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まどか「未来から来た私の子供!?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) :2012/07/21(土) 21:39:25.07 ID:X9vlZUyI0
ほむら「なにを根拠にそんな……」

まどか「ほむらちゃんこそ、なにを根拠にほどかちゃんのことをそんなに目の敵にするの?」

ほむら「それ、は……」

まどか「ほどかちゃんは今まで私達を守ってくれたよね。
    マミさんのことだって片腕を失ってまで守った」

ほむら「……それは、あの子の演技で……」

まどか「演技? どうしてそんなことをする必要があったの?
    死ぬかもしれなかったんだよ」

ほむら「それは……。まどかに信頼されるために。私達を騙すために……」

まどか「なんでほどかちゃんが私達を騙さないといけないの?」

ほむら「あの子の目的にそれが必要だから……」

まどか「目的? ほむらちゃんが考えるほどかちゃんの目的ってなに?」

ほむら「それは……。あの子はまどかの魔法少女の才能を利用して……」

まどか「利用して?」

ほむら「世界を自分のものにしようと……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1342874363
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/21(土) 21:41:03.91 ID:/07bezn8o
乙 メール欄に saga 忘れずにね
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [saga]:2012/07/21(土) 21:43:32.49 ID:X9vlZUyI0
>>2了解。ありがとう。

VIpで最初からのほうがいいって意見あったけどどうしよう。
やっぱ最初からのほうがいいかな
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 21:44:32.29 ID:e/G0VuQEo
>>3が可能ならそれで良いんじゃない?
あと酉つけようず。荒れた時用に
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/21(土) 21:44:54.11 ID:/07bezn8o
俺は最初から読んでたからどっちでもいいけど
新規のほうが読んでくれる人増えるとは思う
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/21(土) 21:45:05.57 ID:q+FG+eGwo
期待
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/21(土) 21:45:58.40 ID:/07bezn8o
>新規のほうが読んでくれる人増えるとは思う
最初からのほうが読んでくれる人増えるんじゃない?
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/21(土) 21:46:02.90 ID:w1XmFlcuo
また名前に突っ込まれるとこから始まるんだろ
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/21(土) 21:46:43.88 ID:CV8g410Ao
ルール違反してるぞ
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/21(土) 21:49:15.09 ID:/TPr+9fFo
大人しく名前はほのかかホミカにしとけ
11 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 21:49:25.75 ID:X9vlZUyI0
じゃあ最初からやる。
読んでくれた人はまたごめんね。

一応、最初投下したのとは変えたりする。

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 21:50:28.60 ID:/07bezn8o
最初から把握
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/07/21(土) 21:52:48.16 ID:ZeusyAxo0
名前をどうするのか…。
14 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 21:53:26.18 ID:X9vlZUyI0
>>9マジで??
速報書き込むの初めてなんでルールについて詳しく教えてほしい

あと、名前は変えるの時間かかりそうだからやめとく
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/21(土) 21:53:32.17 ID:uWl2B44io
名前がほどかじゃ残念過ぎると思うんだ。
無理に二人の名前だけで構成する必要は無いと思うぞ。

ほのかとかあるだろ

どうしてほむかの二の舞になるような
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/21(土) 21:53:39.70 ID:OQulOqfGo
最新まで追いつくのは何時くらいになりそう?
17 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 21:53:52.35 ID:X9vlZUyI0
女の子「はい、私は未来から来たあなたの娘です」

まどか「え、えぇ!?」

始めまして! 鹿目まどかです! 現時刻は午後5時をちょっと過ぎたくらい。
学校も終わって家でのんびりしていた私は、パパにお使いを頼まれて、お醤油を買いに出かけていました。
そして、無事に買い物も終わり後は家路につくだけ。となった私の前に私の子供だと名乗る女の子が現れたのです!
その子は長い黒髪をツインテールにし、少し垂れ目のすごく可愛らしい女の子でした!

まどか「え、えぇと……。なんの冗談かな?」

あまりの突然の出来事に私は思わず、若干引きながらもそう聞き返してしまいました。
なにかの冗談であることを願いながらも。

女の子「冗談ではありませんよ。私は正真正銘、あなたの子供です」

はい。言い切られました。
なんなんでしょうかこの子は? 新手の詐欺でしょうか? 子供子供詐欺でしょうか?
こんな子供まで詐欺に手を染める時代なんでしょうか? 
あれでしょうか、そうしないと生きていけないのでしょうか? 不況のせいですねきっと。
嫌な世の中になったものです。

まどか(見たところ私と同じぐらいの年なのに……。
    詐欺なんてしないと生きていけないなんて……。可哀想に……)
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 21:54:07.59 ID:e/G0VuQEo
>>14
何も問題無いから釣らるなよ
19 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 21:54:57.59 ID:X9vlZUyI0
女の子「なにか失礼な事考えてませんか?」

まどか「え!? そ、そんなことないよー。ティヒヒ」

考えてることがバレた!? なんでしょうか最近の詐欺師は心を読めるのでしょうか。
嫌な世の中になったものです。

女の子「まぁ、いきなりこんなことを言っても信じてもらえないのは仕方がないですね。
    私だってそんなことをこんな道端で言われても宗教の勧誘か詐欺を疑いますから」

まどか「え、ぇー……」

女の子は今、まさしく私が考えていたことを言い当てるかのように言いました。
でも、自分でいいますか? ふつう……

女の子「しかし、あなたもすごいですね」

まどか「え、え? なにが?」

女の子「いきなり自分の子供だーなんて人が現れたら怖がって逃げますよ?
    少し危機管理能力が低いんじゃないですか?」

この子! 初対面でなんて失礼な!!

女の子「私ならその場で大声を出すか、鳩尾に一発決めてやりますよ?」

やだ、この子怖い!!
20 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 21:56:34.46 ID:X9vlZUyI0
>>16一回の投下量がハンパなく
できるみたいだからそんなに時間かからないかも
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/21(土) 21:56:45.85 ID:gSnIWZKso
今から300レス近く貼るのかwwww>>1も頑張るなwwwwwwww
22 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 21:57:44.38 ID:X9vlZUyI0
まどか「え、えー。だっていきなり、そんなことできないよー。それにあなた女の子だし……」

私がそういうと女の子は汚物を見るような眼差しを私に向けました。
え? なにその目……。私なんか変なこといった?

女の子「はぁ……。そうでしたね。あなたはそういう人でした。
    甘いというかぬるいというか……。
    可愛い女の子に対しては特にそう……」

まどか「え、え?」

溜め息交じりに私の性格は昔から変わらないんだな。と、この子は呟きました。
っていうか自分で自分のこと可愛いって言ったよこの子……。

女の子「私は可愛いですよ?」

なにをバカなことを言ってるの? みたいな表情で女の子は私を見てきます。
っていうかまた心を読まれた!! なにこの子!

女の子「なんて言ったって私は世界一美人なママの子供ですからね」
聞いてもないのに女の子は勝手に自分の親の事について話し出します。
あれ? でもこの子の親ってこの子の中では私って話だよね?
つまりこの子の言ってるママは私ってことで、つまりそれは……。
世界一美人なママって私の事?

……いやぁ〜/// なんか照れますな〜///

まどか「ティヒヒ///」

女の子(なんか勘違いしてるな。まぁいっか)

私が照れて頭を掻く様子をひとしきり眺めた女の子は、それはそうと、っと言うと

女の子「親であるあなたに私に協力してほしい事があるんですが」

っと言った。
いきなりだね。君。

まどか「いやいや! 待ってよ! いきなりなに!? 私はあなたの親じゃないよ!!?」

女の子「えっ……」

私の言葉に女の子は世界の終末が来たとでもいうような顔をして俯きます。
いやいや! なになにこの空気! 私何も変なこといってないよね!?
なんだかすっごく悪いこと言ったみたいな感じだよ! これ!

女の子「そっか……。そうだよね……」

なに!? なにを一人で納得してるのこの子!?

女の子「私はいらない子だもんね。ぐすっ」

まどか「え!? え!!?」

なになに!? え? なにこの状況!! なんでこの子泣いてるの!? 私悪者みたいだよ!
こんなの絶対おかしいよ!

まどか「え!? ちょっと待って! 泣かないで!」

慌てて私はその子を泣き止ます為に動きます。
だってこんなところで女の子を泣かしたなんて世間体が悪すぎます。
私は世間体は結構気にする女の子です。
23 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 21:58:31.95 ID:X9vlZUyI0
女の子「私……。どうしたらいいんだろう……。親からは見放されて……。この時代には友達もいないのに……
    これから一人で寂しく生きていくしかないのかな……。
    そして、寂しく一人で死んでいくしか……。ぐすん」

まどか「え!? ちょっと! ごめん! ごめんなさい! 謝るからそんなこと言わないで!」

痛みます。私の心が痛みます。私は何も悪くないはずなのに心がズキズキします。

女の子「謝られたって……。あなたは私を認知してくれないんでしょう?」

認知ってなんですか。
まさか私の年で認知を迫られるとは思ってもみませんでした。

まどか「え、えー。だって……」

そりゃできませんよ、だって。ねぇ?

女の子「うっ……。やっぱり私は一人なんだ……。一人で死んでいくしかないんだー!!」

今まで瞼という防波堤で止まっていたはずの涙という名の津波が一気に堰を切って流れ出しました。
なんでしょうこれ。完全に悪者です。私。
ワンワン泣く女の子に完全にパニックになった私はついうっかりと

まどか「あ、あー! わかったよ! 認める! 認めるから泣き止んで!」

っと言ってしまいました。
我ながらちょろいです。

女の子「そうですか」

まどか「えっ」

え? なに? この子今まで泣いてたよね? あれ? 私、幻でも見てた? ロッソファンタズマ?

まどか「あ、あれ? 泣いてたんじゃ?」

女の子「泣いてましたよ? 酷いことを言われたんで」

まどか「え、でも、あれ?」

女の子は私のキョトンとした表情を見てなにか察しがついたのか

女の子「あなたに一つ教えておきます」

っと人差し指を口の前に立てて。

女の子「涙は、女の武器ですよ?」

っとにやりと口角を吊り上げて言い放ちやがりました。


ママ、パパ。今日私は女の怖さを学んだよ――。
24 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 21:59:04.47 ID:X9vlZUyI0
まどか「……」ツーン

女の子「もー、いい加減に機嫌を直してくださいよー」

立場は一転。今度は女の子が私を宥める側にまわって数分。
私は騙された怒りから彼女の言葉を全て無視していました。

まどか怒りのスルーです。

女の子「別に騙してたわけじゃないんですよ? 泣いてたのは本当ですし」

違います。彼女の涙は本当の涙じゃありません。本当の涙っていうのは、なんかこう……。
……とにかく、彼女の涙は真の涙じゃないのです。
っていうかいい加減に心を読むのは止めてほしいです。

女の子「ごめんなさいー。許して下さいよー。
    私はあなたのママから教えられたことを実行しただけなんですからー」

まどか「え?」

今この子、なんていったの?
私のママ?

