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ほむら「あなたは……」 ステイル「イギリス清教の魔術師、ステイル=マグヌスさ」2 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/05(火) 01:02:41.48 ID:Awj1Gu8/o
前スレはこちら
ほむら「あなたは……」 ステイル「イギリス清教の魔術師、ステイル=マグヌスさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316193826/

前々スレはこちら
ほむら「あなたは何?」 ステイル「見滝原中学の二年生、ステイル=マグヌスだよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311703030/

一行で分かる作品紹介

とある×まどかのクロスSS

一行で分かる前回までの投下

今度こそ終わる、終わる終わる詐欺(おそらく)

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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/05(火) 01:04:04.57 ID:Awj1Gu8/o

 ――さて。
 当たり前のように日常を謳歌し、文明の利器を扱う君たちに一つ面白い話をしてやろう。

 この世界を構成するのに必要不可欠な道具やそれrを扱う知恵、形成された文化に娯楽とかその他色々全て。
 それらが本来であれば『この世界には過ぎたる代物』だと知った時、君たちはどうする?
 バカバカしいと常識者を装って切り捨てるか。
 やはりそうだったのかと陰謀論者の様に納得するか。

 まぁ私にとって現段階での君たちの反応は心底どうでもいいので勝手に話を進めさせてもらう。
 そして時間が無いので真実を単刀直入に述べさせてもらう。

 今ある世界は、幾多の少女がもたらした奇跡によって成り立っている。
 信じがたいだろうが――『今の君たち』ならば、半数程度は信じてくれていることだろう。
 彼女らは甘言に騙されてその身に余る願いを祈り、条理にそぐわぬ奇跡を起こした少女達だ。

 その奇跡の結果が、今ある世界だ。

 ある者は寒さに凍えることの無い生活を望んだのだろう。

 ある者は飢えに苦しむことの無い生活を望んだのだろう。

 ある者は居所に窮することの無い生活を望んだのだろう。

 一族の繁栄を望み、文化の発展を望み、戦争の勝利を望み。
 気が遠くなるような少女の希望と奇跡によって世界は今の形に至ったわけだ。

 ……頭の良い君たちなら分かるだろう。
 そんな簡単に奇跡が起こせるはずが無い、と。
 いやまったく、その通りだよ。結局はこれも等価交換でしかない。相応の代価を払う羽目になる。
 悲惨な運命を知らず、知ろうともせず、知りながらもなお少女たちは影の世界へ足を運び絶望していった。

 まともな人間なら、少し考えれば裏があることなど分かるはずだ。
 起こりえない奇跡を望んだからには、代償があることなど当然だろうにね。
 これは彼女達の思慮浅さが招いた当然の結果だ。自業自得というわけさ。まるで同情できないだろう。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/05(火) 01:05:27.99 ID:Awj1Gu8/o

 そんな哀れな少女たちの話を聞いて、君たちはどんな感想を抱いたかな。

 どうしようもない愚か者だと嘲るか。
 恥ずかしいほどに無知だと罵るか。
 バカめ、と短く一蹴するか。

 そんな感想を抱いたヤツはぜひとも私の下に来て欲しい。
 どうしようもないほどに愚かで恥ずかしいほどに無知なヤツのバカ面を拝んでみたいからな。
 ああいや、別に私は責めているわけじゃない。本当だ。ただ拝んでみたいだけだ。

 だってそうだろう?
 私のような生まれながらにして道を外したヤツならともかく。
 大半が何の負い目も無く、野望も抱かず、崇高な使命も持たない普通の少女なんだ。

 うまい話には必ず裏があると言われたところで、身を持って体験していない彼女たちには理解出来ないのさ。
 なぜなら彼女たちは年端も行かぬ少女であり、子供だからだ。これから『痛い目』を見る年頃だからだ。
 こんなわけの分からない奇跡など無くとも、必ず『痛い目』を見ることになる。
 困難にあえぎ、苦難に涙を流し、それでも流れる時間と立ち塞がる現実に立ち向かって成長していくだろうさ。

 そんな彼女達が初めて体験した『痛い目』が、その身の破滅なんて、いくらなんでもそれは釣り合わないだろう。

 もっとも――だからなんだ、と言う話だ。
 勝手に自爆したんだ。私達には関係ない。それが事実と言う物だ。

 だが――繰り返すように、そんな彼女達の犠牲の上に今の世界は成り立っているんだ。

 彼女らに対して恩返しをしろと言うわけではない。
 身に覚えの無い恩を着せられて、あげくそれを返せと言われても困るだろう
 しかし――だ。しつこいようだが、そんな彼女らのおかげで幸せな人生を送れているんだ。

 『さっきのやりとり』を聞いて、感動した物好きがいたら。
 勝手に着せられた恩を、少しでも返そうと思うお人好しがいれば。
 どこで行われているかも定かではない争いに巻き込まれた少女のために祈ってやってはくれないかな。

 どんな祈りでも構わない。

 上の目線に立って見下しながら救ってやるか、なんて祈りでもいい。
 こんな物を『垂れ流された』ことに憤りを覚えたなら、それを祈りにしても構わない。


 願わくば、君たちの祈りが永久不変の熱力学第二法則を凌駕する祈り足らんことを……
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/05(火) 01:06:34.63 ID:Awj1Gu8/o

――捻じ曲げられた物質が閃光を撒き散らし、解き放たれたエネルギーが怒号を掻き鳴らす。

 単純に相手を破壊するためだけに束ね上げられた、複雑で異常なベクトルが結界を激しく震わせる。
 結界に穿たれた穿孔から流れる、地球と結界外部に流れる自転と公転のエネルギーの塊だ。
 一方通行が極限まで練り上げ、束ね上げ、練成し直した研ぎ澄まされた必殺の破壊刃。
 その気になれば街一つ――下手をしたら小さな島一つ引っぺがすような必壊の破壊槌。
 それらがまとめて、身体を失った魔女の翼に押し寄せた。

 空間が、爆ぜる。

「さて……どォ出るか」

 破壊の爪痕が、わずかな時間と共に過ぎ去ってゆく。
 灰色の上空――およそ数千メートルの先の位置に敵を確認。残念ながら敵は健在だ。
 魔女の翼は吹き飛ばされこそしたものの、それだけだ。魔女の翼は破れていない。
 エネルギーの無駄を一切無くした、敵を打ち破るためだけに作られた攻撃をものともいないのだ。

「チッ、しつけェな」

 常識ある人間ならば驚いてしかるべき光景だが、一方通行は常識なき人間だ。
 彼は舌打ち一つで事実を受け止めると、わずかに地面を蹴って瞬く間に数百メートルの位置まで浮上する。
 背から黒い翼を噴出させながら、その翼のベクトルを練り集めて魔女の翼へ差し向けた。
 直後、翼が幾分にも分かれて、強大な力を秘めた羽が射出された。

 結界の大気が震える。
 物質の怒号が鳴り響く。
 幾本もの黒い羽が、魔女の翼を討ち取るために空間を掻き毟る。

 ある物は目標を刺し貫くために加速し、
 ある物は目標を抉り取るために極端なカーブを付け、
 ある物は目標を叩き潰すためにその身を広がせていく。

 単純な天使ならばこれだけで破壊できるほどの力の豪雨が、体の無い魔女の翼へ襲い掛かる。

 再び、空間が爆ぜる。

「これでダメならもう一つ上まで行くしかねェが、くたばってくれンならそれでも構わねェぞ」

――正直なところ、ここでくたばってくれれば助かるのだが。

 ミサカネットワークによる思考・能力の補助を受けている以上、その電波がなければ彼は本領を発揮出来ない。
 結界の奥に届く電波は最初こそ強かったものの、戦闘の影響でだんだんと微弱になりつつある。
 啖呵を切ったは良いものの、彼はいま窮地に立たされていた。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/05(火) 01:07:01.09 ID:Awj1Gu8/o

 果たして――魔女の翼は、健在。
 途方も無い力を受け止めて、さらに数千メートル上空へ押し流されながらもなおその存在を維持し続けている。

「はっ、薄気味悪いナリの割にはなかなか良い素材で出来てるじゃねェか。何製なンですかねェ……?」

 さすがに動揺を覚えた一方通行が、やや引き気味に軽口を叩く。
 そこで初めて、タイミング良く、魔女の翼が動いた。
 奇怪な音を立ててはためきながら、魔女の翼は一方通行の下へ加速し始める。
 翼は一秒で一〇〇〇メートルを越え、二秒で三〇〇〇メートルを突破。三秒が過ぎる頃には一方通行の目前にある。

「――オマエ、アホだろ」

 三度、空間が爆ぜる――

 ――否、爆ぜたまま、止まらない。

 空間が引き裂かれるような、恐ろしい破壊音が鳴り響かせたまま、魔女の翼は加速する。
 一方通行の超能力が齎す、デフォルト能力――『反射』の力を受けながら。

「っ……おいおい、なンだこりゃあ!?」

 一方通行が、狼狽した。
 完全に常軌を逸した行動だ。人間ならば腕を突き出すだけで痛みが走るというのに。
 それを音速を軽く凌駕した速度で突っ込んで、なお減速せずに加速し続けるなど――

「ッ――!?」

 止まらぬ破壊の嵐を受けて、反射の鎧に綻びが生じた。
 『神の力』と戦った時と同じだ。あの時も、異常な魔翌力と桁外れの力によってダメージを負った。
 今回もまた同じような現象が起きようとしている。

「だったら出し惜しみは無しだ、クソッタレェェェェ!!」

 一方通行の背から生える黒い翼がひび割れて、根元からだんだんと白く染め上げられる。
 そして神秘的な白い翼が姿を現し、大きくはためき大気を弾き飛ばした。
 同時に、一方通行という存在そのものが加速する。
 目の前で繰り広げられる事象全てを観測し、事象を否定するための推測を叩き出す。

 しかし――
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/05(火) 01:07:57.86 ID:Awj1Gu8/o

(これ、は……!?)

 時間が捻じ曲げられる。

 一方通行が白い翼をはためかせ、黒い衣を纏い直し、能力の真価を発揮させていない瞬間まで巻き戻る。

 そして一方通行は魔女の翼に叩き潰され、そのまま翼は元の体に取り付き、やがては完全な魔女として――



「――くっだらねェ、くっだらねェよ、オマエ」

 ――ならない。時間は捻じ曲げられない。
 捻じ曲げてはならない。
 一方通行の前でそれを行うことは、彼が断じて許さない。

「過ぎ去っちまった時間を戻そうなンて都合の良い事を、させると思うか」

 そんな優しい逃げを、彼は能力の全てをフルに活かして否定する。

「……俺は一万人以上殺した極悪人だ。どうしようもない悪党だ。
 だから悪党らしく、オマエのくだらねェ希望はここで綺麗さっぱり叩き潰す」

 ――赤い瞳が、ぎゅっと細められる。
 纏い直された黒い衣をふたたび白く染め上げ、白光にその身を染め上げる。
 染め上げてなお、光り輝く。それはもはや白い翼ではなく、輝き過ぎるほどに輝く光の翼だ。
 輝き過ぎる翼を背に、人類最強の少年は邪悪すぎて無邪気に見える笑みを浮かべて白い息を吐いた。

 彼の頭上に、光の輪が現れ、世界をより一層白で塗りつぶしていく。

 今この瞬間、彼は同質たるイシスのメタトロンを超え、オシリスのミカエルを超え、ルシファーすら超えた。
 人智の及ばぬ聖域に足を踏み入れた。

「電波だの、電池だの、くだらねェ考えは無しにしてやる。オマエは今、確実に、ここで潰す――!!」

 光の天使と魔女の翼を中心にして。

 四度、空間が爆ぜた。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/05(火) 01:08:31.10 ID:Awj1Gu8/o

――遥か頭上で行われる決戦を尻目に、まどかは翼のもがれたつぎはぎの魔女を立たせる事に成功していた。

「ステイル君……」

 すぐそばで倒れたままの神父を見やり、彼女は首を横に振る。
 ここで彼の下に駆け寄る事はおそらく彼が一番望まないだろう。
 彼の望む事、自分に出来ることを成し遂げなければならない。

