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鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」ゴールデン - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆e8lME0lo0A :2012/07/06(金) 00:00:13.43 ID:Sk5cBNUVo
ペルソナ3・ペルソナ4とそのほかアトラス作品のクロスSSです。

ペルソナ4主人公は鳴上 悠、ペルソナ3主人公は有里 湊。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1341500413(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/06(金) 00:00:50.97 ID:WCP1s3nd0
今回は風呂敷広げすぎるなよー
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/06(金) 00:05:38.58 ID:J1fE7MZTo
デビサバはあるの?
4 : ◆e8lME0lo0A :2012/07/06(金) 00:16:25.77 ID:Sk5cBNUVo


―――“マヨナカテレビ”は、終わらない。


>2012/3/21……。

>高校二年の一年間を過ごした八十稲羽から、久方ぶりの実家へと帰った日。

>両親は既に帰国していて、一年ぶりに会う息子を暖かく迎えてくれた。

>しかし、その夜。

鳴上「また海外赴任だから、寮のある学校に入ってくれ……か」

>両親からは既に手続きは済ませてある事と、詳細な日程が伝えられた。

>そして両親は一週間後、本当にまた海外へ飛び立って行った。

>そんなやりとりに慣れてしまった自分も何だが……。

>渡された書類に目を通す。

>高校生活、最後の一年を過ごす場所……。

鳴上「月光館学園か」
5 : ◆e8lME0lo0A :2012/07/06(金) 00:17:12.47 ID:Sk5cBNUVo


【4/5 晴れ】


>春の暖かな日差しの中、電車は進んでいく。

>八十稲羽に向かった時と違い、特急なんて選択肢もあったが……。

>今回は、あえて各停でゆっくり向かう事にした。

>去年の春、同じようにゆっくりと八十稲羽に向かった。

>あれから丸々一年が経った事になる。

鳴上「楽しかったな」

>向こうの仲間たちの事を思い出す。

>色々な事件があったが、それでも楽しかった。

>これから向かう地では、どんな事が起こるだろう。

>……眠くなってきた。

鳴上「……そっとしておいてくれ」

>目を閉じると、意識が薄れていった……。

>……。

声「早い再会となりましたな」

>……聞き覚えのある声がする。

>ゆっくりと目を開けると、一面青い部屋の中にいた。
6 : ◆e8lME0lo0A :2012/07/06(金) 00:17:57.07 ID:Sk5cBNUVo
老人「ご心配なく。現実のあなたは眠っております……というのも、最早無用な説明ですかな」

鳴上「イゴール。それに……」

女性「また会えて嬉しいわ」

>かつてその力を持って、八十稲羽での事件解決に協力してくれた人たち……。

>青い部屋、ベルベットルームの住人。謎の老人イゴールと、その従者マーガレット。

>事件の解決と共に、役目を終え別れたはずの二人が、また目の前にいる。

イゴール「現実の時間で言うと、丁度一年ほど前。あなたが始めてこの部屋を訪れた時の事を、覚えておいでですかな?」

>黙って頷いた。

イゴール「では、話は早い。再び、あなたの力を使う時が来たということです。あなたの旅路はまだ終わりではない」

イゴール「これより向かう地で、あなたは様々な物を見、触れ、新たな力を得る事でしょう。その時、あなたのお手伝いをするのが私の役目……」

>青い鍵がテーブルの上に現れる。

イゴール「お持ちください。使い方は、わかっておられるな」

>“契約者の鍵”を手に入れた!

イゴール「前回、あなたは素晴らしい答えを見せてくれた。今回も……期待しておりますぞ」

>エンジンがかかる音がした。

マーガレット「それでは、発車いたします」

>声が聞こえる。

>声が……。

『次はー、巌戸台、巌戸台。モノレールご利用の方はお乗換えです』

>!

>目的の駅だ。

鳴上「また、何か始まるのか……」

>とにかく、これから過ごす家となる寮へ向かおう。
7 : ◆e8lME0lo0A :2012/07/06(金) 00:19:06.46 ID:Sk5cBNUVo
本式な更新は明日から。
ゴールデンになって帰って来ました。
では、また明日。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/06(金) 00:21:33.58 ID:EgUny+2n0
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/07/06(金) 00:48:10.55 ID:ALgwAZu50
乙乙
まってたよ個人的には刹那がまた出てくれると俺得
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/06(金) 03:19:08.91 ID:vqmzmIOc0
風呂敷広げに主人公を増やして似たような話を多くしてさらには片方贔屓
今度はどうなるのか気になるな
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/06(金) 08:03:00.84 ID:Uj+LQUSX0
しばらくは前スレの話の焼き増し的な感じかな?
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/06(金) 09:27:30.99 ID:Yh4NXa2V0
うぃっす
おかえりー
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/07/06(金) 12:59:34.68 ID:H+0KRNCMo
乙!おかえりなさい!
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 23:58:39.58 ID:UTTS5Yqg0
おかえり。
今度はちゃんと完結させてくれよ。
15 : ◆e8lME0lo0A :2012/07/07(土) 00:00:17.69 ID:FpPO8sseo
鳴上「ここ、か?」

>転校先の月光館学園は、以前修学旅行で訪れた事がある。

>近代的でしかも広い校舎は、八十神高校はもちろん以前通っていた学校に比べても遥に素晴らしい物だったのだが。

>書類に書いてある通りに歩いて来た今、目の前には妙に古い建物があった。

鳴上「住所……合ってるな」

>周りに空き缶が捨てられている。

鳴上「片付けておくか」

>まだ中身が入っている物もある……。

>黙々と片付けた。

>根気が上がった!

女性「こんにちわ」

>背後から挨拶された。

>振り向くと、髪の短い女性が笑っている。

鳴上「どうも」

>こちらが会釈すると、向こうも一つお辞儀をした。

>女性はそのまま寮に入っていった……。

鳴上「あ、あの人も寮に……じゃあここは女子寮なのか?」

>ますます自信がなくなってきた。

>もしかして、道を間違えたか?
16 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/07(土) 00:01:10.61 ID:FpPO8sseo
背の高い少年「あの」

>入り口の前で悩んでいると、今度は男に声を掛けられた。

>顔はまだ少年といった感じだが、身長が自分より高い。

背の高い少年「もしかして、入寮される方ですか?」

鳴上「あ、はい。今日からここでお世話になる……」

背の高い少年「聞いてます。鳴上先輩ですよね。よろしくお願いします」

>少年は無邪気に笑った。

鳴上「あ、後輩なのか。じゃあ一年か二年……」

背の高い少年「……?ああ、そっか。えーと、僕は中等科です。天田乾っていいます」

>中等科……最近の若者は発育がいいとは言うが……。

鳴上「ああ、よろしく。それで……さっき、女の人が入っていったんだが、ここであってるのかな」

天田「間違ってませんよ。その人もここに住んでます。月光館の生徒ではないんですけど」

鳴上「寮監みたいなものか」

天田「そんな感じです。こんな所で立ち話もなんですし、入ったらどうですか?」

>天田に促されて寮の扉を開けた。

>中は外観から想像したより綺麗だ。

>が、学生寮には見えない。

>どちらかというとホテルのような……。

天田「驚きました?ここ、昔はホテルだったのを改造して寮として使ってるらしくて。ここがラウンジです」

>辺りを見渡すと、妙に生活感が無い事が気になった。

>まるで少し前まで人が住んでいなかったような。
17 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/07(土) 00:01:55.26 ID:FpPO8sseo
女性「天田君、おかえり……あれ、その人は?」

>さっき挨拶した女性が上階から降りてきた。

天田「あ、今帰りました。聞いてないですか?ほら、入寮予定の」

女性「……ああ!そっか、あなたが鳴上君?」

鳴上「はい。鳴上悠です。これから一年、こちらの寮でお世話になります。よろしくお願いします」

女性「はい、よろしくお願いします。って言っても、私も住んでるだけだからお世話するわけではないんですけど」

鳴上「あれ?でも寮監みたいなものだって」

女性「なんていうか、責任者ではあるんですけど……詳しくはまた説明します。私は山岸風花。荷物はそれだけ?」

鳴上「はい」

風花「それじゃお部屋に案内します。基本、男子は二階、女子は三階です」

>風花について二階へ上がった。

>ここも、やはり生活感が無い。

風花「この一番奥の部屋が今日から鳴上君の部屋になります。鍵はこれ。無くすと大変だからちゃんと持っててね」

>“部屋の鍵”を手に入れた。

>……聞きたい事がいくつかある。

鳴上「この寮、部屋数は多くないみたいですけど、どのくらいの人が住んでるんですか?」

風花「今は私と天田君と、それと鳴上君だけ。……そうだね、ちゃんと説明しないと。荷物置いたらラウンジに来てください」

>何か妙だ。

>とにかく、今は風花の言う事に従う事にした。
18 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/07(土) 00:03:27.89 ID:FpPO8sseo
>充てがわれた部屋は質素な物だった。

>少し埃臭い気もするが……不満点はない。

>備え付けのベッドの横に鞄を置いた。

>ラウンジに行かなければ……。

>?

>机の上に何か置いてある。

鳴上「ヘッドホン?」

>もちろん自分の物ではない。

>この部屋を前に使っていた人の物だろうか。

鳴上「山岸さんに渡しておくか」

>ついでにヘッドホンも持って出る事にした。

>“誰かのヘッドホン”を手に入れた。

鳴上「お待たせしました」

風花「それじゃ座ってください。……まず、鳴上君が聞かれた事について説明します。鳴上くんは、この寮に入った時どう思いましたか?」

鳴上「どうって……変わった内装だな、と。後は……なんだか最近まで使われていなかったような」

風花「うん、その通り。この寮は訳あって今年の春まで二年間閉鎖されていました。天田君も普通の学生寮に住んでいたんだけど」

鳴上「何故閉鎖されたんですか?」

風花「その話は長くなるから、結果だけになるけど……簡単に言うと、使う必要が無くなったの。誰も住まなくなったから」

>誰も住まなくなった……?

風花「それが今年の春、また使われる事になって。元々近くに住んでた私と寮住まいだった天田君が呼び戻されたの。それで、今住んでるのは私達だけ」

>明らかにおかしい。

>説明すると言ったが、実際にわかった事は無いに等しい。

>ところどころに残る生活感の無さ、その原因はこの寮が閉鎖されていたからだった。

>しかしそこに至るまでの過程、再び開放された理由。そのどちらも風花の口からは出てきていない。

>何か隠し事をしている……?
19 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/07(土) 00:04:27.43 ID:FpPO8sseo
風花「……ごめんなさい。説明するなんて言って、今は言えない事の方が多いんです」

>風花は申し訳なさそうに目を逸らしている。

風花「でも、信じて欲しいんです。私達にとって、あなたは必要な存在。だから、話せない事はあっても嘘は吐きません」

>イゴールの言葉を思い出す。

イゴール『再び、あなたの力を使う時が来たということです』

>新たにやって来たこの地で、既に何かが起こっているという事だろうか。

>だとしても、何故自分の事を知っているのか。

>釈然としない部分は多い。

>……だが、風花からは嘘偽りない誠意を感じる。

鳴上「……わかりました。その時が来れば全て話してくれると信じます。で、今出来る事はありますか」

>風花は驚いたようにこちらを見た。

風花「あっ……ありがとう。今は、特にないです。でも聞いた話だと、多分近い内に」

鳴上「じゃあその日までは普通に過ごしていいんですか」

風花「はい。あの……どうして、信じてくれるんですか?今日会ったばかりだし、色々……」

>素直に答えてもいいが……。

鳴上「好きだからです」

風花「えっ?」

鳴上「……」

風花「あの……」

鳴上「冗談です」

風花「……そういう冗談は、あまり好きじゃないです」

鳴上「すみません」

風花「……ふふっ、でも、面白いんだね。もっと真面目な人だと思ってました」

鳴上「そうですかね?」

風花「うん。……今日は疲れてると思うから、もうお開きにしますね。寮生活でわからない事があったら私か天田君に聞いてください」

鳴上「わかりました。わざわざありがとうございます」

風花「どういたしまして。それじゃ、また」

>風花に挨拶して立ち上がった。
20 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/07(土) 00:05:30.58 ID:FpPO8sseo
>そういえば、渡すものがあった。

鳴上「あ、そういえば……あの部屋にあったんですけど、これ」

>ヘッドホンを取り出すと、風花の目が大きく見開かれた。

鳴上「前にあの部屋を使ってた人のですかね。預かってもらえませんか」

風花「それ……そっか、あの部屋にあったんだ。こんなにボロボロ……そうだよね、二年もほったらかしにしてたもんね」

鳴上「あの……山岸さん?」

風花「あっ、ああ、ごめんなさい。じゃあとりあえず預かっておきますね」

>“誰かのヘッドホン”を渡した。

>……風花は今にも泣き出しそうな顔でヘッドホンを見つめている。

>とりあえず、部屋に戻ろう。

>二階に上がった所で天田が立っていた。

天田「詳しい話を聞かなくてもいいんですか」

鳴上「天田も知ってるのか」

天田「ええ、まあ。何なら僕が教えたっていいんですが」

鳴上「いや、いいよ。天田も山岸さんも信頼出来る人みたいだし、こっちから勘繰る事はしない」

天田「……後悔するかもしれませんよ」

>天田はどうやら心配してくれているようだ。
21 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/07(土) 00:06:19.76 ID:FpPO8sseo
鳴上「天田は良い奴なんだな」

天田「何がですか?」

鳴上「心配してくれてるんだろう」

天田「まぁ、そうですけど。気分が悪いんです。何かを隠したまま人に選択を迫るのが」

鳴上「気にするな。どうだろうと俺は俺の進みたい方を選ぶ。心配してくれてありがとう」

天田「……照れるんでやめてください。何か困った事があったらいつでも相談してくださいよ」

鳴上「ああ。多分いろいろ世話になると思う。今日の所は……少し疲れた。部屋で休む事にするよ」

天田「そうですか。じゃあ、また」

>部屋に戻った。

>休むと言ったものの、まだ日も沈みきっていない。

>寝るには早いか……。

>少しだけ寝て、夕飯時に起きればいいか。

>まだ少し埃臭いベッドに倒れこみ、目を閉じた。

>……。

聞き覚えのある声「お前が授業中居眠りなんて珍しいな」

>……?

>この声は……。
22 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/07(土) 00:07:31.58 ID:FpPO8sseo
鳴上「陽介」

陽介「おう。寝惚けてんのか?」

>どうやらここは八十神高校の教室のようだ。

>しかし、確か寮で眠っていたはず……。

鳴上「なんだ夢か」

陽介「夢って、おいおい。まだ寝る気かよ。よっぽどお疲れなんだな」

鳴上「いや、大丈夫だ」

陽介「そっか。今日もジュネス寄るんだろ?例の事件の話、もうちょっと煮詰めねーとな!」

>どうやら、一年前の事件の夢を見ているらしい。

千枝「あ、当然私達も行くかんね!ほっとけないっての」

雪子「うん。出来る事あるなら、なんでもやりたいし」

>皆は張り切っている。

陽介「はは、天城もやる気だな!しっかし、お前はすげえよなぁ」

>陽介は笑っている。

鳴上「何がだ?」

陽介「神様に選ばれて、他の連中と違って現実からも逃げない。俺達なんかとは違う特別な力を使う」

千枝「ほんと、すごいよね」

>千枝は笑っている。

千枝「優しいし、面白いし、かっこいいし、誰にだって受け入れられて、皆を助けて」

鳴上「どうしたんだ、二人共」

雪子「二人だけじゃないよ」

>雪子は笑っている。

雪子「私もそう思ってる。あなたは特別な人。強くて、まっすぐで、誰かの理想そのままで」

陽介「だな」

千枝「そうだね。まるでアレみたいじゃない?」

雪子「うん。君はまるで」

「物語のヒーローみたい」
23 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/07(土) 00:08:13.76 ID:FpPO8sseo
>これは夢だ。

>だが、この奇妙な現実感はなんだろう。

>褒められているはずなのに、絶えず付き纏う不快感の正体は何なんだ。

鳴上「皆、何を言って……ッ!?」

>突然、背筋が粟立った。

>視線?

>背後から誰かに見られている感覚。

>いや、誰かではない。

>この視線は一人の物じゃない。

>幾人も幾人も、何十、何百、何千人の視線が自分に降り注いで纏わりついている。

鳴上「なんだ……誰だ……!」

>急激に重くなる体を何とか動かして、不自然ににこやかな仲間たちから視線を逸らす。

>振り向いて視線の基を探ろうとする。

鳴上「う……」

>首を捻った辺りで意識が明滅し、暗転する。

>視界には何も映らず、ただ声だけが聞こえる。

>さっきまでの皆の声とは違う、知らない人の声だった。

「……やり直せる……全ては今へ……」

「あいつが……奇跡……そんなの……」

「私は……冷たくなった彼の……約束……」

「……涙を流していた……私……捨てようとしてたのね」

「あなたもまた、命の答えに辿り着いた」

>轟音がして、地面が大きく揺れた。
24 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/07(土) 00:08:53.15 ID:FpPO8sseo
では、また明日。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/07(土) 00:20:52.47 ID:fJcwGzri0
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 00:42:41.69 ID:GIqUULdP0

また復活してくれて嬉しいよ
27 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:00:31.40 ID:8YQ5LCCbo
鳴上「うわっ!……地震か?」

>飛び起きて辺りを見回すと、どうやら寮の部屋に戻ってこれたようだ。

鳴上「気味の悪い夢だったな……少し寝過ぎた」

>天田や山岸さんは無事だろうか。

>一度大きく揺れて以後、揺れは治まったようだが……。

>とりあえず部屋を出た。

天田「あ、先輩。今……」

鳴上「凄い揺れだったな」

天田「ですね。地震にしてはそれ以降揺れないし……どこかで工事とかしてるんでしょうか」

鳴上「それより山岸さんが心配だ」

天田「あ、そうですね。三階に……」

風花「あ、二人共!丁度よかった!」

>何故か風花は階下から上がってきた。

天田「あ、風花さん。こっちも今から様子を見ようと……」

風花「鳴上君、今何時か見た?」

>風花は慌てている。

鳴上「丁度日付が変わった頃だったと」

風花「そう。それから、今外がどうなってるかわかる?」

鳴上「外?」

>窓から見てみるまでもない。

>雨音だ。

鳴上「雨が降って……」
28 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:07:00.20 ID:8YQ5LCCbo
>気付いた。

鳴上「いや、そんなはずは……」

天田「何かあったんですか?」

風花「天田君にも説明されてるはずだけど……」

天田「まだ見た事は無いですけど。あ、そうか、今雨だから……」

風花「と、とにかく二人共、一階に」

>三人で一階に降りた。

鳴上「これは……」

>ラウンジの床に大きな亀裂が入っている。

天田「風花さん、これって……」

風花「うん、似てる……と思う」

>二人は何か相談している。

>床を確かめる……。

>どうやら裂け目はかなり深く、地面の奥まで達しているらしい。

>さっきの地震が原因で地割れが起こったのだろうか?

鳴上「山岸さん、それで……地震もですけど、俺が気になったのはそうじゃないんです」

>風花は頷いた。

風花「近い内とは思ってたけど、まさかその日の内だなんて……明日、ここの本当の責任者を呼びますから、その時に私と一緒に説明してください」

鳴上「それは構いませんけど、俺に言うってことは……」

風花「マヨナカテレビ、です」

>八十稲羽で起こった一連の事件……。

>その発端となった『マヨナカテレビ』……。

>あの街だけの現象だったはずなのに、何故この街で?

>とにかく、明日来るという人と話をしてみよう。
29 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:09:40.33 ID:8YQ5LCCbo


【4/6 曇り】


>昨夜降っていた雨は止んだが、今にもまた降り出しそうな天気だ。

>今日はこの寮の本当の責任者だという人が来るらしい。

>ラウンジに行ってみよう……。

風花「あ、おはよう。良く眠れた?」

>ラウンジにはまだ風花しかいない。

鳴上「疲れてたんで。それで……」

風花「もうすぐ来ると思うから。丁度、起こしに行こうと思ってた所」

>件の人物はすぐに来るという。

>風花と一緒に座って待つ事にした。

>……車のエンジン音がする。

風花「あ、来たみたい」

>エンジン音が寮の前で止まった。

風花「ちょっと出てくるね」

>頷くと、風花は玄関を開けてその人物を迎え入れた。

風花「お忙しいところすみません。今日はどのくらい時間取れるんですか?」

女性「悪いがそう長くは居られないな。話が済んだらすぐにでも出なければならない。以前から計画していた組織の話が少々込みいっていてな……」

>やって来た女性はそこで初めてこちらを見た。
30 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:11:24.31 ID:8YQ5LCCbo
女性「君が鳴上か」

>思わず立ち上がって一礼してしまった。

>なんとなく、そうしたくなる女性だった。

>気品というか、人を従える事に慣れているような、そんな気がして。

女性「ああ、座ったままでいい。こちらに来て早々こんな事になってしまって、本当にすまない。ラウンジがこれでは暮らしにくいだろう」

>女性は床に深々と入った亀裂を眺めている。

風花「あ、鳴上君。こちら、桐条美鶴さん。私達の先輩で、この寮を所有してる人」

鳴上「所有?」

美鶴「ああ。この建物は私名義で登記されている。といっても管理は業者がやるし、春からは山岸に監督してもらっているが」

>美鶴は対面に座った。

>その隣に風花も座る。

美鶴「それじゃあ、よろしく頼む。簡素な挨拶で悪いが時間が無いんだ。本題に入らせてもらうがいいか」

>黙って頷いた。

美鶴「よし。では山岸、説明を頼む」

風花「はい。まず昨夜の出来事から報告します。昨夜、この地域には雨が降りました」

美鶴「それは道中聞いている。そこで君はどうしたんだ?」

風花「運良く雨音に気付けたので、桐条先輩の指示通りにテレビを観察しようと思ってラウンジに来ました。そうしたら、電源を切っているはずのテレビに映像が」
31 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:15:32.19 ID:8YQ5LCCbo
鳴上「数日前にですか?なら何故俺がもらった書類にここの住所が?」

風花「それは偶然。今学生寮の割り当てが決まるまでの仮住まいの予定だったんです。けど、こうなった以上、多分このままここに住んでもらうことになります」

鳴上「ああ、なるほど……話の邪魔をしてしまってすみませんでした」

美鶴「いや、いいさ。君の疑問は残しておくべきじゃない。なにせ私達の誰よりも、今回の事件に詳しいはずだからな」

>だが、マヨナカテレビに端を発する事件は全て解決したはずだ。

風花「それじゃ、続けます。その映像を見ていると、一つ大きく地面が揺れて、そのせいで床に亀裂が。びっくりしちゃいました」

美鶴「よく無事だったな……山岸から連絡があってすぐに調べたが、地震は観測されていない。ここだけが揺れたようだな」

風花「はい。それで、天田君とも話したんですけど、この感じ、何となく覚えがあるなって……」

美鶴「ああ、現場に来てみて私もそう思った。が、まずそれは置いておこう。今は検証すべき事がある。鳴上」

鳴上「はい、なんですか?」

美鶴「山岸からマヨナカテレビの内容は聞いたか?」

鳴上「まだですが」

美鶴「なら聞いて欲しい。何か気付く事があるかもしれない」

鳴上「わかりました。山岸さん、まず最初に見た時の内容をお願いします」

風花「はい。最初に見た時は、何かよくわからなかったんです。人影が……ぼんやり映って。多分、女の人だったと思うんですけど」

鳴上「で、昨夜は」

風花「……私にも覚えのある映像がはっきりと。あれは、多分……三年前の春」
32 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:16:19.65 ID:8YQ5LCCbo
鳴上「はっきり映ったんですか?誰が出てきましたか?」

風花「誰って……?」

鳴上「番組みたいになってませんでしたか?」

風花「別に、そんな感じじゃ無かったです。ただカメラで記録した映像を流してるだけって感じでした」

>今までのマヨナカテレビとは違うのだろうか。

鳴上「まず人影が映る。これは俺の知っているマヨナカテレビも同じです。そして、映像がはっきりしたら……番組が始まるはずなんですが」

美鶴「番組?」

鳴上「大体はバラエティ調です。テレビの中に入れられた人の見たくない部分……シャドウが、後ろ暗い部分を極端に誇張して発信するんです」

風花「そんな感じじゃなかったんだけど……それに、さっきも言ったけどあれは現実にあった事を記録したような映像だったんです」

美鶴「三年前の春……と言ったな。もしかすると」

風花「はい。時間が空回りしたあの日です。この寮の壊れ方も、それから連想しちゃって」

美鶴「そうか……待て、山岸。カメラで撮ったような映像と言ったな。それはどこから撮られた物だった?」

風花「どこから……誰かの視点から見た感じでしたけど」

美鶴「それは誰だ」

風花「誰……?」

美鶴「鳴上。マヨナカテレビは中に入れられた人の心情が反映されるんだったな」

鳴上「少なくとも、以前はそうでした」

美鶴「そして、入れられた者は……」

鳴上「場合によっては、自らのシャドウに勝てずに……」

美鶴「結果が連続殺人か。山岸。誰かの視点だったというならその人物が入れられた可能性が高い。何とかわからないか?」
33 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:17:49.14 ID:8YQ5LCCbo
風花「ま、待ってください。そんな、それって」

>風花は慌てている。

>何かに気付いたようだ。

美鶴「山岸」

風花「……鳴上君。映像がはっきり映るのはテレビに人が落とされたらって言ったよね」

鳴上「……はい」

風花「桐条先輩。アイギスに連絡を。昨夜画面に映って無かった人がわかりました。つまりあの視点は……アイギスです」

美鶴「なっ……アイギスだと?確かに今アイギスは別働してもらっているが……」

>美鶴が電話のようなものを取り出してボタンを押し、耳に当てた。

>全員が黙って次の言葉を待つ。

美鶴「……おかしい」

鳴上「出ないだけなんじゃ……」

美鶴「電波が入らないんだ。地球上であればほとんどの場所で通じるはずなんだが」

風花「じゃあ、じゃあやっぱり……!」

美鶴「その可能性が高いだろうな……迂闊だった!」

風花「私達は調査する側だと思い込んでいましたね……近付いた分、危険も増すはずなのに」

美鶴「考えてみれば当たり前の事だった。油断か慢心か……とにかくすぐに対策を打つ」

風花「対策って……何をするんですか?」
34 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:26:05.40 ID:8YQ5LCCbo
美鶴「テレビの中に世界があり、君は自由に入る事が出来る。だったな?」

鳴上「え、ええ……」

美鶴「そして君と一緒ならば、その力の無い者も入れる。そうだな?」

風花「ちょ、ちょっと待ってください!危険です!」

鳴上「山岸さんの言う通りです!俺の時とは勝手が違う可能性だって……」

美鶴「なら黙って待っていろというのか!」

風花「そうじゃないです!何の策も持たずに……」

>風花と美鶴は言い争っている……。

>テレビに落とされたという人も気になるが、このまま行かせるわけにはいかない。

鳴上「落ち着け!」

美鶴「……ッ!」

風花「あ……」

鳴上「その、アイギスさんはペルソナ使いなんですか?」

美鶴「あ、ああ。そうだが」

鳴上「なら、シャドウが出ないか……あるいは出ても、戦える可能性があります」

美鶴「確かに戦闘においては余程信頼はおけるが……」

鳴上「それに、入ったからと言ってすぐにどうこうなるわけじゃない……体力の消耗はありますが、直接被害が出るわけじゃないんです」

美鶴「しかし、君の言った通り以前とは勝手が違うかもしれない。今回も安全とは言えないだろう」

鳴上「それでも、今行けば被害が増えるだけです。そもそも脱出する手段も考えずに突入するべきじゃない」

美鶴「だが……しかしだな……」
35 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:26:43.12 ID:8YQ5LCCbo
鳴上「焦る気持ちは理解できます。だけど俺達が焦って失敗したら誰も助けられなくなる。それを一番避けるべきでしょう」

風花「私達は失敗できないんだもんね。桐条先輩、やっぱりしっかり準備してから行うべきだと思います。アイギスは……心配だけど、今は信じましょう」

美鶴「……鳴上。具体的な対策を用意してくれ。この件は君に一任する」

鳴上「俺でいいんですか?」

美鶴「テレビに関しては君が一番詳しいだろう」

鳴上「それはそうですけど……」

風花「お願い。私もそれが一番可能性が高いと思う。アイギスを助け出せる可能性が」

>二人は多少落ち着いたようだ。

鳴上「わかりました。やれるだけやってみようと思います。とりあえず、以前の事件で一緒に戦った仲間に連絡をとってみます」

>二人は黙って頷いた。

>再び映ったマヨナカテレビ……。

>事件は既に始まっていた。

>また慌ただしい毎日になりそうだ……。
36 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:27:27.79 ID:8YQ5LCCbo
美鶴「ん?それは……」

>携帯を取り出すと、美鶴がそれを見て言った。

美鶴「ふふっ、そのキャリアを選ぶとは流石だな。性能面では業界一だ」

鳴上「は?」

風花「あ、ほんとだ、KJの……鳴上君、その携帯のメーカー、KJって知ってる?」

鳴上「はぁ、まあ……それが?」

風花「KJの親会社ってどこかわかる?」

鳴上「確か、桐条……え?」

風花「桐条先輩はね、桐条グループの総帥なの。言うの忘れてたけど」

美鶴「君がお望みなら専用のモデルを作らせるぞ?事件解決に尽力してくれるならだが。さて、私は仕事がある。進捗は山岸経由で連絡してくれ」

>……最後に、今日一番の驚きを残して美鶴は去っていった。

風花「それじゃ、お願いします。私、ここの修繕してみるから」

>とりあえず、八十稲羽の仲間達に連絡をしなければならない。
37 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 00:28:01.63 ID:8YQ5LCCbo
では、また明日。
38 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/08(日) 01:09:12.01 ID:8YQ5LCCbo
訂正。>>30>>31の間にこれが入ります。

鳴上「本当にマヨナカテレビが……」

>思わず呟いてしまった。

美鶴「そう、だから君が必要なんだ。一週間と少し前、この街に雨が降った。雨は一晩降り続き、日付が変わる頃……」

鳴上「テレビが映った」

風花「その時、私が偶然起きてて。驚いたんだけど、それだけじゃなくて……テレビの向こうからシャドウの気配がしたから」

鳴上「シャドウを知ってるんですか?」

美鶴「ああ。私達はかつてシャドウと戦った事がある。そして、今も」

風花「一回だけだったから、気のせいかもと思ったんですけど、気になって桐条先輩に連絡して。それで、急遽この寮に戻ってくる事になったの」

美鶴「以前シャドウと戦った時はここが本部だったからな。設備は残っているし、また使う事になったわけだ」

>シャドウの事を知っていて、マヨナカテレビにも誰よりも早く気が付いたようだ。

>そして、戦ったということは……。

鳴上「つまり、山岸さんも桐条さんも、多分天田も……シャドウと戦える」

美鶴「そうだ。私達はペルソナ使いだ」

鳴上「……一つ疑問があります」

美鶴「どうした?」

鳴上「何故俺の事を知っていたんですか?」

美鶴「ああ、その事か。数日前に、君を良く知る人物と関わる事があってな」

>良く知る人物?

美鶴「その人物もペルソナ使いだとわかったから、それから色々と調べさせてもらって……君と仲間達が、八十稲羽で起こった殺人事件の解決に奔走していた事を知った」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/08(日) 23:57:48.06 ID:mETyAoST0
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/09(月) 00:00:25.02 ID:UPBdTxW30
すまん、上げてしまった・・・
41 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/09(月) 00:00:27.64 ID:WGwaPxn1o
>自室に戻って少し考えた。

鳴上「あの中の話なら……クマか。向こうに帰るって言ってたけど、どうしてるんだろう」

>クマはもしかすると連絡出来ないかもしれない……。

鳴上「なら……」

>登録してある番号を呼び出す。

>……。

声『おう!なんか久しぶりだな!』

鳴上「陽介か」

>陽介は元気だ。

陽介『俺の携帯に俺以外誰が出んだよ。それよりどうした?久々の都会で楽しくやってんじゃなかったのかよ』

鳴上「ちょっと色々あってな。少し話が聞きたいんだ。……クマ、いるか?」

陽介『クマ?ああ、あいつな。ほら、お前帰る時に言ってたろ、向こう帰るって』

鳴上「やっぱり帰ってるのか?」

陽介『いんや。お前が帰ってからずっと俺んとこだ。寂しんボーイなんだと。いい迷惑だぜ』

鳴上「丁度良かった、今替われるか?」

陽介『おう、そりゃいいけど。なんだよクマに用事かよ』

鳴上「陽介にも聞きたい事はある。後でまた替わってくれ」

陽介『あ、もしかしてマジな話なわけ?わかった、ちょっと待ってくれな』

>受話器の向こうから何か騒ぐ声が聞こえる。
42 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/09(月) 00:01:01.33 ID:WGwaPxn1o
クマ『センセー!!お久しクマー!』

鳴上「ああ、久しぶり」

クマ『クマな、センセイいなくなって寂しくって……ヨースケもかまってくれなくて……』

鳴上「悪い、その話はまた今度聞く。今は少し聞きたい事があるんだ」

クマ『センセイもいけずクマ……もー何?何聞きたいの?』

鳴上「クマ、テレビの中の事わかるか?」

クマ『そら、クマの故郷ですから?わかるけども?』

鳴上「今どうなってる」

クマ『今はわからんクマ。ずーっとこっちいるから……』

鳴上「良ければ様子を見てくれないか。何かおかしい事はないか、また人が入ってないか」

クマ『どしたの?もしかして何か事件クマ?』

鳴上「どうもそうみたいだ。なるべく早く頼む」

クマ『他ならぬセンセイの頼み!ちょっくら行ってくるクマ!待っててちょー』

鳴上「電話は陽介に戻してくれ。任せた」

クマ『はいよー。ヨースケー』

>クマはテレビの中に戻っていなかったようだ。

>何かつかめるといいが……。
43 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/09(月) 00:01:28.58 ID:WGwaPxn1o
陽介『……クマの奴、なんか妙に張り切ってたけどどうしたんだ?』

鳴上「少し調査を頼んだんだ。陽介、そっちで何か変な事無いか?」

陽介『変な事なぁ。別に無いぜ。あ、変わった事ならあるけどな』

鳴上「変わった事?」

陽介『落ち着いてから連絡するつもりだったんだけどな』

鳴上「いや、何でもいい。教えてくれ」

陽介『多分関係無いと思うぜ?まず、りせちーが復帰した』

鳴上「アイドル活動か?」

陽介『そうそう。あー、詳しくは本人達に聞けって事で、結果だけ話すぜ』

鳴上「他にもあるのか」

陽介『ん、もう一つ二つな。直斗が転校した』

鳴上「転校?どうして?」

陽介『元々事件解決までの滞在予定だったらしいし、別の事件の調査があるんだと。それから、天城が本格的に女将修行するとか』

鳴上「そういえばそう言ってたな」

陽介『そんで放課後あんまり付き合えなくなるらしい。それから里中もだな。国家公務員になるっつって勉強勉強だ』

鳴上「そうか……」

>皆、それぞれに道を歩み始めている……。

>驚いたし少し寂しくもあったが、それで良いんだと思うことにした。

鳴上「皆の事はわかった。他には無いか?」
44 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/09(月) 00:01:55.52 ID:WGwaPxn1o
陽介『他になぁ。特に無いと思うけどな……何があったんだよ』

鳴上「マヨナカテレビがまた映った。しかも八十稲羽の外でだ」

陽介『マジかよ!?つーかまたそんな事巻き込まれてんのな、お前。体質っつーのかねぇ』

鳴上「それで、もしかしたらそっちでもと思って」

陽介『こっちじゃそんな話聞かねーぞ。この前の雨の日も何も映んなかったし』

鳴上「じゃあこっちだけなのか?」

陽介『多分な。なぁ、俺らに出来る事無いか?』

鳴上「今はまだ、としか言えない。わからない事が多すぎるし、こっちだけだとしたら皆じゃ手出し出来ないかもしれない」

陽介『そっか……ま、何かあったらまた言ってくれよ!皆にゃ一応話しとくし、こっちからも何かあったら連絡すっからよ!』

鳴上「悪い、けど頼む」

陽介『悪いなんて言うなっての。離れちまったけど仲間だろ、俺達』

鳴上「ああ、そうだ……」

クマ『てーへんクマああああああ!!』

陽介『うっるせえんだよバカ!』

>突然受話器の向こうから叫び声が聞こえた。

>テレビの中へ向かったはずのクマの声だ。
45 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/09(月) 00:02:30.62 ID:WGwaPxn1o
鳴上「陽介、クマに替わってくれ」

陽介『お、おう。ほれ、何があったんだよ』

クマ『センセー……大変クマよ……テレビん中、また昔みたいに霧だらけになっちゃってたクマ……』

陽介『何ぃ!?』

鳴上「……そうか。誰か入ってる気配はしたか?」

クマ『うん、けど何かちょっと変だったクマ。センセイやみんなとちょっと違う感じ』

>ちょっと違う感じ……?

鳴上「それが知りたかったんだ。ありがとう」

クマ『皆の心の中、また霧モヤモヤクマ?』

鳴上「わからない。クマ、頼めるか」

クマ『何クマ?また霧無くすためならなんだってするクマ!』

鳴上「俺がこっちからテレビの中に入る。クマは俺を探しだして出口を作ってくれ」

クマ『へ?センセイ一人で入るクマ?』

鳴上「いや、一人じゃないと思う。だけどそっちから入る事は出来ないから」

クマ『それ、危険クマ……クマがいけない場所かもしれないし……』

鳴上「やらなきゃならないんだ。頼む」

クマ『……わかったクマ!クマ、頑張っちゃうよ!いつやんの!?』

鳴上「数日の内には。その時はまた連絡するから」

クマ『おっけークマ!そんじゃ今からちょっと様子見てくるクマ!』

>クマは雄叫びを上げて離れていった……。
46 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/09(月) 00:03:19.60 ID:WGwaPxn1o
陽介『で、どうすんだよ』

鳴上「俺がやるしか無いだろうな」

陽介『クマと一緒に行ってもいいんだぜ?』

鳴上「出来るならそうしてくれ。ただ、無理に来なくていい。陽介にもやることあるだろ」

陽介『まーな。今度こそバイク買おうと思ってバイト三昧。つってもんなもんより相棒の危機だけどな』

鳴上「……じゃあ、頼む。他の皆も無理には言わなくていい」

陽介『ああ。皆忙しそうだしな。テレビん中に入るってとこは言わないどくわ。……なぁ、相棒』

鳴上「どうした?」

陽介『無茶すんなよ』

鳴上「お互いな」

陽介『これからいろいろ手回すんだろ?』

鳴上「準備はしないといけないからな」

陽介『お前、前からその辺抜かりねーもんな。よっしゃ、んじゃまたしっかり解決しようぜ!また連絡くれよな!』

鳴上「ああ、また連絡する。ありがとう」

陽介『へっ、いいって。んじゃまたな!』

>陽介との通話を切った。

>マヨナカテレビはこちらしか映っていないらしい。

>そして、テレビの中の世界には霧が再び出ている。

>テレビの中の世界に誰かが入っている。

鳴上「……確定だな。向こうの霧が晴れる前に何とかしないと」

>気になる所と言えば、クマが言う“ちょっと違う感じ”だろうか。

>前の時と何かが違う……?

>行ってみなければわからないか……。

鳴上「山岸さんと色々相談しないと」

>ラウンジへ行こう。
47 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/09(月) 00:03:57.01 ID:WGwaPxn1o
風花「あ、鳴上君。お友達と連絡は付いた?」

鳴上「はい。あの、それは何を……」

>風花はつなぎを着て工具箱を持っている。

風花「今天田君が板買いに行ってるから、とりあえず渡すだけ渡してヒビの上通れるようにしようかなって」

鳴上「随分と、その、用意がいいですね」

風花「あ、うん。趣味用のアイテム。大工仕事には丁度いいかなって」

>風花は笑っている。

鳴上「俺やりますよ。天田と一緒に……っと、そうだ。そうじゃなくて。色々報告する事があるんです」

風花「うん、じゃあちょっとお話しようか」

>ラウンジのテーブルを挟むように座った。

鳴上「……まず、テレビの中に入る事は絶対必要だと思います」

風花「はい」

鳴上「助けだす為には誰かが行かなければならない。これは前回も今回も同じ、だと思っています」

風花「行ってみないとわからないって事ですね」

鳴上「そういうことです。一応脱出の算段はしておきましたが、もしかすると帰って来れなくなるかもしれない」

風花「テレビの中から?」

鳴上「そうです。なので、出来れば俺一人で行ってこようと思うんですが」

風花「……それは承諾できません。危険であるなら尚更複数人で向かうべきです」

鳴上「中が危険なんじゃなくて、出れなくなる危険の話をしてるんです」

風花「どちらにしても、その世界を解析する役目が必要なはずです。それに……」
48 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/09(月) 00:04:27.49 ID:WGwaPxn1o
風花「アイギスは私達の仲間で、友達です。誰かに任せたままになんて出来ない」

鳴上「……わかりました。でも全員で行く事はできません。誰かは残って、万が一の場合俺の仲間に連絡を」

風花「残るのは……順当に考えたら桐条先輩かな。多分先輩は行きたがるだろうけど」

鳴上「そうですね、桐条グループ総帥が行方不明じゃ大事件だ。それから、中では戦闘があると思います」

風花「装備?」

鳴上「それと出来れば薬なんかの物資も、ですね。しっかり準備して行かないと」

風花「わかりました。先輩に掛けあっておきます」

鳴上「まぁ、今言える事はこのくらいです。一度に全部攻略してしまうんじゃなく、まず帰ってこれる事を確認して……」

風花「その辺りのプランは私が専門だから任せて。少しずつテレビの中を解明していけばいいんですね」

鳴上「そうすべきでしょうね。色々と未知な部分もある。まずは帰路の確保ですが……これは絶対に俺一人で行きます」

風花「それは何故?」

鳴上「さっきも言いましたが帰ってこれなくなるかもしれないからです。けど、ある理由で俺が入らなければならない。目印のような物なので」

風花「……わかりました。もし帰ってこれなかった場合」

鳴上「携帯を置いていくので、メモリの中の“特別捜査隊”っていうグループに片っ端から連絡入れてください」

風花「了解。じゃあまずは物資関連だね。先輩の事だから明日には色々山積みになってると思う」

鳴上「そのくらいやってのけそうですね」
49 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/09(月) 00:05:05.24 ID:WGwaPxn1o
風花「後は天田君か……私から危険性について説明しておきますね」

鳴上「お願いします」

風花「ただ、結果は何となくわかってますけど。さて、後出来る事は……」

鳴上「あ、テレビ……これじゃ小さすぎるので、物資に入れておいてください。最優先で、人が入れるサイズのテレビを」

風花「そこは普通の出入口と同じなんだ……もっとファンタジーなのかと思ってた」

鳴上「そんなもんです。じゃあ、あとお願いします」

風花「はい。あ、その辺りヒビ入ってるから気をつけてね」

>風花に伝えるべきことは伝えた。

>他にやることはあるだろうか……。

鳴上「そういえば、陽介とクマだけで大丈夫なのかな」

>もし霧の中に以前のようにシャドウがいた場合、二人だけでは危険かもしれない。

>余り気は進まないが、一人くらい援軍を手配する必要があるかもしれない。

鳴上「誰ならいいかな……」

>とにかく、誰か一人に連絡しておこう。
50 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/09(月) 00:05:41.82 ID:WGwaPxn1o
誰を呼ぼう。
では、また明日。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/09(月) 00:56:08.16 ID:3o4Ch+aSo
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/09(月) 23:38:00.49 ID:CBYVoE6q0
なんで人いないの?と思ったが、日が浅いんだな。
まだ50だしな。
53 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:00:46.69 ID:LM0qtIfDo
鳴上「あと俺に出来る事は無いかな」

>物資は依頼した、人事も行った。

>後は自分の覚悟だけだ。

鳴上「だけど、なんでまたマヨナカテレビが……あれを映していたのはイザナミで、あいつはもう」

>今回の事件も謎は多い。

>マヨナカテレビが再び映った理由。

>さらに、テレビの中に人が入り込んだ理由。

>前回は二人の男がテレビに人を落としていたが、今回も何者かの仕業なのだろうか。

>だとしたら誰が、何の目的で?

鳴上「……何にせよ、アイギスって人を助けないと何も始まらないか」

>現時点で出来る事は無い。

>が、どうにも落ち着かない。

鳴上「散歩でもしてくるか」

>少し、街をうろついてみよう。

風花「鳴上君、お出かけ?」

>ラウンジで風花に声をかけられた。

鳴上「はい。何だか落ち着かないんで、少し散歩でもと」

風花「そっか。それなら神社行ってきてくれないかな」

鳴上「神社ですか?」

風花「場所は教えるから。そこにいるワンちゃんの様子を見てきて欲しいの」

鳴上「犬……?」

風花「見てくるだけでいいから、お願いね」

>風花に神社の場所を教えられた。

>行ってみる事にした……。
54 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:01:39.19 ID:LM0qtIfDo


【長鳴神社】


鳴上「あった、ここか」

>子供用の遊具や砂場がある……。

>ここに犬がいるらしいが、見当たらない。

鳴上「……ちょっと待ってみるか」

>ベンチに座って辺りを眺めてみる事にした。

>何だか疲れている。

鳴上「こっちに来て早々妙な事件だし、陽介にも言われたけど体質なのかもな……」

>だとしたら、きっとイザナミに接触した時に歪められたに違いない。

鳴上「あいつめ……いや、八つ当たりか……」

マフラーの男「あれ?珍しいな、僕以外に人がいる」

>声に気付いて目線をやると、知らない少年がこっちを見ている。

マフラーの男「そこ、僕の指定席なんだけど。今日は君に譲るよ」

>男は穏やかな笑顔で言った。

>春だというのに長いマフラーを巻いている……。

マフラーの男「隣、いいかな?」

鳴上「あ、どうぞ」

>少し端に寄って距離を空けた。
55 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:02:05.18 ID:LM0qtIfDo
マフラーの男「どうも。……君、ここら辺の人?」

鳴上「いや、引っ越してきたばかりで。今日はたまたま散歩しててここに」

マフラーの男「ああ、そうなんだね。高校生?」

鳴上「今年から月光館学園の三年に転入する事になってる」

マフラーの男「おお!それじゃ僕と同級生だ。僕も転入生。僕は一ヶ月くらい前からこっちに住んでるけどね。学校が始まったらよろしく!」

>マフラーの男は笑顔で右手を差し出してくる。

>……さっきまで考えていた事のせいか、何となく気が引けるが、とりあえず握手に応じた。

鳴上「ああ、よろしく。そうだ、良く来るならここに犬がいるのを知らないか?」

マフラーの男「犬?ああ、良く見かけるね。今はいないみたいだけど、白いのが」

鳴上「その犬の様子を見てきてくれって頼まれてたんだ。待ってたら会えるかな」

マフラーの男「多分ね。変な事を頼む知り合いがいるんだね」

鳴上「俺もよくわからないんだけどな。……知り合い、か。知り合いだよな」

マフラーの男「ん?何か引っ掛かる事でも?」

鳴上「いや、何でも無いんだけどな」

マフラーの男「ふむ、それじゃちょっと推理してみようか。君にここへ来るよう頼んだ知り合いはこっちに来てから会った人だね?」
56 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:02:40.33 ID:LM0qtIfDo
鳴上「ああ、そうだけど」

マフラーの男「うん、大体予想がついた。君は引っ越して来る前、とても仲の良い友達がいた」

鳴上「確かにいたな」

マフラーの男「でしょ?それでこっちに来て、新しい仲間が出来た。けど、まだ自信を持って仲間って呼べる程じゃない」

鳴上「……」

マフラーの男「当たり前だよね、過ごした時間が違う。だけど……そうだな、例えば同じ所に住んでるとかして、仲良くせざるを得ない」

鳴上「凄いな、当たりだ」

マフラーの男「だから、“知り合い”なのか“仲間”なのか距離感を掴みかねてるってとこかな」

>マフラーの男は自分の中にあった違和感をぴたりと言い当ててしまった。

鳴上「なんでわかったんだ?」

マフラーの男「僕はこう見えて名探偵なのさ」

鳴上「もっと意外な探偵を見たことがあるから驚かないぞ」

マフラーの男「冗談じゃないか、普通に返さないでよ。実は知ってたんだ、君が寮住まいなの」

鳴上「ああ、そうだったのか」

マフラーの男「転校生が二人もーって、ちょっと噂になってたからね。そういうのには敏いんだよ僕は」

鳴上「……まだ出会って2日しか経ってないんだ。それなのに、すごく重大な事を一緒にしなきゃならない」

マフラーの男「へぇ、どのくらい?」

鳴上「絶対に失敗出来ないくらい。何か、どこまで信頼していいのかわからなくて」

マフラーの男「うーん、事情は良く知らないけど……それ、逆に全部信用しないと危ないんじゃない?失敗出来ないんでしょ?」

鳴上「まぁ、そうなんだけど……違和感があるっていうか。前の仲間達の他に仲間なんて言える人が出来るのか、それがわからないんだ」

マフラーの男「難しい事を考えるんだね。そんなの成り行きでしょ。お互いまだ何も知らないのに仲良くなれるかどうかなんてわからない」

>マフラーの男は不思議そうにこちらを見ている。
57 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:03:45.03 ID:LM0qtIfDo
鳴上「……良い事言うな、凄く」

マフラーの男「そう?照れるな。……っと、そろそろ行かなくちゃ。今日は会えて良かった」

>マフラーの男は立ち上がり、去ろうとしている。

鳴上「ああ、俺も話せて良かった。次は学校で会えるかもな」

マフラーの男「そうだね。あ、来たよ」

>指差す方を見ると、白い犬がのろのろと歩いている。

>随分高齢のようだが、怪我も無いしそれなりに元気そうだ。

鳴上「あの犬がそうか。様子見たら俺も帰る事にするよ。……なぁ、名前、教えてくれないか」

マフラーの男「君は?」

鳴上「ああ、そうだな。名乗る時は自分からか。俺は鳴上悠」

マフラーの男「よろしく、悠。僕はね」

>男は手を振って立ち去りながら名乗った。

マフラーの男「望月綾時。それじゃ、また」

鳴上「またな」

白い犬「ワン!」

>綾時を見送っていると、足元に犬が擦り寄ってきた。

鳴上「随分と人懐っこいな。よしよし」

>犬は気持ちよさそうにしている……。

>犬の様子も見たし、帰って明日に備えよう。
58 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:04:52.09 ID:LM0qtIfDo


【4/7 雨】


>Pipipi……。

鳴上「ん……電話か」

>携帯の音で目が覚めた。

鳴上「もしもし」

クマ『セセセセンセー!またまたえらいこっちゃクマー!』

鳴上「クマか……どうかしたのか?」

クマ『どうもこうも無いクマ!テレビん中、霧晴れちゃったクマ!』

>…………。

鳴上「なんだって!?」

クマ『様子見ようと思ってテレビん中入ったら、なーんか変だなーって思って!よく考えたら、霧が全然出てなかったの!』

鳴上「ちょっとまて、外に霧は出てるのか?」

クマ『出とらんクマ!なんか、これやっぱりちょっと違うんかも……クマ、こんなの知らないクマよ』

鳴上「どうなってる……くそっ!クマ、またすぐ連絡する!いつでも取れるようにしておいてくれ!」

クマ『任せるクマ!』

>クマとの通話を切った。
59 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:05:18.32 ID:LM0qtIfDo
鳴上「一番駄目な部分を読み違えた……とにかく準備だ」

>美鶴に依頼した事が済んでいればいいが……。

>ラウンジに行ってみよう。

風花「おはよう。どうしたの?そんなに慌てて」

鳴上「山岸さん、大変です。救出作戦ですが、とにかく急いで行わないといけなくなりました」

風花「どういう理由で?」

鳴上「テレビの中は、普段霧が出てるんです。それこそ前も見えないくらいに。それが晴れた時、シャドウは暴走します」

風花「うん、それで……」

鳴上「中の様子を探ってもらうように頼んでおいた奴から連絡がありました。今、霧は晴れているようです」

風花「そんな!じゃあもう手遅れってこと!?」

鳴上「今までだとそうでした。けど今回は落ちた人がペルソナ使いですから、無抵抗で殺されてしまうって事は無いと思います」

風花「そ、そっか。戦えるもんね。アイギスだったらきっと大丈夫」

鳴上「ただ安心も出来ません。なるべく早く行って手助けしないと、もしかすると既にかなり体力を消耗しているかも」

風花「そうだね、急がなくちゃ。桐条先輩に連絡してきます!」

鳴上「お願いします。最低でもテレビだけは今必要です」

風花「わかった!鳴上君は天田君と打ち合わせしててください!」

>風花は自分の部屋へ戻ったようだ。
60 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:05:48.58 ID:LM0qtIfDo
天田「だ、そうですよ」

鳴上「天田。聞いてたのか」

天田「風花さんの声が大きかったので。いよいよですか、って程待ってませんけどね」

鳴上「ああ。天田も行くんだろ?」

天田「ええ。アイギスさんは仲間ですから。それより僕は鳴上先輩が行く理由がわかりませんよ」

鳴上「何でだ?」

天田「赤の他人ですよ?そもそも顔も知らない。そんな人のために命の危険をおかす理由がわからないんです」

鳴上「人を助けるのに理由がいるのか?」

>天田は驚いている。

天田「……ごめんなさい、失礼な事を言いました。そうですよね。誰かを助けるのは当たり前の事だ」

鳴上「俺に助けられるなら、皆助けたいんだ。変か?」

天田「いえ、すごいです。それじゃ準備があるんで……行く時は呼んでください」

鳴上「ああ、後で声掛ける」

>天田も自室に戻っていった。

>とにかくテレビに入る準備をしなければならない。

>それから、八十稲羽のメンバーとも連携を取らなくては……。
61 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:06:30.98 ID:LM0qtIfDo
鳴上「まずはクマだ」

>クマの番号にかける。

クマ『……はいよークマクマ!』

鳴上「クマ、俺の匂いはわかるか?」

クマ『しっかり覚えてるクマ。忘れるはずないクマ!』

鳴上「だったら、俺がテレビに入ったらその匂いを追えるよな?」

クマ『任せんしゃい!絶対見つけて、テレビから出してみせるクマ!』

鳴上「わかった。それじゃ早速テレビの中に行ってくれ。俺の出発はいつになるかわからないけど」

クマ『ずっと鼻スンスンしとくから大丈夫よ!』

鳴上「クマが頼りだ、頼むぞ」

クマ『センセイも気をつけてるクマよ』

鳴上「ああ。じゃあ他の二人にも連絡しなきゃいけないから」

クマ『わかったクマ!合流してからテレビの中行っとくクマ!』

>クマとの通話を切った。

>次は陽介だ。

陽介『……もしもし?クマのヤツから聞いたぜ!どうすんだよ!』

鳴上「今日入る事にする。陽介はクマと一緒に……」

陽介『わかった、アイツ連れて入っとくわ』

鳴上「頼んだ。それから……」

陽介『もう一人も連れてけってんだろ?わかってるって!』

鳴上「ああ。中がどうなってるかクマにもわからないらしいから、気をつけてくれ」

陽介『こっちのセリフだっつの。お前も無茶すんなよ。じゃ、後でな!』

>陽介との通話を切った。

風花「テレビと装備、もう着くって!ラウンジ集合!」

>上階から風花の声が聞こえた。

鳴上「わかりました!」

>天田を呼んで、ラウンジに行こう。
62 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:07:02.96 ID:LM0qtIfDo
>風花はテレビのセッティングをしている……。

天田「またすごいのが来ましたね」

鳴上「そうだな」

>とても巨大なテレビだ……。

>ジュネスに合った物より大きい。

天田「あ、桐条さん……もう長柄じゃなくていいのに」

>天田は長い薙刀を支給されたようだ。

天田「昔、小さかった頃に……大きい相手にも負けないようにって長物選んで戦ってたんです。今はまあ見ての通りですけど」

鳴上「確かにそれだけ成長すればな」

>支給された日本刀の握りを確かめる。

天田「鳴上先輩は刀ですか?かっこいいですね」

鳴上「まさかこんなにしっくりくる武器が来ると思って無かったよ。これなら存分に戦えそうだ」

風花「準備終わりました。……いつでもいけます」

>天田を見た。

天田「こっちもオッケーです」

>風花を見た。

風花「現場での指揮は鳴上君が。私達はそれに従います」

鳴上「これからアイギスさんを助けだす為にテレビの中へ向かいます。二人はテレビに入る力が無いはずなので、手を繋いで絶対に離さないでください」

>二人は黙って頷くと、お互いに手をつなぎ、天田は俺の左手を取った。

鳴上「……行きます」

>テレビに手を入れる。

>気味の悪い寒気が体に走った。
63 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/10(火) 00:07:58.64 ID:LM0qtIfDo
いざテレビ。
では、また明日。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 01:57:53.49 ID:3dbPS7wDO
わくわく
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 11:51:39.55 ID:wjRrl/Vwo
わくわく、散々既出だと思うけど

風呂敷広げ過ぎないで欲しい。しかし期待大
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 15:57:13.11 ID:RwywCsDT0

俺は見てるぜ
67 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:01:36.13 ID:Ax1fvYfdo
鳴上「……ッ!なんだ、これ……!」

>落下する感覚はあるが、何かいつもと違う!

>周囲が安定していないような、ガタガタと頭をゆすられているような不快感がある。

鳴上「う、ァああああ!!」

>どすん。

天田「いっ……たたた……風花さん、大丈夫ですか?」

風花「私は平気……。けど、ここって……」

>周囲には屋根も壁も無く、ただ扉だけがある。

>まるでベルベットルームの入り口のようだ……扉の裏に部屋があるわけでもない。

鳴上「心当たりあるんですか?」

風花「うん。マヨナカテレビに映った日の事、私達は知ってるって言ったでしょ?その時の……」

>どうやらここで間違いないようだ。

鳴上「なら、この扉がどういうものかもわかりますか?」

風花「それはちょっと……ただ、見た目はどこにも繋がってないようでも、多分どこかにつながってると思います」

鳴上「今までの傾向が通用するかどうかわかりませんが、大抵は複雑な迷宮が作り上げられています。この扉ももしかしたら」

天田「心の中を反映した迷宮ですか。人間の心の中なんで皆そうなのかもしれませんね」

鳴上「そうだな。それで、これからこの中に入るわけだけど……その前に二人のペルソナを知っておきたい」
68 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:02:15.14 ID:Ax1fvYfdo
天田「戦力の確認ですね。随分久しぶりだけど……」

>天田は拳銃を取り出して自分の額に当てた。

鳴上「ちょ、何を……!」

天田「カーラ・ネミ!」

>引鉄を引くと同時に、天田の背後にペルソナが浮かぶ。

風花「ごめんなさい、説明してなかったね。私達はこうやってペルソナを召喚するの。この召喚器で自分を撃ちぬいて」

>言いながら、風花も額に召喚器を当てる。

風花「ユノ!」

>風花の背後にもペルソナが現れた。

鳴上「驚きました。けどちゃんと召喚出来るみたいで何よりです」

天田「僕のペルソナ……カーラ・ネミは電撃と光の力を使います。それから、僕の攻撃を力強く補佐してくれます」

風花「私のペルソナはバックアップ専門なの。敵の情報を解析したり、この世界自体もある程度なら分析できるかも」

鳴上「なら、山岸さんは入ってすぐに安全な場所で待機。ダンジョンは俺と天田で攻略します。それでいいですか?」

天田「了解です。久々だけどちゃんとできて良かった……それじゃ、行きましょう」

風花「ある程度の攻撃ならユノの中に入れば防げるから、そんなに心配しないで。準備良いよ」

鳴上「じゃあ、開けます」

>ノブに手をかけて、引いた。

>光が広がる……。
69 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:02:56.08 ID:Ax1fvYfdo


【コロッセオ・プルガトリオ】


鳴上「……ダンジョンじゃ、ない?」

天田「ここ、確か……」

風花「周囲を調べてみます。ペルソナ!」

>風花がユノの内部に入った。

風花『……入ってきた扉が消えてます。多分、何かアクションを起こさないと帰ることも出来ないんだと思います』

鳴上「厄介ですね。色々調べて……」

天田「風花さん、ここって」

風花『うん、間違いない……あ、二人共!何か来ます!この反応って……』

鳴上「天田、構えろ!」

天田「はい!」

>闘技場上部の燭台に炎が舞い上がる。

>手前側から闘技場奥側に向かって一つ一つ火が灯って行き……

風花『やっぱり……』

>最奥が赤く照らされた時、そこには一人の黒い女性が立っていた。
70 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:03:25.88 ID:Ax1fvYfdo
鳴上「人間、なのか?」

風花『違うの、あれは……対シャドウ用の、兵器』

鳴上「兵器?」

天田「平たく言えばロボットです。そして、彼女は敵じゃありません」

>天田は構えていた薙刀を下ろした。

鳴上「なんでそんな事が言えるんだ?」

風花『彼女とは会ったことがあるから。メティス!聞こえてる?』

>女性は反応しない。

天田「待ってください、様子が変です」

>……?

>音が聞こえる。

鳴上「何の音だ?」

天田「……冗談でしょ」

>徐々に音が大きくなっていく。

>何かが高速回転するような音が……。

風花『駄目!メティス!』

>風花が叫んだ。
71 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:05:58.68 ID:Ax1fvYfdo
天田「先輩ッ!」

>気を取られている内に天田が目の前に立った。

>一瞬遅れて甲高い金属音。

>その時、初めて音の正体に気付いた。

風花『彼女はメティス、対シャドウ用特殊車輌です!』

>音は、彼女の内部から聞こえていた。

>風花の言う事が事実なら、これはきっと彼女を構成する部品の駆動音だ。

>まるで限界値を超えようとするかのように、それが高速で稼働し彼女の膂力、速力、身体能力のすべてを押し上げている。

天田「全く、何が楽しくてまたこんなこと……!」

>天田が薙刀の柄でメティスの持つ鈍器を受け止めている。

鳴上「俺なら平気だ、下がれ天田!」

天田「言われなくても、もう無理……ですっ!」

>メティスが力任せに武器を振りぬくと、押し切られた天田がふらついた。

鳴上「天田!」

>後ろから天田を受け止めると、即立ち直って武器を構える。

天田「僕の心配ならいりません。ただ、今のメティスさんをおとなしくさせるのはかなり難しいですよ」

鳴上「みたいだな。山岸さん、なんで知り合いがこんな真似するのかはわかりますか」

風花『ごめんなさい、まだ……ただ、この場所の空気が普通じゃないから、もしかしたらそのせいなのかも知れません』
72 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:06:34.97 ID:Ax1fvYfdo
鳴上「……よし、とにかく戦おう。一度戦闘不能に追い込むしかなさそうだ」

天田「気は進みませんけどね、色んな意味で。よし……ペルソナ!」

>天田がペルソナを召喚してメティスに走る。

鳴上「合わせるぞ!イザナギィ!」

>俺の、心の力。

>イザナギを召喚し、自分も刀を構える。

風花『これが鳴上君のペルソナ……凄いパワーですね』

天田「っやぁ!」

>天田がまっすぐに相手を突く。

>メティスは軽く体を捻ってそれを避けた。

天田「まだっ!」

>突いた所から、さらに横薙ぎに払う。

>メティスはそれも軽々と避け、その上で薙刀を地面に叩きつけた。

天田「っ!」

鳴上「天田!避けろ!」

>声に反応して天田が身を躱した事を確認して突進する。

鳴上「ジオダイン!」

>イザナギから、指向性を持った雷がメティスに向かって走る。
73 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:07:03.76 ID:Ax1fvYfdo
メティス「……!」

>命中した!

鳴上「悪いがこれで……」

>袈裟懸けに思い切り刀を振るう。

>メティスの右肩に刀身が当たったが、刃が通らない。

鳴上「なっ……そうか、生物じゃないんだったか!」

天田「このっ!」

>天田の攻撃も通じない。

>ダメージはあるはずだが、決定打にならない!

メティス「……」

>メティスが武器を振り、二人同時に押し退けられる。

鳴上「くそ、どうすれば……」

>……メティスがそれ以上動かなくなった。

天田「止まっ……た……?」

鳴上「どうして急に……」

風花『待って!まだです!』

メティス「プシュケイ!」

鳴上「!?」

>メティスの背後に巨大なシルエットが現れる。
74 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:07:43.69 ID:Ax1fvYfdo
鳴上「機械なんじゃなかったのか!?」

風花『対シャドウ用って事はこういう事なの。でも、ペルソナが召喚出来たって事は……』

>風花の説明を聞いている間に、メティスが動いた。

鳴上「なっ」

>気が付くと目の前に肉迫されていた。

>防御が間に合わない!

鳴上「……ッ!!」

>衝撃を予想して体を強ばらせた。

>やられる……。

鳴上「……?」

>衝撃は来ない。

>何か、焦げ臭い……?

風花『やっぱり。鳴上君、天田君、もう大丈夫。すぐには動かないから』

天田「ああ、そういえばそうでしたね……久しぶりなんで忘れてました」
75 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:08:11.02 ID:Ax1fvYfdo
>メティスは耳?から煙を出して活動停止している。

鳴上「どういう事なんです?」

風花『今までメティスが使っていたのはオルギアモードって言って、機能を限界まで引き出す代わりに切れると反動で動けなくなる切り札みたいな物だったの』

天田「オーバーヒートするんだそうですよ。それで、まあこうなってると」

>天田が薙刀の柄で膝を裏から突くと、メティスはその場に崩れ落ちた。

風花『ああ、駄目よ天田君。いたずらしちゃ可哀想でしょ?』

天田「そんなつもりは……それより、どうしたらいいんですかね。これから……」

鳴上「確かに、メティス以外は何か変わった事があるわけじゃないし……帰るにしても進むにしても困るな」

風花『探ってみたけど、他には何も無いみたい。どうしよう……』

鳴上「とにかく、メティスが目を覚ましたらまた襲われないとも限らないし、なんとか拘束を……」

天田「無理ですよ、それ。並じゃ力尽くで抜けられちゃうんで」

鳴上「そうなのか……まああれだけ強ければな……」

天田「目覚めたら話が出来るようになってるといいんですけど……」

>ずずん。

>闘技場全体が揺れた。
76 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:08:46.87 ID:Ax1fvYfdo
鳴上「今度は一体……」

風花『敵です!……ええ?そんなはずは……』

天田「今度は何ですか?もう何が出ても驚きませんよ」

風花『エレボスです』

天田「……ええ?」

風花『エレボスです!間違いない、あの時と同じ感じ!気を付けて、来ます!』

天田「嘘でしょう……」

鳴上「知ってるのか?」

天田「大ボスですよ、件の事件の」

>地面が揺れて、何かがゆっくりと形になっていく。

>まるで初めからいたように、それはそこに現れた。

鳴上「……でかいな」

天田「強いですよ。言いたくないですけど、僕達だけで勝てるかどうか……」

メティス「う……」

天田「よりによって今目を覚ましますか」

メティス「ここは……私は……」

鳴上「話は出来るみたいだな」

風花『駄目、話してる時間ありません!エレボス、来ます!』
77 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:09:14.93 ID:Ax1fvYfdo
エレボス「グォオオオオオオオオオオオ!」

メティス「あれは……」

天田「目が覚めたなら手伝ってください。あの時皆で戦った相手と、僕達だけで戦わなきゃならない」

メティス「あなたは誰ですか!」

天田「え?」

風花『そんな、メティス……もしかして記憶が……?』

メティス「その声は、風花さん?つまり、あなたは……荒垣さんですか?」

天田「違いますよ!僕です、天田!天田乾!」

メティス「!?そんな、私の知る限り天田さんはもっと小さくて可愛らしい……」

鳴上「感動の再会は後にしてくれ!戦闘だ!」

>メティスは状況が飲み込めないらしくおたおたしている。

メティス「あれは、エレボス?何故ここにエレボスが……」

鳴上「メティス、今は説明してられない。ただ力を貸してくれ。あれを倒さないと、俺達はどこにも行けないんだ」

天田「どうやらそういう事みたいです。だから、一緒に戦ってください」

>メティスは何も言わず、ただ頷いて武器を構えた。

鳴上「……さて、やるか」
78 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/11(水) 00:10:41.60 ID:Ax1fvYfdo
cv.斎藤千和
では、また明日。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 02:28:16.94 ID:6cBXd0pG0

天田はどんだけ変わってんだよwww
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/07/11(水) 15:47:46.61 ID:KMRkLtuq0
キューティクルヘアの荒垣さんとか萌え……ないな
81 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/12(木) 00:01:58.71 ID:RUqneUU6o


【4/8 晴れ】


>風が吹き抜けている。

>春の風だが少しだけ冷たい。

>足音がする……。

鳴上「……ん」

>カラカラと音がして、風が止んだ。

>誰かが窓を閉めたようだ。

鳴上「誰だ……?」

メティス「え……?」

>この声は……。

鳴上「メティスか?」

メティス「そうです。良かった、目が覚めたんですね。今皆に伝えてきます。動けますか?」

鳴上「なんとか。どうしてこうなった」

メティス「もしかして、覚えて無いんですか?」

鳴上「なんだかぼんやりしてて……」

メティス「じゃあ、これからラウンジに来てください。一通り説明します」

鳴上「ああ、わかった……」

>一足先に部屋を出たメティスを追いかけるように、よろよろと階下へ向かった。
82 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/12(木) 00:02:57.42 ID:RUqneUU6o
天田「鳴上先輩!良かった、気が付いたんですね!」

鳴上「心配かけた。もう大丈夫だ」

風花「鳴上君、自分が倒れた時の事覚えてないって……」

>風花と天田は心配そうにこちらを見ている。

鳴上「多分、まだぼーっとしてるんだと思います。話を聞けば思い出すかも」

メティス「そうですね、どこまで覚えてますか?」

鳴上「確か、アイギスさん?を助けようってテレビに入って、メティスを止めて、エレボスとかいうのが出てきて」

風花「それまでは間違いないですね」

鳴上「天田が荒垣とかいう人に間違われて」

天田「それはどうでもいいんですけどね……」

メティス「……だって!天田さんがこんなに大きくなってるなんて思わないじゃない!」

天田「僕は成長期なんです!」

メティス「姉さんと共有してる記憶の中で、今の天田さんサイズの人は荒垣さんしかいなかったから……」

風花「ほんと、大きくなったよね……」

鳴上「あの、それで……エレボスと戦おうとした辺りまでは覚えてるんです」

天田「それからどうなったかがわからないと」

鳴上「そうなんだ。俺達はアイギスさんを助けられたのか?エレボスはどうなったんだ?」

メティス「本当に、覚えてないんですね」

天田「……それじゃ、僕から説明します。あの後何があったか」

>……。
83 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/12(木) 00:03:59.32 ID:RUqneUU6o
鳴上「……さて、やるか」

天田「どうします?正面から行きますか?」

メティス「……姉さん?」

>メティスがぽつりと呟いた。

鳴上「姉さん?」

風花『……エレボスの内部から、かすかに反応があります。アイギスは多分あの中に』

天田「取り込まれてるって事ですか?」

風花『というより、あのエレボスを構成しているのがアイギスみたいな……なんだろう、はっきりしない』

鳴上「どういう事ですか?」

メティス「あの中に姉さんがいるなら、迂闊に手は出せません」

風花『もし傷付けたらアイギスもどうなるかわかりません。とにかく今は耐えて!何とか解析してみます!』

天田「無茶言うよ……」

鳴上「だけどやるしかないな」

メティス「姉さん、今助けるからね……!」

>エレボスの咆哮が響き渡る。

>その巨大な手を振りかぶって、三人をなぎ払う。

鳴上「うっ……!」

天田「くぁっ……!」

メティス「っ……!」

>三人が三人ともギリギリで踏み止まった。
84 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/12(木) 00:05:12.27 ID:RUqneUU6o
天田「これ……耐えられますかね」

鳴上「ダメージよりも反撃出来ない事の方が厳しいな……」

風花『不完全だけど、解析出来ました!やっぱり内部です、あのエレボスの核のような部分にアイギスがいます!』

鳴上「内部、か。なら少しくらい……イザナギ!」

>イザナギがエレボスの腕に大刀を突き刺す。

エレボス「グァアアアアアア」

鳴上「よし!天田!メティス!続いてくれ!」

>二人に声をかけるが、二人共動こうとしない。

>何故か驚いたようにこちらを見ている。

天田「な、鳴上先輩……それ……」

鳴上「どうし……」

>イザナギの体に赤黒い線が刻まれている。

>血管のように広がるそれは脈動し、イザナギの体の隅々まで走っているようだ。

鳴上「なんだ、これ」

>その線から滲みだすように、白銀の体が赤黒く染まる。

>その姿はまるで……
85 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/12(木) 00:05:41.75 ID:RUqneUU6o
鳴上「禍津伊邪那岐……」

>かつて見た足立のペルソナのような姿に変わった自分の分身は、ゆっくりとこちらを振り返った。

風花『鳴上君、ダメっ!』

>風花が叫ぶのとほぼ同時に、イザナギは跳躍した。

鳴上「ぐぁっ……頭が……!」

>激しい頭痛に襲われる。

>頭の中にムカデか何かが潜り込んで、ぐるぐる走り回っているような気分だ。

天田「先輩!駄目ですって!加減しないと!」

>天田に言われてイザナギの方を見ると、既にエレボスに取り付いて暴れまわっていた。

>大刀を信じられない程の力で振り回し、エレボスに深い傷が刻まれていく。

鳴上「やめろ、止まれっ!」

>イザナギは最早、自分のコントロール下に無かった。

メティス「ああ、このままじゃ姉さんが……」

風花『メティス、天田君、二人であのペルソナを止めて!手遅れになる前に!』

鳴上「俺からも頼む……!」

>だが、二人は躊躇している。

>その間にもエレボスに対する攻撃……いや、解体は続く。

>エレボスから上がっていた咆哮は既に悲鳴に変わっている。
86 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/12(木) 00:06:28.36 ID:RUqneUU6o
メティス「駄目、駄目!姉さん!」

>メティスがイザナギに殴りかかった。

>イザナギは受け止めようともせずにその手を天に翳す。

鳴上「駄目だ!下がれ、メティス!」

>イザナギの周囲に雷が落ちる。

>その範囲内に存在するすべてを焼却するように、凄まじい落雷がしばらく続いた。

天田「なんで……こんな……」

>残ったのは、こちらに伸ばしていた手の一部だけ。

>イザナギはそれに刀を突き立てて、肩で息をするように体を揺らす。

イザナギ「ぐる……ォオオオオオオオオオオオオオオ!」

>獣のように一声吠えると、そのまま消えていった。

メティス「姉さん!姉さんは……姉さんはどうなったの!?」

>メティスが叫ぶ。

>風花が必死に周囲を探る。

>天田が少し怯えた顔で俺を見ている。

>頭痛は治まってきた。

>いや、痛みが引いたわけじゃなく……

>意識が……。

>……。
87 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/12(木) 00:07:07.40 ID:RUqneUU6o
天田「……先輩は倒れました。原因はペルソナの暴走で間違いないと思います」

鳴上「……思い出したよ。全部、はっきり。それで、その……」

>聞くのが怖い。

>あの時倒れてしまったから、その後の事を自分は知らない。

>……あの後、果たしてアイギスは助けられたのだろうか。

メティス「姉さんなら無事に保護出来ました。今は桐条のラボでメンテナンス中です」

>言いたいことを察したのか、メティスが答えてくれた。

鳴上「そうか、良かった……」

>安堵の溜息が出る。

風花「それから、気が付いたら最初の扉の前にいて、そこでクマさん達に会って」

鳴上「クマ達も無事来れたんですね」

風花「うん、それで出してもらって。皆は向こうに戻ったけど、心配してたよ。後で連絡してあげて」

鳴上「そうですか……迷惑かけてしまってすみません」

天田「まあ、アレが無ければ勝てたかどうか微妙な相手です……結果オーライ、じゃないですか?」

風花「そうだね。……わからない事はいろいろあります。また桐条先輩に連絡して、情報を整理しないといけないですね」

鳴上「そうですね……あれ、もしかして今日って8日ですか?」

風花「そうだけど、それが?」
88 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/12(木) 00:07:59.25 ID:RUqneUU6o
天田「あ、学校!明日からですよ!」

風花「そっか、月曜日……二人共、準備できてる?」

鳴上「何もしてませんよ!こっち来てすぐ事件だったんですから」

天田「僕は準備らしい準備も無いですから平気ですけど……」

鳴上「……まぁ、なんとかなる、か?」

>明日から学校だった……。

>事件は一応の収束を見たが、今後どう動くだろうか。

鳴上「とにかく、まだだるいので今日は早めに寝ます。すみませんが続きはまたにしてもらえますか」

風花「わかりました。お大事に……」

>謎はまだまだ多い。

>テレビの事だけでなく、自分に起こった変化も含めて……

>だが、とにかく今は明日の事だけを考えよう。

>部屋に戻って寝る事にした。
89 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/12(木) 00:09:12.59 ID:RUqneUU6o
鳴上「ん、メールか」

>陽介からだ。

差出人:陽介
件名:大丈夫かよ
本文:目覚めたか?
   テレビん中行かなかったヤツらには黙っといたぜ
   心配かけるのもアレだと思って。
   大丈夫そうならまた連絡くれよな。

鳴上「……駄目だ、眠い」

>体が重い。

>陽介への連絡も後日にしよう。

>今は、休む……。

>……。

風花「……天田君はどう思う?」

天田「さぁ、どうなんでしょうね。不思議な人ではありますよね」

風花「うん、そうだよね。でも、なんていうか……」

天田「……全然似てないのに、似てる、ですか」

風花「やっぱり、そう思う?」

天田「ま、不思議と言えばあの人も相当不思議でしたから」

風花「あは、そうだね。……これで、終わったのかな」

天田「……どうですかね。まだ何かありそうな気もしますけど」

風花「とにかく、様子を見るしかなさそうだね……あれ?メティス?」

メティス「学校……かぁ。姉さんは、行ったことあるんだよね……」

>こうして、最初の事件は終わった。

>しかしそれは、次の事件の始まりでもあった……。

>その時は、まだ誰も知らなかったけれど。
90 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/12(木) 00:10:31.96 ID:RUqneUU6o
すっかり忘れてたけど学校も。
では、また明日。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 00:23:36.86 ID:Ki0hU9Ju0

番長の身にいったい何が!?
92 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:00:17.86 ID:270rHGflo


【4/9 晴れ】


鳴上「相変わらず凄い校舎だ」

>綺麗だし広い。

>さて、まずは職員室へ……。

メティス「ここが鳴上さんが今日から通う学校ですか」

鳴上「ああ、そうだな。ん?」

>何故かメティスが隣にいる。

鳴上「あー……メティス。何でここに?あ、もしかしてまだ心配だからついて行けって言われたとか?」

メティス「いや、自主的に」

鳴上「自主的に……そうか……」

>……。

鳴上「いや、駄目だろ。学校っていうのは基本的に部外者が入っちゃ駄目な所なんだ」

メティス「そのくらい知ってます」

鳴上「それは知ってても自分のやってることはわかってないのか?」

メティス「……わかりました、帰ります」

>メティスはとぼとぼ帰って行く……。

鳴上「……どうしたんだろう、メティス」

聞き覚えのある声「君!そこの、黒髪の!ちょっと!」

>この声は……
93 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:00:54.48 ID:270rHGflo
鳴上「望月か?」

綾時「あっれ、鳴上君じゃない。奇遇だね」

鳴上「奇遇も何も、学校通ってれば会うだろ」

綾時「それもそうか。っと、話は後後、今は彼女を追わないと」

鳴上「彼女……ってメティスか?」

綾時「あ、メティスちゃんっていうの?肌白いし、外国の子かな?」

鳴上「そんなとこだ。用事か?」

綾時「そう、用事。大事な用事があるんだよ」

鳴上「メティス!こいつがお前に用事だって」

>メティスは振り返り、不思議そうな顔をしている。

綾時「やっとこっち向いてくれたね!メティスちゃん、良ければ今日の夜……」

メティス「……!」

鳴上「おい、用事ってナンパか」

綾時「え?やだな、純粋に今夜ご飯でもって思っただけだよ」

鳴上「世間じゃそれをナンパって……メティス?」

メティス「アナタは……ダメです」

綾時「ええ!?ひどいな、初対面でそれは……」

鳴上「あっ、メティス!おい!」

>メティスは走って行ってしまった……。
94 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:01:45.65 ID:270rHGflo
綾時「……嫌われちゃったかな?」

鳴上「……さぁな。あいつの事は、俺もよくわからない」

綾時「それより鳴上君、そろそろ職員室行った方がいいんでない?」

鳴上「ん、ああそうだな。ちょっと行ってくる」

綾時「うん、僕も行かなきゃなんだけどね。一緒に行こうか」

鳴上「なんだ、そうなのか。てっきりもう行った後だと」

綾時「先に校内うろついてただけさ。職員室あっちね」

>綾時と二人で職員室に行った。

鳥海「あー、あんたらが転校生ね。二人共ウチのクラスだから。私はあんたたちの担任で国語担当の鳥海いさ子。覚えといて」

鳴上「よろしくお願いします」

綾時「よろしくお願いします。いやぁ、噂の鳥海先生に受け持ってもらえるなんて嬉しいなぁ」

鳥海「噂?何のよ」

綾時「え?男子生徒に人気のある女教師ですけど。先生美人だし」

鳥海「……悪い気はしないけど、軽薄なのはお断りよ、私」

綾時「あらら、流石に手厳しい……」

鳥海「とにかく、あんたらは私のクラス。3-Dね。ったく、なんで転校生二人共預からないといけないんだか……っと、聞かれる聞かれる」

鳴上「ええと、それで今日はどうすれば……」

鳥海「ああ、そうね。一応こうやって顔合わせはしたし、後は好きにしていいわよ。素直に教室行くもよし、サボるもよし。サボったら明日から席無いかもしれないけど」

鳴上「……じゃあ、教室に行けばいいんですね」

鳥海「もうちょっとでチャイム鳴るから、そしたら一緒に行ったげる。ほら望月君も」

綾時「ありがとうございます。楽しみだなぁ、どんな子がいるのか」

鳥海「……あんた、色々凄いのね」

>……。
95 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:02:21.37 ID:270rHGflo
>教室内はざわついている。

>先生に呼ばれるまで廊下で待機だ。

綾時「ねぇ、鳴上君」

鳴上「ん、どうした?」

綾時「悠って呼んでいいかな」

鳴上「そりゃ構わないけど」

綾時「ありがとう。僕の事も綾時って呼んでいいから」

鳴上「そうさせてもらうか」

綾時「転校生同士仲良くしようよ。差し当たり今日君の寮に遊びにいってもいいだろうか」

鳴上「ん、そりゃ構わないと思う……けど、今ちょっとえらいことになってるぞ」

綾時「平気平気」

鳴上「……何で寮に来たいんだ?」

綾時「ん?だってメティスちゃんって寮にいるでしょ。こっち来て日の浅い悠と知り合いになれる場所なんて限られてるし」

鳴上「無闇に鋭いな。その通りだけど。じゃあ今日は一緒に帰るか」

綾時「やった!流石だね悠は。楽しみになってきたなぁ」

鳥海「ちょっと、イチャついてないでよ。ほら、入ってきなさい」

>鳥海先生に呆れ顔で呼ばれたので教室に入る。
96 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:04:02.28 ID:270rHGflo
男子A「二人共男か……」

男子B「しかも……クソッ、不公平だ!」

男子C「今から友達になっておこぼれ狙う作戦で行くか」

女子A「綾時くーんやっほー」

女子B「やだちょっと銀髪?すごいかっこいいかも」

女子C「どっち派?あんたどっち派よ」

>……騒がしい。

鳥海「こらこら五月蝿すぎ。はい、そんじゃ二人共自己紹介。つっても望月君の方は何故かもう知ってる子もいるみたいね」

綾時「ええ、まぁ。いろいろありまして。えーと、望月綾時です。これから一年、よろしくお願いします」

鳴上「鳴上、悠です。よろしく」

鳥海「はいそんじゃ二人の席はー……丁度そこが二人分空いてるわね、そこで」

男子A「ちょ、そこサボってるだけっすけど」

鳥海「いいのよ、私のクラスに転校生が来た時の伝統だから。ほらさっさと座る。ホームルーム済ませちゃうから」

>サボると席が無いとはこういうことか……。

>少し罪悪感を覚えながら、綾時と並んで座った。

>……。
97 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:06:13.83 ID:270rHGflo
綾時「っさー終わった!悠、早く帰ろう」

女子A「えー、綾時君帰っちゃうの?」

女子B「ウチらと遊んでくんないのー?」

綾時「ごめんね、また今度。今日は悠が先」

鳴上「悪い、そういう事らしいから。明日以降コイツ好きにしていいから、今日は許してくれ」

女子C「なんかいいね、イケメン二人……」

女子D「鳴×望……望×鳴?どっちなんだろう……」

>綾時と二人で寮に帰ろう。
98 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:07:14.42 ID:270rHGflo


【ポートアイランド駅】


鳴上「で、去年一年は八十稲羽で過ごしたんだ」

綾時「へぇー、大変だねぇ。転校ばっかりなんだ」

鳴上「もう慣れたけどな。案外悪くない……ぞ……?」

>……いない。

>ついさっきまで隣に立って話をしていたはずの綾時がどこかへ行ってしまった。

綾時「ねぇ、これ何描いてるの?」

紅い髪の女性「……別に、なんだっていいでしょ?」

綾時「そりゃそうだね、ごめん」

鳴上「こら、なんだってお前は誰彼かまわず……すみません、コイツが急に」

>紅い髪の女性は黙っている。

>ゴスロリ、というのだろうか。

>実際に着ているのを見るのは初めてだ。

綾時「いや、ナンパじゃないって。見てごらん、これ」

>綾時に言われてスケッチブックに目をやる。

鳴上「お……おお……」

>奇妙な絵だ。

>他に表現のしようがない絵だった。
99 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:07:44.66 ID:270rHGflo
紅い髪の女性「……見るのは良いけど、邪魔はしないでくれる?」

鳴上「あ、ああ、えっと、すみませんでした。ほら、行くぞ綾時」

綾時「ええ?もうちょっと見せてもらおうよ。凄いよ、この絵」

紅い髪の女性「私の絵は私にしかわからない。見ても……意味は無いわ」

>確かに理解し難い絵だ。

>この駅前の風景を見ながら描いてこうなるのだろうか。

綾時「絵ってそういうもんでしょ?目で見て脳で認識する、システムは同じでも見え方には個人差がある。それを描くんだから、自分以外誰にも理解されなくて当たり前さ」

紅い髪の女性「わかってるならさっさと消えて。集中出来ないから」

綾時「うん、そろそろ行くよ。綺麗な絵を見せてくれてありがとう。じゃあ、縁があったらまた」

>そう言うと、綾時は俺を置いて駅に入っていった。

鳴上「ちょ、自由な奴だな……」

紅い髪の女性「……待って」

>追いかけようとすると、女性に呼び止められた。

紅い髪の女性「この絵、綺麗に見える?」

鳴上「……音楽が専門で、美術は良くわからないんですけど……綺麗ではないですね」

紅い髪の女性「はっきり言うのね。でも、私もそうだと思う。なら彼は何故……」

鳴上「変わり者なんです。あの、俺ももう少し良く見てもいいですか」

>女性は黙ってスケッチブックを差し出した。

>……鉛筆で見事に濃淡を出している。

>良く見ると、全部が全部歪に描かれているわけではないようだ。
100 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:09:25.32 ID:270rHGflo
鳴上「……もしかすると、俺なんかよりずっとまっすぐに世界を見てるのかもしれない、そう思えます」

紅い髪の女性「まっすぐに……?」

鳴上「ええ。俺だったら見たまま、普通の風景を描くと思います。だけど、あなたの絵はその裏側というか、奥まで穿って見ている……んじゃ、ないかな、と」

紅い髪の女性「……」

鳴上「すみません、門外漢が妙な事言って。もっと見せてもらってもいいですか?」

紅い髪の女性「……どうぞ」

>ぱらぱらとページをめくってみる。

>どれも似たような、抽象的な風景画だ。

鳴上「あれ、これ……」

>帽子をかぶった男性の似顔絵……ここを境に、少し画風が変わっている。

紅い髪の女性「ッ……そのページは、ダメ」

>スケッチブックを取り上げられてしまった。

鳴上「あ、その……」

紅い髪の女性「電車、遅れるんじゃないの」

鳴上「え?あ、ああ、そうですね。あの、お邪魔しました」

>頭を下げて駅に入った。

>……不思議な女性だった。
101 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:09:52.45 ID:270rHGflo


【巌戸台分寮】


鳴上「ここが分寮」

綾時「へぇー随分古いんだね」

鳴上「昔ホテルだった所を改装したらしい。詳しくは知らないが……」

綾時「ここにメティスちゃんが!」

鳴上「……そうだな」

>寮の前に大型バイクが停まっている。

>……誰の物だろうか。

綾時「さぁ早く入ろう。そしてメティスちゃんと会いたい」

鳴上「何でそんなに元気なんだ……?」

>玄関を開けて中に入った。
102 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/13(金) 00:10:56.26 ID:270rHGflo
再会。
では、また明日。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 01:24:19.62 ID:HTGOpXPH0
104 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:01:10.34 ID:7ZDRNgwMo
風花「あ、おかえ……」

>床の修繕をしていた風花が、こちらを見て固まる。

風花「綾時……君……?え、嘘……どういう事……?」

鳴上「綾時、知り合いなのか?」

綾時「いや……こんな美人なお姉さん、一度会ったら忘れるはず無いんだけど……」

>階段を駆け下りる音が聞こえる。

>メティスが降りてきたようだ。

綾時「あ、メティスちゃ……」

鳴上「綾時!退け!」

>メティスは武器を持ちだしている!

>狙いは明らか、まっすぐに綾時だ。

>綾時の前に立ちメティスを止める。

綾時「や、やだなぁ、ちょっと声掛けただけじゃない?」

鳴上「メティス!どうしたんだ!やめろ!」

メティス「鳴上さん、退いてください。その人は……排除しなければなりません」

綾時「排除?ちょ、話の流れが見えないんだけど……」

風花「待って、メティス!まず話を聞かないと……」

メティス「問答無用です。この人は……この人だけは……」

女性の声「メティス!」
105 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:01:40.49 ID:7ZDRNgwMo
>階段の上から声がした。

>メティスがびくりと体を強張らせる。

>階段をゆっくり降りてくる人影は、どこかメティスに似ていた。

>というより、メティスをそのまま真逆にしたような……。

メティス「あ……その……」

女性「ごめんなさい、驚いたでしょう?」

綾時「ま、まぁ……うん……」

女性「鳴上さんのお友達ですか?」

鳴上「まぁ、そんな所ですかね……どうも、メティスには嫌われてるみたいで」

美鶴「騒がしいな、何かあったのか?」

>上階からさらに人が降りてくる。

鳴上「桐条さん……ってことは、表のバイクは桐条さんのですか」

美鶴「ああ。……彼は、何だ」

綾時「やぁ、生徒会長さん。いや、元かな?」

美鶴「お前……知っているのか、覚えているのか、どちらだ。答えろ」

綾時「やだなぁ、有名ですよ。桐条のご令嬢、元生徒会長の桐条美鶴さん。月光館の生徒で知らない奴いませんって」

鳴上「すみません、桐条さんが来るって知ってたら連れて来なかったんですけど……」

>何だか酷く険悪だ。
106 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:02:09.97 ID:7ZDRNgwMo
美鶴「いや、いい。だが……そうだな。今日のところはお引き取り願おう。連絡が遅れたのはこちらのミスだが、今日鳴上は重要な用がある」

綾時「えー、そうなんですか?残念だなぁ。悠、そうなの?」

鳴上「そうだな。悪いな、綾時」

綾時「まぁ仕方ないか。それじゃ僕は帰ります。メティスちゃんに、桐条さん。それから金髪のお姉さんとショートカットのお姉さんも。また今度、お暇な時に会いに来ますねー」

鳴上「いいから、ほら。帰れ」

綾時「酷いなぁ、無駄足踏まされた友人にその仕打ち?」

鳴上「悪かったから。また今度な」

綾時「ん、じゃあまた明日学校で。それじゃね」

>綾時を追い出した。

鳴上「……すみません、なんていうか、悪意は無いんです」

美鶴「わかっている。態度の問題じゃない」

鳴上「え?」

美鶴「それも含めて話をしよう。天田もそろそろ帰ってくるだろう」

>寮の皆は綾時の事を気にしているようだ。

>何かあったのだろうか……?

>とにかく、全員が揃うのを待とう。
107 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:02:35.70 ID:7ZDRNgwMo
天田「すみません、お待たせしたみたいで」

美鶴「よし、揃ったな。さて、それでは話しあおう。これまでの事と、これからの事を」

>ラウンジには結構な人数が揃っている。

鳴上「あの、ところでまだ聞いてなかったんですけどいいですか?」

美鶴「何だ?」

鳴上「そちらの、金髪の方は……」

女性「あ、そうでした。確か倒れてたんでしたね。私はアイギス。あなたに助けていただいた者です」

鳴上「あなたが……ええと、聞きたい事がいくらかあるんですが。構いませんか」

美鶴「構わない。前にも言ったが疑問は残すべきじゃない。特に……君のはな。わからない事はいくらでも聞いてくれていい」

鳴上「ありがとうございます。まず、あのテレビの中の世界についてです。みなさんは知っていたようですが、どういうことなんですか?」

風花「少し言ったけど、過去に私達が体験した事件の再現みたいだったの。それで」

天田「あの中もそっくりな感じでしたね。それにメティスさんもいたし」

鳴上「メティスはその時出会ったのか?」

メティス「はい。私はその時に生まれた姉さんの影です」

鳴上「影?」

アイギス「あの時、私は悩んでいました。もうご存知かと思いますが、私は戦闘用の兵器で、人間ではありません」

鳴上「一見するとわかりませんけど、こうして機関部が見えていると……信じざるを得ませんね」

アイギス「その事に関連して少し悩んでいたんです。説明が難しいので省きますが、それによって生まれた私の影があの子です」
108 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:03:18.59 ID:7ZDRNgwMo
メティス「シャドウに近いものです。姉さんの内部から生まれて、事件の最後に姉さんの中に戻った……はずだった」

鳴上「いつからテレビに?」

メティス「気が付いたのはあなた達と戦った後です。それまでは、なにかずっとぼんやりしていました。まるで頭の中に霧がかかったみたいに」

天田「シャドウみたいな物が今こうして普通にしているのは驚かないんですか?」

鳴上「似たような前例を知ってるからな……」

メティス「私に関してはそれ以上言える事はありません。というより、私もよくわかってないんです」

鳴上「そういえば、天田の事はわからなかったみたいだけど記憶はどうなんだ?」

メティス「姉さんから生まれた時、つまり今から三年前の記憶しかありません」

鳴上「そうか。だから成長した天田がわからなかったんだな」

メティス「厳密に言えば姉さんの稼働からあの日までの記憶しかありません。天田さんが成長した事や、鳴上さんがやってきた事は知りませんでした」

鳴上「……となると、その事件の最後の時点のまま、あの中に現れたってことか」

メティス「そうですね。そうみたいです」

鳴上「……なるほど、な」
109 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:03:54.53 ID:7ZDRNgwMo
美鶴「もういいのか?」

鳴上「とりあえずは。それで、これからはどうするんですか?」

美鶴「そうだな、その説明をしておこうか。君達はこれから桐条の全面バックアップの元、この件について調査してもらう」

天田「特別課外活動部復活ですね」

美鶴「ああ。鳴上、天田、山岸……それからメティスの四名は引き続きこの寮に住み、現場にて作業してもらう」

風花「アイギスはどうするんですか?もし戦闘なんかがあると……」

美鶴「アイギスは私の手伝いをしてもらう。アイギスも無関係ではないある仕事で今忙しくてな」

アイギス「皆さんのお手伝いが出来ないのは残念ですが……私も、シャドウワーカーの一員ですので」

風花「あ、そっか……もう実働してるんですね」

美鶴「そういうことだ。すまないがこちらの件はしばらく君達に任せきりになると思う」

天田「まぁ、仕方ないですね……」

美鶴「代わりと言ってはなんだが、物資や金銭面でのバックアップは十分にしよう。とにかくまずは様子見だ。この事件が以降連続して起こる事件の始まりなのかどうかを確認しなければならない」

鳴上「そうですね、アイギスさんはテレビに入った時の事を覚えていますか?」

アイギス「それが……よく覚えていないんです。いつあそこにいたのかも、全く。気が付くとラボだったという感じで……」

鳴上「やっぱりそうですか……八十稲羽の事件では、犯人がしっかり存在していて、だからこそ突き止める事ができた」

風花「今回は、そこからわからないってこと?」

鳴上「ええ。人為的な物なのか、もしかするともっと別の……」

美鶴「人の仕業でないとすると、我々といえど安全とは言えないな……アイギスの件もある。以後、警戒を怠らないでくれ」

>これからこのメンバーで事件を追う事になった。

>このまま何も起こらない可能性もあるが、終わったとはとても思えない。

>新しい仲間と共に、何とか犠牲なくこの事件を終わらせたい。
110 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:04:22.98 ID:7ZDRNgwMo
鳴上「!?」

>頭の中に声が囁く。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>これは……

>新たなるコミュニティ、『No.00 愚者 特別課外活動部』を手に入れた!

