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ちなつ「どうしてあかりちゃんじゃなかったんだろう」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/05/31(木) 21:28:31.57 ID:C3MPF4qX0







――どうしてあかりちゃんじゃなかったんだろう。








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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
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2 : ◆qvIZyIvV7w :2012/05/31(木) 21:30:24.93 ID:C3MPF4qX0
ふと口を突いて出た言葉に、きっとあかりちゃん以上に私がドキリとしてしまった。
どうしてあかりちゃんじゃなくて。そんなの当たり前のことじゃない。私の運命の人は結衣先輩なんだから。

「な、なんてね」

慌ててそう付け足して笑うと、あかりちゃんは明らかにほっとしたような顔をして、「びっくりしたよぉ」と笑い返してきた。その表情は、少しだけ私の中のなにかをカタリと動かし、重くのしかかってきて。

「うん……」

そっと目を伏せた。あかりちゃんはそれをなにか勘違いしたのだろう。
「結衣ちゃんだってちなつちゃんがいっぱい話してくれるの嬉しいはずだよ」
違うよ、そうじゃない。そうは思ったけれど、口には出しはしないし出せるはずもない。
3 : ◆qvIZyIvV7w :2012/05/31(木) 21:31:05.61 ID:C3MPF4qX0
「だから落ち込んでちゃだめだよ、ちなつちゃん」
「そうだね、そうだよね」

私は言った。そして、いつものように空元気でも自信満々に笑わなきゃいけないのだ。
結衣先輩に振り向いてもらえるように。
だけど、あかりちゃんを前にしていると私の笑顔は消えていってしまう。

笑わなきゃと思うほどに、笑えなくなってしまう。


「……今日も、泊まってく?」


――たぶん、その言葉が聞きたいから。
4 : ◆qvIZyIvV7w :2012/05/31(木) 21:32:14.41 ID:C3MPF4qX0
今日は以上
かなりゆっくりとですが、完結はさせる予定。良ければ最後までお付き合い下さい
それではまた
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/31(木) 22:00:26.29 ID:qEBc9YMtP
ちなあか期待
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 00:17:11.21 ID:AJLwFfuq0
ちなあかの人か
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/06(水) 01:06:38.39 ID:NATgc21Vo
のんびりと進めてください
8 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/06/10(日) 23:23:32.40 ID:qDeHgclF0
―――――
 ―――――

先輩たちが卒業してから数ヶ月経ち、私たちが「三年生」と呼ばれるのにもようやく慣れ始めた頃。
私の気持ちは、ふわふわと彷徨っているみたいだった。

卒業した京子先輩が創設したごらく部。二年前の春、茶道部と間違えて入部してしまったここで出会った結衣先輩。
その人に一目惚れして、私はそのままずっとごらく部に居ついている。
何があったって結衣先輩一筋で、これからだってそう。そのはずだった。

規則正しいあかりちゃんの寝息。意識すると、途端にどうしようもなくなりそうで私は身体を丸めてきつくきつく目を閉じる。ごらく部のようなどんな活動をするのかさえ明確に決まっていない部活に(一応、去年の春に正式な部活動として認められはしたけど)新入部員なんて入るはずもなく、今ではあかりちゃんと二人きりだ。
9 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/06/10(日) 23:24:15.17 ID:qDeHgclF0
誰よりも、あかりちゃんといる時間のほうが長い。きっとそのせいなのだろうけど。

時々、結衣先輩への気持ちとあかりちゃんへの気持ちが混ざりそうになってしまう。私が好きなのはあかりちゃんじゃないのだ、結衣先輩で。そう言い聞かせたって、最近ではそれすらもうまくいかなくなっていた。二人きりのときに向けられる、あかりちゃんの優しい言葉や優しい笑顔が私を狂わせる。

『あかりはちなつちゃんのことちゃんと応援するよ!』

あかりちゃんに結衣先輩への気持ちを打ち明けたあの日から、私たちはきっと一番の友達になった。
友達だ。それ以上はなく、それ以下にだってもうなれない。前にも進めないのに戻ることすらできないのだ。
そのことがよけいに私の中の気持ちをひねくれたものにしそうで、こわい。
10 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/06/10(日) 23:25:34.75 ID:qDeHgclF0
「……はあ」

先輩たちが卒業してから、あかりちゃんの家に泊まることが多くなった。大抵は私が遅くまであかりちゃんの家に居付いて、あかりちゃんが「泊まってく?」と言うのを待っている。

