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土御門「黄金聖闘士?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 00:21:54.05 ID:0nfcxENao
・俺の小宇宙が書けと命じた
・深夜のテンションでハイになったとも言う
・時系列とかは気にしないで欲しい
・作者の守護星座はポンプ座、多分青銅


祝・聖闘士星矢Ωにて市様再登場!

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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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2 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 00:24:01.94 ID:0nfcxENao
・追加 禁書と聖闘士星矢とのクロスです。


―窓のないビル

土御門元春は悪友の口癖を言いたくなっていた。それは暗い部屋の中に蔓延する重たい空気のせいであった。
 部屋の中央には巨大なビーカーが鎮座しており、緑色の培養液が満たされていた。そしてその中にはさかさまに浮かぶ人間の姿があった。
学園都市総括理事長アレイスターである。アレイスターは逆さのまま腕を組み、自身の目の前で頭を垂れる男を見降ろしていた。男は腰まで
伸ばした白い髪、さらに目を引くのは彼の傍らにある箱である。

アレイスター「……………」

???「……………」

土御門(ただの話し合いだけで、なぜプレッシャーをかける必要があるアレイスター? その男、それほどの者なのか?)

 両者から一歩後ろに引いて待つ土御門であったが、それでも両者の威圧のせいで冷や汗が滲みでていた。土御門はそれを拭い、唾を飲み込むと、
チラッと男の方へと視線を向けた。

土御門(最初見た時は女かとも思ったが……)

 男は長髪であり、その容姿も端麗である。少なくとも顔だけを見れば、勘違いする者もいるだろう。しかし、男は優男ではあったが、鍛えられた体をしており、
一切の隙がなかった。それに漂わせる雰囲気も物静かではあるが、常人よりも常に上にいるような不遜な気配が当たり前というようにまとわりついていた。
3 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 00:26:06.62 ID:0nfcxENao
アレイスター「……では、君の学園都市での活動を許可しよう」

 剣呑な空気が続く中、アレイスターは気にも留めずに口を開いた。それを聞いて男は瞳を閉じたまま、少しだけ頷く。

???「ありがとうございます。これで、私も任務を果たせるというもの」

アレイスター「フフフ……私も君を、君たちを敵に回したくはないのでね。とはいえ、なるべく穏便に済まして欲しい事を願うばかりなのだが……」

???「それは相手次第でしょう。私としては、貴方がたの戦力がちょっかいをかけてこないかが不安ではありますが……」

 男の言葉にアレイスターは小さく笑った。

アレイスター「フッ……すでに手は打ってあるとも。私の命令でね、各所には通達はしてある。しかし……フフフ、君ほどの男が恐れる程ではないと思うがね?」

???「私は常に万全を期したいのです。小僧共の横やりで任務を失敗したとあれば、私は教皇に顔向けが出来ないのでね」

アレイスター「そうかね」

???「降りかかる火の粉は払わせていただくが……よろしいかな?」

4 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 00:26:43.83 ID:0nfcxENao
アレイスター「構わないよ。だが、殺さないでくれよ?」

???「……フッ、ここに来たのが蟹座(キャンサー)でなかった事を幸運に思う事だ」

 男は瞳を閉じたまま、不敵に笑って見せた。

???「しかし、この乙女座、バルゴのシャカにも一つ持ちわせていない物がある」

 男、シャカはスッと立ち上がると凛と言い放った。

シャカ「それは弱者に対する慈悲の心だ」

 その言葉が発せられた瞬間、場の空気は一層重くなった事を感じた土御門は、ついに心の中で呟いた。

土御門(不幸だ……これは上やん並みに不幸だ……)

 土御門はふき取ったはずの額の汗がまた噴き出ている事に気がついた。しかし、今度はそれを拭う事はしなかった。
場の空気の重さが、明確な怒りとなっているように感じられたからだ。
その怒りを発しているのはアレイスターである。明確に怒りと判別できるわけではない。現にアレイスターの表情は変わって
いないのだから。それに、対面するシャカも涼しい顔をしていた。

アレイスター「そちらに任務があるように、私にも研究というものがある。それを台無しにされては困るな?」

シャカ「努力はしよう。そして、貴方の方も首輪をつけ直す事をお勧めする」

アレイスター「そうさせていただく」
5 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 00:27:50.74 ID:0nfcxENao
数分後、暗く思い空気の流れる一室から解放された土御門はサングラス越しに浴びる太陽がいつも以上にまぶしく感じられた。

土御門(聖闘士……ね。噂には聞いていたが)

 土御門は隣を歩く男の顔を横目で見た。やはり見た目だけならば、優男である。だが、その優男は巨大な箱を軽々と背負い、
そして瞳を閉じたまま、なんら支障をきたすことなくついてきていた。

土御門(女神アテナに使える八十八の星座の闘士。その拳は天を裂き、大地を割る……そして、八十八の中でも最強を誇る
     十二の黄金の聖闘士、その一人が、このシャカという男か)

 噂には聞いていた。神話の時代より邪悪と戦い続ける戦士の事を。土御門自身も長い間裏の世界に身を置いているが、
本物の聖闘士を見たのはこれが初めてである。

土御門(聖闘士の本拠地、ギリシアのサンクチュアリはいかなる魔術師であっても突破は不可能な結界に守られたまさに聖域。
     生きる伝説とはまさにこの男のような事を言うんだろうな)

 真偽はどうあれ、今まで謎とされていた聖闘士が、その中でも最強を誇るとされる男の一人が隣にいると言うのは、ある意味では異常事態だ。
6 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 00:28:54.46 ID:0nfcxENao
シャカ「土御門と言ったか?」

土御門「は……なんです?」

 突然声をかけられた土御門ではあったが、客人に対する礼義を忘れる程取り乱したりはしない。
だが、シャカはそんな彼の姿を滑稽に思ったのか、小さく喉を鳴らしながら笑った。

シャカ「フフ……固いな」

土御門「は?」

シャカ「そう身構えずともよい。私も敵でなければ無碍に扱う事はせん」

 シャカは不敵に笑って見せた。言葉尻は優しげなものだが、裏を返せば、それは土御門は取るに
足らない存在としか認識されていないと言う事にもなる。

シャカ「フム……いつまでになるかはわからぬが、この都市に滞在する間はよろしく頼むぞ」

土御門「こちらこそ……」

 できるだけ早く帰って欲しいなどとは言えない。

土御門「取りあえず、ホテルに案内します。そのあと、協力者との顔合わせもしたいので」

シャカ「ローマ清教より派遣されたと聞くが?」

土御門「えぇ、一人は腕の立つ魔術師、もう一人は聖人。戦力にはなります……ムッ?」

 説明を続ける土御門であったが、彼は周りの異様な変化に気がつく。

土御門「人払いのルーン? まさか、あいつら、もうついたのか?」

 そこまで人通りの多い路地を歩いていたわけではない。それでも土御門の隣にいるシャカは人目を引く存在である。
それなのに、彼らの周りには人っ子一人いなかった。その不自然なあり様を作り出す術を土御門は知っている。
そして、それを行う者たちの事も。
7 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 00:29:49.55 ID:0nfcxENao
シャカ「土御門……どうやら敵の方が一足早かったようだ」

 シャカはそう言いながら、土御門を押しのけて前に出る。その声色には警戒の色があった。

土御門「なに……!?」

 その一瞬、土御門は熱気を感じた。肌がひりひりと焼けるような熱気、そんな熱気を放つ事が
出来る男を土御門は一人しか知らない。
 炎の陣がシャカと土御門を包囲する。

土御門「これは……!」

 まさに炎の檻。人間など触れれば一瞬にして炭に変えてしまう程の猛火。そして、炎の中から悠然と、
真っ赤に燃える炎の魔人を引き連れた神父の姿を見た瞬間、土御門は確信した。

土御門「ステイル=マグヌス!」

 土御門は信じられない物を見るように叫んだ。

土御門「ステイル、手前ぇ、何を考えてやがる!」

 身構える土御門だが、それをシャカが制する。

シャカ「よせ、土御門……あの少年に声は届いていないようだ」

土御門「なにっ……はっ……!」

 言われて気がついた。土御門も魔術師のはしくれである。その者が正常であるかないかを判断するのは容易である。
虚空を眺めるような視線には力がなく、ステイルの顔には感情というものが排除されていた。しかし、ステイルからは無機質な殺気が放たれていた。
8 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 00:31:06.72 ID:0nfcxENao
シャカ「フン……先ほどからやり取りを見るに、あの少年は君の言う協力者の一人という事だな?」

土御門「あぁ……しかし、ステイル程の手練が一体なぜ……?」

シャカ「今はそれを考えている暇などない。しかし……降りかかる火の粉は払わなければならん」

土御門「お、おい!」

 土御門はシャカの周りを漂う気迫が燃焼されていくのが見えた。まるでオーラを纏うように、シャカの
身体が金色に輝く。それに呼応するように、シャカの長髪がなびき、炎の陣が僅かに揺らぐ。

土御門「むうう……こ、これは……!」

シャカ「土御門よ……貴様は小宇宙を感じた事があるか?」

土御門「こ、小宇宙?」

シャカ「フン、ならば見るがいい。己の内に秘められた宇宙、小宇宙を燃焼させる。それが聖闘士の戦いよ!」

 膨大なエネルギーがシャカを中心に発生する。その余波は炎の陣を吹き飛ばし、その気迫はステイルに
付き添う炎の魔人を怯ませた。その一瞬、僅かに感情の消えていたステイルの顔に焦燥の色が見えた。
それは本能が発したものだったかもしれない。ステイルは、自分でも気がつかぬまま、懐から数枚のカードを取り出し、
シャカ目がけて投げつける。投げられたカードは一瞬にして火球へと変貌し、寸分の狂いなくシャカを目指した。

土御門「おい、何をしている! ステイルの炎を喰らってはタダではすまねぇぞ!」

 土御門は知っている。ステイルという魔術師はたった一人の少女を守るためにルーン魔術を極め、あらゆる敵を葬ってきた事を。
その実力は魔術師の中でも上位、そして彼の操る炎はあらゆるものを焼きつくす。いや、跡形もなく消滅する。ステイルの操る
三〇〇〇度の炎の前では人間など、その姿形を残す事なく消し去る事が可能なのだから。
 だが、しかし、シャカは悠然と立っていた。土御門の叫びも聞こえているはずだが、それでもシャカは不敵に笑って見せた。
 その瞬間、シャカの背負う箱が黄金の輝きを放つ。

シャカ「カーン!」

 響き渡るシャカの声。それと同時にステイルの火球がシャカを包み込む。その光景を目の当たりにした土御門は唖然とした表情を
見せていた。それは、跡形もなく消え去ったシャカを見たからではない。

土御門「嘘……だろ?」

 それは、煤一つなく、黄金に輝く鎧を身にまとったシャカの姿があったからだ。シャカの周りには不可視の障壁が張り巡らされており、
ステイルの炎はそれに遮られ、むなしく消滅していった。

シャカ「フン……この程度の炎、私の前では涼風に等しい」

 今まさに、最強の黄金聖闘士の一人、乙女座バルゴのシャカが降臨した。
9 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 00:31:47.17 ID:0nfcxENao
以上です。