>新たな地で、新たな仲間との絆を得た……。

>やはり、イゴールの言う通り自分の力を使う時が来たようだ。

鳴上「あ、そういえば」

美鶴「何だ?まだ何かあるのか?」

鳴上「いや、あいつの事ですよ。綾時。皆知ってるみたいだったけど、何かあったんですか?」

風花「……」

天田「……」

アイギス「……」

メティス「……」

>空気が重い……。
111 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:05:03.38 ID:7ZDRNgwMo
美鶴「……彼は、何者なんだ?」

鳴上「転校生だって聞いてますけど……俺と同じクラスの」

美鶴「そうか。なら丁度いい。君は彼を監視してくれ」

鳴上「監視?悪いやつじゃないですよ、まだ良くは知らないんですけど……」

美鶴「なら仲良くなっても構わない。とにかく、彼が本当に私達の事を知らなかったのか、身分などを偽っていないかを調べてくれ」

鳴上「やっぱり、何かあったんですね?何なんですか、あいつ」

美鶴「君はまだ知らなくていい。いや、知らずに済むならそれが多分一番良い……頼んだぞ」

>美鶴に肩を叩かれた。

>よくわからないが、どうやらそうする他無さそうだ。

美鶴「さて、そろそろ移動しなければならない。頼んでおいてなんだが、君達は普通の生活もしっかり送ってもらいたい」

天田「心配ないですよ、多分。それより桐条さん達こそあまり無茶は……」

美鶴「言うようになったな、天田。それじゃ、私はこれで。また何かあったら連絡をくれ」

>美鶴とアイギスは寮を後にした。

メティス「……あの、風花さん。後で連絡をお願いしたい事が……」

風花「ん?どうしたの?」

>メティスと風花は何か相談している。

天田「久々の学校って疲れません?僕、眠くって……今日はもう寝ちゃおうかな」

>天田はだるそうにしている。

>さて、俺はどうしようか……。

>そういえば、陽介達に連絡をしていない。

>電話してみるか……。
112 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:13:45.76 ID:7ZDRNgwMo
>数度コールが鳴って、陽介が出た。

陽介『相棒!大丈夫だったんかよ。ぶっ倒れてたけど』

鳴上「心配かけた、もう大丈夫だ」

陽介『ならいいけどよ。事件、どうなった?』

鳴上「一応は解決したよ。ただ……これで終わるかどうかわからない」

陽介『テレビが映る限り、か。なんでまた……』

『ちょ、先輩!俺にも話させてくださいよ!』

>受話器の向こうでやかましい声が聞こえる……。

陽介『っせーな、今替わってやるよ!あ、悠。ちっと完二に替わるぞ』

鳴上「ああ」

完二『先輩!?体ァ大丈夫なんスか!?』

鳴上「お前にも心配かけた。大丈夫だよ」

完二『先輩だったら大丈夫だとは思ってたけどよ、万が一ってこともあるから、俺ァ……』

鳴上「ありがとう。それより、どうだった?」

完二『何が……ああ、テレビん中っスか。こっちからそっちまでにおかしな所は無かったっスよ』

鳴上「どこもか」

完二『どっこもっス。あ、ただ……最後の時に見た、綺麗な景色じゃなくなってたっス。いつもの、スタジオみてーな感じの場所で』

鳴上「そんな気はしてたけど、やっぱりそうなってたか……」

完二『つか、思いつかなかったっスけど、テレビん中ならそんなにそっちまで距離ないんスね!割りとすぐ辿り着けちまった』

鳴上「現実の距離とはまた違う法則があるんだろうな」

完二『こんなら、ちっと暇見つけりゃそっちに遊びにいけっかもな、なんて』

鳴上「お前も忙しいんだろ?俺が遊びに行くよ。そうだな、ゴールデンウィーク辺りに」

完二『あ、そういやそういう約束だったっスね。そん時にゃ全力で迎えられるようにしときやス!』

鳴上「ああ、頼む。陽介にも話聞きたいから、また替わってもらえるか」

完二『うぃーす。先輩、ほれ』
113 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:17:30.02 ID:7ZDRNgwMo
陽介『おう、戻ったぜ。お前、どう思う?』

鳴上「……多分、まだ続くんだろうな」

陽介『だよな。核心に至るまでって感じか。どうすんだ?』

鳴上「また捜査する事になったよ、こっちの仲間と」

陽介『おお?新生特別捜査隊か?』

鳴上「特別課外活動部だそうだ。いろいろ、やれるだけやってみるよ」

陽介『……気を付けてな。他の連中は忙しいみたいだけど、俺と完二と、それからクマくらいならいつでも駆けつけるからよ』

鳴上「いいさ、自分の事を優先してくれ」

陽介『あのでかい兄ちゃんとか、強そうだったしな。可愛い子もいたし、仲間がいりゃ心配ねーか!』

鳴上「そういうことだ。あと、あのでかい兄ちゃんだけどな、あれ中学生だぞ」

陽介『うっそ!マジで!?信じらんねー……』

>陽介と暫く談笑した。

>向こうの皆はやはり忙しいのだろう……。

>だが、余り気にしてもいられない。

>きっとこちらもまた忙しくなるだろうから。

>とにかく、今日はもう寝よう。
114 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/14(土) 00:18:25.17 ID:7ZDRNgwMo
とりあえず、一段落。
では、また明日。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 00:20:18.95 ID:B4TB04nEo
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 02:36:22.46 ID:uYngwQ+v0

天田が天田さんになったのか
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/14(土) 11:55:44.40 ID:dsWC7YOwo
僕のテレッテはまだですか
118 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:25:14.47 ID:FCJFJU/Po


【4/14 晴れ】


>今日は土曜日だ。

>あれから5日が過ぎたが、今の所何も起こっていない。

>先の事件にはまだわからない事がある……。

>特に、何故雨止みを待たずに霧が晴れたのか、が重要になるだろう。

>それがわからなければ、十分な準備期間を取る事が出来ない。

鳴上「と言っても、どうしようも無い……よな」

>何も起こらなければ情報の集めようがない。

>平たく言えば手詰まりの状況にあった。

綾時「おーい悠。今日はどっか寄って帰ろうよ」

>わからない事の中には彼の事も含まれている。

>寮に住んでいる皆はどうやら綾時の事を知っているようだが、何故知っているのか、何故警戒する必要があるのかがわからない。

>こうして接している限りでは、お調子者で軽薄である事以外は特になんということもないように思うのだが……。

綾時「相変わらず難しそうな顔してるねぇ。悠は毎日何を悩んでるのかな?」
119 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:25:45.38 ID:FCJFJU/Po
鳴上「悩んでも仕方ない事で悩んでるんだ」

綾時「そりゃ大変だ。それでさ、僕は本を見たいんだよね」

鳴上「ああ、駅前に古本屋があったな」

綾時「そこに行きたいんだよ。良かったら付き合ってよ」

鳴上「ん、わかった。それじゃ行くか」

綾時「……悩み事なら、相談に乗るよ。友達だろ?」

鳴上「……ああ。その内聞いてもらう。ありがとう」

綾時「うん。よし、荷物持ったし行こうか」

>……。

>駅前、古本屋『本の虫』……。

>綾時はハードカバーの本を手に取って眺め、また戻す事を繰り返している。

鳴上「……意外と言えば意外だな。読書家なのか」

>そのつぶやきにも反応しない程集中しているようだ。

>邪魔しても悪いし、駅前広場を眺めて……
120 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:26:12.32 ID:FCJFJU/Po
鳴上「あ」

>以前見たゴスロリの女性が座っている。

>今日もスケッチブックを持って何か描いているようだ。

>綾時はまだ本を見ている。

鳴上「……ちょっと声かけてみるか」

>女性に話しかける事にした。

紅い髪の女性「あ……」

>歩いて行くと、先に女性の方が気付いたようだ。

鳴上「こんにちわ。今日も絵ですか?」

紅い髪の女性「……今日は、ついで。本命は待ち合わせ」

鳴上「あ……じゃあ、邪魔しない方がいいんですかね」

紅い髪の女性「いい、別に。無理やり呼び出されただけだから」

鳴上「無理やりって……」

紅い髪の女性「私は別にいいって言ってるのに。出掛けなくたっていいって言ってるのに」

>無表情だし顔色も変わっていないが、もしかすると……怒っている、のかもしれない。

鳴上「嫌なら無理に応じなくてもいいんじゃないですか?」

紅い髪の女性「嫌ってわけじゃない。ただ、変に気を遣われるのが嫌なだけ……私は、ただ……」

>……女性は黙ってしまった。

>気まずい空気が流れる。
121 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:26:40.75 ID:FCJFJU/Po
男の声「おーい!チドリン待った?」

>駅の方から声が聞こえる。

>その瞬間、女性は跳ねるように振り向いた。

鳴上「チドリン……?」

紅い髪の女性「違う。順平がそう呼んでるだけ」

順平と呼ばれた男「や。今日はどうよ、体調」

紅い髪の女性「悪くない」

順平と呼ばれた男「そっか、そりゃ良かった。えーと、こちらは誰さん?」

>順平、と呼ばれた男がこちらを不思議そうに見ている。

紅い髪の女性「知らない。この前会った人」

鳴上「あ、どうも……」

順平と呼ばれた男「へぇ、たまたま会った奴と仲良くなったわけか。珍しいな、チドリンにしちゃ」

>紅い髪の女性は拗ねたようにしている。

順平と呼ばれた男「あ、俺、伊織順平。チドリンのー……」

鳴上「彼氏ですか?」

順平「え!?彼氏とかそーいうんじゃねえけど!?んー、友達、だな」

鳴上「チドリンさんは……」
122 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:27:32.12 ID:FCJFJU/Po
紅い髪の女性「だから!チドリンじゃない。私は……吉野、千鳥」

順平「おー?自己紹介まで……チドリンも社会復帰してきたじゃないの。俺は嬉しいぞぉ」

チドリ「……帰る」

順平「おわ!待って待って待ってよ!あー、と……」

鳴上「あ、俺は鳴上です。鳴上悠」

順平「おう、鳴上な。こいつさ、まぁ見ての通り傍若無人っつーか、他人のこと気にしないトコあってさ。そういうのって良くないと思うんだわ」

チドリ「ほっといてよ」

順平「ほっとけるかっての。でよ、良かったらこうやってたまにかまってやってくれね?暇な時でいいからさ」

鳴上「それは構いませんけど、チドリさん帰ってますよ」

順平「待ってってば!泣くぞそろそろ!と、とにかく頼むな!友達んなってやってくれよ。じゃ、縁があったらまたな!チードリー!」

>順平とチドリは騒がしく去っていった。

綾時「すごいね、あんな難敵をさっそく落としにかかるなんて」

鳴上「うわ!……本は選び終わったのか」

綾時「いい買い物が出来たよ。しかし悠はすごいねぇ」
123 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:27:58.68 ID:FCJFJU/Po
鳴上「何がだ?」

綾時「だって、彼女人に興味なんて無さそうじゃない?なのに普通に会話できるって」

鳴上「きっかけを作ったのはお前だろ?」

綾時「そうだったっけ?」

鳴上「そうだ」

綾時「そっか。まぁそんな事どうだっていいんだよ。悠、明日暇だったりしない?」

鳴上「一応、予定は無いな」

綾時「だったら遊びに行こうよ。悠、こっち来て初めての週末でしょ?」

鳴上「そういえばそうか。綾時は結構経ってるんだったよな」

綾時「うん。だから案内でもと思って。どう?」

鳴上「そうだな、頼む」

綾時「ん、それじゃ明日はポロニアンモールにでも行こうか」

鳴上「任せる」

綾時「デートは男の子がエスコートするもんだよ」

鳴上「じゃあやっぱりお前だろ」

綾時「悠が女の子役?」

鳴上「……無理があるな」

綾時「あはっ、そうだね。……それじゃ明日ね」

鳴上「ああ。また明日」

>綾時と別れて寮に帰った……。
124 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:29:20.76 ID:FCJFJU/Po
風花「あ、おかえりなさい」

>ラウンジには風花と……

女性「おかえりー」

>知らない女性がいた。

鳴上「ただいま。えーと……」

女性「さて、私はそろそろ御暇しますか。風花、またね」

風花「うん、また」

>知らない女性はこちらをちらりと見て帰っていった。

鳴上「今のは?」

風花「昔ここに住んでた人。名前は岳羽ゆかり。私の同級生だから、鳴上君の先輩だね」

鳴上「ああ、そうなんですか……ここに住んでたって事は、あの人も」

風花「ペルソナ使いだよ。ただ、あの頃とは色々事情が違うから……あんまり協力できないって話をしに来てくれたの」

鳴上「そうですか……」

風花「今はお母さんと暮らしてるみたいだし、寮住まいも難しいって」

鳴上「前の事件っていつだって言ってましたっけ」

風花「三年前かな。2009年」

鳴上「それだけ時間が経てば色々変わりますよね。となると、以前のメンバーの協力は期待出来ない……んですかね」

風花「そうでもないみたい。ゆかりちゃん以外は結構協力的で、鳴上君が会ってない後のメンバーは機会さえあれば参加してくれるって」

鳴上「なるべく早く合流したいですね。それによって出来る事も変わるし」

風花「まず、これ以降何も起こらない事が良い……でしょ?」

鳴上「……それもそうですね」

>かつてシャドウと戦ったという特別課外活動部。

>その部員達も今はそれぞれの生活を送っているらしい。

>ただ、全員がある程度協力的な姿勢であるようだ。

>……頼りになりそうだ。
125 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:38:01.94 ID:FCJFJU/Po


【4/15 晴れ】


>今日は日曜で学校は休みだ。

>そういえば今日は約束をしていた……。

>そろそろ行かなければ……。

>……。

綾時「や。お待たせ?」

鳴上「同時だろ、ほとんど」

綾時「だねぇ。奇遇奇遇。さてと……今日、本当にデートするつもりだった?」

鳴上「普通に遊びに行くんだろ」

綾時「そういう意味じゃなくて。悠、僕に聞きたい事あるんじゃないかなって」

鳴上「……別に、無いけどな」

綾時「そう?」

>綾時の目を見た。

>笑顔の奥に底知れない何かを見たような気がして、少し寒気がした。

鳴上「ポロニアンモール、案内してくれるんだろ?」

綾時「ああ、そうそう。そうだったね。んー、じゃあ……カラオケでも行こうか」
126 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:38:28.86 ID:FCJFJU/Po
鳴上「カラオケか。いいな」

綾時「歌は好き?」

鳴上「音楽は好きだぞ」

綾時「趣味が合うね。僕なんか年中ヘッドホンで音楽聞いてるよ」

鳴上「そうなのか?見たことないけど」

綾時「……ごめん、勘違いだ」

鳴上「……変な奴だな」

綾時「酷いなぁ。それじゃこっち。行こう」

>綾時とカラオケに行く事になった。

>……。

>カラオケ『マンドラゴラ』。

>綾時と二人で歌いまくった。
127 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:38:56.28 ID:FCJFJU/Po
鳴上「ちょっと疲れてきたな……」

綾時「選曲が無茶なんだよ、悠は」

鳴上「いや、お前の方が無茶だろ。なんで最初からバラードなんだよ」

綾時「逆に?」

鳴上「逆って……」

綾時「あー、でも時間も良い感じだね。もう一曲くらい歌って、それから晩ご飯でも食べて……それで帰ろっか」

鳴上「もうそんなにか。時間忘れるな……」

綾時「楽しかったって事じゃない?」

鳴上「確かにな」

綾時「……よし!じゃあ最後に一曲ずつ行こう!採点ゲームしちゃおうよ」

鳴上「採点?あんまり得意じゃないんだがな」

綾時「それで、悠が勝ったら……」

鳴上「俺が勝ったら?」

綾時「どんな質問だろうと、嘘偽りなく真剣に答えるよ」

鳴上「……綾時」

綾時「僕が勝ったら、逆に僕から君に質問する。それでどう?」

>綾時は何かを察しているようだ。

鳴上「わかった。……全力で行くぞ!」

綾時「そうこなくちゃ。僕だって負ける気はないよ」

>カラオケ対決が始まった。
128 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/15(日) 00:39:32.18 ID:FCJFJU/Po
ちょっと遅刻しました。
では、また明日。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 10:07:02.50 ID:knq5B4/z0
130 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:01:29.87 ID:3MI1oUYoo
綾時「……さて、採点だね」

鳴上「ああ。なぁ、綾時。お前は……」

綾時「質問は勝った方がする。……どっちにせよ、僕らが友達でいるためには、いつか話さなきゃいけない事だったんだ」

>採点結果が表示される。

>先に歌った綾時は『89点』。

>俺は……『91点』。

綾時「……あーあ」

鳴上「俺の勝ち、だな」

綾時「そうみたいだね。……よし、それじゃ出ようか」

鳴上「そうだな、場所を変えるか」

綾時「ラーメンでも食べに行こうか」

鳴上「この辺はよく知らないから、最後まで任せるよ」

綾時「うん、それじゃはがくれだ」

>……。
131 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:02:00.93 ID:3MI1oUYoo
>ラーメン屋『はがくれ』……。

>はがくれ特製ラーメンを無言で食べた。

鳴上「……」

綾時「……」

>綾時は満足そうに麺を啜っている。

>カラオケ対決が終わってここに来るまで、いや到着してからもずっと考えている。

>綾時に何を聞くべきか……だ。

>綾時が言った『友達』という言葉を信じ、嘘偽りなく答えてくれるとして……

>何を聞けばいい?

>もし何も無くて、この前のメティスや美鶴の態度を気にして今日みたいな事を言い出したのなら。

>俺は謝って、多分綾時も笑って許してくれるだろう。

>だが、もしも。

>もしも、綾時が何か別の目的で俺に近付いて来ていたら。

>八十稲羽で出会ったあの神のように、何かの意思を持って俺に触れてきたのだとしたら。

>俺は何を聞き出し、一時でも友人と信じたこの男をどうすれば良いのだろう。

綾時「大将、ご馳走様。会計お願いします」

>考えている間に綾時は食べ終わってしまった。

綾時「……結局、何も聞かなかったんだね。食べるのは早かったけど」

鳴上「鍛えてるからな。……歩きながら話そう。やっと聞きたいことが纏まりそうなんだ」

綾時「いいね、食後の散歩か」

>綾時に先んじて店を出た。
132 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:03:03.91 ID:3MI1oUYoo
>辺りは紫色に染まっている。

>……もうすぐ夜だ。

綾時「あ、うっすら月が見えるね」

>確かに、空には薄く月が出ている。

>随分と細い月だ。

綾時「この感じだと、来週末には新月だねぇ」

>綾時が歩き出した。

>ついて歩く。

鳴上「……綾時。俺は、お前の事を友達だと思ってる」

綾時「僕もさ」

鳴上「だからこそはっきりさせておきたい。俺達が、友達でいる為に」

綾時「うん。こればっかりは信じてって言う他無いけど、聞かれた事にはきちんと答える。誤魔化さずにね」

>綾時は慣れた足取りで裏路地へと進んでいく。

綾時「もう少ししたら、ここにあんまり素行の良くない人達が溜まり始める。けど、今はまだ誰もいない。丁度いいでしょ」

鳴上「ああ、そうだな……」

>質問は決まった。

>ただ一つ、その一点だけ。

鳴上「綾時。お前は……」

綾時「うん」
133 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:05:13.51 ID:3MI1oUYoo
鳴上「お前は、俺の敵なのか」

>結局の所、知りたいのはそれだけだ。

>ここで綾時が笑って否定してくれれば、それで全て終わる。

綾時「……」

>綾時は笑っていなかった。

>むしろ寂しそうな……

綾時「敵、じゃないよ。ただ、味方でもない」

鳴上「誤魔化さないって言っただろ」

綾時「誤魔化してないよ。これが事実。……説明するには、少し長い話をしなきゃならない」

鳴上「……聞くさ。友達の話だ」

>綾時は一層寂しそうに笑った。

綾時「これは、君が住んでるあの寮や桐条さんも出てくる昔話さ……三年前の、ね」

>綾時はぽつぽつと語りはじめた。

>三年前、この街で起こった事件。

>解決するために組織された特別課外活動部。

>そして、そこにやってきたある男……

>特別なペルソナ使い、その話。

綾時「……僕はその彼の中で生まれた。ある物が彼の内面を反映して出来た人格が僕」

鳴上「……つまり、お前は何なんだ?」

綾時「シャドウみたいなものさ。いや、シャドウの素とでも言った方がいいかな。全ての者に死を宣告する存在……もう少し、話を進めようか。僕が登場する場面までね」

>死。

>死という概念。

>それを告げる存在。

>そして、男は命を賭けてそれを封印した……。
134 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:06:21.98 ID:3MI1oUYoo
鳴上「……凄い、話だな」

綾時「そうだね、君がどんな体験をしてきたかは知らないけど、それに勝るとも劣らない話だと思う」

鳴上「だけど、待ってくれ。今の話、お前……倒されて封印されたんじゃないのか?」

綾時「その通りさ」

鳴上「じゃあ、今ここにいるお前は何なんだ?」

>綾時はまた笑った。

綾時「それが、僕にもわからないんだ」

鳴上「わからない……?」

綾時「以前の僕はメッセンジャーだった。最後通告をする為のね。でも、また生まれた今、その理由を忘れてしまった」

鳴上「つまり、今回はその……死が訪れるから斥候に来たってわけじゃないのか?」

綾時「違うとは思う。僕は、強いて言えば欠片みたいなものなんだ」

鳴上「欠片?」

綾時「死の欠片、オワリノカケラ。世界を滅ぼすような力はもちろん無いし、かと言って普通の人間でもない」

鳴上「そうだ、何で鳥海先生はお前の事を知らなかったんだ?三年前も先生のクラスだったんだろ?」

綾時「僕に関する記憶はほとんどの人から消えてる。君の仲間くらいさ、覚えているのは。深く関わったからね」

鳴上「……敵でも無くて味方でもないってのは、結局どういう意味だ?」

綾時「死はいつでもそばにある。けどただあるだけなんだ。誰かに味方もしないし、誰の敵でもない。僕は、そういう存在」

鳴上「なるほどな……」
135 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:07:03.32 ID:3MI1oUYoo
綾時「答えるとか言ったけど、僕自身わからない事が多くて。ごめんね」

鳴上「……お前を放っておいたら世界が滅ぶとか、そういう事は無いんだな?」

綾時「その点は安心してくれていいよ。今の僕は本体とのつながりも無いし、デスの力は全くない。だからこそ役割がわからないんだけどね」

鳴上「そうか、良かった。なら綾時は俺の友達のままだ」

綾時「悠……」

>綾時は驚いている……。

鳴上「なんだ、嫌なのか?」

綾時「……ううん。悠、僕は君が好きだ」

鳴上「何?」

綾時「そんな君だからこそ、僕は近付いたんだと思う。本当なら、一人で居続けるべきなのに」

鳴上「待て、お前……ソッチ系なのか?」

綾時「僕の役割も君に関係しているのかもしれない。そんな気がするよ、不思議とね」

鳴上「お、おい……」

綾時「……ああ、もう暗くなる。そろそろ帰らないとね。じゃあね、悠。今日は……誘って良かった」

鳴上「あ、ああ。また明日、学校でな」

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.13 死神 望月綾時』を手に入れた!

>綾時との間に絆が芽生えたのを感じた。

>少し心を許してくれたようだ。
136 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:07:30.27 ID:3MI1oUYoo
綾時「うん。……ああ、それから」

>綾時が立ち去りかけて一度振り返る。

>空を見て、月を見て、それからこちらを見た。

綾時「来週末は新月で、それから半月で満月だ。忘れない方がいいよ」

鳴上「なんだ?何かあるのか?」

綾時「多分ね。何となくだけどわかるんだ。月に注意して……」

>……綾時と別れた。

>綾時の正体は驚くべき物だった。

>しかし、今は脅威ではないと言う……。

>何か役割があるからこうしてここにいる、と本人は言っていたが……

>果たして、彼の役割とは何なのだろうか。

>とにかく、今は綾時の言う事を信じるしかない。

>……寮に帰ろう。
137 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:08:24.88 ID:3MI1oUYoo


【4/18 晴れ】


>週の真ん中は少しけだるい。

>もそもそと着替えて、学校に行く準備をした。

風花「あ、おはよう。ねぇ、メティス見なかった?」

鳴上「メティスですか?さぁ……見かけませんでしたけど」

風花「そう……今朝から見当たらないの。どこに行ったのかな……」

鳴上「メティスなら心配ないとは思いますけど……家出するような奴じゃないでしょう?」

風花「それはそうだけど、何だか最近様子が変だったから」

鳴上「変?どんな風にですか?」

風花「急に考えこんだり、一人で何かぶつぶつ言ってたり……」

鳴上「確かに変ですね……」

風花「何か悩んでたのかもって思って」

>メティスが悩み……?

>そういえば、メティスはアイギスの悩みから生まれたと言っていた……

>機械だからこそ悩むような事があるのかもしれない。
138 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:09:23.43 ID:3MI1oUYoo
天田「おはようございます、先輩。そろそろ出ないとまずいですよ」

鳴上「おはよう、天田。……そうだな、そろそろ行かないと。山岸さん、もし学校が終わってもまだ戻ってこないようだったら一緒に探しましょう」

風花「そうね、とりあえずしばらく待ってみます。心配だけど、あの子も常識はそれなりにあるはずだし……」

天田「僕、先に行ってますね」

鳴上「あ、俺も出る。じゃ、続きはまた帰って来てから」

>風花に見送られ、寮を出た。

>……。

綾時「おはよう、悠。水曜って何だかだるいよねぇ」

鳴上「ああ、おはよう。そうだな、確かに……」

>話し声が聞こえる……。

男子A「聞いた?また転校生だってよ」

男子B「ウチのクラス半端ねえな。で、男?女?」

男子A「まだ知らねえって。ただ、男男と来たからにはそろそろ女であるべきだよな」

男子B「男でもいいけどな。俺よりブサイクだったら」

男子A「ちっちぇーお前……ちっちぇー」

綾時「……聞いた?」

鳴上「本当にすごいな、このクラス……」

>しかし、何故だろう。嫌な予感がする……。

鳥海「はーい静かにー。まぁ知ってる人もいるみたいだけど転校生でーす。三人目よ三人目。おかしくない?」

>鳥海先生はうんざりした様子だ……。

鳥海「あ、ちなみに今度は女子だから。男子は嬉しいんじゃない?お人形さんみたいな子よー。入っといでー」

聞き覚えのある声「失礼します」

>!?
139 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:10:05.84 ID:3MI1oUYoo
綾時「あの声って……」

鳴上「聞き間違いであってくれ」

メティス「本日よりこのクラスでお世話になることになりました、メティスと言います。半端な時期ではありますが、両親の仕事の都合で日本に来る事になりました」

鳥海「メティスさんは名前からわかる通り帰国子女なのよ。日本の事でわかんないことあるかも知れないから教えてあげてねー」

鳴上「……冗談だろ」

綾時「おーい、メティスちゃーん」

鳥海「あら?望月君はもう知り合いなの?」

メティス「……」

>メティスはゆっくり歩いて行くと、綾時の首筋に手刀を振り下ろした!

綾時「うぐっ」

メティス「ごめんなさい、他の誰かと間違えているのではないですか?」

鳥海「あー、望月君の事だからまたナンパ目的かもねぇ。えーと、それじゃ席は……」

メティス「ここがいいと思います」

>俺の隣を指さしている……。

>確かそこは既にクラスメイトの男子の席だったはずだ。

>今日は遅刻しているようだが……

鳥海「転校生固まってくれてると私も楽でいいし、そこでいいわ。じゃ、とにかく皆よろしくね」

鳴上「綾時、綾時……」

>綾時は完全に沈黙している……。

メティス「あの、よろしくお願いしますね、鳴上さん」

>メティスはにこりと笑った。
140 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/16(月) 00:15:41.89 ID:3MI1oUYoo
転校生が多いです。
では、また明日。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 01:40:21.06 ID:cw4/Mf730

世界を救った男・・・いったいどんなキタローなんだ!?
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 18:55:52.87 ID:vE4U+X7IO
特別なペルソナ使い…一体何タローなんだ…
143 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:00:32.89 ID:3TfUyBgwo
>昼休み、屋上。

>幾人かの生徒が昼食をとったり昼寝したりしている。

>が、とりあえずここでなら妙な話を聞かれる事も無さそうだ。

メティス「あの、何の用でしょうか?」

鳴上「……綾時、結局午前中は起きなかったぞ」

メティス「そ、それは……少し強くやりすぎました。失敗です」

鳴上「まぁ、綾時はいい。後で謝れば多分許してくれるだろ。俺が聞きたいのは、何でメティスが学校に来てるのかってことだ」

メティス「だから、転校して来たんです」

鳴上「転校ってのは前に他の学校にいた奴が違う学校に入る事だ。お前、最近まで存在もしてなかっただろ」

メティス「……」

>……しまった。

>混乱と呆れで少し投げ遣りな語調になってしまった。

>メティスを傷つけたかもしれない……。
144 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:01:00.33 ID:3TfUyBgwo
メティス「ここ」

鳴上「え?」

メティス「ここからだと、街が一望出来るんですよね」

鳴上「……ああ、確かにそうだな。景色が良い」

メティス「私は、これが見たかった」

鳴上「景色がか?」

メティス「姉さんは、ここから見える景色をとても大切だと思ってて……私は、見たことが無かった」

鳴上「そうか、アイギスさんとメティスは記憶を共有してるんだったな」

メティス「ここで、姉さんはなんて言うか……温かい気持ちになったり、焦ったり、寂しく思ったり……色んな感情を抱いて、それは私の中も通って行って」

>メティスは手摺にもたれかかって街を眺めている。

メティス「だけど、どれも私の感情じゃない。私は、自分の目で、耳で、肌で、全ての入力機関で、その感情を確かめたかった」

鳴上「メティス……」

メティス「手引きをしてくれたのは桐条さんです。山岸さんと相談して……二人共賛成してくれました」

鳴上「やっぱりあの人か……それにしては、今朝山岸さんが心配してたぞ」

メティス「今日入学だとは言ってあったのですが、その、少し張り切って朝早くに出てしまったので……」

>様子がおかしかったのは楽しみだったからだろうか?

メティス「それに、私が同じクラスにいれば何か緊急事態になっても連携が取りやすいからと。……いけませんでしたか?」

>今にも泣き出しそうな顔で質問された。
145 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:01:31.46 ID:3TfUyBgwo
鳴上「学校、楽しい事ばかりじゃないぞ」

メティス「一応、理解してるつもりです」

鳴上「あと、あんまり目立たないようにしよう。色々不都合だろ?」

メティス「そうですね、はい」

鳴上「あのな、メティス」

メティス「何でしょう?」

鳴上「俺が悪かった。勝手に面白半分でやってると思い込んでた。お前にも思う所があったのに。変に疑ってすまなかった。許してくれ」

メティス「いえ、私も……一番迷惑をかけるだろう鳴上さんに何も言わなかったので……」

鳴上「でもだな……」

メティス「あ、こういう時にすっきり決着をつける方法を知ってます」

鳴上「なんだ、どうやるんだ?」

メティス「お互い一発ぶん殴ってお終い!です」

鳴上「えっ」

メティス「それじゃ、行きますよ。せーの……」

鳴上「待て!待ってくれメティス……」

メティス「ばかやろー!」

>非常に硬質な物体が相当な速度を伴って左頬にめり込んだ。

>最後に見たのは、それはそれは青い空だった。

>……。
146 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:02:03.85 ID:3TfUyBgwo
鳴上「学校、楽しい事ばかりじゃないぞ」

メティス「一応、理解してるつもりです」

鳴上「あと、あんまり目立たないようにしよう。色々不都合だろ?」

メティス「そうですね、はい」

鳴上「あのな、メティス」

メティス「何でしょう?」

鳴上「俺が悪かった。勝手に面白半分でやってると思い込んでた。お前にも思う所があったのに。変に疑ってすまなかった。許してくれ」

メティス「いえ、私も……一番迷惑をかけるだろう鳴上さんに何も言わなかったので……」

鳴上「でもだな……」

メティス「あ、こういう時にすっきり決着をつける方法を知ってます」

鳴上「なんだ、どうやるんだ?」

メティス「お互い一発ぶん殴ってお終い!です」

鳴上「えっ」

メティス「それじゃ、行きますよ。せーの……」

鳴上「待て!待ってくれメティス……」

メティス「ばかやろー!」

>非常に硬質な物体が相当な速度を伴って左頬にめり込んだ。

>最後に見たのは、それはそれは青い空だった。

>……。
147 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:02:48.54 ID:3TfUyBgwo
>左頬に手を当てる。

>どう考えても腫れている。

>折れなかった自分の歯に感謝しよう。

鳴上「……いいパンチだった」

メティス「……でしょう?」

>……少し、間があって。

>それから二人で笑った。

>メティスの事を少し理解した……。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.9 刑死者 メティス』を手に入れた!

>しかし、痛い。

>今日はもう寝てしまおう……。
148 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:04:31.34 ID:3TfUyBgwo
訂正:『No.9 刑死者 メティス』→『No.12 刑死者 メティス』
149 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:05:40.78 ID:3TfUyBgwo


【4/21 曇り】


>土曜日、今日は夜から雨が降るらしい。

>綾時に言われてチェックしていたのだが、どうやら新月は今日らしい。

>『何かある』……

>果たして、何が起こるのだろうか。

>とにかく、打てる手は打っておくべきだ。

>携帯を取り出して電話をかけた。

>相手は陽介だ。

陽介『はいよー、どしたよ』

鳴上「陽介か。一つ頼みたい事がある」

陽介『お、事件に進展か?』

鳴上「するかもしれない、だけどな。今日、マヨナカテレビのチェックをして欲しい」

陽介『前回はこっちじゃ映って無かったぜ?』

鳴上「今回もそうとは限らないからな。今度の事件、マヨナカテレビが映ってるから前の事件と同じか、似てると思って考えて来たけど……」

陽介『違うのか?』

鳴上「かもしれない。もしかするとそこから思い違いをしてたのかも、って思って」

陽介『お前がそう言うならそうなんじゃねえかな。よっしゃ、そんじゃ確認しとくわ!他には?』

鳴上「前回、こっちに出口は作ってくれたんだったよな?」

陽介『おう、クマが例のテレビ置いてってくれてるぜ』

鳴上「だったら今回は俺達だけでも大丈夫か……」
150 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:06:08.11 ID:3TfUyBgwo
陽介『前は思ったより時間はかかんなかったけど、次もこっちからつながってるかわかんねーみたいだわ……クマのヤツもビビってたぜ』

鳴上「ビビってた?」

陽介『おう。クマの知ってるテレビの中と空気違うクマーってな』

鳴上「……それは、俺も思ってた」

陽介『まぁな。俺だってそうだよ』

>テレビに入る時に感じた違和感……。

>あれがクマの言う空気が違うという事なのだろうか。

陽介『あ、つーかお前、また何かまずいことんなんじゃねえだろうな』

鳴上「まずいこと?」

陽介『前の時、ペルソナが暴走?したらしーじゃねえか。どうなってんだよ、そのへん』

>そういえば、それもあった。

鳴上「いや、全く何もわかってない。ただ暴走はしたけど、敵意の無い相手には危害を加えなかったし……」

陽介『バカ、そうじゃねって。いや、そりゃ周りも心配だけど、お前だよ。ぶっ倒れるなんて普通じゃねえだろ』

鳴上「……」

陽介『前も言ったけど、無茶すんなよな。次の日心配でバイト手に付かなかったんだからな?』

鳴上「悪かった」

陽介『こっちが勝手に心配してんだよ。行くなっつっても行くんだろ、お前』

鳴上「そうだな。どっちにしても原因を解明しない事にはどうにもならないし」

陽介『そりゃそうか。とりあえずは今日の夜だな』
151 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:06:42.11 ID:3TfUyBgwo
鳴上「ああ。映らなければいいんだけど……」

陽介『そうだな、それが一番だよな。っしゃ、念の為にクマにゃ中にいてもらうわ。それから……』

>陽介は何か言い淀んでいる。

鳴上「どうした?」

陽介『あ、いや、よ。来月の頭にさ、お前……』

>来月の頭……。

鳴上「あ、ゴールデンウィーク……」

陽介『帰って来るって言ってたけどよ。そんなんで帰って来れんのかなって、さ』

>確かにそうだ。

>八十稲羽の面々には会いたい……会いたいが……。

鳴上「まだ、わからない。とりあえず話はしてみるけど」

陽介『ま、まぁさ、別にこれで最後ってわけじゃねーし。無理なら無理で、誰も文句言ったりしねえからさ』

鳴上「なるべくなんとかしてみる。俺だって皆に会いたいし」

陽介『おう。なんか、余計な事考えさせちゃって悪いな』

鳴上「いや、ギリギリで思い出すより良かった。ありがとうな」

陽介『へへ。そうだ、事件の事まだ完二とクマと俺しか知らねえからさ。もし帰ってこれないようなら言い訳考えといてくれよ』

鳴上「そうだったな。わかった」

陽介『……無理でも文句は言わねえけど、俺も楽しみにしてっから』

鳴上「……任せろ。絶対なんとかする」

陽介『おう。信じるぜ、相棒。そんじゃいいか?』

鳴上「ああ。またな」

陽介『おう、またな』

>電話を切った。

>GW……大見得を切ったものの帰れるのだろうか。

>……まずは目の前の事から片付けるしかない。

鳴上「まずは今夜だ」

>夜を待とう。
152 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:07:23.30 ID:3TfUyBgwo
>……。

>雨が降っている。

>ラウンジで皆とテレビを見よう。

天田「久々に雨ですね」

風花「そうね。……映ると思う?」

メティス「映ったとしても、対策を取るだけです」

鳴上「……そうだな。そろそろ時間だ」

>日付が変わろうとしている。

>かち、かち、かち、かち……。

>全員が無言でテレビを見つめている。

>30秒を切った。

>20、15、10、9、8、7、6

>5、4、3、2、1

>日付が変わる。

風花「あ、やだ、何か……」

>その瞬間、風花はそう呟いた。

>テレビに砂嵐が映り、件の放送が始まる。

>同時に、時間が壊れた。
153 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:07:59.95 ID:3TfUyBgwo
XXX、始まる。
では、また明日。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 00:15:27.00 ID:SRk+tCADo
乙。
遂にか…
155 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 00:18:26.88 ID:3TfUyBgwo
今日訂正ばっかりだ
訂正:>>146を以下に差し替え

鳴上「う、ぐ……」

>頭がガンガンする。

>……殴られた所以外に外傷は無いようだ。

鳴上「あれ、ここ……」

>気が付くと寮の自室だった。

>ベッドの横でメティスがこっちを見ている。

メティス「あの……」

鳴上「……」

メティス「ごめんなさい!」

鳴上「……いや、いいけど」

メティス「そ、その。ある方から借りた漫画にああいうシーンがあって……ちょっとやってみたかったんです!本当にごめんなさい!」

鳴上「だからいいって。痛いけど、痛いだけだ」

メティス「私に出来る事ならなんでも……」

鳴上「メティス、聞け」

メティス「は、はい!」
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 02:57:19.63 ID:nXzLkir10
157 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/17(火) 22:34:35.34 ID:3TfUyBgwo
本日諸事情により更新なし。
明日二日分投下します。
では、また明日。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 02:00:59.40 ID:osaDvHtk0
おk
無理しなくていいからな
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 06:14:35.18 ID:yvsKxrz00
>>141
>>142

鬼太郎「呼んだ?」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/07/18(水) 12:36:16.87 ID:rA9RJzJAO
奇異太郎か
161 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:01:29.74 ID:aqNuBKOfo
風花「天田君、わかる?」

天田「……忘れませんよ、こんなの」

メティス「私にもわかります。これが……」

>違和感が辺りを包んでいる。

>空気の流れすら感じない、これは……

鳴上「どういうことなんですか?こんなのは……俺は、知らない」

風花「一日と一日の間、普通の人にはあった事すらわからない時間が存在する」

天田「適正の無い人間は、棺のような形に象徴化し、何事も無かったかのように過ごす」

メティス「けれど、その時間を動く者がいます」

天田「心の力を具体的に使う事の出来る者、僕らのようなペルソナ使い。そして……シャドウ」

鳴上「つまり、これは……」

風花「以前、私達が戦ったのは、これを消す為……これは、影時間です」

>綾時の話で少し聞いていた。

>だが、それなら例の事件の解決と同時に消滅していたはず……。
162 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:02:05.97 ID:aqNuBKOfo
風花「アイギスの時に、少し思った事があるの」

>風花は応急処置で板を渡してある床のヒビ割れを見た。

風花「あれ……何となく既視感があって。ずっと悩んでたんだけど、今回かなり確信に近くなりました」

>天田は同じようにヒビを見ても何も感じないようだ。

風花「この、地割れみたいなの……あの時に出来たのと同じ形のような気がするの」

天田「そうですか?流石に覚えてないな……」

メティス「同じだと思いますよ。私の記憶はあの日が最後だったので、最近の事のように思い出せます」

>……?

>風花の言っている意味がわからない。

鳴上「偶然……では無いんでしょうね」

天田「けど、だからどうしたんですか?それと影時間がまた来た事に何の関係が?」

風花「それは……凄く、突飛な発想かもしれないけど、仮説の一つとして聞いて欲しい事があるの。いい?」

鳴上「ええ、どうぞ」

風花「影時間が“また訪れた”んじゃなくて、“再現されてるだけ”……だとは思えないかな?」

鳴上「再現……?」

天田「つまり、前回はあの3/31を再現した結果寮が壊れたって事ですか?」

風花「あれは現実世界じゃなくて、時の狭間で起こった事だから……実際に寮が壊れたわけじゃないけど、あれがもし現実で起こっていたら、こんな風に傷跡になったと思う」

メティス「新しく何かを起こしているのではなく、過去にあった事象を再現している、ですか。……リプレイのように」

鳴上「リプレイか……」
163 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:02:34.64 ID:aqNuBKOfo
>この寮でかつて起こった事件。

>その記憶があるからこそ気付けた事。

>……自分には、どうやってもわからない。

鳴上「待てよ、だとしたら」

風花「どの程度かわかりませんが、影時間が再現されたとなると……」

天田「エレボスは出てきましたよね……」

メティス「あのエレボスは本物と何ら変わらないように思いましたが」

風花「だとすれば、もしかすると……」

鳴上「綾時が……!」

>携帯を取り出す。

>……電源が入らない。

風花「無理なの、連絡は。影時間中はあらゆる電子機器が無力化する……電気も止まっちゃうから」

天田「動けるのはペルソナ使いとシャドウ、それから特別に加工された機械だけです」

メティス「綾時さん、やっぱり……そうなんですか?」

鳴上「言いたくなかったし、信じたくなかったけど……そうらしい。何かの役割があって生まれたって言ってたけど、それなのかもしれない」

風花「待って、さっきテレビに映ってた人……綾時君なんじゃないかな?」

天田「映像がザラついて良く見えませんでしたけど……男性だったっぽいですよね」

メティス「確かに綾時さんに似ていたような気はしますけど……」
164 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:03:18.64 ID:aqNuBKOfo
鳴上「そういえば、これが過去のリプレイだとしたら……その大本はどこだ?」

風花「大本?」

鳴上「リプレイなんだとしたら、何かの記録とかを元にしてるんじゃないかって思うんです」

天田「確かに、元があってもおかしくないですね」

メティス「つまり、それがテレビの中に落とされた人なんじゃないですか?」

風花「テレビに入った人の記憶から事件を再現する……だとしたら、綾時君は適任かもね」

鳴上「ずっと見てきたわけですから。でも、そうだとしたらいよいよ犯人なんていないのかも……」

メティス「誰かをテレビに入れるだけならまだしも、綾時さんのような存在を生み出す……人に出来る事では無いように思いますね」

鳴上「とにかく、影時間が明けたら少しまとめてみよう。一応、八十稲羽の皆の話も聞きたいし」

天田「人が映るだけならまだ大丈夫なんですよね?」

鳴上「ああ、綾時はまだ落とされていない、はずだ。ならあいつにも話を聞けるかもしれない」

>……しばらく、各々の推量を話し合って待った。

>……。
165 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:03:59.03 ID:aqNuBKOfo
風花「……そろそろ、かな?」

>風花が言ってから数秒で、ラウンジに明かりが戻った。

鳴上「気味の悪い空気でしたね……」

天田「すぐに慣れますよ。……携帯、復活してますね」

鳴上「ちょっと電話してくる」

>皆に断りを入れて席を外した。

>まず綾時に電話を……

>Pipipi!

鳴上「うわ、なんだ?」

>陽介から着信だ。

鳴上「もしもし、どうした」

陽介『どうしたじゃねーよ!映ったの!マヨナカテレビ!』

>!?

鳴上「そっちもか!」

陽介『おお、バッチリだよ!そっちだけじゃ無かったんだな!』

鳴上「そうか……」

陽介『連絡遅れちまって悪いな!なんか携帯電源入らなくてよ……』

鳴上「ああ、そういう時間らしい。日付が変わってからしばらくは」

陽介『これもテレビのせいか?』

鳴上「多分な」
166 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:04:33.05 ID:aqNuBKOfo
陽介『くっそ……なぁ、映ってた子に心当たりとか無いのか?』

鳴上「一応見当は……ん?」

>映ってた子?

陽介『どうした?なんかあったのか?』

鳴上「映ってた子って言ったか?」

陽介『ん?ああ。俺達と同じくらいの歳の女の子が……』

>女の子?

鳴上「まて、華奢なだけで男じゃなかったか?」

陽介『はぁ?見間違えるわけねーって。スカート履いてたし、ウチの制服着てたし、間違いねーよ』

鳴上「おかしいぞ、それ」

陽介『何がよ』

鳴上「こっちは男だった」

陽介『……はぁ?』

鳴上「映ったのは男だったんだよ。しかも俺の知り合いに似てた」

陽介『え、おい。それってどういう事だよ』

鳴上「どういう事なんだろうな、わからない。悪いけど引き続きそっちも調べてみてくれ」
167 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:04:59.65 ID:aqNuBKOfo
陽介『おう、わかった。……あと、これは言おうかどうか迷ったんだけど……』

鳴上「なんだ?」

陽介『クマのヤツ、帰ってこねーんだよ。今日様子見てもらおうって中に行ってもらったんだけどよ……』

鳴上「何だって!?」

陽介『あん中って、言っちまえばアイツのホームだろ。だから心配ないとは思うんだけどな』

鳴上「状況が状況だし、あまり楽観もしてられないな。……皆も忙しいんだろうが」

陽介『……全部、話すぜ。無理に協力しろとは言わないけどな』

鳴上「そうだな。自分で選んでもらおう」

陽介『まぁ、多分結果は全員一致だけどな』

鳴上「……そうだな」

陽介『そっち、何かわかったら連絡くれよ!こっちも進展ある度に連絡入れるから!』

鳴上「わかった。頼んだぞ」

陽介『おう。そんじゃな』

>……八十稲羽では違う内容のテレビが映った。

>一体何が起こっているのだろうか。

鳴上「そうだ、綾時……」

>綾時の携帯を呼び出す……。

>出ない。

鳴上「くそっ、まさか既に……」

>とにかく、この事を皆に知らせよう。
168 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:05:32.18 ID:aqNuBKOfo
風花「どうでした?」

鳴上「色々とわからない事が増えました。綾時は……出ませんでした」

天田「って事は……」

メティス「ですが、まだテレビの内容は変わっていませんよ?」

鳴上「何かを察して関わりを断ってるのかもしれない」

風花「とにかく、わかった事をまとめてみましょう。それで何か見えてくるかも」

鳴上「そうですね」

>……。

仮説@ このマヨナカテレビは、かつてあった事件をリプレイする物である。テレビの内容は現実にも影響を及ぼす。

仮説A リプレイの元となるのはテレビに映った人物の記憶である。よって、テレビの中に落とされる人物はリプレイされる事件の中核近くに居た人物である。

仮説B マヨナカテレビの放送には月齢が関係している。新月に人が選ばれ、満月に霧が晴れる。

仮説C 複数の人物が選ばれる事もある。
169 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:06:04.42 ID:aqNuBKOfo
風花「仮説@は私や天田君、メティスが感じた前回の事件での事と、また影時間が始まった事から考えられるよね」

鳴上「そして仮説Aは仮説@を前提として、アイギスさんが落とされた事から考えられますね」

天田「仮説Bは……鳴上先輩が綾時さんから聞いた話が本当なら、という事ですが」

鳴上「あながちズレた発想じゃないと思うんだ。調べてみたら、前回は満月に霧が晴れてた」

風花「私が見たのも一番最初の放送じゃなかったとしたら説明はつきますね」

鳴上「なるべく細かく様子を見ながら、この説を基に動いてもいいと思う」

メティス「仮説Cは……」

鳴上「これに関してはまだ何とも言えない。ただ八十稲羽の仲間から聞いた話で、向こうでは違う人物が映ったって事から考えてみた」

天田「二人……ですか。でも、向こうの高校の制服だったならおかしな話ですよね。あの事件の関係者で八十稲羽にいる人なんていないし」

鳴上「これは本当に仮説でしかないな。そう思ったってだけだ」

メティス「別件の可能性もありますからね。Cに関しては一応留めておく程度で」

風花「今度の満月は5月の6日みたい。作戦はその日を目安に……」

鳴上「……5月、ですか」

風花「どうしたの?」

鳴上「あ、いや、なんでも……」

>GW……帰れないかもしれない。

>一応、風花に話はしてみようか……。
170 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:06:33.82 ID:aqNuBKOfo
天田「とにかく、満月まで準備ですね。GW中だし、作戦に集中できそうで良かったです」

メティス「GW……そうか、学校が休みなんですね」

鳴上「……山岸さん、ちょっといいですか?」

風花「はい、どうしたの?」

鳴上「その、実はGWに八十稲羽に遊びに行くつもりでいたんですよ」

風花「あっ……あー……そうなん、だ」

鳴上「やっぱり厳しいですかね……こんな事になると思ってなかったんで」

風花「うーん、やっぱり戦力的にね……アイギスや先輩は別件で動いてるし……」

鳴上「ですよね……」

風花「ごめんね、本当なら……」

鳴上「ああ、いいんです。仕方ないのはわかってますから。変な事言ってすみません」

>どうやら帰れそうにない……。

>仕方ない、か……。

天田「今日はこれ以上発展しようが無いですね」

風花「そうですね、解散にしましょうか」

>今日は、寝よう……。
171 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:07:13.77 ID:aqNuBKOfo


【4/23 曇り】


>綾時は学校に来ていない……。

>やはり、何かあったのだろうか。

メティス「綾時さん、やっぱりいませんね……」

鳴上「ああ。もしかしたら来てるかと思ったんだけどな……」

メティス「やはり、テレビに映っていたのは綾時さんなのでしょうか」

鳴上「雰囲気は確かに似てたけどな」

メティス「ただ、少しだけ気になるんですよね。あれって、もしかすると……」

鳴上「何だ、気付いた事があるなら言ってくれれば良かったのに」

メティス「多分、気のせいなんですけど。マヨナカテレビには人が入れられるんですよね」

鳴上「……?まぁ、そうだな。人だよ」

メティス「実在の人ですよね」

鳴上「実在してない人は入れようが無いだろうな」

メティス「やっぱり、気のせいです。忘れてください」

鳴上「変な事言うな。まあ、構わないけど」

>ポケットの中で携帯が震えている。

鳴上「悪い、メティス。電話だ」

>屋上にでも出よう。
172 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:07:59.04 ID:aqNuBKOfo
鳴上「……お待たせしました。どうしたんですか?」

美鶴『急に済まないな。なに、GWの事だ』

鳴上「あ、聞いてくれたんですね。でも……」

美鶴『我々がそちらに着手出来ない以上、山岸を除いて戦力は君達三人しかいない。現場を離れるのは、な』

鳴上「ですよね。構いません。……多分、あいつらも分かってくれます」

美鶴『……もう一つ話があるんだ。君に仕事を頼みたい』

鳴上「え?何ですか?」

美鶴『山岸からの報告にあったんだが、八十稲羽でもマヨナカテレビが映ったらしいな?』

鳴上「そうみたいです。こっちとは別の人物が映ったとかで」

美鶴『聞いている。それを放置する訳にはいかないと思っているんだが』

鳴上「はぁ……?」

美鶴『向こうには我々の知らないペルソナ使いがいる。彼らと連携を取れば、よりスムーズに事が進むだろうな』

鳴上「そうですね。調査してくれるように頼んでますから、多分何かしら分かると思います」

美鶴『……ただ、我々が行ったのでは信用を得るまで時間がかかるだろう。適任者を選別して欲しいんだ』

鳴上「心配しなくても、あいつらなら素直に協力してくれますよ」

>受話器の向こうからため息が聞こえた。
173 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:08:26.42 ID:aqNuBKOfo
美鶴『思ったより察しが悪いんだな。向こうのチームと顔見知り、どころかかつて一員だった男が現在こちらにいるはずだが』

鳴上「……え?」

美鶴『だから、遊びに行くのではなく私からの任務で八十稲羽に言って来いと言っているんだ』

鳴上「本当ですか!?」

美鶴『そもそも君は巻き込まれた側だ。このくらいの事はされて当然だろう。一応、名目は付けてやる』

鳴上「ありがとうございます!」

美鶴『……君には期待している。これが私の誠意だと思ってくれ』

鳴上「……俺、何か誤解してたのかもしれません」

美鶴『何がだ?』

鳴上「桐条さんの事です。……優しいんですね」

美鶴『……ッ、受話器越しだと、表情がわからないから……からかってるんじゃないのか?』

鳴上「本心です。本当に、ありがとうございます」

美鶴『そ、そうか。……人から余り丁寧に礼を言われると、妙な気持ちがするものだな』

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.03 女帝 桐条美鶴』を手に入れた!

>美鶴の優しさを感じた……。
174 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:10:46.88 ID:aqNuBKOfo
>美鶴の優しさを感じた……。

鳴上「ははは……」

美鶴『それから、その関連でしばらく寮に新人が入る事になっている』

鳴上「新人ですか?」

美鶴『ああ。といっても君が向こうに行くまでだが。明日……明後日にはそっちに行くはずだ』

鳴上「他の皆は知ってるんですか?」

美鶴『いや、君が最初だ。これから山岸達にも連絡する。……君の良く知る人物だ。楽しみにしておくといい』

鳴上「良く知る人物……」

美鶴『それじゃ、切るぞ。一応作戦だから、あまりおおっぴらにしないようにな』

鳴上「わかりました。それじゃ、また」

>美鶴との通話を切った。

メティス「……」

鳴上「うわっ!なんだ、いたのか」

メティス「すみません、どうしても気になって。内容までは聞いていないから」

鳴上「いや、構わないよ。作戦の話だったし」

メティス「どこか、行くんですか?」

鳴上「そうなりそうだ」

メティス「……そうですか」

>メティスは少し落ち込んでいるようだ。

鳴上「どうかしたのか?」

メティス「いえ、何でも。授業、始まりますよ」

鳴上「ん、ああ。行こう」

>桐条さんの計らいで、無事に八十稲羽に向かえるようになった。

>本当に、ありがたい。
175 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/19(木) 00:11:21.92 ID:aqNuBKOfo
二倍とはいかないけどほんのちょっと増量。
メティスは色々気になるお年ごろ。
では、また明日。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/19(木) 01:30:33.67 ID:Fqan8h2Ro
メティスまじ天使
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 02:33:28.75 ID:We3twpoG0
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 20:52:54.03 ID:ml+yxsJy0

いったいどんな、ハム子とキタローなのだろうか。

番長が世界で、ハム子とキタローが宇宙だったか…

オラ!ワクワクすっぞ!
179 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/20(金) 00:00:32.03 ID:jVP1lPgNo


【4/24 晴れ】


【巌戸台分寮】


風花「あ、お帰りなさい」

鳴上「ただいま……今日、担任の先生に呼び出されましたよ」

風花「えっ、どうしたの?」

鳴上「綾時が無断で欠席してるから、だそうです」

風花「やっぱり……」

鳴上「鳴上君は何か聞いてないかな?って聞かれましたよ。……こっちが知りたいくらいだってのに」

風花「綾時君、他に友達いないのかな……」

鳴上「いや、それなりに皆と仲良くやってるみたいでしたよ」

風花「そうじゃなくて、ほら。どうしても秘密ができちゃうでしょ?そういう仲だとやっぱりちょっと……」

鳴上「そう、ですよね」

風花「私達、どうしても彼を見ると警戒しちゃうし。鳴上君くらいしか、全部言える人っていなかったんじゃないかなって」

鳴上「……もし、綾時が今回の事件の黒幕に作られた存在だとしたら。もしテレビから出したとして助け出す事って出来るんですかね」

風花「結局、普通の人とは違うんだもんね……」

>綾時は今どんな気持ちでいるんだろう……。

>何としても助けてやりたい。
180 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/20(金) 00:01:02.41 ID:jVP1lPgNo
風花「……助けてあげようね、テレビからももちろんだけど、それからの事も」

鳴上「山岸さん、あいつの事どう思ってるんですか?」

風花「へっ?ど、どういう……」

鳴上「ああ、いえ……以前の事件があったから仕方ないかなとも思うんですけど、他の皆はあまり快く思って無いように思ったので」

風花「私は、ううん。皆も本当はそうだと思うんだけど、敵意は無いんだと思う。別れ際にね、綾時君、すごく寂しそうだったの」

鳴上「寂しそうだった……」

風花「この寮だと、特に順平くんとか……仲良くて。やっぱり、別れるのは辛いんだなぁって思って」

>今、何かを言い淀んだような気がしたが……。

風花「私、寂しいとか悲しいとか、誰かがそう思うのって凄く嫌なの。出来る事があるならしてあげたい。だから、ね」

>風花は微笑んでいる。

>風花の心を少し垣間見た気がする……。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.02 女教皇 山岸風花』を手に入れた!

風花「え、っと。私の事はいいから!そう、お知らせがあるんですよ!」

>風花は少し照れているようだ。

鳴上「お知らせですか?」

風花「もう聞いてると思うんですけど、今日から寮に少しの間滞在する予定の方がいるんです」

鳴上「ああ、俺のよく知ってる人だって聞きましたけど。誰なんですか?」

風花「えっと……多分そろそろ……」

>玄関の外で声がする……。
181 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/20(金) 00:01:30.97 ID:jVP1lPgNo
聞き覚えのある声「おーい、この人ここに用があるんだってよー」

風花「あ、来たかも。はーい、ちょっと待ってくださーい」

鳴上「あれ?今の声……」

>風花が玄関を開ける。

順平「おっす風花!元気してた?」

風花「うん、それなりにね。えっと、こちらが……」

順平「そうなんだよ、駅前歩いてたらたまたま俺に声掛けてくれてさ。いやーナイスチョイスよ」

風花「そうだね。丁度良かった。初めまして、今この分寮の管理を任されている山岸風花って言います」

聞き慣れた声「初めまして。僕は……」

>この声は……

鳴上「直斗か?」

>風花の向こう、順平の横に良く知る顔が立っている。

直斗「お久しぶりです先輩。今日からおよそ一週間、この寮で暮らす事になりました。白鐘直斗です。山岸さん、よろしくお願いします」

鳴上「俺の良く知る人物、ってお前の事だったのか」

直斗「ええ。ご存知かどうかわかりませんが、もう八十稲羽を離れて過ごしてるんですよ」

鳴上「陽介から聞いたよ。何か事件を追ってるんだよな?」

直斗「もう片付きましたけどね。あそこに行く前と同じ生活に戻っただけですよ」
182 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/20(金) 00:02:01.86 ID:jVP1lPgNo
順平「お?……鳴上、何でいんの?」

風花「あれ、二人は知り合い?」

鳴上「ちょっとだけ話した事があるんです。順平さん、もしかして」

順平「おうよ、元特別課外活動部のエース!伊織順平たぁ俺のこった!」

鳴上「エースだったんですか?」

順平「……いや、盛ったわ。悪い」

鳴上「あ、いや……こっちこそ……」

順平「ま、今色々あってよ。寮にゃ住めないけど、作戦があったら出来るかぎり参加するからさ!今日は顔見せだけな」

鳴上「これからまたチドリさんと会うんですか?」

順平「なんでそうなんだよ……」

鳴上「あ、いや。そんなイメージしかないんで」

順平「まぁそうなんだけどさ。っつーわけで、送り届けたしあと任せた!風花、連絡先知ってるよな?」

風花「はい、ちゃんと。それじゃまたね、順平君」

順平「鳴上もまたな。中等科の君も、また今度!」

直斗「ちゅ、中等科!?僕は高校生です!」

順平「あ、そーなの!?そりゃ失礼……と、とにかくまたな!そんじゃ!」

>順平は逃げるように去っていった。

直斗「……ええと、先輩と山岸さん。こちらで起こってる事件について教えてもらえませんか?まとめておきたいので」

風花「わかりました。それじゃ少しお話しましょうか」

>……。
183 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/20(金) 00:02:37.48 ID:jVP1lPgNo
直斗「……僕達が挑戦した事件とは随分違うんですね」

鳴上「ああ。マヨナカテレビが映る事以外はほとんど違うみたいだ」

風花「今の所、サンプルが少なすぎて色々推測するしか無いって感じです」

直斗「流石に今の段階で推理しようにも、材料が……ふむ。とにかく、次の満月を待つしかなさそうですね」

鳴上「一週間後には八十稲羽の方も見に行かないといけないしな」

直斗「あちらも少し変わった事になっているようですしね。やれやれ……探偵らしい活躍はまたできそうにないですね」

>ポートアイランドに直斗がやってきた。

>しばらくの間、調査の為に滞在するという。

>まだ一ヶ月程度しか経っていないのに、すごく懐かしく感じた。
184 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/20(金) 00:03:19.58 ID:jVP1lPgNo


【夜】


>コンコン。

直斗『あの、先輩』

鳴上「直斗か。どうした?」

直斗『少しお話いいですか?』

鳴上「ああ。入ってくれ」

>ドアを開けて、直斗が入ってきた。

直斗「……失礼します」

鳴上「久しぶりだな」

直斗「ええ、まだ一ヶ月くらいしか経ってないのに……先輩が元気そうで安心しました」

鳴上「直斗も元気そうだな」

直斗「ええ……」

>何だか気まずい。
185 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/20(金) 00:03:54.43 ID:jVP1lPgNo
鳴上「今、何してるんだ?」

直斗「今ですか?だから、八十稲羽を離れて……お爺ちゃんの下で色々やってますよ」

鳴上「何で八十稲羽を出たんだ?」

直斗「何でって……元々、事件解決まで滞在の予定でしたし。元通りになっただけですよ」

鳴上「皆、寂しがっただろ」

直斗「ええ、凄く別れを惜しんでくれて……でも、いつまでも居心地の良い所にいると甘えちゃいそうでしたし」

鳴上「そっか……」

直斗「それに……」

>直斗が小声で何か言ったが聞き取れなかった。

鳴上「何か言ったか?」

直斗「いえ、なんでも」

鳴上「……?そうか。まぁ、直斗が来てくれて嬉しいよ。やっぱり、頼りになる」

直斗「そ、そうですか?ありがとうございます……」

>コンコン。

>ドアが叩かれた。
186 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/20(金) 00:04:45.48 ID:jVP1lPgNo
鳴上「はい?」

メティス『あの、鳴上さん……』

鳴上「メティスか。何だ?」

メティス『鳴上さん、あの……』

直斗「メティス……この方が例の、最初の事件の?」

鳴上「ああ。生い立ちは凄く複雑なんだが……で、どうかしたのか?用事か?」

>メティスは黙っている。

鳴上「メティス?」

メティス『いえ、何でも無いんです。おやすみなさい』

鳴上「おい、メティス……」

>返事はない。

>立ち去ってしまったようだ。

直斗「どうしたんでしょう、何かあったんじゃ……」

鳴上「あー、俺達だけ旅行行くから羨ましいのかも」

直斗「そんな事言うような方なんですか?」

鳴上「ちょっと子供っぽい所があるというか。不思議なヤツだよ」

直斗「……先輩が言うと違和感ありますね。一番不思議なのは誰だって話ですよ」

鳴上「ん?何がだ?」

直斗「いや、別に。そろそろ部屋に戻ります。また暫くよろしくお願いしますね」

鳴上「ああ。また明日な」

>直斗の合流で、いよいよ八十稲羽行きが楽しみになってきた。

>メティスの様子が気にかかるが……。

鳴上「本人が話すのを待つしか無いか」

>今日は、もう寝よう……。
187 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/20(金) 00:05:32.72 ID:jVP1lPgNo
直斗合流。
では、また明日。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/20(金) 02:13:06.63 ID:+lTUrp+C0

直斗が来たか
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/20(金) 07:20:27.03 ID:1NNmcgwVo
直斗きたか…よしこれで(胸的に)勝つる!
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 10:14:10.91 ID:+hltnTT8o
あれだなミニマム巨乳枠誕生だな
191 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:01:01.45 ID:kcH+ONL0o


【4/25 晴れ】


風花「お帰りなさい。鳴上君、メティス知らない?」

>帰ってきて早々、風花に質問された。

鳴上「メティスですか?授業が終わってすぐに教室出ていったんで、もう帰ってるもんだと……」

風花「ちょっと頼みたい事があったんだけど、連絡しても出てくれないの。もしかしたら鳴上君と一緒なのかと思ったんだけど」

鳴上「何か用事があったとかじゃないんですかね?」

風花「だといいんだけど……もし暇ならちょっと探してみてくれない?心当たりがあればなんだけど」

鳴上「心当たり、か……ああ、一つだけ。ちょっと行ってきます」

風花「もし帰ってきたらすぐ連絡するから。ごめんね?」

>今帰ってきた所だが、学校にとんぼ返りだ。
192 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:01:41.50 ID:kcH+ONL0o
>月光館学園、屋上。

>日が落ちかけて、生徒ももういない。

>そこに、メティスはいた。

鳴上「やっぱりここか」

メティス「あ、鳴上さん……どうしたんですか?」

鳴上「山岸さんからの連絡、何で返さないんだ?」

メティス「……すみません」

鳴上「いや、謝らなくてもいいけど」

メティス「ちょっと、寮に帰りたくなくて」

鳴上「なんだって?またどうして」

メティス「……昨夜、鳴上さんに相談しようとしていた事があります」

鳴上「ああ、様子はおかしかったな。一体どうしたんだ」

メティス「なんだか、寮に居辛いんです」

>メティスはうつむいている。

鳴上「居辛いって……」

メティス「私は、皆さんと違って……一緒に戦った仲間じゃないので」

鳴上「そんな事無いだろ。聞いた話じゃ、3/31の時は一緒に戦ってたって」

メティス「でも、私は姉さんの一部です。人じゃない」

鳴上「……それは」

メティス「鳴上さんにも、同じような部分を感じていました。あなたも、山岸さんや桐条さん、姉さんや天田さんを仲間とは思い切れていない」
193 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:02:13.09 ID:kcH+ONL0o
>……鋭い。

>確かに、未だに仲間というと八十稲羽の皆が先に立ってしまう。

>メティスにも見抜かれていたのか。

メティス「だけど、違いました。白鐘さんが来た時、わかってしまった。あなたにも……仲間がいる」

鳴上「それで、昨日は何も言わずに帰ったのか」

メティス「はい。私には、過去がありません。あるのは姉さんの記憶だけ。仲間もいないし、思い出もない」

鳴上「でも、だからって……」

メティス「昔は気になりませんでした。姉さんから生まれた時、私はただ姉さんを守れればいいって……今は、少し違ってきています」

>メティスは顔を上げて街を眺めた。

メティス「多分、これがあったから」

鳴上「これ?」

メティス「私はここから街を見て、姉さんの気持ちを確かめたかった。だけど、沸き上がってきた感情は姉さんの中にあった物とは少し違った」

鳴上「そうなのか」

メティス「ええ。その時、気付きました。私はもう姉さんの一部じゃない。いつの間にか、私は私として目覚め始めている」

>メティスの目元に何かが光った。

>泣いて……?

メティス「そうなると、私って言う存在の違和感が気になって。過去の無い私、人じゃない私。そんな私が皆さんと一緒に暮らす事が変に思えて」

>メティスの目からは涙が零れ続けている。
194 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:03:11.20 ID:kcH+ONL0o
鳴上「メティス。そういえば前から言おうと思ってたんだけどな」

メティス「……?なんですか?」

鳴上「いや、謝りたかったんだ。メティスと最初に会った時、俺、敵だと思ってたから。ほら、呼び捨てだろ?」

メティス「そんな、別に……」

鳴上「だから、アイギスさん達と同じように敬語で話させてもらいたいんですよ。メティスさんって呼ぶし」

メティス「や、嫌……そんな……」

鳴上「何でだ?」

メティス「だって、何だか……遠く感じて」

鳴上「なぁ、メティス。人間も、生まれてすぐには過去がないだろ」

メティス「そう、とも言えますけど。それが……」

鳴上「これからだって思えないか?今まで、じゃなくて、これから。仲間じゃないっていうなら、仲間になればいい」

メティス「仲間に、なる」

鳴上「……メティスにはバレてたみたいだけど、まだ俺にとって仲間って、前住んでた所の仲間達の事なんだよ。だけど、一緒に戦っていく以上、いつかこっちの皆の事も仲間って言えるようになろうと思ってる」

メティス「これから、そう変わっていく」

鳴上「そういう事だ。その第一歩としてだな、俺に敬語使うの、やめてみないか?自分で言ったろ、距離ある気がするって」

メティス「え、でも……」

鳴上「クラスメイトだし、もっと近くてもいいと思うんだよ。名前もさん付けなくていいからさ」

>メティスは困惑しているようだ。

>しばらく逡巡して、小さく口を開いた。
195 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:04:13.55 ID:kcH+ONL0o
メティス「……ゆぅ」

鳴上「ん?」

メティス「ちがっ、鳴上さ……鳴上、くん?」

鳴上「そうそう、そんな感じ。そうやって、ちょっとずつ近付いていったらいい。誰も逃げないからさ」

メティス「……名前を呼び捨てはワープ並に近寄りすぎだった……自分でもびっくり」

鳴上「何か言ったか?」

メティス「いえ、いや、何でもない」

鳴上「よし。じゃあ帰ろう。皆待ってる」

メティス「はい、じゃなくて、ええと……うん。帰ろう」

鳴上「あ、そういえば……メティス、お前も八十稲羽行くか?」

メティス「え?どうして?」

鳴上「いや、お前も旅行行きたかったんじゃないのか?」

メティス「そうじゃなくて、鳴上君がいない間寂しいなって思っただけ」

鳴上「そうだったのか。じゃあいいんだな?」

メティス「もう大丈夫。……ありがとう」

>メティスと寮に帰った。

>メティスとの距離が縮まった気がする……。

>『No.12 刑死者 メティス』のランクが2になった。
196 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:04:47.84 ID:kcH+ONL0o
>……なんだか街を行く人波が滞っているように思う。

>なかなか前に進めない。

メティス「この時間、人多いの?」

鳴上「いや、人が多いっていうか……なんだろうな、何かあったのかも」

メティス「痛っ……あの、すみま……」

>メティスが誰かにぶつかったようだ。

鳴上「……今の人、何か変じゃ無かったか?」

メティス「私の事、見ても無かった……」

>周囲を見てみると、他にも何人か同じような人がいるようだ。

鳴上「あの人達がふらふらしてるから、人の動きが変なんだな……なんだろう」

メティス「あ、これって……」

聞き覚えのある声「だから!謝れっつってんだろ!」

>誰かが怒鳴っている。
197 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:05:26.62 ID:kcH+ONL0o
鳴上「あれって……」

順平「おい!聞いてんのか!?」

チドリ「順平、いいから……」

メティス「あ、順平さんと……チドリ、さん」

鳴上「順平さん!」

順平「んだよ!……ああ、鳴上か。悪い」

鳴上「どうしたんですか?その人は?」

順平「ああ、こいつがチドリにぶつかってよ。落としたスケブ踏んで歩きやがったから……」

チドリ「私はいいから……スケッチブックもまだ使えるし……」

順平「でもよ……」

チドリ「お願い……」

>少し迷ったようだが、順平さんは男の肩を掴んでいた手を離した。

>男は何事も無かったかのようにふらふらと歩き、また別の誰かにぶつかりながら去っていった。

順平「チドリ、大丈夫か?」

チドリ「だから、最初から別に大丈夫だって言ってるでしょ。そんな事より、順平に何かあったら」

順平「俺の事こそ“そんな事”だって。俺は、お前さえ無事なら……」

チドリ「……今度、同じ事言ったら、叩く」

順平「……悪かったよ」
198 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:06:12.02 ID:kcH+ONL0o
メティス「大丈夫ですか、二人共」

順平「おー、妹ちゃん、ほんとにまた出てきてんのな。久しぶり」

メティス「あ、はい。お久しぶりです」

チドリ「誰、この子」

順平「ほら、アイギスっていたろ。あの子の妹?みたいなもん」

チドリ「そう……」

鳴上「さっきの人、様子変でしたよね」

順平「ああ、確かにな。なぁ、鳴上。ちょっと時間くれよ」

鳴上「え?はい、いいですけど……メティス、一人で大丈夫か?」

メティス「平気。先に帰ってるね」

鳴上「後でな。で、どうしたんですか?」

>順平はチドリを気にしている。

順平「いや、その、よ……」

チドリ「……聞かないでおいてあげる。どうせ、私には聞かせたくない話だと思うから」

順平「悪い、な。ちょっと外すぜ」
199 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:06:41.37 ID:kcH+ONL0o
鳴上「……いいんですか?」

順平「アイツ、最近俺がちょっと危ない事しようとするとすぐに止めるからな。……事件の話、詳しく聞かせてくれ」

鳴上「はい。まず……」

>今までの経緯を説明した。

順平「……ってことは、今あん時をなぞってるって考えりゃいいわけか」

鳴上「推測の域を出ませんが、そうみたいです」

順平「じゃあさっきからこの辺うろついてんのは影人間だな」

鳴上「影人間?」

順平「聞いてねーの?シャドウに精神食われちまうと、何をするにも無気力になって……さっきのアイツみたいになっちまうんだよ」

鳴上「シャドウに……食われる。つまり、テレビの中に?」

順平「いや、多分違う。俺らん時は、シャドウも普通にこの街うろうろしてたんだわ」

鳴上「あ、影時間……って事は、もしかして夜な夜な?」

順平「だろうな……影時間がまた来てた事にゃ気付いてたんだが……クソ」

鳴上「どうすればいいんでしょうか」

順平「正直、街中なんて見て回んのは無理だ。ただ、解決すりゃ影人間どもも元に戻るから」

鳴上「なるほど……」

順平「心配なのは、その辺の誰かじゃねえんだよ。……ペルソナ使い以外は、誰でも影人間になる可能性がある」

鳴上「らしいですね」
200 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:07:14.97 ID:kcH+ONL0o
順平「チドリは……もう普通の人間だ。だから」

鳴上「……」

順平「鳴上、次の作戦はいつだ」

鳴上「次の満月、GWですね」

順平「そっか。そん時俺も呼んでくれ。ちっと鈍ってっけど、それなりにゃやるからよ」

鳴上「わかりました。一緒に戦いましょう」

順平「おう!よろしく頼むわ!」

>順平と硬く握手をした。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.01 魔術師 伊織順平』を手に入れた!

チドリ「……どうせ、駄目って言ってもやるんだから」

順平「なんだよ、聞いてんじゃねーか!」

チドリ「知らない」

順平「ちょ、おーい……悪い、鳴上。んじゃまたな!」

>順平はチドリを追いかけていった。

鳴上「あの二人、本当に仲が良いんだな」

>……帰ろう。
201 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:08:04.46 ID:kcH+ONL0o
直斗「お帰りなさい。遅かったですね」

鳴上「いろいろあってな。今日はどうしてたんだ?」

直斗「ええ、少し街を回ってみました。……随分な数、影人間になってしまっているようですね」

鳴上「……ああ」

直斗「あの感じは覚えがあります。ほら、去年の冬……」

鳴上「確かに、あの頃の八十稲羽に近い物があるな」

直斗「人の言う事を鵜呑みにし、生きることに消極的になっていった人たち……二度と見たくなかったんですがね」

鳴上「仕方ないさ。また解決すればいい」

直斗「そうですね。少し出てきます。こちらの警察の方と話があるので」

鳴上「ああ、気を付けてな」

>直斗を見送った。

天田「……あの人、本物の白鐘直斗さんですよね」

鳴上「天田、いたのか」
202 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:08:39.47 ID:kcH+ONL0o
天田「この前から気になってたんですよ。テレビで見たことあるなって」

鳴上「そうだな、有名みたいだな」

天田「みたいだなって、知らないんですか?」

鳴上「有名だって知ったのは知り合ってからだったからな……」

天田「テレビとかにも出てましたよね!本物なんだ……すごいな……でも……」

鳴上「でも、なんだ?」

天田「いえ、気のせいだと思うんですけど……あの人、鳴上先輩の事、その……好き、なんじゃないかって」

鳴上「……急におかしな事を言うな」

天田「なんとなく、そんな気がしただけです。まあ在り得ませんよね!」

鳴上「いや、別に在り得なくは無いと思うが……」

天田「ええ!?」

鳴上「……?」

天田「あ、あはは、変な事言ってすみません。その、失礼しますっ!」

>天田は慌てて二階へ上がっていった。

>……いろいろと、変だ。

鳴上「俺も、今日はもう休むか……」
203 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/21(土) 00:09:21.93 ID:kcH+ONL0o
チドリに叩かれ隊
では、また明日。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 00:12:32.74 ID:VX0jceLco

順平爆発しろ
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 01:36:06.70 ID:aIQabyWQ0

番長爆発しろ
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 01:39:41.38 ID:5yyl25BZ0
何かなおちゃんの所が偶然目に入らなくて、天田が鳴上のことを好きなのかと…本当にビックリした
207 :名無しNIPPER [sage]:2012/07/21(土) 09:38:36.35 ID:L3ZBLiVAO
完二………
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/21(土) 13:23:44.82 ID:/bdD7domo
アニメ準拠なの?
209 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:02:11.14 ID:wXNhJWt7o


【4/28 晴れ】


>今日から三連休だ……。

>今の所予定は無い。

>……とりあえず、ラウンジに行ってみよう。

天田「あ、鳴上先輩。……おはようございます」

鳴上「天田か、おはよう」

直斗「あ、先輩。おはようございます」

>直斗も起きたようで、ラウンジに降りてきた。

鳴上「ああ、おはよう」

直斗「あ、先輩。それ」

>直斗が首に手を回す。

天田「……!」

直斗「っと。大きなゴミですね。どこでくっつけて来たんです?」

鳴上「気付かなかったな。どっかから降ってでも来たのか?」

直斗「部屋、ちゃんと掃除してたじゃないですか」

鳴上「見えない所は手を抜く主義でな」

直斗「……なんか、先輩って変な所で生活感溢れてますよね」

鳴上「そうか?……ん?」
210 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:02:49.78 ID:wXNhJWt7o
>ふと見ると、天田が顔を真っ赤にしている。

鳴上「どうした、天田。熱でもあるのか?」

天田「え?さ、さぁなんですかね。調子悪いのかな」

直斗「風邪ですか?良くないですね。ちょっと良いですか?」

>直斗が天田の額に手を当てる。

天田「う、わぁ!」

>……大慌てで頭を振って逃げた。

直斗「あ、ははは……そうですよね、急に触られたら嫌ですよね」

天田「い、いや!そうじゃないんですけど!と、とにかく失礼します!」

風花「……どうしたの、天田君」

鳴上「山岸さん。おはようございます」

直斗「なんだか嫌われてしまったみたいですね……何かしたでしょうか」

風花「嫌われたって言うより……照れてたんじゃないですか?」

直斗「照れる?なぜ?」

風花「それは……何とも。でも、三年前の小さかった頃は可愛げもあったんだけど、今の天田君が照れてわたわたしてると……」

鳴上「単に挙動不審というか」

直斗「……何だか覚えがありますね、あの感じ。最初にあった頃の巽君みたいな」

鳴上「……完二か」

>もしかして……
211 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:03:18.73 ID:wXNhJWt7o
>天田の部屋の扉を叩いた。

天田『はい?』

鳴上「あ、俺だけど。少しいいか?」

天田『今開けます』

>ドアを開けた天田は少し落ち込んでいるようだった。

天田「どうかしたんですか?」

鳴上「いや、ちょっとな」

>……辺りに他の人達はいない。

鳴上「天田」

天田「はい」

鳴上「天田は、その……直斗が好きなのか?」

>天田はドアを閉めてしまった!

鳴上「あ、天田!誰にも言ってないから!天田!」

天田『へ、変ですよ鳴上先輩は!だって、そんな、あるわけないでしょう!?』

鳴上「いや、別に変な事じゃない。一目見た時から好きになる事だってある」

天田『それは……そうかもしれないですけど。でも、それにしたって』

鳴上「心は、人それぞれ違う物だ。だから、好きだって気持ちも人によって違うんだろう。お前はそれをおかしいと思うか?」

天田「……おかしくないです」

>ほんの少しドアが開いた。
212 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:04:00.20 ID:wXNhJWt7o
鳴上「……俺は、応援するよ。お前が変だと思ってもいい。受け入れて、まっすぐに気持ちを表すんだ」

天田「でも……」

鳴上「迷うな。自分に素直になれ。俺はそうやって自分を押し殺して苦しんでいる人達をたくさん見てきた」

天田「自分に、素直に……」

鳴上「受け入れた時、初めてお前はお前になるんだ。心配するな。どうなっても、俺はお前の味方だから」

天田「先輩……!」

>天田は目を輝かせてこちらを見ている。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.05 法王 天田乾』を手に入れた!

>天田に信頼されたようだ……。

鳴上「俺の言いたいこと、わかってくれるか?」

天田「はい。僕は、もう逃げません」

鳴上「そうか、よかっ……」
213 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:05:03.78 ID:wXNhJWt7o
天田「例え同性が好きになったとしても、普通じゃないかもしれないけど、僕だけは僕を裏切らない。自分に、正直になります」

鳴上「えっ」

天田「えっ」

鳴上「……ごめん、応援するとは言ったけどちょっと説明してもらっていいか」

天田「いや、こっちこそ説明聞きたいんですけど。えっと、先輩は僕が悩んでるから来てくれた……んですよね?」

鳴上「ああ、それはそうだけど。てっきり、直斗が好きになってしまって悩んでるのかと」

天田「その通りですよ」

鳴上「……会って数日で好きになるなんてあるのかなあ、的な」

天田「いえ……白鐘さんって男なのに時々可愛くて妙にドキドキしちゃうなあ、です」

鳴上「……」

天田「……」

鳴上「直斗な」

天田「はい」

鳴上「女だから」

天田「はい……えぇっ!?」

鳴上「男装はしてるけどちゃんとした女子だぞ」
214 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:05:33.16 ID:wXNhJWt7o
天田「えっ、ってことは……」

鳴上「天田の悩みは……」

天田「……あの、何か」

鳴上「いや、ごめんな……」

天田「いえ、いいんです。それが知れただけでも収穫で……ありがとうございました」

>天田はドアを閉めてしまった。

鳴上「……とんだ勘違いだったな」

>……外に行こうか。

>巌戸台駅前。

>宛もなく出掛けて来たが、今日はチドリもいない。

>とりあえずベンチに座って周りを眺めた。

>自動販売機でジュースでも買おうか……。

鳴上「……あれ」

>さっきまで自分が座っていた所に色黒の男が一人座っている。
215 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:06:02.26 ID:wXNhJWt7o
色黒の男「……」

>目の前に俺が立っているのに、気がついていないかのように、男は手のひらに乗せた銀の玉を弄んでいる。

>仕方ないから、隣のベンチに座った。

鳴上「……」

色黒の男「……」

>金属製なのか、玉の当たるカチャカチャという音が聞こえる。

色黒の男「君は、暇なのか?」

鳴上「……?」

>どうやら話しかけてきているようだ。

色黒の男「暇なのか?」

鳴上「はぁ、まぁ」

色黒の男「私もそうなんだ」

鳴上「そう、ですか」

色黒の男「……君、私は何に見える?」

鳴上「何ってどういう事です?」

色黒の男「職業だよ。何屋さんに見える?」

鳴上「……」

>男は全身真っ黒な服を着ている。

>これは……
216 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:06:31.27 ID:wXNhJWt7o
鳴上「例えば、葬儀屋……とかですか?」

色黒の男「黒から連想するのは葬儀か。半分正解だ」

>男はかすかに笑った。

鳴上「半分ってことは、惜しいんですか」

色黒の男「そうだな。それも仕事になる事もある、という意味でな。私は……神父、だよ」

鳴上「神父?この辺に教会なんてありましたか?」

色黒の男「いや、無い。たまたまさ、今日来たのは。といっても良く来るがね、この辺りには……」

>神父だと言った男は笑いながら玉を弄んでいる。

>……変わった人だ。

色黒の男「君は少し悩んでいるね」

>男は唐突に言った。

鳴上「悩みですか?いえ、特には……」

色黒の男「そうだな、君の悩みと言うよりは……例えば、大きな宿題を抱えているというような感じだろうか」

>ぎくりとした。

>別に具体的に言われたわけではないが、自分が特別な事件を捜査している事がバレたような気がして。

鳴上「そんな風に見えますか?」

色黒の男「いろんな人間を見てきたが、君の目はある種の人間がする目と方向性が同じなんだよ」
217 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:06:58.88 ID:wXNhJWt7o
鳴上「……ある種というと」

色黒の男「とても大きなヤマに挑む者達だ。自分では到底何ともならなそうな相手と、それでも戦わなければならない時」

>男の手のひらでカチャカチャ鳴っていた音が止んだ。

色黒の男「君はそれ程悲壮感に暮れているようでは無さそうだ。だから、負ける気は無いのだろう。気を付けた方がいい。余り気を入れすぎると他に疎かになる部分が出てくるぞ」

鳴上「ご忠告、ありがとうございます」

>なんてことないお説教だったが、妙に説得力があった。

>この男が本当に神父だとしたら、その職業故の物だろうか。

>飲み終えたジュースの缶を潰しながら、ベンチから立ち上がった。

色黒の男「友達、救えるといいな」

鳴上「!?」

>今、何と……。
218 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:07:45.52 ID:wXNhJWt7o
色黒の男「ふふ、言ってみただけだ。さっきの条件にはもう一つあるんだ。それは、誰かを助ける為に戦う時。人はそんな目をするんだよ」

>男の手の中から、また例の音がし始めた。

鳴上「すごいですね、本当に。……また、会えますか?」

>この男が気になる。

>今まで出会ったどの人とも違う感覚があった。

色黒の男「運が良ければね。そうだ、名前を聞いておこう」

鳴上「俺は、鳴上悠です」

>男も立ち上がり、路地裏に向かって歩いて行く。

色黒の男「私は、神条久鷹……今後とも、ヨロシク」

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.16 塔 神条久鷹』を手に入れた!

>不思議な男、神条久鷹と出会った。

>……今日は、もう帰ることにしよう。
219 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/22(日) 00:08:37.40 ID:wXNhJWt7o
ああ勘違い。
では、また明日。
220 :名無しNIPPER [sage]:2012/07/22(日) 00:18:15.19 ID:bL51T0Iq0
221 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:00:32.79 ID:8QdE802Vo


【4/29 晴れ】


>三連休の二日目だ。

>今日も予定は無い。

>とりあえず、ラウンジに行こう。

風花「おはよう。今日はお出かけ?」

鳴上「いえ、別に用事は。どうかしましたか?」

風花「ちょっとお願いしたい事があったんだけど、出かけないなら天田君とかに頼むから」

鳴上「あ、どうせ暇なんでいいですよ。お使いですか?」

風花「うん、まぁね。ちょっと買ってきて欲しい物があるの。お金渡すから」

鳴上「それじゃメモしてください。行ってきますよ」

風花「ありがとう。ちょっと待っててね」

>風花は受付に合ったメモ用紙にサラサラと何かを書いた。

風花「はい、これ。お店も書いといたから、迷わずにいけると思うけど……」

鳴上「わかりました。じゃあレシート全部もらってくるんで、後で精算してください」

風花「ん、それじゃお願いします」

>……これ、何の買い物なんだろうか。

>とにかく、行ってみよう。
222 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:00:59.01 ID:8QdE802Vo
>……商店街の外れにある、なんだか良く分からない店。

>店名を確認したが、ここで間違いないようだ。

鳴上「何を売ってるのかと思ったら、ジャンク屋だったのか」

>どうやら機械のジャンクパーツなどを売っているようだ。

>風花は何をするつもりなのだろう……。

女性店員「いらっしゃいませー……ってあれ?」

鳴上「……あ」

>店に入ると店員が挨拶してくれた。

>が、どうもこの店員、見覚えがある。

女性店員「二度目だね、鳴上君。私の事は聞いた?」

鳴上「ええ、あの後すぐに。岳羽さんですよね」

>以前寮に来ていた女性、元特別課外活動部員の岳羽ゆかりだ。

ゆかり「そ。改めましてよろしくね」

鳴上「ここで働いてるんですか?」

ゆかり「ああ、そういうワケじゃなくて。臨時のバイト?っていうのかな。たまたま手伝ってるだけ。風花の紹介でさ」

鳴上「そうですか……あの、このメモの商品が欲しいんですけど」

ゆかり「お、お使い?偉いねー。ちょっと待ってて!」

>ゆかりは慣れた様子で店内を回ると、メモの通りの品を持って戻ってきた。

ゆかり「はい、これね。風花、また何か作ってんの?」
223 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:01:26.62 ID:8QdE802Vo
鳴上「さぁ、俺には良く……また、ですか?」

ゆかり「あの子、ああ見えて機械とか得意でね。ずっと隠してたみたいだけど、ある時から急に存分に発揮するようになって」

鳴上「へぇ、なんていうか……意外ですね」

ゆかり「でしょ?今日のこれも多分何か作るのに使うんだと思う」

鳴上「岳羽さんは、もちろん天田の昔も知ってるんですよね?」

ゆかり「ん、もちろん。彼も変わったよねぇ。ていうか、見た目が」

鳴上「三年の間に成長期を迎えたらしいですよ」

ゆかり「鳴上君、身長負けてるもんね。そうだ、順平にはもう会った?」

鳴上「あ、はい」

ゆかり「どう思った?」

鳴上「どう……男気があるっていうか、すごく男らしい人だと思いましたけど」

ゆかり「へぇー。何見たか知らないけど、そういう風に評価されたりもするんだ」

鳴上「俺が会ったのは、山岸さんと、天田と、順平さんと……アイギスさんと、桐条さんと、あと岳羽さんと。それからメティスですね」

ゆかり「メティスは部員っていうのとはちょっと違うけどね。そっか、じゃあ後あの人だけか」

鳴上「あの人?」

ゆかり「うん。……多分、他のメンバーの誰よりキャラ濃いと思うよ」

鳴上「き、桐条さんよりもですか?」

ゆかり「美鶴先輩とは方向性が違うっていうか。真田明彦っていうんだけど」

鳴上「知らない名前ですね」

ゆかり「今、何してるんだろ、あの人……山とか登ってそう」
224 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:01:56.58 ID:8QdE802Vo
鳴上「山?登山家なんですか?」

ゆかり「……いや、それは楽しみにしといて。なんだ、じゃあもうほとんど会ってるんだ」

鳴上「それで全員なんですか」

ゆかり「んー、後は犬」

鳴上「多分、それも会いました。神社にいた……」

ゆかり「私達といた時からもう随分おじさん犬だったから、今じゃおじいさん犬だけどね」

>神社で会った白い犬を思い出した。

>妙に懐いてきたのは、知っている人の匂いがしたからかもしれない。

ゆかり「……そっか。会ったんだ」

>ゆかりは何かを懐かしむような表情をした。

>しかし、それは思い出をたどるというには余りに寂しそうで……

鳴上「あの……」

ゆかり「ああ、ごめんごめん。ちょっと昔思い出して。っていうと、すっごい年寄り臭いね……」

鳴上「ははは。あ、そういえば聞いた事なかったんですけど、あの寮って昔岳羽さん達が使ってたんですよね?」

ゆかり「そうだよ。それが?」

鳴上「いや、どうでも良い事なんですけど、俺の部屋って前は誰が使ってたのかなって」

ゆかり「あー。何、順平の部屋だったりしたら嫌ってこと?」

>ゆかりは笑って言った。

>空気を変えられたようだ。

鳴上「そういうわけじゃ。ちょっと興味があるだけで」

ゆかり「あはは。で、どこなワケ?」

鳴上「えっと、二階の一番奥の部屋です」
225 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:02:30.28 ID:8QdE802Vo
>カタン。

>まだ受け取っていなかったパーツが床に落ちた。

鳴上「あの、岳羽さん?」

ゆかり「あ、あはは、ごめんごめん。取り替えた方がいいかな。探してくるね!」

>ゆかりは目に見えて動揺している。

>以前あの部屋を使っていた人物、恐らくは最初に来た時に見つけたヘッドホンの持ち主。

>今までの話を聞く限り、まだ会っていない真田の部屋かと思っていたが……

ゆかり「お待たせ。……鳴上君が今使ってる部屋ね」

鳴上「……はい」

ゆかり「私達のリーダーだった人が使ってた部屋なの」

鳴上「真田さんですか?」

ゆかり「ううん、違う。今はもう、いない人。もう会えない、人」

>……あの部屋を使っていた人はもういないらしい。

>もういない男の話は、以前聞いた覚えがある。

>綾時の話に出てきた、特別なペルソナ使い。

ゆかり「……鳴上君、また作戦があるんでしょ?」

鳴上「はい、そうですけど……」

ゆかり「私も呼んで」

鳴上「え、だけど、忙しいんじゃ……」

ゆかり「何とかするから。大丈夫、心配しないで」

>ゆかりは真剣な表情でこちらを見ている。

鳴上「……わかりました。けど、なぜ急にそうしようと思ったのか教えてもらえませんか」

ゆかり「……心配になったから」

鳴上「誰が、でしょうか」

ゆかり「君が、心配」
226 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:02:56.24 ID:8QdE802Vo
>俺が、心配?

鳴上「それはなぜ?」

ゆかり「気のせいだと思うの。だけど、どうしても重なって。鳴上君が、彼みたいに……いなくなったりしないかって」

鳴上「どんな人だったんですか、その人は」

ゆかり「んー、どんな人、かぁ」

>……ゆかりはしばらく悩んで、呆れたように答えた。

ゆかり「そーね。何かやる気なさそーで、すごいぼーっとしてて、普段無愛想なんだけどバカ話になると急にはっちゃけて……」

>酷い言われようだ。

ゆかり「それで、鳴上君にどこか似てる」

鳴上「え……」

ゆかり「雰囲気だけね。ま、とにかく掴み所がないっていうか、とにかくマイペースっていうか。不思議な人だったよ」

鳴上「へぇ……」

ゆかり「それで、いなくなった。鳴上君とはまだ二回しか会ってないけど、もう御免だから。私も手伝う」

鳴上「わかりました。これからよろしくお願いします」

ゆかり「ん、ヨロシク!風花通して連絡してもらえばいいからさ。そんじゃお使いご苦労!」

>お互いに笑って商品を受け取った。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』を手に入れた!
227 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:03:28.35 ID:8QdE802Vo
天田「お帰りなさい。買い物ですか?」

>ラウンジには天田と直斗がいる。

鳴上「ああ、山岸さんのお使い。山岸さんは?」

天田「多分部屋だと……あの、どうかしましたか?」

>天田は何か不安気にこちらを見ている。

鳴上「どうしたって何がだ?」

直斗「先輩、顔色悪いですよ?体調が優れないとか……」

>……?

鳴上「いや、別に普通だけど……そんなにか?」

天田「土気色っていうか真っ白ですよ。荷物、渡しておきますから休んだらどうです?」

鳴上「これといって不調は無いんだけどな……」

直斗「もうすぐGWですし、今は体を大事にしてください」

鳴上「だけどな……」

直斗「先輩」

天田「先輩」

鳴上「……わかった、そうする。それじゃ、これ。レシートと頼まれたヤツ。山岸さんに渡しておいてくれ」

天田「わかりました。何かいる物とかあれば持っていきますよ」

鳴上「いいよ、今は。じゃあ、部屋に行くから」

>……。
228 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:03:58.39 ID:8QdE802Vo
>ベッドに寝転んだ。

鳴上「確かに、酷い顔色だった」

>何が原因だろう。

>本当に体に不調はない。

鳴上「無い、よな?」

>そういえば、何だかだるい気がする。

鳴上「あれ……何だ、急に……」

>意識が暗転する……。

???「……ぁ……」

>誰だ、あれは……

>良く知った相手の気がする。

>顔が見えない。

>耳鳴りが酷くて、声も聞こえない。

>こっちに来てからじゃない。

>あれは、八十稲羽で……
229 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:04:29.54 ID:8QdE802Vo


【5/2 晴れ】


鳴上「……ん」

>頭痛はすっきりと消え、耳鳴りもしない。

>意識はだんだんとはっきりしてくる。

鳴上「くそ、なんだったんだ……」

直斗「っ、あ、先輩!」

>ベッドの横には直斗がいた。

直斗「すみません、寝ちゃってたみたいで……あの、体は」

鳴上「大丈夫だ、心配かけた。……というか、何でここに?」

直斗「何でって……先輩があの日からずっと眠ってるから、交代で看病してたんです」

鳴上「ずっと?今日って」

直斗「5月2日。明日からGWですよ」

鳴上「何!?まだ準備してないのに……」

直斗「まず体はもう平気なんですか?何なら僕だけで行ってきますから」

鳴上「大丈夫だ。まず何で倒れたのかも良くわかってない」

直斗「そっちの方が問題ですよ。桐条さんが医者を手配してくれたんですけど、どうもそっちでも原因不明らしくて」

鳴上「何だったんだろうな……」

直斗「本当に平気なんですか?」

鳴上「今はもうなんとも無い。平気だ」

直斗「ならいいですけど……何でしたら、また検査を」

鳴上「いや、いい。とにかく準備しないと」
230 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:04:57.78 ID:8QdE802Vo
>明日からGWだ。

>今ひとつ体はすっきりしないが、機を逃すと次の長期休暇は夏まで無い。

鳴上「荷物……はさして無いな。向こうにも置いてあるし。じゃあ残りは……ええと……」

直斗「全く……先輩、他の方々に先輩が目を覚ましたと伝えてきますから。あまり動き回らない方がいいですよ、また何かの拍子に倒れないとも限らないですし」

鳴上「ああ、わかった。よろしくな」

>あれと、これと……。

>明日は八十稲羽に行って、久しぶりにみんなに会える。

>そう思うだけで、寝たままで鈍った体も軽く感じた。

風花「鳴上君起きたって!?大丈夫!?」

鳴上「あ、山岸さん。この通りですよ」

風花「良かった……あの、後で眠ってる間に受けた検査についてお話するので……」

鳴上「準備終わったら聞かせてもらいます。すぐに終わるんで」

風花「それじゃ、ラウンジで待ってますね」

>……荷物はこんなものでいいだろう。

>さて……。

風花「あ、明日の準備は終わった?」

鳴上「はい、それほど荷物は無いんで。えっと、それで」

風花「うん。鳴上君が突然倒れた原因ね」
231 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:05:28.50 ID:8QdE802Vo
鳴上「何か妙な病気だったりしたんですか?」

風花「妙と言えば妙なんだけど……原因は体じゃなくて精神の方らしいの」

鳴上「精神……?」

>思い当たる事が一つある。

>例の、黒いイザナギ……。

風花「何となくわかると思うけど、あの時の暴走ね。それからちょっとずつちょっとずつ、ペルソナ能力が変調していってる可能性がある……んだそうです」

鳴上「ペルソナが、変わる……あるんですか?そんな事」

風花「見たこと無いかな?ペルソナは人の心が成長すれば一緒に成長したりする。その方向性が違うだけなのかも」

>確かにそうだった。

>八十稲羽の仲間達は皆、自分のペルソナを新たな姿に変化させていた。

>しかし、自分はそうじゃないはずだ。

鳴上「それって、良くない方向にって事なんですかね」

風花「全部推測だから、今はまだ何とも。ただ……余り、ペルソナを使わない方がいいかもって」

鳴上「それじゃ、作戦が……」

風花「それは、桐条先輩と追って相談します。とにかく、今はテレビの中に入る事を禁止させてもらいます」

鳴上「でも……」

風花「あなた自身の為でもあるし、一緒に戦うみんなの為でもあるの。……ごめんなさい、わかって」

>確かに、今度また暴走したら仲間を巻き込まない保証はない……。
232 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:05:57.74 ID:8QdE802Vo
鳴上「わかりました。それで、明日からの旅行なんですけど……」

風花「体に異常は無い?」

鳴上「はい、もうすっかり」

風花「……なら、大丈夫です。桐条先輩は私から言っておきます。あんまり良くはないけど、楽しみにしてるのを取り上げちゃっても、ね」

>風花はいたずらっぽく笑った。

鳴上「ありがとうございます。それで、次の満月……6日には帰って来ますから」

風花「そうですね、ペルソナを使えないと言っても、一応は帰って来てください。ゆっくりしてきたいだろうけど」

鳴上「流石にそこまでわがまま言えませんよ。それじゃ、明日出ます。ご心配おかけしました」

風花「はい。大事取ってもう休んだ方がいいかも。多分体調も本調子じゃないと思うし、寝なくてもいいから部屋でゆっくりしたりとか」

鳴上「ああ、そうですね。そうさせてもらいます」

風花「あ、良かったら何かおみやげ買ってきてね。それじゃあ、おやすみなさい」

鳴上「おやすみなさい」

>明日は八十稲羽だ。

>直斗には会えたが、他のみんなにはもう一ヶ月以上会っていない。

>陽介や完二は一度会っている……はずだが、その時は意識を失っていたし。

鳴上「いかん、はしゃぎ過ぎかな……」

>まるで子供だ。

>ちょっと恥ずかしくなって、もう寝てしまう事にした。
233 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:06:27.51 ID:8QdE802Vo


【5/3 曇り】


>巌戸台駅……。

>GW初日は生憎と薄く曇っていた。

>直斗と連れ立って電車に乗る。

直斗「向こうは久しぶりですね」

鳴上「ああ。皆どうしてるかな」

直斗「余り変わってないような気もしますけどね。ああ、先輩たちは三年だから、変わってないでは駄目なんですけど」

鳴上「……皆、いろいろ考えてるらしい。将来の事とか」

直斗「それが普通ですよ。鳴上先輩は何か考えてるんですか?」

鳴上「まだ何とも。実感が無くてな」

直斗「もう五月なんですから、早く決めないと駄目ですよ。あ、何なら探偵なんてどうですか?優秀な相棒もいることですし」

鳴上「俺に探偵は似合わないよ」

直斗「……冗談です。気にしないでください。でも、進路は本当にそろそろ決めた方がいいですよ。学力に関しては先輩の事なんで心配はしてませんが」

鳴上「そうだな……」

>八十稲羽までの道中、直斗と他愛もない事を話して過ごした。
234 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:07:09.64 ID:8QdE802Vo
『次はー、八十稲羽、八十稲羽に止まります。お降りの方は、車掌に……』

>次は八十稲羽だ!

