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女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:22:51.82 ID:Vui7Qd4U0
これはマカロン大好きメルヘン少女の幸せな物語です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1341231771(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:23:34.19 ID:Vui7Qd4U0
彼女とみーこは仲良しだった
いつも一緒、ずっと一緒
そう思っていた
みーこがタイムスリップしてしまう、あの日までは
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:24:01.13 ID:Vui7Qd4U0
みーこは行った。行ってしまった
ずっとずっと、遠い未来へ

「明日話があるの」

とか昨日言ってきたばかりなのに
それが何なのか言わないうちに行ってしまった

彼女はすごくムカついたけど
取り敢えず1000年だけは生きてみようかなって
マカロン食べながらそんなことを思ったりした
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:25:17.40 ID:Vui7Qd4U0
タイムマシンの誤作動とか、そんな事言われたけど
マカロン大好きメルヘン少女にはちんぷんかんぷんだった
みーこはどこにいってしまったのかと聞いてみたら

「うーん、1000年後くらいかなぁ」

だって
そんな事言われても、ふわふわとしていて彼女には実感がわかなかった
でもやっぱ、なんとかなるんじゃないかなぁと思ったのだ

なんとなくだけど
根拠はないけれど
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:26:07.06 ID:Vui7Qd4U0
そんなわけで彼女はとある組織の実験体になることにしたのだ
IPS細胞とか、テロメアをどーのこーのする実験らしいけど
彼女にはよく分からなかったし、分かろうともしなかった
ただ、日課のマカロンを少しの間控えなければならなかったことだけは堪えた

1000年後にみーこに文句言ってやろう

そう心に誓い、薬を4粒飲み込んだ
彼女は幸運にもあっさりと、不老不死になったのだった
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:27:01.63 ID:Vui7Qd4U0
実験場では7人くらい友達が出来たのだ
なんたって彼女はすごく美人で、透き通るような長いブロンドの髪がとっても綺麗だったから
でも彼女はみーこ以外とはあんまり喋ったことはなかったので
友達がいたことはなかったのだ

だから友達が出来たことを表には出さなかったけど
ホントはとってもうれしくて
嬉しくて
部屋の中でちょっとステップしたりして
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:27:49.41 ID:Vui7Qd4U0
組織の中はまるでマンガ喫茶みたいだった
自由だったし、ポッキーは食べ放題だった

ただ、3日に1人くらいのペースでお友達は死んでいったから
それは少し悲しくて、やるせなくて
職員の太ももの裏をガシガシ殴ったりした
怒られたけど、取り敢えず20回を目標に殴り続けた
ガシガシと、ガシガシと
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:28:46.82 ID:Vui7Qd4U0
「仕方ないんだよ。みんな分かって応募しているんだ」
「そっかー、それは仕方ない」
「うん、だから太ももの裏のほうを執拗に殴らないでおくれ」

そう言う職員が下半身から崩れ落ちるのを眺めながら
まぁ仕方ないのかなぁなんて思って諦めることにした
そもそも彼女は事前の話を全く聞いていなかったので、
なんとなく納得をしていなかった

彼女は研究所から脱走をすることにしたのだ
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:29:32.62 ID:Vui7Qd4U0
脱走は思いのほか簡単に成功した
窓からぽーんと飛び降り、そのまま全力で逃げ出したのだ

後ろの方からは特に声もせず
なんだか走ったのが損した気分になった
そんなわけで、彼女は競歩で街まで歩き続けた
不老不死になった彼女であるが
七時間競歩を続けると足が痛くなることを学んだのだった
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:30:29.64 ID:Vui7Qd4U0
街ではとりあえず、道に捨ててあるごみ箱を漁ることにした
不老不死の彼女でもお腹は減るものだ
お腹が減ったところで死にはしないけど、おいしいご飯を食べると幸せになる
幸せのために食料の確保は必須だった

