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真「ここは……」やよい「……どこですかぁ?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/18(月) 14:25:00.33 ID:xOb/fQ6AO


燦然と輝く夕日に目を細めながら、菊地真は持っていたペットボトルの水を口に流し込んだ。
遠くを山々が折り重なるように続き、その下に広がる田畑が日の光に照らされている。
田舎ならではの美しい光景に、真は思わずため息を漏らした。




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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/18(月) 19:58:57.20 ID:3KzAEEdv0
えっ続きは?
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/18(月) 19:59:50.74 ID:xOb/fQ6AO

765プロ所属のアイドルである真はドラマの撮影のために群馬県まで訪れていた。
今日中に予定されていた撮影は無事に終わり、今は夕日を眺めながらパイプ椅子に座って一息ついている。
そんな真の周りでは、大勢のスタッフが慌ただしく撮影機材などの撤収をしていた。

「真さん、出発しますよー」

遠くから掛けられたスタッフの呼び声に、真は息を吐いて、パイプ椅子から立ち上がった。

「はーい今行きまーす」

ワゴンへと歩みを進める途中途中、片付けを進めるスタッフ達にすれ違いざまに挨拶をした。
重い機材を運んでいるスタッフ達は「お疲れ様でした」という返事をして真を送り出してくれた。

疲労によって重くなった頭をかしげて、真は地面を見た。
雑草が所々生えた砂利道に自分の長い影が落ちている。
スタッフを避けつつ歩きながら、頭をもたげて自分の影を足から頭まで目で追っていく。
頭まで視線が行ったところで視界に白いワゴン車が入った。

ロケのために真が乗ってきたワゴン車だ。
いつもは担当のプロデューサーと共に現場への行き来を共にしているのだが、この日は別件で別の仕事場に行っている。

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/18(月) 20:01:55.10 ID:xOb/fQ6AO

ワゴン車に歩み寄ると運転席の開いた窓から、運転手が顔を覗かせて「お疲れ様でしたー」と笑顔を向けてきた。

真も「お疲れ様です」と会釈をして、ドアに手をかける。

ドアを開けると、後部座席にオレンジ色の髪をした少女が座っていて、ワゴンに乗り込んだ真を見た途端、眩いばかりの笑顔を咲かせた。

「真さんお疲れ様でしたー」

「あぁやよい、お疲れ様」

同じ事務所に所属する中学生アイドル、高槻やよい。
真はドアを閉めて、ニコニコと笑うやよいの隣に腰を下ろした。

「ふーっ、疲れたなぁ」

「今日の撮影は大変でしたもんねー」

どこか舌っ足らずなやよいの言葉を聞いて真は頷く。
撮影しているドラマは、アクション要素満載な内容のものだった。
体力や身体能力が優れ、格闘技もたしなんでいた真は撮影のたびに戦わされ、そのたびにヘトヘトになる。
およそただのアイドルのする事とは思えないアクションの数々を思い出しながら、真はうなだれた。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/18(月) 20:09:09.29 ID:xOb/fQ6AO

「みんなボクが女の子だってこと忘れてないかな……」

「だ、大丈夫ですよー。落ち込まないでくださいー」

ボクだって女の子らしくヒロインになって恋に落ちてみたいよ……

慰めようとするやよいを尻目に、細くも凛々しい眉を下げながら真は窓ガラスに頭を預けた。

生い立ちと外面、そして『男の子のような女の子』という触れ込みにより真は世に売り出すことができたのだが、それは真が望む“アイドル”としての自分の姿とは大きく違っていた。
そのギャップを本当は受け入れたくないのだが、嘘でも受け入れなければ芸能界では生きていけない。
分かりつつも、真はなんとも言えないモヤモヤを胸の内に感じ、それを吐き出すかのように大きな溜め息をついた。

そうして、しばらく窓に映り込んだ自分の顔を見ていた真の横で、やよいがふと車窓から外を見た。

「……事務所に着くのは夜遅くになりそうですねー」

だろうなぁ。
やよいと同じく、車窓から夕日に赤く染まった空を眺めながら真はそう思った。

まぁ、よくあることだからしょうがないかと開き直り携帯を開く。

「えぇと、今日もまた遅くなりそうです。と……」

「真さん、誰にメールしたんですかぁ?」

「お世話になってるプロデューサーさんに。
やよいは家の方、時間は大丈夫なの?」

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/18(月) 20:11:52.71 ID:xOb/fQ6AO

「あ、はい。ちょっと心配ですけど、弟が上手くやってくれてると思います」

そう言ったやよいは家族に思いを馳せている様子で、その表情はいつもの幼い雰囲気から打って変わって、しっかりした姉としての表情をしていた。
その表情を見せられるたびに真は感心させられた。
自分ではこんな表情はできない、と。

ブロロロロロロ

不意にエンジンが掛かり、ワゴンが揺れる。

「出発しますよー」

運転手が呼び掛け、真とやよいがそれに返事をするとワゴンは発車し、速やかに撮影現場を後にした。



7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/18(月) 20:12:25.18 ID:xOb/fQ6AO
ここで切ります。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 21:43:22.48 ID:Ozt3Y+UAo

真とやよいは珍しいから期待してます
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/18(月) 21:47:08.37 ID:53ZZFuio0
真とやよいの組み合わせははじめてみた
期待してる 乙
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/19(火) 08:33:29.81 ID:aE2DzYQAO





高速を走る頃には辺りは完全に暗くなった。

途中のパーキングエリアにて軽食を取った真とやよいは、疲れもあいまって後部座席ですっかり眠りに落ちている。

軽い渋滞に二度ほど捕まった後、東京都に入った頃の時刻は既に9時40分。
頭を預け合って、すうすうと気持ち良さげに寝息をたてる真とやよいの顔を、過ぎ去っていく街灯が照らしていく。

特になんの問題もなく、二人は着々と事務所に近付いていた。

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/19(火) 08:33:56.01 ID:aE2DzYQAO


そのはずだった。


12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/19(火) 08:35:40.39 ID:aE2DzYQAO



「うわぁ、危ない!!」

運転手が悲鳴混じりの声が聞こえ、真は淡く目を覚ます。
しかしその直後、身体を強力な圧力が襲い、真は一気に覚醒した。

運転手が急にハンドルを切ったのだろう。

急激に曲がる車両。
かかる遠心力に振り回されまいとシートベルトが真の身体を捕まえているものの、勿論それは身体に食い込み、真は瞬間的に呼吸ができなくなった。

「かっ……ッはぁ」

車がカーブを止めると共に、遠心力から解放された直後、空気を求めて肺が動き出した。

「どっ、どうしたんですかぁ!?」

隣では同じく目を覚ましたやよいが狼狽した。

相変わらずハンドルは安定せずゆらゆらと車体が揺れる。
運転手を見るとその顔は青ざめており、目に見えて強ばっていた。

「いったいどうしたん………」

真が前に乗り出して運転手に言いかけた瞬間、強烈な光が目に飛び込んできた。

フロントガラス越しに見えた光。
それがこちらに向かって猛然と走る大型トラックの光だと分かったと同時に、真は自分の死を直感した。

妙に頭が冴えている。
しかも自分でも驚くほどに冷静だった。

あぁ、死ぬのか、呆気ないな、まだドラマも撮影途中なのに、765プロのみんなと会いたいな、ファンは悲しむだろうな、父さんは泣いてくれるのかな………

様々な思いが脳内で瞬時に飛び交う。
その間、トラックの光はスロー再生しているように、ゆったりとした動きに見えた。


これが走馬灯なのかな


そう思ったが最期。
直後、トラックの光で目の前が一杯になった。
間髪入れず、今まで感じたこともないような、激しい衝撃が全身に走った。
それを皮きりに、視界は一杯の光から暗転して深い闇へ。

そして真の意識も、間もなくして溶けるように消えていった。





13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/19(火) 13:02:10.06 ID:aE2DzYQAO







トラックの光に視界を飲まれて、真は来たるべき最期の衝撃を待った。
しかし衝撃は一向に襲ってこない。
その代わりに目の前を覆っていた光が段々と弱まり、視界が明瞭になっていった。

気付くと、いつの間にか真とやよいは部屋にいた。


「あれ……え?」


間の抜けた声を出しながら二人は部屋を見渡した。

小さくもなく、大きくもない、床はフローリングの部屋。

部屋には七人ほどの人がいた。
部屋のあちこちで座ったり、壁にもたれかかったりしており、スーツを着た中年の男性や派手な服装をした女、学生服を着た少年など。
性別や服装はまとまりがなく、多種多様な七人。
全員がこちらを見ていた。
好奇の目、驚きの目、興味のなさそうな目。
様々な視線が二人に集中している。

部屋にはベランダに通じる窓があった。
そこからは夜景が望めて、その中を突き抜けている東京タワーからここが東京であることが分かる。
そしてその高さから高層マンションか何かの一室であることも分かった。
しかし部屋には家具が一切置かれていない。

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/19(火) 13:04:05.81 ID:aE2DzYQAO

その代わりに、ちょうど真とやよいの目の前、部屋の奥に、真の胸元ぐらいまである大きな黒い玉が置いてあった。
金属製なのか分からないが、部屋の蛍光灯を鈍く反射している。
空っぽな部屋の中、鎮座するその漆黒の球体が特に目を引いた。


「えっ?……えぇっ?」

奇妙な状況に真とやよいは狼狽えられずにはいられない。

「ここは……」

「……どこですかぁ?」





15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/06/19(火) 13:05:26.64 ID:aE2DzYQAO
ここで切ります
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 13:11:06.68 ID:r6Kw2xtio
…黒い玉…
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/19(火) 14:16:47.55 ID:4Cvp/TsIO
G?
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/19(火) 14:58:19.32 ID:8H4b/F5do
A?
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 15:02:34.97 ID:r6Kw2xtio
B?
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 23:10:36.99 ID:vu2sm9+Eo
A?
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 11:46:45.60 ID:5INM7AwYo
これは期待せざるを得ない
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/11(土) 04:28:03.93 ID:oueEbGMAO
直に更新再開します
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/11(土) 10:34:41.54 ID:cf6M3y2Vo
期待します
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 02:20:47.02 ID:7atUN79AO



「……やよい」

「な、なんですかぁ……?」

「ボク達さっきまで確か、車に乗ってたハズ……だよね?」

「はいぃ……私達、なんでこんなとこにいるんでしょう……」

「わ、わかんないけど」

周りに人がいるために、心なしか小さな声で会話する二人。

(おかしいな、ボク達は確かに撮影帰りのワゴン車の中にいて……)

やよいと共に困惑しながらも、真は記憶を辿った。

(疲れたボクとやよいは車内で寝てたんだ。そしたら運転手さんがいきなりハンドルを切ったから飛び起きて……)

フロントガラスから見えたのは強烈な光。
咄嗟に突進してくるトラックのヘッドライトと判断して、死を覚悟した。しかし次の瞬間には

(気づいたらこの部屋に。
………ってことは、まさかここは死後の世界?)

そう思ってから自分がいつも通り、生物として呼吸をしていることに気付く。
隣で相変わらず困惑したま周りをきょろきょろと見回すやよいに、視線を移した。

「やよい、ちゃんと息してるよね?」

「は、はい、ちゃんと息してますけど……。
どうかしたんですかぁ?」

「いや、ちょっと確認したかっただけだよ」

(死んでないよね、うん死んでない。
ボクもやよいも息してるし、温度も感じるし、感覚もあるし……)

天井に設置された空調からはモーターの回転音が小さく聞こえる。
それが部屋を暑くも寒くもない気温に保っているようだ。

(……じゃ、じゃあ、あれは夢ってことなのかな?
でも、さっきまでの記憶はまるでないし……いやでも)

考えれば考えるほど思考はこんがらかっていく。

(……人もいることだし、ちょっと話を聞いてみよう)

一人で考えていても仕方がない。
真はとりあえず、近くに立って自分達をじっと見ていた中年のサラリーマン風の男に話しかけることにした。

「すいません、あの、ここは一体……」

「……あ、」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 02:23:24.65 ID:7atUN79AO


真がおずおずと話しかけると、サラリーマンは我に返ったかのように驚いた。

「へ?あっ、いや……それが、私もよくわかってなくて。
……なにぶん私もさっき来たばかりですから」

「あなたもですか?」

「えぇ、私だけではなくここにいる人はみんなここが何だかわからないみたいで……」

―――ここにいる人

そう言われて、改めて部屋にいる人達を見直す。

黒い玉の向こうの壁には、背の高い筋肉質な坊主頭の男、そして長い茶髪を携えた長身の女が壁に寄りかかって、興味が無さそうに真とやよいを眺めている。

(うっ、ちょっと怖いな……)

女性はともかく、男の方は無精髭の生えた強面で、こちらを眺めているというよりは睨んでいるようだった。
絡まれないように、と急いで視線を逸らす。

次に部屋の左側の壁、玉の近くには学生服を着た、真と同い年ぐらいの少年が、壁に背中を預けて無表情で床に座り込んでいる。
視線は窓越しから見える東京の夜景に向いているようだ。

そしてその窓側、窓の前にはセーターを着た、金髪で化粧の濃い女性が目を丸くして真を凝視している。

(……ファンの人、だったりして)

目線に熱いものを感じた真は、普段の経験から曖昧ながらもそう判断した。

真がしばらく黙って周りを見ていると、サラリーマンの方から遠慮がちに話しかけてきた。

「あの、ここに来られる前は、一体なにを?」

「え、と……ボクはこの娘と二人で車に乗ってました。それで突然、トラックが追突してきたと思ったら、気が付いたらこの部屋の中にいて……」

「だよね?」とやよいに同意を求めると、やよいは突然話を振られたことに驚きながらも「は、はい」と答えた。

「あなたは?」

「私は、勤めている会社の非常階段を踏み外したんですが……気付いたらここに」

男の話を聞いて、真の額を嫌な汗が伝う。
同時に、自分が見たトラックの光は確かな現実であったことを確信した。

「……あの、ボク達は死んでしまったんでしょうか?」

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 03:00:08.69 ID:7atUN79AO

頭に浮かんだ質問を恐る恐るサラリーマンに投げかけた。

「し、死んだって……真さん、なんでそんなことを?」

ちゃんと座席に座ったままだったやよいは、追突してくるトラック自体は見えていなかったようだ。
「後で話すよ」と真は言ってサラリーマンの返答を待った。

それに対してサラリーマンは、肩をすくめて視線を足下に落としながら答えた。

「かもしれません。でも、こうして息もしてますし、今生きているのは確かです。
こんなマンションの一室があの世だなんて考えられませんし。
……ただそれにしても、この部屋からは出られそうにはないんですが」

「……もしかして、私達この部屋に閉じ込められちゃってるんですかぁ?」

不安げにやよいは言った。

「閉じ込められたって、そんな……窓とか確かめたんですか?」

真の質問に、サラリーマンはどこか煮え切らないような様子を見せた。

「え、えぇ、それにここにはちゃんと玄関もあって、どこも試したんですが……
とりあえず、やってみればわかります」

「やってみればって……」

―――やってみれば
それがどういう意味で言われたのか分かりかね、真は怪訝そうな顔をしながらも窓ガラスに近寄り、留め具に手をかけた。

(……!?)

