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少女「空を飛びたい」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:11:42.68 ID:oLaniepVo



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風を切る音が身を包む。けたたましいアラート音と共に。

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視野は狭まり一面の灰色が感じられるのみ。

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そのまま堕ちてゆく、灰色の空に。

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ああ何故だろう、こんな時でも月は美しい。

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2 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:13:21.51 ID:oLaniepVo

すみません立ててしまいました。

両立できるように…両方エタるとかないように…

同時進行します。
3 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:14:13.96 ID:oLaniepVo


『この空は君を呼んでいる』




『けれども未だに届かない』


4 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:14:53.45 ID:oLaniepVo


人は飛べる。

いきなり訳が分からない事を言ってすまないと思う。

なんていっても、今世紀においては人は飛べるなんて言う“一般常識”をここでさも得意顔で話すのはばかばかしくあるからだ。

今では人は僅か親指ほどの機器を人体へ埋め込むことによって様々な能力を得られる時代となった。

猫科の動物のようなしなやかな跳躍能力。犬科の動物に匹敵する俊足と持続力。地中に凄むモグラのごとく鼻が利き、鷹や梟と同等までの視力をもち、果てにはコウモリのように超音波を扱える…

こんな人間も実現不可能ではない。

そして我々は中世から憧れてきた翼までも手に入れた!

未だに改善点は山積みだが、それだけ切り開くべきフロンティアが残っているという事だ!

若き技術者の卵達よ、この学校を最大限利用し是非ともまだ見ぬ新天地に足を踏み入れて欲しい。

5 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:15:18.48 ID:oLaniepVo

教授「そして理解をして欲しい。この授業では約100年前から発展を続けるアンドロイド技術と、それをベースに開発された個人航行支援技術、略してPASTの技術的背景と基本技術について講義を行う為だ。まずは手元のシラバスを…」

講義室に拡声された教授の声が響く。

今期最大の目玉講義…応用航空工学。それはこの世界において最も重要な技術となったPASTについて学べる授業だ。

PAST…Personal Aerocruise Supporting Technology…だったけかな、簡単に言ってしまえば一人の人間を簡単に飛べるようにしてしまうという、とんでもない技術だ。

今では国際免許としても認められていて、一度免許を取れば誰でも空を飛ぶことができる。鳥よりも自由自在に。

そしてこの学校はそれを開発した研究者が在籍していたと言うことでこの技術に関してはほかの研究機関とは群を抜いた開発力をもっている。

そのため、この学校は空に憧れる人が多く在籍している。俺もそんなひとりだった。

教授「…以上で本日は終了とする。本格的な講義は次回からとなるのでそれまでに準備等を済ませておくようにしてください。」

6 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:15:49.89 ID:oLaniepVo

ガヤガヤ…

教壇に立っていた教授が部屋を退室し、辺りは外へ移動しようと席を立ち、思い思いに雑談をはじめる学生で賑やかになった。

友「今日はガイダンスだけだったみたいだな。」

そんな中、隣で一緒に講義に出ていた友がつぶやいた。こいつは同じサークルの仲間で、大学に入ってからの付き合いだが、息が合うのかほとんど一緒につるんでるやつだ。

男「みたいだな。少しから回りした感じだけど…まあ、時間が空いたし一回サークルに寄る?」

友「ん、ああ。それがいいな。なんか先輩からも連絡あったし。」

男「じゃあさっさといくか。何時までにこっち戻ってきたら良かったんだっけ?」

友「あー…昼が途中に入るから後は三時間はあるな。」

男「なら大丈夫か。」

俺と友は荷物を手早くまとめていつもの場所へ向かった。

7 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:16:26.30 ID:oLaniepVo

いつもの場所…それは自分の所属するサークルに割り当てられた一室なのだが、これまたキャンパスの隅に追いやられていることに加えて狭いこと何の。まあ、弱小サークルに部屋を割り当ててもらえているだけマシか…

友「しっかし、遠いとなかなかいく気力がわかないよなあ。どうにかならないものかな。」

男「ならないだろなあ…弱小が無理に部屋を占有してるようなもんだし。」

友「だよなあ…」

ある程度の人数と実績があればそれなりの活動場所が得られるはずなんだろうけど、まあ活動しているのは俺と友を含めて三人だけで実績もほとんどない。ある教授のコネで無理やり部屋をもらったようなものだといわれてるし仕方ないことなんだろう。

