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夢子「私とあいつの」涼「ありふれた1日」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:04:41.29 ID:Nhz4iWOw0
美味しそうな匂い、軽快な鼻歌。私たちの朝は、ここから始まる。
いや、私のかしら。だってあいつはもう起きているから。

涼「〜♪」

夢子「……ん」

意識は覚醒していく。そして、モヤのかかった世界から、あいつの姿がはっきりと見えてくる。

涼「あっ、夢子ちゃん。おはよう!」

夢子「おはよう……、涼……」

ダサい眼鏡に、緑色のパジャマ。エプロンが妙に似合って、癖っ毛は跳ねていて、どことなく幼さを感じさせる、私の旦那様。

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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:06:12.62 ID:Nhz4iWOw0
涼「ご飯もうすぐできるからね」

夢子「あっ、うん……。今起きる……」

涼「えっ、ちょ……」

涼は言葉を失う。えっと、なにか……。

夢子「あっ」

そういえば昨日は……、あー、はい。成程そう言うことですね。
つまり今私は……、

夢子「で、で……」

涼「でんでんむしむし?」

夢子「出てけー!!」

涼「ぎゃおおおおん!!」

素っ裸なわけで。隠すよりも早く、枕を投げる。
3 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:07:51.96 ID:Nhz4iWOw0
涼「悪意はないんだよー!!」

夢子「そうならそうと言いなさいよ!! うぅ、全部見られちゃった……」

涼「今更だよね!!」

本当に今更だ。結婚する前から、こいつとはそういった関係ではあった。
だから互いに見慣れてるはずなんだけど……。恥ずかしい物は恥ずかしい。

夢子「はぁ……」

朝一から裸を見られたからか、気分は少し下がってしまう。
でもいつまでもこうしているわけにもいかないので、服を着て食卓へ向かう。

夢子「あっ、涼。さっきはごめんなさい。ちょっと恥ずかしくて」

涼「僕が無神経だったよ。ごめんね、夢子ちゃん」

示し合わせたわけでもないのに、同時に頭を下げる。

夢子「プッ……」

涼「あ、あはは……」

それが可笑しくて、2人して笑う。私は堪えるように、涼は情けなく。
4 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:08:32.76 ID:Nhz4iWOw0
涼「じゃ、じゃあ朝ご飯食べようか」

夢子「涼、忘れてるわよ」

涼「忘れてる? あっ、そうだね」

涼は私を抱き寄せると、柔らかな唇を私に重ねる。

夢子「んっ……」

涼「おはよう、夢子ちゃん」

夢子「おはよう、涼」

今日何度目かのおはよう。だけど、私たち夫婦の朝は、おはようのキスから始まる。
冷静に考えなくても恥ずかしいわね……。まるでアメリカのホームドラマだ。

涼「……な、何かな?」

夢子「なんでも」

涼「変な夢子ちゃん」

でも、何回もしているのに、一向に慣れないうぶなコイツの顔は、私だけの宝物だ。
5 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:10:24.37 ID:Nhz4iWOw0
りょうゆめ『いただきます』

椅子に座って、朝ごはん。今日のメニューは洋風だ。

涼「どうかな?」

夢子「本当に美味しいわね。何回か言ったかも知らないけど、アイドルなんてやめて、お店を作ればいいのに」

涼「そ、そんなにかな?」

夢子「私が保証するわよ!」

はっきり言って、こいつの料理は美味しすぎる。それこそなんでアイドルをしているんだってレベルだ。
番組の企画で調理師免許を取得したアイドルなんて、そうそういないだろう。

料理だけじゃない、こいつは家事スキルが異常に高いんだ。共働きの状態の中、
私も手伝うべきなんだろうけど、涼一人で全部やってしまうため、私の出番はほとんどない。

勝手にやってくれるから、楽っちゃ楽だけど、これでも主婦なのよね。

もう少し涼の負担を減らしたいんだけどなぁ。
6 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:12:02.32 ID:Nhz4iWOw0
夢子「ご馳走様でした!」

涼「お粗末様でした。お皿貸して」

皿を洗おうと、重ねる。私はそれを手で静止する。

涼「どうしたの?」

夢子「ね、ねえ。たまには私が皿を洗っていいかな?」

涼「ええ? 大丈夫だよ。僕が好きでしているんだし。それに夢子ちゃん、ここの所働き詰めだったでしょ? ゆっくり休んでなよ」

本当に、こいつは優しい。だから、甘えたくなってしまう。
でもそれは……、夫婦のあるべき姿じゃないわよね。

夢子「させなさい! 私だって、あんたの奥さんなんだから! ほらっ、貸す!!」

涼「わぁ!」

涼からスポンジを奪い、皿を洗う。これぐらい、私にだって!
7 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:14:49.58 ID:Nhz4iWOw0
夢子「皿洗いが出来なくて、奥様名乗れるかっての!」

ガシャン!

