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まどか「ほむらちゃんはわたしのこと、殺せるの?」 -
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1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/15(日) 02:04:46.97 ID:x4WXcEZgo
入り組んだ迷路のずっと奥。
時間の螺旋の最果ての刹那。
万物の理を歪める力と森羅万象を無視する力の交差する世界。
その中心で、汚れて傷ついた私が膝を屈しようとした、まさにその時。
私の目の前で、赤いリボンで髪を結った少女、鹿目まどかは静かに告げた。
まどか「わたしの願いは……」
彼女の言葉に、彼女のすぐ目と鼻の先にいる白い動物が尻尾を振るう。
まるで死刑執行人かなにかが、死刑囚に死の宣告を言い放つかのように。
まどか「わたしの、願いは」
それ以上言ってはダメ――そんな言葉は、焼け爛れた私の喉から発せられることは無く。
結局私は、何も出来ずにただその光景を眺めることしか出来なかった。
私は無力だ。
絶望に打ちひしがれるそんな私にさらなる追い討ちをかけるように。
少女は言葉の続きを、今度は声高らかに叫んだ。
まどか「わたしの願いは、全ての世界を常時ぱるぷんてが起きているような世界にすること!!」
ああ――
あ?
え?
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1342285486
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
Twitter
]: ID:???
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/
渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/
二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/
佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/
全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/
君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/
笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/
【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/15(日) 02:06:05.98 ID:gsBO0xb9o
***6
――気がつくと、私は自分の家にいた。
しかもなぜか玄関前に。しかもなぜか学校に行く準備が出来てる。しかもなぜか涎が――それはそれとして。
ほむら「……ひどい、夢だったわね」
なんというか物語としてどうなのだろう。シリアスな世界にギャグを持ってきたらダメでしょう。
そもそも玄関の前で寝ているというのがおかしい。
もしかしたらこれは夢なのかもしれない。
夢から覚めたと思ったら夢でした、というのはなかなか珍しい話ではない。
たとえばこの扉を開けたら、なぜか中沢が肉じゃがを作っていた――ということも、ないわけではない。
……うん、夢ならありうる。おそらく。微粒子レベルの確立で存在しているはず?
というわけで扉を開ける。
中沢「おお、暁美じゃん。おはよう」 グツグツ
ほむら「……おはよう」
中沢「テンション低いな。体調悪いのか?」 カチャカチャ
ほむら「……いいえ。ところで一つ質問してもいいかしら」
中沢「うん」 グツグツ
ほむら「どうしてカレーなの?」
突っ込むところはそこじゃない。
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)
[sage]:2012/07/15(日) 02:07:23.88 ID:wOwTXnxAO
え?
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/15(日) 02:07:30.68 ID:gsBO0xb9o
というか、ああ。夢の中で突っ込んでしまった。
はしたない。みっともない。
でもしょうがない。
朝っぱらからカレーを煮詰められたりしたらそりゃあ突っ込むでしょう。
しかも路上で。
しかも私の家の前で。
しかもカセットコンロとまな板と包丁やら諸々持参で。
中沢「この前が肉じゃがだったからな。次はビーフシチューかホワイトシチューだけど、どっちが良い?」
ほむら「……どっちでもいいわ」
中沢「じゃあ間を取ってカレイの煮付けにしようかな。梅干を入れると生臭さが消えるんだぜ」
ほむら「へぇ」
中沢「そうだ、味見していくか?」
ほむら「……いちおう、ね」
アホか、私。
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/15(日) 02:09:40.52 ID:gsBO0xb9o
苦笑を浮かべながら、私は鍋に顔を近づけた。
色は普通。いたって茶色。でもどちらかというとやや黄色いかもしれない。中辛――もしかすると甘口?
スパイスの香りというのだろうか。カレーならではの香りが素晴らしい。お腹が空いてきた。
そういえばカレーを最後に食べたのはいつだろう。
たぶん二週間くらい前かな。
中沢から受け取った味見用のお皿にカレーを少し垂らして、口の中へ流し込む。
甘い。けれどただ甘いわけではなく、むしろカレーの持つスパイスが甘さを際立たせているような感じだ。
飽きる甘さじゃない。ご飯が欲しくなる。
中沢「どうだ?」
ほむら「75点。私は中辛が好みなのよ」
中沢「こりゃ手厳しい」
中沢は笑ってカレーの鍋の中に顔を突っ込んだ。
しかも彼はあろうことかそのままカレーを吸い始めた。……吸い始めた? まぁたぶん、吸い始めた。
そのせいか凄い勢いでカレーが減っていく様子を見ながら、私は中沢に背を向けて歩き出す。
ほむら「また遅刻しないようにしなさい」
中沢「@#&%$*〜!!」
わけわかんない。
夢なら覚めて。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/15(日) 02:10:12.56 ID:gsBO0xb9o
ほむら「学校まで来てしまった……」
さやか「げっ、転校生!」
しかも面倒なのと出くわした。
ほむら「朝から不幸ね……」
さやか「こっちの方が不幸だっつーの!」
やや攻撃的だけどいつもどおりの美樹さやかだ。
普段ならすぐに視界からシャットアウトしているところだが、今だけはそんな彼女がありがたかった。
さやか「あー恭介の左腕ぺろぺろしたい……」
前言撤回。
ありがたがった私がバカだった。
すぐさま彼女の存在をシャットアウトしなければ。
それよりも私の意識をシャットダウンしたいのですが。
さやか「あっ、おはよーまどか!」
――まどか!
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/15(日) 02:11:37.13 ID:gsBO0xb9o
その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中に花々が咲き誇り天使が空を舞う天国がぱっと広がった。
でもそれはすぐに溶岩の花が咲き誇り魑魅魍魎が跋扈する地獄に様変わりする。
と言うのは大げさだが、それらが頭の中に同時に浮かび上がったのだ。
なぜ相反する性質の物が同時に存在できるのか。
それはわたしがまだまどかの方を向いていないからだ。
観測されない箱の中の猫と同じである。
毒ガスで死んだ猫がいるのか、それとも毒ガスが出なかったことで助かった猫がいるのか。
どちらかはまだ分からない。これが確か……しゅ、シュプレヒコールのコネ……?
まどか「どうしたのほむらちゃん?」
ほむら「――! まど、か……?」
嗚呼、神様感謝します。
少なくとも私の目の前にいるまどかはこれ以上無いほどにまどかでした。
赤いリボンのところが神々しいまでにまどかでした。
幼い顔の辺りがまさにまさしくまどかでした。
身長もスタイルも雰囲気も全部、そう、これぞまどか。
ある一点――正確には二点――を除いては。
まどか「元気ないね。はい、こんな時は――」
そう言って、まどかは私に一本のドリンクを手渡した。
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/15(日) 02:12:51.81 ID:gsBO0xb9o
私は慄然たる思いで手渡されたドリンクと彼女の格好を凝視した。
まずドリンク。
それは場違いとしか言いようがない文字が刻まれたとしか言いようがないドリンクだった。
狂気じみた二つの漢字が私の心を冒涜的なまでにぐらぐらと揺り動かし、破壊していくのだ。
そして彼女の格好。
それはこの世の物ならざる奇怪な衣服というわけではないが、おぞましい。
あと異形とか名状し難いとかそういうC神話作品のワードをいくつか。とにかく彼女の格好は私を混迷に陥れた。
まどか「はい、『鴨川エナジー』!」
ほむら「……どうして?」
まどか「元気ないの? 超ジャージ部魂出して頑張ろうね! まるっ!」
堪えきれなくなった私は、鴨川エナジーと銘打たれた飲料を飲みながら涙を流した。
そしてそれを飲み終えると、なぜか拍手しているまどかと美樹さやかの前でとうとう声を上げて泣き叫んだ。
ほむら「どうしてジャージなのよおおおおおお!」
まどか「その叫び声、まるっ!」
さやか「朝からやるなぁ、あははははっ!」
やってられない。
そう思いながら私は意識を手放した。
願わくば、次に目を開いた時には正常な世界であってほしい。
わりとまじめに。
お願いですから。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/15(日) 02:14:38.20 ID:gsBO0xb9o
今回の投下作業はここまで――まるっ!
断っておきますが、この作品はこれ以上ないほどにシリアスな作品です。
伏線しかありません。すべて伏線。感動のフィナーレという名の伏線が待っています。
たぶん。
次回の投下は気が向いたら、そのうち。
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/15(日) 02:18:18.60 ID:CIhnRdxDO
乙
カオスwwwwwwww
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2012/07/15(日) 02:41:35.43 ID:JAItv42bo
乙!期待
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)
[sage]:2012/07/15(日) 03:35:38.62 ID:+/yecRtjo
こっちのまどかはさやかと気が合いそうだな
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/15(日) 03:38:27.39 ID:Ww4u043DO
すでにシリアスから遠くかけ離れてるじゃないかwwww
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)
[sage]:2012/07/15(日) 06:32:55.92 ID:UQeuZLfao
わけがわからないよwwwwwwww
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/15(日) 08:40:20.56 ID:1yUtsZVDO
こんなの絶対可笑しいよwwwwww
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)
[sage]:2012/07/15(日) 09:33:43.48 ID:Z1vZHLt4o
鴨川wwwwww
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2012/07/15(日) 11:50:48.65 ID:ctUaDlwj0
これは面白いwwwwww
期待
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/15(日) 16:09:10.01 ID:+a119UEW0
こういうのを待ってたwwwwwwww
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)
[sage]:2012/07/15(日) 17:20:49.16 ID:wOwTXnxAO
スレタイ詐欺とか……
構わん全力でやれwwwwwwwwwwww
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(岩手県)
[sage]:2012/07/15(日) 20:39:17.18 ID:NmFPrH2n0
こっちのまどかかよwwwwww
確かに誰かやると思ったがwwwwwwwwww
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:31:25.71 ID:gsBO0xb9o
まどかはまどかでも性格だけですので
というかこれ本当にシリアスなので
スレタイ回収して感動の伏線フィナーレやるから
ギャグはたんなる目くらましですから
投下
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:31:53.66 ID:gsBO0xb9o
私は繰り返す。
何度でも繰り返す。
気が遠くなるような長い年月を掛けて。
私の魂魄が紡ぐ人生の全てを賭けて。
世界で唯一心を開いた家族の顔すら忘れて。
優しい声を掛けてくれた名前も分からぬ人々の記憶を捨て去って。
険しいなどというレベルを超越した辛い道のりを乗り越え迷路を突き進む。
なぜそうまでするのか。
それはきっと。
私にも、分からない。
私を突き動かすのは、さながらプログラムによってシステム化された衝動。
前に進めと叫び、光を目指せと囁きかける、人類のDNAに刻まれた本能。
私は歩み続ける。
この世界を――――――
この果てしないほどにぱるぷんてな世界をね……!!
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:32:29.37 ID:gsBO0xb9o
**92
『今日の天気は、晴れのち恐慌です』
そんなわけのわからない声を聞いた。
そして気がつくと、私は校庭に立っていた。
なぜかは知らないが、体からほんのり焼き魚のにおいがする。たぶんこれは鯵の開きだろう。
香ばしいが少し生臭い。それはさておき、私は隣を歩く二人の少女の声に耳を傾けた。
まどか「そういえば、最近杏子ちゃんの姿見かけないね」
さやか「あーあいつなんかクライスト(Crist)教にハマってるらしいよ」
まどか「十字教に? ふーん……杏子ちゃんも鴨川ファンクラブに入ればいいのにね」
さやか「キルィスト教なんかよりも上条恭介を崇め敬う同好会に入った方が良いよねー」
まどか「うん。ヤハウェを唯一神として崇める変な宗教よりは安全だよね」
さやか「でしょ?」
ほむら「……」
変な宗教――もとい三大宗教よりは安全ですか。
得体の知れないファンクラブやいかにも異常な同好会よりはれっきとした宗教の方がマシだと思うのだけれど。
黙っておくことにしよう。もしも下手に口を挟もうものなら、絶対に面倒臭いことになる。
これは予感ではない。
これは経験に基づいた私の選択である。
そんなに経験を積んだかどうかは、私でも疑問なのだが。
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:33:13.76 ID:gsBO0xb9o
まどか「じゃ、そういうわけだからほむらちゃんも鴨川ファンクラブに入ろっか! まるっ!」
さやか「転校生も上条恭介を崇め敬う同好会に入って恭介の垢をぺろぺろしよう!」
ああ黙ってても意味無かったわー。
これだめだわー。
私は深いため息をついた。
歩きながら、この得体の知れない世界に呪いあれ! と心中で叫ぶ。
ディルムッド・オディナ。あなたの気持ちが今なら分かる。
そんな私達の後ろで、とても大きな音――おそらくは爆発音――が鳴り響いた。
まどか「きゃあああああ!」
さやか「ぎゃあああああ!」
ほむら(悲鳴で性格って分かるのね……)
そんなことを考えながら、周囲に撒き散らされる力の波を魔法でしのぐ。
私の視界の隅でど、こか中沢に似た少年や中沢に似た少女が吹き飛ばされていった。
さらに中沢に似た先生が地面に打ち付けられ、
中沢に似た用務員が中沢に似たバナナの皮で滑って転んだ。
なぜ今転ぶ?
