリス「ニャ! 凶真、来てくれてうれしいニャン♪」

岡部「どうしてお前がここに?」

フェイリス「フェイリスはメイクイーンのナンバーワンメイドだから居て当然ニャ!」

岡部「そ、そうなのか。それは知らなかった……」


岡部(そういえば、前に病室でここに行くとか言っていたが……まさか、従業員だったとは)

岡部(これは予想外だ……あの厨二トークに巻き込まれないようにしなければ……)
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 03:32:41.40 ID:vUq0lLiOo
フェイリス「凶真……フェイリスに会いに来てくれたのかニャ?」

岡部「い、いや、そういう訳では」

フェイリス「凶真が会いに来てくれるなんて……フェイリスは嬉しいニャ! 凶真、凶真ー」

岡部「ち、近づくな! ……はっ!? 周りから殺気を感じる……!?」


『……俺のフェイリスたんに近づきやがって』

『何だあの男……フェイリスは俺たちの女神なのに……!』

『○す、絶対に○す』


岡部(げ、幻聴だ……そうだ、これは気のせい……)
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 03:43:07.93 ID:vUq0lLiOo
フェイリス「凶真、あれから何か思い出したのかニャ?」

岡部「あ、ああ。それなりに、といったところだな」

フェイリス「フェイリスのことも、少しは思い出したニャ?」

岡部「……済まない。実は何も思い出していない」

フェイリス「ニャー……ちょっと期待したのに、残念ニャ」

岡部「期待? 何を期待していたのだ?」

フェイリス「だって、凶真の話し方、前と同じ感じに戻ってるのニャ」

岡部「話し方……あ? そういえば……前にお前と話している時は丁寧に話していた」

フェイリス「それが戻ったということは、フェイリスと前と同じように話せることになったって考えたのニャ」

岡部「そういうことか。……何も意識せず話していたが、確かに変わっているな」

フェイリス「これはきっと……凶真がフェイリスのことを思い出すという予兆ニャ!」

岡部「なるほど……その可能性はあるな」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 03:51:01.95 ID:vUq0lLiOo
フェイリス「ということで、凶真はもっとフェイリスとお話しすべきなのニャ!」

岡部「そ、そうだな。だが、話すと言っても……」

岡部(厨二トークだけは勘弁してくれよ……よし、普通の話をこちらからすれば)

フェイリス「凶真……早くフェイリスとの共闘の記憶を思い出して欲しいのニャ」

岡部(……とか考えてるうちに始まってしまった)

フェイリス「機関との因縁、今こそ凶真と共に終止符を打つべきニャ!
       でも凶真は今、機関の精神攻撃でズタボロなのニャ……」

岡部(……人を勝手にズタボロにするな)

フェイリス「凶真、早く記憶を取り戻して、共に究極共鳴拳で悪の惑星を吹き飛ばすのニャ!」

岡部(俺よ、早く記憶を取り戻してくれ……そしてこの猫の対処法を教えてくれ……)
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/05/30(水) 04:07:38.82 ID:vUq0lLiOo
まゆり「フェリスちゃん、どうかしたのー?」

岡部「ま、まゆり! 良いところに来てくれた……」

フェイリス「マユシィ、今は邪魔をしないでほしいニャ……。
       凶真とフェイリスは宿世から解放されるための戦いを……」

岡部(俺の前世を勝手に変なものにするな……)

まゆり「すくせ? よく分からないけど、まゆしぃも混ぜてほしいなー」

フェイリス「駄目ニャ……マユシィはここで帰りを待っていてほしいのニャ」

まゆり「う、うん。分かったよ、フェリスちゃん」

岡部(分かったって、何が分かったんだ? ……少なくとも、俺にはさっぱりだ)

フェイリス「という訳で凶真、フェイリスと一緒に旅立つのニャ!」

岡部「旅立つ? いったい何を――っておい、腕を引っ張って何処へ行くつもりだ!?」

フェイリス「気にしニャい、気にしニャい。マユシィ、後は任せるニャン♪」

まゆり「ええー? あっ、フェリスちゃーん、どこに行くのー?」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 06:26:09.55 ID:QdNspBlEo
wktk
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 19:23:19.47 ID:SunjHNLC0
お前を見ているぞ
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 23:19:12.88 ID:QdNspBlEo
>>122
今、ちょうどその辺りを通過したあたりでお前に恐怖を覚えた
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/05/31(木) 21:24:42.34 ID:QHYNqgkpo
今北

最近読んだシュタゲSSではダントツだわ

続きも期待してるよ!
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 00:48:13.90 ID:VNiZautYo


岡部(着替えるから少し待てと言われたが……どこに連れて行くつもりだ?)

フェイリス「凶真、お待たせニャ」

岡部「フェイリス、俺をどこに連れて行くつもりだ。それに店はいいのか?」

フェイリス「どの道、フェイリスは今日のお仕事は終わったのニャ。だから凶真と一緒でも問題ないニャン♪」

岡部「そ、そうか……」

岡部(またあの珍妙な会話が繰り広げられるのかと思うと……気が滅入る)

フェイリス「凶真……フェイリスと一緒は嫌ニャ?」

岡部「い、いや、そんなことは無いぞ」

フェイリス「前に言ったこと、覚えてるかニャ? フェイリスには、嘘は通用しない……」

岡部「ぐっ……なぜ、嘘かどうかが分かる」

フェイリス「それは……秘密だニャン♪」

岡部(……観察眼、眼球の動き? ……ともかく、本当に見抜く力はあるようだな)

126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 01:00:04.86 ID:VNiZautYo
岡部「分かった、正直に言おう。以前と同じように会話されると、その……ついていけないのだ」

フェイリス「ニャー……分かったニャ。凶真との共鳴は復活が果たされた時にするニャ」

岡部(つまり……今は控えてくれる、ということでいいんだよな)

岡部「ああ、そうしてくれると助かる。で、お前は俺をどこへ連れて行くつもりだ?」

フェイリス「うーん……とりあえず」

岡部「とりあえず?」

フェイリス「お茶してから考えるニャ!」

岡部「……はあ?」

フェイリス「さっきも言ったけど、フェイリスとお話すればきっと何か思い出すはずなのニャ」

岡部「確かに、今までのことを考えればその可能性は高いな……」

フェイリス「今まで、って言うからには他の子のことは思い出したのニャン?」

岡部「ああ、それも含めてどこかで話すとするか」

フェイリス「じゃあ……あそこのカフェに入るニャ」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 01:11:51.72 ID:VNiZautYo
カフェ

