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恒一「有田さんの幸運度が上下する現象……?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:20:27.22 ID:1raaGn3yo
とりあえず、vipで書いた分を先に貼ります

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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:21:32.45 ID:1raaGn3yo
赤沢「転入して数日……松子は今日は休みだけれど、あの子に休みが多いのは、榊原君もきづいているでしょう?」

恒一「半分くらいは休んでるね」

赤沢「松子が休んでいるとき、何か変わった事は無かった?」

恒一「変わった事……? 今日は10円拾ったくらいしか、それも大して変わった事じゃ……」

赤沢「それよ」

恒一「えっ?」

赤沢「私達が直面している現象は、松子の幸運度が下がると三組生徒の幸運度が少し上がり、松子の幸運度が上がると三組生徒の幸運度が少し下がる現象なの」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:22:14.02 ID:1raaGn3yo
恒一「いや、でも……なにそれ」

赤沢「分からないのも無理は無いわ。でも、事実なの」

恒一「う、うん?」

赤沢「有田さんが学校に来た日に、あなたに嫌なことがあったことはない? 蜘蛛の巣が顔に引っかかったり、猫の糞を踏んだり、鉛筆の芯が折れやすかったり」

恒一「そ、それは……あったけど」

赤沢「もちろん、松子が悪いわけじゃないわ」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:22:55.24 ID:1raaGn3yo
赤沢「あの子はクラスの皆と違って、幸運度の上下が激しいの」

恒一「それは、どういう風に?」

赤沢「松子はこの一年間、サイコロをふると、一か六しかでないわ。運が良い日には六が。運が悪い日には一が。っていうようにね」

赤沢「それを利用して、彼女には毎朝家でサイコロをふって貰っているわ。運が良ければ登校。運が悪ければ、その日は一日家でおとなしくしていられるようにね」

恒一「だから、有田さんはこんなに休んでいるの?」

赤沢「そういう事。もちろん、授業にはついていけないし、出席日数も問題になるわ。だから先生達は、彼女を『いないもの』として扱うの」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:23:28.81 ID:1raaGn3yo
放課後

勅使河原「サカキ、聞いたんだってな」

恒一「うん。さすがに実感は湧かないけれど……」

勅使河原「まぁ、そうだろうな。でも、今にわかるぜ」

恒一「今に?」

勅使河原「朝、登校中に嫌な事があれば、教室には有田がいる。登校中に良い事があれば、有田は休み。有田には悪いけどよ、いると少しテンション下がっちまう事もある」

恒一「だから、有田さんはいつも一人で居たの?」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:24:03.79 ID:1raaGn3yo
勅使河原「あぁ、去年までは、普通に友達が多くて、普通に笑ってて、普通に過ごす女子中学生だった」

勅使河原「でも、よ。頭では分かってても、やっぱり有田に近づくのは遠慮しちまうんだ。それに、有田自身も遠ざけようとしてる」

恒一「それは……なんかやだね」

勅使河原「ほんと、三組じゃなければ良かったのにとは思うぜ。サカキも一年間いろいろあるけれど、頑張ろうな」

恒一「うん……わかったよ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:24:37.03 ID:1raaGn3yo
恒一宅

恒一「ねぇ、怜子さん」

怜子「うん? どうしたの?」

恒一「有田さんの事。どうして教えてくれなかったの?」

怜子「……その、ね。そういうのは、クラスの子から伝えてもらうべきかなって思ったから」

恒一「これは、質問なんだけどさ、有田さんって受験とかってどうするの?」

怜子「……去年の子は、自力で家で勉強して、それなりの高校に行ったわ。一昨年の子は……わからないわ」

恒一「そっか……ありがとう。ごめんね、変なこと聞いちゃって」

怜子「ううん、私も、説明不足だったから……」

パタン

怜子(行っちゃった……やっぱり、納得行かないよね。だから、もしかしたら……)

怜子(ううん、きっとそうはならない。あんな事は、もう、起きちゃいけない……)
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:25:14.74 ID:1raaGn3yo
登校中

恒一「ぶわっ!? な、何っ!? 何が顔に張り付いたのっ!?」

恒一「ど、どこからか、まだ湿った洗濯物が飛んできたのか……しかも、男もののパンツ……」

恒一(あぁ、うん……なんとなくわかった気がするよ)

恒一「とりあえず、これ、どうしよう……?」

恒一「塀に引っかけて置くしかないか……」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:25:54.67 ID:1raaGn3yo
教室

恒一(あ、有田さんだ……)

久保寺「ホームルームを始めます。皆さん席に着いてください」

恒一(今朝のあれ、現象のせいなのかな……)

授業中

先生「今日は小テストをやるぞー」

勅使河原「うげっ……マジかよ……」

望月「元々予告されてたのに、忘れてたの?」

勅使河原「えへへ、聞いてなかったっ ☆ミ」

先生「あぁっ?」

勅使河原「ごめんなさい」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:26:25.40 ID:1raaGn3yo
テスト中

勅使河原「うげっ……えんぴつ折れた……」

先生「お前が強く握りすぎなんだよ」

恒一「ふふっ……」クスリ

クラス「…………」

恒一(あれ? 今の、笑うところじゃなかって……?)

恒一(あ、そうか……これを笑うと、勅使河原君の不幸を笑うことになっちゃうから……有田さんの前では笑いづらいんだ)
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:26:55.00 ID:1raaGn3yo
放課後

久保寺「それでは、皆さん気をつけてお帰り下さい」

有田「…………」スタスタ

恒一(有田さん、今日一日誰とも喋って無いな)

勅使河原「サカキ、帰りに寄り道しよーぜ」

恒一「ごめん、勅使河原君。今日はちょっと用事があるから!」 

勅使河原「おう、そうか。しかた無いな。風見で良いか」

風見「で良いかとはなんだよ、で良いかとは」

恒一(有田さんに追いつこうっ!)
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:27:53.48 ID:1raaGn3yo
階段

恒一「あ、有田さんっ! って、うわぁぁぁっ!!!」

スッテンコロリーン

恒一「いてて……」

有田「さ、榊原君っ!? 大丈夫……?」

恒一「うん、なんとか……」

有田「……ごめん」

恒一「謝る理由なんて……」

恒一(そうか、有田さんは自分のせいに思えちゃうのか……)

恒一「……僕がかってにこけただけだよ」

有田「でも……」

恒一「それより、一緒に帰らない? 聞きたい事があって……」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:28:24.79 ID:1raaGn3yo
帰り道

恒一「一人でいると、辛くない?」

有田「……結構、ストレートな事、聞くんだね」

恒一「答えたくないなら、無理には聞かないよ。質問を変えようか?」

有田「ううん、大丈夫だよ」

有田「……辛いし、寂しいし、怖いよ。でも、皆の気持ちもわかるから、しょうがないよ」

恒一「しょうがないなんて、おかしいとは思わないの? 現象なんて、よく分からないものの為に、自分が学校から半分追い出されるなんて……」

有田「それでも、その方がマシって事もあるよ? 随分昔の話だけど、死んじゃった人もいるらしいから……」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:29:49.66 ID:1raaGn3yo
恒一「それでも……」

有田「これは、私も納得してる事だから……それより、他の質問は無いの? 無いなら、転入生の榊原君に、私から色々な質問をしちゃうよ?」

恒一「……じゃあ、先に別の質問かな」

恒一「その、両親にはどうやって説明をしてるの?」

有田「私の両親は、どっちも海外に長期出張中だけど、その合間に一度見せてあげたんだ」

恒一「見せてあげた?」

有田「うん、百回以上続けて六が出るサイコロと、百万円が当たった宝くじ」

恒一「うわぁ……」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:30:22.14 ID:1raaGn3yo
恒一「あれ? 両親が長期出張中って、有田さんは一人暮らし?」

有田「うん、そうだよ」

恒一「えっと、大変だね」

有田「そうでもないよ。慣れたら簡単だから」

有田「それよりも……」

恒一「それよりも?」

有田「榊原君の家ってどこなの? もうスーパーに着いちゃったんだけど……」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:30:49.32 ID:1raaGn3yo
スーパー

恒一「凄い量買うんだね」

有田「外に出れる日に、一杯買わないといけないから……」

恒一「持てるの?」

有田「あはは……なんとか、かな」

レジおばさん「お会計が、七千と三十二円になります。なお、本日はポイント五倍デーなので、八十五ポイントを押させて頂きます。ポイントカードはお持ちですか?」

有田「あ、はい。これです」

レジおばさん「丁度ポイントが貯まったので、千円分のチケットか、くじが出来ますが……」

有田「くじでお願いします」

レジおばさん「では、こちらから一枚お取りください」

有田「……これで」

レジおばさん「!? 銀賞、七千円分のチケットになります……本日お使いになりますか?」

有田「はい」

レジおばさん「合計しまして、三十二円になります……」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:31:23.89 ID:1raaGn3yo
会計後

恒一「えっと……すごいね」

有田「いつも、あんな感じだよ。慣れてるおばさんだと、驚かないもん。だから、今日の人は新しいパートの人なのかなぁ」

恒一「スーパーも商売にならないね」

有田「そうでも無いよ。今日も金賞は無かったけれど、慣れてる人が相手だと、最高でも千円分のチケットまでしか入ってないくじだったりするもん」

恒一「う、うわぁ……」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:32:23.34 ID:1raaGn3yo
恒一「袋、一個持つよ」

有田「ええ、悪いよ」

恒一「質問料を払わないといけないから……ね」

有田「そしたら、私が東京での話とか聞けなくなっちゃうよ!」

恒一「それは、転入生の宿命だから、料金は発生しないよ」

有田「ふふふ……なら、お願いしちゃおっかな」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:32:53.30 ID:1raaGn3yo
有田宅前