短いね。
自分の小宇宙じゃこれが精一杯ですわ。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 01:02:16.99 ID:7AJN3+S4o
俺の小宇宙は今にもはちきれそうだぜ
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 01:33:03.11 ID:f8Vxu7JDO
このようなスレに出逢えるとは……センチメンタリズムな運命を感じずにはいられないな
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 14:16:38.48 ID:bvrpUqXDO
ユニコーンギャロップ!
13 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 15:42:49.99 ID:0nfcxENao
 土御門は突如として出現した黄金の鎧に見惚れていた。傷一つない金色の輝きは美しく、
それでいて神々しいまでの風格を出していた。
 そしてそれを身にまとうシャカの力も数倍にまで跳ね上がっているのがわかる。

土御門「こ、これが……黄金聖闘士? なんて、力だ……近くにいるだけでひしひしと伝わってくるぜよ……」

 土御門はずり落ちていたサングラスをかけ直すと、ほぼ無意識のうちに後ろへと下がった。
これより先、多分自分が介入できるものではない。土御門は本能的にそれを察していたのだ。
 そして恐らくシャカも自分が横やりを入れる事を望まないだろう。

土御門(とはいえ、ステイルの殺気とはまた別の殺気を感じるにゃー……こいつぁ、どっかで高見の見物を決め込んでる奴がいやがる)

 こちらに殺気がばれている事すら気にも留めないような冷たい視線であった。土御門が辺りを見渡し、人払いのルーンの効果を確認する。
人影がないのは、ルーンが効いている証拠であり、そんな中で殺気を放つ人物がいると言う事はこの近くに別の敵がいると言う事だ。
 そうなれば、土御門の行動は早い。即座に後方へと下がると、敵の位置を割り出す為の準備に取り掛かる。身体に負荷のかかりにくい道具を
使った探知術である。

土御門「シャカっ!」

 土御門の言葉とステイルの追撃はほぼ同時に行われた。シャカは片手でステイルの火球を弾き飛ばすと、涼しい顔で、土御門を諭すような口調で答えた。
14 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 15:44:29.38 ID:0nfcxENao
シャカ「みなまで言うな。鼠の存在は当の前に気がついていたとも。して、土御門。この少年、どうするべきかな?」

土御門「できれば助けたい。できるのか?」

 その問いにシャカは不敵な笑みを浮かべて答えた。

シャカ「愚問だな」

土御門「……すまん!」

 手短に礼を述べた土御門は探知術が示す方角へと走り去っていく。それを見送ったシャカは再度ステイルと対面する。

シャカ「さて……この私が安易に仏心を出すのは珍しい事だが、君の洗脳を解けば、それを施した術者が判明するやもしれん。
     敵対する者に容赦はせんが……命だけは取らないでおこう」

 シャカの宣言は意識のないステイルのは無駄なもののはずだった。しかし、それでも洗脳を受けたステイルはそれに反応するように、
右手を前にかざすと、傍らの魔人に指示を与える。
 シャカの身長を容易に超える炎の魔人は轟音のような叫び声をあげ、アスファルトの地面すら融解するほどの業火をたぎらせた。
一歩一歩と魔人が歩けば、物体が解ける異臭が漂う。魔人はじょじょに歩行速度をあげ、遂には全身を炎の弾丸と化してシャカに飛びかかる。
そしてマグマのような豪腕でシャカを捕らえようとした瞬間。

シャカ「退け、木偶め」

 シャカはその場から動く事もせず、右手をあげ、左手を下にし、印を結ぶ。まるで仏がその威光を知らしめるように、結ばれた印はシャカの内に
秘められた小宇宙を燃焼させる。

シャカ「オーム!」

 囁くような声と共にシャカの全身からまばゆい閃光が走る。その閃光は瞬く間に魔人を包み込むと、断末魔の叫びをあげさせる事なく魔人を消し去った。

シャカ「さて、これで君を守るものはなくなった。そして君自身の力で私に抵抗する事も不可能。洗脳を解いてやるのだ、ありがたく思うがよい」

 そう言ってシャカはステイルに向かって歩みだす。だが、その瞬間、シャカは背後に魔人の気配が復活した事に気がついた。

シャカ「な、なにぃ!?」

 振り向いた先にいた魔人は先ほどのダメージなどなかったかのように、膨大な熱量を内包し、力強く燃え立っていた。

15 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 15:45:59.50 ID:0nfcxENao
シャカ「奇妙な術を使うか。しかし……」

 魔人の復活には驚かされたが、シャカはすぐさま平然と落ち着きを取り戻していた。
シャカは今度は指一本も動かさず、ただ念じただけで衝撃波を放ち、魔人を消し飛ばして見せる。
だが、それでもすぐに魔人は復活してみせ、炎は勢いをとどめる事を知らなかった。

???「その魔人をいくら消し去っても無駄です」

 ふと、シャカの背後から鋭利な闘気を孕んだ女の声が聞こえた。シャカが声のした方へ振り向くと、
そこには奇抜な長刀を携えた、黒髪の女が立っていた。女の身体は傷だらけで、随所には血が滲みでていた。

???「お初にお目にかかります。アテナの聖闘士。私は神裂火織、ローマ清教より派遣されました」

シャカ「ほぉ、では土御門の言っていた協力者の一人とは君の事か?」

神裂「はい。ですが、自己紹介はここまでにいたしましょう。まずはステイルの魔人イノケンティウスをどうにかしなければいけません」

 神裂が長刀七天七刀の鞘に手をかけ、僅かに刀身を抜くと彼女の周りを七回の斬撃が舞う。その斬撃は神裂の周囲に
点在していた建造物の一部を切り裂いていた。その内の一つ、真っ二つに切り裂かれた電灯の斬り口に奇妙な文様が描かれたカードが貼り付けられていた。

神裂「ステイルの使う魔術はルーン魔術。ルーンの刻印がある限り、イノケンティウスは消滅しません」

 数枚のカードが切り裂かれた影響か、イノケンティウスの炎が僅かに弱まる。

神裂「しかし、どうやらカードは広範囲に散らばっている様子。全て破懐するのは少々厄介です。その間にステイルが別の魔術を発動させれば、さらに面倒」

シャカ「なるほど。中々面白い札遊びだ」

16 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 15:47:15.71 ID:0nfcxENao
シャカは静かに笑っていた。神裂はなぜシャカがこうまで余裕を持てるのかがわからなかった。

シャカ「しかし……フフフ、それに気がつかなかった私も修業が足りぬと言う事か。だが、弱点がわかった以上、遊びは終わりだ」

 そう言ってシャカは再び印を結ぶ。

シャカ「魔人を通して力の流れを読み取れば、ルーンの刻印とやらの場所も手に取るようにわかる! はぁっ!」

 シャカが念じると同時に掲げた右手から何条もの閃光が天に伸び、ほうぼうへと散っていく。そして僅かな間をおいて、
変化は訪れる。イノケンティウスが始めて苦痛の声をあげたのである。それはつまり、シャカがたった一撃でルーンの刻印が
施されたカードを破懐したという事だ。

神裂「なんと……! 散らばっていたカードを全て、一撃で破壊するなんて!」

シャカ「神裂とか言ったか。呆けている暇があれば、あの少年を捉えたらどうだ?」

神裂「言われずとも!」

 長刀を鞘におさめたまま神裂はステイルの下へと一直線に駆け寄る。風を斬るように駆け抜ける神裂を迎撃しようと、ステイルが
その両手に炎剣を出現させるが、もはや遅かった。ステイルが剣を振るう前に神裂の長刀の鞘が彼の鳩尾を捉えていたのだから。
ステイルは小さな呻き声をあげると、そのまま崩れ落ちた。神裂はそれを支え、ゆっくりとステイルを寝かせると、鞘に手をあてたまま周囲を見渡した。

神裂「聖闘士殿……」

シャカ「うむ……どうやら鼠は土御門が追っている方だけではなかったようだ」

 二人は自分たちに向けられる殺気を感じ取っていた。風の吹く音だけが響く場で、二人は膨大なエネルギーが生まれるのを確認した。
シャカは直立不動のまま立ち、神裂はステイルを守るように長刀を構える。そして、エネルギーが弾けると同時にそれは焼き尽くす炎の魔人となって現れた。
17 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 15:48:10.74 ID:0nfcxENao
神裂「ば、馬鹿な! あれはステイルのイノケンティウス。しかし、ステイルは気を失い、
    ルーンの魔翌力も感じられない……暴走か!?」

 驚愕の声をあげる神裂。

シャカ「むうっ!」

 再び復活したイノケンティウスは近くにいたシャカに狙いを定めたのか、その巨体をシャカに向け、
威嚇するように雄叫びをあげた。そして豪腕が振るわれると、シャカはそれを難なくガードして見せた。
しかし、魔人は自身を炎の渦へと変化させるとシャカの全身を包み込んだ。

シャカ「これはっ!」

 シャカに僅かな焦りが見える。シャカは全身の小宇宙を燃焼させ、魔人の炎を振り払おうとするが、
それよりも先に魔人の熱が爆発する。その摂氏三〇〇〇度にも及ぶ炎は太陽の表面温度には劣るとは言え、
赤色超巨星に匹敵する温度である。

神裂「聖闘士殿!」

 神裂の絶叫が響く。じょじょに爆煙が晴れると、そこにシャカの姿はどこにもなく、僅かに魔人の残骸たる火の粉が揺らめいていた。


???「ククク……噂に聞く黄金聖闘士も灼熱の炎の前では消し炭同然だったようだ」

 そして、その火の粉を踏みつけ、熱気の籠るアスファルトの上を悠然と歩く一人の男がいた。深紅のスーツを纏い、
手には真珠のように白い装飾が施された一冊の本を持つ男はシャカが立っていた場所を踏みにじりながら言った。

神裂「……ッ!」

 長刀が鞘から引き抜かれると同時に七つの斬撃が男目がけて放たれる。
だが、しかし。
18 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 15:48:53.95 ID:0nfcxENao
???「無駄だ」

 七つの斬撃は、無数の鋼鉄製のワイヤーによる斬撃である。しかし、
そのワイヤーは男に到達する前に再び現れた炎の魔人の手によって溶け落ちていった。

神裂「な、なんだと……!?」

???「ククク、どうした? この程度の魔人、君の仲間がよく使っているじゃないか」

 男は倒れているステイルに視線を向けると、愉快そうに目を細めていた。その視線は確実に
他人を見下している視線であった。

???「とはいえ、私にしてみればこの魔人など児戯に等しい」

 男は持っていた本のページを開くと人差し指で文字をなぞる。すると、炎の魔人は消え去る。
男はページをめくりながら、つまらないと言った具合に首を横に振る。

???「しかし、残念だ。黄金聖闘士が技とも呼べぬ攻撃で死ぬ事になるとはな」

神裂「何だと?」

???「ククク! しかし、君も聖人と呼ばれる存在……私の技を受けるだけの資格はあるようだ!」

 男の低い笑いが響くと同時に本のページが風に煽られた様にめくられていく。男を中心に紅い渦が巻き起こり、
その身体を包み隠す。
 神裂はその異様な光景に胸騒ぎを覚えた。その証拠に紅い渦を中心に異様なエネルギーが生まれる。
神裂は一気に駆けだすと、長刀を引き抜き、閃光の如き一閃を放つ。

神裂「唯閃!」

 その必殺の一撃は確実に紅い渦を捉えていた。そして刃が渦に触れた瞬間。
 長刀と共に神裂の身体が大きく宙に吹き飛ぶ。

神裂「あぁぁぁぁぁぁ!」
19 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 15:50:10.86 ID:0nfcxENao
 渦より発生した真空波が神裂の身体を切り刻み、そして弧を描いて神裂の身体は
ドシャっと鈍い音を立てて地面に叩きつけられる。

神裂「ぐ、うぅ……馬鹿な! 唯閃が弾き返された!?」

???「ハッハッハ! 無駄だ!」

そしてその渦が最高潮にまで達した時、その渦を引き裂いて、白い鎧を身につけ、ローブをはおった姿で男が再び姿を現す。

???「貴様の刀は法衣(グリモア)には届かん! 大人しく我が奥義を受け地獄に落ちるが良い!」

 男はローブをひるがえしながら高らかと名乗りを上げた。

ヨハン「このファウストのヨハンの手にかかってな!」
20 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 15:51:09.94 ID:0nfcxENao
以上です。
調子こいて二話目投稿。
オリ敵だしちゃったけど、大丈夫だろうか?
一応聖闘士星矢チックに考えてみたけど……

>>10
そのまま黄金の領域まで高められるようにしていきたいです

>>11
その旨をよしとする!