岡部「――という訳だ。はっきりと思い出したのは、今のところ三人のことだけだな」

フェイリス「クーニャンとモエニャンとルカニャンのことだけ……それって不公平ニャ」

岡部「不公平と言われてもな……というかその呼び方は何だ、
    何でもニャンを付ければいいみたいなノリなのか?」

フェイリス「だって、呼び方は可愛い方がいいニャン♪」

岡部「……分かった分かった。とりあえず、俺に話せることは全部話したつもりだ」

フェイリス「会話や目が合ったりした時に記憶が……凶真」

岡部「なんだ……ん?」

フェイリス「……じー」

岡部「……何のマネだ?」

フェイリス「……じー」

岡部「言っておくが、そうやって見つめられても記憶は戻らん。
    それと自分の口でじー、とか言うのはやめろ」

フェイリス「ニャ……凶真、酷いニャ。せっかくフェイリスがじーっと見つめてあげたのに」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 01:27:28.13 ID:VNiZautYo
岡部「とりあえず、思い出すには会話が重要だというのは間違いない」

フェイリス「会話……でも、正直なところ、凶真とはさっきみたいな会話しかしてないのニャ」

岡部「あの厨二トークか、残念だがその会話では何も思い出せないみたいだな……」

フェイリス「……でも、フェイリスと凶真はメイクイーン+ニャン2でしか会ってないのニャン」

岡部「むう……お前との記憶を思い出す手がかりがあれば良いのだが。他に何か繋がりがあれば……」

フェイリス「ハニャ……雷ネット、は詳しくないみたいだからニャ……」

岡部「雷ネッ――ッ!? ぐっ……あっ、があっ……!」

フェイリス「きょ、凶真!? どうしたニャン!?」

岡部「はぁ……い、いや、大丈夫だ。これはまだ軽い方だからな」

フェイリス「もしかして……それが記憶が戻ったってサインなのかニャ?」

岡部「……戻った訳では無さそうだ。ただ、その雷ネットとやらは関係があると思って良さそうだな」

フェイリス「それなら……凶真、移動するニャ!」

岡部「移動? 今度はどこに連れて行くつもりだ?」

フェイリス「それは――フェイリスのお家ニャン♪」

岡部「……はあ?」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 01:34:16.98 ID:VNiZautYo
高層マンション前

岡部「た、高いな……まさか、お前の家って」

フェイリス「この一番上ニャ、絶景に酔いしれるがいいニャン♪」

岡部「……もしかして、お嬢様?」

フェイリス「もしかしなくてもお嬢様ニャン。でも、あまりそういう言い方はしないでほしいニャ」


岡部(こんなお金持ちの子とも知り合いなんて、以前の俺はどんな男だったんだ……)

岡部(……しかし、このマンションには見覚えがある……気がする)

岡部(今までと同じならば、ここで何か思い出せるはずだ。少しでも、一つでも多く情報を得なければ)
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 01:51:29.31 ID:VNiZautYo
フェイリス宅

執事「お帰りなさいませ、お嬢様」

岡部(執事までいるとは……これが真のお嬢様なのか)

フェイリス「さて、凶真。雷ネットが記憶に関係しているらしいというのはホントかニャ?」

岡部「あ、ああ、その可能性は高いと思う」

フェイリス「……それなら、実際に雷ネットで勝負すればいいのニャ!」

岡部「なるほど……やってみる価値はありそうだ」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 01:55:12.72 ID:VNiZautYo
フェイリス「それなら、早速始めるニャ♪ 凶真、雷ネットのルールは?」

岡部「ルール……このカード。どうやら雷ネットに関する知識はあるみたいだな……」

フェイリス「ハニャ? 記憶喪失なのにそれは覚えてるってことニャ?」

岡部「ああ、雷ネットと口に出した時には変化があったが……ルール自体は覚えていたらしい」

フェイリス「うーん……よく分からないニャ。ともかく、始めるニャ!」


岡部(フェイリス、雷ネットのことになると一層輝き出すな。流石は、といったところか)

岡部(……ん? 俺はフェイリスが雷ネットをプレイしているところを……見たことがあるのか?)


フェイリス「コイントス……凶真、先攻は譲るニャ」

岡部「分かった、やるからには勝たせてもらうぞ……!」

フェイリス「それでこそ凶真ニャ……では、――デュエルアクセス!」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 02:06:28.51 ID:VNiZautYo
数分後

フェイリス「凶真、何か言うことは?」

岡部「……参りました」

フェイリス「ニャハ♪ 凶真ったら、特攻というか自爆ばかりなのニャ」

岡部「攻撃こそ最大の防御……と言いたいところだが、そんなレベルでは無かったな」

フェイリス「凶真、修行して出直して来るニャ!」

岡部「まったく……大体、チャンピオンのお前に勝てる訳が無いだろうが」

フェイリス「当然ニャン。凶真も、この彗星のごとく現れたチャンピオンと戦えたことを光栄に思うニャ」

岡部「ああ、グランドチャンピオンで、しかもディフェンディングチャンピオンだったか」

フェイリス「……ニャ? 凶真、何言ってるのニャ?」

岡部「何って、お前は雷ネットのディフェンディングチャンピオンなのだろう?」

フェイリス「……凶真、フェイリスの目を見てほしいニャ」

岡部「目を見ろ、だと?」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 02:12:05.69 ID:VNiZautYo
岡部「何だ突然、目を見て何か分かるのか?」

フェイリス「いいからフェイリスの目を見るニャ」

岡部「あ、ああ、分かった。……こうで良いのか?」

フェイリス「…………」

岡部(急に雰囲気が変わったが……何かまずいことでも言ってしまったか?)


フェイリス「凶真、そのディフェンディングチャンピオンって話、詳しく聞かせてほしいのニャ」

岡部「詳しくって……お前は二人で一組の大会に一人で挑戦して。見事二度目の優勝を」

フェイリス「……それはおかしいニャ」

岡部「おかしい? 何がおかしいのだ?」

フェイリス「フェイリスが大会に参加するようになったのは……つい最近、この一か月くらいのことなのニャ」

岡部「つい最近……? それなら、俺の言っていることは……」

フェイリス「……フェイリスには、覚えが無いのニャ」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 02:20:56.34 ID:VNiZautYo
岡部(まただ……記憶の食い違い、俺が覚えていることは間違いだと認識される……)

フェイリス「……凶真、記憶が混ざったりするとか、そういうことってあるのかニャ?」

岡部「あ、ああ……実は、桐生萌郁やルカ子の時も同じようなことがあった」

フェイリス「それなら納得できるニャ……でも、何だか不思議な感じニャ」

岡部「不思議な感じ?」

フェイリス「まるで凶真は、別の世界のフェイリスを見てきたみたいなのニャ」

岡部「別の世界……確かに、本人の知らない話をしているのだからそう思うのかもな」

フェイリス「凶真、その話もっと詳しく聞かせてほしいニャ。
       別の世界、凶真の記憶の中でもチャンピオンなんて気分が良いのニャ♪」

岡部「……よし、思い出せる範囲で話してみるか」
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 02:36:13.77 ID:VNiZautYo
岡部「さっきも言ったように、お前は二人一組の大会に一人で挑んだのだ」

フェイリス「孤独な戦い……凶真の中のフェイリス、なかなかカッコいいニャン!」

岡部「そしてお前は優勝した、相手の卑怯な妨害行為を乗り越えてな」

フェイリス「妨害行為?」

岡部「ああ、あのヴァイラルアタ――ッ! ……ぐぐっ、ごっ……があっ……!」

フェイリス「きょ、凶真!? またなのかニャ……? ホントに大丈夫なのかニャン……」


岡部(こ、これは……さっきよりも、辛い……! あ、頭が……ああっ……!)

