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1000通目の悪夢 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆aSQx.z3IE/pB [saga]:2012/06/25(月) 01:22:03.05 ID:613oMAse0
このスレは
女「先輩を安価でストーカーします」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1340532544/

の先輩が主人公のサイドストーリーとなります。
先輩の悪い夢をお楽しみください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1340554922(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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A Day in the Life of Mika 1 @ 2024/05/09(木) 00:00:13.38 ID:/ef1g8CWO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715180413/

真神煉獄刹 @ 2024/05/08(水) 10:15:05.75 ID:3H4k6c/jo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715130904/

愛が一層メロウ @ 2024/05/08(水) 03:54:20.22 ID:g+5icL7To
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715108060/

ハルヒ「最近わたしのss見かけなくなったわね」 @ 2024/05/07(火) 15:04:17.64 ID:FJQjQ6ct0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715061856/

孤独のエレナ Season3 @ 2024/05/06(月) 23:06:58.73 ID:mOA71iC60
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715004418/

雑談はヒーローごっこじゃない @ 2024/05/06(月) 20:39:20.98 ID:e5NXmnk+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714995560/

朝顔 @ 2024/05/06(月) 00:25:05.84 ID:AB/bv7Jv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714922705/

オゾン層依存症って3回 @ 2024/05/05(日) 18:17:43.14 ID:JwHCDSU70
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714900662/

2 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 01:23:43.76 ID:613oMAse0
「う」
「うわあああああ!」

悪夢を見た。
左胸がバクバクしていて、飛び出してしまいそうで手を当て深呼吸をする。
久しぶりに昼寝がというか、睡眠が取れたのに気分が悪い。

枕元ではサイレントマナーモードの携帯が光だけで着信を俺に教えてくれている。
恒例通りいけばきっとこれは1000通目のメールだろう。

おそるおそる、携帯を手にとって着信を確認するとやはり彼女だった。
文芸部の後輩だ。


『今、貴方の家の前にいます』

二度見したからと言って内容が変わるわけでもなく、凝視したからと言って文面が変わるわけでもない。
が、つい二度見して凝視してしまった。

『家の場所教えた事無いよね?』

震えつつもとりあえず希望を託してそのメールを送る。
その希望は何と僅か一分後に打ち破られてしまったが。
3 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 01:24:39.44 ID:613oMAse0
ピンポーン
ピンポーンピンポーン

 センパーイ、イルンデスヨネ

ピンポーンピンポーンピンポーン

さっきまで包まっていた布団をもう一度頭から被った。

可愛い声の女の子の声が俺を呼んでいる。
そう表現すれば直ぐにでも玄関へ飛び出したくなる魅力的な光景だ。
俺も飛び出したい、玄関とは反対方向にだけども。
4 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 01:32:19.83 ID:613oMAse0
居留守でやり過ごそうと無視を決め込み、布団でうずくまる。
インターフォンの嵐が止んだことにホッとしたのと同時に、コンコンと俺の部屋の窓を叩く音がした。
まさか、そんなはず無いじゃないか。
だって、此処は2階だ。

そっと布団から顔を出して窓を見た後、俺は一目散に玄関へ逃げ出した。
5 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 01:36:07.14 ID:613oMAse0
友人の家で時間を潰し、夕飯をご馳走になった。
少しだけ気分が良かったものの自宅を見て直ぐにまたブルーな気持ちになる。

「……窓、破られてる」

そんな明らかに可笑しい点が有るというのに近隣住民は通報したりしてないらしく、騒ぎにはなっていない。
そんなに興味も無いのか、人間って冷たいな。
いや、実際あんまり興味をもたれても困るけど。

「もう、いないよな? 深夜だし帰ったよな?」

階段を上りながら自分を勇気付けるように口に出して、部屋に入ると誰もいなかった。

「はぁ……あ、ベッドは特に荒らされて無いみたいだ」

気が緩んでつい溜息が出る。
ほっとして、ベッドに腰掛けると俺の足の間、つまりベッドの下から生首が音もなく飛び出て「おかえりなさーい」と言葉を紡いだ。
あ、これ生首じゃねーや。 後輩だ。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 01:38:35.53 ID:ZAJL4eZPo
先輩サイドから見ればホラー映画の中に迷い込んだみたいだな…
7 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 01:47:23.60 ID:613oMAse0

叫ぶことすら出来ないほどの驚きで俺はただただ、口をぱくぱくさせていた。

「ベッドの下から彼女出てくるってどんな気分ですか? サプライズになるのかな? 
  それだけじゃならないかもだから、サプライズプレゼントを用意したんですよ」

「ぷ、プレゼント?」

生首の方がまだ有難いレベルの訪問者を前に俺の脳味噌が拾えた単語はそれだけだった。

「はい。 手作り弁当です」

「てっ、てづ、くり弁当かぁ……」

オウム返ししか出来ない上に裏返る声、ていうか明らかに引き気味なのに
そんな事を気にしていないらしい後輩は「はい。 先輩、あーん」と焼き炭を差し出している。
食えってか?
ベッドの下で寝たままの体勢で差し出されると丁度鼻先に炭らしきものがついた。
焦げ臭い。

「残念だけど、お腹空いて無いんだ」
「じゃあ、これだけでも食べてください」

何故か炭推しの彼女の目はぎらついていた。

「いや、本当にこれ以上食べたら吐くからさ」
「いいですよ。 先輩のなら私が飲みますから」
「………………」

絶句するしかない。
そこで口を開けて、俺が吐いても自分の口に入るようにしている。
本当に腹は減ってない。 
友人の家で食べたし、食べすぎではないというのに吐き気がしてくる。

「はい、先輩。 あーん?」
8 : ◆aSQx.z3IE/pB [saga]:2012/06/25(月) 02:01:02.46 ID:613oMAse0
「…………」

何だこれ。
失敗にしても焼きすぎだし、他の弁当に入ってるのは普通に見えるのに何でこれをチョイスするんだ。

「先輩、折角作ったんだから食べてください」
「…………これ、何?」
「ハンバーグです。 病気になっちゃいけないなと思ってよく焼きました」
「あーん」
「ぐっ…………っ」

こんなに焦げているのに割と肉は柔らかい。
食べた事の無い味だ、不味い。

「……おっ、ぇ」

喉に流し込む事は出来ず俺が咀嚼してぐちゃぐちゃになった肉は彼女の顔に落ちた。

「そんなに美味しくなかったですか?」

それを拭く事もせずに悲しそうに 問いかけてくる。
きっとここで普通ならそんな事無いよと声を掛けてあげるべきなのだろう。

「……凄く、まずい」

俺は正直に答えた。

「困りましたね。 まだ沢山有るのに……」

あんまり困って無さそうな顔の彼女を見ながらふ、と疑問が沸く。

「家に、そんなに沢山肉無かったよね」
「隣の家のですよ」

何で隣の家の肉を使ってるんだ。
と思ったがまさかの可能性を提示してみる。

「隣の……? 隣……まさか、隣に住んでるのか?」


「えぇ これからよろしくおねがいしますねせんぱい そろそろおそいしかえります
あしたもてづくりべんとうもってきますね じゃああしたがっこうで」


何て言っていたのかは余り覚えてない。
彼女が気持ちの悪い笑みを浮かべて玄関から出た直後、折角ご馳走された夕飯を全部出した事は覚えてる。
9 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 02:46:26.33 ID:613oMAse0