「あ、あれ?」

開かない。
いや、そもそも触れない。
留め具に力を掛けるどころか、まるで強力な磁石が反発しているかのように、手は留め具の周りで滑り落ちてしまう。

「な、なんだよこれ……」

「……私も信じられないんですが、玄関もそんな調子なんです。
それに窓ガラスを割ろうとしても割れないし、大声を出したり壁を叩いても外からは誰も気付く様子がない」

サラリーマンはスーツのポケットから携帯電話を取り出して、ディスプレイを真達に見せつけた。
ディスプレイは真っ黒に染まっている。

「携帯は電波どころか電源すら入らないですし。
まるでこの部屋だけ、外の世界から切り取られてるみたいなんです」

真もズボンのポケットに入っていた自分の携帯電話を取り出した。
見ると電源は入っておらず、バッテリーは入っているのにいくらボタンを押してもなんの反応も無い。

「そんな……こんなことって」

「ま、真さぁん、私達ちゃんと帰れるんでしょうか……」

絶句する真の傍らで、やよいが怯える。

「大丈夫……大丈夫だよ、きっと」

真は神妙な表情でやよいを抱き寄せて、その場にしばしの沈黙が流れた。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 03:03:33.66 ID:7atUN79AO


しばらくして、ふとサラリーマンが何やら思い切ったような語調で、真とやよいに質問を投げかけてきた。

「あの、こんな状況で失礼ですがお二人の名前を伺っても、よろしいでしょうか?」

(………やっぱり知ってたんだろうな)

大物、とまでは行かないまでも真もやよいも、ある程度は名前を世に売り出しているアイドルだ。
サラリーマンも、そしてこちらを凝視している金髪の女性も、口に出す勇気が無かっただけで知ってはいたのだろう。
自尊心や自信などではなく、サラリーマンの反応から真はなんとなく分かっていた。
溜め息を吐いてから、仕方なく真は自分の名前を明かすことにした。

「……菊地真です」

「……た、高槻やよいですー」

真が自己紹介をすると、やよいも恐る恐ると自己紹介をした。

「や、やっぱりそうだったんですね!お二方は765プロの……」

「そ、そうですけどー……」

途端に興奮し始めたサラリーマンの様子に、やよいがやや引き気味になると今度は別のところから黄色い声が飛んできた。

「えっ、菊地真くんに高槻やよいちゃん?マジで本物!?」

声の主は、今まで黙って三人のやり取りを見ていたギャルだった。

「あ、はい、そうです」

「そう、ですけど……」

「えウソ、マジ!?真くん超カッコいいー!!」

「あは、は。ありがとうございます」

こんな時でも、引きつりながらも思わず営業スマイルが飛び出る。
追っ掛けに追われて黄色い声を浴びせられるのが日常的な真にとって、興奮するギャルは、非日常的状況の中に日常が溶け込むような、不思議にも多少の安心感を覚えた。
カッコいいと言われていい気がしないのは相変わらずだが。

「……あの、ボクもあなた達の名前を、聞いておきたいんですが」

「松本千佳って言いますー」

真っ先に答えたのはギャル、もとい松本の方で、サラリーマンはその後に続いた。

「私は筑川幸喜です。よろしく」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「あーん、もうなんでこういう時にケータイ点かないんだろーせっかく真くんと会ったのに写真も撮れないじゃん……」

おもむろに自分の携帯をかちかちといじりながら独り言を言うギャル。

「あ、あははは」

一般人に余計なことを言うと日頃の追っかけがより面倒なことになってしまう。
担当のプロデューサーそう言われていた真は松本に対して笑うことしかできなかった。

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 04:03:56.15 ID:7atUN79AO
ここで一旦切ります
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 07:04:50.61 ID:3o9WQlXDO
ガンツとのクロス…か?
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 09:08:36.53 ID:7atUN79AO
クロスした作品の性質上、オリキャラがいっぱい出てきますがご了承ください。
では投下。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 09:10:47.11 ID:7atUN79AO

「この部屋とかもマジで意味わかんないし。これってなんかのドッキリとか?」

「違う、とは思いますけど……」

「っていうかよかったらメアドとか教えてほしーんだけど、いいかなぁ?」

「いや、あのアドレスとかそういうのはちょっと……
そもそも今、携帯は使えませんし」

「……あっそーか、ごめんね真くん。
でもでもでも!アドレスとか以外にも色んなこと教えてほしいな!!
せっかく会えたんだし!あ、あとサインとかも後でくれない?」

「い、いいですよ」

松本の甲高い声に、真は押されに押された。
やよいは助け舟を出そうにも、なかなか踏み切れずにいるようでおろおろと真の傍らで困っている。

「真くんホントかっこいい!!あー今日渋谷に来ててよかったー!」

喋り続ける松本に真は当たり障りのないことしか言えない。
しかし一方的な会話が展開される中で時々空く間に、それは聞こえてきた。


「……ぎゃあぎゃあうるっせーな、バカ女」


その瞬間、松本はぴたりと話をやめ、部屋の中が静まり返った。

こちらに微かに聞こえるかぐらいの声量で言ったのは、床に座って外を見ていた、今まで黙っていた学生服の少年だった。

「……はぁ?今なんつった?」

少し間を空けて、トーンを上げながら聞き返した松本に、少年は大きな溜め息を吐いた。

「さっきからうるせぇんだよバカっつったんだよ」

「は?なにいきなり、超うぜー……喧嘩売ってんのか?」

「チッ、[ピーーー]よゴミ」

少年の罵りに耐えられなかったのだろう。
松本は床を踏み抜くいきおいで足を踏み下ろした。
だんっ、と大きな音が部屋に響き、それと同時に松本が怒鳴り散らす。

「はぁ!?なんつったテメー調子乗ってんじゃねぇよクソガキ!![ピーーー]ぞ!!」

「ひっ!?」

豹変した松本の大声に怯えたやよいが上擦った声をあげた。

「ま、まぁまぁまぁ。落ち着いてよ、その、松本さん」

先程とは打って変わって汚い言葉遣いになった松本に驚きながらも、真は松本を宥めることに努めた。

「ガキが舐めてんじゃねぇよ!!」

しかし松本は少年をなじることに集中していて、真の声は全く届いていないようだ。

「松本さん落ち着いて!!」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 09:14:19.30 ID:7atUN79AO

「うるっせぇな!!あのガキだろ喧嘩フっかけてきたのは!!」

筑川が止めに入ると、癪に障ったのか松本は筑川に対しても声を荒げた。
対する少年は鬱陶しそうに顔をしかめるだけで、特に何も言ってこない。

「だから子供相手に大人気ないって」

「はぁ?意味わかんねーって、なんであたしが言われてんのに我慢しなきゃなんねーんだよフザケんじゃねーよ!!
おいコラ[ピーーー]よクソガキ!!黙ってんじゃねーぞ!!」

(あー、どうしよう……)

聞く耳を持たない松本に、真は思わず溜め息を漏らしてうなだれた。


ひゅうん


「……ん?」

と、その時黒い玉から、微かな異音が聞こえてきた。

それに気付いた真が、黒い玉に目を向ける。
瞬間、玉の表面から突如として青白い光線が伸びた。

「うわぁっ!」

驚いて後ずさる真とやよい。
真は勢い余って床に尻餅をついた。
松本も途端に黙り、レーザーを見た筑川は「うわっ来たッ!!」と叫んだ。

「来たって……えっえっ!?」

(なんだよこれ!?)

黒い玉から放たれたレーザーは空中の一点で止まり、そこから高速で左右に移動している。
レーザーの移動したところから、まるでコピー機のように、焼き付けるような音と共になにかが書き出されていく。

ジジジジジジジジッ

それは立体だった。
髪のようなものから始まり、徐々に下へ……

「うわ……」

真はそれが何かにすぐ気付いた。
それは人間だった。
書き出されていくグロテスクな身体の断面図は、真の位置からは克明に見えた。

非現実的な光景を前に、真は床にへたり込み、呆然と眺めるしかなく、やよいは壁に背中を預けておびえていた。

それは男だった。
眼鏡を掛けた穏やかそうな印象の顔立ちから首、肩が現れる。
会社員なのかきっちりとしたスーツを着ている。
空中に書き出される男の身体が胸まで現れた辺りで、新たにもう一本のレーザーが黒い玉から放たれた。

「も、もう一人来た!」

「もう一人って筑川さん……これなんなんですか!?」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 09:16:31.07 ID:7atUN79AO

「わからない……けどキミ達もさっきああやってこの部屋に現れたんだ」

(ぼ、僕達もこうやってここに!?)

驚いていると、レーザーから書き出された二人の身体はすでに足先まで現れていた。

ジジジジッ………

書き出しが終わると、眼鏡をかけた男の足先からレーザーは消え、一拍遅れて後から来た男からもレーザーは消えた。
二人とも見た目は若く、同じ藍色のスーツを着ており、見る限り同じ会社に勤めているようだった。
背にはバックパックを背負っており、そしてなぜか二人してどこか頼りなさげな雰囲気を醸し出している。


静まり返った部屋の中で、現れた若いサラリーマン二人は特に驚いた様子もなく、部屋にいた人々を順々に眺めた。
そして、脇で呆然としていた真とやよいに視線が行った途端、あからさまに目を丸くした。

「あれ?菊地真と高槻やよい……?」

「すごいな……売れっ子のアイドルが来るだなんて」

余りに非現実的な光景だったがために、真はレーザーで書き出された二人の言ったことに反応ができなかった。


「……どうやらこれで全員みたいだな」

奥の壁に寄りかかり、今まで黙っていた坊主頭の男が低い声で言った。

「赤羽根さん、祐喜さん、やるんでしょ?」

同じく男の横で腕組みしていた茶髪の女性も、サラリーマン二人に声をかけた。

「あ、はい」

「そうですね」

赤羽根、祐喜と呼ばれた二人はそう答えると、バックパックを床に置いておもむろにネクタイに手をかけた。
しゅるりとネクタイを解き、次に藍色のスーツを脱ぐ。
そしてYシャツのボタンを首もとから手際よく順々に外していった。

「あ、あのキミ達は一体……」

筑川がそう言いかけて、二人のYシャツの下から現れたものに絶句した。
凝視していた真とやよい、それに松本も同じく言葉を失っていた。

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 09:19:38.70 ID:7atUN79AO

サラリーマン二人がYシャツを脱ぎ去ると、真っ黒のラバー状のものにぴっちりと覆われた上半身が現れた。
各所には白く丸いボタンのようなものが点々と付いており、その中心はくぼんでいて中は青緑色をしている。
タイツのように身体を包んでいるラバー状のものは黒く、鈍い光沢を放っている様は、部屋の奥に鎮座する黒い玉と似た印象を受ける。

ベルトを外してズボンを脱ぐと、下半身までラバー状のもので包まれている。
しかし革靴と靴下を脱ぐと、ラバー状のものは足首までで途切れており、そこからは生身の足がのぞいていた。

そこで二人は持っていたバッグを開くと、中から黒いブーツを取り出し、それを履いた。
奥の男女二人も服を脱ぎ去ると、同じラバー状のスーツに身を包んでいる。

「なにアレ……コスプレ?」

松本が呟く。
全身を黒いラバースーツで覆った男と女が四人。

(もうなにがなにやら……)

視線が集中する中、赤羽根と祐喜と呼ばれたサラリーマン二人が、おもむろに黒い玉の前に立った。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/16(木) 09:20:32.85 ID:7atUN79AO
ここでまた一旦切ります
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 09:20:59.35 ID:3o9WQlXDO
クロス書くのはいいんだけどせめて>1か>2に何の作品とのクロスか書いておいてほしかった
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/08/16(木) 09:23:41.46 ID:7atUN79AO
>>36
すいません、以後気を付けます

あとsagaを付け忘れたので、上の文で『殺す』や『死ね』が隠れてしまいました
申し訳ないです
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 09:41:34.39 ID:3o9WQlXDO
ドンマイそれは仕方ないよ誰だって付け忘れることくらいあるさ
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/16(木) 18:38:25.31 ID:j9OB2skU0
楽しみに待ってる
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/18(土) 02:41:53.04 ID:Vho0GwJAO
短いですが投下します
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/18(土) 02:46:23.58 ID:Vho0GwJAO

「あぁ、えぇっと、こんばんは皆さん」

眼鏡をかけた方のサラリーマンが、どもりながら挨拶をした。
対する真達は顔を見合わせるだけで、勿論挨拶は誰も返さない。
もう片方の、やや目が大きい方のサラリーマンが咳払いをして、なにやら眼鏡をかけたサラリーマンに促す。

「えー……自己紹介します。僕は案内役の赤羽根健治です」

と眼鏡をかけたサラリーマン。

「同じく、案内役の祐喜佑太です」

と目が大きいサラリーマン。

(案内役……?)

真が脳内で繰り返していると、眼鏡もとい赤羽根がやや大きな声で話し始めた。

「えっとですね皆さん、これ実はアトラクションなんですよ」

「正確にはぶっつけ本番でゲームをやらせて得点を競い合うっていうある番組の企画です。
都内から無作為に選ばれたあなた方はその企画の参加者として認められたんです」

赤羽根の後に続いて祐喜が説明をした。
しかし誰一人として、それに納得したような表情は見せない。

「あの、すみません」

真は立ち上がって、質問を投げかけた。

「あ、はい。なんでしょう?」

たどたどしく答えたのは赤羽根だ。

「番組ってことは、テレビの企画ってことですよね?」

「勿論そうです。ただ今まで一度も成されたことの無い企画でして、今回はその第一回ということで」

そこで赤羽根の説明を「ちょっとちょっと」と松本が遮った。

「……意味わかんないんだけど。真くんとかはともかく、なんであたし達みたいなパンピーもそれに出なきゃなんないの?
もっと芸能人とか使えばいいじゃん」

「アメリカで放映されてるクイズ番組とかしらないですか?こういうのはむしろ一般人が健闘した方が喜ばれるんですよ」

怪訝な顔をしている松本に、祐喜が飄々と返す。

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/18(土) 02:49:08.29 ID:Vho0GwJAO

「んなの知らないけど選ばれたこっちが迷惑だっつってんの」

溜め息を吐き、例の少年を睨みながら再び不機嫌になる松本。
その後ろから筑川が、遠慮がちに質問をぶつけた。

「……仮にテレビの企画だとしてそこの黒い玉から人間が出てきたりとか、触れない窓とか扉はどう説明するんですか?」

「アメリカとかドイツとか中国とか、先進諸国が技術を結集して運営してるんですよ。
……まぁ、詳しくは明かすことはできませんが」

と赤羽根。
しかし筑川は食い下がる。

「つまり、かなり高度な技術を用いていると?」

すると赤羽根と祐喜は顔を見合わせ、赤羽根が困った顔をすると祐喜が溜め息を吐いた。

「特別に教えますと、それらは全て一種の催眠術によるものです。
ここに来る直前、あなた方は一度死んだかのような催眠術をかけられたんです」

「つまり……あれは幻覚だったと?」

「率直に言えばそうですし、玉から出たレーザーや触れない窓や扉も、催眠術によるものです」

祐喜の『催眠術』という説明。
それに対してとても信じられない、という顔をしながらも筑川は黙って引き下がった。

(番組企画ってことは、カメラが入ってるんだよな………がんばんなきゃ)

真は『テレビの企画』だと言われた以上、下手なリアクションは出来ないと思い、黙って説明を聞いていた。
やよいの方はなにやら説明を理解仕切れていないようで、眉を潜めて首をかしげている。

その最中。


あーたーらしーい あーさがきたー

きーぼーうの あーさーだ


「!?」

突然大音量で流れ出した歌に、真とやよいは驚いて小さく肩を揺らした。

よーろこーびに むねをひーらけー

おーおぞーら あーおーげー
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/18(土) 02:50:59.39 ID:Vho0GwJAO

それは日本人のほとんどが聞いたことがあるだろう、ラジオ体操の歌だった。

らーじおーのっ こーえにー

すーこやーかな むーねをー

歌の発信源は、例の黒い玉だった。
赤羽根と祐喜も振り返って、歌を流し続ける黒い玉を見つめている。

こーのかおーるかぜーに ひらーけよ

そーれ いっち! にぃっ! さんっ!

