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小鷹「安価で友達作る」 2 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 17:52:25.17 ID:arZspdAto
VIPで書いた奴
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1342248575/

安価少なめかも

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1342342345
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

2 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 17:53:56.15 ID:arZspdAto

過去ログ読むの面倒くせえ!! って人用


【羽瀬川小鷹の友達作りの軌跡】

5月
転校初日にバスジャックをする

自己紹介でハルヒの真似して全力で引かれる

理科室に行って志熊理科と出会う

6月
友達作りをやめてぼっち充を目指す

理科を怒らせて、やっぱり友達が欲しいんだと気付く

理科部設立。部長は理科

三日月夜空が入部する

理科部の活動方針は「道具を使って友達を作る」

理科が超強力媚薬を学校中にばら撒く

学校中で乱交パーティーが起こりそうだったのを、理科と小鷹で正気じゃない先生生徒をボコボコにして止める

小鷹が停学になる

理科が課題を手伝いに小鷹の家に来る



【クラスに広がる羽瀬川小鷹のウワサ】

1「羽瀬川小鷹が転校前からバスジャックした」
2「羽瀬川小鷹が転校初日から一年生に乱暴しようとした」
3「羽瀬川小鷹が幼女に爆弾を投げつけた」
4「羽瀬川小鷹がクスリでトリップして全裸で学校中を走り回った」
5「羽瀬川小鷹か昨日校内に残っていた先生及び生徒を半殺しにした」
3 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 17:58:07.28 ID:arZspdAto

【夕方・羽瀬川家】

それから俺と理科は小鳩の「鉄(くろがね)の死霊術師(ネクロマンサー)」というゲームをやった。
さすがに理科のゲームの腕前は大したものであり、俺はほとんど勝てなかった。
俺も結構小鳩に付き合わされたりしてたから、ちょっとは自信あったんだけどなぁ。

そうこうしている内に。

「ククク、今帰ったぞ我が眷属よ」

俺の妹、羽瀬川小鳩がリビングにやってきた。
その時俺は、理科とゲームの真っ最中なわけで。
二人で仲良さそうに並んでソファーに座っているわけで。


「あんちゃん!!!!!」


小鳩の大声が部屋中に響き渡る。
それに俺も理科も飛び上がる。

「お、おう!? どうした小鳩!」

「あっ、お邪魔してます。えーと、もしかして、妹さん?」

「おう」

「……先輩の妹がこんなに可愛いわけがない」

「し、失礼だな! そりゃ小鳩は俺と違って母親似だけどさ……」

ここで理科は少し驚いた様子で、

「え……も、もしかして先輩……ハーフなんですか?」

「そうだよ。そういや言ってなかったな」

「じゃ、じゃあそのプリン頭も……
 理科、先輩の頭は高校デビューでもしようとして失敗した残念な結果だと思って黙っていたんですけど」

「地毛だ地毛!!」

「アニメじゃ赤髪とか青髪が地毛っていうのは珍しくないですけど、地毛がプリンっていうのは珍しいですね」

「プリン言うな!!」


「あ ん ち ゃ ん !!!!!」


ここでもう一度小鳩が大声をあげる。

「な、なんだよ小鳩」

「あんちゃん今停学中やろっ!! なんで女の人連れ込んどるんじゃ!!」

「……あー」

確かに、考えてみると色々とマズイのかもしれない。
何て言えば納得してくれるかな。

>>4
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/15(日) 18:02:43.30 ID:9yVXPxHAO
理科がいないと(課題が)ダメなんだ
5 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 18:20:23.75 ID:arZspdAto

「理科がいないと(課題が)ダメなんだ」

俺は正直に言うことにした。
実際理系の問題は所々分からない問題もあり、理科がいなかったらかなり厳しかっただろう。

しかし。

小鳩がなんか凄く泣きそうな顔をしている。
理科がなんか凄く嬉しそうな顔をしている。

そして。


「あんちゃんのあほーっ!!!!!」


小鳩は全力でそう叫ぶと、自分の部屋へ走って行ってしまった。

俺はそれにただただ呆然とする。反抗期だろうか。
そして理科は、

「せ、先輩、確かに理科的にはとても嬉しかったですけど、妹さんの前であんなにハッキリ……///」

などと頬を染めている。
意味不明だ。いったい何がどうしたんだ。

「えっと……なぁ理科?」

「は、はい///」

「俺、何か変なこと言ったか?」

「変だなんてとんでもないです! 理科は凄く嬉しかったです……///」

俺は首を傾げる。
そんなに理科が嬉しがるような事を言ったか?

「ち、ちなみに、俺の何の言葉がそんなに嬉しかったんだ?」

「もう先輩、分かってるくせにぃ! 『理科がいないとダメなんだ(キリッ』って言葉ですよ!」

「……あー、そ、それか。まさかそこまで嬉しいとは思わなかった。でも、何で小鳩はあんなに怒ったんだ?」

「そりゃ、大好きなお兄さんが他の女に取られるっていうのは辛いでしょう。先輩の妹さん、なかなかのブラコンですね!」

「はは、俺がお前に取られるってそんな事思ったのかよ。俺はただ『理科がいないと“課題が”ダメだ』って言っただけなのに」

俺はちょっと苦笑する。


「     は!?     」


今度は理科がブチギレた。
一体何なんだ……。
6 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 18:46:41.75 ID:arZspdAto

その後、理科はプンプンと怒って帰ってしまった。
後でちゃんと謝んないとな、何で怒ったのかは分からないけど。

俺はちょっと早めに夕食を作る。
といっても、俺や小鳩の腹が減ったわけではない。

実は俺は、これから聖クロニカ学園の理事長の家へ向かわなければならないのだった。

まぁあれだけの事をして停学ですんだのだ。
普通なら退学……どころか警察沙汰なわけで、さすがにこうやって自宅謹慎だけで済むはずがない。
訪問する先が校長じゃなくて理事長というのが何とも私立の学校っぽい。

元々、理事長と俺の父親は友達らしく、俺と小鳩の編入の件でかなり無理を言ったらしい。
いつかお礼を言いに行かないとな、などと考えていたので、こんな形で恩を仇で返す事になったのはかなり心苦しい。

とにかく、心の底から謝りたい。


「小鳩ー、夕飯作っておいたからレンジで温めて食えよー?」

俺は二階に居る小鳩にそう伝える。
返事は返ってこない。やはりまだ怒っているようだ。

帰ったら小鳩にも謝らないとな、と思いながら俺は家を出た。


***


普段通学に使っているバスに乗り、クロニカ学園前を通りすぎて5つ目のバス停で降りる。
そして目の前。
道路を挟んだその先に、草花が生い茂る小高い丘があり、その先に立派な洋館が建っていた。

俺は洋館へ向かう石畳の道路を歩いて登っていく。
私立校の理事長というからある程度は予想していたが、こんな明らかな高級感溢れる場所にいると何とも居心地の悪さを感じてしまう。

10分程歩くと坂が終わり、玄関前に辿り着いた。
目の前には巨大な扉。
その威圧感に俺は思わずゴクリと生唾を飲む。

普通の家でも玄関先に立つと緊張するのに、こんな豪邸の前ともなるともう緊張しすぎて気持ち悪くなってくるくらいだ。

俺はとりあえずチャイムを探す……が、ない。

(の、ノックするのか? で、でもこんなでかい扉ノックしたって気付かれないんじゃ……)



どうする? >>7
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/15(日) 19:04:52.53 ID:9yVXPxHAO
ノックで気付かれないならC4を使う
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/07/15(日) 19:57:46.40 ID:S1Hm6v320
こっちにあったのか
9 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 20:42:51.62 ID:arZspdAto

俺は懐からとあるものを取り出す。
理科の発明品、C4爆弾……のようなオモチャ。
以前に俺がクラスでテロを起こそうと思った時に理科が俺にくれたものだ。

威力こそ大したことないが、音はそれなりに大きい。
だから、これを鳴らせば気が付いてくれるのではないか、と思った。

(……待て待て。俺謝りにここまで来たんだよな? それでいきなりこれって大丈夫なのか?)

そんな事をふと考える、その時。

ガシッ、と何者かに後ろから手首を掴まれた。

「いっ!?」

俺が慌てて振り向いてみると、そこには金髪の美しい女性執事がいた。

「……あまり物騒な真似はしないでください」

「す、すみません、オモチャですこれ!」

俺が慌てて言うと、金髪の執事はゆっくりと俺から離れた。
そして。


「ふん、君は隼人に似て相当やんちゃなようだな」


そんな事を言いながら扉の向こうから現れたのは。
険しい顔をした、着流しの男だった。
歳は30前後だろうか、髪は前髪を後ろに撫で付けて結んだ、いわゆる総髪というもの。

父さんの事も知っているようだし、おそらくこの人が理事長なのだろう。
ちなみに『隼人』というのが俺の父さんの名前だ。羽瀬川隼人。

「よく来た。私は柏崎。聖クロニカ学園の理事長だ。こっちは家令のステラ」

「は、初めまして理事長。羽瀬川小鷹です。えっと、今回はその、本当に……」

「まぁ、話は中でいいだろう。夕食の準備もしている」

「え……ゆ、夕食??」

「なんだ、もしかしてもう済ましてしまったのか?」

「あ、いえ……まだですけど…………」

「そうか、それなら良かった」

俺は少し混乱する。
今回は停学の件で謝りに来たんだよな?
なんだかこれでは、どこかもてなされている様な気もする。

そんな疑問を抱きながら、俺は理事長とステラさんの後について屋敷の中へと入った。
10 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 20:49:21.35 ID:arZspdAto


***


屋敷の中は大体イメージ通りだった。
玄関から入ってすぐ目に入るのは、ザ・豪邸といった感じの大きなホール。
正面には二階へ上がる幅の広い階段。壁面にはいくつものドアやら奥へと伸びる通路の入口がある。

そんな雰囲気に圧倒される俺だったが、ふとトントンという軽い足音が階段の上から聞こえてきた。


「――ふーん、あんたがウワサのヤンキーか」


そう言って階段の上の方からこちらを物珍しげに眺めるのは、金髪碧眼の少女だった。
服装は黒のスカートに白のキャミソール。
おそらくはここの一人娘か何かと思われるが、意外と普通の格好だ。

「え、えっと……初めまして……羽瀬川小鷹、です」

「へぇ、ヤンキーでも挨拶はできるんだ。お礼に踏んであげるわ感謝しなさい」

父親の前でなんて事言ってんだコイツ……と俺は唖然とする。

「星奈、小鷹君は私の客人だ。その態度はやめなさい」

「え、客人? あはは、冗談でしょパパ。
 大人しい学校で悪ぶって暴れて停学くらう、時代遅れの絶滅危惧種ヤンキーが客人??」

酷い言われようだが、暴れて停学くらったのは紛れも無い事実なので何も言い返すことはできない。
もちろん、悪ぶっているつもりなどはないのだが、この髪や目付きから誤解されるのも無理はない。

金髪の少女は、俺が何も言い返さないのをいい事に、さらに口を開く。

「ていうか、一人で勝手に痛い事やってるのは自由だけど、それで他人に迷惑かけるってのはどうなの?
 なんでパパもこんなの退学にしないのかしらね。あとそのプリン頭もマジウケるんですけど。どう見ても染めようとして失敗した醜い――――」


「        星     奈     !  !  !  !  !   」


理事長の怒号が飛んだ。
あまりの大声に、金髪の少女(星奈というらしい)だけでなく、俺までビクッ!! と全身を震わせる。

そして、そんな中微動だにしないステラさんはやはりプロの執事だという感じがする。

星奈はちょっと涙目になっている。
ああ見えて案外打たれ弱いのかもしれない。

「な、なによ……! だって、そいつは…………!!」

「星奈、後で私の部屋に来なさい」

「うぅ……」

「返事は!!!」

「わ、分かったわよぉ…………」

そんな事を言って、星奈は階段を登って行ってしまった。
理事長は俺に申し訳なさそうな目を向ける。

「すまない、小鷹君。娘には後でキツくいっておく」

「あ、いえ……俺も悪いですし…………というより俺が悪いですし」

この様子から、おそらく俺のこの髪の事情も分かっているのだろう。
だから、娘のあの言葉に本気で怒っていたのだ。

まぁ、それでもあの子は少し気の毒な気がする。
この髪を見て、染めるのに失敗したプリン頭という印象を持つのは不思議ではない。
それに、学校での俺の評判を考えれば、あのような言葉をぶつけられるのも仕方ない。
そして今回の停学騒ぎは誤解でも何でもなく俺のせいだ。

そんな感じに気まずくなりながら、俺は案内されるがままに夕食の準備がされているという食堂へとついていった。
11 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 20:51:46.45 ID:arZspdAto


***




食堂のテーブルの上には、刺し身や天ぷらなど豪華な食事が並んでいる。
停学中に理事長の家でこんなものを食べていいのか、などという罪悪感が出てきた。

「本当は君の妹くんも呼ぶべきなのだろうが、まぁ名目上は停学の件に関する話だからな。
 今度、改めて兄妹揃って招待するので、そこは許してほしい」

「い、いえ、そんな!!」

俺は慌ててそう言う。

「ふん、そんなに緊張するな。では、いただくとしようか」

理事長はそう言うと、右手で十字を切って「いただきます」と呟いて箸を取る。
俺も同じように「いただきます」と言って食べ始める。

予想はしていたが、天ぷらも刺身もやはり高級品らしく、明らかに普段食べられないような美味しさだった。

「あ、あの!」

「……なんだね?」

俺は勇気を出して話を切り出す。
ここに来たのはこうしてもてなされるためじゃない。

「この度は、本当に申し訳ありませんでした……。編入の件などでお世話になったというのに、こんな恩を仇で返すような真似をして――」

「……確かに入学シーズンがやっと終わって一息ついた頃に、『うちの息子と娘をそっちの学校に編入させてくれ!』なんて隼人のバカが言ってきた時は頭にきたな。
 まったく、716日間も連絡すら寄越さなかったくせに、いきなりこれだ」

「うっ……すみません…………」

「君が謝ることではない」

……これで終わり?
いやいやいや、そんなわけはない。

「あの、それに停学の件も……」

「なに、分かっているさ。アイツもよくバカやってたからな、君と同レベルかそれ以上の」

「え……?」


「何か、理由があるのだろう? アイツもいつもいつもそうだった」


そう言ってどこか懐かしそうに俺を見る理事長。
その目を見て。
俺は全てを話さなければいけない、そんな事を思った。

しかし、もし話したらどうなる?

今回の件には理科部、そして志熊理科が深く関わっている。
もしも正直に話せば、いくら理科でもその立場はそうとう危ういものになるのではないか。



どうする? >>12
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 20:57:23.69 ID:vKteH/lao
全て話すが全部自分が悪いことにする
13 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 23:23:30.53 ID:arZspdAto


俺は正直に話した。
例の理科の発明のことも、それから起きた事件についても。

理事長はただ黙って聞いていてくれた。
まぁさすがに媚薬の件になると、「び、媚薬!?」などと驚いていたが。

「――だから、俺が悪いんです。確かに実際にモノを作ったのは理科ですけど、提案したのは俺ですから」

「……ふむ、しかし小鷹君も本気で媚薬を作ろうなどと言ったわけではないのだろう?」

「は、はい、ちょっとふざけて……」

何だこの会話。

理事長は腕を組んで少し考え込む。
そして。


「――ふむ、まぁいいだろう」


あっさりとそんな事を言った。

「え、えぇ!?」

「君達も今回の件で十分反省したのは分かる。実は、理科君の方も私に直接出向いて謝ってきたんだ。こちらが心配になる程思いつめた様子でな。
 『自分は何でもしますから、小鷹先輩だけは退学にしないでください』などと言っていたな。全部自分が悪い、とか」

「理科……」

知らなかった。
今日会った時も、そんな様子は微塵も感じなかった。

理事長は満足気に頷く。

「良い後輩ではないか。大切にすることだ。
 それに、まぁ、若さ故の過ちというものはよくある。私も若い頃は隼人と一緒に…………」

そこまで言って理事長は固まる。
何か思い出してはいけないものを思い出してしまったらしい。

「あ、いや、何でもない。とにかく、若者が間違った道を歩んでしまった時は、その道を閉ざさずに導いてやるのが大人だ。
 君は今回の停学が明ければ、いつも通り聖クロニカ学園の生徒だ」

そう言って微笑む理事長に。
俺は深く深く、頭を下げた。
14 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 23:25:50.65 ID:arZspdAto


***



「小鷹君、今日は泊まっていきなさい」

その後父さんとの思い出話を楽しそうに語っていた理事長だったが、急にこんな事を言ってきた。

「えっ、あ、いえ、でも悪いですし……」

「なんだ、やはり君は隼人より人間ができているようだな。だが、気にすることはない。
 それに、20時以降のバスはないぞ」

「はい!?」

俺がそう言ってケータイの時間を確認してみると、ちょうど20時を回ったところだった。
この人……絶対わざとギリギリまで言わなかったんだ…………。

「あー、でも小鳩が、妹が家に居るんで」

「……あぁ、すまない、そうだったな。まったく、父親があれだけフラフラしていると大変だな君も」

「あはは、もう慣れました」

そう言って苦笑いを浮かべる。
まぁ料理なんかは嫌いじゃないから、元々そこまで気にしてはいない。

「それではステラの車で送らせるとしよう」

「かしこまりました」

「ありがとうございます、理事長、ステラさん」


「――だがその前に、少し付き合ってもらうぞ」


そう言って理事長が取り出したのは、高そうなワイン。
おいこれはもしかして…………。

「よし、では私の部屋へ行くぞ。安心しなさい、そう遅くまでは引き止めないさ」

そんな理事長に逆らえるはずもなく。
俺は顔を引きつらせながらついて行くしかない。

そんな俺に、ステラさんが後ろから耳打ちをする。

「大丈夫です、旦那様は下戸ですから」

「そんな事はない!!!」

聞こえていたのか、理事長はムキになって言い返した。
15 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 23:33:36.18 ID:arZspdAto



***




理事長の部屋は、なんていうか、やはり凄かった。
カーペットやソファーのフカフカ具合なんかは半端ないし、ベッドも天蓋付きという俺も初めて見るようなものだった。

そんな部屋の中央で、俺は対面に居る理事長にワインを注いでもらっている。
どうしてこうなった。

「あ、ありがとうございます」

「ふん、どうせ君も隼人やアイリさんと同じくざるなのだろう?」

「ま、まぁ……」

学園の理事長の前で未成年飲酒を認めるのはアレな気がするが、そもそもその理事長本人が酒を進めてくるので素直に白状する。
酒はよく父さんに付き合わされ、自分が結構飲めるというのも分かっている。

「若い頃は勤勉で真面目な学生だった私を、こうやって酒に付き合わせたのは隼人だ。だから、君も付き合いなさい」

なんだかムチャクチャな事を言われている気がするが、反論しても仕方ないので苦笑いを浮かべるしかない。

その間に、理事長は自分のグラスのワインを一気に飲み干す。

「ワインはキリストの血。例え未成年でもバチは当たるまい」

キリスト万能だな。

いつまでも口にしないのも失礼なので、俺も一口飲んでみる。

「あ、おいしい」

「だろう? なにせ高いからな」

キリストの血にも高いのと安いのがあるんだな。
たぶん動脈の綺麗な血は高くて静脈の汚い血は安いのだろう、などと意味の分からない事を考える。

俺は理事長の真似をして、次は一気に飲み干す。

「いい呑みっぷりだ。どんどん呑みなさい」

「あはは、それどう考えても教育者のセリフじゃないですって」

理事長も楽しげに小さく笑うと、再び一口で飲み干す。

俺もこうして大人と二人で飲んでいると、父さんのことを思い出す。
グラスの中のワインを少し回しながら、俺はしみじみと口を開く。

「でも、たぶん父さんは、こういうワインの違いとか分からないと思いますよ。アルコールが入っていればいいって人なので」


「ワインはきりしゅとのち!!!」


「……はい?」

驚いて顔を上げると。


そこには顔を真っ赤にして明らかに完成してしまった理事長がいた。
16 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 23:34:05.30 ID:arZspdAto

あの、キリストの名前が言えていませんが、これはキリスト系のミッションスクールの理事長的にありなんでしょうか。

「そうじぇ……きりーしゅとぉ…………」

これは酷い。
確かにステラさんは下戸だと言っていたが、まさかここまでとは思わなかった。
まぁ、酒に弱くても好きな人は結構いたりするけど。
考え方を変えれば、少ない量で酔えるのだから経済的ではあるのだろう。
この人の場合はそんな事関係ないだろうが。

そしてそれからは何かをモゴモゴ言っていた理事長だったが。
ついにはその言葉もただの寝息へと変わっていた。

「……どうすんだこれ」

とりあえずステラさんを呼ばないとな、とソファーから立ち上がる俺だったが。


「ぱ、パパ……? あの、来たけど……」


扉の向こうからそんな声が聞こえてきた。
この声は確か……理事長の一人娘の星奈、だっただろうか。
そういえば、怒られて部屋に呼ばれてたな。だからこんなに声が震えているのか。

「パパ? 入るわよ」

ガチャ、と扉を開けて入ってくる星奈。

彼女はまずテーブルに突っ伏している理事長を見る。
そして、今まさに立ち上がったところの俺を見る。

少しの間、部屋に沈黙が続く。
そして。

「ひっ!!」

「ひ?」


「人殺しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」


何やら物騒な事を叫んだ。

「は、はぁ!?」

「パパ!! パパァァ!!!」

星奈は俺を完全無視して、泣きながら理事長を揺さぶる。
おーい。

「いや、その人は……」

「黙りなさいこの殺人鬼!!!」

ひ、ひでえ……。
確かに今まで不良やらなんやら色んな事を言われてきたが、殺人鬼とまで言われた経験はなかった。

「ち、ちげえって!! よく見ろ!!」

「ひっ、わ、私も殺すの!? パパの様に私も!!!」

「話を聞けえええええええ!!!」

どうやら俺の顔が恐ろしかったらしく、相当怯えた様子の星奈。
ていうか、笑っても怒っても普通にしてても恐ろしいってんならどうすればいいんだよ。

それにしても、これだけの騒ぎなのに理事長は起きない。
まぁ、その内ステラさんが来てくれるとは思うけど、それまで星奈をパニック状態にさせておくのもなんかなぁ……。



どうする? >>17
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/15(日) 23:36:29.56 ID:9yVXPxHAO
理科にメール実況
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/07/15(日) 23:40:10.62 ID:4xazBINa0
というか、何で死んでると思ったし
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/15(日) 23:41:42.91 ID:S1Hm6v32o
この小鷹は全校生徒半殺しにした小鷹さんだから仕方ない
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/07/15(日) 23:42:12.35 ID:4xazBINa0
>>19
納得
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 23:46:08.05 ID:WBQZ7gI90
前科持ちは大変だな
22 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/15(日) 23:55:33.28 ID:arZspdAto

「そ、そうだ理科に相談しよう……って俺アイツの連絡先知らねえ…………」

そんなこんなで、ステラさんが到着するまで星奈は錯乱したままだった。



***



それから一週間で俺の停学はとけた。
一週間ぶりに登校して教室に入ると、もうこれ以上にない程にみんなが俺を恐れているのが分かる。
まぁ無理もないだろうが。

チラッと夜空の方を見てみると見事に目が合ったが、すぐに逸らされてしまった。
……まさか、夜空にまで怖がられたのか?

それは他の生徒と比べると何倍もキツイ。


そしてなぜか、クラスには「羽瀬川小鷹が理事長を毒殺しようとした」などという噂が流れていた。



***



放課後。
これから部活だが、俺は少し悩む。
もちろん、部活に行こうかどうかではない。

夜空と一緒に行くかどうか、だ。

別に無理して一緒に行く必要もないとは思うが、こうして教室でよそよそしくして部活で一緒になるというのも何だか気まずい。
だが、今朝の様子を見ると、もしかしたら俺のことを怖がっているという恐れもある。



どうする? >>23
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 23:56:28.93 ID:nu3dqe2SO
サボってどっかいこーっと♪
24 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 00:02:42.91 ID:CZnO16LJo

……だが待て。
俺はいつも通りに部活に行ってもいいのだろうか?

今の俺の評判が過去最悪だというのは、周りの様子からも明らかだ。
そんな俺が部活に行って、理科や夜空にまで悪影響を及ぼす可能性はないだろうか?

「…………」

なんか、一気に気まずくなってきた。
とりあえず俺は、真っ直ぐ部活には行かずにどこか他の場所に行ってみることにした。


どこに行く? >>25
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/16(月) 00:03:46.17 ID:G+SOiW/po
理科のスカートの中
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/07/16(月) 00:08:52.61 ID:14/+IZfE0
>>25
直行じゃねえかwwww
27 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 00:20:32.46 ID:CZnO16LJo


「理科あああああああああああ!!!」


結局いつも通りに、俺は理科のスカートの中へと突撃し、いつも通りにナインライブス・ブレイカーに迎撃される。
どこかに行こうと思った俺だったが、気付けばここ理科室まで来ていた。

「まったく、停学明けでも相変わらずですね先輩」

「お、お前も相変わらずだな……いや、ちょっと威力上がってねえかそれ?」

ボロボロになりながら俺は指摘する。

「例のバイオハザード事件で、少し改良の余地があるかなと思って強化しました!」

「あんな事、もう二度と起こるわけねえだろ。つか、起こしたら今度こそ退学だろ」

そう言って溜息をつく俺。


「まったく、全然懲りてないな貴様らは」


そんな声が後ろから急に聞こえてきて。
俺は思わず全身をビクッと震わせる。

「うおっ、夜空!? お前居たのかよ!!」

「……その反応はやめろ」

何かトラウマでもあるのか、夜空は苦々しげな表情になる。

だが、俺は少し安心する。
どうやら夜空はいつも通りで、停学前と変わらない感じで接してくれている。

理科は俺と夜空を見て、嬉しそうにホワイトボードの前まで歩いて行く。


「――では、今日の活動を始めますよ!! 何か友達作りに役立ちそうな道具のアイデアを出していきましょう!!」




何を作る? >>28
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/07/16(月) 00:22:05.36 ID:14/+IZfE0
簡易型防犯ブザー(クラスの人数分)
29 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 00:44:08.32 ID:CZnO16LJo


「……防犯ブザーなんかはどうだ?」


そう提案したのは夜空だ。

「防犯ブザー?」

「あぁ、今回の半殺し事件で学校は恐怖のどん底に突き落とされている。特に諸悪の根源が居るウチのクラスは酷い」

「…………」

いや、それは分かってるけどさ。
改めて言われると、その、やっぱり凹む。

「だから、少しでも不安を取り除いてやろうという事で防犯ブザーを配るのだ。
 まぁ気休め程度の簡易的なもので構わん。それでもあるだけで大分違うものだ」

「なるほど……友達作りはまずクラスの雰囲気からって事ですか! いい考えです、夜空先輩!」

「……ちょっといいか」

「むっ、どうした小鷹」

俺は一つ気になることがあった。

「それってさ、その諸悪の根源とやらの俺が配っても大丈夫なのか?」

「「…………」」

俺の言葉に夜空と理科が固まる。
そして数秒考えた後。

「知らん」

そんな夜空の答えが返ってきた。
俺はガクッと肩を落とした。

「あっ、でも先輩、これってとりあえず先輩達のクラスの人達に配るんですよね?」

「あぁ、そうだが?」

「どうやって配るんですか? 朝に黒板の前に立って『みんな注目ー!』とかって言うんですか?」

俺は理科の言葉で、夜空がそんな事をしている様子を想像する。
…………誰だお前。

「そ、それは……ほら、朝早くに来て机の中に入れておくとか…………」

「バレタインのチョコですか!! いきなり朝来て防犯ブザーが机の中にあったら不気味ですよ!!」

「う、うむ……」



どうやって配る? >>30
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 00:46:24.47 ID:Cv+MmOcSO
謝罪の意味も込め、それぞれの家のポストに投函
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/16(月) 01:02:15.95 ID:3ae5IwVXo
>>30
それだ!!
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/16(月) 01:43:34.67 ID:G+SOiW/po
この小鷹なら爆弾でも投函されたとか勘違いされてもおかしくない
33 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 02:23:00.15 ID:CZnO16LJo

「そ、そうだ! それぞれの家のポストに投函するというのはどうだ?」

「え、全員分? それってかなり大変じゃ……」

「今回の事件は理科部の責任だ。正しくは私以外の理科部だが。
 だから、そのくらいやっても当然だろう。謝罪の意味も込めてな」

「でも、結局あの事件って小鷹先輩の武勇伝としてしか語られていませんよね。理科部のりの字も出てこないですもん」

理科はどこか申し訳なさそうにそんな事を言う。
とりあえずハッキリ言えるのは、決して武勇伝ではないという事だ。

「いや、別にいいだろ。俺は元々評判悪かったし」

「今ではほとんど修復不能な状態になったがな」

「ハッキリ言い過ぎだろ!!」

俺はちょっと泣きそうに泣きながら言う。

「まぁとにかく、これは理科部で作りましたとか何とか書いて、それぞれのポストに投函。それでいいだろう」

「分かりました。それでは理科は今から全員分の住所調べますね」

「そんな簡単に分かんのかよ……」

「ふっ、この程度理科にとっては造作も無いことですよ! オナニーしながらでもできます」

「この変態が!!!」

夜空は顔を真っ赤にして叫んだ。



***



次の日の朝。
俺が登校すると、クラスは防犯ブザーの話で持ちきりだった。

「理科部が作ってくれたんだって」

「へぇー、そんな部活あったんだ」

「でもこういうのって嬉しいよね!」

「うん、ちょっと安心するかも」

どうやら中々好評のようだ。
俺は思わず口がニヤけそうになり、モニュモニュと抑える。
あー、たまに夜空が口をモニュモニュするのは、ニヤけるのを抑えてるのかもな、なんて事にもふと気が付く。

あと、あの事件の原因も理科部だと分かったら、この反応も大分変わってきそうだが、そこは気にしないでおく。

「そういえば、理科部って三日月さんが入ってるんじゃなかったっけ?」

「えっ、そうなの?」

「そういえば、この前クラスの子が放課後に理科室に入って行くのを見たって」

そんな声が聞こえたかと思うと、あからさまに夜空の肩がビクッと震える。
そして何故か助けを求めるかのようにこちらを見てくる。俺にどうしろってんだ。
34 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 02:28:38.49 ID:CZnO16LJo


「ね、ねぇ三日月さん!」


クラスの子の一人。
女子の中でもかなり目立つ方の女子が夜空に話しかける。


「ひゃ、ひゃい!!」


あっ、噛んだ。
その女子はそんな夜空に驚きつつも、何事もなかったかのように続ける。いい子だ。

「えっと……三日月さんって、理科部なの?」

「あ、あぁ」

「そっか!! これありがとね、すっごく心強い!!」

「い、いや、でも簡易的なものだし……」

「十分だって! それに気持ちだけでもすっごく嬉しいし!」

「ぶ、部活で決めたことだから……」

顔を真っ赤にしてしどろもどろになっている夜空を見て、俺は微笑ましく思った。
そうだ、こうやってクラスと関わりを持っていけば、いずれ友達もできるはずだ。
そういう意味で、夜空発案の今回の活動は大成功だったと言える。

周りからは、

「三日月って、結構良い奴だったんだな……」

「私、三日月さんの事誤解してたかも……」

とか聞こえてくる。
これは大きな前進だ。

(……よし)

こうなったら俺もこの流れに乗るしかないだろう。
ここで俺も理科部の一員だという事を明かす。
そうすれば、もしかしたら俺の評判もマシになるかもしれない!

そう決心した俺は席を立って、ちょうど近くで防犯ブザーを持って何かを話している男子集団に近づく。
まず落ち着いて。そしてできるだけフレンドリーに。
俺はニコリと笑って話しかける。

「な、なぁ。実は俺も理科――――」

「ひいいいい!!!」


ビー!!!


教室中に防犯ブザーの音が鳴り響いた。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 02:29:46.78 ID:Cv+MmOcSO
……せつないな……
36 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 02:34:13.99 ID:CZnO16LJo

クラスが静まり返った。
視線がこちらに集中する。

……あー、こういう音するんだ。結構でかいんだな。
俺も夜空も実際に鳴らす事はなかったので、音は初めて聞く。

「あっ、ごごごごごめんなさい!!! ちょ、ちょっと、び、びびびビックリしただけだから、そ、そそそそその許してくださいいいいいいいいい!!!!!」

「……い、いや、いいよ。その、気にしなくても」

「お、お金なら、い、いいい今3000円し、しかなくててててて!! あ、あののの、こ、これで、か、かかか勘弁し、ししし……」

「ほ、ホント大丈夫だから。わ、悪かったな驚かせて」

俺はそう言うと、ゆっくりと自分の席へ戻る。
その途中、ショックで足取りがおぼつかなかったのか、他の机にガンッ! と足をぶつけてしまう。

「あ、ごめ――」

「きゃあああああああああああああ!!!」


ビー!!!


「…………」

「ひっ……あっ、ごめんなさい!!! わ、私も、えっと……び、ビックリしちゃって……ッ!!」

「あ、あぁ。こっちこそごめんな、驚かせて……」

「わ、私、ま、まだその、しょ、処女なんで……ゆ、許してください!!!」

「……大丈夫だって、気にしてないよ」

そんなやり取りをして、俺は席に戻った。
先程までの和やかなクラスの雰囲気はどこへやら。
今や、空気は殺伐とし過ぎて、どこか痛いくらいになっていた。


俺はちょっと泣いた。



***



「ど、どうしたんですか小鷹先輩。ジョーみたいに燃え尽きて」

「……あまり触れてやるな理科」

放課後。
俺はいつも通りに理科室に来ていた。
といっても、どうやってここまで来たのかは覚えていない。

何でも、俺がフラフラと屋上へ向かうのを見た夜空が慌てて引きずって来たとか何とか。

理科が、そして夜空までもが哀れんだ目でこちらを見ている。
やめてくれ、余計悲しくなるから。
その時。


コンコンと、ノックの音が聞こえた。
37 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 02:39:59.54 ID:CZnO16LJo


「えっ、も、もしかして入部希望者ですか!?」

「な、なに!?」

理科、そして夜空が慌てて立ち上がる。

「せ、先輩出てください!」

「何を言っている、部長は貴様だろ!」

「でも先輩、クラスで感謝されたんでしょう? 現時点で友達力は先輩がトップです! つまり部のエース!!」

友達力って何だよ……と思ったが突っ込む気力も湧かないのでスルー。

「くっ……し、仕方がないな…………」

友達力という謎の単語が気に入ったのだろうか。
夜空は渋々といった様子でドアの方へと歩いて行き、

ガラガラ!! と開けた。

その向こうに居たのは二人の男子。
見覚えがあると思ったら、俺と夜空と同じクラスの生徒だ。
そして、その内の一人が少し緊張した様子で口を開く。

「あっ、えと、三日月さん。その、俺達も理科部に入りたいなー、なんて思って」

「そ、そうか。じゃあ、にゅ、入部届が必要だな。理科!!」

「は、はい!!」

理科は慌てて立ち上がると、机を開けてガサゴソと漁り始める。
バイブやらローターやら明らかにおかしいものが次々と発掘されるが、やはり突っ込む気力が湧かないのでスルー。

「そ、そうだ、ここで立ち話というのもなんだろう。入って色々見てみるがいい」

夜空はそう言って、男子生徒二人を部屋に招き入れる。


それが間違いだった。


「「ひっ!!!」」

悲鳴がハモる。これはこれで凄い気がする。
視線の先は案の定俺。

俺は慌てて立ち上がる。
せっかくの新入部員だ、ここで怯えさせるわけにはいかない!
俺は焦りながらも、必死にフレンドリーな感じで、


「よ、よォ!! こ、これから、夜露死苦ゥゥ!!!」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」

「殺さないでえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」


――後に残ったのは。
呆然と部屋の入口を見つめる夜空に。
夢中になって机の中を漁っている理科に。
間抜けに立ち上がったまま、まるで授業中に挙手をしているかのように片手を上げている俺だけだった。


「……あっ、ありましたありました!! すみません、恥ずかしながら全然片付いてなくて…………ってあれ?」


理科の声は、虚しく部屋に響いた。


次の日、クラスには「羽瀬川小鷹が防犯ブザーの報復に理科部を襲撃した」という噂が流れていた。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 02:43:31.48 ID:Cv+MmOcSO
泣いたって

いいじゃない

にんげんだもの

こだか
39 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 02:57:38.92 ID:CZnO16LJo

放課後。
未だにこの前の防犯ブザーの件の傷が癒えない俺は、今日も理科室に来ていた。
いつも通り、夜空と理科も居る。

「……で、次はどんな道具出してくれるんだ、りかえもん」

「先輩、後ろを見ても始まりません。あんな事、2秒で切り返してください!」

「2秒はさすがに前向きすぎね?」

「あぁ、もう! いいから次の道具のアイデアを出していくぞ!」


何を作る? >>40
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 03:04:35.03 ID:Cv+MmOcSO
嘘発見器(本音を推察し喋る)
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 03:28:38.43 ID:bbZ4K1oIO
これは酷い

もっとやれ
42 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 11:09:46.59 ID:CZnO16LJo

「では……嘘発見器なんかどうですか?」

そう提案したのは理科だ。

「嘘発見器? 『私達は友達だな?』と聞いて『はい』という答えがウソじゃなくなるまで拷問とかするのか?」

と、夜空が真顔でとんでもない事を言う。

「ち、違いますよ。ほら、先輩方はギャルゲーとかやりませんか?」

「やらん」

「何となく知ってる程度だな……」

確か選択肢を選んで女の子と仲良くなるゲームじゃなかったか。
家にあるゲームは大体が小鳩の趣味なので、そういうものは一切無かったりする。

「ギャルゲーっていうのは、会話の中にいくつかの選択肢が出てきて、どれを選んだかによって好感度が上下する、といったシステムが主流です。
 やはり、現実で誰かと仲良くなるためにも、そういった好感度を上げるのが大切だと思います」

「あ、あのな、あくまでそれはゲームの話だろ?」

「ふむ、しかし実際好感度というものは現実にもあるだろうな。ゲーム程ハッキリはしていないだろうが」

夜空は腕を組んで何やら頷く。

「さすが、夜空先輩。そこで嘘発見器を使って相手の本音を知って、会話を上手く進めるという作戦です!」

「なるほど……確かにありかもしれん」

「……そうか?」

どうにも腑に落ちない俺だったが、結局これでいこうという事で、理科は作り始めてしまった。

そして一時間ほど経った頃。


「完成です!!」

「いやだからはええって!!」


俺も夜空も本を読んでいたが、すぐに突っ込む。
夜空は本から顔を上げると、理科の手元に注目する。

「意外と小さいんだな」

「えぇ、実用性を重視しました」

それは形も大きさも制服のボタンと同じくらいのものだった。

「では、正しく動作するか試験してみますので、夜空先輩協力してもらえませんか?」

「構わないが……何をすればいい?」

「ただ理科の質問に答えてもらえればいいです」

そういうと、理科は嘘発見器を白衣の襟元に止める。
どうやら裏に留め具のようなものが付いているらしい。

「ん、相手につけるのではないのか?」

「はい。これは対面に居る人の脳波を読み取りますので。
 私の質問にウソをついた場合、これが振動する仕組みになっています」

理科はここで言葉を切ると、

「では夜空先輩」


「小鷹先輩の事、好きですか? 嫌いですか?」
43 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 11:48:16.13 ID:CZnO16LJo
「ぶっ!!!」

夜空が一瞬にして真っ赤になる。

「な、ななんな何を言っているのだ貴様は!!!///」

「ですから、試験を……」

「そんな質問である必要がどこにあるのだと聞いているんだ!!」

「普通の質問じゃつまらないでしょう? まぁ、ぶっちゃけその反応を見れば嘘発見器なんかなくても分かりますけど」

「な、……ぁ……、こ、こっちを見るな!!/// わ、私は絶対そんな質問には答えないからな!!!」

そう言うと、夜空はプイッとそっぽを向いてしまった。
その割に、チラチラと俺の様子を伺ったりしていて、なんか忙しそうだ。

「んー、じゃあ質問を変えます」

「そ、そうだ、それでいい」


「夜空先輩は小鷹先輩の事好きですよね?」


「同じじゃないか!!!」

机をバンッ!! と叩く夜空。

「いえ、少し違いますよ。今の質問には『はい』か『いいえ』で答えることができます」

「そ、それがどうした」

「実はこの機械、例え答えなくても『はい』なら無反応、『いいえ』なら振動します。
 今はピクリとも動いていないので、夜空先輩の答えは『はい』だという事です」

「ぁ……がぁ…………!!/// こ、壊れているんだ!! それは失敗品だ、そうに違いない!!!」

「夜空先輩は小鷹先輩の事嫌いですか?」


ブーブーブー!!!
嘘発見器の振動音がこちらにも聞こえてきた。
嘘発見器というか、もはや読心器……とか言った方がいいんじゃないか。


「 こ れ は 罠 だ !!!」

即座に夜空が立ち上がり、ビシッと理科を指差す。
まるで逆転裁判の「異議あり!!」のようだが、その顔はこれ以上にない程に真っ赤になっている。

「理科が私を陥れるために仕組んだ罠!! 何も答えていないのに反応するなんておかしいだろう!! それが罠である証拠!!!」

「どこのキラですか」

「んー、でも、振動音でかすぎねえか? それじゃすぐに相手に気付かれちまうじゃねえか」

「今は試験なので大きく設定しているだけですよ。ていうか、小鷹先輩、なんか冷静すぎませんか?」

「え、なんで?」

「い、いやだって、夜空先輩が小鷹先輩の事好きって言ってるんですよ?」

「言っていない!!!///」

そんな理科や夜空の様子に、俺は首を傾げる。

「……そんな驚くことか?」

「あれ、それじゃ、小鷹先輩は最初から分かっていた……と?」

「ち、違うぞ小鷹!! これはその、えっと…………///」

「いや、知らなかったけどさ。まぁでも――――」


「――俺も夜空のこと好きだし」


理科と夜空が固まった。
44 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 11:50:47.19 ID:CZnO16LJo


「えんだああああああああああああああ…………じゃねえ!!!
 ちょっとどういう事ですか小鷹先輩!! 流れ的には完全に理科√だったじゃないですか!!!」

「は、はい……? √?」

「ち、ちくしょう……どこでフラグ立て忘れたんですか……どこのセーブポイントから始めればいいんですかあああああああ!!!」

何だか意味の分からない事を言いながら絶望に震える理科。
一方夜空はというと。

「こ、ここここここ小鷹? い、いったい、な、なにを、あ、いや、なにこれ、あう…………///」

「お、落ち着け落ち着け」

「こ、これが落ち着いていられるか!!/// き、貴様は、今、その、こ、こく……」

二人の反応に、俺はますます疑問を抱く。
そして。


「――あ、もちろん理科も好きだぞ?」


またしても固まる二人。
やがて理科が口をパクパクさせて、


「ハーレムエンド希望!?」


またわけの分からない単語が出てきた。

「そんな優柔不断は許されませんよ先輩!! 下手したら誠みたいな事にだってなります!!」

「も、もしや貴様は女ならば誰でも良いのか……ッ!?」

「い、いや、んなわけねえだろ!! だって、俺とまともに話してくれんのっていったら、お前らくらいだし……。
 あ、でも家族とかもありなら小鳩とか……そうだ、理事長も良い人だし、好きだぞ」


「……あの、先輩もしかして」


ここで理科が、何か嫌な事でも思いついた顔でこちらを見る。

「そ、その好きっていうのは……人間的な意味で?」

「おう」

「「…………」」

理科と夜空が同時に黙る。
二人共とても冷たい目でこちらを見ている。

「……ど、どうした?」

「いえ、何でも」

「カスが」

ひどい。
45 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 11:53:30.04 ID:CZnO16LJo


***



「……まぁでも確実とは言えないよな、これも」

「どういう事ですか?」

俺の言葉に、理科がキョトンと首を傾げる。

「ほら、例えばさっき理科は夜空に俺の事が好きかどうかっていう質問してたけど」

「う……ぁ……/// だ、だから、そ、それも小鷹と同じような感覚で、人間的に、という意味で……!!」

「分かってる分かってる。けどさ、どのくらい好きか、までは分かんねえだろ?」

「どのくらい……?」

「あぁ、例えば、それこそ恋愛的に溺愛レベルで好きだったとしても――――」

「だから違うと言っているだろ!!!///」

夜空の声が割り込む。

「よ、夜空の事じゃねえって!
 溺愛レベルで好きだとしても、好きか嫌いかと聞かれればどちらかと言えば好き、みたいなレベルで好きだとしても、同じ反応になるだろ?」

「……確かにそうですね」

「だから、そこで妙な誤解が生まれたりもしちまうんじゃねえか? 例えば本人は軽い気持ちで言ったにも関わらず、勝手に重く捉えられて変な空気になったり……」

「「悪かったな!!!」」

「何でそこでキレる!?」

二人の怒声に、俺はビクッと体を震わせる。
夜空は少しの間顔を赤くして俺を睨んでいたが、

「……まぁ小鷹の言っている事はもっともだな。私だって、どうしても……もしも小鷹が好きか嫌いか選ばなければ地球が破滅すると言われた場合、
 百万歩譲って、1ミクロン程好きだという方に傾いている可能性が微小レベルで存在していたから選んだわけだしな」

「……さいですか」

なんだろう、一応は好きと言われているのにこのやるせない気持ちは。

理科は腕を組んで少し考えていたが。

「……まぁせっかく作ったんですし、とりあえず使ってみましょうよ。問題は誰に使うかですけど……」

「そうだな。でも、考えてみれば俺なんかはまともに会話自体できねえから、使いようがなくねえか?」

「ふむ……」


誰に使う? >>46
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/16(月) 11:56:22.50 ID:/g6pvB4d0
星奈
47 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 13:36:24.29 ID:CZnO16LJo


***


結局、適当にその辺の人に使ってみようなどという、無差別で無責任な結論に落ち着いた俺達。
その後三人は一旦解散し、それぞれ誰かと会話してから理科室へ戻って来るという事になった。
考えてみれば、ただでさえコミュ力皆無な俺達が、見ず知らずの人間に話しかけるなんていうのは不可能なんじゃないか。

まぁ、友達作りのためだと思えば、それなりに実のある活動かもしれないが。

そんな事を考えて廊下を歩いていると、向こうから大所帯が現れた。
俺は大人数で楽しげに話している人達とすれ違うのは少し苦手だ。
なんだか自分が惨めになるし、すれ違った後に何か言われるんじゃないかと不安になるからだ。

そうやって、いつも通り俯いてすれ違おうと思った俺だったが、ふとその集団の中に知った顔がある事に気付いた。
金髪碧眼の美少女、理事長の娘である柏崎星奈だ。

そしてよく見るとこの集団、仲良しグループというより、どうやらお姫様とその家来という構図に近い事に気付く。
星奈以外は全員男子であり、それぞれが大人しく彼女の後ろについて歩いている。ある者は、彼女の荷物を持って。

(……はー、さすが理事長の娘)

俺はそんな事を思いながら、まぁここはわざわざ話しかける必要もないな、と何事もなくすれ違うことにする。
嘘発見器のために誰かと会話をしなければいけないのだが、さすがにこの大人数相手というのはハードルが高すぎる。

しかし。

「……げっ」

「「ひっ!!!」」

向こうが俺を見て立ち止まった。
これはかなり珍しい事だ。
俺とすれ違う人は、大体が決して俺と視線を合わせないようにしてすれ違う。
おそらく、後ろの男子達もそうやってやり過ごしたかったのだろう。

だが、星奈は俺を見て明らかに不快感を出して立ち止まった。

そんな星奈に、後ろの男子の一人がビクビクしながら話しかける。

「せ、星奈様。早く行きましょう」

「……あんたら、どっか散りなさい」

「で、ですが星奈様!」

「あたしの言う事が聞けないの? もう二度と踏んであげないわよ?」

どんな脅しだよ。
心の中で突っ込む俺だったが、

「「はい! すみませんでした!!」」

男子達は一斉にそう言うと、それぞれどこかへ走り去ってしまう。
もちろん、俺の横は通らずに、進んできた道を引き返して行ったのだが。
48 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 13:39:26.43 ID:CZnO16LJo

俺は反応に困る。

「……えっと、良かったのか? アイツら」

「えぇ、あれじゃまるで大人数引き連れてないと、あたしがあんたと話せないみたいじゃない。そんな屈辱的な事は許せないわ」

何だか良く分からないが、サシで話したい事があるのだろうか?

「お、俺に話があるのか?」

「えぇ。あのさ、今すぐあたしの視界から消えてくんない?」

「…………はい」

それが言いたかっただけかよ……。
俺はそれなりに凹む。

「ていうかさ、殺人未遂容疑者が何でのうのうとここで生活しているのかしら。早くブタ箱にぶち込んじゃえばいいのに。
 これで空気感染とかして他の生徒まで殺人鬼になったらどうすんのよ。あ、そうだ。あんた、あたしの半径1km圏内では息しないでね」

俺は新型ウイルスか何かか。

――しかし、よく考えてみれば、俺は彼女の父親の学校で問題ばかり起こしている人間だ。
この学園の評判を下げる、いわば父親の顔に泥を塗っていると言ってもいい。
そんな人間に敵意を持つのは至極当然の事ではないか。

「……ごめんなさい」

「うわっ、何話してんのよ。日本語っていうのはあんたみたいなのが口にして良い程腐ったもんじゃないのよ。
 ていうか言語っていう人類の文明の賜物を使う事自体がおこがましいわ。あ、ワンとかニャーもダメね。犬や猫が可哀想だから」

もうやめて! 俺のライフはゼロよ!!

本気で泣きたくなってくる俺だったが、ここである事に気付く。
星奈の足。
いや、別に「ぐへへ、いい足してんなぁ……」みたいな変態的なものではない。

ただ、注意して見てみれば明らかに。


彼女の足は、ブルブルと震えていた。


「…………」

「そうよ、そうやって何も話さないのが正解よ。あ、息もちゃんと止めなさいよ」

「……なぁ」

「だから話すなって言ってんでしょ。耳も腐ってんの? それとも頭? あぁ、どっちもか」

「お前……俺が怖い…………のか?」

「……は、はぁ!? そんなわけないじゃないバッカじゃないの!?」


ブーブーブーと。
ポケットの中にある理科の発明品が振動する。
49 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 13:41:35.72 ID:CZnO16LJo


「何意味分かんない事言ってんだか……あんた、そこら辺にいるアリを怖がったりする? あんたはそれと同レベルの見当違いな事言ってんのよ!!
 あっ、そっか、あんたはアリを怖がっても仕方ないわね。それ以下の下等生物なんだし。死んだハエとかでやっと良い勝負ってとこかしら?」

いや、まぁ虫が苦手な人は普通に怖がると思うけど……。
そんな突っ込みを飲み込んで、俺は少し申し訳なく思えてくる。
俺は今、あれだけ良くしてくれた理事長の娘を怖がらせている。

「……えっと、ごめんな。俺もう行くから…………」

そう言って足早に立ち去ろうとする。
しかし。

「待ちなさいよ!!!」

「……?」

「何勝手に自己完結してんの!? あたしは、あんたなんてこれっぽっちも怖くないんだから!!!」

「そうだな。俺がどうかしてた。ごめん」

「だからその余裕ある態度がムカつくって言ってんのよ!!!!!」

ど、どうしろってんだ……。



どうする? >>50
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 13:42:04.13 ID:FCyFK8iH0
スライディング土下座
51 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 16:05:48.01 ID:CZnO16LJo

そうだ、本当に謝罪の気持ちを表したいなら、土下座しかない。
それもここまできたらただの土下座ではダメだろう。
それなら。

「…………」

「あっ、待ちなさいって言ってんでしょ!!!」

俺は星奈から少し距離を取り。


ズサァァァァァ!!! とスライディング土下座をした。


ぶっちゃけ、膝が熱くてヤバイ。
廊下でやるもんじゃないな、これは。

「なっ……は…………?」

「悪かった」

「……あ、あんた、プライドってもんがないのね。まぁ仕方ないか下等生物だし。
 ていうか、あんたこそあたしが怖いんじゃないの? あたしの権力が!」

「…………」

「はっ、仮にもヤンキーのくせに権力が怖いとか。とんだチキンね。
 あーあ、何であたしこんな奴のために時間と話すための余計な空気を消費してんのかしら。バカらしくなってきたわ」

俺はただ謝りたいだけなのだが、何か言ってさらに怖がらせる事を恐れて何も言わない。
どうやら俺は声も相当恐ろしいらしいからだ。

星奈はまるでゴミでも見るかのように俺を一瞥すると、足早に去って行った。
俺の横は通らずに、元来た道を。



***


俺が華麗なるスライディング土下座を披露した数分後。
俺、理科、夜空の三人は全員理科室に戻ってきていた。

「……で、貴様達は誰かと話してきたのか?」

「あぁ」

「はい」

「なんだとっ!?」

ガタッと大袈裟に驚く夜空。

「理科は先生方とお話しました」

「「先生??」」
52 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 16:07:45.77 ID:CZnO16LJo

「えぇ、先生方は理科のVIP待遇とか色々知っているので、勝手に気を使ってくれて話しやすいんですよ。
 馴れ馴れしすぎるのは苦手ですし」

「お前……いや何でもない」

俺は理科に「お前が言うな」と言おうとしたが、面倒なのでやめておく。
夜空はちょっと唖然とした様子だったが、気を取り直して、

「で、どうだったんだ。嘘発見器の効果は」

「ぶっちゃけ使えないですこれ」

「発案して作った本人がそれ言うか……?」

俺は呆れて言う。

「もう、ブーブー鳴りまくりでしたよ。何とか本音を探ろうとしましたが、良く分かりませんし。大人って黒いですね」

「……あー、まぁ、そうかもな」

ちょっと遠い目をしている理科に、俺は苦笑するしかない。

「そ、それで、小鷹。貴様は本当に会話なんてしたのか? 無理して嘘つかなくてもいいんだぞ?」

「し、したっての」

「へぇ、小鷹先輩と言葉をかわすなんて、その人自暴自棄にでも陥ってたんですか?」

「失礼だなお前!?」

あまりの言い草に俺は叫ぶ。

「普通に……ではないけど、とにかく話したよ」

「もうやめろ小鷹。もう、いいんだ……」

「その哀れみの目はやめろおおおおお!!!」

妙に優しい声色で俺の肩に手を置く夜空。
俺は即座にそれを振り払う。

「でも、誰ですか? その小鷹先輩と会話したという勇者は」

「俺は魔王か。……柏崎星奈って子だよ」


「 な ん だ と !? 」


夜空が大声出して立ち上がった。
53 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 16:10:17.54 ID:CZnO16LJo

「うおっ!? え、もしかして知り合いか?」

「……いや直接面識はない。だが知っている」

「あぁ、まぁ理事長の娘だからな」

「理科も名前だけなら知ってますね」

「私は……あの女が憎くて憎くてたまらない」

夜空はギリギリと歯を鳴らして、女の子がしてはいけないような表情をしている。

「め、面識ないんじゃなかったのかよ?」

「あぁ、ない。だがリア充というのは存在自体が憎い……死ねばいいのに!!」

これはひどい。

「まぁ確かに、この学校でも一、二を争うリア充でしょうね」

「そう、この学校は日高日向と柏崎星奈の双璧だ。二人共いつかこの世から抹消してやる!!」

堂々と殺人予告をする夜空。
間違ってもネット掲示板とかには書かないでほしい。

あと、日高日向という新しい名前も出てきたが、どうせ聞いたところでまた夜空の呪いの言葉が始まるだけだと思ったのでスルーする。

「で、柏崎星奈とはどんな会話をしたのだ裏切り者」

「う、裏切り者って……。えっと、なんかメッチャ怒られた」

「怒られた……あー、そりゃ自分の学校で暴れるヤンキーですもんね」

「あぁ、でもなんか怖がらせちまったみたいで……」

「ふん、いい気味だ。そのままレイプでもしてしまえば良かったのに。
 あ、いや、小鷹はするなよ。他の男を使うとかしてだな…………」

なぜか慌てて言い直す夜空。

「んな事しねえっての……。まぁやっぱり、俺の方もあんまし役に立たなかったな、これ」

「ですよねー。じゃあ夜空先輩は?」

「わ、私かっ!?」

話を振られた夜空はビクッと全身を震わせる。

「私もそうだな……こんなものは必要なかったな。お互いウソなどつかないし」

「えっ、それってもしかして…………友達ですか?」

「あ、あぁ、その通りだ!!」

そう言って胸を張る夜空に、俺と理科は驚く。
54 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 16:14:00.64 ID:CZnO16LJo

「なっ、お、お前が裏切り者じゃねえか! 友達居るくせに!」

「ふん、どうした小鷹。男の嫉妬は醜いぞ」

「うぐぐ……」

「そ、それでどんな方なんですか、夜空先輩の友達って」

理科はびっくりしながらも、興味深そうに聞く。
実のところ、俺も凄く興味がある。
こんなリア充を無差別虐殺したがっている奴の友達とはどんな人なのか。

夜空は、一瞬少し気まずそうにこちらを見たが、気を取り直して、

「な、何を言っているんだ二人共! ここに居るだろう!」

そう言って、自分のすぐ隣りの何もない空間を指差した。

「……え?」

「紹介しよう、私の友達のトモちゃんだ。凄くいい子だから、仲良くしてやってくれ」

「あ、あの、先輩?」

「な、何だ!」

よく見れば、夜空の額からダラダラと冷汗が流れている。

「えっと、理科は幽霊なんていう非科学的なもの信じていないのですが……」

「なっ、失礼な! 幽霊などではない! ちゃんとここに居るのだ!」

「居るって……もしかしてバカには見えないとか言うつもりか?」

「ふん、バカでなくても見えないだろうな」

そんな夜空の言葉に、俺と理科はますます疑問符を浮かべて首を傾げる。
夜空は軽く息を吸い込むと、


「なにせ、トモちゃんは“エア友達”だからだ!」


……なんだそれ。

「ほら、“エアギター”というものがあるだろう? それの友達版だ!」

「「…………」」

たぶん、人生の中で。
これ程までに哀れんだ目をするのは最初で最後だろう。





次の日、再び俺に関する新たな噂が流れていた。
しかし、今回は悪評というわけではなく、今までとは少し変わったものだった。

内容は「理事長の娘、柏崎星奈が羽瀬川小鷹を土下座させ、屈服させた」というものだった。

この噂により、柏崎星奈は救世主として崇められるようになり、羽瀬川小鷹に関する悩みは皆彼女に相談するようになった。
まぁ崇めている生徒は一人残らず“男子”であるようだが。
55 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 16:17:07.86 ID:CZnO16LJo


***




放課後。
俺と理科と夜空がいつも通り、友達作りの道具について話し合っていると。

コンコンと、ノックの音が聞こえてきた。

すかさず全員が立ち上がる。

「ではエース、お願いします」

「あ、あぁ、分かった」

エースという響きが気に入ったのか、夜空は特に抵抗もせずにドアの方へと歩いて行く。
前回の失敗を学んだのか、理科は既に入部届を取り出している。

俺は隠れようかとも思ったが、結局入部すれば毎日顔を合わせることになるので、このままで居ることにした。

ガチャ、とドアが開かれる。


「感謝しなさい、愚民ども!! このあたしが――」


バンッ!! と、即座に閉められた。鍵もかける。
ていうかドアの向こうの人、今絶対顔とかぶつけただろ。凄い音したし。

それにしても、チラッとしか見えなかったが、あの金髪はおそらく――。

「ちょっと何すんのよ! このあたしがせっかく来てあげてんのにこの対応!?
 ていうか、この完璧すぎるあたしの顔に傷を付けるなんて正気!?」

ガンガンガン!! と、ノックというか騒音が鳴り響く。
メチャクチャうるさい。これでは部活どころではない。

夜空は溜息をつくと、再びドアの方へと歩いて行く。

ガチャリ。

「あっ、やっと開けたわね! まったく、このあたし――」


「 リ ア 充 は 死 ね !!!!!」


バタン。
再び全力で閉める夜空。
なんだこれ。
56 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 16:19:31.23 ID:CZnO16LJo

案の定、再びガンガンガンという騒音が鳴り始める。

夜空は額に青筋をビキビキと浮かべて、

「理科、ドアごとあいつを吹き飛ばせる道具を出せ」

そんな物騒な事を言い出した。
しかしその時。

ピタリと騒音が止んだ。

もう諦めたのだろうか?
それとも、夜空の言葉が外にまで聞こえたとか……いや、あれだけうるさくてそれはないか。


「わっ!!」


そんな驚いた声をあげたのは理科だった。
俺と夜空が不思議そうに彼女を見ると、理科はドアの方を指差す。

ドアに付いている窓。

そこにとてつもなく気持ちの悪い何かがへばりついていた。

それを人間の顔だと認識するのは、ちょっと経ってからだった。
たぶん先程の子が、ドアの窓に顔を押し付けて中を伺おうとしているのだろう。

「う、うお……ッ!」

いつも鏡で自分の顔を見ている俺もさすがにビビる。
言ってて悲しくなるけど。

夜空は嫌悪感を全面に出した顔でそれを睨んでいる。

――どうすんだよこれ。



どうする? >>57
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 16:21:05.69 ID:Cv+MmOcSO
窓ガラスごと顔面ぱんち
58 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 17:14:52.63 ID:CZnO16LJo

「…………」

夜空は無言でスタスタとドアに近づいていく。
そして。


「 消 え ろ リ ア 充 !!!!!」


思いっきり窓を殴りつけた。

ガァン!! というでかい音が響き、ドアの向こうの少女……いやもう回りくどい言い方はよそう。
“星奈”は即座にドアから離れた。
痛いなんて事はないと思うが、かなりビックリしたのだろう。

「あ、あたしは理科部を助けてあげようとしてんのに…………ッ!! もう、いいわよ!!!」

そんな事を言って、やっと星奈は諦めた。
理科部を助ける……ってどういう事だ?

「……よし、じゃあアイデアを出していこうか」

何事もなかったかのように戻ってくる夜空。
だが俺はあるものが目に入る。

「おい夜空、大丈夫か?」

「ん、何が……ひゃあ!!!」

俺は夜空の手をとる。
先程思いっきり殴りつけたせいで、彼女の手は赤くなっている。
どんだけ憎かったんだよ……と少し呆れるが、

「一応保健室行った方がいいんじゃねえか?」

「なっ……ぁ……だ、大丈夫だ!」

なぜか顔を赤くする夜空。やっぱり痛いのを我慢しているのではないか。
俺がそんな事を考え、引きずってでも保健室へ行かせるべきか、などと思っていると、

ボカッ!! と、後ろから頭を叩かれた。

「いでっ!!」

「あっ、すみません、右手の魔力が暴走しました」

犯人は理科。元々この部屋には三人しかいないので当たり前だ。
しかも何も悪びれる様子もなく、しれーっとしている。

つか魔力が暴走とかお前はウチの妹か……。
俺の脳裏に、妹の小鳩が同じ様な事を言いながら、嫌いなものが入ったスープをひっくり返して父さんのゲンコツをくらった光景が思い浮かぶ。

「と、とにかく小鷹は心配しすぎだ!」

夜空はそう言うと、俺の手を振り払ってスタスタといつもの自分の椅子に座る。
文句を言いながらも、その表情がどこか嬉しそうなのは気のせいだろう。

理科はそれを少し不満そうに見ていたが、

「……むぅ、まぁいいでしょう。では、今日も友達作りの道具を作りますよ!!」




何を作る? >>59
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 17:17:05.45 ID:FCyFK8iH0
全自動握手機
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 17:18:16.14 ID:Cv+MmOcSO
一部記憶を任意で消せるハンマー
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 17:55:21.48 ID:bbZ4K1oIO
なんだ夜空ルートか
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/16(月) 18:06:18.89 ID:XydgYeJAO
理科ルートだと思ってた……
63 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 19:05:55.50 ID:CZnO16LJo

「あー、握手できる機械ってのはどうだ?」

「なに?」

「ほら、ケンカして握手して友達になるっていうの良くあるだろ? やっぱ友達をつくる上で握手ってのは大事だと思うんだ」

「言われてみれば、確かにそうですね」

「…………」

俺の提案に理科は頷くが、夜空はどこかぼーっとしていた。

「夜空? どうした?」

「ん、あっ、いや何でもない」

「でも先輩、握手できる機械っていうのは、誰かを認識したら自動で手を動かして握手させる機械という事ですか?」

「え、そ、それは……」

考えてみれば、俺とかがいきなり握手なんかすれば相手はどれだけ怯えるか想像もつかない。
おそらく手を握り潰されるとか考えるのではないだろうか。

「さすがにそれは馴れ馴れしすぎるな。まぁ、ここは握手の練習ができる機械とかでいいんじゃないか。いざという時に失敗しないように」

「握手の失敗ってなんだよ……」

「うーん、まっ、それで作ってみましょうか!」


***


「完成です!」

相変わらずの神速で完成した握手の練習用機械。
もう見た瞬間、突っ込みたいところがあった。

「俺達はどんだけマッチョな人と握手する予定があるんだよ……」

「握手したら握り潰されそうだぞ」

とにかく手がゴツい。
ゲームセンターの腕相撲のゲームを想像してくれればいいだろう。

「ふふふ、甘いですね先輩方。これは使用者によって手の大きさを合わせてくれるんですよ」

「マジで?」

「えぇ、ほら」

試しに理科が握手してみると、その手はみるみる縮まり、彼女と同じくらいの小さなものになった。
64 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 19:08:30.55 ID:CZnO16LJo

「すげえ!!」

「さ、さすが天才発明家というだけあるな」

「先輩から褒められるのは気持ちいいですね。それこそオナ」

「言わせねえよ!」

俺は理科が何かを言う前に言葉をかぶせる。
理科は少し不満そうな表情をするが、すぐに気を取り直して、

「それではお二人も試してみます?」

「あぁ、そうだな。それでは私からやってみよう」

夜空は少し緊張した面持ちで機械の前に立つ。
そしてそろそろと手を差し出すと、なんと機械の方から夜空の手を取った。

「なっ、向こうから握ってくるのか?」

「はい、センサーで感知してます」

「なんかまさに才能の無駄遣いって感じだな」

一応は俺が発案者なのだが、こんな感想が出てきてしまう。

「ふむ、力はどの程度がいいのかな」

「その機械に数値がついていますよね? それが100に近いほど丁度良い力という事になります」

「その丁度良い力ってのはどこで調べたんだよ……」

「むっ、もう少し強くか」

夜空がそう言うと、機械の数値が70から90にまで上がる。

「そうですそうです。センスいいですね先輩」

「ふっ、まぁ私にかかればこんなものだ」

握手のセンスというのに激しく突っ込みたい所だが、夜空が満足そうなので黙っておくことにする。

「力加減とかできんなら、さっきの窓ぶん殴った時もそうしろよな」

「あれは相手がリア充だから加減する必要がなかっただけだ。思い出すだけで腹が立つあのクソ女……!!」

夜空の表情が再び憎しみに染まる。
その時。

「きゃっ!!」

「……『きゃっ』???」

一瞬誰の声か分からなかったが、どうやら夜空の声のようだ。

「あっ……いや、今のは…………///」

「り、理科、不覚にも萌えてしまいました……!! 夜空先輩もう一度!!」

「するか!! いたたたたた!!」

今度は明らかに痛そうな声をあげる夜空。
65 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 19:12:31.91 ID:CZnO16LJo

「あんまり力込めちゃダメですよ。その機械、相手の力に合わせますから」

「な、何だよその無駄機能は……」

「だってこっちが力強く握手しているのに、相手が弱々しかったら失礼じゃないですか」

何となく分かるような分からないような。
つまり最初の夜空の悲鳴は、星奈の事を思い出して無意識に力を強くしてしまったせいか。

「くっ、機械の分際でこの私に恥をかかせるとは……!! いたたたたたたたた!!!」

「な、何やってんだ夜空、力抜けって!」

「……夜空先輩が痛がってて、小鷹先輩が力抜けって…………初夜っぽいですね」

「何言ってんのお前!?」

「この変態が……いたたたた!!!」

ますます痛がる夜空。
数値を見ると、200を突破している。

「く、そ……!!! 握り潰してくれる!!!」

「お前これの目的分かってる!?」

「この機械に打ち勝つことだ……ッ!!」

「違うっ!!」

完全にムキになっている夜空。

「ふ、ふふっ……負けを認めるのなら今のうちだぞ……ッ!! いたたたたたたたたた!!
 くぅ……小癪な……!! 鉄の塊の分際で…………!!!」

「おーい」

「まぁ好きにやらせてあげればいいんじゃないですか? どうせそのうちギブアップしますよ」

「やっぱ握り潰すってのはできないのか?」

「できますよ。1トンくらいで」

「無理なんだな」

止めるのも面倒になってきたので、大人しく見守る俺と理科。
やがて。

「……ふ、ふん。今日はそろそろこの辺で勘弁してやろうか。良かったな、私の機嫌ががそこまで悪くなくて」

ようやくギブアップのようだ。
というか、生身の人間相手には上手く話せないくせに、無機物相手なら大丈夫なのか。

「……おい、今日はもう勘弁してやると言ったはずだ。お前ももう止めとけ。おい……お、おい…………。
 い、いたたたたたたたたたたた!!! ぐっ、こいつ、この……いだだだだだだだだだだだ!!!!!」

「よ、夜空? もうやめろって」

「ち、違う! 力はもう抜いている!! だが、こ、こいつが…………いだだだだだだだだ!! い、いたいいたいいたいやめろこのクソバカ殺すぞ死ね死ね死ね死ね!!!!!」

「なっ……理科!! 様子がおかしいぞ!?」

「…………」

「おい、理科!!」


「――バグっちゃった☆」


ここで伝家の宝刀『テヘペロ』だ。


「ふざけんなああああああああああああああああああ!!!!!」
66 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 19:17:11.40 ID:CZnO16LJo

俺は大急ぎで機械の所まで行く。
全力を込めて機械の手を開かせようとするが、ありえない力でビクともしない。
その間にも、

「いたいいたいいたい!!! おのれ殺す……絶対殺す、切って剥いで焼いて埋めて沈めて殺……コロ、コロロロロロロロロロロロロロ!!!!!!」

女の子としてどころか、人間としてアレなセリフを喚きながら痛がる夜空。

「くそっ!! 壊すしかねえ!!」

俺は機械の手と本体の連結部を思いっきり蹴り上げる。
だがこれも全く効果なし。むしろ俺の足がメチャクチャ痛い。

「いだだだだだだあああああああああああ!!! 死ねクソカスポンコツ死ね死ね死ねくたばれ殺す殺す……ぅぅ、こ、小鷹ぁぁ…………いだ、こ、殺す殺す殺す殺す殺すうううううううう!!!」

さらりと俺の名前を混ぜないでほしい。怖いから。
けど、このまま外れないとさすがにマズイんじゃ……。

俺がいよいよマジで焦ってきた時。


「どいてください、小鷹先輩!!!」


後ろから理科の声。
そして。


ズバン!!! と。


機械の本体と手の部分の連結部が一刀両断された。、



***



「またつまらぬものを斬ってしまった――」

そんな風に居合い抜きのようなポーズを決めている理科。

やっとの事で解放された夜空は、部屋の隅でグスグス言っている。
本人が言うには、泣いているわけではないらしい。どう見ても泣いているが。

俺はどっと疲れて床に座り込んでしまっている。

「……で、何だよそれ」

「斬鉄剣です」

「要するに何でも斬れる刀って事か」

「何でもは斬れないですよ。斬れるものだけです」

なんかもう詳しい仕組みとかまで知りたくないので、適当に聞いて納得する。
それよりも問題は夜空だ。

「なぁ、夜空。さすがに保健室行った方がいいって」

「……いやだ」

「あのなぁ……」

理由としてはただ単に気まずいとかそういう事なのだろう。
まぁ理由を聞かれて、『握手マシーンにやられました』って言うのもかなりシュールだ。

理科はそんな夜空を見て、割と本気で申し訳なさそうにする。

「す、すみません夜空先輩。バグのチェックが不十分で……」

「……あまり気にするな。私の行動も、その、少しアレだったし」

一応自覚はあるのか。
けど、このまま放っておくのもダメだし、何とか夜空を保健室に行かせないとな。


どうする? >>67
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/16(月) 19:18:49.13 ID:fjNbySnD0
夜空を背負って行く
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2012/07/16(月) 19:18:54.50 ID:isp5naiv0
ほっとく
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 19:19:40.60 ID:Cv+MmOcSO
手を握りつぶしてあげる☆
70 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 20:16:32.88 ID:CZnO16LJo

「……しょうがねえな」

俺はそう呟くと、夜空の方へ歩いて行く。

「な、なんだ? 私は保健室などには…………わあっ!!!」

俺は夜空を背中に担いだ。
ようはおんぶだ。

「な、ななななな何を……///」

「どうしても行かねえんなら無理矢理にでも行かせてやる」

「ぐぅ羨ましい……でも、原因は理科ですし……くぅぅぅぅぅ!!
 ていうか今のセリフ、どう考えてもエロすぎです本当にありがとうございました」

理科の言葉は完全無視して俺は部屋を出て保健室へ向かった。
夜空を担いだまま。


***


「……けどちょっと意外だな」

「ん、何がだ」

保健室までの廊下を歩く俺。
夜空の声は背中から聞こえる。

ここまで何人かの生徒とすれ違ったが、何やらヒソヒソ言っていたのでまた新しい噂が増えることになりそうだ。

俺は顔をちょっと後ろに向けて夜空を見る。

「いや、夜空だったらもっと抵抗するかなって思ってたからさ。意外と大人しいんだな」

「ッ!! は、離せバカ……!!///」

「うおっ!? お、思い出したように暴れんなよ!!」

言わなきゃ良かったと後悔する。

「…………」

「…………」

会話が途切れた。
だが、不思議な事に気まずくはない。

外はもう夕方で、オレンジ色の光が窓から差し込んできている。

「小鷹」

今度は夜空から話しかけてきた。

「ん?」

「えっと、その……お、重くないか?」

「重くねーよ」

「ホントだな!?」

「ホントだよ!」

「……そうか」

「…………」

「…………」

また沈黙。
71 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 20:18:23.34 ID:CZnO16LJo

「夜空」

「な、なんだ?」

「何か言いたいことがあるのか?」

「なっ……う…………」

夜空は黙ってしまう。
別に俺も無理して聞きたいというわけじゃないので、言わないならそれでいいか、とも思う。

その時。


「――り、理科の事、どう思っているんだ?」


そんな事を尋ねてきた。

「理科?」

「あ、あぁ。理科部も二人で作ったんだろう?」

「まぁ、そうだな」

「それが私には意外だった。小鷹がそうやって誰かと協力して何かをするというのが……。クラスでは友達居ないの知ってたし」

「う、うるせえな。それはお前だって同じだろ」

「私にはトモちゃんが居るぞ!」

「あー、はいはい」

「な、何だそのやる気のない返事は! 貴様トモちゃんをバカにする気か!」

背中でジタバタと暴れる夜空。
こいつの事を知れば知るほど、意外と子供っぽいという事が分かる。
最初はその人のことをほとんど知らなくても、こうして少しの間共に過ごす事で多くのものが見えてくる。

俺に関しても、すぐにヤンキーでも何でもないっていうのは分かってくれるはずなのだが、いかんせん第一印象というのもかなり重要なようだ。

「……で、どうなんだ。その、理科のことは」

「んー」

俺は少し考えて、

>>72
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 20:20:37.50 ID:Cv+MmOcSO
チンカス
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 20:42:13.48 ID:bbZ4K1oIO
ヒドイ…
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 20:44:15.98 ID:Cv+MmOcSO
だってこうでも言わないとアレじゃん…
75 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 22:08:46.76 ID:CZnO16LJo

「チンカス」

……一応言っておこう。
これは俺のセリフではない。

「ん、なんだ違うのか? それではビッチか? 雌豚か?」

「お、お前、実は今回の件怒ってるだろ」

「そんな事はない。私は大人だからな」

どこがだ。

「さぁ、ここには理科も居ない。思う存分好きな事言えるぞ?」

「……別に悪く思っちゃいねえって。アイツは理科部の部長で頼りになるやつだ」

「……ふぅん」

夜空は微妙に納得したような、していないような声を出した。



その後、保健室の先生に夜空の手を診てもらったのだが、軽い打撲だった。
理由は転んだと誤魔化したが、なんか納得していない様子で、ちょっと焦った。
やはりそういうのは分かるのだろうか。



***



「……我が眷属よ、最近我への供物がいささか貧相ではないか?」

「ん、そうか?」

俺と小鳩は家で一緒に夕食をとる。
ま、まぁ確かに今日は冷凍食品多めだけど……。

「悪い、ちょっと部活でな。休みの日はちゃんと作るからさ」

「むー」

「あぁそうだ。部活といえば、今日理科の作った握手マシーンで夜空がさぁ……」

「……あんちゃんは最近部活の事ばかりじゃ」

「ん?」

「なんでもなかっ!」

そう言って小鳩はさっさと食べて自分の部屋へ行ってしまった。
やっぱ反抗期か?
76 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 22:11:25.79 ID:CZnO16LJo


***


次の日。
朝、教室に入ると、案の定昨日のことで何か噂が流れているようだった。
耳をそばだてて聞いてみれば、「羽瀬川小鷹が三日月夜空を誘拐した」とか何とか。
どういう事だおい。

といっても、なんかもういつもの事なので、特に気にしない事にする。

俺は最初の授業に備えて机の上に教科書を並べる。
その後は無言でケータイをいじったり、本を読んだり。
それが俺の日常だった。

だが、今日に限っては違った。


「ちょーっと邪魔するわよ!!!」


何か聞き覚えのある声が聞こえてきた。
嫌な予感を覚えながらも、そちらを見てみると、居た。
金髪碧眼の美少女、頭には蝶の髪飾りを付けた理事長の娘、柏崎星奈だ。

いや、落ち込むのはまだ早い。
別に俺じゃなくて他の誰かに用があるという可能性だって十分ありえるだろう。
そうだそうだ、わざわざこんなヤンキーに何度も絡んでくるほどアイツも暇じゃ――。


「あっ、居たわね羽瀬川小鷹!!!」


……泣きたくなってきた。

教室中がざわざわとし始める。
「いよいよ決戦か!?」なんて声も聞こえた気がする。ねえよ。

「……なんだよ」

「「ひっ」」

俺が声を出した瞬間、クラスメイトのほとんどが小さく悲鳴をあげた。
確かに今の俺の声は自分でもちょっとアレだと思った。
学校での第一声という事もあって、普段の調子が出なかったらしい。

まぁ普段から既に怖いとは言われるのだが。

「……ふ、ふん、声で脅そうとしても無駄よ」

今の声には星奈もビビったらしく、声が震えているのが分かる。
それならわざわざ関わらなければいいのに……。

星奈はそんな怯えを振り払うかのように、ビシッとこちらを指差した。

「あんたに言いたいことは一つ。理科部を解放しなさい!!」

「……え?」

俺は思わず間抜けな声を出してしまう。
そして夜空の方をチラリと見てみるが、彼女はただ黙々と本を読んでいた。完全に我関せず状態だ。

「あんたが理科部を襲撃して毎日毎日占拠してるってのは分かってんのよ! それをやめなさいって言ってんの!!」

「…………あー」

なんか完全に誤解されているようだ。



どうする? >>77
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/16(月) 22:12:06.85 ID:guqDBeQao
なんかおっかないから理科のスカートの中に避難
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/16(月) 22:17:19.99 ID:UV+gg4lPo
相変わらずだなwwwwwwww
79 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 22:31:59.39 ID:CZnO16LJo

なんかもう色々と面倒だ。
こういう時は――――。

「わるいっ!!」

そう言って、俺は教室を飛び出した。

「あっ、待ちなさいよ!!!」

そう言って追っかけてくる星奈。
……おいおいちょっと待て、何であんなに速いんだよ!!

