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七夜「ここは日本か?」トーリ「あっれ〜七夜じゃん! こんなところで何してんだよ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/10(火) 18:04:11.14 ID:AoFLTOZO0
MELTY BLOOD×境界線上のホライゾンです
七夜中心で行きます

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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/10(火) 18:04:33.68 ID:AoFLTOZO0
頬をなじる、冷たい風。
 腹部は、まるで溶鉱炉にでも突っ込んでいるかのように熱をおび、それに相対するかのように体中の熱は、冷めていく。
 手は動かない。
 体も、もう、指一本たりとも動かせそうにない。
 だが、口だけは動いた。
 それは、酷くかすれた、少しだけ未練を帯びた殺人鬼の声だった。

 「やべぇ―――――コトが終われば塵のように消えるつもりだってのに。
 未練が出来ちまったぜ、軋間」
  

 ……風が臭いを運ぶ。
 それは、生臭い、血の匂いだ。
 風は吐き気を催すほどの、おびただしい血の臭いを運び。
 血の臭いは、月の出ない夜でも、出自を明らかにさせる。
 
 「…………」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/10(火) 18:05:00.91 ID:AoFLTOZO0
 殺人鬼の問いに、答える者はいない。
 いや、いるが、答えることが出来ない。 
 あるのは血の臭い。
 雲間からさす月光が差し込む。 
 折り重なるように倒れる鬼と、殺人鬼。
 月は彼らの姿を照らしあげ、血の海を映し出す。  
 月光は人を映し、血の海を映し、そして現状を映し出す。
 そこには、問いかけ者と、返答者が存在し。
 返答者は、鬼は、喉が割かれ、沈黙に伏している。
 殺人鬼は、それを気にせず、ククと笑い。 

 「楽しい。楽しすぎだってアンタ。十何年の人生なんて話にならない。
 今の二分間の充実には到底及ばない。
 なぁ、そうだろ? 
 なんかもう色々どうでもよくなるぐらい、
 最高の時間だったよな?」

 「…………」

 殺人鬼の喜色を帯びた言葉は嬉しそうな笑いに変わり。
 問いかけられし鬼は、黙す。
 当たり前だ、そのものは、喉を裂かれ、喋ることなどできない。
 それに、殺人鬼は、くく、と笑いつつも気付く。
 あぁそうだったな、と忘れてた、なんて感じの声で。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/10(火) 18:06:10.53 ID:AoFLTOZO0
「って、悪かった、喉を裂かれちゃ声は出ないわな。ああくそ、こっちも目が見えなくなってきた。
 すげえ勢いで血が流れてるからなあ」

 もはや目は見えない。
 感じるのは、腹を貫かれた感触と、内側から広がるかのような熱、そしてそれに反するかのように広がる冷たくなっていく体温。
 そして風の、優しい冷たさ。

 嗅覚も、体の感覚も、意識も消えかかっている。
 それでも、殺人鬼は喋る。

 その殺人鬼は、もう少しだけこの|時間(殺し合い)が続けと、続いていてほしかったと、そう言うかのように、未練を残して喋る。

 「くそ、もう少し、もう一秒だけでもいいから続けていたかったが―――――――この未練が。オレ達には相応しいんだろな」

 もはや感触は感じない。
 目も、見えない。
 思考も出来なくなってきている。

 でも、一つだけ、喋っていて、気づいた。
 こんな殺人鬼でも、これだけの機会と、これだけのモノと、これだけの時間を与えられたんだ。
 これはもう……

 「……ああいや、勿体ないぐらい上等か。時間切れで消えるより何倍もマシな最期だ。
 人でなしにしては恵まれすぎている」

 そうあまりにも恵まれ過ぎていて。
 神に感謝したくなる。
 これだけ恵まれた殺人鬼だ。
 まったく、こんなにも充実してる殺人鬼なんて俺くらいじゃないか?
 なんて、殺人鬼は思いつつもため息をするかのように、死後の世界を考える。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/10(火) 18:06:57.70 ID:AoFLTOZO0







   「……まったく。地獄に落ちたら。八熱めぐりくらいは覚悟しておくとするか―――――」

    そう言って、殺人鬼は―――――――『七夜志貴』は、意識を手放した。
    残るのは月光に照らされた抜け殻と、泉のように溢れた、血だけだった。
    それも……数時間後には、跡形もなく、面影すらなく、全て消えた。
    残ったものは、なにもなかった。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/10(火) 18:07:39.65 ID:AoFLTOZO0



 



      ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 
     これは あり得ない 出来事 まさに 奇跡 としか 言えない
                  
       驚愕の 出来事 これは 紛れもなく 現実で 非現実的
   
    世界が 彼を 偶然にも 世界へと 送り出す その出来事は 「 」か   
  
    それとも 根源か しかし 紛れもなく それは  彼にとって 

             『新世界の始まりだった』                      
      ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――







7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/07/10(火) 18:08:08.34 ID:Qd8mDzrBo
ご主人様がいるじゃん!
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/10(火) 18:10:19.69 ID:AoFLTOZO0
手ところで一旦終了
てか主人って白レン?
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/10(火) 18:14:05.26 ID:Qd8mDzrBo
あの二人の関係いいよね
楽しみにしてる
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/10(火) 20:02:13.03 ID:AoFLTOZO0






 夜になれば魔物は動き。
 朝になれば生者が動く。
 人の世は儚くも脆く、天と地、つまり人と異端、死と生、人と魔物は同じように生きるのは途端に難しい。
 されど、世界が、魔物と人が手を取り合い生きているとしたならば、
それは、ある意味では天地の合一と言えるものではなかろうか。
 ならばその世界は、殺人鬼すらも、受け入れるかもしれない。
 そこはまさしく、天地合一の世界なのだから。  





