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ダークエルフ「男の尻尾をモフモフしたい」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/29(金) 17:50:53.14 ID:lq5sOVyg0
ダーク「私は隣の部屋に住む男が好きだ」

ダーク「二週間前にこのアパートに引っ越して来て、直ぐに一目惚れした」

ダーク「あの吊り目に、整った顔立ち」

ダーク「ぶっきらぼうだが、優しさを感じさせる言動」

ダーク「惚れないわけがない」

ダーク「そして、あの尻尾! あの耳!」

ダーク「たまらないな。モフモフしたい」

ダーク「男の部屋の壁に耳を当てながら、一日を過ごすのが日課となっている」

ダーク「明日から高等学校に行かなければいけないのが悔やまれる。ちくしょう」



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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/29(金) 18:04:49.70 ID:lq5sOVyg0
ダーク「私は優秀な人材を育成する王都立の高等学校ではなく、平凡な魔族が通う高等学校に通うことになる」

ダーク「憂鬱だ」

ダーク「あ、トイレを流す音が聞こえた」

ダーク「幸せだ」


ダーク「男も高校生くらいだろうか。同級生だったりしないかな」

ダーク「……いや、仮に高校生だとしても、優秀な妖狐族のことだ」

ダーク「王都立の高等学校に通ってるのだろう」

ダーク「男と青春を過ごしたかった。ちくしょう」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/29(金) 18:06:51.86 ID:lq5sOVyg0
こんな感じでやっていきます。
現行のssが終わり次第、本格的に書いていく予定です。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/29(金) 18:08:06.21 ID:LuIdp13Xo
何故終わってから立てないのか
まぁいい
早く書いてくれ今日は暑いから脱いでる
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/29(金) 18:14:51.48 ID:lq5sOVyg0
>>4
暫く前から立てたくてしょうがなかったのです。
体はちゃんと暖めてください。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/29(金) 18:15:39.26 ID:LuIdp13Xo
そういう事なら仕方ないな
気長に待ってる
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) :2012/06/29(金) 18:26:32.30 ID:s+EYOhJ20
期待
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [ saga sage]:2012/06/29(金) 19:39:33.38 ID:lq5sOVyg0
ダーク「男と結婚したい」

ダーク「子供は一人が良い。それか三人以上」

ダーク「男の為に毎日朝食を作って、一緒に食べる」

ダーク「仕事への見送りは勿論チューだ」

ダーク「夜は一緒にお風呂に入って、身体を流し合う」

ダーク「それから髪を乾かし合って、同じ布団で寝る」

ダーク「そして、一杯尻尾をモフモフするんだ」

ダーク「考えるだけで、多幸感で胸がぎゅーだ」


9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/29(金) 19:57:17.14 ID:lq5sOVyg0
ダーク「そもそも私は料理ができないな」

ダーク「……しょうがないだろう。使用人が作っていたのだ。
私の炊事力は五十三万です、なんて言えなくても」

ダーク「……お腹空いたな。出来合いの物を食べるのも飽きたが、買ってこなければ」

ダーク「壁への耳当てをやめるのも一大決心が必要だ。
しかし、朝から何も食べていない。餓死は嫌だな」

ダーク「名残り惜しいが、んっ」

ダーク「今日一日で一番頑張ったな。偉いぞ私」

ダーク「財布はテーブルの上だな。下着姿で出かけるわけにはいかないから、着替えもしなければ」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/29(金) 20:17:23.99 ID:lq5sOVyg0


ダーク「ーーよし行くか」


ダーク「風が冷たいな。早く暖かくなれば良いのに」


総菜屋「お、嬢ちゃんかい。いらっしゃい。
毎日、ウチの弁当ばかりで飽きないのかい」

ダーク「私は料理が作れないからな」

総菜屋「ふぅん。エルフにもできないことが有るんだな」

ダーク「私は出来損ないだからな。魔法も使えないんだ」

総菜屋「へえ。エルフってのは全員魔法が使えると思ってたが」

ダーク「その通りだ。だから私は出来損ないなんだ」

総菜屋「そんなに卑下しなさんな。弁当半額にしとくからさ」

ダーク「無料にはしてくれないのか」

総菜屋「こちとら商売なんでね」

ダーク「むぅ」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/29(金) 20:48:26.79 ID:lq5sOVyg0


ダーク「半額にしてもらった。良い魔族だな」

ダーク「あの総菜屋は純種ではないな。基調はコボルトか」

ダーク「純種はロクなのがいない。自尊心が強い奴等ばかりだ。そんなに混じってないのが偉いと思ってるのか」

ダーク「男は、純種だろうな。尻尾の毛並みが素晴らしいのが一目で分かるし」

ダーク「まあ、男は別だ。恋は盲目だからな。しょうがない」

ダーク「……やはり、純種が一切存在しないエルフ族なんて相手にしないだろうか」

ダーク「いや、そもそも純種の妖狐を選ぶか。……むぅ」

ダーク「まあ、私は壁に耳を当てていればそれで満足だしな。
今のところは」


ダーク「どうしてこうも世の中は上手くいかないのだろう」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/29(金) 21:11:01.83 ID:lq5sOVyg0

ダーク(男とまた話をしたいな。初対面の時に会話して以来、全然してない)

ダーク(どんな話をすれば良いのだろう。全く分からないな。
そもそも話したことある男性なんて、父親を含めても一桁じゃないだろうか)

ダーク(そもそも私は友達が少ない)

ダーク(しょうがないだろう。出来損ないなのだから)

ダーク(……また手首切りたいな。
そうしたら、また男が助けてくれたりしないかな)

呆けていた彼女は曲がり角で、誰かとぶつかった。
思いの外当たりが強く、彼女は尻餅をついた。


ダーク「す、すまない。考え事をしていた」

男「ん、気をつけてくれ」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/29(金) 22:05:26.68 ID:ld6tPHa7o
期待
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/29(金) 22:49:21.80 ID:jeTOapxdo
シエンタ
15 :地の文も混ぜていきます。 [saga]:2012/06/30(土) 07:44:49.64 ID:SxfwWlTk0
彼女の眼前に意中の相手がいた。

ダーク(男!? 今日もカッコ良いな。あの二本の尻尾をモフモフしたい)

男はいつまでも立ち上がらない彼女を怪訝そうに見つめる。

男「大丈夫か? 腰でも打ったのか」

ダーク(声もカッコ良いな。透き通るような低音で落ち着く。
もう知れば知るほど好きになってしまう)

男「おい。聞いてるのか」

ダーク「ひゃ、ひゃい! きき、聞いてます!」

彼女は慌てて立ち上がった。

男「ん、隣室のメンヘラか。暗がりで顔が見えなかった」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/30(土) 08:03:07.56 ID:SxfwWlTk0
男「またリストカットしてたりしないよな」

ダーク「し、してないです。あ、あの、ご、ご迷惑をおかけしました」

男「自覚があるならもうするなよ。
せっかく綺麗な肌をしてるんだ。傷つけたら勿体ないだろ」

ダーク「きき、綺麗!? そそ、しょんな!」

男「……随分と挙動不審だな。後ろめたいことでもあるのか」

彼女は強くかぶりを振った。

ダーク(どうして私はこんなにも緊張しているんだ。
舌が上手く回らないぞ)

男「まあ、良いけどな。……あ、その弁当」

彼の言と視線につられて、ダークエルフは下を見る。


購入した弁当が、無惨に散らばっていた。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/06/30(土) 10:31:39.04 ID:SxfwWlTk0
ダーク「あ……」

ダーク(夕食、また買いにいかなければダメだな。
総菜屋には悪いことをしてしまった)

男「悪い」

ダーク「い、いえ。わ、悪いのは私ですから」

男「そうだとしても、俺の気分が悪い。
何か奢らせてくれ」

ダーク「そ、そんな! わ、悪いですよ!」

男「んー、だったら俺が夕食を作る。良いか?」

ダーク「い、いい、良いんですか!?」

あまりの剣幕に彼は少し上体を反らした。

男「あまり美味いもんは作れないけどな」



18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/30(土) 14:11:49.09 ID:K5f+EPQpo
シエンタ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県) [sage saga]:2012/06/30(土) 22:14:47.34 ID:b06GI8yoo
男からの第一印象は最悪っぽいなwww
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/01(日) 10:30:43.48 ID:ZNeyAryE0
ーーーー男の部屋ーーーー

ダーク(ここが男の部屋か。男の匂いに満ちてるな)

ダーク(いっぱい嗅いでおこう)

ダーク(良い匂いだ。胸がぎゅーってなる)

ダーク(しかし、招かれるとは思わなかった)

ダーク(男は親切過ぎるな)

ダーク(それも好きになった要因だが)

ダーク(しかし、男の部屋は整頓されてるな。物が少ないのも有るが)

ダーク(私も、部屋を綺麗にしてなければ嫌われるか?)

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/01(日) 18:10:15.00 ID:ZNeyAryE0
ダーク(嫌われたくないな。むぅ)

ダーク(あ、そもそも最初の時点で好かれてはいないのか)

ダーク「ちくしょう」

男「どうした?」

ダーク「ひゃ!? ひゃ、ひゃんでもにゃいです!」

ダーク(かなり驚いたな。また変な声が出てしまった)

男「お前も中々の変人だな。俺も人のことは言えないが」

ダーク「ああ、あ、ありがとうごさいます!」

男「いや、褒めてないぞ」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/01(日) 18:21:17.82 ID:ojjOwPV9o
かわいい
23 :現行終わった。 [saga]:2012/07/01(日) 18:21:43.34 ID:ZNeyAryE0
男「できたぞ」

ダーク(料理、普通に美味しそうだな。家庭的なのか。
そういえば調理する音もよく聞いていたな)

ダーク(味わって食べなければいけないな。
細胞に染み込ませて二度と体外に出さないつもりでいかなければ)

男「食べないのか?」

ダーク「あっ、い、いただきます」

ダーク(美味いな。男が作ってくれたと思えば、千倍。
男の毛とか成分とかが入ってると思えば兆倍だ)

男「随分、美味そうに食うな」

ダーク「あっ、お、お腹が空いてたんです!」

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/01(日) 18:47:42.01 ID:ZNeyAryE0
男「ふうん。まあ、美味そうに食ってくれた方が嬉しいけどな」

ダーク「は、はい! が、頑張ります!」

男「いや、頑張らなくてもいいけど」



ダーク「ご、ごちそうさまでした!」

男「ん。お粗末様。洗ってくるわ」



ダーク(今気付いたが、食器はいつも男が使ってるもの。
……もっとねぶっておけば良かった)

ダーク(いや、引かれるか。
しかし、後悔の念は消えない)

ダーク(……男の尻尾。どうして動くのだろう。
妖狐族が扱えるという妖術の類なのか)

ダーク(……も、モフモフしたい)
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/01(日) 19:00:00.99 ID:ZNeyAryE0
ダーク(耳も可愛らしい。そして、あの二本の尾。
私を誘ってるのか?)

ダーク(噂に聞く『誘い受け』というものなのか?)

ダーク「あ、あの!」

男「ん?」

ダーク(……私はどうして声をかけたのだ?)

ダーク(誘ってるのか! とでも口にするつもりだったのか)

男「何だ?」

ダーク「おお、お、男さんって高校生なんですか!?」

ダーク(おお、凄いぞ私。ごまかせたうえに、訊きたかったことを口にできた)
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/01(日) 19:02:14.34 ID:exARJcORo
暇スレが終わったんだどんどん書きたまえ
俺は常に全裸待機している
27 :>>26 こちらはダラダラやっていきます。 [saga]:2012/07/01(日) 19:17:16.02 ID:ZNeyAryE0
男「ああ。メンヘラもか?」

ダーク「は、はい!」

男「エルフってことは、王都立のほうか。エルフ族は優秀だもんな」

ダーク(いや、私は出来損ないだから公立だが。
言ったら、男に幻滅されるか?)

ダーク(嫌われたくないな)

ダーク(……私はいつでも嫌われ役だがな)

男「俺は公立の高等学校だ」

ダーク「えっ?」

男「なんだ?」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/01(日) 20:27:16.70 ID:ZNeyAryE0
ダーク「お、王都立ではないんですか?」

男「ああ」

ダーク(男も私と同じ出来損ないなのか??
……だとしたら、浅ましいが嬉しい)

ダーク「あ、あの!」

男「なんだ」

ダーク「わ、私も公立です!」

男「そうなのか。……もしかして先輩か? 俺は新入生だが」

ダーク「わ、私もです!」

男「ああ、同級生か。
……そりゃ、最近引っ越してきたんだもんな。
同級生と考えるのが普通か」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/01(日) 21:30:56.58 ID:ZNeyAryE0
ダーク「そ、そういえば何処かに出かける予定じゃなかったんですか?」

ダーク(そうでなければ私と衝突しなかったからな)

男「ああ。ちょっと知り合いに用があってな。
いつでも良いような用事のはずだ。多分」

ダーク(自分の用事のはずなのに、随分と曖昧だな)

ダーク(……まさか女!?)

ダーク(確かに男は外見も良い。しかも優秀な妖狐族だ。
更に性格も良い。作る料理も美味しい。
好かれるのも当然だ。魔族が瘴気無しでは生きられないのと同じくらい当たり前だ。
だが私が一番男のことが好きだ。全部が好きだ。誰よりも愛している。
男のことを考えるだけで、一日を終えることだってできる)

男「そろそろ遅いし自室に戻れ。あまり長居されても迷惑だ」

ダーク「あ、すす、すいません!」

ダーク(随分とハッキリ言う。嫌われてるのだろうか)

ダーク(……それは本当に嫌だな)
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/01(日) 21:43:06.25 ID:xcqJX23vo
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/01(日) 22:05:22.13 ID:fXb5DWMCo
おちゅ
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 00:21:47.86 ID:9YdO6GVT0
某JKソロプレイ漫画を思い出したww
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 11:30:52.88 ID:8uzVE3BIO
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/02(月) 16:15:15.69 ID:LbOjQBFto

瘴気がどうのってことは世界観ってあの世界なの?
都市化してるみたいだし
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県) [sage]:2012/07/02(月) 17:29:37.55 ID:tuuCpCjfo
あの世界ってなに
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 17:57:52.94 ID:s68B363jo
同じ作者の他のSS
世界観は共通らしい
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/02(月) 18:30:50.77 ID:9sn3UqEio
>>35
どのスレかは頑張って探してくれ
しかし暇だなぁ
38 :世界観はこのスレだけでも分かるようにします。 [saga]:2012/07/02(月) 20:36:10.19 ID:2o7dYsSZ0
ダーク「あ、有り難うございました! め、迷惑かけてすいません!」

男「別にまだ迷惑とは思ってないが。
すぐそこだが一応送るぞ。男としてのマナーだからな」

ダーク「ああ、有り難うございます!」

男「本当に元気が良いな。まあ、無いよりは良い」





ダーク「私は夢を見ていたんじゃないか? あんなに男と喋れたぞ。夢見心地とはこのことか」

ダーク「男は殆ど笑わないな。だがそこが良い。歯を見せるのは本来威嚇行為らしいしな。私は取り敢えず敵と思われてないようだ」

ダーク「……違うか」

ダーク「しかし、男の部屋に比べると、私の部屋は散らかっているな。
聞いた話では、部屋は心を表すらしい」

ダーク「男の心の中も、あの涼しげな吊り目が捉える世界も、私のものよりずっと明瞭なのだろう」

ダーク「私も男と同じ気持ちで、同じものを見てみたい」


ダーク「ーーーー取り敢えず、また壁に耳を当てよう」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/02(月) 21:00:50.49 ID:2o7dYsSZ0
ダーク「爽やかに晴れた朝だ。今日から高校生になる」

ダーク「正直、昨夜までは学校生活が憂鬱だった」

ダーク「しかし、男も公立の高等学校に通うならば話は別だ。王都立でなくて良かった」

ダーク「神様ありがとう」

ダーク「いや、魔物しか住めないこの世界、感謝するのは魔神の方が正しいのだろうか」

ダーク「どうでもいいか」

ダーク「しかし、通学時と帰宅時に男を尾行できるとはな」

ダーク「私にも運が回ってきたようだ」

ダーク「誕生した瞬間から、私は不運だったからな」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/02(月) 22:32:36.72 ID:2o7dYsSZ0



ダーク「今の音、男が部屋を出たようだな。私も少し間を空けて行くか」



ダーク(男は後姿もカッコ良いな。雰囲気がある)

ダーク(しかし妖狐族の服は、上着はエルフ族と同様だが、下はモフモフ尻尾がある分独特だな)

ダーク(魔族にも色々と体型があるからな。それを仕立てるのを生業にする者たちは大変だろう)

ダーク(……男の尻尾はよく動くな。
本当に誘っているのだろうか。モフモフしたい)

ダーク(妖狐族は毛並みを褒めると嬉しいらしいが、男も喜ぶのだろうか)

ダーク(私が褒めようとしたところで噛んでしまうだろうが)

ダーク(……急に振り向いた)

ダーク(しまった、立ち止まってしまった。
後ろを尾けていたことがバレてしまう)
41 :まとめサイトにのったよ! やったねタエちゃん! [sage saga]:2012/07/04(水) 00:07:32.87 ID:r6p+IeLb0
ダーク(こっちに寄ってきた。怒鳴るつもりなのだろうな。
嫌われてしまったのか)

ダーク(……どうせ元々嫌われていたか。男は優しいからこんな出来損ないの私にも構っただけだろう)

ダーク(変な期待を持つから心がキューってなるんだ。淡い想いなど最初から捨ててしまえば良かった)

男「おはよ。朝から随分と辛気臭い顔してるな」

ダーク「お、おはようございます。そ、そうですか?」

男「ああ。ところで一緒に行かないか? お前が良ければだが」

ダーク「い、いい、良いんですか!?」

ダーク(尾けてたとは思われてないのか? その方が断然良いが)

男「ああ。しかし、凄い剣幕だな。中々迫力がある」

ダーク「あ、ありがとうございます!」

男「……褒めてないんだけどなぁ。まあ、どういたしまして」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/04(水) 00:11:51.36 ID:r6p+IeLb0


ダーク(……何か話題を見つけないと)

ダーク(それにしても、昨日から心臓の鼓動が速過ぎる。これでは生き急ぐことになるかもしれないな)

ダーク(まさか男の隣を歩きながら通学できるとはな。エルフ冥利に尽きる)


ーーーーお前をエルフとは認めない。


ダーク(……しまった。嫌なことを思い出してしまった。せっかく男といるのに、この幸せな感情にモヤモヤを入れたくない)

男「お前って、会う度に印象変わるな」

ダーク「そ、そうですか?」

男「ああ。初対面ではメンドくせぇ奴だと思ったが」

ダーク(完全に同意だな。あの時は殆ど発狂してたからな)
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県) [sage]:2012/07/04(水) 00:58:55.14 ID:HBTHro4Xo
まとめに載って喜ぶのか…
ないわ
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/04(水) 01:01:00.21 ID:a641n2i2o
乙?
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 01:02:38.64 ID:NUgsUZlXo
>>43
やったねタエちゃんでggr
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県) [sage]:2012/07/04(水) 01:12:00.47 ID:HBTHro4Xo
>>45
誤用
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/04(水) 01:35:19.65 ID:r6p+IeLb0
男「でも、昨日は妙に明るかったしな」

ダーク(昨日は昨日で精神が限界だったからな)

男「メンヘラは奇妙な奴だな。それともエルフの種族性だったりするのか」

ダーク「いや、私が変わってるだけだ……」

男「お、敬語を使わなくなったな」

ダーク「あっ。すす、すいません!」

男「謝る必要はないだろ。同級生なんだからそれが普通だしな」

ダーク「で、でで、でも……」

ダーク(相対年齢は同じでも実年齢はそれなりに離れていると思うが)
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/04(水) 01:55:36.21 ID:r6p+IeLb0
男「自然体で話せよ。その方が俺も気楽だ」

ダーク「わかりまし……分かった」

ダーク(男がそう言うなら、そうしよう。その方が親密に感じるしな)

ダーク(更に仲良くなって、そのうち恋仲になって、デートしたり、手を繋いだり……)

男「……顔が紅いが、大丈夫か?」

ダーク「だ、大丈夫だ! 健康だ! 今なら空を飛べそうだ!」

男「……本当に大丈夫か。熱でも有るんじゃないか」

ダーク「ほ、本当に本当に大丈夫だ!」

男「……なら良いんだがな。体調が悪いようなら無理はするなよ」

ダーク「だ、大丈夫だ。心配してくれて有り難う……」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 07:08:40.78 ID:BixAN+rSO
>>43
お前もSS書いてみれば分かる
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 08:18:13.72 ID:jXtR6zhmo
>>49
キモッ
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 11:58:33.95 ID:1BVCwYqIO
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/07/04(水) 14:08:09.00 ID:qzvWiGmAO
荒ぶるなお前等

>>1
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) :2012/07/04(水) 16:03:50.70 ID:EPWiNbwm0
荒れる流れが好きな奴等は、そういうスレ別に作って、似たもの同志でずっと争い合ってろよ
ここはSS読んでprprする場所かと思ってたんだが、一部にはそうではないようだ。

名前の横に、長屋とか四国とか都道府県以外が出てくるのはなんでなんだろう?
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/04(水) 16:37:08.65 ID:6e6o8UZ/0
>>1

荒らしは無視した方がいい
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 17:46:00.38 ID:gmMRHEP00
>>50
書いたこと無い奴に批判する資格無し
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 17:56:00.97 ID:hfbmSn1Zo
>>55
馬鹿すぎワロタw
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 18:18:21.85 ID:a3x2Qd3w0
>>55
無知の知
黙っといてやれ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2012/07/04(水) 18:22:55.69 ID:wt2szuEfo
書いてる奴はまとめに載るのは嬉しい事なのかも知れないけどまとめが嫌いな人が多いからまとめの話はしないでほしい
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/04(水) 18:26:50.06 ID:7w1fxx+Po
ここでも長屋かよ。

これだから長屋は
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/04(水) 18:30:24.82 ID:4abfxN66o
伸びてるから続ききてんのかと思ったら荒れてんな
いちいち反応せずスルーしとけよ
あと長屋だからって荒らしと決め付けるのはよくねぇぞ
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/04(水) 18:46:15.48 ID:EPWiNbwm0
長屋 2chで見たら地域表示の意味が理解できた
スシ詰め住居住んでる奴はストレスマッハだから
荒らしに走りたくなるんだろうなと納得
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 19:16:58.55 ID:V8+EA6GIO
>>55
こういう馬鹿も見てるぐらいだからしょうがない
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 19:50:10.65 ID:1EAv6FHao
続き待ってる
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 20:13:57.70 ID:WG2zmgTIO
>>62
安価ミスってるわ

こういう馬鹿は>>55のことな
いつもの
嫌なら見るな出来ないのに批判するなってw
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/04(水) 21:34:07.74 ID:FNj9n+Cuo
なんでお前ら黙ってられないの?
ゆっくり>>1を待とうぜ……
66 :荒れるようなことを書いて申し訳ないです。 [sage saga]:2012/07/04(水) 23:17:17.23 ID:r6p+IeLb0



校長「ーーーーこの学校には様々な種族がいる。そしてその全員に或る共通点が有る。
それは、君たちはこれからの未来を担う者たちだということだ。
これからの三年間で、互いを分かりあい、互いに成長していって貰いたい。
あまりに短い時間だが、今の時期に培ったものは生涯君たちの力となり、自信となり、誇りとなるだろう。
後悔しないように過ごして欲しい
そしてーーーー」


ダーク(……男の後姿を凝視していたから殆ど聞いてなかったな。しかし、余りにも冗長だ。もっと短縮できるだろう)

ダーク(……私の近くに座っている魔族たちの、奇異の視線が鬱陶しい)

ダーク(男以外に視姦されても嬉しくないぞ)

ダーク(勿論男なら大歓迎だ。むしろ私だけを見ていて欲しい)

ダーク(喜ばしいことに、同じクラスにもなれたしな。もしかしたら私は現在、一生分の幸運を費やしているのではないか?)

ダーク(少し先の未来に大きな不幸が待ち受けていたりしてな)

ダーク(……妙な杞憂は止めておこう)
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/04(水) 23:22:55.88 ID:r6p+IeLb0




ダーク(ホームルームが終わった。私の席は窓側の一番前。男の席は窓側の一番後ろだ)

ダーク(男の姿を見るのが一番難しい位置だ。ちくしょう)

ダーク(……いや、男に見られてると思えば良いのか。男が私に舐めるような視線を向けている。そう考えれば幸せな気持ちになれるな)

ダーク(我ながら天才だな。ふふん)

「本物のエルフなんて初めて見た……」
「エルフは本当に珍しいよな……。しかも肌が黒い……」
「でも、なんで優秀なはずのエルフが公立なんかに通ってるんだ……?」

ダーク(聞こえてるぞ。私に聞こえ
ないくらいまで声量を絞れ)

「多分、落ちこぼれなんだろ……」
「あのエルフにも劣等種がいるのか……?」
「エルフは混種しかいないから、基調がエルフでもその様相は存外多様らしいわよ……」
「えーと、つまり変異が負の方向にいっちゃったってこと……?」

ダーク(……その通りだよ)
68 :sage忘れてしまいます。 [saga sage]:2012/07/04(水) 23:26:44.61 ID:r6p+IeLb0
「机に突っ伏したぞ……」
「聞こえてたんじゃね……」
「あら。にしても、エルフは高慢って聞くけどどうなのかしら?」
「ちょっと……。声が大きいよ……」

ダーク(……帰ろう。此処にいると胸がキューってする)

彼女は伏せていた上体をもたげ、椅子を引いて立ち上がった。

ダーク(ーーーーあ)

立ち上がった直後、彼女の華奢な躰が傾いた。
彼女の内面の揺れ幅を表すように。


しかし、彼女の痩身が床を打つことは無かった。


男「おい、メンヘラ。帰るぞ」


ダーク(……男に支えられてるのか)



ダーク(男の手、温かいな)
69 :今日は終了です。 [saga sage]:2012/07/04(水) 23:29:23.91 ID:r6p+IeLb0
ダーク(……っ。どうしてこれくらいで私の涙腺は緩むのだ。泣いたら男に迷惑だろう)

周囲の者たちは重く沈黙していた。

男「自分で歩けるか?」

ダーク「だ、大丈夫だ。空も飛べるぞ、多分」

男「飛ばなくて良いから歩け。まあ、それだけ言えるなら元気だな」

彼は彼女を垂直に立たせ、抱えていた手を離した。

ダーク(……もう少しだけ支えて欲しかったが、ワガママだな)

男「ほら、行くぞ」

ダーク「あ、ああ」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/04(水) 23:36:19.66 ID:rCmVRCNa0
なんか良いなこれ
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/04(水) 23:59:32.94 ID:N4aLHwMGo
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/05(木) 00:04:17.38 ID:eUneINJto
おつおつ
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/05(木) 06:56:50.92 ID:ySl1nJsh0
乙です。こちらも頑張ってねww

魔王のwikiページは
あちらのスレの>>2に存在してましたので、そこを雛型もとにして編集してみました
変な部分あれば補完お願いします
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/05(木) 06:58:45.10 ID:ySl1nJsh0
安価違いごめん。元スレ1のリンク先編集
75 :>>23 おお! 有り難うございます! [sage saga]:2012/07/05(木) 20:30:29.53 ID:phfkUSq00
ーーーー通学路ーーーー

ダーク「すまなかった……」

男「何に対する謝罪だ?」

ダーク「いや、迷惑をかけてしまったから」

男「別にあれくらいなら範疇に入らない。俺の心は広いしな」

ダーク(……本当に男は心が広い。私のような出来損ないにも優しくしてくれるのだから)

男「クラスの奴等の言葉は気にするなよ。
アイツらもお互い親しくなる為に、共通の面白い話題を考慮した結果だろうし。
その結果が悪口というのは、些か低脳が過ぎるがな」

ダーク「しかし、殆ど事実だ……」

男「ん?」

ダーク「彼等の言通り、私は劣等種だよ。エルフ族最大の特長である魔法も使えない」

男「……ふうん」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/05(木) 20:49:25.40 ID:phfkUSq00
男「で?」

ダーク「……え?」

男「それがどうしたんだよ? お前が悪口言われて良い謂れになるのか?」

ダーク「……事実だからな。悪口には当たらないだろう」

男「……ふうん」

暫く沈黙が続く。

彼女の歩みは気まずさからか、少しだけ幅を増した。

彼もそれに合わせる。
元々、最初から歩の速度を彼女に合わせていた。

彼にしては、非常に珍しいことだった。

男「お前が自分をそう思うのは構わない。でもな、俺はムカついた」

ダーク「……?」
77 :>>73でした。すいません。 [sage saga]:2012/07/05(木) 21:32:01.92 ID:phfkUSq00
男「アイツらはお前を何一つ知らないだろ。
俺だって殆ど知らないが、少なくともアイツらよりは知ってるつもりだ」

彼は前方に視線を固定したまま言う。

男「お前はメンヘラで、挙動不審で、奇妙な奴だ。メンドくせぇ奴だ」

ダーク(返す言葉もない)


男「だが、俺は嫌いじゃない。料理を美味そうに食ってくれたしな」

ダーク「……実際に美味しかったからな」

男「どうも。
とにかく、俺はお前をアイツらの言葉通りの奴だとは思えない。だから、まあ、おこがましいが、お前はもっと自分に自信を持てよ」

ダーク「……自信、か」

ダーク(私が自負できるものは何だろうな)
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/05(木) 21:53:37.40 ID:phfkUSq00
男「まとまりがないことを言って悪かったな」

ダーク「そんなことはない。ありがとう」

言って、彼女は微笑む。

男「おう。それと、お前は笑った方が可愛いな。いや、綺麗の方が適切か」

ダーク「にゃ!? にゃにゃ、にゃにを言ってるんだ!?」

男「ケットシーの真似か?」

ダーク(噛んだだけだ。
……顔に血が集まってのが分かるぞ。男はこんな簡単に私を慌てさせるから質が悪い)

ダーク「わわ、私は先に帰る! さ、さよなら!」

彼女は駆け出そうとして、前に踏み出そうとした足が、地を踏んでいた足にひっかかり、前に転びほうになる。

しかし、再び彼の腕がそれを止めた。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/05(木) 22:01:25.25 ID:phfkUSq00
男「危なっかしいな。良いから一緒に帰るぞ。見送った後に怪我をされたら俺が後悔するだろ」

ダーク「あ、す、すいません……」

男「いいから。ほら、体勢整えろ」

ダーク「あ、はい……」

男「敬語に戻ってるぞ」

ダーク「あ、ああ……」

男「ん、よろしい。帰るぞ」



ダーク(優し過ぎるだろう)

ダーク(これ以上惚れさせてどうするつもりなのだ)
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 03:54:47.39 ID:2K0/6pVao
支援ぬ
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/06(金) 05:16:54.48 ID:izPzjcvqo
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 08:42:13.55 ID:eXBzAcjWo
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/06(金) 23:02:46.60 ID:jOUAb03U0
ーーーーダークエルフの部屋ーーーー

ダーク「明日も共に登下校しないかと誘われた」

ダーク「……遂に私の時代が訪れたようだ」

ダーク「私と男が結ばれる日も遠くないな」

ダーク「こうなったら、将来に備えて料理を覚えておくか。良いお嫁さんで有りたいしな」

ダーク「食材を買って。料理本も買って。ダンボールに入れたままの食器類もおろして。……準備に時間がかかるな」

ダーク「しかし、思い立ったが吉日。頑張るか」

ダーク「……取り敢えず壁から耳を離そう」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sagasage]:2012/07/06(金) 23:04:54.49 ID:jOUAb03U0
ーーーー本屋ーーーー

ダーク(問題は何を作るかだな)

ダーク(男の好物を作れるようになりたいが、そもそも好物が分からないしな)

ダーク(肉料理か? しかし、男は肉食系には見えないな)

ダーク(氷をガリリと噛んでいそうだ。勝手な想像だが)

ダーク(どちらかというと、魚料理の方が好きそうだな)

ダーク(しかし、私に捌けるのか。内臓を取り出せる自信が無いぞ)

ダーク(あ、切り身を買えば良いのか)

ダーク(ならば、ムニエルとかを作ってみるか)
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/06(金) 23:08:07.40 ID:jOUAb03U0
ーーーー帰り道ーーーー

ダーク(材料も買ったし、帰ったら早速作ってみるか。既に食器類も取り出しているしな)

ダーク(洗濯もできるようになったし、料理ができるようになれば私の生活能力は飛躍的に向上するな。目指すは良妻賢母。炊事力五十三万)

ダーク(母ということは、私と男に子供ができるということか。ということはーー)


ダーク(い、いや。この思考は止めにしよう。顔が紅くなってきた)

ダーク(早く帰ろう)


ダーク(しかし、薄暗くて侘しい道だ)

ダーク(夜に女独りで歩く道ではないな)

ダーク(次からはもっと往来の多い道にしておこう)
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/06(金) 23:11:26.24 ID:jOUAb03U0
ダーク(ーーん?)

ダーク(眼前にいるのは誰だろうか)

ダーク(……妖狐族か?)

ダーク(随分と美しい女性だな)

ダーク(……男は、やはり彼女のように同じ妖狐族が好みなのだろうか)



ダーク(あの制服。王都立の生徒か)

ダーク(王都立は凄いな。年中無休で夜遅くまで勉強するのだから)

ダーク(しかも九年間もだ。流石世界一の選民育成学校だ)



ダーク(しかし、美しい妖狐だ。男もだが、冷静で知的な印象を受けるな)

ダーク(それにしても、どうしてこんな夜道に佇んでいるのだろう。イヤホンを付けてるようだが)
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/06(金) 23:12:45.88 ID:jOUAb03U0
「……っ!!」

ダーク「ひゃっ……!」

ダーク(何だ? 急にイヤホンを外したと思ったら、鬼気迫る顔になったぞ)

ダーク(思わず情けない声が出てしまった)

「……」

ダーク(に、睨まれているぞ。取り敢えず目を逸らしておこう)



ダーク(やり過ごせたか。悪漢では無いが、恐ろしかった)

ダーク(……あの妖狐、どことなく男に似ていたな)
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/06(金) 23:14:04.67 ID:jOUAb03U0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク「これが白身魚の手触りか。ふむふむ」

ダーク「えーと、まずは……」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク「フライパン、フライパン」

ダーク「誘導加熱調理器にのせてーー」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク「バターを敷いてーー」

ダーク「次は、えーと、えーと……」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/06(金) 23:15:20.75 ID:jOUAb03U0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク「あわわ、レシピ本に水が……」

ダーク「だ、大丈夫なようだな」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク「身が焦げた……」

ダーク「私の肌より黒いぞ」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク「盛り付け、盛り付け」

ダーク「うう、写真通りにはいかないな」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク「洗い物を先にしておこう」

ダーク「だいぶ汚してしまった。特にフライパンが酷いな」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/06(金) 23:18:11.86 ID:jOUAb03U0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク「つ、疲れた……」

ダーク「もう遅い時間だな」

ダーク「こんな時間に食べたら太るか?」

ダーク「……良いか。お腹が空いたしな」

ダーク「いただきます」


ダーク「……まずっ」

ダーク「パサパサだし、余りにも大味過ぎる」

ダーク「……自分で料理を作ると、使用人さんの有り難みを深く実感するな」

ダーク「彼女の料理がまた食べたい」

ダーク「……残さずに食べよう」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/06(金) 23:19:52.62 ID:jOUAb03U0
ダーク「ごちそうさまでした」

ダーク「私は偉いな。全部食べたぞ」

ダーク「皿とかは明日の朝で良いか」

ダーク「良妻の道は遠い」

ダーク「いっそ男を嫁に貰えば良いのかもしれないな」


ダーク「……取り敢えず夜だけでも毎日頑張ろう。魔法と違って素質の有無は関係無いはずだしな」

ダーク「もう少し経ったらシャワーを浴びるか」

ダーク「その前に予習もしておこう」

ダーク「勿論、男の部屋との壁に耳を当てながらだ」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 00:34:27.59 ID:CJChMaJPo
抱きしめたい
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 01:23:24.82 ID:FHXpmjGSO
健気?なダークエルフたんペロペロ
94 :我ながら冗長な展開速度だな [saga]:2012/07/07(土) 22:00:24.12 ID:n7OQO6JS0
男「はあ」

ダーク(随分と深い溜息だな。何かあったのか?)

ダーク(訊いて大丈夫だろうか)



ダーク「ど、どうかしたのか」

男「ん? ちょっとな。俺の周りにはメンドくせぇ奴しかいないことにふと気付いてしまったんだ」

ダーク(……その“メンドくせぇ奴”には、私も含まれているのだろうな)

ダーク「すまない……」

男「ん? ……ああ、確かにお前もメンドくせぇけど、迷惑じゃないから良いんだよ」

ダーク「そ、そうか。ありがとう」

男「礼を言われることでは無いだろう」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/07(土) 22:03:14.08 ID:n7OQO6JS0



男「クラスに中々馴染めなくても塞ぐなよ。俺も口が悪いから嫌悪されるだろうしな」

ダーク(男は口が悪いというよりも、包み隠さずにはっきりと物事を口にする性分のようだが)

ダーク(私は勿論そんな男も好きだが、不快を覚える者がいるのも当然といえば当然か)

ダーク「大丈夫だ。男もいるしな」

男「……ああ、うん。何かむず痒いな」

ダーク(……私もだ。何を口走っているのだろう)

男「まあ、どうせ三年間だ。俺からすれば微々たる時間だよ。妖狐は長命だからな。殆ど不死だよ」

ダーク(純種の妖狐族では、未だに老衰で亡くなった者がいないらしいしな)

男「エルフ族もそれなりに長命だろ」

ダーク「ああ。普通は千年くらい生きるからな」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/07(土) 22:05:56.06 ID:n7OQO6JS0
ダーク(尤も、私のような黒い肌をしたエルフの寿命は記録にないがな)

ダーク(黒エルフは最近になって存在を確認されたばかりだからしょうがないのだが)

ダーク(私は自分がどれだけ生きられるのか見当もつかない)

ダーク(一般のエルフのように千年ほど生きる可能性も有るし、明日死ぬ可能性だって零ではない)

ダーク(ーー黒エルフは、私は何者なのだろうか)


男「惚けてるが大丈夫か?」

ダーク「あ、ああ。昨日美しい妖狐に会ったからな。思い出していた」

男「……尾は何本だ。四本か?」

ダーク(……随分と真剣な表情で訊くな)
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/07(土) 22:07:26.84 ID:n7OQO6JS0
ダーク「いや、確か二本だったと思う」

ダーク(見惚れていて、あまり観察してなかったから確信はないが、四本ではなかったはずだ)

男「……そうか。四本ではないか。なら良いんだ」

ダーク(いつもの無表情が翳っている……?)

ダーク(男。分かりにくいが落ち込んでるのか?)

ダーク(……男が誰かのことで一憂するのは快くないな)

ダーク(特に異性のことで)



男「あ。もしかして見た妖狐ってのは王都立の制服を着ていなかったか」

ダーク「あ、ああ。着ていたな」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/07(土) 22:09:07.14 ID:n7OQO6JS0
男「……はあ。成る程なあ。アイツ、不審な振る舞いをしていなかったか」

ダーク「……イヤホンを付けていたが、怖い顔でいきなり外していたな」

ダーク(睨まれたことは黙っておこう。何となく)

男「ああ、はいはい」

ダーク(合点がいった顔をしているが、どういうことだろう)

ダーク(あの美しい妖狐と知り合いのようだが。姉とか、妹とか)

ダーク(……彼女、だったりしないと良いが)

ダーク(また胸がキューってしてきた)
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/07(土) 22:10:44.49 ID:n7OQO6JS0
ーーーー公立高等学校ーーーー

ダーク(クラスの中で私たちが付き合っているという噂が立っているようだ)

ダーク(私は嬉しいが、男は嫌がっているかもしれない)

ダーク(しかし、男は何も弁明しないだろう)

ダーク(どうすれば良いのだろうか)

ダーク(……むぅ)


ダーク(しかし、クラスメイトと仲良くなれる気がしないな)

ダーク(中等学校時代からそうだったから尚更だ)

ダーク(……馴染むのはやはり諦めた方が良いか)

ダーク(男と同じクラスというだけで幸せだしな)
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/07(土) 22:13:32.36 ID:n7OQO6JS0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

語学教師「えー、高等学校では公用語である『人語』の造詣を深め、他方で各民族の言語も習得していく」

語学教師「言語は賢さの下地だ。真面目に受けろよ。私のテストは難しいからな」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

歴史教師「高等学校の歴史では、中等学校で習った歴史を更に深く学びます」

歴史教師「自分は特に戦国時代が好きですね。鬼蛇戦争などは皆さんも中等時に習ったでしょう」

歴史教師「勿論、四百年ほど前に勃発した世界大戦の詳細も学びますよ」

歴史教師「歴史はその流れを理解できれば、下手なコミックやノベルよりも面白いです。一緒に楽しい授業を目指しましょう」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/07(土) 22:16:55.83 ID:n7OQO6JS0
化学教師「化学では魔物の生命維持に必須であり、電気生産の原料などで我々の生活基盤を支える『瘴気』などを化学式を用いて紐解いてくからね」

化学教師「じゃあ、一番前の席のオーク君。
瘴気を構成する元素四つを知ってる?」

オーク「えーと、『瘴子』、『壊子』、『毒子』、『灰子』です」

化学教師「ちゃんと勉強してるね。偉いね」


化学教師「にしても、『壊子』と『灰子』は音が一緒だし、化学的性質も似てるからややこしいね」

化学教師「間違えないように気をつけようね。私も学生時代はよく間違えたからね」

ーーーーー
ーーーー
ーー
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/07(土) 22:19:27.31 ID:n7OQO6JS0
生物教師「おう! 新入生! こりゃまた色んな種族が混じってんな!」

生物教師「一年次の生物では、細胞や魔族共通の器官、遺伝について勉強するぜ! 魔獣と魔草木の器官もな!」

生物教師「二三年次は各魔族の特徴的器官や、細胞を更に深く学ぶ! このクラスにはめちゃくちゃ珍しい黒エルフや、不死に等しい妖狐族もいやがるな! 俺も楽しい時間になりそうだ!」

ダーク(無遠慮な教師だな。他の教師のように無言でジロジロ見られるよりは潔くて好ましいが)

生物教師「ちなみに生物を受け持つのは 三年間俺だ! 覚悟しやがれよ!」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/07(土) 22:23:15.39 ID:n7OQO6JS0
ダーク(昼休みだ。学食に行って食事をするか、購買でパンを買うか)

ダーク(クラスでら弁当を持参している者が多いな)

ダーク(男はどうするのだろうか)

男「おい、メンヘラ」

ダーク「あ、な、何だ?」

男「お前は昼食どうするんだ?」

ダーク「学食か購買にしようと思っていたが」

男「そうか。弁当なら一緒に食べようと思ったんだが」

ダーク「あっ、じゃ、じゃあ購買でパンを買ってくる! い、急いで行ってくるから!」

男「そうか。別に急く必要はないからな。ゆっくり行けよ」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
104 :今日の投下は終了です。 [saga]:2012/07/07(土) 22:28:52.16 ID:n7OQO6JS0
ダーク(男とご飯か)

ダーク(何を話そう。お弁当を褒めたりとかすれば良いのか?)

ダーク(私は男のことを未だ未だ知らないからな)

ダーク(訊きたいことはたくさん有る)

ダーク(でも、質問ばかりするのは良くないと聞いたな。気を付けなければ)

ダーク(早くパンを買おう)

ダーク(一つで充分かな)


ダーク(早歩きで戻ろう)

ダーク(周囲から不躾な視線も向けられているしな)

ーーーーーー
ーーーー
ーー
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 22:42:14.35 ID:FHXpmjGSO
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 23:18:14.11 ID:HrfpN9CY0
あの世界の設定ならエルフは皆殺しされたり、ほかの種族との子供作ると生殖機能無くなるってあるけど、
まだ生き残りはいたってこと?
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/07(土) 23:33:37.53 ID:XiogYc41o
純種で無ければ生殖機能は無くならないんじゃないのかね
世界観は一緒でも違うSSだからあんまり詮索してもしょうが無い
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/07(土) 23:40:17.74 ID:n7OQO6JS0
>>106
物語とは直接関係しないはずなので補足します。

人間の国で奴隷化されていた純エルフの生き残りを臣と司書が連れてきました。
『浄化の呪』はエルフが遺した手記などに載っていたと思います。
純エルフは子供を一人しか埋めませんが、ハーフエルフ以降は関係ないと思われます。
血が濃くなることを恐れた結果と、司書がおそらくエルフのハーレムをまで作ってしまった結果、純エルフの子はいなくなりました。
亡命してきた純エルフは寿命と戦争でもう亡くなったと思われます。


要するに「司書[ピーーー]」です。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 23:45:43.65 ID:HrfpN9CY0
>>108
補足ありがとうございます






司書くたばりやがれ
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/07(土) 23:50:21.97 ID:XiogYc41o
司書の血筋なのか…でも司書って元々エルフと魔王の孫じゃん
クウォーターと純種の子孫だから結構血は濃いんじゃないのかね
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/07(土) 23:52:33.35 ID:n7OQO6JS0
歳月はかなり経っています。
血が濃いというのは種族ではなく、近親とかのアレの話です。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 23:54:13.49 ID:FHXpmjGSO
あの世界あの世界ってなんだよ

このSSしかしらないやつは置いてきぼりですかそうですか
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/08(日) 00:01:52.72 ID:9FOSTh1Z0
>>112
裏設定的なものなので流していただければ幸いです。
世界観共通の前作的なものが有ることは有るのですが、長いし胸糞悪いしで勧められる作品ではないです。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/08(日) 00:51:15.86 ID:F5J4F5SYo

>>1が勧められないと言う以上外野からは貼らないほうが良さそうかな?
こっから独り言だけど、前作的なアレまた読んできたけどまた泣いてしまった。
まぁまた>>1のペースで書いてくれ
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 01:59:42.54 ID:DDy7rK/Go
胸糞悪いのは姫の殺され方ぐらいでかなりの良SSだったと思うけどなぁ
疎外感を感じる人もいるだろうし>>1は自信を持って紹介していいんだが
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 05:01:17.83 ID:8HBVgQXso
気になる
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/08(日) 05:29:02.76 ID:14HCOiu70
両方WIKIがあるんだし、関連作品ってことでWIKIに入れとけばどーかね?
興味ある人は、そのくらい調べる手間は厭わんだろうし
作者である>>1さんのOK出れば、前作同様にテンプレ成分程度だけど埋めとくよ
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/08(日) 06:42:52.90 ID:yk227mOPo
まぁ好みが別れそうな作品だったしな
>>1の判断に任せよう
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 06:51:08.34 ID:TLAT5hUIO
寧ろ気になるのは胸糞の悪さまで共有するんじゃなかろうかって点だな
あんまりアレな様ならそっとスレを閉じるんだけど
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 06:54:23.47 ID:G5f/+tPQo
このダークエルフはあれだな
東海地方の生まれだな
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 12:23:54.11 ID:eHqIfxwio
どっちも面白いのは確か
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/08(日) 13:30:58.41 ID:9FOSTh1Z0
魔王「暇だな」
という作品と世界観が共通しています。
自分の端末からはURLを貼り付けられないので、興味を持った方はお手数ですが検索にかけてみてください。

取り敢えず、前作ほどの胸糞は無いはずです。
クズキャラは出ますが。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/08(日) 14:02:46.82 ID:9FOSTh1Z0
ダーク(男がクラスメイト二人と会話している)

ダーク(机を寄せ合っているし、一緒に食べるのか?)