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:34:11.83 ID:gsBO0xb9o
さて。
謎の衝撃波を凌いだ私は次にどうしたかというと、だ。
なぜか自分の手のひらを舐めているさやかと鴨川エナジーを飲むまどかを連れて爆心地へ向かったのである。
Q.なぜか?
A.原因の解明のため
当然だ。こんな理不尽な世界とはいえ、こんな事件はなかなか起こらない。
せいぜい二日に一回だ。
……ん?
ほむら「昨日はこんな事件起きてないから確率的にはおかしくないじゃない……!?」
そもそも昨日っていつだろう……?
一人絶望しながら、まるで役に立たない二人をその場で待機させて爆心地を覗き込む。
そして私は絶句した。
そんなことよりも、そこには直径5メートルほどのクレーターが存在していた。
しかもあろうことか、なんとそのクレーターの中央には少女の姿があった。
彼女は大の字に寝転がり、ぽっかりそのまま地面に埋まっている。
まるで上空数千メートルからダイブした結果地面に衝突して埋まってしまったかのように!
まぁたぶん文字通りそうなのだろうけれど。
かろうじて見えるあの赤い髪、あれは記憶が正しければ佐倉杏子の髪に違いない。
魔女との戦闘で弾き出され、その結果ここに墜落したのかもしれない。
しかしそれにしたってこれは――むごい。
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:34:48.98 ID:gsBO0xb9o
魔女との戦いが生み出す非情な現実に、私が髪を震わせながら改めて戦慄した。
たとえこんな異常な世界であったとしても、死ぬ時は死ぬのだ。
彼女が齎した非情な現実は、しかし私の緩みきった精神を元に戻してくれた。
諦めてはならない。油断してはならない。私の目的を果たすためにも、前へ進まなければ。
彼女の尊い犠牲は私に活力を与えてくれた。ありがとう、佐倉杏子。あなたの犠牲は、絶対に忘れない……!
と、いつの間にかそばにいたさやかとまどかが目を丸くして口を開いた。
さやか「あ、杏子じゃん」
まどか「ほんとだ。また懲りずに大気圏からのダイブしたのかな?」
ほむら「え?」
さやか「大気圏からのダイブだよ。弾道飛行登校でしょ?」
ほむら「え?」
まどか「杏子ちゃん、歩くのが面倒だからってすぐに弾道飛行する癖があるよね」
さやか「大気圏ギリギリまで飛んでさ、秒速数十キロって速度でここ目掛けて飛び降りるんだよねー」
まどか「間違えて中沢君の頭に落ちちゃったことあるよね」
さやか「そしたら中沢が5メートルほどバウンドして轟! って感じに転んでもうおかしくってさぁ、あはははっ!」
まどか「それって超ジャージ部魂だよね? まるっ!」
ほむら「……」
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:35:20.05 ID:gsBO0xb9o
おかしいのはあなたたちです。
と、わざわざ律儀に突っ込むほど愚かではない。
なにせ佐倉杏子は死んだのだ。こんな状況下でおふざけに付き合うほど私の神経は図太くない。
杏子「おーっすさやか、まどか。それにほむらも」
生きてました。
しかも無傷です。
体中砂だらけです。
しかも私の隣ですまし顔を浮かべています。
杏子「どうしてあんたの隣にいるかって? いやぁ、オープニングで省かれた者同士だし、なんとなく」
詳しく知りたい方ははまどか☆マギカのオープニングを参照あれ。
といっても後半で追加されてるのだけれどね。
さやか「あんまり弾道飛行登校しないでよね、後片付けするの中沢なんだから」
杏子「わりーわりー、でもさぁ歩くのって疲れるじゃん?」
まどか「お家から学校まで続く川でも作ったらどうかな? 歩かなくて済むよ?」
杏子「水はちょっと……ほら、汚れるし」
宇宙線――放射線とか紫外線とか――を浴びるほうが汚れると思うが、無視。
そもそも地面に衝突した時点で砂だらけで汚れまくっているのだが、無視。
もう慣れた。
そういうわけで、私達は教室へ向かって再び歩き始めた。
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:35:51.77 ID:gsBO0xb9o
/ガラス張りの教室/
早乙女「えー、人間心理学と経済論と哲学の授業を同時進行で始めたいのですが――その前に!」
さやか(うわぁまたなんか始まった……恭介と握手したあたしの手でも舐めてよっと)
まどか(まるっまるっまるっ……うーん、ちょっとアクセントが違うかな? まるっ!)
仁美(女と女の絡みよりも無機物と無機物の絡みの方がナウなヤングにバカウケですわね!)
杏子(あぁ〜先生の話をBGMに食べるラーメンは格別だね) ズルズル
中沢(ペペロンチーノはにんにくが命とされがちだが、実は重要なのは麺の湯で加減なんだよなぁ) グツグツ
彼女らのの脳内コマンド画面には、『話をまともに聞く』という選択肢がないらしい。
机に置かれたカセットコンロと鍋でパスタの麺を茹でる中沢を見ながら、私は深いため息をついた。
そして懐からニンテンドー3DSを取り出して、私だけは先生の話を真面目に聞いてあげようと思った。
ちなみにソフトは世界樹の迷宮4。
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:36:21.66 ID:gsBO0xb9o
早乙女「なんと、校庭に隕石が衝突していたそうなのです!」
さやか「えええええええ!? つまりどういうこと!?」
まどか「それって超ジャージ部魂だね! まるっ!」
仁美「はあああん!! 校庭さんの大事なところが摩擦熱を帯びて熱くなった隕石によってぐちょぐちょですわぁぁ!!」
杏子「世の中物騒になったもんだねぇ」
物騒というか、まともな人が消えたというか。
正直心が痛くなる。私達はどうしてこんなところまで来てしまったのだろう。
はぁ……
早乙女「校庭に落ちた隕石の調査と授業、どちらが重要ですかはい中沢君!」
中沢「ええっと、どちr」
早乙女「長い! はいそれでは授業を始めます!」
中沢「……」 シュッシュッ
人の話を聞くことの出来る種族は、もしかするともうこの世にはいないのかもしれない。
人の話を聞けるほど忍耐強い種族は既に私を除いて絶滅状態。なんてこと。
包丁を研いでいる中沢の姿を見ながらそんなことを考えた。
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:36:49.14 ID:gsBO0xb9o
……ところで校庭に落ちた隕石ってもしかして……
杏子「ん? なーに見てんのさ。ラーメンならやらないよ?」
ほむら「いえ……べつに」 プイッ
杏子「?? ヘンなやつだね、あんた」
気にしすぎだろう。
気にしてはダメなのだろう。
気にしたら負けだ。間違いない。
ほむら(例え心当たりがあっても触れちゃいけない……!)
早乙女「はいそれでは哲学においてもっとも有名な言葉でありにわかファンの大好きなかの哲学者
デカルト氏の発言である我思う故に我ありとはすなわち思考することにその存在を証明することが――」
……先生、それは中学生に教える内容ではありません。
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:37:38.44 ID:gsBO0xb9o
/放課後/
まどか「ジャージ部の活動で校庭のクレーター調査に来ました、まるっ!」
さやか「ジャージ着てるのまどかだけだよね。というかそれセンスないからやめたほうがいいよ」
杏子「背中にでかでかと『KYOSUKE☆LAVU』ってプリントがしてあるあんたの制服よりはマシじゃない?」
どうでもいいけどLAVUってなんだろう。
もしかしてLOVEと書きたかったのだろうか。いやそこまでバカなはずは……
さやか「だってあたし、恭介にL・A・V・U! ラブ、しちゃってますから!!」
そこまでバカでした。
まどか「そのラブ、まるっ!」
杏子「まるなラブ……これがマブラヴってやつだね!!」
まどか「それって超ジャージ部魂だね? マブラヴっ!」
さやか「あははぁいやーそれほどでも! かなり舞い上がっちゃってますね、あたしたち!」
ほむら「あなたたちが何を言っているのか分からないわ!」
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:38:08.18 ID:gsBO0xb9o
話が進まないので彼女らを無視して私はクレーターに足を踏み入れた。
クレーターは杏子が墜落した跡こそそっくりそのまま残ってはいるものの、周辺は先程よりも綺麗になっている。
中沢が気を利かして爆心地以外は片付けてくれたのかもしれない。
視界の端でバケツ状の器にパフェを盛り付ける中沢を見ながら、私はそっと会釈した。
中沢「……フッ」
なぜか親指を立ててきたので背を向ける。
まどか「……このクレーター、隕石が衝突して出来たにしては形が変じゃないかな?」
さやか「あたしも同じこと考えてたわ。そもそも隕石にしては被害が小さすぎるよねー」
杏子「まるで魔法少女が魔法を使って減速しながら衝突して出来たって感じのクレーターだね」
まどか「もしかしたら重力制御かなにかで減速しながら地球に現れた宇宙人かもしれないよ?」
さやか「でもクレーターの形も見るからに人が地面に埋まったって雰囲気がさぁ……」
まどか「あっ、赤い髪の毛が落ちてるよ! じゃあ正体は魔法少女なのかな……?」
さやか「それに魔力がちょっと残ってる! しかも杏子に似た魔力だよこれ!」
杏子「魔女との戦いが生み出す非情な現実に、アタシも思わず緩みきった精神を元に戻しちまったよ……」
わざとやってるの?
そうなの? そうでしょ? そうなんだよね?
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:38:34.88 ID:gsBO0xb9o
まどか「髪が赤くて」
さやか「杏子に似た魔力を持った」
杏子「魔法少女が今回の騒動の原因ってわけか……なんつーか、ちょっと悲しい話じゃんかよ」
さやか「……そうだ! このクレーターに名前を付けて保存しようよ!」
中沢が持ってきたティーカップ――中身は紅茶――に口をつけながら、私は首を傾げた。
なぜそうなるのだろうか。
まどか「このクレーターの名前は『杏子ちゃん衝突跡』が良いと思うの! それって超ジャージ部魂だもん!」
さやか「あたしは『杏子墜落現場』。現場って付くと渋いって恭介が言ってたはぁぺろぺろしたいぺろぺろ……」
杏子「じゃあアタシは『アタシ着陸失敗地点』かな。減速に失敗しちゃってずれちゃったんだよねぇ」
さやか「あははっ、杏子はおバカさんだなぁ」 コノー
杏子「へへっ、あんたに言われたくないよーだ」 ナンダヨー
まどか「これぞ鴨川ジャージ部スピリットだよね! まるっ!」
ほむら「……え?」
ほむら「え?」
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:39:26.26 ID:gsBO0xb9o
そんな時だ。
私たちの前方、15メートルの地点。
卵焼きを作っていた中沢の頭めがけて、空から赤い髪の魔法少女――佐倉杏子が降ってきた。
中沢はそのダメージで20メートルほど吹っ飛び、物言わぬボロ人形に成り果ててしまう。
まどか「これって……」
ふたたび杏子が空から降ってきた。
彼女は今度は前方10メートル、やや右よりの方角に落ちて、大きなクレーターを作り上げる。
さらに杏子が落ちてくる。クレーターが形成される。
またもや杏子が。これまたクレーターが。
そして私が我に返ったときには、もうなにもかも手遅れだった。
見滝原市は、豪雨のような勢いで降り注ぐ杏子によって真っ赤に染まっていた。
あたり一面が杏子の海で満たしつくされている。杏子杏子杏子杏子杏子杏子杏子……。
さやか「あーそっじゃ、今日ってあれだったんだね、天気」
杏子「あれじゃ仕方ないよなぁ」
ほむら「……勝手に納得しないで詳しく説明しなさい」
まどか「あれ、ほむらちゃん天気予報見なかったの?」
ほむら「……ええ、まあ」
そもそも気象予報士にこんな状況が予報できるはずもないだろう。
いや――待て。たしかさっき私が目を覚ました時に聞いた言葉。
あれは確か――――
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:40:18.38 ID:gsBO0xb9o
ほむら「晴れのち恐慌じゃなくて……晴れのちきょーこ……?」
まどか「きれいにオチがついたね! まるっ!」
オチてない。
それどころか駄洒落にすらなっていない。
悠然と降り注ぐ杏子の雨を見ながら、私はふたたび意識を手放した。
願わくば、次に目を開いた時には正常な世界であってほしい。
わりとまじめに。
せめて杏子の海だけは勘弁してください
お願いですから――あれ、これって既視感(デジャブ)がすg
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/15(日) 21:42:21.88 ID:gsBO0xb9o
今回の投下作業はここまで――まるっ!