「でも……どうやって?」

 不意に目頭が熱くなる。視界がぼやけて、雫がこぼれそうになる。
 右に、左にふらふらと揺れ動く魔女の横顔を見ながら、まどかは空いた手で目を擦った。
 泣くのはダメだ。まだ早い。どうせ泣くなら、それは彼女を救ってからだ。

 こくりと頷くと、まどかはステイルに言われた言葉を思い出そうとする。
 彼は背を貫かれたまま、何と言ったのか。自分に何を頼み、望み、願ったのか――



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『……これから来るヤツが時間を稼ぐ。だから君は、彼女を』

『君の知る暁美ほむらを見つけ出して、救い出せ』

『情けない話だが、君にしか頼めない事なんだ』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 考えるんだ。
 考えて、頑張って探して、見つけて、救い出すしかないんだ――!
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/05(火) 01:09:00.61 ID:Awj1Gu8/o

「マミさん……?」

 無重力空間を無気力に漂いながら、まどかは身体を振って周囲に目を配る。
 けれどもそこに期待していた人影は無い。
 けれども声は止む事を知らない。

『鹿目さん、落ち着いてちょうだい。ゆっくり深呼吸して、ね?』

「あ、はっ、はい!」

『落ち着いたら状況を再確認しましょ。あなたはいまどこにいて、何をしたいの?』

 ああ、この声だ。
 私を導いてくれた、優しい人の声だ。
 最後に病院で聴いたときとなにも変わらない、温かい声だ。

「私は……私はいま、ほむらちゃんの隣にいます。私はほむらちゃんを助けてあげたいんです」

『ならまずは暁美さんのこと、ちゃんと暗闇の中から見つけてあげないとね?』

 声は優しく語りかける。
 まるで心を通わせた弟子に、最後の指導をするかのように。

『じゃあ決まりね。暁美さんが居る場所が闇に包まれているのなら、光で照らしてあげましょう』

「どう……やって?」

『大丈夫、あなたなら出来るわ。
 あなたは魔法に頼らないで願いを叶えるんでしょう?
 それならこんなところで挫けてちゃダメよ。私も手伝うから、ね?』

 何故その事を知っているのだろう。
 今の今まで見守っていたとでも言うのだろうか。
 もしそうなら、ああ、この人はやっぱり――本当に――私の知るマミさんなんだ。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/05(火) 01:10:09.50 ID:Awj1Gu8/o

 まどかは同じように浮かび上がる魔女を右手で抱き締めると、目を閉じた。

 そしてわずかな間を置いて、ふたたび開いた。
 目の前に広がる崩壊する灰色の大地は、光の差さない暗闇の大海へと姿を変えていた。
 自分の姿すらも視認出来ない不確かな空間だ。
 それは心象風景だったのかもしれない。魔女の呪いが齎したまやかしだったのかもしれない。
 真実がどうであれ、まどかは、光という存在、概念が存在できないような絶望の世界にいた。

 まどかは自分の左手を――ほむらと繋いでいた左手を見た。
 手首から先が無い。虚無だけが残る、空っぽのがらんどう。

 だけど――もう、何も怖くない。

『そう、怖くない。暗くても、見えなくても怖くないのよ。
 絶望するのは悲しい事だけれど、それを否定してはダメ。
 絶望しない人なんていないように、希望だけで生きていける人もいない。
 “もう一人のあなた”が絶望を否定せず、ただ絶望で終わる事を否定したように――』

 まどかは頷いて、一度瞬いた。
 次の瞬間、まどかの身体を中心に光が差し込んだ。
 絶望の裏側、絶望の正逆。闇で彩られた絶望の、反転した姿――光で彩られた希望が、彼女を照らし出す。

『いまよ、鹿目さん!』

 仄暗い海の、どす黒い闇を光で照らしながら、まどかは声に誘われるがままに突き進む。
 魂の残滓達が創り出す幻想的な湖水を叩き割るように、真っ直ぐ下へ、底へ、黒を白で塗り変えながら潜りゆく。
 潜り続けた先でまどかはついに見つけ出した。
 闇の奥底にある、まどかの知る暁美ほむらの魂の燃え尽きた後に残る残滓を。

『手を伸ばして!』

 励ましの声に従って、手首から先の無い左手をぐんと突き動かす。
 けれどもその手は届かない。
 すぐそこにあるのに、今なお突き進んでいるのに。
 たったの数十センチ。そのほんのわずかな距離が、手を伸ばせば伸ばすほどに引き伸ばされる。
 数メートル、数十メートル、数百メートル、数千メートルと引き伸ばされたまま、辿り着けない。

「届かない……!」

『いいえ、届くわ鹿目さん。忘れないで』
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/05(火) 01:11:40.07 ID:Awj1Gu8/o



 極限にまで研ぎ澄まされて、引き伸ばされた、刹那にも満たないわずかな瞬間。



――祈りは届く。それで人は救われる。


――あなたたち人間は、そうやって生命を紡いできたのだから。




 自分の声を、聴いた。


11 :やっちまった……sagaで [saga]:2012/06/05(火) 01:13:06.47 ID:Awj1Gu8/o

 それはあまりにも唐突だった。

 前触れと言える前触れは何も無い。
 強いて挙げるならば、天使と魔女の翼が六度交差したことだろうか。

 それほどまでにあまりにも唐突だった。

「無駄にしぶといじゃねェか、クソッタレ」

 人智の及ばぬ領域に到達した一方通行は、しかし数多の因果を束ねた魔女の翼を前に無力だった。

 致命傷を受けたわけではない。電波はまだ安定しているし、今の状態なら電池残量だって無視できる。
 実力は互角同然。むしろこちらが押しているくらいだ。羽ばたく事しか能のない敵よりも強い。
 ならばなぜ無力なのか。答えはとても単純な物だ。
 ダメージを与えられない。魔女が鎧として身に着ける魔力の外壁を打ち破れない。どれだけ力を集めても――だ。

 ゆえに勝てる姿がイメージできない。
 千日手になれば勝ち目は無い――一方通行は冷静に判断を下してから、何気なく眼下に目をやった。
 険しかった表情がぎょっと固まり、ウサギのように赤い瞳がくるっと丸くなる。

 彼の視線の先にあるのは、つい先ほど一方通行が穿った、巨大な穴だ。
 最下層にして結界の外郭、その外に広がる『地球の空』まで続く、数千キロ以上もある大穴だ。

 その空洞から、太陽すらも見劣りするような輝きが溢れ出た。

 それは灰色の世界を余す所なく閃光に染め上げる尋常ならぬ光の塊だ。
 太陽と決定的に違う点は、その強力な光は人間の視力を焼き尽くさない事。
 そして太陽の誇る無慈悲な熱量に比べれば遥かに劣る、人肌の温もり程度の熱しか持ち合わしていない点。

「はっ、よォやく真打のお出ましか」

 一方通行が荒々しく言葉を吐き捨てる。

 直後、光の塊は何かに誘われるように収束し、ある一点目掛けて降り注いだ。

 ある一点。

 鹿目まどかが首から提げる、十字架。


 まどかと魔女の姿が、文字通り光に飲まれる――――――
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:13:33.19 ID:Awj1Gu8/o

 ………………え?


 朦朧とする意識の中で、ふと思考が働いた。
 その事実に彼女は――ほむらは人知れず驚愕した。

 何も視えず何も聴こえず何も匂わず何にも触れず何も味わわず。
 意識など当然のように無く、思考という行為すらも絶え、死という概念すらも死にゆく領域。
 そもそも存在しているかどうかすら曖昧な、空っぽの世界。
 暗くも無く、明るくも無く、色すら無いクリアな世界。
 無い、という概念すらも無い透明な世界。
 それは闇ではなく光でもない。本当の意味で何も無い無の世界。死後の世界。消失した世界。

 その中心に、ほむらという存在が初めて形成された。

 ……でも。

 それがどうしたというのだ。
 おぼろげに浮かび上がる身体を縮めて、膝を抱えて、彼女は小さくなる。

 ……だって。

 ほむらは知ってしまった。
 自分が犯した罪の数々を。
 大勢の人間の因果を捻じ曲げ、あまつさえ本来与えられるべき“自分”の人生すら奪ってしまった。

 意識が途絶えるあの瞬間。あの刹那。
 私は聴いてしまった。

『わたしはこんなに不幸なのに、どうしてあなたばかり幸せなの』

 それは“私達”の嘆きであり、嫉妬と憎悪の固められた慟哭であり、悲哀と呪いで彩られた叫びでもあった。

 ……だから。

 いまさら、どうしろと言うのか。
 私を起こして、何かを願うのだろうか。
 私を呼び戻して、何かを償わせるのだろうか。

 私はもう、何もしたくない。だって私は存在しちゃいけないんだから――――
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:14:02.79 ID:Awj1Gu8/o

「――そんなこと、ない!」

 ……あっ。

 ほむらしかいない空間に響いた声に、彼女は知らず知らずの内に顔を上げていた。
 顔を上げて表情を崩し、喉を鳴らして唇をワナワナと震わせながら、必死に言葉を紡ぐ。

「……ど、おし、て……っ!?」

 ありえない。
 今この世界に存在できるのは自分だけだ。
 自分のために用意された、咎人の空間なのだ。
 だから、どうして、何故、ここにいる――

「どうしてここにいるのよっ!?」

 声を絞り出しながら、ほむらは首を振る。
 ほむらの目の前、歩いて二歩の位置に、少女の姿があった。
 何度も見て、何度も脳裏に焼き付け、何度も心に刻んだ幼い姿。
 自分の人生そのものに等しい少女の形。笑みを浮かべる優しい顔。

「まどかああぁぁぁぁぁぁッ!!」


 ――たった一人の、最高の友達の姿。


「やっと会えたね、ほむらちゃん」

 彼女がここにいる、それが示す意味を想像してほむらは絶望する。
 だからと言って、何が困るわけでもない。濁るようなソウルジェムを、彼女は持っていない。
 ほむらは自分の左手を押さえた。
 手首から先が無い。虚無だけが残る空っぽのがらんどう。

 しかしまどかは笑みを絶やさずに続けた。

「大丈夫だよ、ほむらちゃん。私は平気だから」

「っ……え……?」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:14:30.15 ID:Awj1Gu8/o

「ねぇ、ほむらちゃん。聴こえない?」

 そう言って、彼女は笑い、左手を上げた。
 手首から先が無い。虚無だけが残る空っぽのがらんどう。
 私と同じ。

「私には聴こえるよ。たくさんの人の、優しい声が」

 同じだけれど決定的に違う。
 ほむらには聴こえない。
 そんな声は聴こえない。

「私はあなたとは違う、私の居る場所には何も聴こえない、私は、もう……っ」

「それじゃあほむらちゃんもこっちに来ちゃえばいいんだよ」

「無理よ! 私はもう戻れない! 私は魔女になって死んだのよ!」

 ほむらが叫ぶと、まどかは少しだけ困ったような顔をした。
 それから形のある右手を開きながらこちらへ伸ばして、さらに困ったように肩をすくめて見せる。

「ごめんねほむらちゃん。私、ほむらちゃんをそこから連れ出したいのに、連れ出してあげられないや」

 まるで見えない壁が阻むと言いたげに、まどかは開いた右手をそっと止めた。
 次に、先の無い左手をこちらへ、ぐん、と伸ばした。
 左手は見えない壁を乗り越えて、私のすぐ目と鼻の先に突き出される。

「私に出来る精一杯は、ここまでだよ」

「……なに、を」

 まどかは凛とした表情を作ると、胸を張ってほむらと目を合わせた。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:15:00.37 ID:Awj1Gu8/o

