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橘「ファラオの呪い?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : [kgcrd091@yahoo.co.jp]:2012/07/01(日) 18:30:13.10 ID:Wq93eJf60

 舞台設定:アマガミの世界観によく似た輝日東、輝日南が舞台。公式設定とは違う部分がありますが、
      ご了承して下さい。

 キング「我が眠りを妨げる者よ。千年王国の呪いを受けるがいい!」
 絢 辻「はい、どうぞ。」
  橘 「そんな簡単に・・・」
 ウォォォオオオオォォ〜〜ン!
 絢 辻「・・・何とも・・・ないわ」
  橘 「そう?」
 絢 辻「うん。ただのアトラクションの演出だったみたい。でも何だか怖くなってきたから橘君。
     早くここを出ましょう。」
  橘 「? うん、わかったよ。」
 ギュッ
  橘 (どういうことだ!
     絢辻さんが腕を絡ませてきたぞ!!)
 絢 辻「あたしを置いったり、怖い意地悪とかしないでね。」
 ギューーーッ
  橘 (胸が当たって・・・
     いつもの絢辻さんならここまで体をくっつけたり、
     何よりここまで怖がったりはしないのに
     もしかしてまた猫かぶってるのか?
     よし、ちょっと聞いてみよう。)
  橘 「ねえ絢辻さん。」
 絢 辻「なーに?」
  橘 「急にどうしたのかな?
     もしかしてまた猫被ってる?」
 絢 辻 カッ!
  橘 (しまった!
     ストレートに聞き過ぎたか!
     怒られる!)
 絢 辻 「酷い、橘君。あたし猫被れる程、器用な人間じゃないわよ。そういうのを上手く出来る
      人を羨ましくは思うけど。あたしなんて言いたいことをはっきり言えなくて自分でも
      その性格が嫌って思ってるのに・・・
      それよりここから早く出ましょう。」
  橘  「? ああ、そうしよっか。」
  橘 (どうなってるんだ?)

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=^・ω・^= ぬこ神社 Part125《ぬこみくじ・猫育成ゲーム》 @ 2024/03/29(金) 17:12:24.43 ID:jZB3xFnv0
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VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711673687/

小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1711622906/

満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/01(日) 21:18:41.49 ID:h0LCBWkWo
ちょっと楽しみだけど

文頭が揃ってないと、読みにくいかも。
3 : [kgcrd091@yahoo.co.jp]:2012/07/01(日) 21:33:16.54 ID:Wq93eJf60
 橘 その後、僕達は他のアトラクションへ行ったり、ショッピングをしたりと、
   キビトランドでのデートを楽しんだ。彼女は僕に意地悪などせず、ただ純粋に
   (思い上がりかもしれないけど)僕とのデートを楽しんでいるようだった。
 橘 (全く僕に対する意地悪な感じがしない。それどころか、今僕の隣を歩く絢辻さんは
    何だかか弱い感じがするなあ。)
絢 辻 「どうしたの?」
 橘  「ん? いや何でもないよ。それより今日のデートはどうだったかな?」
絢 辻 「ファラオ呪いは怖かったけど、他のアトラクションはとっても楽しかったわ。あ、でも
     橘君、高い所苦手みたいだったのに観覧車に乗りたいだなんて言ってごめんね。橘君と
     落ち着いて二人っきりになりたかったんだけど。」
 橘  「いや気にしないで。今日は絢辻さんと一緒にいられて僕は嬉しかったから。」
絢 辻 「橘君。あたしも!」ダキッ!
 橘  (うわあ! また胸が当たって・・・
     やっぱり今の絢辻さんからは意地悪な感じが全くしないよ。どうしたんだろう?)
   
   
4 : [kgcrd091@yahoo.co.jp]:2012/07/01(日) 21:43:36.68 ID:Wq93eJf60
ほんとだ。気をつけたつもりなんですが。ご指摘ありがとうございます。
5 : [kgcrd091@yahoo.co.jp]:2012/07/01(日) 23:09:56.52 ID:Wq93eJf60

     帰り道の河原

     ワンワン
 小学生A「そっち行ったぞ」
 小学生B「待て〜」
 小学生C「きっとあの高そうな犬は何か使い道があるぞ〜」
 絢 辻 「あの男の子達、変わった理由で追い掛け回してるのね」
  橘  (あれ? 絢辻さんも前、全く同じことして、おしっこかけられてたよね?)
 小学生A「くっそーあともう少しなのに」
 小学生B「落ち着け、ただ追い掛け回してもあの犬は捕まえられない。最初の手筈通りにやるんだ。」
 小学生A「わかってるよ!」
 絢 辻 「何なのあの子達。一匹の犬に3人で必死に追いかけたりして。ちょっと怖いわ。」
  橘  「はは、捕まえるって言ってるけど、ただ単に犬と一緒に遊んでるだけなんじゃないかな。
      深く気にしなくてもいいんじゃない?」
 絢 辻 「でも・・・」
     タタタタタタタ
  橘  「うん? 男の子達の一人ががこっちに向かってくる・・・って絢辻さん危ない!」
 絢 辻 「え? キャッ」
      ドサッ
  橘  「二人共、大丈夫!」
 小学生C ムクっ「待てー」 タタタタタ
  橘  「おい、君! ぶつかってきたのはそっちなんだから絢辻さんにあやまって・・・って行っちゃた。
      絢辻さん大丈夫・・・って オオー!!」
      目を向けると、そこにはスカートから白い布地をはみ出させて倒れていた彼女の姿があった。
  橘  (何てことだ! 前に一度、神風が吹いて絢辻さんの本性とは裏腹な真っ白なパパパパン・・・ツを見た
      けど、またこうして拝むことができるなんて。あの子供達と犬は日頃紳士な行いをしてる僕にご褒美をくれ      たに違いない!)
 絢 辻 「アイタタタタタ・・・」
  橘  (・・・アレ、なんだろう。急に絢辻さんの匂いを嗅ぎたくなってきたぞ。
      ちょっとだけなら・・・パンツの匂いならいいよね!)
 
  
6 : [kgcrd091@yahoo.co.jp]:2012/07/01(日) 23:34:09.50 ID:Wq93eJf60

 橘 (ちょっとだけ・・・
    絢辻さんってどんな白い匂いがするんだろう)
    ソーッ
 絢辻 パチっ
    「うーん橘君って・・・キャー何してるのよ!」
 橘  「あ、絢辻さん!
     ごめん! つい絢辻さんの白い匂いを嗅ぎたなって!」
 絢辻 「声が大きいわよー!
     白い匂い何よー!
     馬鹿ー、変態!」
 橘  (うう、流石にこれは嫌われちゃったかなー)
 絢辻 「もう! 橘君が見るのは別に良いけど、他には誰にも見られてないわよね。」
 橘  「え? 」 キョロキョロ
    「犬は向こうにいるけど、子供たちはいないみたいだよ。」
 絢辻 「そう、なら良かった。」
 橘  「それより絢辻さん。見るのは良いってどういう」
 絢辻 「アーッ! 変な意味じゃないんだから。さっきのは事故だから
     見られるのは仕方ないって意味なんだから!!
     まして犬みたいにパンツの匂いを嗅ぐことまで許してないんだからーー!」
 橘  (ゆ、許すって。それにしてもこの反応。少し怒ってるけど、普段の絢辻さんなら
     この駄犬、どうやってしつけようかしらって僕を調教しようする気がするんだけどなー)
7 : [kgcrd091@yahoo.co.jp]:2012/07/02(月) 00:04:20.33 ID:7m37XuWY0

 絢辻 「じゃ、橘君。明日学校でね。」
 橘  「うん、じゃあまた明日。」クルッ
 橘  (キビトランドのデートの最中から絢辻さん変だったなー。どうしたんだろ?)
 絢辻 「キャーッ!」
 橘  (悲鳴!? 絢辻さんの声だ!)タタタタタ

 橘  「絢辻さん!
     ナッ!?」
    そこにはさっきの犬が絢辻さんの足を舐め、二本足で立ちながら彼女のスカートの中に顔を
    入れようとしていた。
 橘  (な、なんてうらやま、じゃなくて早く助けないと。)
 絢辻 「イヤーーーーーーー!」
     パッパパパパパッ
 橘  (なんだこの青い光のフラッシュは?
     絢辻さんの体から発せられてる!?)
    シューッ
 絢辻?「この駄犬、舐めてんじゃないわよ!!」
  犬  キャウキャウ
 絢辻?「てめえ、逃げてんじゃねえ!」
  橘 「あ、絢辻さん落ち着いて。いったいどうしたって・・・え?」
    急に言葉が乱暴になった絢辻さんをなだめようとした僕だったが気づけば彼女に
    投げ飛ばされていた。
  橘 「ウッ」
 絢辻?「私は絢辻じゃねえ。覚えとけ、私の名前は黒辻だ!」  
8 : [kgcrd091@yahoo.co.jp]:2012/07/02(月) 00:20:31.48 ID:7m37XuWY0

  橘  (黒辻? 一体何がどうなって?)
 黒 辻 「それよりお前、よくもさっきは私が恥をかくことをしようとしたよなあ。
      タダで帰れると思うなよ!」ゲシッ
  橘  (うっ、絢辻さん・・・もとい黒辻さんの渾身の膝蹴りがみぞおちに。)
 黒 辻 「これだけで済むとまだ思ってんじゃないわよ。」ギロッ
  橘  (ヒーッ このままじゃ僕殺されるよ。)
 絢 辻 (黒辻! もうやめて!)
 黒 辻 「うっ、五月蝿いわねこの体はわたしの・・・アー―ーーーーーーーーッ!!!」
     謎の青い光のフラッシュ パッパパパパパッ
     ドサッ
  橘  「絢辻さん!」
     (気を失ってる。ここは僕の部屋まで連れてって目が覚めるまで様子を見よう。)
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/07/02(月) 03:30:47.56 ID:/pa4PmiTo
読みにくいな
名前の間とか名前と括弧の間とかのスペースいらなくね?
10 : :2012/07/02(月) 05:42:56.54 ID:7m37XuWY0
橘の部屋

絢辻「うーん…あれ、ここは?」
橘「あ、気が付いた。絢辻さん大丈夫?」
絢辻「橘君? そっかあたし河原で気を失って…あ、そういえば、あたし橘君のみぞおちを蹴っちゃたよね。ごめんなさい。」
橘「あれ? そのことは覚えてるんだ。何だか別人みたいで怖くて、自分で黒辻って絢辻さん言ってたけど。」
絢辻「自分でも上手く説明できないけど、黒辻、彼女は私とは違うのよ。違うんだけど、彼女が表に出てるときにしてる言動は何となくあたしも覚えてるの。」
橘「じゃあ逆に黒辻さんが表に出てないときでも、絢辻さんがとってる言動は覚えてるんだ。」
絢辻「ええ、そんな感じよ。」
橘(だとすると黒辻さんが彼女の中にいる限り変なことはあまり出来ないぞ。今度からは気をつけよう。あくまで紳士的に。)

11 : :2012/07/02(月) 05:56:54.13 ID:7m37XuWY0
夜・絢辻さんの家の前
絢辻「送ってくれてどうもありがとう。」
橘「どういたしまして。じゃあ今夜はお休み〜」
絢辻「お休みなさい。」
橘(ふー。今日はいろんなことがあったなー。絢辻さんのパンツ…嗅ぎたかったな…って僕は何を
考えてるんだ。紳士になるって決めたばかりじゃないか。どうして匂いなんか。)
ワオーん
橘(うん? あれは、河原にいたあの犬じゃないか。あ、向こうに走ってちゃった。)
「帰ろう。」
12 : :2012/07/02(月) 06:22:01.89 ID:7m37XuWY0
翌日
美也「にいにー、早く支度しないと遅刻するよー」
橘「ああ、もう少ししたら行くよ」
美也「先行ってるねー」

通学路

梅原「オーッス大将!」
???「よお、橘」
橘「梅原、それに一輝じゃないか。一輝、歩きながらサッカーボール蹴るなよ。ボールが
どかに行ったらどうするんだよ」
一輝「俺はそんなヘマしねえよ」
ワイワイ 僕たちは3人で一緒に登校した。
13 : :2012/07/02(月) 06:46:27.28 ID:7m37XuWY0
2−A教室

絢辻「おはよう橘君」
橘「おはよう絢辻さん」
バシッ
棚町「グッモニーング純一」
橘「イテテ、薫か。いきなり背中叩くなよ」
棚町「アンタの朝一番の背中を叩かないと今日が始まらないのよ」
橘「どうしてそうなるんだよ」
絢辻「おはよう、棚町さん。この間の数学の宿題、今日までなんだけどあたしに提出…」
棚町「マジ! あれ今日まで! こうしちゃいられない。恵子、一緒に手伝うのよ。」
田中「もう! 何でそうなるのよー」
絢辻「橘君は宿題やった?」
橘「数学は苦手じゃないからね。」
絢辻「そっか。じゃああたしに出してくれる? 後で先生に提出するから」
橘「いや、これくらい自分で出すよ。それにしても先生も宿題を学級委員に集めさせるなよな」
絢辻「ありがとう。橘君」

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/02(月) 07:17:51.63 ID:UtyiY+ero
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 11:17:01.01 ID:JKC++VpIO
行間開けてもらえるとみやすいとおも
16 : :2012/07/02(月) 23:38:33.85 ID:7m37XuWY0

放課後


絢辻「橘君一緒に帰りましょう」

橘「うん、帰ろう!」

僕達は他愛の無い話をしながら楽しく帰った。途中、駅前の車上販売のメロンパン屋に寄った。彼女は「美味しいそう」

と言ってすぐにメロンパンを買いに行った。袋一杯にメロンパンを積んで天使のような笑顔で僕の所に戻って来る彼女を

見て僕はいつだったかのメロンパン地獄を思いだし、思わず後退った。そんな僕の様子を見た彼女は悲しそうな表情で

「メロンパン嫌いなの?」と、僕に話してくるものだから、食べないわけにはいかなくなった。小さくちぎった

メロンパンを僕の口元に近付け食べさせようとしてくれた。僕はたかがメロンパンに腹を括り、彼女のメロンパンを

限界まで食べることを決意をした。しかし、予想に反して彼女は僕の口の中に小さくちぎったメロンパンをホイホイ詰め

込むような意地悪はせず、あくまで僕のペースに合わせて食べさせてくれるのだった。
17 : :2012/07/03(火) 00:16:40.58 ID:yDD/u5/H0

流石に袋一杯のメロンパンを二人で食べきることは出来なかったので、残ったメロンパンを二人で

半分に分けることにした。彼女が買ったメロンパンのお金を彼女に払おうとしたが、彼女はそれを

やんわり断った。その代わり、

絢辻「私が橘君にあげたメロンパンの見返りを求めるわけじゃないんだけど、これから私の家で

一緒に勉強しない? なんていうかもう少し橘君と一緒にいたいなあって。あ、ちなみに家には

今夜家族のみんなは遅くなるみたいだから、それまであたし以外いないの。一人じゃ淋しいから

一緒に来てくれないかな? もちろん、それなりのおもてなしはするわ」

橘(絢辻さんの家にだってー! しかも家族は遅くなるって言うから、絢辻さんと二人きり

じゃないか。お、落ち着け。あくまで紳士として)

ダキッ

絢辻「お願い今夜は一緒にいて//」

橘(ああああやつじさん! それは何だか誤解を招く発言だとおもわれ、

ええい、どうにでもなれ!)

僕は彼女と一緒に家に行くことにした。黒辻さんの存在が少しきになったけど、そのときは

そのとき何とかしよう!