女の子「だから私はあなたのママ。私からしたらおばあちゃんですね。から教わったことをただやっただけなんですよ?
    詢子さんが言ったんですから」

女の子「女が自分の意見を通したいときは泣いてみるのも一つの手よ。って」

うわぁ……。確かにママならいいそー……。
だけど、この子どうしてママの名前を知ってるの……。
まさか本当に未来の……?
いやいや、名前くらいいくらでも調べようが……。
でも、なんで私の家族のことなんか調べて……。

まどか「……」

さすがの私もこの子の異質さに気づき、警戒心が芽生え始めました。
遅すぎるだろ。っとか言ってはいけません。

女の子「……なんか、本当に怖がられちゃったみたいですね」

女の子の方も、私の警戒を感じ取ったのか、態度を改めて私に対峙します。

まどか「あなた……。本当になんなの?」

まさか本当にヤバい子なのでしょうか。今までは私と年の近い女の子。
そして若干言葉に棘があるけれど、不思議と人を安心させるような雰囲気や、親近感のようなものを感じられたから危ない子ではないと考えていました。
だけど、これはいくらなんでも怪しすぎます。

女の子「……仕方ないですね。信じてもらう為です。どうせあなたには見てもらわないといけないんだし……」

女の子はそう呟くと、自分の左手を私に見えるようにかざしました。

まどか「な、なに?」

女の子「私の中指にある指輪、わかりますか?」

彼女の言葉に私はその指輪を注視する。
一見なんの変哲もない指輪に見えるけど、これがなんだというのでしょうか。

まどか「これが、なんなの?」

彼女の意図が読めず、私は彼女の顔を窺うように目を向けます。

25 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 21:59:30.27 ID:X9vlZUyI0
女の子「まぁ、見ていてください」

そういって彼女は手の平を空に向け、何か念じるような仕草をします。
すると、なんの変哲もなかったはずの指輪が光を放ち始めました。

まどか「な、なに!?」

一定の光を放ち続ける指輪。
間近で見ていた私はその光に少し目が眩みましたがそれもすぐに終わりを迎えました。
光が収束し、その発光を終えた時、いままで彼女の手の平にはなかったものが存在していました。
それは卵形の形状をした宝石のようなものでした。

まどか「な、なにこれ……」

私は今、目の前で起きたことが理解できずにただ呆然とするしかありません。
私が唖然としているのを見た彼女は私にこう説明しました。

女の子「これの名前はソウルジェムっていいます。
    まぁ本来の形が今の形状で、さっきの指輪の状態は普段持ち運ぶ時の為だとでも思って下さい」

あまり状況が読み込めない私に彼女は淡々と説明を続けます。
正直あまり飲み込めません。

女の子「これには色々と便利な機能があるんですがそれについては後で説明します。
    今は、それよりも知ってほしい事がありますから」

まどか「知って、ほしいこと?」

女の子「えぇ、それは……」

そういって彼女は私から3歩程離れます。
そしてソウルジェムを胸に抱きかかえるよう持つとまたなにかを念じるように、なにかを祈るように目を瞑ります。
すると今度は彼女自身を優しく覆うように光が広がり始めたのです。

まどか「な、なに!?」

今度の発光はさっきのものとは比べ物にならない程大きく、しかし私はその不思議な光景から目を離せずにいました。

まどか「……きれい……」

私は思わずそう呟き、眼前の光景に魅入ってしまいます。

しばらく続いた発光もやがて収束し、光の中からゆっくりと彼女の姿が現れ始めました。
しかし、再び現れた彼女の姿はさっきまでの彼女とは異なったもので、私はその事実に驚くのでした。

女の子「どうです? 驚きました?」

そう話しながら現れた彼女の顔はすごく優しげな笑顔で、いきなり驚かせたことに対する謝罪も含まれているようでした。

でも、なぜでしょうか。
私は目の前にいる少女が、その笑顔が、そのとても綺麗で優しげな笑顔が悲しんでいるように、そう感じたのでした――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
26 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 21:59:57.29 ID:X9vlZUyI0
女の子「以上で説明を終わります」

こんにちは! 鹿目まどかです! 私はパパのお使いで買い物に出かけたのです!
でも、その帰りにすごい女の子と遭遇! その子はなんと! なんとですよ!
私の子供だっていうじゃないですか!
ビックリ!! 

で、ですね、その子がなんかパーッと宝石みたいなのを出してですね、それでパーッと変身したんですよ!
で、それからなんか凄い話を聞かされちゃうんですよ!
なんでもですね。その宝石はソウルジェムって言って魔法少女になるためのアイテムで魔法少女はキュウべぇっていう
見た目が可愛らしい宇宙人と願いを一つ叶える代わりに魔女を倒すための契約を結んで日夜、魔女を倒すために戦うらしいんですよ!
ビックリ!!

まぁほかにもソウルジェムのこととか色々聞いたんですけど、その辺は魔法少女まどか☆マギカ 第二話でマミさんが説明したことを聞いた感じです。はい。
詳しく知りたい人は、DVDを“買って”確認してね! まどかとのお約束だよ!

まどか「ってマミさんって誰! DVDってなに!?」

女の子「!?」ビクッ

女の子「ど、どうしたんですか急に……」

私の急の叫びに女の子が驚きながら聞いてくる。

まどか「ご、ごめん。なんか言わなきゃいけない気がして……」

私の答えになってない答えに、怪訝なそうな顔をして女の子は話を続けます。
その顔はやめて! なんか傷つくから!!

女の子「で、ですね。私の話、信じてもらえました?」

そう問いかける女の子。
まぁ、正直まだ半信半疑なところはあるけど(私の子供だーとかね)さすがに未来から来たのは信じざるおえないかな。

まどか「だってあんなの見せられたらね……」

魔法少女に変身した女の子。
変身してまず私に見せたことが
時を操る能力。魔法少女になった時についてる盾を操作することで操れるんだって。
なんでも自分の身体に触れている人はその能力の制限を受けないみたいだから、私は女の子の手を握ってたんだけど。
ちなみにすっごい柔らかかった。
まぁそれはいいんだけど、で、実際に見せてもらったらこれが凄いのなんのって、まず、
時を止められる。

止まってるのみんな。
道路を走る車や空を飛んでる鳥。挙句の果てには今、塀から飛び降りたばかりの猫まで空中でストップ。
あまりのことに呆然。
で、なぜか私達だけは動けるの。
自由自在。


で、時を止めるだけじゃなくて進めることもできるの。
どんなものかを見せてもらったら、その辺にあったちょっと大きめの石を拾って投げたのその辺に。
投げられた石、すっごく早かったなぁ。
っていうか見えなかった。気づいたらその石が10メートルくらい先に落ちてた。投げるモーションをした瞬間に落ちてた。
詳しく聞いたら。対象の決められた行動を早送りしたんだって。しかもその対象のみに早送りが適応されるから本来の時間の流れは無視して進めることができるみたい。
なにそれすごい。つまり遅刻しそうな時にそれを使ったら遅刻しないで済むねって言ったら、その時は時を止めますだって。
ですよねー^^

で、次が一番すごい、時を戻す能力。
さっき飛んで行った石、気づいたら元の位置にあるの。
なにしたの? って聞いたら次は対象の決まってしまった行動を巻き戻しましただって。
半端ない。
じゃあ、あれだよね。テストで悪い点数取っても巻き戻せば完璧だねっていったら、
テストはいつも満点なんでその例えはよくわかりません。だって。
この野郎^^♯ 私の子供じゃないのかよ^^♯
っていうかその規模だと時間軸自体の巻き戻しになるので、そこまではできませんだって。
なにそれ実はそんなにすごくない。

まぁ、そんな感じで能力の説明をしてもらったんだけど、こんな不思議なことが目の前で起こったらさすがに信じるしかないというか、なんというか……。
27 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:00:35.88 ID:X9vlZUyI0
まどか「うん。信じるよ」

女の子「それは、どこまでですか?」

まどか「どこまでって……」

女の子「あなたが私の子供であるっていうことはまだ完璧に信じてもらえていないような気がするんですが」

私の心理を見透かしたかのように女の子は話し続ける。
鋭いなぁ……。実際、私が信じたのは彼女が魔法少女で、未来から来た。という話まで。
私の子供であるというのは半信半疑だ。

女の子「……」

じーっと私の目を見る女の子。
その目はとても真剣で、とても嘘をついてるようには見えません。

まどか「……」

……。そう、嘘をついているようには見えない。
それに私はなぜかこの子を一目見た時から妙に親近感が湧いていた。
この子は悪い子ではない。信頼できる子だと。心のどこかで感じていたんだ。

だからだろう。
普通なら身の危険を感じるであろう状況にをおいても逃げ出したりはしなかったのも、この子は私に危害を加えることはない。
むしろ守ってくれるだろうとまで考えたのは。

女の子「……」

少し、彼女の目に不安の色が陰っていることに気づく。
その目は悲しそうにも寂しそうにも見えた。、

その目を見た私は、彼女のさっきの言葉を思い出す。

『私……。どうしたらいいんだろう……。せっかく見つけた親からは見放されて……。この時代には友達もいないのに……
    これから一人で寂しく生きていくしかないのかな……。
    そして、寂しく一人で死んでいくしか……。ぐすん』

彼女が未来から来たという話が本当なら、この言葉は真実であるという事になる。
そう、彼女はこの時代において文字通り一人なんだ。
一人きりで、自分を知っている人間もいない現代で彼女が何をしようとしているのかはわからない。
でも、そんな中、彼女は“親”である私を頼り力を貸してほしいと私の前に現れたんだ。


まどか「……」

今度は私がじっと彼女を見つめる。

改めて、悪い子ではないと思う。
そして、私を頼ってくれた。それは間違いではないと思う。

それだけでいいかな。信じる理由はそれだけで。
彼女が本当に私の子供かどうか、それを証明する方法はないけれど、彼女が私の子供だというのなら、今日から彼女は私の子供だ。
子供の言うことを信じるのは親の務めなんだ。
なら、私の言うべき事は……。

まどか「信じるよ」

女の子「え?」

私の言葉に彼女はきょとんとした顔をする。
その顔からはさっきまでの生意気で大人びた彼女ではなく、年相応な、彼女の本当の姿を見られたような気にさせる。


まどか「あなたの話した事を全部、信じる」

私は彼女を安心させるように親が子供に語りかけるように、優しい声色で彼女への信頼を示した。

まどか「あなたは私の……娘、なんだね」

女の子「あ……」

まどか「あなたが、なんのためにこの時代にきたのかはわからないけど……。きっととても大変な事の為にやってきたんだっていうのはわかる。
    私なんかで役にたてるのかはわからないけど、親としてあなたのやることの力になれたら嬉しいな」

そう、親なら子供の力になるべきだ。なんにもできない私だけど、少しでもこの子の力になれるのなら……。

まどか「だからそんなに不安そうな顔をしないで? 私はあなたを信じるから。ね?」

笑顔で彼女に安心するように語りかける私。親なら、子供に不安を与えてはいけない。子供を安心させなくちゃいけない。
だって、私はこの子の母親なんだから。
28 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:01:03.18 ID:X9vlZUyI0
まどか「うん。信じるよ」

女の子「それは、どこまでですか?」

まどか「どこまでって……」

女の子「あなたが私の子供であるっていうことはまだ完璧に信じてもらえていないような気がするんですが」

私の心理を見透かしたかのように女の子は話し続ける。
鋭いなぁ……。実際、私が信じたのは彼女が魔法少女で、未来から来た。という話まで。
私の子供であるというのは半信半疑だ。

女の子「……」

じーっと私の目を見る女の子。
その目はとても真剣で、とても嘘をついてるようには見えません。

まどか「……」

……。そう、嘘をついているようには見えない。
それに私はなぜかこの子を一目見た時から妙に親近感が湧いていた。
この子は悪い子ではない。信頼できる子だと。心のどこかで感じていたんだ。

だからだろう。
普通なら身の危険を感じるであろう状況にをおいても逃げ出したりはしなかったのも、この子は私に危害を加えることはない。
むしろ守ってくれるだろうとまで考えたのは。

女の子「……」

少し、彼女の目に不安の色が陰っていることに気づく。
その目は悲しそうにも寂しそうにも見えた。、

その目を見た私は、彼女のさっきの言葉を思い出す。

『私……。どうしたらいいんだろう……。せっかく見つけた親からは見放されて……。この時代には友達もいないのに……
    これから一人で寂しく生きていくしかないのかな……。
    そして、寂しく一人で死んでいくしか……。ぐすん』

彼女が未来から来たという話が本当なら、この言葉は真実であるという事になる。
そう、彼女はこの時代において文字通り一人なんだ。
一人きりで、自分を知っている人間もいない現代で彼女が何をしようとしているのかはわからない。
でも、そんな中、彼女は“親”である私を頼り力を貸してほしいと私の前に現れたんだ。


まどか「……」

今度は私がじっと彼女を見つめる。

改めて、悪い子ではないと思う。
そして、私を頼ってくれた。それは間違いではないと思う。

それだけでいいかな。信じる理由はそれだけで。
彼女が本当に私の子供かどうか、それを証明する方法はないけれど、彼女が私の子供だというのなら、今日から彼女は私の子供だ。
子供の言うことを信じるのは親の務めなんだ。
なら、私の言うべき事は……。

まどか「信じるよ」

女の子「え?」

私の言葉に彼女はきょとんとした顔をする。
その顔からはさっきまでの生意気で大人びた彼女ではなく、年相応な、彼女の本当の姿を見られたような気にさせる。


まどか「あなたの話した事を全部、信じる」

私は彼女を安心させるように親が子供に語りかけるように、優しい声色で彼女への信頼を示した。

まどか「あなたは私の……娘、なんだね」

女の子「あ……」

まどか「あなたが、なんのためにこの時代にきたのかはわからないけど……。きっととても大変な事の為にやってきたんだっていうのはわかる。
    私なんかで役にたてるのかはわからないけど、親としてあなたのやることの力になれたら嬉しいな」

そう、親なら子供の力になるべきだ。なんにもできない私だけど、少しでもこの子の力になれるのなら……。

まどか「だからそんなに不安そうな顔をしないで? 私はあなたを信じるから。ね?」

笑顔で彼女に安心するように語りかける私。親なら、子供に不安を与えてはいけない。子供を安心させなくちゃいけない。
だって、私はこの子の母親なんだから。
29 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:01:33.41 ID:X9vlZUyI0
女の子「あ……」

彼女の瞳がにわかに潤みだす。

女の子「あ、あり……がとう」

少しづずつ滲み出した涙は、ポロポロと零れだす。それはさっきのような津波のようなものではなく、ゆっくりと湧き出す湧水のようで
私は彼女の本当の涙を見れたんだと少し嬉しく感じた。

まどか「うん。大丈夫だよ。もう一人じゃないからね」

私は泣いている彼女に近寄り、母親が子供にするように、優しくその体を抱きしめました。

女の子「あり、がとう……。ありがとう」

何度もお礼の言葉を繰り返す彼女を抱きしめながら私は彼女の力になろうと決心を固める。




まどか(そうだよ……。だって私はこの子の、ママなんだもん)

母親が自分の子供の力にならなくてどうするんだ。

女の子「ありがとう……。ありがとう」

そう、自分は母親なんだから。ギュッと抱きしめる腕に力をいれる。

女の子「ありがとう。信じてくれて」





女の子「お父さん」




そう母親な……ら……?