伏線重視でお話を作っているので寒いとか言われても知りません
本当にシリアス。いやぁシリアス。冒頭とか完全にシリアス。
マミさん登場は次回に持ち越し。
次回の投下は気が向いたら、そのうち。
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/07/15(日) 21:42:58.13 ID:vULTd8ns0
乙乙
シリアスって…何だっけ
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/15(日) 21:45:40.72 ID:F+HuYsVco
振り向かないことさ!
乙
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)
[sage]:2012/07/15(日) 21:46:03.38 ID:Z1vZHLt4o
ロッソファンタズマの無駄遣いワロタ
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/15(日) 21:58:33.77 ID:YzWdeMkbo
乙
色々と凄まじいスレを開いてしまった
41 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/15(日) 22:07:19.78 ID:CIhnRdxDO
乙
シリ……アス……?
42 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)
[sage]:2012/07/15(日) 22:27:56.97 ID:UQeuZLfao
他のSSで必死に脇役をこなしてる伏線さんに謝れwwww
43 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/16(月) 00:13:29.67 ID:2kiBq4/a0
いやあシリアスすぎて参っちゃうな
44 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/16(月) 00:54:35.25 ID:iQbEiIbHo
なんてシリアスなスレなんだ・・・
45 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
[sage]:2012/07/16(月) 03:47:39.06 ID:g3hZP7VJo
え、何このスレは(ドン引き)
46 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/16(月) 07:26:10.41 ID:MQgWuAJDO
シリコンアスファルト、略してシリアス
それにしても何てシリアスなスレなんだ
47 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)
[sage]:2012/07/16(月) 13:19:11.08 ID:7SdihMsAO
これは、見習いたくても高レベル過ぎて出来ないシリアスと伏線だわ…
48 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/16(月) 23:31:20.10 ID:lX4nObYOo
乙
いやぁ すごい しりあすで、 ぼく こまっちゃうな !
49 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
[sage]:2012/07/17(火) 00:19:26.00 ID:e7+riUnMo
どういうことなの・・・
50 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福井県)
:2012/07/17(火) 20:34:08.61 ID:atYP4SZjo
俺は今までシリアスという言葉の意味を間違えて覚えていたようだ....
51 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/18(水) 01:32:51.56 ID:isJWyxRDO
シリアスとは振り向かないこと…なら真実とはなんなんだろうか…
こんな世界に辿り着いたら一日で魔女化する自信ある
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/07/18(水) 20:12:54.48 ID:nGRJV/xE0
次の世界では何人の中沢が犠牲になるのか
53 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/18(水) 21:29:33.78 ID:pbocE+WDO
中沢の魔女とかいそう
54 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:20:25.48 ID:WSDYyHgdo
長くなったので分割投下
今回は前半のみ。シリアスの塊がシリアスでやばいけど今回は大人しめ
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:20:59.04 ID:WSDYyHgdo
巡り巡る時の螺旋を歩みながら、ふと思う。
それはもしかすると、無意味な行いなのかもしれない。
何かを成し遂げようとすればするほどに、その祈りは叶わず。
そのために力を振るえば振るうほどに、私の魂は拡散し、疲弊し、衰えていく。
それは熱力学第二法則に似ている。
私のしていることは無駄なのかもしれない。
私の想いを彼女は知らない。
私の想いに彼女は気付いてくれない。
私の存在を彼女は絶対に――忘れてしまう。
だけど――それがどうしたというのだろうか?
私は彼女に見返りを求めているわけではない。
私はただ、私を私として固定し、この世界に繋ぎとめている『約束』のために生きているのだ。
まどか。
たとえあなたが私の事を忘れてしまうとしても。
私は何一つ忘れずにあなたのために生きて、死ぬ。
――――そんなことを考えていた時期が、私にもあったらしい。
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:21:50.64 ID:WSDYyHgdo
*459
ふと我に返って、私は周囲の光景に目を向けた。
お先真っ暗だ。気付かぬうちに夜になっていた、とも言う。
体重を移動すると、草を踏む音がした。どうやらここは見滝原市にある河川敷らしい。
一体どのような理由でここまで足を運んだのかは、不思議なことにまったく記憶に覚えがなかった。
ほむら「はぁ……」
がっくりとうなだれると、仕方なく足を一歩一歩前に動かす。
この一歩は小さな一歩だし、私にとっても小さな一歩であることに変わりはない。
QB「はぁ……」
ほむら「うわっ」
うわっ。
思わず心の中でも同じ言葉を繰り返してしまった。
暗闇の中に浮かび上がった白い物体を、私は睨むような目つきで見た。
この白いのはインキュベーター。愛称はキュゥべえ。魔法少女に従う使い魔で、人の魂を宝石に変える悪党だ。
そんなキュゥべえは、なぜか白い顔をどことなく青くしてぐったりと地面に横たわっている。
相手にしたくないなぁと心から思うが、彼とは一時的な『協力関係』にあるので無碍にすることも出来ない。
視界の隅っこでラーメンの屋台を営んでいるっぽい中沢を見ながら私はキュゥべえに声を掛けた。
ほむら「なにしてるのかしら」
QB「……なんだキミか」
ほむら「なんだとは酷いわね……で、なにしているのよ?」
QB「……話せば長くなるよ」
57 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:22:45.48 ID:WSDYyHgdo
ということで、十分ほど聞かされた愚痴を四行にすると。
・40人くらいの杏子たちに絡まれてパシリにされた
・先ほどのとは別の80人くらいの杏子たちに見つかって遊びに付き合わされた
・川で溺れていた160人くらいの杏子たちと遭遇してしまい全員を救出する羽目になった
・お礼代わりに『んまい棒』を230本ほどプレゼントされたが、中身は潰れてほとんど粉だらけだった
ということらしい。世はまさに大杏子時代。右も左も佐倉杏子だらけだ。
ほむら「へばるのは勝手だけれど、勝手にくたばらないようにしなさい」
QB「……分かってるよ。君の方もあまりこの世界に馴染み過ぎないようにね」
ほむら「言われなくても馴染むわけないでしょうが」
この会話からも分かるとおり、彼はどちらかと言うと私の同類に当たる存在。
つまりまどかの願いによって改変された世界に巻き込まれた、異世界人(?)というわけだ。
この世界から脱出するために、私達は協力関係を結んだのである。いつ結んだのかは残念ながら記憶にございません。
ほむら「本当ならあなたと馴れ合うなんて死んでもごめんなのだけれど……」
QB「酷い言いようだなぁ。価値観を共有することが出来るだけで十分気が楽になるじゃないか」
ほむら「まるで感情があるような言い回しね」
QB「まさか、そんなわけあるはずがないよ。……でも、せめてマミがまともだったら良いんだけどね」
マミ。巴マミ。
そう言えばまだ彼女と会ってない、気がする。
まともだったら、という言葉から察すると彼女もまた例外に漏れずまともではないのだろうか。
58 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:23:12.55 ID:WSDYyHgdo
ほむら「巴マミはどうまともじゃないの?」
QB「うーん、説明するのは難しいね」
ほむら「色々あるでしょう、一人ぼっちとか、暗いとか、病んでるとか、太ってるとか……」
QB「そうだね……すくなくとも彼女はそのどれにも当てはまっていないね」
ほむら「? ということは?」
QB「人望も厚いし友達もいるし、明るいしポジティブだしね。マミは理想の魔法少女……だと思うよ?」
難しい話だ。
まどかのようにまどかだけどまどかじゃないとか。
美樹さやかのように異常な上条恭介愛(彼女いわくLAVU)を抱いているとか。
ロッソファンタズマの能力なのかよく分からないが大量に存在している佐倉杏子とか。
私の視界の端っこでおでんの屋台を経営している中沢とか。
そういう感じなら分かりやすいのだけれど。
ほむら「つまり、どういうこと?」
QB「人は見た目によらない……とだけ言っておくよ」
ほむら「答えになっていないじゃn」
??「うるっせぇぇえぞガキ共ぉ!!」
ほむら・QB「!?」
59 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:23:47.64 ID:WSDYyHgdo
どうやら中沢が営むおでんの屋台の客が叫んだようだった。
ほむら「ちっ……酔っ払いね」
QB「キミも迂闊だね。一般人から見えていないボクとこうして話していれば、それだけ注目を浴びることは確実じゃ」
??「うるせぇんだよ白いのォ! 今何時だと思ってんだぁ!!」
ふたたび浴びせられた怒号に肩を震わせて――ん? 白いの?
ほむら「……キュゥべえ、あなた一般人には見えないんじゃ?」
QB「……そのはず、だけど」
私達はおそるおそる中沢が営んでいるくさいお好み焼きの屋台に近づく。
そしてそこに居座る客の姿を見て――嗚呼、何ということだろう!!
その客の肌は、いわゆる黄色人種の私達に比べて白く、背丈は低く、子供ほどもない。
二つの目はルビーのように紅く輝き、ちょんと生えた耳からはうわっとなるほど長い耳毛が飛び出ている。
その異常な姿をした客は、白い肌に似合わぬ無精ひげを生やした顔をぐるっとこちらに向けた。
頭に結ばれたネクタイがぷらーっと揺れる。
??「あぁ? 誰かと思ったら……同僚じゃねぇか」
QB「あ、あああ、ああ……!」
60 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:24:50.57 ID:WSDYyHgdo
ほむら「そんな……まさか、でも……」
??「おう、紹介がまだだったなぁ」
そう言うと、白い身体に赤い瞳の人間離れした客――つまり。
『THE酔っ払い親父』テイストな『キュゥべえ』は陽気に首を揺らして語り始めた。
QB´「俺はそいつの同僚のいんきゅべぇたぁでぇよう。あんたぁたしかほむらさんだろ? まぁ飲んでけよ、な?」
ほむら「えっと、あの……」
QB´「うううう、ちくしょぉ……なにが悲しくて年端もいかねぇ女の子を騙さなきゃなんねぇんだよぉ……」
キュゥべえが手元にあるビールをぐいっと一飲み。
イカを焼きながら『お客さん、そろそろやめときなせぇな』と中沢が語りかけるが、酔っ払いキュゥべえはこれを無視。
やれやれと首を振りながら中沢は私にイカ焼きを渡してきた。
ありがたくいただきつつ、首を傾げる。これは一体どういうことなのだろうか。
QB「もうだめだ……おしまいだぁ……ボクもやがてはあんな風に『THE酔っ払い親父』になるんだ……!」
ほむら「ちょっ、キュゥべえ?」
QB「うわあああああああああああああああ!!!」
大きな声で叫ぶと、キュゥべえは颯爽と走り出して、夜の河川敷の向こうに消えた。
ほむら「……良く分からないけれど、辛い戦いになりそうね」
中沢「寒い時代だとは思わんか?」
ほむら「あなたはさっさと寝なさい」
中沢「はい」
61 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:25:21.91 ID:WSDYyHgdo
そんなわけで朝である。
ぱっぱと身支度を整えると、私は朝食をとらずに家を出た。
朝食抜きダイエット? 残念ながらそうではない。
私は中学生の中ではむしろ痩せているほうだ。
ではなぜ朝食を抜くのか。
その理由は、自宅玄関前にある。さっそく扉をご開帳。
中沢「よう暁美。昨日はよく眠れたか?」 トントントントン
するとそこにはそこには路上でテーブルを広げている中沢の姿が!
もう慣れたので大げさなリアクションを取らずに軽く肩をすくめて見せる。
ほむら「それなりに眠れたわ。今朝は何を作っているのかしら」
中沢「何って、見ればわかるだろ。サンドイッチだよ。食うか?」 サッサッ
ほむら「それじゃあお言葉に甘えて」
皿に置かれた小さなサンドイッチを手に取り、口へ運ぶ。
パン生地のほのかな香りが口の中に広がるや否や、
薄く塗られたマーガリンと中に挟んである卵ペーストの香りが追加で加わり口の中で混ぜられていく。
卵はほのかに生暖かい。おそらく茹で上げた直後なのだろう。
けれどそれはそれでまた良し――でもちょっと微妙。
62 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:26:35.08 ID:WSDYyHgdo
またたくまにサンドイッチを胃の中に収めきり、私はグッ! と親指を立てた。
中沢もグッ! と親指を立てた。
最近気付いたのだが彼とは妙に気が合うような気がしないでもないようなそうでもないか。
そうでもないです。
中沢「で、どうだった?」
ほむら「90点ね。マヨネーズがそれほど強くないのが気に入ったわ。手作りかしら?」
中沢「そうだよ。酢を少なめにしてみたんだ。あと10点はなにかな?」
ほむら「卵が冷えてないのが残念ね。あまり冷えていてもダメだけれど」
中沢「分かった、覚えておくよ」
中沢はわらって頷き、その口の中にサンドイッチを詰め込み始めた。
一個、二個、三個、四個……八個を超えて中沢の口から血が垂れ始めたあたりで私は彼に背を向けた。
遅刻しないように、とだけ言って学校へ向かう。
背後で肉の裂ける音がする。おそらくサンドイッチを詰め込みすぎて中沢の頬が裂けたのだろう。
いつもどおりの朝の日常に安堵して、私は静かに微笑んだ。
63 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:28:07.30 ID:WSDYyHgdo
/教室、帰りのホームルームにて/
私は頭を抱えて机に突っ伏していた。
ほむら「普通に馴染んでしまってるじゃない……!?」
元の世界に戻ることを考えていたというのに、私とあろうものは!