                             ★





 そよそよと風が頬をなぞる。
 死と臓物による冷たく生臭い風ではなく。
 暖かく、そして緑の匂いがする、平和な風。
 それはまさに、自分に一番合わなくて、自分が一番出会うもの。
 平和と言うものがいかに脆い死の線の上で出来ているかというのは、あの死の眼をもつた『志貴』でなくても分かる。
 社会にも、人にも、地にも、どこにでも、突けば脆い場所がある。
 それは死の線と言い、死の点と言う。
 されど、未来というものはどうにも無敵らしい。
 人が死のうが、人が生きようが、無数の蜘蛛の巣を張るかのように、多量の未来を用意し、変化させる。
 不定形で、歪。
 されど、だからこそ無敵。
 ……だからこの未来も、どうにも気まぐれな訪問らしい。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/10(火) 20:02:39.63 ID:AoFLTOZO0
「……たく、まいったね。死んだ人間が肉体を持ち、さらには見知らぬ場所にいる。……生き返ったんだとしたら―――――どうやら俺は神への反逆をしたらしい」

 この肉体の感覚は、まさに本物。
 傷一つすらなく、タタリの影響ですらないらしい。
 それは、タタリの影響で存在できた自分が一番わかる。
 タタリと切り離された、黄泉帰り。
 これは……

 「ふむ、遠野とは関係のない、七夜としての肉体ということか……まぁそれは、いい――――余計な付属物も付いてしまったが……起きてしまったことに文句をつけても始まらん。……まったく、未練も捨て義理も果たし、己の証も立てた。それで死んでみれば次の人生か……まったく、救われない」

 
 文句をつけつつも周りを一瞥する。
 場所は、どうにも

 「ここ、本当に日本か?」

 天気は晴れ、しかし、その向こうには白く薄い、二つの双月があり、さらには人が空を飛び、ロボが飛んでいる。
 一般の家らしきものもあるが、それも、なにか宙に浮かぶモニターが表示されていたり、道には人はいるが、下半身が際どい服を着た女性が普通に歩いていたり……
 ――――七夜は頭を押さえる。
 ここは、どうにも自分の世界とも、どこかの本で読んだ、並行世界とも、とれそうにない世界。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/10(火) 20:04:03.53 ID:AoFLTOZO0
どうにもここは……

 「……異世界か? 現実は小説よりも奇なりと言うが……俺が巻き込まれるいわれがわからんね」

 現実は受け入れる派の七夜でも、流石にこれは予想外であり、どうにもこうにも、吐き気を催しそうなほどに、見慣れないものがありすぎる。
 黄泉帰りをしたのはいい、自分の命が増えただけだ。
 だが、それでも、自分の世界の範囲であってほしい。
 殺人鬼の本分を果たすにしても、人として生きるにしても、この世界の常識が分からないのでは色々な面で生きづらい。  
  
 「……もしかしたらこれが地獄の一つだったりするのか? そうなんだとしたら、神様って奴はとことん意地が悪い。あたふたする人間を見るのが趣味のようだ」

 悪態をつくが、事態が好転するわけでもなく。
 むしろ時間がたつにつれ、悪化するに決まっている。
 さて、どうしたものか……そう七夜が考えていると、突然――――と言っても近づいてくる気配には気付いていたが――――声が真横から降ってきた。

 「あっれ〜七夜じゃん! こんなところで何やってんのよ? 転校二日目でいきなり先生の授業ぶっちとか命しらずじぇね? まっ、俺もサボってっからなんもいえねけどさ!!」

 と、この世界の、制服……? であろうものを着た、なにやら小包を抱えた、自分と同程度の年齢であろう少年がいた。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/11(水) 02:02:25.13 ID:tvvk6JND0
伝と東方は?
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 14:36:34.33 ID:eRgFCJS10
期待
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 17:38:36.74 ID:hGYe7cAE0
しかも……

 「へえ、俺の名前をしってるのか。ってことは、どうにもこの世界で俺の居場所が存在するらしい」

 そう、七夜はあたりをつける。
 変な世界で目を覚まし、居場所まで用意されている、どうにも出来過ぎているが、まぁこの世界の知識を得るには、この男から聞くのが手っ取り早い。
 そう七夜は、納得した。

 「おいおい、いきなり無視して『〜らしい』とか、カッコイイ感じで決めちゃってずりぃ〜ぞ!! 俺も『〜らしい』なんてかっこつけちゃうからな!! ……おっぱいがでかいらしい」

 ……納得はしていたが、目の前の男がアホだということもまた一つ、納得した。
 ついでに言うとこの男に情報を聴いていいのか不安に思った。
 が、とりあえず聞いておくことはある。
 いくらアホで馬鹿でも流石に分かるだろう、と、質問する。

 「おい、そこのバカ。ここは、どこだ?」

 「んぁ? どこって決まってんじゃんかよ『武蔵』の品川だぜ? って今思ったんだけど七夜って言いづらいからシッキーでよくね?」

 どうにもこの馬鹿は話を二転三転させるのが好きなようだ。
 だが、一つ、情報を得た。
 『武蔵』と言う場所で、品川と言う場所らしい。
 名前からして日本語で、そしてどうにも日本らしい。
 しかし……
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 17:40:36.33 ID:hGYe7cAE0
 (並行世界ってのは無さそうだな……)

 並行世界だとしても、こんなに空を魔法使いが飛ばないだろうし。
 見たところ凄まじい科学が溢れたこんな世界に、そういう異端が存在する余地は存在しないだろう。
 そう、七夜は思う。
 異世界とあたりをつけても平気そうだが、しかし。
 その予想は、半分当たりで、半分はずれ。
 あたりなのは、ここが異世界であること、そしてはずれなのは。

 『おそうじおわった。……でるとこまちがえた』

 黒い藻のような存在がひょこっと出てきて喋り、またひょこっと戻って行った。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 17:48:24.69 ID:hGYe7cAE0
 「…………」