まどか「え?」

いまなんてった?

女の子「お父さんが信じてくれてよかった」

女の子「信じてくれなかったらどうしようって……」

女の子「すごく不安だったんだ……」

女の子「でもお父さんが信じて手伝ってくれるならもう安心。絶対にお母さんを助けることができるよ!」

彼女の言葉が理解できない私。

お父さん? お父さんってなに?
あれ? 私聞き間違えた?

まどか「ね、ねぇ。誰が信じてくれてよかったって?」

私は聞き間違えたであろう言葉を聞き返す。
こういうのはちゃんと聞かなきゃいけないからね。
30 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:02:01.92 ID:X9vlZUyI0
女の子「え? お父さんがだよ?」

うん。あー。うん。幻聴だね。うん。これは幻聴が酷いね。
今度病院にいかなきゃね。

まどか「えーと。うん! お母さんが手伝うから安心だよ!」

女の子「え?」

再びキョトンとする女の子。
何も私はおかしなことは言ってないのになんでだろうね!

女の子「……お父さんなに言ってるの?」

まどか「え? お母さんなにかおかしなこと言ったかな? そ、それよりあなたがしなきゃいけないことってなに? お母さんはなにを手伝えばいいのかな?」

幻聴をスルーして話を進めようとする私。だけどそんな努力は無駄で……。

女の子「なにか勘違いしてるようですけど……。あなたはお母さんじゃなくてお父さんですよ?」

まどか「」

淡々と衝撃的なことを口にする彼女。
幻聴であると、そうであってほしいと願っていた私の思いは無残に砕け散るのでした。







女の子「あ、そういえば私の名前をまだ言ってませんでしたね」

彼女はうっかりしていました、遅くなりましたが。
といい自身の名前を口にする。

女の子「私の名前は鹿目ほどか。父親であるあなた、鹿目まどかと、三日後に転校してくる母親である暁美ほむらの一人娘です」

にっこりと笑い自己紹介をする彼女。
そのとても美しい笑顔は夕日をバックにその美麗さをより一層輝かせ、その笑顔を見た私は、
この子に似ているほむらちゃんって子はすっごく綺麗なんだろうなー。っと場違いなことを考えてしまうのでした。

そして彼女の胸元で光る宝石。
そのピンクパープルに光るソウルジェムの輝きを見た私はこれから起こるであろう大変な出来事と、信じがたい現状に一人頭を悩ませるのでした。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
31 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:02:52.30 ID:X9vlZUyI0
      ―― まどホーム ――


まどか「……」

ほどか「わぁ……。この料理すごくおいしいです。こんなにおいしい料理食べたことありません!」

知久「はは、そういってもらえると作った甲斐もあるな」

詢子「まだまだいっぱいあるからたくさん食べなよー。遠慮なんかいらないからな?」

ほむか「はい! いただきます!」

タツヤ「ほどかー!」

ほどか「あはは、タツヤおじちゃん口元汚れてるよ? ふきふきするね」フキフキ

詢子「おー、よかったなタツヤー。こんな美人な女の子に世話やいてもらって。この色男めー」

ほどか「そんな……。美人だなんて///]

詢子「はは、照れてる姿も絵になるじゃないか」

ほどか「か、からかわないでください///」

詢子「ははは。照れるな照れるな」




こんばんは! 鹿目まどかです!
無事? 買い物も終わり帰り道に出会った未来の私の娘と名乗る女の子、ほどかちゃんを家に連れてきた私。
で、ママ達に紹介して一緒にお食事ってなったんだけど……。

まどか(馴染みすぎだよ……)

そうです。すっごい馴染んでるの。とても初対面とは思えない程に。
いや、私の娘っていうんならほどかちゃんは初対面じゃないだろうし、そりゃそうなんだろうけど……。
でも、初対面なはずのママもパパもタツヤも馴染みすぎというか、普通の家族みたいというか……。

まどか(いや、悪いことじゃないんだけどね)

でも、さすがに驚きを禁じ得ないよ。これは……。
私としてはこの子を家族に紹介するのは結構緊張してたのに……。
なんていって紹介しようかとか、どう説明しようかとか。あんまりよくない頭を働かせて考えてたんだよ?
なのにこの子と来たら……。

ほどか「あぁ、私のことなら大丈夫ですよ。任せてください」

っていうから任せてみたら……。



詢子「いやー、まさかこんなに早く孫の顔を見ることができるとは、驚いたね」

知久「そうだね、最初聞いたときは信じられなかったけどね。でも、確かにまどかに似ているところもかなりあるしね」

ほどか「信じてくれてありがとうございます」

そうです。この子普通に全部ありのまま説明しやがったんです。
ご丁寧に魔法少女の事まで全部。

詢子「しっかし、そんな世界があるとはねー。長い間生きてきたけど全然気づかなかったわ」

ほどか「魔法少女は基本的には人にバレないように行動していますから……。やっぱり人目があると面倒ですし」

詢子「まぁそうだろうね。そんなもんが存在してるなんて知れたらみんな大騒ぎだ」

知久「まぁそのおかげで僕たちはこんなに早く孫の顔を見ることができたんだからラッキーなのかな?」

詢子「だね」

ラッキーで済ますんだ、この親は……。

え? っていうかそんなにあっさり信じていいもんなの? そりゃ魔法少女の事は目の前で見せられたら信じるしかないのはわかるけど……。
私の子供っていう事までそんなに簡単に信じちゃうの? しかも、しかもだよ?
32 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:03:38.03 ID:X9vlZUyI0
詢子「しっかし、まどかもやるじゃん。この子の顔を見るに母親の子はすっごい美人だよ。そんな子を落とすなんてさすがは私の子だ」

なんで私が父親だっていうことも信じてるの!!
なんで!? そこは信じられないよね普通!! っていうか娘の性別が変わるっていうのになんでそんなにあっさりしてるの!?

ほどか「はい、お母さんは凄く綺麗ですよ。まぁ私も写真でしか見たことないんですけどね」

詢子「たしかほどかが小さい頃に亡くなったんだっけ?」

ほどか「はい……。もともと体の弱い人だったらしくて、私を生んだ為に体に限界がきたみたいで……」

詢子「そう……」

ほどか「……私のせいで」

悲しそうな顔をして、そう呟くほどかちゃん。
なんだろうこの空気。私だけついていけてないよ……。



詢子「ほどか」

ほどか「なんでしょうか?」

詢子「辛い思いをしてきたんだね。でもね、これだけは覚えておけ。あんたの母親、
   ほむらって子は、あんたを生んで絶対に後悔なんかしてないよ。
   自分の体がどうなろうともあんたを生んだんだ。後悔なんかあるはずがない」

そういってママはほどかちゃんの頭に手を置きました。
そして頭を優しく撫でます。

詢子「だから私のせいでなんてあんたは絶対に口にしちゃいけない。
   その言葉はほむらの覚悟を裏切る言葉なんだから。
   ほむらはあんたのせいで死んだんじゃなくて、あんたが産まれたおかげで幸せの中で死ねたんだよ」

ほどか「あ……。そう、ですね。そうですよね……」

俯くほどかちゃんを優しく笑いながら撫で続けるママ。
普通なら感動的なシーンなのだろうけど私の心はそうはいかない。
だってその流れでいくと私がパパなのはもう確定事項として扱われているわけで。
私としてはそこにまだ納得いっていないというかなんというか……。

まどか「マ、ママ?」

いまだほどかちゃんを撫で続けるママに話しかける。





詢子「ん? どうした? まどか」

まどか「あのー。私がこの子の父親っていうの信じるのかなって」

詢子「え? だってこの子はまどかの子供なんだろ?」

まどか「えぇ、いや、それはそうなんだけど、その父親っていうのはちょっとおかしくないかなって……」

詢子「……? なにかおかしいとこある?」

知久「ないよね?」

詢子「ないみたいよ?」

まどか「あるよ!」

おかしいところだらけだよ!

まどか「だって、パパだよ!? パパ! 変でしょ!?」

自分の娘の性別が変わることになんでそこまで疑問を抱かないの!?
33 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:04:25.59 ID:X9vlZUyI0
詢子「変っていわれてもねー。……まどか、まさか」

急に真剣な顔になるママ。
え? なに? なんなの?

詢子「認知しないっていうの?」
 
出たよ認知! まさか一日で二度も認知って聞くとは思わなかったよ! しかも親から!

詢子「まどか」

ママは溜め息をつきながらなにかを私に伝えようとする。

詢子「男ならちゃんと責任を取らないとダメよ?」

まどか「私は女の子だよ!」

なにを言ってるのこの人は!



まどか「っていうかママとパパは私が男の子になることについてなにか疑問はないの!?」

詢子「疑問って、ある?」

知久「ないね」

おい、知久。知久、おい。即答か。

詢子「まぁ、魔法少女なんて存在してるんだし、女が男になるっていうのもありじゃないの?」

えぇー……。軽ぅ……。

ほどか「お父さんは私のお父さんは嫌ですか?」

ほどかちゃんが私の顔を覗き込みながら、上目使いでそう尋ねる。
……ホントに可愛いなこの子。

ほどか「あぅぅ……」

なに今の鳴き声。超可愛い。
じゃなくて、若干不安げなほどかちゃんの顔を見た私は、なんだか自分が父親であることを認めないのが悪いことな気がしてきたことと
このアウェーな空気により

まどか「……別に嫌じゃないよ」

っと彼女の頭を撫でながら言ってしまうのでした。





まどか(だってこんな可愛い顔で私のお父さんは嫌? って聞かれたら嫌とは言えないよ……)

だから決して私が押しに弱いとか可愛い子には弱いとかそんなことはないわけで……。

ほどか(パパちょろい)

詢子(我が子ながらちょろいわー)

知久(僕に似たんだね。これから苦労するよ、まどか)

なんか二名からは邪念が、一名からは憐みの眼差しを向けられているような気がするけどきっと気のせいだよね。
うん。気のせい。

まぁ、そういうわけでほどかちゃんはこんな風にあっさり我が家の一員になったのでした。

ちなみにほどかちゃんの生活費等は、家で払うことになりました。
ほどかちゃんは自分で出す。っと聞かなかったのですが、ママの

詢子『子供がんなこと心配すんな』

の一言と恐ろs、いえ、女神のような笑顔で納得してくれたようです。

ほどか(こ、恐かった……)
34 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:04:57.69 ID:X9vlZUyI0
―― まどルーム ――


まどか「でもこれからどうするの?」

夕食も済み、お風呂にも入った私達は今後の予定を話し合うことにした。
ちなみにお風呂に一緒に入ろうとしたところ

ほどか『お父さんのえっち! 変態!』

との御言葉により一緒には入れませんでした。

解せぬ。

ほどか「そうですね、これからのことを話す前に、まず私がなぜこの時代に来たのかを話しますね」

そういって椅子に腰かけ、私のぬいぐるみを抱きながらほどかちゃんは話し始める。
しかしぬいぐるみを抱く姿も絵になるねー。ティヒヒ。

まどか「たしか、お母さんを助けるとか言ってたよね? それと関係があるの?」

ママを助ける。
この言葉を考えるとなんだか物騒なことを連想してしまうけどどうなんだろう。




ほどか「はい。私のお母さん、つまりあなたの妻であるほむらさんが私が幼いころに亡くなったと話しましたよね?」

改めて妻とか言われるとなんだか違和感バリバリだけど、話が進まないのでとりあえず頷いておく。

まどか「体が弱かったからだよね」

ほどか「……実はそれは嘘なんです」

まどか「え?」

なんだか衝撃的な事を告げるほどかちゃん。
嘘って……。ならどうしてほむらちゃんは。

ほどか「体が弱いというのは嘘ではないんですけど、
    お母さんは魔法少女になってからは魔法の力で体は丈夫になっていたみたいですから、出産にも耐えられたはずです」