道行く人達はみんなびっくりしていた
なんたって、ブロンドの年端もいかぬ女の子が満面の笑みを浮かべながらごみ箱を漁っているのだ
とつぜん非日常が眼前に転がり込んできたので、みんな見て見ぬふりをした
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:31:21.54 ID:Vui7Qd4U0
「何で君はごみ箱を漁っているの」

そう話しかける物好きなおじさんが現れたのは、それから3日後のことだった

「死なないけど、お腹が減って死にそうなのでご飯を探しています」
「よくわからないけど、取り敢えず分かった」

困惑した表情を浮かべながらおじさんは偶然手に持っていたマカロンを1つ、彼女に渡した
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:32:11.58 ID:Vui7Qd4U0
「これ、もらっていいのですか」
「いいよ、死にそうなんだろう」
「絶対に死なないけどありがとうございます。やったー」

そのまま彼女はおじさんの家までついていって
おじさんの家のマカロンも2つ食べたのだった
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:32:54.92 ID:Vui7Qd4U0
おじさんは家に帰るとすぐ、神棚にマカロンを供えた

「娘が好きだったんだよね」

遺影を前にそんなことを言うと、おじさんは少し泣きそうになっていた
おじさんがあまりにも寂しそうだったので仕方なく、
彼女は頭をよしよしと撫でてあげた
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:33:28.19 ID:Vui7Qd4U0
「きっと人生いいことありますよ。頑張れ」
「がんばろうかな。うん頑張るよ」
「よろしい」

おじさんは「なんか娘が生き返ったみたいだ」なんて言っていたけど、
彼女は未来に行ってしまったみーこがそこで死んでないか、ちょっと不安になったのだ
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:34:17.90 ID:Vui7Qd4U0
「どこかに行く宛はあるのかい」
「私は千年後に行かなきゃいけないのですよ」
「千年後か。それは大変だね」
「あ、信じてないでしょ。絶対信じてない。信じろ!」
「わかったよ。信じるよ」
「よろしい」
「それじゃあ、うちで千年後を待つのはどうだい」
「おお。それはいい案ですね」
「いい案だろう」
「よろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそよろしく」
「しかたないですね、よろしくお願いしてあげますよ」
「うーん。なんだこれ」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:35:30.78 ID:Vui7Qd4U0
おじさんは毎日マカロンを買ってくれた
彼女は特に何をするというわけでもなく、毎日を持て余していた
暇なんだね。
そう言われると彼女は少し怒って

「公園で蟻の観察をしたり、砂場の砂利の数を数えたりしてるよ!」

なんて言い、ぴかぴか光る極彩色の空をぼーっと眺めるのだった
兎にも角にも、暇であったのだ
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:36:06.89 ID:Vui7Qd4U0
時々おじさんは発作みたいに泣き出すのだった
そんな時は頭をよしよしと撫でてあげた

なんで娘は死んだのか、何の仕事をやっているのか
奥さんはどこにいるのか、友達はいるのか
そんなことは一切聞かなかったけど
聞いておけばよかったなんて、もっとお話をすればよかったなんて
その時の彼女は全く思ってもいなかったのだ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:36:37.30 ID:Vui7Qd4U0
そんな感じでおじさんとは7年と43日間一緒に暮らした
おじさんは7年と12日目に病気にかかり、7年と31日目に死んでしまった
伝染性の流行り病だったらしい
街の人達もみんな死んでしまったけど、彼女は不老不死だから生き延びた

生き延びてしまったのだ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:37:21.63 ID:Vui7Qd4U0
もう街には誰もいない
無人の街でひとり、おじさんのお葬式をする
吹き付ける風が妙に寒くて、空の色が消えた気がした

彼女は空を見上げながら、おじさんが買ってくれた最後のマカロンを食べた
そのマカロンはいつも通り美味しくて、初めて会った時からずっと美味しくて、
それで彼女はちょっとだけ泣いた