それにしても今の彼女(白辻さんとでもいうべきか)は、以前の絢辻さんだったらとても

考えられない言動を取るなあ。以前の彼女が僕に向ける笑顔は天使のような少し悪魔の笑顔を

してたのに、今は天使そのものだよ。

18 : :2012/07/04(水) 05:20:46.65 ID:WPhllUuW0

絢辻さんの家の前

縁「詞ちゃん!待ってたわ。あら、橘君もいるじゃない。」

絢辻「お姉ちゃん、今日は遅くなるんじゃなかったの?」

縁「急な話なんだけどお父さんとお母さんが仕事の関係でしばらく家を留守にするみたいなの。そして私も大学の関係でしばらくの間、遠い所にいくことになったの。どっちも急に決まったことだから、それを詞ちゃんに伝えようと思って急いで戻ってきたのよ。」

絢辻「…ふーん、そうなんだ。みんなしばらくいないんだ。」

橘(絢辻さん、ちょっと淋しそうな顔してるな。いつも自分の家族の話題に関して苦手にしてた感じをしてたから、こんな表情になるのに少し驚きだな。家にいるときは一人でいる方がまだ落ち着くみたいなことも以前言ってたし)

縁「詞ちゃん一人でお留守番ってことになるけど、家に女の子一人にさせるのはいろいろと不安があるわよねえ、誰か詞ちゃんと一緒にいてくれる人がいればいいんだけど…あら、そういえば橘君がいるじゃない。」

橘「へ?」

縁「詞ちゃんと一緒にしばらくこの家に住んでくれないかしら?」

橘「な、何言ってるんですか!? ひとつ屋根の下にお、お、おとこと一緒に年頃のお、お、おんなの子が住むなんて!」

絢辻「橘君、あたし一人になりたくない」

橘「そう言っても、僕の親が流石に許可しない…って、そういえば僕の家もしばらくの間、両親がいないんだよな。妹はいるけど。」

縁「あら、なら橘君の家に住んでもらえばいいじゃない。」

橘「いや、でも…」

絢辻「橘君! あたし、橘くんと妹さんには迷惑かけないようにするから。それから橘君の家の家事とかも手伝うわ。橘君が望むならあなたの言うことも何でも聞くわ。だからお願い。私を一人にしないで!」

橘(あ、絢辻さん…元々絢辻さんの家に勉強しに来た筈なのにどうしててこうなった。今の絢辻さんってやっぱり以前の絢辻さんじゃないんだよなあ。普段なら自分の不安をあまり他人に見せる人じゃないのに。今はその不安を隠さないで僕を頼ろうとしてる。こんなに一人になることを恐れているらしくない彼女を、たしかに僕も一人にさせられないなあ。)

橘「ダメ元で美也に聞いてみるよ。あいつ、今はもう家に帰ってると思うから。絢辻さんのお姉さん、電話借りてもいいですか?」

絢辻さんのお姉さんはいいよ、いいよと二つ返事で電話を借してくれた。僕の家に電話をかけると、美也がすぐさま出た。美也の知らない女の人をしばらく泊めるなんて許さないだろうなあと思いつつ、絢辻さんの事情を話した上でお願いした。

美也『いいよ。うちのこと手伝ってくれるんなら。それに困ったときはお互い助け合いだもんね。にっしししし』

あっさり、美也は承諾してくれた。

その後、僕は絢辻さんの外泊用の荷物、勉強道具などを運ぶのを手伝い、二人で僕の家へと向かった。
19 : :2012/07/04(水) 05:22:44.12 ID:WPhllUuW0
こんな弱々しい絢辻さんって需要あるかな?
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 08:19:36.77 ID:JlsuDyMSO
いいゾ〜これ
21 : :2012/07/04(水) 22:02:11.36 ID:WPhllUuW0

橘家


絢辻「今日からしばらくお邪魔させていただきます。よろしくね。橘君、妹さん」

美也「そこまで畏まらなくていいよ。絢辻先輩。少なくともお兄ちゃんには。ただ、この家の家事はしっかりやってもらうのだ。家主代行として命令させてもらうのだ。小姑のようにコキ使うから覚悟するのだ」

橘「こら美也、感じの悪いことを言うんじゃない。それでもって、絢辻さんはお前の先輩なんだから上から目線になるんじゃない。後、お前が家主代行なんて冗談は間違っても言うな。ロクなことがなさそうだ。」

美也「なにおー」

絢辻「気にしないで橘君。あたしの無茶なことを妹さんは許してくれたんだから」

美也「妹さんは他人行儀過ぎるのだ。一緒に住むんだからみゃーのことは美也でいいのだ。にっしっしっしし」

絢辻「そう、なら美也ちゃんって呼ばせてもらうわね。美也ちゃん、早速だけど、ここに来る途中、スーパーに寄って買い物をしてきたの。だから、今日の夕食を作ろうと思うんだけどいいかしら?」

美也「それならみゃーも手伝ってやるのだ!」

橘「こら美也。それは絢辻さんにとても迷惑だろ! お前は料理の隠し味に変な物入れようとするから、やらなくていい。僕と絢辻さんに任せておけ」

美也「さっきからこの家主代行に突っかかて何なのさ。この馬鹿にい…お兄ちゃん」

絢辻(二人共いがみ合ってはいるけど、本当は仲良いんだろうな。それにくらべてあたしはお姉ちゃんにつまらない劣等感を感じて…。橘君達が羨ましいな)
22 : :2012/07/04(水) 23:49:06.89 ID:WPhllUuW0

僕は絢辻さんと一緒に夕食を作った。彼女はあまり料理はしないというが、たまに僕が味音痴な美也の代わりに作るもの以上に丁寧でこっちが参考にしたいくらいの腕前があった。

橘(絢辻さんの手料理なんて何気に初めてだよな)

以前、彼女と一緒に昼食を食べたことがあった。彼女はそのとき自分の弁当とおにぎりを持ってきてはいたのだが、その際、彼女自身が作った料理はどれなのかクイズを出された。僕は弁当のおかずのどれかを答えたがハズレだった。後に彼女が言うには自分で作ったのはおにぎりだという。弁当は誰が作ったのかはわからなかった。そういえば彼女はあのとき弁当は僕にあげて、彼女自身はおにぎりだけしか食べていなかった。

橘「絢辻さんって料理も上手いんだね」

絢辻「…一人でいるときは自分で作ってたからそれなりには。橘君だって料理できるじゃない」

橘「美也の奴が味音痴だからさ、反動でそうなったんだよ」

美也「こらー聞こえてるぞ」

橘「美也、いたのか」

美也「夕食を食べてるとき、嫌味な小姑の様にネチネチ言ってやる。」

橘「お前はまたそんなことを。そういえば、美也が小姑なら絢辻さんはお嫁さん、僕はその夫ってなるのかな?」

ゴトッ

橘「絢辻さん、大丈夫!? 野菜落としたよ」

絢辻「ご、ゴメンネ。今、野菜を洗い直すわね//」

橘(心なしか顔が赤い気がする)
「いったい、どうしたのかな?」

美也「いや、普通わかるでしょ」

23 : :2012/07/05(木) 00:36:42.31 ID:8IGn8/4q0

夕食を3人で食べた後、それぞれ風呂に入り、上がった後は適当にくつろいでいた。僕と美也でリビングでテレビを見ていると絢辻さんが学校の教科書を持ってきて近付いてきた。

絢辻「ねえ、橘君。今日元々やる予定だった勉強を今から一緒にやらない? 美也ちゃんも一緒にどう?」

絢辻さんの勉強の教え方は上手だし、彼女のおかげで僕の成績も上がってきたので僕は快く頷いた。美也は面倒くさそうにな顔をしていたけど、絢辻さんの勉強は為になるぞと話すと少し考えた後、「わかった」と言い、勉強道具を持って来た。

美也「教わられてやるのだ」

僕たちは他愛の無い会話を話しながら勉強をした。

美也「ふあーー。もう寝ようよ」

絢辻「そうね、もう遅いもんね。勉強はここまでにしましょうか」

橘「そうだねじゃあ、寝よう。お休み。」

僕と美也は自分の部屋へ戻ることにした。絢辻さんは両親の部屋で寝ることになった。別にいいよね? 父さん、母さん?


自室


ワンワンワン、ワオーン

橘(やけに犬の鳴き声が五月蝿いな)

トントン

橘「? はーい」

絢辻「橘君」

橘「絢辻さん、どうしたの?」

絢辻「何だか怖くて眠れなくて。外から犬の鳴き声と・・・女の人の悲鳴が聞こえた気がするの」

橘(絢辻さんも聞こえてたのか、それにしても悲鳴?)

絢辻「お願い、今日は一緒にここにいさせて」

橘「あ、絢辻さん! それはいくらなんでも」

絢辻「私を橘君の好きにしてくれてもいいから。お願い、一人にしないで!!」

橘(好きにしていいって(;゚Д゚)! お宝本のようなこともしていいってことなのか? いや、そうじゃなくて!)

橘「だ、駄目だよ絢辻さん。好きでもない男の部屋で一緒に寝るなんて」

絢辻「馬鹿! 橘くんは全然分かってない! あたしがここにきたのは橘君のことが…」


一方その頃


ワンワンワン、ワオーン

美也(どこの野良犬〜? 五月蝿くて眠れやしないよ。トイレに行ってこよう)

シャー

美也(ふう、すっきりした。あれ、あれは絢辻先輩? にいにの部屋に入っていく。……まさかにいに、絢辻さんを住まわせてることをいいことに先輩に何かエッチなことを要求しようとしてるな。よし、ちょっと懲らしめてやる)
24 : :2012/07/05(木) 01:12:17.46 ID:8IGn8/4q0
自室


絢辻「あたしがここにきたのは橘君のことが…」

パチン

橘「何だ部屋の電気が消えたぞ」

絢辻「橘君怖い!」ダキッガシッドサッ

橘(あああああやつじさん、僕を押し倒して…、絢辻さんの胸が僕の胸に当たって…すごくやわらかさを感じる。それに絢辻さんのさっきお風呂からあがったときの石鹸とシャンプーの匂いと、あああやつじさんの匂いが混ざって何だか僕、おかしくなりそう。し、紳士として冷静に、冷静に……出来ない!)

ムクッドサッ

絢辻「た、橘君//」

橘(しまった。逆に押し倒してしまった。これはもう言い訳ができ…)

絢辻「橘君、あたしいいよ// 橘君なら安心できるし、怖さを紛らわせてくれそうだから。そ、そのあたし初めてだからやさしくしてね////」

橘(ウオー、サヨナラ僕の紳士!)

???「ウガー!!」

絢辻「キャーッ!!」

橘「うわー! って美也か! 何なんだせっかくいいところだったのに」

美也「何がいいところなのさ! 完全に、にいに絢辻先輩を押し倒そうとしてたじゃん! 後少し遅かったら、にいに絢辻先輩に取り返しのつかないことしようとしてたじゃん! だからみゃーは、にいにの部屋の電気のブレーカーを落とし脅かしに来たのだ! にっしっしっしし」

橘「電気が消えたのはお前の仕業か! それをいうならお前のせいで僕の中の紳士も部屋の電気と一緒に消えそうにったよ! というか、絢辻さんまで脅かしてどうするんだ! あ、そうだ絢辻さん、大丈夫?」

絢辻「イヤーーーーーーーー」

パッパパパパパッ

美也「何!? この目に優しくなさそうな青い光の点滅は!」

橘「まさか!」

シュー

橘「あ、絢辻さん? 大丈夫?」ソーッ

バシッ

黒辻「触んじゃないわよ、この変態! それから私の名前は黒辻よ!!」
25 : :2012/07/05(木) 23:19:03.30 ID:8IGn8/4q0

黒辻「ねえあんた、さっき私に何しようとしたんだあぁぁぁ」

橘「え? いや、あれはどっちかっていうと絢辻さんの方から」ドン

橘(か、壁に少しヒビが…)

黒辻「黒辻よ。あんな弱虫で臆病女と一緒にしないで」

美也「ちょっと先輩、壁を強く殴らないでよ。家を壊す気ですか!」

黒辻「そういえばアンタも随分変なちょっかいだしてたわよねぇぇぇ。兄妹揃ってたっぷり躾けないといけないわねえ」

橘・美也(うわ〜 目がやばい〜〜)

僕と美也はふたり揃って黒辻さんの説教をしばらく聞かされた。彼女の言う言葉は歯に衣着せぬストレートな言い方だった。だからなのかあまり時間はかからず、彼女は言いたいことを言い終えたら

黒辻「ていうか、こんな話しするだけ時間の無駄ね。眠いし。いい?あんた達、次に変なことしたらその体に躾けてやるわ。じゃあね。」

橘「あ、ちょっと待ってよ! あや…いや、黒辻さん。」

黒辻「くだらないこっとだったらパンチ一発よ」

橘「今日は遅いからここに泊まるしかないけど、その…絢辻さんの方は自分の家の人がいない間もここに泊まるつもりだったんだ。黒辻さん、君が表に出ているときはその辺はどうするの?」

黒辻「……あんな胸糞悪い人達がいた家に戻るなんてまっぴらごめんよ。だから私もしばらくここにいるわ。でも、私が居候だからって言って調子に乗ったことはしないでね。お休み」バタン

美也「な〜にあれ。住まわせてもらってるのにあの態度。でも絢辻先輩、急に態度変わった感じだけどどうしたのかなあ? にいに何か知ってるの? 黒辻さんとか、表に出てるとか変なこと言ってたよね?」

橘「そうだな。美也には話す必要があるな」

僕は絢辻さん、と黒辻さんの事情について美也に話した。美也は信じられないっといった表情で僕の顔を見ていた。

美也「全く〜、そんな話し聞いてなかったよ。つまり今の絢辻先輩って二重人格みたいなことになってんの?」

橘「そうなんだ。だから何だかほっとけないんだよ。絢辻さんの一つの体に二人?の性格がとても違うからあやふやな感じでさ誰かが見てないといけないかなって思ってさ。」

美也「もお〜、にいにはお人好しだなあ。みゃ〜は黒辻さんがいても反対しないよ。黒辻さんの方はともかく、おいしい夕食を作ってくれて、しかもとてもわかりやすい勉強を教えてくれた絢辻先輩にはみゃ〜は恩を感じてるから」

橘「ありがとう美也。美也も出来れば今の絢辻さん達を見守ってくれ」

美也「合点承知の助なのだ! ところでにいに?」

橘「何だ?」

美也「今の絢辻先輩と黒辻さんの性格は良く分かったけどさ、以前の絢辻先輩ってどんな人だったの?」

橘「…絢辻さんは裏表のない素敵な人…だったよ。」

美也「何それ? まあ、今のあの二人にしても自分で思ってることがすごく分かりやすいから以前と変わらないってことなのか。ふあ〜それにしても話し込んじゃったね。そろそろみゃーも寝るよ。お休み〜」バタン

橘(確かに今のあの二人はストレートに感情をぶつけている気がする。黒辻さんは僕だけでなく、美也に対してもあの性格を隠さなかった。とても以前の天下無敵の仮面優等生とは思えない程に…)
26 : :2012/07/06(金) 01:23:21.40 ID:69CVH8Ab0