ほむらちゃんも魔法少女なんだ……。
なんだか親子揃って魔法少女とかすごいなー。

まぁそれはいいか。






まどか「じゃあどうしてほむらちゃんは……」

ほどか「……。いまから一か月後にワルプルギスの夜という大型の魔女が現れます」

まどか「ワルプルギスの夜?」

ほどか「はい。その魔女は凄く強力な魔女でお母さんはこの街を守るために戦ったんですが、その魔女との戦いで呪いを受けてしまったんです」

まどか「呪いって……。まさかそのせいで」

ほどか「はい……。
    ですから、私はお母さんがワルプルギスの夜との戦いの際に呪いを受けないように一緒に戦い、その呪いのせいで死んでしまう未来を変えたいんです」

そこまで話すとほどかちゃんは一呼吸置く。
そして、

ほどか「それが、私が未来からこの時代に来た理由です」

っと、彼女は真剣な瞳でそう告げる。
その瞳は固い決意を宿していて、その目的を果たす為ならばどのような困難にも打ち勝ってみせるといわんばかりだった。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/07/21(土) 22:05:06.62 ID:ZeusyAxo0
結局ほどか、か。まぁこれはこれでいいや。
36 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:05:23.80 ID:X9vlZUyI0
まどか「……。うん。わかったよ」

彼女の決意を受け、私は自分がすべきこと出来ることをしようと考える。
だって、娘であるこの子がそんな大変なことに立ち向かってるのに親である私が逃げるわけにはいかないもん。

まどか「で、私はなにを手伝えばいいのかな? 今の話からだと私にできることってなさそうだけど……」

今の話を聞く限りだと、そのワルプルギスの夜っていう魔女との戦いでは私は役にたてそうにない。
だって私は魔法少女じゃないし、ほどかちゃんと一緒にほむらちゃんの為に魔女と戦うというのは無理だろう。
なら私は何をすればいいのか。

ほどか「それなんですが……。お父さんには私がお母さんと一緒に戦えるように仲を取り持ってほしいんです」

まどか「取り持つって……。なんでそんことを? 私に話したみたいにほむらちゃんにも自分があなたの娘だってことを言えばいいんじゃ……」

ほどか「いえ……。えーと、そのなんていうか自分でいうのもなんですけど、いきなりそんなことを言われてもお母さん信じてくれないと思うんですよ。
    それにお母さんはなんだか性格に難しいところもあったみたいで……。一匹狼気質というか、冷たいというか……」

えぇー……。なにそれ。私の奥さんってそんなに怖い人なの? なんか将来に不安が……。





ほどか「あっ、でもそんなお母さんが唯一心を許せる人がお父さんだったらしくて、そんなお父さんがお母さんに話しをしてくれたら大丈夫かなって」

えぇ、なにそれ。私ってそんな人の心を射止めたの? やるじゃん私。

ほどか「ですから、私がお母さんの子供っていうことは内緒で、うまく協力関係を結んでワルプルギスの夜を無事に倒すことが私の目的になります」

まどか「なるほどねぇ」

なんだか難しそうだけど……。
不安そうにこっちを見てくるほどかちゃんを安心させる為にもここは

まどか「うん。きっとうまくいくよ」

笑顔でこう答えるべきだよね。

まどか「ほむらちゃんがどんな子かは会ったこともないからわからないけど、優しい子だっていうのはわかるよ。
    だってこの街を守るためにそんなにすごい魔女と戦ってくれるんでしょ?
    みんなの為にそんなことをしてくれる優しい子なら、きっと協力してくれるよ
    だから大丈夫だよ。きっとほどかちゃんの願いは叶うよ」

その言葉に安堵の表情を浮かべるほどかちゃん。
うんうん。やっぱり子供には安心してほしいよね。





ほどか「そうですね。……私の願いは叶いますよね。未来は……」

ほどかちゃんはそう呟いて俯く。
表情は見えないが、きっと自分の望む未来が訪れるであろうことに安心しているのだろう。

ほどか「あ、そうです。お父さんにもう一つお願いが」

そういって顔を上げ、私にお願いがあることをほどかちゃんは告げる。
うんうん。なんでも言ってね。可愛い娘のお願いならなんでも聞いちゃうから。

まどか「なーに?」

ほむか「お父さんにも魔法少女の素質はあるんですが、魔法少女にはならないでください」

なんだそんなことか。
それならお安い御用だよ。私が魔法少女にならな、ってえぇ!?

まどか「えぇ!? 私にも魔法少女の素質があるの!?」

思わぬ言葉に大声を出してしまう私。
そんな私の叫び声にほどかちゃんは耳をふさぎながら。

ほどか「うるさいですおとうさん」

っと抗議の声を挙げる。
37 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:05:54.39 ID:X9vlZUyI0
まどか「ご、ごめん。ってそうじゃなくて私にも素質があるってほんとうなの!?」

ほどか「本当ですよ。しかも歴代の魔法少女の中でも一番の素質があるみたいです」

まどか「そ、そうなんだ」

私なんかがそんな凄い力を持ってるなんて……。俄かには信じられない話だ。

まどか「で、でもなんで私は魔法少女になっちゃだめなの? ワルプルギスの夜がすごい魔女なら一人でも多く戦える人がいたほうが……」

ほどか「うーん……。それについてなんですが、魔法少女になるとお父さんは男の人になれなくなるんですよね」

まどか「え?」

ほどか「魔法少女になると死ぬまで永遠に魔法少女になるみたいです。
    ですから、お父さんが契約して魔法少女になってしまうと将来的に私が産まれなくなるので私の存在が消えてしまいます」

あっさりと凄いことを言ってのけるほどかちゃん。





ほどか「ですので、お父さんが魔法少女になるのはやめてほしいなぁって。
     まぁ私の存在を消してでも叶えたい願いがあるなら別にいいですけど」

まどか「そ、そんな願いないよ! ほどかちゃんを消してまで叶えたい願いなんて……」

私はその言葉を慌てて否定する。

ほどか「冗談ですよ。お父さんはそんな人じゃないって信じてますから」

ニコリと微笑みほどかちゃんはそう話す。
なんだかこの子には勝てないなぁー。
こんなことを言われたら、絶対に契約なんてしないぞ! って思っちゃう。

ほどか「……。このことはお母さんも忠告してくると思うんです」

まどか「え?」





ほどか「実を言うとお母さんも未来から今の時代に時を渡ってきているんです。
    まぁ、お母さんの場合はワルプルギスの夜が現れる一か月後からみたいですが」

まどか「それってどういう……」

ほどか「詳しい事情はわかりません。ですが、お父さんが魔法少女になることと関係があるみたいです」

まどか「……」

ほどか「お母さんはお父さんが魔法少女になってしまった未来を変えるために行動していたみたいです。
    たぶん、ワルプルギスの夜に殺されてしまうから、その未来を変える為とかだと思うんですが……」

まどか「そ、そんなに強いんだワルプルギスの夜って……」

ほどか「みたいです。でも安心してください。その点については問題ありませんから」

自信満々に胸を張るほどかちゃん。
ちなみに私よりも大きい。ほむらちゃんの血だろうか?

まどか「どういう意味?」

ほどか「私の存在が答えです」
38 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:06:21.02 ID:X9vlZUyI0
まどか「??」

彼女の言葉が理解できない私。
やめて! 頭はあまりよくないの……。

ほどか「えっと、つまりですね。
    私が存在しているということは、ワルプルギスの夜を倒した未来は存在しているということです。
    そして、未来からきた私はワルプルギスの夜の倒し方も知っているというわけです。
    だって、母親であるほむらさんが倒したわけですから」

そこまで言われてようやく理解する私。

まどか「じゃあほどかちゃんはワルプルギスの倒し方を知っているんだね!」

ほどか「だからそう言ってるじゃないですか」

う……。たまに冷たくなるよねこの子。

ほどか「ですから、ワルプルギスの夜については問題ありませんので安心してください。
    お父さんはお母さんの忠告を素直に聞いてお母さんを安心させてあげてくださいね?」

そういって念を押すほどかちゃん。
……。本当にこの子はほむらちゃんのことが好きなんだなぁ。
やってることや言ってることは全部ほむらちゃんの為。
若干、私に冷たい時があるけど、私に全部話してきたことも私の事を信頼してくれてるんだろうし……。





まどか(ほむらちゃん……。私達の娘は優しい子に育ってるよ。あなたとはまだ会ったことはないけど)

じっと慈愛の眼差しで我が娘を見る。
あぁこれが子供の成長を喜ぶ親の気持ちなんだね。

ほどか(なんか気持ち悪い目だなぁ)

ほどか「さて、私の目的を話したところで今後の予定ですが」

ほどか「まず、お母さんと協力関係を結び、その後は巴マミさんとも協力してもらうために話しをします」

まどか「巴マミさん?」

聞きなれない名前に首を傾げる私。
誰だろう……。その、首と胴体が着脱可能そうな名前の人は……。

ほどか「はい。私と同じ魔法少女でこの見滝原を守っている人です。年はお父さんの一個上ですよ。
    たしか、お父さんと一緒の中学に通っているはずです」





まどか「へぇー、そんな人がいるんだ。その人と協力するのはワルプルギスの夜の対策の為に?」

ほどか「はい。マミさんの力は必要ですから……」

まどか「うん。わかった。マミさんって人とも仲良くなればいいんだね?」

ほどか「仲良く……。まぁそうです」

要は友達を増やせばいいんだよね?
じゃあ簡単簡単。

まどか「他にはなにかないの?」

ほどか「そうですね……。あと一人協力したい人がいるんですが……。佐倉杏子さんって人なんですけど、まぁ今はいいです。
    今はお母さんとマミさんの二人と話をすることに集中してください」

まどか「んー。了解! 学校で話せばいいのかな? それとも家に呼んだ方がいい?」

ほどか「学校でいいですよ。時間がないようなら放課後に喫茶店でもいいですし」
39 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:06:47.05 ID:X9vlZUyI0
まどか「じゃあ喫茶店かな。だってほどかちゃんも一緒のほうがいいだろうし」

ほどか「そうですね。では放課後にみんなで一緒に喫茶店にでも」

まどか「じゃあ放課後になったら連絡するね?」

ほどか「? 連絡なら必要ありませんよ?」

まどか「え、でも連絡しないといつ家をでたらいいかわからないんじゃ……」

ほどか「え? ……あぁ、そういえば言ってませんでしたね」

ん? なにが? またこの子は大事なことを話してないのかな?

ほどか「私もお父さんと一緒の学校に通うことになってますから」

なん、だと?




まどか「え? えええええ!!? な、なんで!?」

ほどか「そっちのほうが効率がいいからですよ?」

まどか「え!? でも手続きとかは!?」

だってこの子の話だと今日この時代に来た感じだよね!?
じゃあ、そんな暇ないはず……。

ほどか「その辺は魔法で、あとは私の願いの余波とかでかな」

まどか「え、えぇ、なにそれ……」

便利すぎだろう魔法……。
チートじゃないか……。



ほどか「お父さんの親戚ってことになってますから、ちゃんと口裏を合わせて下さいね? 
    私はお父さんのことをまどかちゃんって呼びますから。おかしなことを言っちゃダメですよ?」

ほどかちゃんがつらつらと注意事項を述べていく。
でも、急展開に頭がついていかない。

ほどか「じゃあ、まぁ、というわけで。これからよろしくお願いしますね。まどかちゃん♪」

ニッコリ微笑みそう言う彼女の笑顔はとても可愛くとても悪魔的でした。

まどか(こういうのを小悪魔っていうのかな?)