 七夜は、ポカンとしたような、間抜けな顔をした。
 なんというか、変な生物を見た。
 そしてバカはオーバーリアクションで

 「んだよんだよ〜。俺に報告じゃダメなのかよ〜。俺が駄目なのかよ!? もしかして俺いない方がよかった!?」

 と、目の前の馬鹿はおよよなんて笑顔で泣き真似をしている。
 正直、目の前の男の取りたい行動がまったく読めない。
 これも馬鹿だからか、と七夜は思うが。
 はずれの意味は、先ほど、黒藻が出てきたことで分かった。
 どうにも、異端はそんざいするようだ、ということだ。
 どうにも自分の世界の常識はとことん通用しないらしい、そう七夜は呆れた。

 「んでシッキーさあ……ってこれウッキー見たいで被んな……これ。まぁいいや。んでさ、あっちの方が騒がしいから行ってみようぜ〜なんか面白そうなことやってそうだぜ」

 などと満面の笑みで指を船の先端側に差した。
 どうやら何があるか野次馬しようぜと言うことらしい。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 17:52:16.42 ID:hGYe7cAE0
それに七夜は、右も左もわからないこの世界で、頼れるのはこの男だけなのを、今更思い出し。
 ……こんなのに、ついていかなないといけないのか。と、頭を痛めた。
 とりあえず、七夜は一つ思いだす。
 目の前の男に、一つ聞いておくことがあった。

 「それで? お前の名前はなんだ?」

 「えぇ〜あんなに派手に自己紹介したのに俺ってばもう簡単に名前忘れられてるのかよ」

 と、どんな自己紹介をしたのかは気になるが、まぁそれは置いておいても、この男の名前を聞かないわけにはいかない。どうやら、この世界の自分のデータでは、知合いらしい。
 少年は、笑みを浮かべて言う。
 いつもいつでも笑っているような少年の顔は、今も笑顔で、その笑みが崩れるときは、どこにもなさそうな顔で、親指を自分に差す。

 「俺は葵・トーリってんだ。今度は忘れねぇように手にメモっとけよ!」
 
 そう、少年――――葵・トーリは、笑いながら言った。
 ここに、殺人鬼と、世界を動かす少年の邂逅は果たした。
 何も知らない殺人鬼は―――――未練も、義理も、証も立てた殺人鬼は、次に何の証を立てるのか。
 それをしるものは、未来だけだった。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 17:53:02.54 ID:hGYe7cAE0
とりあえずここまで
>>13伝と東方って何?
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/11(水) 19:36:37.52 ID:tvvk6JND0
伝勇伝×東方は?
なろうを見る限り同じ作者だよね?
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/11(水) 19:47:34.19 ID:ZZeTQh3j0
>>20
伝勇伝はわかるけど、
東方ってお前の勘違いじゃない?
見たけど、なかったし
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 21:37:18.20 ID:hGYe7cAE0
伝勇×なのは
ならやったけどあそこ潰れちゃうしね
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 21:44:48.70 ID:hGYe7cAE0
「――――――そう言えば武蔵さん。こんな噂知ってる?」

 「どのような噂か分かりませんのでお答えできません――――以上」

 「いやいや、そこはなんの噂か聞いてほしかったな〜。ま、いいけどね。それじゃ、七夜って知ってる?」

 「jud.二日ほど前に武蔵の教導員に転校してきたはずですが、それがなにか?―――――――以上」

 「jud.その七夜なんだけどね。彼、経歴が不明なのも知ってる?」

 「jud.記憶によりますと、ステルス航行中の武蔵にも唐突に表れ、転校してきたとか――――――以上」

 「jud.武蔵の住人も、彼のことを今一良く分かってないみたいなんだよね。それに、二日前に転校してきたっていうのに、梅組や僕たちくらいにしか認知はされていない。少し、おかしくないかな」

 「そうでしょうか、もしかしたら、職業上や、一身上の都合上、身を隠していたとか言う線もありますが、そこはどうお考えになりますか―――――以上」

 「うーん。ま、そう言われちゃあれなんだけどね。どうにも違和感があるんだよね〜。それに彼、家族はいないよ?」

 「jud.それも分かっていますが、そこがどう違和感に繋がるのですか?―――――――以上」

 「…………武蔵さん、なにか隠してない? どう考えても違和感の塊なんだけどな〜」

 「そんなことは――――ありますね。しかし、女性の事情に首を突っ込むなんて愚かです。―――――以上」

 「うわ、やっぱなんか隠してた。まぁ別にいいんだけどさ。無理に聞く必要もないし。武蔵さんが隠すなんてよっぽどなんだろうし。でもま、少し気になっただけだからねぇ。七夜の忘れ形見だと思っただけだしね」

 「七夜様の忘れ形見とは?――――以上」

 「まあ現役だったころの話だけど。昔、七夜ってのがいたんだけどねえ。七夜はどうにも魔神や人狼とかの、そういう人外系の狩りに長けててね、ま、それも一族ごと滅びたんだけど、『彼』がそこの忘れ形見かもしれないっておもってね」

 「なるほど、つまり七夜様がそうであるかどうか調べろと―――――つまりストーキングですね。―――――以上」

 「……あれ、どこでそこに繋がったのかな……それ」

 「いいえ、酒井様の性格から考えて勝手に自己判断いたしました。―――――以上」

 「俺ってそんな風に思われてんだ。でもま、そういう七夜にかんしての情報は、三河につけば、色々と分かるかもしれないよ? 武蔵さん」

 「なるほど、ストーカーということは否定しないんですね。――――以上」

 「なんか今日の武蔵さん辛口だねえ」

 「jud.いつも通り辛口です。――――以上」

 「でもま、榊原とかなら、何か知ってんだろうかね。あいつ、ガリ勉強だし」

 「jud.知らなければ無駄足ですね。――――以上」

 「ほんと、辛口だねぇ」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 21:52:58.58 ID:hGYe7cAE0
 馬鹿に連れられた七夜は、目の前に、大剣を持った笑顔の女を見る。
 武蔵の端で品川のさらに端、日常風景が流れていそうな、ちょっとした倉庫がある、静かなそんなところで、何故、そんな殺伐とした香ばしい存在がいるのか、若干引いていた。
 そしてその大剣を持った女の足元にはなんというか、予想通りと言うか、人らしきものが倒れている。
 人らしきもの、というのはその倒れている存在に凄まじく違和感があるからだ。
 それは、倒れているものが、一見すればゴリラの二倍はある巨体なのだ。