翌朝


チュンチュン


橘「ん もう朝か。でもまだ眠いからお休み」


???「二度寝しないであなたも朝の家事を手伝いなさい」バサッ

橘「おい美也、布団とるなよ。って、あや・・・じゃなくて黒辻さん!?」

黒辻「キッチンで待ってるわ。一分で来なさい。遅れたら10秒ごとにグーパンするわよ」

橘「いい行きます。すぐ行きます」


キッチン


美也「おはよーにいに」

橘「何だ美也も起きてたのか」

美也「黒辻さんに起こされたんだよ。みゃーも朝食作るの手伝えってさ」

橘「なんだって! 黒辻さんそれは何の冗談なの!?」

黒辻「冗談なんかじゃないわ。昨日彼女は夕食を作らなかったんだから今日は手伝ってもらうわ」

橘「でも、美也は料理下手くそだよ」

美也「失礼な。みゃーだってやるときはやるの!」

黒辻「私が見てるから心配ないわ。ねえ純一、私達3人で暮らすのに一人だけ食事を作らないことほど不公平なことはないわ。だから彼女にはまともに作れるように私が徹底的に叩き込むの。それは彼女の将来の為でもあるわ」

美也「絶対にいにより美味しくてギャフンと言わせるようなやつ作るんだから」

黒辻「違う意味でギャフンとならないようにね。さあ美也、いくわよ」

美也「にゃ〜!」

橘(何気に僕も美也も呼び捨てにされてる)


美也は黒辻さんの厳しい指導を受けながらも何とか朝食を作るのだった。


橘「へえー、なかなかやるじゃないか美也」

美也「みゃーだってやればできるもん」

黒辻「美也、隠し味といって味噌汁に砂糖と生姜を入れたりしないでね。後、調理中の無駄な動作が目立つわ。そつなく動いて」

黒辻「さ、食べ終わったら早く片付けて学校に行く準備をしなさい」

橘(黒辻さん、意外と面倒見がいいなあ)

黒辻「勘違いしないでね。あなたたちがしっかりしてもらわないと私の仕事が無駄に増えるだけだから言ってるんだからね。ま、一応居候の身でもあるからもだけど」


そして僕達はいつもの遅刻ギリギリの時間ではなく、余裕をもって登校するのだった。
27 : :2012/07/07(土) 00:18:43.45 ID:te0lhLqD0

校門にて


栗生「あら橘君? いつも遅刻するか、ぎりぎりのどっちかのあなたがこんな早い時間に登校なんて珍しいわね。」


※補足:このアマガミの世界観ではキミキスの一部のキャラが橘さんと同年代で出てきます。


橘「まあ、たまには早く来ることもいいかなって思って」

栗生「いいかなじゃなくて、普通時間に余裕を持って登校するのが常識なのよ。あら、橘君の妹さんと絢辻さんも一緒じゃない」

美也「おはようなのだ〜」

黒辻「おはよう」

栗生「おはようお二人さん。妹さんはともかく絢辻さんも一緒に来てたのね」

黒辻「まあ、同じ家から一緒に来たからね」

栗生「なーんだ。それなら不思議じゃない…ってえぇぇぇーーーー!」

橘「黒辻さん! それはストレートに言い過ぎだよ」

栗生「不潔よ! 橘君と絢辻さんには後で風紀委員室に来てもらうわ」

黒辻「別にやましいことなんかしてないわ。美也が証人よ。それと風紀委員が学校の外に関することまでちょっかいは出さないでくれないかしら」

栗生「良くないわよ絢辻さん! あなた達は学校の中でいかがわしい男女の付き合いをしてるって噂があるのよ! そこの橘くんは変態で有名だし、社会に出てたらわいせつ行為で数え切れないくらい逮捕されててもおかしくないのよ! 男女二人の高校生が一緒に住んでるなんて周りに知れたらあなたの評判、品位が下がるのよ!」

美也(にいに…みゃーはにいにの妹としてこれ程恥ずかしく思ったことはないよ…)

黒辻「私のことはあんたに関係ないわ。評判、品位なんて周りの人間が勝手につけたような評価を気にすることの方が、私にとってくだらないわ。話は終わりよ。それじゃ」

栗生「あ、待ちなさい」

橘(黒辻さん、行っちゃた。以前の絢辻さんはあれ程周りを気にして学校生活を送ってたのに)

栗生「妹さん、橘くんと絢辻さんは本当に何もしていないのね?」

美也「あ、はい。ちゃんと止めました。」

栗生「止・め・た〜?」

橘「あ、それはその」

栗生「ま、いいわ。確かにあなたたちが学校の外で何をしようとしなくても止める権利はないわ」

橘(ホッ 助かった)

「じゃあ栗生さん。僕たちももう行くね」

栗生「あ、待って! もう一つ聞きたいことがあるの!」

橘「何?」

栗生「昨日の夜、あなた達の家の周辺で何か変わったことはなかったかしら?」

橘「僕の家の周辺で? うーん、寝るとき犬が五月蝿かったくらいかな」

美也「そういえば、みゃーも五月蝿くて最初なかなか寝付けなかったよ」

栗生「!! ありがとう。引き止めてごめんね。もう行っていいわ」

橘「あ、うん」

橘(どうして昨夜の僕の家の周りのことをを栗生さんは聞いてきたんだろ? 何かあったのかな? そういえば犬が五月蝿いだけでなくて、昨日、僕の部屋に来た絢辻さんが)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

絢辻「何だか怖くて眠れなくて。外から犬の鳴き声と・・・女の人の悲鳴が聞こえた気がするの」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

橘(って、言ってたっけ。昨日の夜、僕の家の周りで何かあったのかな?)

28 : :2012/07/07(土) 14:56:34.84 ID:te0lhLqD0

美也「じゃあねにいに。黒辻さんのことよく見てたほうがいいよ」

橘「わかってる。じゃあ僕は自分の教室に行くから」


教室

数学の先生「教師に向かって何て口の訊き方をするんだ、絢辻!」

橘(何だ? 数学の先生が黒辻さんに怒鳴ってる?)

黒辻「同じことを言わせないで。先生が出した宿題くらい自分で集めろって言ってるだけよ。」

数学の先生「お前は学級委員だろう!」

黒辻「学級委員はクラスのまとめ役であっても、先生の雑用係なんかではありません。安くない学費を先生の給料に当ててるんですからこのくらいは自分でやりなさい。それが嫌ならそう言う意味でも面倒な宿題なんて出さないでください」

数学の先生「ぐぬぬぬぬー」

イイゾー アヤツジサン アノセンセイマエカラムカツイテタンダヨナー チョウシニノリヤガッテアノオヤジ キョウノアヤツジサンナンカチガウー  ざわざわ

黒辻「何あんた達調子に乗ってんの? 宿題を私に提出しなかったり、遅れた宿題は直接自分で出せばいいのに私に出すし、出さないときはその理由をこの教師に直接言わないで私にイチイチ言わせるし。そんなあんた達がこの教師を責めるのは筋違いよ」


しーーーーーーん


黒辻「しーんとなってるとこにもう一言いうけど、







自分のことは自分でやれ!!」
29 : :2012/07/07(土) 18:13:07.54 ID:te0lhLqD0

休み時間

橘「黒辻さんまずいよあれは」

黒辻「さっきのことでこのクラスの人達がどう思ったて私に関係ないわ。」

棚町「随分きついこと言ってくれるじゃない」

橘「薫」

黒辻「あら、提出物をいつも出さない人が何の用かしら?」

棚町「絢辻さん、今日はいつもと違うのね。いや、心の内はいつもそう思ってたの?」

橘「薫、今日の絢辻さんはいろいろ事情があってさ…」アセアセ

棚町「あんたは黙ってて。いやあたしが言いたいのは宿題のことは勿論、他にも今まで学級委員だからって絢辻さんにいろいろ押し付けてたからさ、その、今までごめんね」

橘(薫、わざわざその為に黒辻さんのとこに来たのか)

田中「絢辻さん。私もあの数学の先生が苦手で、関わりたくないからって理由で絢辻さんに伝言とかお願いしてた。ごめんなさい」

梅原「絢辻さん、俺も提出物とか出さなくて迷惑かけたよ。悪かった。ついでにいうと創設祭のことに関して一人で押し付けてたよな。いや、これに関しては大将と二人にだよな。本当に悪かった」

アヤツジサンオレモ アタシモ ザワザワ

黒辻「…何よみんな急に。わかってもらえればいいのよ別に。はい、この話はもうおしまい、こんなにみんなが集まってると何だか恥ずかしいんだから」

橘(ふうー、クラスのみんなの間に変な溝ができなくて良かったよ)
30 : :2012/07/07(土) 20:17:34.91 ID:te0lhLqD0

体育

一輝「A組B組との合同体育で何でサッカーじゃなくて、バレーなんだよ」

橘「つまんなさそうにしてるけどお前が体育でサッカーやると、僕達の方がおもしろくなくなるよ」

一輝「そりゃお前、かわいい女の子達が近くで見てると思うと、手加減してやりたくても出来ないんだよ」

橘「頭は悪くない、運動も出来る、サッカーに関しては同じ学年どころか、この学校一のエースのお前だったらモテモテなんだろ?」

一輝「それが女子の前で平気で下ネタ連発、学校のお宝本持ち込みがばれたりとかでそうでもないんだよ。風紀委員の栗生さんに何度お世話になったことか」

橘「とんだ変態じゃないか」

一輝「お前が言うか? お前の変態行為の方が俺の遥か斜め上いってるぞ。サッカーじゃお前に負けないけど、お前の変態ぶりには敵わないって思ってるぞ。お前の変態行為はある意味尊敬できるわ」

橘「失礼な! 僕はこれでも紳士なんだ!」

一輝「…水泳部の練習を暇さえあれば覗いてたり、森島先輩と飼い主と飼い犬ごっこやってるやつがよく言うよ。ところで女子のバレーはどうなってるかな? おお、うちのクラスの桜井さんは動くたびにあのはちきれん胸が動くな。お前んとこのA組は…何だアレ!! スゲー!!!」

橘「どうした?」

一輝「お前んとこの絢辻さんが司令塔になってチームのメンバーに的確に指示出してる。だからみんなの動きが活発だ。」

ピィィィーーーーーーー

「一セット終了! セットA組取得! A組、B組のチームメンバーはコートを交換してください」

一輝「凄いな。圧倒的な点差で勝ってる」


A組女子側


女子A「絢辻さんからサーブだね」

女子B「頑張って!」

黒辻「すぐ終わらせるわ」


男子側


一輝「すげー! 絢辻さん一人で強烈なサーブ打ってるぞ! あのサーブは男でも受け止められるかわからないぞ! 点数がガバガバ入って…あ、アウトライン超えた。それにしたって凄すぎだろ…」

橘(ハハ…黒辻さん、人格変わるだけでこうも違うのか。以前の絢辻さんよりパワーアップしてるよね…)

31 : :2012/07/07(土) 20:34:24.70 ID:te0lhLqD0

「ゲームセット! 勝者A組!!」

女子A「やったー」

女子B「絢辻さん凄いー」

棚町「…あんたは敵に回さないほういいってことはよくわかったわ」

黒辻「こんな子供遊びの球技、早く終わらせたかっただけよ」

B組女子A「悔しい私バレー部なのに手も足も出なかった」

B組女子B「仕方ないよ。でもあの強さは反則だわ」

B組女子A「せめてCがいれば違ったかもしれないのに」

B組女子B「Cちゃんどうしちゃったんだろ? 昨日まで特に変わったことなかったのに。部活が終わってから、河原の辺りで地元の体育館でも自主練するからって言って別れたけど。頑張りすぎて疲れちゃったのかな?」

黒辻「……」
32 : :2012/07/07(土) 22:13:16.93 ID:te0lhLqD0


昼休み


黒辻「やっと終わったわー。全く創設祭のことで昼休みの半分も使って話し合いするなんて。余った時間は保健室で昼寝でもしたいっていうのに」

橘「…創設祭実行委員長の絢辻さんが自分でこの日にスケジュールを立ててたんだよ。それから、保健室は別にただの寝るとこじゃないよ」

黒辻「さっきの体育で疲れたのよ。はあ、あの猫被り女もこんな『自分一人でやるわ!』みたいなスケジュール立てるなんて。全校生徒と教師達をフルに使えばこんなキツキツのスケジュールにならないってのに」

橘「…まるで他人事のように言うんだね。君と絢辻さんとで一体何が違うの?」

黒辻「私にも今のこの自分が何なのかわからないわ。『私』がちゃんと自我、意識を持つようになったのもここ最近、キビトランドでのデートのときくらいからよ」

橘(あの、河原で現れたときじゃないのか)

黒辻「ただこれだけは言える。私はあの猫被り女とは違う存在よ。勿論、怖がり絢辻とも違う」

橘「怖がり絢辻さんっていうと、昨日夕食を作ってくれたり、僕と美也に勉強を教えてくれた絢辻さんのこと?」

黒辻「そうよ。っていうか、『絢辻』だと猫被り女とややこしいから怖がりの方は『白辻』って私は呼ばせてもらう。」

橘「う、うん」

黒辻「さっきも話した通り、私はここ最近になって存在するようになった。そして、私はあんたも知ってる人前ではいい顔して、裏では一人で文句を垂れたり、ゴミ箱に八つ当たりしたり、自分の不満を黒い手帳に書き殴る『絢辻』とは違う。まあ、手帳はあいつ自身があんたの前で燃やしたけど」

橘「あの手帳、そんなことが書かれてたんだ」

黒辻「あの文句、直接言えばいいって言うのに。話を戻すわ。『絢辻』、『白辻』とは違うけど、二人の言動、『絢辻』のそのとき思ったことの記憶はあるの。尤も、『絢辻』の記憶は全部知ってるわけじゃない。さっき言った手帳とか、彼女の負の記憶に関したことだけ覚えてるの。ま、『絢辻』自身はほとんどが日常のほとんどが負の記憶ばっかりだったわ。しかも小さな頃からね。あそこまで負の記憶で一杯だと楽しいって思えたことなんて、ないんじゃないかしら」

橘(絢辻さん…そこまで君は一人で悩んで、抱えて、日常を送ってきたんだ。僕は君の傍にいてどうして、気付けなかったんだ)

黒辻「まあ、創設祭実行委員の仕事をするようになってからは少し『絢辻』の負の記憶が少なくなってたかな。いや、あんたが創設祭の準備を手伝うようになってからか。私の話はこれで終わりよ。早くこのプリントを先生に私に行くわよ。」
33 : [sage]:2012/07/07(土) 22:14:50.92 ID:te0lhLqD0
レスがない…

これ見てる人いる?
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/07(土) 22:53:21.06 ID:VzmZFW5zo
見てる見てる〜
安心しておくれ。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/08(日) 00:36:17.25 ID:GTezJzURo
面白いぞ。
36 : [sage]:2012/07/08(日) 04:51:01.90 ID:pgpTN3ae0
>>34、35

ありがとうございます
37 : :2012/07/08(日) 05:11:46.42 ID:pgpTN3ae0


独白


黒辻(『絢辻』は小さな頃からキビトランドのデートの日までいろんな意味での努力を怠らなかった。…何の為にかは大体察しがつく。でも『絢辻』がやってことは強そうに生きてただけに思うわ。強そうに生きてくよりも、本当に強くなる為には『絢辻』が根本的に抱えてた問題から逃げないことが大事なのに、彼女はそれに関してだけは逃げた。私は違う。強そうに生きる為の仮面で顔を隠した『絢辻』には絶対ならない。本当に強くなるために自分の目の前に来る問題から私はにげたりなんかしない。)
38 : :2012/07/08(日) 06:13:02.82 ID:pgpTN3ae0

職員室前


???「どうしてわかってくれないんですか!」

橘(この声は栗生さんだ。どうしたのかな?)