「私には、ほむらちゃんを地獄の底から引きずり上げる力なんてない」

 それを拒絶と捉えてしまうのは、自分の失われた心が脆弱だからだろうか。

 失われた魂がその事に傷付き、激しく痛むのは自分が甘えているからだろうか。

 無いはずの心と魂の奥底にある醜い感情が浮き彫りになるのをほむらは自覚した。

「私だけじゃ、あなたを救い出せない。――だけど、みんながいるから、ほむらちゃんがいるから」

 まどかは表情を崩して朗らかに笑うと、もう一度左手を差し伸べた。

「あなたが、私のことを思って何度も繰り返したこと、私は知ってるから」

 さらにもう一度、今度は肩を入れるように身体を傾けて左手を伸ばす。

「あなたが辿った歴史を、奪ってしまった人生を、私は見たから」

 自分でも気付かぬ内に、ほむらは左手を伸ばしていた。
 虚無だけの空っぽの左手を。がらんどうの左手を。

「私はもう、一人じゃない。ほむらちゃんだってそう。私達は二人で一人だよ」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:15:37.42 ID:Awj1Gu8/o

 良きときも

 悪きときも

 富めるときも

 貧しきときも

 病めるときも

 健やかなるときも

 死が二人を――分かとうとも

「ずっと一緒だよ、ほむらちゃん。私の、最高の友達」

 彼女はあらん限りの慈しみと優しさを身に纏って、左手を伸ばした。
 それに応えるようにほむらもまた涙をこぼしながら左手を伸ばした。

 無いはずの手が、しっかりと握り締められて。
 無いはずの指が、ぎゅぅっと絡み合わされた。

 ……無いはずの心が、魂が熱く滾る。
 失われたはずのソウルジェムが無の中に浮かび上がり、光を帯びて明滅した。
 それに合わせて無で統一された世界がひび割れ、張り裂け――世界が、元に戻る。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:16:25.27 ID:Awj1Gu8/o

――あまりにも眩く、直視することを憚られる温かい光に晒されながら。

 ほむらはふたたび現世に舞い戻った。
 しっかりと形のある左手に、彼女の持つ魂の輝きを携えて。
 彼女の身体を覆っていた黒いつぎはぎの呪いが零れ落ちる。
 それはまるで、焼き尽くされた灰の中から蘇る伝説。不死を司る神鳥のように。

 ほむらは下を見た。
 数十メートル下に、まったく見覚えの無い灰色の大地が見えた。

 ほむらは上を見た。
 数百メートル上に、まったく見覚えの無い天使と魔鳥か蝙蝠の翼の姿をした“自分”が見えた。

 ほむらは隣を見た。
 そして強張らせていた表情を崩し、柔らかな笑みを作った。
 死が訪れようと共にあることを誓った親友――鹿目まどかと左手を繋いだまま、彼女はその瞳から雫をこぼす。
 隣にいるまどかは涙を流しながら、ほむらの背に回していた右手を耳元に寄せた。
 それに倣ってほむらも右手を耳元に寄せ、耳を澄ます。

 ……聴こえる。
 大勢の人の声が聴こえる。
 男も女も、子供も老人も。
 魔術師も能力者も、国籍も人種も関係なく、私達を励ます人々の声が聴こえる。

 私達の、ためだけに発せられた声が。

『ほむら!』

『ほむらちゃん!』

 凝り固まった身体を、暖かい光に埋め尽くされながら。
 わたしは二人の男女の声を聴いた。

 ずっと昔、もう何十年も前に聴いたことのある声。
 それまでずっと私のために尽くしてきてくれた、唯一無二の男女の発する響き。
 辛酸苦汁を嘗めることを強いられた日々に磨り減った、傷だらけの心を癒す思いやりに溢れた音色。

 ……あなたたちは、誰?
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:16:56.87 ID:Awj1Gu8/o

 考えている間にも光は収束していき、やがて薄れて消えていった。
 それを見届けると、ほむらはまどかの顔を覗き込み、首を傾げた。
 話を聞かせて、のポーズだ。意図を察してくれたらしいまどかはすぐに頷いてくれた。

「いろいろあったよ、ほむらちゃん。ほむらちゃんが魔女になっちゃって、みんな助けようと必死になってね?」

「ええ、それで?」

「それでね、マミさんの声がして、それからみんなの――きゃっ!」

 無重力ゆえに、流れる風に吹き飛ばされそうになるまどか。
 ほむらは笑みを浮かべると、そんな彼女の左手を引き寄せてあっという間に両手に抱えて見せた。

「ほ、ほむらちゃん!?」

「聞きたいことはあるけど、まずは降りましょう。しっかり掴まってて」

 腕の中にある温もりを、もう二度と離さぬようにしっかりと抱き直しながら集中する。
 思考を働かせ、魔力を用いて背中に翼があるイメージ作る。
 イメージは現実となって、ほむらの背中に魔力で作られた翼がぐん、と広げられた。
 風を翼で弾くように羽ばたき、灰色の大地に直進。ゆっくりと姿勢を立て直して、羽のように着地する。
 けれども重力の干渉は無いままだ。ほむらは細心の注意を払いながらまどかを下ろし、周囲を見渡した。

「ここはどこかしら。見たところ、月というわけでも無さそうだけれど」

 見渡しているうちに、ほむらは珍妙な格好の二人組みを捉えた。
 赤いポニーテールの少女と、青いショートの少女だ。
 二人は必死に地面に這い蹲りながら、こちらへ向けて近づこうと試みている。

「ここは君が創り出した結界だよ、暁美ほむら」

 聞きなれた声が頭の中に響いた。
 ほむらは華麗に足元を蹴って、無重力の中でくるりと振り返る。
 目の前には、どういうわけかいつもと同じように地べたに座り込むキュゥべぇの姿があった。

「正確には君に人生を奪われた暁美ほむら達、かな。
 しかし、おめでとう。こんな結末は僕にも予想できなかったよ」

「どういうこと、一体何が……私は救われた? 誰が救ったというの。まさかステイルたち?」

 まさか、とキュゥべぇは言った。赤い瞳をじぃっと細め、まるで感情があるかのような仕草で彼は続ける。

「君達魔法少女を救ったのは、君達魔法少女が守り続けてきたもの――人類さ」

 そう告げるキュゥべぇの瞳は、ここではない別の場所。どこか遠い、異国の地を見ているようだった。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:17:34.92 ID:Awj1Gu8/o

――実際のところキュゥべぇ、正確に言えばインキュベーターの関心は既に他に向けられていた。

 結界より下ること、六〇〇〇キロ以上。
 直径約一二〇〇〇キロメートルの地球。

 そこでは、結界の中に太陽が発生したことが笑い話に思えるような異常事態が発生していた。

「これはまた、大胆に仕掛けてくれたものだね」

 そう言葉を漏らしたのは、イギリスの街中をそろりと歩く一匹のインキュベーターだ。
 彼は夜空を見上げながら、やれやれと首を振った。

「グリニッジ標準時間だと、今は誰も彼もが寝静まっている時間なんだけどね」

 そう言って、彼はくるりと尻尾を振った。
 その動作に連動して、影もまたくるりと尻尾を振るう。

 ……彼の近くに、街灯らしい街灯は見当たらない。
 にもかかわらず彼が影を付き纏わせているのは、単純に空が明るいからである。
 そう。
 本来であれば星の光がいくつか瞬いている程度で、街灯が消えてしまえば瞬く間に真っ暗闇になるはずなのに。
 その日のイギリスの夜空は、まるで太陽が昇っているかのように明るく、眩しかった。
 原因は、彼の視線の先にある。

 それは暗い夜空を貫くように打ち立てられた、光の柱だった。
 柱は太陽の光の当たらぬイギリスから『小さな光』を吸い上げて、イギリスの大地を白く染め上げていた。

「これと同じ物が地球中で確認されているよ。
 およそ一〇〇〇〇弱の光の柱が、地球という星から夜を奪ってしまっているんだろうね」

 イギリスだけではない。
 地球に浮かぶ六つの大陸全てでまったく同一の物が立ち上がっていた。
 その事実に、しかしさして驚いた素振りを見せる様子も無く。
 インキュベーターはすぐ目の前にいる一人の少女と老人を赤い瞳で捉えた。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:18:02.41 ID:Awj1Gu8/o

「予想よりもずいぶん早いご到着だな。面倒事はこのババァに押し付けてトンズラ決め込む予定だったんだが」

「いい加減にしておけよ小娘」

 などと言い合う二人――レイヴィニア=バードウェイとエリザードを、無視して話を始める。。

「一体どうやって、こんな大掛かりな仕掛けを施したんだい」

「その発言だと、まるで何が起こったのか大体察しているようだな」

「同じ事例は過去に一度見たことがあるからね。
 規模は違えど、これはさやかのときと同じ現象だ。君達は≪グレゴリオの聖歌隊≫を発動したんだろう?」

 グレゴリオの聖歌隊。
 バチカンにある霊脈と、3333人の祈りを集めて魔術を増幅し、地球の裏側であろうと正確に撃ち抜く強力な魔術。
 正確に言えば、それを応用して発動された一週間ほど前にさやかのソウルジェムを復元した魔術のことだ。
 その際は癒しの魔術に魔導図書館の知識を合わせ、なおかつ幻想殺しを用いて救済した。
 無論、なんの犠牲も無かったわけではないが、この場合はさして問題にならない。

「だけど不思議だ。僕らはこの事態をまったく予想できなかった。
 命令が下れば情報が動き、それに次いで人が動く。時間だって必要になるだろう。
 地球中にいる無数の僕らが、これほど大掛かりな魔術を施しているのに気がつけないはずがないんだけどね」

 ソウルジェムに変換されて、なおかつ絶望によって燃え尽きた魂の残滓を復元する。
 削られた魂を再生することは出来ずとも、元の形に戻す。それに必要な祈りが最低でも3000人以上。

 だが今回の場合は文字通り規模が違う。
 ほむらが至った魔女は、さやかの時のような単純などこにでもいるような魔女ではない。
 まどかには及ばずとも、多量の因果をその身に束ねたとても強力な魔女だ。

 例えその大半を『翼』の方に持って行かれていたとしても、救済するには一筋縄では行かないはずだ。
 最低でも一千万人の祈りが必要になるだろう――と、それがインキュベーターの見立てだった。
 当然ながら、それだけの人間が動けばインキュベーターが気付けないはずがない。
 ならば何故、彼らは気付けなかったのか。

「答えは簡単だよ。今回の術式を施すのにかかった時間はほんの数分だ。
 だから命令なんて下していないし、情報も動いていないので人も動いていない。気付かれないのは当然だ」

 なにをいまさら、と笑ってバードウェイは言った。
 ローラとはまた質の違う、意地の悪い邪悪な笑みだ。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:18:31.53 ID:Awj1Gu8/o

「君は何を言っているのか自分で理解しているのかい?」

「そちらこそ、自分が何を言っているのか理解しているのかな」

 バードウェイはかぶりを振って小馬鹿にするような仕草を見せると、腰に手を当てた。
 そして饒舌に語り始める。

「事の発端は、うさんくさい格好の土御門ナントカって男が私にとある頼み事をしてきたことだ。
 当時情報に飢えていた私はその男が掴んだ情報と引き換えにその頼みごとを了承してやった」

 バードウェイが右手を掲げて見せる。
 その手の中には、金と蒼が混じった美しい宝玉がある。
 ソウルジェム。変換された少女の魂。インキュベーターが契約することで生まれる存在。
 だが、インキュベーターは少女と契約した覚えは無かった。

「これがその結果だ。ん? 見覚えが無い、という顔だな。当然だろう。
 私は厳重に神殿を築き上げた上で結界を施して、無理やり拉致した君達に契約を迫ったのだからね」

 つまり、情報が漏れないようにした上で契約したということだ。
 確かにそれならインキュベーターが覚えてない理由も分かる。

「私が頼まれたのは、極東の魔法少女たちを助けてやってくれ、という内容の物だ。
 だが致命的に時間が足りなかった。私に何か出来る事があったとしても、まぁ少ないだろう。
 大体、あの女狐が全て解決すると踏んでいたのだからな。
 だからもしもあの女狐が何か失敗するとしたら、それは鹿目まどかか暁美ほむらの魔女化だろうと推測してね」