俺はとりあえず理科の元へ言って話し合おうと思っていた。
しかし、これではその前に捕まってしまう。

「だから待てって言ってんでしょうがあああああああ!!!!!」

「あ、ありえねえ……スポーツ万能少女かよ……!?」

差がどんどん縮まっていく。
見た目から、運動嫌いのギャルかと思っていたのが大失敗だ。

廊下を何度も曲がってやり過ごそうとするが、それでも振りきれない。
すれ違う教師などにも注意されるが、止まるわけにはいかない。
理科室まではまだまだ距離がある。このままでは――――。


どうする? >>80
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 22:32:32.18 ID:MGkWyez/o
足かける
81 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 22:50:08.83 ID:CZnO16LJo

……しょうがねえ!

俺はこのままでは逃げ切れない事を悟ると、スピードを落とす。

「ふん、やっと諦めたようね! じゃあ大人しく……」

星奈がすぐ近くに来た瞬間、俺は足をかけた。
その結果。

「ぎゃっ!!」

ビターン!!! と、見事に顔面からいった。

あまりの盛大なコケっぷりに、俺も思わず止まってしまう。
自分でやっておいてなんだけど、大丈夫かアレ?

ちょうど近くを通りかかった生徒達も、びっくりしている。
理事長の娘が廊下で派手に転んでいるのだから仕方ない。

星奈がフラフラと立ち上がる。

「や、やってくれんじゃないの……。け、けど、これくらいであたしが諦めるとでも……」

「お、おい、鼻血出てんぞ!」

「ふぇ?」

美少女が鼻血を垂らしているというのは、見てて何とも残念な気持ちになる。
星奈は一瞬キョトンとすると、手の甲でグシグシと拭き取る。

「このくらい何ともないわ!!」

「止まってねえって! また出てる出てる!!」

「こんなもん出させとけばいいのよ! あたしの完璧すぎる顔にさして影響はないわ!!」

い、いやぁ……結構残念な感じになってますけど。

しかし、本当に、想像以上にしつこい。
温室育ちのお嬢様かと思ったが、意外と根性はあるのかもしれない。
それともただ単に負けず嫌いなだけか。

「さぁ……もう観念しなさい……!!!」

鼻血をドバドバ出しながら迫り来る美少女。
俺が言うのも何だけど、普通に怖い。



どうする? >>82
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 22:51:18.47 ID:Cv+MmOcSO
全力で腹ぱん→膝。眠らせる
83 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/16(月) 23:13:41.15 ID:CZnO16LJo

「お、お前明らかにフラフラしてんじゃねえか! 大人しくしとけって!」

「そうはいかないわ…………あたしは、頼まれたんだから…………」

フラフラと危なっかしい足取りで、それでも確実に星奈は俺に近付く。

「頼まれた?」

「えぇ、あんたの事を止められるのはあたしだけって、すっごく頼りにされてんのよ」

「そ、そうか……」

「だから、あたしは……!!」

俺は辺りを見渡す。
もう一限目の授業が始まるのか、廊下には誰も居なくなっていた。

「……わるい」

「え?」

ドゴッ!! と、拳を彼女の腹に打ち込み、続けて膝を入れる。
星奈は動かなくなった。

……理事長、ホントごめんなさい。

「……で、どうするよ、これ」

目の前には気絶した星奈。
チャイムが鳴り始め、授業が始まったことを知らせる。

このまま星奈を放っておくことはできないが、保健室へ連れていけば事情を聞かれまくるはずだ。
いくらフラフラでヤバかったと言っても、俺が気絶させたなんて言えば大事だ。
というか、そもそも鼻血をドバドバ出させた原因も俺だし。

……うーん。



どうする? >>84
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/16(月) 23:15:19.00 ID:XydgYeJAO
覆面被って保健室へ運ぶ
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 23:15:21.50 ID:w8CdMHNIO
理科に預ける
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/07/16(月) 23:22:51.31 ID:ohWeEg5co
この小鷹はマジでヤンキーだな
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 23:35:10.73 ID:MGkWyez/o
これは覆面ヒーローとヤンキーの二重学生生活の予感
88 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 00:26:01.12 ID:YFpFztNQo

「そ、そうだ、覆面でも被って顔隠せば……」

とりあえず、星奈を保健室に運ぶことにした。


***


俺は適当な部屋から拝借してきた、馬の覆面を被って保健室まで来た。
気絶した理事長の娘に、それを担ぐ謎の覆面男。
……もしかして、この状況見られたら普通に警察沙汰じゃねえの?
そんな事を考えながらおそるおそる保健室を覗く。

幸運な事に、誰も居なかった。

「よ、良かった……」

俺は星奈を空いているベッドに寝かせる。
鼻血が酷かったので、ティッシュを詰め込んでおいた。

女の子の鼻にティッシュを詰めるなんてことは初体験だったが。

俺はとにかく誰にも見られない内にと、教室へ戻ることにした。


***


昼休み。


「羽瀬川小鷹!!!」


そんな大声が聞こえてきた。
声の主は案の定、柏崎星奈だ。

俺は何も言わずに立ち上がり、星奈に近付く。

「うっ……ぁ……な、何よ! いきなり暴力!?」

「悪かった」

「……え?」

俺は深く頭を下げた。

あれから冷静に考えた結果。
女の子の腹を殴った上に膝を入れて気絶させるなんていうのはどう考えてもやり過ぎだと思った。

「今朝の事は本当に悪かった。俺――」

「そんな事はどうだっていいのよ」

「……はい?」

「あたしが聞きたいのは、あんたが理科部を乗っ取るのをやめるかどうかってこと!!」

この少女は何だか色んな意味でぶっ飛んでいると思った。
いや、真っ直ぐすぎると言えばいいのか。俺には少し眩しい。

「……いや、俺も部員なんだけど」

「え……そ、そんなの無理矢理入っただけでしょ!」

「本当だって。何なら今から部長のとこ行くか?」

「の、望むところよ!!」

そんなわけで理科室まで行く事になった。
ちなみに夜空は相変わらず我関せず状態だった。
89 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 00:29:10.26 ID:YFpFztNQo

***

「はい、小鷹先輩はちゃんと部員ですよ。ていうか理科と一緒に創部しましたし」

「……うそーん」

理科の言葉を聞いた途端、呆然となる星奈。
理科は溜息をつくと、

「先輩、情報は何でもかんでも鵜呑みにしてはいけませんよ? そういう人達がマスゴミに騙されるんです」

「うっ……く…………!!」

「仮にも理事長の娘なんですから、もっと自分でちゃんと考えて……」

「わ、悪かったわね!! 分かったわよ、次からは気をつければいいんでしょ!!」

星奈はドタドタと出ていく……前に俺の方を見る。

「あと、あんたに関する相談はまだ沢山残ってんだから、覚悟しなさいよね!!!」

そんなセリフを残して出ていってしまった。
まるで嵐のようだった。

「そういえば理科、それ何だ? 新しい友達作りの道具か?」

俺は机の上に出ていたパネルのようなものを指差す。

「いえ、これは企業さんから依頼されたものです。太陽光発電の装置です」

「……やっぱお前ってすげーんだな」

「ふふ、惚れちゃいましたか? できるオンナでしょう、理科は」

「あぁ、そうだな」

「ぶっ、ちょ、マジ反応はやめてくださいよ///」

自分で振っておいて赤くなる理科だった。


***


放課後。
俺と夜空が理科室にやってくると、理科が完全にダウンしていた。
何でもあの太陽光発電の検査などで屋外で作業していたらこんな事になったらしい。

「うー、あー、うま、かゆ……」

「おーい大丈夫かー?」

「ちくしょう……ファッキン太陽めが……」

なんか相当重症だ。
ちなみに保健室には行ったらしいが、日射病とか熱中症ではなく、ただ暑さにやられているだけらしい。

「まぁ、もうそろそろ7月だからな。そりゃ外は暑いわな」

「これでは今日は活動はできそうにもないな。そうだ、小鷹」

「ん?」

「貴様、あのリア充ビッチに絡まれていたな。どうした?」

「あー、お前思いっきり知らんぷりしてたよな」

「誰が自分からあんな女と関わるものか。で、何だったんだ?」

「なんか俺が理科部を乗っ取ってるとかって勘違いしてたんだよ」

「はっ、さすがビッチの頭の中は違うな」

「よ、夜空お前、すげえ悪い顔してんぞ」

俺はそう言うが、夜空は特に気にした様子もなく、鞄から本を取り出し読み始める。
さて、俺は何するかな。

何する? >>90
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 00:30:26.95 ID:RpLEMx4IO
夜空を観察
91 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 00:43:57.49 ID:YFpFztNQo

「……理科、今日はもう帰ります」

フラフラと出て行こうとする理科。

「お、おい大丈夫か?」

「ダメです。先輩、魔力供給をお願いします」

「魔力供給?」

「セクロスです」

「よし、帰れ」


……というわけで、理科室には俺と夜空だけが残る。
特にやることもない俺は、ぼーっと夜空を見ている。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「……なぁ小鷹」

「ん?」

「そこまでガン見されると集中して読めないんだが」

「えっ、あ、悪い……」

「…………」

「…………」

「その本、面白いか?」

「面白い」

「そっか」

「…………」

「…………」



なにしよう? >>92
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/17(火) 00:47:16.26 ID:SAeTsaOAO
帰る
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/17(火) 00:47:31.15 ID:PJvam4Zuo
全裸ブリッジで夜空の周りをうろちょろ
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 00:47:33.60 ID:IsI/x2bSO
本はたきおとして抱きしめてみる
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/17(火) 00:47:36.27 ID:6ZbGlP0N0
夜空から本を借りる
96 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 01:11:42.19 ID:YFpFztNQo

うん、帰ろう。
特にやることもないし。


***


「ククク、今日は中々の生贄だな、我が眷属よ」

晩飯時の羽瀬川家。
小鳩は満足そうにロールキャベツを頬張る。
今日は早めに帰ってきた事もあって、それなりに手間をかけて作れた。

「……なぁ小鳩」

「ん、何だ」

「小鳩ってさ、ちゃんと友達いるか?」

俺のそんな質問に、小鳩は少しキョトンとすると。

「……ふん、愚問だな。我に友など不要。必要なのは永久の闇だけだ」

「そ、そうか……」

容姿も性格も似てない兄妹だけど。
友達がいないなんていう変なところは似たのかなぁ、なんて思った。


***


次の日の放課後。
今日は星奈の襲撃もなく、比較的平和な生活を送れた。
相変わらず友達はいないけど。

理科室には理科と夜空も揃っている。

「では、今日も友達作りの道具作りますよ!!!」



何を作る? >>97
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/17(火) 01:17:04.46 ID:PJvam4Zuo
理科との子供
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/17(火) 01:18:10.01 ID:RS4kjS2eo
カラーボール
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 01:18:22.39 ID:v5aVqQpSO
ほほう
100 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 01:39:27.99 ID:YFpFztNQo

「……小鷹先輩」

「ん、何か思いついたのか?」


「子供、なんてどうですか?」


「「は??」」

俺と夜空がハモる。

「作るんですよ、理科と小鷹先輩の子供を!!!」

「この変態がァァ!!!」

バシッ!! と夜空が理科の頭をハエ叩きで叩く。

「で、でもほら、ママ友とかあるじゃないですか! そこの繋がりで友達を作ろうという作戦です!」

「友達がついでになっているだろそれは!!」

「……まぁ確かにママ友ってのはあるみたいだよな」

「こ、小鷹まで何を言っているんだ!!」

「あっ、いや、別に賛成してる訳じゃねえって!!」

俺は慌てて訂正するが、夜空はジト目で疑わしげに見てくる。
理科はニヤリと笑って、

「夜空先輩。子作りが卑猥な事と言いたいのですか?」

「そ、それは……」

「生命の神秘ですよ。元気な赤ちゃんを産んで、幸せそうに涙を浮かべる母親の前で、先輩は『子作りは卑猥だ』なんて言うんですか?」

「ぐっ……し、しかし私達はまだ高校生だ! そ、そういうのは、その、経済的な問題とかあるし、まだ……」

「ふふ、理科は普通の高校生ではありません。その気になれば今すぐにでも社会に出れます。そこは問題ないです」

「い、いや、でも……くっ、こ、小鷹! 貴様も何か言え!!」

なぜか泣きそうな顔になって俺に助けを求める夜空。
俺は溜息をついて、

「なぁ理科、確かにお前なら経済的には問題ないのかもしれない」

「そうです! つまり理科と先輩を阻むものなんて何も……!!」


「 俺 が 嫌 だ 」


「ぐあっ!!!」

勝負が決した。



***


結局今日はこれといった活動もせず、いつもより大分早めに解散になった。
俺は理科室を出て廊下を歩く。

(んー、なんか微妙な時間だな。図書室で勉強でもしてくか? いや、早めに料理の支度するってのも……)


どうする? >>101
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 01:40:58.91 ID:IsI/x2bSO
校庭に「私はここにいる」の意味を込めた巨大なマークを書いてみる
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 01:44:21.26 ID:RpLEMx4IO
帰ってスーパーで買い物
途中で星奈に遭遇して今までのお詫びで夕食をご馳走する
103 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 01:57:05.50 ID:YFpFztNQo

「いや、ここはやっぱ少しでも友達作りの方を頑張らないとな!」

そんなわけで、ネットで質問してみる。
すると。

「……このマークを校庭に書く? ってまたハルヒじゃねえか」

意味は「私はここにいる」。いや、俺の場合、そういう自己主張は十分な気がする。
それに、前にネットのアドバイス通りに自己紹介したら酷いことになったからな。
でもせっかく質問したんだ、これで何もしなかったら答えてくれた人に悪いだろう。

というわけで、靴に履き替えて校庭に出る……が。

見事に運動部が活動中だった。

「……ですよねー」


どうする? >>104
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 01:58:11.29 ID:IsI/x2bSO
全員倒して強行
105 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 02:11:26.33 ID:YFpFztNQo

よし、こういう時は勝負してグラウンドを空けてもらえばいい。前に読んだ漫画にそういう展開があったはずだ。
もちろん、勝負といってもケンカではない。正々堂々、競技で勝負をする。
まずは陸上部からだ。

「……あ、あの」

やっぱり誰かに話しかけるのは緊張する。

「ひぃぃ!!」

「えっと、実はちょっと校庭を使わせてもらいたくて……」

「は、はい分かりましたああああああ!!」

「もし、100m走で俺が勝ったら…………ってアレ?」

気付けば、陸上部は一人残らずいなくなっていた。

「…………」


その後も同じような事を繰り返した結果。
見事に校庭には誰もいなくなった。
……なんか虚しい。

「え、えーと、とりあえずこのマーク書くか」


***


数時間後、マークは完成した。
上からちゃんと見ないと分からないが、結構なクオリティだと思う。

「…………で、何してんだ俺」

もう日も落ちて暗くなっている校庭で一人謎のマークを書く。
なんか凄く怖いことしてないか俺。

これは誰かに見られる前に帰ったほうがいいんじゃ……と思い始めた時。

誰かが校庭にやってきた。


誰? >>106
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 02:13:07.83 ID:RpLEMx4IO
幸村
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/17(火) 02:16:07.42 ID:RS4kjS2eo
>>106 ついにきたか…
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/07/17(火) 02:29:25.96 ID:jWYmoMzH0
>>106
wwktk
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/17(火) 07:52:47.64 ID:PfoRrO+c0
後はシスターだけか…
生徒会長さんもからんで欲しいけれども
110 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 15:06:19.77 ID:YFpFztNQo

美少女が居た。
夜空や星奈よりも、「可愛らしさ」に比重が置かれた印象だ。

だが……なぜだろう。
理科といい夜空といい星奈といい。
なぜ、ただ美少女である、で完結しないのだろうか。
なぜ、プラス要素で、おかしなものがくっついているのだろうか。

その少女は男子の制服を着ていた。

「…………」

俺は何も言えずにいた。
そして相手の少女……でいいのかどうか分からないが、とにかく彼女もただじっと俺の事を見ているだけだ。

何か話さないといけない。

「……えっと、だな。その、このマークは特に意味とかはなくて、その…………」

恥ずかしい。
こんな時、小鳩のように厨二病的に言えたらどんなに楽だろう。

少女は静かに口を開く。
その声はとても柔らかく、抑揚のない声だった。

「やはり、わたくしには理解できぬものなのですね」

いや、ラノベとか読めば簡単に理解できるものなんだけどな。
だが、それを言ってしまうといよいよ完全に痛い人なので黙っておく。
もう既に手遅れな気もするが。

風が吹く。

彼女の綺麗な髪が静かに揺れる。
それを手で抑える彼女の姿は、なんというか。
見惚れるものがあった。

「わたくしは小鷹せんぱいの事をずっと見てきました」

心臓が跳ね上がった。
ずっと、見てきた? それって、まさか……。

「せんぱい、わたくしを、せんぱいの……」

「ま、待て! その、いきなりすぎて良く分かんねえっていうか――」

「しゃていにしてください」

「だからそういう話はもっと落ち着いた時に落ち着いた場所で…………え??」
111 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 15:07:50.45 ID:YFpFztNQo

この少女は今なんて言った?
しゃてい……射程、車?、斜汀…………舎弟?

「お、おい」

「今までの数々のぶゆうでん、そして今回のしょぎょう。
 ご自分の目的のために運動部を全て追い払うという、わがみちをゆく孤高のおとこ」

「あの……」

「ご自分の欲求を満たすためならば、おなごも襲い、ゆうかいするそのおうぼうさ」

「それは誤解だ!!」

「わたくしはつよいおとこになりたいのです、あにき」

「兄貴じゃねええええええええええええ!!!!!」

日も落ちた真っ暗な校庭で、俺は何を言っているんだろう。
そしてこの少女はもっと何を言っているんだろう。
なんかもう……色々とカオスだ。

「よ、よし、じゃあ俺から質問だ」

「何でもお尋ねください、あにき」

もう兄貴のところは面倒なのでスルー。

「まず、何でお前は男子の制服を着てんだ?」

「……? 何かおかしいことでも?
 あっ、そうですか。わたくしのような未熟ものには、まだこの制服は早いというわけですね。今すぐぬぎます」

「おいバカ脱ぐなあああああ!!!」

慌てて止めに入る俺。
本当にコイツは一体何なんだ。

「そうじゃなくて! 何で女子が男子の制服を着てんのかって事だよ!」

「……? わたくしはだんしですが?」

「いやウソだ」

「……そうですね、わたくしはまだ未熟者ゆえ、だんしとは呼べませんか」

「ちょ、待て待て!! え、マジなの!?」

「はい」

俺は口をあんぐり開ける。
確かに普通に考えて、女子があれだけ何の躊躇いもなく校庭のど真ん中で脱ごうとはしないだろう。
ラノベではたまに出てくるが……これが男の娘というものなのか。
112 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 15:09:16.80 ID:YFpFztNQo

「……わ、分かった。じゃあもう一個質問だ。何で俺なんだ?」

「わたくし、じつはいじめを受けているのです」

「いじめって……まじか」

「はい……わたくしが着替えているとまわりのだんしには仲間外れにされ」

「…………」

「ドッジボールの時はなぜかねらわれず」

「…………」

「トイレに入ると慌ててみな出ていってしまい……」

「待て、それはいじめじゃない」

俺はすぐに気付く。
それはどう考えても。

「たぶんそれは全部、みんなお前を女だと思ってるんだよ」

「……さようですか」

「あぁ。だから別に気にしなくても……」

俺はそこで少し考える。
気にしない、なんていうのは何の解決にもなっていない。
いじめではないにしても、この少年にとっては、それは辛いことなんだ。

「……確かに、ちょっと男っぽくした方がいいかもな。もうちょっと髪短くしてみたらどうだ?」

「真のおとこというものは、例えどのような格好をしていてもおとこにしか見えないという事を聞きました」

「それは……ど、どうだろうな」

「だから、あにき。わたくしに、真のおとこというものをおしえてください」

「……だ、だから俺はそんなんじゃ…………」

なんかもう面倒になってきた。
ここは適当に言って帰ってしまうのがいいのではないか。

「……分かったよ。お前の好きにしろよ」

「ありがとうございます、あにき」

少年は深々と頭を下げた。

それを見て、俺は溜息をついて家に帰ることにする。
その後を、少年がひょこひょことどこか嬉しそうについてきていた。

ちなみに校庭のマークを消し忘れたせいで、次の日から「羽瀬川小鷹がミステリーサークルを書いていた」という意味不明な噂が流れることになった。
113 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 15:11:35.87 ID:YFpFztNQo


***


次の日の昼休み。
俺がいつも通りに一人で昼食をとっていると、

「あにき、どうぞこれを」

そう言ってやって来たのは昨日の少女……じゃなくて少年。
その手には焼きそばパンにカレーパンにコーヒー牛乳。そしてヤンキー漫画。

「……え? な、なんだこれ?」

「あにきのおしょくじです」

「な、何でお前が持ってくんの?」

「しゃていがあにきのおしょくじを持ってくるのはとうぜんです」

「…………」

痛い。
周りの視線が凄く痛い。
なんかメッチャひそひそ言われてる。
内容なんて聞かなくてもだいたい分かる。

あと夜空、お前の視線が一番キツイからやめろ。

「ではあにき、失礼します」

少年はそんな事には少しも気付かない様子で、満足気に教室から出ていった。


***


放課後、理科室にて。


「あいつは何だ!?」


夜空の開口一番だ。
何が言いたいのかはよく分かる。
一方で事情を知らない理科は、いきなりの夜空の叫び声にかなり驚いていた。

俺は隠す必要もないと思ったので、正直に話した。


「ど、どどどどどどどっちが受けでどっちが攻めなんですか先輩!!! アッー!!!!!」


なんか大変なことになっている理科はスルー。
夜空は目を見開いており、

「お、男……だと? あ、あれが?」

「あぁ、制服だってそうだっただろ」

「た、確かにそうだったが……」

夜空がうろたえながらそう言うと、


コンコンと、ノックの音が聞こえてきた。


「ん」

夜空は立ち上がってドアのところまで歩いて行く。
もうこの役割は完全に夜空のものとなったようだ。

ドアを開けるとそこには、

「おつかれさまです、あにき」

例の少年が立っていた。
114 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 15:12:58.16 ID:YFpFztNQo



***



1年1組、楠幸村。
それが少年に関する情報だった。

「幸村って……名前は普通に男っぽいんだな」

「はい、真田幸村のように勇ましいだんしになるようにと」

「せ、先輩! も、ももももっと近づいてもらえますか!?」

「は、はぁ?」

「ほらほら、幸村くんも!!」

何やら興奮した様子の理科は、幸村を促して俺の近くまで来させる。

「…………///」

「待て待て待て、何で頬を染めてんだお前は!!!」

夜空はそんな二人を見て、腕を組んで考え込みながら、

「……まぁ、男だし、うん…………」

良く分からないので、深くは聞かないでおく。
俺は、さりげなく幸村からちょっと離れて、

「……で、なんでここまで来たんだ?」

「わたくしはあにきのしゃていゆえ、いつもお近くで仕えるしょぞんであります」

「だ、大歓迎です!!!」

答えたのは理科だ。
その手には入部届。

「それではここに名前を!!!」

「はい」

「…………」

なんか凄く釈然としないが、止めるのも可哀想だし理由がない。
ちなみに幸村の字は相当綺麗なものだった。


楠幸村が理科部に入った。部員4名。


「そ・れ・で・は!!! さっそく今日も活動始めますよー!!!」

やたらハイテンションな理科が宣言する。



何を作る? >>115
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 15:13:55.47 ID:IsI/x2bSO
筋肉養成ギプス
116 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 16:18:51.00 ID:YFpFztNQo

「筋肉養成ギブスを作りましょう!!!」

「……それは友達作りに役立つのか?」

夜空はジト目で尋ねる。

「理科が付けるつもりはありませんよ。ムキムキになんかなりたくありませんし。
 これは全て幸村くんのためです!!」

「なるほどな、それで男らしさを磨くってことか」

「はい!! 夜空先輩も、新入部員への歓迎ってことでいいですよね?」

「……まぁいいだろう」

「っしゃあ!!」

理科はグッと拳を握ると、鼻息あらく幸村の方を見る。
話が読めない幸村は、キョトンと首を傾げる。

「幸村くん、筋肉をつけましょう!!」

「きんにく……ですか?」

「はい!! 真の男に筋肉は必要不可欠です!!」

「それでは、あにきもムキムキなのですか」

「お、俺!?」

いや、まぁそれなりにはあると思うけどさ。
今までも何度も不良に絡まれたし、ある程度は鍛えてる。

「もちろん、小鷹先輩もムキムキですよね!! ほら、証拠を見せてあげましょう!!」

「お、おい脱がすなこら!!」

「ぐふふ……良いではないか良いではないか!!」

「わ、分かったから!! 自分で脱ぐよ!!!」

そう言うと俺は渋々とシャツを脱ぐ。
ムキムキとはいかないが、まぁ貧弱というわけではないはずだ。

幸村はぽーっと頬を染めて見てくる。
理科はよだれを垂らして「ぐへへ」と笑いながら見てくる。
夜空は耳まで赤くしてそっぽを向いているが、時々チラチラと見てくる。

……男でも結構恥ずかしいんだな。

「あにき」

幸村がポツリと言う。

「どうした?」

「わたくし、このような体になりたいです」

「そ、そうか……」

体を褒められるのは悪い気はせず、俺は少し照れて頭をかく。
理科はそんな俺らを鼻息荒く見て、

「では理科、すぐに作ってきますうううううう!!!」

そう言って、奥の部屋へ消えた。
奥は理科準備室になっており、実際の所そこが開発室になっている。
一度入ったことがあるが、パソコンが3台あったりモニターが10個以上あったり、怪しげな薬品の入ったビーカーが並んでいたりと凄かった。
117 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 16:20:31.24 ID:YFpFztNQo

理科がいない間は何もできないので、俺と夜空はいつも通りそれぞれ本を読んで時間を潰す。

幸村は、そんな俺をただガン見していた。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「な、なぁ幸村」

「なんでしょうか、あにき」

「そんなにガン見されると読みづらいんだが……」

「それは失礼しました」

そう言って素直に目を逸らす幸村。
ただ、何もやることがないらしく、ぼーっと何もない空間を見つめているだけだった。


***


「完成です!!!」


そう言って理科が持ってきたのは、一見何の変哲もないギブス。
しかし効果の程は凄まじいらしく、一ヶ月ほどで簡単にマッチョになれるらしい。

「これで、わたくしも真のおとこに近づけるのですか?」

「真の男ってのは良く分かんねえけど、女に見られるのはマシになるかもな」

俺がそう言うと、夜空も頷く。
幸村は嬉しそうに柔らかく微笑んだ。

……ヤバイ可愛い。


だが男だ。
118 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 16:21:27.44 ID:YFpFztNQo


「では小鷹先輩、幸村くんにこれを付けるのを手伝ってもらえますか?」

「ん、これ一人じゃ付けらんねえのか。まぁいいけど」

「ちなみに、“全裸”の上から付けないと効果がありません」

「ぶっ!!!」

俺は思わず吹き出す。

「じょ、冗談だよな?」

「いえ、大真面目です。ぐへ」

「お前わざとそういう風に作っただろ!?」

「そんな人聞きの悪い。…………ぐへへ」

あぁ、ダメだ。
こいつは腐っている。

夜空は夜空で、顔を赤くしながらも「幸村は男だ男。男男男男男男……」などと呪文のように唱えてるし。

そして幸村はというと、

「わたくし、あにきにならどんな事をされてもかまいません」

「いっ!?」

男だ。
幸村は男なんだ!!

頬を染めてウルウルとした目で上目遣いをしていても、コイツは男なんだ!!!

俺は両手で頭を抑えてうずくまる。

「さぁ、小鷹先輩!! 男同士なら何の問題もないでしょう!? さあさあさあ!!!」

理科がそんな追い打ちをかけてきた。
よだれを垂れ流しながら。



どうする? >>119
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/17(火) 16:23:10.23 ID:ySWpnvLZo
冷静さを保つためにまずは小鷹が全裸になる
120 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 16:52:56.84 ID:YFpFztNQo

「先輩、悩んでいるのなら理科に一つ提案があります」

「な、なんだ?」

「自分も全裸になってしまえばいいんですよ」

「はぁ!?」

あまりに意味不明な言葉に、俺は思わず叫ぶ。
しかし、理科はあくまで淡々と語る。

「自分だけ服を着ているから恥ずかしいんです。お互い全裸になれば銭湯と同じような感じで平気になったりしますよ」

「……い、いや、でも、それは…………」

そうかもしれない、と思ってしまう自分がなんか嫌だ。

「ちょ、ちょっと待て小鷹! 貴様は、その、そういう趣味はないよな!?」

「ねえよ!!」

「そ、それなら良いのだが……」

なぜか夜空が焦ってそんな事を聞いてきた。
誓って言うが、俺にそういう趣味はない。

「まぁとにかく、こっちの部屋で着替え始めちゃってくださいよ!!」

そう言って理科は奥の準備室の方に俺と幸村を押していく。
俺はされるがままに、部屋に入った。


***


準備室の鍵を閉める。
なんか扉の向こうで夜空の怒鳴り声が聞こえるような気がするが、関わらないことにする。

幸村は早くもシャツを脱ぎ始めていた。

「ちょ、ちょっと待て幸村!!」

「はい?」

幸村はキョトンと首を傾げてこちらを見る。

「お、俺がまず脱ぐ!!」

「……わかりました、あにき」

とりあえず理科の言葉を信じてやることにした。
俺はさっさと服を全部脱ぐ……が。
なんか凄く恥ずかしい。
幸村は男なのに。

しかも、余計に妙な雰囲気になった気がする。
ただギブスをつけてやるだけなのに。
121 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 16:53:51.09 ID:YFpFztNQo

「では、わたくしも」

幸村が再び脱ぎ始める。

とても男のものとは思えない、柔らかそうで白い肌が露出していく。
俺は、ゴクリと生唾を飲み。
結局、耐え切れずに後ろを向いた。

無理だ。
これは着替えの時に避けられるのも仕方ない。
こんなの男にとっては気まずくて仕方がない。

シュル……と。
布が床に落ちる音が妙に生々しい。

「……ぜんぶぬぎました、あにき。このぎぶすというものを付けるのを手伝ってはもらえませんか?」

「…………ッ!!」

俺は全身をビクッ!! と震わせる。
今、後ろには。
全裸の幸村がいる。



どうする? >>122
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 17:02:02.20 ID:IsI/x2bSO
威風堂々とやる
123 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 17:35:22.73 ID:YFpFztNQo

……何を躊躇っているんだ。幸村は男だ。
どんなに可愛らしい姿をしていても、幸村は男なんだ。

見た目だけで判断されるのがどんなに辛いことか、俺はよく知っているはずなのに。
自分は見た目で判断してほしくないと言っておきながら、他の人にはそれを当てはめないのか。
そんなのはただ都合が良い奴でしかない。

「……分かった幸村。俺に任せろ」

「はい、あにき」

俺はゆっくりと振り返る。
俺はノーマルだ。
男の裸に変な気持ちになることなんてない。
こんな事、全く問題にならない。

「……って、何で胸隠してんだよ!!」

「わたくし、あにきと違って胸板が薄いゆえ……はずかしいです」

「あー」

……なるほど。
確かにあまりにも痩せすぎている男子なんかは、プールで上半身裸になるのを嫌ったりする。

俺はあまり深く追求せずに、ギブスを手に取る。

「じゃ、こいつを付ければいいんだな。えっと、説明書は……」

「あにき、こちらに」

「おっ、これか。えーと………………ん?」

俺はある違和感を覚える。
それはギブスの説明書を読んで、というわけではない。
説明書を手渡すために近づいてきた幸村。
その姿に、どこか、違和感を…………あ、れ…………?

「あにき?」

幸村がキョトンと首を傾げる。

何か、変だ。
おかしなものが…………違和感が…………ある。

いや、“ない”。
“ない”のが、おかしい。

男を証明するもの。
男の象徴。
男なら、あるもの。
あるから、男である、もの。


それが、ない。


つ い て な い。





「うわあああああああああああああああああ!!!!!」





男の娘なんていうのはファンタジーの産物だ。
普通に、落ち着いて、現実的に考えれば分かる事だ。

どう見ても美少女にしか見えない子は。
やっぱりどう考えても美少女なんだ。
124 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 19:06:50.36 ID:YFpFztNQo


その後、俺の叫び声に驚いて飛び込んできた理科と夜空。
そこにいたのは全裸の俺と幸村。

理科はトリップするわ、夜空はなんか真っ赤になって理科室を飛び出すわ散々だった。

それからやっと落ち着いて、俺はちゃんと服を着て理科室にいた。夜空も戻ってきている。
理科は幸村に色々と説明するために、準備室に“彼女”と一緒に閉じこもってしまった。
どうやら幸村のやつ、自分で自分のことを女だと分かっていないらしい。

「……こ、ここ小鷹」

「ん?」

夜空が話しかけてくる。
その顔はまだ赤い。

「か、確認しておくが、こ、小鷹は幸村に何もしていないんだな……?」

「し、してねえよ!!」

まぁ考えてみれば、全裸の男女が同じ部屋に居るというのは、やはりそういうのを想像してしまうだろう。
夜空は少しだけ安心した様子になるが、

「……だが、見たことは見たのだろう」

「見たって……あー、いや、そ、それは…………」

そりゃ見なければ確認できないし……。

「…………」

「けどそれは、し、仕方ねえだろ! みんなアイツが男だと思ってたんだし……」

「まぁ、それは、そうだが……」

それでもどこか納得いかない様子の夜空。

その時、奥の準備室の扉が開いた。


「……あにき、わたくし、だんしではないようです」


そんな事を絶望的な表情で言う幸村。
完全に女だと認識してしまうと、男子の制服の違和感が更に増した気がする。
理科は珍しく少し疲れた様子だ。

「あぁ……まぁ…………そうだろうな」

「わたくし……立派な日本男児になれないのでしょうか……」

「まず男子じゃないからな」

夜空の言葉に、幸村は目に涙を浮かべる。
それを見て、夜空は「うっ」と気まずそうな声を上げると、髪をいじりながら目を逸らす。

「あ、あにき……わたくしは…………」

「え、えっと……」

どうやら相当ショックだったようだ。
これは何か言ってやらないと……。

>>125
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 19:08:13.01 ID:IsI/x2bSO
ないならティンコつければいいじゃない
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/17(火) 19:14:48.76 ID:i/aETmT6o
女ってバレるの早かったなw
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 19:30:42.12 ID:IjmPU+reo
安価独占ワロタ
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 19:38:33.35 ID:IsI/x2bSO
スマン
129 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 20:01:32.55 ID:YFpFztNQo

「大丈夫だ、幸村。男にはなれる」

俺のその言葉に、幸村は少し驚いた表情でこちらを見る。
それは理科も夜空も同じだった。

「世の中には性転換手術ってのがある。それならきっと男になれるはずだ」

「わたくしも……おとこに……?」

「あぁ。その方法は確かに存在するんだ。それなら、諦めるわけにはいかないだろ?
 お前の真の男になりたいって気持ちは、簡単に諦められるようなものじゃないはずだ」

「はい……!」

「まぁ金がかかるから学生の内は無理かもしんねえけど……それまでは内面の男らしさを磨けばいいじゃねえか。
 俺が教えてやる。お前はいつも俺について、俺のことを見てろ!」

「あにき……わたくし……とても、嬉しいです。わたくしは、だんしではありませんのに……」

「んなの関係ねえよ! お前は俺の舎弟だ」

こうすれば、彼女はこれからも希望を持って生きていける。
そして、いつか本物の男になる。
幸村なら、きっとできるはずだ。

それにしても、幸村のこのウルウルとした上目遣いは何ていうか……破壊力がヤバイ。


***


次の日の放課後。
理科室には俺、理科、夜空、幸村の部員全員が揃っていた。

ちなみに幸村は女だと発覚しても、制服は男子用のままだ。
まぁいずれ男になろうと思っているのだから、これでいいのだろう。

理科はいつものようにホワイトボードの前まで歩いて行く。
その表情はなぜか深刻そうだ。

「……みなさん、7月ですね」

「ん、あー、そうだな」

「この部ができてそろそろ一ヶ月ですが、誰か友達作りで進展は?」

そんな事をどんよりとした目で言う理科。

「……俺は評判が悪化したように思えるんだが」

「わたくしに友などふようです。ただ、あにきのしゃていとして仕えるのみ……」

「わ、私は……」

夜空が何か言いにくそうに口ごもる。
そういえば。

「夜空は最近はクラスの人に話しかけられることもあるじゃねえか。やっぱあの防犯ブザーが効いたんじゃねえか」

「えっ、ま、マジですか!? くっ……は、発明したのは理科だというのに……!!」

「そ、そうでもない。いつも通りだ」

少し照れながら顔を背ける夜空。
こういう部員の進展は嬉しくもあり……なんか自分が惨めにもなり。

「なるほど。あにきが戦場をかけぬける孤高の武士ならば、夜空のあねごは人望あつい参謀どのでしたか」

「まぁ小鷹先輩は孤高っていうよりただ単に友達居ないだけなんですけどね」

「ハッキリ言うなよ!!」

泣きたくなってくる。


「さて、じゃあこれまでの遅れを取り戻すためにも、ここでガツンと一発強力な道具作っちゃいましょう!!」


何を作る? >>130
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/07/17(火) 20:03:10.22 ID:zOARswTj0
ドラえもん
131 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 22:08:26.29 ID:YFpFztNQo

「ドラえもんはどうだ」

「ど、ドラえもんって……確かに色んな意味で強力だけどさ…………」

「あんなバカでアホでノロマなのび太に友達がいるのは、あのチートロボットのお陰だろう。
 あれを利用できれば、私達にだってすぐ友達ができるはずだ」

「い、いや、そうか?」

ぶっちゃけ言動はのび太くんより残念だと思うぞ、お前……。

「それに、あれだけ都合がいいロボットの使い道はいくらでもある……ふふ」

「夜空先輩、ちょっといいですか?」

「なんだ」

ノリノリな夜空に、理科は口を挟む。


「あんなもん作れるわけないじゃないですか」


ですよねー。

「なっ、き、貴様それでも天才発明家か!?」

「いや、無理なものは無理です」

「う、うぐぐ……」

「夜空のあねご、この世には時代のながれというものがあります。いそがずあせらずです」

どうやら夜空のやつ、割とマジで言っていたらしい。
まぁ冷静に考えれば、あんなのを作れる技術があるならこの20世紀はもっと違うものになっているだろう。

「……あっ、でも猫型ロボットなら何とかなるかもしれません」

「ね、ネコ!?」

即座に食いついたのは夜空だ。
その予想以上の反応に、理科は戸惑いつつも、

「は、はい。元々愛玩用ロボットっていうのは研究されていまして。
 ほら、子供が独り立ちしたお年寄りの方のためにとか」

「よ、よし、それでいい! それを作ってくれ!」

「でもそれって友達作りに役立つか?」

「な、何を言っている小鷹! 動物は人の心を解きほぐす。友達作りにぴったりではないか!」

「忠犬ハチ公は、いぬながらそんけいにあたいします」

「い、いや幸村。ネコなネコ。ていうか夜空……」

「なんだ!」

「……ネコ好きなんだろ」

「うっ!!」

俺の言葉にギクリと固まる夜空。
その後少しの間視線を彷徨わせて、何かしらの言い訳を考えていたようだったが、

「わ、悪いか!!/// ネコが嫌いな人間などこの世にいない!!!」

開き直った。
ていうか猫嫌いは普通にいると思うが……。
132 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 22:10:50.12 ID:YFpFztNQo

「まぁいいじゃないですか、小鷹先輩。理科もネコ好きですし、作りましょうよ」

「ん、まぁ別にいいけどさ」

「そ、それなら何で私にあれ程突っかかってきたんだ!///」

「いや、なんかこういう夜空珍しくてさ。つい」

「う、うぅ……///」

こうして見ると、夜空も案外女の子らしいところもあるんだな。
俺は少し微笑ましく思う。

「……なぜでしょう、あにきと夜空のあねごをみていると胸がチクチクします」

幸村はぼんやりとそんな事を呟いていた。



***



次の日の朝。
教室では俺はいつも通り、最初の授業で使う教科書とノートを準備して本を読んでいた。

すると。

『ニャー!』

鳴き声と同時にネコが教室に入ってきた。
当然、クラスは大騒ぎ。

女子なんかはキャーキャー言いながら、そのネコの周りに集まっていく。

これは昨日理科部で作った猫型ロボット。
その完成度は凄まじく、このように見ただけではロボットだと気付かれないほどだ。

ネコは教室を元気にかけ回り、夜空の机の上で落ち着く。

「あれ、もしかして三日月さんが気に入ったのかな?」

そんな事を言いながら、夜空の机の周りに集まる女子。
なんか凄く珍しい光景だなぁ、と俺はぼんやり眺める。

まぁ本人は緊張してあたふたしている様だが。

「あ、えっと、こ、これは理科部で作ったものなんだ……」

「作った……ってこれ本物のネコじゃないの!?」

「そ、そうだ」

「すごーい!! どこからどう見ても本物だよこれ!!」

「触ってみてもいい!?」

「あ、あぁ」

女子は大はしゃぎだし、男子もロボットという単語に惹かれたのか、興味津々に集まってきていた。
133 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 22:14:37.82 ID:YFpFztNQo

「かわいいー! にゃ〜!」

『なぁ〜お』

ネコは腹を天井に向けて寝転がった。

「あれっ、今もしかして反応したの!?」

「あぁ、ネコの鳴き声の真似をして話しかけると何かしら反応する」

夜空がそう言うと、女子達は一斉にネコの鳴き声を真似し始める。
ニャーニャーニャーニャー……と。
他のクラスの人が見たら、これは奇妙な光景かもしれない。

夜空はというと、いつものクールなキャラをなるべく崩さないようにはしているようだが、やはりチラチラと目の前のネコを見ている。
本当は今すぐ抱きしめたりしたいのだろう。まぁ昨日は散々あのネコと遊んでたしな。
しかし、今は周りにクラスメイトもいるので、何とか耐えているらしい。が。

「……ぅにゃー」

ポツリと、夜空がそんな事を言った。

ネコはそれに反応し、夜空の元へジャンプしてその胸に飛び込む。

「あ、あれ? 今もしかして三日月さんがネコの真似した!?」

「わーっ、珍しい!!」

「あ、いや、その!!///」

一気に真っ赤になる夜空。

「照れなくていいって! すっごく可愛かったよ!!」

「うんうん、三日月さんみたいな可愛い子がそれ言ったらマジ凶器だよ!」

「……ぁぅ///」

そうやってキャーキャー騒ぐ女子に、男子も、

「た、確かに今のはヤバかったな……」

「あ、あぁ……三日月ってあんなに可愛かったんだ……」

何だか大人気の夜空。

そ、そうか、ネコの鳴き真似とかすると人気が出るのか。
ということはもしかして……。
同じ事をやれば……俺でも……………!!

俺は静かに席を立つ。
そして、夜空の席までできるだけ気配を消して歩いて行く。

ここで俺がネコの鳴き真似をして、全然ヤンキーなんかじゃないことをアピールするんだ!


「ぬぅぅぁぁあああーお」


ヤバイ、ちょっと緊張して変な声になった。

教室が静まり返っている。
……あれ?

おそるおそる、近くにいる女子の方を向いてみると、

「ひっ!!!」

「…………」


俺は大人しく自分の席に戻った。
134 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 22:16:49.27 ID:YFpFztNQo



***



昼休み。
いつも通り幸村が届けてくれたパンを食べながらヤンキー漫画を読む(代金は後でコッソリ幸村の財布に入れている)。
この漫画は、最初は全然趣味と合わないと思っていたが、読んでみると結構面白い。
周りの視線がちょっとアレな気もするが。

その時。

「三日月さん、一緒にご飯食べない?」

「ぶごっ!?」

これまたいつも通りに一人で昼食をとっていた夜空だったが、なんと数人の女子から一緒に食べようと誘われていた。
案の定、夜空は相当驚いた様子であり、食べ物を喉に詰まらせた。

いや、俺も漫画落としかける程びっくりしたけど。

「だ、大丈夫!? はいお茶!」

「あ、ありが……とう…………」

貰ったお茶を飲んで何とか回復する夜空。

「え、えっと、それで……」

「一緒にご飯食べよう! もっと理科部のお話聞きたいなーって!」

「他にも色々作ってるんでしょ! 何があるのー?」

そう言いながら女子達は、夜空の周りの席を動かして話しやすいようにして座る。
当の夜空はというと、あたふたとしながら髪をいじったりして落ち着きがない。

「……うぅ///」

なんと夜空はこっちを見てきた。

おいおいおい。
せっかく一緒に昼飯食べてくれるってのに、俺の方見てちゃダメだろ。

なんか嫌な予感がしたので、俺は席を立った。
教室を出ると、とりあえず昼休みが終わるまで図書室にでもいようと、廊下を歩いて行く。


「こ、小鷹!」


後ろからそんな声が聞こえた。
振り返ってみれば、夜空が追いかけてきていた。
135 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 22:18:46.40 ID:YFpFztNQo

「う、うおっ、夜空!? どうしたんだよ」

「え……いや、その…………」

俺は驚いて尋ねるが、夜空は俯いてもじもじとし始める。
俺はそんな夜空に溜息をついて、

「ったく、せっかく他の女子と昼飯食えるってのに……」

そう言いながら、チラリと教室の中を見る。
先程の女子達はまだ同じ場所にいて、楽しげに話している。

「ほら、まだあの人達いるじゃねえか。行ってこいよ」

「え、いや、でも……」

「あのな、お前は友達が欲しいんだろ?」

「う……」

俺がジト目で尋ねると、夜空は俯く。

「それならこういうチャンスは無駄にすんなっての。んじゃな」

と言って、俺はまだ何か言いたげな夜空を残して図書室へ向かった。



***



数分後、俺は図書室の前で溜息をついていた。
なんか今日はやたら人が多く、俺が入ることで沢山の人を追い出してしまいそうでかなり気まずいのだ。

「……どうすっか」

教室はダメ。図書室もキツイ。
じゃあ昼休みが終わるまでどこで時間を潰せというのか。


どうする? >>136
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/17(火) 22:19:13.93 ID:SAeTsaOAO
理科のスカートの中
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 22:19:52.07 ID:IsI/x2bSO
関東ェ…
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/17(火) 22:23:28.87 ID:bdBe7TUIo
安定の「理科のスカートの中」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/17(火) 22:23:30.04 ID:HdJtmuCAO
ですよねー
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/17(火) 22:23:59.57 ID:PfoRrO+c0
生徒会長に会いに行く
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/07/17(火) 22:50:56.19 ID:tq5LjjmD0
困ったらワンチャン理科のスカートの中だな
142 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 22:57:16.40 ID:YFpFztNQo

「理科ああああああああああああああああ!!!!!」

「きゃっ!!///」

「ッ!?」

俺はいつも通り理科に突撃する。
しかし、なんと。
思いっきり理科のスカートの中に突っ込んでしまった。

「う、うおおっ!? え、な、何でいつもみたいに迎撃しないんだよ!!」

「理科……先輩になら…………」

「え……い、いや、な、何言って……!!」

かなり焦る。
いつも俺が飛び込む→理科が迎撃する、というのが一連の流れだったのでこういうイレギュラーを混ぜられると困る。

すると、理科がニヤリと笑う。

「ふふ、先輩。理科は先輩が望むのなら構わないと言ってるんですよー?」

「う、うぐ……」

「……はぁーあ。やっぱ先輩はヘタレですねぇ」

「わ、悪かったな!」

結局主導権は握られ、からかわれることになる。
もう先輩後輩もくそもない。

「あっ、そうだ、猫型ロボットはどうでした?」

「おう、大人気。やっぱすげーなお前」

「せ、先輩に褒められると理科……ッ!! イッちゃいます!!」

「あー、はいはい」

「そこまで流されるとショックです」

そう言って肩を落とす理科。

「あと夜空も大人気でさ。アイツみんなの前でネコの鳴き真似なんかしてさ」

「ま、マジですか!? 先輩、録音は!?」

「してねえよ」

「ちっ、使えねえプリンだ」

「お前ひでえな!?」

俺は理科の毒舌に叫ぶ。
143 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/17(火) 22:59:41.98 ID:YFpFztNQo

「それに、夜空のやつ、今日は他の女子と一緒に飯まで食ってんだよ」

「ほうほう、それで先輩はちょっと寂しくなってここに来たと」

「んー、まぁ、それもちょっとあるな」

俺は苦笑する。

「けど、アイツがああやって誰かと仲良くなるのは嬉しい。
 例え他人事でも、俺みたいに友達いねえ奴がああやってクラスに溶け込んでいくのを見ると、ちょっと希望が見えてくるしな」

「……そうですか。まぁでも、小鷹先輩にだって、いつかきっとそうやってクラスに馴染める日が来ますよ。
 小鷹先輩のように、人の幸せを素直に喜べる人って案外少ないんですよ。それだけ、良い人だって事です」

「……はは、だといいな」

理科は優しく微笑み、俺もつられて笑っていた。
こうして言ってくれる人がいるだけで、だいぶ違う。
俺は本当に理科に助けられてばかりだと思った。

その後、俺が手に持ったヤンキー漫画を読み始めると、

「……先輩、女の子と部屋で二人きりなのにヤンキー漫画読むってどうなんですか」

「これが結構面白いんだって。幸村のやつセンスあるよ」

「そういう事じゃないですよ!! もう、もっとなんかあるでしょう、セックスとか!」

「それはねえよ」

「じゃあSMプレイとか!」

「変わってねえよ」

俺は溜息をついて漫画を閉じる。
なんかこのまま放っておいてもうるさそうなので、構ってやることにするか……。


なにする? >>144
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/17(火) 23:00:46.03 ID:SISCEFAPo
星奈を拷問
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/18(水) 00:26:20.90 ID:r5F5a7LTo
そろそろあのじゃじゃ馬を躾けてやらないといかんな
146 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 00:30:55.22 ID:3SWAkkcoo

「あっ、そうだ先輩。ちょっと発明品の実験体になってもらえませんか?」

「は、はぁ? なんだよ急に。どんなのだ?」

「以前の嘘発見器を覚えていますか? あれからどうやって人の本音を聞き出すか考えたんですけど……」

「おー、それで?」

俺は興味津々で尋ねる。
何だかんだ理科の発明は面白いものが多いからだ。

「やっぱり拷問が早いと思うんです」

「何言ってんのお前!?」

なんか凄い残念な事言い出したぞこいつ。

「あっ、でも拷問って言ってもくすぐるだけです。大したことないですよ」

「くすぐるだけってな……それでもキツイものはキツイだろ。てか実験台なんて嫌だぞ」

「ええー、何でですか!!」

「お前、この前の握手の練習用の機械バグってただろ。アレ見て誰がやりたいなんて思うか」

「うっ……それは…………」

あの時は夜空のせいもあるが、それでも嫌なものは嫌だった。

「仕方ありませんね、それじゃあ誰か手頃な人でも捕まえますか。幸村くんとか」

「やめとけ。つか幸村“くん”?」

「あぁ、いずれ男になるんでしょ? その時に困らないようにって」

「あー……そうだな」

その時まで親交があればいいけどな。
俺が苦笑いしながらそんな事を考えた時――――。


「羽瀬川小鷹!!!」


バタン!! と、急にドアが大きく開かれた。
そこに居たのは。

「柏崎……星奈…………」

俺はうんざりとした声を出した。

金髪碧眼で少しキツイ目付き。
どこまでも偉そうでどこまでも自信満々な、理事長の娘だ。
147 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 00:34:22.55 ID:3SWAkkcoo

「何よその顔は!! あたしだって、あんたの顔なんか見たくもないし、同じ空気も吸いたくないんだけど、仕方なく来てやってんのよ!!」

「あなたも暇ですねぇ、理事長の娘なのに」

「暇じゃない!!」

「……で、今度はなんだよ」

俺が尋ねると、星奈は芝居がかった動作でビシッと俺を指差す。

「苦情処理よ!!」

「苦情?」

「あんた、女の子を誘拐したんですって? 確か三日月……なんたらってのを!」

「…………」

そういやそんな噂が流れてたっけ。

「女の子を拐うとか何考えてんのよ!! やめなさい!!」

「先輩、それもデマです」

「……え?」

理科の言葉にキョトンとする星奈。
この光景、前にも見たな。

「三日月夜空さんは理科部の部員です。活動中にちょっと怪我してしまった夜空先輩を、小鷹先輩がおぶって保健室まで連れて行っただけですよ」

「…………そ、そうなの。それならいいのよ。じゃ、じゃあ、あたしはこれで」

「待ってください」

気まずそうに帰ろうとする星奈を、理科が呼び止めた。
理科の口元には怪しげな笑みが。

なにか、嫌な予感がする。

「な、なによ……?」

「人を疑っておいて、何もなしっていうのはどうなんですかねー? 人として」

「うっ……そ、それは……。そ、そいつの普段の行いが悪いのよ!!!」

星奈は真っ直ぐ俺を指差す。

「でも先輩、それだって聞いた話で、あなたが直接見たわけではないですよね?」

「う……ぐっ……た、確かにそうだけど……ッ!!」

「じゃあ、他のもデマだっていう可能性もあるじゃないですか。現に、今のところ2回連続でデマ掴んでるわけですし」

「そ、それは……!!」

「先輩……やっぱりこういう時って謝罪が必要なんじゃないですかね……?」

「……うっ……くぅ…………!!」

かなり憎らしげに顔を歪める星奈に、余裕の笑みを浮かべる理科。
いや、別に俺は構わないんだけどな……。

「わ、分かったわよ! 謝ればいいんでしょ謝れば!! “ごめんなさい”!! これでいい!?」

「謝って済めば警察はいらないんですよ」

「じゃあどうしろってのよ!!」

ちょっと泣きそうになってる星奈に、理科はさらに細く微笑む。
おい、俺が言うのもなんだけど、かなり怖いぞ理科。
148 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 00:37:00.38 ID:3SWAkkcoo

「言葉ではなく、体で償ってください」

「……な、何やらせる気よあんた…………!!」

「安心してください、性的なものではないです。むしろ、幸福を感じうるものですね」

あー、確かに「笑い」ってそうかもしんないけど。

「……うぅ…………」

「どうしました、先輩。まさか、先輩ともあろう方が謝罪一つできないと?」

「…………うぅぅぅううううう!!!」

「まっ、仕方ありませんか。結局は温室育ちの世間知らずのお嬢様。期待するだけ無駄――」


「いいわ、やってやるわよ!!!」


あーあ、言っちゃった。
俺は気の毒そうな目を向けるが、どうやら星奈は気付いていないようだ。

理科はそれはそれは嬉しそうだ。

「本当にいいんですか?」

「構わないわよ! このあたしにできない事はないわ! 何でもかかってきなさい!!」

こうして、実験台が決まった。



***



「ちょっと、何これ動けないんだけど」

星奈が座らされているのは拘束椅子のようなものだった。
そして椅子の背中から伸びている手。おそらくあれでくすぐるのだろう。

「大丈夫ですよ。先輩はただ理科の質問に正直に答えてくれればいいです」

そう言って手元のリモコンのスイッチを押す理科。
すると、ブゥーンという音と共に、椅子が発光して後ろの手がゆらゆらと動き始める。

そして理科は、不安そうな表情を浮かべる星奈を真っ直ぐ見て、

「この人の名前は何ですか?」

と言って俺を指差した。

「チンピラプリン」

「おい」

俺は思わず突っ込むが、その直後。


「ひっ、ひゃ……ひゃはははははははははははははははは!!!!!」
 
 
149 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 00:42:13.79 ID:3SWAkkcoo

椅子の後ろから伸びた手が星奈をくすぐり始めた。
星奈は必死に体をずらして逃げようとするが、がっちり固定されているためどうにもならない。

「あひゃ、あっ、ははははははははははははははは!!! ひっ、ひー!!!
 あ、あんたぁ……ひーっ!! あたっ、あたしにやにゃやっっやっやあひっっひっひ!!! こ、こんなぁ……ぶひゅっっ……ことして……くふっふふふふうううううううううう!!!」

「早く言わないと辛いですよ?」

「わ、分かった!! わひゃはあああああひゃあややひゃやややややや!!! は、羽瀬川……いひっひっひっいいいいいいい!!!
 こ、だ、ひゃははははは、小鷹ァァあああああひひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!」

自分の名前でこれだけ爆笑されたのは初めてだ。
俺は何とも言えない気持ちになりながら理科を見ると、彼女はうっとりとした様子で星奈を見ていた。
こ、こいつ……。

「はい、よくできました♪ では、次の質問は……」

「はっ……ふっ…………げほっ! ま、まだ、あんの……?」

「もちろんですよ。これだけで終わるわけないでしょう。じゃあ次の質問はどうしますかね……うーん、じゃあ『今日ウンコしましたか?』」

「は、はぁ!? そ、そんなの……」

星奈は顔を真っ赤にして抗議しようとするが、即座にくすぐりが再開される。

「いひゃああああああああ!!! ひゃひひひひひひひっふっふっふうううううううううううう!!!!!
 あ……あああああははははっはははっっはっはひひひひひいいいいいいいい!!!」

「早く答えてくださいよ」

「い、いえっっひっひいいいいい、言えるわけきゃきゃやややっっやあああきっひっひっひひひひひ!!!
 ないいいいいひひひひいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

「じゃあずっとそのままですね」

「ひゃああああひひひひひひいいいいいい!!! わ、分かっひひひふふふうううううううう!!!
 分かったからああああははははひひひっっっっっっひゃああああああああああ!!!」

「さっさと言ってください」

「くっふふうううううふっひいいいいいい!! し、しまっああああはっっはっっははあああああ!!
 しましっいいひっひいいいいいいたあああああああふふふううううはひいいいいいいいい!!! しましいいひひひいいたああああああああっっはっひいいいいいい!!!」

くすぐりが止まった。
今のでちゃんと認識されるって凄いな。

理科はわざとらしく何度か頷いて、

「ほう、お嬢様でもウンコするんですか。一つ勉強になりました」

「うっ……ひっく……ふぇぇ…………!!」

「お、おい理科、泣いてるって。もうさすがにやめねえか?」

星奈は顔をグシャグシャにして泣いていた。
これではせっかくの綺麗な顔も台無しで、かなり残念な事になっている。

理科はそれを少し無表情で見て、


「……先輩。理科、目覚めてしまったかもしれません」

「何に!?」
 
 
150 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 00:44:08.87 ID:3SWAkkcoo


ヤバイ。
理科の目が……ヤバイ。

「うふっ……ふふふふ……じゃあ星奈ちゃーん? お次はそのウンコの色と大きさ言ってみようかぁ……?」

鬼だ。
コイツ、鬼だ。

「い、いやぁ!! ひっく……許してぇ!! お願いだから……ぐずっ………ゆるじでええ!!! なんでもずるがらぁぁあああ!!」

「じゃあウンコの色と大きさ言ってくださいよぉぉ? うふふふふふふ!!」

「やめとけ」

さすがに見かねた俺は、理科の後頭部をポカッとはたく。

「も、もう冗談ですって小鷹先輩。あはは」

「ホントか……?」

正直さっきの目を見せられると信用できない。

「でも、まだデータが不十分なんですよね。じゃあ先輩が何か質問考えてくださいよ、優しいものでもいいですから」

「俺が?」

「はい。なんか理科だと鬼畜なものしか思い浮かびません。下の毛の手入れの仕方とか」

「分かった俺が決める。お前はもう何も言うな」

このまま理科に任せていると、リアルに星奈が精神崩壊を起こしそうだ。

……それじゃ、どんな質問をしてみようか。


>>151
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/18(水) 00:45:15.68 ID:3k/rLpbAO
友達ってどうやったらできるのか
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/18(水) 00:46:47.33 ID:r5F5a7LTo
友達いる?
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/18(水) 00:56:58.77 ID:PeMbxMZ5o
理科鬼畜過ぎる……夜空より酷いだろwwww
154 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 01:46:28.16 ID:3SWAkkcoo

「えーと、じゃあ簡単な質問するから……な?」

「ひっく……ふぇぇ…………」

気まずい。

拘束椅子に座って泣いている少女の前にヤンキー。
たぶん見つかった瞬間俺の高校生活は終わる気がする。

俺はとりあえず、今一番気になっている事を尋ねてみる。


「――友達ってどうやったらできるんだ?」


すると星奈は、泣いて赤くなった目を床に落として、

「……知らない」

「なっ、お、おい、ちゃんと答えねえとまたくすぐりが…………」


……来ない。


俺は首を傾げて理科を見る。

「……またバグったのか?」

「星奈先輩、今日のウンコの色と形は?」

俺が止める間もなく、そんな事を言いやがった。
当然、星奈が答えられるはずもなく、

「いやぁぁははははひいいいいいいいいいいいい!!! ぴゃああああはいひいいいいいっっふうううううう!!!!!」

理科はリモコンでくすぐりを止める。

「故障ではないみたいですね」

「お、お前の血は何色だ」

ともあれ、故障じゃないという事は……。

「……もしかしてお前、友達いないの?」

「そ、そんな事…………ひゃああああああああひいいいいい!!! あっひいいいいっひいいくっふっふびゅふふふふ!!!!!
 い、いなああああはははははいぃぃいいいひひひいいいわよおおおおははははははぁぁぁぁ!!!!」

「……マジで?」

「うぅ……ぐすっ……ひっく…………!! 悪い!? 友達いないのがそんなに悪い!?」

目に大粒の涙を浮かべて怒鳴られた。
俺は思わず一、二歩下がる。
155 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 01:48:02.90 ID:3SWAkkcoo

「け、けど、いつも取り巻きみてえの連れてるじゃねえか」

「あれは下僕。友達なんかじゃ……ない…………」

「女子の友達は? お前ならいくらでも……」

「成績優秀、スポーツ万能のお嬢様。小鷹先輩、同性の方にとってはどちらかというと嫉妬の対象かもしれません」

「ふ、ふん!! 愚民があたしのような崇高な存在に嫉妬するのは仕方ないかもしれないわね!」

なるほど。
ただ成績優秀でスポーツ万能ってだけならまだしも、この性格だ。
そりゃ他の女子は面白くないだろう。

だが、これが本当の星奈の性格なのだろうか。
たぶんみんなが見えていない部分、それがあるはずだ。

だって、こいつは――――。

「何でお前は俺に突っかかってくるんだ?」

「……あんたの事なら、みんながあたしを頼ってくれるから。
 どんなに嫌われてても、みんなの役に立つことができれば、いつかきっと…………」

「…………そっか」

「もういいですよ先輩、データは取れました」

その理科の言葉で試験は終わった。


来る前よりも明らかに疲弊して、笑い過ぎで声が枯れて、泣き過ぎで目を腫らした星奈はトボトボと去っていく。
その後ろ姿はとても小さく見えた。
156 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 01:48:32.22 ID:3SWAkkcoo

今日はこの辺で終わり
明日は書けるか微妙かも
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/18(水) 07:31:08.83 ID:/4yDWKLAO
うむ、乙
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/18(水) 10:58:33.70 ID:X8uO0eE/o
>>1が来るまで理科のスカートの中で待ってるわ
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/18(水) 11:28:51.41 ID:r5F5a7LTo
じゃあ俺は星奈のスカートの中で待ってるわ
160 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 14:43:17.86 ID:3SWAkkcoo

「「友達と遊ぶ練習がしたい?」」

放課後の理科室。
俺と理科は同時に同じ言葉を発する。

目の前には少し赤くなっている夜空。

「あ、あぁ。実は今週の日曜に買い物にでも行こうと誘われてな。ほら、今日の……」

「あー、昼飯一緒に食ってた人達か」

俺はぼんやりと思い出す。

「戦場のせいかも、日々のたんれんから。さすが夜空のあねごです」

「……い、いやお前の言ってることはよく分かんねえぞ幸村…………」

「んー、理科は構いませんけど。暇ですし」

それは俺もそうだ。友達いないし。
幸村もコクンと頷いている。

夜空は安心した顔で、

「そ、そうか、付き合ってくれるか!」

「でも買い物といってもどこまで行くんですか?」

「えっと……永夜まで」

「永夜? 結構遠くまで行くんだな。別に買い物くらい駅前の商店街とかでいいじゃねえか」

「先輩、女の子がお買い物って言ったら、そりゃちょっとは洒落たところまで行きたいものでしょう」

「えんせい、ですか。よりおおくの戦果をもとめるのなら、とおくまで侵略するものですね」

永夜とは隣の県の中心都市で、ここ遠夜から電車で20分程行ったところにある。
こことは比べ物にならない程賑わっているらしく、デパートや飲食店が数多く立ち並んでいるらしい。
俺も小さい頃に両親に連れられて行ったことはあるのだが、よく覚えていない。

「じゃあ土曜の午後1時に遠夜駅に集合って感じでいいか?」

俺のその言葉に、理科部の全員が頷いた。
161 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 14:45:13.69 ID:3SWAkkcoo



***



土曜日。
俺が集合時間の10分前に待ち合わせの場所に到着すると、既に他のメンバーは全員いた。

理科はいつも通りの制服に白衣。
夜空はデニムのホットパンツに、へそが出ているシャツ。

そして突っ込みどころは幸村だった。
ピッチリとしたジーパンに、白いドクロやら蛇やらが描かれた黒いシャツ。
腰にはシルバーチェーンがジャラジャラとぶら下がっている。

なんていうか、俺は良く分からないがパンクとかいうやつなんだろうか。

「ゆ、幸村……?」

「どうしました、あにき」

「あ、いや、えっと…………何でもない」

結局俺は何も言えない。
まぁ、他人のファッションをとやかく言うのはちょっとアレな気もするし。

でも、なんていうか幸村は、男らしさというのを色々な方向に勘違いしている気がする。

そんな事を考えていると、理科が話しかけてくる。

「先輩、私服は普通なんですね。もっとヤンキーっぽいの持ってないんですか?」

「持ってねえよ!!」

「えー、つまんないですねー。ここはウケ狙いでそういうの着て来てくださいよー」

「誰がそんな体を張ったボケかますか。てかお前だっていつも通りじゃねえか」

「あれ、先輩。もしかして理科のエロ可愛い服装とか期待していましたかー? ふふふ、それは失礼しました」

「エロ可愛い??」

「うわっ、ホントに残念な目で見られた!?」

そんな感じで落ち込む理科。
すると、今度は夜空が話しかけてくる。

「そ、その、私の服はこれでいいか? ど、どう思う?」

「どうって…………なんつーか、せ、セクシー?」

「ぶっ!!?」

俺が少し戸惑いながら感想を述べると、夜空が一気に顔を真っ赤にする。
162 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 14:47:43.24 ID:3SWAkkcoo

「なっ、ば、バカな!! 理科、幸村!! 貴様達はどう思う!?」

「とてもお似合いだと思いますよ、正直夜空先輩がここまで服を着こなせるのは予想外でした。
 理科、ホットパンツのお尻は水着とか下着よりエロいと思います」

「エロかっこいいです、あねご」

「う、うそだああああああ!!!」

さらに顔を赤くする夜空。
理科の指摘に、バッグで尻も隠す。

「そんなわけはない! 雑誌には『ボーイッシュスタイル』と書かれていた! そんなエロいなどという感想が出てくるはずがない!!」

「あ、あのな、夜空」

俺は苦笑いを浮かべながら。

「そういう雑誌に書かれている『ボーイッシュ』ってのは何も男みたいな格好っていう意味じゃないぞ?」

「えっ!?」

「あくまで中性的な雰囲気の中に、女の子の可愛らしさを加えるといった感じですね。理科はバッチリ成功していると思いますけど」

「はい、かっこいい上にかわいいとは。さすが夜空のあねごです」

「うっ……ぐ、ぐぅぅ……………!!」

みんな褒めているのに、夜空は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
体全体をもじもじとひねらせ、本当に恥ずかしそうだ。

「て、ていうか夜空。お前女子と一緒に遊ぶのに男みたいな格好していくつもりだったのかよ」

「だ、だって、その、あまり女の子らしい服装というのは…………恥ずかしいし」

「なんで女の子が女の子の格好するのが恥ずかしいんですか……」

溜息をつく理科。
なんていうか、夜空は色々大変そうだ。
こんなんで明日の本番でまともに遊べるのだろうか。


***


電車に揺られること20分。
永夜市は土曜日という事もあって、どこを見ても人人人だった。

そして、問題発生。

「うぅ……気持ちが悪い…………」

「夜空、大丈夫か? 電車で酔ったのか?」

「違う……私は人混みが苦手なんだ…………」

「ちょ、それ致命的じゃねえか!! 明日どうすんだよ!!」

「おぇ……り、理科も…………」

「お前もか!!!」

俺も人混みは得意というわけではないが、さすがにここまで弱くはない。
どんだけ人との関わりが苦手なんだよお前ら……。

「あにき、わたくしに考えがあります」

「おっ、どうした幸村」

「この周りにむらがる人間、あにきのお力でふきとばしてしまえばよいのです」

「良くねえええええええええええ!!!」

少しでも期待したのが間違いだった。

さて、どうすんだよこれ。


>>163
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 14:54:38.54 ID:qpyY9gGSO
アイマスク、耳栓装備で手を握って誘導
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/18(水) 14:59:19.80 ID:r5F5a7LTo
小鷹が先頭に立ってメンチビームを出して雑魚散しをして3人を守る
165 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 15:27:20.94 ID:3SWAkkcoo

「あー、もう!! お前らちょっと来い!!」

そう言って俺はとりあえずダウンしている二人の手を取って引っ張る。
幸村もそんな俺の後ろをついてきた。


***


「……よし、これで大丈夫だろ」

「た、確かにこれならば人混みも気にならないな」

「理科、思いつきませんでした……先輩もしかして天才ですか!?」

俺が買ったのはアイマスクと耳栓。
これを付ければ人混みを見なくて済むし、周りの音も聞こえなくなるのでまだマシになるだろう。
まぁ、人の熱気とかには効果ないんだが。

そんなわけで、視覚も聴覚も塞いだ二人の手を引いて、とりあえずどこかで買い物でもしようかと歩く。
しかし。


「君、ちょっといいかな」


そう言って誰かに止められた。
振り返ってみると、そこにはお巡りさんが。

「は、はい?」

「なんか不思議なことしてるね? ちょっと話聞きたいから署まで来てくれるかな?」

「……マジですか」

「うん、マジで」

アイマスクと耳栓をさせた少女二人を引っ張るヤンキー。
考えてみれば相当怪しい。
どうやら周りの人間もヒソヒソ俺を見て何か話している。

「……やだ、誘拐?」

「こわいわねー」

……誤解だ。これは誤解なんだ。
俺は唯一の理解者である幸村へ視線を移す。

幸村はぽーっとこちらを見て、

「あにき、まじぱねえです」

「ぱねえ、じゃねえええええええええええ!!!」



***



結局、解放されたのは少し経ってからだった。
「あまり変な事をしないように」という注意を受けながら、俺はただ頭を下げるしかなかった。
俺以外の者はすでに解放されており、俺だけが署まで連行されてずっと事情を聞かれていたという感じだ。

確か別れ際に、夜空達は駅で待ってるとか言ってたか。
俺はとりあえず合流しようと警察署から歩き出す。

人混みをかき分け、繁華街を歩く。
すると視界の中にあるものが入ってきた、

「……あれ?」


何を見つけた? >>166
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/18(水) 15:45:07.03 ID:X8uO0eE/o
夜空達とはぐれて迷子になってる理科
167 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 16:06:30.32 ID:3SWAkkcoo


「理科……?」


「あっ、先輩!!」

そう言ってフラフラとこちらへ歩いてくる理科、

「何でこんなとこに居るんだ?」

「先輩を迎えに行こうと思って。でも、ちょっと迷っちゃいました」

いつものテヘペロを繰り出す理科。
でもなんか、弱ってるというのが影響しているのかもしれないが。
いつもより、ちょっと可愛かった。

「そ、そっか、仕方ねえな。じゃあ一緒に駅まで戻ろうぜ」

「はいっ!」

理科はそう言うと、嬉しそうに俺の腕に抱きつく。

「お、おい理科!」

「先輩、理科まだちょっと気分悪いです。だから腕貸してください♪」

「うっ……」

そう言われると、どうしようもない。

「わ、分かったよ」

「やった」

理科は本当に嬉しそうな笑顔を見せる。
なんていうか、普通に可愛い。

「……ふふ、これだとデートみたいですね」

「ま、まぁ、そう見えんのか、な」

「というわけで先輩、今度デートしましょう」

「何でそうなるのかが分かんねえよ」

「ぶー、つれないですねー」

そう言って頬を膨らませる理科。
俺は小さく笑って、

「それよりも、俺達はまず友達作りだろ? 夜空だって頑張ってるんだからさ」

「……先輩は夜空先輩の事ばかりです」

「え、なんだって?」

「何でもないですよーだ」

理科はぷいっとそっぽを向いてしまった。
俺は首を傾げるしかない。

すると理科はそのまま顔をこちらに向けないまま、


「小鷹先輩は、夜空先輩の事どう思っているんですか?」


そんな事を聞いてきた。

俺は少し考え込む。
そういえば、夜空にも同じようなことを聞かれたような気がする。

俺は軽く息を吸い込み、


>>168
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 16:08:13.67 ID:iiQOd40Eo
幼馴染かな
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/18(水) 16:08:36.06 ID:v52fFpIA0
わからなくなってる
170 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 16:46:46.67 ID:3SWAkkcoo


「幼馴染かな」


「えっ……ええええええええ!?」

理科が大声をあげる。
周りの人達も何事かとこちらを見ており、少し恥ずかしい。

「なっ……なぁ…………!!! 理科、初耳ですよ!?」

「言ってねえからな」

一応言っておくが、もちろんウソだ。
真面目に答えるのもなんか恥ずかしいのでからかってみただけなのだが、想像以上に理科は動揺している。
これこそからかいがいがあるというものだ。

それからしばらくの間、理科はブツブツと「まさか幼馴染属性が……」などと呟いていた。



***



「小鷹先輩から聞きましたよ夜空先輩!! 何で教えてくれなかったんですか!!」

「……一体何の話だ? というかあまり大きな声を出すな、頭に響く」

「理科どのはよくなられたようですね。あんしんいたしました」

夜空、幸村と合流した俺と理科。
夜空はまだ気分が悪いらしく、理科の開口一番にもただ顔をしかめるだけだ。

理科は今ではすっかり回復しているようだ。
いや、それを上回る驚きで忘れているだけかもしれないが。

理科は夜空に向かって、


「夜空先輩と小鷹先輩は幼馴染なんでしょ!?」


ドサッと。
夜空は手に持っていたバッグを取り落とした。
そしてそれを全く気にしていない。

目を見開いて。
全身を震わせて。
ただただ、目を潤ませて、俺を見ている。

「こ、小鷹……まさか、覚え…………」

「ど、どうした夜空? いやちょっと理科をからかってみただけんだが……」

「「えっ?」」

夜空と理科はキョトンとしてこちらを見る。
171 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 16:58:13.13 ID:3SWAkkcoo

「か、からかったって先輩まさか……」

「あぁ、まさかあそこまでマジにするとは思わなかったぜ」

「も、もうー!! 先輩のバカァァ!! すっごく焦ったじゃないですかあああああ!!!」

「はは、悪い悪い」

「さすがおなごを騙すのがおじょうずです、あにき」

「ゆ、幸村、その言い方はやめてくれ!」

ポカポカと俺を叩く理科に、素直に感心した様子の幸村。
そんな光景を微笑ましく思えて、俺は知らず知らずの内に笑顔になっていた。


しかし――――。


「帰る」


静かに、それでいてよく通る声でハッキリそう言ったのは夜空だった。
そして、そのままクルリと後ろを向くと、足早にさっさと歩いて行ってしまう。

俺達はそれを見て、ただポカンとするしかない。
あまりに急なことに、脳が処理できていないのだ。

だが、すぐに俺は我に返って、

「お、おい夜空!?」

慌てて夜空の腕を掴むが、

「離せ!!!」

大きな力で振り払われてしまった。
そして一瞬見えたその瞳には……涙が浮かんでいた。

俺達は、そんな夜空の後ろ姿をただ黙って見ている事しかできなかった。



***



次の週の月曜日。
朝教室に入ると、夜空はもう登校してきており、いつもの様に自分の席で不機嫌そうに本を読んでいた。

俺は夜空に聞きたいことが色々あった。
結局日曜日は上手くいったのか。
土曜日はどうしてあそこまで怒らせてしまったのか。

明らかに俺のせいで怒っていたので、とにかくその理由を知って謝りたい。
理由が分からない時点で、相手にされないかもしれないが。

「…………うぐ」

俺は夜空の方を見てそわそわする事しかできない。
なんか、話しかけづらい。


どうする? >>172
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/07/18(水) 16:59:51.26 ID:4aiL1ydAO
逃げる
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 17:00:14.04 ID:qpyY9gGSO
ブレイクダンス→コサックを目の前で繰り返し注意を引く
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/18(水) 17:03:42.70 ID:ppgP+jsUo
まぁ星奈の告白からも逃げたしな小鷹
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/07/18(水) 17:30:02.57 ID:R57FsDpl0
あの状況じゃ逃げたくもなるがな
176 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 17:32:49.56 ID:3SWAkkcoo

結局、俺は逃げた。
なんだか夜空と一緒の空間にいるというだけでも気まずくなったのだ。

問題を先延ばしにしているだけだというのは良く分かっている。
だが、まだ心の準備ができていない。
また下手なことを言って、更に夜空を怒らせる。それが怖かった。


とりあえず朝のHRが始まるまで廊下かどっかで時間を潰そうか。
そう考えた時、とあるものを見つけた。


何を見つけた? >>177
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 17:35:09.67 ID:qpyY9gGSO
先生の不倫現場
178 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 19:24:33.99 ID:3SWAkkcoo

誰も使っていない空き教室。
そのドアが少し開いていたので、何気なく中を見てみると。

教室でキスしてる男女が居た。

「ッ!!?」

俺は声を上げそうになるのを必死に抑えて中を伺う。

二人共教師だ。
それが神聖な学び舎で、なんか思いっきり。

ぶちゅっといっている。

「……う、うわー」

小声で呟く。
これは早く立ち去った方がよさそうだ、と思い始めた時。


「何かいけないものを見てしまったようだね、少年」


後ろから声をかけられた。
俺は全身をビクッと震わせて振り返る。

そこに居たのはシスターさんだった。
歳は俺と同じくらいだろうか。
銀髪にブルーの瞳、ちょうど「美人」と「可愛い」の中間に位置するような整った顔立ち。

俺は思わず見惚れてしまった。

「んー、おーおー。朝っぱらからハッスルしちゃってんねぇ」

「え、あ、あの、止めなくていいんすか?」

「えー、だって止める理由もないじゃん」

面倒くさそうにそんな事を言いながら尻をポリポリと掻くシスター。

「つーかさ、子供に悪影響とかって言うけども、今日び大人のキスを見て悪影響受ける高校生なんていんのかね。
 それはそれで珍しい純情くんだとは思わないかい?」

「ま、まぁ、そうですけど……」

「さすがにズッコンバッコン始めたら止めるけどさー。別にキスくらいはいいんじゃね。
 クソ真面目でお利行さんな先生よりも、ちょっとくだけてた方が感じもいいじゃん?」

「いや、でも先生」

「んー?」

俺は気まずさを感じながら、教室の中を指差す。


「――確か二人共既婚者です」


「そりゃダメだ。悪影響あるわ」

俺の言葉を聞いた瞬間、銀髪のシスターさんはずかずかと教室の中へ入っていった。
何ていうか、色々と豪快な人だ。

俺はどうしようかと迷ったが、そろそろHRも始まりそうだったので教室へ戻ることにした。
179 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 19:26:36.33 ID:3SWAkkcoo



***



放課後。
理科室には理科と幸村、そして夜空が集まっていた。

意外なことに夜空はいつもの様子であり、この前の事はなかった事の様に振舞っている。
それならわざわざ蒸し返す事もないかと、俺も普段通り接することにした。

「で、夜空。日曜は結局どうだったんだ?」

「断った」

「「ええ!?」」

当然のように言う夜空に、俺と理科が驚く。

「当たり前だろう。人混みであれだけ気分が悪くなるんだ。行っても迷惑をかけるだけだ」

「うーん、確かにそうかも知れませんけど……せっかくのチャンスですのに…………」

理科は納得いかない様子だが、当の夜空はそれ程気にしていないようだ。

「まぁこの体質が友達作りに支障をきたすのなら、追々何とかしていけばいいさ。
 それより、早く今日の活動を始めないか」

「夜空がそう言ってんならいいんじゃねえか、理科」

「うーん、まぁ、そうですね」

「さきの目標をめざすことはりっぱですが、まずはあしもとを固めるということですね、あにき」

「えーと、うん、そうなの……か?」

幸村の言葉に、俺は良く分からないままに肯定する。

一方で理科はいつものようにホワイトボードの前まで歩いて行き、


「それでは、今日は何を作りましょうか?」


>>180
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/18(水) 19:32:20.81 ID:r5F5a7LTo
みんなで遊べるボードゲーム
を作ってクラスの人と遊ぶという口実を作る
181 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 20:09:36.45 ID:3SWAkkcoo

「ボードゲームなんかどうだ?」

俺はとりあえず提案してみる。
昨日小鳩と人生ゲームをやってみたら、二人でも意外と楽しめた。

そして理科部の部員も皆肯定的なようだ。

「ふむ、確かにそういったものは気楽にできていいな。ゲーム中ならば普通に話せるかもしれないし」

「おなじ卓をかこむのはどうほうの基本ですね」

「分かりました! 理科は普段はゲームの開発とかにも協力してますからね、任せてください!」

というわけで、ボードゲームを作ることに決まった。


***


「名付けて、『友達作りゲーム』です!」

「えらくストレートだな」

理科が出したのは見た感じ普通のボードゲームだ。
人生ゲームのようにマスの上で動かす車、車に挿すプレイヤーを表したピン。

だが、人生ゲームと違うところもある。
それは、人を表すピンが多いという事だ。
つまり、それが友達だ。

このゲームはお金が0、もしくは友達が0でゲームオーバーとなる。
スタート時はお金は1000円、友達は2人だ。

「なっ……初めから友達が居るだと…………ッ!!!」

「いや、だってそうしないとゲームになりませんし」

「――俺らだったらスタートと同時にゲームオーバーだな」

俺が暗く笑いながら言うと、他の部員の表情まで暗くなる。

「ていうか、ゲームの名前が露骨過ぎないか? 友達いない奴がこのゲームを勧めるっていうのは、なんか哀れな感じがするぞ」

「そんな事気にしている場合じゃないですって。
 たぶん一般的な人から見れば一人でお昼を食べたり授業でペアが作れない時点で十分に哀れです」

「そ、そんなハッキリ言うなよ……」

確かに昼飯はいつも一人ポツンと食ってるし、『はい二人組作ってー』なんて言われると胃が痛むけどさ。

「つまりこのゆうぎは、どれだけはいかを従えてどれだけ金品を奪略できるか、といったものなのですね」

「いや、なんか違うぞ幸村。もっと、なんつーか、平和的な感じでな……」

「なるほど、あくまでひょうめんじょうは平和なように見せかけておいて、裏では……」

「表も裏も平和だっての!!!」

幸村とそんな会話をしている内に、理科は準備を終えたようで、

「それではテストプレイしてみましょうか」

そう言って、まずは理科部でやってみることになった。



***



順番はサイコロで夜空、俺、理科、幸村となった。

「よし、じゃあ始めるか」

夜空がサイコロを振る。目は3。
止まった先のマスにはこう書いてあった。


>>182
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 20:11:02.00 ID:qpyY9gGSO
株で失敗☆借金3億マルク
183 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 20:45:28.89 ID:3SWAkkcoo

『株で失敗☆借金3億マルク』

夜空は破産してゲームオーバーとなった。
彼女は少し呆然とした後、

「おいコラなんだこのふざけたマスは!!!」

「いやー、ほらいきなりゲームオーバーというのもなかなかウケると思いません?」

「思わねえよ!」

俺も同じようにダメだしする。
そりゃそうだ。
せっかく友好を深めようとしているのに、開始早々脱落というのは、自分としても相手としても気まずい。
脱落者はただ他の人が楽しんでいるのを眺めて、他の人は気を使ってあまりはしゃげなくなる。

「むー、個人的には結構アリだと思ったんですけどねー。ヌルゲーじゃつまらないじゃないですか」

「このゲームの趣旨は『友達作り』だ!」

「あっ、そうでした」

理科は本気で忘れてたらしく、テヘペロする。
クリエーターというのは創作中に夢中になりすぎてしまうのだろうか。

とにかく、ここは修正箇所としてメモしておき、ゲームを続ける。
次は俺の番だ。サイコロの目は4。
そのマスに書いてあったのは――――。


>>184
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 20:46:01.05 ID:muCX0M30o
財布を拾う
警察に届けるなら友達を一人
届けないのなら一万円貰う
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/18(水) 20:46:14.22 ID:7CUQg7k8o
次の順番の人にキス
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage saga]:2012/07/18(水) 20:46:42.83 ID:Pa5NXAYn0
今1ユーロおよそ96円、1ユーロ1.95ドイツマルクだからキリ良く2ドイツマルクとして
1ドイツマルク48円、3億マルクだから日本円にしておよそ144億円…だと…?!
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/18(水) 20:50:53.97 ID:EXhLL6ER0
1923年ならパンも買えないな
188 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 21:00:51.38 ID:3SWAkkcoo

『財布を拾う
 警察に届けるなら友達を一人
 届けないのなら一万円貰う』

俺は見た瞬間、

「友達だ!!」

迷いなく友達を選んだ。
シチュエーション的には、財布の落とし主と友達になったのだろうか。

「さすがあにきです、その者を利用して1万円いじょうをかせぐおつもりですか」

「ちげえよ!! 友達はなぁ……金じゃ買えねえんだよ…………!!」

「毎月1万やるから友達になってくれ、と言えば誰かなってくれそうだけどな」

「それは友達じゃねえ!!」

なんか、他の部員の反応が酷い。
お前らそれでも友達作るつもりがあるのか……。

「まぁ、確かにあのお嬢様も、お金は持ってるでしょうけど友達いないみたいですしね」

「お嬢様?」

夜空が首を傾げる。

「柏崎星奈先輩ですよ。あの人も友達いないみたいです」

「……はっ、いい気味だ!!」

「よ、夜空。お前アイツがリア充だから嫌いだったんじゃねえのかよ」

「成績優秀でスポーツ万能なお嬢様の時点で大嫌いだ!!」

ダメだこいつ。

俺が呆れて溜息をついていると、理科がサイコロを持つ。

「それでは次は理科の番ですね!!」

出た目は6。
止まったマスに書いてあったのは――――。


>>189
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/18(水) 21:01:34.36 ID:X8uO0eE/o
小鷹先輩とセックス(☆理科限定☆)
190 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 21:27:07.34 ID:3SWAkkcoo


『小鷹先輩とセックス(☆理科限定☆)』


「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」

「この変態がァァ!!! こんなの無効に決まっているだろう!!!」

「ぐっへっへ……もう遅いです。さぁ小鷹先輩!!!」

顔を真っ赤にして怒る夜空を気にもとめず、よだれを垂らしながらこちらに寄ってくる理科に。
俺は自分の車に挿さっていたピンを抜いて、渡した。

「……へ?」

「このゲームじゃそれが俺だろ? 仕方ねえから、セックスでもなんでもやれよ」

「…………」

残念無念な表情でこちらを見る理科。

だが、俺は舐めていた。
こいつは、本物の変態だった。


「あっ……ああ!! こ、小鷹先輩、そんなとこ……ああんっ!!! り、理科、おかしくなっちゃいましゅううううう!!!」


な、なんかピンとピンを怪しげにすり合わせながら変なこと言ってる!!