直斗「着きましたね」

鳴上「ああ。さて、降りよう」

>久しぶりの八十稲羽。

>駅も随分懐かしい。

>ホームを出て、辺りを見回す。

>……空気の味が違っているかもしれない、などと、良くわからない感想まで抱いた。

直斗「さて、それじゃ失礼します。僕は少し用事があるので。また後で会いましょう」

鳴上「そうか。後でな」

>よく覚えている車が停まっている。

>多分、あの向こうから走ってくるのだろう。

>ドアが開いて、閉まって。

菜々子「おにいちゃん!」

>菜々子が満面の笑顔でこちらに走ってきた。
235 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/23(月) 00:07:43.33 ID:8QdE802Vo
おいでませ、八十稲羽。
では、また明日。
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/23(月) 01:31:29.50 ID:+w/KlAAl0

237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 10:52:12.79 ID:fWiTPRgyo
直斗かわいそす乙
238 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:03:00.24 ID:BkhZqqyqo
鳴上「菜々子!久しぶりだな」

菜々子「うん!菜々子ね、まってた。ずっと、まってたよ!」

>菜々子は何か言ってほしそうに見つめてくる。

鳴上「……ありがとうな、菜々子。会えて嬉しい」

菜々子「えへへ……そうだ、お父さんも来てるよ!」

鳴上「そうみたいだな」

堂島「よぉ」

鳴上「お久しぶりです」

堂島「違うだろ、挨拶が」

鳴上「あ……ただいま」

堂島「おう。おか……」

菜々子「おかえりなさい!」

>堂島が応える前に菜々子が応えてくれた。

堂島「おいおい、お父さんにも挨拶くらいさせてくれよ」

菜々子「ごめんなさーい」

鳴上「あはは。改めて、ただいま」

堂島「おかえり。悠、お前痩せたか?」

鳴上「ああ、ちょっと体調崩しちゃって」

堂島「おいおい、ちゃんとやれてるのか?お前の事だから、あんまり心配してなかったんだがな」

菜々子「おにいちゃん病気なの?だいじょうぶ?」

鳴上「もう大丈夫だよ。菜々子にも会えたし元気一杯だ」

菜々子「う、うん……」

>菜々子は照れているようだ。
239 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:03:29.88 ID:BkhZqqyqo
堂島「荷物は?それだけか?」

鳴上「はい」

堂島「持って帰っといてやるよ。菜々子もそうだが……待たせてる連中がいるだろ」

鳴上「……それじゃ、お願いします。ちょっと行ってくるんで」

堂島「疲れてるなら早めに帰ってこいよ。久々だからって余り無茶しないように」

鳴上「わかってますって。菜々子、なるべく早く帰るから」

菜々子「うん……待ってる!」

>菜々子と堂島と別れてジュネスに向かった。

>ジュネス、八十稲羽店……。

>相変わらず盛況なようだ。

鳴上「ん?あれは……」

陽介「あーもー、お兄ちゃんこれから友達と会わなきゃなんないの!」

男の子「だってお母さんいない……」

>どうやら陽介と完二が迷子の男の子と一緒にいるようだ。

陽介「だから、店内放送してあるから!大丈夫だって!待ってたら来るから!」

完二「先輩、冷てーな。遅刻していくぐらいいいじゃないスか」

陽介「バカ!今日遅刻なんてしてみろ?いつものノリで俺のオゴリ確定だろが!」

完二「そんな事気にしてたのかよ。器の小せえ男だなオイ」

陽介「小さいのは器じゃなくてお財布なの!バイク買うんだっつったろ?」

男の子「……ごめんなさい、お兄ちゃん。一人で待ってる」

>男の子は迷惑をかけたと思ったのか、泣きそうになっている。
240 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:04:18.12 ID:BkhZqqyqo
完二「だ、大丈夫だ!このお兄ちゃんも俺も一緒に待っててやっからよ!んなツラすんなって!」

陽介「何勝手に……わーかったよ!こうなったら一蓮托生!お母さん見つかるまでずっと二人でついててやるよ!」

鳴上「三人でな」

陽介「うわぁ!?あ、相棒!」

完二「おっ、先輩!お久しぶりっス!」

鳴上「久しぶり、二人共」

陽介「俺らは前に見たけどな、顔だけ。ぶっ倒れてたから知らねーだろうけど」

鳴上「その時は世話になったな。ありがとう」

完二「いや世話っつー世話はしてねえんスけどね。それよりいいんスか?女ども、今頃待ってると思うぜ」

陽介「主賓のお前が遅刻してどーすんだよ。ここはいいから行ってこい」

鳴上「主賓の俺だから一緒に遅刻して行ったらお前達も許してもらえるかもしれないだろ?」

陽介「相棒……」

完二「いやぁ……やっぱ花村先輩とは違うわぁ……漢度っつーか、そういうのがよぉ」

陽介「つーかこいつも別に財布痛まねーから言えるんだっつの。……ま、ありがてえけどよ!サンキュな」

>三人で迷子の男の子の母親を待った。

女性「あの、本当にありがとうございます」

陽介「今度は迷子になんなよー!」

完二「母ちゃんにあんま心配かけんなよ」

鳴上「お母さんも、元気な盛りですから、余り目を離さないように」

女性「え、ええ。ごめんなさいね。お世話になりました。ほら、ちゃんとお兄ちゃん達にごめんなさいして」

男の子「ごめんね、お兄ちゃんたち。お友達のとこ早く行かなくていいの?」

陽介「うわっマッズ!行くか!じゃあな!」

男の子「またね!」

>フードコートへ急ごう。
241 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:04:45.41 ID:BkhZqqyqo
陽介「……おい、あれどう見る?」

完二「……まずいっスね」

鳴上「……怒ってるわけでは無さそうだけどな」

陽介「いや、あれはもう文句も言い尽くしてやることなくなったからとりあえずぼーっとしてる図だろ」

完二「特に里中先輩がヤバイっスね。あの力の抜け方は間違いなく溜めてる時のそれだぜ」

陽介「よ、よし。まず誰が行く?」

完二「花村先輩が一回不満解消したらいいんじゃないスか」

陽介「おー、そんで俺がボロボロになってあいつらがすっきりした頃にお前らが……ってバカ!」

鳴上「ノリツッコミは今じゃないぞ」

陽介「あーもー……わぁったよ。三人で行くぞ三人で。そんなら怒りも3分の1だろ」

完二「それがベストかね。よっしゃ、腹括ったぜ!」

鳴上「行こう!」

>三人で正面からぶつかる事に決めた。

>フードコートに入っていく。
242 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:05:15.59 ID:BkhZqqyqo
千枝「……なんか眠くなってきちゃった」

りせ「あ、もしかして昨日眠れなかったとか?」

千枝「べっ、別にそんなわけじゃ……そりゃ、楽しみにはしてたけどさ」

雪子「私はあんまり寝れなかった……久しぶりに会えるから楽しみで」

りせ「あー!ずるーい!私だって楽しみだったもん!」

直斗「まぁまぁ、その内来ますから、落ち着いて待ちましょうよ」

りせ「直斗はいいよねー昨日まで先輩と一つ屋根の下だもんねー」

直斗「ひっ、一つ屋根の下って……同じ寮っていうだけで、別に何も……」

りせ「本当かなぁ?」

>久しぶりに会う皆は、何も変わっていないように思える。

>なんだかそれが凄く嬉しかった。

千枝「はー。花村達も来ないし。何やってんだか……?」

>千枝がこちらに気付いたようだ。

千枝「なっ!鳴上君!」

>全員が一斉にこちらを見た。
243 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:05:52.01 ID:BkhZqqyqo
陽介「いやー悪い悪い、待たせちまったな!」

千枝「はーなーむーらー……あんたが遅刻するだけならともかく鳴上君まで巻き込むってどういう事?」

雪子「千枝、ちょっと落ち着いて。ほら、鳴上君も来たし」

陽介「そ、そうそう!久々だしさ、言いたい事もあるだろ?俺なんかほっといてさ!」

>陽介は怯えている……。

千枝「……そうだね。よっしゃ!そんじゃ鳴上君も来てくれたし、ぱーっとやろっか!」

りせ「いぇーい!先輩久しぶりー!」

雪子「ほんと、久しぶり、鳴上君。元気してた?」

千枝「あ、もちろん花村のオゴリだかんね」

陽介「嘘ぉ!?」

>仲間達と近況を報告しあった……。

>みんな、勉強や女将修行で忙しい中時間を割いてくれているらしい。

>特にりせは、無理やり予定を調整してまでオフにしたようだ……。

>嬉しい半面、少し申し訳なくなった。

鳴上「悪いな、皆。忙しいのに」

千枝「もー、またそういう事言う。好きでやってるんだから遠慮はいらんぞよ?」

雪子「うん。私達が鳴上君に会いたかったの。だから、ね?」

りせ「そうだよ。ずーっと楽しみだったんだから、仕事なんかで潰してらんないって!」

直斗「僕はついでですから。……楽しみにはしてましたけど」

鳴上「皆……」
244 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:06:24.11 ID:BkhZqqyqo
陽介「みんな……じゃねーっての。大事な話もあんだろ?」

完二「そうっスよ。クマの事もあるし、久々に……」

陽介「捜査本部復活だ」

>陽介がメモを取り出した。

陽介「例のテレビが映ってから、この辺に流れてる噂はできるかぎりまとめといた」

千枝「ほっとんど大した事ない話だったけどね。ずーっと前からある噂とか、そんなの」

雪子「ただ、マヨナカテレビ自体は……ほら、去年凄く大々的に広まったでしょ?だから、見てた人も多かったみたい」

りせ「私は何も出来てない……ごめんなさーい」

直斗「僕達はここにいませんでしたから。ええと、少し見せてもらってもいいですか?」

>直斗が陽介からメモ帳を受け取って読み始めた。

>横から覗きこんでみる。

>……字が汚い。

陽介「マヨナカテレビ見た!ってヤツら、かなりの人数に話聞いたんだけどさ。全員一致で気になる答えが帰ってきてさ」

鳴上「気になる答え?」

完二「ウチの制服着た女が映ってたんスよ。映像も結構綺麗だったんスけど、俺らにゃ見覚え無くて」

千枝「腕章まで見えた!って人もいたけど、それでも誰かわかんないんだよねぇ」

雪子「三年の腕章してたって言うから、知り合いじゃないはず無いと思うんだけど……ほら、こんな街だし」

>確かに、この町で同級生ならどこかで会った事があるはずだ。
245 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:07:02.37 ID:BkhZqqyqo
直斗「確かに三年なんですか?」

雪子「間違い無いと思う。いろんな人が言ってたし」

千枝「知らない人いないはずなんだけどなー」

完二「あんなすげえ髪してたら下級生でもわかるっつの」

陽介「なー。美人っぽいんだけどなー……」

千枝「今そういう話してないから」

鳴上「すごい髪って何だ?」

陽介「ちょうどお前みたいな髪だよ。いや、ありゃもっとなんつーか、銀って感じだったな」

直斗「ロングヘアでポニーテール……ですか」

陽介「んだけど、だーれも知らないんだよなぁ」

>誰も知らない八十稲羽の生徒……。

りせ「それってさ、転校生とかじゃないの?」

陽介「え、そんな話聞いたことないけど?」

りせ「だから、何かの理由で学校に行く途中で……とか……無理、あるか」

>りせは落ち込んでいる。

鳴上「いや、可能性は全部挙げてみるべきだ。全く見当もつかないわけだし」

りせ「う、うん。ごめんね、あんまり役立たなくて」
246 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:07:35.57 ID:BkhZqqyqo
直斗「いえ、久慈川さんが来てくれたのは大きいです。……テレビの中を本式に調べられますから」

陽介「そうじゃん!クマがいなくてどうにもなんなかったけど、これでテレビの中探りにいけるってことか!」

千枝「あ、そっか。よっし!そんじゃ早速……」

りせ「私、頑張っちゃうよ!」

>……皆は盛り上がっている。

鳴上「あの、実は……」

直斗「先輩は昨日まで体調を崩してまして。行くなら僕らだけで行きましょう」

>テレビに入れないという話をしようとしたら、直斗に遮られた。

千枝「うそ、大丈夫なの!?」

雪子「無理に来なくても……休んでたら良かったのに」

りせ「せんぱーい、大丈夫?どっか悪いの?」

鳴上「いや、その……」

直斗「内緒にしておいた方がいいと思いますよ。心配されると、色々大変だと思います」

>直斗に耳打ちされた。

>確かに、無駄に心配を増やしても仕方がない。

鳴上「……ああ、今は大丈夫なんだけど、まだ無理は出来ないんだ。だから」

陽介「しゃーねーか。そんじゃ俺らだけで行ってこようぜ!」
247 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:08:08.58 ID:BkhZqqyqo
鳴上「なっ、大丈夫なのか?」

陽介「心配すんなって。事件は解決したいし、お前が無理だっつーなら仕方ないだろ?」

鳴上「や、やっぱり俺も……」

千枝「こーら、無理言わないの。今日はさ、菜々子ちゃんと遊んであげなよ」

りせ「うんうん。無理はしないし、私達だってちゃんと出来るって!」

完二「ま、この間も何とかなったワケだしな」

直斗「だ、そうです。先輩は今日は留守番しておいてください」

>皆はやる気だ……。

鳴上「でも……」

雪子「心配しないで、とは言わないよ。けど……信じて」

>……。

鳴上「わかった。皆を信じて、今日は家で待ってるよ。頼むから無理しないでくれ」

陽介「そんじゃ早速行きますか!」

千枝「鳴上君は帰って休む、ね」

雪子「旅疲れもあると思うし。今日はゆっくりしてて」

完二「まーかせてくださいよ。ちゃっちゃと終わらせてやるからよ!」

りせ「クマ君も助けなきゃだし。先輩、明日は遊んでね!」

直斗「それじゃ、行ってきます。必ず何か掴んで来ますから」

鳴上「ああ……任せたぞ」

>皆と別れて家に帰る事になった。

>……心配ではあるが、今自分にできる事はない。

>皆を信じて、今は待とう。
248 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:08:38.38 ID:BkhZqqyqo
菜々子「おかえりなさい!」

鳴上「ただいま。今日は一日暇になったから、遊ぼうか」

菜々子「いいの?やったー!えっとね、えっと……お話しよ?」

鳴上「ああ、いいよ。何の話をしようかな……」

>菜々子といろいろな話をした。

>……この音は。

菜々子「あ、雨だね」

鳴上「そうみたいだな」

菜々子「お天気のお姉さん言ってたよ。明日の朝まで雨だって」

>今夜は雨のようだ。

>マヨナカテレビが映るかもしれない。

>……見てみることにしよう。
249 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:09:08.55 ID:BkhZqqyqo
>夜。

>雨は降り続いている。

>……マヨナカテレビは映るだろうか。

『ザザ……ザーッ』

>テレビが映った!

>……音楽が流れ始めた。

『男の中の男!出てこいクマァ!』

>この声は……

鳴上「クマか!?」

>画面には、妙なコスプレをしたクマが映っている。

クマ『最初の対戦はー……ここクマ!』

鳴上「対戦……?」

>!

鳴上「陽介……里中!なんで……?」

>陽介と千枝がお互い向きあって立っている。

>クマが言った事が事実なら、今から二人は……闘う?

ナレーション『実力伯仲!どうなるこの試合!』

陽介『ジライヤァ!』

千枝『守って!トモエ!』

鳴上「二人共、やめろ!」
250 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:09:34.47 ID:BkhZqqyqo
>当然、テレビの中に声は届かない。

>おそらくこの映像はテレビの内部で本当に起こっている事だろう。

>なら、中に入った仲間達は今頃こうやってお互いに戦っているのだろう。

鳴上「どうなってる、くそっ!」

>とにかく、テレビの中へ入る必要がある。

>大急ぎで一階に降りた。

堂島「こんな時間にどうした、大慌てで」

鳴上「あ……いや、何でも無いんですけど」

堂島「もう出かけるなんて言うなよ。時間が時間だ、許すわけにいかん」

>堂島は何かを察したのか、苦い顔をしている。

>……素直に言うしか無さそうだ。

鳴上「テレビの中に世界があるって話、信じてますか?」

堂島「まぁ、あんな事があったんだ。信じるさ」

鳴上「友達が、その中にまた行ってます。助けられるのは、俺だけです」

堂島「……」

>堂島は深くため息をついた。

鳴上「ほめられた事じゃないのはわかってます。だけど、俺達もこの街が好きで、人が好きで、守りたくてしてる事なんです」

堂島「……わかってる。で、どうするんだ」

鳴上「とりあえず、ジュネスの家電置き場に行ってそこからテレビに」

堂島「バカ、こんな時間に開いてるわけないだろ。とりあえず落ち着け」

鳴上「あ……」
251 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:10:07.76 ID:BkhZqqyqo
堂島「焦っちまうとできる事も出来なくなる。菜々子の時の俺を見てただろ?」

鳴上「……」

堂島「座ってろ」

>どうすればいいのだろう。

>このままでは……!

>堂島は立ち上がると、電話をかけ始めた。

堂島「あー、夜分遅くすみません。稲羽署の堂島です。そちらのお店に不審物なんかありませんでしたか?」

>……?

堂島「いえ、いたずらだと思うんですけど、脅迫文みたいなもんが届きましてね。一応探してみようかと」

>どこに電話しているのだろうか。

堂島「ええ、まぁ……とりあえず下見だけ、という形になりますが。……はい、はい。よろしいですか?はい。それじゃ、今から伺いますので。よろしくお願いします」

>受話器を置いた。

堂島「おい、行くぞ」

鳴上「どこへ……?」

堂島「ジュネス。今許可は取った。……バレたらえらい事だがな」

>電話はジュネスへのものだったようだ。

鳴上「その……ありがとうございます」

堂島「いい。ただし余り時間はかけられないぞ。不審に思われる」

鳴上「わかりました。……行きましょう」
252 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:10:37.09 ID:BkhZqqyqo
>ジュネス八十稲羽店、家電売り場。

>以前使っていたテレビは今も変わらずにあった。

堂島「俺は一応店内見回ってくる。……しかし、警察だって知ってるからって、部外者一人を野放しにするかね」

>堂島は少し呆れているようだ。

堂島「絶対助け出せよ。それと、お前も無事に戻って来い」

鳴上「わかってます。それじゃ……」

>テレビに手を触れる瞬間、躊躇する。

>ペルソナの暴走……ペルソナを使うと、どうなるかわからない。

>それでも……

鳴上「行ってきます」

>今は、行く。

>幾重にも重なった白黒のゲートをくぐり……

>いや、違う。

>色が、反転している?

鳴上「何だ、いつもと違う……!?」

>……。
253 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/24(火) 00:11:04.11 ID:BkhZqqyqo
P-1グランプリ開催中。発売日に届くかどうかが不安です。
では、また明日。
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 02:07:35.87 ID:7ZWFyjv80

堂島△
255 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:00:40.38 ID:lGcpeiT7o
クマ「また新たなチャレンジャーが現れたクマー!」

>周囲は大きくざわめいている。

鳴上「クマ!お前一体……」

クマ「今のクマはクマ総統クマー。さ、さっさと戦う準備するクマ」

鳴上「バカ言ってないでやめさせろ!」

クマ「P-1グランプリを中止しろって事?そりゃ無理クマ」

>P-1グランプリ……?

鳴上「なんだ、それは」

クマ「よーするにぃ、ガチンコバトルで誰が一番強いかを決めるっちゅー大会クマ。センセイももうエントリー済みだから、黙ってても向こうから襲ってくると思うクマ」

鳴上「そんな勝手に……」

クマ「そいじゃ頑張ってー。クマは高みの見物クマー」

>クマが消えた。

鳴上「クマの様子がおかしい……何がどうなってるんだ?」

りせ『キャー!先輩頑張ってー!』

鳴上「りせ?りせまで参加してるのか?」

りせ『あらあら?これは手強そうな挑戦者が現れたぞー!』

>気がつくと、シャドウの山ができていた。

鳴上「なっ……?」

>が、その山の全てが“倒された”シャドウで、その頂点に座っている男が挑戦者のようだ。

りせ『私としてはー、先輩に頑張って欲しい所だけど……立場的に贔屓は駄目だよね!よーし、それじゃ実況は私、久慈川りせでお送りしま〜す!』

男「……お前が、次の相手か」

>見知らぬ男はシャドウの残骸を拳で吹き飛ばした。

男「なるほど、なかなかやりそうだ。だが……俺は強いぞ?」

>……誰かは知らないが、言う通り強いだろう。

>しかし、こうなってしまった以上負けるわけにはいかない。
256 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:01:10.01 ID:lGcpeiT7o
鳴上「どこの誰だか知らないが、俺は先に進まなくちゃならない。どいてくれ」

男「お互い引けないわけか。ならやる事は一つだな」

>男が拳を上げる。

>あの構えは見たことがある。

鳴上「ボクシング……?」

男「構えろよ。行くぞ」

>男が突っ込んできた!

>……速い!

男「受けたか。やはりやる……テンポ上げていくぞ」

>男はこちらの武器に怯みもせずに攻め立てる。

>刃引きしてあるとはいえ、見た目からはわからないはずなのだが……。

鳴上「やられっぱなしで……いられるか!」

>反撃に転じようと刀を振るも避けられる。

>身のこなしが尖すぎる。

>翻ったマントの中は上半身裸で、大小様々な傷が刻まれていた。

男「いい攻撃だ。だが……この間合で大振りはリスクが高いぞ」

>余裕からか、アドバイスまでされてしまった。

鳴上「くそ!」

>一旦距離を取る。

男「何だ?逃げるのか?」

鳴上「やりやすい距離に離れただけだ」

男「確かに、リーチではそっちが上だな。……なら、無理にでもこっちに来てもらう事にしよう」

>男がマントの中から拳銃を取り出す。
257 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:01:38.15 ID:lGcpeiT7o
鳴上「言ってる事とやってる事が違うじゃないか」

男「勘違いするな。これはお前を狙う為に出したんじゃない」

>男は拳銃を自身の頭に向けた。

鳴上「……?」

>あの行動は見覚えがある。

>あれは、天田や風花がペルソナを召喚した時の……

男「カエサル!」

鳴上「ペルソナ……!?」

>男のペルソナに吸い寄せられる……!

鳴上「う、わぁっ!」

男「この瞬間を待っていた!これで……」

>不意に発動した引力に抵抗も出来ず、前のめりに近付く事になった俺を迎撃すべく男が渾身の一撃を用意する。

>これは、まずい。

鳴上「待った!いや、待ってください!もしかして真田さんですか!?」

男「何?」

>寸前で、引力と拳が止まった。
258 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:02:09.32 ID:lGcpeiT7o
鳴上「あの、俺……今年から月光館学園に通ってる鳴上悠って言います。特別課外活動部の」

男「……確か、美鶴がそんな事を言っていたな。そうか、お前がそうなのか」

鳴上「真田、明彦さんですよね?まだ会ってないメンバーの」

真田「そうだ。何だ、関係者なら先に言えば良い物を。思わず殴り倒してしまうところだった」

鳴上「すみません。いや、それはそっちも同じなんじゃ……」

真田「少し楽しみすぎた。悪かったな。さて……」

りせ『ちょっとー、何普通に喋っちゃってるんですか!番組成立しないじゃないですかぁ!』

真田「だそうだが、どうする?」

鳴上「真田さん、もしかして今桐条さん達も来てますか?」

真田「ああ。どういうわけかはぐれてしまったがな」

鳴上「そうですか……良ければ目的を教えてくれませんか」

真田「聞いてどうするんだ?」

鳴上「俺がやります」

真田「お前が?どうして」

鳴上「どうも、勝った方しか先へは進めない。そういう事なんですよね?」

真田「そうみたいだな」

鳴上「今、この中で友達同士が戦わされています。俺はそれを止めに来ました」

真田「……」

鳴上「俺がやりたいんです。約束もあるし」
259 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:02:54.95 ID:lGcpeiT7o
真田「俺達は、ある物を探しに来た」

鳴上「物?」

真田「そうだ。お前ももうアイギスには会っただろう」

鳴上「ええ……」

真田「あれの兄弟機……いや、姉妹機と言った方がいいか。名前は、ラビリス」

鳴上「ラビリス……もしかしてそれって、銀髪でポニーテールだったりしません?」

真田「その通りだ。もともと稼働停止していた物が何故か動き出してな。俺たちは回収し、保護しなければならない」

鳴上「俺に、任せてもらえませんか」

真田「……勝負にはこだわりたい」

鳴上「真田さん!」

真田「一撃だ。お前の最大を撃ってこい。それで判断する。俺は反撃しないから、一撃で倒せればお前の勝ちだ」

鳴上「でも、それじゃ真田さんが」

真田「無抵抗の相手を倒せないようなら、どの道負ける。やるか?やらないのか?」

>真田は本気のようだ。

>……最大の一撃には、イザナギの力を使う事になるだろう。

>恐らく真田は今の俺の状態について知らない。

>だが……。
260 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:03:24.18 ID:lGcpeiT7o
鳴上「行きます……!」

>刀をしっかりと握る。

>上段に構え真田を見る。

真田「来い」

りせ『なんだかよくわからないけど、これで決着がつくようだー!こういう少年漫画的展開、私は嫌いでは無いです!』

>一度振り上げて、降ろす。

>その一挙動に全霊を込める。

>刀にイザナギの雷の力を乗せて、相手に叩きつける。

鳴上「これで!」

>振り下ろした刀を、今度は横薙ぎに払う。

鳴上「終わりだ!」

>全身全霊の十文字斬り。

>これで倒せなければ……俺に手は無い。

>手応えはあった!

>真田は……
261 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:04:04.60 ID:lGcpeiT7o
真田「……おい」

鳴上「駄目か……」

真田「お前、今二回斬っただろ。一撃の約束だったのに」

鳴上「あ……」

真田「だが……申し分無い攻撃だった。行け。お前の勝ちだ」

鳴上「あ、ありがとうございます!」

りせ『えーと……勝者!鳴上悠〜!って事でいいのかなこれは?とにかく、やったー!せんぱーい!』

鳴上「あの、大丈夫ですか?本当に加減せずに撃ったんで……」

真田「いいからさっさと行け。後輩にぶっ倒れる姿は見せたくない」

>真田はそう言って笑った。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.17 星 真田明彦』を手に入れた!

>真田のお陰で先に進む事ができた。

>今はまだペルソナに何の影響も出ていない。
262 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:04:30.68 ID:lGcpeiT7o
>これなら、なんとかなるかもしれない。

>奥へ向かって走っていると、また開けた場所に出た。

りせ『おーっとぉ!鳴上選手ここで出会ってしまったか!突然やって来た優勝大本命!最強のペルソナ使いの登場だー!』

>アナウンスに驚いて足を止める。

>最強のペルソナ使い……

>あれが、そうなのだろうか。

>正面に一人の女性が仰向けに寝転がっている。

女「あら。これはお恥ずかしい所を……」

>起き上がった女性は、見覚えのある服装をしていた。

鳴上「もしかして、エリザベス……?」

女「私をご存知なのですか?」

>あの青い服は、マーガレットの着ていた物に似ている。

>以前少しだけ聞いた事がある。

>あの部屋を出て、ある目的の為に旅をしているマーガレットの妹。

鳴上「多分、あなたのお姉さんには世話になった」

エリザベス「なるほど。道理で覚えのある匂いがするわけです」

>エリザベスは何の冗談か鼻をすんすんと鳴らした。
263 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:05:06.26 ID:lGcpeiT7o
りせ『ちょっとー、だから戦ってってば!そういう番組なのにぃ』

鳴上「エリザベス、俺は急いでる。悪いが、道を譲ってくれないか」

エリザベス「それは吝かではないのですが……私にも少し用事がありまして」

>エリザベスが持っていた本を開く。

エリザベス「そう簡単に道を譲るわけにはいかないのです。そういうわけですから」

>その中から一枚のカードを抜き出した。

>あの本はマーガレットも持っていた、ペルソナ全書。

>そして召喚されるのは……

エリザベス「タナトス」

>黒い体に白い仮面。

>いくつもの棺を背負ったペルソナが現れた。

エリザベス「では、始めましょうか」

>エリザベスの雰囲気は戦闘をする者のそれではない。

>にも関わらず、額に嫌な汗が滲んだ。

>どうやら、手を残して勝てる相手では無いらしい。

鳴上「……イザナギ!」

>ペルソナを召喚する。

>が、動けない。

>打ち込む隙が見当たらない。
264 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:05:41.71 ID:lGcpeiT7o
鳴上「……くっ」

>じりじりと近付く。

>これは愚かな行為だ。

>何の策も無く、ただ間合いに入ろうというそれだけの。

エリザベス「あらあら、いけません」

>タナトスが吠えた。

鳴上「ぐぁっ……何だ!?」

>急激に体が重くなる。

エリザベス「何に怯えてらっしゃるのかはわかりませんが、そのように恐る恐るでは私は勿論他の誰かに勝利しようなどとてもとても……」

鳴上「……あなたからのプレッシャーが凄いんですよ」

エリザベス「いいえ、違います。あなたが怯えているのは、自分の中の影。少し、教えてさしあげましょうか」

>エリザベスはゆっくりと近付いてくる。

>体が動かない!

鳴上「何を……!」

エリザベス「これから、あなたを攻撃します。命が危ないかもしれません。全力を出して避けてください」

>エリザベスの手にエネルギーが集中していくのが見える。

鳴上「避けろったって……動け、動け!」

>体が重い。

>このままではまずい事はわかるが、対応出来ない。
265 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:06:33.64 ID:lGcpeiT7o
エリザベス「では、参ります」

>自分の体も動かないし、連動するようにイザナギも動かない。

>これは……もらってしまう。

イザナギ「ルル……グル……」

>イザナギの顔、鎧の奥から声がする。

>この声は、あの時の。

鳴上「まずい……!」

>イザナギが手元を離れようとしている。

>エレボスの時と同じ感覚。

>自分が自分でなくなるような、自分の中から違う誰かが出てくるような。

>イザナギが、黒く染まる。

エリザベス「それが、あなたの恐怖の正体」

>頭を過ぎったのは、足立の姿。

>八十稲羽に来る前に見た夢。

>あれは、足立では無かったか。

エリザベス「自らの影を恐れていては、ペルソナは扱えない。そして、ペルソナが扱えなくては、あなたの目的も果たせないでしょう」
266 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:07:06.26 ID:lGcpeiT7o
>目的……

>皆を、守りたい。

>皆を、助けたい。

エリザベス「さて……そろそろ宴も終わりの刻限です。最後に一つ、特大の花火を上げて見せましょう」

>エリザベスが手を上げる。

エリザベス「本日のグランドフィナーレ、『メギドラオン』でございます」

>破壊エネルギーの奔流が辺りを包む。

鳴上「俺は……負けない!」

>負けるわけには行かない。

>……。

エリザベス「……お見事です」

>光に包まれていた視界が戻っていく。

>凄まじいダメージのメギドラオンを何とか食いしばった。

>そして、同時に……

エリザベス「やーらーれーたー」

>銀色に輝くイザナギが、エリザベスに一撃加えていた。

りせ『あ、あれっ?終わった?なーんか釈然としないってゆーか、エリザベス選手、まだまだ余力がありそうに見えますが……』

エリザベス「とんでもございません。私、指一本動かす体力もありません」

>言いながら、寝転がって指をくねくねさせていた。
267 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:07:39.76 ID:lGcpeiT7o
エリザベス「ですから、私の負けです。先に進むのは鳴上様という事になります」

鳴上「だけど、もう体力が……」

>エリザベスは微笑んだ。

>気がつくと、肩の辺りに小さな妖精がとまっている。

鳴上「ピクシー?」

>ピクシーから暖かな光が放たれ、体力が全快した!

エリザベス「メディアラハン、でございます。それではご武運を」

鳴上「……ありがとう。お陰で全力で戦える」

エリザベス「またいつか、お会いしましょう」

鳴上「ああ。それじゃ」

>エリザベスをおいて更に奥へ向かった。

>さっきの一撃以降、体の中に澱のように溜まっていた違和感が全て吹き飛んだ。

>今の自分は全開だ。

鳴上「ここは……」

>放送室のようだ。

りせ「先輩!」
268 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:09:13.23 ID:lGcpeiT7o
鳴上「りせ。なんであんな実況を……」

りせ「私じゃなくって!私のニセモノっていうか……」

鳴上「ニセモノ?」

女性の声「なんや、あんたも暴れてたんか?」

>知らない女性の声だ。

鳴上「誰だ?」

銀髪の女「ウチは八十神高校生徒会長、ラビリスや!校内で暴れとるあんたらを取り締まるんが仕事の」

鳴上「お前がラビリスか」

ラビリス「なんや、何か用か?」

りせ「先輩、あの子……」

鳴上「ああ。ワケありでな……ラビリス。外へ出よう」

ラビリス「外へ……?」

鳴上「ここは現実じゃない。多分、お前の作った世界だ」

ラビリス「な、何言うてるんや。ここは現実で、ウチはここの生徒会長やろ?」

鳴上「違う。ここはテレビの中に作られた虚構の世界で、お前の都合の良い用に出来上がった心の世界だ。現実は別だ」

ラビリス「嘘や!だって、ウチは……ウチは……!」

鳴上「認めてくれ。ラビリス次第なんだ。今、この中で俺の友達が戦ってる。戦わされている。俺はそれを助けに来たんだ」

ラビリス「そ、そんな……みんな困ってるん?」
269 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:10:07.30 ID:lGcpeiT7o
クマ総統「やーれやれだクマー。全く、番組全部ぶち壊し!やーねーもう!」

りせ「あ!アイツだよ!あの変なクマ君が……」

鳴上「元凶か。ってことは」

クマ総統「せっかくラビリスが望むように作ってあげたのに。邪魔しないでくれる?」

>クマの姿が変わっていく。

>あれは、ラビリスの影だ。

シャドウラビリス「ねぇ?ラビリス?」

ラビリス「う、ウチが望んだ……?」

シャドウラビリス「そう。なりたかったんでしょ?皆に頼りにされる生徒会長に。……人間に」

ラビリス「だって……」

シャドウラビリス「なれるワケないけどね。だからそんなヤツの言う事聞かなくていいの。この世界でずっといましょうよ」

ラビリス「でも、皆困ってるって……」

シャドウラビリス「いいじゃない。放っておけば。結局皆とは違うのよ。心配するだけ無駄」

ラビリス「ウチは皆と違うって……あ、あんたに何がわかるんや!」

シャドウラビリス「あなたの思ってる事は全部。だって、私はあなただから」

ラビリス「そ、そんな……違う、そんな事……ウチは皆に迷惑かけてまで……そんな風に考えた事なんて……」

シャドウラビリス「楽しかったらいいじゃない。難しい事考えず、自分のことだけ追いかけて行きましょうよ」

ラビリス「もう黙って!あんたなんか……あんたなんか……」

りせ「駄目!」
270 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:11:06.72 ID:lGcpeiT7o
鳴上「いや……」

>これは、ラビリス自身の問題だ。

>メティスもそうだったし、アイギスもそうだったらしい。

>人の心を持った機械には、人には到底理解できない深い悩みが付き纏う。

>それと向き合うのはとても辛くて、きっと一人では抱えきれないのだろう。

>だから、ここは……

ラビリス「あんたなんかウチやない!」

りせ「言っちゃった……」

鳴上「いいんだ。ラビリスが一人で受け止められないなら、俺が手伝ってやる。りせ、サポート頼めるか」

りせ「先輩……うん、わかった!全力でサポートします!」

>ラビリスの影に力が集まっていく。

シャドウラビリス「そうよ!今この瞬間から!私はあんたの影じゃない!私は、私になった!」

>ラビリスの影の背後、集まった力が形になる。

>巨大な牛型のシャドウが生まれた。

りせ「すごいパワー……先輩、本当に大丈夫なの?」

鳴上「ああ。やれるさ」
271 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:12:42.07 ID:lGcpeiT7o
陽介「だな。ちょちょいっと片づけちまおうぜ」

りせ「あ、あれっ?花村先輩」

>いつの間にか陽介がやってきている。

陽介「心配しなくても里中も天城も怪我ねーよ。一応俺が勝ったって事にして先進んだだけ」

アイギス「あれが、姉さんの影……」

鳴上「アイギスさん?」

アイギス「お久しぶりです、鳴上さん」

美鶴「……確か、君はテレビに入る事を禁じておいたはずだがな」

>背後から冷たい声が聞こえる。

鳴上「きっ!桐条さん。これは、その」

美鶴「やってしまった物は仕方ない。白鐘や、巽君と言ったか。彼も無事だ。ラビリスを連れて帰るぞ」

鳴上「はい、申し訳ありません。……皆、手伝ってくれ」

陽介「おうよ!」

アイギス「勿論です」

美鶴「元よりそのつもりだ。行こう!」

>仲間達は皆無事だったようだ。

>これで、何の気兼ねなく戦う事ができる。

鳴上「イザナギ!」

陽介「スサノオ!」

アイギス「アテナ!」

美鶴「アルテミシア!」

りせ「やっちゃえ!みんなー!」

>……。
272 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:13:11.61 ID:lGcpeiT7o
ラビリス「う、んん……」

アイギス「目が覚めましたか?」

ラビリス「……あんた、何者や。ウチと同じ……なんか?」

アイギス「姉さんの後継機のアイギスといいます。それより……」

>ラビリスの影は大人しくなったが、未だ消えていない。

ラビリス「うん。わかってるよ。……あんたも、ウチなんよな」

>ラビリスは自分の影に近付いた。

ラビリス「悩んで悩んで、苦しい事は全部あんたに押し付けて。辛かったな。ごめんな。これからは……」

>自分の影を抱き寄せる。

>自分の影と向き合い、受け入れるという事。

ラビリス「また一緒やで」

>自分と向き合う強い心が力に変わる……。

>ラビリスは、困難と戦う為の心の鎧……

>ペルソナ“アリアドネ”を手に入れた!

ラビリス「これが、ウチのペルソナ……」

美鶴「君は、兵器だ」

ラビリス「あんたは、確か……」

美鶴「だが、心がある。ペルソナは心の力、シャドウは心の影だ。君も、私達と何ら変わらない。一人の人格があるという事だ」

アイギス「姉さん。私も、最初は凄く苦しかった。悩んで、悩んで、だけど、解決出来ずに。私が自分と向き合えたのは、私だけの力じゃない」

ラビリス「うん。皆がウチの影と戦ってくれたから、ウチは自分と向き合えた」

アイギス「人と触れ合う事で、少しずつ変わって行って。いつか、答えも見つけられる。それは、人間も私達も同じ……みたいですよ」

ラビリス「……みんな、ありがとう。それから、ごめんなさい」

陽介「いいって。気にすんなよ。そっちの二人はともかく、俺らみーんな似たような事やってんだからさ」

りせ「そうそう。迷惑かけてかけられてって、それも関わり方の一つだよね」

ラビリス「……何や、疲れたわ。アイギス、良かったら、外の世界へ連れてってくれんか?」

アイギス「わかりました。では、帰りましょう。……私達の現実に」

>ラビリスは自分自身と向き合い、前へ進む決意を固めたようだ。
273 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:13:52.68 ID:lGcpeiT7o
>……帰ろう。

堂島「……うわっ!」

陽介「あれ、堂島さん?」

堂島「おい、悠。聞いてないぞ」

鳴上「何がですか?」

堂島「お前の友達連中はともかく、そっちの四人は何だ。俺は知らんぞ」

鳴上「えーと、いろいろありまして。あの三人は俺が向こうで世話になってる人達で、あとの一人は……その関係者です」

堂島「ったく。あー、とりあえずそうだな。こんな人数車にゃ乗れん」

美鶴「お心遣いありがとうございます。ですが、我々はこれから向かう先がありますので……」

真田「送っていくのは、そっちの連中だけで十分です」

堂島「そうか。気を付けてな。それじゃ、他のは乗れ。送ってくから」

完二「い、いいっスいいっス。俺、歩いて帰れるんで!」

千枝「私はお世話になろうかな……流石に、ちょっと疲れちゃった」

天城「私は、少し遠いんですけど……お願いできますか?」
274 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:14:20.92 ID:lGcpeiT7o
りせ「じゃあ私は完二と一緒に帰ろうかな。夜道は物騒だけど、コイツといれば大丈夫でしょ」

直斗「僕は迎えを呼びますので……」

陽介「ふぅー助かったぜ……もうくったくただ」

堂島「何言ってんだ、ジュネスの息子はちゃんと親に来てもらってるからな」

陽介「げぇ!?マジで!?……ぜってー大目玉だよ……」

堂島「悠。一応話は聞かせてもらうからな」

鳴上「……はい」

>とりあえず無事に帰って来る事ができた。

>こちらの事件は一段落だろうか。

>また、集まってみる必要がありそうだが……

>今はとにかく……

>疲れた……。
275 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/25(水) 00:14:57.78 ID:lGcpeiT7o
何とか一件落着。
では、また明日。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 02:40:09.71 ID:XwmR9lVx0

ベスさんのメギドラオンキター
277 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:00:45.64 ID:BJXiMq8yo


【5/4 晴れ】


>ジュネス、フードコート。

>陽介が切羽詰まった様子で電話してきたので急いで来たのだが……。

クマ「うぅぅ……しどいクマ……」

美鶴「話には聞いていたが……どうやって入っているんだ?明らかに中身より着ぐるみが小さいだろう」

真田「あまり引っ張ってやるな。取れるぞ」

アイギス「解体してみたらどうでしょう?何かわかるかもしれません」

ラビリス「もー、あんまりクマ君イジメんといて。この子、あん中で私の為に戦ってくれてたんやから」

鳴上「どうなってるんだ、これは……」

>なぜかシャドウワーカーの一同がクマをイジリ倒している。

陽介「おう、相棒。なぁ、あの人らってお前んとこのアレだよなぁ」

鳴上「ああ、そうだな」

陽介「どこで知ったのかわかんねーけど、俺らが集まるんだろって一番に来てよ。何か用なのかよ」

鳴上「さぁ……何も聞いてないぞ」

陽介「とりあえずクマが生贄になってっけど、お前助けてやってくれよ。多分もう皆も来るからさ」

鳴上「わかった」

>背後からそっと近付く。

>クマに気付かれた。
278 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:01:45.00 ID:BJXiMq8yo
クマ「あー!センセイ!助けてほしークマ!」

鳴上「楽しそうじゃないか」

美鶴「ん?来たのか、鳴上。ここに君の仲間達が集まると聞いて寄らせてもらったよ」

真田「お前、美鶴にテレビに入るの禁止されてたらしいな。よく破ったもんだ」

鳴上「直接言われたわけじゃなかったんで……もし面と向かって言われてたら、もっと躊躇したと思います」

美鶴「……どういう意味だ?」

>背筋に冷たい物が流れた。

鳴上「い、いえ、別に。ところで、その……」

>俺が来たと気付いた途端、クマの背後に隠れた人がいる。

>今回の中心人物、ラビリスだ。

クマ「ラビちゃん?どしたクマ?」

ラビリス「い、いや……何でも無いんよ?ただ、ちょっと恥ずかしいというか」

クマ「なぬ!ラビちゃんもセンセイにメロメロクマ!?」

ラビリス「そういうんちゃうって。ただ、その、恥ずかしい所を見られたっていうか……」

クマ「ななななんですとぉー!クマほったらかしてそんな事してたクマぁ!?センセイ!流石にそれはしどいクマよぉ!」

鳴上「落ち着け。それで、どうしてここに?」

アイギス「姉さんが皆さんに言いたい事があると。それに、今回の事件と前回までの事件、つながりがあるのかどうか検討したくて」

美鶴「後は、我々はもう帰るから挨拶だな。君の仲間達には世話になった」
279 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:02:30.34 ID:BJXiMq8yo
千枝「あー!クマきち!あんたいつ戻ってきてたの!?」

クマ「お?チエちゃん!もしかして、忘れてたクマ?」

千枝「い、いやーそんな事ないけどね!ね?」

雪子「私達、すごく疲れちゃってて……ごめんね?」

クマ「およよ……クマ皆に見捨てられてたクマ……ぐすん」

陽介「揃ったぜー。えーと、そちらの皆さんも良かったらどうぞー」

美鶴「ああ。鳴上、隣良いか?」

鳴上「あ、どう……」

りせ「先輩の隣は私ー!」

>りせが体をねじ込んで来た。

鳴上「……すみません」

美鶴「いいさ。楽しい仲間だな」

>美鶴は笑っている……。

陽介「さてと!そんじゃ全員揃った所で……」

美鶴「まず、ラビリスから話があるそうだ。ラビリス」

>美鶴に促されてラビリスが頷く。

>アイギスが心配そうに見ている……。
280 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:02:59.78 ID:BJXiMq8yo
ラビリス「あ、あのな……皆、ごめんなさい!そんで、ありがとう!あの、ウチ……」

完二「あー、そういう話っスか。だったら別に……なぁ?」

千枝「まぁねー。私ら疲れはしたけど、別に怪我もしなかったしね」

雪子「うん。謝ってもらうような事は無かったよね」

ラビリス「うん、皆やったらそう言ってくれるような気はしとった。けど、なんていうか……ケジメ、やな。私の為に、皆が危険な目にあった。だから、ごめんな」

美鶴「それに関しては我々方からも謝っておく。皆、それぞれの生活がある中で事件の調査に時間を割いてくれたな。すまなかった。ありがとう」

真田「俺個人としては鳴上に謝っておかなきゃな。お前の事は聞いちゃいたが、詳しい状況までは知らなかったんでな。妙な挑発をしてすまなかった」

鳴上「いえ、俺は別に……」

美鶴「個人的に、というのであれば、私からは巽、君に謝っておこう。凍傷になったりしてないか?」

完二「は、はいっ!大丈夫でありますっ!」

>完二の様子がおかしい……。

陽介「あいつ、昨日相当やられたらしいぜ。途中でアイギスさんが止めてくれなかったら……ってベソかいてた」

鳴上「そ、そうなのか……」

アイギス「白鐘さんも、お怪我はありませんでしたか?あの時は良く確かめもせず……」

直斗「平気ですよ。最初は驚きましたけど」

アイギス「すみません。ただ、素晴らしい動きでした。やはり皆さん実戦経験が豊富なだけは……」

陽介「あのー、それはいいんすけどぉ。結局、用事ってそれだけなんすか?」

美鶴「ああ、そうだった。勿論謝罪と、それから私達はもうここを発つからその挨拶。それと、一番重要な事がある」

直斗「ポートアイランドでの事件と、八十稲羽での事件。その共通項と相違点の整理ですね」
281 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:03:26.80 ID:BJXiMq8yo
美鶴「ああ。ポートアイランドでの事件は我々の方が精通しているだろうし、こちらでの話は君たちに聞いた方がいいだろうと思ってな」

真田「鳴上なら両方ある程度は把握しているだろうから、お前は一番良く聞いておけよ」

鳴上「勿論わかってます。それで、まず共通点は」

直斗「共通点は、マヨナカテレビが再び映った事、これに尽きますね」

美鶴「そうだな。ポートアイランドでも同様にマヨナカテレビが放送され、事件が起こっている。今抱えている事件で二件目だ」

直斗「相違点は……」

鳴上「今回の事件は過去の再現じゃない。ただ、本当に過去の再現が行われているのかまだわかってないから何とも」

直斗「それから、ポートアイランドでのマヨナカテレビは現実に影響を及ぼすっていう点もありましたね」

美鶴「こっちでは特に変わった事は起きてないのか?」

完二「至っていつも通りでありました!」

美鶴「そうか……巽、あまり緊張しなくてもいい。別に普段からあんな態度なわけじゃないから」

完二「そ、そっスか……?すんません、俺敬語とかわかんないんで……加減が……」

美鶴「いいさ。堅苦しいのはナシだ。だとすると、こちらでの事件はポートアイランドの一連の事件とは無関係なのか?」

直斗「そうとも取れます。ですが、そもそも連続した事件なのかどうかが曖昧ですから、それも何とも」

>材料が少なすぎて、話しあおうにもすぐに手が詰まってしまう。

>何か、核心をつけるような話題は無いものか……。

千枝「ラビリス……さん?はどうなのかな。もし前の時みたいに誰かに落とされたのなら、犯人見てるかも」

ラビリス「呼び捨てでええよ。ウチはほら、あの中じゃ同級生やったし。んー、犯人、なぁ」

>ラビリスは頭を捻っている。

ラビリス「ウチの話に限って言うなら、ウチ自身が逃げ込んだ先がテレビの中やったから……犯人らしい犯人といやウチって事になるんかなぁ」

鳴上「テレビの中、普通に入れたのか?」

ラビリス「何か入れたよ?あ、そういう意味じゃウチが入れるようになった理由があって、その理由たどったら黒幕も見えてくるんちゃうかな」
282 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:04:09.57 ID:BJXiMq8yo
直斗「……何にせよ、向こうとは事情が違いますね」

アイギス「ええ。私は入れられた自覚すらありませんでしたから、姉さんとは違います」

美鶴「となると……別件扱い、とすべきかな。こちらに向こうの事件を解く鍵は無いと」

直斗「現状ではそうなりますね。残念ですが」

美鶴「そうだな。……さて、鳴上」

鳴上「はい」

美鶴「わかっているとは思うが、満月の日には必ず寮にいてくれ。どうやら昨日何かを掴んだらしいが……未だ、君は一人で運用するには危険な人材だ」

鳴上「わかってます。心配しないでください」

美鶴「ならいい。それじゃ、我々は帰るよ。……ラビリス、どうした?」

>ラビリスは机をぎゅっと掴んでいる。

アイギス「姉さん、別に誰も引っ張っていこうとはしてないから……何か、言いたい事があるんでしょ?」

ラビリス「あの、あのな。美鶴さん……ウチ、もうしばらくこっちにおってもええかな?」

美鶴「何?いや、しかし君はまだラボでの調整も……」

ラビリス「一日だけでもええ!えっと、鳴上さんも後で帰るんやろ?そん時一緒に帰るんでもええから」

美鶴「しかしだな……」

アイギス「美鶴さん、私からもお願いします」

美鶴「アイギスまで……」

アイギス「多分、姉さんはまだやり残した事があるんだと思います。だから、その……」
283 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:04:40.37 ID:BJXiMq8yo
美鶴「……わかった、好きにしなさい。私に連絡はできるな?」

ラビリス「へ?えっと……どうやったかな」

美鶴「ああ、いい。アイギス。君が保護者だ。ラビリスを見ててくれ」

アイギス「え、でも」

美鶴「君とラビリス、それから鳴上の三人で帰ってきなさい。それでいいだろう?」

ラビリス「ありがとうな……アイギスもええんか?」

アイギス「私は姉さんが良ければ。いいですか?」

ラビリス「むしろこっちからお願いしたいわ」

美鶴「決まりだな。鳴上」

鳴上「あ、はい」

美鶴「二人をしっかり連れて帰ってきてくれ。アイギスはそう見えて世間知らずで子供っぽい所がある。目を離すとどうなっているかわからんぞ」

真田「お前が言うな。さて、それじゃ俺達は帰るとするか」

美鶴「そうだな。今回の件では君達に本当に世話になった。また何かあったら協力して欲しいんだが、構わないだろうか?」

陽介「いつでも言ってくださいよ。俺らでよけりゃですけど」

千枝「ずーっと勉強ばっかで肩凝ってたからちょうど良かったかも、なんちて」

雪子「いつでも……って訳にはいかないけど、できるかぎり協力します。ううん、させてください」

完二「俺ぁいつでも暇だし、その、戦うくらいしか役に立てそうな事無いんで……また何かあったら一番槍は任せてくださいよ」

りせ「完二と違って私は暇じゃないんですけどー?でも、先輩の為でもあるし……多少の無理ならさせてもらっちゃいますよ!」

直斗「むしろ僕の方からそちらに伺う事もあると思います。その時はよろしく」

美鶴「ありがとう。頼もしい仲間達じゃないか、鳴上。それじゃ、また寮で会おう」

真田「じゃあな、お前ら。ああ、それから巽って言ったか。今度、試しにやってみないか。お前もなかなか楽しそうだ」

完二「な、なんスか!やるってなんスか!」

真田「何って、スパーリングだよ。時間がある時にでも来い。待ってるからな」

陽介「お前、まだ引きずってんの?」

完二「う、うるせえな……」

>アイギスとラビリスを残して、二人は帰って行った。

>さて……。

>……。
284 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:05:17.10 ID:BJXiMq8yo
鳴上「どうしてこうなる」

千枝「え?何が?」

雪子「おかしい事は無い……よね?」

りせ「うん、特に見当たらないけど」

直斗「いや、おかしいですよ」

アイギス「鳴上さん、暑そうですね」

ラビリス「なんで囲まれてるん?」

>あの二人が帰った途端、女性陣に取り囲まれてしまった。

>陽介と完二は買い出しにいかされ、帰ってくるまではどうやらこの状態らしい。

鳴上「……流石に、暑い」

千枝「ご、ごめんね?体温高いからな、私」

雪子「私はそうでも無いと思うんだけど」

直斗「いや、いくらなんでもそれだけ近ければ暑いでしょう!ちょっと離れたら済むじゃないですか」

りせ「直斗は駄目だよー?向こうで二人だったんだから」

直斗「別に二人じゃありませんでした!」

アイギス「……なるほどなー」

ラビリス「これがあれなん?青春なん?鳴上さんはそういう男なん?」
285 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:05:44.75 ID:BJXiMq8yo
鳴上「あー、ラビリス。別にさん付けしなくていいよ」

ラビリス「へ?」

鳴上「同級生だろ?」

ラビリス「……えへへ。ほな、悠って呼ぶわ!悠ー、ごめんなー昨日」

鳴上「もういいから……なんで近付く」

ラビリス「いや、暑そうやなって思って。ウチほら、機械やから。体温無いで?」

りせ「ちょ、近い!大体機械って……」

ラビリス「む、疑っとるな!これでどうや!」

>ラビリスは突然服を脱ぎ始めた!

千枝「ちょ、ちょっとラビリス何やってんの!」

雪子「流石にそれは許容できないよ!?」

りせ「うわわ!わ……?」

ラビリス「見てみぃこれ。機械やろ?」

>どうやら自分の関節を見せたかったようだ。

>確かに機械なのだから、本来服など着ていなくてもいいのだろうが……。

直斗「僕は知ってましたけどね……かと言って、こんな場所で服を脱ぐのはどうかと」

ラビリス「ちなみにアイギスもそうやでー」

アイギス「ちょ、姉さ……やめてくださいってば!もう!」

>……。
286 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:06:11.44 ID:BJXiMq8yo
陽介「うーい、買い出し行ってきたぜー」

完二「オラ、好きなもん取りやがれ」

陽介「おい、相棒どうしたんだよ。なんか溶けてんぞ」

鳴上「いろいろとアツかった」

陽介「あ!?俺がいない間になんかあったな!?そうなんだろ!おい!教えろよな!」

千枝「でもさー、GWって言ってももう一日終わっちゃったしさー。あと今日一日と明日だけでしょ?」

鳴上「ああ。悪いが明後日には帰っとかないとまずいんだ。だから今日明日だけだな」

りせ「3日ってみじかーい。先輩、近くでお仕事あったら会いに行ってもいい?」

鳴上「そりゃ構わないけど」

直斗「それより!今日明日の予定決めるんじゃなかったんですか!?」

雪子「そうだよ、鳴上君だって忙しいんだから」

ラビリス「遊ぶんやったらウチらも混ぜてもらってもええかな?」

鳴上「いいんじゃないか?」

完二「つか、ラビリス……先輩?はなんで残ったんスか?何かやることあるみたいな話っしたけど」
287 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:06:39.91 ID:BJXiMq8yo
ラビリス「ああ、それな。なんていうか……色々、見てみたくなったんや。もっといろんな事知りたいなって思って」

りせ「え、それって鳴上先輩の事もっと知りたいって事?」

ラビリス「そうやな」

りせ「だ、駄目!それは駄目!」

ラビリス「悠だけやなくて、皆の事もや。ウチみたいな知らん相手の為に、命が危ないかもしれんとこに行けるって凄い事やと思うから」

千枝「別に難しい事考えて無いんだけどねぇ」

雪子「だったら一緒に遊ぼうよ。少しの間だけだけど、ラビリスももう友達でしょ?」

陽介「賛成賛成!いやー綺麗所増えて嬉しいぜ俺は!」

直斗「だったら皆でやる事考えましょうか。誰か意見は……」

りせ「ちょーっと待ったー!」

>りせは高々と手を挙げて言った。

りせ「先輩は一人しかいません。けど先輩と遊びたい人はここに……八人?います」

陽介「八人?……そういやクマは?」

完二「あそこでペラックマになってるぜ」

千枝「何かいじり倒された挙句皆に忘れられてたのがショックだったみたい……」

陽介「……悪ぃ事したな」

クマ「そー思うんだったらクマも仲間に入れてよねぇ!」

雪子「あ、復活した」

りせ「えーと?八人と一匹、かな?」
288 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:07:08.15 ID:BJXiMq8yo
アイギス「それなら私と姉さんは一機あるいは一体と」

鳴上「アイギスさん」

>ラビリスは泣きそうな顔をしている。

アイギス「ね、姉さん。冗談ですから。ただの冗談です、私達も一人、二人って言ってもらいましょう」

ラビリス「ウチらは人間やないもんな……あはは、一機、一体。せやな、ウチらにはそれがピッタリや」

アイギス「姉さん……だから冗談ですってば」

陽介「こうして見てると本当機械にゃ見えねーなー」

完二「つか、俺らと何が違うんスかね」

千枝「えーと……材質?」

鳴上「じゃあ、義手や義足をつけている人は人じゃないのか?」

陽介「大本は人だろ?だったら人じゃね?」

鳴上「人の大本っていうのが体なのかどうか、って事だな」

完二「……よくわかんねえけど、要するに難しく考える必要無いって事っスかね」

雪子「そうだね、私達と何にも変わらないのかも」

>皆はすんなりと理解を示してくれたようだ。

>良かった……これなら大丈夫だろう。

りせ「えっと、なんだっけ。あ、そうそう。先輩は一人しかいないわけだし、一緒に遊ぶなら密度上げるべきだと思うの」

雪子「どういうこと?」

りせ「だからー、今日一日を分割するでしょ?」

直斗「あ、先輩と交代で遊ぶってことですか?」

りせ「そう!ただ人数多いから、一対一ってわけにはいかないと思うけどねー。ということで、ペアで四組にわけてぇ、それで交代で!」
289 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:07:35.38 ID:BJXiMq8yo
陽介「おもしれーなそれ。んで明日は皆で遊べばいーじゃんな」

雪子「私、千枝と一緒がいいな」

千枝「ん?そ、そう?」

りせ「私は直斗に色々聞きたい事もあるのよねぇ」

直斗「僕ですか?……まぁ、構いませんが」

アイギス「姉さんは私が引き受けますので」

ラビリス「こらアイギス!お姉ちゃんを荷物みたいに言わんといて!」

陽介「……じゃあまあ」

完二「俺らは俺らでっつーことで……」

クマ「割りきれてないよ!これ割り切れてないよ!」

陽介「あー、じゃあクマはこっちで引き取ろう」

完二「しゃーないっスね。おいクマ公、こっちこい」

クマ「二人は優しいクマね……」

りせ「よーし、それじゃそれぞれ話し合って時間決めてくださーい!」

鳴上「……あれ?」

>どうやら俺に決定権は無いらしい。

>話し合いで順番が決まるのを待とう。

>……。
290 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 00:10:10.69 ID:BJXiMq8yo
P4U発売前夜ですが予約した店舗から発送メールが来て無くてハゲそうです。
地方民はただでさえ一日二日遅れるというのに・・・!
皆さんは予約しましたか?してない?さっさとゲーム屋に走ろう。
そして対戦をしよう。

では、また明日。
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/26(木) 00:26:10.50 ID:0TESKPaCo
P4U風花さん美人になりすぎて鼻血吹いた
とりあえず今日のファミ通は皆買うよな!乙!
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/26(木) 00:41:46.63 ID:vrx49OpBo
アマゾン[ピーーー]
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 01:16:49.21 ID:GE2i0D000

p4u欲しいけどps3とか持ってない・・・
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/26(木) 11:19:26.46 ID:NGzuh/Nwo
馴染みの店で買って来ました!
まだ開けてないですがwwww
295 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:12:49.96 ID:BJXiMq8yo
りせ「というわけで一番手!」

直斗「よ、よろしくお願いします」

鳴上「お前達からか。で、何する?」

>最初はりせと直斗がやってきた。

>後のメンバーは時間が来ると交代するらしい。

りせ「んー、ちょっと歩きません?適当にぶらっと」

直斗「いいですね、久しぶりですし……それとも、先輩は何か希望ありますか?」

鳴上「いや、特に無いな。それじゃ歩きながら話すか」

>三人で並んで歩く……。

>町の人にはすっかり顔なじみとは言え、この二人と一緒だと周囲の視線も集まる。

りせ「……先輩!私言った通り復帰したよ。やっぱり一回離れちゃうと、元に戻すのも大変だけどね」

鳴上「ああ。そうらしいな。頑張ってるんだろ?」

りせ「うん!多分私達が一番生活変わったんじゃないかなぁ、ね?直斗くん」

直斗「まぁ、そうですよね。久慈川さんも僕も元に戻っただけとはいえ、皆さんと一緒に居た時間は……すごく、濃かったので」

りせ「実際、一年も無かったんだよねぇ。そう考えるとびっくり」

鳴上「特にお前達は途中からだったからな。そういえば短いんだな」

直斗「すっかり馴染んでしまいましたけどね。最初は全然そんなつもりじゃなかったのに」

りせ「もー先輩ナシじゃ生きてけないってカンジ!」

>りせが腕を取って体を擦り寄せてくる。
296 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:13:51.20 ID:BJXiMq8yo
直斗「く、久慈川さん!アイドル活動再開したのに、スキャンダルはまずいんじゃないですか!?」

りせ「あ、そうだった……復帰は全然後悔してないけど、そういうとこはちょっと面倒かも」

直斗「全く……でも、僕も同じような気持ちですよ。自分が選んだ道とは言え、先輩たちがいないと物足りないというか」

りせ「先輩“たち”……ねぇ」

直斗「何ですか……?」

>この二人を見ていると何かを思い出しそうになる……。

>何だったか……。

りせ「そこよ、私が聞きたかったの。せっかく先輩も来てくれたしぃ、先輩の前ではっきりさせとこーじゃないの」

直斗「だから、何が……」

りせ「ズバリ!直斗くんって鳴上先輩の事好きなの?」

直斗「ええ!?」

>直斗は慌てふためいている。

>あ、帽子が落ちた。

りせ「先輩だってはっきりしてくれないと困りますよねー?」

鳴上「ん?まあな」

直斗「せ、先輩!?」

鳴上「冗談だ。ただ……気にならないでもない」

直斗「そんな……だ、だったら久慈川さんはどうなんですか!?」

りせ「えー?私言えなーい。だってぇ、アイドルだしぃ?スキャンダル困るしぃ?」
297 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:14:18.25 ID:BJXiMq8yo
直斗「く、ぐ……せ、先輩のことは、尊敬しています。僕なんかと違って完全に民間の身でありながら、事件の真相に……」

りせ「ソンケーしてるんだって、先輩!じゃあ私が先輩の彼女になっても何も問題無いワケね!」

鳴上「……?何の話だ?」

りせ「やだもう先輩ったら鈍いんだから!」

直斗「彼女って……スキャンダルは困るんじゃなかったんですか?」

りせ「それとはまた別。このまま先輩が学校卒業して、それから就職したら、私アイドル引退して先輩の所に永久就職したいなっ」

直斗「永久就職ぅ!?そ、それは早計じゃないですか?」

鳴上「……ああ、思い出した」

>あれだ、子供の頃に見たアニメだ。

>猫がネズミを追いかけるけど、ネズミにいいようにやられてしまう……。

鳴上「この場合、猫はどっちだ?」

>……。
298 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:14:44.92 ID:BJXiMq8yo
りせ「あ、やば。時間来ちゃった」

直斗「ええ?ああ……本当ですね」

りせ「ちょっとー、直斗くんがはっきりしないからほとんど先輩と話せなかったじゃない」

直斗「僕のせいですか!?」

りせ「うそうそ、冗談。先輩、それじゃ次の人たちの所行ってあげてくださいね!」

鳴上「ああ。何だかんだで楽しかったよ。久しぶりだし、やっぱりただ一緒にいるだけでもいいもんだな」

>二人は顔を見合わせると、同時にため息を吐いた。

りせ「……そういう事言っちゃうんだもんなぁ」

直斗「……向こうにも、女子生徒はたくさんいるでしょうね」

りせ「苦労しそうだね」

直斗「お互いに、ですね」

鳴上「……よくわからないけど、じゃあ俺は行くから。また明日な」

りせ「はーい、また明日!」

直斗「それじゃ、失礼します」

りせ「ねぇねぇ、何か食べにいかない?」

直斗「いいですね、それじゃ久しぶりに……」

>りせと直斗と別れて、次のペアに会いに行こう。
299 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:16:14.65 ID:BJXiMq8yo
雪子「というわけで」

千枝「次は私達……なんだけど」

鳴上「ああ」

>二番目は千枝と雪子だ。

>が、なぜか雪子の部屋で勉強会が行われている。

千枝「ごめんねー、鳴上君。本当は遊びに行きたいんだけどさ……」

雪子「千枝ね、警察学校に入るんだって。ただ、成績が……だから、今すごく一生懸命勉強してるんだよ」

鳴上「そうか、里中も頑張ってるな」

千枝「へへん、もっと褒めても良いぞよ?」

鳴上「ん、よくやってるな」

>とりあえず、頭を撫でてみた。

千枝「こっ、子供じゃないんだから……でも、ありがと」

雪子「……」

>雪子がこっちを見ている。

>……見ている。

鳴上「天城は、女将修行どうなんだ?」

雪子「うん。お母さんにみっちりやってもらってる。お母さんだけじゃなくて、いろんな人が手伝ってくれるから……代役くらいなら努められるかな?って感じ」

千枝「雪子も頑張ってるんだよー。そのせいであんまり勉強教えてもらえないんだけどさ」

鳴上「それは仕方ないだろ?」

千枝「わかってるって。そういう、頑張れちゃう雪子だから私も友達なわけだし」
300 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:16:49.79 ID:BJXiMq8yo
雪子「ふふ、私もそう。やる時はやる子だって知ってるから千枝の事好きだよ」

千枝「て、照れるな……」

雪子「今日もね、朝からお料理習ってたんだよ。結構上達してきたと思うから、今度また味見してね」

鳴上「……ああ」

>良く見ると、雪子の指に絆創膏が貼ってある。

雪子「ん?ああ、今朝包丁でやっちゃって。なかなか慣れないの」

鳴上「そうか……天城も、すごく頑張ってるんだな」

雪子「そ、そうかな……あの、私も、もっと褒めてもいいんだ、よ?」

鳴上「ああ。天城もよくやってる」

>とりあえず、頭を撫でてみた。

雪子「えへへ……何か鳴上君、頭撫でるの慣れてるね」

鳴上「菜々子も良く撫でてやってたからかな」

雪子「しばらく、そのままでいい?何か気持よくて」

鳴上「別に構わないけど」

千枝「あー雪子?ここの問題見てもらえないかなー」

雪子「あ、ああごめんごめん。えっと、どれ?」

>この二人も、自分の道を見つけて一生懸命やっているらしい。

>それからしばらく、雪子と一緒に千枝の勉強を見た。

>……。
301 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:17:17.12 ID:BJXiMq8yo
千枝「あ、そろそろ時間じゃない?」

雪子「そうだね。鳴上君、次次」

鳴上「ん、もうそんな時間か。それじゃ俺は……」

千枝「あ、あのさ鳴上君。今度メールか何かで勉強聞いてもいいかな?」

鳴上「え?いや、天城に聞けば……」

雪子「あ、私もわかんない所あるから……私も聞いてもいい?」

鳴上「まあ、構わないけど」

千枝「良かった。それじゃまた明日ね!」

雪子「早く行ったげて。多分、待ってると思うから」

鳴上「ああ。じゃあ、また明日」

>二人と別れて次の組の所へ行こう。
302 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:17:48.97 ID:BJXiMq8yo
陽介「さーて」

完二「さーて?」

クマ「さてクマ」

鳴上「さて」

>次は陽介・完二・クマの三人だった。

>フードコートで座って喋る事になった。

陽介「この際だから俺聞いときたい事あったんだよな」

完二「なんスか」

クマ「なになに?クマに質問?」

陽介「バカ、お前に聞くんだったらいつでもいいだろが。そいつだよ、そいつ」

>陽介に指差される。

鳴上「俺?俺がどうしたんだ」

陽介「どうしたんだ、じゃねーよ。お前さ……結局、どうするわけ?」

完二「あー……そういう話っスか」

クマ「クマわかんなーい。カンジー教えろー」

完二「まあ黙って聞いとけよ」

鳴上「どうするって、何がだ」
303 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:18:22.56 ID:BJXiMq8yo
陽介「何がって……あれだよ!女方面!お前さ、至る所でフラグ立ててんだろ!」

鳴上「ふ、フラグ?」

陽介「どうすんだよ、誰かに決めんのかよ」

完二「っつーかちょい待てよ。アンタもしかして自覚ねーのかよ」

鳴上「……別に誰からも好かれてるようには思わないけど」

陽介「あーあー……」

完二「マジかよ……」

クマ「これはクマでもわかるクマー……センセー滑ってるクマー……」

鳴上「だ、だってそうじゃないか?誰からも好きだって言われた事……」

陽介「りせちーとかすっげえ言ってんだろ」

鳴上「冗談みたいなものだろ?」

陽介「じゃあお前俺や完二が言われてんの見たことあるか?」

鳴上「……」

>無い。

クマ「クマなー、わかるよ。センセーはアレよな、皆のアイドルだから誰かに決められないのよな」

鳴上「そんなつもりは……」

陽介「決めてやった方がいいぜー、お互いの為だぜ?」

完二「言ってる花村先輩はどうなんスかそっち方面」

陽介「俺?俺はあれだろ、硬派に生きてっからな」

完二「……そースか」
304 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:18:55.75 ID:BJXiMq8yo
鳴上「別に、今誰か特定の相手を作るつもりは無いよ」

陽介「まぁじで?お前あれか?完二と同じタイプか?」

完二「ちょっと待てコラァ!」

鳴上「そうじゃなくてだな。例えば、その……女の子と付き合っ、たり?とかすると、その子の為にしなきゃいけない事が増えるだろ?」

クマ「それを厭わないのが恋!そして愛クマよ」

鳴上「そうなのかもしれないけど、やっぱり自分の事で手一杯だと疎かになると思うんだ。そういうのは良くないと思う」

陽介「っはーなんつーのかね、こういうの」

完二「いやすげえっスわ。やっぱ鳴上先輩は違うぜ」

クマ「センセーが凄いのはクマが最初に知ってたクマよ?」

鳴上「……こっちの皆の話を聞いて、俺、思ったんだ」

陽介「何をよ?」

鳴上「陽介、お前はどうするんだ?」

陽介「俺はなぁ!お前と違って……」

鳴上「そうじゃない、進路だよ」

>陽介はキョトンとしている。

>完二も驚いてる。

>クマは転がっている。
305 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:19:22.26 ID:BJXiMq8yo
陽介「あー、そういう事ね。納得」

完二「……俺もちゃんと考えねーとなぁ」

クマ「どったの?元気ないぞー皆」

鳴上「俺、まだ何も考えてないんだよ」

陽介「ほー、お前がねぇ」

完二「意外っちゃ意外っスね」

鳴上「多分去年くらいには決めとかなきゃ駄目なんだろうけど、ほら、先生たちもちょっとおかしくなってたし……結局何の話もしないまま転校だろ?」

陽介「あー去年はなぁ」

完二「つか、ウチってその辺どうなってんスかね。まだ話も聞いてないんスけど」

陽介「大半就職だから、あんま力入れてねーんじゃねえかな。俺も進路相談とかされた記憶ねーや」

鳴上「本当ならそういうの無くてもある程度考えてるもんなんだろうけどな」

完二「俺ぁそういうのわかんねーなー。多分この辺のどっかに就職するか家継ぐんだと思うんスけどね。花村先輩はジュネス継ぐんスか?」

陽介「いや、親父雇われだから。でもまぁ、そうだなぁ。親父の下で働きながら勉強して、ゆくゆくはって感じだな。潰れなきゃだけどな」

鳴上「俺には目標も無ければ、継ぐような物も無いんだ。そう思ったら、進路ってどうやって決めたらいいのかなって」

陽介「……難しい話だよな、実際さ。なぁ、お前って部活とかやってたじゃん、アレでさ……」

>陽介と完二と進路について話し合った。

>……。
306 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:19:49.52 ID:BJXiMq8yo
陽介「っと、そろそろ時間か?」

完二「あー、だいぶ話し込んじまいましたね」

陽介「おいクマ、今何時だよ」

クマ「……」

陽介「あ?おーいクマ?」

クマ「Zzz……」

完二「こいつ……途中から寝てやがったな」

陽介「まぁいいか、クマだし。よっしゃ、そんじゃ相棒、ラスト行ってこいよ!」

完二「また明日っスね」

鳴上「悪いな、相談にのってもらって」

陽介「いいっつの。つか乗れてもねーし」

完二「先輩だったらどんな道でもやってけるっスよ。好きなように考えりゃいいんじゃないスか?」

鳴上「……そうだな。よく考えてみるよ。じゃあ、行くから」

陽介「おう!明日、遅れんなよ!」

完二「お疲れ様っス。そんじゃ」

>最後の組に会いに行こう。
307 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:20:24.32 ID:BJXiMq8yo
ラビリス「あ、悠。おかえりー」

アイギス「お帰りなさい、鳴上さん」

菜々子「おかえりなさい、お兄ちゃん」

鳴上「ただいま……だけど、なんで二人はここに?」

アイギス「花村さんに聞いたら連れてきてくれました」

菜々子「菜々子ね、お姉ちゃんたちにいろいろ教えてもらったんだよ」

鳴上「そうか、良かったな。何か飲……まないか、二人は」

ラビリス「あ、うん。お構いなく」

アイギス「すぐお暇しますから」

菜々子「お姉ちゃんたち帰っちゃうの?」

ラビリス「ごめんなー菜々子ちゃん。けどあんまり長居しても迷惑やろ?」

アイギス「それに、今晩泊まる所に行かなければならないので……」

鳴上「あ、そういえば二人はどこで一泊……二泊か。するんですか?」

ラビリス「なんやアイギスが美鶴さんに連絡してな。天城さんとこの旅館抑えてくれたらしいわ」

アイギス「何でも中々評判の良い所だとか」

鳴上「ああ、良い所ですよ」

>アイギスはじっとこちらを見ている……。

鳴上「何か?」
308 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:20:54.22 ID:BJXiMq8yo
アイギス「姉さんには敬語じゃないですよね」

ラビリス「ん?」

鳴上「あ、まぁ……同級生だし」

アイギス「私は姉さんより後に作られました。言ってしまえば年下です」

ラビリス「まぁ、そう……なんかなぁ」

鳴上「ええと、それで?」

アイギス「私も敬語じゃなくて構いません、と」

鳴上「でも、アイギスさんは敬語を使ってくれてますよね?」

アイギス「これは、癖のようなものです。気にしないでください」

鳴上「まぁ、拒否する理由もありませんし……じゃあ、これからはアイギスって呼ぶよ」

アイギス「はい!」

>機械でもこんな表情ができるのか、と思った。

>人間よりよっぽど感情豊かに思える。

鳴上「旅館、行くならそこまで送るよ」

ラビリス「ほんまに?ほな……お願いしようかな。アイギスもええやろ?」

アイギス「もちろんです。お願いします」

鳴上「菜々子、またちょっと出てくるから」

菜々子「すぐ帰ってきてね?」

鳴上「ああ。すぐだよ」

>二人を連れて家を出た。
309 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:21:26.44 ID:BJXiMq8yo
鳴上「とりあえず、商店街のバス停まで送るから。バスの乗り方くらいわかるんだろ?」

ラビリス「む、悠はウチらをバカにしとるな?一般常識はきっちり入ってますー」

アイギス「大丈夫ですよ、お金も持ってます」

鳴上「安心した。……そういや、二人はなんでわざわざ俺のとこに来たんだ?」

アイギス「え?そういうルールだったのでは?」

鳴上「いや、そうだったけど。まずなんで俺と遊びたいなんて思ったんだ」

ラビリス「遊びたいっちゅーか、話したいって感じやな。アイギスは?」

アイギス「姉さんと同じです。少し……気になったものですから」

鳴上「気になった?」

アイギス「ええ。まずは、ありがとうございます」

>アイギスは深々と礼をした。

鳴上「突然どうした」

アイギス「まずマヨナカテレビから私を救ってくれた事。それから、姉さんを救ってくれた事。それから、メティスに道を示してくれた事」

>どうやら、メティスの様子がおかしかった事も知っているらしい。

アイギス「どれも、私ではきっと出来なかった事。ああ、それから今日の朝、皆さんに私達を受け入れるよう言ってくれた事」

鳴上「ん?それは覚えが無いぞ」

アイギス「人の大本は体なのかどうか、と言ってくれましたね。とても嬉しかったです」

鳴上「……ああ、確かに」

>そんな事を言ったような気もする。

アイギス「あなたとは……まだ数回しか会った事もない。なのに、ずっと以前から知っているような気がするのはなぜでしょうね」

>そう言ってアイギスは微笑む。
310 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:21:52.46 ID:BJXiMq8yo
ラビリス「なんやー二人だけええ雰囲気やなぁ。意地悪せんとウチも混ぜてよ」

アイギス「そんなつもりは……姉さんこそ、鳴上さんと話したかった事ってなんですか?」

ラビリス「ん?ウチか?んー……ウチは何が話したいとかやなくて、ほんまに話しがしてみたかっただけなんよ」

鳴上「それはまた何で?」

ラビリス「思うに、悠はちょっと他と違うな。ペルソナ使いっていう、普通じゃない集団の中でもまた一つ質の違う男や」

>どきりとした。

>ポートアイランドでは勿論、こっちに来てからもまだワイルドの力を使っていない。

>にも関わらず、ラビリスには何かがわかっているようだ。

ラビリス「それに、かっこええし優しいし、もう理想みたいな人や!そんな人と話してみたいって思うんは当たり前やろ?」

アイギス「ね、姉さん?」

鳴上「……反応に困るな」

ラビリス「冗談やで?あはは。でも、助けに来てくれた時の悠はかっこよかったよ。逃げよう逃げようとするウチを真剣に引き止めてくれた」

鳴上「まぁ、俺はあの中がどういう場所か知ってたからな……」

ラビリス「そんでも、ありがとう。うん、結局ウチもお礼が言いたかったんやな。そうやと思う」

>ラビリスは照れたように笑うと、それから黙ってしまった。

>……バス停が近付いて来る。

>三人で、黙って歩いた。
311 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:22:19.22 ID:BJXiMq8yo
鳴上「あ、丁度バス来てるな」

>確か、あれに乗れば旅館前まで行けたはずだ。

鳴上「じゃあ、俺はここで。またな」

アイギス「はい……」

ラビリス「ん……」

鳴上「……またな?」

>念を押すように言ってみる。

>不意に、アイギスが顔を上げた。

アイギス「あの、ポートアイランドに帰ったら、私も一緒に戦いますから。いいですよね?」

>ただそれだけの事を言うのに、アイギスは至極真剣な表情だった。

鳴上「元からそのつもりだったよ。帰っても、よろしくな」

アイギス「はい!よろしくお願いします!行きましょう、姉さん」

>ラビリスは動かない。

鳴上「バス、出ちゃうぞ」

>そう言うと、ラビリスは恐る恐るこう言った。

ラビリス「あの、な。明日、皆で集まるんやろ?そん時……ウチも、ウチらも行っていいかな?」

>……ラビリスは今にも泣きそうになっている。

ラビリス「迷惑やと思うけど、まだ、友達やないかもしれんけど、良かったら……」

鳴上「……」

>この姉妹は皆揃って悩みが多いらしい。

>メティスを思い出して、ふと思った。

>見た目は違うが、皆子供と同じなんだ。

>人とのふれあい方がまだわからない。

>その点では、やはりアイギスに一日の長がありそうだ。
312 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:22:56.28 ID:BJXiMq8yo
鳴上「ラビリス、友達ってどうやってなると思う?」

ラビリス「そんなん、わからんよ……ウチは人やないし」

鳴上「例えば、友達になりましょうって言ってなるものか?約束したら友達か?それって、ちょっと違わないか?」

ラビリス「でも、そんならどうしたらええん?」

鳴上「友達って、勝手になってるもんなんだよ、多分。俺達は今日こうやって話をした。皆とも、話したよな。それで十分なんだよ」

ラビリス「でも、でも……まだ会ったばっかりやで?」

鳴上「関係ないんだ、時間は。少なくとも、俺はもうラビリスを友達だと思ってるよ」

ラビリス「悠……」

>ラビリスの目に透明な液体が溜まる。

>液体はどんどん溜まって、すぐに零れた。

ラビリス「悠〜……ゆ゛う゛ぅ〜」

>小さな子供のように泣きじゃくるラビリスを見て戸惑うアイギス。

>そんな二人が微笑ましくて、自然と頬が緩んだ。

ラビリス「うっ、うぇっ、明日、また明日な……ぐすっ。ありがとなぁ〜ゆぅ〜」

鳴上「わかったわかった。ほら、バス待ってくれてるから。早く行かないと。アイギス、任せるぞ」

アイギス「は、はい。えと、姉さん、ほら……行きましょう」

>アイギスがラビリスの背中をぽんぽんと叩いた。

>ラビリスは泣きじゃくりながら歩き始める。

>バスに乗る時、アイギスは小さく一礼して、ラビリスは大きく手を振って……。

>一時の別れを惜しんでくれた。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.07 戦車 アイギス』を手に入れた!

>新たなるコミュニティ、『No.08 正義 ラビリス』を手に入れた!

鳴上「……さて。今日は帰って菜々子をかまってやらないとな」

>帰ろう。
313 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/26(木) 23:24:36.67 ID:BJXiMq8yo
わけあってフライング。
P4Uは明日以降になりそうです。

さて、役者は揃ってきました。
では、また明日。
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/27(金) 04:55:11.73 ID:2fKbdItmo
ラビリスは運命じゃないのか…
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 15:24:44.85 ID:Be0UtOSQ0
他のゲームといっしょにp4u買ってきた
今日から徹夜になりそうだ
316 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/27(金) 22:57:46.36 ID:N7itOPTio
事情(P4U)あって本日は更新なしとなります。
ラビちゃんかわええわ・・・。
では、また明日。
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/07/28(土) 00:32:02.64 ID:31Zv9PnM0
wktk
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/07/28(土) 12:33:59.74 ID:9lJC+3uMo
ワロタwwwwww

素直でよろしい。
319 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/28(土) 23:09:41.80 ID:22HkkF1ko
ちょっと待ってこのゲームストーリー長・・・
あ、あの!明日には!明日には更新しますから!

というわけで、
では、また明日。
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 00:38:50.96 ID:crbSIFV+o
二日間待ったんだから凄いクオリティなんだろうなぁ…wktk
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/29(日) 02:07:49.51 ID:tpzQGkpro
ラビのストーリーで泣いて、ザベスのストーリーでクソ笑ったわ。
これは続編あるのかな?
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/29(日) 04:05:59.74 ID:OGpjtphGo
P4U2かは分からんけど何かしらありそうだな
323 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:00:25.74 ID:PFne1HRUo


【5/5 晴れ】


>……今日が、八十稲羽で過ごす最後の日だ。

>本来ならこの後の土日も滞在する予定だったのだが、事件の為に今日か、最悪でも明日には帰らなくてはならない。

鳴上「仕方がない、か」

>いつまでも遊んでもいられない。

>最終日だから菜々子も一緒に、というので家で遊ぶ事にした。

>皆が来るのを待とう。

>……。

千枝「おっはよー!」

菜々子「あ、はーい!」

>騒がしい声がする。

>どうやら皆連れ立って来てくれたようだ。

陽介「おう!菜々子ちゃん!悠は?」

菜々子「いるよー、ちょっと待ってね」

鳴上「待たなくていいぞ」

完二「あ、先輩うぃっス!」

りせ「……はぁ」

直斗「ほら、久慈川さん……」

クマ「ナナちゃーん、ナナちゃんのクマクマよー」

菜々子「クマさんだ!」

>陽介、千枝、雪子、完二、りせ、クマ、直斗……。
324 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:00:52.25 ID:PFne1HRUo
>……あれ?

鳴上「天城、ちょっといいか?」

雪子「ん?どうしたの?」

鳴上「天城の所にあの二人が泊まってると思ってたんだけど」

雪子「あ、うん。家に泊まってくれてるけど……どうしたの?」

鳴上「来ないのか」

雪子「……わかんない。一応、声は掛けたんだけど」

鳴上「……そうか」

>雪子の顔を見るに、声をかけはしたがやんわりと拒否されたとか、そんな所だろう。

>何か事情があるのだろうか?

鳴上「悪い、皆。上がっててくれ」

陽介「お?おう。お邪魔しまーす」

>さて、風花の電話番号は……。

風花『もしもし?』

>風花はすぐに出てくれた。

鳴上「あ、山岸さん。あの、山岸さんっていろんな所への連絡任されてましたよね」

風花『うん、私か桐条先輩が取り纏める役になってるから……それで、どうしたの?どこか連絡?』

鳴上「はい。良ければアイギスの連絡先を教えてもらえませんか」
325 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:01:44.25 ID:PFne1HRUo
風花『それは構わないけど……アイギスって確か今そっちに』

鳴上「少々厄介な問題が起きてるんです。お願いします」

>風花が息を呑んだのが受話器越しにもわかった。

風花『……わかりました。とりあえず、支給してある携帯の番号を教えておきます』

鳴上「すみません、ありがとうございます」

風花『どうなってるのか知らないけど、無理はしないでくださいね』

>風花は心配してくれているようだ。

>……実際の所危険は一切無いのだが、しばらく勘違いしていてもらおう。

>風花との通話を切り、教えてもらった番号にかける。

>こちらの番号は知らないはずだが、支給された携帯である以上連絡を取らないという事も無いだろう。

>数度のコールの後、透き通った声が聞こえた。

アイギス『こちら、アイギスです。どなたでしょうか?』

鳴上「俺だけど、わかるか?」

アイギス『この声……鳴上さん?お電話だと少し印象が違いますね』

>アイギスは笑っている。
326 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:02:35.96 ID:PFne1HRUo
鳴上「ところで……用件はわかってるか?」

アイギス『この携帯にかけてこられたという事は……非常事態と思いますが』

鳴上「ああ。緊急事態だ。もう皆集まってるのにお前達だけ来ていない」

アイギス『え、っと……それは……』

>とても言い辛そうにしている。

>この反応は、もしかすると……。

鳴上「ラビリス、だな」

アイギス『……はい、私は良ければ行きたかったのですが、姉さんが乗り気ではなくて』

鳴上「自分から来たいって言っておいて……」

アイギス『昨日、鳴上さんにああ言ってもらったのに……それで余計に気兼ねしたというか。とにかく、迷惑だからの一点張りで』

>ため息が出た。

>あの生徒会長さんはどうも、少し引っ込み思案な所があるな。

>……いや、不安なんだろう。

>一度は受け入れてくれたようでも、受け入れてくれたからこそ、もし何かの表紙に拒絶されるのが怖い。

>そういう気持ちは理解できる。

鳴上「ラビリスに代わってくれないか」

アイギス『はい。あの、姉さん……』

>ごそごそと音がして、小さい吐息が聞こえる。

>ちょっとぞくっとした。
327 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:04:00.81 ID:PFne1HRUo
ラビリス『う、ウチやけど』

鳴上「ラビリス……」

ラビリス『いや、あのな!悠の気持ちは嬉しいんよ。けど、やっぱりウチら何か新参者やし、最後の日くらい皆で……』

鳴上「ラビリス」

ラビリス『……はい』

>萎縮しているようだ。

>多分、悠の気遣いを無にするのもな、とか。

>けど、やっぱり皆だけで遊びたいやろうし、とか。

>そういう葛藤をしてたに違いない。

>全く、見当はずれの葛藤を。

鳴上「いいか、一度だけ言うぞ。それから先はもう自由に判断してくれ。顔を出さなくてもいい、これ以上は何も言わない」

ラビリス『う、うん……』

鳴上「なんでもいいから来い」

ラビリス『……』

鳴上「それだけだ。じゃあな」

>何も言わせずに電話を切る。

>ちょっと脅しっぽくなってしまったが、このくらい言わないとラビリスは動かない気もした。

鳴上「さて、それじゃちょっと待ってみるか」
328 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:04:41.40 ID:PFne1HRUo
>数分後。

>待ってたら来た。

>走って。

ラビリス「あ、ゆ、悠……」

アイギス「おはようございます、鳴上さん」

鳴上「おい、待て。もしかして旅館からずっとか」

アイギス「姉さんが急ごう急ごうと言うから……」

ラビリス「やって悠が脅かすような事言うからやん!」

鳴上「悪かったよ……ただ、もう街中を走り回るのはやめた方がいいな」

アイギス「心得ています。緊急事態以外では」

鳴上「ならいい。さ、あがってくれ」

>アイギスはためらわずに進むが、ラビリスの足は動かない。

鳴上「ラビリス、心配か?」

ラビリス「……うん」

鳴上「まあ、あがってみてくれ。多分、すぐにわかる」

>ラビリスは不安そうな表情のまま、おっかなびっくりといった感じで玄関をくぐった。

鳴上「居間はこっち。もう皆いるから」

>廊下を進み、座っていた陽介の目にアイギスが映る。
329 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:05:27.72 ID:PFne1HRUo
陽介「おー!アイギスさん!おっ、ラビリスもいんじゃん!遅刻だぜ、二人共」

>ほらな。

ラビリス「えっと、あの……」

>ラビリスは何故か俺を見た。

>どうしたらいいかは知っているはずだから、あえて無視する。

雪子「どうしたの?そんな所で立ってないで、こっちおいでよ」

ラビリス「う、ん。うん。あはは」

>笑みが零れた。

ラビリス「なんや、ウチ、随分無駄な事悩んでたんやなぁ」

>アイギスも笑った。

>皆は不思議そうにしている。

鳴上「こんなもんさ」

ラビリス「うん。ありがとうな」

菜々子「お姉ちゃん、何か飲む?」

ラビリス「お、菜々子ちゃんは偉いなぁ。ちゃんとお客さんお迎えできるんやね」

菜々子「えへへ……」

陽介「っしゃ、皆揃ったし。また都会に旅立つ相棒の為に、一つ騒ぎますか!」
330 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:05:54.21 ID:PFne1HRUo
りせ「やーだー!先輩ともっと一緒にいたいー!」

直斗「ほら、そんなんじゃ先輩も気持ちよく発てないですよ?」

千枝「あ、それで元気無かったんだ」

クマ「ねねアイちゃん!アイちゃんはねーぇ、クマの事どう思う?」

アイギス「ぬいぐるみです」

雪子「ぷっ!アイギスさん、それ、まんますぎ。ぷははっ!」

完二「オラ、そんなコップいっぱい乗せるんじゃねえよ。落っことすぞ」

ラビリス「へぇー、完二君って優しいんやねぇ」

菜々子「うん、みんな優しいし面白いよ」

>GW、八十稲羽にいられる最後の日。

>夕方には堂島さんも帰ってきて、皆で楽しく過ごした……。

>楽しい時間はあっという間に過ぎていく……。

>そろそろ、帰らなくてはならない。

鳴上「皆、悪いけどそろそろ……」

>一気に空気が沈む。

陽介「だな。気にしないようにしてたんだけどよ」

直斗「見ないようにすればする程時間が気になったりしますよね」

アイギス「……行きましょう。準備を」

ラビリス「うぅー……」

>ラビリスは誰よりも名残惜しそうにしている。
331 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:06:32.99 ID:PFne1HRUo
堂島「どうする?駅まで送るか?」

>皆の顔を見回して、首を横に振った。

鳴上「駅まで歩いて行こうと思います」

堂島「……そうか。向こうでもしっかりやれよ」

アイギス「私達がついてますから」

ラビリス「大丈夫やんな!」

>堂島は苦笑した。

堂島「頼むぞ。あー、菜々子はどうする」

菜々子「わたしも行きたい!」

陽介「菜々子ちゃんだったら俺らがちゃんと連れて帰って来ますんで、な!」

>皆頷く。

堂島「わかった。行ってこい。また来るんだろ?」

鳴上「次は……夏休みくらいだと思います。次はもっとゆっくり出来るといいんですがね」

堂島「じゃあ、またな。事故と病気は気をつけろよ」

鳴上「はい。お世話になりました。……行ってきます」

>皆を引き連れてぞろぞろと歩いた。

>家を出た辺りは騒がしいほど喋っていたが、駅が近付くと口数も少なくなってくる。

>……別に永遠の別れってわけじゃない。

>だけど、やっぱり寂しい。
332 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:07:17.40 ID:PFne1HRUo
陽介「……あーあ!やめだやめ!こういうのらしくねーって!」

>ホームに入った時、突然陽介が大声を出した。

陽介「そりゃまぁ……寂しいんだけどよ」

完二「ま、らしくねーっちゃらしくねーか。もっとぱーっと行きましょうや」

雪子「鳴上君が行っちゃうのは寂しいし、新しく出来た友達と、もう離れちゃうのも……寂しいけど」

りせ「そうだよね。離れるからって、心までバラバラってわけじゃないし!」

ラビリス「心……」

直斗「誰だって、ずっといっしょにいる事なんて出来ない。けど、だからって僕達が仲間じゃなくなるわけじゃない、ですよね」

クマ「クマはー、お暇な時テレビの中から会いに行っちゃうもんねー」

菜々子「クマさんお兄ちゃんに会いに行けるの?」

千枝「な、菜々子ちゃんにはまだ早いかなー!」

鳴上「皆……」

>3月、別れた時にも思った。

>住む場所が違っても、仲間じゃなくなるわけじゃない。

鳴上「夏にはまた来るよ。今度はあっちの友達も連れて」

>今、テレビの中にいるだろう、アイツも。

陽介「おう!海いこーぜ海!」

完二「み、水着っスか!」

りせ「夏かー、オフ取れるかなー」

直斗「夏までには、抱えてる事件終わらせておきますから」

クマ「センセー、帰ってきたらホームランバーオゴって欲しいクマー」

雪子「あ、日程決まったら早めに連絡してね。シーズン中だから、家手伝わないと」

千枝「次に会うまでには、もうちっと頭良くなっとくかんね!」

>一人一人、再会の言葉をくれる。
333 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:07:47.15 ID:PFne1HRUo
>ずっと黙っていた菜々子が、顔を上げて言った。

菜々子「いってらっしゃい!おにいちゃん!」

>またね、でも、じゃあね、でも無く、いってらっしゃい。

鳴上「ああ。また帰ってくるから。しっかり留守番していてくれ」

>菜々子の頭をくしゃくしゃと撫でてやる。

>丁度、電車も入ってきた。

アイギス「では、行きましょう」

ラビリス「ウチらもまた来るで!」

鳴上「それじゃ、皆。またな」

>電車に乗る。

>車掌のアナウンスがあり、ゆっくりと車体が動き出す。

アイギス「……私もまた、来てもいいですか?」

鳴上「喜ぶんじゃないかな、皆」

ラビリス「あ、見てみ、悠」

>走りはじめた電車に向かって、皆手を振ってくれている。

ラビリス「菜々子ちゃんは元気やなぁ。……クマさんも、元気いっぱいや」

鳴上「ああ……そうだな」

アイギス「少しの間しかいませんでしたが、のどかで良い所でしたね」

鳴上「便利じゃないけど、いろんな物がある所なんだ。俺の、2つ目の故郷だよ」

>夕日に暮れる線路の上を電車が進んでいく。

>ラビリスにはまだ駅の様子が見えているのだろうか、ずっと窓から後ろを見ている。

>アイギスは微笑みを浮かべて景色を眺めている。

>短い間だったが、実に意義のある滞在だったように思う。

鳴上「……またな」

>小さくつぶやくと、誰かが返事をしてくれた気がした。

女性の声「私も是非また来たいと思います」
334 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:08:18.61 ID:PFne1HRUo
>……?

>!?

エリザベス「微笑ましいお別れの光景……実に美しくございましたが……」

>青い服、銀色の髪。

>いつの間にか隣の座席にエリザベスが座っている!

エリザベス「空気をー、読まずにー、失礼致します!」

>向かいの席に座っていたアイギスとラビリスが目を丸くしている。

>多分、俺も似たような顔になっているだろう。

鳴上「あの、エリザベス……だよな?」

エリザベス「いかにも、たこにも。でございます」

鳴上「何でここに?」

エリザベス「私、一度電車という物に乗ってみたく……というのは冗談で。お三方にお話があって参りました」

>話……?

ラビリス「あ!どっかで見た思たらテレビの中で……」

アイギス「姉さんも会ってたんですね。エリザベスさん、それでお話とは」

>アイギスは既に知り合いなのか、最初こそ驚いたようだが今は普通にしている。
335 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:09:00.24 ID:PFne1HRUo
エリザベス「はい。お三方がこれより向かう地……かつてあの方がいらした地、ポートアイランド。あちらで起こっている事件のお話です」

鳴上「事件……テレビの話か?」

エリザベス「いかにも、くらげにも。でございます。いや、くらげはどうでしょう……やはり、たこ……」

ラビリス「イカでもタコでもなんでもええんやけど、何や、何か知ってるん?」

エリザベス「動き出します」

>しっくり来る言い回しを探していたエリザベスが、急にトーンを落とす。

鳴上「動き出す?」

エリザベス「今までの事件……そちらの方が起こした物ではありません。その前の事件です。あの事件は、ごくごく小さい物でした」

>確かにそうだ。

>メティスを助けだしてから聞いた話だが、再現された事件は寮以外に影響を与えない物だった。

>しかし、今度の事件は……

エリザベス「今、世界中があのテレビの内容に影響されています。私、自ら入ってみて感じたのですが……かの地におけるテレビの世界、こちらで入った場所と繋がってはいても別物であるように感じました」

ラビリス「どういうことなん……?ウチ、そういう事件があるって聞いただけやから」

>そうだった。

>ラビリスにはまだ詳しい説明がされていない。

アイギス「詳しい話は後ほど。それで、どうなるのですか?」

エリザベス「さぁ、それはわかりません。全てはあなた方の選択次第。私はただ、道を指し示すだけに過ぎません」

鳴上「道……って言われても、何もわからないぞ」

エリザベス「それで良いのでございます。どう足掻いても、渦中に入る事になるのです。特に、あなたは」

>エリザベスはまっすぐに俺を見ている。
336 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:09:50.76 ID:PFne1HRUo
エリザベス「声を大にして言うには少し恥ずかしいのですが、私、あなたには期待しております」

>他に誰も乗っていないとはいえ、十分に声は大きい。

エリザベス「世界を救う程度、朝飯前……どころか、一夜戻って夕飯前であると。ですので、私はそれだけを」

鳴上「世界を、救う……」

>エリザベスの心情は、表情からは読み取りにくい。

>しかし、期待しているというのは嘘では無いようだ。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.14 節制 エリザベス』を手に入れた!

エリザベス「現にあなたはかつて一度成し遂げていらっしゃるはず。それでは、私はこれで。またお会いできる時を楽しみにしております」

>エリザベスは立ち上がると、本革の表紙を開く。

>青い魔法陣が空中に描かれて、それが発光する。

エリザベス「では……お邪魔致しました」

>魔法陣に向かって歩いたかと思うと、エリザベスの体は吸い込まれるように消えていった。

ラビリス「き、消えた……なんやの、あの人……」

アイギス「……私は昔会った事があるのですが……よくわかりません」

>あのテレビの影響が“世界”に及んでいる……。

>確かに、影時間は八十稲羽でも起こっているようだった。

>つまりは、きっとその通りなのだろう。

>もう俺達の手に負える規模じゃないのかもしれない。

アイギス「鳴上さん」

鳴上「……ああ。エリザベスはああ見えて、意味の無い事はしない……と、思いたい。だから、きっと考えなきゃいけないんだと思う」

アイギス「きっと解決しましょう。事が大きくなったようですが、私達にできる事は変わりません」

>俺は黙って頷いた。
337 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/30(月) 00:11:31.09 ID:PFne1HRUo
P4U、実に良いストーリーでした。
アトラスらしさは例によって例の如く薄かったのですが、Pシリーズらしさは抜群といった所でしょうか。
とくにラビリスストーリーのあのシーンであの曲が流れた時はもう……。

あ、SSの方は今日の更新で「プロローグ」に当たる部分が終わった事になります。
では、また明日。
338 :名無しNIPPER [sage]:2012/07/30(月) 08:40:53.72 ID:lrS96YgAO



楽しませて貰ってます
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/30(月) 10:10:24.43 ID:lds/3+Rz0
プロローグ長かった
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/30(月) 18:00:50.77 ID:/xAIbsMj0
本編か・・・やっと棚
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 18:02:09.43 ID:MT61AKAEo
ゲームをクリアしたと思ったら2週目が始まってそれが真のエンディングにたどり着く道ですとか言われた気分
342 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/31(火) 00:00:41.99 ID:TZ8m8x7No


【5/6 雨】


>……ここは。

>昨日までと違う部屋で目が覚める。

>そうだった。

鳴上「戻ってきたんだったな」

>今夜は満月だ。

鳴上「そして、霧が晴れる……」

>外は測ったように雨が降っている。

>今夜、テレビに入る事になるだろう。

>最後の打ち合わせをしておこう。

天田「あ、おはようございます。お疲れだったみたいですね」

>ラウンジでは天田が何か飲んでいた。

鳴上「帰ってきて早々爆睡だったよ。それ、何飲んでるんだ?」

天田「牛乳ですよ。昔から飲んでるんでくせになっちゃって。もう大きくならなくてもいいと思うんですけどね」

>確かに、これ以上大きくなっても……。
343 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/31(火) 00:01:20.77 ID:TZ8m8x7No
天田「……満月ですね」

鳴上「ああ。多分、もう霧が晴れてるんだと思う。いつ入ってもいいようにしておいてくれ」

>天田はこくりと頷いた。

天田「先輩が向こうに行ってる間に、こっちでは雨が降ったんですよ」

>確かに、向こうでも雨が降っていた。

鳴上「こっちのテレビ、誰か確認したか?」

天田「はい。僕は見てないですけど、山岸さんが。その時にはもう映像は変わってたみたいです」

鳴上「やっぱりそうか……これで今日霧が晴れてたら、どうも確定みたいだな」

天田「ですね。周期があると……あの、ところでなんですけど」

鳴上「どうした?」

天田「いえ、その日から……風花さんの様子が変な気がするんですよ」

鳴上「山岸さんが……?」

>電話で話した感じは特になんとも無いようだったが……。

天田「落ち込んでるとかじゃなくて元気なんですけど、カラ元気っていうか、無理やりな感じが。気のせいかもしれないんですけど」

鳴上「そうか……心配だな。山岸さんは今どうしてる」

天田「多分部屋に。何か映ったんでしょうか、三年前の……」

鳴上「そうかもしれないな。ちょっと様子見てくるよ」

>今回再現されるのは三年前、風花や天田が深く関わった事件らしい。

>だからだろうか。
344 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/31(火) 00:02:38.80 ID:TZ8m8x7No
>三階に上がり、風花の部屋の扉を叩く。

鳴上「山岸さん、鳴上です。ちょっといいですか?」

>……反応が無い。

鳴上「寝てるのかな……あの、また後で来ます」

>一階に戻る。

天田「あれ、いなかったですか?」

鳴上「さぁ、返事が無かったんだ。また後で行ってみる」

>……ニュースでも見てみよう。

キャスター『世界各国で破滅思想が広がりを見せています。新興宗教が大きな影響力を……』

鳴上「本当に世界に広がってるんだな……」

>流れている映像では、他国での暴動騒ぎの物だ。

評論家『人間、誰しも持っている願望ですからねぇ、破滅願望といいますか、頭ごなしに否定はできませんねえ』

天田「すみません、テレビ切ってもらっていいですか?」

>天田が眉間に皺をよせている。

鳴上「ああ……悪かった」

>理由はわからないが謝っておく。
345 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/31(火) 00:03:17.25 ID:TZ8m8x7No
天田「いえ、僕の方こそ……ただ、我慢ならなくて。僕たちはその破滅を回避するために命を賭けたのに、またこうして引っ張られてる。見たく、無いです」

鳴上「そうだな……俺の時もそうだった。確かに、全部なくなってしまえば楽なのかもしれない。だけど、そうじゃないだろって思う」

天田「僕も同じですよ。世の中辛いことばかりじゃない。無くしたくない物もある。って、僕の歳で言っても説得力無いのかもしれないですけど」

>そんな事はない。

>天田の思想には共感できる。

>むしろ、世間がこうも簡単に滅びを受け入れられる事の方が薄ら寒く感じた。

天田「僕らはいいんです。だって、生きて今日を迎えてるから。だけど、あの時死んでしまった人が……今のこの世間を見たら、どう思うか。あの人は、それにあの人も、何で命を……」

鳴上「無駄じゃないさ。天田がそう思うって事は、その人達はお前の中に何かを残してる。人間はそうやって前へ進むんだと思う」

天田「鳴上先輩……」

>天田はほっとしたように笑っている。

>天田から信頼されているのを感じる。

>『No.02 法王 天田乾』のランクが2になった。

鳴上「だけど、心配だな。山岸さん……」

天田「まぁ、僕は見てないし聞いてないからわからないんですけど。思い出すだけでも……色々思うことがある事件でしたから」

鳴上「中々普通じゃいられないよな」

>……心配だ。

>やはり、もう一度様子を見に行くべきだろうか。
346 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/31(火) 00:03:53.89 ID:TZ8m8x7No
>考えていると、上階から誰か降りてきた。

鳴上「あ、山岸さん……と、メティスか」

メティス「おはようございます。何で人をおまけみたいに……」

風花「おはよう。さっき呼んでくれてたよね?ごめんなさい、ちょっと寝ちゃってて……」

>寝ていた……?

>目が、赤いが。

天田「大丈夫ですか?今夜、作戦ですけど」

風花「うん、平気。みんないるなら丁度いいかな……今夜の作戦についてお話があります」

>風花はいつもの柔和な表情をしていない。

>何か思い詰めたような、見ていて痛くなるような、そんな表情だった。

風花「今回の作戦、特別課外活動部の全員を集めて行います。そうしなければいけないと思います」

天田「全員?桐条さんとか、来れるんでしょうか?」

風花「もう連絡してあります。どうしても、来てもらわないといけません」

鳴上「しかし、どうして?」

風花「……理由は、多分今夜わかると思う。雨だから、映ると思うから」

>マヨナカテレビを見れば、という事だろうか。

>確かに呼べ、と言っていた人が何人かいるが、全員とは……

天田「まぁ、人が多くて困る事はないでしょうけど……」

メティス「あの、私も参加していいんでしょうか?」

鳴上「俺も、メンバーじゃないんだけど……」

風花「とにかく、揃って見てもらわなきゃならないの。参加メンバーはその時に決めましょう」

>風花の様子がおかしい、というのは気のせいでは無かったようだ。

>マヨナカテレビ……何が映るのだろうか。

>今は、夜を待つしか無い。
347 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/31(火) 00:04:37.63 ID:TZ8m8x7No


【夜 巌戸台分寮・ラウンジ】


>ラウンジにはかつての特別課外活動部のメンバーが集結していた。

>……どことなく居場所が無く、少し落ち着かない。

>どうやらメティスも同じようだった。

風花「皆さん、それぞれ忙しい中呼び立ててすみません。だけど、今日の作戦は……ううん、今日流れる映像は絶対に皆に見て欲しい物だったから」

ゆかり「ま、呼ばれた事は全然良いんだけどね。映像って、マヨナカテレビでしょ?何が映るの?」

風花「それは……まだ言えません」

順平「おいおい、どういうこったよ。見て判断しろってか?」

風花「ごめんなさい、だけどその通りです。私の印象だけじゃ判断が付かなくて。二通りの捉え方ができると思うんです。だから……」

真田「聞いた話じゃ、例の望月が中にいるんじゃなかったのか?」

美鶴「推測に過ぎないがな。だが、シルエットも彼に似ていたようだし間違いないと思っていたのだが」

天田「他の誰かが入ってて、その映像が流れてるかもって事ですか?」

>風花は答えに悩んでいるようだ。

>一体何を見たというのか。

アイギス「……とにかく、待ってみましょう。もうすぐですし」

>時計を見ると、もうすぐ日付が変わる。

>本来なら早く突入して救出作戦をすべきなのだが、今日はそうもいかない。
348 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/31(火) 00:05:20.13 ID:TZ8m8x7No
美鶴「そうだ、テレビが映る前に言っておく。今回より以後、テレビの中での作戦行動は鳴上に締めてもらう」

鳴上「え?俺ですか?」

>突然の発表に驚いて、間抜けた返答をしてしまった。

美鶴「そうだ。パーティーのリーダーといった所か。不満か?」

鳴上「いや、俺でいいのかなと」

真田「俺も美鶴と同意見だ。お前はテレビの中を熟知してるし、なにより人を纏める力というか、人を惹き付ける力のような物がある。リーダーには必要な素質だ」

順平「まーた俺リーダーなり損ねるんすかぁ?地味に狙ってたのに」

ゆかり「いや、あんたは無理でしょ、どう考えても」

アイギス「異論はありません。鳴上さんなら大丈夫かと」

天田「そうですね。鳴上先輩なら任せてもいいと思います」

鳴上「まぁ、皆が良いなら……やらせてもらいます」

美鶴「それでいい。任せたぞ」

風花「皆さん、そろそろです」

>話している内に時計は進み、あと数秒で日付が変わろうとしている。

>全員が黙ってテレビを見る。

>真っ暗な液晶に、ノイズが走る。

>……。
349 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/31(火) 00:05:56.18 ID:TZ8m8x7No

『2009/4/7』

>画面に白い字で日付が映る。

>確かに、三年前のようだ。

>映像は移り変わり、この寮のラウンジになる。

ゆかり『誰!?』

ゆかり「あ、これ……」

美鶴「……懐かしいな」

>綾時に聞いた話と同じ内容の映像が進む。

>三年前の事件をダイジェストで追っているようだ。

順平『俺だってな……!』

順平「うわ……俺こんなだったっけ」

風花『ナツキちゃん!』

風花「……あの時は、必死だったな」

ガラの悪い男『アキ……こいつを……』

真田「……」

天田「……っ」

>ここまでに、綾時から聞いた話と違う所は無い。

>という事は、やはり……

風花「この映像も、前回と同じく誰かの目線から記録した物のように見えます」

美鶴「そうだな。だが、望月は……」

風花「……前回は、ここまで長く流れませんでした。多分、今日は最後まで映るんだと思います。そして、そろそろ……」

>全員がはっとしたように画面を注視する。

>なんだろう?
350 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/31(火) 00:06:43.59 ID:TZ8m8x7No
綾時『思い出した……』

鳴上「……!?」

アイギス「これは……私が橋で戦った時の」

風花「やっぱり……」

順平「おい、これどういう事だよ。綾時の目から見た絵なんじゃなかったのかよ?」

真田「望月はあの時までアイツの中に居たと言っていたから、もしかするとそのせいなのかもしれないと思っていたんだが……」

ゆかり「綾時君の目線で綾時君が見えるわけ、無いよね」

天田「つまり、これって……」

>画面には死の宣告者の姿となった綾時がいる。

>それと対峙しているこの人物は。

風花「私が思った事、これでわかってもらえたと思います」

>誰も何も言わなかった。

>画面は更に移り変わり、どこか真っ暗な空間を映す。

>巨大な……目?だろうか。

>アメノサギリに少し似ている。

>あれが、死……。

順平「アイツ、あんなのと戦ってたんだな……」

ゆかり「でも、変じゃない?だって彼は……」

アイギス「マヨナカテレビは中に落とされた人を元に映像を映すはずですよね」

鳴上「今まではずっとそうだったけど……」

真田「だとしたら、おかしいな」

天田「そうですね……だって、あの人がここにいるわけがない」

美鶴「彼は……もうどこにもいないのにな」

風花「でも、こうして映っている映像を見る限りでは、他の可能性は考えられません」

>風花が一度大きく深呼吸をする。

風花「恐らく、テレビに落とされた人物は綾時君ではなく……有里、湊君だと思います」
351 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/07/31(火) 00:08:13.02 ID:TZ8m8x7No
彼でした。
では、また明日。
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/07/31(火) 00:15:32.63 ID:wyqlgJT60
乙!