有田「ありがとうね、榊原君」

恒一「男子だからね、これくらいしないと」

有田「今日は、面白い話とかがいっぱい聞けてよかったよ!」

有田「私の運が良かったら、また明日ね」

恒一「うん、また明日、会えると良いね」

パタン

恒一「運が異常な以外は、普通な子だったな……」

恒一「僕も帰ろう……って、うわぁっ!!」ズベシャッ

恒一「……何も無い所でこけた……有田さんの荷物を持ってる時じゃなくて、良かった」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:33:20.85 ID:1raaGn3yo
恒一(あれ? 有田さんの荷物を持ってる時にこけたら、有田さんからしても不幸だよね)

恒一(なら、幸運な有田さんの荷物を持ってる時には、僕はこけるはずもないのか)

恒一(…………)

恒一(取りあえず、気をつけて帰ろう)
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:34:14.21 ID:1raaGn3yo
次の日

恒一(有田さん、休みかぁ……)

恒一「ねえ、勅使河原君」

勅使河原「うん? どうした、サカキ?」

恒一「現象について、詳しく教えてくれたりしない?」

勅使河原「現象ねぇ……俺が知ってることは、ほとんど知ってると思うぜ。詳しくなら、対策係の赤沢か……」

恒一「赤沢か?」

勅使河原「第二図書室の千曳先生に聞けば教えてくれると思うぜ」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:34:45.72 ID:1raaGn3yo
放課後、第二図書室

恒一「し、失礼します……」

恒一(紹介しておいて、勅使河原君は一緒には来てくれないし……いや、たしかに此処って怖いけれど……)

恒一「卒業アルバムがいっぱい……」

恒一(そういえば、母さんもここの生徒なんだっけ……)
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:35:44.18 ID:1raaGn3yo
恒一「たしか、この年の……」

千曳「誰だい? こんな所に珍しい」

恒一「えっと……千曳先生、ですか?」

千曳「君は……たしか三組に来た……」

恒一「榊原恒一です」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:36:15.40 ID:1raaGn3yo
千曳「そうか……理津子君の息子だったのか……」

恒一「はい、たしか此処の生徒だったんですよね?」

千曳「あぁ、私が担任だった。元気で誠実な、いつもクラスと中心にいる生徒だったよ」

千曳「……不躾な質問だが、理津子君は、年齢から察するに……」

恒一「はい、僕を生んですぐに、交通事故で亡くなりました」

千曳「そうか……子供がいたのか……いや、申し訳ない。君にこうして聞くべきでは無かったね」

恒一「いえ……」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:36:49.42 ID:1raaGn3yo
千曳「今日は、彼女の写真でも見にきたのかい?」

恒一「……現象について、聞きに来たんです。千曳先生は詳しいって聞いて」

千曳「そうか……私に話せる事なら、出来るだけ話そう……」

千曳「まずは、現象の始まりから、それでいいかい?」

恒一「はい、お願いします」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:37:18.05 ID:1raaGn3yo
千曳「君のお母さんと同じ三年三組に、夜見山岬という生徒がいた」

千曳「異常。今思い出してもそうとしか言いようがないほどに、異常に運を持っていた子だった」

千曳「マークシートのテストを受けたことはあるかい? 彼は、あれで問題を読まずに適当にマークして、満点を取ったこともある」

千曳「道端に落ちていた紙袋を拾ったら、中から金塊が出てきた事も有った」

千曳「そんな話が、数える事が出来ないくらいにある生徒なんだ」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:37:43.97 ID:1raaGn3yo
千曳「生徒達……いや、くだらない嘘は止そう。私を含めた三組の生徒達は、少なからず彼に嫉妬した。ただ、運が異常に良かった相手にね」

千曳「だが、その運は突然消え去った」

千曳「彼が海外旅行に行った飛行機が、不時着し、炎上したんだ」

千曳「何分、海外のニュースだったものでね、最初の頃は、奇跡的に生存者多数。としかわからなかった」

千曳「クラスの皆は、間違い無く信じてたよ。あぁ、岬なら生きてる、彼の運なら、死ぬわけが無い。とね」

千曳「だが、実際は違った……」

千曳「その事故で死んだのは、彼だけだった。彼以外の乗員乗客は、老人から子供、全員助かったんだ」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:38:28.79 ID:1raaGn3yo
千曳「これは、生存者の言った事だがね。彼は炎に包まれた客席で、火傷を負うことも無く、意識の朦朧とした人を助け、助けていたんだ」

千曳「だが結局、彼が最後の乗客を運び出そうとした時、飛行機は崩れようとした。彼はその乗客を外へと放り投げ、飛行機の残骸の中へと埋もれた」

千曳「彼は、運を使い切ったのかもしれない。もしかしたら、そういう運命だったからこそ、あんな運を持っていたのかもしれない。……彼は実は、死ぬことを望んでいた。だから『運良く』事故が起きた。なんて考えも、出来なくは無いだろう」

千曳「当時、私は嘆いたものだよ。くだらない嫉妬なんて、感じるべきじゃなかったとね」

千曳「だが、それから三組に異変が起きた」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:38:56.93 ID:1raaGn3yo
千曳「ある日生徒の一人が、札束を拾った。またある日、別の生徒は、古代の石器を見つけた」

千曳「まるで彼の遺した運が、生徒達の中を移動しているようだった」

千曳「その年は、最後まで運の居場所は落ち着かなかったよ」

千曳「だが、次の年からは違った。次の年からは、良い意味でも悪い意味でも、運は一人に集まった。そして、その分他の生徒の運が変わった」

千曳「これは、もはやオカルトと言ってもいい考え方だがね、私は、彼の死が、三年三組の運を不安定にしたんだと考えている。最初の一年は、彼の持ち前の運だったが、それからは、運が上下しようと、その総量は変わらない」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:39:23.43 ID:1raaGn3yo
千曳「水面に物を落とせば、最初はその物が沈んだ分だけ、周りの水が上がる。だが、その物が沈みきってしまえば、後はそこにあった水が上下するだけだ」

千曳「なんとも、非科学的だが、実際に起こっている以上、なんとも言えないよ」

恒一「それから今まで、現象は続いているんですか」

千曳「あぁそうだ。だが、昔よりも運の上下は小さい」

千曳「さっき、水面の波で例えたもう一つの理由だ。波はいずれ消えるように、ゆっくりだが、現象もまた、弱まってきている」

千曳「もっとも、いつ現象が終わるかと聞かれても、わからないがね」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:39:50.82 ID:1raaGn3yo
恒一「今も、クラスの運の総量は変わらないんですよね」

千曳「あぁ、そうだ。それを逆手に取った対策もあったが……それは、三神君に聞いた方が良いだろう」

恒一「れい……三神先生、ですか」

千曳「あぁ、彼女も、十五年前の三年三組だ」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:40:27.83 ID:1raaGn3yo
帰り道

恒一(そういえば、有田さんは運が悪い日はどうしているんだろう?)

恒一(いきなり押し掛けたら邪魔かな)

恒一(でも、なんとなく家に帰りたくないんだよな……)

恒一(千曳先生は怜子さんについては、本人に聞いてくれ、としか言ってくれなかったし……怜子さんは怜子さんで、現象については教えてくれなかったし……)

恒一(ちょっとだけ、有田さんの家に寄っていこう)
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:40:54.84 ID:1raaGn3yo
有田宅前

ピンポーン

有田「はーい」ガチャグシャ

恒一「え?」

有田「あ! ドアノブ取れちゃった……」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:41:30.59 ID:1raaGn3yo
恒一「えっと、なんかゴメン……」

有田「ううん、いいの。運が良い日に修理してもらうから。それよりどうしたの?」

恒一「えっと……どうしたってわけでも無いんだけど……」

恒一「有田さん、どうしてるかなって思って」

有田「あはは、どうもしてないよ。今日は、サイコロが一しか出てないから」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:42:03.06 ID:1raaGn3yo
有田「上がってく? お陰様で、昨日榊原君が運んでくれたから、お茶はあるよ?」

恒一「……じゃあ、ちょっとだけお邪魔しようかな」

有田宅リビング

有田「苦手なお茶とかあったりする?」

恒一「無いよ。それより、任せちゃっていいの?」

有田「うん、これくらいは……きゃあっ!?」パリーン

恒一「有田さんっ!?」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:42:33.92 ID:1raaGn3yo
有田「あはは……コップ割っちゃった……」

恒一「有田さん、離れて。僕が片付けるよ」

有田「ごめんね、せっかく来てくれたのに」

恒一「ううん、でも、一つ教えて」

有田「? うん、いいよ」

恒一「有田さん、運が悪い日は、どうやって料理してるの?」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:43:00.98 ID:1raaGn3yo
有田「……そういう日は、一日一食にして、食べ物には全て熱を通して食べてるかな」

恒一「火を使うのは危なく無いの?」

有田「電子レンジさんは、私の心強い味方だから。それに、壊れても良いように、予備を含めて五台あるの。もう一台壊しちゃったけれどね」

恒一「そんな生活……!」

有田「良いんだよ。だって、外に出たらそれこそ危ないよ。だから、これはしょうがない事なの」

恒一「……違う。しょうがない事じゃない」

有田「え?」

恒一「これは、周りの努力でどうにかなることだよ」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:43:38.75 ID:1raaGn3yo
有田「榊原君? 何が言いたいの?」

恒一「ねぇ、有田さん。一つ質問なんだけどさ」

有田「??? うん、良いけど……」

恒一「有田さんは、僕の事好き?」

有田「えええええっ!!!!!」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:44:12.72 ID:1raaGn3yo
次の日、教室