 くるりとソウルジェムを弄りながら、彼女は続ける。

「そうなった時は、グレゴリオの聖歌隊を使えば良いのではないか、と私は判断した。
 だが重要なのはその先、必要になる祈りをどうやって集めるかだ。
 時間はほとんど無かったし、下手に君達に嗅ぎつけられたら間接的に妨害されてしまう可能性もあった。
 だから私は考えた。面倒臭い、やってられない――と」

 ソウルジェムを指輪に戻して、バードウェイは口角を吊り上げた。

「そもそも私があれこれ働くのはおかしいだろう。
 助けを求めるなら自分で求めればいいのだ。
 つまり、鹿目まどかの声を世界中に無理やり届けたのさ。私の魔法少女としての魔法でね」

「無茶苦茶だ。あの結界の中にいる彼女の言葉をどうやって拾ったというんだい」

 その言葉を受けて、バードウェイはどこからともなく白い塊――インキュベーターの死骸を取り出して見せた。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:19:27.41 ID:Awj1Gu8/o

「これに使われてる通信回線みたいな物はえらく複雑だな。
 科学側の知識が豊富な私の妹でもまったく解析できなかったぞ」

「僕らの文明に君達の文明が追いつくには、万単位の時間が必要だよ。
 それは魔術を使っても同じことじゃないかな? 実際、解析は出来なかったんだよね?」

 バードウェイは否定しなかった。
 代わりに肩をすくめて、左手で掴んだ死骸をぷらぷらと揺らして見せる。

「理解は出来なくても、利用は出来る」

「何を――いや、まさか、そうか」

「解析は不可能だったが、君達の間に流れるリンク――
 不可視の糸、不可思議の通信回線にタダ乗りすることは可能だ。
 有象無象のいらぬ情報を無視して、あの結界内の音声のみを抽出するのは手間がかかったが」

 そんなことが可能なのだろうか。
 ……不可能では、ない。恐ろしいまでに魔術のセンスがあれば、可能だろう。
 だが、それと今回の件は関係しないはずだ。
 インキュベーターの心を読んだかのように、バードウェイはにぃっと口の端を上げた。

「そこで私の魔法だ。私が得意とする魔法はあらかじめ契約する際に願った能力でね。
 『人の上に立つ為に、とびきり強力なテレパシー能力を寄越せ』……とか、そんなのだったかな」

 強力なテレパシー能力で大勢の人間に働きかけた。
 彼女はそう言いたいのだろうか。だとしたら、それはやはりありえない。
 地球全体に及ぶテレパシーを繋げれば、確実にソウルジェムが濁りきってしまう。
 その旨を告げると、彼女は余裕の態度を崩すことなく続けて見せた。

「おかげ様で部下が死に物狂いで集めた十二個のグリーフシードの内八個が封印された。
 でもまぁ私だって馬鹿じゃない。七〇億人全てにテレパシーを送るようなことはしていないさ。
 私が送ったのは――9969人か、ああいや、半年前に9970人になったのか? まぁ、そういう素質ある人間だよ」

――一致する。
 地球全土から立ち上る光の柱の数と一致する。
 彼女はそれらの人間を中継地点、あるいはそれらの人間を発信地点にしたのだ。
 地球そのものを膨大な電波の網(ネットワーク)で覆ってしまうように。
 そうして形成された光の柱は、仕掛けられた術式に従い極東の結界目掛けて飛んでいったのだろう。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:19:54.35 ID:Awj1Gu8/o

「そういうわけで、無事私は頼まれたことを完遂したわけだ。
 禁書目録が私の意図を察して祈りに術式を織り込むかどうかはぶっちゃけ賭けだったんだがね」

「――なるほどね、仕組みは分かったよ」

 なんてでたらめなのだろうか。
 他人頼みに運頼みのいい加減な少女の言動に表面上は呆れた素振りを見せると、インキュベーターは座り込んだ。
 だが、まだ解せないことがある。座り込んだと同時に、彼はその疑問をぶつけることにした。

「君は結界内の会話を地球に伝播した、というようなことを言っていたね。
 だけど仮にそれが成功したとして、彼女が救われない可能性もあったんじゃないかな。
 そうして祈りを集めたところで、どうやって彼女と魔女の下に集めるよう細工したんだい?」

「いっぺんに質問するな。まず前者だが、その通り。
 私は会話を全人類に無理やり聞かせた上で魔法少女の話をわずかにした。
 だがそれで人々が彼女達のために祈るかどうかは賭けだった。
 下手をすれば彼女達への怒りやらなにやらで、救われるどころか滅ぼす可能性もあったがそれはそれで狙い通りだよ」

「どういうことだい?」

「助けろ、とは頼まれたが、助けられない可能性だってあるってことさ。
 私はこの術式のことを『火薬』と表現し、後者の細工――
 つまり鹿目まどかに持たせた十字架を『爆弾』と表現した。
 土御門ナンタラはあれを呪いを弾く十字架と言って鹿目まどかに渡しただろう。
 それも間違いではないが、あれは正確には呪いを弾き祈りを集める霊装だ。美樹さやかの時にも使われたそうだぞ」

 ……形状が一致しなかったが、それはあまり関係が無かったのだろうか。
 いずれにせよ、抱いていた疑問全てに解を出されてインキュベーターは下を向いた。
 もうこの場に留まる必要は無くなったと、彼女らに背を向けて歩き出す。

「……せっかくだから教えてやろうか。鹿目まどかの、友を想う声に同調し、賛同し、祈った人間の数を」

 バードウェイの声が聞こえる。


「――二〇億人だよ。究極的に言えば、私の魔術などはきっかけに過ぎない。魔法少女を救ったのは、人類という種族さ」
   ¨ ¨ ¨ ¨ ¨

 尻尾を振って返事をすると、インキュベーターは街並に姿を溶け込まして消えていった。
 同時に、天に向かって立ち上っていた光の柱も薄れ、消えていく。
 後には不気味な静寂と、闇に包まれた街並みと、エリザードの神妙なため息の音だけが残った。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:20:21.60 ID:Awj1Gu8/o

 かくして、舞台は灰色の結界に戻る。

「そういうわけだから、君達の念願は叶ったわけだよ。
 後はもう、残った魔女の欠片を倒しておしまいだ。本当におめでとう」

 そう言うキュゥべぇの姿を見ながら、ほむらはありえない、と首を振った。
 なまじ魔法少女でいる期間が長すぎただけに、そんな救いのある結末を彼女は許容できなかった。
 素晴らしいことだとは思う。手放しで喜びたい気持ちでもある。だが、信じられない。

「……大事なのは、きっかけだったんじゃないかな」

 まどかの呟きに、ほむらは静かに顔を背けた。
 きっかけがあれば、あるいは結末は、もっと違う物になったのかもしれない。
 では、彼女達はどうなる。自分が奪った、罪の無い少女達が集まった呪いは。
 上空で輝く天使と激闘を繰り広げているありえたかもしれない自分達は。

 彼女達を倒して、否定して、それで終わりなんて、そんな……

「……ありえない状況から復活出来ただけありがたいだろうが。君は高望みしすぎだ」

 背中から低い声が聞こえて、ほむらはまどかと共に後ろを振り返った。
 そこには黒の法衣を真っ赤な血で染め上げた、身長2メートルの神父――ステイル=マグヌスが立っていた。
 いや、立っていたというのは正確ではない。隆起した大地に右手で掴まりながら浮かんでいた。
 よく見ると、服の腹の辺りが大きく食い破られたかのように引き裂かれている。

「ステイル君、大丈夫なの!?」

「君達に向けられた祈りのおこぼれを貰ってね。血が足りないから、すぐに気絶するだろうが……それよりもほむら」

 ステイルに見つめられて、ほむらは無意識の内に萎縮した。
 彼の言葉は正論だ。望みすぎだ。甘えすぎだ。だから責められるのは当然なのだ。
 だが、ステイルはわずかに息を吐いて、懐から一つの宝石――どす黒く濁ったグリーフシードを取り出して見せた。

「……声が聴こえたよ。巴マミの声がね」

 ――え?
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:20:54.04 ID:Awj1Gu8/o

「グリーフシードにどれだけの祈りを注いだところで、元には戻らない。
 なぜなら彼女は死んだからだ。じゃあなぜ、僕は巴マミの声を聴くことが出来たのか」

 彼の言いたいことがわからず、ほむらは首を傾げた。
 そんな彼女の隣で、まどかが『あっ!』と大きな声を上げた。
 ステイルはまどかを見て頷くと、ふたたびほむらに視線を移した。

「僕は事の真相を知らないが、ただ排除する以外にも手立てはあるはずだ。
 地上で君が巻き込まれた、あのわけの分からない光……あれなら、何とかできるんじゃないのか」

 彼の言う、わけの分からない光が何を指し示しているのか。それにようやく気付いたほむらは目を丸くした。
 呪いを、因果を受け止める救済の光。『魔女を消し、魔法少女導くための概念』のことだ。
 だが『彼女』は姿を消してしまった。もう一度この世界に顕現出来る可能性は低い。ましてやここは魔女結界の中なのだ。
 しかし、まどかは違った。彼女はほむらの手をぎゅっと握り締め、声を大にして言う。

「ほむらちゃん、ここって無重力だよね?」

「それはそうだけど……でもそれがどうしたというの?」

「私、知ってるよ。ほむらちゃんの記憶を見たから知ってる。思い出して、ほむらちゃん」

 思い出せといわれて、ほむらは首を捻った。
 あの時、あの場所で起こった出来事を。
 この世界の仕組みを。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「しかるべき位置にしかるべき情報、呪文を記し、魔術的な記号、物品を配置すれば難しくはない
 君とて見たはずだ。ルーンを刻み、魔法陣を敷くことで行使される人祓い魔女狩りの王といった魔術をね」

「そうして輸出された技術――すなわち情報と、
 部品――すなわち記号は、世界中に出回っている。それがどのような意味を持つかも知らずに、ね」

「世界中に出回ったそれらの中から最適な式を求め、演算し、魔力を流せば魔術は発動するのだよ」

「学園都市製の人工衛星によって巨大な円も作られていることだしな

「話をまとめると、紆余曲折を経て一つになった世界を、君は生きていくことになったわけだ」

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26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:21:24.71 ID:Awj1Gu8/o

 ああ、そうか。

 つまりここは……重力の井戸から離れたこの場所は。

 大穴が空いた事と、魔女の本体が元に戻ったことで崩れ行くこの結界は。

 一つになった世界、正確に言えば重なった宇宙の、共通する地球という星の外側。

 魔法少女を導く概念が、その力を発揮できる世界なのだ。

「……どうやら、僕の推測は正しかったようだね」

 ステイルは深いため息を吐くと、グリーフシードをほむらの元へ放って寄越した。
 慌てて空いたほうの手でそれを受け止める。

「巴マミがまどかを導く声がした。
 その原因と、君達にしか分からない存在と、地上で君に何か仕掛けた存在は繋がっているんだろう」

 彼はとても疲れたような表情を浮かべて、力なくうなだれた。

「だったらそれをここに呼んで、上で暴れる“ほむら達”をどうにかすることくらい、可能なんじゃないのか」

 呼べと言われたところで、どうにか出来るはずもない。
 そもそも呼べば来るようなものなのかどうかすら怪しい。
 だけどまどかは、ほむらの手を握り締めて、真っ直ぐな瞳でほむらを見た。

「来てくれるよ。だってあの人は、あの子は、ほむらちゃんのことが大好きな『私』なんだから」

「まどか……」

 まどかに微笑まれて、私は何も言えなくなってしまう。
 そうだ、駄目で元々、ひとまず挑戦してみればいいのだ。

 まどかと一緒なら、最高の友達と一緒なら――私は、なんだって出来る。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:21:51.92 ID:Awj1Gu8/o