中沢の奇行を日常の一部として受け入れてしまうなんて!
自分の愚かさが恥ずかしい。穴があったら入りたい気分だった。
まどか「落ち込んでの? ジャージ部魂出して頑張ろうよ、ほむらちゃん!」
ほむら「まどか……」
まどか「ねぇねぇそれよりもほむらちゃん、これ見てよ!」
そう言うや否や、まどかはジャージの前をちらっと空けてその下を私に見せてきた。
ジャージの下にあるもの――それはなんと、ああなんと!
人の妄想の象徴、水着の究極系にして完成系であるスクール水着!
しかも白! スクール水着の白! 膨張色! 太って見られてしまうのにどうしてそんな色を選んだの……!?
ほむら「というかなぜスク水を……?」
まどか「だってほら、これなら見滝原の海で溺れてる人を見かけたらいつでも助けにいけるでしょ?」
ほむら「……?」
小さな違和感を覚えて、私は首を傾げた。
64 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:28:44.16 ID:WSDYyHgdo
まどか「どうしたの?」
ほむら「ああいえ、ただ、その……」
まどか「これこそ超ジャージ部魂だよね! んん〜〜まぁるっ!」
ほむら「……ねぇ、まどか」
まどか「なに?」
ほむら「その、言いづらいのだけど……」
とはいえ、もう口にしてしまったのだから仕方がない。
怪訝そうなまどかに向かって、私は続く言葉を口にした。
ほむら「見滝原市に海はないでしょう?」
――瞬間、見えない空気が確かに音を立ててひび割れた。
そんな錯覚を私は覚えた。
いいや、違う。
感じただけだ。
だから私はさらに続けてしまったのだ。
私の住む場所――この地域一体に住む人間にとっては禁句である言葉を。
65 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:29:11.52 ID:WSDYyHgdo
ほむら「そもそも群馬県は海と面してないでしょう?」
66 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:30:15.60 ID:WSDYyHgdo
しまった――己のミスを悟った時には、もう何もかもが遅く。
先ほどまでの帰りのホームルームの空気は一転、
死刑が執行されるのを待つ死刑囚が集う死刑場のそれに様変わりしてしまっていた。
陽気なムードは、さながら無慈悲に振り下ろされる断頭台(ギロチン)の鈴の音にかき消されたかのように息を潜め。
みんなの笑顔は全てを清浄な物に戻すという名目で大地を走る、巨大なバイク戦艦を前にした一般市民のように弱弱しく。
されど漂う雰囲気は、宇宙漂流の刑に処された人間のように、確実に迫り来る終わりという名の未来に絶望した物だ。
そしてやがては誰一人喋ることなく、無力な赤子同然にまで精神が退行し。
ゆっくりと歩みを止め、進むのを拒み、破滅を享受し、絶滅する。
それをもたらした存在。その有り様は、まるで天使の輪(エンジェルハイロゥ)であったという――
なんてキメている場合じゃない。
私は急激にテンションが低下したみんなのほうをちらっと横目で覗き見た。
そしてふたたび頭を抱えた。
なぜかと言うと、まぁ……先ほど語ったような空気だったからである。
67 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:31:49.24 ID:WSDYyHgdo
まどか「海と面してない……」
さやか「陸の孤島……」
杏子「海とは縁のない田舎……」
仁美「水気のない砂漠地帯……」
早乙女「ゲリラの出没する未開地……」
中沢「今日の夕飯はタコの煮付けにしよう」
中沢に似た級友A「塩なんて出回らない奥地……」
中沢に似た級友B「挨拶代わりに引鉄が引かれる紛争地帯……」
中沢に似た級友C「死ぬ前に一度でいいから海が見たかったよおぉ……」
中沢に似た級友D「海が本当に実在するのかどうかさえ俺達には分からないんだ……」
中沢に似た級友E「生と死が交差して無が生まれるように群馬県と宇宙が交差して海が生まれるんだ……」
ほむら(地雷を踏んだどころか拳銃で打ち抜いたかのような気まずさね……)
というか後半はほとんど電波じみていた気もするが。
頭を抱えながら、私はとりあえずはやく家に帰って寝てしまいたいなぁと思うのでした。
後編に続く
68 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/20(金) 02:35:22.65 ID:WSDYyHgdo
今回の投下作業はここまで――まるっ!
当然ながら作中で登場する群馬県は実在するグンマーとは何一つ関係性が以下省略である。
次回はマミさんが登場。マミさんは冗談抜きでシリアスと伏線だらけの存在でびくびくです。
その次が上条くんの楽しいマイクロウェーブ講座、さらにその次が杏子ちゃんと一緒に学ぶ水商売という感じです。
次回の投下は気が向いたら、というか明日の夜か深夜か昼か深夜辺りに。
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/20(金) 02:54:33.33 ID:qqgsM4BDO
マミさんがボッチじゃない…だと…乙
人望に厚くボッチじゃないマミさんは生徒会長とか?
そんなマミさんはきっと眼鏡をかけてるに違いない!
眼鏡属性ないが眼鏡をマミさんがかけたらそれはもうヤバいな
つかほむらが染まりかけてるのが一番ヤバい(笑)
上条恭介のマイクロウェーブ講座気になる…サテライトキャノンでも開発するつもりか?つか杏子水商売ってオイオイ…お水の花道みたくなるのつもりか?
70 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/20(金) 06:11:54.17 ID:g1KAzWkMo
乙
Vガンネタを見てると、その内水着姿の中沢がビームサーベルで蒸発させられそうな気がしてきた
71 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)
[sage]:2012/07/20(金) 19:05:11.08 ID:eBqXGDudo
ここまで中沢が死んでないとかシリアスを通り越してハードボイルドすぎるだろ……
72 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/20(金) 22:22:37.46 ID:9IsyJ8yko
ここまできたら中沢が黒幕でも驚かんわww
73 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/20(金) 22:47:49.29 ID:lkNyNYK70
マミさんが気になり過ぎるうううう
74 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/21(土) 02:01:38.68 ID:f/GucD6DO
実は中沢はインキュベーターも知らない宇宙人だったら笑えるwwww
75 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福井県)
:2012/07/21(土) 21:03:27.18 ID:287nfAflo
なるほどシリアスですね
76 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/22(日) 00:29:49.18 ID:1xDHtbZLo
もうちょいで投下……しますよ?
もうちょいで
77 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/22(日) 01:15:00.94 ID:1xDHtbZLo
突貫作業で完成。
今回はちょっと真面目な部分が多いです
78 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/22(日) 01:15:28.69 ID:1xDHtbZLo
まどか「海……」
さやか「海……」
仁美「海……おっともう時間ですわ、それじゃあ帰りますわね」
杏子「腹減ったー」
まどか「海……」
さやか「海……」
杏子「ああ、天に召します我らの父のご加護を……」
ほむら「……」
あまりの気まずさに、私は帰り道を歩きながら一人瞠目した。
彼女らの海コンプレックス、すなわちシーコンがこれほどだとは夢にも思わなかったのだ。
確かに言われてみれば群馬県は陸の孤島。海に面していない秘境だろうが……
あからさまに気落ちしている彼女らを見ていると、悪いことをしたような気持ちになってくる。
そんなことを考えていると、まどかの口がかすかに動き始めた。
掠れるような吐息と共に、小さな声が吐き出される。
79 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/22(日) 01:15:56.69 ID:1xDHtbZLo
まどか「海がないなら……」
さやか「消えちゃえば良いんだよ……」
杏子「異教徒の国家なんて滅びてしまえ……」
ちょっと待とうそれはおかしい。
私が制止の声を張り上げるよりも早く、周囲の世界がぐにゃりと捻じ曲がっていく。
これは――結界だ!
どうしてもっとはやく気付けなかったのか。
油断? いや、違う。彼女達の負のオーラが魔女を呼び寄せてしまったのだ
まどか「海……」
さやか「海……」
杏子「プロテスタントに裁きを……」
佐倉杏子、あなたいろいろとおかしいわ。
そうこうしている内に空間の変質が完了してしまう。
そこはキャンディや綿菓子、飴玉にビスケットやケーキなどで溢れかえってお菓子の結界。
ほむら「気付かないうちにあの魔女が出てくる時期になっていたのね」
あの魔女とは、つまりこの結界の主のことである。
とても強力だが時間を止められる私の敵ではない。
そんな時だ。
あのお菓子と出逢ったのは。
80 :
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[saga]:2012/07/22(日) 01:16:23.53 ID:1xDHtbZLo
唐突だが、みなさまは『マアト』と呼ばれる物をご存知だろうか。
フランスのとある地方で販売されている、それはそれは軽いお菓子のことだ。
その意味は『天使の羽』。その名に恥じぬ軽さと、口の中に運んだ瞬間に溶けてしまう透明さが特徴的らしい。
食べたのかどうかすら分からないほどに透き通っているが、たしかにそれは美味しいらしい。
夢か現か、それすらも分からなくなる曖昧なお菓子。
ウエハースに似ているが、それだけでは終わらぬフランスのお菓子技術の塊。
かのマリーアントワネットも『パンが無ければマアトを食べればいいじゃない!!』と豪語したと思う奇跡の一品。
それが『マアト』だ。
もうみなさまお気付きだろうとは思われるが、私は『マアト』を口にしたことがない。
それどころか耳にしたことも、ほとんどない。
私がこのお菓子を知ったのは、とある小説にそれが出てきていたからだ。
とても美味しそうだったので食べてみたいと思い調べてみたはいいものの――なかなか結果は実らず。
東京の学校の頃の友人――中沢に良く似ていた気がする――は『マアト』は架空のお菓子だよ、とのたまっていた。
だが、それは違った。
『マアト』は実在した!!!
私は目の前に転がっている『マアト』を見ながら、感動のあまり大粒の涙を零した。
ゆっくりとその奇跡の証に腕を伸ばし、心を電動歯ブラシのように激しく震わせながら手に取る――
81 :
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[saga]:2012/07/22(日) 01:16:54.07 ID:1xDHtbZLo
直前、地面から姿を現した恵方巻きのような巨大な塊――お菓子の魔女が姿を現した。
大きな口を恥ずかしげもなくおっぴろげて。
『マアト』を飲み込んで。
ほむら「あああああああああああああああああ!!!!」
まどか「わっ!?」
さやか「ちょっ、どうしたのよ転校生?」
ほむら「許さない……あいつだけは私が倒す!」
お菓子をばりぼりう貪る杏子を無視しながら、私はあっという間に魔法少女の姿に変身。
盾に魔力を注ぎ込み、世界の時間を停止させる!