ずるいというのは、もう随分と前から知っていた。だから私は敢えてそのずるさから抜け出そうとはしない。これだって全部私で、そんな私をあかりちゃんは受け入れてくれているのだし。これ以上、私があかりちゃんに求めることなんてない。欲張りになるのは結衣先輩のことだけなのだ。

そうよチーナ。いい加減、こんなふうにあかりちゃんに頼っちゃうのはやめなさい。

何度も、何度も。そう言い聞かせた。
あかりちゃんに悪いからとか、そういうわけじゃなかった。ただ、これ以上あかりちゃんの近くにはいたくないからで。ああ、違う。いたくないわけでもない。

頼ったところで、なにもならないことを私は知っているから。
そう、なにもならないのだ。このままずるずるとあかりちゃんの傍にい続けたからといって、なにが変わるでもない。

結衣先輩への気持ちも、それからこのどうしようもない気持ちの揺らぎだって――

けれど、とも思う。そもそも、私はなにを、頼っているのだろう。あかりちゃんに。
結衣先輩の代わりとして、あかりちゃんを見ているから。それとも、結衣先輩のいない寂しさを紛らわすためにあかりちゃんを?きっと、それ全部、なのだろう。この気持ちの揺らぎだって、そのことが関係しているのだ。

だったら尚更。そこまで考えて、私はいつもこの堂々巡りな思考にストップをかける。
考えていたって、それこそなにかが変わるわけもない。だから私は、そっと寝返りを打って、隣で眠るあかりちゃんの寝顔から目を逸らすのだ。
11 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/06/10(日) 23:27:11.12 ID:qDeHgclF0
本当に冒頭の冒頭を投下するのにかなりの時間が経っていたにも関わらず、今日は以上
それではまた
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/10(日) 23:33:29.81 ID:kmsd+flWo

ちなあか大歓迎
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/11(月) 03:30:44.95 ID:9QrF6JTZo
わぁいちなあか
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 17:10:30.70 ID:vXxaWJPIO
来ない
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 06:16:14.70 ID:Afvlp4MmP
小説っぽい文体のSSは続かない法則
16 : ◆qvIZyIvV7w [sage]:2012/08/03(金) 18:42:01.04 ID:iBp/bAlK0
長い間書き込まなくてすみませんでした。続きを練ろうにも時間がなく、筆も進まずにいまだに書き込める状況ではないのですが生存報告だけでも、と思ったので

いつになるかはわかりませんが必ず続きを書き込むつもりなので遅筆をお許しください。それでは。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/08/03(金) 19:28:06.69 ID:4Z0lvBfBo
焦らないでゆっくり考えて下さい
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/08/03(金) 19:34:43.51 ID:3m6mbXqk0
のんびり待ってます
19 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/11(火) 22:27:23.98 ID:NTiAzj4X0


「……え、いいけど」

その日は、あかりちゃんの家から学校へ行った曇り空の月曜日だった。

一緒に登校して、三年生になってからも相変わらず同じクラスだから一緒の教室に入り、一時間目をぼんやりやり過ごし、そしてうつらうつら、次は夢の中へワープしかけるはずだった二時間目と三時間目のその間。
あかりちゃんは「ちなつちゃん、ごめんね!」とあたふた私の席へ駆け寄ってきたのだった。

突然のことに首をかしげている私に、あかりちゃんは今日のお昼は一緒に食べられないと告げた。
珍しいなと思いつつも、私は笑って「別に気にすることないよ」と言った。
残念ながら二年生まで一緒だった櫻子ちゃんは向日葵ちゃんとは離れてしまったが他に一緒にお昼を食べる友達がいないわけではないし、平気だ。

それなのに申し訳なさそうなあかりちゃんに、私は別の幻想を抱いてしまいたくなる。

あかりちゃんにとって、もしかして私は本当に特別な存在なんじゃないか、と。あかりちゃんは私のことを特別想ってくれているんじゃないか、なんて。
もちろんそれは本当にただの幻想――いや、妄想であって、そんなはず、ないのだけど。第一、あかりちゃんは優しいから。

これはそんな優しさのために出た、あかりちゃんの本心だ。裏があるはずなんてない。
20 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/11(火) 22:28:23.05 ID:NTiAzj4X0
「本当にごめんねぇ」
「大丈夫だって。ほら、もうすぐチャイム鳴るよ。席戻ったほうがいいんじゃない?」
「あ、うん。じゃあ」