「はぁ……」

家から出るだけなのに泥棒を働いた直後な気分になる。
何も悪いことはしていないのだけれど、見つかるとそれは恐ろしい事になる。
特に胃痛が。
そういえば、五日前から通っている精神病院の薬を入れた箱の鍵を無くしてしまった。
人間はたった十日で体重が4キロも減るという事を学んだ。

(いないみたいだ)

ほっ、と肩で息をつくと学校へ向かって歩き出す。

(あ、右隣の人の車変わってない。 ってことは左隣が後輩の家か……)

ここに住んでるおばさんはいつも仕事(パン屋だったか?)で朝早くにはいなくなっているので偶に見ると印象深い。
今日は仕事が休みなのかもしれない。
そういえばおばさん特有のお節介な性格なのに通報しなかったんだな――


「――ひッ」


背中にゾクッとした感覚が走った。


―――病気になっちゃいけないなと思ってよく焼きました
――困りましたね。 まだ沢山有るのに
―隣の家のですよ


それは考えすぎだ。
まさか。
そうだ、考えすぎるのは俺の悪い癖なんだ。
10 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 03:54:43.25 ID:613oMAse0

「おいお前、携帯光ってるぞ」

昨日、俺が急に訪ねたにも関わらず飯まで奢ってくれたその友人はめざとく俺のポッケから漏れる光を見つけた。

「あぁ……。 先に食べててくれ」

きっと、昼食のお誘いだろうな。
と、差出人を見て思う。

「? わかったよ。 行こうぜ委員長」
「何々、彼女?」

女子って本当、彼氏とか彼女の話題が好きだな。
俺はもうその単語がトラウマになりそうだよ。

「はは、ただの後輩だよ。 ただの」

ただの、というには若干抵抗がある。
正確に言うならただの、異常な後輩だ。
11 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 03:57:14.62 ID:613oMAse0
「今日は天気がいいですねー」
「…………」

本当に雲ひとつ無い青空で良い天気だ。
詩的な表現をすれば俺の心とは真逆な空だ。
あぁ、天気が悪ければこんな事にはならなかったのにな。
屋上で女の子の作ったお弁当をたべる。

どれもこれも字面だけ見ればいいものに思えるんだがなぁ……。


「はい、卵焼きです」
「先輩、甘い卵焼き好きなんですよね。 沢山作りましたから」

(おにぎり2個と、1段目が全部卵焼き、2段目が全部ハンバーグ……)

料理センスは余り無い様だ。
ハンバーグは相変わらず病気にならないように良く焼いているらしい。

「じゃあ、卵焼きから。 どうぞ」
「……甘い」

甘い卵は好きだがいくらなんでも甘すぎる卵を何とか飲み込む。
砂糖が一袋入ってるんじゃないのか

「ふふ、美味しいですか?」

思い切り眉を顰めているのに笑顔でこんな事を聞いてくるのは何なんだ。
目がついてないのか。

「不味い」で駄目ならてんで興味が無いと思わせなければ。
俺はできる限り無感情に「普通」と答えた。

「美味しいって事ですね。 ありがとございます」
「……」

……彼女はどうすれば引いてくれるのだろうか

12 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 03:58:14.84 ID:613oMAse0

「じゃあ、どうぞハンバーグです」

差し出されたそれをみて内心「うへぇ」と舌を出す。
考えすぎだと思ってもそもそも食べたくない。

「食べたく、ない」
「………………なんでですか?」

少しだけ、声が刺々しく聞こえた。
俺は負けじと芯の通った声で返す。

「……美味しくないから」
「口を、開けてください」

箸の先に刺さっているそれがハンバーグなのかという時点で既に怪しい。
こんな丸焦げの物体を食う奴の方が異常だ。

「そのハンバーグは、絶対に食べない」
「ふーん……」
13 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 03:59:17.40 ID:613oMAse0
「あぁ、そういうことですか」

彼女はそのハンバーグを自分の口へ持っていくと咀嚼し始め、俺の顔をがっちりと手で固定した。
恥ずかしい話、俺は非力だ。
彼女は中学では運動部だったという話を聞いたことがあるし、体力も俺よりある。
そう、俺は女の子の手を振り払うことが出来ないヒョロヒョロなのだ。


「うっ……む!? んん゛んんんー!!!」
「ふっ……」

彼女は色っぽい声を漏らしていたが俺はそれどころじゃない。
この肉が人間かもしれないんだから。
しかも、噛まれて唾液と一緒になった物だ。

もし、これが好きな女の子からやられたなら我慢できるかもしれないが俺は彼女を好きでもなんでもない。
むしろ苦手だ、怖い。

つまり、ただの精神的苦痛でしかない行為を強いられている。
14 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 04:00:34.10 ID:613oMAse0

「おっあ、おっう、ぇえ、ええ」
「仮にも女の子からの口移しに酷いんじゃないですか?」

ぶりっこというのか人差し指を頬っぺたに当てて、その頬っぺたを膨らませている。
可愛いつもりなのかもしれないが、こんな事をしておいてそういう行動が取れる意味が解らない。

「げえっ、う゛ぇッ、はっ、はあ゛」

屋上のコンクリートで四つん這いになって口の中にある肉を吐き出そうと懸命に努力する。

っはー、はっ、はぁ、と荒い息をした後に俺は口を開いた。
多分、唾液が垂れていたと思う。

「何で」
「はい」
「何でこんな事するんだよ」

もしかしたら目からも唾液がでていたかもしれない。
いや、白状すると半泣きだ。
15 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 04:01:23.91 ID:613oMAse0
「貴方が好きだから…」

ありふれた理由でもあり、狂気的な理由でもあると思った。

「好きだからってやっていい事と悪いことの区別くらいつかないのかよ」

今まで喉に引っかかって言えなかった事がすらすらと出てくる。
脳の恐怖を感じるどこかが決壊してしまったのかもしれない。


「私は先輩になら何されてもいいですよ」
「俺は、君の事嫌いなんだ」
「でも、私は好きです」

平行線を辿る議論に俺は珍しく声を荒げる。

「俺の事が好きなら俺の気持ちも考えてくれよ!」

驚いたのか、感心したのか解らないが彼女は一瞬考える素振りを見せてこう言った。

「……そうですね解りました。 考えます」
16 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 04:04:16.20 ID:613oMAse0

「本当か?」

思わず、歓喜の声をあげる。
不味いな、機嫌を損ねたかもしれないと思ったが彼女は相変わらず笑っている。

「ええ。 でもその代わり先輩も私の気持ち考えてください」
「先輩、後輩の間柄……いや、友達としての付き合いならしても良い」

それが俺に出来る最大限の譲歩だった。
だが、彼女は不服そうな顔で俺に詰め寄る。

「何言ってるんですか。 私は先輩と恋人になりたいんですよ?」

世間一般では可愛い顔に部類されているであろう女の子にこんな事を言われているというのに全く反応できない。
喜ばしくも無い、緊張でくちびるが乾く。
此処を切り抜けなければ俺は安心して家でも寝られないのだ。