楽しみにしてる!
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 01:11:50.27 ID:UTKPTpYO0

キタローの事忘れてた
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/31(火) 11:02:51.52 ID:f2bb0I2eo

法王ってNo.Xじゃ無かったっけ?
間違ってたら、すまん。
355 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:03:41.73 ID:kQgpc260o
>有里湊。

>話には聞いている。

>かつての特別課外活動部の実質的なリーダーで、俺と同じワイルドのペルソナ使い。

>そして、三年前に……命を賭けて世界を救い、今はもういないはずの人物。

>それが、何故?

鳴上「どうなってるんだ……」

メティス「あの、それで……作戦は行うんですか?」

鳴上「それはそうだろう。誰だろうと、助けないわけにはいかない」

メティス「そうなると、メンバーを選ばないと……」

>そうだった。

>指揮権が俺にあるという事は、メンバーもやっぱり俺が……。

美鶴「私に……私に行かせてくれ」

ゆかり「私も、手伝わせて」

アイギス「是非、私を」

風花「バックアップは私が」

>女性陣の目がいつもと違う。

順平「鳴上……悪い事は言わないからさ、俺と真田先輩と天田でチーム組もうぜ」

鳴上「順平さん……どうしてですか?」

順平「見りゃわかんだろ。あいつら、ちょっと思い入れ強すぎてさ。入れ込んじまってるだろ。多少でも冷静な俺らが行った方がいいって」

>……確かに、あれでは冷静さに欠けるだろうが。
356 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:04:08.49 ID:kQgpc260o
メティス「私は、今回はちょっと……その、三年前は、私は……」

>メティスはその様子を見て身を引く事にしたようだ。

鳴上「……仕方ないですね。じゃあテレビの中には俺と順平さんと真田さんと天田で入るって事で。山岸さんはどうしても一緒に来てもらう事になりますけど」

真田「大丈夫だろう。あいつらだってやるべき事はわかってるさ。今は動転してるかもしれないが」

天田「ま、みなさんは仕方ないとこありますよ。当時小学生だった僕でもただの友達じゃないなって思ってましたし」

順平「っつーわけだから、今回は俺らが行くから。女性陣待機!オッケー?」

美鶴「……指揮権を預けた手前、それを否定するわけにもいかないな」

ゆかり「仕方ない、か……」

アイギス「あの、お気をつけて……」

>風花以外の女性陣は目に見えて落胆している。

>有里湊……一体彼女たちにとってどういう存在だったのだろうか。

風花「それじゃ、行きましょうか。準備はいいですか?」

>順平さん、真田さん、天田。

>それぞれの顔を見る。

順平「いつでもいけるぜ」

真田「俺もだ」

天田「僕だって」

鳴上「それじゃ行きます。気をつけてください」

>テレビに指を沈める。

>……。
357 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:04:36.50 ID:kQgpc260o
鳴上「ここは……」

>さっきの映像で見た場所だ。

天田「やっぱりここですか」

順平「お、なんだタルタロスじゃん。いやー久々だな」

真田「久々と言えば、順平、召喚器は持ってきたか?」

順平「うっす。きっちり持って来ましたよぉ」

天田「あ、けど多分テレビの中だといりませんよ召喚器」

順平「あ、そうなの?」

鳴上「俺たちは一回も使ったことありませんから」

順平「へぇー……そりゃ楽でいいな」

>喋りながら探索していく。

>どうやら今回はダンジョンもあるらしい。

>階段を探して、上る。

順平「しっかし……まだ信じらんねーな。本当にこん中にあいついんのかよ」

鳴上「有里さんですか」

真田「信じられんのは確かにそうだが、何があってもおかしくなさそうな空気じゃないか?」

天田「影時間が再現されるような現象なわけですから。それに、望月さんだって出てきたし、あながち無いとも言えませんよ」

順平「そうだよ、綾時。結局あの綾時と同じなのか?」

鳴上「前の事は覚えてるみたいでしたけど、新しく生まれたって本人は言ってましたね」

順平「わかんねーなー……どうなってんだよ一体」

真田「望月も今は連絡がつかないんだろ?」

鳴上「はい。だからてっきりテレビの中にいるものだと思ってたんですが」

順平「……俺、すげえ嫌な予感すんだけど」

天田「同感です……ちょっと、緊張感持った方がいいかもしれませんね」

>二人が神妙な顔つきをしている横で、真田が笑っている。

真田「ちょうどいいじゃないか。あの時からどれだけ進歩したか……改めて確認できる」

>順平がため息をついた。

>……。
358 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:05:07.26 ID:kQgpc260o
順平「いい加減しんどくなってくんな……」

天田「今何階でしたっけ?まさか実物と同じだけあるんじゃ……」

真田「なんだお前ら、もうバテたのか?」

>真田だけが妙にハツラツとしている。

鳴上「ゴールが見えないのは精神的にも厳しいですね……。あ、階段ありましたよ」

>……?

>今までと空気が違う。

>これは……

真田「……頂上、だな」

順平「いよいよか……なんか、ふざけてたけどここまで来るとやっぱ緊張すんな」

天田「順平さん、腕震えてません?」

順平「ばっ、ちげえよ!こりゃアレだ、武者震いってヤツだろ!」

鳴上「……行きましょう。多分、そこに綾時もいるはずです」

>階段を一段上がる度に、空気が変わっていくのを感じる。

>さっきまでふざけあっていた三人も押し黙ってしまった。

>沈黙の中、靴音だけが響く。

綾時『やぁ、来ると思ってたよ』

>上った先に部屋は無く、屋上には月を背に巨大な何かが存在した。

鳴上「やっぱりお前なのか、綾時」
359 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:05:34.36 ID:kQgpc260o
綾時『うん。どうしても僕はこの役回りから逃れられないらしい』

順平「久しぶりだなぁ綾時」

>順平が笑う。

綾時『久しぶり。元気そうでなによりだ』

順平「おう、それだけが取り柄ってな。んでさ、俺らアイツ探してんだけど、お前何か知らね?」

綾時『……ごめん。僕にもわからないんだ。どこか近くにいるような気はするんだけど』

鳴上「近くに……」

>メティスと出会った時を思い出す。

>あの時、アイギスはエレボスを構成するコアとして使われていたはずだ。

鳴上「綾時、有里さんはお前の中にいるんじゃないのか?」

真田「中に?どういう事だ?」

天田「そうか、前にアイギスさんはエレボスの中に……それなら、あの望月さんも有里さんを元に作られてるのかも」

綾時『残念ながら違うみたいだ。すまないけど、これ以上君達の力にはなってあげられそうもない』

風花『あ……この感じ……あの時と同じ……!』

>今までほとんど喋らなかった風花が言う。

風花『嘘でしょ……皆さん、急いでください!死が……ニュクスがすぐ近くまで迫ってます!』

順平「……なんだってぇ!?そこまで再現してんの!?」

綾時『僕がこの姿になってるって事はそういう事さ。君達が選べる道は2つ。滅びを受け入れるか、抗って滅ぶか。そのどちらかだ』
360 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:06:23.44 ID:kQgpc260o
天田「そんな……またあの時と同じ」

鳴上「例えばお前を倒しても、それは変わらないのか」

綾時『それはそこにいる皆に聞けばいい。前回の事を思い出せばわかるはずだよ』

真田「……確かに、お前を倒した所でニュクスには勝てなかったな。というより勝負にならなかった。アイツ以外は」

綾時『そろそろ時間だ。選んでくれ。僕を倒して足掻くのか、それとも諦めて、楽に死ぬのか』

>時間が無い。

>綾時を倒してもどうにもならないなら別の手を考えなければならないが……。

>それを考える時間も、材料も、今は足りない。

鳴上「くそ、どうすれば……」

順平「おいおい、何難しく考えてんだよ」

>順平が武器を構える。

順平「とりあえず足掻いてから考える。諦めるって選択肢だけはそりゃ、ナシだろ」

真田「言うようになったな、順平」

>真田が拳を握る。

真田「あの時勝てなかった、あの時戦えなかった……今はどうだか試してみようじゃないか」

天田「何度も戦いたい相手じゃないんですけどね……」

>天田が肩を回す。

天田「来週、見たい番組があるんで。負けてらんないですよね」

綾時『……君は、どうするんだい?』

>綾時は俺を見下ろしている。

>俺の答えは……。

鳴上「夏休みにな」

>決まった。
361 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:06:56.46 ID:kQgpc260o
鳴上「八十稲羽っていう、俺が前に暮らしてた街に行くんだ。その時、お前も連れて行くって言ってしまったから。ここで世界が滅んだら、俺は嘘つきになる。それはごめんだ」

>刀を握る。

>相手は強大だ。それはわかる。

>だが、黙って負けるわけにはいかない。

綾時『いいだろう。それなら相手になろう。ただし……きっと、絶望するよ』

>プレッシャーが強くなる。

風花『ふぅ……はぁ……絶対、綾時君も彼も、助けて帰りましょう。みなさん、気合い入れてください!』

順平「風花が気合いだってよ。あいつ、ちょっと変わったか?」

天田「ですね。似合わないかも」

真田「いいじゃないか。結局最後は気合いだ」

鳴上「行くぞ、綾時」

綾時『今から、僕は望月綾時じゃない』

>羽根が広がる。

ニュクス・アバター『死の宣告者、ニュクスの現身……ニュクス・アバター。足掻くなら、見せてもらうよ。君達の力を』

順平「嫌ってほど見せてやるぜ!トリスメギストス!」

天田「カーラ・ネミ!」

真田「カエサール!」

鳴上「……イザナギィ!」

>ペルソナを召喚し攻撃に備える。
362 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:07:48.56 ID:kQgpc260o
風花『綾時君……いえ、ニュクス・アバターは各種アルカナを変更する事で自分の能力も変化させます!気をつけて!』

ニュクス・アバター『知恵の実を食べた人間は、その瞬間より旅人となった……カードが示す旅路を辿り、未来に淡い期待を託して』

>ニュクス・アバターの雰囲気が変わる。

鳴上「これが、アルカナを変えるって事なのか?」

ニュクス・アバター『そう……、とあるアルカナがこう示した……強い意志と努力こそが、唯一夢をつかむ可能性があると』

風花『現在のアルカナ、魔術師!火炎来ます!』

>言うと同時に業火が舞う。

順平「効かねえ!こっちも行くぜ!空間殺法!」

>順平のペルソナが敵に突進し、幾度も切り裂く。

風花『順平君、すごいです!アルカナ変わります!』

ニュクス・アバター『そのアルカナは示した……心の奥から響く声なき声、それに耳を傾ける意義を……』

風花『アルカナ、女教皇!氷です!真田先輩のカバーを!』

>空気が冷えていくのを感じる。

真田「ぐぉっ……!」

>真田を冷気が襲い、その衝撃でダウンしてしまう。

>即座に天田が駆け寄り、助け起こす。

天田「真田さん!」

真田「悪いな……さて反撃と行くか?」

ニュクス・アバター『そのアルカナは示した……生が持つ輝き、その素晴らしさと尊さを……』
363 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:08:20.18 ID:kQgpc260o
風花『アルカナシフトしました!女帝……疾風です!』

>順平を突風が襲う。

順平「うわ……っとぉ!」

>倒れかけた順平を支える。

鳴上「大丈夫ですか!?」

順平「サンキュー鳴上!っしゃ次だ!」

ニュクス・アバター『そのアルカナは示した……あらゆるものに毅然と向き合い、答えを決するその勇気を……』

風花『えっと……皇帝!電撃です!』

>電気火花が散り、辺りが発光する。

真田「効かん!喰らえ!」

>真田のペルソナ、カエサルがニュクス・アバターを殴りつける。

風花『流石です、真田先輩!次、来ます!』

ニュクス・アバター『そのアルカナは示した……己を導く存在、それを知る事の大切さを……』

風花『アルカナ、法王!状態異常に気をつけて!』

天田「その前に……倒す!」

>天田のペルソナがニュクス・アバターに突進し、体を貫いた。

>……。
364 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:08:48.17 ID:kQgpc260o
順平「くそっ……もうカラだぜ……」

真田「汗も出んな……」

天田「でも……」

ニュクス・アバター『知恵の実を食べた人間は、その瞬間より旅人となった……』

鳴上「まだ、倒せないのか……!」

>何度も何度も、そう多くは撃てないだろう一撃を叩き込んだ。

>それでもまだ、ニュクス・アバターは平然と浮かんでいる。

>それどころか、まだ本気を出していないように思う。

ニュクス・アバター『アルカナの示す旅路を辿り、未来に淡い希望を抱く……』

風花『これ……今までよりずっと強い力が……』

ニュクス・アバター『しかし、アルカナは示すんだ……』

順平「へっ……やっと本番、ってか……」

ニュクス・アバター『その旅路に待つものが、“絶対の終わり”だと言う事を』

天田「まだ……やれますよ……!」

ニュクス・アバター『いかなる者の行き着く先も……』

真田「残るは、一つ……」

ニュクス・アバター『絶対の“死”だと言う事を!』

風花『アルカナ、死神です!これが、ここからが本領……皆さん、大丈夫ですか!?』

ニュクス・アバター『君達に残っているのはわずかにその生命だけ……それまで燃やす事は無いじゃないか。苦しんだ所で、どうせ……』
365 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:09:42.69 ID:kQgpc260o
順平「変わってねぇなあ、お前は」

>順平が皮肉っぽく笑う。

真田「俺たちだって変わってないさ。諦める、なんて話は……」

天田「事ここに至っても、まだ思いつきませんね」

鳴上「諦めるには、まだやれる事が残ってる。やるさ」

ニュクス・アバター『……そうだったね。君達は諦めない。なら、絶望を贈ろう』

>途端、体がずしりと重くなった。

>叫びのような音が聞こえる。

真田「この……感じは……!」

順平「またっ……かよぉっ……!」

風花『そんな……やっぱり駄目なの……?』

鳴上「なんだ、この力……どこから……!」

ニュクス・アバター『君達の頭上、遥か月からの力。君達は死に抗う事は出来ない。君達が人であるかぎり例外は無い』

>死の力。

>膝から崩れ、地面に倒れこむ。

>頭が痛い。

天田「これじゃ……同じじゃないか……あの時と……!」

順平「何にも変わってねぇのかよ、俺達はよぉ……」

真田「勝てない……のか……今の俺でも、まだ……」

>皆の苦しげな呻きが聞こえる。

>もうその様子を窺う事も出来ないが……。
366 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:10:30.50 ID:kQgpc260o
鳴上「まだ……まだだ……!」

>渾身の力を込めて立ち上がる。

>立ち上がるのに精一杯で、戦えるとは思えない。

>それでも、このまま地に伏しているよりはいい。

ニュクス・アバター『……驚いた。まだ立てるなんて』

鳴上「立つさ、何度だって。俺は、まだ諦めない!」

ニュクス・アバター『ごめんよ、悠。それでも君の願いが叶う事は無いんだ。君は立っているだけでやっと……だけどこの力は、更に強くなる』

>言う通りだった。

>プレッシャーが何段も上がっていく。

>一度立ち上がった俺は、再び地面に倒れ伏す事になった。

風花『鳴上君!順平君!真田先輩!天田君!みんな……もう、駄目なの……?』

>風花の声が聞こえるが、もう目も良く見えない。

>月と、その前に在るニュクス・アバター。

>……綾時。

>誰も、救えないのか……。

>世界は……。
367 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:11:04.48 ID:kQgpc260o
ニュクス・アバター『……君は』

>霞む目に、あり得ない物が写る。

>ニュクス・アバターの前に、ニュクスの力の只中に。

>一人の人間が、まっすぐに立っている。

>人差し指を立て、天に……ニュクスに向けて高く上げて。
368 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 00:12:05.23 ID:kQgpc260o
法王は5でした。お詫びして訂正いたします。
暑さのせいで間違えました。夏が悪いです。
ついでに今回セリフあってるかなとか思いながら書きました。

では、また明日。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 00:19:22.11 ID:jDZZHcEDO
うるさいはよ書け
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 00:44:45.93 ID:nnNQ96sFo
おつーん
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 00:58:58.87 ID:XYY7Pm6Qo
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 10:47:34.95 ID:CWwPCN6Q0

373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/01(水) 21:10:20.97 ID:fBaIxfNao
追いついた乙
374 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/01(水) 22:34:16.51 ID:kQgpc260o
本日・・・体調不良につき更新ありません・・・。
明日、明日更新するんで・・・

では、また明日。
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/02(木) 01:21:38.40 ID:LG0iGXFao
お、おう。夏バテには気を付けろよ
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/08/02(木) 22:07:20.59 ID:1BkjW5cU0
お大事に・・・無理しないでください。
そういう俺は家族全員の看病中。
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 22:10:48.45 ID:iZ+6SaQIO
ageて期待させてんじゃねーよks
378 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:08:20.23 ID:Ka21XPr5o
「サタン」

>あれは……ペルソナ?

>人影の背中に巨大な悪魔の影が現れる。

「ルシフェル」

>今度は、神々しい天使が。

風花『嘘……これって……』

「……ハルマゲドン」

>二種類のペルソナがその力を一つに重ねる。

>光の渦がニュクス・アバターを取り込む。

順平「おい……マジかよ」

天田「あれって……」

真田「間違いない、な」

風花『有里君……!』

>光が収まるとそこには既に何もいなかった。

鳴上「倒した……のか?」
379 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:08:46.71 ID:Ka21XPr5o
>そうだ、綾時は!?

鳴上「綾時!」

少年「心配無いよ。ここにいる」

>体の異常も収まっている。

>上空にあったはずの月はどこにも無い。

>終わったのか……?

鳴上「お前は……」

天田「有里さん!」

>天田が少年に駆け寄った。

真田「随分と久しぶりだな。俺の事は覚えているか?」

>少年は無表情なまま答える。

少年「真田先輩と……誰?」

天田「天田です、天田乾」

少年「……凄く大きくなったね」

鳴上「あの……」

少年「君が天田って事は、そこの彼は……コロマル?」

鳴上「こ、コロマル?」

天田「違いますよ。有里さんがいない間にいろいろあって……新しい仲間の鳴上悠先輩です。」
380 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:09:15.64 ID:Ka21XPr5o
少年「そう……よろしく、鳴上君」

鳴上「ああ……」

順平「よう、有里」

有里「順平」

>順平は複雑そうな表情をしている。

>が、黙って手を出した。

有里「……ただいま」

順平「おう、おかえり。いろいろさ、話したい事もあるんだよ」

有里「……ところで、わけがわからないんだけど」

鳴上「後で説明します。とりあえず……山岸さん?」

風花『有里君……うっ……ぐすっ……』

>……泣いている。

鳴上「あの……」

風花『ごめ……なさ……えっと、その……どうしましたか?』

鳴上「こちらからニュクスが確認できなくなりました。今どうなってますか?」

風花『……反応、消えてます。もう平気だと思う』

鳴上「そうですか。とにかく一度帰ろう。綾時は……」

>綾時を見ると、既に有里が肩を貸している。

有里「行こう」

>意識は無いようだが、体に大きな傷もない。

鳴上「無事なのか……?」

有里「息はしてるよ」

>今は信じるしかない。

>まだ重い体を引き摺って、テレビから出る事にした……。

>……。
381 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:09:41.50 ID:Ka21XPr5o
順平「っだー!やってやったぜんにゃろー!」

天田「覚悟が出来て無かった分、厳しかったですね……」

真田「情けない話だが、もう一歩も動けん。眠い」

鳴上「ははは……」

>テレビから出た途端、とんでもない脱力感が全員を襲った。

>今すぐにでも寝てしまいそうだ……。

順平「あれ?そういや皆いねーな。どこ行ったんだ?」

>確かに、ラウンジにいたはずの女性陣の姿が無い。

有里「……まずい」

>有里が小さく呟いたのを俺は聞き逃さなかった。

鳴上「何がまずいんですか?」

有里「いや、別に……ちょっと出掛けてくる」

順平「おいおいどこ行くんだよこんな時間に」

真田「そもそも今の状況わかってるのか?」

天田「……」

>天田は船を漕いでいる。

>まぁ、今の気温なら風邪はひかないだろうが。

鳴上「ちょっと俺、探して来ますよ。多分会いたがってると思うし」
382 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:10:22.92 ID:Ka21XPr5o
有里「いや、いい。そっとしておいてくれ」

鳴上「ええ……?」

メティス「お疲れ様です皆さん。そして初めまして有里さん。アイギスの後継機のメティスと言います」

>上階からメティスが降りてくる。

有里「後継機……?」

メティス「詳しい話は追々。今は急を要する事態です」

鳴上「どうした、また何かあったのか?」

順平「勘弁してくれよ……もう余力ねーって」

メティス「いえ、有里さんだけで。みなさんは今日はもうお休みくださいとのことです。三階ロビーで皆さんお待ちですので、有里さんは至急上がってきてください」

>有里の顔色がみるみる青ざめて行く。

順平「……ああ、そっか。マヨナカテレビで全部流されちゃったもんな」

天田「あー……僕らが入ってる間に何話してたんでしょうね」

真田「ともかく今日は休もう。詳しい話はまた明日だ。鳴上、俺の使ってた部屋なんだが……」

鳴上「二階は俺と天田の部屋以外は空いてますよ」

真田「丁度いい、使わせてもらうか。物置になっているわけでもあるまい」

有里「……はぁ」

鳴上「どうしたんです?辛そうですね」

有里「いや、別に……」

>もう一度ため息を吐く。

有里「……どうでもいい」

>……なんだかよくわからないけど、今日は寝よう。

>疲れた……。
383 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:10:54.19 ID:Ka21XPr5o


【5/7 曇り】


>体が重い……。

>昨日の疲れがまだ残っているようだ。

鳴上「い、たたた……筋肉痛になったのは初めてだな」

>連休最終日にも関わらず、ろくに動けなさそうだ。

鳴上「とりあえずラウンジ……だな。有里さんや他の皆から話を聞かないと」

>わからない事だらけだ。

>昨日はとりあえず良しとしたけれど、ニュクスはどうなったのか、有里はどこから現れたのか。

>綾時はどうなったのか……。

>話をする必要がある。

真田「起きたか」

>ラウンジには真田と天田、順平がいる。
384 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:16:48.79 ID:Ka21XPr5o
鳴上「おはようございます。その様子だと皆も……」

順平「一晩じゃ無理だわな、まぁ」

天田「真田先輩は元気そうですけどね……」

真田「日頃の鍛錬の成果だな。それはいいが、有里はどうしてる?」

順平「さぁ……死んでなきゃいいっすけどね」

鳴上「見てきましょうか」

天田「やめといた方がいいですよ……」

>しばらく雑談していると、階段を降りる足音が聞こえた。

>この硬質な音は……

鳴上「おはようございます、桐条さん」

美鶴「ああ、おはよう。揃っているな」

>美鶴が降りてくるのに追従するようにして、女性陣がぞろぞろと階下へやってくる。

ゆかり「ふぁ……ちょい眠いなー、流石に」

風花「大丈夫?ゆかりちゃん」

アイギス「眠いなら休まれた方が……」

ゆかり「平気平気、ちょっと話するくらいでしょ?」

>その中に、有里の姿もあった。

>……もともと表情豊かといった感じでは無かったが、今は張り付いたような無表情だ。

>顔色も妙に悪い。

>昨夜、一体何があったのだろうか……。
385 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:17:16.36 ID:Ka21XPr5o
メティス「……世にも恐ろしい話が。多分、鳴上君は知らない方がいいと思うけど」

>メティスが隣にやってきてぼそりと言った。

>……いよいよ一体、何があったのだろうか?

美鶴「さて、とりあえずはご苦労様だ。今回は二人とも救出する事ができた。綾時の方は検査も兼ねて入院してもらっているが、有里は目立った衰弱も無いから聴取を優先させてもらうぞ」

順平「目立った衰弱、あるよな」

鳴上「ええ……テレビから帰って来た時より悪化してますね」

有里「……まず、今の状況を聞きたいんだけど」

鳴上「俺から説明します。まず今は……」

>有里のいない間に三年が経過していること。

>自分が解決した事件の話。

>今起こっている事件の話。

>それらを順を追って説明した。

有里「三年……か」

>思う所があるのだろう。

>有里はぽそりと呟いた。

鳴上「それで、今の事件の犯人……もしかしたら人では無いのかもしれないですが、その元凶を何とかしたいんです」

有里「良くわかった。ありがとう」

>有里の顔色は気付けば元に戻っている。

>切り替えの早いタイプなのだろう。
386 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:17:49.58 ID:Ka21XPr5o
有里「僕から言える事はそう多くない。なにせ、今の状況を何も知らなかったし、それからわかってもらえると思うけど事件について知っている事は何もない」

美鶴「それで構わない。まず昨日の事を聞かせて欲しい。現場に行った彼らからの質問に応えてくれ」

>有里が黙って頷く。

>質問……いくらかある。

鳴上「じゃあ、いいですか?まず昨日テレビの中に現れるまで、有里さんはどこにいたんですか?」

有里「どこにもいなかったと思う。少なくとも意識は無かった。気がついたら君達を見下ろしてた」

鳴上「見下ろしてた……?」

有里「……僕は、ニュクスの中にいた。そう言えば伝わるかな」

>アイギスの時は、エレボスの中に。

>やはり、中核を成す存在の中に被害者は囚われているらしい。

順平「ニュクスっていや、結局ニュクスはどうなったんだよ。気がついたら消えちまってたけど」

天田「そういえばそうですね。ニュクスが消えたから有里さんが出てこれたのか、あるいは逆か……」

>有里は首を捻っている。

>どうやら自分にも良くわかっていないらしい。

有里「気がついたら自由だった。……君達が、このままじゃ倒れるって思って、そうしたらあそこに」

順平「俺達のピンチにヒーロー登場ってか?」

>ピンチに……そんな事あるだろうか?

美鶴「何らかの力を感じたりはしなかったか?」

有里「別に何も。……強いて言えば、力が無くなった、のかも」

真田「無くなった?どういう事だ」

有里「僕を拘束する力が無くなった……のかもしれない。実際の所は良くわからないです。すみません」

>ニュクスの中に拘束する力が働いていたというのは最もらしい。

>それが解けて、外に出る事が出来た……だとしたら、その条件は?
387 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:18:33.35 ID:Ka21XPr5o
有里「本当に、何もわからないんだ。気が付いたらあそこにいて、皆を助けようと思って、綾時を」

美鶴「……新しい情報は無しか。有里、体に不調は?」

有里「これといって。一晩寝て起きた感覚ですよ。寝起きにはちょっとキツイ運動でしたけど」

>言いながら、手を握ったり開いたりしている。

鳴上「……とにかく、検査は受けた方がいいですよね。なんとも無かったとして、有里さんは俺達と一緒に戦ってくれるんですか?」

順平「そりゃお前……」

有里「……いや、やめておこうと思う」

>全員に衝撃が走った。

順平「マジで言ってんのかお前!?」

有里「マジで言ってる」

風花「……前は一緒に戦ってたからって、今度も戦ってくれるとは限らないよね。当たり前といえば、そうかもしれないけど」

美鶴「理由を聞かせてもらいたいものだな。もし得心が行く理由でなければ」

ゆかり「どうなるか……」

有里「……理由は簡単なんだけど、僕、多分普通の体じゃないんですよ」

天田「普通の体じゃない?どういうことですか?」

有里「綾時もそうだけど、僕も、誰かに作られた存在……なんだと思う。だから、もしもの時にちゃんといられるかわからない」

>その言葉に、メティスが体を震わせたのが目の端に留まった。

有里「だから、悪いけど……」

真田「……確かに、敵が何らかの手段を講じてないとも限らん。作戦の中核には据えかねるか」

有里「非常時には僕も出張りますよ。今はそれで」
388 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:29:30.68 ID:Ka21XPr5o
>場に気まずい沈黙が降りる。

>てっきり、一緒に戦ってくれると思っていた。

>しかし有里の言う事にも理がある。

>もしもの時、敵の手中に落ちる可能性があるわけだ。

>なら……並んで戦うのは危険なのかもしれない。

アイギス「でも、これからどうするんですか?」

風花「あ、そっか……有里君、もう住む所も無いし……」

>美鶴とゆかりが同時に動く。

ゆかり「私、丁度良い所知ってるんだけど」

美鶴「仕方あるまい、私が預かろう」

有里「……あの、作戦には参加出来ないけど、あんまり皆と離れるのもどうかと思うから、出来ればこの寮にいたいんだけど」

真田「何かあった時にすぐわかるのは重要だな。それでいいんじゃないか?」

天田「また一緒ですね。部屋は空いてるし……あ、でも真田さんとか順平さんが使う事考えたらあの部屋くらいしか……」

>天田の表情が曇る。

美鶴「不満ならどこか近場を都合するが?」

天田「いえ……もう、いいんです。昨日、久しぶりにあの人の顔を見れたし、もう大丈夫」

風花「じゃあ有里君も寮預かりで!」

順平「うわぁ……露骨に喜んでんな……」

鳴上「これからよろしくお願いします」

有里「うん、よろしく。よかったら後で部屋に行っていいかな?話があるんだ」

>後半は俺にだけ聞こえるように小声だった。

鳴上「はい、いいですよ。それじゃ、部屋で」

>……何の話だろうか?
389 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/03(金) 00:29:57.37 ID:Ka21XPr5o
夏バテではないけど胃がまずいんですよ、胃が。

では、また明日。
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/03(金) 02:04:03.50 ID:n4OQEGjyo
有里wwww
まぁ男女間の友情はありえないゲームシステムだししかたないですよね…
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/03(金) 06:51:57.10 ID:kHdtsqgh0
なんだ有里搾り取られたのか?
392 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:05:26.29 ID:lTUgrxnTo
>部屋でしばらく待っていると、ノックも無しに有里が入ってきた。

有里「……っと、ごめん。いつもの癖で」

鳴上「ああ、前は有里さんの部屋だったらしいですね。いいですよ、別に……って、メティス?」

>有里の後ろから、おずおずとメティスも部屋に入る。

メティス「あの……」

有里「メティスも関係ある話なんだ。とりあえず、鳴上君には謝っておかなくちゃならない」

>そう言って有里は頭を下げる。

鳴上「え、いや、良く分からないんですが」

有里「敬語、使わなくていいよ。順平と同い年だったけど、三年間いなかったわけだから、肉体年齢は君とほとんど同じだし」

鳴上「……そうですか、いや、そうか。それで、有里……は、何で謝ろうなんて言うんだ?」

有里「これから先、君と特別課外活動部のメンバーの間に隙間ができるかもしれない」

>メンバーとの間に隙間が……

>実を言うなら、現時点で少し感じていた事ではあった。

>何か、俺と話しているのに俺を見ていないような……。

有里「それはきっと僕のせいだ。こうして僕が出てきてしまったせいで、より顕著になるかもしれない。だから、ごめん」

鳴上「……良く分からないけど、気に留めておく。なるべく上手くやっていきたいしな」

有里「今はそのくらいでいいよ。ただ、もし辛くなったら僕に当ってもいい。逃げ場にはなれるから」

鳴上「逃げたって物事は解決しない。遠慮しておくよ」

>無表情だった有里の顔が、少しだけ緩んだ……ような気がした。
393 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:05:54.90 ID:lTUgrxnTo
有里「そう。それならいい。さて、それじゃ本題。メティスも関係あるって話」

>メティスが居住まいを正す。

メティス「私達は、本来ここにいないはずの存在だって」

有里「僕は死んでるし、メティスは元々アイギスの中にいるはずだ。今回の事件の影響でこうして在る事ができてるけど、実際は違う」

鳴上「それはわかってる。だけど、それで……?」

メティス「……事件が解決すると、私達はどうなるの?」

>……?

>どうなるって、事件が解決したらもう何も問題が無いんだから普通に……。

メティス「私達を作った力の主が、鳴上君や他の皆にもし倒されたとして、私達は存在し続ける事ができるの?」

鳴上「……え?」

>考えた事も無かった。

>だが確かにその通りだ。

>もし元凶に辿り着いたとして、そこからの力が無くなったとしたら、それによって存在している彼らはどうなるのか?

>……再び、元に戻るのか?

メティス「もし、消えてしまうのだとしたら、私は……」

>メティスの体が震える。

メティス「私は、皆と……まだ、何も、これから、どうやって、嫌……」

>言えば言うほどに想像はクリアになっていく。
394 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:06:23.80 ID:lTUgrxnTo
>メティスは自分の体をかき抱いた。

メティス「消えるなんて……」

鳴上「メティス、落ち着け!」

>触れられない。

>メティスの体にも、心にも。

>俺は、ようやく生きる事を知った彼女の喜びを少しは知っている。

>それが奪われる絶望は想像すら出来ない。

>俺は、彼女を落ち着かせる言葉を持っていない。

鳴上「大丈夫だ、大丈夫だから」

>大丈夫な訳がないと頭ではわかりながら、効果の無い言葉を繰り返す。

有里「メティス」

>戸惑っていると、有里がメティスの体を包むように抱いた。

>自分の体を逃がすまいと掴むその腕の上から、そっと腕をかぶせる。

有里「落ち着いて。大丈夫。君はちゃんとここにいる」

>震えがゆっくりと止まる。

メティス「私は……」

有里「……落ち着いた?」

メティス「は、はい……すみません。不安は有里さんも同じなのに……」

有里「僕は別に。自分で選んだ道だから」
395 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:06:52.10 ID:lTUgrxnTo
>……俺には、何も出来なかった。

>有里は妙な説得力を持っている。

>良く知らない俺でも、何故か彼に任せておけば安心と思うような、そういう魅力がある。

>俺とは、違う。

メティス「ごめんなさい、取り乱して。あの、私、飲み物……買って来る」

>メティスはそう言って部屋を出ていった。

鳴上「……ありがとう、メティスを落ち着かせてくれて」

有里「違う。あれじゃ駄目だ」

>有里は相変わらず無表情だが……何故か、少し悔しそうに見えた。

鳴上「何でだ?」

有里「間に合わせなんだ、所詮は。メティスも言った通り、僕だって同じ境遇だ。結局は、そうじゃない相手からの言葉が無いと」

鳴上「……でも、俺は何て言えばいいのか。逆に傷付けてしまいそうで」

有里「君は不器用なんだね。それでいい。思ったままを言ってあげればいい。後は、任せたよ」

>有里から奇妙な信頼を感じる。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.10 運命 有里湊』を手に入れた!

>有里はどうやら導こうとしているらしい。

>まるで兄が弟にするように、あるいは先輩が後輩にするように……。

鳴上「ちょっと、行ってきます」

>有里は何も言わず頷いた。
396 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:07:35.90 ID:lTUgrxnTo
>メティスは自販機の前でぼーっとしている。

鳴上「メティス」

メティス「え?あっ、鳴上……君。ごめんなさい、何か、気を遣わせて」

鳴上「いや……」

>……思うままを、言う。

>メティスの不安を払拭する事は出来ない。

>恥ずかしい話だが、今まで考えたことも無かったんだから、解決策なんて持っているはずもない。

>それでも、言えというのだろうか。

鳴上「メティスは……もしかしたら、消えてしまうのかもしれない。だけど、事件を解決しないときっと、沢山の人が辛い目に合う。今回だって、世界のいろんな所で暴動が起きて、沢山の人が……」

メティス「わかってる。私の事は気にしないでいい」

>メティスは固く拳を握った。

鳴上「俺は、メティスに消えて欲しくない。だから、解決するまでに何とか手を探してみせる」

メティス「別に……」

鳴上「前にもちょっと言ったけど、俺の仲間にいるんだ。シャドウだったのに、ちゃんとした実体を持って存在してるヤツが。あいつの件もヒントになると思うし……」

メティス「気休めはいい。納得してるから大丈夫」

鳴上「そうじゃなくて……」
397 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:08:02.96 ID:lTUgrxnTo
>伝達力は高めたはずだが……。

>今、自分の中にある気持ちを伝える術が無い。

鳴上「悪い、俺はやっぱり有里みたいに上手くは出来ない。だけど、信じてくれ」

>メティスの手を握って体を引き寄せる。

メティス「何を……!?」

>まっすぐに、メティスの目を見た。

鳴上「俺は、せっかく出会えたメティスとただ別れたりするのは嫌だ。手を尽くして、その上で諦めるならまだしも」

メティス「あ……きらめる、の?」

鳴上「まさか。最後の最後まで諦めないさ。世界中の人が幸せになっても、メティスが幸せじゃなきゃ意味が無い」

メティス「……っ」

>目を逸らされてしまった。

>伝わらなかっただろうか。

鳴上「メティス」

メティス「もういい、わかった!へ、部屋、戻るから!」

>手を振りほどかれてしまった。

鳴上「メティ……拗ねられたか……」

>あの様子ではわかってもらえなかったかもしれない。
398 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:08:48.92 ID:lTUgrxnTo
天田「……何やってんですか、鳴上先輩」

鳴上「天田」

>気がつくと天田が呆れたようにこっちを見ていた。

天田「メティス、どうしたんですか?」

鳴上「いや、俺の本心を伝えようとしたらああなった」

天田「へぇ」

鳴上「……わかってもらえなかったみたいで、残念だよ」

天田「あ、そう見ますか。……なんか、いよいよ似てきましたね、鳴上先輩」

鳴上「誰にだ?」

天田「いえ、別に。僕はもうちょっと寝ます。それじゃ」

>……?

鳴上「俺は……どうするかな」

風花「あ、鳴上君。おはよう」

鳴上「おはようございます」

風花「今メティスがすごい勢いで部屋に逃げ込んだけど……何かあったの?」

鳴上「……いえ、別に」

風花「そう?あ、そのメティスから伝言。『ありがとう』だって。ふふ」

鳴上「えっ……そう、ですか。わかりました、どうも」

>どうやらわかってくれなかったわけではないらしい。

>『No.12 刑死者 メティス』のランクが3になった。

>体は痛むが……ぼーっと過ごすのもいただけない。

>体をほぐす意味で、散歩くらいしようか。
399 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:43:46.32 ID:lTUgrxnTo
>……長鳴神社。

>綾時に初めて会った場所だ。

>今日は誰もいない。

>ベンチに座って休む事にした。

鳴上「……ふぅ」

>日差しは夏の物に変わろうとしている。

>……足音が聞こえる。

>これは、犬の息か?

犬「ヘッヘッヘッヘ」

真田「よし、コロマル。今日はこのへんにしておこう。……ん?」

鳴上「真田さん?」

真田「鳴上か。もう動いて平気なのか?」

鳴上「ええ、ちょっと筋肉痛ですけど。むしろこっちが言いたいんですけど、走ったりして平気なんですか?」

真田「体力が違う。ま、今日のトレーニングは軽めにしておいたがな。休憩だ」

>真田もベンチに座る。
400 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:44:45.39 ID:lTUgrxnTo
鳴上「あの犬、コロマルって言うんですね」

真田「ああ。あれでもペルソナ使いで、俺達の仲間だ」

鳴上「それは聞きました。信じられないけど……」

>真田と雑談をして過ごした……。

真田「お前の体、それなりに鍛えてあるが……それなり止まりだな」

鳴上「まぁ、運動部ではありましたけど。そこまで成績上げてたわけじゃないですしね」

真田「有里のヤツは入って即エースだったぞ。お前も素質はありそうだ。何か本腰入れてやってもいいんじゃないか?」

鳴上「三年になってからはちょっと……」

真田「そういえばそうだったか。お前、進路はどうするんだ?」

鳴上「進路……実は、まだ何も。進学なのかなぁって思いますけど」

>真田は何故か照れくさそうに顎を掻いた。

真田「かく言う俺も最近まで迷っていてな。とりあえず、シャドウワーカーとして活動する為に力をつけようと思っていたんだが……」

鳴上「修行してたんでしたっけ」

真田「世界を回ってな。この前、お前の仲間と会っただろ。あの中にいた……里中がな。少し面白い事を言っててな」

鳴上「里中が?何を言ってたんですか?」

真田「それは秘密だ。とにかく、それでようやく俺の進む道が決まった。案外、そんなもんなのかもしれん」

>照れているのだろうか。
401 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:45:21.30 ID:lTUgrxnTo
>突然立ち上がってシャドーボクシングを始めた。

真田「悩んで悩んで出ない物が、あるきっかけで突然生まれる事もある。お前は……そうだな、俺達を含むいろんなヤツと交流を広げていけ」

鳴上「交流ですか」

真田「なんとなくだが、お前にはそれが一番あってる気がする。人との交流はいい刺激になる。格闘技だって、試合がカンフル剤になる事が殆どだ」

鳴上「確かに、真田さんとこうやって話せてよかったと思います。ちょっとだけ、見えたかもしれません」

真田「それなら良かったな。これでも一応気になってるんだ。後輩たちの将来がな……ガラじゃないが」

>真田は右拳をこちらに向けて振った。

真田「合わせろ」

鳴上「はい」

>自分も右手で拳を作り、がつんと合わせた。

真田「戦いも、生きる事も、手を抜くな。それが俺から言える最初の事だ」

鳴上「そのつもりです。ありがとうございます」

>真田から、不器用な気遣いを感じる。

>『No.17 星 真田明彦』のランクが2になった。

真田「よし、それじゃ帰る。またな」

鳴上「はい、それじゃまた」

>真田と別れ、コロマルと少しだけ遊んで寮に帰った。
402 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:46:49.21 ID:lTUgrxnTo
アイギス「おかえりなさい」

鳴上「ただいま……って、アイギス、どうして寮に?」

アイギス「姉さんを送ってきたんです」

ラビリス「悠!おかえりー!」

>ラビリスが飛びついてきた。

鳴上「おわ、っと。ただいま」

ラビリス「ウチもこの寮住んでええことになったから!今度から月光館も通ってええって!同級生やでー!」

鳴上「何?そうなのか?」

ラビリス「うん!いろんな人に世話になったみたいで……ほんま、ありがたいわ」

鳴上「良かったな。あ、でもそれだとメティスとも同級生か……不思議な事になってるな」

「あはは、確かにそうだねぇ」

「……どうでもいい」

>……?
403 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 00:47:19.19 ID:lTUgrxnTo
今月は満月が二回あるそうで。満月シャドウも月二で出るのかしら。

では、また明日。
404 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/04(土) 12:01:33.49 ID:lTUgrxnTo
(日付の計算ミスってる事に気付いた。5/7は月曜日だ・・・ふ、振替休日・・・とかで・・・勘弁してください・・・)
405 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/05(日) 00:11:40.79 ID:Fial17Tno
>背後から聞こえるこの声は。

鳴上「綾時!」

綾時「や」

鳴上「検査入院してたんじゃないのか?」

綾時「抜け出してきちゃった。……っていうのは嘘。元々大した消耗も無かったんだ。あの世界は僕を……いや、彼を元にしてるから」

>隣に立っている有里を指さす。

有里「どうして僕が綾時の迎えに……」

綾時「いいじゃない。久々の再会だよ?」

有里「だから僕にとっては綾時と戦ったのは昨日の話みたいな物なんだって」

>有里が妙に饒舌だ。

>この二人は、やはり特別な仲のように見える。

>元々同じ人間だったのだから当たり前だが。

綾時「でさ、悠にお礼言っておこうと思って」

鳴上「礼?何のことだ?」

綾時「やだなぁ、助けに来てくれたでしょ」

鳴上「ああ……別に、礼を言われるような事じゃないよ。友達が困ってたら助けるだろ、お前だって」
406 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/05(日) 00:12:07.46 ID:Fial17Tno
>綾時だけに留まらず、有里もきょとんとした顔をしている。

>後ろで話しを聞いていたアイギスは困ったように笑い、ラビリスは何故か誇らしげだった。

綾時「そうか……君はそういう事が言える人だったんだね。これからどうなるかわからないけど……」

>綾時が手を差し伸べる。

綾時「悠と友達になれてよかった。良ければこれからもよろしく頼むよ」

鳴上「もちろん。よろしくな」

>綾時としっかりと握手した。

>綾時の手は少し冷たかったが、はっきりとした感謝が伝わってくる。

>『No.13 死神 望月綾時』のランクが2になった。

アイギス「男の友情ですね……」

ラビリス「悠は友達多くてええなぁ」

綾時「えっと、ラビリスさんだよね。お見舞い来てくれた順平から聞いたんだけど、アイギスさんのお姉さんなんでしょ?」

ラビリス「ん、そうなるんかな。アンタは望月綾時やな?」

綾時「うん。そっちも聞いてはいるみたいだね。君も月光館に通うんでしょ」

ラビリス「そうやで!……あ、綾時も同級生になるんか」

綾時「うん。だから、良ければお友達になってもらえないかなと思ってさ」
407 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/05(日) 00:12:57.37 ID:Fial17Tno
ラビリス「え、ええの……?」

綾時「是非」

ラビリス「ほ、ほな、よろしくな。明日からウチも学校行くから」

>ラビリスは綾時の右手を両手で取ってぶんぶんと振っている。

>よほど嬉しかったのだろう。

アイギス「……この場合のお友達は普通のお友達でいいんでしょうか?」

有里「……さぁ?」

アイギス「では姉さん、私はこれで。有里さん、少しお付き合いしてもらいたい事が……」

有里「いいよ。行こうか」

>ラビリスはまだ綾時と握手している。

鳴上「……良かったな」

>明日からまた学校だ。

>……なんとなく、またラビリスも同じクラスになる気がする。

>というか、メティスは間違いなく桐条からの手回しがあっただろうし、ラビリスも同じだろう。

>気苦労は増えそうだが……。

>楽しそうだし、良いか。
408 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/05(日) 00:14:19.37 ID:Fial17Tno


【5/8 晴れ】


>昨日まであった雲はどこかへ行って、今日は快晴だ。

>起きて着替えをしていると、突然部屋の扉が開いた。

ラビリス「悠!おはようさん!」

鳴上「……」

ラビリス「……はよ着替えや」

鳴上「見られながら着替える趣味はない!」

>びたーんと音を立てて扉を閉める。

>大急ぎで着替えてまた開けた。

ラビリス「もー、別に全部脱いどったわけやないしええやんかー」

鳴上「いや、びっくりするだろ……」

ラビリス「あ、ノック忘れとった……ごめんな」

鳴上「次からは頼むぞ。それで、何の用だ?」

ラビリス「何って、学校!今日からウチも通う言うたやろ?」

鳴上「ああ、そうか。なら一緒に行こう。メティスも呼んで来ようか」
409 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/05(日) 00:15:17.43 ID:Fial17Tno
ラビリス「せやな!いやー楽しみやわー。ほんまに学校通えると思ってへんかったから。生徒会って今からでも入れるんかなぁ」

鳴上「今からはどうだろうな。少なくとも会長はもう決まってると思うぞ」

ラビリス「なんやぁ、残念。っと、言うてる場合ちゃうわ。遅刻はあかん!ほら、急ぐで!メティスはウチが呼んできとくから!」

>ラビリスにやたらと急かされて準備を済ませる。

>鞄を持ってラウンジへ降りると、既にメティスとラビリスが待っていた。

ラビリス「はよ行くで!」

メティス「おはよう。行こう」

鳴上「それじゃ行くか」

>出掛けに風花も降りてくる。

鳴上「おはようございます。二人と学校行ってきます」

風花「あ、おはよう。うん、いってらっしゃい」

>風花は笑顔で挨拶を返してくれた。

>だが……なんだろう、違和感がある。

鳴上「……気のせいだろ」

>ラビリスにとにかく急かされるので、気にしない事にして学校へ向かった。

ラビリス「しっかし気付いたら妹と同級生かぁ。なんや変な感じやなぁ」

メティス「元々私は存在しないナンバーだから……でも、姉さんが増えたのは嬉しい」

ラビリス「甘えてええんやでー」

メティス「やっ、甘えないよ!」

>メティスはラビリスにからかわれている。
410 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/05(日) 00:15:47.92 ID:Fial17Tno
>……本当の姉妹みたいだな、と思った。

ラビリス「姉さんといや、アイギスな。ウチらにとってみたら一番の先輩なんよな」

メティス「そうなるのかな。私はほとんど姉さんと記憶を共有してるから、あんまりそういう意識はないけど」

ラビリス「聞いた?アイギスって飛行機乗ったことあるんやて!飛行機って、空飛ぶんやろ?ウチも飛べるけど、どっちが速いんやろな」

メティス「うーん、どうなのかな。ラビリス姉さんは何km出せるの?」

ラビリス「えーと、リミッター全解除で……」

鳴上「待て!」

>今は登校中、周りに生徒もいる。

>そんな中でこの話はまずい。

鳴上「自分達が機械だって堂々と話しちゃうのはまずいだろ?」

ラビリス「ふっふーん。それがやな、ウチらはどう見ても人間なんや!」

鳴上「そりゃ、一見じゃ機械には見えないけど」

ラビリス「そうやのうて、ウチの能力や!周りの人にウチらが人間やーって見せられるんよ」

鳴上「何?そうなのか?」

ラビリス「うん。なんや、いろいろ理由あるらしいけど、日常生活送る上ではえらい便利やで。ちょっと体験してみる?」

鳴上「ああ、やってみてく……おお」
411 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/05(日) 00:16:38.34 ID:Fial17Tno
>ラビリス達に共通する機関、耳元の放熱部が普通の耳に見える。

>首や手も、特有の硬質感がなくなり人間の肌と同じように見えるようになった。

メティス「私も見え方変わってるの?」

ラビリス「そうやでー。どや、便利やろ?」

鳴上「すごいな、これは。良かったよ、またバレないかヒヤヒヤするのかと」

メティス「わ、私だってバレるような事は……」

ラビリス「何したのん、メティス……」

>しゃべっている内に学校についてしまった。

ラビリス「ほな、職員室行ってくるわ!またなー」

>ラビリスは大きく手を振って職員室へ向かった。

メティス「私達は教室」

鳴上「だな。行くか。……綾時のヤツ、今日は来てるのかな」

>三年の教室に向かう。

>その途中、目の端に見覚えのある誰かが映ったが……。

>すぐに通り過ぎて、誰だかはわからなかった。

鳴上「今のは……」

メティス「鳴上君?」

鳴上「あ、ああ。今行くよ」

>見間違いか……?
412 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/05(日) 00:17:08.57 ID:Fial17Tno
次の事件まで、少しだけの日常。

では、また明日。
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/08/05(日) 08:50:13.31 ID:vsC3Ym1AO
おつん
414 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/06(月) 00:03:02.84 ID:cSDDXM66o
鳥海「あー、なんかもう嫌になってきたわ。けど転校生を紹介します!」

>鳥海先生はもはや投げやりだ。

ラビリス「はーい!えーと、関西?の方から越してきました。ラビリスいいます。今年一年、よろしゅーお願いします!」

綾時「よろしくー」

鳥海「やっぱりチェック済みなのね。はいそれじゃ席は望月君の隣」

>……だからそこは既に……いや、いいか。

ラビリス「よろしゅーよろしゅー」

>ラビリスは誰かの席の横を通る度に挨拶している。

ラビリス「ふぅ!綾時も悠もメティスもおるし、丁度ええ席が空いてたな」

メティス「……そうだね」

鳴上「もう気にするな」

ラビリス「なんや?」

綾時「あはは……」

>……。
415 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/06(月) 00:03:37.32 ID:cSDDXM66o
ラビリス「……アカン」

>授業が終わると、ラビリスは机に突っ伏していた。

鳴上「どうした?」

ラビリス「む、難しすぎる……なんなん……勉強ってこんなしんどいもんなん……?」

>どうやら授業が理解できなかったらしい。

鳴上「そうかな……結構楽しいもんだが」

綾時「悠みたいには中々思えないかもねぇ。まぁコツさえわかれば後は単純作業だよ」

ラビリス「二人共えらい余裕やな」

鳴上「勉強得意です」

綾時「元学年一位の記憶があります」

メティス「……私は、一応二年までのアイギス姉さんの記憶があるから」

ラビリス「ず、ずるい!ウチもリミッター外したらこのくらいすぐ記憶して……」

鳴上「丸暗記じゃ意味無いぞー」

>ラビリスがうんうん唸っている。

>……なんだろう、廊下が騒がしい。

女子「うわ、あんなの本当に着る人いるんだ……」

男子「すっげー肌白いなー、つか部外者だろ?なんで?」
416 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/06(月) 00:04:05.77 ID:cSDDXM66o
メティス「侵入者!?」

>メティスの体からモーターの駆動音がする。

鳴上「待て!待った!メティスは出なくていい!」

綾時「でも珍しいね、ここって結構セキュリティしっかりしてるのに」

鳴上「堂々としてたら案外ザルなのかもな」

綾時「よし見に行こう」

鳴上「……お前って、結構お祭り好きなのか?」

綾時「賑やかな場所には行くのが吉さ。さて何者かなー」

>綾時に付き合って廊下に出ると、騒動の主はすぐ近くに来ていた。

鳴上「……嘘だろ」

綾時「あれ、あれって……」

鳴上「綾時、良かったらラビリスとメティスを寮まで送ってくれないか」

綾時「……りょーかい。後任せるよ」

>ため息をつきながらその人物に近付く。

>白い、やたらとひらひらした服。

>病的に白い肌、赤い髪。
417 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/06(月) 00:04:34.12 ID:cSDDXM66o
鳴上「チドリさん」

チドリ「……!」

>チドリはとんでもない形相でこっちを見た。

鳴上「ど、どうしたんですか?何かあったんですか?」

チドリ「やっと見つけた。来て」

>腕を掴まれて、そのまま引っ張っていかれる。

>通り過ぎる生徒たちのひそひそ話がとても居心地悪かった。

鳴上「ちょっと、どうしたんですか。一旦落ち着いて……」

チドリ「順平が来ない」

鳴上「え?」

チドリ「今日、順平と会う約束だったの。だけど、来ない。何か知ってるでしょ」

>掴まれた腕はうっ血して痣になりかけている。

>この細腕のどこにこんな力があるのだろう、とにかく全力で握りしめられていた。

鳴上「待ってください、俺は何も……」

チドリ「悠が順平と何かしたのは知ってる。私には秘密って言ってたけど。だから、知ってるはず。知ってるって言って。でないと、でないと私……」

>さっきまでとうってかわって、今度は今にも泣き出しそうだ。

>順平さんとは、テレビから出た日から出会っていない。

>てっきり自分の家に帰ったのだと思っていたが。

鳴上「とにかく落ち着いて。待ち合わせ場所はどこですか?」

チドリ「いつもの場所……」

鳴上「もう一回行ってみましょう。もしかしたら来てるかもしれないし」

チドリ「私、嫌われ……」

鳴上「俺が言うのも変ですけど、それは無いと思いますよ。ほら、付き合いますから」

>チドリは弱々しく頷く。

>彼女も、なんというか不安定なんだな……。
418 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/06(月) 00:05:06.50 ID:cSDDXM66o
>巌戸台駅前。

>いつもチドリが座っている場所に行く。

チドリ「やっぱりいないじゃない……」

鳴上「そうですね……携帯とか知らないんですか?連絡すれば……」

チドリ「私が持ってない」

鳴上「えーと、番号さえわかれば俺がかけますけど」

チドリ「……わかんない」

鳴上「参ったな……家……知らないか。となるとここからちょっとずつ範囲を広げて探していくしか……」

「おーい、チドリー」

>この声は。

順平「悪い悪い、遅れちまって。あれ?鳴上じゃん。おっす」

鳴上「あれ、順平さん?」

順平「おう。え、チドリどしたの?」

鳴上「……あのですね。チドリさんは」

チドリ「っの……バカ!」

>普段物静かなチドリが叫んだ。

>周囲がざわめく。
419 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/06(月) 00:05:33.07 ID:cSDDXM66o
鳴上「ちょ、チドリさん、周り周り……」

チドリ「なんで……心配するじゃない……」

順平「お、おう……いや、筋肉痛がまだ引かなくてさ……」

チドリ「バカ……もう死……」

順平「そこまで言う!?」

チドリ「……言わない。けど、謝って」

順平「えっと、その、ごめんな?そんな心配してくれると思わなくて……」

鳴上「ま、まぁ良かったですよ。何かあったとかじゃなくて」

順平「そういやなんでお前ここにいんの?」

鳴上「……えーと。心配したチドリさんがわざわざがっこモゴッ!?」

>チドリの手に口を塞がれる。

>その顔は髪と同じくらい真っ赤になっている。

チドリ「それ以上言わなくていいから」

>……どうやら、動転していた自分を恥じているらしい。

>それを見て順平も大体を理解したようだった。

順平「……あー、なんだ、お前にも迷惑かけたな」

鳴上「ぷはっ!いえ、全然いいんですけど。なるべく遅刻しないであげてくださいよ」

順平「そうだなー。ま、とにかくサンキューな」

>苦笑する順平から温かい気持ちを感じる。

>ほんの少し、順平と打ち解けられたようだ。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが2になった。
420 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/06(月) 00:06:03.09 ID:cSDDXM66o
鳴上「あ、そういえば順平さん、綾時の見舞い行ってたらしいですね」

順平「んぉ?おー、行った行った。検査だけだったからピンピンしてたけどな。……三年前な、あいつと一番仲良かったの俺だと思ってんのよ。だからまぁ、ほっとけないだろ?」

>順平は照れたように笑った。

鳴上「……ありがとうございます」

順平「何でお前が礼言うのよ?」

鳴上「いえ、何となく。それじゃ、俺帰ります」

>伊織順平は“良い人”だ。

>それがはっきりわかった。

>……。

天田「あ、おかえりなさい」

>ラウンジでは天田が牛乳を飲んでいる。

鳴上「ただいま。また牛乳か?」

天田「ええ。ジュースより牛乳派って感じなんで。炭酸とか苦手だし……」

鳴上「そうなのか。今時変わってるな」

天田「今時って、年寄りみたいですよ」

>天田に笑われてしまった。

鳴上「他の皆は?」

天田「ラビリスさんとメティスさんはちょっと前に帰ってきましたよ。山岸さんと有里さんは……部屋を改造するとかでこもってます」
421 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/06(月) 00:06:47.85 ID:cSDDXM66o
鳴上「改造……?」

天田「有里さん用に模様替えするんだそうですよ。何か家具やら何やら運んでました」

鳴上「ああ、なるほど……そういえば、あの部屋は誰の部屋だったんだ?」

>天田が少し引っ掛かる様子だったのを思い出す。

天田「僕の母親を殺した人の部屋ですよ」

鳴上「なっ……それは、どういう……」

天田「冗談です」

>天田は笑っている。

>……冗談?

天田「仲良かったんですよ、あの部屋の人とは。けど、三年前……事件を追う途中で、死んでしまいました」

鳴上「……そう、か。それで」

天田「テレビに出てたでしょ?すっごいガラの悪い人」

鳴上「あの人か。じゃあ、アイツを頼むっていうのは天田の事だったんだな」

天田「ええ。……いろいろ、お世話になりました。でももういいんです。過去の事は過去の事。あの人はもういないけど、僕がここにいるのはあの人が居たからです」

鳴上「そうか……強いな」

天田「縋ってばかりじゃどうにもなりませんから。有里さんも気遣って『ごめん』なんて言ってくれましたし、納得はしてますよ」

>天田は笑っているが、その笑顔はなんだか寂しい物だった。

>天田の心の内側を少し覗けた気がする。

>『No.05 法王 天田乾』のランクが3になった。
422 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/06(月) 00:07:36.89 ID:cSDDXM66o
天田「さてと、牛乳飲んだしちょっとトレーニングしてきます」

鳴上「天田もか?」

天田「僕もって……ああ、真田先輩ですか。あの人程じゃないですけど、強くなっておきたいんで。ちょっと思い出す事もありましたし。それじゃ」

>強くなる、か。

>……明日も学校だ。


【5/11 晴れ】


>授業が終わると同時に、ラビリスが跳ね起きた。

ラビリス「ほな!行ってくるわ!」

>そう言うが早いか、自分の荷物をひっつかみ教室を飛び出していった……。

メティス「ラビリス姉さん……?」

鳴上「どうしたんだ、あれ」

綾時「あー……もしかしてアレかな」

鳴上「アレ?」

綾時「この前、悠があの人とどこかへ行っちゃった時に……」

「そのお話、少し待っていただけますか?」

>この声は、そしてこのパターンは。

鳴上「なんで学校に……」
423 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/06(月) 00:08:15.78 ID:cSDDXM66o
突然の訪問者・・・一体何者なんだ・・・

では、また明日。
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/06(月) 01:48:45.90 ID:o8ISHlO/o
おつーん
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 15:00:25.67 ID:v74xsulO0
426 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:02:08.73 ID:UO8EcG6oo
メティス「この方は、確か……」

エリザベス「おや、いつぞやの。……確か、あの折にお帰りになったと記憶しておりますが」

メティス「事情があって……」

エリザベス「なるほど、何やらやんごとなき事情が……ですが、今はそれどころではございません」

>綾時の笑顔が固まっている。

エリザベス「私、忠告に参りました。一刻を争う事態でございます」

鳴上「忠告……?」

エリザベス「あなたはまた一つの事件を解決しました。その結果……あの方が、帰って来た」

鳴上「そうだな。駄目な事なのか?」

エリザベス「いえ。しかし私の胸に突如湧き上がった正体不明の感覚……あれが、他の誰かにも訪れたなら。あなたはこれから、厳しい立場におかれる事でしょう」

>有里が言っていた事を思い出す。

>仲間との間に“隙間”が出来る……。

>有里の、せいで。

エリザベス「その忠告をしに、4日程前からこの学校に潜入していたのですが……」

鳴上「4日!?」

>思い出した!

>ラビリスが初登校した日、学内で見かけた覚えのある人影。

>あの青い帽子は、エリザベスの物だ。
427 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:02:58.68 ID:UO8EcG6oo
鳴上「なんで早く言ってくれなかったんだ」

エリザベス「いえ、それが……生徒のいる時間帯に侵入するのは初めてでしたので、つい……学校とは、中々に興味深い場所ですね」

>どこから手に入れたのか、月光館の女子制服を懐から引きずり出す。

>まさか、これを着て……?

鳴上「……人がいない時間帯なら、いつでも案内するから。もう勝手に入って来ないように頼む」

エリザベス「本当でございますか?それは……とても甘美なお誘い。でしたら、今日の所は退散するといたしましょう。目的も果たした事ですし」

>綾時の肩にエリザベスの手がかかる。

綾時「うわっ!」

エリザベス「あなたにも、期待しています。あの方の半身として……」

>綾時にだけ聞こえるように何事か囁いた後、エリザベスは踵を鳴らして去っていった。

メティス「あの……どういう事でしょうか」

鳴上「さっぱりわからない。何より……」

男子A「あれ、鳴上の知り合いなのかな……この前のゴスロリ女も知り合いっぽかったよな」

男子B「どっちも美人だったし、普段なら羨ましいって思うんだろうけどな」

男子C「流石に不審すぎるだろ、あれは……」

鳴上「転校からこっち、俺の評価がおかしな方向で定まろうとしている」

綾時「来る転校生来る転校生関係者だし、謎の人物と関わってるし、仕方ないよね」

鳴上「くっ……ところで、結局アレってなんだ?」
428 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:03:36.68 ID:UO8EcG6oo
綾時「ああ、生徒会だよ」

鳴上「生徒会?入れるのか?」

綾時「役職は無いんだけど、まぁボランティア?みたいな感じで入れるみたいだよって教えたんだ。生徒会に入りたがってたから」

鳴上「そうなのか。それで張り切ってたんだな」

綾時「無茶しないといいけどねぇ」

>ラビリスは入りたがっていた生徒会に入る事が出来たようだ。

>……感想を聞いてみるのもいいかもしれない。

鳴上「帰り、待ってみるか」

>……。

ラビリス『お疲れ様でしたー!!』

>生徒会室の中から一際大きな声が聞こえた。

>勢い良く扉が開いて、ラビリスが顔を出す。

ラビリス「げ、悠」

>開いた時とは対照的に、ゆっくりと扉を閉めた。

ラビリス「えーと……これはな?」

鳴上「生徒会でボランティアだって?偉いじゃないか」

>ラビリスは口元を手で覆った。

ラビリス「綾時からバレたか……あの、変やない?」
429 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:04:15.42 ID:UO8EcG6oo
>何故か恥ずかしがっているようだった。

>別に、笑うような事では無いと思うが。

鳴上「いや、良い事だと思う。どうして変だなんて思うんだ?」

ラビリス「や、そやかて……そんなに憧れてたん!?とか言われたら恥ずかしいなーって」

鳴上「ああ……そんな事か」

ラビリス「そんな事て、ウチなりに結構悩んでたんやで?特に悠は、ほら。テレビの中でのウチを知ってるから」

鳴上「生徒会長になりたかったんだろ」

ラビリス「あーん、もう言わんで!生徒会ってどんなもんかもわからんと言うてたんやから、笑われても仕方ないとは思てたんやけどなー」

鳴上「……で、どうだった?実際の生徒会は」

>ラビリスの顔が輝いた。

ラビリス「聞いてや!ウチらがおらんと行事一つ回らんのやって!一人一人が大事な仕事なんやってよ」

鳴上「そっか。ラビリスも大変だな」

ラビリス「ウチ、リミッター掛けてる時はあんまり器用ちゃうからなぁ。書類綴るんも皆すごい綺麗にやりよるんよ。ウチがやったらちょっとズレたりで大変やったわ」

鳴上「ははは……」

ラビリス「な、何よ?」

>思わず笑ってしまって、ラビリスがちょっと怒り顔になる。

鳴上「いや、ごめん。いいなって思ったんだ。そうやって、誰かの為に一生懸命働けるってのは」

ラビリス「……まぁ、悪ぅ無いで。そや、何やったら悠もやったらええやん。人手はいつでも歓迎や言うとったで!」

鳴上「俺?……うーん、まぁ手伝いくらいならいいけど。本式にはどうかな」

ラビリス「あ、もしかして悠も不器用なんか?」

鳴上「はっ!まさか」

ラビリス「えらい自信やな……ほな、ウチが困った時に手伝ってや。そんでええやろ?」

鳴上「そのくらいなら喜んで。さ、帰ろうか」

ラビリス「うん!」

>寮への道中、生徒会であった事などをずっと話していた。

>ラビリスと少し仲良くなれた気がする。

>『No.08 正義 ラビリス』のランクが2になった。
430 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:04:42.49 ID:UO8EcG6oo
ゆかり「おかえりー」

>寮に戻るとゆかりが天田とテレビを見ていた。

鳴上「ただいま。岳羽さん、来てたんですか」

ゆかり「うん、ちょっとね」

ラビリス「あ、初めまして!ラビリス言います。アイギスの……」

ゆかり「ああ、聞いてる聞いてる。私は岳羽ゆかり……って知ってるか。よろしくね」

ラビリス「よろしゅう頼みます。っと、ウチ生徒会の用事持って帰って来てるで、挨拶もろくすっぽできませんけどこれで」

ゆかり「いいって、気にしなくて。頑張ってね」

>ラビリスは一礼すると駆け足で階段を上った。

ゆかり「元気いいねー。あ、私もそろそろ帰るね。天田君、それじゃ」

天田「あ、はい。じゃあまた」

>ゆかりは立ち上がり、こちらを見ている。

>……なんだろう、嫌な目線だ。

>値踏みされているような……いや、気のせいだろうが。

ゆかり「鳴上君さ、明日暇だったりする?」

鳴上「明日ですか?学校ですけど」

ゆかり「ああ、授業終わってからで全然いいからさ。時間あったらなって」
431 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:05:33.19 ID:UO8EcG6oo
鳴上「はぁ……特に予定は無いですけど」

ゆかり「そっか。それじゃさ、明日駅前で待っててよ。ちょっと行きたいとこあるからさ」

>そう言ってウィンクする。

天田「デートのお誘いですか?」

ゆかり「もう、そんなんじゃないってば。あ、嫌だったら言ってね?無理にとは言わないから」

鳴上「いや、いいですよ。お付き合いします」

ゆかり「ありがと。えっと、授業終わるのは……」

鳴上「ああ、時間は……」

>明日、ゆかりと出掛ける約束をした。

>行きたい場所とはどこだろうか。

>そして、何故俺と……?

>もやもやした感情が胸に残ったが、無理やり押し殺した。

ゆかり「それじゃ明日ねー」

鳴上「はい、また明日」

>……ゆかりが寮を出てすぐ、天田に話しかけた。

鳴上「なぁ、天田」

天田「何ですか?」
432 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:06:21.01 ID:UO8EcG6oo
鳴上「岳羽さん、今日は何の用だったんだ?」

天田「用っていうか、有里さんの様子を見に来たみたいですけど。あとは普通に雑談してましたよ」

鳴上「そうか……今日、何か様子が変じゃなかったか?」

天田「変……?」

>天田は首を傾げている。

>心当たりは無いようだ。

鳴上「いや、やっぱり気のせいかもしれない。悪かったな、変な事聞いて」

天田「いいですけど。気になるなら僕も気にして見てみましょうか」

鳴上「いいさ、そこまで……多分、勘違いだ」

>そう、勘違いだ。

>……そのはずだ。

>今日は、もう休む事にしよう。
433 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:06:47.86 ID:UO8EcG6oo


【5/12 晴れ】


>昨夜から、疑念が頭に残って離れない。

>昨日ゆかりに感じた違和感……その正体が掴めない。

>とにかく、約束した以上会わないわけにもいかないし、もう一度会えば何かわかるかもしれない。

>とりあえず、学校に行かなくては。

鳴上「あ、有里。おはよう」

有里「……ああ、おはよう」

>珍しくラウンジに有里が一人でいる。

>そういえば、昨日天田が言っていたが、ゆかりはそもそも有里の様子を見に来たらしい。

鳴上「なぁ、昨日岳羽さんに会ったか?」

有里「会ったよ。それが?」

鳴上「……変な話だけど、どこかおかしくなかったか?態度とか……」

有里「変……?」

>有里も首を傾げている。

鳴上「勘違いかもしれないんだが、何となくな。何も無かったならいいんだ」
434 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:07:15.23 ID:UO8EcG6oo
有里「あ、そういえば」

鳴上「やっぱり何かあったのか?」

有里「あったというか……口紅」

鳴上「口紅?」

>確かに、昨日ゆかりは口紅をつけていたような気がする。

有里「三年前はつけてなかった気がする。って言っても飽くまで三年前の話だし、化粧も変わったのかもしれないけど」

鳴上「それは……あんまり当てにならなそうだな」

有里「他には特に思いつかないな」

鳴上「そうか。悪かったな、変な事聞いて」

有里「別に」

ラビリス「悠ー、はよ行くでー」

メティス「姉さん、まだ時間に余裕はあるから……」

>ラビリスが呼んでいる。

>学校へ行こう。

>……。
435 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:07:59.94 ID:UO8EcG6oo
>授業が終わった。

綾時「悠、駅まで一緒に帰ろうよ」

鳴上「駅までな」

ラビリス「ウチらは寮までなー」

メティス「同じ所に帰るから当たり前だと思う」

鳴上「いや、悪いけど駅までだ。今日は人に会う約束がある」

綾時「もしかして、女の人?」

鳴上「……」

>……何故だろう。

>メティスとラビリスから冷ややかな視線を感じる。

鳴上「いや、そうなんだけど。岳羽さんだぞ」

メティス「ああ、そうなんだ」

ラビリス「なんや、面白い話かと思ったのに」

綾時「そういう事なら仕方ないね。二人は諦めて、僕と帰ろう」

メティス「そうですね」

>綾時がメティスとラビリスに目配せしたのが見えた。

>何となく、何を考えているかはわかる。

鳴上「とにかくそういうわけだから、俺は先に駅行くよ。またな」

綾時「うん、またね」

>……。
436 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:08:41.90 ID:UO8EcG6oo
>巌戸台駅前。

鳴上「すみません、お待たせしました」

ゆかり「いやいや、全然待ってないよ。こっちこそ学校帰りに寄り道させちゃってごめんね?」

>到着した時には、既にゆかりは待っていた。

>……今日は口紅をつけていないようだ。

ゆかり「えっと、それじゃちょっと付き合ってよ。って言っても商店街なんだけどさ」

鳴上「いいですよ。何か買い物ですか?」

ゆかり「うーん……っていうわけじゃないんだけど。あ、お腹空いてない?たこ焼き食べる?」

>ゆかりに手を引っ張られてたこ焼き屋の前に連れて行かれる。

鳴上「いや、いいですってそんな……」

ゆかり「遠慮しない。おばちゃん、一つ頂戴!」

おばちゃん「はい毎度ー」

ゆかり「美味しいんだよ、ここの。ほら座って?」

>ベンチに座り、自分の隣をぱんぱんと手で叩く。

>気恥ずかしさを覚えながら素直に従った。

ゆかり「はい、口開けて」

鳴上「ええ!?いいですって本当に!」

ゆかり「え?あ、熱いかな。ふーっ」

>……俺は一体何をしているんだろうか。

>そしてこの人は何をしたいんだろうか。

>そのまま、ゆかりに振り回され続けた。
437 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:09:23.16 ID:UO8EcG6oo
ゆかり「あ、もうこんな時間……」

>気付けば、日は暮れて辺りは真っ暗になっていた。

>……どっと疲れた。

ゆかり「実はさ、行きたいとこあるとか……口実が作りたかっただけなんだよね」

鳴上「え?」

ゆかり「ちょっと、鳴上君と時間を過ごしてみたかったっていうのが本当。変だよね、突然」

>ゆかりは笑っている。

鳴上「変ですかね?個人的には嬉しいんですけど」

ゆかり「やだ、なにそれ。そうやって女の子口説いてんの?」

鳴上「誤解ですよ」

ゆかり「あはは。さーて、ほんとごめんね?早く帰りたかったでしょ?もう解放したげるからさ」

鳴上「そうですね、そろそろ帰らないと」

ゆかり「ん。……良かったら、さ。私の事嫌いじゃなきゃなんだけど」

>ゆかりが背を向けた。

>……表情が見えないと、声のトーンが変わったような気もし始めた。

ゆかり「……あー、いや、なんでもない。良かったらまたデートしてよ」

鳴上「デート……まぁ、出掛けるくらいなら。何だかんだ楽しかったですし」

ゆかり「ありがと。それじゃ約束ね。私、帰るから」

>ゆかりはこちらを見ない。

鳴上「あ、はい。気をつけて……」

ゆかり「うん。鳴上君もね。じゃあ、またね」

>……ゆかりが何か特別な気持ちを抱いているようだ。

>コミュニティに変化は無かった。

>……帰ろう。
438 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/07(火) 00:10:13.45 ID:UO8EcG6oo
いちゃつく二人。

では、また明日。
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/07(火) 01:02:42.34 ID:TgAJk7Gw0
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/07(火) 01:46:54.55 ID:0xiYYLXDo
ほほう?
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/07(火) 12:31:01.34 ID:c70I+ptUo
比較されるパターンですね
442 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:02:08.08 ID:ZfsIKMimo
綾時「おかえり」

>寮に帰って来たら、出迎えてくれたのは綾時だった。

鳴上「ただいま。今日、見てただろ」

綾時「あれぇ、バレてた?」

鳴上「何となくそんな気がしただけだ。見て面白い物でも無いだろ?」

綾時「そうでも無いみたいだよ。特にあの二人にとってみたらね」

>あの二人……?

鳴上「!」

>ラビリスとメティスがじっとこっちを見ている……。

鳴上「な、なんだ。どうしたんだ」

綾時「罪作りだねぇ、悠は……さて、それじゃ僕は帰るよ。巻き込まれない内にね」

鳴上「待て」

>綾時の肩をがっしと掴んだ。

>今ここで三人だけにされるのは非常にマズい気がする。

綾時「僕は関係ないでしょ?」

鳴上「いや、今日の尾行はお前の画策だろ。責任持って最後まで見ていけよ」

綾時「そんな責任は……わかったよ、諦めよう」

>さて。
443 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:02:34.63 ID:ZfsIKMimo
鳴上「二人共、どうかしたのか?元気無いけど」

ラビリス「ん、いや、別に……」

メティス「これといって」

>……なんだこの気まずさは。

綾時「まぁまぁ、とにかく話してみなよ。心に何か思いがあるのなら」

>綾時は急にかっこつけて言う。

>ラビリスとメティスはお互いに目線を交わしてから口を開いた。

ラビリス「もやもやするんよ」

メティス「すっきりしない」

綾時「うーん、思ってた通りの解答をありがとう。だってさ、悠」

鳴上「お、俺に振るな」

>まぁ、二人の顔を見れば不満そうなのはすぐわかる。

>しかし、何故そうなっているのかがわからない。

綾時「だって君が原因なんだから、君がなんとかするしかないでしょう。ほら、何か言ってあげてよ」

鳴上「う、ぐ……あの、何だ。すまなか……った?」

ラビリス「いや、謝られても。別に怒ってへんし」

メティス「姉さんと同じ。別に怒ってるわけじゃない……と思う」

綾時「そうだよ悠。怒ってるとかじゃなくて、これはね、ジェラシーっていうんだよ」

ラビリス「じぇら……」

メティス「しー?」

綾時「そう、ジェラシー。嫉妬ってヤツだね。二人は、悠が岳羽さんと一緒にいるのを見て嫉妬しちゃったんだ」
444 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:03:31.57 ID:ZfsIKMimo
ラビリス「なんで?」

メティス「何故?」

鳴上「……何でだ?」

>三人が三人疑問符を浮かべた。

綾時「何でって……そりゃ、ラビリスさんやメティスさんは悠の事が気になってるから……」

ラビリス「いやぁ、それは無いやろ」

メティス「流石にそれは違うと思う」

>地味に傷付いた。

綾時「ちょっと、今の言い方はひどいんじゃない?男心はデリケートなんだよ?」

>しかも綾時にフォローされる始末。

ラビリス「あ、や、悠はほら。かっこええと思うよ?優しいしな?」

メティス「うん、それは私も思う。鳴上君は悪くないよ」

鳴上「あ、ああ……ありがとうな……」

ラビリス「せやけど、綾時が言いたいんはあれやろ?その、恋人……とか。そういう風になりたいなーって気持ちやろ?」

綾時「そういう事だね」

ラビリス「それは、ウチが悠に持ってる感覚とは多分違うと思うんよ。悠は、その、なんて言うたらええんやろ?うーん……」

メティス「すごく、大事な人。だけど、恋人とかそういうのは違うのかも」

綾時「……なんか、さらっと大変な事言ってない?」

鳴上「俺はじわじわ悲しくなって来てるぞ」
445 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:04:14.33 ID:ZfsIKMimo
メティス「あ、私が姉さん達に対して感じてる感覚が凄く近い気がする」

ラビリス「あー……あー、そうや!わかった、これはあれやな。兄弟っていうか、お兄ちゃんがおったら多分こんな感じやで!」

鳴上「お、お兄ちゃん?」

綾時「良かったじゃない、嫌われてなくて」

鳴上「……まぁ、良かったのか?」

ラビリス「お兄ちゃん相手に嫉妬とか、それはちゃうやろ。……でも、ほなあの感じは何なんやろなー」

メティス「不明なエラーとして登録しておいたら?」

ラビリス「そうしよか。悠お兄ちゃーん」

>ラビリスが突然飛びついてきた。

鳴上「うわっ!」

メティス「姉さん……もう」

ラビリス「ウチお兄ちゃん出来て嬉しいわー。甘えさせてー」

鳴上「わかったから一回離れてくれ、動けない」

綾時「……あの、僕帰るね」

ラビリス「ん?帰るんか?ほなさいならー」

メティス「また学校で」

綾時「うん……うん……悠、あんまり行き過ぎないようにね……」

鳴上「何がだ……」

>綾時が帰った後も、やたらくっついてくるラビリスと妙にもじもじしたメティスの相手をし続けた。

>……やたら疲れる日だった。
446 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:05:34.15 ID:ZfsIKMimo


【5/13 晴れ】


>今日は日曜で、学校が休みだ……。

>といっても別に予定は無いので、とりあえず買い物にでも行こうか。

鳴上「お」

有里「ん」

>部屋を出た所で、有里と鉢合わせた。

鳴上「おはよう、有里」

有里「おはよう」

鳴上「お前も出掛けるのか?」

有里「……そのつもりだったんだけど、良く考えたらもういいんだった」

鳴上「ん?……何の用だったんだ?」

有里「いや、コーヒーを飲みに行くかわかつでDHA定食を食べるか神社にお賽銭を入れに行くか悩んでたんだけど」

鳴上「何の用なんだ!?」

有里「けど、もうどれもやらなくていい事だった……から、ネットゲームでも……ああ、それももういいんだ……」

>有里は何故か少し寂しそうに見えた。
447 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:06:21.80 ID:ZfsIKMimo
鳴上「そ、そうか……なら俺に付き合ってくれないか?買い物でも、と思ったんだけど、話を聞いてたらコーヒーが飲みたくなった」

有里「いいよ。付き合う。準備するから少し待ってて」

>有里と二人で喫茶店に行く事になった。

>……。

>シャガール辰巳店。

>ここのイチオシはフェロモンコーヒーというらしい。

>飲むだけで魅力が上がるというのだが……。

有里「本当に上がるんだ」

鳴上「そ、そうなのか?」

有里「人間関係の円滑化に効果的だよ」

鳴上「お前が言うと妙な説得力があるな」

>そのフェロモンコーヒーを一口啜る。

>……普通のコーヒーに思えるのだが。

有里「それで?どうして僕を?」

鳴上「誘ったのか、か?」

>有里もコーヒーを飲み、頷く。
448 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:06:49.85 ID:ZfsIKMimo
鳴上「いや、単に暇そうだったからなんだが」

有里「……それだけ?」

鳴上「それだけ」

有里「本当にそれだけ?」

鳴上「本当にそれだけ」

>ふぅ、と大袈裟なため息が聞こえた。

鳴上「悪いか?」

有里「いや、全く。君は変わってるというか……」

>今日のお前が言うなはこれですか。

有里「てっきり色々聞かれるんだと思って身構えてたから。気が抜けた」

鳴上「聞きたい事な……無いでも無いけど。それならもっと早くに聞いてる」

有里「それもそうか。鳴上君ははっきりモノを言うタイプみたいだし」

鳴上「……ちょっともう一回言ってもらっていいか?」

>違和感。

有里「鳴上君ははっきりモノを言うタイプなんだね」

鳴上「もう一回」

有里「鳴上君は……」

>これだ。
449 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:07:29.57 ID:ZfsIKMimo
鳴上「その鳴上君っていうのやめてくれないか」

有里「どうして?」

鳴上「いや、綾時は俺の事悠って呼ぶんだ。それと似たような声、似たようなトーンで鳴上君、なんて呼ばれるとくすぐったいというか」

有里「へぇ、仲がいいんだね」

鳴上「クラスメイトだしな。それに、俺は有里の事呼び捨てにしてるし。なんだか落ち着かない」

有里「……それじゃ、僕も悠って呼ぶよ」

鳴上「そうか。ならそれでいい」

有里「そのかわり、悠も僕の事を湊って呼んで欲しいな」

鳴上「ん?そりゃ構わないけど……なんでだ?」

有里「気分」

鳴上「そうか……わかったよ」

>二人でコーヒーを飲む……。

>静かな時間が過ぎていく。
450 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:08:17.19 ID:ZfsIKMimo
有里「……悠」

鳴上「どうした」

有里「もし僕が戻ってきた事で、君や他の誰かに不都合が出たなら……僕は、またどこかへ消えるから。心配しなくていい」

鳴上「それは困るな」

有里「元に戻るだけさ」

鳴上「だけど、困るんだ」

有里「もしかしたら、僕がずっといる方が困る事になるかもしれないよ?」

鳴上「……何だか、湊には親近感というか、変なシンパシーを感じてるんだ。だから、お前がいなくなるとその、何だ。寂しい」

>ぶふっ、という空気の漏れるような音がした。

>正面に座っている有里が顔をそむけている。

>肩が小刻みに震えている所を見ると……。

鳴上「……笑うなよ」
451 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:08:54.39 ID:ZfsIKMimo
有里「ご、ごめん。急にそんな事言うものだから……悠のそういう感覚は、僕も理解出来るよ。けど、そんな真面目な顔で寂しいって」

鳴上「本心だ」

有里「わかった。僕もできる限り力になるよ。……まずは帰って、風花に言わないと」

鳴上「言う……?何をだ?」

有里「次に何か事件があったら、僕も前線に立つ。その報告さ」

鳴上「それじゃ、湊……」

有里「協力するよ。もしかすると、また消えなくちゃいけなくなるかもしれない。それでも、君の手助けがしたくなった」

>有里は元の無表情に戻っている。

>しかし、その言葉からは優しさが強く伝わってくる……。

>『No.10 運命 有里湊』のランクが2になった。

鳴上「ありがとう。心強い」

有里「どういたしまして。……ただ、忘れないで。僕の存在は、必ずしもプラスになるばかりじゃない」

>どれだけ否定しても、有里はその発言を撤回しなかった。

>……引っ掛かる、が、気にしていても仕方がない。

>今は、この強い味方が戦いに復帰してくれた事を喜ぼう。

>……。
452 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/08(水) 00:09:30.42 ID:ZfsIKMimo
お互い気になるカンケイ。

では、また明日。
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 00:49:34.83 ID:74HdFIX+o
>>446
泣いた
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 01:29:23.44 ID:Hmltk8o00
キタローボッチみたいじゃんワロタwww
ワロタ・・・
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/08(水) 01:32:29.10 ID:ebkhwz26o
体が不安定と言うか確定してない事が多すぎてどうすればいいか湊自身も分からないのかな…
456 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:01:10.80 ID:XBlUDnKoo


【5/20 雨】


>今夜は新月だ。

>前回までの事例に倣えば、今日から次の人物がテレビに映るはずだ。

>寮の面々は真剣な表情でテレビと睨み合っている。

メティス「……そろそろ、零時です」

>メティスが、文字通りの意味の体内時計で今の時間を報告する。

>……ノイズが走る。

鳴上「来たか」

>シルエットが映る。

>……相変わらず、ノイズではっきりとは見えない。

>だが、この体格は……男か?

ラビリス「初めて見たわ……ほんまに映るんやな」

天田「男の人ですかね?そんな風に見えましたけど」

鳴上「ああ、俺もそう見えた」

有里「それじゃ、一度推理してみようか」

>映らなくなったテレビから視線を逸らし、皆の方に向き直る。
457 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:01:46.43 ID:XBlUDnKoo
鳴上「今までの事例から、今回のテレビは過去あった事件を再現する性質がある……と、思われてきたけど」

天田「三年前の事件……もう解決しちゃいましたよね。となると、それより前?」

メティス「記録には十年前の爆発事故くらいしか無いですね」

天田「ですよね。となると……実は再現するってワケじゃないのかな」

鳴上「たまたまアイギスと湊が狙われたって事か?」

ラビリス「偶然にしちゃ、出来すぎやな」

鳴上「となると、狙われているのは三年前の事件の関係者……?だとしても、おかしくないか?さっき映った人に心当たりは?」

>全員が首を横に振る。

天田「全然です。今は死ん……いない人も考えましたけど、どれもしっくりこないです」

有里「……一度、観点を変えてみよう。マヨナカテレビっていう媒体自体は、今回の事件だけの物じゃないはずだね?」

鳴上「ああ。俺達が解決した去年の事件……それ以前にもあったのかもしれないけど、映るようになったのはそれが最初のはずだ」

有里「その時は、映る対象はどうやって決まってたのかな」

鳴上「それは、確か……皆が見たがる相手が映る、だったと思うが」

有里「……そう」

>湊は何か考え込んでいるようだ。

>自分でも考えてみる。

>そう、去年は人間の“見たい”という気持ちがテレビの中に影響を与えていた。

>しかし、今回はそうじゃないはずだ。

>だって、三年前の事件や湊の存在を他の人達は知らないのだから。
458 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:02:15.66 ID:XBlUDnKoo
>となると……。

鳴上「やっぱり、関係者が狙われてる……それか、考えたくないけど関係者の誰かが黒幕と関わってる、か」

天田「そんな……そんなわけないでしょう?」

鳴上「それは俺もそう思う。関わってるって言っても共犯とかじゃなくて、利用されてる可能性があるかもしれないって事だ」

メティス「でも、三年前の事や有里さんの事を知っている人がそんなに多くない事も事実ですよね」

鳴上「なのに、湊にも誰だかわからない。そんな事ってあるのか?」

有里「無いだろうね。僕が関わった人はそれなりに多いけど、皆覚えてる」

天田「根底から瓦解してきましたね……」

>事件を再現する。

>事件のネタが切れた今、一体何が起こっているのだろう。

>それとも、事件というのはこの街で起こった事に限らない……?

>だとしたら、範囲が広すぎて出来る事が無い。

鳴上「……シャドウ、いやペルソナに関連する事件、桐条さんならまとめてるかもな」

ラビリス「ああ、シャドウワーカーの資料室みたいな所見たらわかるんちゃうかな。昔っから今まで、色々調べてるみたいやで」

鳴上「となるとそれを頼ってみるとして……提案があるんだけど、テレビの中に入ってみないか?」

天田「え?今までもそうでしたよね?」

鳴上「そうじゃなくて、満月前にだよ。中がどうなってるかわからなかったから控えてたんだけど」

メティス「そうか、別にいつ入ってもテレビの中は存在しているから……」

鳴上「何かヒントでも無いかなと思って。ただそうなると、ちょっと用意する物もあるからすぐにとはいかないけど。どうだろう?」
459 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:02:44.47 ID:XBlUDnKoo
天田「反対する理由は無いですね。テレビに慣れるにもいいし」

ラビリス「せやな!腕が鳴るわぁ」

メティス「うん、それでいいと思う」

有里「そういう事になりそうだけど、風花はどう思う?」

>そういえば、風花がずっと黙っていた。

>何か思い悩んでいるようだから敢えて無視していたのだが。

風花「私は……賛成できません」

鳴上「え……?」

風花「ハイリスクすぎます。それに、収穫が無い可能性も高いと思う」

天田「いや、でも……何もしないとこのまま満月が来ちゃうだけだと思うんですけど……」

風花「もしそうなったとしても、今回は私達の関係者じゃない人が映ったし、最悪の場合被害が出たとしてもそれを踏み台に……」

有里「風花」

>湊が風花をじっと見つめる。

風花「あ……私、何て事……あの、ごめんなさい……ちょっと、頭冷やしてきます」

>それだけ言うと、一つ頭を下げた後、階段を駆け足で上っていった。

鳴上「山岸さ……」

>立ち上がり、追おうとした俺を湊が手で制す。

有里「僕が行くよ。これは、多分僕の仕事だと……いや、僕じゃないと無理だと思うから」

>有無を言わせない言い方だった。

鳴上「……頼んだ」

>湊は黙って頷くと、風花を追って上階へ行く。
460 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:03:20.07 ID:XBlUDnKoo
メティス「山岸さん……あんな事言うなんて……」

ラビリス「そんなふうには見えんけどなぁ……」

天田「実際、そんな人じゃないですよ。何か様子変でしたね」

鳴上「ああ。何か焦ってるような……俺達がテレビに入ると、何かあるのか?」

>……全員黙ってしまった。

>風花はあんな事を言う性格では無いと思っていたが、思い違いだったのだろうか。

>どちらにせよ、このまま待っていても進展は無い。

>湊が説得に成功すれば良いのだが……。

天田「……大丈夫ですよ。頭が冷えれば、もう無茶は言わないと思いますし」

鳴上「だといいが。まぁ有里なら上手くやるだろ」

ラビリス「あ、ウチの武器どこ置いたっけ」

メティス「私のと一緒に部屋に置いてあるよ」

>誰からともなく席を離れ始めた。

>どこか、ズレ始めている。

>湊の言っていた事が現実になろうとしているのか。

鳴上「……大丈夫さ」

>自分に言い聞かせて、席を立った。
461 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:03:53.36 ID:XBlUDnKoo


【5/21 曇り】


綾時「そんな事がねぇ」

鳴上「ああ……どうも色々おかしいんだ」

綾時「そういう事もあるんじゃない?人間いつも一本調子じゃ行けないでしょ」

鳴上「そりゃそうだけど……」

>月曜、綾時を誘って屋上で昼食を摂った。

>風花の事を相談してみたものの、綾時は鼻歌を歌いながらパンを齧るだけで真剣に取り合ってくれない。

綾時「それはそうと今日はいつもの二人は?」

鳴上「ラビリスが生徒会の用事があるとかで、メティスはその手伝いだ」

綾時「あらー、仲間はずれだ」

鳴上「そうだな」

綾時「……いや、冗談だよ?」

鳴上「そうだな」

綾時「……はぁ。大丈夫だよ、彼なら上手くやるって。悠は心配しなくてもいい。ほら、あーん」

>綾時に差し出された焼きそばパンを手を使わずに齧る。

綾時「犬に餌付けしてる気分になるね」
462 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:04:21.86 ID:XBlUDnKoo
鳴上「……でもな、湊が上手くやったとして、根本的な理由がわからないと俺達はこれからやってけないと思うんだ」

綾時「難しいと思うよ」

鳴上「だろうな。でも俺は、何か困ってるなら助けてあげたいと思うし」

綾時「悠、君ってもしかして『皆幸せならいい』とか思ってるタイプ?」

>綾時が突然呆れたように言う。

鳴上「まぁ、深く考えた事は無いけど……そうだな。それなら一番いい」

綾時「さらっと言うねぇ。僕も、きっと彼も、そこまで大それた事は願ってないよ」

鳴上「大それた事かな」

綾時「そりゃそうさ。だってそれって、全世界を救いたいっていうのと何も変わらないじゃない」

鳴上「でも、それなら湊は一度やってるだろ?」

綾時「……あれは、そうじゃないんだ。あの時僕は既に彼と別れてたから、推測になるけど……彼が救いたかったのは世界でも人類でもない。仲間さ」

鳴上「そういう物なのか?」

>綾時は真顔になって言う。

綾時「悠、全ての人が我慢せず、幸せに暮らせたらそんなに良い事は無いだろう。だけど、そうはならない。殆どの場合ならないんだよ」

鳴上「……そうだな」

綾時「それを成そうとすれば、尋常じゃない代償が必要になる。その覚悟はあるんだろうね?」

>考えた事も無かった。

>自分の中にある『ささやかな願望』。

>それに対する覚悟。

>……ある、さ。
463 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:04:49.03 ID:XBlUDnKoo
鳴上「それでも、俺は誰かが辛いのとか見たくないんだ。その為に俺が辛い目にあったとしても、それは我慢できる」

綾時「……まぁ、いいか。悠はそういう所がいいんだ」

鳴上「なんだ急に」

綾時「僕の好きな鳴上悠は、そういう事をさらっと言えるいい男さ。さて、昼休みも終わるし、そろそろ教室に帰ろう」

>パンの袋をくしゃくしゃと丸めながら立ち上がる。

>綾時が俺を心配してくれているのがわかった。

>『No.13 死神 望月綾時』のランクが3になった。

>……。

>放課後、メティスとラビリスを伴って寮に帰って来た。

鳴上「ただい……」

クマ「センセー!!」

>玄関を開けるなり、着ぐるみのタックルを受けて転んでしまった。

鳴上「ったた……クマ!早かったな!」

クマ「センセーからお電話もらってスグ来たクマー!」

鳴上「別に郵送とかで良かったのに……陽介にはそう言ったと思うんだが」

クマ「クマがセンセーに会いたかったのー。いいでしょー別にー」

>クマは口を尖らせている。

ラビリス「クマさん!また会えたなー」

クマ「およ?ラビちゃん!そのお洋服も素敵クマー!」

ラビリス「せやろ?こっちの学校の制服やねん。どう?似合う?」

クマ「チョーカワイークマ!」
464 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:05:28.13 ID:XBlUDnKoo
風花「あ、鳴上君。お帰り」

鳴上「山岸さん」

風花「昨夜はごめんね、変な事言っちゃって。もう大丈夫、事件解決に全力尽くすから!」

>カラ元気、に見えるが……とにかく冷静にはなったようだ。

鳴上「そうですね、一緒に解決しましょう。あ、もしかしてクマ、何か迷惑かけました?」

風花「ううん、大丈夫。クマ君、ずっと鳴上君が帰ってくるの待ってたんだよ」

クマ「待ってたクマー……」

鳴上「悪かったな、待たせて。それで、頼んだ物は大丈夫なのか?」

クマ「きっちり人数分持ってきたクマ!ほれこの通り!」

>クマが体のどこかからそれを引っ張りだす。

>今までと違い、霧が出ている時にテレビに入る為に必要な物……。

>クマの作るメガネだ。

ラビリス「メガネ?これでどないするん?」

風花「テレビの中は普段霧が出てて、そういう時に普通の人が入っちゃうとすごく体力を消耗するらしいの」

クマ「それをかるーくするのが、このクマ特製メガネクマ!ほれ、ラビちゃんもメティちゃんもあるクマー」

>ラビリスとメティスはお互いにメガネを掛けあって遊んでいる。

鳴上「わざわざありがとうな。それで、もう帰るのか?」

クマ「せっかくだし、クマもテレビの中ついてくクマー。久々に腕ふるっちゃる!」

鳴上「そうか、わかった。それなら……山岸さん。有里と天田を」

風花「わかりました。あ、でも今回もメンバーは鳴上君入れて四人まででお願いしますね。サポートが行き渡らなくなる可能性があるから」

鳴上「わかりました。それじゃ……有里、メティス、ラビリス、俺の四人で行きます」
465 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:05:54.69 ID:XBlUDnKoo
クマ「およ?クマは?」

鳴上「お前は戦うより、サポートの補助を頼む。山岸さんは霧の出てる時は今回が初めてだから」

クマ「おお、そんなら任せるクマー!」

鳴上「……それじゃ、有里と天田が来たら出発しよう。準備しておいてくれ」

ラビリス「おっけー!」

メティス「わかった」

風花「私はいつでも大丈夫」

クマ「腕が鳴るクマー!」

>……。

有里「……これ、中身入ってるの?」

クマ「入ってるクマ」

有里「そう。ならいい」

鳴上「すんなり受け入れるな」

有里「まぁ、害は無さそうだし」

鳴上「ははは……それじゃ、三人とも準備はいいか?」

>有里、メティス、ラビリスの順に確認する。

>どうやら準備はできているようだ。

風花「クマ君と一緒に、しっかりサポートします。それじゃ……」

クマ「行くクマー」

鳴上「おわっ!」

>クマに突き落とされるようにテレビに入った。
466 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:06:24.53 ID:XBlUDnKoo
鳴上「痛ぅ……あいつまた……」

メティス「大丈夫?」

鳴上「ああ……」

>辺りには霧が立ち込めている……。

>久しぶりにメガネをかけた。

ラビリス「うわ!ほんまによー見える……」

クマ「ふふーん、どうクマ?」

メティス「確かに、霧が無いみたい……スゴイですね、クマさん」

クマ「もっと褒めていいのよ?」

メティス「いえ、それ以上言う事は無いんですけど……」

>メティスとクマを尻目に辺りを見回す。

鳴上「タルタロス……は消えてるな。あれは……」

>今までになかった扉がひとつ。

鳴上「まさか、もう既に誰か入ってるのか?」

メティス「昨日の今日で……?」

風花「……だけど、扉の向こうから大きいシャドウの反応が。いますよ」

クマ「およよ?けど、このカンジ……なんか、なーんか変なカンジクマー……」

>クマはしきりに首を……首?を、傾げて?いる。

ラビリス「何や気になるみたいやけど、とにかく確かめに行かな始まらんやろ?」

>ラビリスが背負っていた斧を展開する。

鳴上「そうだな……開けるぞ」
467 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:06:50.43 ID:XBlUDnKoo
>扉に手を掛ける。

有里「待った」

>ノブを握ったまま振り向く。

有里「……いや、気のせいかもしれない。けど、これは……見覚えがある、気がしたんだけど」

>言われて、扉を眺めてみる。

鳴上「これ、寮のドアか」

メティス「あ、そうだ……けど、何か違う?」

鳴上「今の寮のドアより、ちょっとだけ……新しい感じだな」

有里「それだ。これ、三年前の……僕が暮らしてた頃のドアだよ、多分」

風花「そっか、あの後一回使わなくなったから、年月以上に劣化しちゃってるもんね。それでこんなに新しく見えるんだ」

鳴上「だけど、だから何なんだ?」

風花「やっぱり、関係者の誰かが……」

ラビリス「もー、悩んでないでさっさと入りや。何でも行動行動」

有里「あ、待っ……」

>言うよりも早く、ラビリスが扉を開いた。

風花「ここって……」

有里「風花の、部屋?」
468 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/09(木) 00:07:33.97 ID:XBlUDnKoo
ドアを抜けると、私の部屋でした。

では、また明日。
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/09(木) 00:20:55.29 ID:H0N6gtJMo
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/09(木) 03:00:41.25 ID:3tat2yTzo

盛り上がって参りました
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/08/09(木) 22:23:33.26 ID:M2D3wkHB0
なぜこうも主人公達は鈍感なのか
472 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:20:35.39 ID:50mvxIEJo
鳴上「なんだって?」

ラビリス「え、山岸さんの部屋ってこんな感じやったっけ?」

風花「ラビリスは知らないと思う。これ……三年前の私の部屋」

>突然現れた風花の部屋……。

>風花の部屋……?

>初めてテレビに入った頃を思い出す。

>あの時……小西酒店で……。

>……まずい!