歌が終わると、今度は黒い玉の表面に文字が浮かび上がってきた。
何かの文章のようだ。

「皆さん、見に来て下さい」

祐喜がそう言うと、全員が全員、わけがわからないという表情をしながらも黒い玉に近付いた。

(……なんだこれ?)

それが、黒い玉に表示された文章を見た真の率直な感想だった。

「てめえ達の命は無くなりました。
新しい命をどう使おうと私の勝手です。
という理屈なわけだす……」

筑川が玉の文章を読み上げる。

「『り』とか『す』が逆ですねー」

と、玉の前でしゃがみこんでいたやよいが言った。
やよいの言った通り文章はところどころで文字が逆転していたり、文字体も一つ一つがバラバラで、単純な誤字もある。

「……これは、番組のオープニングみたいなものです」

と赤羽根。
それに対して真が一人「へぇ」と納得していると文字は消えて、新たになにかが浮かび上がってきた。

じじじじじじっ

出てきたのは顔写真と、それに伴うメッセージ。


てめえ達は今から
この方をヤッつけに行って下ちい

キリン星人

特徴
 つよい
 きりん
好きなもの
 じゃがりこ
口ぐせ
 キリがない


『キリン星人』という文字の下には、馬面でやたらと目が大きく睫毛の長い男性の顔写真が表示されていた。

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/18(土) 02:52:27.59 ID:Vho0GwJAO
中途半端ですが、ここまで

赤羽根健冶はアニメのプロデューサー、祐喜佑太は漫画のプロデューサーを元にしてます
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/08/18(土) 17:49:18.83 ID:UJUL6r9AO
赤羽根P=良い人ってイメージだけど
アメリカの番組と言うことはつまり…

支援
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 13:34:32.15 ID:dJyNO2sDO
これは結局何とのクロスなんだ?
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/28(火) 20:51:54.45 ID:IaG+/5GAO
>>46
すいませんでした、結局明記してませんでしたね。

これは『アイドルマスター2』と『GANTZ』のクロスオーバーです。
アイマスの方はアニメの設定やゲームの設定を混ぜてます。
ガンツの方はクロスしているのはあくまで原作の世界観や設定というだけで、ガンツに登場したキャラはほとんど出てこない予定です。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/28(火) 23:06:28.43 ID:IaG+/5GAO
「……なにこいつ気持ち悪っ」

松本が、表示された顔写真に対して吐き捨てるように言った。
確かに写真の男はどこか人間離れした顔をしており、つぶらな瞳は生気を感じさせず不気味だ。

「この人が、そのキリン星人っていうことですよね?」

「えぇそうです」

「それを今から倒しに行くと?」

「飲み込みが早いですね、そういうことです」

筑川の度重なる質問に、祐喜が即座に切り返していると

がしゃんっ

突如、重い音とともに、黒い玉の左右と後ろ側が引き出しのように飛び出した。

「!?」

玉が変形した、という表現が正しいのだろうか。
左右両側に飛び出したのは鉄骨らしきもので構成された収納スペースで、大量の銃らしきモノがその中で整然と並んでいた。
後ろに飛び出した部位は戸棚のような形状になっており、そこに幾つもの薄いケースが入っている。

「……地球防衛軍からエージェントとして見込まれたあなた達は、世間において一度死んだことになりました。
これからあなた達は地球に巣くう悪質なエイリアンを退治しに行きます」

祐喜がおもむろに何かを淡々と語り出した。
恐らくこの企画の『設定』というものだろう。
そこからルールの全容をなんとなく理解した真は俄かにやる気が芽生え始めた。

「……へぇ、なんか楽しそうですね。ボク、燃えてきましたよ!」

「あはは、それはよかった。
それでこの玉はいわゆる指令を与えて、我々を運ぶ役割を果たしています」

「これが、その武器ってことですか」

説明する祐喜のそばで、並ぶ銃器を眺めながら筑川が聞いた。

「えぇ、自由に見てみて下さい」

そう答えた赤羽根の言葉を皮切りに、話を聞いていた各々が、変形した黒い玉に集まった。

「お金かかってるなぁ」

「へぇ、よくできてるね」

左右に収納されている武器は散弾銃かライフルのような形状をした銃と、短銃の二種類があり、どちらも玉と同じく黒色で、弾の射出口は無く近未来的なデザインをしている。

「あわわ、結構重いです……」

長銃を引き抜いたやよいが、ずっしりとした重みによろめいた。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/28(火) 23:21:36.99 ID:IaG+/5GAO

「リアルだなー」

形こそオモチャのようだが、その実、鉄の塊のような、本物の銃を思わせる程の重量と質感を持っている。

短銃を持った真が、ふと収納スペースと玉の付け根を見やった。
玉は何やら空洞になっており、どうやらそこから玉の中が覗けるようだ。
真は好奇心からなんとなしにしゃがみ込んで、中身を覗いてみた。
そして次の瞬間、ぎょっとして声をあげた。

「うわっ、中に人がいますよ!?」

玉の中には裸でスキンヘッドの男が、体育座りをしているような体勢で丸まっていた。
眠っているようにその目は堅く閉じられており、その上、男は呼吸器のようなものに繋がれている。
耳を済ませば、呼吸器から微かに呼吸する音が聞こえてきた。

「気持ち悪っ。すげーリアル」

「作り物、でしょうね。それにしてもスゴい作り込みだなぁ」

同じく玉の中を覗き込んだ松本と筑川がそう零した。

(作り物、にしてはよく出来過ぎだよ、これ……)

作り物とはとても思えないその男は今にも目を覚ましそうだ。
真は、精巧に出来ていて凄いという感情より、微かな恐怖心を覚え、立ち上がるとそそくさと玉から離れた。

「……えー、これから皆で外に出ます」

変形した玉について皆がそれぞれの感想を漏らす中、赤羽根が言った。

「そこのどこかにコイツがいるんで、見つけ次第戦って倒します」

赤羽根は、指でトントンと黒い玉に表示された顔写真をつつく。

「倒した数だけ、点数が加算され豪華商品が与えられるというルールです」

「その、豪華商品ってなんですか?」

真の問い掛けに、顔を見合わせる祐喜と赤羽根。
一拍空けてから赤羽根が呟くように言った。

「……賞金1000万」

その瞬間、部屋の空気が一変し、途端に騒がしくなった。

「はっ!?マジ!?」

「い、1000万!?」

「うっうー!それだけあれば……」

「点数を競い合うのはあなた方五人。多くの星人を倒して得点を貰って下さい。
その武器は見たようにここにあるんで好きなのを持って行って下さい。
あとコレ、僕達が着てる服。これを着ていないと大変なことになるから、ちゃんと着て下さいね」

興奮する皆に対して、畳みかけるような説明をした祐喜。
賞金1000万ということもあってか、不満げな顔をしていた松本や筑川もそれには大人しく話を聞いていた。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/28(火) 23:32:55.22 ID:IaG+/5GAO

「それと」

そこで赤羽根は、後ろで黙っていた男女二人に視線を送った。

「彼等はあなた達が困った時の強力な助っ人です」

「……倉田徹」

「尾形美智恵です。よろしく」

赤羽根の紹介に筋肉質の男、倉田と茶髪の女、尾形はそれぞれ部屋にいた面々に短い挨拶をした。

「では詳しい説明は戦闘区域に出てからしますので、まずはそこにあるスーツを着て下さい。
着る場所はそちらの玄関で、一人ずつでお願いします」

「はぁ?更衣室とか無いの?」

祐喜の言った事に、松本が素っ頓狂な声を出して、場を取り仕切る二人に抗議した。
真ももっともだと思いながら、松本の抗議に対する二人の返事を待った。

「すいません、ただ誰にも見られずに着替えられるスペースはあるので。
……時間が押してるので着替えはお早めに。スーツケースは玉の後ろに入っているので」

(……なんかイヤな感じだな)

配慮が足りないように感じられる進行の仕方に、真は少なからず苛立ちを覚えた。
場に僅かだがぴりぴりとした空気が流れる中、黙っていた少年が颯爽と玉の裏に回って行き、そこに収納されているスーツケースを一つ取り出した。

少年がケースを持って玉の裏から戻って来るのを見計らったように、筑川も続いて玉の裏に行き、棚の中を覗き込んだ。
少しして、怪訝な顔をしながら筑川は赤羽根と祐喜を見やった。

「……あの、名前とかは?」

「名前は書いてある場合と、各人が個別に分かるような単語が適当に書いてある場合があります。
これが自分のだろうと思ったらそれを持って行って下さい」

それを聞いた真はスーツケースを抱えて部屋から出て行こうとする少年の姿を見やった。

『厨二病(笑)』

ちらりと見えた少年のスーツケースの文字。
真は眉を潜め、それに対しどういったリアクションを取ればいいのか分からず、少しだけ混乱する。

(厨二病……ってどういう意味なんだろ?)

少し馬鹿にしたように付けられた(笑)も気になる。
疑問に思いながら、玄関に向かって部屋から出て行く少年の背中を見送った。

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/28(火) 23:49:45.44 ID:IaG+/5GAO

(それにしても、変な番組だなぁ)

心の中で感想を漏らしていると、筑川が自分のケースを見つけたようで、スーツケースを抱えて戻ってきた。
『中年リーマン』と書かれたスーツケース。
書かれたことは見た目のままの内容だ。


やよいを見やると、何を考えていたのか無表情で見つめ返してきた。

「……取りに行こうか」

「あ、はいー」

やよいの気の抜けた返事を聞き届けてから、真はやよいと共に玉の裏側に回って自分たちのスーツケースを探した。
棚に入っているスーツケースは残り三個だ。
それを一つずつ引き出しては表面を確認する。

「あ……それ多分、私のですー」

言ってやよいが一つのケースを指差した。
真は指されたスーツケースを取り出して表面を見ると、そこにはへろへろの字で『もやしっ子』と印刷されていた。

「……そういえばやよいはもやしが好きだったんだっけ?」

「はい、家族でよくもやしパーティーをやってますよー」

その『もやしパーティー』が余程楽しいものなのか、やよいは笑顔を浮かべて答えた。

「はは、そっか」

相変わらず輝かしい笑顔に釣られて微笑みながら、真はもう一つケースを引っ張り出した。

『まこと王子』

「……王子、ね」

文字を見つめながら、思わず呟いた。
この黒い玉にさえ男扱いされているような気がして、なぜだか情けない気分になった。

(まぁ、馴れてるからいいけどさ)

溜め息を吐きながらもスーツケースを持って戻ろうとして、残り一つのケースの存在に気付く。
興味本位でケースを引き出すと表面に『ギャル』と書かれていた。

(……松本さんのだよね?これ)

しばし考えた後、念の為、そのスーツケースも引き出した。

(一応、持って行こう)

しかし真の引き出したもう一つのケースを見て、やよいは戸惑ったようだ。

「あの真さん、そのケースって」

「まぁ、一応ね。ほら戻ろう」

戸惑うやよいを促し、二つのケースを持って玉の裏から出て行く。
それとほぼ同時に玄関から、例の黒いスーツを着た少年が畳んだ学生服を手に持って部屋に戻って来た。

「じゃ、次は私が行きますね?」

筑川がケースを手に遠慮がちに真とやよいに声を掛けてきた。

「あ、どうぞ」

真がそう言うと、筑川は軽く会釈してから玄関に向かって行った。
筑川を見送ってから、真は松本に歩み寄って、ケースを差し出した。

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/28(火) 23:56:49.37 ID:IaG+/5GAO

「……あの、これ一応」

「あ?あぁ、ありがと」

先程までのはしゃぎっぷりからはかけ離れた低い声で、松本はぶっきらぼうに返した。
先程から松本は気分の上がり下がりが激しく、情緒不安定な面を持っているようだ。

舌打ちをすると、「時間とか知らねっつの」と悪態や愚痴を交えながらも真が差し出したスーツケースを受け取った。

(……大丈夫なのかな)

失礼だと感じながらも、真は松本のような人間が『番組』の雰囲気をかき乱さないか不安に思っていた。




53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/28(火) 23:57:15.75 ID:IaG+/5GAO
ここで一旦切ります
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/29(水) 04:32:31.65 ID:tiXSTtOAO
――――――――――――――




少年、筑川とやよいが着替え終わり、今は松本が着替えに行っている。
松本を先に着替えさせたのは、『番組』の空気を配慮した真が提案したことだった。
真が言うなら、と渋々着替えに行った松本を見送ってから、真は黒いラバースーツに身を包んだやよいと会話していた。

「やよい、結構似合ってるね」

「うっうー!意外と窮屈じゃないんですよ、この服」

「へー」

衣装を着たらその気になれたらしく、俄かにはしゃぐやよい。
やよいにぴったりと合ったスーツは幼い身体のなだらかなラインを浮き彫りにしている。

(……これ、貴音やあずささんが着たら凄いことになりそうだな)

真、やよいと同じく765プロに所属しているアイドル、四条貴音と三浦あずさ。
765プロの中でも抜群のスタイルと豊満な胸を有する二人がスーツを着ている姿を、真はなんとなしに思い浮かべた。

(……あの二人はこの企画に出ることはないだろうなぁ)

二人の身体のライン、主に胸や尻のラインが浮き彫りになろうものならファンを悩[ピーーー]ること間違いなしだろう。
同時に子供には見せられない、公共の電波的に色々とアウトな姿になることも間違いない。


「ところで真さん」

ラバースーツを着込んだ二人を脳裏に描いていると、不意にやよいがひそひそと話し掛けてきた。

「え……な、なに?」

釣られて真も声を潜める。

「これってプロデューサーさんとかは知ってるんでしょうか……?」

「これって、この番組のこと?」

「はい」

「うーん……知ってるん、じゃないかなぁ?ボク達がこうやって出てるんだし。
あ、でもさっきのあの人達の説明聞いた限りだと、半分ドッキリっぽいからもしかしたら知らないかも……
まぁ、心配はいらないとは思うけど。
でもなんで?」