岡部(あの男達、4℃……俺はあの男達に襲われ……フェイリスを、助け……)

岡部(……はぁ、はぁ……殴られ、蹴られ……そして、俺達は――)
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 02:42:41.72 ID:VNiZautYo
フェイリス「きょ、凶真……やっぱり、救急車を」

岡部「い、いや……その必要は……ぐっ、……無い」

フェイリス「ホントニャ……? まだ無理はしちゃダメニャ……」

岡部「大丈夫だ……そのおかげで思い出した、はっきりとな」

フェイリス「思い出したって、何のことニャン?」

岡部「フェイリスが優勝した後、俺達は敵のヴァイラルアタッカーズの取り巻きに襲われた」

フェイリス「襲われた……」

岡部「ああ、必死で逃げたが捕まってしまい……俺はボコボコにされた」

フェイリス「ニャー……凶真、大丈夫だったのかニャ?」

岡部「大丈夫、とはいかないが大事には至らなかった。お前の父親のおかげだな」

フェイリス「えっ……?」
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/01(金) 02:48:14.16 ID:VNiZautYo
岡部「お前の父親が車で偶然通りかかってな、そして俺達は助けられた。
    いや、お前の父親には感謝してもしきれないな……命の恩人と言ってもいい」

フェイリス「…………」

岡部「……だが、これも混ざった記憶なのかもしれないな。
    それでも、鮮明に覚えているということはきっとお前の父親には何かしらの形で」

フェイリス「――凶真!」

岡部「……っ!? ふぇ、フェイリス……?」

フェイリス「それ以上は……パパの話は、やめてほしいニャ……」

岡部「な、なぜだ? お前の父親には本当に世話になった……はずなのだが」

フェイリス「……凶真、フェイリスのパパは、……もういないのニャ」

岡部「いない? ど、どういうことだ?」

フェイリス「……飛行機の事故で、ずっと前に……亡くなったから」

岡部「亡くなった……?」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/01(金) 14:26:30.79 ID:1dhe8B1bo
続きも期待!
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/01(金) 21:44:48.00 ID:kWNMLgt60
アニメ版のOPは癖になる!

Dメールや電子レンジやタイムマシンのことを先に話したほうがよかったんじゃないかな?
確かに混乱すると思うけど、話して今も混乱しているわけだし・・・・
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/01(金) 22:26:55.89 ID:TqXnYGTRo
続き期待してます
いとうかなこさん良いよね
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/01(金) 23:07:42.93 ID:zA+amo6go
シュタインズゲート世界線では電話レンジとかタイムマシン関係は岡部しか知らないんじゃないの?
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/01(金) 23:11:32.27 ID:h7uh9gYQo
この世界線ではみんな知らない感じだね
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/06/02(土) 00:38:47.68 ID:N78KXq/Vo
せいぜいゲルバナ止まりだろ
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 05:12:06.20 ID:VMZGAtNbo
岡部「ほ、本当なのか? だが、俺の記憶では確かに……」

フェイリス「凶真の記憶がどうなってるかは分からない……でも、パパがこの世にいないのは本当」

岡部「そんな……それなら、この記憶は何だ。お前の父親を俺は……はっきりと、声も覚えている」

フェイリス「……凶真とパパが会ったことがある可能性もあるかもしれないニャ。
       でも、それだと凶真がもっと小さい頃なんだと思う……」

岡部「いや、会ったのはつい最近のことだ……しかしそれだと、俺が会ったのは……」

フェイリス「他の男の人と勘違いしてる、その可能性も……ちょっと待っててニャ」


岡部(この世にいない人間の記憶……今までの食い違いとは異なる)

岡部(フェイリスの父親、本当にこの世にいないのか? それしては、この記憶はあまりにも鮮明過ぎる……)
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 05:18:35.88 ID:VMZGAtNbo
フェイリス「凶真、この写真を見るニャ」

岡部「これは……小さい頃のフェイリスと、隣に居るのは」

フェイリス「これがパパ。凶真……本当にこの人と会ったのかニャ?」

岡部「……ああ、間違いない。だが、この写真よりももう少し老けていたな……。
    きっと今も生きていたら、俺が覚えているような姿になっているだ……あっ」

フェイリス「…………」

岡部「す、済まない。……生きていたら、なんて無思慮なことを言ってしまった」

フェイリス「……凶真、もう一度フェイリスの目を見てほしいニャ」

岡部「分かった、……こうで良いのか?」

フェイリス「もっと……近づくニャ」

岡部「……っ!?」


岡部(ち、近い……睫毛長いな、整った顔をしているし。それと、何だか良い匂いが……)

岡部(……って違う! 今はそんなことを考えている場合では……)
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 05:25:16.83 ID:VMZGAtNbo
フェイリス「…………」

岡部「あの……いつまでこうしていれば良い?」

フェイリス「……凶真は、本当に別の世界から来たみたいニャン」

岡部「……お前の父親が生きている世界、そこに俺はいたのだろうか」

フェイリス「でも、そんな世界も素敵ニャ。フェイリスとパパは一緒で、凶真もパパと仲が良いなんて」

岡部「そ、そうだな……だが、別の世界などあるはずが無い。
    ……なぜ俺は知らないはずの人物を覚えているのか」

フェイリス「凶真、大丈夫ニャ? 少し、疲れているみたいニャン……」

岡部「……済まない、自分のことも分からないというのは不安でな」

フェイリス「それなら、あっちの部屋で休むといいニャ」

岡部「えっ? い、いや、そこまででは」

フェイリス「ほらほらー、今は言う事聞くニャー」

岡部「わ、分かった、分かったから押すな!」
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 05:41:48.92 ID:VMZGAtNbo
フェイリス「この部屋は好きに使っていいニャ、ベッドに横になっても構わないニャン」

岡部「そこまで気を遣ってくれなくても良いのだが……まあ、少し休ませてもらうか」

岡部はベッドに腰を下ろし、一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

岡部(……今まではまだ、何かの間違いともはっきりと言える食い違いだけだった。
    だが、フェイリスの父親の記憶はそれとは違う。……別の世界? いや、まさか……)

「……横、座るね」

岡部「ああ、どうぞ……って、フェイリス!?」

留未穂「……フェイリスじゃなくて、留未穂って呼んでほしいな」

岡部(ネコ耳が無いだけで変わり過ぎだ……というか、
    ネコ耳があってもやり辛いが無くても対応に困る……)

留未穂「岡部さん……」

岡部「ち、近い、もう少しその……離れてくれると」

留未穂「嫌、って言ったら?」

岡部(や、やり辛い……何だこのこそばゆい感じは……)
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 05:55:38.63 ID:VMZGAtNbo
岡部「…………」

留未穂「…………」

岡部(な、なぜ何も話さない……それよりもこの雰囲気は何だ!?)