こりゃ難儀な子ですね……。

まどか「はぁ……」

――――――――――――
――――――――――
――――――――

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/07/21(土) 22:06:47.56 ID:13vUoN0Yo
やっぱりほどかなのか
この名前は最後まで馴染めそうにないな
41 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:08:49.29 ID:X9vlZUyI0
>>40な。俺も書いてて違和感しかなかったわ。
なんど、名前間違ったか。


あと、ここいらでお詫びの意味も込めてお題募集します。

なんか適当にタイトルくれたら適当に消化します。



まどかとほどかの初夜

まどか「ねぇねぇ、ほどかちゃん」

ほどか「なんですか?」

まどか「せっかくだし、一緒に寝ない?」

ほどか「え」

まどか「未来のこととか……、いろいろ聞きたいし、お話ししながら寝ようよ」

ほどか「……」

まどか「ほどかちゃん?」

ほどか「お父さんのえっちー!!」

まどか「ちょ、ちょ! ぬいぐるみ投げないで!!」

ほどか「もう知りません! 部屋にもどります!」

まどか「え? え?」

まどか「……解せぬ」

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 22:09:08.06 ID:0f895uZTo
語感が微妙に悪いと思いました>ほどか
43 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:09:12.85 ID:X9vlZUyI0
おはようございます! 鹿目まどかです!
未来からきた私の娘、ほどかちゃんと出会って今日で三日目の朝。
今はいつものメンバーで登校中なのですが、その登校風景にいつもは見ない姿が。

さやか「へぇー、まどかの親戚ねー。確かに似てるところはあるね」

仁美「えぇ目の辺りとかはまどかさんにそっくりです」

ほどか「よく言われるんですよー。あとは私のほうが大人っぽいとか」

さやか「あー、うん。そうだね。まどかがかわいい系っていったらほどかは綺麗系っていうの?
    いやぁー。仁美も美人だし、こんな子達に囲まれたたらますますさやかちゃんの存在が薄くなるよ!」

ほどか「さやかさんもすごく可愛いと思いますよ?」

さやか「くぅー。そんなに嬉しいことを言ってくれるとは! そんなに可愛いことをいうほどかは、私の嫁になるのだー!」

ほどか「きゃー! さ、さやかさんやめてくださいー!」

仁美「……こほん」

まどか「……」





まどか(相変わらず、馴染むのが早すぎるよ……)

なんなんでしょうか、みんなのほどかちゃんの受け入れ態勢の整い加減は。
今朝会って親戚の子で今日転校してくるって紹介したら二つ返事で受け入れてこれですよ。
いや、まぁなにも不審に思うこともないでしょうけど、ひと悶着くらいあるんじゃないかとか心配してた私はいったい……。

さやか「しかしほどかのそのリボン可愛いねー」

ほどか「派手じゃないですか? 私には似合わないような……」

仁美「そんなことはないです。よくお似合いかと」

さやか「そうだよ。まどかとお揃いでよく似合ってるよ!」

褒められて照れているほどかちゃんにニコニコしながら話しかける二人。
……騙されないで! その子猫被ってるから!

だって今朝――。
44 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:09:41.26 ID:X9vlZUyI0
―― まどホーム  ――

まどか『リボンどっちかな?』

詢子『ん』

まどか『えー 派手すぎないかな?』

詢子『それくらいでいいのさー』

詢子ほどか『女は外見でなめられたら終わりだよー』

ほどか『ですよね?』

まどか『え』

詢子『よくわかってるじゃないかー。さすが私の孫だね』

ほどか『えへへ』





詢子『そうだねー。ほどかもまどかとお揃いのリボンでいきな』

ほどか『そうですね。……んしょ。どうですか?』

詢子『うん! いいじゃーん。これならほどかの隠れファンもメロメロだ』

ほどか『そうですねー。えへへ』

まどか『いやいや、ほどかちゃんこの時代に知り合いいないでしょ。隠れファンなんているわけ……』

ほどか『いると思っておくんですよ。それが美人の』

詢子ほどか『ヒ・ケ・ツ』

詢子『だね』

ほどか『ですね』

まどか『……』
45 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:10:08.55 ID:X9vlZUyI0
まどか(ってことがあったんだから……)

思ったね。ほどかちゃんはママにそっくりだって。

さやか「しかし、ほどかは美人だねー。これは男子はだまっちゃいないよー」

ほどか「そんな……。私なんて全然……」

さやか「くー、なんて奥ゆかしさ!」

まどか(さやかちゃん騙されちゃだめ! その子の本性はそんなんじゃないから!)

さやか「私が男だったらほっとかないよ! きっと!」

まどか(それについては同意見だよ! でもさやかちゃんにはあげない!)

仁美(あらあら、私なんだか空気ですわ)

そんなこんなでさやかちゃん達とも打ち解けることができたほどかちゃん。
若干うまくいきすぎな気もするけど仲良しなのはいいことだよね。




まどか(次はほむらちゃんか……)

一番重要な人であるほむらちゃん……。どんな子なんだろう……。
あれ? そういえばほむらちゃんって私のお、お嫁さんになるんだよね……。
ど、どうしよう! 今更だけどなんか緊張してきたよ!
なにを話せばいいんだろ!? 式はいつあげるとか!? ハネムーンはどこがいいんだろう!? やっぱり熱海かハワイかな!?

まどか「あ、あわわわわ」アセアセ

さやか「ん? どうしたまどか、そんなあからさまに慌てて」

まどか「え!? な、なんでもないよ!」

さやか「えー、なんでもないようには見えないけどなー」

食い下がるねさやかちゃん……。
ここは空気を読んで流してほしいのに!





ほどか「……」ジー

あぁ! ほどかちゃんが可愛いお目目でこっちを見てるよ!
あの目は私が余計なことを言わないか危ぶんでる目だ!

まどか「も、もー! ほんとうになんでもないから! それより早く学校いこ! 遅刻しちゃうよ!」

さやか「げ、たしかにもうこんな時間」

まどか「ね! ほらほら早く! ほどかちゃんも!」

強引に押し切る私。かなり怪しいけどしょうがない。
遅刻しそうなのは本当だし。

さやか「あ、まってよ! まどか!」

ほどか「そんなに慌てると転びますよ?」

仁美「あらあら私に今後出番はあるのでしょうか?」

こうしてドタバタしながらも私たちの一日は始まったのでした。
46 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:10:36.20 ID:X9vlZUyI0
―― 学校  ――

和子「目玉焼きとは(ry

さやか「だめだったかぁ」

まどか「だめだったんだねぇ」

和子先生の破局を聞きながらついにこの時が来たと私は緊張する。

まどか(ついに私の嫁がみられるんだね)

思わず生唾を飲み込んでしまう……。
ほどかちゃんがあの外見ならほむらちゃんもきっと……!

和子「はい。あとそれから今日はみなさんに転校生を紹介します」

さやか「え、えぇ、そっちが後回しかよ」

まどか(きた!)

ついに私の嫁が!





和子「じゃ、鹿目さん、暁美さんいらっしゃーい」

さやか「え? 二人?」

転校生の登場にざわめく教室内。
そりゃそうだよね。転校生が二人。しかも同じ教室になんて普通はありえないもん。

さやか「うわ、ほどかもそうだけどもう一人の子もすげぇ美人……」

まどか「……」

さやか「ん? っていうかあの二人似てない……? 並んだら姉妹みたいだよ」

そりゃ親子だもん。似てるのは当たり前だよ。
っていうか……。

まどか(なにあれなにあれ! ほむらちゃんすっごく可愛い!! 本当にあの子が私の……///)




思わずじっとほむらちゃんを凝視してしまう私。
そして肝心のほむらちゃんは……。

ほむら「……」

ほどか「……」

ほどかちゃんをじっと、驚いたような顔で見つめているのでした。

まどか(あれ、なんか様子がおかしい……?)

その異様なふいんき(←なぜか変換できない)にみんなもさっきとまでは違ったざわめきを見せ始める。

和子「えーっと……。それじゃあ二人とも自己紹介いってみよー」

先生も困った様子で自己紹介を促す。

ほどか「……鹿目ほどかです。このクラスにいる、鹿目まどかさんとは親戚で、今日からみなさんとこの学校で共に学ぶことになりました。
    仲良くしてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします」

笑顔でそう自己紹介をするほどかちゃん。
うん。客観的に見て、完璧な挨拶。あれならみんなにいい印象を与えたのは間違いないね。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 22:10:46.52 ID:tmM4PmOIO
お、こっちでやるのか
きたい
48 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:10:59.65 ID:X9vlZUyI0
対してほむらちゃんはほどかちゃんの挨拶に驚きながらも

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

と、完璧なまでに無愛想な挨拶をしたのでした。

まどか(……確かに、なんだか難しそうな子だね……)

ほむら「……」

まどか(あ、こっち見た。っていうか睨まれた! なんで!?)

私、なにかしたかな? あ、未来でなにかしたからかな……。
……。なんだか、この先が一気に不安になってきたよ……。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
49 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:11:28.19 ID:X9vlZUyI0
HRも終わり、クラスの子達は珍しさから転校生、つまりほむらちゃんとほどかちゃんを囲んで質問攻めをしているのでした。
ほどかちゃんの方には親戚ということもあり私も一緒にいるんだけど、どうしようかな……。

まどか(ほむらちゃんと話さなきゃいけないんだよね)

大事な話は放課後にすればいいとしても、そのきっかけ作りにとにかく一回は話さないと。

モブ1「鹿目さんってどこからきたのー?」

モブ「あずにゃん! あずにゃん!」

ほどか「東京からです。実家は神戸にあるんですけど、親が転勤族で住むな所がころころ変わるんで
    あと、ほどかでいいですよ。鹿目さんだとまどかちゃんと紛らわしいですし」

モブ2「じゃあほどかちゃん! まどかちゃんの家に住んでるのはなんでなの?」

モブ4「あずにゃんぺろぺろ! あずにゃんぺろぺろ!」

ほどか「親が外国に転勤になりまして、むこうが落ち着くまではまどかちゃんの家にお邪魔することになったんです」




モブ3「えぇー。じゃあもしかしてまた転校しちゃったりするの?」

モブ4「あずにゃんもふもふ! あずにゃんもふもふ!」

ほどか「はい……。みなさんと仲良くなれそうなのに残念ですが……」

まどか「……」

この子、本当に凄いな……。
よくもまぁ、これだけ嘘をスラスラとつけるもんだよ……。
しかも表情もころころ変わって……。今の悲しげな表情とか本当に悲しそうだもん。
演技ってわかってるのに思わずなでなでしそうになったよ。
そういえばほむらちゃんのほうはどうなんだろう……。






モブ5「暁美さんって、前はどこの学校だったの?」

モブ4「ほむほむ! ほむほむ!」

ほむら「東京のミッション系の学校よ」

モブ6「前は部活とかやってた? 運動系? 文科系?」

モブ4「ほむほむくんかくんか! ほむほむくんかくんか!」

ほむら「やってなかったわ」

モブ7「すっごい綺麗な髪だよねー。シャンプーはなに使ってるの」

モブ4「ほむほむのサラサラヘアーほむほむ! ほむほむのサラサラヘアーほむほむ!!」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/21(土) 22:11:57.39 ID:JiBU2MEno
何で書きためてるか知らんが名前変えるのなんて置換すれば一発なのに
51 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:12:00.44 ID:X9vlZUyI0
まどか「……」

あっちはあっちで人気みたいだね。

仁美「不思議な雰囲気な人ですよねぇ。暁美さん……」

さやか「ねぇまどか。あの子知り合い? なんかさっき思いっきりがん飛ばされてなかった?」

まどか「え? うーん。うぇひひ……」

知り合いって言ったら知り合いなのかなぁ?
未来では仲良くしてるみたいだし……。

まどか(仲良く……///)

さやか「まどか?」




ほむら「ごめんなさい……。ちょっと緊張しすぎたみたいで気分が……。保健室にいかせてもらえるかしら」

モブ5「あ、じゃあ私が案内してあげる」

モブ6「あ、私もいくいく!」

モブ4「拙者もイクでござるー!!!」

ほむら「いえ、おかまいなく。係りの人にお願いしますから」

あ、こっち来た。
どどど、どうしよう。係りの人って私だよ!? 急にこんなの唐突すぎるよ!