「これもお仕事だから頑張りたいですけど、正直ドラマの撮影帰りにこれから身体を動かすのはちょっと大変かなーって……」

やよいは少し不安そうに目を伏せた。
仕事以外に、家族や家事のことも視野に入れて生活しているやよいにとって疲労はほどほどにしておきたいのだろう。

やよいの言うとおり、内容的にも過酷なドラマ撮影をこなしてきた帰りに連れてこられたのだ。
疲れていないはずが無い。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/29(水) 04:37:17.12 ID:tiXSTtOAO

「確かに、ちょっと体力的にキツいところはあるかもね。大丈夫なの?」

「今は元気ですけどー、明日のお仕事に影響が出ちゃわないかなって。
明日は真美ちゃんとラジオのお仕事とか、イベントのお仕事があるんですけど、疲れてるからって皆さんのお邪魔になるわけにはいかないし……」

(ラジオにイベントかぁ)

それほど過酷な仕事では無いが、それでも仕事は仕事だ。
失敗はしたくない。

(……やよいは中学生だし、ボクみたいに運動に慣れてるってわけでもないからなぁ)

やよいは根性は十分にあるが、年齢も幼く体躯も小柄で体力面では確かに心配があった。

「うーん……
じゃあボクがフォローに回るから、やよいは力を抜いて大丈夫だよ」

「ふぇっ!?それはそれで真さんに悪いですよー。
それに真さんも明日仕事があるんじゃ……?」

「あるけどそんなにキツい仕事じゃ無いし、それにまだまだ力が有り余ってるから大丈夫、大丈夫!」

実際はバラエティー番組への出演などが仕事に入っていたが、実際まだまだ動ける自信はあるし、体力にも確かな余裕がある。
担当のプロデューサーに怒られない程度に頑張れば大丈夫だろう。番組の折り合いを見ながら力を調整するぐらいの器用さは真にも多少なりとも備わっていた。

「あ、ありがとうございますー」

申し訳なさそうに笑いながら小さくお辞儀したやよい。
やよいの癖で、お辞儀と同時にぴんと伸ばした両腕が若干後ろに上がっている。
そんな癖を可愛らしいなと思い、真は笑みを零した。


「でもボク、一般の人を交えてのお仕事なんて初めてだから……
正直ちょっと不安はあるんだよねー」

ファンの前で余り素になってしまうと、不本意と思いながらも真が担当のプロデューサーと共に築き上げてきたファンからの『イメージ』が崩れてしまう。
現時点で売れているとは言え真はまだ駆け出しのアイドルに過ぎない。
ここでイメージが崩れるのはまだ早過ぎるし、そこはなんとか避けたいところであった。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/29(水) 04:39:41.69 ID:tiXSTtOAO

「はい、ちょっと難しいですよねぇ」

やよいも考えていることは同じのようだ。
と言ってもやよいの場合、アイドルとして活動している時と素との性格にあまり差が無いのだが。

(……あぁ羨ましいなぁ、そういうとこ)

口には出さず、羨望の眼差しを向ける真。
理想とのギャップに苦しまずに仕事が出来るやよいは素直に羨ましかった。

(でも上手くできるかな……)

最近こそ余り無いが、下積み時代から売れてしばらくはプロデューサーと共に行動し、プロデューサーの機転によって助けられた場面も多々あった。
やりくりは自分だけでも多少はできるが、それでも頼りになるプロデューサーがいないことに、やはり不安はある。

小さく溜め息を漏らしていると、玄関からスーツを着た松本が部屋に入ってきた。

「真くん、次いいよ」

「……じゃあやよい、後でね」

やよいに手を振りながら、スーツケースを掴んで真は玄関に向かった。

「うっうー、待ってますー」


57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/29(水) 04:44:22.16 ID:tiXSTtOAO
―――――――――――――――



玉のある部屋を出て、右に伸びているフローリングの細長い廊下の先に玄関はあった。
金属製と思しき扉には覗き穴やチェーンや郵便受けがちゃんと付いており、ここが何の変哲もないマンションの一室であることを表していた。

(設定がSFならもっと秘密基地みたいなセットとかにすればいいのに……)

なぜマンションの一室なのだろうかと改めて不思議に思いながら、『まこと王子』と書かれたスーツケースを玄関脇の靴箱の上に置いた。

とりあえずケースを開いて中身を確認する。
ケースの中には、まず赤羽根と祐喜の履いていた黒い近未来的なデザインのブーツが入っており、その下に例のラバースーツが折り畳まれてあった。
ブーツをどかして、ラバースーツを目の前に広げる。

「……変なカタチだなぁ、これ」

ラバースーツはいくつかパーツに分かれているようで、一見した様子だと、スーツのあちこちに付いている白いボタンでパーツ同士を繋げて着るようだ。

(説明も受けてないけど、ちゃんと着られるのかなぁ)

未知な構造をしたスーツ。
やよいが一人で着て来れたのだから自分もすぐに着れるのだろうと思っていたが、奇妙な形状を前にして不安が湧き上がる。

「……まぁいっか」

悩んでいても仕方がない、とスーツを置いて服に手をかけた。

(……誰も覗いて来ないよね?)

一応警戒して廊下の向こう、玉のある部屋の方を見ながら、服を脱いでいく。
ドラマ撮影で身体を動かしやすくできるようにと、着ていた下着はスポーツブラとスパッツだ。
我ながら色気も無い下着姿だな、と思いながら、脱いだ私服を畳んで靴箱の上に置いた。
そして再び、スーツを掴んで目の前に広げる。

「ホントに、どうやって着るんだろ」

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/29(水) 04:53:37.49 ID:tiXSTtOAO

パーツを一つ一つ見ていくと、スーツは大まかに上半身と下半身に分かれていて、他に手を包むグローブのような部位と、ブーツとで構成されているようだった。

「よーし……」

とりあえずスーツの下半身に当たるパーツに、足を通してみた。

(あれ、やよいが言ってた通りだ)

ゴムのような見た目とは裏腹に、するすると柔らかな感触がする。
スーツは肌にも全く突っかからず、意外にも滑らかに着用できた。

(これなら楽に着られるかも……ってあれ?)

しかし上まで引っ張り上げると、不意にスパッツにスーツが突っかかり、股から上に着れなくなってしまった。
力で無理やり引っ張ってみても、スーツはスパッツから上にいかない。

「き、ついなぁ……あと少しなのにっ」

本当にあと少しで着れそうなのだが、どうにもスパッツで引っ掛かってしまい、それ以上いかなかった。

(……もしかして、これ裸にならないとダメなのかな?)

そう思って一度手を休める。
一拍おいてからスーツを脱ぎ、改めて部屋の方に警戒の目を向けた。

(誰も見てない、よね)

しばし沈黙して、スパッツに手を掛ける。

「……よし」

そして一息入れてから、スパッツを脱いだ。
即座にスーツを掴んで足を通す。
するとスーツは先程の突っかかりが嘘のように、いとも簡単に下半身を包み込んだ。

「はいっ、たぁ」

腰元まで包み込んだスーツを見やって、一息吐く。

(……多分上半身もだよね)

スパッツだけであそこまで引っかかるのなら、当然ブラジャーも脱がなければならないだろう。

(時間も押してるって言ってたし……迷ってる暇は無いな)

胸を隠すように扉の方に身体を向けながら、ブラジャーを脱ぐ。
そして急いで上半身部分を着込み、スーツを腹部まで下ろした。

「うぅ……せめて服の着方とちゃんとした更衣室ぐらい用意してくれよぉ」

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/29(水) 04:59:31.27 ID:tiXSTtOAO

恥じらいで一人でいそいそと扉に向かって着替えていたことが、無性に空しくなり、真はやるせない訴えを扉に吐き出した。




上半身と下半身部分を着てしまえばあとは簡単だった。
ボタン部分で繋ぎ、グローブをはめてそこもボタンで繋ぐ。
最後にブーツを履いて、スーツと接続。

かちり、と小気味よい音と共にブーツのボタンがはまった。
祐喜や赤羽根と同じく身体は漆黒のスーツで完全に包まれている。
立ち上がり、試しに腕を回してみたり上体を捻ってみた。

(ホントだ、入ると全然窮屈じゃない……)

手を握ったり開いたりをして、身体にぴったりとはまったスーツの着心地を確かめる。

(スゴいな、このスーツ)

身体を動かしてみても、驚いたことに服を着ているという感覚がほとんど無い。
まるで身体と一体化して第二の皮膚になったような着心地だった。
スーツは確かに身体を包んではいるのだが、その存在を忘れてしまう程に自然で違和感がない。

首もとから足先まで、身体中の寸法を隅から隅まで事細かに測らないと、これほど身体にぴったりと合ったものは作れないだろう。

(ってことは特注ってことだよね……こんな服、どうやって作ったんだろう)

作るにしても、それに掛かる金額は相当なものだ。
玉といい武器といいスーツといい催眠といい、一体どれほど金を掛けているのだろうか。

逆に考えれば自分はそれだけ金の掛かった番組に出ているということになる。
赤羽根が言っていた通り、アメリカや中国等の大国が協賛しているとならば、尚更想像も出来ないような予算と手間がかかっているに違いない。

そう思うと、突然緊張してきた。
関わったであろう多くの人々のためにも、気を回して番組を盛り上げなければならない。

(そ、それに、プロデューサーのためにも、こ、ここは頑張らないと!)

プロデューサーがいない今、尚更失敗することは許されない。
気合いを入れつつ、緊張感でない交ぜになりながら、空のケースと畳んだ服を抱いて、部屋に戻ろうと廊下を歩いた。


60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/29(水) 05:06:00.63 ID:tiXSTtOAO


「あの、戻りまし……ってあれ!?」

部屋に入ると同時に真は驚きの声をあげた。
それもその筈、部屋はもぬけの空だった。

床にはさっきいたメンバーの私服や空のスーツケースがあちこちに置いてある。
しかしその持ち主達は見る影も無い。

「みんな、どこ行ったんだよっ!?」

血相を変えて部屋を見渡す。
そこで、玉の表面に新しく何かが表示されていることに気付いた。

『行って下ちい』

誤字混じりにそうメッセージが表示され、その下ではデジタル表示で時間が刻まれている。

00:59:37

時間は秒単位で減っており、どうやらそれは例のゲームの制限時間のようだ。
ということはゲーム自体はもう始まっているらしい。

(こういうのって普通、参加者を待ってやるものだろ!?あぁもうワケわかんないよ!!)

問答無用に進行していく現状に、もはや苛立ちを覚え始める。
しかし、一人だけ部屋にぽつねんと残してどうしろと言うのだろうか。

(いや、でもさっきみたいな『転送』があるかもしれないし……)

「……そ、そうだ武器!!」

取り敢えず目に付いた黒い玉の収納スペースに駆け寄り、ショットガンのような銃を引き抜く。
いくらか既に持って行ったようで何本かの銃が無くなっていた。

そして銃を持った直後

「うわっ、うわっ」

不意に額にひやりとする感覚を覚え、思わず上擦った声を上げる。
瞬間的に、それが外気のものだと判断した。

(き、来たっ!)

ひやりとした感覚は徐々に下に下がって来て、すぐさま視界に変化が訪れた。



都心のマンションの一室から打って変わって、見えたのはどこかの閑散とした住宅街。
道脇の街灯がぽつぽつと寂しく灯っている。
先程いた人々も周りにおり、皆それぞれ辺りを見回したり歩き回っていた。


61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/08/29(水) 05:07:00.26 ID:tiXSTtOAO
ここで切ります。
……どうか二次創作がこれからも続けられますように。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 13:13:17.72 ID:R2JJQEPio
面白い!
63 :名無しNIPPER [sage]:2012/09/05(水) 20:00:40.99 ID:KywAh5EAO
見てます
支援
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/06(木) 08:34:06.38 ID:DsQgfdDAO

自分の身体を見下ろす。
すると身体は肩から下が無く宙に浮いているような状態で、その空中から自分の身体が書き出されていく様子が見えた。
徐々に胸や二の腕、腹部が現れ、それが『転送』というものなんだと、真はなんとなしに理解した。

(スッゴいなぁ、これが催眠術……かぁ。ホントにどうやってるんだろ)

空中に現れていく自分の身体という現実離れした光景。
先程までの苛立ちや戸惑いを忘れ、その様子を何も考えずにじっと見つめる。
すると不意に声を掛けられた。

「真さん」

顔を上げると、そこにはやよいが安堵の表情を浮かべて立っていた。

「あ、やよい。やっぱり先に来てたんだ」

そこで『転送』は終わり、真の両足がコンクリートの地面に着いた。

「はい、真さんが着替え終わってないのにいきなり連れて来られちゃって、びっくりしましたー」

「本当だよ。
全くもう!ボクのことなんて全然待たないでどんどん始めちゃってさ……信じらんないよ」

真は銃を持ったまま腕を組んで、頬を膨らませて小さく怒りを爆発させた。
しかしあくまで出演している側に過ぎないので、大きな声では言えない。

「これだけお金掛けてやってるなら、進行だってもっときちんとやんなきゃダメだろうに……」

当の案内人である赤羽根達は、少し離れた所に四人で集まって何か話しをしている。
他のメンバーの状態は見向きする様子も無い。

「せめてもう少し取り纏めようとする努力をしてほしいよね。
カメラがどこにあんのかは分からないけどさ」

「あはは……でもカメラ、ほんとにどこにあるんでしょうかぁ?全然見当たらないですし」

「多分どこかに隠れてるんじゃないかなぁ。
……でもせっかく隠れてるカメラを出演者が探すなんて真似はしちゃいけないよね」

と、声を小さくしてやよいに耳打ちする。
やよいは「わかってますよー」と小声で頷いた。

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/06(木) 08:36:18.12 ID:DsQgfdDAO



「……ところでここって、どこなんだろ?」

ふと疑問に思い、改めて周りを見回す。
見た限り日本のどこかの住宅街の中であることは間違いなさそうだ。
しかし「外に出る」とは確かに言われたが、まさか本当に道端に放り出されるとは思ってもみなかった。

「うー、わかんないです……家はたくさんありますけど」

家だらけで高い建物は見当たらない。
それに道も平坦で、なんの変哲もないただの住宅街だ。

「ここ八王子みたいですよ」

丁度二人の会話を聞いていたようで、筑川が歩み寄ってきた。

「あ、筑川さん。
八王子って、八王子市ですか?東京の?」

「ええ」

「なんで分かったんですか?」

「ほら、電柱とかに現在地が書かれてるじゃないですか」

言われて近くの電柱に目を向ける。
街灯に照らされて、ぼんやりとだが電柱には確かに『八王子市』と書かれた小さな看板が掛けてあった。

「なるほど……。ってことはボク達、一応は都内から出てないんですね。
でもこれから、そのエイリアン退治とかいうのを住宅街のど真ん中でやるんですよね?しかも夜中に」

まさかひそひそと人の目を気にしながらやるわけでは無いだろうから、それなりに騒ぐことにはなるに違いない。
ただそれを夜に、しかも街中でやるというのなら周りの付近住民にある程度の迷惑が被るのも確実だ。