名残惜しそうに時折ちらちらと私のほうを見ながらも、あかりちゃんは自分の席へ戻っていくあたり優等生だ。
いくら三年生といえど、まだ皆受験というのが現実的ではないからそこまで授業に集中したりなんてしない。ちらほら休み時間も勉強している人はいるけど、チャイムギリギリまで友達のところでお喋りに興じている人がほとんど。

まったくもう。あかりちゃんったら真面目なんだから。

次の授業までもう少し時間はあるんだから、私はそれまでまだちょっとお話していたかったのかもしれない。自分から
「席戻ったほうがいいんじゃない?」なんて言ったくせに。

こんな自分の気持ちに、未だに戸惑わずにはいられない。
それを押し殺すみたいに、私はこの頃増えた溜息をまた惜しげもなく吐き出して「なにかあったのかなあ」とあかりちゃんのいない昼休みを思い描きながら心の中、呟いた。
21 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/11(火) 22:29:12.85 ID:NTiAzj4X0
――――― 
 ―――――

あかりちゃんの用事は、どうやらいつも朝と放課後にお水をやっている学校の花壇についてだったらしい。

トイレに行って教室に戻るところを、隣のクラスの整備委員の人と話しているところを窓の外、見かけた。まだ雨は降っていないものの、今にでも降り出しそうな空の下をあかりちゃんと他の女の子がいて、花壇の前にしゃがみ込みながら話していた。

文句を言われているようでもないのでひとまず安心する。文句というよりも、談笑に近そうだ。大方花についてなにか相談事だろう。

ま、あかりちゃんだもんね。

そんなふうなことを思った。
あかりちゃんは人や植物のために自分から動ける子なんだから、そんなあかりちゃんの密かな優しさに気付いた人はみんなあかりちゃんが好きになるはずだ。なんだかんだあかりちゃんは人気者なのだ。

一年生の頃は空気だとか散々言ってからかっていたけれど、今思えば本当に、いい意味であかりちゃんは空気なんじゃないかと思える。気が付けば、あかりちゃんは私の中のどこかに溶け込んでいるから。

「給食、いらないのかな」

そう呟いてすぐに、お昼休み、教室を出る前にあかりちゃんが給食をのせたプレートを持っていたのを思い出して苦笑した。
22 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/11(火) 22:30:19.38 ID:NTiAzj4X0





寂しいとか、寂しくない、とかきっとそんな簡単なことじゃない。
気持ちはもっと複雑で、私は辿り着きたくない答えに辿り着きそうで怖かった。





23 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/11(火) 22:33:16.39 ID:NTiAzj4X0
雨が降ってきていた。

鞄の中を覗き込むと、折り畳み傘は入っていない。ごらく部の部室には今、私一人だった。あかりちゃんは部室に来る前にまた誰かに呼び出されたらしく、あとで来ると言ってそれっきりだ。

最近こんなことが多いな、とぼんやり思う。
というよりも、これまで私がそんなことは気にしなかっただけなのかもしれない。

携帯を開けた。
一通、新着メールの表示。京子先輩からだった。
しかも私宛ではなくって、一斉送信。アドレスを見るに私とあかりちゃん、そして結衣先輩までも含まれている。

『やっほー、みんなお久っ(・ω<)突然だけど、次の日曜みんなでどっか遊びに行こうよ!』

私とあかりちゃんはともかく、結衣先輩にも久し振りだなんて。
ああ、でもそっか、と私は一人ごちた。
結衣先輩と京子先輩は、意外にも違う高校に進学したのだ。それでもあの二人は頻繁に会っていると思っていたから少し驚く。高校生になると、どれだけ仲が良くても離れてしまうものなのだろうか。

私はとりあえずOKという返事を返す。
結衣先輩は来るのだろうか。そしてもし結衣先輩に会ったら、私はどんな顔をするのだろう。すべきなのだろう。
24 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/11(火) 22:34:12.75 ID:NTiAzj4X0
いつまで経ってもあかりちゃんは来なくて、メールを打って先に帰ることにした。
雨も小降りになってきたし、傘を借りずとも走ればなんとかなるはずだ。

昇降口で靴を履き替え、少しだけ待ってみた。でもあかりちゃんが来る気配はない。当たり前だ。
あかりちゃんもあかりちゃんで忙しいのだろうし。
そう思って、また少しだけ雨脚が強くなってきた空の下を駆け出したとき、「ちなつちゃん、待ってぇ!」と声が聞こえた。