ダーク(……全員男子で加わり辛いな)

男「あ、戻ったか。早く来いよ」

ダーク「あ、ああ」


ヴァンパイア「どもども」

オーク「こんにちは」

ダーク「どうも」

ダーク(吸血鬼と猪人か。オークはHR委員だったか)
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/08(日) 14:04:58.29 ID:9FOSTh1Z0
ダーク(どうせなら男と二人の方が良かったな)

ヴァンパイア「ダークエルフさんはクール美人だよな」

ダーク「ありがとう」

ヴァンパイア「男と付き合ってるのか」

男「いや。違うが」

ダーク「あ、ああ」

ダーク(その通りなのだが、男の口から言われると心にくるな)

ヴァンパイア「ほほう。じゃあ登下校が一緒なのは何でなんだぜ」

オーク「そうなのかい?」

男「アパートの部屋が隣なんだよ」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/08(日) 14:09:15.46 ID:9FOSTh1Z0
ヴァンパイア「なんと。二人とも一人暮らしなのか」

ダーク(あまり教えたいことではないのだが。物騒だしな)

オーク「一人暮らしは憧れるけど、やっぱり面倒事も多そうだね」

男「まあな」

ヴァンパイア「でも羨ましいぜ。
俺も一人暮らしして彼女と気のゆくまでイチャイチャしたいぜ。甘噛みしながら血を吸いたいぜ。
彼女いないけどな!」

オーク「自虐はよしなよ。
それにしても皆は小食だね」

ダーク(大きい弁当箱だな)

ヴァンパイア「オークは身体がデカいんだから、たくさん食って当然だろ」

男「ああ」

ダーク「ヴァンパイアは血を飲まなくて良いのか」

ダーク(吸血鬼は一日に血を少量摂取することが必要らしいが)
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/08(日) 14:11:36.37 ID:9FOSTh1Z0
ヴァンパイア「俺は純種じゃないから、週一くらいで良いんだぜ」

オーク「ヴァンパイア君も混種なんだね。僕もだよ。男君は?」

男「純種だが」

ダーク(やはり男は純粋な妖狐族か。毛並みが美しいのは血統書付きというわけだな)

男「まあ、気にしないでくれ。混ざる混ざらないなんてそんな気にすることでもないだろ」

ヴァンパイア「ほほう。男は変わってるな。優秀な一族の純種は偉そうにしてるのが標準だと思ってたぜ」

男「そういう奴も少なくないな」

オーク「男君とは仲良くなれそうだ。ところで、弁当は自分で作ったのかい?」

男「ああ」

ヴァンパイア「まじか。カーチャンが作った弁当より美味そうだぜ」

ダーク(私も頑張ろう)
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/08(日) 14:15:40.59 ID:9FOSTh1Z0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

地理教師「地理では、世界の地形や、そこに住む魔族の文化や生活様式などを学習していきます。はい」

地理教師「初日なので、授業を始まる前に面白い話をしましょう。はい」

地理教師「世界の半分を覆っている瘴気と瘴気の発生場所である『瘴溝』は勿論ご存知でしょう。王都の近くにも世界一の瘴溝である『大瘴溝』が有りますしね。はい」

地理教師「今は大瘴溝の上に発電所が設けられ、王都全域の電力が賄われていますね。はい」

地理教師「この大瘴溝及び瘴気はどうやら自然的に発生したにしてはあまりに不自然だと研究者の間では騒がれています。はい」

地理教師「古代に存在していた知的生命体が瘴気を創ったのではないか、などという眉唾な論文を提出した学者もいるらしいです。はい」

地理教師「……あまり興味を持ってもらえなかったみたいですね。残念です。はい」

地理教師「じゃあ、教科書を開いてください」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/08(日) 14:19:07.15 ID:9FOSTh1Z0

数学教師「はい、これからよろしく。それでは授業を始めます」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク(疲れたな)

ダーク(HRも終わったし、後は帰るだけだ)

ダーク(男の隣を歩くのは緊張するが、やっぱり幸せだ)

ダーク(帰りは何を話そうかな)

男「メンヘラ、今日は先に帰るから」

ダーク「えっ。……あ、ああ。分かった……」

男「じゃあな」

ダーク「さ、さよなら……」
129 :数学教師「え? 俺だけ異様に省かれてね?」 [saga sage]:2012/07/08(日) 14:22:48.87 ID:9FOSTh1Z0
ダーク(……嫌われたのか?)

ダーク(……私と帰りたくないのかな)

ダーク(い、いや。用事が有っただけだろう)

ダーク(悲観的に考えるのは止めだ)

ヴァンパイア「あれ、男と帰らなかったのか?」

ダーク「あ、ああ。まあな」

オーク「そうなんだ」

ヴァンパイア「じゃあ体験入部しに行こうぜ! 青春はスポーツと共に有るんだぜ!」

オーク「僕は入部するなら文化部の方が良いかな。スポーツとかすると、見境が無くなって暴力を振るったりしちゃうんだよね」

ダーク「怖いな」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/08(日) 14:26:23.60 ID:9FOSTh1Z0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク「だいぶ回ったな」

ヴァンパイア「だなぁ。しかしダークエルフさんの弓の腕前には驚嘆したぜ」

オーク「矢の上に矢を何個も重ねていったもんね。やっぱりエルフ族は凄いや」

ダーク「幼少の頃から弓は得意だからな。使う機会は全くないが」

ヴァンパイア「そりゃ、日常生活では使わないな」

オーク「でも初夏にあるらしい『勇者合宿』で役に立つんじゃない?」

ヴァンパイア「ああ、そんなのも有るらしいな。内容はよく知らんが」

オーク「それで、何に入部するか決めた?」

ヴァンパイア「俺は水泳部かな」

ダーク「吸血鬼が水泳か」

ヴァンパイア「ステレオタイプに囚われないのが俺なんだぜ」

オーク「僕は郷土史研究部かな。雰囲気が緩そうで好き」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/08(日) 14:28:28.73 ID:9FOSTh1Z0
ダーク「そうか」

ヴァンパイア「ダークエルフさんはどうするんだぜ」

ダーク「私はやはり帰宅部だな」

オーク「え、弓道しないの?」

ダーク「一人暮らしの身に、部活動に打ち込む時間は無いからな」

ヴァンパイア「それもそうか。付き合わせて悪かったんだぜ」

ダーク「いや、楽しかったよ。ありがとう」

オーク「そう言ってもらえると嬉しいよ」

ヴァンパイア「ああ」
132 :夜までに書き溜めておこう。 [saga sage]:2012/07/08(日) 14:32:03.61 ID:9FOSTh1Z0
ヴァンパイア「じゃあ、一緒に帰るんだぜ!」

ダーク「構わないが、私はスーパーに寄っていくぞ」

オーク「スーパーの方向なら僕の帰り道と同じだよ」

ヴァンパイア「俺もなんだぜ」

ダーク「そうか。ならば都合が良いな」

オーク「うん。行こう」

ヴァンパイア「行こう」

ダーク「そういうことになった」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/08(日) 15:30:07.52 ID:bD0t3adSo
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 17:56:29.31 ID:eHqIfxwio
頑張って
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 18:31:13.64 ID:UY2yHufb0
ダークたん、異性のオトモダチでハーレムなりそうですねww

しかしまたクズキャラ居るのか…屑ッぷりを楽しみにしてるww
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/08(日) 20:03:50.31 ID:2CPRZzHDO
ヴァンパイア君が癒し系な予感
137 :現段階では三章構成の予定です。 [saga]:2012/07/08(日) 20:43:34.68 ID:9FOSTh1Z0
ーーーー帰り道ーーーー

ダーク(ヴァンパイアもオークも善い奴だな)

ダーク(親しい友達になれれば良いな)

ダーク(家に帰ったらムニエルに再挑戦だ。食材も買ったことだし)

ダーク(上手くいったら、次は男に好物を訊いてそれを練習しよう)



ダーク(夜もだいぶ更けてしまったな。早く帰ろう)



ダーク(ーー男の部屋から誰かが出てきた)

ダーク(……昨日の妖狐だ)

ダーク(な、なんで……)

ダーク(目が合ってしまった)
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/08(日) 20:45:29.73 ID:9FOSTh1Z0
ダーク(こっちに寄って来る。どうしよう)

「……昨日のエルフね」

ダーク「あ、ああ」

ダーク(随分と威圧感の有る女性だな。相対年齢は同じくらいだと思うが)

「アタシと同じクラスにもエルフがいるけど、貴女は肌が黒いのね」

ダーク(……もしかして)

「でも、そんなことは良いの。貴女に訊きたいことが有るの」

ダーク(私は逃げたい)
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/08(日) 20:49:31.10 ID:9FOSTh1Z0
「貴女、男のストーカーなの?」

ダーク「えっ。い、いや、違う」

ダーク(ストーカーでは無いはずだ。多分)

「その反応は怪しいわね」

ダーク「部屋が隣室で、クラスが同じなんだ。ストーカーでは無い」

「……へえ」

ダーク「ひゃっ……」

ダーク(に、睨まれているぞ。この妖狐、美人だが凄まじく怖い)

「男はアタシの彼氏なの。寝取ろうとしたら、殺すからね」

ダーク「え……」

「え、じゃないわよ。何? 男のことを狙ってたの? 貴女みたいなのが? 笑わせないで」

ダーク「……」

「忠告はしておいたから」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/08(日) 20:52:35.84 ID:9FOSTh1Z0
ーーーーダークエルフの部屋ーーーー

ダーク(……男の彼女)

ダーク(ここ二週間で初めて会った。王都立はやはり多忙なのか)

ダーク(しかし、あれだけの美人なら男とも釣り合ってるな)

ダーク(……少なくとも私よりは)

ダーク「……」

ダーク(どうして私の一生は不幸に溢れてるのだろう。出来損ないに幸せは無いのだろうか)

ダーク(……胸が苦しい)

ダーク(たすけて。誰かたすけて。生きてる実感をちょうだい)


ダーク(……カッター)
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/08(日) 20:55:07.12 ID:9FOSTh1Z0
膝を抱えていた彼女はおもむろに立ち上がり、引き出しに収納していたカッターを取り出した。

薄い緑色の把手に納められていた銀の煌めきが、無機質な音ともに表出する。

その銀は、蠱惑的な輝きを放っていた。

彼女は左手首の少し下に、冷ややかな刃を当てる。

以前に自傷した箇所の僅かばかり下の位置だ。

以前の傷は薄く盛り上がり、皮膚の下に蟲が潜んでいるようだった。

あと僅かでも刃を深く押し当てれば、彼女の柔らかく美しい褐色の肌を裂き、彼女の肌よりも黒い血が滲み出るだろう。

ダーク(……)
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/08(日) 20:57:37.89 ID:9FOSTh1Z0
ーーーーせっかく綺麗な肌をしてるんだ。
傷つけたら勿体ないだろ。


ダーク「……っ」

彼女はカッターの刃を仕舞い、部屋の隅に放った。

ダーク(……私は浅ましいな)

ダーク(また自傷行為に及んで、男が助けてくれるのではと望んでいた)

ダーク(本当に独善者だ)


ダーク(……もう訳が分からない)

ダーク(自分の感情が制御できない。グチャグチャだ)

ダーク(……今は泣いておこう)
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/08(日) 20:59:15.77 ID:9FOSTh1Z0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク「……朝か」

ダーク「学校に行きたくないな」

ダーク「でも、休んでもしょうがない」

ダーク(男よりも遅く出よう。ギリギリ遅刻しない程度で)


ダーク「男が出たようだな」


ダーク「そろそろ行くか」


男「おはよう。随分と遅かったな。急がないと遅刻するぞ」

ダーク「な、なんで……」

男「ん? 何がだ?」

ダーク(なんで、彼女がいるのに私を待っていたんだ?)

男「ん、時間が本格的にヤバいな。行くぞ」

ダーク「あ、ああ」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/08(日) 21:02:02.63 ID:9FOSTh1Z0
ーーーー通学路ーーーー

男「お前、今日おかしいぞ」

ダーク「え、そそ、そうか?」

男「ああ。陰鬱な顔してる。それに目が腫れぼったいぞ」

ダーク(鏡で確認した分には気にならないと思っていたが、他人から見たらそうでも無いのだろうか)

ダーク「な、何もない」

男「……そうか」

ダーク「ああ」

ダーク(男は優しいな。……優しいから私の隣にいて、私を気にかけてくれてるに過ぎない。そこを勘違いしては駄目だ)

ダーク(私に、男の隣に並ぶ権利は無い)
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/08(日) 21:03:53.18 ID:9FOSTh1Z0
ーーーー昼休み・教室ーーーー

ヴァンパイア「化学のハーピー先生と、歴史のラミア先生はマジで美人なんだぜ」

オーク「ハーピー先生は薄着だから、目のやり場に困るよね」

男「鳥人族は羽根のせいで基本薄着だからな。冬は大変そうだ」

ヴァンパイア「俺としては有難いんだぜ! 目の保養なんだぜ!」

オーク「ちょっとヴァンパイア君、ダークエルフさんが引いちゃうよ」

ヴァンパイア「おっと。確かに女子を加えてする話題では無かったんだぜ。悪かった」

ダーク「いや、別に」

男「お前、今日はパン二つなんだな」

ダーク「あ、ああ」

ダーク(昨夜から何も口にしていないからな。流石にお腹が空いた)
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/08(日) 21:09:05.33 ID:9FOSTh1Z0
ヴァンパイア「……何だか暗い顔してるんだぜ。保健室に行ったら良いんじゃないか?」

ダーク「……いや、大丈夫だ」

男「……」



オーク「次の時間は生物だね」

男「あの声がデカい鬼人族の教師か」

ヴァンパイア「オッサンなんて興味無いんだぜ。それより、ラミア先生のあの理知的な雰囲気の素敵さを議論しよう」

ダーク「確かにあの先生は物腰が柔らかそうだ」

ヴァンパイア「ああ。俺はあの尻尾に締められながら熱く抱き合いたいぜ」

オーク「骨が折れるんじゃないかな」

男「吸血鬼は刺創以外の損傷には強いから大丈夫なんじゃないか」

ヴァンパイア「あんな美人に抱き締められながら死ねるなら、それも幸せなんだぜ」
147 :投下終了です。 [saga]:2012/07/08(日) 21:11:07.01 ID:9FOSTh1Z0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク(今日の学校生活も終わった)

ダーク(ヴァンパイアは水泳練習に行くらしい)

ダーク(オークも郷土史研究部に顔を出すらしい)


男「帰るか」

ダーク「あ、ああ」

ダーク(男は普段と変わらない)


ダーク(……一緒に帰るのはもう止めにした方が良いだろう)

ダーク(私のせいで、男に迷惑をかけたくないしな)

ダーク(今日で最後だ)
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/08(日) 21:16:45.02 ID:9FOSTh1Z0
一応種族を載せておきます。
再登場時に間違えないようにしないと。

化学ーーハーピー(鳥人)女
地理ーーデュラハン(首無騎士)男
語学ーートロール(巨人)男
生物ーーオーガ(鬼人)漢
歴史ーーラミア(蛇人)女
数学ーーミノタウロス(牛人)男
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/08(日) 23:04:16.33 ID:b+81YMAc0
あれ、屑キャラ……?
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/08(日) 23:22:16.15 ID:bD0t3adSo
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 09:34:43.96 ID:ep6GYm4SO
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/09(月) 23:09:19.56 ID:xf2uEnDw0
ーーーーアパート廊下ーーーー

男「じゃあな。また明日」

ダーク「ああ。……あの、男」

男「なんだ?」

ダーク「その、明日からは一緒に登下校しなくていいぞ」

男「……そうか。一応理由を訊いても良いか?」

ダーク「いや、ほら、男には彼女がいるのに、私と登下校するのはまずいだろう」

男「彼女? 誰からそんな話を聞いたんだ?」

ダーク「……彼女本人からだが。王都立の生徒の」

男「……ああ、アイツか」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/09(月) 23:12:42.75 ID:xf2uEnDw0


男「それ、嘘だからな」


ダーク「……え?」

男「俺に彼女なんていない」

ダーク「い、いやでも、本人が言ってたぞ」

男「アイツはただの幼馴染だ。
尤も妖狐族は全員が、有る程度血縁関係に有るが」

ダーク「お、幼馴染?」

男「ああ。アイツは魔王様の血筋の妖狐でな。
一族の中でも秀才なんだが、かなりメンドくせぇ奴でな。
あんまり関わりたくない奴だ」

ダーク(魔王様も妖狐族だったな。魔王様の血筋ならば、優秀なのも美人なのも納得だ)


男「入学式の前日の夜に、お前と道端でぶつかっただろ?」

ダーク「ああ」

ダーク(あれを契機として、男に近づけたのだ。忘れもしない)
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/09(月) 23:15:22.80 ID:xf2uEnDw0
男「あの日の午後は用事で出掛けていたんだ」

ダーク(……ん? 午後の時間も物音がしていたと思ったが。
確か、入口の扉の開閉音が一度して、それから数分もしない内にまた音がしたぞ)

男「それから、家に帰ってみると部屋の様子が微妙に変わっていたんだ」

ダーク「え……」

男「不審に思って探ったら、盗聴器が出てきた」

ダーク「……え?」

男「直ぐに幼馴染の仕業だと察しがついた。以前も似たようなことをされたしな。
でも今回は流石に怖くなった。犯罪行為だしな」

ダーク(か、壁に耳を当てるくらいは普通のはず……)

男「それで、問い詰めにいこうとしたらお前とぶつかった訳だ」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/09(月) 23:20:11.95 ID:xf2uEnDw0
ダーク(あの妖狐、恐ろしいな。
世に聞く『ヤンデレ』というものだろうか)

男「一昨日に、もう数個盗聴器が有ることに気付いた。
それらは次の日に部屋に来るよう言ってから壊した。
それで昨夜は、もう嫌がらせ行為をしないことと、俺に付き纏わないことを約束させた」

ダーク「だから昨日、独りで帰ったのか?」

男「ああ。戦闘になっても良いように色々と準備していたからな。素直に肯いてくれたが」

ダーク(ストーカーは私では無く、彼女の方だったというわけか)


男「アイツに会ったんだろ? 何か変なことを言われなかったか?」

ダーク「い、いや。特には」

ダーク(殺すと脅されたが、それは流石に誇張だろう)

男「そうか。なら良いんだ」
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/09(月) 23:22:08.01 ID:xf2uEnDw0
ダーク「あ、あの!」

男「なんだ?」

ダーク「その、やっぱり明日も一緒に行って欲しい」

ダーク(……ちゃんと言えた)

男「……明日はもう少し早くな。遅刻は嫌だぞ」

ダーク「あ、ああ!」

男「じゃあ、また明日」

ダーク「ま、また明日」



ダーク(……よかった)
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/09(月) 23:24:04.75 ID:xf2uEnDw0
ーーーー金曜日・昼休み・教室ーーーー

オーク「ヴァンパイア君、歴史の時間は凄かったね」

男「教師の質問に全部挙手して答えてたな」

ダーク「ラミア先生、若干迷惑そうだったぞ」

ヴァンパイア「存在感を示したかったんだぜ。
それに、先生の授業に興味が有ることをアピールしたかったんだぜ」

男「ただ歴史が好きなだけだと思われたんじゃないか」

オーク「だよね」

ヴァンパイア「……マジかー。昨夜、必死に勉強したのにな」

ダーク「随分と健気だな」

ヴァンパイア「まあな。完全に惚れちまった」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/09(月) 23:25:40.92 ID:xf2uEnDw0
オーク「教師と教え子の禁断の恋だね」

男「実らないだろうな」

ヴァンパイア「酷いんだぜ。成就させてやるんだぜ」

ダーク(私もその心意気を見習おう)

オーク「頑張ればきっと報われるよ」

ヴァンパイア「流石オーク。善い奴なんだぜ」

男「まあ、頑張ってくれ」

ヴァンパイア「勿論なんだぜ」

ダーク(お互いに頑張ろう)
159 :コピペになるくらい長いあとがきを書きたいです。 [saga]:2012/07/09(月) 23:28:16.72 ID:xf2uEnDw0
ーーーー放課後・教室ーーーー

ヴァンパイア「顧問にカッコ良いところを見せて来るんだぜ!」

男「誰が顧問なんだ?」

ヴァンパイア「ラミア先生なんだぜ」

オーク「へぇ。じゃあ目立たないとね。僕も部活に行かなきゃ」

ダーク「郷土史研究部はどんな活動をしているんだ?」

オーク「特に何もしてないよ。雑談したり、勉強したりしてる」

男「緩いな」

オーク「まあね。それじゃあ、さようなら」

ヴァンパイア「俺も行くぜ。また明日な」

男「じゃあな」

ダーク「さよなら」
160 :投下終了です。 [saga]:2012/07/09(月) 23:31:20.53 ID:xf2uEnDw0
ーーーー通学路ーーーー

ダーク(スーパーで食材を買わなければいけないな)

ダーク(夜でいいか)

ダーク(ーーそういえば男の好物は何なのだろう)

ダーク「あ、あの」

男「ん?」

ダーク「その、男の好きな食べ物は何だ?」

ダーク(凄いな私。以前よりずっと積極的じゃないか)

男「んー。ムニエルとか?」

ダーク「ほ、本当か!?」

ダーク(練習の成果がそのまま実を結ぶじゃないか。
私の勘は正しかったのだな)

男「作ってでもくれるのか?」

ダーク「い、いや。私はまだ料理が不得手だからな。まだ無理だ」

男「そうか。納得いくものができるようになったら食べさせてくれ」

ダーク「あ、ああ。勿論だ」
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 00:29:58.80 ID:BLFG0cx1o
乙乙
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/10(火) 07:49:30.59 ID:VH89jlyeo
ヤンデレの妖狐は九尾の魔王の血筋って事だけど
半狐ちゃんの時点で妖狐と側近のハーフ
そんでうまく司書と出来ちゃったとしてその子供がヤンデレ妖狐とすると

九尾魔王が4分の1側近が4分の1
元魔王が8分の1エルフちゃんが8分の1
人間の王族の血筋が4分の1で

あんまり妖弧純血って言えないような
側近も元魔王と同等と考えるとかなり濃い元魔王系の血筋だ

でも血筋だけみると強烈な超エリートだな
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/10(火) 08:06:38.30 ID:pl0FHuhVo
半狐は心を読む力があったのに
ヤンデレは盗聴器wwとか思ったけど
もし母親が心を読むスキルがあって
その子供には無かったら

その子供は心を病んじゃいそうとか思った
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 09:15:43.00 ID:NPkXxW3IO
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/10(火) 15:07:41.75 ID:ukPZ+orAo
>>162
半狐の子供とは限らないし、下手したら1000年近く経っててもおかしくないんだから、魔王自体変わってる可能性もある。
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/10(火) 22:22:15.89 ID:0/OBi1iN0
ーーーーダークエルフの部屋ーーーー

ダーク「男のことを考えていたら、随分と時間が経ってしまった」

ダーク「結婚式はやはり六月だな」

ダーク「ーーさて、男に美味しいと思わせる為に、もっと料理の練習をしなければいけないな」

ダーク「取り敢えず食材を買いに行くか」

ダーク「男を胃袋から掌握していき、最終的には尻尾をモフモフする仲になる」

ダーク「その為の一歩だ」


ダーク「もう遅い時間だな。スーパーの閉店時間が近い」

ダーク「急がなければ」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/10(火) 22:23:44.39 ID:0/OBi1iN0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダーク(この路地は暗いし侘しいから夜は通りたくないが、近道だからな)

ダーク(少し小走りで行けばいいか)

彼女は駆け足で道を通ろうとする。


ダーク(……っ!?)

彼女は首に両手を当てた。

彼女の細首に何かが巻きついていた。

それは柔らかい手触りだが、強かに彼女の首を締め付ける。

ダーク「っ……!」

呼吸が止まり、顔が赤らむ。
168 :今日はこれだけです。 [saga]:2012/07/10(火) 22:25:28.51 ID:0/OBi1iN0
ダーク「ーーーー」

やがて、彼女の全身から力が抜ける。

締め付けていた“何か”が外れた。

彼女の華奢な身体が地に倒れる。

締め付けていたのは長い尾だった。

妖狐の尾だった。


幼馴染「……」
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 22:31:26.41 ID:Ib3qWZZSO
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/10(火) 22:36:32.75 ID:Wafkn3yio
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/07/10(火) 23:29:36.85 ID:GtQUfe/6o
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/07/11(水) 00:07:29.37 ID:eBafYUu+o
こわっ
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/11(水) 19:56:37.57 ID:FXrVbJ/n0
乙です
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/11(水) 22:31:06.11 ID:P8cl+2tH0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

「おい。大丈夫か」

私のことなど放っておけ。

「そんなに血が出てるのに放っておけるわけないだろ」

いいんだよ。もうどうでもいいんだ。

私はもう生きていたくないんだ。

このまま死にたいんだ。

「あっそ。死にたいなら勝手にすれば良い」

そうだ。さっさと部屋から出ていけ。

「でもな。俺が察知できないところでやれよ。
もう関わってしまったんだ。放っておけないだろ」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/11(水) 22:32:56.23 ID:P8cl+2tH0
私に触るな!

やめろ!

「うっせーよ。怪我人は安静にしとけ」

ふざけるな!

やめろ!

「あんまり騒ぐなよ。襲ってるみたいに思われるだろ」

ならば、やめろ!

「ーー少し落ち着け。そしてよく聞け」

……。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/11(水) 22:38:27.55 ID:P8cl+2tH0
「俺はお前のことを全く知らない。
何がお前をここまで追い詰めてるのかも分からない」

当然だろう。初対面だぞ。

そんな輩に私を理解されてたまるか。

「まあ、そうだろうな。
だがな。俺はお前に死んで欲しいとは思わない」

……何故だ。

「分からん。だが、素直な気持ちだ」

……適当だな。

「そうだな。まあ、良い。医者のところに行くぞ」

……いやだ。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/11(水) 22:40:12.70 ID:P8cl+2tH0
「メンドくせぇ。取り敢えず俺を信じて生きてみろ。
それで駄目だったら、今度は首を吊れよ」

……変な奴だな。

「よく言われるよ」

……首を吊るのは怖いだろう。

「はは、確かにな。さて、よいしょっと」

ま、まて!?担ぐな!

「肩に担がれるのはご不満か? なら、これで良いか」

な、尚更良くない!
178 :終了です。目標は“少量でも毎日”です。 [saga]:2012/07/11(水) 22:44:40.97 ID:P8cl+2tH0
「お姫様扱いも不満か」

恥ずかしいだろう!

「生きたいと思ってる証拠だな。良いことだ」

……っ。

「すぐ近くの医院で良いよな。
救急車を呼ぶよりも早いだろうし」

……保険証も無いし、今は金も無いぞ。

「それくらい立て替えてやるよ。後で払ってくれ。
あ、返す時は笑顔でな」

……本当に変人だ。

「そうだな。嫌わないでおいてくれ」

……はは。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/11(水) 22:55:27.86 ID:P8cl+2tH0
10レス分ほどの書き溜めを誤って消してしまった。
鬱だ。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 23:12:19.66 ID:yJ3TMwkSO
なぜ落ち着いてCtrl+Zをしなかった
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 23:13:37.71 ID:Dg7jxsnm0
がんばれ
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/11(水) 23:26:29.98 ID:P8cl+2tH0
iPod touchのメモ帳で書き溜めてるのです。
頑張って書き直します。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/11(水) 23:42:41.03 ID:hudpVIKNo
ipod touchなら7notes miniオヌヌメ
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 01:14:31.69 ID:quwJzfdK0
色んな意味で乙>>1
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 20:55:51.68 ID:g/Ge0IiXo
不思議だよな
投下が遅いやつの言い訳って、だいたい2択
病気と、書き溜め消した

別に遅いのなんて気にしないんだから
もうちょっと気の利いた言い訳考えればいいのに
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/12(木) 21:25:54.31 ID:wSq0WX4D0
>>182
焦らずに頑張れww
お見舞い代わりに、>>1のWIKIまとめておいたけど
追加や補正して欲しい部分は、言ってくれたら誰かが直すと思うんだ
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/12(木) 21:26:52.00 ID:U8sUfdGto
別にこの作者投下ペース遅く無いじゃん
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/12(木) 22:20:54.62 ID:G5+uN64+o
病気は知らんが書き溜め消しちゃうのはよくあることだろ
189 :>>186 有難うございます。 [saga]:2012/07/12(木) 23:25:41.57 ID:odcBbg1v0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

目醒めると、闇に満ちた空間が彼女の眼前に広がっていた。

ダーク(……まだ男にお金を返して無かったな)

明瞭になりつつも未だ朧なままの脳裡で、彼女はそう思考する。

彼女の頭上には明滅を繰り返す電球があった。

頼りない唯一の光源は、荒い岩肌を照らしている。


彼女は黒い帯状の拘束布で、椅子に固く縛り付けられていた。

胴に二本。
片腕に二本ずつ。
片足にも二本ずつ。

首元のテープは若干ゆとりがあった。

ダーク「……なんだこれは」

茫然と呟く。

閉ざされた空間なのか、声がよく反響した。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/12(木) 23:29:11.58 ID:odcBbg1v0
「ようやく醒めたみたいね。待ち切れずに殺してしまうところだったわ」

前方の暗闇より、女の声が聞こえた。
反響する。

間を空けずに、足音が響く。
やはり反響した。

幼馴染「随分とぐっすり眠ってたわね。
もう日付が変わる時間よ」

頭部ほどの蒼炎が現出し、彼女の周囲を揺らめく。

狐火だ。

ダーク「……どういうつもりだ」

幼馴染「男に擦り寄る蛾を駆除するだけよ。
光に群がる習性は本当に鬱陶しくて苛々するわ」

ダーク「貴様も蛾の一人か」

幼馴染「……この状況で随分と余裕ね」
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/12(木) 23:31:07.51 ID:odcBbg1v0
美しい妖狐は笑む。
いや、口角を吊り上げる。

眼には修羅の炎が宿っていた。

幼馴染「最初に言っておくけれど、悲鳴はたくさん上げていいわよ。
ここは世界大戦の折に作られて、使われもせずに棄てられた避難壕だから、誰の迷惑にもならないわ」

ダーク「……それは重畳だな」

幼馴染「ふふ、殺す前に子供が産めない身体にしてあげる。
良い声で啼いてね。
悲鳴を聴く為に、醒めるのを待っていたのだから」

ダーク「貴様の下賤な思考には共感できないな。
男に振り向いて貰えないわけだ」

肉を強烈に打ち付ける音が響いた。

あまりに大きな音で、数度反響する。

幼馴染「図に乗るな。顔の皮を剥ぐぞ」

修羅がダークエルフを睨んでいた。
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/12(木) 23:35:53.89 ID:odcBbg1v0
ダーク「……」

強かに頬を叩かれ、あまりの痛みに彼女は片目から泪を流した。

幼馴染「今までも蛾の駆除をしてきたけれど、殺すのは貴女が初めてになるわ。男にここまで擦り寄った蛾は初めてよ。今までは他が入り込む余地もないほど一緒にいたしね」

片方の尾の毛を細指で弄びながら、彼女は言った。

ダーク「……私は男と付き合っても無いがな」

幼馴染「関係ないのよ。男の隣にアタシ以外の雌がいる。
それが不快なの。男の隣はアタシの居場所なの。
この避難壕だってアタシと男の秘密基地よ。
小学生の時はいつも此処で一緒に遊んだわ」

懐かしむような声音で彼女は言った。

幼少時の情景が脳裡を巡っているのか、狐火で照らされた彼女の顔は満たされたように微笑み、眼は安らかに閉じられていた。

すっかり自分の世界に浸かっているようだ。
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/12(木) 23:40:28.59 ID:odcBbg1v0
それから、再び激情が顔に浮かぶ。

幼馴染「なのに、どうしてアタシは振り向いて貰えないの? 物心ついた時から、ずっと好きだったのに。何十年も一緒にいたのに。誰よりも愛してるのに。どうして高祖母なんかに負けたの? あんなの見た目だけ若いクソババアじゃない。しかもあのババアは男のことを振るし、調子にのってるんじゃないわよ。傷心の男を慰めて振り向いて貰おうとしていたのに、男は王都立に進学するのをやめて一人暮らしを始めるし。あまつさえ黒エルフなんかと男は親しくしてるし。もうなんなの? 訳がわからないのよ。誰よりも男を想ってるのに。一番男を知っているのに。なんで。なんで。なんで。なんで。なんで。なんでのよ」

恨みがましい口調で、彼女は延々と呪詛を呟く。

ダークエルフはその異様さに畏怖し、戦慄する。

脅迫の文句として、彼女は「殺す」と口にしていたと思っていたが、彼女ならば本気で自分を殺しかねないと考え直し、ダークエルフの背筋は凍り付く。

同時に胸を焼くような怒りが湧き上がってくるのを感じた。
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/12(木) 23:42:29.23 ID:odcBbg1v0
幼馴染「あ、そっか」

彼女は納得した表情で、手を打った。

幼馴染「貴女のせいね。貴女が全部悪いのよ。貴女がいなくなれば男は私を見てくれる。貴女さえいなければ男は私の元に戻ってくる。貴女さえいなければ全て上手くいくのよ。貴女のせいで私は不幸なのね。貴女さえいなければ。貴女さえいなければ……!!」

ダーク「……ふざけるな!」

狂気の笑みを浮かべる妖狐に、彼女は怒りを露わにする。

ダーク「好き放題言ってくれたな。
色々と訂正したいが、取り敢えずこれだけは言っておく。
男を誰よりも愛してるのは私だ!」

妖狐は無言で、二本の尾を槍のように鋭く尖らせて、彼女に照準を定めた。
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/12(木) 23:44:14.40 ID:odcBbg1v0
しかし、彼女は全く動じていなかった。

恐怖は怒りによって心の底に押し込められたらしい。

ダーク「私は男と出会ってまだ間もない。貴様ほど男のことも知らない」

幼馴染「当たり前でしょ!」

ダーク「だが、例え男に振り向いて貰えないとしても、私は男のことを想い続けるし、男の幸せを願う。男を困らせるようなことを絶対にしない」

妖狐は歯軋りする。

形の良い歯が立てる音は、相応の不快な音色だ。

ダーク「男のことを想うからこそだ。
どうして貴様はそれができないのだ?」
196 :投下終了です。 [saga]:2012/07/12(木) 23:48:59.77 ID:odcBbg1v0
ダーク「貴様は男を所有したいだけではないのか」

幼馴染「……黙れ」

ダーク「ーー貴様は本当に男を愛しているのか」

幼馴染「黙れ!!」

ダーク「貴様が黙れ!」

ダーク「痴れ者が! 貴様がいくら男を知っていようが、貴様のような独善者に男が靡くわけがないだろう!」

幼馴染「……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……!!」

ダーク「……っ」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 23:53:18.66 ID:I5x7D6loo

俺もiPod touchだけど、メモ帳ミスって消しちゃったりしたら、iPodを一回振れば取り消すってでるよ!
だいたいの動作は振れば取り消せるはず
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 23:57:19.42 ID:PXX9jXgSO
病んでるなあ
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/07/13(金) 00:11:50.05 ID:oh9EpS7AO
ほのぼの日常はドコに逝ったんですか?
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 02:06:45.51 ID:0yTmYUzXo
ダークエルフかっこいい
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 08:15:49.14 ID:iVCeP09IO
幼馴染は萌えるものだと決めつけていた時期が僕にもありますた・・・
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 11:05:30.50 ID:hG22SKE+o
>>201 ヨウキョウダイ幼馴染ってこんなに怖いモノだったとは
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2012/07/13(金) 11:55:33.39 ID:mAuFVg+Vo
ほのぼの日常なんて最初からなっかたよ
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 12:06:55.93 ID:hG22SKE+o
男を巡る争いだけあって ほのぼの じゃなくて 本能煩悩だったわけだな(キリッ)
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 17:45:35.00 ID:h7b+FHFFo
楽しみ
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/13(金) 18:37:37.53 ID:/BfuycUlo
>>204
審議拒否(AA略)
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/13(金) 23:53:25.10 ID:+JqbkxjD0
ダークエルフに向かって双の尖槍が放たれる。

しかし、彼女の身体が穿たれることは無かった。



獣が妖狐に体当たりを食らわせたからだ。



彼女の体は突き飛ばされて、岩壁に衝突する。


獣はそのしなやかな姿体の周囲に、握り拳程度の大きさをした蒼炎を幾つか纏っていた。

その飴色の体毛は仄かに光を帯びており、視る者に神秘的な印象を与える。

筆の総を想起させる二つの尾は、独立した意思を持つかの如く揺らめく。



巨大な狐だった。
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/14(土) 00:06:43.82 ID:Z64zCYU/o
キター!
209 :1レスで寝るつもりでした。すいません。 [saga]:2012/07/14(土) 00:13:04.97 ID:QJPNPJnS0
獣の澄んだ瞳が、ダークエルフを捉えている。

彼女の知っている瞳だった。

ダーク「……男?」

狐「おう」

馴染み深い声が返事した。

ダーク「どうして……」

狐「お前が出掛ける音を耳にしたんだよ。でも、帰ってくる音が全然しないから不安になってな」

彼は地に臥している自身の幼馴染へと視線を向ける。

狐「こいつの家を訪ねたら、まだ帰ってきていないと言われた。
それで万が一を考えて此処まで駆けてきたんだ。
此処ぐらいしか当てがないからな」
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/14(土) 00:15:15.79 ID:QJPNPJnS0
ダーク(私の為にか……。
……どうしよう。嬉し過ぎて泣いてしまいそうだ)

幼馴染「……そんなにその黒エルフが大事なの??
いつもは嫌がる『獣纏』までして」

彼女は倒れたまま呟く。

幼馴染「アタシで良いじゃない。ババアと容姿だって酷似してるわよ。それにアタシなら、男のことだけを考えて、男だけを見て、男の為に生きられるわ。男の為なら死んでも良い」

狐「そうか」

幼馴染「なのに、どうしてアタシを見てくれないの? そんな黒エルフなんかに構うのよ? アタシの何がダメなの? その女狐の何が良いの?」

ダーク(妖狐族に“女狐”呼ばわりされた。誇るべきだろうか)

狐「お前は、まあ、悪い奴ではない。
家族の次に長く時間を共に過ごしたから、それは知ってる」

幼馴染「……なら、どうしてなの?」

狐「だってお前ーー」
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 00:15:31.86 ID:9sbkXUqSO
イケメン過ぎるだろ

いいぞもっとやれ
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/14(土) 00:15:58.23 ID:QJPNPJnS0



狐「料理に血とか陰毛とか入れるじゃん」


213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/14(土) 00:17:08.35 ID:QJPNPJnS0
ダーク「……えー」

幼馴染「血は、男とアタシが一つになりたいからよ。
毛は、結ばれる為のおまじないよ」

狐「俺は食べ物を愚弄するような奴を好きにはなれないんだよ。
チョコレートに経血入れられた時は胃袋の中身全部吐き出したしな」

ダーク「……うわぁ」

ダーク(ない。それは流石にない)

幼馴染「それも、おまじないよ」

狐「それだけでなく、他にも思い出したくもない所業の数々。
そんなお前に恋心を抱けるだろうか」

ダーク「いや、ない」

ダーク(男と私の見事な反語連携だな。ふふん)
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/14(土) 00:22:21.87 ID:QJPNPJnS0
幼馴染「アタシじゃ無理なの?」

狐「俺では、お前の愛を受け止めきれないな」

幼馴染「……あはははははは。男はアタシを愛してくれないんだ? そう。そうなのね。もういいわ。もういいの。もういい」

ダーク「……?」



幼馴染「死んじゃえばいい」



彼女の全身を金色の膜が包む。

膜は彼女の身体に張り付き、厚みを増していく。

女狐「それならせめて、アタシが男を殺す」

やがてもう一匹、二本の尾を持った巨体な獣が出現した。

獣は牙を剥く。

狐「お前じゃ俺に勝てないだろ」

女狐「やってみなきゃ分からないでしょうが!」

吼えながら、彼女は突進する。

しかし、彼は純粋な獣では有り得ない体捌きで避け、二本の尾を彼女の後頭部に叩きつけた。
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/14(土) 00:23:45.50 ID:QJPNPJnS0
女狐「ーーーーっ」

獣は再び地に臥す。

狐「悪いな。家にはちゃんと送り届けるから眠ってろ」

言って、彼は身体を包んでいた膜を消散させる。

金色の鱗粉が宙に漂い、大気に還っていった。

男「おいメンヘラ、大丈夫か?」

ダーク「あ、ああ。助けてくれて有難う」

男「無事なら良い。今テープを外すからな」

ダーク「ああ。頼む」



拘束紐を外し終えて、彼は彼女の四肢を解すように揉む。

固く縛られたせいで、鬱血し、むくんでいる為だ。
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/14(土) 00:26:06.20 ID:QJPNPJnS0
男「もう大丈夫か。帰るぞ」

ダーク「あ、ああ」

ダーク(男にたくさん触られてしまった……。
嬉しいけれど、恥ずかしいな)



女狐「……待ちなさいよ」



男「まだやるのか」

女狐「男はアタシのものなの。誰にも渡さない。誰にも渡さないんだから」

男「お前のものになった覚えなんて一度も無いがな」

女狐「男。男。男。男。男。男。男。男。男。男。男。男」

おぼつかない足取りで迫る獣の、尾の数が一本増える。

更にもう二本。
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/14(土) 00:29:22.19 ID:QJPNPJnS0
ダーク「……成長しているのか?」

男「流石、妖狐族屈指の秀才。お前なら九尾になれるかもな。魔王様の血を継いでいるわけだし」

女狐「男。男。男。男。男。男。男。男。男。男。男。男」

男「少しは話を聞けよ、全く」

ダーク「どうする……?」

ダーク(実は相当危機的な状況じゃないか?)

男「別に何もしない」

ダーク「え?」

女狐「男。おと……」

獣は、事切れたように倒れ込んだ。

『獣纏』が解け、彼女は人型に戻る。
218 :投下終了です。 [saga]:2012/07/14(土) 00:38:25.57 ID:QJPNPJnS0
男「やっぱりな」

ダーク「どういうことだ?」

男「妖狐族は普通、尾の数が増えた時は疲労で動けなくなるんだよ。しかも、こいつは一気に三本だからな。さっきまで起き上がってたのが不思議なくらいだ」

ダーク「そうなのか」

ダーク(執念とは凄いものだ)

ダーク(取り敢えず、今は大丈夫なようだな)

男「さて、帰るか。途中でこいつを家に送り届けるからな」

ダーク「……分かった」

ダーク(でも、このまま彼女を放置したら、私はまた襲われる気がする)

ーーーーーー
ーーーー
ーー
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 04:28:19.03 ID:ybgRjo4DO
よし見つけた追い付いた
しかし新規にはとっつきにくい世界観か……
慣れるように頑張らないとな…
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 08:36:19.00 ID:9sbkXUqSO
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 10:32:59.20 ID:NcbcQtAIO
>>219
そうか? そういうもんだと割り切ってみれば、以外となんとかなるぞ。ソース俺
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/14(土) 10:50:51.09 ID:T8zPWcSDo
>>219
新規の方が楽しめると思うが
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/14(土) 11:59:56.86 ID:qhRUCCYeo
面白いから何だっていいだろ
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/14(土) 12:25:43.41 ID:98xKBJgT0
いつも乙です
自分の中では、作者が間違ってファイル消しちゃったあたりから
作者のドジっ子ぶりと話中のダークちゃんがダブって見えて微笑ましく思いながら読んでいるww

うん。作者が男か女かは知らないし別に突っ込んで聞く気も無いけど、性格に萌えたんだ。他意はないwwww
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 13:42:35.01 ID:S47De8/b0
>>219
前作から来た奴がどう繋がってるのか質問しまくったから一部とっつきにくく感じるが
この作品はこの作品としてしっかり基盤があるから気にするな

前作ですら初なのに前スレあるようなイメージだった
俺としてはそれがイイと思うがww
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 15:09:47.15 ID:hXBkD3iFo
えっ、もしかして直系?

んな訳無いか、すまん消える
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 15:21:38.87 ID:4NDX4WfXo
女狐がめだかボックスの江迎ちゃんとダブって嫌いになれない
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/14(土) 21:09:43.41 ID:QJPNPJnS0
一緒に暮らしている祖父が急逝しました。
数日は多忙になりそうです。

229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/14(土) 21:11:16.63 ID:Uc36kqabo
お役目をはたせー
待つから
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 21:59:46.37 ID:yUPvAa8Jo
男は黙って
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/07/15(日) 00:08:45.11 ID:HqemzqgAO
冥福を祈る
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/15(日) 09:35:56.90 ID:x2ikaedC0
初七日、いや、49日までは、じいちゃん見送っておいで
その程度なら余裕で待ってる
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 10:44:23.18 ID:okRHiBiQo
だな、ちゃんと送ってあげてな。

のんびり待つから
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 15:30:29.48 ID:rbpanYuDO
息抜きにしてもそんなレスしたその日にあのSSはきついわ…。
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 15:52:54.16 ID:K4G/cZego
>>234に同意
こっちのレスがなければ別にどうってこと無いのにな
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/15(日) 19:29:10.50 ID:fIG13QQuo
3週間で2回喪主をやった俺が通る
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/16(月) 00:02:36.73 ID:xtBXOU5+0
>>234-235
書き込みが日付変わる前で、その日の夜になって急逝って書いてるから
SS書いてた時点では、そういう事態になると思ってなかったんじゃないか?

>>236
逝く時は結構続くね・・
俺も癌で母親>3日後に胃癌で叔父>さらにその2日後に脳溢血で別の叔父・・・
って葬式が続いた経験がある
元々親戚同士の繋がりが薄い一族だったんだが
葬式の場で、母親が皆を連れて行ったとか抜かした親戚数人とは、その場で絶縁したが
238 :今日は意外に時間が有りました [saga]:2012/07/16(月) 20:22:40.56 ID:ZfzZPh730
ダーク(男と並んで帰れるのは嬉しい。とても嬉しい)

ダーク(しかし、だ)

男「眠いな」

幼馴染「……すぅ」

ダーク(男が、彼女をお姫様扱いしているのは気に入らない)

ダーク(凄く気に入らない)

ダーク(先刻彼女に告げた言葉に偽りはない)

ダーク(……しかし、やはり嫉妬はしてしまう。むぅ)

ダーク(男が失恋した相手のことも気になる)
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:23:57.37 ID:ZfzZPh730
男「怖い顔してどうした?」

ダーク「いや、これから先にまた襲われたらどうしようかと思って」

男「確かにな。オジさん、オバさんの言葉で、こいつが改心するとも思えない」

ダーク「むぅ」

男「気は進まないが警察か。犯罪行為に及んだことだしな」

ダーク(首を締められたし、殺人未遂に当たるのだろうか)

ダーク(でも、男の幼馴染を警察に突き出すのも憚られるな)

ダーク(どうしよう)

幼馴染「……とこぉ」

男「……?」
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:25:38.89 ID:ZfzZPh730
幼馴染「おとこぉ……。おとこぉ……」

ダーク(……寝たまま泣いてるのか)

ダーク(今まで近くにいて当然だった者が急に離れるのは、やはり辛いのだろうな)

男「……俺は最低だな」

彼は自嘲的に呟く。

ダーク「どうした?」

男「こいつ、俺が失恋したって言ってただろ」

ダーク「……ああ」

男「魔王様なんだ。その相手は」
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:29:55.44 ID:ZfzZPh730
ダーク「……え」

男「三ヶ月ほど前に、魔王様の息女が逝去されただろ。ほら、四天王の一人だった」

ダーク「あ、ああ」

ダーク(そういえば大々的なニュースになったな。
葬儀は身内の者だけで行なったらしいが)

男「その時期に想いを告げたんだ。打ちひしがれてる魔王様にな。心の空虚に入り込もうとしたんだ」

ダーク(そうか。魔王様は未亡人だったか。
夫を見送り、娘に先立たれたら哀しみも底抜けだろうな)

男「見事に振られたけどな。いつまで経っても子どもとしか思えないってさ」

ダーク(あの方、千歳を余裕で超えているらしいからな……。無理もない)

男「相応しい男になる為に色々と頑張ってきたのに、散々な結果に終わってヤケになったんだ。それで王都立の進学も辞した」

ダーク「そうか……」
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:32:26.71 ID:ZfzZPh730
男「親父にはあの時初めて殴られたな。家からも追い出されたよ。仕送りはしてもらってるから、感謝してるが」

ダーク(仕送りと、追い出されたというところは、私と同じだな)

男「……こいつには一人暮らしすることは言わなかった。
こいつが俺のことが好いてるのは薄々感付いてたけど、応えるのが億劫だった。拒否して傷付けるのも怖かった」

ダーク「……」

男「その結果がこれだ。俺の不断のせいで、こいつはアホをやらかすし、お前を危険に晒してしまった。本当にすまない」

ダーク「……男が謝ることじゃないだろう」

男「謝ることだよ。……この際だ。このまま、全てぶちまける」




男「お前の部屋、音が全部筒抜けなんだ」
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:34:35.74 ID:ZfzZPh730
ダーク「……え?」

ダーク(男は今、何と言った?)