「やっぱりちゃんと許可とか取ってるんじゃないでしょうかー?」

真の疑問にやよいが考えながら答える。
しかし筑川はなぜか目を細めて、険しい表情になった。

「さぁ……まぁ、私は疑わしいと思ってますけど」

「え?」

「だってそうじゃないですか。さっきの空間移動みたいなのも、催眠術の一言で片付けられちゃって……。
都心のマンションから都の端まで大した時間も経たずにひとっ飛びだなんて未だに信じられません。
真さんややよいさんはそう思いませんか?」

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/09/06(木) 08:38:27.18 ID:DsQgfdDAO

「うーん、確かにそう思えますね……」

(でも、あの進行役の二人が言ってたことを否定しちゃうと、説明が付かないし意図も分からないしなぁ)

それを言ってしまうと筑川を焚き付けそうなので、心の内に留めておく。

「………」

やよいは困った顔をして、なにかを言いたそうな表情をしていたが結局は黙ったままだ。
筑川は構わず話を続けた。

「テレビ企画と言うにしても進行の仕方は雑だし、とにかく色々と信用する気にはなれないです」

割と大きな声ではっきり言った筑川を前にして真は慌てた。

「ま、まぁ確かに、進行の仕方は雑ですけど……」

(あぁ、こんなに大きな声で………もう、大丈夫なのかなぁ)

ただでさえボロが出ている中、ここまで懐疑的な出演者がいて、頼りなさげな二人はしっかりと進行ができるのだろうか。
真にとってただただそれが心配で、不安だった。

(……でも賞金1000万って言われた時、食い付いてたよね、筑川さんも)

賞金額を明かされて驚き、その後の説明は黙って聞いていた筑川の様子を思い出す。
やはり金が絡むとなると、気の持ちようが変わるのは誰でも同じらしい。

(会社とかで働いていると、尚更そうなのかな)

そんなことを考えていると、不意に赤羽根の掛け声が聞こえてきた。

「お待たせしてすいません。みなさんちょっと集まって下さい」


手招きをされ、松本と筑川、真とやよいが赤羽根と祐喜を囲む。
例によって倉田と尾形は少し離れたところから赤羽根達を眺めていた。
松本に突っかかった少年は近くの家のブロック塀に寄っ掛かり、赤羽根達のことは完全に無視しているようだ。

(ほら、もう言うこと聞かない出演者が出てるじゃないか)

しかし少年に関して、赤羽根と祐喜は一瞥しただけで特に声を掛けようとする様子も無い。
それが真を更に苛々させた。

(なんだよもう……やる気あるのかなこの二人は!?)

しかし場の雰囲気もあるし口に出すわけにはいかなかった。
代わりに軽い歯軋りをしていると、唐突に祐喜が真達の前に右手を差し出した。

67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/06(木) 08:42:11.86 ID:DsQgfdDAO
「こいつを見て下さい」

そう言って差し出された祐喜の手には、リモコンのような細長い形の機械が握られており、その中央にはモニターが付いていた。
表示されているのは、どうやらこの辺りの地図のようだ。
地図には四角で囲まれた丸のマークが複数表示されている。

「地図に表示されているこの点、これが星人達のいる場所を示しています」

マークを指差しながら祐喜が説明する。
そしてなにやらリモコンをかちかちと操作して、地図の縮尺を先ほどよりもいくらか大きなものにした。
すると地図上には正方形の線が引かれていた。

「そしてこの枠線、この約一キロ四方の枠線から出るとミッション放棄と見なされて失格になります。
くれぐれもここから出ないよう、注意して下さい」

さらにリモコンをかちかちと操作すると今度はデジタル時計のような数字が表示された。

(あっ……これ)

見たところ、真が部屋から送られて来る前に見た、黒い玉のデジタル時計と同じもののようだ。
あれから更に一分程経っている。

「これはこのミッションの制限時間です。残り時間は58分……約一時間ですね。
この制限時間内に多くの星人を倒して下さい」

と祐喜。
説明は足早に続く。

「それと武器の説明をします。皆さんが今持っている銃はトリガーが二つ付いています」

言われて銃を覗くと、引き金が上下二つに別れていた。

「上のトリガーが相手のロックオン用。下のトリガーで攻撃ができます。上下のトリガーを同時に引かないと攻撃はできませんので、注意して下さいね。
それと照準は、拳銃は後ろに付いているモニターで、長銃はアームの先に付いているスコープでそれぞれ確認できます」

円筒形のボディにグリップを付けたような奇怪な形をしている銃。
祐喜の言ったモニターはグリップの上に付いていた。
長銃の方は、銃身から飛び出るように伸びたアームの先に長方形の小さなモニターが付いている。

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/06(木) 08:43:04.44 ID:DsQgfdDAO
「……これからは自由行動です。ただしエリアからは絶対に出ないようにお願いします」

赤羽根はそう言うと持っていたショットガンのような形状をした銃を両手で持ち直した。

「では、これより異星人の駆逐に行って来て下さい。
時間が無いので急いで下さいね。それではお気を付けて」




69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/09/06(木) 08:45:01.30 ID:DsQgfdDAO
今回の投下は以上です
次回からやっとこさミッションが始まります

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/08(土) 09:53:18.43 ID:FiZQPiWAo
おお!期待!!
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/09/11(火) 18:02:44.76 ID:2Q3O7S1AO
投下します
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/11(火) 18:07:11.12 ID:2Q3O7S1AO
――――――――――――




祐喜と赤羽根に催促され、真達四人は宛もなく住宅街の中を歩いていた。
『強力な助っ人』らしい尾形と倉田は早々にどこかへと行ってしまい、例の少年も真達に一切の関心を寄せることも無く行動を別にしているようだ。
赤羽根と祐喜も「僕達はサポートに回りますので」と二人して姿を消してしまった。

松本は相変わらずふてくされた表情をして文句を言っている。

「行けっつってその異星人、だっけ?
それがどこにいんのかも全然わかんねーのにフザケんなよマジで。
しかもこんなキモい格好させてさ、あたし達笑い物じゃん」

文句を垂れていたのは松本だけだったが、一部賛同できるところもあるので、真もそれに乗じて頬を膨らませていた。
一瞬だけ地図を見せられてから突然放置されて、どうしろと言うのだろうか。

ただ、考えてみれば二人のあからさまに雑な進行は番組の設定に沿った演出なのかもしれない、という見方もできなくもない。
……どちらにしろ余計なことは声に出して言わない方がいいだろう。自分はアイドルでありタレントでもあるのだから。


不意に筑川が「あ、あの」と三人に声を掛けた。

「言い出すの遅れたんですが、あの祐喜って人が持ってたやつ、私も持ってます」

視線が集まる中、筑川が差し出した手には祐喜の持っていたリモコンと同じ物が握られていた。
それを見たやよいもはっとした顔をして、身体をまさぐり始める。

「……あ、私もですー」

そう言ったやよいの手にもあのリモコンが握られている。
しかし画面には何も出ていない。

「これで居場所が分かるんじゃないかと思うんですが」

「操作の仕方とかは?」

「分からないですね、あの二人はなんの説明もしてくれなかったので」

言いながらリモコンをかちかちといじりはじめる筑川。

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/11(火) 18:42:56.91 ID:2Q3O7S1AO

「つかこれ、なんであたし貰ってないの?真くんも貰ってないの?」

松本が声を荒げた。

「はい、ボクも持ってないですけど……これ部屋でどこにも無かったと思うんですけど、どこにあったんですか?」

答えたのはやよいだった。

「この服が入ってたケースに一緒に入ってましたよー?」

「……ボクのには入ってなかった」

「あたしにも。マジ意味わかんねー」

持っている者と持っていない者に分けたのはなんの意味があるんだろうか。
不可解に思っていると、リモコンをいじっていた筑川が「あ、出ました。地図」と声をあげた。

「私達がいるところが、多分ここですよね。それであの二人が言っていた星人がここにいると」

「……結構近いですね」

住宅街が升目のように表示される中に、星人を表しているマークが一つ。
自分達と思われるマークも表示されており、その間を見る限り少し歩けば道端で遭遇するだろうという距離だ。

「……賞金1000万だっけ?、ヤバいよねー」

マークを見ながらおもむろに松本が呟いた。星人を多く倒した参加者が貰えるという賞金。やはり1000万という額はかなり魅力的なのだろう。

その時、表示されている星人のマークが動き出した。

「あっ、動いてますよー」

やよいが他三人に呼び掛けるように言った。マークは路地を辿るようにゆっくりと移動しており、真達との距離はどんどん離れていっている。

(よーし……)

「追いましょう!」

咄嗟に真は言い、星人のいるであろう位置に向かって走り出した。
こういう時、自分が先陣を切って皆を奮い立たせるべきだと直感した故の行動だ。

「あ、真さぁん」

「ちょ、ちょっと待ってよー」

とやよいと松本がせっせと真の後を追い、筑川が一番後ろから走って付いて来た。





74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/09/11(火) 18:46:27.47 ID:2Q3O7S1AO
ここで一旦切ります
続きはまた後で投下します
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/12(水) 00:14:25.49 ID:XTSH7w36o
またいいところで。乙です。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/09/12(水) 09:08:34.24 ID:E+YLwxYAO
間が空きましたが、投下再開します
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/12(水) 09:14:13.20 ID:E+YLwxYAO




誰もいない夜道。星空が見えない程度に明るい住宅街の中で路地を曲がり、まだ見ぬ星人に向かって四人は走り続ける。
体力が少ないやよいはその中でどうしても遅れてしまう。加えて体調のこともあり、真は気遣って、今は一緒に並んで走っていた。
よって今先導しているのは筑川と松本の二人だ。


マークを目指して走り出してから4分程、不意に筑川が立ち止まった。全員がそれに伴い、動きを止める。
筑川がおもむろに、道の向こうを指で差した。

「あれじゃないですか……?」

「え?」

「あれ、ですかね?キリン星人……」

筑川が指差した先を見ると、少し離れたところにシックなスーツを着た男が、街灯の下でぽつんと立っていた。
遠くて顔はよく見えないが、真達を眺めているようで、こちらを向いたままピクリとも動かない。

スーツ姿の男性と奇妙な黒いラバースーツを着た四人組。双方間の微妙な距離は、その場に変な緊張感を生んだ。

真は生唾を飲み込んで恐る恐る歩き出す。黒い玉に表示されていた肝心の顔がこの距離では近付いてみないと分からなかった。
松本や筑川も真の後ろに付き、再び真を先頭にして、四人は男に近付いていく。

近付けば近付くほど男の顔は克明になっていく。その顔は黒い玉に表示されていた『キリン星人』の顔写真と同じく、睫毛が長くつぶらな瞳をした馬面だった。

こちらをじっと見ているようで、真達が近付いている間も微動だにしない。真上から街灯の明かりに照らされ、陰影が浮き彫りになっているその様子は非常に不気味だ。


ついに真達が目の前まで来ても、男はまばたきひとつせず、真達をジッと見たまま何の反応もない。その様子に一同は警戒しながらも、怪訝に思った。
静寂が流れる。
一方的に見つめ続けられている真は、躊躇しながらも男に話し掛けた。

「……あ、あの、こんばんは」

78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/12(水) 09:16:49.29 ID:E+YLwxYAO

……静寂。
反応は無い。

(もしかして、作り物なのかなぁ?)

反応どころかまばたき一つしない男の様子に、真はそんなことすら思い始めた。
しかしそんなことは無いだろうと、思い改め、もう一度話し掛ける。

「あのキリン星人さん、ですか……?」



「…………じゃがりこ」



男はいやに高い声で、そう呟いた。
その言葉だけ嫌に鮮明に聞こえ、しばしの沈黙と共に、間の抜けたような妙な雰囲気がその場を支配する。

(……は?)

凍り付いたような沈黙を率先して破ったのは筑川だった。

「……今言いましたよね?」

「えぇ確かに……『じゃがりこ』って言いましたね」

真は『じゃがりこ』と口に出し、改めて自分達が耳にした単語を確認する。

「じゃあやっぱりキリン星人なんですよね、この人が……」

「じゃがりこ」

改めてキリン星人らしい男に向き直ると、再び『じゃがりこ』と言われて、真は口を噤んだ。
筑川は怪訝な顔をして、やよいは困惑している。あくまで男はキリン星人を演じ続けるらしい。話し掛けるだけ野暮なように真は思えてきた。


「チッ……もういいよ、とりあえずコイツ撃っとけば得点になるんでしょ?」

「あっ、松本さん」

微妙な空気に苛立ちを交えながらそう言ったのは松本だった。手に持っていた長銃を構え、銃口に当たる先端部を男の顔に突きつけた。


その瞬間。

それまで微動だにせず、表情に何の変化も無かった男が、眉間に皺を寄せて凄まじい形相をして勢いよく銃口に振り向いた。

「うわっ!」

その突然のリアクションに、筑川や真、やよいは小さな悲鳴をあげた。銃を構えていた松本も驚いたようで、「え、な、なに?」とどもりながら銃を下ろしてしまった。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/09/12(水) 09:18:50.02 ID:E+YLwxYAO

「じゃが リこ、じゃ が リ コ」

男は松本を睨み付けながら再び『じゃがりこ』と口走る。しかしその様子がおかしい。
じゃがりこ、という言葉の音程が徐々に崩れていくのだ。

「じャ がり⊃、じ ゃガИこ 」

ノイズが混じっているような、聞き辛い声調で『じゃがりこ』を連発し続ける。
不意に、ごきっ、ごきっ、と鈍い音がして、男が首を曲げた。そして次には、あろうことかその首が徐々に伸び始めた。

「!?」

全員が言葉を失い見守る中、男は『変身』していく。

「ι゛ゃヶ リこ、じψ ガ り⊃、」

『じゃがりこ』という言葉は最早原型を留めていない。それに伴ってごきごき、と鈍い音と共にという男の首は徐々に太くなり、長くなっていく。

「えぇっ!?」

テレビ企画がどうこうの話ではない。
想像を遥かに超えた信じがたい光景に、真達は混乱しながら後退りをした。

「いやなにコレ!?なにコレ!?」

「えっ?えぇっ!?」

「うわっ、気持ち悪い……」

「ど、どうすればいいんですかっ!?」

皆がうろたえる中、男の首は2メートル程にまで伸び、その顔も鼻と首が寄って前方に長くなっていく。
更には頭部から角のような突起物が二つ現れ、その様相は最早完全なキリンだ。
無論、それは特殊メイクや特殊効果によるものには見えない。

「Щャ々りコ」

スーツを着た人間の身体にキリンの首と頭部。スーツの首もとは太い首のせいではちきれそうになっている。
変身が終わったようで、キリンはぐぐぐっとゆったりとした動きで頭を下げ、つぶらな瞳で真達を見下ろした。
反対に真達は黙って、キリンの頭を見上げる。

「……なんだこれ」

そう真が呟いた時だ。

80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/09/12(水) 09:21:07.84 ID:E+YLwxYAO

「Щ*ヶ∪こ!!!」

キリン星人が叫び、太い首を大きく振り回した。

「おわぁっ!!」

真や松本、筑川は咄嗟に身を引き、ぶんっ、という風を切る音がしてキリン星人の首は空振る。
首は唯一、短銃を握っていたやよいの手に当たった。やよいは「あっ!!」と叫び、持っていた短銃はどこかに弾き飛ばされてしまった。

「はっ?はぁっ!?」

声を裏返らせ、混乱しながら筑川は無我夢中で長銃を構え、トリガーを引いた。

ぎょーん

奇怪な音とともに銃が鮮やかな青い光を放つ。やった、と全員が固唾を呑んで撃たれたキリンを見守った。

……しかし、なにも起こらない。
筑川が叫ぶ。

「これでどうなるっていうんですか!!」

「し、知らねーよンなこと!!」

松本がわめく。

「おーい撃ったぞー!!」

筑川が、どこかで潜んでいるであろうカメラマンに向かって叫んだ。

(こ、こうなったらボクも……)

真も後退しながら銃をキリン星人に構える。

(えっと、確か上のトリガーでロックオンして下のトリガーも引いて発射だっけか!?)