恒一「ねぇ、皆。話があるんだけど、ちょっと良いかな」

ザワザワ

恒一「僕は、今の現象の状況が気にくわない。例えプラスも大きくても、少なくとも有田さんは、あの生活を嫌がってる」

恒一「だから、皆に協力してほしいんだ」

デモ  ソンナノ
 ムリダヨ  デキルワケナイ

恒一「簡単だよ。皆、このクラスから出て行って欲しいんだ」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:44:53.21 ID:1raaGn3yo
職員室

ガララ

恒一「失礼します。三神先生。ちょっといいですか」

怜子「? えぇ……良いけれど」

恒一「出来れば、あんまり人がいない所がいいんですけど……」

怜子「……わかったわ。こっちへ」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:45:21.07 ID:1raaGn3yo
恒一「三神先生。単刀直入に言います。僕と有田さん以外の三組の生徒を、別のクラスにしてください」

怜子「っ!? 恒一君……」

恒一「運の総量が、クラスの中で等しいなら、クラスが二人なら、片方の運が下がれば、同じだけもう片方が上がります」

恒一「そして、その二人が常に一緒に居れば、運は合計して、普通になるはずです」

恒一「もし、三神先生が現象をどうにかして、有田さんに少しでも普通に生活して欲しいなら、僕と有田さん以外の三組の生徒を別のクラスにしてください」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:46:16.76 ID:1raaGn3yo
怜子「その話、千曳先生に聞いたの?」

恒一「クラスの運の総量については、千曳先生に聞きました」

怜子「違うわ。クラスを二人にするって話よ」

恒一「……もしかして、十五年前に三神先生がした対策って」

怜子「……今晩、家でゆっくり話しましょう。クラスについても、それからだわ」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/06/21(木) 23:46:50.28 ID:1raaGn3yo
恒一宅、夜

怜子「十五年前、私の一番の親友が、いないものになったわ」

怜子「もちろん、そんなのは嫌だったし、どうにかしたかった。だから、現象の事を調べて、恒一君と同じ結論に至った」

怜子「千曳先生の力も借りて、どうにか、二人クラスになったわ。でも、徹底されてなかったの」

怜子「丁度、貴方が生まれて間もない頃だった」

恒一「ねぇ、怜子さん……もしかして」

怜子「……ええ、その通りよ」

怜子「姉さんは、私のせいで亡くなったわ」
44 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/06/21(木) 23:48:07.54 ID:1raaGn3yo
vip分終了
45 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/06/22(金) 00:04:29.91 ID:6b/QTogXo
怜子「その日は、私の運が良い日だった。夜の十時になって、理津子姉さんが、私と「いないもの」の子が住んでいた家に来たの」

怜子「私のお婆ちゃん……恒一君からすれば、曾お婆ちゃんになる人が危篤だから、今すぐ病院に行かなきゃいけないってね」

怜子「いないものの子は、家でじっとしてれば安全だからって、私を送り出したの。だから、姉さんと二人で、車で病院へ行ったわ」

怜子「結果として、私は死ぬ瞬間に間に合って、少しだけ話す事も出来た……そうね、運が良かったのよ」

怜子「でも、そんな事に気づけないくらいショックで、私は何もかも忘れていた」

怜子「帰り道、姉さんが車で送ってくれた時には、ね」

怜子「もう、日付が変わっていたの」
46 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/06/22(金) 00:21:00.95 ID:6b/QTogXo
怜子「サイコロも何もかも忘れて、お通夜がどうこうだとか話していた時に、私達を乗せた車は、居眠り運転のトラックに、はね飛ばされた」

怜子「訳が分からないままに気を失って、気がついたら病院。起きたらすぐに、父さんと母さんに泣かれながら抱きつかれたわ」

怜子「生きてて良かった。怜子だけでも生きてて、本当に良かったって」

怜子「私ね、事故から一週間も昏睡状態だったんだって。だから、姉さんのお葬式も何もかも、全て終わった後だった」

怜子「後悔なんて、しきれないわよ。私が、今恒一君がやろうとしてる対策をしたから、姉さんは事故に巻き込まれた。私が、いないものの子と、少しでも離れたから、姉さんは事故に巻き込まれた。私が、現象を死人が出た事は無いって、甘く見ていたから、姉さんは事故に巻き込まれた」

怜子「だからね、恒一君。私は、貴方にそれをして欲しくない」

怜子「恒一君と有田さんは男女だから、私の時よりももっと問題が起きると思うわ。それでも、貴方は片時も、どんな事があろうと、有田さんと離れる事無くいられる?」
47 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/22(金) 00:23:09.10 ID:6b/QTogXo
とりあえず、ここまでです
せっかくのSS速報なので、ゆっくり更新していこうと思います
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 00:37:25.72 ID:Fsaj4ffDO
乙です
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 11:41:40.94 ID:oQSX32RDO
おちゅ
50 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/06/23(土) 00:06:11.07 ID:F2zutetzo
恒一「僕は……出きる。いや、やらなきゃいられないよ。本来、友達の多い普通の少女が、クラスの中で孤立してしまう状況なんて、僕は嫌だ」

恒一「そこに自分から何も出来ず、ただ見ているだけなんて、もっと嫌だ」

恒一「そして、自分に状況を打破する方法があるのなら、それを実行しない理由なんて、どこにも無いよ」

恒一「怜子さん、たしかに、母さんはそうやって亡くなったかもしれない。でも、それが、今僕を妨げる確かな理由にはならないよ」

恒一「車にはねられそうな子供がいたら、危険だからって見ているわけには行かないよ。少なくとも僕は、その子供を助けようとする」
51 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/23(土) 00:12:01.02 ID:F2zutetzo
怜子「……今度は、恒一君が死んじゃうかもしれないよ?」

恒一「怜子さんが忠告してくれたからには、二の舞にはならないよ。最善の注意も払う」

怜子「有田さんが嫌がったら?」

恒一「昨日、有田さんには聞いて、了解を得たよ。クラスの皆も、別のクラスに移動するくらいなら、賛成してくれるって」

怜子「……そう、なら。もうこれ以上、文句は言わないわ」

怜子「命だってかかっているんだから、やるからには少しのミスもなくやり遂げなさい。どんな問題が起きても、諦める事は許されないわ」

恒一「うん、もちろんだよ」

怜子「……明日、職員会議で提案するから、早くても今週末から、二人だけのクラスよ」

恒一「怜子さん……ありがとう」
52 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/23(土) 00:15:19.25 ID:F2zutetzo
次の日、学校

恒一「あ、有田さん!」

有田「おはよう、榊原君」

恒一「えっと、今日は運が良い日なんだね」

有田「おかげさまで? かな。でも、落ちてたお財布を拾ったから、交番まで届けに行って、むしろ遅刻しそうだったよ」

恒一「あはは、それは有る意味不運かもね」
53 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/23(土) 00:18:39.86 ID:F2zutetzo
恒一「その、この前の話なんだけどさ……」

有田「二人クラスの話?」

恒一「うん、あれ、三神先生から先生達に提案してくれるって」

有田「本当に、良いの? いくら何でも、榊原君に悪いよ」

恒一「そんな事は無いよ。僕はただ、やれる事をやるだけだから」

恒一「それに、運が異常になる事は、見方を変えれば得にもなり得るからね」

有田「榊原君……」
54 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/23(土) 00:27:47.88 ID:F2zutetzo
恒一「それより、有田さんは嫌だったりしない? さすがに、同じクラスの男子と、同じ屋根の下で一年間過ごすのは、嫌だろうから……現象から考えると、同じ部屋に居なきゃいけない事になりそうだし……」

有田「わ、私は大丈夫だよ! そりゃ、そういう生活は不安だけど、今の生活だって十分不安だから……榊原君さえ良ければ、私は……」

恒一「……そっか。それを聞いて安心したよ。ちょっと速いけど、これから宜しくね、有田さん」

有田「うん! 宜しくね、榊原君」

有田「……ねぇ、榊原君。これは提案なんだけどさ」

恒一「うん? どうしたの?」

有田「その、同じ家で過ごすのに、名字にさん君じゃ、なんか堅くない?」

恒一「あー、それは有るかもね」

有田「だから、それを変えようと思うんだけど、どうかな?」

恒一「うん、良いんじゃないかな」
55 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/23(土) 00:30:51.38 ID:F2zutetzo
恒一「でも、となると、有田……名字呼び捨てはおかしいよね。なら、松子……さん?」

有田「私は、わざわざさん付けしなくても良いよ。松子、って呼び捨てで」

恒一「そっか、じゃあ……宜しくね、松子」

有田「うん、宜しくねっ! 恒一君っ!」

恒一「……なんか照れるね」

有田「……だね」
56 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/23(土) 00:31:41.19 ID:F2zutetzo
イチャイチャの準備は整った
とりあえずここまで
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 00:36:49.38 ID:Cyc/akjCo
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 11:44:26.93 ID:Rn/ZrgtDO
乙。
有田さん可愛いよね。

取り敢えず将来の為に2人で株に手出すべきだな。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 17:20:45.02 ID:C503Cf4jo
60 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/06/24(日) 01:00:04.82 ID:UKA8SJz0o
新三年三組