鳴上「山岸さん、一旦出て……」

『私の部屋に……来て欲しいの』

>どこからか声が聞こえる。

鳴上「間に合わなかったか……!」

風花「えっ、今の声……私?」

『有里君……アリサトクン……』

有里「これは?」

鳴上「多分、山岸さんの心の声だ」

>油断していた。

>ペルソナとシャドウは表裏一体、同じ物のはずで、だからペルソナ使いがテレビに入ってもシャドウは……。

>表裏一体?
473 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:21:31.26 ID:50mvxIEJo
鳴上「山岸さん!周囲に何か反応は!?」

風花「えっ、あ、今、探っ……あれっ?」

>風花は何故か動揺している。

鳴上「……やっぱりか」

>ペルソナとシャドウは表裏一体。

>つまり、シャドウが現れようとしている今、風花のペルソナも使えないという事だろう。

風花「嘘……私のペルソナ……」

『あら、嘘を吐いてるのは誰?』

>……来た。

風花「え、わ、私……?」

風花の影「そうよ、私。私はあなた。あなたは私」

メティス「これは……」

有里「風花が二人……?」

ラビリス「ウチの時と同じや……」

クマ「センセー、これどーいう事クマ?」

鳴上「さぁな……俺にもわからない」

>風花とその影の間に割って入る。

風花「鳴上君、これ……」

鳴上「俺達が戦ってきたのはこういう相手です。自分の中の、見たくない部分……自分の影、シャドウ」
474 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:22:42.23 ID:50mvxIEJo
風花「じゃあ、これは私……?」

風花の影「その通り。私は本当のあなた。嘘吐きなあなたに代わって本当の言葉を言いに来たの」

>耳を貸すな、と言いたかった。

>だけど、そんな事出来ないのもわかっている。

風花「私、嘘なんか……」

風花の影「事件解決の為に全力を尽くします」

>風花の体がびくりと固まる。

風花の影「嘘、だよね?本当は、事件なんて解決しなければいいと思ってる」

風花「そ、そんな事は……」

風花の影「本音は『関係ない人だし、最悪放っておいても構わない』の方。有里君に言われて、嫌になっちゃったんだよね?」

風花「私は……そんな事……」

風花の影「事件が解決しちゃうと、もしかしたら有里君がいなくなっちゃうかもしれない。せっかく、せっかくまた会えたのに、そんなの嫌だ」

>今度は湊が身を硬くした。

>が、すぐに溜息をついて諦めたような顔をする。

>『だから言ったのに』、と。

風花の影「そうよ、有里君が消えちゃうくらいなら、他の誰かが犠牲になるくらい構わない。世界が滅んでもいい。その瞬間まで有里君と一緒にいられるなら」

風花「や、やめて……」

風花の影「ねぇ、鳴上君。知ってた?実はね、有里君が帰ってくるまでは君のこと……」
475 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:23:39.14 ID:50mvxIEJo
風花「もうやめて!あなたなんか……」

>風花が叫ぶ。

クマ「フーカちゃんダメー!」

風花「私じゃない!!」

>一瞬の静寂の後、部屋の空気が震える。

風花の影『ふふ……あははははははは!そうよ!』

>轟々と唸りをあげて、風が風花の影に集まっていく。

>風花と同じ姿をしていたそれは、形を変え風花のペルソナにそっくりな形になった。

>ただし、その内部にいるのは風花ではなく、体を丸めた胎児のような……。

風花の影『私の大事な人!それを優先して何が悪いの!?ねぇ、そうでしょ!』

>声が直接頭の中に響く。

鳴上「まずいな、このタイプは……」

>りせと、同じタイプだ。

風花の影『我は影、真なる我……』

有里「悠。どうすればいい」

>メティスも、ラビリスも、何度か経験しているはずのクマでさえも、その威容に押されて動けなかった。

>その中で、一番に動いたのは湊だった。

鳴上「とにかく、この影を大人しくさせる必要がある。その後は……山岸さん次第だ」

有里「そう。わかった。とにかく倒せって事だね」
476 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:24:20.08 ID:50mvxIEJo
鳴上「その通りだ。ただ、恐らくあのシャドウにも山岸さんのペルソナと同じ力があると思う」

有里「それで?」

鳴上「俺達の弱点は筒抜けって事だ」

有里「……そう。でも関係ないと思うよ」

鳴上「何?」

有里「チェンジ」

>一瞬、湊の背後にペルソナの影が見えた。

有里「僕には、弱点は無い。というか、あって無いような物だから」

鳴上「なるほどな……チェンジ!」

>ペルソナを切り替える。

有里「やっぱり君もそうなんだね」

鳴上「ああ。だけど油断はするなよ。クマ!」

クマ「ほ、ほいクマー!」

鳴上「久々だけどサポート頼む。いけるか?」

クマ「やってみるクマ!」

鳴上「よし。メティス、ラビリスはまず防御だ。このタイプとまともにやりあえるのは多分……」

有里「僕達だけだから」

>湊と二人で影の前に立つ。

有里「作戦は?」

鳴上「全力で当たれ、だ」

有里「了解」
477 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:24:54.12 ID:50mvxIEJo
風花の影『有里君、有里君……どうして私の邪魔をするの?あなたと一緒にいたいだけなのに』

>風花の影は今までと違い、問答無用で襲い掛かってくる事をしない。

有里「……君が生まれたのは、きっと僕のせいだ」

風花の影『そうよ、私はあなたの為に、あなたとずっと一緒にいる為に……』

有里「だから、僕が責任を持って元に戻す。僕が好きなのは君じゃない。いや、君を含めた風花全部だから」

>風花の影が沈黙した。

鳴上「戦わずに……終わったのか?」

>が、すぐに勘違いだとわかる。

風花の影『嫌、嫌、嫌、嫌。どうせ他の子にも同じ事を言ってるんだ。私みたいにとろくて暗い子を有里君が好きだなんて言うはずがない。お前は……』

風花の影『お前は嘘吐きだ!』

>体の内側を探られるような感覚が走る。

鳴上「っ……!来るぞ!」

有里「わかってる。クマ」

クマ「ほい!どしたクマー?」

有里「弱点はわかる?」

クマ「ご、ごめんクマ……クマはそこまでの力無いから、弱点は自分で探してもらうしか……」

有里「わかった。悠、多分だけど物理攻撃はそんなに効かないと思う。魔法で」

鳴上「どうしてわかるんだ?」

有里「ユノは結構硬いんだ」

鳴上「……そうか。ツィツィミトル!ジオダイン!」
478 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:25:20.02 ID:50mvxIEJo
風花の影『きゃああああ!』

>湊の言った通りだ。

>魔法はちゃんと通じる。

有里「キクリヒメ!マハラギオン!」

ラビリス「すご……」

メティス「あの二人、強い……」

風花の影『解析、完了。喰らいなさい』

>背筋が粟立つ。

>でかいのが来る……!

鳴上「湊!」

有里「わかってる。パールヴァティ!」

鳴上「トート!」

>衝撃波が襲い来る。

>が、効かない。

風花の影『嘘……何で……』

有里「……戦ってみてわかった。君はパワー自体はそれほどじゃない」

鳴上「弱点を突く事でそれをカバーしてる。だけど、弱点を的確に突いてくるって事は俺達にとってはむしろわかりやすいって事なんだ」

風花の影『嘘よ、嘘……嘘……私は……消えたくない……』

有里「……ごめん」

>湊が一歩前に出る。

有里「君も風花の心なのはわかった。だけど、こんな形で聞くのは嫌なんだ。だから……さようならだ」

有里「スカアハ」
479 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:25:58.99 ID:50mvxIEJo
>巨大な氷塊が風花の影を覆う。

>そして、氷が砕け散ったその後には……

風花の影「……」

>元の姿に戻った、風花の影が残った。

風花「ん……ぅ」

鳴上「山岸さん」

風花「……ごめんなさい、もう大丈夫。あの子と話を」

>道を開ける。

風花「あなたの言った事、全部本当。嘘を吐いてたのは私……自分を誤魔化してたのは、私」

風花の影「……」

風花「でもね、わかってるの。我儘だけじゃ生きていけないよね。私は、有里君が好き。だから、有里君の力になりたい。あなたもそうでしょ?」

風花の影「……私は……」

風花「私は、あなた。戻ってきて、一緒に……戦おう」

>風花の影がほのかに光を放つ。

>シャドウはペルソナと表裏一体……

>自分を受け入れる強い気持ちが、ペルソナを取り戻す。

風花「お帰り、ユノ」

>風花はペルソナ“ユノ”を再び得た!
480 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:26:26.05 ID:50mvxIEJo
有里「風花」

風花「あっ……その、有里君……」

有里「ありがとう」

>風花は言葉を飲み込んだ。

>何も言わずとも、湊は全てを理解しているようだった。

風花「ううん、ごめんなさい……私……」

有里「悠」

鳴上「あ、ああ。どうした」

有里「今日は一度帰ろう。風花が心配だ」

鳴上「そうだな。クマ、ここから出る道はわかるか?」

クマ「すんすん。うーん、普通にドアから出られるカモ?」

有里「歩ける?」

風花「大丈夫です……」

ラビリス「なーんかウチら……」

メティス「蚊帳の外って感じ……?」

>……。

有里「悠」

鳴上「ああ、わかってる。後は頼むぞ」

>湊は風花を部屋へ連れて行った。

天田「何かあったんですか?」

鳴上「ちょっとな。後で説明するよ。……そういえば」

>風花の影は、一度だけ湊じゃなく俺に声をかけた。

>あれは、結局何を言おうとしていたのか……。
481 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:26:56.21 ID:50mvxIEJo
メティス「でも、有里さんの存在はもしかすると大きな歪になるかもしれない」

ラビリス「こら、メティス。滅多なこと言わんの」

メティス「ご、ごめんなさい……でも、あの人は特別すぎるから。姉さんは知らないと思うけど、アイギス姉さんの記憶がある私にはわかるの」

ラビリス「うーん、そうなんか?なんやややこしいな……」

>湊本人もそれは自覚していたようだ。

>今回、風花が自分の影を生む事になった原因は湊だ。

>湊が大事だと思うほど、事件解決は邪魔な事になる。

>なぜなら、事件のお陰であいつは帰って来たし、事件のお陰で一緒に暮らしていられるから。

>恐らくは、風花自身そこまで考えてはいなかっただろう。

>だがあの世界ではそれがはっきりとした形を持って現れる……。

鳴上「確かに、あいつはもしかすると大変なヤツなのかもしれないな……」

>後で、話を聞いてみようか。

>……。

有里「お待たせ」

鳴上「山岸さんは?」

有里「寝てる。疲れてたみたい」

鳴上「そうか……少し話そう」

>湊に正面に座るように促す。
482 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:27:30.14 ID:50mvxIEJo
有里「……何でも言うよ」

鳴上「いや、別に尋問ってわけじゃないんだ。ただ、お前と山岸さん……他の皆との間にどんな関係があったのか、それが知りたい」

有里「仲間……ってだけじゃ、無かったよ」

>湊がゆっくりと語りだす。

有里「順平や真田先輩、天田達は別に何とも無いさ。順平とは友達だし、真田先輩や天田も、僕が何もしなくとも前に進む事が出来た。けど彼女たちは違ったんだ」

有里「君のチームは揉めたりしなかったの?」

鳴上「そうだな……喧嘩になったりは無かったな」

有里「そう、羨ましいね。僕達は、いろいろギクシャクしてたんだ。誰のせいってわけでも無いんだけどね。仲間、友達って思うより先にチームがあったから、仲良しこよしでやれたわけじゃなかった」

>俺達は逆だった。

>仲間がいるからチームが出来る……湊達は、チームの為に仲間が増えて行く、という順番だったのだろう。

有里「男女の間で考え方の違いってあるでしょ?」

鳴上「まぁ、あるだろうな」

有里「さっきも言ったけど、天田と真田先輩は、僕じゃない人のお陰で前を向けた。順平とは色々あったけど、でもお互い仲間として認め合った。けど彼女たちは違う」

有里「……傍目に見ても、凄く脆かった。いつ何時折れてもおかしくないような状況だった。彼女たちは彼女たちで支えあってたけど……」

有里「僕は、一生懸命にやった。皆が辛いのは嫌だったからね。一生懸命、彼女たちがこれ以上辛い目に遭わないように、少しでも前が向けるように頑張ったんだ」

>湊は組んだ手を見つめている。

有里「その結果……僕は彼女たちにとって特別な存在になった。なってしまった。大袈裟じゃなく、彼女たちの人生を変える程に」
483 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:28:27.60 ID:50mvxIEJo
>湊はどこか辛そうだ。

鳴上「でも、良かれと思ってやったんだろ?というか、良い方向に向いたんだろ?」

有里「どうかな。僕は少しやりすぎたのかもしれない。君は聞いたかな?3/31の話を」

鳴上「あ、ああ……少しだけ」

有里「多分、誰にとっても気持ちのいい話じゃないから……詳しくは聞いてないと思う。僕は、聞いた。風花からね」

鳴上「何があったんだ?」

有里「僕を巡って、彼らは殺しあった」

鳴上「ころっ……!?」

有里「誰も死ななかったけど、死んでもおかしくない状況だった。僕は、そうさせるまでになってしまっていたんだ」

>一人の人間の処遇を巡って、仲間同士で殺しあう……?

>俄には信じられない話だ。

有里「その時は、それが切欠で未来へ向かう事が出来たんだ。それまでは良かったのに、僕が」

鳴上「帰ってきた……」

有里「僕が言っていたのはこの事なんだ。きっと、どこかで影響が出ると思っていた。まさか命がけになるとは思ってもみなかったけど」

>湊は少し悔しそうに見える。

>自分がやった事の結果がこんな風になってしまった無念はわかる。

>しかし……。

鳴上「……お前のせい、なのか」
484 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/10(金) 00:29:28.83 ID:50mvxIEJo
ギクシャク。

P4U箱版が直って良かったです。本当に良かったです。
では、また明日。
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/10(金) 06:34:52.93 ID:WTWfYNAro
ドキドキですな
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/10(金) 06:58:30.12 ID:2tJ241d2o
同じ3の主人公でもハム子だとさして人間関係に亀裂入るわけじゃないのになw
意図してやっとタルンダvs天田vs垣さん程度だし
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/10(金) 14:34:15.42 ID:ngMcByQV0

こんな事になるんならボッチのほうがましだわwwww
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/10(金) 21:26:16.35 ID:yp43Ao6zo
489 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:17:55.14 ID:cI7Tx3Q9o
有里「そう、僕のせいだ」

鳴上「あ、違っ……」

>口を突いて出たのは、批難色に満ちた言葉だった。

>湊を責めるつもりなど無かったのに。

有里「違わないよ。僕のやり方が間違ってたか……帰ってきてしまった事が間違いなのか……」

鳴上「湊、聞いてくれ。俺はそんな風に言いたかったんじゃ……」

有里「どちらにせよ、僕がいると君や仲間に負担がかかる。だから」

>湊は淡々と言う。

>違うんだ。

>俺はそんな風に、お前を責めるつもりなんて無かった。

>ただ、胸の中に……

>冷たく黒い水のような感情が広がって、それが言葉になってしまった。

>そして、その言葉は取り返しのつかない事態を招こうとしている。
490 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:18:23.96 ID:cI7Tx3Q9o
有里「僕は消える。君達の目に付かない所に。僕を誰も知らない所に。……さよならだ」

鳴上「湊!」

有里「悠のせいじゃない。前から言ってたでしょ?考えてた事ではあったんだ」

鳴上「……お前、桐条さんの庇護下から出たら生活していけないんじゃないのか?」

有里「多分、なんとかなるんじゃないかなぁ。これでも顔は広い方なんだ。社長にでも頼んで……」

鳴上「結構具体的に決まってるんだな」

有里「かなりね」

鳴上「……その方が、お前の心は楽なのか?」

有里「……かなりね」

鳴上「……そうか」

>止めるべきなのか、わからなくなってきた。

>湊がいなくなれば、皆は悲しむだろう。

>しかし、湊がいるから面倒が起こるんじゃないのか?

>心のなかに湧きだした冷たい感情は滾滾と湧き続ける。

>胸を満たしてしまう程に。
491 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:18:50.27 ID:cI7Tx3Q9o
有里「早い内が良いよね。渡りがついたらすぐ出ていくよ」

鳴上「……すまない」

有里「だから、悠のせいじゃない。僕の意志だから、謝らなくていい」

>湊が立ち上がる。

>今すぐ自分も立ち上がり、声をかけるべきなんじゃないか。

>迷っている間に、湊は去っていく。

>もしかすると、二度と会えないかもしれない。

>だが、俺は追わなかった。

>湊が玄関を出て、ラウンジに俺ひとりになる。

>行き場の無いモヤモヤを込めて、机を思い切り叩いた。

>大きな音が響き、拳がじんわりと熱を持つ。

>……それ以外に、何も起きなかった。

>……。
492 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:19:19.10 ID:cI7Tx3Q9o
有里「さて、と」

>まず電話をかけなければならない。

有里「とにかく、美鶴先輩に見つからない所……となると、あの人に聞くか」

>最早珍しくなった公衆電話を求めて駅前まで行く。

>ようやく見つけた電話ボックスに入り、小銭を入れる。

有里「……番号あってるかな」

>数度のコールが鳴り、良く知った声が聞こえる。

真田『誰だ』

有里「僕です、真田先輩」

>僕の知らない美鶴の足跡を知っている人……。

>この三年の間に何があったか、僕は完全に知らない。

>だから、その間の彼女の動向を知る人物と話をしておきたかった。

真田『ん……?有里か』

有里「そうです。すみません、事情があって支給された携帯じゃなく公衆電話からかけてます」

真田『なるほどな。で、どうした。緊急事態か?』

有里「まぁ、それほどでも無いんですけど。……僕、寮を出ようと思いまして」

真田『……』

有里「……出来たら、美鶴先輩や他の誰にも見つからないような場所に行きたいんですけど」
493 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:19:45.56 ID:cI7Tx3Q9o
真田『もう、決めたのか』

有里「出ていく事は決定してます。少なくとも僕の中では」

真田『そうか……』

>しばらくの間、受話器の向こうからは何も聞こえなかった。

>時間が経って、ふぅ、という吐息の音だけが聞こえた。

有里「すみませんが、他に頼れる人もいなくて」

真田『お前の事だ、事情も無くそんな事は言わんだろうな。なら止めはしないさ。で、場所だな』

有里「はい、どこか……恐らく国内では、探す気になれば即見つかるでしょうから、敢えて探す必要の無いような所がいいんですが」

真田『なるほどな。ならとっておきの場所がある。一旦徹底的に調べた場所ならそうそうは調べ直すまい』

有里「そんな場所がいいですね。どこですか?」

真田『程良く田舎だ。ついでに羽根を伸ばしてこい。場所は……』

>真田は詳しい地理を説明してくれた。

有里「八十稲羽?」

>……。
494 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:20:12.62 ID:cI7Tx3Q9o


【5/22 晴れ】


車掌『次はー稲羽、稲羽に着きます。お降りの際は、車掌に切符または定期券を……』

>スピードが落ちていく。

>さっきから、風景の移り変わりを興味深く眺めていたが……

有里「本当に田舎なんだなぁ」

>こういう所に住んでいた事は無い。

>上手くやれるだろうか。

有里「……とりあえず、数日の宿探しか。パトロンは見つかったけど」

>電車に乗る前に、田中社長に電話してみた。

>会社の番号しか知らなかったので、かなり無茶かと思ったが……

有里「名前出したら結構簡単に繋がったな……あの会社、大丈夫なのかな」

>田中社長に、事の次第を伏せて金銭的な援助をお願いしたいと頼んでみた所、思ったよりすんなりと承諾を得る事が出来た。

田中『アンタの商品価値に目付けてるんだから、そのくらいやるわよ。別にアンタが心配とかそういうワケじゃないんだからね』

>……だそうだ。

有里「真田先輩の話じゃ、確か旅館があるはずだ」

>駅を出る。

>……何もない。

>駅前なのに。

>……大丈夫かな。
495 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:20:39.17 ID:cI7Tx3Q9o
有里「ええと……案内板……」

>どうやら聞いた旅館……天城屋旅館まではバスが出ているらしい。

>それで行こうか……。

有里「バス停は商店街か」

>地図を記憶して、それを頼りに歩く。

>人混みが無い分、すれ違う人達一人一人が目に付く。

>双子の少女やアフロの少年……。

>稀に変わった人もいるが、基本的には何の変哲も無い街のようだ。

有里「この街で何があって、調べる事になったんだろう」

>美鶴が調べたという事は、シャドウ絡みの何かがあったということ……?

>こののどかな街で?

茶髪の少年「いやいやいや!サボってたのお前じゃん!」

>中華料理屋の前を通っていた時、高校生らしき少年たちが騒いでいるのが目に入った。

ジャージの少女「はぁ!?誰がサボってたってのよ!」

茶髪の少年「おーまーえーだっつの!どーすんだよテストだぞ!?」

ジャージの少女「だからってアンタにおでこ叩かれる謂れ無いっつーの!まーだヒリヒリすんだからね!」

茶髪の少年「いいんじゃね?そのショックでちっとは頭良くなってるかもよ?あ、もしかしたら一周回って女らしくなるかもよ!」

ジャージの少女「なっ……こんのバカ!」

茶髪の少年「おぐわっ!」

>ジャージの少女が茶髪の少年を蹴り飛ばした。
496 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:21:15.33 ID:cI7Tx3Q9o
>……人間が飛ぶ所を初めて見た。

有里「ってうわっ!」

茶髪の少年「そこの人すんませーん!!」

>茶髪の少年は吹っ飛んで、そのまま僕の方へ魚雷の如く突っ込んできた。

>……空が青い。

ジャージの少女「うわ!ごめんなさい!あの、大丈夫ですか!?」

茶髪の少年「っててて……この馬鹿力!すんません、怪我無いすか!」

有里「ああ、うん、大丈夫……だけどもっと加減した方が良いよ。本当に怪我しかねない」

ジャージの少女「あ、コイツは慣れてるんで大丈夫ですよ」

茶髪の少年「いや慣れねーよ!」

有里「元気がいいのはいいけどね……そうだ、これから天城屋って旅館に行きたいんだけど、バスの時間とかどうなってる?」

茶髪の少年「え?天城んとこ行くんすか。あー、そんなら案内しますよ」

ジャージの少女「あんた、勉強はどうすんのよ」

茶髪の少年「送ってってからやったって大丈夫だって。お前も来いよ」

ジャージの少女「もー、でも花村に任せておけないしな……行くか!」

有里「いや、別に案内まで……」
497 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:21:41.61 ID:cI7Tx3Q9o
茶髪の少年「いーっていーって。俺、花村陽介。こっちの馬鹿力が里中千枝。よろしくな!」

千枝「だーれが馬鹿力か!えっと、よろしくね」

有里「僕は有里湊。多分、これからこの街に住む事になると思う」

陽介「おお?引っ越してくんの?まーた妙な時期だなおい」

有里「色々あってね。出来れば詮索しないでくれたら助かる」

千枝「え……う、うん。あ、バス停こっちね」

>陽介と千枝の案内でバスに乗り、目的の旅館へ向かった……。

陽介「うっし到着!ここの若女将……っつーか、女将の娘な。俺らの同級生なんだよ」

有里「へぇ、そうなんだ」

陽介「これがまた美人でなー……」

千枝「ちょっと花村ー?そういうのいいから、さっさと帰ろうよ」

陽介「んだよ、付き合いわりーなー。んじゃ、後はそいつに聞いてくれよ。天城雪子って、黒髪の美人な。こっちに住んでたらまた会うこともあると思うからよ」

有里「わざわざごめんね」

陽介「だーからいいって。んじゃ、またな!」

>予約とか無しでも大丈夫なんだろうか。

>そもそも日数も決まっていない……。

有里「連休でもないし、大丈夫だと思いたい。とにかく受付しよう」

>旅館に入ると着物の女性がぱたぱたとやってきた。
498 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:22:08.50 ID:cI7Tx3Q9o
女性「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」

有里「あ、いや……予約はしてないんですが、数日滞在したいんです」

女性「ああ、はいはい。丁度今は一部屋空いてますよ。何日ほど滞在される予定ですか?」

有里「とりあえず3日……で、お願いします」

>部屋探し……3日で済むだろうか。

>もしダメだったらその時考える事としよう。

女性「はい、わかりました。ええと……雪子ー?こちらのお客様ご案内してー」

少女の声「はーい」

>今度は僕と同じくらいの歳の少女がやってくる。

>着物の似合う綺麗な顔立ちだ。

少女「こちらどうぞー」

>黒髪がさらりと揺れた。

少女「こちらのお部屋になります」

有里「ありがとう、天城雪子さん」

少女「えっ……私の事ご存知なんですか?」

有里「やっぱりそうなんだ。花村君に聞いてたんだ」

雪子「花村君に?お知り合いなんですか?」

有里「ここまで案内してもらっただけ。これからよろしく」

雪子「あ、はい……よろしくお願いします」

>荷物も殆ど無い僕は、余程奇異に見えた事だろう。

>早い内に住処を決めて出て行かなければ……。
499 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:22:36.89 ID:cI7Tx3Q9o
雪子「あの……普通は、お客さんにこんな事聞かないんですけど……」

有里「ん?」

雪子「何で、この街に来たんですか?」

有里「……ワケありで」

雪子「あ、そうじゃなくて。えっと……何か後ろめたい事があるのか?とかじゃなくて、ですね。少し気になったから」

有里「どうして?」

雪子「私の知ってる人に……似てる、から」

有里「知ってる人……?」

雪子「う、ううん、何でもないの。ごめんなさい、変なこと言って……何か用事あったらなんでも言ってくださいね」

>そういうと、雪子は何故か慌てたように戻っていった。

>一応持ってきたひと通りの荷物を置いて、畳に座る。

>この街……何だか不思議な感覚がある。

>のどかで、『何もない』があるような街……。

>これから、ここで過ごしてみよう。

>何も起こらないといいが……。
500 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 01:23:32.16 ID:cI7Tx3Q9o
決別。

さて、これからどちらの物語を追いかけようか。
では、また明日。
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/11(土) 01:53:34.37 ID:Q0pTpEQCo
乙!
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/11(土) 03:16:16.86 ID:B+4dwldIO
このタイミングでスレタイ回収か
まさかこうくるとは
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/11(土) 03:23:38.86 ID:ztIgIrUXo
504 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/11(土) 21:28:30.57 ID:cI7Tx3Q9o
帰省(してきた弟の送迎)のため一日潰れちゃったので本日更新はおやすみで・・・

では、また明日。
505 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:10:01.03 ID:CQKIlWB7o
美鶴「有里がいなくなっただと!?」

>風花を通じて呼び出した美鶴は開口一番こう叫んだ。

鳴上「いなくなった、ではなく出ていった、が正しいんです」

美鶴「どういう事だ?君はどこまで知っている」

鳴上「報告が行ってると思いますが、テレビの中で山岸さんのシャドウが出現しました。それを受けて、湊は出ていく事を決めたみたいです」

美鶴「わからないな。何故山岸のシャドウと有里の失踪が繋がるんだ」

鳴上「……あいつは、自分が山岸さんや、他の人にとって特別な存在であると自覚していました。その自分がここにいては、他のメンバーに迷惑がかかると……」

美鶴「意味がわからない。君が何を言っているか全く理解できない。そして彼の行動も理解できない。どうなってるんだ、一体」

>美鶴はその場をぐるぐるとうろつき始めた。

美鶴「何故だ。何か不満があったのか?出来る限りの事はしたはずだが……」

鳴上「……ですから、本人の判断で」

美鶴「そもそも何故彼が出ていく必要がある。問題があるなら、それを越えていくのが私達のやり方じゃないのか。これじゃ……」

鳴上「落ち着け!!」
506 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:10:27.32 ID:CQKIlWB7o
>自分でも驚く程の大声が出た。

>……落ち着くのは自分も同じだ。

鳴上「……すみません」

美鶴「い、いや。私こそ取り乱してすまなかった。しかし、容易に納得出来る事でもないんだ……」

鳴上「湊はあなたにとっても特別すぎる存在になってしまった、と言っていました。桐条さんの取り乱し方を見て、少し……理解出来た気がします」

美鶴「そうだ、何故君はそれを知っている?有里は君に何か言ってから出たのか?」

>深呼吸を、一つする。

>そもそも、この話をする為に彼女を呼んだのだ。

>……湊は、俺のせいで出て行きました、と。

鳴上「あいつは、出ていく時に俺と話をしました。……俺は、止める事も出来た。だけど、そのままにしました。何故でしょう、自分にもわかりません。つまり、あいつが出て行ってしまったのは俺のせいです」

>美鶴の顔がさっと紅潮する。

>怒るだろう。

>彼女も、湊には特別な感情を抱いているはずだ。

美鶴「……っ……そう、か。だが、自分を鑑みるに正しい判断だったと言えるだろう。君には辛い役目を押し付けてしまったようだな」

鳴上「え?」
507 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:10:54.29 ID:CQKIlWB7o
美鶴「私達に叱責される可能性も君なら想像出来たはずだ。なのに君は全体の益を選択し、かつそれを隠すような事をしなかった。……立派だ。ただ狼狽えた私などより遥かに」

>違う。

>これは、こんなのは違う。

美鶴「私は人を統べるべき家に生まれ、人を統べるべく育てられ、人を統べる立場にある。だが、それでもやはり人間なんだ。君になら言うまでも無いと思うが……私がみっともなく取り乱した理由も、理解して欲しい」

鳴上「あの、俺は……」

美鶴「何も言うな。何も……私が表面上冷静でいられるのもこの辺りが限界だ。帰るよ。この事は皆に伝えるが、いいか」

鳴上「は、はい」

美鶴「心配するな、悪いようにはならない。というか、君に責は無い。これからも現場の指揮は君に任せる。また何かあったら連絡をくれ」

>美鶴は立ち上がり、外へ出ようとする。

鳴上「あの、桐条さん!」

美鶴「……なんだ。まだ何かあるのか?」

鳴上「怒らないんですか?」

美鶴「怒る事などない。彼が選んだ道なら……私に止める権利など無いよ。それだけだ」

>こちらを振り向かずにそれだけ言うと、寮を出て行った。

>大型バイクの唸るようなエンジン音が遠ざかっていく。

鳴上「何で……何でなんだ」
508 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:11:21.10 ID:CQKIlWB7o
>怒られたかった。

>恨まれたかった。

>そして、あいつを追い掛けようと、そう言って欲しかった。

>責められれば、それで済む気がして。

>責めてくれれば、それで許される気がして。

>黒い感情は小さく小さくなって胸の奥にしまってある。

>高密度に圧縮されたそれは、何かの映画で氷に閉じ込めたアメーバみたいにどろりとして、その時を待っている。

>言いようの無い感覚に襲われて、あえぐように口を開いた。

>喉から飛び出しそうになる叫びをこらえて、ぎりりと歯を食いしばる。

鳴上「ぅ……ぁ……」

>あいつは、これからどうするのだろうか。

>全てから逃れ、幸せに過ごす事が出来るのだろうか。

>きっと、出来ないだろう。

>あいつも、事件の一部なのだから。

>その事だけが、暗い視界の中で仄かに輝いていた。
509 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:11:47.35 ID:CQKIlWB7o


【5/26 晴れ】


>厳密な意味での一人暮らしは初めてだった。

>少し不安はあったが、案外何とかなっている。

>よくよく考えれば、巌戸台での生活もほとんど自分の自由だったし、こんな物かもしれない。

有里「で、どうしてこうなってるのかな」

>陽介の伝手でもらえた机には高校3年のテキストが乱雑に広げられていて、その上に千枝が突っ伏している。

陽介「……いや、里中の気持ちもわからんでもねーよ俺は」

>陽介や千枝、雪子の協力で、なんと二日の内に当面の住処が決まった。

>陽介は妙に人脈が広かったし、雪子は家業上だろう、更に輪をかけて広かった。千枝は街を走り回って色々な物件を探してくれた。

>そのお蔭で、家賃も手頃なワンルームが見つかり。

>手続きさえすればその日から入れると言う僕にとってはとても好都合な条件もあり、ほぼ即決でそこに住む事に決めた。

>三人の協力はそれだけに留まらず、家具まで安く揃ってしまった。

>そして僕の一人暮らしがスタートしたのだが……

>その日から、学校が終わると陽介と千枝がやってくるようになった。
510 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:12:14.80 ID:CQKIlWB7o
有里「勉強だったら天城さんに聞けばいいんじゃないの?成績いいんでしょ?」

>そう聞いた僕に、陽介は当たり前のような顔で答えた。

陽介「いや、だって天城忙しそうだし。場所だけ貸してくれたら後俺らでやるから」

>……見た限り、それが全てではない。

>来週、テストがある。

>だから勉強会をする。

>それはそうだが、陽介と千枝は何か僕の様子を見に来ているような気がする。

>雪子が言っていた『知ってる人に似ている』という感覚を、この二人も感じているのだろうか。

>……まぁ、どうでもいい事なのだけれど。

>話を机の上の現状に戻す。

有里「全く、勉強するって言って来た人がこれじゃね」

陽介「気付いたんだけどさ、バカとバカが寄っても結局全然捗らねーの」

有里「……とりあえず、飲み物買ってきたから。炭酸大丈夫だよね」

陽介「おう、サンキューな」

有里「ほら、里中さんも」

千枝「……」

有里「……あれ?」

>反応がない。
511 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:12:41.03 ID:CQKIlWB7o
陽介「これ、もしかして……」

>机に伏せていた顔がごろんと横を向く。

千枝「……もう食べられないよぉ……」

>こんなテンプレートな寝言、初めて聞いた。

陽介「寝てんじゃん!」

有里「すごいな……たった15分目を離しただけで、人の部屋で眠れるなんて」

陽介「ったくしょーがねーなー。……よし」

>陽介が水性ペンを取り出す。

陽介「サボってるコイツが悪いんだからな。勉強進まないイライラをぶつける事にする」

有里「怒られるよ?」

陽介「ヘーキだって、ちゃんと水性使うし」

>そういう問題なのだろうか?

>陽介は慎重にペンを近付ける。

陽介「とりあえず、額に肉とでも……」

有里「古いよ」

陽介「定番の大事さってもんがわかってねーな有里は」

有里「……僕にいい案がある。貸して」

>きゅっきゅっ、きゅぅ。
512 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:13:08.40 ID:CQKIlWB7o
陽介「これ、何て読むのよ」

有里「これはウーって読む」

陽介「……あにそれ」

有里「あれ?知らない?三只眼吽迦羅と无」

陽介「日本語でしゃべってくんね?」

有里「とにかく起こそう。おーい、里中さん?」

>千枝の肩を揺する。

千枝「寝てへんよ?ちゃんと勉強……」

陽介「どこと混線してんだ。起きろっつの」

千枝「ふぇっ!?あ、あれ?私今寝てた?」

有里「ぐっすりね」

千枝「うわ、恥ずい!ていうか花村も起こしてくれてもいいじゃん!」

陽介「だからこうして起こしてんじゃん」

>……額の落書きに気付く様子は無い。

千枝「うぐぐ……ていうか勉強全然進まないね」

陽介「だな。やっぱこう、頭イイ奴がいないとダメだぜこれ」

千枝「ちょっと待って遠回しに私の頭悪いって言ってない?」

陽介「良いのかよ」

千枝「……良くはない」

陽介「だろ。つっても天城は家が忙しいらしいし、アイツに手間掛けるのもアレだしなぁ」
513 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:13:58.52 ID:CQKIlWB7o
千枝「……ねぇ、有里君。ちょっとこの問題やってみてくれない?」

有里「X≒3」

陽介「ん?……合ってんな」

千枝「そ、それじゃこっち!こっちは!?」

有里「……持統天皇……だっけ」

陽介「正解。お前さ、もしかして……」

有里「ん?」

千枝「すごい勉強出来る人?」

有里「いや、それなりだと思うよ」

陽介「それなりでもいい!それなり以下の俺らを救ってくれぇ!」

千枝「それなり以下はあんただけだってば!でも、良かったら勉強……教えてくれたりしないかなー、なんて」

>実は3年の授業はやっていないのだが、テキストを見る限りなんとかなりそうではある。

有里「僕で良ければ。じゃあ取り敢えず苦手な教科を教えてもらえる?」

千枝「あ、私は理数がちょっと……」

陽介「全部」

>……全部?
514 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:14:53.20 ID:CQKIlWB7o
有里「わかった。里中さんはまず数学から。花村君は……まず勉強のやり方から」

陽介「俺そっからなの!?」

>陽介が良いリアクションをした辺りで、ドアがどんどんと叩かれた。

千枝「うわっ、何?」

陽介「えらく乱暴な客が来たもんだな」

>客?

>そんなもの、この二人と雪子以外に来るはずがない。

>警戒しつつ、玄関に向かう。

>……ドアスコープを覗くと、ドアを叩いているのは見るからにガラの悪い大男だった。

有里「何でこんな人が……」

大男『おい!先輩よぉ!いるんだろ!?大変なんだよ!』

有里「そっとしておこう」

陽介「待て待て有里。ドアの外、誰がいた?」

有里「すごくガラの悪い男の人が」

千枝「聞き間違いじゃないね。完二君?」

大男『そうっスよ!あ、そうか。俺ぁそこの二人の後輩の巽完二ってモンだ。別に怪しいモンじゃねぇから入れてくれねぇか!』

有里「そうなの?」

陽介「まぁな。見た目はあんなだけど悪い奴じゃねえよ」

有里「それならいいけど。今開ける」
515 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:15:21.07 ID:CQKIlWB7o
>扉を開いて迎えいれると、僕に挨拶もせずに陽介と千枝に詰め寄った。

完二「急で悪いんスけど……なんスか里中先輩、そのデコ。懐かしいっスね」

千枝「へ?でこ?」

有里「君、知ってるの?」

完二「ん?あぁ、まぁな。40巻読破したっつの」

>この少年とは仲良くなれる気がする。

完二「って、んなこたどうでもいいんだよ。先輩方、ちっとやべェんスよ。天城先輩んとこは先に行ってきたんスけど、忙しいみたいだったんで……あんたらがここにいるって聞いて飛んできたんスよ」

陽介「何がどうやべえんだよ。そんな血相変えてよ」

完二「シャドウっスよ、シャドウ!シャドウが出たんスよ!」

陽介「あんだってぇ!?じゃ、またマヨナカテレビが……」

>聞き覚えのある単語に体が反応する。

>シャドウ、マヨナカテレビ……

>彼らは、つまり。

完二「ちげえよ!街ん中だよ!現実にシャドウがいんだよ!」

陽介「え?」

千枝「な……」

有里「何だって……?」
516 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/13(月) 00:16:18.05 ID:CQKIlWB7o
いい漫画でした。

では、また明日。
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/13(月) 00:28:21.42 ID:5GTTsgWro

P3の面々も間違いなく好きだけど、一緒に過ごすならP4メンバーの方がいいな
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/08/13(月) 03:05:20.04 ID:n+e6m3e+0
乙です僕わ前回のスレから来たよ
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/13(月) 03:38:24.38 ID:Dv0clwhLo
正直P3で友達になれそうなのってテレッテと風花くらいだからなぁ。
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/08/13(月) 04:52:55.12 ID:anFaitXAO

マックイーンなのか筋少なのか
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/13(月) 11:27:31.02 ID:HuYmKMQ9o
影時間でもないのにシャドウが?
522 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:10:52.11 ID:d16ZUgf0o
陽介「ばっか野郎、お前一般人の前で……」

完二「あ、ヤベ……つ、つか!アンタもマヨナカテレビがーとか言ってたじゃねえかよ!」

千枝「あ、あのね有里君!えっと、これはね!」

有里「……君達も、ペルソナ使いなの?」

千枝「はぇ?」

有里「マヨナカテレビにシャドウ……そうか、君達が悠の……」

>今更、真田がここを薦めた理由がわかった。

>あの街を出てもまだ、切れていない。

>仲間たちとのつながりは。

陽介「え、有里アイツの事知ってんの?」

有里「うん。君達はどこまで知ってるのかな……彼は今、昔僕がいた組織の一員として頑張ってるんだけど」

千枝「って事は……」

完二「桐条さん達の元お仲間っスか、有里サンは」

有里「あれ、知ってるんだ。そうか、徹底的に調べたっていうのは……」

陽介「ん?つーことは有里もペルソナ使いなのか?」

有里「そうだよ。君達も、って言ったでしょ」

完二「丁度いいや、ちっと付き合ってくれよ。とにかく外、外出てみろって!」
523 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:12:22.86 ID:d16ZUgf0o
>完二に急かされて部屋を出る。

>完二を追いかけるように道を行くと、ついにそれに出会った。

>……なんだ、これは。

陽介「うぇ……なんだよ、アレ……」

>道に奇妙な生き物がいる。

>生き物、と表現していいのかどうかもわからないが、何となくそう感じた。

>やせ細った子供のようなそれ。

>何も見えていないようにふらふらと漂いながら、電柱に引っかかったりしている。

千枝「あれ……シャドウなの?何か、感じ違うけど……」

完二「あ?だって、他にいねぇだろ、あんなバケモン……ここだけじゃねえんスよ、街中いろんなとこにあんなんとかもっと強そうなのとかいるんスよ」

>シャドウではない。

>彼らも何となくわかっているようだが、僕はよりはっきりと知覚していた。

>シャドウとは違う。

>だが、出会った事が無い……今までの知識では名前すら付けられない存在であることは間違いないようだ。

千枝「あっ!ちょっとアレ!」

>見ると、女性が一人その生き物に近付こうとしている。
524 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:13:38.47 ID:d16ZUgf0o
陽介「だー!ダメだってそれ!危ないってマジで!」

>陽介が大声を出すが、女性はこちらを怪訝に見るだけで避けようとしない。

完二「っしゃーねぇ!力尽くでも離れてもら……う……ぜ?」

>女性はソレの横を素通りした。

千枝「の、のーりあくしょん?」

陽介「いや、それはないっしょ……明らかにおかしーじゃん、アレ」

有里「もしかして……見えてない、とか」

>考えてみれば、今の女性はアレを一瞥もしなかった。

>流石の僕でもそれは無理だ。

>存在しているだけで空間が歪んで見えるような、そういう異質な存在を無視する事は不可能に近いだろう。

>つまり、女性は最初からアレを視認あるいは知覚できていないと考えれば辻褄が合う。

完二「つまり……ペルソナ使いにしか見えねえって事か?」

有里「可能性にすぎないけど。だけど、それなら少し希望もある。アレが人に危害を加えないかもしれないって希望が」

>さっき、女性は無視し、無視されていた。

>もし見える相手……ペルソナ使いにだけ襲いかかる性質があるとしても、彼らは戦う事が出来る。

>一般人に被害が出ないだけマシに思えた。
525 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:15:36.66 ID:d16ZUgf0o
陽介「……お互い、干渉しないってんならいいけどな。こっちとしても無理に戦ったりしたくねーし」

千枝「テストもあるしね……」

完二「つっても気持ちいいもんじゃねぇっスよ……」

>三人は不安に思っているようだ。

>……美鶴達に連絡するべきだろうか。

>いや、しかし今の自分は……。

千枝「これってさ、この街だけなのかな」

陽介「いや、わかんねー……去年の件あるから、そうじゃないとも言い切れねーけど」

完二「情けねーけど、俺らだけじゃわかるトコも限界あるよな……こういう時に、直斗がいてくれりゃ……」

「悪魔、ですよ」

>背後から声がした。

>振り向くと、そこに立っていたのは綺麗な顔立ちの帽子を被った少年だった。

少年「あなたが有里さんですね。初めまして。僕は探偵の……」

>……。
526 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:16:21.47 ID:d16ZUgf0o
>学校から帰ると、寮が騒がしかった。

>ラウンジで、誰かが議論しているらしい声がする。

>……入るのが躊躇われたが、このまま突っ立っているわけにもいかず、玄関を開けた。

ゆかり「だって……それじゃ私達は何のために……」

風花「彼一人の為じゃないでしょ?」

ゆかり「じゃあ風花は顔も知らない誰かの為に戦ってたっていうの!?」

風花「そうじゃなくて……」

>議論が一時中段され、二人の視線がこちらに向く。

>風花はすぐに目を逸らし、ゆかりはぎこちない笑顔を作った。

ゆかり「おかえり。ごめんね、うるさくしちゃって」

鳴上「あ、いえ……いらしてたんですね」

ゆかり「うん、時間あったから。あの……大変だったね」

鳴上「……別に、俺は何も」

ゆかり「そっか……風花もごめんね、キツイ言い方しちゃって」

風花「ううん、私はいいの」

ゆかり「今度またお茶でも行こうよ。風花、どっかいいトコ探しといて!」

風花「あ、うん。帰るの?」

ゆかり「うん。今日はね。……ていうか、もう来ないかも」

>寂しそうな笑顔が、その言葉が、ちくりと刺さった。
527 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:18:19.40 ID:d16ZUgf0o
風花「そう、なんだ……それじゃ、えっと……また」

ゆかり「ん。あ、鳴上君。良かったらちょっと送ってくれない?」

鳴上「俺ですか?」

ゆかり「今帰って来たとこ悪いんだけどさ。ダメ?」

鳴上「いや、いいですけど」

ゆかり「すぐそこまででいいからさ。お願いね」

>ゆかりに続いて寮を出る。

>無言だった。

>何か考えているようにも、怒りをこらえているようにも見えた。

>しばらく歩き、人通りが途切れた時、初めてゆかりが口を開いた。

ゆかり「鳴上君、あの人が出ていく時……何て言ってた?」

鳴上「……皆に迷惑をかけたくないから出ていく、だそうです」

ゆかり「そっか。それで、君は止めなかったんだ」

鳴上「……」

ゆかり「責めてるわけじゃないの。確かに、あの人がいると私、他の事とかどうでも良くなっちゃうから」
528 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:18:50.18 ID:d16ZUgf0o
鳴上「そんな……」

ゆかり「だから、君の判断は間違ってないよって、そう言おうと思って。事件が大変なんだもん、仕方ないよ」

>ゆかりは笑っていなかった。

ゆかり「気にしないでって言っても無理だと思うから、私もちょっと距離置こうかなって。勝手だけどね」

鳴上「そう、ですか……」

ゆかり「うん。もう来ないかも、って言ったのもその……あれ?」

>道端に鳥が一羽いた。

>……妙に大きい。

鳴上「何か、あの鳥……」

ゆかり「待って、あれ……鳥じゃ無い、んじゃ」

>俺達の声に気付いたのか、鳥がこちらを見た。

>鳥……体は確かに鳥に違いない。

>しかしその頭は、顔は、まるで人間の……

鳴上「あれは……」

ゆかり「やだ、気持ち悪い……」

>おぞましい生き物だった。

>昔読んだ本に、半人半鳥の怪物が出てきたのを思い出す。

>確か名前はハーピーと言った。
529 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:21:31.16 ID:d16ZUgf0o
ハーピー『気持ち悪い……?それって、アタシの事?』

>ハーピーがゆかりの言葉を耳ざとく拾う。

鳴上「しゃべっ……!?」

ハーピー『ガキのくせに男連れちゃってさ。アタシが気持ち悪いですって?』

>地面に降りていたハーピーがその大きな翼を広げ、飛ぶ。

ハーピー『ふざけんじゃないわよ。アンタなんかすぐコロシちゃうんだから!』

>それまでの人語とは違う、鳥そのもののような甲高い声をあげた。

>来る。

>武器は寮に置いたままだし、ペルソナは現実世界では使えない。

>だが、それはゆかりも同じはずで、それならゆかりを守らないと。

>思った時には、ゆかりを庇うように立っていた。

ハーピー『クエエエエエエエ!!』

>羽音がすぐ近くまで迫る。

>恐らく、かなりの大怪我を負う事になるだろう。

>最悪死ぬかもしれない。

>しかし、ゆかりが逃げるだけの時間を稼げればそれでいい。

ゆかり「鳴上君!」

鳴上「逃げてください!はやく!」
530 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:22:10.75 ID:d16ZUgf0o
>頭を狙って振り下ろされた鉤爪を右腕で受ける。

>制服の袖を裂き、爪が肉を破り骨にまで達する。

>想像以上の力だ!

鳴上「この……!」

>ゆかりを狙う事の出来ないように、今度は左腕でその脚を掴む。

ハーピー『ジャマすんじゃないわよ!』

鳴上「ぐあっ!」

>掴んだのと逆の脚が左腕を掴み返してきた。

>腕の中で何かがひどく圧縮されるミシミシという音がする。

>ゆかりはまだ逃げていない。

>突然の事に混乱しているのか、泣きそうな顔でこっちを見ているだけだ。

>まだ時間を稼ぐ必要がある。

>左腕の内部から、何かが切れるような音も聞こえ始めた。

>そろそろ、限界だ。

>……不意に、音が聞こえる事に気付いた。

>タッタッタッタッタッタと、ミシンのように速く正確なスパンで刻まれる音。

>しかも複数だ。

>それが足音だと気付くのと、別の音がするのはほぼ同時だった。

>たららららっ、軽い音がして、ハーピーを通じて強い衝撃が腕を揺する。

「鳴上君、伏せて!」

>声に反応して、緩んだ掴みを振りほどき頭を下げる。
531 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:23:09.83 ID:d16ZUgf0o
>風を切る音が聞こえて、続いて鈍い音がした。

>ハーピーが数メートル吹き飛び、地面に落ちる。

>目の前に手が差し出される。

>硬く、冷たい手。

メティス「大丈夫?」

>メティスと……

アイギス「すみません、遅れてしまって……」

>アイギス。

ラビリス「なんやー、二人共おるやん。ほな、ウチが急いで来る事も無かったんやなぁ」

>吹き飛んだハーピーに、自身の得物をずんと乗せて、ラビリスが言う。

鳴上「なんとか、骨は無事だ……けど、こっちの出血はあんまり良くないかもな」

アイギス「そうですか。では一度寮に戻って応急処置を。姉さん、ゆかりさんを送って行ってもらえますか?」

ラビリス「えー?ウチも帰るとこやってんけどな……まぁしゃーないか。ほな岳羽さん、帰り道で説明するから。とりあえずついてきてや」

ゆかり「あ、う、うん」

>事態が飲み込めないながらもラビリスに従うようだ。

鳴上「何があったんだ、一体。あれは……ん?」
532 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:24:43.84 ID:d16ZUgf0o
>さっきまでハーピーが横たわっていた場所には既に何もなかった。

鳴上「あれ?あそこにさっきまで……」

アイギス「それが、彼らの性質です。体が維持できなくなると、霧のように消える」

鳴上「彼らって、アレが何だか知ってるのか」

アイギス「はい。美鶴さんに言われて、それを伝えに来ました。即座に伝えられるのは、通信機を内蔵している私達だけだったようなので」

>なるほど、それであの三人だったのか。

メティス「今みたいな物が、街に……ううん、世界にたくさん出没してるみたい。ただ、一部の人間と私達のようなペルソナ使い以外には見えないし聞こえない、触れないみたいだけど」

鳴上「世界中にか?結局、アレは何なんだ」

アイギス「人の恐怖や黒い部分を象徴する存在……悪魔、と呼ばれているそうです」

鳴上「悪魔……?」

>ふと、八十稲羽の事が頭を過ぎった。

鳴上「待て、世界中って事は八十稲羽もか?」

メティス「手は打ってある……美鶴さんはそう言ってたけど」

アイギス「今回の事態に最も適任であろう方を派遣したそうです。とりあえずは心配ないかと」

鳴上「そうか……で、何でこんな事になってるんだ」

>アイギスはふるふると頭を振った。

アイギス「それが全く。ただ、恐らくは……テレビの影響です」

鳴上「テレビの?」

アイギス「悪魔というのは、実は昔から存在していたそうです。ただ私達が知らなかっただけ……だから、きっと何かの再現だと」

鳴上「つまり、今回は……」

アイギス「影時間の次は、突如増えた悪魔達……その対処が私達の仕事です」
533 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/14(火) 00:25:28.63 ID:d16ZUgf0o
悪魔現る。

では、また明日。
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/08/14(火) 00:47:57.07 ID:hW9CJV+20



面白いことになってきたな。
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/14(火) 02:02:56.79 ID:k4/LsMKYo
P2とも繋げんのか…乙!
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/14(火) 02:33:09.41 ID:+bkr72XHo
てかゆかりは現実世界でもペルソナ出せるから戦えたんじゃ・・・
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/08/14(火) 02:44:05.52 ID:m9Ub4aeL0
乙ですまさかの悪魔か
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/14(火) 02:52:28.21 ID:EWMrbnWyo
ビビってる描写あったべ
だせるはだせるはずだけど…
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(ぐんまー) :2012/08/14(火) 16:22:10.12 ID:ZTKQst/10
召喚器がないんじゃね?
540 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:02:49.02 ID:fhlxHWqNo
鳴上「対処って、あれと戦うのか!?」

>両腕の痛みがそれは無理だと言っている気がした。

アイギス「不可能ではないかと」

鳴上「俺の現状を見てもそう言えるのか」

アイギス「いえ、そうではなく。ペルソナを使えばいいだけでは?」

鳴上「ペルソナはテレビの中でしか……」

>ふと、アイギスを見る。

>彼女達は三年前、確かにシャドウと戦っていた。

>順平達が言っていた『この中だと召喚器がいらない』という話。

アイギス「こちらでも召喚できます。恐らくは、感覚がかなり違うので……少し慣れが必要だと思いますが。これを」

>手渡されたのは小さな金属の塊だった。

>以前、似た物を見た事がある。

>あの時はその所作に驚いたものだが……

アイギス「使い方は……」

鳴上「知ってる。天田達のを見たからな」

アイギス「それは重畳であります」

>……あります?
541 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:03:49.46 ID:fhlxHWqNo
鳴上「なぁ、アイギス」

アイギス「なんですか?」

鳴上「……いや、なんでも無い」

>何か違和感がある。

>アイギスは機械だが、最近ではそのことを殆ど忘れていたのに、今強くそれを思い出した。

>任務だからか?

>戦闘が控えているからだろうか?

>いつもより、冷たい声に感じた。

鳴上「とにかく、寮に戻って装備を……いや、テレビに入ってもいいな」

アイギス「その両腕では不可能であります。専門外なのでわかりませんが、数日間は戦闘も厳しいかと」

鳴上「回復魔法で……」

アイギス「ペルソナの補助無しで受けた傷は、回復が難しいことはご存知かと思いましたが」

鳴上「……そうなのか?」

アイギス「……それが原因で致命傷となった方もいらっしゃいます。どうやら、随分と安全な戦いをしてきたようですね」

鳴上「いや、そんなつもりは……」

アイギス「いえ、それで正しいです。戦いにおいて、臆病である事は美徳とも言えます。その分生存率が上がるのですから。正しい判断です」

>珍しく挑発的な物言いだった。

>やはり、アイギスも知っていて、そのせいでこんな態度なのだろう。

>いなくなっても、結局はアイツの影が俺の周りにいる。
542 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:04:31.82 ID:fhlxHWqNo
メティス「あの、鳴上君……」

>今まで黙っていたメティスが小声で囁く。

メティス「姉さんのこと、悪く思わないで欲しいの。あの、今は、ちょっと……」

鳴上「……わかってる。心配しなくてもそんな事で嫌いになったりしないよ」

メティス「うん、そうだよね……あの、その腕、大丈夫?」

鳴上「ちょっと痛いな」

メティス「骨は折れてないみたいだけど……」

鳴上「明日病院行って検査してもらうよ。早くなんとかしないといけないしな」

メティス「……無理しないでね」

>少し、驚いた。

鳴上「まさかメティスに心配されるとは」

メティス「な、何で?」

鳴上「いや、なんていうか俺が保護する側みたいに勝手に思ってたから。ありがとうな」

メティス「わ、私だって心配になったりする。最近は……元気も無かったし」

鳴上「……バレてたか」
543 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:05:45.81 ID:fhlxHWqNo
メティス「あの話は、鳴上君が悪いんじゃないと思う。ていうか、誰かが悪いとかじゃなくて、その……」

鳴上「そうだなぁ」

>一生懸命説明しようとしているメティスが妙に可愛らしくて気の抜けた返事をしてしまった。

>メティスがむっとしたようにこっちを見る。

メティス「真剣に話してるのに」

鳴上「悪い、ついな」

メティス「……もう心配してあげない」

鳴上「あ、おい……」

>メティスに置いていかれてしまった。

>メティスは少しずつ変わってきている気がする。

>『No.12 刑死者 メティス』のランクが4になった。

>事件解決に集中していれば、胸のもやもやを忘れられるかもしれない。

>今は、それでいい。

>……。
544 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:11:15.76 ID:fhlxHWqNo


【5/27 曇り】


>病院に行った帰り道、見覚えのある人物に出会った。

鳴上「神条さん」

神条「ん?ああ、君か。久しぶりだな」

鳴上「そうですね」

>以前出会った神父だという男、神条久鷹。

>……用事があるわけではないのだが、つい話しかけてしまった。

>俺は、懺悔でもしたいのだろうか?

神条「随分と酷い顔色だ。悩み事かね」

鳴上「わかりますか」

神条「どれ、また当ててみせよう。……ふむ。これは……そうか」

>神条はじっと目を見ると、その奥にある何かを読み取るように呟いた。
545 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:12:12.97 ID:fhlxHWqNo
神条「君の中に住む黒い怪物が大きくなっているねぇ。以前よりはっきりとした形になったみたいだ」

鳴上「怪物……?」

神条「人の腹の中には、悪魔が住んでるんだよ。人によっては神だったり天使だったりするがね。その、もう一人の自分とも言える存在……それが、君の場合怪物なんだろう」

>もう一人の自分。

>まるでペルソナのことを言っているような口ぶりだ。

>とすれば、黒い怪物というのは、あの黒いイザナギの事だろうか。

>エリザベスとの一件以降、不調にもならずに今まで過ごせたが……。

神条「その顔だと、心当たりがあるようだ。もう一人の自分、なんて言ったけど、それは違う。むしろその自分こそが本質なんだ」

鳴上「俺の本質が怪物ですか」

神条「おかしな話じゃない。人間、誰だって真っ白に美しいわけじゃない。だから神に縋る。むしろ、全て綺麗な人間なんていないと言っていい」

>さっきまでの話がペルソナだとすれば、これはシャドウの話だろうか。

>人間はみんな、自分でも見たくない部分を抱えている。

>陽介もそうだったし、千枝もそうだった。

>雪子も、完二も、りせも、人間じゃないクマも、直斗も。

>そして、きっと俺も。
546 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:13:35.27 ID:fhlxHWqNo
>そういえば、俺のシャドウとは出会っていない。

>強いて言えば、彼にそれに近い感情を持っていた気がする。

>足立透……連続殺人の、本当の犯人。

神条「それに逆らうか受け入れるかは本人の自由だ。どちらにせよ……それ以上大きくなったらどうなるか。きっと壊れてしまうだろうねぇ」

>神条は立ち上がり去ろうとする。

鳴上「あ、待ってください」

神条「……心配しなくても、きっとまた会える。私達はそういう運命の下にあるんだろう」

>自分の中の怪物。

>神条は、何かを伝えたいようだった。

>神条に、少し惹かれてきている自分がいる……。

>『No.16 塔 神条久鷹』のランクが2になった。
547 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:14:07.03 ID:fhlxHWqNo
天田「おかえりなさい。どうでした?」

鳴上「うん、日常生活には支障無いらしい。ただ、筋力とかがフルに使えるようになるには一週間……かそれ以上かかるそうだ」

天田「そうですか……となると、次の満月までは」

鳴上「微妙な所だな」

天田「まぁ、最悪僕達だけでもいけますよ。テレビにも随分慣れてきましたし」

鳴上「そうだな、もしも無理だったら頼むよ。暫く安静だな」

天田「はい、任せてください。それじゃ、ちょっと運動してきますんで」

>天田を見送って部屋に入った。

>……一週間か。

>迅速を求められる時に頭の痛い話ではある。

>いや、痛いのは腕なのだが。

鳴上「どうするかな……本当に、今回は戦力外かも……」

>出来る事なら今日にでもテレビに入り、原因の究明がしたかったのだが、腕を上げ下げするだけでずきずきと傷口が痛む。

>自力で戦うのはかなり難しいだろう。

鳴上「ペルソナだけで戦わせれば……」

>そうなったら、自身のフォローに仲間の手を割かねばならないだろう。

>結局足手まといだ。

鳴上「……何か、ペルソナのフォローに使えて自力で戦うような……そういう物があれば……」

>……無い、だろうなぁ。

>今回は引きこもっているしかないかもしれない。

鳴上「はぁ……ん?」

>ぱたぱたと窓を叩く音がする。

鳴上「雨だ」
548 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:14:41.60 ID:fhlxHWqNo
>寮の全員がラウンジに集まっている。

>……無言でテレビの画面を見つめる。

>悪魔の出現は、テレビの中に何らかの変化があったからだと予想できる。

>なら、今日もしかすると……

ラビリス「……映るで」

>いつものノイズが画面に走る。

>女性ボーカルが歌うOPが流れて、映像が始まった。

風花「やっぱり、もう誰か……」

>これは……学校のようだ。

鳴上「知らない学校だな」

>校門が映る。

>聖……エルミン学園?

>学校かと思ったら城があったり、知り合いかと思ったらキャラが違ったり……

>ちぐはぐな設定の物語だ。

男の声『理想の世界へようこそ』

>怪しい会社に潜入するぞ、という所で、そうナレーションが入って番組は終わった。
549 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:19:31.14 ID:fhlxHWqNo
風花「聖エルミン学園……誰か知ってますか?」

>全員無言だ。

鳴上「とりあえず、その名前で調べてもらいましょうか。それから……悪魔について」

天田「早急な対処が必要でしょうね。ペルソナ使い以外にも、一般人にも見えてしまう事があるみたいですし」

メティス「とはいえ、鳴上君が復帰するまで時間がかかりそうだし……」

ラビリス「ウチらだけでやろか?」

鳴上「そうだな……手早く解決しないと、このまま悪魔が街中を徘徊するようじゃ困る」

風花「えっと、それじゃあ……まず聖エルミン学園に関連した事件の資料を探しておきますから、それが見つかったら挑みましょう」

天田「もし見つからなかったらどうします?」

風花「無いと思うけど……もしシャドウワーカーに資料が無かった場合、それが判明し次第でいいんじゃないでしょうか?」

ラビリス「ほなそれまで待機やな。悠もちゃんと養生しーや?」

鳴上「悔しいけど、そうするよ。……任せた」

>部屋に戻ってベッドに倒れこむ。

>この無力感……何ともいやな物だ。

鳴上「俺の腕代わり、か……」

>そんな都合のイイ物が……

鳴上「ん?」

>携帯にメールが入っている。

鳴上「さっきメールが来てたのか。えーと……」

>差出人は……知らない名前だ。

鳴上「スティーブ……ン?誰だ、これ」
550 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/15(水) 00:24:02.80 ID:fhlxHWqNo
とんでもなく迷惑な迷惑メール。

では、また明日。
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/15(水) 00:38:48.54 ID:VWVWOllio
Y子くるんですか
乙!
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 00:51:40.19 ID:kRy9L1KCo
まーたスティーブンさんの押し付けが始まるのか
おつー
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/08/15(水) 01:50:18.52 ID:x/2zpuEA0
乙です
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/15(水) 15:27:14.37 ID:+P3UXELs0
乙!
555 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:00:36.03 ID:2m08GTsno
>開いても大丈夫なのだろうか。

>こういった方面はあまり得意では無いが、こういうメールで開いただけで面倒な事になる物があるのは知っている。

>……添付ファイル付き。

鳴上「まずいよな、多分……あ、山岸さんに見てもらえば何かわかるかもしれない」

>明日、風花にメールを見せてみよう。


【5/28 曇り】


風花「迷惑メール?」

鳴上「なのかなって」

>早速風花に例のメールを見せる事にした。

>例の件以降、少し気まずい空気だったのもあって、話しかけるきっかけが欲しかったのもある。

風花「ん、じゃあちょっと携帯見せてもらえる?」

鳴上「はい」

>携帯を渡す。

>風花はポケットからケーブルを取り出すと、持っていたノートPCと繋いだ。
556 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:01:34.59 ID:2m08GTsno
風花「一回こっちにコピーして内容チェックしてみるから。多分大した物じゃないと思うけど」

鳴上「そうなんですか?」

風花「まぁ、大体は広告とかそんな物かな?そんな本式なウィルスとかそういうのは……何、コレ」

>添付されていたのは極小さいプログラムだったようだ。

>それこそフロッピーにも収まるような、小容量のプログラム。

>そして、何よりも目を引いたのはその文面だった。

『NAME:STEVEN
 このNETに せつぞくしている
 すべてのひと へ
 げんざい われわれ ニンゲンに
 しんこくな ききが せまっている
 でんせつの アクマたちが
 やみから めざめたのだ
 すぐにも アクマが おそってくるだろう
 アクマと たたかうために
 アクマの ちからを りようすることだ
 この プログラムが あれば できるだろう
 ゆうきあるものが
 うけとって くれることを いのる・・・
 アクマと たたかい ひとびとを すくうために』

>随所にあるアクマという単語。

>アクマの力を利用するプログラム……。

鳴上「これ、いたずらなんでしょうか」

風花「ちょっと、今の段階では……でもタイミングを考えるとただのいたずらじゃないと思います」

鳴上「ですよね。少なくとも悪魔の事は知っている……これ、プログラムが作られた日ってわからないんですかね」

風花「一応見てみるね。……ええと……」

>風花がいくつか操作すると、エラー表示がポップアップした。

風花「ええ!?あ、これ、相当古いフォーマットかも。大体20年くらい前の……ちょっと待ってて」

>もう何をやっているかもわからないが、何やらプログラムの形式を調べているらしい。

>しばらく黙って待っていた。
557 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:02:27.85 ID:2m08GTsno
風花「一回こっちにコピーして内容チェックしてみるから。多分大した物じゃないと思うけど」

鳴上「そうなんですか?」

風花「まぁ、大体は広告とかそんな物かな?そんな本式なウィルスとかそういうのは……何、コレ」

>添付されていたのは極小さいプログラムだったようだ。

>それこそフロッピーにも収まるような、小容量のプログラム。

>そして、何よりも目を引いたのはその文面だった。

『NAME:STEVEN
 このNETに せつぞくしている
 すべてのひと へ
 げんざい われわれ ニンゲンに
 しんこくな ききが せまっている
 でんせつの アクマたちが
 やみから めざめたのだ
 すぐにも アクマが おそってくるだろう
 アクマと たたかうために
 アクマの ちからを りようすることだ
 この プログラムが あれば できるだろう
 ゆうきあるものが
 うけとって くれることを いのる・・・
 アクマと たたかい ひとびとを すくうために』

>随所にあるアクマという単語。

>アクマの力を利用するプログラム……。

鳴上「これ、いたずらなんでしょうか」

風花「ちょっと、今の段階では……でもタイミングを考えるとただのいたずらじゃないと思います」

鳴上「ですよね。少なくとも悪魔の事は知っている……これ、プログラムが作られた日ってわからないんですかね」

風花「一応見てみるね。……ええと……」

>風花がいくつか操作すると、エラー表示がポップアップした。

風花「ええ!?あ、これ、相当古いフォーマットかも。大体20年くらい前の……ちょっと待ってて」

>もう何をやっているかもわからないが、何やらプログラムの形式を調べているらしい。

>しばらく黙って待っていた。
558 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:05:25.11 ID:2m08GTsno
風花「……これ、1992年に出来たプログラムみたい。丁度20年前になるのかな。それで……一応中も読んでみたんだけど、私なんかじゃとても理解できないプログラム……」

>確か、dos画面というのだったか。

>黒い画面に白い文字が走っているが、当然理解できない。

風花「とりあえず、こっちにコピーは残しておくけど、オリジナルも出来たら消さないでとっておいて。何となく、本当になんとなくだけど、それ、すごく重要な気がするの」

鳴上「とにかく只事じゃ無さそうですよね。わかりました」

風花「ただ、起動はしないでね。何があるかわからないから……」

>頷いて、もう一度メールを見る。

>突然送られてきた奇妙なメール。

>文面の通りに取れば、このプログラムを使う事で悪魔の力を利用できるのだろうが、その方法がわからない。

>そもそも、この携帯に20年も前のプログラムをインストールできる物だろうか。

>……色々な可能性を考えたが、あまり役立ちそうな代物では無い気がする。

鳴上「まさか、悪魔が一緒に戦ってくれるってわけでもあるまいし、な」

風花「うーん、流石にどうなのかな……」

鳴上「ですよね」

>だが、もしそうだったとすれば、今の自分でも戦闘に参加出来るかもしれない。

>風花には起動するなと言われたが……

>風花に見えないように、添付ファイルを展開した。
559 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:06:05.86 ID:2m08GTsno
>!

>驚いた事に、正常に起動したようだ。

>20年も前のプログラムが今こうして使えるというのは不思議だが、確かにロードされている。

鳴上「……悪魔召喚プログラム?」

風花「ちょっと、起動しちゃダメって……!」

>風花に静止されるも、時既に遅し。

>ロードは100%になり、悪魔召喚プログラムの画面が開いた。

鳴上「す、すみません。つい……」

風花「……でも、何も起こらないね」

鳴上「みたいですね。あ、これ」

>悪魔召喚プログラムに、ケルベロスという名前がある。

鳴上「これが、登録されてる悪魔って事なのか?」

風花「悪魔召喚プログラム……名前の通りだとすると、その悪魔を召喚出来るって事になるのかな……でも、そんな事って……」

鳴上「試してみていいですかね」

風花「ダメ!絶対ダメ!もし召喚できても味方とは限らないでしょ!?」

>風花が珍しくすごい剣幕で怒っている。

風花「鳴上君、今戦えないのにそんな危ない事しちゃダメよ!?絶対だからね!」

鳴上「は、はい……」

>押されて返事をしてしまった。
560 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:07:07.48 ID:2m08GTsno
風花「心配なの……有里君がいなくなった事に責任感じてないかって思って……それに、鳴上君無茶するし……」

>そっと腕に手を添えられる。

風花「誰かの為だったら自分なんて、って思っちゃダメなんだから……そんなんじゃ、あの人みたいに……」

>風花の唇がふるふると震えている。

鳴上「あの、なんか、すみません……」

風花「……怒鳴っちゃってごめんなさい。けど、自分の事も考えて。私たちは、皆覚悟して戦ってる。あなただけじゃないから」

>風花の言葉から優しい気持ちが伝わってくる。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが2になった。

鳴上「ありがとうございます。肝に銘じておきます」

風花「それに、有里君の事……有里君がどこかへ行こうって決めた直接の原因って、やっぱり私だと思うから。鳴上君がそんなに思いつめる事、無いよ」

>どうやら、湊の件で責任を感じていたのは彼女も同じだったようだ。

>確かに、有里は彼女のシャドウを見て何かを決めたようだった。

鳴上「あいつは幸せものですね……」

風花「どうしたの?突然」

鳴上「皆があいつを頼りにする。皆があいつを……愛してる」

風花「愛してるって……うん、そう、なのかな……」

鳴上「俺なんかよりずっと凄いヤツで、だから当たり前なんですけどね」

風花「鳴上君……?」
561 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:08:08.82 ID:2m08GTsno
鳴上「……っと、卑屈になってもしょうがないですよね。あー、あの、これ、とりあえず放置する事にします」

風花「う、うん。危ないかもしれないから、できるだけ触らないようにしてね。私、色々調べてみるから」

鳴上「わかりました。俺、出かけて来ます」

風花「それならちょっと待って、天田君かメティスが今いるはずだから……」

鳴上「大丈夫ですよ、散歩してくるだけですから。それじゃ」

>背後から風花の呼ぶ声がする。

>振り切るように寮を出た。

鳴上「結構、いろんな人に気遣わせてたんだな……恥ずかしい話だ」

>なんだか気恥ずかしくなって飛び出してきたが、本当に行くあてがない。

>とりあえず、いつものように神社にでも行ってみようか。

コロマル「ワン!」

鳴上「ん?あ、コロマルじゃないか。珍しいな、神社に着く前に会うなんて」

>……?

>よく見ると、コロマルの足に赤い物が付いている。

鳴上「お前、怪我してるのか!?」

>小さな傷だが、横腹から血が出ているようだ。

鳴上「ええと……人間の医者しか知らないぞ、俺は……そうだ、一旦寮に……」

コロマル「グゥゥ、ワン!ワン!」
562 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:08:55.67 ID:2m08GTsno
>コロマルはズボンの裾を噛んで俺を引っ張って行こうとする。

鳴上「おい、どこ行くんだ?その前に怪我を……」

>……えらく必死な様子だ。

鳴上「……全く、わかった。行くぞ!」

コロマル「ワン!」

>コロマルを追いかけて走った。

>ついた先は、やはりというか長鳴神社だった。

鳴上「ここで何かあったのか?」

コロマル「グルルルルルルル……」

>コロマルは唸りながら神社の裏手に向かって行った。

鳴上「そっちか……うぉ」

>どうやら既に何事か起こった後のようだ。

>一人の男性が胴から血を流して倒れている。

鳴上「大丈夫ですか!?」

男「うぅ……痛い……」

>どうやら意識はあるようだが、素人目に見ても重傷だろう。

鳴上「少し待っていてください。今助けを」

>携帯を取り出して、電話をかけようとする。

『小僧がひとつ現れおったか』
563 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:10:08.15 ID:2m08GTsno
>嗄れた声が頭上から聞こえた。

鳴上「誰だ!?」

『誰と、我を知らぬか。我こそ妖獣ヌエ……今より貴様を喰らう者よ』

>神社の屋根に乗っていたのは、巨大な獣だった。

>猿のような顔に虎のような胴を持つキメラ……。

>悪魔だ。

鳴上「喰らう……くそ、無茶はしないって約束してたのに」

>とは言ったものの、無茶はできそうもない。

>なにせ両腕はボロボロで、かつこの男性とコロマルを守りながら戦わなければならない。

>……不可能だ。

ヌエ『どうした小僧。恐れをなしたか』

鳴上「冗談じゃない。……だけど、今は逃げさせてもらう!」

>男性の腕を掴み、立ち上がらせる。

>腕の傷が痛んだがかまっていられない。

鳴上「コロマル!」

コロマル「ワン!」

鳴上「……寮まで走るぞ!」

>途中、人がいるかもしれないが仕方がない。

>とにかくこの人を安全な場所へ、そしてこの悪魔を倒さなければならない。

>コロマルも神社が無事ならそれで納得するはずだ。
564 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:10:37.36 ID:2m08GTsno
鳴上「くそ……重い!」

>両腕が完全ならもう少し楽に……というか戦う事だって出来るのだが。

ヌエ『逃がすと思うのか』

>ヌエが跳躍し、目の前に降りる。

>逞しい前足による引っ掻きを、男性を突き飛ばし、自分も地に伏せて避ける。

>手荒な真似をしてしまったが、この場合は仕方がない。

ヌエ『ほう、なかなか良い身のこなしだな。少し面白いぞ。ふぉーふぉーふぉー』

>どうやら簡単に逃がしてくれそうもない。

鳴上「それなら見逃してくれないか」

ヌエ『それは出来んな。我は腹が減っておる』

鳴上「そうか……」

>言いながら、ポケットにしまってあったソレを取り出す。

ヌエ『……そのような玩具で、我がどうにかなるとでも思ったのか?』

鳴上「どうかな」

>拳銃型のソレを、こめかみに突きつける。

ヌエ『馬鹿な真似を!生きたまま喰らうのが良いのだぞ?』

>少しだけ、怖い。

>大丈夫だと何度も言い聞かせ、人差し指に力を込める。
565 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:11:31.77 ID:2m08GTsno
鳴上「ペ」

鳴上「ル」

鳴上「ソ」

鳴上「ナ」

>引き金を引くと同時に、頭に、いやその中身に衝撃が走る。

>殻が破れるイメージと、自分がどこまでも広がっていくような感覚。

>初めてイザナギを召喚した時と同じだ。

鳴上「本当に召喚出来るんだな。良かった……行くぞ、イザナギ!」

ヌエ『ふぉーふぉーふぉー!いよいよ面白い小僧だ。それでどうするのだ?』

鳴上「ジオダイン!」

>電撃が一直線に走り、ヌエに直撃する。

ヌエ『ぬっ!?』

鳴上「電光石火!」

>イザナギを突進させ、そのまま切り裂こうとするが……。

ヌエ『小僧、貴様いよいよ我を怒らせたぞ』

>イザナギの大刀はヌエの前足によって受け止められた。

鳴上「……やっぱり、厳しそうだな」

>元々ペルソナ単体で戦わせた事は殆ど無い。

>自分とのコンビネーションで相手を倒す、そういう戦い方をしてきた。

>今も、打ち込む隙はあるものの、そこを突けずにダメージを与えられずにいる。

ヌエ『こんなか弱い力で我にかなうと思うたか!』

>ヌエが咆哮し、尻尾の蛇が大刀を絡めとる。

鳴上「しまっ……!」

>大刀は手から引きぬかれ、イザナギがヌエの爪をもろに受ける。
566 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:12:23.00 ID:2m08GTsno
鳴上「うっ……!?」

>ペルソナの方に打撃を受けたのは初めてではない。

>しかし、テレビの中でのそれとは比較にならない衝撃が体を襲った。

ヌエ『さて、どう喰ってやろうか……』

>イザナギが維持できなくなり、ヌエがゆっくりと近付いてくる。

鳴上「万事休すか……」

>せめて、あの男性とコロマルだけでも……

>そう思い、ポケットの中の携帯を手探りで操作する。

>せめて寮の誰かに連絡がつけば良い。

>そう思ってボタンを押した時だった。

鳴上「何だ、これ」

>目の前の地面に模様が描かれる。

>そこから獣の唸り声が聞こえてきた。

ヌエ『ぬぅ!?小僧、何をした!』

>自分でもわからない。

鳴上「……待てよ」

>携帯をしまった時、俺は何をしていたか。

>悪魔召喚プログラムを終了してからポケットに入れただろうか。

>もしかして、起動したままではなかったか。
567 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:12:57.52 ID:2m08GTsno
鳴上「つまり……あれは本物で……今ここから、悪魔が来ようとしてるのか?」

>魔法陣から、動物の毛が見え始めた。

>あれは、鬣だ。

コロマル「アオーン!」

>何かに反応してコロマルが吠える。

>獅子のような姿。

>ヌエとは比べ物にならない威容。

ヌエ『ぬぅう、何奴!』

>魔獣はヌエの存在など歯牙にも掛けず、こちらを見ている。

『俺は何故こんな所に……あなたは』

鳴上「……な、なんだ?」

『すまない。かつて仕えた主にどことなく似ていたもので……』

>魔獣は懐かしそうに目を細めた。

『どうだろう、良ければあなたのナカマに加えてもらえないだろうか。あなたの行く先を見てみたい』

鳴上「ああ、是非頼む。ところで、お前の名前は……」

『俺は魔獣ケルベロス。こんごとも よろしく・・・さて、早速あなたの敵を倒してみせようか』

>ケルベロスは振り返ると、ヌエに向かい唸った。

ヌエ『貴様……我を無視するとは……』

ケルベロス『貴様程度、俺が見てやる必要もないな』

ヌエ『何を……喰らうてやるわ!』

>ヌエが跳びかかる。

>気のせいだろうか、ケルベロスの口角が上がった気がした。
568 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:18:13.34 ID:2m08GTsno
ケルベロス『燃えろ』

>ケルベロスは口から炎を吐き、ヌエに浴びせた。

ヌエ『ぐ、グオオオオオオオオオ!!』

>ヌエは雄叫びを上げて焼却されていく。

ケルベロス『ナカマになったからには、足を引っ張るわけにもいくまい。いかがかな?』

鳴上「はは……すごいな、お前。助かったよ」

ケルベロス『期待に沿えたようでよかった。さて、俺はまた魔界へ戻る事にしよう』

鳴上「何?ずっとはいられないのか?」

ケルベロス『俺を連れ回すとでも?』

鳴上「いや、そうじゃなく……俺の他の仲間にも紹介したかったんだが」

ケルベロス『……なるほど。それなら、良い手段がある。ふぅ……』

>ケルベロスの体が小さくなっていく。

>丁度大型犬ほどのサイズになった所で縮小は止まり、今度は形が変わっていった。

鳴上「ハスキー犬か?」

ケルベロス『昔の姿だが、これなら並んで歩く事もできよう。現在の姿では小道には入れないし、な』

>コロマルがケルベロスに擦り寄って行った。

コロマル「ワン!」

ケルベロス『……そうか。良かったな』

鳴上「……?あ、そうだ。忘れる所だった。あの、すみません乱暴に扱ってしまって……」

男性「うぅぅ……」

>急いで携帯を取り出し、救急車を呼ぶ。

>男性はまだ意識もあるし呼吸もしている。

>とりあえずこれで大丈夫だろう。

>救急車が到着するのを待って寮に帰ろう。
569 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:18:40.40 ID:2m08GTsno
風花「おかえりなさい。大丈夫だっ……ワンちゃん?」

>寮に戻ると、風花が玄関前で待っていてくれた。

>ケルベロスを右に、コロマルを左に置いて歩いてきた俺はどう映っただろうか。

ケルベロス『正確にはもうワンちゃんでは無いが』

風花「しゃべった!?」

鳴上「えー、話すと長いんですが……悪魔召喚プログラム使っちゃいました」

風花「……ってことは、このハスキーちゃんは」

ケルベロス『姿こそこのようになっているが、魔獣ケルベロスというれっきとした悪魔だ』

風花「ってことは、アレ……本物だったんだ」

鳴上「みたいですね。あ、コロマルが怪我してるんです。なんとかなりませんかね?」

風花「えっ!?コロちゃんおいで。……本当、怪我してる。ちょっと待ってて、とりあえず手当するから」

>精神的にひどく疲れた。

>寮に入って、ラウンジの椅子にどかっと落ちるように座る。

鳴上「ふぅ……ありがとうな、ケルベロス。お前がいなかったらどうなってたか」

ケルベロス『礼には及ばない』

鳴上「そういえば、前の主に似てるってどういう意味だったんだ?」

ケルベロス『……あなたの中には不思議な部分がある。善にも悪にも、あるいは中庸にもなる存在だ』

鳴上「んん……?なんだか難しい話だな」

ケルベロス『それが似ている。だから、あなたがどの道を選ぶのか気にかかった』

鳴上「……そうか。それじゃ、しばらくよろしく頼むよ」
570 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:19:40.07 ID:2m08GTsno
ケルベロス『こちらこそ。そうだ、説明しておこうか』

鳴上「何のだ?」

ケルベロス『あなたの持つ悪魔召喚プログラムについてだ。画面を見て欲しい』

鳴上「ケルベロスの名前と数字が書いてあるな」

ケルベロス『この数字がマグネタイトの残量だ。これは俺達悪魔を実体として維持するのに使われる。今も少し減っただろう』

鳴上「うわ、本当だ。無くなったらケルベロスも出てこれないのか」

ケルベロス『そういう事になる。これを補充する手っ取り早い方法は、悪魔を狩る事だ』

鳴上「悪魔を?」

ケルベロス『実体化している悪魔は例外なくマグネタイトによって実体化している。だからそれを捕食する事で生体マグネタイトを吸収することが出来る』

鳴上「なるほどな……わかったよ」

ケルベロス『残量には常に気をつけておいてほしい。さて、説明も終わったしマグネタイトも減っていく。俺はまた帰るよ』

鳴上「そうか。それじゃ、また何かあったら呼ぶよ」

ケルベロス『いつでも待っている。それでは』

>ケルベロスは来た時と同じように魔法陣に入り消えて行った。

鳴上「……すごい仲間ができちゃったな」

>寮は誰もいないかのように静かだ。

>風花がコロマルの治療、ラビリスは確か美鶴の所で任務中。

>メティスと天田は……何をしているのだろうか……。

鳴上「ふぁ……疲れたかな……」

>眠気が襲ってくる。

>……多分、風花が起こしてくれるだろうし……

>少しだけ……眠って……。

>……。
571 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/16(木) 00:20:20.51 ID:2m08GTsno
ケロちゃん・・・

何故か重複投稿になってしまいました。スルーしてください。
では、また明日。
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/16(木) 00:59:58.57 ID:xN5n+CG8o
乙!
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/08/16(木) 01:00:33.31 ID:TK7sgBT00
乙です
悪魔登場か
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/16(木) 06:18:29.25 ID:kJXYUDSuo
乙、まさかの真T
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/08/16(木) 20:43:40.01 ID:YZKVj7W/o
なんかジョーカーとか出てきそうな勢いだゾ
576 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:02:53.29 ID:PETvAr9fo
鳴上「ん、ふぁあ……何だか随分寝た気がするな」

>椅子から身を起こすと、体がぱきぱきと鳴った。

鳴上「んん……ふぅ。さてと」

>コロマルの様子を見に行くとしようか。

コロマル『ワン!ワン!』

>タイミング良くコロマルの声がする。

鳴上「上の階か?」

>コロマルの声は上階から聞こえる。

>二階……じゃないから、きっと三階だろう。

風花『きゃっ!ちょっとコロちゃん!』

鳴上「ん……?」

コロマル『ワン!ワン!グルルルル』

>コロマルが唸っている。

>風花の部屋で何が起こっているのだろうか。

>風花の部屋の前まで行くと、コロマルがドアを引っ掻いているのかガリガリという音が聞こえるようになった。

鳴上「……まさか!」

>ヌエの事を思い出す。

>悪魔が部屋の中にいる可能性も無いとも言えない。
577 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:03:27.25 ID:PETvAr9fo
鳴上「山岸さん!大丈夫ですか!?」

風花『鳴上君?ごめんなさい、あんまり大丈夫じゃないかも……』

>コロマルの必死な様子といい、やはり何か起きているのか!

鳴上「すみません、開けます!山岸さ……」

風花「えっ」

>開いたドアの隙間から、コロマルが駆け出して行った。

>残されたのは俺と、バスタオル一枚で濡れた体の風花。

鳴上「……」

風花「……き」

鳴上「うわぁ!す、すみません!!」

風花「きゃぁああああああ!」

>……。
578 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:04:12.16 ID:PETvAr9fo
鳴上「いや、本当にすみませんでした……」

風花「もういいですから……忘れて……お願い……」

>……しっかりと、心の中に保存した。

鳴上「コロマル洗ってたんですね」

風花「傷もそうだけど、随分汚れてたから……お風呂入れてる時は平気だったんだけど、体拭いてあげようと思ったら急に暴れだしちゃって」

鳴上「……すみませんでした」

風花「いいから……」

>……気まずい沈黙が流れる。

鳴上「……」

>ぽりぽりと頬を掻く。

>風花は思ったより着痩せするタイプだったようだ。

>……いかんいかん。

風花「で、でも見られたのが鳴上君で良かったかも、なんて」

鳴上「え?」

風花「あ、変な意味じゃなくてね?もし天田君だったりしたら、ほら。教育に良くないというか。あ、ていうかごめんね、変な物見せちゃって……」

鳴上「あ、いえ、ええと……」

>突然しどろもどろになった風花に少し困惑する。
579 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:05:01.93 ID:PETvAr9fo
風花「やっぱり忘れましょう!うん!そうしましょう!忘れてね!絶対!」

鳴上「わ、わかりました。それでいいです」

風花「うん、そうしてね……ふぅ。お風呂入ったのにまた変な汗かいちゃった……あはは」

鳴上「はは……」

>変な汗はこちらも同じだ。

風花「あ、コロちゃんしばらく寮に住んでもらうから、たまにお散歩とか連れていってあげてね」

鳴上「まぁ、放っておくわけにもいきませんね」

風花「コロちゃんは襲われても連絡できないから。……もう一回お風呂入ってきます。忘れてね?」

鳴上「はいはい……」

>ふぅ……。

>良い物を見た。

天田「あれ、鳴上先輩。どうしたんですか?」

鳴上「天田か。いや、どうもしてないけど」

天田「……普段からそんな顔でしたっけ?すっごいにやけてません?」

鳴上「気のせいだ。忘れてくれ」
580 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:05:29.42 ID:PETvAr9fo
天田「はぁ……?あ、メティスさんが呼んでましたよって言いに来たんですよ。例の場所で待つ……って。新しい遊びですか?」

鳴上「ん?いや、知らないな……けど、心当たりはある。ちょっと行ってくるよ、ありがとう」

天田「いえ。あ、良かったら今度スパー付き合ってくれません?真田さんに頼もうかとも思ったんですけど」

鳴上「俺で良ければ。まぁ、あの人の代わりには力不足だと思うが」

天田「あの人とやると必要以上に疲れるんですよねぇ。それじゃ、その内お願いしますね」

>さて、メティスと俺にだけわかるような場所。

>まず間違いなくあそこだろう。

>しかし、今日は日曜で、あそこには行けないはずだが……。

>とにかく、行ってみよう。

>月光館学園……。

>校門が閉まっている。

鳴上「だろうとは思ったけど……一応、な」

>重そうな門に手をかけてみる。

鳴上「あれ?」

>門は想像と違い、ごりごりと音を立てて開いた。

鳴上「あいつ、壊したんじゃないだろうな……」
581 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:05:56.04 ID:PETvAr9fo
>正面玄関も当然のように開いている。

>階段を昇り、屋上に出る。

鳴上「やっぱりここか」

メティス「わかってくれると思ってた」

>メティスはくすりと笑う。

鳴上「まぁな。それで、どうかしたのか?」

メティス「ううん、何も……ただ、ここなら落ち着けるかなって」

鳴上「ああ……なるほど」

>確かに良い景色だし、落ち着けるのは間違いない。

>どうやら、メティスはまだ心配してくれているらしい。

メティス「……前に、ここで泣いちゃったの、覚えてる?」

鳴上「ああ、良く覚えてる」

メティス「私、多分あの時からちょっとずつ変わってるんだと思う。あれが、最初」

>メティスは俺の手を取った。

メティス「ここ、わかる?」

>そのまま、自分の胸の真ん中に持っていく。

鳴上「うわっ!何を……」
582 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:06:22.44 ID:PETvAr9fo
メティス「音……振動、伝わらない?」

>振動……?

>確かに、小さくかたん、かたんと音がしているようだ。

>まるで、心臓の鼓動のように。

メティス「この中には、文字通り私の心臓部分があって……私の感情の揺れに合わせて、速くなったり遅くなったりするの」

>かたん、かたんと規則正しく鳴っていた音が徐々に速くなる。

鳴上「今、どんな感じなんだ?ちょっとリズムが変わったけど」

メティス「……緊張、かも」

>リズムはどんどん速くなっていく。

メティス「こんな風になるのは、鳴上君……ゅ、ゆぅ……悠と、一緒の時だけ。あの日から、悠はずっと私の……トクベツ、だから」

>早鐘を打つ、というのはこんな感じなのだろうか。

>ゆったりしたリズムだった鼓動は、今やエンジンのようにドッドッドッドッと脈打っている。

メティス「誰も代わりにはなれない。悠は、悠で……いい」

鳴上「……メティスも今日から俺の特別だ」

メティス「んぇっ!?」

鳴上「わざわざありがとうな。わかってたつもりだったんだが……いろいろ、難しいもんだな」

メティス「い、今何て……?」

鳴上「メティスも俺の特別だって……うお、煙出てるぞ!」

メティス「あ、ぅぅぅ……」

>メティスを手で仰ぎながら学校を後にした。

>……。
583 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:06:50.32 ID:PETvAr9fo
ラビリス「おかえり〜」

鳴上「ただいま」

ラビリス「……メティス、どないしたん?」

メティス「なんでもない」

ラビリス「……?」

メティス「なんでもないったら……」

鳴上「はは……」

ラビリス「まぁええわ。悠、ウチ今日どこ行ってたと思う?」

鳴上「ん?確か桐条さんと任務に……」

ラビリス「そやねん。そんでな、ウチなんと八十稲羽行ってたんよ」

鳴上「何だって?」

ラビリス「みんな元気してたでー。でやな、もっとすごいニュースがあんねん」

鳴上「凄いニュース……なんだろうな」

ラビリス「んっふっふ……なんと!悠のお友達がこっちくる言うてたで!」

鳴上「何!?」

>本当に凄いニュースだ。

鳴上「あ、でも学校とか……どうするんだ?」

ラビリス「さぁ、そこまではウチもわからんけど……美鶴さんがいろいろ手回す言うてたからなんとかなるんちゃう?」

鳴上「そんな無茶苦茶な……いや、やりかねないな」
584 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:07:31.88 ID:PETvAr9fo
ラビリス「どしたん?嬉しないん?」

>ラビリスは不安そうに顔を覗きこんできた。

鳴上「いや、すごく嬉しいよ」

ラビリス「せやろ!?良かったー、なんや心配になってしもたわ。あのな、悠。嬉しかったら言う事あるんちゃう?」

鳴上「ん?」

ラビリス「せやから、ウチがわざわざグッドニュース持って帰ってきたやろ?そんでウチに言う事あるんちゃうかなーって」

鳴上「ああ……ありがとうな、わざわざ教えてくれて」

ラビリス「そやろ?そやろ?労ってもええんよ?」

鳴上「労うっていってもな……」

ラビリス「あー、なんか眠なってきたなー。どっかにええ枕ないかなー」

鳴上「枕なんてこんな所に無いだろ」

ラビリス「……もう!」

鳴上「?」

ラビリス「ほなもう直で言うわ。膝枕とかしてくれてもええんやで?」

鳴上「膝枕って……別に、俺の膝は気持よくないと思うぞ」

ラビリス「ええのー。やって欲しいのー。嫌なん?」

鳴上「いや、別にいいけど。それじゃソファーだな」
585 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:08:04.99 ID:PETvAr9fo
>ソファーに座って隣をぽんぽんと叩く。

ラビリス「失礼するでー……よいしょ」

>隣りに座ったラビリスの肩を抱いて上体を倒させる。

ラビリス「ふぇ!?」

鳴上「ばたーんって来られたらかなわないからな。ほら、これでいいのか?」

ラビリス「う、うん。……なんやゴツゴツしとんなぁ」

鳴上「だから言ったのに」

ラビリス「ううん。これがええ……」

>ふと見ると、メティスが人を殺しかねない目でこっちを見ている。

鳴上「ど、どうしたメティス」

メティス「別に……」

ラビリス「……ああ。今は悠はお姉ちゃんのやで!」

メティス「べっ!別にそんな……」

鳴上「何だ、メティスも膝枕か?」

メティス「いいの!?」

鳴上「いいよ」

ラビリス「えー、ウチはぁ?」

鳴上「交代にな」
586 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:08:36.12 ID:PETvAr9fo
>……その後、膝から下の間隔がなくなるまで二人の頭を乗せる事になった。

鳴上「……やっと満足してくれたか。む」

>足が痺れて動けない。

鳴上「はぁ……っしょっと、あ痛たたた」

天田「お疲れ様です。大丈夫ですか?」

>天田が苦笑いしながら手を貸してくれる。

鳴上「ああ、悪いな。何が楽しくてあいつらも俺の膝枕なんか……」

天田「さぁ、なんででしょうねぇ」

>……何故棒読みなんだ。

天田「休みなのに大変ですね、引っ張り回されて」

鳴上「いや、そうでもないよ。楽しいもんだ」

天田「そうですか。なら良かったです。……鳴上先輩って、むやみに心広いっていうか。後ろから刺されないようにだけ気をつけた方がいいかもですね」

鳴上「心が広いのにダメなのか?」

天田「……まぁ、そういうところも含めて。そろそろ歩けます?」

鳴上「ああ、多分もう大丈夫だ。悪かったな」

天田「いえいえ。頑張ってくださいねー」

>天田は手をひらひらさせながら部屋に戻った。

鳴上「とは言え、ちょっと疲れたな。明日は学校だし、そろそろ寝るか」

>皆はいつ頃来るのだろう。

>……楽しみだ。

>……。
587 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:09:08.95 ID:PETvAr9fo
鳴上「ん……?」

>ドアの向こう側で人の話し声がする。

鳴上「今は……うわ、二時か。めちゃくちゃ深夜じゃないか」

>こんな時間に誰だろうか……。
588 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/17(金) 00:09:42.84 ID:PETvAr9fo
コミュニティに変化は無かった。

では、また明日。
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/17(金) 00:33:22.01 ID:8qsZ+f2lo
風花の部屋には風呂ないけどな
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/17(金) 00:47:22.52 ID:I7PTX1dLo
きっと新装されたんだよ…

591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/08/17(金) 01:34:31.18 ID:ALb5pwq30
乙です
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 01:51:42.66 ID:f/+PLvxDO
いきなりのラブコメ展開wwww
番長今回誰とくっつくんだろな
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/17(金) 07:29:12.65 ID:mFg1OXQb0
ペルソナ4ヒロインとくっついてほしい
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/08/17(金) 09:40:39.76 ID:DsDjgmzRo
フラグ関連は>>1に任せようぜ、また荒れるから
595 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:02:47.61 ID:uC6LJVnNo
『寝てるんじゃないのか?』

『だいじょーぶですって、イマドキの高校生ならこのくらいの時間……』

>この声は……。

鳴上「桐条さん……と、岳羽さん?どうしたんですか?」

ゆかり『ほーら起きてるじゃん。鳴上くーん、今ちょっといいー?』

鳴上「はぁ、かまいませんけど……」

ゆかり『ほんとー?入るねー』

>ドアが開くと、ゆかりがまっすぐこっちに向かってきた。

ゆかり「なーるかーみくーん」

鳴上「おわっ!ん、酒臭い……?」

ゆかり「ちょっと臭いは無いんじゃない?デリカシー無いぞー」

美鶴「夜分すまないな……まぁ見ての通りだ」

>一体何が見ての通りなのかわからない。

>ゆかりの真っ赤な顔とアルコールの匂い。

>……想像するに、美鶴とゆかりの二人で飲んでいて、酔ったゆかりが何かしら言ったのだろうか。

>それで、俺の部屋に来たと。
596 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:03:48.60 ID:uC6LJVnNo
鳴上「で、何の用ですか?」

ゆかり「用っていうかね、ただ鳴上君に会いたくなっただけー。私寝るからねー。おやすみー」

>ひと通り人にくっついて満足したのか、ゆかりはベッドを占拠して寝息をたて始めた。

美鶴「……本当にすまないな」

鳴上「まぁ、いいですよ。一応連れて帰ってくださいね」

美鶴「ああ。ここで寝かせるわけにもいかないだろう」

ゆかり「嫌ですー……」

鳴上「……」

美鶴「はぁ……」

>どうしたものか。

美鶴「まぁ、良い機会か……」

鳴上「何がですか?」

美鶴「君に言いたい事があった。丁度良いから言わせてもらおう」

>美鶴は一つ咳払いをした。

美鶴「その、だな。君には、感謝している。我々との接点も無かったのに現場指揮など任せてしまって、少し心苦しかったんだが、よく務め上げてくれているようだ」

鳴上「そうですかね?大した事した覚えは無いですけど」

美鶴「動揺を誘う材料も多々あったはずだ。それでも今までやってきてくれた。賞賛に値するよ」

鳴上「動揺を誘う、ね……」
597 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:05:07.36 ID:uC6LJVnNo
美鶴「……察しがついたか。有里の事だ。取り乱して見苦しい所を見せてしまったな」

鳴上「わからないでもないですよ、そういう気持ちは」

美鶴「そうか……はっきり言って、有里が帰ってきてからの君への扱いは杜撰に過ぎた。あってはならない事だ。本来感謝より謝罪すべき所だな」

>美鶴は自嘲気味に笑っている。

鳴上「感謝も謝罪もいらない」

美鶴「え?」

鳴上「俺は、俺が……俺を、見て欲しかっただけです。あいつには勝てないかもしれないけど……」

美鶴「鳴上……」

ゆかり「ごめんね」

>寝ていたゆかりが体を起こして言う。

ゆかり「私、埋めようとしてたの。あの人が、もう私を……私達を見てないのがわかったから、君で。本当は、謝りに来たんだけど……」

ゆかり「お酒の力借りないと、気まずくて言えそうになくて。ごめん。辛いのはわかってたのに、私自分の事だけ考えてた」

鳴上「いいんです。俺は……嫉妬して、あいつを追い出すような真似をしました。償いは出来るものじゃありません」

美鶴「それだって、間接的には私達がしたようなものだ」

鳴上「それでも、俺は……」

ゆかり「やっぱり、特別だね」

>ゆかりは薄く微笑んだ。

美鶴「そうだな。君も……いや、君こそ特別だ。その姿勢は他の誰にも出来る物ではない」
598 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:06:00.06 ID:uC6LJVnNo
>ようやく、自分の中の後ろ暗い部分を出す事が出来た。

>胸の奥につっかえていた物がとれたような気分だ。

>こんなにも、清々しい。

ゆかり「美鶴先輩。送ってってくれますよね?」

美鶴「ああ。これ以上鳴上の睡眠時間を奪うわけにもいくまい」

鳴上「俺なら平気ですよ」

ゆかり「だーめ。鳴上君にはまた明日から頑張ってもらわないと。頼んだぞ、リーダー」

美鶴「ふ……頼りにしている。さ、帰ろう」

>ふらつくゆかりを連れて、美鶴は部屋を出た。

>例のバイクが遠ざかっていく音が聞こえる……。

>辛いのは、自分だけじゃない。

>わかっていたつもりだったが、こうしてはっきり理解すると認識がズレていたのがわかる。

>皆が皆、誰かに申し訳ない、ありがたいと思って生きている。

>……いつまでも、甘えているわけにも行かないだろう。

>……。
599 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:08:05.89 ID:uC6LJVnNo


【5/28 晴れ】


ラビリス「おはようさーん」

メティス「おはよう」

>ラウンジではラビリスとメティスが折り紙を折っていた。

鳴上「おはよう。鶴か」

ラビリス「うん。今ウチの生徒で入院しとる子がおるんやって。その子の為に千羽鶴」

メティス「結構難しいね……」

>二人の折る鶴はひどく不恰好だ。

>まぁ、あの手では仕方ないかもしれないが。

鳴上「一枚もらえるか?」

ラビリス「お、手伝ってくれるん?」

鳴上「見本をな」
600 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:08:39.37 ID:uC6LJVnNo
>八十稲羽で死ぬほど折った鶴だ。

>失敗する要素が存在しない。

>まるで俺こそ機械のように、きっちり折っていく。

メティス「おー……」

ラビリス「ほぇー……」

鳴上「……よし、できた」

>自分で言うのもなんだが、見事な鶴が折れた。

メティス「す、すごい!折り紙でこんなシャープな輪郭が出来るなんて……」

ラビリス「ほんま、綺麗やなぁ。器用やったんやね、悠」

鳴上「二人のも、味があって好きだぞ」

メティス「ぐちゃぐちゃだけど……」

ラビリス「お手製感バツグンやろ?」

>二人は笑っている。

>……腕の痛みは全く無かった。

鳴上「ラビリス。八十稲羽の皆がこっちに来るのはいつだっけ?」

ラビリス「え?さぁ、来週くらいやとしか聞いてへんな」

>その日まで、待っていたかった。
601 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:09:05.34 ID:uC6LJVnNo
鳴上「……なぁ、二人共。今、幸せか?」

ラビリス「急になんや?」

鳴上「どうなのかなってな」

ラビリス「うーん……今まで知らんかった事もやれたし、割りと幸せやと思う。今までと比べたら天国や」

メティス「私も幸せ。……悠に会えたし」

鳴上「そうか……悪いな」

ラビリス「メティスなんやズルい!……って、え?」

メティス「どうして謝るの?」

鳴上「お前たちの幸せは、多分もう終わる」

>立ち上がり、テレビに近付く。

ラビリス「え、テレビの中行くん?」

鳴上「いや。多分……」

>思った通りだ。
602 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:09:37.49 ID:uC6LJVnNo
>手が通らない。

>液晶はまるで壁のように、俺の侵入を拒んだ。

鳴上「終わりにしよう。これは、多分俺の作った世界だ」

>『理想の世界へようこそ』。

>一日いただけでわかった。

>ここは居心地が良い。

>そう、良すぎるくらいに。

ラビリス「……いつから気付いた?」

>ラビリスの声はもう別の誰かの物だ。

鳴上「最初からだ。腕が全く痛くないんだ、怪我してたはずなのに。それに、変な所はいろいろあった。小さいことだけどな」

>俺の部屋には風呂もシャワーもない。

>だが、風花の部屋にはあった。

>日曜は学校に入ることはできないはずだ。

>だが、門は開いていた。

>ラビリスはまだ任務中のはずだ。

>だが、寮に戻ると帰ってきていた。

>別に、おかしな事ではない。

>風花の部屋は改装したのかもしれないし、門だって別に開けられないわけじゃない。

>ラビリスも、任務が早く片付いたのかもしれない。
603 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:12:55.46 ID:uC6LJVnNo
>だが、しかし。

>そして、何よりも。

>俺は皆に認められるような事を何一つしていない。

>だが、皆は俺を認める旨の話をしてくれた。

>それは、俺の望んでいる事だ。

メティス「何故、帰ろうとするの?ここにいれば、ずっと理想の世界……気持ちのいい場所でいられるのに」

鳴上「俺には現実がある」

>ここにいればきっと何も痛くない。

>けど、何も進まない。

鳴上「俺は戦わなくちゃならない」

女性の声「何の為に?」

鳴上「皆の為に……そして、俺の為に」

女性の声「何の為に苦しい思いをして生きるの?」

鳴上「さぁ、なんだろうな……今は、その答えを探す為に生きていきたい」

女性の声「……どうして、逃げたらいけないの」

鳴上「……逃げたっていいさ。ただ、逃げたらまた戻ってこないとな。逃げてるだけじゃ誰も救えない。誰にもなれない。だから、俺は」

鳴上「生きる事から、逃げない」
604 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:13:29.59 ID:uC6LJVnNo
>世界が形を変える。

>寮のラウンジが祭壇のような場所に変わり、俺はそこに一人放り出された。

>祭壇の中心にいたのは無貌の怪物。

>硬質なのか軟質なのかもわからない触手状の物体がより集まってできているように見える。

鳴上「……まだ腕の痛みが戻ってないのが救いか」

>武器は無い。

>が、ペルソナの力は感じる。

>戦える。

鳴上「勝てるかどうかはわからないが、逃げないって決めたしな」

「そうだな。お陰で俺もお前を助けられる」

>知らない男の声がした。

>今の今までここに一人だったはずなのに、気付くと隣に男が立っている。

鳴上「あなたは……?」

「懐かしいなぁ、あいつも。十年……いやもっとか。こっちも久々だな……」

>見た目からして20台後半から30歳くらいの年齢の男だった。

>青い髪に、耳のピアスが妙に目立つ。
605 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:14:18.05 ID:uC6LJVnNo
「ふぅ……ペルソナ!」

>男の背後にペルソナの影が立つ。

>あれは……明王?