 「……なんだありゃ、あの女、人なのは間違いないんだろうが……あんな大剣振り回して…………ゴリラか?」

 七夜は落ちている巨体と、大剣を振り回している女を見て、頭を痛くする。
 何故なら女の足元に倒れているのは軋間なんかより遥かに巨体で、さらに腕が四本生えており、頑丈そうな図体。
 さらには頭に角といった存在。
 それは、まるで絵本に出てくるまんまの見た目。
 鬼の軋間なんかより全然『それ』と言える物体がいる。

 「あの倒れてんのは……見た感じ鬼だよな?――――本当にここはどこなんだ?」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 21:53:26.85 ID:hGYe7cAE0
少し頭が痛くなる。
 ファンタジー色が強すぎる。
 自分の世界も、タタリで人が復活ととか、真祖の吸血鬼とか、死徒27祖とか、大概なのはいたが、それでもまだ忍んでいた。
 が、こんな、端とはいえ、少なからず人通りがある場所で、鬼が倒れているとかもう、ひどいもんだ。
 それに、あそこで大剣持った女の前には、トーリとか言う馬鹿と同じような服装をした同い年くらいの奴らがずらりとおり。
 ……あれが、この世界での俺のクラスメイトか?
 七夜は少しだけ、観察する。
 トーリの奴があそこに向かっているのだから、そうなのかもしれないが、と七夜は確証持てずそう思う。
 ……この世界が、自分の周りがどのようにして動いているのかが全く分からん。
 それに、人の動きも、考え方も、元いた世界とは全く違うのかもしれない。
 自分が動きやすくも、動きにくくもあるのかもしれないと思う。
 無人で動く機械。空や家、人の周りに浮かぶ画面。空飛ぶ魔女。変な服装。そして、空を見るが、明らかにここの地面は動いており。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 21:54:57.97 ID:hGYe7cAE0
(……ここは巨大な飛行船か?)

 七夜は良く分からないなりに、空の動きや、地面の振動などを考慮し、現状をまとめる。
 そして―――そう言えば、今更だが、自分もトーリとか言う奴と同じような服を着ていると気づく。
 この服の意味も良く分からない。
 さて、本当にどういう立場に今の自分はいるのだろうか―――――

 「あれ? おいおいおいおい、皆、なにやってんの?」

 そう思っていると馬鹿が、馬鹿っぽい喋り方で、唐突に集団の中に入って行った。
 そして馬鹿は、抱えていた紙袋の一つの中からパンを取り出し、口にくわえ装飾の鎖を鳴らして歩いていく。
 だれかが、その馬鹿を見ていった。

 「トーリ"不可能男(インポッシプル)"葵……!」   
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 21:57:34.71 ID:hGYe7cAE0


                 



 七夜は思う。
 
 (不可能男? なんだそりゃ……ニックネームとかそこらへんか、俺には関係なさそうだから、どうでもいいか)
  
 なんて、どうでもいい情報だな、と決め込んで周りを見回す。
 すると、馬鹿が、歩くだけで、あの大剣女の騒ぎに来ていたヤジ馬どもが、一気にだまる。
 あの馬鹿が来てから、空気が変わった。
 さらに、人が口々に、馬鹿にむかい、『総長』『生徒会長』などといっている。
 七夜は総長? などと思うが、現状情報が少なすぎる。
 何も思いつかない。
 さらに大半の人々はトーリの馬鹿を見ている、しかし

 (ん? 俺にも注目してるなんてどういうことだ?)

 衆目の眼は、七夜にも向けられていた。
 どういうことだ? そう七夜は訝しむ。
 が、衆目の反応は、至極簡単だった。
 『梅組の転入生か?』 などと言う声と、『あれは誰だ? 』という奇異の目。
 そして、あの馬鹿と来たんだから、どんな狂人なのか、という期待の眼差しが飛んできているのだが、七夜は気付かない。
 そして馬鹿は話を続けていたようで、話は大剣の女の方に移っていた。

 「……さて、君『達』は話しはしょると授業サボって何に並んだって? 先生に言ってみなさい」

 「ええ? 先生マジ俺達の収穫物興味あんのかよ! 俺、まいったなあ!」

 そう言って馬鹿は紙袋の中から女の子の絵の描かれた箱。
 表紙の端にはR元服表記。 
 そしてパッケージ裏には春画
 ……つまりエロゲを取り出して女に見せた。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 22:00:46.52 ID:hGYe7cAE0
「ほら、見えるか先生! 今日発売されたR元服の”ぬるはちっ!”これ超泣かせるらしくて初回限定が朝から行列でさあ。俺、今日は帰宅したらこれPCに奏填して涙ボロボロこぼしながらエロいことするんだ! ほら、点蔵も欲しいだろコレ!? ――――ってあれ? 点蔵は?あいつの親父、店舗別特典求めてほかの店に忍者走りで行ってたけど、あいつもそっち行ってんのかな? どう思う先生?」

 なんて言っている。
 それに七夜はあきれ顔で額を抑える

 (これって俺もエロゲ買いに行ったことになってんのかね?)