>>12
Ωでの出番はあるのか一角獣座の聖闘士邪武!
21 : ◆HiI.6D.a8M :2012/07/16(月) 15:57:02.21 ID:0nfcxENao
やべ、ミス発見。

>>17
× 神裂「ば、馬鹿な! あれはステイルのイノケンティウス。しかし、ステイルは気を失い、
      ルーンの魔翌翌翌力も感じられない……暴走か!?」

○ 神裂「ば、馬鹿な! あれはステイルのイノケンティウス。しかし、ステイルは気を失い、
      ルーンの魔翌力も感じられない……暴走か!?」

でした。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 15:58:22.64 ID:Cv+MmOcSO
saga入れたらちゃんと撃てるよ
23 : ◆HiI.6D.a8M [sage]:2012/07/16(月) 16:47:23.12 ID:0nfcxENao
あ、またやってしまった・・・

>>22
すみません、初歩的なミスでした・・・
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/17(火) 09:30:02.57 ID:tM8haT9ro
ローマから派遣されてるのはわざとか?
25 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/17(火) 14:29:39.02 ID:PvODz8yYo
神裂「う、うぅ……ファウストのヨハンだと?」

 地面に伏しながらも神裂は全身を走る激痛に耐え、敵の姿を確認していた。

ヨハン「貴様を地獄へと誘う者の名だ。その身に特と刻むがいい!」

 ヨハンが手に持つ本のページが開かれると同時にヨハンの肉体から膨大なエネルギーが生まれ出る。
その力はシャカと同じく小宇宙の力であった。神裂は何とかして立ち上がろうとするが、予想以上のダメージを
受けた身体は中々言う事を聞いてくれなかった。

神裂「くっ……このままでは!」

ヨハン「フフフ、さぁ、災いに苛まれるがいい。カタストローフェ!」

 その瞬間、本のページから無数の邪気があふれ、それらはまるで死霊のような姿となって神裂の身体を
貫かんと迫っていった。長刀を支えにして立ち上がろうとする神裂であったが、まず間に合わない。
そしてカタストローフェの無数の黒い邪気が神裂を飲み込み、その周囲を埋めつくした。

ヨハン「フッ……いかな神の子と同等の力を備えているとはいえ、あれだけの邪気を受けてはひとたまりも
あるまい。もはや浄化もかなわんだろう」

 確実に仕留めた事を確信したヨハンは爆煙を背にしてその場を立ち去ろうとした。

ヨハン「うっ! こ、これは……!」

しかし、背後から感じる強大な小宇宙を感じた瞬間、ヨハンは慌てて後ろを振り向いた。未だ晴れぬ爆煙の中、
ヨハンは見た。まばゆい光を放つ黄金の鎧の姿を。
26 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/17(火) 14:30:51.35 ID:PvODz8yYo
ヨハン「ば、馬鹿な! 貴様は、消し炭となって消えたはずでは……!?」

 ヨハンの視線の先にいたのは、座禅を組み、神裂の盾となるように佇むシャカの姿であった。

シャカ「あの程度の炎で私が死ぬと考えていたのなら、君は聖闘士を侮っていたようだな」

 シャカは依然目を閉じたままであったが、ヨハンの狼狽する姿がわかるのか、小さく笑って見せた。
そのシャカの余裕に満ちた態度を目の当たりにしたヨハンはギリッと奥歯をかみしめた。

ヨハン「えぇい! ならば、今度こそ我が手によって地獄へ落ちるがいい!」

 半ば叫び声とも取れるような怒声を放ちながら、ヨハンは本のページをめくる。勢いよくめくられたページの
数々から無数の邪気があふれ出る。

ヨハン「カタストローフェ!」

 ヨハンから発せられた邪気はシャカを砕かんと迫る。しかし、シャカは無数の邪気を前にしても、態勢を崩す事はなかった。
否、その必要すらなかったのだ。黒い邪気はシャカに到達する前にまばゆい光となってはじけ飛んだのだから。
だが、それだけではなかった。はじけ飛んだ邪気はそのままヨハンへと向かってくる。

ヨハン「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 弾き返された技を受けたヨハンは宙高く吹き飛ばされ、そのまま地上に激突した。そしてヨハンが身に纏う白く美しい陶器の
ような法衣は無残にもひび割れ、一部が砕け散っていた。

27 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/17(火) 14:31:48.88 ID:PvODz8yYo
ヨハン「ば、馬鹿な……法衣がこうも簡単に!? い、一体なぜだ!」

シャカ「フッ……そのような事を考えている暇が君にあるのかね?」

ヨハン「なにぃ!?」

 シャカのその言葉にヨハンは頭上に気配を感じた。見上げるとそこには、
長刀を引き抜き、今まさに自身を切り捨てようとする神裂の姿があった。

神裂「はぁぁぁぁぁ!」

ヨハン「えぇい、小癪な!」

 ヨハンはほぼ反射的にカタストローフェを放つ。無数の邪気は今度は確実に神裂を貫いた。
しかし、貫かれた神裂の身体は血しぶきをあげる事もなく、まるで陽炎のように消え去った。

ヨハン「馬鹿な……はっ!」

 ヨハンが気がついた時には遅かった。

神裂「Salvere000(救われぬ者に救いの手を)!」

 魔法名を名乗った神裂の繰り出す真剣が横一文字にヨハンを切り裂く。その一瞬の交差の内に、
ヨハンの法衣がバラバラに切り裂かれ、ヨハンはそのまま後ろに倒れていく。

ヨハン「ぐ、うぅ……な、なぜ殺さん?」

神裂「たとえ敵であっても、私は命を取ろうとは思いません。それに、聖闘士殿、貴方もその方がよろしいのでしょう?」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 14:33:33.46 ID:cYE/hUa+o
また蟹座を酷い目に合わせるスレか…ちくしょう
29 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/17(火) 14:34:49.18 ID:PvODz8yYo
???「その通りだ」

 返事を返したのは、シャカではなかった。神裂が声の方へと振り向くと、
そこには身体を休めるように座り込み、煙草をふかしたステイルの姿があった。

ステイル「日本に到着した時、僕と神裂を襲った男の事も知りたいし、なぜ『あの子』を
      狙うのかも知りたいからね。殺すのはそのあとでいい」

 紫煙をくゆらせながら、ステイルはカードを取り出す。

ステイル「きりきりと吐いてもらおうか。僕は拷問は得意じゃないんだ」

ヨハン「フフフ……そうか、さっきの陽炎は貴様の仕業か……ククク……法衣は砕け、
    私の身体もボロボロ、それに黄金聖闘士に魔術師、聖人か……なるほど、抵抗するだけ
    無意味と言う事か……」

 右手で顔面を押さえ、仰向けのまま、自嘲するように笑い続けるヨハン。ひとしきり笑った後、
ヨハンは力なくうなだれるようにして、三人へと顔を向けた。

ヨハン「しかし、なぁ……それは無理な相談だな!」

 ヨハンはボロボロになった本を手に取り、それを天高く掲げる。

シャカ「むっ! いかん!」

ヨハン「うわはははは! 貴様らに話す舌など持たん、さらばだ!」

 シャカが制するよりも先にヨハンは邪気を放出し、自身の身体を粉々に砕いた。舞い上がった灰と
埃が消え去った時、ヨハンの肉体は跡形もなく消え去っていた。

シャカ「……自ら命を絶ったか」

神裂「潔い……というわけではないようですね」

ステイル「破滅主義者だったのさ……しかし、ッ……神裂、君もう少し手加減をしてくれてもいいんじゃないか?」

 そう良いながらステイルは座ったまま、自身の鳩尾を撫でた。

神裂「ならば、洗脳を受けるなどという目に合わなければ良かったのです。それよりも……
    ステイル、そして聖闘士殿も聞いてください」

 そんなステイルを見て苦笑したのもつかの間、神裂は居直ると真剣なまなざしを向け、口調も鋭くさせた。

神裂「護衛対象は……インデックスは既に敵の手中に落ちました」

 その言葉にステイルは咥えていた煙草を落とし、シャカは目を閉じまま、それでも僅かに顔をしかめたようにも見えた。
30 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/17(火) 14:35:45.36 ID:PvODz8yYo
 

 シャカ、神裂、ステイルがファウストのヨハンを撃退するよりも数十分前。
 敵の気配を追って、シャカから離れた土御門は探知術の示す方角へと走っていた。
土御門「ちっ……シャカの方に新しい反応か! 敵に先手を打たれるとはなっ!」

 気配を消し、裏路地や人目の付きにくい道路を走りながら、土御門は新たな反応の存在に舌打ちをした。

土御門(まさか、ねーちんまで洗脳されたなんて事は……いや、シャカの方は心配しなくてもいいだろう。
     とにかく俺は敵の情報を集めるだけだ)

 今回、自分は戦力としては数えられない。土御門は己をそう判断した。能力者であり魔術師であるこの身体は
ひとたび魔術を行使すれば、ボロボロになる。格闘術も多少はかじっているが、聖人である神裂程の身体能力はない。
そうなれば、自分のできる事はサポートしかない。

土御門「ここか……」

 土御門がたどり着いたのは破棄され廃墟となったビルが並ぶ区画だった。

土御門(ここはスキルアウトたちがたむろしている場所の一つ……まさか不良どもが?)

 だが、そんな考えはすぐさま捨て去った。

土御門(ありえん、ありえん……それに……)

  土御門は薄暗い廃墟を睨みつけ、周囲を警戒した。わざわざ正面から侵入するつもりはない。
それにどうやら周囲にはこちらを探知する術がかけられている様子はなかった。少なくとも、土御門が知るような術はない。
31 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/17(火) 14:36:27.92 ID:PvODz8yYo
土御門(あのステイルを洗脳した相手だ……どんな手を使ってくるか
     わからんからな……必要以上に用心させてもらうぜ)

 そうして土御門は廃墟の周りを調べ、割れた窓からの侵入を試みた。
音もなく、侵入すると、土御門は物陰に隠れながら、目を凝らし、耳をすませた。

土御門(スキルアウトたちの気配? しかし、それにしては静かすぎる……)

 もしここにスキルアウトがいるのだとして、同時にここには敵の反応がある。
血気にはやるものが多いスキルアウトたちが騒がないのは少々妙であった。

土御門(まさか、本当に奴の中の一人じゃないだろうな?)

 そう考えながら、土御門はさらに奥へと進んでいく。すると、かすかにだが人の声が聞こえる。
だが、どうやら会話ではないようだった。進んでいくにつれて、声は鮮明にまた大きくなってくる。

土御門(これは……泣き声?)