「……あなたを拒絶しておきながら、こんなことを頼み込むなんて間違ってる」

 言葉を吐き出しながら、ほむらは地面を蹴った。
 まどかのことを離さぬ様にしっかりと左手を握り締めながら、翼をはためかせる。

「分かっているわ。私は、とても汚い。とても卑怯よ」

 バッ、と音を轟かせて、すぐ真横を光の天使が落ちていった。
 口元から血を流しているのが見えた。恐らくは魔女の猛攻に耐え切れず、気を失ってしまったのだろう。
 ほむらは名前も分からぬ天使に感謝しながら、さらに加速して上昇。

「だけど、もしもあなたが、そんな私を許してくれるなら」

 身体を失い、どうしていいのかも分からず暴れ狂う魔女の翼の前で停止。
 翼で大気を叩きながら、かつて同一の存在だった翼を見て、ほむらは悔しさから唇を噛んだ。
 けれども、不意に左手を握り返されて、ほむらは弾かれるように隣を見た。
 まどかが凛とした表情で頷いていた。
 ほむらも頷き返して、言葉を紡ぐ。


「あなたが、全ての世界、全ての時間の魔女を消す概念であってくれるのなら」


 ほむらの声に合わせて、まどかも口を開いた。


「『私』が魔法少女を導く、魔法少女の希望であるのなら」


 声が、ぴったりと重なる。


「彼女達を救ってあげて、円環の理―――!!」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:22:23.51 ID:Awj1Gu8/o


 果たして。


 彼女は、舞い降りた。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/05(火) 01:29:41.22 ID:Awj1Gu8/o
以上、ここまで。

伏線回収+説明+最終回を兼ねていたのですが、説明に時間を割きすぎましたので、ちょっとだけ補足を。
神裂さんじゅうきゅうさいや土御門、アニェーゼたちに『訪れていた』のがまどかたちの会話です。べぇさん経由で全世界に生中継されていました。

全員救ってハッピーエンドか、それとも犠牲はあるのか、後味はどうなのか。
その辺りは次回の投下と、さらにその次から投下する(絶対に)エピローグで明らかになる予定です。

次回の投下は明日、はちょっと厳しいので明後日の22時ごろを予定としております。……間に合うかな
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/05(火) 01:32:28.12 ID:y0axKl3IO
鳥肌もんだぜ乙
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/05(火) 01:32:55.48 ID:CPYuWeGt0
なんかもう、話が熱すぎてどんなに称えても言葉が足りない気がする。
だから一言だけ、乙と言わせてもらおう。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/06/05(火) 01:38:54.17 ID:IlIWTE160
円環の理降臨キター!!!
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/06/05(火) 03:02:22.66 ID:A2DWA2m20
  |l、{   j} /,,ィ//|     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ     | あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
  |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |     < 『おれはまどマギと禁書の映画の原稿を読んでいたと
  fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人.    |  思ったら実はただの二次創作だった』
 ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ   | そげぷ乱舞だとかホムラチャホムホムだとか
  ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉.   | そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
   ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ. │ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
  /:::丶'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ \____________________
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/05(火) 22:20:01.09 ID:ML21ve4Po
全世界が感動した(まどかに)
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/06/05(火) 23:32:10.78 ID:LIoyHpxao
凄いな、それしか言葉が出ないわ…
面白いSSは一杯あるし感動したSSもそれなりにあるが、ここまで上手いのは数える程しか知らない。
唸りっぱなしだわ。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/06(水) 13:36:09.66 ID:Maq6PMjHP

別に倒してしまっても構わんのだろうを地で行くもやしに合掌
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:07:22.69 ID:jiMDkYtfo
投下します。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:07:52.19 ID:jiMDkYtfo
――数多の少女達が紡ぎだす、歓喜の歌が聴こえる。


 呆然と宙に漂い続けるまどかの頬を見えない風が過ぎ去り際に優しく撫でた。
 それから彼女の身体を追い越して、そっと反転。幼い耳元に近づいて囁くのだ。

 『魔法少女(わたしたち)の希望だよ』

 と。それがなんであるのか、なぜ囁いたのか、まどかには分からなかった。
 彼女に出来るのは、目の前に現れたものに対して無意識の内に感動の涙をこぼすだけ。

 彼女の目の前には、少女がいた。
 その存在はおぼろげで、霞がかっているようで、薄らぎ、今にも消えそうで、儚げで。
 それでもそれは確かにある。少女として存在している。

 温かい、と表現するだけなら簡単だ。
 優しい、と言葉にするのも大して労力を伴わない。
 だけど彼女は初めて自分の頭を激しく働かせて、それに見合う言葉を繕おうとした。
 ほむらの記憶を覗き見た時に知識として取り入れたはずなのに、彼女の意識はそれで終わらすことを良しとしなかった。

 ただ一度。
 目に触れただけで意識の改革を迫られる、偉大と呼ぶにはあまりにも可憐な存在。

 それが彼女にとっての『魔女を消す概念』であり、
 初めて眼で見た『魔法少女を導く希望』であり、
 ありえたかもしれない『自分』だった。

 まどかは無意識の内に隣を見た。
 彼女の最高の友人である暁美ほむらもまた、同じように自分の顔を覗いている。

 二人にとって目の前に現れたものは『自分』であり『友達』なのだ。

 なればこそ、その反応が似通った物になるのは当然だったのかもしれない。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:08:44.80 ID:jiMDkYtfo

 二人は顔を見合わせて頷き、そろそろと顔を元の位置に戻す。
 と、空間が揺らいだ。

 少女の姿がほんの僅かに、それこそ振るいテレビ画面のように『ぶれた』。

 まどかは自分でも気付かぬうちに手を伸ばしていた。
 少女との間に広がる距離は五メートルあるかないか。伸ばしたところでその手が届くはずもない。
 そう気付いた辺りで、まどかは目を丸くした。
 すぐ目と鼻の先。手を伸ばしたその先に、少女の姿が移動していた。

 ――いや、もしかすると彼女は最初からそこにいたのかもしれない。
 ただまどかとほむらには認識できなかっただけで、ずっと昔からすぐそばで見守ってくれていたのだろうか。
 実体があるかどうかさえ怪しい少女が、伸ばされたまどかの手に己の手を重ねた。

「……あっ」

 心に浮かんだ驚きに、思わず声が漏れた
 白いレースの生地はすり抜けることなく確かに彼女の右手に触れたのだ。
 レース越しに、太陽に手をかざした時に得られるどうしようもなく安心のできる温もりが伝わってくる。

「あなたは……」

 少女はそっと微笑んだ。微笑んで、優しくかぶりを振った。
 その身に纏う、白い衣装から放たれる光を受けて、わずかに白がかって見えるピンクの髪が宙を舞う。

『ちゃんとした形で『私』と会うのは、これが初めてだよね』

 ――あぁ。

 少女の唇の動きに合わして届いた言葉は、けれども空気を震わすことで発せられた音とは違っていて。
 キュゥべぇたちと同じ、心の中に直接響き渡るもので。
 目の前にいるのに、彼女はとても遠い場所にいるのだと実感する。
 まどかはどこか寂しさを覚えながら頷いた。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:09:47.35 ID:jiMDkYtfo

『それじゃあ改めて――初めまして、鹿目まどかです。わけあって、たくさんの魔法少女の希望をやっています』

 自分とは――正確に言えば、少し前の自分に自信を持てなかったまどかとは違う自信に満ち溢れた響き。
 自分の存在に確かな誇りと喜びを持ち合わしている者だけが持てる、力のある言葉。

 ……違う。

『それから、久しぶりだね、ほむらちゃん。ああでも、ほむらちゃんにとってはすぐのことかな?』

「まどか……」

 握り締められた左手に、返す力が加わった。
 まどかはその手を同じように握り返す。

『私、時間の感覚がおかしくてね。ずっと導いてきてるけど、それも一瞬で終わるような曖昧な感じで』

 彼女はそう言って、寂しそうに笑うのだ。
 まどかは胸の置くがぎゅっと掴まれたような気持ちになって、もう一度ほむらの手を握り締めた。

『こうなったのもね、あなたにとっては一ヶ月前でも、私にとってはずっと昔で、ほんの少し前の出来事なんだ。
 だから結界で覆われたこの地球を眺めてる時間がとっても現実的でね? それで、とっても不思議な気持ちなの』

 声こそ明るいが、その内容はとても笑う気分になれるようなものではなかった。
 それは彼女が人間を辞めた事の証であり、彼女が背負う、あまりにも無慈悲な業の重さを表している。
 魔法少女の希望になる、その選択が罪であり、業をもたらすと言うのなら。
 業を背負わぬ選択など存在するのだろうか。

 ……やっぱり、違う。

『でも良かった』

「え?」

 少女の口から紡がれた安堵の言葉に、まどかとほむらは口をそろえて疑問の声を発した。

『こうなることなんて、私にはまったく予想できなかったの。だから、良かったなぁ……ってね』
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:10:13.92 ID:jiMDkYtfo

「まどか、あなたは……心配してくれていたの? あなたを選ばなかった、私を?」

 ほむらの言葉を受けて、少女は意地の悪そうな笑みを浮かべた。
 空いた方の手を胸に当て、視線を下に、首を小刻みに左右へ振り動かす。

『ほむらちゃんが私のこと、そんな性悪女みたいに見てたなんて……傷付いちゃったなぁ』

「えっあ、違うの! そうじゃなくて、私はただ、その」

『あははっ、冗談だよぉ。 ほむらちゃん可愛い♪』

「なっ……」

 先ほどまでの人外オーラはどこへやら。
 彼女はどこにでもいる少女のように、舌をちらっと覗かせて頭に手を当てた。
 
 どこにでもいる、少女のように。

『あのねほむらちゃん、ほむらちゃんが私の事を選んでくれなくても、心配するのは当たり前だよ?
 ほむらちゃんはほむらちゃんなんだから。選ばれたかどうかなんて、私が気にするだけ意味ないでしょ?』

 少女は本質的に、優しいのだろう。
 悪意を持たず、怨みを産まず、ただ慈しむのだろう。
 それこそが彼女。魔法少女を救う、世界から外れた存在。円環の理。

『またこうして会えた事が、私にとっては奇跡みたいなものだから。むしろ感謝してるんだ』

 彼女は何も妬まず、誰も憎まず、全てを肯定的に捉える。
 もちろん、まどかはまだ少女の全てを理解したわけではない。
 少女が救済した全ての命に流れる物語の側面すら知らない。何も分かってなどいない。
 だからこそ思うのだ。

 違う、と。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:10:40.12 ID:jiMDkYtfo

『……ねぇ、ありえたかもしれない、もう一人の『私』』

 びくっ、と身体が大きく震えて、勝手に硬直した。

『あなたは、後悔してない?』

 それを聞くのは自分の方なのに。
 彼女は自分のことを案じて、尋ねてくれる。

「……あのね」

 そう言うと、まどかはすぅっと肺に息を溜めた。
 言いたいことを、言いたいように言おう。

「『私』とは、会うのはこれが初めてだけど。その姿を見たとき、どこかで会ったことがあるような気がしてね」

 一旦言葉を切り、相手の反応を窺う。
 少女は微笑んだまま頷いて先を促した。

「たぶん、夢の中で逢ったような……ううん、もしかしたら、私が夢にまで見た姿かもしれなくて。
 もし私がそうなれるのなら、それはとっても嬉しいなって……でも、そう思うのと一緒に、とても怖くなって」

「まどか?」

 ほむらの声に、手を握り返すことで応える。

「もう何も怖くないって思ったのに、でもやっぱり違うなって思っちゃったんです」

『……』

 彼女の姿を、隣にいる友達の記憶で覗き見たときから思っていたこと。
 同じ鹿目まどかなのに、まったく違う、何かがあること。
 それはもしかしたら気のせいなのかもしれない。
 ほんの少し道を違えていたら同じようになれたのかもしれない。

 だけど。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:11:06.68 ID:jiMDkYtfo

「私は『私』じゃない。私は『あなた』とは違う――って」

 不意に、左手が握り返された。
 それを温かいと、嬉しいと、まどかは思う。
 視線の先で、黄金色の瞳の少女は深く頷いた。まどかの言葉を受け止めてくれた。

『そうだね。私は『私』じゃない。ごめんなさい』

 だけどね、と彼女は続ける。

『私と『あなた』の違いは、たぶん、本当にささいなことだと思うの。
 きっかけが有ったか、無かったか。
 助けてくれる人たちがいたか、いなかったか。たったそれだけの事だと思うんだ』