 なんて思うも、弁解のしようも何もない上に、どんな伝手や、人間関係があるのか、さらには自分の立場が分からないので、何も言えない。
 普段の自分なら、適当にナイフ取り出して、殺しに行くのだろうが。

 (軋間の奴を殺してから、どうにも人間臭くなっちまったか……)

 そう、思う。
 どちらかと言えば、今の自分は、未練も義理も、証も立てて、比較手に人間側、さらにちょっとした悟りに近い位置にいる。
 さらに極めつきに『タタリ』じゃない、人間の体も手に入れた。
 それで、どうにも自分の精神が

 (―――遠野側に近い……か)

 そう思う。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/07/11(水) 22:02:41.19 ID:hGYe7cAE0
 あそこまでお人よしにはなれないだろうが、無闇な殺生をする気が起きない。
 なにか引き金があれば、好き放題するのだろうが……とも思う。
 自分は、遠野志貴の殺人衝動のなれの果て、殺人とは切っても切れない縁にいる。
 だから、この気分も、『鬼』を殺すという目標を達成して気が抜けたせいだろうと、決めつける。
 ……あんなにも高揚して殺しあえた場は、もうないかも知れんがな。
 七夜は考え事をやめ、トーリ達の方に顔を戻す。

 「あっれ、もっと硬い見立てだったんだけどな……。おかしい、マジおかしいな……、骨とか筋肉とかあって仰天する予定が……」

 ―――――――なんか、馬鹿が大剣女の乳を揉んでいた。
 大剣女は、急な出来事に硬直し、「はわあ」なんて可愛い声を出している。
 さらにその上馬鹿は、何の狂気か、その状態から一転。
 乳から手を離し――――― 一息。
 彼は切り出した。

 「―――明日、俺、コクろうと思うわ」

 どんな状況でそんなのを切りだすんだよ!
 と、内心七夜は突っ込まざるを得なかった。
 もう色々ついていけないこの狂気空間に―――殺人鬼なので常識人ではないが―――普通の人間としての思考回路が残っている七夜にとっては、もう本当に頭が痛かった。
 記憶にある、遠野志貴が使った直死くらいには。    
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/15(日) 23:01:29.24 ID:4WxjvetJo
期待
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/17(火) 00:45:44.77 ID:e7+riUnMo
今日見つけた、期待してるぞ
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/18(水) 23:18:35.61 ID:doUHNoDAO
ところで白レンはいないのか?
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagasage]:2012/07/22(日) 17:05:45.46 ID:UP4C8PF+o
期待しまくりんぐ
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga sage]:2012/08/10(金) 13:07:11.28 ID:JGOdDGoP0
 ―――馬鹿は言った。
 乳を揉んだあとなのに、何もなかったかのように、言った。
 ……俺はホライゾンという女に告白する。
 笑って、しかし、その言葉に、押し黙る面々。
 ホライゾンが何者なのかは分からない。
 しかし、その名前の意味は、相当に重いのであろう。
 だから、誰も喋らない。
 しかし、その馬鹿の、トーリの姉は違う、そんな空気を打ち破り、馬鹿の笑顔に頬笑みを返して、言う。

 「十年前に、あの子は亡くなったのに。あの、あんたの嫌いな"後悔通り"で。……墓碑だって、父さんたちが作ったじゃない」

 「解ってるよ。ただ、そのことから、もう逃げねえ」

 馬鹿は笑みのままにそういう。 
 周りを一度見渡し、七夜の顔も、視界に入れ、いいか、と更に前置きしていう。 

 「コクった後、きっと皆に迷惑かける。俺、何も出来ねえしな。それに、なにしろ、その後にやろうとしていることは、俺の尻拭いってか――――」




 一息。



 「世界に喧嘩を売るような話だもんな、どう考えても」





 告げた言葉に、誰も疑問も、異論もはさまない。
 いるとしたら、ただ一人、この場で、異物である七夜だ。
 七夜は――――思う。
 恐らくだが、この馬鹿は、自分とはベクトルは違うだろう、が、自分と同じような道を歩もうとしている、と思う。
 自分は一族を殺され、さらに自分に『死』というものを見せた存在がいた。
 それを一族の誇りを清算するために、殺し合いたいがために、自分は過去に挑み、そして自分は、清算したうえで、死んだ。
 コイツも、何かしら死ぬ覚悟があり、なにか、清算したいものが、あるのだろう。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga sage]:2012/08/10(金) 13:07:40.49 ID:JGOdDGoP0

 「お前は、そのまま行くと死ぬかもしれないぞ?」

 七夜は、そう言葉を投げかける。
 正直、自分には関係ないし、興味もない事柄。
 しかも、なんの話かも、漠然としか分からない。
 なのに、この、気遣うような、セリフ。
 似合わないし、今までそんな言葉は、碌にはいたことがない。
 ―――だが、

 (タタリや、夢の影響が抜けたせいかね、やっぱ、『あの俺』のような気分だ)

 そう七夜は思う。
 真祖のために命をはり、困ってるやつのために27祖を殺しに行く。
 そんな馬鹿を、『自分』を思い出す。
 そしてそんな七夜を見て馬鹿は――――葵・トーリは笑顔で言う。

 「何言ってんだよ、俺はそう簡単には死なねえし、死ぬときは責任を取る時だ。不可能男の俺も、そんくれえは出来るぜ?」

 そんな質問は愚問だと、トーリは言外に言う。
 それに七夜は、

 (何も知らないのに出しゃばったか)

 と、思う。
 覚悟も、決意も、そして想いも、ずいぶんと前から決まっていたような顔だ。
 なにも知らないのに、口をはさむようなことじゃないな、と、七夜は口を閉じた。
 しかし、横から女の声が、割り込んでくる。
 『馬鹿』の姉だ。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:08:17.40 ID:JGOdDGoP0
「あら、愚弟。いつのまに真正中二病と仲良くなったのかしら、いいから賢姉に言ってみなさい、弄ってあげるから!」