恒一「おはよう、松子」

有田「おはよう、恒一君」

恒一「えっと、今日からお世話になります」

有田「こちらこそ、お世話になります」

恒一「……教室に机が二台しかないのって、落ち着かないというか……何というか……」

有田「あはは、慣れるまでは苦労しそうだね」

恒一「担任は三神先生。授業は一応監督の先生が来るけれど、基本自習……受験の為にも、気を抜かないようにしないとね」

有田「それは、あんまり言って欲しくないなぁ……」

恒一「そうは行かないよ、居候させてもらうんだから、家庭教師くらいはするよ」

有田「う、うーん……恒一君はレベルが高そうで……」

恒一「そんな事言ってると、あっという間に時間は過ぎちゃうよ」

有田「う、うぅ……」
61 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/24(日) 01:04:23.50 ID:UKA8SJz0o
恒一「と、言うわけで、第一回、松子学力テストっ!」

有田「ええっ!? 抜き打ちっ!?」

恒一「ここに、前もって準備してあった、各教科のテストがあります」

有田「いつ用意したのっ!?」

恒一「先生が足りないなどと言い張る学校側のおかげで、時間はあるから、今日一日かけて、これをやろう!」

有田「あはは……」

恒一(僕のせいで、只でさえまともに授業を受けれなかった所を、全て自習にされちゃったんだ……授業の変わりになるくらいには、僕が頑張らないと!)
62 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/24(日) 01:09:32.58 ID:UKA8SJz0o
昼休み

恒一「有田さん、おつかれ様」

有田「うぅ……頭がパンクしそう……」

恒一「残り一教科だから、頑張って」

有田「それが、数学じゃなければなぁ……」

恒一「あはは、大丈夫だよ。午前中を見る限り、悪くは無いから」

有田「それは、良くも無いって言われてる気がするなぁ」

恒一「あはは」

有田「……笑ってごまかされた」
63 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/24(日) 01:16:28.78 ID:UKA8SJz0o
恒一「よし、そこまで!」

有田「……終わったよ。真っ白だよに燃え尽きたよ」

恒一「解答用紙が真っ白じゃなくて、安心したよ」

有田「うぅ……少し馬鹿にされてる気がする……」

恒一「そんな事は無いよ。それに、テストで点が取れない事なら、それを治す方法はいくらでもあるからね」

有田「勉強は、あんまり好きじゃ無いなぁ……」
64 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/24(日) 01:22:49.06 ID:UKA8SJz0o
帰り道

恒一「買い物は良い?」

有田「うん、大分溜め込んでたから、それを消費しないとね」

恒一「そっか、なら今日は寄り道せずに帰ろうか」

有田「うん!」

有田「ねぇ、恒一君」

恒一「うん? どうしたの?」

有田「恒一君は、卒業したら東京に戻っちゃうの?」

恒一「……うん、そのつもりだよ」

有田「……そっか」

恒一「……寂しい?」

有田「今は、少しだけ。でも……)

恒一「でも?」

有田「これから仲良くなったら、もっと寂しくなっちゃうな」

恒一「……それは、僕もそうかな」
65 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/24(日) 01:33:15.05 ID:UKA8SJz0o
有田宅前

有田「荷物はもう届いてるからね」

恒一「うん……」

有田「どうしたの?」

恒一「これからここに住むんだな。って思うと、なんか緊張しちゃって」

有田「あはは、そんな緊張されると、こっちがそれだけの期待に応えられるか不安になっちゃうよ」

有田「昨日の内に掃除もしておいたからね……あ」

恒一「どうしたの?」

有田「いや、今日は私の運が悪い日だよね、一応」

恒一「僕が一緒に居れば、相殺されるから、あんまり関係が無くなるけどね」

有田「でも、何となくドアノブ握るのが怖くて……」

恒一「四月から、十二回壊れたんだっけ……」

有田「うん……」

恒一「じゃあ、家主より先に入るのも変な話だけど、僕が開けようかな」

有田「うん、お願い」

恒一「それじゃあ……失礼します、いや、ただいま、かな」

有田「おかえり、恒一君。ようこそ有田家へ」
66 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/24(日) 01:35:23.74 ID:UKA8SJz0o
ここまで
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/24(日) 13:58:18.67 ID:X73/LwMoo
乙っす
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 10:24:30.85 ID:mVUoVgfDO
ニヤニヤ
69 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/06/25(月) 23:54:18.62 ID:VOnfW3ujo
恒一「最初の問題は……料理だね」

有田「私が作るよ?」

恒一「いや、確かに二人で一緒にいれば、不運は起こりづらいけど、それでもリスクは減らしたいから、運の良い方が作るようにしよう」

有田「それもそうだね。でも、恒一君って料理するの?」

恒一「自慢って程じゃないけど、それなりにはね。さすがに、一人暮らしをしていた松子には勝てないだろうけどね」

有田「私もそんなに凄くないよ。だから、今日は楽しみにしてるね!」

恒一「期待には出来るだけ応えれるように、頑張るよ」
70 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/06/25(月) 23:59:31.07 ID:VOnfW3ujo
有田「うわあ、ちょっと私自信無くしちゃうかも……」

恒一「そ、そこまではさすがに無いよ」

有田「でも、十分に美味しいよ。これなら、この為に毎日不運になって毎日食べたいかも」

恒一「でも、そこまで喜んでくれるなら、僕も光栄かな。ただ、僕にも松子の料理を食べるタイミングは頂戴ね」

有田「う、うぅ……プレッシャーがぁ……」
71 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/06/26(火) 00:05:30.64 ID:rfHVxxRwo
恒一「いっぱい食べたね。松子が予想よりも食べたから、次回からはもう少し多めでも良いかな」

有田「お、美味しい物をいっぱい食べる事はしょうがないんだよ! どうしようもないんだよ!」

恒一「怜子さんも似たような事を言ってたなぁ……」

恒一「そういえば松子、テレビのリモコンってどこにあるの?」

有田「え? あぁ……リモコンは壊れちゃって……本体は触ってないから確認してないけれど、まだ壊れてなかったはずだよ」

恒一「もしかして、運の悪い日はテレビも見れなかったの?」

有田「さすがに、リモコンのボタンを押したら中から煙が出ると、見る気を無くしちゃうからね……本体を壊すとお値段がお値段だし」

恒一(本当に、日常生活もおくれなかったんだな)
72 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/26(火) 00:13:46.86 ID:rfHVxxRwo
恒一「あ、ついたよ。壊れてはいないみたいだね」

有田「良かったぁ。じゃあ、新しいリモコンを買ってこないとね」

恒一「本体の操作は、さすがに面倒だからね」

有田「ありがとうね、恒一君」

恒一「そんな、感謝される事じゃないよ。って、松子。どうしたの?」

有田「……えっとね、その、相談なんだけど」

有田「……トイレに行きたい時って、どうすれば良いのかな」
73 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/26(火) 00:19:26.46 ID:rfHVxxRwo
恒一(怜子さんの話を聞く限りだと、極力近くにいる方が良い訳で。いざ松子に不運が襲った時に幸運な僕が助けれなきゃ行けない)

恒一「つまり、僕が一緒にトイレに入れば良いんだねっ!」

有田「ええええっ!?」

有田「こ、恒一君っ!? 扉の外で待っててくれれば大丈夫だから! そこまで一緒じゃなくて大丈夫だから!」

恒一「でも……いざという時に……」

有田「叫ぶくらいはするよっ! ……か、鍵を閉めなければ、すぐに入れるから、大丈夫!」

恒一「そっか、なら大丈夫だね。行こうか?」

有田「う、うん……お願い」
74 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/26(火) 00:27:05.11 ID:rfHVxxRwo
トイレ前

有田「耳、塞いでてね」

恒一「でも、そしたら何か有ったときに松子の声が聞けないよ」

有田「うぅ、なら扉を叩くから! ちゃんと耳を塞いでてねっ!」パタン

恒一(デリカシーが無くても、命には変えられないからなぁ……。にしても、トイレ前で耳を塞いで立ってる僕って……)

有田「ありがとう、恒一君」パタン

恒一「うわぁっ!?」ゴツーン

有田「こ、恒一君っ!? ……きゃあっ!?」

恒一「いてて……扉で頭を打ってこけて……って、松子。どうして僕の上に倒れ込んでるのさ」

有田「あはは……まさか恒一君が倒れてるとは思わなかったから、つまづいちゃって……」

有田「よいしょっ、と。ごめんね、重かった?」

恒一「いや、全然重くなかったよ。むしろ、軽いくらいじゃないかな」

有田「そうかなぁ、でも、そうだと良いなっ!」
75 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/26(火) 00:27:49.01 ID:rfHVxxRwo
ここまで
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/06/26(火) 14:44:17.52 ID:zgt686ZAO
おつ
有田さんはかわいいなあ
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/26(火) 23:32:47.22 ID:rDjMtLSIo
おつ 続く待ってる
78 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/06/28(木) 00:10:38.45 ID:LHIteV8Oo
恒一「ついに、この時が来たね……」

有田「う、うん……」

恒一「どうすれば良いと思う?」

有田「と、扉越しに一緒に居れば良いんじゃないかな……?」

恒一「それはそうだけど、その、それって……」

有田「恒一君につき合わせちゃって本当に申し訳ないけれど、でも、これからの事を考えると……早めに決めた方が良いだろうから」

恒一「わかった……じゃあ、松子先に入ってくれる?」

有田「うん……」
79 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/28(木) 00:18:23.33 ID:LHIteV8Oo
廊下

有田『も、もう脱衣所まで入っていいよー!』

恒一「う、うん」

恒一(ついさっきまで、此処で松子が脱いでたんだよな……っ!? いかんいかん、決して洗濯籠を覗くなんて事は天地天命にかけてそんなの絶対おかしいよっ!)

恒一(神様仏様ラーオーディンゼウスアリタサンキリストなんでも良いから僕の煩悩を抑えてええええええ!!!)

恒一(体が! 体が勝手に動こうとするんだっ!)