――我は汝、汝は我。我は汝の心の海より出でし者――

「さぁ、やろう。……逃げないんだろ?」

>男は敵ではない。

>それは理解できた。

鳴上「はい。ペルソナァ!」

>イザナギを召喚する。

>こんなヤツに苦戦していられない。

>俺は、現実に生きる。

>辛い時もあるけど、思うように行かないけど……

>それが、生きるって事だから。

>……。
606 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/18(土) 00:15:06.89 ID:uC6LJVnNo
痛くない世界に意味は無し。

では、また明日。
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/08/18(土) 00:47:25.14 ID:P1gj6XJb0




共闘開始だな
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/08/18(土) 00:47:25.08 ID:P1gj6XJb0




共闘開始だな
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/08/18(土) 03:02:32.12 ID:IWXy4DGc0
乙です
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/18(土) 07:02:17.75 ID:H78P86o70
青い髪にピアスってペルソナ1の人?
611 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 00:14:18.57 ID:aKD/rWCSo
>戦いが終わると、景色はいつもの場所に戻っていた。

>クマが置いていった出口用テレビもある。

>腕がずきずきと痛んだ。

「お、戻った?」

>男は周囲を見回している。

鳴上「あの、あなたは……」

「その話は後だな。とにかくここから出ないと……」

鳴上「あ、出られますよ」

>男にテレビの中について説明した。

「……はぁー、すごいもんだな。俺らの時とは時代が違うっていうか。ニュータイプは流石だねぇ」

鳴上「ニュータイプ……?」

「出られるんならさっさと出よう。こんなわけのわからない場所はまっぴらだ」

>説明を聞いた男は何の躊躇もせずにテレビに頭を突っ込んだ。

>無茶になれているというか、向こう見ずというか……。

>とにかく、追いかけるようにテレビを出た。
612 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 00:14:48.71 ID:aKD/rWCSo


【5/28 晴れ】


美鶴「とにかく、捜索隊を組織する。コトがコトだ、我々だけで秘密裏に処理したい」

風花「でも、大事になったら帰って来辛いかもしれませんし……」

天田「僕、岳羽さんと順平さんにも連絡してきます」

メティス「私、また探しに出てきます!」

ラビリス「ウチも行く!悠……どこ行ってしもうたん……」

鳴上「ここだけど」

>ラウンジに出ると、寮の皆と呼び出されたであろう美鶴が難しい顔で話をしていた。

ラビリス「悠!?」

天田「鳴上せんぱ……どなたですか、そちらの方は」

美鶴「説明してもらうぞ。仕事の途中で呼び出された私達も納得できるようにな」

>ピアスの男が目を丸くしている。

「お前、何したの?」

鳴上「さぁ……酌量の余地はあるみたいなんで説明しますよ。口添えお願いします」

>テレビの中であった事を説明した……。
613 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 00:15:24.16 ID:aKD/rWCSo
美鶴「……つまり、気付いたらテレビの中にいた、と?」

鳴上「そうなります。ラウンジで寝てたと思うんですけど……」

「俺はその前からいた」

鳴上「そうだ、あなたは何者なんですか?ペルソナも使えるし、テレビの中にもまるで動じてなかった」

「ああ、俺は……」

美鶴「あなたについては調べがついています。聖エルミン学園とペルソナというキーワード……その2つを繋ぐと、かつてあったある事件が浮かんで来ました」

「まぁ、その気になって調べればすぐわかるだろうね」

美鶴「セベク・スキャンダル……十数年前に起きたある企業の実験事故だ。その時、聖エルミンの学生がペルソナに覚醒し戦った記録があった」

鳴上「桐条さん達と同じような感じですね」

美鶴「そうだな。その学生達の中で、どう調べても名前が出てこない人物がいた。学生たちのリーダーになって戦った男なのに、何の記録にも残っていない。だが、意外な所からすんなりと名が上がった」

美鶴「私の家……桐条の、いわば本家。南条の、現当主からだ。もちろんご存知ですよね、藤堂尚也さん」

>男……藤堂は、照れくさそうに額を掻いている。

藤堂「……なんじょうくんは、元気そうだな」

美鶴「ええ。私がセベク・スキャンダルについて調べているとどこからか聞きつけ、あなたの事を教えてくれましたよ」

藤堂「あの事件を知ってるなら、俺が何をしてたかも何となくわかるんじゃないか?」

美鶴「悪魔の出現はあなたにもすぐにわかったはずです。恐らくはそれを調査しようとしたのではないですか?」

藤堂「ご明察。その途中でマヨナカテレビの噂を聞いてね。調べてたら……落とされた」

鳴上「落とされたって事は、誰か犯人に心当たりがあるんですか?」

藤堂「多分、お前と同じだよ」

>つまり、気が付いたら……のパターンか。
614 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 00:18:37.83 ID:aKD/rWCSo
>俺自身、いつの間にテレビに入れられたのか全くわかっていない。

>正直、去年の被害者達が犯人に気付かなかったというのを内心ありえないと思っていた部分もあったのだが。

鳴上「案外、気付かないものですね」

藤堂「そうだな。あんなわけのわからない場所に入れられたのに、いつ入れられたのかわからないときた」

>……ん?

鳴上「あれ、待ってくださいよ。藤堂さんは、悪魔が出たから調査しようと思って……その過程でテレビに落とされたんですよね?」

藤堂「ああ。それがどうかしたのか?」

>今までの事件を顧みると、確か……

鳴上「影時間は、有里が落とされてから起こって、有里を助け出したら終わった……でも、悪魔は藤堂さんが落とされる前からいた……?」

美鶴「確かにそうなるな……ということは、もしや悪魔騒動はまだ片付いていないという事か?」

藤堂「何の話をしてるのかさっぱりなんだが」

>藤堂に、今までの経緯を説明した。

藤堂「……なるほど、過去の事件の再現ね。だったらちょっとおかしいって事になるな」

鳴上「まだ何もわかってないに等しいですけど、今までのパターンからは外れてますね」

藤堂「まぁ、悩んでも仕方ないだろ。俺の昔の仲間にもいろいろ頼んでみるから、お前たちも出来るだけの事をすればいい」

>藤堂はまるで当たり前のように考える事を放棄した。

>他の誰かがしたなら解決を諦めたようにも取れる態度だが、彼の場合は受ける印象が違う。

>場当たり的にやっていっても、この人なら解決してくれそうな、そんな雰囲気がある。

>一言で言うなら貫禄とでも表すべきだろうか。

>何だか安心出来た。
615 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 00:19:46.23 ID:aKD/rWCSo
美鶴「そうですね。我々は目の前の問題を1つずつ解消する事しか出来ない。鳴上も無事帰ってきた事だし、よければ藤堂さんとも常に連絡をとれるようにしておきたいのですが……」

藤堂「ああ、付き合うよ。どうすればいいのかな?」

美鶴「とりあえず私と一緒に来てください。私の組織の一員として登録しておきたいと思います。飽くまで臨時ですが」

藤堂「組織?……なんか凄そうだな」

美鶴「鳴上、君は休んでおけ。体に不調が出ないとも限らない」

藤堂「おっと、そうだ。鳴上」

>藤堂が耳元に顔を寄せる。

藤堂「抱えてる事があるなら、相談にのるよ。これ」

>藤堂は携帯の番号が書かれた紙を握らせた。

鳴上「あ……ありがとうございます。でも、出来るだけ自分でやってみます」

美鶴「ん?どうかしましたか?」

藤堂「いいや。鳴上はお気に入りだから、ちょーっと内緒話を。じゃな」

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.04 皇帝 藤堂尚也』を手に入れた!

>美鶴と藤堂は連れ立って寮を出た。

>……2つの殺気を感じる。
616 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 00:20:22.36 ID:aKD/rWCSo
ラビリス「……」

メティス「……」

風花「二人共、鳴上君疲れてるかもしれないし怪我人だから……」

天田「……ま、フォローはしますよ」

鳴上「あー……心配かけた」

メティス「姉さん」

ラビリス「はいよ」

>二人に有無を言わせぬ力で両手足を掴まれた。

鳴上「何を……おわっ!」

>そのまま持ち上げられ、二階へ運ばれる。

>二人は俺の部屋のドアを乱暴に開け、ベッドの上に俺を放り投げた。

鳴上「痛っ」

メティス「その痛みは私達の心配の分だから」

ラビリス「しんどいやろーから寝とき。話は明日以降や。もー……心配かけて……」

鳴上「あ、ああ。悪かったよ。ありがとうな」

ラビリス「ええからさっさと寝る!」

メティス「体力回復に努めなさい!」

鳴上「……はい」

>……。
617 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 00:21:28.04 ID:aKD/rWCSo
天田「具合どうですか?」

鳴上「元からそんなに悪く無かったんだけどな」

天田「はは、お疲れ様です」

>天田が飲み物を持ってきてくれた。

鳴上「助かるよ。今動いたらあの二人に縛り付けられそうだ」

天田「正直、見てられなかったですよ。メティスさんもラビリスさんもすごい狼狽え方だし」

鳴上「そんなにか」

天田「そんなにです」

鳴上「なんか、悪いことしちゃったか」

天田「いや、鳴上先輩は被害者じゃないですか?」

鳴上「そうなんだけど、何となく」

天田「少なくとも今日一日は寝といた方が良さそうですね。多分どっかから見てますよ」

鳴上「そうするよ。あ、学校はどうなってるんだろう」

天田「欠席の連絡入れてると思いますよ。メティスさんもラビリスさんも一応学校は出たんで」

鳴上「あ……あー!」

天田「ど、どうしたんですか?」

>思い出した。
618 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 00:21:57.23 ID:aKD/rWCSo
鳴上「……今日、テストだ」

天田「そうですけど、それがどうしたんです?」

鳴上「俺のテスト、どうなるんだろう」

天田「多分後日受ける事になると思いますけど……」

鳴上「追試扱いになるのかな……」

天田「満点は無いでしょうね」

鳴上「くそっ……時期を選んでテレビに落としてくれよ……」

>せっかく地味に勉強していたのに……。

天田「無事帰ってこれただけ良かったじゃないですか。てっきり家出でもしたのかって騒いでたんですよ」

>天田は苦笑しながら言う。

鳴上「家出?何で俺が?」

天田「最近、何か悩んでるみたいだったし。もしかしたら嫌になったんじゃないかって」

鳴上「……そうか」

>悩みはある。

>だけど、逃げないと決めた。

>湊……お前は今、どうしている?
619 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 00:45:30.78 ID:aKD/rWCSo
女性「い、いや……来ないで……」

悪魔「ハァ……ハァ……」

>まるでホラー映画の1シーンのような、そんな路地裏。

>女性が小さく悲鳴を上げ、怪物に爪裂かれるのをただ怯えて待つ場面。

>女性の首に怪物の爪がかかり、後少し握ればきっと細い首がぼりんと音を立てて千切れ飛ぶだろう。

>もちろん、そんな場面を見る趣味は無い。

>背後から近付き、剣を振り上げる。

>女性はそれに気付き、目線を悪魔からずらす。

悪魔「ギ……?」

>悪魔が振り返ると同時に、全力で剣を振り下ろした。

悪魔「ギャアアアアアアア!!」

>悪魔は銀色の霧になって消えていく。

>消え切らない内に、管にマグネタイトを掬いとった。

女性「あ、あの……」

有里「忘れた方がいい。少し休んで、また明日からも普段通りに生活を……」

>管の封を解き、ピクシーを召喚する。

>ピクシーが女性の額にそっと触れると、女性は気を失った。

「片付きましたか」

>帽子の少年が後ろに立つ。

有里「ああ」

「すっかり悪魔も手懐けたようで。やはり才能があったみたいですね」

>召喚したピクシーの様子を見て、帽子の少年は無感動に言う。

有里「悪魔と戦う才能ね……今でこそありがたいけど、普段は無駄だよね」

「嫌味ですか?」

有里「いや、率直な感想だよ。……ライドウ」
620 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 00:46:00.15 ID:aKD/rWCSo
帽子+少年+探偵=葛葉。

では、また明日。
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/19(日) 01:43:04.44 ID:GS+0joQUo
乙ん
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 03:00:21.09 ID:gzWBowxl0
追いついた。直斗かと思ったらライドウか!アトラスファンにはたまらんSSだ
完結までがんばってくれー
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 08:24:13.16 ID:i5ICofWeo
たまきさんは出ますか?
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage saga]:2012/08/19(日) 09:11:33.44 ID:ocGnEFeMo

銃刀法違反の方でした。
学生の方でした。
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) :2012/08/19(日) 10:54:33.04 ID:Nnde5iJu0
乙乙
626 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:43:43.57 ID:aKD/rWCSo
ライドウ「結構役に立つ物ですよ。悪魔にもいろんな種類がいるので。さて、次に行きますか」

>次。

>溜息が出る。

ライドウ「お疲れか?」

有里「体は特に。精神的にね。倒しても倒してもキリがない」

ライドウ「それは致し方ない。なにせ悪魔と人間の戦いは遥か昔から連綿と続いてきた物ですから」

>それは以前にも聞いた。

>ライドウの前時代的な格好も、そもそもは何代か前の葛葉ライドウをモチーフにしているという。

>彼は、大正時代に活躍した葛葉ライドウに瓜二つらしく、それが故にらしい。

有里「君はこれを生業にしてるんだよね?辛く無いの?」

ライドウ「楽では無い。けれど、誇りを持ってやっていますので。それよりも、貴方が辛いならそろそろ止めにしますか」

有里「まさか。次に行こう」

>元々何の役割も無い体だ。

>こうして何かの役に立てるならそれでいい。

ライドウ「……そういえば、あの方々も何か動いているようですね」

有里「そうだね」

ライドウ「構わないんですか?そもそも貴方が戦っているのは彼らを……」

有里「止めた所で聞く相手でも無いさ。だけど、被害がでなければいつか諦めるかもしれない。僕に出来るのは先回りして悪魔を倒し続ける事。それだけだよ」

>ライドウはもう何も聞かなかった。

>腰の日本刀を抜き、月を映す。

>月光を刃に反射しながら、二人は夜の街を歩く。

>皆は戦わなくていい。

>……僕がいるから。
627 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:44:18.44 ID:aKD/rWCSo


【6/1 晴れ】


>休んだ日の試験も特別に受けさせてもらって、なんとか中間試験を終わらせた。

>今日は、“勇気”を持ってそれを実行しようと思う。

>特別課外活動部のメンバーを時間差で呼び出してある。

>最初は……。

順平「よう。どうしたよ、話って」

鳴上「いえ、大したことじゃないんですけど。聞いて欲しい事があるんですよ」

順平「大したこと無いのに呼び出したりしねーだろ?ほれ、先輩に言ってみろって」

>順平は笑顔で促す。

>この人を最初にしてよかった。

鳴上「俺、湊に嫉妬してたんだと思います」

順平「はぁ?」

>……まぁ、そうなるだろう。

鳴上「あいつの事は殆ど知りません。けど、あいつが特別だって事は短い期間で痛いほどわかりました」

順平「だからって何で嫉妬よ。お前だって……」

鳴上「そうですね。俺も、普通とは言い難いです。でも、だからこそ嫉妬しました。強くて、クールで、器用で……そんなあいつに」

順平「……」

鳴上「追い出すような真似をしたのはそのせいだと思います。それを、言っておきたかったんです」

順平「……あー、なんだ。ちっと恥ずかしい昔話するぜ」

鳴上「え?」

>順平は決まり悪そうに話し始めた。
628 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:46:22.04 ID:aKD/rWCSo
順平「三年前の話だ。俺がペルソナに目覚めて、真田先輩にSEESに誘ってもらった時だな。俺は特別なんだって思った」

順平「ほれ、RPGの勇者みたいな?そんな感じだと思ってたんだな。けどさ、勇者ってのは、実は竜の戦士だったり、ラスボスと因縁があったりするもんじゃん?」

順平「俺はそれをすっかり忘れてたんだよ。俺なんて平凡で平凡なヤツなのにな。RPGだったら戦士とかか?頭も悪いし、そんなとこか」

順平「そのくせ、勇者に……自分とは全く違う特別な力を持ってるヤツに嫉妬して、俺だって!とか思ってたんだよなぁ。馬鹿馬鹿しい話だけど」

鳴上「それって……」

順平「そのせいで危ない目にあって、皆に迷惑かけて、しかもアイツに助けられたりしてな。最悪だったぜ、ジッサイ」

>順平は俺の肩に手を置くと、笑った。

順平「お前は特別だよ。あいつにだって負けてねぇ。俺なんかと違ってな。保障してやるよ。って、いらねえか」

鳴上「……ありがとうございます」

順平「悩むんならもっと建設的に悩もうぜ。例えばさ、お前って彼女いんの?」

鳴上「え?」

順平「いないんだったらそっち方面とかよ。あんだろ?あ、興味無い?」

鳴上「無くはないですけど」

順平「だぁろぉ?俺さ、ずっと思ってたんだけど、風花ってすげえこう、美人になったっつーか。なんかクるもんあるよな!」

鳴上「チドリさんに言ってもいいですか、それ」

順平「……いや、私が悪うござんした」

>……。
629 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:46:54.91 ID:aKD/rWCSo
風花「話って、何?」

>次は風花だ。

鳴上「湊を、俺が追い出した事について、です」

風花「だから、それは……私のせいでもあるから……」

鳴上「違うんです。俺は、あいつが嫌いでした。だから、止めなかったんです」

風花「嫌い……?」

鳴上「ええ。俺より強くて、俺よりスマートですから。簡単に言うと嫉妬してたんでしょう」

風花「嫉妬って……そんな」

鳴上「なにより、同じ仲間のはずの俺よりずっと大事にされていた。過ごした時間が違うから当たり前なんでしょうけど、それが悔しくて」

>言っていて情けなくなる。

>だが、黙っていてはいけない事だ。

風花「……私、口下手だから、上手く言えないかもしれない。だから、もう簡単に言うね」

鳴上「はい。何でしょうか」

風花「私は有里君が好き。だけど、鳴上君だって大切。どっちが、とかじゃ無いと思うの」

>風花は目を閉じて一気に言い切った。

>じっと、その顔を見る。

風花「……っ!み、見ないで、あんまり」

鳴上「あ、すみません……その、予想外というか、思ったよりずばっと言われたもので」

風花「ちょ、ちょっと待って。なんか恥ずかしくなってきたんだけど。ああの、顔赤くなってない?」

>……真っ赤だ。

鳴上「大丈夫ですよ」

風花「う、嘘!絶対嘘!やだ、もう……でも、本心だからね。忘れないで」

>……。
630 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:47:21.48 ID:aKD/rWCSo
真田「で、俺か」

鳴上「あ、他の人も呼んでるの知ってましたか」

真田「まぁな。話は?」

>この人はいつも淡々としている。

>それが頼りになる部分でもあるのだが。

鳴上「俺が、湊に嫉妬してて、それがあったからあいつを止めなかった。そういう話をしたかったんです」

真田「……俺に言ってどうする」

鳴上「どうもしません。俺が、そういう人間だって事を知って欲しかったんです」

真田「そうか。話はそれだけか?」

>思った以上にリアクションが薄い。

鳴上「軽蔑しましたか?」

真田「いや。人間、悩む事だってある。当たり前だ。お前も人間だって話だろう」

鳴上「そう、ですか」

真田「どうした、軽蔑されたかったのか?」

>真田は笑うが、俺にとっては笑い事じゃない。

鳴上「あるいは、そうかも。そうすれば、俺は罰を受けた事になると、償った事になると思っていたのかもしれません」

真田「俺はお前の逃げ道じゃない。俺に出来るのは、お前の尻を叩いて……俺の場合、殴ってか?前へ進ませる事だけだ。先に生まれた者として、それが責務だと思っている」

真田「まぁ、なんだ。気合い入れろよ」

>真田がボクシングの構えを取る。

>応えるように、掌を前に出した。

>バチン!と音が響いて、治りかけの傷が少し痛んだ。

>……。
631 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:51:20.75 ID:aKD/rWCSo
天田「鳴上先輩が有里さんの事嫌いって話ですか?」

>天田は開口一番そう言った。

鳴上「……誰から聞いた?」

天田「いや、別に。だってずっと悩んでたのってその事ですよね?」

鳴上「まぁ、そうなんだが……」

天田「別に、それがどうしたって感じですね。あの人は……僕から見ても人と違いすぎますし。順平さんも昔は……っと、これ言っちゃ駄目なんだっけ」

鳴上「そこまでバレてると、何か恥ずかしくなるな」

天田「むしろバレてないと思ってたんですか。僕らだってそこまで鈍感じゃないですよ」

鳴上「というより、自分の悩みがはっきりわからなかったって感じだな。嫉妬とか、あんまりしたことなかったし」

天田「……鳴上先輩も、やっぱりモノが違いますよ。普通の人ならとっくに折り合いつけてる事ですよ、それ」

鳴上「俺が幼稚ってことか?」

天田「そうじゃなくて、なんていうか……ほんとに聖人君子だなって」

鳴上「今は違うけどな」

天田「その方が遥かに人間らしいですよ。……そんなに悩む事じゃないです。誰もそんな事で、鳴上先輩を嫌ったりしませんから」

鳴上「どうやらそうらしいな。自分が馬鹿みたいだ」

天田「あはは。頭良いのにそういうとこわかんないんですね」

鳴上「だな」

天田「頭良いは否定しないんですね……」

>……。
632 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:52:53.34 ID:aKD/rWCSo
アイギス「お話とは、何でしょうか?」

>残る三人は……特に、言っておかなければならない相手だ。

>自分の影と戦った風花は別として、やはり女性達は少し……違う、と思う。

鳴上「湊がいなくなった理由についてだ」

アイギス「それなら既に聞き及んでいます。自身の存在が、全体にとって損失であるとみて姿を消したと」

鳴上「聞いたのはそれだけか?」

アイギス「……最後の一押しは、あなたによるものだと」

鳴上「その通りだ。俺、あいつが嫌いだったんだよ」

アイギス「何故?」

鳴上「何でだろうな。俺より、すごかったからだろう」

>アイギスは何も言わない。

>目も合わせてくれない。

鳴上「情けないというか恥ずかしいというか、とにかく嫉妬だ。俺は……あいつに嫉妬して、それで」

アイギス「もういいです」

鳴上「……そうか」

アイギス「あなたはどうして……」

鳴上「どうして?」

アイギス「どうして全てを背負おうとするのですか?」

鳴上「何を言って……」
633 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:53:43.13 ID:aKD/rWCSo
アイギス「あの人がいなくなったのは、元々私達のせいだったはずです。あの人に依存する気持ちが原因だったはずです」

アイギス「なのに、何故あなただけが自分を責めるんですか?私は、あなたに冷たく当って……それで嫌ってもらえたら、責めてもらえたら、私もあなたの事を……」

鳴上「嫌いになれたのに、か」

アイギス「……そうすれば、こんな複雑な気持ちにならずに済んだのに」

鳴上「アイギス」

アイギス「何ですか」

鳴上「俺も、同じ事を考えてた」

アイギス「え?」

鳴上「誰かに責めてもらえれば、許してもらえるかと。だけど、きっとそうじゃない」

アイギス「本当は、わかってました。私も……それじゃ駄目なんだって」

鳴上「迎えに行こう。アイツがいなくてもやっていけるって自信がついたら。その時は、一緒に」

>差し伸べた手を、硬い感触が包む。

>アイギスは、ようやく目を見てくれた。

>……。
634 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:54:34.11 ID:aKD/rWCSo
美鶴「……悪いが、アイギスから話は聞いた」

鳴上「……そうですか」

美鶴「君は……いや、私には何も言う権利はないか。君に重責を押し付け、自分だけが辛いかのように振る舞う。最悪だ」

鳴上「桐条さんは、責任のある立場の人ですから……俺なんかが、それを少しでも肩代わり出来るなら」

美鶴「そうじゃない。そうじゃないんだ……私は……」

鳴上「湊と俺、どっちが好きですか?」

美鶴「何?」

>面食らった、というのはこんな時に使うのだろうか。

>美鶴はひどく驚いている。

美鶴「冗談を聞きたい気分じゃないんだがな」

鳴上「いえ、本気です。こんな時だからこそ聞きたい」

美鶴「……なら、真剣に答えよう。有里だ」

鳴上「でも、湊を止めなかった俺を責めなかった。何故です?」
635 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:55:08.83 ID:aKD/rWCSo
美鶴「それは、私が組織の長だからだ。長が取り乱しては、組織は成り立たない」

鳴上「けど、あいつの前ではそうじゃない。ですよね?」

美鶴「それは……!確かに、多少プライベートを混同することもあった。しかし、それがどうしたというんだ?」

鳴上「俺の前では、そうじゃない。そこに嫉妬したんです。そして、乗り越える方法をやっと思いついた」

美鶴「是非、聞きたいな。何だ」

鳴上「桐条さんと……他の皆と、本当の仲間になる事です。あいつにも負けないくらい、良い仲間に」

美鶴「……」

鳴上「そして、桐条さんは……あいつがいても、いなくても、立派に務めを行えるようにならなければならない。違いますか?」

美鶴「確かにそうだな」

鳴上「俺達は、結局目的を同じくする仲間なんだってわかりました。自分一人が悲劇を背負っているような顔をしちゃいけなかった。今まで気付かなかったのが恥ずかしいですが」

美鶴「私が自立するために、私は君を頼っていい。そして、君も私を頼る。なぜなら私たちは……」

鳴上「仲間だから、です。そうやって、本当に仲間になれたら、あいつを迎えに行こうと思います」

美鶴「……一刻も早く、良い信頼関係を築こう。私達なら出来るさ。同じ人を目標にしているのだから」

>美鶴は笑った。

>俺も、笑い返した。

>……。
636 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:55:40.84 ID:aKD/rWCSo

>さて。

>恐らくは一番の難関である人を最後に呼び出してある。

>あの人にとって、湊は……きっと、自分の一部のように大切な人。

>それを失う痛みは、単純な怒りで埋められる物じゃなくて……。

ゆかり「……鳴上君の、言う通りだよ」

鳴上「……ですか」

ゆかり「うん。急に君に近付いたのもそれが理由。あの人が、今までのあの人と違うって気付いたから。君を代わりにして、ごまかそうとしてた」

ゆかり「でも、それが悪い事なの?私には、あの人が必要だった。いなくなって、忘れようって、でもまた帰ってきて、それで……」

鳴上「俺は湊じゃありません」

ゆかり「わかってるよ」

鳴上「あいつみたいに上手く立ち回れないし、あいつみたいに特別でもない。俺は有里湊にはなれません」

ゆかり「わかってるってば」

鳴上「俺は、そんな湊に嫉妬するような、小さい人間です」

ゆかり「……」

鳴上「最初は、謝ろうと思っていました。けど、思ったんです。俺は確かに自分の中の黒い感情に逆らえなかった。だけど」

鳴上「あいつがいなくなったのはあいつの選択です。理由があるはずで、それならそれを理解せずに止める事なんて出来るはずがない」

鳴上「あいつがいなくなった理由は、一言で言うなら俺の為です。俺があなた達と分かり合うためには、あいつの存在は妨げでしかなかった」

ゆかり「……っ」

>ゆかりの平手が飛んだ。

>頬がヒリヒリと熱を持つ。
637 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:56:08.40 ID:aKD/rWCSo
ゆかり「妨げなんて、邪魔なんて言わないで」

鳴上「……でも、あいつがいなくなったからこうやって話す事が出来る。あいつがいたままなら、俺はきっと自分の中に劣等感を抱えたままだったでしょう」

ゆかり「だから何なのよ……」

鳴上「岳羽さんも、わかってるはずです。あいつは帰って来たわけじゃない。あいつは別物で、結局は過去の記憶でしかない」

ゆかり「だけど……それでも……!」

鳴上「それじゃ駄目なんです。あいつは、俺達皆を前に向かせる為にここを去った」

ゆかり「前を、向く為に……」

鳴上「俺はその事をあいつから聞いていました。なのに、自己嫌悪ばかりして何もしていない。ようやく目が覚めた所です」

ゆかり「私は……」

鳴上「一度は出来たはずです。忘れるんじゃない、糧にする事。あなたにだけは、伝えておかなければいけないと思いました」

ゆかり「……叩いちゃって、ごめんね」

鳴上「全然です。むしろ気持ちいいくらいで」

ゆかり「ばか。……ありがとね」

鳴上「いえ、すみませんでした。生意気言いました。俺がもっと器用なら、あいつがいなくなる必要も無かったのに」

ゆかり「ううん、それでいい。鳴上君は、それが似合ってるよ。よっし、それじゃ私帰るね!なんかすっごいすっきりした!」

>ゆかりは背を向ける。
638 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:56:36.70 ID:aKD/rWCSo

鳴上「あの、また連絡していいですか?」

ゆかり「ん、いつでも」

鳴上「……良かったら、付き合ってもらえませんか?」

ゆかり「鳴上君が有里君よりかっこよくなったらね」

>……やはり、まだ勝てないようだ。

>しかし、それでいい。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが3になった。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが3になった。

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のランクが2になった。

>『No.05 法王 天田乾』のランクが4になった。

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のランクが2になった。

>『No.07 戦車 アイギス』のランクが2になった。

>『No.17 星 真田明彦』のランクが3になった。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが2になった。

>……。
639 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/19(日) 22:57:44.44 ID:aKD/rWCSo
離れてるような、近付いてるような。

明日早いのでフライング。
では、また明日。
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/19(日) 23:51:56.30 ID:5woO/zsio
乙ー
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/08/20(月) 06:12:20.53 ID:+wgZVCy60
乙です
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/20(月) 11:46:27.57 ID:xaP47FSwo
643 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:08:52.57 ID:/Qp3gPCCo


【6/4 晴れ】


風花「おかえりなさい。病院、どうでした?」

鳴上「ただいま。もうすっかり万全ですよ。今夜辺りから俺も悪魔と戦いに出れそうです」

>悪魔騒動はやはり落ち着いてなどいなかった。

>街を歩けばそこかしこに奴らがいて、特に夜間は人を襲うこともあるようだ。

>ケルベロスが言うには、月が出る事で悪魔の精神に何らかの影響を及ぼすらしい。

>メティスとラビリス、それに天田は毎夜悪魔から街の人々を守るためパトロールしている。

>俺は、怪我が完治するまで待機させられていたのだが、今日ついに完治のお墨付きをもらった。

風花「はい、わかりました。それじゃ今夜は天田君に休んでもらって……」

ケルベロス『それは良くない』

>突然、ケルベロスが現れて言った。

鳴上「うお、お前……勝手に出てこれたのか」

ケルベロス『やる必要が無かったのでやらなかっただけで、やろうと思えば。話を聞いていたが、今日は全戦力を傾注すべきだと思う』

風花「えっと、それはどうして?」

ケルベロス『俺も体が疼いている。今夜はもしかして満月では無いだろうか?』
644 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:09:30.18 ID:/Qp3gPCCo
風花「はい、それは確かそうだけど……」

ケルベロス『以前少し話したが、悪魔というのは月に強く惹かれる部分を持っている。満月は特にだ。今夜はきっと夜が明けるまで暴れるだろう』

鳴上「何?ってことは徹夜か」

ケルベロス『そうなるだろう。機械の娘達には何ともないかもしれないが、主達人間にはかなり厳しい戦いになると思うが』

風花「どうしよう、とにかくまずは桐条先輩に連絡して……協力してもらえる人材を出来る限り確保しないと」

鳴上「ああ、そうか。この街だけじゃないですもんね。ってことはここは俺達だけでやるしかないか」

ケルベロス『普段なら交渉する手もあるが、今夜に限っては悪魔たちは一切の話を聞かないだろう。注意したほうがいい』

鳴上「……とんだ復帰戦だな」

>……。

>夜。

>風花の言った通り、闇夜には丸い穴が開いている。

鳴上「あれって、確かニュクスなんだよな」

>悪魔の精神は月に惹かれて高揚するという。

>その月が人間にとっての死だというのは、ただの偶然だろうか。

>見上げると、月に吸い込まれそうな錯覚を起こした。

ケルベロス『……主、近いぞ。匂いがする』

鳴上「ああ。行こう」

>悪魔退治だ。

>……。
645 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:10:16.92 ID:/Qp3gPCCo
鳴上「ふぅ……片付いたな」

>ケルベロスと別れて辺りの悪魔を一掃した。

>幸いな事に、被害者はまだ出ていないようだ。

風花『お疲れ様です。その区画はしばらく大丈夫そうだから、他の人のサポートに回ってあげて』

鳴上「了解です。少し皆の様子を見にいってみます」

>一番近いのは誰だろうか。

風花『そこからだと、ラビリスの持ち場が近いです。まだ戦闘中みたいだから注意して』

鳴上「わかりました。それじゃ行ってきます」

>ケルベロスは……まだ戻ってこない。

鳴上「あいつなら心配は無いだろうが……後であいつも見に行かないとな」

ラビリス「あ、悠。どないしたん?」

>ラビリスはその斧で大型の悪魔を倒した直後だったようだ。

>斧を背中に仕舞いながら歩いてきた。

鳴上「いや、こっち終わったから手伝いにな。調子はどうだ?」

ラビリス「悪ぅないで。ただ、未だに悪魔退治は慣れへんな……悪魔や言うても、なんや普通の生き物みたいで、なんていうんやろ、悪い気がするわ」

鳴上「仕方ない、さ。ここは俺達の世界だから、出ていってもらうしかない。特に今夜は交渉もできないらしいし……」

ラビリス「そうやな……あ、それでちょっと気になる事あるんやけど」

>ラビリスは辺りを見回すと少し声を潜めた。
646 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:10:57.24 ID:/Qp3gPCCo
ラビリス「悠は夜に見回った事ないからわからんかもしれん。けど、今夜……絶対悪魔の数少ないで」

鳴上「そりゃ、いつもと違って見まわってる人数も多いし……」

ラビリス「それにしたって、や。ウチら、いつもリミッターギリまでトバして見回りしてるんやけど、街中でかなりの数の悪魔がおるんよ」

鳴上「今日はそれが少ないのか?」

ラビリス「いつもは害が無さそうな悪魔は無視するんやけど、今日は別やろ?それにしては戦った数が明らかに少ないんよ。まるで……」

>言いかけた言葉は飲み込まれて、頭を振った。

ラビリス「まぁ、そんなはず無いんやけど……とにかく、気を付けた方がええかもわからん。ここら辺も殆ど終わったし、ウチもうちょっと範囲広げて回ってみるわ」

鳴上「ああ、気をつけてな。俺は他のメンバーの所も回ってみる。山岸さん?」

風花『はい。そこからなら……次は天田君ね』

鳴上「わかりました。そういうわけだから」

ラビリス「うん、悠も気を付けて。ほなな」

>ラビリスと別れて、天田を探して移動することにした。
647 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:11:49.71 ID:/Qp3gPCCo
天田「あ、鳴上先輩。調子どうですか?」

鳴上「まずまずだな。持ち場は終わったから、こうしていろんな所の様子見て回ってるんだ」

天田「……驚異的な速さですね。ケルベロスのお陰ですか?」

鳴上「それもあるな。まぁ、あいつはまだ戻ってきてないんだが」

天田「心配ない……とは言えないかもしれません」

>天田の表情が曇る。

鳴上「もしかして、天田も何か気になる事があるのか?」

天田「ええ。悪魔の数が少ないんですよ、極端に。僕は街中回ったり、一晩中戦ったりはできませんけど、それにしたって少なすぎる」

鳴上「ラビリスも同じ事を言ってたな。そんなに極端なのか」

天田「戦闘自体は少ないんですよ。襲ってくる奴や人を襲ってる奴以外はふらふらしてるだけなんで。でも、個体数で言えば今晩の三倍はいてもおかしくないはずです」

鳴上「そんなにか。となると……何か起こってるのかな」

天田「かもしれません。僕らはそれぞれの持ち場が被らないように配置されていますから、持ち場内の悪魔の数が少ないって事は……」

鳴上「俺達の知らない誰かが悪魔を倒してる、とか」
648 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:12:43.47 ID:/Qp3gPCCo
>ありえない話ではない。

>藤堂のように、俺の知らないペルソナ使いがいる。

>美鶴から聞いた話では、悪魔退治を生業としている人種もいるようだ。

>それが今回の騒動に気付いていても不思議は無い。

天田「それか、一点に集まってるとか。持ち場は街に満遍なく配置されてるから、可能性は殆どありませんが」

鳴上「何にせよ、油断は出来なさそうだな」

天田「ええ。僕はもう暫くこのエリアで戦います。先輩は他を回ってみてください。もしかしたら気付いてる人がいるかも」

鳴上「そうだな」

風花『次に近いのは藤堂さんの所。ポロニアンモール方面です』

鳴上「夜中でも人が多い場所だな……行ってみます」

>ポロニアンモールに向かった。
649 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:13:31.95 ID:/Qp3gPCCo
鳴上「藤堂さん!」

藤堂「おお、鳴上か。いや大変だな遅くまで」

鳴上「平気ですよ。それで、藤堂さんに聞きたい事があるんですけど」

藤堂「どうした?何かあったか?」

鳴上「藤堂さん、確か悪魔退治してたって言ってましたよね」

藤堂「ああ、そうだな。お前たちに会う前からいろいろやってたぞ」

鳴上「その時と今日ってどう違います?」

藤堂「違い?……うーん、何とも。満月の夜に悪魔が凶暴化するってのはある意味普通だし……あ」

>藤堂は手をぽんと打って言った。

藤堂「種類。見たこと無い悪魔が何体かいたな。と言っても、持ち場につく途中で目についただけだから詳しくはわからんが……」

鳴上「見たこと無い悪魔……?どんな奴です?」

藤堂「なんか、こう……刃物みたいな奴だよ。足とか手が刃物になってて、体の中が何か蠢いてるんだ。ボロ切れで出来たカカシみたいな奴だよ」

>確かに、それは見たことが無い。

鳴上「どの辺で見ました?」

藤堂「ん?あー、確か……学校の方だな。黒い方の子が持ち場だったろ、あの辺」

>メティスの持ち場は確かに月光館近くだったはずだ。

>もしかすると何か起こっているかもしれない。

>急いで向かおう!
650 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:13:57.93 ID:/Qp3gPCCo
鳴上「メティス!」

>名前を呼ぶも、返事がない。

>悪魔の姿も見えないが……。

鳴上「山岸さん、メティスの居場所わかりますか?」

風花『近くにいるはずなんだけど……通信も返事が無くて』

鳴上「まさか、もう悪魔に……」

>間に合ってくれ……!

>祈りながら辺りを探索していると、不意に携帯が震えた。

鳴上「なんだ、こんな時に」

>携帯を取り出すと、悪魔召喚プログラムが起動する。

鳴上「そういえば、ケルベロスはどうしてるんだろう」

>確か、ステータス表示が出来たはずだ。

>ケルベロスの項を見てみると、HPの表示がどんどん減っていく。

鳴上「これで携帯が鳴ったのか!?山岸さん!」

風花『ごめんなさい、ケルベロスの反応は悪魔たちと同じだからどこにいるかは……』

鳴上「あいつがピンチって、どういう相手なんだ……!」

>探す対象が2つに増えてしまった。

>とにかく、近くにいるだろうメティスを探そう。
651 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:14:24.55 ID:/Qp3gPCCo
風花『……あっ!メティス?メティスなのね!?』

>どうやら風花へ通信が入ったらしい。

風花『えっ……戦闘って、相手は……どういうこと?』

>風花の声から緊張した様子が伝わる。

>メティスは何者かと戦闘しているらしい。

風花『……っ鳴上君!月光館の校庭!早く行って!』

鳴上「でっ、でもケルベロスは……」

風花『ケルベロスもそこにいるから!急いで!』

>切迫した風花の声に弾かれるようにかけ出す。

>月光館学園はすぐそこだ。

>誰かに壊されただろう校門が見える。

>何かを削り取るような連続した音が聞こえる。

>これは、銃声?

>メティスには火器は搭載されていなかったはずだ。

鳴上「メティス!」

>歪に破壊された校門を乗り越え、校庭に出る。

メティス「鳴上……く……」

>メティスの関節部から煙が上がっている。

鳴上「大丈夫か!」
652 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:15:21.90 ID:/Qp3gPCCo
>メティスと対峙しているのは悪魔では無かった。

>どう見ても人間の男。

>足元にはケルベロスが横たわっている。

>男の両手には拳銃が一丁ずつ握られていて、メティスがそれに狙われていたのは確実だった。

「怪我は無いはずだぜ。そんな体なら尚更な」

>男はホルスターに拳銃を収めた。

鳴上「逃げる気か」

「逃げる?誰から?」

鳴上「俺はこいつと、そこで倒れてるケルベロスの仲間だ」

「あー……ちょっと待て。俺は何を倒しちまったんだ?」

鳴上「そのケルベロスは野良の悪魔じゃない。俺と契約して一緒に戦ってるんだ。お前はそれを……」

>男が銀色の髪を掻き上げる。

「オーライ。どうも勘違いしてたみたいだな。って、謝って済むレベルじゃないか」

風花『鳴上君、構えて。その人、悪魔の反応があります』

>風花からそう通信が入った時、俺の中の戦う意志は完全に固まった。

「話を聞く気は?」

鳴上「無いな」

「そうか……じゃあとりあえず大人しくなってもらうか」

>今度は銃で無く、背中に背負った大剣を抜く。

「ただし、気を付けな。俺と戦うとなりゃ……」

>紅いコートを翻して、大剣を俺にまっすぐに向けた。

「悪魔も泣き出すぜ?」
653 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/21(火) 00:18:21.53 ID:/Qp3gPCCo
INTERMISSION。

では、また明日。
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/21(火) 00:28:40.40 ID:yKT37v+x0

一瞬キョウジかと思ったけどまさかのデビルハンターか
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/21(火) 00:29:13.19 ID:/E4X5p+Go
とにかくダンテは何仕様なのかが気になるな。順当に行けば2なんだろうが、まさかDmCダンテ…は無いか。銀髪っつってるし。
そういやDMC4のネロって英語版の番長もやってるんだよね。
ペルソナじゃないけどスタンドみたいなのも使えるし、意外に共通点あるな
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/21(火) 00:33:17.21 ID:+fjHJNzr0
風呂敷広げ過ぎてないか?
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/21(火) 00:36:18.34 ID:eO64Slolo
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 01:19:08.68 ID:P6b6fH5F0
ああ、そうかマニアクスか
つまりここで善戦すればコイントスで依頼料が安く…

っていうかこれ、さすがに何もなかったことになったENDだと思うけど
ダンテが関わってるとなるとルシファー戦をやるENDかと思ってしまうわ
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/21(火) 01:33:30.41 ID:WPxw9ebXo
まぁ目一杯広げる人だからな…
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/08/21(火) 01:38:09.83 ID:Ny7R7L2Do
広げても良いけど、前回みたいな終わりかたはやめろよ。
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/08/21(火) 01:39:00.69 ID:POwEPGjFo
人修羅とサーフにも期待できるかな
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/21(火) 01:45:44.68 ID:eO64Slolo
結末の構想はできているのか?
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/21(火) 07:23:20.44 ID:32Vnq5lco
人修羅期待
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 10:48:11.47 ID:ZhseJEQIO
ダンテきたー!
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/21(火) 21:17:40.98 ID:u74dkcmQo
地獄の鬼ごっこキター
666 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:20:30.12 ID:hQ9cQNz+o
>無意識に一歩後退っていた。

>背中を冷たい物が伝う。

>今まで、強大な相手と戦った事は何度もある。

>だが、こいつは違う。

>存在そのものの大きさじゃなく、練り上げた強さ……。

>積み上げた強さの桁が違う。

>そういう相手と戦うのは、考えてみれば初めてだった。

鳴上「負けてられるか……!」

>ぐっと目に力を込めて相手を見据える。

>そして刀を両手で握り……

>握り……?

>刀はどこだ?

「おい。いい歳して子供からかってんじゃねえよ」

>声は背後からだった。
667 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:20:57.35 ID:hQ9cQNz+o
>正面の敵に背を向ける事も気にせず振り返る。

>俺の刀は、もう一人の男の腕に無造作に掴まれていた。

>あの距離からどうやって……?

鳴上「あんたもこいつの仲間か」

「仲間?……そうなるのか?そうなるのか。けど、そこのヤツも俺もお前と争う気は無いぜ」

>男のさらに背後から、見慣れた人影が走ってくる。

美鶴「鳴上!無事か!」

鳴上「桐条さん?」

美鶴「済まない、両者に説明が足りなかった。あなたも剣を納めてくれないだろうか」

>紅い男はやれやれといった様子で剣を背中に背負い直す。

美鶴「鳴上、彼らは味方だ。赤いコートの方がダンテ氏、こちらの青いコートの方がネロ氏。悪魔退治の専門家だ」

鳴上「悪魔退治の専門家……?」

ネロ「そういう事だ。悪かったな、アイツが脅かしちまって。怪我無いか?」

ダンテ「脅かしちゃ無いだろ?なぁ、ナルカミ」

>紅い男……ダンテは突然フレンドリーに、悪く言えば馴れ馴れしく俺を呼ぶ。

鳴上「でも、味方ならなんでケルベロス達を……」

ケルベロス『……すまない。俺が先に襲った。悪魔の匂いがしたのでな』

>ケルベロスが意識を取り戻したようだ。
668 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:21:38.40 ID:hQ9cQNz+o
ダンテ「悪魔にゃ違いないが、突然襲われる謂れは無いんでね。反撃しちまった。だから、お互い勘違いって事で」

ケルベロス『確かにこうして冷静に見ると、悪魔……にしては、どこか違う。人間の匂いも混ざっているな。もしや、混血か』

ダンテ「ワンちゃん、あんまり人の出自を晒すもんじゃねえぞ?」

ケルベロス『……失礼した。主、俺はしばらく戻る。すまんが回復するまで使い物にならんだろう』

鳴上「ああ、わかった。無茶させて悪かったな」

>ケルベロスは例の魔法陣を通って消えっていった。

美鶴「……しかし、何故あなたは説明の途中で抜けだしたのですか」

ダンテ「ん?俺ああいうの苦手なんだよ。あ、お嬢さんが直接話してくれるなら別だぜ?」

美鶴「それは、長が直接来いという事でしょうか」

ダンテ「いいや。どうせ話すならレディとの方が楽だって話だ」

>青い男……ネロが溜息をつく。

ネロ「あの女悪魔が俺も行けって言った理由がわかったよ。アンタ一人じゃ毎度こんな感じなんだろうな」

美鶴「……改めて、話したい事があります。一度、我々の拠点までご足労願えますか」

>……。
669 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:22:11.13 ID:hQ9cQNz+o
>事務所の役に立たないドア(蹴破ったのは俺だが)が耳障りな音を立てて客人を迎えたのは数日前の話だ。

>客人とは言っても、いつもいつも厄介事を持ち込む上に悪魔よりよっぽど強欲なあの女だったから、入ってくるなり溜息が出た。

レディ「大口の仕事が入ったわ」

ダンテ「おめでとう」

>この続きはわかってる。

レディ「こっちのセリフよ。ようやくツケが完済できそうね」

ダンテ「お前の仕事で俺が儲かるのか?そりゃラッキーだ」

レディ「まさか。私の仕事ならビタ一文あんたには入らないわよ。あんたが行くの」

>ほら来た。

>仕事を取ってくるのは良いが、それを殆ど俺に投げやがる。

>しかも仲介料だとかのピン撥ね付きだ。

ダンテ「面倒だ。自分でやったらどうだ?大口って事は報酬も凄いんだろ?」

レディ「ええ、物凄いわ。ロダンの店のツケを全部払ってこの事務所がビルになるくらいね」

>……冗談だろ?

>レディがテーブルに置いた書類を見る。

>確かに、報酬の桁が信じられない数だ。

ダンテ「クレイジーだ。どれだけ金が余ってたらこんな事が出来るんだ?」

レディ「依頼先は日本の大企業。キリジョウだそうよ」

>キリジョウ……聞いたことはある。

>確か、世界でも有数の大企業。

ダンテ「それで?何で俺が」

レディ「どうせ暇でしょ。トリッシュはもう動いてるわ」

ダンテ「……やれやれだぜ」

>……。
670 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:22:38.97 ID:hQ9cQNz+o
ダンテ「とまぁそういうワケでコイツと二人で極東日本まで飛んできたわけだ」

ネロ「こう見えて、相方の女悪魔にゃ頭上がらないんだぜ。だから乗り気じゃなくても来るハメになったんだ」

ダンテ「……レディファーストは基本だろ?」

ネロ「強がりはよせよ」

>ダンテはオーバーなアクションでやれやれと肩をすくめ、我が物顔でソファーに座った。

美鶴「もしもの為にと私が依頼した。だが、任務に関する説明を行なっている途中で……ダンテ氏の方が居眠りをし、あまつさえ抜け出したという報を聞き私が駆けつけた」

天田「ああ、それで……確か、別働隊の指揮に行ってるはずですもんね」

美鶴「そちらは明彦に任せてきた。無茶はするが、他人を巻き込む事はないから大丈夫だろう。それで、ダンテ氏、ネロ氏両名と君達を引き合わせる事にしたんだ」

ダンテ「そうだ、あの黒いお嬢ちゃんは大丈夫か?攻撃を避けてたら勝手に煙吹いたんだが。日本のコミックじゃ見たことあるが、本当にいるんだな、ロボット」

美鶴「ええ。損傷はありませんでしたから、しばらく冷却期間をおけば大丈夫です。ですが、かなり怯えているようで」

ダンテ「……」

ネロ「無茶するからだ」

ラビリス「悪魔退治の専門家って、普段からそんな仕事してるん?」

ダンテ「俺はな。いろいろ理由はあるが……一番は、連中が気に入らない。そんなとこだ」

ラビリス「いろいろの部分聞きたいわぁ」

ダンテ「男ってのは秘密で出来てんだぜ?」

鳴上「……ともかく、頼もしい味方だって事はわかりました」

風花「二人の反応、しっかり確認しました。これから誤って襲いかかったりしないようにお願いしますね」

>風花が申し訳無さそうに言う。
671 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:23:06.41 ID:hQ9cQNz+o
鳴上「いきなり刀向けてすみませんでした、ダンテさん」

ネロ「刺されたって死にゃしねえから、別にいいんじゃないか?」

鳴上「ええ……?」

ダンテ「日本人は礼儀正しいね。昔そこの坊やも俺に斬りかかって来た事があったんだぜ。一言も謝ってもらってないね」

ネロ「あれはあんたが何の説明も無しに……」

ダンテ「斬りかかったどころか、その馬鹿でかい剣で胸のここんとこに大穴開けてくれやがって」

ネロ「いいだろ、治ったんだから」

>……この二人は、なんていうか規格外だ。

美鶴「山岸、悪魔はどうだ?」

風花「今のところ、少なくともポートアイランド内に反応はありません」

ダンテ「粗方片付けたからな」

美鶴「ご苦労さまです。私は他にも見ねばならない部隊がありますので、またしばらく戻ってこれませんが……」

鳴上「その間は二人と協力して戦えと?」

美鶴「そういう事だ。当面の拠点はこちらにしてください。施設は自由に使っていただいて結構ですが、他のメンバーの部屋は」

ネロ「流石にそれは言われなくてもわかってるよ。アイツは俺が見とくから、心配せずに行ってきてくれ」

美鶴「ではお願いします。鳴上」

鳴上「はい。現場指揮ですね」

美鶴「ああ。いつも通り頼むぞ」

鳴上「わかりました。お気を付けて」
672 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:23:38.28 ID:hQ9cQNz+o
>美鶴はダンテをちらりと見た。

>ダンテは笑ってウィンクし、手をひらひらと振った。

>美鶴はそれに苦笑を返し、ラウンジを出た。

ダンテ「さて、と。行くぞ坊や」

ネロ「坊やはやめろ」

鳴上「あ、俺も……」

ネロ「任せとけばいい。お前らは寝てろ。……心配すんな」

>ネロは俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。

ラビリス「……なんや荒い人やなぁと思ってたけど、多分優しい人なんやな」

天田「お言葉に甘えて今日はもう寝ちゃおうかな。流石に連日は辛いし……」

風花「一応、私は起きて二人を追いかけておきます。何かあったら起こすかもしれないけど、皆は寝てていいですよ」

>……恐らく、強さは本物だ。

>なら安心して任せていいだろう。

>そういえばメティスは大丈夫だろうか。

>様子を見に行こう。
673 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:24:05.11 ID:hQ9cQNz+o
鳴上「メティス?大丈夫か?」

メティス『鳴上君?開いてるから入って』

>メティスは何か大きな機械に接続されていた。

鳴上「おお、これでメンテナンスするんだな」

メティス「うん。ちょっと過負荷かけちゃったから……少し休めば元に戻ると思う」

鳴上「そうか。ダンテさん、味方だって聞いたか?」

メティス「……すごく、怖かった。あの人が、じゃなくて、ケルベロスさんが」

鳴上「ケルベロスが怖かったのか?」

メティス「続きがあるの、聞いて。ケルベロスさんが、いなくなるんじゃないかと思って。それがすごく怖くて……話も聞かずに襲いかかっちゃって」

メティス「生まれてすぐは、姉さんだけが守れればよくて、他の人なんか……でも、どんどん守りたい人が増えていって。今は、仲間の皆以外にもクラスの皆も」

>メティスは何を想像したのか一度震えた。

メティス「いなくなっちゃ、嫌……私、おかしくなってるのかな?」

鳴上「いや、それでいいんだ。その気持ちがメティスにもっと強い力をくれるよ。俺もそうだった」

メティス「鳴上君も……?」

鳴上「ああ。仲間を守ろう、仲間と一緒にいたいって思えば、その分頑張れるんだ。メティスにもそういう相手が増えてきたって事だろ」

メティス「そうなのかな」

鳴上「そうさ。それより本当に体は大丈夫なのか?」

メティス「平気。あの人、体には傷一つ付けなかったから。見て」

>横に置いてあった武器を指差す。

>手にとって見てみると、削り取られたような傷が付いていた。

メティス「私が本気で攻撃してるのに、武器ばかり狙って攻撃を撃ち落とす事しかしなかった。凄い腕前じゃないとそんな事出来ないのに……」

>しばらくの間、メティスと話をした。

>『No.12 刑死者 メティス』のランクが5になった。
674 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:24:45.74 ID:hQ9cQNz+o


【6/5 晴れ】


>学校へ行こうとラウンジに降りると、美鶴が戻ってきていた。

美鶴「鳴上か。今日は学校は休みだぞ」

鳴上「え?何かあったんですか?」

美鶴「ああ。一大事だ。山岸が今仮眠を取っているから、君もぎりぎりまで休んでいた方がいい」

鳴上「どうしたんです?」

美鶴「……悪魔が、街に溢れた。今の所この街以外では報告されていないが、これから世界中に波及しないという根拠はない。街の住民には避難してもらっている」

鳴上「なんだって!?」

>玄関を開ける。

ラビリス「あ、悠。おはようさん」

鳴上「あ、ああ。ラビリス、話は聞いたか」

ラビリス「まぁ、ウチはほら。寝んでもええ体やから。こうして寮に近付く相手を……」

>突然、黒い何かが渦巻いた。

ラビリス「来るで!」

鳴上「何だ!?」

ラビリス「今までの悪魔と違う……あの黒いのが集まって悪魔になるんや。見ててみぃ」
675 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:25:12.19 ID:hQ9cQNz+o
>渦巻いた黒い何かは形を為し、カカシのような姿に……

鳴上「藤堂さんが言ってた見たことない悪魔ってのはこいつのことか」

ラビリス「そうなん?とにかく、今街はこんなんで溢れかえっとるわ。今日は一日がかりでこいつらに対処するって」

鳴上「そうか。メティスはどうした?」

ラビリス「駅や。とにかく街の外に出てもらわなあかんから、モノレールの護衛役やってるわ。律儀に街の境界は守ってるんやって」

>言いながら、ラビリスは斧を振るってカカシを吹き飛ばす。

ラビリス「街の外への連絡がきっちり確保出来て、そんで皆揃ったら作戦開始やて。どうも原因はあの二人が知っとるらしいわ」

>あの二人……

ダンテ「呼んだかい?お嬢ちゃん」

ネロ「大丈夫か?」

>その二人が悪魔たちを文字通り蹴散らしながら帰って来た。

鳴上「ダンテさん、ネロさん。無事で良かったです」

ネロ「誰に言ってんだ。それより、ミツルはいるか?」

鳴上「中にいますよ」

ダンテ「お嬢ちゃんも来な。話がある」

>……。
676 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:25:38.21 ID:hQ9cQNz+o
鳴上「ダンテさん達のせい?」

ネロ「ああ。この街は妙な空気が漂ってる。そこに俺達みたいなのが来ちまったせいであいつらが生まれたんだろう」

天田「……起き抜けにかなり衝撃のカミングアウトですね」

ネロ「悪いな。そもそもお前らの負担を軽くする為に呼ばれたってのに、これじゃ手間を増やしちまった」

鳴上「こんな事、予測出来るはずありませんよ。誰が悪いとかじゃ無いでしょう」

ダンテ「で、だ」

>ダンテが身を乗り出す。

ダンテ「こっから先は俺達が片付ける。お前たちは……休んでればいいさ」

>天田とラビリスが顔を見合わせた。

>メティスと美鶴は言葉を選んでいるようだ。

>俺も、何と言うべきか迷っていた。

風花「それはできません。ここは私達の街ですから」

>意外にも、最初に言ったのは風花だった。

>ダンテは不敵に笑い、ネロは驚いている。

ダンテ「言うねぇ。あと五年経ったら拐いに来てもいいかい?」

風花「えっ、えっと、あの……」

ネロ「だからいい歳して子供をからかうなって」

美鶴「山岸は我々の大事な仲間なので、拐われては困ります。そして……」
677 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:26:39.58 ID:hQ9cQNz+o
ラビリス「黙って見とれっちゅーんも、聞いてられんな。元々ウチらのヤマやし」

天田「ラビリスさん、そんな言葉どこで覚えるんですか?……まぁ、僕も同意見です。せめて手伝いくらいしなきゃね」

メティス「私達だって、誰かの為に戦いたい。それを許してはもらえないでしょうか」

鳴上「……俺達は、それぞれに信念があって戦っています。皆、誰かに強要されたわけじゃない。だから、気遣いはいりません」

鳴上「それに、自分達だけ彼女達に良い所見せようったってそうは行きませんよ」

>今まで軽口三昧だったダンテに意趣返しのつもりで言った。

ダンテ「それでこそオトコノコだな。それじゃ準備しな。行こうぜ、悪魔退治」

天田「……あそこまでかっこつけられちゃ、本当にかっこいいとしか言いようが無いですね」

ラビリス「悠もああいう大人になるんやでー」

メティス「……それは、嫌かも」

>全員で戦闘の準備をした。

>……。

ネロ「それじゃこれから街を走り回るわけだが、何か質問は?」

鳴上「目的地は?」

ダンテ「行き先は気の向くままさ」

風花『……学校の方向に奇妙な反応があります。まるで、悪魔が湧いてきてるような』

ネロ「じゃあそっちだな。優秀だな」

ダンテ「行こうか。ダンスパーティーだ」
678 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/22(水) 00:28:19.07 ID:hQ9cQNz+o
迷惑千万。

インターミッションは飽くまでインターミッションなので本編にはあんまり関係なかったりします。
では、また明日。
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/08/22(水) 01:25:43.35 ID:X1/yx8rB0
乙!


ダンテかっけぇw
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/22(水) 01:44:10.17 ID:f4K5woouo
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/22(水) 02:10:08.31 ID:Qr+8Wl6ao
デビメメンバーくるー!
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/08/22(水) 10:47:56.40 ID:G+rUm+apo
名倉ー
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/22(水) 10:50:57.90 ID:lmjEyrB30
まさかのクロス
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 11:19:38.08 ID:iIpzmwuDO

ダンテとネロでインフレがヤバい
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/08/22(水) 14:37:28.13 ID:WjLjyZiz0
ふと思ったがダンテとデビチルの刹那って共通点多いよな
悪魔と人のハーフ、父が強力な悪魔、母と死別
魔界に行ったことがある、白髪、指ぬきグローブ
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 17:28:46.97 ID:T4Y9XcVOo
またひろげすぎかwwww

と思ったが今回のは前回より綺麗に広がってて読みやすい!
そんな>>1に乙
687 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:11:07.84 ID:gdkgz/iCo
>言葉の通りだった。

>ダンテとネロは、俺にはきっと振るう事すら叶わないだろう大剣を振り回し、踊るように悪魔を屠っていく。

ラビリス「悠!」

>つい見蕩れていると背後から怒号が飛ぶ。

>目の前に獣のような素早い悪魔が迫っていた。

鳴上「くっ!」

>攻撃をするも盾状の腕に防がれる。

>万事休すかと思われたその時、銃声が2つ響き、悪魔が消滅した。

ダンテ「ハッ!どうだナルカミ!楽しすぎて狂っちまいそうだろ!?」

ネロ「余所見してる余裕は無いぜ!見てみろよ!」

>学校への道を剣で指す。

鳴上「……嘘だろ?」

>普段、それなりに人通りのある道だ。

>その普段の人通りより多く、悪魔が道にひしめいている。

>倒さなくては前にも進めないようだ。

ラビリス「よっしゃ、ほないこか」

メティス「うん、姉さん」

>ラビリスとメティスが一歩前に出る。

鳴上「どうするんだ、二人共」
688 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:11:37.35 ID:gdkgz/iCo
ラビリス「道開けたるわ。行きぃ」

メティス「私達なら皆の通路くらい確保出来ると思うから。行って」

>言うが早いか二人は悪魔の塊に飛び込んで……いや、踊り込んでいった。

鳴上「おい!」

美鶴「鳴上。無駄にはするな。行くぞ」

>美鶴に肩をぐっと掴まれる。

>幾分手薄になった中を駆けて学校を目指す。

天田「……」

>途中、天田が立ち止まった。

鳴上「天田!急げ!」

天田「ダンテさん、言ってましたよね?レディーファーストは基本だって」

ダンテ「言ったぜ?」

天田「じゃあ、あの二人にだけ任せておくわけにもいきませんよねぇ」

>天田は来た道を戻るように走り始めた。

鳴上「天田……」

>振り返る事はなかったが、こちらに見えるように親指を立てている。

ダンテ「ナルカミ。お前の仲間はクールなヤツばかりだな」

鳴上「ええ。本当に……行きましょう!」
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/08/23(木) 00:16:25.84 ID:G7o+Ya0Go
キタ―――(゜∀゜)―――!!!
690 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:24:28.33 ID:gdkgz/iCo
ネロ「走りながらでいいから説明してくれないか。結局なんで悪魔なんてもんがこんなに現れたんだ?」

>ネロとダンテに再現の事件について話した。

ダンテ「道理でどいつもこいつも見飽きた面ばかりな訳だ」

鳴上「今回は、多分ダンテさんとネロさんの記憶が元になってるんだと思います」

美鶴「待て」

>美鶴に先を制される。

>思わず立ち止まって、初めて違和感に気付いた。

>……寒い。

ネロ「……ッチ。コイツらもいるのかよ」

>氷の塊が3つ現れる。

>氷塊は彫刻のように削れていき、鋭利な爪を持つ悪魔の姿になった。

ネロ「仕方ねえな。お前らは先に……」

>戦おうとするネロに先んじて美鶴が前に出る。

美鶴「氷、か。冷気を操る悪魔もいるんだな。ならここは……私がやる」

>美鶴はレイピアをひゅんと振り、構えた。

ネロ「手強い相手だぜ。大丈夫かよ」

美鶴「心配はいりません」

>悪魔の一体が美鶴に跳びかかる。

>爪を振り上げ、下ろすその一挙動で美鶴は紙のように切り裂かれる……はずだった。
691 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:25:12.39 ID:gdkgz/iCo
ダンテ「おお?」

>その爪が止まっている。

>いや、爪だけじゃない。

>体が……凍っている。

美鶴「私に冷気は効かない。……貴様達は、この街を荒らした。私にとって何よりも大事なこの地をだ。万死で足りると思うな。何度でも処刑してやる」

>ただの氷の塊と化した悪魔を、そのピンヒールで蹴り抜く。

>派手だが綺麗な音を立てて悪魔は砕け散った。

ダンテ「優雅なもんだ。任せても大丈夫かい?」

美鶴「ええ。鳴上。君は先にいけ」

鳴上「でも……」

美鶴「ここは私だけで大丈夫だ。それに些か……気が立っている。余り人に見られたい物ではないからな」

>美鶴は微笑んだが、その微笑に俺の背筋は凍った。

ダンテ「この街はいい女ばかりで目移りしちまうな」

ネロ「……俺はあんなおっかないのはごめんだね」

>ネロが美鶴に聞こえないよう、小声になったのが少し可笑しかった。

ダンテ「アレが学校か?」

>校庭には不思議と悪魔が一体もいない。

>だが、その代わりなのか見覚えのない物が立っている。

ダンテ「地獄門か」
692 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:25:50.29 ID:gdkgz/iCo
ネロ「アレをぶっ壊して、後は大掃除だ」

鳴上「アレを壊すって、どうやって?」

ダンテ「簡単だろ?剣を刺して、斬る。それだけだ」

>剣を刺して斬る……。

>あの質量の物体を斬る?

>だが、簡単に言ってのける以上本当に可能なのだろう。

>常識は忘れた方が良さそうだ。

鳴上「ならさっさと……」

風花『待って、鳴上君!その……地獄門から大きな反応が!多分大型の悪魔です!』

>地面が揺れて、地獄門がそれに輪をかけて揺れる。

ネロ「何が来るかと思って構えちまったが、コイツか」

ダンテ「おいおい坊や。ビビってたのか?」

ネロ「まさかだろ」

>正直、ビビった。

>地獄門から現れたのは、紅蓮の炎に身を包んだ巨大な悪魔だった。

>現れるだけで辺りが熱気に包まれる。

>強大な力をもっているだろう事は簡単にわかった。
693 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:26:48.30 ID:gdkgz/iCo
ベリアル『また貴様らか!』

ネロ「こっちのセリフだ」

ダンテ「本当に見飽きたぜ。悪いがさっさと帰ってくれ」

ベリアル『そうはいかん。貴様らを血祭りにあげるという使命があるのでな!』

ネロ「そりゃ無理だな」

ダンテ「俺達一人ずつでも勝てなかったお前が、二人相手に勝てる理由がどこにあるってんだ?」

>二人はこの悪魔に一切臆していない。

>一歩遅れながらも、俺も刀を構えた。

ダンテ「さて、早く片付けて」

>セリフの途中でダンテがいなくなった。

ネロ「ダンテェ!」

>ネロが叫ぶ。

ベリアル『何だか知らんがこれで一対一。雪辱晴らさせてもらうぞ!』

>炎の悪魔が足を踏み鳴らす。

ネロ「クソッ!」

>ネロが悪魔に向かって走り、俺はその場で動けなかった。

>炎の悪魔の巨体に隠れて気付けなかったが、その後ろに何かがいる。
694 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:27:15.59 ID:gdkgz/iCo
>黒い鎧のような見た目をした悪魔。

>体の周囲に青白い剣が浮遊している。

>どうやらダンテはこいつの攻撃にあったようだ。

>その黒い悪魔の目線を追う。

>校門の門柱に、紅い男が磔になっている。

鳴上「ダンテさん!」

>黒い悪魔の持ち物だろう巨大な剣はダンテの胸を貫き、どう考えても生存は不可能な傷を与えていた。

鳴上「勝てるのか……俺に」

>だが、一応は武器を手放している今ならもしかすると……

>一向に俺を見ようとしない黒い悪魔に少しずつ近付く。

>あと一歩で間合いだ。

ダンテ「待て、ナルカミ」

>磔になったはずのダンテの声が聞こえる。

>幻聴かと思った。

>しかし、血を吐く音まではっきり聞こえて思わず振り向いてしまった。
695 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:27:44.29 ID:gdkgz/iCo
>動いている。

>刺さった剣を抜くのではなく、無視して前に進むように。

>刃の部分はまだいい。

>明らかに傷口より幅の広い鍔の部分も無理矢理に体を貫通させている。

>ずりずりと進み、ついには柄まで全てが体の後ろに通ってしまった。

>ダンテは大量の血を吐いて、口元を拭った。

ダンテ「久しぶりだな。不意打ちするようなキャラだったか?剣ブン投げやがって」

>言って、今まで自分に突き刺さっていた剣を門柱から引っこ抜く。

ダンテ「返すぜ」

>何を思ったか、その剣を黒い悪魔に投げてよこした。

鳴上「ダンテさん?」

ダンテ「こいつとは俺がやる。お前はアレをぶっ壊せ。任せたぜ」

>ダンテの体から電流火花に似た何かが迸る。

>俺は黙って頷いて、地獄門を見る。

>だが、自分の力ではあの地獄門に斬りつけた所で何ともならないだろう。

>何か策を……

鳴上「そうだ!」

>地獄門の高さは丁度校舎の屋上と同じくらいだ。

>距離も無茶な距離じゃない。

>あそこから飛び乗って……

鳴上「ダンテさん、ネロさん!無事で!」

>校舎の中に走った。
696 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:28:27.48 ID:gdkgz/iCo
>玄関を潜り、昇降口から階段を上る。

>幸運な事に悪魔は一体もいない。

>このまま屋上にたどり着けば……

>耳元でバリッという、何かが弾ける音がした。

>警戒して足を止める。

>さっき氷の悪魔が出現した時と似ている。

>この階段を登れば屋上なのに……。

>電流火花が散る。

>いや、集まる。

>光球は辺りを飛び回り、目の前に止まると本来の姿を現した。

鳴上「もう逃げられそうにないな……」

>角が特徴的なその悪魔は、つい呟いた俺を完全にロックしたようだ。

>角を突き出してまっすぐに突進してくる。

鳴上「くっ……!」

>刀で受けたにも関わらず、手が痺れて感覚が薄れる。

>信じられないパワーだ。

鳴上「ふっ!」

>それでもなんとか刀を握り直し、無防備に晒した背中に一撃を入れる。

鳴上「なっ……刃が通らない?」

>一見して全身で一番装甲が薄いその部分ですら、俺の力ではダメージに至らないようだ。
697 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:28:54.81 ID:gdkgz/iCo
鳴上「どうする……どうすれば……」

>ペルソナで……いや、しかし……

>次の手を考えている間に、悪魔は振り返る。

>早く、早く何か手を……

鳴上「……?」

>悪魔は首を捻った所で動きを止めている。

>何故攻撃してこない?

鳴上「これは……」

>悪魔の胴体を魔法陣のような物が囲っている。

>どうやらそれに縛られて動く事が出来ないようだ。

「さっさと行きなさい」

>廊下をヒールが叩く硬い音がする。

>音の主は、サングラスをかけた金髪の女性だった。

「そいつは足止めしておくから。それとも、私が行った方がいいかしら?」

鳴上「……いえ。ありがとうございます!」

>何者かは知らないが、この上ない助け舟だった。

>階段を駆け上がり、屋上に出る。

鳴上「やっぱりだ」

>地獄門の天辺が丁度良い位置にある。
698 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:29:34.10 ID:gdkgz/iCo
鳴上「よし、ここから……」

>さっきの悪魔に刃が立たなかった事を思い出す。

>もしかすると、一切ダメージが通らないかもしれない。

鳴上「だけど、やらなくちゃ。俺が」

>手すりを乗り越えて、屋上の縁に立つ。

>飛べば届く距離だ。

鳴上「ふぅ……」

>一度深呼吸して、召喚器をこめかみに当てる。

鳴上「イザナギ!」

>召喚したイザナギの力を、全て刀に込める。

鳴上「……刺さってくれ」

>二度、三度と深呼吸を繰り返し、心臓を落ち着ける。

>足に力を込め、飛ぶ。

鳴上「行っ……」

>地獄門に刀を突き立てる。

>……刺さった!

鳴上「けえええ!」
699 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:29:59.91 ID:gdkgz/iCo
>落下の勢いと体重を全て刀にかける。

>刃は地獄門を切り裂き……

>途中で、止まった。

鳴上「駄目、か……!」

>もう一押しする力が足りない。

>まだ破壊には程遠い。

ダンテ「ネロ!!」

>眼下、まだ戦っているダンテが叫んだ。

ネロ「良くやった、ナルカミ。手伝ってやるよ」

>炎の悪魔の足元を抜け、ネロが真下に立っている。

鳴上「手伝うって、どう……!?」

>刀を誰かの手が掴んでいる。

>最初にネロに会った時、明らかに手の届かない距離で刀を奪われた事を思い出した。

ネロ「行くぜ」

鳴上「はい!」

ネロ「せェ……のぉっ!」

鳴上「うぉおおおおおおおおおおおお!」
700 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:30:26.37 ID:gdkgz/iCo
>強烈な力で刀が引っ張られ、地獄門を裂いていく。

>地面スレスレで勢いは止まり、無事着地する事ができた。

鳴上「っはぁ、はぁ。助かりました。けど……」

>地獄門は変わらず立っている。

>あの二人の剣ならともかく、普通の刀では刃渡りが足りなかったようだ。

ネロ「大丈夫だ。後はアイツがやるさ」

>アイツ、と言われてダンテを見た。

>俺の視線に気付いたのか、ダンテは一瞬小さく笑うと一気に跳躍した。

ダンテ「悪いな!丁度良い踏み台だぜ!」

>追って飛んだ黒い悪魔を踏みつけ、更に加速し上昇する。

ベリアル『させるものか!』

>炎の悪魔が手を伸ばす。

ネロ「こっちのセリフだぜ!」

>ネロが例の伸びる手で悪魔を掴む。

>手を一気に縮ませて、悪魔の足元に移動する。

>一瞬、ネロの背後に青い悪魔の影が見えた。

ネロ「喰らっとけ!ウォオオオラァッ!」

>紅い腕に巨大な蒼い腕が重なり、炎の悪魔を殴り飛ばした。

>更に、あの黒い悪魔が使っていたような幻影の刀を飛ばし追撃する。
701 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:30:59.96 ID:gdkgz/iCo
ベリアル『グオオオオオオオ!!』

>ネロが剣を握ると、エンジンの音がした。

ネロ「火傷の心配はいらねえか?炎獄の支配者さんよ」

>ネロの大剣が赤熱し、炎を噴く。

>圧倒的推進力で突撃し、その勢いのまま剣を振りぬく。

>その剣は炎の悪魔の体を深々と切り裂いた。

>タァン。

>一発の銃声で、視線をダンテに引き戻される。

>黒い悪魔は体に大穴を空けられ、落下していった。

>あの口径の銃であんな穴が空くものなのだろうか。

>ダンテを見ると、そこに見知った姿は無かった。

鳴上「……悪魔」

>まるで悪魔そのもののような姿に変わったダンテは背中の剣を抜く。

>俺がやったのと同じ事をするつもりのようだ。

>ただし、それよりも遥かに強い力で。

>俺の付けた傷の丁度反対側をなぞるように剣を走らせる。

>俺の時と違い、ブレーキ無しで地面まで一気に。

>巨大な剣によって切り裂かれた地獄門は、見事に真っ二つに別れた。

>ダンテの着地の衝撃で、校庭の砂が巻き上がり姿が見えなくなる。

鳴上「ダンテさん!」
702 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:31:39.98 ID:gdkgz/iCo
>砂煙が晴れた時、ダンテは既にいつもの姿だった。

ダンテ「ヘイ、ネロ。こいつをぶっ壊すのに丁度いい物持ってるじゃないか」

ネロ「そうだな。こいつらには帰ってもらう事にするか」

>ネロは紅い腕で炎の悪魔を持ち上げ、地獄門に向かって放り投げた。

ダンテ「お前もだ。……もう、迷うなよ」

>ダンテがそれに合わせるように黒い悪魔をそっと投げる。

>地獄門に空いた異空間への入り口を通り、二体の悪魔がどこかへ消える。

>しかし、その巨大な質量を受け入れる事ができず、半壊した地獄門はそのまま崩壊を始めた。

ネロ「これでこれ以上悪魔が増える事は無い」

鳴上「でも、今までの悪魔は残ってるんですよね?」

ダンテ「その通り。だからこれから大掃除だ。悪魔死すべし(Devil Must Die)だぜ!」

>堰を切ったように校庭に押し寄せる悪魔の群れに向けて、ダンテとネロが弾丸を放った。

>……。
703 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:32:26.94 ID:gdkgz/iCo
>バー『The Gates of Hell』。

>サングラスのマスターと眼鏡の女性が会話している。

マスター「ってなワケで、連中日本に飛んだそうだ」

女性「へぇ。楽しそうね」

マスター「なんだ、行きたかったのか?」

女性「まさか。だって悪魔退治でしょう?」

マスター「連中の仕事だからな」

女性「天使退治なら行ってたわ。悪魔には興味無いもの」

>女性はグラスを空けると席を立った。

マスター「おい!金!」

女性「エンツォにツケておいて。また来るわ」

マスター「エンツォは払わねえぞ……ったく」

>今女性が出て行った扉がもう一度揺れる。

マスター「……お前らか。今日はツケねえぞ」

>入ってきたのは紅いコートの銀髪、蒼いコートの銀髪、サングラスの金髪の三人。

ダンテ「心配すんなよ。今日はツケじゃねえ。ストロベリーサンデーを、人数分頼むぜ」

マスター「今日はツケじゃねえ、じゃなくて今までのツケを払えってんだ」

>今日も呆れながら、ストロベリーサンデーの用意をするのだった。

>……。
704 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:33:17.77 ID:gdkgz/iCo
鳴上「悪魔と人間のハーフですか?」

美鶴「少なくともダンテ氏の方はそうらしい」

>ダンテとネロが去った後、美鶴から彼らに関しての話を少し聞いた。

美鶴「しかし、知っての通りかなり上級の悪魔でも無いと人間と生活を営む事など出来ない。そして上級の悪魔は人間など下等生物にすぎないと認識しているから、滅多にある事でも無いようだ」

>悪魔と人間の混血。

>でありながら、悪魔を狩る存在。

>彼の目には、どんな世界が映っているのだろうか。

鳴上「……でも、良い人でしたよね」

美鶴「それは間違いないな。少し不真面目に過ぎるが」

鳴上「報酬も受け取らなかったんでしょう?」

美鶴「ああ。私がどうしてもと押し付けたチケット代と、後は……なんだろうな、これは」

>美鶴が苦笑しながらメモ書きを見せる。

>メモには『ストロベリーサンデー代』と、金額が書いてあった。

鳴上「また、会えますかね」

美鶴「事件が終われば、どうだろうな。彼も言っていたよ。日本にはまた来るかもしれない、と」

>悪魔の血を引き、人間の心を持つ男。

>出来れば、そんな人ともう少し話をしてみたい。

>そんな風に思った。
705 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/23(木) 00:39:31.42 ID:gdkgz/iCo
インターミッションおしまい。これからまた事件に挑もう。

では、また明日。
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/23(木) 01:51:23.18 ID:uwMZ5Xjmo
ベヨネッタもwww
スゲーな!
707 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/24(金) 00:02:13.83 ID:YC55jPOXo


【6/12 晴れ】


綾時「それでさー、その時に先生がね」

>屋上に出るのも暑い季節になってきた。

鳴上「ああ」

綾時「……聞いてる?」

>綾時とこうして話すのも久しぶりだ。

>だが、綾時は湊の半身で……そのせいで勝手に微妙な気まずさを感じてしまっている。

綾時「もう、酷いなぁ。悠が暇そうなのは久しぶりだから誘ったのに」

鳴上「悪かったよ。ちゃんと聞く」

綾時「……といっても改めて話したい事も無いんだよねぇ。強いて言えば、有里君の事かな?」

鳴上「お前、知ってたのか?」

綾時「うん。推測だけどね。君と彼両方を見てきたから、なんとなくわかるんだ」

鳴上「そうか……黙ってて悪かったな。何か言い難くて」

綾時「いいさ。君もようやく正直になれたみたいでよかった」
708 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/24(金) 00:02:44.43 ID:YC55jPOXo
鳴上「正直に?」

綾時「最初の頃からずっと無理してたみたいだったからさ。荷が降りたみたいで何よりだ」

鳴上「そう見えるか」

綾時「君、人の為に何かしてあげる事をどう思う?」

鳴上「ん?そりゃ……困ってる相手なら当たり前じゃないか?」

綾時「それはいい心がけだけど、その為に相手の人生まで背負う理由は無いんだよ。いつか重さで潰されちゃうよ」

鳴上「そこまで深く考えた事はなかったな」

綾時「きっと君の本質がそうなんだろうね。羨ましいよ」

鳴上「考えなしがか?」

綾時「そうじゃない。僕は誰かを滅ぼしに作られた存在で、君は誰かを救う為の存在なんだろう。それが羨ましい」

鳴上「……卵、食べるか?」

綾時「うん、頂戴」

>開けた口に卵焼きを放り込んでやる。

綾時「……やっぱり美味しいね」

鳴上「羨ましいのはお互い様だ」

綾時「ん?」

鳴上「なんでもない。さ、食べたら午後の授業だ」
709 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/24(金) 00:03:11.88 ID:YC55jPOXo
綾時「んー、眠いね。このままサボっちゃおうか」

ラビリス「こら。悠を不良にする気か」

綾時「おわ、ラビリスさん。いつからそこに?」

>屋上の入り口にはメティスも立っている。

ラビリス「悠探してたんや。そしたら綾時が悠を悪の道に引きずり込もうとしてたから」

綾時「悪の道って酷いなぁ」

鳴上「綾時は悪い奴だからな。ラビリスも気を付けた方がいい。油断すると落とされるぞ」

ラビリス「落とす……?どこからや?」

綾時「悠も酷いなぁ。ま、教室に帰ろう」

>次の新月は大体一週間後だ。

>それまで、日常を謳歌しよう。

>『No.13 死神 望月綾時』のランクが4になった。
710 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/24(金) 00:03:38.11 ID:YC55jPOXo


【6/15 晴れ】


メティス「鳴上君、ここの所なんだけど……」

鳴上「ああ、見せてみてくれ」

ラビリス「悠ー、この問題なー」

鳴上「ちょっと待っててくれ、今メティスを見てるから」

綾時「君達本当仲いいねぇ」

鳴上「勉強見てるだけだろ?」

綾時「まぁそうなんだけど」

メティス「鳴上君?」

ラビリス「悠ー」

鳴上「あぁはいはい」

>中間テスト後、二人は一層勉強の出来を気にするようになった。

>元々そういう目的でテストするのかもしれないが、とりあえずそれなりな成績を取った俺は二人に年中捕まっている。

綾時「悠は教えるの上手いしね。前の学校でも教えたりしてたんじゃないの?」

鳴上「まぁ、そうだな。そんな事もあった」
711 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/24(金) 00:04:05.26 ID:YC55jPOXo
綾時「でしょ。モテモテだ」

鳴上「何で女子だと思うんだ?」

綾時「違うの?」

鳴上「……半分正解」

ラビリス「ああ、それって里中さん?」

鳴上「と、たまにりせだな。天城と直斗は俺なんかが見なくても出来る」

綾時「あれ、ラビリスさんは悠の前の学校の事知ってるんだっけ?」

ラビリス「ええと、いろいろあってな。ちょっと行った事あるんよ」

綾時「へぇ。それじゃ知らないのは僕らだけか」

メティス「……」

>メティスが湿った視線を送ってくる。

鳴上「夏休みにはまた向こうに行こうと思ってるんだけど、良ければ一緒に行くか?」

メティス「いいの!?」

綾時「いいの!?」

鳴上「……メティスに言ったんだが」

綾時「いやぁ、だって僕暇じゃない?」

鳴上「まぁ、お前も連れていくって言ったしな。いつか誘おうとは思ってたよ」
712 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/24(金) 00:04:33.34 ID:YC55jPOXo
綾時「どんな所なの?」

ラビリス「ええ所やで。まったり出来るわ。もちろんウチも行ってええんやろ?」

鳴上「皆待ってると思うよ」

ラビリス「へへ……」

綾時「あれ、雨だ」

>綾時の言葉につられて外を見る。

>確かに雨が降りだしている。

鳴上「ああ……今年は梅雨入り遅いんだってな。今日かららしいぞ」

綾時「梅雨ってのも律儀だねぇ。わざわざ初日から降らさなくてもいいのに」

ラビリス「あっ……」

鳴上「ん?どうかしたか?」

ラビリス「いや、なんでも無いんよ。うん」

>梅雨か……。

>雨が頻繁に降るのは捜査にはもってこいだが、個人的には好きな時期じゃない。

>言っても仕方ないが……。

>……。
713 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/24(金) 00:05:28.90 ID:YC55jPOXo
綾時「それじゃまたねー。ああ、濡れる濡れる……」

鳴上「あ、おい。傘あるから良かったら……人の話を聞け」

>授業が終わっても雨は降り続いていた。

>梅雨入りを聞いて鞄の中に折り畳み傘を入れておいたのだが、どうやら役に立ちそうだ。

鳴上「あれ?おーい」

ラビリス「ああ、悠。どないしたん?」

鳴上「俺のセリフだ。帰らないのか?」

ラビリス「あー、うん。ちょっとな」

>ラビリスはどこか気恥ずかしそうにしている。

鳴上「あ、もしかして傘忘れたのか?」

ラビリス「あ、バレた?まぁそやねん。別に防水やから、構いはせんのやけどな。なんか、こう……ちょっとやってみたかったんよ、雨の日の、こういう風景ゆうんかな」

>走って帰る生徒、傘を差して帰る生徒。

>同じように傘を忘れたのか、校舎から出るに出られない生徒もいる。

ラビリス「ウチらはあんまり普通やないけど、こういう普通な生活出来てるわけやん?せやから、出来たらいろんなシーンを楽しみたいな、と」

>まるで今がとても特別な時間かのようにラビリスは言った。

ラビリス「あ、けど心配せんでええで。満足したら適当に走って帰るから。悠は先に……」

鳴上「せっかくだから、もうちょっと色々楽しんでみないか?」

>折り畳み傘を広げてラビリスの隣に立つ。
714 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/24(金) 00:06:00.51 ID:YC55jPOXo
ラビリス「え?何するん?」

鳴上「傘が無いなら一緒に帰ろう。大きい傘じゃないから、濡れないように気を付けてな」

ラビリス「え、ええ!?いや、ええて!ウチ帰れるから!」

鳴上「放って帰ったら俺のプライドに関わる。いいから、ほら」

>ラビリスは遠慮がちに傘の下に入る。

鳴上「だから、もっと寄って」

>肩をぐっと抱き寄せる。

ラビリス「ひゃ!?」

鳴上「肩出ちゃうだろ。さ、帰ろう」

ラビリス「う、うん……」

>ラビリスと並んで校門を出た。

鳴上「生徒会はどうだ?」

ラビリス「んー、思ったより甲斐無いもんやなぁ。皆ウチらが仕事してるなんて知らんみたいや」

鳴上「縁の下の力持ちってヤツだな。世の中そんなもんさ」

ラビリス「悠はそういうの平気なん?」

鳴上「逆にラビリスは感謝されたく雑務こなしてるのか?」

ラビリス「あんまり思った事無いけど、でもやっぱり感謝された方が嬉しいやん?」
715 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/24(金) 00:21:36.27 ID:YC55jPOXo
鳴上「まぁな。でも楽しいだろ」

ラビリス「それは……そうやな」

鳴上「苦じゃないって事は良い事だ。結構さ、何も言われなくても喜んでもらえるだけで十分だろ」

ラビリス「まぁ……うん。そうやな!」

鳴上「そうやってさ、人のためになっていったらいつか誰かがお返ししてくれるよ。結構そういうふうになってるらしい」

ラビリス「あ!それ知ってるで!えーと……情けは人のためならずや!」

鳴上「そうそう。そう思ったら何だって出来るもんだよ」

ラビリス「悩んだってしゃーないしなー」

>二人で笑いながら帰り道を歩いた。

風花「あ、鳴上君。ラビリス連れて帰ってくれたんだ」

鳴上「あれ?山岸さん……と、メティスか」

風花「ラビリス傘忘れてたみたいだから、迎えに行こうと思って」

ラビリス「ほんま?ありがとなー」

メティス「……姉さん、楽しそうね」

鳴上「なんで怒ってるんだ……」

メティス「別に」

>何だかわからないがメティスに睨まれてしまった。

>『No.08 正義 ラビリス』のランクが3になった。
716 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/24(金) 00:22:21.79 ID:YC55jPOXo
まったりタイム。

では、また明日。
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/08/24(金) 00:26:03.56 ID:zEkr4Ikmo
乙!
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/08/24(金) 04:12:09.80 ID:iorrfAnNo
おつちん
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/24(金) 04:15:46.21 ID:tJ+d6NTdo
720 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:00:34.11 ID:6Avme98Oo


【6/17 雨】


>梅雨、梅雨。

>湿気とそれなりな熱気が肌に纏わりついて鬱陶しい。

>もう少し気温が低ければ、窓に当たる雨も良いBGMなのだが。

>出掛ける気は無いが、部屋にいても過ごし難いだけだ。

>ラウンジにでも行ってみるとしよう。

天田「あ、おはようございます」

鳴上「おはよう。天田だけか」

天田「誰がいた方が良かったんです?」

鳴上「いや、別にそういうわけじゃ無いが」

天田「今日はあれだそうです、女子会。皆出かけてますよ」

鳴上「じょ、女子会。実在してるんだな」

天田「まぁ、議題はわかってますけどね……」

>天田にじろりと見られた。
721 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:01:18.97 ID:6Avme98Oo
鳴上「何だ?」

天田「いいえ。ああ、そうだ。暇ならどうです、僕らも」

鳴上「俺達も?」

>天田が携帯を取り出して笑う。

天田「男子会」

>……。

順平「この雨ん中呼び出しやがって、いい度胸だな天田」

天田「いいじゃないですか。別に参加は自由ですよ?」

順平「ばーか。面白そうだから来たんだよ」

天田「だと思いました」

真田「なぁ、俺は何で呼ばれたんだ?」

藤堂「割りと俺のセリフだな」

綾時「いいじゃないですか。たまには皆でわいわい話すのも」

>天田が真田と順平を呼び、俺が綾時と藤堂を呼んだ。

>六人の男子?がここに集まったわけだが、実際何の目的で集まったのかは良くわかっていない。

鳴上「で、男子会って何するんだ?」

天田「さぁ。何かこう、うだうだ駄弁ったりするんじゃないですか?」

順平「はいはーい!俺、気になります!」
722 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:01:58.79 ID:6Avme98Oo
>順平が元気よく手を上げて言う。

真田「騒がしいぞ、順平」

順平「いいじゃないすか。いや、まぁワンパターンなんだけどさ。女方面。皆どうなのよ?」

鳴上「またその話ですか」

天田「多分こんな感じですよ向こうも。岳羽さん辺りが言ってると思います」

順平「ま、向こうはアレだけどな」

天田「二択でしょうね」

>二択?

順平「で、どうなんすか真田先輩」

真田「ん?俺か。いや、特に何も無いな」

順平「先輩って昔からモテる割に何も無いっすよね。なんすか、ホモなんすか」

藤堂「……そう言われれば、なんとなくそんな顔してるな」

真田「ちっ、違う!考えてみろ。高校まではお前たちと戦っていたし、大学に入ってからはシャドウワーカー参入で修行の旅だ。そんな余裕がどこにある」

順平「あー、それもそうか……でも、それこそ世界中のいろんな女の人に会ったんじゃないすか?何か良い人いなかったんですか」

真田「俺の旅はもっと荒れてたからな。……気になる女は、いる」

順平「おー!それそれ!そういうの欲しかったんすよ!」

天田「何か、意外ですね。どこの誰なんですか、真田さんに興味持たせた女の子って」

真田「鳴上には以前言ったな。ラビリスの件で、こいつの古巣に行った時に会った女だ。俺に先を示してくれた、いわば恩人だな」

順平「あー……そういうのっすか」
723 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:02:38.37 ID:6Avme98Oo
天田「そんな所でしょうね、真田さんは」

真田「な、何だ。何が悪い」

藤堂「悪かないさ。なぁ?」

綾時「そこから始まる恋もありますよ」

真田「いや、それはないな。美鶴と同じくらい御免被りたい」

>以前聞いた話と言えば、千枝の事だろう。

>気になるの意味が違うとはいえ、少し驚いた。

順平「あー、桐条先輩は俺も無理っすね」

藤堂「何でだ?美人じゃないか」

順平「いや、無理っすよ。俺には荷が重すぎる。あの顔であのスタイルであの家っしょ?……釣り合わねー!」

綾時「でも順平は確か……」

天田「そうですよ、チドリさんがいるじゃないですか」

順平「あー?いや、あいつとはそういうんじゃねーって」

真田「なんだ、仲良さそうだったが違うのか」

順平「先輩も天田も知ってるっしょ。特別は特別だけど、そういう……普通のじゃないっつーか」

>チドリと順平の間に何があったかは大体聞いている。

>だが、今の二人はそれに留まらないように思うのだが……。
724 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:03:47.96 ID:6Avme98Oo
天田「そんな所でしょうね、真田さんは」

真田「な、何だ。何が悪い」

藤堂「悪かないさ。なぁ?」

綾時「そこから始まる恋もありますよ」

真田「いや、それはないな。美鶴と同じくらい御免被りたい」

>以前聞いた話と言えば、千枝の事だろう。

>気になるの意味が違うとはいえ、少し驚いた。

順平「あー、桐条先輩は俺も無理っすね」

藤堂「何でだ?美人じゃないか」

順平「いや、無理っすよ。俺には荷が重すぎる。あの顔であのスタイルであの家っしょ?……釣り合わねー!」

綾時「でも順平は確か……」

天田「そうですよ、チドリさんがいるじゃないですか」

順平「あー?いや、あいつとはそういうんじゃねーって」

真田「なんだ、仲良さそうだったが違うのか」

順平「先輩も天田も知ってるっしょ。特別は特別だけど、そういう……普通のじゃないっつーか」

>チドリと順平の間に何があったかは大体聞いている。

>だが、今の二人はそれに留まらないように思うのだが……。
725 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:04:51.66 ID:6Avme98Oo
藤堂「不思議な関係なんだな。それも面白い」

順平「あ、藤堂さんはそういうの多そうっすね。オトナだし、その顔とテンションだし。モテたでしょ?」

藤堂「いや、そうでも無かったよ。ほら、真田君だっけ?も同じような事言ってたけど、俺高校で例の事件解決してさ。それからちょっと旅に出てたから」

真田「ほう、修行ですか」

藤堂「いんや。今風に言うと自分探しってヤツ?夢を、探してな」

天田「夢……?」

藤堂「人生の目標っつーか、生きる意味みたいなのを探しにうろうろしてみたんだ。戻ってきたのが三年後だったかな」

綾時「へぇー、なかなか変わった人生ですね」

順平「お前が言うな」

真田「お前が言うな」

天田「あなたも人の事言えないと思いますけど」

綾時「……まぁ、そうだけどさ。三人で突っ込まなくてもいいじゃない」

順平「で、結局今まで彼女関係はナシっすか」

藤堂「んー……俺のも普通じゃないから、ナシって事になるな。そう考えたら寂しい青春だなぁ、おい」

>藤堂は大袈裟に泣き真似をした。

藤堂「暇だったから来てみたけど、自分の話するのってちょっと恥ずかしいな。ほら、他のヤツに聞けよ」

綾時「天田君は?君もモテそうだけど。その身長にその顔でしょ」
726 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:05:31.52 ID:6Avme98Oo
順平「昔は昔で女ウケ良いキャラだったけど、方向性変わったよな。すげえんじゃねえの、今」

天田「いや、僕も別に何も無いですよ」

順平「お前もかよ。なんの集まりだこりゃ」

天田「失礼な、真田さんと一緒にしないでくださいよ」

真田「失礼なのはお前だ」

天田「僕は普通に女性が好きですから」

真田「おい、俺だって男が好きなわけじゃないと言ってるだろ」

綾時「じゃあ寮生活って結構天国じゃない?」

天田「そうですね。ぶっちゃけちゃいますと山岸さんとか割りと本気で好きですよ」

順平「おわ!突然はっちゃけたなお前!」

天田「ていうか昔から山岸さんは好きでしたよ」

真田「確かに、メンバーの中では山岸が一番お前と話してたな」

天田「あれ、ほとんど僕から行ってたんですよね。我ながら自分の位置というか、キャラクターを良く利用したなと思います」

綾時「あれ?でもこの前誰かに一目惚れしたって聞いたけど」

天田「あっ、えっと……」

>天田に睨まれたが、視線を逸らした。
727 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:06:13.65 ID:6Avme98Oo
順平「この寂しい空間に一瞬青春の香りが!なんだそれ、詳しく!」

綾時「え?確か前にこの寮に悠の友達が来て、その子に一目惚れしたって聞いたけど」

真田「そうなのか」

天田「まぁ……」

順平「どんな子よ?天田が気に入るってどんなタイプ?」

天田「えー……そうですね、顔は綺麗でした」

藤堂「天田君は面食いなのか」

天田「そうかもしれませんね。あと、声が……すごく綺麗というか、通る声してるんですよ。そこがちょっと」

順平「声フェチ?」

天田「いや、そういうんじゃないですよ?」

綾時「山岸さんも綺麗な声してるよね、そういえば」

順平「天田、アウトー。声フェチ確定ー」

天田「……まぁ、いいですよ。別に」

藤堂「ところで、ずっと黙ってるヤツがいるんだが」

綾時「ですねぇ。せっかく盛り上がってきたのに」

真田「そういえばそうだな。俺達だけ喋らされたんじゃ割に合わん」

順平「ちげーっすよ。こいつは最後って思ってたんす。だって凄そうじゃないっすか。な、鳴上?」

>順平に肩を叩かれる。
728 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:06:50.33 ID:6Avme98Oo
>上手く躱していたと思ったが、露骨すぎたか……。

鳴上「……俺も、特に」

順平「もうそれいいって。お前、向こうじゃ彼女いなかったの?」

鳴上「彼女はいませんでしたね。皆友達止まりで」

真田「そうなのか?俺はてっきり……」

鳴上「てっきり、何ですか?」

真田「いや、あの全員と付き合っているのかと」

鳴上「無理ですよ、それは。そもそも誰からも好きだって言われた事は……無いでもないですけど」

天田「こっちでも何人か引っ掛けてますよね」

鳴上「何?それは記憶にない」

順平「マジかよ。誰?」

天田「少なくともメティスさんとラビリスさんは既に陥落済みですね」

綾時「他の子はまだまだ有里君派みたいだけど、時間かけたらわかんないねぇ」

順平「やっぱ二択か」

真田「そういえばあいつ、今八十稲羽にいるんだが」

鳴上「あ、らしいですね。桐条さんに聞きました」

真田「内緒にしておいてやりたかったが、悪魔騒動のせいでそうもいかなくなってな。向こうで楽しくやってるらしいが」
729 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:07:23.50 ID:6Avme98Oo
天田「あー、となるとあれですね」

鳴上「あれ?」

順平「鳴上……お前の彼女候補、全員アイツに持ってかれるぞ」

鳴上「ええ!?」

藤堂「そんな凄い子がいるのか」

綾時「すごいですよー、一時期六股してましたからね」

天田「ほら、駅前に本の虫ってあるじゃないですか。あそこのおばあさんも守備範囲だったとか」

真田「俺が聞いた話じゃ小学生と婚約したって」

鳴上「湊……一体何してたんだ……」

順平「まぁそういうわけで、残念だったな鳴上。ナチュラルボーンスケコマシだからさ、あいつ」

鳴上「そうはならないと思いますけど」

天田「あれ、もしかして自信アリですか?」

鳴上「いや、湊がそんな風にいろんな相手に手を出すとは思えなくて」

綾時「いや、出すよ彼は。ノーと言えない男だからね」

順平「だな。しかもやる事成す事いちいちカッコつけやがるからな。いやコレが実際キマってんだわ。悔しいけどよ」

真田「スポーツは確か、あの一年で部のエースだろ?」

綾時「勉強は学年一位でしたね」

藤堂「……どんなヤツなんだ、一体」
730 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:07:54.72 ID:6Avme98Oo
順平「気が付いたら周りの女子がほとんど落ちてるんだよ……」

綾時「すごかったねぇ」

順平「いや、お前も大概だからな?軽薄すぎてちょっと引かれてたけど」

綾時「自分に正直なだけさ」

鳴上「……なんだろう、すごく不安になってきた」

順平「もう諦めろ!諦めて、こっちも奪い返してやれ!な!」

天田「それ、誰も幸せになりませんよね」

順平「いいんだよ、あいつもたまには痛い目にあうべきなんだよ多分」

真田「お前、私怨入ってないか?」

順平「そ、そんな事ないっすよ!?」

藤堂「順平はモテなそうだもんな」

順平「藤堂さん、フレンドリーなのはいいけど一気に踏み込みすぎっす……」

綾時「あははは」

>皆と楽しい一時を過ごした。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが4になった。

>『No.04 皇帝 藤堂尚也』のランクが2になった。

>『No.17 星 真田明彦』のランクが4になった。
731 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:08:53.45 ID:6Avme98Oo


【6/20】


>空が暗い。

>今日も雨だろうか。

>梅雨が早く明けてくれればいいのだが。

>制服に着替えて、違和感を覚える。

鳴上「……雨だからか?寒いな」

>本当に面倒な時期だ。

>疎ましく思いながら部屋を出て、ラウンジに行く。

>今日は誰もいなかった。

>玄関を開けようとノブに手をかけて押す。

>……?

鳴上「あれ、開かない」

>ドアが重い。

>まるで外に何か積み上げられているようだ。

鳴上「このっ……んんっ!」

>全力で押すと、少しずつ動いてなんとか通れる隙間が開いた。

鳴上「よいしょ……っと……うわっ!?」

>玄関を出ると、そこは雪景色だった。
732 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 00:09:28.56 ID:6Avme98Oo
雪だー!