しかし講義室が入っている棟から歩いて30分かかるのはやっぱりどうかと思うんだ…

男「そりゃあ、もう廃れた技術だからねえ…“あれ”は。」

8 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:16:55.09 ID:oLaniepVo

で、貴重な費やしてようやくサークルが入ってる多目的棟に到着した。ここはキャンパスの北端にあって中心からは2kmほど離れている。どんだけ遠いんだ。


『電装義肢研究所』


それがこのサークルの実態なのだが…正式な研究は十年以上昔に打ち切りになっていて古い計測器や何やらが放置されているだけだ。そこを当時の研究室のメンバーに掛け合って、間借りさせてもらっているのが現状だ。

男「しつれいしまーす。」

友「先輩ちぃーっす。」

部屋に入る。いつも不思議に思うことは、10畳にも満たないこの部屋によくこんな機材を詰めたなってことと、その真ん中の事務デスクで優雅(?)にコーヒーをすすっている先輩の後姿だ。

先輩「おー、二人ともよくきたな、こんな辺鄙な場所まで。」

いやいや、先輩が呼んだんですよね、こんな辺鄙な場所まで。

友「あ、はい。ガイダンスだけで終わったので。呼ばれたとおりに。」

この部屋には実験に使うような工具もあるが、それよりも多いのが先輩が拾ってきたりする“ガラクタ”だ。廃棄された計測器やPCパーツから、何に使いたいのかわからない大型の照明器具や薄汚れたぬいぐるみ…あ、あっちには先輩の着替えがあった…

そういえば、この部屋にものが増えた気がする…先輩はいつもジャンクをあさっては持ち込んでくるから片付けるのが大変だ…ここはごみ屋敷にしたくないからなあ。あ、あのダンボールか。

9 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:18:19.14 ID:oLaniepVo

先輩「お、早速男は気づいたみたいだな。あれが今日ここまで呼んだ理由なんだが…まあもう少し待ってくれ。」

やっぱりアレか…部屋の隅にもうしわけ程度においてあるけど、人一人が入るんじゃないかってくらいにでかい。

先輩はすすっていたコーヒーをおいてキーボードをタイプし始めた。

友「…なあ、今日の先輩は何を拾ってきたんだと思う…?」ヒソヒソ

男「…たぶんあの大きさだから古いアンドロイドでも拾ってきたんじゃないの?」ヒソヒソ

友「…さすがにそれはないだろ…登録制で不法投棄は厳罰だし…」ヒソヒソ

とまあ、二人で予想を立てつつキーをタイプする先輩の後姿を眺めるんだが…やはりおかしい。

一応女性?であるはずの先輩だが、頭髪はなんか切り揃えられていない様な感じで、油とカーボンで汚れて白い場所が存在しない白衣を、さらに丈の長い白衣の上から羽織っている上に、丈を詰めていないジーンズは裾を引き摺っている。

背丈は178とかなり大柄で、街中ですれ違っても他人の振りをしたいような容姿といえよう。

ちなみに俺は16ピーッだ。ああ、妬ましい。

10 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:20:21.28 ID:oLaniepVo

先輩「さあ、用意はできたぞ。驚き慌てふためくがよい!さあ、起動!」


先輩はどこから出してきたのかわからない、大型の赤い押しボタンスイッチを殴って(!?)奇声を上げた…この人、本当に大丈夫か?