栗生「私の友達は確かに襲われてたんです! 橘君の家の近くで!」

生徒指導の先生「栗生、お前のそれは目撃証言じゃなく、橘が聞いたってだけの話だろ。それにお前の話が本当だとしても、わざわざそんなことを全校生徒に注意を呼びかけるなんて出来るわけがない。うちの生徒が帰宅途中に犬の集団に襲われてたなんて」

栗生「先生がそんな態度だから、彼女は今日の欠席の理由を打ち明けなかったんです。彼女は…紗弥加ちゃんは泣きながら私に朝、電話で話してくれたのに。たくさんの犬に襲われたなんて打ち明けづらいことを私に話してくれたのに…」

生徒指導の先生「どうせ、犬達を挑発するような真似でもしたんだろ。それじゃあ先生は忙しいからこれで」

栗生「あ、待ってください先生。行っちゃた。この問題を放置して、また次の被害者がでたらどうするのよ」

黒辻「その話、詳しく教えてもらえないかしら」

橘「黒辻さん!」

栗生「あ、あなた達! 今の話をまさか」

橘「その、ごめん」

栗生「迂闊だったわ。聞かれてたなんて。話すことはないわ。早くどこかに言って」

黒辻「犬の声なら私も聞いたわ。それと、女性と思われる悲鳴もね」

栗生「! 橘君。今朝、悲鳴のことまで言ってなかったじゃない!」

橘「ご、ごめん。悲鳴は僕が直接聞いてたわけじゃなかったからさ」

黒辻「悲鳴は私だけが聞いてたのよ。彼を責める必要はないわ」

栗生「そうなの…でも、私は話すわけにはいかない。紗弥加ちゃんはその…男子に言いづらいことをされたらしいから。勿論、絢辻さん、あなたが同じ女だからって簡単に話すわけにはいかない。先生にだって被害の状況は詳しく言ってないわ。…私なに言ってるんだろ。勝手にしゃべりすぎたわ。お願いこのことは誰にも言わないでそれじゃ」タタタタタ

クルッ

栗生「橘君! あんまり女の子に変なことすると、傷つくことだってあるんだから! その変、よくわかってね」タタタタタ

橘(栗生さん…行っちゃった。まさか、昨日の夜そんなことがあったなんて…)



※補足:紗弥加=>31のCちゃんです。


39 : :2012/07/08(日) 10:03:59.65 ID:pgpTN3ae0

帰り道 河原


橘「栗生さんの言ってたこと、気になるよね。男に言えない襲われ方って何なんだろう。相手は犬なのに」

黒辻「犬を甘く見ないほうがいいわ。野生の犬は厳しい環境の中で孤独に生きなきゃいけないの。食べ物、寝る場所、他者からのストレス。そういったことをたった一匹で処理するのよ。そんな犬は人間に対してあまり可愛くないものよ」

橘「じゃあ、紗也加さんはそういう犬にちょっかいをだしたのかなあ?」

黒辻「そして、襲われた…その可能性を否定はできないけど栗生が言ってたわね。たくさんの犬に襲われたって。そして男子に言えない。犬に噛まれたくらいだったらそういう言い方するのは変よね」

橘「もしかして…おしっこかけられたとか。ほら絢辻さんだって前おしっこをかけられてたじゃない。その時絢辻さんは僕になかなか話そうとは」ガスっ 「いてっ」

黒辻「確かに一理あるわね。恥ずかしくて普通言わないわ。尤もそんなことで学校まで休んだりなんか私はしないけど。」

橘「痛いよ黒辻さん」

黒辻「あんたがくだらないこと言うからでしょ。いい、率直に言うけど被害者の彼女は犬に性的な被害を受けたってことよ」

橘「性的なこと!? だから栗生さんはあのとき振り向きざまに僕にあんなこと言ったのか」

黒辻「…性的な被害しかいってないのにそこから連想させて、よく栗生の言葉の意味を自分で理解したわね。多少あんたにも自覚があったのかしら?」

橘「え? いや、その」

黒辻「まあいいわ。話を戻すけど、おそらく彼女は犬にセクハラをされた。どの程度までされたかは想像がつかないけど、悲鳴を上げ、学校を休みたくなるほどのね。橘君、先に帰ってもいいわよ。私はこれからいろんな所を調べるから」

橘「えーー!? 黒辻さんもしかして解決しようとしてるの!?」

黒辻「私は目の前にふりかっかた謎を放置したくはないの。」

橘「でも危ないよ」

黒辻「うるさいわねえ。とにかく先に帰ってちょうだい」

ガシッ

橘「ダメだよ。絢辻さんの体は黒辻さんだけの体じゃないんだから。黒辻さんに何かあったら」

黒辻「その手を放して…キャ!!」

橘「うわ!?」

ドサッ

橘(うう、黒辻さんが僕の手を振り払おうとしたら二人共転んじゃったよ…ってまずい! 僕が黒辻さんを押し倒すような形で倒れてしまった)

黒辻「イタタタタ… !!  純一〜、あなたも私にセクハラ犬と同じことをしようとしてるのかなあ」

橘「ち、違うよ黒辻さんこれは…ん? 黒辻さんの手の辺りにトカゲがいる」

黒辻「トカゲ!?」

バッ!!

黒辻「イ、イヤアァァァァァーーーー」

パッパパパパパパ

橘(そうだ、絢辻さんって虫と爬虫類が苦手なんだっけ。って眩しい。この青い光…もしかして!?)

シューーーーーー

橘「『白辻』さん、『白辻』さん」

絢辻「橘君? トカゲはもういない?」

橘「やっぱり君は白辻さんなんだね。大丈夫。トカゲはさっきの青い光でどこかに行ったよ」

絢辻「そう、良かった。ねえ橘君。『白辻』は黒辻が以前のあたし?と区別する為につけた仮名だけど、あたしのことは今までと同じように絢辻って呼んでくれる?」

橘「わかったよ。絢辻さん。さ、一緒に帰ろ」

僕と絢辻さんは犬のことを調べることもなく、僕の家に帰ることにした。




40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/08(日) 16:58:21.27 ID:pgpTN3ae0

自宅前


橘(僕と美也の部屋が同じ方向にあって、絢辻さん、もとい、僕の両親の部屋、もとい、絢辻さんが寝てた部屋は僕たち兄妹の部屋とは反対側にあった。悲鳴は絢辻さんしか聞いていないから、絢辻さんの寝てた部屋側の外に紗弥加さんはいた筈だ。大体この辺りだと思うけど)

絢辻「橘君どうしたの? 家の周りをウロウロして。早く家の中に入りましょう? 美也ちゃんがお腹空かせて待ってるわ」

橘「調べてるんだよ。絢辻さんが悲鳴を聞いた辺りを」

絢辻「橘君まさか調べようとしてるの!? あなたが黒辻に危ないって自分で言ってたのに」

橘「いやいや、この家の周りだけだから」

絢辻「そう、なら良かった。あたし、橘君が深追いして危ない目にあったらって思うと不安で」

橘「はは、何だか心配してもらって逆に嬉しいなあ。すぐ終わるからね。一応自分の家の周りで変なことが起きてたみたいだからさ、放っておいて万が一に自分の家に被害が及んで絢辻さんと美也が危ない目にあうのは避けたいから、このくらいは調べようって思ったんだ」

絢辻「そういうことならあたしも橘君を手伝うわ」


僕たちは家の周りを調べた。


絢辻「橘君これ見て!」

絢辻さんが指を指す方向をみるとそこには短めの白い靴下があった。僕はそれに手を取る。

橘「スポーツソックスかな? 有名なスポーツ用品を販売してるロゴと、よく見ると歯型がある。」

絢辻「片方だけね。被害にあった女の子の靴下かしら。犬に無理やり靴下を…ねえ橘君もう辺りは暗いわ。早く家に入りましょう」

橘「そうだね」

僕達二人は家の中へはいった。




41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/08(日) 17:40:14.24 ID:pgpTN3ae0
美也「ねえ〜黒辻さん!って、絢辻先輩?に戻った?」

絢辻「まあ、黒辻が苦手なものを見たから彼女そのショックで引っ込んじゃった」

橘(あの強そうな黒辻さんでも、苦手なものは以前の『絢辻』さんと変わらないんだな)

絢辻「ところでなーに美也ちゃん?」

美也「今夜の夕食もみゃーと一緒に作って欲しいのだ」

絢辻「黒辻のことを気にしてるのかしら?」

美也「ウッ…それもあるけど、みゃーも料理をちゃんと作れるようになりたいの!! いつまでも出来ないからってお母さんやにいにに甘えることはしたくないの!」

絢辻「にいに?」

美也「あ、それは」

絢辻「あたしの前だからって自分のお兄ちゃんに呼び方に気を使う必要はないわよ美也ちゃん。あたしは変だと思わないし恥ずかしいことじゃないとわ。自然に気楽にしてればいいと思うわ。それでも、あたしの前だと恥ずかしいならそれでもいいと思うけど、それは美也ちゃんに悪いことしちゃったってこっちは思っちゃうわ」

美也「うー、絢辻先輩は別に悪くないよ。ただこの年で家族以外の前で「にいに」って呼ぶの恥ずかしくなってきたからさ。…でも、絢辻先輩の前だったら別にいいのかな。すごく優しいし、お兄…にいにと凄く仲良いから、将来的に美也のねえねになるかもだし」

絢辻「え、美也ちゃんそれは」//カアァァァァ

美也「……」//カアァァァァ

橘「夕食をそろそろ作ろっか。ん? 二人共何で顔が赤いの?」

美也「う、うるさい馬鹿にいに!! 馬鹿にいにはあっち行け!」

橘「おい、美也! 人前でにいにって呼ぶのは」

絢辻「た、橘君// 別にあたしは気にしないから美也ちゃんの好きに呼ばせてあげて。あたしもねえねになれるように頑張るから////」

橘「え? それはどういう」

美也「夕食はねえ…じゃなくて、絢辻先輩と一緒に作るから、にいには居間でテレビでも見てて!」バタン

橘(…追い出された。ま、美也も絢辻さんから真剣に料理を教わろうとしてるしいいか)
42 :1 [sage]:2012/07/08(日) 17:44:35.37 ID:pgpTN3ae0
>>41

描写修正。絢辻さんと美也の恥ずかしい会話部分を橘さんは自分で夕食を作ろうとしてて、たまたま聞いてなかったことにしてください。
43 :1 :2012/07/08(日) 19:43:22.39 ID:pgpTN3ae0

テレビ ワイワイガヤガヤ

橘(あんまりおもしろいのは放送されてないな。あの犬に関する手がかりはこの靴下だけか。この白い…靴下…)




絢辻「橘君〜♡、ごはんできたわよ〜♪ って…キャー何してるのよー」

橘「あ、絢辻さん!? あれ? 僕は一体何を!?」

絢辻「さっき拾った靴下を何クンクン嗅いでるのよー」

橘「いや、気づいてたら靴下の匂いを嗅ぎたくなっちゃって」

絢辻「もう〜。これは没収! あたしが一応、栗生さんに渡しておくわ。紗也加さんのであっても、そうじゃなくても歯型がある靴下なんていらないっていわれると思うけど!!」

橘「すみません」

絢辻「匂いなら…せめてあたしの匂いで我慢してよ//」

橘「うん、わかったよ。…って、え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!! いいの!?」

絢辻「料理しててちょっと油っぽいかもしれないけど、それで橘君の気が済むなら」

橘「それじゃ、遠慮なくいたただき、グヘッ」

美也「にいにが頂くのは絢辻先輩じゃなくて、ご飯でしょー」



僕達はご飯を3人で食べた後、風呂にそれぞれ入り、勉強をして、そして寝る時間がやってきた。


橘(今日は犬の鳴き声は聞こえない。一応家の周りの様子を見てこようかな。両親もいない今、男の僕がしっかりしないと)

コンコン

絢辻「橘君あたし。入ってもいい?」

橘「いいよ」

ガチャッ

橘「どうしたの?」
(絢辻さんの水色のパジャマ可愛い)

絢辻「昨日のことと、今日、栗生さんが話してたことが怖かったから。橘君の部屋で寝ていいかな?」

橘(また彼女は僕の中の紳士を殺そうと。でも、今日はちゃんと言わないとな)

橘「絢辻さん、怖かったら美也と一緒にいた方がいいよ。僕だと、逆に絢辻さんに何しちゃうかわからないし、ここは学校の外だけど、自分の心の中の風紀は守っておきたいからさ。僕達まだ高校生なんだよ」

絢辻「違うわ橘君。あたしたちは『もう』高校生なんだよ」

橘(…このやりとり、神社で雨宿りしたときにも似たようなことがあった気が…)

美也「やっぱり絢辻先輩ここにいた〜」

橘「美也! 今日は普通に来たんだな」

美也「そりゃあ、絢辻先輩を変に刺激して悪魔を降臨…じゃなくて、黒辻さんを怒らせたくないもん。」

橘「美也頼む。絢辻さんと一緒にいてくれないか」

美也「ん〜、それでもいいけど絢辻先輩はにいにと一緒にいたいんだよね」

絢辻 コクコク //

美也「仕方ない。みゃーもここで一緒に寝るから。にいにそれならいいでしょ」

橘「何言ってるんだお前!? 年頃の女の子と一緒に寝れるわけないだろ!」

絢辻「え、まさか橘君」

美也「にぃに、みゃーをそんな目で見てたの? 気色悪い〜」

橘「誰がお前のおこちゃま体型に変な気をおこすんだ」
44 :1 :2012/07/08(日) 20:01:55.60 ID:pgpTN3ae0

シャー シャー

美也「馬鹿にぃに。みゃーはもうにぃにのベットの端の方で寝るから。お休み!」

橘「あ、おい。寝ちゃったよ」

絢辻「橘君、美也ちゃんに言い過ぎよ。明日謝った方がいいわ。」

橘「別にいらないよ。寝るとケロッと忘れるやつだから」

絢辻「そんなこと言って根に持たれてても知らないわよ。まあ、あたし達も寝ましょう」

橘「…う、うん」//



川の字  美也−橘−絢辻



橘(あれ? 何で僕が真ん中なんだ?)

美也「zzz…にいに…にししししし…」スリスリ

絢辻「zzzあ、ダメよソコは…」フーッ

橘(あ、絢辻さん。耳に息を吹きかけないで〜。ダメだ。こっそりベッドから抜けて床に寝よう…)

だきっ ぎゅーーーーーー

橘(ふ、二人共ー、放してぇぇぇーー)

45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/08(日) 21:01:00.05 ID:n/wk5mmto
良いペースだな
46 :1 :2012/07/08(日) 21:42:50.15 ID:pgpTN3ae0
チュンチュン


橘(昨日はよく眠れなかった)

絢辻(昨日は橘君と一緒に寝ちゃった//)

美也(昨日はにぃにと一緒に久しぶりに寝ちゃった//)


通学路

梅原「おーす大将! 今日は早いな」

一輝「よう橘! 今日の体育は合同サッカーだぜ。ゴールネットは勿論、近くで見てるであろうかわいい女の子の心のネットにもゴールを決めるぜ! おう? 美弥ちゃんと絢辻さんも一緒か。二人共おはよう。絢辻さん昨日のバレー凄かったぜ」

絢辻「ありがとう。真田君」ニコッ

梅原「今日の絢辻さん、少し色っぽいぜ」

一輝「それに比べて橘、お前はなんか少しやつれてるな」

橘(ただ、文字通り一緒に寝てただけなのに、お宝本に載ってるようなことはしてないのに絢辻さんなんで大人の階段を登ったみたいな表情してるんだろ?)

謎の女性「君たち〜ちょっといいかな?」

橘(誰だろう?)