「俺は、君とは恋人になれない」
「さっき、私の気持ちを考えてくれるって言いましたよね」
「君も、俺の気持ちを考えるって言っただろ」
「……」

彼女は拗ねた顔をして俯いたかと思うと一瞬で顔を上げる。
その顔にはもう拗ねた表情はひとかけらも残っていなくて、今まで見た中で一番爽やかな笑顔だった。
それでいて、今まで見た中で一番気持ち悪い笑顔だった。
17 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 04:06:19.71 ID:613oMAse0


















「じゃあ、先輩が思考しなくなればいいんですよね?」














18 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 18:36:38.60 ID:613oMAse0
          
19 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 18:38:18.91 ID:613oMAse0





































20 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/25(月) 18:39:30.78 ID:613oMAse0
「う」
「うわあああああ!」


悪夢を見た。
屋上で後輩に金槌を使って殴り殺される夢だ。
左胸がバクバクしていて、飛び出してしまいそうで手を当て深呼吸をする。
久しぶりに昼寝がというか、睡眠が取れたのに気分が悪い。

枕元ではサイレントマナーモードの携帯が光だけで着信を俺に教えてくれている。
恒例通りいけばきっとこれは1000通目のメールだろう。

おそるおそる、携帯を手にとって着信を確認するとやはり彼女だった。
文芸部の後輩だ。




『             』




空メールか……『今、貴方の家の前にいます』とかじゃなくて良かった……。


安心したらまた眠くなってきた。
ここのところ全然眠れてなかったからな……。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 19:02:37.32 ID:HdirES57o
エンドレスでBAD ENDへ突入するのか
安価スレの登場人物の中でも屈指の不幸っぷりだな
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/06/25(月) 19:07:26.25 ID:CbxZvdQAO
今度は陵辱だからな…不幸過ぎる
23 : ◆aSQx.z3IE/pB [saga]:2012/06/26(火) 03:17:31.64 ID:gktqnIZE0

「おっ、あっ……? あっ!?」

起きるとドラマとかでよく見るタイプの手錠が嵌められていた。
全然気がつかない位結構深い眠りに入っていたらしい。

「何だこれ!? えっ、えっ!? は!?」


近くに住んでいる従妹が悪戯好きで偶に起きたら顔に落書きされていたりする。
今回もその類かと一瞬思った直後、脳裏に後輩の顔がちらついて軽いパニックを起こした。

「何なんだこれ!クソッ!」

もし、後輩だったらどうにかして家に入ってるって事だ。
足が拘束されている訳ではないから逃げようと思えば逃げられるかもしれない。
少し羞恥心を我慢して外に出て友人に助けを求めれば――


「えいっ☆」


――――!!?
24 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 03:21:20.72 ID:gktqnIZE0

「覚悟しやがれ!!!! 」

可愛くテンションの上がった声を耳に入って、小さく柔らかい手で目を隠された俺が一番最初にした反応は、体をびくつかせる事だった。

「……だ、誰だ」

これ、後輩だよ、絶対。
思いつつも一応聞いてみる。
もしかして、女強盗とかだったりしないかな……強盗の方がいいな

「貴方の可愛い後輩、あっ、違う違う。 彼女ですよ」
「お、俺にこんな猟奇的な彼女はいないぞ」
「もう照れ屋なんだから!」


は、話が通じない上に手から変な臭いする、何だこの臭いは。
後、彼女にした覚えが俺に一ミリも無い。
俺はいつから後輩と付き合ってるんでしょうか、誰か教えて下さい。
25 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 21:52:23.95 ID:gktqnIZE0

「先輩、今から気持ちいい事してあげるからね。 えへへへへ」

うわうわうわ。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い怖い怖い怖い。

「初めてだから上手く出来ないかもしれないけど、頑張ります!」
「ま、待ってくれ!」

俺の部屋着はTシャツにジャージという直ぐに脱げ(脱がされ)る格好だ。
因みに女性との性行為経験は一度も無い。
所謂童貞だが初体験が逆レイプで後輩相手というのはちょっと、流石に無い。

「何ですか?」
「……そういうのは恋人同士がやるもんだろ」
「? 先輩と私は恋人でしょ?」

怖い、怖い、怖い、怖い、逃げたい。

「違うぞ。 いつ恋人になったんだ」
「生まれた時に決まってるじゃないですか、だって先輩と私は赤い糸で結ばれてるんですから」

あくまでも、俺とこの女は恋人関係であるという点を譲る気は無いらしい。
大体生まれたときに決まったなんて、妄想癖にも程がある。
26 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 21:54:08.16 ID:gktqnIZE0

(くそっ……)

このお花畑に納得してもらえるような理由をなんとか頭を働かせて考える。
起きたばかりではあるものの手錠を嵌められていた事で頭は覚醒していたのかすんなりと次の言葉が浮かぶ。

「順序って、もんがあるだろ?」
「最初はキスからとかそういう?」
「そう」
「わかりました」

常識は無いもののそういう手順を踏むべきだという気は一応あるのか納得して貰えた。
これで引き下がってくれないだろうかと思っていたところでまた彼女が口を開く。


「手を繋いでキスしたらHなことしましょうか」


違えええええええええ!
俺が必死に思考を働かせても逃れる手段が見つからない。
手錠をされているといっても特攻すれば女の子一人くらい押し倒して、玄関へ迎えるかもしれないけど
玄関のドアを開けている時に間違いなく追いつかれる。
そしたら、まさか、無いとは思うけど、殺されたりするんじゃないかと夢を思い出して結局俺は硬直してされるがままだった。
27 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 22:01:03.12 ID:gktqnIZE0

女の子に触られているというのに全く興奮しない。
というか、最近性欲が薄れている気がする。

「…………あの、先輩って不能なんですか? こんなに触ってるのに」
「……うん。 だから諦めてくれない?」

何故か最近勃たないって思ってたけどこれはストレスだな、と
可愛らしく首を傾げる動作をした彼女を見て吐き気を催し確信する。

(あと、実際そんなに上手くない……)
「うーん……」

腕を組んで何やら真面目に悩んでるポーズをして彼女は言う。
28 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 22:12:44.20 ID:erHCzMlV0

「解りました。 今日のところは帰りますね。でも、私先輩が不能でも好きですから
  先輩の全部を愛してますから、離れたりしませんよ。 安心してください」

死刑宣告だった。
俺がどう抵抗しようと何をしようとこの先一生付き纏ってやるという宣言だった。

「それじゃあ」
「ちょ、おい。 この手錠を外して……くれないか」

腕を彼女の前に出すようにして言うと彼女は俺を冷たい目で見つめた。

「…………」

そして、じっと手錠を見る。
この顔をしている時の彼女はとんでもなく、ろくでもないことを考えているという事を俺は知っていた。
29 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 22:30:54.23 ID:erHCzMlV0

「外しませんよ?」
「なっ……なんで」

少しだけ、予想はしていたもののやはりそう言われると焦る。

「明日の準備がありますから」

淡々と彼女は言う。
目は笑って無いが、口元は笑っていた。

「あ、明日の準備?」
「ええ。 そうです」

背中がゾクゾクした。
勿論、期待ではなくて恐怖で。

「……何をするんだ」

ごくり、と唾を飲み込んで聞く。
冷や汗が口に入ってしょっぱかった。
30 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 22:33:35.61 ID:erHCzMlV0