そして時が止まり数秒後…何もおきなかった。いろんな期待を裏切って何も起きなかった。

先輩「あっ、あれ〜?なんか間違ったかなー…?電源入ってるよなー…?」

先輩、うろたえる。見た目はアレでも、いつも実験やら勉強やらに関しては天才の域に達している人間のはずで、こういうことは滅多にない。

先輩「もしかして本体に異常とか…まさかなあ…」

そうつぶやきながらダンボールに近づく先輩。こういうのってアレだよね。花火が着かないからって覗くなってやつ。

???「うおらァーーーッ!!」

少し気の抜けた叫びでダンボールは吹っ飛ぶ、何者かによって。そして体躯の割りに軽い先輩も吹っ飛ぶ、ダンボールに弾き飛ばされて。

ほら言ったとおり。

11 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:23:00.17 ID:PCscGXifo

ガッシャーン

男「ちょっ、先輩大丈夫ですか?」

先輩「いてて…とりあえず大丈夫だが…」

友「おい、それよりもあれって…」

友の一言でダンボールがあった場所を見る。

そこには、人型の…

???「…ふぅ。とりあえずは動けるようだな…」



男「あれって…アンドロイド!?」

友「おいおい…まさか盗んできたんじゃ?」

頭を抱えながら先輩は立ち上がる。やれやれ?といった感じでアンドロイドに近づいてゆく。

先輩「だめじゃないか。いきなり立ち上がっちゃあ。」

???「約束と違う。いまだここは研究室みたいだが?」

約束…?何のことだろう。まあ、先輩とする約束なんて大抵ろくな物でも無いと思うけど。

先輩「ああ、ここはあんなところの研究室じゃなくて、大学の研究室だよ。」

???「まさか反故にしようとするか…私相手になんとまあ…」

アンドロイドは疑った目であたりを見渡す。すると俺と目が合った。そしてすこし口角を上げて皮肉めいた言い方で言った。

12 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/02(土) 18:29:23.82 ID:cQQzqaAao

???「ふむ、確かに違うみたいだな。元の研究室に子供はいなかったからな。」

男「俺は、子供じゃない!」

???「そういわれても私よりも背が低い男は子供としても問題ないだろう?」

男「これでも19歳だっ!おまえだって子供みたいじゃないか!!」

???「アンドロイドに子供もクソもあるか、小僧。」

男「はぁ!?てめえっ…」

友「とりあえずそこらへんにしておけ。」

先輩「そうそう。男君もいつまでも低身長ネタで煽られても怒るなよ。」

???「ふんっ。まあ、この小僧に免じて信じてやろうか。」

男「なにそれ、煽ってるの…?」

今の自分の眉間には青筋が浮かんでいるであろう。それぐらいこのアンドロイドは神経とか人のコンプレックスを逆なでしていた。

先輩「あはは…取りあえず二人とも落ち着こう、な?」

そんなんじゃいつまでたっても身長が伸びないぞ、と加えて先輩はアンドロイドと奥に引っ込んだ。。ほんとうになんなんだあの人達は…。

友「先輩、男にあんな事言って…ここ一年一ミリも伸びてないのにな…」

男「おい、やめてくれ…」


意外な伏兵が近くにいた。

13 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/02(土) 18:30:33.77 ID:cQQzqaAao
夜にまた来ます
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/02(土) 20:39:09.68 ID:EQ7v0Qg50
面白そう期待
15 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/03(日) 00:32:14.54 ID:CnCeYT2Lo

ともかく数分後、俺は友に宥められ先輩が裏から戻ってきた後にだが、改めてその少女みたいなアンドロイドの紹介となった。

少女「正式名称はATD-AX。通称、概念実証機『詠神』だ。便宜上、私のことは少女と呼ぶがよい。一身上の都合によりしばらくここに世話になる。よろしく。」

その自己紹介に唖然とした俺と友は、きっと間抜けな顔を晒しているだろう。それと反対に、先輩以下二名はなにやらしてやったりと言いたげな顔をしている。ああなんて憎たらしいのだろう(主に少女を指して)。

男「はぁ…まじかよ…」

不意にそんな言葉が零れる。先輩は本当にアンドロイドを連れてきた…そしてあろう事か軍事用だ…。そんな言葉も言いたくなる。理由はそれだけでないが。

16 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/03(日) 00:33:37.50 ID:32gjHf/Qo

今一度少女を見る。白金のように美しく光る瞳。首元から覗くギャップで映えるMILコネクタ。そして大きな気圧孔はワンポイントのようで良く似合っている…完全に空軍仕様のアンドロイドだった。

先輩「はいはいはい。少女が綺麗だからってジロジロ見るのはマナー違反だぞ。」

男「なっ、みみみ見てねえよっ!」

視線が少女にいっていたことに気づき、はっと目をそらす。

少女「ほー、小僧のくせに私の色香がわかるのか。」

男「お前なんかに欲情するわけ無いだろ!このちんちくりんめ!」

やっぱりこいつは俺を徹底的に煽りたいようだ。

先輩「ほらほら、これからやること多いんだからいちいち反応しない。全く、煽り耐性が無い男はモテないぞ?」

どういう関連性があるのかよく分からない言葉で場を濁され、取りあえず引っ込むことにした。友もいい加減イライラしてきているみたいだしな。

先輩「とりあえず、男と友の説明はもうしてあるから自己紹介はしなくて大丈夫だ。あと、詠神に関しては絶対に口外するなよ?お前らまで共犯でつかまるからな。一応呼ぶときは少女と呼んでくれ。」