留未穂「ねえ、岡部さん……凶真、って呼んでもいい?」

岡部「か、構わん……というかフェイリスの時は凶真と呼んでいたではないか」

留未穂「だって、呼び捨てにするのって……照れちゃうから」

岡部「そ、そうか……好きにすれば良い」

留未穂「……うん。ありがとう、凶真」


岡部(どうしてここまで変わる……しおらしくなられてもどうすればいいのか困る……)
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/02(土) 06:44:35.98 ID:VO7Lknkto
隙間ピンク可愛いな
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 07:34:05.27 ID:VMZGAtNbo
留未穂「ねえ、凶真。……パパのこと、聞かせてくれない?」

岡部「……話すのは構わん。だが、良いのか?」

留未穂「最初は驚いたけど……今は聞いてみたいって思ったの」

岡部「分かった……全て思い出した訳では無い、断片的な記憶だけだがその中で話す」

留未穂「うん。お願い、凶真」

岡部「お前の父親は、とても優しい人だった。傷付いた俺にとても良くしてくれてな」

留未穂「私のことは……何か言ってなかった?」

岡部「留未穂との約束は何があっても守る。そう言っていた、気がする」

留未穂「そっか……ありがとう、凶真。……パパは九年経っても何も変わってないみたい」

岡部「本当に話して良かったのか? 聞いても辛くなるだけでは……」

留未穂「ううん、大丈夫。凶真の言ってることが現実だとは思えないけど……
     パパのことは少しでも知りかったから。それと……何となく、だけど覚えがある気がするの」

岡部「覚え?」

留未穂「凶真の話……私にも、覚えがある」
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 07:50:52.42 ID:VMZGAtNbo
岡部「何……!? それは本当か!?」

留未穂「うん……それが現実だとは思えないけど、覚えがある。
     パパと私と凶真、三人で食事した記憶が……あるような、気がする」

岡部「その記憶は前からあったのか?」

留未穂「凶真と話していたら急に……だから、私も何が何だか分からないの」

岡部「そうか……俺と同じ様な状態だな。フェイリス、それは」

留未穂「フェイリスじゃなくて、留未穂って呼んで?」

岡部「あ、ああ……る、留未穂、他には何か覚えていないか? その後のこととか」

留未穂「その後……パパと凶真がパソコンの話をしてたような」

岡部「パソコン……?」

留未穂「多分……詳しくは思い出せないけど、パパはパソコンが好きだったから」

岡部「他には何か思い出せないか? 何でも良い、少しでも良いから教えてくれ」

留未穂「……あっ」

岡部「どうした、思い出したのか?」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 08:04:35.65 ID:VMZGAtNbo
留未穂「う、うん……でも、その……恥ずかしいから」

岡部「頼む、何でも良いんだ……教えてくれ!」

留未穂「……分かった。この部屋に、凶真と私は一緒に居て」

岡部「この部屋に。それで、何をしていたんだ?」

留未穂「何を話したのかは……思い出せないけど、凶真に……」

岡部「俺に?」

留未穂「横になっていた凶真に……抱き着いてた」

岡部「なっ!? べ、ベッドの上で……抱き合っていた、ということか?」

留未穂「そうかも……しれない」

岡部「俺とお前はその、そういう関係、だったのか……?」

留未穂「凶真は……私の、王子様……そう言った気がする」

岡部「……ほ、本当なのか?」

留未穂「……多分、現実じゃなくて夢の中かもしれないけど」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 11:42:06.86 ID:VMZGAtNbo
岡部(王子様……は、恥ずかしい。だが、どういうことだ?
    今までは俺と留未穂の記憶が一致している……)

留未穂「ねえ、凶真。本当に夢なのかな? 私が思い出したのは……現実じゃないのかな」

岡部「……分からん。だが、それが本当だとしたら……お前の父親は」

留未穂「うん……だから混乱してるの。凶真、もし記憶を取り戻したら……全部話して」

岡部「記憶を取り戻せば全て分かる、とでも言うのか?」

留未穂「凶真の話と私の話、別の出来事では無い気がする。だから、
      記憶を取り戻せば私よりも凶真の方が詳しく知っているはず」

岡部「……お前もそう思うのか。分かった、お前のためにも自身の記憶……必ず取り戻す」

留未穂「ありがとう、凶真……でもね、無理はしないでほしいな。だって、凶真は……」


岡部(み、見つめるな! この雰囲気はマズイ……どうにかしなければ。……! これだ!)

岡部は近くにあったある物を取り、そのまま留未穂の頭へと狙いを定め――。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 11:53:46.28 ID:VMZGAtNbo
留未穂「凶真は私のお……っ!? 凶真!?」

岡部「留未穂、また会おう! そしてさようならだ!」

「ニャ!? ……うう、凶真! 何するニャ!?」

岡部(よし、成功だ! ネコ耳が近くにあったおかげで助かった……しかし、本当に戻るのか)


フェイリス「……凶真のいくじなし」

岡部「なっ……! い、いきなりそういう雰囲気になられてもだな! その、こっちは記憶を失ってる訳で……」

フェイリス「ニャー……だって、凶真と居ると……不思議とそうしたくなってしまうのニャ」

岡部「ええい、そうやって照れるのもやめろ! お前は明るい方がこっちも楽だ!」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 12:03:30.63 ID:VMZGAtNbo
フェイリス「ニャニャ? 凶真、そう思ってくれてたのかニャ?」

岡部「えっ? ま、まあ、大人しいお前も悪くは無いと思うが……そっちもそっちで、うん」

フェイリス「凶真、フェイリスのことをちゃんと見てくれていたんだニャー! 感激ニャン♪」

岡部「きょ、今日は帰る! フェイリス、協力してくれたことには感謝する」

フェイリス「えー? 帰っちゃダメニャー。ほら、まだお茶も出してないニャ」

岡部「いらん、帰ると言ったら帰るんだ!」

フェイリス「ニャフー。それなら、力づくでも行かせないようにしちゃうニャ」

岡部「ち、力づく!? ……いや、そんな小さい身体じゃ無理だろうが」

フェイリス「フェイリスにはギアナ高地で身に付けた『奥義』があるニャ……それで凶真を」

岡部「フッ……今の俺には厨二設定は通用しないということを忘れたか?」

フェイリス「……ニャ!?」

岡部「さらばだフェイリス、そして留未穂よ。また会おう!」

フェイリス「あー! 凶真ー! ……もう、メイクイーンで待ってるニャーン!」
156 :バレル・タイター [sage]:2012/06/02(土) 12:08:55.89 ID:0JLzm3TE0
うっひょー、フェイリスたんはサイコ―だお
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/06/02(土) 12:10:35.72 ID:VMZGAtNbo


岡部(結局、こうやって逃げてしまった……俺とフェイリスはどういう関係なんだ?)