 気味の悪い話しだが、男の嗚咽が聞こえてくる。それも一人ではない。複数の声が土御門の
耳に入っていた。そして薄暗い廊下の先にうずくまる男たちの姿が見えた。

男1「ひいぃぃぃぃ!」

男2「助けてぇ、お母ちゃん!」

男3「うぅ……こ、恐い……」

 それは異様な光景だった。
32 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/17(火) 14:37:10.92 ID:PvODz8yYo
土御門「こ、これは……!?」

 その光景を見た土御門は無意識のうちに後ろへと下がった。すると、
背中が何かにぶつかった。マズイと感じた土御門はすぐさま後ろを振り向くと、
そこにはうつろな目をした男が立っていた。

土御門「な……こいつ……」

 その男は土御門がぶつかったのにも関わらず意に介してないようだった。
僅かに揺らいだ視線が土御門の方を向いたようにも見えたが、それだけだった。
男は感情が消え去ったかのように、その場に立ちすくみ、虚空を眺めていた。

土御門「何なんだこいつぁ……」

???「ケケケケッ! そいつらは臆病者と心のないものさ」

土御門「……ッ!」

 全体に響き渡る声に土御門は身構える。周囲を見回し、警戒を強めながら、
同時に逃げ込める場所も探す。

???「ケケケケッ! 無駄だ」

土御門「うっ……!」

 土御門は鳩尾に衝撃を感じると、激痛よりも意識が薄れていくのを感じた。
その瞬間、土御門が見たのは白い陶器のような鎧をまとった醜悪な男の姿だった。

???「ケケケケッ!」

 廃墟の中で、男の奇妙な笑い声が響いた。
33 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/17(火) 14:41:35.98 ID:PvODz8yYo
書きためた分は弾切れ。
これ、多分最初の方にのっけといた方がよかったん
だろうけど、このSSは短編物です。
LCの外伝っぽい感じに作品だと思ってくれれば幸いです。

>>25
  ( ゚д゚)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/    /
     ̄ ̄ ̄

  ( ゚д゚ )
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/    /
     ̄ ̄ ̄

やっちまった……ローマじゃないよ、イギリスだよ……
なに考えてんだよ……初歩的なミスとかそんなんじゃねぇよ……
次からは気をつけていきます。
34 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/17(火) 18:44:44.34 ID:PvODz8yYo
>>28
大丈夫b
蟹座は出てこないから。

乙女座が終わったら書いてもいいかも
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/17(火) 21:30:20.28 ID:Dg0GG7CA0
蟹座の呪いはマニさんが断ち切ってくれたんだよ…!
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/18(水) 20:54:52.68 ID:lTkyOtel0
>>34乙、そして、六道輪廻!!
37 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:39:38.19 ID:Vt7jJR/Xo
ちょっと頑張ってみた。
これから更新は遅くなると思います。


 土御門が目覚めた時、自身の身体は柱にくくりつけられていた。縄の結び自体はお粗末なもので、
術を使わずとも関節を外すことなく容易に抜けられる程度のものだった。土御門は取りあえず手足に
力を入れる。次に制限された状態ではあるが、己の身体に以上がないかを確かめる。

土御門(特に何かされたようすはなし。殴られた痛みも退いたようだ。周りは……)

 土御門が周囲を見渡すとそこは忍びこんだ廃墟である事は間違いなかった。

???「ほほぉ? 目が覚めたようだな?」

 突如として部屋に響いた声は低く唸るような声だった。土御門がその方へ顔を向けると白い陶器のような
鎧をまとった男がいた。

???「ケケケケッ……! よくもまぁ引っかかるもんだ。しかし、そうなるとヨハンの奴は黄金聖闘士の相手を
     していると言う事か……ケケケケッ、運のない奴め」

 男の下品な笑い声は土御門の神経を逆なでするようなものだった。

???「いや……ある意味、運の良い奴やもしれんな……」

土御門(……?)

 土御門は僅かに眉をひそめたが、その表情はサングラスに遮られ、男には見えなかったようだ。土御門は目だけを動かし、
周囲を確認しながら、口を開いた。

土御門「随分な御挨拶どうも……できればこいつを解いて欲しいんだが?」

 身体を縛る縄を強調するように、土御門は身じろぎしてみせた。とはいえ、そんなものは期待していない。
 どうせ縄を解くつもりはないだろう。

???「ケケケケッ、どうせすぐに抜け出せるのだろう? やればいいさ。だが、そこから抜け出しても、
     この俺を倒さねばここから逃げる事はできんぞ?」

土御門「へぇ? こう見えても俺はそこそこ腕の立つ陰陽師と自負しているんだが?」
38 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:41:01.18 ID:Vt7jJR/Xo
???「強がりは止すのだな。貴様の身体は一度術を使うだけで半死半生になると聞く。
     ケケケケッ! この俺を倒せるだけの高位の術を使ってみるか、うん? 
     まぁ、むざむざと術を使わせるほど、俺は大人しくないがな……」

???「だったら、術とか関係ねぇ奴なら構わねぇよな?」

 ふと、室内に土御門でも鎧の男でもない少年の声が響く。その声に土御門は聞きおぼえがあった。
身体を縛られ、さらに男の身体が邪魔になって覗き見る事はできないが、そんな事をせずとも、この状況で
こんな啖呵をきれる少年を土御門は一人しか知らない。

土御門「カミやん!」

 その少年の名は上条当麻。
 土御門の声は歓喜も混ざりつつ、驚愕の声の方が大きかった。今回の依頼に関して上条当麻という少年が
関わってしまう事は半ば決定されたようなものだ。正体不明の集団が魔導書図書館であるインデックスを狙っている。
それだけ十分な理由である。それは良いが、なぜ彼がこの場に現れたのか。土御門はそれが疑問であった。しかし、
その疑問が晴れるよりも先に状況は進んでいった。

???「ケケケケッ! 来たか、『幻想殺し』。貴様の到着を待っていたぞ」

 男は笑い声をあげながら、上条の方へと振り向く。対面する上条は拳を握りしめ、鋭い視線を男に向けていた。

上条「インデックスはどこだ?」

 上条の視線がさらに強くなり、声色も重くなっていた。だが、男はそれでも気圧される事もなく、肩をすくめて答えた。

???「さぁてな。俺は知らん」

上条「なんでインデックスを浚った?」

???「理由なんぞ、テメェがよく知っているんじゃないのか? あえて言えば、あの小娘を狙う有象無象と同じ理由ってこった」
39 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:42:31.67 ID:Vt7jJR/Xo
 どこまでも小馬鹿にしたような様子で男が言った。だが、上条もまた冷静であった。
男の挑発に乗らず、ただ静かに、鋭く男を睨みつけるだけだった。

???「ハンッ、張り合いがねぇな。なら、いっちょやりますかい?」

 二ィッと口元をゆがませた男が指を鳴らすと、上条の背後を大男が捕らえる。

上条「なっ!」

 大男は上条をはがいじめにして決して離そうとはしなかった。もがく上条はふと、大男の顔を見た。

上条「……!?」

 その男の目は上条ではなく、虚空を眺めていた。まるでこちらに興味がないように、否、
それ以前に男からは精気を感じられない。ただ、男の命令に従うように、上条を拘束していた。

???「ケケケケッ! さて、どんどん行こうか。オイッテメェら、出てきやがれ!」

 男の号令と共に各扉からおどおどとした大男たちが入ってくる。誰も彼もが上条や土御門よりも
体格が勝っており、顔つきも服装もいわゆる不良と呼ばれる者たちのそれであった。彼らはこの
廃墟を占領していたスキルアウトの少年たちであった。
 本来なら屈強な男たちだが、彼らはまるで子供のように怯え、男の顔色を伺うように、低姿勢のままぞろぞろ、
のそのそと入ってくる。

???「ちんたらしてんじゃねぇ!」

 男が適当な一人を蹴飛ばすと、周りが一斉に悲鳴をあげ、中には鳴きだす者たちもいた。男はダンッと片足をふみならし、
コンクリートを砕きながら、怒声をあげた。

???「だまってろ! いいかテメェらよぉく聞け。テメェらの命は俺が預かってるんだ。よぉくわかるな? 良い子だ。
     とはいえ、俺もそこまで鬼じゃねぇ。俺の言うとおりにすれば、助けてやる。どうだ?」
40 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:43:14.67 ID:Vt7jJR/Xo
 怯えるスキルアウトたちの中の一人の髪のつかみながら、男は囁くように言った。
男の言葉にスキルアウトらは頷くばかりで、それ以上の抵抗を見せる事はなかった。

???「ケケケケッ! 素直な奴は嫌いじゃないぜ。よぉし、テメェら。今からあの小僧を殴れ。全員でだ」

スキルアウト「け、けど……そんな事したら死んじゃうよぉ」

???「あぁん! テメェらがいつも使ってる言葉だろうが! それとも何か、テメェは死にたいのか?」

スキルアウト「ひぃぃぃぃ!」

 男が一睨みするだけでスキルアウトは怯え、震える身体を押さえながらも上条の方へと振り向く。
ぞろぞろとスキルアウトたちが一斉に上条の下へと歩み寄る。そして一人のスキルアウトが鍛えられた
太い腕を振りあげる。しかし、その握りこぶしは緩いものだった。

スキルアウト「う、あぁぁぁぁぁ!」

土御門「カミやん!」

 半ば錯乱状態のような叫び声をあげながら、一人のスキルアウトが拳を振り下ろす。弱弱しかろうが、
大男の豪腕である。それに大勢で囲まれれば、それだけでも危険だ。なぜなら、上条は右手を除けば全くの無能力者。
この学園都市における序列は最下位のレベル0。もう一つ付け加えるなら、上条の右手に宿る力はスキルアウトには
まったく通じない。なぜなら、彼らもまた無能力者なのだから。
41 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:45:32.77 ID:Vt7jJR/Xo
上条「やべぇ! この、野郎……!」

 その事は上条も理解している。だからこそ、自身を拘束する放心状態とも
言えるスキルアウトから何とかして抜け出そうともがく。
 その時であった。前方から迫るスキルアウトの拳が振り下ろされる瞬間、
上条は咄嗟に右足でそのスキルアウトの腹を蹴飛ばした。普通のスキルアウトなら
この程度の蹴りは痛みは感じるだろうが、すぐに頭に血が上り、執拗な反撃にでる。
 だが、迫っていたスキルアウトは上条の蹴りが命中すると、悲鳴をあげながら、
そのままもんどり打つように後ろに下がった。その大げさな姿に流石の上条も土御門も
これは何かの演技ではないかと疑いを持つほどだった。その姿を見た他のスキルアウトたちも
怯えるような視線を上条に向ける。

???「ケケケケッ……!」

 だが、男はその光景を眺めながら心底面白いものを見るように、低くいななくような声で笑っていた。

???「次だ……グズグズするんじゃねぇ!」

 男がもう一度地面を踏みつける。ドンッという音と共にコンクリートがまたも砕け、スキルアウトたちはもう一度のそのそと上条に迫っていく。

上条「クソッ!」

 どうにも理解できない状況に上条は舌打ちをしながら、自身を拘束するスキルアウトを振り払おうとした。
がっちりと締め付けられた身体は思うように動く事が出来なかったが、上条は自分の頭がスキルアウトの顎の
真下にある事に気がつくと、思いっきり跳びあがり、スキルアウトの顎に頭突きを喰らわす。