捕まったら多分死ぬしな、なんて付け加えて先輩は奥へと再び引っ込んだ。

背筋が寒くなる一言だった…いつも冷静でポーカーフェイスな友も若干苦い顔をしている。

少女「まったく、そんなことで肝を冷やしている様じゃまだまだ子供だな。ああ、小僧だから当たり前か。」

ガッターンッ!!


どうやら俺はこいつと仲良くできなさそうだ。


17 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/03(日) 00:34:16.80 ID:32gjHf/Qo


友「概念実証機…しかもよりによって『詠神』か…」

あのあと先輩に研究室から追い出された俺らは多目的棟の屋上で遅めの昼食を食べていた。そんな時に友はふと呟いた言葉が引っかかった。

男「ん…、友は何か知ってるの?」

友「あ…ああ、軍事マニアの間で囁かれてた噂って程度なんだがな、すこし。」

そう言って残りのホットドッグを口につっこみ、友は携帯の投影ディスプレイを映す。

友「実際に読んだ方がいいだろ。えっと…ああ、これだ。」

そういって映し出したのは日本防衛軍の、特に空軍に関してのファンサイトだった。

友「この記事を見てくれないか?」

そう言って端末を渡される。記事の見出しには

「概念実証機『詠神』の組み立てが開始された?」

×月○日、日本の航空機メーカーMIK社の呉工廠にて航空機適用型の新型アンドロイドである概念実証機『詠神』の組み立てが開始されたという情報を入手した。

概念実証機『詠神』とは、防衛軍とMIK社の合同事業であるX計画(次世代軍用アンドロイド調達計画)のスピンオフ計画であると考えられている計画によって開発されているという噂の機体だ。

だがしかし、関係省庁及び防衛軍等は存在を否定しており、MIK社はこの『詠神』に関してはノーコメントとしている。

また、この『詠神』計画の発端としては……

18 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/03(日) 00:34:54.93 ID:32gjHf/Qo

男「これじゃ、詳しいことは分からないな…」

端末を友に返して思い返す。非公式の計画。存在が否定されているはずの機体。それでも、目の前に現れたアンドロイドは『詠神』と名乗った。

友「とりあえず少なくともアレは…タダモノじゃあないってことだ。」

男「ならどうやって先輩は…そもそもなんでわざわざ電義研まで連れてきたんだ?」

友「そこだ。俺らはまだ先輩の目的を知らない。多分、とんでもないことを考えているとは思うけどな…」

友が漏らした言葉に背筋が寒くなる。反芻される先輩のトンデモ実験の末路…今度は本当に犯罪だぞ…?

男「……本当に、先輩は何を考えているのかな…」

俺の呟きが空に吸い込まれる…ああ、なんとも無情なり。


19 : ◆a36IBHPVSk [saga sage]:2012/06/03(日) 00:35:19.39 ID:32gjHf/Qo
とりあえずここまで。

続きは明日にでも。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 01:14:27.58 ID:Pzi97JY00
乙です
よかったらもう片方のスレも教えてください
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/03(日) 01:15:23.30 ID:HzSIz79Eo
心神か。
22 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/04(月) 20:37:52.81 ID:bEUMzgVjo

先輩「お、戻ってきたか。」

しばらくして研究室に戻ると、スクリーンが降りていて、プロジェクターはPCのウィンドウを表示していた。先輩と少女はその傍らに立ち、なにやら話していたようだった。

男「先輩…これで一体何をするんですか?」

先輩「なに、少しばかりかわいい後輩の理解を助けるためのプレゼンでもと思ってな…」

あ、これはいよいよもってヤバい。先輩がわざわざ古いPCとソフトを使ってチープなプレゼンをするときは、限って最高にろくでもない事を始めている証拠だ。

前回は学内の清掃ロボを秘密裏に全自動ズボン下ろし機にしたんだったな…あれはバレる一歩手前で清掃ロボ(元)を変形合体させたんだっけ。

23 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/04(月) 20:38:19.22 ID:bEUMzgVjo