「お、おい待て待て待て!!」

「んはぁ……!! ダメですぅ……そ、んんっ、そこは汚いからぁぁ……ぁぁああんっ!!」

「おい止めろこの変態!!///」

俺は焦り、夜空は顔を真っ赤にしている。
ちなみに幸村はいつも通りの無表情だ。

理科はもう完全にノッてしまっているようで、

「んんっ、ち、ちがっ……そっちじゃないですよぉ。ふふ、こっちです……んんっ、ああ、は、入って……小鷹先輩のが、ああんっ!!」

「分かった、俺が悪かった!! 俺が悪かったからああああああああ!!!」

結局、それから理科が元に戻るまで数分かかった。
最後の方はもうなんか、本当に聞くに耐えなかった。夜空なんか耳塞いでたし。

「それでは、次はわたくしですね」

そう言ってサイコロを持つ幸村。
俺と夜空はもう疲れきっていて、ろくに反応もできない。

サイコロの目は2。
マスに書いてあった言葉は――――。


>>191
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/18(水) 21:28:33.74 ID:3k/rLpbAO
三マス戻る
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/18(水) 21:28:38.94 ID:r5F5a7LTo
スク水に着替えて艶かしいポーズをとる
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/18(水) 21:31:30.11 ID:r5F5a7LTo
畜生あと5秒早ければ…
194 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/18(水) 21:52:32.88 ID:3SWAkkcoo


『三マス戻る』


「……おい、理科。ここミスだろ。まだ二マス目なのに三マス戻るってなんだよ」

「いえ、あってますよ。実はここのボタンを押せば……」

理科がボタンを押すと、なんとスタート地点から新たに伸びる道が現れた。

「おおっ、何だよこれ裏面ってやつか?」

「えぇ、ゲームには付き物でしょう!」

「やっぱ分かってんなお前!」

確かにゲームで裏面というのはワクワクするものだ。
俺は珍しく理科に感心するが、夜空や幸村はよく分かっていないようだ。

「では、わたくしはこちらへ進めばよいのですか?」

「はいっ! ふふ、通常ルートが普通の学園生活であるのに対して、こっちは闇のゲームですよ……!」

まるでどっかのカードゲーム漫画のように話す理科。
見てみると、確かに全体的に暗い雰囲気の絵柄だ。

幸村が止まったマスを見ると、

『ヤクザの世界に入る』

とだけ書いてあった。
……ヤクザってもはや友達作りとかそういう問題じゃなくね?
確か兄弟とかっていうんじゃなかったっけ。



***



そんなこんなでゲームを続ける三人。
すぐに脱落してしまった夜空はただ見ているだけでつまらなそうだが。

最初こそアレなマスばかりだったが、次第に落ち着いていき、今では普通に楽しめるくらいにはなっていた。
みんなお金は1万円を越え、友達も5人以上いる。
幸村なんか所持金が50万を超えてインフレが激しい。

夜空は小さく舌打ちして、

「なんだこのリア充どもは」

「ゲームの中にまでキレるなよ……」

俺はドン引きしながら、サイコロを振る。
出た目は5。
止まったマスに書いてあったのは――――。


>>195
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 21:53:58.35 ID:qpyY9gGSO
酒呑んで暴れる。友達2人減る
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/18(水) 21:55:05.01 ID:gGp6Q7iAo
ほかのプレイヤーから1万カツアゲ
周りにばれて友達が一人に
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/07/18(水) 23:35:33.19 ID:FE5PJvMR0
幸村がヤーさんの世界で出世してる!?
198 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 00:18:25.87 ID:6TwGpxhro

「ぐっ……!!」

俺は車に挿してあるピンを2本抜く。
ごめんな、明博、友和…………。

「うわー、酒乱ですか先輩。結婚したくない男のタイプですね」

「俺は酒弱くねえって」

「なんだ小鷹、その飲み慣れているような発言は」

「それはもちろん、あにきはよるのていおうとも呼ばれるお方ですから」

「呼ばれてねえよ!! 父さんによく付き合わされたんだよ」

聞いた話によると父さんだけでなく死んだ母さんも相当強かったらしく、これはもう遺伝というやつだろう。
といっても、小鳩が酒に強そうなイメージはわかないのだが。

「ほうほう、では今度みんなでお酒でも飲んでみます? なんだかリア充みたいじゃないですか!」

「バカを言うな。そんなの見つかったら一発で廃部だろう」

「ですよねー」

理科部のメンバーが酒を飲んだ時のことを想像してみる。

……たぶん幸村はすぐ寝てしまうタイプではないだろうか。
だが、夜空と理科は面倒くさそうだ。特に理科。


「それでは、次は理科の番ですね!」

理科がサイコロを振る。出た目は1。
止まったマスに書いてあったのは――――。


>>199
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 00:20:03.59 ID:lJEvYtBro
ゲームオーバーになった人を1人だけ復活させれる
200 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 00:43:05.24 ID:6TwGpxhro


『ゲームオーバーになった人を1人だけ復活させれる』


「ッ!!」

これに真っ先に反応したのはもちろん夜空だ。

「えー、理科にメリットないじゃないですかー」

「ふふふ、まぁ私がリタイアしたままであるはずがないな」

「でもこれって任意ですから別に夜空先輩を復活させなくてもいいんですよね」

「な、なに!?」

夜空が慌てる。

「だってー、なんでわざわざ敵増やさなきゃいけないんですかー」

「き、貴様が考えたマスだろう!!」

「まぁそれはそうなんですけど……あっ、そうだ」

理科は何かを思いついたようだ。

「では取引をしましょう先輩。友達を一人ください」

「なっ……!!」

夜空がゲームオーバーになった原因は破産だ。
復活する場合は、どうやら100円の状態から始めるようだが、友達は変わらないので初期の2人のままだ。

そして、このゲームはプレイヤー間でも友達や金のやりとりも認められている。

「ほらほら、いいでしょう友達の一人くらい〜。売ってくださいよー」

「ぐぅっ…!!」

「ふふふ、それでいいんです」

夜空がピンを一本渡すと、理科は満足気に微笑む。
なんか端から聞くと、とんでもない会話だな。

そうやって、夜空は復活した。
しかし、株であんだけ借金して、どんな手を使えば復活できるのだろうか。


「では、次はわたくしですね」

幸村がサイコロを振ると、出た目は3。
止まったマスに書いてあったのは――――。


>>201
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 00:46:19.36 ID:obYOzuGSO
連帯保証人になります。誰か選択して。今後その人が借金できたら貴方が支払います
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/19(木) 00:59:02.45 ID:lJEvYtBro
なんという恐ろしいゲーム
銀次郎が作ったかのような盤面だ
203 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 01:15:11.83 ID:6TwGpxhro


『連帯保証人になります。誰か選択して。今後その人が借金できたら貴方が支払います』


「もちろん、あにきです」

幸村は少しも考える素振りを見せずにそう言った。
ていうかヤクザが連帯保証人ってなんかおかしくないか。

「お、おう、サンキュ」

「いえいえ、しゃていとしてとうぜんですから」

ちなみにこのゲームでは幸村はもはやヤクザの幹部クラスにまで昇進している。
……そんな奴の兄貴が普通の高校生活送ってるってどうよ。
なんか設定的にはドラマとかにありそうな気もするが。

「ぐっ……幸村! 財政的には私のほうがピンチだぞ!」

「二君に仕えるのはもののふにあるまじきことです」

「さすが小鷹先輩。友達はいませんけど、人をパシリにするのがお上手ですね」

「んな事ねえよ!!」

俺は失礼な物言いに反論する。

「つーか幸村。一応言っておくけど、現実ではこういう連帯保証人とかには絶対なったりするなよ?」

「あにきならば問題ないです。わたくしは、あにきのお役に立てるだけで嬉しいのです」

そうやって可憐に微笑む幸村に。
俺は少し、見惚れてしまった。

いやいやこいつは男……じゃねえんだ。
それならドキドキしても問題ないじゃねえか、うんうん!

「むっ……」

「ふーん……」

なんか夜空と理科に睨まれた。



***



その後、ゲームは終盤にさしかかり、いよいよゴールが見えてきた。
一位はおそらく幸村になるだろう。今や組のボスで、金も友達(ていうか部下?)も俺達と比べ物にならない。
ていうか、これ絶対裏面行った奴が勝つ……ゲームバランス悪すぎだろう。

ちなみに幸村は、「この者達はみなあにきのしゃていです」とか言いながら友達を渡そうとしてきたが、それは断っておいた。

「……とりあえずビリだけは避けたいな」

「えぇ、なんかゲームでも友達居ないってなんかアレですからね」

次は夜空の番で、サイコロを握る。
終盤になって、マスの効果も厳しいものが増え、一発で命取りになるようなものも増えてきた。

夜空はサイコロを振る。出た目は6。
序盤で一度ゲームオーバーになった影響もあって、俺達よりは少し後ろにいるのでこれは嬉しいのではないか。
止まったマスに書いてあったのは――――。


>>204
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 01:18:13.96 ID:idSwXnhIO
全員振り出しに戻る
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 01:18:20.74 ID:obYOzuGSO
復讐タイム。今まできっと物凄くひどい目にあった人もいるでしょう。誰か指定してください。最下位の人の友達と財産を交換できます
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/19(木) 01:26:47.33 ID:lJEvYtBro
ゲームが終わらねぇww
207 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 01:37:06.50 ID:6TwGpxhro


『全員振り出しに戻る』


「なぁ、理科。俺は一つお前に言いたいことがある」

「奇遇だな、小鷹。私もだ」

「は、はい……?」

ゴゴゴゴ……と。
何か黒いオーラをまとう俺と夜空。
そして。


「「 お 前 バ カ だ ろ !!!」」


結局、その後も散々グダグダになったので、途中でやめてしまった。
なんかもう、クソゲーにも程が有るというか、ゲームとして根本的に何か間違っているような。
これは改良とかそういうレベルじゃなかった。

そんな評価を下したら、さすがの理科も凹んだのか、準備室にこもってしまった。

「……まぁ何にせよ、これをクラスで出さなくてよかったな」

「あぁ……それが唯一の救いだな」

そんなこんなで今日の活動はお開きとなった。



***



理科室を出た俺は、これからどうするか少し考える。
時間はまだそれほど経っていない。今日はゲームを一つやったくらいだからだ。
小鳩のためにちょっと凝った料理でも作るか。それとも図書室で勉強でもするか。


どうする? >>208
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/19(木) 01:39:18.79 ID:lJEvYtBro
部員を家に誘って飯を作って友達とのパーティをする練習をやってみる
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 01:39:48.39 ID:obYOzuGSO
ちょっと面白そうな実験でもやってみるか
210 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 02:15:37.15 ID:6TwGpxhro

「なぁ、今日ウチ来て遊ぼうぜ! 飯も食ってけよ!」

「おう、行く行く!」

そんな事を話している生徒を見て。

「……そっか。友達ができるとそういう事もあるよな…………」

俺はもちろん家に誰かを読んだことがない。
友達居ないし。
だが、いざという時のためにその練習は必要なのかもしれない。

「……よしっ!」

俺は元来た道を引き返す。



***



「なっ……小鷹の家……だと!?」

「あぁ。ほら友達ができたらきっとウチで遊ぶこともあるだろ? その練習でさ!」

「行きます行きます行かせてもらいます!!!」

「わたくしもよろこんで」

鼻息あらく食いついたのは理科。
幸村も嬉しそうににっこりと微笑んでいる。

一方で夜空は顔を真っ赤にしてうろたえている。

「で、でも、その、家の人に悪いだろう……」

「あぁ、安心しろよ。俺と妹の二人暮らしだから」

「そ、そうなのか。ふ、ふむ……」

「ふふ、夜空先輩だって行きたいんでしょ!?」

「ぶっ、なっ、そ、そういうわけじゃ……ッ!!」

真っ赤になって否定する夜空。

「あー、まぁでも、確かに女の子は男の家に行くってのは抵抗あるのかもな」

「えっ!? あ、いやいや、そんな事は思っていないぞ!! 私は小鷹の事を信用しているからな!!」

「お、おう……その、サンキュ」

「……あっ!///」

自分で言ったことが恥ずかしくなったのか、夜空は俯いていしまう。
いや、俺も正直ドキッとしたけどさ。

「もう面倒くさいですね夜空先輩は!! 行くってことでいいじゃないですか!!」

「……そ、そうだな。それでは、その、お邪魔することにしようか」

そんなわけで、理科部全員でウチで遊ぶことになった。
211 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 02:17:48.89 ID:6TwGpxhro



***



「あんちゃんのあほあほあほあほあほーっ!!!!!」



俺と理科部の部員が家に入ると、小鳩が涙目で叫んだ。
いきなりの事に、俺は目を丸くしてキョトンとするしかない。

「……先輩、幼女監禁は良くないと思います」

「んな事してねえ!! 妹の小鳩だっての!! ていうかお前わざとだろ……」

理科は一度小鳩にも会っているので、知らないわけがない。

「ほう、小鷹の妹か」

「あにきの妹君……なんなりと申し付けください」

「じゃあ、今すぐ出てってほしいけん!!」

「分かりました」

「待て待て待て!!」

従順に家から立ち去ろうとする幸村を、俺は慌てて引き止める。

「お、おい、どうしたんだよ小鳩。あのな、この人達は部員の……」

「そんなん知らんわぁ! ウチが嫌なんじゃ! だいたい、あんちゃんはいつもいつも家でも部活の話ばっかりで…………」

「ははーん、ブラコンってやつですか」

「ぶ、ブラコンちゃうわぁ!!!/// てかあんだは前に来とったやろウチに!!」

「なっ、どういう事だ理科!!」

「……ふふ、実は先輩の停学中に愛の確認を…………」

「小鷹!!!!!」

「んな事してねえって! てか余計な面倒増やすなっての!」

とにかく今は、小鳩の方を何とかするのが先だろう。

「なぁ、小鳩。別にいいじゃねえか、な?」

「や!!」

ダメだ。どうやら一筋縄ではいかない様だ。


どうする? >>212
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 02:19:49.47 ID:obYOzuGSO
よし、皆で闇鍋ぱーちーしてこいつらのよさを知ってもらうか
213 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 02:37:34.07 ID:6TwGpxhro
ダメだ眠いお休み
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 02:40:53.33 ID:obYOzuGSO
>>1
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 04:21:31.29 ID:3gSt1gMR0
やっぱ理科が一番可愛い。理科ルートで
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 11:12:32.63 ID:1iShv4HIO
理科と星奈の両手に花ルートを狙おう
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 12:12:10.82 ID:obYOzuGSO
もういっそ全員でいいんじゃないかな
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 12:34:50.93 ID:gIR0CdXAO
幸村を舎弟から嫁にするのがいいんじゃないかよ
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 12:41:05.09 ID:s8YPHs4No
星奈をはやく理科部に入れたいな
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/19(木) 13:57:15.58 ID:ZYSP2qVH0
やっぱはがないだと、理科が一番
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/19(木) 16:42:20.25 ID:Fqan8h2Ro
星奈はあの拷問で理科部が軽くトラウマになってるだろw
222 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 20:02:05.59 ID:6TwGpxhro

「そ、そうだ、みんなで鍋やらねえか!?」

「鍋っ!?」

即座に小鳩が目を輝かせて食いつく。
食べ物で釣ろうという作戦だ。

最近はあまり凝ったものも作れていないので、余計に効果がありそうだ。

「ほら、鍋って二人じゃなかなかやらねえじゃん。この機会にさ」

「……う、うぅ…………」

小鳩は目を泳がす。
おそらくかなり揺れているのだろう。

もうひと押しだ。

「実は鍋といったらずっと考えてた特製スープがあってなー。あれは旨いだろうなー」

「……うぅぅぅぅうう!!!」

「まぁでも、小鳩が嫌なんじゃ仕方ない――」


「食べる!!!」


よし、勝った。

「ふむ、鍋か。確かに友達同士で食べる時の練習をするのはいいかもしれないな」

「理科も小鷹先輩のお鍋食べてみたいです!! あと小鷹先輩も食べてみたいです!!!」

「あにきのりょうりを頂けるなんて……これいじょうのしあわせはありません」

よし、理科部のメンバーもみんな賛成のようだ。
と、俺がほっと一息ついた時。


「――そういえば、リア充はただの鍋ではなく、闇鍋というものをするらしいぞ」


そんな事を夜空が言った。

「あ、理科も聞いたことあります! それぞれ好きなモノを鍋に入れて食べるんですよね!」

「なるほど、闇鍋か……ちょっと面白そうだな」

「ククク……闇というのが実に我に合っておる」

「ときに未知のものにてを伸ばす。さすがあにきです」

そんなわけで、俺達は普通の鍋ではなく闇鍋を試してみることにした。
全員、闇鍋という話には聞いていた楽しげなものに期待し、テンションも上がって笑顔になっていた。

この時点では。



***



さっそく全員で近くのスーパーに買い出しに行く。
誰が何を入れるのか分かってしまうとつまらないので、一人ずつだ。



闇鍋用に買ったものは?

小鷹→>>223
理科→>>224
夜空→>>225
幸村→>>226
小鳩→>>227
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/19(木) 20:06:57.32 ID:lXpjdm6F0
白菜
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/19(木) 20:08:20.01 ID:/Vddm0nAO
ウインナー
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/19(木) 20:09:01.90 ID:SgyGjjxLo
星奈
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/19(木) 20:12:54.45 ID:zz8Onaydo
たくあん
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/19(木) 20:14:31.55 ID:dWTI+c4p0
牛肉
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/19(木) 20:16:50.83 ID:ZGEPMK360
これ大丈夫そうだぞ
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/19(木) 20:17:31.50 ID:lXpjdm6F0
夜空以外普通のもん持ってきたな
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/19(木) 20:17:49.24 ID:zz8Onaydo
案外普通の鍋になったな
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/19(木) 20:53:24.86 ID:TV+DrnBKo
夜空さんの安定感パネェww
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/19(木) 21:26:17.03 ID:OoZEYGDdo
理科と夜空がなんかアレだな
233 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 21:41:47.58 ID:6TwGpxhro


***


こうして思い思いのものを買って、俺達は羽瀬川家へ戻ってきた。
そして俺は突っ込む。


「 お 前 何 買 っ て き た の !?」


俺の視線の先にいるのは夜空だ。
そして彼女の足元。
そこには巨大な黒いビニール袋が置かれていた。

「ふふ、それを言ってしまったらつまらないだろう?」

口元に、それは楽しそうな笑みを浮かべて答える夜空。
なんかすっごく嫌な予感がする。
ここまで運ぶのに台車を使っていた所を見ても、重量もかなりあるのだろう。

小鳩はそれを見て、芝居がかった笑みを浮かべる。

「ククク、人肉は我の好物だ。良く分かっておるな」

「おぉ、それは良かった。存分に食ってくれ」

「お前らな……」

俺は何やらノリノリな小鳩と夜空に溜息をつく。

「まぁいいや。じゃあとりあえずスープ作りだな。やっぱ真っ黒なの用意したほうがいいのか?」

「んー、闇鍋なんだからそうなんじゃないですかね」

「我が眷属よ。黒は全ての基本となる色だぞ」

「……はっ、すみませんあにき。墨汁をかうのをわすれてしまいました」

「それじゃ食えねえだろ……まぁそこら辺は考えておいたから大丈夫だよ」

一応さっきの買い物で、俺は闇鍋に入れる白菜の他にイカスミや黒胡麻など、スープ用のものも買っておいた。
これで黒いスープは何とか作れるのではないか。もちろん初挑戦だけど。

「あ、小鷹。私の食材は大きいから普通の大きさの鍋ではダメだぞ」

「……そんなもん入る鍋はねえよ」

「じゃあ理科が大鍋でも持ってきましょうか?」

なんか料理から離れてきている気がしたが、考えないことにした。


そして数十分後。


「……結構いけんじゃねこれ」

俺が作ったのは、イカスミと黒胡麻をベースとした、魚介類のダシがきいたちょっとピリ辛スープだった。
味見をしてみると、我ながらかなり美味しいと思う。

レシピを考えるのはそれ程難しくはなかったのだが、問題はその量だった。
理科が持ってきた大鍋は、それこそ人一人が入れる程の大きさだ。
なんかもう料理というか黒魔術でもやっているかのような気分になる。

とりあえずそれをリビングまで持って行くと、一斉にみんなが反応した。

「ほう、人間長所の一つはあるんだな」

「先輩、結婚しましょう! お嫁に来てください!!」

「さすが孤高のおとこです。これならばひとりでもじゅうぶんいきてゆけます。わたくしも料理をまなぶべきでしょうか」

「ククク、まぁまぁ、といったところか。これに満足せずに精進せよ我が眷属よ」

なんか素直に喜べないものが多い気がするが、一応は褒められているのだろう。
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/19(木) 21:45:39.21 ID:TV+DrnBKo
>>232
気がつかなかったけど、よく見たら理科も流石だったww
235 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 21:48:07.53 ID:6TwGpxhro

次に部屋の電気を消す。
真っ暗な部屋に真っ黒のスープ。これならば何を取っているのかなど分からないだろう。

「さぁ……それでは漆黒の儀式を始めるぞ。魔神サタンの召喚だ……」

小鳩は完全にスイッチが入ってしまっている。
まぁ確かに、真っ暗な部屋で5人で一つの大鍋を囲んでいるこの状況は、そういう雰囲気がかなり出てる気がするが。

「じゃあ、私から先に入れよう。大きいしな」

姿はよく見えないが、声からして夜空だろう。
なにやらゴソゴソとしている。

「……くっ、重いな。このデブ肉が」

「大丈夫か? 手伝うぞ」

「いや、いい。何とかなるだろう」

夜空の言葉を聞く限り、どうやら肉のようだ。
だがあれだけ大きい肉、普通のスーパーで売ってるもんか? と首を傾げる。

その間にもズルズルと何かを引きずる音が継続的に聞こえる。

「なんか理科、ハァハァしてきました」

「ドキドキな」

「あにき、わたくしもむしゃぶるいが……」

「ククク、我はこの程度の事でうろたえたりはせん」

「……よし、じゃあ入れるぞ」

どうやら夜空の準備ができたようだ。

俺らはなぜか緊張してゴクリと生唾を飲む。
ここでリア充達はどんなリアクションを取るのだろうか。少なくともこの反応は違う気がする。
そして。


「いでよ、魔神サタン……ッ!!」


小鳩がそう呟くのとほぼ同時に、夜空が何かを大鍋の中へ入れる。


――ドボン!!!



「うあっっちゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
 
 
 
236 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 21:49:52.00 ID:6TwGpxhro

ドンガラガッシャーン!!! と。
大鍋は即座にひっくり返され、謎の叫び声が部屋に響き渡った!!

おそらく鍋のスープだろう、熱い液体もそこら中に飛び跳ねる。
ドッタンバッタン!! と、まるで地震でも起きているかのように床が振動している。

もちろん、俺達は大パニックだ。

「は!? え、いや…………は!?」

「なんだ夢ですかそうですよねこんな非科学的な事起きるはずないじゃないですか何が魔神サタンですかファックしてやりますよ」

「……くせもの。きってすてます」

「びえええええええええええええん!!! あ、あんちゃんどこ!? あんちゃああああああああああん!!!!!」

真っ暗で周りもよく見えないので、余計にカオスな状況になる羽瀬川家。
相変わらずドッタンバッタン!! と凄まじい振動と音が部屋中に響く。


「あああああっちゃああああああああああああ!!! みどぅぅ!!! みどぅぅうううううううううううううう!!!!!」


さっきから意味不明な凄まじい声らしきものも聞こえる。
正直、俺もかなり怖い。


どうする? >>237
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/19(木) 21:51:03.09 ID:lXpjdm6F0
明かりをつける
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/19(木) 21:51:08.12 ID:/Vddm0nAO
たたかう
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/07/19(木) 22:02:59.28 ID:2HOyoNVd0
星奈が人間不信にならないか心配になってきたwwwwwwワロスwwwwww
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 22:13:20.06 ID:1iShv4HIO
肉をまるごといれるとは素晴らしい
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 22:39:45.76 ID:F1Xu5Av7o
窓に張り付いてたら顔面パンチ
腹パン
くすぐり拷問
煮えたぎる鍋に入れられる
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 22:45:11.20 ID:obYOzuGSO
それでも入部したいとか言ったら☆さん相当なMだな
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/19(木) 22:45:49.49 ID:TV+DrnBKo
みどぅwwww
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/19(木) 22:53:00.77 ID:OoZEYGDdo
星奈が一体何をしたっていうんだ…
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 22:53:23.82 ID:1iShv4HIO
早く入部させたい
246 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/19(木) 23:59:41.34 ID:6TwGpxhro

「と、とにかく明かりだ!!」

俺は必死で壁をベタベタ触ってスイッチを探す。
しかし、動揺していて中々見つからない。

そしてやっと――。

「あっ、あった!!」

パチッ!! という音と共に明かりが戻った。

俺達の視界に入ってきたのは。

部屋の中央辺りでドタバタと床の上でのたうち回る。
俺特製の黒いスープまみれになった。
聖クロニカ学園の制服を着た。

金髪碧眼の美少女だった。

……そいつは。


「柏崎……星奈…………」



***



「…………」

星奈は思いっきりブスッとした表情で俺を睨んでいる。
手には透明のビニール袋に入った氷。
それを顔に当てて冷やしていた。

ちなみに小鳩は大泣きしていたので、とりあえずシャワーに行かせた。
イカスミスープの汚れも酷かったし。

俺は星奈を気の毒に思いながら、

「いや俺じゃない。本当だって」

「……じゃあ誰よ」

星奈は明らかに不機嫌な様子(そりゃ当然だ)で尋ねてくる。

「私だ」

「お前だったのか」

「暇を持て余した」

「神々の」

「「遊び」」

夜空と理科だ。仲いいなお前ら。

「こ、んの……あんたらァァ…………ッ!!」

「すまんな、肉と間違えた」

「どうやったら人間と食用肉間違えんのよ!!」

「貴様があんなスーパーのベンチでグースカ寝ているのが悪い。恥を知れ」

大きなスーパーには休憩用のベンチが出入口付近にあったりする。
そこで寝ている女子高生というのも珍しい。

「あ、あれは……ッ!!」

「そもそも貴様のような人間がなぜスーパーに居たのだ。ついに家族からも見捨てられたか?」

「そんなわけないでしょ!! あたしはとってもとっても愛されてんだから!!」

初対面であるにも関わらず、夜空はお構いなしに罵る。
本当に嫌いなんだな……。
247 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 00:03:53.54 ID:LuHuZbhOo

「いいわ、そんなに知りたいなら教えてあげるけどね、あたしはリア充になるためにあそこに居たのよ!!
 ふっ、まぁあんたらみたいな非リア共には到底理解できないことでしょうね!!」

「……つまり現時点でリア充じゃないって認めてんじゃねえか」

「うぐっ……う、うっさいわよそこのプリン!!」

「ていうかリア充とスーパーの繋がりが理解不能です」

「料理の腕を上げるためよ!!」

「なるほどな、それで練習するために食材を買おうとしてたのか。偉いじゃねえかお嬢様なのに」

「は、何言ってんの? あたしがわざわざ自分で食材なんか買うわけないじゃない」

そんな星奈の言葉に、俺だけでなく全員が首を傾げる。

「……あにき、わたくしこの方の言っていることがよくわかりません。にほんごとは難しいものですね」

「いや大丈夫だ。俺も分かんねえから」

「非リアこじらせてついに頭がおかしくなったか?」

「理科、医学系は専門外なんですけど、何か作りましょうか?」

「人を病人扱いしないでよ!!!」

テーブルをバンッ!! と叩いて抗議する星奈。

「ふんっ、ホント無知な愚民どもは困るわ。特別に教えてあげるから感謝しなさい。
 料理スキルっていうのはね、ただスーパーに居るだけで上がるのよ!!」

「……いや、ねーよ」

「あるわよ!! そしてスキルが上がると、一人暮らしの佳菜子ちゃんとのイベントが発生するのよ!!」

「イベント?」

夜空の問いに、星奈は清々しいまでのドヤ顔で言い放った。



「美少女ゲームよ!!」



………………。
…………。
……。



ドン引きした。


ここまで引いたのはいつ以来だろう。
あぁ、そうだ、アレだ。

たぶん、夜空のエア友達を見た時以来だ。


「「…………」」
 
 
 
248 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 00:06:40.64 ID:LuHuZbhOo


「……な、なによその目は」

「柏崎星奈」

夜空が話しかける。
その目はなんていうか、夏の終わりに地面に転がっているセミの死骸を見ているような感じだった。

「私が悪かった。君には酷いことをしてしまった」

「う……あ…………その目やめなさいよおおお!!!」

夜空は素直に謝っているが、星奈の方は涙目になっている。

そして俺達もそんな星奈を見て可哀想になり、

「なんつーか、ほら、人生って長いしさ。これから色々経験して、学んでいくんだろうな俺達」

「星奈先輩。どんな事でも、後になって思えば笑い話になったりしますよ」

「何よ!! 何なのよあんた達!! 何であたしがこんなに惨めになってんのよ!!!
 て、ていうか、そ、その目やめなさいって!! あんたも、あんたも、あんたもおおおおおおおおおお!!!!!」

星奈は俺と理科と夜空を指差して、今にも涙をこぼしそうになって叫んでいる。
いや、でも、この目をやめろと言われても、自然とこの目になってしまうわけで。

夜空は溜息をついて、

「――分かってる、もういいんだ。お前は頑張った」

「や、やめなさいよぉぉ……!! その優しい声やめてよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

ついにポロポロと涙をこぼし始める星奈。

「あにき」

「ん、どうした幸村」

ずっと星奈をじーっと見ていた幸村が口を開く。

そして、彼女を指差して一言。


「――このかた、きもちがわるいです」


「びええええええええええええええええん!!!!! 理科部のバカアホカスボケ死ねええええええええええええええええ!!!!!」


星奈が大泣きして出ていった。
他のみんなはポカンとして、ただそれを見送るしかない。

……俺はふと考える。
あのイカスミスープまみれの状態で外へ飛び出したのを放っておくっていうのも、なんかさすがに……可哀想な気がするな。


どうする? >>249
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 00:07:32.75 ID:X0eXgNYSO
そっとしといてやろ
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/20(金) 00:07:38.04 ID:bGIuclkAO
あいつの分もパーティを楽しもう
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 00:07:54.58 ID:SQL2yYhIO
追いかける
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/07/20(金) 00:08:59.84 ID:n2O/FpCs0
小鳩の服を貸す
253 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 00:14:02.66 ID:LuHuZbhOo
そういや明日テストだった
今日はこれでおしまい
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 00:16:43.02 ID:SQL2yYhIO

幸村が何気にヒドスw
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/20(金) 01:05:39.93 ID:qXLvVupJo
ホントに可哀想なのはまだ未登場なマリア
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/20(金) 07:20:35.64 ID:5v29OqXIO
↑マリアはさっき出なかった?
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/20(金) 16:58:19.53 ID:5ha1XfU10
あのシスターはケイトさんだろ
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/20(金) 17:33:42.93 ID:hp+oR0YIO
↑ケイトさんに連行されてるマリアが俺には見えたのは気のせいか?
259 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 18:34:59.91 ID:LuHuZbhOo

「……まぁ下手なこと言って余計に傷つけちまうのもアレだし、そっとしておくか」

というわけで、飛び出していった星奈は放置することにした。



***



それからは闇鍋ではなく、普通の鍋をみんなでやることにした。

意外とみんなが買った食材がまともだった事もあって、それなりに良い感じに出来上がる。
幸村のたくあんの処理には少し困ったが。

「つーか小鳩。お前この牛肉高いやつだろ」

「……ククク、その程度の事を気にしていては来たるべきラグナロクで戦えぬぞ」

小鳩はすっかり泣き止んでおり、美味しそうに肉ばかり頬張っている。
まったく、お金を渡して好きなものを買っていいといったのは間違いだったか。

「先輩、どうですかこのウインナーの食べ方。エロいでしょう!」

「幸村ー、そっちのポン酢取ってくれねえか?」

「どうぞ、あにき」

「サンキュー」

「……放置プレイですか」

理科がなんかしょげている気がするが、まぁ放っておいても大丈夫だろう。

「ふむ、リア充どもはいつもこんなに美味しいものを食べているのか。実に腹立たしいな」

「いや、それはどうだろうな……。つーか夜空、お前もちょっとは反省しろよなー」

「反省?」

「星奈の事だよ。さすがにやりすぎだろありゃ」

「あぁ……さすがにどこかで起きると思ったのだがな。そんな気配もなかったのでそのまま鍋に投下しただけだ。
 だがまぁ、ここが汚れた件については、私も掃除しただろう?」

「ん、確かにそうだけどさ……」

しかし、改めて考えてみれば、初対面の人間を鍋の中へ放り込むというのは凄まじい。
こんなこと理事長に知られたら大変な事になりそうだ。

「あにき、どうぞ」

「おう、サンキュー……って、幸村ももっと食べろって。俺の分取ってるだけじゃなくてさ」

「わたくしはあにきにお仕えする身……そのようなことは…………」

「じゃあ兄貴からの命令だ。ちゃんと食わねえと立派な男になれねえぞ?」

「……はっ、確かにくうふくではたたかえません。さすがあにきです」

お前は何と戦うつもりなんだ。
とりあえず、幸村も普通に食べてくれるようになり、安心する。

それからしばらく、理科部のメンバー+小鳩はどうでもいいような話をしながら、楽しく鍋を食べた。
なかなかリア充的な感じだと思う。
260 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 18:36:15.70 ID:LuHuZbhOo



***



「それでは、そろそろお暇しますね」

夕食を食べ終え、みんなで小鳩のゲームで少し遊んだ後、理科がそんな事を言って立ち上がる。
意外なことに、小鳩は不満そうだ。

「……卑怯な。勝ち逃げする気か」

「ふふ、理科に勝ちたければもっと修行することですよ」

「ぐぬぬ……」

結局、小鳩が理科に勝つことはなかった。
ゲームの持ち主で、ほぼ毎日やっている小鳩をあれほどコテンパンに負かすくらいに理科は強かった。

そして、理科に続いて夜空と幸村も立ち上がる。

「それでは私も帰ることにしよう。今日はなかなか有意義な活動だったぞ小鷹」

「あにき、この御恩いっしょうわすれませぬ」

相変わらずな夜空に、大袈裟すぎる幸村。
まぁ二人共いつものことなので突っ込んだりはしない。

……んー、でもこの時間に女の子三人を帰らせるってのも結構不安だな。
こういう時は送っていくべきなのだろうか?


どうする? >>261
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/20(金) 18:39:24.54 ID:CygK5DpH0
一人ずつ送っていく
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/07/20(金) 18:40:38.98 ID:2HjLFpwAO
送っていこう
263 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 18:54:07.25 ID:LuHuZbhOo

「あ、もう、遅い時間だし送ってくよ」

「……なるほど、先輩は送り狼だったのですね!!」

「違う!!」

あまりの言い草に、スルーできずに思わず突っ込んでしまう。

「しかし、全員を送る気か?」

「あぁ、そのつもりだけど……」

「さすがにそこまでしてもらう必要はない。私はいいから、理科か幸村を送ってやれ。後輩だしな」

「いえ、そんなあにきのてをわずらわせるような事はできません。ここはわたくしではなく理科どのを」

「ぶふぇ!! いいんですかぁ!? じゃあ帰りにちょっとどっか寄って行きましょうよ!! お城のようなホテルとか!!」

「…………お前なぁ」

さて、どうするか。


誰を送る? >>264
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage saga]:2012/07/20(金) 18:54:57.58 ID:U6mlKdyE0
理科
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 19:18:18.87 ID:R94L7Bsoo
>>264
グっジョブ
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/20(金) 20:17:55.35 ID:LZPI9mj8o
よくやった
267 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 20:22:36.63 ID:LuHuZbhOo

俺と理科は二人で夜の道を歩く。
もう夏ということもあって、この時間でも少し蒸し暑い。

「そろそろ夏休みですね。理科はあまり実感わかないですけど」

「……おー、そうだな。つっても、特に予定とかはないんだけどな」

聖クロニカ学園は2学期制であり、夏休み前にテストがあったりするわけでもない。
そのため、この時期の生徒達もやたらハイテンションであり、夏休みに何して遊ぶかなどそれはそれは楽しそうに話し合っている。

……正直、かなり羨ましい。

「それなら、夏休み中も部活をすることにしましょう!」

「へ……夏休み中もやんのか?」

「当たり前です! リア充がのさばる季節だからこそ、理科の道具の出番ですよ!」

「……はは、そうかもな」

実際は理科部の活動では、俺が停学になったり夜空が保健室行きになったりとろくな事がなかった気がする。
しかし、中には役に立ったものもあり、夜空はクラスの人達と少しは話せるようになっていた。まぁ夜空だけなんだけど。

それになにより。
俺にとって、理科部を作ってからの日々は……。

「ありがとな、理科」

「え、どうしたんですか急に」

「いや、俺は理科部に入って毎日結構楽しいと思ってる。それも創部者の理科のお陰だろ」

「……なんか先輩って唐突に恥ずかしいこと言いますね」

「うっ……ま、まぁな…………」

俺は思ったことを言っただけなのだが、確かに考えてみたらなんていうか、かなりくさい事を言っているのかもしれない。


「――でも、理科も同じ気持ちですよ」


理科は優しく微笑む。
それは暗闇の中で、どこか儚げな雰囲気を演出する。

「ほら、理科ってクラスには顔を出していないじゃないですか。だから、あの学校に入ってもずっと一人で。
 話し相手といったら先生方や企業の偉い人ばかりで、同世代の方とこのように話す機会なんて全くなかったんです」

「理科……」

「でも、ある日理科室に小鷹先輩が来て、理科部を作って、夜空先輩が訪ねてきて、幸村くんが小鷹先輩にくっついてきて……。
 今ではあの理科室もとっても賑やかで、なんて言うか暖かいです」

理科は優しい目で、たくさんの星が輝く空を見上げる。
その目は、どこかずっと遠くを見つめているかのようだ。

俺が行く前の理科室を想像してみる。
そこはただ実験器具を動かす無機質な音だけが響いていたのだろうか。
理科はそんな中で、ただ一人で居たのだろうか。

「先輩、理科は思うんです。こうやって毎日会って、色んなくだらない事話して、時間がきたらそれぞれ帰る」

理科は視線を空からこちらへと移す。
その目はどこまでも透明で、見ているだけで吸い込まれそうな気もしてくる。

彼女の、小さな口が開く。


「理科達はもう――――」
 
 
 
268 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 20:26:27.26 ID:LuHuZbhOo


その時。
ビュオオオオオ!! という音と共に、大きな風が二人の間を駆け抜けた。

俺は砂なんかが目に入らないようにまぶたの少し上辺りに手をかざし、理科は髪を押さえる。

「え? なんだって?」

「……いえ、なんでもありません」

理科は小さく笑う。

「それでは先輩、もうこの辺りでいいです。ありがとうございました」

「え、ここでいいのか?」

「ふふ、何ですか先輩。やっぱり送り狼だったんですね!!
 それなら理科はいつでも大歓迎です!! なんならここでも!!!」

「よし、じゃあ気をつけて帰れよー」

「うぅ、せんぱーい…………」

俺はそそくさと理科に背を向けて、歩いて行く。

……なんか、こういうのはいい。
昔、毎日アイツと遅くまで遊んで別れていたのを思い出す。
幼い日の懐かしい思い出だ。

アイツは今どこで何をしているのかは分からない。
こんな俺と違って、リア充ライフというのを満喫しているのかもしれない。

俺は頭上に広がる星空を見上げる。
都会では見られないような、綺麗な空がそこにはある。

確かに俺は友達は居ないし、リア充でもないし。
周りに居るのは、そんな残念な俺と似たような残念な奴等ばかりだけで。
毎日理科室で良く分からない道具ばかりで遊んでいるだけで。

普通の高校生と比べればつまらない青春を送っているのかもしれないが。

何だかんだ今の生活に満足している。
そう思っている俺が居た。
269 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 20:28:52.39 ID:LuHuZbhOo



***



「明日から夏休みです!!」

そうやって切り出したのは理科だ。
場所はいつもの理科室で、部員はいつも通り全員揃っている。

今日は7月20日。
ついに明日からリア充の跋扈する日々が始まる。

「ちっ、夏休みなど消え去ればいいのに」

心底嫌そうな顔でそんな事を言うのは夜空だ。
学生としてかなり珍しい意見だと思う。

「あれ、でも夜空プールとかに誘われてなかったか? 同じクラスの女子に」

「ぶっ!!! な、なぜそんな事を知っているんだ!!」

「いや、聞こえてきただけだって。……聞きたくねえよ俺だって、はぁ」

「なるほど、夜空のあねごはりあじゅうだったのですね」

「ち、違う!! 断ったぞもちろん!!」

夜空は慌てて弁解がましく言う。
すると理科が溜息をついて、

「夜空先輩、この部の目的分かってます?」

「うぐっ……い、いや、だが、プールなんて…………水着もないし」

「いや買えよ普通に」

「そ、それだけではない!! 人前であれほど肌を晒すなど不可能だ!!」

顔を赤くする夜空。
確かにそういう女子もいるとは思うが、夜空はスタイルもいいと思うし、別にそこまで気にする必要はないと思う。
まぁそんな事を言えばセクハラだのなんだの散々言われそうなので、黙っておくが。

ちなみに妹の小鳩は布面積が極端に小さい水着を好んでいて、兄としてはアイツはもう少し夜空みたいな恥じらいを持ってほしい。

「……はぁ、ではリア充夜空先輩はひとまず置いておいて」

「誰がリア充だ!」

夜空の言葉は聞き流し、理科が口を開く。
その表情はまるで、ラスボス前の勇者のようだ。


「いかにこの夏休みを乗り越えるか、話し合いましょう」


どうする? >>270
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/20(金) 20:31:07.97 ID:ZV+xBwJXo
理科部で乱交
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/20(金) 20:31:27.76 ID:LZPI9mj8o
とりあえず泳いでみないか?
俺の家の庭にビニールプールを持ってきてから
これなら人がいないからお前らでも大丈夫だろ?
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/20(金) 20:32:11.23 ID:LZPI9mj8o
ちくしょう
また負けた
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 20:33:14.04 ID:X0eXgNYSO
そりゃ競争率高い所で長文書いてりゃなぁ…
274 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 20:51:27.93 ID:LuHuZbhOo

「……と言われてもなぁ」

「あぁ、夏のリア充を排除するのは不可能だ」

「てごわいあいてですね。それでも、あにきなら」

そんな感じに負け犬モード全開な俺達。
すると理科は、

「ふふ、それならまずはリア充の真似をして理科達のリア充度を上げる所から始めましょう!!」

リア充度ってなんだよって突っ込みたくなるが、とりあえずまずは理科の話を聞いてみることにする。
夜空と幸村も、同じように真面目な表情で理科の方を見ている。

「夏にリア充がやる事!! それはズバリらん――」

「この変態がッ!!!」

即座に夜空のハエ叩きが理科の顔面にブチ当たった。

「な、何するんですか夜空先輩!」

「貴様がいきなり破廉恥な事を言おうとするからだ! まったく、まじめに聞いた私がバカだった」

「ええー、まだ『らん』までしか言ってないじゃないですかー。
 もしかしたら『ランニング』かもしれませんし『ランドセルを背負った幼女について語る』かもしれないじゃないですかー」

「そ、それは……」

「それにあまり過剰反応していると、ムッツリさんに見えますよー、うへへ」

「なっ、違う!!///」

顔を赤くして動揺する夜空。
つーか、『ランドセルを背負った幼女について語る』ってのも余裕でアウトだと思うけどな。


「――まぁ、ご想像通り、『乱交』って言おうと思ったんですけど」

「やっぱりか貴様ァァ!!」


結局再びハエ叩きでぶっ叩かれる理科。

そんな感じでその後もただギャーギャーと騒ぎ、それで体力を消耗した結果、結局今日は何もやらないで解散となった。
夏休み前の最後の活動は、俺達らしい何とも残念なものとなった。



***



「さて、と……」

理科室を出た俺は少し考える。
時間はまだ早い。
今日は午前授業だった上に、理科部でろくな活動もしていないからだ。

外では体育会系の部活が炎天下の中汗を流し、校内には吹奏楽部の演奏も聞こえてくる。
みんな青春してんなー、なんてどこか悲しくなるような事を思いながら、俺は一人で人気の少ない廊下を歩く。

これからどうするか。


>>275
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 20:52:24.61 ID:X0eXgNYSO
廊下に消火器撒いてみるか
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 21:08:39.81 ID:akFmEb8b0
ワロタwww
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 21:12:58.69 ID:X0eXgNYSO
ゴメン、俺、どうしてもハジケリストな小鷹が見たいんだ…後無茶ぶりして狼狽しながらもうまく捌く>>1が…
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/20(金) 21:19:03.72 ID:LZPI9mj8o
小鷹の歴史にまた1ページか
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 21:26:19.84 ID:GZD7Aos/o
下手したらマジで退学しそうだな
280 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 22:05:24.04 ID:LuHuZbhOo

「ヒャッハー!! 汚物は消毒だああああああ!!!」

「ははははは、やめろってのー!!」

そんな声にそちらを見てみると、どうやら男子生徒二人がふざけているようだ。
一人が消化器を持って、もう一人に向けている。たしか北斗の拳のネタだったか。
当然、中身が出ているわけではなく、あくまでふりだ。

この学校の生徒は全体的に大人しいと言われているが、夏休み前ともなると少しはっちゃけたくもなるのだろう。

ああやって友達同士でふざけるのって楽しそうだよなぁ。
そんな事を考えてしまう。

「……ひっ!!」

「ん、どうした……わっ!!!」

どうやら二人共俺に気付いたようだ。
なんかもう、この反応は慣れてきたとはいえ、悲しいものは悲しい。
ていうかかなり傷つく。


「「調子乗ってすみませんでしたあああああああああああああああああああああ!!!!!」」


なんか恐怖の風紀委員みたいになってるな。
俺は溜息をつくと、放置された消化器を元の場所に戻そうと手に持つ。

……ちょっとリア充の練習でもしてみるか。

「ひゃ、ヒャッハー!! 汚物は消毒だああああああああ!!!!!」

ちょっとふざけてみる俺。
だがその瞬間。


ブシャァァアアアアアアアア!!! と中身が噴出した!


「う、うおおおおお!?」

俺はビビって消化器を取り落とした。
それでも止まらず、廊下に消火器の中身がぶちまけられていく。

やばいやばい!!

たまたま通りかかった生徒達はその光景に驚くが、俺のことを見ると「またか」といった表情で通りすぎていく。
ちがう、誤解だ!!
俺は焦って言い訳しようとするが、


「あーっ!! 何をやっているんですかー!!!」


そんな舌足らずな大声が聞こえてきた。
俺は全身をビクッと震わせて、急いでそちらを振り向く。

そこに居たのは小柄な少女だった。
ウルフカットの赤みがかった髪に幼さの残る顔立ち。
少年っぽい印象も受けるが、それもボーイッシュというか幼い男の子というような感じだ。

「ち、違うんだ! これは俺が反社会的行動でやったわけじゃなくて、ホントに事故で……!!」

「はっ、君は羽瀬川小鷹!! あの悪名高きヤンキーさんがまたやらかしたんですか!!」

やっぱ結構有名なんだな、俺。
ちっとも嬉しくないし、むしろ泣きたくなってくるけど。

「まぁとにかく、先生を呼んでくるしかないですね。羽瀬川くんはここに居てください。
 君がここに居れば、野次馬の人達も近づけないでしょうし」

「……はい」

俺は鳥よけのカカシか。

そんな事を考えながら、パタパタと走っていく少女の後ろ姿を見送った。
 
 
281 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 22:08:14.18 ID:LuHuZbhOo



***



あの後先生が来て、どうやら消化器自体が老朽化していて部品が壊れていた事が判明した。
それでも、何でもないのに持ったりしない事、と注意は受けたのだが。

今は職員室近くの廊下に居た。
目の前には先程の少女、名前を遊佐葵というらしい。
彼女は頭を深く下げていた。

「本当にすみませんでした。私はてっきりあなたがふざけてあんな事をしたのだと……」

「い、いや、もう別に気にしてないからさ」

実際、ふざけていたというのは当たっているので、俺も少しバツが悪い。
とりあえず少しでもこの空気をほぐそうと、俺は口を開く。

「そういえば遊佐は生徒会に入ってるんだって? 一年生なのに偉いじゃねえか」

「え……? 私はニ年生ですけど?」

「ま、マジで!?」

素直に驚いた。同学年かよ。
まぁ小鳩もよく小学五年生くらいに見られるけど。

遊佐は軽く溜息をつく。

「でも、生徒会に入ってるとか関係ないですよ。私はこうして羽瀬川くんの見た目だけで勘違いして君を傷つけてしまいました。
 そういえば会長も羽瀬川くんの悪評を聞いても、『本人と話したこともないのだから、どんな奴だと決め付けるつもりはない』なんて言っていました……」

「え、会長?」

「はい、生徒会長の日高日向さんです。やはりあの人が正しかったです。人の噂なんて何も当てになりませんね」

確かに見た目や評判だけで勝手に判断するのは良くないと思う。
しかし、それは所詮綺麗事で、俺の事をそんな風に見ているなんて相当珍しいと思う。
ぶっちゃけ俺の場合は、噂が全部ただの噂だとは言えないわけだし。

それと、日高日向……という名前はどこかで聞いたような……うん、忘れた。

「……まぁでも、ホントに俺も気にしてないから、お前ももう気にしなくていいって」

「で、ですが……」

まだ納得できない表情の遊佐。
うーん……でもこの女の子にひたすら頭下げさせている所も、誰かに見られたらまた変な噂流されそうで嫌なんだよなぁ…………。

そうやって俺がキョロキョロと辺りを見渡すと、とあるものが目に入ってきた。


何を見た? >>282
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/20(金) 22:09:20.45 ID:bGIuclkAO
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/20(金) 22:13:23.08 ID:pi3Ib3vv0
「ごっつええ感じ」に教室の窓の外見たら象が暴れてるコントあったよな
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/20(金) 22:15:47.88 ID:nN8Cbqby0
みんな>>1に期待しすぎww
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/07/20(金) 22:16:50.87 ID:9X6tbu3k0
星奈かそれともほんまもんの牛かww
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 22:18:50.58 ID:X0eXgNYSO
ほんまもんのが話的には面白いなーチラッ
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/20(金) 22:20:34.32 ID:LZPI9mj8o
乳牛のがいいな
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 22:22:29.83 ID:pQKMg/oIO
乳牛のコスプレをした肉か…
289 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 23:25:02.90 ID:LuHuZbhOo

俺の目に入ってきたのは牛――――のような乳だった。

この学校でそんな胸を持っている者は、俺が知るかぎり一人しかいない。
廊下の向こうから歩いてくる少女。
金髪碧眼のお嬢様、柏崎星奈だ。今日は珍しく取り巻きの男子は居ないようだ。

「……げっ」

俺を見ての第一声はそれで統一する気か。
明らかに嫌そうな目で俺を見ている。

まぁ最後に会った時、彼女は鍋に入れられたわけで……。
この反応も当然だとは思うが。

「よ、よう」

「あんたこんなとこで何やってるわけ? どうせ、また何かやらかして職員室に呼ばれたんだろうけど」

「うぐっ……」

「やっぱり図星? 相変わらずヤンキーらしくバカみたいなことしてるわねあんた。
 ある意味羨ましいわ。頭空っぽで悩みも何もなさそうでさ」

「柏崎星奈! 羽瀬川くんの事を悪く言わないでください! これは私の早とちりのせいなんです!!」

遊佐が俺をかばってくれた。
今までみんな怖がっているばかりで、こんなかばわれることなんてなかったので、思わず感動してしまう。

星奈は眉をひそめて、

「……誰よあんた」

「遊佐葵ですよ! 同じクラスでしょう!!」

「ふーん。あ、そうだプリン!」

星奈は遊佐のことはまるで興味ない様子で、すぐに鋭い視線を俺に戻した。
というか、そのあだ名はやめてほしい。

「なんだよ……」

「理科部のあの黒髪ロングで狐みたいな目のあの女、三日月夜空っていうんだっけ!? アイツに覚えとけって言っときなさいよ!!
 愚民の分際で高貴なあたしをあれだけ侮辱して……ッ!! ただじゃ済まさないわ!!!」

「……おー、一応言っておくよ」

たぶん全くと言っていい程気にも止めないだろうけど。
すると遊佐がキョトンとした表情でこちらを見上げてきた。

「羽瀬川くんは理科部なのですか?」

「あぁ。気が向いたら遊びに来いよ。結構面白いもん作ってるからさ」

「はいっ!」

「やめときなさい、実験台にされるわよ。あたしも一度酷い目にあったんだから」

「えっ!? ……はっ、ダメですダメです人の評判に惑わされては!! 羽瀬川くんはそんな事しません!!」

遊佐は一瞬怯えた目で俺を見たが、すぐにブンブンと頭を振った。
それを見た星奈は思いっきり見下した目で、

「はぁ? まさかあんたもこのプリン達と同類のバカなわけ?」

「プリンって羽瀬川くんの事ですか!?」

「そうよ。この学校に汚いプリン頭なんて一人しか居ないでしょ」

「そんな事言わないでください! それにいいじゃないですか羽瀬川くんの頭!! カッコイイです!!」

「「え??」」

思わず星奈に合わせて俺も声を出してしまった。
まさかこの頭をカッコイイという子がいるなんて。
290 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 23:27:38.31 ID:LuHuZbhOo

「あんた……本気で言ってる?」

「はい!! こだわりを持ってそうな渋い金髪が大変いい感じです!! それにズボンの裾をちょっと上げちゃってるとこもとってもオシャレさんです!!
 こういうカッコイイ人を巷でモテモテな『ちょいわる系』とかって呼ぶのでしょう?」

外見をここまで褒められたのは初めてで、思わず照れてしまう。

だが、悲しいことに俺はこう思ってしまう。
たぶん、この子の感性はかなり残念だ。

「……なんだ、やっぱりあんたもコイツらと同類か。えっと、なんだっけ…………ゆなんとか」

「“遊佐”です!!!」

夜空の名前覚えるくらいなら、同じクラスの女子の名前くらい覚えてやれよ……。
二人のやり取りを他人事のように眺めながら、俺はそんな事を思った。

なんとなく、星奈に友達がいない理由が分かってきた気がする。



***



「……はぁ、なんか疲れたな」

その後、遊佐、星奈と別れた俺は再び一人で廊下を歩く。
太陽は次第に低い位置まで来ているが、まだ夕暮れには早い。
もちろん、このまま帰ってもいいのだが――。


どうする? >>291
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 23:28:55.01 ID:X0eXgNYSO
ハデに躍り狂ってみる
292 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 23:42:12.47 ID:LuHuZbhOo

ふと近くの教室から軽快な音楽が聞こえてきた。

チラリと覗きこんでみると、どうやらダンス系の部活か同好会が活動しているようだ。
机は全て後ろに寄せられ、開いたスペースで男女が踊っている。
確か、ブレイクダンスとかってやつだろうか?

なんていうか、すごく。
リア充っぽい雰囲気だ。

「……よし」

やはりリア充の事は学んでおくべきだろう。
そう思った俺は教室の中から聞こえる音楽に乗って、廊下で踊りまくってみる事にした。
もう振り付けなどはてきとーで本能のままに。

体や腕を回す。
両手を床につけて足を回す。
大きくジャンプしたり、ブリッジなんかもしてみる。

これは予想以上に楽しい。
かなり夢中になってしまう俺だったが。


――その時。


とあるものが目に入った。


>>293
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/20(金) 23:42:40.30 ID:bGIuclkAO
理科のスカートの中
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/20(金) 23:44:19.43 ID:ZV+xBwJXo
それ理科のパンツや
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 23:44:36.05 ID:X0eXgNYSO
もうね、関東は理科のスカートの中に住んだらいいと思うの。いやいい意味で
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/20(金) 23:56:06.09 ID:Wjo2ktN40
スカートの中は安定して
理科の好感度上げれていいな
297 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/20(金) 23:59:39.52 ID:LuHuZbhOo

「ぶほっ!!!!!」

急に、何か見てはいけないものが見えてしまった俺は派手にすっ転んだ。
全身をズキズキと痛めて起き上がるとそこには、


「何をやっているんですか先輩?」


凄く心配そうにこちらを見ている理科が居た。

「え、あ、いやこれはだな……」

夢中になって踊っているところを見られるのは何とも恥ずかしい。
俺は焦って言葉に詰まる。

「見た感じ踊っていたみたいですけど、端から見るとすっごく怖かったですよ」

「え、マジで?」

「えぇ、近づけば殺されそうな雰囲気が出てました」

「そこまで!?」

それは自分では気付かなった。

「あー、なんつーかサンキューな教えてくれて」

「いえいえ。理科も部員が学校の怪談の一部になるのとかはちょっとアレなんで」

「ホラー的な怖さかよ……」

まぁ人気のなくなった廊下で踊っているのは気味が悪いかもしれないが。
そこで、俺はふと疑問に思う。

「あれ、でも理科は何でここに居るんだ? 今から帰りか?」

「理科はですね……」


理科は何をしている? >>298
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/21(土) 00:01:40.71 ID:BzRdyN0+o
マンズリ
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/21(土) 00:01:52.95 ID:S1rfL3JAo
小鷹のにおいに釣られてやってきた
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/07/21(土) 00:03:12.12 ID:gNzjKlCAO
理科部が割と本気で危険人物の巣窟だな
301 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 00:38:44.91 ID:23ooq/eQo

「ちょっとそこの教室の机でマンズリでもしようかと」

「ふーん。じゃあ俺帰るわ。またな」

「え、ちょ、先輩!?」

そんなわけで、俺はもう帰ることにした。
消化器騒ぎがあったり、星奈に会ったり……そして最後は理科だ。
それはとてつもなく重いものを食べた最後に油がこってりのった巨大な肉が出てきたかのような感覚で。

なんか凄く疲れた。


そういえば星奈が遊佐に対して「コイツらと同類」とか何とか言っていたが――。

俺はチラリと後ろの理科を見てみる。
放置されたことに対してビクビクと全身を震わせている。
微妙に喘ぎ声まで漏れている。廊下のど真ん中で。

俺は溜息をつく。
星奈も本当に酷い事を言うもんだ。
「理科部と同類」、それはたぶん一般人にとって、とてつもなく酷い侮辱の言葉になるだろう。

なにせそれは、エア友達を作っていたり教室でマンズリしているような人間と同類と言われているのだから。



***



夏休みがやってきた。
といっても朝からラジオ体操に行ったりカブトムシを取ったりする事もなく。
はたまた友達と共にプールへ行ったり、涼しいデパートまで買い物に出かけたりするでもない。

さすがに一日中自分の部屋にこもってひたすらPCに向かうような事もないが。
それでも、外にも出ずに家でまったりとしている事に変わりはなかった。

「……これ再放送か?」

「ククク、その通りだ。この時期は一挙放送とやらが多いからな」

俺はリビングでぼけーっと小鳩と一緒にテレビを見る。
鉄(くろがね)の死霊術師(ネクロマンサー)。
所謂魔法少女のバトル物であり、小さい友達から大きい友達まで幅広い層に人気がある。

小鳩の邪気眼発祥の原因もこのアニメであり、ヒロインであるレイス・フォン……なんとかのキャラを演じきっている。
正直専門用語的なものが多すぎて、あまりついていけないというのが率直な感想だ。
まぁアクションシーンはさすがに凄いので、設定とかあまり知っていなくても面白い。

「……あ、そういえば部活はいつから行けばいいのかなぁ」

「むっ、我が半身よ。夏休みであるにも関わらず、まだ部活などという俗的なものへとうつつを抜かすのか?」

「あれ、眷属から半身になったんだな」

「ふん、何を言っている。我と貴様は前世で契を交わした、半身同士ではないか」

設定がコロコロ変わるのはいつも通りなので、そこまで深く突っ込んだりはしない。
そして普段はアニメを観ている時の小鳩は集中しすぎて周りの音が全く聞こえなくなるのだが、今観ているのは再放送なのでそこまでにはならないようだ。

現在時刻は午後一時。
一応夏休みも部活をやるというのは聞いていたが、いつも通りの時間に行く、という事でいいのだろうか。



どうする? >>302
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/07/21(土) 00:40:18.15 ID:gNzjKlCAO
いつも通りの時間に行く
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 00:40:48.75 ID:IemqyDkSO
中二病の恥ずかしさを理解するまで教え込む
304 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 01:28:51.23 ID:23ooq/eQo



***



結局いつもの時間に理科室に行く。
そこには全員が揃っていた。

「遅いぞ小鷹!」

「え、遅いって、いつもの時間じゃねえか」

「せっかくの休みの日ですのに、いつもの時間ではもったいないではないですか!」

「お、おう、そっか悪い……お前らは何時に来てたんだ?」

「昼の一時だ」

「同じくらいです」

「わたくしは、朝の八時です」

「八時!?」

何でもない様子で答えた幸村に俺は仰天する。

「な、何でそんな早くから!?」

「万が一にでもあにきよりも遅くつくなどしゃていとしてゆるされませんゆえ」

「……そ、そっか」

なんだか申し訳なさがこみ上げてくる。
幸村がそうやって理科室に来た時、俺はまだ部屋で爆睡していたはずだ。

「な、なぁ、一応基本的な集合時間は事前に決めとかないか?」

「確かにそうした方がいいな。しかし、連絡手段はどうする?」

「連絡手段……ネット掲示板とかはどうだ?」

「いやだ」

即答だった。
しかもその顔が激しく歪んだのを見ると、何かトラウマでもあるのだろう。
あまり聞きたくもないのでスルーするが。

「あにき、そーしゃるねっとわーくさいとなどはいかがでしょうか」

「あぁ、SNSか。どうだ夜空?」

「アレも好かん」

「じゃあどうするんだよ……」

俺は溜息をつく。


どうする? >>305
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/07/21(土) 01:30:16.60 ID:gNzjKlCAO
普通に電話かメール
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 01:30:25.77 ID:IemqyDkSO
じゃあ俺が毎回決める。一斉送信でメールで通達する
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/07/21(土) 01:38:30.23 ID:EokcTax20
>>305
小鳩が電話に出るフラグ?
308 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 01:51:02.76 ID:23ooq/eQo


「あの、先輩方」


ここで理科がおずおずといった感じで手を上げる。

「おっ、そっか理科が何か作ってくれんのか?」

「ほう、さすが理科部の部長だ」

「あ、いえ、そうではなくて……連絡って普通に電話とかメールじゃダメなんですか?」

理科のその言葉に俺と夜空は固まった。
電話に……メール?
それは、まさか……ケータイデンワの事を言っているのか?

「……理科、お前は天才か」

「そうか、携帯電話……その手があったか!!」

「……えーと」

驚く俺と夜空を見て、なぜか軽く引いている理科。
彼女が引くというのはかなり珍しい気がする。

「じゃ、じゃあアレだな、アドレス交換が必要だな!」

「そうですね、それでは赤外線で……」

「赤外線!? まさかあのテレビのリモコンと同じやつか!?」

「そのほうほうならわたくしにもしょうしょう心得があります」

「マジか幸村!!!」

そんなこんなでしばらくギャーギャーと騒ぐ俺達。
その様子はまるで電気を初めて知った未開人のようだったと、後になって理科から聞いた。

いや、でも仕方がないだろう。
ケータイとはつまり現代で最大のコミュニケーションツール。
友達がいない人間が上手く使えるはずがないんだ。


「――と、これでみなさんへの連絡方法はできたというわけで」


とりあえず全員とアドレス交換が完了した。
夜空はケータイのアドレス帳を見て何やらニヤニヤしている。いや気持ちはわかるぞ夜空。
俺も家族以外のアドレスが登録されているのを見ると自然と頬が緩む。

アドレス帳の“あ”行から“ら”行までコンプリートなんてできなくていい。
とにかく、そこに自分以外の誰かの連絡先が登録されている、それが大事だ。

ちなみに、活動の時間などは部長である理科がすべて決める事になった。


「ああもう、聞いてますかー? これから新しい道具や、この夏を乗り切る作戦を考案しますよー?」


何をする? >>309
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/21(土) 01:53:07.82 ID:ETCGr1TI0
プール掃除
水泳部がいようが関係ない、排除してでも掃除
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 01:53:40.48 ID:IemqyDkSO
強力な水鉄砲作って軽いサバイバルゲームやろーぜ
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 01:54:01.45 ID:idfi3z3DO
海水浴に行ってリア充になる練習をしよう
312 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 02:38:41.29 ID:23ooq/eQo


「プール掃除しましょう!!」


そんな事を高らかに宣言する理科。

「プール掃除?」

「はい!! 夏のリア充と言えば、プール掃除ですよ!!」

「……ふむ、確かに一理あるな。小説などでもそういうシチュエーションは度々見る」

「みずぜめにたいするしゅぎょうですか」

そんな感じにいつも通り各々好き勝手な意見を言いまくる。
まぁしかし、確かにプール掃除はなんていうか、リア充的なワクワク感がある。
クラス全員でびしょ濡れになりながら楽しく掃除する。テレビのCMなんかでもよく見る。

「ふふ、それで掃除中にカーリングかなんかで遊んだり……!!
 後は掃除が終わってプールに水を入れながらプールサイドに腰掛けてラムネなんか飲んだり!!」

「いいなそれ、すげえリア充っぽい!! やっぱお前天才じゃねえか!!」

「でしょう!! ただの変態じゃないんですよ変態じゃあ!!!」

「一応変態の自覚はあったのか……。だがまぁしかし……お前の言っている事は確かに心を揺さぶられるな! 実にリア充らしい!!」

「理科どのはできるへんたいであります」

「もう何でもいいですよっ!! とにかく今すぐプールへ行きますよ!!!」

そうやって妙なテンションでプールへ向かう理科部だった。
313 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 02:40:24.13 ID:23ooq/eQo



***



プールへ行くと、意外なことに水泳部は活動していなかった。

「休みの日を狙いましたからね」

「お前最初からこのつもりだったんじゃねえか」

口ではそう言いながらも、内心ワクワクしている俺。
夜空も珍しくテンションが上がっているようで、

「よし、それではプールの水を抜くぞ!」

「あ、待ってください。それは理科にお任せを」

そう言って理科は手に持ったリモコンを操作する。
すると。

ゴゴゴゴゴゴゴ!!! という凄まじい音を立てて、見る見るうちにプールの水が抜けていく。

「普通はただ水を抜くだけでもかなりの時間がかかりますからね。そこを理科の道具で短縮することにしました」

「さすが理科どの。これならば相手が堀でまわりをかためていようとも、かんたんにおとせます」

「お、お前やっぱ凄いんだな……」

そんな事を言っている間にプールの水が空になった。
そこで俺は重大なことに気づく。

「そうだ、お前水道代とかどうすんだよ!? これまた入れるってなるとどんだけ金かかるか分かんねえぞ!!」

「大丈夫ですよ、理科のポケットマネーから払いますから」

「ぶ、ブルジョワか貴様……」

「ふふふ、天才発明家をなめないでもらいたいですね」

そう言ってメガネをクイッと上げる理科。
ヤバイ、どことなく様になっている。

それから俺達はプールの中へ降りる。
全員裸足になって、男の制服を着ている俺と幸村はズボンの裾を膝の上辺りまで上げる。
そして何故か夜空がモジモジと赤くなっていた。

「……どうした夜空?」

「あ、あまりこっちを見るなバカ!」

「??」

「あー、もしかして生足を見られるのが恥ずかしいとかですか?」

「わ、わるいか///」

なるほど、確かに露出を嫌う夜空なら、別に不思議じゃないかもしれない。

「あー、もういい!! ほらとにかく始めるぞ!!」

「あ、待ってください。理科部は理科部らしく、道具を使って効率良くやってみましょう!」

「しんのおとこたるもの、炎天下の中あせみずをたらして掃除するべきでは?」

「んー、確かにそれもありだけどさ。四人しかいねえわけだし、ここは理科部らしくやってみようぜ」

「あにきがそうおっしゃるのならば」


どんな道具を使う? >>314
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/21(土) 02:42:10.80 ID:hGRbQToR0
ただのたわし
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 02:42:33.64 ID:IemqyDkSO
除菌液を貯水してるタンクからデカイホースで撒く
316 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 03:01:37.53 ID:23ooq/eQo
おやすみ
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 03:02:35.63 ID:IemqyDkSO
>>1乙おやすみ
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/21(土) 03:02:51.59 ID:eg76edvGo
おやすみ
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/21(土) 03:03:31.25 ID:ETCGr1TI0
おやすみ〜

そしてただのたわしってwwwwww
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 03:43:42.69 ID:NZhSm84IO
321 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 12:58:00.79 ID:mkIvWLCto
「……ふむ、でも確かに幸村くんの言葉も一理ありますね。
 考えてみれば、楽してプール掃除っていうのはリア充っぽくないです。適度にサボりながらってのはありますけど」

「え……お、お前もしかして…………」

「はい、とりあえず汗水たらして真面目にやってみましょう!」

理科が持ってきたのは何の変哲もないタワシだった。
俺と夜空はそれを見て顔を引きつらせる。

「お、おい理科。せめてデッキブラシとかじゃねえのかよ」

「というかこんなものではとても終わらないぞ」

「そういった終わるか終わらないか、ギリギリなところを攻めるのがリア充っぽいじゃないですか!!」

「おとこには時にたっせいこんなんなもくひょうへと挑まなければならないときもあります……」

そんなわけで俺達はタワシでプール掃除を始めた。
みんな屈んで、タワシを手に無言でゴシゴシゴシゴシとひたすら擦る。

とにかく暑い。
頭上にはよく晴れた青空が広がっており、太陽はもう下がってきている時間だが、それでも日暮れまではまだまだある。
セミの音が絶え間なく鳴り響く。
汗が頬を伝ってタワシで擦っているところに垂れる。

辺りに響く音は、ゴシゴシというタワシで磨く音と、ホースから水を出す音と、セミの鳴き声や遠くから聞こえてくる運動部の声だけ――――。


「……なぁ、これってリア充となんか違くねえか」


俺が顔を上げてそう言うと、理科も頷く。

「確かに何か違いますね。何でしょう?」

「ふん、しょせん非リアがリア充の真似をしても無駄だという事なんじゃないか?」

「元も子もない事言うなよ……」

俺もなんとなくそんな気がしていたが、口にするのはやめておいたというのに。
プール掃除というのはリア充がやるから楽しそうに見えるだけで。
実際理科部のメンバーのような残念な人達がやっても残念な事にしかならないのではないか。

俺はどうしようもなくやるせない気持ちになって溜息をつくと、理科が少し驚いた表情で、

「あ、夜空先輩、パンツ見えてます」

「なっ……!!!///」

「えっ!?」

理科の言葉に、俺は思わず夜空の方をバッと見る。
理科は少し呆れた様子で、

「いや、冗談……」

「こっち見るなああああ!!!」

「ごはっ!!!」

どうやら理科の言葉は冗談だったらしく、白状しようとするが遅かった。

夜空が投げたタワシが俺の顔面にブチ当たった。
俺はよろけて、後ろに居た幸村にぶつかってしまう。

そして幸村は運悪くホースで水をまいていて、ぶつかった拍子に盛大に水をかぶってしまった。

「わ、悪い幸村!」

「いえ、プール掃除でぬれるというのはとうぜんのことですので」

「そ、そっか。いやでもわるか……ッ!!?」

ある事に気付いた俺はバッと幸村から顔を背ける。
幸村はキョトンと首を傾げており、自分が今どんな状態なのか理解していないようだ。

俺も幸村も、上はワイシャツしか着ていない。
その状態で水をかぶったらどうなるか。
つまり、彼……ではなく彼女の体が透けて…………。
322 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 13:01:28.04 ID:mkIvWLCto

「離れろバカ小鷹!!」

即座に俺と幸村を引き剥がす夜空。
そして彼女を背中に隠して、俺をキッと睨む。

幸村は呆然とした様子で、

「あねご?」

「うわっ、で、出てくるな! 自分の格好を見てみろ!!」

「……? あぁ、これはきがえたほうがよいですね」

「ば、バカ!! ここで脱ぐな!!!」

そんな会話を聞いて、俺はドキドキしながら背を向ける。
さすがに直視できないし、したら確実に夜空に怒られる。

「……先輩、理科達もヌレヌレのスケスケになりましょうか?」

「おいやめろ」

なんか怪しげな笑みを浮かべてにじり寄ってくる理科に、俺は後ずさる。
俺が言うのもなんだが、普通に目がヤバイ。
ついでに言うと頭もヤバイ。言ってる内容もヤバイ。

その存在自体が法律で取り締まるべきな感じだ。

「先輩、なんだかとてつもなく失礼な事考えてません? まぁ、それでも、先輩が理科の事を考えてくれるだけで……!!」

「寄るな来るな触るな近寄るなー!!」

「ふふふ……そう言われると余計やりたくなるのが人の性……!!」

ユラユラとさらに近づいてくる理科に、俺はさらに後ずさる。
すると。

「おわっ!!!」

足で何かを踏んだ。
多分この感触は――タワシだろう。
そう思った直後。

ドテーン!! と、俺は派手に転んだ。

その瞬間、チャンスとばかりに理科が俺にまたがってきた!!