ほどか「……」

慌てる私にほどかちゃんが目配せをする。
そ、そうだよね。いまからが本番だよね。気を引き締めないと……。
ぐっと拳に力をいれる私。そう……。私がやらなきゃいけないんだ……。





ほむら「鹿目まどかさん、あなたがこのクラスの保健委員よね」

まどか「え、えっと……」

ほむら「連れて行ってもらえる? 保健室」

まどか「え!? そ、そんな私達にはまだ早いよ!!」

ほむら「え?」

さやか「え?」

仁美「あらあら」

ほどか「はぁ……」

まどか「え? え?」

あれ私なにいって……。
ど、どうしよう……。なんだかすごい空気だよ……。
いったい誰のせいでこんなことに……。
52 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:12:39.14 ID:X9vlZUyI0
ほむら「……。鹿目まどかさん、あなたがこのクラスの保健委員よね」

まどか「え?」

さやか(あ、今の流して仕切りなおした)

ほむら「連れて行ってもらえる? 保健室」

まどか「あ、はい」

さやか(意外といいやつなのかな)

ほどか「あ、なら私もついて行ってもいいですか? 早めに校内のこととか知りたいですし」

ほどか「あなたも?」

ほどか「ぁ……。えと、だめ……、でしょうか……?」

ほむらちゃんの言葉にほどかちゃんはおどおどしながら同行してもいいか伺う。
なんだか、ほむらちゃんに対しては弱気……? なんでだろ……。

ほむら「……。私が許可を出すことでもないわ。そもそも私が拒否する資格はないもの
    案内してくれるのは鹿目まどかさんなのだから鹿目さんに聞くのが正しいんじゃないのかしら」

ほどか「ぁ、はい。そうですね……」






うわぁ、なんだかほむらちゃんもほどかちゃんに対して冷たいなぁ。
なんか、警戒してる感が半端ないよ。
ほどかちゃんもすっごく怖がってるし……。

まどか「え、えーと……。私は構わないよ! ほどかちゃんも一緒にいこ!」

私の言葉に安心したのかほどかちゃんはホッとした様子を見せる。
だけどほむらちゃんの

ほむら「よかったわ。私もあなたとは“じっくり”お話ししたかったし」

の言葉にまた萎縮してしまうのでした。

まどか(えぇ……。大丈夫なの? これ……)

不安すぎるよ……。
53 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:13:41.59 ID:X9vlZUyI0
まどか「……」

ほどか「……」

ほむら「……」

……。なんですか、この空気。

まどか(き、きまずい……)

ほどかちゃんとほむらちゃんを保健室に案内しているわけだけど、見事に会話がない。
会話がないだけならともかくほむらちゃんはほどかちゃんに対してなんだか、敵対心みたいなものを抱いていると私は感じた。

まどか(なんでだろう……。初対面のはずだよね?)

ほむらちゃんはほどかちゃんが自分の娘だとは知らないわけで、当然初対面のはず。

まどか(でも、明らかにほどかちゃんに対しては警戒しているんだよね)

他のクラスメイトに対しては無愛想ながらもちゃんと話してたし、敵愾心みたいなものは感じられなかった。
でも、ほどかちゃんに対してはなにか危険なものを見るような……。
自分が知らないものがそこに存在していることへの警戒というかそんなものが感じられた。

まどか(おかしいよね? 確かにほむらちゃんが未来からきたとしても……)

ここまで露骨に警戒する必要はないんじゃ……?



ほどかちゃんもほむらちゃんに警戒されていることからか元気がない。

まどか(ううん。これは警戒されていることよりも……)

せっかく会えた母親に嫌われているかもしれないという事実に悲しんでいるんじゃないか。

まどか(そうだよね……。ほどかちゃん、ほむらちゃんに会えるのすっごく楽しみにしてたもん)

実際にそういうことを本人の口から聞いたわけではないけど、昨日のほどかちゃんはなんだか落ち着きがなかった。
どこから持ってきたのかわからない制服を着ておかしくないか見ていたり、今朝だって、鏡の前で念入りに身支度をしていた。

まだあって間もないけどほどかちゃんがしっかりしている子だということは理解している。
礼儀作法はきっちりしてるし、浮かれたり無意味にはしゃいだりもこの子はしないんだろう。

タッちゃんの面倒も見てくれたりしてるし、パパのお手伝いも自分から進んでやってるみたいだったし……。
ママからどっちが親かわからない。なんて言われたっけ。

まどか(でもしょうがないよ。ほどかちゃん頭もいいし、気が利くし、私よりも大人だもん)

ママはそのことについて、難しい顔で

詢子『ほどかはどっちかというと根っこはまどかに似てると思うんだけどなー』

なんて言っていた。


まどか(私はほむらちゃんに似てると思うんだけどな)

実際にほむらちゃんに会ってみての感想だ。
この二人。本当にそっくり。
話し方や愛想とかは全然違うんだけど、ふとした時のしぐさや雰囲気なんかはうりふたつだ。

まどか(顔だってほむらちゃんにそっくりだしね)

この二人が一緒に歩いていると知らない人は姉妹と思うだろう。
現に教室から保健室に向かう間、他のクラスの子達からの注目をこの子たちは浴び続けている。

まどか(そりゃこんなにかわいい子たちが歩いてたら見ちゃうよ)

若干、少し……、大いに、自分との外見を比べたりをしてアンニュイな気持ちになりかける。
自分だって女の子だ。未来ではどうか知らないが、今は女の子だ。
そういう気持ちにだってなる。

でも、ふと、自分はこんなに世間の注目を集めるような子達の家族になれるのかと考える。
もっと言えば、この子達は私の……。

まどか(……私はバカなの? 今はそんな変なこと考えてる場合じゃ)

だいぶ脱線した気もするが、今やるべきことはほむらちゃんと話すこと。
そして、ほどかちゃんに対する敵対心を解くこと。

まどか(親子の仲が悪いなんて絶対おかしいもん)
54 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:14:10.23 ID:X9vlZUyI0
それにほどかちゃんの目的を考えればほむらちゃんとは仲良くしてほしいと思う。
せっかく奇跡のおかげで母と娘が会えたんだ。

まどか(ここは、パパがなんとかしないとね)

私の前を歩くほむらちゃん。
まぁ、さすがに未来からきただけあって、保健室の場所は知ってるみたいだね。

ほどかちゃんに私に任せてほしいというアイコンタクトを送り、私は話をするためにほむらちゃんの傍に近寄る。

まどか「えっと、ほむらちゃん」

ほむら「! ……。なにかしら」

ん? 今の表情はなんだろう? まぁいいや。

まどか「その、変わった名前だよね。あっ、変な意味じゃなくて、なんかさ、燃え上がれー、って感じでかっこいいなって」

とりあえず名前から褒めてみる。かっこいいと思ったのは本当のことだし。




ほむら「そ、そうかしら///」

あれ? 顔が赤い? もしかして……。

まどか「照れてる?」

ほむら「て、照れてなんかないわ」

まどか「えー、照れてるよね? 顔とかちょっと赤くなって……」

ほむら「照れてないわ!」

いやいや、照れてるよね。表情にあんまり変化はないけど。
うーん……。もしかしてほむらちゃんって……。

まどか「……。ほむらちゃんってさ、可愛いよね」

本心からそう思う。



ほどほむ「!」

ほむら「な、急になにを言いだすの、鹿目さん///」

おぉ、慌ててる。
なんだろ、なんか面白い。

まどか「最初はクールでかっこいい子だなって思ったけど、今の表情とか見てたらなんだかとってもかわいいなーって」

ほむら「だ、だから私は……」

必死でごまかそうとするほむらちゃんかわいいなー。

まどか「ふふ。隠さなくてもいいのに」

ほむら「隠してなんか///」

そういって俯くほむらちゃん。
でも、俯いていてもわかる程に顔はもはや真っ赤だ。
55 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:15:22.65 ID:X9vlZUyI0
まどか「私は好きだよ? ほむらちゃんの照れた顔」

可愛いし、もっと見てたいなって思うくらいに。

ほむら「え!?」

驚いて顔をこっちに向けるほむらちゃん。そんなほむらちゃんに近づいて。

まどか「だからさ、もっとよく見せてよその可愛いお顔を」

ほむら「ひう/// あ、あの、その、鹿目さん……」

まどか「違うよ」

ほむら「え?」

まどか「まどかって呼んで?」


笑顔でほむらちゃんにそう告げる。
これから長い付き合いになるんだし、どうせなら名前で呼んでほしい。

ほむら「!!!!!!」

ボンッっていう音がしたかと思うとほむらちゃんの顔がこれまで以上に真っ赤になる。

ほどか「うわぁ……」

ほむら「あ、あああああああの! わ、私一人で保健室行きますね! そ、それじゃ!!」

そう言い残すとダッシュで保健室に向かうほむらちゃん。
そして、それを呆然と見送る私。

まどか「……」

あれ? 私やらかした?



ほどか「なに、娘の前で母親口説いてるんですか」

ほどかちゃんが心底呆れたようなような顔でこっちを見てくる。
やめてその顔! なんだか心に響くから!

ほどか「どうするんですか、お母さん走っていっちゃいましたよ」

まどか「あはは、どうしよっか」

これじゃあ話ができない。
どうしてこんなことに……。

ほどか「はぁ、本当にお父さんはいつの時代もお父さんなんですね」

まどか「えー……。なにそれ」

ほどか「いいんです。今はお母さんともう一度話すことを考えないと……」

まどか「そ、そうだね。保健室まで追いかける?」



ほどか「今お父さんが行ってもまた逃げられるだけですよ」

まどか「え? ……もしかして私、嫌われちゃった?」

少し馴れ馴れしすぎただろうか。でも、あのほむらちゃんを見ているとつい……。

ほどか「嫌われてることはないと思いますよ。むしろ逆……」

まどか「逆?」

どういう意味だろう?

ほどか「……はぁ。お母さん可哀想……。お父さんがこんなんじゃ苦労するよね……」

そういって私の方を向いて溜め息をつくほどかちゃん。
はは、傷つくね。

まどか「て、てぃひひ」

うん。笑ってごまかそう。このことについては余計なことを言ったら怒られそうだ。
56 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:15:49.96 ID:X9vlZUyI0
まどか「で、でもどうしよう? ほむらちゃんといつ話せば……」

こうなると話しにくい。このタイミングを逃したのは痛かったかな。

ほどか「うーん……。それについては大丈夫だと思います」

まどか「え? なんで?」

ほどか「保健室の場所を知っているのにわざわざお父さんに案内を頼んだことからも、
    なにか話があったんでしょうし、お母さんのほうからもう一度接触してくると思いますよ」

まどか「あ、そっか」

ほどか「今度は暴走しないでくださいね?」

別に暴走したつもりはないんだけどなー。

まどか「う、うん。わかった」

まぁ、一応頷いておこう。
さて、それはそれとして。



まどか「ほどかちゃん」

ほどか「はい? なんですか」

まどか「あんまり気にすることないからね?」

ほどか「なにをですか?」

まどか「ほむらちゃんがほどかちゃんに対してなにかあるのは間違いないと思う。
    それがなんなのかはわからないけど、ほむらちゃんの態度が冷たくっても気にしなくていいんだよ」

ほどか「……」

まどか「まぁでも、気にするなっていうのは無理があるよね。
    でも大丈夫。私がなんとかするから。ほむらちゃんとほどかちゃんが仲良くできるように、私がなんとかするから
    だから安心して? それに悲しいのを隠さなくてもいいんだよ?」

ほどか「別に、悲しくなんか……」

確かに表情には出ていない。でもわかる。
この子は。そういったことは顔に出さない。
自分の辛さや悲しみは絶対に人には見せない。悟られないようにする。




まどか(本当にそっくりだね)

ほむらちゃんもそうなんだろう。
あの照れて逃げて行ったほむらちゃんが本当のほむらちゃんなんじゃないかと思う。

まどか「とにかく私に任せて! それでほむらちゃんとほどかちゃんが仲良くなれてワルプルギスとか全部の問題が片付いたら一緒にお出かけしようよ」

この提案はなかなかいいと思う。
ほどかちゃんは母親、つまりほむらちゃんとの思い出は覚えている範囲ではないはずだ。
思い出づくりの意味を込めてもほどかちゃんの寂しさを埋める意味でもこの提案は我ながらいいと思う。

ほどか「お出かけ……」

まどか「うん。家族でお出かけ。そうなるように私頑張るから。だから、ね?」

ほどかちゃんの傍に寄り、そっと彼女を抱きしめる。

まどか「だから悲しいときや辛いときは私に頼ってくれていいんだよ」

頼ってほしい。なんにもできない私だけれど、一緒にいることくらいはできるから、その悲しさを、辛さを、少しでも
私が引き受けることはできるから。
57 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:17:13.46 ID:X9vlZUyI0
ほどか「……」

まどか「……」

穏やかな時が流れる。
とても心地よくてなんだか安心する。
なんだろう。今初めて家族としての時間を過ごせているって気がするな。
ふふ。ほどかちゃんも私の腕の中で幸せを感じてくれているんだろうな。

まどか(てぃひひ)

ほどか「お父さん」

腕の中にいるほどかちゃんから声があがる。
なんだろう? お礼とか? もしくは、パパ大好き! とか?