夢子「あっ」

小皿、享年2か月。南無。

涼「……やろうか?」

夢子「な、なんのこれしき! 皿洗いもできない奥様なんて嫌よ!」

ガシャン!!

夢子「……ウォーミングアップ終了!」

涼「ウォーミングアップだったの!?」

コップ、享年1年。南無。

涼「そんなにしたら滑っちゃうよ! ほらっ、貸して。一緒にしよ?」

夢子「きゃ」

涼は後ろから私の手を取り、操り人形のように皿を洗う。

まるで、アメリカのロマンチックホラーのワンシーンだ。あれは陶芸家だったかしら? 自然とBGMが流れてくる。
8 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:15:57.14 ID:Nhz4iWOw0
涼「ほらっ、こうやれば汚れも落ちるよ」

夢子「うぅ」

涼の吐息を感じる。耳元でささやかれると、力が抜けてしまう。涼は私専門の魔法使いなんだと、不意に思った。

結局、涼のことで頭が一杯で、もう1枚お皿を割ってしまうという結果に終わった。
お皿さんたち、本当にごめんなさい。ちゃんと供養するからね。合掌。

涼「〜♪」

涼は鼻歌を歌いながら、掃除機を回す。アイドル活動しているときと同じぐらい、
楽しそうに家事をする涼がちょっぴり羨ましかったりする。

私も、アイドルと同じぐらい楽しめる趣味を見つけるべきかしら? 例えば……、飴細工とか?

涼「ふぅ、お掃除終わり。ねぇ、夢子ちゃん」

夢子「ふぁい!」

頭の中で飴を作っていると、涼が声をかけてきた。
9 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:17:31.72 ID:Nhz4iWOw0
涼「今日さ、お休みじゃんか」

夢子「そうね。久方ぶりのね」

涼「そして僕もお休みだ。だからさ……、あっ、もしかして疲れてた? だったら家でダラダラするのも悪くないかなーって」

全く、分かりやすい旦那様だこと。

夢子「外に遊びに行きたいんでしょ? 良いわよ、着替えてくるから待ってて」

涼「あっ、うん」

私だって、遊びたいに決まってるじゃない!

夢子「こういう服、今でも着れるのかしら?」

自分で言うのもなんだけど、まだまだスタイルは崩れちゃいない。
流石にお姉様や、律子姉さんに比べると、見劣りしちゃうかもしれないけど、それでも現役アイドル。

ほら、8年前の服も……。
10 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:19:12.72 ID:Nhz4iWOw0
夢子「無理するのもダメね」

流石にこの歳でへそ出しルックはハッスルしすぎかしら? にしても……。

夢子「ドロンパはないわよね……」

言いえて妙だけど。

涼「夢子ちゃーん、準備できたー?」

夢子「まだよー! ちょっと待ってて!」

こういう服は、必要な時に着ようかしら。例えば……、夜?

夢子「涼も興奮するのかしら……。って何考えてるの私!?」

誰に聞かれるわけでもなく、悶絶する。

夢子「封印しましょう」

2度と変な気を起こさないように。
11 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:21:28.06 ID:sOyGOXkd0
夢子「涼、着替え終わったわよー。って何やってるのよ」

涼「えっと、少し待ってて」

夢子「急かしといてそれはないんじゃない?」

着替えを終えて、部屋を出ると、涼がおにぎりを作っていた。

涼「急だったから、手の込んだものは出来ないけど、おにぎりぐらいは作れるからね」

夢子「もう、別に良いのに」

涼「僕が作りたいんだ。よっと、一丁あがりっと!」

夢子「ご苦労様」

おにぎりをランチパックに入れて、準備はオーケー。

涼「じゃっ、行こうか」

夢子「どこに?」
12 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:22:58.24 ID:Nhz4iWOw0
涼「うーん、そうだね。公園に行こうよ」

夢子「公園? あぁ、あそこね」

昔私が自主レッスンしていた公園ね。そう言えば、こいつとの初デートもそこだったっけ。

その時は涼のあまりの服装のセンスの無さに、開いた口がふさがらなかったけど、
痘痕もえくぼか、今ではそのダサさもなんとなく可愛く思えてくる。

テレビの中では格好付けても、私と2人っきりじゃ、キスも恥ずかしがるヘタレな男なんだから。

涼「あっ、あの遊具まだあるんだ」

夢子「そうね。懐かしいわ」

危険だ! 撤去だ! と親の声で近所の公園の遊具がなくなっていく中、この公園はあの日のまま、何一つ変わっていない。

厳密には、補強やら禿げた部分に色を塗ったりとしているんだろうけど、
昔の記憶と違いない光景に、ちょっぴり感動。
13 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:26:13.26 ID:aAiZhg6n0
涼「僕が夢子ちゃんを説得しに行ったのも、ここだったっけ?」