スコープを覗く余裕もなく、キリン星人目掛けてトリガーを引いた。

ぎょーん

戦隊モノのオモチャのように銃が光を放った直後、キリンが再び頭を大きく振り回し、銃を構えていた真はキリンの首振りをまともに喰らった。強い衝撃と共に身体が吹き飛ばされる。

「がっ……!?」

2メートル程吹き飛び、真は地面に倒れ伏した。
筑川や松本も同じく、キリンの首をまともに喰らって弾き飛ばされている。

暴れ回るキリン星人は三人を地面に叩きつけた後、おもむろに長い首を持ち上げて、夜空を向いた。

「£∂"∂"∂"∂"∂"∂∂∂∂∂∂∂∂∂∂∂!!!!!」

凄まじい金切り声でキリン星人が何かを叫んだ。
鼓膜を揺るがす余りに強烈な声量に、全員が咄嗟に耳を塞ぐ。

その最中。


ばばぁん

キリン星人の首が突然、風船が割れるような音を出して破裂した。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/09/12(水) 09:21:49.86 ID:E+YLwxYAO
今回はここまでとします
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 13:19:30.48 ID:h9Do3o3AO
投下します
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 13:42:36.92 ID:h9Do3o3AO
キリン星人の叫び声がぶつっと途切れ、代わりに破裂した首から黄緑色の肉片が飛散する。

どちゃっ、というくぐもった音が連続して二つ。首を失った頭と頭を失った身体が地面に転がる。
飛散した血肉は地面やブロック塀、電信柱等周囲を黄緑色に彩り、キリンの首のだらしなく開かれた口や、頭を失った首元から黄緑色の水溜まりが広がっていく。


先程までの騒動が嘘のように静まり返り、全員の視点がキリンの死骸に集中した。


凍り付いたような空気の中、頭の中が真っ白になりながら、真は何となしに頬を撫でた。
ぬるり、と指先が顔の上を滑る。

「…………」

指を見る。黄緑色だ。黄緑色の液体が指先に付着していた。

「…………っ!!」

爆発したキリンの体液だ。
そう認めた瞬間、生理的嫌悪感が波のように押し寄せ、真は青ざめながら顔に付いたキリンの体液を必死になってスーツで拭った。

(何だよコレっ……!!これが本当にテレビ番組なのか……!?スゴくグロテスクだし、気持ち悪いし、なんだよもう!なんだよもう!!)

驚愕や苛立ち、途端に様々な感情が湧き上がり、頭の中でせめぎ合う。それをぶつけるように真は黄緑色の体液をごしごしと拭った。

やよいは地面にへたり込み、呆然としたままキリンの死骸を食い入るように見つめている。

「うぇぇ、きも………」

松本は死骸を見ながら口元を手で押さえ、険しい表情をしている。
一方で同じく体液にまみれた筑川は、冷静に顔を拭いながら立ち上がり、おもむろにキリン星人の死骸へと近寄った。

「………グロいな」

そんな筑川を尻目に、少し落ち着いた真がショックを押し隠しながらよろよろと立ち上がって、呆然としているやよいに歩み寄った。

「……やよい、大丈夫?」

「ぇ……」

やよいはゆっくりと真の方へ感情の停止した目を向け、蚊の飛ぶような小さな声を出した。

「大丈夫?立てる?」

「え、ぁ……はい」

真に支えられながら、やよいは力無く立ち上がるが、その目は未だにキリンの死骸に釘付けになっている。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 13:47:51.56 ID:h9Do3o3AO
真はやよいを抱き寄せて、死骸から目をそらさせると、

「……見ない方がいいよ」

と言い聞かせた。
「あ……はい」とやよいは単調な返事をしたが、心なしかその声は若干震えている。

やよいを支えている真も、頭の中では衝撃のあまり整理がつかなくなっていた。

人間の頭が、キリンになって、襲い掛かってきたと思ったら首が爆発して……
現実として有り得ない光景、出来事が連続し過ぎて、脳の処理が追い付いていないのか、夢を見ているような、どこか浮ついた感覚が身体を包んでいる。

「それ……作り物、ですよね?」

真はやよいを抱き締めながら、死骸のそばに立ち尽くす筑川に、ふと質問を投げかけた。
言った自分でも馬鹿らしいと思う。だが目の前に起きた出来事はそれ以上に馬鹿らしい。
作り物であってほしいが作り物とは思えない程に、キリン星人の死骸は生々しかった。

「うーん……でもさっきまで確かに動いてましたし……」

そう言って、何を思ったのか筑川はおもむろにキリンの耳を掴むと、頭を持ち上げてみせた。
首の先が、弾けた黄緑色の肉が露わになり何やら神経のような管がぷらぷらと垂れ下がっている。それと同時に黄緑色の血液がぼたぼたと滴り落ちた。

「うげっ!!マジで信じらんねえ、なにやってんだよテメエ!!」

「っ、ちょっと筑川さん!!やめて下さいよ!!」

直視していた松本は顔を背けながら筑川を罵り、真もやよいを強く抱き締めながら思わず怒声をあげた。

「えっあ、ご、ごめん」

筑川は謝りながら、咄嗟に手を離した。どちゃっ、という音と共にキリンの頭が地面に落下する。

真は込み上げてくる嫌悪感を大きな溜め息を吐いてなんとかごまかした。

ふとやよいが真の肩もとでもぞもぞと動き出した。

「あ、あの真さん、もう大丈夫ですよー…」

やよいは、言葉とは裏腹に弱々しい声調でそう言った。いつものような元気は全く感じられない。

「本当?」

「はい……」

「無理はだめだよ?」

「ありがとうございます……大丈夫ですー」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 13:54:11.86 ID:h9Do3o3AO
短い返事をして、やよいは真から離れ、そして地面に転がるキリンの死骸をもう一度見やった。

「……あれ、本当に作り物なんですよね?」

やよいは細い声でぽつりと呟いた。

「う、うん……そうだよ、筑川さんもそう言ってたし」

答えた真の口調は自分に言い聞かせているかのようだった。

キリンの生首は光の無い濁った目でどこかを見つめている。

死骸は映画のセット以上に生々しい。それこそたかだかテレビ番組の小道具とは思えないほどにリアルだ。
それにさっきまで動いていたのだ、人間から変身して頭がキリンになる様子も確かに見た。

(全部催眠術、なのかなあ?
……それにしても、これの制作してる人達ってどういう人なんだろ?
グロテスクなものを見せて出演者の反応を楽しむ?だとしたらすごい悪趣味な番組だし……。
大体なんでボク達を出させたのかな。そもそも放送できないだろ、こんなの)

放送コードに全力で引っかかっているであろうグロテスクな死骸を見ながらそんなことを思う。
お茶の間にこの光景が流されたらたちまち場の空気が凍り付いて、世間からはバッシングの嵐を受けるだろう。
内容は物騒だし、金を掛ける方向を間違っているようにも思えた。

(………でも)

ふと違和感を感じた。

(あの二人が言ってたことって本当なのかな?)

黄緑色の血液。ぬるりとした感触。星人の変身。オモチャのような銃、撃てば星人は血肉を撒き散らして爆発。転送、死んだ記憶。
撮影スタッフがひとりとして見当たらない現場。
それらをどうこうできる催眠術。そんな画期的な技術は今まで聞いたことが無い。
あったとしたらもっと別方向に使うべきだろう。この番組は倫理観や常識的に間違っているんじゃないか。
色々と思えば思うほど様々な疑問が胸の中で膨らんでいく。

(いやいや、でもこれが撮影とかじゃなきゃ困るし……あんなの、有り得ないもん)

しかし思い直すも、胸の内の疑問が消えることは無い。

「……筑川さん」

「なんですか?」

「これって、本当に番組の企画、なんでしょうか」

筑川は目を丸くすると、少し考えてから何かを言おうと口を開けかけた。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 16:23:15.51 ID:h9Do3o3AO
だが筑川が何かを言う前に、どこからともなく、そこにいた誰のものでもない声が聞こえてきた。


「ハッ、まだそんなこと言ってんの?」

突如、ばちばち、という電気が迸る音と共に死骸の横の景色が人の形に歪み、そこに色が加えられていくようにして、誰かが現れた。
驚いた筑川が咄嗟に死骸から離れる。

『転送』とは違う、カメレオンが擬態を解いたように現れたのはあの少年だった。

少年は銃を片手に人を馬鹿にしたような笑みを浮かべている。

「あっテメエ!!」

少年を見るなり、松本が敵意を剥き出しにした。
それを無視して少年は真を見据えると、鼻で笑ってみせた。

「馬鹿だなお前、まだ信じてたんだあいつらが言ってたこと」

「あいつら……赤羽根さんと祐喜さんのこと?」

「それ以外誰がいんだよ。……ったく、倉田や尾形までノりやがって、糞つまんねぇわ」

少年は舌打ち、溜め息と苛立ちを露わにする。

「教えてやるよ。あいつらアホみたいなこと言ってたけど、マジな戦争だからこれ」
「……え?」

言っている意味が理解しかねた。

「え、じゃねーよ。
銃の光線に当たりゃ死ぬし、敵の攻撃も食らえば痛いし死ぬ。
アトラクションでも番組でもなんでもない、命掛けた戦いなんだよコレは」

「は?でもあの二人は番組の企画だって言ってたじゃねえか」

と松本。それに対して少年はわざとらしく溜め息を吐いて、嘲るように言った。

「んなもん嘘に決まってんだろ。馬鹿だから騙されてんだよお前らは」

「あ?」

途端に松本の眉間に皺が寄った。
今にも吉川に飛びかかりそうな剣幕だ。

「ンだとテメ……」

しかし松本が怒鳴りかけたところを、少年は更に大きな声で遮った。

「赤羽根!!祐喜!!出て来いよ!!いるんだろ!?」

87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 16:44:25.41 ID:h9Do3o3AO
少年に祐喜、赤羽根と呼ばれてから数秒後、真の背後から再びばちばちという音が聞こえてきた。
驚いて振り向くと、そこにはいつの間にか祐喜と赤羽根が立っていた。

「吉川くん……」

祐喜は出てきて早々、憂鬱そうに溜め息を吐く。

「どうしてこんなことするんだ?」

少年、吉川を非難する赤羽根。
すると吉川は明らかに馬鹿にした目で二人を睨みつけた。

「イラつくからだよお前らのやってることが。まどろっこしい上に面倒くせえんだよ」

「面倒って……理由は話したじゃないか」

「知るかよ、普通に戦わせればいいじゃん。戦って生き残れなきゃ死ぬ、それでいいじゃねーか」

「いずれにせよ一緒に戦う仲間は必要なんだよ!どうして分かんないのかなぁ……」

「分かりたくもねーっつの、アホか」

今一番現状を理解できていなくて、一番情報を得たい真達を置いてけぼりに、三人は言い争いを始めた。

「あ、あのっ!!」

三人の中だけでやり取りが成されている中、真は強い語調で割って入った。
会話が止み、真に三人の視線が集中する。

「話が見えないんですけど……っていうことはこれって全部作り物とかじゃなくて……?」

「……うん、騙してて悪いと思ってるけど、吉川くんが言った通りだよ。
君達は、いや俺達は本物の異星人を相手に命を掛けて戦うんだ」

と赤羽根。

(……なに言ってんだろ)

頭が痛くなってきた。

「いや、なんでボク達がそんなことを………ドッキリとかじゃ、ないんですか?」

「バラすとね……転送に星人、今俺達がやった透明化は催眠術がどうとかの話じゃない。全部本物だよ」

次に筑川が質問をぶつけた。

「あー……っていうことは催眠術っていうのが、嘘だと?」

「全部嘘。ハッタリです」

「…………」


88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 17:07:43.42 ID:h9Do3o3AO
頭の中を整理する必要があった。先程までの現実的に有り得ないと信じていた光景が全て、現実のものだと言われ、酷く混乱している。
むしろこれがドッキリなんじゃないか、そういう考えも頭をよぎった。
しかしそれで納得できる程、問題は簡単ではない。

他にも色々と聞きたいことはある。むしろあり過ぎて何も質問が出て来ないぐらいだ。
その中からかろうじて出て来た疑問を真は投げかけた。

「……なんで、戦うんですか?」

「ここではそれが義務だからさ。ガンツに与えられた」

ガンツ?
聞き覚えのない単語が引っ掛かる。

「ガンツ?なんですか、それ」と筑川。

「ガンツはですね……」

祐喜が答えかけようとした。
ちょうどその時

「じξ仝 り>」

あの声がした。


真達と離れた、住宅街の曲がり角からキリン星人がのしのしと歩いてくる。
頭部は既に、人間の身体とは不釣り合いなキリンの頭に変容しており、先のキリン星人と同じくシックなスーツを着ている。

「おっ、来た来た」

吉川は嬉しそうに長銃を構える。

「ま、真さん」

やよいが先程のキリン星人が爆発した瞬間を思い出したのか、顔を青くしながら真に近寄って来た。

「やよい……」

真はどうすることもできず、やよいの名を力無く呼ぶことしかできなかった。

のしのしと近付いてくるキリン星人の真っ黒な瞳には、街灯の光が映り込んでいる。

「……あれが、本物の異星人なんですよね?」

表情の感じられない瞳を見ながら、真は赤羽根に聞いた。

「ああそうだ。……あれを殺らなければ、俺達があれに殺されるんだよ」

「殺される……」

シュールな見た目のキリン星人。
それ相手に戦争だのとは、未だに信じられない。

吉川が銃を構えながら星人に一人近付いていく。

89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 17:13:03.72 ID:h9Do3o3AO
キリン星人も立ち止まり、吉川を見下ろした。