有田『こ、恒一君、いる?』

恒一(はっ!? 僕は何を……)

恒一「うん、ここにいるよ、松子」

有田『良かったぁ、やっぱり不安になっちゃって……子供みたいだね、私』

恒一「仕方ないよ。状況が状況だし、それに、僕達はまだ中学生だよ? 子供だって良いじゃないか」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/28(木) 00:19:36.43 ID:Cf4piyV1o
きたああ 
81 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/28(木) 00:26:43.08 ID:LHIteV8Oo
恒一「子供だから、怯える。子供だから、迫害する。子供だから、煩悩に負ける。どれも、仕方のない事なんだよ……」

有田『恒一君?』

恒一「むしろ、松子は凄いよ。僕だったら、クラスの皆の事を恨んでたかもれない」

有田『そんな事……』

恒一「クラスの中でどうしようも無く浮いた状態にされて、一人ぼっちで家に居ざるをえない状態にされて、本来ただの他人である人達にすら警戒されてくじの当たりを減らされて、寂しくない訳がない。恨まない訳がない」

恒一「でも、松子はそれに耐えていた。寂しさを押し殺して、恨みを噛み潰して、一年間耐えようと思っていた」

恒一「だから、僕は松子の助けに成りたかったんだよ」

有田『恒一君……』
82 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/28(木) 00:33:47.71 ID:LHIteV8Oo
恒一「だから、さ。もっと僕を頼ってくれて、良いからね。でないと、何のために来たのかわからなくなっちゃうよ」

有田『……恒一君は、優しいね』

恒一「そんな事はないよ。僕は、僕が思った通りにしか動けないし、何も出来ない」

有田『ふふ、じゃあ、私からも一つ、お知らせが……』

恒一「?」

有田『嫌いな人や普通の人と一緒生活しようとする程、私は世間知らずじゃないよ。だから、私は、こうして恒一君と一緒にいられるだけで、十二分に支えて貰ってるんだよ』

恒一「松子? それってどういう……」

ジャー

恒一(シャワーの音で、何も聞こえないや……)
83 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/28(木) 00:38:39.49 ID:LHIteV8Oo
有田『恒一君、そろそろ出るから、廊下まで出てもらっても良い?』

恒一「うん、わかったよ」

恒一(布が床に落ちたり、何かと擦れる音が聞こえる……)ゴクリ

恒一(……一年後には、悟りでも開けそうだよ)

有田「ありがとう、じゃあ交代だね!」

恒一「うん、暇だろうけど、待っててね」

恒一「あ、そうだ、一つ良い?」

有田「何?」

恒一「脱いだ服ってどうすればいいかな?」

有田「あぁ、洗濯機に入れちゃって良いよ」

恒一「……うん、わかったよ」

恒一(道理で、洗濯籠が空なんだ……)
84 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/28(木) 00:44:39.78 ID:LHIteV8Oo
恒一(動物的に考えて、匂いは個人を見分ける……いや、嗅ぎ分ける重要な物のはずだ)

恒一(つまり、松子と同じジャンプーを使うって事は、動物的にどうなんだ?)

恒一「うーん……」

有田『どうしての? 唸ったりなんかして』

恒一「あ、いや、ジャンプーってどれを使えば良いのかなって」

有田『あぁ、青色のがジャンプーで、緑色のがリンス、黄色が身体用だよ。ごめんね、説明不足で』

恒一「なるほど……」

恒一(こう、なんというか、自分が裸で、扉一枚向こうには女の子が居て、会話をしてるって状況が、いろいろな僕の感情を高めてる気がするんだ)

恒一(一々ドキドキしてたら、これから困りそうだなぁ……)

恒一(でも、一々ドキドキしなくなったら、いろいろダメな気もするよ)
85 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/28(木) 00:56:18.94 ID:LHIteV8Oo
有田『ねぇ、恒一君』

恒一「な、何?」

有田『恒一君はさ、私の事、どう思ってるの?』

恒一「ど、どうって……」

有田『さっき恒一君はさ、私が耐えてたから、私を助けようとしてくれたんだよね』

恒一「……うん、そうだよ」

有田『ならさ、それは、私の事が嫌いでも、そうしたかもしれない。でも、もしそうなら、私は恒一君にとっても嫌な思いをさせてる事になっちゃうの』

有田『だから、教えて欲しいんだ。恒一君が、私の事、どう思ってるか』

恒一「……嫌いだったら、こうして一緒にいるわけ無いよ」ゼンラ

恒一「僕はそんな、出来た人間じゃない。だから、松子が言うような事なんて無いよ」フリチン

恒一「僕は、松子と一緒に居たいから来てるんだ」スッポンポン




有田『……ねえ、恒一君』

恒一「……はい」

有田『……さっき、私がどういう気持ちだったか、わかった?』

恒一「……はい」

有田『……すっごく無防備な状態で真面目な話をするとね、恥ずかしくなるんだよ』

恒一「……はい」

有田『今回の話の内容はともかくとして、その、次からはもう少し恥ずかしくならない会話が良いな』

恒一「……はい」
86 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/06/28(木) 00:59:39.09 ID:LHIteV8Oo
ここまで
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/28(木) 01:00:12.34 ID:xW95Q2dMo
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/01(日) 13:43:13.62 ID:N9NKGr6lo
続きはまだですか
89 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/07/02(月) 00:31:17.52 ID:ItZHo37Lo
有田「えっとね、その、ね……恒一君に謝らないと行けない事が有るんだ」

恒一「いきなりどうしたのさ」

有田「その、現象の特性上、寝るときは同じ部屋だよね?」

恒一「うん、そうじゃないと、夜中に何か有ったときに対応出来ないからね」

有田「私の家はさ、元々は私の両親と私の三人家族なんだけど、両親が家に居たときは、クイーンサイズ……ベットを二つ合わせたサイズより少し小さいくらいのベットで寝てるの」

恒一「まさか……」

有田「……もちろん、そんなサイズのベットの有る部屋に、もう一個、普段私が使ってるベットは、狭くて置けないの」

有田「恒一君が家に住むって決まってから、大急ぎで手に入れようとしたんだけど……そのころって、ことごとく私が不幸だったから、さ」

有田「手に、入らなかったんだ」テヘペロ

恒一「oh……」
90 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/07/02(月) 00:37:21.63 ID:ItZHo37Lo
恒一「わお……」

有田「その、やっぱり嫌、だよね……。いっそ私床で寝るから、恒一君、これ使って欲しいな」

恒一「それこそダメだよ! 床でなんてもってのほかだよ!」

有田「で、でも……」

恒一「やるなら、逆か、それとも……二人でここに寝るかだ」

恒一「松子、僕を信用して欲しいなんて、言えないけれど、それでも僕は誓うよ。絶対にやましい気持ちなんて起こさないし、松子に手を出したりしない。いや、むしろ僕の両手両足を縛っておいて欲しい」
91 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/07/02(月) 00:51:13.88 ID:ItZHo37Lo
有田「し、縛るまでしなくても良いよ。私は……恒一君を信じるから」

恒一(負けるな負けるな負けるな負けるな負けるな負けるな……理性のナイフを研ぎ澄ませ、欲望を常に切り刻み続けろ。松子のパジャマがキャミソールでちょっと屈んだ表紙に見えそうでむっちゃドキドキするとかシャンプーの香りでうわああ……ふぅ……はぁ……負けちゃいけないんだ。今日は最初の夜だぞ? 言い方を変えれば初夜なんだ! この夜で全てが決まるんだ! 覚悟を決めろ! 僕ッ! ……いや、決めんなっ! 決めたら負けだ! 覚悟の欠片も残さず消し去れっ! 大丈夫、僕の理性はそんなやわじゃない。女っ気の無い学校で養われた僕の理性は、たぶんきっとおそらくらやわじゃないはずなんだ! いや、待てよ? 僕、家族以外の女性とこんなに近くにいるって初めてだよな? ……落ち着け、落ち着くんだ。こんなところで終わる僕じゃないはずだ。松子に手を出してりしてみろ、僕はこれからの一生を、「そういうもの」として扱われるんだぞ。いないものが一生続くんだぞ、っていうか、松子に申し訳なくては僕自身が耐えられないぞ、見ろ、この松子の不安そうな瞳を、小動物のように僕を見つめる濡れた瞳を。こんな汚れなき少女を、僕が汚して良い筈がないんだ! 理性のナイフを欲望に突き立てろ!)
※読まなくても良いです

有田「こ、恒一君……? 凄い顔してるけど、大丈夫? 具合悪いの?」

有田「……信じるから、ね?」

恒一(はっ!? ……僕は何を。僕を信じる松子を、裏切れるわけなんて無いじゃないか)

恒一「……うん、大丈夫。なら、さっさと寝ちゃおう。深い眠りについてしまおう」
92 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/07/02(月) 01:04:51.56 ID:ItZHo37Lo
カチリ

恒一(なんで! どうして! 掛け布団がベット全体にかかる大きなタイプなんだ! せめて、一人一人にかけるタイプだったら良かったのにっ!)モゾモゾ

恒一(だめだ、だからこそ、モゾモゾ動くと松子に伝わっちゃう。身動きするな、僕は寝たんだ! もう寝たんだ!)