岡部(萌郁は押し倒しキス、ルカ子とは恋人、お次はフェイリスの王子様と来た……)

岡部(……まさか、紅莉栖とまゆりとは、そんな関係は無い……よな?)

岡部(ええい、今は考えても無駄だ。……まだ帰るには早いな)

岡部(ラボにでも行ってみるとするか。記憶を失ってからは一度も行っていないからな……)

岡部(そこでまた、何かを思い出す可能性もある。……よし、行こう)
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/06/02(土) 12:20:21.80 ID:fa4vRkIJo
ダルがオカリンをゲルオカにする準備を始めてるそうです。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 13:01:41.40 ID:VMZGAtNbo
ビル前

岡部(久しぶりか……見覚え、場所の記憶、大丈夫だ。この場所のことは覚えている)

萌郁「岡部くん、何をしているの?」

岡部「指圧師か、久しぶりにラボに戻って来たところだ。そっちはバイトか?」

萌郁「うん。今は、私一人」

岡部「お前一人……? 大丈夫なのか?」

萌郁「……多分。戻ってくるまでは、頑張る」

岡部「ま、まあ、何かあったら上に来い。……ブラウン管の店など、誰も来ないと思うが」

萌郁「分かった。……ありがとう、岡部くん」

岡部「ああ、しっかり働くのだぞ」

岡部(そういえば、ここの店長にはまだ会っていなかったな……会って記憶が戻れば良いのだが)
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 13:10:47.20 ID:VMZGAtNbo
ラボ

岡部(しかし、休日に誰か居るのか? まゆりはバイト……誰も居ないかもしれないな)

岡部(……よし、開けるぞ)

岡部「誰か居るか?」

ダル「あれ? オカリン、病院から抜け出して来たん?」

岡部「いや、自宅療養でも構わないということになってな。退院したと思ってもらっても良い」

ダル「把握しますた。しかし、牧瀬氏涙目な展開……」

岡部「牧瀬氏……ああ、助手のことか。何かあったのか?」

ダル「つい三十分前までここに居たんだお」

岡部「そうか、それは残念だな……」

ダル「おっ? それはどうして残念なのかkwsk」

岡部「ん? 助手に今までのことを相談しようと思っていた、というだけだが」

ダル「……牧瀬氏、乙」

岡部「どうしたダル、言いたいことがあるなら言ってくれ」

ダル「何でもないお」
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 13:17:48.29 ID:VMZGAtNbo
ダル(しかし、牧瀬氏タイミング悪すぎだろ常考……)

―――――

紅莉栖「……何だか、岡部が今日はラボに来る気がする」

ダル「本当に? ソースは?」

紅莉栖「……勘」

ダル「……非科学的すぎる件について」

紅莉栖「こ、こういう場合は信用できたりするのよ! だから、今日はラボで待ってみる……」

ダル「そんなことしなくても、直接オカリンに聞けば良いんじゃね?」

紅莉栖「……それだとラボに来てって言ってるみたいじゃない。
     つまり、それはラボで岡部に会いたいってことになるというか……」

ダル「素直になれない牧瀬氏……エロゲだったらメインヒロイン待遇だお」

紅莉栖「ひ、人をエロゲのヒロインにするな!」

ダル「でも、攻略されたら嬉しいでしょ」

紅莉栖「岡部に、攻略……うへへ…………はっ!? だ、ダメよ! HENTAI発言禁止!」

ダル「HENTAI妄想は許されるんですね、わかります」

紅莉栖「だ、誰も妄想なんかしとらんわ!」
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 13:26:49.93 ID:VMZGAtNbo
ダル(しかし、牧瀬氏はホテルに論文があるから戻らなきゃと言い帰ったのである。
    そして「今日は無理かな……」と言い残した。だが、すぐにオカリンは来てしまったのであった……)

岡部「ダル、急に黙ってどうした?」

ダル「気にしなくておk。で、あれから何か思い出したん?」

岡部「ま、まあ、断片的ではあるが思い出してきてはいる」

ダル「それなら、記憶が戻るのは時間の問題ってこと?」

岡部「だと良いが……どうやら、そう簡単にはいかなさそうでな」

ダル「原因とかは分かってんの?」

岡部「……ある記憶を思い出せば、全ての記憶が戻るかもしれない」

ダル「……記憶を取り戻すための記憶が必要とか。それなんて鬼畜ゲー?」

岡部「全くだ……という訳でダル、お前にも協力してもらうぞ」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 13:33:31.43 ID:VMZGAtNbo
ダル「協力? 何すればいいん?」

岡部「明日は暇か? 暇なら俺と一緒に秋葉原を巡ってくれ」

ダル「……それはウホッ、な展開だったりとか」

岡部「馬鹿なことを言うな。いや、まさか……俺が忘れているだけでその可能性も?」

ダル「うげっ……僕とオカリンとか、誰得すぐる」

岡部「……この話はやめておこう。とりあえず、お前に案内をしてもらいたい」

ダル「別に良いけど、何で僕をチョイスした訳?」

岡部「何でって、お前は俺の友人なのだろう? 友人と遊びに行く、その位の感覚だったのだが」

ダル「……うーん、改めてそう言われると流石の僕も照れれます。失礼、かみまみた」

岡部「照れる? 何か変なことを言ったか?」

ダル「何でも無いお」

ダル(……これが無自覚オカリンの力、他のラボメンももしや)
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 13:45:02.26 ID:VMZGAtNbo
岡部「ところでダル、お前は今日はラボで何をしていたんだ?」

ダル「午前中はフェイリスたんに会いにメイクイーン、午後になってからラボでこれを直してたんだお」

岡部「それは……」

ダル「サイリウム・セーバー2nd Edition Vol1.02。牧瀬氏の依頼により直しますた」

岡部「これがサイリウム・セーバー……で、何の役に立つんだ?」

ダル「それ、オカリンが言うん? って忘れてるんだった……まあ、遊び道具でしょ」

岡部「むう、これが俺の記憶に関係しているとは思えんな……」

ダル「えっ、これがオカリンの記憶に関係? ……オカリン、いったい何があったん?」

岡部「それを紐解かなければ何も分からん……早く、元に戻らないとな」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 13:55:11.03 ID:VMZGAtNbo
ダル「まっ、すぐに直したから後はエロゲに没頭してたって訳」