「ぐへ、ぐへへへへへ……理科と楽しいことしましょうね先輩ぃぃ…………!!」

「おい待てバカ!!」

両手をワキワキする理科に、俺は真剣に恐怖を覚える。
理科はもうなんか華の女子高生などではなく、ただの変態オッサンだった。
たまにニュースなんかで「女の子に興味があった」などと供述しているアレだ。

俺がどうにかして抜けだそうと抵抗していると、一つの影が俺達二人をおおった。


「――この変態どもがっ!!!」


ドカドカッ!! と俺達を蹴っ飛ばす夜空。顔は真っ赤だ。
なんか俺まで変態扱いされたのは納得いかないが、まぁとにかく助かったのでよしとする。

理科は本当に残念そうな表情を浮かべて、

「……はぁ、もう少しでしたのに。ていうか夜空先輩、今パンツ見えましたよ。冗談抜きに」

「ッ!!/// ふ、ふん、もうそんなウソに惑わされるか!! なぁ小鷹!」

「そ、そうだそうだ! 別に水色のパンツなんて全然見えなかったし!!」

次の瞬間、夜空は声になってない声をあげて大量のタワシを俺に投げつけてきた。

いやだって、あのローアングルで足上げて蹴ってきたら。
その、たとえ見るつもりがなくても見えるじゃねえか……。

当然そんな弁解が聞き入られる事もなく、俺はしばらく夜空にこっ酷くしばかれた。
 
323 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 13:04:11.49 ID:mkIvWLCto



***



数時間後。
日も傾き、空が夕日に染まったころ。
理科部のメンバーはプールサイドでぐったりしていた(幸村以外)。

俺と夜空はもっぱら精神的な疲れ。
あの後も理科の変態行動と、幸村の無意識な過激行動は収まることを知らなかった。
ちなみに夜空はスカートの下にハーフパンツを履くことにしたようだ。

そして理科は肉体的な疲れ。
日中の暑さは超インドア派の理科には相当きつかったらしく、今ではいつもの変態的発言も出なくなっている。
それはそれでいいとは思うのだが、彼女のアイデンティティ的に大問題といえばそうなのかもしれない。

唯一幸村だけはいつもと変わらず、ただオレンジ色の空を見上げてぼーっとしている。


「……で、どうすんだよこれ」


俺がぐったりと声を出す。
プール掃除は十分の一も終わっていない。
まぁ、もちろんプール開き前に既に掃除はしてあるはずだ。
といっても、たかが一ヶ月ほど使用しただけでもそれなりには汚れてはいる。

「がんばりましょう、あにき」

「…………はぁ」

俺の言葉に反応したのは、タワシを片手にいつものぼんやりとした目を向けてきた幸村だけだった。
夜空は相変わらずどんよりとした目で俺をチラリと見るだけ。
理科なんかピクリとも反応せず、燃え尽きたジョーみたいになっている。

……どうすんだよこれ。


>>324
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 13:09:58.51 ID:xSSgZRpuo
理科の道具を使う
325 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 16:10:08.15 ID:mkIvWLCto

「……ここは素直に道具使いましょう」

げっそりとした声でそう言ったのは理科だった。
当然、それに反対する者も居なく、それからは理科の道具を使って楽して効率的に掃除していった。



***



日もすっかり落ちて、辺りは暗闇に包まれる。明かりといえば月の光だけだ。

俺達はプールサイドに腰掛けていた。
ドボボボボボ!! と水の音が絶えず聞こえる。プールに水を入れているのだ。
もう大分水も溜まってきており、小鳩なんかは足がつくか微妙な深さだ。

俺達はぼーっと水面を眺める。
月の光が反射してキラキラと光って綺麗なことは綺麗だが、残念ながらそれで感動できる程明るい気分ではない。

「……なんか、ただ掃除しただけだったな」

「こんな退屈でつまらない作業をあれ程楽しく見せるとは、リア充とは本当に同じ人類なのか」

「いや、まぁ、最後の方は理科の道具も使ってさらに単純作業的な感じになっちゃいましたしね」

「……このむなしさ。つわものどもがゆめのあと…………」

はぁ……と四人の溜息が重なる。
なんていうか、本当に俺達は残念だ。
これでは理科部というよりボランティア部とでも言ったほうがいいのではないか。

「……せめて入水式でもやりますか」

「「は??」」

理科がポツリと呟いた言葉に俺と夜空が首を傾げる。
理科はそんな俺達の視線をスルーして、幸村に何かコソコソ話している。

「おい理科? お前一体何を……」

俺がそう言いかけた時、


「あにき、失礼いたします」


そんな幸村の声が後ろから聞こえたかと思ったら。


ザッバアアアアアアアアン!!! と。


俺はプールの中へ突き落とされていた。
視界が無数の泡で埋め尽くされる。
俺は水面から顔を出すと、仰天して幸村を見る。

「ごばっ!!! お、お前、何やってんの!?」

「入水式とは、このなかでもっともくらいのたかいものを水の中へと入れるぎしぎだと理科どのから」

「俺は船か!! そんなもんウソっぱちだ!!」

「あはは、いやだって、夜のプールと言ったら誰か飛び込まなきゃダメじゃないですか」

「いや意味分かんねえよ……」

俺はなんかもう怒る気もなくなって、プールの中でガクッと肩を落とす。
一方で、入水式なんていうのがウソっぱちだという事に気づいた幸村は何やら肩を震わせて、

「あ、あにき……もうしわけございません。このぶれい、この身をもってつぐなわさせていただきます」

そう言って、プールの中へとダイブした。

…………上がってこない。


「ゆ、幸村あああああああああ!!!」
 
326 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 16:13:25.70 ID:mkIvWLCto


俺は大慌てで泳いでいって、幸村を抱えて水面から顔を出させる。

「あにき……とめないでください」

「いやいやいや止めるだろ!! てかそんなんでいちいち入水自殺なんてしようとしてんじゃねえええええ!!!」

「……あ」

理科のそんな言葉。
幸村はワイシャツがずぶ濡れになってしまったので、上は体操着を着ているのだが。
なんていうか、その。

――透けている。


「小鷹ぁぁ……!!!」

夜空が地を這うような恐ろしい声を出して俺を睨む。
身を乗り出して、今にも襲いかかってきそうな雰囲気だ。
なんか月をバックにしていてすごく怖い。

「ま、待て待て!! 仕方ねえだろこれは!!」

「そう言っていつまでガン見しているんだ貴様は!! この変態!!!」

「ちょ、夜空先輩あぶな――」

夜空がさらに身を乗り出し、理科がその手を取って止めようとした結果。


ザッバアアアアアアアアン!!! と、二人仲良くプールへダイブすることになった。


そして当然。
女子二人はヌレヌレのスケスケになるわけで。

夜空は一瞬ポカンとプールの中で俺と向き合い……。
その後、自分の姿を確認して……。
また、俺へと視線を戻して……。


「こっちを見るなああああああああああああああああああああ!!!!!」


凄まじい水しぶきが俺の顔面に直撃した。

「ごぶっ、よ、夜空落ちつ……!!」

「見るなと言っているだろうが!! この変態変態変態!!!!!」

「小鷹先輩、ご褒美ですね」

「ご褒美じゃねえよ!!!」

俺はたまらず夜空とは反対の方へ泳いで退散する。
すると、今度は理科が追いかけてきた。

「うへへ……せんぱーい!!」

「お前は来んな!! つか胸!!!」

「見せてんですよ。鈍いですね」

「この痴女が!!!」

痴女がクロールで迫ってきた。
つーかお前運動音痴じゃないのかよ!!

そうやって突っ込もうとして後ろを見ると。

なんと理科が沈んでいた。

「ッ!! 理科!?」
 
327 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 16:16:25.75 ID:mkIvWLCto

足でもつったのではないかと、俺は慌てて引き返して理科を抱きかかえる。
彼女も余程怖かったのか、ブルブル震えて俺にしがみついてきた。
なんだか柔らかい何かが当たっているような気がするが、今はそれどころではない。

「理科、大丈夫か!?」

「……うっふっふ」

かなり焦る俺だったが――――理科の様子がおかしい。
嫌な予感がする。

そう思って、とりあえず理科から離れようとするが、完全にホールドされていた。

「お、おい理科。とりあえず離そうか」

「ぐへへ……捕まえましたよぉ、先輩」

そう言ってニタァと笑う理科。
こいつ、はめやがった!!

「は、離せって!!! つーか色々当たってる!!!」

「当ててんですよ!! ふっふっふ、それではFF10よろしく水中プレイとでもいきましょう!!」

「いかねえよ!!!」

正直、ヌレヌレのスケスケ状態の女の子に抱きつかれているこの状況は色々とマズイ。
今の理科は髪も濡れて、いつものポニーテールでもないストレートになってたりして、悔しいが少し色っぽい。
俺が助けを求めて辺りを見渡すと、

「あにき、おたすけします」

「よし、さすが幸村!! …………ってお前もその格好何とかしろおおおおおおお!!!!!」

「……はて」

首を傾げてキョトンとする幸村。
思いっきり透けているその胸元も十分ヤバイのだが、濡れた髪が首元なんかに張り付いていてさらにエロさが……。

……っていちいちこんな事考えている俺も大概なんじゃないか。


「不潔だ!! 不潔だ!!! 不潔だああああああああああ!!!!!」


夜空は全身にタオルを巻きつけて、プールサイドから大量のタワシを投げつけてくる。
いや、ギャグっぽいかもしれないが、実際かなり痛いからやめてほしい。

そんなこんなで、俺達理科部は全員ヌレヌレのグショグショのスケスケでしばらく騒いだ挙句、警備員に見つかってこっ酷く叱られた。
全身ずぶ濡れな状態でうなだれて説教を受けていると、なんだか凄く泣きたくなった。
 
 
328 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 16:17:26.86 ID:mkIvWLCto



***



「――で、何をしましょう」

それから数日後。
あまりにはっちゃけ過ぎた理科部は数日間の活動停止を言い渡され、今日から再び活動開始だ。

ここはいつもの理科室。午後一時。
空気はなんというか、少しどんよりしている。

「とりあえずプール掃除でなければなんでもいい」

「は、はは……さすがに理科ももう一度アレをやる気にはなれないです」

「つーか、もうその話はやめてくれ、泣きたくなってくる……」

「ときにはしっぱいもつきものです、あにき」

時にはっていうか、いつも失敗してるけどな。
だが、今はそんな突っ込みも言う気力がない。

すると、理科が無理矢理奮起するかのように、バンッとホワイトボードを叩く。


「と、とにかく! 後ろを見ていても仕方ありません!! 今は新道具のアイデア、もしくはこの夏を乗り切る作戦について考えましょう!!」


何をする? >>329
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 16:18:34.12 ID:69/aw9zMo
肉をからかいに行ってみよう
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/21(土) 16:18:40.28 ID:WsPJAaBE0
ペットボトルロケット大会
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/21(土) 16:22:18.00 ID:lM1LF0muo
ふと思ったんだけど、こいつらリア充っぽくね?
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 17:55:42.36 ID:jjEdaqbf0
肉は部外者なくらいが面白くて丁度いいな
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/21(土) 18:15:05.11 ID:ETCGr1TI0
ここまでうんこマリアなし
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 18:25:27.24 ID:JOj896UIO
そろそろ肉も仲間に入れて理科以上のセクハラをさせたい
335 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 18:48:20.42 ID:mkIvWLCto

「……評価とは相対的なものであることも多い」

「夜空?」

いきなり良く分からない事を言い出した夜空に、全員が首を傾げる。

「つまり、だ。私達よりも非リア充を蔑み、罵倒すれば相対的にあたかも私達がリア充であるかのような錯覚を得られるかもしれない」

「…………」

俺は絶句してしまう。
いや、なんとなくは知ってたけど。
それでも改めて俺は思う。

――こいつはとても酷い性格をしている。

「まぁ一理ありますね」

「おい!」

そんな風にバカ正直に言う理科に、俺はすぐに突っ込む。
さすがにそんな人間としてアウトな事はやってはいけないだろう。

幸村は少し考えこんで、

「……なるほど、てきしょうの首をとって自らの地位をあげるということですか」

「いやそれは違う」

たぶん歴戦の武将達も、こんな事と一緒にはされたくないはずだ。

「でも、大きな問題がありますよ」

「む、なんだ?」

「理科達より非リアな人なんているんですか?」

理科の言葉に俺は深く納得する。
確かにこの理科部よりも非リアな者なんていないだろう。

実際、俺よりも可哀想だと思った奴なんて理科部以外には…………。

そこまで考えて、俺は固まった。
――居た。
この理科部のメンバーよりも非リアだと思われる最高に可哀想な奴が。

そして他のメンバーもほぼ同時にとある人物が頭に浮かんだようだ。

「ふっ、気付いたか。そうだ、私達よりも非リアな人間、それは柏崎星奈だ」

夜空はドヤ顔で宣言する。
それに対し俺達は、

「……確かに、あの人は凄まじかったですね。今までの人生でいろんな人を見てきましたけど、あそこまで痛い人は初めてでした」

「きもちがわるかったです」

「まぁ終わってたな。人として」

口々に星奈に対する印象を述べる。
全員イメージは似たり寄ったりのようだ。

俺は夜空の方を見て、

「……てかさ、つまりわざわざ星奈に絡んで非リアなのを蔑んで罵倒するのか?」

「その通りだ」

「鬼かお前は」

確かに星奈は痛い。
だからといって、そこを攻撃しまくるのは何だかすごく気が引ける。
ただでさえ、以前の鍋事件の際に彼女は精神的にかなりのダメージを負ったはずだし。

あの泣きながら飛び出していった星奈を見て。
自分たちが小学校のいじめっ子みたいな感覚がして正直気まずかったりもした。
336 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 18:53:28.18 ID:mkIvWLCto

「……まぁ仮にも理事長の娘ですしね。あんまりやり過ぎるとすぐバレますよ」

理科も実際の所はあんまり乗り気ではないらしい。
とはいえ、そのセリフは以前に星奈を拷問した人間が言うものではないが。

「じゃくしゃをしいたげるのは武士の心にはんします」

幸村も静かに目を閉じてそんな事を言う。
星奈は一応立場的には理事長の娘だし、弱者ではないとは思うのだが、かといって強者とも思えない。

夜空はそんな俺達の反応に面白くなさそうに、

「まったく、貴様達は変なところで真面目だな。巷では『ちょいわる系』とやらが人気者らしいぞ?」

「いやお前のはもう『ちょいわる系』ってレベルじゃねえって……」

「あ、でも先輩」

ここで理科が何かに気付いたらしく手を挙げる。

「星奈先輩をいじめるのはアレですけど、学ぶものはあるんじゃないですか?」

「……アレから学ぶもの?」

夜空が本気で意味が分からないといった様子で眉をひそめる。
これを天然で、心の底からやっているのが酷い。

「はい、人の振り見て我が振り直せ、ですよ。あれだけ残念な人です。きっと色々な欠点が見えてくるはずです。
 その中に理科達も当てはまっているようなものがないかって客観的に検証するんですよ!」

「……たしかに、おのれをしることはむずかしいものです」

「それ……ありかもな」

理科の言葉に俺と幸村も納得する。
俺自身、今までの自分の行動を見直して色々と努力して友好的に見えるようにはしているのだが、なかなか上手くいかない。
そういう時は少し引いた所から見ることで何か見えてくるものがあるのではないか。

本人は大真面目でも、客観的に見たらすごく滑稽であるというのは良くあることだ。

夜空も理科の言葉は一理あると思っているらしく、

「まぁ試してみる価値はあるか……。できればあんな残念な奴から、自分と似たような部分なんて見つけたくはないがな」

「では、決まりですね!」

そうやって、今日は自分達より残念な人物……柏崎星奈を観察して欠点を見つけるという活動をする事になった。
なんかすごくネガティブな感じがするが、あまり考えないようにする。
せっかくみんなも結構乗り気だし。

……ところが、さっそく問題が一つ。

「でもさ、どうやってアイツに近付くんだ? 夏休み中だし、学校に来てねえんじゃねえの? 部活入ってるなら別だけど……」

俺の言葉に全員が顔を曇らせる。
その反応から、みんな星奈は部活には入っていないと考えているのだろう。俺も同感だ。
それだけ彼女からは残念さが滲み出ていた。

しかし、それだと彼女は登校して来ていないという事になる。


どうする? >>337
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 18:54:57.81 ID:JOj896UIO
直接出向く
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 18:55:19.99 ID:IemqyDkSO
しらみ潰しに探して[ピーーー]か
339 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 20:37:24.28 ID:mkIvWLCto

「学校に来ていないのなら、直接ご自宅へ出向けばいいのでは?」

何でもないように理科が言った。

「……い、いや、星奈の家って言ったらつまり理事長の家だぞ?」

「それがなにか?」

「あなたの娘が残念すぎるから観察しに来ました、なんて言えねえだろ」

「その普通ならばとうていこなせないことをやってのけるのがあにきです」

「期待してくれてありがとう幸村! でも無理なものは無理だっての!」

少なくとも、俺はあの人にそんな事を言う勇気はない。
すると夜空が少し呆れた様子で、

「バカ正直に言う必要もないだろう。そこは何か適当な理由でも考えればいい」

「適当な理由って言ってもなぁ。相手は理事長だぞ?」

直接会った俺は分かる。
たぶんあの人にはそういう誤魔化しが通用しない気がする。

「そういえば先輩、停学の件で理事長の家まで行ったことがあるんでしたっけ?」

「あぁ……だから言っとくけど、あの人はそう簡単に……」

「ちょっと待て小鷹。それはつまり、貴様はあの女の家に行ったことがあるということだな?」

なんか夜空が目を細めて睨んできた。

「あ、あぁ」

「……ふーん。そういえば貴様、あの女の事を“星奈”と下の名前で呼んでいるな? もしかして意外と仲悪くもないんじゃないか?」

「んな事ねえよ。“柏崎”だと理事長と紛らわしいし、取り巻きの男達が“星奈様”とかって呼んでるから名前で呼んでるだけだ」

「……ふん」

面白くなさそうに腕を組んでそっぽを向いてしまう夜空。
少しでも星奈と関わりがあることが許せないのだろうか。

理科はそんな俺と夜空のことは気にせずに何かを考え込んでいる。

「ていうかわざわざ理事長を通す必要もないんじゃないですかね」

「え?」

「ほら、アポ無しでこっそり行って、どっかの壁を理科の道具で――」

「却下だ。退学になりたいのか貴様は」

「冗談ですって」

「ならばわたくしが囮になって……」

「それもダメだっての!!」

理科部らしく残念な考えしか出てこない。
ていうか物騒なことすればガチで警備員とかぞろぞろ出てきそうだぞあの屋敷は。

俺はなるべく身体的にも社会的にも平和な方法を考える。
340 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 20:38:19.14 ID:mkIvWLCto

「……やっぱ素直に理事長に言った方がいいんじゃねえのかな」

「と言いますと?」

「ほら『星奈さんと遊びたいんですけど』……とか」

「却下だ。そんな屈辱的な方法は耐えられん。せめて『おたくのリアルダッチワイフを観察しに行きたい』だな」

「それで家に通す親がいたら見てみたいです」

「夜空のあねご。だっちわいふというのはあまり良くないかと。ここは『あるくこうしゅうべんじょ』などで……」

「変わってねえよ!!」

やっぱりなかなか決まらない。
とりあえず家に入れてもらえれば後は何とかなりそうだが、一学生が理事長の屋敷にお邪魔する言い分というのがあまり思い付かない。
俺だけなら何とかなりそうなんだけどな。


どうする? >>341
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 20:39:06.03 ID:IemqyDkSO
幸村の意見採用
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/21(土) 20:43:06.59 ID:WsPJAaBE0
公衆便所…
つまりたまたま通りかかった体で「すみませんトイレ貸してください」でいけばモラルには反さないか?
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 20:43:57.15 ID:69/aw9zMo
>「ならばわたくしが囮になって……」

こっちじゃないの?
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 20:49:53.34 ID:IemqyDkSO
小鷹「お宅の歩く公衆便所観察しにきたんですが」

だったらどうしよう(笑)
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 21:23:29.17 ID:NZhSm84IO
ペガサスさんの家ってプールあるの?
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/21(土) 22:00:03.47 ID:Q6vKSroKo
>>345
ミーの家には広さ3畳程のプールがありマース!
347 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 22:08:34.67 ID:mkIvWLCto

「……幸村の案がいいかもな」

俺はポツリと呟く。

「わたくしの意見にきょうみをもっていただいてうれしいです、あにき」

「いやいやいや。先輩、さすがに人の娘を歩く公衆便所扱いするのはまずいと思いますよ……」

「そっちじゃねえよ!!」

俺は理科の呆れた様子に反論する。
さすがに星奈の事をリアルダッチワイフやら歩く公衆便所やら言うつもりはない。
そんな事言えば、理事長との関係にヒビどころか深い深いクレバスを刻むことになるだろう。

「そうじゃなくて、囮作戦のほうだよ」

「分かりました。わたくしは正面突破をしていさぎよくちります。その隙にあにきたちは……」

「散るな散るな!! そんな物騒な事じゃねえよ。ただ、俺と理事長が面識ある事を使うんだ」

「どういう事だ?」

「まず理事長に俺が連絡して、また色々話したいとか言う。あの人はウチの父さんの事話すの好きだし、断らないと思う」

「アッー!!!」

「で、同じ部員の人達がぜひ理事長のお屋敷を見たがっている、とか何とか言ってお前達も入れてもらえるようにする。
 俺は理事長と雑談をしている内にお前達は屋敷を見て回って、何とか星奈の部屋を見つけて観察する。これでどうだ?」

俺が一気に言うと、夜空と幸村は少しの間ポカンとしていたが、その後頷く。
理科はなんかしょんぼりしているが無視でいいだろう。

「……悪くはないな。他に案もないし、それでいってみるか」

「あにきのかんがえるさくせんに、まちがいなどございません」

そんなわけで、囮作戦で星奈に接近する事になった。


***


俺達理科部のメンバーは理事長の屋敷前まで来ていた。

あの後話はトントン調子で思うように進んだ。
しかも星奈の俺への印象が良くない事を知っている理事長は、彼女には特に何も言ったりしないとまで約束してくれた。
あまりに上手くいき過ぎているので、幸村なんかは罠の可能性を心配していた。
だがもちろん、理事長が俺達を罠にはめる理由がないわけで、これはただ単に上手くいっていると喜んで良いのだろう。

俺は一度来たことがあるのでそこまででもないが、他の部員は屋敷を見て口をポカンと開けて驚いていた。

「……成金が」

「なんかいかにも『金持ちだぜぇ〜、いいだろぉ〜』っていう感じに自慢しているみたいですね」

「これほど敵が攻めやすいばしょにたてているとは。ぶようじんです」

やっぱりどいつもこいつも感想が残念すぎる。
ここは理事長の家なんだが、そこのところ分かっているのだろうか。

俺がいつもながら残念な光景に呆れていると、玄関の扉が開かれた。

「小鷹様に志熊様、そして部員のみなさんですね。お待ちしておりました」

金髪美女の執事、ステラさんだ。

「り、リアル執事キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! いや、理科は一度会ったことありますけど」

「お前はもう少し静かにしろよ……」

「いえ、構いませんよ」

ステラさんはニコリと笑うと、気にせず俺達を屋敷内へと案内する。
このスルースキルは見習いたいものだ。

「先輩、今少し酷い事考えませんでしたか?」

「気のせいだろ」
348 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/21(土) 22:12:45.07 ID:mkIvWLCto
「……あにき、この者みのこなしにむだがありません」

「上の人間がアレでも仕える人間は優秀なのだな。いつの時代も変わらないものだ」

「シー!! シー!!!」

俺は必死に夜空や幸村の言葉をかき消す。
こいつらわざと面倒な事態にしようとしているようにしか思えない。

そうやって変な汗をかきながら、食堂に通された。

この時間に食事が出されるという事はないようだが、テーブルの上には明らかに高級そうなお菓子が並んでいる。
そして理事長は相変わらず気難しそうな表情で椅子に座って待っていた。

「――よく来た。座りたまえ」

俺達は大人しく席につく。
さすがに夜空も理事長の前では、はっちゃけたりはしないようで安心した。


***


俺の他に部員も居るというわけで、理事長とは主に理科部の活動について話した。
といっても話せないような部分も多く、あまり長くは続けられそうにもなかった。
こうしてみると、改めて俺達がろくな活動をしていないことがよく分かる。

その後、話は普段の学校生活という俺達にとっては地雷な内容になりかかっていたのだったが、

「そういえば、君達は屋敷に興味があったのだったか」

その言葉はまるで天からの救いかと思った。
俺はすぐに口を開く。

「は、はい! やっぱりこういう大きい屋敷が珍しいらしくて」

俺のその言葉に、他の部員もコクコクと大袈裟に頷く。
やりすぎだ、と言いたかったが、理事長の前ではそれもできない。

理事長は少し苦笑して、

「見たいのならば好きなように見たらいい。所詮は普段生活する場だ、君達の期待には添えないかもしれないがね」

「あ、ありがとうございます!! 理科……あ、いえ私もこういった所は珍しくて」

「……ん? 志熊君はこういった屋敷にも、よく招待されているのではないか? 企業の関係で」

「あ、い、いえいえ、そんな事は!!」

「ほう、そうなのか」

理科は明らかにギクッとした様子だったが、何とか誤魔化せたようだ。

そして理科と夜空と幸村は席を立つ。
理科と夜空は恐る恐るといった感じで挙動不審だったが、幸村はいつもと何も変わりがない。
幸村のこういった物怖じしない所は素直に感心する。

「そ、そそそれでは、ダッチワイ……あ、いや、公衆便……じゃなくてその、そう、屋敷!! 屋敷を見て回ってもよろしいでしょうか!?」

「あ、あぁ、好きなだけ見るといい」

動揺しまくりな夜空に、理事長も少し驚いている。
すげえな夜空、理事長を押してるぞ。言動は一歩間違えたら退学レベルな気もするけど。

そんな感じで食堂から出て行こうとする三人。
ここまでくれば後少しだ、と俺は小さく溜息をつく。
しかし。


「それでは私が屋敷をご案内いたします」


ステラさんだ。

予想外の展開に、三人の顔に緊張の色が走る。
これではこっそり星奈の部屋を探して観察するなんて事はできない。
ていうか幸村、目を細めてお前は何を考えてる。頼むから物騒なことはやめてくれ。


どうする? >>349
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 22:13:49.26 ID:IemqyDkSO
むしろ堂々と入る
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/21(土) 22:14:07.28 ID:WrUjhSXYo
幸村がステラに組み手を挑む
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 22:14:33.61 ID:VZP1Ev/+o
こだかがステラさんを引き付ける
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/21(土) 23:12:44.00 ID:gcViJ9XIO
つまり、堂々と風呂場に突入するということか…
353 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/22(日) 00:53:45.46 ID:GM02XxqZo

他の部員が居なくなってから、俺と理事長はずっと父さんの話をしていた。
正直理科達が上手くやっているのかどうかすごく気になるが、ここを抜け出しては囮の意味が無い。

「それで隼人のやつは――」

言葉こそ乱暴だが、父さんを語る時の理事長は明らかに楽しそうだ。

俺は素直に羨ましいと思う。
こうして十年以上経っても変わらず友達でいる。
それはきっと良くあることではなく、そういった友達が居ることは素晴らしい事なんだ。

俺の脳裏に十年前の親友が浮かぶ。
俺もその時は、きっとこいつとはずっと友達でいられる。そう思っていた。
だが、実際は違った。
十年経った今、俺とアイツは互いのことを少しも知らないで別々の道を歩んでいる。

そう考えると、少し寂しい。
理事長や父さんが、少し妬ましい。

「小鷹君? どうした?」

「えっ、あ、すみません。ちょっとぼーっとしてました」

俺は現実へと意識を戻す。
そうだ、結局は過去のことだ。
いつまでも後ろを振り返ってばかりではいけない。

理事長はそんな俺をじっと見つめ、何か躊躇した後に重々しく口を開く。

「……君に一つ聞きたいことがあるのだがいいか? できればあまり他言してほしくないのだが……」

「……? はい、何ですか?」

「星奈の事なんだが……あの子はひょっとして、いじめられているのではないか?」

「ぶっ!!!」

思わず口に含んだジュースを吹き出してしまった。

「実はこの前、全身を黒い何かで汚した上に大泣きしながら帰ってきたのだ。
 あの子が小学生などであれば、同じクラスの子とケンカでもしたのかと、ある程度は放っておくのだがな……」

「あ、え、えーと……」

「しかしあの子はもう高校生だ。そんな全身を汚してケンカをするような年でもあるまい。
 私は一瞬、暴漢か何かに乱暴でもされたのかと思って警察に連絡しようかとも思ったのだが、あの子に止められてな」

「……え?」

「問い詰めると、同学年の生徒とケンカをしたような事を言っていたのだが、私には……親には出てきてほしくないと言っているんだ。
 もちろん、子供のケンカに親が首を突っ込むのは私も好まない。しかし、万が一いじめとなると……な。あの子はプライドが高いから正直には言わないだろうし」

俺は黙り込む。
その気になれば、理事長に全てを話して俺達を処分してもらうなんていう事は簡単なはずだ。
しかし、彼女はそれをしないで隠した。

それはきっと、俺達の事を気にして、なんていう理由ではない。
ただ単に、彼女のプライドが許さない、そういった理由なのだろう。

でも、例えそうだとしても。
アイツは何事にも真っ直ぐで。
アイツは何事にも一生懸命で。

俺にはもう、星奈がただの残念な奴には思えなくなっていた。


「小鷹君、何か知らないか? こんな事を聞けるのは君くらいなんだ」


そんな理事長の真剣な問いかけに。
俺は――――。


何て答える? >>354
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 00:55:12.52 ID:HYX8dwBSO
全部正直に洗いざらいぶちまける
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 01:20:27.79 ID:zCwuuinDO
鍋の具材にして食おうとしたなんて言うのか…?
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 01:27:43.32 ID:u16wzEHIO
夜空ピンチじゃね?
357 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/22(日) 02:13:52.13 ID:GM02XxqZo

俺は全てを正直に話した。
理科の時もそうだったが、この人には隠し事はできそうにもない。

理事長は一切口を挟まず、黙って聞いていた。

「……ふむ」

俺が話し終えると、理事長は腕を組んで難しそうな顔をして唸る。
これは――完全に終わったか。
そんな事も脳裏をよぎる。

なにせ学園の理事長の娘を鍋に投入したのだ。

理事長は俺をじっと見て、


「……まぁ、なんだ。これからも娘を頼む」


頭の中が真っ白になった。
まだ、退学を言い渡されたほうが落ち着いていただろう。

え、なんで?
俺達はおたくの大切な一人娘を鍋でコトコト煮込もうとしたんですけど……。

理事長は小さく苦笑しながら、

「少し、安心した。星奈にもそうやって真正面からぶつかってくる相手ができたのだな」

「え、いや、真正面すぎるっていうか色々突き抜けすぎてるっていうか……」

「私も学生の頃は隼人のお陰で散々な目にあってきたものだ。あの時なんか……」

何かを思い出したようで、理事長の口が止まる。

そして次第に。
青筋をビキビキ立ててプルプルと全身を震わせる。
その目にはまさに怨念がこもっていた。

「あの野郎……!!!」

な、何をやったんだ父さん……。

それから少しして理事長もこちらへ戻ってくる。
その表情はどこか疲れたものになっており、なんとなく申し訳なかった。

「まぁとにかく、だ。学生の内はそういう相手が大切なんだ。本心からぶつかり合えるような相手がな。これは大人になっていくにつれてよく分かる」

「そ、そうなんですか……?」

あの二人の状態を見たらとてもそんな感想は持てないが、俺も大人になれば分かるのだろうか。

「特にあの子は特別な立場にいる。そういった立場なんかを気にせずにぶつかってくる相手というのは珍しいだろう。
 大抵は『理事長の娘』という肩書きだけで、他の者と同じように接することができなくなるものだ」

「そりゃ、まぁ、そうですね……」

「そうだ、どうせならウチの星奈を君達の理科部の仲間にしてはくれないか? あの子は特に部活もしていないようだしな」

「いや、たぶん星奈……さんの方が全力で拒否するんじゃ…………」

「はは、まぁそうだろうな。だがいずれ、あの子も分かってくるだろう。
 しかし、やりすぎには注意だぞ。今回の鍋はギリギリアウトだ」

「ギリギリアウトって事は……」

「注意だ。以後気をつけるように」

そう言って小さく笑うと、理事長は透き通った目で窓の外を眺める。
 
358 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/22(日) 02:18:58.42 ID:GM02XxqZo

俺はポカンとそんな理事長を見て、そしてだんだんといたたまれない気持ちになる。
俺達……というか夜空が星奈にした事は単なる嫌がらせだ。
それにも関わらず、理事長はそれを咎めることもしない。

良く分からない。
夜空が星奈に突っかかるのは、ただ「気に食わない」という子供みたいな気持ちからだ。
それでも、星奈にとって夜空みたいな存在は本当に必要なのか?

「……あ、そうか。もしかして三日月君がここに来たのは星奈に用があるんじゃないのか?」

「それは……」

「ふっ、図星のようだな」

「…………あの、理事長。星奈さんの部屋の場所、教えてもらえませんか」

俺は気づけばそんな事を口走っていた。
頭で考えて、口から出した言葉ではない。
ただ自然と、脊髄反射のように口から出てきたのだ。


「――あぁ、いいだろう」


理事長は満足気に笑っていた。
俺は理事長から星奈の部屋の場所を聞くと、食堂を飛び出した。



***



走って、走って。
俺は肩で息をしながら星奈の部屋の前まで来ていた。
なぜこんなにも急いで来ようと思ったのかは分からない。

ただ、そうしたかった。
そう言うしかない。

「……ん?」

中から怒鳴り声が聞こえる。
これはおそらく……というか絶対…………。

俺は嫌な予感を受けながら、ドアをノックする。

ガチャリと扉を開けたのは理科だった。

「あ、先輩。理事長はどうしたんですか?」

「ちょっと何勝手に開けてんのよ!! ここあたしの部屋なんだけど!?」

「うるさいぞ食用肉。あまりこの空間の酸素を消費するな。貴様なんぞにもったいない」

「はぁ!? だからここあたしの部屋なんだけど!? ていうか食用肉って何よ!!!
 あんたの目と頭が腐りきってて勝手に間違えただけでしょ!?」

「ふむ、食用肉は言いづらいな。それでは短縮して肉と呼ぶことにしよう。
 喜べ肉。友達の居ないお前の初めてのあだ名だぞ」

「誰が喜ぶってんのよ、あんたの感性バグってんじゃない!? じゃあ代わりにあたしが呼んであげるわよこの肉!!」

「……何を言っているのだ? 肉語はよく分からん」

「……あんたぁぁ……ホントに性格悪いわねクソが…………!!!」
359 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/22(日) 02:21:15.95 ID:GM02XxqZo

さっそくエキサイトしているようだ。
とはいってもやはり夜空が優勢で、星奈は涙目になっている。

俺は理科と幸村に小声で尋ねる。

「ステラさんはどうしたんだ?」

「正直に言いました。星奈先輩とは知り合いですって」

「そしたらこの部屋にあんないされ、こうして夜空のあねごといいあらそいに」

「……あー、よく分かった」

俺は溜息をつく。
一応目的は星奈の“観察”だったはずだが、夜空はそれを覚えているのだろうか。
授業ではどんな質問にも簡単に完璧に答えるので頭は良いんだろうが、勉強以外ではバカっぽいところも多々ある。

「おい小鷹、やっぱりダメだな。この駄肉からは学ぶものなど何もない。人間が参考にするには価値が低すぎる」

「何わけ分かんない事を……ってプリンあんた何で勝手に部屋に入ってきてるわけ?
 パパの親友の息子だかなんだか知らないけど、調子乗らないでほしいんだけど」

「…………」

「……? なによ文句あんの?」

そういえば、俺はどうしてあんだけ急いでここに来たのかまだ分かっていない。
俺はこの部屋に来て、何がしたかったんだろうか。


>>360
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/07/22(日) 02:22:14.14 ID:57zJUM5AO
星奈に今までのことを謝る
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 02:22:48.99 ID:u16wzEHIO
ペガサスさん寛大すぎワロタ
安価なら今までのことを誠心誠意謝って理科部に勧誘する
362 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/22(日) 02:25:41.48 ID:GM02XxqZo
おやすみ
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/22(日) 02:52:47.85 ID:hcWIf7ge0
お疲れ〜
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 04:15:02.04 ID:VsNsriXSo
夜空の安定のクズっぷりに安心した
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/22(日) 08:56:44.38 ID:lYWp2AfOo
やっと星奈フラグが立ちそうだ
366 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/22(日) 14:45:55.80 ID:GM02XxqZo

「星奈、悪かった」

「……は?」

俺は深く頭を下げた。
それに対して星奈だけでなく、理科部のメンバーも全員が唖然とする。

「お前には今まで散々ひでえ事しちまったからな。一度きちんと謝りたかったんだ」

「……ふん、パパに何か言われたわけ?」

「え?」

「どうせ今までの事がバレて、焦って謝りに来たとかでしょ。
 まっ、安心しなさいよ。あんた達みたいな愚民のする事なんて、いちいちあたしの記憶には残ってないから」

当たっているような当たっていないような。
まぁしかし、星奈が気にしていないと言うのならそれでいいのではないか。

夜空は少し俺を怪訝な目で見ていたが、再び蔑むような目を星奈へと向ける。

「……それで肉。我々の今回の活動内容を特別に貴様に教えてやろう。泣いて喜べ」

「心の底から興味ないわよ。それよりさっさと出ていきなさいよ!」

「そうはいかない。なにせ、今回の活動は貴様の観察だからな」

「は、はぁ!? ふざけんじゃないわよ!! 何勝手に決めて――」

「黙れ肉。貴様は私達の事は気にせずただ普段通りに生活していればいいのだ」

「そんな事できるわけないじゃない!!」

「ほう、つまり貴様は普段誰かに見られたらマズイ事をしているのか」

「そ、それは……ッ!!」

夜空の目がギラリと怪しく光り、星奈が少し動揺する。
理事長が言うようにケンカするほど仲が良い……という目で見てみようかとも思ったが、やはり何か違う気がする。
まぁそもそも、俺も友達いないしそういう判断はできないのかもしれないが。

理科はウンウンと何か分かっているかのように頷く。
こういう反応をした時の理科は大抵分かっていない。

「大丈夫ですよ、星奈先輩。別に恥ずかしいことではないです。女の子だってオナニーくらいはします」

「ぶっ!!! な、なななな何言ってんのよあんた!!!」

「おなにー、とは何ですか理科どの」

「それはですね――――ゴニョゴニョ」

「……なるほど。つまり柏崎星奈はちじょだった、というわけですね」

「違うわよ!!! 何勝手に想像してくれちゃってんのかしら!? そういう変態的な想像してるあんた達の方が痴女じゃない!!!」

「そうですけど、なにか?」

「少しは否定しろよ……」

たしかに理科に関してはその通りで反論しようもないとは思うが、ここまで堂々と胸を張って言うことでもないと思う。

「まったく、さっきからうるさいぞ肉便器。早く普段通りの生活をしろ。それとも貴様は常にそうやって独り言ばかりの寂しい奴なのか?」

いや、エア友達居る奴にだけは言われたくないと思うけどな……。
星奈は机をバンッと叩いて、

「そんなわけないでしょ!!! ていうかあたしがそんなのに従う必要なんかないじゃない!! さっさと出ていきなさいよ!!!」

さっきから同じような会話をループしているような気がする。
仕方ない、夜空に任せていても一向に進まなそうだし、俺が何とかしてみるか。


どうする? >>367
367 :名無しNIPPER [sage]:2012/07/22(日) 14:49:17.01 ID:lmPfNUqW0
星奈に本気で告白してキスしちゃう
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/22(日) 14:55:57.17 ID:/dp1Frcmo
肉食すぎワロタww
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 18:34:54.58 ID:HYX8dwBSO
好感度低い中ヤってもむしろ…
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/07/22(日) 18:45:27.02 ID:83CefZM+0
いや、むしろそれで好感度アップも…
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/22(日) 18:51:48.18 ID:lYWp2AfOo
ゲームみたいな展開にすれば肉は簡単に堕ちるだろう
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/22(日) 20:59:24.89 ID:Nh4/fWt60
ドキッ意識しちゃうみたいな展開か
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 23:31:54.89 ID:zCwuuinDO
餌に小鳩をちらつかせば簡単に食いついてきそう
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 23:42:53.11 ID:E9A3aC+IO
まずは家に連れて行かないと
375 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 00:38:24.97 ID:6WXCaImWo

俺は夜空を手で制すると、一歩前へ出る。
そして真剣な目で星奈を真っ直ぐ見つめる。

「……な、なによ。そんな怖い顔したって、あ、あたしは!!」

「え……あ、いや、別に脅してるつもりはないんだが……」

もうなんかどんな顔しても怖いと言われるので、密かに行なっている穏やかな表情の練習は無駄なのかもしれない。

と、今はそれはどうでもいい。
とにかく星奈には言わなければいけないことがある。

「星奈、俺はお前に告白しないといけない事がある」

直後、周りが一斉に騒ぎ出した。

「なっ……ぁ……こ、小鷹!? い、一体何言って……う、うそだよな……?」

「あにき。僭越ながらこの幸村、このものはあにきには相応しくないとおもいます」

「唐突すぎる!! 理科がコツコツとフラグ立てていったの無視して、一気にルート変更!?」

な、なんだこの反応は……。
俺は他の理科部のメンバーに少し引きつつ困惑する。
というか理科にいたっては何を言っているのか理解できない。

星奈は星奈で、まるで靴の裏にへばりついたガムを見るかのような目で俺を見ている。

「……は? いや別にあんたとは一切フラグも何も立ってないし、好感度も下に突き抜けてるし。
 告白するのは構わないけど、心に深い傷を負いたくないならやめておくことね」

星奈の言葉に首を傾げる。
何でそこまで念を押されるのだろうか。
俺に色々キツイ言葉をぶつけてくるのはいつもの事だし、今更心に傷もくそもない。

それに学校じゃみんなに怖がられて、話しかけただけで逃げられたり防犯ブザー押されたり、メンタル的には鍛えられてるしな。
……自分で言ってて泣きたくなってきた。

「んじゃ、告白するけど」

「やめろ小鷹!!」

夜空が必死になって止めてくる。
なんと、その目にはうっすらと涙さえ浮かんでいる。

俺はギョッとするが、やめるわけにはいかない。

「星奈、実は俺――――」

理科や幸村は悲しそうな目で、夜空は泣きそうな目で……というか泣きながら俺をじっと見ている。
そして目の前の星奈は半目でいかにも鬱陶しいという表情だ。

俺は口を開く。


「――友達がいないんだ」


時間が止まった気がした。
シーンと辺りを静寂が包み、部屋にいる全員がポカンとしている。

俺は何かおかしな事でも言ったのか。
そんな事を考えて焦っていると、星奈が口を開いた。

「……いや、知ってるけど」

「うぐっ……ま、まぁそうだろうな。で、ここからが本題だ!」

「本題ってなによ。どうせまたしょうもない話なんでしょうけど」

星奈はもはや真面目に聞く気ゼロのようで、髪を指に巻きつけながら「どうでもいいから早く終わらせろ」と言わんばかりに睨んでくる。
あまりに興味無さそうな態度に少し物怖じする俺だが、構わずに話し始める。

「理科部の本当の目的は『友達を作る事』なんだ」

「……友達?」

星奈は髪をいじるのをやめる。
 
376 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 00:43:01.19 ID:6WXCaImWo

「あぁ。部員はみんな友達がいない。それで、もし良かったらお前も入らないか……ってさ」

「なっ……!」

「お前が根は良い奴なのは何となく分かる。だからきっと、頑張れば友達だってできると思うんだ。
 まぁ、その、ぶっちゃけ理科部に入ったからといって友達を作りやすくなるかと言えば微妙なんだけどさ……」

今までの活動を振り返って、俺は少し気まずそうに笑うしかない。

まぁしかし、星奈を理科部に誘ってほしいと言ったのは理事長だ。
俺はできるだけそれに応えたい。
それに、星奈が空回りばかりしているのは俺でも分かる。

星奈は少しの間ポカンと俺を見ていたが、俯いてしまい顔が見えなくなる。

「……ふん、そう言ってパパに媚びを売る気? そんな事しても無駄よ」

「違う。俺は――――」


「ウソよ!!!」


俺の言葉にかぶせて、星奈が大声で叫ぶ。

俺をキッと鋭い目付きで睨んで。
その目には大粒の涙が浮かんでいる。

俺は、それを見て思わず言葉に詰まる。

「どうせあたしなんか一生友達できないって蔑んでるんでしょ!? 一生寂しい人生を送るんだって嘲笑ってるんでしょ!!
 見てなさいよ!! すぐに友達の一人や二人作ってリア充になってみせるんだから!!!」

「そんな事――」

「うるさい!! あんたにあたしの何が分かるのよ!! 誰も、あたしの事なんて……」

最後の方は声も小さくなって俯いてしまう星奈。

俺はそんな彼女がどうしようもなく脆い存在に見えた。
いつも自信満々で高飛車で、弱さなんてちっとも見せない彼女だからこそ。
その姿は、余計に辛そうに見えた。

俺は口を開く。
何を話せばいいのかなんて分からない。
こんな時、ポンポンと気の利いた事が言える程、俺は話上手なわけではない。友達いないし。

だから、ただ。
頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出す。
それが正解かどうかなんて分からない。
もしかしたら、星奈を余計に傷つけてしまうかもしれない。

それでも。
ここで何も言わないでいるよりはずっとマシだと思う。

「……確かに初めはお前のことなんて何も分かってなかった。ただワガママで性格悪いお嬢様だと思ってた」

「はっ、本音が出たわね!! どれだけ綺麗事並べても結局――」

「でも、今は違う」

俺は星奈の言葉を遮ってじっと見つめる。

星奈はわずかに瞳を揺らす。
怯えているのだろうが、やめるつもりはない。

「お前はいつも一生懸命で、真っ直ぐで。誰かのために全力で動けるやつだって、俺は知ってる」

「えっ……」

「もちろん、これがお前の全てじゃないってのは良く分かってる。まだまだ俺の知らないお前は居るはずだ。
 相手のことが分からないなんて当たり前のことだろ。時間をかけて、お互い一緒にいて、だんだん知っていくものなんだと俺は思う」

「……あんた…………」

星奈は驚いた目でこちらを見つめる。
その目には敵意がない。
たぶん、初めてなんじゃないだろうか、そう考えて俺は思わず苦笑してしまう。
 
377 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 00:46:55.93 ID:6WXCaImWo

「だからさ、えっと…………」

俺はここで口を止める。
……あれ、それで結局俺は何が言いたかったんだ?

「……あ、えっと、だな。つまり、その…………元気出せって!!」

無理やり締めた。
いやだって、なんかわけ分かんなくなっちまったし。

星奈はキョトンとした表情だ。
だが、次第に……呆れ顔へと変わっていく…………。

「……はぁ。なんていうか、あんたって本当に残念ね」

「うっ……し、仕方ねえだろ口下手なんだ!! つーか友達いねえんだから当たり前だろ!!」

「うわっ、開き直った……。ていうか顔怖い声も怖い」

「……言い過ぎだろお前…………」

俺はガクッと肩を落とす。
怖い怖い言われるのは慣れてはいるが、ショックなものはショックなのだ。

しかし、そこでふと意外なものが目に入る。

星奈の口元が微かに緩んでいる気がする。
俺の前でこんな表情をしたのは初めてだ。

俺は何となくそれが微笑ましく思う。
今の仕返しに、ちょっとからかってやろうかと口を開こうとする、が。


「このバカ小鷹ァァ!!!」


後ろから夜空に思いっきり蹴っ飛ばされた。
突然の事に俺は、為す術もなく前へ吹っ飛ぶ。

ガッシャーン!! と派手な音があがる。

「何が告白だ!! 紛らわしいんだ!!!」

「理科もほっとしましたよ。……はっ、まさかそこまで見越しての頭脳プレイ!?
 理科の心を弄ぶなんて……先輩、やりますね!! それでは次は理科の体を弄んでください!!!」

「さすがあにき。敵を欺くにはまず味方から、おみごとです」

今の今まで、ずっと呆然としていたのだろう。
再び騒がしくなった理科部員の面々だが、俺はその言葉をまともに聞けるような状態ではない。

夜空に蹴っ飛ばされた俺は無様に床にうつ伏せに倒れ込んでいた。
なんかムニュッとしたものがクッションになったから良かったが、痛いものは痛い。
しかもプルンとした柔らかいものに口を押し付けてしまっているようで、息苦しい。

……ん??

クッションらしきものから顔を離してみる。
目の前に、星奈の顔があった。


「うおおおおおおおおおおおッ!?」


俺はバッと勢い良く離れた。

心臓がドクンドクンとうるさいくらいに鳴る。
冷汗がダラダラと顔全体を伝う。

ま、まさか、今…………!!
 
378 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 00:48:18.96 ID:6WXCaImWo

星奈は呆然として、自分の唇を指でなぞっている。

「……え? ね、ねぇ、い、今もしかして…………」

「あっ、いや、ちがっ……!! じ、事故だ!! 今のは事故で……!!」

「…………初めてだったのに」

じわりと、星奈の目に涙が浮かぶ。

それを見た俺は。
おそらく人生で一番焦っていた。

「わ、悪かった!!! 本当に……その……ごめん!!!」

「ふぇ……ひっく…………」

星奈の涙は止まらない。
ヤバイヤバイヤバイ……!!!

女の子をガチで泣かせてしまった。
それは男にとっては相当にマズイ事で。

こんな所を理事長に見つかればどうなるか、想像するだけでも恐ろしい。

「ん、どうしたのだ?」

のんびりとそんな事を聞いてくる夜空に「お前のせいだろうがああああああああああ!!!」と叫びたくなるが、今はそんな事をしている場合ではない。
とにかく、星奈を何とか泣き止ませないといけない。ひ、人として。


どうする? >>379
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 00:49:13.90 ID:6Jz4MHTSO
腹パンで眠らす
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 00:51:00.62 ID:qrAiiQIz0
おいふざけんな
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/23(月) 00:53:17.86 ID:4kHfPm4fo
いいところだったのに…
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 00:53:32.34 ID:HVnJtq1IO
さすがに空気読めよと言いたいわ
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 00:54:16.72 ID:zsHvx6VO0
誰をとは書いていない
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/07/23(月) 01:00:45.26 ID:qSnbPx2k0
自分に腹パンを…?
385 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 01:41:49.06 ID:6WXCaImWo

「わ、分かった星奈! じゃあ俺を好きなようにしろ!!」

テンパった俺は両手を広げてそう言った。
自分でどうやって謝ればいいのかわからないので、とにかく星奈の好きなようにさせる事にしたのだ。
何ていうか、我ながらヘタレな気がする。

それを見て理科部のメンバーは、

「せ、先輩にそっちの性癖が!? り、理科もどっちかというとMよりなんですけど、先輩のためなら!!!」

「なっ、そうなのか小鷹!?」

「あにきはどSでどMなんですね」

とりあえず全部無視。

すると星奈は泣きながらも、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。
拳は固く握られている。

「こ、の…………」


「バカ――――ッ!!!」


ドゴォ!! と腹に鈍い衝撃が加わった。
例え女の子の力でもそれなりに痛い。

星奈も星奈で渾身の力で殴っているだろうし。

「まだよ!! これで終わったと思ってんじゃないでしょうね!?」

「わ、分かってる!! どんとこい!!!」

続けてニ発三発と、星奈の拳が腹に叩き込まれる。
しかし、だんだんと疲れてきたのか、次第に力が弱くなってくる。

ケンカ経験豊富な俺は分かるのだが、殴る方も結構大変なのだ。

「……はぁ…………はぁ。じゃあ、次で最後の一発にしてあげるわ」

「よし、こい!」

星奈はフゥーと息を吐いて集中する。
そして漫画かなんかの真似事か、左の掌を前に出して、脇を締めて右の拳を構える。

そして、一気に打ち出した。

その最後の一撃は。
狙いがズレて、腹には当たらなかった。
拳がめり込むこんだのは、腹よりも下にある部分。

もう少し具体的に言えば男のシンボル的なアレ。


「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!」


俺は死んだ。
 
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/23(月) 01:43:40.19 ID:1X14MVDK0
ああ
387 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 01:44:03.74 ID:6WXCaImWo



***



次の日、午後一時。
理科室にはいつも通り部員が全員集合していた。

下腹部はまだ痛む。

「……で、結局、肉を観察しても特に何も得るものはなかったな」

「そうですね……たぶん理科達と星奈先輩では残念さのベクトルが違うのかもしれません」

「つまり、いじげんの残念さ、というわけですね」

いや幸村、それは違うと思うぞ。
というか今の会話、星奈が聞いたらまたブチギレるんだろうな。

――なんて思っていたら。

「……ん?」

ドアについている窓から何かが見えた。
あの金髪、それに蝶の髪飾りは…………。

「どうした、小鷹?」

「いや、たぶん星奈が来てるぞ。ほらドアのとこ」

「そうか。それでは今日の活動内容を話し合おう」

清々しいほどのスルー。
というかドアの方すら見ていない。

まぁでも、たまたま通りかかっただけっていうのもあるだろうしな……。

そんな事を考えて、理科や夜空が話し合っているのを聞きながら、再びこっそりとドアの方を見る。
……まだ居る。
しかし入ってくるような気配もなく、ただこちらの様子をうかがっている、そんな感じだ。



どうする? >>387
388 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 01:44:31.36 ID:6WXCaImWo
>>389
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/07/23(月) 01:44:47.50 ID:MxzeOhpK0
部室に招く
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 01:44:48.45 ID:qrAiiQIz0
良く来たなと笑顔で迎える
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/23(月) 01:56:06.99 ID:Pbf4/gK0o
よくやった北海道
というか長屋でも大丈夫だったな
392 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 03:17:53.00 ID:6WXCaImWo

俺はドアを開ける。
目の前に星奈が居た。

「あ……」

「よっ。そんなとこに居ないで入ってこいよ」

「う……か、勘違いしないでよね! あたしはその、また昨日みたいな事されないように見張ってるだけで……!!」

「それなら中に居たほうが見張りやすいだろ?」

「そ、そうだけど」

そうやって不満そうに中に入る星奈。
俺はそんな彼女に苦笑しながらドアを閉める。

案の定、嫌悪感丸出しの部員が約一名。

「おい、なんだその部外者は」

「ぐっ……あんた達だって昨日あたしの部屋にズカズカ入ってきたじゃない!!」

「私達は精肉所なんかに行っていないが」

「何が精肉所よ!!! ていうか昨日の事すら覚えてないなんて、あんた頭やばいんじゃない?
 部活してる暇があったら病院でも行きなさいよ。それも重症みたいだから大きいとこ」

「それを言うなら、貴様は生きている暇があるなら早く出荷されたらどうだ?
 あぁ、そうか。貴様のような駄肉を人様の口に入れるわけにはいかないな。これはすまない、失言だった」

「こ、の……あんた……ぐすっ……どんな生き方すればそんなに腐った性格になれんのよ……ッ!!」

「貴様こそどんな生き方をすればそんな腐った肉になれるのだ? 良かったな、細菌には大人気みたいだぞ。
 それにしても、食用にもならない有毒で不快なこの肉は使用済み核燃料並みに処理に困るな、まったく」

「うぅ……ひっく……あ、あんた……ぐすっ……いい加減に……ふぇ…………」

「その辺にしとけ、夜空」

さすがに見ていられなくなった俺はポカッと夜空の頭を叩く。
星奈は、本人は涙を堪えているつもりなんだろうが、既に顔がグシャグシャだ。

夜空は口を尖らせて俺を見る。

「……金髪巨乳だからってヘラヘラして」

「し、してねえよ!!」

「くっ、巨乳がなんですか!! 今時のニーズは貧乳なんですよ!!
 ていうか小鷹先輩は、そんな金髪巨乳ツンデレなんていうコッテコテのテンプレ美少女が好みだったんですか!?」

「あにきはおっぱいせいじんだったのですか」

「違う!!」

俺はそこは全力で否定する。
いやまったく興味ないと言ったら、それはそれで理科は食いついてきそうだけど。

「ぐすっ……ひっく…………」

「ほら、お前もそんな泣くなって」

「な、泣いてない……ッ!! ていうか、頭撫でないでよ!」

そうやって俺の手を振り払う星奈。
しまった、なんか小鳩と同じ感覚だった。
 
393 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 03:21:34.88 ID:6WXCaImWo

星奈はグシグシと目を擦って、

「とにかく! あたしを巻き込んでおいて、今更知らんぷりしてんじゃないわよ!!」

「分かった。今後一切貴様には関わらない。こちらにメリットもないしな」

「え……」

「これで満足だろう。ほら、さっさと出て行け」

「なっ……あ、えっと…………!!」

「まだ何かあるのか? 貴様がそこに居ると活動を始められないのだが。
 他人に迷惑をかけてはいけないという社会の基本的なルールさえ理解できないのか貴様は?」

「……うぅ……あ、あたしは…………」

「あー、そういえば今までの活動で、この学校には迷惑かけちまったなー」

「むっ……?」

夜空が怪訝な目でこちらを見てくる。
俺はそれを受け流して続ける。

「学校に迷惑って事は、理事長にも迷惑だよなー。これからもそういう事があるかもしれないなー」

「なっ、こ、小鷹!?」

「……そ、そうよ!!!」

突然、また泣きそうになっていた星奈が復活した。
そして夜空に向かってビシッと人差し指を突きつける。

「この部は今まで散々問題起こしてきたんだし、理事長の娘であるあたしが見張る必要があるのよ!!!」

「ぐっ……貴様、肉……ッ!!」

「ふふん、そりゃこんな変人ばかりの部活で問題が起きないわけがないわよねぇ?」

「ノーマルの何が面白いんですか!! アブノーマルこそ輝くものです!!」

「いだいな人物は、ときに理解されないものです。そう、あにきのように」

変人ばかりと言われて何も言い返せないのが何とも悲しい。
理科にいたってはむしろ喜んでるし。

「んー、それでは星奈先輩。入部するってことでいいんですか?」

「えぇ……ほんっとうに不本意だけどね。
 まぁ、このあたしが入部してあげるんだから泣いて喜びなさい愚民ども!」

「やったー」

「かるっ!? ちょっと、何よその棒読み!!」

「何を言っている理科!! こんな肉を入部させるなど……!!」

「まぁいいじゃないですか。権力的、資金的な意味で色々利用できそうですし」

「……星奈のあねご。よろしくおねがいいたします」

「結構現金なんだな、幸村……」

「……ちっ!!」
394 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 03:23:59.42 ID:6WXCaImWo

入部を認められる流れになると、星奈の顔がぱぁと明るくなる。
一人は舌打ちしてるし、他の部員も手放しで喜べる反応ではないのだが。

しかし、こうしてコロコロ表情が変わるのを見ていると、本当に子供のようだ。
妹の小鳩も、どんなに不機嫌でも大抵夜に唐揚げでも作るといえば笑顔になる。

とりあえず、俺も何か言ったほうがいいだろうな。
一応この部にも、変人じゃない……まだまともな奴も残っているという事を教えてやらないと。
俺は笑みを浮かべて星奈に話しかける。

「よろしくな、星奈」

「……あんたの微笑みって狂気を感じるわね」

「そこまで言うか!?」

割とガチで凹む。
どうしろってんだよ……。

「とにかく、せいぜいあたしの足を引っ張らないようにね。
 あ、そうだ。後あたしの好感度上げてフラグ立てようとしても無駄だから。まぁたまに踏みつけるくらいはしてあげるからそれで我慢しなさい」

「…………」


理科部にまた一人、変人が加わった。
395 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 03:24:38.27 ID:6WXCaImWo
安価ないけど眠いからここまでー
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/23(月) 03:26:06.69 ID:k3uBZRJdo

ついに肉が加入か
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 03:38:57.38 ID:zsHvx6VO0


いいねいいね
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 09:00:10.82 ID:HVnJtq1IO
おつ
あとはうんこ幼女だけだな
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 13:19:10.62 ID:3jLE+H30o
小鳩もまだ入部してないんだよなあ
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/23(月) 18:02:32.85 ID:o25+LQCf0
理科√にいきたいのに
このままでは星奈√になってしまう…
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/07/23(月) 18:33:26.79 ID:MxzeOhpK0
俺はなんとか幸村√に行きたい
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/23(月) 19:09:34.68 ID:8IWY0rHl0
いやこれはむしろ小鷹√に…
403 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 19:34:42.95 ID:6WXCaImWo

「……もう、ソファーもないわけ? こんな硬い椅子に座ってたらお尻痛くなっちゃうじゃない」

「文句があるなら帰れ。いや間違えた、死ね」

「何でそこまで言われなくちゃいけないのよ!!!」

こいつらは常時ケンカしていないと気がすまないのか……。

「ったく、いいわよ。ソファーなら今度来る時に持ってくるから」

「次の活動は夏休み明けだぞ」

「えっ、そうなの?」

「違う違う。おい夜空、嘘教えんなって」

「ちっ」

「あんたホントいい性格してるわね……!!」

俺は溜息をつくと、二人は放っておいて理科の方を向く。
理科は幸村と何かを話しているようだ。

「つまりですね、男性には“やおい穴”という器官が存在していて、そこにぶち込むっていうわけなんです」

「なるほど……勉強になります。しかしわたくしはだんしではないゆえ、そのエクスカリバーなるものはついていませぬ……」

「そこは心配ありません!! 世の中にはペニバンというものがありましてね……」

「お前らは何を話してんだ!!!」

全力で突っ込む。
さすがにこれはスルーできない。
この中では一番マシっぽい幸村を堕とすのはやめてほしい。

理科はわざとらしく頬を膨らませて、

「もう、先輩! 女の子同士の会話を盗み聞きなんてダメですよ!!」

「俺にはとても女の子同士でするような内容とは思えないんだが……」

「ふふ、意外と純情ですね先輩。女の子の下ネタトークは男の子のそれを完全に凌駕します。
 別に恋バナとかファッションとかの話でキャッキャしてるだけじゃないんですよ!!」

「あにき、理科どのの話はとてもためになります。わたくし、さっそくペニバンというものを手に入れてあにきを……」

「それ以上言わないでくれ幸村……」

俺がガクッと肩を落とすと、幸村がキョトンと首を傾げる。
もうやだこいつら。

すると、夜空と口喧嘩していた星奈が俺の方を向く。

「ったく、こんな奴相手じゃ話になんないわ! ねぇ小鷹」

「ん?」

「今までどんな活動してきたか教えなさいよ。ほら、あたし今入ったばっかりだし」

「それもそうだな。まず――――」

「待て肉、貴様なぜ小鷹を名前で呼んでいる」

「はぁ? 何でそこで突っかかってくんのよ」

「うるさい。貴様は小鷹のことを“プリン”と呼んでいたはずだ。それを突き通せと言っている」

「いや待てそれは俺が嫌だぞ……」

「小鷹は関係ない! 黙っていろ!!」

「関係ありまくりだろ!!」

夜空のムチャクチャな言い分に反論する。
俺としてはもちろんプリンなんてあだ名より普通に名前を呼んでくれたほうがいい。
404 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 19:37:17.89 ID:6WXCaImWo

「ていうか、星奈が俺をどう呼ぼうが、それこそ夜空には関係ないだろ!!」

「むぐっ……い、いや、ある……」

「何でだよ……」

「その、私は……そうだ、こんな肉と同じ単語を発するのが嫌なのだ!!」

「えええ……」

それを言ってたら日常会話とか凄く困りそうだが。
星奈はそんな夜空の言葉を聞いて額をピクピクとさせていたが、

「……ははーん」

「なんだその顔は。いつも以上に不快だ」

「もしかしてあんたさぁ……小鷹に惚れてんじゃない?」

「ッ!! な、なななな何を急に!!/// ま、まったく、さすが肉だな。ふざけた思考回路をしている」

「あはは、なに顔赤くしてんのぉ……? へぇ、そうなんだ、あんたこんなヤンキーが好みなんだぁ。さすがいい趣味して――――いたぁぁっ!!!」

途中で夜空がハエ叩きで星奈の顔面をぶっ叩いた。

「何すんのよ!! ふん、結局暴力でしか――いたっ!! ちょ、あうっ!! いたたたた!! 痛いってばああああああ!!!」

夜空はさらに畳み掛ける。
といっても冷静なわけではなく、顔を真っ赤にして星奈に言葉を言わせないようにしている。
星奈は涙目だ。

さすがに見かねた理科がこちらの会話に加わってくる。

「夜空先輩。いくら図星突かれたからってやり過ぎですって」

「肉にはこのくらいが丁度いいんだ……!! ん、おい待て理科。今なんと言った?」

「ですから図星突かれたからってやり過ぎですって」

「図星ではない!!!///」

「夜空のあねご、何も恥じることはありません。わたくしもあにきのことはお慕い申しております」

そうやって今度は理科部全員でギャーギャーと騒ぎ始める。
こんなんじゃいつまで経っても活動を始められない。



どうする? >>405
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/07/23(月) 19:38:50.87 ID:RPb7dtrAO
どうにかして止める
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/23(月) 19:39:15.84 ID:heN/JbrB0
普通にペガサス√じゃないのか?
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/23(月) 20:46:32.44 ID:Pbf4/gK0o
小鷹の家の庭でみんなでビニールプールでリア充の練習をする展開に持っていってくれ
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 20:49:47.92 ID:c8xlQbRIO
追いついた
まさかこっちで立ってるとは

面白いぜ
409 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/23(月) 21:38:47.15 ID:6WXCaImWo

「お、おいお前ら落ち着けって!」

俺はとりあえず事の発端を思い出してみる。

「えーと……そうだ、星奈はなんで急に俺の呼び方を変えたんだ?」

「え……そ、それは…………」

「あれ? もしかして星奈先輩まで小鷹先輩の毒牙にかかっちゃったんですか!?」

「毒牙ってなんだよ……」

「あにきはもてもてですね」

「なっ、肉の分際で生意気な!!」

「……分かった言うわよ。こんなヤンキーに惚れてるとか思われるのも癪だし」

星奈は溜息をついて、

「実は昨日、ついパパの前で小鷹のこと“プリン”って言っちゃって。こっ酷く叱られたのよ。
 だからまたうっかり言わないように名前で呼ぶことにしたの。これで満足?」

「なるほどな……」

「それでは肉は小鷹のことなど何とも思っていないという事だな?」

「えぇ、別にあんたから取ろうなんて思っちゃいないわよ。いらないし」

……いやまぁ知ってるけど。
それでもこうもハッキリ言われるとなんかショックだ。

夜空は顔を真っ赤にして、

「わ、私だっていらない!!」

「ふへへ、それでは小鷹先輩は理科がもらっていきますね」

「わたくしはあにきにもらわれたいです」

なんかまた脱線してきている気がする。

「そ、それはダメだ!!」

「どうしたんですか夜空先輩。先輩がいらないなら理科がもらうと言っているんですけど」

「うっ……えっと、ふ、不潔だ!! そんな破廉恥な事は認められない!!」

「でも夜空先輩。高校生の夏と言ったらもう盛りまくりで、毎日ズッコンバッコンやっているものですよ?」

「そうよ夜空。あたしの持ってるゲームじゃ大抵は夏にお泊りイベントがあって、そこで二人は結ばれるわよ」

「黙れビッチ!! 痴女!! リアルダッチワイフ!! 歩く公衆便所!! 寄るな触るな子供ができる!!!」

「ゲームの話しただけで、なんでそこまで言われなくちゃいけないのよ!!!!!」

あぁ、ダメだこれは。
俺はもう完全に諦める。

結局、今日はそんな感じでずっと騒いでまともな活動ができなかった。



***



俺は学校の廊下を歩く。
時刻は午後三時。
あの後ずっと騒ぎ続けていた理科部の面々は疲れきってしまい、今日はもう解散となったのだ。

さて、これからどうしよう?


>>410
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 21:39:51.85 ID:6Jz4MHTSO
放送室室ジャック、バンプのカルマ熱唱
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 21:39:57.13 ID:qrAiiQIz0
ちょっと部室で休んでみよう
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 21:42:11.18 ID:h9xzfvsN0
またお前か
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/23(月) 21:54:07.23 ID:8IWY0rHl0
カルマは個人的に好き
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 23:30:06.93 ID:W6WJcCJIO
たまにはカラオケというわけだな
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 23:45:12.80 ID:xwOG2DSIO
というか夏休みで人もそれなりに増えてきたし安価もうちょい離してもいいと思う
あと個人的には同じ人が毎回取ってるのも萎えるから連続で取るの禁止とかの制限も欲しいところ
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 00:48:33.44 ID:z4DZ1ldSO
ちゃっかり火種を置いていくから困る。
417 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/24(火) 01:47:33.15 ID:Ws2QZIQio

その時、ブーブー、とケータイのバイブ音が鳴った。
こんな事は滅多にないので、俺はビクッとなって驚いてしまう。

キョロキョロと周りを見るが、誰も居ない。
良かった、今のは見られたら少し恥ずかしい。

「……ん? 理科か」

メールの相手は理科だった。


『今から理科の開発した道具を試験するので、放送室へ来てください!
 あっ、でも先輩が望むのなら保健室で楽しい事してからでも良いですよ』


とりあえず二行目は無視。
俺は真っ直ぐ放送室へ向かうことにする。



***



放送室に入ると、そこには理科だけが居た。

「あ、先輩。わざわざすみません」

「別にいいって。それで新しい道具ってのは――」

「それより、先輩……密室で男女が二人きりですよ。このシチュエーション、二人は自然と身を重ねて――」

「帰るぞ」

「もう、相変わらずつれないですねー。とりあえず道具っていうのはこれです」

そういって理科が出したのはマイクだ。

「……ただのマイクじゃねえんだよな?」

「これ自体はただのマイクです。本命は周りのやつですね」

理科に言われて見てみると、何やら電波塔を縮小したようなものが4つ置かれている。
なんか電波って言われると体に悪いイメージがあるので、こうやって囲まれるのは少し落ち着かない。

それに、かなりの大きさの薄型ディスプレイも壁にかけられている。

「何をする道具なんだ?」

「ズバリ、カラオケです。周りのやつは防音装置ですね。
 これでいざ友達と行く事になった時のために練習しようというわけです」

「……なるほどな。でも何でこの部屋なんだ?」

「音響関係の道具が揃っているからですよ」

リア充な高校生はカラオケに頻繁に行っているイメージがある。

何の準備もなしに行くと、選曲に困ったりノリに困ったり色々大変そうだ。
俺は連続して曲を入れるのがアウトって事くらいしか知らない。

「というわけで、テストプレイを頼めますか?」

「え……う、歌えって事か?」

「はい。主に防音性能を確認したいので」

「きゅ、急に言われてもな……」

リア充はここでノリよく今時の歌を歌うんだろうが、俺にそんな事はできない。
いますぐ歌えと言われても戸惑ってしまう。
418 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/24(火) 01:49:13.78 ID:Ws2QZIQio

「そんな緊張しなくても大丈夫ですって。理科は外に出て音が漏れてないか確かめるので、小鷹先輩一人で気持よく歌ってください」

「一人、か。まぁそれなら……」

「じゃあ曲はこちらから選択してください。最新の曲も含めてだいたい揃っているはずです」

「こういうのってJASRACとかがうるさいんじゃ……」

「大丈夫です、適当に言いくるめましたから」

「お前すげえな!」

そういう事で、カラオケ練習機のテストをすることになった。
理科は扉の向こうで待機している。

俺は何を歌おうか少し迷ったが、

「……これでいいか」

それなりに歌えそうな曲を見つけたので、それを転送する。

前奏が始まると、画面上にその曲のPVが流れ始める。
そして明かりも自動で消え、上からカラフルな色の光が降り注ぐ。
今まで気づかなかったが、天井にライトまでついているようだ。

これはなかなか本物のカラオケっぽい。

さすがに天才少女だな、と感心しながら俺は歌う。
サビまでいくとテンションも最高潮になり、声も大きくなる。


『か〜な〜ら〜ず〜!! ぼくら〜はで〜あうだろ〜!!』


バタン!!!
放送室のドアが勢いよく開かれた。


「何をやっているのですか――――ッ!!!」
 
 
 
419 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/24(火) 01:52:55.81 ID:Ws2QZIQio
 
ウルフカットの小柄な女の子、遊佐葵だ。

俺はビクッ!! と飛び上がる。
生徒会の彼女が来るという事は、これは問題があったのではないか。
まぁほとんど部屋全体を改造しているわけだし。

「ゆ、遊佐!?」

「あ、あれ……また羽瀬川くんですか!!」

遊佐も俺の事を見てビックリしている。

「もう、何やっているのですか!!」

「あー、悪い。もしかしてこれ、まずかったか?」

「いえ、放送室の改造については許可を出しています。私としてはそれも納得できないのですけど……でも今はそこではありません!」

「へ? じゃあなんで――――」


「君の歌が学校中に流れているのですよ!!!」


……遊佐が何を言っているのか理解できなかった。

しかし、次第に頭が回り始める。
学校中に流れている。
ここは、放送室。
そして、遊佐のこの慌てよう。

「まったく!! 確かに羽瀬川くんの歌声はとても綺麗で私も思わず聴き惚れてしまいましたけど、だからって無視なんかできません!」

「…………」

「あれ? 羽瀬川くん?」

俺は、遊佐に何も言えなくなっていた。
学校中に、俺の歌声が流れた。

なんていうか、これぞまさに。

黒歴史……というやつなのだろう。



***



その後、先生からお叱りを受けた俺はとぼとぼと廊下を歩く。
ケータイには理科から『ドンマイです(・ω<)テヘペロ』なんてメールが入っていた。

隣には遊佐、そして――。

「くははっ、やっぱり貴様は面白いやつだな!」

誰だっけこの人。
気品のある顔立ちに、長い黒髪を三つ編みにして後ろでまとめている。
そして威厳と愛嬌を兼ね備えた微笑みを浮かべ、人を惹きつける柔らかい眼差しでこちらを見ている。

あぁ……思い出した。
生徒会長の日高日向センパイだ。
俺を職員室まで連れて行く遊佐を見かけて、ただ「面白そうだから」とついてきた人だ。

「……俺は全く、全然、これぽっちも面白くないですけどね」

「はは、そんなにいじけるな! こういうのは、後になれば笑い飛ばせるものだ!」

「そ、そうですよ羽瀬川くん! ドンマイです」

俺は深く溜息をつく。
正直、今すぐ自分の部屋の隅で膝を抱えて引きこもりたい。
 
420 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/24(火) 02:00:54.69 ID:Ws2QZIQio

「ふむ、しかし羽瀬川。貴様は葵の言った通り、見た目ほど凶悪なやつではないみたいだな」

「いや、今回も思いっきり問題起こしちゃいましたけど……」

「起こしてしまったものは仕方ない。人間誰でも過ちはあるものだ。特に私達はまだ高校生だしな!
 ここで色々学んで、大人になってニュースに登場するなんていう事がないようにすればいい話だ」

「……はは、それ生徒会長が言っていいセリフなんですか?」

「例えダメでも仕方あるまい。私もまだ高校生で、時として過ちも犯してしまうからな!」

なんだこの人、と俺は思わず苦笑を浮かべてしまう。
会長はそれに満足したようで、

「いいぞ、笑え笑え! あんなもの笑い話にでもしなければやってらんないだろう!
 くはははっ、本当にお前は恥ずかしいやつだな!!」

「ちょ、ハッキリ言い過ぎでしょ!?」

「でも私はそこまで恥ずかしがる事もないと思いますよ、羽瀬川くん。とっても綺麗な歌声でした」

「おっ、どうした葵、うっとりして。こいつに惚れたか?」

「ぶっ!! な、何言ってるんですか!!! 確かに羽瀬川くんはオシャレさんでカッコイイですけど、私なんかじゃ全然釣り合いませんって……」

「くくっ、貴様は相変わらず残念すぎる感性をしているなー」

「あの、それ俺の方がショックなんですけど……」

「ん、おぉ、すまんすまん。まぁ私は性格重視だから安心しろ!」

「すいません、ちょっと意味分かんないです」

いや、俺がカッコイイわけないってのは分かってるけどさ。
ここまで真正面から否定されるというのもそれはそれで凹む。

俺はとりあえず話を戻す。

「それで、なんで俺が悪い奴じゃないって思うんですか?」

「うむ。貴様、教師に事情を聞かれた時、全部自分の責任のように話していただろう?
 カルマを歌っていたから、てっきり『俺は悪くねえ!!』とか言うと思ったが」

「いや、俺以外誰の責任なんですか……」

「志熊理科」

会長の言葉に、俺は立ち止まってしまった。
それに対して、会長と遊佐も同じように立ち止まって俺と向き合う。

「もちろん全部ではないが、志熊理科にも責任の一端はある。そうだろう?
 あぁ、言っておくが彼女を責めるつもりはない。君と彼女はこういった事をギャグ的に済ませられる仲なのだろう」

「あ、あの、もしかして彼女さんとかですか?」

「いや、そういうわけじゃないけど…………」

「とはいえ、ああやって自分から全責任を被るような奴は珍しいと思う。
 多くの者は、少しでも自分以外の誰かの非を探して、自分にかかる責任を軽くしようとするものだ」

「……買いかぶりすぎですよ。ただ単に誰かのせいにしようって考えられるほど頭回ってなかっただけです」

実際、俺は恥ずかしくて恥ずかしくて、説教の内容なんてほとんど覚えていない。
普通の状態なら理科のせいに……するのかは分からないけど。
ぶっちゃけ理科のせいにしたって意図的にスルーされただろう。
天才少女でVIP待遇な理科よりは、既に評判の悪い俺の方が何かと都合がいいだろうし。
 
421 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/24(火) 02:04:09.58 ID:Ws2QZIQio

会長は俺の言葉に目をつぶって小さく笑う。

「……まぁそういう事にしてほしいならそれでいいが。それで、だ。貴様に一つ提案……というか頼みがある」

「俺に……?」

「日向さん? もしかして……」

遊佐がそんな事を言いかけるが、会長は構わず続ける。


「貴様が気に入った。生徒会に入らないか?」


会長のよく通る綺麗な声が、人気のない廊下に響いた。

一瞬、会長が何を言っているのか理解できなかった。
俺が、生徒会??