上条「ッ……!」

 僅かに痛みが走るが、それよりも意外な事にスキルアウトの拘束は呆気ないほど簡単に解かれる事になった。
上条を拘束していたスキルアウトは顔色一つ変えず、そのまま後ろへと倒れていく。しかし、上条はそれに目もくれず、
迫りくるスキルアウトの面々を睨みつけた。それだけで、酷く怯えるスキルアウトたちは気圧され、それ以上前に進めないようだった。

上条「テメェら……やられたくなかったら、すっこんでろ!」
42 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:46:33.08 ID:Vt7jJR/Xo
 右腕を振りあげ、できる限り威圧すように声を張り上げる。理由はわからないが、
このスキルアウトの面々にはそれだけで十分だった。その一声で、スキルアウトの
面々は子供のように、泣き叫び、その異様な光景は性質の悪い三流カルト映画を
見ているのではないかと思うほどだ。

???「つまらねぇな。もう終わりかよ」

 その一部始終を見ていた男は頭をかきあげながら、小さくため息をついた。

???「やっぱ臆病者共には荷が重すぎたか……」

 そう言いながら男は右腕を上に掲げる。上条はその動作が何を行うものなのかは分からない。
しかし、

土御門「カミやん! 何かおかしい、防げ!」

 土御門の忠告が飛ぶ。上条はそれに従い、すぐさま右腕を前方に突き出す。

???「ケケケケッ! 心配するな、貴様らに向けるわけではない!」

 男の腕に深緑の光が集まる。それを後ろで見ていた土御門は男からシャカと同じ種類のエネルギーを感じた。

土御門「これは……小宇宙とかいう力? テメェも聖闘士なのか!?」

 その土御門の問いに男はケタケタと笑い声をあげながら、答える。

???「ケケケケッ……違うな! 俺達は魔闘士(メイガス)! 聖闘士ほど大層なやくわりは持たぬが、
     大いなる魔術師たちの力を受けた者だ!」

 男の腕にさらに小宇宙が集められていく。

???「そして俺様の名はゲイル。オズのゲイル!」

 名乗りと同時に男、ゲイルは腕を振り払うように降ろす。

ゲイル「ブロークン・マインド・ウェーブ!」

 深緑の光の波が薄暗い室内を照らす。その光は怯えるスキルアウトたちに降りかかり、変化を及ぼす。
あれほど泣き叫んでいたスキルアウトが一瞬にして、大人しくなり、全員がピタッと動かなくなった。
43 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:48:09.62 ID:Vt7jJR/Xo
上条「な、んだ……何が起きやがった?」

 戸惑いの声をあげながら、上条は突き出した右腕をそのままに、スキルアウトたちの方へ
顔を向けた。スキルアウトたちはみな虚ろな目をしており、ゆっくりと立ちあがっていた。
全員がピンと背筋を伸ばし、直立不動の姿勢を取った。

ゲイル「臆病なライオン……百獣の王の自覚を持ちながら、勇気を持てなかったライオン。
     ま、こいつらの場合は虚勢だがな。だが、今のこいつらはその勇気も虚勢もない。
     心なんぞもはやないのだからな。そう、心臓のブリキ人形のようにな!」

 それが号令の代わりとなった。無表情の男たちはゆっくりとした足取りで上条を取り囲もうと迫る。
臆病なスキルアウトたちの姿とはまた違った異様な光景に上条は僅かに後ろへと下がる。
 ふと、足に何かがぶつかった。チラッとそのぶつかったものを見ると、上条は大きく目を見開いた。

上条「な、何だこれはっ!」

 そこにいたのは上条をはがいじめにして拘束していたスキルアウトが白目をむき、ぴくりとも動かない、
まるで廃人になったような姿だった。混乱や恐怖以上に上条は突如として死を迎えていたスキルアウトの
姿に唖然としていた。そんな上条の様子に気がついたのか、ゲイルは壁に寄りかかり、腕を組みながら言った。

ゲイル「おぉ、忘れていたな。脳みそのないかかし。もはやその男は頭脳、知恵すらなくなり、心の全てが砕け散った。
     ケケケケッ! オズの物語とはちと違う形だがな」

上条「て、めぇ……!」

ゲイル「ケケケケッ良い顔だ。俺を憎む顔。だが、諦めろ。テメェじゃ俺を倒せねぇよ。やれ!」

 スキルアウトたちが一斉に飛びかかる。身構え、反撃の態勢をとる上条だったが、わざわざそんな事をせずとも、
スキルアウトたちの攻撃は容易に避けられた。なぜなら、彼らの行動は一々遅いのだ。それこそ臆病な状態以上に襲い。
実直にゲイルの指示に従っているようだったが、機械的な動作は喧嘩慣れした程度の上条ですら見切れるレベルであった。
44 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:49:21.62 ID:Vt7jJR/Xo
上条「この、どけぇ!」

 のそのそと迫るスキルアウトを押しのけるように、上条は『右手』で
目の前の男を押し出す。その瞬間、男の身体に電流でも走ったかの
ように小さく痙攣すると、その場に倒れる。

上条「え?」

 まさかと思い上条は倒れた男に視線を落とすと、男の身体は僅かに上下していた。
どうやら生きているようだった。

土御門「カミやんの幻想殺しが効いている? そうか、どんな理屈かは知らないが、
     ゲイルの技も異能! なら、その影響下にある連中に幻想殺しを当てれば、
     技が解除されるのは必然!」

上条「そうか……なら!」

 土御門の言葉に上条は己の右手を見て、拳を握りしめた。そしてゲイルへと視線を向けると、
右腕を振りかざしながら一直線に駆けだす。しかし、当然ながらゲイルの盾となるようにスキルアウトたちが
立ちふさがるが、上条の右手に触れられるだけで全員が気絶していく。まるで海を割るように上条がゲイルとの
距離を縮めていく。対するゲイルはニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべているだけでその場から動こうともしない。

上条「おおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 叫び声をあげながら、上条の拳は真っすぐにゲイルを捉えていた。ゲイルの盾となる最後の一人を押しのけて、
上条はゲイルの間近まで迫る。振りあげられた拳がゲイルの顔面に迫る。だが、それでもゲイルは動かない。
その姿に上条は僅かな疑問を感じたが、どうでもよかった。まずは一発、この憎たらしい顔に拳を決める事が出来る。
そう考えながら、上条は渾身の一撃を振り下ろした。

上条「な……にぃ……?」

 だが、しかし。その渾身の一撃は空振りに終わった。上条は勢いあまって態勢を崩しかけるが、それでも何とか立て直す。

45 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:50:10.24 ID:Vt7jJR/Xo
ゲイル「ケケケケッ!」

 ゲイルの下賤な笑いが後ろから聞こえてくる。上条は急いで振り返ると、
ゲイルがスキルアウトたちをはさんで反対側に移動していた。

上条(いつの間に……!)

ゲイル「はぁ……やっぱり雑魚共は使えんなぁ。足止めも満足にできねぇ……」

 ゲイルはため息をつきながら、足元の倒れるスキルアウトをつま先で小突く。
僅かに呻き声をあげるスキルアウト。見れば、上条が気絶させたスキルアウトたちが
目を覚まし始めたようだった。彼らは頭痛でもするのか、頭を押さえながら、立ち上がろうとしていた。
 その内の何人かが上条らに気がつく。彼らは何が起きたのか理解できないのと、原因不明の頭痛に
多少なりとも混乱しているようだったが、悪態をつくくらいには目が覚めていたようだった。

スキルアウト「な、何だテメェら! 俺達の島で何やってやがる!」

上条「こいつら……目を覚ましたのか」

スキルアウト「あぁん? 何言ってやがんだ。さっさと消えねぇとぶっ飛ばすぞ!」

 睨みを利かせた視線を上条に向けながら、彼は周りの様子を探った。何人かの仲間が倒れており、
意識があるのは自分を含め僅か。そしてどういうわけか自分たちのねぐらには見慣れない学生と奇妙な鎧を
身に付けた男がいる。彼は頭を横に振りながら、混乱する意識を正そうとしていた。
 彼に、この場から逃げるという選択肢はなかった。

ゲイル「チッ……目が覚めるのがはぇな」

スキルアウト「はぁ? おい、おっさん、ここは仮装大会の会場じゃないんだぜ?」

ゲイル「喚くな、ガキ共」

スキルアウト「なにぃ? もっぺん言ってみろやぁ!」

 ゲイルの言葉が癇に障ったのか、一人のスキルアウトが大振りに殴りかかろうとする。

ゲイル「ケッ……」
46 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:51:06.50 ID:Vt7jJR/Xo

 しかし、ゲイルは軽く腕を払うだけで、男の巨体をなぎ倒した。

スキルアウト「が、あぁぁぁ!」

ゲイル「フンッ……肋骨が折れた程度でこのざまか」

 ゲイルはそう吐き捨てると、残りのスキルアウトの面々を見渡す。
彼らは仲間の一人がいとも簡単に吹き飛ばされるのを見て、多少怖気
ついたようにも見えたが、元々が短気で血気にはやる連中であり、すぐさま
仇打ちに動こうとする。その様子を見ていたゲイルはわざとらしく肩をすくめると、
今度は大きなため息をついて、憐れむような視線を向けた。

ゲイル「やぁれやれ……」

 そして、両腕を前に突き出すと、ニヤリと奇妙な笑みを浮かべた。その時、上条は
ゲイルがこちらをみて笑ったように見えた。
 ゾクッと上条の背筋に悪寒が走る。上条の経験が、最悪の事態を想定した。

上条「お前ら! 逃げろ!」

 だが、上条の叫びなどに耳を貸すスキルアウトたちではなかった。

ゲイル「言うとおりにしていれば良いものを」

 その言葉が皮切りだった。ゲイルの両腕は深緑の光を帯びていく。上条は咄嗟に土御門の
下まで駆け寄り、右手を前に差し出す。スキルアウトたちはその異様な光に気がついていたが、
止まる事をしなかった。
 そして、ゲイルがニタリと笑うと、その両腕から深緑の閃光と共に風が吹き荒れる。

ゲイル「エメラルド・テンペスト!」

 吹き荒れる風は鎌鼬となって、光と共に目の前にいたスキルアウトたちを飲み込んだ。上条は風圧に
襲われながら、迫る鎌鼬を斬撃をその右手に宿る幻想殺しで打ち消してった。

上条「う、おぉぉぉぉぉぉ!」
47 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:52:18.69 ID:Vt7jJR/Xo
 数秒、いやそれよりももっと短いかもしれない。風が止み、
鎌鼬が完全に消え去ると、上条はまず後ろを振り向いて、
土御門の安否を確認した。

上条「無事か、土御門」

土御門「あぁ、何とか。サンキューな、カミやん……だが……」

 礼を述べる土御門の声は重苦しく、視線は上条の方ではなく、
スキルアウトたちがいた場所に向いていた。
 まさかと思い、上条は急いで振り返ると、そこには、全身をズタズタに
引き裂かれ、真っ赤な血の海に沈むスキルアウトの面々であった。
 そしてその先に立つゲイルはニタリと笑みを浮かべていた。

上条「て、めぇぇぇぇぇ!」

ゲイル「ケケケケッ!」

 上条の叫びが室内に響き渡る。それを見て、楽しむようにゲイルの下賤な
笑い声も反響していく。
 もはや頭に血がのぼった上条は我慢がならなかった。右手を握りしめ、一気に
駆けだす。ゲイルの攻撃は幻想殺しで防げる事はさっき証明された。