ぎょっと雨の中を振り返ると、昇降口のところであかりちゃんが肩で大きく息をしながら立っていた。

「あかりちゃん!?」
「ち、ちなつちゃん、傘は……?」
「忘れちゃって……」
25 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/11(火) 22:35:14.50 ID:NTiAzj4X0
「ちょ、ちょっと待ってね、あかり、傘あるから……」

鞄をがさがさと探って、あかりちゃんは折り畳み傘を取り出す。ちゃんと持って来てるあたり、あかりちゃんらしいと思う。しかしさすがに二本も三本もないらしい。

あかりちゃんはこちらに走ってきながら器用に傘をひろげる。
あーあ、せっかく傘があるのに結局濡れちゃうじゃない。こういうところもあかりちゃんらしいのかもしれないけど。

「はいっ!かなり狭いけど……」
「ううん、ありがと。助かった」
「えへへ……ちなつちゃんからメールきてて、慌てて来たの。ごめんね、ほんとはすぐに部室に行くつもりだったんだけど」

大丈夫、と私は答える。
すぐ傍で聞こえてくるあかりちゃんの声や吐息や、時折触れる腕の温もりで、それ以上は答えられなかった。

まったくもう。あかりちゃんったらほんと、真面目なんだから。

こんなにも、こんなにも。そしてどこまでもどこまでも、この子は優しい。けれど、勘違いなんてするものか。
お願いだから、落ち着いて私の鼓動。
26 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/11(火) 22:36:02.87 ID:NTiAzj4X0
お久し振りです
少しずつ書けるようになってきたので、ぼちぼち書いていきたいと思います
今夜は以上、それではまた
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/11(火) 22:36:55.15 ID:lcIW5evHo
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 23:15:43.68 ID:tCUMrUCSO

続き楽しみに待ってる
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 01:22:48.61 ID:qj3n8luSO
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/12(水) 02:52:43.41 ID:ydbFtBGLo
31 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/12(水) 22:17:20.11 ID:IkW9xL0S0


『じゃあ日曜の朝十時に七森中正門前に集合!』

金曜日の夜中に、ようやく京子先輩から返信がきた。メールがきて、私がそれに対してした返事も忘れかけていたから、最初面食らった。

また京子先輩、突然に。

そう思ってすぐに、以前ちゃんと誘いのメールが来ていたことを思い出して苦笑せざるをえなかった。
先輩がまだ中学校にいた頃はなんの相談もなしに薮から棒にどこそこへ行く、と言うことが多かったから。(当たり前だけど、それはほとんどの場合頓挫だ)

今思えば、月曜日のあのメールは珍しかったのかもしれない。それともただ単に、京子先輩が変わったのだろうか。けれど待ち合わせ場所が七森中正門前なんて書いてあるから、やっぱり変わったなんてことはないのだろう。
現役でこの学校に通っている私たちのことも考えてほしい。
呆れたような安心したような、どっちつかずの息を吐いて私はメールを閉じた。

この前と同じ一斉送信のメールには、結衣先輩のアドレスも含まれていた。
32 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/12(水) 22:18:05.96 ID:IkW9xL0S0


土曜日はその一日中、なにを着ていこうか、結衣先輩に会ったらまずなんて言おうか、なんてそんなことばかり考えて過ごした。

結衣先輩と会うのは、久し振りのことだったのだ。
先輩たち二人が卒業してからは一度も会っていないから、もう数ヶ月。以前の私なら発狂寸前だったかもしれない。
もともと毎日連絡を取り合っていたわけではなかったから(学校で会えるだけで満足していたし)、離れてからは連絡がなくなったのも当然のことで。


33 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/12(水) 22:19:24.97 ID:IkW9xL0S0


ずっと落ち着かなくて、あかりちゃんに数度電話した。
そのたびにあかりちゃんは嫌がることもなく付き合ってくれた。

本当は、あかりちゃんに結衣先輩のことを話すのは少し気が引けた。
結衣先輩を、あかりちゃんと話すための理由にしている気がして。

最近では相談事をすることも少なくなっていて、けれど結衣先輩のことを口に出すとあかりちゃんは普段どおり――ううん、普段よりもっと嬉しそうに答えてくれたのだ。

三度目の電話のとき、「明日、結衣ちゃんと沢山お話できるといいね」
きっとそれは、あかりちゃんの心からの言葉だったのだと思う。
だから私も、「話すだけじゃなくって、もっといろんなことしてもらっちゃうんだから!」なんて。
そんなことを口走って、「いろんなこと」ってなんだろう。ぼんやり思った。