マカロンを食べ終え、涙を拭くと
彼女はそのまま前を向いて歩き出したのだった
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:38:14.99 ID:Vui7Qd4U0
彼女は歩き続けた
果てない荒野を
煌めく海岸線を
揺らめく木々の隙間を越えて
立ち並ぶ高層ビルを越えて
地平線の向こうに
水平線の向こうに
彼女は歩き続けたのだ
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:39:02.10 ID:Vui7Qd4U0
ずっと、ずっと
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:46:57.31 ID:Vui7Qd4U0
歩き続けていたらいつの間にか百年以上経っていた
彼女が歩いている間に中国という国が滅びていた
世界はそのことでごたごたしていたけど、彼女にはあまり関係なかった

200年が経ったところでとある組織の研究所に戻ってみると
もうそこは跡形もなく消えていた
代わりに空中バスのターミナルになっていたので、
彼女は初めて空中バスに乗ることにしたのだった
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 21:56:50.29 ID:WB3M1xzIo
不思議なスレに迷い込んでしまった
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:58:42.04 ID:Vui7Qd4U0
>>23
見ていてくれる人誰もいないと思ったから嬉しいです
有り難うございます
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 21:59:40.66 ID:Vui7Qd4U0
全自動で動く空中バスは閑散としていて
中に乗っているのは彼女だけだ
ふと思い立って彼女はふわり窓から飛び降りた

肌を風が切り、眼前に大地が広がる
空から眺めるこの広い世界には、もう彼女の知り合いは誰も居ないのだろう
世界はいつでも広大で、いつも一人ぼっち

みーこは元気にしているのだろうか

ふとそんなことが頭をよぎる
そのまま彼女はとしゃんと湖にダイブした
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 22:03:59.14 ID:Vui7Qd4U0
2300年問題が起こる頃には地球温暖化で沖縄が海に沈んでいた
日本人は血眼でエコを訴えていたけど
人も大分減っていたのであまり問題は起こっていないようだった

彼女は海水浴がすごく好きなのでとても喜んだ
7日に26回くらいは海で泳いだ
デジタル水着は嫌いだったので裸で泳ぎまくった
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 22:09:04.25 ID:Vui7Qd4U0
そんな感じで毎日毎日泳いでいたら
100年で地球の七分の二くらいの陸地が海に消えていった
世界はなんだかもう終わりのムードに包まれていて
自殺者がついに年間1000万人を突破したらしい

そんな絶望的な空気が漂う世界で彼女は今日も海水浴を続けるのだ
肌が小麦色に焼けて凄く健康的になっていた
一日中バタフライで海を彷徨えるくらい泳ぎをマスターした

地球温暖化バンザイ!

彼女はひとり泳ぎながらそう叫ぶのだった
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 22:11:24.98 ID:Vui7Qd4U0
そんな日々を送っていたある日、地球に小さな隕石が落下した
彼女の泳いでいる海岸のすぐそばに
物凄い衝撃で、彼女以外の人間なら即死だったけど
彼女は不老不死だったから平気だった

びっくりしたな〜と思い、彼女が隕石に近づくと
そこにはマシュマロみたいにふわふわの白い変な生物がぷよぷよ鳴いていた
取り敢えず彼女はその生物を浜辺に持って行って小麦粉を食べさせると
ぽよぽよ鳴いて元気に食べていた

なんだこれ。なんだこれ。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 22:13:15.21 ID:Vui7Qd4U0
彼女はその生物に”シュバルツクーゲルシュライバー”と名付け
毎日毎日小麦粉を食べさせるのであった

シュバちゃんは、ぼたん餅みたいにふよふよしながら小麦粉を食べていた
地球温暖化で世界が終わりかけている最中に彼女はシュバちゃんと遊ぶ日々を送っていた
のんきなものである
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 22:14:07.92 ID:Vui7Qd4U0
シュバちゃんは小麦粉を上げ続けた結果、最終的に150体にまで増殖した
さすがの事態に彼女も驚嘆して、これは面倒見切れないと思い
どっかの家にシュバちゃん達を持って行く事にした
これ以上増えすぎても与える小麦粉が足りないのだ