「……ξャが‖⊃」

キリンがそう呟き、それと同時に吉川が引き金を引いた。

ぎょーん

しかし、銃から光が放たれるその直前にキリン星人が吉川に向けて大きく首を振った。

「おっ、危ねッ!!」

風を切り、高速で振られたキリン星人の首を吉川は飛び退いて避けた。

「ジε 仝り Π!!」

仲間の死骸を見て激昂しているのか、キリンはよだれを撒き散らし、叫びながら吉川に迫った。

「Щ ャヶり゛ッ」

ばぁん

そして頭部が爆発。黄緑色の物体が飛び散る。
頭を失ったキリン星人は、吉川に迫った勢いでよたよたと走り、そしてすぐに力無く地面に崩れ落ちた。

「っ……」

やよいが表情を歪ませて顔を逸らす。
再び地面に飛び散る黄緑色の液体。
真は、何の変哲もない夜の路地が異形の血で彩られていく様子を所在なさげに見ていた。

「はっはっはァ!!」

体中にべったりと付着した黄緑色の血液を意に介さず、吉川は楽しそうに笑った。

(……狂ってる)

真は率直にそう思った。吉川は常人とは違う、どこかネジの外れている人間なんだろう。
曲がりなりにも生き物だ。それを殺して楽しそうに笑う姿は、真にってはただただ不快だった。

90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 17:18:50.97 ID:h9Do3o3AO

「じ ゃ仝 ―>」
「ι゛εガΠ ⊃」

再び声がした。今度は二体。
いや、二体だけではない。その声を発端に、周りからキリン星人の声が続々と聞こえてきた。

「£ャ ヶ リこ」「ι"*≡り コ」
「ジ ψが り コ」「仝ゃ 々り⊃」
「ξゃガ ‖⊃」「仝 ャξ Π>」

全員が身構える。
無数の不気味な声は重なり合い、住宅街にキリン星人の合唱が響き渡った。
しかしその姿が見えない。真達は辺りを見回して見えない声の主達を探した。

不意にやよいが上を見上げて、「あっ」と間の抜けた声をあげた。
その反応に釣られ、真も顔を上げる。

そして目に飛び込んできた光景に、真は心臓が鷲掴みにされたような感覚を覚えた。
住宅の屋根の上から、無数のキリン星人が長い首を覗かせていた。空に伸びる幾つもの首さながら林のようで、星人達の真っ黒な瞳は真達をしっかりと捉えている。

「囲まれた……」

皆が絶句する中、赤羽根がぽつりと呟いた。

真達がキリン星人達に気付くと、途端に星人達は黙り込み、緊張した静寂が辺りを包み込んだ。

肌がぴりぴりし、背筋に嫌な汗が流れる。
真は、表情は相変わらず無表情だがキリン星人達から少なからず放たれている殺気をなんとなく感じた。

見つめ合いか、睨み合いか。
膠着状態が続く中、ふと一体のキリンが首を動かして視線を移した。
そこから次々とキリン達が首を動かして視線を変える。

キリン星人達の視線のほとんどは、黄緑色の血液まみれの吉川に集中していた。

「………やんのかよ?上等だわ」

吉川はそう言うと銃を持ち上げ、キリン星人に銃口を向けた。

「じゃ仝ッ!!」

すると一体のキリン星人の口から何かが発射された。
それは吉川の肩もとに命中し、がつっ、と鈍い音がして吉川の身体が後退する。

「うぉっ!?」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 17:21:45.81 ID:h9Do3o3AO

からんころん、と金属音を響かせ、発射された物体が地面に落ちる。
それは大きな黄色い杭のようなものだった。長さ50センチ、太さは10センチはある杭がごろごろと地面に転がっている。

「ッのクソが!!」

怒った吉川が負けじと撃ち返し、一体のキリン星人の頭が再び弾け飛んだ。
直後、囲んでいたキリン星人が吉川に向けて一斉に杭を吐き出した。

「ジεガッ!!」「ξゃがッ!!」「ジャ£ッ!!」

がががががががががががががが

無数の黄色い杭が吉川に向けて雨のように降り注ぐ。
真達は咄嗟に身をすくめた。

杭にはそれなりの質量があるようで全方向からそれをぶつけられ、吉川は身動きが全く取れないようだ。
歯を食いしばって杭を耐えている。

(………なんで無事なんだろう?)

頭をかばいながらふと真は思った。音からして重そうな杭を一心に受けているのに、吉川は傷一つつかない。
思い出せば先程、キリン星人の首振りを食らった時も痛みは全く感じなかった。身体に伝わったのは鈍く重い衝撃だけだ。

杭の雨が止む。
黄色い杭で埋め尽くされた道の真ん中に吉川は立っていた。
あの攻撃を耐えるのはやはり楽ではなかったらしく、呼吸が激しい。

「……くそ、やりやがったな」

深い呼吸を繰り返しながら、吉川が再び銃を持ち上げた。
だが

どろり

突然、吉川のスーツ中に付いているボタンから青いゲル状の液体が漏れだし、だらだらとスーツの表面を伝っていった。
それを見た吉川は、勝ち気な表情から途端に顔を青くし、あからさまに狼狽え始めた。

「あ、あぁっスーツがっ……」

先程までの威勢とは正反対に、不安げに歪んだ表情をする吉川。

(ど、どうしたんだろ?)

なにか確実に不味いことになったのは確かだが、それがなんなのかは分からない。

92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 17:25:30.94 ID:h9Do3o3AO
吉川の様子に真が首を傾げていると、後ろから祐喜が血相を変えて叫んだ。

「吉川くん!!逃げるんだあああ!!」

祐喜の叫び声に吉川が不安げな顔を上げた直後。

「ξゃガッ!!」

キリン星人の一体が、新たに杭を吐き出した。

どずん

鈍い音と共に、杭は吉川の脇腹に命中。

「……は」


空気が凍り付いた。

真は目を見開き、吉川の腹から飛び出している、赤く染まった黄色の杭を見つめた。
吉川は呆然と、自分の腹から生えている杭を眺めている。

やがて、吉川の息が荒くなり、眉間にこれでもかと皺が刻まれ、顔から大量の汗が吹き出し始めた。

「おっ………がああああああああああああああ!!」

絶叫と共に吉川は地面にうずくまる。
その足元には赤い血が点々と滴り落ちていた。


「えっ!?やだやだやだなになになになに!?」

「あ、あれヤバいんじゃないですか!?」

筑川と松本は酷く狼狽えた。
やよいは口元を押さえ、涙目になりながら目を堅く瞑っている。

「あっ、真くん!!」

祐喜が叫んだ。
真は、気付いたら銃を放り出して吉川の方へと走り出していた。
後ろから祐喜と赤羽根が「あ、危ないよ!!」と声を掛けてきたがそれも耳に入らない。

「大丈夫!?」


真は吉川に駆け寄るやいなや、そう声を掛けた。しかし吉川はうずくまったまま呻くばかりで真への反応は無い。

(こ、こういう時は動かさない方がいいんだろうけど……)

キリン星人達は真の動向を観察しているように、こちらをただじっと見るだけで何もしようとしない。
いつあの杭を吐き出してくるのか……

「と、とりあえずここを離れよう!!」

そうは言ったものの、腹を貫かれた人間をどう扱えばいいのか分からない。
肩を持とうとしても、吉川は呻き苦しむだけで顔をあげようともしなかった。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 17:32:33.54 ID:h9Do3o3AO

「ぐっ……がっはぁ……あぁぁ」


苦悶の声を絞り出す吉川。

その時、一匹のキリン星人が住宅から飛び降り、その勢いのまま首が振り下ろされた。

ずん

軽い地響きを感じたと共に、真の顔に生暖かい液体がかかった。

「…………」

ぐぐぐ、とキリン星人が頭を持ち上げた。
その長い首には大量の赤い液体が付着している。

血だ。

真は、呆然として視線を地面に移した。
そこには物言わぬ肉塊になった、吉川が転がっていた。
上半身と下半身とで引きちぎれ、臓器と見られる物体がおびただしい量の血液の中、飛び出ている。

「……うぇぇッ!!」

真は咄嗟に口元を押さえ、胃袋から逆流してくるものをなんとか抑えた。
一瞬呼吸が困難になり、苦しさの余り涙目になる。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

なんとか吐き出さずに済み、真は浅い呼吸を繰り返した。

見上げると、キリン星人がまるで巨木のようにその首を天に向かって伸ばしており、ぎらぎらとした黒い目で、真を確かに見下ろしていた。

「ひっ………」

声がひきつる。
身体が地面に根を張っているかのように、その場からぴくりとも動けない。

ばんっ、ばんっ

直後、キリン星人の頭が粉々に弾け飛んだ。

「早く逃げるんだッ!!」

赤羽根の声を聞いた途端に、地面に張っていた根が引っこ抜けたように身体が自由になり、真は無我夢中で赤羽根達のいるところまで走り抜け、先に放り投げた銃を急いで拾い上げた。

銃を構える赤羽根と祐喜。
やよいはショックで反応ができないらしく、呆然と立ち尽くしている。
筑川と松本は完全に取り乱しており、銃を構えながら挙動不審に周りを見回している。

ずん、ずん、ずん

次から次へとキリン星人が屋根から下りてきた。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 17:35:52.32 ID:h9Do3o3AO
怯えた松本が叫び散らす。

「ああぁ、来んなぁぁぁ!!」

ぎょーんぎょーん

銃を乱射する松本に、キリン星人達が近付いていく。
一体ほどのキリンの首が爆発。あとは当たらず、後ろの住宅のブロック塀が粉塵を吹き上げながら爆発した。

松本は段々とキリン星人達に、囲まれていっているが、本人は取り乱していて気付いていないようだ。
松本を援護しようと銃を構える祐喜や赤羽根には屋根にいるキリン星人達から杭が放たれ、それを避けるために上手く照準が合わせられない。

「ああああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

そうこうしているうちに、松本が両腕や脚を三体のキリン星人にくわえられ、宙に持ち上げられた。

「いやだいやだいやだいやだ!!下ろせっ下ろせェ!!」

絶叫する松本を、三体のキリンは問答無用に噛み締め引っ張り上げた。
ぎりぎり、と松本の身体が三方に引っ張られる。

「いやっ、いやあああああああああああああああ!!」

やがて松本のスーツのボタンからも、ゲル状の物体が流れ出した。

「やよいっ!!」

真は、マズいと直感的に感じ、そばで呆然とその光景を見ていたやよいをかばって目と耳を覆った。

「いだあぁッ、い゛ゃあ゛ああああああああああ」

ぶちぶちっ、べきべきべき

松本の断末魔の叫びと共に、肉から引きちぎられ、骨が砕ける音が聞こえてきた。ばちゃばちゃと大量の血が、キリン星人達の足元に滴り落ちる。
やよいを抱き締めながら真は目をギュッと瞑り、その光景から目を逸らした。

ばんっばばばんっ

直後に破裂音。
松本を食いちぎったキリン星人達の頭がバラバラに吹き飛ぶ。
赤と黄緑色の液体が混ざりながら飛び散った。

「うわっうわぁっああああああああああああああ!!」

筑川の叫び声が聞こえた。
見るとキリン星人達から背を向けて一目散に逃げ出している。

「や、やよい、逃げよう!!」

「う……うぁ……」

真もやよいの手を引き、その後を追った。

ずん

しかしその目の前に、住宅街から降りてきたキリン星人が立ちはだかる。
真は咄嗟に銃を撃ち、やよいを連れて全速力でキリン星人の横を駆け抜けていった。

「あっ、待ってよ!!」

祐喜が静止を呼び掛けたものの、真達は既にかなり遠くまで離れており、その声は届かない。
そしてその直後に、真が撃ったキリン星人の首が爆発した。



95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/18(火) 17:36:57.06 ID:h9Do3o3AO
以上で投下終了です
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 21:32:45.36 ID:Dp+J+yoxo
吉川マジ西くん
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/19(水) 00:24:51.70 ID:mN7cNK6Bo
この後の展開を想像すると、怖くて眠れない
98 :名無しNIPPER [sage]:2012/09/21(金) 20:30:22.12 ID:vTSAuf4AO
良かった、赤羽根(P)は黒幕じゃなくて

それにしても真達は初めてのミッションなのに
いきなりハードだね
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/24(月) 06:55:26.86 ID:e51plMtAO
短いですが投下します
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/24(月) 07:00:54.58 ID:e51plMtAO
――――――――――――



「はァっはァっはァっはっはっ……」

宛もなく無我夢中で走り出して数分。
筑川は足が速く、真はやよいの手を引きながらその後ろを走っていた。

背後からキリン星人が追ってくるような錯覚が絶えず、怖くて後ろを振り向くことができず、とにかく必死になって走っていた。
だがしかし


ピンポロパンポンピンポロパンポン


突然、軽快なメロディーが辺りに流れ始めた。

(なんだこれ……?)

携帯の着信メロディーのような電子音がどこからともなく鳴っている。
しかもその音量は足を進めれば進めるほど大きくなっていった。

緊張感の欠く明るいメロディーが、逆に気分を不安にさせる。
嫌な予感が、真の手を突き動かした。

「あッ!?……ま、真さん?」

腕を掴まれて急停止したやよいは、よろめきながら素っ頓狂な声を上げた。

「これ以上行っちゃダメだ!!」

メロディーは軽快な曲調で鳴り続けている。

「え、な、なんで……」

「筑川さぁん!!止まってぇ!!」

狼狽えるやよいを遮って、真は前方を走る筑川に向かって叫んだ。
筑川は既に真とやよいとの距離をかなり離している。

ピンポロパンポンピンポロパンポン

「筑川さぁん!!それ以上行っちゃだめだぁっ!!」

叫び続ける真の声に気付いたのか、筑川が速度を緩めながら振り向いた。

「筑川さ………」

その時だった。

ばぁん

筑川の頭が大きな破裂音と共に粉々に砕け散った。
吹き飛んだ肉片などが周りに飛び散り、頭を失った身体は、速度を維持したまま勢いよく地面に倒れ込む。

「……え?」

突然の出来事に、真は拍子抜けしたように呟いた。
絶句した二人の周りでは、未だにあのメロディーが規則正しく鳴り響いている。

(……や、やっぱり)

真はなんとなく感づいていた。
祐喜と赤羽根がミッション開始時に説明していた一帯に設けられたエリア。
鳴り響くメロディーはエリア外に出そうになった時の警告のようなものなのだろう。
戦争を放棄してエリアから出たらペナルティーが下る。
あの二人はそんなことを言っていた。

101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/24(月) 07:04:11.42 ID:e51plMtAO

(そのペナルティーが……頭の、爆破)

よく聞くと、先ほどから流れているメロディーは頭の中から聞こえてきているように感じる。

(この頭の中に、爆弾かなんかが入っている……?)