34 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/12(水) 22:20:22.21 ID:IkW9xL0S0
今夜も数レスで申し訳ない
週末にはもう少しがっつり投下したいと思ってます
それではまた
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/12(水) 23:56:02.05 ID:Muvwe9awo
楽しみにしてます
36 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/17(月) 23:53:10.79 ID:yAfUJDv40
―――――
 ―――――


翌日はびっくりするくらいにカラリと晴れていた。
月曜日から崩れていた天気は週末まで続くと言われていたのが、ここにきてその予報を裏切ったようだった。


37 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/17(月) 23:54:12.82 ID:yAfUJDv40
私はというと、朝からバタバタと家の中を走り回る。
昨日の夜から入念にファッションショーを繰り返していたのに、今朝になって「やっぱりだめ!」とクローゼットを引っかき回してかき集めたありったけの服を持って日曜の惰眠をむさぼっているお姉ちゃんの部屋に飛び込んで。

「なあに、ちなつ……まだ八時じゃない」

「もう八時だよ、お姉ちゃん!いいからちょっと手伝って!」

「手伝ってって、昨日も散々付き合ってあげたのに……」

「そうだけど、お願い!今日は、その……かわいくして、行きたいから」

かわいくして行きたい。女の子ならいつでもかわいくいたいのは当たり前だけど、今日は普段より特別なのだ、と思う。
だって、久し振りに結衣先輩と会うのだ。それなりの準備はしていきたい。自分の気持ちが見えなくなっていたとしても、これは自分なりの意地なのだ。きっと。

お姉ちゃんはそんな私の勢いを目の当たりにして、「昨日のでも充分可愛かったのになあ」と言いながらも包まっていた布団から起き出してくれた。
38 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/17(月) 23:55:27.62 ID:yAfUJDv40
結局、早くに起きたのに家を出たのは待ち合わせ場所にギリギリ間に合うであろう二十分ほど前だった。

まああかりちゃんや結衣先輩はともかく、京子先輩なら遅れてくるはずだろうし――

そんな考えが間違いだったらしい。
髪が乱れないようにあまり走らなかった私が七森中の正門前に着いたのは待ち合わせ時刻より一分早いだけだった。
そしてまだ一分もあるというのに、「ちなつちゃーん、だーっしゅ!」と京子先輩がそこから私を見つけてぶんぶん手を振っていた。

「きょ、京子先輩!?」

私は唖然とした後、その横にはすでにあかりちゃんや結衣先輩の姿があるのを確認して「みなさん早すぎですう!」と自業自得と知りつつ半ば八つ当たり気味に駆け出した。

「おはよう、ちなつちゃん。大丈夫?」

ゴールまでちょっとの距離を走っただけで、息が弾む。「ちっなちゅー!」と抱きついてくる暑苦しい京子先輩は放っておいて、私は「遅れて、すみません」と顔を上げた。
39 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/17(月) 23:57:07.36 ID:yAfUJDv40
結衣先輩が優しい顔をして私のことを見ていて、しばらく忘れていた、結衣先輩という存在の大きさを改めて実感する。

久し振りに見る結衣先輩は、中学生の頃より当然大人っぽくなっていて、少しだけお化粧もしているみたいだった。それは京子先輩も同じで、少しだけ自分の子供っぽさに恥ずかしくなる。

結衣先輩は私の言葉に「全然遅れてないから平気」と笑って。

「いつもの京子のほうが何倍も遅いしね。ほら京子、ちなつちゃんから離れろ」

「やーん、ちなちゅとくっつかせろー!」

「うるさいっ」

京子先輩への結衣先輩の鉄拳は、今でも健在のようだ。でも、学校も違っているはずなのに私の知っている先輩たち二人のやり取りとまったく変わっていない。
私なんて、久し振りに会う結衣先輩や、不本意ながら京子先輩にも少し緊張していたというのに。
これは幼馴染、というやつだからだろうか。
40 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/17(月) 23:58:42.68 ID:yAfUJDv40
そんなふうなことを思っていると、「ち、ちなつちゃん、今日も可愛いね!」と先輩たちの傍でおろおろしていたあかりちゃんが声をかけてきた。

あかりちゃん、その言い方じゃどこかのヘタなナンパみたいよ。

と言いたいのをこらえ、私は「ありがとっ」ととびきりの笑顔を振りまいてみせる。
ほんとは、少し照れ臭かったこともある。でも、家を出る時間を引き延ばしてまで選んだ甲斐があった、とも思う。
実際は結衣先輩に言われるつもりだったのに、あかりちゃんの声だけで自分の幼さに恥じ入っていた気持ちまでも吹き飛んでしまった。