また謎の多重投稿・・・うぅ・・・
では、また明日。
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/25(土) 00:10:34.52 ID:hABnEbfY0
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/25(土) 00:23:23.79 ID:uYte5qpLo
乙乙!
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/08/25(土) 02:13:37.83 ID:sgeAqDoIo
乙ダイン
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/25(土) 03:30:59.54 ID:wwpo0xYvo
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 06:30:08.41 ID:yyoMvDRuo
雪子ルートでさえない番長か……このナナコンめ!
738 :蜷咲┌縺湧IPPER [sage saga ]:2012/08/25(土) 09:11:57.29 ID:uYL933UW0
乙ダイン

番長は人妻と未亡人とバラエティは負けて無いな
739 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/25(土) 15:26:23.08 ID:6Avme98Oo
諸事情あって今日明日はお休みにしたいと思います。
次回更新は月曜→火曜の影時間で・・・。
妙なタイミングでの宣言になってしまい申し訳ない。

では、また後日。
740 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:05:54.84 ID:2zQDfKjCo
綾時「異常気象だって。この間の避難騒動は君達の管轄だったんでしょ?」

鳴上「ああ。だけど今回はまだわからないぞ」

綾時「じゃあただの雪なのかな。そうは思えないけど」

鳴上「滅多にある話じゃない事は確かだな。タイミングも合う。そう考えてもおかしくないな」

綾時「今日サボっちゃおうか。これ、学校来てていい状況なの?」

鳴上「わからない。……だけど、俺この前休んじゃったから」

綾時「なんで急に出席気にしだしたのさ……」

鳴上「学校休んだら、翌日の空気が寂しいだろ」

綾時「あ、それなんとなくわかる。ところで、お連れさん方は?」

鳴上「あの二人は学校行ってる場合じゃないそうだ。今頃いろいろ走り回ってると思う。文字通り」

鳥海「ったーく、6月だぞ!!ってねー。えーと、雪が降っても授業はやるわよ。槍でも降ったら別だけど。ほらさっさと準備するー」

>雪が降った程度では人はそこまで取り乱さないようだ。

>あるいは、ちょっと面白いくらいに思っているのかもしれない。

>だが、俺は……いや、俺達はそう楽観的になれない。

>今夜は新月だ。

>事件の慣例に則るなら、事が起きるには早過ぎるが、ダンテ達が来た時の事もある。

>もしかすると、何か変化が起こっているのかもしれない。
741 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:06:45.42 ID:2zQDfKjCo
鳴上「もし事件が進行しているとしたら……この先、どうなるんだろう」

>湊の事件の時に、世界を巻き込んだ事件だと自覚した。

>一刻も早く解決しなくては……。

>……。

綾時「ねぇ、僕も寮に行った方がいいかな」

鳴上「そりゃ構わないだろうけど、どうするんだ?」

綾時「何かあるならあそこが一番安全かと思って。一応関係者だし、何か出来る事もあるかも」

鳴上「そうだな。藤堂さんも呼び出しておこう」

綾時「あの人って、ああ見えて面白いよねぇ」

鳴上「……そうだな」

>必要があれば、風花に美鶴を呼び出してもらう事にもなるだろう。

>とにかく、一度現状を整理しなければならない。

>綾時と二人で学校を出た。

綾時「まだ降ってるね。こりゃもっと積もるかな」

鳴上「これ以上となると流石に大変だぞ」

綾時「仕方ないよ、降るものは降る。そうだ、雪だるま作らない?」

鳴上「ふざけてる場合か。ほら、さっさと帰るぞ」

>……寮までの道中、何か違和感を覚えたが、その正体は掴めなかった。
742 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:09:16.74 ID:2zQDfKjCo
鳴上「ただいま」

綾時「おじゃまします」

藤堂「よう、帰ったか」

>藤堂は既に到着していた。

藤堂「参ったな。この前夏服出したのにまた冬服引っ張らなきゃならんとは」

綾時「いいじゃないですか。僕ら衣替え済ませちゃって夏服で授業受けたんですよ」

藤堂「最近の学校はエアコンとか入ってるんじゃないのか?」

鳴上「その話はまた後で……藤堂さん、何か気付いた事とかありませんか」

藤堂「気付いた事なぁ。実は何も無いんだよな。そもそもこれって例のテレビ関係なのか?」

鳴上「それもまだわからないんです。何ならテレビに入って調べようかと」

藤堂「悪魔に動きは?」

鳴上「今の所なんとも。今、仲間が動いてくれてるんでそれ次第でしょうか」

綾時「うわ、関東一円異常気象で積雪だってさ。ここだけじゃないみたいだね」

>ダンテ達がこの街を訪れた時、悪魔達は街の境界を越えなかった。

>となると、やはりあの時とは別で、事件は一切関係していないのだろうか……?

風花「桐条先輩、忙しいけど寄ってくれるって。この気象もシャドウ関連の事案として処理するから手が足りてないみたい」

鳴上「あ、山岸さん。ありがとうございます。あと、メティスとラビリスは……」

風花「一旦帰ってくるように言っておいたから、そろそろ戻ってくると思いますよ」
743 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:09:54.13 ID:2zQDfKjCo
鳴上「あの二人が何か良い報告を持って帰ってくれればいいんですけどね」

風花「それは……そうですね。期待してみましょう」

>実際の所、風花に何の連絡も入っていない時点で然程期待は出来ないだろう。

鳴上「山岸さんはどう見ますか?」

風花「さっぱり……でも、法則性はいろいろ変わって来てるけど、誰かの記憶を元に事件を再現するっていうのは変わってないみたいだから、これも昔あった事なのかも」

鳴上「異常気象がですか?だとすればどこかに記録があるかもしれませんね」

風花「そう思って一応調べたんだけど、季節外れの雪なんて記録はどこにも。大雪は過去に何度かあったみたいだけど、単純に冬が厳しかっただけみたい」

鳴上「となると、やっぱり無関係ですかね……」

綾時「ねぇ、さっきから気になってたんだけど」

>頭を悩ませていると、綾時が玄関を見ながら言う。

綾時「外、誰かいるよね?」

藤堂「音はしてたな」

鳴上「ああ、あの二人が帰って来たんじゃ……」

風花「……でも、それなら何で入って来ないんだろう?」

>!

>確かにそうだ。
744 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:10:21.01 ID:2zQDfKjCo
藤堂「さっきからここの前を何往復もしてるぞ。何かあるんじゃないか」

>一瞬身構えるが、すぐに考えなおす。

>受け身に回っちゃ駄目だ。

鳴上「確かめましょう。綾時と山岸さんは下がっててください」

>藤堂に目配せし、玄関に向かう。

>ノブに手をかけて、一気に開いた。

ラビリス「ああ、アカンアカン。そない大きいの乗らんて」

メティス「それじゃあ、こっちを胴体に……」

>……?

藤堂「ええと、おかえり」

ラビリス「あっ」

メティス「あぅ……」

風花「メティス、ラビリス、何してるの?」

ラビリス「い、いや?ちょっと雪の成分調査をやな……」

メティス「雪の質量・組成について検査していたであります。もし何らかの影響で降雪したならば通常の雪と違う結果が出る事もあるかと思ったのであります」

綾時「懐かしい喋り方だねぇ。お姉さんの方だけど。でも今は雪だるま作ってる場合じゃないと思わない?」

ラビリス「せ、せやんな……ちょっとはしゃぎすぎたわ」

メティス「ごめんなさい、雪って初めてで……」

>確かに、今はふざけている場合では無いのだが……。
745 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:10:57.33 ID:2zQDfKjCo
鳴上「てい」

>雪玉を作ってラビリスにぶつけた。

ラビリス「ひゃん!何すんの!?」

鳴上「いや、雪合戦っていうのもあるぞ、と」

藤堂「俺審判な。この歳で表ではしゃぐわけにもイカンだろ」

綾時「悠、僕の時と言ってることがへぶっ!」

メティス「……この、人に雪玉をぶつけた瞬間の感覚は……これが、愉悦!」

ラビリス「男女平等やろ?な?」

風花「ま、待ってラビリス。この服濡らしちゃ……」

ラビリス「えい」

風花「きゃっ!」

鳴上「……考えても仕方ない時は、こういうのもいいな」

>体中に雪玉を食らいながら、ちょっとだけそう思った。

>……。

綾時「へっくしっ!」

藤堂「後で風呂借りろよ」

鳴上「ラビリスもメティスも、お前たちがリミッター外したら俺達じゃ無理だろ」

ラビリス「ごめんな、つい……」

メティス「雪、いいね」
746 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:23:05.45 ID:2zQDfKjCo
鳴上「山岸さんが可哀想な事になってたな」

綾時「後半ちょっと涙目だったね」

>ちょっと可愛かった。

鳴上「さて、本題だ。二人共、街で何か気付いた事は?」

ラビリス「雪ってキラキラして綺麗やなぁ」

メティス「新雪の反射率は鏡と同じくらいだって聞いた事があるけど、本当にあんなに日光を反射するんだなぁって」

鳴上「雪はもういいから」

ラビリス「いうても、なぁ」

メティス「何も無かったし……」

鳴上「何もか……」

ラビリス「うん、ほんまに何も……あれ?」

>ラビリスが首を傾げて、メティスに何か耳打ちした。

メティス「えっ……あ、そういえば……」

鳴上「どうした?何かあったのか?」

ラビリス「うん、気のせいかと思っててんけどな」

メティス「悪魔がいなかったかも。もしかしたら偶然かもしれないけど」

鳴上「いなかった?……あ」

>学校帰りに感じた違和感の正体がわかった。

>道すがら、一体の悪魔も見なかったのだ。
747 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:23:34.45 ID:2zQDfKjCo
>例の件以降、悪魔の数は落ち着いた。

>しかし、いなくなったわけではないのだ。

>朝学校に行く途中でも、帰り道でも一体すら見ない。

>そんな日はこれまで無かった。

鳴上「俺も見てない。これ、どういう事だ?」

風花「ふぅ……お待たせしました。あれ、どうかしたの?」

>風花が着替えと入浴を済ませて帰ってくる。

綾時「ん、少し濡れた髪に上気した肌。なんだかセクシーだね」

風花「セクハラですよ、それ」

綾時「何か知らない間に辛辣になってない?」

鳴上「山岸さん、悪魔の反応どうなってますか?」

風花「え?悪魔……それは、普通に……あれ」

>風花の反応を見るに、どうやら確実なようだ。

風花「ちょっと集中してみます。……あ、いないわけじゃないみたい。けど、極端に少ないかも」

鳴上「また誰か来てるのか……?」

風花「可能性は無いでもないです。後は、桐条先輩が知ってるかどうかですね」

鳴上「前の時はそれでカタが付きましたしね。とりあえず桐条さんを待って……」

>ザ、ザザ……キュゥイ……キキュ……

鳴上「何の音だ?」
748 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:24:00.59 ID:2zQDfKjCo
風花「見て、テレビ!」

>テレビに白と黒の模様が映っている。

>あれは、テレビの中に入る時に通るゲートではないだろうか。

鳴上「どうして今……」

>あっけにとられていると、テレビから人の頭が出てきた。

鳴上「俺達以外にテレビに入れる人間がいるのか!?」

>考えられるのは、こっちにいる仲間達と、向こうにいる仲間達、それとその関係者。

>だが、この銀髪は少なくとも自分の知っている人物ではないような気がする。

>いつかホラー映画でこんな映像を見たが、自分たちもテレビから出る時はこんな感じなのだろうか。

「あれ」

>顔が半分ほど出た辺りで、聞き覚えのある声が聞こえる。

「いっててて……んだこりゃ引っかかって……ちょっと、そこ誰かいないか?」

>この声は……

鳴上「陽介?」

>いや、だが声は似ているが喋り方が少し違うような気もする。

>陽介より幾分落ち着いているような……

「陽介?誰だかわかんねーけどちょっと手伝ってくれねえか。手引っ張って、ほれ」
749 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:25:09.21 ID:2zQDfKjCo
>右手が差し出される。

>もしかすると、何かの罠かもしれない。

>皆を見回して、それから意を決して手を取った。

鳴上「行きますよ?」

「おう」

鳴上「せーの!」

>男が一人、テレビから引きずり出された。

「っぷぁ!ふぅ……ってどこだここ」

鳴上「あの……どなたですか?」

>銀髪の男は周囲を見回している。

「ん?ああ、そうだな。助かったよ。俺の名前は甲斐刹那。ところで、ここはどこなんだ?」
750 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/28(火) 00:27:42.67 ID:2zQDfKjCo
せっちゃん・・・。

では、また明日。
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/28(火) 00:33:46.15 ID:qy5R9Pmbo
デヒチルのせっちゃん!中の人が陽介と同じだもんねー
>>1ちゃん乙なのだよ!
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 11:50:36.44 ID:b/WRjxon0
銀髪ってまさかとは思ったがマジでせっちゃんか

刹那表記で陽介だしゲーム版ベースなのか? 漫画版のバイオレンスさ(とかっこよさ)が今でも印象的
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/28(火) 12:59:28.17 ID:25sUyPAp0
ペルソナシリーズくらいしか詳しく知らないんだが
どの作品に出るキャラ?
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 13:01:06.80 ID:RFz78PzRo
>>753どのキャラの話よ
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/28(火) 14:19:59.35 ID:uq8AN6uNo
流れてきにせっちゃんだろ
真女神転生デビルチルドレン
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 14:21:49.88 ID:RFz78PzRo
刹那「オレが…オレ達がデビルチルドレンだ!!」
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 17:12:14.01 ID:w0HtZrINo
クールくるーーーーー?
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2012/08/28(火) 21:24:20.04 ID:PxX9mOQ5o
漫画じゃどういうポジションなのかわからなかったデコ...じゃない未来さんクルー?
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/28(火) 23:01:57.65 ID:25sUyPAp0
>>755
ありがとう
760 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:03:36.29 ID:nZhfzp0/o
>刹那に今までの経緯を説明した。

鳴上「それで、あなたもテレビに落とされたんだと思います。心当たりはありませんか?」

刹那「ようは過去にでかい事件に関わったかどうかって事だろ。関わったぞ」

鳴上「それは現状に関係ありますか?」

刹那「あの時も真夏なのに雪が降ってたな。それで、こっちに悪魔が出てきて」

藤堂「ビンゴだな」

刹那「そういや、あんたらはどうやって悪魔と戦ってんだ?」

鳴上「え?」

>予想外の質問だった。

鳴上「いやいや、どうやってって、甲斐さんもペルソナ使いでしょう?」

刹那「刹那でいいよ。そのペルソナっての?良くわかんねーな。もちろん俺は使えない」

風花「……これは、どういう事になるんでしょうか」

綾時「僕なんかは例外としても、今までは皆ペルソナ使いだったんだけどね。あ、そういえば聞いてませんでしたけど、刹那さんの関わった事件ってどういう物なんですか?」

刹那「あー、説明が難しいな。掻い摘んで言うとだな、世界が滅ぶからそれをなんとかしなきゃなんなかったんだけど……」

鳴上「悪魔は出てきたんですよね」

刹那「ペルソナはナシだ」

>今までは“ペルソナ関連”の事件を探っていたが、これでは前提が崩れる。

>彼……甲斐刹那は確かに何か大きな事件に関わっていたようだ。

>だが、それがどうにも要領を得ない。
761 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:04:02.96 ID:nZhfzp0/o
風花「ええと、それじゃあちょっと詳しい話をお願いします。それでデータベースを照会するので」

刹那「わかった。どこから話したものやら……」

>PiPiPiPi……

>携帯の着信音が響く。

>これは俺のじゃない。

風花「あ、すみません。……もしもし?どうかしま……ええ?」

>風花が音量を上げてこちらにも聞こえるようにする。

美鶴『現在ポロニアンモールに巨大な悪魔が出現中!天田は学校から直接来てもらった!全員出撃だ!藤堂さんもいるのなら協力願います!』

>風花に携帯を渡される。

鳴上「了解しました。今すぐ向かいます」

美鶴『鳴上か。その場にラビリスとメティスもいるな?』

鳴上「はい。それから藤堂さんと、綾時はいますがどうしましょうか」

美鶴『非戦闘員を残して行く方が危険だ。一度こちらに来て、それから目の届く範囲で安全な場所にいてもらおう』

鳴上「わかりました。それじゃあ準備して向かいます」

美鶴『なるべく急げ。これは……危険だ』

鳴上「メティス、ラビリスはそのままいけるな?」

ラビリス「武器だけ握ったらすぐや!」

メティス「私もすぐ動ける!」
762 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:05:09.84 ID:nZhfzp0/o
鳴上「急いでポロニアンモールに向かってくれ。お前達ならすぐ合流出来るだろう。山岸さん」

風花「はい。座標補足します!」

鳴上「お願いします。藤堂さんは……」

藤堂「一応、装備は持ってるよ」

鳴上「では、すみませんが協力をお願いします。綾時と……刹那さんは、俺達についてきて下さい。ここにいるのも危険かもしれません」

綾時「わかった。黙ってついていこう」

刹那「状況が飲み込めないけど、とりあえずは従うよ」

鳴上「それで構いません。それでは作戦を開始します。それぞれ行動に移ってください」

>巨大な悪魔……。

>ポロニアンモールの人々は避難できただろうか。

>急がなくてはならない。
763 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:06:54.80 ID:nZhfzp0/o
風花『……もう、私のサポートが無くてもわかると思います』

>その通りだった。

>ポロニアンモールに近付くと、その存在は否が応にも目に入ってきた。

綾時「巨大な、ってさ」

藤堂「本当にでかいんだから困ったもんだな」

>氷で出来た怪物がポロニアンモールの真ん中にでんと立っている。

美鶴「来たか、鳴上!」

鳴上「すみません、遅くなりました。あれは……」

美鶴「さぁな、一切わからない。突然現れて、周囲に冷気と氷をばら撒き始めたんだ」

鳴上「ってことは」

美鶴「ああ……一般人に、悪魔の存在が知られた。どうやらアレは私達以外にもしっかり認識できるようだ」

>美鶴は悔しそうに言う。

鳴上「仕方ありません、とにかく今はあいつをどうにかしなくちゃ」

美鶴「そうだな……。だが、私達だけでは火力が足りない。見ろ」

>指さした先には……ラビリスだろうか。

>悪魔に纏わりついているが、ダメージは殆ど無いようだ。
764 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:08:02.43 ID:nZhfzp0/o
美鶴「ところで、そこの男性は?」

>美鶴に言われて、刹那の事を説明していなかった事を思い出す。

鳴上「あ、ええと……今回テレビに落とされた人のようなんですが、自力でテレビから脱出したみたいで。それで……あ、刹那さん!」

>美鶴にどう説明したか迷っている間に、刹那がどんどん歩いて行く。

美鶴「危険です!近付いてはいけない!」

>刹那は警告を無視して悪魔に近寄っていく。

鳴上「刹那さん!くそっ、藤堂さん、桐条さん!」

藤堂「ああ。守らないとな」

美鶴「天田!そちらに一般人が行く!止めろ!」

>三人が追い掛けて走るのと、刹那が走り出すのとは同時だった。

天田「えっ!?うわっ、ちょっと!どう見ても危険でしょう!」

>止めようとした天田をすり抜けてさらに近付く。

>刹那は誰よりも速く悪魔の足元にたどり着くと、立ち止まって息を吸った。

刹那「久しぶりだなぁ!アイスランドのヘルさんよぉ!」
765 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:11:04.63 ID:nZhfzp0/o
>とんでもない大声で叫ぶ。

>悪魔は初めて刹那に気付いたようで、足元を見た。

ヘル『……デビルチルドレン?』

刹那「なーんか変だな、お前。本当にヘルか?俺の仲魔みーんな持って行ってくれたあのヘルなのか?」

ヘル『コ……ロス!』

>音と共に地面が揺れ、刹那が立っていた位置に巨大な氷柱が聳え立つ。

鳴上「刹那さん!」

>刹那の姿は消えている。

美鶴「だから危険だと言ったのに……」

>美鶴が絶望的な表情で呟く。

>だが、俺が見ていたのは恐らく美鶴が見ている場所と違う場所だった。

鳴上「あの氷柱、何mくらいありますかね」

藤堂「……多分、7・8mくらいじゃないかな」

鳴上「人間って、何の補助も無しにそんなに垂直跳び出来ましたっけ」

藤堂「俺はそんなヤツを人間とは呼ばん」

>氷柱の上に、刹那が立っている。

>丁度ヘルと呼ばれた悪魔の顔と同じくらいの高さだ。
766 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:12:04.96 ID:nZhfzp0/o
刹那「あの時のヘルじゃないな。だからって、俺がお前にムカついてるのは何も変わらないけどな」

ヘル『コロス……コロス……』

刹那「いいぜ、やれるもんならな」

>刹那は何をするつもりなのか、右腕をヘルに向けて構えた。

刹那「俺を殺してみろ!」

ヘル『コロォス!!!』

刹那「コール!!」

>刹那の右手から強烈な光が放たれる。

>そこから何か大型の物体がヘルに向かって飛び出し、その勢いのまま激突した。

ヘル『グォオ!?』

「いってぇ!」

>右手から放たれた物体が言葉を話す。

>あの姿は見たことがある。

鳴上「……ケルベロス?」

ケルベロス「おいコラ刹那!何てことすんだ!」

刹那「よう、久しぶりだなクール」

>刹那はケルベロスと親しげに会話している。

>携帯に入っている悪魔召喚プログラムの事を思い出す。

>刹那はペルソナによって悪魔と戦っていたのではない。

>悪魔を従える事で、悪魔を倒していたのだ。
767 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:12:31.60 ID:nZhfzp0/o
クール「ったく……久しぶりだってのに、とんでもない呼び出し方だな。って、何だ?こいつは……ヘルか」

刹那「倒したはずなんだけどな。まぁいろいろあってまた会ったんだよ」

クール「それで?どうするんだ?」

刹那「俺とお前がやってきた事ってなんだ?」

クール「わかった。倒せばいいんだな」

>ケルベロスの口から炎が漏れる。

刹那「そういう事」

クール「マハラギ!」

>炎がヘルを取り囲む。

>氷で出来たその体がゆっくりと融解する。

刹那「何か火力上がってないか?」

クール「お前が呼ばないから、暇で暇でずっと特訓だったからな」

刹那「なんだよそれ」

ヘル『トける……体が……』

刹那「お、ちょっと意識戻ったか?」

ヘル『貴様は……また貴様に……』

刹那「もう戻ってくんなよ。じゃあな」

>ヘルの体は全て水に変わる。

>後には完全に置いていかれた俺達だけが残った。
768 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:13:13.48 ID:nZhfzp0/o
美鶴「彼は……何者だ?」

鳴上「さっぱりですよ」

天田「あっつ!ちょっと、加減してくださいよ。近くに僕いるんですから」

刹那「悪い悪い。ところで君、誰だっけ?」

風花『桐条先輩、これから一度寮に来てもらえませんか?いろいろと話しておかなければならないことがあると思うんですが……』

美鶴「もとよりそのつもりだったが、これは是が非でも行かなくてはならないだろうな。今後の事も含めて、話す事が多すぎる」

>……。

鳴上「デビルチルドレン、ですか」

刹那「悪魔と人間の混血をそう言うらしい。俺は特に、当時の大魔王が親父だから」

鳴上「それであの強さと……」

刹那「いろいろあってかなり訓練もしたしな。この街に来た時も、悪魔を根こそぎ倒したりした」

鳴上「ああ、刹那さんがやったんですか」

刹那「なんだ、まずかったか?」

鳴上「いえ、そういうわけでは」

天田「で、このケルベロスが」

クール「クールだ。こいつ……刹那とはパートナーとして結構な付き合いになるな」
769 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:13:40.38 ID:nZhfzp0/o
刹那「で、俺達が関わった事件だったよな」

風花「はい。データに無い事件みたいなので、良ければもっと詳しい情報を」

刹那「データねぇ。多分無いんじゃないか?」

風花「なぜですか?」

刹那「俺が一回世界作りなおしたからな」

>……?

藤堂「若者の会話についていけない」

刹那「難しく考えなくていいんだけどな。要するに、それを出来る装置があって、俺がそれを使った。それだけの話だ」

風花「……並行世界」

刹那「そうとも言うな。似てるけど全く別物の世界だ。そこで、新しい世界にゴーサインを出した。だから、俺の事件はどこにも記録が無い」

綾時「リセットボタンか……何か、凄い事になってきたね」

美鶴「だとすると、リプレイはこの世界ができてからでは無く、別の可能性世界での事件も再現する事が出来るという事か」

刹那「よくわかんねえけどそうなるんじゃないか?」

鳴上「ところで、どうやってテレビから出てきたんですか?確か、落とされた人はテレビの世界を構築するパーツになって……」

刹那「ああ、それは多分合ってる。俺も最初は意識しか無かった。けど知り合いの深淵の魔王がな……」

鳴上「し、深淵の魔王」

刹那「そいつが、こんな世界は気に入らないって言ってさ。俺に出口を教えてくれたんだよ。それで出てきたらここだったと」

美鶴「……頭が痛くなってきた」

>つまり……?

>事件の黒幕によって創りだされた世界で、作られたキャラクターが自由意志を持って世界を崩壊させた……?

鳴上「そんな事が可能なのか……」
770 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:14:35.37 ID:nZhfzp0/o
刹那「まぁ、俺って言ってみればこの世界の親みたいな物だし。宗教によっては神様だからなぁ。何ができてもおかしくはないっつーか」

>開いた口が塞がらないとはこの事だろうか。

>人間、理解を超えた存在に出逢うとただただ呆れる他無いらしい。

鳴上「なら、犯人とかわからないんですか?」

刹那「んー……そりゃ無理だな。神様役ってだけで実際神様じゃないし。全能じゃないんだよ」

>結局、手掛かりは無しか。

ラビリス「それより、これまずいん違うん?」

美鶴「ああ、まずい事になったな」

風花「一般の人が悪魔を目撃してしまいましたしね」

美鶴「これから公安側と話をする必要がありそうだな。気のせいで済ませるレベルを大きく超えている」

天田「僕達、めちゃくちゃ見られちゃいましたけど?」

美鶴「個人レベルなら他人の空似で押し通せるかもしれないが、悪魔自体は隠せないだろう。となると、私や君達の処遇も変わるかもしれない。覚悟しておいてくれ」

>公安か。

>話には聞いていたが、ようやく実感が伴ってきた。

>自分がどんな組織に与しているのか……。

>もしかするとここでの会話がこの国の明日を変えるかもしれない事を、今はっきりと自覚した。

綾時「そもそも、今まではここまで大規模に影響無かったよね。どうしてかな?」

メティス「影時間の発生、悪魔の発生……それらが私達のような、特殊な存在にしか感知出来なかったからだと思います」
771 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:15:01.56 ID:nZhfzp0/o
鳴上「それを抜きにして考えても、今回はイレギュラーが多すぎるように思うな。もしかすると、事件が形を変えてきているのかもしれない」

天田「その可能性はありますね。新月の日に即テレビに落とされた事もそうですし、どんどん状況が悪化してきている気が……」

美鶴「とにかく、私は一度帰らなくてはならない。何日かかるかわからないが、その間甲斐さんはここで暮らしていてもらえますか」

刹那「それはいいけど、こっちからも頼んでいいか?」

美鶴「あまり沢山は人員を割けませんが、何でしょう?」

刹那「ああ。人を探して欲しい。俺の……友達なんだ。名前は要未来。俺と同じ歳の女で、多分これから目立ってくると思う」

美鶴「目立ってくる……ですか。よくわかりませんが、手配しておきます。それでは、空いている部屋を使って頂いて構いませんので」

刹那「わかった。よろしく頼むよみんな」

>悪魔と人の混血児。

>戦う事には慣れてきた俺達の中でも、圧倒的実力を誇る刹那が寮で暮らす事になった。

>後でちゃんと挨拶でもしに行こう。

>……。
772 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:18:26.17 ID:nZhfzp0/o
刹那「それで来てくれたのか。鳴上は律儀なヤツだな」

鳴上「そうですかね。一応、これから何日か一緒に暮らすわけですし」

刹那「ああ。よろしく頼むな。ところで……」

>刹那はちらりとクールの方を見る。

クール「お前から同族の匂いがするんだが、どういう事だ?」

鳴上「同族?……ああ、確かにそうかもしれません。これを」

>刹那に悪魔召喚プログラムを見せる。

刹那「ケルベロス……え、これで悪魔召喚出来るのか?」

鳴上「はぁ、まぁ」

刹那「時代は進歩したもんだね……俺らの時はこう、ノートパソコンみたいなのが必要だったのに」

鳴上「え、でも今は違いますよね?」

刹那「まぁ、体自体が変わったしな。空も飛べるんだぜ?」

鳴上「それは凄いですね……」

クール「ちょっとこのケルベロス、呼び出してもらってもいいか?」

鳴上「え?構いませんけど」

>悪魔召喚プログラムを操作し、ケルベロスを召喚する。

ケルベロス「どうした主」

鳴上「クールさんがお前に会ってみたいって言うんだ」
773 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:22:54.18 ID:nZhfzp0/o
ケルベロス「クール?ああ……そこのケルベロスか」

クール「そうだ。……お前、名前は?」

ケルベロス「……かつては、パスカルと呼ばれていたよ」

クール「そうか。俺はクール。お前、純粋なケルベロスじゃないな?」

パスカル「ああ。元々は普通の犬だった。かつて仕えていた主の元、悪魔と合体し力を得て……この姿に」

クール「妙な匂いだったのはそのせいか。まぁ、同じケルベロスとしてよろしく頼むよ」

鳴上「そうか、だから以前の姿がハスキー犬だったのか」

刹那「なんだ、知らなかったのか?」

鳴上「ええ……そう考えたら俺、パスカルの事全然知らないですね」

刹那「駄目だぞ、それは」

鳴上「え?」

刹那「悪魔だって生き物だからな。一緒に戦う相手の事は良く知っておいた方がいい。人間だって一緒だろ?」

鳴上「それは……そうですね」

刹那「俺とこいつはそこまで仲良く無いけど、お前とそいつは仲良くしろよ。そうじゃなきゃ満足に戦えない」

クール「お前と仲良くしてもしょうがないだろ」

刹那「うるせえな、今かっこよくキメてんだろが」

>喧嘩する二人?は、十分仲良さそうに見える。

>俺はパスカルをちらりと眺めた。

>パスカルは、眠たそうにあくびを一つした。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.15 悪魔 甲斐刹那』を手に入れた!
774 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/29(水) 00:23:45.61 ID:nZhfzp0/o
ケルベロス同盟結成。

では、また明日。
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/29(水) 00:31:48.07 ID:vLjIwF0Eo

やはり真Tのケルベロスと言えばパスカルだな
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 00:33:20.46 ID:5LbjFrxio

コロマルがハブられて泣いてる
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/29(水) 00:47:59.04 ID:vRThc6tco
未来やナガヒサ、特にタカジョーゼット出てきてくだしゃあ!
>>1ちゃん乙なのだよ!
778 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:22:22.11 ID:xzx/HIRRo
>その夜。

鳴上「……雪が雨に変わったか」

>そろそろ日付が変わる。

>が、マヨナカテレビはチェックする必要が無い。

>刹那は既に出てきているからだ。

>頭ではそう思っていながらも、何故かそわそわと落ち着かない。

鳴上「一応、な」

>ラウンジに行ってみる事にした。

天田「あ、先輩」

鳴上「天田もか」

天田「ええ、まぁ一応……」

鳴上「メティスとラビリスは?」

天田「いつものパトロールですよ。風花さんはここの所無理してたんで寝てます」

鳴上「そうか。じゃあ俺達だけでもチェックしておくか」

天田「そうですね。……そろそろですよ」

>時計の針が12時を指す。

>……何も映らない。

鳴上「やぱり、今回は刹那さんだったのかな」

天田「ええ。どうやらその……あれ」
779 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:22:58.70 ID:xzx/HIRRo
>画面にノイズが走る。

>チューニングを合わせるような音がして、黄色い背景に一人の女性が映った。

天田「……映っちゃいましたね」

鳴上「……だな」

>今度の満月は刹那だと思っていたが、どうやら違ったらしい。

>今の女性、見覚えは無いが……

鳴上「何か、知ってる気がしないか?」

天田「見覚えは全く無いんですけどね。何でしょう、この既視感というか」

鳴上「誰かに似てるのかな。そんな感じだ」

天田「とにかく、また助けに行く事になりそうですね」

鳴上「ああ。次の雨まで様子見か」

天田「せっかく今回はテレビの中行かずに済んだのに。あの中、疲れません?」

鳴上「もう慣れたよ」

天田「流石、キャリアが違う。……先輩、昼の事なんですけど」

鳴上「ああ」

天田「どうなるんでしょうね、僕達。というか……世界」

鳴上「さぁな……桐条さんに任せるしかないだろ」

天田「僕達も公安所属ーとかになるんでしょうか。だとしたら公務員?うわ、期せずして就職決まっちゃった」

鳴上「あー、そうなったら困るな」
780 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:23:56.67 ID:xzx/HIRRo
天田「何でです?」

鳴上「今一生懸命進路考えてたのに。無駄になるだろ」

天田「いいじゃないですか、公務員。このご時世ありがたいですよ」

鳴上「でも、他にやりたい事見つかったらどうする?」

天田「我儘言ってられないでしょう。僕達がやらないと」

鳴上「それはそうだけど。……この事件を解決したら、そんな心配もなくなるかもな」

天田「……ですね。がんばりますか」

鳴上「よし、今日はもう寝よう。おやすみ」

天田「おやすみなさい、先輩」

>天田は少し不安がっていたようだ。

>二人で決意を新たにした……。

>『No.05 法王 天田乾』のランクが5になった。
781 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:24:37.57 ID:xzx/HIRRo


【6/24 晴れ】


陽介「で、どうするよこれから」

千枝「ニュース見たでしょ?とりあえず鳴上君に連絡してさ」

完二「つってもよぉ。センパイ、アレがマジなら今相当大変な事になってんじゃねえか?」

りせ「でもでも!心配だよ、やっぱり」

直斗「桐条さんにも連絡がつきません。恐らくは今頃忙殺されているんでしょうが」

雪子「鳴上君もそうだけど、私達もこれからどうするのか考えないとまずいよ、これ」

クマ「クマ的にはー、センセーに会いに行きたいなーって」

陽介「だーから、それがまずいんじゃねえかって話をしてたんだろうが!」

>……何故、自分はここにいるのだろうか。

>ライドウは隣で大学芋をひたすら食べている。

>結局、僕達が単独で悪魔と戦っていた事がバレてしまい、彼らに巻き込まれる形で自称『特別捜査隊』に組み込まれる事になった。

陽介「んでライドウ!お前もいつまでも芋喰ってねーで何か意見くれよ!専門家だろ?」

ライドウ「む?手を出さない事が一番かと」

有里「全面的に同意」

完二「そんじゃ鳴上先輩は見殺しっスか」
782 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:26:09.16 ID:xzx/HIRRo
有里「向こうにいるのが誰の仲間だと思ってるの?」

完二「……うス」

直斗「勿論それは信用しています。けれど、それにしても事態が異常すぎる。有里さんの話の通り、現実世界でペルソナを召喚出来るとしても、いつ大怪我や、最悪……」

りせ「ちょ、ちょっとやめてよ!」

>ポートアイランドで、ついに悪魔の事件が一般の人にも認識されたらしく、全国区でニュースになっている。

>それを見たりせと直斗は仕事を半ば放り出して戻ってきてしまった。

>召喚器を持たず、現実世界でペルソナを呼ぶ事も出来ない彼らは、そのまま悪魔たちに手を出そうとしている。

>既に何度も止めたが、容易に説得出来る物でもなかった。

雪子「有里君や葛葉君が私達の事心配してくれてるのはわかるの。けど、出来る事があるならやりたいって思っちゃ駄目なのかな?」

陽介「そーだそーだ。その大学芋だってお前が欲しがるから俺が頼んでメニュー入れてやったんだぞ」

>ライドウが大学芋に楊枝を刺して一旦置く。

ライドウ「出来る事などありません。何の力も無しに悪魔に立ち向かう事は当然無謀ですし、そもそも貴方方の様な普通の学生に関わって欲しくない」

千枝「な、なんでよ」

ライドウ「邪魔だからでむぐ」

>大学芋を一つ放り込んでやると、ライドウは口を閉じた。

有里「ごめん、口が悪いんだ。ただ、概ね僕も同じ気持ちだよ」

陽介「お前も邪魔だってのかよ」

有里「そうじゃなくて、危ないから。向こうは装備もしっかりしてるし、サポートも完璧。こっちは……言いたくないけど普通の学生達、要は一般人だ」
783 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:27:08.91 ID:xzx/HIRRo
>皆黙ってしまった。

>事実だから、だ。

>それでも何か出来る事を、彼のために出来る事を。

>その気持ちは理解できる。

>……僕も大人になったものだ、と思う。

>昔は考える前に体が動いた。

>今は、それを止める側だ。

有里「……君達には将来がある。僕の言う事もわかって欲しい」

>彼らも頭ではわかっている。

>だからこそ強い反論が無いのだ。

>それがわかって何度も言っている僕は、酷いヤツだと思う。

ライドウ「そういう事なので、自分らはこれで抜けても?」

完二「あァ?待てよ」

ライドウ「待ってどうするのか。自分は特殊な訓練を受け、悪魔と戦う為にある。有里君も同様に、戦う力を持っている。貴方方は違う。それで話は済んでいるでしょう」

完二「……チッ」

>ライドウが立ち上がろうとすると、着ぐるみが震えた。

クマ「でも、クマとセンセーは仲間クマ。ヨースケだってチエチャンだって、みんなみんな仲間クマ。大事な仲間クマ」

ライドウ「……それが?」

クマ「クマ、クマ良くわからんけど!仲間って助け合うもんクマ!誰かがしんどーい事してる時に、見てるだけなのは仲間と違うクマ!」

ライドウ「ですから、何度も言っている」
784 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:28:06.68 ID:xzx/HIRRo
陽介「……あんがとよ、クマ。そうだな。理屈じゃねーよ」

>陽介が静かに言う。

陽介「正直言ってビビってたんだよ、俺。有里やライドウの言う事も最もだと思う。だから、止めてくれるなら止めて欲しかった」

完二「情けねぇなぁ。……まぁ、俺もだけどよ。コトがどんどんでかくなってって、俺なんかにゃ立ち入るスキねーんじゃねえかってよ」

千枝「私らに出来る事って、本当は何も無いんじゃないかなって、思っちゃってたね」

直斗「事実、限りなくそうでしょう。大人なら、ここで諦めるべきなんでしょうけどね」

りせ「無理!だって、だって先輩の事大好きだもん!先輩が辛い目にあってるなら、ちょっとでも助けてあげたい。励ましてあげたい!」

雪子「ライドウ君、有里君。二人の考えはすごくよく分かる。ライドウ君が、ちっとも思ってないのに邪魔だなんて言ってる理由も。だけど、ごめんなさい」

陽介「俺ら、やめらんねーよ。あいつに助けられたから。今度は俺達が助けてやんねーと」

>どうやら火がついてしまったようだ。

ライドウ「……買い被りです。自分は別に他意があって発言しているわけではない」

有里「心配だったくせに」

>ライドウは口の端をへにょりと曲げて、帽子のつばを下げた。

有里「良くわかったよ。君達は僕らが何を言っても止められない。だけど、その前にやらせて欲しい事があるんだ」

直斗「やらせて欲しい事?」

有里「君達が動く前に、先んじて僕らが動く。……帰るよ、ポートアイランドに」

ライドウ「……自分も、いずれ行かねばならないと思っていましたから。その提案には賛成です」

陽介「でも、今向こうどうなってるかわかんねーんだろ?」

有里「僕からなら、恐らく最優先で連絡が取れると思う。美鶴……桐条先輩に連絡が付き次第、ここを出るよ。向こうの様子は僕が報告する。それでいいかな?」
785 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:28:41.77 ID:xzx/HIRRo
完二「そりゃ……止める理由は、ねぇけどよ」

りせ「あの、有里さんって……その。いろいろあって、居辛くなったからこっちに来たんですよね?帰って大丈夫なんですか?」

有里「さぁね。彼らが何も変わっていなければきっと面倒な事になるだろうけど、皆も……悠も、そんなに弱く無い。だよね?」

千枝「そりゃ折り紙付き。うん、そっか。じゃあ、任せる!」

雪子「ライドウ君も、気を付けてね。危ない事はなるべくしないで」

ライドル「自分は戦うのが仕事なんですが。まぁ、覚えておきます」

>あの場所に帰ろう。

>僕の逃避行も終わりだ。

>悠は、皆は、どう変わっただろうか。

>あるいは、何も変わっていないかもしれない。

>それでも……。
786 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:29:30.92 ID:xzx/HIRRo


【6/27 雨】


>……今日、湊が帰ってくるらしい。

>寮には美鶴を除いた特別課外活動部メンバーが全員揃っている。

>美鶴は流石に忙しすぎて、来れるとしても夜になると言っていた。

天田「刹那さんが出ていってすぐ、ですか」

鳴上「今までに無い出入りの激しさだな」

真田「鳴上、平気なのか?」

鳴上「ええ、もう大丈夫です。一緒に待ちますよ」

>そう、もう大丈夫だ。

>話では湊ともう一人、美鶴がかつて八十稲羽に派遣したという男が一緒に来るらしいのだが、そちらの詳細は不明だった。

順平「そろそろじゃね?迎え行った方がいいんかね?」

ゆかり「ああ、私ら行くから、待ってていいよ」

順平「ああ、はいはい。そんじゃ俺らはここで待つとしましょーかね」

>大丈夫だ、うん。

>女性陣の張り切り方を見ると、何かちょっと悔しいけれど。

>皆と雑談しながら、湊の到着を待った。

順平「なんか遅くねえ?まだかよ」

天田「寄り道してるんじゃないですか?まぁ、面子が面子ですし」

真田「だとしたら、ついて来るもう一人が可哀想だな」
787 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:29:59.18 ID:xzx/HIRRo
メティス「それとも、悪魔に……?」

ラビリス「アイギスもおるし、悪魔の方が可哀想やと思うけどな」

鳴上「様子見てみましょうか」

順平「ああ、じゃあ玄関からちらっと覗いてみ」

>順平に促されて、玄関から外に出る。

>確かめるまでもなく、女性に囲まれたあの人影は湊だろう。

鳴上「湊!」

>湊もこっちに気付いたようだ。

>周囲のメンバーは、以前俺が湊に対してどういう感情を抱いていたかを告白している。

>恐らくはそれで気を遣ったのだろう。

>一歩下がって黙っている。

有里「や。久しぶり」

鳴上「そうだな」

有里「……平気?」

鳴上「ああ。全然な」

>黙って右手を差し出す。

鳴上「おかえり」

>湊は手を取って言った。

有里「ただいま」

>……。
788 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:30:46.31 ID:xzx/HIRRo
ライドウ「ほう、君も悪魔を」

鳴上「ああ、といっても俺の場合このプログラムが凄いんだけど」

ライドウ「なるほど、簡略化し一般人にも使えるようにすると。実に素晴らしい発想だ」

順平「有里よぉ、お前何やってたの?」

有里「……悪魔退治?」

天田「え、召喚器持ってましたっけ?」

有里「いや、いろいろあってさ」

>湊とライドウを迎え、寮内は久しく賑わっていた。

風花「あ、皆さんそろそろ桐条先輩も来るそうですよ!」

ゆかり「重役出勤ねー。ま、今は仕方ないか」

天田「そういえば、今日はテレビどうします?」

順平「なに、また映んの?」

ゆかり「あれ?確か今回もう片付いたんじゃなかったっけ?」

真田「おかわりが入ったらしい。そうだな、せっかくだし残って見ていくか」

ライドウ「自分は抜けても良いでしょうか?少し気になる事がありますので」

ラビリス「構わんのと違う?連絡は付くんやろ?」

有里「僕が知ってる。じゃあ、ライドウも気を付けて」

>ライドウを除く全員でマヨナカテレビを見る事になった。

>そういえば、全員揃って見るのはいつ以来だろうか。

>前は……湊の時か。

>そこまで考えて一つ引っ掛かる事があるのに気付いた。
789 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:31:12.45 ID:xzx/HIRRo
>誰かに似ていると思ったあのシルエット……。

>今、答えが目の前にある気がする。

鳴上「あ、湊だ」

有里「ん?」

鳴上「湊だよ。誰に似てたのかずっと気になってたんだ。湊に似てるんだよ、あの人」

天田「前に映った人ですか?あー……あー!確かに!そうですよ!」

有里「え、何?」

鳴上「とにかく、今夜もう一度見てみればわかる。どういう事なのか」

>今は、夜を待とう。

鳴上「もうすぐか」

美鶴「有里似の女性……?確かに中性的な顔立ちではあるが」

天田「いや、顔とかじゃなくて空気ですよ。雰囲気が似てるっていうか。まぁとにかく見てくださいよ」

>遅れてきた美鶴も合流し、全員がテレビを食い入るように見る。

>もうすぐ日付が変わる……。

>いつもの音といつものノイズと共に、番組が始まった。

鳴上「もう落とされてるのか……」

>番組は湊の回をなぞるように進行していく。

順平「有里、いるよな?」

有里「いるよ。落とされたのは僕じゃない」

天田「でも、そっくりですよ……って、あれ?」

>視点になっている誰かは、例のガラの悪い男の部屋に入っていく。
790 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:31:38.80 ID:xzx/HIRRo
真田「このシーンは見覚えが無いな」

ラビリス「なんや、この二人やたら近ない?」

>確かに、隣同士に座っているようだ。

>二人の距離が近付いていく……。

『止まんねぇぞ』

ゆかり「!!」

美鶴「!!」

風花「!!」

アイギス「!!」

有里「!?」

メティス「こ、これは見てはいけないのでは?」

順平「ちょ、ちょい待って。有里ぉ!?」

有里「ぼ、僕じゃない!知らない!」

真田「シンジ……」

天田「荒垣さん……」

鳴上「と、とにかく、どうやら有里とは別人のようですが、この寮が舞台って事は関係者だと思いますよ」

有里「けど、他の部分はまるで僕と同じみたいだった。どうなってるんだろう」

鳴上「わからない……けど、誰か落とされてるのは確かみたいだ。皆も一度落ち着いて、とりあえず今日は休みましょう。それからどうするか考えればいい」

美鶴「そ、そうだな……私はまた帰らせてもらう。鳴上、あとは頼んだぞ」

ゆかり「あ、先輩、私も送ってってください……うー、想像しちゃったよ」

風花「アリ……かも」

アイギス「私は残ります。もし救出作戦を行うなら是非」

鳴上「明日以降になるから、とにかく今は寝よう。どうも奇妙な事になってるみたいだ」

>皆がそれぞれ休息を取る中、湊だけがずっとテレビを眺めていた。
791 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/30(木) 00:33:32.24 ID:xzx/HIRRo
アッチ系まつり。

最近P4Uが楽しくて遅刻しがちです。
では、また明日。
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/30(木) 00:51:04.14 ID:Ksqpg80Uo
せっちゃんもう終わりかー
>>1ちゃん乙なのだよ!
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 02:49:14.46 ID:f+N03TVIO
ハム子!ハム子なのか!?
そして風花ェ…
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 03:18:03.77 ID:oQI4gWhy0
ハムちゃん!
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 07:18:08.38 ID:o9B1w9hIO
ハム子おおおおおおおお
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 20:41:17.35 ID:zNlyw0hpo
ハム子ォォォォ
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/30(木) 22:22:46.46 ID:xA+Y1HlMo
荒ハムううううう
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/30(木) 23:29:44.69 ID:J+8KJGcpo
ハム天はショタじゃないからアウト
799 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:05:40.50 ID:HYBH4ftlo


【6/28 曇り】


>……暑い。

>今日は気温が高いのだろうか。

>……いや、暑いのは外に出ている顔じゃない。

>布団の中だ。

鳴上「誰かいる」

>明らかにもう一人分の膨らみがある。

>布団を一気に剥ぐと、見覚えの無い女性が丸まっていた。

「うぇ?」

鳴上「……えっ」

「……?」

鳴上「あの……」

「あ。ごめん。忘れてた」

>女性は寝ぼけ眼で頭を掻きながらベッドを降りた。

「顔洗ってくるねー」

鳴上「ああ、うん」

>女性が部屋を出て、ようやく頭が動き出す。
800 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:06:10.25 ID:HYBH4ftlo
鳴上「だっ!誰だ今の!」

>大急ぎで着替えて部屋を飛び出す。

>眠そうな天田が部屋から出てきた。

天田「何ですか、大声出して……」

鳴上「天田!女の人を見なかったか!」

天田「へ?さぁ……」

鳴上「そ、そうか。悪かったな、起こして」

天田「何かあったんですか?」

鳴上「何か、ちょっと落ち着いたら気のせいだった気もしてきた。寝ぼけてたのかもしれな」

「おっはよー。ごめんねー、部屋間違えちゃって」

>いた。

>夢でも気のせいでもなかった。

天田「あ、おはようございま……どなたですか?」

「……ていうか、君が誰?」

天田「いや、だから……」

有里「ああ、ごめんごめん。説明するよ。とりあえず、皆を起こしてもらっていいかな」

>上がってきた有里は全てを理解しているようだった。

>……。
801 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:06:54.48 ID:HYBH4ftlo
「えーと、初めまして。有里美奈子って言います。特別課外活動部の現場リーダーやってました」

>女性はそう名乗った。

鳴上「有里……?親戚か?」

有里「違うよ。確か、甲斐刹那さんだっけ?彼の時にわかった事があったんでしょ」

鳴上「……?」

風花「そっか、平行世界……別の可能性世界の事件も再現するって」

有里「そう。つまり、彼女は僕のオルタナティブ……いや、代替っていうわけじゃないか。とにかく、僕がいない世界で僕と同じような立場にいた人さ」

美奈子「なんかそうらしいです。良くわかんないんだけど」

有里「昨夜、皆が寝た後にテレビの中に入って助けだしてきた。それで、僕とラウンジで寝てたはずなんだけど……」

美奈子「トイレ行った後、ついふらふらと。勝手知ったるってもんだからさー」

鳴上「まぁ、それはいいんですけど。体に不調とか無いんですか?」

美奈子「敬語、いらないよ。湊と同じでいいから。体は全然平気。それより聞きたいんだけど」

>美奈子は天田を指差して言う。

美奈子「彼は何方様?」

天田「天田乾です。こっちとメンバーが同じなら知ってるはずなんですけど」

美奈子「嘘!?嘘だ!あの可愛かった乾はどこ行ったの!?」

天田「いや、知りませんけど……」
802 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:08:04.10 ID:HYBH4ftlo
美奈子「あー、けど面影無いでもないなぁ。んー……方向性変わったけど可愛いっちゃ可愛いからよし!」

天田「は、はぁ?」

真田「またとんでもないヤツが出てきたもんだな」

美奈子「あ、失礼な。真田先輩の恥ずかしい話もきっちり知ってるんですからね!」

真田「なっ何!?何だ、言ってみろ!」

美奈子「内緒ですー」

順平「……なんつーの?小悪魔系?」

鳴上「さぁ……なんなんでしょうか……」

美奈子「とりあえず、皆とまた会えて嬉しいです!皆は私の知ってる皆と違うけど、それでも、ね」

>なんだか湊とは随分違うが……

>とにかく別の可能性世界における“有里湊”、有里美奈子が合流した。

>寮で暮らす事になるだろうから、もう少し話をしてもいいかもしれない。
803 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:08:36.73 ID:HYBH4ftlo
美奈子「お、鳴上君……だっけ。どしたの?」

鳴上「普通にテレビ見てただけだよ……まぁ、美奈子を待ってたんだけど」

美奈子「おおう、呼び捨て」

鳴上「あ、駄目だったか?湊と同じでいいって言うからつい」

美奈子「あ、いいんだよ?ちょっとびっくりしただけ」

鳴上「そうか。ああ、俺の事も呼び捨てで良いよ」

美奈子「下の名前……悠だっけ。かっこいー名前だね」

鳴上「そうかな」

美奈子「うん。そう思う」

>美奈子は机を挟んで反対側に座ると、こちらをじっと観察している。

鳴上「……何か、気恥ずかしいんだが」

美奈子「ん?」

鳴上「いや、そう見られると少しむずむずする」

美奈子「ああ、ごめんごめん。なんかさ、あんまり見なかったタイプだからつい」

鳴上「まぁ、課外活動部にはいなかったしな」

美奈子「……誰とも違うよね。強いて言えば湊に似てる、かも。ってことは私似?」
804 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:09:25.40 ID:HYBH4ftlo
鳴上「そう見えるか?」

美奈子「いや、流石にそれは微妙。でもいい男だよ」

鳴上「あ、ありがとうございます」

美奈子「あはは、からかい甲斐があるね。ま、これからよろしく。……事件が終わるまでだけど」

鳴上「……まだ、可能性は無い訳じゃない。諦めるのは最後の瞬間まで諦めなかった奴の特権だよ」

美奈子「ん。でも、本当にどうしようも無かったら……」

鳴上「その時考えよう。とりあえず、よろしく」

>美奈子は笑顔で応えた。

>彼女も湊達と同じく、恐らくは作られたキャラクターだ。

>事件が終わるまで……か……。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.09 隠者 有里美奈子』を手に入れた!

>朝が早かったから少しのんびり出来たが、流石に時間も近付いて来た。

>遅刻する前に学校に行こう。

>……。
805 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:11:25.75 ID:HYBH4ftlo
綾時「おはよう、悠。何か良い事でもあったのかな?」

鳴上「ん?どうしてそう思う?」

綾時「君は何とも無くて、あの二人がちょっと不機嫌だからさ」

メティス「別に、不機嫌じゃない」

ラビリス「そやで。不機嫌になる理由がないもんな」

メティス「別に鳴上君が誰と仲良さそうでも私には関係無いし」

ラビリス「そやで。ウチと悠は別に何も関係無いしな」

綾時「ね?」

>朝の会話を見られていたらしい。

>しかし、この二人が不機嫌になるタイミングが毎度わからない。

鳴上「実は、新しい仲間が出来てな」

綾時「当ててみようか。女の子だ」

鳴上「正解。ただ、また一曲あるヤツだぞ」

綾時「あの寮ってそんな人ばっかりだね」

鳴上「まぁな」

鳥海「はーい黙ってー。悪魔騒動に便乗してまたしょーもない噂が流れてるみたいじゃない。っていうか悪魔ってなに?食べられるの?ま、いいわ」

>鳥海先生もまた不機嫌だ。

>今日は厄日のような気がする。
806 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:12:40.17 ID:HYBH4ftlo
鳥海「えーと、それじゃ転校生!紹介します!何人目よこれで!私のクラスどうなっちゃってんの?ほら、入ってきて」

>あ、これもまた嫌な予感が。

ライドウ「……自分は、葛葉ライドウと云います。田舎暮らしが長いので、こちらの学校での生活に馴染めるか不安ですが皆様よろしくお願い致します」

>何故だ……。

>何故ライドウまで……。

綾時「……女の子、じゃないみたいだけど」

鳴上「そうだな」

綾時「やっぱり?」

鳴上「関係者です」

綾時「ですよねー」

>とにかく、後で事情を聞かねばならないだろう。

鳴上「ライドウ」

ライドウ「どうかしましたか?」

鳴上「いや、昼飯一緒にどうだ?こいつも一緒だけど」

綾時「や」

ライドウ「……ご一緒しましょう」

>三人で屋上に出た。

>今日は曇っているからか、生徒も少ない。
807 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:13:07.26 ID:HYBH4ftlo
ライドウ「さてと」

鳴上「お、弁当か」

ライドウ「ええ」

綾時「中身拝見……ってうわっ!」

>ライドウの弁当箱の中にはぎっしりとサツマイモが入っている。

>あのテカり方は……

鳴上「だ、大学芋か……」

ライドウ「好物なもので。いただきます」

鳴上「……はっ。いや、違う。弁当を見に来たわけじゃないんだった」

>あまりの光景にいろいろと忘れてしまう所だった。

鳴上「なぁ、ライドウ。お前、どうしてわざわざ学校に?」

ライドウ「簡単に言えば、桐条さんのお節介です」

鳴上「それはそうだろうな。そんな操作出来るのあの人くらいなもんだろ」

ライドウ「ええ。しばらくこちらに滞在して調査を、という話をした所……」

>ライドウは突然立ち上がりポーズを取る。

ライドウ「なるほど。ならば君も学校に通えるようにしておこう。鳴上達と同じクラスだ。何、この程度の手回しなら負担にもならないよ」
808 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:14:32.95 ID:HYBH4ftlo
綾時「あ、今のモノマネ?」

ライドウ「どうですか?」

鳴上「その指はなんだ?」

ライドウ「ほら、あの……髪のくるっとした部分を指で弄ぶ癖があるでしょう」

>言われてみれば、そうだ。

鳴上「よく見てるな」

ライドウ「まぁ、探偵ですから」

鳴上「理由はわかったよ。でも何の調査をするんだ?」

ライドウ「……いろいろと、です。そのうち協力をお願いするやもしれませんが」

鳴上「それは構わないけど……一人で大丈夫なのか?」

ライドウ「ご心配なく。一人では無い」

>ライドウの視線の先には一匹の黒猫がいた。

綾時「……ま、まぁ、頑張ってよ」

ライドウ「ええ。昼からの授業を受けたら早速捜査に出かけますよ」

>なんというか、掴み所の無い男だ。

>俺の周りはこんなのばっかりか……。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.11 剛毅 葛葉ライドウ』を手に入れた!
809 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/08/31(金) 00:18:56.77 ID:HYBH4ftlo
転校生てんこ盛り。

では、また明日。
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 00:55:47.48 ID:uNO3ASL9o
主人公子じゃないだと……
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 02:59:32.70 ID:VvbZ0Xgio
ゴウトにゃん!
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/31(金) 15:16:00.99 ID:FePxiDaVo
P3P4クロス+アトラスオールスターSSを二つ並行で読んでるから
だんだんこんがらがってきた…
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 19:25:31.03 ID:j46Lrsnlo
>>812
よかった俺だけじゃなかった
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 20:26:22.02 ID:mKjLfOlIO
だいぶ前からわかんなくなってる俺もいる
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 22:29:48.76 ID:DFFHNY1/0
>>813-814
スレチかも知れないがもう一個ってどれ?
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/31(金) 23:47:20.26 ID:h5jCiVUD0
>>815
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1329486637/
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1335610871/
これだと思う
817 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:04:31.28 ID:gNs8OxFeo
鳴上「今日は一人か……」

>綾時はさっさと帰ってしまったし、ライドウは捜査に出た。

>メティスとラビリスは二人で何か企んでいるようだ。

鳴上「何も無いといいけど」

>……悪魔騒動があってから、街を歩く人が減った。

>中には引っ越す人もいるようだ。

鳴上「……見た目が少しさみしいな」

>うら寂しい気持ちになりながら駅まで行くと、見知った人が歩いていた。

鳴上「あ、チドリさん」

チドリ「ああ、悠……こんにちは」

鳴上「あ、はい」

>チドリから挨拶されたのは、これが初めてじゃないだろうか。

>少し驚いた。

チドリ「帰り?」

鳴上「ええ。チドリさんは……」

チドリ「……」

鳴上「待ち合わせ、ですか」

>チドリは頷く。
818 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:05:07.56 ID:gNs8OxFeo
鳴上「怖く無いんですか?ここって、その……近いじゃないですか」

チドリ「何が?」

鳴上「何って、知らないわけじゃないでしょう。悪魔がどうこうって話」

チドリ「ああ……別に怖くは無いわ」

鳴上「どうしてです?」

チドリ「だって……」

順平「おっすチドリン!と、鳴上か。お前ともなんだかんだ良く会うな」

鳴上「そうですね。で、チドリさん何て言いました?」

チドリ「別に」

順平「お前ら結構仲いいよな。気が合うのかね」

チドリ「そうでもないわ」

鳴上「……だ、そうです」

順平「へへ。こいつはいっつもそう言うんだよ。素直じゃねーんだから」

チドリ「……うるさい」

順平「はいはい。待たせちまって悪かったな」

鳴上「それじゃ、俺はこれで」

順平「あー、待った。ちょっと頼みあるんだけど聞いてくんね?」
819 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:06:00.65 ID:gNs8OxFeo
鳴上「はい?」

順平「……チドリをさ。どっか、なるべく安全なとこに逃してやれねーかな」

鳴上「いや、それは俺じゃなんとも……」

順平「だからさ、お前から桐条先輩に頼んでみてもらえないか?」

鳴上「でも、それなら順平さんが頼んでもいいんじゃないですか?」

順平「……身内だから特別扱いしてくれって、言い難いんだよ。あの人、いろいろ背負っちゃってるしさ。お前も言い難いだろうけど」

鳴上「……わかりました、とりあえず伝えて」

チドリ「いらない」

>チドリの声が震えている。

順平「何言ってんだよ。危ないんだって」

チドリ「私、悪魔なんて怖くない」

順平「おい、何だよそれ。お前まさかまた死ぬのが怖くないとか……」

チドリ「違う!私には順平がいるから。だから、悪魔なんて怖くない」

順平「……俺、自信ねーよ。それこそ、有里とか鳴上の方がよっぽど……」

チドリ「それに、会えなくなる」

順平「チドリ……」

チドリ「順平がいない所で生きていくなんて、私には出来ない。私に意味をくれるのは、順平なんだから……」

>順平の胸に、チドリが顔を埋める。
820 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:06:47.78 ID:gNs8OxFeo
チドリ「……わかってよ」

順平「……鳴上。悪いけど頼みごと変更で」

鳴上「なんなりと」

順平「今週末、買い物付き合ってくれよ。ちょっと買いたいモンあるんだわ」

鳴上「いいですよ。俺で良ければですが」

順平「サンキュ。ほれチドリ。離れろ離れろ」

チドリ「……ぐす」

順平「あーあー顔ぐちゃぐちゃだ」

鳴上「ハンカチ使います?」

順平「用意がいいね。ほれ、貸してくれるってよ」

チドリ「……うぅ」

順平「あー、その、なんだ。悪かったよ。俺だって……側にいたい。なんつって。恥ずいっつの」

鳴上「駄目ですよ順平さん。そういう時はごまかさずに言わないと」

順平「……いや!恥ずいって!無理無理!」

チドリ「私は言ったのに」

鳴上「ね?」

順平「あーもうくっそ!チドリに会えないなんて嫌だよ!なんならずっと一緒にいたいくらいな!これで満足か!」

鳴上「ええ。俺はすごく満足しました」
821 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:07:20.58 ID:gNs8OxFeo
チドリ「……ふふふ」

順平「何これ公開処刑!?ま、まぁ、とにかくそういう事で。週末よろしくな」

鳴上「はい。あ、ハンカチその時にでも返してください。まだ必要そうなんで」

>チドリはまだ涙を流している。

>……さっきとは、意味が違うようだが。

順平「おう。んじゃまたな」

鳴上「はい。お邪魔しちゃって申し訳ないです。それじゃ」

チドリ「悠!」

>立ち去りかけた所でチドリに呼ばれて振り返る。

チドリ「……ありがと」

>ハンカチを振って礼を言われた。

鳴上「いえいえ。チドリさんもまた」

>二人は並んで歩いて行く。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが5になった。
822 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:09:06.20 ID:gNs8OxFeo
鳴上「ただい……ん?」

>ラウンジには寮の女性陣が集まっている。

>その中心には……。

鳴上「美奈子か」

>帰って来た俺にも気付かずに何事か話し込んでいるようだ。

ラビリス「そ、そんで!?そんでどうなったん!?」

風花「ラビリス、声大きい……」

メティス「でも、はっきり聞きたい所……」

>……そっとしておこう。

美奈子「えー、どうなったって……あ、悠ーお帰りー」

>こっそりと部屋に戻ろうとしていた所を美奈子に気付かれた。

鳴上「ただいま。楽しそうだな」

美奈子「うん、まぁねー」

>笑顔の裏側に何か別のメッセージを感じる。

>これは……
823 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:09:44.90 ID:gNs8OxFeo
鳴上「美奈子、良かったらちょっと歩かないか。話したい事もあるし」

美奈子「え?うーん、でもなー」

メティス「あ、えっと……私達なら、いいから……」

ラビリス「うん、行って来たらええやん。続きは今度な」

風花「私も用事済ませちゃおうかな」

美奈子「じゃあ付き合っちゃうよ。すぐ?」

鳴上「そうだな、荷物置いてくるから」

美奈子「それじゃ待ってるねー」

>……。
824 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:10:59.77 ID:gNs8OxFeo
鳴上「で、これで良かったのか?」

>長鳴神社……。

>美奈子と二人で歩いてきた。

>今日はコロマルもいないようだ。

美奈子「うん、バッチリ。いやー助かりました。もー困っちゃって……」

鳴上「一応聞いてもいいか?何の話をしてたんだ?」

美奈子「ほら、私って別世界?から来てるでしょ。そっちでの恋愛事情を少々……」

鳴上「それで皆あんな目がギラついてたのか」

美奈子「他人の恋話は美味しいからねぇ」

鳴上「災難だったな」

美奈子「別にいいんだけどねー。ていうか悠のせいなんだよ」

鳴上「俺の?何で?」

美奈子「今朝ちょっと話したでしょ?」

鳴上「ああ、したな」

美奈子「それがラビリスとメティスの気に食わなかったみたいで。モテるね、悠」

鳴上「……?」
825 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:13:17.40 ID:gNs8OxFeo
美奈子「……え?」

鳴上「いや、ちょっと良くわかんなくて」

美奈子「いやいや、冗談でしょ?」

鳴上「冗談じゃなく」

美奈子「……わお」

鳴上「何だ、変か?」

美奈子「変だね。すごく」

鳴上「そ、そうか……」

美奈子「鈍いっていうか初心?いや、鈍いんだろうね」

鳴上「リバーブローみたいに効いてくるな」

美奈子「あのね、多分あの二人もはっきりわかってないんだろうけど……間違いなく、悠の事を特別な人として見てるよ」

鳴上「まぁ、ある意味恩人とは言われたけど」

美奈子「そうじゃなくて……お節介かなぁ」

>美奈子は何やら悩んでいるようだ。

鳴上「恋愛とか、良くわからないんだよ。別に好かれたいと思っていろいろしてるわけじゃないし」

美奈子「あー、そうなんだろうね。それはわかる」

鳴上「ただ、こうすれば喜んでくれるかな、とかさ。励ましてあげたいな、とか。そうやって動いてるだけなんだが……」

美奈子「悠さ、鏡見たことある?」
826 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:13:49.41 ID:gNs8OxFeo
鳴上「いや、勿論あるけど」

美奈子「自分のことかっこいーって思った事は?」

鳴上「そこまでナルシストじゃない」

美奈子「……あ、そう。これは大変だなぁ、あの二人も」

鳴上「そんなに変か……?」

美奈子「まぁ、かっこ良くなくてもだよ?それなりな見た目の男の子が、自分の為に心を砕いて頑張ってくれる……そんなの見ちゃったら、ねぇ?」

鳴上「そういう物なのか?」

美奈子「逆に考えてみなよ。悠が女の子にすっごく嬉しい言葉とか言われる所想像して?」

>……むむむ。

鳴上「確かに、結構……」

美奈子「でしょ。自分の立ち振舞がどう影響与えるか、しっかり考えた方がいいよ」

鳴上「そうだなぁ。ありがとな、美奈子」

美奈子「べっつに、お礼言われるような事は無いんだけどさ。えへへ……」

鳴上「湊もそうだったし、美奈子もモテるんだろ?」

美奈子「ん?あー、うん、なんていうか……どうかなぁ」

鳴上「はは、まぁ言い辛いか」
827 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:14:41.27 ID:gNs8OxFeo
美奈子「はい、モテます!とはね。とにかくだ!悠はその辺考えて接してあげたほうがいいかもね。お互いにとって、さ」

鳴上「……どうしたものかな」

美奈子「そこまでは。ま、今までどおりでいいと思うよ。ただ不機嫌な時にちょっと気をつかってあげればいいだけだから」

鳴上「うん……ちょっと頑張ってみるよ」

美奈子「ん!頑張りたまえ!」

鳴上「良かったらまた話聞いてもらえるか?俺、何かヘマしそうで……」

美奈子「気にしなくていいと思うけど……気になるなら聞くよ。大した事言えないけどね」

鳴上「ああ。……さて、そろそろ帰るか。あの二人に捕まらないようにな」

美奈子「そーだねー。保護者まで一緒になって聞きたがるんだからもー」

>二人で笑いながら寮に帰った……。

>『No.09 隠者 有里美奈子』のランクが2になった。
828 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/01(土) 00:17:55.99 ID:gNs8OxFeo
多感なお年ごろ。

他スレは・・・出来たら・・・
いや、読んでるし面白いんですけど・・・向こうに迷惑かかると困るので・・・ね?

では、また明日。
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 01:05:07.67 ID:MGzx8nc60
ハム子はできる女 乙
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 06:21:04.43 ID:f+EVsHNoo
ハム子はかわいいなぁ!
831 :815 [sage]:2012/09/01(土) 10:24:16.99 ID:34pzaM+t0
>>816
感謝、これから読んでみる

>>1
俺が質問したばかりに申し訳ない
以後無くします
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/01(土) 14:20:03.79 ID:YfynYaIM0
>>1
気が細かいところまで回らずすいません
以後自重します
833 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 01:22:41.66 ID:f/WCEhsHo


【7/1 晴れ】


>今日は日曜日だ……。

>そういえば今日は順平と約束をしている。

>そろそろ行かなくては……。

順平「よう、来たな」

鳴上「おはようございます」

順平「あ、忘れない内に返しとくわ。ほれ」

>ハンカチを返してもらった。

鳴上「あ、どうも」

順平「一応洗濯してあるからな。さて、それでは鳴上君。今日の作戦を説明しよう!」

鳴上「買い物ですよね?」

順平「……まぁ、そうなんだけどネ。買う物ってのが問題でさー」

鳴上「何買うんですか?」

順平「ぷ、ぷれぜんと……をですね……」

鳴上「あー……」

>まぁ、順平の言い方からすれば誰に贈るかは予想できる。
834 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 01:23:34.26 ID:f/WCEhsHo
鳴上「でも、それなら順平さんが選んだ方がいいんじゃ……」

順平「そうなんだろうけどさぁ。アイツの趣味って、その……ゴシックというか、アレじゃん?」

鳴上「普段はそんな服着てますね」

順平「俺にゃ無いセンスだから、悩んじゃって。その点鳴上なら……」

鳴上「お、俺にだって無いですよ!」

順平「いーや!お前ならいける!少なくとも無難なアイテムを選んでくれるはずだ!」

鳴上「そうですかねぇ……」

順平「まずカテゴリから悩んでんだよ。プレゼントって何買うのが正解なんだ?」

鳴上「そうですね……ええと……いや、待った!そういう事なら俺じゃないんじゃないですか?」

順平「他に誰がいるっつーんだよ」

鳴上「いるじゃないですか、最強の助っ人が……」

>あいつなら……。

有里「で」

鳴上「話した通りだ」

順平「出来ればお前には頼りたくなかったぜ……」

有里「なら帰ろうか」
835 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 01:24:06.56 ID:f/WCEhsHo
順平「待った!今は藁にも縋りたい!頼む、助けてくれ!」

有里「チドリってストレガの彼女でしょ?彼女の趣味とか僕知らないんだけど」

順平「見た目通りだ」

有里「うーん……」

鳴上「悪いな、俺が力になれればよかったんだけど……俺もあんまり得意じゃなくて……」

有里「君達二人は……まぁ、二人共行動で示すタイプだからねぇ……」

順平「なんかちょっとバカにされてねえか?」

鳴上「わざわざ来てくれたんだから、ちょっとくらいは我慢しましょう」

有里「アクセサリー類が無難かな?彼女のタイプからしてブランドに喜ぶ感じじゃないし、普段着に合うアクセサリーを選んであげるのがいいかもね」

順平「おお……戦闘より頼もしく見えるぜ……」

有里「……ほんと、帰っていい?」

鳴上「アクセサリー……確か、ポロニアンモールにアクセサリーの店があったような」

有里「Be blue Vだね。久しぶりだなぁ」

順平「よし!行こう!すぐ行こう!」

>張り切る順平に押されるようにポロニアンモールに向かった。
836 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 01:24:52.05 ID:f/WCEhsHo
>アクセサリーショップ、『B blue V』。

>順平と湊が真剣な顔でアクセサリーを選んでいる。

有里「これなんかは?ちょっと値段はするけどあんな感じの服だったら似合いそうだけど」

順平「あー、でもそれだと色がさ……」

>……アクセサリーは、付加効果以外見たことがなかったので何となく新鮮だ。

>SP+装備はどこだろうか。

順平「鳴上、ちょっとコレ見てくれよ」

鳴上「あ、はい。どれですか?」

順平「これとこっちで悩んでんだよな。鳴上はどっちだと思うよ」

有里「ちなみに僕のおすすめはイヤリングの方ね」

>赤い石を使ったイヤリングと、シルバーのブレスレット……。

>確かに、どちらもチドリには良く似合いそうだ。

鳴上「うーん……なんとも悩ましいですね」

順平「どっちも似合いそうなんだよなぁ」

鳴上「……このブレスレット、男性が着けてもおかしくないデザインですよね」
837 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 01:25:18.97 ID:f/WCEhsHo
有里「そうだね、いいと思う」

鳴上「ならこれを二つ買って二人で着けるのはどうですか?」

有里「なるほど」

順平「おお……いや、でもそれなんか恥ずかしくねえか?」

鳴上「なんとなくですけど、チドリさん喜びそうだなって思ったんですけど……」

有里「悪くないと思うよ。どうする?」

順平「おそろいね……うーん……」

有里「後はお好きに」

鳴上「俺達は邪魔しないように出とこうか」

>唸っている順平を置いて店を出た。

>湊は少し眠そうにしている。

有里「あ、そうだ。悠にも言っとくよ」

鳴上「ん?なんだ?」

有里「八十稲羽の皆、すごく心配してたよ」

鳴上「ああ、そうか……言うの遅くないか?」

有里「君の様子を向こうに伝えるって約束で帰って来たから、向こうにはもう報告してるんだけどね」
838 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 01:25:53.59 ID:f/WCEhsHo
鳴上「そういえば連絡してなかったな……悪い、助かった」

有里「ついでだからいいよ。……彼ら、割りと無茶するね」

鳴上「そうかな?」

有里「そうだよ。僕とライドウが悪魔退治してたら、危ないからやめとけって言われた」

鳴上「心配だったんだろうな」

有里「でも自分たちはやろうとするんだ。召喚器が無いからペルソナも出せないのにね」

鳴上「何!?止めてくれたんだろうな!」

有里「勿論。というか収まりが付きそうになかったから僕がこうして出向いたわけで。一番の原動力は君のためだったみたいだよ」

鳴上「俺の……?」

有里「君が戦ってるなら、自分たちだけ見てるだけっていうのは出来ない。それが彼らの言い分だった」

鳴上「そうか……そうか」

有里「……嬉しそうだね」

鳴上「そんな事ないぞ。だって危ないだろ」

有里「……そうだね」

>湊は小さく笑った。

鳴上「今度連絡しないとな……」

有里「あんまり心配かけちゃ駄目だよ」

鳴上「ああ。気を付けるよ」
839 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 01:26:23.21 ID:f/WCEhsHo
順平「っしゃー決めた決めた。助かったぜ二人共」

有里「結局どっちにしたの?」

鳴上「あの大きさだと……」

順平「結局ペアで買っちまったよ……これどんな顔して渡しゃいいんだろうな……」

有里「いつも通りでいいよ。あ、渡した後に喜んでくれたら一回ニコってしてあげれば尚良し」

鳴上「な、慣れてるな……」

有里「まぁ、ね」

順平「いや、でもマジありがたかったぜ。俺じゃ多分照れて買えなかったしな」

有里「なんともまぁ」

鳴上「情けない……」

順平「んだとぉ!?先輩だぞ先輩!」

鳴上「ははは……」

>順平と湊と買い物をした。

>八十稲羽か……皆は元気そうだ。

>後で連絡しておこう。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが6になった。

>『No.10 運命 有里湊』のランクが3になった。
840 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 01:26:56.49 ID:f/WCEhsHo
鳴上「ただいま」

有里「ただいまー」

美奈子「おっかえりー。あれ、二人一緒だったんだ」

鳴上「ああ、来てもらったんだ」

美奈子「へぇー、なになに?何やったの?」

有里「別に?」

美奈子「内緒ー?なんかずるいなぁ」

鳴上「まぁ、俺達の用事じゃなかったからな」

有里「言い難いよね」

美奈子「ぐぬぬ……」

>……?

>視線を感じる……。

メティス「じー……」

ラビリス「じー……」

美奈子「……ほら」

鳴上「ん?あ、ああ。そうか」
841 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 01:28:17.08 ID:f/WCEhsHo
>美奈子に言われた事を思い出す。

鳴上「や、やぁ。今帰ったよ」

ラビリス「何よ、それ」

鳴上「……間違ったか」

メティス「何か妙な勘違いをしている気がする」

鳴上「む、なんだ……えーと……グッジョブ!」

メティス「それも違うと思う」

鳴上「……そうか。ならいつも通りで」

ラビリス「せやな。いや、その前に何で急にそんなおかしなったん?」

鳴上「ん?……いや、なんでもないぞ」

メティス「……怪しい」

鳴上「なんでもないって……」

ラビリス「ほんまー?」

鳴上「ああ。別に美奈子に何か言われたとか、そんな事はない」

メティス「何言われたの?」

鳴上「なんでもないって……」

>二人の追求をなんとか躱して部屋に戻った。

鳴上「皆にメールしてみるか……」
842 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 01:30:58.12 ID:f/WCEhsHo
接し方がわからないよ・・・。

遅刻遅刻ー。
あ、他スレは直接リンク貼ったりだけやめてくれれば・・・正直自分もおすすめなので。
こう、もっとオブラートに包んで教えてあげてね

では、また明日。
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 16:38:56.22 ID:2B07CY8c0
乙!
なんだこのリア充達は
844 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/02(日) 21:08:41.92 ID:f/WCEhsHo
ぐぬぬ・・・本日も申し訳ないがお休みで・・・
なんで日曜が一番忙しいんだろう・・・

では、また明日。
845 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/04(火) 02:09:01.47 ID:TURrvskBo


【7/2 晴れ】


>携帯の着信ランプが点いている。

>……メールだ。

>陽介、千枝、雪子、完二、りせ、直斗……。

>皆元気にしているようだ。

鳴上「りせと直斗も帰って来たんだな……」

>次に遊びに行くのは夏休みになるか。

>それまでに事件が片付くと良いが……。

鳴上「さて、学校だ」

>皆と気兼ねなく遊ぶためにも、早く事件を解決しないとな。

>……教室にも空席がいくつか出てきた。

>この時期に転校するのは厳しいだろうが、それでもこの街を出たいという家族が多いらしい。

>まぁ、あんな事があっては仕方ない事ではあるが。
846 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/04(火) 02:09:29.15 ID:TURrvskBo
綾時「おはよう。今日は元気だね」

鳴上「ああ。朝からちょっと嬉しい事があってな」

綾時「へぇ。そりゃいいね。どうしたの?」

鳴上「久しぶりに友達とメールしたんだ。皆元気そうだったから」

綾時「そっか。良かったね」

鳴上「ああ。……?」

>綾時は何故か俺じゃなく、メティスに向かって言っている。

メティス「何で私?」

綾時「え?気になってたんでしょ?」

メティス「ちょ、ちょっと来て……」

>メティスに連れられて綾時はどこかへ行ってしまった。

ラビリス「友達って、八十稲羽のやろ?」

鳴上「そうだよ」

ラビリス「そっか、皆元気なんや。夏休み、遊びに行くん楽しみやな」

鳴上「ああ。だけど、もしかしたら事件のせいで潰れるかもしれないって思うとな……」

ラビリス「あ、そうやな……もしウチらがもっと忙しくなったら、そうなるかもしれへんのよな……うーん」
847 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/04(火) 02:09:55.82 ID:TURrvskBo
鳴上「夏休みまであと半月も無いし、どうなるのかな……」

ラビリス「今桐条さんが公安の上の方と話し合ってるらしいわ。もっと権限を広げて貰えたらええんやって」

鳴上「そうだな。もっと戦力があればいいんだろうけど」

ラビリス「まぁ、難しい話やな……」

鳴上「こればっかりは俺達じゃどうにもな……」

ラビリス「せやけど、やっぱり会いに行きたいよなぁ」

鳴上「そうだなぁ。なんとかならないもんかな……」

綾時「あたたた……ひどい目にあった」

メティス「変なこと言うから……」

鳴上「お帰り……」

ライドウ「おはようございます。……何事ですか?」

>朝から皆とわいわい騒いだ。

>何となく、八十稲羽の頃を思い出した……。
848 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/04(火) 02:10:22.86 ID:TURrvskBo
>そして、放課後。

>ここ最近はすごく和やかに過ごせている。

>しかし、だからこそなのだろうか。

>極々小さい、しかし見過ごせないような奇妙な感覚が心の中にある。

>そう思った時、何故か俺はあの人を探していた。

神条「今日は会えそうな気がしていたよ」

鳴上「俺も、会いたかったです」

>神父、神条久鷹。

>この男の不思議な言葉がまた聞きたい。

>思えば、いつも何らかのヒントをくれているような気がする。

>自分の中の何かと、折り合いを付ける為の。

神条「今日はどうした?また何かあったのかな?」

鳴上「いえ、話がしたかっただけです。会えてよかった」

神条「いつか言っただろう。何かの運命だよ……きっと」
849 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/04(火) 02:10:49.47 ID:TURrvskBo
鳴上「そうかもしれませんね。あの……」

>いつものように、抱えている問題を当ててはくれないのだろうか。

神条「私が何も言わない事が不安か?」

鳴上「あ……はい、少し。今までは怖いくらいに言い当てられてきましたから」

神条「わからないわけじゃない。君はきっと何かを悩んでいるのだろう。だが、それはどうだっていい事だ」

鳴上「どうだっていい、ですか」

神条「ああ、どうだっていい。君の悩みは本来君が解決すべき事だ」

鳴上「それはそうですけど……」

神条「……と、言ってしまっては私の仕事が無い。聞こうか。心に思いがあるのなら」

鳴上「あ、はい。その、最近は忙しいけど、その中でも平和というか……少し、気が抜けてるんです」

神条「ふん。なるほど。それで?」

鳴上「えっと、それで……楽しいはずなのに、平和なはずなのにどこか落ち着かないというか」

神条「……一種のワーカーホリックだな」

鳴上「え?」
850 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/04(火) 02:11:15.56 ID:TURrvskBo
神条「要するに仕事が好きすぎるんだよ。君は多分、誰かに必要とされたくて仕方ないんだ」

鳴上「必要とされたい……ですか」

神条「役目を任されている間は特別な一人でいられるから、その他大勢として見られる事も無い。君はそこに執着してしまっている」

>そうなのだろうか。

神条「埋もれる事を恐れている。自分が価値を失うんじゃないかと。だから、何も無い事が怖い」

>何も無ければ力を使う事もない。

>それは、埋もれるという事なのだろうか。

>だとしたら……少し、怖いかもしれない。

神条「君は誰かにとっての特別でいたい。人のために働いているようで、その実自分の為に動いているようなものだ」

>……言い返す言葉が無い。

鳴上「あなたと話していると、自分がすごく小さい存在に思えますよ」

神条「よくわかっているじゃないか。人間は皆小さい。それが寄り集まって大きな力になる……」

鳴上「つまり、どういう事ですか?」

神条「取るに足らない人間などいない、ということだ。教科書的だがね」

>神条は立ち上がる。

鳴上「そろそろ連絡先くらい教えてくれてもいいんじゃないですか?」

神条「必要無い。君が探せば私はここにいる。きっとそうなる。じゃあ、また」

>また胸中を言い当てられた。

>彼は何者なのだろうか。

>……寮に帰ろう。

>『No.16 塔 神条久鷹』のランクが3になった。
851 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/04(火) 02:12:13.68 ID:TURrvskBo
まったりしてるけど、意味もなく不安。そろそろまた何かが・・・

遅刻・・・遅刻・・・明日からは通常営業に戻るので・・・勘弁して下さい・・・。
では、また明日。
852 :蜷咲┌縺湧IPPER [sage saga ]:2012/09/04(火) 03:43:04.42 ID:cftNttuL0
乙ー


リアルが忙しいなら遅刻も仕方ない
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/09/04(火) 06:14:44.46 ID:WljR+NqWo
854 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:03:09.30 ID:PE5KNNQPo
メティス「おかえりなさい」

鳴上「メティスか……ただいま」

>そう応えると、メティスが途端にむっとした表情になる。

メティス「私じゃ不満なの?」

鳴上「ん?ああ……悪い。別にそんなつもりじゃなかったんだが」

メティス「……本当に?」

鳴上「本当さ。……ちょっと話さないか」

メティス「わ、私と!?」

鳴上「他に誰もいないだろ。それとも用事でも……」

メティス「え、いや、そうじゃなくて……うん、私で良ければ」

鳴上「そうか……。メティスは俺のことどう思う?」

メティス「……ど、どうって?」

鳴上「どういう風に見てるかなって」

メティス「うん……えっと……言わないと駄目?」

鳴上「言い難いのか?……あ、もしかして嫌われてるのか俺」

メティス「そうじゃなくて……鳴上君は、私にとって凄く、特別で……」
855 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:03:50.49 ID:PE5KNNQPo
鳴上「それってどういう事なんだ?」

メティス「え?」

鳴上「特別っていうのは、仲間だからか?」

メティス「え……うん、それも、そうだけど」

鳴上「じゃあもし事件が終わって、俺達が戦わなくて良くなって……そうしたら、もう俺は特別じゃないのか?」

メティス「何言ってるの?何のこと?」

鳴上「俺は特別なペルソナ使いだと思う。一応はリーダーも任されてる。特別なのは、それだけか?」

メティス「私、そんな事言ってない……!」

鳴上「……悪い」

メティス「どうしたの?何かあったの?」

鳴上「いや……」

メティス「私は、鳴上君に助けてもらったよ。私も鳴上君を助けたい。辛いなら……」

>俺はメティスをいつ助けた?

>メティスを励ましたのは、俺が特別でいたかったから……なのか?

>じゃあ、助かったのは誰なんだ?

>メティスか?

>それとも……俺なのか?

鳴上「辛くは無いよ。ただ……わからなくなってきた。俺はどうしたいのか」
856 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:04:22.98 ID:PE5KNNQPo
メティス「それは……」

鳴上「誰かに相談してどうにかなることじゃないんだ。それはわかってる。だけど……」

メティス「私、鳴上君が好き」

>一瞬、思考が止まった。

メティス「こんな気持ち初めてで、姉さんの記憶にあったどの気持ちとも違うからわからなくて……」

鳴上「メティス……?」

メティス「でも、だから私の気持ちだって自信持って言えるの。私は、鳴上君が好き。鳴上君と一緒にいたい。ずっと、いっしょに」

鳴上「待った、待てメティス。突然何だ」

メティス「突然じゃない。ずっと、私の中にあった気持ち……言わずにいようと思ったけど、無理」

鳴上「……けど、何で今なんだ?」

メティス「私にとっての鳴上君は、事件の事が無くたって特別だって伝えたくて。でも、それだけだから。それ以上は望まない」

>メティスは少し視線を下げた。

メティス「私は……消えるべきだから。本当はここにいない存在だから」

鳴上「……」

メティス「急にこんな事言っちゃってごめんなさい。あの……それじゃ」

>メティスは走って階段を上る。

鳴上「メティ……何で俺は……」

>追いかけるべきなのだろう。

>だけど、何故か体は動かなかった。

>ここで追いかける事も、自分の立場を守る為のような気がして……。
857 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:05:34.59 ID:PE5KNNQPo
美奈子「……見ちゃった」

ゆかり「……だねー」

鳴上「っふ、二人共、いつの間にそんなとこに!?」

>一頻り自己嫌悪して顔を上げると、美奈子とゆかりが苦い顔でこっちを見ていた。

美奈子「大体俺のことどう思う?辺りからかな」

鳴上「めちゃくちゃ最初からじゃないか」

ゆかり「ちょっと遊びに来てみれば……何か大変ねー」

美奈子「ほんと、男ってどうしてこう……」

ゆかり「よし、今日は私に任せなさい!美奈子もいいよね?」

美奈子「あー、うん。びしっとお願いします隊長」

鳴上「あの、何を……」

ゆかり「鳴上君……表出よっか」

>笑顔が、怖かった。
858 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:06:09.05 ID:PE5KNNQPo
ゆかり「バカじゃないの?てかバカじゃないの?」

鳴上「……はい」

ゆかり「あのねぇ……あの子がどんな気持ちで打ち明けたかとかさ……ちょっとは汲んであげなさいよ」

鳴上「それは、わかってるんですけど……」

ゆかり「じゃあ何?何か考える事でもあったわけ?」

鳴上「その、ええと……」

ゆかり「まぁ、考える事はあると思う。急にあんな事言われたらね。だけど、納得する前に動くって事も大事なのよ」

鳴上「納得する前にですか」

ゆかり「あの子、本意じゃなかったと思う。本当は、内緒にして……どうしても我慢できなくなった頃に言おう、それまではって思ってたんだと思う」

ゆかり「でも、何か悩んでる鳴上君を見て、この人のためならって、それで言ったんだよ。それはわかる?」

鳴上「……わかります」

ゆかり「そこまでさせといて、あんな顔させといて、フォローも無しってのはそりゃ……駄目でしょ」

>目を逸らして、自嘲気味に笑ったメティスの顔。

>何かが張り裂けそうな、あの表情。

>俺が……させた。

鳴上「俺、メティスに……」

ゆかり「何言うつもり?」
859 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:06:38.21 ID:PE5KNNQPo
鳴上「ありがとうと、ごめんなさいを。それから……消えるなんて言わないでくれって、そう言いたいです」

ゆかり「……ん。上出来。ほんとは私に言われる前に気付いて欲しいんだけどね」

鳴上「わざわざすみません」

ゆかり「いいのいいの。鳴上君の為じゃないから」

鳴上「え?」

ゆかり「メティスの為。私ねぇ、見たく無いのよ。どうせ叶わないって我慢する所」

>ゆかりは笑って言う。

ゆかり「ほら、行ってこい色男!しっかりねー」

鳴上「はい。あの……ありがとうございました!」

>寮に戻って、メティスの部屋の前に立った。

鳴上「メティス、いるか?」

メティス『……鳴上君?』

鳴上「いるならいい。そのまま聞いてくれ」

メティス『う、うん』

鳴上「……ありがとう。好きだって言ってくれて、凄く嬉しかった」

メティス『……』

鳴上「それから、すぐに追いかけなくて悪かった。本当に自分の事だけ考えてしまってた。お前がどんな気持ちかも考えずに」

メティス『そんな……いい、別に……』
860 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:07:05.40 ID:PE5KNNQPo
鳴上「あとな。消えるなんて、言わないでくれよ。前にも言ったけど、俺はお前も湊も、綾時だって諦めるつもりはない。皆で先に進む道があるはずだ」

メティス『……まだ、そこにいて』

>メティスがドアを開けた。

メティス「ありがとう。だから、好き」

鳴上「……けど、好きだって言われても俺は、今はそういうのは」

メティス「わかってる。ずっと見てたから。だけど、忘れないで。私が持ってた気持ち……」

鳴上「ああ、絶対忘れない」

メティス「……ふふ」

鳴上「どうした?」

メティス「嬉しかっただけ。……ありがと」

鳴上「……ああ」

>メティスの想いに応える事は出来ないが、それでも正面から向き合う事は出来る。

>……これも自分の為なのだろうか?

>違うと思う。いや、違うと思いたい。

美奈子「世話焼けるよねぇ」

ゆかり「まったく」

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のランクが3になった。

>『No.12 刑死者 メティス』のランクが6になった。
861 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:08:15.17 ID:PE5KNNQPo


【7/4 晴れ】


>満月が空に大きく見える。

>今夜は悪魔が興奮し、暴れる夜……

>今日ばかりは、総出で悪魔退治に挑まなければならない。

パスカル「主、気をつけろよ」

鳴上「そっちもな。今日は多分楽だとは思うけど」

>寮の面々に加えて藤堂と刹那、そしてライドウが協力してくれている。

>これなら個々の負担はかなり減るだろう。

風花『それじゃ作戦開始します。皆さん十分に気を付けて戦ってください』

>風花から告げられると同時に悪魔が一体飛びかかってくる。

>俺は刀を構えると、撃ち落とすように振りぬいた。

>……。

鳴上「粗方片付いたか。パスカル」

パスカル「ああ、ほとんどな」

鳴上「……悪魔ってのは、どこから来てるんだろうな」

パスカル「ん?ああ、大体の悪魔は……」
862 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:08:43.74 ID:PE5KNNQPo
ライドウ「魔界ですよ」

鳴上「ああ、ライドウ。お疲れ」

ライドウ「然程疲れはありません。これでもプロですから」

鳴上「頼もしいな。けどここらはほとんど終わったよ」

ライドウ「でしょうね。他の所もほとんど終わっています」

鳴上「何?やたら早いな。何かあったのかな」

ライドウ「甲斐さんが大暴れしているようで」

鳴上「ああ……そう……」

>ライドウがベンチに座る。

>俺も隣に座った。

ライドウ「……あの人は不思議な人ですね」

鳴上「そうだな……妙な人だ」

ライドウ「知っていますか?今日はあの人と一緒にもう一人デビルチルドレンが来ている事を」
863 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:09:42.54 ID:PE5KNNQPo
鳴上「いや、初耳だ。あ、もしかして……」

ライドウ「甲斐さんが探していた、要未来という人物。どうやら彼女もまたデビルチルドレンだったようです。戦闘力は甲斐さんに及びませんが」

鳴上「悪魔と人間の間に生まれる……か。どんな気分なんだろうな」

ライドウ「悪魔は人と変わりません。見ていればわかるでしょう」

>ライドウはパスカルを指さして言った。

鳴上「そうだな。物も考えるし、感情だってある。それはわかってる」

ライドウ「少しいいですか」

鳴上「ん?」

ライドウ「甲斐さん達と話がしたいんです。良ければ仲介していただきたい」

鳴上「仲介って……別に普通に話しかければいいだろ」

ライドウ「ですが、自分は悪魔を狩る側。彼らは人間側とはいえ悪魔の因子が強い。……警戒されるやもしれないので」

鳴上「そういうもんなのか?」

ライドウ「取り越し苦労かもしれませんが、万全を期したいので」

鳴上「わかったよ。じゃあ行くか」

>風花に刹那達の居場所を聞いて、ライドウと一緒に行く事になった。
864 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/05(水) 00:10:09.51 ID:PE5KNNQPo
言っちゃった・・・。

では、また明日。
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/05(水) 00:10:40.80 ID:UnE1OUKN0
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/09/05(水) 00:26:32.52 ID:QzGRJ/Ejo

867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/09/05(水) 00:45:40.43 ID:CldKgX/po
楽しみにしてるよ、乙
868 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/06(木) 00:01:21.80 ID:ITd5tUiio
パスカル「クール!」

クール「ん?なんだ、お前らか」

刹那「よう、鳴上。そっちは……」

ライドウ「こんばんわ。自分は葛葉ライドウ……デビルサマナーです」

刹那「デビルサマナー……」

「悪魔退治の専門家が何の用なのかしら」

>頭上から声がする。

刹那「俺達だって似たようなもんだろ、未来」

未来「まぁそうなんだけど。よっと。君が鳴上君?初めまして、私は要未来。デビルチルドレンよ」

>大きな鳥?獣?のような悪魔から降りて地面に立つ。

>彼女が刹那の探していた人……。

>同じデビルチルドレンで、刹那の友達。

>しかし、なんだ。

鳴上「おでこ……」

未来「なっ……!刹那!この子失礼じゃない!?」

>思わずこぼした一言に刹那が腹を抱えて爆笑する。
869 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/06(木) 00:02:13.85 ID:ITd5tUiio
刹那「っし、っしゃーねーだろ!お前がいつまで経ってもそんな……髪型……ぶはっははははは!」

未来「どいつもこいつも……」

「落ち着きなさいよ未来」

未来「私は落ち着いてるっての!」

鳴上「そっちの悪魔は未来さんのパートナーなんですか?」

未来「え?ああ、そうそう。グリフォンのベール」

ベール「よろしくね」

鳴上「あ、よろしく……」

ライドウ「……何だか、気が抜けました」

刹那「ひっひひ……あー腹痛い。なんだよ、何か警戒してたのか?」

ライドウ「いえ、自分は貴方の同胞を何体も何十体も、何百体も屠ってきましたので。警戒されているのではと思っていた」

刹那「気にすんなよ。悪魔っつっても悪事働くヤツだけだろ。そいつらは俺達の敵だ。半分悪魔でも、半分は人間なんだから」

>刹那は事も無げに言った。

ライドウ「そうですか。無用な心配だったようで。さて……本題に入りましょう」

鳴上「本題?」

ライドウ「もしかするとこの地に住んでいる人間にはわからない事なのかもしれません。なので、この地に住むわけでなく、半分人ではない彼らと話す必要があった」

刹那「……マジな話か」

ライドウ「特にあなた……甲斐さんに聞きたい。この街は、何か異常な空気に包まれている」
870 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/06(木) 00:03:02.62 ID:ITd5tUiio
未来「それは私も思った……来た途端、何か気持ちの悪い空気だなって」

刹那「悪魔がいるせいじゃ無いな。もっとデカい何かがこの街を覆ってる感覚だ」

ライドウ「同様の違和感を自分も感じました。そして事件のあらましを聞くにつれ、ある確信が心中に生まれた」

鳴上「俺は何も感じないな……外から来てないからか?」

ライドウ「それもあるでしょうが……自分の得た確信についてお話します。自分が感じたのは、事件はまるで誰かを中心に動いているような気がする、そういう感覚です」

鳴上「誰か?」

ライドウ「貴方ですよ、鳴上悠。貴方が訪れて街は狂い始め、貴方のいる所で事件が起こる」

鳴上「なっ……」

刹那「おいおい、そりゃちょっと飛躍しすぎ……」

ライドウ「犯人だとは言いませんが、貴方が特別すぎる部品である事は疑いようがありません」

鳴上「けど、最初にマヨナカテレビが映ったのは俺が来る前だったはずだぞ」

ライドウ「なら言い方を変えましょうか。貴方は選ばれている。この事件の元凶、奇怪な力の源に……事件を回す歯車として」

鳴上「俺がここに来る事もそいつに決められてたってことか?」

ライドウ「恐らくは。しかしこれは悲観する事ではない。貴方は事件の謎を解く鍵です。良く考えて行動すれば、必ずどこか接点に行き当たる」

未来「……鳴上君の選択が、これから先を大きく変えるかもしれないって事?」

ライドウ「そういう事です」

鳴上「俺が……」
871 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/06(木) 00:03:32.49 ID:ITd5tUiio
ライドウ「自分は鳴上君の事を良く知りません。だが八十稲羽で、貴方の友達には出会った。彼らを見ていれば……貴方が信用に足る人物だとはわかる」

ライドウ「自分が伝えたかったのはそれだけです。それでは、自分は悪魔退治の続きに戻る事とします。後は……お任せします」

>ライドウは刹那に目配せするとこの場を立ち去った。

刹那「任せるったってな……」

未来「先輩としてビシっとキメなさいよ」

刹那「俺そういうの得意じゃないんだよ」

未来「知ってるけど」

刹那「……ったく。おい、鳴上」

鳴上「あ、は、はい」

>動転してしまっていた俺に刹那が呼びかける。

刹那「気にすんなとは言わねえよ。けど気にすんな」

鳴上「……は?」

未来「すごいバカみたい」

クール「バカなんだよ」

ベール「体は大きくなっても変わんないのね」

刹那「う、うっせえ!あー、その、なんだ。俺も昔、世界を左右する選択ってのを任された事がある」
872 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/06(木) 00:04:17.89 ID:ITd5tUiio
鳴上「そういえばそんな事言ってましたね……」

刹那「お前の今の状況も、多分それに近いと思う。あの時、俺は一人で……どうしようか、すげえ悩んだ。今でも後悔する事がある」

刹那「だけど、お前や、その周り……もっと言えば人間皆を見る度に、これで良かったなって思えるんだ。それでだ。お前の周りには誰がいる?」

>俺の周り……。

>八十稲羽の仲間たち。

>そして、こちらにも。

鳴上「仲間が……友達が、います」

刹那「そいつらは、お前が間違った方に進もうとしたらどうすると思う?お前が困ってる時、どうすると思う?」

>湊が言っていた。

>彼らのモチベーションは、“君の為”だと。

>陽介達は俺の為に心を砕いて考えてくれるだろう。

>桐条さん達は、陽介達とは違う観点から俺に助言をくれるだろう。

鳴上「きっと、助けてくれます。……仲間だから」

刹那「だろ。だったら心配すんな。お前は大丈夫だ。俺だって助けてやるから」

未来「……一人で悩んだって、私は?」

刹那「最後は俺一人だったろ?」

未来「なんか納得行かないわ……」

>信じられる仲間がいる。

>最近、一人で考えこむ事が多かったから不覚にも忘れていた。

>俺は一人じゃない。

ライドウ「……任せて良かった。自分ではああは言えないから」

>『No.11 剛毅 葛葉ライドウ』のランクが2になった。

>『No.15 悪魔 甲斐刹那』のランクが2になった。
873 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/06(木) 00:04:45.55 ID:ITd5tUiio
>一度、考えてみよう。

>八十稲羽で、俺はイザナミに選ばれてテレビに入る力を得た。

>しかし、事件の中心には自分から望んで近付いて行ったはずだ。

>以前の事件の中心は、選ばれた他の二人。

>蚊帳の外にいるはずだった俺は、ある切欠からそこに近付いて行った。

>だが、今回は違う。

>俺は最初から巻き込まれていた。

>それが犯人の思惑通りだとするなら、やはり事件が起こったきっかけは……俺自身?

>鍵は俺……と言われても、全く心当たりが無い。

>どこかで黒幕と接触しているのか?