夢子「まだ覚えてたの、それ?」

涼「僕は夢子ちゃんのことなら、何でも知っているよ」

自信満々に答える。私も涼のことなら、何でも知ってるつもりだから、御相子様だ。

夢子「言うわね。例えば?」

涼「うーん、寝相が良かったり、耳元が弱かったり、あっ、それと好きな人の名前とか?」

夢子「は、恥ずかしいこと言うなぁ!」

よりのよってそのチョイスはどうなのよ!

涼「痛っ! 足を踏まないでよ!」

夢子「もう、知らないわよ!」

聞いている方が恥ずかしくなるようなセリフを、こいつは息を吐くように言ってくる。
おかげで、私はいつもドキドキしっぱなしだ。
14 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:27:58.59 ID:aAiZhg6n0
涼「よっと!」

不意に涼は上着を脱ぎ捨てると、リズムを取り出した。

夢子「何してるの?」

涼「踊ってるの! なんとなく、そんな気分なんだ」

夢子「はぁ!? なんとなくってあんた……」

人目を憚らず、涼はその場で踊る。

いつの間にやら、周囲にはギャラリーが出来てき、涼の姿を写メっている子までいる。

夢子「ちょ、ちょっと涼!」

涼「よっと! はいっ!」

華麗に回って、決めポーズ。ファンサービスに、ウインク付き。
昔からダンスが得意なだけあって、キレは相変わらずだ。
15 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:36:04.37 ID:YZ0CKlzP0
『涼ちゃーん!!』

『イケメンで踊れるのね、嫌いじゃないわ!』

『良いダンスだ、感動的だな、だが無意味だ』

『ボクの方が可愛いですけどね!!』

涼「あはは、どうもどうも」

四方八方から、拍手の嵐が降る。トップアイドルのダンスをただで見れるなんて、ラッキーな皆様だこと。

『サインを書きなさい』

『お前は良いよなぁ。どうせ俺なんか……。あっ、サインください』

『オデボボラッデイイカナ?』

夢子「はぁ……。休日なのに……」

涼「え、えっと……。お手柔らかに?」

そんな人の集まるところで、目立つ真似をしたらこうなることぐらい分かってたでしょうが。
16 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:39:27.22 ID:YZ0CKlzP0
妙に濃いファンのみんなに、涼は1人1人丁寧に対応する。オフとはいえ、
こいつはファンを大事にしているのよね。一度裏切ったってことが負い目になってるのかもしれないけど。

『あっ、桜井夢子さん! 私、ファンなんです! あっ、秋月夢子さんって呼んだ方が良いですか? でも桜井涼さんの方がしっくりきませんか? ラップとかやってそうです!!』

夢子「あ、ありがとうございます。お好きにどうぞ……」

たまに、私のとこにも来たけど、それはそれで嬉しかったり。って桜井涼って、MCカミヤマですか。

秋月涼即席サイン会は、お昼近くになるまで、終わらなかった。

涼「疲れたぁ……」

夢子「当たり前でしょ。ウォームアップもしていないのに、踊りだすんだから」

涼「やっぱ準備運動はすべきだよね」

夢子「そういう問題でもないわよ」

寝転がる涼の頭を膝に乗せ、手で風を送る。膝に伝わる涼の重みが、不思議と心地良い。
17 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:41:35.99 ID:YZ0CKlzP0
涼「なんとなく、見て貰いたかったんだ」

夢子「誰に?」

涼「夢子ちゃんに決まってるじゃんか」

真顔で言う涼が、少し面白い。

夢子「そっ。でも公園で踊ることないでしょ? バカじゃないの」

昔そこで踊ってたのはどこのどいつかしら?
……私だよ。

涼「あはは、それもそうだね。反省反省」

そっけなく返すけど、心の中ではやっぱりドキドキ。
もし私の心臓が爆弾なら、この町一帯を焼け野原にしていることだろう。

涼「ねぇ、お昼にしない?」

夢子「そうね。良い時間だし。ってあんたが躍ってただけじゃないの」
18 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:44:03.61 ID:YZ0CKlzP0
涼「お腹すいちゃったしね。ほらっ」

ランチパックを開けて、おにぎりを取り出す。食べやすい大きさに握られたそれを1かじり。
うん、おにぎり1つとっても美味しい。あのおにぎり大好きビジュアルクイーンもお気に入りだとか。

『おにぎりだけは涼ちゃんに任せたいの。あっ、これは浮気じゃないからね、ハニー!』

というか、こいつの周りはどうも女性が集まってくる。それも私が見ても、魅力的な子ばかり。

……浮気してないわよね?