「でもあかりちゃんだって。それ、新しいリボン?」

「うん、この前お姉ちゃんが買ってきてくれて、せっかくだからつけてみようかなって……」

「すっごく似合ってるよ」

「えへへ、嬉しいなぁ」

あかりちゃんのにこにこした笑顔がふと眩しく感じて、私はぱっと京子先輩に目を向けた。
41 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/17(月) 23:59:27.26 ID:yAfUJDv40
「ていうか京子先輩!」

「ほえ?」

「なんで今日に限って私より早いんですか!」

結衣先輩に怒られてしょんぼり気味だった京子先輩は、突然キリッとした表情をすると「それはちなつちゃんに早く会いたかったからかな!」抱きついてきた。

ああ、京子先輩全然反省してない!わかってたけど!

それでもこの押し付けられるような温もりが懐かしくて、必死に抵抗しようという気にはならない。結衣先輩も私が本当に嫌がっているわけじゃないことに気付いたのか、「しかたないなあ」という顔で京子先輩を見て溜息をつくだけだった。
42 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/18(火) 00:00:27.01 ID:gIu3waZk0
「ちなつちゃん分充電!」

「意味わかんないです……」

もふもふと髪に触れながら首筋に顔を埋めてくる京子先輩。
これにはさすがに離れてもらいたくなったけれど。

「でも京子ちゃんが一番だなんて、あかりもびっくりしたよぉ」

「えっ、京子先輩一番だったんですか!?」

「ふふん、私が一番なんて当たり前じゃないかー」

「当たり前じゃないから皆驚いてるんだろうけどな。でもどうせ京子のことだから、締め切り間近で徹夜とかだったんだろ?」

得意げに胸をそらす京子先輩に「なにいってんだか」と心の中で突っ込むと、結衣先輩が重ねるように突っ込んだ。
43 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/18(火) 00:01:26.84 ID:gIu3waZk0
京子先輩はというと、ようやく私にかけていた体重を元に戻すと「さすが結衣、よくおわかりで」とさらに胸をそらせる。

そういえば京子先輩、こころなしか少し大きくなった……?
自分の胸にそっと触れて確認。それから愕然。

「褒めてねーよ。いや、私が褒められてる?」

「私は私を褒めている!」

「わけわからん」

「ま、みんなに早く会いたかったっていうのはほんとだよ」

にっと京子先輩が笑う。
44 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/18(火) 00:02:27.89 ID:gIu3waZk0
結衣先輩が「よくそんな恥ずかしいこといえるな……」と顔を逸らし、あかりちゃんが「わあ、あかり嬉しいよ!」と本当に嬉しそうな顔をした。

私はというと、「なにいってんだか」とまた心の中ぼやいた。
ぼやきながらも、嫌な気分ではない。今さら京子先輩のこともそれなりに好きだったなんて認めるのは嫌だけど。
正直中学生の頃の京子先輩のことはあまり好きではなかったはずなのだけれど、離れてみるといい先輩だったんだなと思う。

会わなかった時間なんてきっとこの人にとっては関係なくて。
なんだ緊張なんてする必要なかったんじゃない。

「そんで待ってる間にちなつちゃんの新ミラクるんコスのチェックしてたんだけど、ちなつちゃんサイズ変わりなさそうだから着れるよね?」

足許に置いてあった鞄からどうにもアレな感じの衣装を取り出して期待に満ち溢れた目で私を見る京子先輩。
……やっぱり前言撤回だ。
45 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/18(火) 00:03:28.31 ID:gIu3waZk0

けれどそんな京子先輩のおかげで随分とリラックスできた私は、四人での時間をそれが当たり前だった頃のように過ごすことができた。

色んなお店をまわったり(高校生になると行動範囲が広がるらしくて、色んなところに連れて行ってもらえた)、ゲームセンターで遊んでプリクラを撮ったり。

やっぱり、四人でいるのは楽しい。

「ちなつちゃん、喉渇いてない?なにかおごるよ」
そして、やっぱり結衣先輩の仕草やその一言に胸の奥が熱くなる。

「あっ、はい!じゃあオレンジジュースでお願いします!」

「あかりは?」

「あかりもいいの!?えっとね、それじゃああかりはプカリがいいなぁ」

「ん、わかった。京子は適当なのでいいよな。じゃあ買ってくるからあいつがトイレ戻ってくるまで二人ともここにいて」

わかりました、と答えて少し離れた場所にある自販機へと駆けていく結衣先輩の後姿を見送る。
46 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/18(火) 00:04:28.62 ID:gIu3waZk0
歩きつかれて、ちょっと小洒落たお店(のその前)で、私たちはベンチに座って休憩していた。
京子先輩はさっき調子に乗って安いカキ氷を二杯も平らげたせいでお腹を壊したのか中々トイレから出てこない。今頃青ざめた顔をして呻いているだろう。