岡部「自由に過ごせているお前が羨ましいな……」

ダル「どう聞いてもバカにしてるようにしか聞こえない件について」

岡部「そう取ってもらっても構わん。俺が借りている部屋でエロゲとは……」

ダル「そこはお互い持ちつ持たれつってことで。で、オカリンは今日は何をしてたん?」

岡部「俺か? 俺は病院からまゆりと一緒に出て、その後はメイクイーンに行った」

ダル「あれ? オカリンもメイクイーンに居たの?」

岡部「ああ。だがすぐにフェイリスに連れられてな……店に居たのは五分も無い」

ダル「……フェイリスたんと?」

岡部「その後はカフェで休もうと思ったのだが、なぜか家に連れて行かれた」

ダル「ほう……オカリン」

岡部「うん? どうした?」

ダル「屋上へ行こうぜ……久しぶりに……キレちまったよ……」

岡部「なっ!? だ、ダル!?」
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 14:03:41.62 ID:VMZGAtNbo
ダル「どういうことだってばよ! オカリン、それは許されることじゃないお!」

岡部「な、何だ急に……別にやましいことなど……あっ」

ダル「あっ? 何そのあっ、って。まさか、オカリン……僕のフェイリスたんを……!」

岡部「お、落ち着け! だいたいお前のでは無いだろうが!」

ダル「フェイリスたんは僕の天使であり、みんなの女神なんだお!」

岡部「知るか! 現実を見ろ、フェイリスは普通の女の子だろうが!」

ダル「こんな可愛い子が普通の女の子な訳ないお!
    きっとこの世を浄化するために降臨したに決まってんだろ常考!」

岡部「い、いや、そんなこと言われても……」

ダル「このスレ見てみればすぐに分かる……僕たち同士のフェイリスたんへの愛の書き込みを!」

岡部「@ちゃんねる……メイド喫茶、メイクイーンのスレ」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 14:09:09.07 ID:VMZGAtNbo
『( ゚∀゚)o彡゚フェイリス!フェイリス!』
『フェイリスたんのせいで俺の世界がヤバい』
『うっひょー、フェイリスたんはサイコ―だお』

岡部(……もしフェイリスの部屋で起きたことを話したら、死ぬな)

ダル「ちなみに一番下の書き込みが僕だお」

岡部「ID真っ赤になるまで書き込むな……分かった、お前のフェイリスへの情熱は認めよう」

ダル「分かればいい、分かれば。……ん? メールだ、誰から――っ!?」

岡部「どうした?」

ダル「お、オカリン。今日は僕は帰る、明日また会おう」

岡部「あ、ああ。……メールが来てから急にそわそわしだしたが、何か関係があるのか?」

ダル「そ、そんなことは無いお。じゃ、また明日!」

岡部「あっ、おい、ダル! まったく……いったい、何があったんだ?」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 14:19:10.22 ID:VMZGAtNbo
岡部(……しかし、一人になってしまった。せっかくこうしてラボに戻って来たというのに)

岡部(ラボ、か。……ここにも俺の記憶に関するものがあるはずだ、色々探してみるか)

岡部(何だこれは……地雷?  クレイモアと形が似ているが……いや、まさかな)

岡部(これは……オモチャ? オモチャの銃が何の役に……いや、確かこれは)

岡部(テレビを点けて、この銃を使えば……おおっ、チャンネルが変わった)


岡部(ラボという場所は覚えていた。だが、このガラクタの数々の記憶は断片的……)

岡部(忘れていることに共通するもの、それが分かればあるいは)


岡部「……もう少し、調べてみるとするか」
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/06/02(土) 14:26:55.05 ID:Vhrar5p+o
恋愛絡み、じゃないよな・・・
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 14:28:08.19 ID:VMZGAtNbo
しばらくして

岡部「ダメだ……何も思い出せん」

岡部(やはり、物ではなく人と会話する必要があるのか?)

岡部(辛い体験、それが分からなければ何も解決しない……)

岡部(その体験、果たして一人でのものなのか。それとも他の誰かとの……)

岡部(……考えても何も思い出せないというのも困るな、一人ではどうしようも無いのと一緒だ)

岡部(今日はこれ以上の成果も無いだろう。帰るとするか……ん?)

岡部(電話……まゆりからか)
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/02(土) 14:30:41.21 ID:VMZGAtNbo
岡部「もしもし、まゆりか」

まゆり『あー、オカリン。フェリスちゃんとどこに行ってたの? 心配してたんだよー?』

岡部「す、済まない。まゆり、バイトは終わったのか?」

まゆり『うん、今から帰るところなのです』

岡部「それなら迎えに行く。俺も家に帰るところだったから丁度良い」

まゆり『本当に? 迎えに来てくれるの?』

岡部「ああ、メイクイーンで待っていろ。すぐに出る」

まゆり『うん! オカリン、ありがとう』


岡部(……よし、急ぐとするか)
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/02(土) 22:37:25.12 ID:3tDqJ8Cgo
オカリンだと天然タラシでもハーレムでも許せちゃうのはなんでだろ
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/02(土) 23:56:38.86 ID:Fvf5/US/0
平行世界リープしまくって精神年齢が高くてトラウマをなんども経験しながら全てを乗り越え
その上で世界を救ったのに「俺はみんなの可能性を潰してひとりの女性のためだけに行動した罪人」
とか考える賢者的思考を持ち最終的に腹を刺されて傷を自分で抉って自分を刺した奴さえ許す
狂気のマッドサイエンティスト…そりゃハーレムぐらい許すよ
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 08:51:25.31 ID:FRx4Vtzko
なんでも「さすが岡部」になってしまうんだが
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 11:37:29.44 ID:Ykqf9at40
(岡部のハーレムを)赦すよ……
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 18:04:13.32 ID:ntSaefMx0
何言ってんだダルは、オカダルとか俺得だろうがjk
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 20:43:56.61 ID:VnB+I8SV0
>>176
(゚Д゚)
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 22:01:27.58 ID:QgyqHpdko
\   / .::::::::::::::::::::::::;;:;;::,ッ、::::::   )  く   ホ  す
  \ l  ,ッィrj,rf'"'"'"    lミ::::::: く   れ  モ  ま
     Y           ,!ミ::::::: ヽ  な  以  な
`ヽ、  |           くミ:::::::: ノ   い  外  い
     |、__  ャー--_ニゞ `i::::,rく   か  は
``''ー- ゝ、'l   ゙̄´彑,ヾ   }::;! ,ヘ.)  !  帰
      ゙ソ   """"´`     〉 L_      っ
      /          i  ,  /|    て    r
≡=- 〈´ ,,.._        i  't-'゙ | ,へ     ,r┘
,、yx=''" `ー{゙ _, -、    ;  l   レ'  ヽr、⌒ヽ'
        ゙、`--─゙      /!         `、
  _,,、-     ゙、 ー''    / ;           `、
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-''"    /   `ー─''ぐ;;;;' ,'  ノ      
   //    /     ヾ_、=ニ゙
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 22:09:46.90 ID:FRx4Vtzko
                     /j
                   /__/ ‘,
                  //  ヽ  ', 、
                    //    ‘  ! ヽ             …わかった この話はやめよう
                /イ       ', l  ’
               iヘヘ,       l |  ’
               | nヘヘ _      | |   l            ハイ!! やめやめ
               | l_| | | ゝ ̄`ヽ | |〈 ̄ノ
               ゝソノノ   `ー‐' l ! ¨/
            n/7./7 ∧        j/ /     iヽiヽn
              |! |///7/:::ゝ   r===オ        | ! | |/~7
             i~| | | ,' '/:::::::::::ゝ、 l_こ./ヾ..     nl l .||/
             | | | | l {':j`i::::::::::::::::`ーr '         ||ー---{
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      , 一 r‐‐l   γ /、::::::::::::::::::::::::〉ー= ___  ヘ  ヽ   }
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180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 01:34:47.79 ID:Q2OFE/JEo
メイクイーン付近