涼「どうしたの、夢子ちゃん?」

涼はペットボトルのお茶を音を鳴らして飲んでいる。

夢子「ねぇ、浮気してないわよね」

涼「ぶふっ! な、何で急に聞くの!?」

飲んでいたお茶を噴き出す。聞くタイミングを完全に間違えてしまった。反省。
19 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:45:23.36 ID:YZ0CKlzP0
夢子「もう、汚いわね……」

涼「ごめんって! でも心外だなぁ。僕が浮気するように見える?」

夢子「見えないから疑ってるんでしょうが」

見えないから、怖いんでしょうが。

私より魅力的な女の子と、どこかに行ってしまいそうで。

涼「安心しなよ。僕が好きなのは、夢子ちゃんだけだよ」

夢子「ホント?」

涼「うん。嘘なんか吐かないよ」

夢子「こうやってスラスラ出てくるのも怪しいわね……」

涼「酷いよ! どもったらどもったで浮気してるでしょって言うくせに!!」

夢子「当たり前でしょ?」

涼「理不尽だよー!!」
20 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:49:40.02 ID:sOyGOXkd0
不安になるけど、涼の言葉に少し救われる。好きなのは私だけ、か……。
並み居る女の子に勝ったことが、嬉しい。

まぁこいつに限って浮気なんてするわけがないでしょう。そもそもそんな度胸がないことぐらい、百も承知。
最強激辛キャンデーを自分で舐めたっていい。

だけど、こいつの反応は見てて楽しいから、ついつい意地悪をしたくなってしまう。
自然の摂理よね。

夢子「じゃあ証拠見せてよね」

涼「証拠?」

間の抜けた顔で、オウムみたいに聞き返す。

夢子「そっ、証拠。秋月涼はその妻秋月夢子を誰よりも愛してるって証拠を私に突き付けなさいよ!」

涼「裁判みたいに言わないでよー!!」

最近やってるゲームの影響か、裁判長みたいなセリフが出てしまう。さぁ、被告人はどう出るのかしら?
21 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:50:55.44 ID:YZ0CKlzP0
涼「うぅ、恥ずかしいんだよ?」

私の頬に手を当て、近づいていく。

夢子「涼……。んっ……」

涼「っ……」

本日2度目のキス。優しくも気持ちのこもったそれに、頭はクラクラする。
呆けそうな私を、涼はニヤニヤとしながら尋ねる。

涼「伝わった? 裁判長」

夢子「……ゆーざいよ、ゆーざい」

涼「なんで! むっ……」

判決有罪。被告人、秋月涼は秋月夢子をドキドキさせた罪で、キスの刑に処す。

……笑いなさいよ。

夢子「んくっ……。伝わったわよ、あんたの気持ち」

涼「うぅ……、夢子ちゃんに汚されたぁ」
22 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:52:29.60 ID:Nhz4iWOw0
それは女の子のセリフでしょうが。でもこいつが言うと、違和感がない。

夢子「何を言うか!!」

涼「ほほひっはらはいへ!(ほほ引っ張らないで!)」

1つのイヤホンで、一緒に音楽を聴いたり、手を絡めたかと思うと、恥ずかしくなって離したり。
子供みたいにじゃれ合いながら、時間の経過に身を任す。

涼「はぁ、結局踊ってキスしたぐらいだね」

夢子「私が参加したの後半だけじゃない」

涼「公判?」

夢子「文字でしか分からないようなボケをしないの!」

涼「でもさ、まだ帰るのは早いよね」

公園の時計台は、3時を示す。おやつの時間だ。

夢子「そうね。まだ3時だし。後どこかに寄れそうね」
23 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:54:03.54 ID:sOyGOXkd0
時間が経つのは、早いようで遅い。付き合い始めたころなんて、もう終わりかと思ってたのに、
今じゃまだ一緒にいれるんだね、って安心しちゃう。環境と心境の変化なのかしら?