「結衣ちゃん、優しいなぁ」

「そりゃあ結衣先輩だもん。王子様みたいにかっこよくって優しくって頼りになるのは当たり前なの!」

あかりちゃんがふと漏らした声に反応すると、あかりちゃんは「えへへ」となぜか嬉しそうに笑った。
それがどうしてなのかわからなくて首を傾げると、「ちなつちゃん、結衣ちゃんのこと大好きだもんね」

「……う、うん」

いつもみたいに、はっきりとは答えられなかった。

いつもみたいに――そう、今日の私はいつもみたいな四人で、いつもみたいに過ごせていたはずなのに、ただ一つ、できないことがあった。

結衣先輩に触れられない。
どさくさにまぎれて抱き着いたり、手を握ったり、できない。
ふと、私の中の何かがブレーキをかけるのだ。それが少しだけ、不安だった。
47 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/18(火) 00:05:27.29 ID:gIu3waZk0
「良かったぁ」

「へ?」
また唐突にあかりちゃんがそう言うものだから、私はもじもじしていた手を止め俯かせていた顔を上げた。
良かったって、なにがだろう。



「あのね、あかり、ちなつちゃんが結衣ちゃんのこと嫌いになっちゃったのかなぁって」



ズキリ、と確かに胸の奥が軋む音がした。
48 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/18(火) 00:05:57.53 ID:gIu3waZk0




そんなわけないじゃない。
笑おうとして、笑えないことに気付く。
だから私は、代わりに「どうして?」と訊ねた。



49 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/18(火) 00:06:45.91 ID:gIu3waZk0

「だってちなつちゃん、最近結衣ちゃんのお話してくれなかったでしょ?だからちょっと寂しくって」

にこにこ笑いながら、あかりちゃんが言う。私は、もう一度顔を俯かせて必死に表情を繕った。
笑って、私。笑うのよ、チーナ。
だって今笑えなかったら、あかりちゃんを尚更心配させてしまう。なのにどうしてだろう。私は。

「ちなつちゃん……?」

私の様子に気付いたのか、あかりちゃんが心配そうな声で顔を覗きこんでこようとする。「やだなあ、あかりちゃん」

「そんなわけ、ないでしょ」

ちゃんと、笑えただろうか。あかりちゃんはほっとしたように「そっかぁ」と笑顔を見せた。
その笑顔を見て、私の心はどうしてか、ずっとずっとギシギシと軋んだ音をたてていた。
50 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/18(火) 00:08:05.17 ID:gIu3waZk0
「二人ともおまたせ」

「あ、結衣ちゃん!京子ちゃんも!」

「いやあ、長い戦いだったよ……死ぬかと思った」

「自業自得。ほら、コーヒー」

「おおう、結衣女神!……って、ブラック、だと!?」

「あかりはプカリ、ちなつちゃんはオレンジジュースね。……ちなつちゃん?どうかした?」

「え、あ、いえ!ありがとうございます、結衣先輩!」

あかりちゃんのはしゃいだ声だけがやけに大きく聞こえて、結衣先輩が戻ってきてその優しい顔が目に入っても軋んだ音はずっと続いたまま、止むことがなかった。
51 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/09/18(火) 00:09:16.66 ID:gIu3waZk0
週末と言いながら週明けになってしまってすみません
今夜はここまで
それではまた
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) [sage]:2012/09/18(火) 13:14:39.05 ID:4pj6+8I6o
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/18(火) 14:30:34.07 ID:fe21V7Fuo
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/18(火) 23:24:12.45 ID:/Zp7upl00
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/10/30(火) 12:41:39.36 ID:wh1y8xyHo
これは良スレ
続きが気になる
56 : ◆qvIZyIvV7w [sage]:2012/11/01(木) 20:39:59.83 ID:1bxE3yja0
生存報告のみ
また近いうちに投下します
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) [sage]:2012/11/02(金) 00:34:04.02 ID:QFli+HRso
応援してます
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/30(金) 17:50:50.54 ID:Y+QTMCX60
続き待ってます
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 12:26:10.94 ID:gt8zuuGIO
いつまでも待ってます
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 00:32:27.62 ID:8HtCDkYvo
 