 「姉ちゃん姉ちゃん。なんか凄え珍しく真面目に話してたのに全部ぶち壊しじゃね? いい空気吸いすぎじゃね?」

 「フフフ、愚弟。転校生との会話に私も混ぜなさいってことよ、それくらいわかりなさい」

 「……姉ちゃん偶にマジ、無茶ぶりするよな。でも俺、芸人として空気読めるように頑張るぜ!」

 「フフフ、そのいきよ愚弟。何せ夢は世界でしょ! 素敵!」

 「そんなこと一言も言ってないけどまあいいや! 俺、頑張るよ!」

 何を言っているのか、どんな話の流れなのかもうわけがわからない。
 もはやこいつらは狂人だな、と決めつけ。 
 七夜はそんなやり取りに、頭を押さえて、言う。

 「……はぁ。俺はもう帰っていいか」
 
 元の世界に、とは言えなかった。
 なんというか、物理的に。   
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:09:01.98 ID:JGOdDGoP0
 (まったく、今日はなんて日だ)

 厄日を通り過ぎてもはや異世界だな、あっ、異世界か。
 なんて、七夜はため息をつく。
 自分の個性も、性格も殺人衝動も、相当際どいものだと思っていたが、こいつらの前だと霞むな、とも思う。
 しかしトーリは言う。
 今この場を去ろうとする七夜を見て、

 「待てよ、七夜。お前、碌に仲間の名前覚えてねえだろ、ほら、紹介してやるよ」

 「余計な御世話だ。面倒くさいことは嫌いでね。どうせ紹介してくれるならぶっ殺してもいい人間を紹介してくれ」

 なんて七夜の言葉にトーリは腕を組んで一つ頷き。

 「んじゃ、点蔵だな」

 「即答した!!」

 七夜以外、他の全員が突っ込んだ。    
 そしてどこかでなんで拙者で御座るか!? とか突っ込みが聞こえてきた……気がする。 
 七夜はもう色々と呆れて。

 「…………もういい。色々と諦めたよ、好きにしろ」

 七夜は、おとなしく紹介を待った。
 どことなく、遠野志貴が、真祖や、家政婦、妹、先輩などに弄られる姿と重なったのは、何故だろうか。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:09:41.47 ID:JGOdDGoP0




 ――――五分後。
 あらかた紹介を終えた。
 なんというか、酷くはあったが。
 例えば、『あのオッパイが大きいのが浅間で、あっちでいい空気吸ってるのが姉ちゃんの葵・喜美な』
 という、酷い紹介であった。
 『なんでそんな悪意ある紹介なんですか!?』
 とかいろいろ突っ込みはあったが。
 まぁこの程度はもう、許容範囲内だ。
 色々と慣れた。
 時間が濃密すぎる。
 そしてそんな濃い紹介を終えた後、―――――いきなり話は戻った。

 「明日で十年目なんだ、ホライゾンがいなくなってから。皆覚えてねぇかもしんねぇけど」

 そう言った。 
 それに、浅間と紹介された女は

 「この流れでいきなり真面目な雰囲気に戻るんですか!?」

 「んだよ浅間、それの何がいけねぇんだよ! 俺はいつだって本気で真面目だぜ!」

 そんなトーリの言葉に、浅間は一つため息をつく。
 そして呆れたように。

 「いや、トーリ君……はぁ、まぁもう、いいです。もうこういうのは慣れました。なので後でズドン一発で許します」

 「怖えぇよ!!」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:11:10.94 ID:JGOdDGoP0
 全員がマジ突っ込みを入れた。

(凄まじい連携だな)

 と七夜は思う。
 自分など、呆れて何も言えないというのに、と思う。
 しかし、そんなふわふわした空気の中、トーリは言う。
 顔は、いたって笑顔、しかし――――

 「まあ話は戻るけどさ。明日、コクってくる。彼女は違うかもしれねえけど、この一年、色々考えてさ、それとは別で好きだとわかったから、―――――もう逃げねえ」

 その言葉に、空気が変わる。
 そのトーリの一言に、昔からの付き合いがある面々は、押し黙る。
 その一言に、大きな意味が込められていることが、分かっているから。
 その一言に、多大なる決意が込められているのが、分かっているから。
 だから空気が変わる。
 馬鹿の姉、葵・喜美は言う。

 「じゃあ愚弟、今日はいろいろ準備の日よね。そして、……今日が最後の普通の日?」 

 そうだな、とトーリが笑顔で言った。

 「安心しなよ姉ちゃん。俺は何もできねえけど、――――高望は忘れねえから」   
 
 そう言って、親指をあげ、カッコつける。
 が、七夜は見た。
 トーリの後ろから、先ほどの大剣女が、肩を叩いていた。
 それに、トーリは、ん? と、気がつく。
 そう言えばこいつは紹介されてないな、と思うも、七夜は、殺意の目をした女に一瞬――――――高揚した。
 それは、この女が、殺意だけでかなりの実力者だと分かるから。
 殺し合えば、どこまででも、殺し合うことが出来そうなほど、楽しそうな女だから。
 だが、今、この状況で言うとあの殺意は。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:12:37.73 ID:JGOdDGoP0
 (乳揉まれたことだろうな……)

 呆れる。
 この世界は、どうにもギャグばかりで、色々な意味で『真面目』な『殺人鬼』にとっては肩身が狭いらしい。
 むしろ真面目ぶってる方がバカとでも言われてるかのようだ。  
 ―――トーリは後ろを振り向く。
 そこには、目が据わった大剣女――――七夜の中での通称ゴリラ――――は右足を軽くステップさせている。
 七夜は、色々な意味で未来が見えたのか。

 「本当、呆れてものも言えんな……」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:18:22.45 ID:JGOdDGoP0
 ――――二分後、ドでかい音が、響いたのは、言うまでもない。
 トーリが、倉庫をつき破り、壁にめり込んでいる。
 それに、周りはドン引き。







 が、七夜は、

 「……なんだあの、馬鹿力は。軋間ほどじゃないにせよ……なるほど、人外か……あの馬鹿も生きてるし。規格外ばかりだな……」

 この世界の『神道契約』など色々なモノのあり方を知らない七夜は、ただのギャグでは済まない。
 ありえない力にそれを普通に受けて気絶するだけの馬鹿。
 凄まじい世界だ。
 なんというか、周りは引くだけだが、七夜だけオーバーリアクションなのは、酷く滑稽ではあった
 そして……。