涼「そうそう、この前美味しいお店見つけたんだ。行かない?」

夢子「美味しいお店?」

涼「うん。ココアとお菓子がすっごく美味しいんだ。おすすめだよ」

あんたは女子か。趣味趣向が完全に乙女じゃないの。伊達に女の子アイドルやってなかったって訳ね。

夢子「ビックリするほど、男らしくない趣味よね」

涼「そうかな……。やっぱり、和太鼓とか趣味にした方が良いのかな……」

夢子「そのチョイスは色々とおかしいわ」

こいつの持つ男らしいとかイケメン像は、どうも世間一般のそれに比べて、ずれている気がする。
24 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:55:29.24 ID:sOyGOXkd0
夢子「でもさ、涼らしいじゃない。私、あんたのそういうところ嫌いじゃないわよ」

涼「うーん、色々引っかかるところがあるんだけど……」

夢子「無理に格好つけなくても、私はあんたが世界一格好良いと思ってるんだから」

こういう恥ずかしい台詞って、言ってから恥ずかしくなるわよね。

涼「夢子ちゃん!? ぼ、僕も夢子ちゃんが銀河一可愛いと思ってるよ。こんな素敵な人を、お嫁さんにできて幸せだよ」

夢子「は、恥ずかしい……」

それは涼も同じみたいだ。

涼「そ、そうだね! 行こうか!」

夢子「あっ、ちょっと! 待ちなさいよ!!」

互いに気恥ずかしくなり、いそいそと公園を出る。

後ろで、ボクの方が可愛いです! なんて声が聞こえたけど、無視しておく。
25 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 21:59:01.59 ID:sOyGOXkd0
夢子「へぇ、内装も可愛いのね」

ますます、男性がおすすめするお店じゃないなと思う。

涼「春香さんに教えて貰ったんだ。夢子ちゃんと行ったら? って」

また他の女の名前。でもまぁ、あの人は765のプロデューサー一筋らしいから、浮気の心配はないわね。

涼「どれにしようかなぁ。迷うな〜」

涼はショーケースに並べられたケーキを、品定めするように見ている。

夢子「じゃあ私はこれで。後ミルクココア」

涼「夢子ちゃん早くない?」

夢子「あんたが遅いのよ」

涼「だってさぁ、目移りしちゃうんだもん。これも美味しそうだしなぁ……。でもこっちも捨てがたいな」

夢子「はぁ、早く決めなさいよね」

その後3分間、涼はうんうんと悩むことになる。
26 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:01:24.30 ID:sOyGOXkd0
涼「えっと、これで」

夢子「カップラーメン出来たじゃないの」

涼「あはは、ごめんごめん」

光の巨人だって宇宙に帰ってるし、短い曲なら終わっているわよ。

夢子「優柔不断よね」

涼「治さなきゃとは思うんだけどね……」

やるときはすっごく格好良いのに。普段が頼りなく見えるから、ギャップがあるってやつかしら?

夢子「あっ、これは美味しいわ」

涼「でしょ? なんたって、僕と春香さんのお勧めだからね」

成程、芸能界きってのパティシエ2人が言うのなら、文句はないわね。
27 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:02:20.04 ID:sOyGOXkd0
夢子「ココアも美味しいし。また来てもいいわね。ねぇ、涼。そのケーキ私も食べていい?」

涼「うん、良いよー」

そう言って涼は、ケーキを小さく切ると、

夢子「……何の真似?」

涼「ほら、こういう時は相場が決まってるでしょ? あーん♪」

こ、こいつは……っ! 先手を取られた! 何ニヤニヤと見てるのよ!!

夢子「あ、あーん……」

く、屈辱よ……。

涼「ねっ、美味しいでしょ?」

夢子「美味しいけど、それ以上にあんたにイラッて来たわ」

涼「なんで!?」
28 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:04:48.55 ID:sOyGOXkd0
夢子「って私もやったんだから、あんたもしなさいよ! ほらっ! お口開けて!」

涼「あ、あーん」

涼の前までフォークを持って行って、

夢子「やっぱやーめた!」

そのまま私の口へ。

涼「夢子ちゃーん!」

夢子「涼のくせに、私を手玉に取ろうとするからこうなるのよ! 立場をわきまえなさい!」

うん、すっきりした。これで涼も、調子に乗った真似しないでしょ。

涼「もうこうなったら実力行使で食べるもんね! えいっ!」

訂正、妙に火が付いたみたいだ。

夢子「あっ、こら! 勝手にとるな!! そのイチゴ貰った!」

涼「あー! 最後に食べようと思ってたのにー!」

店内に流れるジャズのムードもぶち壊し。仮にもそれなりに名の知れた芸能人2人が、
トムとジェリーよろしく仲良く喧嘩しているなんて、誰も思わないだろう。
29 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:06:32.66 ID:Nhz4iWOw0
喫茶店での時間は緩やかに過ぎ、外に出ると七つの子が流れていた。子供は帰る時間だ。