61 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/12/12(水) 22:59:54.95 ID:O/HrC83h0


家に帰ってすぐ、私は今朝ギリギリまでかかって選んだ服を脱ぎ散らかしシャワーを浴びた。
熱いお湯を頭からかぶりながら、出てくる重たい息を吐き出して目を閉じる。
まだ少しお腹がゴロゴロすると言って先に帰って行った京子先輩に付き合う形であかりちゃんがいなくなって、少し気持ちは楽になった。そんな私を家まで送ってくれたのは結衣先輩だった。

「それじゃあちなつちゃん、また今度ね」

そう言って背を向けた先輩の背中に、私はメールしていいですか、とただすがりつくみたいに、そんな言葉を投げ掛けていた。

なにか、どうしてもつながっていられるものがほしかった。繋げていられるものが、必要だった。
結衣先輩は不思議そうに振り返った後、「当たり前」と優しく微笑んだ。
62 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/12/12(水) 23:22:56.32 ID:O/HrC83h0
絶対、絶対にメールします!

そう言って結衣先輩を送り出した、たった数ヶ月前なのにまるで遠い昔のような春。
最初は言葉通り、何度もメールのやり取りをした。けれど、その頻度が徐々に少なくなっていき、最終的にパタリと途絶えてしまったのはいつの頃だっただろうか。

濡れた頭をタオルで拭きながら、私はベッドの上、体育座りで壁へともたれかかる。この間落としてしまったからか、足許に投げ出した携帯には沢山の傷がついていた。

結衣先輩のことが好き。
それには間違いないはずなのに。

『あのね、あかり、ちなつちゃんが結衣ちゃんのこと嫌いになっちゃったのかなぁって』

あのときの私がどうかしていたのだと言い聞かせたって、胸の中に残る違和感は、どうしたって消えるはずなんてなかった。
63 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/12/12(水) 23:23:36.01 ID:O/HrC83h0



結衣先輩と、久し振りに会えて、胸が弾んだ。
たくさんお話できた。嬉しかった。
けど。
けど、それだけだ。それだけしか、ない。



64 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/12/12(水) 23:24:08.94 ID:O/HrC83h0
あんなに恋い慕っていた人のはずなのに、私の中で、それ以上の気持ちは湧き上がらなかった。今だって、メールしていいですかと引き止めておきながらどんなメールも送るのを躊躇っている。

『結衣ちゃんのこと嫌いになっちゃったのかなぁって』

あかりちゃんの声が、表情が、今になって、何度となく頭の中に何度も映る。
嫌いになるなんて、ありえるはずもない。ありえるはずもないのに、だったら好きなの?と自分に問いかけてみれば、私の奥底で、わからない、と声がした。
65 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/12/12(水) 23:24:53.34 ID:O/HrC83h0
明日は月曜日。学校だ。

今日一日、ずっと嬉しそうに笑っていたあかりちゃんのことを思い返して、今の私がとてつもなく暗い気分に陥っていることを自覚する。
私だって、やっぱり今日の日を、楽しみにしていた。それと同時に、ずっと中途半端だった気持ちがまた正常になるんじゃないかと、期待していた。

でも、わからない。なにも、変わらない。
それどころか、ますます、私の中で結衣先輩というひとの存在が、どこか彼方へいってしまうみたいに感じていた。

――あかりちゃん。
私は明日、あかりちゃんに会ったとき、どんな顔をしてしまうんだろう。ふと、不安になった。
66 : ◆qvIZyIvV7w [saga]:2012/12/12(水) 23:25:28.16 ID:O/HrC83h0
遅くなってすみません
今夜は以上
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/12(水) 23:29:54.37 ID:kzHS7lyy0
乙です!
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 12:05:11.77 ID:NcmjuFlWo
おつー
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 18:40:56.10 ID:98nT8nO80
おつです
70 : ◆qvIZyIvV7w [sage]:2012/12/21(金) 20:50:22.96 ID:yksqzUOq0
突然ですが、一旦更新を中断します。
理由は単純に書けなくなったこと、このまま無理に書いてもつまらないものしかできないという危惧からです。
ごめんなさい。またいずれ書けるようになったら投稿したいと思います。

今までありがとうございました。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 01:07:29.34 ID:UC5IV9hSO
戻って来るの楽しみにしてるよ
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 12:05:44.93 ID:M+jgW6qAO
非常に残念
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