 「七夜も授業サボったし、お仕置きが必要よね」

 矛先が、こっちに向いた。
 「とばっちりだ」と思うも、体はすでに構えをとっている。
 あんな蹴り、打たれ強さは普通の人間である自分が食らえば確実に―――――死ぬ。
 それは分かっていたので七夜は―――――

 「こりゃ、殺す気でいかなきゃ――――死ぬか?」 
 
 あきれ顔で、少しだけ笑みを浮かべて言う。
 アホばかりで、鬱憤も溜まっていた。
 しかし、実力が折り紙付きなのは多そうだ、と七夜は高揚する。
 こいつとの殺し合いは、きっと――――――楽しそうだ。
 どこまでも殺しあえて、そして一瞬で殺し合いが終わりそうな、濃密な空気。
 悦楽する。
 気分が高ぶる。
 あの鬼との戦いとは言わないでも、それでも――――

 「楽しめそうだ」

 そう、微笑んだ。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:22:00.34 ID:JGOdDGoP0
 ――――だが

 「ま、今日が一回目のサボりだし。トーリであらかた発散したから、今日は見逃してあげるわ。それに嬉しそうに笑みを浮かべてる子に、御褒美をあげるつもりもないし」

 と、こちらの考えを見抜いていたのか、そう言って剣を背にしまう。
 それに七夜は、冷や水を浴びたかのように興醒めした。

 「なんだ、やらないのか? 俺はいつでも準備万端で、殺し合う気はできてるけど?」

 と、言いつつも、構えを解く。
 もうそんな空気でも気分でもなくなった。
 それに、女は苦笑いし。

 「教え子と殺し合う教師がどこにいるのよ、そんなのは教師とは言わないわ」

 「俺の先生は、名前の言い方を間違えれば、本気で殺しに来るがね」

 「それはその人の人間性の問題じゃない……?」 

 その言葉に、七夜は肩をすくめる。
 目の前の教師も相当人間性ではアレなんだかな……と思った。

 「……くく、違いない」

 「てかあんた、急に中二入ったわね……」

 「はは、それは失礼。まぁ演劇口調なのは、タタリの影響時の口調が抜けてないせいだ」

 「タタリ?」
 
 なにかの術式だとは思うが、聞いたことがない。
 そのことを聞こうとするが、
 しかし七夜の返答は、あいまいだった。  

 「なに、俺が生まれたきっかけで、こっちにこれたのも、その影響だろうさ。ま、やらないならそれでいい。……昔殺した主人との約束でね。女子供は殺るなって言われててね。名残惜しいが、あの馬鹿が言っていた『世界に喧嘩売る』ってのを信じて今はこの高揚の慰めとしよう」
 
 七夜は笑顔を浮かべてそう言い放った。
 それに、大剣女は、苦笑いを浮かべて。

 「はぁ、折角、ちょっと中二入ってるけど真面目な子が来たと思ったのに、殺人狂で、馬鹿の一つだったなんてガッカリだわ」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:24:57.29 ID:JGOdDGoP0
 そう女は肩をすくめる。
 それに七夜は、同じく肩をすくめ。

 「なにかおかしなことでも言ったか?」

 「転校してきてすぐにあの馬鹿の言葉を信じる馬鹿を見た私の気持ちになってみなさい」

 そう言われ、七夜は苦っ笑する。

 「……確かに。……だが、アレは本気の眼だ。だから、俺は信じるさ似たようなやつを知っているからな」

 それは、あの人のためなら死徒とだって戦うあの自分だ。
 そのことは言わなかったが、しかし雰囲気は伝わったのか、女は呆れて肩をすぼめる。

 「全く、バカばっかりね」

 そう呆れて、笑った。
 そして、七夜は、その笑顔を見て、思う。 
 そういえばこの女の名前は聞いていないな。
 と、想い、質問する。
 
 「で、お前の名前はなんだ? 教師とか雌ゴリラとかでいいか? ま、俺はどっちでもいいんだがね」

 ―――――空気が固まった。
 というか、冷えきった。
 ちょっといい感じの雰囲気だったのに、教師の名前すら覚えていない上に、確実に馬鹿にしている生徒に、大剣女は固まった……笑顔のままに。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:25:24.45 ID:JGOdDGoP0
そして外野は

 「うわ、あれ絶対死んだよ? てかわざとでしょ」

 と、ネシンバラと言う書記の少年が顔をひきつらせて言う。

 「馬鹿になるのに金はかからんが、馬鹿で生きるのは金がかかるな」
 
 「シロ君。それ、遠まわしに大けがするっていってる? まぁ、そうなんだろうけど」

 と、会計のシロジロと補佐のハイディが酷いことを。

 「ナイちゃん思うに、あれ、真性だと思うな」

 「トーリと同じね。天然で、更に自分からボケかましに行くタイプよ、あれ」

 と、第三特務、第四特務のマルゴット・ナイトとマルガ・ナルゼが馬鹿に。

 「すごいですね……。変態さはトーリ君と同じレベルじゃないですか?」

 「フフフ、大丈夫、愚弟はあれを凌ぐくらいには変態よ!」

 「それはそれでどうかと思いますけど……」

 と、浅間と喜美が色々な意味で突っ込みを入れた。
 そして――――以下略。

 「ひでぇ!」

 紹介されなかった全員の突っ込みである。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:26:57.75 ID:JGOdDGoP0
そして女は

 「あ、あははは、大丈夫、怒ってないわよ、ただ猛烈に七夜の顔面をぶん殴りたいだけだから」

 「確実に怒ってるよね(な)!」

 全員よく突っ込むな、と七夜は思う。
 が、オリオトライは頬に血管浮き上がらせつつも

 「……私の名前はオリオトライよ、以後よろしくね」

 と、握手の手を出してくる。
 が、七夜は握らない。
 殺意がビンビンだからだ。
 あれを握ったら終わる……という直感と殺し合いの経験が働き、握手を拒む。
 だから七夜は