「ちょうど庶務が空席でな。現在生徒会はみんな女子で、男手が欲しいと思っていたところなんだ」

「い、いやいやいや。こんな見た目ヤンキーな奴が入るところじゃないでしょう、生徒会って」

「見た目なんぞ、校則さえ守っていれば何でもいい」

「でも周りの評判とか……」

「そんな見た目だけで判断するような輩、私は気にしない」

何の迷いもなくキッパリと言い切る。
ありえない、と思う。
生徒会が生徒からの評判を気にするのは当たり前だし、わざわざこんなヤンキーみたいな奴を入れるなんて間違っている。

見た目だけで判断してほしくない。それは俺もいつも思っている。
だけど、それは綺麗事だというのも理解してるつもりだ。
内面的なものも、見た目に現れる。そういう考えも分かる。
だから、見た目だけで判断するような人を全否定するつもりもない。

俺は目の前の会長をまじまじと見る。
冗談を言っている様子ではなく、本気で言っている、それが分かる。
例え自分の評判が悪くなっても、俺に生徒会に入ってほしいと思っている。

こんな人が居るなんて、考えもしなかった。

俺は視線をずらして遊佐を見る。
彼女は真っ直ぐ俺を見つめ返して、にっこりと笑った。

俺は――――。


>>423
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/07/24(火) 02:05:16.29 ID:KiAZHiKUo
お験しで入る
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/24(火) 02:05:22.42 ID:gb234qyAO
だが断る
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 02:08:18.46 ID:s+WDtaJy0
いえ―――俺はもう、部活、入ってるんで
気持ちだけ受け取っておきます
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/24(火) 02:13:14.58 ID:zL+DPPTBo
まあ入る理由も無いし
理科のほうが大事ですもんね
426 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/24(火) 02:13:57.64 ID:Ws2QZIQio

眠いから今日はここまで
安価は↓1〜2で、連続で取るのはなしって事でいいや
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 02:14:02.20 ID:T9QeHHVb0
>>423
理科のスカートの中だけで満足してろよ
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 02:20:55.67 ID:cemSETWJo
葵√が……orz
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 02:21:31.11 ID:/EaNp/ISO
え、生徒会入った方がよかったと…?
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/24(火) 02:35:09.57 ID:zL+DPPTBo


>>428
生徒会役員共を理科部に絡ませればいいじゃないか
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 12:09:40.31 ID:CJsJg4NIO
小鷹への好感度は星奈が下に突き抜けてる以外は概ね全員横一線くらいか
こうなってくると逆に星奈を攻略したくなってくるな
432 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/24(火) 14:03:30.55 ID:Ws2QZIQio

「だが断る」

「えええええ……」

遊佐があからさまに残念そうな表情をする。
その表情を見ると、少し申し訳ない気持ちになる。

正直この俺も会長に惹かれてる部分はある。
きっと、一緒に仕事をするのは悪くない……いや、凄くいいと思う。
今よりずっとリア充へと近づける、という希望も出てくるかもしれない。

でも、俺には理科部がある。
俺にとって、あの空間は大切な居場所なんだ。

「……すいません。俺、理科部の方に集中したいんで」

「ふむ……そうか。残念だが、貴様がそう言うなら仕方ないな」

会長も残念そうな表情を浮かべたが、すぐに暖かい笑顔に戻る。

「それじゃあな、羽瀬川。高校の夏休みだ。思いっきり青春しろよ」

「はは、それなんかオジサンくさいですよ」

「なんだと、このっ!」

「いてててててて!!」

会長は俺の頭を掴んで、拳をゴリゴリと押し当ててくる。
いや、割とマジで痛い。

遊佐もそんな俺と会長を見て笑って、

「あの、その内理科部に遊びに行っていいですか?」

そういえば、遊佐は前にもそんな事を言っていた気がする。

「あぁ、いつでも来いよ」

そんな感じで、俺達は別れた。

夜空は凄く嫌っているようだが、この学校の生徒会長は凄く良い人だと思う。
会ったのは今日が初めてだが、それだけはよく分かった。



***



俺は校舎を出て、校門へと歩いて行く。
石畳の広い道で、その沿道にはいくつかベンチが設置されている。
学校がある日は、このベンチで昼食をとっている者も多いみたいだ。

日はだいぶ傾いている。
時刻は四時半といったところか。

これからスーパーのタイムセールに行って食材を買って、家に帰ればちょうどいい時間だろう。

俺は今日の献立はどうしようかなー、なんて考えながら歩いていると、ふとあるものが目に入った。


何を見た? >>433
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/24(火) 14:10:38.69 ID:0qRyWOLR0
暇をもてあましている夜空
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/24(火) 14:17:51.25 ID:QO8j9+9IO
うんこ幼女
435 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/24(火) 14:36:41.92 ID:Ws2QZIQio

「……夜空?」

俺と同じく校門へと歩いて行く後ろ姿に呼びかける。

「ん、小鷹か」

「お前、帰ってなかったのか?」

「あぁ、家に帰っても暇だしな。図書室で本を読んでいて、今帰るところだ」

「そっか」

俺が相槌を打つと、夜空は意地の悪そうな笑みを浮かべる。

「それにしても小鷹。貴様なかなか歌が上手いじゃないか」

「歌……? いっ!!」

一瞬夜空が何を言っているのか分からなかったが、すぐにギクッとなる。
そういえばあれは全校中に流れたわけで、夜空が聞かなかったなんてことはありえない。

「ふっ、静かな図書室では余計に響いていたぞ」

「も、もうその話はやめてくれ……」

「そうはいかない。語られない黒歴史などつまらないだろう?」

「お前は鬼か!!」

「失礼な。録音してネット上に晒さないだけ良心的だとは思わないのか?」

「すいません、ホント勘弁して下さい」

俺はたまったものではないのだが、夜空はニヤニヤと楽しそうだ。
くそう、他人事だからって……。

このままではいつまでもからかわれると思ったので、さっさと帰ることにする。

「はぁ、まぁいいや。じゃあな夜空」

「あっ、ちょ、ちょっと待て!」

呼び止められた。
まだいじめ足りないのだろうかと、嫌な予感を受けながら振り返る。
さすがに理科でもないので、そのまま無視というわけにはいかない。

夜空はなぜか顔を赤くしていた。

「そ、その、なんだ。えっと…………」

「どうした?」

「い、いや、うぅ……」

俺相手に、ここまで言葉に詰まっている夜空は珍しい。
理科部の面々に対しては、いつも直球でズカズカものを言っているのに。

というか、このままだとタイムセールに間に合わないんだけどなぁ……。


どうする? >>436
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 14:44:11.96 ID:dvSB3Glw0
全力で愛の告白をする
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 14:51:08.67 ID:9k2EMQpeo
>>1はどう逃げる
告白だけならまだしも、「愛の」ってついてるぞw
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 15:12:23.70 ID:VrsNKPPIO
ここでのルート確定はまだつまらん
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 17:14:37.72 ID:QcyNsTFQo
何に対して愛の告白するかは書いてないな
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/07/24(火) 17:18:16.68 ID:uQBX85TP0
中原中也に対しての愛の告白
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage saga]:2012/07/24(火) 17:24:18.42 ID:F7LoSDyb0
何故詩人なのだ、いや、好きだけど

全力か、いいさ!どうせなら聞かせてやる!
的な事に成りそうな予感がするな、また放送室か
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/07/24(火) 19:22:49.20 ID:0XGD7+mQ0
小鷹「音楽を愛してるんだよ」

こんな感じ以外で
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/07/24(火) 20:38:01.71 ID:uNkO3wXD0
俺実は〜のことがーみたいなのもありえるな
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 20:39:52.38 ID:E8KkWxOIO
別に小鷹が告白するとも限らないし
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 22:23:27.47 ID:80892teOo
逃げ道を無くすなら「小鷹が夜空に愛の告白をする」ってやれば良かったのかな
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/24(火) 22:50:47.56 ID:/oY2Ba8so
タイムセールを愛してるんだ!
今すぐ帰らねえと!

とか?
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 01:27:25.71 ID:gn9znvFIO
え?なんだって?
448 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 01:31:02.81 ID:SybNSjRVo

「――夜空、一つ聞いてほしいことがある」

「な、なんだ?」

俺は真っ直ぐ夜空を見つめて話しだす。
どうしても、言わなければいけないことがある。


「愛してる」


ポカンと、夜空は口を少し開けたままこちらを見つめていた。
見るからに、「何言ってんだコイツ」的な表情で。

しかし。

次第に、見る見る内に真っ赤になっていく。

「な、ななななななな!!!///」

「夜空」

「ま、待て!!/// わ、私にも心の準備というものが……!!
 い、嫌なわけではないんだ!! むしろ、すごく嬉し――――」


「俺は、家族を愛してるんだ!!」


……夜空はまたもやポカンとしている。
何か変なこと言ったかな? と少し心配になるが、構わず続けることにする。
これは大切な話なんだ。

まぁ家族といっても、家で待っているのは小鳩だけなんだが。

「家族のために、俺は今すぐスーパーのタイムセールに行かなくちゃいけない!! 分かってくれ夜空!!」

「……え」

夜空の事だ。
話も聞かずに俺が勝手に別れようとすれば、後でどんな仕打ちが待っているか分からない。
だから、こうでも言って諦めてもらわないといけない。

俺は恐る恐る口を開く。

「ってわけで……えっと、この辺でもう行っていいか……?」

「…………ふふ」

「よ、夜空?」

「あぁ分かっていたさ。こんな鈍感プリンに期待するのが間違いだと。
 分かっていたのに……ふふふ、私はバカだなぁ。トモちゃんもそう思うだろう?」

な、なんかトモちゃん出てきてる……。
俺は夜空の異様な雰囲気に、思わず何歩か後ずさる。

夜空は若干虚ろな目でこちらを見る。

「……すまなかったな、引き留めて。小鷹はタイムセールでも何でも行けばいい。
 なんかもう、いいや……私はトモちゃんと帰るし…………」

そう言って、夜空はトボトボと帰っていった。
これでタイムセールに間に合う……のだが。

なんか妙な罪悪感が残った俺だった。
 
 
 
449 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 01:36:25.61 ID:SybNSjRVo



***



夜。
俺はいつもの様に小鳩と食卓を囲む。
最近は部活で帰りが遅くなる日も多く、プールではしゃいで怒られた時なんかは夕飯も作ってやれずに後で小鳩にも怒られた。

だから、今日はいつもよりもちょっと豪華にしてみた。
小鳩の大好きな唐揚げもあるし。

「ククク、この調子で普段から頼むぞ、我が半身よ」

「んー、それはちょっと厳しいな」

「ふん、部活とやらか。夏休みくらい休めばいいものを」

「夏休みはリア充の季節だから、それこそ活動しねえと……ってわけらしいぞ」

「……むー」

不満気に頬を膨らませる小鳩。

「そういえば、お前も夏休みなのにあまり外に出てないよな」

「我は吸血鬼だが陽の光を克服している。とはいえ、自ら望んで当たりたいものではない。
 そもそも外に出て遊ぶなど、人間の子供がやることであり、悠久の時を生きる我にとってはくだらぬものだ」

「……そういえば、お前も友達いねえんだっけ…………」

「ククク、言ったはずだぞ。我にとっては闇こそが真の友であると……」

闇だけが友、というのも何とも悲しい話だ。
まぁ夜空のエア友達よりはマシかもしれないが。

というか、小鳩は俺と違って見た目は全然問題ないはずだ。
むしろ、ハーフらしさがよく出ていて、人気者でもおかしくないと思う。

それでも友達がいないのは、この厨二病のせいだろう。

「……なぁ、小鳩。なんつーか、その演技やめればすぐ友達もできるんじゃねえの?」

「え、演技ちゃうもん!! ……はっ! ククク、何をたわけたことを言っているのやら……」

そんな小鳩に俺は溜息をつく。
でもまぁ、こういうのは家族にあまり突っ込まれて聞かれるのもいい気分ではないかもしれない。
俺も父さんとか小鳩に友達がいないことについて深く聞かれるのはちょっと嫌だし。

でもやっぱり兄としてはちょっと心配なわけで。


どうする? >>450
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 01:37:12.69 ID:28NE9lFSO
中2病の怖さをしっかり教える
451 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 02:15:26.10 ID:SybNSjRVo

俺は決心する。
兄として、妹の重度の厨二病は放っておけない。

「……小鳩、よく聞くんだ」

「ふぇ?」


……それから小一時間、俺は厨二病がどれだけ恐ろしいものか話して聞かせた。

今は楽しいかもしれないが、後になってそれは確実に黒歴史になってからかわれる事。
例えば、成人式とかでの同窓会でその時の真似をしろ、とかって言われたり。
後現時点でも、周りから見ればかなり痛々しい人だという事。

ぶっちゃけレイシスなんたらかんたらとか、夜の血族だとか意味分からない事。
難しい言葉を使いたいのはいいが、時々意味とか言葉自体を間違っている事。
空想と現実の区別はきちんとつけたほうがいい事。


そんな俺の懸命の説得の結果、小鳩は――――。


「あんちゃんのあほ―――――ッ!!!!!」


泣いて自分の部屋に引きこもってしまった。。



***



俺はベッドに寝っ転がりながらケータイをいじる。
最近は部活の連絡などもこれで行なっており、前よりも触っている時間が格段に増えた。
それだけ以前まではケータイなんてただ持っているだけであり、使うことなんて殆ど無かった。
今時の高校生はケータイ依存症というものにかかっているとか言われているが、それは友達がいる人だけだろう。

そういえば、星奈への連絡はどうしているんだろう?
あんな状態じゃアドレス交換もしてないだろうし。

そんな事を考えながら、明日もいつも通り午後一時から活動、という理科からのメールを読んでケータイを閉じる。
他にもホテルがどうのこうのとかって書かれていたような気がするが、そこは面倒くさいので読んでいない。

俺は部屋の天井を眺めながらぼんやりとする。
小鳩、そうとう怒らせちまったなぁ…………。
明日の夕食も、それなりに豪華なものにしたほうがいいのだろうか。

それに、夜空だ。
彼女にしては珍しく、あれはかなり傷ついていた気がする。
たぶん……俺のせいだろうし、かなり罪悪感もある。

夜空にはメールでもして謝ろうかな。
いや、それよりも先に身近な小鳩の機嫌を直すのが先か。


どうする? >>452
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 02:17:11.91 ID:FYoVz+Os0
夜空に謝りのメールを送る
453 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 02:35:49.97 ID:SybNSjRVo

うーん、まぁ小鳩は食べ物で機嫌も直るだろうし、まずは夜空だな。

俺は再びケータイを取り出すとメールを打ち始める。
慣れてないので、すごく遅い。


『今日はなんかごめんな』


こんな感じでいいだろうか。
さすがに簡素すぎる気もするが、正直夜空が怒っている理由も分からないので、他に書きようもない。

ティロン、というメールの送信が完了した音が部屋に響く。

それからただ返信を待っているのも時間がもったいないので、俺は夏休みの宿題にとりかかることにした。
間に合わなかった、なんて事態は絶対に避けたい。
ただでさえ見た目で不良扱いされるのだから、こういった所でまで評判を落としたくないのだ。

俺が数学の因数分解という何の役に立つのかも分からないものをひたすら解いていると、ケータイのバイブ音が鳴った。
開いて確認してみると、やはり夜空からの返信だった。


『何のことだ?』


夜空らしい短くて素っ気ない文。
これだけなら、俺の心配とは裏腹に大して気にしていないようにも見える。
しかし夜空のことだ。
例えムチャクチャ気にしていたとしても、それを素直に話すようなやつではないだろう。

さて、何て返すかな。


>>454
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 02:37:36.97 ID:LMq2ha2b0
今日の別れ際だよ
なんか…悪かった
455 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 03:00:41.24 ID:SybNSjRVo


『今日の別れ際だよ。なんか…悪かった』


送信っと。
それにしても夜空のやつやっぱりそう簡単には怒っていた理由を言う気はないようだ。
それくらい自分で察しろ、という事なのか?

次の夜空の返信はすぐに来た。

『だから私は何ともないと言っているだろう。
 そうだ、帰り際といえば、小鷹はちゃんとタイムセールに間に合ったのか?』

うーん……なんか話を逸らされている気がする。

『何ともないわけはないだろ。お前、相当落ち込んでたっていうか……。
 あとタイムセールはちゃんと間に合ったし、唐揚げ作って小鳩も喜んでくれたよ』

『小鳩とは小鷹の妹だったか。お前もあんな感じにハーフっぽかったら、違う人生を送っていたのかもな』

まぁ確かにその通りだとは思うが、それは夜空の知っている羽瀬川小鷹ではないだろう。
こんな中途半端なプリン頭と目付きの悪さで不良と勘違いされがちで、今まで色々と苦労してきた結果俺がいるわけで。
ハーフっぽくなって周りからチヤホヤされたりすれば、それこそ学園系漫画とかに登場する感じの悪いイケメンとかみたいになったかもしれない。

この生活に大満足かと言われれば素直に頷くことはできないが、それでも今までの人生を全て否定する気にはなれない。
そもそも、そんな事考えたところで時間の無駄だと思う。

……ていうか、夜空のやつ、意地でも怒ってる云々のところはスルーする気だな。


どうする? >>456
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/25(水) 03:02:12.36 ID:lAwid8sT0
後日生徒会に相談に行く
457 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 03:07:21.17 ID:SybNSjRVo
今日はここまでー。おやすみ
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 03:07:43.31 ID:FYoVz+Os0
乙でした
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 10:51:33.84 ID:UMqgX8YXo
小鳩を入部させるチャンスだったんじゃね
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 12:22:43.79 ID:LMq2ha2b0
夏休み中に勝手に部室来そうじゃね?
461 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 21:11:52.23 ID:SybNSjRVo

たぶん、俺だけじゃ聞き出すことなんかできないと思う。
人と話すのは得意じゃないし。

それなら、どうする?

俺は考える。
考えて、考えて…………。
そして、思いついた。

おそらく、前までの俺では思い付かなかっただろう。
自分一人でどうにもならないのなら、誰かを頼ればいいんだ。

「…………でも誰に」

俺はまた考え込む。
できれば、夜空本人には知られたくない。

しかし、夜空の耳に入らない者となると中々出てこない。
こうしてみると、何だかんだ俺の人間関係は夜空……というか理科部中心だという事が分かる。

それ以外となると…………。

「……生徒会、か」

会長に遊佐。
遊佐はともかく、会長ならきっと俺では考えつかないようなことも分かると思う。

とにかく、今度相談してみよう。



***



次の日の午後一時。理科室。
今日も部員は全員集合だ。せっかくの夏休みなのに、みんな暇すぎるだろ。
俺も人のこと言えないけど。

おそらく連絡がいってないであろう星奈もちゃんと来ている。

「あれ、星奈先輩普通に来ましたね。連絡しなかったのに」

「ちょ、ちょっと!! 何であたしだけ仲間外れにしようとすんのよ!!!」

「元々人間と肉は似て非なるものだ。そのうえ貴様は腐肉だからな。そこの所をわきまえろ」

「あたしは腐ってない!! いたってノーマルよ!!」

「理科はもちろん腐ってますよ!! いいじゃないですか男の子同士!!!」

「……おとこどうしの友情が好きなものを腐っているというのですか…………」

「いや幸村、その場合友情じゃなくて愛情な」

そんな感じでいつも通りの理科部。
今日こそはまともに活動できるのか。かなり不安だ。
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 21:11:54.94 ID:3kz0cmTIO
自宅でビニールプール展開はよ
463 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 21:13:45.88 ID:SybNSjRVo

「ていうか、星奈先輩のケータイの番号を教えてもらわないと、連絡取りづらいですよ」

「け、ケータイ?」

「あぁ、そうだ。ケータイとは携帯電話のことで、文字通り携帯できる電話のことだ。電話は分かるか?」

「あたしはいつの時代の人間よ!!! そんな事くらい分かってるわよ!!! で、でも……」

「どうしました、星奈のあねご。頭の悪そうな、やたらとデコったキラキラケータイをお出しください」

「ゆ、幸村……」

俺は無表情の幸村から淡々と放たれる毒舌に若干引く。
星奈は泣きそうな顔で、

「う、うるさい!! ケータイなんか持ってないわよ!!」

「え……マジ?」

「え、えぇ……あんなもの、そこらのバカ女が好きな低俗な機械よ!! 高貴なあたしが持つべきじゃないわ!!」

かなり意外だった。

星奈は性格こそ色々とアレだが、見た目的に流行の最先端を行っている印象を受ける。
正直、幸村の言う通り、ギャルが好むようなキラキラしたケータイを持っているのかと思っていた。

理科は少し考えこんで、

「ふーむ、それでは星奈先輩への部活の連絡はどうしましょうかね」

「しなくていいだろう。できないものは仕方ない」

「なっ、ちょ、ちょっとは何か考えてよ!!」



どうする? >>464
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 21:15:04.79 ID:DH0AH/KE0
小鷹が行ってラッキースケベ
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 21:16:48.06 ID:3kz0cmTIO
小鷹が部活のある日は迎えに行く
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 21:18:47.32 ID:FYoVz+Os0
>>464
ちょっと文脈に合わんくね?
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 21:22:16.62 ID:3kz0cmTIO
この中に長屋は2人いたのか
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 21:29:31.35 ID:Ld1LBAr3o
俺もいる
長屋はスマホなのか?
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/25(水) 21:57:08.55 ID:xYDzEsNGo
>>468
スマホって訳じゃ無いと思うぞ
470 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 22:05:41.35 ID:SybNSjRVo

「じゃ、じゃあ小鷹! あんた、部活ある日はあたしを迎えに来なさい!」

「えっ……お前の家まで? 正直面倒くさいんだけど……」

「はぁ? 男はあたしの言うことは大人しく聞くものでしょ!」

「そりゃお前の下僕の話だろ!」

さすがに部活がある日……となるとほぼ毎日なのだが、星奈を迎えに行くというのは面倒にもほどがある。

「それはダメだ。調子に乗るな肉」

「なんであんたがダメ出しすんのよ」

「そ、それは……」

「あたしは小鷹に聞いてんの。いいでしょ?」

「いやだ」

「な、何で!? このあたしがお願いしてあげてんのよ!? 本当なら泣いて喜ぶべきじゃない!?」

ダメだこいつ……と俺は溜息をつく。
まぁ理科部の面々で、こういう残念な奴にも少しは慣れたけど。

「……まぁいいでしょう。小鷹先輩、お願いします」

「理科!?」

「考えてみれば、理事長の家に定期的に訪問してパイプを作っておいた方が何かと好都合かもしれません。
 あっ、“パイプ”ですよ。“バイブ”ではなくて」

「それで何で俺が……」

「小鷹先輩は理事長と繋がりがあるじゃないですか。ここでどんどん気に入られて、理科達が動きやすくしてください!」

「ま、待て理科! それは……」

「大丈夫ですよ、夜空先輩。小鷹先輩はヘタレですし、星奈先輩には何もしませんって」

「そうかもしれないが……って、なっ、べ、別に小鷹を肉に取られるからとかそういう話ではないからな!///」

「……なんか俺散々言われてねえか?」

確かに星奈に何かする気なんてないが、この言われ方は引っかかる。
ヘタレじゃなくて紳士って言ってほしいもんだ、一応イギリスとのハーフだし。

「あにき、わたくしは分かっております。あにきはヘタレだと見せておいて、実はおなごをぺろりと食べてしまう……」

「それも違う!!」

ダメだ……誰一人として分かっていない。

「何でもいいけどさ、来てくれるの? くれないの?」

「大丈夫ですよ」

「おい……」

「まぁまぁ、小鷹先輩。これも理科部のためだと思って」

「…………はぁ、分かったよ」

こんなわけで、俺は理科部の活動がある時は星奈の家まで迎えに行く事になってしまった。
夜空はまだ納得していないようだが。もちろん俺も。
471 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 22:09:17.82 ID:SybNSjRVo

「あにき、よろしければわたくしがお代わりいたしますが」

「ほ、本当かゆきむ――」

「えっ……いや、あんたちょっと得体がしれないからパス」

「…………」

幸村がムスッとして星奈を見る。これは結構珍しい。
というか手をゆらゆらと腰の何かを掴むように彷徨わせるのはやめてほしい。怖いから。
俺は慌てて、

「だ、大丈夫だ幸村! わざわざお前がやらなくてもさ!」

「……あにきがそうおっしゃるのなら」

「えーと。そ、それでは、そろそろ今日の活動始めましょうか!」

理科も急いで話題を変える。
なかなかナイスだ。

これで、今日はまともに活動ができる……と思った時。


コンコン、とノックの音が鳴った。


夏休みにわざわざ誰だろう? と思っていると、夜空が無言でドアを開ける。
そこにいたのは遊佐葵だった。

そういえば、見学に来たいとか言ってたっけ。

「こんにちは! 理科部の見学に来ました!」

「帰れ」

そういってドアを閉める夜空。

「おいおい、何やってんだって!」

俺は立ち上がると、再びドアを開ける。
遊佐はただただビックリとしている。

「えっと、あの、迷惑でしたか?」

「いや、そんな事は――」

「迷惑だ」

「おい夜空。さすがにそれは――」

「ちょっと聞け小鷹」

夜空はそう言うと、俺を引っ張ってコソコソ話を始める。

「あいつは生徒会の手先だぞ?」

「手先って……ただ見学したいだけだろ」

「いや、例えそうだったとしても、奴の立場は変わらない。ここで、いつもの大失敗でもやらかしてみろ」

俺は少し想像してみる。
今まで作った道具の中で、まともに役に立ったのは防犯ブザーと猫型ロボットくらいだ。
それ以外……しかも媚薬なんかは俺の停学騒動にまでなった大失敗作であり、万が一そんなものを生徒会の人間に見られたら…………。

……うん、たしかにヤバイ。


どうする? >>472
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/07/25(水) 22:10:01.53 ID:FYoVz+Os0
構わない
見学してもらう
473 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 22:29:02.23 ID:SybNSjRVo

「……いや、見学したいって言ってんだからさせてやろうぜ」

「なっ……」

「つーか、元々見られたらマズイ事ばっかしてたらダメだろ。今日は監視役がいると思って、気をつけようぜ」

「むぅ……」

あれだけ楽しそうにしていた遊佐を追い出すのは可哀想だ。
見られたらマズイ事が起きるかもしれない、なんていうのは自分達の都合だし、それなら気をつければいい話だ。
どっちにしろ、いつまでもそんな事ばっかりもやってられないわけだし。

……正直に言うと、個人的な理由もある。
それは、ちょうど遊佐が来てくれたことだし、後でこっそり昨日の夜空の事について聞いてみようと思ったからだ。

「それじゃあ遊佐、好きなだけ見ていってくれていいぞ」

「あ、ありがとうございます!」

ここまで目をキラキラさせて喜ばれるとそれなりに嬉しい。
まるで妹であるかのような感じもするが、彼女は同学年だ。なでなでするとか、小鳩に対するノリは止めておいたほうがいいだろう。

そんな遊佐を、星奈がじっと見つめながら、

「……あんた、どっかで見たことあるわね」

「だから同じクラスだって言ってるじゃありませんか――――ッ!!!」

星奈のやつ、もう忘れてやがる……。
さすがにこれは不憫だ。

そこで、幸村がちょいちょいと俺のシャツの裾を軽く引っ張ってくる。

「どうした、幸村?」

「ごあんしんを、あにき。もしもの事態には、わたくしがこの刺客のいきのねをとめますゆえ」

「何を安心しろって!?」

ダメだ、やっぱりこんな奴等と遊佐を関わらせてはいけないんじゃないか。
そんな後悔が一気に押し寄せてくる。

これはさっさと活動を始めてしまったほうがよさそうだ。

「あー、理科。もう始めようぜ」

「分かりました。……えー、コホン。それでは今日は観客もいるという事なので、いつも以上に張り切っていきますよ!」



本日の活動内容 >>475
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 22:29:29.40 ID:28NE9lFSO
ボクシング
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 22:29:41.83 ID:LMq2ha2b0
夏の暑さ対策用の何かを作る
476 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/25(水) 22:31:54.82 ID:SybNSjRVo
明日テストだからここまでー。今日は暑いね
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 22:33:29.78 ID:FYoVz+Os0
乙でした

確かに最近はホント暑い…
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 22:37:03.07 ID:LMq2ha2b0
荵吶シ
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 22:38:43.39 ID:LMq2ha2b0
うお、文字化け…

乙でしたー
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/07/25(水) 23:26:25.12 ID:N0jYeez30
見直すと割と理科部は奉仕団体のように思えてきた
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/25(水) 23:41:46.40 ID:xYDzEsNGo
乙乙
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 23:54:56.46 ID:ECO4lonIO
肉の好感度がヤンキー→下僕まで上がったか
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/26(木) 00:25:10.14 ID:EeZOdvFm0
それは好感度上がったのか?ww
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 01:18:39.08 ID:yKRx8w0SO
路傍の石から人間関係持てた位、には?
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/26(木) 01:26:40.12 ID:GU1fhIWto
すでに肉の脳内では毎朝迎えに来てくれる幼馴染くらいの妄想してるだろ
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 03:05:46.29 ID:yKRx8w0SO
それなんてシンジくん
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/26(木) 03:06:40.09 ID:X/4dNEwXo
路傍のウンコから路傍の石くらいには格上げされたなww
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/26(木) 08:54:15.84 ID:AhXTGXM4o
最初は仲悪かったけど後でくっつくってのは王道だな
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 10:14:27.78 ID:wLRVk+4IO
なんだかんだで肉はメインヒロインだし(残念だけど)一番可愛いしな
早くデレろ
490 :sage :2012/07/26(木) 13:14:29.34 ID:mn4ykKND0
理科ルートは貴重だから頑張ってほC
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/26(木) 13:55:16.04 ID:NlBwoD400
sage書くところ間違えてるぞ…
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/27(金) 00:02:24.77 ID:jW5sNa2r0
>>490
それは同意だがsageはメール欄にな
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 19:56:20.01 ID:R2habocIO
テスト期間中は来ないのかな
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 21:22:46.50 ID:5DZWzsVIO
テスト期間中くらい勉強させてやれよ
495 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/27(金) 22:58:26.46 ID:QMUou1G8o

「理科的には、やっぱり夏ですし暑さ対策なんかいいと思うんですけど、どうでしょう?」

「あー、そういやお前太陽光発電の装置の検査とかでぶっ倒れてたもんな。
 けど、学校はクーラー効いてるし、今は夏休みだからクラスの人もいないだろ」

「そこは運動部の奴らにでも渡してみれば良いだろう。クーラーなどとは違って個人で使えそうなものをな」

「わたくしはかぜを引いた時などは、恥ずかしながら冷えピタなるもののたすけを借りるときもあります」

「恥ずかしながらって……別に普通じゃねえか」

「いえ、しんのおとこはそんなものに頼らないのです。そもそも、かぜを引いている時点でわたくしは軟弱者です……」

何とかは風邪引かないっていう言葉もあるが、面倒くさくなりそうなので黙っておく。

だが今のところは割と良い感じじゃないか。
少なくとも結構部活っぽい感じがする。
これは理科部にとっては貴重な時間だ。

遊佐もわくわくとした様子でこちらを見ている。
何も口を挟んでこないのは、邪魔をしてはいけないと思っているのだろうか。

理科はみんなの言葉を聞いて少し考えこみ、

「それでは、冷えピタの改良版的なものを作って運動部の皆さんに配りましょうか!」

その提案に反対するものはいなかった。
今回は“当たり”かもしれない。そう思った。



***



それから少しして、いつもの驚異的なスピードで理科は新しい発明品を完成させた。
確かにこの早さは凄いと思うが、俺としてはもう少し時間をかけていいんじゃないかとも思う。
そうすれば、媚薬を作った時なんかは途中で「何やってんだろ」と我に返ったかもしれないし、握手マシーンの不具合もなかったかもしれない。

まぁそれは今度話してようという事で、今はとにかく新しい発明品を見てみる。
想像していたものよりずっと小さく、一辺が五ミリ程度の正方形のチップだ。

「感覚的に言えば、冷え冷え成分を凝縮した冷えピタですね。どうぞ、使ってみてください」

言われた通りに俺達はチップを手にとって、それぞれ首の後ろやおでこに貼ってみる。

「わあっ! すっごく冷たいですね!」

「はい、丹誠込めて強力にしましたから!」

遊佐は目を丸くして驚いている。

俺も正直ビビった。
それはまるで冷たい氷をそのまま押し当てているような感じで、急に貼られたりしたらビックリするだろう。
それでいて、時間が立つにつれて冷たさが体全体に広がっていく。

周りの部員のみんなも同じような反応をしている。

「これ、運動部の皆さんに配ればすっごく喜ばれますよ! やっぱり理科部の皆さんは凄いです!」

「まぁ、ほとんど理科のお陰ですけどね」

「……確かにそうだな」

「わたくしはあにきのお役に立てればそれで十分です」

まぁ理科中心になってしまうのは仕方ない部分もあると思う。俺らはあくまでサポート役だ。
そして幸村はなんか根本的に部の活動からズレている気がするが、深く突っ込まないことにした。
496 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/27(金) 23:01:08.96 ID:QMUou1G8o

俺達の会話を聞いていた夜空は慌てて口を開く。

「なっ……わ、私だって協力しているぞ! アイデアを出したり実験台になってみたり!」

「ちょっと、一番実験台にされてんのはあたしじゃない! つまり、あたしがこの部に一番貢献してるって事よ!」

「はっ、肉が部のエースたるこの私に向かって何かほざいているな」

「エースって何よ! あたしはそんなの認めてないわよ!!」

「くく、驚け!! 私は夏休み前にクラスの女の子と遊びに誘われたことがある! プールとかショッピングとか!」

「な、何ですって……ッ!! で、デタラメ言ってんじゃないわよ!!!」

「貴様のような肉では一生そんなことはないだろうな。
 これからも貴様はクラスメイトの女子なんかに、『柏崎さんは男ばっかり連れてマジビッチだよね、ギャハハ☆』とか言われ続けるのだろうな、可哀想に」

「う、うるさい!! そんな事言う性格ブスなんてこっちから願い下げよ! あたしにはもっと良い子がいるんだから!!」

「画面の中にな」

「うっ……ぐぐぐぐううう……………!!!」

なんか雲行きが怪しくなってきた。遊佐も二人のやり取りみて困惑……てか引いてるし。

「おい二人共その辺にしとけって。つか夜空、お前結局遊びに誘われても行けなかったじゃねえか」

「こ、小鷹! 余計なことを言うな!」

「……ふふーん。結局、その時になったら怖くなって行けなかったんだ〜。チキンね」

「それならば今ここで私がチキンでないことを証明してやろうか。貴様で」

「熱くなりすぎですよ、先輩方」

「「うひゃああ!!?」」

ここで、理科が素早く二人の首元に新たな冷えピタチップを貼り付ける。

余程冷たかったのか、その瞬間二人共ビクッと飛び上がった
全く同じタイミングで、妙なところで息が合うものだと思う。
497 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/27(金) 23:02:49.32 ID:QMUou1G8o

「な、何すんのよ!!」

「いえ、お二人がとても暑そうだったので」

「……ふ、ふん。まぁ私はこの程度何ともない」

「……あ、あたしだって何ともないわ」

「強がりはよせ肉。貴様、気持ち悪い声をあげてビビっていただろう」

「ビビってなんかないわよ! あんたこそ『ひゃああ!!』とか言ってたくせに。ぶっ……あはは!! 思い出したら笑えてきた!」

「肉ぅぅ……ッ!!!」

ビキビキ青筋を浮き立たせながら、女の子としてありえない表情になっている夜空。
顔はお前の数少ない長所なのに……。

そして夜空は何を思ったのか、冷えピタチップをさらに首に貼りつけた。

「ほらみろ、こんなものいくらつけても何ともない!!
 貴様とは違うんだ貧弱肉が!! 貴様はそのまま冷凍肉にでもなって出荷されていろ」

「何ですってぇ……!! あたしだってまだまだ余裕よ!!!」

そう言って、なんか分からないが、我慢比べのようなものが始まった。
俺が呆れていると、幸村が夜空達の様子を真剣に眺めながら、

「……あにき、男をみがくためにわたくしも挑戦するべきでしょうか」

「いや、磨くどころかコイツらと同レベルって事で大切な何かを失うと思う……」

「あ、あの、これあんなに貼って大丈夫なんですか……?」

遊佐が心配そうに言う。
確かにこれ一つでもかなり冷たいのに、あんだけ貼って大丈夫なのか。

いや。
理科だって二人がこういう意味不明な事をするのを見越して、何か対策を考えてくれているだろう。
そんな希望を抱いて彼女の方を向くと、

「もちろん大丈夫じゃないですよ。普通に危ないです」

「おい!!!」



どうする? >>498
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/27(金) 23:04:18.31 ID:JHOxt1XS0
無理矢理剥がす
499 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/28(土) 00:25:12.32 ID:FUtWX+fBo

とにかく、ここは実力行使しかない!

「お、おい! お前らやめとけって!!」

「きゃっ!!」

「こ、小鷹!?」

俺は急いで二人の首元から冷えピタチップを剥がした。
すると、二人がビクン! と大きく反応する。
顔は真っ赤だ。

……え?

「い、いきなり首を触るな!!」

「そうよこの変態!! セクハラ!!!」

「……小鷹先輩はうなじ好きだったのですか」

「あにき、この混乱に乗じて……まじぱないです」

「違う!! 色々と違う!!!」

俺は必死に否定するが、夜空には顔を赤くして睨まれるわ、星奈にはゴミ虫を見るような目で見られるわ。
挙句の果てには理科にも少し冷たい目で見られる。
幸村はなぜか尊敬の眼差しを向けてくるのだが、ちっとも嬉しくない。

そして。
恐る恐る遊佐の方を向くと……。

「あ、え、えーと……は、羽瀬川くんも男の子ですもんね……あはは…………。
 わ、私ちょっと生徒会の仕事残っているので、そろそろ失礼しますね! 今日はありがとうございました!!」

そんな事を言って、出ていってしまった。



その後予定通りに運動部に冷えピタチップを配ろうとした……が。
俺達の目を盗んで夜空と星奈が再び我慢比べを始めようとしたので、結局これは封印することにした。

なんか、部員が増えるたびにトラブルが増える。
星奈の入部は色々な意味で大きいのかもしれない。

そういえば、遊佐に昨日の夜空のこと聞くのを忘れていた。
……でもなんか、もういいかな。
今のこの状態を見れば、夜空が完全にいつも通りなのは良く分かるし。
 
 

 
500 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/28(土) 00:26:56.14 ID:FUtWX+fBo



***



次の部活の活動日。時刻は午後0時30分。
俺は星奈を迎えに屋敷の前まで来ていた。

今日も雲一つない青空で暑くなりそうだ……ていうか既に暑い。

「……急に来て大丈夫なのか?」

なんていうか、この家に限ってはアポ無しでは門前払いされてもおかしくない気がする。
同じ部活の仲間の家、といえばいいかもしれないが、同時にここは学園の理事長の家でもあるのだ。

俺がそんな事を考えて困っていると、

「……小鷹様?」

執事のステラさんが出てきた。
もしかしたらこの家の玄関には何かのセンサーでもついていて、誰かがきたら知らせているのかもしれない。

「あ、えっと、すみません急に。今日部活で、星奈……さんを迎えに来たんですけど……」

「これはこれは。わざわざ申し訳ございません。どうぞ」

そうやってあっさり家の中に通される。
執事が勝手に人を家の中にあげてもいいのだろうか、とぼんやりと考える。

それから案内された応接間で待っていると、星奈ではなく理事長がやってきた。

「小鷹くん、わざわざここまでありがとう」

「いえいえ、このくらい大丈夫ですよ」

実際のところは結構面倒くさいのだが、さすがに理事長の前でそれは言えない。

「星奈は今シャワーを浴びている。すまないが、もう少し待ってもらえるか」

「はい、大丈夫です」

「……それで、星奈のことなんだが。部活は上手くやれているか?
 あの子もそういったものに入るのは初めてだろうし、色々と迷惑をかけているだろうが……」

「えーと、何ていうか……それなりに楽しくやってますよ……はい……」

「そ、そうか。うむ、それならいいのだがな」

やはり一人娘というだけあって、星奈の事は可愛くて仕方ないのだろう。
父さんも小鳩に対してはデレデレだし。

毎日毎日夜空とケンカしている星奈だが、たぶん理事長基準ではあれも仲がいいのだろう。
そういう事にして、とりあえず当たり障りない事を言っておいた。
501 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/28(土) 00:30:28.73 ID:FUtWX+fBo



***



それから緊張のためか尿意をもよおしたので、俺はトイレを借りることにした。
しかしステラさんから場所は聞いたのだが、なかなか見つけることができない。
いくらなんでも、この歳になってトイレまでついてきてもらうわけにはいかないし……。

その時、ふとどこかから鼻歌が聞こえてきた。
もしかしたら別の使用人とかかもしれない。

俺はもう一度トイレの場所を尋ねようと、音源を探してみる。
それはどうやら、少し先の大きめの扉の向こうから聞こえてきていた。

「あの、すみません……」

そう言って、俺はドアを開ける。

モワッ、と湯気があがっている。
奥の方にはすりガラスの大きな扉。
手前にある大きな鏡の前にはドライヤー。
壁にはふんわりとしたバスタオルがいくつもかけられていて…………。


つまる所、完全に風呂場の脱衣所だった。


そして先程の鼻歌の主も居た。
そいつはちょうどバスタオルで頭を拭いていた。
風呂あがりで、体全体を火照らせた、全裸の…………金髪碧眼の美少女が居た。名前は柏崎星奈。

彼女はじっとこちらを見ている。
体を隠すこともなく、ただ目の前で起きたことが脳まで届いていないようだ。

だが、次第にその目に光が戻ってくる。
続いて、口がパクパクと動き始める。

……そして。


「いやああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」



***



俺と星奈は学校へ向かうために同じバスに乗っている。
お互い無言で、目も合わせない。

といっても、これは星奈の方が一方的にそうしているわけで、俺としたら気まずいことこの上ない。
まぁでも無理はない、と思う。
たぶん星奈は夜空の言うようにビッチじゃないだろうし、男に自分の肌を見せる機会なんてほとんどなかっただろう。
それだけに、ショックもデカイはずだ。

……チラリと星奈の方を見てみる。

当然ながら目を合わせる気はないらしく、ただ流れ行く窓の外の景色を眺めている。
もうなんか、意図的に無視しているというより、完全に俺の存在に気付いていないかのようで、これはかなりキツイ。

もちろんあれから謝りまくった。
けれどもそれだけで許してもらえるほど世の中は甘くない。
これが知り合いだったからまだ良かったものの、見ず知らずの人だったら本気で警察の人が訪ねてきてもおかしくないくらいだ。

……何とか星奈の機嫌を直すような方法がないだろうか。


>>502
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/07/28(土) 00:31:30.07 ID:kcow0iE80
あの、俺に対する他の生徒達からの相談ってまだ受けてるんですかね?
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 00:31:31.39 ID:hppvvSVIO
とりあえず全裸に
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 00:34:29.56 ID:4xnFtyz20
小鷹ェ…
505 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/28(土) 01:18:06.86 ID:FUtWX+fBo

「あ、あのさ」

俺は頑張って言葉を口に出してみる。
正直無視されるのが怖い。

星奈は目だけ動かして反応してくれた。

「えっと、生徒からの俺に関する相談ってのは、まだ来てたりするのか?」

「えぇ、今もかなり来てるわよ。もうこれはあんたの存在自体を抹消しないとダメね。
 そうだ、今日の部活でそういう道具作ってみたらいいじゃない。さすがあたし、いいアイデアね」

「……わ、悪かった」

「あぁ、でも別に社会的に存在を抹消するってのもありかしらね。とりあえずあんたが学校にいる状態が悪いわけだし……」

「…………」

それからしばらくの間、バスの中にはギスギスとした空気が流れていた。
俺はちょっと泣きそうだった。



***



理科室に着いてからも星奈は相変わらずで。
俺以外と話す時はいつも通りなのだが、俺だけ目を合わせるのも避けている。

さすがにみんなも気付いたようで、

「……小鷹先輩と何かあったんですか?」

「別に何も。あ、そうだ。あたしもケータイ買うことにしたわ」

「ふん、貴様以前にケータイはバカ女が使うものだと言っていただろう。ついに自分がバカ肉だと認めたか」

「ものは使いようよ。バカに包丁持たせたら危ないけど、シェフに持たせれば安心じゃない。
 このあたしに選ばれたケータイは幸せものね。この高貴なあたしが凡人では到底考えられない素晴らしい使い方をしてあげるんだから」

「わたくしが釘バットをもっても大してやくにたちませんが、あにきがもったら凶器とかすという事ですね」

「……俺は釘バット持って何すんだよ」

どうやら星奈は今日でもう俺に迎えに来させるのはダメだと判断したらしい。
まぁ、当然か。
506 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/28(土) 01:19:58.32 ID:FUtWX+fBo

「小鷹先輩、星奈先輩を迎えに行って何かしましたね?」

「いっ!?」

急に理科がそんな事を言ってきたので、俺はビクッと後ずさる。
彼女はこうして唐突に核心をついてくるからビビる。

「その反応、マジっぽいですね」

「ふん、よくやったぞ小鷹。肉は定期的に躾けなければどこで発情して子供を持ってくるか分かんないからな」

「あたしはネコか!!!」

「いえ夜空先輩。もしかしたら、ホントに性的な事も考えられると思いますよ。
 なぜか星奈先輩は怒っているのに言いたがりませんし、実際小鷹先輩は星奈先輩の家に……」

理科の真面目なそんな言葉に、夜空の血の気が引いた。

「……おい小鷹」

「ま、待て。とりあえず落ち着け」

「はぁ……小鷹先輩はヘタレだから何もできないと踏んでいたのですが……読み違いました」

「星奈のあねごほどのぷろぽーしょんを前に、ほうっておくのはおとこではないのですね、あにき。
 ……しかしなんでしょう、この胸の痛みは」

夜空は凄い目で睨んでくるし、理科も冷めた目で見てくるし。
幸村は幸村でよく分からないことを言いながらも、どこか悲しそうな目でこちらを見ているし。

星奈は「何とかしろ、できないなら殺す(社会的に)」みたいな目で見てくる。

……クーラーは効いているはずなのに、汗がにじみ出てくる。



どうする? >>507
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/07/28(土) 01:20:25.89 ID:reHtTLmk0
正直に白状する
508 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/28(土) 01:26:33.92 ID:FUtWX+fBo
睡魔が来たからここまで
五輪サッカーとか観るから更新頻度長くなるかも
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/28(土) 01:28:42.75 ID:kcow0iE80
乙でした
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/28(土) 01:35:53.60 ID:IrUiA94Ko

どうにかしてギャルゲーみたいな展開にしないと肉が懐かないな
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 01:53:42.74 ID:4xnFtyz20


もう星奈は無理じゃね…?
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 02:26:25.70 ID:hppvvSVIO

せっかく評価が人間レベルまでなったのに前より酷くなってんじゃねえのかこれw
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/28(土) 02:50:10.82 ID:iRM3IqDEo
>>464
これのラッキースケベを消化したのか
514 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/28(土) 12:43:52.61 ID:FUtWX+fBo

ダメだ。
たぶんどう誤魔化そうと結局バレる気がする。
特に理科はそういうのに鋭いし。

こういう場合は始めから素直に言ってしまうのがいいだろう。

「えっと、実はな――」

「ちょっと待ちなさい!!!」

星奈に大声で遮られた。
そして呆気にとられている間に腕をつかまれ、廊下まで引っ張られる。
そのままずんずんと人気のない所まで歩いて行って、やっとこちらを振り向いた。

「あの事は言わないで。ていうか今すぐ忘れなさい」

「で、でもよ、たぶん理科は誤魔化せないと思うけど……」

「そこを何とかしなさいよ!
 あんたみたいな人間の底辺……いや、虫以下の存在に、このあたしが裸を見られたなんて知られるのは耐え切れないわ!!」

「わ、分かった。一応バレないようにはしてみる。けどあんまり期待するなよ?」

「ダメだったらパパに頼んであんたをこの学校から追放してもらうわ」

……いや、理事長はそんな事しないとは思う。
それでもこう言われると、どうしても不安を感じてしまう。


そんな感じで、再び理科室に戻ってきた俺と星奈。
それを見た理科が一言。


「なるほど、小鷹先輩が星奈先輩の裸を見てしまったわけですか」
 
 
 
515 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/28(土) 12:47:42.14 ID:FUtWX+fBo

ぶほっ!! と同時に吹き出す俺と星奈。
夜空はメチャクチャ不機嫌そうな顔でこっちを睨んでいるし、幸村も悲しそうな目で見てくる。

「な……なんで…………!!」

「さっきこの部屋を出ていく時に、小鷹先輩の服に盗聴器をつけました」

そう言って、理科は俺の背中から小さいボタンのような物を取った。
まったく気付かなかった……。

夜空はしばらく俺をじっと見て、

「……金髪巨乳がそんなにいいか変態め」

「あにきはへんたいだったのですね」

夜空はともかく、幸村の淡々とした口調は心に刺さる。
すると、ずっと引きつった顔でプルプルと震えていた星奈が、心底呆れた様子で溜息をついて、

「……そうよ、いきなり脱衣所に入ってきて裸見られたわよ。ねぇ理科、こいつの頭の中の記憶を焼き切るもの作ってくんない?」

「開発してみる価値ありですね」

「珍しくまともな意見だな肉」

「わたくしもそれには賛成です。しんのおとこは過去はふりかえらないのです」

「ま、待て待て待て!!」

なんか真顔で凄いこと言ってるぞこいつら。
しかも理科の事だから、マジで作ってしまいそうで怖い。

「忘れる!! 忘れるからホントに勘弁してくれ!!」

「そんな言葉信じられると思う? どうせ勉強の内容とかはすぐ忘れるくせに、こういう事はずっと覚えてるんでしょ?
 さすが変態ね。ホントだったらこの世から抹消したい所を記憶の抹消だけで済ませてあげるんだから感謝してほしいくらいだわ」

「往生際が悪いぞ小鷹。人は何かを得るためには何かを失わなければいけないんだ。
 お前の場合はこれから生きていくにあたって、肉の裸の記憶を失わなければいけない」

「じゃあ理科はこれから準備室の方にこもりますね。今回は気合入れるんで、二、三日かかるかもしれません」

「ご武運を、理科どの」

やばい、なんか話がまとまり始めてる。

星奈の裸を忘れたくない、というわけではない。
誰だって頭を弄られるのは恐ろしすぎる。特に相手は理科だ。
あの記憶だけじゃなく他にも色々忘れてしまって、理科がテヘペロするような事態が目に浮かぶ。

何とかしないと……!!


どうする? >>516
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/07/28(土) 12:49:20.82 ID:VU906w+Fo
ほかの娘の裸を見れば忘れられると主張する
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/07/28(土) 12:59:28.62 ID:SKNofkhAO
>>516
さすがや
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/28(土) 13:08:35.76 ID:kcow0iE80
夜空に殺されるぞ
519 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/28(土) 13:19:43.04 ID:FUtWX+fBo

「そ、そうだ、俺にいい考えがある!」

俺の言葉に、他の部員がいかにも信用のない目だけを向けてくる。

要は、星奈の裸を忘れればいい。
それなら――――。


「他の娘の裸を見れば、星奈のは忘れるかも!!」


やってしまった、と思った。
よく考えもせず勢いで言った結果……なんか凄いことを言ってしまった。
慌てて訂正しようとするが、もう遅い。

みんな、俺のことをゴミのような目で見てくる。
たぶん、ここまで酷い目で見られたのは初めてだ。
なんかもう……心の底から軽蔑している、そういう目だった。

理科は何も言わず準備室へ入って鍵をする。
夜空は本を読み始め、星奈はPSPで何かのゲームをやり始める。
幸村はただぼーっと部屋を眺めているだけだ。

みんな、心の隔壁……ATフィールドを展開しているような気がした。


当然、俺がそんな空間に耐えられるはずがなく、理科室を立ち去ることにした。



***



「……はぁ」

廊下に出て溜息をつく。
どうしてこうなった。

星奈の屋敷でトイレなんか探すんじゃなかった。
そもそも、迎えに行くという約束を軽々しく受けるんじゃなかった。
ていうか、いくら焦ってたとはいえ、何であんなことを言ってしまったのか。

頭の中には様々な後悔が浮かぶが、そんなものはいくら考えても意味が無い。

まだ日は高く、校庭では運動部が汗を流しながら活動している。
ああいうのを見ていると、余計に自分が凄く惨めに感じる。

……もう家に帰ろうかな。


どうする? >>520
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/28(土) 13:20:11.30 ID:kcow0iE80
生徒会にでも行こう
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 13:35:57.07 ID:hppvvSVIO
理科でさえこの反応とかもう理科部辞めて生徒会入るしか…!
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/29(日) 07:18:14.28 ID:GmphsVTY0
肉の好感度が微妙
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/07/29(日) 18:59:33.31 ID:PBv7se9AO
小鳩連れてくればなんとかなるだろ

うんこシスターがいつになっても出てこないんだがどういうことだよ
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/29(日) 19:33:38.40 ID:GmphsVTY0
シスター?
ああ、ケイトの事か…
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/07/29(日) 19:44:34.12 ID:lTUkB19AO
はがない2期確定らしいな
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 20:28:23.38 ID:OcxmNTRIO
肉がダメそうなんで、早く理科ルートに行くべきです
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 21:11:52.16 ID:jmil7CSho
まーた夜空が更なる畜生に変えられるのか
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 23:25:48.60 ID:dTRVwKuAO
早くあにきとしての威厳を取り戻して幸村ルートに入るべきです
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/30(月) 00:09:20.01 ID:DIrcYHRo0
やはりここは王道の理科√に
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 00:56:51.49 ID:ocV48pu0o
うむ、この星奈は実に可愛くない! しかしあり得る展開だ
思えば原作で早々に小鷹に泳ぎ方を請うた展開すら今では不自然に思えるわ
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 02:18:37.43 ID:56i67PpIO
もうここは小鷹が小鳩とマリア率いてロリ部設立すればいいと思う
そしたら変な女関係に振り回されなくて済むぞ
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/30(月) 02:30:58.79 ID:z52FF2/Eo
扇原下手すぎwwwwww
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/30(月) 02:36:26.57 ID:z52FF2/Eo
すみません誤爆でス
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/30(月) 13:49:04.39 ID:XYCXnrNJ0
この>>1はラノベ書けるだろう
535 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/30(月) 20:58:55.92 ID:JLQQfMWmo

数分後、俺は生徒会室に居た。
特に変わった部屋ではなく、普通の教室と比べて狭くて机と椅子が少なく、前にホワイトボードがあるくらいだ。

結局一人で考えていても良い考えが思い浮かびそうになかった俺は、会長に助けを求める事にした。

部屋には会長と遊佐だけだった。
最初はいきなり俺が来たので驚いていたが、それから歓迎してくれた。

そして事情をあらかた話すと、

「……ふむ、ならば生徒会に入れ!」

「はい??」

「あ、あの日向さん。今の羽瀬川くんの話と生徒会に入るっていう事にはどんな関係が……?」

「私が入ってほしい!」

「あんたの願望じゃねえか!」

思わずタメ口で突っ込んでしまった。
まぁ会長は気にしている様子など微塵もないのだが。

「くはは、冗談だ冗談。半分くらいは」

「半分は本気なんですね……」

「当たり前だ! 私はお前が欲しい!」

「ぶはっ!!?」

「か、会長!!///」

「む……どうした?」

どうやら会長本人は今の発言に対して何も思っていないらしく、俺と遊佐を見て首を傾げている。
それならわざわざ指摘することもないだろう、と俺は気を取り直して口を開く。

「……で、どうすればいいんですかね」

「そんなの簡単だ。謝ればいいじゃないか」

「もちろん謝りましたよ。でも許してもらえないんです」

「なら許してもらえるまで謝ればいい」

「……さいですか」

なんかもう、面倒くさくなってるんじゃないかとも思える回答だが、会長は真面目な顔だ。

というかいくら謝っても、たぶん記憶を消す道具の発明は止められない気がする。
もちろん、そんなものを作っていると言えば確実に問題になるので、会長には言えないが。

そうやってガックリきている俺に、今度は遊佐が話しかけてきた。

「あ、じゃあ、その相手の人に何をしてもらいたいか聞けばいいんじゃないですか?」

「……なるほど」

「ふふ、私なんかは甘いものとか貰えればすぐ機嫌良くなっちゃいますよ!」

「い、いや、それは高ニとしてどうだろう……」

「私は羽瀬川が生徒会に入ってくれれば嬉しいぞ」

「あんたそればっかりか!!」

しかし、これはなかなか良さそうなアイデアだ。たぶん星奈の場合は甘いモノじゃダメだろうけど。
俺は星奈がやってほしそうな事を考えてみる。

…………嫌な予感しかしない。
536 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/30(月) 21:00:54.58 ID:JLQQfMWmo

「……え、えっと。じゃあ、ありがとうございました、会長も遊佐も」

「どういたしまして、です! 仲直りできればいいですね!」

「もしできなかったらここに入ればいい。当たって砕けろ!」

「……あの、なんか砕けてほしいっていう気持ちがひしひしと伝わってくるんですけど……」

「くはは、気のせいだ気のせい!」

そんなわけで、俺は再び理科室へと向かうことにした。
なんかグダグダな感じもしたが、会長や遊佐には助けてもらった。
今度、雑用かなんかでも手伝おうか。



***



「おつとめご苦労様です。あにき」

「お、おう」

理科室まで来た。

俺が部屋に入ると、幸村だけは声をかけてくれたが、後の二人は完全無視だ。
夜空はピクリとも反応せずに本を読んでるし、星奈はPSPに夢中だ。
俺は一瞬そんな二人の無言の圧力に押されそうになるが、勇気を振り絞って星奈に話しかける。

「あ、あのさ星奈!」

「…………」

「ホント俺が悪かった! だから、えっと……お前の言うこと何でも聞くから、それで許してくれ!」

「じゃあ記憶消去で」

「うっ……そ、それ以外で…………」

「なに? 何でも聞くとか言っておいて。あんたみたいな下等生物になると言葉も理解できないわけ?」

「た、頼む。記憶を弄るってのは勘弁してほしいんだ……それ以外なら何でもやるからさ……」

「ふーん、じゃあ――――」



星奈のお願いは? >>537
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/30(月) 21:04:02.90 ID:/fVH/kY/o
死んでくれる?
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 21:14:17.16 ID:KRJLO+k7o
言いそうだけど許す気ゼロじゃないか!
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2012/07/30(月) 21:17:50.60 ID:ii6+svbt0
幸村に介錯してもらうわけだな
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/30(月) 21:47:07.50 ID:Uw8or2lso
遊佐が唯一の癒し
541 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/30(月) 22:12:51.62 ID:JLQQfMWmo

「死んでくれる?」

ただ一言。
ちょっと自販機でジュース買ってきて、みたいな気軽さで言ってきた。

「そ、それ以外で……」

「じゃあ論外ね。あんたとはもう話すことはないわ」

それから星奈が俺と口をきいてくれることはなかった。



***



三日後。
ついに理科の記憶抹消装置が完成した。
もうなんか、名前を聞くだけでヤバさ全開だ。

それでも理科室はワイワイといい雰囲気で、理科なんかは達成感に満ちた表情をしている。
夜空と星奈も嬉しそうで、二人のこんな表情久しぶりに見た。

そんな中、幸村だけは真剣な表情で俺を見て、

「あにき、ぶじにおわったら共に飲みましょう。わたくし、いいみせをしっております」

おそらく映画か何かで聞いたセリフだろう。
幸村はどうやらそれが男らしいものだと認識して使っているらしい。

まぁ、どう考えても死亡フラグなんだが。

「よし、それでは小鷹先輩! こちらへどうぞ!」

まるでテレビ番組かなんかのゲストを案内するかのように、やたらテンション高く手招きする理科。
記憶抹消装置は、椅子に座って装置を頭につけるだけらしい。
俺はそれを見てどうしても電気椅子を思い出して寒気を感じる。

……何か、この状況から脱することができる逆転の策はないか。


どうする? >>542
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/30(月) 22:14:10.75 ID:MkOV4/nD0
生徒会に逃走
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/30(月) 22:14:53.34 ID:yEHtj+mAO
むしろ見られたという記憶を消せばいいんじゃないか!
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/30(月) 22:15:38.92 ID:z52FF2/Eo
生徒会好きだなww
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 22:20:49.28 ID:FStW30900
理科のスカートの中ばりに安定になりそう
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 22:33:09.04 ID:UCERQBxIO
どうしてこうなった
理科と星奈ルートじゃなくて絶望が小鷹のゴールだ
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 22:40:59.72 ID:56i67PpIO
長屋は生徒会ルートが希望か
なら俺はロリコンハーレムを目指すぜ
548 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/30(月) 22:53:30.17 ID:JLQQfMWmo

ダメだ、ここは一旦逃げるしかない!
俺はそう思うが早く、理科室を飛び出そうとする――が。

ガシッと、両手を掴まれた。

左に星奈。右に夜空だ。
二人とも凄まじく邪悪な表情をしている。

「何逃げようとしてんのよ」

「い、いや、トイレだ! マジ漏れそうなんだって!」

「じゃあ漏らせばいい。安心しろ、その様子を動画に撮ってどこかの掲示板へアップするなんて事はしない。
 それは私の頭の中に、小鷹の人生の汚点として永遠に記憶するだけだからな」

「理科的にはスカトロもありです!!」

「あにきはいかなる状況においても失禁などいたしません。わたくしは分かっております」

終わった。
俺は父さんや死んだ母さん、そして家でアニメでも観ているであろう小鳩に、心の中で別れを言った。


明らかに怪しい装置が頭に装着される。
顔までスッポリと覆うヘルメットのようなタイプだ。
俺にもう少し余裕があれば、最近読んだラノベの真似をして「リンクスタート!」なんて叫ぶのもいいかもしれないが、生憎そんな余裕はない。

ピッ、ピッ、と電子音が耳元で鳴る。
俺にとってはそれが絞首台を登る足音のように聞こえる。

「それでは、準備はよろしいですか先輩」

「よろしくない」

「カウントダウンいきまーす。5、4、3……」

「聞いた意味ねえ!!」

何も見えない暗闇の中で、無情な理科の声が聞こえる。
しかも、声の調子からワクワクしているのが丸わかりだ。

俺は神に祈る。
ここはキリスト系のミッションスクールだ。礼拝堂だってある。
だから神様だって俺の事を見捨てないでくれるはずだ。

理科の声が、さらに続く。
処刑の合図が…………今。


「2、1…………記憶消去です!!」


目の前が、真っ白になった。


**************************************


>>549の投稿時間のコンマ以下の数字で次の展開が決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/30(月) 00:00:00.(00)←ここ

00〜29→星奈の裸の記憶だけ消去
30〜59→星奈に関する記憶丸ごと消去
60〜69→理科に関する記憶も一緒に消える
70〜79→夜空に関する記憶も一緒に消える
80〜89→幸村に関する記憶も一緒に消える
90〜99→記憶が全部消える
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/30(月) 22:53:54.26 ID:z52FF2/Eo
ほい
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 22:54:05.54 ID:FStW30900
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/30(月) 22:54:35.74 ID:z52FF2/Eo
なんか一番寂しい選択肢になってしまった
すまん
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2012/07/30(月) 22:54:53.02 ID:wmxqKNlAO
もっとおもしろくなれ
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/30(月) 22:55:45.00 ID:MkOV4/nD0
うん、小鷹的には一番良かった

物語的にはなんともだが
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/30(月) 22:58:14.82 ID:F7Iy2OLXo
ここで誰かの記憶が消えたら、思い出すために一緒に居るっていう展開でルート分岐だったか
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 23:00:19.19 ID:UCERQBxIO
記憶が全部消えてから理科が恋人の振りして近づく展開が
556 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/30(月) 23:23:06.13 ID:JLQQfMWmo



……暗い。
どうやら頭に何かを被っているようだ。
でも、何でこんなものを被っているんだっけか。

俺は確か、いつも通りに理科室まで来て。
そして理科の発明品を……あ、そうだ。

理科は記憶を消す装置を発明したんだっけか。
それで、俺が実験台になって――――。

そこまで考えた時、急に視界が明るくなった。
誰かが頭の装置を外したからだ。
眩しさに目を細めて見ると、目の前には理科が居た。

「どうですか、先輩?」

「……いや、別に何ともないけど」

「何ですって!?」

星奈の大声が聞こえる。
今はまるで寝起きであるかのように頭がぼーっとしているので、あまり大声は出さないでほしい。

「星奈先輩、落ち着いてください。小鷹先輩、この装置が何か分かりますか?」

「記憶を消すやつだろ? お前の新しい発明品の。俺が実験台になったんじゃねえか」

「先輩が実験台になるまでの経緯は?」

「えっと、確か…………あれ?」

思い出せない。
考えてみれば、こんな得体の知れないものの実験台なんか普通はやりたくない。
という事は、俺がこんな事をしている理由があるはずだ。
例えばジャンケンで負けたとか、夜空の口車に乗せられたとか、色々。

しかし、それが何一つ出てこない。
正直、気味が悪い。

「お、おい……俺何か忘れてるんじゃ…………」

「よし、それでは部活を始めようか。最近は夏という事もあって、リア充のリア充っぷりにも拍車がかかってきているからな」

「ま、待て待て待て!! だから俺――」

「小鷹、過去をずるずる引きずるのはダサいわよ」

「あにき、もはや過ぎ去ったものです。そこまでお気に止めるひつようなどないかと」

みんなスルーする気満々だった。
しかも理科に至っては、黙々と発明品を片付けている。

「理科、それどうするんだ?」

「封印します。考えてみると結構危なそうですし」

「俺さっき実験台になったよな!?」

「あはは、ドンマイですよ」

軽い、軽すぎる。
ホントにこのままでいいのか。
もしかして、大事な記憶を無くしてはいないだろうか。

そんな不安が胸の内で渦巻くが、周りの奴らが相手にしてくれないのでどうにもならない。
部長の理科は、さっきの装置を準備室の方へ持って行くと、わざとらしくメガネを外して高らかに宣言する。


「それでは、今日もはりきっていきましょう!!」



どんな活動をする? >>557
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 23:24:12.09 ID:FStW30900
理科部全員の記憶が消えたふりをする
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/30(月) 23:24:38.36 ID:PaSH1dKS0
記憶リセットからの生徒会→リア充展開を狙ってたのに
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/30(月) 23:30:12.74 ID:MkOV4/nD0
バレたらぶち殺し確定だぞwwwwww
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/30(月) 23:49:37.80 ID:N0DUHkIV0
良い展開だ
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/31(火) 00:00:25.35 ID:thIzPD43o
理科部の活動だから、そういうのじゃないんじゃね
562 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/31(火) 01:02:37.65 ID:OyLiZynto

「……ふむ、そうだな。
 それではこの理科部の人間の記憶が全て無くなったという設定で話してみるというのはどうだ?」

「なにそれ。まさか、さっきの理科の怪しい発明を使うんじゃ……」

「話を聞いていたのか。あくまで“設定”だ。分かったかアホ肉」

「いちいちムカツクわね、あんたぁぁ……!」

「つーか、夜空ってトモちゃんといい、そういう設定作るの好きだよな」

「トモちゃんは設定じゃない!!」

「わたくしの中でのあにきもせっていなどではありません」

「いや、それは設定って言ってくれ……」

「えっと、つまり、初対面の方と話す時の練習というわけですね?」

理科が部長らしく意見をまとめる。
といっても彼女は一年生なわけで、二年生である俺と夜空と星奈からすると、少し情けない気分になる。

まぁ、そういうわけで、理科部の面々が初対面だというお芝居のようなものをやる事になった。



***



俺達は理科室の椅子に行儀よく座る。
設定は『高校初日の教室』。
やはり、どのような高校生活を送れるかは、そこにかかっているという夜空の意見からだ。

俺もそれには深く同意する。
転校初日からバスジャックなんかしたら、友達なんてできるはずがない。

ぶっちゃけ理科や幸村とは学年が違うのだが、そこは無視することにする。

「お、おーす。君はどこ中だったの?」

俺はとりあえず幸村に話しかけてみる。
何となく想像はできたが、お芝居というのは結構恥ずかしく、声も変な感じに裏返ってしまった。
それに、表情もちょっと強張っているかもしれない。

だが、セリフは完璧だったはずだ。
とりあえず中学の話題からせめる、そういう作戦だ。
しかし。

「おい小鷹、いきなりクラスメイトに因縁つけるな。今のは『お前どこ中よ? お?』というやつだろう」

「ちげーよ!!!」

「ていうか“君”って何よ。キモすぎて鳥肌立ったわ、どうしてくれんのよ」

演技ではない、素でダメ出ししてくる夜空と星奈。

「……わたくし、あなたの男らしさに感服いたしました。ぜひ舎弟にしてください、あにき」

幸村の反応はなんて言うか、そのまんまだった。
そういや、あのミステリーサークル事件の時もいきなりこんな感じだったしなぁ。

続いて、理科がこちらを向く。
にっこりといい笑顔を浮かべており、これなら相手も気楽になれるだろう。
こういった表情は、俺も見習わなければいけない。なぜか笑った時が一番怖いって言われるし。

そして彼女はその表情のまま口を開く。

「初めまして小鷹さん。性交渉しましょう」

「しねえよ!!!!!」

「……あ、あれ? ダメでした?」

「当たり前だろ……」

最悪だ。
登校初日でいきなりこんな事を言ってくる奴がいたら間違いなくドン引きする。
563 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/31(火) 01:06:35.08 ID:OyLiZynto

理科は少し考えて、何か納得したような顔をする。

「あっ、すみません、間違えました」

「どんな間違いだよ。まぁ今のがダメだって分かっただけ、お前にしてはマシ――」

「小鷹さん、セックスしましょう」

「だから何言ってんのお前!? 言葉のチョイスの問題じゃねえよ!!!」

ダメだ、コイツは根本的なところから本当にダメな気がする。
俺は軽い頭痛を覚えながら、首を傾げている理科を無視して夜空達の方を見てみる。

「これは驚いた、こんなところに肉があるぞ。調理実習があるわけでもないのに、不思議な事だな」

「あたしもビックリだわ。こんな狐みたいな目をした人類なんていたのね。ていうか案外本当に狐が化けてるのかもね」

「おぉ、しかも何かの言語を話すのか。これは肉語と呼べばいいのか? やはり私では理解できそうにもないな」

「人の言葉も理解できてないようね。さすが下等なキツネ目女だわ」

「しかも何だこの腐敗臭は。まったく、新品の肉ならばまだしも、腐っているとなるとただのゴミではないか。
 早く掃除係の順番を決めてしまおう。私は、今週……というか今日じゃないならいつでもいい」

「き、キツネ目……女……ぐすっ…………」

「おい、しかも有毒と見られる汚水まで撒き散らし始めたぞこの肉は。
 まさか……これはテロ? そういえば、アメリカでは大学で銃乱射など事件も聞くが……」


「夜空のバカアホカスボケ死ね――――――ッ!!!!!」


星奈が泣きながら理科室を飛び出していった。
なんていうか、いつも通りだった。



***



「ていうかさ、やっぱお芝居とかじゃなくて、実際に知らない人と話してみるのがいいと思うんだ」

再び理科室。
今は星奈も戻ってきている。まだグスグスいっているが。

俺の提案に幸村と理科は頷くが、夜空は激しく顔をしかめる。

「バカな、それは死ねと言っているのと同義だぞ」

「お前、それはコミュ障ってレベルじゃねえぞ」

俺は溜息をつく。
夜空も俺達相手ならこんだけ好き放題話せるのにな。

一方、星奈もどこか不服そうだ。

「だいたい、何であたしの方から話しかけなきゃいけないのよ。あたしは気を使われるのはいいけど、気は使いたくないわ」

「い、いや、待ってるだけじゃダメだろ」

「そうですよ、待ってるだけじゃいけません! たまには自分も後ろからズボッといかないと!!」

「あにきのごめいれいであれば、ヤクザの組長にでもはなしかけてみせましょう」

「理科は頼むから黙ってくれ。あと幸村、そんな奴は学校にはいない」

俺は相変わらずの理科部の面々にガックリと肩を落とす。
俺が言うのもなんだが、幸村以外は何で友達ができないのかが一発で分かる。

だが、いつまでもこのままではいけない。
知らない人に話しかけるのは緊張するが、たぶんリア充たちもこういう試練を乗り越えてきたんだ。
俺達だけその道を通らずにリア充になろうだなんて、虫が良すぎる。

「とにかく、まずジャンケンで負けた奴がやってみようぜ!」


誰が負けた? >>564
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/07/31(火) 01:08:00.86 ID:OLI70jUAO
夜空
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/31(火) 01:08:14.31 ID:V3KNbWRPo
夜空
566 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/07/31(火) 01:09:33.45 ID:OyLiZynto
眠い、おやすみ
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/07/31(火) 01:10:16.62 ID:M7vByFsJo
おつ
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/31(火) 01:10:59.57 ID:NcPWf6XKo
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/07/31(火) 01:13:25.52 ID:MxopfUPKo
おつ
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 13:30:13.92 ID:z/BqXixIO
知らない人=まだ出てきてない人

ようやくうんこきたか
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/31(火) 18:52:38.31 ID:pUAeFgbJ0
ケイトの方が良い
572 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/02(木) 23:30:53.17 ID:H2n1SLfco

「う……ぐぁ…………!!!」

夜空がまるでこの世の終わりのような顔をする。
この人数でジャンケンして一人負けというのは、もうなんか神様が「やれ」と言っているようにしか思えない。

「あはははははははははは!!! 傑作だわ!!!」

「夜空のあねご、ご武運を」

「大丈夫ですよ。知らない人に話しかけたからといって、死にはしません」

他の部員の反応はそれぞれだ。
星奈なんかは涙を浮かべるほどに爆笑しているが、今の夜空はハエ叩きを使うほどの元気もないようだ。

そして夜空は涙目でなぜかこちらを見る。

「こ、小鷹ぁ……」

「えっと……まぁ頑張れよ。理科部のエースだろ?」

夜空の涙目上目遣いという珍しいものに、少し動揺しつつも俺はそう言うしかない。
ジャンケンをした以上、それは絶対にやり遂げなければいけない。

そんなわけで、夜空の知らない人に話しかける練習(実践編)が行われることとなった。


**************************************


>>573の投稿時間のコンマ以下の数字で話しかける相手が決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/02(木) 00:00:00.(00)←ここ