謎の女性「初めまして、私は輝日東大学・新聞部に所属してる鏡(かがみ)遥(はるか)っていうの。よろしくねぇー」

橘・梅原・一輝(綺麗な人だなあ(//∇//))


絢辻・美也「」 イラッ


絢辻「すいませんけどあたし達急いでるんで」

美也「ホラ、行くよにぃに!」

橘「うわ、絢辻さん、美也、二人共引っ張らないで!!」

梅原「大将、俺達は後でいくからなぁ!」

一輝「お前の分までしっかりおしゃべりしてるからなあ!!」




遥「絢辻?…」

47 :1 :2012/07/08(日) 22:05:20.34 ID:pgpTN3ae0

校門前

栗生「あら、橘君達じゃない。おはよう」

女生徒「…おはよう」

橘「おはよう。栗生さん今日は校門前で風紀委員の仕事はしてないんだね。えっと君は」

女生徒「…橘君ですよね。いろいろ有名な… 恵(めぐむ)や同じクラスの桜井さんからあなたのことはいろいろ聞いています」

橘(僕って有名だったのか)

栗生「悪い意味でよ。悪い意味で! 紹介するわね。私の友達の紗也加よ」

橘・絢辻(!!)

橘「絢辻さんまさか」ヒソヒソ

絢辻「ええ、そうね」ヒソヒソ

絢辻「栗生さん、紗也加さん場所を移してもらってもいいかしら?」
48 :1 :2012/07/08(日) 23:36:04.71 ID:pgpTN3ae0
橘「美也は先に行っててくれ」

美也「え! お兄ちゃん、絢辻先輩、どこに行くの!」


ポンプ小屋

絢辻「ここなら誰にも聞かれないわね」

栗生「あなた達もしかして、昨日のことは忘れなさいって言ったでしょ!」

紗也加「知ってるんですね。昨日私が犬に襲われたこと」チラッ

栗生「わ、私は何も」アセアセ

橘「栗生さんを責めないで。僕達が勝手に調べてることだから」

紗也加「はあ、まあいいです。大方めぐむがでかい声出して先生と言い争ったの橘君達に聞かれてたのね」

栗生 ギクッ

紗也加「めぐむ、気にしてないわ。どこまで知ってるかは知らないけど、私は一昨日の市の体育館でバレーボールの自主連の帰り道に突然、3匹の犬に襲われたの。橘君の家って××地区よね。桜井さんから聞いたことがあるわ。あの辺りで襲われたの」

絢辻「やっぱりあの悲鳴は聞き間違いじゃなかったのね」

紗也加「確かに思わず叫んだわね。ただ、どうして絢辻さんも知ってるの?」

絢辻「あ、あたしもその地区で帰り道に女の人の様な悲鳴聞いたから。怖くて慌てて逃げちゃった。ごめんなさい。」

栗生(やけに今日はおとなしいわね。昨日あんなにハッキリ橘君の家で同棲してるって言ってたのに)

紗也加「仕方ないわ。来なくてよかったのよ。足を舐められるわ、靴下脱がされるわ、スカートの中に顔を突っ込まれるわ。何匹もの犬にされたんだから」

橘(…そこまでだったら、絢辻さんもされてたな)

紗也加「そうこうされてる内に尻餅付いちゃって、…一匹の犬に馬乗りの状態にされたの」

絢辻(…犬にそこまでされると流石に恥ずかしいわね)

紗也加「私、必死に抵抗して自分で持ってた私専用のバレーボールで馬乗りになった犬の頭を何度も殴ったの。犬はそれでも怯まなかったんだけど、突然後ろを振り向いて、3匹ともどこかに行っちゃたの。それから私は慌ててその場から逃げたの。次の日、私は通学中にまたあの犬達に会うんじゃないかって思って、怖くて学校に行けなかった。襲わられた内容がとても恥ずかしいから、めぐむに早朝に電話して相談したの」

絢辻「そうだったの。ごめんね。言いづらいこと聞いちゃって」

紗也加「…今日も本当は怖かったんだけど、めぐむが昨日の夜、私の家の周辺をパトロールしてくれて、家に来て励ましてくれて、今朝付き添ってくれたから、何とか登校出来るようになったの。一応自分でも少しは落ち着いて話せるようにもなったわ」

橘「話してくれてありがとう紗也加さん。ところで辛いことを蒸し返すんだけど君は襲われた時、靴下を片方脱いだまま逃げたかな?」

紗也加「ええ、そうよ」

絢辻「もしかしてこれ?」

絢辻さんは昨日、僕の家の近辺に落ちていた片方のスポーツソックスを見せた。

紗也加「ええ、そうよ。地元の体育館で自主練した後に履き替えたやつね」

橘「自主練の後? 普通は激しい運動の前に履き替えない?」

紗也加「私、激しい運動をした後の湿った感じの靴下をいつまでも履いていたくないからいつも何足か学校に持ってきてるの。普段も靴下は短めのスポーツソックスを履いてるわ」

絢辻「そう。この靴下どうすればいいかな?」

紗也加「申し訳ないんだけど捨ててもらっていいかな? 何だか気持ち悪いから」

栗生「もう、そろそろ朝のHRの時間よ。早く学校に戻りましょう」
49 :1 [sage]:2012/07/08(日) 23:37:43.29 ID:pgpTN3ae0
>>45
ありがとうございます。ただ、今日はここまでにします。
50 :1 :2012/07/09(月) 22:27:29.84 ID:PiTPgx5g0

2−A教室


女子A「昨日、とっても怖かったー」

女子B「怖かったよねーあの犬達」

橘(犬だって!!)

絢辻「犬がどうかしたの? その話聞かせてもらっていいかな」

女子A「あ、絢辻さん、橘君おはよう。一緒に登校して来たの? 仲いいねえ」

女子B「二人はどこまで進展した仲なのかなあ」

絢辻「もう//、そういうのはいいから。教えてくれる」

女子A「昨日、学校が終わった後、Bと街の繁華街の方に行って遊びにってたの。」

女子B「結構遅くまで遊んだよね」

女子A「すっかり暗くなった夜道を二人で帰ってたら、突然犬の鳴き声が聞こえてきて、3匹の犬が私達二人の方に向かってきたの」

女子B「二人で最初は逃げようとしたけど追いつかれちゃって」

女子A「私が来てたコートに噛み付いてきたの」

絢辻「噛み付かれたの!?」

女子A「ええ、コートの上からだったから幸い怪我とかはなかったけど」

橘「その後どうしたの?」

女子A「Bと一緒に抵抗してたんだけど振り切れなくて、ダメだと思ってたらたまたま通りかかった女の人とイケメンな男の人が助けに来てくれて追い払ってくれたの」

絢辻「女の人とイ、イケメンの男の人?」

橘(あれ、絢辻さんその男の人が気になってる? あれ何だろうこのモヤモヤした気持ち?)

女子A「そう! イケメンだったの!! いいなあ、私もああいうイケメンの彼氏欲しい。でも、女の人と一緒だったから、あの二人、恋人同士だったのかなあ?」

女子B「あの男の人、女の人に向かって姉ちゃんって呼んでたたから姉弟じゃないの?」

絢辻「それでその人達はどうしたのかしら?」

女子A「ちょっと話はしたんだけど。急ぎの用があったみたいで二人共、行ちゃった。名前聞きそびれたなあ」

女子B「それにしてもあの犬達、今思うとAだけ狙ってた感じだったよね」

女子A「よくよく考えてみるとそうね。あーあ、せっかくお小遣いはたいて買ったお気に入りのコート、歯型とか付いてもう着れないよ。」

女子B「ジュース持ってた小学生くらいの男の子とぶつかったりして、シミもついちゃったしね」

絢辻(Aちゃんは噛まれただけで、エッチなことはされてないのね。そして一緒にいたBちゃんは無傷。何だか妙ね)
51 :1 :2012/07/09(月) 23:22:21.13 ID:PiTPgx5g0

絢辻「橘君。この犬が人を襲う事件についてどう思う」

橘「野生の犬は変に刺激すると人を襲うこともあるみたいなことを黒辻さんは言ってたけど、紗也加さんにしてもAさん達にしても自分からは何もしてないのに突然襲われたんだよね。」

絢辻「紗也加さんはエッチな襲われ方をされて、Aさんは噛まれただけ、Bさんは特に何もされてない」

橘「Bさんはたまたま巻きこれただけなのかな?」

絢辻「そうだとしたらまず犬達が紗也加さん、Aさんを襲う理由は何なのかしら? 襲い方も異なるし」

ケン「昨日の深夜番組のバラエティ良かったよな」

マサ「あのスタイルが良くて気の強そうな女の人がSな男に責められる場面、見てるこっちもそんな気分になって興奮したぜ」

橘(それってもしかして…僕も毎回欠かさず視てる番組じゃないか。きわどい内容が多くてお宝本みたいなこともするから気に入ってたのに視忘れちゃったよ。…待てよ!?)

絢辻「橘君〜、犬に襲われた女の子のことより、ケン君とマサ君が話してる女の人の方が興味あるのかなぁ?」

橘「絢辻さんそうだよ! わかったよ!! 」

絢辻「え、何がわかったの?」

橘「犬が女の人を襲う理由だよ! 誰かが自分の嗜好を満たす為に犬を操って紗也加さんとAさん達を襲ったんだよ! 犬にエッチなことや噛ませたりする様子を見ていて自分も興奮していたんだよ!」

絢辻「…橘君が言ってることがわからないっていうか、あまりわかりたくはないんだけど、つまり犬を操った人間がいて、その人は…つまり犯人は犬が女の人を襲う現場を近くで見てたってことかしら?」

橘「その通り! そしてそんなことが出来るのは一人しかいない!!」
52 :1 :2012/07/10(火) 01:26:26.40 ID:+4dL4SV/0

休み時間 3−A教室


森島「わ〜お橘君♪ 君が私の教室に来るなんて珍しいわね。あら? 隣にいる可愛い女の子はたしか…」

絢辻「お久しぶりです森島先輩。去年の創設祭のミス・サンタコンテスト関係の打ち合わせでお会いして以来ですね」

森島「二年の絢辻さんね。可愛いし、頭もいいし、器用に何でも出来る凄い女の子って噂で聞いてるわよ」

絢辻「ありがとうございます。」

橘「森島先輩、話があるんです。ここじゃ話しづらいので場所を移してもらってもいいですか?」


屋上


橘「ここなら誰にも聞かれないな」

森島「どうしたの? こんな所に連れてきて? もしかしてまた私とワンちゃんごっこをするの? ダメよ橘君。君と二人きりのときはいいけど、絢辻さんが見てる前ではさすがに恥ずかしくて出来ないわよ」

絢辻「橘君〜? 森島先輩と以前何をしてたの〜?」ジーッ

橘「えーと、犬の気持ちを理解するために森島先輩が飼い主になって、僕が飼い犬の役になって遊んでたんだよ」

絢辻「変なことしてないよね。同じ学年の女の子が本物の犬に襲われてるだけに遊びで済まされないことだってあるのよ」

橘「そ、それは大丈夫。してないから…たぶん」

森島「あのときの橘君、本当にワンちゃんみたいで可愛かったわ。イタズラ好きで、怒るとシュンって落ち込んで」

橘「あ、あの〜時間もないし、話も進まないのでその話はこの辺で終わってもらっていいですか?」

絢辻(橘君、今度はあたしと遊んでもらうからね)

僕はこの学校の生徒に起きた事件の内容を森島先輩に話し、思い切って聞いた。

橘「単刀直入に聞きます。森島先輩は野良犬を操ってこの学校の生徒に危害を与えていますね」

森島「あら、どうして私が犬を操れるって思うのかしら?」

橘「茶道部の先輩達から聞いたことがあります。先輩が公園で一匹の野良犬と遊んでいると、一匹、さらに一匹、さらにさらにもう一匹と集まりだし、先輩は最終的にその集まった犬達に芸をさせていたと。ちゃんと目撃証言もありますし、以前僕も先輩の犬になったことがあるのでわかります。」

絢辻(最後のは関係あるのかしら?)

森島「ムムム、まさか私のその秘密に気づいていたとは…」

橘「観念する気になりましたか? 森島先輩?」

森島「そうよ…すべて橘君の言う通りよ」

絢辻(え!? まさかホントに!?)

森島「なーんてあるわけないじゃない!」

橘「そうですよねー」

黒辻(何なのよこの二人の会話。先に中々進まないし、結局違うし)イライラ

絢辻(黒辻、出てこないで!)

森島「橘君、私は犬を操ってるわけじゃないのよ。ただいつも犬と普通に遊んでると、いつの間にか群がってきて私もだんだん楽しくなってくるからワンちゃん達にいろんな遊びを教えてるだけなのよ」

橘(ハハハ…やっぱり自覚なしで犬が集まってくるんだ。)

絢辻(何ていうか…犬のことに関して森島先輩に敵わないわ。……何となくなくだけど、うちのお姉ちゃんに通じるものがあるなあ)

森島「でも犬を操るというか、犬の行動を意図的にこっちの思う通りに動かすこ方法はあるわ」

橘「何ですか?」

森島「犬は嗅覚、視覚、聴覚に関しては人間より優れているわ。その優れた感覚を利用するの。犬笛って知ってる? あれは人間の耳には聞こえないけど、犬には聞こえる音を出すの。それである程度、野良犬も動かすことができる。それと匂いね。犬が興奮しちゃうような匂いがある物をその襲われた女の子達につけるの。」

橘「でも被害を受けた人達はそんなこと話してなかったですよ」

森島「そーなんだ。私から話せることはこのくらいね。」

橘「ありがとうございました。森島先輩」
53 :1 :2012/07/10(火) 20:20:02.01 ID:+4dL4SV/0

体育の時間 グラウンド

一輝「梅原! お前はあいつに付いててくれ!!」

梅原「あいよ!」

一輝「さあ橘! 行くぞ!!」

橘「う、うん!」

僕は一輝が事前に話した通りに動き、予定通りの場所で一輝からのボールのパスを受け取る。

一輝の作戦通りに動いた結果、僕の周りには僕の動きを妨害する相手チームの人は周りにいない状態となっていた。いわゆるフリーというシュートするには最高の状態である。僕は一輝から受け取ったボールを2,3歩ドリブルした後、

シュートを決めた。

僕のシュートは綺麗な放射線状を描き、相手チームのキーパーが飛んだ場所とは反対方向へゴールネットの中にボールは入っていった。

ピイィィィィ「試合終了! 勝者、ビブス着用チーム!!」

梅原「やったな大将!」

一輝「橘、やるじゃないか」

橘「一輝が僕がシュートを打ちやすいようにお膳立てしてくれたおかげだろ。AB組混合のチーム分けでお前と一緒のチームじゃなかったら負けてたよ。」

一輝「確かにお前がシュートを打てる状況を作るためにチームのみんなにはあれこれ動いてもらったが、チャンスを作ってやってもそれを活かせるかどうかはお前自身に懸かってたんだ。あの状況でもシュートを外すやつは外す。お前は自分の力でゴールを決めることができたのさ」