「今日は準備不足でしたから明日はセンパイスッゴく気持ちよくなれますよ?」

何の準備なのか聞く勇気は無かったし、まだ何か言っていたが俺はベッドから飛び降りた。
そして、グキリと足首を捻って無様に転ぶ。
そんな俺を見て彼女は少しひきっつた笑いを漏らして流れるように足枷を嵌める。

ベッドに乗せたかったのだろうが俺がいくら平均体重より軽いと言っても彼女より重いし、背は高い。
残念そうな顔をしながら俺をカーペットに転がしたまま彼女はベッドの足に俺の右手錠を繋いだ。
あと、何故か左手にカロリーメイトを握らされて「晩御飯です」と声をかけられる。
惨めってこういう気持ちを言うんだなと頭のどこか冷静な部分が思った。
31 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 22:38:16.51 ID:erHCzMlV0





やめてくれ、お願いだから」
「大丈夫です、直ぐ気持ちよくなります」

涙声で俺は懇願した。
そこら中にエロ本とかネットとかでしか見たことの無いようなそういう事に使う玩具が転がっている。
トポトポトポ、とピンク色の瓶から彼女の手に、落ちているのは潤滑油だ。
その隣には男性器を模した形のそれがある。
そこからの事はよく覚えていないが、俺が最後に言った言葉は「もう許して下さい」だった気がする。


32 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 22:39:53.00 ID:erHCzMlV0





「えへへ、今日は卵焼きでーす。 どうぞ」
「…………あー」
「先輩、私の事好きですか?」
「…………ぇうー」
「えへ。 そうですね」
「……………ぅー」
「あっ、もう涎が出てますよ!」
「…………あ゛ーー」
「えっ、そんな。 いえ、私も同じ気持ちですよ……」




33 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 22:41:45.51 ID:erHCzMlV0





































34 : ◆HgSrN7ASXCDy [sage]:2012/06/26(火) 22:52:37.78 ID:erHCzMlV0

「う」
「うわあああああ!」


悪夢を見た。
口に出すのも躊躇われるほどに酷い夢だ。 鳥肌が立っている。
久しぶりに昼寝がというか、睡眠が取れたのに気分が悪い。

枕元ではサイレントマナーモードの携帯が光だけで着信を俺に教えてくれている。
恒例通りいけばきっとこれは1000通目のメールだろう。

おそるおそる、携帯を手にとって着信を確認するとやはり彼女だった。
文芸部の後輩だ。




『実は食用マンボウが一部では取引されてるって知ってました?』


いつもに比べれば平和的な内容だ。
ほっ、と肩を撫で下ろしたが安心できない。
いつだったか一日返信しなかったら家の留守番電話とファックスが凄いことになっていた。
着信拒否なんかした日には家の前で包丁を持った後輩が家の前に立ってるだろう。


とりあえず俺は『知らなかった』と当たり障りの無い返信をしておく事にする。
35 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/26(火) 23:11:18.15 ID:erHCzMlV0

『一緒にマンボウ狩りませんか』

5分もしないうちに次のメールが来た。
マンボウ狩りって何処に行くんだと少し聞いてみたい気もするが
後輩と出かけたり会話したりするのは控えたい。
欲を言えば視界に入れるのも控えたい。

『今、忙しい』

とりあえず、断りのメールを送りもう一度寝ようかとベッドに寝転がる。
ふ、とそういえば夢ではここで後輩が家に乗り込んできていたんだっけ? と思い出す。
まさかな、と思いながらもカーテンを開けてみると家の隣の隣の隣の家から後輩が出てきた。

かなり衝撃を受けたが悪夢のお陰といえばいいのか俺は即座に判断を下すことが出来た。
玄関へ行くと自分の靴を履き、家の中へ戻る。
必要最低限の物を入れた鞄を持つと台所の窓から俺は外へ出て、家と反対の方向に走り出した。
後ろでインターフォンの音が聞こえた気がする。
36 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/27(水) 20:27:13.83 ID:k7DjLMpk0
「悪いな」
「別にいいぞ」

小学校来の友人の家に荷物を持って転がり込み、暫く置いてほしいと俺は頼み込んだ。
面倒見の良い性格のコイツは快くそれを了承してくれた。

「何かあったのか?」
「ちょっとな……」
 
気持ち悪いほどにメールは送られてくるが実害が有った訳じゃない。
殺される夢を見たなんてアホな理由は流石に言えなかった。

「言いたくないならいいけどよ」
「ん。 サンキュー」

コイツ良い奴だなぁ……と思いながら俺は布団に寝転び、段々と眠気が……。
37 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/27(水) 20:44:50.86 ID:k7DjLMpk0

「おーい、いつまで寝てんだ」
「あ……?」
「もう9時だぞ」
「んー悪ぃ悪ぃ」

5時半頃に友人の家に上がったのだから4時間半程度寝ていたことになる。
しかし、側に人が居るだけでこんなにも深い眠りに入れるとは……。

「飯できてるぞ、っても冷凍食品だけどな」

台所から漂ってくるチーズの匂いに良い気分になりながら俺は立ち上がった。
38 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/27(水) 21:23:02.81 ID:k7DjLMpk0

「お前、携帯光ってるぞ?」

冷凍食品のグラタンは普通に美味かった。
最近の内では一番食事をした満足感が得られた気がする。
幸せな気分に浸りながら携帯を開いて少し嫌な気分になった。

「なんか最近学校でもお前の携帯光りっぱなしじゃねぇか?」
「…………」
「おい? どうした? おい? お前急に顔色悪くなってるぞ?」


友人の声が聞こえるが反応できない。
携帯画面には『先輩、今からそっちに向かいますね 』という文字が出ている。

「なぁ……お前、文芸部の1年生の女の子と仲良いか?」
「なんだよイキナリ……つーか誰だそれ」
「いや。 ごめん、なんでもないんだ」

流石に友人の家まで解りはしないだろう。
心臓を押さえながら俺は深呼吸をする。
汗が止まらない、怖い。
39 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/27(水) 23:31:04.15 ID:k7DjLMpk0

「……ん?」

暫くするとまた光った携帯電話にうんざりしつつ、手に取ると差出人は従妹だった。

『ウチ、今めっちゃピンポンダッシュされたよ。 怖かったー!』

まさか後輩じゃないよな?
と思いながらも万が一の可能性が有るので従妹には気をつけるようにメールを送っておく。

「風呂入るか?」
「いや、後で」
「んじゃ先に入るわ」
「おー」

もしかして、何か武器を握ったほうが良いんだろうかと思ったが勝手に人の家を探っていいものか。
武器になりそうなものは筆箱に入れている98円のカッターしかない。
心もとない気もするがポケットに入れて置く事にする。
気休め程度にはなるだろう。
40 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/28(木) 01:27:17.78 ID:Gne69eYK0

「今なんか音したか?」
「お、脅かすような事言うなよ……」

風呂から上がった俺は友人のベッドの隣に布団を敷いて貰いそこに寝転がっていた。
これからゆっくりと睡眠に入ろうと思っているというのにそんな事を言われれば気が気でならない。