まどか(ウェッヒッヒ)

ほどか「いい加減離してください。セクハラです」

まどか「え」

ほどか「あと、加齢臭が……」

まどか「しないよ!? そんなの!!」

花の乙女になんてことを! 思わぬ言葉にほどかちゃんの拘束を止め自分の臭いを嗅ぐ。

まどか「臭いってなに!? なんかくさそうだよ!」

って臭くないよ! いい匂いだよ! ちゃんとお風呂にも毎日入ってるもん!

ほどか「冗談ですよ。お父さんはまだ臭くないです」

まどか「まだ!? まだってなに!?」

将来的にはあるの!? やだよ!!

ほどか「ふふふ。冗談ですよ冗談」

くすくす笑いながら冗談だというほどかちゃん。
なにが冗談だというのか、将来も臭くないということか。もしくは私が臭くないということが冗談なのか……。
58 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:17:41.08 ID:X9vlZUyI0
まどか「うぅ……」

ほどか「もぅ……。お父さんはいい匂いですよ? だからそんなに落ち込まないでください」

いつの間にか慰める側が変わっているような……。
どうしてこうなった。

ほどか「……まさか、お父さんに慰められるとは思っていませんでした」

ほどかちゃんは優しく微笑んでいる。

ほどか「まぁでもおかげでだいぶ楽になりました。ありがとうございます」

ぺこりと頭を下げるほどかちゃん。

まどか「あ、いえこちらこそ」

思わず私も下げてしまう。

ほどか「……楽しみにしていますからね?」

まどか「え?」

ほどか「お・で・か・け、ですよ」

まどか「あ、う、うん! 任せといて!」

頼られているんだろうなと思った私は期待に応えるという意味を込めてVサインを送る。
ほどかちゃんはそれに満足したのか笑みを浮かべながら

ほどか「本当に楽しみ……。本当に」

と、呟くのでした。

まどか「絶対行こうね! どこがいいかなぁ。ピクニックとか? 遊園地もいいよねー」

ほどかちゃんが楽しみにしてくれていると、そう思ったらなんだか私もとっても楽しみになってきちゃうな。

ほどか「どこでもいいですよ。みんなが一緒なら」

まどか「もー。ほどかちゃんがいきたいとこがいいの!」

じゃないと意味ないもん。ほどかちゃんの為に行くんだから!

ほどか「それよりも、今は目前のことに集中しましょう。失敗したらお出かけもなにもないんですよ?」

うっ……。冷静だなほどかちゃん……。
まぁ、その通りなんだけどね。

まどか「うん。そうだよね」

ほどか「頑張りましょう。私達の未来のために」

まどか「うん! がんばろー!」

ニコニコしながら話すほどかちゃんを見て私は決意を新たにするのでした。

――――――――――――
――――――――――
――――――――

59 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:18:06.71 ID:X9vlZUyI0
ぐっどいぶにんぐ! 鹿目まどかです!
あれからほむらちゃんとコンタクトをとることに成功した私達は親睦を深める意味も込めて放課後に喫茶店で話をしようと誘いました。、
ですが、ほむらちゃんにはやることがあるからと断られ、泣く泣く引き下がったのでした。

まどか(なぜか私に話しかけてくる時のほむらちゃんの顔が赤かったことが気になったけど……)

もしかして体調でも悪いのでしょうか? 少し心配です。

で、今はお昼休みなわけですが、この間に巴マミさんと協力するために三年生の教室に来ているわけです。

モブ4「マミ様ー! なにやら話があるという子等が来ておりますがー!」

そう呼ばれこっちにくる人。
少しタレ目で綺麗な髪を縦にロールした、美人な女の人。
落ち着いた雰囲気を放ち、大人の女性を感じさせる物腰は一つしか違わないはずの年齢を忘れさせ、私は思わずその人に目を奪われてしまうのでした。
しかも、いやがおうにも目につく自己主張した胸。

なぜ一つしか違わないのにこうも差がでるんでしょうか?
世の中って理不尽です。




マミ「私になにか御用かしら?」

小首を傾げて用を問う巨乳のマミさん。
こういう姿も可愛らしく世にいる男性はこの姿に騙されるのでしょう。
男の人は本当にバカです。

ほどか「えーと……。ここでは言い難いのですけど……。このことで、といったらいいでしょうか」

ほどかちゃんが自分がつけている指輪をマミさんに見せる。
するとそれを見たマミさんの顔は真剣なものに変わり、ほどかちゃんの顔をじっと見つめる。

マミ「……」

少し考えるそぶりを見せるマミさん。
そしてあまり時間をかけずに

マミ「わかったわ。なら屋上にいきましょうか」

と、切り出した。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/21(土) 22:18:33.28 ID:RMVsMsaP0
sageは外してもいんじゃね
61 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:18:35.11 ID:X9vlZUyI0
―― 屋上 ――

マミ「さて、聞かせてもらえるかしら。魔法少女である私になんの用があるのかを」

屋上についた私達。
自己紹介等は途中で済ませ、さっそく話を始めるわけだけど、なにやら剣呑な様子。
っといってもマミさんが一方的に警戒をしているみたいなのだけれど……。

まどか(なんでこんなに警戒されてるんだろう?)

私のそんな疑問に答えるかのようにほどかちゃんがマミさんに答える。

ほどか「最初にいっておくことがあります。
    私達は、と言っても魔法少女は私だけなのですが、あなたと争う気はありません」

マミ「……簡単に信じられるとでも?」

ほどか「魔法少女の間には縄張りがあるのは知っています。そしてそれを守るために争うことも」

まどか「!?」

そ、そんなこと知らないよ!?
魔法少女同士で争うなんて……。
魔法少女の敵は魔女じゃないの!?



ほどか「信じてくださいといっても無理があるかもしれません。ですが私からは信じてくださいとしかいえません。
    ですが、信じてもらえるように私なりに行動はするつもりです」

マミ「……。具体的には?」

ほどか「そうですね……。まずこれを」

そういってほどかちゃんはなにかを取り出す。

マミ「これは……」

ほどか「グリーフシードです。これを差し上げます」

手に持った物を、マミさんに渡すほどかちゃん。
グリーフシードってあれだよね? 魔女の卵でソウルジェムの穢れを取るっていう。

マミ「いいの? あなたも魔法少女ならグリーフシードの重要性を……」

ほどか「わかっています。これはあくまであなたと良い関係を築きたいという具体的な証です」

マミ「……」

自分の手にあるグリーフシードを眺めじっと考え込むマミさん。






ほどか「ですが、こんなものであなたの信頼を得ようなどとは思っていません」

マミ「……?」

ほどか「私がなぜあなたとの友好を築きたいかあなたを信頼しているか、それをお話しします」

まどか(あれ? なんだか私空気だよ?)

自身の存在意義について悩みだす私。

ほどか「私があなたを信頼している理由は、あなたの魔法少女としての行動の信念にあります」

マミ「……」

ほどか「多くの魔法少女が自身のためにしか魔女を狩らず、人を傷つける可能性がある使い魔を見逃し魔女に育つまで待つ。
    確かに本来ならばそれが普通でしょう。グリーフシードは魔女しか落とさないですし……。
    だから、自分の為に力を使い、自分の為に魔女を狩る。そして自分の縄張りを侵略しよう者がいるのならそれを葬る。
    それが正しく賢い生き方なのかもしれません」

まどか(えぇ!? 魔法少女ってそんなにシビアな世界なの!?)
    
私が想像してたのと違う……。
なんかもっと、日曜の朝にやってる感じとか、可愛いマスコットキャラを従えてカードを封印する為に日々奮闘する感じな、
そんなファンシーな世界を思い描いていたよ。
62 : ◆Y9E2ABw2YKVM [sage saga]:2012/07/21(土) 22:19:02.93 ID:X9vlZUyI0
ほどか「ですが、そんな中あなたは、その力を他人の為に使い大勢の人を救ってきた。
    グリーフシードを落とさない使い魔ですらも人に危害を加えることを恐れ狩っていますよね。
    一般的な魔法少女ならばあなたのやり方は馬鹿みたいに甘く、理解できないでしょう」

マミ「……」

ほどか「でも、そんな甘いあなただからこそ、馬鹿なあなただからこそ、私はあなたを信じるんです。
    そしてあなたの力になりたいと思うんです。
    他の魔法少女に理解されなくても自分の信念、誇りの為に一人きりで戦うあなたに協力したいんです。
    そして、私を助けてほしい……」

マミ「……」

ほどか「これが私があなたとの協力関係を望む理由です」

まどか「ほどかちゃん……」

ほどか「お願いします。私と協力してもらえませんか」

そう言ってほどかちゃんは頭を下げる。
私も同じように頭を下げる。

まどか「お、お願いします! ほどかちゃんの力になってあげてください!」




マミ「……」

どれくらい時間が経っただろう、いや、実際にはそこまでの時間が経過していることはないんだけど
待ってる時間というものは凄く長く感じるもので……。
私は頭を下げながらマミさんがどう答えてくれるかを戦々恐々として待っていた。

マミ「……これは返すわね」

マミさんから帰ってきた言葉は、拒絶を示すもの。

ほどか「……」

ほどかちゃんの手にグリーフシードが戻る。

まどか「そ、そんな! どうして!」

断られてしまった。その事実に私はパニックになり慌ててマミさんに理由を問い詰める。

まどか「だって今の話を聞く限りではマミさんは正義の味方で人の為に戦ってるんですよね!?
    なら同じような理由で戦うほどかちゃんとは仲良くできるはずじゃ!」

ほどか「まどかちゃん」

慌てる私をほどかちゃんは手で静止する。




まどか「ほどかちゃん……」

そんな私達を見つめていたマミさんがおもむろに口を開く。

マミ「勘違いしないで。協力しないわけではないわ」

まどか「え?」

マミさんの言葉が理解できずぽかん、っと口を開いてしまう。

マミ「なぜ、あなたがここまで私のことについて知っているのかはわからないわ。
   どう考えてもあなたとは初対面なはずだし」

でも、っと付け加え

マミ「あなたが私の助けを必要としているのはわかるわ。
   だから、協力してあげる」

そう言ってマミさんは少し考え、

マミ「うーん……。なんか違うわね……。
   そう、そうね、お互いに助け合いましょう」

そう言い直しほどかちゃんに手を差し出すのでした。
63 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:19:44.79 ID:X9vlZUyI0
ほどか「あ、ありがとうございます!」

その手を握り、感謝の言葉を述べるほどかちゃんの顔はとても嬉しそうで、
そしてそんな彼女の顔を見た私もとても嬉しくて、私はおもわずほどかちゃんに飛びついてしまうのでした。

まどか「よかったね! ほどかちゃん! マミさん本当にありがとうございます!」

ほどか「きゃ!? ちょっとパ、まどかちゃん! 苦しいよ!」

私の抱擁を嫌がるほどかちゃん。だけど私はそんなことにはおかまいなしで抱き着く力を強める。
だってすっごく嬉しいんだもん!

まどか「ふふふー。本当は嬉しいくせにー。ほどかちゃんは可愛いなー」

ほどか「ちょ、ちょっとまどかちゃん気持ち悪い! 本当に離して!!」

まどか「やーだよ。可愛いほどかちゃんが悪いんだもん!」

ほどか「なにそれ!? もう! 怒るよ!?」

マミ「あらあら。あなた達って仲がいいのね」

私達の仲睦まじい様子を見て微笑を浮かべるマミさん。
この人の笑顔って凄いなー……。包容力がハンパない。





ほどか「いえ、そんなに仲はよくないです」

まどか「ひどいよほどかちゃん!?」

私はこんなにあなたの事を想っているのに!
あんまりの仕打ちに打ちひしがれる。

まどか「ひどいよ……。こんなのってあんまりだよ……」

ほどか「あーもう。拗ねないでください」

まどか「だって、ほどかちゃんは私のことが嫌いなんでしょ?」

うるうると瞳を潤ませほどかちゃんを見る。
そんな私にほどかちゃんは溜め息を吐きながら、

ほどか「もぅ……。嫌いなら一緒にいたりはしませんよ」

っと嬉しいことをいってくれるじゃありませんか!