友「それは俺と男に危害が加わる事ですか?」

友が一歩でて先輩に詰め寄る。さりげなく俺の事も考えてくれたなんて、俺はよい親友を持ったよ…

先輩「あら、ここに戻ってきた時点でもはや確定済みって理解したと思っていたのだが。」

酷い。さすが先輩酷い。

先輩「まあ、あまり危険ではないようにするさ。男に死なれたらマズいからな。」

俺に死なれたらマズい…どういうことだか分からないがあまり良くないニュアンスが含まれていそうだ。

男「そもそも、なんで俺なんですか?何か今回のコレに関係とか…」

先輩「まあまあ、そう急がなくてもこれから説明するさ。とりあえずそうだな…あそこらへんに座ってくれ。」

24 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/04(月) 20:38:47.37 ID:bEUMzgVjo

俺の言葉を遮った先輩は、俺と友に研究室の床に座れという…まあ、この部屋には今先輩が座っている社長イスとでも言えるほど立派なイスの他はオンボロソファが2つ向かい合っているだけしかないから仕方ないかもしれないが。

先輩「では、これからプレゼンを開始する…逃げるなよ、野郎共。」


部屋の照明が落とされ、スライドショーが開始される。


「電送義肢研究室 研究指針」

タイトルがでかでかと表示される。俺と友は床に座ってそれを見上げる。

先輩「これから今年度の電送義肢研究室の研究指針を発表する。質問などは最後にまとめて受け付ける。」

先輩は手に持ったレーザーポインターでスライドショーを操作し、次へ進める。

先輩「まあ、去年度までの実績なんてあって無いようなものだから割愛するとして…」

先輩「まずは、少女ちゃんからいってもらった方がいいな。どうぞ。」

25 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/04(月) 20:39:18.50 ID:bEUMzgVjo

そういって先輩は少女をスクリーンの前に立たせる。少女の方は特に表情も動かさず、口を開いた。

少女「まず、先に言った通りに私は軍用機として製造された、戦闘機だ。」

戦闘機、その言葉には重みがある。アンドロイド技術の発展で飛躍的に発展した兵器がある。それが戦闘機を含む超音速航空機だ。

少女「名古屋にて極秘裏に設計製造され、今日までその存在が秘匿されていた。」

人間には不可能な航行耐性、正確なオペレーション、そして全方向知覚可能なハイパーセンサーと、それらを部隊で共有するという次世代の戦争の可能性……

少女「計画の意図は詳しくは知らない。ただ分かるのは予算も人員もほとんど割り振られていなかったことだけだ。」

世界の空軍はこぞって、アンドロイドをコックピットにくくりつけては超音速で空へと飛ばし始めた。

少女「計画は難航したが、一応の完成を迎えた。私はようやく空へ飛べるのだと期待した。しかし計画は破棄された、完成したばかりの私と共に。」

26 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/04(月) 20:39:58.65 ID:bEUMzgVjo

この地球の成層圏では今日も機械同士が戦っている。もう報道もされなくなった世界規模の紛争が十年ほど昔から続いているのだ。空の上でのみだがーーー

少女「その後は動力を抜かれ、厚木の倉庫に放置されていた。なにもできないままに眠らされた。」

そして、撃退されても機体ごとデブリとして空にとどまる物もあるらしい。名実ともに空はアンドロイドの墓場と化していた。

少女「私は10年も眠っていた。しかし今再び私にチャンスが回ってきた。そしてそのチャンスはただ一つの願いのために使いたい。その願いは……」


27 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/04(月) 20:40:24.47 ID:bEUMzgVjo




少女「空を飛びたい」




少女「自由に、空を飛びたいのだ。」




28 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/04(月) 20:41:03.84 ID:bEUMzgVjo



『この空は君を呼んでいる』



『しかし翼さえ未だ無い』


29 : ◆a36IBHPVSk [saga]:2012/06/04(月) 20:43:22.08 ID:bEUMzgVjo
とりあえずここまで。


もう一つの方は、酉で検索してもらうと出て来ますが、念のため。

男「嫁に内緒で娘作った」

というものを書いています。まだ途中です。


ではまた近い内に。
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