「しかしなぁ……ストーカーだ?」
「あぁ、いや、ストーカーされてるかは解らないんだけど……」

風呂から出た友人に俺はメールの履歴を見せ、今まであった事を語った。
やはり置いて貰うのだから事情を説明する義務が有るのではないかと思ったのだ。

「うぉお……怖ぇえ……直ぐそこにいる気がする」
「んな訳ないだろ」

布団の中で身を縮こまらせる俺に友人は馬鹿にしたように笑う。

「マジ怖い。 眠れない、最近寝てねーもん」

一応、ジャージのポッケにはカッターを入れている。
それでも段々と震えが大きくなっていく。

「あー……誰もいないか見てきてやるから」

自分の何か変な音がするという発言で俺を必要以上に追い詰めたと思ったのか友人は玄関へ向かう。
正直、一人にして欲しく無い気もするが見てきて欲しいのも事実だ。
俺はジャージのポケットに手を突っ込んでカッターを握り締めた。
41 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/28(木) 23:10:15.32 ID:Gne69eYK0

「マッチが捨てられてた」

戻ってきた友人は言った。
近くに人はいなかったらしいが焦げたマッチが5本友人の手に握られている。

「後輩だ……」
「ただの放火魔かもしれないだろ」

放火魔にはただの、なんてつかないだろという突っ込みも思いつかず俺は布団の中で頭を抱える。

「俺の事殺しにきてる……」
「大丈夫だって……」

結局その夜は眠れなかった。
42 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/28(木) 23:12:15.95 ID:Gne69eYK0

「あああああああああああああああああああ! [ピーーー]っ[ピーーー]! [ピーーー]!」
「な、何だ? どうしたんだよ。 落ち着けって!」

『風邪ひいてて辛いです……先輩一欠片でも優しさがあるなら助けてくださーい』

翌朝メールを開いた瞬間に思わず俺は携帯を放り投げて奇声をあげた。
はぁー、はぁー、と体力が余り無いのに暴れたから息が荒くなる。

放り投げられた携帯を見て友人は苦笑いを浮かべる。

「あぁ、と……そういえばお前は寝てないけど学校は行くのか?」
「……あぁ、一人でいるのはちょっとな」

上手いコメントが思いつかなかったらしく友人は話題を転換させた。
教科書類は全て学校に置いてあるから問題は無い。
一人で居る方がどうにかなりそうだと思いながら俺は顔を洗いに行くことにした。
43 :>>42 修正 [sage saga]:2012/06/28(木) 23:45:56.32 ID:Gne69eYK0

「あああああああああああああああああああ! 死ねっ死ね! 殺す!」
「な、何だ? どうしたんだよ。 落ち着けって!」

『風邪ひいてて辛いです……先輩一欠片でも優しさがあるなら助けてくださーい』

翌朝メールを開いた瞬間に思わず俺は携帯を放り投げて奇声をあげた。
はぁー、はぁー、と体力が余り無いのに暴れたから息が荒くなる。

放り投げられた携帯を見て友人は苦笑いを浮かべる。

「あぁ、と……そういえばお前は寝てないけど学校は行くのか?」
「……あぁ、一人でいるのはちょっとな」

上手いコメントが思いつかなかったらしく友人は話題を転換させた。
教科書類は全て学校に置いてあるから問題は無い。
一人で居る方がどうにかなりそうだと思いながら俺は顔を洗いに行く。
44 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage saga]:2012/06/28(木) 23:48:16.92 ID:Gne69eYK0

学校では何事も無く過ごせた。
後輩は風邪で休みらしく、俺の心は軽い。

昼休みにメールを見てふー、と溜息を漏らした。
友人の大丈夫か? という声にあぁ、と簡潔に答える。

『そんな所に居ないで、そろそろ自宅に帰ってきませんか?
 あんまり遅いと迎えにいっちゃいますよ。 』

カチカチと指を動かすと俺は返信する。

『解った。 帰りに寄るから家に居てくれ』

お人よしだとか、絆されてるとか、そういう訳ではない。
ただ、もうこの精神的苦痛から解放されるにはこれしかないと思ったのだ
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/28(木) 23:53:33.41 ID:TbrSVe9xo
どう転んでも絶望ENDしか残されてないな…
46 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/29(金) 00:36:32.09 ID:dHprpdni0
一度、自宅へ戻ってから後輩の家へ向かう。

友人は病院に行くから先に帰ってくれと言って置いた。
かなりやつれている様に見えたのか自殺とかするなよと言っていたが、する訳無い。
多分これからは悩む事も無い。

携帯にまた着信が有った。
きっとこれが最後のメールだ。

『私は先輩になら何をされたって平気ですよ』

「ふ、は、ははははははは」

笑いながら返信する。
何をされたって平気なんて無理だろ、馬鹿か。
そろそろ後輩の家に着く頃だ。

『そうか嬉しいよ。 ありがとう、もう着くよ』
47 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/29(金) 02:12:48.65 ID:dHprpdni0

「お邪魔します」
「……やぁ。 体調どう?」

ドアの鍵は開いていた。
後輩はベッドに横たわっていたがあまり辛そうには見えない。

「何があったかkwsk 」
「け、ケー? ……あ、詳しくか」
「何か先輩やつれてるので……」

話すと少しだけ鼻声だったがこんな事を言えるならやはり元気そうだ。

「そうだな……最近悩みがあってさ」
「私でよければ聞きますよ! 話してください!」
「いや、いいよ。 もう解決する予定だから」

話しながらおもむろに俺は学生鞄を探り始める。
一度家によって鞄の中身を整理してきたのだが、どれを取り出そう。

「そうなんですか? なら良かったで……!?」
「あぁ……本当に良かった」

俺は見舞いの品を取り出す様な素振りで取り出した包丁で後輩の左胸を刺す。
48 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/29(金) 02:16:47.82 ID:dHprpdni0

「俺、幽霊とか結構信じてるから祟られるかと思って」
「まぁ、何されても平気なら大丈夫だよな」

なんだか鶏肉に似ているなと思いながら包丁をずぶずぶと胸の中にうずめる。
生臭いというか鉄臭いのが鼻に付くが気にせずもう一度抜いては刺すを繰り返した。

「……………ぁ、が」
「じゃあ俺帰るわ。 お大事に」

口から血を流し始めた後輩に聞こえているかどうかは怪しいが一応言葉をかけてから家を出る。

包丁の指紋を拭きもしなかった俺h当然の様に殺人犯として捕まり、少年院に送られることになった。
未成年で良かったなぁ位しか思わなかった。
もしかして、これが俺にとっては最高のハッピーエンドなんじゃないだろうか。

因みに全然、全くこれっぽっちも悪い事をしたとは思ってない。
49 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/29(金) 18:55:16.00 ID:dHprpdni0






































50 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/06/29(金) 19:07:23.57 ID:dHprpdni0