絢辻「橘君すごいじゃない」

絢辻さんが近くに来ていた。

女子も外で体育をやっており、合間を縫って僕の所に来てくれていた。

絢辻さんは先程の僕のサッカープレイを褒めてくれて、僕は少し照れた。

一輝「それにしても本当は俺があれこれやりたかったんだけどな、先生もハンデとしてお前はシュートを打つなはきついぜ」

梅原「それは白けたサッカーになっちまうな」

絢辻「真田君もすごいのね。シュート禁止があったとはいえ、チームの司令塔みたいな感じでチームのみんなを的確に動かしていたんだから」

一輝「そりゃあサッカーにおいて俺より格下の人間はリーダーの言うことを聞いてもらわないと困るだろう アッハッハッハッハ」

橘「誰が格下だ! 誰が!!」

こうして体育の時間は終わった。

54 :1 :2012/07/10(火) 22:51:23.83 ID:+4dL4SV/0

昼休み 2−A教室

絢辻「橘君お昼一緒にここで食べない?」

橘「うん? でも僕お弁当は持ってきてないよ」

絢辻「実はあたし橘君のお昼用のお弁当持ってきてたの。ダメかな」

橘(そ、そんな悲しそうな目で見られたら断れるわけないじゃないか)
「食べよう。一緒に食べよう!」

僕と絢辻さんは机をくっつけ向かい合って座った。

絢辻さんは僕用のお弁当を見せてくれた。

そこには色とりどりの綺麗で美味しそうな食べ物があった。

このお弁当を食べることが出来る男は何て幸せ者だろう。

橘「これ、絢辻さんが作ったんだよね?」

絢辻「お弁当の半分はそうよ」

橘「え、半分?」

絢辻「残りの半分は美也ちゃんが作ったのよ。あたしが教えながらだけど。」

橘「美也の奴、何だってそんなことを」

絢辻「美也ちゃんは自分がお弁当を上手に作れるようになる為に橘君を練習台にするんだって言ってたけど、本心は違うんじゃないかな? ちょっと照れてた感じで言ってたし」

橘「いや美也のことだ、僕を踏み台にするくらいにしか思ってないよあいつは。うーん食べて大丈夫なものなのか。見た目は良くても変な隠し味入れたことがあるからなあ」

絢辻「もー、それじゃあ美也ちゃんが可愛そうじゃない。一生懸命作ってたんだから。橘君、ここはあたしに免じて食べてあげて」

橘「絢辻さんがそこまで言うなら食べるよ」

パクッ

モグモグ

絢辻「どうかしら?」

橘「美味しい。美也の奴やれば出来るじゃないか」

絢辻「そうでしょう。今の言葉、美也ちゃんにも伝えてあげてね。きっと喜ぶと思うから」

橘「そうするよ。ところで絢辻さんのお弁当は自分で作ったんだよね?」

絢辻「そうよ」

橘「…今日はおにぎりじゃないんだね」

絢辻「? 橘君がお弁当なのにあたしがおにぎりだけって変じゃない。あたしのお弁当は橘君のお弁当を作るついでに作ったのよ。その方が作る効率も良かったから。」

橘「そ、そうだよね」

絢辻「それにしても美也ちゃんと一緒にお弁当作るの楽しかったわ。姉妹の共同作業で作ったって感じで。家では家族と何か食事を一緒に作るなんてなかったから。実は今日のお弁当はお姉ちゃんがいつも作ってたお弁当を思い出して、記憶を頼りに作ったものなの。お姉ちゃんが作ったものよりは劣ってるかもしれないけど」

橘「そんなことない! このお弁当はとても綺麗だし、美味しい。何より絢辻さんと美也の思いがすごく込められてるよ!!」

絢辻「ありがとう。橘君」

橘(それにしても、お姉さんの話題を普通に出してる。絢辻さん…いや、白辻さん。君も黒辻さんと同じ様に以前の『絢辻』さんとは違う存在なのかな?)

55 :1 :2012/07/11(水) 00:06:27.55 ID:Owyt7V8G0

女子A「あら、橘君と絢辻さんがお弁当なんて珍しいじゃない。自分で作ってきたの?」

橘「絢辻さんの方はね。僕のは絢辻さんと僕の妹が作ってくれたんだ」

女子B「あら、絢辻さんの愛妻弁当ってわけじゃないのね。それにしたって、二人の女の子に作ってもらえるなんて幸せ者ね。このこの。」グイグイ

橘「いやあ、あはははは//」

絢辻「愛妻//」

女子A「チェッ、惚気けて見せつけてちゃってさ。それに比べて私は何なのよ。犬に噛まれるわ、お気に入りの白いコートがダメになるわ。ま、でもあのイケメンの男の人に会えただけでも良しとするか。B、学食行こう」タタタタ

女子B「それじゃあね。橘君、絢辻さん」タタタタタ


しばらくして


棚町「何なのよあのAランチ。にんじんが入ってるなんて聞いてないわ」

田中「薫〜子供じゃないんだから、好き嫌いはよくないよ」

橘(薫と田中さんが教室に入ってきたぞ。学食で食べてたのか。それにしても人参が嫌いだなんて。そういえば薫がにんじんを食べてるとこなんて見たことなかったな。よーし、からかってやろう)

橘「何だ薫、お前にんじんも食べれないのか」

薫「じゅ、純一! 何よアンタには関係ないでしょ」

橘「あの輝日東の核弾頭と呼ばれた薫がにんじん程度も食べれないとはねぇ〜」ガスッ 「いたっ」

薫「そのあだ名をいうな。もう〜恵子、あのオレンジの固くて、火が通りにくいあの野菜を食べれる方法ないの」

田中「うーん、あ、そうだ!」

パラパラ

棚町「恵子、その本は何?」

田中「『あなたもこれで相手を自分の意のままに』っていう、催眠術の本なの。この本に苦手な食べ物を美味しく食べられる暗示をかける方法が載ってあるからそれをやってみようよ」

棚町「さ、催眠術って…まあいいや。こっちは藁にもすがる思いだからお願いね」

田中「任せてよ!」


実践中……


………




橘「薫の為に購買でにんじんジュースを買ってきたぞ」

田中「いよいよだね」

絢辻(何気なく棚町さん達の様子みてたけど、にんじんジュースってレモンの果汁とかが入っていて飲みやすくなってるのよね。純粋なにんじんのジュースじゃないけど効果はあるのかしら)

棚町「い、いくわ」

ゴクっ

………





棚町「お、おいしいわ。この催眠術効果があったのね!」

田中「よかったね薫。この本に書かれてる催眠術、人間にも効くんだね」

棚町「ええそうね。…って、ちょっと待った!」

田中「あ…」

56 :1 :2012/07/11(水) 00:14:20.69 ID:Owyt7V8G0

棚町「恵子〜、アンタ今何て言った〜」

田中「あ、それは…」

絢辻「この本、表紙をよく見ると『犬用』って書いてあるわ」

橘「アッハハハハハハハ」ガスン「グエッ!」

棚町「け い こ 〜〜〜〜」ワナワナ

田中「ご、ごめんなさーい」ダッ

棚町「あ、待ちなさーい」

タッタッタッタッタ

絢辻(あ、あはははは。一応効き目はあったのかな。あら、田中さん、本を落としていったわね)

ペラペラ

絢辻「!」
(田中さん、この本少し借りるわね)
57 :1 :2012/07/11(水) 01:03:10.28 ID:Owyt7V8G0

放課後

絢辻「橘君、一緒に帰りましょう」

橘「うん、かえ」

タタタタタタ

森島「橘君〜一緒に帰りましょう〜」ダキッ

橘「も、森島先輩!」
(後ろから急に抱きつかれた)

絢辻(もう〜何なのよこの人は〜 橘君も鼻の下伸ばしちゃって)

???「こらーそこ、学校の敷地内でイチャイチャするのはやめなさーい」

橘「この声は」

栗生「また、あなたなのね橘君」

紗也加「どうも」

橘「栗生さんと紗也加さん!」

栗生「全くあなたときたら。しかも、絢辻さんの目の前で森島先輩にもう鞍替えかしら?」

紗也加「サイテー」

橘「ち、違うよ」

森島「私は橘君が可愛いワンちゃんに見えたから思わず追いかけて捕まえたくなったの」

栗生「もう、森島先輩も突拍子なく変な行動をしないで下さい」

森島「分かったわよ。絢辻さん、ごめんね」

絢辻「え!?、いえ」
(謝られちゃった)

森島「でも、せっかくだから私も一緒に途中まで帰っていいかしら?」

絢辻「構いませんよ。ここ最近、夜道は物騒みたいですから」

栗生「待ちなさい! 絢辻さんだけだと橘君が何するかわからないわ」

橘(う、酷い言われようだなあ)

栗生「私も一緒に帰るわ。橘君を監視する意味でね」



帰り道・河原付近


ワイワイガヤガヤ

橘「あれ、あそこにいるのはあの時の小学生3人組じゃないか」

絢辻「あらそうね」

紗也加「そういえば、あの子供達、私が犬に襲われた日、街の体育館にいたわね。」

栗生「もう辺りは暗いのに子供は元気ねぇ〜」

森島「そういえばこの辺りって何だか高貴な感じの野良犬がいるのよねぇ〜」

58 :1 :2012/07/11(水) 01:23:29.02 ID:Owyt7V8G0

タタタタタ

ゴンッ

絢辻「きゃあ」

バサッ

タタタタタッ

橘(あの子供が絢辻さんにぶつかった拍子に絢辻さんが持ってたカバンの中身がぶちまけられちゃった。拾わないと)

栗生「こらー、ぶつかったんならちゃんと謝んなさーい」

橘「絢辻さん大丈夫!?」
(うん? あれは紗也加さんが持ってた靴下…あれ?)

ドクン

橘(何だろコレ…)

紗也加「絢辻さん、カバンからこぼれた中身を全部拾ったよ。…靴下、まだ捨ててないんだね。」

絢辻「ごめんね。本当は紗也加さんの為にも早く捨てた方がいいのかもしれないんだけど、何かの手がかりになるかもしれないから」

ワンワンワンワン ダダダダダ

森島「! 3匹の犬がこっちにものすごい勢いで向かってくるわ」

紗也加「あの犬達、私を襲った犬じゃない! やだ、めぐむ助けて」

栗生「大丈夫、紗也加は私が守るから」

ダダダダ

絢辻(あれ、あたしの方に向かってくる)

森島「あの犬達様子が変ね! 危ないわ。絢辻さん逃げて」

絢辻(やだ、怖い)
「橘君、助けて」

橘「……」

絢辻「橘君? どうしたの犬みたいに四つん這いで来て…キャッ 何、紗也加さんの靴下を嗅いでるの」←絢辻さんはまだカバンにしまっておらず、右手に紗也加さんの靴下を握っている状態です。

ペロペロ

絢辻「キャッ! 何、指を舐めてるの」

栗生「ちょっと橘君何やってるの!?」

紗也加「犬が絢辻さんにもう目の前に来てる」

絢辻「いやーーーーーーーーーーーーーーーーー」

パッパパパパパパパパパ

森島「何!? この青い光」

シューーーーー

ガスッ、ゲシッ、ゴスッ、ドスッ

キャン、キャン、キャン

ガシッ

森島(絢辻さん、橘君と犬達を蹴った後、一匹を捕まえて片手で顎を持って持ち上げてる!?)

一匹の犬「キャインキャインキャイン」







黒辻「私を舐めないで」
59 :1 :2012/07/11(水) 01:41:53.24 ID:Owyt7V8G0

紗也加「絢辻さん、大丈夫!?」

橘「うっ…うーん。 あれ、僕は一体?」

ブンッ

橘「痛い、栗生さん、いきなり何で投げ飛ばすの」

栗生「この馬鹿! 自分がさっきまで何やってたかわからないの!?」

紗也加「橘君、犬達と一緒に絢辻さんを襲おうとしてたんですよ」

橘「何だって!?」

栗生「アンタ、このことは生徒指導の先生に報告させてもらうわ。しばらく学校にこないで頂戴!」

橘「そんなあ。僕何も覚えてないのに」

黒辻「まあ待って、栗生。純一は今回に限っては自分の意思で私に襲いかかろうとしたわけではないわ。私が今捕まえてるこの犬にしてもね」

栗生「どういうこと!?」

黒辻「純一と犬を操った人間がいるのよ。」

栗生「何ですって!?」

森島「わ、私じゃないわよ」

紗也加「じゃあ、私を襲ったのも」

黒辻「ええ、ただの人間の仕業よ。私は散々弄んでくれた犯人を絶対に見つけるわ」

森島「見つけるってどうやって?」

黒辻「ある程度手がかりは揃ってるの。後は残りの手がかりを探すだけ」

橘「大丈夫なの? 黒辻さん」

黒辻「心配しないで。だって、




















私に不可能はないわ」



60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 12:39:51.57 ID:CUk14cEIO
純一も犬にwwww
61 :1 :2012/07/15(日) 00:20:39.55 ID:++NAcGky0

???A「何だあの女の人!? 片手で犬を持ち上げたぞ!!」

???B「さっきまで犬に凄く怯えてた感じなのに…ヤベッ、凄い形相でこっち見てきた。逃げろ!」

タタタタタ

???C(僕のせいだ。僕のせいで…)

ガシッ

???A「何ボーッと立ってんだ。早く逃げるんだよ!」

???C「アッ! 待っ」

ドサッ ドサッ

???A(ヤベッ、マフラー落とした。でも気にしてる場合じゃねえ)

タタタタタタ

森島「男の子達、行っちゃった」

紗也加「あの子達もさっきの犬達に何かされてないかしら。心配だわ」

栗生「と言っても、一応私達襲わられたのよ。きっと見てたはずだわ。なのに私達を心配する声もかけずに行っちゃうなんて。子供とはいえ男の子なのに情けないわねえ。こっちの男子はあろうことか襲おうともしたし」

橘「…襲った記憶がないんですけど、なんかごめんなさい」

黒辻「みんな、この犬を逃げないように抑えてもらえないかしら。この犬は事件を解く手がかりになる筈だから」

橘「黒辻さん、どこに行くの?」

黒辻「さっきの子供達がいた辺りを見てくるわ」

テクテク キョロキョロ

黒辻(怖くなってあの子供達は逃げたんじゃない。私があの子供達を見た瞬間に3人の内2人は真っ先に逃げ出した。残りの1人も手を引っ張られて行っちゃたけど。きっとあの子供達…いや、躾のなってない悪ガキどもねきっと。うん? 草むらに何か落ちてる。何かの液体が入った小さなスプレーと白いマフラー……フン、これらも何かに使えるわねきっと)

62 :1 :2012/07/15(日) 10:00:41.91 ID:++NAcGky0


地元の体育館 外


栗生「絢辻さんこんな所に何の用があるのかしら?」

紗也加「私があの日、犬に襲われる前に寄った体育館であったことをここで働いてる人に聞くって言ってたけど」

栗生「なら紗也加に聞けばいい話じゃない。同じ体育館に居たんだから」

紗也加「私が知ってる以外のことがないか確認するんだって。確かに自主練中は周りを特に見てなかったから」

栗生「犬とこの体育館がどう関係するのかしら? まあ、それはさておいて…」

森島「わんちゃんお手」

犬「ワン!」ポン

紗也加「…どんな野良犬でも手懐けさせることが出来るって噂は聞いてたけど…」

栗生「さっきまで襲いかかった様子とはエライ違いねえ。見た目も凶暴そうなのに凄く笑ってるように見えるわ」

紗也加「森島先輩は犯人じゃないよね。先輩は人間に危害を加えるようなことはしなさそう」


地元の体育館 事務室


爺い職員(以下職員)「一昨日の夜のことを教えて欲しい?」

橘「はい、どうか些細なことでもいいので教えて下さい」

僕は黒辻さんと一緒に紗也加さんの事情は一部伏せて、うまく一昨日の夜のことを聞けることになった。

職員「一昨日は体育館を使っていたのは4人だけじゃ。バレーの自主練をしてる女子高校生とこの辺の小学校のから来とる3人の男の達しかいなかったよ。この4人はちょくちょく来るから覚えてるよ」

黒辻「何か変わったことはないかしら」

職員「女子高校生の方は何も。一生懸命練習しておったよ。子供達の方は…そういえば体育館の隅に置かれていた女子高生の荷物を漁っていたのを注意したわい」

橘「えーーーっ! 何か盗ったんですか?」

職員「いや、あの子供達は何も盗ってないと信じとる」

黒辻「信じる?」

職員「この目で女子高生の荷物の中身を直接見たわけではないし、また彼女の方にも何か盗られた物はなかったかと確認はしなかった。彼女は練習に夢中で子供達が荷物をゴソゴソしていなかったことに気づいていなかった。子供達も彼女にバレることを怖がっていたから、あまり大事にすると子供達が気の毒だと思って、口答で何も盗ってないことを確認し見逃してやったんじゃ」

黒辻「職員としてあるまじき行為ですね。その甘さが後にどんな大きな影響を及ぼすかわからないというのに」

職員「…それを言われると何も言えないのう。あの子達は根は悪い子ではないと思っているからつい甘さがでてしまったわい」

橘「一応、紗也加さんは何か盗られたなんては言ってないよね?」

黒辻「…そうね。ねえ爺さん、その子供達が彼女の荷物を漁っていたとき手に何か持ってなかった?」

橘(黒辻さん、職員の人をじいさん呼ばわり)

職員「そうだのう、手には白い靴下、彼女の荷物に戻したから彼女のじゃな。それともう片方の手にも何か持ってたの。確か……」
63 :1 :2012/07/15(日) 12:14:18.31 ID:++NAcGky0


輝日東高校 理科室


橘「学校に戻るなりこの理科室の備品や薬品使って何するつもりなの?」

黒辻「ちょっと調べることがあるからね」

橘「もう、栗生さんが知ったら怒られるよ」

黒辻「その為に今日の所はあの3人を帰らせたのよ。事件の真相は明日必ず話すって約束してね」

橘「…僕がここにいなきゃいけないのはどうしてなの?」

黒辻「あなたは大事な証人だからよ。…出来たみたいね」

橘「何が出来たの?」

黒辻「純一、私が良いと言うまで少し後ろを向いてもらえないかしら。見たら殴るわよ」

橘「え、わ、わかったよ」クルッ
(後ろを向けって、何をするんだろう?)