全てが静止した世界で、私は両の目をギッと尖らせた。
ほむら「あなたにはこのアメリカ製の大型拳銃の鉛玉をこれでもかというほどに食わせてやる……!」
まどか「こ、怖いよ? ほむらちゃん?」
ほむら「まどかは黙ってて! これは私とアイツの戦いよ!」
まどか「はっはい!」
まどかを一睨みして黙らせると、私は魔女に向き直った。うねうねする魔女を睨み、拳銃を構え――
そしてもう一度まどかを見る。
まどか「どうしたの?」
ほむら「……あれ?」
82 :
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[saga]:2012/07/22(日) 01:17:20.42 ID:1xDHtbZLo
もしかしなくても時間が止まってないわね、これ。
何度か盾に魔力を送ったり叩いてみたりするが、変化は無し。
どうしましょう。
困り顔で肩をすくめる私。
先ほどまでの怒りはきれいさっぱり忘却の彼方。
なぜかって? それは簡単。
だって私、時間が止められなかったら雑魚ですもの。
その旨を簡単に説明すると、二人はまたたくまに魔法少女の姿に変身して胸を張った。
まどか「よーし、それじゃあ超ジャージ部魂を見せてあげるね!」
さやか「こんなやつ、さっさと倒して恭介の腕ぺろぺろしたいしね!!」
いつもはイライラさせられる二人のおかしさが、今日となっては頼もしい。
ところが、私が感激して目頭を抑えていると二人はなぜかばつが悪そうな顔で私の方に視線を注いできた。
ほむら「どうしたのかしら?」
まどか「あーいや、その……み、みどり(ソウルジェムの名前。色はピンク)の調子が、その……」
さやか「というか、マジで成長する五秒前? 的な?」
ほむら「つまり?」
まどか「百聞は一見にしかず、だよ!」
さやか「どうぞごらんあれ!」
83 :
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[saga]:2012/07/22(日) 01:17:51.40 ID:1xDHtbZLo
二人は示し合わせたかのように元の姿に戻ると、手のひらに乗せたソウルジェムを私の方に突き出してきた。
なんてことはない、ただのソウルジェムだ。
どす黒く濁った、ただのグリーフシードになる直前のソウルジェム。
ああ……マジで成長する(=魔女になる)五秒前ね。
まどか「海の事を考えていたらソウルジェムが濁っちゃったみたいで……」
さやか「いつもなら恭介ぺろぺろでぺろぺろな感じに濁らないけど、今日はまだぺろってないぺろだからぺろ……」
ほむら「……仕方ないわね」
私はすぐ隣でお菓子を貪り食う杏子の首根っこを掴むと、無理やり立たせることにした。
杏子「ああ? なんだよ?」
ほむら「倒して。お願い」
杏子「なんで? アタシがやる必要がどこにあるのさ? あんたらの問題じゃん?」
ほむら「……グリーフシード、自由にしていいから」
杏子「いまんとこ余裕あんだよねー、別に苦労してないしさー」
84 :
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[saga]:2012/07/22(日) 01:18:25.45 ID:1xDHtbZLo
それにしてもこの佐倉杏子、まともだ。いや、まともではないのだが、この世界ではまともである。
本来の佐倉杏子のように、自分に利益が無い時は動こうとしないのだ。
どこか言い知れぬ懐かしさを覚えつつ、私は盾の中から一本のスナック菓子――うぅんまい棒を取り出した。
ほむら「これあげるわ」
杏子「はん、魔女くらいはじめチョロチョロなかパッパの要領で倒してやるよ!」
ちょろい。
結局彼女もまた、私の知る佐倉杏子ではないのだ。
私の知る佐倉杏子は、こんなお菓子程度で釣られるほど愚かではない。
願いに裏切られ、秋霜烈日の日々によって傷付き、自身のために魔法を振るうことしかしなくなった哀れな魔法少女。
それが私の知る佐倉杏子だ。つまるところ、目の前の彼女は所詮『ぱるぷんて』状態の佐倉杏子でしかないのだろう。
佐倉杏子が右手を突き出し、ソウルジェムを構える。
そして赤い光が彼女を包み込み――
杏子「おおっとバナナの皮がっ」
つるっ。
べたーん。
ぱくっ。
……ぱくっ?
音がしたのは、魔女の口からだろう。何かを食べたに違いない。飲み込んだと言うべきか。
何を?
杏子「あー悪い、ソウルジェム落としちゃった。てゆーか食べられちゃった」
Oh...
85 :
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[saga]:2012/07/22(日) 01:18:52.29 ID:1xDHtbZLo
杏子「さいわいまだ割れてないみたいだけど、体のコントロールはこれ以上むr」
ばたっと倒れる杏子。凍りつく私とまどかと美樹さやか。
心の中を絶望が渦巻いてゆく。
嫌だ。
ここで死ぬのだけは嫌だ。
こんなわけのわからない世界でだけは死にたくない。
恐怖が私の心をぎゅっと締め付け、現実から逃れようとする私の思考を捕らえて離さない。
だが、もう無理だ。あの魔女の俊敏性は随一を誇る。背中を見せればやられるのは確実だろう。
魔女が迫る。早い。想像よりも――私の記憶よりもずっと早い。
強……!
速…
避…
無理!
防御するしか……
無事で!?可能なの!?
否
死
ああ、おさらば。
86 :
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[saga]:2012/07/22(日) 01:19:26.57 ID:1xDHtbZLo
???「――――ティロ・フィナーレ!!」
死を覚悟した私の目の前で、その覚悟を抱かせた原因である魔女が“吹き飛んだ”。
津波を思わせるような、うねりのある赤い閃光――魔力によって形成された砲撃によって。
まどか「これってもしかして!」
まどかの声が聞こえてくるのと同時に、視界一派に煙が行き渡る。
先ほどの砲撃が着弾したことでもたらされた煙だ。
私は姿勢を低くしながら目を見張る。
小さな影が、すぐ正面に躍り出た。
さやか「マミさんっ!!」
やはり、巴マミなのだろう。
影は想像よりも小さかったが、さやかの言葉通りだとするならどうやらあれは巴マミの影らしい。
もちろん、最初の叫びからある程度は予想していた。
だが相手が悪すぎる。
なにせこの魔女は、巴マミの天敵なのだ。
マミ?「待たせてごめんなさい。もう大丈夫よ」
大丈夫じゃない。
私はぎゅっと目を瞑ると、大きく口を開けて叫んだ。
ほむら「まだよ、魔女は生きてるわ!」
マミ?「えっ?」
87 :
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[saga]:2012/07/22(日) 01:20:05.71 ID:1xDHtbZLo
煙がより一層、激しくうねる。
先の砲撃から立ち直った魔女が起き上がっているのだろう。
もう私の隠している情報を全て開示するしかない。たとえ疑われようと、生き延びなければ。
ほむら「その魔女はかなりしぶといタイプよ。何度も攻撃して!」
煙の向こうで、影が静かに頷くポーズを取った。
マミ?「それじゃあもう一度……ティロ・フィナーレ!」
ふたたび閃光と赤い砲撃が走る。湧き出る煙。
それでも煙の向こうには、依然として巨大な物が動く気配がする。
マミ?「バイ・ティロ・フィナーレ!」
今度は二重の砲撃音。
こちらからでは窺えないが、どうやらティロ・フィナーレを二つ用意したらしい。
しかし――気配は健在。しぶとい!
マミ?「これがラストよ!」
声高らかに、それこそ謳い上げるような調子で巴マミが叫ぶ。
同時に煙が晴れていった。
私は目を細めたまま、煙の向こうにある影を凝視し――見開く。
88 :
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[saga]:2012/07/22(日) 01:21:22.35 ID:1xDHtbZLo
マミ「バイバイ・ティロ・フィナーレ!」
――四つのティロ・フィナーレが、息も絶え絶えな魔女を完膚なきまでに爆砕した。
これが巴マミ? 強い、強すぎる! 私の知る巴マミの倍の倍は強いわ!
これだけの火力があれば、もしかしたら……
感動のあまり肩を震わしていると、すぐ目と鼻の先に赤い宝石が降ってきた。
マミ?「はい、佐倉さんのソウルジェム。回収しておいたわ」
さやか「さすがマミさん!」
まどか「超ジャージ部魂ですよ! まるっ!」
ほむら「……わざわざ悪いわね」
マミ?「そんなことないわよ。大事な後輩のためですもの、ね?」
精神的にもだいぶ落ち着きが見られる。
おかしい。が、おかしいのがこの世界だ。
私はキュゥべえの言葉を思い出すと、くすっと小さく笑った。
強く、気高く、美しく。
優雅に、華麗に。
きっとこの世界の巴マミは、そういう巴マミなのだろう。
ソウルジェムを杏子に投げつけると、私は背後にいるであろう巴マミの方を振り向いた。
89 :
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[saga]:2012/07/22(日) 01:21:52.93 ID:1xDHtbZLo
ほむら「――って、あれ? 巴マミ?」
マミ?「なにかしら?」
声がするのに、肝心の巴マミが見えない。
右向き、左向き、上と下を見る。
やはりいない。
マミ?「もう、ここにいるじゃない?」
ほむら「……まさか、でもそんな、あなたが……?」
まどか「もう、どうしたのほむらちゃん? マミさんの顔、忘れちゃったの?」
さやか「この溢れんばかりのバスト! きゅっと絞られたウエスト! 柔らかそうなお尻!」
杏子「それに黄色いソウルジェム……どっからどう見てもマミじゃん?」
中沢「80点ってところだな。俺は貧乳派だ」
最後のは無視するとして――しかし。
美樹さやかや佐倉杏子が指差す物を見て、私は唇をワナワナと震わせた。
いや、だって、仕方ないでしょう?
――だってそれ、ただの黄色いリボンよ?
90 :
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(神奈川県)
[saga]:2012/07/22(日) 01:22:21.58 ID:1xDHtbZLo
マミ(リボン)「もう、美樹さんたら。そんなに褒めても何も出ないわよ?」
さやか「本心ですよ! ほら、そのお胸!」
さやかがリボンの上の部分を指差しながら言う。
まどか「それにそのかわいいスカート!」
まどかがリボンの下の部分を指差しながら言う。
杏子「あとこのソウルジェム。あんたちゃんと見えてるのかい?」
杏子がリボンの一番先っちょにぶら下がっているソウルジェムを指差しながら言う。
分かった。なるほど。確かにソウルジェムは巴マミのものだ。それは間違いない。
だが――
え?
マミ(リボン)「暁美さん、怖い目にあって気が動転しているのね。もう大丈夫よ、安心して、ね?」
ほむら「あ、はい……え?」
1メートルあるかないか、そんな黄色いリボンに頭を撫でられた。
マミ(リボン)「はい、それじゃあもう帰りましょう! もうじき結界も消えるでしょうしね!」
リボンが胸と思しき生地の部分を張りながら言った。
91 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/22(日) 01:22:48.18 ID:1xDHtbZLo
ほむら「に、人間ですらない……!!」
中沢「十人十色、色んな魔法少女がいても不思議じゃないよ」
ほむら「わけがわからないわ!」
まどか「あははっ、ほむらちゃんってばもー!」
さやか「転校生は冗談がうまいなー!」
杏子「マミー腹減ったーめしー」
マミ(リボン)「はいはい、分かったから背中(リボンの裏側)によりかからないでちょうだい」
ほむら「認めない……脚本のリテイクを要求したい……!」
中沢「それより『マアト』な。あれ架空のお菓子だぞ」
もうそれはいいから。
そんなことを叫びながら、私はまたまた意識を手放した。
92 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/22(日) 01:26:00.60 ID:1xDHtbZLo
今回の投下作業はここまで――まるっ!
マミさんの容姿と活躍に思わず失禁。ちなみに何度も言いますが、マミさんの容姿は伏線です。
この謎に気付かれた方は杏子の謎にも気付かれるでしょうね。連鎖的にさやかの謎にも気付けるはず
そこまで気付いたらもう答えは出たようなものです
なお『マアト』は元パントマイム師が床屋を営業しているどこかの小説で見かけたもので、架空のお菓子です。
次回の投下は気が向いたら、そのうち。あすの深夜か夜中頃に……
93 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/22(日) 01:27:32.40 ID:XO4v6r5DO
乙
うむ、やはり俺はシリアスを勘違いしていたようだ
94 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/22(日) 01:29:05.97 ID:bH+2uYpvo
乙
本体がリボンなら魔法行使の効率が良くなりそうだね
リボン細工ごっこをして遊ぶ事だって出来るからとっても便利
95 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2012/07/22(日) 01:30:21.42 ID:bIOMmki5o
乙!
今回も絶望的なまでのシリアス回だった
96 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
[sage]:2012/07/22(日) 01:31:11.53 ID:9iXV+mSao
真面目に考えたが分からんわw
97 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/22(日) 02:02:58.82 ID:InDTYYmDO
マミさんの扱いに絶望した!俺のソウルジェムが真っ黒でMS5だ!
98 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/22(日) 02:09:40.81 ID:MxP4Jz7Ko
スタイル良いし格好良いし面倒見の良い素晴らしいマミさんじゃないか!(リボンを見ながら)
99 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)
[sage]:2012/07/22(日) 02:41:09.83 ID:qaz5hDemo
……マミ………さん……?
100 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)
[sage]:2012/07/22(日) 12:03:50.61 ID:TP9HlDxAO
マミ→リボン
さやか→ペロペロ
杏子→降ったり増えたり
まどか→まるっ
中沢→まじ中沢
QB→飲んだくれ
なんてシリアスな話なんだ…どんなに考えても俺じゃ伏線が繋がらない
101 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(空)
[sage]:2012/07/22(日) 12:21:32.74 ID:xAPzXkFro
なんとなく
>>1
の頭の中はゆめにっきみたいになってるんだろうなあと思いました。まる
102 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/22(日) 22:56:44.03 ID:YcliGra7o
俺のアリンコ程度の大きさしかない脳みそじゃ、伏線から謎を読み取ることが出来ないみたいだ
それはそうと今回も相当なシリアスだった。乙
103 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage ]:2012/07/22(日) 23:35:06.80 ID:d0PXHCVI0
シリアス過ぎて頭が痛い
共通点あるにゃあるが…
乙
104 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/23(月) 01:25:12.25 ID:ovsRZX1IO
この中沢君なら、本編1話で質問された「卵の焼き加減」で、どっちでもいいなんて答えそうにないな
乙、まるっ!