頭に手を当てて、血の気が引いた。
これ以上前に進めば、筑川のように頭が粉々に……

「うぁ………」

不意に呻き声とも溜め息ともつかない声がやよいから聞こえてきた。
見ると、何かやよいの様子がおかしい。

「やよい……?」

よたよたと覚束ない足取りで後ずさりするやよい。
目はどこか遠くを見ており、明らかに正常な状態ではない。

「あ……あぁ」

力の入っていない声が漏れている。
次の瞬間、どさり、とやよいは崩れ落ちるように倒れ込んだ。

「やよい?やよい!!」

抱き上げて身体を揺らす。
どうやら気絶しているようだ。
無理もない、次から次へとショッキングな光景に遭遇したのだから。

むしろ真は、三人もの人間が目の前で無惨な死を遂げているにも関わらず、まだ平静を保てている自分自身に驚いた。
もう、感覚が麻痺してるのだろうか。

「………とにかく、戻らないと」

少なくともこのままここにいてもいいことは無いだろう。
いち早くこのメロディーが鳴り止む場所まで戻らなくてはいけない。

(……筑川さん、ごめん)

真は気絶したやよいを背中におぶると、離れたところに転がっている筑川の頭の無い死体を一瞥して歩き出した。

赤羽根や祐喜に会わなければ。
今頼りになるのは彼等だけなのだ。

(でも最悪あの二人も……)

嫌な考えが頭によぎる。
キリン星人に囲まれたまま残してきてしまったが大丈夫なのだろうか……
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 07:05:20.28 ID:PDozzceSO
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/24(月) 07:05:48.14 ID:e51plMtAO
「あっ」

その時、ふとやよいの腕に取り付いているリモコンが目についた。
リモコンはアームのようなものでやよいのスーツに取り付けられている。

真は立ち止まり、やよいをおぶったまま、腕からリモコンを取ってかちかちといじり始めた。

(あ、出た)

適当にいじっていると、画面に地図が表示された。

参加者を表したマークは、見る限りだと真とやよい以外に4つ、少し離れたところで固まっている。
赤羽根と祐喜はまだ生きているようだ。
加えて言うなら彼等は倉田や尾形と合流したらしい。
そして彼等の周りには星人のマークが点々としていた。

(……よかった)

安堵しながら更にボタンを押すと、ミッションの残り時間が表示された。

『00:32:14』

残り時間は半分に差し掛かろうとしている。

「……急がなきゃ」

真はリモコンをやよいの腕に付け直した。
そして銃を手に持って、やよいをおぶり直すと、元来た道を全速力で走り出した。



104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/09/24(月) 07:07:26.48 ID:e51plMtAO
以上です
これでメンバーは残り六人となりました
ではまた
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 07:28:09.79 ID:PDozzceSO
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/10/03(水) 20:30:25.08 ID:W6Dfpu+AO
投下します
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/10/03(水) 20:35:33.76 ID:W6Dfpu+AO
――――――――――――




あともう少しで、先程の路地に戻る。
ショッキングな光景がそこに広がっていることを覚悟して真は走り続けた。
リモコンの地図で確認した経路を思い出しながら目的地を目指す。
ここまでは幸運なことに一度もキリン星人に遭遇していない。

(よし、次の角で……)

そして見覚えのある角を曲がり、キリン星人に囲まれた路地に出る。

そこで真は思わず立ち止まった。
そこに広がっている光景は先程よりも更に酷くなっていたからだ。

路地のほとんどは黄緑色の血液でべったりと彩られており、道や塀の上、住宅の屋根の上など、至る所にキリン星人達の無惨な死骸が転がっている。
その中に、松本と吉川と思われる死体があったが、それすらも黄緑色に彩られている。
電線からは星人の血液が、雫となってぽたぽたと滴り落ちていた。

(………酷い)

凄惨な状態になっている路地を、真は絶句しながら見渡した。
やったのは赤羽根か祐喜か、あるいは尾形と倉田なのか。
人影は一切無く、どうやら赤羽根や祐喜はここにはもういないらしい。

真は再びやよいの腕からリモコンを取って、地図を見た。
見る限りまだ近くにいるようで、相変わらず尾形や倉田と見られるマークと固まっている。
そして気付けば、星人達のマークはかなり減っており、あと五体程になっていた。

赤羽根達はどうやらこの路地の先にいるようだ。
なりふり構ってはいられず、真は死骸だらけの路地の中を走り出した。
ばちゃばちゃと足元で星人の血液が跳ね、その度に両足に黄緑色のまだら模様が増えていく。

(やよいが起きてたらこの光景にまた取り乱してただろうな)

足を濡らす血液を、もはや何とも感じられなくなっている自分を真は少し物悲しく感じた。


108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/10/03(水) 20:38:38.85 ID:W6Dfpu+AO

そして星人の死骸だらけの道を抜け、少し広い車道に出た。
するとちょうど一台の乗用車が通りがかりった。真は乗用車とすれ違い、乗用車は真達を素通りして行く。
小さくなっていく走行音に、真は遠ざかるヘッドライトを目で追った。

「………?」

一瞬違和感を感じながらも、先を急ごうとやよいを背負い直し、再び前に向き直る。
しかし真はそこで、またもや立ち止まることになった。


前方にはいつの間にか、老人がこちらを見ながらじっと立っていた。
髭を生やしている老人はスーツを着込んでおり、背筋は皺だらけの顔から来る印象とは違って、ぴんと伸びている。

老人の姿を認めた瞬間、緊張していた真の心臓は跳ね上がった。

暗がりに浮かぶ老人のその顔は、言うまでもなく気味の悪い馬面だった。





109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/10/03(水) 20:40:41.86 ID:W6Dfpu+AO
―――――――――――――




街の中、小さな公園に赤羽根、祐喜、尾形、倉田は集まっていた。
ベンチに座っている祐喜の膝には小型のノートPCが置いてあり、複数のアダプターで黒い玉から支給品されたリモコンと繋げてある。
画面にはリモコンよりも詳細な地図が表示されていた。

「真さんとやよいさん、こっち向かって来てるみたいだ」

PCの画面を見ながら祐喜が言うと、赤羽根がほっと胸を撫で下ろした。

「そうか……よかった。また俺達以外全滅したのかと思ったよ」

筑川達が逃走した後、赤羽根と祐喜を取り囲んでいたキリン星人は駆けつけた尾形と倉田の協力によって蹴散らされた。
だが筑川達を追うわけにもいかず、赤羽根達は残りのキリン星人を狩るために街中を移動していた。

現在は状況分析を兼ねて、四人は公園で休憩をしている。

「ねー、生きててよかったね。……あの筑川っていうサラリーマンは死んじゃったみたいだけど」

安堵の息を漏らす赤羽根の横から尾形が口を挟んだ。

「……………」

途端に表情を曇らせる赤羽根。

「まぁそう気を落とさないでよ、ね?次に繋げていきゃいいんだし」

尾形は、眉を下げて困ったような笑顔を赤羽根に向けながら、慰めとも皮肉とも取れる言葉を投げかける。

「しっかしまぁ吉川が死ぬなんてね」

不意に尾形は話題転換を図り、無表情で黙り込んでいた倉田に話を振った。

「……ある意味当然の結果だろ。一人で舞い上がって自爆しやがって。あんなに忠告しといたのにな」

「あたしが高校の時はあんなヤツいなかったけどなぁ。根暗でイタいガキが増えてんのかなー」

するとPC画面を観察していた祐喜が横から口をはさんだ。

110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/10/03(水) 21:58:40.65 ID:W6Dfpu+AO

「尾形さんの世代でも根暗でイタい人はいくらでもいますけどね」

「ふーん、部屋に籠もってパソコンばっかやってるヤツとか?」

「引きこもりのことですか?」

「それも含めて」

「……さぁ?尾形さんがそう思えば、そうなんじゃないでしょうかね」

「ははっ、なにそれ」

「……おい祐喜」

そこで倉田が会話に割って入った。

「星人のボスはどこにいるんだ?」

画面上に表示された星人達のマークを見ながら、祐喜は答えた。

「残りの星人は全部この近くにいますし、その中にいるんでしょうけど、それぞれの個体を捕捉してないんで分からないですね……
うーん、でも動きはありませんし、機を伺ってるんじゃないですか?」

大方のキリン星人は既に倒した。残るは五体、その内どれか一体が星人達のボスだ。
五体は祐喜達を取り囲むようにいたが、その位置はバラバラで、先程から動こうとする気配すら無い。

「こっちから行くしかないんじゃないの?」

「それもそうかもしれませんね」

長銃を見せつける様に持ち上げた尾形に、赤羽根が賛同する。
直後、画面を見ていた祐喜がおもむろに眉を上げ、「あ」と声を漏らした。
全員の視線が祐喜に集中する。

「……言ってるそばから、相手が来ましたよ」

「マジか。どっからだ?」

倉田が祐喜に聞いた直後。

ドンッ

地響きと共に、鈍重な音が赤羽根達の背後から聞こえてきた。

「……言うまでもないですよね」

夜空に向かって伸びているキリンの首を見上げながら、祐喜は呟いた。
しかも赤羽根達の前に現れたキリンは、今までのキリン星人とは違い、なぜか眼鏡を掛けていた。
黒縁の、標準的な眼鏡。

「……課長ってところ?」

街灯の明かりを受け、時折光を反射する眼鏡を見ながら、尾形が言った。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/10/03(水) 22:00:15.22 ID:W6Dfpu+AO
祐喜は手際よくパソコンとリモコンからアダプターを取り外し、即座にパソコンを脇に抱え、ベンチから立ち上がって戦闘態勢に入った。
その次の瞬間。

「ジャガリコッ!!!!」

キリン星人が叫びながら一瞬にして距離を詰め、首で四人を薙ごうと横に振った。
四人ともぎりぎりで飛び上がり、キリン星人の首を避ける。

「やっぱコイツ他のヤツとは違うっぽいな」

「中ボスみたいな感じ、ですかね?」

攻撃を避けた倉田と赤羽根がそんなことを言っていると、

ドンッ

再び地響き。
背後から更にもう一体、キリン星人が現れた。頭部には何故かバーコード型に禿げあがったカツラが乗っかっていた。

「もう一体!?」

「多いな今回は!!」

「他の二体もこっちに来てます!しかも……」

リモコンを見ていた祐喜が、そこで口を噤んだ。

「しかも真さんのところに、残りの一体が……」



112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/10/03(水) 22:05:24.23 ID:W6Dfpu+AO
―――――――――――――――



赤羽根達が戦闘を始めた頃、真は気絶しているやよいを背負いながら、道端に立ち尽くしていた。
その視線の先には、スーツを着て、髭を生やした馬面の老人。
無表情で道路の真ん中に独り、背筋を伸ばして立っている。

緊迫した雰囲気の中、星人への恐怖に負けまいと、真は険しい表情で老人を睨み付けていた。
戦うしか道は無い。
睨み付けながら考えに考えた末、結局はその答えに行き着いた。

だが相変わらず得体の知れない不気味な雰囲気を放つキリン星人を前にして、身体が動かない。
しばしの膠着状態が続いていた。


「……よくも同胞を殺してくれたな」

不意に老人が口を開いて、予想以上に高い声で真に語り掛けてきた。

(しゃ、しゃべった……!?)

今まで『じゃがりこ』としか言わなかったキリン星人とは違い、まともに言葉を話した星人に、真は大きく動揺した。
見てくれといい雰囲気といい、どうやらこの老人は、他のキリン星人とは色々と違うようだ。

「お前の仲間は私の同胞が殺しにかかっている。行っても無駄だ。お前も私に殺されるのだからな」

「………な、なんでですか?」

老人の静かで冷たい気迫に怯えながら、真はなんとか聞き返した。

「なんでボク達は、あなた達と戦わなければならないんですか?」

「我々を狩りに来たのはお前達だ。だから狩られる前に我々がお前達を狩ってやるのだ」

「い、意味が分かりませんよ……ボク達は、少なくともボクとやよいはあなた達と戦う意志なんて無いのに」

「そんなものは関係が無い。既にお前も我が同胞を殺しただろうに、私は許さない」

「……ボク達は戦わされているんです、それがなんなのかは分からないけど」

「我々の知ったことではない。お前達は敵だ、だから排除する」

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/10/03(水) 22:13:19.85 ID:W6Dfpu+AO

口調は淡々としているが、その中で老人は明確な敵意を剥き出しにしていた。

「このままお前達は、私に殺される」

冷たくとも明確な言葉が差し向けられ、真は息が詰まりそうになった。
脳裏には目の前で肉塊になった吉川や、引き裂かれた松本、頭が爆発した筑川の姿が、まざまざと蘇った。

死ぬ……死ぬ、自分もああなる?

こんなわけの分からない状況の中で、こんな得体の知れない者に人知れず殺されてしまうなんて、ついさっきまでそんなこと夢にも思っていなかった。
平然と明日が来て、学校に通いながら仕事をするものだと思っていた。
765プロに帰ってから、挨拶をして家に帰れば今日はそれで終われると思っていた。

それに、まだ17年しか、生きてないのに。
ようやくアイドルとしてまともに活動できるようになったのに。
自分にも、やよいにだって家族が待っているのに………

様々な思いが胸の内に渦巻き、不意に銃を握る手に力が入った。

「………いやだ」

小さな、小さな言葉が漏れた。
その声は小さな上に震えている、頼りないものだ。
だがそれを口に出した途端、真の中で何かが、プツン、と音をたてて切れた気がした。

「まだ、死にたくない……死にたくない」

語調は徐々に強まり、それに伴って怒りともつかぬ、得体の知れない興奮が身体の中から湧き上がった。

おもむろにやよいを背中から下ろし、ゆっくりと道路に寝かせる。
そして老人と改めて向き合い、銃を構えた。

「ボクだって……ボクだって、殺されるわけにはいかない!!」

そう言い放つち、真は老人を睨み付けた。
対する老人は相変わらずの無表情を携え、静かに見つめ返してきた。
そしてふと目を細め、

「……お前如きが、そっちの人間を守りながら私を殺せるのか?」

ごきっごきっ

言いながら、老人が鈍い音を慣らしながら首を動かした。

「お前∂よウな人間が?」

ごきごきっごきっ

「£めるナよ、人間」

首が伸び、老人の顔も変形していく。
キリン星人としての形態になりつつある老人の首の後ろと頭部には、獅子のような勇ましい銀髪が生えてきた。
今までのキリン星人とは明らかに違う、一線を画す風格。

しかしそれを前にしながらも、真の闘志は揺らぎすらしなかった。

「……ボクは戦う。やってみせる!!」

そう叫び、銃をキリン星人に向けて、トリガーを引いた。


114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [saga]:2012/10/03(水) 22:14:40.05 ID:W6Dfpu+AO
なぜかこういう流れになってしまいましたが、以上で投下終了です

ではまた
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/04(木) 22:37:22.29 ID:wRRuaFD+o
いよいよ真のターン!
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) :2012/10/06(土) 23:10:48.08 ID:JGc/DO4AO
ここに来てすいません
全体的にちょっと書き直したいと思い、よってこのSSは現段階で打ち切りにします
また練り直してから最初から投下するので、その時にまたよろしくお願いします
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/07(日) 23:40:03.75 ID:5esUvziK0
なん、だと・・・っ
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/08(月) 02:09:36.43 ID:pUBxBwaZo
期待して待ってますね
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