土御門「待て、カミやん! 迂闊だ!」

 土御門の忠告は上条には届かなかった。目の前でこんな殺戮を繰り広げられて
黙っていられるほど、上条当麻は冷静ではない。

上条「おぉぉぉぉぉぉぉ!」

 腹の底から叫び声をあげる。血の海に脚を踏み入れると、ベチャッとした感触が靴底から
伝わってくる。赤い水滴が跳ね、上条の足を染めていくが、構わず突き進んだ。
 だが、上条がゲイルに到達するよりも先に、ゲイル自身が先に動いていた。一瞬にして、
鼻先が触れ合うほどまでに距離を縮めると、ゲイルはニヤッと笑みを浮かべる。

上条「な……!?」
48 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:53:42.55 ID:Vt7jJR/Xo
 上条が反応するよりも先に、ゲイルは上条の腹に掌底を喰らわす。
その一撃で上条の身体は軽々と吹き飛ばされ、壁に激突する。全身に
激痛が走り、肺の中の空気が全て押し出される感覚に上条は意識が
もうろうとしかけるが、寸でのところで耐えた。

上条「がっ、はっ……! こ、の、野郎……!」

ゲイル「ケケケケッ! 根性があるなぁ貴様。ケケケケッ楽しいぞ!」

 笑いながら、ゲイルは上条の懐に飛び込むと今度は回し蹴りを放つ。
上条は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。受け身も取れない状態で
叩きつけられた身体は骨が折れるのではないかと錯覚するほどの衝撃が走った。
それでも、上条は立ち上がろうとする。

ゲイル「おぉっと!」

上条「がっ!」

 だが、そうはさせまいと言うのか、ゲイルは上条の頭を左足で踏みつけ、右足は
上条の右の二の腕を踏みつけた。まるで幻想殺しの範囲である右手を封じるように。

ゲイル「ケケケケッ!」

土御門「カミやん!」

 その光景を眺めるしかできない土御門は内心舌打ちをしていた。この程度の縄ならば
すぐに解いて、上条の加勢に飛んでいきたい。だが、術を使えば、むしろ上条の足出まといに
なる可能があり、さらに言えばゲイルの身体能力の高さが脅威的なのだ。少しでも術を邪魔されれば、
それだけ自分の身体のダメージは跳ね上がる。

土御門(チッ……自分の身可愛さで手をこまねいている場合じゃないよなぁ……)

 だが、土御門の心は決まっていた。

土御門(ゲイルとかいう奴の身体能力は高い。カミやんはもちろん、俺が対抗できる相手じゃない。
     そして術だ。そうそう大がかりな奴は邪魔されるだけ、ならば!)

 土御門は小さく息を吐きながら、目を閉じた。
49 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:54:47.86 ID:Vt7jJR/Xo
土御門(詠唱ヲ謳ウ。名ハ『いろは歌』ナリ。『いろは』ノ『は』ヲ刃トス)

 ピシッと土御門の頬に切り傷が生まれる。

土御門(言霊ヲ乗セヨ。『は』ハ刃ナリ。ソレ即チ断チ切ルモノナリ。
     式ヲ展開。言霊ヲ乗セヨ。ソノ式ハ即チ刃トナル)

 詠唱を唱えると同時に土御門の懐から折り紙でおられた手裏剣が
一枚飛びだす。手裏剣は勢いよく回転すると、たちまちに縄を切り裂き、
土御門を解放する。

ゲイル「むぅ?」

 術の展開に気がついたのか、ゲイルが首だけを土御門の方へと向けた。
そこには全身に切り傷を作り、血を流す土御門の姿があった。

ゲイル「ほぉ……貴様、術は使えるのだな……しかし、その傷……なるほど術を
     使えば貴様の身体は崩壊するわけか」

土御門「魔術師であり超能力者の俺には、下級の術すら命がけでね」

上条「つ、土御門……! 止めろ、お前……!」

土御門「カミやん、心配するな。何もあの時のような大掛かりな術じゃねぇ。死にはしないさ。
     さぁ、オズのゲイル! 陰陽師土御門の式を受けるがいい!」

 血をまき散らしながら、土御門は腕を振るう。折り紙の手裏剣が、他にも剣や槍の形におられた
折り紙が無数に宙を舞う。その度に土御門の身体に新たな傷が出来上がっていく。だが、土御門は
構わず、式を操り、言霊を乗せる。

土御門「式ヨ武具ト成リテ、魔ヲ討チ邪ヲ祓エ!」

 その命に従い折り紙がゲイルに飛来する。言霊の乗った折り紙はただの紙ではない。その気になれば、
鋼鉄する切り裂く刃と化す。無数の折り紙が舞う。手裏剣が剣が槍が、獣が、紙飛行機が無数の刃となって
ゲイルに降りかかる。
50 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:55:49.34 ID:Vt7jJR/Xo
ゲイル「なにぃ……! うおぉぉぉぉぉぉ!」

 怒涛の波の如く押し寄せる折り紙の群れに飲み込まれた
ゲイルはそのまま壁まで押し出され、さらに折り紙は爆撃の
ように降り注ぐ。瓦礫の山が築かれ、コンクリートの灰が舞い上がる。
土御門はそれに目もくれず、傷だらけの身体を押さえながら、上条に駆け寄る。

土御門「カミやん! 無事か?」

上条「そ、そういう土御門こそ……傷だらけじゃねぇか……」

土御門「こんなもん、外側の傷だけだにゃぁ。それよりも早く態勢を立て直さねぇと!」

 土御門は急ぎ上条の肩を担ぎ、その場から離れようとする。先ほどの術は決して威力の
低い術ではない。だが、土御門はあの程度の術でゲイルが倒れるとは思わなかった。だからこそ、
すぐさま次の手を打つ手立てを考えていたのだ。
 だが、瓦礫の山が吹き飛ぶと同時に二人の身体に衝撃が走る。

上条「がっ……!」

土御門「ぐっ……!」

 一瞬遅れて二人の身体が宙に浮き、後方へと飛ばされる。二人は衝撃の走った腹部を抑え、
身をよじりながら、激痛に耐えた。

ゲイル「えぇい……油断していたか! 術を使うだけで半死半生になる小僧と侮っていたわ……だが……」

 ゲイルが瓦礫の埃を払うとそこには傷一つない法衣が現れる。ゲイル自身の身体にも傷は一つもなく、
冷徹な視線が二人を捉えていた。

ゲイル「貴様らも魔闘士と法衣を侮っていたようだな。ケケケケッ! 時間はまだまだある。
     たっぷりといたぶってやるぜ」

 ゲイルは冷たい笑みを浮かべて、二人を見下す。ゲイルの両腕に小宇宙が集められていく。
51 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 12:56:26.55 ID:Vt7jJR/Xo
ゲイル「殺しはせん。俺の役目は時間稼ぎだからな」

上条「な、にぃ……?」

土御門「どういう……事だ?」

ゲイル「貴様らがそれを理解する時には全てが終わっているのだよ。
     さぁ、深緑の風で舞い踊ってもらうぞ! エメラルド・テンペスト!」

 ゲイルの両腕から発せられる鎌鼬は上条の幻想殺しで打ち消す事が可能だ。
しかし、その為には上条が右手で鎌鼬に触れなければならない。だが、傷を負った上条の
反応は一瞬遅れ、右手を伸ばす前に鎌鼬が襲いかかる。上条と土御門は風に巻き上げられ、
風の刃で身体中に傷を作り、そして、風が止むとそのまま地面に激突し、大きなダメージを負った。

上条「ぐうぅ……」

土御門「奴め……完全に遊んでいやがる……」

 痛む身体を押さえながらも二人の少年は立ち上がろうとした。しかし、ゲイルはその姿を見ても
鼻で笑い、再び両腕に小宇宙を溜めていく。
二人の少年がふらふらになりながらも完全に立ち上がると、同時にゲイルのエメラルド・テンペストが
再び放たれ、深緑の光が二人を包み込んだ。
52 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/21(土) 13:00:10.44 ID:Vt7jJR/Xo
以上です。
シャカでてこねぇ……
それにしても、上条さんをちょっと短気にしすぎたか?
原作だと結構冷静な部分も多いから、少し違和感があるかも。

ちなみに実際のオズの魔法使いにこんな技はもちろんありませんとも。
普通の人間ですし、詐欺師だペテン師だ言われてますからねw

>>35
ロスキャンの蟹座はかっこいい。けど、エピGのデスマスクさんもかっこいいよ!

>>36
おおおぉぉぉ!
>>36の小宇宙が燃焼されていく!

乙レスありがとうございます。
53 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 08:48:19.89 ID:mZ7289W0o
展開早すぎかも。
筆の勢いとはいえ、必要な描写省いたのはまずかったか。


 廃墟の薄暗い空間の中、立っているのは白亜の鎧をまとったオズのゲイルのみであった。
そして、そのゲイルの足元には上条当麻と土御門元春が全身に無数の傷を負い、血だらけに
なりながら、地に伏していた。だが、二人にはかろうじて息があった。外傷は派手に見え、実際に
身体中の節々が悲鳴をあげてはいるが、それでも二人の少年はまだ耐える事が出来る。

上条「ぐ、うぅぅぅ……!」

 上条は右手を握りしめながら、土御門はひび割れたサングラスをかけ直しながら、意地でも
立ち上がろうとしていた。ゲイルはそんな上条らの姿をニタニタと笑みを浮かべながら眺めていた。
ゲイルが攻撃を仕掛けるのは、彼らが完全に立ち上がってからであり、その最中には決して攻撃しなかった。
わざわざ立ち上がるのを待ち、そしてまた地面に叩きつける。その繰り返しだった。

ゲイル「もう止すのだな。俺がいくら手加減上手とは言え、そう連続して攻撃を受けていれば、
     貴様の身体はバラバラになるぞ」

上条「ぐっ……やるんなら、さっさとやりやがれ……」

ゲイル「強がるなよ、小僧。俺はやろうと思えばすぐに捻りつぶす事もできるのだぞ?」

土御門「へっ……口だけは達者と見える」

 二人は互いに肩を貸しあいながら、立ち上がった。そして血をにじませながらも、二人は皮肉を言い放つ。
だが、その皮肉もゲイルを挑発させるには至らず、ただただ彼を呆れさせるだけにとどまっていた。

ゲイル「吠えろ、吠えろ。その分だけ貴様らは惨めになるだけだ」

上条「惨めで結構だ!」

 もつれる足に力を入れながら、上条は歩き出す。確実にゲイルとの距離を縮めるように、全身が悲鳴を
上げようとも構わない。この男を倒し、インデックスの居所を突き止める。もはや上条にはその事しかなかった。
 そして意を決したように歯を食いしばり、叫び声をあげて駆けだす。その足取りは遅く、力の片鱗すら感じられない程
弱弱しいものだった。
54 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 08:49:34.37 ID:mZ7289W0o

上条「おぉぉぉぉぉぉぉ!」

ゲイル「フンッ大人しく寝ていれば、痛い目も見ずに済んだものを……」

 迫る上条を前にしてなお、ゲイルは余裕の態度を崩さなかった。否、崩す必要すらないのだ。
上条らとゲイルの実力には明確な差があった。ゲイルの言うとおり、彼がその気になれば、
二人を一瞬のうちに切り刻むことなどわけない事なのだ。
 ゲイルは再び腕に小宇宙を込めていく。放つのはエメラルド・テンペストではない。ただ衝撃波を
放つだけだ。単純な作業と化した流れをこなそうと腕を伸ばした瞬間であった。