 ただ言葉だけを捉えていればまどかのことを励ましているように聴こえるかもしれない。
 実際、その響きにじゃまどかのことを思いやる気遣いが含まれているように聴こえた。
 だけど――まどかにはそれが、精一杯の抵抗の言葉に聴こえた。
 ちょっとした意地悪な言葉。小さなイタズラ心が生んだ、彼女自身気付かぬ、世界にも気付かれない嫌味。
 小さな小さな、嫉妬の炎。

 ……もし、そうであったならば。
 彼女の心が常人のそれと変わらない事を証明しているように思えて、まどかは複雑な笑みを浮かべた。

『本当はもっと色々お話したかったけど、ごめん。もう時間みたい』

 そう言って、彼女は右手をまどかから離して周囲を仰いで見せた。
 それを見てまどかとほむらも気付く。
 灰色の大地に、見通せぬほど広い果ての無い世界に大きな亀裂が走っている。

 もう、時間が無い。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:11:37.94 ID:jiMDkYtfo

『それじゃあこの子達は、連れて行くね』

 彼女は音も無く消えた。
 そして、初めからその場所にいたかのような仕草で、動きを止めたままの魔女の翼に寄り添った。
 光が弾ける。
 嫉妬と憎悪と、ありとあらゆる呪いを含んだ怨嗟の声を身に纏っていた魔女の翼が静かにばらばらになっていく。

 羽根が、翼から抜け落ちていく。
 一枚一枚、一つ一つ、静かに抜けて、ばらばらになる。
 それらはほんのわずかに少女の姿を構成すると、すぐに光の粒になって少女の下へ吸い込まれるように誘われた。

「あっ――」

 ほむらの声が漏れる。
 彼女が犯した罪が、重ねた業が、絶対的な概念によって洗い流されていく。

「……っ」

 まどかは手を握り返そうとして――やめた。
 代わりにほむらに向き直り、彼女の肩を、白い翼の生えたその背中を優しく抱き締める。

「ほむらちゃん……」

 彼女の顔を覗き見るような、無粋なことはしない。
 まどかに出来ることと言えば、ただ抱き締めて、肩を貸してあげる事くらいだった。

 そんな二人を尻目に、とうとう最後になった黒い羽根が少女の姿を形作った。
 彼女は蜃気楼か陽炎のように曖昧な姿のまま、三つ編みに結ばれた髪を振ってこちらを見る。

『あの……』

 とても小さな声だった。
 とても安らかな音だった。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:12:09.75 ID:jiMDkYtfo

『わたしはもう、なにも怨みませんから……だから、二人の事、よろしくお願いします』

「え?」

 私達の疑問の声は、しかし彼女に届くことは無かった。
 瞬く間に光の粒となって、白い少女の下に導かれる。

『それじゃあ二人とも、これで本当にさようなら』

 振り返り、少女はその背に光り輝く翼を広げて言った。
 そして長大な白のスカートの隙間から見える、宇宙のように深く綺麗な瞬きと共に薄れていく。

『あの子達がいなくなってしまった以上、この結界はもうすぐ閉じちゃう。
 そしたらみんなは宇宙空間に放り出されちゃうから、急いだ方が良いよ』

「え……ええぇぇぇ!?」

「ちょっ、まどか、いくらなんでもそれは!」

『あははっ♪ 大丈夫、さっきの白い人が頑張ってくれると思うよ。じゃあね!』

 少女の姿は、まるで人の抱く幻想、実体の伴わないうたかたのように弾け、消えていった。
 世界の仕組みを考えれば、もう会うことは無いというのに。
 彼女の言葉はあくまで軽く、人を不安にさせないような優しいものだった。

 まどかはほむらの背中を撫でながら、頬を彼女のそれに寄せて呟いた。

「……どうしよっか?」

「……どうしようかしら?」

 あまりにも間抜けな掛け合いに、二人は堪えきれず噴き出して、しばらくの間笑い続けた。


 すぐに空が二つに裂けたので、気を取り直して皆と合流し、血眼になって大穴を降りる羽目になったのだが。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:14:06.59 ID:jiMDkYtfo

――それから一時間ほどして、舞台は地上に戻る。

「この前三下とシスターもそォだが、どいつもこいつも俺の事をタクシーか何かと勘違いしてねェか……?」

「それだけ頼りにされてるってことさ。結局血が足りなくて気絶した僕よりはマシだと喜ぶべきだろう」

 全員を背に乗せたまま、六千キロダイブを可能な限り安全な状態で行いってげっそりした表情の一方通行の肩を叩くと、
 ステイルは力無くむき出しのコンクリートの上に横になった。
 身体中がズキズキするし、傷口はまだ痛むわ足はまだ完全に繋がってないわで重傷もいいところだ。
 だが彼は安らかな顔で空を――暁美ほむら達が作り出した結界の無い、広い青空を見上げた。
 そんな青空に、さっと影が差す。長身にポニーテールの神裂だ。

「お疲れ様です、ステイル」

「ああ、君もある程度は回復したようでなによりだ」

「医療班からはあと三日動くな、と言われてしまっているのですがね。……それで、どうです?」

「とりあえずは無事解決したよ」

 そう。あくまでとりあえずは、だ。
 しかしいちいち先の見えない未来に気を病んではいられない。

「それではこちらもご報告を。帰ってきた魔法少女たちは皆、家族や親友と話をしているようです」

「そうか。……あのグレゴリオの聖歌隊は?」

「バードウェイの差し金です。あなたは知らないでしょうが、地球ではあなたたちの会話が延々と流されていましたよ」

「それくらい、わざわざ結界の中にキュゥべぇを忍び込ませた時点で察しは着いたさ。手は打ってあるんだろう」

「はい、どうやらバードウェイの仕掛けた術式が発動しているようで、素質の無い者の記憶からは抹消されているようです」

 用意周到なことだと、ステイルはため息を吐きながら思った。
 数千万か数億人規模の祈りを用意しながら、世間に生じる波乱は最小限に留めて見せた少女の笑みが浮かぶ。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:14:42.56 ID:jiMDkYtfo

「それから……インキュベーター側から提案がありました」

「提案?」

「はい。どうやらローラ=スチュアートが打ち立てた和解案に応じるとの事です」

「いったいどんな……ああいや、また今度聞こう」

 詳しく話を聞きたい気持ちは有るが、聞いたところでろくに覚えていられる自信がなかった。
 ステイルは無理やり上体を起こすと、神裂に視線を向け直した。

「それで、土御門たちはどこに行った。いるんだろう」

「彼らならローラ=スチュアートの探索に出かけましたよ」

「そうか……分かった、君は君の仕事をするといい。僕はもうしばらくここで休んでいるよ」

「はい。――ああそれと、学園都市から派遣された災害救助隊から連絡がありまして」

 違和感を覚えて、ステイルは目を細める。
 別に学園都市が救助隊を派遣すること自体はおかしくない。
 妙なのは、わざわざ魔術師である自分達に連絡を入れたことだ。
 ステイルは軽く眉をひそめて先を促した。

「なんでもここに来る途中で拾った二人組の男女を連れてくるそうです。年は若くないそうですが」

「……若い二人組の男女だったら、察しは着いたんだけどね。名前は分からないのかい?」

「それなのですが、実はその二人の苗字が……」

 続く神裂の言葉を聞いて、ステイルは合点が行ったように頷いた。
 そして離れた場所で一人佇んでいるほむらを見て、微笑を浮かべるとステイルは力を入れて立ち上がった。

 話をするような親しい相手がいないせいで、どこか手持ち無沙汰な表情を浮かべるほむらに、
 少々複雑だが、それでも聞けばとびきり喜ぶであろう話を届けてやるために。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:15:16.60 ID:jiMDkYtfo

――視点は、美樹さやかに移る。

「……なんか、すっっっごーい疲れたんですけど……」

 ため息と共にあたしは隣にいる杏子にどたーっともたれかかった。

「おい、引っ付くなよさやか」

「えー良いじゃん減るもんでもないしー。あたしらもまどかとほむらみたいに抱き締めあおうよー」

 あれだけ見せ付けられたらその気になっちゃうのは仕方ないよねー、と思う。
 もちろん二人にソッチの気はないのだろうけど。
 ……あったらどうしよう、友達付き合い考え直さないとダメかな?

「お断りだっての。だいたいアンタ、こんなとこで油売ってて良いのかい?」

「なにがー?」

 杏子は面倒くさそうな顔をしながら、あさっての方向に指を向けた。

「ボーヤ、お待ちかねみたいだけど」

 あたしはばっと姿勢を正して、杏子の指差す方を見る。
 そこには体中泥まみれで、ところどころに擦り傷を負った男の子がいた。
 汚れてるし、傷だらけだけど、見間違えるはずも無い。

 恭介だ。

「……ごめん杏子、あんたとイチャイチャするのはここまで。あたし行ってくる」

「アタシが求めてたみたいに言うなよ!」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:15:43.46 ID:jiMDkYtfo

 あたしは恭介の下に駆け寄った。
 ――のは良いんだけど、何を言っていいのか分からなくて、結局黙り込んでしまう。
 そんなあたしを見ながら、恭介は静かに口を開いた。

「終わった、みたいだね」

「……うん、終わったよ」

「夢、みたいだね」

「うん。夢みたいだけど……ちゃんと、現実だから。奇跡も、魔法も、あるんだよ」

 そっか、と恭介が頷いたのを合図に、ふたたび場に沈黙が舞い降りる。
 だけど恭介のおかげで普段の自分を取り戻したあたしは、その沈黙をすぐに打ち破った。

「みんな助かったよ。あたしに出来たことは少なかったけど……ね」

「そっか。後悔はしてないんだね」

「もちろん! 後悔なんて、あるわけない」

 ……たとえ、ソウルジェムがボロボロになっていようと。後悔の念なんて、綺麗さっぱり消え去ってしまっていた。

「恭介、あたしが言った言葉覚えてる?」

「もちろんじゃないか。君の言葉を忘れるはず無いだろう?」

 ありがとう、と心の中で呟く。

「仁美にね、本当の気持ちと向き合えますか? って、結構前に言われてね。
 ずいぶん悩んで、避難所を出る前に告白したけど、実際どうなのかなってもう一度考えたりしてね」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:16:37.97 ID:jiMDkYtfo

「……あたしって、ほんとバカって、自分でも思っちゃった」

「さやか?」

 恭介の近くに歩み寄りながら、あたしは思う。

 考える必要なんて最初から無かった。
 悩む必要だって、まったく無かった。

 だって、だってあたしは――

「あたしは――心の底から、あなたのことが大好きだって気付けた」

 そう言うと、あたしは有無を言わさず抱きついた。

「こういうとマセてるかなーって思っちゃうけど、でも……あなたのことを愛してるって、ようやく分かったの」

 服越しに伝わる、恭介の鼓動の音を聞きながら。

 あたしはただ、自分の意思と衝動に身体を委ね、恭介に体を預けた。

 その時だ。
 あたしの背中に、しっかりと腕が回されたのは。
 その意味を尋ねるほど、あたしは鈍感じゃない。
 頬を流れる涙の意味に気付かないほど、あたしはバカじゃない。

 あたしたちは、互いの気が済むまでお互いの温もりを分かち合った。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:17:19.63 ID:jiMDkYtfo