有田「恒一、君……もう寝ちゃった?」

恒一「……起きてるよ、どうしたの?」

有田「私、恒一君にいろんな事をしてもらっちゃって、その上に迷惑かけちゃって……どれだけ感謝しても足りないよ」

恒一「それは違うよ。この現象は、あくまでも結果的にはプラスマイナスゼロだから、松子が僕に感謝する必要は無いよ」

有田「でも、それでも、私は感謝したいの。ありがとう、って思ったら、言いたいから」

有田「今日一日、楽しかった。これから毎日がこんな風に続くなら……不謹慎だけど、私は現象に選ばれて、良かった。でも、今こうして、私が誰かと一緒にいられるのは、その誰か……恒一君のおかげだよ。だから、ありがとう」

恒一「……どういたしまして」

有田「……何度も言うと、くどい?」

恒一「言われて嫌になるわけも無いよ。でも、一緒に暮らす以上、家族みたいなもんなんだから、そう繰り返し感謝する必要も無いかな」

恒一「感謝は、お互いの心の中で良いと、僕は思う。それは、自然と相手にも伝わるなら」
93 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/07/02(月) 01:09:03.91 ID:ItZHo37Lo
有田「うん、わかったよ。……今、私がどう思ったかわかる?」

恒一「ありがとう、でしょ?」

有田「当たり。……じゃあ、寝よっか。明日、遅刻してもダメだからね」

恒一「うん、おやすみ松子」

有田「おやすみ、恒一君」
94 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/07/02(月) 01:09:47.11 ID:ItZHo37Lo
ここまで
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 01:11:50.12 ID:6DFoMBnho
乙です
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/02(月) 01:12:03.29 ID:59zYjeGLo
待ってた
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 02:01:42.77 ID:4bgWRcoDO
イイネ
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/02(月) 12:24:47.12 ID:3eLPMICAO

恒一の理性がすごい

俺は保たない
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/04(水) 01:10:14.98 ID:INWt0zbko
たまらんですわ
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 06:36:09.62 ID:ohuRVMUoo
素晴らしいぃ
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/07/04(水) 10:46:25.61 ID:nYyIRMCAO
すばらです
102 : ◆ZLUGH5bpAU7a [sage]:2012/07/06(金) 00:02:55.80 ID:9jAO5m2uo
チュンチュン

恒一(はっ!? 朝っ!? まったく……ぐっすりだったよ。……あれ?)

有田「……うん…………ごはん……おいひぃ……」ムニャムニャ

恒一「なん……だと……」

恒一(おきまりというかなんと言うか、抱きつかれていた……)

恒一(それも、完全に向かい合う形で……)

恒一(うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!)

恒一(よし、落ち着いた! 現状を確認しよう!)

恒一(僕は完全に覚醒した。いらない所も起床している。腰を引いて対応する)

恒一(松子は思いっきり僕に抱きついている。色々感じ、色々思うが、松子の発育が緩やかなのは分かっていた事だから、控えめなアピールにひとまず満足。というか感動)

恒一(まったく……無防備というか、むしろ僕が襲われているじゃないか!)
103 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 00:07:14.65 ID:9jAO5m2uo
有田「えへへぇ……」

恒一(あ、涎垂れてる……」

恒一(抱きついていた云々はともかくとしても、異性に涎を垂らした姿を見られるのは嫌だよね)

恒一(抱きつかれてるのは、ガッチリと抱えられているからどうしようもない。でも、涎は拭ってあげる事は出きる)

恒一(そっと……そっとやれば起きるはずが無いんだ)スッ

有田「んん……? んんっ!? こここ、恒一君っ!?」

恒一「起きたァッ!?」
104 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 00:09:35.51 ID:9jAO5m2uo
恒一(落ち着け、落ち着くんだ、榊原恒一。お前はこんな所で取り乱す男じゃないはずだ)

恒一(松子は僕に抱きついている。これはどうしようもない)

恒一(そして、明らかに松子がこちらによってきた位置だから、僕に悪い所は無い。でも……)

恒一(この、唇に触れた手は、どうすれば良いんだろう?)
105 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 00:13:20.60 ID:9jAO5m2uo
有田「……ふぁあ、んー……はむ」

恒一(指をくわえられた……だと……)

恒一(この松子、未だ寝ぼけている?)

有田「んー……ん、む……」スヤスヤ

恒一(しかも、人の指をくわえたまま寝ちゃった……)

恒一(……どうしよう)
106 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 00:18:09.57 ID:9jAO5m2uo
恒一(時計は……あぁ、まだ時間有るなぁ……)

恒一(いや、寝れないだろ、これ。指をくわえられてるんだよ? 寝てるんだよ? どう足掻いても寝れないだろ?)

恒一(……まぁ、松子を眺めてればいっか)

恒一(退屈はしないしね)
107 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 00:28:01.49 ID:9jAO5m2uo
ジリリリリリリリン

恒一「松子、目覚ましなってるよ、起きて」ユサユサ

有田「んー……らに? ふぇ? な゛っ!?」ガブッ

恒一「ぐおおおおお!!!」

有田「ご、ごめん! 恒一君! まさか口の中に指が有るだなんて……って、何で有ったの!?」

恒一「その説明をする為には、取りあえず僕を離して、目覚ましを止める事が大事だと思うよ」

有田「え? ってあれ!? ご、ごめん……まさか抱きついてるなんて……」
108 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 00:29:10.64 ID:9jAO5m2uo
ここまで
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 00:29:57.50 ID:d1eLt80vo
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 03:21:19.32 ID:itTAvVpDO
むむ
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/09(月) 12:53:04.15 ID:0Yyl9+Soo
まだー
112 : ◆ZLUGH5bpAU7a [sage]:2012/07/10(火) 23:35:40.48 ID:N0ZFzE1to
リビング

有田「ご、ごめんなさい……」

恒一「謝る必要なんて無いよ。それより、今日のサイコロは僕が一だったから、僕が不幸の日だね」

有田「私が頑張らないとね!」

恒一「適当にご飯を食べて、学校に行こうか」

有田「うん!」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/10(火) 23:41:26.57 ID:N0ZFzE1to
クラス

有田「今日は何するの?」

恒一「うーん……少し悩んでるかな。このまま僕が授業っぽい事するよりは、何かしらの問題集を使って、分からないところを僕が補う方が良い気がするんだ」

有田「たしかに、恒一君に頼りっぱなしじゃダメだよね」

恒一「そういうわけでも無いけれど、そのためには、早い内に買いに行かないと。とりあえず今日は、教科書を使ってやろうか」

有田「よ、よろしくお願いします……」
114 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/07/10(火) 23:49:25.30 ID:N0ZFzE1to
恒一「仮にも監督の先生なら、せめてこっちに興味を持ってて欲しいんですけどねぇ!」

怜子「あら、ちゃんと見てるわよ?」カキカキ

恒一「見てるは見てるでも、それは僕達じゃなくて、教室の風景じゃないですか?」

怜子「だって、なかなか無い題材じゃない? 二人っきりの授業なんて」

恒一「それはそうですけど……怜子さん」

怜子「三神先生」

恒一「三神先生は、手伝ってくれないんですか?」

怜子「美術の先生に、数学の内容を聞かれても困るわよ。それに、私より恒一君の方ができるでしょう?」

恒一「……この学校、こんな人ばっかりか」

怜子「あら? 他に誰が?」

千曳『はっはっは、この小説は尋常じゃないね』

恒一「千曳先生は本を読んでました」

怜子「あぁ、なるほど」
115 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/07/10(火) 23:55:18.70 ID:N0ZFzE1to
放課後

有田「う〜んっ!」ノビー

恒一「疲れた?」

有田「そりゃあ、勿論だよ。こんなに勉強したのは、いつ以来かってくらいだもん」

恒一「じゃあ、これからはそれを当然にしていこうか」

有田「う、うぅ……頑張ります」

恒一「それじゃあ、本屋さんに行こうか。この辺で一番大きな所って、歩いて行ける?」

有田「うん、そんな遠くは無いよ」
116 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/07/11(水) 00:04:37.12 ID:apQMM7P9o
本屋(大)

恒一「たしかに、こんな場所でやっていけるのか不安なくらい、大きいね」

有田「なんだかんだでずっとあるから、きっと儲かってるんだと思うよ?」

恒一「参考書参考書……この辺りかな」

有田「うわぁ……クラクラしそう」

恒一「予算は、松子がこのお店に入った時に、来店なんたら人記念のカードで、いくらでも買えるね」

有田「だからって、そういうのを狙って別々に入ろうとするのは、危ないから、もうダメだよ?」

恒一「わかってるよ。車にはねられるのは、さすがに嫌だからね」

有田「もう。本当にダメだよ?」
117 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/07/11(水) 00:11:15.01 ID:apQMM7P9o
恒一「さて、こんなもんかな……」

有田「……本当に、これだけ、買うの?」

恒一「うん、まぁ、夏休みの終わりには、全部終わってると思うよ」

有田「……ファイナルアンサー?」

恒一「ファイナルアンサー」

有田「…………」

恒一「…………」

有田「…………残念! だったら、良かったのに」

恒一「松子には残念だったね」

有田「うぅ……」
118 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/07/11(水) 00:13:16.62 ID:apQMM7P9o
今日はここまで
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 00:14:17.49 ID:hq3jXeDHo
乙です
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 16:28:37.55 ID:lf9ZvsYIO
otu
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 14:41:57.21 ID:sr+ztESco
まだかな
122 : ◆ZLUGH5bpAU7a [sage]:2012/07/19(木) 17:27:43.83 ID:54qWwVdRo
今週入ってから忙しすぎて笑えない……
ちょっと間空きます
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 17:29:29.46 ID:RGL6bZCbo
おう、頑張れよ
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/19(木) 21:24:30.47 ID:ugyYX70po
マジで待ってますよー
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 23:18:25.56 ID:TVGOhFAIO
はい
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/20(金) 00:21:01.16 ID:1fAvDYkqo
おう
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/07/24(火) 09:35:30.74 ID:kgweeHTAO
期待
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 22:14:43.52 ID:uPfRPyaDO
マダー
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/08/01(水) 11:34:38.88 ID:EitsfujAO
有田さんは天使
130 : ◆ZLUGH5bpAU7a :2012/08/13(月) 01:16:59.84 ID:ycCuQzhRo
トリップ不安なので一度実験
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/13(月) 01:21:34.94 ID:ycCuQzhRo
有田宅