ダーク(筒抜け……? 筒が抜けた……? あれ……? 丸聞こえ……? あれ……? )

男「妖狐族は聴覚が発達してるからな。
あの程度の壁だと防音の意味を為さないんだよ。
あと、ムニエルはそこまで好物じゃない」

ダーク「あああ、あの、そそ、それって……!」

男「お前の独り言は全部聞こえてた。直ぐに教えてやらなくてすまない」

ダーク「あ、あうあう……」

ダーク(な、何を口にした? 普通に好きだと言っていた気がする。結婚したいとも……)

ダーク(き、消えてしまいたい……)

男「な、泣くなよ」
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 20:36:01.14 ID:B7HSQlGIO
あー、なかしたー
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:36:51.74 ID:ZfzZPh730
ダーク「だ、だって……」

幼馴染「おとこぉ……」

男「お前もか」

ダーク「ぐすっ……」

幼馴染「ぅぅ……」

男「どうすればいいんだ」




男「なあ、メンヘラ」

ダーク「何ですか男さん? あ、ゴミクズはさっさと消えろということですね。本当に気が利かなくてすいません。気持ち悪くてすいません。出来損ないですいません。生きていてすいません」

男「おい、どうしてそんなに否定的になってるんだよ」

ダーク「だって……本当に……私は……」
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:38:06.47 ID:ZfzZPh730
男「あのな。俺はお前のこと、嫌いじゃないよ」

ダーク「……え?」

男「そもそも嫌いだったらこうして助けになんて来なかったし、そもそも初めての対面の後に二度と関わろうとしなかったよ」

ダーク「あ、あの……それって結婚……」

男「いや、それは余りにも性急だろ。飛躍が過ぎる」

ダーク「ぅぅ……」

男「え、えー」

幼馴染「おとこぉ……」

男「本当にどうすればいいんだ」
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:39:42.52 ID:ZfzZPh730




ダーク「すまない。取り乱してしまった」

男「落ち着いてくれて良かった」

幼馴染「……すう」

男「こいつも泣き止んだな」

ダーク「男、彼女のことだが」

男「ん、処遇か」

ダーク「不問にしてやれないだろうか」

男「良いのかよ。多分、また同じようなことをするぞ」

ダーク「……私には、彼女の気持ちが若干分かる」

男「同じメンヘラだからか」
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:41:23.77 ID:ZfzZPh730
ダーク「同じ男性を好きになったからだ」

男「……そうかよ」

ダーク「彼女は必死だったのだと思う。大切な人を取られるのが嫌で堪らなかったのだと思う」

男「……」

ダーク「勿論、用いた手段はいけなかったが」

男「それはそうだ」

ダーク「でも、もし同じようなことにあっても男が助けてくれるだろうしな」

男「……お前、呑気だなぁ」

ダーク「男を信頼しているんだ」

男「他人なんて信頼するものじゃない」

ダーク「私にとって、男は他人じゃない」
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:43:04.18 ID:ZfzZPh730
男「……深夜の浮かれた気分で喋ると、明日の朝に後悔するぞ」

ダーク「確かに気分は高揚としているが、嘘は話してない」

男「……そうかよ」

ダーク「ああ」

男「……こいつの家はもうすぐだ。俺一人の方が都合が良い」

ダーク「あ、そうか。先に帰る」

男「帰り道は分かるか?」

ダーク「大丈夫だ。さようなら」

男「ああ、じゃあな」
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:44:53.20 ID:ZfzZPh730
男「ーーさて。起きてるんだろ」

幼馴染「……バレてたのね」

男「ああ。降ろすぞ」

幼馴染「もう少し、こうしていたいわ」

男「自分の足で立てるなら、立てよ」

幼馴染「相変わらず冷たいのね」

男「冷血漢だからな」

幼馴染「本当にそうね」

彼女は彼の腕から離れ、地に足を着ける。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:46:15.09 ID:ZfzZPh730
男「いつくらいから起きてたんだ」

幼馴染「彼女が泣き止んだ辺りかしら。臭い言葉だったわ」

男「そうかよ」

幼馴染「彼女に私の気持ちが分かるわけないわ」

男「俺も知らないさ。
お前を完全に理解できるのは世界でお前だけだ」

幼馴染「……それもそうね」

答えて、彼女は己の尻尾を指先で弄ぶ。

幼馴染「尾が増えたわ」

男「一気に三本か。前代未聞だな」
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:51:18.53 ID:ZfzZPh730
幼馴染「成長の速さは混種の強みかしら」

男「お前はそこまで混じってないだろ」

幼馴染「父や祖父、曾祖母に比べたらそうね。
血の薄さは祖父がピークだったから。だってクォーターよ。
ま、四分の一でも優性になることで、妖狐族の血の素晴らしさを証明したと、一部では持て囃されたらしいけれど」

男「魔王様は純種なのにな。不思議な家系だ」

幼馴染「あのババアが異種族と結ばれるからこうなるのよ。曾祖母もね」

男「……過ぎた口だな」

幼馴染「恨んで当たり前よ。純種だったら男と簡単に結婚できたのに。
妖狐族で唯一混じったアタシたちの家系は、妖狐族のなかでも異端扱いだもの」

男「いや、お前が純種ならば家族は承諾しただろうけど、俺は分からないぞ」

幼馴染「なによ。男だって純種が良いんじゃない。
男が高祖母に惹かれたのも純種だからなんでしょ??」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:55:14.56 ID:ZfzZPh730
男「違うな。俺はあの人が時折見せる哀しい顔に惹かれたんだ。
最初は笑顔にしたいって感情だったはずだ。
血筋は関係ない」

幼馴染「嘘よ」

男「嘘じゃない。誓っても良いぞ」

幼馴染「……じゃあ、アタシが今まで抱えていた劣等は幻影だったというの?」

男「コンプレックスだったのか。俺に関して言えば、そうだな」

幼馴染「……もっと早く言ってよ。バカ」

男「お前の本音を初めて聴いたんだが」

幼馴染「それくらい察してよ。幼馴染でしょう。バカ」

男「……そうだな。すまなかった」



幼馴染「……あの黒エルフのことが好きなの?」

男「……急に何だよ?」

幼馴染「良いから答えなさいよ」
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:56:38.48 ID:ZfzZPh730
男「相変わらず高圧的だな。……嫌いではないな」

幼馴染「アタシは?」

男「大切な幼馴染だ。でも、異性としては見れないな」

幼馴染「なんでアタシにはハッキリ言うのに、黒エルフのことは濁すのよ」

男「ん……」

幼馴染「……好きなのね」

男「……そう、だな。ああ、そうだ。
最初会った時、あいつ泣いてたんだよ。
その泣き顔に惹かれたんだな。悪い奴でも無いし」

幼馴染「男の性的嗜好は泣き顔なの? 嗜虐者?」

男「なんでそうなるんだよ」
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 20:59:59.69 ID:ZfzZPh730
男「……でも、まだ整理が着いてない。
俺は失意の埋め合わせとして、あいつを求めてるだけかもしれない。それは最低だろ」

幼馴染「そうかしら。誰もが、いつだって、何かの代替品を探してるでしょう」

男「……そうかもしれないが、俺の気が治まらないんだよ」

幼馴染「真面目ね。知ってたけれど」

男「そうだな。
ーーーーとにかく、あいつにはもう手を出すなよ」

幼馴染「出さないわよ。男が血統に拘泥しないなら、アタシに欠点なんて無いもの。
あの黒エルフから、直ぐに男の心を奪い返してみせるわ」

男「それを俺の前で言うのか」

幼馴染「あ、でも監視カメラを設置させて」

男「却下だ」
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 21:01:30.86 ID:ZfzZPh730
ーーーー早朝・ダークエルフの部屋ーーーー

ダーク「うわあぁぁぁああん!」

彼女はベッドに横たわりながら、枕に顔を深く埋めていた。

そのまま体を悶えさせる。

ダーク「昨夜の私はアホか!? どうして、あんな恥ずかしいことをたくさん口にしたのだ!」

ーーーー同じ男性を好きになったからだ。

ダーク「うわあぁぁ! うわあぁぁあ!」

ダーク「アホ! 昨日の私のアホ!」

ーーーー私にとって、男は他人じゃない。

ダーク「ーーーーッッッ!!!!」
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 21:03:27.81 ID:ZfzZPh730
悶えるだけでは足らず、彼女は枕に顔を埋めたまま、体を転がす。

結果、ベッドから落ちた。

ダーク「あう」

痛みで、ようやく彼女は僅かばかり冷静を取り戻す。

ダーク(さっきの声も、男に筒抜けか……!)

ダーク(ううっ、これからどうしよう)

ダーク(男に合わせる顔がない)


ダーク(……いっそ開き直るか)

ダーク「男! 好きだ! 大好きだ! 愛してる!
結婚してくれ! 嫁にしてくれ! むしろ嫁になってくれ!」
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 21:07:27.62 ID:ZfzZPh730
ダーク(男の部屋から扉の開閉音が聞こえた。部屋を出たのか?)

彼女の部屋のドアが勢いよく開かれた。

男「お前はアホか! 大きな声で何を宣ってるんだよ! ……しかも、なんでそんなに薄着なんだよ!」

ダークエルフは薄い生地のTシャツに、下着しか身に付けてなかった。

扉が閉められた。

ダーク(シャツは無難。下着は可愛い奴だ。助かった)

ダーク「ノックも無しに、扉を開けるのは良くないと思うぞ」

男「急に冷静になるなよ!」

ダーク(さっきまで、恥辱の極致に塗れていたから、羞恥は殆ど無いな)

ダーク(むしろ、男が慌ててくれたお陰で、私の精神が幾分落ち着いた)

ダーク(取り敢えず着替えるか)
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) [sage]:2012/07/16(月) 21:41:06.60 ID:41AmShG8o
しえん
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/16(月) 21:44:55.58 ID:URsYayG5o
乙?
男かわいい
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 22:01:49.43 ID:ZfzZPh730
男「先ずは謝る。すいませんでした」

ダーク「別に気にしていない。むしろ照れてくれて嬉しい」

男「……性格変わり過ぎだろ」

ダーク「いや、もう憚る感情がないからな。
これからはずっとこんな感じだ」

男「いや、憚るべきだ。
今までも確かに、お前の独り言を聞いていた。でも独り言の内は良いんだが、話しかけられると困惑するんだ」

ダーク「どうしてだ?」

男「どうしてもだ。とにかく、色々と今まで通りでいこう。
お前の独り言は聞かなかったことにするから、プライバシーの心配はしなくて良い」

ダーク「分かった。そういえば、男に立て替えてもらった治療費を返して無かったな」

男「あ、確かに。忘れてた」
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 22:05:12.32 ID:ZfzZPh730
ダーク「あの時はありがとう」

男「ん、ちゃんと笑顔も忘れてなかったな」

ダーク「むしろ男が忘れていたじゃないか」

男「さっき思い出したから、良いんだよ」

ダーク「何だかズルいな。
あ、訊きたかったんだが、男の好物は何だ?
ムニエルでは無いんだろう?」

男「好物か。肉料理かな、やっぱり」

ダーク「若者らしいな」

男「まあ、相対年齢では高校一年生だからな」

ダーク「そうか。
……もう少し時間をくれ。まだまだ料理の技術は低い」
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 22:06:57.61 ID:ZfzZPh730
男「いつでも良いけどな。どうせなら教えるか?」

ダーク「良いのか?」

男「構わないぞ」

ダーク「じゃあ、頼む」

男「ああ」
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 22:08:48.93 ID:ZfzZPh730
ーーーー王都立大学校ーーーー


幼馴染(……しまった)

幼馴染(色々とカッコ付けちゃったけど、この学校は無休の上、夜も遅いじゃない)

幼馴染(どうやって男の心を惹くのよ)

幼馴染(……アタシにアホの子キャラなんて無かったはず。
あの黒エルフのせいかしら)

幼馴染(本当にどうしよう……)

幼馴染(せめて盗聴器だけでも設置させてもらえば良かったわ)

「おはよう。キツネちゃん」

幼馴染「……その呼び方は何かしら?」

「あれ、気に入らなかった? 結構可愛いと思うんだけど」

幼馴染「バカにしているの?」

「違うよ。友達になりたいと思っただけだよ」
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 22:11:02.69 ID:ZfzZPh730
幼馴染「先ずは礼儀を弁えなさいよ。馴れ馴れしい輩は好きじゃないわ」

「手厳しいなぁ。あ、ところでね」

幼馴染「……?」

「黒い肌をしたエルフに酷いことしたでしょ?」

幼馴染「……」

「言っておかなくちゃいけないことが有るんだ」

幼馴染「……何よ?」

幼馴染(……? 急に誰も話さなくなったわね)

幼馴染(教室中の視線がこっちに向けられてる。……しかも、全員が虚ろな瞳になってる)
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 22:12:55.09 ID:ZfzZPh730
「もうアレに手を出しちゃダメだよ」


「アレは私のオモチャなの」


「他の奴に壊す権利なんて無いんだよ」


「もしもまた手を出したら」


「貴女から壊すよ」


幼馴染「……っ」

幼馴染(……本気ね)


「それに、貴女は妖狐族随一の秀才なんでしょ?」
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 22:15:21.50 ID:ZfzZPh730
幼馴染「……そうね」


「できれば“友達”になって欲しいなぁ」


「“兵士”じゃなくてね」


幼馴染(……兵士。このクラスメイトたちのことかしら)


幼馴染「……ええ。喜んで」

「嬉しいなぁ。それじゃあ、私は帰るね」

幼馴染「……まだ一時限目も始まって無いのだけれど」

「大丈夫だよ」



「貴女以外は皆“兵士”だもの」
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 22:16:55.86 ID:ZfzZPh730
幼馴染「……っ!?」

「あはは、可愛い顔。じゃあ、私は用事が有るから」

幼馴染「用事……」

「うん。世界征服でもしようと思ってね」

幼馴染「……は」

「じゃあね」


幼馴染(姿が消えた!?)

幼馴染(……クラスメイトは普段通りに戻ったみたいね)


幼馴染(ーーーー何が“友達”よ)

幼馴染(あの眼は……)
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/16(月) 22:18:20.02 ID:ZfzZPh730



幼馴染「ゴミを見下す眼だったじゃない……!」


270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/16(月) 22:19:43.29 ID:ZfzZPh730
一章的なものが終了です。
一スレで終わると良いけれど。
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/16(月) 22:20:26.44 ID:URsYayG5o
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/16(月) 22:23:06.97 ID:tkyLMx6Bo

屑キャラ登場?
やっぱりほのぼのじゃ無かったのか…
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 23:00:54.31 ID:rA/kxPJGo
なに?前スレみなきゃいけない流れ?
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/16(月) 23:07:18.53 ID:gqnPNKM7o
見たきゃ見ろ。
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/16(月) 23:12:15.14 ID:ZfzZPh730
いや、多分大丈夫です。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/07/16(月) 23:20:22.93 ID:mG+YRsGd0
転移の呪を使えるだと!?
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/17(火) 00:26:03.63 ID:RZK8VJyM0
本命かどうかはまだ分からんな
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/17(火) 12:00:30.50 ID:FmcnlDSE0
意見を伺いたいのですが、

ダーク「

ダークエルフ「

ならどちらが良いと思いますか?
もしも変えるなら、このタイミングしかなさそうですので。
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 12:25:42.44 ID:fsGlYn6IO
個人的には>>1の書きやすい方ならどちらでも構わないと思う
同種族で似た名前が出まくったりする予定があるならDエルフとか黒エルフとか差別化する必要もあるだろうけどさ
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 13:56:49.87 ID:6O+ViO1IO
好きな方でよかよ
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/17(火) 17:08:54.28 ID:94kPbWi30
>>278
好みでww
それに2スレ以降になっても、読む側は追っかけるから
一切気にせず、好きなように書け
蛇足ながら、登場人物など、WIKIでまとめる要素の希望を補ってもらえたら
編集する場合に助かる
今後も第二章、三章・・って続くなら人物とか埋める要素が増えてくるのでね
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 21:20:40.00 ID:N1z1vMdno
どっちでもいいけど、ダークで分かるよ
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 23:38:27.76 ID:9FY9eQO5o
駄エルフでも…いやなんでもない
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/18(水) 00:48:30.93 ID:LTx1GQFy0
ダークエルフ「
にすることにします。
最近、自分の中でエルフ成分が不足してるので。

>>281
自由に編集していただけると嬉しいです。
個人的には緩い紹介の方が好みです。
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 00:51:40.17 ID:LTx1GQFy0
部屋のブザーが鳴ったのは、ダークエルフがちょうど荷造りを終えた時だった。

雨が沛然と降っている中、屋根を叩く激しい水音に紛れて聞こえた。

ダークエルフ(誰だろう……?)

訝しみながら、彼女は扉の前に立ち、魚眼レンズを覗き込む。

妖狐族と思われる女性が佇んでいるのが、歪んだレンズ越しに視えた。

ダークエルフ(……男の幼馴染か? あれ以来全く音沙汰が無かったが)

逡巡しながらも、ダークエルフは施錠を外し、扉を開ける。

女性は雨傘を差していなかったが、体は濡れていなかった。
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 00:54:05.98 ID:LTx1GQFy0
ダークエルフ(彼女に似ているが、別人だな。顔立ちが大人びているし、尻尾が四本だ)

ダークエルフ(体が濡れていないのは妖術でも使ったからだろうか?)

「あれ、此処って男ちゃんの部屋じゃないの?」

ダークエルフ「男の部屋なら、そちらから見て此処の右隣である一番端の部屋です」

「あ、そうなんだ。ごめんね」

ダークエルフ「あ、でも男は留守ですよ」

「そうなの? どれくらいで帰ってくるのか知ってる?」

ダークエルフ「そこまでは流石に……」

「そっか。困ったなー」
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 00:55:19.49 ID:LTx1GQFy0
ダークエルフ(……見たことの有る顔だな)

「厚かましいけど上げて貰えないかな? 怖いのに追われてるんだ」

ダークエルフ「追われてる……」

「取り敢えず上がって良い?」

ダークエルフ「はあ……。どうぞ」

「ありがとね」

快活な口調で礼を述べ、彼女は部屋に入る。



ダークエルフ「粗茶ですが」

彼女はティーバッグの緑茶を淹れて彼女に差し出した。

「無理に上がったんだから、お構いなく」
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 00:56:49.75 ID:LTx1GQFy0
女性はどこか優雅に茶を啜った。

ダークエルフは彼女の所作に眼を奪われる。

ダークエルフ(…………あ)

唐突にダークエルフは彼女が何者なのかに気付いた。

ダーク「あああ、あにょ、ももも、もしかして……」

ダークエルフのよく知っている人物だった。

「うん? どうしたの?」

ダーク「まままま、まお、まおうさま!?」


魔王「そうだけど」
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 00:59:19.15 ID:LTx1GQFy0
ダークエルフ「え、えー」

ダークエルフ(魔王様ってどのようにもてなせば良いのだろうか)

ダークエルフ(そもそもどうして魔王様がこんなアパートの一室を訪れるのだ)

ダークエルフ(……追われていると言っていたな)

ダークエルフ(……もしかして暗殺を目論む輩に追われているのか!?)

ダークエルフ(この部屋が流血と叫喚に満たされるのか!?)

ダークエルフ(勘弁してくれ……)

ダークエルフ(それにしては、魔王様は随分と穏やかな雰囲気だな)

ダークエルフ(尻尾がパタパタしていて、とても可愛いらしい)

ダークエルフ(モフモフしたい)
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/18(水) 01:03:00.21 ID:eXg0Msffo
モフモフwww
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 01:04:18.70 ID:LTx1GQFy0
魔王「雨足が強いね」

ダークエルフ「そ、そうですね」

魔王「でも明日の予報は晴れだって。
……その荷物を見るに、何処かに出掛けるのかな?」

ダークエルフ「あ、はい。明日から『勇者合宿』が有るんです。何でも、魔王様が提案なさってくださったと、先生方は言っていましたが」

魔王「ああ、高校生なんだ。
勇者合宿、まだ続いてたんだね。軽い冗談で提案したのに」

ダークエルフ「えー」

魔王「酒の席でも、軽口はダメだね。
でも、二十年近く続けてるということはそれなりに意義があるみたいだから良いのかな」

ダークエルフ(魔王様は意外と適当な性格なのだな)



魔王「ところで黒ちゃんは、男ちゃんと仲が良いのかな?」

ダークエルフ(……黒ちゃん、なんて初めて呼ばれた)
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 01:06:18.97 ID:LTx1GQFy0
ダークエルフ「隣室ですし、一応同じ組なので」

魔王「へー。本当にそれだけかなー。怪しいなー」

意地悪そうに口許を吊り上げながら、彼女は詰め寄る。

ダークエルフ「え、えと」

魔王「その反応、もしかして付き合ってるのかなー?」

ダークエルフ「しょしょ、しょんな! ま、まだです!」

魔王「へー。まだかー」

ダークエルフ「あ、あうあう」

魔王「あはは。からかってゴメンね。
まあ、あの子と仲良くしてあげてね」
293 :「女」と書いて「ひと」でオナシャス。 [saga]:2012/07/18(水) 01:09:28.66 ID:LTx1GQFy0
ダークエルフ(この女、怖い)

ダークエルフ(……彼女が、男を振った女か)

ダークエルフ(やはり美人だ。男が惚れるのも無理ない)

ダークエルフ(今でも男はこの女を好いてるのだろうか)

ダークエルフ(だとしたら、敵う気がしないな)

魔王「ボクとしては、異種族同士で結ばれるのはお勧めできないね。特に、寿命に歴然とした差が有る時は。娘や孫より長生きするのは、辛いものだよ」

ダークエルフ「……あ、あの。非常に不躾なのは重々承知しているのですが、再婚などはなさらないのですか?」

魔王「わぁ、本当に不躾だね」

ダークエルフ「すすす、すいません!」
294 :新キャラも出たし、投下終了です。 [saga]:2012/07/18(水) 01:13:56.02 ID:LTx1GQFy0
魔王「土下座までしないでよ……。冗談だから」

ダークエルフ「いえ! 本当に失礼なことを伺いました!」

ダークエルフ(国の王に何を訊いているのだ、私は)

魔王「良い相手がいれば、そうすると思うよ。
そう言い続けて、もう千年ほど経っちゃったけれど」

ダークエルフ「そ、そうですか」

ダークエルフ(敵となる可能性は、零では無いということか)

ダークエルフ(むぅ)

ダークエルフ(やはり、勇者合宿で更に距離を縮めなければな)

ダークエルフ(頑張れ、私!)

魔王(急に気合いの入った顔になったけど、どうしたんだろ)
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/18(水) 05:18:44.07 ID:Lt+/29zjo

モフりたい
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/18(水) 09:50:11.75 ID:YGIsdR3Yo
そういえばまだモフモフしてないな
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 12:18:43.17 ID:TeBqEOOKo
スレタイにあるのにまだないなww
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/18(水) 13:23:02.30 ID:HqJW4Qa8o
スレタイはあくまでも「モフモフしたい」だからな

最後までモフれない可能性も……
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/18(水) 13:40:02.38 ID:184PCSJko
じゃぁ、魔王様のしっぽでモフモフしてきますね
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 16:33:11.42 ID:/gIqr7ad0
むしろダークたんの脳内思考が顔に出まくってる所に萌えるww
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 18:07:29.09 ID:kf5M4/5vo
前作の登場キャラで存命なのは魔王ぐらいなのかな
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/18(水) 18:55:52.88 ID:JKsCMAaz0
話の流れ読むと、前作から1000年位後の話らしいので
ほとんどは天寿全うしたんじゃないのかな?
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 19:32:10.63 ID:KKufTeuEo
蛇神も死んだんかな
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/18(水) 21:06:22.59 ID:atJpqNcso
蛇「神」だから1000年くらい余裕でしょ多分
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/18(水) 21:10:58.00 ID:63jHpjBFo
あの中じゃ若い方だったし生きてる可能性はあるね
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/18(水) 21:52:06.23 ID:6m+4fM68o
このスレで前作の話やめない?読んでない人もいるんだし
307 :>>283 堕悪エルフなんて番外ネタが浮かんでは消えます。 [saga]:2012/07/18(水) 22:36:14.96 ID:LTx1GQFy0
唐突に、彼女は端正な顔をしかめた。

魔王「うぇ、もう居場所がバレちゃったみたい。足音を消してるし」

ダークエルフ「へ?」

魔王「男ちゃんの部屋のブザーが鳴ったんだ。怖いのが来ちゃったみたい」

ダークエルフ(此処が修羅場になるのは困るな)

暫くして、ダークエルフの部屋のブザーが鳴った。

ダークエルフ「ひっ」

魔王「うーん」

若干の間を空けて、もう一度ブザーが鳴った。

ダークエルフ「ど、どうしましょう」
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 22:38:07.24 ID:LTx1GQFy0
魔王「もう無理そうだね。出てみて」

ダークエルフ(出た瞬間に襲われたりしないと良いが)

ダークエルフ(でも、強硬手段に出るような輩だったら、とっくにドアを破っているか)

物怖じしながらも、彼女は施錠を外し、扉を開ける。

「ふむ。王殿がおられるな」

ダークエルフ(また美人が来た)

ダークエルフ(うわぁ……四天王の方だ)

ダークエルフ(恐ろしいって、彼女のことか)

ダークエルフ(確かに、気は強そうな方だが)

ダークエルフ(……彼女も雨に濡れていないな)

四天王「失礼してもよろしいか?」

ダークエルフ「あ、はい……」
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 22:41:49.92 ID:LTx1GQFy0
魔王「……どーも」

四天王「……王殿。ご勝手な外出は困ります」

魔王「いやー、ゴメンね」

ダークエルフ(……どうして私の部屋に、魔を統べる王と重鎮がいるのだろう)

四天王「ここ二ヶ月ほど、王都内に不穏な動きが有ることは、ご存知でしょう」

魔王「知ってるけどさ。城内にずっといると窮屈なんだよね」

四天王「お気持ちは痛いほどに承知しておりますが、王殿のご命が狙われている可能性がある以上、仕方の無いことです」

ダークエルフ「え」

魔王「ああ、四月の中旬にちょっと襲撃されたんだ。
何だか頭のおかしい集団にね。皆して死んだ魚の目をしてたんだ。怖いよね」
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 22:44:46.30 ID:LTx1GQFy0
ダークエルフ(そんな重大なニュース、初めて耳にした)

四天王「非公表の事柄を軽々しく仰らないでください。
すまないが、このことは内密にしていただきたい」

ダークエルフ「あ、はい」

魔王「返り討ちにしたから良いじゃない。それにまた襲われても大丈夫だよ。ボクは強いからね」

四天王「そのようなお言葉は、私よりも強くなってから仰ってください」

魔王「ほほう? 随分と大きく出たね」

四天王「事実を述べたまでです」

魔王「……これは『拳神』と持て囃されて図に乗った小娘に現実を教えなきゃいけない感じかな」

四天王「流石は王殿。ご冗談がお上手ですな」

魔王「わぁ、闘ってやる。戦ってやる。殺ってやる」

四天王「いくら王殿といえど、戦闘に関しては容赦致しませんよ」


ダークエルフ「あの、外でやってください」
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/18(水) 22:46:38.78 ID:LTx1GQFy0



魔王「お邪魔しましたー」

四天王「失礼した」

ダークエルフ「はあ」

魔王「勇者合宿、楽しんで来てね」

ダークエルフ「あ、はい」

四天王「個体数が極めて少ない黒エルフか。
一度手合わせを願いたいところだ」

ダークエルフ「それはお断りさせていただきます」

四天王「残念だ」

魔王「じゃあね」

二人は豪雨の中を、やはり傘も差さずに帰って行った。
312 :新キャラも出たし、投下終了です。 [saga]:2012/07/18(水) 22:51:06.16 ID:LTx1GQFy0
ダークエルフ「随分と気さくな方達だ」

ダークエルフ「テレビで観るのとはだいぶ違う」

ダークエルフ「あの方達、私が初めて見た時から全く老けてない」

ダークエルフ「それにしても、仲が良さそうだったな」



ダークエルフ「……昼過ぎだし、一眠りするか」

ダークエルフ「それにしても三泊四日か」

ダークエルフ「パーティの編成は最高だが、部屋割りがな……」

ダークエルフ「入学式から二ヶ月以上も経って、未だに同性の友達ができていないのは、色々と問題だ」

ダークエルフ「この機会に、同性とも親しくなれると良いが」

ダークエルフ「まあ、それも頑張ろう」


ダークエルフ「…………すぅ」
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/19(木) 00:30:32.40 ID:qT2GqC28o
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 01:40:25.59 ID:wOslQ4bGo
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 12:43:49.71 ID:9CNOdhN0o

ダークエルフの目標は男と幼馴染と魔王の尻尾でモフモフしまくりだな
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 13:18:11.02 ID:hUTDuod7o

俺も尻尾もふもふされたい
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/07/19(木) 13:56:19.52 ID:qP/KCfcio
尻尾は全員で何本なんだろ
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/19(木) 14:47:16.77 ID:FaEzTzJY0
乙です。
前作見てませんが、独特な世界観にどっぷりハマってしまいますた。
続きを楽しみに首を長くして待ってます。
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 15:29:23.62 ID:+z9aoZUdo
追いついた
あの人か乙
320 :やっぱり毎日は無理でした。 [saga]:2012/07/20(金) 23:20:17.00 ID:dMt7A4rz0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

雨上がりの空に雲は無く、常に世界の半分を満たしている薄紫の霞は、大粒の雨によって局地的に落とされた。

上弦の月が、遥か上の紺碧に弧を描いている。

芝生の上の露は、月光を反射して煌めいていた。

彼女は細く長い息を吐いた。

形の良い口に咥えられた細筒から、幾つもの泡が生じる。

透明な小球は宙を漂い、或るものは空中で弾け、或るものは地面に落ちて消散した。

全ての気泡が消えた後、彼女はもう一度息を吹く。

シャボン玉が飛んだ。

すぐに壊れて消えた。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/20(金) 23:23:11.75 ID:dMt7A4rz0
「綺麗だよね。魂が有るとしたら、こんな形なのかな」

幼馴染「……それが、我が家の敷地を無断で侵している貴女の第一声なのね」

「冷たいなぁ。私たちは“友達”なのに」

幼馴染「……親しい者の間にも礼儀は必要でしょう」

「そっか。ゴメンね」

幼馴染「それで、何の用かしら?」

「そんなに急かさないでよ。慌てて良いことなんてないよ」

幼馴染「……ああ、そう」

「私は“友達”と月見をしたかっただけだよ」
322 :サマーウォーズ観てたら、祖父を思い出した。 [saga]:2012/07/20(金) 23:27:04.92 ID:dMt7A4rz0
「雨上がりは良いよね。
私は、このしめやかな感じと独特の薫風が堪らなく好きだな」

幼馴染(こいつの好みなんて知りたくも無いわ。
変に付き纏われているせいで男にも中々会えないし、本当に害悪ね)

彼女はもう一度シャボン玉を吹いた。

「世界征服は中々難しいものだね」

それからしみじみと呟いて、液が詰まった容器に細筒を浸す。

幼馴染「……冗談じゃなかったの?」

「まさか。実際に行動を起こしてるよ」

幼馴染「行動を?」

「“兵士”を使って貴女の高祖母を暗殺しようとしたりね。失敗しちゃったけど」

幼馴染「……は」
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/20(金) 23:29:48.59 ID:dMt7A4rz0
「命令を果たせなかった“兵士”たちを処分しておこうかと考えたけど、また使えるかもしれないから生かしておくことにしたよ」

彼女の言葉に、妖狐は曖昧にうなずいた。

「それで、今は戦力の増強を頑張ってるよ」

幼馴染「操っている者の数でも増やしているの?」

「それも続けているけどね。国の高官とか、王に固い忠誠を誓っている鬼人族とかを中心的にね。
でも最近はもっと大きな戦力を手中に収める為に奮起してるよ」

幼馴染「大きな戦力?」


「三王獣だよ」


彼女は目を剥き、絶句した。

幼馴染「……手懐けられる存在じゃない」

暫く沈黙し、やがてそれだけを口にした。
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/20(金) 23:32:51.96 ID:dMt7A4rz0
「できるよ。現にベヒモスを四頭と、ジズを二頭懐柔できたしね」

幼馴染「陸王と空王を……」

「見つけるのが凄く大変だったけどね。
征服の重点になるはずの王都侵略は、基本的にベヒモスだけで事足りるんだろうけど、どうせだから三頭一対で揃えようと思ってるんだ」

幼馴染「……貴女は本当に世界を征服したいの? 三王獣まで従えて、今更冗談なんて言えないわよ」

「本気だってば。ずっと言ってるじゃない」

幼馴染「何の為に?」

その問いに、彼女は沈黙する。

返事の代わりなのか、シャボン玉を飛ばした。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/20(金) 23:35:20.82 ID:dMt7A4rz0
「ーーーー世界はつまらないよ」

幼馴染「……」

「私の力の強大さはよく知ってるでしょ」

幼馴染「ええ」

幼馴染(嫌というほどね)

「そのせいで全てが上手く行き過ぎるんだ。張り合いがないよ」

幼馴染「聴く側からすれば羨ましい限りね」

「……やっぱり、優秀なキツネちゃんでも私の気持ちは共感してくれないんだね」

幼馴染「私は上手くいかないことの方が多いわ」

幼馴染(現に男を振り向かせることができないでいる)
326 :風呂敷も広がったし、投下終了です。 [saga]:2012/07/20(金) 23:39:02.12 ID:dMt7A4rz0
「そっか」

幼馴染「ええ」

「……また霞が立ち込めてきたね」

幼馴染「本当ね」

「……私は瘴気が嫌いだな。元々私たちには有害だったんだし、今でも、耐性がついただけで必要のある物質ではないしね」

幼馴染「そうだったわね」

彼女は息を吹いた。

透明な泡が、再び微風に舞う。

「尤も、アレは別みたいだけど。
ーーーーそろそろ帰るね。ばいばい」

返事も待たずに、彼女は虚空に姿を消した。



幼馴染「……大混乱が起きそうね。そう遠くない内に」



シャボン玉はもう一つも残っていなかった。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/21(土) 00:05:53.38 ID:WrfQNQr1o

シャボン玉だと…?
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 00:25:55.47 ID:sVG111L+o
ちょっとよくわからないです
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 01:51:12.86 ID:pttflhgS0
>>328
シャボン玉が判らないというなら、そのまま
作中でも言われている通り「魂の形みたいなもの」

前作読んでたら「シャボン玉」だけで妄想反応するレベルというだけ
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/21(土) 02:05:34.07 ID:1lWfuLFSo
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 02:23:10.63 ID:uoXaVAIDO
前作、前作か・・・

読まなきゃワケわからん表現を多様したいなら、はじめから○○(前作のタイトル)パート2、とかいかにも続編な
タイトルにしとけばいいのに
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/21(土) 02:41:14.39 ID:rygzkXJbo
ここの奴らは普通の小説とか読んだりしないのか?
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/21(土) 04:17:03.69 ID:NEhWvBZ8o
>>331
訳わからないとかどんだけ読解力ないんだよ
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 07:16:06.15 ID:rRh12ikVo
つかわからないと思うなら前作読めばよくね
それで分かるかはその人次第だろうし
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 07:59:18.28 ID:S+Wz2EpIO
>>333
オマエモナー
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/21(土) 09:17:41.13 ID:XUNDRcfL0
まあ、前作に興味ある方は、WIKIから辿って行けるようにしてますので
ここで争わずに、そちらから見に行ってみてくだされ
とりあえず、両作のWIKIは相互に行ける・・・はず
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/21(土) 10:05:36.69 ID:NIL2OYqWo
>>331
シャボン玉=魂みたいなものって>>321で普通に言ってるし、前作読まないと訳がわからなくなる表現は今のところ使ってないと思うが
読んでも結局「確かに魂はまるでシャボン玉みたいだったな」って感じるぐらいだぞ
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/21(土) 10:09:15.68 ID:rygzkXJbo
一部の阿呆に合わせる事はないよ乙
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 10:49:19.27 ID:mYqSOILXo
風呂敷を広げるってどういう意味だと思ってんの?
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/21(土) 11:23:16.79 ID:UaCjNsNEo
外野が前作前作ゆーから新規が騒ぐんだろが

黙ってろやks
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 14:06:41.61 ID:pttflhgS0
俺も前作読んでるがそもそも世界観以外ほぼ繋がってないし(シャボン玉・瘴気&エネルギー関連・現魔王千年前思い出話)
前作厨が前作思い出して反応してるから新規が混乱しているだけだと思う

とりあえず新規で前作読まないと駄目って思ってる奴は「普通の小説」読んで読解力付けろ
読解力があると自分で思っている奴は前作厨は無視しろ

それが一番楽しめる
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/21(土) 14:07:52.70 ID:glSA8c+Xo
俺も前作読んでないけど、普通に読めるしなんとなくの意味もわかるだろこれくらい
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 16:31:20.43 ID:3SeadeXIO
意味はわかるけど他に前作の何か含んでるのかもとか気になっちゃうのはわからんでもない
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/21(土) 17:20:04.21 ID:2bIAfh5Oo
ジョジョの1部と4部くらいには関係あるかもしれん
まあその程度だけど
345 :ジョジョは四部と五部が好きです。 [saga]:2012/07/21(土) 21:02:40.93 ID:Sfbup37d0
ーーーーバス内ーーーー


ダークエルフ(出発式とか不要だな)

ダークエルフ(早朝で眠いのに、立って校長の長話を聞くのは億劫だ)



ダークエルフ(しかし良い座席だ)

ダークエルフ(窓側だし)

男「ねむ……」

ダークエルフ(何より男の隣だしな)

ダークエルフ(眠そうに眼をこする男が凄く可愛い)

ダークエルフ(寝ている隙に尻尾をモフモフできないだろうか)

ダークエルフ(流石に怒られるかな)
346 :ラバーズは、実はチート。メタリカよりも断然暗殺向きだと思う。 [saga]:2012/07/21(土) 21:06:51.41 ID:Sfbup37d0
ヴァンパイア「なんだか眠そうだな。行きのバスは騒いで愉しむべきなんだぜ」

彼女の前の席に座っていたヴァンパイアが笑顔で振り向いた。

ダークエルフ「吸血鬼なのに、朝に強いのだな」

ヴァンパイア「固定観念に囚われないのが俺なんだぜ。
男も随分と眠そうだな。今の内に耳でも触っておくか」

男「やめろ。耳と尻尾に触られるのは特に嫌いなんだよ」

ダークエルフ(そうなのか。勝手にモフモフしなくて良かった。嫌われたくないからな)

ヴァンパイア「しかし楽しみだぜ。皆で合宿とかテンション上がるぜ。どうせならオークも同じバスで騒ぎたかったぜ」

男「それはしょうがないだろ。身体の大きさが違うからな。それに、パーティが同じなんだから殆ど一緒に行動するしな」

ヴァンパイア「男は分かってないんだぜ。
こういう行事の楽しみは何でも共有したいのが乙女心なんだぜ」

ダークエルフ「ヴァンパイアは男じゃないか」
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/21(土) 21:09:43.63 ID:Sfbup37d0
男「俺は宿屋に着くまで寝る」

ヴァンパイア「男はつれないんだぜ」

ダークエルフ「男だからな」

ダークエルフ(そんなところも好きだが)



ヴァンパイア「前からダークさんに訊きたいことが有ったんだぜ」

ダークエルフ「なんだ?」

ヴァンパイア「エルフ族は貧乳が多いと言うだろ」

ダークエルフ「まあ、華奢な種族だからな」

ヴァンパイア「ダークさんも細いしな。でも、ダークさんは貧乳じゃ無いんだぜ」
348 :もっと速報にもエルフSSが増えれば良いのに。 [saga]:2012/07/21(土) 21:14:00.44 ID:Sfbup37d0
ダークエルフ「純エルフに比べたらな。純エルフと黒エルフには体格にも差異が有るしな」

ヴァンパイア「ほほう。けしからん身体は黒エルフ特有なのか」

ダークエルフ「そういうことになるな。
尤も、黒エルフは総じて魔法が不得手だから、純エルフの劣化とも言える。その中でも私は出来損ないだから一切使えない」

ヴァンパイア「……ダークさんって自虐が好きだよな。
生きる上で大切なのは根拠の無い自信を持つことなんだぜ」

ダークエルフ「根拠の無い自信か」

ヴァンパイア「おう。俺だって他より取り分け優れたポイントなんて無いけど、自分を信じて生きてるんだぜ」

ダークエルフ「ヴァンパイアには素晴らしいところがたくさん有ると思うが」

ヴァンパイア「それを言うならダークさんにも有るんだぜ。おっぱいとかな!」

ダークエルフ「……そうか」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/21(土) 21:15:52.03 ID:Sfbup37d0
ヴァンパイア「あれぇー?今は流れ的にドツキが入るのを期待してたんだぜ」

ダークエルフ「被虐嗜好者なのか」

ヴァンパイア「それは誤解なんだぜ。
痛めつけられて悦ぶ趣味は無いはずなんだぜ」

ダークエルフ「怪しいな。まあ、概ね良いことを言っていたと思う」

ヴァンパイア「ふふん、惚れても良いんだぜ」

ダークエルフ「ヴァンパイアの本命はラミア先生だろう」

ヴァンパイア「ば、ばか! 同じバスに乗ってるんだから、軽々しく口にされると困るんだぜ……!」

ダークエルフ「そうだった。すまない」

ヴァンパイア「まったく……」
350 :今なら固定読者が一人つくのに。 [saga]:2012/07/21(土) 21:18:01.18 ID:Sfbup37d0
ダークエルフ「魔王様は美人だな」

ヴァンパイア「急にどうした?」

ダークエルフ「いや、何となく」

ヴァンパイア「魔王様か。魔族の男の初恋は大体魔王様だよな」

ダークエルフ「そうなのか?」

ヴァンパイア「俺もだし、俺の親父もそうだって言ってたんだぜ。親父は、何時の間にか外見が魔王様より老けてしまって落ち込んだとも言ってたんだぜ」

ダークエルフ「ふむ」

ヴァンパイア「でも拳神様派の奴も少なく無いんだぜ」
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/21(土) 21:21:24.65 ID:Sfbup37d0
ダークエルフ「確かに美人だからな」

ヴァンパイア「そうそう。それに、あの漢気溢れるところに心囚われるんだろうな」

ダークエルフ「武勇伝もよく聞くな」

ヴァンパイア「世界大戦の時の話とかな。 人間が飛ばしてきた巨大飛行型兵器を生身で撃墜したらしいぜ」

ダークエルフ「更に、エルフ族でもないのに魔法を使えるそうだ。相当特殊な方だな」

ヴァンパイア「……ずっと気になってたんだが、魔法って具体的にどういうことができるんだ?」

ダークエルフ「色々だな。些細な魔法ならば水を濾過したり、火を起こしたりもできる。強力なものだと、相手を三日ほど気絶させたり、惚れさせたりもできる」

ヴァンパイア「惚れされる? 凄く魅力的な響きなんだぜ」

ダークエルフ「尤も、かなり高等魔法だから行使できる者が殆どいないのが実情だ」
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/21(土) 21:27:22.19 ID:Sfbup37d0
ダークエルフ(私だって使えるならばとっくに使っている)

ダークエルフ(いやでも、正々堂々と仲良くなりたいから控えるだろうか)

ダークエルフ(……使えないのだから考えるだけ無駄か)

ダークエルフ「因みに、傷を癒やす『治癒の呪』を使えれば魔法士としては充分だと言われている。気絶させる『昏倒の呪』が使えれば相当な実力者だな」

ヴァンパイア「ほうほう。ところで、魔法って詳しい原理がまだ分かってないんだろ? だったらダークさんが一切使えないと決まった訳じゃないだろ」

ダークエルフ「それは、そうだ」

化学教師「ヴァンパイア君、いつまでも後ろを向いてちゃダメだからね」

ヴァンパイア「あ、すいません」

鳥人の注意を受け、彼は前へと向き直る。
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/21(土) 21:33:18.27 ID:Sfbup37d0
ダークエルフは暫しの間、車窓の風景に意識を傾けていた。

ダークエルフ(暇だし、しおりを読むか)

それから、ハンドバッグにしまっていた冊子を取り出す。

表紙にはデフォルメされたキャラクターが描かれていた。

美術部員が依頼されて描いたらしい。

彼女はぺージの一枚目をめくる。

上質の紙では無く、めくる際に軽くシワができた。

しおりの一頁には合宿実施の動機が難しい言葉を交えながら長々と書かれている。

ダークエルフ(普通の生徒は多分見ないだろうな)

ダークエルフ(しかし、大仰な言葉を並べながらも、実情は酒の入った魔王様の冗談という)
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/21(土) 21:36:02.84 ID:Sfbup37d0
ダークエルフ(合宿中の行動は基本的に四人。たまにクラスごと)

ダークエルフ(……独特なのは、クラス対抗のポイント制か)

ダークエルフ(一組から五組の五チームの合計点で順位付けをする)

ダークエルフ(得点は様々な状況で発生して増減する)

ダークエルフ(優勝クラスには素晴らしい賞品か)

ダークエルフ(素晴らしい賞品。一体、何なのだろう)

ダークエルフ(取り敢えず宿屋についたら部屋に荷物を置けば良いのだな)

ダークエルフ(三人部屋だ。しかも女子。私だけ余るパターンは勘弁してくれ。いや本当に)

ダークエルフ(……そんな憂慮をしても不毛だな)

ダークエルフ(有意義な時間を過ごす為に男の寝顔を見ておこう)
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/21(土) 21:37:20.85 ID:Sfbup37d0
ダークエルフ(綺麗な寝顔だ)

ダークエルフ(いつもの冷ややかな印象が失せて愛らしい)

ダークエルフ(……今なら耳とか尻尾を触り放題か)

ダークエルフ(い、いやダメだ!)

ダークエルフ(バレたら男に嫌われてしまう)

ダークエルフ(それは絶対に嫌だ)

ダークエルフ(見てるだけにしよう)

ダークエルフ(もっと仲良くなればきっと好機があるはずだ)

ダークエルフ(今は我慢の時だ)
356 :区切りが良いし、投下終了です。 [saga]:2012/07/21(土) 21:40:07.67 ID:Sfbup37d0
ダークエルフ(見れば見るほど端正な唇だ)

ダークエルフ(……うう)

ダークエルフ(なんて蠱惑的な唇なんだ)

ダークエルフ(貪りたくなってしまう)

ダークエルフ(……ただ粘膜を接触し合うだけならば何も問題無いんじゃないか?)

ダークエルフ(はっ……!)

ダークエルフ(だ、ダメだダメだ!)

ダークエルフ(平常心を取り戻せ!)