00〜29→日高日向
30〜59→高山マリア
60〜89→高山ケイト
90〜99→トモちゃん2号
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 23:31:55.58 ID:PDyEl8YSO
きゅっぷい
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/02(木) 23:36:08.52 ID:6f3vQ3sw0
ついにウンコ幼女が
575 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/03(金) 00:21:30.66 ID:2hkYzOJoo

夜空は理科室を出ていった。
服には理科の小型カメラが取り付けられており、本当に誰かに話しかけたかどうか確かめられる。
今は夜空を除く理科部全員が、準備室の方にあるモニターの前に集まっている。

普通こういう映像を観ていると酔ってきたりするが、そこはさすが理科の発明だけあってブレは最小限に抑えられている。

「……どこ行く気なのかしら」

星奈がポツリと呟く。おそらくみんな同じ事を思っていただろう。
夜空は校舎から出て、普段通らないような所を歩いていた。
俺は行ったことがないが、確かこの方向には礼拝堂があった気がする。

夜空は何の躊躇いもなく礼拝堂へ足を踏み入れる。

「まさか、神様に話しかけてクリアするつもりじゃないでしょうね」

「…………ありえる」

三日月夜空はエア友達と話しているような人間だ。常識は通用しない。

「さすがあねご。まさか神様を相手に選ぶとは」

「いや、そこ感心するとこじゃねえって……」

「ていうかこれアリなの!?」

「う、うーん、でも詳しくルール決めてたわけでもないですし……」

夜空の慌てる姿を楽しみにしていた星奈は不満を口に出す。
そうこうしている内に、夜空は礼拝堂の一番前へと辿り着いた。

そして、中指を立てた。

『ファック……ッ!!』

こいつ、神様にケンカ売りやがった。その為だけにわざわざここまで来たのか。
もうなんていうか、見ていて悲しくなるような光景だった。
ていうか普段は神様なんざ信じてないくせに、こういう時は信じるというのもマイナス過ぎて夜空らしい。


『むっ、誰だお前は!』

 
 
576 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/03(金) 00:31:37.34 ID:2hkYzOJoo

妙に幼い声だ。
夜空が体の向きを変えるのにあわせて、カメラから映し出している映像が移動する。

画面上に映しだされたのは、銀髪碧眼の幼女シスターだった。
かなりの美少女であり、成長すればさぞかしモテるに違いない。
世の中には、そういった成長を望まない人種も存在するらしいが。

『……?』

『神様に中指なんか立てちゃダメなんだぞ! お前呪われろ、死ね!!』

『あ?』

『ひっ!!』

夜空のドスの利いた声が画面から聞こえた。
子供相手になんて声出してんだアイツ……。

案の定、相手の子供は涙目になって怖がっていた。
たぶん、表情も恐ろしいことになっているのだろう。

「さすがあねごです。あにきには及ばずとも、良い声でした」

「あんな声出した事ねえよ!!」

「小鷹は素であれに近い声だからね。ずっと質悪いんじゃない」

「理科は好きですよ。ああいう声はドMにはたまりませんね……ッ!!」

「…………」

俺、普段から今の夜空レベルの声を出していたのか。
その事実に、俺は割とマジで落ち込む。

その一方で、夜空は手をポンと叩くと、

『そうだ、お前私の話し相手になってくれないか? お前のような無知でバカな子供なら私も話しやすい』

『お前と話すことなんて何もないぞ!! 今すぐ帰れうんこ!!!』

『そうか……そんなに私が恐ろしいか。ふん、シスターというのも大したことないな』

『な、なんだと!!! お前みたいなうんこ、全然怖くないぞ!!!』

『それならいくら話しても問題ないだろう?』

『分かった!!! かかってこい!!』

どうやらこの幼女シスターは、ラノベなんかで見る合法ロリ(見た目だけロリ)というわけではなく、純粋にロリらしい。
もちろん、頭が残念すぎる合法ロリという可能性もなきにしもあらずだが、そんなに濃い人がそんなにポンポン居るはずがない。
もうこの理科部の残念オーラだけでお腹いっぱいだ。

そういう感じに、夜空の知らない人との会話が始まった。
相手は幼女シスターという意外な人物だが、夜空のことだし、まともな人とまともな事を話すなんて言うのは想像しにくい。


話題は? >>577
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/08/03(金) 00:32:54.91 ID:rgG0p+SAO
日本経済
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/03(金) 00:32:57.63 ID:FxkotgmR0
お互い何者なのか
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 00:33:03.69 ID:GbXZU1LIO
自己紹介
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 05:44:58.82 ID:j2/TTR2IO
マリア出てきてたのか
経済くらいなら軽く話せそう
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 20:03:29.45 ID:QvZM2Ob3o
果たして10歳児がどのような必要に迫られて日本経済をヲッチしてるのか興味あるな
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/03(金) 20:38:34.18 ID:u/QM5PU70
まず>>1は日本経済を語れるのか?
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/04(土) 00:06:34.14 ID:ROogcMxw0
>>1は日本経済を勉強しているようです
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/04(土) 00:33:55.66 ID:LzjzbxvIO
それより夜空のトンデモ経済のほうが難関なような…
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/04(土) 06:53:09.46 ID:Dz69isMq0
>>583
なるほど
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/04(土) 15:17:20.06 ID:iqFQ1QJWo
日本経済って近所のスーパーの話じゃないのか
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/05(日) 18:49:29.55 ID:1ze0b3IL0
何か一気にレベル下がるな、それ
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/07(火) 21:37:04.54 ID:h6K6sUsIo
続きマダー?(AA略
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/09(木) 23:59:48.34 ID:CI7CJh8IO
一週間動きが無いと1の安否が心配だ、

590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/11(土) 00:01:11.03 ID:tc0ciGpIO
お盆とオリンピックが終われば帰ってくるはず
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/11(土) 00:37:20.48 ID:03+f+saqo
理科の機械でこのスレの存在を忘れさせられてる可能性が微レ存
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/11(土) 01:29:40.48 ID:tc0ciGpIO
お盆過ぎてオリンピック終われば帰ってくるはず
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/11(土) 16:38:14.74 ID:Jp242TF60
日本経済が復調すれば帰ってくるはず
594 : ◆0WipXNi8qk [sage]:2012/08/11(土) 19:16:42.56 ID:pZAzmmjeo
ばあちゃんちから帰ってきたら書くっす
ケータイからだとキツい……
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/12(日) 00:40:08.44 ID:qNELArSWo
あんちゃん!
うちに連絡のひとつもよこさんと!心配になるけん!
596 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/14(火) 21:57:15.57 ID:SByZIKC0o

『それじゃあ、日本経済について話すか』

なぜか自信満々な様子で提案する夜空。
おいおいおいおい…………。

残念な人間が集まる理科部と言えども、これはない、と全員が思う。

しかし、意外なことに幼女シスターは、


『おお、いいぞ! ここ数年ずーっと不景気だからな!
 外需の方は円高が問題だな。日本じゃ円高分を外貨建て販売価格に完全に転嫁できていないから、
 結果的に円建ての販売価格が急落して、企業の収益率を大幅に悪化させているからホント困ったぞ』

『そもそも、日本は石油が出るわけでもないから世界へは技術力を売りにしていたのにそれも負けてきているのだ!
 理系離れって言われてるけど、医者とか薬学は人気で工学が問題なんだぞ。
 といっても文系の方も国を動かすのがうんこみたいな奴ばっかだからなー! とにかくもっと真面目に勉強するのだ!
 どいつもこいつも大学は酒のんでどんちゃん騒ぎする為のものだと思ってるからな!』

『それと少子化もぶっちゃけかなり深刻だと思うぞ。このままじゃ一億人切る勢いだからな。
 ジジイババアばっかになれば当然GDPだって下がるし、人口が減れば内需も上手くいかなくなる。
 国を構成する人が減るってことは、そのまま国が衰退するって事なのだ! 中国とかはいきすぎだけどな!』


ポカンと、理科部全員が呆気にとられた。幸村はいつも通りのような気もするが。

これはまさかホントにラノベとかによくある合法ロリっていうオチなのではないか。
見た目はどう見ても子供なのに、実年齢は大人という。
しかし、平然とうんこと口にする大人の女というのもなんだか凄く残念な感じがする。

画面では夜空がどのような表情をしているのか見えないが、どうやら言葉に詰まって何も言えないようだ。
俺みたいに幼女シスターの言ったことが理解できない、というわけではないだろう。頭の良さは夜空の数少ない長所の一つだ。
これは俺らと同じく、ただただ驚いているということだ。

「て、天才少女というやつでしょうか。理科と同じく」

「まぁ、凡人と比べれば優秀みたいね。あたしみたいに」

理科と星奈が口々にそう言う。
確かに二人とも相当優秀なのは確かだが、自分で言う辺り何とも惜しい感じがする。

「世の中のうごきに注目することは大切なこと。こどもながら立派です。
 しかし信長公の『楽市・楽座制』について言及しないところをみると、やはりまだまだ……」

「幸村、それは政経っていうより歴史の分野だ」

幸村に突っ込みつつ、俺は視線を画面へと戻す。
夜空はまだ何も言うことができないようだ。

『…………』

『むっ、どうしたのだー?』

『あー』


>>597
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/14(火) 22:00:34.81 ID:cCp8g9go0
柴漬け食べたい
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 22:07:12.39 ID:ophtE86SO
来たか
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/14(火) 22:08:13.87 ID:8+olLA2qo
天才ぶりを発揮してるマリアって始めて見たかも
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/14(火) 22:13:03.59 ID:xvj+yNB5o
来てたか
601 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/14(火) 23:16:17.94 ID:SByZIKC0o

『柴漬け食べたい』

結局出てきた言葉はそんなものだった。
ダメだこいつ、早くなんとかしないと……。

『あんなもの食いたいってオマエ変わってるなー。うんこだぞあれは』

『柴漬けをバカにしたな貴様……?』

『ひっ!! お、おいしいです!! 柴漬けおいしいです!!!』

なぜかドスの利いた声で脅す夜空。
子供で柴漬けが好きっていうのも珍しいが、そんな事もお構いなしだ。

『よし、それでは今から学食へ行くぞ。貴様には柴漬けの素晴らしさをとことん教える必要がありそうだ』



***



そして数十分後。
二人は学食で仲良くご飯を……いや、山のような柴漬けを食べていた。

『さぁどんどん食え。私の奢りだぞ』

『うぅ……も、もう無理なのだ……!!』

『あぁん?』

『な、何でもありません!! とってもおいしいです!!!』

『そうかそうか、まだまだあるぞ』

『ぐす……ふぇぇ…………』

画面には涙目になりながら柴漬けを口に運ぶ幼女の姿が映っていた。
どうしてこうなった。

「子供にまで容赦なしとかさすがね……」

今回ばかりは星奈の言葉に同意する。
理科も幸村も気の毒そうに画面を見つめている。

『…………』

『おぇ……まず……い、いや、おいしいです!!』

『…………』

『……ひっく……………むぐっ』

『…………おい幼女』

『わ、ワタシは幼女ではない! 立派な先生なのだぞ!!』

『……もう許してやる』

そう言って、夜空はポテチの袋を投げてよこした。
しかも声がどこか優しい気がする。

この変化に驚いたのは俺達だけではなく、幼女の方も同じようだった。

『く、食っていいのか?』

『いらないなら私が食べるが』

『いる!!』

幼女はすぐに袋を開けると、満面の笑みでバリバリと食べ始める。

『うま!! うまいうまいいいい!!!』

『大袈裟だな』

『ワタシはいつもいつもろくなもの食ってないのだ。毎日ポテトサラダとかしか出ない。他のシスター達は味覚がうんこだ』

『ふむ……』
602 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/14(火) 23:19:13.08 ID:SByZIKC0o



***



俺達は目を丸くしていた。
別に幼女シスターの食生活に驚いて、というわけではない。
シスターが節制するというのは特に変わったことではないし。

それよりも、夜空の態度だ。
俺は彼女がここまで他人に気を使っているところを見たことがないし、今みたいな声も聞いたことがない。

「な、何よ夜空のやつ!! あたしは散々いじめるくせに子供には甘いわけ!?」

「まぁ子供に甘いのは普通だと思いますけど……でも夜空先輩ですからね…………」

「子供好きというのはおなごにとっては珍しいことではありません」

「子供好き…………夜空が…………?」

その時、ガラガラという音と共に理科室のドアが開かれた。
入ってきたのは夜空と……先程の幼女シスターだった。

夜空はなぜかドヤ顔だ。

「どうだ、私だって知らない人間と話くらいできる」

「ねぇ夜空。あんたまさか子供好きなわけ?」

「なっ……!!」

星奈の言葉に、明らかに動揺した様子の夜空。
これはどうやらビンゴなようだ。

「そ、そんな事は……!!」

「別に隠すような事でもないだろ。子供好きは良い事だと思うぞ」

「えっ……小鷹はそう思うのか……?」

「あぁ」

「理科も子供は大好きですよ!! うへへ」

「お前は最後の言葉で台無しだよ」

夜空はコホンと咳払いをして、

「ま、まぁ、子供は嫌いではない」

「ふーん、似合わないわね」

「うるさいぞクソ肉。貴様は存在自体が子供に悪影響だから今すぐ出て行け」

「あんたホントに最悪ね!!!」

「なーなー夜空ー。ポテチはもうないのかー?」

幼女シスターは夜空の制服の裾を掴んでグイグイと引っ張る。
おそらく同じ事を星奈がやれば、即ハエ叩きが飛んでくるだろう。
しかし、夜空は特に気にした様子もない。
603 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/14(火) 23:19:40.25 ID:SByZIKC0o

「なぁ夜空。結局その子は何なんだ?」

「高山マリア。一応この学校の教師らしい。十歳らしいが」

「マジで?」

「そうだぞ!! ワタシはとってもとっても偉いのだ!!」

そうやって胸を張るマリア。
なんかもう理科の件といい、何でもありだなこの学校。

「つまり、マリア殿は夜空のあねごのしゃていという事ですね」

「それは違う。私はそんなヤンキーのような真似はしない。小鷹じゃあるまいし」

「俺もヤンキーじゃねえよ!」

「でも……どうするんですか、この子?」

「むっ……」

「あんた責任持って飼いなさいよ。懐かれてるみたいだし」

「飼うって、ワタシは人間だぞ!! この頭すっからかんの乳だけうんこオンナが!!」

「なんですってぇぇ……!!」

「お前も本気になるなっての……」

十歳児の悪口に本気で怒る高校生というのも、見てて結構痛々しい。

「マリアはどうしてここまで来たんだ?」

「夜空はポテチくれるいい奴なのでついてきたのだ!」

「……あー、そっか」

こうやって知らない人にすぐついて行ってしまうのは、正直かなり心配だ。
いくら賢いと言っても、それはあくまで勉強についてだけで、他はまだ十歳らしさが残っているようだ。

さて、それにしてもどうしようかこの子。


>>604
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 23:20:53.31 ID:5AGx90qSO
警察に連絡するか
605 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/14(火) 23:25:28.48 ID:SByZIKC0o
眠いからここまでー
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/15(水) 00:08:13.93 ID:57ByGMvVo
ひでぇ
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/15(水) 00:22:20.81 ID:I9vT4XWY0
いざなみ景気・・・
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県) [saga]:2012/08/15(水) 00:32:15.45 ID:YJO5vRbbo
久しぶりに乙
609 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 00:06:12.04 ID:iEYQ0yTAo

「とりあえず警察に連絡しておくか」

「待ってください、何でそうなるんですか」

何気なしに考えた俺だったが、すぐに理科のツッコミが入る。
たぶんこれは迷子のたぐいだから、そういうのは警察に任せたほうが良いと思うんだけどなぁ。

「警察沙汰とか勘弁して下さい。理科部が危ないですよ」

「……確かにそうだな」

「別にそこまで深刻に考える必要もないでしょ。一応教師らしいし」

「そうだぞ! ワタシは迷子なんかではないのだ!」

「どうでもいいが、お前はいつまでここに居るつもりなんだ?」

呆れた様子で夜空が尋ねると、マリアは満面の笑みで、

「ポテチがもっと欲しいのだ!」

「そんなに買いだめしてるわけないだろう。あれで最後だぞ」

「えええええええ!!!」

「まったく、下手に餌付けなんかするからこうなんのよ」

「ぐっ……まさか肉にまともな事を言われるとは……」

「あっ、発明品のお菓子ならありますよ。自分で言うのも何ですけどかなり怪しいものですけど」

「ホントか!?」

「待て待て、そんなもの子供に食わせんなって!」

「ご安心を。それではまずわたくしが毒見を……」

「それもダメだ」

そんな感じにいつものグダグダに陥る。
すると、夜空はそんな様子を眺めながら、

「ふむ、それではこうするか」

「ん?」

「私が時々ポテチを買ってやる。その代わり、お前はこの理科部の為に働く。これでどうだ?」

「おぉ、いいぞいいぞ!」

「働くって……何やらせるつもりなんだよ?」

「こう見えても教師だからな。もし部で問題が起きた時に責任を全部かぶってもらう。
 他にも発明品の実験台や、資金不足の時はこいつの下着をブルセラショップに売ったり……」

「お前悪魔だな!!」

「まぁでも、形式的にとは言え教師を部に置くのは良いかもしれませんね。
 顧問の件に関しては理科のワガママを押し通しましたが、その方が周りからの印象はいいでしょう」

「多少のことはパパに言えばなんとかなるけど、問題は少ないに越したことはないわね」

「さすがみなさん、世の中をわたっていくために様々なしゅだんをもっているようす。わたくしも見習わなければ」

「いや、幸村。こいつらの事は見習わなくていい……」

俺はどうにも嫌な予感がして気がのらないのだが、他の部員は結構ノリ気だ。
そんなわけで、ポテチを報酬として高山マリアが理科部の顧問……というか責任押し付け係になった。
 
610 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 00:11:42.74 ID:iEYQ0yTAo



***




次の日。
今日はザァーと大粒の雨が地面を叩いている。
かといって涼しくなるというわけでもなく、じめっとした嫌な暑さだ。

そんな中、俺は今日も真面目に理科室に顔を出す。


**************************************


>>611-615の投稿時間のコンマ以下の数字で部員の出欠状況が決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/16(木) 00:00:00.(00)←ここ

>>611理科の出欠
奇数→出席
偶数→欠席

>>612夜空の出欠
奇数→欠席
偶数→出席

>>613幸村の出欠
00〜09→欠席
それ以外→出席

>>614星奈の出欠
奇数→欠席
偶数→出席

>>615マリアの出欠
69〜99→出席
それ以外→欠席
 
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/16(木) 00:12:10.42 ID:e2LU7WAs0
ほい
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/16(木) 00:12:54.14 ID:QRp2Ad3eo
よっ
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 00:13:41.09 ID:I4WMQv3h0
縺斐>
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/16(木) 00:14:21.76 ID:JwhRJ7Eto
幸村流石の出席率ww
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/16(木) 00:14:52.26 ID:e2LU7WAs0
>>614
が、欠席だ
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県) [saga]:2012/08/16(木) 00:17:35.64 ID:c2yyxE35o
>>1キテタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/16(木) 00:18:41.91 ID:JwhRJ7Eto
1割当てやがった……
618 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 00:39:39.89 ID:iEYQ0yTAo

理科室に居たのは夜空と星奈だけだった。
しかもお互い相当離れた場所に座っており、夜空は本を読んでいて星奈はPSPをやっている。
なんていうか、酷い雰囲気だった。

「……あれ、これだけ? 他は?」

「ケータイ見てないのか?」

「ケータイ……あ、家に置きっぱなしだ」

普段からケータイを確認するという習慣がないもので、こういう事が起きてしまう。
今時の高校生からすれば珍しいことかもしれないが、友達がいない俺はあまりケータイを使う機会がなかった。

「理科と幸村は欠席。マリアもシスターの仕事があるらしい」

「そっか……けど三人だとこの部屋も随分広く感じるな」

「確かに、さすがに六人も入ると結構窮屈だったからな」

「今だって全然広くないわよ。まっ、あたしの感覚でだけど」

「そうだな、私としても貴様とは少なくとも100メートルは離れていたいところだから、これでは部屋の面積が全然足りないな。
 そうだ、いいことを思いついたぞ。貴様が今すぐ帰ればいいのだ」

「わざわざ来たのに何もしないで帰れないわよ! そういうあんたが帰れば?」

「私はこの部のエースで必要不可欠な存在だ。対して貴様はただの肉だ」

「肉って言ってんのはあんただけでしょうが!!!」

いつも通り口喧嘩を始める二人。
今は人も少ないためか、その声も大きく聞こえる。

「んじゃとにかく……何かやるか?」

「ちょっと、何であんたが仕切ってんのよ」

「いちいち口を挟むな、肉汁が飛び散る」

「あんたこそいちいち悪口言わないと気がすまないわけ!?」

「……はぁ」

ダメだ、これでは活動どころではない。
とりあえず、まずはこいつらをどうにかする必要があるみたいだ。


どうする? >>619
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/16(木) 00:40:57.14 ID:9t8MBcFn0
とりあえず普通に仲裁
620 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 01:10:29.81 ID:iEYQ0yTAo

「おい二人共、その辺にしとけって」

「何よ、ヤンキーのくせに!!」

「だからヤンキーじゃねえって……」

「止めるな小鷹。この肉には一度自分の立場を分からせた方がいい」

「あんたねぇ……肉肉ってもしかして嫉妬? あたしの完璧すぎるプロポーションに嫉妬してんでしょ?」

「ふん、何を言い出すかと思えば。いつどこの誰が肉に嫉妬したというのだ?」

「貧乳が何か言ってるわね」

「私は別に小さくない」

「中途半端な大きさなんてないのと同じじゃない」

「貴様のような無駄乳はバカっぽく見えるだけだ。いや、ここはハッキリ言っておくべきか、ビッチと」

「ビッ……!! それは男どもが勝手にいやらしい目で見てくるだけよ!」

「内心喜んでいるんだろうこの痴女め。これだからネットで最近のJKはビッチばかりだと言われるのだ。
 そもそも、その男達の視線というのももしかしたら単なる貴様の勘違い…………む?」

ここで夜空は言葉を切って、なぜか俺を軽蔑の眼差しで見てきた。

「小鷹……お前どこ見てる」

「えっ、あっ、違う!! 今はお前らが胸の話なんかしてるからその……だな…………」

「変態、死ねばいいのに」

「…………」

確かに二人の胸を見比べてたのは認める。
けど、それは男としては仕方ないことで……という言い訳は通じない。
 
621 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 01:11:43.41 ID:iEYQ0yTAo

「……なぁ、小鷹はやっぱり大きい方がいいのか?」

「へ?」

「だ、だから胸の話だ」

「そ、それは……ま、まぁその…………」

「…………くっ」

俺が目をそらすと、夜空は悔しげに顔を歪める。
そんな様子を星奈がニヤニヤと見つめながら、

「ははーん」

「なんだ肉、気味の悪い顔をして。あぁ、それはいつもだったな」

「あんたさ、小鷹の事好きなんでしょ?」

「なっ……!!」

途端に夜空の顔が真っ赤になった。

「い、いきなり何を言うかと思ったら……さすが肉の思考回路は理解不能だな…………」

「顔真っ赤にして説得力ないわよ、夜空ちゃ〜ん? でも残念だったわね! 小鷹はあんたみたいな貧乳興味ないってさ!!
 あっ、別にあたしが横取りするって事はないから安心していいわよ。あんたはせいぜい牛乳でも飲んでのんびり頑張れば?」

「お、お前何言って…………いっ!?」

俺は呆れてそう言うが、夜空の表情を見て思わず何歩か後ずさる。
青筋が何本もビキビキと浮き上がり、殺意のこもった瞳。
たぶん、子供が……小鳩あたりが見たら泣き出すんじゃないか。

夜空は口を開く。
地を這う恐るべき声だ。

「肉ぅぅぅぅうううううう…………ッ!!!」

「な、なによ……! 別に、あ、あんたなんか怖くない……」

「生まれてきたことを後悔させてやる…………」

「ちょ、ちょっと、あんた何するつもりよ……?」

言葉とは裏腹に、ブルブルと震え始めている星奈。
正直俺も今の夜空は怖すぎる。

な、何か言わないと大変なことになりそうな気がする……。


>>622
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/16(木) 01:14:24.59 ID:e2LU7WAs0
ま、待て夜空!少し落ち着け!
胸だけが全てじゃない!
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 01:19:24.94 ID:hxSIm4B10
>>622
ナイス
624 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 01:39:03.29 ID:iEYQ0yTAo

「ま、待て夜空! 少し落ち着け! 胸だけが全てじゃない!」

「……なに?」

「ほら、えっと、夜空には他にいいところがあるじゃねえか。子供には意外と優しいところがあったりさ」

「そ、そうか……?」

「あぁ、それに何だかんだみんな事考えてくれてるし、それに、その、顔だって良いと思うしさ……」

「なっ!!」

「だから、別に胸なくてもそこまで気にする必要ねえっていうか……」

なんかこういう事を真面目に言うのは恥ずかしい。
夜空は真っ赤になってモジモジしながら、

「ま、まぁ小鷹がそこまで言うならそういう事にしといてやるか……」

「あーあー、結局そういうリア充展開ってわけね」

「星奈だって外見だけじゃないだろ。前にも言ったけど、俺はお前の真っ直ぐ一生懸命なところは素直に感心してんだ」

「……あんたもしかしてギャルゲー感覚で人生楽しんでない?」

「はい?」

「いや、何でもないわよ。とりあえず言葉は受け取っておいてあげるわ」

どうやら二人ともある程度は落ちつてくれたらしく、先程までの危険な雰囲気はなくなっていた。
これでやっと活動ができそうだ。

しかし、今日は肝心要の理科がいない。
一応奥の準備室の鍵はもらっているのだが、それでもこの三人ではやれることが限られてくる。


何をする? >>625
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2012/08/16(木) 01:39:41.98 ID:bOOK7HmRo
釣り
626 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 01:41:58.85 ID:iEYQ0yTAo
今日はここまでー
釣りって外でやる釣りと家でPCの前でやる釣りがあるね
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/16(木) 01:42:11.78 ID:GkAcUl/6o
魚釣り?
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 05:37:45.79 ID:W3OlNFAIO
女釣りだろ
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/16(木) 11:36:27.91 ID:RS+8k82mo
僕に釣られてみる?って言うやつだろ
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/16(木) 11:38:43.59 ID:GkAcUl/6o
>>629
?

631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/08/16(木) 18:16:33.15 ID:xXhnX/yG0
ここで書いてたのか支援
632 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 23:08:11.28 ID:iEYQ0yTAo

「そうだ、釣りしてみない?」

この意外な提案をしたのは星奈だった。
夜空は思いっきり顔をしかめる。

「わざとらしい書き込みをしてレスを真っ赤にさせて何が面白いんだ」

「そっちの釣りじゃないわよ! リアルの方!」

「けど、今日は雨だぞ?」

「雨の中で釣りっていうのもなかなかオツじゃない?」

まぁ分からなくもない。
しかし、これは理科部の目的である友達作りに役立つのだろうか?

「ほら、よく釣り仲間で仲良くなったりするじゃない? 部活的にもアリだって」

「それは私達よりもずっと年上の場合だろう。高校生の釣り仲間とかかなりレアだろうが」

「てかやけに釣りにこだわるな? 好きなのか?」

「ん……実はパパが好きでさ。話とか聞いてたらあたしもちょっと興味出てきたっていうか……」

「結局貴様がやりたいだけか。却下だ」

「な、なんでよ、いいじゃない!!」

夜空は溜息をつくと、視線を本に戻す。
しかし星奈の方も簡単には諦められないらしく、なおも食い下がっている。

「……まぁ他にやることもないし、いいんじゃねえか?」

「でしょ!?」

「なっ、小鷹! お前肉に甘くないか!? クソ、金髪巨乳だからって……」

「そういう事じゃねえって。ほら、コミュニケーションの練習とかにはなるじゃねえか。
 それに、釣りは昔父親に何度か連れられたけど全然釣れなくてさ。リベンジしたいって気持ちもあるんだ」

「むぅ……まぁ、小鷹がそう言うなら…………」

「あんたはホントに小鷹に弱いわねぇ。惚れてるんだから当たり前なんだろうけど」

「貴様はまだそんな事を……!!」

再び夜空が顔を真っ赤にして睨み始めていたので、今回は早々に切り上げる星奈。
それだけ、釣りに行きたいということなんだろう。

そんなわけで、今日の理科部の活動は魚釣りという事になった。
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/16(木) 23:09:25.92 ID:GkAcUl/6o
期待
634 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 23:14:56.92 ID:iEYQ0yTAo



***



こんな雨の中あまり遠出はしたくないというわけで、三人は遠夜市内のとある河原に来ていた。
山に入ってすぐの所で、木々のお陰で傘も必要ないくらいだ。
こういった山の中の景色を眺めると、やはりここは田舎に区分されるんだろうなと、ぼんやりと考える。

「ここ、パパが言ってた釣りスポットなのよ――――って、あ」

「ん、どうした…………あれ、理事長?」

その場所には先客……理事長と、もう一人シスターが居た。
シスターの方もどこかで見たことがあると思ったら、以前に会った学校の先生だ。

「むぅ……」

夜空が明らかに嫌そうな顔になる。
元々人見知りではあるだろうが、この場合は相手が理事長という事も大きいだろう。
いつものノリで星奈に暴言を吐けなくなるからだ。

そして向こうも、俺達に気付いたようで、

「星奈……いや、理科部の者達か! その道具、君達も釣りに来たのか?」

「はい、一応活動って言うことで……」

「おろ? 君はいつぞやのはっちゃけヤンキー君じゃないかい?」

「ヤンキーじゃねえです」

「あっはっは、ごめんごめん。いやいや、私も理科部の人達には一度お礼を言わなければいけなかったんだよねー」

「え?」

俺は礼を言われる覚えはないので、夜空と星奈の方を向いてみる。
しかし、二人とも俺と同じく思い当たる節がないようだ。

「ほら、マリアの事だよ。君達の理科部に入れてもらえることになったんだろ? あの子がうれしそうに話しててねぇ」

「あ、もしかしてマリアの……」

そこまで言って俺は言葉に詰まる。
話しぶりでは母親のそれに近い感じがするが、それにしてはいくらなんでも若すぎる。
俺と同じか年下くらいの子が、あれくらいの大きさの子供を持っているというのはおかしな話だろう。

「ん、姉だよん。高山ケイト。よろしく!」

そう言ってマリアの姉はニッコリと微笑む。
やはりこうして改めて見ると、夜空や星奈とは違ったタイプの美少女で、すごく可愛い。

ちなみにマリアが理科部に入った経緯云々は言わない事にしておく。
さすがに奴隷のような事は俺がさせないつもりだが、それでも自分から言う気にはなれない。

理事長は俺達のやり取りをみて、機嫌良さそうに口を開く。

「ケイト君とは釣り仲間なのだよ。昔は隼人ともよく行ったものだ」

「ホント、パパって小鷹のお父さんの事気に入ってるのね」

「なっ……そ、そんな事はないぞ! ……ごほん! 話はこのくらいでいいだろう。あまり騒いでは魚が逃げてしまう」

理事長はそんな感じに上手く逃げて、釣りに集中する流れに持っていく。
こういう素直じゃないところは星奈に似てる気がする。やっぱり親子という事か。

ともかく、俺達は特に理事長に反抗してさらにいじったりもせず、流れのままに釣りを始めることにした。
 
635 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 23:17:06.89 ID:iEYQ0yTAo



***



数分後、各人はそれぞれ自分の場所を陣取っていた。
当然のことながら、夜空と星奈は可能な限り離れている。
てっきり、星奈は理事長と一緒に釣るのかと思ったのだが、予想に反して一人だった。
みんなの居る前で、あまり親にくっついているところを見せたくないのだろうか。

そんなわけで、理事長はケイトと一緒に釣りを楽しんでいた。
辺りには雨が木々の葉を打つ音と、時折聞こえる理事長とケイトの話し声しか聞こえない。

ていうか、これだと理科部の活動としての建前であるコミュニケーション云々が成り立っていない気がする。
まぁ、深く考えたら負けか。


さて、俺はどこで釣ろうかな。


1 夜空の近く
2 星奈の近く
3 理事長、ケイトの近く
4 一人で
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 23:18:25.66 ID:pDuZusDSO
一人
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/16(木) 23:18:45.38 ID:KDyu1JrD0
3
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/16(木) 23:19:20.77 ID:GHV1Kyuro
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/16(木) 23:19:44.10 ID:D3qkNi0So
釣りは己との戦い
640 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/16(木) 23:34:58.25 ID:iEYQ0yTAo

まぁ隣人部メンバーが真剣にやってるみたいだし、俺も一人で集中してやってみるか。



***



それからしばらく、俺はただ岩場に座って浮きを眺めていた。
最近は色々と騒いだりする事も多かったので、こうして落ち着くのもいいのかもしれない。
周りは大自然、雨の音がまた雰囲気を作ってくれている。

……なんかずっとこのままだと眠ってしまいそうだ。


その時、浮きがトプンと沈んだ。


「ッ!!」

俺はすぐに意識を覚醒させると、興奮して釣竿のリールを巻く。
確かな手応えを感じる。何かがかかっている!



何がかかった? >>642
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/08/16(木) 23:36:03.06 ID:hBDI1goAO
ブルーギル
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/16(木) 23:36:13.49 ID:GkAcUl/6o
ksk
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/16(木) 23:36:27.29 ID:GHV1Kyuro
理科
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/16(木) 23:36:39.34 ID:KDyu1JrD0
さめ
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 23:37:59.66 ID:KDyu1JrD0
無理やり登場させおったwwwwww
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/08/16(木) 23:39:39.65 ID:hBDI1goAO
でもよく考えればブルーギルや鮫よりは川にいる可能性は高いよな
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/16(木) 23:40:09.05 ID:GkAcUl/6o
ごめんなさい…
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 00:49:50.29 ID:2HNjT6RIO
理科なにしとんねんwwww
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/17(金) 00:52:58.58 ID:dcHTFx2X0
川にいる可能性が高ければいいってもんじゃねぇwwwwwwwwww
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/17(金) 01:33:09.65 ID:ke45L/XHo
>>642-643
ナイスwwwwww
そして>>1
651 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/17(金) 01:46:36.66 ID:uZyGFH5Oo

「うっ……な、何だよこの引き!! まさか主ってやつか!?」

俺の口から出てきたのは、恐怖と興奮が混ざり合った震えた声だった。
力強く思い切り引くが、なかなか引き寄せられない。
それでも諦めずに引き続け、次第に水面に映る影が大きくなってくる。

「で、でか……ッ!!!」

俺が絶句した次の瞬間、


ザバァーン!!!


巨大な水しぶきとともに、ついにそれが姿を表した。


人魚が居た。


何を言っているのか分からないかもしれないが、俺も分からない。
ただ、目の前に居るのは確かに下半身が魚の、人魚と呼ばれるそれだった。
ちなみに、顔は志熊理科と酷似している。


「こんにちは、小鷹先輩」

「…………」

「あれ、先輩? 愛する理科ですよー?」

「…………」

あぁ、夢だこれ。
俺はぼーっとする頭の中でそれだけ考えた。
たぶん起きたらまだ家のベッドの上なのだろう。

早く覚めないかなぁ……。

「な、なんか現実逃避してる!? もしもーし、せんぱーい!?」

「まぁ夢でもとりあえず話してみるか。なんだ、理科に似た何か」

「夢じゃないですし、理科は理科ですし!!」

「じゃあ何でこんな所にそんな格好で居るんだよ。俺が納得できる理由を簡潔に言ってくれ」

「発明品の試験です」

なるほど、と思ってしまった。
確かに簡潔にとは言ったが、まさか一言で納得させられるとは思わず、妙な敗北感を覚える。

「……じゃあそれが発明品なのか」

「えぇ、企業向けですけどね。人魚型の水着です!」

もはやそれは水着と呼んでもいいのだろうか。
上はオーソドックスなビキニタイプではあるのだが、下は思いっきり魚類だ。

「つか、水の中で両足使えないのは危ないだろ」

「大丈夫ですよ、いざとなったらニョキッと出せますから。ほら」

そう言って、理科は魚の下半身から人間の生足を飛び出させた。

「きもっ!!!」

「ちょ、女の子の生足見てそれはないですよ!!!」

「いや、なんていうかそれは色々とぶち壊しだからやめてくれ……」

人魚に人間の足というパーツを付け加えただけで、ここまで気持ち悪い生物になるとは思わなかった。
理科はブツブツ文句を言いながら足をしまう。
 
652 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/17(金) 01:47:05.21 ID:uZyGFH5Oo

「まぁでも、練習すればこれでも十分泳げるんですよ。そこら辺は考えて設計しましたから」

「ふーん、こんな所でテストしてんのは何でだ?」

「まだ発表前のものなので、あまり人目につく所ではダメなんです」

「真似されるからとかか? ぶっちゃけその心配はないと思うけど……」

「それもありますけど、発表時のインパクトを大きくするためっていうのもありますよ」

そういう事を話す理科を見ると、やっぱりどこか高校生よりも大人びて見える。
まだまだバリバリの学生である自分からすれば、そうやって社会へ貢献している人は誰でも遠い存在に感じる。

改めて理科を見ると、人魚型の水着はかなり似合っていた。初めはパニックで気付かなかったが。
いつも結んでいる髪は下ろし、当然ながらメガネも付けていない。
普段とはちょっと違う理科のその姿に、俺は不覚にも心を動かされていた。

正直、かなりストライクな感じの女の子だ。

「……何でお前は理科なんだ」

「存在全否定ですか!?」

思わずポロリと出てしまった言葉に、理科が嘆く。
俺は軽く溜息をついて、

「ていうか、何で俺の釣竿にかかったようなフリをしたんだよ」

「ふふ、ビックリさせようと思いまして。でも、その小鷹先輩の顔自体が怖くて、理科の方も少し怖がってしまいましたよ。
 さすが、小鷹先輩です。ビックリしながらも、恐ろしい表情でまさかのカウンター攻撃を仕掛けてくるとは……」

「そんなつもりはねえよ悪かったな!!!」

失礼極まりない理科の言葉に、俺は全力で突っ込む。
理科はコロコロと笑うと、

「それにしても、小鷹先輩は釣りが趣味だったんですね。こんな雨の日にこんな所まで来るなんて」

「いや、一応理科部の活動ってことで来てんだ。理事長たちも居るぞ」

「……理科部の活動で何で釣りになるのかはよく分かりませんが…………ふふ、少し面白そうですね」

「釣りがか?」

「いえいえ、今の小鷹先輩みたいに驚かせたら反応が面白そうってことですよ」

「そりゃビビるだろ。大物だと思ったのにいきなりこんなのが出てきたらガッカリだ」

「理科の評価は魚以下!? と、とにかく、釣りにビックリはつきものです!」

「あるあ…………いや、ねーよ」

「それでは、まずはターゲットの選択ですね」

当然ながら、俺の言葉はスルー。
理科も一度言ったことは全然曲げない困った性格だ。
そんなわけで、理科は次の驚かせるターゲットを考え始めた。


誰を驚かせる? >>653

1 夜空
2 星奈
3 理事長、ケイト
4 やめとく
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/17(金) 01:47:55.50 ID:tdfRdnHU0
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/08/17(金) 01:47:59.26 ID:uHizgJCAO
655 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/17(金) 01:48:19.79 ID:uZyGFH5Oo
おやすみ
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 02:01:33.29 ID:2HNjT6RIO
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/17(金) 07:07:49.36 ID:tO8gTXSvo
おつ
GJ
658 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/17(金) 12:33:56.96 ID:uZyGFH5Oo

俺はそろそろと茂みの中を移動して、星奈の近くに移動する。
もしもこれを誰かに見られれば色々と大変なことになりそうな気もする。
だが、理科のドッキリに対する星奈の反応というのはかなり興味があった。

「まったく、全然釣れないじゃないのよ。このゴツゴツした岩場もおしり痛くなるし……」

星奈はブツクサ文句を言いながらも、大人しく釣りをしていた。
何をやっても優秀な星奈だが、どうやら魚釣りはそうでもないらしく、俺と同じく一匹も釣れていないようだ。

その時、星奈の浮きがトプンと沈んだ。
理科だ。

「えっ、き、きたあああああああ!!!」

星奈は大声をあげると、即座に立ち上がって竿を思いっきり引いている。
その様子は先程の俺とそっくりだ。

「お、おもっ!!! なにこれ大物!? やっぱりあたしって天才ね!!!」

まだ釣り上げてはいないのだが、既に勝ち誇った様子の星奈。
しかし、俺と違って星奈は女の子だ。
その力の差はあり、俺の時のように無理矢理引っ張ってくることはできないようだ。

それでも星奈は諦めようとせず、竿を離そうとしない。

「こ、この……!! 魚の分際であたしに楯突く気!?」

魚にブチギレる星奈。
いや、本当は魚じゃないんだけどさ。

ふと水面を見てみると、影がだんだんと大きくなってきていた。
おそらく、理科がそろそろ水から上がって驚かそうとしているのだろう。

だが、その時。
ムキになった星奈が岩場から足を滑らせた!


「きゃ……っ!!」


ザッバァーン!!! と派手な水しぶきをあげて落ちた。
これでは星奈よりも理科のほうがずっと驚いているのではないだろうか。

ちょっとやりすぎたか、と俺は苦笑いしながら星奈の居た岩場へ歩いて行く。
確かに星奈は集中すると周りが見えなくなるので、そこら辺も考えておくべきだったか。

おそらく星奈の方はキレているだろうなと、俺はとにかく謝っておこうと星奈の落ちた辺りを見る。
まだ水しぶきがバシャバシャと上がっている。
最初は星奈が水の中ではしゃいでいるのだろうかとも思ったが、よく見てみると違う。

無意識の内に、星奈は何でもできると決めつけていたのかもしれない。
だけど、やっぱりあれは――――。


溺れているのではないか?


「星奈っ!!!」

俺はすぐに川の中へ飛び込んだ。
ここは足がつかない所も多く、泳げない人にとっては本当に危険だ。


**************************************


>>659の投稿時間のコンマ以下の数字で次の展開が決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/17(金) 00:00:00.(00)←ここ

00〜49→小鷹が助ける
50〜79→小鷹と理科が協力して助ける
80〜99→理科が助ける
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/08/17(金) 12:36:20.40 ID:eTFMp/BAO
理科頑張れ
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [saga]:2012/08/17(金) 12:36:39.53 ID:S0ihHBCq0
ksk
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 12:38:12.09 ID:+AzllGgIO
やるじゃん
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 13:14:42.02 ID:+uUSVEql0
ナイス
663 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/17(金) 15:15:12.93 ID:uZyGFH5Oo

俺は水をかいて急いで星奈の元へ向かう。
以前は九州の方に住んでいてよく海で遊んでいたので、泳ぎは結構できる方だと思う。

俺は暴れる星奈を捕まえる。

「〜〜〜〜!!!」

「落ち着け星奈! すぐ岸まで行くから!」

「先輩!!」

理科がこちらへ泳いできた。
どうやら彼女も星奈が泳げないというのは予想外だったらしく、表情には焦りと驚きが浮かんでいる。

「理科、理事長を呼んできてくれ!」

「え、だ、大丈夫ですか!?」

「あぁ、こっちは何とかするから!」

「分かりました、急いで行ってきます!!」

実際、溺れている人を助けるのは難しく、理科も巻き込んでしまう危険もある。
だから、ここは俺一人で何とかするのが得策だと思った。

「た、助けて……ッ!!」

「あぁ、分かってる!!」

星奈は完全にパニックになっているらしく、俺の腕だけではなく足にも絡み付いてくる。
泳ぎにくいことこの上ないが、無理に引き剥がすわけにもいかないので気合で岸へ進む。

途中で何度も沈みかけて、ヤバイ、と真面目に命の危険を感じる。
それでも何とか岸まで辿り着くと、残った力を振り絞って星奈を水から上げて、俺もその近くで大の字になって荒い息をあげる。
本気で死にそうになったのは生まれて初めてだ。

星奈はただブルブルと震えていた。
俺はそんな彼女を初めて見た。それだけ本気で怖かったのだろう。

罪悪感が胸の中で渦巻く。
元々は悪ふざけをした俺達のせいである。

それから少しして、息を切らして走ってくる理事長の姿が見えた。
さて、お説教の時間だ。



***



「「ごめんなさい……」」


数分後、俺と理科は理事長の前で正座して頭を下げていた。
理科はいつもの制服の上に白衣という姿に戻っている。

理事長はさすがにおかんむりだ。

「まったく、この時期は水の事故も多くて危険だというのに……」

「おっしゃる通りです……」

「……もういいわよパパ」

意外なことに星奈が口を挟んだ。
もうだいぶ落ち着いてきているようだ。

「別に小鷹達だってそこまで悪気があったわけじゃないだろうし、結果的に何ともなかったんだからさ」

「し、しかしだな、一歩間違えれば……」

「あぁ、もう! あたしがいいって言ってんだからいいの!」

「うーん……まぁ理事長さんや。小鷹くん達も十分反省してるみたいだし、この辺で勘弁してあげてもいいんじゃない?」

「……そうだな。二人とも、もう二度とこの様な事がないように」

「「はい、すみませんでした……」」
664 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/17(金) 15:17:52.85 ID:uZyGFH5Oo
星奈とケイトの介入もあって、何とか許してもらえた。
それにしても、ケイトはともかくあの星奈が俺達を庇うのはすごく意外だ。
夜空も理科も星奈のことを驚いて見ている。

星奈は居心地が悪そうに顔を逸らして、

「な、なによ。あたしは別にあのくらいでそこまで大騒ぎされるのが嫌だっただけよ」

「いや、そんな軽い事じゃなかった。本当に悪かった。あと、ありがとうな」

「……それはあたしのセリフ」

「え?」

星奈の言葉に間抜けな声を出してしまう。
彼女は完全に被害者で、加害者である俺に向けて「悪かった」も「ありがとう」もおかしな話だろう。

星奈は濡れた髪をいじりながら言いにくそうに、

「えっと……一応助けてもらったから。その……あ、ありがと。ちょっとだけ頼もしかったわよ」

「……でも、そもそも俺達があんな事しなきゃ…………」

「もう、このあたしがわざわざお礼なんて言ってあげてるんだから、素直に受け取っておきなさいよ!」

「お、おう! ど、どういたしまして……?」

なんと言えばいいのか分からなかったので、疑問形になってしまう。
星奈はそれに対して、クスクスと笑っていた。

俺が見たことのない、すごく可愛らしい笑顔だった。



***



次の日。
今日は昨日と打って変わって、夏の厳しい日差しが降り注いでいる。
高校生は部活で汗を流したり、プールで遊んだりしているのだろう。

まぁ俺も一応は部活なのだが。
そんな事を考えながら、俺は理科室のドアを開く。
中には理科、夜空、幸村、星奈、マリア。
どうやら今日は全員出席らしい。

「あにき、おつとめご苦労様です」

「遅いわよ小鷹ー」

幸村はいつも通りペコリと頭を下げてくる。
星奈は視線をPSPに落としたままだが、それでも一応反応くらいはしてくれるだけマシだと言える。

「小鷹、小鷹!! この部屋を掃除したら夜空からポテチ貰ったぞ! いいだろー?」

「はは、良かったなマリア」

俺は小鳩を思い出してマリアの頭を撫でる。
マリアは気持ちよさそうに、頬を緩めた。
子供でもこの年くらいになると、こうした子供扱いは嫌がる子も少なくはないが、マリアはそうでもないらしい。

「ヤンキーが幼女の頭を撫でている光景、か。想像以上にヤバイな」

「なんだよそれ!」

「先輩のストライクゾーンはどこまでですか? もしかして『中学生以上はババァ』っていう人ですか?」

「んなことねえよ!!」

なんか変な誤解を受けている。
何でこいつらはただこれだけで俺をロリコン認定しようとするんだ……。

理科は俺の言葉を聞き流して立ち上がる。

「それでは、活動を始めましょうか。最近理科部では発明の方がご無沙汰なんで、今日は何か作ってみましょう」



何を作る? >>665
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/17(金) 15:19:00.26 ID:R9Evrlpzo
電話レンジ
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/08/17(金) 15:41:57.37 ID:CON0MpH8o
友達のいる世界腺に移動する時がついにきたか
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 23:15:37.28 ID:2HNjT6RIO
おや?星奈のようすが…
668 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 01:15:42.40 ID:7siwRZy4o

「電話レンジを作りましょう!」

「なにそれ?」

理科は自信満々に宣言したが、部員の反応はイマイチだった。
全員、星奈の言ったことと同じようなことを思っており、首を傾げている。

「なっ……星奈先輩なら知っていると思っていたのですが…………!!」

「どういう意味よ」

「ゲームですよゲーム。『Steins;Gate』っていう。アニメ化もされました」

「えーと、そのゲームに電話レンジっていうのが出てくんのか?」

「はい! 文字通り携帯電話を付けた電子レンジですね。
 外からそのケータイに電話をかけることで、遠隔で中の物を温められます」

「……それは友達作りにおいて何の役に立つのだ?」

夜空が呆れた様子で尋ねる。
確かに、あまり使い道のないおもしろレンジにしか聞こえず、とても友達作りに役立つとは思えない。

しかし、理科はなおも自信ありげな表情を浮かべたままだ。

「ふふ、このレンジ実はそれだけじゃないんですよ。むしろ今から話す機能のほうが重要だったりします」

「もったいぶらずに教えなさいよ」

星奈が明らかに期待していないような表情で尋ねる。
理科はおもむろにメガネを外し、白衣の胸ポケットに引っ掛けると、いかにも雰囲気出してますといった表情で口を開く。


「――過去を変えられるんですよ」


理科の声が理科室に響く。

誰も何も話さない。
ただただ沈黙。まるで音という概念自体を忘れてしまったかのようだ。
そして――――。

「ほげえええええ!? 過去が変えられるのか!? すげーすげー!!!」

マリアが大声をあげた。
子供はやっぱりこういったSF的なものが大好きなんだろう。
俺だって結構好きだ。

だが、さすがに高校生なので、手放しではしゃげるわけでもない。
子供はこの世に不可能なんてないという、眩しいくらいに純粋な心を持っているが、それはだんだんとくすんでいく。
今ではすっかり現実を知って、世の中にはどうしようもない事があるというのも知っている。
そういった現実に逆らい続けている人を、俗に「厨二病」と呼ぶのだろう。俺の妹とか。

「過去を変えるって……理科あんたね、一応科学者なんだから現実を見なさいよ現実を」

「貴様が言うな肉」

「お前も言えないだろ夜空。トモちゃんとか」

「夢をみつづけることはおとことして素晴らしいことです。あにきも全国制圧をあきらめないでください」

「一度も夢見たことねえよ!!」

「もう、みなさん理科の話は完全スルーですか!?」

理科がホワイトボードの前でブンブンと大袈裟に腕を振ってアピールする。
俺は溜息をつくと、

「あのな理科。お前が凄い発明家ってのはよく分かってるよ。でもさすがに過去を変えるなんていうのを簡単に信じられねえよ」

「むぅ……分かりました! それではまず現物を作ります! 実際に体験すれば疑いようがないでしょう!」

そうやってムキになって準備室の方へと引っ込んでいく理科。
そんなわけで、半ば強行的に次の理科部の活動は電話レンジによる友達作りになった。
669 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 01:19:25.57 ID:7siwRZy4o



***



一週間後。暑さの厳しい夏の午後。
理科室には部員全員が集まっていた。
今回はだいぶ時間がかかったが、それだけ理科にとっては本気の発明なのだろう。

まぁそれでも、本気で電子レンジで過去を変えられるなんてマリア以外は思っていないのだが。

「ついに完成しました……電話レンジです!!」

そう言ってビシッと理科が指差したのは、見た感じ何の変哲もない業務用の電子レンジだった。
業務用のものは一般家庭で使われているものと比べると出力が大きく、短時間での温めが可能だ。
しかし、やはりその分値は張るので、こうして簡単に用意できる辺り理科の資金力も伺える。

「あっ、じゃあさっそくこの唐揚げ温めさせてよ」

そう言って星奈は鞄からビニール袋を取り出す。
おそらく、ここに来る途中のコンビニで買ってきたのだろう。

「ですから、このレンジの一番の機能は…………まぁいいでしょう」

理科は文句を言いかけるが、途中で何か閃いたような表情になった。
そして星奈から箱に入った唐揚げを受け取ると、レンジの中へ入れる。

「せっかくですから、遠隔操作で温めましょう。星奈先輩、この電話レンジに付いてるケータイに電話かけてもらえますか?」

「えー、面倒くさいわねぇ。まぁいいけどさ……」

星奈はそう言うと、新品のケータイを取り出して番号を入力する。
そして発信キーを押すと、自動音声によるガイダンスが始まった。理科の声だ。

『こちらは電話レンジです。♯ボタンを押した後、温めたい秒数を入力してください。ちなみにオナホールなら20秒ほどで人の体温ほどになります』

「なんつーいらねえ補足だ」

「あれ、小鷹先輩はオナホを温めたりしないんですか?」

「まず持ってねえっつの!」

「またまた、そんな見え透いたウソを。あ、星奈先輩、その自動音声ちょっとミスがあるみたいです。
 正しくは温め秒数を押した後、最後に♯ボタンを押してください」

「ん、分かったわ」

星奈は言われたとおりに、まだ慣れていない手つきで秒数を入力すると、♯ボタンを押す。
するとレンジが起動し、中が回転し始めた。

「おー」

「何とも微妙な反応ですね、小鷹先輩」

「いや、だってこうとしか言えねえっていうか……」

「そもそもレンジを遠隔操作する必要なんかあるのか?」

「何言ってんですか夜空先輩! 初めからレンジの中に食べ物を入れておいて、帰り道で秒数入力をして帰った時にはホカホカのご飯が待っているっていう寸法ですよ!」

「こんな夏の日にレンジの中に入れっぱってのはダメだろ……」

俺が呆れて突っ込んだ時、チンという音と共にレンジが停止した。どうやら温めが終わったようだ。
星奈は特に感動した様子もなく、レンジを開けて唐揚げの入った箱を取り出す。


「ひいいいい!!!」


星奈が箱を取り落とした。
カコンという箱が床に落ちた音と共に、ベチョ、という音が聞こえる。

「ベチョ……?」

星奈が落とした唐揚げでも踏んづけたのだろうかと、俺はレンジの近くまで行って様子を見てみる。
俺の視界に入ってきたのは……床にばら撒かれた緑色のゼリー状のものだった。
 
670 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 01:25:33.19 ID:7siwRZy4o
「……お、おい星奈。お前唐揚げ温めたんじゃないのかよ」

「そうよ……そのはずなんだけど…………」

星奈も目を丸くして驚いている。自分の言葉にも自信なさげだ。

それもそうだろう。
緑の、しかもゼリー状の唐揚げなんか聞いたことがない。
青りんごとかマスカットのフルーツゼリーという方がはるかにそれっぽい。

だが、そばに落ちている空の箱。
そこに書かれているジューシー唐揚げナンバーワンという文字が、これは唐揚げなんだという事を無理矢理につきつけてくる。

「何をしているんだ二人とも――――なっ!?」

「これは…………未熟者のわたくしには理解できません」

「おぉ、すげー!!! 唐揚げがゼリーになったぞ!! 星奈、一つくれ!!」

「ま、待て食うなマリア!」

俺は慌ててマリアを止める。
こんな得体の知れないものを食べさせるわけにはいかない。


「これで信じてもらえましたか。このレンジには不可思議な力が宿っているんですよ」


そうやってドヤ顔で言ったのは理科だ。
白衣を着て腕組みをしているその姿は、まさしく科学者っぽい感じがする。

俺達は一斉に彼女の方へと振り向く。

「なっ……あんた、こうなる事が分かってたの!?」

「はい。まぁ自動音声の通りにやっていれば普通に温められたんですけどね」

「ちょ、あたしの唐揚げどうしてくれんのよ!」

「いやいや、問題はそこじゃないだろ……」

お嬢様のくせに妙に庶民っぽい事を言う星奈に俺は突っ込む。

「つまり、自動音声の通りに♯ボタンを押した後に温め秒数を入力すると普通に温められる。
 けど、温め秒数を設定した後に♯ボタンを押して起動すると、中の物がゼリーになる……って事なのか?」

「まぁ大雑把に言えばそうですね。
 他にも条件があって、今隣りの準備室で点けてあるブラウン管テレビとかも関係しているんですけど、原理はかなり面倒なので省略させてください」

「……だが、中の物がゼリーになるからって、過去を改変できるなどという証明にはならないぞ」

「分かっていますよ夜空先輩。もともと、実際に試してみるつもりですし」

そう言ってニヤリと笑う理科。
その表情を見て、俺は不安と期待が混ざった気持ちになる。
過去改変なんてできるわけがない。理性はそう強く言っている。

しかし、こうして説明不能な現象を目の当たりにして、心のどこかにもしかしたら……という気持ちも芽生え始める。
それも、過去を変えられるという期待と同じくらい、未知の現象に対する不安も強い。

そんな俺を置いて、理科はペラペラと説明し始める。

「この電話レンジは、メールを過去に送ることができます。そのメールの内容によって過去を改変するという事です」

「メールで過去を改変……ですか?」

幸村が首を傾げる。

「はい。例えばそうですね……小鷹先輩。先輩はこの学校の転校初日、バスジャックしましたよね?」

「あはは、小鷹はバスジャックなんかして悪いやつだなー。普通だったら刑務所に行くのだぞ!」

「そ、そんなつもりはなかったって! ただ、いきなり乗るバス間違えて焦ってて……」

「そのバスに乗るちょっと前に、バスの行き先を確認しろというメールが未来から来たらどうしましたか?」

「そりゃそんなメールが来てたら正しいバスの方に乗る…………そういう事か」

過去へメールを送ることで、過去の行動を変化させる。
つまり、「もしあの時こうしていたら……」というのが叶ってしまうのだ。
671 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 01:29:29.69 ID:7siwRZy4o

他の理科部メンバーも、理科の言葉に息を飲む。
理科室の空気が一層張り詰めるのが分かる。

「……その場合、私達の記憶はどうなるんだ? 今の記憶に加えて、その改変された過去の記憶がねじ込まれるのか?」

「いえ、今の私達の記憶は綺麗さっぱりなくなります」

「なっ……!」

「この世はいくつもの世界線と呼ばれるもので構成されています。過去を改変することで世界線は変動します。
 先程の小鷹先輩の例で言うと、この世界線は『小鷹先輩がバスジャックをした世界線』。過去改変後は、『小鷹先輩がバスジャックをしなかった世界線』となります。
 世界線が変動すると、あらゆるものが変動後の世界線に合わせて再構築されます。それは理科達の記憶も例外ではありません」

理科の言葉に全員が黙り込む。
話が理解できなかったというわけではない。
ただただ、話のスケールの大きさについていけなかっただけだ。
メール一つで世界全てが再構築される。そんな事を簡単に受け入れられはずがない。

俺は無理矢理引きつった笑みを浮かべて口を開く。

「……はは、いや、そんな事あるわけないだろ」

「そうですね。そう思っていても何の問題もないと思いますよ。
 もしも本当に世界線が移動したとしても、記憶が再構築される理科達がそれを確認する方法なんてないのですから。
 世界線の変動を確認できる人なんて、どこかこの世界の外から理科達を観察している観測者でも居ない限り不可能です」

「……その世界線とやらが本当にあるとして、今ここに居る私は確かにここで生きているんだ。それを捨ててまで、この世界で変えたいことなど……」

「本当に、ないですか? 今までで心の底から後悔したことは?」

俺達は黙り込む。
そりゃ、変えられるのなら変えたい過去なんていうのはいくらでもある。
それも、この残念な理科部のメンバーならばなおさらだろう。

俺の頭の中に、幼い日に遊んだ公園が浮かんでくる。
十年前、俺がまだここに居た時には一人の親友が居た。
これまでの人生でただ一人と言える本当の友達だと思っていた。

俺はアイツに言えなかったことがあった。

「それでは、少しテストしてみますか」

理科の言葉に、俺は現実に引き戻される。
彼女は、ケータイを取り出して何かを打っていた。

「お、おい、何送るつもりだよ?」

「大丈夫です、あくまでテストですから、過去を変えるつもりはありません」

「ど、どうやって過去にメールを送るわけ?」

「電話レンジを扉を開けた状態で起動すると、途中で放電現象と呼ばれる稲妻が走ります。その時にレンジに取り付けられたケータイに過去に送りたいメールを送信します。
 レンジに取り付けられたケータイには予めメール転送機能をつけてあるんで、好きなケータイにメールが送られます。
 あ、ちなみにゲームではこの過去に送るメールの事をDメールと呼んでいますね」

「放電現象って……マジで?」

「えぇ、それなりの振動も一緒に起きるみたいですよ」

何でもないようにそう言いながら、理科は準備をすすめる。
どうやら電話レンジの起動はPCでもできるらしく、カタカタとキーボードを打っている。

「テストなんで、メールの転送先は小鷹先輩のケータイでいいですか?」

「まぁいいけど……本当に大丈夫なんだよな?」

「はい、理科を信じてください!」

「うーん……」

「そこは頷いてくださいよ!」

そんな会話をしている内に、準備が整ったらしい。
電話レンジの扉は開かれ、理科がPCのエンターキーを押すだけで起動する状態になっている。
 
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/18(土) 01:30:56.42 ID:qyDKcRwbo
過去を変えちゃったら理科部も無くなる可能性があるな…
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 01:31:19.97 ID:HIifXib80
ガチじゃねーかwwwwww
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県) [saga]:2012/08/18(土) 01:31:27.31 ID:GTivw/bwo
飛べよおおおおおおおおおおおお!!
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/18(土) 01:32:45.40 ID:WRkadlD0o
逆に原作通りになるかもしれん
676 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 01:32:48.66 ID:7siwRZy4o

「な、なぁ、扉を開けたまま電子レンジを動かすって大丈夫なのか?」

「問題ないように設計してありますって。じゃ……いきますよ?」

「おう……みんなもいいか?」

俺が振り返って他の理科部メンバーを確認する。
マリア以外はどこか不安そうな表情を浮かべているが、それぞれ頷く。

「早くなのだ! ワタシは楽しみで楽しみでしょうがないぞ!」

「マリアは元気だなぁ……」

「では、起動です!」

理科がッターン! とエンターキーを押した。
レンジが起動し、中の皿が回転し始める。

そして。


ゴゴゴゴゴゴゴ!!! という巨大な振動とともに、バチバチバチ!!! と、レンジの周りに稲妻が走り始めた!


「うおー、すげーすげー!! なんかバチバチいっとるげ、あはははははは!!!」

「ま、マリア、ちょっと離れとけ!」

俺は慌ててマリアを引き寄せて体の後ろへ隠すようにする。
さすがにここまで派手な事になるとは思わなかった。
他の理科部のメンバーも、目を見開いて驚いている。

そんな俺達をよそに、理科はすごく楽しそうな表情でケータイを操作している。
確か彼女の話では、この状態の時にレンジのケータイにメールを送れば過去にメールが送られるらしい。

「エル・プサイ・コングルゥ……!!」

理科は意味の分からない呪文のようなものを唱えたかと思うと、ポチッと送信ボタンを押し込んだ。
過去にメールが、送信されたのか。


……少しして、レンジの放電現象と共に振動も収まった。

「び、ビックリした……。あんなに大変なことになるなら先に言っときなさいよ!」

「えー、でも言わないほうがワクワク感があるじゃないですかー」

「そんなものはない!!」

夜空と星奈が一斉に文句を言い始める。

「ご心配なく、理科殿。あのような振動、あにきは一睨みするだけでひきおこすことができましょう」

「できねえよ!!」

「なーなー、さっきのもう一回やってほしいぞ! もう一回!!」

マリアと幸村は割といつも通りのようだ。
すると、理科が俺に目を向けて、

「先輩、メールの確認してもらえますか?」

「え、あぁ、そうだな……」

一瞬、今のはきちんと過去にメールが送られるかのテストだという事を忘れてしまっていた。
それだけ先程の放電現象のインパクトは大きかったということだ。

俺はケータイを開くとメール画面を呼び出す。

「新着メールは来てないぞ?」

「当たり前ですよ、過去に送ったんですから。10時間前のメールを見てみてください」

俺は理科の言葉に従って画面をスクロール……する必要はなかった。
もともとメールなんて理科部の連絡くらいにしか使っていないので、最初の画面で昨日のメールまで表示されている。

そして、あった。
明らかに見覚えのないメールが三通。しかも開封済み。
差出人は理科。おそらくレンジのケータイからこのケータイに転送される際に、元々の差出人のアドレスを表示するように設定してあるのだろう。
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/08/18(土) 01:33:10.74 ID:LmNZXRlAO
ただのシュタゲじゃねーかwwwwww
678 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 01:33:54.85 ID:7siwRZy4o


―――――――――――――――――
time:8/9 4:12
―――――――――――――――――
from:理科
―――――――――――――――――
sub:
―――――――――――――――――
先輩のサイリ









―――――――――――――――――


***


―――――――――――――――――
time:8/9 4:12
―――――――――――――――――
from:理科
―――――――――――――――――
sub:
―――――――――――――――――
ウムセーバー









―――――――――――――――――


***


―――――――――――――――――
time:8/9 4:12
―――――――――――――――――
from:理科
―――――――――――――――――
sub:
―――――――――――――――――
を理科のシュ









―――――――――――――――――
679 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 01:36:32.59 ID:7siwRZy4o


確かに、時刻は昨日の深夜……10時間前だ。
しかし、俺は首を傾げる。

「……理科、三通も送ったのか?」

「いえ、勝手に6文字で分割されてしまうんですよ。それも全部で三通分……18文字までしか送れませんし」

「なるほどな。だからこんな途中で切れた感じになってるのか」

「全文知りたいですか?」

「いや、いい」

文面からして嫌な予感しかしないので即答で断る。

後ろからは他の理科部のメンバーが俺のケータイをのぞき込んでいた。
別に見られて困るものでもないが、なんだか落ち着かない。

「……確かに10時間前に送られてるわね。小鷹、あんたこのメール見た?」

「今日の朝にメールはチェックしたけど、こんなのはなかったな」

「ふむ……」

「ふっしぎだな−!」

「あにき、お体の方は大丈夫ですか?」

「ん、あぁ……何ともない」

俺は念のため自分の体の調子を確かめてみるが、何ともない。
やはり、おかしなことが起きたのはこのケータイの方のようだ。

「やっぱりマジ……なんだな」

「どうします、やめますか?」

理科の言葉に、俺は黙り込む。
正直、不安が大きいのは確かだ。
しかし、今ではそれと同じくらい、過去を変えるという未知の現象に対する好奇心が湧き上がっていた。

俺は他の理科部のメンバーの方に振り向く。

「私は別にどちらでもいい」

「あたしは当然やってみるべきだと思うわ!!」

「わたくしはあにきの後ろをついていきますゆえ」

「ワタシは早くやってみたいぞ!!!」

「決まりですね」

理科が満足そうに言う。
やはり根っからの科学者なんだろう、その表情には楽しそうなものが浮かんでいる。
 
680 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 01:38:28.39 ID:7siwRZy4o

「では、メールの本文を決めましょう。一歩間違えれば大変なことになりますから、慎重に」

「大変なこと?」

「えぇ、小鷹先輩のバスの例で言うと、正しいバスに乗ったことで転校初日の印象がそこまで悪くなかったとします。
 そして奇跡的に、非科学的に、天変地異的に小鷹先輩に友達ができたとします」

「おい」

「もし、その場合、理科と小鷹先輩は出会っていなかったのかもしれません」

「……って事は」

「もし理科と小鷹先輩が出会っていなかったら、この理科部もなかったでしょう。
 こうして皆さんとここで話をしているという事も、今までの活動も全て、なかった事になります」

理科は寂しそうな表情を向ける。

世界線が移動すると、全てが改変後の世界線に合わせて再構築される。
それは俺達の記憶だけでなく、この理科部そのものがなくなるという可能性もあるという事だ。

それは、嫌だ。
理由なんて上手く言えない。それでも、ただ心から嫌だった。

あるものを手にする為には、それ相応のリスクを負わなければいけない。
世の中はそういう風にできているのか。
理科は真剣な表情でみんなを見渡す。

「じゃあ……みなさん意見を出してください」




誰にどんなDメールを送る? (全角18文字、半角36文字まで)
>>682
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/08/18(土) 01:39:43.51 ID:cQI0JB4z0
夜空

ソラ久しぶり
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/18(土) 01:40:00.27 ID:hXrnLRLX0
いや……やめておこう

理科やほかの理科部のみんなと友達じゃないかも
しれない世界なんて、俺は行きたくないからな

無理なら安価した
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 01:40:27.94 ID:peZqZ7rSO
自分自身に

後悔するような選択をするな
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/18(土) 01:45:08.94 ID:yHYKBaaH0
マジナイス
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/18(土) 01:50:13.42 ID:qyDKcRwbo
>>682よくやった
というか理科部のみんなは友達というよりあにきのハーレム要員じゃないでしょうか
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 02:04:53.90 ID:F+7fMdnIO
夜空は使いたいと思ってそうだな
687 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 03:11:36.25 ID:7siwRZy4o

……ダメだ。
例えどんなに小さい可能性だったとしても、この理科部がなくなるような事があってはいけない。
理屈なんてまともに言えない。
ただ心の奥底から、これからもずっとこうしてみんなで理科部に居たい。そう思った。

「……いや、Dメールは送らない」

皆が一斉に俺の方を振り向く。

「俺は、理科部のみんなと友達じゃないかもしれない世界になんて行きたくない」

俺の言葉に、全員が目を丸くした。
もしかしたら今の言葉は、この環境を壊すようなものなのかもしれない。
でも俺は、自分の気持ちを正直に言いたかった。

すると夜空が震える声で、

「タ……小鷹は、わ、私のことを友達だと思っているのか?」

「あぁ。夜空だけじゃなくて、理科も幸村もマリアも、みんな友達だと思ってる。少なくとも俺の方は」

「小鷹、あんた……」

「ホントは、ずっと前から思ってたんだ。でも、口に出すのが怖かった。先に進むのが怖かったんだ。
 けど、こんな時だから言う。俺はもう二度と、友達を失いたくないんだ」

俺はもう後先など一切考えず、ただ言葉を吐き出す。
今まで自分の中に押し留めていたものを開放するように、口下手な俺からは考えられないほど言葉がスラスラと出てくる。

「わたくしはお友達でも舎弟でも……あにきのお側にいられるのであれば…………」

「やったー、今日から小鷹はワタシの友達だな!!」

幸村は可憐な表情で微笑み、マリアは飛び跳ねて喜んでいる。
そして夜空と星奈は……。

「……まぁ、お前がそう思っている分にはいいだろう。私も、その、ちょっとだけならそういう風に思ってやらないことも……ない」

「あ、あたしもあんたがどうしてもって言うなら別に友達になってあげてもいいけど……」

二人とも頬を染めて視線を彷徨わせながらも、そんな事を言ってくれた。
内心拒否されたらという不安もあったので、俺は心から安堵する。

「……しかしだな。友達の友達は友達ではないのだ。なぁ、肉?」

「当たり前ね。あたしもあんたなんかと友達とか、想像するだけで寒気がするわ」

「それは長い間冷凍保存されていたからではないのか」

「あんたのその腐りきった性格は一体何年寝かせれば生まれるのかしらね!!」

結局、いつも通りのケンカを始める二人に、俺は笑う。
なんだかこういったありふれた光景も、今では違ったものに見える。

ただひたすら、楽しい。
 
688 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 03:14:59.04 ID:7siwRZy4o

「先輩」

理科が声をかけてくる。
その表情にはとても年下には見えない、暖かくて落ち着いた微笑みが浮かんでいた。

「……はは、ちょっとクサすぎたか?」

「えぇ、確かにそうですね。どこかのライトノベルの引用ですか?」

「ここまで残念な主人公のライトノベルは読んだ事ないな」

そうして二人は笑い合う。
まるで小学生に戻ったかのように、純粋な表情で。

「先輩が来るまで、この理科室はいつも静かで聞こえる音といえばPCのファンの音とかモニターの点灯音くらいでした。
 でも、今は違います。夜空先輩と星奈先輩のケンカの声が聞こえる。幸村くんのぼーっとした声が聞こえる。
 マリアさんの元気な声が聞こえる。小鷹先輩の、一応頑張っているのだけど、それでもドスの利いた低い声が聞こえる」

「……そうだな」

「理科は……この部活を作って本当に良かったと思います。だって、こんなにも良い友達がたくさんできたのですから」

「あぁ」

俺と理科は並んで理科部の様子を眺める。
俺達が求めていたのはこういう光景だったのかもしれない。
友達を作ろうと様々な活動をして、何度も失敗してきたが、その行程で目的は既に達せられていたのか。

理科は頬を少し染めてこちらを向く。

「あと……理科は、小鷹先輩に出会えて本当に良かったです」

「俺も、理科に会えて良かったよ」

俺の言葉に、理科の目が見開かれる。
顔は真っ赤になっており、パクパクと口を開くが上手く言葉出てこないようだ。

俺はそんな理科の様子に苦笑しながら、


「はは、そこまで照れることないだろ。
 俺は理科にも夜空にも幸村にも星奈にもマリアにも……他にも理事長とかステラさんとかケイト先生とか、会長とか遊佐とか、たくさんの人に出会えて本当に良かったと思ってる」

「どうせそんな事だと思いましたよちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


理科部はいつも通りだ。
みんなで集まって、みんなでバカやって。
全然建設的な事ではないかもしれないが、ここはそれでいい。

俺は友達が少ない。
どこかの民謡のように友達100人なんていうのは夢物語だ。
でも、それならその少ない友達を100人分大切にすればいい。

俺は部屋の上方にある小さな窓から見える青空を眺めながら、そう思った。
とある幼き日の夕焼けを思い出しながら。

 
 
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/08/18(土) 03:17:20.45 ID:LmNZXRlAO
あれ?これ完結する流れ?
690 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 03:19:44.49 ID:7siwRZy4o



***



夕方になった。理科室には夕日の光が差し込んできている。
今部屋に居るのは俺と夜空だけだった。
夜空はこの時間まで本を読んでいて、俺は図書室で夏休みの宿題と格闘していた。
他の部員はどうやらもう帰ったらしい。幸村なんかはメールにおびただしい程の謝罪文が残っていた。

「夜空、お前はまだ帰らないのか?」

「ん……そうだな、私もそろそろ帰るとするか」

夜空は本を閉じると、鞄に入れる。
そしてゆっくりと立ち上がると、スタスタと電話レンジの方へと歩いていく。
結局、このレンジはDメール機能は使わないことにして、部室で普通のレンジとして使うことになった。

夜空はその電話レンジの上部に手を置く。
こちらから見て後ろを向いているので、その表情は良く見えない。

「過去を変える……か。小鷹は何か変えたい過去はないのか?」

「そりゃたくさんあるさ。でも、本当に強く変えたいって思ってる事は一つだけだな」

「聞かせてくれるか?」

「……まぁ隠しておく事でもないか。俺さ、10年前までこの街に住んでて、その時親友がいたんだ。
 それで、俺がこの街を出るって事がなかなか言い出せなくてさ。最後の日に待ち合わせもしたんだけど、結局何も言わずに出て行っちまったんだ」

「……そう、か」

「あいつは、俺に裏切られたと思ってるかもな。だから過去を変えられるなら、あの時何が何でも一言言っておきたいって思ったんだ。
 ……けど、今の俺にとってはこの理科部もその親友と同じくらい大切なんだ。だから、片方を危険にさらしてまでもう一方を手にしたいとは思えない」

「…………」

「まぁ、わざわざ過去を変えなくても、そいつと再会する方法だってあるはずだしな! 案外まだこの街にいてその内バッタリ会ったりも……」

「小鷹」

「……ん?」

「私も、どうしても変えたい過去がある。いや……あった。気持ちが変わったんだ。この気持ちは一生変わらないと思ったんだけどな。
 でも、気付けた。現実でどうにかしないで過去にすがるなんて、それは逃げているのと同じだったんだ」

「夜空……」

「今日のお前の言葉を聞いて目が覚めたよ。私は、過去よりも今を変えることにする」

夜空はこちらを振り向いた。
その表情には不安が強く浮かんでいるのがすぐ分かる。
触れたらすぐに壊れてしまいそうな、そんな危うげな儚さが夜空にはあった。

いつもの印象からは到底想像できない。
しかしこの様子を見ると、普段のあの憮然とした態度はこういった儚さを隠しているものだったのかとも思う。

他の理科部のメンバーは、一緒に居る間に様々な面が見えてきていた。
しかし、その中で夜空はあまり他の面が見えてこなかった。
それが今この時、一気に見えてくる。

全体的にオレンジの光に包まれた部屋の中。
目の前の少女はまるで絵画から抜け出してきたかのような、そんな芸術的な美しさがあった。


キラリと、ふと夜空の手元から強い光を感じて、俺は目を細める。
鏡でも持っているのだろうかと良く見てみると、彼女の手にはハサミが握られていた。
 
 
691 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/18(土) 03:21:23.63 ID:7siwRZy4o
眠いギブアップ
他の作品のネタは俺がよく分かんなかったら無難に対処する事があるよ
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 04:44:16.97 ID:p8AQNU5IO
おつ
まさかのエンディングかと思ったぜ
ここから夜空のターンか
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 07:50:57.26 ID:oAPOh2lIO
おつwktk
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/08/18(土) 08:05:06.75 ID:RAtj5O2AO
Dメール送ったから機関がせめてくるんじゃね?
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/08/18(土) 09:14:20.42 ID:UiIAnsrAO
乙乙
アニメ1期のラストよりラストっぽかった

そして>>682GJ
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/18(土) 12:15:46.16 ID:hXrnLRLX0
よし!これでまだ理科√が一番近い……よな?
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 13:44:07.66 ID:F+7fMdnIO
ここで夜空が断髪して正体明かしたらまだわからんぞ
肉もなんだかんだで小鷹に傾いてきてる感じだしな
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 14:24:06.37 ID:tWAWzfHd0
やはり世界線は小鷹のハーレムに収束するんだな
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2012/08/18(土) 22:40:57.62 ID:mLWtBYn60
理科ェ…… 理科は可愛いのになぁ
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/18(土) 23:17:20.74 ID:hXrnLRLX0
>>687 夜空だけじゃなくて、理科も幸村もマリアも、みんな友達だと思ってる

よく読んだらさりげなく星奈がはぶられてた
701 : ◆0WipXNi8qk [saga sage]:2012/08/18(土) 23:38:31.82 ID:+2OMsRs6o
>>700
マジだwwwww星奈カワイソスwwwwwwww



ごめん、眠かったんだ
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 00:19:21.66 ID:KnyKBYKJo
みんなの一例で名前言ったのかとおもた
だから良いんじゃね?
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 00:27:40.38 ID:pgPGQYVpo
ちょうど数日前にシュタゲ見終わった後になんとタイムリーな展開!超俺得
>>665には感謝を、そしてうまい具合に展開しきった>>1に賞賛を!!