105 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/23(月) 04:15:59.41 ID:IOebEGPDO
恐ろしいほどにシリアスすぎて俺のような雑魚には伏線すらわらかねえ!
乙乙まる
106 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2012/07/23(月) 21:47:53.42 ID:6xj/0m730
あれ結局読んでないから今から読んでこよう、どこ置いたっけなあ
シリアス…スープの底になら沈んでるだろうか?
107 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/30(月) 01:07:03.23 ID:d33pewljo
スレのこと素で忘れてました
明日の今頃に投下いたしまするのでご容赦あれ
108 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2012/07/31(火) 00:50:27.79 ID:aKPaN0vd0
わくわく
109 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/31(火) 02:31:50.52 ID:UqGSsQeao
長くなりそうだから二分割で。
ひとまず前半を。
110 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/07/31(火) 02:32:19.21 ID:UqGSsQeao
日の沈む夕暮れ時。
理由も無く悲しくなり、大人の階段を上るような錯覚に陥る時間帯。
それは昼と夜との境界線上の、あいまいな世界。
お日様にさようならを告げ、月と星々にこんばんはを伝えるための準備時間。
美樹さやかにとっても、それは変わらなかったのかもしれない。
「もう演奏は諦めろってさ。先生から直々に言われたよ。現代の医学じゃ、無理だって」
黄昏色に染まる病室で、彼女はきっと、そんな内容の言葉を告げられたはずだ。
恋する乙女が夢に見る、楽しくて明るいお日様のお時間にさようなら。
絶望と現実が蹂躙する、苦しくて暗い月と星々のお時間にこんばんは。
「僕の手はもう二度と動かない。奇跡か、魔法でもない限り治らない……!」
そんな言葉を聞いてしまったから。
だから彼女は思ってしまったのだろう。
夜は嫌だ。
昼が良い。
お日様が良い。明るいのが良い。悲しくならないのが良い。子供でいるのが良い。
好きな人が辛そうにしないのが良い。好きな人が笑顔でいるのが良い。
自分が――幸せでいるのが良い、と
ゆえに、彼女は口にしてしまう。おそらくは、ほとんど反射的に。
「あるよ」
なぜなら彼女には。
「奇跡も、魔法も――あるんだよ」
条理を覆してでも叶えたい望みが、あったのだから。
111 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:32:57.21 ID:UqGSsQeao
5697
そんな白昼夢を見ていたんです。
見ていたかったんです。
もっと見させて欲しかったんです。だって、
さやか「というわけで恭介ぺろぺろしにいこうよ!!!」
まどか「ああ、そういえば上条くんと最近会ってないもんね」
さやか「でしょでしょ? もうあたし的にはぺろり度がぺろるターン起こしてぺろフィナーレああぺろぺろぺろ……」
まどか「そのぺろり精神、超ジャージ部魂だよ! まるっ!」
ほむら「現実なんてこんな物よね……」
上条恭介のお見舞いに行くさやかに同行している私は、無意識の内に深いため息を吐いていた。
そんな様子に疑問を抱いてか、舌を高速回転させるさやかの隣にいたまどかが私に歩幅を合わせてくれた。
まどか「どうしたの?」
ほむら「ええ、ちょっと……現実と理想(妄想)のギャップに戸惑っていただけよ」
まどか「難しいことは分からないけど、あんまり一人で悩んじゃだめだよ? 何かあったら相談してね?」
天使のような言葉に、私は表面上は静かに頷き、だが心の中では盛大に大粒の涙を流していた。
なんて良い子なんだろう……!
まどか「それから今度鴨川の良い所いっぱい案内してあげるね! おらが丼おいしいよ! まるっ!」
鴨川コンプレックスと変な口癖さえなければ!
ああ惜しい!惜しいなぁ!どうしてかなぁ!
112 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:33:39.33 ID:UqGSsQeao
頭を抱えたくなる衝動を堪えながら、すぐ左隣で全長800メートル以上の『流しラーメン』をしている中沢を見た。
ずっと抱いていた疑問――ではなく、最近抱いた疑問を何気なく口にする。
ほむら「そういえば以前あなたに似た友人に『マアト』が創作上のお菓子だって言われた気がしたのだけれど」
中沢「うん?」 ズルズル
ほむら「考えてみたら昔の私に友達なんていなかったわ。あれはどういうことかしら」
尋ねてから、中沢が理由を知っているわけがないことに気付く。
自分の愚かさに呆れ、すぐになんでもないと言おうとする。
だがそれよりもはやく中沢は口を開いた。
中沢「いくらここでもお前の過去に干渉は出来ないからなぁ。俺は矛盾の寄せ集めのWPDだし」
ほむら「……え?」
中沢「それにあんだけやったら嫌でもデジャブるんじゃね? まぁ良い兆候だと思うよ」
ほむら「あの、つまりどういうこと?」
中沢「流しラーメンは、正直あんまりおいしくない」
ほむら「だったらやめればいいじゃない……」
中沢「流しそうめんはこの前やったからな」
もうだめねこのひと。
113 :
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(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:34:06.81 ID:UqGSsQeao
ほむら「そういえば、美樹さやか。一つ聞いてもいいかしら」
さやか「なにペロ?」
ほむら「(イラッ)……あなた、いつの間に上条恭介と仲良くなったの?」
さやか「え? あたしは昔から恭介とは仲いいよ?」
ほむら「そうじゃなくて、その、ペ……ぺロペロ……できるくらい仲良くなったの?」
ぺろぺろ。ペロペロ。
単純な擬音ながら、口に出すのは偉い恥ずかしかった。
さやか「えー? うーん、いつからだろー」
まどか「わたしがさやかちゃんと知り合った時にはもうぺろぺろしてたよね?」
さやか「あーそーかも。たぶんまどかと会った時くらいからぺろぺろってたぺろ!」
ほむら「そう……」
まどかと会った時期。
その前後に、彼女は自分の想いを(ややエスカレートさせて)上条恭介にぶつけるようになったという。
もしかすると、これはなにか重大なヒントなのだろうか?
彼女の想いがそこまで変化した理由。それによって叶えられた願い。
そして確実に変わったであろう上条恭介との関係。
とにかく、上条恭介から話を聞こう。
もしかするとこのぱるぷんて状態の世界から抜け出せる手がかりが見つかるかもしれない。
114 :
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(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:34:53.67 ID:UqGSsQeao
そんなこんなで、私達は見滝原市のとある工業地帯にやってきた。
上条恭介に会うために。
……どうして、などという疑問は抱かない。疲れたので。
ほむら「それで、上条恭介はどこにいるのかしら」
まどか「えっと……あ、ほらあそこだよ!」
まどかがびしっと指差す。
確かにその指の先にある場所に上条恭介は居た。
見滝原中学の制服を着ていて、左手は……包帯がされていないので、治っているらしい。
彼は現場にいる作業員の何人かと話し合っているようだった。なぜ?
さやか「おーい恭介ー!」
さやかが呼ぶと、彼は作業員との話を中断してすぐにこちらまで駆け寄ってきた。
あら意外、というかずいぶん元気。
確か足はまだ治っていなかったはずだが……
恭介「やぁさやか! どうしたんだい?」
口調も普通。真面目すぎるくらいだ。
これはひょっとすると……まともな部類の人間?
115 :
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(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:35:20.32 ID:UqGSsQeao
さやか「たまには恭介の演奏が聴きたいなーなんて思っちゃって。だめかな?」
恭介「ダメなわけないじゃないか! 他ならぬさやかの頼みだしね。ここでいいのかい?」
さやか「うんおっけーおっけー」
ほむら「え? ここにヴァイオリンあるの?」
まどか「あはは、ほむらちゃんったらもう。上条君の左手が楽器でしょ?」
……左手が楽器?
あまり聞きなれない――というか予想外な答えに、私は思わず首をかしげた。
さやか「できればオーケストラ形式のアヴェ・マリアが良いなー」
恭介「お安いごようだよ。ちょっと待っててね」
そう言うと、上条恭介は左手を真っ直ぐ上に向かって掲げて見せた。
そして次の瞬間、上条恭介の左手の甲がぱかっと二つに割れた。
上条恭介の左手の甲がぱかっと二つに割れた。
116 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:35:49.26 ID:UqGSsQeao
ここであらかじめ説明しておきたいのだが、私は別に怪しいクスリなんて使ってはいない。
現実逃避する癖はあるが幻覚は見ないし、視覚も正常。精神状態もきわめて良好だ。
頭がおかしいなんてことはないし、ヘンなフィルターや魔法を掛けられたなんてこともない。
その上で、もう一度私は、目の前で起こったその現象を言葉にしてみようと思う。
上条恭介の左手の甲がぱかっと二つに割れた。
そりゃもう、ぱかっと。ぱっくんフラワーが口を開けるかのようにぱっくりと、否ぱかっと。
そして中から六本ほどのロボットアーム――おそらく金属製――が飛び出してきた。
六本のアームは互いの先端を弄り始め、どこからか持ってきた金属をくっつけてさらに数を増やし始める。
六本が十二本になり、十二本が二十四本になり、二十四本が四十八本に、そしてそれがさらに……。
そうやって三桁近くまで増殖したアームは、今度は何本かのアームを集中的に改造し始めた。
そして、瞬く間にその何本かのアームの先端が改造される。
あるアームはどこからか持ってきた木を使用したヴァイオリンの本体に。
あるアームはそのヴァイオリンに見合う立派な弓に。
またあるアームは巨大なグランドピアノに。
またあるアームは荘厳な音を奏でるパイプオルガンに。
あるアームはトランペットに、あるアームはチェロに、あるアームはタンバリンに、あるアームはピッコロに。
あるアームはトライアングルに、あるアームはクラリネットに、あるアームはカスタネットに、あるアームはシンバルに。
あるアームは指揮棒に、あるアームは楽譜に、あるアームはフルートに、あるアームはオーボエに。
あるアームはトロンボーンに、あるアームはホルンに、あるアームはファゴットに、あるアームはヴィオラに。
その他私の知らない多種多様な楽器が、上条恭介の左手の甲から生える数十本のロボットアームに接続されている。
調べてみると、上条恭介の左手からロボットアームの一番端まで実に30メートル以上あった。
なんだこれ。
なんだこれ?
117 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:36:21.64 ID:UqGSsQeao
さやか「はぁ……何度見ても恭介の『二○型一〇機械腕式楽団兼衛星砲』楽団形態の展開シーンは最高だよねぇ……」
まどか「超ジャージ部魂だね! まるっ!」
ほむら「むしろ機械魂じゃない?」
そして始まる、オーケストラ(?)