ダークエルフ(男の寝顔を見ていたら奇行に走ってしまいそうだ)

ダークエルフ(勿体無いが外を眺めておこう)
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 23:13:45.55 ID:Z5JGdt3SO
時々入る>>1の呟きがツボなんだが
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/22(日) 01:00:47.57 ID:g2LfNDy/o
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/22(日) 01:03:02.11 ID:V+wXT5RRo
ダークエルフって幼馴染の狐と病み具合はたいして変わらない気がしてきた
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/22(日) 05:25:35.42 ID:tEEudKWpo
エルフの心の呟きが笑えるな
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/07/22(日) 06:56:25.30 ID:2Sdmgu8f0
乙です。
自分の経験だから当たってないかも知れんけど
人には磁石属性っていうか
付き合う相手のことごとくが特定の性癖持ちって人がいる
さしずめ男さんはメンヘラ磁石なんだろう
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 09:32:21.56 ID:+ksTcwYIO

だがメタリカよりもラバーズの方が暗殺向きかについては同意しかねるけどな
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/22(日) 10:56:13.79 ID:whIr0Z5bo
射程距離チートだよな
364 :>>361 多分冷却した電磁石並みに強力なのでしょう。 [saga]:2012/07/22(日) 16:59:14.78 ID:+ftMmOFx0
ーーーー宿泊施設・待合室ーーーー


ダークエルフ(もう昼だ)

ダークエルフ(半島にある宿泊場所か。大規模な造りだが飾り気がなく簡素な施設だな)

ダークエルフ(貸し切りのうえに、大所帯だからしょうがないのだろうけれど)

ダークエルフ(修学旅行でもないし、宿泊料を切り詰めておきたいのだろうな)

ダークエルフ(その割には三人部屋なのだから不思議だ。詰められるよりは嬉しいが)


ダークエルフ(宿屋の裏手に温泉が湧いているらしい。露天風呂というやつか)

ダークエルフ(しかし、生徒の使用は禁止されているそうだ)

ダークエルフ(こっそり入って見つかりでもすれば減点の対象になるのだろうな)

ダークエルフ(……温泉か。数えるほどしか入湯したことないな)

ダークエルフ(取り敢えず、荷物を置いてくるか。その後に昼食だ)
365 :どこまでキンクリするかで悩む。 [saga]:2012/07/22(日) 17:03:25.36 ID:+ftMmOFx0
ーーーー初日・午後・防波堤ーーーー

ヴァンパイア「海だ! 海だぞー!」

男「見事な紫色だな」

オーク「『海瘴溝』から瘴気が噴出しているせいだね」

ヴァンパイア「前方に雄大な海。後ろには山林。
山派も海派も満足な地形なんだぜ」

ダークエルフ「今日は、ここで日が暮れるまで釣りか」


地理教師「一組の皆さん、竿の準備はできましたか? はい。たくさん釣ってください。はい。釣った分だけポイントに加算されます。はい。大きければ大きいほど高ポイントです。はい」

生物教師「俺の酒の肴にするんだから気合い入れて釣れよ!がはは!」

地理教師「ちょっと!? 生徒の前で何言ってるんですか!?」

生物教師「あん? ああ。酒なんか飲むわけないだろ! 勤務中だからな!」

地理教師「白々しいにもほどが有ります。はい」

生物教師「うるせーな。その両腕に抱えてる頭、海にぶん投げるぞ」

地理教師「勘弁してください。はい」
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 17:05:40.41 ID:+ftMmOFx0
ヴァンパイア「昼食、思いのほか地味だったなぁ」

オーク「確かにね」

男「合宿なんだからあんなものだろ」

ダークエルフ「そうだな」

ヴァンパイア「まあ、気を取り直していくんだぜ。デカイのを釣ってやるんだぜ」

オーク「大地を釣り上げたりしないでね」

男「お約束だな」

ヴァンパイア「そんなことしないんだぜ。取り敢えず誰か釣り餌を付けてくれ」

男「俺も無理だ。誰か頼む」

ダークエルフ「私も頼む」

オーク「しょうがないなぁ」
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 17:08:20.87 ID:+ftMmOFx0




ダークエルフ「釣れた」

ヴァンパイア「はやっ」

男「しかも二匹だな」

ダークエルフ「釣りをしたのは初めてだが、中々楽しいな。想定していたよりも手応えが強くて驚いた」

地理教師「お、釣れたんですね。はい。二匹で十ポイントといったところですね。はい。忘れない内に集計用紙に書いておきます。はい」

オーク「やったね」

ヴァンパイア「俺も負けてられないんだぜ」

ダークエルフ「誰か、針から魚を取ってくれ。ビチビチ跳ねて怖い」

オーク「あ、僕が取るよ」

ダークエルフ「ありがとう。それと餌も頼む」

オーク「はいはい」
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 17:09:54.52 ID:+ftMmOFx0
ヴァンパイア「んー、釣れないんだぜ」

男「まだ始まったばかりだろ」

オーク「そうそう」

ダークエルフ「釣れた」

ヴァンパイア「どんだけなんだぜ」

男「運が良いな」

オーク「あ、取るよ。餌も付けておくね」

ダークエルフ「ありがとう」

オーク「ところで。ダークさんは良いとして、ヴァンパイア君と男君が自力で餌を付けられないというのはどうなんだい?」
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 17:11:56.11 ID:+ftMmOFx0
ヴァンパイア「えー、だってなぁ」

男「環形動物は気持ち悪い」

ヴァンパイア「ウネウネ気色悪い」

オーク「薄弱だなぁ」

ヴァンパイア「ま、餌の取り替えはオークに頼むんだぜ」

男「その前に釣らないとな」

オーク「そうだね」

ダークエルフ「あ、また釣れた」

ヴァンパイア「……なんでダークさんのところだけ入れ食いなんだよ」
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 17:14:00.34 ID:+ftMmOFx0




ヴァンパイア「つ、釣れねぇ……」

男「ああ……」

オーク「ぶひぃ……」

ダーク「あ、釣れた。これで二十匹くらいかな」

男「二十二匹だな」

オーク「凄いなぁ」

ヴァンパイア「俺なんて近くのゴブリンとお祭りになったんだぜ」

オーク「近い位置で釣りをすると結構なるよね」

ダークエルフ「オーク、取ってくれ」

オーク「はいはい。餌もだね」
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 17:16:34.54 ID:+ftMmOFx0
男「幾らなんでもおかしいだろ。どうしてダークだけこんなに釣れるんだよ」

ヴァンパイア「ホントだぜ。
とにかく、ボウズで終わるのは避けたいんだぜ」

オーク「そうだね」


ダークエルフ「釣りは楽しいな」

男「それだけ釣れれば楽しいだろうな」

ヴァンパイア「羨ましいんだぜ」

オーク「はあ……。こないなぁ……」


男「……陽が傾き始めたな。制限時刻も遠くない」

ヴァンパイア「うう。焦るんだぜ」
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 17:19:39.40 ID:+ftMmOFx0




ヴァンパイア「他の奴等も全く釣れてないらしいぜ」

オーク「ぶひぃ。せめて明日が釣り予定の二組と三組も僕たちと同じ調子だと良いけどね。
明日はバカみたいに釣れたりしたら、差がついちゃう」

男「そうだな。どうせなら優勝したいところだ」

ダークエルフ「男も意欲が有ったのか」

ダークエルフ(くだらないとか言って適当に取り組むと思っていたが)

男「どうせなら勝ちたいだろ。どんな勝負事でも負ければ悔しいしな」

ヴァンパイア「それでこそ漢なんだぜ」

オーク「負けたくないよね」

ダークエルフ(意外と子どもじみたところも有るのだな)



ダークエルフ(……本当に、知れば知るほど好きになる)
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 17:21:52.53 ID:+ftMmOFx0
地理教師「そろそろお終いです。はい。竿を片付けてください」

「うがー! 釣れなかったー!」
「つまんね……」
「マジで糞だな」

ヴァンパイア「うう。結局ボウズなんだぜ」

オーク「運が悪かったなぁ。魚が少なかったのかな」

男「はあ……」

地理教師「……おかしいですね。例年はもっと釣れるはずなんですが。はい」

生物教師「全くだ。殆ど黒エルフしか釣ってねーな」

ダークエルフ「ふふん」

「……なんだよ。魔法でも使ったんじゃねーの」
「魔法で独占かよ。屑だな」
「道理で釣れないはずだ。時間を無駄にした」

ダークエルフ(……どうしてそうなるのだ。そもそも私は魔法が使えないのに)
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 17:27:26.44 ID:+ftMmOFx0
ヴァンパイア「おいおい、勝手なこと言うなよ。確固とした証拠でも有るのか?」

「いや、ねーけどさ。でもおかしいだろ」
「魔法を使ったとしか考えられないな」
「確かに、一人だけそんなに釣れるのはおかしいわね」

ヴァンパイア「たんなる偶然だろうが。憶測で物事語ってんじゃねぇぞ」

男「そもそもダークは魔法を使えないしな」

生物教師「ほぉ。それは初めて聞くケースだな」

「は? エルフなのに魔法を使えないのかよ。魔法はエルフの唯一の存在理由みたいなものだろ」

「変な肌の色をしてると思ってたが、黒エルフはやっぱり劣等種か」

ダークエルフ「……っ」

オーク「いい加減にしなよ! どうして他者の気持ちを慮れないんだ! 君たちの言葉がどれだけダークさんを傷つけてるのか自覚しなよ! 多勢に無勢で罵倒を並べるなんて最低だよ!」
375 :夜にもう一度投下できたら良いなぁ。 [saga]:2012/07/22(日) 17:34:32.23 ID:+ftMmOFx0
ヴァンパイア「ひゅーひゅー。オークさんカッケー!」

オーク「どうしてヴァンパイア君は茶化す側に回ってるんだい!?」

ヴァンパイア「だって殆ど代弁してくれたし」

「……ちっ」

ヴァンパイア「まあ! 舌打ちなんてはしたない! お母さん、あなたをそんな子に育てた覚えはないわよ!」

「育てられた憶えがねーよ!?」

ヴァンパイア「まあ! お母さん、息子に怒鳴られたショックのあまり、顔が青褪めてしまったわ!」

「吸血鬼だから元々蒼白だろうが! そもそもなんで寸劇を始めてるんだよ!?」

地理教師「あー、取り敢えず宿に戻りましょう。はい」
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 18:00:29.17 ID:VJDhWXb3o

イジメ(・A・)イクナイ!!
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/22(日) 18:01:50.27 ID:nq2CdRjq0
オークに怒鳴られたらビビルよなwww
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/22(日) 19:01:34.27 ID:MyiB1AQmo

これは良いオーク
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 22:38:31.93 ID:1dUJyvQdo
三人部屋?ダークは?
380 :>>359 行動に移すか移さないか。そこにはマウスとモルモット程度の差があるのです。 [saga]:2012/07/22(日) 23:07:24.43 ID:+ftMmOFx0
ーーーー宿泊施設・夕食後ーーーー


ダークエルフ「すまなかった」

男「ん、どうした?」

ダークエルフ「皆に迷惑をかけてしまった。クラスでの心象も下げてしまったかもしれない。本当にすまない」

オーク「僕たちは言いたいことを言っただけだよ。ダークさんが謝る必要なんて無いよ」

ヴァンパイア「そうそう。それに友達なら謝るんじゃなくて、むしろ感謝して欲しいんだぜ」

ダークエルフ「……ありがとう」

オーク「どういたしまして」

ヴァンパイア「だぜ」



ダークエルフ(……私は本当に、素晴らしい友人に出会えたな)
381 :魚「俺は美人に釣られたぜ!」魚「俺も!」 [saga]:2012/07/22(日) 23:10:25.20 ID:+ftMmOFx0
ーーーー大浴場ーーーー


ダークエルフ(一組の女子全員が同時に入浴か)

ダークエルフ(広いがこの大人数だと流石に狭いな)

ダークエルフ(しかも他の組が支えているから、まったりする暇も無い)

「ほんとに全身の肌が黒いね……」
「変なの……」
「てかキモい……」
「どうしてエルフ族がこっちの学校に来たのかイミフだったけど、納得……」

ダークエルフ(聞こえているぞ。まったく)

ダークエルフ(でも、さっきよりもずっと気楽だ)

ダークエルフ(私への揶揄に怒ってくれる友人がいるのは幸せなことなのだな)

ダークエルフ(おかげで、今はどちらかというと腹が立っている)

ダークエルフ(好き勝手言ってくれるな。ちくしょう)

ダークエルフ(ここは一度、怒りを表明してみようか)
382 :生物教師「食うのは俺だがな! がはは!」 [saga]:2012/07/22(日) 23:13:53.29 ID:+ftMmOFx0
サキュバス「はぁ。まったく」

ダークエルフ(相部屋になるサキュバスだ)

ダークエルフ(この淫魔、言動が辛辣だからな)

ダークエルフ(まさに、“歯に衣着せぬ”という慣用句を体現したような女だ)

ダークエルフ(彼女の前ではやめておこう)

ダークエルフ(今は大人しく入浴しておくか)

サキュバス「アナタ達、いい加減にしなさいよ」

ダークエルフ(……ん?)
383 :魚「\(^o^)/」 [saga]:2012/07/22(日) 23:17:27.95 ID:+ftMmOFx0
サキュバス「豚がさっき言ってたことは正しいでしょ。
大勢で一人を詰るのは間違いよ。せめて堂々と一対一で罵りなさいよ。
それに魔法が使えないからって馬鹿にするのもおかしいでしょ。アナタたちは自分がどれだけ優秀だと過信してるのかしら」

ダークエルフ(彼女の主張は正しいような正しくないような……)

ダークエルフ(いや、正しくないな)

「偉そうに……」

サキュバス「なに? 大きな声で喋ってくれないかしら。それともその声量が通常なの? 今まで良く生活できたわね」

「はあ!? なんなの!?」

ウンディーネ「あ、サキュたんの悪口言ったら、溺死寸前まで水責めの刑ね」

ダークエルフ(サキュバスといつも一緒にいる水人だ。
彼女とも相部屋なのだから困る)

ダークエルフ(笑顔だが、目が据わっている。……本気だな)
384 :魚「俺は処女らしき淫魔ちゃんに釣られたぜ!」魚「ビッチ処女最高!」 [saga]:2012/07/22(日) 23:21:11.22 ID:+ftMmOFx0
サキュバス「その呼び方はやめなさいと言ってるでしょ。
あと勝手なことをしないで。私に突っかかる生意気な子は、私が躾けるんだから」

ウンディーネ「サキュたん冷たーい。でもそんなところも大好き!」

サキュバス「はいはい。良いから“たん”はやめて」



ダークエルフ(……静かになったな)

ダークエルフ(重苦しい沈黙だ。先程も同じ雰囲気になりかけた時はヴァンパイアの冗談で和らいだが、今度はそういかないようだ)

ウンディーネ「サキュたん、背中流してあげる」

サキュバス「結構よ。それと、その呼び方はよしなさい」

ウンディーネ「遠慮しなくて良いってば。身体にボディソープを付けて、と」

サキュバス「本当にやめなさい」
385 :生物教師「てめぇらを食うのも俺だ! がはは!」 [saga]:2012/07/22(日) 23:25:34.59 ID:+ftMmOFx0
ダークエルフ(……あそこだけ百合の花が香っている)

ウンディーネ「一緒にニュルニュルになろうよー」

サキュバス「勘弁してちょうだい」

ダークエルフ(この光景を男子が見たら狂喜するのだろうか)

ダークエルフ(……男も?)

ダークエルフ「風呂場では静かにしろ! 女同士でイチャつくな!」

ウンディーネ「……うん?」

唐突に、彼女の周囲に四本の水柱が発生した。

柱は縦長で、彼女の背丈を優に超えている。

ウンディーネ「なんか言った? 溺死したいって聞こえた気がしたんだけど」

ダークエルフ「何でもないです。申し訳有りませんでした」

彼女の謝罪から僅かに間を空けて、水の柱が崩れ落ちる。

ウンディーネ「ごめんね。聞き間違えちゃった」

ダークエルフ「いえ」

ダークエルフ(……以前はこんなのがもっと身近にいたな)
386 :魚「あなや」 [saga]:2012/07/22(日) 23:27:19.84 ID:+ftMmOFx0
ーーーー男部屋ーーーー


ヴァンパイア「さて。ここで問題なんだぜ」

オーク「いきなりどうしたの」

ヴァンパイア「現在、我がクラスの女子が入浴中なんだぜ」

男「それが?」

ヴァンパイア「ここで俺たちがとる行動は何だ?」

オーク「いや、何もしないでしょ」

ヴァンパイア「ハズレなんだぜ」

男「良いから布団敷けよ」

オーク「そうだね。答えは布団を敷いて寝る」

ヴァンパイア「ハズレなんだぜ。でも布団は敷いておこう」
387 :ダークエルフのssが自分の他にも生まれたよ。やったね! [saga]:2012/07/22(日) 23:29:46.81 ID:+ftMmOFx0
男「お前は体幹トレーニングでもして寝ろ。それが答えだ」

ヴァンパイア「ハズレなんだぜ。体幹はするけどな」

オーク「お風呂も入ったし、明日も早いし寝よう」

ヴァンパイア「だああぁぁあああ! なんでそうなるんだよ! 普通は覗くだろ! お前ら本当に高校生か! 枯れてんのか! 悟りでも開いてんのか! 百八つの煩悩から開放されちゃってんのか!!」

男「うるさいな。隣室の奴らに迷惑だぞ」

オーク「夜中に騒いでたら、きっと減点の対象だよ」

ヴァンパイア「お前らの性欲の無さには絶望したぜ。猪人族なんて性欲の強さで有名だろうが」

オーク「そんなこと言われてもね。倫理に反してることはしたくないもの」

ヴァンパイア「どうやったら、そんなに堅固な理性を養えるんだよ」
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 23:31:18.08 ID:+ftMmOFx0
男「今風呂に入ってる女子は俺たちのクラスなんだろ?」

ヴァンパイア「しおりのスケジュールを見る限りそうなんだぜ」

男「だったら絶対にダメだ」

ヴァンパイア「ほほう。へえへえ」

オーク「あはは」

男「……なんだよ」

ヴァンパイア「いやぁ、好きな娘の裸を他の男に見せたくないのは当然なんだぜ」

男「なんの話だよ」

ヴァンパイア「白を切ろうとしても無駄なんだぜ」
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 23:33:08.35 ID:+ftMmOFx0
オーク「さっきダークさんが悪口言われた時、一番怒ってたのは男君だもんね」

ヴァンパイア「そうそう。いつ爆発するかと不安だったんだぜ」

男「……意味が分からないな」

ヴァンパイア「素直じゃないんだぜ」

オーク「本当にね」

ヴァンパイア「ぶっちゃけ両想いだよな。何故くっつかない。何故交尾しない」

狐「……死んでみるか?」

ヴァンパイア「冗談なんだぜ」

オーク「これが獣纏か。初めて見たよ」
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 23:35:50.81 ID:+ftMmOFx0
ヴァンパイア「でも、妙に焦らすようなことはしない方が良いんだぜ。微妙な関係は変動しやすいからな。くっつける時にくっついちまえ。合宿なんて最適だろ」

男「……トイレ」

ヴァンパイア「好きなだけしてくれば良いんだぜ。気のすむまでな」

男「……そうするよ」


オーク(ヴァンパイア君がカッコ良い? いや、気のせいか)

ヴァンパイア「なんか失礼なことを考えてる顔だな」

オーク「え、別になんにも考えてないよ」

ヴァンパイア「怪しいんだぜ。
……はあ。女体。全裸。瑞々しい肌。じゃれ合う女子たち。下着姿。髪を乾かす仕草。衣擦れの音。はあ……」

オーク「うん。やっぱりヴァンパイア君はヴァンパイア君だ」
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 23:37:53.63 ID:+ftMmOFx0
ーーーー女部屋ーーーー


ダークエルフ「あの、ありがとう」

サキュバス「なにが? 感謝されるようなことはしてないわよ」

ダークエルフ「いや、サキュバスのおかげで陰口が止んだから」

サキュバス「私は、私が思ったことを口にしただけよ。まあでも、一応謝辞を受け取っておくわ」

ウンディーネ「サキュたん! 一緒に寝よ!」

サキュバス「結構よ。私の布団に入らないで。あとその呼び方はやめて」

ウンディーネ「もう! すげないんだからー! でも大好き!」

サキュバス「はいはい。分かったから、私の布団から出てって」

ウンディーネ「もう既に一糸纏わぬ姿だよ。やんっ!」

サキュバス「じゃあ、布団を交換ね。私はアナタの布団で寝るから」

ウンディーネ「あーん。いけずぅ」
392 :新キャラが二人も出たし、投下終了です。 [saga]:2012/07/22(日) 23:40:14.92 ID:+ftMmOFx0
ダークエルフ「……トイレに行ってくる」

ダークエルフ(ダメだ。ここは花の香りが強過ぎる)

ダークエルフ(少し夜風に当たろう)

ダークエルフ(先生方に見つからないようにしなければな)

ダークエルフ(戻ってくる頃には落ち着いていると良いけれど)

ウンディーネ「サキュたーん。愛を語り合おうよー」

サキュバス「良いから服を着なさい」

ウンディーネ「着させてー。それとサキュたんの服を脱がさせてー」

サキュバス「断るわ」


ダークエルフ(……暫くは無理そうだな)
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 23:58:01.49 ID:1zKW0RMmo
ダーク乙!
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/07/23(月) 00:22:36.22 ID:c/2eetq+o
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 00:23:05.56 ID:Q1pCWH55o
乙!
ヴァンパイアいいキャラだなwwww
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 00:37:13.84 ID:Q3iFOVG9o
俺の知ってるオークとちがうんだけど
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 00:54:57.00 ID:oo6IIG3DO
確かにオークなんて、拐った村娘やエルフ女を凌辱しまくってるイラストしか見ないなw
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/23(月) 01:04:16.64 ID:cvjsqeozo
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 01:42:41.90 ID:teDU618DO
追いついたぞ乙
前作もあるのか読んでこないと
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 12:45:52.94 ID:3zNAqaWao
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 18:12:40.16 ID:6Pc/7dKSO
よかったなダークエルフスレできて

魚wwwwwwwwwwww
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 18:49:13.82 ID:lE4utd5DO
ヴァンパイア…(*´・ω・)
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 00:27:01.27 ID:ave5mq9d0


魚とオークとヴァンパイアとウンディーネが色々な意味で凄いことにwwwww
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/07/24(火) 08:08:16.00 ID:Uhbof9L3o
なんて言うか色んな意味で病んでるキャラ山盛りだよねww
405 :以前書いたキチガイssがマジキチでワロタ。 [saga]:2012/07/24(火) 10:12:43.40 ID:EXbPWfHe0
部屋を後にした彼女が向かった先は宿屋の横側だった。

道中、誰にも見つからなかった。

靡く風を強く感じるように彼女は目を閉じる。

海から運ばれて来た仄かな潮の薫りが彼女の鼻腔を通り抜けていく。

それから宿泊施設をも通り過ぎて、山林に茂る草木の葉を揺らす。

小高い丘の上に構えられたその場所からは、闇のなかでさざめく海が一望できた。

三方向を海に囲まれた、半島と岬の定義の境界とも言える地形だった。

やがて彼女は目を開き、天を見上げた。

零れ落ちそうな光の粒が瞬いている。

上弦の三日月も有った。

夜中でもかなり明るい王都の星空とは比較にならなかった。
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/24(火) 10:17:38.58 ID:EXbPWfHe0
手を伸ばせば星屑を掴めそうで、彼女は天へと手を差し伸べた。

男「高校生にもなってまだそんなことする奴がいるとはな」

ダークエルフ「ひゃ!」

背後から唐突に声をかけられ、彼女は短い叫びを上げて身体を硬直させた。

男「驚かせたか。悪い」

ダークエルフ「……男か。いつからそこに……」

羞恥で紅顔しながら彼女は訊く。

心臓が激しく脈打ち、痛いくらいだった。

星と月以外の光源は無い為、自分の頬が紅いことを悟られずにすみそうであることには内心安堵する。

男「お前が来るよりも先にいたよ」
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/24(火) 10:20:56.64 ID:EXbPWfHe0
ダークエルフ「そうか……。恥ずかしいところを見られてしまったな」

男「気にするな。気持ちは分かる。素晴らしい星空だからな」

彼女はうなずいた。

ダークエルフ「王都では見られそうにない星空だ」

それから訊ねた。

ダークエルフ「男はどうしてここにいるのだ?」

男「……ちょっと考え事」

言いにくそうに告げて、彼は訊ね返す。

男「お前こそどうしたんだよ」

ダークエルフ「部屋が百合の香りに満ちていてな……」

彼は怪訝そうな顔をしながらも曖昧にうなずいた。
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/24(火) 10:26:24.15 ID:EXbPWfHe0
男「夕方のことだが、気にするなよ。エルフ族は優秀だから妬まれやすいきらいが有るからな」

心配そうな視線を向ける彼に、彼女は軽くかぶりを振って微笑む。

柔和でいながら強靭な微笑だった。

ダークエルフ「気にしてない。私には素晴らしい友人がいるからな」

男「そうか」

うなずいてから、彼は僅かに顔を曇らせたが、薄闇のせいで彼女の眼には映らなかった。

男「ごめん」

彼の突然の謝罪に、彼女は首を傾げた。

謝罪される理由が思いつかなかったからだ。

空気よりも軽い気体を詰められた風船のように、謝罪しなければいけないことは数多く彼女の脳裡に浮上した。
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/24(火) 10:37:10.40 ID:EXbPWfHe0
男「お前が言いがかりをつけられた時、弁明してやらなければいけなかった」

ダークエルフ「そんな。気にすることでは無いし、ましてや謝ることではないだろう」

彼は強く首を振った。

尻尾のバタつきも増した。

男「俺が納得いかないんだよ」

ダークエルフ「男はあまりに律儀過ぎるな」

男「それは違う。俺はただ……」

彼は何か告げようとして、口を噤む。

ダークエルフ「どうした?」
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/24(火) 10:39:23.32 ID:EXbPWfHe0
男「いや。……まだ時間有るか?」

ダークエルフ「大丈夫だが」

男「それなら少し雑談しよう」

ダークエルフ「ああ」

彼の提案に、彼女は嬉しそうな顔で同意した。

二人は近くのコンクリートの段差に腰を下ろす。

コンクリートは未だに昼の陽光を仄かに帯びているらしく、冷たくはなかった。

膝が触れ合いそうなほどに二人の間隔は狭かった。

そのまま二人の心の距離を表していた。
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/24(火) 10:42:39.72 ID:EXbPWfHe0
彼女は高鳴っている心臓を落ち着かせるように静かに深呼吸した。

男「明日の予定は午前は登山だったか。登るのは大した山ではないらしいな」

彼は星空に視線を向けたまま言った。

尻尾は地面に着くのを嫌がるように、重力に抗って反り返っていた。

ダークエルフ「午後からの工芸はクラス一丸で作品を製作するんだったな。しかも得点が付けられると」

男「正直まとまる気がしないな」

彼女は肯いた。

ダークエルフ「私たちのクラスはクセが強いのが多いし、繋がりが希薄だからな。オークも大変だ」

男「俺たちも協力してやらないとな」

ダークエルフ「ああ」
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/24(火) 10:48:20.35 ID:EXbPWfHe0
男「それで、明後日は山地での食糧調達か」

ダークエルフ「得点の稼ぎどころなのだから合宿の肝とも言えるな」

彼はうなずく。それから笑った。

男「集めた食糧はまた鬼人の教師の胃袋に収まるんだけどな」

彼女も笑った。

ダークエルフ「あの先生はよく食べるからな。十尺を超える巨漢だから当然なのだが」

男「まあな。それで、四日目が野外炊飯か」

ダークエルフ「男の料理の腕前を披露できるな」

男「そこまで凄いものでもないけどな」

彼は肩を竦めてから、ようやく彼女の方に顔を向けた。

男「お前もだいぶ料理が上手くなったな」

ダークエルフ「二ヶ月も教わったからな」

男「お前が熱心だったからだろ。それに物覚えも良いしな」

ダークエルフ「男にそう言われると嬉しい」
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/24(火) 10:49:29.40 ID:EXbPWfHe0
彼女は白い歯を見せた。

彼は暫くそれを凝視して、それからおもむろに彼女を抱き寄せた。

ダークエルフ「え……」

小さな声が漏れた。

彼女は茫然としながら彼の体温を感じていた。

身体は弛緩していて抵抗も硬直もしなかった。

彼と同じように、背中へと腕を回すこともなかった。

やがて大きな安らぎが彼女の裡に満ち始めた。

彼の腕の中は何よりも彼女を必要とし、彼女を守ってくれるように思えたからだった。

そして彼が堪らなく愛おしかったからだ。
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/24(火) 10:55:15.61 ID:EXbPWfHe0
ダークエルフ「あ、あの……」

男「……いきなりすまない」

彼は身体を放し、顔を伏せて謝罪した。

彼の体温が離れるのと同時に、彼女の身体を寂寥が過ぎった。

ダークエルフ「確かに驚いたが……」

気恥ずかしさから、続きの句は発せられずに彼女の裡で萎んだ。

むず痒い沈黙が漂う。

それでも彼女はこの場を離れたいとは思えなかった。

男「……そのうち」

ダークエルフ「え?」

彼の呟きが聞き取れなかった為、訊き直す。
415 :男君もヘタレだし、投下終了です。 [saga]:2012/07/24(火) 10:59:59.86 ID:EXbPWfHe0
男「そのうち言いたいことがある」

ダークエルフ「そうか……」

或る期待が彼女の心内で湧き起こったが、それを悟られないように平常を装った。

男「……そろそろ戻るか」

彼女は彼の提案にうなずく。

男「教師に見つからないようにしろよ」

ダークエルフ「男もな。……心待ちにしてるから」


幾分の失望と多大な希望を秘めながら、彼女は部屋に戻った。
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 11:47:52.63 ID:RYOWFZ58o
なんか来てた乙!
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 12:33:43.13 ID:LT+V7s7SO
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 13:15:16.21 ID:tRJwBGAIO
男はナニをおっ勃ててんだwww
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 13:32:23.93 ID:ave5mq9d0
>>405
お前が言うなww
そして俺特だから気にするなwww
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 13:34:02.60 ID:14wtHhCIO
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 19:43:54.98 ID:YmPh4hDco

マジ基地というかミサワ臭がした
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/25(水) 04:01:10.76 ID:gtnjvCNso
よかったね乙
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 14:35:05.21 ID:ysXEFZBpo
乙だぜ
424 :ミサワとか知らねーわー。まじ知らねーわー。 [saga]:2012/07/25(水) 19:00:05.71 ID:8sgCj6Zn0
ーーーー露天風呂ーーーー


語学教師「ふう……。良い湯加減だ」

数学教師「あー、腹の底から生き返る」

地理教師「十尺を超える巨漢三人に囲まれているせいで、自分が小さくなったようです。はい」

生物教師「風呂でやる酒は最高だな! がはは!」

地理教師「本当に自重してください。はい」

生物教師「うるせーな。頭を沈めんぞ」

地理教師「あづっ!? 既にしてるじゃないですか!? あづっ! ちょっ! 鼻にお湯が!」

語学教師「うるさいぞ。いい年して風呂で騒ぐな」

数学教師「まったくだ。入浴ってのは一日で一番有意義な時間だってのに」
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/25(水) 19:01:04.88 ID:8sgCj6Zn0
生物教師「がはは! わりぃ! んなことよりミノ先生も一杯やるか?」

数学教師「お。じゃあ貰うか」

生物教師「そうこなくちゃな。トロール先生も飲むだろ?」

語学教師「む。じゃあ一杯だけ」

生物教師「流石、どこぞの首無しと違って話が分かる」

地理教師「私は間違っていません。はい」

生物教師「うっせ。もっかい沈んどけ」

地理教師「あづっ! ホント勘弁して!」

数学教師「相変わらず仲が良いこった」

語学教師「まったくだ」

地理教師「どこを見て言ってるんですか!? そのお目々たちは腐ってやがるんですか!」
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/25(水) 19:02:29.02 ID:8sgCj6Zn0
生物教師「んなことより、どのクラスが優勝しそうよ?」

地理教師「何が『んなことより』ですか。はい。私には一大事ですよ。はい。あづっ!? 堪忍してっ!」

数学教師「俺の予想は三組だな。中々の団結力だし、組全体の意欲も高い気がする」

語学教師「ふむ。私は五組が健闘すると踏んでいる。多才な生徒が多いようだからな」

生物教師「なんだよ。二人とも自分の受け持ちクラスじゃねぇか」

地理教師「なら私は一組が。……と言いたいところですが、険悪な雰囲気で厳しいのが実情ですね」

生物教師「そうかぁ? 中々見所が有りそうだと思うがなぁ。面白い奴らが多いしな」

数学教師「オーガ先生がそう言うのならそうなんじゃねぇの?」

言語教師「鬼人族は魔族最強の戦士たちだからな。その観察眼を以て言うのだから信憑性は高いだろう」

地理教師「だと良いのですけどね。はい」
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/25(水) 19:05:57.62 ID:8sgCj6Zn0



数学教師「正直さ」

語学教師「なんだ?」

数学教師「優勝とか、運だよな」

生物教師「それは言っちゃダメだろ。事実だけどよ」

語学教師「まあな。そのことに感付いている生徒も多いようだ」

地理教師「あながち言い切れないと思いますけどね。はい。加算だけでなく減点も有りますから。はい」

数学教師「でも極端な減点なんてまず無いだろ。そのくせ釣りと食糧調達は獲得点に差が付きやすい」

生物教師「だなぁ」

語学教師「その二つは校長から義務化されているのだから仕様がない。私的意見としては釣りは外した方が良いが」
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/25(水) 19:08:19.75 ID:8sgCj6Zn0
生物教師「その二つは魔王様が提案したんだろ? しかも酔っ払ってる時によ。それを律儀に守る校長はアレだな。阿呆だな」

地理教師「ちょっ」

数学教師「世界の統治者だからな。それに校長も魔王様が初恋なんだろうよ。校長からは同胞の臭いを感じるからな」

語学教師「校長はどのような伝手で魔王様と同じ席で飲んだのだろう」

地理教師「聞いた話によると、魔王様がご贔屓にしているケーキ屋の主人と親しいらしく、その関係で三人で飲んだらしいです。はい」

数学教師「魔王様は本当に気さくだよな」

地理教師「その親しみやすさが好意を集めるんでしょうね。はい。私としては時たまに発せられる皮肉が堪らなく好きですが。はい」

生物教師「んだよ。俺以外は魔王様に惚れてた口か。俺は拳神様一択なんだがなぁ」

語学教師「なるほど。あの方は鬼人族の長であるし納得だな」
429 :サービスシーンも書いたし、投下終了です。 [saga]:2012/07/25(水) 19:12:20.46 ID:8sgCj6Zn0
数学教師「族長に異種族が就任してるのは鬼人族だけだよな」

生物教師「ああ。若い奴はそのことに反感して決闘を挑みやがる。異種族、しかも女が自分達の長なんて認めたくねぇからな」

語学教師「オーガ先生も同じ口か」

生物教師「まあな」

地理教師「その結果無惨に負けたと。あづっ!? やめてっ!」

数学教師「負けた相手に惚れるってのは鬼人らしいな。よく分からんが」


生物教師「しかし、どうして中年同士で恋話を交わしてんだ?」

語学教師「良いじゃないか。恋は死よりも強し。そして生涯の命題の一つだ。存分に話すべきだろう」

生物教師「がはは! 結局恋は生殖本能だがな!」

数学教師「それで良いじゃねぇか。最重要の本能だ」

語学教師「そうだな」

地理教師「いいかげんたすけてっ!」

生物教師「あ、悪い。忘れてた」
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 19:37:27.20 ID:Ucy2DLXSO
サービスとか誰得だよwwwwww
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 20:13:57.33 ID:OkJgGT5fo

中年男の入浴シーンがサービスかよwwww
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 20:15:21.73 ID:gojhwxuIO
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/25(水) 20:20:55.59 ID:73dPb6xRo
いろいろキャラが浮かんでたのしい
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/25(水) 21:09:49.54 ID:nnzGsgqfo
ふぅ……
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/25(水) 21:14:49.23 ID:gtnjvCNso
>>434
お前…
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 23:02:25.15 ID:60Ufojzeo
いやなサービス食らったwwww

しかもそれで賢者になってる奴までいるし
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 03:31:23.12 ID:R4mop1uvo
ナーガちゃんしっかり族長やれてるのね……
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 08:05:43.57 ID:RRI8l8sIO
>>86
('@'Tjp
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 22:17:19.80 ID:BUBZ4HcR0
ーーーー二日目・正午・山巓ーーーー


オーク「暑いね……」

男「ああ……」

ダークエルフ「私はそれほどでもないな」

ヴァンパイア「俺もだ。吸血鬼はこの程度の寒暖には堪えないんだぜ」

オーク「羨ましいなぁ。僕なんか汗だくだよ」


地理教師「それでは昼食です。はい。作っていただいたライスボールをどうぞ召し上がってください。はい」

ヴァンパイア「あー、腹減ったんだぜ」

オーク「ホントにね」

男「オークのは随分と大きいな」
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 22:20:03.55 ID:BUBZ4HcR0
ダークエルフ「私の分の五倍は有るんじゃないか?」

オーク「ダークさんのが小さいだけだよ」

ヴァンパイア「それだけでは無いだろうけども、オークの巨体を考えれば当然なんだぜ」

オーク「そうそう」

「下山だりぃ」
「だよなぁ……」
「次は工芸かよ」
「適当に駄弁ってれば良くね」
「確かに。誰かがやるでしょ」

ヴァンパイア「俺たちのクラスは盛り上がりに欠ける奴らが多いんだぜ」

オーク「うん。僕が皆を焚き付けないとなぁ」

ダークエルフ「私たちも協力するさ」

男「ああ。HR委員にばかり任せてられないしな」

オーク「うん。ありがとう」
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 22:23:27.74 ID:BUBZ4HcR0
ーーーー工芸室ーーーー


地理教師「それでは夕餉の刻限まで製作に取り掛かってください。はい。しおりに有る通り、評価は教師陣で行います。はい。
私は席を外します。HR委員を中心に頑張ってください。はい」

オーク「分かりました」




ヴァンパイア「さて、何を作るか」

「ここ、テレビがねぇから超つまんねぇよな」
「だよなぁ。部屋に一台付けろっての」
「いつも観てる音楽番組が観れなかった。好きなアーティストの新曲が流れるはずだったのに」
「ああ、あのグループでしょ。私も好きだよ」

ダークエルフ(デュラハン先生が退出した途端に騒がしくなったな)

ダークエルフ(テレビ番組なんてニュースしか観ないから、不便には思わないが)

ダークエルフ(しかし、殆どのクラスメイトに意欲が見えないな)

オーク「みんな! 何を作る?」
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 22:26:25.19 ID:BUBZ4HcR0
「お任せするわ。俺ら応援してっから」
「うんうん。ファイト」
「健闘を祈りまぁす」

オーク「あはは……。それは困るよ。皆で作らなきゃ意味が無いんだから」

「別に他クラも適当っしょ」
「てか、美術部とかがやった方が良い作品になるでしょ」
「別に文句も言わないし」

ヴァンパイア「皆でやることに意味が有ると思うんだぜ」

「めんどくせ」
「俺は美術科目が苦手だしなぁ。手出しできねぇわ」
「あー、俺も。中学校時代の成績は毎回低かったわ」

ダークエルフ「得手不得手では無いと思う」

「あ? じゃあ何作るんだよ?」

ダークエルフ(彼はいつも私に突っかかってくるな)

ダークエルフ「それは、決まっていないが」

「ちっ。偉そうな事言うなら最初にそれくらい決めておけよ。案も無いのに上から目線で偉そうなこと言ってんじゃねぇよ」

ダークエルフ「あ……えっと」
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 22:29:18.23 ID:BUBZ4HcR0
男「気にするなよ。大体それを考えるのも製作の一つだろ。そんなことも分からないのか」

「あぁ!? 妖狐族だからって調子に乗んなよ!」

男「なんだそのチャチな啖呵は。それに俺は事実を述べただけだ」

ヴァンパイア「おいおい。あんまり煽るなよ。仲良くやろうぜ」

「てめぇ!バカにしてんのか!?」

男「してない。バカとは思っているが」

ダークエルフ「男……。もう……」

「ざけんな! いつも澄ましやがって! ムカつくんだよ!」

男「……それは俺の台詞だ!」
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 22:31:59.27 ID:BUBZ4HcR0
ダークエルフ(男が声を荒げているところなんて久しぶりに聞いたな)

男「いつもダークを罵りやがって! いい加減我慢の限界なんだよ! アイツだって色々なことで苦しんでるんだよ! それぐらい察しろよ!」

ヴァンパイア「お、おい! 胸倉掴むのはやり過ぎなんだぜ!」

オーク「ちょっと! 落ち着きなよ!」





ダークエルフ(取り敢えず場は落ち着いたが、空気が最悪だ)

ダークエルフ(クラスメイトを焚き付けるはずだったのだが)

ダークエルフ(何か打開策は無いだろうか)

オーク「んー、何を作ろうか」

ヴァンパイア「まったく考えが浮かばないんだぜ……」

男「……」

「……」
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 22:36:08.24 ID:BUBZ4HcR0
「……なんか、そんな空気じゃねーよな」
「だよなぁ……。誰か適当にやっちゃえよ。もう」

オーク「だからね。全員で作ることに意味が有ると思うんだ。皆が一つになって、一つの作品を仕上げる。それが大事なんだよ」

「そりゃ、そうかもだけどさ」
「実案が無いのが現状だよなぁ」

ダークエルフ(全員が一つ。そして一つの作品。……そうだ)

ヴァンパイア「こんなことになるなら昨日の内に考えておけばよかったんだぜ」

オーク「そうだね。失敗しちゃったなぁ」

ダークエルフ「あの、似顔絵とかどうだ」

オーク「似顔絵?」

ダークエルフ「ああ。皆で大量に似顔絵を書き合って模造紙に貼るんだ。そして一枚絵を作れば良いんじゃないか?」

ヴァンパイア「あー、モザイクアートって奴か」
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 22:38:36.33 ID:BUBZ4HcR0
「時間かかりそうじゃない?」
「うん」

ダークエルフ(ダメか)

サキュバス「興味深いわね。私は賛成よ」

ウンディーネ「私もー」

オーク「うん。名案だと思うよ」

ヴァンパイア「やり甲斐が有りそうなんだぜ」

「結構面白そうだな」
「でも絵とか苦手だわ」

ダークエルフ「絵はそこまで上手くなくても良いと思う。上手い方が良いのは確かだが」

ヴァンパイア「大事なのは量と配置なんだぜ」
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 22:55:13.36 ID:BUBZ4HcR0
「お、なら俺でもやれんじゃね?」
「俺もできそう。お前のことを面白く描いてやるぜ」
「やるなら急いだ方良くない?」
「だよねー」
「デフォルメキャラでも良いよね?」
「劇画風に描いても良いかも」
「取り敢えず時間との戦いだな」

ダークエルフ(意外と乗り気だ)

ダークエルフ(一組がここまで一致団結しようとしているのは初めてだな)

オーク「時間が勿体無いよ! 早速取り掛かろう!」

『おお!』


ヴァンパイア「ペンは用意したんだぜ。一枚の用紙に大量に描いて、切り取って使おう」

オーク「流石ヴァンパイア君、準備が良いね。大きい図柄は何にする?」

男「それなら、やっぱりーーーー」
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 22:57:24.04 ID:BUBZ4HcR0




ヴァンパイア「さらさらーっと」

オーク「両手と両足で描くとか凄いね」

ダークエルフ「私からすれば両手で描くオークも相当に凄いが」

ダークエルフ(よく見れば殆どのクラスメイトが両手で似顔絵を描いてる)

ダークエルフ(幾ら何でも異常だろう……)

ヴァンパイア「ふんふーん」

オーク「ラミア先生を描いてるんだね。って、用紙全部がラミア先生じゃないか」

ダークエルフ「……しかも上手いな」

ヴァンパイア「さて、スペースも無くなったし用紙を変えるか」
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:01:00.23 ID:BUBZ4HcR0
オーク「もう二十枚目なんて早すぎだよ。助かるけどね。でも、違う人の顔も描いて欲しいな」

ヴァンパイア「えー、速度がだいぶ落ちちゃうぜ。それにラミア先生しか一度に四種類の表情が描けないんだぜ。愛が為している業だからな」

オーク「同じ表情でも問題無いし、ヴァンパイア君はそれでも速筆だと思うけど。僕なんかまだ六枚目だ」

ダークエルフ(私なんてまだ一枚目の半分も描いていない……)

ダークエルフ(頑張ろう)


ダークエルフ(……男の耳はもう少し尖っているな)

ダークエルフ(もう少し吊り目にして)

ダークエルフ(鼻はもう少し高いな)

ダークエルフ(お、そっくりだ)

ダークエルフ(ふふん)
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:02:40.66 ID:BUBZ4HcR0



サキュバス「……」

ウンディーネ「ねー。サキュたーん」

サキュバス「その呼び方はいい加減やめて欲しいわ。何かしら?」

ウンディーネ「どうしてオーク君だけ描いてるの?」

サキュバス「…………なんとなくよ」

ウンディーネ「そっかー。あの豚殺してこよう」

サキュバス「物騒なことを言うのはやめなさい」

ウンディーネ「だってー。だってさー」

サキュバス「……次は貴女も描くわよ」

ウンディーネ「むー。嬉しいけど」
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:04:23.89 ID:BUBZ4HcR0
サキュバス「貴女の用紙は私ばかりじゃない。三十枚くらい全部」

ウンディーネ「そーだよ。これが平常時のサキュたん。これがちょっと不機嫌なサキュたん。これがハニかんでるサキュたんで、こっちが結構怒ってるサキュたん。寝ているサキュたんに、ぼんやりしているサキュたん」

サキュバス「随分と絵が上手ね。タッチの種類も豊富だし」

ウンディーネ「愛の力だよー」

サキュバス「あっ、そう」

ウンディーネ「サキュたん、愛してる!」

サキュバス「はいはい」
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:06:06.09 ID:BUBZ4HcR0



ダークエルフ「男は誰を描いているのだ?」

男「ん」

ダークエルフ(……これは何なのだろう?)

ダークエルフ(魔獣?)

ダークエルフ「あ、もしかしてベヒモスか。中々だな」

男「…………オークのつもりなんだが」

ダークエルフ「え?」

ダークエルフ(しかし四足歩行じゃないか)

ダークエルフ「あ、この脚らしきものは手なのか。なるほど」
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:07:35.73 ID:BUBZ4HcR0
男「……」

ダークエルフ(あわわ、男が落ち込んでしまった)

ダークエルフ(男の画力が、幼児と同じかそれ以下とは思わなかった)

ダークエルフ(……落ち込む男、可愛い)

ダークエルフ(耳がちょっと垂れた耳が庇護欲を刺激してくるな)

ダークエルフ(抱き締めたい)

ダークエルフ(そしてモフモフしたい)


男「俺の絵が壊滅的であることは重々承知しているさ。しているけどさ……」

ダークエルフ「す、すまない男! 悪気は全く無かったんだ!
で、でもほら! こっちのレヴィアタンは中々似ているぞ! 尾がちゃんと八本有るしな!」

男「……それはクラスメイトのサラマンダーだ」
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:09:38.41 ID:BUBZ4HcR0
ダークエルフ(私はアホか!)

ダークエルフ(似顔絵なのに海王の絵を描く訳が無いだろう!)

ダークエルフ(尾もよく見れば消し残りじゃないか!)

ダークエルフ「すす、すまない男! で、でもほら!火蜥蜴も海王も大きさは違うが、形は少し似てるから! 海王じゃなくて海蜥蜴に改名すれば良いと思うから!」

ダークエルフ(……私は何を言っているのだろう)

ダークエルフ(フォローを入れるはずだったのだが)

男「……はあ」

ダークエルフ(男の耳が更に垂れた)

ダークエルフ(可愛すぎる)
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:13:17.68 ID:BUBZ4HcR0




「……男」

男「……何だよ。さっきのことなら謝らないからな」

「……悪かった」

男「……」

「俺はずっと僻んでいたんだ。妖狐もエルフも優秀な種族だからな。それに比べて俺たちの種族は低脳扱いされてるから。
それが更に自分を浅ましくしていることにお前の怒りでようやく気づけた」

男「……俺に謝る必要は無い。ダークに謝れ」

「……そうだな」

男「……さっきは悪かった」

「……なんだよ。謝るんじゃねぇか」

男「うるさいな」

「はは。……しかし、その絵はベヒモスか? そこそこ似てるな」

男「悪口か? 悪口だよな?」

「ん? 違ったのか?」

男「……」

「えっ、なんで項垂れるんだよ」
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 23:14:15.56 ID:MZFv1gsW0
かわいいなwwwwww
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:17:43.05 ID:BUBZ4HcR0




「模造紙に、似顔絵を貼り付ける配置は大体記しておいたから。ちゃんと明度別にな」

「まじか」

「俺たちの種族はパズルとかに強いから。殆どが理数系だしな。それに俺は色彩の勉強を昔からしてたし」

「ケットシー凄え」

「それでザッと見た感じ、色が濃い似顔絵が足りないな」

「んー、どうするか」

「あ、ダークエルフさんを描けば良いんじゃね?」

「そうだな」



ダークエルフ「わざわざ、写実しなくても大体で描けば良いだろう」

「ダークエルフさんの顔をまじまじと見たことがないから、上手く描けそうにないんだ」

「そうそう」

ダークエルフ「……まあ、構わないのだが」
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:20:52.21 ID:BUBZ4HcR0


「……やべぇな。ダークエルフさん、メチャクチャ美人じゃねぇか」

「お前、気付いてなかったのかよ」

「やべぇ。学校生活を二ヶ月無駄にしてたわ」

「ちょっと笑ってみてくれないか」

ダークエルフ「ん、こうか?」

「……まじやべぇ。ホントやべぇ」

「なんという破壊力……!」

「おかしいな。サキュバスさん派だったのに」



男「……」

オーク「男君の耳がピクピクしてる……」

ヴァンパイア「嫉妬なんだぜ……」

男「聴こえてるぞ」
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:23:28.43 ID:BUBZ4HcR0




ヴァンパイア「切るのも面倒だったが、並べる作業が一番面倒なんだぜ」

オーク「良いから手を動かそうよ」

ダークエルフ「一番重要な作業は一番面倒なものだろう」

ウンディーネ「あ! 私のサキュたんの隣に男子を並べちゃダメー! ましてや豚の似顔絵の隣なんて許しません!」

オーク「ぶ、ぶひぃ……。そんなこと言われても……」

サキュバス「ウンディーネの言葉は気にしなくて良いわ」

ウンディーネ「サキュたん、ひどいよー!」

サキュバス「どこがよ」



ヴァンパイア「百合は良いもんだぜ」

オーク「百合?」
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:26:10.67 ID:BUBZ4HcR0




オーク「もう暗くなってきたよ。急ごう」

ヴァンパイア「後は糊付けだな」

男「業務用の『スライムストッパー』を見つけたぞ」

オーク「固定剤あったんだ。じゃあ、上からゆっくり垂らして固まったら完成だね」


ウンディーネ「サキュたんをネバネバのベトベトに……」

サキュバス「したら、もう口も利かないわ」

ウンディーネ「冗談だよー」

サキュバス「冗談に聞こえなかったわ」


男「俺が糊付けして良いか?」

オーク「じゃあ、お願いするね」

ヴァンパイア「慎重にやるんだぜ」

男「分かってるよ」
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:28:37.76 ID:BUBZ4HcR0




「あー、やっと完成か」

「ちょっと不格好だな」

「モデルが悪いんだろ」

「はは、確かにな」

ダークエルフ「ただ、模造紙の隙間が寂しいな」

オーク「なにか飾り付けでもする?」

ヴァンパイア「でも時間が無いんだぜ」

男「全員の手形でどうだ?」

サキュバス「良いんじゃないかしら」

ウンディーネ「共同製作って感じが出て良いね」
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:29:52.93 ID:BUBZ4HcR0
「おし、絵の具の準備だ」

「カラフルにしようぜ」

「俺はオレンジが良いな」

「俺ピンク」

「コバルトブルーしかないだろ」

ダークエルフ「私は黒で良いか」

男「俺は飴色を自作しよう」

オーク「僕は緑とかで良いかな」

ウンディーネ「豚はピンクで良いでしょ」

オーク「ぶひぃ……」


ヴァンパイア「俺は、黄色かな」
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:31:15.44 ID:BUBZ4HcR0
「そこは赤だろ」

「意外性ばかり狙ってもしょうがないだろ」

「意外性はお約束を守ってこそだしな」

「君には失望したよ」

「ないわー。ヴァンパイアないわー」

「黄色とか。お前のパンツの後ろだけにしろよ」

「それは黄色じゃなくて黄ばみじゃね?」

ダークエルフ「酷い言われようだな」

ヴァンパイア「うおー! ムカつくんだぜー!」
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:33:28.93 ID:BUBZ4HcR0
「ちょっ! ジャージに手形を付けるな!」

「落ちなくなるだろ!」

ヴァンパイア「知ったこっちゃないんだぜ!」

「このやろー!」

「きゃっ! 巻き込まないでよ!」

オーク「お。落ち着いて! わわ、僕にまで!」

「俺にもかよ! お返しだ」

「戦じゃー!」

「何すんのよバカ男子共!」

「うるせぇ!」
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:36:48.72 ID:BUBZ4HcR0




地理教師「……皆さん、どうして皆さんのジャージにカラフルな手形が付着しているのですか。はい」

ヴァンパイア「負けられない戦いがそこに有りました」

オーク「作品が汚れなくて良かった……」

ダークエルフ(さっきの混乱の途中、誰かに胸を揉まれた……)

ウンディーネ(ダークちゃんも良い胸してるなー)

生物教師「負けられない戦いかならしょうがねぇな! がはは!」

地理教師「納得しないでくださいよ!」

化学教師「わぁ。一組の作品、凄いですね」

歴史教師「モザイクアートですか。半日足らずでこれだけの作品をよく作成しましたね」

語学教師「様々な絵柄の似顔絵が有るな。全員で描いたのか」

数学教師「昨夜のオーガ先生の言葉はマジだったわけだ」

生物教師「当たり前だろ! がはは!」
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:39:03.62 ID:BUBZ4HcR0



地理教師「この一枚絵、私ですか?」

オーク「はい。やっぱり担任の先生が一番適しているかと思いまして」

地理教師「とても嬉しいですね。はい。頭が地面に転がってるデザインが少し気になりますが。はい」

生物教師「そっくりじゃねぇか。こんなのを作ってもらえるなんて教師冥利に尽きるだろ」

地理教師「本当に感激ですね。はい」

歴史教師「これは、私の似顔絵でしょうか」

ヴァンパイア「あ、俺が描いたんだぜ」

化学教師「特徴をよく捉えてるね」

ヴァンパイア「ラミア先生のことをいつも見てるからなんだぜ」
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/26(木) 23:40:10.55 ID:BUBZ4HcR0
歴史教師「見ていて面白い顔では無いと思いますが」

ヴァンパイア「面白くは無いんだぜ。ひたすら胸が高鳴るんだぜ」

歴史教師「む。そうですか」

ダークエルフ(ヴァンパイアが口説きにかかっている)

ダークエルフ(いや、素なのか)

化学教師「あ、私のもあるね。嬉しい」

数学教師「一年の担任全員いるみたいだな」

語学教師「本当に力作だ」

生物教師「がはは! 校長までいるぜ!」
468 :男君も涙目だし、投下終了です。 [saga]:2012/07/26(木) 23:43:29.00 ID:BUBZ4HcR0
ダークエルフ(この様子だとかなりの高得点だな)

生物教師「お! ベヒモスまでいやがる!」

地理教師「あ、本当ですね。はい」

ダークエルフ(そ、それはタブー……!)