夢子「ねえ、涼」

涼「なに、夢子ちゃん」

夢子「また来ようね」

涼「うん、何回でも来ようね」

また1つ、私たちのお気に入りの場所が出来た。

夢子「ね、ねえ涼。夜ご飯だけど……」

涼「あー、そうだね。どこかで食べて帰る?」

外食も良いんだけど……。

夢子「ううん、今日はさ、私が晩御飯作っていい?」

涼「え?」

何で意外そうな顔をするのよ。至極普通の事でしょうが。そんなに私には料理のイメ−ジがないのかしら。
30 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:08:16.40 ID:aAiZhg6n0
夢子「だーかーら! たまには私に作らせなさいよ! お皿を洗うのは苦手だけど、料理はそれなりに自信あるんだから。そりゃ、あんたに敵わないだろうけどさ……」

涼「でも夢子ちゃん、お疲れだし」

その優しさは嬉しいけど、こっちにも女のプライドってものがあるの。
いつまでも、旦那様にばかり任せてられないわ。

夢子「それはあんたも一緒でしょ! いつも作ってもらってんだし、こういう時ぐらいは私に任せなさいよ!」

涼「でも」

夢子「デモもテロもない! それに、私たち夫婦なんだしさ、やっぱり嬉しいことも楽しいことも共有したいじゃない。私はあんたと、料理を作る喜びを共有したい。オーケー?」

涼「そう言われたら何も言えない……」

夢子「ほらっ、帰りましょ。たんと美味しいもの、作ってあげるから!!」

涼「うん、期待している」

久々の料理、腕が鳴るわね!!
31 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:09:27.12 ID:Nhz4iWOw0
夢子「えっと……。どう、かな?」

涼「うん、見栄えもきれいだし、それに味も美味しいよ」

夢子「本当に!?」

自分でも今日は上手く出来たという自信はあった。だけどこう褒められると、
雲の上にも乗れそうなぐらい、嬉しくなる。

涼「うん! 僕よりも美味いんじゃないかな」

夢子「そ、そこまで!? よしっ」

涼自身は自分の腕がどの辺にあるのか、知ってるのだろうか?
あんたの料理、高級レストランでそのまま出せるレベルよ?

まぁ、リップサービスだとしても、嬉しい物は嬉しい。旦那様に料理を褒められ、小さくガッツポーズ。
こういうのが、幸せなのかしら。

涼「これで皿洗いが出来たら完璧だね」

夢子「しょ、精進します……」

笑顔で言わないでよ凹むじゃない。
32 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:13:00.39 ID:sOyGOXkd0
夢子「はぁ……」

皿洗いは涼に任せて、私はお風呂に入っていた。程よい熱さの湯船が、私の疲れを流していく。

夢子「私もしっかりしないといけないのになぁ……」

いつまでも、涼に任せっきりじゃダメだ。少しずつ頑張らないと……。

涼「夢子ちゃん、一緒に入ろう」

夢子「りょ、涼! いきなり来ないでよ!」

涼「ぷはっ!」

夢子「お湯でもかぶって反省しなさい!」

シャワーを全開にして、涼にかける。別に一緒に入るのなんて珍しくもなんともないけど、
いきなり来られるとこっちだってびっくりじゃない。

関係ないけど、昔涼に水をかけたら性別が変わるんじゃないかと妄想していたこともあったっけ。
今はお湯だから……。そのままじゃない。
33 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:17:45.76 ID:sOyGOXkd0
涼「酷いよ夢子ちゃん」

夢子「酷いのはどっちだか。ほら、空けてあげるから入りなさいよ」

端によって、涼が入れるスペースを作る。

涼「どっこい翔太御手洗」

夢子「あんたはおっさんか」

親父臭いことを言いながら、湯船に入る涼。やっぱり裸で向かい合うと、少しばかり気恥ずかしい。

涼「ねぇ、夢子ちゃん」

夢子「なぁに?」

涼「うん、そろそろさ。僕引退しようかなって思って」

夢子「はっ? 何を?」

涼「アイドルを」

夢子「え?」

思ってもない急な告白に、言葉を失う。
34 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:28:58.37 ID:sOyGOXkd0
涼「15歳のころからやってたけどさ、そろそろ潮時かなって」

夢子「で、でもまだアイドルランクは高いじゃない!」

それにまだまだ現役で頑張れる! ダンスだって歌だって……。

涼「高いだけだよ。下がらないだけで、上にも行けない」

夢子「っ!」

まるで私にも言っているような台詞だ。

涼「過去の遺産だけで、残り続けるのはダメだと思うんだ。次世代のアイドルたちに、バトンを渡すのもいいかなって。最近思い始めた。勇退だよ」

妙に悟ったような涼に、心が締め付けられる。

涼「昔は良かったねなんて言うつもりはないけどさ、それでもいつまでも居座り続けるほど、この世界に未練もない」

夢子「未練、ないの?」

涼「だってさ、夢は叶ったんだから。いつまでも、しぶとくいるのもお門違いかなって」

にっこりと笑う涼からは、未練のみの字も見つからない。それぐらい、晴れやかだ。
35 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:32:55.83 ID:sOyGOXkd0
涼の夢が叶った日のことを思い出す。