とは言えDメールで過去改変&SERNとの攻防な展開も見てみたかった気ガス
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/19(日) 00:38:53.85 ID:qFQc/09Uo
>>703
一応電話レンジは残ってるし、安価とれば使えるんじゃね?
安価スレだから、物語がカオス過ぎる方向に進んだ時、それ使って上手くやれば軌道修正できそうだし
705 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/19(日) 00:48:54.59 ID:TZK0d7QOo

夜空はハサミを持った手をゆっくりと上げる。
そして、首の後ろあたりまで持ってきて止めた。

「夜空……?」

まさか、と思った。
いや、そんな事はするはずがない。する必要がない。

俺の今の表情が面白いのか、夜空はクスリと笑う。
その後、ゆっくりと目を閉じて――――。


ザク……と、何の迷いもなく自分の髪にハサミを入れた。


「お、おい、夜空!?」

「いいから、黙って見ていろ」

いつもの素っ気ない声ではなく、ほとんど聞いたことのない、透き通るような優しい声。
本当は止めるべきなのかもしれないが、俺はその一言だけで全く動くことができない。
ただただ、夜空が髪を切っていくのを見ていることしかできない。

パサッ……と、長い髪が次々と床に落ちていく。
夜空はかなりのロングヘアだった。あれだけ伸ばすのは結構大変だと思うし、それなりにこだわりがあるのだと思っていた。
それでも、彼女は何の躊躇いもなくハサミを進める。

夕日に染まった部屋に、夜空の綺麗な黒髪が舞う光景は、どこか幻想的だった。


夜空の断髪はものの数秒で終わった。
美容室などでちゃんと切ってもらうのではなく、見た目など気にせずにただ短くするだけという作業なので当然か。

俺は今どんな顔をしているんだろう。
たぶん、今までの人生の中でもワーストクラスの間抜けな顔をしているんだろう。
髪が短くなった夜空を見て、俺は言葉を失っていた。


「……ソラ?」


10年前の親友。「ソラ」と呼んでいたアイツの面影が、はっきりと見える。

夜空は俺の言葉に、ニカッと笑う。
彼女がこんな顔で笑ったところを、俺は見たことがない。
いや、見たことはあったんだ。この表情、もう見間違えるはずがない。

「久しぶり、タカ。ここまでしないと気付かないとは、やっぱりお前は鈍感だな」

「やっぱり……ソラなのか……。お、お前は気付いてたのか?」

「あぁ、お前を一目見た時からな」

「じゃあ何で早く教えてくれなかったんだよ?」

「……私だけが覚えているなんて何か癪だろう。そっちは全然気付く素振りすらも見せないし」

「いや、あんだけ外見変わってて気付くのはキツイだろ……っていうか俺はお前のこと男だと思ってたぞ?」

「そんな事だろうと思っていた。私は一度も自分が男だなんて言ったことはなかったのだがな」

そんな事言っても気付けっていうのは無理な話だ。
幼い頃の夜空は、男のようにケンカっ早く、男の口調。一人称も「オレ」だった。
加えてショートヘアで、いつもズボンを履いていて女の子らしさなんていうのは微塵も感じられなかった。
 
706 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/19(日) 00:50:47.77 ID:TZK0d7QOo

その後、夜空とはあの頃の話をいくつもした。
俺がこの街を出る日、別れを伝えようと待ち合わせをした日。
どうやらあの日は妙なすれ違いが起こっていたらしい。
そういえば、あの日は夜空の方もなにか大切な話をしたいと言っていて、それが自分が女だという告白だったのだ。
その為にスカートを履いてきたはいいが、結局恥ずかしくて出て行けなかった。そんな何でもない、まさに子供らしい真相だった。

「……私はあの時、結局友達だと思っていたのは私の方だけだったのかと凄く不安になったぞ」

「あー、悪かったな、もっと早く言っておけばよかった。けど、どうにも言い出しづらかったんだよ」

「ふん、まぁ過ぎたことだからいいがな。それに、こうして再会できたわけだし」

「あぁ、お互い本当に良かったなソラ」

「なぁ……お前はその呼び方に戻すつもりなのか?」

「え?」

「ソラというあだ名についてだ。まぁ私にとってはもはや些細な事なのだがな。
 タカとソラも、そして羽瀬川小鷹と三日月夜空も友達同士なのだからあだ名を使うのは別に不自然なことではない。
 ただ、お前の方が私の事をどう呼ぶかで、私もそれに合わせた方がいいと思うし、この際ハッキリと決めて欲しい」

「……うーん、そうだな…………」



夜空のことを何て呼ぶ? >>707
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/19(日) 00:52:25.38 ID:b8T92VwMo
二人きりのときだけはソラって呼ぶ
708 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/19(日) 01:21:48.21 ID:TZK0d7QOo

「じゃあさ、二人きりの時はあだ名で呼び合うってのはどうだ?
 なんかみんなの前でいきなり呼び方変えるってのはちょっと恥ずかしいしさ」

「……まぁ確かにそれはあるな。いいだろう、だがタカはすぐボロを出しそうだ」

「な、何でだよ」

「ついうっかり『ソラ』と言ってしまう光景が目に浮かぶっていう事だ」

「ぐっ……自分で言っておいてそんな事はしねえ…………と思う」

最後は自信無さげになってしまった。
不覚にも、俺自身夜空の言うような事が起きそうだと思ってしまった。

俺はとりあえず話題を変えようと、頭を働かせる。

「……なんか二人きりの時だけ呼び方変えるって、友達っていうか恋人に近い気がするな」

「ッ!!!」

一気に真っ赤になる夜空。

「な、なななななな何を言っているタカ!! わ、私達は友達であって、それ以上の関係になった覚えはないぞ!?
 ま、まぁ、タカがどうしてもというのなら心の片隅で気が向いた時にでも考えてやってもいい。その、私もそこまで嫌な気はしないし……」

「はは、冗談だって」

「えっ、じょうだ…………おい」

「ど、どうした?」

「…………はぁ、何でもない。タカはそういう奴だよ。ほら、もうそろそろ帰るぞ」

どこかムスッとした様子で踵を返してドアの方へ向かう夜空。
俺はそんな夜空の様子に、何か機嫌を損ねる様なこと言ったかな? と首を傾げる。
だが、ある事に気付いた俺は、急いで夜空を呼び止める。

「おい待て夜空! 髪、髪」

「ん? あっ……」

夜空は後ろ髪を撫でて、バツの悪そうな顔をする。
今彼女の髪は明らかに素人が切りましたと言ってるくらい長さがバラバラで、このまま外に出るのは少しまずい。
やはり見た目の問題がでかく、ただみっともないという理由の他に、親なんかが見たらいじめられているのではないかと誤解してしまう可能性だってある。

「……どうしよう?」

「何も考えてなかったのかよ……」

俺は呆れて嘆息する。



どうする? >>709
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/19(日) 01:22:45.65 ID:9sJ1uFE5o
美容院に行こう
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 01:22:55.71 ID:SjkooNeSO
いっそ丸刈りに
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/19(日) 01:23:12.34 ID:dOmo983C0
髪を整えてあげる
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/19(日) 01:23:26.33 ID:SUGGndoIO
困ったときのりかえもん
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/19(日) 01:24:56.53 ID:b8T92VwMo
てか掃除…
714 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/19(日) 01:25:18.27 ID:TZK0d7QOo
ダメだマジ眠いおやすみ
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/08/19(日) 03:01:27.96 ID:yPLfBNxOo
貴重な十年ものの黒髪がww
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 14:34:42.08 ID:6WrPMVkw0
もうこれ原作でいいんでね?
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/20(月) 17:59:35.18 ID:ABVXS6wt0
理科√になって欲しい
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 22:01:30.44 ID:fYiitMwIO
てかまだ夏休み前だっけ?
なんか色々やっててとっくに突入してそうなんだが…w
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/20(月) 23:13:32.84 ID:9qhBWfj/o
>>301から夏休み入ってるな
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 23:55:41.87 ID:fYiitMwIO
あホントだ
合宿とか縁日とかまだ行けるかな
つかその前にマリアと仲良くなってからの小鳩入部フラグが先か
721 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 15:04:10.64 ID:g/v3slEao

「これは美容院に行ったほうがいいだろ」

「び、美容院だと……?」

「あぁ、やっぱちゃんと切ってもらわねえと……」

「くっ……わ、私は美容院など好かん」

正直それは分かる。
俺も高校に上る直前の春休みに一度だけ行ったことがあったが、どうにも落ち着かなかった。
それに美容院のにーちゃんに「自分で染めようとしたの?」なんて笑われて、少し腹が立ったというのもある。

それがなくても、あのフレンドリーすぎる感じは苦手だった。

「ていうか、今まではどうやって切ってたんだよ?」

「自分で」

「マジで? あ、まさかあんだけ髪伸ばしてたのってもしかして……」

「あぁ、前髪は鏡を見れば何とかなるが、後ろは難しいからな。滅多に切れなかった」

かなりのロングヘアだったので、それなりにこだわりがあるのかと思っていたが、美容院に行きたくないという残念な理由だった。
まぁそれはそれで夜空らしいが。

「こ、小鷹。その、一つ頼みがある」

「ん?」

「確かにこの髪は美容院に行かなければいけないと思う。だから……一緒についてきてくれ」

「え、俺も?」

「あ、あぁ! 元はといえばお前がなかなか思い出さないからこうして切るはめになったんだ! つまり小鷹にも責任がある!」

「そうなの……か?」

「そうなんだ!」

という事で、半ば道連れ的な感じで俺も美容院に行く事になった。



***



俺と夜空がやってきたのは駅前の美容院だった。
もう日が暮れる時間帯だからか、客はそんなに居ない。
昼前に来てセットしてもらってからどこかへ遊びに行くという人が多いとは聞いたことがある。

店内に入って夜空が帽子をとると、まず店員が夜空の髪を見て驚いたのが分かった。
華の女子高生が後ろ髪をメチャクチャにしていたら、この反応も仕方ないだろう。
だがそこは商売なので、すぐに営業スマイルに戻って案内を始めた。

俺と夜空はすぐ隣りの席に座らされる。
夜空の方は長さはこのままで、ただ全体的に整えて欲しいと言っているのが聞こえる。

「おにーさんはどうしよっか?」

若い男の美容師が尋ねてくる。
髪は綺麗に染まった金髪で、一応純正の俺の髪の何倍も見栄えがいい。

ぶっちゃけ、俺は髪もそこまで伸びてないし切る必要はないんだけどなぁ。


どんな感じにしてもらう? >>
722 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 15:04:38.13 ID:g/v3slEao
安価忘れた >>723
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/21(火) 15:07:10.04 ID:TiLnDZRio
流行の髪型(髪は染めない)
724 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 16:27:43.81 ID:g/v3slEao

「えっと、じゃあ何か流行の髪型を……」

「流行かー。それじゃ、こんなのはどうかな?」

そう言って店員が見せてきたのはヘアスタイル特集の雑誌だった。
開かれたページには、確かに学校でもよく見るような髪型のイケメンが写っている。

画像→http://vip.jpn.org/uploader/source/up5520.jpg

「あー、じゃ、じゃあこれで」

「あ、そうだ。あと染めるのはどうする?」

「それはなしでお願いします」

この髪の見栄えが悪いのは良く分かっている。
だけどこれは死んだ母さんから受け継いだ唯一の外見的特徴だ。
例えどんなことでも、少しでも母さんとの絆は大切にしたい、そう思っている。

そんな俺の表情を見て、美容師はそれ以上何も言ってこなかった。

髪にはハサミはほとんど入れられず、代わりに良く分からない機械を頭に当てられる。
正直何をしているのかは良く分からないが、まぁ任せておけば変な事にはならないだろう。

隣では女の美容師が夜空の後ろ髪を整えながら笑顔で話しかけていた。

「もしかして後ろ自分でバッサリやっちゃったとか? あ、言いたくないことだったらゴメンね」

「え、あ、いや……その…………勢いで」

「あはは、勢いで後ろ髪をズバッとかー。今時珍しいワイルドな子だね、彼氏さんもそういう所が気に入ったのかな?」

「「ぶっ!!!」」

俺と夜空が同時に吹き出した。

「ち、違いますよ!? 俺とそいつはただの友達で、そういうんじゃないですからね!?」

「…………そこまで必死に否定しなくでもいいだろう」

「ん、夜空?」

「な、何でもない!」

「ははーん♪」

何やら美容師のほうが顔を見合わせてニヤニヤとしている。
そして女の方は夜空へ、そして男の方は俺へと耳打ちを始める。

「(あの子、完全に君に惚れてるって!)」

「なっ……!」

急に何を言い出すんだこの人は。
そういえば理科も星奈も似たようなことを言ったことがあるが、そこまで誤解されやすいのだろうか。
 
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/21(火) 16:29:48.46 ID:gAvpFrLqo
このリア充ヘアーで小鷹もたくさん友達ができるね!
726 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 16:31:14.61 ID:g/v3slEao

美容師の人に合わせて、俺も自然と小声で話す。

「(な、なんでそう思うんですか?)」

「(そりゃ、さっき君が友達だって言った時、あの子分かりやすく残念そうな顔したからねー。
  それにさっきから君の髪がセットされていくのを横目でチラチラと見てるよ、彼女)」

「(あー、いや、それはたぶんそういうんじゃないかと……)」

夜空は元から不機嫌な顔をしている。
だから、別に俺が夜空と恋人だという事を否定したことに対して不機嫌になっているわけではない。
なるほど、つまり今まで他の人に誤解されていたのも、誰かがからかった際に俺が否定してその後夜空の不機嫌な顔を見るからそう思われてしまうのか。

横目でチラチラと見ているというのも、たぶん俺のプリン頭がどうなるか純粋に楽しんでいるだけなんだろう。

「(またまた、照れなくてもいいって! ていうかあの子メチャクチャ可愛いよね! 君がそんな事言ってると、僕がアプローチかけちゃうよ?)」

「(はは、まぁ顔は確かに良いんですけどね。たぶんあなたの思っているような子じゃないと思いますよ……)」

「(そりゃ人間欠点の一つや二つあるもんだって! そういう所全部許せて初めて好きって言えるんだよ!)」

果たしてこの人は、エア友達とかリア充に対して殺意を抱いている事とかを許せるのだろうか。
いや……たぶん無理だろうな。そもそもこの人自体リア充っぽいし。

「(でさでさ、実際の所あの子の事どう思ってるの? 僕にだけコッソリ言ってみてよ!)」

「(え……うーん、そうですね…………)」



**************************************



小鷹の返答が>>727-729の中から、>>729の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/21(火) 00:00:00.(00)←ここ

00〜39→>>727
40〜69→>>728
70〜99→>>729
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 16:36:00.58 ID:4hPUbPdIO
小鷹のセリフでいいのな?
安価なら恋人以上にかけがえのない存在ですよ
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/21(火) 16:37:53.47 ID:YvKyMdEeo
大好きです
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/08/21(火) 16:39:09.65 ID:u2EXLgWd0
気になってはいます
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/21(火) 16:41:13.59 ID:8VWglkjE0
僕の奴隷です
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/21(火) 17:34:57.09 ID:I5Jd3kV+o
えんだああああああああああああああいやああああああああ
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/21(火) 18:06:55.28 ID:sdnBCSvk0
理科√が……理科√がぁ!

いやでもまだ√確定はしてない、してないはずだ……!
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 19:05:57.72 ID:/TIu7lgIO
(友人として)大好きです!
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/21(火) 19:26:22.05 ID:WsTnOHzXo
大好きです(大切な親友ですから)
735 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 19:45:38.74 ID:g/v3slEao

「(……大好きです)」

「(おっ、やっぱりやっぱり?)」

たぶんこう言わないといつまでもこのネタを引っ張られそうな気がしたので、とりあえずこう言う事にした。
まぁ友達としては確かに好きだし、嘘は言っていない。
たぶんこの人が言っている好きというのはそういう意味ではないとは思うが。

「(じゃあさ、やっぱもっとアプローチした方がいいって! なんかあの子もツンデレってやつだろうしさ!)」

「(は、はぁ……)」

今時はリア充な人でもツンデレって単語を知ってるんだなーと、ぼんやりと思う。

「(これからどこか行く予定とかは?)」

「(い、いや、もうすぐ日も暮れますし……)」

「(ダメダメ、ここは夕食とか誘っとかないと!)」

美容師はニカッと笑うと、今度は夜空の方を向いた。
夜空も女のほうの美容師にコソコソと何かを言われていて、顔を真っ赤にしていた。

「ねぇねぇ、こっちの彼氏さんが話があるみたいだよ?」

「だ、だから彼氏なんかではない!」

「まぁまぁ、とりあえず聞いてあげなって!」

そう言って俺に向かって親指を立てる美容師。
……はぁ、これは言わなきゃいけないんだろうな。
とりあえず、後で事情を説明すれば問題ないか。

「えっと……ソラ。この後、もし良かったらご飯とか食べに行かないか?」

「ッ!!! な、な……いきなり何を……ぁぅ…………///」

「あー、嫌ならいいんだ、うん」

「嫌じゃない!」

急に夜空が大声を出した。
そしてすぐにハッとすると、途端にモジモジし始めた。

「あ、いや、その、私はタカがどうしてもというのなら仕方なく一緒に行ってやろうというだけだ……///
 わ、私としては、夕食は帰って家でゆっくりとりたいところなのだがな…………」

「……あー、じゃ、じゃあこの後どっか行くか」

「そ、そうだな。あまり混んでいない所がいい」

意外にも乗っかってきた夜空。
チラリと美容師達の方を見てみると、もうこれ以上無くニヤニヤしていた。
俺は溜息をつく。
やっぱり、美容院に対する苦手意識は拭えなさそうだ。
 
736 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 19:47:36.14 ID:g/v3slEao



***



「じゃ、これから頑張ってねー!」

そんな言葉を背に受けて俺達は美容院を出る。日はすっかり暮れて、街灯が点いている。
俺の髪はまさにあの雑誌の通り、束感たっぷりのリア充ヘアーになっていた。
髪の色は相変わらず残念だが、これだけでも大分変わってくるのだろうか。
ワックスも貰って、この髪型にするための整え方も教えてもらったが、毎日これをやるような気力は湧かない。

隣の夜空は後ろ髪を整えてもらっただけなのだが、それだけでも全然違った。
今では帽子を被らずに外を歩いているが、よく似合っていると思う。
中性的な外見の中に女性的な可愛らしさも見えて、正直顔だけで言えば美容院の雑誌モデルよりずっと良いんじゃないかとも思う。
実際、美容師に雑誌モデルになってくれないかと頼まれてたみたいだし。

「まったく……誰がモデルなんかやるか」

「別にいいじゃんか。その、かなり似合ってると思うぞ、その髪」

「そ、そうか?/// えっと、その、タカも悪くない……と思うぞ……」

夜空はチラチラと俺の方を見ながら消え入りそうな声で言う。
まさか彼女から外見をほめられる事があるとは思っていなかったので、妙な気恥ずかしささえ覚える。

「お、おう、サンキュ」

「…………」

「…………」

むず痒い沈黙が流れる。
俺はそれに耐え切れずに、とにかく口を開いた。

「「あのっ!!」」

ハモってしまった……。

「ど、どうしたタカ?」

「え、あー、その……夕食の話なんだけどさ」

「ッ!!/// そ、そうだな、どこにしようか!! 正直、この時間のファミレスはリア充が鬱陶しいしな!!
 どこか静かな、あまり人気のない所がいいと思う。あ、いや、別に二人きりになりたいとかそういう事じゃないからな!!」

「……えっと」

夜空の言葉に思わず口ごもってしまう。
俺は「さっきの話は美容師が勝手に進めてしまったものだから、別に気にしなくていいぞ」と言うつもりだった。
だが、こんな反応をされると、それも言いづらい。

俺は悩みながら口を開く。

>>738
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 19:48:41.42 ID:yTPDpCTL0
俺の家で一緒に食べないか?
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 19:48:57.57 ID:tdYxKA4SO
いや俺家で一人で食うから
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/21(火) 19:49:26.35 ID:uxiE+d+J0
ジョイフルいこうぜ
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 19:54:21.53 ID:/TIu7lgIO
家で一人で食うから…、一緒に行こうぜ!ですね
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 19:54:47.83 ID:vkJptTW20
許さん 許さん 絶対に許さん
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/21(火) 19:56:31.68 ID:TiLnDZRio
屋上
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 19:58:18.22 ID:tdYxKA4SO
皆が皆夜空√を望む人間ばかりと思うなよ、一枚岩ではないんだ
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/21(火) 20:02:59.39 ID:IiBbEHrQo
このヘタレ小鷹が!
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/21(火) 20:29:06.36 ID:WsTnOHzXo
>>743
理科が一番ですもんね
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 20:33:28.35 ID:4hPUbPdIO
原作夜空はそんなに好きじゃないがここの夜空は可愛げあっていいね
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/21(火) 20:56:16.34 ID:sdnBCSvk0
>>738
俺的にはナイスとしかいいようがない、これでまだ理科√が狙える
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/21(火) 21:28:11.83 ID:CWfem95ro
晩飯を一緒に食うくらいでルートは確定しないだろ(震え声)
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/21(火) 21:32:25.13 ID:WsTnOHzXo
不安要素は潰しておかないと
750 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 21:45:51.94 ID:g/v3slEao

「いや俺家で一人で食べるから」

「えっ?」

「あ、いや一人じゃないな、小鳩居るし」

夜空が呆然と俺のことを見てくる。
ここはちゃんと説明しておくべきだと思った。夜空も外食というのは慣れていないだろうし、あまり無理をさせるのも悪い。

「実はあの美容師さんに夕食に誘えって言われてさ。ああ言うしかなかったんだ。悪かった」

「…………そ、そっか」

「だから……ほら、もう遅い時間だしさ」

「あ、あぁ、そうだな。こっちこそ悪かったな、そういう事情も知らずに一人で話を進めてしまった。
 そもそも、食事というものはやはり落ち着いた所で食べるものだと思うし……………はは」

夜空は笑っているが、どこか辛そうにも見える気がする。
いや、でも夜空も本当は家で食べたいとか言ってたし、たぶん気のせいだろう。

夜空は少し顔を俯ける。
俺は何か気に触るような事を言ってしまったのだろうかと心配になりながらその様子を黙って見ていることしかできない。

すると、夜空はバッと勢い良く顔を上げる。
その顔には夜空には珍しい、ニッコリとした笑顔が浮かんでいた。

「よし、じゃあ今日はもう帰るか!」

「お、おう。送ってこうか?」

「いや、大丈夫だ。まったく、私は十年前みたいに子供ではないんだぞ」

「いや、でも女の子だし……」

「だから大丈夫だと言っているだろう。それじゃあな、タカ。今日は助かった。また部活でな」

「あ、あぁ……」

夜空の勢いに押されるように、俺は頷いてしまう。
それを見て、夜空は足早に歩いて行く。
もしかして、本当は何か家の用事でもあったのだろうか。

そんな事を考えながら、その後ろ姿を見送っていると、彼女は途中でこちらを振り返った。

「タカ、その髪似合っているぞ。学校でもそれで居た方がいい、もしかしたら本当に恋人ができるかもしれないぞ」

「はっ!?」

「そういう相談なら受けてやるから、いつでも言うといい。友達として、応援くらいはしてやる」

俺は驚愕の声を上げるが、夜空はニヤリと不敵な笑みを浮かべると、そのまま歩いて行ってしまった。
……まさか、夜空があんな事を言うとは思わなかった。

まぁでも、彼女の言葉を聞いてちょっと頑張ってみようかなー、なんて思い始めている自分も居た。
 
751 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 21:47:02.68 ID:g/v3slEao



***



ちょっと遅い時間に帰った俺を待っていたのは、すっかり腹をすかせた小鳩だった。
俺は文句を言う小鳩に謝りながら、すぐに夕食の準備を始める。
だが、時間が時間なので、そこまで凝ったものは作れず、ただの肉と野菜炒めになった。

俺と小鳩は同じテーブルを囲んで、箸を動かし始める。

「……我が眷属よ、一つ聞きたいことがある」

「ん、どうした?」

「その髪型はどうしたのだ? 貴様にしては珍しい」

「あー、今日ちょっと美容院に行ってな」

「美容院!? あんちゃんが!?」

余程驚いたのか、小鳩はレイシス化を忘れてしまっている。

「…………はっ! ククク、どういう風の吹き回しだ」

「んー、まぁ色々とあってな……」

「……それはこんなに遅くなったことと関係あるのか?」

「あぁ、そうだな」

「……むぅ」

なぜか小鳩は頬を膨らませて、不満気にこちらを見ている。
何か悪いことを言ってしまったのだろうか。

「あんちゃん、もしかして……デート?」

「ぶほっ!!!」

予想外の言葉に、俺は思わず吹き出してしまった。

「い、いきなり何言ってんだよ小鳩」

「だ、だって、あんちゃんが美容院なんておかしいんじゃ!」

「あー、まぁ確かにな……」

さて、どうするか。
素直に本当のことを言うのがいいのかもしれないが、それだとまた小鳩に何か勘違いをさせてしまうかもしれない。


どうする? >>752
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 21:47:47.18 ID:tdYxKA4SO
おしゃれしたくなっただけ
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/21(火) 22:07:30.34 ID:+LQxcAYVo
二回連続はダメじゃなかった?
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/21(火) 22:13:27.94 ID:WsTnOHzXo
女の子にもてたいから
755 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 22:18:36.46 ID:g/v3slEao
そうだね、連続で安価取るのはナシ。確かスレの上の方で書いた希ガス

再安価>>756
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/21(火) 22:22:42.81 ID:4hPUbPdIO
デートだよ
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/21(火) 22:23:28.70 ID:WsTnOHzXo
第一印象が良ければ友達が出来るらしいから変えてみた
758 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 23:55:10.51 ID:g/v3slEao

ここは適当に言って、この話は早く終わらせた方がいいかもしれない。

「あぁ、デートだぞ」

「ッ!!! だ、誰と!?」

「夜空。まぁ別に少し出かけただけだけど……」

「……あの黒髪か。我が眷属を誑かすとは放っておけん…………」

「おーい小鳩? おーいってば」

それからしばらく小鳩はブツブツと何かを言っていた。
嫌な予感がしたが、どうしようもないのでとりあえず放っておいてみることにした。



***



次の日、理科室で髪を切った夜空を見た皆の反応は、

「えっ、ちょ、あんたどうしたのよ夜空!!」

「おぉ、これは大胆にイメチェンしましたね夜空先輩」

「あねご、よくお似合いです」

「あははははは、夜空が禿げた! いだだだだだだ、ごめんなさいごめんなさい!!」

大笑いを始めたマリアの頭を、夜空がグリグリやっている。
星奈はそんな夜空をじっと見て、

「あ、もしかして失恋した? それで髪をバッサリっていう人は多いみたいだけど。私の持ってるゲームにもそんな子居るし」

「…………黙れ肉」

「えっ!? もしかしてホントにフラれたの!? あはははははははははは、よくやったわ小鷹!!!」

「おい待て、何で俺がフッた事になってんだよ」

「そりゃ夜空が告白する相手なんてあんたくらいしか居ないじゃない。くくくっ、いや、それにしても傑作だわ!」

バチン! と星奈の顔面にハエ叩きがブチ当たった。

「いったああああ!!! 何すんのよ!!!」

「私はフラれてなどいない」

「じゃあ叩かなくてもいいじゃない!」

「貴様の笑う姿がただ不快なだけだ。貴様は泣き叫んでいる姿がお似合いだ」

「んな事ないわよ!!!」

なんだかんだ、夜空の髪型が変わっても理科部は全く変わらない。
俺はなんだか、それが面白くてクスリと笑う。

「そういえば小鷹。お前、結局髪は整えてきていないのか?」

「ん、あぁ。ちょっとやってみようかとも思ったんだけど、やっぱ面倒くさくてさ」

「はは、お前らしいな」

「え、どういう事ですか?」

理科が首を傾げて尋ねてくる。
別に隠しておくことでもないと思った俺は、素直に話そうと口を開く。


だがその前に、ガラガラ、と理科室の扉が開かれた。
 
 
759 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/21(火) 23:57:06.79 ID:g/v3slEao


全員の視線がそちらに集中する。
ドアの向こうに居たのは――――。

「小鳩!?」

「ククク、我が眷属よ。今宵もこのような場所にいたか」

「何を言っているのだ? 今は昼なのにバカだなー」

「う、うるさい、子供のくせに!」

「なっ、オマエだって子供じゃないか!」

「うちは中学二年生じゃ!!!」

なぜかいきなりマリアとケンカになっている小鳩。
それよりも、今は小鳩がここに居る理由だ。

「おい小鳩、何でここに――」

「かわいいいいいいいいいいいいいいい!!! なにこれ、天使!?」

俺の声を遮ったのは星奈だ。
血走った目でハァハァと荒い息を吐いて、両手を前に突きだした状態で小鳩の方にゆっくり歩いて行っている。
まさにゾンビのようだ。

「ひっ!!」

「げへへへ……ねぇねぇ、お姉ちゃんにお名前教えてちょうだい……?」

「あ、あんちゃん……」

小鳩はすっかり怯えて俺の後ろに隠れてしまった。
確かに今の星奈はそれほどヤバく、たぶん知り合いじゃなかったら通報していたのかもしれない。

「落ち着け、星奈。こいつは小鳩、俺の妹だ」

「あはは、何言ってんのよ小鷹。あんたの妹がこんなに可愛いわけがないじゃない」

「ホントだって……」

俺の言葉に、後ろで小鳩もコクコクと頷く。
それに驚いているのは理科と夜空と星奈だ。

「そういえば先輩は一応ハーフでしたね。でも兄妹でこんなに違うなんて……小鷹先輩の方は突然変異なんじゃないですか?」

「小鷹と並んでいると、例え兄妹でも犯罪臭がすさまじいな」

「ほんと、神様って残酷ね」

酷い、酷すぎる。
あまりの物言いに、俺は反論する気もなくし、ただ落ち込む。

そんな俺に、幸村がニコリと微笑む。

「あにき、元気を出してください。わたくしは少しもあにきの言葉をうたがってなどおりませぬ」

「幸村……」

あぁ、そうだ、この変人だらけの理科部にも良心はあった。
それは暗闇の中で一筋の光を見つけたかのような感覚だった。

「例え血の繋がりはなくても、さかずきをかわせばきょうだいです」

「血の繋がりあるから!!!」

「ははは、ごじょうだんを」

「冗談じゃねええええええええええ!!!」

前言撤回。やっぱり理科部には救いはなかった。
 
760 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/22(水) 00:00:24.95 ID:uifvkVtqo

そんな俺達をよそに、小鳩はとある方向をじっと睨んでいた。
その先には……夜空が居た。

「ん、どうした、小鷹の妹」

「……昨日あんちゃんとデートしたって聞いた」

小鳩の言葉に、一瞬理科室が沈黙に包まれた。
そして。

「えっ、ちょ、抜け駆けですか夜空先輩!?」

「あねご……?」

「へぇ、あんたにしては積極的じゃない」

「おぉ、デートとは聞いたことがあるぞ! つまり小鷹と夜空は結婚するのか大人だなー」

「け、結婚なんかせえへん!!!」

一斉にそれぞれが口を開いた。
小鳩なんか、マリアの言葉を本気で返している。

俺はチラリと夜空を見る。
元々デートなんて言ってしまったのは俺だ。ここはとりあえず夜空に説明して……なんて思っていると。

「……デートではない」

夜空は静かに目を閉じて口元に笑みを浮かべた。
それはこの賑やかな空間では浮いている、とても穏やかな様子だった。

それに対して、小鳩は腑に落ちない顔をしている。

「えっ、でも……」

「私と小鷹は友達だからな。少し私の用事に付き合ってもらっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない」

「そ、そうなの?」

「あぁ、そうだ」

夜空は少しも動揺している様子も見せず、あまりに淡々と話す。
それに対して、小鳩は困ったように俺の方を見る。
俺は一回だけ頷いてみせた。

それを見た小鳩は明らかに安心した様子で、

「……ククク、全く我に余計な心配かけおって。まさか貴様が本当に人間の女なんぞに誑かさられのかと思ったぞ」

「お前俺まで吸血鬼設定にしてるだろ……」

「やだ何この子イタい!! そこがまた可愛い!!!」

「はっ、吸血鬼って知ってるぞ怖いやつだ!!」

「その通りだ神の手先よ。貴様達人間は数千年の長きにわたって我々を恐れ続けている」

「ワタシはオマエなんかに負けないぞ!! くらえ十字架バスター!!!」

「いたっ……!!! く、ククク、そんなもの我には効かぬからやめておけ……いたっ! だ、だから効かぬと…………止めろゆうとるじゃろアホー!!!」

「こらマリア!! あんた天使に何やってんのよ!! でも十歳児にマジギレする小鳩ちゃんもかわいいいいいいいい!!!」

「オマエは天使なのか吸血鬼なのかどっちなのだ!!!」

なんかどんどん収集不可能な事になってきており、俺は頭を抱える。
 
761 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/22(水) 00:01:01.14 ID:uifvkVtqo

ここは理科と夜空と幸村にも協力してもらおうと、そちらの方を向いた。
そこでは、なぜか理科と幸村がじっと夜空のことを見ていた。

「夜空のあねご。どうしましたか?」

「ん、お前こそどうした幸村。私はいたって普通だが?」

「それはウソです。普通なら夜空先輩が小鷹先輩との関係の事であれほど冷静にいられるはずがありません」

「はっ、一体何を言って……」

「……あくまでごまかす気ですか。いいでしょう」

理科は溜息をつくと、今度は俺の方を向いた。
その瞳は、どこか責めるような光を宿している気がする。

「小鷹先輩、昨日夜空先輩と何かありましたね?」

「……えっと」

これはちゃんと話すべきだろうか?


>>762
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 00:02:00.43 ID:daEum+NSO
暴露
763 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/22(水) 00:02:57.20 ID:uifvkVtqo
眠いからこの辺でー。最近すぐ眠くなって深夜アニメも録画でしか観れないわ
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/22(水) 00:02:58.12 ID:na1KFF0To
ここは男らしいのな
765 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/22(水) 10:10:13.23 ID:uifvkVtqo

俺は正直に全部話すことにした。
たぶん中途半端にごまかしても、理科が相手だとすぐにバレてしまうと思ったからだ。

話し終えると、理科と幸村がジト目で見てきた。

「……あにき」

「な、なんだよ?」

「もうなんか鈍感もここまで来ると暴力ですね。とりあえず、夜空先輩には土下座して頭を踏んでもらってください」

「はい!? え、いや、俺、そこまで酷い事したのか!?」

「はい、そりゃもう。理科としては夜空先輩と小鷹先輩がイチャつくのは複雑な気持ちですが、さすがにこれは夜空先輩が可哀想です」

確かに夜空の様子がどこかおかしい気はしたが、知らない内にそこまで酷いことをしていたとは思わなかった。
俺はかなり罪悪感を覚えながら、おそるおそる、具体的に何をしてしまったのか尋ねようとする。

しかしその前に、理科は疲れたように溜息をつくと、部室に居るみんなに向かって口を開いた。

「すみません、みなさんちょっと理科の実験に付き合ってもらえませんか?」

「実験?」

「はい、また企業のための太陽光発電の装置なんですけどね。一人だとしんどいのでお願いします」

「えー、この暑い中外にー?」

「あ、それなら星奈先輩には別の装置の実験台に……」

「行くわよ行けばいいんでしょ!」

以前の悪夢を思い出したのか、星奈は態度を一変させる。
他の部員たちも特に嫌がらずに理科についていく。マリアなんか楽しそうだし。

しかし、小鳩は立ち止まったままだ。

「……我は部員とやらではないので、付き合う義理などない」

「ほう、それでは理科が部活で小鷹先輩とニャンニャンしても構わないと?」

「そんなんダメに決まっとる!!」

「それなら素直に部員になるのがいいんじゃないですか? 理科の他にも星奈先輩とか幸村くんとか危ない人はいますし」

「…………くっ、まぁたまには人間どもの戯れに興じてみるのもいいか」

「やったああああああ!!! よろしくね、小鳩ちゅわあああああああああん!!!」

「や、やめ……ッ!! 離れろ人間の分際で……!!!」

そんな感じでどさくさに紛れてちゃっかり部員になった小鳩。
まぁ、俺からは別に反対する理由もないが、星奈のあの様子を見ていると兄として不安な気持ちがあったりもする。

そして俺と夜空も、理科に付いて行こうとするが、急に理科が振り返ってこちらを見る。

「あ、先輩達はここで待機お願いします。PCで少し操作してもらいたいことがあるので」

「なに……? いや、そういうのはお前がやった方がいいだろう」

「まぁまぁ、そんなに難しいことじゃないですから!」

無理矢理押し通される感じで、俺と夜空はここで待機することになった。
これはまさか……と思いながら理科を見ると「ちゃんと上手くやれよ」という目付きで見てきている。
つまり、二人にさせてやるからちゃんと謝れ、そういう事だろう。
 
766 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/22(水) 10:10:56.18 ID:uifvkVtqo

みんなゾロゾロと部屋から出ていき、俺と夜空が二人で理科室に残される。
一瞬の沈黙があったが、その後夜空はすぐに準備室の方へ歩いて行く。
だが、俺がついてこない事に振り返って首を傾げる。

「どうした、タカ?」

「あのさ、ソラ」

「ん?」

ここで俺は悩む。
謝るといっても何と言えばいいんだろうか。
実際の所、俺は夜空に何をしてしまったのか分かっていなく、それでは謝りようがない気がする。
よく分からないけどゴメン、というのも何かアレだし。

…………よし。


>>767
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 10:25:06.07 ID:G5QCa8a/0
明日、二人で飯食いに行かないか?昨日の埋め合わせがしたい。
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/22(水) 10:38:35.75 ID:u6aghhsao
夜空ルート続行www
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 11:00:41.29 ID:d8dEbbAIO
>>767
GJ
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 11:08:47.57 ID:xTD3fRBIo
無理矢理√を壊す奴と作りたい奴がいてワロタwww
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 11:34:50.60 ID:ICTMEXrIO
いやいや、ハーレムのためにまずは夜空を攻略ってことだろ?(超ゲス顔
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 12:19:54.51 ID:AHI92on/0
おっしゃあナイス
原作夜空はカスだけどこの夜空はカワイイ
773 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/22(水) 12:43:09.63 ID:uifvkVtqo

「明日、二人で飯食いに行かないか? 昨日の埋め合わせがしたい」

「た、タカ? い、いや、昨日はあの美容師に言われて仕方なかったと言っていただろう……」

「美容師なんて関係ない。俺は夜空と一緒にご飯を食べに行きたいんだ」

「!!」

そういえば、昨日は夕食を食べに行くのを止めてから夜空の様子がおかしくなった気がする。
そこから、夜空は本当は外食をしたがっていて、興味無さそうにしていたのは照れ隠しのようなものだったと推測する。
確かに友達の少ない人はあまり外食をする機会がない。
といっても、それでも構わず一人で堂々とファミレスに入る人も中には居るようだが。

夜空は顔を赤く染めてモジモジとし始める。

「わ、私とご飯を食べても楽しくないと思うぞ……?」

「そんな事ねえよ。友達だろ?」

「えっ……あ、あぁ、そうだったな!」

夜空は俺の言葉に一瞬複雑そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。
髪を切ってから、彼女は表情豊かになった気がする。これはすごく良い事だと思う。

「よし、じゃあ明日は部活の後にどっかで夕飯食べようぜ」

「……ぶ、部活の後か。ま、まぁいいぞ」

何だかんだ、夜空はいつも通りになってくれた気がする。
これは本当に外食がしたかったという俺の予想があたったのだろうか。

それなら別に二人じゃなくて部員全員で行ってもいい気がしたが、つい二人でなどと言ってしまったのでわざわざ訂正することもないか、と黙っておくことにした。



***



太陽光発電装置の実験も無事終わり、いよいよ今日の活動を始めることにする。
理科室には今では七人も部員がいて、さすがに少し狭い感じがする。
星奈から可能な限り距離を置こうとしている小鳩ががっちりくっついてきてるのも理由の一つかもしれないが。

俺は部員たちをぼんやり眺めて、ふと思ったことを口にする。

「……なぁ、ぶっちゃけ友達作りっていう目的は結構達成できてるよな?」

「甘いですね、小鷹先輩。友達ができても、理科たちには決定的に欠けているものがあります。それも日常生活に支障をきたすほどに大切なモノです」

「なんだそれ?」

「コミュニケーション能力です」

「……あー」

確かに知らない人と話すのは苦手だ。
まぁ俺の場合は、そもそも会話までいけたらいいほうで、大抵はその前に怖がられて逃げられてしまう。
そしてコミュニケーション能力が低いというのは、他の部員にも大抵当てはまる。

友達になろうとまではいかなくても、当り障りのない会話を普通にする。
それくらいは最低限できないとこれから色々苦労しそうだというのは分かっている。
 
774 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/22(水) 12:45:29.59 ID:uifvkVtqo

すると、星奈が自信満々に腰に手を当てて、

「ふん、あんた達と一緒にしないでほしいわね! あたしはそんなの全然問題無いわ!」

「ほう、それならもうこの部にいる必要もないな。卒業おめでとう」

「ちょ、な、何でそうなるのよ!! あたしは出て行かないからね!!!」

夜空の言葉に、星奈が慌てて言う。
星奈の場合は、同じクラスの遊佐の顔と名前もろくに覚えていなかった辺り、コミュニケーションとかそれ以前の問題な気がする。

理科は腕を組んでスタスタとホワイトボードの近くまで歩いて行く。

「というわけで、友達作りの他にも理科達はそういったコミュニケーション能力を向上させていくべきだと思います」

「ククク、くだらぬ。我には念じるだけで全てを通い合わせる手段があるというのに、なぜわざわざそんな人間の言語を使って面倒なことをしなければいけないのだ」

「今まさにその人間の言語ってやつ使ってるけどな」

「小鳩ちゅわあああああああん、あたしとも心を通い合わせましょー!!! ココロコネクトしましょおおおおおおおお!!!」

「や!!!」

「コミュニケーションは大切だな! ワタシなんか高校に行ってた時は『ウザイウザイ』言われてたぞ、あはははは!!」

「わたくしもいじめられないように、こみゅにけーしょん能力を向上させたほうがいいのでしょうか」

相変わらず理科部はそれぞれ好き勝手に騒いでいる。
ていうか、地味にマリアがヘビーな過去っぽいのを語っているが、あまり突っ込むと傷を掘り返してしまいそうなので止めておくことにする。

理科はそんな理科部の面々をまとめようと、大声を張り上げる。


「それでは!! 今日の活動を始めますよ!! まず、何を作りましょう!?」



**************************************



今回作る発明品が>>775-778の中から、>>778の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/22(水) 00:00:00.(00)←ここ

00〜24→>>775
25〜49→>>776
50〜74→>>777
75〜99→>>778
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/22(水) 12:46:46.88 ID:I6fu6ug80
惚れ薬
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/22(水) 12:49:39.69 ID:m1ZpJzsYo
人格入れ替わり機
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 12:53:10.57 ID:T9cwvg/po
性転換する薬
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 12:53:21.93 ID:pa2/kzXIO
さとりヘルメット
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 12:53:39.75 ID:hWBUI7vIO
バンシィ
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/08/22(水) 13:02:38.84 ID:CF+ixJkT0
ついに幸村が真の男になるのか
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/22(水) 13:13:41.95 ID:1bqoBMfjo
>>778だな
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/08/22(水) 13:16:48.53 ID:CF+ixJkT0
意味勘違いしてたわ、サンクス
783 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/22(水) 23:36:58.54 ID:uifvkVtqo

「心を読む機械とかどうかしら? やっぱり、相手の事をちゃんと理解してあげる事が大事だと思うわよ。ここの連中はそれができない奴が多すぎよ」

「例えば貴様とかな肉」

「ふん、あたしはそんな事ないわよ! いつもゲームで鍛えてんだから! 夜空なんて、初めから理解する気もないじゃない」

「何を言っている。私はトモちゃんの事なら全てを理解している」

「んー、まぁ確かにこの部では人の心を読むような発明は何個か作りましたが……」

夜空と星奈の残念な会話は無視して、理科が腕を組んで考える。

「おー、そんなの作ったのか!? ワタシも見てみたいぞ!」

「そんなに大層なものではないですよ。ちょっとした嘘発見器です。えっと、たしかこの辺に……」

そう言って理科がゴソゴソと取り出したのは、制服のボタンくらいの大きさの装置だった。
相手がウソをつくと振動する、理科部ができてから少し経った頃に作ったものだ。
確か、あの時はまだ部員も俺と理科と夜空しかいなかったはずだ。

「おぉ、懐かしいな。小鷹はこれを肉に使ったんじゃなかったか?」

「あー、そういえばそうだった気がする」

「は、はぁ!? いつ!? あたし、そんな覚えないわよ!?」

「えっと…………まぁいいじゃんか」

あの時は確か俺のことを怖がっているか、というような事を星奈に聞いて見事に振動した。
装置自体はポケットの中にしまっていたので、星奈が知らないのも無理はない。
俺としても結構ショックだったので、今になってあまり言いたくない事だ。

「でも、星奈先輩は一度この嘘発見器の改良版の実験体になってもらったじゃないですか。ほら、あのくすぐり機能がついた……」

「……あれは二度と思い出したくないからそれ以上言わないで」

「ん、なんだそれは。私は知らないぞ?」

「あー、そういえばその時はちょうど夜空先輩は居なかったんでしたっけ。いやー、惜しかったですね。面白かったですよ、あの時の星奈先輩。
 なんたって、ウンコ――――」

「だから言わないでって言ってんでしょうがああああああああ!!!」

即座に大声で遮る星奈。
俺もあれはハッキリと覚えている。終いには星奈が泣きだしてしまって大変だったが。

一方で、マリアは嘘発見器を興味津々に眺めており、小鳩はそれを見てせせら笑っている。

「ククク、くだらぬ。そんなものを使わなくても、我ならば一瞬で人の心を読むことができるぞ」

「ウソつけ吸血鬼め!」

「ウソではない。我が眷属よ、貴様は我の事を大切に思っているな?」

「え……あぁー、まぁな」

「どうだ、見たか神の手先め」

「な、なんだと!? まさか本当に人の心が読めるのかオマエ!!」

なんていうか、マリアは勉強はできるようだが、それ以外に色々学ぶべきことがたくさんあるようだ。
これでは飛び級制度というのも考えものだなぁ、なんて思う。
 
784 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/22(水) 23:39:05.99 ID:uifvkVtqo

すると、幸村は小鳩の方をじっと見て、

「……あにきの御心がわからぬわたくしはしゃてい失格です…………」

「いやいやいや、普通分かんねえから」

幸村も妙な所で抜けている。
俺はとりあえず話を戻そうと、理科の方を向く。

「けど星奈の言う通り、嘘発見器とか回りくどいものより、直接心を読む機械のほうがいいよな」

「簡単に言ってくれますね……まぁ理科もあれから密かに色々考えていたんで、作れなくもないとは思いますが……」

「え、マジで?」

「はい、たぶん。あれですね、ドラえもんの道具の『さとりヘルメット』的なものならいけると思います」

「さとりヘルメット? なによそれ」

「半径三十メートル以内の人間の思考を読むことができる機械です」

「……そ、そんなものが作れるのか?」

夜空はなぜか気が進まない表情で尋ねる。

「えぇ、使い方としては例えば小鷹先輩がヘルメットを被って、夜空先輩に『俺のこと好きか?』って聞きます。
 すると、たとえ夜空先輩が何も答えなくても、その返事を聞くことができるというわけです」

「そんなのダメだ!!!///」

「えー、他のみなさんもイヤですか?」

そう言って、理科は部屋を見渡す。
夜空以外には特に反対する者もおらず、楽しそうだと思っている者が多いようだ。
マリアなんて、まるでクリスマスイブの夜のようにワクワクしている。

「はい、それでは多数決で決定です。次の発明は『さとりヘルメット』です!」

「ぐっ……!」

夜空は見るからに不満そうだったが、結局それ以上は何も言えなかった。



***



その日の夜。
そろそろ寝ようかなーなどと思いながら、ベッドの上で漫画を読んでいると机の上のケータイがブーブーと鳴った。
俺は家でもマナーモードは解除しない。学校に行く時に設定し忘れそうだからだ。

ケータイを開いて確認してみると、夜空からのメールだった。


『明日は部活に行くのか?』


理科が発明品を作っている間は活動らしい活動はできないのだが、それでも何となく集まっている理科部。
だが、当然やることと言ったらダラダラ本を読んだりゲームをやったりと、ただ遊んでいるだけだ。

それでも、夜空からこういうメールが送られてくることは珍しい。
そういえば明日は部活帰りに夜空と夕飯を食べに行く約束をしているので、そこら辺が関係しているのだろうか。

さて、何て返そう?


>>785
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 23:39:47.04 ID:daEum+NSO
眠い
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/22(水) 23:42:45.17 ID:8MKcIHMF0
フラグへし折りよったわこやつめ
787 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 00:05:10.29 ID:uNLtxZRSo

……ダメだ眠い。
俺はとりあえず「眠い」とだけ打って送信し、そのまま寝ることにした。



***



次の日。
理科部には全員が集まってきており、案の定をダラダラして過ごした。
それと、何やら小鳩の夏休みの宿題が少しヤバイらしかったので、みんなで手伝ったりなんかした。
星奈は小鳩の役に立てるのが余程嬉しかったのか、終始ハイテンションで暴走して夜空に何度もひっぱたかれていた。

時々準備室の方から理科が顔を出し、「先輩成分を補充させてください!」などと言いながら抱きついて来るのを、夜空と小鳩が迎撃するというのも何度かあった。
まぁ、意味分からない事を言っているのは相変わらずだが、それでもどこか疲れている様子だったので、リポDとかを持って行ってやると喜んでもらえた。
さすがフラグ建築士などと言われた気がするが、良く分からないのでスルーした。

そんなこんなで、もう夕方だ。
理科室はオレンジの光で満たされ、部員それぞれが帰り支度を始めていた。

「どうした、我が眷属よ。早く我らの城へと戻るぞ」

「城!? 小鷹と吸血鬼は城に住んでるのか!?」

「違う違う、普通の家だよ」

目をまん丸にして驚くマリアに説明する。
まさかここまで小鳩の言葉を本気にするような者がいるとは。
小鳩は小鳩で、ここまで本気の反応をしてくれるのが楽しいらしく、満足気に笑っている。

しかし、ここで少し困ったことになった。
小鳩は早く帰ろうと俺を急かしているが、俺には夜空との約束がある。
チラリと夜空を見ると、彼女の方も俺の方をチラチラと見ていたようで、バッチリ目が合ってしまった。
そしてすぐに夜空はバッと目を逸らしてしまう。

……小鳩には何て言おうか?
元々、冷蔵庫の中には温めるだけで食べられるものを入れておいたので、食事の面では問題ない。
だが、俺が外食だということを聞いたら絶対ついてきたがるだろう。
まぁ、ぶっちゃけそれでも問題ないとは思うが。

よし、決めた。


>>788
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 00:07:27.56 ID:dHb75IiIO
ちょっと用事があるから先帰っててくれ、すぐ帰るから
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/23(木) 00:07:27.79 ID:h+aOrkp80
理科と留守番しとけ
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/23(木) 00:09:12.64 ID:U8pHhmQR0
今日はちょっと用事あるから一人で飯食ってくれないか
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 00:14:35.13 ID:8t8zXOHO0
これを繰り返しても攻略出来るあたり、二次元の女ってのは本当にパネェ
792 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 00:46:36.84 ID:uNLtxZRSo

「ちょっと用事があるから先帰っててくれ、すぐ帰るから」

「む、用事とはなんだ?」

「いや、ホント大したことじゃないからさ」

「ふむ……そうか」

小鳩は少し疑わしげな目を向けてきたが、それ以上追求せずに部屋から出ていった。

上手くいった。
とりあえずすぐ帰ると言っておけば、そこまで深く追求されないだろうとは思っていた。
それでその後、用事が長引きそうとか何とか連絡すればいい。

部屋には俺と夜空の二人きりになっていた。

「よし、じゃあとりあえず駅前行くか?」

「あ、あぁ、そうだな///」



***



夕日に染まった駅前の街並みには、それなりに大勢の人々が歩いていた。
俺達と同世代くらいの集団が楽しげに話していたり、主婦のおばさんたちが夕飯の買い出しに来ていたり。

俺と夜空は微妙な距離を空けて並んで歩いていた。

「ソラ? なんか今日は静かじゃないか?」

「そ、そうか? えっと、人混みは少し苦手でな」

「そうなのか……悪いな、とりあえずどっか人気のないところに行くか?」

「ひ、人気のないところ……?」

「ん? あれ、なんかこの言い方だとあれだな……。あ、あのな、ソラ? 別にそういう意味で言ったんじゃなくて、本当にただ人混みから出ようっていう…………」

「わ、分かってる!」

俺は若干焦りながら、ケータイに視線を戻す。
俺達の間に会話が少ない理由の一つに、こうやって俺がさっきからケータイをいじっている事がある。
というのも、先程小鳩に「用事が長引きそうだから、先にご飯食べててくれ」というメールを送った所、何の用事かとしつこく聞かれているのだ。
「大したことないから」とだけ送って後は放置しようとも考えたのだが、それでも何度も何度もケータイが振動し、マナーモードでもかなり気になる。
それならケータイの電源自体を消せばいいのかもしれないが、それでは本当に緊急の時に対応できない。

そんなわけで、俺は小鳩から送られてくるメールを一つ一つきちんと読んでいるのだった。

「……妹からメールか?」

「あぁ……何してるのかってメチャクチャ聞いてきててな」

「そういえば、タカは先程妹にすぐ帰るとか言っていたが……その、食事だけに集中してすぐ済ませるつもりなのか……?」

「え?」

「あっ、いや、違うぞ!? 別に私は朝まで一緒に居たいとか考えているわけではない!!
 ただ、食事というのは落ち着いてするものだと思うし、その、色々話す事とかも…………」

「あぁ、それは小鳩に大人しく帰ってもらうために言っただけだ。俺もソラとは話したいことが沢山あるからな。十年前のこととか、今話すと結構面白そうだしさ」

「そ、そうか……///」

だが、差し当たっての問題はこの小鳩からのメール爆撃だ。
しかもどんどんヒステリックな内容になっており、最初の方はレイシス状態の内容だったのだが、今ではすっかり素に戻っている。
たぶん、メールが電話に変わるのも時間の問題だろう。


どうする? >>793
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 00:47:47.90 ID:gdJKh4USO
携帯折る
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/23(木) 00:55:30.50 ID:c9464pw7o
それやるなら電源切れよwww
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 01:02:55.24 ID:cRBzZy9IO
小鷹の携帯って確かガラケーの折り曲げるタイプのやつだよな
796 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 01:16:34.81 ID:uNLtxZRSo

パタン……。
ついに俺はケータイを折り畳んだ。
まぁ、緊急の時は電話してくるだろうし、その時出れば――――。


ブブブブブブブ!!!


俺がそんな楽観的な事を考えた直後、ケータイが今までとは違う震え方をする。
これはメールではなく電話だ。
ケータイを開いて確認すると、案の定相手は小鳩だった。

「……悪い、ソラ。妹から電話だ」

「あぁ、私は構わないが……大丈夫か?」

「正直わかんねえ……」

そう言いながら、俺は通話ボタンを押した。

「も、もしもし?」

『あんちゃあああああああああああん!!!!!』

キーン!! と、あまりの大声に俺はケータイから耳を遠ざけた。
どうやら今の声は夜空の方にも聞こえていたらしく、目を丸くして驚いている。

「こ、小鳩!? 何かあったのか!?」

『あんちゃん何してるとぉぉ――――!? うちのあんちゃん返せアホ――――ッ!!!』

「お、落ち着け小鳩!!」

ヤバイ、なんか凄い泣いてる。
こんな事、万が一父さんに知られたりしたら絶対ぶん殴られるだろう。

とにかく何とか落ち着かせないと。


>>797
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 01:19:09.55 ID:uyNxDgsMo
どうした?落ち着け
798 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 01:37:50.63 ID:uNLtxZRSo

「どうした? 落ち着け」

『うぅ……ひっく…………!!』

「あー、えっと、小鳩?」

『あんちゃん……今どこにいるの……?』

「どこって……それは…………」

小鳩の言葉に、俺は口ごもる。

『すぐ帰るって言ったのに…………』

「あ、いや、初めはすぐ帰れると思ってたんだけどなー、あはは……」

『ぐすっ……あんちゃん、絶対夜空って人と一緒にいるけん…………!!』

「いっ!?」

なんでバレた。
俺は困惑して思わず夜空を見るが、彼女は首を傾げる。
どうやら今はもう小鳩の声の大きさも小さくなったので、声も聞こえていないのだろう。

『うち、嫌じゃ……あんちゃんが他の女となんて…………ッ!!』

「えっと、その、小鳩……?」

こんな状況を打開する方法など存在するのだろうか。
もし仮にあったとしても、たぶん友達が少ない俺には思い付かない気がする。


どうする? >>799
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 01:39:48.31 ID:gdJKh4USO
夜空に謝ってすぐ家に帰る
800 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 01:45:53.27 ID:uNLtxZRSo
今日はここまで。おやすみ
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/23(木) 01:51:24.81 ID:sT135U/5o

小鳩ルート入りも近いな
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 01:53:29.14 ID:cRBzZy9IO

小鳩ウザ可愛い
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 02:16:28.64 ID:E5IDibyYo
小鳩ちゃんカワユス。ハァハァ
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 07:51:24.68 ID:yzHeNOAIO
おつー

>>803
肉はお帰りください
805 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 10:14:29.50 ID:uNLtxZRSo

「……分かった、今すぐ帰るよ」

『ほ、本当……?』

「あぁ、だからもう泣くなって」

『絶対!? すぐ帰ってくる!?』

「帰る帰る」

『……うん、じゃあうち待っとるけん』

小鳩は何とか落ち着いた様子になったみたいなので、電話を切る。
そして夜空の方を見ると、彼女は少し悲しそうな顔をしていた。
しかし、すぐに笑顔になって、

「は、はは……妹は本当にタカの事が好きみたいだな。まぁ、そういう事なら仕方ないだろう、今日は……」

「悪いソラ、夕飯はウチで食うってのでいいか? ちょっと小鳩が大変なことになっててさ」

「えっ……?」

「やっぱダメ……か?」

「い、いや、全然構わないぞ!」

夜空は大慌てでそう言う。その表情は安堵に満ちていた。
俺はもう一度夜空に謝ると、家に向かって歩き始める。夜空もちゃんと隣に居る。

二人の間は、先程よりも少し狭まっていた。
 
806 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 10:17:11.61 ID:uNLtxZRSo



***



家に帰ると、案の定ムスッとした小鳩が待っていた。
その視線の先には夜空が居る。

「……なんでその人もいるんじゃ」

「ん、あー、ほら、たまにはいいじゃんか。友達なんだし」

「本当に友達……?」

「あぁ、そうだって」

小鳩は疑わしげな目でこちらを見ている。
夜空はそんな小鳩を優しい瞳で見つめながら口を開く。

「実は私達はな、幼馴染なんだ」

「えっ!?」

「お、おい夜空?」

俺と夜空が幼馴染だという事は部員には言わないという事にしていたはずだが、夜空はあっさりと白状してしまった。
本当は隠すことでもないとは思うが、わざわざ自分達から言うことでもないと思ったのだ。なんかちょっと恥ずかしいし。
俺は驚いて夜空を見るが、本人はさして気にしていない様子だ。

「まぁ妹くらいには言ってもいいだろう」

「そ、そうか……?」

「ほ、本当? あんちゃんと……」

「あぁ、十年前に小鷹がここに居た時によく遊んでいたんだ。友達としてな」

「じゃあ、その、こ、恋人になろうとか思ってない!?」

小鳩がすがるように夜空に尋ねた。
さすが夜空だ、これで何とか小鳩の誤解が解けそうだ。

夜空はまっすぐ小鳩を見つめて口を開く。



**************************************



夜空の返事が>>807-809の中から、>>809の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/23(木) 00:00:00.(00)←ここ

00〜39→>>807
40〜69→>>808
70〜99→>>809
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/23(木) 10:19:40.42 ID:jO3PQg1Po
少し興味はあるな(暗黒微笑)
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/23(木) 10:21:07.65 ID:471X5dNu0
こちらこそよろしく
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 10:40:43.03 ID:Yoa9RqzIO
そ、そんな恋人とか‼(赤面)
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) :2012/08/23(木) 10:41:21.56 ID:y0UWWJHR0
えっ/////
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 11:20:24.70 ID:cRBzZy9IO
さすが夜空先輩パネェっす
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 12:10:45.94 ID:jmo7Wsf50
やったあー夜空派の俺歓喜
813 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 12:21:40.99 ID:uNLtxZRSo

「少し興味はあるな」

「えっ!?」

「ぶっ!!!」

まさかの夜空の返答に小鳩は再び警戒心をあらわにし、俺は吹き出す。
夜空はそんな俺達を悪い笑みを浮かべて楽しそうに見ている。

「や、やややややっぱりあんちゃんと恋人になろうとしてる!!!」

「くく、何をそんなに慌てている? 恋人といえば、友達のさらに先にあるもの。興味があるのは当然だろう?」

「い、いや、確かにそうだけど意味が違うっていうか……つーか夜空! せっかく小鳩が落ち着き始めてたのに何言ってんだよ!」

「なんだかからかいたくなってな」

やっぱり夜空はどこまで行っても夜空だった。



***



夕食には小鳩の好きなハンバーグが並んでいた。
ただ、それだけでは健康的ではないのできちんと野菜のサラダもつけている。

いつもならハンバーグを見た瞬間大喜びな小鳩なのだが、珍しいことに今は違う。
小鳩から見てテーブルの向かい側、俺の隣に座る夜空を敵意のこもった瞳でじっと見て警戒している。
なんとも食事時にしては嫌な雰囲気に俺は居心地の悪さを感じるが、夜空は気にせず淡々と食べている。

「これは美味いな……私の母親よりも料理の腕があるかもしれない」

「夜空は料理とかしねえのか?」

「私がすると思うか?」

「家庭科の授業とかどうしてたんだよ?」

「……聞かないでくれ」

「わ、分かった」

トラウマをえぐられたのか、夜空の表情に影が落ちる。
その状態で自嘲気味に笑っているその姿は純粋に怖い。

「あんちゃん、おかわり」

「おう、ちょっと待ってろ」

俺は不機嫌そうな小鳩から茶碗を受け取ると、炊飯器まで歩いて行く。
その間に、夜空が小鳩に話しかける。

「その目はどうなっているのだ?」

「……カラコンじゃけん」

「ほう、コンタクトレンズとは私にとっては恐ろしいものでしかないのだがな……。目に異物を入れているわけだし」

「慣れれば平気……ていうかジロジロ見すぎなんじゃ」

「赤と青、どっちが元々の眼の色なんだ?」

「青に決まっとるやろ!」

小鳩がムキになるのを見て、夜空は満足気に笑う。
やはりマリアへの態度といい、夜空は子供が好きでこうやってからかっているのだろう。
まぁ小鳩からしてみれば、それはつまり小鳩も十歳児のマリアと同じ扱いを受けているというわけであり、それに気付けばさらに怒り出すと思うが。
 
814 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 12:23:32.48 ID:uNLtxZRSo

俺は小鳩に茶碗を渡しながら席につく。

「小鳩のこの目はアニメの影響なんだ。俺も最初は目も悪くないのにコンタクトなんてどうかって思ったんだけどな」

「確かに戦隊物のヒーローの真似事をする子供は沢山いるが、カラコンまでするのは珍しいな」

「……そこらのにわかとは違うんや」

小鳩が口を尖らせてそう言う。
にわかとかとは問題が違うような気がしたが、あまり深く突っ込まないでおく。

夜空は今度は俺の方をじっと見て、

「小鷹の目の色は普通なんだよな」

「あぁ、外見的なもので俺が母さんから受け継いだのはこの髪くらいだしな」

「ち、近いんじゃ二人とも!!」

急に小鳩が大声を出したので、俺と夜空はビクッとなって離れた。
どうやらいつの間にか至近距離で見つめ合っているような状態になっていたらしい。

夜空は頬を染めて、モジモジとする。

「わ、悪かったな///」

「あ、いや、俺の方こそ気付かなかった……」

「むぐぐぐぐぐぐ…………!!」

俺達が妙な雰囲気にお互い気まずそうにそう言うのを、小鳩は恨めしげな目で見ていた。



***



「それでは、私はそろそろお暇しよう。今日はごちそうになった」

夕食の後少しして、夜空はそう言って立ち上がった。
確かに時間的にはもうお風呂に入る頃だ。

俺も夜空と同じように立ち上がる。

「送ってくよ」

「いや、いい。一人で大丈夫だ」

「こんな時間に女の子を一人で帰らせる訳にはいかないだろ」

「お、女の子…………わ、分かった、それなら頼もうか…………///」

夜空はなぜか顔を赤くして、それでいてどこか嬉しそうにしている。
すると小鳩が不機嫌そうな表情で、

「うちも一緒に行く」

「え、でもお前風呂入ったばっかだろ?」

「べ、別にいいもん!」

「……あー、小鷹。妹は私とお前が一緒に居るというのが嫌なんだろう。やっぱり私は送ってもらわないでも……」

「それはダメだっての」


さて、どうしようか? >>815
 
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/23(木) 12:26:02.57 ID:h+aOrkp80
仕方ない、夜空には一人でかえってもらおう
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 12:31:22.12 ID:FgK02ZiDO
ここは家に泊まってもらう展開だろ畜生
ファック千葉県
817 :名無しNIPPER [sage]:2012/08/23(木) 12:50:27.90 ID:54dYkJkJ0
千葉県は基本クソ安価ばかりだな
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 13:19:34.33 ID:jmo7Wsf50
千葉県民は死んでどうぞ
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 13:59:54.21 ID:gdJKh4USO
一緒にいると妹が嫌がるようなのを家にあげた上にそれ以上何かやるのは兄失格だ。千葉はよくやった
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 14:07:52.17 ID:XCqaimng0
友達だよ、今はな
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 14:09:14.78 ID:XCqaimng0
リロしてなかった
あぶねえ
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 14:24:44.78 ID:aQu/ssMpo
千葉ディスられててワロタ
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 14:25:46.25 ID:SCtotleIO
夜に女の子一人帰らせるほうが常識としてどーなのよと
つか末尾SOは発言とか安価の傾向から単に夜空嫌いなだけだろ
安価の内容に文句言うつもりはないがキャラアンチっぽい発言はマジやめれ。本気でイラッてくるから
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 14:48:38.08 ID:gdJKh4USO
はぁ?別に夜空は嫌いでも好きでもないですが?気に入らない安価だからと千葉とかを叩いたりするのは気に食わねーけどな
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 14:55:48.98 ID:XCqaimng0
安価スレに常識とか的外れもいいところ
そもそも鬼畜安価ってわけでもないし問題ないじゃん
これが信者って奴か
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/23(木) 14:56:33.20 ID:sT135U/5o
落ち着け
もうちょっとドラマチックなハチャメチャが押し寄せてくる様な
話を広げれるような安価にしたいってことでしょ
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 14:59:14.74 ID:XCqaimngo
なら安価とればいいだけっしょ
そういうスレだし
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/23(木) 15:02:09.02 ID:hdiF6eWI0
いたちごっこみたいな事をだらだら続けるよりかは、誰かの浮ノ入った方が面白いと思うが。
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 15:36:10.22 ID:gdJKh4USO
だから皆が皆そう考えてる訳じゃねーんだよいい加減にしろ何をどこまでやったら誰の√入りかは>>1が裁量で決めるんだから要らん心配すんな。
自分が望む展開の安価をとればいいのに何誘導みたいな事してんだ俺にキャラアンチどーのこーの言う前にテメーが一番黙ってろ
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 15:41:38.85 ID:XCqaimngo
ほんとそれな
安価の醍醐味


妹に爆弾しかけるとかそういう安価もうまくやってんだからいらん杞憂
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 16:17:24.37 ID:SCtotleIO
>>829
>>1ならともかくなんでお前に黙れとか言われてんの俺?wあと俺は別に文句も誘導もしてないんだが
問題にしてんのは遠回しにキャラをディスる発言は控えろってことだよ日本語理解してるか?
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 16:22:23.57 ID:XCqaimngo
目くじらたてる程のレスじゃないだろ?いいから黙っとけって



あと単芝やめろ
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 16:36:06.17 ID:SCtotleIO
まあそうだな
空気悪くしちゃったし今日はもうROMるわすまんこ
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/08/23(木) 17:15:52.76 ID:5cDOlseJo
みんなそうやって争ってる間に話題に上がるヒロイン全員もらってくよ?

ハーレムルート!!
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 17:39:02.15 ID:HGIjb9qIO
千葉は関係ないだろ!
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/23(木) 17:45:35.02 ID:h+aOrkp80
空気読めてなかった俺が悪かったよすまんこ
ROMってるわ
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 17:47:00.58 ID:XCqaimngo
千葉いいところだからまじで
海があって山があって自然がいきてる
夏はちょっと暑いけど冬は温暖ですごしやすい
シーワールドとかマザー牧場とかレジャー施設も充実してるし食べ物も美味しい
鴨川にある病院は世界レベルの心臓外科医がいる
東京にも近いから交通の便もいいしな

838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 17:47:25.72 ID:cV5BezZDO
ハーレムってなにを楽しめばいいんだ?
主人公の鈍感さを見て笑えばいいのか?
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 18:47:40.81 ID:gEG0Af/z0
ID:XCqaimngo
レス多い
ちょっと控えろ
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2012/08/23(木) 19:01:29.16 ID:nuUmr2vAO
>>838
足を引っ張り合うのを止めれば自然とハーレムになるってだけの話
だから一番損する奴が少ないのがハーレム
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 21:51:54.87 ID:b1jc9iBIO
みんなの幸せ目指してToLOVEるダークネスを見習えってことだな
842 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 23:01:38.16 ID:uNLtxZRSo

「小鷹、少し耳を貸せ」

「え?」

夜空はそう言うと、俺の耳元に口を近づける。
俺の耳に夜空の息が当たって、なんだかムチャクチャこそばゆい感じがする。
そして、小鳩の視線が痛い。

「(タカの妹は、私とお前を二人きりにさせないように無理して行こうとしているんだ。兄として、そんな妹の気持ちくらい察してやれ)」

「(……でもお前は)」

「(私は高校二年だぞ? お前が気遣うべきなのは私よりも妹の方だろう)」

「(…………)」

「(タカ)」

「(……あぁ、分かったよ)」

俺は溜息をつく。
気は全然進まないが、ここまで言われたら引き下がるしかないだろう。

俺は夜空から少し離れて口を開く。

「……じゃあ仕方ねえから、夜空には一人で…………」

「あんちゃん、さすがに女の人一人で帰らせるのはダメじゃ」

「え?」

小鳩の意外な言葉に俺は思わず間抜けな声で聞き返してしまった。
そして夜空も俺と同じように驚いた表情で小鳩を見ている。

小鳩は居心地の悪そうに目を逸らして、

「そ、その、これで途中でその人に何かあったら目覚めが悪くなるけん……」

「…………あぁ、そうだな。というわけで夜空、やっぱり俺達が送ってくよ」

俺は小鳩を見て微笑ましく思いながら夜空にキッパリとそう告げる。
確かに小鳩のことも気遣わなければならないのは事実だが、本人がこう言っているのだ。
そして、俺はその事がすごく嬉しかった。

夜空は少し戸惑ったように、

「わ、分かった……ありがとう」

とだけ答えた。
そのすぐ後には、優しい笑みが浮かんでいた。
 
843 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 23:07:44.74 ID:uNLtxZRSo



***



俺と夜空と小鳩の三人は人気の少なくなった田んぼの近くの道を三人で歩く。
頭の上には綺麗な星空が広がっており、こういった景色は田舎の特権だと思う。
小鳩は学校で習ったのか、夏の大三角とその近くの星について俺に色々と話している。

俺は相槌を打ちながら、とある事に気付く。

「そういえば、今日はレイシス化しないのか?」

「うっ……」

俺の言葉に小鳩は目をそらす。
いつもの事とはいえ、こうして改めて言われると恥ずかしいのだろうか。

「……そんな余裕ないんじゃ」

「へ?」

「何でもなかっ!」

小鳩は何かをぼそっと言ったが、すぐにそっぽを向いてしまった。
夜空はそんな小鳩の様子を見て微笑みながら、

「小鷹の妹は優しいな」

「な、なんじゃいきなり……」

「お前は私が気に入らない、そうだろう?」

「当たり前じゃ。うちのあんちゃんにちょっかいだして……」

「それでも、そんな嫌な相手でもちゃんと心配はしてくれる。十分優しい奴だ」

「そ、それは!」

「これは小鷹にも通じる所があるな。妙にお人好しな辺りが」

「悪かったな」

「褒めているんだ」

夜空は満天の星空を見上げて小さく笑う。
暗い中で月の光にわずかに照らされたその姿はどこか幻想的で、凄く綺麗に見えた。

小鳩はわずかに俯いて、

「……うちはあんだの事認めてないんじゃ…………」

「はは、そうか……。まぁ私は性格が悪いからなぁ。でも、いずれは認めさせてみせるさ」

「や、やっぱりあんちゃんを……!!」

「そういう事ではない」

ここで夜空は視線を空から小鳩へと移す。
その表情には穏やかな笑みが浮かんでいる。


「私は、小鷹の妹……小鳩とも友達になりたいと思っているんだ」

 
844 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/23(木) 23:13:34.76 ID:uNLtxZRSo

小鳩は呆然と夜空を見る。
今、小鳩は何を考え思っているのだろうか。それは兄である俺にも分からない。
もしかしたら、小鳩自身にも説明できないかもしれない。


それでも、これは単なる俺の願望なのかもしれないが。
小鳩の顔にはどこか嬉しそうな色が浮かんでいるように見えた。


そして、小鳩はふと我に返ると慌て始め、

「う、うちはあんだなんか…………!!」

「ふむ、これは骨が折れそうだな。やれやれ、友達を作るというのは大変なものだ。リア充どもは良くあんなに沢山作ることができるな」

「…………」

「まぁ、お前のことだし俺は何も言わないけどさ。夜空だって嫌な奴ではないから考えるくらいはしてやれよ」

俺は小鳩の頭に手を乗せて撫でる。
小鳩はしばらくされるがままになっていたが、

「……夜空って呼んでいい?」

「お、お前な、一応夜空は先輩だぞ……?」

「構わないさ。どうした小鳩?」

俺は小鳩のこれからを思って注意しようとするが、夜空は全く気にしていないようだ。
だから、俺もそれ以上強く言えない。

小鳩は立ち止まった。
俺と夜空も小鳩の少し前で同じように立ち止まり、何事かと振り返る。

小鳩は真剣な表情で夜空を見つめていた。
小鳩のことは十年以上見てきた俺だが、そんな表情を見たことがなかった。たぶん、父さんも見たことがないと思う。
強い光を宿したその瞳は、いつもの小鳩からは想像もつかない。

「……夜空はあんちゃんの事好きなん? もちろん、友達とかそういう意味とちゃうよ」

「えっ……あ、あのな小鳩。だから私はそういう意味で言ったのでは……」

「それは関係なか。ただそれだけ答えてほしいんじゃ。ハッキリ言うんなら、うちも考えるけん」

「…………」

俺はそれは誤解だと口を挟もうとしたが、小鳩の真剣な様子に言葉が出てこない。
夜空は始め若干オロオロとして、俺と小鳩を交互に見ていたが、やがて観念したかのようにゆっくりと目を閉じた。

辺りにはわずかな夜風が木々の葉をゆらす音や虫の音だけが響く。

夜空が静かに目を開けた。
そして小鳩を真っ直ぐ見つめながら口を開いた。



**************************************



夜空の答えが>>845-848の中から、>>848の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/23(木) 00:00:00.(00)←ここ

00〜24→>>845
25〜49→>>846
50〜74→>>847
75〜99→>>848
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/23(木) 23:16:30.66 ID:tUVSKmyio
好きだ
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 23:17:29.45 ID:gEG0Af/z0
…好きだよ
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/23(木) 23:17:30.08 ID:j+0nXNSOo
恋人として好き
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 23:18:49.73 ID:PhU0thYP0
昔から好きだったよ
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/08/23(木) 23:19:35.05 ID:83chArslo
鉄壁過ぎワロタwwwwwwwwwww
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/23(木) 23:24:35.97 ID:c9464pw7o
コンマの意味ねえwwww
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 23:30:25.56 ID:jmo7Wsf50
訓練されすぎ!
つか夜空がコミュ障じゃない!?
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/24(金) 00:19:06.68 ID:4GRALCsF0
好きぶりに隙がねぇww
853 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/24(金) 00:34:24.01 ID:PWhOf0yqo
ちょっと書いたけど眠いからここまで

えんだあああああああいやああああああああああ、とはならないかも
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/24(金) 00:37:32.57 ID:iAtAzf7mo
鉄壁だな(胸が)
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 00:41:06.53 ID:SL6G361eo
恋愛要素ちょっとにしてコメディ路線でいって欲しいな
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 02:48:57.66 ID:5gGbDmfIO
ワロタww
しかし小鷹さん難聴スキルお持ちだしどうなることやら
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 04:58:08.81 ID:zeRVSTHIO
>>854
夜空はちょっとは胸あるよ!
マウスパッドのは盛り過ぎだけど
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 15:32:20.26 ID:SL6G361eo
難聴とみせかけて普通にスルーしてるだけなんだぜ
全員の気持ち知ってて無視してる
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 15:54:15.87 ID:GAK/yJRfo
>>851
今を変える宣言してから何か突破した感はある
前向き夜空イイヨー
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/24(金) 19:12:29.05 ID:UFL8OK+Co
乙!
もっと続いて欲しいからヒロインの攻略はゆっくりやるんだ!
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/24(金) 23:02:50.07 ID:iAtAzf7mo
>>857
ん?なんだって?(難聴)
862 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/24(金) 23:21:21.06 ID:PWhOf0yqo


「――――あぁ、私は小鷹のことが好きだ」


夜空の静かで、それでいてよく通る声が響いた。

ザァーと、少し大きめの風が近くの森の木々の葉を揺らす。
涼しくて心地良い夜風が頬を撫でるが、今はそれに何も感じない。

頭の中が真っ白になった。
夜空が……俺のことを好き?
それも友達とかそういう意味ではない……男女の感情として……俺のことが……。

いや、違う。

俺の心が今の状況を理解するに連れ、他の可能性が浮かんできた。
おそらく夜空は、冗談を言っているんだ。
小鳩が変に真剣になってしまったから、ここで雰囲気を和らげようとしたんだ。
夜空にしてはなかなか気が利いている。


……あぁ、分かってる。
こんなのはただの現実逃避だ。
顔を赤くして、それでいてどこか吹っ切れた様子で俺のことを見ている夜空。
そんなものを見て本気で「冗談だろう」と思えたらどんなに幸せだったのだろうか。

小鳩はじっと夜空を見つめる。
そして、小さく溜息をついて口を開いた。

「……分かったけん、うち、夜空のこと見てちゃんと考えるばい。その、あんちゃんの事だけじゃなくて、うちと友達になりたいっていうのも……」

「そうか、お手柔らかにな」

「手は抜けん」

「ふふ、これは大変そうだ」

夜空は小鳩の言葉に苦笑している。
まるでお互い冗談を言い合って楽しんでいるように。

だが、そんな感覚もすぐに消える。
夜空が再び俺のことを見た時。
その表情はこれまでにないくらい真っ赤だった。

「……ま、まさか小鷹よりも先に小鳩に言う事になるとはな」

「よ、夜空。お前……さっきのは本当に…………」

「何度も言わせるな、恥ずかしいんだ。……わ、私は、お前のことが好きだ。その、友達の先、恋人になりたいと思っている」

「……ぁ……え、っと…………」

俺は言葉に詰まる。
夜空に告白されて、嬉しくないわけがない。
しかし、ここで分からないのは夜空だから嬉しいのかどうか、だ。
こうして誰かに好意を向けられること、それは友達が少ない俺にとって無条件で嬉しい事だ。

つまり、極端な話、夜空に限らず誰でもいいなんていう気持ちである可能性もある。
そんな気持ちで、彼女の想いに答えていいのか?