男「……」

数学教師「お、マジだ。遊び心も有るのな」

生物教師「こっちはレヴィアタンか」

語学教師「ほう、アーティスティックなイラストだ」

歴史教師「描こうとして描ける絵では無いですね」

化学教師「そうですね」

男「はは……」

ダークエルフ(……涙目の男なんて初めて見た)

ダークエルフ(網膜と脳細胞に焼き付けておこう)
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 23:47:06.65 ID:HraG4sAto
ニヤニヤ乙乙
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/26(木) 23:54:48.36 ID:kqEdDygro
まさか一番の萌えキャラが男だったとは
一番のイケメンはオークだしな
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 00:28:43.19 ID:X/xjssPFo
やべえ男がかわいすぎるww
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/07/27(金) 00:37:04.09 ID:So8zrpOAO
こりゃ、モフモフしたくなるわな
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 01:09:19.76 ID:MW2ztG3DO
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 01:16:03.65 ID:HtA3Rr2Ao
かわいいなww
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/27(金) 06:34:25.16 ID:pS8KzDFa0
>>453
ダークエルフ(耳がちょっと垂れた耳が庇護欲を刺激してくるな)

ダークエルフ(ちょっと垂れた耳が庇護欲を刺激してくるな)
に訂正です。
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/27(金) 06:37:31.33 ID:ia9CcFwMo
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 09:24:02.98 ID:YM/+p8340
もうニヤニヤが止まらないwwwww
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/27(金) 18:09:16.95 ID:pS8KzDFa0
ーーー男風呂ーーー

ヴァンパイア「今日は有意義な一日だったんだぜ」

オーク「だね。作品も全クラストップの得点だったし、クラスの和も一層強固になったしね」

男「このまま首位を維持できると良いな」

ヴァンパイア「そうだな。ってことで潜水対決しようぜ」

オーク「それはあまりにも脈絡が無いんじゃないかな」

ヴァンパイア「気にすんな」

男「全員が入浴してる浴槽では勘弁して欲しいが」

オーク「そうだね」

ヴァンパイア「女々しいんだぜ!いいから、せぇの!」
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/27(金) 18:15:26.64 ID:pS8KzDFa0




オーク「ぷはっ。……二人ともまだ潜ってるんだ。凄いや」

オーク「頑張れー」





ヴァンパイア「がはっ。くるし……」

オーク「ヴァンパイア君が先か」

男「俺の勝ちだな」

オーク「随分と余裕そうだね……」

ヴァンパイア「負けたか。潜水には自信が有ったんだけどなぁ」

男「まあ、俺は息を止めてないからな」
480 :今日はこれだけです。 [sage saga]:2012/07/27(金) 18:18:10.96 ID:pS8KzDFa0
オーク「どういうこと?」

男「水中でも呼吸できるようになる妖術を使ったんだ。『化水』というな」

ヴァンパイア「そんなの狡いんだぜ」

男「だって狐だし」

ヴァンパイア「狐? 画伯の間違いだろ」

男「あ?」

オーク「二人ともやめなって」
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 19:53:30.84 ID:X/xjssPFo
画伯wwwwww
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 20:27:11.23 ID:OBSUbPESO
煽るなよwwwwwwww
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 20:41:42.51 ID:8cOch7PSO
画伯wwwwww
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/07/28(土) 14:11:11.01 ID:BDM13hnco
追いついた

C
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 21:59:57.37 ID:Og7I2MlO0
ーーーーーー
ーーーー
ーー


昨夜に比べて瘴気の濃度が濃く、遠方を窺い知ることのできない夜だった。

昨夜は輪郭を掴めた海も、今は霞の向こうからさざめきを届けるだけだった。

宿泊施設の横手に彼はいなかった。

今夜も彼に逢えるのではないかと期待していた彼女は幾分気を落とす。


空気が裂ける音を耳にした。


どのように時間を潰すか考えていた時のことだ。

肌にまで響きそうな鋭い音だった。

彼女は音の出処と思わしき方向へと首を曲げる。

どうやら建物の裏手から聞こえたらしい。
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:02:29.23 ID:Og7I2MlO0
彼女は怪訝な表情を浮かべ、音源に向かうか暫し逡巡する。

それから、好奇心に背中を押されて足を踏み出した。



その背中は分厚く、そして雄大だった。

施設の中から漏れ出る僅かな光が彼を照らしていた。

十尺を超える偉丈夫の背中だった。

隆起した筋肉に滴った汗が、仄かな光の下で煌めいた。

半裸の大男は弓を引いていた。

二間もの全長をした武骨な上長下短の大弓だった。

弦の緊張が極限まで高まる。

解放を求めるように、しなった弦が音を立てた。

それは獰悪な猛獣の唸り声に似ていた。
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:04:42.99 ID:Og7I2MlO0
矢はつがえられていなかった。

弦の緊張に呼応するように、周囲の大気も張り詰める。

それが極限まで高まったと彼女が直覚した時、弦の解放を阻む指が開かれた。


矢はつがえられていなかった。

先ほど彼女が耳にした空気を裂く音が生まれた。

音と共に生み出された風は、前方に生えていた樹木の細枝を砕いた。

猛獣が歓喜する声が彼女の脳裡を過ぎった。

瞬きすることを忘れていた。

呼吸すらも失念していた。

眼が離せなかった。
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:10:35.61 ID:Og7I2MlO0
再び静寂が訪れた時、偉丈夫が振り返った。

鬼人「ーー黒エルフか」

鬼だった。

暫くの沈黙の後、鬼は逆立てている黒々とした髪を掻いた。

それから厳めしい顔をくしゃっとして笑う。

生物教師「夜に彷徨くのは減点の対象になるぞ。俺は見逃してやるがな」

ダークエルフ「…………」

彼女は声を出せずにいた。

洗練された所作の精巧な流動に、未だ心奪われていた。
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:12:50.81 ID:Og7I2MlO0
やがて彼女は口を開いた。

ダークエルフ「美しいな……」

熱に浮かされたような声音だった。

ダークエルフ「荒々しくも、繊細で……」

美しい翠の瞳も熱を帯びていた。

ダークエルフ「力強くも、雅で……」

生物教師「がはは! 中々見る目が有るな!」

彼は大きな笑い声を上げてから大弓を地に置いた。

光に照らされた大弓は、石炭のように黒光りしている。

ダークエルフ「初めて見る素材です……」
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:15:57.88 ID:Og7I2MlO0
彼女は彼に近づいてからしゃがみ込み、まじまじと弓に見入る。

生物教師「ベヒモスの甲殻を使ってる。弦はベヒモスの髭でできてる。陸王がそのまま弓になったと考えりゃ良い」

鬼人の言葉に彼女は目を瞠った。

生物教師「お前にも弓の心得が有るみてぇだが、それは扱えないだろうな」

ダークエルフ「……触ってもよろしいですか」

生物教師「おう」

威勢の良い返事に安心して、彼女は自身の背丈の二倍は有る大弓を握る。

硬質でありながら滑らかで、手に吸い付くようだった。

持ち上げようと腕に力をこめる。
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:22:28.86 ID:Og7I2MlO0
ダークエルフ「重いですね……」

彼女は両手で弓を掴み、歯を食いしばって引き上げようと尽力するが、弓は微動だにしなかった。

地に貼り付けられたようだった。

生物教師「やっぱり細腕じゃ持ち上げるのも無理か。
まあ、こいつを完璧に操れるのは鬼人族ぐらいだからな」

彼は夜にそぐわない豪快な笑い声を発してから、足元に置いていた細長の布袋を掴み上げて手を入れた。

取り出されたのは大弓と同じように黒光りする小弓だった。

それも充分な大きさだったが、彼が持つと子供の玩具のようだった。

生物教師「デカい奴じゃどんなに加減しても威力が有り過ぎて、並の獲物じゃ微塵も残らねぇんだ」

教師は彼女に小弓を手渡す。

彼が手を離した瞬間、彼女の腕が急激に垂れ下がった。

ダークエルフ「これも、重いですね……」
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:25:21.91 ID:Og7I2MlO0
両腕で辛うじて支えるのが限界で、構えることなど到底できなかった。

彼女は小弓を静かに地面に落とした。

ダークエルフ「ベヒモスを狩猟したのですか」

生物教師「ああ。結構昔にベヒモスが或る地方都市に出現してな。」

彼はその年を口にする。

ダークエルフ「私はまだ生まれていないですね」

生物教師「あれからもうそんなに時間が経ったのか」

彼は曖昧な笑いを厳めしい顔面に浮かべる。

生物教師「俺にはまだ最近のことのように思えるぜ。
そして、おそらく生涯忘れらることのできない出来事だな」

彼は彼女に語るのではなく、自分の裡で噛み締めるような様子で呟いた。
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:29:04.00 ID:Og7I2MlO0
生物教師「陸王の名を冠するだけあって、奴は恐ろしく強かった。
鬼人族長ーー拳神様でも単独では手を焼いていた」

ダークエルフ「あの方が……」

彼女は実際には見たことがないベヒモスの姿を、自分の知る情報を基に構築する。

それから巨山のような陸王と、一昨日対面したばかりの四天王のサイズを比較した。

次にその彼女が片脚で軽々と潰されている像が、彼女の意思を無視してダークエルフの脳内で結ばれた。

生物教師「俺を含めた鬼人十数人も共闘してようやく仕留めることができたんだ。
この弓二つはその際の記念に自作した」

ダークエルフ「なるほど」

彼女は再び足下の小弓に視線を戻す。

彼の武骨な太い指で作られたとは思えない艶やかな形状だ。
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:30:26.61 ID:Og7I2MlO0
生物教師「がはは! もう遅い時間だ! さっさと部屋に戻れ!」

ダークエルフ「あ、はい」

彼女は歯を食いしばりながら、両腕で小弓を持ち上げる。

生物教師「お、悪いな」

教師はそれを何でも無いように片手で受け取り、布袋に収納した。

ダークエルフ「おやすみなさい」

生物教師「おう! 明日も早えんだからグッスリ寝ろよ!」

ダークエルフ「はい」

彼女はその場を立ち去ろうと踵を返した。

生物教師「……黒エルフ、か」
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:31:35.87 ID:Og7I2MlO0
ダークエルフ「なにか?」

彼女は再び向き直る。

生物教師「お前は魔法を使えないらしいな」

彼女は肯いた。

生物教師「普通のエルフじゃ魔法で肉体強化もしてねぇのに弓を持てたりはできねぇだろうな」

ダークエルフ「はあ……」

彼の意図が察せず、彼女は曖昧な返事をする。

生物教師「黒エルフってのは、通常のエルフと違って瘴気を取り込めるのかもな。
だから肉体がより強靭なのかもしれねぇ」

ダークエルフ「……黒エルフは純エルフよりも、より魔物の肉体構造に近づいていると?」
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:34:15.40 ID:Og7I2MlO0
生物教師「あくまでも推測だがな。
魔法が使えないのも、この辺りに関連しているのかもな」

彼女は曖昧に肯いた。

黒エルフがーー己がどのような存在なのかは昔から模索していた。

その答えの一端に出会ったのかもしれないが、感動は無かった。

それから、自身の求める答えは生物学的なものでは無いことに気付いた。

生物教師「ーー百分の一か。やはりお前にもいるんだろうな」

ダークエルフ「……はい」

彼の言わんとしていることを察して彼女は肯いた。

百分の一。

それは黒エルフが産まれる確率だった。

そして、もう一つの確率でも有った。
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:35:44.77 ID:Og7I2MlO0
ーーーー露天風呂ーーーー


生物教師「おーす!」

数学教師「なんだ。遅かったじゃねぇか」

語学教師「鍛錬が長引いたのか?」

生物教師「まあ、そんなとこだ! 桶は……あったあった」

地理教師「毎日欠かさずに鍛えるなんて凄いですね。はい」

生物教師「鬼人族じゃ普通だぜ。首無しも毎日剣を振れよ」

地理教師「私は剣ではなく、ペンで戦ってますから。はい」

生物教師「うぜぇ! がはは!」

地理教師「あづっ!? ひどいよ!」
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/28(土) 22:38:16.72 ID:Og7I2MlO0
数学教師「しかし奇妙だよな」

語学教師「まったくだ」

生物教師「なんの話だ?」

地理教師「釣りの話です。はい」

生物教師「ああ。確かに異常だな」

数学教師「だろ? 四クラス合わせて零なんて初めてだぜ」

語学教師「近くにいた釣り人に話を伺ったが、彼もボウズだったらしい」

地理教師「海で何か異常が起きているのでしょうか。はい」

生物教師「さあな。それよりも飲もうぜ」

地理教師「またですか。いい加減ーーあづっ!?」
499 :デュラハン先生(頭)も沈められたし、投下終了です。 [saga]:2012/07/28(土) 22:41:12.63 ID:Og7I2MlO0
数学教師「明日は食糧調達か。何事もねぇと良いが」

語学教師「山に猛獣はいないはずなのだから大丈夫だろう」

地理教師「不注意での怪我なども止めて欲しいところです。はい。監督不届きとなってしまいますから。はい」

生物教師「ま、そうだな」

数学教師「獣なんか狩らずに、山菜とかを採ってくれるだけにして欲しいところだぜ」

語学教師「うむ。穏便に終わって欲しいところだ」

生物教師「熱燗うめぇ」

地理教師「飲んだくれめ。あづっ!? ヘルプ!」
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 22:52:12.50 ID:wDEz9hipo

お約束になりつつあるなww
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 22:53:06.30 ID:/1UCmIaVo
乙乙〜
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/28(土) 23:36:54.31 ID:qNAdxL94o
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 07:00:21.15 ID:QO6ArlvSO
頭しっかり守れwwwwww
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 18:30:28.22 ID:Bs3Jcxem0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

夕焼けが山林を赤く染めていた。

高木の太い枝の上で、彼女は弓の弦を引き絞っていた。

数本に分けられた組み立て式の代物を、合成樹脂を幾重にも巻き付けて補強した弓だ。

彼女が持参した弓だった。

狙いは遥か前方で草を食む獣。

すらりと伸びた脚で大地を踏みしめている。

頭部にある独特の弧を描いた細長い双角が特徴的だ。

彼女は研ぎ澄ました集中力を以って照準を定める。

そして右手の指を離し、矢を射出した。

数瞬の間を置いて、獣は首をもたげて矢の方向へと顔を向けようとした。

それは矢が獣のこめかみを穿つのとほぼ同時だった。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 18:33:19.23 ID:Bs3Jcxem0
酷くゆっくりと獣は倒れた。

完全に動かなくなったのを見届けてから、彼女は一挙に枝から地面まで飛び降りる。

膝の屈折で衝撃をだいぶ吸収した為、音は比較的小さかった。

ダークエルフ「すまないな」

彼女は謝罪の言葉を口の中で呟き、獣へと歩み寄る。

ヴァンパイア「ダークさん、流石なんだぜ!」

彼女の影から吸血鬼が姿を現した。

彼女は別段驚きもせずに彼を一瞥した。

ダークエルフ「これくらいなら普通だろう」

ヴァンパイア「いや、本当に凄いんだぜ。こんな遠くから正確に当てるなんて普通はできないんだぜ」
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 18:39:11.62 ID:Bs3Jcxem0


ヴァンパイア「さて」

彼は獣の側に屈み込み、その首筋に噛み付いた。

喉を鳴らす音が断続的に繰り返される。

ダークエルフ「……吸血してるのか?」

返事はなかった。

やがて、彼は首筋から口を離した。

ヴァンパイア「血液が凝固すると肉が血生臭くなっちゃうんだぜ。だから有る程度抜いておこうと思ったんだぜ」

ダークエルフ「なるほど。しかし獣の血を飲んでも問題無いのか」

彼女は疑問に思い訊ねた。

ヴァンパイア「良し悪しは血の匂いで本能的に分かるんだぜ」

ダークエルフ「凄いな。まさに吸血鬼といったところか」

彼は微笑みながら肯く。

ヴァンパイア「さてと。男とオークに合流するか」
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 18:41:58.90 ID:Bs3Jcxem0
ダークエルフ「ああ。しかし暑い……」

ヴァンパイア「美人は汗をかいても美人なんだぜ」

ダークエルフ「そうか」

ヴァンパイア「……ダークさんは男以外の異性と話す時は泰然としてるよな」

ダークエルフ「……そうだろうか?」

ヴァンパイア「そうなんだぜ。どれだけ男のことが好きなんだという」

ダークエルフ「なな、なんの話だ」

ヴァンパイア「その反応、バレてないと思ってたのか?」

ダークエルフ「い、意味が分からないな」

ヴァンパイア「吃りながら白を切ろうとするダークさん、凄く可愛いんだぜ」
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 18:42:57.43 ID:Bs3Jcxem0
ダークエルフ「……」

ヴァンパイア「睨まないで欲しいんだぜ」

ダークエルフ「……まあ、バレていたところで問題無い」

ヴァンパイア「そうなのか」

ダークエルフ「羞恥は感じるが」

ヴァンパイア「恥じらうダークさん、可愛過ぎてペロペロしたいんだぜ」

ダークエルフ「アホなことを言ってないで行こう」

ヴァンパイア「はいはい」
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 18:45:00.74 ID:Bs3Jcxem0


男「魔獣を仕留めたのか。やるな」

ヴァンパイア「ダークさんがやったんだぜ。遠くから弓矢でぶすっとな」

ダークエルフ「私の数少ない特技だからな。
だが、二人も魔獣を仕留めているじゃないか。しかも二頭も」

男「罠を張って、誘導して落としただけだ」

ダークエルフ(いや、それが凄いと思うのだが)

「お、魔獣を狩ったのか。お前ら凄いな」

「これで一組の優勝は盤石だな」

「他のクラスにも魔獣を狩った奴はいるらしいけど三頭は狩ってないだろうな」

オーク「そうだね。さて。そろそろ麓に戻ろうか」
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 18:48:11.50 ID:Bs3Jcxem0
ーーーー山麓ーーーー


化学教師「集計した結果、得点が一番高いのは一組ですね。次点で四組。その後は五、二、三と続きますね」


ヴァンパイア「おお。圧倒的な差で首位なんだぜ」

オーク「やったね。後は減点されないように慎んで行動しよう」

「そうだな」

「今日は疲れたし早く寝るか」

「腹減ったぁ。夕飯はなにかな」

「汗かいたし、風呂入りてぇ」

サキュバス「疲れたわね」

ウンディーネ「私が癒してあげるー!」

サキュバス「結構よ」
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 18:51:16.12 ID:Bs3Jcxem0
ーーーー露天風呂ーーーー


化学教師「何事もなく終わって良かったですね」

歴史教師「ええ、本当に」

化学教師「今日はだいぶ日焼けしちゃいましたね。日焼け止めを塗ったんですけどねー」

歴史教師「大変ですね」

化学教師「ラミア先生は細かい肌をしてますよね。羨ましい」

歴史教師「そうでしょうか?」

化学教師「どんなスキンケアをしているんですか?」

歴史教師「特筆すべきことは特にしていないですが」

化学教師「えー……。私なんて毎日欠かさずにスキンケアをしてるのにボロボロですよ。
どうして水泳部の顧問もしているのにそんなに白いんですか」

歴史教師「おそらく蛇人族の体質ですよ」
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 18:57:14.85 ID:Bs3Jcxem0
化学教師「うう……。蛇人族羨ましい……」

歴史教師「そうですかね」

化学教師「……尻尾を触っても良いですかね?」

歴史教師「急にどうしたんですか?」

化学教師「前からどんな手触りなのか興味有ったんですよね」

歴史教師「別に構いませんが」

化学教師「やったぁ! それでは失礼しますね」

歴史教師「んっ、ちょっとくすぐったいです」

化学教師「逆立てて撫でるとザラザラしてるのに、鱗の一つ一つは滑らかな手触りですね。
わぁ、流れに沿って撫でるとスベスベだ」

歴史教師「んっ……」
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 19:00:30.61 ID:Bs3Jcxem0

歴史教師「ハーピー先生ばかりズルいですよ。
私も羽根に触ってみたいです」

化学教師「良いですよ」

歴史教師「なるほど。付け根はこうなってるのですか。
羽根に神経は通っているのですか」

化学教師「んー、髪の毛と同じと考えて大丈夫ですね」

歴史教師「なるほど。
付け根は少し硬質ですね。陶器のようです」

化学教師「ひゃっ! そこくすぐったいんです!」

歴史教師「おっと。すいません」
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 19:02:28.85 ID:Bs3Jcxem0



歴史教師「……今物音がしませんでしたか?」

化学教師「……しましたね」

歴史教師「そこの茂みからでしょうか」

化学教師「おそらくそうですね」

歴史教師「誰かいるのでしょうか……」

化学教師「分かりません。ピット器官を有していたりは?」

歴史教師「いえ。蛇人族は昼行性ですから」

化学教師「……確認しますか?」

歴史教師「……一緒に行きましょう」
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 19:03:43.22 ID:Bs3Jcxem0
ーーーー男部屋ーーーー


オーク「ねぇ、男君」

男「ん、なんだ?」

オーク「ヴァンパイア君、遅いね」

男「確かに。随分と長いトイレだな」

オーク「なんだか嫌な予感がするんだけど」

男「嫌な予感?」

オーク「うん。凄く、ね」

男「気のせいじゃないか?」

オーク「だと良いけれどね」
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 19:05:17.41 ID:Bs3Jcxem0


男「……ノック?」

オーク「ヴァンパイア君……じゃないよね」

男「ああ。聞こえてきた足音は二つ。そのうち一つは地を引き摺るような音だ」

オーク「男君はやっぱり耳が良いね」

男「まあな。取り敢えず出ないと」

オーク「だね。今開けまーす」


歴史教師「……」

化学教師「……」

オーク(うわあ……不機嫌な顔)
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 19:06:25.32 ID:Bs3Jcxem0
オーク「ど、どうしたんですか」

化学教師「これ」

オーク(ラミア先生の尻尾?)

オーク「……ヴァンパイア君!?」

男「声を荒げてどうしたんだ。
……うわ、なんだこのヴァンパイアらしき物体は」

歴史教師「紛れも無くヴァンパイア君です」

オーク「ど、どうして瀕死なんですか?」

化学教師「彼ね、私たちがお風呂に入ってるところを覗いてたのね」

男「あ、阿保が……」
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 19:08:41.15 ID:Bs3Jcxem0
ヴァンパイア「お、俺は何も知らないんだぜ……。ほ、本当なんだぜ……」

歴史教師「現行犯がよく言います。どうやらもっと強く締め上げて欲しいようですね」

ヴァンパイア「あがが!? 死ぬ! 死ぬ! いやでも本望!?」

歴史教師「……度し難いですね」

ヴァンパイア「かひゅ……」

歴史教師「君は不敬なところは有れど、誠実な生徒だと思っていましたが」

ヴァンパイア「ーーーー」

歴史教師「本当に失望しました」

オーク「先生、ヴァンパイア君が完全に失神してます」
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 19:10:53.62 ID:Bs3Jcxem0
化学教師「取り敢えず今回は被害者が私たちだけだから、不問にしておくけどね」

歴史教師「君たちも彼が大切な友人なら口外しないように」

オーク「あ、はい」

化学教師「あと、一組は零点まで減点ね」

オーク「え!?」

男「まじか……」

歴史教師「連帯責任ですから。ヴァンパイア君はここに捨てていきます」

化学教師「おやすみー」

オーク「……おやすみなさい」
520 :ヴァンパイアも逝ったし、投下終了です。 [saga]:2012/07/29(日) 19:13:43.91 ID:Bs3Jcxem0
オーク「皆にどう説明しようかな……」

男「俺たちも知らない振りをするのが得策じゃないか?」

オーク「だよね。……まったく。ヴァンパイア君は」

男「こいつは生殖器で思考してるのか」

オーク「否定できないね」

男「……しかし、こいつ」

オーク「随分と幸せそうな顔してるね……」

男「腹立つな。狐火で髪を軽く燃やしておくか」

オーク「重傷だし、これ以上はやめてあげなよ」

男「オークは優し過ぎるな」
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 20:02:06.96 ID:2vmDf+cpo
男風呂と女風呂を覗くのとで罪の重みが違うのはなんで?
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/29(日) 20:20:48.09 ID:Bs3Jcxem0
>>521
本来は差が無いと思います
罪の重さはジェンダーによるものでは?
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/29(日) 20:24:01.71 ID:ARfr4dfmo
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 21:43:08.15 ID:QO6ArlvSO
バカスwwwwww
525 :もう一度投下します。 [saga]:2012/07/29(日) 23:09:53.52 ID:Bs3Jcxem0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

部屋のベッドに腰掛けながら、少女は円筒を右眼で覗き込んでいた。

赤い花柄の紙を巻いた筒だ。

たおやかな細指で円筒を廻す。

廻す度に砂利をかき混ぜるような音が小さく響いた。

左眼は閉じられている。

「万華鏡も綺麗だよね。私たちの未来はどんな色かな」

ダークエルフ「……何をしに来た」

「そんなに怖い声を出さないでよ」

少女は万華鏡を覗いたまま、柔和な口調で言った。

ダークエルフ「この状況で、それは無理だな」

淫魔と水人が床に臥していた。

意識を失っている。

部屋に突如として現れた少女の力によるものだった。
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 23:11:37.77 ID:Bs3Jcxem0
ダークエルフ「お前はいつだってそうだ。
全ての物を見下しながら飄々とした態度を気取っている」

「ひどいなぁ。傷付いちゃうよ」

少女は平然とした口調で言う。

それから花柄の色紙で飾られた円筒から右眼を離した。

翠の両眼がダークエルフに向けられた。

彼女の瞳と同じ色だった。

「暫く見ない間に口が悪くなったね」

ダークエルフの脳裡に或る単語が浮かぶ。


百分の一。


それは、黒エルフが産まれる確率。


そして、一卵性双生児が産まれる確率。
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 23:15:50.72 ID:Bs3Jcxem0
ダークエルフ「サキュバスとウンディーネに何の魔法を行使した?」

彼女は双子の妹を睨みつけながら詰問する。

少女は、エルフはその小さな肩を竦めた。

エルフ「『昏倒の呪』だよ。威力は明日の早朝に目覚める程度に抑えて置いたから安心して」

ダークエルフ「そういう問題では無いだろう。『昏倒の呪』は用法を誤れば脳死する可能性も有るだろう。
エルフ族としての誇りが有るならば無闇に魔法を濫用するな」

その言葉に少女は嘲るような微笑みを浮かべた。

エルフ「お姉ちゃんがエルフ族について語るの? 出来損ないのお姉ちゃんが?」

ダークエルフ「……」

エルフ「軽い冗談だよ。怒っちゃった? ごめんね」
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 23:24:33.34 ID:Bs3Jcxem0
彼女は話題を転換する。

ダークエルフ「いつの間に『転移の呪』を使えるようになったのだ。あれは亡失魔法だろう」

エルフ「私が使えるんだからもう亡失魔法じゃないよ。
使えるようになったのはお姉ちゃんが家を追い出されてすぐだから、進学する直前かな」

告げて、彼女は再び万華鏡を覗き込む。

何か大切なものを探しているように熱心だった。

エルフ「ーーお姉ちゃんは今の日々が楽しい?」

唐突な質問に、ダークエルフは首を僅かに傾げた。

ダークエルフ「……ああ」

それから間を空けて答える。

エルフは愉しげな声を出す。

エルフ「……そっか。楽しいんだ。ふうん」
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 23:25:27.48 ID:Bs3Jcxem0



エルフ「壊したくなるなぁ」



530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/29(日) 23:28:54.70 ID:Bs3Jcxem0
ダークエルフ「……っ」

彼女の呟きに、ダークエルフの背筋が凍り付く。

蟲が全身を這っているような悪寒が走った。

エルフ「お姉ちゃんの為にプレゼントを用意しておいたから」

ダークエルフ「……プレゼント」

彼女は言葉を小さく繰り返す。

口の中が渇き切っていた。

エルフ「うん。結構大きいんだ。お姉ちゃんを訪ねたのもそれを伝える為だよ」

ダークエルフ「……それだけの為にサキュバスとウンディーネを気絶させたのか」

エルフ「そうだよ」

ダークエルフ「ふざけろ! 他者を愚弄するな!」

彼女の大声に、エルフは顔をしかめながら万華鏡から彼女へと視線を移した。

エルフ「一々カリカリしないでよ。男君に嫌われるよ?」

ダークエルフ「っ!?」

彼女は目を剥く。

それから眼光鋭く自身の妹を睨みつける。
531 :今度こそ投下終了です。 [saga]:2012/07/29(日) 23:31:53.60 ID:Bs3Jcxem0
エルフ「あはは。“まだ”何もしてないよ。勘繰り過ぎだってば」

ダークエルフの眼光の鋭さは増す。

エルフは苦笑を浮かべながら肩を竦めた。

エルフ「まあ、今日は帰るよ。さようなら」

ダークエルフ「私は二度と会いたくないが」

エルフ「実妹に対して冷たいなぁ。
まあ、お姉ちゃんの要望は叶うだろうけどね」

彼女が何か言い返す前に、エルフは姿を消した。

最初からその場にいなかったと錯覚するほど唐突な別れだった。

ダークエルフ「……私にはアイツの目的が分からない」

静寂に包まれた部屋の中で、彼女は呟いた。
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/29(日) 23:37:02.96 ID:iHUUGS8Xo
なんとまぁ妹だったのか
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 23:45:32.25 ID:2VW8weZDO
ヴァンパイアの件も怪しいな
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/29(日) 23:53:25.40 ID:ARfr4dfmo
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 00:06:39.41 ID:56FH7bkSO
魔法の天才なのか
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/30(月) 00:23:49.82 ID:QpxxhCW9o
まさかクズキャラってのは
537 :別のダークエルフスレが荒ぶっておる…… [saga]:2012/07/30(月) 23:20:07.85 ID:g/uRv9x30
ーーーー最終日・朝・食堂ーーーー


サキュバス「昨日は知らない間に眠ってしまったわ」

ウンディーネ「えー、私と睦み合った甘い一時を忘れたの? 私の身体の下で悶えていたあの一時を」

サキュバス「朝から変なことを喋るのはよしなさい」

ダークエルフ(いつも思うが、彼女はあまり淫魔らしくないな)

ウンディーネ「あれー? 本当に憶えてないの?」

サキュバス「そんな虚言を信じるわけないでしょ」

ウンディーネ「そっかー。忘れちゃったのかー。そっかー」

サキュバス「……何も無かったわよ」

ウンディーネ「昨日のサキュたんは凄く可愛かったのになー」
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/30(月) 23:22:07.02 ID:g/uRv9x30
サキュバス「嘘よ……。私にそんな性癖は……」

ウンディーネ「サキュたん、美味しかったよー。えへへ」

サキュバス「そ、そんな……」

ダークエルフ(アイツが来るまでは別にいつも通りだったのだが)

ダークエルフ(ここは黙っておくか)



オーク「あ、僕たちも相席して良いかな?」

ダークエルフ(男たちか)

ダークエルフ(ヴァンパイアが若干負傷しているが、喧嘩でもしたのだろうか)

ウンディーネ「来んな豚死ね臭いんだよ飯が不味くなるだろうが」

オーク「ぶ、ぶひぃ……」
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/30(月) 23:24:50.91 ID:g/uRv9x30
サキュバス「口を慎みなさいよ。別に構わないわ」

オーク「ほんと? ありがとうサキュバスさん」

サキュバス「……別に」

ダークエルフ(……ふむ)

ウンディーネ「豚の悪食を見てると食欲が失せるんだけど。床で食べて貰えないかな」

オーク「ぶ、ぶひぃ……。量は多いけど同じ物だよ」

ウンディーネ「あれー。糞豚が食べるんだから、生ゴミかと思っちゃった」

オーク「ぶ、ぶひぃ」

サキュバス「いい加減にしなさい」

ウンディーネ「……ちぇ」
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/30(月) 23:28:06.61 ID:g/uRv9x30
ーーーー正午・野外炊飯場ーーーー


ヴァンパイア「カレー美味しいんだぜ。男とダークさんの料理の腕前は凄いんだぜ」

オーク「もう。ヴァンパイア君は調子が良いんだから……」

男「本当に呑気だな。クラスメイト達の消沈した顔はお前のせいなのに。あと傷の治りが早過ぎだろ」

ヴァンパイア「吸血鬼だからな。昨日は血も飲んだし」

ダークエルフ「ヴァンパイアのせいで一組は零点にされたのか?」

ダークエルフ(てっきりアイツが何か仕掛けたものと思っていたが)

オーク「あ、内密にね。まあ、色々有って」

ダークエルフ「色々か」

ヴァンパイア「でも本当に記憶が無いんだぜ。トイレに行った後、気晴らしに外に出たところまでは憶えてるけど」

ダークエルフ(記憶が無い?)

ダークエルフ(……アイツが何かしたのか?)

ダークエルフ(充分に有り得るな)
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/30(月) 23:31:05.33 ID:g/uRv9x30
ダークエルフ(使ったのは操る魔法か?)

ダークエルフ(そんな魔法、私の知識には無いな。敢えて上げるならば『蠱惑の呪』か)

ダークエルフ(しかしあれは好感度を高めるだけのものだから、使用者に従順になるだけで自発的に行動するはず)

ダークエルフ(それに記憶を失うことは無いはずだ)

オーク「昨夜のことで何か憶えて無いの?」

ヴァンパイア「水の滴る艶やかな髪。赤みを帯びた柔肌。美乳」

ダークエルフ「覗きでもしたのか?」

ヴァンパイア「そういうことになってしまったんだぜ」

ダークエルフ(……自発的行為である可能性も否めないな)

ダークエルフ(ヴァンパイアだし)
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/30(月) 23:33:55.00 ID:g/uRv9x30



ダークエルフ(食器類を洗浄した後は自由時間か)

ダークエルフ(一時間では大したことはできないな)

男「……なあ、ダーク」

ダークエルフ「うん?」

男「その、この後に話が有るんだが……」

ダークエルフ(この他人行儀な態度は、もしかして……)

ダークエルフ「あ、わわ、分かった」

男「……取り敢えず洗ってしまうぞ」

ダークエルフ「そそ、そうだな」
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/30(月) 23:36:08.78 ID:g/uRv9x30
ダークエルフ(鼓動が余りに激しくて身体まで跳ねているようだ)

ダークエルフ(男に悟られていないと良いのだが)

男「……っ」

ダークエルフ(目が合ってしまった)

ダークエルフ(何だこの感じ! 何だこの感じ!)

ダークエルフ(……落ち着け)

ダークエルフ(アイツの腹立たしい媚びた笑顔を思い出せ)


ダークエルフ(……だいぶ昂ぶりが収まったな)
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/30(月) 23:38:21.71 ID:g/uRv9x30
「しっかし、最下位かぁ……」

「理不尽だよな。理由も分からんし」

「ほんと何が有ったんだよ」

「事件の臭いがするぜ」

オーク「あはは……」

「ま、でも良いんじゃね?」

「楽しかったよね。団結できたし」

「親睦が深まったし」

「モザイクアートを作るのはやり甲斐があった」
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/30(月) 23:46:29.91 ID:g/uRv9x30
「みんなで何かを成し遂げるのって凄え気持ち良いよな」

「ほんとほんと」

「食糧調達も、辛かったけど充実してたな」

「うんうん」

「野生の魔獣の肉なんて初めて食ったわ」

「俺も。クセが強かった」

「山菜の天ぷらはメチャクチャ美味しかった」

「確かにね」

「最下位でも最高のクラスだと思う」
546 :投下終了です。次からは投下が遅れそうです。 [saga]:2012/07/30(月) 23:50:14.06 ID:g/uRv9x30
オーク「どうせなら皆でもう一度集合写真を撮らない?」

ヴァンパイア「お! 良い考えなんだぜ!」

「やっぱり背景は海だよね」

「だね! 」

「デュラハン先生も呼ばないとな」

「皆で同じポーズとろうぜ!」

「えー、それはヤだ」

「ま、取り敢えず片付けよ」

ダークエルフ(先に集合写真の撮影になるようだな)

ダークエルフ(その後は…………はうっ)


547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/30(月) 23:58:00.07 ID:REhcXpxbo

まったり待ってる
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/07/31(火) 01:11:11.05 ID:PqMJHLgF0

なんだ今日はサービスカットはないのか・・・(´・ω・`)
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/31(火) 01:31:08.86 ID:8+S/gmwP0
鬼人先生のサービスショットはお休みか
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 07:14:41.22 ID:tdpFxKrSO
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 17:55:02.97 ID:FEnDshTR0
山菜の天ぷらが別ダークエルフスレから流れてきたのかと一瞬邪推したw
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 17:55:47.72 ID:QpgsEtEyo
両方とも読んでるオレも邪推しちゃったww
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:24:11.22 ID:/VSXP1Px0
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薄紫の海を背景に、一組のクラスメイトが担任教師を中心に固まっていた。

砂浜では他の組の生徒が波を蹴ったりして遊んでいた。

流石に泳いでいる者はいない。

地理教師「私は素晴らしいクラスの担任になれて幸せです。はい」

自身の両腕に抱かれた彼の顔は、心底嬉しそうに笑っていた。

数学教師「じゃあ、撮ります。端っこがフレームアウトしてるから全体的にもっと寄って」

牛人の教師が、体格にそぐわないサイズのカメラを構える。

「……? どうしたケットシー。メチャクチャ震えてるぞ」

生徒の一人が首を傾げて言った。

猫に酷似した獣人は、首を振る。

「分からないけど、身体が……」

喋る内にも、彼の身体の震えは強さを増していき、遂に自力で立ち上がることすらできなくなっていた。

彼は集団の中から抜け出そうとするように砂浜を這いずる。

男「おい、本当にどうした?」

「怖い……。怖い……」

うわ言を呟きながら猫人は集団から離れようとする。

ウンディーネ「……海がおかしい」

ポツリと水人の少女が呟いた。

いつもは柔和な顔が、今は強張っていた。

サキュバス「深刻な顔をしてどうしたの?」

ウンディーネ「離れなきゃ……。海から逃げなきゃ……!」

彼女は切迫した面持ちで声を荒げる。

地理教師「……っ。危険です! 海から離れてください!」

数学教師「あん? いったい何だってんだ?」

多くの者が不可解そうな顔をして周りを視線を散らす。

他のクラスでも同じような状況だった。

ダークエルフ「……海?」

彼女は何気なく海を振り返る。
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/08/01(水) 23:24:49.63 ID:/VSXP1Px0



海が割れたのは、その時だった。




555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:27:50.95 ID:/VSXP1Px0



瘴気を取り込み、生命を維持する生物を『魔物』と呼ぶ。

魔物という存在は幾つかに分類される。


高次な知能を具有する魔物を『魔族』とした。

多様な種族が存在し、現在では共存して生活を営んでいる。


『魔草木』は植物型の魔物の分類だ。

生産者、分解者で有るが、中には消費者を喰らう種も存在する。

また、『花人族』という魔族も存在する。


そして。


低次の知能しか備えていない魔物を『魔獣』と分類した。

非常に大きな分類だ。

哺乳類も、爬虫類も、魚類も、巨大な昆虫もまずはここに分類される。

家畜や愛玩動物として品種改良された種も多い。

『一角獣』など希少な種は保護対象生物だ。

しかし、その大半は凶暴性を秘めた生物だ。

時として魔族すらも生命の糧とする。


世界の生態系の頂点はいつでも魔族では無かった。

未だ辺境地の生態系の頂点には、三王獣と畏怖される魔獣が君臨している。

陸王ベヒモス。

巨山の如き獣。

空王ジズ。

天を闊歩する獣。

海王レヴィアタン。
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:28:27.34 ID:/VSXP1Px0



彼女たちの眼前に現れた獣。



557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:30:44.59 ID:/VSXP1Px0
海王の出現と共に発生した波濤が轟音を立てる。

それは発声器官を喪失した獣王の啼き声だった。

身体に纏っている半透明な翠色をした粘膜は、状況によっては優美で神秘的に視えるのかもしれない。

しかし、現在の状況では邪悪な印象しか抱けなかった。

八つの紅眼は何も捉えていない。

それでも身をくねらせ、太古の残滓である不完全な四肢を用いて浜辺に打ち上がろうとする。

その様子に生徒達は悲鳴をあげながら蜘蛛の子を散らすように逃げる。

混乱を鎮静する為に各教師は声を張り上げて生徒たちに避難の指示を出す。

生物教師「がはは! こんな浅瀬まで海王が来るなんて珍しいな!」

鬼人は豪快な笑い声をあげながら、弓袋から取り出した大弓に、矢筒から取り出した弓と同じく陸王の甲殻から削り出した矢をつがえる。

大弓用の矢は三本しか手許に無かった。
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:33:55.70 ID:/VSXP1Px0
数学教師「宿泊場所よりデカイんじゃね。そもそも海王は陸上でも活動できんのか?」

生物教師「元はベヒモスだからな。長時間じゃねぇなら大丈夫みたいだ」

数学教師「陸から海に進出したって説が有力なんだっけか。事実だとしたら奇特な奴だな」

語学教師「呑気に話している場合では無いだろう!」

生物教師「がはは! 俺が囮になるさ! その間に避難をすませれば解決だろ!」

彼は間近まで迫っているレヴィアタンに狙いを定めて、力の限り弦を引き絞る。

そして、海王の偏平な口に向かって陸王の化身を放った。

矢は口内に潜り込む。

海王はその巨体を仰け反らせた。

八本の尾が荒々しく水面を叩く。

数学教師「流石鬼人族だぜ。さて今の内に……」

レヴィアタンから眼を離し、後ろを振り向いた牛人の顔が凍り付いた。

生物教師「……なんだよ、これ」

鬼人もまた呆然と呟く。


誰もが無様に口を開き、途方に暮れていた。
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:35:53.93 ID:/VSXP1Px0
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彼女は宙に腰掛けている。

正確には腰掛けたような姿勢を取っている。

その小さな手にはお手玉が三つ握られていた。

器用に玉の循環を繰り返す。

何度も。何度も。

そして口許に微笑を浮かべながら地上を見下ろしていた。


大地が極端に大きく隆起していた。

隆起は比較的大きな円を描き、下にいる者たちを囲んでいた。

その牢は、一人として外に漏らすことは無かった。

厚い大地の壁は彼女の魔法によるものだった。

エルフ「せっかくのプレゼントから逃げちゃダメだよ」

愉快そうに彼女は呟く。
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:37:27.66 ID:/VSXP1Px0
エルフ「壊すなら徹底的にね」

玉は入れ替わる。

追い出され、受け入れられる。

エルフ「どうせならちゃんと見届けたいけど、やることも有るしなぁ」

残念そうに呟き、彼女は手を止めた。

エルフ「ばいばい。お姉ちゃん」

彼女は三つのお手玉を消し去る。

それから下に向けて小さく手を振った。

エルフ「安らかに眠ってね」


彼女の姿が消え、後には虚空のみが残っていた。
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:40:29.24 ID:/VSXP1Px0
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突如として隆起した地面は生徒たちの逃走を阻んだ。

彼女の周囲には先程まで生徒たちの怒号と壁を蹴る音が満ちていたが、今では咽び泣く声ばかりだ。

鳥人族や淫魔族など、翼を有する種族は飛翔して逃げられるだろう。

しかしこの状況で独り逃げようとすれば、多くの者が抱えた行き場を無くした憎しみの矛先とされ、最悪翼をもぎ取られてもおかしくなかった。

それを恐れているのか、壁を超えて逃げ出そうとする者はまだいなかった。

生徒たちは、後ろで八本の尾を振るって徐々に迫る海王と、あまりに強固な壁を諦観した顔で交互に見やることしかできなかった。

ヴァンパイア「……俺たち、海王の食糧にされるのか?」

オーク「ここで死ぬの……?」

男「……」
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:44:29.65 ID:/VSXP1Px0
ダークエルフ「……くそ」

ダークエルフは激しく憤っていた。

全てが自身の妹の所業だと覚ったからだ。

彼女は忌々しい壁から目を離して後ろを向く。

教師たちがレヴィアタンの足止めをしている。

一瞥しただけで明らかに劣勢であることが分かった。

そもそも少人数で敵う相手ではない。

ダークエルフ「……私が止めなければいけない」

男「……なに言ってるんだ」

ダークエルフ「……っ」

彼女は海へと、海王へと駆け出す。

男「おいっ!」

彼の制止の声にも振り向かずに、彼女は全力で走る。
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:48:06.51 ID:/VSXP1Px0



オーク「ーーーー男君。ヴァンパイア君」

男「……なんだ?」

ヴァンパイア「……どうした?」

オーク「怖いよね。死んでもおかしくないんだから」

彼の言葉に、二人は肯いて同意した。

オーク「正直、先生たちに海王が倒せるわけがないよね」

二人は肯いて同意した。

オーク「僕たちなんか尚更だよね」

二人は肯いて同意した。

オーク「でも、このままじゃいけないよね」

二人は沈黙した。

オーク「怖くても、臆病になっても、それでも突き進む。
それがきっと勇気だよね。」

二人は沈黙する。

オーク「もしそうだとしたら、大切な友人の為に一歩を踏み出せる者が、『勇者』だよね」
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:49:49.79 ID:/VSXP1Px0
二人は笑う。

男「お前は格好良いな」

ヴァンパイア「友の為に生命を張るなんて尋常じゃないんだぜ」

男「ーーーー俺にはもっと重大な理由が有る」

ヴァンパイア「奇遇だな。俺もなんだぜ。逃げて怯えてる場合じゃなかったんだぜ」

オーク「……そっか」

三人で笑う。

オーク「行こう」

ヴァンパイア「行こう」

男「行こう」

そういうことになった。
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:51:41.11 ID:/VSXP1Px0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

海王の全身が浜に上がっていた。

生物教師「死にたく無い奴は下がれ! 海王は俺がやる!」

レヴィアタンの背後に雄々しく突っ立っている鬼人が叫んだ。

歴史教師「単騎でどうにかなる相手ではないです!」

語学教師「せめて、海王の攻撃対象を分散させなければ……!」

数学教師「いやー、教師が殉職なんて事例ないんじゃね?」

化学教師「不吉なことを言わないでくださいよね!」

歴史教師「まったくです!」

レヴィアタンの尾が鬼人の身体を叩きつける。

生物教師「ぐっ……」

彼は大弓で辛うじて受け止めた。

弓が大きく軋む。
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:53:47.34 ID:/VSXP1Px0
地理教師「はあっ!」

片腕に頭を抱えたデュラハンが、握っていたペンで尾を突いた。

数学教師「ホントにペンで戦ってるのかよ!?」

語学教師「言ってる場合か! こっちには三本来たぞ!」

数学教師「げっ!?」

近くに固まっていた巨人と牛人は後ろに大きく跳んで尾を回避した。

生物教師「水棲生物が! 陸で図に乗んな!」

鬼人は大弓の弦を引き絞る。矢は最後の一本だった。

海王の急所は把握していた。

しかし、彼の実力を以ってしても的確に射抜くのは困難だった。

精神を研ぎ澄ませる。
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/01(水) 23:56:44.92 ID:/VSXP1Px0
化学教師「ほらほらこっちだよ!」

ハーピーは海王の周囲を旋回しながら、海王の気を引く。

歴史教師「……ハーピー先生危ない!」

ハーピーの死角から、彼女に向かって尾が振られた。

鬱陶しい虫を払うような所作だった。

化学教師「あ……」

生物教師「……ちっ」

大弓の最後の矢はその尾を打ち抜く。

硬直した尾が彼女を叩き落すことは無かった。

レヴィアタンは更に猛々しく暴れる。

全員が、自己の生命を繋ぎとめる為に避けるので精一杯だった。
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 00:02:33.22 ID:/w4oqres0
鬼人には未だ海王を討ち取る手段が有るが、海王のこれ以上の進行を阻むことを優先して、前へと躍り出る。

ダークエルフ「先生! 私も戦います!」

生物教師「……莫迦が! 下がってろ!」

彼は、走り寄って来たダークエルフを怒鳴りつけ、迫った尾を横に跳んで回避した。

ダークエルフ「私には戦わなければいけない理由が有る!」

生物教師「誰もがそうだろうが! いいから俺たちに任せろ!」

彼女は激しくかぶりを振る。

ダークエルフ「違う……。違うんだ……!
私はアイツに証明しなければいけないんだ!」

彼女の切迫した声音と表情から何かを感じ取ったのか、鬼人は押し黙って少し離れた地点に指を向けた。

そこには彼の弓袋があった。

生物教師「矢も一本だけ袋の中に有る。尾の付け根の中心を狙え」

手短に言い、彼は海王に殴りかかる。
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 00:06:00.06 ID:/w4oqres0
自身のやるべきことを把握した彼女は、弓袋へ駆け寄ろうとした。

瞬間、尾が上から振り落とされた。

ダークエルフ「っ!?」

驚愕で彼女の身体が強張る。足が動かなかった。

しかし圧し潰されることは無かった

狐「立ち止まるなよ。危ないだろ」

飴色の体毛を纏った獣が、彼女を背に乗せて迫る尾から離れた。

ダークエルフ「男!」

狐「何か特別な事情があるようだが、それは後で聴く。今はこの畜生を倒すことが最優先だ」

ダークエルフ「……ああ!」

彼女は小弓と矢を取り出す。

一昨日ほど重くは感じなかった。

危機的状況に陥ることで、身体の限界が伸長されたらしい。

何かの音を耳にして、彼女は背後を振り向く。


そして目を見開いた。
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 00:09:14.80 ID:/w4oqres0



歴史教師「何をしているんですか!?」

ラミアが叫ぶ。目の端には涙が溜まっていた。

側にはヴァンパイアが倒れていた。

ヴァンパイア「だ、大丈夫なんだぜ……。なんたって吸血鬼は頑丈だからな……」

彼の脇腹が裂けていた。傷口には血の糸が引いている。

鋭利な刃物でつけた傷ではなく、手で無理やり千切ったような裂傷だ。

黒々とした血が傷口から止め処無く溢れ出していた。

彼女を庇った際に被った傷だった。

歴史教師「死んでしまいますよ!」

ヴァンパイア「こんなのは、唾付けとけば、治るんだぜ……。
それに、ラミア先生を護って、死ねるなら、割りと本気で、悪く無いんだぜ……」

掠れた声で言い、彼は立ち上がる。
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 00:11:05.74 ID:/w4oqres0
ヴァンパイア「安全なところまで逃げて……」

彼は顔をしかめ、夥しい汗をかきながらも海王と彼女の間に立つ。

歴史教師「……っ。君は、本っ当に度し難いですね!!」

顔をたくさんの涙で濡らしながら、彼女は叫ぶ。

オーク「だって、ヴァンパイア君ですからね。
それに、女性の前で格好付けたいのは男の性ですから」

オークが吸血鬼の隣に並ぶ。

オーク「大丈夫?」

ヴァンパイア「……結構やばい。でも、やるしかないんだぜ」

レヴィアタンを睨みつけながら彼は呟いた。
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 00:14:31.11 ID:/w4oqres0
サキュバス「酷い傷ね……」

ウンディーネ「うわぁ……。尻尾には気を付けないと」

ヴァンパイア「お前ら……」

「あんまり独りでカッコつけんなよ」

「そうそう。ヴァンパイアのくせによ」

「まったくだ。俺らにもカッコつけさせろよ」

オーク「みんな……!」

一組のクラスメイトたちがいた。

「僕たちだってやってやるよ」

「もう泣いて待つのはイヤなの」

男女隔てなく全員がいた。

ヴァンパイア「……はは。ホント最高のクラスなんだぜ」

オーク「そうだね。……僕たちならやれる! 戦おう!!」

全員の声が重なった。
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 00:18:56.99 ID:/w4oqres0



海王は悶えるように身を捩らせている。

その度に翠色の粘膜が辺りに飛散した。

レヴィアタンの八本の尾は、教師と一学年の全生徒の手によって地に押さえつけられていた。

一組の奮闘を見て、全員が焚き付けられたのだ。

燃え上がった炎は海の王をも焦がしている。

尾があらゆる方向に引っ張られ、付け根が剥き出しになっていた。



海王の身体には、酷く狭隘ながらも軟弱な肉質の層が、尾の付け根から脳まで続いている。

ダークエルフは其処を射ち抜く為にレヴィアタンの背後に回り、左手で黒光りする弓を構え、右手で光沢を放つ漆黒の矢を、美しい女の黒髪を思わせる弦につがえていた。

腕は麻痺していた。腱は断裂寸前まで軋む。

それでも、その顔には一切の雑念が無く、精神は無我の極致に有った。
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 00:21:12.39 ID:/w4oqres0
矢は今つがえているのが最後の一本だ。

外すわけにはいかなかった。

全ての者の生命と願いが彼女の双肩にのしかかっていた。

それでも彼女の心は乱れない。

側には愛する者がいた。

それだけで彼女はまったく気負いせずに狙いを定めることができた。

弦が緊張する。唸り声のような音を立てる。

彼女は弓と化した陸王を完全に支配していた。



そして。
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 00:25:44.18 ID:/w4oqres0



海王は一際大きく身を仰け反らせた。

幾つかの尻尾が跳ね上がり、数十人が飛ばされた。
しかし、大きな怪我をした者はいないようだった。

ダークエルフ「……やった、のか?」

彼女は安堵し、小弓を落として砂浜に膝を着いた。


そして次の瞬間には、その身体は沿岸部の奥まで放られていた。


ダークエルフ「ーーーーっ」


海王の最期の抵抗だった。


尾は彼女の身体を掬い上げるように打った為に裂傷は生じなかった。

しかし、あまりの衝撃に彼女の意識が混濁する。

彼女の肉体から感覚が剥離していた。



そして、海面に叩きつけられた彼女の意識は八つ裂きになった。
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 00:27:39.40 ID:/w4oqres0
ーーーーーー
ーーーー
ーー



どこだ。



暗い。



……光だ。



遠いな。



死ぬのか。



良いか。



楽しかった。



とても。




さようなら。
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 00:29:46.50 ID:/w4oqres0



……手が温かい。



握られてるのか。



誰に?