「ごめんよ・・・私がバタフライばかりしてるばかりに・・・」

そんなことを呟きながら、彼女は今日もバカンスライフを送るのであった
生活を改善する気はまるでなかった
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 22:15:50.62 ID:Vui7Qd4U0
「シュバちゃん1号から150号には悪いけど、私の生活のために誰かのところで元気にやるんだよ」
そう言って彼女は小麦粉をいっぱい与えてくださいとしっかり伝え、
シュバルツクーゲルシュライバー1号から150号は、
どっかの知らない心優しい人の家に引き取られていった
シュバちゃんたちは悲しそうな表情でぷよぷよ鳴いていた
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 22:16:21.90 ID:Vui7Qd4U0
その3年後、実はシュバちゃんが二酸化炭素を吸い込み、酸素を吐き出す夢の生命体だったことが判明した
そしてその5年後に世界的政策でシュバちゃんの計画的増加実施に至ったのだった
シュバちゃんは世界の二酸化炭素を吸い込み、あっという間に地球の気温を下げた

彼女からシュバちゃんを引き取った研究者は世界を救った人として
ノーベル平和賞と10億円を頂いたのだが、それを彼女が知ることは無かったのだった
シュバちゃんは巷では「神」と呼称され、今でも世界中で愛されている
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/02(月) 22:41:21.99 ID:QkulOceyo
不思議乙
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 22:50:13.38 ID:Vui7Qd4U0
地球の色々な問題が解決し、世界は平和に包まれた
地球の気温も下がり、海で泳ぐのも寒くなったので彼女が200年ぶりにバカンスライフをやめた時、
もうこの地球でわからないことなどほとんど無くなっていた

地球の誕生も、生命の神秘も、深海の謎だって全部解明されてしまった

科学者たちは未知の世界に夢を託し、宇宙についての研究がいっそう盛んになっていったのだ
宇宙開発ブームの到来である
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 22:56:57.99 ID:Vui7Qd4U0
むかし人がみんなプロ野球選手に憧れたように、人々はみな宇宙に関しての研究者に憧れるようになった
そんな中、彼女は公園でドッジボールをしている少年たちと仲良くなった
あまりにも暇すぎた彼女はバタフライで鍛えた驚異的な背筋力で公園のいたいけな子供どもをなぎ倒す日々を送っていたところ、
どういうわけか少年たちの人気者になってしまったのだ
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:00:20.40 ID:Vui7Qd4U0
中でも特に慕ってきたのが彼女にいつもマカロンを献上してきた背の小さなメガネの子である
ドッジボールが弱くていじめられていた体の弱い男の子だったが
その少年も例に漏れず宇宙研究者になりたいと思っていた
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:00:53.70 ID:Vui7Qd4U0
少年は彼女のことを”師匠”と呼び慕っていた
ブロンド髪のメルヘン少女である彼女だが、師匠と言われるのは初めてだったので大層気分をよくしたのだった
彼女は少年に

「弟子にして欲しかったら一ヶ月に一回マカロンを持って来なさい」

と言い、毎月マカロンを貢がせていた
いたいけな少年は喜んで彼女にマカロンを貢ぎ続けたのだった
悪女である。650歳の愛され悪女である
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 23:01:43.50 ID:7L7AT3sSO
こういうの好きだな シンプルで

セカイ系って男のコの好みだよな
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:05:43.29 ID:Vui7Qd4U0
「師匠!どうすればそんなにドッジボール強くなるんですか!」
「うーん、泳ぐといいよ」
「泳げばいいんですか!わかりました!毎日泳げば大丈夫ですよね!」
「そうだねー。毎日21時間、それを二百年くらい続ければ強くなるよー」
「さすが師匠!すごい!頑張ります!」
「がんばれー」
「はい、素晴らしい助言誠にありがとう御座います!」
「いいよー。来週マカロン忘れないでねー」
「はい!了解しました!」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:07:04.25 ID:Vui7Qd4U0
こんな感じのアホな少年だったが勉強は幸いにもできたため、夢だった宇宙研究者になることができた
十年たっても、二十年たっても、少年は彼女のことを師匠と呼び、毎月マカロンを持ってきた