シュッ パサ

橘(何かシュッって音がしたぞ。その後は…黒辻さん服を脱いでる?…って脱いでる!? エッ! 黒辻さん、この二人しかいない理科室で何を!?)

ゴン

黒辻「後ろを向いててもあんたの考えは丸分かりね」

橘「痛い。酷いよ黒辻さん。後ろから殴るなんて」

黒辻「あんたが変なこと考えてたからよ。それよりこっちを見てもいいわ」

クルッ

橘(く、黒辻さん。制服とカーディガンを脱いでワイシャツ姿に)ゴクリ

黒辻「ねえ純一、今の私を見てどう思うかしら?」スタスタ

橘(黒辻さんがこっちに近づいて来る!! 黒辻さんがワイシャツ姿になっただけなのにどうして僕の胸はこうドキドキする…ん……)



バチーーーーン



橘「痛っ!! あれ、僕はまた一体? うおぉ! 黒辻さんのワイシャツがいつの間にか目の前に!!」

黒辻「純一、大丈夫かしら?」

橘「え!? まあ殴られたところは痛いけど…また僕変なことしたのかな?」

黒辻「心配ないわ。今夜はもう帰りましょう。フフ










なるほどね」

64 :1 [sage]:2012/07/15(日) 12:24:50.92 ID:++NAcGky0
このアマガミss見てくれてる人ありがとうございます。ここからは一応真相編になります。といっても本格ミステリーじゃないので真面目に推理する必要はないです。真相はとてもお粗末なんで、真面目に推理した人がいたらすごく申し訳ないです。ところで特に明記はしてないのですがこのss、ある昔のドラマ作品の要素が所々に入ってるんですが気づいてる人いるでしょうか? そのドラマ作品も怪奇ミステリーっぽい割には真相にツッコミどころが多かったので。とはいえ、おもしろかったのですが。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/15(日) 21:56:20.43 ID:ZHwOtZYJo

ネタバレ無しで、楽しみにしてます
66 :1 :2012/07/15(日) 22:39:43.52 ID:++NAcGky0


次の日 夜 河原

ゴソゴソ

???B「見つかったか?」

???A「ダメだ。クソッ、帽子は落として見つからねえしアレもCは落とすし」

???C「……」
(Aが昨日、無理やり引っ張るからだよ。大体、AとBがアレを変なことに使うから…いや、僕も人のことは言えない。それどころかAとB以上に大変なことをしてしまった)

ウ〜〜〜〜ワンワン

???A「何だ?」

???B「俺たちが操ってた犬達。昨日、女の人に捕まってた犬もいるぞ! 無事だったんだな」

???C「でも何か様子がおかしくない? あの犬達、猛スピードでこっちに向かって来てない?」

???A「まさか!?」

???B「おい、逃げるぞ」

タタタタタ

ガシッ

???A「うわっ」

???B「やべえ追いつかれた」

ウ〜〜〜〜ワンワンワンワン

???A「何だよ、そんなうちのかーちゃん以上に怖い顔してこっち見んなよ」

???C「きっと怒ってるんだ。散々僕たちが犬を利用してあちこち引っ掻き回したから」

???B「うわー許してくれよー」ポロポロ

???C(こうなったのも全部僕のせいだ。僕がこの二人を巻き込んだ。なんとか注意を引いて二人だけでも逃がさないと。僕の持ってる犬笛を使えばきっと…)

ガシッ

???C(しまった。犬笛を逃げる時に落として、しかも犬に足で踏まれてしまった。あれじゃ取りに行けない)

ウーーーー ワーーーーーーーーーー ガバッ

???AB「「うわーー、誰か助けてえーーーーー」




???A「あ…れ…」

???B「飛びかかってきたと思ったら、後ろの方にそのまま行っちゃった」

森島「もう、ワンちゃんに芸をさせるなら私に任せてくれればいいのに」

紗也加「…森島先輩にとってあれは芸の内に入るんですか。そうだとしたら絶対披露するのはやめて下さい」

栗生「全く、小学生相手にいくらなんでもやり過ぎでしょう」

黒辻「このくらいはやらないと、自分達がやったことがどういうことなのかわからないって思ったからよ。この悪ガキどもは」

???C「お、お姉さんは昨日の!?」

黒辻「さあ、お仕置きはまだまだあるわ。続きをしましょうか」
67 :1 :2012/07/16(月) 01:41:49.73 ID:v7qkXDwu0

紗也加「本当にこの子供達が犬を使って私を襲ったの?」

黒辻「そうよ」

栗生「信じられないわ。こんな子供達が野良犬を使って人を襲わせてたなんて。普通ありえないわ。森島先輩は別として」

森島「ムムム、失礼しちゃうなあ。私はあんな愛の無いことはしないわよ」

紗也加「先輩、さっきと言ってることが違います」

橘「黒辻さん、この小学生達はどうやって野良犬を従えてたの?」

黒辻「簡単なことよ。犬は人より聴覚、視覚、嗅覚において優れているわ。その性質上手く利用したのが一つ。そして、この本に書かれていることを行ったのよ」


「『あなたもこれで相手を自分の意のままに』


栗生・紗也加「」

橘「その本、田中さんが持ってたやつだよね?」

黒辻「その通りよ。純一、このページを見て」

橘「えーと、『犬を追いかけながら特定の色に反応を示すようにする方法』?」

黒辻「純一、思い出して。以前私達はキビトランドからの帰りにこの河原を通ったわ。そのときこの子達もここにいたでしょう」

橘「そういえばそうだね。あのとき小学生達は高そうな犬を追いかけてて…まさか!?」

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小学生A「くっそーあともう少しなのに」

小学生B「落ち着け、ただ追い掛け回してもあの犬は捕まえられない。最初の手筈通りにやるんだ。」

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橘「同じだ。この本に書かれている内容と同じことを小学生達はやっていたじゃないか」

黒辻「そうまさにあのときこの子達はこの本に書かれていたことを実践していたのよ」

栗生「ちょっ、ちょっと待ちなさい」

黒辻「何かしら」

栗生「そんな催眠術まがいな方法で犬を従えてたっていうの!? 確実性も信憑性もないわよそんなの」

黒辻「そうね。この本に書かれていることすべてが本当に出来るかは分からないけど、でも特定の色に反応を示すようになるって部分は保証するわ。一応ここに来る前に森島先輩に預かってもらった昨日私が捕まえた犬で何度か試したけどすべて成功したわ」

橘「森島先輩、ありがとうございました」

森島「いいのよ。ワンちゃんを追いかけるなんて久々で楽しかったし。ちなみにその本に書かれてる内容は犬の扱いに慣れてる人なら意外と誰にでも出来るの。本に書かれてる人間の言うことを聞かせる方法はペット事情に詳しい人を対象に最近になって知られてきた知識ね。一応催眠術とかじゃなくて、この本をよく見ればちゃんと科学的な解説、裏付けも書かれてるわ」
68 :1 :2012/07/16(月) 02:33:49.01 ID:v7qkXDwu0

紗也加「はあ、そうなんですか」

黒辻「紗也加、女子Aは犬の襲われ方には違いがあったけど狙われた部分にはある共通点があった。」

栗生「共通すること?」

橘「そうか! 色、つまり白だね」

黒辻「その通り。襲われた二人が狙われた部分として白のスポーツソックス、白のコートがあったの。犬はさっきの本に書かれてた『特定の色に反応する』という暗示、つまり白の色に反応してその部分に襲いだしたの」

森島「でも、絢辻さん。あの本に書かれてることは色に反応すると言っても、人を襲うことまでは出来ないわよ?」

栗生「そうよ、白なんてありきたりな色じゃない。白にイチイチ反応してたら犬は正気を保ってられないわ。」

紗也加「被害を受ける人間が私とAさんだけじゃ済まなくなります」

黒辻「別に白の色を見ただけで襲ってた訳じゃないのよ。それに紗也加、あなたは被害を受けた人間が二人しかいないみたいな言い方してるけど後一人足りないわ。全く、昨日のことなのにひどいわね」

紗也加「あ! ごめんなさい」

橘「黒辻さんだね」

黒辻「そう、昨日、紗也加の白の靴下を手に持ってた私も入れて三人よ。もっとも私が襲われたのはあれで二回目だけどね」

橘「二回目? どういうこと?」

黒辻「…あんたは覚えてて欲しかったわね。この子達が高そうな犬に暗示をかけた後のこと、覚えてないのかしら」

橘「後のこと?…」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

タタタタタタタ

橘「うん? 男の子達の一人ががこっちに向かってくる・・・って絢辻さん危ない!」

絢辻「え? キャッ」

      ドサッ

橘「二人共、大丈夫!」

小学生C ムクっ「待てー」 タタタタタ

橘「おい、君! ぶつかってきたのはそっちなんだから絢辻さんにあやまって・・・って行っちゃた。絢辻さん大丈夫・・・って オオー!!」

目を向けると、そこにはスカートから白い布地をはみ出させて倒れていた彼女の姿があった。




絢辻「キャーッ!」

橘(悲鳴!? 絢辻さんの声だ!)タタタタタ

橘「絢辻さん! ナッ!?」

そこにはさっきの犬が絢辻さんの足を舐め、二本足で立ちながら彼女のスカートの中に顔を入れようとしていた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

橘「そうだ。小学生の一人が絢辻さんにぶつかった後、高そうな犬が絢辻さんの『白のパンツ』にめがけて襲ったじゃないか」

ゲシ ゴン

黒辻・栗生「一々『白の』を強調するな」

黒辻「ついでにいうと純一、あんたのさっきの回想の間の部分に


69 :1 :2012/07/16(月) 04:00:38.44 ID:v7qkXDwu0

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橘(何てことだ! 前に一度、神風が吹いて絢辻さんの本性とは裏腹な真っ白なパパパパン・・・ツを見た けど、またこうして拝むことができるなんて。あの子供達と犬は日頃紳士な行いをしてる僕にご褒美をくれたに違いない!)

絢辻「アイタタタタタ・・・」

橘(・・・アレ、なんだろう。急に絢辻さんの匂いを嗅ぎたくなってきたぞ。 ちょっとだけなら・・・パンツの匂いならいいよね! ちょっとだけ・・・ 絢辻さんってどんな白い匂いがするんだろう)

    ソーッ

絢辻 パチっ 「うーん橘君って・・・キャー何してるのよ!」

橘「あ、絢辻さん! ごめん! つい絢辻さんの白い匂いを嗅ぎたなって!」

絢辻「声が大きいわよー!  白い匂いって何よー!  馬鹿ー、変態!」

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黒辻「ということがあったのを忘れないで」

橘「そうだ。あのとき僕は無性に絢辻さんが履いてた白いパンツの匂いをかぎたくなって」

ブン!!!!

ドサーーー

橘「痛い。何するんだよ栗生さん!」

栗生「それはこっちのセリフよ! あなたが絢辻さんに何してたのよ!!」

黒辻「栗生、落ち着いて。確かにあのとき私もこいつを殺そうって思ったわ」

紗也加(怖っ)

黒辻「でも今にして思うとそれは仕方の無いことだったの。まあ今はとりあえずそのことは置いとくわ。話が少しズレたけど、犬はどうやって白色系のものを襲ったかだけど、その答えはコレよ」

森島「スプレー? 何か液体が入ってるみたいだけど?」

小学生C「それは!?」

黒辻「あなたの持ち物だったのね。そういえば私が最初に犬に襲われる前にぶつかってきたのもあなただったわね」

小学生C ギクッ

紗也加「絢辻さん、それは一体何なの?」

黒辻「これは一種の興奮剤スプレーみたいなものよ。犬専用のね」

栗生「何ですって!?」

小学生C「……」

黒辻「このスプレーは人間が嗅いでも感知できない匂いが詰まってるの。嗅覚のいい犬でないと感知できないような匂いがね」

橘「あのとき絢辻さんにぶつかったのは…」

黒辻「このスプレーを気づかれないようにかけることが目的だったの。まず暗示によって犬は白の色に反応を強く持たせた。次にこの子達が白い色のした何かにこの興奮スプレーをかける。犬はその匂いを嗅ぎとる。鼻がいいからある程度離れても嗅げるわ。そして臭いの元をたどった犬はスプレーがかけられた場所を見る。白い色を見た犬は興奮性が高まって白にめがけて追いかける。これが犬が人を襲った方法なのよ」

森島「だから白のパンツを履いてた絢辻さん、白の靴下を履いてた紗也加さんに白のコートを着てたAさんは襲われたのね」

栗生「あの先輩、コートと靴下はともかく、絢辻さんの身につけてたものに関して男子がいる前でそんなハッキリ言わなくても」

紗也加「でも絢辻さん、私は靴下にスプレーをかけられた覚えはないんですが? 女子Aさんにしてもどうやってスプレーをかけたの?」

黒辻「女子Aの場合は私と大体同じジュースを持った男の子とぶつかったって言ってたからね。きっとこの子達の誰かがやったこと。紗也加の場合はあなたが体育館で自主練に集中してたとき、あなたの荷物に何かしていたのを職員さんが見てたわ」

栗生「何それ! 紗也加、何か盗られたりしなかったの!?」

紗也加「なくなった物はないわ。でも荷物に何かって…」

黒辻「このスプレーを吹きかけたんでしょうね」

紗也加「やだ気持ち悪い!」

栗生「紗也加…」

黒辻「ちなみに私が2回目に襲われたのは紗也加の靴下を特に洗濯したりしてなかったから匂いが残ってたからよ」

橘「うーんでももう一つ気になるんだけど」
70 :1 :2012/07/16(月) 09:56:25.95 ID:v7qkXDwu0

黒辻「何かしら?」

橘「白に反応する暗示って、あの高そうな犬にはかけてたのは僕も見てたからわかるけど、他の犬にも同じ暗示ってかけてたの?」

黒辻「そうじゃないわ。暗示は高そうな犬一匹だけにかけられていたの」

橘「え? じゃあ他の2匹はどうやって?」

黒辻「犬の先祖は狼と言われているわ。狼は群れて行動しその中の一匹、つまりリーダーの指示に従って行動をしていたとの。これは野良犬だって例外じゃないわ。暗示を受けた高そうな犬は他の二匹に命令させて従わせていたの。サッカーにおいて格下の選手は指令塔の選手の指示に従うようにね。犬が他の犬に命令させることが出来るんだから高そうな犬の個の実力は相当なものよ。…以前の『私』はあの犬にその素質があると思って捕まえようとしたわ」