はい、正直に告白します。
私は上条恭介の左手から伸びる数十メートル規模のロボットアームとその楽器が奏でる響きに、心を奪われました。
この美しい音色があれば、この世から絶望は消えてしまうだろうとさえ思いました。
曲はいたって普通のアヴェ・マリア。美樹さやかの好きな曲。
だけど今日、私達の耳に届くのは至高のアヴェ・マリア。世界に一つだけの旋律。
神融奏であり親友奏でありFOR MY BEST FRIENDSなのだ。
人の闘争本能を抑え込み、心に負った傷を癒し、闇を消し去る銀の剣にも似た鋭さがある。
けれどもそれは決して傷つけない。鋭くとも、それは全てを受け入れる優しさが込められている。
だから自分も受け入れなければならない。
研ぎ澄まされた、刃の美しい――その切っ先に良く似た、彼の心を。
ああ、全てを認め、一つになろう。それが救いなのだ。彼こそは現世に舞い降りた救世主(メシア)なり。
上条恭介を信じよう。上条恭介を称えよう。上条恭介を崇めよう。上条恭介を敬おう。
上条恭介こそが希望。上条恭介こそが真理。上条恭介こそが救済。上条恭介こそが正義。
上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。
上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。
上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。
上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。
上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。
上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。上条恭介万歳。
我に光あれ。
世界に救いあれ。
そして彼に総てあれ。
彼こそは――この原罪に汚れた世界を導く救世主(クライスト)なり。
118 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:36:48.50 ID:UqGSsQeao
――そんな時、私の鼻腔をスパイスの香りがかすかにくすぐった。
ほむら「――――はっ!?」
それがきっかけで我に返る。
いけない。
何か危ないものが見えていた。
隣を見ると、私同様になんとか気を取り戻したらしいまどかがなぜかジャージのチャックを上げたり下ろしたりしている。
今度はスクワット始めた。なぜかうさぎ飛びまでし始めた。。
その隣では美樹さやかが――いや、何も見なかったことにしておこう。
しゃちほこが涙流しながら身投げするくらい背筋を異様な角度に曲げて痙攣して全身から変な液体を出していたなんて――
とてもじゃないが、私には言葉にすることが出来ない。
中沢「良い曲だな、今の。音も良かった」 グツグツ
ほむら「中沢……それは何?」
中沢「ああ、インド式刺身カレーだよ。知り合いのハッサンってやつが教えてくれたんだ。食うか?」
ほむら「いらないわ。あなたは今のを聴いても平気なの?」
中沢「もう五千回くらい聴いたからな」
なんなのこいつ。
なんなのこいつ……気色悪いわ。
119 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:37:14.63 ID:UqGSsQeao
恭介「ふぅ……これで良かったのかい?」
さやか「サイッコーにCoolだよ恭介の旦那ァ! もうあたし頭の中がとろとろになりそうだよひうひひひ!!!」
なってる。
なってるわよもう。
まどか「でも本当にすごいね、上条くん」
まどかの言葉に、私は確かに、と目を細めた。
上条恭介を崇め敬う同好会なんて、ネタだと思っていたけれど、あながち馬鹿にはできないのかもしれない。
うんうん、と頷いていると、突然私の足元からずぼっと翠色の何かが出てきた。
仁美「素晴らしい演奏ですわね……」 ググッ
ほむら「ひぃ!? じ、地面から志筑仁美が!?」
驚くどころか腰を抜かして地面に尻餅着いてしまった私をよそに、彼女はにょきにょきと地面から這い出てきた。
仁美「土×バクテリアの絡みを観察していたらついこんナところに。申し訳ありませんわ」
まどか「あははっ、仁美ちゃんはうっかりさんだなぁ! まるっ!」
もうやだこの世界。
仁美「観察の結果ですが……土はバクテリア無しでも生きていけますが、
土中のバクテリアは土がないと生きてはいけない事実に至りましたわ。
つまり土の方が優位にあるわけなのですがバクテリアに依存しない土はバクテリアの攻めを受け止めるでしょう。
ならばバクテリア×土ではないか、という考えもないわけではございませんが……
それでも主導権は土にあるわけですからお姉さん主導のおねショタのように余裕のある土×バクテリアが最強かと
もちろんバクテリア無しでは土の栄養はさもしいものになりますので、立場逆転のバクテリア×土なんかもありでは!?」
やだなぁ……この世界……
と、私がため息を吐いた瞬間。
世界は、塗り替えられた。
120 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:38:20.27 ID:UqGSsQeao
――仕方が無かったのだ。
違う。それは逃げだ。素直に認めよう。私は、またもや完全に油断していた。
いや、それは正しくない。何が起きてもおかしくないこの世界でも、絶対に起こらないことがあると信じていた。
それは――なにもかもを絶望に叩き伏せる、無力の象徴が現れること。
それだけはないと、心の中で思っていた。
だから――私は、自分の不幸と愚かさを呪った。
ほむら「どうして……ここに、この時間に、現れるの!?」
気付けば、先ほどまでの青空は消え失せて、暗雲がどこまでもどこまでも広がっている。
そして目の前、工業地帯の中心では、巨大な竜巻と見間違えるような猛烈な突風が吹き荒れていた。
さやか「なによあれ……なんでこんなことに?」
まどか「あれってもしかして……魔女なの?」
そこにあるのは、最強の存在。
舞台装置にして最悪の魔女。
ワルプルギスの夜が、降臨していた。
私の世界を幾度となく蹂躙した魔女は、この世界でも当然のように姿を現した。
全ての筋書きをぶち壊して。全ての希望を打ち砕いて。
私は地面に膝を下ろして、ただ呆然とその巨大な姿を見上げることしか出来なかった。
121 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:39:27.53 ID:UqGSsQeao
恭介「さやか、なにがどうしたんだい?」
上条恭介が、わずかに声を震わせて尋ねる。
さやか「恭介……実は私、魔法少女で……それで、いま、すっごい強いのが現れて……」
まるで説明になっていない説明を聞いて、しかし恭介は分かった、と大きく頷いた。
恭介「……僕には、ただ凄い竜巻が現れたようにしか見えないけど」
そして左手を天に向けて構えながら、その瞳を勇気で爛々と輝かせる。
恭介「――――どうやら、コイツの封印を解く時が来たようだね」
えっ
ちょっ
えっ?
122 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/07/31(火) 02:44:28.84 ID:UqGSsQeao
今回の投下作業はここまで――まるっ!
今回はまじめに、ちょっとシリアスが多めですね。
演奏シーンなんか特にシリアス。それじゃつまらないのでなんとなくワルプルも出演。
次回の投下が終わったら、いよいよ杏子ちゃんと一緒に学ぶ水商売です。スレタイ回収しないと怒られるのでスレタイもついでに回収します。
次回の投下は気が向いたら明日の夜、もうちょっと早い時間帯を予定。あくまで予定。
123 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/31(火) 03:11:51.87 ID:VL2Gk1pno
乙!
恭介の演奏シーンとか中沢の800m級流しラーメンとか壮絶だった。
さやかのペロペロとか恐ろしいシリアス度
だけど、ワルプル登場のギャグシーン必要だった?
……あれ、なんか間違えてる気が
124 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/31(火) 05:17:11.71 ID:Wan7NMIlo
乙
125 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/31(火) 08:24:40.94 ID:Cg25BmPDO
エキセントリックでシリアスな展開だぜ…
乙。
126 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/07/31(火) 10:42:29.10 ID:hxGwij9S0
乙
さりげなく衛星砲って言ってたもんな…
しかしこの
>>1
はすごいな、色んな意味ですごいな
127 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)
[sage]:2012/07/31(火) 12:49:32.98 ID:TCAnb2TAO
完結した後に見返すと、きっと大量の伏線とその回収能力にシャチホコ状態になるんだろうな
128 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2012/07/31(火) 21:02:14.95 ID:y5cgl5Wfo
そして全身から変な液体を流し出すのか…
>>1
、恐ろしい子ッ!
129 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/08/01(水) 06:05:48.72 ID:/FBUFpRDO
シリアスすぎてもうわけがわからん!乙
いやー刺身カレー作る中沢とか超シリアスだったもんな
恭介の音楽なんかヤバいくらいシリアスすぎて言葉にならないし
さやかなんか思わず龍ノ介(?)になるくらいシリアスな恭介の演奏にシリアスになったしすごいシリアス度が高すぎるぜ
仁美も地面から登場なんてビッグシリアスだったし
>>1
のシリアス展開には痺れる!
ワルプルギスなんか恭介の演奏に痺れてシリアスな登場するしもう最高にCoolだぜ
>>1
の旦那ァ!
130 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/08/01(水) 18:29:34.44 ID:JKzaE+QIO
まさかあのハッサンの名をここで見ることになるとはな・・・
131 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鳥取県)
[sage]:2012/08/02(木) 17:11:40.41 ID:KWA7bfo4o
上条恭介万歳の下りどっかでみたことあんな
確か幼女最高的な奴だった気がする
132 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:43:12.92 ID:nZ4YPhH+o
ふ、伏線とか……回収しなくてもいいよね……
なんて弱気な考えは全く抱いていない。本当です。全て回収する。それくらいの気持ちでいく。
投下。
133 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:44:36.23 ID:nZ4YPhH+o
恭介「――どうやらコイツの封印を解く時が来たようだね」
さやか「ダメだよ恭介! それを使ったら恭介の腕は!」
恭介「さやか。僕は君を、守りたいんだ」
まどか「でも上条くん、それじゃあ上条君が……」
仁美「そうですわ! 事情は良く分かりませんが、それの封印を解けばあなたは!」
ほむら「……どうなるの?」
全員がぴたりと動きを止めて、表情を消しながら私の方へ視線を向けてきた。
じろじろ、という擬音が聞こえてきそうなくらい凝視される私。
彼らはたっぷり5秒間視線を送り続けた後、何事も無かったかのように表情を元に戻した。
さやか「ダメだよ恭介!」
ほむら「……あの、どうなるの?」
ふたたび全員がぴたりと止まった。
ほむら「そうね! それの封印を解いたらとんでもないことになってしまうわ!」
さっさと話を進めることにしました。
134 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:45:05.72 ID:nZ4YPhH+o
恭介「さやか。聞いてくれ。僕は今まで、音楽のためだけに生きてきた」
さやか「恭介……ちょっと左腕舐めても良い?」
上条恭介はこくりと頷く。美樹さやかはそれにぺろぺろで応える。
恭介「だけど分かったんだ。それ以上に、もっと大切な物が僕にはあったんだって」
さやか「ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ」
恭介「今頃だけど、でも僕は、それに気付くことができたんだ。だから僕は、もうどうなっても構わない」
さやか「うまい棒たこ焼き味の味がするねぺろぺろ」
恭介「さっき食べてたからね。だから、さやか。お願いだ。僕を信じて、力を貸してくれるかい?」
さやか「……うん」
そう言うと、美樹さやかは彼の右側に立つと、その背に左手を回し、彼の左手に自分の右手を添えた。
さやか「恭介……あなたに、力を」
そして――上条恭介の左腕が、ゆっくりと展開を始めていく。
135 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:45:46.93 ID:nZ4YPhH+o
左手の甲から生えてきた複数のロボットアームが、互いに互いを改造しながら上条恭介の背後に回りこんだ。
そして彼の背中を基軸に、さらに多くの部品や装甲を取り付けて改造を進めていく。
ただの金属板があらゆる金属にも勝る合金になり、
ただのガラス板があらゆるエネルギーを吸収するリフレクターやエネルギーパックへと生まれ変わる。
エネルギーパックが上条恭介の体のあちこちに増設されると、そのまま改造によって溜まった内部熱を放熱。
ぱっと火の粉が巻き上がり、美樹さやかと上条恭介を取り巻くように赤い光が広がっていく。
さらにその背に取り付けられた二対のリフレクターが傾き、アルファベットの『X』の形へと展開された。
仁美「あれは……まさか月面基地に配備された『ゾハル』から発生する流体エネルギーを、
衛星を介して送信し照射されるマイクロウェーブを己の動力源に取り込むためのシステムでは!?」
まどか「『第五六九七軸衛星経由送波機構』……通称『サテライトシステム』!? 完成していたの!?」
QB´「ロイズモイオプロ……あれは人の持つ大罪の輝き! 焦がれの全域に違いない!」
ほむら「あなたはどこから来たの……?」
さやか「――きます!」
確かにきてるね。
色々と。心に
136 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:46:23.86 ID:nZ4YPhH+o
一方その頃。
地球から38万キロメートル離れた月面で、それは閉ざされていた一つの目をゆっくりと開いた。
――要請有り。要請有り。
地球の極東地区、日本国内陸部にて要請有り。
マイクロウェーブの送信要請。理由。ワルプルギスの夜を撃破する為。
審議。否決。否決。否決。
再審要請有り。要請主。不明。却下。エラー。再審要請有り。不明。エラー。再審要請有り。可決。
再審。否決。再審。否決。再審。否決。再審。
可決。
理由。第五六九七軸の暴走。
意図不明。否決。
理由。周囲への因果的矛盾有り。条約により使用は認められない。矛盾有り。否決。エラー。
エラー。エラー。エラー。エrrrrrrr――
――却下。エラーは認められない。
因果的矛盾はWPDで解消可能。対象であるNのWPD値を上昇。矛盾解消。
送信準備。送信先。情報無し。識別信号無し。情報更新。
対象。
『二○型一〇機械腕式楽団兼衛星砲』。
送信準備完了。
――マイクロウェーブ、送信。
137 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:46:53.55 ID:nZ4YPhH+o
ほむら(――なんてドラマが繰り広げられるのかしら……)
そんな妄想を私がしていると、頭上を覆っていた暗雲がばっと晴れた。
月面基地にある太陽炉……ええと、そういうエネルギーが衛星を介して送信されたらしい。
よく見てみると、なにやらレーザーみたいなものが伸びている。
それはいつの間にか魔法少女姿に変身している美樹さやかのソウルジェムに吸い込まれていった。
まどか「あれは……衛星軌道上に存在している人工衛星から放たれた照準用のガイドレーザー!?」
仁美「本当に『アレ』を使うつもりですの!?」
QB´「上条恭介の『二○型一〇機械腕式楽団兼衛星砲』の楽団形態以外の、もう一つの形態を使うつもりなのか!?」
そんなありがたい解説リアクションを頂いていると、唐突に上条恭介の左手が弾け飛んだ。
具体的にはその皮膚が、である。
皮膚が弾け跳び、その中に秘められていた物……巨大な砲身が外気に晒される。
サテライトシステムを使った砲なので、とりあえずサテライトキャノンと呼ぶことにしよう。
仁美「やはりあれは『二○型一〇機械腕式楽団兼衛星砲』の衛星砲形態――サテライトカノンですわ!!」
ああ、カノンなの。惜しい。
138 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:47:24.87 ID:nZ4YPhH+o
まどか「でもあれの充填には最低でも300秒掛かっちゃうよ!?」
ほむら「しょぼいと言うべきか、凄いと言うべきか……」
仁美「きゃああ! 良く分かりませんけどなにか強い風がああー!」
そんな志筑仁美の悲鳴でようやく思い出した。
先ほどまで放置プレイされていたワルプルギスの夜がすぐ目の前まで迫っている。
反応してあげられなくてごめんなさい。
まどか「よし、わたしたちが時間を稼ごう!」
ほむら「え?」
時間停止無しで?