 「あぁ、よろしく」

 と言って、近くにいた丸い体系の御広敷を差し出した。

 「あ、あれ? な、なんで小生が……ってなんでそんな笑顔なんで……ぁ、ぁぁ、ぁあああああああああああああああああああ」  

 御広敷が犠牲になって、この場はおさまったのであった。
 壁にめり込んだトーリはほぼ無視の状態だっが、まぁそれもたまにはいいだろうというのが、満場一致であった。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:27:57.39 ID:JGOdDGoP0
 そして最後に――――

 「帰る場所も、金も、食うものもない、あるのは、この制服だけなんだが……どうしょうかねえ……」

 七夜は、皆が帰った後、途方に暮れた。
 近くには、まだ壁にめり込んだトーリがいるだけだった。  






 七夜は、軽く眉間を揉む。
 そして、空を見る。

 「金がない……。腹が減った……。これは俺、死ぬんじゃないか?」

 太陽はすでに真上に上がっており、腹が減ったが、金もなく、仕事もない。
 どうにもこの体、碌に飯も食っていないらしく、燃費も相当に悪いらしい。
 だからか、足取りがふらつき出し、よろよろと、地面を歩く足が、千鳥足のようになる。
 人間の体は不便だな……。
 なんて七夜は思うも、しかし、足は前に進ませる。
 飯がなければ、盗むか、奪うか、それとも働くか……。
 前者二つをとってもいいのだが、どうにもね……。
 碌に周辺状況もわからない上で立場を悪くするのは今は不味い。
 しかしまぁ、『馬鹿のトーリ』から名前を聞いたクラスメイトから、色々と現状を聞くチャンスを自分から逃してしまった。
 まったくもって自分の運のなさ、頭の回らなさに辟易する。
 
(どうしようかね……。このままだと俺、普通に餓死するんじゃないのか?)

こんなこと、元の世界で生きていたなら考えない出来事なんだけどな、しかもここの世界のルールが分からん、色々とどうしたもんかな。
 七夜は、一つため息をつき、空を見上げる。
 空には、目覚めてすぐ見た、魔女たちの姿が、ある。
 異常だ……。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:30:42.43 ID:JGOdDGoP0
 しばらく無闇に人を殺すのは、気分的なことを除いても止めた方がいいかもしれない、空から地から、色々な各方面からの攻撃は、面倒くさすぎる。
 しかし今はそんなことより、お腹の問題が優先だ。
 今は、どうにも右舷二番艦”多摩”というところにいるようだ。
 観光するための場所なのか、観光客用の店などが、ずらりと並んでいる、その上、食い物の店が、良い匂いを外に広げているので、七夜の腹に、余計に響く。
 ―――グルル〜。
 腹が、盛大に鳴った。

 「ぐ、今にも行倒れそうだ……。大人しく元御主人の言うこと聞いてたら良かったかもしれん……」

 ――――元の御主人。
 つまり白レンのことなのだが、まぁこうなることが分かっていても七夜は恐らく普通に軋間相手に突っ込んでいただろうから言葉遊びに過ぎないのだろうが、そう思うくらいには今の状態が餓死寸前で危険だというのがわかる。  
 
 「あぁ、くそ、目の前が暗くなってきやがった……」

 腹の減り過ぎ餓死寸前。
 行き倒れるのは俺のキャラじゃねぇなんて七夜は思うが、足取りは重く、ついには足がくずおれた。
 
 (……目覚めてすぐ死ぬ、か……ヤマの野郎も、意地の悪い……)

 視界がブラックアウトする












 ―――――――ザザ。










 何か、視界、いや、脳内に、イラナイ物が見えた。
 それは知っている、見たことがある。
 それは、魔術師の至るべき到達点。
 そこは、自分をまねていた場所。
 それは






 ――――俺が通ってきた道……か?





 しかし、見えたのは一瞬。
 そのまま、視界は暗く、体に力が入らず、ドサリ、と、倒れた。
 情けない、と七夜は思うも、耳に聞こえたドサリという音に、少し訝しみ、気を失った。





 ――――倒れた音は二つだった。 





48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga ]:2012/08/10(金) 13:32:00.31 ID:JGOdDGoP0
 軽食屋、青雷亭(ブルーサンダー)の前に、P−01sという、自動人形が、武歳の、主に下水関係を綺麗にしてくれる、黒い藻の獣と、話をし、友達なった後の話。

 『おなまえぷりーず』

 「P−01sと申します」

 『ありがと いつも』

 と、黒藻は、いつも水をかけてくれる、P−01sに、お礼を言う。
 黒藻は、言う。
 
 『て あらって おねがい』

 下水など、汚いものを綺麗にする自分は、だからこそ、臭いもし、汚い。
 だから、友達としてのお願いとして、そして友達に、周りに嫌な眼で見て欲しくないから、だからこそ、そう言った。
 それにP−01sは頷き、桶の水で、手を洗う。
 そして、それに一つ頷き。
 それと同時に影が落ちた。

 「?」

 影は人であった。
 しかも、二つ分。
 両方とも、黒の男子学生服。
 両方とも、武蔵アリアダスト教導院のものであった。
 倒れた片方は、やや長めの、黒髪の細身。
 そして、もう片方は、髪は長くはないが、同じく黒髪の細身であった。
 P−01sは、片方は知子ではあるが、しかし片方は初めてみる。
 だれでしょうか……と、一瞬考えるが、しかし店に振り返り、言う。

 「店主、お客様です。いつものように、正純様が餓死寸前ですが……さらにもう一方、こちらは初の顔出しですが、見た感じ、同じように餓死寸前です」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/10(金) 21:16:50.60 ID:UQ5XfklNo
乙!
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/13(月) 03:00:46.55 ID:/Vu6iyoso
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