まゆり「あっ、オカリーン。こっちだよー」

岡部「済まない、待たせたか?」

まゆり「ううん、大丈夫。オカリンが迎えに来てくれて、まゆしぃはとっても嬉しいのです」

岡部「これ位で喜ばれてもな……。もう辺りも暗い、早く帰るぞ」

まゆり「なんか、こうやって一緒に帰るのも久しぶりだねー」

岡部「久しぶり? そうか、前もこうして帰ることがあったのか」

まゆり「あっ……記憶が無いからこんなこと言っても困るだけだよね。ごめんね、オカリン」

岡部「気にするな。むしろ、忘れてしまったことを教えてくれるのだから助かる」

まゆり「そっかー。じゃあ、まゆしぃがオカリンのこともっと教えてあげないと」

岡部「ああ、頼むぞまゆり」
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 02:01:16.10 ID:Q2OFE/JEo
まゆり「――それでね、ダルくんがえっちなゲームばかりしているのをクリスちゃんが怒ったんだよ」

岡部「ダルのヤツ……女の前でも堂々とし過ぎだ」

まゆり「でも、最近はそこまでゲームばかりしてる訳じゃないみたい」

岡部「そうなのか?」

まゆり「うん、急にぼーっとして溜め息ついたりしてるの。何か悩みごとでもあるのかなあ……」

岡部「まあ、ダルのことだ。何かあれば相談してくるに決まっている、その時に聞いてやれば良い」

まゆり「そうだねー。ダルくん、悩み過ぎてやせちゃったりして」

岡部「悩むとやせるのなら、ずっと悩んでる方が良いかもしれないな」

まゆり「あー、オカリンそれは酷いよー」

岡部「そ、そうか? まあ、ダルから言ってくるのを――」

まゆり「……あれ? 急に黙ってどうしたの、オカリン?」

岡部「今日は……星が良く見えるな」

岡部はそう言うと立ち止まり、手を星空に向かって高く上げた。
その指の隙間からは、いくつもの輝く星が見える。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 02:14:39.85 ID:Q2OFE/JEo
まゆり「……オカリン、急に手を伸ばしてどうしたの?」

岡部「いや、特に意味は無い。……ただ、こうしていると」

まゆり「こうしていると?」

岡部「星に届きそうな気がするんだ。……そんなことは有り得ないがな」

まゆり「……そっかー。えへへ、なるほどねー」

岡部「何だまゆり……ニヤニヤするな、馬鹿にしてるのか?」

まゆり「ううん、違うよ。ねえ、オカリン。まゆしぃのことはまだ思い出せてないって言ってたよね」

岡部「ああ……その通りだ」

まゆり「でもね、オカリンはまゆしぃのことをちゃんと覚えてるよ」

岡部「……? どういう意味だ?」

まゆり「あのね、オカリンは今、お星様に手を伸ばしたよね?」

岡部「それが何か関係があるのか?」

まゆり「うん。それは、スターダスト、えーっと……シェイクハンドって言うんだよ」

岡部「スターダスト、シェイクハンド……」
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 02:29:02.29 ID:Q2OFE/JEo
まゆり「まゆしぃがこうやって手を伸ばして空を見てたら、オカリンがそうやって呼んだの」

岡部「俺がその呼び方を考えたのか。……我ながら、少し恥ずかしい呼び方だな」

まゆり「でもね、それを覚えているってことは、まゆしいのこともちゃんと覚えてるんだよ」

岡部「……そうか、俺はまゆりのことも少しずつ思い出してきているのだな」

まゆり「うん! だから何も心配することなんて無いよ、オカリン」

岡部「ああ……ありがとう、まゆり」

まゆり「ねえ、オカリン。一緒にやってみようよ」

岡部「スターダストシェイクハンドだな。……よし、やってみるか」

二人はゆっくりと星空に向かって手を伸ばし、しばらくの間星を眺めつづけた。
周りには誰も居ない。ただ二人は静かにそうしているだけだった。
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 02:43:49.06 ID:Q2OFE/JEo
岡部「……そろそろ行くか、これ以上遅くなると流石にな」

まゆり「うん。そういえば、オカリンは久しぶりにお家に帰るんだよね?」

岡部「そうなるな。どうやら、元々あまり家には帰っていなかったようだが……」

まゆり「そうだよー、ラボに泊まってばっかりで心配してたんだからー」

岡部「男一人だから心配するまでも無いだろう。
    ……まあ、あの部屋ではゆっくり休むのは難しいだろうが」

まゆり「ちゃんとお家に帰らなきゃダメだよ、オカリン」

岡部「わ、分かった。ところで、まゆりは明日は学校か?」

まゆり「うん、学校が終わったらラボに行っても良い?」

岡部「構わないが……もしかしたら俺は居ないかもしれないぞ」

まゆり「えー? どこかにお出かけするの?」

岡部「ダルと秋葉原を巡るつもりだ。そうすれば何か思い出すかもしれないからな」

まゆり「そっかー。じゃあ、学校が終わったらオカリンに電話するね」

岡部「ああ、分かった」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 03:06:09.76 ID:Q2OFE/JEo
翌日 秋葉原駅前

岡部(ダルと待ち合わせた場所はここのはずだが……早く着き過ぎたな、まだ少し時間がある)