それはいくらなんでも無理でした。
すいません、役立たずで。
??「その必要はないよ!」
――この声は!
139 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:47:51.46 ID:nZ4YPhH+o
私が空を見上げたのと、
空から数十人を超える佐倉杏子が降ってきて、
ワルプルギスの夜となぜかワカメを股間に装着している全裸状態の中沢に衝突したのは殆ど同時だった。
まどか「杏子ちゃん!」
ほむら「そういえば今日の天気は晴れのちワル夜のち杏子だったわね……」
そんな言葉を呟いている間にも、空から降り注ぐ杏子の量はどんどん増していく。
秒単位10人だったのが100人になり、500人、1000人、10000人と加速していく。
杏子「おらおらおらー!」
余談だが、彼女らはみな大気圏スレスレの位置からここまで降下して来ている。
落下の摩擦熱や何やらで燃え尽きず、まったく減速しないであれだけの数の人間が降り注いだ場合、
普通だとこの辺りが更地どころかどこぞの砒素生物が造り出した資源回収用の『べーた』が通り過ぎた後のような、
それはそれは恐ろしいペンペン草すら生えない荒地状態になるはずなのだが。
インディアンの格好をした中沢が衝撃波でずたぼろになるだけで済んでいるのは、奇跡と呼んでもいいかもしれない。
肝心のワルプルギスの夜は……ところどころ凹んでいるものの、いまだ健在。
杏子「ちぃっ、しぶといねぇ!」
あなたのソウルジェムもね。
というかどういう仕組みになってるの?どうして濁らないの?なんなの?というか本体どれ?
??(???)「あとは私に任せて!」
――この声は!
140 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:48:22.48 ID:nZ4YPhH+o
とりあえず心の中でそんな言葉を吐き出していると、ワルプルギスの夜と白衣姿の中沢が眩い閃光に飲み込まれた。
まどか「今のはティロ・フィナーレの光!」
とりあえず発信源を見る。
そこには巨大な銃にも砲にも見える武器を抱えた黄色いリボンが!
まぁ巴マミなんですけれども。
マミ(リボン)「ティロフィナーレ・クァットロ!」
黄色いリボン(巴マミ)は端っこをぷらぷら揺すって同じ武器をさらに三つ造り出した。
この前のバイバイ・ティロフィナーレだ。さすがにあの名前は無いと気付いたらしい。
それはともかく、四つの砲から放たれた炎はワルプルギスの夜と翼の生えた中沢を瞬く間に飲み込んだ。
が、残念。ワルプルギスの夜は今だ健在だ。頑丈過ぎないだろうか。
マミ(リボン)「……どうやらあれの封印を解く時が来たようね!」
ほむら「最後のティロ・フィナーレとかは禁止で」
マミ(リボン)「ええ!?」
ほむら「もちろん『私(リボン)がティロ・フィナーレになることよ』とかもナシで」
マミ(リボン)「しょ、しょんなぁ……」 ジワ
目尻(リボンの右から端っこのちょい手前辺り)に涙? を浮かべる黄色いリボン(巴マミ)。
かわいい。でもリボン。
141 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:48:48.64 ID:nZ4YPhH+o
まどか「―――それじゃあわたしの秘密兵器を開放するしかないみたいだね!」
ほむら「カーット!」
まどか「ええ!?」
ほむら「マイナーなのでカット! ここは見滝原! 鴨川じゃありません! ロボットは禁止!」
まどか「それなら大丈夫だよ。私の秘密兵器は『赤くて大きいジムみたいなもの』だから」
ほむら「なおさらカーット!」
まどか「そんなぁ……」 ウルッ
ほむら「な、泣いてもダメですよ!」
まどか「はぁーい」
ほむら「まったくもう、鹿目さんは……」
仁美「では私の変身ベルトを」
ほむら「カーット!」
なんだろう、今の私、とっても輝いてる気がする。
QB´「なんでもいいけどもういいみてぇだぞ!」
とまぁ、そうこうしている内にサテライトキャ――カノンの充填が済んだようで。
142 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:49:15.35 ID:nZ4YPhH+o
衛星から照射されるマイクロウェーブの光の中で。
見返りを求めぬ真っ直ぐな少女の愛を、少年は受け止めていた。
エネルギーに耐え切れず、だんだんと崩壊を始める左腕の痛みを無視して少年は少女に声を掛ける。
恭介「さやか」
さやか「恭介……」
恭介「側にいてくれ。君と一緒なら……何だって出来る!」
さやか「……うん!」
少年は少女と共にあることを望んだ。
少女はその望みに、満面の笑みと首肯で応えた。
恭介「―――さようなら」
さやか「―――ワルプルギスの夜」
少年の左手から、光が迸る。
それは二人の――否。生を受けた全ての存在の想いを乗せて加速する。
加速し、世界の壁を超え、ありとあらゆる法則を無視して走る。
直後。
光はワルプルギスの夜と板前姿の中沢を飲み込み、そのまま遥か宇宙の彼方まで飛び立っていった。
143 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:49:52.54 ID:nZ4YPhH+o
――結果報告。
サテライトカノンから放たれた光り輝くトラペゾへドロンなるエネルギー物質は、太陽系どころか銀河系を離脱。
そのまま減衰することなく遠く離れたインキュベーターの本星に直撃し、その文化能力と科学技術の大半を奪ったそうです。
これに対しインキュベーター側は遺憾の意を表明するも、すぐにそれを撤回。
上条恭介と美樹さやかの発する愛のエネルギーを利用した宇宙延命計画に着手したそうです。
実は彼女らの働きに感動した彼らが譲歩したという情報もありますが、詳細は不明。
調べる気も起きません。無視しておきます。
なお今回の件は大々的に報道されることになり、美樹さやかと上条恭介は世界的な英雄扱いを受けています。
彼らの働きに対して感動したらしい国連のお偉い方が『絢爛舞踏賞』なる物を授けようとしていたそうです。
でもなぜかそれはまずい世界を抜け出されてしまうと焦った誰かさんの鶴の一声によって中止されました。
誰でしょうね。
え? 口調がおかしい?
――そ、そんなことはないわ。私はいつも通りよ。
ええ。
問題ないわ。
144 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:50:19.57 ID:nZ4YPhH+o
――見滝原病院。
ほむら「――っと、脳内日記はこのくらいにしておきましょうか」
まどか「何か言ったー?」
ほむら「いいえ、なにも。それにしても良かったわね。美樹さやかと上条恭介が無事で」
さやか「恭介のサテライトカノンはおしゃかだけどね……」
恭介「今年の隠し芸大会まで取っておきたかったんだけどなぁ」
さやか「まぁ楽団形態あるし、ね?」
恭介「そうだね。鹿目さんのイデオンガンとの兵器対決が出来ないのは残念だけど……」
まどか「あははっ、じゃあ私はイデさんに頑張ってもらっちゃおっかなー」
マミ(リボン)「あら、それじゃあ私は今度こそ最後のティロ・フィナーレをやってみようかしら」
杏子「そんじゃあアタシはロッソファンタズマで10億人目指してみよっかなー」
ほむら「それだけはやめて……」
145 :
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(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:50:46.70 ID:nZ4YPhH+o
同じベッドで寝ている半裸の上条恭介とシーツに包まっているだけのさやかを取り囲んで談笑するみんな。
そんな輪から逃れると、私は離れた場所で椅子に座っている志筑仁美の下に歩み寄る。
ほむら「混ざらないの?」
仁美「……ええ」
ほむら「どうして?」
仁美「なんとなく、です」
ほむら「どういうことかしら?」
仁美「それが、私にもよく分かりませんの。何か大事な物を失くしてしまったような、そんな気がして頭が一杯で」
ほむら「……いつか、良いことあるわよ」
なんとなく事情を察した私は、彼女の頭を軽く撫でて病室を出た。
いやまぁ、全然察してはいないけれど。
なんとなくそういう雰囲気だったので。
そんなふうに雰囲気に流されていると、視界の端に人影が。
中沢「よう、みんな集まってるみたいだな」
146 :
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(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:51:40.46 ID:nZ4YPhH+o
あの時サテライトカノンに飲み込まれた中沢だ。
視界の隅にいる中沢に似た看護師と中沢に似た医者を見ながら私は眉をひそめた。
ほむら「……生きてたの?」
中沢「おう。中東に再現出したから日本料理を現地民に振舞いながら旅して、今帰ってきたところだよ」
ほむら「移動手段は?」
中沢「知り合いのサーストンって人に教わったリフってのでここまで飛んできた」
そう言いながら、なぜか切りそろえられたスイカを差し出す中沢。
そしてなぜか受け取ってしまう私。
足元を中沢に似た猫と小鳥が歩いていく。
中沢「それにしても凄いもんだな」
ほむら「なにが?」
中沢「美樹の恋愛成就とワルプルギスの夜の早期撃破。因果律が黙っちゃいないよ」
なぜか無精髭を生やした中沢(CV山寺さん。ご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに)がにやりと笑いながら口にする。
中沢「それとも、これも計算の内か? ぱるぷんて状態の世界の神様さん」
古いです、そのネタ。いやそうでもないかな。
そんなことを考えながら、私は――疲労が溜まったせいか――すんなりと意識を手放した。
147 :
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(神奈川県)
[saga]:2012/08/03(金) 00:58:11.61 ID:nZ4YPhH+o
今回の投下作業はここまで――まるっ!
今回はシリアスの皮を被ったままシリアスやってるシリアスでしたね
どうでもいいですけどわたしロボットアニメとかゲームって詳しくないんですよね
そんなことよりいよいよ杏子ちゃんと一緒に学ぶ水商売です。水は命よりも重い……!
>>131
あら、他のスレとネタが被ったのかしら。すいません
148 :
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(愛知県)
[sage]:2012/08/03(金) 01:04:10.90 ID:PufW1djYo
真面目な話、伏線が見えてきた気がする
まあ伏線が本当にあればの話だけど・・・
149 :
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(愛知県)
[sage]:2012/08/03(金) 01:06:00.92 ID:PufW1djYo
おっとこれを言い忘れた
乙!
150 :
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[sage]:2012/08/03(金) 01:08:41.56 ID:tJD4oKICo
乙
151 :
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(岡山県)
[sage]:2012/08/03(金) 01:15:43.40 ID:CFRaERLE0
乙
なんとなくオチが見えてきたな
最後の最後でシリアスに化けるタイプか
152 :
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[sage]:2012/08/03(金) 01:24:25.13 ID:SpP+XnTKo
前回と今回でマミさんとさやかちゃんの謎は分かったけどほとんど詐欺じゃねえかwww
中沢くんとあんこちゃんが分からん
・・・スレタイから察するに黒幕はそういうことなんだろうし次回で怒濤の展開くるなこれ
153 :
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[sage]:2012/08/03(金) 01:45:58.92 ID:KbHVXrbDO
やべぇ…シリアスすぎてどっからどこまでが脳内日記かわかんねえ…
さやかとマミさんも超シリアスすぎて謎が全然わかんねえ
中沢が超ウルトラシリアスすぎてカッコいい
乙
154 :
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[sage]:2012/08/03(金) 06:13:27.43 ID:0BlBEdEPo
投下時点で回収する方法が固まってないネタは
伏線ではなく風呂敷を広げてるだけじゃないかな
そろそろ目が滑ってきた
155 :
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[sage]:2012/08/03(金) 16:10:30.49 ID:R1AJlc4Xo
それこそギャグじゃないかww
156 :
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(兵庫県)
[sage]:2012/08/04(土) 12:24:12.05 ID:IobxyOZEo
中沢の残機数がシリアスかもだ!
157 :
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(京都府)
[sage]:2012/08/15(水) 20:31:53.96 ID:3u5uGRU90
(続きまだ?)
158 :
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[sage]:2012/08/22(水) 09:16:36.47 ID:CvoaO1fDO
(まだかな?)
159 :
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(千葉県)
[sage]:2012/08/29(水) 21:58:42.97 ID:jDVMe7pto
はよ
160 :
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[sage]:2012/09/23(日) 18:20:01.99 ID:Af6n9fdDO
もうすぐで二ヶ月か最近中途半端に書いてそれから逃げる奴増えてきたから困る
そうならないためにも
>>1
はよ
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[ Aramaki★
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