橘(『絢辻』さん、何か使い道があるかもしれないから捕まえようとしたのはその為だったのか)

栗生「よくわかったわね。その犬にそんな素質があったなんて。絢辻さんにしてもこの子達にしても」

黒辻「私はともかく、この子供達が自分達で見抜いたのかどうかは分からないけどね。それにしても犬の命令にまさか純一、あんたも従ってしまう性質があったのは正直驚いたわ」

森島・栗生・紗也加「え!!!」

橘「…どういうこと? 黒辻さん」

黒辻「あんた、ときどき意識が飛んで変なことをしてたことがあったでしょう。『白い匂い』を嗅ごうとしたり、靴下の匂いを嗅ごうとしたり。大抵そのとき近くには高そうな犬がいたわ。家でも靴下嗅ごうとしてたけどそのときも家の外に高そうな犬がいたんじゃないかしら」

紗也加「橘君の昨日の奇行にはそういう理由があったんですね」

橘「そんなあ〜。どうして僕が犬なんかに」

黒辻「簡単なことよ。それは単にあんたが」

黒辻・栗生・紗也加「「「変態だから(よ)(ですね)」」」

橘「うっ、三人揃って言わなくても…」

森島「私がワンちゃんごっこで遊んでた影響もあるわね」

黒辻「…きっとそうですね。さあ、あなた達がやったことすべてを話したけど白状する気にはなったかしら?」

71 :1 :2012/07/16(月) 10:19:55.77 ID:v7qkXDwu0

小学生C「…一つ教えてください。どうやって僕達を犬を使って襲うことが出来たんですか?」

黒辻「昨日あなた達が逃げた際、スプレーの他にこのマフラーも落ちていたのよ」

小学生A「俺のマフラー!」

黒辻「この二つを拾った私は学校の理科室に戻り、スプレーと靴下にかけられた成分を調べたの。見事に一致したわ。そして純一に犬の命令に従わせる暗示をかけてその効能を調べた。変態な純一は見事にかかったわ」

森島「犬用の暗示にもかけられちゃうなんて。橘君、本当に心は犬化してたのね」

黒辻「その後は昨日私が捕まえた犬を介してマフラーの持ち主をあなた達が行ったトリックを同じように行っただけよ」

小学生B「さっきから黙って聞いてれば俺達がやったっていう証拠がねえじゃねえか! その辺どう説明するんだよ!」

黒辻「ならあなたが体育館で行っていたことの説明、このスプレーと靴下についてる指紋、女子Aが着てたコートを徹底的に科学的に調べようかしら?」

小学生B「ご、ごめんなさい」

栗生「あっさり認めたわね」
(それにしても誰も突っ込もうとしないけど絢辻さん、あなた何者なの。理科室の設備だけで普通ここまで調べられないわよ)

スタスタ

小学生A「C!」

紗也加「何かしら? 私の前に立って」

小学生C「ごめんなさい。全部僕のせいなんです」
72 :1 :2012/07/16(月) 11:27:42.61 ID:v7qkXDwu0

紗也加「どうしてこんなことしたのかな?」

小学生C「シロを、僕が飼ってた犬のシロを見つけたかったんです」

橘「シロ?」

小学生C「僕は昔、この河原で捨てられてた子犬を見つけました。それがシロです。シロは傷ついてて、寒そうに震えてた。僕はシロを拾って飼い始めました。シロと一緒に暮らしてたのはとても楽しかった。」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

小学生C「シロ、僕の靴を飛ばすから、それを見つけるんだぞ」

シロ「ワン」

………

小学生C「靴どこに行っちゃったんだろう」

シロ「くうーん」

小学生C「ハハ、気にしないで。靴ならお母さんに新しいもの買ってもらうからさ」

………

小学生C母「全く、遊んでる最中に靴をなくすなんて」

小学生C「ごめんなさい」

シロ「くうーん」

小学生C母「もういいわ。靴は新しいのを買ってあげるから。戻りなさい」

………

小学生C「ハハ、怒られちゃった」

シロ「くうーん、くうーん」

小学生C「そんなに気にしないでよ、シロ」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

小学生C「でもシロは病気に罹ってた。一ヶ月前、シロの様子がおかしかった僕はシロを動物病院に連れて行ったらもう長くはないって言われたんです。僕はシロの最後を見届けようと思いました。でもシロはしばらくしていなくなった。必死にあちこち捜した。でも見つからなかった。そんなある日、僕、見たんです。お姉さんがぐったりしたシロを抱えていたのを」

紗也加「!」

小学生C「すぐに声をかけようと思った。でも、お姉さんは道路の反対側にいて、車が通ってなかなか向こうに渡れなかった。向こう側に僕が行ったときはお姉さんはもういなかった。僕はどうしもシロを見つけたかった。この河原には野良犬が何匹かいた。野良犬なら街のあちこちを彷徨うから何か知ってると思った。あの高そうな犬は以前、他の犬に向かって一声吼えた。他の犬はどこかに行き、やがて自分達の食べる餌を高そうな犬の前に持ってきたんだ」

黒辻「それで私が説明した通りのことを行っていたというわけね」

小学生C「はい。A君とB君に協力してもらって。(黒辻に向かって)お姉さんあのとき、わざとぶつかって、しかもお姉さんのスカートの中にスプレーを吹きかけたごめんなさい。本当に効くのかどうかあのとき試したかったんだ」

橘「…どうでもいいかもしれないけど、もし絢辻さんが履いてたパンツが白じゃなかったらどうするつもりだったの?」

小学生A「え、女子が履いてるパンツってみんな白じゃないの?」

小学生B「そうだそうだ。クラスの女子のスカートめくりしてもみんな履いてるパンツは白かったぞ。だからCにもそう教えたのに」

黒辻・紗也加・森島「………」

栗生「後で、この二人には違うお仕置きが必要ね」

橘(小学生二人が言うことも少しわかるなあ。あのときは僕もまだ子供だったんだよな。そして年を取るにつれて下着は色が違うだけで、違う興奮があることを覚えてきて)

ゲシッ 黒辻「余計なことは考えないで。話を続けて」

小学生C「…お姉さんを相手にして確かに効き目があったことを知った僕は本格的にシロを捜そうとした。そしてお姉さんが街の体育館に入っていく所を見かけたからA君とB君と一緒に体育館に入って遊んでるふりをしたんだ。バレーをやってたお姉さんには悪いとは思ったけど、荷物を勝手に開けて新品の靴下にスプレーをかけたんだ。新品の靴下があるってことはお姉さん、帰るときには履き替えるんじゃないかって思って」

小学生B「途中、体育館を管理してるじいさんに見つかったけど見逃してもらったな」

小学生C「僕達は犬達を誘導してお姉さんの帰りを目撃させた。お姉さんとシロの匂いを辿って、シロを見つけてくれると思った。でも、犬達はお姉さんを襲い始めた。しばらく見てたけどこれはいけないって思った僕は自分が持ってた、シロがいたときに使ってた犬笛を使ってなんとか引き離したんだ」

紗也加「あのとき、犬が急にいなくなったのはそういうことなのね。でも笛の音なんてきこえなかったけど」

森島「犬笛は人間の耳の感覚では聞こえない音を出すの。犬には聞こえてね。だから聞こえなくても不思議じゃないのよ」

73 :1 :2012/07/16(月) 12:49:58.68 ID:v7qkXDwu0

黒辻「C、あなたは紗也加とシロの匂いを辿って、と言ったわね。あのスプレーにはもしかして」

小学生C「うん、シロの匂いも入っていたんだ。シロはメスなんだ。バレーのお姉さんは以前シロを抱えてたから、あの野良犬達はみんなオスだから興奮作用と合わせてお姉さんがシロを連れて行った場所に向かうと思ったんだ。でも犬はお姉さんを襲ってしまった。本当にごめんなさい」

紗也加「君があの犬の飼い主だったのね。ごめんね」

小学生C「いや、悪いのは僕です。僕、お姉さんにも話しかけようと思ったけど、知らない人に声をかける勇気がなくて、だからこんなことをしてしまったんです。お姉さんにはとても迷惑かけちゃった」

紗也加「C君って言ったわね。ちょっと一緒に来て欲しいの」


河原の外れ


橘「ここは? 土が盛り上がってその上に靴の片側が置いてある。もしかして」

紗也加「私が作ったお墓よ。シロっていう犬のね」

小学生C「!」

紗也加「部活の帰り道、私は河原でぐったりしていた犬を見つけたの。私はその犬をしばらく看病したわ。犬は少し元気を取り戻したけどまたどこかに行ってしまった。それから学校の帰り道、何度か河原を彷徨っているあの犬を何度か見かけるようになったの。何かを探している様子でね。ある日、私は川に溺れかかった犬を見つけたの。ちょうどこの辺りでね。その犬は今お墓の上にある片側の靴を咥えてた。私は犬をまた家に連れて看病したんだけどその犬は亡くなってしまったの。私は弔ってあげようと思っていつも見かけたこの河原にお墓を作ったの。お墓の場所を忘れないようにあの犬が咥えてた靴をのせてね」

小学生C「この靴、僕がシロと遊んでたときになくした靴だ。シロ、まさかこの靴を探す為に病気で思うように動けない体を動かして……うわーーーーーん。どうして僕は…僕はーーー」ポロポロ

紗也加「ごめんね。君の元に返してあげられなくて」グスッ

黒辻(何なの、この胸が苦しい感じは。私には…関係ない…ことなのに)


小学生Cはしばらく泣き続けた。周りを見ると森島先輩も泣いていて、栗生さん、他の小学生二人も涙ぐんでいた。僕も目頭が熱くなるのを感じた。黒辻さんは後ろを向いていてどんな表情をしているのかはわからなかった。でも、その後ろ姿は一緒に悲しんでくれているんだと思った。彼女は自分が悲しい表情をしているのを見られたくなかったんだと思った。

74 :1 :2012/07/16(月) 13:33:02.56 ID:v7qkXDwu0

森島「それにしても、犬の命令と色と匂いで起こった事件だったとわ。橘君も匂いに反応してたみたいだけどシロちゃんの匂いに反応してたなんて」

橘(ウッ!! 結果的にそうなるのかー)

黒辻「変態」

森島「アハハハ、ワンちゃんごっこはしばらくお休みね」

黒辻「しばらくって、またするつもりはあるのかしら?」

橘「え!! それは…」

小学生A「C、ごめんな。お前があんなに真剣な気持ちでシロを探してたのに俺達は遊び半分に探してた」

小学生B「河原であのお姉さんのパンツを見て、他の女の人のも見られるかなって思って、シロを探す為って嘘ついてお前からスプレーを借りた。そんな考えだけで繁華街で白のコートを着てた女の人にスプレーを吹きかけたジュースを持ってわざとぶつかった。匂いがついたその女の人は夜、コートの腕の部分を噛まれた。そのとき別の男の人と女の人が来てくれたから助かってたけど」

栗生「そんな下心で、もし女の子が取り返しのつかないことになったらどうするのよ!?」

小学生A「本当にごめんなさい。お姉さんその女の人と同じ学校の人ですよね? 同じ制服着てるから」

栗生「そうよ」

小学生C「お願いです。今度謝らせてください」

小学生A「C!」

小学生B「お前はいいよ。俺が半ば無理やりスプレー借りて、Aと二人だけでやったことなんだから」

小学生C「たしかに僕はその女の人に関しては直接関わってないけど、でも元はといえばこの騒動の発端は僕のせいだから」

橘「君達のことは僕が伝えるよ。その子とは同じクラスなんだ」

小学生ABC「ありがとうございます」

紗也加「A君、B君、クラスの子のスカートめくりもやっちゃダメよ」

栗生「もしやったら今度は体で指導してあげるわ。私はこうみえて柔道の段を持ってるわ」

小学生AB「「はい、もうしません」」ブルブル

黒辻「C、聞きたいことがあるわ」

小学生C「何ですか?」

黒辻「この事件に使われたトリック、私ならともかく、子供のあなただけで出来るとは到底思えないわ。飼ってた犬の匂い入りスプレーや暗示、あの高そうな犬のリーダー性の素質に気づいたりとかね」

小学生C「勿論、僕がそれらを考えたわけじゃないです。シロを探して…見つからなくて途方にくれてたとき、女の人が現れたんです」

黒辻「女の人?」

小学生C「はい、僕はシロが見つからないことをその人に打ち明けたんです。すると女の人は」




謎の女「この方法を使えば、いなくなったあなたのペットが見つかるはずよ」



小学生C「って言って、いなくなりました」

黒辻「どういう人だったかしら?」

小学生C「痩せてて、お姉さんみたく黒い髪でとても長くて、…そういえばお姉さんにどこか似てる感じがする」

黒辻「私に?」

小学生C「はい、後はわからないです」

黒辻「そう、ありがとう」
75 :1 :2012/07/16(月) 13:37:05.83 ID:v7qkXDwu0

???「ふふ、思ってた以上に早く解決したわね。流石天才と言われるだけあるわね。でも次はこうはいかないわ。その時まで束の間の平穏を過ごすといいわ。………







詞」
76 :1 :2012/07/16(月) 13:59:15.43 ID:v7qkXDwu0
森島「さあて、無事に事件も解決したし、今夜はみんなで何か食べにいきましょう!」

紗也加「いいですねそれ」

栗生「まあ、たまにはいいか」

橘「じゃあ僕はこれで」

森島「ちょっと橘君! どこに行くのよ」

橘「いやーウチ今、両親がいなくて家を空けるわけにはいかないんです。妹がいるけど美也一人に家のこと任せるのも悪いから」

森島「あら、先輩の言うことが聞けないなんて、そういう言うことを聞かない後輩には」

ガバッ

森島「お仕置きしちゃうゾ♪」

橘「も、森島先輩!? 何するんですか」
(う、後ろから羽交い絞めにされてム、胸が当たって)

栗生「こら〜そこ! 私の目の前でイチャイチャしない」

橘「いや、助けてよ栗生さん」

黒辻「ハア〜、見てられないわ。純一、家のことは私に任せてアンタは女の子達だけで遊んでなさい」

橘「え、黒辻さん、待ってよ、行かないでー」

黒辻「付き合いきれないわ」

絢辻(だめえぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!)

黒辻(は? ウッ 白辻、出て来ない…で…)

絢辻(橘君を、橘君を女子3人の中に置いってたら………ダメなんだからーーー)

ぱあぁぁぁぁぁぁぁぁ  ←優しい青い光

絢辻「森島先輩、離れてください!」

森島「わおぉ」

抱き!

橘(あ、絢辻さんが腕を組んできたぞ。これじゃあ傍目には恋人みたいだ)

絢辻「橘君はあたしのものなんですから!!」







ファイル1 完
77 :1 [sage]:2012/07/16(月) 14:00:19.54 ID:v7qkXDwu0

一旦終わりです。ありがとうございました。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/16(月) 20:25:37.05 ID:yqokRo6+o
乙でした。
白辻さんがハッピーで安心。

改行とか、読みやすくする工夫すれば
もっと良いかも。

次回作期待してます。
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