「う」
「うわあああああ!」


悪夢を見た。
後輩を刺し殺して逮捕される夢だ。
結構リアルな肉を切った感触を思い出し、思わず利き手の右手を開いたり閉じたりする。

枕元ではサイレントマナーモードの携帯が光だけで着信を俺に教えてくれている。
恒例通りいけばきっとこれは1000通目のメールだろう。

携帯を手にとって着信を確認するとやはり彼女だった。
夢に出てきた後輩 、と言っても俺の後輩だったのは一瞬だ。
俺が北海道から沖縄に引っ越す直前に一目惚れされたらしく十日前から一日百通単位でメールが送られてくる。
もう会う事は無いだろうから最悪着信拒否にしてしまえばいいかと思いながらメールを開く。

『私の想いを受け止めてください(消すと増えます)』


何が増えるんだとメールに突っ込む。
一々返信してるとキリが無いので返信はしないが。
51 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/07/02(月) 20:48:06.51 ID:Urniug5z0

夕方頃、またメールの着信が有った。

『お久しぶりです先輩。私が居ない間に浮気とかしてませんか?』

付き合って無いし、久しぶりって程メールの間隔もあいていない。
薄々感づいていたが彼女は頭の螺子がちょっとトんでいるんじゃないだろうか。
引越し疲れなのか俺は居間で携帯を開いたまま寝てしまった。

ピンポーン

それからどれ位がたったのか解らないが太陽の傾きから恐らく夕方だろう。
インターフォンの音で目が覚めた俺は玄関へ向かう。

「はい、どちら様で……!? え……えっ、何で!?」

扉をあけると立っていたのは後輩だった。

「はい、これお土産です 」

笑顔で2つ重ねられた箱を差し出してくる。

「何? 何で来たの?」
「どうぞお土産の熊肉です」

俺の質問には答えずグイグイと俺に箱を押し付けてくる彼女は相変わらず気持ち悪い笑顔だ。

「いや、いらない。 いや本当に何で俺の家知ってんの?」
「教えてくれたのは先輩じゃないですか」

キョトンとした顔で言うが俺は教えていないし、教えてくれと頼まれたとしても教えなかったと思う。
熊肉の下にあった箱はバターサンドだったらしく、彼女はちょっと残念そうな顔をしながら鞄にお土産を仕舞った。

「教えてない」
「でも、携帯持ってますよね?」
「持ってるけど……」
「だからです」
「どういう事……?」

俺の疑問には答えず彼女はお土産を仕舞った鞄からゲーム機を取り出すと何やらピコピコと電子音を鳴らす。
誤魔化すにしてももっと自然な方法が取れないのか……。
52 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/07/02(月) 20:51:10.85 ID:Urniug5z0

つーか怖い。 閉めていいかな
北から南まで移動してきた(恐らく俺を追いかけて)来た彼女に若干の恐怖を覚え扉を少し閉める。
するとそれを感じ取ったのか彼女はゲーム機をパタンと閉じて俺に向き直った。

「すいません、ちょっと電脳世界に行ってました」
「…………帰ってくれない?」

意味不明な行動を取り始める彼女にちょっと勇気を振り絞ってそう言ってみる。
しばらくの沈黙の後――



「………うぇっ、ひぐっ、うぇっ、えええ!」
「えっ」
「先輩が帰れってぇ! うぇぇえうぇえええ!」



彼女は泣き始めた。



「えぇー……」

おろおろしてる俺に彼女はちょっと自棄気味に言う。

「もういいですぅぇっ、かえりまっ、ひぐっ、から」
「ひぐっ、うぇ、ひっ」


なんだったんだと思いながらドアを閉める。
その際向かいのホテルに彼女が入っていくのを見て少しぞっとした。
53 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/07/02(月) 20:52:06.29 ID:Urniug5z0

チーズトーストに焼いたベーコン、スクランブルエッグとレトルトコーンポタージュ
面白みの無い朝食を摂りながら食後はお茶を飲むかコーヒーを飲むか考える。
テーブルの上に置いておいた携帯が光ったので多分後輩だろうなと思いながらも開く。


『おはよーございます。昨日は突然押し掛けてスミマセン(--;)
   色々お話ししたいので今度先輩の都合がいいときにお会いできませんか?』

正直、会って話すなんていうのは嫌だ。
というか、頭がどうにかなっていそうな人と進んで会話したい人なんかいないと思う。
悩んだ末当たり障りの無い回答を選択する。

『何で沖縄来たの? 話さなくてもメールでいいじゃん』
『何か突然会いたくなっちゃって///いてもたってもいられなくなって、気付いたら飛行機のってました/// 』

返信した直後に回答が来る。
あんまり考えて返事をしていないんだろうか?
というか、いてもたってもいられなくなって北海道から沖縄に来るなんて異常だ。
やっぱりどこかおかしいんじゃないだろうか。
54 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage saga]:2012/07/03(火) 01:04:59.21 ID:B93FVPs30

家から出るとスーツ姿の男が立っていた。
白い手袋をつけていてパッと見どこかの執事のような格好だが、顔がそこまで綺麗な部類に入らないからかタクシー運転手のようなイメージもある。
何で家の前に立っているのかと横目で見ながら通り過ぎようとするとその男に呼び止められた。

「あちらのホテルに宿泊している方から、貴方に来て欲しいと要望があります
   また、来てくれたら御褒美がありますよとの事です」

ホテルの従業員なのだろうか?
という事はこれは制服なんだろうか。

ホテルの従業員はそんなに何でもかんでも客のいう事聞かなきゃいけないなんて可哀想だな
と思ったが多分その客とは後輩の事なのでやんわりと断っておいた。
向こうも食い下がることも無くあっさりと引き下がってくれた。
やっぱり仕事でも面倒だと思っているのかもしれない。
55 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/07/03(火) 01:11:08.45 ID:B93FVPs30

「にゃー」
「お、来い来い」

猫の集会場というのか、猫のたまり場が通学路にある。
猫好きな身としては嬉しい限りだ。

暫く撫でているとポケットから光が漏れる。
後輩かなと思っていても他の人だったら無視したら失礼になるな、と考え一応確認。

『このメールを見て振り返ったときお前は



                  死ぬ』

不幸の手紙並に馬鹿みたいな内容だ。
あまりにも俺がメールを無視するから方向性を変えたんだろうか。
携帯の時刻をチェックし、そろそろ遅刻しそうだと判断すると俺は猫に後ろ髪引かれながらも歩き始めた。
56 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage saga]:2012/07/03(火) 01:13:00.05 ID:B93FVPs30

曲がり角に差し掛かると人影が出てきた。

「おはようございます。 せんぱーい!」
「うぇっ!?」

満面の笑顔の後輩だった。
それにも驚いたが手に持っている物にも驚いた、アイスピックだ。

振りかぶられたアイスピックを見て俺は咄嗟に手を出す。
ザクッ、と小気味良い音をさせながら俺の手の平が貫かれた。

「ぐっ……」

ドンッ、と後輩を力に任せて押すと全速力で走る。
人の居るところへ出るのが先だ、と思ったが此処は割と田舎でそうそう沢山人が集まっている場所は無い。

(あ……警察……)

その存在に思い至った俺は足を止めて、アイスピックを手から抜きその変に投げると鞄から携帯を取り出す。
11、まで打った所で携帯がヒュッ、と飛んだ。

「は!?」

驚いて携帯の行方を目で追うが一部が砕けて完全に壊れている。

「何なんだ……!」
「あの、すいません」

後ろから低い声がかかる。
振り返ると今朝の従業員が立っていた。

「一緒に来ていただけませんか?」

それを聞いて俺はその場から逃走した。
後輩関連だと思ったからだ。

だが後ろから強く殴られ俺は気絶した。
57 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage saga]:2012/07/03(火) 01:13:53.62 ID:B93FVPs30