有田「料理……料理、よし! いけるっ!」

恒一「そんなに身構えなくても良いんじゃないかな」ペラペラ

有田「だ、ダメだよ。普段から料理をしている人として、男子に料理で対抗する女子として、負けられない戦いが、ここにあるから」

恒一「そういうものなのかな?」ペラペラ

有田「そうだよ! ……それに」

恒一「それに?」ペラペラ

有田「そこで目を通されてる参考書の山がこの後に控えていると思うと、今の内からアクセルを踏まないと……」

恒一「なるほど」ペラペラ
132 :VIPにかわりましてAritarがお送りします :2012/08/13(月) 01:30:16.16 ID:ycCuQzhRo
有田「…………」ゴクリ

恒一「…………」モグモグ

有田「…………」ドキドキ

恒一「…………うん」

有田「っ!?」

恒一「おいしいよ。何というか、家庭の味だね」

有田「良かったぁ……」ダツリョク

恒一「そんなに緊張してたの?」

有田「当然だよ! 普段、人に食べてもらった事が無かったから、余計にね」

恒一「あぁ、そうか。……でも、ちょっと羨ましいかな」

有田「どうして?」

恒一「僕の料理ってさ、元が料理クラブなだけあってさ、充分な材料と機材を前提にした料理なんだ」

恒一「昨日みたいに、いろんな食材が揃ってるか、それ用に買い出しに行かないと、料理が出来ないんだ」

恒一「でも、松子のは違う。冷蔵庫に残ってる食材から何を作るか考えて、足りなくても代用や応用を効かせて、レベルの高い物を作る。経験値の違いが、僕との大きな違いだよ」
133 :VIPにかわりましてAritarがお送りします :2012/08/13(月) 01:32:02.50 ID:ycCuQzhRo
有田「ほ、誉めても何も出ないよ?」

恒一「おいしい料理はこうして出てるじゃないか」

有田「もう……」

恒一「ほら、松子も食べないと。せっかく美味しいのに冷めちゃうよ」

有田「うん、じゃあ、頂きます」
134 :VIPにかわりましてAritarがお送りします :2012/08/13(月) 01:32:50.11 ID:ycCuQzhRo
すまぬ、ここまでだ
更新頻度はこれからは戻るはず
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 02:03:06.16 ID:Vsw8R9/IO
おつ
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/13(月) 15:36:06.26 ID:CllWgtqyo
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
137 : ◆ZLUGH5bpAU7a [sage]:2012/08/16(木) 01:48:37.15 ID:JS3gLLqoo
脱衣場

有田『恒一君、そこにいる?』

恒一「いるよ? どうしたの?」

有田『いやぁ、今日は静かだなぁって』

恒一「あはは、たしかに今日は、本を読んでるからね」

恒一「それに昨日、真面目な話に釘を刺されちゃったし」

有田『そういうつもりじゃなかったんだけどなぁ……』

恒一「わかってるよ。でも、その、こうして扉を境にしてるとさ、妙に緊張しちゃって……」

有田『き、緊張は私の方がしてるよ!』

恒一「そりゃそうだろうけど……そりゃ、僕だって緊張するよ」

有田『うぅ……でもさ、会話が無いのも寂しいよ?』
138 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/08/16(木) 01:52:53.22 ID:JS3gLLqoo
恒一「じゃあ、そうだ。勉強の話でも……」

有田『ストップ! ストップ!!
その話はダメっ! もう散々学校で聞いたから!!』

恒一(……学校でもずっと一緒に居るから、話題に困るぞ)

恒一「そうだなぁ……じゃあ、少しジャンルを変えて、進路とか?」

有田『恒一君は芸術系だっけ?』

恒一「まぁ、うん、一応。松子は?」

有田『うーん……正直な所、わからないかな』
139 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/08/16(木) 02:04:00.24 ID:JS3gLLqoo
有田『将来成りたい職業って聞かれて、ケーキ屋さんとか花屋さんとか、そりゃ私だって、小学生の頃には言ってたよ?』

有田『でも、さ。それは結局、イメージだけの話だからさ、実際に自分がそうなってる姿って思い浮かばないんだよね』

恒一(似合いそうだけどなぁ)

有田『結局、その辺の会社に就職して、結婚して、幸せに生きれれば良いなぁ、ってなっちゃうんだ』

有田『だから、方向性の決まってる恒一君が羨ましいの』

恒一「僕だって、そんな良いものじゃないよ」

恒一「でもさ、それで良いとも思うよ」

有田『……どういう事?』

恒一「僕達まだ中学生だよ? 大学まで含めれば、就職までずっとある。だから、それまで悩んで、結論を出しても良いんじゃないかって思うんだ」

有田『それは悩みすぎじゃないかなぁ』

恒一「それでも、あと一年半はあるよ。高校で文理選択するまであと一年半。その間は、いくら悩んだって、良いと思う」

有田『それは、そうだね』

恒一「わからないって結論を出しちゃダメだけど、まだわからないなら、それで良いよ」

有田『……うん、そうだね。なんか元気出ちゃったかな』

恒一「なら、バリバリ勉強出来るね」

有田『……うん、なんか元気無くなっちゃったかな』
140 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/08/16(木) 02:08:46.27 ID:JS3gLLqoo
あかん、頭いたい、ここまで
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 06:19:03.49 ID:bD74RXoIO
おつ
142 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/08/27(月) 02:57:37.60 ID:1n4Y7WP4o
生きてます、書きます
143 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/08/27(月) 03:03:27.72 ID:1n4Y7WP4o
恒一「受験生にとって、勉学とは逃れられない宿命である」

有田「誰かの名言?」

恒一「すごく適当に言ったけど、よく塾とかで似たような事は言ってるらしいよ」

有田「合格とかって書いてある鉢巻をつけて、必死に勉強してる人達って、尊敬しちゃうなぁ」

恒一「鉢巻つける?」

有田「……いらない」
144 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/08/27(月) 03:10:35.07 ID:1n4Y7WP4o
有田「恒一君に問題です」

恒一「どうしたの?」

有田「ある工場は、そこにある機材、材料、人員の全てが申し分ない質でした」

有田「ですが、その工場で作られる物が、ある日を境にがた落ちしました。なぜでしょう? 機材、材料、人員は変わっていません」

恒一「そうだなぁ……環境が変わったとか?」

有田「そう、正解だよ」

有田「経営者が代わって、働いてる人を馬車馬のようにこき使ったり、気温が40度近くになったり」

有田「ある日突然変化があると、日々のサイクルが機能しなくなっちゃうわけだ」
145 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/08/27(月) 03:14:27.48 ID:1n4Y7WP4o
有田「つまり、恒一君。私が言いたいのはね」

有田「今まで勉強を熱心にはして来なかった私としては、息抜きをしたいと思うの」

有田「勉強を教えてくれる恒一君には感謝してるし、そこについて行けるように頑張る気持ちも、もちろんあるよ」 

有田「でもね、その、これから長く生活する上ではね、ガス抜きの機会があって欲しいと思うんだ」

有田「それでね……ここに、こんな物があります」

恒一「遊園地の、チケット?」
146 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/08/27(月) 03:28:21.25 ID:1n4Y7WP4o
休日

恒一「僕一応、肺に爆弾抱えてるはずなんだけどなぁ」キコキコ

有田「私が漕ぐって言ったのに、恒一君がダメって言ったから、こうなったんだよ?」

恒一「だって、今日は僕の運が良い日じゃないか。僕が疑問に思ったのはそっちじゃなくて、気がついたら爆弾の話とか、どっか行ってたなって」キコキコ

有田「うーん……例えば恒一君のそれが、人より不運な面だとしたらどうかな?」

恒一「どういう事?」キコキコ

有田「私も言っててよくわからないけど。もともと、恒一君自体が人より不運なのか、それとも他に幸運な面があって、恒一君自体は普通が幸運だったとしてね」

有田「三年三組の云々で、恒一君の運が大きく変動したせいで、その辺りがこう、均されたんじゃないかな」

恒一「たしかに良くわからないね」キコキコ

有田「あはは、でも現象ってそんな物なんじゃないかな。良くわからない、だから私達は結果を分析して、勝手に解釈してるんだよ」

恒一「まあ、それもそうだね。でもね、有田さん」

有田「うん? 何?」

恒一「僕は元々、幸運な部類に入るんじゃないかな」
147 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/08/27(月) 03:31:34.18 ID:1n4Y7WP4o
有田「それは、ワタシに会えた自分を幸運だと言いたいんだね。はっはっは、言わなくてもわかっているから、構わんよキミ」

恒一「…………」キコキコ

有田「…………」

恒一「…………」キコキコ

有田「……笑う所だよ?」
148 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/08/27(月) 03:40:33.48 ID:1n4Y7WP4o
恒一「いやぁ、正しいから笑うに笑えなくって」キコキコ

有田「……?」

恒一「背後から首を傾げている気配がするんだけどさ、うん、ごめん、我ながら恥ずかしい気がしてきたから、止めにしない? この話」

有田「続けて」

恒一「いや……アリタサン?」

有田「恒一君は状況をわかっていないね。私が如何に自由か。恒一君が如何に無防備か。それをちょっと知ってみる必要があるよね」

恒一「え? ……ッ!? あはははっ!! やめ! ひっ、あははは!!」

有田「続けて、恒一君。さもないと私、この無防備な脇腹を、ずっとコチョコチョしなきゃいけなくなっちゃう」
149 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/08/27(月) 03:53:37.23 ID:1n4Y7WP4o
恒一「その、さ。松子と会わなかったら、こうして自転車二人乗りする事も無かったし、料理をお互いにする事も無かったし、勉強の面倒を見る事も無かったし、中三にもなって遊園地に行く事も無かったし、それに、自分の母親死んだ理由もわからないままだっただろうから」キコキコ