「師匠は老けないですね!」
「むかし不老不死になったんだよー。すごいでしょ」
「凄いです!さすが師匠!」
「でしょー。もっと褒めたまえ」

そんな他愛のないやり取りを暇な時に繰り返していた
そんなある日、彼女は少年の髪に白髪を見つけた
彼女は少し寂しくなったけど、何も言わなかった
彼女の精一杯の強がりだった
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:10:12.53 ID:Vui7Qd4U0
数十年も過ぎると宇宙開発も佳境に入り、とうとう人類は宇宙の中のことが全てわかるようになった
となると次は宇宙の外について調べるようになった
ホワイトホリー号という最新宇宙船に乗って、宇宙研究者は宇宙の外を目指して飛び立った
宇宙船の航海は万事うまく行き、ワープを繰り返してついに宇宙の外に出ることに成功した
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:13:09.79 ID:Vui7Qd4U0
その宇宙船の中に少年の姿もあった

「ちょっと5年くらい留守にしますけど、帰ってきたら宇宙の外側のスイーツとか持ってきますよ」

そんなことを言って、もう定年を迎えそうなほど老いた少年は宇宙に飛び立っていった
彼女はがっかりしたけどまた5年後に60ヶ月分の未知なるスイーツを貰えると思うとわくわくした

「無理しないで死ぬほどがんばってね!」

と元気よく少年を見送ったのだった
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:13:40.98 ID:Vui7Qd4U0
人類が皆、未知なる世界に胸を躍らせる中、ホワイトホリー号から一通のメッセージが届いた

『私達は幸福を発見した』

そのメッセージとともに、ホワイトホリー号からの通信は途絶えた
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:18:55.83 ID:Vui7Qd4U0
35
世界中の科学者たちはびっくりして、後続の探検隊を続々と送ったが、誰も帰ってこなかった
好奇心に勝てない世界中の宇宙研究者たちはみな宇宙の外側に向かって飛び立ち、
そして二度と大地を踏むことはなかった
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:19:54.21 ID:Vui7Qd4U0
宇宙の外側に何があったのかは誰もわからない
本当に幸福があったのかなんて、誰も知らない
でもきっと、もう少年は戻ってこないのだろう
彼女はずっと待っていたけど、とうとう5年たっても少年が公園に帰ってこなかった

たったひとりの愛弟子は、宇宙の外側で幸せに暮らしていたらいいなぁと
そんなことを思ったり、願ったり
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/02(月) 23:20:54.79 ID:Q3+12pFI0
俺もこういうの好きだわ
期待
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:37:17.93 ID:Vui7Qd4U0
有能な科学者達がみんないなくなったので、地球の人々は少し馬鹿になってしまった
ある日突然、ハワイが消失した
ある大国の大統領が暇だからという理由で核兵器を島にぶっ放したからだ

他の国の人達も大激怒して、世界大戦が始まったのだった
するとびっくりすることに、3日くらいで大体の国が滅びてしまった
決壊したダムみたいに、世界はあっさりと終わりを迎えたのだった
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:38:51.74 ID:Vui7Qd4U0
無政府状態、放射能だらけ
世界は北斗の拳みたいになってしまった

彼女は不老不死だったけど、恐ろしかったので隠れ続けた
もう少し、もう少し我慢すればみーこに会える
あとたった200年じゃないの
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:40:33.50 ID:Vui7Qd4U0
100年かけて人口は急激に減少していき、
全盛期は370億人いた地球も、1000万人しかいなくなっていた