目が覚めると山に居た。
手足は縛られている。

目の前では従業員がぼけっーとあほづらを晒している。

「おい」

呼びかけてみるがこちらを少しだけ見て特に返事はしない。

「お前、誰なんだ?」
「何でこんな事するんだ?」
「俺はどうなるんだ?」

しつこく質問を続けていると「はぁー」と溜息をついて俺に布を噛ませた。
どうやら何も教えてくれないらしい。
58 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage saga]:2012/07/03(火) 01:15:44.13 ID:B93FVPs30

それから十分もしない内に後輩が現れる。

「先輩は何処ですか」
「そこです。 逃げられたので縛っておきました」
「わかりました」
「何をするんですか?」
「愛の巣へ」
「愛の巣ですか?」
「はい。 とりあえず、私の実家へ連れて帰りましょう」
「乗り物を手配して下さい」
「了解」

手足を縛られ、布をかまされている俺は特に何も出来ずに二人のやり取りを見守っていた。
とりあえず、今直ぐ殺されたりはしないようだ。

「あ、乗せるとき邪魔でしょうから気絶させておきますね」

と思った矢先また、男(従業員では無いらしい)によって頭を殴られ俺は気絶した。
59 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage saga]:2012/07/08(日) 22:43:56.41 ID:cHQr+dSP0

「………んぐ……んっ! んー!」
「あ、気がつきましたか」

息苦しさに目を覚ますと目の前に後輩の顔があった。
鼻と口をつままれていたらしく少し痺れた様な違和感が口と鼻にある。
あぁ、ヘリコプターの中かと状況を把握した俺は後輩に出来るだけ威圧的に問いかける。


「お、俺をどうする気だ」
「私と恋人になって下さいな♪浮気してもいいし、お金欲しいならいくらでもあげます♪
         せっくすしたいならいくらでも生で出してもいいですよ?どうですか? 」

威圧的といっても縄に縛られている状態では何も怖くないらしく平然と後輩は言葉を返す。
浮気してもいい等とのたまっているが浮気したら相手は殺されるのではないかとアイスピックで刺された傷の痛みを思い出しながら考える。


「……折角だけど、お断りするよ」

息を呑んでそう言う。
急に逆上して飛び掛ってくるかと思ったが案外冷静に後輩は俺を見つめている。

「何でですか?」
「君の事をそういう風には見れない。 だから、家に帰してくれないか?」
「じゃあ、どういう娘なら見れるんですかね? 教えて下さいよー」

顔を近づけて息が掛かる距離で彼女はそう言う。
ブワッ、と嫌な汗が全身から噴出すがなんとか口から言葉を搾り出していく。


「……巨乳でショートカットの日に焼けてる背が低い美人な女の子」

彼女とは真逆の特徴を淡々と挙げれば少しだけ顔が曇った気がするが直ぐに持ち直し、不気味な薄ら笑いを受かべる。

「……髪は切ります。 胸は、シリコンを入れます。 肌は焼きます。 顔は整形します。 
                            背は……妥協してください」
「……無理だ」
「むぅ……」

見た目が好みじゃないからという理由だけで諦めてくれるとは思わないが少し考えるような素振りを見せる。
60 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage saga]:2012/07/08(日) 22:45:30.33 ID:cHQr+dSP0

思考がまとまったのかポケットから五円玉を取り出した。

「こうなったら催眠術をつかいます」
「さいみ……何?」
「あなたは段々、私の事が好きになる……」

糸に五円玉をつるして揺らすという催眠術というオカルトな部類であるのにアナログな方法に思わず苦笑いする。
暫く五円玉を揺らしても効果が無いと判断したらしい彼女はポケットに五円玉を仕舞いつつ舌打ちを打つ。

「成功しませんか」

敬語だというのにどこか迫力の有る言い方で思わず俺は肩をすくめた。


「でもですね先輩、先輩に選択権は無いですよ。 とりあえず、私の実家までは連れて行かれてもらいますから」

キッ、と俺を睨んで彼女は言う。
効果が無いと解りそうなものだが俺に催眠術の効果が無かった事を不満に思ってるのかもしれない。




「……わかった、だからこのロープを解いてくれ。 ヘリコプターの中じゃ逃げられもしないだろ」


顎で窓の外を指してみるが彼女は俺を見たまま動かない。
そうして冷たい声で言い放つ。

「解きません。 念には念を入れます」

61 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage saga]:2012/07/08(日) 22:52:16.17 ID:cHQr+dSP0

「手だけでも解いてくれよ。 痒いところもかけない。 それになんかさっきから顔がカサカサして痒いんだよ」

嘘という訳ではない。
本当にさっきから顔から急速に油が抜けていってるように痒いのだ。


「じゃあ私が痒いとこかいてあげますんで」
「ごめん。 もう痒くなくなった」

考えもせずそう言った彼女に対して俺はすぐさま撤回の言葉を吐き出す。
顔を引っかいて肉を抉っても何らおかしくないような精神構造の持ち主に自分の身体に触られるような機会は出来れば少なくしたいものだ。


「何か食べたい、飲みたい、または排泄したいとか希望あります?
              あ、勿論家に帰りたい等の類いは聞けませんが」


俺が撤回したからか特に手の縄を解いてくれるという気は無いらしい。
下手に何か言って悲惨な状態になる事は避けたかった為何も要求しないつもりだったが彼女の「あと3時間はこの状態ですから、そこも考慮して下さいね」という声に少しだけ考え込む。
そういえば朝から走ってばかりだというのに何も飲んでいない。
加えて密室でこの気温だ。


「スポーツドリンク、が飲みたい」


ポツリ、と小さく俺は希望を呟いた。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 23:08:02.33 ID:cHQr+dSP0

「わかりました、って言っても先輩は手が縛られてるんですよね」

薄ら笑いを浮かべたまま彼女は耳元で言った。

「じゃあ、口移しで……♪」
「え、じゃあ、要らなうぐっ……!」

近くに置いてある鞄(食料なんかが入っているのだろう)からペットボトルをとりだして口に含む彼女を見て慌ててそういう。
だが、聞く耳持たずにそのまま俺に唇を押し付けてきた。

「ごほっ、げっ、げほっ」

唾液とスポーツドリンクにむせ返るものの手で口を覆うことも出来無い。

「美味しかったですか?」

正直俺の顔は涎が垂れていて汚いはずなのだがそんな事を気にする素振りも見せず彼女は聞いた。


「…………死にたい」

そうして俺は小さく絶望を呟いた。

63 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/07/09(月) 20:45:44.59 ID:JnxqerF10
「仕方が無いですね……どうぞ、ストローさしたので」
「あ、ありがとう」