ーーそうか。



いつだって彼だ。



すくってくれるのは。



……いきたいな。



一緒に。



「帰るぞ」



……うん。
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/02(木) 00:32:51.14 ID:/w4oqres0
投下終了です。
ぶっちゃけ海王戦が書きたくて勇者合宿編をやってました。
海王は八本の尻尾と八個の目を持った緑色の山椒魚みたいなイメージです。
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 00:36:45.85 ID:0FgHhSUJ0

いい戦いだった
何よりオークがイケメン過ぎるwww
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/02(木) 00:37:40.00 ID:sbn1kCgeo
おお、面白いぞ!
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 00:38:00.36 ID:G3/0sfdQo
ヴァンパイアもだろwww

男活躍なしwww
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 00:41:07.10 ID:IBn+mngDO
よかった、死者が出るかと思った
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/02(木) 00:46:35.97 ID:SKPCyoQMo
日本でいうヤマタn
いや、何でもない
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/02(木) 01:18:14.78 ID:PhgHPBzgo
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/02(木) 01:19:31.03 ID:5T+2Gqpco
八つ目レヴィアタンきゃわわ
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [suteadmohumohu584@yahoo.co.jp]:2012/08/02(木) 01:23:27.84 ID:GVKRufDJ0
>>1さん

前作の"魔王「暇だな」"からのファンです!
すごく面白かったです!!
よかったらちょっとお聞きしたいことがあるんでメールいただけないですか?

メール欄に捨てアド書いておいたので、
よかったらメールいただけるとすごく嬉しいです!
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 01:40:46.10 ID:wjGmzXrG0
>>586
作者と連絡取ろうとするとか頭おかしいの?

キモすぎ死ね



588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/02(木) 01:44:06.36 ID:XOeagFFSo
夏だなぁ
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/08/02(木) 02:09:58.73 ID:t2ppkd7k0
夏ってこわい
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/02(木) 02:16:40.36 ID:2DQFr2RIO
まあいいんじゃね?
これだけ面白けりゃファンもできるだろ

ということで>>1がんばれ
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 06:07:52.96 ID:N2iv19sIO
>>586
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 07:19:01.82 ID:+jR0YJbSO
いや流石にキモい
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/02(木) 07:43:38.62 ID:PhgHPBzgo
女か同人の馬鹿か礼儀を知らない零細出版社だろ
たぶん前二つのどっちか
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/08/02(木) 08:32:30.04 ID:yVPemQ7f0
流れ読まずにすみません。
投稿乙です。
第二章結構進んできたようですので、勝手ながら、WIKIを少し編集進めてみました。
教師さんの紹介に関しては、第二章での風呂場のやり取りからの推測です

編集やってるのが、作者さんじゃないんで、うまく編集まとめられてないと思います。
もう少しこうして欲しいとかありましたら、ご指摘くださいませ。
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 09:00:56.20 ID:uz22qUFmo

なんかすげぇのがいるw
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 10:56:17.52 ID:8Dh9VDmqo
流石にメルアドでメールくださいは夏ってレベルじゃねぇぞwwww
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 10:58:57.95 ID:KUZBrR9c0
>>593
意外と出版社のスカウトとかはあるかもな
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 11:03:25.33 ID:8Dh9VDmqo
出版社のスカウトな、まおゆうで味をしめたか、まおゆうの2代目を狙ってるか…
しかし、スカウトならスカウトでやり方があると思うんだが

IP晒すとか住所晒すとかで身分を見せるとか。
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 11:08:26.47 ID:KUZBrR9c0
>>594


>>597
そうだったら面白いんだけどなwww
書き込みの厨臭さが逆にそれっぽい
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2012/08/02(木) 11:10:14.97 ID:RFSXUpjao
>>586
死ねカス
601 :597 [sage]:2012/08/02(木) 11:10:52.08 ID:KUZBrR9c0
安価ミスった>>597じゃなかった>>598だわ
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/02(木) 11:17:32.27 ID:NgIXefO5o
驚きのキモさ
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 11:19:07.11 ID:qUSdtI5DO
>>586 叩かれすぎワロタwwww せいぜいがんばれwwwww
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/02(木) 12:47:21.83 ID:h7uhU2tso
腫れ物に触れるなよ・・・
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 13:12:36.35 ID:1fBNEbhIO
スルーしとけよ。
興味あるなら>>1が勝手に連絡するだろ

それよりも続きはよ
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 14:34:57.55 ID:bems97JIO
夏厨のフリをした馬鹿
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/02(木) 15:18:06.13 ID:5T+2Gqpco
続ききたと思ったら>>586叩かれすぎわろた
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 17:45:28.75 ID:0FgHhSUJ0
>>594
地味に設定見るのが楽しみww
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 22:43:00.11 ID:0VGhvrAIO
>>586
これからコレが流行るのか…
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/02(木) 23:06:31.97 ID:/w4oqres0
>>586
そういうのはちょっと無理です。
すいません。
質問が有りましたら此処で答えられる範囲で答えます。

>>594
いつも有り難うございます!

611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 23:10:15.76 ID:/w4oqres0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダークエルフ「ーーーーん」

ダークエルフ(……白い部屋だ)

ダークエルフ(点滴が打たれてる)

ダークエルフ(病院か?)

ダークエルフ(確か、私は海王を射ち抜いて……)

ダークエルフ(ああ。その後に飛ばされたのか)

ダークエルフ「んん……」

ダークエルフ(身体中が痛い……)

ダークエルフ(今は昼間かな)

男「……起きたのか?」

ダークエルフ(男だ。付き添ってくれていたのか)

ダークエルフ「おと、こ……」

ダークエルフ(喋るのが辛いな)

ダークエルフ(凄く眠い……)

男「待ってろ。すぐに医者呼んでくるから」
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 23:12:01.07 ID:/w4oqres0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダークエルフ「ん……」

ダークエルフ(眠ってしまったのか)

ダークエルフ(痛みはだいぶ引いている)

ダークエルフ(……薄暗い)

ダークエルフ(夕方か)

男「お、また起きたか」

ダークエルフ「……ずっといたのか?」

男「まあ、な」

ダークエルフ(……嬉しいな。凄く)
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 23:14:44.88 ID:/w4oqres0
男「退院は早くて二日後か」

ダークエルフ「そうなのか?」

男「ん、昼間の話を聞いて無かったのか」

ダークエルフ「殆ど記憶が無い。男がいたのは憶えてるが」

男「そうか。因みに、お前は二日も眠ったままだったんだぞ」

ダークエルフ「……そうなのか。随分と熟睡していたな」

男「アホ。こっちはずっと心配してたんだぞ」

ダークエルフ「ありがとう」
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 23:17:30.30 ID:/w4oqres0
男「……変わったな。知り合った頃のお前なら謝ってたぞ」

ダークエルフ「そうかもしれない」

男「……しかし、時の流れは早いよな。もう少しで夏休みだ」

ダークエルフ「そうだな」

男「夏休みが終わって少ししたら、今度は文化祭だ」

ダークエルフ「忙しくなるな」

男「ああ。だが、掛け替えのない日々になるだろうな」

ダークエルフ「うん」

男「……だから、その、なんというか」

ダークエルフ「……?」


男「今までよりもっとお前の側で、その日々を過ごしたい」


615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 23:19:52.27 ID:/w4oqres0
ダークエルフ「……それって、プロポーズ?」

男「あー、えー、まあ、うん」

ダークエルフ「け、結婚?」

男「えー、あー、その、まあ、うん。将来的には」

ダークエルフ「……嬉しい。凄く、凄く嬉しい」

男「……泣くほどかよ。合宿中にしなくて良かったな」

ダークエルフ「……そうだな。情けない顔を男以外に見せないですんだ」

男「というよりも、俺が他の奴に見せたくない」

ダークエルフ(……男のデレ期が遂に訪れたのか?)

ダークエルフ(尻尾をモフモフしても良い頃合いだろうか)
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 23:22:11.12 ID:/w4oqres0
男「それで。返事を聴かせて欲しいんだが」

ダークエルフ「あ、えと……不束者ですが、よろしくお願いします」

男「……いや、それはおかしいだろ」

ダークエルフ「そ、そうか?」

男「いや、良いけどさ。こちらこそよろしく」

ダークエルフ「は、はい」

男「…………」

ダークエルフ「…………」

男「…………」

ダークエルフ(え? 何だこれ気まずい)
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/02(木) 23:25:48.94 ID:/w4oqres0
ダークエルフ(変に意識すると話題が全く出てこない)

ダークエルフ(どうしよう)

男「あ、あー、お前も疲れてるだろうしそろそろ帰るな」

ダークエルフ「あ、うん」

男「明日も休日だし、他のクラスメイトも来ると思う。
今日も結構な人数が来たが、折悪くお前が寝てたんだ」

ダークエルフ「そうなのか」

ダークエルフ(わざわざ見舞いに来てくれる友人ができるとは)

ダークエルフ(本当に意義の有る合宿になったな)

男「それじゃあな」

ダークエルフ「うん。…………男」

男「ん、なんだ?」

ダークエルフ「好きだ」

男「…………」



男「俺もだ」
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/02(木) 23:29:07.56 ID:/w4oqres0
二章的なものが終了です。
この後はほのぼの成分が極端に減る予定なので、閑話として日常パートを少し挟むと思います。

619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 23:31:59.01 ID:zwC1WH8ho
えんだあああああああああああああああああ
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 23:33:26.04 ID:IBn+mngDO
えんだあああああああああ!!w

いや、>>1乙!
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 23:39:29.98 ID:+jR0YJbSO
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
622 :銀髪スキー [saga]:2012/08/02(木) 23:57:05.86 ID:WHs1nY0B0
ダークさんと男君maxデレだね 乙
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/03(金) 00:03:55.39 ID:w1v8MfCx0
うん、良い中ボス戦→後日談の流れだったぜ
乙乙。
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 00:25:09.36 ID:z9wKA/li0
ちくしょう男かわいいよ男wwwww

ドシリアスもほのぼのもイケメンオークもネタヴァンパイアも待ってるぜ>>1



あ、百合ンディーネ忘れた←
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 01:32:45.52 ID:U1DGDu7DO
乙!

ほのぼの成分が極端に減る・・・だと・・・?
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 01:46:21.64 ID:5tH3zIyKo

うわああああああああ
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/03(金) 03:06:41.29 ID:Bi5IFS94o
やめてくれえええええええ乙
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/03(金) 08:17:54.17 ID:NShmLSKX0
せめて、せめて鬱成分は少なめでお願いします
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 09:05:24.83 ID:doK4E0SDO
甘々成分を…
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 11:26:38.55 ID:1hMlXq88o
エンダァァ!!

>この後はほのぼの成分が極端に減る予定

イヤァTT
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 12:59:17.13 ID:PRRbnKMIO
>>630
くそこんなレスでwwww
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 14:41:10.30 ID:hOTHNqwIO

とは言えほのぼの分が減ると言う冬が来るとなると暖かくなるまで旅に出ざるを得ないな
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/08/03(金) 15:55:43.34 ID:JSAc2Y500
お疲れさまでしたww
さて・・今回は、WIKIがある程度まとまってます
ですから、話が長くなって2スレ目に入っても、あっちで誘導が可能です
安心して好きなように書いて♪
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 20:47:56.42 ID:BbdxEvCe0
えんだああああああああああああああ
乙乙!

>>586 はカスだとしてアフィブログあたりに載ったら
そのまま本になったりはしそうだな……
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県) [sage]:2012/08/05(日) 06:26:48.22 ID:8KFQArrYo
>>634
くせえ
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:02:25.54 ID:qgHDz/U50
ーーーー公立高校・日曜日・プールーーーー


ヴァンパイア「ああもう! 俺も泳ぎたいんだぜ! 見てるだけはつまらないんだぜ!」

歴史教師「その怪我では暫く無理に決まっているじゃないですか」

ヴァンパイア「うぐぐ……」

歴史教師「そもそもあれだけの怪我を負って通院ですむ事自体が異常です」

ヴァンパイア「吸血鬼は頑丈なんだぜ。だから泳いでもきっと大丈夫なんだぜ」

歴史教師「ダメです。良いから今日は見学していてください」

ヴァンパイア「ちぇ」

歴史教師「……私のせいですね。私が不甲斐ないから君に怪我を負わせてしまった」

ヴァンパイア「いやいや、そんな話はしてないんだぜ」

歴史教師「しかし、現に君がプールに入れないのは私のせいです。それどころか、最悪の場合君が死んでいた可能性さえ有りました。本当にごめんなさい」
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:07:09.96 ID:qgHDz/U50
ヴァンパイア「死んでないから気にしなくて良いんだぜ。それに、負傷したことに対しての後悔は全く無いんだぜ。むしろ誇らしいんだぜ」

歴史教師「そ、そうですか」

ヴァンパイア「おう! ラミア先生の美しい姿態をキズモノになんてできないからな! まさに国宝級なんだぜ!」

歴史教師「……はい?」

ヴァンパイア「多くの男を魅惑する艶かしい肢体。
触れただけで穢れてしまいそうな清雅な玉肌。
光を纏い、鮮やかに煌めく鱗。
見事な曲線美を……はぐぁ!?」

歴史教師「君は……!」

ヴァンパイア「くるしっ……! でも幸せ……!
そういえば幸いと辛いって似てるんだぜ……」

歴史教師「いつも私の感情を悉く裏切りますね!」

ヴァンパイア「ぐぁ……。怪我人、なんだぜ……。 かひゅ……」

歴史教師「私は期待と失望を何回繰り返せば良いのですか!」

ヴァンパイア「ーーーー」

歴史教師「あまり私を混乱させないでください!」

「先生。ヴァンパイアが完全にオチてます」
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:09:53.04 ID:qgHDz/U50
ーーーー公立高校・日曜日・地理学習室ーーーー


オーク(ダークさんは明日に退院か)

オーク(今日もヴァンパイア君とお見舞いにいこうかな)

オーク(でも二人の時間を邪魔するのも悪いかな)

オーク(……それにしても、郷土史研究部の文化祭発表どうしようかな)

オーク(先輩たちも同級生もやる気がないから僕が頑張らないとなぁ……)

オーク(HR委員だから一組の方も僕が頑張らないと)

オーク(激務だけど、やっぱり素晴らしい文化祭にしたい)

オーク(デュラハン先生は顧問で担任だし、協力してくれるかな)
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:11:38.12 ID:qgHDz/U50
オーク(発表内容は夏祭りで行われる龍神楽についてとか良いかも)

オーク(王都では身近なものだけど、その割には皆知らないだろうし)

オーク(龍が豊穣神として崇められるようになったルーツとかを調べたら面白いかな)

オーク(よし、そうしよう)

オーク(そうなると夏休み前からも調べ始めた方が良いかな)

オーク(でも、やっぱり独りじゃ人手不足だなぁ)

サキュバス「……」

オーク(サキュバスさんが数学の課題をやってる)

オーク(ミノタウロス先生、毎週のように課題を出すからなぁ)

オーク(……問題が分からないのかな?)
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:14:19.92 ID:qgHDz/U50
オーク「その問題は式変形すれば、今日習った公式で解けるよ」

サキュバス「っ!? い、いきなり話しかけないで! 豚!」

オーク「ご、ごめん」

ウンディーネ「本当だよ糞豚。同じ空気を吸ってるだけでも吐き気がするのに」

オーク「ぶ、ぶひぃ……」

サキュバス「それは言い過ぎよ」

オーク(いや、サキュバスさんも大概だよ……)

オーク(……ウンディーネさんは、ダークさんを救出する時に真っ先に男君に助力してたし、悪い娘では無いんだろうなぁ)

オーク(サキュバスさんも悪い娘じゃ無いんだろうし)

オーク(そんな二人に嫌われるようなことしたかなぁ……)
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:15:51.63 ID:qgHDz/U50
オーク(まあ、勝手な理由で簡単に嫌悪感を抱けるものだから、考えても分からないかな)

オーク(サキュバスさんやウンディーネさんにも調査を手伝って欲しいけど、無理かな)

オーク(でも一応仰いでみようかな)

オーク「夏休みになったら祭りに行かない?」

サキュバス「え……」

ウンディーネ「もはや豚バラにするしかないみたい。
サキュたんをデートに誘うなんて、万死した後に煉獄で豚の丸焼きになってからにしてよ」

オーク「ぶ、ぶひぃ。デートとかじゃないよ」

オーク(しまった。説明が足りなかった)
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:18:37.27 ID:qgHDz/U50




サキュバス「ああ、そういうこと……」

ウンディーネ「独りで調べなよ」

サキュバス「何言ってるの。私たちだって郷土史研究部員でしょう。貴女もやるのよ」

ウンディーネ「ちぇ」

オーク「協力してくれるの?」

サキュバス「ええ」

オーク「ありがとう!」

サキュバス「あ、て、手握って……」

オーク「あ、ごめん。嬉しくてつい」

サキュバス「き、汚い豚の手で触らないで……!」

オーク「ぶ、ぶひぃ……。ごめん……」

ウンディーネ「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

オーク「ぶ、ぶひぃ」

オーク(ウンディーネさんの目が据わってるよ……)
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:21:51.96 ID:qgHDz/U50
ーーーー魔王城・日曜日・執務(休憩)室ーーーー


魔王「新作の苺タルトは甘さ控え目で中々美味しいよ」

四天王「左様ですか」

魔王「うむうむ。大儀であった」

四天王「私は買って参ったに過ぎません」

魔王「……それにしても、またフルーツケーキ食べてるの??
本当にそのパンケーキが好きだよね」

四天王「大切な味ですので。この味が失われないことをケーキ屋の代替わりの度に常々心配しております」

魔王「……やっぱり味覚は大事だよね。母親の手料理の味はいつまでも忘れられないものだし」

四天王「ええ。本当に」
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:25:47.07 ID:qgHDz/U50
魔王「……それで。議会と内閣のことだけど」

四天王「……かなり不穏ですな。殆どの議員と大臣、果ては宰相までもが何者かに操作されている兆しが見受けられました」

魔王「あちゃー。やっぱり政府の中枢はほとんど掌握されちゃったかな」

四天王「ええ。おそらくは魔法士の仕業かと」

魔王「実はボクの眼の前に黒幕が……」

四天王「……冗談でも傷付きますな」

魔王「あはは、ごめんごめん。
……しかし、黒幕が個人か集団かは分からないけど、取り敢えずはエルフ族が仲間にいるみたいだね。
蛇神が同時に二人現れることは無いんでしょ?」

四天王「有史には有りません。
やはりエルフ族が関与している可能性が濃厚ですな。
他者を操る魔法など私は存じ上げませんが」

魔王「そっか。……んー、もうアレしちゃおうか」

四天王「アレ?」
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:31:58.86 ID:qgHDz/U50
魔王「国権を全部さ、一旦ボクに戻しちゃおう」

四天王「『緊急時における臨時中央集権』を行使なさる心算で?」

魔王「うん。三大機関も水面下では麻痺しちゃってるしね」

四天王「前回の行使は世界大戦時ですので、およそ五百年振りですな」

魔王「それだけの緊急事態ってことだよ。さっさと犯人を見つけて処理しないと」

四天王「長期間の中央集権に耐え得る政治運営能力など今の私たちには有りませんし、短期間で始末をつける必要が有りますな」

魔王「実質、政治運営の凍結だからね。猶予は発動から一日ぐらいかな」

四天王「いつから行使なされますか?」

魔王「んー、政府内で明らかに不穏な動きが出たら迅速にかな。それか、裏の伝手を使って調査をしてるから、それで有力な情報を入手できた時」

四天王「しかし、その間に王殿へ魔手が及ぶ可能性も有ります」

魔王「あー、そうだね。じゃあその時の策も講じておくよ」

四天王「それがよろしいでしょう。息災であればそれが最良ですが」
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 07:36:26.97 ID:qgHDz/U50
魔王「まあね。さて、もう一個食べようかな」

四天王「もうすぐ夕餉の時刻ですが」

魔王「ケーキは別腹だから大丈夫だよ」

四天王「太りますぞ」

魔王「あ、言っちゃう? それ言っちゃう?」

四天王「王殿はたいして運動も行っておりませんし」

魔王「し、してるから。今日だって城内の掃除をしたし……」

四天王「これ以上だらしない身体になられると王としての示しが付かなくなられます」

魔王「だらしなく無いもん! 魅力的だもん!?
そっちが鍛錬で肉を削ぎ落とし過ぎてるだけだよ!」

四天王「脂肪など邪魔にしかなりません」

魔王「だからって腹筋が六分割されてるのはちょっと引くよ。
それに見事な絶壁だし。もはや国宝級だよ」

四天王「女らしさより強さを優先しておりますから」

魔王「その結果、千年間も彼氏無しと。美人なのに勿体無い」

四天王「そのままお返しいたします」
647 :一旦投下終了です。 [saga]:2012/08/05(日) 07:40:08.26 ID:qgHDz/U50
魔王「うっせ。闘るか?」

四天王「勝てるとお考えで?」

魔王「獣纏を使うからね。九尾になるからね」

四天王「ならば私も相応の拳を以って承りましょう」

魔王「…………はあ。アホらしい」

四天王「…………左様ですな」

魔王「暇だなぁ」

四天王「すっかり口癖になられておられますな」
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 08:29:07.36 ID:BNMYKDOjo

いいね、オーク頑張れ
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 08:35:43.10 ID:RcjSjLsSO
ラミア先生かわいい
ツンデレサキュバスたんかわいい
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/05(日) 08:51:05.66 ID:ZyiRA6wd0
追いついたわ
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/05(日) 09:34:08.72 ID:2uuD4KB6o
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 10:23:57.75 ID:rGYSxGQIO
良い口癖だ。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/05(日) 10:40:30.55 ID:FhLOVD4io
どう鬱展開になるのか考えちゃって胃が痛い
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 10:59:45.49 ID:WRqdvNcIO
シックスパックとか最高過ぎるにも程があるだろ
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 11:18:27.39 ID:XqOQ7RbIO
オークくんに鈍感主人公の才能が…?
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 14:58:53.00 ID:qgHDz/U50
ーーーー病院・日曜日・個室ーーーー


ダークエルフ「大変なことに気付いてしまった」

ダークエルフ「男と付き合うことになった」

ダークエルフ「結婚を前提に」

ダークエルフ「つまり、婚約者に……」

ダークエルフ「はにゃ……」

ダークエルフ「どど、どうしよう」

ダークエルフ「男の両親に挨拶しなければいけないか?」

ダークエルフ「嫌われないようにしなければ……!」

ダークエルフ「……もしも男の両親が純種主義だとしたら、簡単には認めて貰えないだろうな」

ダークエルフ「むぅ」
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 15:00:42.82 ID:qgHDz/U50
ダークエルフ「私の両親は……まあ、良いか」

ダークエルフ「どうせ私のことなど気にも留めていないしな」

ダークエルフ「見舞いにも一度も来ないし」

ダークエルフ「入院費は仕送りで何とかなるから構わないが」

ダークエルフ「そもそも私が入院していることを知っているだろうか?」

ダークエルフ「聞いてはいるか。先生が話したはずだ」

ダークエルフ「……この話題は気分が低迷するから止めよう」



看護師「ダークエルフさん、採血の時間です」

ダークエルフ「あ、はい」
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 15:03:28.30 ID:qgHDz/U50
ダークエルフ(しかし、両腕を固定されると中々に不便だ。
明日には左腕の固定は解かれるが)

ダークエルフ(左腕は軽く痛めただけだからまだしも、右腕は筋が断裂してしまったからな)

ダークエルフ(暫くは片腕を固定しての生活か)

看護師「ちょっとチクッとしますよ」

ダークエルフ(もう採血も慣れたな。肌に違和を感じはするが)

ダークエルフ(しかし、淫魔の看護師か)

ダークエルフ(なんというか、別の意味でナース服が似合ってるな)

ダークエルフ(男性受けしそうだ)
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 15:06:13.32 ID:qgHDz/U50



ダークエルフ(バーコードで管理されるのは商品扱いされているようで不快だな)

ダークエルフ(患者の情報を管理するのが容易になるから用いるのだろうが)

男「元気にしてるか?」

ダークエルフ「あ、男。一日に何回も来なくて良いのに」

ダークエルフ(男の時間を奪っているようで申し訳なってしまう)

男「気になるからな。迷惑か?」

ダークエルフ「それは絶対に無い。ありがとう」

男「ん、なら良かった。ところで、訊きたいことが有るんだが」

ダークエルフ「何だ? 婚姻届の提出日か? 挙式の期日か?」

男「えー、あー、うん、まあ、それはそのうち、かな?
訊きたいのは、海王のことだ。どうしてあんな必死になっていたんだ?」

ダークエルフ「ああ……」
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 15:09:18.04 ID:qgHDz/U50
ダークエルフ(何処から説明すれば良いだろうか)

ダークエルフ「結論から言うと、最終日の件は私の双子の妹がしでかしたんだ。それ以外には考えられない」

男「お前、双子だったのかよ。初耳だ」

ダークエルフ「……あまり話したいことでは無いから。
あまりアイツのことは好きじゃない。むしろ憎いと思っている」

男「……何でだ?」

ダークエルフ「アイツはいつだって私の渇望するものを当たり前のように手にしているからだ。私から奪ってな」

男「……」

ダークエルフ「……父母とも、見舞いに来たりしないだろう?
両人ともエルフなんだが」

男「……ああ」
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 15:12:32.65 ID:qgHDz/U50
ダークエルフ「二人は私のことなんてどうでも良いんだ。
妹が二人の全てだから。…………父はいつだか言った」

ダークエルフ「お前をエルフとは認めない、と」

男「……っ」

ダークエルフ「恥を晒したくないと、王都立では無く公立に通うように言われ、顔も見たく無かったのか、家を追い出された」

男「……無理して喋らなくて良い」

ダークエルフ「肌が、黒いから。魔法が、使えない、から。
私は、出来損ないだと、言われて、きた……。ずっと……」

男「もう良いから。泣いてまで話す必要なんて無い」

ダークエルフ「もう、辛くて、苦しくて、哀しくて、狂いそうだったから、手首を、切った……」

男「……」
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 15:13:54.95 ID:qgHDz/U50
ダークエルフ「ああ。……でも、今は、苦しく無い。
学校生活は楽しいし、素敵な友人ができたから」

男「うん」

ダークエルフ「何より、男が……側に……いる、から……」

男「……いつまでだって、近くにいるから。お前の涙だって拭ってやるから」」

ダークエルフ「もし、男まで、盗られたら、私は……」

男「有り得ないから大丈夫だ」

ダークエルフ「でも……」

男「……ああ、もう!」

ダークエルフ(あ……抱き締められて……)
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/05(日) 15:17:52.26 ID:qgHDz/U50
ダークエルフ(男の身体は温かいな……)

ダークエルフ(心まで溶けてしまいそうだ)

ダークエルフ「あ……。その、私は身体を拭いただけで入浴してないから、離れた方が……」

男「別に臭わない。むしろ良い匂いがする」

ダークエルフ「でで、でも……」

男「良いからもう少しこうさせてくれ」

ダークエルフ「は、はい」

ダークエルフ(……私は、凄く幸せだ)

ダークエルフ(この温もりだけは誰にも渡さない)


ダークエルフ(あ……顔が近付いて……)

ダークエルフ(わ、私も……)

ヴァンパイア「ちーす! 見舞いに来たんだ…………ぜ」

オーク「元気にして…………る」

サキュバス「…………邪魔しちゃったみたいね」

ウンディーネ「お熱いねー」

男「…………」

ダークエルフ「…………」

『タイミング悪っ!』
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/05(日) 15:22:26.06 ID:qgHDz/U50
投下終了です。
三章は書き終えてから投下することにします。
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/05(日) 15:59:55.06 ID:FoopyG2fo
乙でした
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 16:08:48.07 ID:5W0qkSxgo
いやあ、まだほのぼのしてるじゃん、よかったー。

やがて来る鬱展開に備えて、ほのぼの分補充しとかないとな
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 16:12:20.65 ID:RcjSjLsSO
鬱展開はスパイス程度には良い
鬱エンドは勘弁だが
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/05(日) 16:20:46.91 ID:qgHDz/U50
このSSで鬱を書く予定なんて無いです。
次回に向けて溜めてるので。
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/05(日) 17:21:43.02 ID:w6KsvR6Xo
>>668
安心した
やっぱハッピーエンドだよな
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/05(日) 20:11:43.32 ID:nvJJLjoDO
>>668

鬱じゃないのはありがたいが、そういうことは言わなくていい。
鬱耐性ゼロの読者様が五月蝿くても無視しな
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/05(日) 20:40:14.39 ID:bokuebZWo
前作みたいに唐突にこられると結構キツいから個人的にはありがたいけどな
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/05(日) 23:51:11.95 ID:LZbu3HXI0
NTRフラグっぽくて怖いぜぇ……
と思ったが>>668か。ハッピーエンド至上主義万歳!
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/08/06(月) 01:57:16.89 ID:fPlo0xQr0
乙です。
>>636-663は閑話休題その1でWIKI追加。内容は極力出さないようにしてますが
例によってご意見あればよろしくです。
社会人には夏休みは無いけど、今年は暑いです。
作者さんも、読者さんも、節電も良いけど、熱中症でぶっ倒れないようにね
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 02:04:17.76 ID:4AIMQbSp0
豊穣神に蛇神
そして淫魔看護師は正義


ふぅ…
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 11:35:42.69 ID:mNAbM6tKo
次回作は鬱なのかww
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/06(月) 22:35:16.44 ID:WvK+9JJZ0
>>673
いつも有難うございます。
熱中症で亡くなっている方も多いようなので気を付けたいところですね。
人間なんて簡単に死んでしまいますし。


投下はまだ先になりそうです。
あと、予定というのは崩れやすいものですね。
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/07(火) 23:04:47.21 ID:FhBjX1Kzo
ドンマイ待ってる
678 :構想は出来上がったから投下。 [saga]:2012/08/09(木) 22:35:25.15 ID:k7QnKjUw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

陽が差し込まない薄暗い場所だった。

長年使われていない場所だったが埃臭くは無い。
魔法によって埃は清掃されているらしい。

紙風船が宙に浮かんでいた。

瞬間的に宙に留まった後、玩具は重力に従う。

やがて白い掌に降り落ちた。

渇いた音と共に、鮮やかで歪な球が再び打ち上がる。

それが数度繰り返された後、紙風船は白い少女の掌で静止した。

エルフ「学校にはちゃんと行かなきゃダメだよ。キツネちゃん」

女狐「……貴女にだけは絶対に言われたくないわ」

エルフの眼前にいる獣と化している妖狐が答えた。

五本の尾が静かに揺らめいている。
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/09(木) 22:38:31.35 ID:k7QnKjUw0
エルフ「どうして此処が分かったの?」

幼馴染「以前、貴女の服に糸屑が付着していたわ。
だいぶ昔に、人間が来ていた衣服と同じ素材の服を着るのが少しだけ流行ったでしょ。本当にすぐ廃れてしまったけれど」

少女は感嘆の声をあげて手を三回叩いた。

エルフ「それで、この遺棄された紡績工場に辿り着いたと。凄い推理力だね」

幼馴染「此処に辿り着くまでに同じような場所を十数軒回ったのだけれど」

エルフ「十時間も経たない内にそれだけ回るなんて凄い機動力だね。やっぱりキツネちゃんは凄いよ」

幼馴染「心にも無いことを言わないで。すぐに喋られなくしてあげる」

エルフ「……戦うつもりなの? 私たちは“友だち”なのに」

寂しそうな声音を出し、大袈裟に肩を落とした。

女狐「貴女が勝手にそう思ってるだけでしょう」

獣は冷ややかに言う。
それから鈍く光る牙を剥いた。
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/09(木) 22:40:49.84 ID:k7QnKjUw0
女狐「そもそもアタシの高祖母を昏睡状態にしておいてよく言うわ」

エルフ「あれ? バレちゃってた?」

彼女は戯けた声音で言う。

女狐「当たり前でしょ。ニュースになっていた海王の出現も、どうせ貴女の仕業なんでしょう?」

その言葉に、エルフは端正な顔をしかめた。

レヴィアタンの一件は彼女の予定外の事態だったからだ。

女狐「男に危害を加える虫はアタシが殺す……!」

彼女は脚を踏み出そうとして、己の身体が一切動かないことに気付く。

女狐「……!?」

口を開こうとするが、それも出来なくなっていた。

肉体が思考から乖離していた。
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/09(木) 22:44:33.11 ID:k7QnKjUw0
エルフ「物騒だなぁ。怖いから『束縛の呪』を使っちゃったよ」

彼女は柔和に微笑みながら言った。

紙風船を潰す。
これから妖狐が辿る姿を表しているようだった。

妖狐へと歩み寄る。
柔和な微笑みは既に酷薄な笑みへと変貌していた。

金色の獣の頭部を撫でる。
愛玩動物を可愛がる少女の手つきだった。

エルフ「こんな風に愛でられるのは嫌い?」

幼馴染「大嫌いよ!」

妖狐は纏っていた金色の膜を破り、彼女に飛びかかる。

エルフ「おっと」

しかし彼女は、涼しい顔で上体を横に動かして躱した。
それから魔法で、伸ばされた妖狐の右手を腐食させる。
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/09(木) 22:46:41.84 ID:k7QnKjUw0
幼馴染「ーーーーっ!?」

エルフ「同じ手をキツネさんにやられたんだよね。
凄く痛かった。治したけどね」

彼女は笑顔で言った。
それから、肘まで黒く変色した腕を見て愕然としている妖狐の右肩に手を置く。

黒ずんだ右腕が肩から落ちた。
出血はしていない。
断面は皮膚が捩じられて、雑巾を絞ったような状態になっていた。

エルフ「これで全身が腐ることはないよ。良かったね」

やはり笑顔で言った。

幼馴染「バケモノ……!」

激痛に顔をしかめながら、彼女はエルフを睨みつける。

エルフ「そうかな。あ、左腕に力を込めてた方が良いよ」
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/09(木) 22:49:49.84 ID:k7QnKjUw0
言い終わりもしないうちに、妖狐の右の大腿が、上向きの垂直に折れ曲がり、左の脛から下が炭化した。

大腿骨は肉と皮膚を突き破っていた。
黒々とした鮮血が溢れる。

焦げた左足からは饐えた臭いが広がっていく。
足首から下は身体から離れて床に転がっていた。

幼馴染「がっ……!?」

絶叫が建物中に響く。

支えを失った身体は前のめりに崩れ、彼女は全身を強かに打ちつけた。

その際の衝撃で、一瞬胸が詰まり叫びが中断するが、すぐさま叫喚が再び壁に反響した。

左脛の断面は高熱で肉が癒着し、大量の流血を防いでいた。

エルフ「防音の魔法を建物中にかけておいたから好きなだけ叫んで大丈夫だよ」

可愛らしい笑みを浮かべながら少女は言う。

それから、魔法で再び妖狐の身体を拘束した。
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/09(木) 22:52:24.56 ID:k7QnKjUw0
エルフ「『斬手の呪』」

己の指を刃物に変えて、エルフは彼女の筋の通った鼻をゆっくりと削ぎ落とした。

痛みを増加させる為に、あえて斬れ味を鈍らせていた。

エルフ「はい。好きなだけ叫んで」

少女は彼女の動きを封じる魔法を解いた。

妖狐は喉が張り裂けんばかりに声を上げた。
涙と鼻水で顔中が汚れていた。

ぼんやりと。
少女はその様を観察している。

エルフ「……キツネさんはもっと耐えたよ。
キツネちゃんと同じような状態にして、更に歯を全部折って、陰部と子宮をぐちゃぐちゃにしたんだから。あと耳と尻尾を千切ったっけ」

幼馴染「いやぁ……。おとこぉ……」

彼女は幼児のように泣いてかぶりを振って、懸想する者の名を口にした。

エルフ「あ、知らなかったのかな?
男君、アレとくっついちゃったよ。残念だったね」
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/09(木) 22:55:48.05 ID:k7QnKjUw0
彼女は目を見開く。
身体を蝕んでいる痛みさえ忘れたようだった。

エルフ「完全に心が折れちゃったかな。可愛い顔だね。鼻は無いけど」

エルフは彼女を慰撫する。

エルフ「可愛いなぁ。私がオスだったら何度も犯してたと思うよ。
キツネさんもだけど」

幼馴染「…………」

エルフ「そろそろ遊びもお終いで良いかな」

彼女は魔法を唱える。

エルフ「『征心の呪』」

翠色の瞳と伏せられた彼女の瞳が互いに見つめ合う。
それだけで心を支配できる魔法だ。

エルフはうつ伏せに倒れている妖狐に右手を差し伸ばす。

エルフ「“友だち”から“兵士”になっちゃったけど、よろしくね。キツネちゃん」

幼馴染「……ぉ」
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/09(木) 22:57:59.49 ID:k7QnKjUw0
エルフの身体が後方に吹き飛んだ。
壁に叩き付けられ、彼女の形の良い口から呻き声が漏れる。

彼女の尾に弾き飛ばされたのだ。

幼馴染「男。男。男。男。男。男。男。男。男。男。男」?