――視点は、佐倉杏子に移る。

「アタシにはイチャイチャする相手なんていないから、覗き見したって無駄だよ」

 そう言って、アタシは後ろを振り向く。
 物陰に隠れていた五和と香焼、それに建宮が脂汗を浮かべたまま姿を現した。

「いやいや、俺は悪くないのよな。意識を取り戻したと思ったら五和が気になることがあるとか言い出して!」

「いやいやそれ教皇代理じゃないですか!? まだ治療中だった私を無理やり連れまわしたんじゃないですか!」

「二人とも元気っすね……」

 調子が狂うなぁ、と思い、まぁそれも良いか、と割り切る。
 そしてそのすぐ近くでこちらを見つめる修道女――アニェーゼに目をやり、笑みを浮かべて見せる。

「よぉ、“先輩”」

「はん、路上生活は辞めたんですからそりゃ正しくないってもんでしょう。それともまた戻るつもりですか?」

「そんなの、アタシが許さない。……なぁ」

「なんです?」

 アタシは少しの間迷ってから、素直に自分の疑問を打ち明けた。

「……どうなるんだい、アタシたちは」

 アニェーゼは目を細め、悩む素振りを見せる。

「さて、分かりません。しばらくは現状維持でしょうが……後始末が色々とありやがりますから」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:17:46.40 ID:jiMDkYtfo

「そっか。……まぁ、いいさ」

 どうせ時間はたっぷりとあるんだ。

 仮に元の人間に戻れたとして、なにか重大な欠陥やリスクがあったとしても。
 それでも、残された時間は自分のために使うことが出来る。

 自分のために――誰かのために役立ちたいという、自分のために。

「面倒事が全部終わったら、あの教会でシスターの真似事するのも悪くないね」

「シスターなら修道院に入るべきでしょうが」

「鈍器持って魔術だなんだ取り扱うアンタにゃ言われたくないよ」

「確かに、それには違いねーですね」

 愉快そうに笑うと、アニェーゼはどこへともなく姿を消した。
 後始末とやらのためだろう。

「……あっ」

 正確に言えば、シスターの真似事ではなく父親の真似事だったな。

 杏子はしばらく考えてから、まぁいいかと頷いて空を仰いだ。

 雲一つない、快晴だ。
 今がまだ太陽の光差す時間帯であることに少し驚いた。
 杏子は笑うと、いまだに三人で責任を押し付けたりツッコミを入れたりする三人の中に飛び込んだ。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:18:15.88 ID:jiMDkYtfo

――鹿目まどかの場合。

「この……バカ娘!」

 ばちぃんっ! と頬を叩かれて、私は何歩か後ろに下がった。
 痛みに遅れて、痺れと熱が訪れる。

 だけど私はちゃんと前を向いたまま、目を閉じなかった。

 私を叩いたママは、そんな私の態度に表情を険しくすると、無理やり私の事を抱き寄せた。

「あんたって娘は、いつのまにそんな気丈な態度取れるようになったんだい」

「えへへ、ママの子供だから、うん」

 ママの温もりが、伝わってくる。
 今日はなんだか抱き締めたり抱き締められたりばっかだなぁ、と思うと、ちょっと笑えて来ちゃって。
 だけど笑うわけにもいかなくて、私はきっと、変な表情を浮かべていたんだと思う。

 私の顔を覗き見たママは、私の頭を乱暴に、ガシガシと撫でた。

「言うようになったじゃないか」

「うん、だってママの子供だもん」

「それ言えばなんとかなるとか思ってないかい?」

「そ、そんなことないよ!? ちゃんと反省してるよ!?」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:18:44.37 ID:jiMDkYtfo

 ママはそっと表情を緩めて、それからもう一度、私の頭を優しく撫でてくれた。

「なんだろうね、無性にあんたと酒を飲みたくなってきたよ」

「あと六年間は待ってね」

「長い! 四年で!」

「十八歳は飲んじゃダメだよ」

「アメリカとかは平気じゃなかったっけ?」

「ここ日本だもん」

 そりゃそーか、とママは舌を出した。
 こんな何気ないやりとりが、こんなにも温かいものだったなんて。
 こんなにも大事で、かけがえの無いものだったなんて

 そんな時、私達を呼ぶ声がした。

「おーい、まどかー! ママー!」

「まろかー! ままー!」

 私はママと顔を見合わせると、互いに肩をすくめあった。

「ちゃんと謝れよー、パパすっごく心配してたんだからな」

「はーい」

 私は頷くと、微笑んだ。

 もう二度と見ることの出来なくなってしまった『彼女』のことを思い出す。
 私と彼女は別人だけれど。
 せめて、彼女の分までこの時を噛み締めようと、私はそう思った。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:20:56.90 ID:jiMDkYtfo

――そして。

「因果が巡り巡った先で、機会があればいずれまた逢いましょう」

「じゃあまたね、救世主」

「ええ。また会いましょう」

 そう言って、わたしは白と黒の二人組の魔法少女に別れを告げた。
 突然現れたと思ったら、いきなり言いたいことだけ言って感謝して帰っていく二人を見ながら、私は思う。

 ……あの二人、私を殺しかけたことを完全に無かったことにしてたわね、と。

 だからと言って、いまさら問い詰めるのも面倒だった。
 何か無い限りは無害であることに変わりないのだから、寛大な心で見逃してやるとしよう。

「でも……本当に終わったわね」

 呟き、肩の荷が下りたような気分になる。
 もちろん問題は山積みかもしれない。見滝原市の復興だって、何年掛かるか分からない。

 けれど、終わったのだ。
 もうワルプルギスの夜に怯える必要は無くなった。
 まどかが魔女になる可能性だって、いまのところは無い。

 そうなると、今度は急に暇が出来てしまった。

 私には、帰還を喜べるような親友や魔術師はいない。
 まどかもさやかも杏子も、皆親しい者達と共にいるので少し疎外感を味わう羽目になった。
 まぁ……どうせ暇だしそれも良いかもしれない。

「もう誰にも頼らない。まどかとの約束が、私の全て……最後に残った道しるべだと、思っていたのに」

 呟き、力を抜いて笑みを浮かべる。
 良かった――と。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:21:24.40 ID:jiMDkYtfo

 そんなことを考えていると、私の下に身長二メートルの赤毛神父――ステイルがやってきた。
 彼はどこから手に入れたのか、酢昆布をかじりながら私に向かって手を挙げた。
 とりあえず同じように手を挙げて応えると、彼は肩をすくめて酢昆布を手に取り口を開く。

「一人ぼっちは寂しいかい?」

「そうでもないわ。……というか、半死半生のあなたにとやかく言われる筋合いは無いと思うのだけれど」

「それとこれとは関係ないだろうが……そんなことよりも朗報だ。いや、君からすれば少し複雑かもしれないが」

「なにかしら?」

「君に面会の申し込みがあってね。詳しい話を聞きたいそうだが、どうする?」

「……今はやめておくわ。詳しい報告は今度するから」

「それは困ったな。もう来てしまっているんだが」

 この神父はどうしてこう、人の神経を逆撫でするのが得意なのだろう。
 私はため息を吐くと、仕方なく彼のそばに歩み寄った。

「それで、相手は誰かしら。あなたのところの上司?」

「ん? 上司じゃないね。正確に言うと、あー……
 僕が所属する組織と密接な関係の組織がここに来る途中で拾った赤の他人の夫婦、かな」

 歯切れの悪い返事に、私は眉を立てた。

「つまり?」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:22:04.73 ID:jiMDkYtfo

「つまり――君のご両親だよ」

 ……え?

 彼は酢昆布である方角を指し示した。
 私がその方向に目を向けると、見慣れぬ形をしたヘリコプターがちょうど着陸するところだった。
 その中から、二人の男女が寄り添いながら降りて来た。

 ……ああ。

「もちろん、厳密に言えば君の、ではなくその身体の暁美ほむらの、になるが……どうする?」

 どうする、と言われたところで。
 私には、どうすることも出来ない。

「まどかから聞いたよ。暁美ほむらの一人に、二人の事をよろしくと言われたそうじゃないか」

 ……そう。そういう意味だったのね。

「……まぁ、ここから先を説明するのは少し野暮かな。君が嫌ならお引取り願うことも出来るが」

「いいえ、大丈夫よ。……ありがとう、ステイル」

 私は小さな声で礼を言った。
 彼はどういたしまして、と言うと私に背を向けて歩き出した。
 その姿を見送りながら、私もまた、歩き出す。

 ……結界の中で聴いた二人の声は、そういうことだったのね。

 私は降りて来た二人の顔を見つめながら、震える足取りで前へ進む。
 姿を見るのはこれで何年振りになるのだろう。
 たぶん二〇年……いや、二五年ぶりだ。

 二五年振りに見た私の両親の姿は――記憶のまま、何も変わってなどいなかった。
 私は震える足に力を入れて、走り始めた。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:22:31.35 ID:jiMDkYtfo



 私は、あなたたちの本当の娘ではないけれど。

 今だけは。

 どうか今だけは。

 あなたたちの娘として振舞うことをお許しください。

 そう、心の中で懺悔しながら。


 私は二人の間に飛び込んで行った。



 二五年振りに感じた両親の温もりは――とても、気持ちが良かった。


59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2012/06/07(木) 01:29:25.83 ID:jiMDkYtfo
以上、ここまで。

最後に台詞の中にサブタイトルをたっぷり突っ込んでやったぜとか、禁書が空気だとか、
色々ありましたが、本筋はこれで完結です。
一応エピローグは用意してありますが、それを読まなくても納得頂ける形に仕上がっていれば何よりです。

ほとんど一年近く、お付き合いいただきまことにありがとうございました。


残るはエピローグの投下だけですが、どうも徹夜のせいか風邪を引いてしまったのでちょっと間が空くかもしれません。
20日までには投下したいと思います
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/07(木) 01:31:40.57 ID:txNc6P8s0
乙乙、超乙。音の速さを超えて乙
どこから感想言っていいのか分からないくらい話の密度高え!
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/07(木) 01:39:05.59 ID:yc6ACLH/0
大団円だな
それでも一人足りないのが悲しいが…
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/07(木) 01:53:10.51 ID:dXqKkBaI0
乙以上の言葉は蛇足だな
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/06/07(木) 03:35:07.23 ID:Z2z9WaPj0
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 04:51:26.82 ID:nzAZpiBDO
言葉で言えるほど賢くもないので一言。


お疲れさまでした。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/06/07(木) 06:36:25.06 ID:1EfRLz5Z0
乙!まどかはようやく“自分”の憧れと決別できたんだな…
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/07(木) 07:32:10.86 ID:zr0ylMzlo
乙でした
やっぱり戦いの後は晴天が合うなもので晴れ晴れとした気分になります
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/07(木) 08:31:19.34 ID:L3w77J0DO
>>1乙!

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/07(木) 09:39:13.57 ID:YyWrInjIO
乙です!つーかステイルは気絶してほむら達のやりとりを聞けなかったのかww
つくづく物語の中心に関われない性質なんだなぁ…
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/06/07(木) 10:09:13.59 ID:CDBnrO8c0
乙!
えんだあああああああああ、と叫ぶにはまだ早いかな

ほむパパとママはびっくりするわな
気弱な娘がいつの間にかクール系になってると
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/07(木) 22:04:04.85 ID:EDeF+UWv0
スレタイに惹かれて追いかけたこのスレも遂に完結か・・・
エピローグ楽しみにしてます
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/06/07(木) 22:17:12.23 ID:rr/3820Ko
キレイに終わったなぁ…乙。
個人的にはマミさんに復活してもらいたかったが、虎は死して皮を残す、じゃないけど
最後に結構重要な役だったし流れ的にはこれで良かったかな。

エピローグが楽しみだ。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/08(金) 00:10:17.02 ID:IKRjOZCv0
25年っていうとおおよそ300回もループしたのか・・
しかしまどかとまど神の会話は読んでてクるものがあったな。
せめてあともう少し、ほんの少しだけアレイスターによる世界結合が早かったらまた違った結末になってたのかな.....
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/06/08(金) 01:50:10.25 ID:4XtLOklh0

最高のハッピーエンドでした!!