涼『私……、いいえ。僕は男です』

ある理由から、女性アイドルと性別を偽り活動していた涼。こいつは、全国放送で、その正体をバラした。
そして、芸能界を干され夢を失いかけた私のためだけに、夢を諦めないでと語った。

涼が男の子と知った時、私は不思議と怒る気にもなれなかった。
今まで同性かと思ってた相手が、実は嘘ついてました。

怒りの感情よりも呆れ、それ以上に、こいつらしいなと思えた。
結局出会った時から、今の今まで、涼に振り回されっぱなしなんだ。

そして今も、私を思いっきり振り回そうとしている。

涼「だから今度は、取り戻しに行くんだ。あの日の想いを、夢を。そして、それを抱いたまま前に進んでいく」

夢子「ね、ねえ……。それって、私のせいかな?」

涼「えっ?」

夢子「私と結婚したから、なのかな?」
36 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:34:14.48 ID:sOyGOXkd0
ネガティブな気持ちが、私を満たす。そんな顔、見せたくないのに。

だけど涼は、そんな私をたった一言で、救い出してくれた。

涼「ううん、僕は夢子ちゃんと出会ったこと、結婚したことを誇りに思っているよ」

夢子「え?」

涼「もしさ……。例えばだよ? 左回りの時計があるなら、1つ持って行きたいぐらい。何度でも、夢子ちゃんに会うためにさ」

本当にこいつは……。

涼「だけど、僕たちは前を向いていきたいんだ。僕たち色の未来を、2人で切り開いていきたいんだ」

身も心も裸になった今、涼の言葉が私の心を幸せで満たす。

夢子「私も……、あんたに会えてよかった。あんたに救われて良かった。今こうやって、あんたと一緒になれて良かった」

涼「僕もだよ、夢子ちゃん」
37 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:35:44.01 ID:sOyGOXkd0
私の夢が叶ったのも、悔しいけど涼がいてこそだった。
もしもの話なんて、考えるだけ無駄だろうけど、こいつに会わなかったら、こいつを妨害しようと思わなかったら。
私はどうなっていたのかな。

きっと夢は断たれたまま、自暴自棄になって生きていたのかもしれない。想像しただけで、ゾッとする。
なにより今が幸せだから、尚更そう思う。

涼「僕も君も、夢を叶えてそのままなんだ。だからさ……、新しい夢に2人で走り出すのも悪くないかなって。あっ、今のは夢子ちゃんに引退して欲しいって意味じゃなくて……」

夢子「分かってるわよ……。私もさ、そろそろキツイかなって思ってたの。涼程売れたわけじゃないし、今も涼と一緒だからってことで価値を見出されてるんだろうし」

夢の舞台に立つことが出来た。涼と結ばれた。もう、芸能界に未練はない。

夢子「一緒に引退しましょ」

トップアイドルと、準トップアイドルが同時に引退。きっと芸能界は荒れるだろうな。
マスコミに追われる私たちを想像すると、可笑しくなって笑いがこぼれる。

涼「本当に、いいの?」

夢子「良いの! オールドホイッスルも出たし、ぶっちゃけもう惰性でやってたとこもあるしさ。でも、引退したらどうするの? 律子姉さんの事務所で雇ってもらうの?」
38 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:37:14.37 ID:sOyGOXkd0
涼の従姉が芸能事務所を経営しているので、コネがあるっちゃあるんだけど……。

涼「うーん、誘われたんだけどね」

夢子「なによ、引退すること私より先に律子姉さんに相談したわけ?」

涼「いでで! 耳引っ張らないでよ!」

なんとなく、2番目になったのが悔しくて、耳を力いっぱい引っ張ってやる。

涼「でも、蹴るつもりだよ」

夢子「なんで? 結構大きな事務所なのに。お給料良いわよ?」

涼「でもそれじゃ、夢子ちゃんと一緒になれないでしょ? だからさ、お店出さない?」

夢子「お店? もしかして、あれ真に受けた?」

涼「うん。ナイスアイデアだと思った。僕も夢子ちゃんも、料理得意じゃんか。きっと、美味しいお店を作れるよ」

夢子「はぁ、あんたはそういうやつだったわね」

屈託なく笑う涼に呆れて溜息が出る。
39 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:39:11.97 ID:sOyGOXkd0
夢子「そんな急に言われてできるものなの? ほら、場所とか」