そして、他にも心に引っかかる事はある。
それは理科部のことだ。
あの部活は俺にとって大切な場所で、絶対に失いたくない繋がりだ。

もし、その部員二人が付き合うという事になったらどうなるだろうか?
部にギクシャクした空気を持ち込まないだろうか?
これまで通り、みんなでバカやって心の底から笑い合う事ができるのだろうか?

俺は、今の心地良いあの環境を変えるのが、どうしようもなく怖かった。
 
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 23:23:12.69 ID:zeRVSTHIO
まだ時ではない
864 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/24(金) 23:23:27.75 ID:PWhOf0yqo

「……返事は今しなくていい」

「えっ……?」

夜空の言葉に、俺はいつの間にか俯けていた顔を上げた。

「急な話だからな。それに、私としてもよく考えて答えてほしい。間違っても同情で受け入れてほしくないんだ」

「そんな事……」

「しないと言い切れるか? 小鷹はお人好しだからな」

「うぐ……」

夜空のニヤニヤとした表情に俺は何も言い返せない。
やっぱり夜空には何でもお見通しな気がしてならない。

夜空はさらに口を開く。

「それに、お前のことだ。理科部の事とかも色々考えているのだろう?」

「お前はエスパーか!?」

「私は、誰よりもお前のことを見ていた自信がある。……そ、その、惚れた相手だしな」

「……そ、そうですか」

「あんだらイチャイチャしすぎじゃ」

俺と夜空はお互い恥ずかしくなって目を逸らすが、小鳩がそれを明らかに不機嫌そうな表情で見ている。
今からこんなんで、明日から部活とかで普通に過ごせるのだろうか。

夜空はこの妙な空気を何とかするためか、腰に両手を当てて、

「と、とにかく! 私にはまず小鳩に認めてもらうところから始めければいけないからな。返事は後でいい!」

「お、おう、分かった!」

「……あ、でも……もし他に好きな人がいて、そっちと付き合いたいというのなら早めに教えてくれ。さすがにそれは……その、ダメージがデカイからな」

「い、いや、そんな人はいねえから……」

「そ、そうか? …………良かった」

「っ!!」

本当に嬉しそうに頬を赤らめてはにかむ夜空は反則的に可愛い。
俺は思わず半歩下がってゴクリと喉を鳴らすと、夜空が不思議な表情をして首を傾げる。
そしてその仕草も、俺の心臓の鼓動を早めるには十分な威力だった。
もしかしてわざとやっているんじゃないかとも思ったが、夜空はそういう計算ができる人間ではない。

それから夜空と別れるまで、俺と夜空の間には妙な緊張感が漂っていた。
小鳩は、そんな俺達の様子を冷ややかな目で見ていたりもした。

体が火照っているのは、夏の夜の蒸し暑さのせいだけではないだろう。
 
865 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/24(金) 23:28:44.53 ID:PWhOf0yqo



***



それから数日、部活では何とかいつも通りの様子を装えた……と思う。
たまに夜空と目がバッチリあって、お互い慌てて目を逸らして周りがキョトンとした時もあったが。

それよりも、小鳩の夜空に対する態度の変化のほうが明らかになって、星奈が大騒ぎしていた。
まず小鳩が夜空の事を名前で呼んでいるのを聞いて、「あたしの事も呼んで!!」→「や!!」という会話があった。
それに、夜空が割と仲良さ気に小鳩と話しているのを見て、やっぱり星奈が会話に混ぜてもらおうとしたが、夜空と小鳩の両方に撃退された。
まぁ、小鳩を見て最初に出る言葉が「ぐへへ」ではそれも無理もない気がする。

その後、俺のところに来て「小鷹ぁ……小鳩ちゃん攻略のヒント教えて…………」なんて言ってきた時は、あまりにアレ過ぎて言葉に詰まったくらいだ。

そんなこんなで理科部らしく数日が過ぎ、ついに理科の新しい発明品「さとりヘルメット」が完成した。
理科室には今日も部員全員が集合している。

「では、さっそくテストしてみますか。誰が使ってみます?」

「はい!! ワタシがやりたいですっ!!」

「マリアさんですか。みなさんよろしいですか?」

理科の問いかけに、マリア以外が素直に頷く。
見るからに星奈や小鳩は試したくてうずうずしている様子だが、さすがにそれで十歳児と取り合いをするのはプライドが許さないらしい。

マリアがヘルメットを被る。
これは一応大人用に作ったらしく、マリアが被ると目まで隠れてしまう。

「あははははははは、すげーすげー!! 真っ暗で何も見えないぞ!!」

「そこで喜ばれても反応に困るのですが……まぁいいでしょう。はい、起動しますよ」

理科の言葉に合わせて、ヘルメットがブゥンと発光する。
すると――――。


「おおおおおおおお!!! なんか声が聞こえるげ、すげ――――っ!!」



誰のどんな心の声が聞こえた? >>866
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/24(金) 23:29:50.66 ID:b4x5nWiJ0
夜空の小鷹へのLOVE
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 23:30:01.86 ID:HmCT5WSIO
小鷹の昨日のことについて
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/24(金) 23:30:41.44 ID:zIW1Ee7n0
星奈のHな声
869 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/25(土) 00:22:38.90 ID:7WGBmLG+o

理科は改良のための参考にするのか、メモの用意をしてマリアに尋ねる。

「どんな声が聞こえましたか?」

「おぉ、なんかな、夜空がな――――」


「そおい!!!!!」


電光石火。
夜空はマリアを部屋の隅へと引きずると、何やらコソコソと話し始めた。
俺達は首を傾げてそれを見ているしかない。

夜空とマリアの内緒話はすぐに終わった。

「よ、夜空の『肉は本当に暑苦しいな』という声が聞こえたぞ!」

「な、暑苦しいって何よ夜空!」

「そのまんまの意味だ。無駄にデカイ脂肪もぶら下がっているわけだしな」

「ふん、惨めね夜空! これは女としてのステータスよ!」

「貴様は『貧乳はステータスだ! 希少価値だ!』という偉大なる言葉を知らないのか? まぁ私は貧乳などではないが」

「ぐっ、確かにあるけども……」

星奈がぐぬぬと、口ごもる。
まぁぶっちゃけ、日本で言えば貧乳は別に希少でもないと思うが、それは口に出さないことにした。

すると、理科は何でもないように、

「それでマリアさん、本当はどんな声が聞こえたんですか?」

「本当は『小鷹の横顔カッコいいな……大好きだ』という声が聞こえたのだ!」

「ぶっ!!」

「バッ――!!」

マリアの元気な声に、俺は盛大に吹き出し夜空は顔を真っ赤に染め上げる。
理科は「おうふ……」と声を漏らし、幸村はいつもの無表情でじーっと夜空を見て、小鳩はムスッとしている。

そして、星奈はというと…………。


「あはははははははははは!!! げほっ……ごほっ……よ、横顔……!!!」


あまりに笑いすぎて呼吸困難になっていた。
夜空はそれに対してヤバイくらいに額に青筋をビキビキと浮き立たせているが、何も言い返すことができない。

そして、その矛先は……。

「マァァァァリィィィィアァァ――――ッ!!!!」

「ひ、ひぃ、ごめんなさい!! お願いですから全裸で町内一周は許してください!!」

「まぁまぁ、別にそこまで怒らないでいいじゃないですか。小鷹先輩にも本心を聞かせることができたんですし」

「そ、それは……!!」

夜空はチラッと俺を見る。
正直潤んだ瞳で上目遣いというのはかなりドキッとするが、このタイミングでやられても困る。

案の定、他の部員の視線も俺に集中する。
 
870 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/25(土) 00:24:39.80 ID:7WGBmLG+o

「げほっ……ふぅ、まったく、笑い死ぬかと思ったわ。で、小鷹、あんたの感想は?」

「か、感想って……………ありがとう?」

「何であたしに言ってんのよ。相手はこっちの恥ずかしい奴でしょ」

星奈がビシッと夜空を指差す。
夜空は涙目のままキッと星奈を睨むと、

「か、勘違いするなよ! 私と小鷹は友達なんだからお互い好きだし、ちょっとカッコいいと思うくらい普通だろう!」

「たしかにあにきの事をカッコいいと思うのは至極当然なことです」

「……いやー、ぶっちゃけそこまで行くと友達の一歩先まで踏み込んでいる気がしますけどね…………」

「……一歩どころか何歩もズカズカ入ってきとるやろ」

「やーん!! 嫉妬する小鳩ちゃんかわいすぎるマジ天使ィィィィ!!!!!」

「し、嫉妬ちゃうわ!!!」

ギャーギャーと騒ぎ始める部員達。
何て言おうか、いつも通りすぎる光景だが、今回は助かったと思った。
この騒ぎに乗じれば、何とかごまかせそうだ。

「……よ、よし、じゃあマリア! 今度は俺が使ってみたいから貸してくれよ!」

「おぉ、いいぞ! ワタシは大人だから独り占めはしないのだ!」

「う、うちもあんちゃんの次に使いたい!」

「じゃあ、あたしは小鳩ちゃんの後!! ふへへ」

「警察に通報するぞ肉。強制わいせつ及びわいせつ物陳列罪で」

「誰がわいせつ物よ!!」

「さすが星奈のあねご、強制わいせつのほうはひていなさらないのですね」

「……なんか、上手くごまかしたつもりになってません?」

「え、なんだって!?」

「その難聴発動はちょっと無理あるんじゃないですかね……」

理科はジト目で言ってくるが、それ以上は追求してこなかった。
それに対して俺と夜空はほぼ同じタイミングで安堵の溜息をつく。
やはり一番の難敵は理科で、彼女さえごまかせれば何とかなるからだ。

そんなこんなで、今度は俺がヘルメットを被ってみる。
すると――――。



誰のどんな声が聞こえた? >>871
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 00:28:30.70 ID:KD/G2brV0
幸村の夜空への軽い嫉妬
872 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/25(土) 00:30:32.76 ID:7WGBmLG+o
眠い……おやすみ
今なら心読まれても大丈夫そうだ
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 00:30:45.17 ID:5EoRIoAF0
肉の小鳩ちゃんかわいいというきもい声
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/25(土) 02:18:04.39 ID:gEoNFYavo
毎度乙乙!
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 22:37:58.70 ID:nSE0hyiw0
>>871
お前・・・天才か?
876 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 10:47:14.54 ID:9yGjZeWbo


『なぜでしょう……あにきと夜空のあねごを見ていると胸がチクチクします』


「……ゆ、幸村?」

俺の頭の中に直接叩きつけるように響いてきたのは幸村の声だった。
ここまでハッキリと聞こえるものなのかと感心する反面、その言葉の意味を考えると…………。

「あにきに聞かれてしまいましたか。お恥ずかしいかぎりです」

「は、恥ずかしい?」

「はい。主君のことをみて心に痛みをおぼえるなど、しゃてい失格です」

あぁー、なるほど!
幸村の言葉を聞いてなぜか安心する俺。

他の理科部のメンバーはそんな俺達を見て首を傾げている。

「何の話してんのよ?」

「恥ずかしながら、さきほどのあにきと夜空のあねごの事を見ていてむねがチクチクと痛みました。
 それをあにきに聞かれてしまったということです」

「大丈夫か幸村ー? そういう時は病院に行ったほうがいいんだぞ」

マリアが心配して言う。
こういう所を見ると、普段は口が悪かったりもするが根っこの所では優しい良い子だという事が分かる。

一方で、夜空は頬をピクピクとさせた引きつった表情をして、

「……おい、それは」

「ゆ、幸村はさっきも言った通り、しゃていとして恥ずかしいって言ってんだ! 何も他の妙な理由があるってわけじゃないらしいぞ!」

「さすがにそれは無理あんでしょ」

「あんちゃんは女の子に手出しすぎなんじゃ……」

星奈は呆れた表情、小鳩はジト目でこちらを見ている。
まずい、なんか危惧していた方向に話が進んでいる気がする。

理科はそんな焦っている俺をじーっと見た後、幸村へと視線を移した。



**************************************



理科の行動が>>877の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/26(日) 00:00:00.(00)←ここ

偶数→幸村にその感情について丁寧に教える
奇数→ごまかす
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 10:50:55.95 ID:QmNmsbCd0
それ
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/26(日) 10:51:20.05 ID:Xe9UqFkSo
教えて
879 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 11:18:49.71 ID:9yGjZeWbo

「幸村くん、それは自分が小鷹先輩の隣に居れないのではないかという不安です。つまり――」

「り、理科!?」

俺が慌てて理科の言葉を止めようとするが、それよりも先に彼女はさっさと口を開いてしまう。


「舎弟で居られないのかもしれない……という不安ですね」


理科が淡々と言った。

俺は思わずポカンと理科を見てしまう。
これがもっと天然な子が言ったのなら、ここまで驚かなかったかもしれない。
しかし、相手は理科だ。
天然なんていうのとは全然違うし、幸村の胸の痛みも確実に妙な方向で理解しているはずだ。

理科は、そんな俺にいたずらっぽく片目をつむって、

「理科は敵に塩を送るなんていう甘い事しないんですよ!」

「て、敵って……」

「なるほど……さすが理科どのは博識であります」

幸村は素直に感心している様子だ。
そして、少し困ったような表情で俺を見る。

「あにき、僭越ながらお願いがあります……。
 あにきのお隣には夜空のあねごがいらっしゃいますが、わたくしもしゃていとして、あにきの少し後ろに置いてもらえないでしょうか?」

不安の色を宿した幸村の瞳を正面から受ける。
他の部員達の視線も俺に集中し、夜空なんかは不安そうな目でこちらを見ている。

微かに潤んだ瞳で上目遣い気味にこちらを見ている幸村は反則的にカワイイ。
いつもは違和感を覚える男子の制服も、これはこれでアリなんじゃないかとも思えてくる。
そしてこれだけ自分に尽くしてくれる女の子。それは男なら誰もが望むものなんだろう。

俺は様々な事を頭によぎらせながら、口を開いた。

>>880
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/08/26(日) 11:21:41.74 ID:9heUjWMm0
結婚してくれ
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 11:22:33.29 ID:4Nr84qsh0
もちろんだ
お前は俺の大切な舎弟だしな
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/26(日) 11:23:18.35 ID:Xe9UqFkSo
確かに舎弟のままではいられないかもしれないな
もっとその先の関係に
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 11:55:28.96 ID:qtPP+5Nuo
唐突www
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 12:00:31.13 ID:O0Y7YVRIO
唐突な幸村推しw
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/26(日) 12:15:35.02 ID:Odp11nfF0
なんでそうなるwwwwwwww
886 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 12:17:59.60 ID:9yGjZeWbo


「結婚してくれ」


俺は幸村に見とれながら、いつの間にか何か言葉を発していた。
だが、何と言ったのかは俺の頭に残っていない。
例えるなら、ゲームに熱中している時の生返事のような感じだ。
俺は、色々な事が頭に浮かび過ぎて、無意識の内に言葉が出ていた。

しかし、周りのみんなの反応を見て、とんでもないことを口走ってしまったことが分かった。

「まさかの公開プロポーズ!? ちょ、先輩いきなりすぎますし大胆すぎますしショックすぎるんですけど!!
 ネタですよね!? ネタなんですよね!?」

「あたし、ゲーム以外で人の告白シーンって初めて見たわ」

「あんちゃん……」

「おぉ、プロポーズは大人なのですごいなー!!!」

どうやら俺は幸村にプロポーズをしたらしい。
…………って、えええええ!?

「ま、待て!! 今のは頭の中こんがらがってて……っ!!」

「……ふふ、そうか幸村か。いや、いいんだ、私は口を出すまい。小鷹、幸村、幸せにな…………」

目を虚ろにして静かに笑う夜空。
その周りには負のオーラが目に見えるようだ。

そして、幸村は頬をほんのりと染めて、


「……あにき、わたくしとても嬉しいです。ふつつかものですが、末永くよろしくおねがいいたします」


ちょっと待て、待ってくれ。
いくら何でも展開が唐突すぎるだろう。
今時ケータイ小説でも、結婚する前にはいくつもの壁を乗り越えて困難の先に……的な展開がある。

というかいきなり結婚って言われても実感湧かないし、まずは恋人から…………って何考えてんだ俺!!

とにかく、何か言わないといけない!!



**************************************



小鷹の発言が>>887-889の中から、>>889の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/26(日) 00:00:00.(00)←ここ

00〜39→>>887
40〜69→>>888
70〜99→>>889
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 12:18:53.63 ID:H1YMZqqBo
理科も結婚しよう
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 12:19:50.44 ID:tRuZEiRno
夜空も一緒にな
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 12:20:14.04 ID:QmNmsbCd0
ちょっと待ってくれ!
誤解なんだ!
エロゲのやりすぎでつい出ちまったセリフだったんだ!
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 12:40:39.29 ID:O0Y7YVRIO
理科wwwwww
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 12:47:54.66 ID:gxxPgmmWo
夜空ェ…
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 14:23:09.67 ID:YvbRCLoIO
もう何がなにやら
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/26(日) 15:24:10.61 ID:enK8okD20
ハーレム王に俺はなるって展開か
894 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 16:27:09.20 ID:9yGjZeWbo

……よし、ここは!
俺はある素晴らしい作戦を思いついて理科の方を見る。

「理科も結婚しよう」

「「え!?」」

俺の言葉に、理科部全員が目を丸くして驚く。

「……うわ、最低ねあんた。死ねばいいのに」

「あれ、日本は一夫多妻制は認めてないんじゃなかったかー?」

思い切り蔑んだ目を向ける星奈に、純粋にキョトンと首をかしげるマリア。
そして理科はすごく複雑そうに、

「理科としては大人数プレイというのも捨てがたいのですが、乙女的には結婚は真面目にいきたいです……」

「まぁまぁ、気にすんなって! というわけで、幸村も理科も俺の嫁だ! あ、夜空もなるか?」

「あ、あぁ! …………って違うだろ!!!」

ハエ叩きが顔面にブチ当たった。
星奈がよく受けているが、これかなり痛いな……。
だが、めげるわけにはいかない。

「夜空は分かんねえか……ハーレムってのは男の夢なんだよ!!」

「……うわぁ」

マリアと幸村以外が凄く引いてるのが分かる。
夜空や星奈にそういったリアクションをされるのは慣れているが、正直小鳩までにやられると心をえぐられる感じがする。

しかしそれ以上に、幸村の寂しそうな微笑みもかなりダメージがくる。

「確かにいくにんものおなごをはべらせるのは、しんのおとことして当然のこと。
 わたくしもそのまったんに加えさせていただけるだけでも、光栄……です…………」

「うぐ……!」

言葉とは裏腹に、幸村の目尻にはうっすらと涙が浮かんでいる。
まずい、このギャグっぽくして流す作戦が崩れそうな気がする。

それを見て、理科は何かを決心したようで、

「……面倒くさいですね。この際ハッキリさせちゃいましょうか」

「ハッキリ……って?」

「ふふふ……」

理科は怪しげに笑いながら俺の頭からヘルメットを奪った。
そして自身がそれを被り、


「小鷹先輩は誰の事が好きなんですか?」


爆弾をぶちかました。
とっさに心を無にしようとするが、そんな事ができるとは思えない。
このままでは…………。


どうする? >>895
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 16:27:42.37 ID:WpDRDfg80
皆だよ(イケメンスマイル)
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/26(日) 16:38:48.89 ID:HCBE6KD3o
oh…これは記憶削除2回目来てもおかしくないで
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/26(日) 16:40:06.23 ID:+nIve5PMo
イケメン小鷹さんですねぇ…
898 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 16:52:25.45 ID:9yGjZeWbo

そうだ、あのヘルメットは相手の心を読む。
それならば、自分で心の声を作ってしまえばいいんだ。

よし、ここは――――。

「俺はみんな好きだぜ!」

「なんかカッコいい事言ってるつもりなとこ悪いんですけど、この道具は深層心理から声を読み取るのでごまかしとか意味無いですよ」

「ま、マジで!?」

予想以上に凶悪な道具だ。
始めは相手の気持ちを知ることがコミュニケーション能力を上げる第一歩みたいな感じで、特に何も思わずに賛成してしまった。
だがよくよく考えると、これではプライバシーもクソもなく、こんなのを使っている相手とまともに会話しようと思うのだろうか。
人間、言いたいことが全部筒抜けな状態だと色々と大変なことにもなりそうだし。

そんな問題点を今更見つけるが、時既に遅し。
すでにこうして道具は完成してしまっていて、それによって今まさに俺が窮地に立たされていた。

理科が、俺の心を読んでいる…………。



**************************************



小鷹の心の声が>>900の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/26(日) 00:00:00.(00)←ここ

00〜74→好きな人は居ない
75〜84→理科が好き
85〜94→夜空が好き
95〜99→幸村が好き
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 16:53:33.50 ID:3GQ1/8Qm0
ksk
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 16:55:19.33 ID:H1YMZqqBo
どうなるか
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 16:56:43.14 ID:tF828oOeo
これは幸と出るか…
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/08/26(日) 17:18:06.57 ID:A8LwCR7+0
ふつうに意味なしなのか、それとも
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 17:21:41.70 ID:YvbRCLoIO
まだ確定しないほうが面白いからおk
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/26(日) 17:47:38.49 ID:enK8okD20
それよりコンマに肉がいないんだが…
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 18:36:24.98 ID:kj2uzu0Yo
数の範囲に偏りがあるも妥当なチョイスではなかろうか
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 18:37:18.18 ID:kj2uzu0Yo
いや、生徒会メンバーも入ってて欲しかったな
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 18:49:06.19 ID:arDHv/Dio
生徒会は出番少ないからな
序盤は理科無双だったし、最近は夜空無双だったし
908 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 19:00:08.22 ID:9yGjZeWbo
理科は静かにヘルメットを外す。
その表情は良く見えない。

そんな理科に、夜空が心配そうに声をかける。

「り、理科? どうだったんだ?」

「……はぁ、そんな事だろうとは思いましたが…………」

「理科どの?」

「小鷹先輩、本当に好きな人とかいないみたいです」

理科が呆れたように、やれやれと言う。
元からそこまで期待していたわけでもないらしいが、それでも予想通り過ぎて拍子抜けしたらしい。

夜空と幸村はそれを聞いて複雑そうな表情をする。
他の部員たちは……。

「……ククク、さすが我が眷属。人間などには興味ないか」

「えぇ、小鷹、ワタシの事好きじゃないのか!? 嫌いなのか!?」

「あのね、今理科が聞いたのはそういう意味ではないでしょ。
 つーか小鷹、あんたも贅沢ね。理科も夜空も幸村も、客観的に見れば結構可愛い方に入ると思うけど? 夜空なんかを褒めるのは癪だけど」

「い、いや、そういうのはまだ良く分かんねえんだよ……」

俺は心のどこかで安心して答える。
考えてみれば、理科に誰が好きだと聞かれて、その瞬間本当に誰も浮かんでこなかったんだから当然なのかもしれない。

理科はなおも納得いかないような表情をしつつ、

「……まぁ、落とし所ではこの辺がいいのかもしれないですね。まだ理科達にはフラグ立てが足りないみたいです」

「ふ、フラグ……?」

「好きになってもらえるための下準備みたいなものですよ。まったく、理科はチューまでしたっていうのに……」

「 ち ょ っ と 待 て 」

夜空の声が理科室を這う。
俺も理科の言葉を聞いて、顔が熱くなるのを感じる。

他の部員……特に小鳩と幸村がじーっと見てくる。

「おい小鷹、どういう事だ?」

「じ、事故だっての! 前に俺が停学くらってた時に、理科が家に来て……」

「そういえば、そこの人がウチに来てたんじゃ……!」

「ふふ、懐かしいですね先輩! 理科はまだ先輩の唇の感触を覚えていますよ♪」

「忘れろよそんなの!! あ、ちげーぞ!? なんか知らないけどポッキーゲームをする流れになってな……」

「まず、女の子と家でポッキーゲームするって事自体どうよ。ゲームじゃかなり好感度上げないと無理よ」

「それなら問題ありません! 理科の先輩への好感度はもはや振り切っていますから!」

理科が体をクネクネと捻らせて悶えている。
すると、マリアが首を傾げて、

「キスは結婚式でするものだよなー? じゃあ理科と小鷹は結婚してるのか?」

「えぇ、その通りです!」

「んなわけあるか!!」

「なんでこんなのがあんちゃんと結婚するんじゃばかたれ!」

「こ、こんなの……って……確かに理科はちょっと人とは違うかもしれませんが……。
 まぁでも、キスしたら結婚するって事になるなら、星奈先輩もそうですよね?」

「あれはノーカンに決まってんでしょ!! あー、思い出したらまた腹立ってきたわ!!!」

「……あれは本当に悪かった」

そういえば星奈にも事故でキスしてしまったことがあった。
あの時の事を思い出すと、同時に股間の強烈な痛みも思い出してしまいそうなので、そこまで考えたくはないが。
909 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 19:01:28.49 ID:9yGjZeWbo

一方、夜空と幸村は……。

「ぽ、ポッキーゲーム……理科と…………キス…………はは」

「あにきと理科どのがせっぷん……」

どよーんとした空気をまき散らして凹んでいた。
これは話題を変えた方がいいだろう。

「あー、そうだ理科。その道具、永久封印な」

「え、何でですか!?」

「考えてみればそんなプライバシー無視なものは色々と危険すぎる」

「……それには私も同意する」

今だに落ち込みながらも、この道具の被害者の一人である夜空が口を挟む。
しかし、夜空はそれだけではなくさらに続ける。

「だが、このまま封印するのは不公平だ。とりあえず部員全員が使い終わってからにしよう」

「はい、賛成賛成! あたしも使ってみたいし!」

珍しく星奈が夜空に合わせる。
夜空はそれに心底気分悪そうな表情をするが、特に何も言わないことにしたらしい。

「ククク、確かにな。その道具も我のような高貴な存在に使われるのを望んでいるだろう」

「というわけだ。理科と小鷹とマリアはもう使ったから、残りの四人も使ってから封印するぞ」

「ていうか、封印しないっていう選択肢は……」

「それはない」

「ですよねー」

理科が名残惜しそうに言うが、夜空が一言で却下。
そんなわけで、さとりヘルメットは理科部全員が使ってから封印ということになった。

「それでは……まず幸村くんからいきますか?」

「はい、分かりました。あにきにとって都合のわるいことは聞こえてもけっしていいませんのでご安心を」

「そっか! サンキューな幸村!」

「お、おい幸村! 私もやめろよ!」

「あ、ずるいわよ夜空! 幸村、あたしも!」

「それは聞けませぬ。二君に仕えるのはもののふにあらずゆえ」

夜空と星奈の言葉を受け流して幸村はヘルメットを被る。
そしてすぐにブゥンと発光すると、心の読み取りが始まった。


誰のどんな心の声が聞こえた? >>910
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/26(日) 19:04:29.01 ID:i2SzGz6P0
kskst
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 19:04:54.03 ID:gzSiTG9SO
小鷹の幸村ペロペロしたい
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/26(日) 19:23:54.14 ID:HCBE6KD3o
>>910
そのkskstに何か意味はあるのか…
913 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 20:12:57.95 ID:9yGjZeWbo

「…………」

「どうですか幸村くん、何か聞こえましたか?」

「……言えませぬ」

「え……って事は…………」

みんなの視線が俺に集中する。
俺はすぐに幸村を捕まえると、部屋の隅へと移動した。

そしてコソコソと、尋問を開始する。

「ど、どんな声が聞こえたんだ?」

「その、あにきがわたくしのことを……ぺろぺろしたいと」

「ごぶっ!!!」

思わず吹き出した俺に、他の部員達が疑いの目を向けてくる。
俺はそれに対して笑ってごまかす。

確かに、幸村が俺の心の声は秘密にしてくれると聞いた時には、とても嬉しく思えた。
しかし、だからといってそこまでぶっ飛んだことを心の奥底で考えていたとは、我ながら恐ろしい。
これでは星奈のことも言えないではないか。

幸村はほんのりと頬を赤く染めて、

「……わたくし、あにきが望むのであればぺろぺろされるのも大人しく受け入れるしょぞんであります」

「し、しねえよ!! と、とにかくこの事はなかった事にしてくれ!!」

「さようですか……」

なぜか残念そうな表情の幸村。
正直、ぺろぺろも受け入れてくれるという言葉に俺の心は数段跳ね上がったのだが、本当にそんな事をしてしまったら人として終わってしまう気がする。

話がついた俺と幸村が部屋の隅から戻ってくると、案の定部員達は疑わしげな表情だった。
しかし、幸村の忠誠心はみんなが知っているので、どうせ白状しないと思ったのか特に何も聞いてこなかった。

理科は面白くなさそうに口を開く。

「それでは次は……小鳩さんいってみます?」

「ククク、よかろう。ついに我の秘められし力を解放する時が来たか」

「お前の力っていうか、理科の道具の力だけどな」

俺のツッコミに小鳩は頬をふくらませる。
すると、それを見た星奈が暴走し始める。

「うはああああああ、小鳩ちゃん可愛すぎるわ!!! ねぇねぇ、あたしの心の中の小鳩ちゃんへの想い、聞いてくれる!?」

「や!!」

小鳩はプイッと顔をそむける、
まぁ、わざわざ心を読まなくてもこれだけ大っぴらに大公開していれば、どれだけ星奈が小鳩にゾッコンなのかは十分に分かる。
というか、表面に出てるものでもこれ程なのに、心の中まで見たらどうなるのか、想像するだけでも恐ろしい。

小鳩も同じ事を思ったのか、若干顔を引きつらせながらヘルメットを被った。



誰のどんな声が聞こえた? >>914
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 20:13:48.28 ID:l1iuss2Qo
肉の小鳩へのルイズコピペ等々
915 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 20:32:14.76 ID:9yGjZeWbo

「…………」

「お、おい、どうした小鳩?」

ヘルメットを外した小鳩は明らかに疲弊した様子だった。
そしてフラフラと立ち上がると、

「うち、もう帰るけん……」

「え、小鳩ちゃん大丈夫!? もしかして夏バテ!?」

「あんだのせいじゃアホ――――ッ!!!!!」

小鳩は星奈に向かって思い切り叫ぶと、部屋を飛び出してしまった。
星奈はそんなまるで嵐のように過ぎ去っていく小鳩をビックリして見送ることしかできない。

その様子を見て、俺達は何となく事態を理解した。

「おい星奈……お前さっきまで何考えてた?」

「え……そりゃ、小鳩ちゃんに心読んでもらえるようにありったけの愛情表現を…………」

星奈の言葉に部員全員が溜息をつく。
珍しいことに、マリアも呆れ顔で、

「あのなー、あの吸血鬼はオマエが大嫌いなんだぞ? そんな奴が好き好き言っても気持ちが悪いだけなのだ」

「あ、がっ……!!」

時に純粋で素直な子供の言葉は凶器になる。
星奈はorzと綺麗な形で落ち込んでしまった。

理科もさすがに気の毒そうな表情で、

「えっと、星奈先輩はダメっぽいんで、次は夜空先輩使ってみます?」

「あぁ、そうだな。今なら肉の耳障りな声も聞こえなさそうだし」

夜空の憎まれ口に、星奈は何も反応しない。
それだけダメージがでかかったんだろうが、これはこれで調子が狂ってしまう。
夜空は少し哀れんだ目で星奈を一瞥して、ヘルメットを被る。



誰のどんな声が聞こえた? >>916
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 20:34:44.05 ID:gzSiTG9SO
理科が必殺業考えてた
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/08/26(日) 20:54:55.71 ID:WrX7yrtAO
小鳩が同調するんですね分かります
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 21:11:38.56 ID:jPVSkFeEo
小鳩帰っちゃったじゃん
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 21:59:39.09 ID:YvbRCLoIO
ルイズコピペだったらケイトでもありだな
920 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 22:17:21.05 ID:9yGjZeWbo


「この変態があああああ!!!」


夜空はヘルメットをかなぐり捨てると、いきなり理科の頭をハエ叩きでぶっ叩いた。
顔は真っ赤になっている。

「いたあああ!! ちょ、いきなり何するんですか!?」

「き、貴様は何て破廉恥なものは考えて……!!」

「え、あー、もしかして、今度小鷹先輩に試してみようと思っていた理科の必殺技の事を知ってしまったのですか?」

「何が必殺技だこの痴女め!!!」

なんか聞いてて嫌な予感しかしない。
怖いことに俺の名前も出てきてるし。

「ふふふ……それでは具体的に理科がどんな事を考えてたのか言ってもらえますか?」

「そ、それは……その、小鷹を…………言えるかあああああああ!!!!!」

自分の心を読まれても、相手に羞恥プレイをさせようと試みる理科。
精神的にたくましいと言えるのかもしれないが、まったく感心しないのはなぜだろうか。

夜空は今だに顔を赤くして悔しそうに顔を歪める。

「くっ、納得いかない……なぜ私のほうがこんな目に…………」

「まぁまぁ、世の中上手くいかない事だらけですよ」

「さようです。かの信長公ですら、こころざしなかばに世を去ったのですから」

「そうだぞ夜空ー、ワタシなんか天才なのに友達全然いないしあはははは!」

いかにも理科部らしい残念な見解。
まぁ世の中上手くいかないっていうのは俺も同意するところだが、それは自分達にもかなり問題があるとも言えると思う。

すると…………。


「その上手くいかない世の中を無理矢理にでも上手くいかせんのよ!! お金とか権力で!!!」


最低なセリフを吐きながら星奈が復活した。
まぁここまで割り切って物事を考えられるのはそれはそれで気が楽なのかもしれない。

「お、小鳩に心の底から嫌われている肉が起きたようだな」

「ぐぅ……あんたねぇ……!!」

いきなり星奈の傷をえぐる夜空はさすがだ。
軽く涙目になりながら、星奈は夜空ではなく理科の方を向く。

「最後はこのあたしの番よ!! あんた達の間抜けな頭の中覗いて大笑いしてやるわ!」

「小鳩さんが居なくなったので精神的ダメージを受ける心配もなくなりましたしね」

「どういう意味よ!」

ギャーギャーと騒ぎながら、星奈はヘルメットを被る。



誰のどんな声が聞こえた? >>921
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/26(日) 22:19:47.88 ID:/6WZvwVeo
なぜか小鳩の肉は嫌いとのつぶやき
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 22:20:00.43 ID:kj2uzu0Yo
理科室前を通りかかった安価キャラ
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 22:59:14.50 ID:YvbRCLoIO
さらにとどめw
924 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/26(日) 23:19:55.41 ID:9yGjZeWbo


「ごっ、がああああああああああああ!!!」


……星奈がいきなり絶叫して倒れた。
何が起きたのか分からず、顔を見合わせて首を傾げる理科部メンバー達。

するとその時、ガラガラと理科室のドアが開かれた。

「わ、忘れ物したけん……」

入ってきたのは先程気分が悪くなって出ていった小鳩だった。
気まずそうにもじもじとしていたが、床に白目をむいて倒れている星奈を見て、それから俺達を見る。

「……何があったと?」

「いや、分かんねえ。そのヘルメット被ったらいきなり…………あ」

ここで俺は気付いた。
確かこのヘルメットの効果範囲は30メートル。
そしてこのタイミングで帰ってきた小鳩。

これはたぶん……。

「小鳩さんの心の声が聞こえたんですね……」

「本当に絶望的に運が無いんだなこいつは」

夜空は星奈に哀れんだ目を向ける。
星奈がここまでになるということは、小鳩はさぞかし星奈にとってショッキングな事を思っていたのだろう。
ちょっと気になるが、星奈のことも考えて小鳩に聞くことはやめておいた。

理科部には何とも残念な空気が流れる。
結論としては、人の心の中を読んでもろくな事がないという事だけよく分かった。



***



さとりヘルメットを封印してから数日後。
今日も夏の日差しが容赦なく照りつける。
もうすぐ夏休みも終わるというのに、この暑さはどんどん酷くなっているようにも思える。

それでもこうして俺は理科部に顔を出す。
なんだかんだ、自分にとって一番落ち着く場所になっているのだろう。


**************************************



理科部の出席状況が>>925-930の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/26(日) 00:00:00.(00)←ここ

理科>>925
00〜69→出席
70〜99→欠席

夜空>>926
00〜29→欠席
30〜99→出席

幸村>>927
00〜79→出席
80〜99→欠席

星奈>>928
偶数→出席
奇数→欠席

小鳩>>929
偶数→出席
奇数→欠席

マリア>>930
00〜69→出席
70〜99→欠席
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 23:20:43.76 ID:l1iuss2Qo
926 : ◆WNrWKtkPz. [sage]:2012/08/26(日) 23:21:35.72 ID:JeMe7Mau0
hai
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/26(日) 23:22:49.75 ID:CiAp8MN/0
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/26(日) 23:23:30.43 ID:92GPjUuRo
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 23:24:13.73 ID:XtouwxmU0
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 23:24:15.28 ID:qtPP+5Nuo
とりあえず>>924>>1は禁書好きってのが分かったw
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 23:25:44.82 ID:l1iuss2Qo
>>930

なんで?
そういう要素見当たらないんだが
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/26(日) 23:31:03.11 ID:FvjV3qUqo
「ごっ、がああああああああああああ!!!」のあたりかな
ノーバウンドで飛んで行ったりはしていないが
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 23:42:42.03 ID:l1iuss2Qo
いや、何でそれだけで禁書になるの?
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/08/27(月) 00:45:10.55 ID:XIZsWVLyo
おい今夜はこれでお開きか?
935 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 00:54:37.24 ID:rvvGPYaNo

今日部活に来ているのは夜空、幸村、マリアの三人だった。
元々、この部活はかなり緩い感じで、出る出ないもケータイに一言連絡すれば済むくらいだ。
理科は企業への用事で休み、小鳩と星奈は互いにまだ「さとりヘルメット」での心の傷が癒えないらしい。

「おはようございます、あにき」

「おう、おはよう幸村。って、マリア、お前またポテチばっか食って……」

「今日は夜空の宿題を見てやったらもらったのだ!」

「夜空、お前まさか夏休みの宿題終わってないのか?」

「バカなことを言うな。こんなに暇な時間が有り余っているのに終わっていないわけがないだろう。
 ただ答えがあっているかどうかマリアに確認させただけだ」

いわゆるリア充と言われる学生は夏の間は遊びまくりで、この時期になって必死に宿題にとりかかったりするらしい。
ただ、俺達のような人間はやることもないので結局宿題をするという事になる。
真面目にやるのは良い事なんだろうが、なんだか悲しくなってくる。

「今日は理科はともかく、小鳩と肉も休みか。まったく、あれくらいで凹んでいてどうするんだ」

「本人にとってはダメージでかかったんじゃねえの……星奈なんかあの後帰らせるの大変だったしな」

「誰しもがあにきやあねごのような強靭なせいしんりょくを持っているわけではないのですね」

幸村がやけに感心したように頷いている。そんな大層なことでもないと思うけどなぁ。
夜空は部屋全体を見渡して、

「さて、今日は何をする? 理科も居ないし、私達だけではろくなものは作れないだろう?」

「んー、どうすっかね……」



**************************************



理科部の活動内容が>>936-938の中から、>>938の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/27(月) 00:00:00.(00)←ここ

00〜39→>>936
40〜69→>>937
70〜99→>>938
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/27(月) 00:58:39.75 ID:wPwC9KHK0
送りバントの練習
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/08/27(月) 00:59:21.43 ID:3cIm4UHAO
昆虫採集
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/08/27(月) 01:01:31.86 ID:XIZsWVLyo
他校の文化祭に潜入
939 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 01:04:42.23 ID:rvvGPYaNo
眠いからここまでー
禁書ネタは誰か気付くだろうとは思ってた
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 01:11:01.64 ID:XIZsWVLyo
乙!

一応夏休み中に文化祭開催するとこもあるにはあるけど、無理があるなら単純に他校に潜入でもいいと思うんだ
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 01:33:53.60 ID:BMOJqirIO
原作で他校の存在ってまだ出てきてないよね?
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 07:10:27.40 ID:9I8SifUIO
おつー

碧空高校とか大橋高校を出そうぜ!
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 08:56:49.13 ID:XIZsWVLyo
まぁ待て。 高校と決まったわけじゃないし、まずは>>1が書けそうな
校名を提示して貰おうじゃないか
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/27(月) 09:33:56.81 ID:oS5VJjo1o
碧陽学園とか…
945 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 10:18:43.99 ID:rvvGPYaNo

「そういえば、今日は○○学校で文化祭があるようだ。リア充どもの生態を探るために行ってみるか?」

「文化祭? 夏休みにやってんのか。俺はいいけど、お前人混み苦手じゃなかったか?」

「いつまでもそんな事を言ってるわけにはいかないだろう。少々荒療治だが、無理矢理にでも慣れることにする」

「さすがあねご、自らの身をきけんにさらしてまで困難にたちむかうそのお姿はりっぱです」

「んな大層な事じゃねえけどな……」

「おぉ、文化祭か!? ワタシも行ってみたいぞ!!」

そんなわけで、俺達には珍しく外に出て他の学校の文化祭へと出かけることになった。
目的がリア充の観察というのがいかにも俺達らしいところだが……。



***



一旦帰って着替えるのも面倒なので、俺達は制服のままとある学校の文化祭までやってきた。
綺麗な飾り付けのされたゲートをくぐると、そこはたくさんの人で賑わっていた。
メイド姿や、お化けの格好をした人も見られ、たぶん自分のクラスの出し物の宣伝なんだろう。
こんな真夏日に厚着で外に出てる辺り、気迫を感じる。

他の学校の制服を着ている人もちらほら居るので、クロニカの制服の俺達がそこまで浮いている事はないのだが、こっちにはマリアが居る。
さすがに修道服を着ている人なんていうのは居なく、道行く人がチラチラとこちらを見ている。
そして、そんな人達はたまに俺と目が合うと、みんな逃げていった。

「はぁ……どこ行ってもこれか…………」

「お前が人気者なのはヤンキー学校くらいだろう」

「嬉しくねえ……。つか、お前大丈夫か?」

「大丈夫だ……と言いたいところだがな。正直もう結構きてる」

見ると、夜空は明らかに気分悪そうな顔色になっている。
そこまで無理しなくてもいいのに……。

そんな夜空とは対照的に、マリアは満面の笑みで辺りを見渡して、

「おおおお、なんかすっごく楽しそうだぞ! 早く遊ぶのだ!」

「待て、それよりまずパンフレットを……」

「あねご、わたくしが手に入れてまいりました」

「ん、さすが幸村だ。さて……まずはどこへ行ってみる?」



どの出し物を見てみる? >>946
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/27(月) 10:19:35.13 ID:6B0KelQL0
お化け屋敷
947 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 11:07:54.33 ID:rvvGPYaNo

「はいはい! ワタシはお化け屋敷に行きたいですっ!!」

「お化け屋敷か……まぁ定番だよな。でもマリア大丈夫か?」

「ワタシはシスターだからお化けなんか聖なる力でぶっ殺してやるのだ!!」

「頼むからお化けに攻撃するなよ……」

聖なる力でぶっ殺すというフレーズに違和感を覚えながら、俺は溜息をつく。
一応夜空と幸村にも聞いたが、マリアが行きたいなら、という事でお化け屋敷に行く事になった。



***



お化け屋敷をやっているクラスはいくつかあったが、とりあえず近いところに行ってみることにした。
部屋の周りには暗幕がかけられており、中の様子はよく見えない。

俺達は順番待ちの列に並んで待つことにする。
すると、ふと宣伝の看板を見た夜空が、

「む、どうやらここは一度に二人までのようだぞ」

確かに言われてみれば狭い教室に何人も固まっていると窮屈かもしれない。
俺達は四人。ちょうど二つの組に分けることができる。

「あはは、二人組を作るなんて学生の頃みたいで懐かしいなー。ワタシはいつも誰とも組めなかったぞ」

「おいやめろ」

マリアの言葉に夜空が顔を歪める。
その気持ちは俺もわかり、あの「はい、二人組作ってー」という言葉には恐怖を感じる。

そうやってトラウマを刺激されつつも、俺達はグーとパーで分かれる事にした。



**************************************



小鷹のペアが>>948の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/27(月) 00:00:00.(00)←ここ

00〜39→夜空
40〜69→幸村
70〜99→マリア
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/27(月) 11:09:24.59 ID:Jsb5NYcVo
ゆきむらこい
949 :もう一つコンマ入れるの忘れてた  ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 11:29:14.08 ID:rvvGPYaNo

このお化け屋敷の怖さレベルが>>950の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/27(月) 00:00:00.(00)←ここ

00〜19→もはや笑えるレベル
20〜49→ちょっとビックリするレベル
50〜79→ゾクッとするレベル
80〜99→絶叫するレベル
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/27(月) 11:30:08.42 ID:o43/A8Z/0
951 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 11:51:26.96 ID:rvvGPYaNo

「俺と幸村、夜空とマリアか」

「あにき、ふつつかものですがよろしくお願いいたします」

「……小鷹、暗いからって幸村に変なことするなよ」

「しねえよ」

「そういえば、男は暗がりに女の子を連れ込んで押し倒してしまうってババアに聞いたなー」

「偏見だ!!」

そんな会話をしている内に、俺達の番が回ってきた。
まず俺と幸村が入る事になり、入り口から中に入る。
途中で周りの人達にヒソヒソ言われていた気がするが、それはヤンキーっぽい俺の事とか、なぜか男の制服を着ている幸村の事なんだろう。
とにかく、あまり気にしないことにする。

中は予想通り真っ暗だった。
クーラーが効きまくっていて少し肌寒いほどであり、たぶんこれも演出の一つなのだろう。
節電節電言われているこのご時世に真正面から反抗している感じだけども。

「……なかなか雰囲気あるな」

「はい……これでは本当にお化けが出てもおかしくないでしょう」

「ふ、不吉なこと言うなよ……」

「冗談です」

そう言ってニコリと笑う幸村。
最近では幸村はこうして冗談も言ったりして、感情表現が豊かになっている気がする。
俺はこうやって他の人の新たな一面を知るのが好きだ。

そんな事を考えていると、ふいにガタッという音と共に、天井から生首が落ちてきた。

「うおっ!!」

俺は思わずビクッと肩を震わせる。
生首は地面には落ちずに、丁度目の高さ辺りで吊るされている。
よくよく見てみると、クオリティは高いとはいえず、手作り感が見て取れる。

「な、なんだ、ちょっとビックリしたじゃねえか……幸村は平気なんだな」

「はい。この程度、たいしたことありません。あにきのお顔のほうがよっぽどおそろしいです」

「 悪 か っ た な ! !」

それからも、俺だけ時々ビクッとする程度で、結局最後まで幸村は眉一つ動かさなかった。
まぁ幸村は幸村で、ビビっている俺の反応を見て面白がっていたようだし、それなりに楽しめたようだ。
 
952 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 11:52:30.47 ID:rvvGPYaNo



***



お化け屋敷の出口近くでちょっと待っていると、夜空とマリアが出てきた。
夜空は明らかにつまらなそうな表情だが、マリアはそんな夜空の腕にがっしりとしがみついてブルブルと震えていた。

「まぁ、所詮は文化祭レベル、そこまでではかったな。マリアは相当怖がっていたようだが」

「そ、そんな事ないぞ!! ワタシはちょっとビックリしただけなのだ!」

「わたくしも少々きょうふをかんじてしまいました」

「ん、幸村もか? 意外だな」

「いやいや、ウソつけ。お前微動だにもしてなかったじゃねえか」

「いえ、暗がりの中でときおりおどろきの表情をうかべるあにきのお顔に、わたくしふかくにも恐怖をかんじてしまいました」

「……それは確かに恐ろしいな」

「そろそろ泣いていいか?」

「冗談です」

ニッコリと微笑む幸村。
この笑顔を見るだけで、どんな事でも許してやれそうな気がする。

夜空はパンフレットをペラペラとめくる。

「さて、次は何を見る?」



>>953
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 11:59:21.30 ID:BoiVLqFx0
メイド喫茶
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/27(月) 11:59:55.46 ID:Jsb5NYcVo
合コン喫茶
955 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 12:52:58.14 ID:rvvGPYaNo

「とりあえず喉かわかねえか? ちょっとそこで何か飲んでいこうぜ」

俺はそう言って何気なしに近くの教室を指差す。
喫茶店的な雰囲気だったので特に何も考えずに提案したのだが、そこは…………。

「小鷹はメイド好きなのか?」

「え……?」

「そこはメイド喫茶だぞ」

夜空の言葉に教室の中をよく見てみる。
確かに女の子がみんなメイド姿だった。
考えてみればメイド喫茶というのもよくある出し物で、文化祭ではむしろ普通の喫茶店の方が珍しいかもしれない。

「あ、いや、メイド好きとかそういう事じゃなくてだな、本当にただ何か飲もうって……」

「……そういえばうちにも一着あったな」

「夜空?」

「な、何でもない!」

夜空は顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。

「わたくし、メイド喫茶なるものには入ったことがありませぬ」

「ワタシもジュース飲みたいぞー! お化け屋敷で叫びすぎたのだ!」

というわけで、俺達はメイド喫茶で休憩することにした。



***



「「いらっしゃいませご主人様!」」


お決まりのテンプレセリフで俺達を出迎えるメイドたち。
この綺麗なハモリは何回も練習したのだろうか。

俺達はテーブルの一つに案内される。
学校の机を四つ集めた上に、ピンクのテーブルクロスがしかれている。
椅子もピンクのクッションが置かれており、長い間座っていても尻が痛くなることもないだろう。

俺は可愛らしい絵がたくさん描かれた品書きを手にとって眺める。

「萌え萌えトロピカーナに萌え萌えブルーハワイ、萌え萌えイチゴミルクに萌え萌えレモンスカッシュ…………」

「『萌え』という言葉がゲシュタルト崩壊してきそうだな」

夜空は呆れた表情で言う。
とりあえず俺達は適当に飲み物を頼んだ。
マリアはケイトからお小遣いを貰っているようで一度にたくさん頼もうとしたが、そこは止めておいた。

数分後、テーブルにジュースが届けられる。
運んできてくれたメイドさんは金髪ツインテールの子だった。

「では、お飲みになる前においしくなる魔法をかけますね!」

「魔法?」

「おお、すげ――――!! 魔法なんて使えるのか!?」

興奮状態のマリアにメイドは優しく微笑むと、手でハートの形を作って、


「おいしくな〜れ! 萌え萌えキュン☆」
 
 
956 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 12:57:03.53 ID:rvvGPYaNo

俺達はただただ呆然とする。
マリアまで、わけが分からないといった表情だ。
しかし、メイド本人は満足そうに微笑んでいる。

「はい、おいしくなりましたよ!!」

「あ、ありがとうございます……」

俺はとりあえずお礼を言って、ジュースを一口飲んでみる。
ぶっちゃけ魔法をかける前のものを飲んでいないので、おいしくなったかどうかは分からない。
それでもメイドが何かを期待してじーっとこちらを見ていたので「おいしい」と言っておくと、笑顔でテーブルから離れていった。

夜空は片肘をついてストローをグラスの中でカラカラと回しながら、

「こんな場所に需要がある辺り、この国の終わりが見えるな」

「そこまで言うか……」

「しかし、しゅじんに絶対服従というぶぶんにおいては立派だとおもいます」

「……普通のジュースなのだ。本当に魔法なんてかかっているのか?」

「あー、まぁ、ちょっとはかかってんじゃねえのかな」

俺はジュースを飲みながら、そんな曖昧な事を言う。
まぁ魔法うんぬんはともかく、ジュース自体は普通においしいと思う。

そんな俺達に、再び先程のメイドが近づいてきた。
夜空は明らかに「今度は何だ?」といった鬱陶しそうな表情をする。

「あの、実はここではメイド服の貸し出しを行なっているんですよ!」

「貸し出し?」

「はい! それで記念撮影なんかも!」

「ふーん、夜空どうだ?」

「ああ!?」

「何でもないです……」

何となく夜空に振ってみるが、凄まじい目で睨まれた。
せっかくだし、やってみればいいのになぁ。



**************************************



メイド服を着るかどうか、>>957-959の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/27(月) 00:00:00.(00)←ここ

夜空>>957
00〜09→着る
10〜99→着ない

幸村>>958
偶数→着る
奇数→着ない

マリア>>959
00〜69→着る
70〜99→着ない
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/27(月) 12:57:31.53 ID:oS5VJjo1o
はい
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 12:58:50.26 ID:1oEEv+sDO
どれどれ
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/08/27(月) 12:59:39.93 ID:qh45PD7n0
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/27(月) 13:02:46.06 ID:oS5VJjo1o
夜空に着させたかった…
スマソ…
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/27(月) 13:04:27.38 ID:Jsb5NYcVo
安定の幸村
962 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 14:47:09.62 ID:rvvGPYaNo

「それではわたくしが」

そう言ったのは幸村だ。
俺は意外に思って、

「あれ、幸村ってこういう女っぽい格好はいいのか? なんか真の男がどうとかって言ってたけど」

「……あにき、わたくし最近じぶんの気持ちがわからないのです」

「え?」

「たしかにわたくしはしんのおとこというものを目指していたはずでした。ですが最近ではただあにきのお側に居られればまんぞくなのです」

「そ、そうか……」

幸村の真っ直ぐな瞳に、俺は思わずたじろぐ。
ていうか、その言葉だけ聞くともっと色々別な意味にも聞こえてきそうな……。

「それで……メイドなのか?」

「はい、しゅじんに仕えるといういみでは知っておくのもいいかと」

なんとも幸村らしい考え方だ。
そんなわけで、メイド姿になるのは幸村ということになった。

一方で、夜空はなぜか少し不安そうな表情をしていた。



***



数分後、幸村が着替え用のカーテンの裏から出てきた。
フリルのついた丈の短いスカート、頭にはカチューシャ。
まさしくメイドだった。

「あにき……どうでしょう?」

「……す、すげえ似合ってるぞ」

「そう、ですか……」

幸村はメチャクチャ可愛かった。
俺はゴクリと喉を鳴らして、動揺を抑えながら何とか言葉を紡ぐ。
幸村は俺の言葉にわずかに頬を染めて微笑み、それによって俺の心臓がさらに跳ね上がる。

夜空はなぜか悔しそうに幸村を見て、

「ぐっ……ま、まさかここまで似合うとは……!!」

「おぉ、メイドさんなのだ!! 幸村がメイドさんになったぞ!!」

二人の反応を見ても、どれだけ似合っているか分かる。
すると、先程の金髪ツインテールのメイドがデジカメを片手にやってきた。

「やっぱりツーショットでいっちゃいます?」

「なっ!」

いたずらっぽく笑うメイドに、俺は驚きの声を上げる。
しかし、幸村はこちらを上目遣いで見上げて、

「あにき……わたくしはあにきとつーしょっとがいいです」

「……あ、あぁ……じゃあ、そうすっか…………」

こんな目で見られては断ることなんてできるはずがない。
マリアも写りたかったようで残念がっているが、問題は夜空だ。
なんか半目でこちらを見ていて、正直怖い。

幸村は俺と一緒に写るためにすぐ隣までやってくる。
女の子特有の良い香りが鼻孔をくすぐる。
 
963 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 14:48:03.32 ID:rvvGPYaNo

「もうちょっと近づいてくださーい!」

「はい……」

もう十分近いのだが、メイドはまだ足りないと言う。
ニヤニヤしている辺り、たぶん距離的にはもう問題ないのだが、ただ面白そうというだけで言ってる気がする。

幸村は俺と完全にくっつくようにして……そして俺の腕を遠慮気味に掴んだ。

「いっ!?」

「おぉ、小鷹と幸村はラブラブだな!!」

「……むぅ」

マリアは楽しそうにそんな事を言って、夜空は顔をしかめる。
すかさず金髪ツインテールのメイドはシャッターチャンスとばかりに、

「はい、チーズ!」

パシャ、とカメラのフラッシュがたかれた。
写真を確認してみると、俺の表情は明らかに引きつっており、いつも以上に酷い。
だが、幸村は本当に嬉しそうに、それを自分のケータイに移してもらっていた。

「あにき……わたくし今日の事はいっしょうわすれませぬ」

「そ、そんな大げさな…………」

俺は満面の笑みの幸村に動揺しつつ答える。
先程から動揺しっぱなしだが、これだけの美少女に笑顔を向けられて平常心を保てる男子高校生というのも中々居ないはずだ。

ふいに誰かに足を思い切り踏まれた。

「いってえ!!!」

「あぁ、すまん。間違えた」

「何をどう間違えるんだよ……」

夜空はプイッとそっぽを向いてしまう。
このメイド喫茶は夜空にとってはあまり楽しくなかったようだが、まぁ幸村が嬉しそうだから良かった。

幸村は先程の写真をケータイの待受画面に設定していた。
俺としてはかなり恥ずかしいが、幸村の顔を見ていると止めることはできなかった。



***



俺達はメイド喫茶から出て、再び人の多い廊下を歩く。
夜空はフラフラと危なっかしい足取りだが、何とか耐えているらしく目にはまだ光がある。
時々マリアが好き放題に走り回って行方が分からなくなりかけたりもしたが、その都度幸村がちゃんと連れてきてくれた。

「マリア、今度居なくなったらお前を首輪で繋ぐからな」

「く、首輪は犬みたいで嫌なのだ! 大人しくするから許してください!!」

「それでいい。……で、次はどこへ行く?」



>>964
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 14:50:25.41 ID:XnSLBon70
体育館にでも行くか
965 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 15:25:47.93 ID:rvvGPYaNo

「体育館にみんな集まっていたぞ! ワタシ達も行ってみるのだ!!」

「体育館……夜空は大丈夫か?」

「あそこは人口密度が凄まじいことになっていそうだな…………私が途中で倒れたら頼むぞ」

「はい、お任せをあねご」

「……できれば小鷹がいいんだけどな」

「え、なんだって?」

「…………」

夜空がジト目で俺を見る。
そして。


「だから!! 私が倒れたら小鷹が介抱してほしいと言っているんだ!!」


大声で叫んだ。
周りの道行く人々も何事かとこちらを見る。

夜空の顔は案の定真っ赤で、俺も同じように顔が熱くなるのを感じる。

「ばっ、い、いきなり何言ってんだよ!」

「お前が鈍感なのが悪い!! わ、私は……もう隠すこともないし…………」

「……え、えっと、とにかく行こうぜ!」

なんだか妙な空気を振り払うように、俺はさっさと歩き出すことにした。
マリアはキョトンとして、幸村はわずかに口を尖らせながらついてくる。

夜空は慌てて俺の後を追いながら口を開く。

「ま、待て小鷹! 返事はどうした!?」

「分かったっての!」

俺は夜空とは目を合わせられずにそう答えることしかできなかった。



***



体育館には人が押し寄せ、むっとするほどの熱気に包まれていた。
窓には暗幕がかけられており、光が全然入ってきていない。
そんな中、前のステージだけがライトアップされている。

俺達はステージから真正面あたりの位置には居るのだが、距離が遠い。
マリアなんかは全く見えない状態なので、俺が抱き上げてやる事にした。
夜空はそれを見て、顔色を悪くしながら口を開く。

「お前はマリアの父親か」

「し、仕方ねえだろ、何も見えないんじゃ可哀想じゃねえか」

「あはは、新しいお父さんなのだ!!」

「あにき、いつでもわたくしが代わりますので言ってください」

「……あー、分かった。ありがとな」

幸村の細い腕を見ながら、俺はとりあえずそう言っておく。
するとその時、周りの人達がざわざわし始めた。いよいよ何か始まるようだ。


**************************************


体育館の催し物が>>966の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/27(月) 00:00:00.(00)←ここ

偶数→ミスコン
奇数→バンド
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/27(月) 15:26:31.80 ID:0XsCEN0f0
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 15:52:54.25 ID:9I8SifUIO
女装ミスコンを期待したんだが残念
968 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 15:56:29.54 ID:rvvGPYaNo

『みんな盛り上がってるか――っ!?』

「「うおおおおおおお!!!」」

マイクで大きくされた男子高校生の声が体育館に響く。
周りの人達はテンション高く腕を上げて答えていたが、俺達の中で同じような事をしたのはマリアだけだ。
こういうノリには付いて行かなければいけないというのは分かっているつもりなのだが、とっさに体が動かない。
なんかこういう所は体に染み付いてしまっているのではないかとも思えてくる。

ちなみに夜空や幸村は、初めからみんなに合わせるという考え自体がないようだった。


『いよいよメインイベント、ミスコンが始まるぞ――!! 良かったな野郎ども!!』


どうやらこれから始まるのはミスコンのようだ。

そして、ここの学校のミスコンは変わった趣向を持っており、観客もミスコン候補として動員するというものらしい。
予めこの学校内のミスコンは決まっており、その子を含めた何人かでまたミスコンの座を争うというものだ。
しかも観客の中から候補を選ぶやり方もかなりいい加減で、大体が近くの女の子に対して「この子可愛くね!?」みたいな感じで選ぶものらしい。

優勝賞品はジュース3000円分。高校生らしいものかもしれないが、この時期だと素直に嬉しい。

『じゃあ、ウチのミスコンに対抗できるほど可愛い女の子を探してくれ!!!』

その声と共に、体育館全体が一斉にざわざわし始める。
みんな可愛い子探しに取り掛かっているようだ。

とりあえず俺も形だけはと、可愛い子を探してキョロキョロと周りを見渡してみる。
……あれ、なんか見落としている気がする。


**************************************


誰がミスコン候補になるか>>969-971の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/27(月) 00:00:00.(00)←ここ

夜空>>969
偶数→選出
奇数→不選出

幸村>>970
偶数→不選出
奇数→選出

マリア>>971
偶数→選出
奇数→不選出
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 15:57:20.46 ID:PE7xShAno
でろ
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 15:57:26.24 ID:elkELhKPo
えい
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/08/27(月) 16:02:15.89 ID:h5e2u8VAO
マリアァアアア
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 16:03:34.94 ID:PE7xShAno
マリアぇ
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/08/27(月) 16:28:14.23 ID:yFMWiZuHo
夜空キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/27(月) 17:35:16.56 ID:Jsb5NYcVo
これはあれか
壇上で夜空が小鷹に  して
975 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 17:52:08.69 ID:rvvGPYaNo


「可愛い子発見!!!」


そんな声が近くから聞こえてきたので、そっちを見てみる。
目に入ってきたのは…………何やら男に囲まれている夜空だった。

「な、なんだ……?」

「君、メッチャ可愛いね!! ミスコン出てみなよ!!」

「やべえ、ボーイッシュ女子じゃん!! 絶対優勝間違いなしだって!!」

「ていうか、隣の子も可愛い!! でも男の制服……」

あー、そういえば、顔と頭は夜空の数少ない長所だった。
やっぱり他の人達から見ても美少女扱いなんだなー、と俺はぼんやりと考える。
幸村も同じように注目こそされてはいるのだが、やはり男子の制服がネックになっているらしい。

夜空は困ったように俺の方を見る。

「こ、小鷹……」

「ん? あ、もしかして彼氏さん…………ひっ!!」

夜空の時と同じテンションで俺に話しかけようとした人が、俺の顔を見て後ずさる。
暗いという事もあって、どうやら相当の悪人面に見えるらしい。
……もう慣れたけどさ。

俺は、おどおどとこちらを見ている夜空に笑いかける。

「いいんじゃないか? 出てみれば」

「なっ……!! そ、そんなの無理に決まっているだろう!!!」

「無理って決めつけてたら何もできないだろ? この機会だしさ、いいきっかけになると思うぞ」

「ワタシも夜空なら優勝できると思うぞ!」

「あねご、ふぁいとです」

「……ぐぅ」

夜空が顔を赤く染めて少し俯く。
そしてそのままの状態でしばらくブツブツと何かをつぶやく。
その声はよく聞こえないが、たぶんいつもの呪詛だろうと思ったので無理に聞こうとはしないでおく。
周りの男子達が困ったように俺の方を見てくるが、いつものことなんでちょっと待って下さい、と言う。

それから少しして、夜空が顔を上げた。
口を真一門に結んで、なぜか俺をキッと睨む。

「もし私が優勝したら何でも一つ言うことを聞いてもらう」

「え……えぇ!?」

「いいな!!」

「あー……ま、まぁ俺ができる範囲なら……」

相手が夜空だとどんな要求をしてくるか恐ろしいが、気迫に押されて頷いてしまう。
夜空は俺の返事を聞いて一瞬顔を緩めるが、すぐにいつもの不機嫌なものに戻って男子生徒の方を向く。

「いいだろう……ミスコンとやらに出てやる」

「「よっしゃあああああああ!!!!!」」

男子生徒達が歓声を上げる。
そんなわけで、なんと夜空がまさかのミスコン候補という事になった。
 
976 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 18:00:23.62 ID:rvvGPYaNo



***



数分後、ついにミスコン大会が始まった。
候補者は全員ステージの裏に行って、出番を待つことになっている。

流れは至って簡単で、順番に出てきて一人五分のアピールタイム。
そしてその後観客からの質問タイム。一人三問まで答えるらしい。

そして最後に投票だ。
さすがにこの体育館に居る人間全員が参加できるわけではなく、ランダムに選ばれた100人に予め投票装置が渡されている。
幸か不幸か、その100個の内の一つは俺が持っている。


『それではまず始めに登場するのは、我が校のミスコンだ――っ!!!』


そんなハイテンションな声と共に割れんばかりの歓声が上がったのでステージを見てみると、そこには凄く可愛い少女が出てきていた。
周りが話しているのを聞くと、どうやらモデルなんかもやっているらしく、校内のミスコン大会ではぶっちぎりだったらしい。
まさしく学校のアイドルというやつか。

しかし、贔屓目に見ても夜空にもチャンスはあると思う。
確かにこの学校のミスコン少女はメチャクチャ可愛いが、何ていうか高嶺の花的なお嬢様系な感じだ。
それと比べると夜空の場合は良い意味で庶民的で、観客にとっても自分達と近い場所にいるように感じるはずだ。

マリアは複雑そうな表情でステージを見ながら、

「むむぅ、確かに綺麗な人なのだ……だけどワタシは夜空の方が美人だと思うぞ!!」

「わたくしもマリアどのに同意であります」

「はは、そうだな」

ミスコン少女は自己アピールを始める。
趣味はピアノに生け花。それでいてスイミングにも通っているという。
周りの男子生徒達の反応を見る限り、相当良い感じだ。

夜空に関してはこの自己アピールがとてつもなく不安だ。
そもそもこんな大勢の前で話したことなんてないだろうし、自分で薦めておいてなんだが、上手くいく光景が思い浮かばない。
まさかトモちゃんの事とかを話し出すんじゃないかという不安さえ浮かんでくる。

そのままミスコン少女は観客からの質問にも、まさに理想的だといえるくらいの好印象を残す返答をして体育館のボルテージは高まっていた。
周りからはやはりこの子で決まりかな、と早くも予想の声が上がっている。


その後も何人か観客の中からの候補は出てきてその度に歓声が上がるが、最初の子ほど盛り上がることはなかった。
やはり普通の子はこういった場で話す事に慣れていないらしく、自己アピールでも噛んでしまう子が多かった。
まぁそれはそれで「かわいいー!!!」なんて声もあがっていて、プラス要素になっていたが。

そして、ミスコン大会はそのまま滞り無く進み、ついに最後の候補が出てくる。
夜空の番だ。

夜空の姿が出てくると、歓声が沸き上がった。
そういえば、今までの候補者はみんな長い髪をしていたので、夜空のような短い髪は新鮮だ。
それに、クロニカの制服というのは女子の間でも結構人気があるらしく、そこでのアドバンテージもあるのかもしれない。
実際、この歓声の大きさは最初の子と同じくらい大きいように思える。

夜空は緊張した面持ちでマイクを持ってステージの真ん中へ向かう。
しかし、予想していたよりはずっとマシで、表情こそ堅いがその他は特におかしいことはない。
たぶん小鳩に同じ事をさせたら両手足を同時に動かすくらいはやらかしそうだ。

夜空はステージの真ん中に立つと、目をつむって深呼吸した後、マイクを口元へ持っていく。
そして真っ直ぐな眼差しで口を開いて話し始めた。


**************************************


夜空の自己アピールの内容が>>977-980の中から、>>980の投稿時間のコンマ以下の数字で決定
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/27(月) 00:00:00.(00)←ここ

00〜24→>>977
25〜49→>>978
50〜74→>>979
75→99→>>980
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/27(月) 18:01:22.51 ID:D9oGFsr30
小鷹ー!愛してるー!
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 18:02:31.77 ID:BMOJqirIO
リア充は[ピーーー]!
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2012/08/27(月) 18:03:12.53 ID:Jsb5NYcVo
私の歌を聴けぇ!
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/27(月) 18:10:37.33 ID:oS5VJjo1o
(笑顔で)私に……投票して下さいね?
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 18:12:54.29 ID:9I8SifUIO
これはひどいw
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/27(月) 18:22:13.52 ID:sfUPVGDZo
オワタww
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/08/27(月) 18:46:59.77 ID:3cIm4UHAO
こんな場面でもブレないのはらしいっちゃらしいが
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/27(月) 18:47:52.51 ID:Yy6u2uk1o
これはひどいwwwwww
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/27(月) 23:03:42.23 ID:b+EjBmOAo
優勝する気がまるでねぇww
986 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/27(月) 23:10:26.82 ID:rvvGPYaNo

『……私は人の顔色を伺いながら話すなんて言う高等技術を持ち合わせていない。
 だから、ありのままの私をそのまま伝えたいと思う』

体育館が水を打ったように静かになる。

嫌な予感がする。
ありのままの自分……っていう事は…………。

『まず私はお前達が思っているような人間ではない』

『昼休みは一人でご飯を食べるし、何人かでグループを作れと言われても必ず余る。
 学校のない日は大半一人で本を読んで過ごすし、夏休みだってやる事がなさすぎて一週間で宿題を終わらせてしまう』

『目付きが悪いのは自覚してるし、近寄りがたい雰囲気を出してしまっているのも分かっている。
 おまけに性格も悪いし、そもそも気を使ってまで周りの人間と関わるのが好きじゃないし…………』

『まぁ一言で言えば、私は友達が少ない』

夜空はここで一旦言葉を切る。
体育館の人達は一言も声を出さずにただ夜空の事を見ている。

ここで夜空が俺達の方を向いた。
その表情が、穏やかなものになる。

『……だが、そんな私にも今は友達と呼べる存在が確かにいる。
 そいつらはどれだけ私が残念なことをしても側にいてくれる、そして私自身気兼ねなく接することができるんだ』

『だから、私は私を偽らない。ここでは好きな事を言わせてもらう。
 例え世界中の人間から嫌われようとも、私には大切な友達がいるから何も怖くない』

『ここに来ている者達の多くはこの夏休みを存分に満喫し、私なんかよりもずっと充実した毎日を送っているのだろう。
 そんなお前達に、私から言いたいことは一つだ』

夜空は大きく息を吸い込む。
そして。


『リア充は死ね!!!!!』


親指を立てて地面に向ける夜空。
いわゆる地獄へ落ちろというジェスチャーだ。

これは完全に終わったな……と俺は諦める。
だけど、まぁ、本人がそうしたかったのならばそれでいいとも思う。
俺は自然と笑みを浮かべていた。これはこれで夜空らしい。

幸村もマリアも、夜空のことを微笑みながら見ている。


すると次の瞬間、体育館が盛大に湧き上がった。
俺は驚いて周りを見渡す。


「いいぞいいぞー!!!」

「もっと言え!!」

「ありがとうございます!!!」

なんと体育館のほとんどの人が夜空へ拍手をしたり、声援を送っている。みんなとても楽しそうだ。
なんか明らかに趣向が偏っている者も居るようだが、どうやら先程の夜空の言葉は良い方向に転んでくれたらしい。
確かに考えてみれば、今までの候補者はみんな似たり寄ったりの事しか言わなかったので、こういった斬新なアピールが効いたのかもしれない。
みんなとは違う所を見せる。オーディションなどではこういった事は大切だ。

まぁ、とはいっても夜空は狙ってやったようではないようだ。
本人もまさかの声援にキョトンとしているだけで、事態を把握しきれていないようだ。

ともあれ、俺達はみんなと一緒に夜空に拍手を送る。

『これは素晴らしい自己アピールが聞けました!! 残念系美少女、これまた新たなブームの予感!!』

司会者も興奮気味に言う。
そして場の熱気が冷めやらぬ内に、質問タイムへと突入する。


夜空への質問は?(3つ) >>987-989
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 23:11:25.35 ID:t1QK/gYSO
スリーサイズは?
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/27(月) 23:12:22.95 ID:9Qr0Fegx0
僕と友達になってくれますか?
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 23:12:25.34 ID:jpI6oPRIO
好きな人は?
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/08/27(月) 23:12:59.36 ID:0DxyBMLYo
休みの日はどのように過ごしていらっしゃるんですか?
私、気になります!
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 23:32:23.68 ID:BMOJqirIO
そろそろ次スレの季節か
992 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/28(火) 00:16:03.64 ID:cG88bZ7Ho

観客の中の一人から、まず最初の質問が飛び出す。

『スリーサイズ教えてください!!』

『誰が言うか!!!!!』

当然のことながら夜空は顔を真っ赤にして答えない。
ぶっちゃけ、星奈程ではないが夜空も普通にスタイルは良い方だとは思うが、そういう問題ではないのだろう。

すると、マリアが手を上げて大声を出す。

「はいはいはい!!! ワタシ知っているぞ!!! 前に星奈から聞いた!!!」

「お、あの子が知ってるみたいだぞ!!」

「マイク渡せマイク!!」

マリアの元にマイクが渡ってくる。
それをマリアは大喜びで受け取るが、あんまり暴れると抱き上げている方はキツイので大人しくしていてほしいところだ。
ステージの上では夜空が怪訝な表情をしてこちらを見ている。

『夜空のスリーサイズはなー! 上から81・5……』

『ちょっと待てええええええええええええ!!!!!』

マリアの声は夜空の大絶叫によってかき消された。
マイクで大声を出したせいで、キーンという嫌な音が体育館に響く。

……ていうかこの反応、どうやら合っているようだ。

『なんでお前がそんな事を知っている!?』

『星奈から聞いたのだ!!』

『なんで肉もそんな事を知っているんだ……っ!! 次会ったらただでは済まさないぞ……!!!』

ギリギリと怨念のこもった表情を浮かべる夜空。
間違ってもミスコン候補者が浮かべてはいけないような表情だ。
まぁ、もうなんか残念系美少女なんて言われちゃってたし、何でもありなのかもしれない。

そうこうしている間に、マイクが次の質問者へと渡る。

『僕と友達になってくれますか?』

『あぁ、いいぞ』

『本当ですか!? ありがとうございます!! これからよろしくお願いします三日月さん!!』

『あぁよろしく、友達A』

『あ、扱いひどっ!!』

夜空は笑顔でサラッと酷いことを言い放った。
しかし、質問者の男子も罵られているのをどこか楽しんでいる様子もあり、元々これが目的だったのではないかとも思う。
とはいえ、夜空もこうして初対面の人にも笑顔を見せることができるようになっている辺り、成長しているようにも感じる。
 
993 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/28(火) 00:17:55.06 ID:cG88bZ7Ho

さらに、マイクは最後の質問者へと渡る。

『好きな人は居るのー?』

『ッ!! そ、それは…………』

夜空がステージの上から俺の方を見てくる。
すると、近くに居た夜空を推薦した男子達が近くからマイクを貰って、

『残念だけど三日月さんは彼氏持ちだぜ! ここに彼氏さん居るし!』

途端に周りから視線がこちらに集まってくる。
この髪のせいで視線を集めるのは慣れているとはいえ、こういった事で注目されるのは何とも気恥ずかしい。
そうやって、俺も夜空も俯いてもじもじとしていると、何と俺の方までマイクが回ってきた。

『じゃあ彼氏さんから何か一言!』

「う、うえええ!?」

突然話を振られて、俺は動揺を隠せない。
大体、俺だってこんな大勢の中で話すなんて慣れていない。
しかし、夜空にも頑張るように言った手前、逃げることもできない。

俺は頭で色々考えまくりながら口を開く。

『あー……』

俺が少し声を出した瞬間、周りが一斉にざわざわし始めるのが分かる。
え、お、俺何かしたか!?

「あにき、さすがのお声です。よくドスがきいております」

「小鷹の声はどこかの怪物みたいだなー」

幸村とマリアの声を聞いてやっと理解する。
自分ではあまり分からなかったが、どうやら相当まずい感じの声が出ていたらしい。
俺は一度咳払いをして声を整える。


>>994
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 00:20:01.57 ID:KE+ajqOIO
夜空は俺の嫁
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 00:20:08.58 ID:5hlYGID+o
夜空が欲しければ、勝ち取れ!
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 00:20:25.57 ID:u2322OOmo
やべえ本当に言いそうでおもしれぇ!
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 00:21:19.72 ID:u2322OOmo
あ、夜空のセリフな
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/28(火) 00:21:28.50 ID:BzJdt6B00
俺の女だから手出すなよ
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/28(火) 00:34:19.71 ID:pzPbzMEoo
周りから見たら夜空もリア充じゃねこれ
1000 : ◆0WipXNi8qk [saga]:2012/08/28(火) 00:35:59.61 ID:cG88bZ7Ho
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