お疲れ様です!!
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/08(金) 02:30:05.51 ID:UphlfDljo
まだソウルジェムやらなにやらで鬱臭いフラグが残ってるからどうかな
この>>1なら鬱からのどんでん返しを期待したいがマミさんとか死んでるしまた誰かが犠牲になる可能性が・・・
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/08(金) 10:26:51.69 ID:jqN02TPIO
今のとこ危なそうなのはさやかあたりか。
>>72本編でも助けてくれる人やきっかけがあればあんな結末にはならなかったんだろうな…切ない
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/08(金) 23:44:50.98 ID:ySPg8QiG0
これであと残ってるのはSG関連に円環の理への対処、アレイスターの動向くらいか
エピローグに期待
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/09(土) 00:18:57.41 ID:+gAbD2vx0
円環の理はアレイスターが結界で締め出したから大丈夫なんじゃない?
こうなった以上向こうも積極的には干渉してこない(できない)だろうし
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/10(日) 00:17:52.32 ID:93nFPeiW0
アレイスター「すべて計画通りだ」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/15(金) 00:51:22.35 ID:cxzZhVJx0
改めて読み直したがすごいSSだな
本編の結末に納得いかなかった身としては、このまどかの選択はベストだと思った。
まあその分まど神とのやり取りは読んでて切なかったが…
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 02:23:06.54 ID:/eZgwgIq0
これって地球から出たら円環の理の有効範囲ってことなの?
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 02:40:26.58 ID:4ri/rbCNo
そうなるんじゃね?
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/26(火) 02:54:29.31 ID:DhHZ2hbqo
マダカ
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 08:36:24.70 ID:lWqllAqDO
マギカ
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/02(月) 10:21:55.96 ID:nYshUd7IO
マダー?
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 17:02:37.20 ID:lvaMuUSs0
個人的にはどーもまど神=まどかとは思えないんだよな
なんつーか"こっち"の価値観や常識、概念に当てはまらないQB以上に異質な存在というか....
小説版曰く無数の魔法少女達の集合体らしいし、まどかの記憶と姿をもったナニカといったイメージがある
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 17:06:03.44 ID:lvaMuUSs0
誤爆
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/05(木) 08:03:35.52 ID:DAsBR//Bo
とても誤爆には見えないくらいスレの内容とマッチした誤爆に感動した
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/05(木) 13:02:25.03 ID:pdiMvpPIO
概ね同意だが、俺は円環の理=まどかでもないと思ってる
祈りによって創りだされた法則にまどかの意識だけが張り付いてるイメージ
初期構想では自意識拡散ENDだったらしいし
ただその残った意識にしても絶望に繋がるような感情は一切抱かないみたいな>>86の言う異質な物になってる気がする
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/05(木) 13:19:27.94 ID:91DqDGOIo
このスレのまどかが考えてる悪意をもたず憎まず慈しみ妬まず恨まず肯定的に〜ってやつみたいな?
そう考えると「意地悪な言葉」もすげぇ重たくなるな。妬めないのに絞り出した嫉妬の言葉みたいだし
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 00:30:31.37 ID:sQztq+yK0
そりゃいくら望んだ事とはいえ、自身が概念化した後になって自分が犠牲にならなくても皆が救われる最後のハッピーエンドなんてモン見せられりゃ嫉妬の一つや二つするわな。
皮肉にもそのキッカケを作ったのが並行世界の自分自身の祈りってだけに余計に
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 12:30:53.36 ID:sQztq+yK0
×最後
○最高
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 01:58:06.31 ID:Dep7wgS70
しかも二つの世界が融合したタイミングが、よりによってちょうど願いを叶えた直後ってのがな…
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 15:24:26.88 ID:+88SWnz5o
☆とローラって良いことしちゃいるけどマミさん死なせたりまど神からほむら奪ったりと失策も多いよなぁ…
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 10:34:14.60 ID:NCuZo4QIO
マミさんが死んだのは残念だが、まどかも消えてないし魔法少女も人間に戻せるしで結果として本編ENDなんかより遥かにいいじゃないか
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 17:31:52.44 ID:6FHWTJyo0
最後の投下からもう一ヶ月以上か....

魔法少女を人間に戻せるようになれば、少なくとも現在の魔法少女は死ぬまで戦う運命から開放できるな。QBもこれ以上契約しないようだから未来に魔法少女は生まれないし。
もっともこれだと過去の魔法少女は救えないけど、そこはまあ「なかったことにしてはいけない」ってことで
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/14(土) 20:45:49.47 ID:3oWIr7fX0
ぶっちゃけまど神って禁書的にいうとどんなもんなんだろ?
エイワスとかと同等レベルだろうか?あいつも異なる時間軸に存在(知覚?)してるっぽいし
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/07/15(日) 10:35:52.52 ID:xdp3DBjc0
マミマミストの俺にとってはマミさんが最後の最後までステイルやまどかに影響を与えてたことが救いだよ。
是非ともエピローグが読みたいので、頑張ってください
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/20(金) 11:19:32.86 ID:/Vf4o4eIO
まだー?
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/07/20(金) 11:50:18.49 ID:TK438vTk0
>>98
愉快なオブジェになりてェようだなァ
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 02:33:29.04 ID:3lP+YKV9o
まだか
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/02(木) 00:20:10.79 ID:+5NCz7/SO
昨日から徹夜で一気
読みしたけど凄い上手だな!

ワルプル戦のステほむは
胸が熱くなるよ!

書き込むの殆どした事ないから何か悪い事してたら申し訳ない
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/08/02(木) 17:13:52.89 ID:aLG+pit60
>>101
名前欄の隣に「E-mail」ってあるだろ?
そこに「sage」を入れるのがここの板での基本だから注意してくれ
皆が「sage」を入れて>>1だけが「sage」を入れないことで、板を見ただけで>>1が来てるかどうかすぐわかるようになる
だから別の人が勝手に「sage」を入れないで書き込むと>>1が来たと勘違いする
以前これが原因で落ちたスレもあるから書き込み前にはぜひとも「sage」てるか確認してくれ
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 17:24:54.67 ID:trZZx3PDO
自治厨うぅーぜぇー
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/08/02(木) 21:25:17.14 ID:aLG+pit60
>>103
気に障ったのなら謝る
ごめん
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/02(木) 23:16:24.79 ID:2G2D+iSMo
いきなり罵倒する連中に比べりゃ遥かにマシだからキニスンナ
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/08/03(金) 00:35:09.77 ID:uL/Xt1sT0
正直なところ一番ウザいのは自治厨ウザい厨だからな
やり過ぎなければ無問題よ

ところでエピローグまだー?
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 07:16:33.52 ID:CFRaERLE0
まあ自治厨が敬遠されるのは一々噛み付くバカが多いせいだしな

ここの作者のことだからあんまり心配はしちゃいないが……せめて予告した日までには来て欲しいな。前回もそれで2ヶ月待たされたし。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/07(火) 00:19:50.81 ID:YIRKv7+X0
今日でちょうどあと残り1カ月か……
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/08(水) 01:17:44.90 ID:wQoq8X0jo
せいぞーんほうこくぅー

いやすいませんごめんなさい冗談です
エピローグに関してはもうしばしお待ちください。夏が終わるまでには、なんとか……
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 09:38:22.62 ID:kmw/SMR60
待ってる!
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 09:30:31.61 ID:7CD5Au6IO
まだかな
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/16(木) 01:26:12.26 ID:fBKEQx1so
>>1まだ〜?
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 20:41:29.40 ID:mTdgvGsy0
ここのまどかとまど神の関係はFateの士郎とエミヤを思い出すな。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 09:27:42.53 ID:8qe8tl3IO
そういやエミヤは最終的に"正義の味方"の概念になってたな。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 08:26:02.11 ID:Xo5RY34o0
いつかまど神もアーチャーみたいに摩耗するんじゃないかと考えたことはあるな。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/21(火) 21:44:03.11 ID:vhB2s6aQ0
 >>1乙!
                                                           応援してる!!
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/08/27(月) 20:01:41.12 ID:YsPQtoDD0
マダー?
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/02(日) 11:28:49.15 ID:XJVRDJ0wo
イイハナシダッタ
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/02(日) 12:02:59.26 ID:XJVRDJ0wo
無能力者、というか契約しないまどかや恭介って
相方が魔女化して初めてヒーローになれるジレンマがあるねぇ

それにしても、この話におけるまどかは士郎以上のバカチンだ
聖歌隊の準備も知らず無策のまま、契約も突っぱねた上で特攻してるが
これって第三者の的確すぎる仕込みが無ければ
チャンスを棒に振った上で無駄死にするだけでなく、ほむらも地球も終了してるじゃないかww
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 21:11:03.21 ID:aAe4zxIV0
まあクロス先がご都合主義満載の禁書じゃなきゃここまでうまくはいかなかったよなw
だからこそ徹底的に正のご都合主義が取り払われた成れの果てであるまど神との対比が映えるんだろうが・・・
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 23:46:41.49 ID:aEhVCApXo
正直禁書側も犠牲がほしかったな
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 14:09:36.27 ID:Oc11kUYIO
まあシェリーや天草式の名もなきモブあたりは死んでもよかったとは思うな
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 23:32:57.17 ID:3B4FKi960
ご都合主義でもなんでも
登場人物達がハッピーエンドを掴みとる為に全力で立ち向かったこの最後をてにいれたんだ

124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 12:31:04.89 ID:ncajyjSIO
マダカナー
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 18:30:33.40 ID:deQaiRN90
>>113 Fateネタということで一つ

体は祈りで出来ている

血潮は夢で 心は希望

幾たびの絶望を超えて不敗

ただ一度の敗走もなく

ただ一度の勝利もなし

救い手はここに一人

世界の果てで友を待つ

ならば、我が願いに後悔はいらず

この体は、無限の祈りで出来ていた
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 19:21:05.11 ID:h+RhdGj+0
か…かっこいい……!

世界の果てで友を待つのところがぐっとくる…!
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/06(木) 22:53:57.98 ID:pjszaBsWo
普通に出来が良いなかっこいい
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 23:31:45.25 ID:deQaiRN90
>>125ちょいと訂正
一人→独り
いらず→要らず
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 00:13:14.20 ID:me4EgP750
無限の剣製ならぬ無限の救済か
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 19:27:35.33 ID:mGTssPCx0
まだか
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/18(火) 13:26:26.80 ID:mdimPqy50
そろそろ夏が終わっちまうぜ
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/09/18(火) 23:18:42.85 ID:HiASUKsV0
上げんじゃねえよドカス、投下かと期待しただろ
あと糞みたいなオ○ニー短文晒してんじゃねえよ、無駄に伸ばしてんじゃねえよ、長めの投下かと期待しただろ
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 23:46:56.76 ID:J9c9OECwo
落ち着け
しかし一方クロスといいここといい、どうしてエピローグで詰まるのか…創作しないから分からんが大変なのかね
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/19(水) 00:46:16.26 ID:xFyA6us1o
終わりのラインを決めるのは確かに大変だ
別業種だがそれは解る
専ブラ入れて、ゆっくり待ちましょうや
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 10:40:53.61 ID:AeCJQrAG0
せめて生存報告だけでも…
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 19:46:05.04 ID:DKQ9G4r90
もうすぐまた二ヶ月来るんだが・・・
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 00:51:30.55 ID:WJm83LDM0
また2ヶ月たっちまったよ.....
生存報告除くと純粋な文章投下は4ヶ月以上してない事になるぞ
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 02:40:58.29 ID:iwzxn00Qo
一方まどかの人も同じ感じでエターなっちゃったよなー
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 13:02:19.69 ID:iI82Z/siP
ここまで話が進んでエタるはずがない(チラッ
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 13:13:18.77 ID:WnuNKoY2o
向こうも残りエピローグだけでエタったんだぜ……
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/10(水) 17:53:00.88 ID:Zcl7iQ2l0
生存報告もなしか・・・・
こりゃいよいよマズいかもな
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 12:12:30.54 ID:LhRY4f6A0
もうだめかもしれんね
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 20:01:52.05 ID:s3QIWupI0
やっと追いついたのにまじか・・
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 20:58:17.62 ID:Wn7i8lWo0
まだだ、まだ時間はあるッ・・・!
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/17(水) 20:57:04.76 ID:UhroLYHI0
頼む>>1帰ってきてくれ
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