彼女は左腕だけで這いずる。
眼には狂気が宿っていた。

痛みに顔をしかめる少女は小さく舌打ちした。

エルフ「なんでキツネ共には『征心の呪』の効き目が弱いのかなぁ」

少女は苛立たしげに言い、妖狐の正面に転移して魔法を放った。

エルフ「『昏倒の呪』」

幼馴染「ーーーー」

妖狐は臥し、まったく動かなくなった。
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/09(木) 23:00:23.77 ID:k7QnKjUw0
エルフ「……良いや。『治癒の呪』」

妖狐の身体が急速に復元していく。
失われた手足と鼻までもが生えた。

エルフ「まあ、暫くおやすみなさい」

妖狐の身体が消える。
転移先の座標は彼女の自宅の玄関前にした。



再び独りになった彼女は、大きく溜息を吐いた。

エルフ「……男君か。アレが海王を倒せたのも、キツネちゃんに『征心の呪』が効かなかったのも、彼のせいか」

少女は紙風船を再び膨らませた。
軽く打ち上げる。
何度も。

紙風船は彼女の掌に弄ばれていた。
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/09(木) 23:02:26.34 ID:k7QnKjUw0



エルフ「……最後に試してみようかな」



689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/09(木) 23:05:45.97 ID:k7QnKjUw0
投下終了です。
言ってることがが二転三転してすいません。
変な位置に出てくる『?』は文字化けです。
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/09(木) 23:24:15.38 ID:LcZsFNDo0
乙です
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/09(木) 23:24:49.79 ID:AZuovmoDo
おおぅ…結構重い展開…
本当にエルフが男じゃなくてよかったわ…
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/09(木) 23:36:47.64 ID:8K8eYgsjo

幼馴染もエルフの血が何割かあるはずなんだけどなあ
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/08/09(木) 23:51:20.33 ID:NBsJosJFo
あれ、魔王まけたの?
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/08/10(金) 02:40:52.29 ID:6EXFPLWv0
ごめん。読み返してもわかんなかったから教えて(´;ω;`)
キツネって誰??
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/10(金) 02:49:48.03 ID:xtMp8+D4o
黙って待ってろ
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/10(金) 21:33:51.82 ID:uqIhVBECo
ここの作者は惨殺がけっこう好きなんだね
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/10(金) 21:51:08.30 ID:AJr44FtRo
でも微妙にミサワっぽいんだよね
エルフ「」を
ミサワ「」にしてもしっくり来るwwww
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/11(土) 11:49:06.72 ID:9WfdUzgV0
ダークミサワとか
















笑っちまったじゃねぇか
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/11(土) 13:57:50.08 ID:3uesdh9SO
魔王負けたのか
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:19:34.98 ID:LGBDF+Yw0
最後まで書き終わりました。
一気に投下します。
誤字脱字、設定の矛盾が有っても気にしないでください。
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:23:04.98 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

城内の或る部屋には二人しか居なかった。

彼女は横たわり眠っている女性の額に手を載せている。

暫く静寂が流れた。

やがて、彼女の舌打ちがそれを破る。

四天王「……やはり私の実力では解呪できないか」

額から手を離し、苛立ちながら呟く。
自身の力量への憤りだった。

彼女よりも圧倒的に上の実力を持った魔法の使い手によって、女性は眠らされていた。
昨日の深夜のことだ。
もう半日前になる。

いつ頃に目覚めるのかも見当が付かない。
ただ相当な長期間であることは間違い無かった。

四天王「王殿、私が必ずお助けいたします」

安らかに眠っている女性にそう告げ、彼女は退室した。
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:28:31.63 ID:LGBDF+Yw0
執務室の自分のデスクに腰掛け、彼女は眉間に手を当てる。

様々な後悔が浮かび上がるが、それらを心の底に押し込み、固く封をした。
やらなければいけないことは数多く有る。

彼女はデスクの上にある紙に眼を落とす。

証書だった。

それは魔王が有する全権限を彼女に委任することを証明していた。

現在、彼女は魔王の代理人だった。

そして、その権限にて政府の中枢機能を事実上停止させた。

不当な立法や行政、司法を防止する為だ。

しかし、この状態が長引けば世界中が混乱することになる。

一刻でも早急に、この事態を解決しなければならなかった。
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:33:20.01 ID:LGBDF+Yw0
四天王「くそっ……。今は待つことしかできないか」

忌々しそうに彼女は呟き、眼を強く閉じる。

反政府活動を行う『何か』についての調査は、私財で雇った巨大犯罪組織である『商会』を用いて進めていた。
魔王は『商会』と懇意にしていたが、清廉潔白な性質の彼女は彼等を快く思っていなかった。

しかし、今は少しでも多くの助力が必要な状況だった。

また、深い繋がりを持たない存在は、内部の誰が洗脳されているかも判別し難い現在では重要だった。

地道な調査は彼等に任せ、彼女は城内で集まった情報を統合して繋辞することにした。

その為、動き出したいのを堪えて椅子に座っている。



唐突に彼女は眼を開ける。

不審な物音を耳にしたからだ。
床を打ち付ける音だった。

勢い良く立ち上がり、急いで部屋を後にする。

音が聞こえたのは食堂の方面だった。
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:36:03.76 ID:LGBDF+Yw0



使用人である花人族の女性が倒れていた。

四天王「どうした!?」

彼女は花人に駆け寄ろうと、足を踏み出したところで身体の動きを止めた。

花人の身体が不自然に跳ね起きた。
糸で操られている人形のようだった。

ドライアド『どうも、初めまして。蛇神さん』

彼女は普段とは違う口調で喋る。

その眼は澱んでいた。

彼女はその眼に見憶えが有った。
春に魔王を襲撃した者と同じ瞳だった。

彼女は踏み出したままの足を戻し、不自然に留まっていた身体の体勢を整えた。
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:38:31.47 ID:LGBDF+Yw0
四天王「……貴様が今次の一件の首謀者か?」

彼女は花人の奥に潜んでいるであろう何者かに尋ねる。

ドライアド『首謀者? ……ああ、うん。そうだね』

四天王「ふん。すぐに貴様を陰から引き摺り出し、陽光で灼いてやる」

彼女の威勢に、花人ーー性格にはその裏に居る者ーーは肩を竦めた。

ドライアド『凄い剣幕だね。私はただ“お遊び”を提案しに来ただけなのに』

四天王「……何だと?」

ドライアド『“隠れんぼ”だよ。今から真夜中までに私を見つけてね』

何者かは愉快そうに言う。

ドライアド『鬼人族長が“鬼”というのは皮肉っぽいね。
実際は蛇であるところが尚更』
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:41:06.52 ID:LGBDF+Yw0
四天王「言われるまでも無い。
私はお前をすぐに見つけ出して断罪してやる」

ドライアド『そっか。因みに真夜中までに発見できなかった場合はベヒモスとジズで王都を壊滅させるから』

四天王「なーーーー」

彼女は眼を見開いて絶句する。
その様子を見て、相手は満足そうにうなずいた。

ドライアド『可愛い顔だね。驚いた顔って無防備で好きだな。
脆弱で強固な心の壁が消えた時だから』

四天王「……絶対にそんなことはさせない」

彼女は相手を強く睨み付けて言う。

ドライアド『……そういう眼は嫌いだな。何かの為に必死な眼は。
そもそも貴女が嫌いだけどね。
ナーガだか知らないけど、エルフじゃないのに魔法を使えるし。
品行方正で、謹厳実直で、忠君愛国をそのまま形にしたような性格で。
生物はそんなに綺麗ぶっちゃダメだと思うけど』

その言葉を彼女は鼻で笑う。

四天王「それは貴様が薄汚い低俗な心根の持ち主だからだろう。
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:44:04.00 ID:LGBDF+Yw0
ドライアド『……そうかな。あ、それより最近魔法について新しいことが分かったんだ』

花人の奥に潜む者は一際明るい声を出す。

ドライアド『魔力の道筋を逆に辿ってみたんだけど』

四天王「……そのようなことができる程の天賦の才をどうして悪用するのだ」

ドライアド『話を逸らさないでよ。
それで、辿り着いた先は何処だと思う?』

彼女は暫く黙考して、やがて答える。

四天王「大地か」

ドライアド『正解だよ。凄いね。流石は蛇神だ』

褒めそやし、手を三回叩いた。

しかし、彼女は仏頂面だった。

蛇神。
蛇人族の特異体。
エルフ族を除いて現在唯一魔法を使える存在。
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:51:57.55 ID:LGBDF+Yw0
ドライアド『力の源は大地の奥の奥に有るみたい。
そして私たちは自身を回路として、その力を魔法に変換して出力するみたい』

それを聞いた彼女は、僅かばかり納得したようにうなずくが、すぐに顔の険しさを増した。

四天王「だから何だというのだ。世界に選ばれた存在とでも言うのか? そうだとしたら、随分と傲慢だな」

何者かはつまらなそうな顔で舌を鳴らす。

ドライアド『そんなこと言ってないでしょ。全てが下らないとは思ってるけど。
……まあ、良いや。頑張って見つけてね』

糸が切れた操り人形のように、花人の身体が倒れた。

四天王「大丈夫か?」

彼女は駆け寄り、花人の華奢な体を揺する。

ドライアド「ん……」

彼女は眼を覚ました。
暫く惚けていたが、やがて上体を起こす。

ドライアド「ナーガ様……?」

彼女は無言でうなずく。

ドライアド「あら。私ったらいつの間にか眠ってしまったのですね」

自分の頬に手を当て、花人は言った。

四天王「いや違う」

ドライアド「よほど疲れているのでしょうか」

彼女は否定したが、花人の耳には届かなかったらしい。

四天王「違うと言っているだろう」

ドライアド「ということで暫しの間、またお休み致します」

四天王「おい、待て」

制止の声を聞かず、花人は彼女に身を任せて再び目を瞑った。

四天王「……花畑なのは毛髪だけにしてくれ」

彼女は呆れながら言った。
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:54:26.53 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

総菜屋「いらっしゃい。……おう、エルフの嬢ちゃんかい。久しぶりだな」

声を掛けられ、彼女は犬人に頭を下げた。

ダークエルフ「どうも」

総菜屋「何だ? 右腕を骨折でもしたのか?」

ダークエルフ「まあ、そんなところだ。お陰で料理ができない」

店主はあからさまに気の毒そうな顔をする。

総菜屋「そりゃ、災難だったな」

ダークエルフ「労わりとして、弁当を無料に……」

総菜屋「そりゃ無理だ」

ダークエルフ「むぅ」

即答に、彼女は肩を竦めた。
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:56:02.31 ID:LGBDF+Yw0
総菜屋「嬢ちゃん、変わったな」

店主は、彼女をしげしげと見て言う。

彼女は小首を傾げた。

ダークエルフ「そうだろうか?」

総菜屋「ああ。明るい顔になった。前よりずっと良い顔だ」

彼女は四月の初めを振り返る。
それから納得したようにうなずいた。

ダークエルフ「そうかもしれないな」

総菜屋「あれか。彼氏でもできたか」

ダークエルフ「ふふん、婚約者だ」

コボルトは驚嘆の声を上げた。
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 01:57:48.98 ID:LGBDF+Yw0
総菜屋「そりゃスゲぇな。そんなにめでたい事が有ったなら弁当を無料にするのも吝かじゃないぜ」

ダークエルフ「本当か」

総菜屋「どうせ今日はもう閉店だしな」

ダークエルフ「何か用事か?」

総菜屋「副業の方をやってくるんだ。この店は赤字経営だしな」

ダークエルフ「……むぅ。やはりちゃんと代金を支払おう」

彼女はバツが悪そうな顔で財布を取り出そうとする。

しかし、店主はそれを止めた。

総菜屋「良いってことよ。持ってけ泥棒!」
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:01:13.02 ID:LGBDF+Yw0
正午を過ぎてから半刻ほど経っていた。

彼女は帰路に着いていた。

早朝に退院したばかりで身体は本調子ではない。
養生の為に今日だけ学校を欠席した。

右腕はギプスで固定され、包帯を巻かれている。
暫くは市販の弁当が主食になりそうだ。

平日だけあって辺りは閑静だった。
彼女の軽快なメロディーの鼻唄がよく響いた。



やがてアパートに辿り着く。

ポケットに仕舞っていたキーを鍵穴に差し込み、施錠を外した。
ドアを押し開く。

現在の日常の一端だった。

エルフ「やっほう」

部屋の中では過去の日常、現在の非日常がくつろいでいた。
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga.]:2012/08/13(月) 02:05:49.39 ID:LGBDF+Yw0
白い少女は、赤い紐を両手の指に巻き付けている。

手を動かす度に紐が作り出す透明な図が移ろいでいく。

交互に重なり、その交差が形を生み出していく。

ダークエルフ「……何の用だ?」

エルフ「怖い眼だなぁ。そんな邪険に扱わなくても良いじゃない」

エルフは赤い紐に落としたまま言う。

ダークエルフ「お前みたいなバケモノを嫌うなという方が難しいだろう」

エルフ「黒い肌のお姉ちゃんにバケモノ扱いされたくないな」

彼女が吐き捨てるように告げた言葉に、エルフは美しい面を上げて微笑む。

彼女はこの芝居じみた少女の笑みが堪らなく不快だった。
媚び諂うようでいて、内実他人を見下しているような笑みが。

同時に、いつからこのような笑みを浮かべるようになったのか疑問に思い、考えた。
しかし答えは出なかった。
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:08:37.26 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「たまには姉妹で語り合おうよ。私たちは双子なんだよ?」

ダークエルフ「……殺そうとしたくせによく言えるな。
海王を仕向けたのはお前なのだろう?」

エルフ「そう。それなんだよね」

ダークエルフは不可解な顔をする。
妹が何を言おうとしているのか理解しあぐねたからだ。

エルフ「海王に止めを射したのはお姉ちゃんなんだってね。ビックリしちゃった」

ダークエルフ「……」

エルフ「やっぱり男君がお姉ちゃんを変えたんでしょ。恋人にまでなっちゃって」

ダークエルフ「……だから何だというのだ?」

彼女は要領を得ない彼女の言葉に苛立ちを覚え、声を低くして尋ねる。
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:10:56.00 ID:LGBDF+Yw0



エルフ「男君、寝取っちゃった」


716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:12:56.45 ID:LGBDF+Yw0
彼女は息を呑んだ。
左手に持っていた弁当が落ちて耳障りな音を立てる。

エルフ「あはは、驚いた顔はお姉ちゃんが一番可愛いね」

ダークエルフ「……」

彼女の耳は笑い声を上手く感受することができず、彼女の眼は口許を歪める少女の輪郭を明瞭に捉えることができなかった。

エルフ「男君、中々逞しい身体をしてたよ」

ダークエルフ「……」

エルフ「気持ち良かったなぁ」

ダークエルフは無言でエルフに掴みかかる。

しかし、妹を掴む前に彼女の両腕が弾け飛んだ。

部屋中に血飛沫が飛散して、家具や床を汚す。

叫び声が喉から溢れ出そうになったが、自制とは別の抑止力がそれを堰き止めた。

身体の自由も奪われていた。

白い少女は、いつだって彼女から全てを奪っていく。
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:19:59.86 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「そのままで話を聴いてね。
私と“隠れんぼ”をしよう。鬼はお姉ちゃん。真夜中までに私を見つけてね。見つけられない場合は男君を消すから」

妹は回復の魔法で彼女の両腕を修復する。
右腕の元々の怪我も治療されていた。

エルフ「因みに男君には手を出して無いから安心してね」

エルフは赤い紐で、別の模様を作り出す。
空虚は紐という境界によって形を為す。
しかし、形はやはり空虚のままだった。


ふと。


エルフ「……世界にはたくさんの生き物がいるね。
……でも独りぼっちだ。どんな時も独りぼっちなんだよ」

少女は寂しそうな声音を出した。
心の隙間に吹く虚無の風が、少女の心の脆い箇所を揺さぶったのかもしれない。

エルフ「ーーーーだから、“証明”して。
愛は存在することを。全ては下らなく無いことを。孤独で無いことを。
私はそれを知りたい。決して私は“遠くない”と思わせて」

誠実な声音で、そして真摯な瞳で彼女に語りかける。

エルフ「その為なら世界だって壊すよ」

少女は姿を消す。

身体の自由を奪っていた魔法が解かれる。


こうして“隠れんぼ”が始まった。
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:22:06.56 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

城内に鬼人の集団が押し掛けていた。

最も気温の高くなる時間帯だった。

四天王「……何の用だ?」

訪れた鬼人は全員が警察隊に所属している者たちだった。
見事に統率されており、等間隔に並び、皆一様に胸を張っている。

鬼人副族長「族長よ。先ずは謝罪致します」

集団を代表して、鬼人の副族長が一足前に出る。
その厳めしい顔が翳っていた。

彼はその巨大な上半身を垂直に折り曲げた。
他の者たちも間髪入れず同時に続いた。

鬼人副族長「申し訳有りません」

四天王「……一体何だ。ただでさえ様々な事柄が一遍に迫ってきて困惑しているのだ。簡潔に言ってくれ」
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:25:26.10 ID:LGBDF+Yw0
鬼人副族長「我々は長に助力することが出来ません」

彼女は少し眼を大きくした。

四天王「……何故だ」

鬼人副族長「我々一同には奇妙な少女と対面した記憶が有るのです。そして、その前後の記憶が酷く曖昧模糊となっております」

四天王「なに?」

鬼人副族長「魔法による害を被った可能性が有ります。
おそらくは日頃から長に鍛えられていた為に魔法への耐性が他より高まり、記憶が若干残っているのではないかと」

彼女は腕を組んで俯く。整った顔は険しい。

警察機関も上層部が支配されており、上手く作用していなかった。
陸王と空王が王都を襲撃する可能性が有る以上、せめて気の置けない鬼人の力は不可欠だった。

鬼人副族長「共に戦えぬことはこの上なく悔やまれますが、敵の駒になることだけは絶対に避けねばなりません。
ですので、我々は昏睡状態にして貰うべく訪れたのです」
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:28:31.10 ID:LGBDF+Yw0
四天王「……よく進言してくれた。誇り高い戦士が、傷も負わぬ内に戦線から退くことが、どれだけの恥辱かは痛い程に分かる」

しかし、彼女は面を上げて、鬼人たちを讃えた。

四天王「ところで、どのような少女だったのか憶えている者はいるか?」

彼女の質疑に、副族長は苦い顔をしながら応答した。

鬼人副族長「白いエルフの少女だったことは覚えているのですが、それ以上は全員……。申し訳有りません」

四天王「そうか……」

彼女は物憂げにうなずいた。
それから強い決意を湛えた瞳を鬼人たちに向ける。

四天王「お前たちの決意、無駄にはしない。安心して私に任せろ」

鬼人副族長「……長よ!?申し訳有りません……!」

大男は号泣する。
つられて他の鬼人たちも列を崩さないまま、咽び泣いた。

四天王「泣くな! 鬼人としての誇りを持て!」

彼女は年甲斐もなく泣き叫ぶ鬼人たちを叱咤する。

鬼人副族長「しかし……!」

四天王「お前たちの想いは受け取った。私が必ず全てを護る」

鬼人副族長「長よ! どうかご無事で!」

四天王「ああ」

彼女は強くうなずく。

「肌に傷を残したりしてはいけませんぞ!」

四天王「ああ。…………は?」
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:31:15.26 ID:LGBDF+Yw0
「嫁入り前の長が消えない傷を負ったりしたら、先達に会わす顔が無い!」

「長の美貌は鬼人族の至宝だ! 失うわけにはいかないのだ!」

四天王「ちょっと待てお前たち」

「ちくしょう……! ナーガ様の盾になれねぇなんて……!」

「ナーガ様の役に立てねぇ俺なんて屑以下だ……!」

四天王「いや、おい」

「怪我をしたら『治癒の呪』を使うのですぞ!」

「掠り傷一つ残してはいけませぬ!」

四天王「おい」

「そもそもオレは長が前線に出ることに反対なんだ! 宝をわざわざ危険に晒す必要などない!」

「その宝を護れない状況に追い込まれた。まだまだ鍛錬が足りん。長の婿まではずっと遠い……」

四天王「…………」

彼女は無言で拳を握り、構えた。

鬼たちの慟哭はまだ続いている。

四天王「魔法拳『昏倒の呪』!」

やがて、鬼の数だけ打ち込まれた拳が静寂をもたらした。
722 :キンクリし過ぎ感も否めない。 [saga]:2012/08/13(月) 02:40:17.87 ID:LGBDF+Yw0



非合法の組織『商会』の理事長が城を訪れたのは、それから数分経ってのことだった。

コボルト「酷いなこりゃ」

床で昏睡している鬼人たちを見て犬人は呟いた。

四天王「頼んでいた資料は?」

デスクに座っている彼女は、訪問した『商会』のまとめ役に訊ねる。

日陰者。
しかし今は同じものを護る為に協力している。

コボルト「ほらよ。全エルフ族の個人情報をリストアップした」

彼は分厚い紙の束をデスクの上に置いた。

四天王「ご苦労。報酬は後日に渡す」

彼は首を振った。

四天王「私の私財だ。遠慮することは無い」

コボルト「魔王様にはたくさんの恩があんだよ。この程度のはたらきじゃ返せないような恩がな。だから今回は無料だ」

四天王「しかし……」

犬人は肩を竦めた。

コボルト「アンタは律儀者だ。その真面目な気質じゃ、俺たちのことを快く思ってないだろうよ」

彼女は黙する。
それを見て犬人は笑った。

コボルト「否定しないところがまた良いな。アンタみたいな潔癖な奴が世界の上層部にいる内は安泰だよ」

言って、犬人は立ち上がる。

コボルト「仕事はこれで終わりかい?」

四天王「取り敢えずはな。また頼むかもしれない」

コボルト「あいよ。それも無料にしておくさ」

彼女は怪訝そうに犬人を見る。
あまりにも献身的だからだ。

コボルト「なに。魔王様への恩返しも有るが、アンタにも恩を売っておきたいのさ」

なにより、と彼は続ける。

コボルト「もうじき祭りだ。副業も本業も稼ぎ時なんだよ。中止させる訳にはいかないね」

四天王「……そうか。ならば甘えさせて貰おう」

威勢の良い返事をして、『商会』の理事長は部屋を後にした。

723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:42:32.55 ID:LGBDF+Yw0



彼女はリストに目を通していく。
一人につき十数枚にも及ぶ為、その枚数は何千も有った。

限られた時間では全てに眼を通すことができない為、彼女は仕分けをすることにした。

最初に男性と女性の二つ分けた。

それから女性を若年層と老年層に分ける。
相対年齢のちょうど中間辺りが区別の境界だった。

女性の若年層に犯人が潜んでいる可能性が高いと彼女は推理した。

鬼人の記憶、それから先ほどの対話時の言動と仕草の端々が女性的かつ幼かったことが判断材料だ。

尤も、演技の可能性も捨てきれない為に確信は無いが、優先的に目を通す理由としては充分だった。



百人程度の情報に目を通したところで若年女性の範囲が終了した。

一旦、背もたれに上体を預けてくつろぎ、閉じた両目を指で軽く押した。

それから再び背筋を伸ばし、資料の一つに手を伸ばした。
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:44:27.14 ID:LGBDF+Yw0
或る少女の情報だった。

父は国家魔法士でエルフ族。
薬剤師の母もやはりエルフ族。
黒エルフの姉がいる。

珍しい家族構成だが、問題はそこでは無い。

書かれている略歴。
優秀で有りながら平凡。

ーーーーあまりに平凡過ぎた。

父母と姉の資料にも目を通す。

それから参考として他のエルフ族の親子も。

問題の家族の資料は整合性が取れていて、資料を見ることで家族の様子が想像できるような代物だった。

しかし、他の家族は整合性があまり取れていない。
個人に焦点を当てているのだから当然だ。

四天王「……出し抜こうとして失敗したか」

おそらくは調査に気付いていて、資料を改変したのだろう。
その結果、あまりに不自然な物が生まれてしまった。

この家族の誰かが、若しくは全員が犯人の可能性が極めて高かった。

彼女は立ち上がる。

やるべきことは決まった。



陽は傾き始めていた。
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 02:51:19.78 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダークエルフは頬を伝った汗を指で拭った。

時刻は夕方だ。

数時間を使って、王都立大学校や王都中の様々な公共施設、取り壊し予定の建物などを捜索したが、妹を見つけることができなかった。

後半は幼少の記憶を頼りに思い出の地を辿ったが、それも徒労に終わった。

その道中で、実妹及び両親と使用人との記憶が数多く喚起した。
あまり好ましい記憶では無かった。

しかし目的地に着くまでに、もう一度思い起こすことにした。
愛する者の為ならば、どんな苦行も厭わない所存だからだ。

独り遊びをする妹。

オモチャは同じ物を買ってもらった。

最初は黒エルフだからという理由で嫌われることは無かった。

双子の姉妹は同量の愛を享受し、相応の親睦とケンカを経て成長した。
726 :ねむねむ [saga]:2012/08/13(月) 02:57:07.53 ID:LGBDF+Yw0
それが変わり始めたのは、中等学校に上がった頃のことだと彼女は記憶している。

いつまで経っても、彼女はまったく魔法が使えなかった。

彼女とは裏腹に、妹は一般のエルフと比べて並外れた才能を持っていた。

国家に奉ずる魔法士である父は、事あるごとに妹を贔屓するようになっていた。

ダークエルフ「……自分の境遇を想起してどうする。アイツを主点に置かなければ」

彼女は両手で頬を軽く叩き、思考をリセットしようとする。

妹について思索すると、やはり負の記憶が優先的に思い浮かんだ。

彼女にとって、妹は憎悪の対象だった。
魔法が使えないのは、産まれる前に妹が彼女の分の才能も奪ったからだと決めつけていた。

実際にそうだとしても、それは妹が関与するところでは無いことを彼女は知っているが、憎しみを抱かずにはいられなかった。

初等学校の時分までは仲の良い双子だった。

妹はどちらかというと内向的な性格であったと、彼女は思う。

独り遊びする彼女の姿が浮かんだ。
それと二人一緒に遊んだ光景も。
727 :無理です。寝ます。また明日。 [saga]:2012/08/13(月) 03:01:24.78 ID:LGBDF+Yw0
変貌を初めたのは、やはり中等学校に上がった頃だ。

彼女の魔法の実力は、エルフ族の中でも魔法の技量が高い者しか就けない国家魔法士の父をとうに超えていた。

しかし、妹はその才を他者の前で披露することは殆ど無かった。

唯一彼女を除いて。

全てを見下すような態度を取り始めたのもこの時期からだった。

彼女は、ふと疑問に思った。



アイツは本当に私を嫌っているのか?



彼女の歩みが止まった。
しばらく考える。
答えは出なかったが、再び足を前に向けた。

目的地はもうすぐだった。

何故、私に“証明”させようとするのか?

彼女は思考する。
答えを模索する。

嫌っているだけならば、殺せば良かった。
現に海王は彼女を殺す為の刺客だったのだろう。

しかし、今は彼女を試すような事をしている。

おそらく“隠れんぼ”自体に意味は無いと彼女は考えた。
何かしらの篩を兼ねた余興に過ぎないだろうと。

真の目的は、“証明”させること。
ダークエルフが“証明”することは、エルフにとって重要な意味が有ることなのだろう。

それが何なのかは幾ら考えても分からなかった。
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/08/13(月) 03:03:19.74 ID:fSHZK0lXo

明日も頑張ってくれ
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 03:09:34.88 ID:UsJ5Zftdo
乙乙
夜遅くまでご苦労様
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 03:56:55.99 ID:xxItXANDO
>>1

終わりまでって言うから今夜じゅうに終わってしまうかと思ったw
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/13(月) 04:33:58.57 ID:uRh74aCco
乙乙
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [saga sage]:2012/08/13(月) 09:38:34.56 ID:5NlOL5tY0
乙ですー。
エルフちゃんみたいな愉快犯的な悪党なんざ創作の世界では掃いて捨てるほどいるけど、どいつもこいつも大抵並外れた才能があって苦労や努力をしてないんだよな。

ヒマを持て余した人間が歪んでロクでも無い思考をするようになるのは何時の時代、何処の世界でも同じだと思う。
「汗水垂らして世のため人のために働きゃ下らないこと考えてるヒマなんて無くなる」とはとあるスパロボキャラのセリフだけど、言い得て妙だわな。
そのキャラ、借金持ちでそれを返すために汗水垂らして働いてるわけだがw
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/13(月) 09:40:56.79 ID:LmjwXl4+o
ナーガ様
それ、魔法じゃないw
734 :投下します。 [saga]:2012/08/13(月) 11:01:17.11 ID:LGBDF+Yw0



彼女は生家の玄関前に立っていた。

空唾を呑み込む。

三ヶ月振りの実家の玄関は、彼女に疎外感を与えていた。
自身の帰る場所は此処では無いと告げているような気がした。

しかしそれは彼女の錯覚で、扉は変わらずに扉のはずだった。

普段ならば、この時間帯に居るのは使用人である小鬼の女性だけのはずだ。

両親は仕事で忙しく、家事などは全て使用人に任せている。

小鬼は彼女と妹に分け隔て無く接した。
彼女には魔法など関係の無いことだったからだ。

逡巡の後、彼女はドアノブを回した。
鍵は掛かっていない。

扉を押して中を窺う。
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 11:03:03.52 ID:LGBDF+Yw0
ゴブリンが彼女の眼前に立っていた。

ダークエルフ「ひゃっ……。驚かせないでくれ」

彼女の小さな悲鳴にも、その後の親しげな声音で告げた言葉にも使用人は反応を示さなかった。

その眼は虚ろだった。

ダークエルフ「……どうしたんだ?」

使用人は彼女の声を意に介さず、居間へと姿を消した。

彼女は不穏を気取りつつも、後に続いて居間に行く。

父と母がソファーに座っていた。

ダークエルフ「……なんで」

おもむろに二人は立ち上がる。
不自然に首を曲げて、彼女に濁った瞳を向けた。
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 11:05:54.48 ID:LGBDF+Yw0
父「お帰り。ずっと待っていた」

抑揚の無い口調で彼は言った。

母「顔が見れて嬉しいわ」

生気の無い口調で彼女は言った。

ダークエルフ「……」

彼女は困惑していた顔を引き締める。

この異常な光景が、妹の仕業であると感付いたからだ。

ダークエルフ「……エルフは居るのか?」

彼女は訊くが、誰も答えなかった。

父「すまなかった。お前を追い出したことをずっと後悔していた。母さんも反対していたのに」

彼は仏頂面で涙を流す。

母「ごめんね。私は母親なのに、最後まで味方になれなくて」

彼女は無表情で涙を流す。
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 11:08:28.93 ID:LGBDF+Yw0
ダークエルフ「……ふざけろ」

彼女の顔は怒気を帯びる。

ダークエルフ「本当に何を考えているんだアイツは!」

使用人『あはは、何だと思う?』

右側の壁に立っていた小鬼が、いつもと異なった声を発した。

ダークエルフ「……エルフか。この魔法は何だ」

彼女の問いに、エルフの言葉を代弁する小鬼の口が素直に開いた。

使用人『自作した心を操る魔法だよ。“蠱惑の呪”を昇華したものなんだ』

彼女は怒気を強める。
険しい瞳で小鬼の奥にいる妹を睨んだ。
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 11:10:55.21 ID:LGBDF+Yw0
ダークエルフ「父さんと母さんにこんなことをして何が目的だ」

小鬼は嘯くように首を傾げただけだった。

その為、彼女は自身の推測を前提にして話を進める。

ダークエルフ「私を動揺させたかったのかもしれないが、お前の考えた茶番では何も感じない。
父も母も私にこんな事を言うはずが無いからな」

使用人『そうかな。私は身体の自由を殆ど奪ったのと、感情を表出しやすくしたこと以外は何もしてないけど』

彼女は耳を疑う。

ダークエルフ「……二人共、本音なのか?」

使用人『そうなるね』

ダークエルフは顔を曇らせる。
複雑な心境だった。

彼女が負った心の傷は深く、容易に赦すことなどできなかった。

しかし同時に、心の底から滲み出て、胸を切なく圧迫する感情が有ることも確かだった。
739 :800いかなそう [saga]:2012/08/13(月) 11:14:39.47 ID:LGBDF+Yw0
ダークエルフ「……本当に目的はなんだ?」

か細い声で発せられた問いに、小鬼は肩を竦めて微笑んだ。

使用人『これは、嫌がらせだよ』

ダークエルフ「嫌がらせ……」

彼女は言葉を繰り返す。

使用人『お涙頂戴の和解を潰してあげたんだ。だって下らな過ぎて吐気がするじゃない』

妹は小鬼の声で嘲る。

ダークエルフ「……お前は、どうしてそんなに変わってしまったんだ」

長い間が空いて、答えが返ったきた。

使用人『大体は魔法のせいかな』

言い終えると同時に小鬼は床に倒れ込み、動かなくなった。
気絶したらしい。
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 11:16:17.41 ID:LGBDF+Yw0
彼女の父と母が不自然に立ち上がる。

眼窩からは涙が溢れ出していた。
瞳は相変わらず濁っている。

その手には刃物。
二本のカッター。

エルフの考えた余興らしい。

ダークエルフ「……っ!」

彼女は背を向けて玄関へと逃げようとする。
もう長居する必要が無かった。

しかし、その足が立ち止まる。

父と母が互いに、カッターで切り合いを始めたからだ。

鮮血が白い壁に飛び散る。

ダークエルフ「な……」
741 :タイム! [saga]:2012/08/13(月) 11:18:47.72 ID:LGBDF+Yw0
彼女が立ち止まると二人は切り合いを止めて、再び彼女に虚ろな目を向ける。

どうやら彼女が逃げようとすると、標的をお互いに変えるらしい。

ダークエルフ「下種が……!」

恐怖と怒りで凄まじい形相になりながら、彼女は二人を見据えたまま一歩だけ後退りする。

二人は切り合わなかった。
しかし、奇妙な足取りで確実に近づいて来る。

彼女は一気に数歩後ろに下がった。

二人は一度互いを切り合い、また歩み寄る。

ダークエルフ「っ……」

できる限りゆっくりと、そしてなるべく速く彼女は後退する。
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 11:54:58.02 ID:LGBDF+Yw0
玄関先まで来た時、距離は腕二本程度だった。

彼女は大量の汗をかいている。
顎に溜まった数滴の雫が落ちた。

荒い呼吸をしながら、扉に貼り付き、ドアノブを手探りで見つけだそうと躍起になる。

熟知している扉にも関わらず、焦燥のあまり中々ノブを掴めなかった。

血塗れの両親はそれぞれ右手を振り上げる。
顔は未だ涙で濡れていた。

彼女はやっとドアノブを探り当て、施錠を外す。

途端に身体が支えを失った。

唐突にドアが開いたのだ。

彼女は後ろに倒れ込む。

両親は駆け寄りカッターを振り落とそうとする。
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 11:57:16.45 ID:LGBDF+Yw0
しかし、彼女の身体は地に倒れ込むことは無く、カッターが何かを突き刺すことも無かった。

四天王「……状況がよく分からないな」

美しく凛々しい女が左腕で彼女の身体を支え、右手の指で二本のカッターを受け止めていた。

ダークエルフ「拳神様……」

茫然とするダークエルフに彼女は言う。

四天王「ナーガで良い。状況を簡潔に説明してくれ」

ダークエルフ「あ、えと、二人は両親で、私の妹に操られています」

四天王「なるほど。充分だ」

彼女はダークエルフを立たせ、拳を握った。

四天王「魔法拳『昏倒の呪』」

それから二人の額を軽く小突いた。

ナーガは意識を失った二人を抱きとめる。

四天王「……これで完全に正体を掴んだな。待っていろ」

彼女は此処にいない少女に向かって呟いた。
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:00:01.63 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

男「う……」

彼は覚醒した。

こめかみに手を当てる。
頭の中で、熱を帯びた鈍い痛みが蠢いていた。

薄暗い場所だった。
上方の小窓から射す外光が、現在が夕闇で有ることを示していた。

コンクリートの床が敷かれた広い部屋の隅には衣服の原料が廃棄されている。

彼は上体を起こした。

エルフ「起きたんだね」

少女が後ろから彼に抱きつく。
仄かな甘い匂いがした。

男「っ!?」

彼は反射的にエルフを振り払おうとして、自身の身体が自身の意思から離反していることに気付く。
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:02:21.03 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「女の子を殴ったりしちゃダメだよ。
雄なんて雌に捕食されるくらいがちょうど良いしね」

抱きついたままの少女が言う。

エルフ「今から身体の自由を戻すけど、乱暴なことをしないでね」

彼は指先に意識を向ける。
人差し指が彼の意思通りに軽く跳ねた。

男「……ダークの妹か」

彼は確認するように言った。
意識を失う寸前に彼女と自己紹介をし合っていた。

男「これはどういうことだ?」

エルフ「誘拐、かな」

不穏な言葉に、彼は眉間に皺を寄せた。

男「……取り敢えず離れてくれ」

エルフ「えー。結構心地良いからこのままじゃダメ?」

甘えた声で少女はせがむ。
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:04:03.53 ID:LGBDF+Yw0
男「他の男にやってくれ。俺にはダークがいるんだよ」

エルフは素直に離れた。

彼は振り向こうとして、

男「ーーーーっ!?」

側頭部を硬い床に激しく打ち付けられた。

視界が黒くなり、強い衝撃で肺中の酸素が強制的に押し出される。
エルフはもう一度彼の頭を床に叩きつけた。

およそ少女の細腕からは考えられない力だった。
魔法によって肉体を強化しているらしい。

それを何度か繰り返す内に、彼の全身から力が抜けた。

エルフ「おっと。『治癒の呪』」

少女の唱えた魔法で、彼のひしゃげた頭蓋や脳内の組織が修復される。

エルフ「今は殺さないからね」
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:18:18.36 ID:LGBDF+Yw0
頭部の損傷が回復した後も、彼は惚けたままだった。

少女は彼の耳裏の匂いを嗅ぐ。

エルフ「お日様で干して直ぐのシーツみたいな匂いがするね」

エルフは更に鼻を近づけた。

エルフ「好きだよ。この匂い」

言って、白い少女は彼の尖った黄褐色の耳に口付けをした。

男「っ……」

そこでようやく彼は正気に戻る。

少女は啄むようなキスを数度繰り返した後、尖った耳の先端を咥えた。

男「っ……。やめてくれ……」
?
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:20:17.49 ID:LGBDF+Yw0
また瀕死まで暴力を振るわれるのを恐れたのか、彼は顔をしかめながらも弱々しい声でせがむ。

少女は懇願を黙殺して、小さな舌で丹念に耳をねぶる。

少女が口を離すと、透明な糸が引いた。

エルフ「気持ち良さそうな顔をしてるね。耳が感じるの?」

男「そんなわけないだろ……」

彼は否定するが、エルフは微笑みを浮かべる。

エルフ「……ねぇ、私が恋人じゃダメなの??
外見はお姉ちゃんにそっくりだよ。
肌は白いしお姉ちゃんより華奢だけど、いっぱい尽くしてあげるよ」

少女の提案に、彼は顔を険しくした。
恐怖が幾分消えていた。

男「俺はダークの外見だけが好きなんじゃない。
あいつの弱さも強さも、クールなところも少しアホで変態ところも、笑顔も泣き顔も好きなんだよ。お前じゃダメだ」
749 :文字化けワロスwwww [saga]:2012/08/13(月) 12:25:41.48 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「……同じことをキツネちゃんに言えるの?
あんなに男君のことを慕っていたのに」

男「……アイツを知ってるのか。
危害を加えたりしてないだろうな」

彼の強い眼光を放つ瞳を見て、少女は肩を竦めた。

エルフ「なに? キツネちゃんの事も好きなの?」

男「恋愛感情なんかじゃない。家族みたいに大切な奴なんだよ」

少女は気の無い返事をする。

エルフ「それってキツネちゃんを悲しませる言葉だろうね」

男「……そうかも、な」

彼は歯切れ悪く同意した。
それからかぶりを振った。

男「そうだとしてもお前には関係無いだろ」
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:27:35.44 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「そうかな。まあ、キツネちゃんが目覚めたら伝えてあげるべきだね。あ、でもしばらくは精神がボロボロだろうから止めた方が良いかも」

男「……何だと」

彼の吊り目が更に吊りあがる。
瞳を彩っていた恐怖の色が失せ、確固とした怒りが灯っている。

しかし、エルフは怯みもせず柔和に微笑んだ。

エルフ「キツネちゃんは私との遊びで疲れて眠り姫になってるよ。
王子様のキスで目覚めるのを待ってるけど、その王子様が役割を放棄してるからなぁ」

男「ふざけるな!」

彼は激昂する。
獣になろうとして、再び肉体の自由が奪われていることを知覚した。

エルフ「……それにしても、双子って不思議だよね。
同じ細胞が分裂したのに別人なんだから。しかも白と黒」
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:29:38.23 ID:LGBDF+Yw0
エルフは彼の顎に手を当てた。
そしてその翠の瞳で彼の瞳を見つめる。

エルフ「アレの“証明”は私の“証明”になる。私は“遠くない”ことのね」

白い少女は一度言葉を区切る。
それから彼を拘束していた魔法を解く。

エルフ「待ってる間、遊んでよっか。『征心の呪』」

彼の瞳が濁る。
虚ろな眼は、光を失ったかのように何も捉えていなかった。

エルフ「人形遊びをしよっか。背景も変えよう」

エルフは灰色の壁を薄いクリーム色に変える。
更に照明として明るい光球を天井に生み出した。
それから床に濃いブラウンのカーペットを敷く。

一変した広い室内で、二人は並んでカーペットに腰を下ろす。
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:34:14.59 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「キツネくん、キツネくん」

エルフは彼の呼称を変えた。

男『何かな?』

彼の口が魔法の効力によって開かれた。

エルフ「周りの全てが遠いのはどうして?」

男『全てが下らないからだよ。君自身もきっと』

それは自慰行為だった。

自身の望む言葉を他人の口で聴くこと。

自己存在の再認識。
精神の均衡維持。

彼女の精神は脆かった。
魔法によって傷は跡形も残らなかったが、自傷行為に及んだことも有るくらいに。
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:35:23.58 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「キツネくん、キツネくん」

白い少女は呼びかける。
親しみを込めて。

男『何かな?』

傀儡は返事する。
笑顔と虚ろな瞳を以って。

エルフ「私は魔法の才能なんて要らなかったな」

男『どうして?』

エルフ「そうすればアレと……お姉ちゃんと同じだったから。
お姉ちゃんにとって、世界は楽しいんだろうね」

男『彼女だって苦しんでると思うよ』

エルフ「そうだね。でも、きっとお姉ちゃんの眼に映る世界は、私のものよりもずっと近いんだろうな」

男『そうだね』
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:36:48.97 ID:LGBDF+Yw0
少女は宙に視線を彷徨わせながら、過去を振り返る。

姉が輝いて見えた日々。

同時に生を受けた。

それにも関わらず、彼女はやはり姉で、自分はやはり妹だった。

姉は異色の肌をしていたが、それでも明るく笑っていた。

少女は昔から独り遊びをしていた。

姉が一緒に遊んでくれる事が凄く嬉しかった。

楽しかった。

そんな日が続けば良いと思っていた。
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:38:13.44 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「キツネくん、キツネくん」

白い少女は呼びかける。
感傷を込めて。

男『何だい?』

傀儡は返事する。
変わらぬ表情を以って。

エルフ「どうして、どうしてこうなっちゃったのかな。
私は無力でも誰かの手を繋いでいたかった。孤独は嫌だよ」

白い少女は震えていた。

声も体も。

心も。

傀儡は少女の肩を抱き寄せた。
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:44:50.25 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「あったかいね」

しかし、少女の顔は晴れない。

エルフ「でも、やっぱり遠いよ。どんなオモチャも下らない。
どれだけ酷い事しても、どれだけ大それた事しても、享受する愛も、温もりも、痛みさえも、凄く遠いんだ。
全部遠過ぎて、自分の位置さえ分からなくなって……」

少女は涙を零す。
震えが増す。

それを魔法で無理やり落ち着けた。

エルフ「キツネくん、キツネくん」

少女は呼びかける。
期待を込めて。

男『何だい?』

傀儡は返事する。
形だけの労りを以って。

エルフ「お姉ちゃんなら“証明”してくれるよね。
全てのモノが下らなくなんかないことを。私にも愛が有ることを」

男『きっとね』

エルフ「……私にとって、魔法と自分の生命は同じなんだ」

男『どういう意味か分からないな』

エルフ「魔法のせいで全てが狂ったのに、魔法に依存してるんだ。
生命が終わることに恐怖を感じながら、生命が終わること自体が希望なんだ」

男『そうなんだ』
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:46:02.94 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「どうして生きてるんだろうね。生命なんて要らなかったな」

傀儡は答えなかった。

エルフ「キツネくん、キツネくん」

彼女は呼びかける。
虚無を込めて。

男『何だい?』

傀儡は返事する。
縛られた糸を以って。

エルフ「どうして生きてるんだろうね」

傀儡は答えなかった。

エルフ「キツネくん、キツネくん」

少女の中に答えが無かった。

それでも呼びかけた。
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:47:32.94 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

二人は目的地に向かう道中、互いの経緯を話し合った。

辺りの闇が濃さを増していた。

小走りにも近い速度で二人は道を往く。

ダークエルフ「しかし良いのですか?」

ダークエルフは心配した面持ちで彼女に訊ねる。

四天王「何がだ?」

ダークエルフ「王城の使用人も操られているなら、魔王様を別の場所にお移しした方が危険が低いのでは?」

四天王「ああ。既に別の場所で保護して貰っている」

彼女は答え、逆に訊ねた。
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:49:35.58 ID:LGBDF+Yw0
四天王「ところで、お前はどの程度の魔法の実力を有している?
お前の妹は稀代の実力者なのだから、お前も相当なのだろう?
戦力は把握しておきたい」

ダークエルフ「……零です」

四天王「ん?」

ダークエルフ「全く使えません……」

彼女は眼を逸らして答えた。

四天王「……そうか。それは珍しいな。……その、すまない」

彼女は神妙な顔で謝罪の言葉を口にした。

ダークエルフ「いえ、別に」

暫く沈黙が続いた。
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:51:51.44 ID:LGBDF+Yw0
やがてナーガが口を開いた。

四天王「……今回の一件はエルフの戯れに過ぎないとお前は言ったな」

ダークエルフ「はい。おそらくは」

先刻、情報を交換した時にダークエルフは彼女にそう告げた。

四天王「どうしてそのように考える?」

ダークエルフ「調査資料が改竄されていることで、エルフが犯人であることを突き止めたと仰りましたよね」

彼女は肯く。

四天王「それがどうしたのだ?」

ダークエルフ「アイツはそのような悪手を打つ奴では有りません。
おそらくは私たちを誘導しているのだと思います」

ナーガの顔が曇る。

四天王「ミスリードということか?」

ダークエルフは首を振った。

ダークエルフ「そういう訳では無いと思います。
おそらくはヒントかと。アイツは妙なところでフェアな奴ですから」
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:55:04.80 ID:LGBDF+Yw0
彼女は暫く押し黙り、やがて言う。

四天王「片割れの言葉だ。信憑性は有るな」

彼女の言葉に、ダークエルフは苦い顔で呟いた。

ダークエルフ「……私にはアイツの思考が分かりませんが」



目的地に着いた。

ダークエルフ「……此処が男の幼馴染の家か」

四天王「立ち止まってる暇は無い。何か手掛かりが有ると良いが」

彼女の許に連絡が入っていた。
魔王の玄孫が深い眠りに落ちたらしい。

魔王の血族であり、拐われた者の幼馴染であり、捜している少女と同級生であった彼女が昏睡状態になったのだ。

何かしらの手掛かりが有るだろうと彼女は判断した。
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:56:52.46 ID:LGBDF+Yw0
彼女の母親に恭しく挨拶して、二人は彼女の部屋に入る。

母親は、彼女や魔王に似て端麗な容姿をしていた。
しかし今、その顔は不安でやつれていた。

幼馴染「……」

彼女は安らかな寝息を立てて眠っている。
傍目からは疲れて眠っているだけに見えた。

四天王「望みは薄いが……」

彼女は呟き、横たわっている少女の額に手を触れる。

魔法を解呪しようと試みているらしい。

四天王「……やはり無理か」

暫くして彼女は額から手を離した。

四天王「しょうがない。気は乗らないが、お部屋を物色してみるか」

ダークエルフ「……すまない。男の為なんだ」
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 12:58:35.59 ID:LGBDF+Yw0




ダークエルフ(漁れば漁るほど男にまつわる物が出てくるな)

ダークエルフ(あ、男の小っちゃい頃の写真だ)

ダークエルフ(……可愛過ぎる)

ダークエルフ(照れたようにカメラを睨むところがまた素晴らしいな)

ダークエルフ(頼んだら複製してくれないだろうか)

ダークエルフ(……無理か)

四天王「ちゃんと探しているのか?」

ダークエルフ「あ、す、すいません」

ダークエルフ(しまった。もう四時間も無いのだった)

ダークエルフ(写真の男より、現実の男の方が大事だ)
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:00:14.84 ID:LGBDF+Yw0
ダークエルフ(……あ、この写真の幼い男は満面の笑みだ)

ダークエルフ(かか、かわい、可愛い……!)

ダークエルフ(抱き締めてモフモフしたい!)

四天王「……時間が無いのだが」

ダークエルフ「あ、すす、すいません!」

ダークエルフ(わ、私は悪くない)

ダークエルフ(幼年期の男が可愛い過ぎるからダメなんだ)

ダークエルフ(……しかし、幼馴染というのは羨ましい立ち位置だな)

ダークエルフ(小さい頃の写真を合法的に入手できるのだから)
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:05:02.16 ID:LGBDF+Yw0
四天王「出てくるのは同じ少年の写真ばかりだな。こんなメモも見つけたが……」

『男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き』

ダークエルフ(こわっ)

ダークエルフ(どうして赤ペンで書き殴っているのだ……)

四天王「……暗号か?」

ダークエルフ(違うと思う)

ダークエルフ(……しかし、これだけ写真が有るのだ)

ダークエルフ(一枚くらい盗ってもバレないのでは……?)

ダークエルフ(い、いやダメだ! バレたら今度こそ殺される!)

ダークエルフ(我慢するか)
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:08:02.85 ID:LGBDF+Yw0
四天王「くそっ、手掛かり無しか……」

ダークエルフ(……冗談抜きに大変な状況だ)

ダークエルフ(ベヒモスとジズが王都に侵攻したら、どれだけの犠牲者が出るだろうか)

ダークエルフ(何より男が……! うう……)

ダークエルフ(ーーーーん?)

ダークエルフ(彼女のミュージックプレイヤーだ)

ダークエルフ(改造されている。これで以前に男を盗聴していたのか?)

ダークエルフ(……まだ残ってたりしないかな)

ダークエルフ(当たり前だが、妖狐族用のイヤホンしか無いな。
しかし、スピーカーも付いてるようだ)

ダークエルフ(スイッチは何処なのだろう?)
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:38:35.15 ID:LGBDF+Yw0



ダークエルフ(……しまった。何か物音が流れ始めた)

四天王「ん?」

ダークエルフ(間違えてスイッチを押してしまったのか?
ど、どうやったら止まるのだろう?)