ダル「あれ? オカリン、もう来てたん?」

岡部「ダルか、お前の方こそ早いな。まだ時間はあるぞ」

ダル「エロゲでは約束の十五分前に着いてるのが常識ですしおすし」

岡部「……それだと俺がエロゲのキャラみたいではないか」

ダル「確かに。オカリンを攻略する僕……うーん」

岡部・ダル「…………」

岡部・ダル「おえっ……」

岡部「……この話は止めよう、誰も何も得をしない」

ダル「……激しく同意」
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 03:23:42.73 ID:Q2OFE/JEo
ダル「で、どこか行きたいところとかはある訳?」

岡部「特には無いな……秋葉原駅周辺なら、一日も歩けば巡れるだろう」

ダル「うへっ……この辺りを全部巡るとか、安請け合いしたことを後悔するレベル」

岡部「そう言うな。それに、巡っている途中でお前の悩みも聞いてやるぞ」

ダル「悩み? それ、何のこと?」

岡部「とぼけなくても良い。最近、ボーっとして何か考えることが多いと聞いたぞ」

ダル「……ああ、そのことね。別に、悩みという訳でも無いけど……まっ、気が向いたら話すお」

岡部「そう言われると気になるな……今教えろ、と言ったら?」

ダル「お断りします、と答えるのぜ。じゃ、まずはラジ館でも行ってみる?」

岡部「そうだな……よし、行くか。俺の記憶のために頼むぞ、ダル」

ダル「オーキードーキー!」
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 03:38:19.38 ID:Q2OFE/JEo
ラジ館前

ダル「ラジ館は駅のすぐ近くだから、改めて来る場所でも無い気がするけど」

岡部「だが、誰かと一緒というのが肝心なのだ。俺一人では何も思い出せそうに無いからな」

ダル「僕とオカリン、か。うーん、ラジ館には特に何も思い出なんて……」


岡部(秋葉原に来れば自然と通り過ぎるラジ館。……確かに、こんなところでは何も)

岡部(……何も、無い? 無いって何がだ? 何かが無い……あったはずの何か、そこには……)


岡部「……なあ、ダル」

ダル「ん? どしたん?」

岡部「ラジ館の屋上に……何か無かったか?」
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 03:41:54.17 ID:Q2OFE/JEo
ダル「へっ? 何かって、何?」

岡部「……それは分からん。ただ、こう……何と言うか、違和感がある」

ダル「違和感……? ラジ館はいつも通りなのだぜ?」

岡部「……違う、屋上には何かがあったんだ。忘れてはいけない、大事な」

ダル「お、オカリン? それってもしかして、記憶が戻ってきてんの?」

岡部「……かもしれないな。ダル、行くぞ」

ダル「えっ? 行くってどこにいくつもり?」

岡部「屋上だ、そこに行けば何か分かるかもしれん」

ダル「いや、屋上って言われても……そもそも入れない件について」

岡部「……ともかく行くぞ、着いて来い」

ダル「あっ、ちょっと待てってオカリン!」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 03:54:26.60 ID:Q2OFE/JEo
ラジ館内

岡部「このドアを開ければ屋上か……」

ダル「うへー……疲れたお。オカリン、本当に入る気?」

岡部「ああ。自分の記憶のためなら、多少の無茶はするつもりだ」

ダル「それに僕を巻き込まないで欲しいお……まっ、どうせ開かないだろうから無駄だろうけど」

岡部「おっ、開いた」

ダル「うそん!? ……世界がオカリンを後押ししてるとしか思えない」

岡部「つべこべ言わずに行くぞ。誰かに見つかったら厄介だ」

ダル「見つかって困るようなことをするなと僕は声を大にして言いたい」

岡部「責任は俺が取る、着いて来い」

ダル「……二人とも怒られるに決まってんだろ常考」
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/04(月) 04:04:52.70 ID:Q2OFE/JEo
ラジ館屋上

岡部「なるほど、屋上から見る景色はなかなかのものだな」

ダル「そんな呑気なこと言ってないで、さっさと調べて帰った方が良いと思われ」

岡部「そう急かすな。ラジ館の屋上なんてそう入れるものでは無いぞ」

ダル「入っちゃダメな所に勝手に侵入、つまりは不法侵入な件について」

岡部「う、うるさい! いちいち文句を言うな。それにお前も言っていただろうが」

ダル「へっ? 何のこと?」

岡部「屋上へ行こうぜ、と前に言っていたこと、俺は忘れていないぞ?」

ダル「……それはそういう意味じゃねーし。つーか、
    ウマいこと言ったみたいなドヤ顔してるけど全然ウマくも何ともないお」

岡部「ともかく、この辺を調査する。ダルよ、少しでも情報を得るために励むのだ」

ダル「へいへい……分かりますた」
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/04(月) 18:37:04.36 ID:N6yhn0I+o
鈴羽こないかなー
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/04(月) 18:45:09.57 ID:zEQr4Jz/o
>>176
どんまいwwwwwwww
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 21:23:26.31 ID:I0uUgLrR0
ここで鈴羽が登場したらさらにオカリンが混乱しそうな気が・・・・
そういえばミスターブラウン出たっけ?あの人、オカリンの記憶喪失のことを知ったら心配してくれそう。
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/04(月) 21:25:56.68 ID:eXVQ42o3o
鈴羽が出てきたらS;G世界線崩壊やん
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 22:17:12.86 ID:hsWFPmt/0
>>193
しかしオカリン側にとっては絢と桐生の事含めてトラウマボックスのひとつな件
鈴羽もか…オカリン、気をしっかり持ってくれ
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 23:53:20.36 ID:ztbnTBeAo
http://beebee2see.appspot.com/i/azuYqfrLBgw.jpg
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 15:36:12.51 ID:oBB9LLEa0
ssマダー?(・∀・)っ/凵⌒☆
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/14(木) 10:18:23.10 ID:zLRJPavpo
追いついたー
ツヅキマダー?
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/06/19(火) 19:57:05.09 ID:j7MHI1PAo
一度落とそうと思います、理由は時間とか形式を変えたいとか色々。
同じスレタイでスレが立ってたら最後まで書いてから立てたと思ってください。
ここまで読んで下さった方はありがとうございました。
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/19(火) 20:09:29.94 ID:b12MgdKio
うわあああああああああああああああああああ
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/06/19(火) 20:10:16.30 ID:muIVGreoo
いやあああああああああああああああああああ
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 20:25:31.67 ID:KsRGZd2Vo
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 21:59:31.69 ID:WvPXtsTto
おかりぃぃぃぃん‼
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 23:42:49.64 ID:S+TacTEyo
書き溜めてから改めてとか期待せざるをえないな
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 01:08:08.12 ID:DfEjZXg/o
wktkがとまらない
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