何で俺が謝っているんだろうと頭の片隅で疑問に思いつつストローに口をつける。
零れた黒い唾液がストローを伝っている。

「なんだこのストローから黒い……」

そこでふと黒い唾液という違和感に気がついた俺はまじまじとその黒い液体を見る。
どうもそれはやっぱり俺の口から垂れているようだ。

「俺!?  これ俺の口から垂れてんの!? ……え。俺の顔今どうなってんの?」

少しだけ考えた後目の前の彼女は言う。

「今の先輩は最高に素敵ですよ」
「いや、具体的にどうなってんの?」

さっきより更に少しだけ眉を下げて困り顔になりながら彼女はポケットに手を入れると可愛らしいデザインの正方形を取り出した。
コンパクトミラーらしきそれを開くと俺に向ける。

「鏡みます? はい」

その鏡の中に顔が真っ黒な俺がいた。

「……なんだこれ! 俺の顔が黒く塗りつぶされてんじゃねーか!」
「はい。 いけませんでした?」

悪びれた様子も無く彼女は言う。
俺はなんだか疲れてしまって、溜息を吐いた。
64 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/07/09(月) 21:04:03.38 ID:JnxqerF10

「…………はぁ、なんだかなぁ……」
「どうかしましたか?」
「君って俺のドコがそんなに好きなの? 言葉を交わした回数だって少ないし」

こんな犯罪を犯してまで俺と付き合いたい(らしい)彼女は何でそんなに俺が好きなのか聞いてみることにする。
正直、思い当たる節が無い。
顔もそんなに格好良い方ではないし、運動が得意な訳でも無い。


キリっ、と顔を引き締めた彼女は宣言するように言った。

「私の、唯一絶対の希望だからですよ 」
65 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/07/12(木) 21:06:56.58 ID:b9JHiA5I0
真剣に言い放った彼女に対し、俺は
意味わかんねぇ……厨二なのか? なんて考えていた。

俺の沈黙をどういう意味に受け取ったのかは知らないが鞄の中から包みを取り出すと彼女は俺の前に差し出す。

「それより先輩そろそろお腹減ったでしょ? 私、お弁当作ったんでよかったら食べてください」

そう言って包みを開けると一般的なお弁当箱が出てきた。
確かに昼時だが緊張のせいか空腹は感じていないし、何が入っているかもわからない為どうやって断ろうか思案しているとそのお弁当箱の蓋が開かれる。
ドロドロででろでろしていて表現出来ない臭いな赤黒い何かが中に入っていた。

「はい。 あーん」

一見すると塩辛にも似ている半固形、半液体なそれを箸で摘むと彼女は俺の口元に近づける。
生臭くて微かに鉄の臭いがついていた。

「どうしたんですか? 食べないんですか?」
「何だよこれ」
「何でもいいじゃないですか」
「腹減ってないから」
「でももうお昼ですよ?」
「食欲、無いんだよ」

食べろ、食べないの問答を続けていたが俺が固く口を閉ざしてしまうと彼女は肩を落として弁当の蓋を閉めると

「……じゃあ、仕方有りませんね。 家で沢山食べましょう」

そう言って俺に笑いかけた。
66 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/07/12(木) 21:07:37.88 ID:b9JHiA5I0
生命の危機を感じながら俺は今後どうするかについて考える。
逃げるのはまず無理だ、となると諦めるか反撃か……または自害するか。
もしもこれからあんまりに酷な目に合うのならいっそヘリコプターの窓に体当たりでもして(足が縛られているので頭突きになるが)死んでしまってもいいかと思う。
とりあえずこれから俺はどうなるのかと後輩に聞いてみることにする。


「一つ、聞いてもいいか?」
「なんでしょう?」

俺から話しかけられたことが嬉しいのか若干にやつきながら彼女は応える。

「その、君の実家に着いた後は俺はどんな扱いを受けるのかな」
「秘密です」

語尾に音符でも付くんじゃないかと言う位楽しげに言うが俺は全然楽しくない回答だ。

「そ、そういわずに」
「着いてからのお楽しみですよ」

食い下がってみても効果は無い。
俺はクソッ……と心の中で悪態をついた。

「ホント、楽しみですね」

全然楽しみじゃないともう一度心の中で悪態を吐くと小さく舌打ちをした。
67 :今まで忘れてた ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/09/07(金) 15:07:51.91 ID:m3bm2KHd0


「他にも質問していいか?」
「なんでしょう?」

話しかけられたことが嬉しいのかにっこりと微笑んで俺に答えた。

「俺が逃げたとして、その後どうする?」
「逃げるんですか?」

首を傾げる動作は、普通に見たらかわいらしい。
が、この状況でそんな事思えるはずも無い。

「例えばの話だ」
「そりゃあ、追いかけますよ?」
「それで、追いかけて捕まえたら俺をどうする?」
「秘密です♪」

口に人差し指を当てて微笑んだ彼女に対して鳥肌しかたたなかった。
しかし先ほどから何も情報が与えられない。

逃亡した事で俺の待遇が良くなったりする場合、俺は是非とも逃走しようとする
だから、そんな逃走を促すような事は言わないだろう。
となると少なくとも俺にとって良い話になる事は無い。
恐怖……というよりは不安を与えて動けなくするつもりなのだろうか。

「もう少しで到着しますね」
「暇だから何かお話でもしましょうよ。 先輩」
「……」

アイスピックで刺されるより酷い事になるのは確かだなとぼんやりと思いながら俺は彼女の次の言葉を待った。

「何の話をしましょうか」
68 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/09/28(金) 03:12:56.14 ID:liAREvU+0


「そうだ。 私が先輩とお会いする前の先輩の生活についてにしましょう」
「どんな生活でした?」
「……秘密」

「は?」

目をかがやかせる彼女に対し精一杯の抵抗、と呼ぶにはしょぼすぎる返事をする。
案の定、彼女は刺すような視線で俺を見ると氷の様に冷たい声を出した

「……別に、普通だよ。 朝起きて飯食って学校行って帰ってきて寝るくらい」

当たり障りの無い回答をなんとか脳内から導き出し口に運ぶ

「ふーん……ね、前に彼女とかいました?」

納得していないようなトーンで呟いた後、急に楽しそうな質問をしてくる

「…さあね」
「いたんだ?」
「過去の事はどうだっていいだろ……」
「ま、今はそういう事にしておきます」

にこり、と彼女は微笑んだ。
あまりにも笑うので、よく笑う奴だなと場違にも呑気な事を考えてしまう
69 : ◆aSQx.z3IE/pB [sage]:2012/09/28(金) 03:20:38.76 ID:liAREvU+0


「もう到着しますね……」

口角は上がっているのに光の無い目で窓を見遣る

(どうしよう……)

ごくり、と唾を飲み込んだ瞬間
機械的なアラーム音が響いた

「ん……電話ですか。ちょっとすいません」

ポケットから携帯を取り出し、口に当てると彼女は『もしもし?』と会話を始める

「は? 私、消息不明の時探せって言いましたよね? ……貴方、どこから電話かけてるんですか?」

一言発するごとに眉根を寄せて険しい顔つきへと変化して行く
何を言われたのか解らないが彼女はいきなり爆発した

「―――[ピーーー]っ!」

彼女の手から投げ出された携帯電話が宙を描く
どう見てもイラついていた

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/12(月) 08:42:56.45 ID:VAVcREmy0
僕「こんにちは…」

君「どうも」
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