>……わからない。

鳴上「ああ、どうなってるんだ……」

エリザベス「全くでございます」

パスカル「主、そう思いつめる……な……」

鳴上「……またか」
874 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/06(木) 00:05:13.23 ID:ITd5tUiio
エリザベス「今宵は良い月夜で。エリザベス、でございます」

鳴上「知ってるよ。久しぶりだな」

エリザベス「はい。と言いましても、私、常にあなたを監視しておりました」

パスカル「監視……敵か?」

鳴上「いや、敵じゃないよ」

エリザベス「どうやら少しずつ事件は進展している様子……私、いたく感動いたしました」

鳴上「ああ、ありがとうな」

エリザベス「……事件の全容は、全ての人に関わる大きな物、でございます」

鳴上「全ての人に……?」

エリザベス「全人類の集合的無意識、そこから生まれる人類の無意識下の願望……それが、普段と違う形になっているのです」

エリザベス「あなたはその中心……いわば、囚われた存在。人の望みを託され、その為に生きる事を余儀なくされる人……」

鳴上「どういうことなんだ」

エリザベス「私にも全てはわかりません。しかし、あなたはそうした存在。それだけはわかるのです」

鳴上「俺が全人類の望みを背負ってるって……大袈裟な話じゃ、無いんだよな」

エリザベス「自覚はないかもしれませんが、そういう状態にあるのです。もしかすれば、自覚する事で何か変化があればと、助言に参りました」

鳴上「そうか……わざわざありがとう」

エリザベス「私の望みは人のそれと別にありますので、そちらの為だと思っていただければ。あなたの成長は私の喜びでもあるのです」

鳴上「それなんだけど、エリザベスの望みって……」
875 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/06(木) 00:05:43.68 ID:ITd5tUiio
パスカル「……いないな」

鳴上「全くわからないな、あの人は……」

有里「や」

鳴上「ん?湊、いつから居たんだ?」

有里「いや、ついさっきから。誰と話してたの?」

鳴上「エリザベスって人なんだけど……」

有里「……へぇ」

鳴上「そういえば、アイギスとは知り合いだったみたいだし湊も知ってるんじゃないか?」

有里「一応ね。さて、それじゃ続きだ」

>湊は何故かエリザベスの話題を避けようとしているようだ。

>過去になにかあったのだろうか。

鳴上「なぁ、エリザベスと昔何か……」

有里「……仲が、良かったんだ。でもそれは僕の話だけど僕じゃない。僕は、僕の欠片でしかないから」

鳴上「それって、どういうことだ?」

有里「僕は作り物、まがい物って事。さ、まだ夜は長い。次に行こう」

>……湊も何か、心に想いがありそうだ。

>人類の望み……一体何のことだろうか。

>『No.14 節制 エリザベス』のランクが2になった。
876 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/06(木) 00:07:04.07 ID:ITd5tUiio
まぁ、見てる人は皆知ってたけどね。

では、また明日。
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 01:47:13.03 ID:QkEKo9d00
878 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/07(金) 00:00:57.12 ID:xRMc2pwWo


【7/5 晴れ】


>学校から帰ると、何故か寮内が騒がしかった。

鳴上「なんだろうな」

メティス「この周波数は……知らない人の声。女の人みたい」

鳴上「客かな……」

>突然、玄関が開いて風花が出てきた。

風花「とにかく、お引取り願います!」

「ちょ、ちょっと!本当に記事にするとかじゃないから!信じてってば!」

鳴上「おっと。どうしたんですか?」

風花「あ、鳴上君。それにメティスも、おかえりなさい」

「あ、君達もここの生徒さん?良かったら、ちょっとお話聞きたいなーとか思ってるんだけど……」

風花「もう!困ります!」

鳴上「ええと……マスコミの方ですか?」

「まぁ、一応ね。といっても今はプライベートっていうか……事情があるみたいだから、記事にはしないって言ってるのにそこのお姉さんに追い出されそうなのよ」

風花「だから、何度も言ってますけど話す事なんて何も……」
879 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/07(金) 00:02:02.62 ID:xRMc2pwWo
「嘘ね」

風花「……ごめんなさい、鳴上君にまかせてもいい?」

鳴上「はぁ、まぁ……ええと、俺達普通の学生で、別に記事になるような事無いと思うんですけど」

「あなた達が、ポートアイランドで悪魔と戦ってるのを見たって人がたっくさんいるんだけどなー」

鳴上「人違いでは?一介の高校生にできる事じゃないですよ」

「……あなた、若いのにヤルわねぇ。大物政治家並に嘘吐くの上手いわ」

鳴上「ですから嘘とかじゃなく……」

「ペルソナ、使えるんでしょ?」

>……!?

風花「あのっ、今、何て……」

「もう隠しても仕方ないから言うけど、私もペルソナ使い。昔悪魔と戦ったりしてね」

風花「すみません!あの、私、確認しないで……」

「いや、こっちこそごめんなさいね。最初にマスコミ名乗っちゃったから緊張しちゃったのよね、多分。ちょっとは興味持ってもらえたかしら?」

風花「それなら、少しお話してもいいかもしれません。あの、お名前は……」

「私は天野舞耶。それじゃ、いろいろ聞いてもいいかしら」

>……。
880 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/07(金) 00:02:31.68 ID:xRMc2pwWo
舞耶「はぁーすごいわねー。本当に機械なんだ」

メティス「やっ、そんなところ……あんっ!」

鳴上「あんまりいじらないでやってください。精密機械なんで」

舞耶「あ、ごめんごめん。メティスちゃん、ごめんね?」

メティス「……いえ」

風花「確かにペルソナ使いですね……どうして気付かなかったんだろう」

舞耶「あ、私、ペルソナ入れたり切ったりできるのよ。テレビのスイッチみたいに」

鳴上「そんな事が?」

舞耶「逆に君達は出来ないのね。環境の違いかしら」

風花「隠す必要もありませんでしたから……それで、舞耶さんはどうしてここを?」

舞耶「メディア関係はやっぱり現場が一番早いのよ。悪魔が出たって話もすぐ届いたわ。ほとんどの人は興味持たなかったけど、私は違った」

鳴上「悪魔を知ってるんですもんね」

舞耶「そう、昔の事があったから、多分事実だろうって思ってた。で、取材にかこつけて現地に入って、そこで聞き込みして……」

風花「やっぱり、戦ってるの見られてたんだ……」

舞耶「そうでもないわよ。あなたやそこの彼は誰も見てなかった。ただ、空飛ぶ人がいたっていうのが凄く話に上がってね」

>ラビリスだ。

>認識制御できるならここで使うべきなんじゃないのか……?
881 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/07(金) 00:03:04.15 ID:xRMc2pwWo
舞耶「その子がここに住んでるってわかったから来てみたわけ。勿論、記事にするとかネタにするとかじゃなく、助けに来たつもりだったんだけどね」

風花「本当、すみません……」

舞耶「わかってもらえたらいいのいいの。それで、状況はどうなってるの?というか、あなた達は何で戦ってるわけ?」

鳴上「ええ、実は……」

>事件の事をひと通り説明した。

>……昨夜言われた事は省いて、だが。

舞耶「シャドウね……悪魔とはまた違うのよね?」

鳴上「ええ。今はシャドウの方は落ち着いてますが、悪魔が街に……昨夜も一晩がかりで戦ってました」

舞耶「お疲れ様。でもそっか……まだ事件の元凶はわかってないんだ」

鳴上「正直、何がしたいのかもさっぱりで。昔の話をもう一度やってどうするつもりなのか」

舞耶「確かにわからないわね。そこが不気味。私達の時みたいに、手掛かりになるような話も無しか……」

鳴上「正直、目前の敵を倒していくしか出来なくて、何も起こらない時は手詰まりに近い状態です」

舞耶「……よっしわかった!私しばらくここに留まる事にする!」

風花「えっ、でもお仕事は……」

舞耶「悪魔騒動の取材に来てるだけだから、ちゃんとした仕事よ?」
882 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/07(金) 00:03:37.15 ID:xRMc2pwWo
鳴上「でも、危険かもしれませんよ」

舞耶「子供が大人に言う事じゃないわねー。まぁ心配しなくても大丈夫。私、結構強いのよ」

風花「それじゃ、一応連絡先を……」

舞耶「はいはーい。改めてよろしくね、皆。さーて調べるぞー」

>やたらと元気のいい記者、天野舞耶と知り合いになった。

>事件について調べてくれるらしいが、大丈夫だろうか。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.18 月 天野舞耶』を手に入れた!

>そして、数時間後、その日の夜。

風花「鳴上君、ちょっと」

鳴上「はい?」

風花「夕方の……天野さんから連絡があって、取材行くけど付き合わないかって」
883 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/07(金) 00:04:04.02 ID:xRMc2pwWo
鳴上「何で俺なんですか?」

風花「あ、いや……私でもいいんだけど、私その……すごい失礼な初対面だったから。ちょっと、ね」

鳴上「あー……わかりました、それなら行ってきますよ」

風花「ほんと、ごめんなさい……。ポロニアンモールまで来て欲しいって言ってたから、天野さん、そこにいると思う」

鳴上「はい。それじゃちょっと行ってきます」

風花「はい、お願いします。何かあったらすぐ連絡してね」

>取材……一体どこを取材するのだろうか。

>とにかく、ポロニアンモールまで行ってみよう。

舞耶「あ、来た来た。おーい、こっちこっち」

鳴上「こんばんわ。流石に行動が早いですね」

舞耶「ネタは鮮度が命!ってね。えーと、鳴上君で良かったっけ」

鳴上「はい。それで、取材ってのはどこに?」

舞耶「うん。一応電話したらオッケーしてくれたからね。事件と言えばここでしょう」

>……交番?

鳴上「ええと……オッケーしてくれた、んですよね」

舞耶「普通は門前払いなんだけど、何故か二つ返事で許可してくれたのよねぇ。不思議だわ」
884 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/07(金) 00:04:55.79 ID:xRMc2pwWo
>確か、ここの交番は……。

>未だ息がかかっているのだろうか。

舞耶「さ、行ってみよー!」

鳴上「あ、舞耶さん……」

>舞耶はマイペースに突撃していく。

舞耶「すみませーん、お電話した者……なん……ですが……」

>舞耶が中にいる警官を見て固まる。

「ああ……電話受けた先輩が今警らしてる途中なんで、俺で良ければ話聞きますよ。……あの、何か?」

>見た目は普通の警官のように見える。

>知り合いだったのかと思ったが、それにしては相手側の反応が薄い。

舞耶「あ、ああ、そうですか。それじゃお伺いしたいんですけど……はっきり言ってしまうと、以前起きた悪魔事件についてです」

「この前のですか。……実は、俺が配属されたのは例の事件の後、増員にって理由なんで、良く知らないんです」

>警官は申し訳なさそうに頬を掻いた。

舞耶「なるほど、そうだったんですね。ではわかる事だけで良いので聞いても?」

「さっきも言った通り、詳しくは知りませんが……実際巨大な怪物が目撃されて、かなりの物的被害が出た事は間違いありません」
885 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/07(金) 00:05:21.91 ID:xRMc2pwWo
舞耶「物的被害……人的被害は?」

「それは確認されていません。話によればある団体が早期に解決したためだとか」

舞耶「そうですか……すみません、わざわざ」

「いえ……それだけでいいんですか?」

舞耶「え、ええ。ごめんなさいね、大したことじゃないの」

「はぁ……ええと、これからも何か御用がありましたらいつでもどうぞ」

舞耶「はい、ありがとうございました。あの、それじゃまた聞きたい事があったら来ますんで」

「はい。それでは」

鳴上「あーあのー……一応、名前くらい聞いておいた方がいいんじゃ……」

「あ、俺は……周防達哉って言います。先輩がいない時は大体俺がいるんで」

鳴上「わかりました。また何かあったらお世話になります」

達哉「いつでもどうぞ」

舞耶「行こう、鳴上君」

>二人で交番を出た……。

鳴上「あの、どうかしたんですか?」

舞耶「あ、ううん。なんでもないの。ちょっと知り合いに似てたものだから」
886 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/07(金) 00:06:29.07 ID:xRMc2pwWo
鳴上「知り合いに……?」

舞耶「けど、気のせいだった。うん、そうそう。ごめんね、大した事無いのに呼びだしちゃって」

鳴上「ああ、いえ……本当に気のせいだったんですか?」

舞耶「あら、疑うわねー。びっくりするくらいそっくりだったけど、知り合いだったらさ、向こうからも何か反応あるでしょ?」

鳴上「まぁ……そう、ですよね」

舞耶「うんうん。さて、それじゃ私帰るわ。……あのね、あの警官、あんまり関わらない方がいいかも」

鳴上「え?何でですか?」

舞耶「記者のカン!じゃあね!」

鳴上「あ!舞耶さん……行っちゃったか」

>あの警官、知り合いでは無いと言っていたが……

>やはり何かあるんじゃないだろうか。

>ペルソナ使いの記者、天野舞耶……

>新任の警官、周防達哉……

>また何かありそうな二人だ……。
887 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/07(金) 00:09:42.62 ID:xRMc2pwWo
ついに主人公勢揃い。

ここからコミュニティを伸ばす相手によって事件がどう進展するかが変わるマルチエンディングシステムに!
いや、冗談ですけど。

では、また明日。
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/09/07(金) 00:14:24.90 ID:fi34q90U0
乙乙
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/07(金) 07:06:38.62 ID:Z2tpsROq0
今まで周防出てなかったのか…
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/09/07(金) 15:01:08.36 ID:CZFx0Akno

891 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:01:00.94 ID:NiUXowcfo


【7/9 曇り】


>いよいよ、街に人が少なくなってきた。

>悪魔はあれ以降目撃されていないが、俺達の手を逃れた悪魔が人を襲う事件は時たま発生してしまっている。

>今までは事故、あるいは原因不明として内密に処理されていたそれが、あの件以降は悪魔の仕業と囁かれるようになった。

>一層、街から出る人が増えているのはそのせいだ。

ラビリス「なんや、寒々しい言うんかな。やーな感じやなぁ」

メティス「今までも、あんまりいい印象は無かったけど……それでも、人がいるのといないのとじゃここまで印象が違うんだ……」

鳴上「早く何とかしないとな……」

>三人で学校に向かっていたのだが、途中で妙な事に気付く。

鳴上「なんか、逆に行く生徒多くないか」

ラビリス「ほんまやな。忘れ物……ってワケやないんやろうけど」

メティス「学校で何かあったんじゃ……?」

鳴上「ん。あれ、天田じゃないか」

天田「先輩、おはようございます」

>部活の為に俺達より早く出たはずの天田に出会った。
892 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:02:08.75 ID:NiUXowcfo
鳴上「学校、何かあったのか?」

天田「僕も良くはわからないんですよ。朝練してたら急に悲鳴が上がって、警察まで来ちゃって……今日、休校になるんだそうです」

ラビリス「あらら、ほな真面目に朝はようから登校した子らは無駄足踏むわけや。可哀想になぁ」

鳴上「ちょっと待て、それどころじゃないんじゃないか?とにかく俺は学校見てくる。皆は……」

天田「寮に帰って桐条さんに連絡を。もし僕らの出番だったら恐らくは向こうにも事情は通ってるでしょうから」

鳴上「ああ、頼む。それじゃあな」

メティス「あ、私も……」

鳴上「いや、一人で十分だ。行ってくる」

>少し駆け足で学校に近付く。

>校門前に鳥海先生が立っている。

鳥海「あら、鳴上君。おはよう」

鳴上「あ、おはようございます」

鳥海「今日休校よー」

鳴上「えっと、何かあったんですか」

鳥海「言えないんだけどね。……まさか、中入りたいなんて言うんじゃないでしょうね」

>ものすごく不機嫌そうに睨まれる。

鳴上「……あー、えっと、その」

鳥海「ただでさえ変な噂のせいで気遣うってのに、こんなもん生徒に見せられるわけないでしょ……」
893 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:02:38.02 ID:NiUXowcfo
鳴上「え?今何て……」

鳥海「うっさい!いいからさっさと帰んなさい!」

鳴上「でも……」

>校舎から制服の警官が出てくる。

>本当に警察沙汰になっているのか……。

鳴上「って、周防さん!」

達哉「ん?お前、確か……」

鳥海「お疲れ様です」

達哉「あ、どうも。そちらもお疲れ様です。どうかしましたか?」

鳥海「いえね、生徒が中に入ろうって言うんで、なんとか帰らせようとしてた所でして」

達哉「……彼、関係者ですよ。多分、見てもらう必要があると思います」

鳥海「へ?」

達哉「いわば重要参考人ってヤツですね。刺激が強いが、いいか?」

鳴上「あ、はい!構いません。鳥海先生、これならいいですよね?」

鳥海「……何か、なーんか胡散臭いっていうか。いえいえなんでもありませんよ。オホホホホホ。それじゃ鳴上君、くれぐれも粗相無いようにね!!」

鳴上「う、はい……それじゃ周防さん、よろしくお願いします」

達哉「ああ。ついてきてくれ」

>達哉に付き従うように校舎に入る。
894 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:03:07.11 ID:NiUXowcfo
>校舎内は何か奇妙な雰囲気に包まれているようだ。

達哉「鳴上、だったな」

鳴上「はい」

達哉「今日はあの……記者の人は別なのか」

鳴上「天野さんですか?あの時はたまたま一緒だっただけで、別にチームだとかそういうわけではないですよ」

達哉「そうか……」

鳴上「天野さんが気になるんですか?」

達哉「少しな。初めて会ったはずなんだが、どこかで会った事があるような……」

鳴上「天野さんも同じような事言ってましたよ」

達哉「そうか。それなら本当にどこかで会ったのかもしれないな。……夢を、見るんだ」

鳴上「はい?」

達哉「いや、夢というか……フラッシュバックっていうのか。見たことも無い景色とかがばっと目の前に広がって、そこには知らない奴らとあの人が」

鳴上「……何か、奇妙な話ですね」

達哉「そうだな。俺もそう思う。……気にしないでくれ。この教室だ」

>二年のクラスか……。

達哉「先に言っておく。中にあるのはホトケだ」

鳴上「ホトケ……って、ええ!?」

達哉「今朝、一番に登校してきた先生が即刻通報した。自殺……かどうかは見ればわかる。かなりキツイけど、見るか?」
895 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:03:36.72 ID:NiUXowcfo
鳴上「……み、見ます。何となく、見ておかなきゃいけない気がする」

達哉「そうか。幸いというか、トイレは近い。現場だけは汚してくれるなよ」

>がらりとドアを開ける。

>目に入ったのは、赤。

>俺はこの色を良く知っている。

>場合によっては戦闘中に目にする事もある、自分の中を流れる液体の色だ。

>匂いも、口を切った時口中に広がるあの味がさらに濃厚になったような、むせるような……。

>その光景の出元である、女生徒だったであろう物体に目線を移した時、胃が痙攣した。

鳴上「うぉ……えっ……」

達哉「落ち着け。トイレなら……知ってるよな」

>達哉の声がやたら遠くで聞こえる。

>俺は男子トイレに駆け込み便器に胃の中身をぶち撒けた。

>胃酸が鼻孔を刺激し、涙が溢れる。

鳴上「……っは、はぁ。うぇっ……くそっ」

>今まで俺は、どれだけ非現実的な世界を見てもきちんと受け止めてきた。

>しかしそれは気のせいで、現実と非現実を勝手に線引していたに過ぎなかったようだ。
896 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:04:18.52 ID:NiUXowcfo
>夜、戦っている俺は非現実の側。

>テレビの中で戦う俺は非現実の側。

>学校は、現実の側。

>だけど、そこに……

達哉「俺はただ現場を見て、応援を呼ぶだけだ。巡査にどうこう出来るもんでもない」

>いつの間にか達哉が背後に立って背中をさすってくれていた。

達哉「だが、自殺じゃないのは見ればわかる。それとも、侍よろしく自分でかっさばいたのか?まず無いな」

鳴上「あれは……」

達哉「知り合いか?」

>首を横に振る。

>知らない生徒だった。

達哉「最初に発見された時、まだ血が流れてきていた。つまり、その直前に死んだ事になる。……腹を裂かれ、喉を開かれて」

鳴上「すみません、わざわざ見せてもらったのに……」

達哉「見せた俺が悪いんだ。もしかしたら、と思ったけど……お前に関係あるはず無かったな。あれはただの殺人事件だ」

鳴上「例えば、変質者の仕業だったりするんでしょうか」

達哉「そうかもしれん。それか、彼女に恨みがある……まぁ、あの若さであれだけの事をされるような恨みは持たれてないだろうが……とにかくその辺りを中心に調べる事になるだろう」

>もう一つ、わかった事がある。
897 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:04:47.04 ID:NiUXowcfo
>今まで、シャドウは人の一部だと言っておきながら、どこか別に考えていた所があった。

>悪魔なんて完全に別だから気にもしなかった。

>しかし、今日のコレは違う。

>あの犯行……死体からは……

>確かに、人間の匂いがした。

>犯人は、人間だ。

>……。

>巌戸台分寮のラウンジは、今までに無い程重い空気に包まれていた。

>原因はわかっている。

>……俺だ。

メティス「……あの」

>メティスが何か話しかけようとしてくれるが、すぐに困ったように座り直す。

>風花はそれを見ておろおろし、ラビリスがつまらなそうにしている。

>湊はぼんやりテレビを眺め、美奈子は何故か歯痒そうにしていた。

>そして、天田が黙ってコーヒーをいれてくれた。
898 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:05:15.87 ID:NiUXowcfo
>……まだ、瞼の裏にあの教室が浮かぶ。

>俺一人で見に行って良かった。

>メティスやラビリスには見せたくない光景だった。

>結局皆黙ったままでいると、表に車の止まる音がした。

風花「あ……」

>寮の玄関が開いた。

順平「うぃーっす!……って、アレ。どったの、これ」

真田「何だかわからんが沈んでるようだな」

アイギス「一応、報告は来ていますが……」

ゆかり「風花、何かあったの?」

風花「うん、実は……」

>美鶴がジェラルミンケースをテーブルにどかっと乗せた。

美鶴「とにかく揃っているようだな。皆、頭を切り替えろ。今日は重要な話がある」

鳴上「……重要な話?」

真田「ああ。面白い事になってきたぞ。きっと驚く」

美鶴「明彦、面白がるな。先に合流したメンバーには少し話したが、正式に発表する。我々シャドウワーカーが、より強い権限を持つことが許可された」

>ジェラルミンケースを開けると、人数分のバッジと召喚器が仰々しく収められていた。
899 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:05:46.52 ID:NiUXowcfo
美鶴「今の所はこの街限定の話だが、シャドウワーカーに所属している者は警察の更に上位の権限を持つ事ができる。何かあった時に真っ先に、かつ的確に行動する為の措置だ」

美鶴「これ以後、対応地域は増えていく事だろう。しかし権限が増すというのは同時に、より重い責任を負うという事になる」

美鶴「これを受け取れば、強大な権限に付随する重い責任も君達の物となる。今まで通り、有志として協力してもらう事も勿論可能だ。良く考えて選んでくれ」

>そういえば、美鶴は以前から権限の向上を訴えていたようだった。

>それがついに結実したのだろう。

>しかし、警察権力よりも上に立つとなると……

>言うとおり、責任も重い。

>住民の安全がより一層自身にかかってくるという事だからだ。

>少し、躊躇してしまう。

>最初に動いたのは真田だった。

真田「俺が自分自身の道に進む為の……いわばけじめだ。この事件、なんとしても終わらせよう」

>バッジを掴み、召喚器をホルスターに収める。

真田「だが、お前たちもそうであれとは言わない。俺に釣られて動く必要はどこにも……」

>言い終わる前に、順平が動いた。

ゆかり「ちょ、順平?」

順平「あんだよ。俺だってな、人任せにしたくない事くらいあんの」

真田「見直したぞ」

順平「……どもっす」
900 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:06:13.24 ID:NiUXowcfo
美鶴「受け取ってもらえるのは純粋に嬉しいんだが、別に受け取らないのも自由だ。そこは理解しておいてくれ」

>次に動いたのはアイギスだった。

アイギス「私は、この街を守りたいです。その為の力なら……」

ラビリス「ま、ウチらその為にあるようなもんやし?」

メティス「……私も、守りたい」

>三人が受け取る。

天田「逃げたらどやされそうですしねぇ。頂きます」

>天田も苦笑しながら受け取った。

ゆかり「あの……私は、やめておきます」

美鶴「……そうか。理由を聞いても構わないか?」

ゆかり「あ、その。私、今お母さんと暮らしてて……無茶、出来ないから。だから、すみませんけど」

順平「んな申し訳なさそうにすんなって。責めるヤツなんかいねーよ」

天田「そうですよ。家族のため……立派な事です」

ゆかり「でも、皆は戦うって決めたのに」

風花「ううん、いいの。だってゆかりちゃんの分も……」

>風花がバッジを取った。

風花「私、頑張るから」
901 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:06:53.99 ID:NiUXowcfo
ゆかり「風花……」

美奈子「……ま、私は失くす物も無いし」

>美奈子は小さく呟いた。

美奈子「付き合いますよ。地獄の果てまで悪魔と相乗りってねー」

>そして、残るは……

有里「……ふむ」

鳴上「参ったな」

美鶴「しつこいようだが、強制はしない。ゆかりのように身を引く事もこの場においては重要だ。君達には……今までも、少々無理をさせてきた。ここで引いたとして、誰も文句はあるまい」

有里「じゃあ、僕は遠慮します」

鳴上「何?」

>湊がもし受け取れば、自分も……そう思っていたのだが。

有里「忘れてるかもしれないけど、僕はあんまり中心にいたくないって言ったでしょ?それに……僕がいなくても、きっと大丈夫さ」

>湊はゆかりに目をやった。

>気まずそうにしていたゆかりは、少しだけ笑った。

>……なるほど、そういう理由もあってか。

鳴上「……俺は」

>受け取らずとも、今までどおり戦う事はできる。

>しかし。

鳴上「頂いておきます。何かあった時に、すぐに動けるように。……改めて、よろしくお願いします」

>美鶴は満足そうに頷いた。

美鶴「正直、ここまでの人数に受け取ってもらえると思っていなかった。だが、だからと言ってゆかりや有里の判断が間違っているとも思わない」

美鶴「彼らには彼らなりに守る物があり、それを優先するが故の決断なのだろう。私は……君達全員が仲間である事を誇りに思う」

真田「……新生シャドウワーカー、活動開始だな!」

>それぞれがそれぞれを鼓舞しあう。

>今までと大きく変わる事は、現状では無い。

>しかし、以前より仲間として……絆が深まった事をはっきりと感じる。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが3になった。
902 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 00:13:27.86 ID:NiUXowcfo
デジャヴのしょうね・・・しょうじょ・・・?お、おばさん・・・?

では、また明日。
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/08(土) 00:15:26.19 ID:1XrQoI390
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 00:23:03.49 ID:SvqrOYgLo
美奈子はフィリップだったのか……
905 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/08(土) 23:53:23.81 ID:NiUXowcfo
えー今日明日もお休みで。
月〜金更新にしようかと悩み中です。
来週様子見て決めまする・・・申し訳ない。

では、また月曜日。
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 02:18:55.30 ID:cxuG9o2O0
了解
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/10(月) 02:32:34.67 ID:8EnvE3P60
やりたいようにすればいいさ
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/09/11(火) 01:21:23.43 ID:TtGyDqeDo
今日は無し?
909 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:18:00.25 ID:1CRpv4tco
美鶴「しかし、殺人か……どうしたものか」

鳴上「勘ですけど、あの手口は悪魔やシャドウのそれじゃありません。人がはっきりと殺意を持って殺したそれに見えました」

順平「マジかよ……悪魔よりよっぽどこえーってそれ」

ゆかり「でも、それって私達が関わっていい事なの?」

風花「本当なら警察に任せる事ですよね……」

アイギス「姉さんとメティスは見なかったのよね?」

メティス「私も行こうとしたんだけど、鳴上君が一人でいいって言うから」

ラビリス「今となっては行かんで良かったと思うわ。……想像するだけで嫌や」

真田「だが、もし悪魔やシャドウが関与しているとしたら警察の手には負えんな」

天田「はっきりするまで調査するしかありませんかね」

美奈子「はいはーい、私行きたいです」

美鶴「何?どこにだ」

美奈子「だから、殺人事件の捜査。どうせ退屈だから、行ってもいいですよね?」

美鶴「遊び気分は困るぞ?」

美奈子「わかってますって。湊もどう?」

有里「ん?僕も?」

鳴上「あ、俺も引き続き調べてもいいですか」

美鶴「そうだな。君は今の所一番入り込みやすいようだし、頼む。しばらくはそちらの事件を中心に動く事になりそうだな」

鳴上「わかりました。それから……聞いてますか?天野さんの事」

美鶴「一応報告は受けているが……信用できるのか?」

鳴上「悪い人ではなさそうです。ただいくつか妙な所が……」

美鶴「そうか。そちらも君達の判断に任せる。手に負えないようならいつでも連絡してくれ」

>何の因果かまた殺人事件の捜査をする事になった。

>去年とは違い、正式に警察と協力する事ができる分、話は早いかもしれない。

>とりあえず、達哉に話を聞きに行った方がいいだろう。
910 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:19:13.68 ID:1CRpv4tco


【7/10 晴れ】


>今日は通常通りに授業があるらしい。

>例の教室は暫く閉鎖され、そのクラスの生徒は別のクラスで授業を受ける事になった。

>確か事件の詳細は伏せられていたはずだが、やはりというか学内は噂でもちきりだった。

鳴上「噂っていうのはどうしてこう尾ヒレが付くんだろうな」

綾時「まぁ、とんでもない人数で伝言ゲームしてるわけだからね。仕方ないんじゃない?」

ライドウ「中にはわざと歪曲して伝える者もいる。そうなれば元の姿などわからなくなって当然でしょうね」

鳴上「噂するのってそんなに楽しいかな。俺は余り好きじゃないんだが」

綾時「聞くのは好きでもぺらぺら喋るのはねー。ほら、男は無口の方がかっこいいじゃない?」

ライドウ「……綾時君が言うと何かの冗句にしか聞こえないのが何とも」

綾時「嘘?僕結構寡黙なキャラだと思ってたんだけど」

鳴上「無いだろ」

ライドウ「無いですね」

>いつものように屋上で昼食をとりながら駄弁っていると、これまたいつものようにラビリスとメティスがやってきた。
911 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:20:26.11 ID:1CRpv4tco
綾時「今日も来たね二人共」

鳴上「今日はどうした?何の用……」

>ラビリスとメティスは黙って俺の両側に回り、手を握った。

鳴上「……何だ?」

綾時「さぁ……」

ライドウ「何やら怯えている様子だが?」

>ライドウの言葉にラビリスが反応する。

ラビリス「おび、おびびえてへんわぁ!べっ、別に何や怖い噂聞いたからってび、びびびびびってへんからな!」

>怖い噂……?

メティス「JOKER呪い……って、言うんだって」

綾時「あ、名前聞いたことある。あれだよね、頼んだ相手を殺してくれるっていう」

ラビリス「ちょ、綾時!やめぇや!」

綾時「え?ご、ごめん」

鳴上「頼んだ相手を殺す?」

>普段なら気にもとめない話だが、何か引っかかる。

>殺人事件の直後に、殺しの噂……もしかすると、何か関係あるのかもしれない。

鳴上「メティス、良ければ詳しく教えてくれないか」

ラビリス「なんでや!」

鳴上「昨日の事件に関係あるかもしれないだろ」
912 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:21:33.75 ID:1CRpv4tco
メティス「……」

ライドウ「どうやらメティスさんも怯えているようですね」

鳴上「……ロボットなのにな」

ラビリス「かんっけーあらへんから!そんなん一切全く一つも関係あらへんから!」

メティス「心は人と同じなんだから、たまには怖い事も……あるよ」

鳴上「ん、そうか。悪かった。しかしこうなると……誰に聞けばいいんだろう」

綾時「二人が聞いた相手に聞けばいいじゃない」

鳴上「ああ、それはそうか。なぁ、二人は誰にその噂を聞いたんだ?」

ラビリス「誰って……皆知ってるで」

メティス「うん。多分もうほとんどの人が知ってると思う。綾時君も知ってたみたいだし」

綾時「詳しくは知らないよ?JOKER呪いっていう呪いの掛け方があって、自分の携帯から自分の携帯に電話をかけて、それから殺したい相手の名前を言うとJOKER様が殺してくれるんだって」

ラビリス「詳しく知らんってそれ全文やろ」

綾時「あ、そうなの?」

メティス「私達が聞いたのもそれと同じで、昨日殺された生徒はJOKER様に殺されたんだって……」

鳴上「……JOKER様、か」

>何者なんだろうか。

ライドウ「……この場合、気になる事がいくつかありますね」

鳴上「そうだな」
913 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:22:29.12 ID:1CRpv4tco
ライドウ「まずは当然噂の実態。普段ならまず間違いなく無視していい類です。しかし今は通常時ではない」

鳴上「悪魔やシャドウがいるなら怪人JOKERだっていてもおかしくないってことだな」

ラビリス「やめてぇ〜……」

ライドウ「第二に、噂の出処。急速な拡散の原因は間違いなく昨日の事件でしょう。しかし、噂自体はもともとあった可能性がある」

鳴上「俺達が知らなかっただけで、実は既にそういう噂があって、事件を機に急に流行った可能性があるな」

ライドウ「ええ。もしそうではなく、事件を素に想像し、作り上げられた噂なら根本を辿るのは比較的容易でしょう。まだ日の浅い今ならですが」

鳴上「ただ、そうじゃなかった場合は噂の大本にたどり着くのはかなり難しいだろうな。最悪広めた本人も忘れてるかもしれない」

ライドウ「そうなると厄介ですが、それなら逆に今回の事件とは関係無いと言えるかもしれない。まずその辺りを明確にする事が必要でしょうね」

鳴上「調べる事が増えてきたな。ああ、そうだ。今日の放課後、事件の話を聞きに警察に行くんだが、ライドウはどうする?」

ライドウ「自分は別ルートから追ってみたいと思っているので。そちらは任せる事になるがよろしいか?」

鳴上「わかった、任される。さて、午後の授業だ。そろそろ離してくれないか」

>ラビリスとメティスは首をぶんぶんと横に振った。
914 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:23:00.76 ID:1CRpv4tco
>放課後、ポロニアンモール。

>一度寮に戻り、美奈子と湊と合流してから交番に向かった。

>が。

鳴上「……なぁ」

美奈子「ん?」

鳴上「そのかっこ、どうしたんだ?」

美奈子「いやぁ、事件の捜査っていうからさ」

鳴上「探偵か」

美奈子「うん。可愛いでしょ?」

鳴上「どう見る、湊」

有里「……ノーコメントで」

>楽しそうにくるくる回って見せる美奈子は、何故かラブリーンのコスプレをしている。

美奈子「〜♪」

鳴上「恋する名探偵だ……」

有里「悠もなんでちょっと詳しいの……」

鳴上「一緒に暮らしてた親戚の子がハマっててな……」

有里「歳は?」

鳴上「小学生」

有里「……」

鳴上「……」

有里「着替えさせよう」

鳴上「もっと早くそうすべきだったな」

>……。
915 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:23:34.02 ID:1CRpv4tco
美奈子「もー、仕方ないなー」

鳴上「あの格好じゃ真面目な話なんて出来ないだろ。……あれ?」

有里「やぁ、ゆかりッチ」

>何故か大荷物を抱えたゆかりが薬局から出てきた。

ゆかり「それやめて。三人揃ってどうしたの?」

鳴上「昨日言ってた事件についてそこの交番で話聞こうと思って」

ゆかり「あー、そっかそっか。ご苦労様。栄養ドリンクいる?」

>薬局の紙袋からマッスルドリンコを手渡された。

鳴上「……ありがとうございます」

ゆかり「でも三人揃って行かなくてもさ、手分けしていろんな事やった方がいいんじゃない?」

有里「……それはそうだね」

鳴上「といっても別に手掛かりが他にあるわけじゃ……あ、そうだ。岳羽さんって月光館のOGですよね」

ゆかり「え、うん。知ってるでしょ。それが?」

鳴上「ちょっと気になる噂聞いたんですけど、在学中に聞いたことあるかどうか教えて欲しいんです」

>ゆかりにJOKER呪いの事を説明した。

鳴上「っていう噂が……あの?」

>ゆかりの顔色が酷く悪い。
916 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:24:00.29 ID:1CRpv4tco
美奈子「あー、そういえばそうだっけ」

有里「忘れてたね」

鳴上「お前たちだけで納得するなよ。何かまずかったのか?」

ゆかり「別にまずくないけどね?私はそういうの馬鹿らしいって思うなー。そもそもそこに元月光館生いるじゃない?何で私にわざわざ聞くのかなー?」

有里「僕一年間だけだったし」

ゆかり「あーそーですか。……ね、さっきも言ったけど話し聞くなら三人もいらないよね?」

鳴上「え?はぁ、まぁ」

ゆかり「じゃあ有里君借りてもいいかな?いや別に一人で帰るのも平気なんだけどね?今ちょっと物騒だから、ほら。ね?」

有里「……わかった。行くよ。ごめん、悠、美奈子。後任せた」

美奈子「はいはい。いってらっしゃい」

鳴上「ちょ、お、おい」

>ゆかりは湊の襟を掴むとずるずると引きずっていった。

鳴上「……なんだったんだ」

美奈子「ゆかりねー、ああ見えてそういう怪談じみた話って凄く苦手なのよ。何年経っても直んないもんなのね」

鳴上「何か、悪いことしちゃったかもな」

美奈子「いいんじゃない?湊と二人になれる口実になったし。多分必死すぎて言ってる時は気付いて無かったと思うけど」

鳴上「……ま、まぁ、俺達はしっかり話聞いておこう」

>交番を覗くと、また達哉しかいなかった。

>ある意味好都合だ。
917 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:24:30.68 ID:1CRpv4tco
鳴上「あの、すみません」

達哉「はい……なんだ、お前か。そっちは?」

美奈子「お仲間です」

達哉「事件の話なら、もう俺の手元離れたからな。ろくな話は出来ないぞ」

鳴上「一介の巡査には……って言ってましたもんね」

達哉「その通りだ。もう一般人に開示出来る領域じゃなくなったって事だ」

鳴上「あ、それなんですが……その。事情があって、俺達も一般人じゃなくなっちゃいまして」

>ポケットに入れておいたバッジを取り出して見せる。

鳴上「多分、話は通ってると思います」

達哉「何のバッ……ジ……?」

>達哉は机の上にあった書類に目をやった。

達哉「あー……お前らがそうか」

鳴上「はい。これで問題ないんじゃないですか?」

達哉「そうだな。何が聞きたい?知ってる範囲でなら答えよう」

美奈子「犯人の目星はついてますか?」

達哉「いや、全く。遺体の状況は鳴上もちょっとは見ただろうが、鋭利な刃物で腹と喉を裂かれて殺されていた。多少残虐趣味だが、それ以外は普通の殺人だ」

鳴上「恨みや変質者の線で行くって言ってましたよね?」

達哉「被害者に恨みを抱いているような人間はまだ上がってない。そもそも、人が出来過ぎているわけでもなく、かと言って人に悪意を持つようなタイプでも無かったらしいからな」
918 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:24:56.52 ID:1CRpv4tco
美奈子「狙われるような理由は無いと……」

達哉「一人、前日に喧嘩したって子がいたが、それだけだ。たかが喧嘩で女子高生があんな犯行に及ぶかどうかっていうと……な」

鳴上「変質者の方は?」

達哉「ここ一ヶ月、ここらで変質者や不審者の目撃は無い。突発的な犯行だとしたら……地道に行くしかないって事になる」

鳴上「そうですか……」

>手掛かりとしては、その喧嘩した生徒が有力だろうか。

美奈子「大した情報は無……あ、もしかして」

>美奈子が何かに気付いたように手を打つ。

美奈子「あの、えっと……」

達哉「周防達哉だ。君は?」

美奈子「私、有里美奈子って言います。周防さん、少し調べて欲しい事があるんですけど」

達哉「遠慮しなくても、俺達はお前達には逆らえないようになってる。何でも言っていい」

美奈子「それなら、ある噂について捜査を。JOKER呪いっていうんですけど、もしかするとさっき言ってた喧嘩相手の女生徒が知ってるかもしれません」

達哉「JOKER呪い?流行ってるのか」

>そうか。

>もしJOKER呪いが本当で、かつ事件の前から語られていた噂なのだとしたら。

>仲の良い友達と喧嘩して、その勢いでつい……というパターンも考えられるのではないか。
919 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:25:45.85 ID:1CRpv4tco
美奈子「自分の携帯に自分の携帯から掛けるとJOKER様っていうのに繋がって、そいつに殺したい相手を言うと代わりに殺してくれる……んだそうですよ」

達哉「……物騒な噂だなっ!?」

>呆れたように呟いた達哉が突然頭を抱えた。

鳴上「周防さん!?」

美奈子「ちょっと、大丈夫ですか!?」

達哉「JOKER……」

鳴上「っと、美奈子、誰か人を!」

美奈子「任せて!」

>美奈子が交番を飛び出す。

>達哉は小さく何か呟いた後、その場に倒れこんだ。
920 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/11(火) 10:27:30.03 ID:1CRpv4tco
たっちゃん、混乱中。

停電による更新妨害にあってしまった為こんな時間になりまして、なんとも申し訳ない。
今夜こそ普通通りに更新します。

では、また夜に。
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/11(火) 12:00:20.44 ID:MhrEdpRP0
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 16:01:12.99 ID:mnN5uxhY0
乙!
923 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:03:19.07 ID:SZuRIpQno
鳴上「周防さん!周防さん!」

達哉「……う、ぐ……」

>何度か呼びかけると、達哉は首を振って目を開けた。

達哉「……大丈夫だ、なんとも無い。例のフラッシュバックが……」

鳴上「それって、倒れるような物なんですか?」

達哉「今ままではそんな事無かったんだがな。JOKER……何か、聞き覚えがある気がする。それに、天野舞耶」

鳴上「天野さんの事、何か思い出したんですか?」

達哉「はっきりとはわからない。だが俺はあの人に会ったことがある。良く知っている相手のような気がする」

>本当にそうだとしたら、舞耶は何故隠すのだろうか?

達哉「鳴上、頼みがある」

鳴上「何ですか?」

達哉「俺を、あの人に会わせてくれないか。あの人は、俺も知らない俺の事を知っている気がするんだ」

鳴上「それは……」

>どうすべきだろうか。

>達哉はそれを知りたがっているが、舞耶はそれを隠そうとしている。

>俺と達哉の接触を牽制するような言葉を残してもいる。

>もし、達哉に、あるいは舞耶に悪影響を及ぼす事になるのだとしたら許すべきではないのではないか。
924 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:03:54.88 ID:SZuRIpQno
達哉「……頼む」

>達哉の目は真剣そのものだった。

鳴上「わかりました。個人的な連絡先を教えてもらえますか」

>もう一度会わせてみよう。

>今回の事件のキーワードに反応を示した達哉が何か変わるなら、捜査も進展するかもしれない。

>それに、勘でしか無いが……二人の関係は悪い物ではないような気がする。

達哉「ありがとう。俺の携帯教えとく」

鳴上「それじゃ、天野さんと連絡とって都合が付けば」

達哉「ああ、連絡をくれ。妙な頼みごとをしてすまないな」

鳴上「いえ。……ただ、天野さんが少し嫌がっていたようなのでどうなるか……」

達哉「やっぱり、何かあるのかな。無理なら無理でいい、頼んでみるだけ頼んでくれ」

鳴上「わかりました。あ、そういえば美奈子は……」

美奈子「早く、早く!大変なんだって!」

「おい、何なんだ。ていうか誰なんだ、お前」

>人を呼びに行った美奈子は、冴えない男を連れて戻ってきた。

鳴上「えーと……どうも」

「あ、はい……」

美奈子「この人、クラブの前うろうろしてたから連れてきた!」
925 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:04:22.42 ID:SZuRIpQno
達哉「人選間違ってるだろ」

美奈子「あ、周防さん!大丈夫なんですか?」

達哉「何とかな。すみません、お騒がせして……」

「ああ、いや、それは構わないよ。……正直、人に関わってる場合じゃないんだが。ふぁあ」

>男は心底眠そうにあくびをすると交番を出て行った。

鳴上「知り合いだったのか?」

美奈子「あ、こっちじゃ知らない人。って言っても向こうでも一回喋っただけなんだけど……」

鳴上「それを良く連れてきたな……」

美奈子「いや、本当に非常事態だと思ったから……知らない顔より知った顔かと思って」

鳴上「一回喋っただけはほとんど知らない顔だろう」

美奈子「まぁ、何事も無かったなら良かったって事で」

達哉「心配かけたな。……話はそれで全部か?」

鳴上「とりあえずは聞きたい事は聞けました」

美奈子「体には気を付けてくださいね?」

達哉「ありがとう。もう帰るのか」

鳴上「そうですね、そろそろ。頼みごとはしっかりやりますから、安心してください」

達哉「……頼んだぞ」

鳴上「はい」

美奈子「ん?何の話?」

鳴上「こっちの話だ。帰ろう」

美奈子「また内緒ぉ?もー……」

>……。
926 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:04:50.27 ID:SZuRIpQno
風花「天野さんに連絡を?それはいいけど……どうして?」

鳴上「気になる事があるんです。多分、事件と無関係じゃありません」

風花「それって、天野さんが何か関係してるって事?」

鳴上「それはまだ何とも。ただ、どこかで繋がってる気がするんです」

風花「……わかりました。連絡してみます」

鳴上「お願いします」

風花「ちょっと待ってね」

>風花は携帯を取り出して電話を掛ける。

>同時に、俺の携帯も鳴った。

>知らない番号だ……。

鳴上「一応、出てみるか」

>通話ボタンを押す。

>……何も、聞こえない。

>いや、がさがさと音が……悪戯か?

『バカ、そうじゃない。こっちを……そう、その向きだ』

>知らない男の声がして、直後によく知っている声が聞こえた。

『あーあー、聞こえていますか?』

鳴上「この声……ライドウか?聞こえてるぞ」
927 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:05:23.84 ID:SZuRIpQno
ライドウ『良かった。どうも自分はこの手の機械に疎くて……ごほん。鳴上君、今日、時間はあるだろうか』

鳴上「今の所は。何かわかったのか」

ライドウ『自分と同じく葛葉の者が探偵事務所を開いていて、そこで少し調べ物をしてもらったんです。興味深い事がわかったので、それについて話し合いたい』

鳴上「電話じゃダメなのか?」

ライドウ『人を連れて来て欲しい。君が話していた雑誌記者の天野舞耶と、警官周防達哉を。それで初めて部品が揃う』

鳴上「天野さんと周防さん?何であの二人が……」

『いいから呼べ。葛葉探偵事務所の轟って名前を出せば、少なくとも天野は応じるはずだ』

鳴上「あなたは……?」

『俺がその轟だ。その二人とも知らない仲じゃない。いいな、必ずだぞ』

鳴上「必ずって……」

ライドウ『……すまないが、よろしくお願いする。今夜、ポロニアンモールにて待ちます。後はお任せした』

鳴上「あ、おい!」

>通話が切れた。

鳴上「急になんだって……そうだ、山岸さん」

風花「あ、すみません少し待ってください。なに、鳴上君」

>電話中の風花が一度受話器を耳から外し、聞く。
928 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:05:50.98 ID:SZuRIpQno
鳴上「天野さん、都合がつくなら今夜ポロニアンモールまで出てくるように言ってください。葛葉探偵事務所の轟って人の指定だと」

風花「……?よくわからないけど、そう言えばいいのね。わかりました。……失礼しました。その、出来れば今夜……はい、葛葉探偵事務所の轟さんが指定したと……」

>これで上手く行くんだろうか……。

風花「はい、はい。はい、それではポロニアンモールに……はい。お願いします。突然すみません。はい……それでは失礼します」

>風花が通話を切る。

鳴上「どうです?」

風花「最初は渋ってたけど、鳴上君に言われた通りに言ったらすんなり。ところで轟って誰なの?」

鳴上「さぁ……俺も良く知らないんですが、天野さんや周防さんと関係ある人らしいです」

風花「そうなんだ……とにかく、今夜八時にポロニアンモール。鳴上君も行ってください」

鳴上「わかってます。わざわざありがとうございました」

風花「ううん、事件の為でしょ?人が……死んじゃうような事件は、早く解決しないと」

鳴上「そう……ですね。一刻も早く解決しましょう」

>風花は人の生き死に……いや、誰かに被害が及ぶ事を強く嫌っているらしい。

>普段優しげな風花の瞳に、強い決意を見たような気がした。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが4になった。

>……。
929 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:07:55.52 ID:SZuRIpQno
>ポロニアンモール。

>指定の時刻より幾分早く到着した。

鳴上「まだ誰も来てないか……な?」

>いや、既に一人到着しているようだ。

鳴上「周防さん、早いですね」

達哉「鳴上か。いや、やっぱり気になって……」

鳴上「周防さんは、葛葉探偵事務所と轟って名前に聞き覚えは?」

達哉「葛葉……轟……今はこっちの寮に住んでるんだが、俺が以前住んでいた街にそういう名前の所長がいる探偵事務所があった……ような気がするな」

鳴上「あ、そうなんですか?」

達哉「ああ。俺も何度か世話に……?いや、世話になった事なんてないな。変な思い違いをしてたみたいだ」

>達哉は首を振って何かを振り払うような仕草をした。

鳴上「大丈夫ですか?」

達哉「今の所はな。……なんだか、人生を三度くらいループした気分だ。俺の知らない記憶が俺の中にあるような……何なんだ、一体」

舞耶「やっほー。来てあげたわよん」

>達哉がそうこぼすのとほとんど同時に、舞耶がやってきた。

鳴上「こんばんは、天野さん。これで二人は揃ったんですが……もう少し待ってもらえますか。まだ一人来てないヤツが……」

達哉「天野舞耶……舞耶姉……?」

舞耶「……何のことかしら」

>俺を他所に、二人の間には何か緊張した空気が走った。
930 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:09:18.12 ID:SZuRIpQno
>やはり、達哉と舞耶には何か関係がある。

>にも関わらず、舞耶はそれを隠そうとしている。

鳴上「天野さん、何か隠し事があるんじゃないですか?」

舞耶「無いわ」

鳴上「でも……」

達哉「……俺が、間違ってるのかもしれない」

鳴上「周防さん?」

達哉「俺が、何か妙な病気だとかで……記憶が混濁してて、そのせいで会ったこともない人を知ってるような気になったのかも」

舞耶「……私は、あなたを知らないわ」

ライドウ「嘘ですね」

>突然現れたライドウはそう断言した。

鳴上「ライドウ、来たのか」

ライドウ「全員が揃うのを待っていました。天野さん、少なくとも貴女は彼を知っているはずだ」

舞耶「あなた、誰?何者なの?」

ライドウ「申し遅れましたが、自分は葛葉ライドウ。探偵です」

舞耶「葛葉……探偵……そうか、あなたが轟所長を?」

ライドウ「ええ。彼とは同じ流派ですから、事情を話して話を聞いてきました。十三年前……の話も、しっかりと」

舞耶「まだ現役なのね、所長」
931 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:22:20.75 ID:SZuRIpQno
ライドウ「後任が育たないんだそうです。ぼやいてましたよ」

舞耶「そっか……もう、バレちゃってるのね」

鳴上「どういう事なんですか?俺にはさっぱり」

舞耶「……もう随分前になるのね。私もおばさんになるわけだわ。ライドウ君も言ったけど、十三年前、私は悪魔と戦っていた」

鳴上「以前戦った事があるって言ってたのはその時の事ですか」

舞耶「そうよ。その戦いの中心にいたのが周防達哉……君だった」

達哉「俺が悪魔と……?」

舞耶「正確には君じゃなくて、別世界の君だったんだけど。もしかするとその時の事を思い出しちゃわないかって、距離を取ろうとしたの」

達哉「思い出しちゃいけない事なのか」

舞耶「……今の君には今の君の人生がある。邪魔したくなかったのよ」

鳴上「……すみません、そんな事情とは知らずに」

舞耶「いいのよ、それで苦しめちゃってたみたいだし。すっきりした方がいいんなら、それで」

達哉「悪魔……ペルソナ……?」

ライドウ「そうです。俄には信じられないかもしれませんが、実際に実物がいるわけですから見てもらった方が早い」

>ライドウはそう言うと手招きした。

ライドウ「人目に付きたくない。路地裏に入りましょう」

>俺達は頷くとついていく。

ライドウ「ここまで来れば良いでしょう。いいですか、この管の中に悪魔が入っています」
932 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:22:46.87 ID:SZuRIpQno
達哉「この中にか」

舞耶「へー。あ、って事はこれも君の仲間?」

ライドウ「いや、まだ何も……!?」

鳴上「天野さん、離れて!」

>路地裏には既に大型の悪魔が潜んでいた!

舞耶「ちょ、キャー!」

達哉「舞耶姉!」

ライドウ「しまっ……間に合え!」

>ライドウが管の蓋を開ける。

>俺が召喚器を取り出す。

>声が聞こえる。

『我が手を取れ……恐れるな……』

>時間の進みがゆるやかになるのを感じる。

>俺やライドウがスローモーションで振り向く間、達哉だけが通常のスピードで動いている。
933 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:23:14.15 ID:SZuRIpQno
達哉「ペル……」

>片手で顔を覆うようにし、目を閉じている。

達哉「ソナッ!」

>発声と同時に目を見開き、手を大きく振るう。

『我は汝……汝は我……我は汝の心の海より出でし者……』

>真紅のペルソナが達哉の背後に現れ立つ。

『一切の不浄薙ぎ払う、業火の運び手ヴォルカヌスなり!!』

達哉「ヴォルカヌス!」

>達哉が命じると、ヴォルカヌスが悪魔に向かい腕を振った。

>業火が舞い、悪魔を薙ぎ払う。

鳴上「これが……周防さんのペルソナ……」

舞耶「このペルソナ……もしかして」

達哉「……思い出した、全部。舞耶姉、久しぶり」

舞耶「あなた……こっちの達哉君じゃなくて……」

達哉「そうみたいだ。俺は、あちら側の周防達哉だよ」
934 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/12(水) 00:24:06.18 ID:SZuRIpQno
達哉(こちら側)か達哉(あちら側)かの二択

では、また明日。
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/09/12(水) 00:39:29.32 ID:N0FKqHpAO

楽しみすぎる
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/09/12(水) 01:17:25.92 ID:eQNegrcl0
乙です
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/09/12(水) 01:20:30.21 ID:xxb0XIrm0
乙乙
938 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/13(木) 00:02:06.53 ID:pPK0dMSYo
舞耶「やっぱり……でもどうして?あの時……」

ライドウ「積もる話もあるでしょう。お二人でどうぞごゆっくり。自分は彼に話しがありますので」

>ライドウは俺を指さして言った。

舞耶「あ、そうなのね。ええと……それじゃあどうしようかしら」

達哉「少しだけ、舞耶姉と話をさせてくれ。その後、お前たちにも詳しい話をする。それでいいだろ」

ライドウ「結構です。鳴上君、お話が。一度外しましょう」

>達哉、舞耶と別れてライドウと歩きながら話をする事になった。

>ライドウは何度も口を開きかけては閉じるを繰り返している。

鳴上「何か難しい話か」

ライドウ「……はい、正直な所、どうしたら良いか皆目見当も付きません」

鳴上「お前が?珍しいな」

ライドウ「以前話したことを覚えていますか」

鳴上「ああ、事件の中心は俺なんじゃないかって話だろ」

ライドウ「ええ。今もその考えは変わっていません。ですが……」

>ライドウはまた迷うような仕草をした。

>言葉を探しているのだろうか?
939 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/13(木) 00:04:00.66 ID:pPK0dMSYo
ライドウ「……ですが。事件の黒幕について少しわかってきた今、その意味がわからなくなってきているんです」

鳴上「意味?いや、それよりも黒幕についてって……」

ライドウ「現在起きている事件と最も近しいと言える性質を持つ事件、それが天野さんや周防さんの関わっていた戦いです」

鳴上「近しい性質……?結局どういう事なんだ」

ライドウ「JOKER呪いですよ。十三年前、ある街でその噂が氾濫した事がありました。その際、JOKERと戦ったのが天野さん達です」

鳴上「何!?ってことは今回の事件の犯人も同じってことか」

ライドウ「そういうワケではありません。そもそもそれを知る人物は様々な事情でもう殆ど残っていません」

鳴上「なら模倣犯の可能性は?」

ライドウ「無いでもありませんが……どうでしょう。まだ犠牲者が一人しか出ていない事、本当にJOKER呪いが行われたのか等わからない事も多い。そこは保留してください」

鳴上「本題は別ってことか」

ライドウ「はい。忘れ去られたJOKER呪いの噂を蘇らせた存在がいる事が問題なのです。先の事件には、JOKERという実行犯の他に、それを操る存在がいました」

鳴上「操る……待て、天野さんは悪魔と戦ってたんだよな?悪魔を使役できるような人間がそうそういるのか?」

ライドウ「それに関してははっきり否定できます。自分らのように使役する技術を持っている者、鳴上君のように機械によって行う者。そのどちらも、悪魔を従えるにはある手順を踏む必要がある」

鳴上「……ケルベロスは最初から登録されていたからな。本当はどうするものなんだ」

ライドウ「交渉ですよ。力尽くで捩じ伏せるにせよ、懐柔するにせよ。対面して交渉する必要がある。街に溢れる程の量の悪魔を使役する事など不可能です」

鳴上「一体一体交渉していったんじゃ無理だってことか。じゃあ、黒幕ってのは何者なんだ?」

ライドウ「事件を終えた天野さんや、その仲間だった人から聞いた話だそうです。それは……人の普遍的無意識に存在する者」

>何だかどこかで聞いたような気がする……。
940 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/13(木) 00:04:33.29 ID:pPK0dMSYo
ライドウ「名を、ニャルラトホテプ、と。悪魔より高次の存在であり、事件の際、因果を捻じ曲げるという事まで行ったそうです」

鳴上「ニャルラトホテプ……」

ライドウ「天野さんや周防さんによって、一度は滅ぼされたそうですが……人が存在する以上、それもまた存在するはずです」

鳴上「人間の意識の中にいるのなら、そうなんだろうな」

ライドウ「そして、この街で起こっている事件。とても人に起こせるような物では無いと思いませんか」

鳴上「そりゃ、最初からそうだと……え?」

ライドウ「自分の推測です。根拠はどこにもない。しかし間違っているとも思えない。それはこの説にたどり着いてからの奇怪な不快感が証明してくれています」

鳴上「大丈夫か?」

ライドウ「ええ、何とか。ただ……何だか自身の正気を疑いたくなります。現実と非現実の境界が曖昧になるような。足元がすっぽりと消失してしまったような気持ちですよ」

鳴上「……あ」

>黒幕がそのニャルラトホテプだと仮定しよう。

>俺はそれに似た存在と戦った事がある。

>こっちに来てすぐに、アイギスを助ける為にテレビの中で戦った存在。

>エレボスと呼ばれるそれは、人の普遍的無意識に存在するのでは無かったか。

>そして、それが望むのはNyx……。

>マヨナカテレビは人の望みを映し出す物……。

>何だ?

>何かが繋がりそうで繋がらない。

>大事なピースが抜け落ちている感覚が……。
941 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/13(木) 00:04:59.94 ID:pPK0dMSYo
ライドウ「とにかく、自分の説が正しいと仮定して。それなら、なぜ鳴上君が事件の只中にいるのかという部分です」

鳴上「確かにな。俺はそんなヤツ知らないし、関わった覚えも無い」

ライドウ「どこかに繋がりがあると思っていたのですが……どうにも見えない。意図が切れてしまった」

鳴上「まだたどり着くには道が長そうだな……」

>二人共口を噤んでしまった。

>ライドウの感じた不快感は俺にも伝播してきている。

>経験は無いが、泥酔したらこんな感じなのだろうか?

>自分の立っている場所がわからなくなるというか……。

>不意に、視線を感じた。

>鳥肌が立って振り向くと、空に月が浮かんでいるだけだった。

達哉「……話、終わったか」

ライドウ「ああ、すみません。お待たせしました」

達哉「お前がいろいろ画策したんだってな」

ライドウ「ええ。貴方はどうやら事件解決に必要な人物だったようなので」

達哉「そうか……ありがとう。何もわからないまま巻き込まれる所だった」

ライドウ「礼を言われるとは思ってもみませんでした。……自分は、これで帰ります。どうにも気分が悪い」
942 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/13(木) 00:05:58.43 ID:pPK0dMSYo
舞耶「え?大丈夫なの?送ろうか?」

ライドウ「結構。貴女の運転については聞き及んでいます」

達哉「……賢明だ」

鳴上「気をつけろよ」

ライドウ「……鳴上君も」

舞耶「何に気をつけろってのよ。失礼しちゃうわねえ」

達哉「舞耶姉はちょっと黙っててくれ」

>舞耶は一瞬むっとしたが、おとなしく黙っている事にしたようだ。

達哉「鳴上」

鳴上「はい」

達哉「今、JOKER呪いが流行ってるっていうのは本当か」

鳴上「本当です。学校ではほとんどの生徒が知っているようでした。勿論教師もそうだと思います」

達哉「……舞耶姉が戦ったJOKERっていうのは、本当のJOKERとは別なんだ」

鳴上「……詳しく、お願いできますか」

達哉「それにはまず俺の事を説明する必要がある。俺はこの世界の周防達哉とは少し違う人格だ」

鳴上「この世界の……まさか、平行世界ですか」

達哉「そういうらしいな。便宜上、お前たちが生きてきたこの世界をこちら側、俺がいた世界をあちら側と呼ぶとだな……もともと、世界っていうのはあちら側の事だった」
943 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/13(木) 00:06:35.31 ID:pPK0dMSYo
鳴上「あの、よく意味が」

達哉「元々あったのはあちら側の世界だったんだ。けど、アイツのせいで色々あって……舞耶姉が、死んだ。俺達はそれを取り戻す為に世界をやり直した」

>世界もよくリセットされるものだなぁ、と思ったが、流石にそれを言う勇気は無かった。

達哉「その時……俺は、皆との出会いを忘れたくなくて。記憶を持ったままこちら側に来てしまった。そのせいで、俺が二つの世界の接点、特異点になってしまった」

鳴上「それが原因で天野さん達も……」

達哉「そういう事だ。俺から言えるのはこんな所だ。それで、お前に聞きたい。今何が起こっている?」

鳴上「何が起こっているんでしょう。わかっていると思っていた事が全部無意味に思えてきました」

達哉「そういうのはいい。事実だけ教えてくれ」

>達哉に事件のあらましを話した。

>ライドウの説もいくらか交えての説明になったが、問題なく伝わったようだ。

達哉「……間違いないだろうな。ライドウって言ったか。あいつは良い勘してる」

鳴上「やっぱり、そうなんですか」

達哉「ニャルラトホテプが最初にやったのは、噂を現実にする事だった。そして、理想を叶える事。要するに、人の望みを反映するなんてのは、あいつにとっちゃ朝飯前ってことだ」

鳴上「……良かったです、犯人がわかって」

達哉「俺達が来なけりゃわからなかったかもしれないな。だが……まだ油断は出来ない。俺達がこの街に来たのもきっと偶然じゃない。何かが手引きをしてるはずだ」

鳴上「そうか、天野さんは自分の意思でここへ来たけど、周防さんは仕事で……」

達哉「そういうことだ。何よりも相手の目的が一切わからないのが気味が悪い所だな。……しばらく、様子を見るしかないか」

鳴上「殺人の方から何かつかめるかもしれませんしね。周防さんが全部理解した上で協力してくれるなら、こんなに力強い味方もいませんよ」

達哉「……公的にも、個人的にもお前達に協力する。本当にあいつがまた現れたんなら、決着をつけなきゃならない。……鳴上」
944 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/13(木) 00:07:41.92 ID:pPK0dMSYo
鳴上「はい」

>今まで険しい表情だった達哉が、少し優しい顔をする。

達哉「無理はするな」

鳴上「……はい」

舞耶「私達の持ってる情報なら全部あげるわ。人手がいるなら手伝うし。私達が出会ったのが誰の策略でも、きっとこの出会いは良い方向に向かってるはず」

達哉「レッツ・ポジティブシンキング……ってな」

鳴上「そうですね……そうですよね」

>未だわからない事も数多くある。

>しかし、一つ筋道はつながった気がする。

>あとはこの道を太く確かな物にしていくだけだ……。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.19 太陽 周防達哉』を手に入れた!
945 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/13(木) 00:20:22.42 ID:pPK0dMSYo
もしかしてあいつじゃね?(知ってた)

では、また明日。
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/13(木) 01:35:52.77 ID:uLMHMSvLo
知ってた

乙!
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/13(木) 06:48:39.00 ID:IiME/YLUo
ライドウさんのSAN値が……
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/13(木) 09:25:27.82 ID:NmxIMzcIO
ニャル子さん…
949 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/14(金) 00:02:46.83 ID:wc9W8BGLo


【7/11 晴れ】


鳥海「嘆け学生達。私も辛い。えーと、皆知ってると思うけどちょっとした事件がありまして……期末試験の日程がずれ込みました。夏休み、ちょっとだけお預けです」

>クラス中からブーイングが飛んだ。

鳥海「うるさい!私だってねぇ、余分に学校来なきゃいけないのよ!まー仕方ないから諦めなさい。えー、本当は昨日から土曜日までの予定だったんだけど、明日から来週水曜までになったから」

綾時「あちゃあ……これってさ、振替休日とかあるのかな?」

ライドウ「さぁ……まぁ、勉学に励むのが我々の仕事ですから」

ラビリス「ライドウは本職ちゃうやろ」

ライドウ「どちらも自分の本職ですよ」

メティス「夏休み……そうだ、夏休みだよ鳴上君」

鳴上「ん?ああ、そうだな」

メティス「あの……覚えてない?」

>メティスが不安そうな顔をした。

>……もう少しからかってもいいが、ここは素直に答えておこう。

鳴上「覚えてるよ。一緒に八十稲羽行くんだよな」
950 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/14(金) 00:03:16.65 ID:wc9W8BGLo
ラビリス「……せやった!すっかり忘れてたわ!」

綾時「僕も忘れてた」

鳴上「……置いていくぞ」

ラビリス「ああん、いけず言わんといてぇ」

ライドウ「向こうの皆さんはどうしているでしょうかね」

鳴上「元気にやってると思うよ。この前メールした感じだと忙しそうではあったけど」

綾時「あ、有里君はどうするんだろうね」

鳴上「そうか、そういえばあいつもあっちに居たんだったな」

ライドウ「仲睦まじく過ごしていたようだが、どうでしょうね」

鳴上「……というか、今の状態で抜けても大丈夫なんだろうか。綾時はともかくラビリスやメティスがいなくなったら……」

メティス「そっか……人手足りないかも……」

鳴上「そんな顔するな。一応、桐条さんにでも相談してみるから」

綾時「こりゃ駄目だ。きっと駄目だね。あー駄目だ」

メティス「そ……うかも、知れないけど……」

鳴上「こらこら、いじめるんじゃない」

綾時「きっと君達は忙しいから僕と悠と有里君の三人で行くことになるんだよ。それで友情と愛情を深め合って……」

ラビリス「愛情もなん?」

綾時「あのね、世の中にはボーイズ……」

鳴上「やめろ!背筋がぞくっとした!」

鳥海「毎度毎度そこうるさい!黙んなさい!」
951 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/14(金) 00:03:46.37 ID:wc9W8BGLo
>……。

有里「里帰り?」

鳴上「里じゃないんだがな。お前も良かったらどうかなって」

有里「ああ……いいねぇ」

>湊が皆とどんな仲なのか、その表情でわかった気がした。

鳴上「行くか?」

有里「うーん、行きたいのは山々なんだけど。状況が状況だからね」

鳴上「それなんだが……綾時から一つ策をもらってな」

有里「?」

鳴上「湊に協力してもらえばできるって言うんだがな……」

有里「詳しく」

鳴上「まず桐条さんにだな……」

>……。
952 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/14(金) 00:04:17.03 ID:wc9W8BGLo
風花「桐条先輩ですか?お忙しい所すみません。あの、実は有里君から……」

>電話している風花に向かって手を合わせて頭を下げた。

>困ったような笑顔で大丈夫とジェスチャーを返してくれる。

風花「ええ、プライベートではなく業務連絡だそうで。はい、替わりますね。有里君」

>湊の顔が白く固まっている。

>恐らく、自分の意に沿わずこの策を取るのが嫌なのだろう。

>気持ちはわかる……が、俺達の夏休みのためだ。

>なんとか頼む……。

有里「あ、替わりました。はい、すみませんわざわざ……どうしても聞いてもらわないといけない話なので」

>ため息を挟む。

有里「夏休み、なんですよ。いや、勿論僕でなく……はい。彼が、ですね、あの、八十稲羽に……」

風花「ねぇ」

>風花が小声で話しかけてくる。

鳴上「なんですか?」

風花「有里君を使うって、誰が思いついたの?鳴上君?」
953 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/14(金) 00:04:58.70 ID:wc9W8BGLo
鳴上「綾時ですよ。湊なら大丈夫だろうって。ほら、今一生懸命……本当に一生懸命俺達の旅行を勝ち取ろうと……」

>湊は時折こちらを見てくるが、その目線はまるでその昔CMに出ていたチワワのような……

有里「そこをなんとか……え?ええ……あの、今、あ、はい……桐条せんぱ……美鶴なら、わかってくれると思って」

風花「……呼び方変えた」

鳴上「頑張れ……!頑張れ……!」

有里「うん、うん……そうだね、約束する。帰って来たらね。ん?……ええ!?」

風花「何か言われたみたい」

鳴上「湊、お前ならいける……!」

有里「あー……了解しました。それじゃ伝えておきます。はい、お疲れ様です。……ありがとう、美鶴」

風花「しれっと言って……」

鳴上「切ったぞ……」

>湊は何の反応もしない。

>……数秒の沈黙の後、黙って親指を立てた。

鳴上「湊!」

有里「何か騙してるみたいですごく気が引けた……媚びるのは得意じゃないんだよね」
954 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/14(金) 00:05:29.87 ID:wc9W8BGLo
鳴上「悪かったな。けどよくやってくれた」

有里「夏休みを有意義に過ごす為の一大ミッションだからね。僕のミスで君達の夏休みを棒に振るわけにもいかないし」

風花「おめでとう、二人共。いつから行くの?」

鳴上「向こうの皆と連絡取って決めますよ。あ、何日取れた……?」

有里「まるまる一週間。流石にこれ以上はいろいろまずいみたい」

鳴上「一週間か……いや、十分だ。ありがとう」

有里「半分は僕の為だし、お礼なんていいよ。その前に期末テストでしょ?」

鳴上「もう乗り越えたようなもんだ。いや、良かった……」

>湊のおかげで夏休みに八十稲羽に行く約束は守れそうだ。

>期末テストを滞り無く終わらせたら八十稲羽だ……。

>皆と相談して予定を決めなければ。

>……。
955 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/14(金) 00:07:02.81 ID:wc9W8BGLo
>翌日、八十稲羽。

陽介「期末テストは確かにダルい。だが終われば夏休みだ!」

完二「っるせーなー。真面目に勉強してんだから邪魔すんなよ」

りせ「そうだそうだー!」

直斗「巽君はともかく、久慈川さんは手が進んでませんよ。ほらこっちの問題」

千枝「鳴上君もいないし、有里君も帰っちゃったし、勉強見てもらうのも心苦しいねぇ」

雪子「私なら平気だから、ちゃんと問題解こう?それに……二人共、そろそろまた会えるかも」

>雪子が携帯を取り出す。

千枝「へ?何で……ええー!?」

雪子「さっきジュース買いに行った時にメールチェックしてたらこんなの来てたの。ふふっ」

『差出人:鳴上君
 件名:夏休みだな
 本文:そっちはどうしてる?やっぱり忙しいか?
    こっちはなんとか都合がついたから、湊と一緒に一週間は滞在できる事になった。
    そっちの皆がなるべく余裕のある時に行きたいから、良ければ予定を教えて欲しい。
    楽しみにしてる。』

千枝「ちょ、ちょっと待った!私には!?」

>千枝も携帯を取り出して、画面を見る。

>新着メール一件。

千枝「来てんじゃん!うわー、一番に気付きたかったー!」

陽介「マジ?相棒帰って来れるって?」

直斗「あちらは今大変らしいから、もしかしたら無理かもしれないと思っていたんですがね」

りせ「あれれー?嬉しくないの?」

直斗「……嬉しいです」

完二「こうしちゃいられねえ!テスト悪くて補習なんてなったらよぉ……」

陽介「うっわ!そうじゃん!やべえんじゃねえの俺ら!」

雪子「そうならない為にもがんばろー!」

>……。
956 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/14(金) 00:08:06.05 ID:wc9W8BGLo


【7/12→7/18 晴れ】


綾時「終わったねぇ」

鳴上「終わったなぁ」

ラビリス「……」

メティス「……」

ライドウ「あの二人は何故煙を?」

綾時「テスト、駄目だったんじゃないの?」

鳴上「勉強してる時間無いくらい忙しかったからなぁ」

鳥海「はーいお疲れー。楽しみにしてた夏休みが遠ざかっちゃって残念だったわねぇ。でももうすぐに夏休みだから安心しなさい!」

>歓声が沸き上がる。

鳥海「ったく調子いいんだから。一応夏期講習もあるから、進学組は受けといた方がいいわよー。そんじゃ、結果発表をお待ちください、と。じゃあねー」

綾時「さて、悠。予定はどうなった?」

鳴上「8月6日から一週間向こうだ。綾時は他に予定無いんだろ?」

綾時「失礼な。無いけど」

ラビリス「ウチも平気やで!」

メティス「私も!」
957 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/14(金) 00:08:49.59 ID:wc9W8BGLo
ライドウ「復活した……」

鳴上「一応、テストの結果次第だぞ。悪かったら講習受けないと」

ラビリス「それは酷ってもんやで……」

メティス「私、大丈夫かな……」

鳴上「明後日だったか、発表は。それが一学期最後の日だな」

綾時「まぁ僕らは心配無いでしょ」

ライドウ「……実は、英語は余り得意では無いんですが」

鳴上「教えただろ、文法」

ライドウ「響きがどうも……」

ラビリス「ま、とにかく週末までのお楽しみやな!」

メティス「ドキドキして2日も……私、壊れないかな」

>一学期末テストが終わった。

>発表がすぎれば夏休みだ。

>八十稲羽に行くまでの間に、事件が起きなければいいのだが……。

>今だけは、ただ祈るしかない。
958 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/14(金) 00:11:44.98 ID:wc9W8BGLo
わーい夏体みだ

では、また明日。
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/09/14(金) 09:53:06.27 ID:3Rg4sBlE0
乙休み

リアルじゃ終わったトコだけどww
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/14(金) 23:31:16.75 ID:N5yTCDGFo
ハム子出た意味あるの?
961 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:42:45.21 ID:+0vm6ijHo


【7/20 晴れ】


>午前の授業が終わった。

男子「おい、試験結果出たってよ!」

>教室に飛び込んできた男子生徒がそう言ったのを皮切りに、生徒たちは職員室前に向かった。

綾時「来たねぇ」

鳴上「俺達も見に行くか?」

綾時「んー、正直あんまり興味無いかも」

ライドウ「いつ見に行っても結果は同じですからね」

鳴上「まぁそうだな。メティス……あれ」

ライドウ「ラビリスさんとメティスさんならさっき既に走って行きましたよ」

綾時「ありゃ、行動早い」

ライドウ「なんでも、『ウチにそんな余裕あらへん!あんたらとは違うんや!』だそうです」

鳴上「相変わらず細かい仕草が妙に上手いな」

ライドウ「探偵ですから」

綾時「探偵ってすごいんだねぇ。あ、帰って来たんじゃない?」
962 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:43:12.07 ID:+0vm6ijHo
>ラビリスとメティスが浮かない顔で戻ってきた。

鳴上「おかえり。どうだった?」

綾時「その顔からすると、駄目だったのかな?」

ラビリス「いや、うーん……なぁ?」

メティス「え?うーん……」

ライドウ「一概に駄目だった訳ではなさそうですね」

ラビリス「順位としてはな、補習はいらん順位やってん」

メティス「ただ、丁度平均くらいだから……夏期講習は受けた方がいいのかなって」

鳴上「そうか。でも二人共進学するわけじゃないんだろ?」

メティス「それはそうだけど?」

鳴上「だったら本人の意思次第じゃないか?別に強制ってわけじゃないんだし」

>二人の顔がぱっと輝いた。

ラビリス「せやんな!いやー良かった!あ……この事、美鶴さんには内緒にしといてな?」

鳴上「何でだ?」

ラビリス「いや、普段から任務で学業を疎かにさせてしまって申し訳ない、せめて夏期講習は出られるようにしておこう!とか言いそうやし」

>確かに言いそうだった。
963 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:43:42.63 ID:+0vm6ijHo
綾時「これで心置きなく夏休み迎えられるね」

メティス「良かった……あ、三人の名前も見つけたよ」

ライドウ「ほう。何位でしたか?」

ラビリス「下から綾時、ライドウ、悠やな。綾時は上から三分の一くらい、ライドウはトップ10入りやで」

綾時「あれ?思ったより低い」

ライドウ「勉強した甲斐のある位置ですね、良かった」

鳴上「それで、俺は?」

メティス「……一番上」

鳴上「……そうか」

>良かった。

>前回のテストは不本意な結果に終わったから、今回さり気なく勉強していたのだが、どうやら実ったようだ。

綾時「とりあえず学力に関しては心配無く夏休みだね」

鳴上「だな。午後が終わったら旅行の準備しないと」

ライドウ「確かまだ二週間ほど先では?」

綾時「気が逸ってる感じがすごいね。そんなに楽しみ?」

ラビリス「あ、ウチも!ウチも一緒に行く!」

メティス「買い物だったら私も行きたいな」

鳴上「それじゃ、一旦帰ってから買い物に出るとしようか。最後までちゃんと出てからな」

>放課後、三人で買い物に回る事になった。

>今日で、いろいろあった一学期が終わった。

>……。
964 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:44:09.52 ID:+0vm6ijHo
ラビリス「とは言え、別に持っていくもんとか無いんよなぁ」

メティス「私たちは身一つでもどこへでもいけるしね」

鳴上「羨ましいな、そういう所は。って言っても、俺も結構物置いてきてるからあんまりいらないんだけど」

ラビリス「ほな気合い入れて来る事も無かったんやなぁ。なんや拍子抜けやわ」

メティス「あ、でも私は買いたい物もあるし」

鳴上「そういえば、お前達はどこからお金出てるんだ?やっぱり桐条さんか?」

ラビリス「せやで」

メティス「お小遣い制なの」

鳴上「こ、小遣い制……」

ラビリス「あ、けど月額ちゃうねんで?歩合制やねん」

鳴上「歩合?何のだ?」

メティス「悪魔一体につき100円」

鳴上「悪魔一体って……それで毎晩走り回ってるのか」

ラビリス「一晩で平均5000円くらいやなぁ」

鳴上「それ、かなりの額になってるんじゃないか」

ラビリス「どのくらいからかなりなんかわからんけど、まぁ月30万くらいは……」

鳴上「バイトじゃ済まない額だな……」
965 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:44:41.38 ID:+0vm6ijHo
メティス「それで、使う事も無いからどんどん貯まっちゃって。今大体ひゃく……」

鳴上「待て、それ以上言わないでくれ。何か辛くなってきた」

ラビリス「悠も美鶴さんに言うてみたらええやん?」

鳴上「いや、俺は普通にバイトとかするし……」

メティス「最初は私達もいらないって言ったんだけど、君達が友達と遊ぶ時に手持ちが無いでは辛いだろう、って」

鳴上「……そっか」

ラビリス「ありがたいけど、使わんかった分はその内返そ思てんねん。見返りほしさに働いてるわけちゃうしな」

鳴上「立派だな」

ラビリス「そうしてみぃ言うたんは悠やで?もう忘れてるかもしれんけど」

>そういえば、以前ラビリスにそんな事を言ったような気がする……。

ラビリス「うわ、ホンマに忘れてたんかいな!もー、あれで結構考え方変わったりしたんやけど?」

鳴上「い、いやちゃんと思い出したぞ。大丈夫だって」

メティス「何の話?」

ラビリス「内緒ーや。な?」

鳴上「ん?あ、ああ……」

メティス「むぅ……」
966 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:45:21.09 ID:+0vm6ijHo
ラビリス「あー……そや。日用品は別にいらんけど、服とか買いたいかも」

メティス「服?どうして?」

ラビリス「いや、メティスも一緒やろ?ウチら制服以外持ってへんやん」

メティス「あ……そういえば、そうかも」

鳴上「寮じゃ何も着てないもんな。慣れたけど……」

ラビリス「せっかくお出かけするんやったら、おしゃれして行きたいやん!」

メティス「おしゃれ……私もしたい」

鳴上「それなら二人で見てきたらどうだ?ラビリスも一緒なら例の……なんだったか」

ラビリス「ああ、ちゃんと人肌に見せられるで。着替えても安心やな」

メティス「あの、良かったら鳴上君も……」

鳴上「俺?俺は服はいいよ。買い足したい日用品と、ちょっとしたおみやげくらいかな。見終わったらまた集まろう」

ラビリス「……へいへい」

メティス「……はぁ」

鳴上「?」

>ラビリスとメティスと二手に別れて買い物をする事になった。
967 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:46:02.98 ID:+0vm6ijHo
鳴上「ええと……あと陽介に……ナースか」

>さて、どうやって購入したものか。

>堂々としていればバレないだろうか?

刹那「おお?鳴上か。どうした、本屋の前で」

>やたら聞き覚えのある声がした。

鳴上「あ、刹那さん。……刹那さんならいいかな」

刹那「なんだよ、何か隠し事か?」

鳴上「ええと……まず説明しますと、刹那さんに声がそっくりな友人がいてですね」

刹那「声ぇ?なんだそりゃ」

鳴上「今度そいつに久しぶりに会うんで、土産でも渡そうかと」

刹那「本屋って……そいつんとこの本屋でも買えんだろ」

鳴上「まあそうなんですが……実は、その……健全な男の子ならきっと持っているであろう類の本でして」

刹那「あぁ?……あぁ。いや、お前買えないだろ」

鳴上「ええ、ギリギリで。それでどうしようかなと」

刹那「そうか、頑張れよ。じゃ!」

鳴上「ちょっと待ってください」

>刹那の襟を引っ掴んで止めた。

刹那「ぐぇ!なんだよ、俺関係ないだろ?」

鳴上「似た声のよしみでお願いしたいんです、代理購入を!」

刹那「お前だったら大丈夫だって、堂々としてればさ!」

鳴上「ナース物を買う男だと思われたくないんです……」
968 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:46:37.73 ID:+0vm6ijHo
刹那「……そいつ、ナース物が好きなのか」

鳴上「らしいです……」

刹那「そうか……仕方ねえな!」

>刹那の目が欄と輝く。

刹那「ナース好きと聞いちゃ黙ってられねえよ。俺に、任せとけ……!」

鳴上「刹那さん……!」

>刹那はずんずんと本屋の奥に入っていく。

鳴上「頼りになる人がいて良かった……陽介も満足するだろう」

>レジを通過し、無事に帰って来た。

鳴上「すみません、手間かけさせて。あの、お金は……」

>本屋の袋に包まれた、数冊の本を手渡される。

刹那「いらねえよ。その友達に言っといてくれ。お前は良い趣味してるぜ、ってな」

鳴上「は、はい。ありがとうございました!」

>刹那は手を振って去っていく。

>あれが、男の背中か……。

>『No.15 悪魔 甲斐刹那』のランクが3になった。

>そろそろあの二人も買い物を終えただろう。

>合流するか。

>……。
969 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:47:04.98 ID:+0vm6ijHo
メティス「何買ったの?」

鳴上「ん、本をな」

ラビリス「悠、おみやげ買うんちゃうかったん?」

鳴上「立派なおみやげさ。服は買ったのか?」

ラビリス「何着か可愛いのあったで!」

メティス「ちょっと買いすぎちゃった」

鳴上「そりゃ良かった」

ラビリス「どうや?楽しみ?」

鳴上「何がだ?」

メティス「姉さん、鳴上君は……」

ラビリス「いいや!ここは引かへん!どんだけにぶちんでも気付くようにはっきり言うたる!ウチらが可愛い服着てるの見るの、楽しみかって聞いてんねん!」

>ラビリスはすごい剣幕でそうまくし立てた。

鳴上「そ、そりゃ楽しみだよ。楽しみにしてる」

メティス「本当?」

鳴上「本当だって。可愛い子が可愛い服着るんならそりゃ楽しみだろ」

>思わず本音を口走ってしまった。

>まずい、と思って二人の顔色を窺うと、何故か二人共にやけていた。

ラビリス「えへへ、しゃあないなぁ。そない言うんやったらちゃんと見せたるわ」

メティス「可愛い……ふふふ。あのね、こういうの買ったんだけど……」

鳴上「いや、別に今見せなくていい!大丈夫だから!」

>それからしばらく、メティスとラビリスに洋服を自慢され続けた……。

>『No.08 正義 ラビリス』のランクが4になった。

>『No.12 刑死者 メティス』のランクが7になった。

>……。
970 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:47:49.34 ID:+0vm6ijHo
ラビリス「あの襟んとこにフリルがあるん可愛かったよなぁ」

鳴上「買えば良かったのに」

メティス「姉さん、自分には似合わないって結局買わなかったの」

鳴上「そんな事無いと思うけどなぁ」

ラビリス「んもう!褒めたってなんもでぇへんよ!」

鳴上「思ったままを言って……あれ?」

>寮の前に天田が立っている。

天田「あ、先輩。おかえりなさい」

鳴上「ただいま。どうした、そんな所に立って」

天田「いえ、一番にお知らせしようと思ったんですけど……」

>天田はため息をついた。

鳴上「お知らせって、何を……?」

>視線を感じる。

>寮の窓からだ。

>あれは……美奈子?

天田「……手遅れみたいですね。入ったら、多分わかると思いますよ」

>不思議に思いながら寮に入る。
971 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:48:46.60 ID:+0vm6ijHo
鳴上「別に何もないけど」

天田「あれ、見てください」

>あれ……?

>天田が指差した先には旅行カバンが一つ置いてある。

鳴上「誰か来てるのか?」

美奈子「来てるんじゃない、行くんだよ!」

>二階から美奈子が降りてきた。

>やはり、さっき覗いていたのは美奈子だったようだ。

鳴上「これ、美奈子のか。行くってどこへ行くんだ?」

美奈子「八十稲羽」

鳴上「……へ?」

美奈子「だから、私も一緒に行く!」

>……ええと。

>俺、綾時、メティス、ラビリス、湊。

>さらに美奈子……?

>随分と大所帯だ。

鳴上「いや、行くはいいんだが。こっち大丈夫なのか?流石にそれだけ抜けたら……」

美奈子「美鶴先輩に聞いたら鳴上がいいって言ったらいいって」

鳴上「あー……」
972 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:49:22.33 ID:+0vm6ijHo
>天田が袖を引っ張る。

天田「本当はまずいんですよ、流石に。一応皆さんいない時は真田先輩達が帰って来てくれる事になってるんですけど……人手が」

鳴上「凄く断りづらいんだが」

天田「なんだか旅行とか大好きみたいで。桐条先輩も勢いに押されて断りきれなくて。なんで、先輩が最後の望みなんですよ」

美奈子「ちょっと、何コソコソお話してるの?ねえ悠、行ってもいいでしょ?」

鳴上「……えーと」

>既に準備を済ませている事から考えても、本当に楽しみなのだろう。

鳴上「ちょっと、大所帯すぎるというか……」

美奈子「私ひとりくらい大丈夫!」

鳴上「……あの、悪いけど今回は」

美奈子「行ってもオッケー?」

>駄目だ、止められそうにない。

>どうしたものかと頭をひねっていると、湊も降りてきた。

有里「美奈子、あんまり無茶言っちゃ駄目だよ」

美奈子「えー、湊は行くんでしょ?そんなのずるい!」

有里「仕方ないなぁ。だから、僕らといけない代わりに……」

>湊が何か耳打ちしている。

>最初不満気だった美奈子も、最後には満面の笑みに変わっていた。
973 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:50:22.11 ID:+0vm6ijHo
美奈子「さっすが湊!やるじゃん!」

有里「どーも。悠、話ついたから」

鳴上「あ、ああ。ありがとうな。どうしたもんかと思ったよ」

有里「あ、その代わり……アイギスも連れて行く事になったから」

鳴上「何?」

有里「後ろの二人の保護者だって」

ラビリス「なんや、ウチの方がお姉ちゃんやのに」

メティス「アイギス姉さんも一緒……そのほうがいいよ、うん」

鳴上「まぁ、いいか……」

>友達に会いに八十稲羽に行くだけのはずだったのに、気付けば大所帯での旅行になってしまった。

>何となく不安なのは何故だろうか……。

>やらかさないと良いが。
974 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 00:52:13.88 ID:+0vm6ijHo
男の友情はしょーもない事で上がる。

では、また明日。
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/09/15(土) 02:40:26.23 ID:SQTU+rhno
乙ーせっちゃん…あんた漢だぜ!
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 07:02:13.06 ID:DqPWnhLco
ハムラビティスはかわいいなぁ
977 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/15(土) 22:20:39.51 ID:+0vm6ijHo
今週から土日お休みを制度にしたいと思います。
昨日言っておこうと思ってたのに忘れてた……。
投下は月〜金になります。

では、また来週。
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 01:06:16.02 ID:oQSSfh2Z0
了解
979 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/18(火) 00:02:04.26 ID:KDJLN0lgo


【7/21 晴れ】


>買い物も終わったし、後は出発まで特にやる事は無い。

>ただ、かなり大人数を連れて行く事になったから、それまでに出来るだけの事はやっておきたい。

鳴上「とはいえ昼間はやる事も無いな……ああ、そうだ」

>不在の間世話になるだろう人達に挨拶に行っておこうか。

鳴上「山岸さんと天田はいつでも会えるから、週末の方が会いやすい人からだな」

>携帯を取り出して、電話をかけた。

>……。

鳴上「えーと……あ、いたいた」

>クラブ、『エスカペイド』。

>開店前の店内で藤堂は待っていた。

藤堂「よう。挨拶周りか」

鳴上「ええ、一週間程こっちにいないんで……」

藤堂「聞いてるよ。まぁお前がいない間の事は任せろよ」

鳴上「すみません、俺のために」
980 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/18(火) 00:02:33.32 ID:KDJLN0lgo
藤堂「いや、お前のためってわけでもない。ほっとくわけにもいかんだろ?」

鳴上「でも、俺が休みたい為に大きい穴開ける事になったんで、やっぱり」

藤堂「んー、俺らは違うけど、お前らは学生だろ?学生はちゃんと休みも取らないとな。社会に出たら無いぞ夏休み」

鳴上「あ、日本は特に無いっていいますよね」

藤堂「んだなぁ。俺は普通の会社勤めじゃないから仕方ないけど、しっかりした会社でも夏休み3日とかザラだろ」

鳴上「そう考えると、学生って楽ですよね」

藤堂「楽かどうかは考えようだ。今日日、夏休みだって勉強漬けだったりするしな」

鳴上「それはそうですけど」

藤堂「それに、仕事はやればやった分見返りがあるからな。そういう風に考えたら報われるかどうかもわからない事に時間費やす方が辛くないか?」

鳴上「ああ……それもそうかもしれませんね。藤堂さんって何か、視野が広いっていうか。いろんな目線から喋りますよね」

藤堂「お前の周りにはそういう大人はいなかったか?」

鳴上「俺の周り……?」

>……両親、堂島さん……。

鳴上「あまり、いなかったかもしれません。皆尊敬できる人ですけど、タイプが違うというか」

藤堂「なるほどな。先輩方は自分の事で必死だしなぁ。俺はそういう時期過ぎたからちょっと変わって見えるのかもしれないな」

鳴上「やっぱり旅をしたりすると性格も変わりますか」

藤堂「いろいろやったからなぁ。人生って何だ?みたいな、今考えると答えなんて無い事を探してたし」
981 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/18(火) 00:03:18.60 ID:KDJLN0lgo
鳴上「哲学的ですね」

藤堂「もっと哲学的な事を言うとだな、人は皆俺と同じ旅をしてる。それを人生って呼ぶんだ。意味を探すことを」

>以前、テレビの中で同じような事を言ったのを思い出した。

>人生の意味を知る為に生きる……。

藤堂「……何か飲みながら話すか。店長、冷蔵庫開けますよ」

>奥に居た男性、あの人が店長なのだろう。

>こちらを見ると一言「払えよ」、とだけ言った。

藤堂「コーラでいいか?」

鳴上「あ、はい。店長さんとは……?」

>炭酸の弾ける音がする……。

藤堂「常連なんだ、俺。なんか気に入られちゃって」

鳴上「なるほど。藤堂さんって、そういうところありそうですもんね。誰にでも気に入られるというか、いろんなところに入り込めるというか」

藤堂「それも一種の処世術だな。人と仲良くするコツは、心に仮面を被せる事だ。俺達風に言うならペルソナか?」

鳴上「心に仮面を……?」

藤堂「簡単に言えば自分を偽る事だな。相手に合わせていろんなやり方をすればいい」

鳴上「でも、それじゃ本当に仲間とは言えないんじゃないでしょうか」

藤堂「そうだな、そうかもしれない。けど、世の中の全ての人と仲良くなる事って可能か?」

鳴上「それは……」
982 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/18(火) 00:03:46.86 ID:KDJLN0lgo
藤堂「俺は不可能だと思う。だからこそ、心を覆わずに接する事のできる相手っていうのが本当の仲間で、大事な友達なんだと思うよ」

鳴上「そうですね、確かにそうです」

藤堂「俺にとってはお前もそのひとりなんだがな」

鳴上「え?」

藤堂「はは、前に言っただろ。お前のことは気に入ってるんだ。……そんなお前に、人生の先輩から忠告だ」

>藤堂は軽く笑った後真顔になった。

藤堂「お前はこれから、自分の人生について考えろ。他人は後回しでいい」

鳴上「よく、意味がわかりませんが」

藤堂「人の事を考える前に自分の事を考えろって言ってるんだ。お前はきっと誰かの幸せの為に身を滅ぼす事になる。それも遠くない将来だ」

鳴上「……それは、いけない事なんでしょうか」

藤堂「いけなかないさ。ただ、それでお前がどうにかなっちまうのが嫌なんだよ、俺は」

鳴上「以前も別の誰かにそんな事を言われたような覚えがあります」

藤堂「お前がそれに抵抗を持ってるってのもわかる。俺達は、人の役に立ちなさいって教えられて生きてきた。けど、それも限度がある。……度を越した献身は、他の誰かにしわ寄せが行くんだ」

>藤堂は苦い顔をしている。
983 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/18(火) 00:04:25.44 ID:KDJLN0lgo
>多分、言いたくないのだろう。

>自分がそんな事を言う人間だと思われたくないのか、あるいは……本当はもっと上手く言えたはずだ、と悔いているのか。

鳴上「忠告、ありがとうございます。ちゃんと覚えておきます」

藤堂「そうしろ。いや、忘れててもいい。瀬戸際で思い出して、お前がお前の為に生きる道を見つけてくれればいい。余計なお節介だろうけどな」

鳴上「藤堂さんの言う事は、不思議と反発せずに聞けるんです。よければこれからもお節介をよろしくお願いします」

>藤堂は驚いたような顔をして、それから笑った。

藤堂「おう、任せとけ」

>『No.04 皇帝 藤堂尚也』のランクが3になった。

>……。

>まだ挨拶する相手は残っているが、今日は他には都合がつかなかった。

>明日か、あるいはそれ以降に挨拶に行く事にしよう。

>そう思って寮に戻ってきたら、寮の前に美鶴がいた。

鳴上「あれ、桐条さん。いらしてたんですか」

美鶴「ああ、鳴上か。お帰り。丁度良かった、直接話しておくぞ」

>俺はつい身構えてしまった。

>また何か事件が起こったのかと思ったのだ。
984 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/18(火) 00:04:53.53 ID:KDJLN0lgo
美鶴「そう構えるな。何か事が起こったわけではない」

>美鶴はくすくすと笑った。

美鶴「君も旅行に行くそうだが、それとは別枠に我々も旅行に出る事にした。普段の慰安も兼ねて、寮の面々や元課外活動部員で行くつもりなんだが……」

鳴上「なんだが?」

美鶴「君も呼ぶべきだと美奈子に強く推薦されてな。良ければ一緒にどうだ」

鳴上「え、俺もですか。その間街は……」

美鶴「……君達に休暇を許した事を聞いて美奈子が拗ねてな。課外活動部外の人達に任せる事にした。とはいえ長い間空けるわけにもいかないから、二泊三日が限度だが」

鳴上「あ、そうですか。……ちなみにどちらへ」

美鶴「屋久島に私の別荘がある」

鳴上「屋久島……良いなら行きたいです」

美鶴「そうか。なら急いで準備しろ。出発は月曜だ」

鳴上「月曜?明後日ですか。えらく急ですね」

美鶴「美奈子が余りに騒ぐからつい……どうも私はあの子には弱いようだ」

>湊にもな、と思ったが、勿論口には出さない。

鳴上「わかりました、それじゃお供します。今日はその話で?」

美鶴「ああ。それと……いや、なんでもない。では明後日迎えをよこす。またな」

>……多分、湊に会いに来たんだろうな。

>いろいろと理由をつけて。

>なんだか知らないが少し悔しかった。
985 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/18(火) 00:07:19.82 ID:KDJLN0lgo
美奈子ちゃんのゴネ得作戦大成功。

ちょいと短めの更新。
そろそろこのスレも終わるので次スレに行きたいと思います。
こっちのスレでは本編投下は以後ありません。おまけくらい。
明日の投下前に次スレ貼るので待っててね。

では、また明日。
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 03:09:18.69 ID:Q9gxLz5L0

そろそろ次スレの季節かな
987 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/19(水) 00:02:05.99 ID:qWwLXxcho
鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」ゴールデン 2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347980481/

新スレが立ちました。良かったら次もお付き合いください。
988 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/19(水) 00:02:40.24 ID:qWwLXxcho
おまけ。

有里「なんだか不思議な縁を感じるので皆さんに集まってもらいました」

藤堂「おー」

美奈子「いぇーい」

舞耶「ひゅー」

達哉「……?」

鳴上「集まったのは良いが、何を……?」

有里「いや、ほら。せっかく勢揃いなわけだからさ」

達哉「な、何が勢揃いなんだ?」

美奈子「そりゃ歴代主人公でしょ」

舞耶「皆まだ気付いていないのね?ここがメタ空間だという事に……」

藤堂「め、メタ空間!」

有里「要するになんでもアリって事だね」

鳴上「そうなのか……え、ええと。その、よろしくお願いします先輩方」
989 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/19(水) 00:03:31.57 ID:qWwLXxcho
達哉「そうか、それで俺も高校の時の体なんだな」

舞耶「私も十年は若返った気がしてたけど本当に若返ってたのね」

有里「僕らはあんまり変化無いね」

美奈子「まぁ、体はね」

藤堂「俺なんか15年は若返った気分だ」

鳴上「……一年じゃ何も変わったように思えないな」

有里「とにかく、そういうわけなんでそれぞれ思ってた事を語ってください。以上」

美奈子「ああ、湊がぐったりしてる……」

鳴上「一瞬とはいえあいつに仕切りは無理だったか……」

有里「基本的には無感動でどうでもいいが口癖のダルい系主人公だからね……」

藤堂「えー、じゃあ一個言っていいか」

達哉「先輩か。どうぞ」

藤堂「あのさ……鳴上幸せ過ぎじゃないか」

有里「確かに」

美奈子「確かに」

達哉「確かに」

舞耶「そ、そんな事ないでしょ?」

鳴上「何で即答なんだ、皆……」
990 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/19(水) 00:04:08.58 ID:qWwLXxcho
藤堂「いや、俺は別にそこまで酷い事にはなってないんだけど」

有里「死にます」

美奈子「死にますね」

舞耶(私は別に何とも無いから流石に何も言えないわね……)

鳴上「それは……それはお前達が自分で選んだ道だろ?納得してるんじゃなかったのか」

有里「そりゃ納得してるけどさ。後輩が君だからね」

美奈子「なんというリア充生活……」

鳴上「生活に関してはお前達だって同じようなもんだろう!」

有里「……何の事かわからないな」

藤堂「周りの女次々落としてったって聞いたぞ」

美奈子「うわ……湊怖い……」

鳴上「いや、美奈子も周りの男子次次落としてたんだろ」

美奈子「それは仕方ないよ、だってあっちからくるし……」

舞耶「待って皆、タッちゃんが変」

鳴上「うわ……罪リメイクのポスターみたいな顔してる……」

藤堂「ど、どうした周防。何かあったのか」
991 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/19(水) 00:05:30.33 ID:qWwLXxcho
達哉「俺……最終的に誰もいない世界で生きていかなきゃならないんだけど……しかも別にリア充もしてない……」

舞耶「だけど、リサちゃんがいるじゃない!」

達哉「罰じゃ覚えてるのは俺だけだし!会えない!」

舞耶「ルートによっては会えるでしょ!」

鳴上「……俺、恵まれてたんだな」

達哉「ああ……俺だって彼女何人も作ったり友達と放課後集まったりしたかったよ」

藤堂「俺もだ……」

舞耶「え、鳴上君って彼女何人も作ってたの?」

鳴上「いや、ルートによっては……」

美奈子「ひどーい、さいてー」

有里「君は彼氏何人もいたよね」

藤堂「お前も彼女何人もいただろ」

達哉「藤堂さんも何人にも慕われてたじゃないですか」

藤堂「そうなのか!?」

舞耶「あ、あの人っていうのが藤堂さんなのね。だったらかなり……」
992 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/19(水) 00:06:04.02 ID:qWwLXxcho
藤堂「……時間って、戻らないかな」

達哉「あれ、そう考えると何も無いのって俺だけ……」

舞耶「私がいるじゃない。駄目?」

達哉「舞耶姉は……女子高生じゃない……」

舞耶「ちょっと、それ聞き捨てならないわよ」

鳴上「何だか申し訳なくなってきた」

有里「まぁ心配しなくても、悠はきっとひどい目に遭うよ」

美奈子「あ、それ私も思った。流れがそんな感じだよね」

鳴上「待て、なんだそれは」

藤堂「確かにそんな電波を受信したぞ」

舞耶「電波はやめて」

達哉「青春したかった……」

鳴上「結局何だったんだこの集まり」

有里「さぁ……とにかく君が恵まれてるって事じゃない?」

美奈子「そーねー」

鳴上「それでどうしろっていうんだ。地獄めぐりでもすればいいのか」

藤堂「お、いいなそれ」

達哉「俺と同じかそれ以上な目にあってほしい」

舞耶「それはちょっと難しくない?」
993 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/19(水) 00:12:49.36 ID:qWwLXxcho
有里「でも多分痛い目見るよ」

美奈子「理不尽に耐えてこそアトラス主人公って誰かも言ってたしね!」

鳴上「何なんだその酷い話は!」

舞耶「世の中には東京が死んでから生まれる人だっているのよ!」

鳴上「と、東京が死ぬ!?」

有里「とにかくそういうわけだから。君はきっと酷い目に遭う。遭わされる。間違いない」

鳴上「何で俺ばっかり!」

>……?

鳴上「あれ、ここ……」

>ベッドの上だ。

天田『ちょっと、どうかしたんですか』

>天田が扉を叩きながら言う。

鳴上「あ、いや……夢見が悪くてな」

天田『……大丈夫ですか?まぁ、いいですけど……心配になるんで、なるべく静かに寝てください』

鳴上「悪かったな、起こしちゃって」

天田『いえ。それじゃ失礼します』

鳴上「……変な夢だったな」

>最早おぼろげにしか覚えていないが、理不尽なことを言われた気がする。

鳴上「っと、早く寝直そう。睡眠時間は……大事だ……」

>……。
994 : ◆e8lME0lo0A [saga]:2012/09/19(水) 00:13:49.60 ID:qWwLXxcho
鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」ゴールデン 2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347980481/

もっかい宣伝。
次はこちらになりまーす。
鳴上君は本当に恵まれてると思うから、これから酷い目に遭えばバランスが取れますね。

では、また明日……次スレで。
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/09/19(水) 01:14:22.29 ID:NyK6rQXQo
乙ーうめてやるー
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2012/09/19(水) 01:25:32.59 ID:Di/rMo/1o
そしてそれを乗り越えるのも番長。
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/19(水) 10:22:30.28 ID:T9Y5XE5Q0

確かに番長は恵まれてるよなあ
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/09/19(水) 14:57:30.82 ID:+rRO4tYAO
歴代主人公…あれ?アイギスは(ry
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/19(水) 16:27:13.26 ID:sQYTvEMIO
うめー
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/19(水) 16:28:08.76 ID:sQYTvEMIO
1000
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低身長の女の子ちょっと来い Part.40 @ 2012/09/19(水) 16:08:09.55 ID:AxZu970yo
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あすみ「安価で色んな人を絶望させちゃうんだから!」QB「ほう」 @ 2012/09/19(水) 15:43:42.39 ID:fDy/TJFlo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1348037022/

HOWLINGの冒頭ってなんて言ってんの? @ 2012/09/19(水) 13:59:47.96 ID:V4OGau3Oo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1348030787/

写真袋 @ 2012/09/19(水) 13:47:58.60 ID:SXINaPbIO
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右翼ジジイの石原慎太郎のせいでこんな事態になっちまったんじゃねえの @ 2012/09/19(水) 11:28:05.23
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【いちご】そこのメンズちょっと来い!あ、レディースも113【デラックス】 @ 2012/09/19(水) 11:25:44.29 ID:XRDZIyEDo
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【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART20【安価】 @ 2012/09/19(水) 10:37:38.05 ID:OFPzaVvl0
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【避難】今日も会社でVIP【避難】 @ 2012/09/19(水) 08:56:34.93 ID:UKygrzHno
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