ゲイル「うっ……!」

 ゲイルの身体が無数の折り紙によって拘束されていた。数十枚の色とりどりの折り紙がゲイルの
身体を包み、その自由を奪っていく。

ゲイル「こ、これは……!」

土御門「へっ……油断大敵……テメェにダメージを負わせられなくても、動きを止める事はできるんだぜ?」

 無数の傷跡から血を流す土御門は、それでもざまぁみろと言うように舌を出した。その間にも上条は
距離を詰めていた。

ゲイル「お、おのれぇぇぇ!」

 土御門にまだ術を使うだけの力が残っていたとは思わなかったゲイルはその突然の事態に焦ったようにもみえた。
そして、その隙をつくように上条の拳が迫る。残る力の全てこめて、振りあげられた右拳は確実に、ゲイルの顔面を捉えていた。

上条「なにぃ……!?」

 上条の拳は確かにゲイルの顔面を捉えていた。そして拳が命中したのなら、鈍い音が響くはずだが、それはなかった。
なぜなら、上条の拳をゲイルは軽々右手で受け止めていたのだから。その光景に上条も土御門も茫然とするしかなかった。
ふと、気がつけば、彼らのまわりに折り紙が舞っていた。ゲイルの身体を拘束していた折り紙であったが、彼の身体には折り紙は
一枚も残っていなかった。
55 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 08:52:10.32 ID:mZ7289W0o
ゲイル「ケケケケッ! 残念だったな。確かにあの折り紙の拘束には
     驚かされたが、あの程度の力、俺に通用すると思っていたのか?」

上条「う……うぅ……」

 上条は身体の力が抜けていくのを感じていた。もはや拳を握る力も残されていない。
上条はそのまま倒れ込むと、握りしめていた拳を解いた。そして、その光景を目の当たりに
していた土御門もまた絶望を感じ、上条以上に血を流したためか、眩暈をおこしていた。
 ゲイルは力尽きた上条らを見下し、その表情には嘲笑すら混ざっていた。

ゲイル「ケケケケッ! 無駄なあがきだったな」

 倒れる少年たちに背を向け、ゲイルはどうやって時間をつぶそうかと考えた、その時だった。
 ピキッという小さな音が鳴った。

ゲイル「むっ?」

 その音は自身の右手からなっているようだった。ゲイルは何事かと思い、右手を見ると、その目を
大きく見開き、驚愕の表情を浮かべる事となった。

ゲイル「ば、馬鹿なっ!」

 ゲイルの視線の先、法衣の右手の手甲にひびが入り、自壊していく姿があった。

ゲイル「法衣が砕ける!? 馬鹿な、小僧共の攻撃が法衣に傷をつける事はなかったはず……ハッ!」

 ゲイルは己の犯した過ちに気がついた。上条の右拳を受け止めた事である。上条の右手に宿る幻想殺しは
それが異能の力であれば全てを消し去る。それは魔術や超能力だけに限った事ではない。たとえ法王級の
守護結界であろうとも、魔具であろうと、幻想殺しは発動する。

ゲイル「うぅ……た、確かに法衣は聖闘士の聖衣を魔術的に再現したもの。厳選された魔石、聖骸布を錬金術で
     長い時間をかけ生成させた鎧は確かに異能の塊とも言える!」
56 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 08:53:22.07 ID:mZ7289W0o

 幸い砕けたのは右手の手甲のみであった。触れただけで法衣を砕く
右手にゲイルは思わず後ずさったが、すぐさま余裕を取り戻す。
そう、ゲイルは幻想殺しを恐れる必要はないのだ。幻想殺しは異能の力に
触れる事が発動の絶対条件。だが、上条の身体能力は確かに高いが、それも常人、
学生レベルでの話であり、ゲイルはそれ以上の、それこそ聖人に匹敵する身体能力を
有している。事実、ゲイルはわざと上条の拳を受け止めるまで、その身に触れさせる事すらしなかった。

ゲイル「ケケケケッ……驚いた、まさか俺の技をかき消すだけではなく、法衣すらも砕くとは……
    しかし、わからん。なぜあの方はこの幻想殺しを始末しないのか……この幻想殺しはまさに
    ジョーカー! 万に一つの可能性でも、侮れん……今の内に始末した方がいい」

 ゲイルは左手を手刀の形にすると、倒れている上条の首下に狙いを定めた。

土御門「カミやん!」

 土御門の絶叫が響く。だが、上条は動く事も出来ず、ただゲイルの手刀が振り下ろされるのを待つだけだった。
 そして、無慈悲にゲイルの手刀が上条の首を貫こうとした、その時だった。風を切る音と共にゲイルの左手の手甲に衝撃が走る。

ゲイル「うっ!? 何だ?」

 思わず怯んだゲイルは衝撃の走った左手を確認した。白亜の鎧に一筋の切れ目が入っていた。
幸い、内側までは届いていなかったが、法衣を切り裂く程の斬撃にゲイルは冷や汗を流した。

ゲイル「むぅぅ……法衣を切り裂くだとぉ? い、一体何が……!」

 敵の正体を探ろうと周囲を見回すゲイルだが、その瞬間、彼はありえない光景を目の当たりにすることになる。
周囲は暗闇に閉ざされ、さっきまで倒れていたはずの上条と土御門の姿はない。まるで自分以外の存在が
消え失せたかのような空間に、ゲイルは囚われていた。

ゲイル「な、なんだこれは!?」
57 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 08:54:34.70 ID:mZ7289W0o

 思わず叫んだゲイルに反応するように、暗闇の空間に変化が訪れる。
四方八方、もはや上下左右のわからない空間の中に無数の曼荼羅が現れ、
一変の隙間もなく埋めつくしていく。そしてその奇妙な空間の中を埋めつくすように
強大な小宇宙が蔓延していく。

ゲイル「こ、この小宇宙は……間違いない黄金聖闘士、乙女座のシャカ!
     し、しかし貴様はファウストのヨハンが相手をしているはずでは……!?」

シャカ『彼ならばすでにこの世にはいない。自らの負けを認め、自害した』

 どこからともなくシャカの声が響く。周囲は小宇宙に満ち、どこに意識を向けても探る事が
不可能で、それがますますゲイルの感覚を狂わせていった。

シャカ『しかし、どうにも腑に落ちん。あの男は自らの命を絶つ事になんら躊躇がなかった。
    君たちはこの学園都市に忍び込んでまでインデックスという少女を浚っていった。
    彼女の頭の中に記憶された十万冊にもおよぶの魔導書を用いて一体何を行うつもりなのか。
    それは自ら命を絶ってまで行うべき事なのか……』

ゲイル「く、クケケケケッ! シャカよ、最も神に近いとさえいわれる貴様でもわからぬ事があるとはな
     ……ケケケケッ! これは貴様にも関係のある事だというのに……」

シャカ『……そうか』

 そのシャカの声は全てを見通したかのように澄んでいた。

シャカ『君たちは非常に愚かな選択をしたと言えよう。それほどまでに亡者の仲間になりたいのなら、
    今すぐにでも連れて行ってやろうぞ!』

ゲイル「うっ! シャカの小宇宙が高まっていくだと!?」

 空間内に満ちる小宇宙が次第に攻撃的なものへと変化していくのを感じたゲイルは咄嗟に身構えた。
 そして、シャカの力強い声が曼荼羅の空間を揺らした。

シャカ『天空破邪魑魅魍魎!』

58 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 08:56:08.74 ID:mZ7289W0o
 その瞬間、曼荼羅で埋め尽くされていた空間が砕け散り、
暗黒の空間に戻ると、周囲からは怨念に満ちた嘆き声が響く。
それと同時に霊魂のような白い光が周囲を漂っていた。その白い光は、
次第に骸へと姿を変え、ゲイルの身体を取り囲み、貪ろうとでも言うのか、
その口を大きく開けていた。

ゲイル「ぐ、あぁぁぁぁ! なんだ、これは! 本当に亡者とでも言うのか!?」

シャカ『何を恐れる。一足先にその仲間に入れてやろうというのだ。感謝されこそはすれ、
    そのように怯えられる筋合いはないと思うが?』

ゲイル「な、なにぃ……うわぁぁぁぁぁ!」

 気がつけば、ゲイルの足元には亡者が群がっていた。無数の亡者が我先にと腕を伸ばし、
ゲイルの足を腕をつかみ、腐り落ちた顔を近づけていた。

ゲイル「う、あ、あぁぁ……!」

シャカ『さぁ、亡者共の相手ばかりではつまらないだろう? これより、君の望む地獄へと
     落とそうではないか!』

 その時、空間の中に一条の光が差し込むと同時鐘の音が鳴り響く。重く荘厳に満ちた鐘の音
と共に黄金の聖衣を纏い、座禅を組んだ姿でシャカが光の中から降り立つ。

ゲイル「き、貴様が……乙女座のシャカ!?」

シャカ『さぁ、私の顔が引導代わりだ。迷わず逝くがよい!』

 シャカの両腕がまさに仏の如く開かれていく。それに呼応するように、シャカの中の小宇宙が燃焼され、
シャカの身体が黄金のオーラに包まれていく。

シャカ『六道輪廻!』

 シャカの小宇宙が爆発すると共にゲイルは己の身体堕ちていくのを感じた。

シャカ『君はこれより六つの世界へと飛ばされる。さぁ、好きな世界を選ぶが良い。そこが君に死に場所となるのだ!』

ゲイル「うわぁぁぁぁぁぁ!」
59 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 08:57:00.75 ID:mZ7289W0o
シャカ『地獄界!』

 無数の怨念が立ち込め、亡者は針の山を歩き、煮え立つ釜戸でゆでられ、
血の池に沈む世界。

シャカ『餓鬼界』

 決して満たされる事のない空腹に苛まれ、死肉すら貪る餓えの世界。

シャカ『畜生界!』

 本能のみ生きる獣に姿を変え、自らの力では救いを求めることすらできない世界。

シャカ『修羅界!』

 終わる事のない戦いを永遠と続ける闘争のみが許された破懐の世界。

シャカ『人間界!』

 四苦八苦の苦しみに苛まれ、あらゆる苦難と僅かな救いが存在する世界。

シャカ『天界!』

 天人が住まい、快楽に満ち、苦しみのない。享楽の内に果てると言われる世界。

 ゲイルが六つの世界を巡り終える頃には、彼の精神は擦り切れ、もはや感情らしいものもなくなっていた。
そして、ゲイルの肉体は地獄界へと堕ちていく。だが、すでにゲイルの意識はどこに堕ちようとも構わなかった。
もはやそんな事を考える感情すらないのだから。そして、ゲイルに僅かに残った意識は地獄界に住まう鬼の姿を
見た瞬間に途絶えた。
60 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 08:58:28.17 ID:mZ7289W0o


 ゲイルがシャカの術中に陥った時、上条と土御門には一体何が起きているのか
がわからなかった。突如としてゲイルの姿が消えたと思えば、再びゲイルが現れ、
そのまま頭から地面に落ち、息絶えていたのだ。

上条「な、何が起きたんだ……?」

 事態を確かめようとする上条は何とか膝で立つまではできたが、それ以上は身体が
言う事を聞いてくれなかった。それでも無理やり身体に力を入れると、激痛が走り、態勢を
崩してしまう。だが、その時、がくんと首が揺れ、服の襟で絞められる感覚に襲われた。