涼「それなら大丈夫」

夢子「?」

涼「律子姉ちゃんの事務所の1階に、空いたスペースがあるから、そこでお店出そうかなって。律子姉ちゃんも了承済みさ」

準備の早いこと。全く、さてはだいぶ前から話を進めてたわね……。

夢子「事後承諾になるのが気に食わないけど、それは素敵だと思うわ。涼の料理が、みんなの口に届くなんて」

奥様としても、それは誇らしい。

涼「でしょ? これなら2人で出来るし、きっと楽しいと思うんだ」

夢子「そうね……。それがあんたの、新しい夢?」

涼「うん。歌で人を幸せにできた、次は料理で人を幸せにしたいなって。僕に期待してくれた武田さんには、少し悪い気がするし、ファンのみんなを悲しませちゃうけど」

夢子「大丈夫じゃない? 武田さんなら、開店初日に来て、『ほう、良い料理だった、掛け値なしに』って言ってくれるわよ。それにさ、あんたは十分すぎるぐらい頑張ったんだから」

それに、ファンは引退してもファンよ。今までより近い場所にいるんだから、きっとお店は大繁盛ね。
40 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:41:56.08 ID:sOyGOXkd0
歌の新時代を切り開いた少年は、8年間走り続けた。悔しいけど、涼を継ぐだろう存在も出てきている。
彼ら彼女らに、バトンを渡しても、武田さんはお疲れ様って労ってくれるだろう。

私たちの時代は、終わったんだ。

夢子「出ましょ。逆上せちゃう」

涼「そうだね」

新たな夢が生まれた私たちの顔は、きっと活き活きしていたんだろうな。
身体を拭きあいながら、そんなことを考えた。

夢子「〜♪」

涼「Dazzling?」

鼻歌を口ずさみ、ベッドで髪を乾かしていると、涼が隣に座る。

夢子「どうしたの、シェフ秋月」

涼「シェフってそこまで大げさなものでもないよ」

夢子「免許もってるじゃない」

頭を涼の肩に乗せると、子供をあやすように私の頭を撫でてくれる。
41 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:42:26.57 ID:YZ0CKlzP0
夢子「ねぇ、涼」

涼「何、夢子ちゃん」

夢子「あの日の言葉、憶えてる?」

涼「あの日?」

夢子「ほら、プロポーズした日のことよ」

照れくさくなり、目を逸らしてしまう。

涼「夢子ちゃんの夢、僕に下さい。ずっと一緒にいてください」

夢子「も、もう! 言わなくていいわよ!!」

恥ずかしさは最高潮に達する。

涼「何度でも言ってあげるよ。その度、夢子ちゃんのことが愛おしくなるから」

夢子「恥ずかしい言葉禁止!」

聞いたのは私なのに、なんと自分勝手なこと。
42 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:43:43.91 ID:aAiZhg6n0
涼「愛してるよ、夢子ちゃん」

夢子「こらっ、調子に乗るなぁ! 私の方が好きなんだから!」

付き合い始めた恋人同士みたいに、じゃれ合い無我夢中で愛の言葉をささやき合う。
2人ともいい歳してるのに、この辺はあの頃となんら変わらない。

涼「ふふっ」

夢子「もう……」

互いに笑い合って、時々けんかして、仲直りして。……時々裸になって求めあって。
結婚が人生の墓場なんて言葉があるみたいだけど、私たちなら楽園になるでしょ?

涼「おやすみ、夢子ちゃん」

夢子「おやすみなさい、涼」

抱き合って、眠りにつく。これからどんな未来が待っているのかな?
どんな困難も、こいつと一緒なら乗り越えられるはず。

素晴らしい世界は、私たちで切り開けるんだ。
43 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:47:34.92 ID:sOyGOXkd0
夢子「知ったらコイツ、どんな顔するんだろ?」

寝静まった涼に聞こえないように、お腹を撫でて呟く。

ビックリするのかな、それとも喜ぶのかな。

涼「……むにゃ」

夢子「可愛い寝顔しちゃって……。私も寝ようっと」

なんとなく私たちの未来に、祝福の明かりが灯った気がした。そんな1日。

夢子「おやすみなさい……」

きっと明日も、素敵な日になれると思う。どうしてかって?

涼が隣にいるから、ね!



終わりだよー!!!
44 : ◆dj46uVZbVI [saga]:2012/07/02(月) 22:50:17.89 ID:YZ0CKlzP0
短いですが、これで終わりです。涼ちんSSはたびたび書いてますけど、りょうゆめ単品は初めてだったり。
イチャラブは苦手なので、寒い台詞になってるかもしれませんが、楽しんでいただけたのなら幸いです。
読んでくださった方、ありがとうございました。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 00:48:31.71 ID:rTrX/85U0
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/19(木) 09:43:50.11 ID:WVNTDCNjo
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