火星に移住した人たちも、もう地球を完全に見捨てていた
培われた地球の技術は全て失われ、放射能で荒れ果てた死の惑星に劇的ビフォーアフター

そして極めつけは巨大隕石の衝突だった
衝撃で舞い上がった砂塵が大気圏を覆い、太陽の光を遮断した
世界が灰色になってしまった
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:42:15.35 ID:Vui7Qd4U0
光が届かない世界
超氷河期が訪れ、残りの人類の方々も皆死んでいった
誰もいない世界、彼女はそれでもみーこを待ち続けた
いつか来る千年後まで、待たなきゃいけないんだ

みーこの大事な話を聞かなきゃ
頑張ろう、頑張ろう
言葉を吐くと、彼女の口から血が出た

彼女の体に異変が起こるなんて、約千年ぶりのことだった
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:43:04.46 ID:Vui7Qd4U0
もちろん彼女が知る由はないけれど、
放射線は彼女の遺伝子をぼろぼろに壊していた

いつの間にか彼女は不老不死じゃなくて、
普通のどこにでもいるマカロン大好きメルヘン少女になっていた
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:47:59.42 ID:Vui7Qd4U0
――――――
灰色の世界
色もなく、光もない、ぐちゃぐちゃになった世界
そろそろ帰りたいな
どこか、私の知らない場所へ
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:49:24.54 ID:Vui7Qd4U0
もう疲れちゃったよ
世界の移り変わりとか
いろんな人との別れとか
もう疲れちゃった
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:50:02.66 ID:Vui7Qd4U0
もう私は十分生きたよ
おじさんにマカロンは貰ったし
世界中を旅したし
毎日バカンスを楽しんで、変な生物を拾って
初めて弟子ができて、世界が滅びて
もう十分、十分だよ
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:51:27.67 ID:Vui7Qd4U0
でも、できることなら
最後に、最後にみーこに会いたいな


会いたいなぁ
―――――――
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:52:53.38 ID:Vui7Qd4U0
視界にぱちぱちと光が飛び出る
灰色の世界に何十年ぶりの明るい光
こんなのが見えるなんて、きっともう終わりは近いんだろう
どこからか幻聴が聞こえた
それはどこかで聞いたことがある声だった
彼女はもう目は見えなかったけど、
わかったのだ
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:55:28.51 ID:Vui7Qd4U0
「久しぶり」
「うん、久しぶり」
「元気だった?」
「すこぶる元気だったよ」
「そっか、それはよかったよ」
「うん」

「あのね、ずっと言いたかったことがあるの」
「なぁに」

「私レズなの。ずっと愛してた」
「私も愛してるよ。マカロンくらい愛してる」
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:58:51.44 ID:Vui7Qd4U0
そんな感じで地球最後の日
マカロンもスイーツもない世界で、
人類は幸せに滅びたのだった
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/07/02(月) 23:59:54.56 ID:Vui7Qd4U0
そんなマカロン大好きゆるふわメルヘン少女の、
へんてこで、それでいて

幸せなお話
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 00:11:48.41 ID:hwQ9QsVq0

中々面白かった
マカロン千年分を進呈しよう
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 00:16:07.99 ID:SwdTMYnHo
不思議なスレでした乙
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/07/03(火) 00:19:25.34 ID:4H6urgUAO


不思議な感じで面白かった
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 00:44:10.40 ID:b7jnRasSO
凄いペースで頑張ったな
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国) [sage]:2012/07/03(火) 01:11:58.58 ID:7Q2A+lyAO

この雰囲気はいいね
面白かった!
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/03(火) 16:42:02.45 ID:Wne6myhm0

感動した
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 00:12:46.64 ID:JlsuDyMSO
次回作も期待しちゃう
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/04(水) 23:07:13.29 ID:yD6mkjCYo
黒ボールペンwww
期待って書こうとしたらもう終わっていた
何を言っているn(ry

乙乙!
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