上条「ぐあっ……!」

 そしてそのままの態勢で引き上げられると、そこには神父服を着た赤髪の少年、
魔術師ステイル=マグヌスが立っていた。

上条「ス、テイル……?」

ステイル「フンッ、無様な姿だな上条当麻……黄金聖闘士が助けなければ君は
      間違いなく死んでいたところだ」

神裂「ステイル、貴方も人の事が言えますか?」

 たしなめるような言葉を言う神裂は土御門に肩を貸していた。
 ステイルはその神裂の言葉に一瞬ムッとしたような顔を見せた。

神裂「それに、彼も土御門も重傷です。手荒な真似は止しましょう」

ステイル「わかっているさ」

 そう言いながら、ステイルは上条をゆっくりと地面に下ろした。ステイルもそのまま腰を下ろすと、
煙草に火をつける。

ステイル「単刀直入に聞くが……インデックスは浚われたのだな?」

上条「あぁ……」

 ステイルの問いに上条は力なく答えた。しかし、その拳は悔しさのあまりか弱弱しくも握りしめられていた。

ステイル「君はインデックスを守ると言っていたはずだ……それがこの有様か……」

 上条はステイルの吐き捨てるような言葉に言い返す事もできなかった。ただのその言葉を甘んじて受けるしかなかった。

神裂「待ってください、ステイル。今回の件、非は私にもあります」

ステイル「なに?」

神裂「ステイル、貴方も覚えているでしょう。我々がこの日本へ到着した時の事を……」

61 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 08:59:45.21 ID:mZ7289W0o

 神裂の口から語られたのは、ステイルと共にインデックス
護衛の任を受け、日本に到着した時の事であった。
 二人は薄汚れたローブで全身を隠した男と出会ったのだった。
それは、敵の襲撃であった。半ば奇襲に近いものだったが、二人は
何とか応戦する事が出来た。だが、ローブの男の力は強大だった。
ステイルの魔術も神裂の斬撃も全く通用せず、逆にローブの男の攻撃に
よって、二人は身動きの取れない状態となってしまったのだった。

ステイル「そうだ。今に思えば、あの時から奴は僕を捉え、操るつもりだったのかしれない。
      そして、僕は咄嗟に君だけはインデックスの下へと送ろうと思い、魔術を使って
      爆発と煙幕を作り出し、敵に対するジャミングを測った」

神裂「えぇ……そして、辛くも逃れる事の出来た私は、一刻も早く上条当麻の下へと急ぎました。
    その時はまだ、インデックスも彼の下にいました……ですが……そこに現れたのですよ。
    あのローブの男が……!」

 その言葉にステイルは眉をひそめる。普通なら考えられない事なのだから。

ステイル「ちょっと待て、神裂! それじゃ、なにか? 奴は僕を捉えたその脚で君に追いついて
      見せたというのか!?」

神裂「言ってしまえばそうなります……」

 神裂は頷きながら答えた。

神裂「そこからは上条当麻……あなたも知っての通りの展開です」

 神裂の言葉に、上条はその時の状況を思い出していた。そう、なんの変哲もない日常、インデックスが
腹をすかし、自分がそれをからかって怒ったインデックスが噛みついてくる。そんな他愛もない日常だったのだ。
だが、それを打ち破るように現れたのが、ローブを着た男だった。
 一瞬にして部屋のドアが吹き飛ばし、隣接する部屋の壁すらも砕き、現れた男はそのままインデックスを
差し出すように要求してきた。
62 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 09:00:40.41 ID:mZ7289W0o

上条「もちろん抵抗はした……だが、奴はこちらに攻撃する事もなく、
   一瞬にしてインデックスを浚っていった」

 目にもとまらぬ早業と言えば良いのだろうか。ローブの男は一瞬にして、
上条の背後に周り、上条の影に隠れていたインデックスをその腕に納めていたのだ。

上条「神裂が現れたのはそれとほぼ同時だった……」

 神裂は長刀を引き抜き、ローブを男へと迫っていったが、不可視の防御壁に阻まれ、
弾かれてしまった。男はインデックスを構えたまま、崩れたベランダから外に出ると、
宙に浮き、そして虚空に消えていった。

上条「そのあとすぐに、神裂が敵の反応が二つあると言っていたから、俺は二手に分かれる事を提案した」

 そして、上条は土御門の下へ神裂はステイルとシャカの下へとたどり着いた。

上条「言い訳はしねぇ……俺は、俺はインデックスを守れなかった……」

シャカ『そう悲観する事もあるまい』

上条「えっ……?」

 突如として響く聞きなれないシャカの声に上条は驚きの表情を作り、虚空を見上げた。すると、
一瞬の閃光の後に黄金の聖衣を纏ったシャカが現れる。シャカはそのまま上条の下まで歩み寄ると、
上条を仰向けに寝かせ、人差し指で胸の中央部分をつく。

上条「うぐっ……」

 一瞬、小さな悲鳴をあげた上条。だが、苦痛の表情はすぐに消え去っていた。

土御門「カミやん!」

 苦痛の後の安らぎと見て土御門は一瞬だけまさかの事態を想定してしまったが、それは彼にしては
珍しい早とちりであった。

シャカ「案ずるな。我ら聖闘士に伝わる血止めのツボ、真央点をついただけだ。どれ、土御門、
    君もこのツボをついてやろう」

 そう言って、シャカは土御門の下に足を運ぶと、同じようにツボをつく。上条同様に一瞬、痛みが走ったが、
そのあとは僅かに身体が楽になったように感じた。

シャカ「とはいえ、所詮は血止め……失った体力までは回復できん。無理な行動を起こせばまた傷口が開く事を忘れるな」
63 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 09:02:34.24 ID:mZ7289W0o
 ふと、土御門はシャカの言葉に仏の如き慈愛を感じた。
 土御門自身、シャカという男は名前に似合わずどこまでも冷徹で
不遜な男であると感じていた。その考え自体は恐らくは間違っていないだろう。
ゲイルの死体に視線を移せば、彼が敵に対して容赦のない男だと言う事ははっきりとわかる。
 かと思えば、初対面であり、人となりを知らないはずの上条の手当てをした。早急な判断で
ある事は理解しているが、それでもシャカから感じた感覚は嘘ではないだろう。

土御門「すまん、シャカ。だが、魔闘士を……あの男、倒したようだが……?」

シャカ「構わぬ」

 ぴしゃりと言い放ったシャカは彼らに言い聞かせるように前にでると、間をおかずに言葉を続けた。

シャカ「敵の目的だがな、核心がつかめたのだよ。して、神裂、ステイル、君たちに聞きたい事がある。
    インデックスという少女、その頭脳に記憶された魔導書の中には死者に関するもの、もしくは地獄、
    冥界に関するものはあるか?」

ステイル「ごまんとあるだろうね。詳しい事まではわからないが、有名どころから、僕たちの知らない魔導書
      まで網羅されていると聞くし」

 答えたのはステイルの方だった。その答えを聞いたシャカは「そうか」と短く返事を返す。シャカはその身を
ひるがえすと同時に言い放った。

シャカ「少々急がねばならんな。もし、敵の目的が私の予想通りならば……インデックスという少女は、
    冥界に堕ちる」

 シャカの口から出た言葉はその場にいる全員を凍りつかせるには十分であった。冥界とはつまり死者の国である。
それは単純に考えても、インデックスが死ぬという事に繋がるわけなのだから、彼らが動揺しないわけがないのだ。

神裂「なっ……それはどういう事ですか! 彼らの目的はインデックスを殺す事にあるとでも!?」

 狼狽した声で神裂が聞き返すと、同時に上条が立ちあがっていた。血止めの処置を行ったとはいえ、その身体には
まだ苦痛が残っているはずだった。それでも彼はその苦痛を押さえ、重たい身体を引きずるようにしながら、シャカに歩み寄った。
64 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 09:03:55.01 ID:mZ7289W0o

土御門「カミやん、まだ動くなっ!」

上条「うるせぇ!」

 土御門が制するが、上条は振り払うように声を荒げて答えた。
その声音の中には居ても立っても居られないという感情が混ざって
いるのがその場にいる全員に伝わっていた。

上条「いま、こうして間にもインデックスが死んじまうかもしれないんだろ?
    だったら、奴らの目的がなんだろうが、そんな事はどうでもいい。
    奴らを倒して、インデックスを取り戻すだけだ……」

ステイル「その身体で何をしようって言うんだ?」

 悪魔で冷静な声で、ステイルは上条の背を軽く小突いた。それだけで、
上条は苦痛に歪んだ表情を作り、その場にうずくまるようにとまった。

神裂「ステイル!」

 神裂の咎める声が飛んできたが、ステイルはそれを無視した。

ステイル「君の無茶、無謀は知っているつもりだが、その身体では足手まといだ。
      生きて彼女と再開したければ、さっさと病院にでも行く事だな」

 そう冷たく言い捨てたステイルは次に神裂に身体を支えて貰っている土御門の方へ
振り向くと、同様の事を言い放った。

ステイル「君もだ、土御門。早く上条当麻と共に病院に行った方がいい。行くぞ、神裂」

 神裂はステイルの言うとおりに土御門をゆっくりと降ろす。それを確認したステイルはシャカの
方へ振り向きながら、「待たせてすまなかった。シャカ、敵の居場所は?」と聞いたが、振り返った先に
シャカはいなかった。シャカはいつの間にか、上条の眼前に立っていた。
65 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 09:05:48.04 ID:mZ7289W0o
シャカ「…………」

上条「うっ……」

 閉じられているシャカの目に、上条はまるで睨まれているような、
全てを見透かされているような錯覚を覚えた。だが、無言の圧力を
感じながらも、上条はジッとシャカに視線を返していた。

シャカ「フッ……」

 突然、シャカが小さく笑ったと思うと、聖衣のマントを翻し、扉の前まで移動しながら、
口を開いた。

シャカ「ついてくるのなら、勝手にしたまえ。私は止めはせん」

ステイル「シャカ!」

 シャカの判断に喰ってかかったるステイルだが、シャカは腕をあげて彼を制すると、
そのままの態勢で答えた。

シャカ「あの少年に何を言っても無駄だ。なんとしてでも我々についてこよう」

 そう答えたシャカは扉に手をかけたところで、立ち止まった。

シャカ「上条当麻とか言ったな? 私はこれ以上何もいわんが、我々についてくると言う事は
その命を散らす事になるやもしれんぞ? それでもいくかね?」

上条「いく!」

 上条は力強く答えた。その返答を聞いたシャカは何も言わず、そのまま部屋から出て行った。
そしてそのあとをすぐに上条が追う。呆気にとられていたステイルたちだったが、次に行動を
起こしたのは、土御門であった。

土御門「やれやれ、カミやんはいつも通りだにゃぁ。それに、シャカも気づいていたようだし、
     俺も行くかね。ねーちん、ステイル。ボケっとしていると、おいていくぜよ?」

 土御門は二人の方に振り向くと、ニッと笑って言った。そしてシャカと上条の後を追うように
駆けだしていった。ステイルと神裂は一瞬茫然としたが、彼らに追いつくのには時間はかからなかった。
66 : ◆HiI.6D.a8M [saga]:2012/07/23(月) 09:09:41.79 ID:mZ7289W0o
今回は以上です。
インデックスが浚われるシーンなどは
シャカとアレイスターの交渉の前に書く
べきだったと今頃ながらに反省している。

けど、シャカの技が書けたのはちょっと嬉しい。
ちなみに六道輪廻の説明ですが、実際、地獄界以外は
意外と救いのある場所らしいですよ?
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/07/23(月) 09:38:06.16 ID:O7v78yfAO
セインセイヤァーッ!
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/08(水) 23:40:05.00 ID:eEFYzMGio
続きマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/09/04(火) 19:41:40.26 ID:Zb+3SDdm0
続きまってるよマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
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