『万が一の為にバケモノの所在を掴む為の手掛かりを残しておくわ』

ダークエルフ「え……」

『バケモノの服に付着した糸屑から、次に上げていく場所の何処かに彼女は居るはず』

四天王「……よくやった。ダークエルフ」

ダークエルフ「あ、あはは。それ程でも」
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:40:15.80 ID:LGBDF+Yw0
ダークエルフ(しかし、音声を残すとは周到だな)

ダークエルフ(妖狐族の秀才らしいし、流石と言ったところか)

『……以上よ』

四天王「直ぐに調査させなければ」

ダークエルフ(これで一気に近付いたな)

ダークエルフ(男。待っていてくれ)

『もしもこれを聴いた者がいるのなら、アタシは無事では無く、誰かがアタシの部屋に居るはずね』

ダークエルフ(その通りだな)

『もしも、部屋の物を持ち去ったりしたら殺すから。死んでいても呪い殺すから』

ダークエルフ「……本気の口調だ」

四天王「そうだな」
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:42:27.15 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

彼は暗闇の中、足音を忍ばせて廊下を歩いていた。
学び舎の長い廊下だ。

やがて保健室の前で立ち止まる。
音を完全に殺しながら盗んだ鍵で施錠を外し、戸を引いた。

本来は闇に生きる種族である彼にとって、この程度は造作ないことだった。

室内は暗かったが、彼は躊躇わずに足を踏み出す。
躊躇わない理由は二つあった。

一つは夜目が利くこと。

もう一つはーーーー

彼はカーテンに囲まれたベッドに辿り着いた。

やはり音を立てずにカーテンを開ける。

暗闇の中でも分かるほど、美しい女性が簡素なベッドで眠っていた。
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:45:06.95 ID:LGBDF+Yw0
全魔族の頂に立つ者だった。

彼は手に握りしめていたモノを彼女に向けた。

しかし、それ以上彼女に近付くことができなかった。

歴史教師「そこまでです」

物陰に潜んでいたラミアが、自身の尾を彼の身体に固く巻き付けたからだ。

扉が開き、照明のスイッチを入れる小気味の好い音が響く。

生物教師「がはは、魔王様を襲撃するとは骨の有る奴だな」

鬼人が笑う。
眠っている王の手前、声量をだいぶ落としていた。
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:47:55.62 ID:LGBDF+Yw0
ヴァンパイア『ちぇ、失敗しちゃったか。暇だからキツネさんに悪戯してやろうと思ったのに』

吸血鬼が言う。
全身をきつく絞めつけられながらも平然とした面持ちだ。
その眼は澱んでいる。

手に握られていたモノが落ちて、軽い音を立てた。

油性ペンだった。

歴史教師「どうして君が……」

茫然とした顔で彼女は言葉を発した。

生物教師「同族の奴が言っていたが、操る魔法を使える存在が王都内で暴れているらしい。
ヴァンパイアもそれを被っちまったんだろ」

ヴァンパイア『そういうこと。今は体を拝借してるだけだよ。合宿の時に因子を埋め込んだんだ』

歴史教師「……もしかして、覗きをしたのも」
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:50:04.95 ID:LGBDF+Yw0
ヴァンパイア『あはは、操られて、だよ』

歴史教師「そんな……」

ヴァンパイア『でも、私は彼が欲求を遵守して行動するようにしただけだから』

生物教師「そりゃまあ、この時期の男子が惹かれてる女の裸を見たいのは当たり前だわな」

歴史教師「と、とにかくヴァンパイア君の身体を返してください」

彼女は吸血鬼を睨みつけながら言った。

吸血鬼は意地の悪い顔になる。
口許を吊り上げることで発達した犬歯が露わになった。

ヴァンパイア『そんな風に言われると返す気が失せるなぁ』

歴史教師「返してください!」
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:53:59.95 ID:LGBDF+Yw0
生物教師「絞め落とせ。おそらく気絶してる間は大丈夫だろ。勘だが」

吸血鬼は感嘆の声を漏らす。

ヴァンパイア『警察隊の人たちもだけど、鬼人族の勘は冴えてるね』

生物教師「生まれながらの戦士だからな」

中々気絶しない彼を見てらラミアは絞める力を強めた。

ヴァンパイア『悪戯は失敗したけど良いや。本命のお遊びはこれから重要な局面を迎えるしね』

やがて、吸血鬼の全身が弛緩する。

ラミアは尾に込めていた力を緩め、代わりに両腕で彼の身体を支えた。

歴史教師「ヴァンパイア君……」

生物教師「幸せそうな顔で気絶してんな」
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:56:22.41 ID:LGBDF+Yw0
数学教師「さっきから騒いで、どうした?」

牛面の大男が暢気な声をあげて入室する。

地理教師「魔王様の警護なんて職務に有りませんよ。はい。
あまりの緊張でお腹が緩いです。はい」

デュラハンが腕に頭を抱えながらミノタウロスに続いた。

化学教師「校長先生もこんな重大な事を安請け合いしないで欲しいですよね」

語学教師「まあ、魔族として魔王様と同室できるのはこの上なく誇らしいことだけどね」

ハーピーとトロールも入室する。
巨人は若干屈んで戸をくぐった。

地理教師「ヴァンパイア君じゃないですか。はい。どうして此処に? はい」

生物教師「色々有ってな。後で自宅まで送ってやれ」

デュラハンは釈然としない顔ながらも親指を立てた。
首の無い彼ら特有の肯定の仕草だった。
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 13:59:12.34 ID:LGBDF+Yw0
数学教師「どうでも良いけどさ。勇者合宿の賞品が酷いな」

化学教師「ああ……。まあ、全員に渡すのは納得ですけどね」

生物教師「校長がアホだから酷いのはしょうがないだろ」

地理教師「口は謹んでください。はい。賞品が酷いのは同意ですが。はい」

語学教師「確かに酷い」

不意に全員の顔が曇る。

歴史教師「……地震?」

建物が微かに揺れた。

語学教師「非常に珍しいな」

地理教師「……この揺れ方は地震じゃないですよ。はい」

断続的に地面が揺れていた。
微弱ながらも確かに。

生物教師「……これは。嘘だろ……」

鬼人は鬼気迫った顔になる。

冷や汗が厳めしい顔を伝う。

揺れ方に憶えが有った。
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 14:02:18.68 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

四天王「まだ真夜中では無いだろう……!」

全力で駆けながら、彼女は歯軋りする。

犯人の所在は『商会』に調査させた。

結果、一箇所だけ調査員が戻らない場所が有った。

取り壊し予定の紡績工場だった。
ダークエルフが其処に向かった。

彼女も向かうはずだったが、現在彼女は王都近くの森へと全力で疾走している。

震動の許へと。

四天王「……ベヒモスに単独で勝つのは厳しいが、やるしか無い」

瞳に決意を湛え、彼女は猛烈な速度で地を蹴り続ける。
魔法によってその肉体は強化されていた。

四天王「……っ!」
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 14:04:49.09 ID:LGBDF+Yw0
空を切る音が近付いてくるのを耳にして、彼女は横に大きく跳んだ。

次の瞬間には、彼女が直前までいた地表が大きく抉られていた。

彼女の眼が巨大な怪鳥を捉える。

怪鳥は、彼女の数十倍も有る全長をして、暗闇の中でも識別できるほど鮮やかな真紅の羽毛で全身を覆っていた。

身体に不釣り合いな細い三本の脚で立ち、煌めく黄金の瞳で彼女を見据えている。

その眼が濁っているのかは、彼女には判別できなかった。
対峙するのは初めてだからだ。

四天王「ジズか……!」

天空の覇者が彼女の眼前にいた。
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 14:08:03.41 ID:LGBDF+Yw0
彼女は臨戦体勢を取る。

陸王が近付いてくる為、時間は無い。
しかし、彼女は焦らずに空王の隙を探す。

一際大きい地面の揺れで、空王が姿勢を僅かに崩した。

彼女は機を逃さなかった。
一気に距離を縮め、勝負を分かつ拳を振るう。

しかし、その拳は大気を穿っただけだった。

四天王「っ!?」

空王は後ろに小さく跳躍していた。
細く頼りなげな脚は、実際のところは強靭だった。

そして、通常の獣には無い高次の狡猾さを具有していた。

空王は短く啼いて、弓形に反った獰悪な嘴で彼女を啄もうとする。
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 14:09:43.25 ID:LGBDF+Yw0
しかし空王は侮っていた。

彼女を。

彼女の拳を。

嘴は彼女の両腕でいなされた。

空王の身体がよろめく。

拳には既に意識を刈り取る魔法が込められていた。

四天王「流石に触れただけでは効き目が薄いか。……だが充分だ」

魔法拳は打撃の衝撃によって、込められた魔法を射出する威力も高まる。

世界で唯一、彼女のみが扱える戦闘様式。
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 14:16:39.17 ID:LGBDF+Yw0
彼女は再び拳を固く握る。

そして、無防備な空王の巨大な頭部に必殺の一撃を放った。

四天王「魔法拳『爆砕の呪』!」

空王の頭部で、前方への方向性を備えた爆発が起きる。

頭部は肉片と脳漿を彼女の正面一帯に飛散させて消失した。

四天王「所詮は空の王。陸上ではベヒモスに劣る。
陸王の甲殻はあまりに肥厚で魔法が通らないからな」

呟き、当の陸王の許へと再び向かおうとする。

しかし、真逆の方向に飛び跳ねた。

四天王「ぐっ……!」

背中の肉が深く抉られている。
上空から急襲されたのだ。
781 :キングクリムゾン! :2012/08/13(月) 14:20:05.23 ID:LGBDF+Yw0
もう一匹の空王が舞い降りた。

獲物を狩った直後の獣が無防備であることを知っていたらしい。

好機と見たのか、積極的に啄もうとする。

彼女は避けるので精一杯だった。
背中の痛みが彼女の極限まで研ぎ澄まされた集中力を阻害することは無かったが、それでも彼女の動きを鈍らせる。

捌き、受け流し、反撃の機会を探る。

鬼の長として、不意討ち程度で敗北するわけにはいかなかった。

獰猛な獣に、それ以上に獰猛な瞳を向ける。

熾烈な攻防を繰り広げた。



彼女は肩で息をする。

純粋な攻防でジズに勝利した。

しかし負傷も多く、右腕は辛うじて繋がっている状況だった。

地面の揺れが大きい。
陸王が相当近くまで接近しているらしい。
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/13(月) 14:25:30.62 ID:aKf9Srig0
バイクかとおもた
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2012/08/13(月) 15:46:50.65 ID:z8T3V/Bbo
おつー
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 17:18:26.47 ID:LGBDF+Yw0
不審なことに気付き、彼女は顔を上げた。

巨山を思わせる獣がいた。

辺りが暗い為に彼女からは判別できなかったが、おそらく黒曜石のような黒光りする甲殻に身を包んでいるはずだ。
そして、頭部に生えた雄々しい角が威厳を湛えているはずだ。

しかし彼女にとって、そのような事はどうでも良かった。

重要なのは足音と地面の震動だ。

四天王「……私の判断ミスだ。民を避難させるべきだった」

茫然と言った。

陸王一頭だけならば、単身でも勝機が有ると思っていた。
故に、無闇な混乱や犯人捜索を円滑に進める為にこの一件を伏せていた。

基本にして大きな過失だった。

敵の戦力を見誤った。
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 17:25:15.45 ID:LGBDF+Yw0
足音は複数有った。震動も。

陸王は五頭いた。
王都を蹂躙するには充分過ぎる数だった。

絶望しながらも、彼女は覚束ない足取りで前進する。

四天王「私が止めなければ……。私の力は護る為に有るのだ……」

負傷を治すことも忘れ、彼女は陸王へと歩み寄っていく。

四天王「護る……。私が……。護るんだ……。私が……!」

勝機は微塵も見出せなかった。
彼女は泣きながら、それでも前に進む。

一際大きな震動で、彼女の足が縺れた。

倒れる。


起き上がれなかった。
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 17:26:44.70 ID:LGBDF+Yw0
足音は複数有った。震動も。

陸王は五頭いた。
王都を蹂躙するには充分過ぎる数だった。

絶望しながらも、彼女は覚束ない足取りで前進する。

四天王「私が止めなければ……。私の力は護る為に有るのだ……」

負傷を治すことも忘れ、彼女は陸王へと歩み寄っていく。

四天王「護る……。私が……。護るんだ……。私が……!」

勝機は微塵も見出せなかった。
彼女は泣きながら、それでも前に進む。

一際大きな震動で、彼女の足が縺れた。

倒れる。

起き上がれなかった。
787 :連投ごめんね! [saga]:2012/08/13(月) 17:34:16.15 ID:LGBDF+Yw0
折れてしまっていた。
不甲斐なさに涙が止まらなかった。

四天王「私は……」



鬼人「おいおい、拳神様よ。寝るには場所が悪いぜ」


背中に大弓を担いだ偉丈夫が彼女の左腕を掴み立ち上がらせる。

その行為だけで、折れた心を簡単に直した。

「酷い怪我ですぞ。副族長の慌てる姿が眼に浮かびますな」

「ははっ、違いねぇや」

四天王「どうして……」

各々の得物を携えた鬼人が十数人、彼女の後ろに立っていた。
警察隊以外の職務に就いている者たちだった。

「むしろ、どうして頼ってくれなかったのですか?」

「まったくだ」

「この身、ナーガ様の為に尽くすことを幼少より誓っていた」

鬼人「そういうこった。狩猟といこうぜ」
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 17:36:47.77 ID:LGBDF+Yw0
四天王「……有り難う」

彼女は再び瞳に強い決意を宿らせる。

しかし、どう足掻いても陸王を五頭も撃退するのは不可能だった。

四天王「……すまない。ベヒモスの足止めを頼む」

鬼人「打開策が有るのか?」

四天王「まあな。頼めるか?」

鬼人たちは豪快に笑いながら肯いた。

「族長の命令は絶対遵守に決まってるだろ」

「その通りだとも」

四天王「……頼んだぞ」
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 17:40:34.58 ID:LGBDF+Yw0
彼女は負傷をある程度治し、鬼人たちの肉体に強化の魔法を施す。

鬼人「……こういうのは鬼人としての誇りが傷付くんだがな」

四天王「誇り高く生きるのは素晴らしい。だが誇りの為に死ぬな」

「耳タコです」

「同感だ! ぐはは!」

四天王「……死ぬなよ。別れは哀しいからな」

彼女はそう言い残し、全速力で王都に引き返す。

残された鬼人たちは武器を強く握り締めた。

鬼人「さて。哀しませるわけにはいかねぇな」

「あたりめぇだろ」

鬼たちは歯を剥き出しにして笑う。

鬼人「鍛錬を怠ってたアホはいないよな」

「当然。生まれながらの戦士だぞ」

「俺は企業戦士として昼も戦ってきたけどな」

「オレもだっての」

鬼人「がはは! 後で飲みにいくか! 生きてたらな!」

威勢の良い返事と共に、鬼人たちは果敢に巨大な獣へと突撃していった。
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:08:03.82 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ダークエルフは妹と対峙している。

鮮やかに模様替えされた廃工場内だ。

鮮烈な光を放つ照明が、黒と白を明確に区分している。

先程から地面が揺れ始めていた。

ダークエルフ「まだ制限時刻を過ぎていないだろう」

彼女は険しい顔をして、刺々しい口調で言う。

エルフ「良いんだよ。最初からこういう予定だったの。
ヘビさんを奔走させて最後には絶望して死んでもらうっていうね。
むしろお姉ちゃんが予定外だったんだよ」

少女は穏和に微笑みながら、柔らかい口調で言った。

少女の後ろには虚ろな眼をした妖狐がいた。
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:09:40.43 ID:LGBDF+Yw0
ダークエルフ「……約束だ。男を返せ」

エルフ「あれ? 私は間に合えば男君を返すなんて言ってないけど」

ダークエルフ「ふざけろ!」

声を荒くする彼女を見て、エルフは愉快そうに息を漏らした。

エルフ「ここからが本番だよ。“証明”して。身を以ってね」

少女の言葉を継ぐように彼は動き出す。

ダークエルフ「男……」

緩慢に迫ってくる彼に呼びかけるが、反応は無かった。

ダークエルフ「眼を覚ましてくれ……」

悲愴な声を出すが、やはり反応を示さない。
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:10:56.97 ID:LGBDF+Yw0
彼は彼女の首を絞める。

柔らかい首筋に彼の指が沈んだ。

気道が圧迫され彼女の顔が赤味を増す。

呻き声が漏れた。

膝がカーペットに着く。

彼は彼女を押し倒し、馬乗りになる。
照明を背にした彼の顔に、濃い陰影が落ちる。

白い少女は無表情で二人を見つめていた。

彼は掌全体で彼女の生命線を塞ごうとする。

彼女は抵抗しなかった。

ただ、涙を零すだけだった。
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:12:31.90 ID:LGBDF+Yw0
ふと。

手の力が緩んだ。

彼女は数度咳き込む。

男「……」

虚ろな眼は彼女を見据えている。

その双の眼窩から雫が伝った。

何粒も。

何粒も。

泣いている彼女が、彼の頬を伝う雫を細指で拭った。

雫は止め処無く溢れ出す。

彼女の指先はそれを払う。

何度も。

何度も。
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:14:18.54 ID:LGBDF+Yw0
彼の澱んだ瞳が微かに動いた。

彼女の左手を見ていた。

彼女の手首を見ていた。

彼女の傷痕を見ていた。

男「……ダーク」

彼の眼が輝きを取り戻した。

両手を彼女の細首から離す。

そして、上体を丸めて彼女に口付けした。

それから横に倒れる。

彼女は起き上がり、彼の肩を揺らすが反応は無い。

意識を失ったらしい。
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:17:06.74 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「……あはは、『征心の呪』を解いちゃったみたいだね」

少女は可憐な笑い声を出す。

手を三回叩いた。

何度もうなずく。

それから、


エルフ「ふざけるな! こんな茶番が見たいんじゃない!」


喉が張り裂けんばかりに怒鳴った。

エルフ「くだらない! 望んでない! こんなの望んでない! 違う! 違うんだよ!」

修羅が吼える。

痛哭だった。

エルフ「全部全部くだらない! 遠いよ! 遠いままだ! 違うんだよ! お前らは何処にいるんだよ! 私は何処にいるんだよ!」

修羅が叫び終えた後には、白い少女の荒い息遣い以外の音が絶えていた。
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:20:46.65 ID:LGBDF+Yw0
やがて、黒い少女が言った。

ダークエルフ「ーーーーなんだ。お前がどんな事を考えてるのか謎だったが、簡単な事だったんだな」

その顔は柔和に微笑んでいた。

エルフ「……はあ?」

ダークエルフ「世界で自分だけが孤独だなんて考えていたんだろう? それで色々悩んでしまって、生きる理由なんて永遠の謎についても考えてしまうんだろう?」

彼女は穏和な口調で語りかける。

ダークエルフ「ごめんな。すぐに気付いてあげられなくて。私は姉なのに」

エルフ「……勝手なことを言うな!」

白い少女は顔を歪めて叫ぶ。

ダークエルフ「エルフ。誰だって孤独では無いんだ。
だから、深く考えるな。心から笑え。それで充分だ」
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:23:37.70 ID:LGBDF+Yw0
白い少女は口を噤んだ。

それから獣の咆哮に似た笑い声を上げた。

エルフ「そんな言葉は響かないよ! 言葉では遠いんだ!
その表情じゃ、その声音じゃ、お姉ちゃんじゃ遠いんだよ!」

白い少女は泣いていた。
それでも笑っていた。
全てを見下して笑っていた。

黒い少女は悲しい顔をしていた。
妹の心に届くものが自分の中に無かった。
それでも救いたかった。

エルフ「こんな世界は壊れてしまえば良いんだ!」



四天王「騒がしいな」



ダークエルフ「……拳神様」

四天王「ナーガで良いと言ったろう。独りでは何も護れない私に、そのような大層な称号は似合わない」
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:27:33.05 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「……あはは。ベヒモスの行進を止めなくて良いの?
それとも数の多さに驚いて逃げて来ちゃった?」

四天王「貴様を倒せば解決する話だろう」

彼女は涼しい顔で言った。
声音は自信に満ちていた。

エルフ「私に勝てる訳ないでしょ」

四天王「乳臭い稚児が驕るな」

言って、彼女はエルフに向かって走る。
その拳を握り締めて。

エルフ「『束縛の呪』」

四天王「っ……」

彼女の肉体が不安定な体勢で固まった。

少女は口角を吊り上げるが、すぐに驚愕で目を剥いた。
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:29:46.01 ID:LGBDF+Yw0
無理やりの一歩が踏み出された。

彼女の身体が負荷の為に軋む。
至る箇所で内出血を起こしていた。

それでも進む。

エルフ「なんで動けるの……」

少女は酷く戸惑う。

四天王「耐性が有るからな」

実際はそれだけでは少女の極めて強力な拘束魔法を凌駕できない。

彼女の極限まで錬磨された肉体と精神を以って初めて為せる事だった。

彼女は何歩か進み、ついには平常と変わらない速さで再び走り始める。
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:32:07.89 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「っ……。『昏倒の呪』!」

四天王「ーーーーっ!!」

彼女は一瞬よろめくが、それでも気絶しない。

護る為ならば、彼女は幾らでも強くなれた。

エルフ「なんで……! なんで……!」

エルフは幼い子どものように大きくかぶりを振って泣く。
恐怖で思考が停止していた。

四天王「……悪い子どもにお仕置きだ」

彼女は指が皮膚に食い込んで血塗れになった拳を振り上げた。

振り下ろせばエルフの華奢な肉体を破壊できる位置にいた。

エルフ「て、転移の……」
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:34:02.52 ID:LGBDF+Yw0
四天王「魔法拳!!」

少女が転移魔法を唱えるよりも先に、彼女の拳が白い頬を打ち抜いた。

エルフ「ーーーーっ」

強烈な打撃音と共に、少女の身体が浮き上がって吹き飛ぶ。

やがて、壁に衝突して地に落ちた。

ダークエルフ「エルフ……!」

彼女は殴り飛ばされた妹に駆け寄る。

四天王「……そいつの身を心配するか」

ダークエルフ「当たり前だ! 愚か者でも大切な私の妹だ!」

四天王「……そうか。良い事だな」

彼女は膝を突きそうになるが、辛うじて堪える。
まだやるべき事が有った。
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:39:53.25 ID:LGBDF+Yw0
ダークエルフ「エルフ! 大丈夫か!」

彼女は妹の身体を揺する。

少女の頬は深く陥没して、首が酷く捻じれていた。

辛うじて脈は有るが、瀕死の重体だった。

四天王「そいつを連れていく。
取り敢えずベヒモスを何とかしてもらわなければいけない」

ダークエルフ「無茶を言うな! すぐに治療しなければ死んでしまう!」

彼女は眼に涙を溜めながら叫んだ。

四天王「問題ない」

彼女は自身に治癒の魔法を駆けながら言った。

ダークエルフ「何をーーーー」
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 18:41:35.48 ID:LGBDF+Yw0
更に反論しようとして、彼女は口を噤む。

少女の負傷が治りつつ有った。

四天王「先程の魔法拳は『治癒の呪』だ。
後進に稽古をつける際によく使う」

言いながら、彼女は負傷が殆ど癒えた少女の細腕を掴んだ。
それから何かを思い出した顔になる。

四天王「……ああ、そうだ。言い忘れていた」

彼女は気絶している少女に告げる。

四天王「みーつけた」



長い“隠れんぼ”が終わった。
804 :そこそこ長いエピローグに入ります [saga]:2012/08/13(月) 19:05:27.88 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

ーーーー火曜日・通学路ーーー


ダークエルフ「おはよう」

男「ん、おはよう。昨日はお疲れ」

ダークエルフ「ああ」

ダークエルフ(本当に疲れた。今日が普通に学校というのが尚更)

男「心配かけてすまなかった」

ダークエルフ「いや。……あ」

男「ん、どうした?」

ダークエルフ「その、昨夜の事、憶えてるか……?」

男「お前の妹と言葉を交わしたことしか憶えて無いな」

ダークエルフ「そ、そうか」

ダークエルフ(初めてのチューだったんだが……)

ダークエルフ(ううっ……)

男「……冗談だ。ちゃんと憶えてる」

ダークエルフ「え……」

男「あー、良いから学校行くぞ」

ダークエルフ「う、うん」
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:07:57.57 ID:LGBDF+Yw0
ーーーー昼休み・教室ーーーー


男「お前ら、口が異常に軽いな……」

オーク「いや、ヴァンパイア君だからね。広めたの」

ヴァンパイア「どうせ、遅かれ早かれ知れ渡るんだから良いだろ。黙ってろとも言われて無いしな」

サキュバス「昨日は二人一緒に休んだから色々な憶測が広まったわね」

ウンディーネ「まあ、しょうがないよねー」

ダークエルフ(昨日の一件は伏せられているのか)

オーク「しかし、昨日の地震は気味が悪かったね」

サキュバス「確かにね。何だったのかしら」

ヴァンパイア「俺は昨夜の記憶が無いんだぜ。何でも学校で寝ちゃったらしんだぜ」

ウンディーネ「アホだねー」

ダークエルフ(……黙っていた方が良いのだろうな)
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:09:30.60 ID:LGBDF+Yw0
ヴァンパイア「あ、次の時間は自習なんだぜ。嬉しいんだぜ」

男「次は生物だったか」

オーク「先生が昨日から入院してるらしいよ。すぐに退院らしいけど」

男「ダークと同じか」

サキュバス「ちゃんと自習しなさいよ」

ヴァンパイア「うぇー……」

ウンディーネ「うぇー……」

オーク「ウンディーネさんまで」

ウンディーネ「話しかけんな豚。さっさと屠殺されろ」

オーク「ぶ、ぶひぃ……」

サキュバス「やめなさい」

ウンディーネ「ぶーぶー」

サキュバス「やめなさいって」

ダークエルフ「今のは違うんじゃ……」
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:12:37.53 ID:LGBDF+Yw0
ーーーー教室・HRーーーー


地理教師「以上で連絡は終わりです。はい。
ただ、最後に渡す物が有ります。はい。
勇者合宿の賞品です。はい。学年全体に配布される事になって、追加発注の為に遅延していたんです。はい」

ヴァンパイア「何なのか気になるんだぜ」

ウンディーネ「だねー」

地理教師「……こちらです。はい……」

男「うわ……」

ダークエルフ「え、えー」

サキュバス「……何なのこれ?」

地理教師「校長の肖像画が刺繍されたタペストリーです。はい」

ヴァンパイア「なんと」

ウンディーネ「あはは……」

オーク「……よし、皆。言いたい事は同じだよね。せーの」


『いらねぇぇえええええええええええ!!』
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:14:38.44 ID:LGBDF+Yw0
ーーーー放課後・プールーーーー


ヴァンパイア「あー、見学は暇なんだぜ」

歴史教師「別に帰っても構いませんよ」

ヴァンパイア「いや、ラミア先生といたいから帰りはしないんだぜ」

歴史教師「そ、そうですか……」

ヴァンパイア「でもどうせならカッコ良いところを見せたいんだぜ!」

歴史教師「……充分カッコ良いですけどね」

ヴァンパイア「ん?」

歴史教師「な、何でも有りません」

ヴァンパイア「いや、聞こえてはいたんだぜ。具体的にぎゃああぁああああ! 絞まるぅうううう!」

歴史教師「忘れてください! 今すぐ!」
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:16:14.13 ID:LGBDF+Yw0
ヴァンパイア「い、痛いけど気持ちいい! あ、愛を感じるんだぜ!」

歴史教師「……まったく! いつも君は……!」

ヴァンパイア「わ、湧き上がるリビドー! ゆ、歪む理非の道! つ、つまり、愛と理非道!がああぁぁああああ!」

歴史教師「冗談なのか、本気なのかハッキリさせてください!」

ヴァンパイア「はぎいぃぃいいいいいいい! かひゅっ……」

歴史教師「私は……! ああ、もう!」

ヴァンパイア「ーーーー」

歴史教師「も、もし本気なら誠意を見せてください!」

「先生。ヴァンパイアのクソ野郎が逝ってます」
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:18:22.93 ID:LGBDF+Yw0
ーーーー放課後・地理学習室ーーーー


オーク「今日の夜、龍神楽の練習会が有るそうなんだ。
誰か一緒に行ける人いない?」

サキュバス「私は無理ね。今日は姉さんと外食に行くから」

ウンディーネ「サキュたんのお姉さん!? 会いたい会いたい! ご挨拶しなきゃ!」

サキュバス「病院で会ってるけどね」

オーク「……ああ! ダークさんのお見舞いに行った時に見かけた淫魔の看護師さんか!」

ウンディーネ「ううー! サキュたんと同じ遺伝子を持つ人に気づかなかったなんて一生の不覚だー!」

サキュバス「頭を机に叩きつけるのはやめなさい」

オーク「そっか。家族の時間は大切にしないとダメだもんね。
ウンディーネさんは?」

ウンディーネ「誰が豚と二人で行くか。あ、一人と一匹か。ゴメン」

オーク「ぶ、ぶひぃ……」

サキュバス「ちょっと」

ウンディーネ「実際、今日は無理。家の都合が有るからねー」

オーク「そっか。じゃあ僕一人か」

サキュバス「ごめんなさい」

オーク「謝る必要なんて無いよ」

ウンディーネ「……豚なのに爽やか系なのが腹立つなー」
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:19:47.27 ID:LGBDF+Yw0
ーーーー火曜日・夕暮れ・幼馴染の家のベランダーーーー


幼馴染「……」

魔王「夕陽が綺麗だね」

幼馴染「……働かなくて良いの?」

魔王「良いの良いの。働き過ぎは毒だからね」

幼馴染「……あっそ」

魔王「いやー、目覚めたらあの白ちゃんがいたからさ、また襲いに来たのかと思って四肢を千切っちゃったよ」

幼馴染「……それはやり過ぎよ。アタシも片腕を飛ばしたけど」

魔王「やっぱり同じ血が流れてるね」

幼馴染「……そうね」
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:20:37.62 ID:LGBDF+Yw0
魔王「……男ちゃんに振られちゃったんだって?」

幼馴染「……だいぶ前の話よ。今回で完全に息の根を止められたけれど」

魔王「……失恋かー」

幼馴染「そうね」

魔王「あまり堪えて無さそうだね」

幼馴染「そうでも無いわよ。実感が無いだけ」

魔王「そっか」

幼馴染「はあ……」

魔王「……」

幼馴染「……」
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:22:18.40 ID:LGBDF+Yw0
魔王「……諦めるの?」

幼馴染「無理」

魔王「……そっか」

幼馴染「……」

魔王「まあ、待てば良いんじゃない?」

幼馴染「え?」

魔王「妖狐族は長命だしね。幾らでも機会は有るよ。
好きなら千年でも待てるでしょ。待てないなら新しい人を探せば良いし」

幼馴染「……むしろ奪い取ってしまえば良いじゃない」

魔王「多分そういうのは失敗すると思うな」

幼馴染「……まあ、年寄りの話は聴くものね」

魔王「なんだと、こんにゃろー」

幼馴染「ふふ……」

魔王「……あはは」
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:25:44.78 ID:LGBDF+Yw0
ーーーー火曜日・宵・魔王城・執務(休憩)室ーーーー


四天王「勝手に外出なさられると困ります」

魔王「大事な孫の心のケアをしてきたんだから赦して」

四天王「……せめて、仰ってからになさってください」

魔王「ごめんごめん。
それにしてもお疲れ様。大変だったでしょ」

四天王「……多くの者が生命をかけて造り上げた世界です。
護る為ならば骨を粉にし、身を砕くことも厭いません」

魔王「……そっか。よし! 次の魔王は頼むね」

四天王「縁起でも無いことを仰らないでください」

魔王「それもそうだね。ところで白ちゃんは?」

四天王「白? ……ああ、あのエルフなら帰らせました。混乱もだいぶ復旧させましたし、今日はもう魔法が使えないようでしたので」

魔王「うわー、そんなに酷使するなんて鬼だね。蛇だけど」

四天王「そのような言葉は聞き飽きました。
それに、魔王様が重傷を負わせになったのも大きな要因です」

魔王「むむ。ところで、送ってあげなくて良いの?
祭りも近いし、色々と治安が悪化してそうだけど」

四天王「確かに。まあ、大通りを歩けば大丈夫でしょう」
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:26:49.25 ID:LGBDF+Yw0
魔王「そっか。しかし、そろそろ本気で考えないとね」

四天王「何をでしょうか」

魔王「ナーちゃんの婿探し」

四天王「……はい?」

魔王「いつまでも生娘だから、ナーちゃんは堅物なんだよ。
男を知るべきだよ。うん」

四天王「なっ……!」

ドライアド「魔王様、ナーガ様。ご飯ですよー」

魔王「わーい!」

四天王「……はあ」
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:35:26.18 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー

エルフは疲れた顔でひっそりとした夜道を歩いている。

雑踏を歩くと、頭が狂いそうになる為、細路地を通ることにした。

魔法をあまりに酷使した為、転移魔法が使用できない状態にあった。

エルフ「……魔法が使えない私なんて、存在価値無しだね」

彼女は自嘲的に呟いた。

魔法が使えない今、彼女は少しだけ世界に近付いた気がした。

エルフ「……でも、ずっと遠い」

彼女は自分の位置が分からなかった。
夜道を歩いてる事がその感覚に拍車をかける。
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:37:58.95 ID:LGBDF+Yw0
目に入る光景も、街のにおいも、耳に侵入する音も、足裏の感触も、全てが偽りのような気がしていた。

自分が何なのかも分からなくなって、粒子の海を歩く。

歩いているのかも分からなくなりつつあった。

やがて何かに衝突した。

感覚が正常に戻る。

「いてぇな」
「ちゃんと前見て歩けよ」
「お、エルフ族じゃね」

三人の魔族の男だった。

いずれも各々の身体の一部を自然とは違う色に脱色して、鼻や唇に装飾品を着けている。

「うお、まじか」
「ふうん……」
「カワイイな」

男たちは下卑た笑みを浮かべ、下卑た視線を彼女の全身に這わせる。
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:39:30.36 ID:LGBDF+Yw0
エルフ「……すいませんでした」

頭を下げ、彼女は彼らの横を通り抜けようとする。

「待てよ。謝るくらいなら遊ぼうぜ」

男の一人がその手を掴んだ。

エルフ「……離して」

その手を振り払おうとするが、力強く握られている為に不可能だった。

「大丈夫だって。ちょっと××××するだけだから」
「ぎゃはははは! 直接過ぎだろ! 強え!」

エルフ「いや……」

彼女は必死に逃げようとする。
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:41:10.34 ID:LGBDF+Yw0
「ちっ、うぜぇな」

エルフ「ーーーーっ」

腹を強かに殴られて、彼女はうずくまる。

「さあて。何処ですっかな」
「他の奴らも呼ぶかあ?」
「だな。皆でマワすか」

エルフ(……そっか。こんな怖い思いをキツネちゃんやキツネさんにさせてたんだ)

「いつもの溜まり場で良いんでね?」
「俺、最初ね」
「バカヤロッ、じゃんけんだろ」
「とりま、場所変えんべ」

男が彼女の手を乱暴に引いた。

エルフ(……あはは。もう、どうでも良いや……)

彼女は諦観して、抵抗を止めた。
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:45:41.58 ID:LGBDF+Yw0



オーク「何をしているんだい?」



通りがかったオークが彼らに声をかけた。

「あ? 何だよ豚」
「てめぇにはカンケー無いだろ。失せろ」

オーク「その娘、泣いてるじゃないか」

「何なの? 王子様気取りですか? 豚のくせに」
「ぎゃはは! ボコられたくなかったら失せろや!」

しかし、彼は眉一つ動かさずに彼らを見据えていた。

「何なんだよ! くそがっ!」

勝手に腹を立てた男の一人が彼を殴る。

オーク「いたっ!」

彼は痛みに顔をしかめる。
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:49:49.87 ID:LGBDF+Yw0
それを見てもう一人が便乗した。

二人がかりで彼に暴力を振るう。

エルフ「……やめてよ!」

「うぜぇな! 黙ってろ!」

彼女の腕を掴んでいる男がもう一度彼女の腹を殴った。

彼女は顔をしかめて、地面に膝を着けた。

オーク「……おい」

彼は殴りかかってきた男二人の頭を鷲掴みにした。

オーク「そういうのは最低だよ」

そして、互いの頭を激しく叩き合わせた。
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:52:02.51 ID:LGBDF+Yw0
「ーーーーっ」
「ーーーーッ」

もう一度。

彼は完全に失神した二人を後ろ手に放った。

「ひっ……」

男は急に狼狽える。
独りでは何もできない小心者だった。

オークは男に迫る。

「す、すいません!」

オーク「謝ってすむなら戦争なんて起きないんだよ!」

彼は男の鳩尾を全力で蹴り上げる。

男の身体は地面を数度跳ねて、やがて静止した。
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:53:26.41 ID:LGBDF+Yw0
オーク「大丈夫かい?」

茫然としている彼女に、無骨な手が差し伸べられた。

エルフ「あ……」

圧倒的な存在感。

近かった。

近くて、近くて、あまりに近過ぎて、全ての言葉が消え失せた。

言葉も要らぬ距離だった。

疑問も、虚無も、感傷も、孤独も、恐怖も消え失せた。

考える必要も無かった。

唯一の感情表現は、その手を掴むことだけだった。

この瞬間の為に自分は生きていたとさえ、彼女は思った。
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:54:30.67 ID:LGBDF+Yw0
オーク「立てるかい?」

エルフ「あ、ははは、はい!」

上ずった声を出しながら、彼女は勢い良く立ち上がる。

オーク「家の近くまで送ってくよ」

エルフ「いい、いえ! わわ、悪いでしゅから!」

オーク「……まだ落ちついて無いみたいだし送るよ。
この時期は柄が悪いのが増えるしね」

エルフ「すす、すいません!」

彼女は何度も頭を下げる。

オークは優しい声で静止を促した。
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 19:55:31.01 ID:PclhWS3c0
オークウウウウウ!!
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/13(月) 19:58:45.97 ID:UBwSUMzQo
あらー
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 19:59:53.88 ID:LGBDF+Yw0
ーーーーーー
ーーーー
ーー


オーク「ダークさんの妹なんだ。というよりダークさん双子だったんだ」

エルフ「は、はい」

オーク「確かに似てるね。すぐ気付かなかったのが不思議だ」

エルフ「は、はい」

オーク「もしかして、王都立に通ってるの?」

エルフ「は、はい」

オーク「凄いなぁ」

エルフ「そそ、そんな事無いですよ!」

オーク「でも王都立は夏休みとか無いんでしょ?」

エルフ「は、はい」

オーク「祭りも行けないのかぁ。次世代の偉い人たちが庶民たちの親しむ文化を知らなくて良いのかな」

エルフ「そそ、そうですね」

オーク「さっきまで、龍神楽の練習を見てきたけど、凄かったよ。洗練されていてさ。
あれを見ないなんて勿体無いよ」

エルフ「わ、私も、み、見たいです。だだだ、だ、だから、そそ、その……」

オーク「うん?」

エルフ「いいいい、い、一緒に行きませんか!?」

オーク「良いけど、学校があるんじゃ……」

エルフ「な、何とかしますっ!!」

オーク「そ、そう」

エルフ「あ、こ、この辺りで大丈夫です」

オーク「そう? 次からは明るい道を通るようにね」

エルフ「は、はい。あ、ありがとうございました!」

オーク「うん。じゃあね」

エルフ「さ、さようなら!」



エルフ「……オークさん、か」
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 20:05:44.56 ID:LGBDF+Yw0
ーーーー日曜日・男の部屋ーーーー


ダークエルフ「ど、どうだ?」

男「美味いぞ。本当に上達したな」

ダークエルフ「そ、そうか。良かった」

男「ハンバーグとか結構久し振りに食べるな」

ダークエルフ「そうか。とにかく美味しいなら良かった」

男「うん。よしよし」

ダークエルフ「あう……」

ダークエルフ(男の手は温かくて心がポカポカするな)

ダークエルフ(ずっと撫でて欲しいくらいだ)
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 20:11:39.31 ID:LGBDF+Yw0
男「……ところで、お前の妹の事なんだが」

ダークエルフ「……ああ」

男「どうして急に転校してきたんだ?」

ダークエルフ「転校してきた日に訊いたんだが……」

男「答えは?」

ダークエルフ「一目惚れだそうだ。オークに」

男「……なに?」

ダークエルフ「何でも悪漢に襲われているところに颯爽と現れて、助けてもらったそうだ」

男「あー、流石オークだな」

ダークエルフ「うん。特に魔法も使ってないらしい。
巨大な権力の援助を受けたそうだが」

男「……あー。なんか交換条件でも取り付けたんだろうな」
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 20:13:48.17 ID:LGBDF+Yw0
ダークエルフ「……ところで、大事な話が有るんだが」

男「ん、何だ?」

ダークエルフ「実家に戻ることになった」

男「……え」

ダークエルフ「色々あって両親、妹と和解したんだ。
それで、もう一度やり直そうということになった」

男「……そうか。いや、良いことだな。俺も親と話し合わないと」

ダークエルフ「……」

男「……ああ、くそ。別に会えなくなるわけでも無いし、学校でも会うのに、なんでこんなに寂しいんだよ」

ダークエルフ「……私もだ」
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 20:15:52.65 ID:LGBDF+Yw0
男「……まあ、いつかは一緒に暮らす予定なんだから問題無いだろ。それに、その内慣れるはずだ」

ダークエルフ「そ、そうだな。あ。今度、両親に男を紹介しても良いか?」

男「えーと。いや、良いんだけど、作法とか全く分からない」

ダークエルフ「何とかなるさ。多分」

男「ま、まあ、今度な」

ダークエルフ「男のご両親にも挨拶しなければ」

男「あー、俺が最初に説得しておかないとキツそうだな」

ダークエルフ「……やはり純種主義の家系なのか?」

男「まあな。まあ、説得するよ。その前に親父と和解しないとな」
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 20:17:24.97 ID:LGBDF+Yw0
ダークエルフ「やることは、たくさん有るな」

男「そうだな。大忙しだ」

ダークエルフ「少しずつ進んでいこう」

男「ああ。時間は有るさ」

ダークエルフ「ーーそれで、引っ越す前にお願いが有るんだ」

男「ん、何だ?」
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 20:22:10.29 ID:LGBDF+Yw0



ダークエルフ「男の尻尾をモフモフしたい」


834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 20:23:29.17 ID:LGBDF+Yw0



男「…………」


835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 20:23:59.99 ID:LGBDF+Yw0



男「良いぞ」


836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/08/13(月) 20:24:48.53 ID:LGBDF+Yw0
ダークエルフ「尻尾モフモフモフモフモフモフモフモフ」


男「ちょっ、食べ終えてからにしてくれ」


ダークエルフ「二本の尻尾モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ」


男「ま、待ってくれ!」


ダークエルフ「モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ」



男「たすけてー!!」
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/08/13(月) 20:25:52.83 ID:LGBDF+Yw0

おしまい!

838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 20:27:03.16 ID:lYHXCngSO
乙!!
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/13(月) 20:27:26.29 ID:3hSEl391o
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage モフモフしたい]:2012/08/13(月) 20:29:04.56 ID:1epGyzLIO
     ...| ̄ ̄ | < お疲れ様でした とても面白かったですよ
   /:::|  ___|       ∧∧    ∧∧
  /::::_|___|_    ( 。_。).  ( 。_。)
  ||:::::::( ・∀・)     /<▽>  /<▽>
  ||::/ <ヽ∞/>\   |::::::;;;;::/  |::::::;;;;::/
  ||::|   <ヽ/>.- |  |:と),__」   |:と),__」
_..||::|   o  o ...|_ξ|:::::::::|    .|::::::::|
\  \__(久)__/_\::::::|    |:::::::|
.||.i\        、__ノフ \|    |:::::::|
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.|| ゙ヽ i    ハ i ハ i ハ i ハ |  し'_つ
.||   ゙|i〜^~^〜^~^〜^~^〜
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/13(月) 20:32:34.92 ID:K3wXew6eo
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/13(月) 20:38:03.64 ID:T+WxBRUro
面白かった
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/13(月) 20:38:10.08 ID:UBwSUMzQo
おもろすかったよ
おつんこ
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 20:38:47.87 ID:xxItXANDO
>>1超乙!楽しかったよ


ただし白テメーは失恋しろ!オークはサキュたんのだ!(願望)
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 20:41:58.53 ID:1GtorqASO
久しぶりに来たら終わってた……

846 :これ貼るの忘れてました。 [sage]:2012/08/13(月) 20:42:22.61 ID:LGBDF+Yw0

えー、長々と有難うございました
レスに元気付けられました
速度が遅いのは改善していきたいです
のってる時は速いんですけどね
みんなを待たせないようにしたいです
転の箇所が雑なのは反省
戴いた指摘を次に反映させたいです
禁じられた封印が解けそうだ……
止まってくれ……
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 20:45:19.78 ID:lbkOhxqSO
やはりオークには主人公の才能が……?

オークの外伝が見たいものだ
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/13(月) 20:48:28.63 ID:uRh74aCco
オオオオォォォォォーーーック!!
おおおおぉぉ乙
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/13(月) 20:50:29.85 ID:LGBDF+Yw0
>>847
疲れたし新しいの書きたいし無理です。
夏祭りとか文化祭とかも思いつきましたが、それよりも新しいエルフが書きたいです。
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/13(月) 20:52:49.87 ID:o65a7csNo
お疲れ様
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 20:52:56.68 ID:lbkOhxqSO
>>849
そうか残念だ
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 20:54:43.87 ID:xxItXANDO
結局、ダークの両親がダークを追い出したのもエルフに操られてたから、ってこと?
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/13(月) 20:57:02.24 ID:LGBDF+Yw0
>>852
違うと思います。
エピソードを削りました。
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/13(月) 20:57:23.68 ID:HjxoVCuno

新しいエルフに期待
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/13(月) 21:00:26.68 ID:LGBDF+Yw0
>>854
エルフ「素敵な顔ですね」
多分こんな感じのスレタイの予定です。
キャラと世界観しかできていないので相当後になると思います。
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/13(月) 21:17:28.17 ID:fieXTP9N0
乙!
おまけ的なものはないのか・・・
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 22:05:59.29 ID:aKQr8dvK0
オークのぶひぃと最後の男のたすけてーで凄い和んだ
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/13(月) 22:42:34.36 ID:faKxI2Yuo
乙乙!

外伝ないのが残念だが、次回作に期待する。面白かった!
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 22:43:27.19 ID:mw57RwQ2P
>>846
それ作ったのここの>>1だったのかwwww
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) :2012/08/13(月) 22:44:08.79 ID:7FRGTXKB0
お前のほうがきもいわ
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/13(月) 23:11:21.70 ID:7FRGTXKB0
きもいとかありえないわ
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/13(月) 23:21:56.77 ID:maQwD4ICo
面白かったよ、>>1乙カレー
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/13(月) 23:28:09.05 ID:eLfN75VXo
>>1
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 23:52:58.91 ID:MkztERmDO
乙!!
オークェ・・・
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/14(火) 00:39:54.51 ID:L6pvc9LB0
すみません、スレチでした
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/08/14(火) 01:01:50.89 ID:asycPW7R0
>>1さん、乙でした。
オークがこうなるとは予想外だったwwww
さて・・前作同様、HTML化の依頼必要なら
(作者さんの端末の問題で本人がHTML化依頼するのが難しいらしいので)
言ってくれたら誰か代行すると思うので
その場合は一言頼みます
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/08/14(火) 02:09:21.55 ID:asycPW7R0
wikiはいつものように一通りまとめてます。
HTML化終わるまでは現行スレのカテゴリにしておきます。
次回も同じ世界観になるとすれば
前作と今作同様にWIKIで関連繋がりしようと思うのですが
こればかりは、作者さんの次のSSスレを見つけられるか次第かな・・・

ひとまず、長い間お疲れ様でした。
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 09:18:12.77 ID:ub5V/VSDO
エルフへの制裁がぬるい気がしたが、うまいこと死者は出ずに済んでたのか?
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [saga sage]:2012/08/14(火) 11:15:55.10 ID:vwEtP9Px0
>>868
自身の唯一のアイデンティティである魔法が一時的にとはいえ使えなくなるくらい酷使されたんだから制裁としては十分なんじゃね?おまけにキツネちゃんに四肢もがれるレベルでボコられたし。

厨二病拗らせて大勢の人間に迷惑かけてたのもオークのお陰で快復しそうだし、良い方向に変わっていく事に期待しよう。
ただしオーク、お前は末永く爆発しろw
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/14(火) 11:24:48.35 ID:5lvaGYoPo
オークとサキュたんとエルフのドロドロの三角関係に、ウンディーネが横槍入れる話はまだですか
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/14(火) 13:46:41.27 ID:f+jrff4X0
外伝始まり始まりー
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 14:15:47.93 ID:Qfdn2Q6eo
わあい
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 20:36:42.15 ID:ub5V/VSDO
そっか、オーク種の底なしの性欲なら、サキュにエルフに、ついでにウンディーネも
加えたくらいでちょうどいいはずだな。
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/14(火) 21:54:14.80 ID:T6D1cuIp0
>>866,867
最後まで有難うございます!
次回は新しい世界観でやると思います。
人間とエルフを絡ませたいので。まあ、ファンタジーに人間を出すと明るい話にはなりませんけれど。


どなたかHTML化依頼を代理していただけると幸いです。


875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/14(火) 21:57:15.50 ID:+uf4jvFBo
じゃあ出しときます。
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/14(火) 22:06:33.20 ID:T6D1cuIp0
>>875
すいません。
有難うございます。
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/14(火) 22:18:01.92 ID:E1xuqML1o
うう………名作がまた一つ終わってしまった
新しい作品が見れるから嬉しいような悲しいような…
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/14(火) 22:54:50.64 ID:wfyEhdBjo
ああそういえば次回作鬱なんだっけ…

見るけどな
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 15:15:41.87 ID:2qoJ4WvS0
鬱・・・鬱・・・
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/15(水) 15:31:12.89 ID:IaVnvxXa0
>>846
って反応して良かったんかよ……
確執とかありそうで触りにくいっちゅうに。
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1344074117/115
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 02:01:22.96 ID:TsBumDs80
ナーガに対する鬼人族が面白すぎる
スレタイになった瞬間バームクーヘン思い出した
後オーク爆発しろ


何が言いたいか?
>>1乙 面白かった
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/16(木) 07:13:12.47 ID:tbw6lbKBo
>>1
色々案ざーストーリー的なの見たいけど>>1が書けないってなら脳内補完しておく
エルフとサキュのオーク争奪戦とか・・・

次回作も楽しみにしてる
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 09:05:30.36 ID:DVEskFTlo
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 20:22:28.72 ID:eII2GjiSO
お前ら露骨な縦読みスルーはいやらしいぞ……

とりあえずエレファント速報にまとめらてれるの見付けたら通報しときゃいいんだよな?

次も待ってるよ
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 23:38:48.18 ID:TsBumDs80
>>884
>>1が縦読み書くとは思ってもみなかったから違和感仕事しなかった←
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/17(金) 01:10:31.10 ID:4XFeXHtwo
いやわざわざ反応することでも無いと思って…
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2012/08/17(金) 16:06:49.99 ID:0pvBec020
縦読み書いた理由、本人がSSまとめで明かしてたけど
作者に無断でタイトル改変した暇つぶしとエレ速が悪いと思う
仮に、この板の鯖運用の支援してるから、投稿されたものを改変してかまわんとか考えてたり
ここの板管理人がそういうの黙認するようだったら、ここに投下する人は一気に減ると思う
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/17(金) 20:19:09.44 ID:v2f6fNPyo
どこに書いてあるの?
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/08/17(金) 20:51:26.75 ID:Xl7KEBSYo
SSまとめサイトについて語れ★5
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1344074117/

ここの>>158
暇つぶしに関しては書いてあるけどエレ速については理由書いてなくね?

まあまとめとか読んで無いからどうでも良いけどさ
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