有田「……でも、それが全部良い事だなんて」

恒一「ダメだよ、松子。それは松子が決める事でも、客観的に見れる誰かが決める事でも無くて、僕の価値観で決める事だから」キコキコ

恒一「僕は、松子と会えて良かったって思ってるし、その……」シンゴウマチ

有田「その?」

恒一「今もこうして一緒に居られて、嬉しいよ」

有田「お、おう? うん、その、えっと……ありがとう?」

恒一「お、お礼を言われても……」

有田「う、うん……」

恒一「…………」キコキコ

有田「…………」

恒一「……だから言ったじゃないか、恥ずかしい話だって」キコキコ

有田「……う、うん」
150 :VIPにかわりましてAritarがお送りします [saga]:2012/08/27(月) 03:54:13.02 ID:1n4Y7WP4o
ここまで
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:37:42.33 ID:GXo/4dsIO
おつ
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/28(火) 02:11:13.05 ID:QcarbwgDo
良い
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/27(木) 20:21:17.21 ID:ZLDIsb0io
待ってる
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/10/09(火) 17:03:07.59 ID:l8EJaQado
つづきまだ?
155 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/10/18(木) 22:51:24.45 ID:QCk3o60co
遊園地

有田「わーお」

恒一「わーお」

有田「ど、どこ行く? ジェットコースター?」

恒一「僕達的にはジェットコースターはまずいかなぁ、まずは……目の前にあるあれ?」

有田「コーヒーカップかぁー、良いよ行こう!」
156 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/10/18(木) 22:54:10.24 ID:QCk3o60co





コーヒーカップ

恒一「えっと、これを回せば良いの?」

有田「え? 乗ったこと無いの?」

恒一「うん? 全力で回せば良いんだよね?」

有田「ええ? うん? 全力ってのはおかし……きゃぁっ!?」

恒一「うおりゃぁー……ってこんなにまわっわぁあぁあああああ!?」

有田「これ壊れてるよね? こんなに回るはずないよねっ!?」グルングルン

恒一「たぶ、ん……めがまわ……」グルングルン

恒一(目が回ってその上に遠心力で吹っ飛びそうで、何が何だか……)

シュウウウウウウウウ(コーヒーカップが止まる音)

恒一「うぅ……何とか止まった……?」

有田「う、うん……うん?」
157 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/10/18(木) 22:59:50.49 ID:QCk3o60co
有田「コウイチクン? 私が言う前に退いてくれるかな?」ニッコリ

恒一「松子? 一体どうし……あぁ! ごめん、思いっきり乗っかっちゃってたね。今立つよ……ってうわぁっ!?」

有田「ここ、恒一君!?」

恒一「いてて……ごめん、目が回って上手くたてな……ごめん!! 本当にごめんっ!!」

恒一(思いっきり松子の胸を触ってしまった……えっと、ラッキースケベって言うんだっけ?)

有田「…………」カオマッカ

係員「すみませーん、大丈夫でしたかー? ……って、どうしました?」
158 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/10/18(木) 23:04:08.82 ID:QCk3o60co
有田「…………」ツーン

恒一「ごめん、松子。本当にごめん、お願いだから、何でもするから機嫌を直してくれない?」

有田「……恒一君はまず、女心を知るべきだと思うよ」

恒一「女心?」

有田「ごめんね、触った瞬間謝りたくなるような貧相な物で」ツーン

恒一「そ、そんな事無いよ!」

有田「…………」ツーン

恒一(あちゃぁ……)
159 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/10/18(木) 23:11:12.46 ID:QCk3o60co
恒一「ほ、ほら! 売店があるよ、そろそろお昼時だし、何か食べない? 僕買ってくるからさ!!」

有田「……ミニハンバーグセット」

恒一「うん、わかったよ! すぐに買ってくるからこの席に座っていてねっ!」タタタタ





恒一「買ってきたよ。僕も同じ物にしちゃった。はい、どうぞ」

有田「…………」ツーン

恒一「松子?」

有田「……さっき、何でもするって言ったよね?」

恒一「うん、松子が機嫌を直してくれるなら、何だってするよ」

有田「あーんで食べさせて」

恒一「……え?」

有田「私のミニハンバーグセット、全部恒一君が私にあーんってして食べさせて」

恒一「……わーお」
160 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/10/18(木) 23:16:33.65 ID:QCk3o60co
恒一「あーん」

有田「あーん。次はごはんね」

恒一「うん、わかったよ、あーん」

有田「あーん」

恒一「次はハンバーグ? ごはん?」

有田「じゃがいも、切って」

恒一「わかったよ、はい。あーん」

有田「あーん」

ザワザワ  ナニアレ
  バカップル?  シカナイデショ
ジ、ジンジョウジャナサスギルネ  ウワァ

恒一「あーん」

有田「……あーん」

恒一(心なしか、松子が恥ずかしがり出してる気がするぞ? ……僕だって恥ずかしいけど、でも、これで松子の機嫌が直るなら、頑張らなきゃ! 少し楽しくなってきたのも確かだけど)
161 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/10/18(木) 23:24:56.25 ID:QCk3o60co
食後

有田「……恒一君、二つ聞きたいんだけど良いかな?」

恒一「うん、良いよ」

有田「……あーんって恥ずかしくなかった?」

恒一「あはは、そりゃ恥ずかしかったけど、でも松子の機嫌の方がずっと大事だからね」

有田「私としては、恒一君を恥ずかしがらせる予定だったのに……」

恒一「むしろ松子の方が恥ずかしそうだったね」

有田「気づいてたのっ!?」

恒一「そりゃまぁ、顔ばっかり見るわけだしね」

有田「うぅ……作成失敗だよ……」
162 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/10/18(木) 23:30:01.85 ID:QCk3o60co
恒一「それで、もう一つは?」

有田「…………」

恒一「……松子?」

有田「……こほん、恒一君は、今から触ったときの感想を、女心を気にしながら答えてください」

恒一「…………松子?」

有田「だ、だって仕方ないでしょ! 恒一君にとってはただの事故でも、私にとっては色々初めての事で、そ、その、いきなり謝られると色々ショックで……とりあえず恒一君は私に感想を言うことで私を慰める責任があると思うよっ!!!」
163 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/10/18(木) 23:40:58.68 ID:QCk3o60co
恒一「……良いんだね?」

有田「……うん」

恒一「本当の本当に良いんだね?」

有田「……うん」

恒一「…………」

有田「……恒一、君?」

恒一「……こほん」

恒一「まず、最初にあったのは後悔かな、状況を把握した時には触っていたわけで、もちろん紳士的に事故を起こしてしまった事に対する後悔もあるけれど、男として、女性の胸を触るのはアクシデントでは無く双方合意の上で、それもイイ雰囲気の中で、下品な言い方をすれば味わいたかった、っていう後悔もあった。本題の、その、感触だけど、僕はたしかに、恥ずかしい事を言えば比較的大きい方が好きな部類ではあったけど、もちろん実物を衣服無しで見たことがあるわけでも、ましてや触った事なんて無いんだ。だから、正直驚いた事もあるんだ、僕はなめていたんだよ、失礼な事を言うから先に謝るよ、ごめん松子。僕は松子の胸は比較的小さい方だと思って、それ相応のそういう物なんだろうと決めてかかっていたよ。でも、事実は違った。そう、僕は思ったんだ。柔らかい、と。例え見た目で判断しても、実際に触ったら、柔らかいんだって、今日初めて知ることが出来た、だから、もしかしたら僕は感謝すべきだったんだね。事故とはいえ、僕に女性の真実を教えてくれてありがとう松子、そして君の初めてを奪う事になってごめん、僕はとても、心地が良かったよ」

恒一「……以上で」
164 : ◆ZLUGH5bpAU7a [saga]:2012/10/18(木) 23:47:57.57 ID:QCk3o60co
有田「…………」ポカーン

恒一「……松子?」

有田「…………」ポカーン

恒一(や、やっぱり言い過ぎた?)

有田「…………」ポッカーン

恒一「……し、松子?」

有田「……ねえ、恒一君?」

恒一「はい」

有田「……ごめん、途中から私が混乱してわからなくなっちゃった。熱意だけは伝わったんだけど……」

恒一「……それは、松子の機嫌を直す事になる?」

有田「……うーん、うん。うん? うん、私も良くわからないけど、直った、かな? なんかより大きなショックで、あんまり気にならなくなっちゃった」

恒一「そ、それは良かった……のかな?」

有田「うん、あ、でも恒一君は、遊園地にいる間は、私の言うことを聞いてね! でないと不機嫌になっちゃうからねっ!」

恒一「あはは、それくらい、おやすいご用さ」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 05:46:55.49 ID:nKO+Bu6IO
おつ
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/10/19(金) 19:30:06.70 ID:X78BmqqXo
続き来てた〜、乙

恒一……読み飛ばしたぜ
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 03:38:48.00 ID:qD3B+l2DO
一月か
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/17(月) 06:36:59.54 ID:+4xAjejM0
そろそろ2カ月
169 :sage [sage]:2012/12/17(月) 08:38:22.58 ID:SNSG6h330


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170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/18(火) 01:49:37.95 ID:2Yv2ilTS0
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