まどか「ほどかちゃーん!! 大好きだよー!!」

ほどか「だから抱き着かないでくださいよー!」

マミ「あらあら」

うふふと笑うマミさん。
そうです。マミさんが仲間になってくれたのです。
なんだかとっても大人で優しくて、頼りになりそうなマミさんが仲間に……。
これから先、まだまだ不安なことはたくさんあるけれど、ほどかちゃんとマミさんが協力すればどんな困難にも負けない。
私は強くそう思ってしまうのでした。

マミ(ふふ。本当に仲がいいわね。
   ……。鹿目ほどかさん、この子がなにを考えているのかはよくわからないところがあるけど
   鹿目まどかさん。この子が懐いてる姿を見る限りでは悪い子じゃないっていうのはわかるわ。
   その事もこの子をを信じる一つの理由)

マミ(……気になるのは……
   この子が助けてほしいと言ってきた時のあの目……。
   あれは……)

マミ(まぁ、私の気のせいね。
   ふふ。でも、あなたの力になりたい。っか……
   同性ながら少しドキッっとしたわ。この子凄く美人だし、あんなこといわれたら、ね?)
64 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:20:10.25 ID:X9vlZUyI0
―― 屋上付近 時計塔 ――


ほむら「鹿目ほどか、あなたはいったい何者なの?」

今までのループには存在しなかったはずの人間。
調べる必要があると考え、尾行した先には魔法少女である巴マミと現時点ではまだ魔法少女ではない鹿目まどかがいた。
ここだけを見ても異様だと感じる。今までのループにおいても巴マミとまどかがこの時点で接触することはなかったはずだ。
そもそも、巴マミとまどかが接触するにはインキュベーターの勧誘。もしくは魔女空間に入り込んでしまったまどかとさやかの救出。
その二つの内どれか、もしくは両方の条件が必要なはず――。

ほむら「まさか、こんなにも早くまどかが魔法少女と接触することになるなんて……」

できればまどかと魔法少女との接触は避けたかった。
今回のループではまどかが出会うであろう魔女を先回りし撃退。
そしてインキュベーターとの接触を断つように立ち回ろう、と考えた矢先の出来事。

ほむら「いえ、接触するだけならば問題ないわ」

その方法はどの道無理があることは理解していた。
ただ今の自分には少しでも可能性があるのならばそれに賭け、失敗ならばそれを次に生かすしかないのだ。

ほむら「次、だなんて……。私はどれだけの罪を犯せばいいのかしら」

次に生かす。それはつまり今を殺すことである。
それは比喩的な意味でなく、文字通り、現実的な事象を持ち現れる。





ほむら「私はあと、何人のまどかを――」

自身の感情に気づき、それを無理やり払う。



――彼女自身は気づいていない。彼女が殺しているものは彼女の大切な人だけではなく彼女自身でもあることに。
そして、その結果がなにをもたらすのかについても。
もし、彼女がそれに気づくことができれば、この無限に続くループをある意味においては終わらせることができるのかもしれない――。




ほむら「……。次のことより今ね。鹿目ほどか……」

今まで存在しえなかった。イレギュラー。
しかも一部始終を見聞きする限りでは彼女も魔法少女だとわかった。
65 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:20:37.41 ID:X9vlZUyI0
ほむら「美国織莉子のようにまどかを殺すことが目的というわけではなさそうだけど……」

仲のよさそうな二人の様子を見る限り、あの二人は信頼を築いていることが窺える。
ならば、あのイレギュラーがまどかに対して危険な事をするとは考えにくいか……?
だが、魔法少女が傍にいるということは常に爆弾を抱えて行動しているようなもの。

ほむら「そのくらいのことはあの子ならばわかりそうなものだけど……」

現時点ではあのイレギュラーの考えは読めない。
しかし現段階ではあのイレギュラーがまどかに危害を加えることはないだろう。

だが、もし――

ほむら「あなたがまどかにとって有害な存在だとわかれば、その時は――」


――私があなたを殺すわ。


そう呟き、暁美ほむらはその場から姿を消した。

去る際、仲睦まじくじゃれ合う二人の愛らしい少女に、片方には母が子に向けるような慈愛の眼差しを送り。
もう片方には、本来ならば自身がいるべきはずである場所を奪った憎き敵を見るように、
そして、彼女の傍に自分が存在する等、もはや叶うはずのない未来だと考え、最近よく訪れるようになった感情をまた振り払うのであった。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
66 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:22:25.66 ID:X9vlZUyI0
ほむらとまどか

      ―― 保健室 ――
 
ほむら(な、なんなのよあのまどかは!)

まどか『だからさ、もっとよく見せてよその可愛いお顔を』

ほむら(///)

ほむら「はっ」

ほむら(恥ずかしがってる場合じゃないわ……。私にはやるべきことが……!)

まどか『まどかって呼んで?』

ほむら「」ボン




保険医「暁美さん、だいじょう、って顔がすごい赤いわよ!? どうしたの!?」

ほむら「あ、だ、大丈夫です! なんでもありません!」

保険医「いや、大丈夫って……。とでも大丈夫そうには見えないわよ……。早退したほうが……」

ほむら「本当に大丈夫です! お世話になりました!」

保険医「あ。ちょっと暁美さん! 暁美さん!! 行っちゃった……」

保険医「……。あ、なるほど。あれは……恋ね」

ほむら(マドカー! マドカー!)

67 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:22:52.71 ID:X9vlZUyI0
グッドアフターヌーン! 鹿目まどかです!
さてさて、無事! マミさんを仲間にした私達は、放課後にさやかちゃんに誘われてCDショップに来ているのでした。

まどか「さやかちゃんも頑張るねー」

さやかちゃんの目的は幼馴染である上条君のためにクラシックのCDをプレゼントすること。
その上条君は事故で入院しているのでさやかちゃんはわざわざ病院まで行くのです。

まどか「さやかちゃんもなんだかんだで可愛いよね」

好きな男の子のために頑張ってるんだもん。

ほどか「そうですね」

ほどか(さやかさんは恭介さんのことが好きだったんだ。あれ? じゃあなんで杏子さんと……?)

ほどかちゃんが頭に疑問符を浮かべて、なにかを考え込んでいる。
なんだろう? なにか気になることでもあるのかな?






まどか「あ、そうだ。ほどかちゃんは未来から来たんだよね?」

ほどか「はい。そうですよ」

まどか「じゃあじゃあ、未来でさやかちゃんと上条君がどうなったのかとか教えてよ」

さやかちゃんの親友としてはこのことについては聞いておきたい。
いや、決して下世話な下心からとかではなく純粋に親友の恋路が気になるのであって、
それを知って今後のさやかちゃんに対して心理的なアドバンテージを取りたいとか頑張るさやかちゃんを見てニヤニヤしたいとかではなく……。

まぁ気になるよね?

まどか「ねぇねぇ、どうなの?」

ほどか「……」

じーっと私を見つめるほどかちゃん。
やだ、そんなに可愛い瞳で見ないで、照れちゃう///





ほどか「お父さんって……。サイテーですね」

まどか「はぅあ!!」

サイテー。
なんと心苦しい響きでしょうか。
友達どうしで言われるのならまだしも、実の娘から言われるとこんなにも辛いとは……。

まどか(あれ、でもちょっと嬉しかったかも)

ほどかちゃんがじとーっとした目で詰ってきた瞬間、凄い苦しみとほんの一握りの快感が……。

まどか(いやいや、なに考えてるの私)

ぶんぶんと首を振りなにやらイケナイ考えを追いやる私。
そんな私に対してほどかちゃんはおかしな人を見るような目をし、話を続けます。
68 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:23:20.28 ID:X9vlZUyI0
ほどか「確かに私は未来のことを知っていますよ。ですがそれはあくまで一つの可能性としての未来です
    本来、未来というものは各個人に平等に与えられたものなんです。自分自身の考えと行動の結果がその人の未来となって得られるんです」

そこで一呼吸置いて、だからといい。

ほどか「ですからさやかさんの今の未来はさやかさんが自分自身で掴み取るまではまだ訪れていません。
    可能性の一つとして私の知っている未来を教えることはできますがそれはあくまで数ある未来の中の一つです。
    そんなことを知ることに意味がありますか?」

まどか「うぅ……」

なんだかすごく怒られてる……。でもでも、やっぱり知りたいよ!

まどか「じゃあその可能性の未来でいいから教えてほしいなー。なんて」

その言葉にほどかちゃんは溜め息を吐く。
あぅ、なんか私呆れられてばかりな気が……。

ほどか「私がお父さんをサイテーといったのはですね。
    お父さんが下世話な下心でさやかさんの未来を知ろうとしているからですよ?」

まどか「ぎくぅ!!」





ほどか「そんな下種な理由で人の恋路をからかおうなんて馬に蹴られますよ?」

なにそれ。でもなんとなくこれ以上踏み込んだらほどかちゃんに愛想を尽かされそうな気がするからここは引き下がろう。

まどか「ごめんなさい」

ほどか「もぅ……。ダメですよ?」

メッと私に怒るほどかちゃん。
正直、これはこれで、いいよね。

まどか(てぃひひ)

ほどか(……第一。結果を認めずに過去に来た私なんかの未来に得るものなんて……)

ん? なんかほどかちゃん辛そう? 見た目に変化はないけど最近この子の感情とかがなんとなくわかるようになってきた私。

まどか「……ほーどかちゃん」

そういって抱き着く。
69 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:23:46.97 ID:X9vlZUyI0
ほどか「わ! な、なんですか。今日のお父さんはセクハラが多いですよ」

口では嫌がってるけど身体は正直なもので、追い払おうとはしないほどかちゃん。

まどか(ホントに嫌なら強引に払うよね。そもそも魔法少女のほどかちゃんのほうが力は強いんだし)

今日の体育の授業でもそれはわかった。
だって色んな種目でことごとく県内記録を塗り替えるほどかちゃんを見たら力では敵わないって思うよ。

まどか(まぁ頭でも敵わないんだけど)

ちなみに記録はほむらちゃんの次にほどかちゃんが並ぶって感じでどの種目もほむらちゃんのほうが凄かった。

まどか(でもあれはほどかちゃんが遠慮してる風にも見えたなー)

ほむらちゃんに対してはどこか引いた態度があるほどかちゃん。

まどか(やっぱり時間が必要だよね)

二人が仲良くできるように頑張るけど、結局は二人次第だもんね。
押し付けになりすぎると余計拗れたりするし。でも助けがないと二人の仲が進展しないのも事実だし。

まどか(その辺は私がうまく調整しないとね)




そんな風にこれからについて考えていると私の腕の中でほどかちゃんが抗議をあげる。

ほどか「もー……。いい加減に離してくださいよ」

さすがに抱き着きすぎたかな。
ほどかちゃん自慢のツインテールもなんだかぐったりしてるような……。

まどか「ごめんごめん。ね。あっちで一緒になにか聴こうよ」

ほどかちゃんの手を引っ張り視聴コーナーに連れて行く。

ほどか「……お父さん元気すぎです……」

はぁっと溜め息を吐きながらもほどかちゃんは私に従う。
なんだかんだで素直だね。この子は。

まどか(ほむらちゃんとも、いつかこんな風にできたらいいのにな)

なんだか幸せな、とってもかけがえのないこの日常をいつかほむらちゃんとも……。
ううん。必ず一緒に感じようと。私は自分の大切な存在の温もりを手に感じつつ願うのでした。
70 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:24:13.80 ID:X9vlZUyI0
まどか「♪ 〜♪」

『――――まどか』

まどか「……?」

『――――まどか! 助けて!』

まどか(誰? 誰なの?)

急にどこかから声が聞こえだす。
ほどかちゃんが呼んだのかと隣を見るも歌に集中しているようで私に呼びかけたような気配はない。

『――――まどか! 僕を助けて!』

まどか「!」

ほどか「……? どうかしました?」

私の異様な気配に気づいたのかほどかちゃんが声をかけてくれる。





まどか「声が、聞こえるの……」

ほどか「……」

私に助けを求める声が聞こえた、そう話すとほどかちゃんは少し思案し、

ほどか「たぶん、キュゥべぇですね」

と、私の疑問に答える。

まどか「キュゥべぇって魔法少女に契約を持ちかけるっていう……」

ほどか「はい。キュゥべぇが助けを求めているんですか?」

まどか「うん……。そうみたい」

ほどか「それはどこからか、わかりますか?」

真剣な表情のほどかちゃん。
助けを求められたことといいなにやら悪いことが起こっている。そんな気がした。





まどか「え、っと……。上の階からだと思う」

ほどか「上……。確か今は工事中でしたね」

そういうと歩き出すほどかちゃん。

まどか「ど、どこにいくの!?」

ほどか「キュゥべぇが危機に陥っているというのなら助けないと」

まどか「え、で、でも」

危険じゃないか。そう言おうとするのがわかったのかほどかちゃんは笑顔で

ほどか「大丈夫ですよ。だって私は魔法少女なんですよ?」

そう言うのでした。

71 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:24:40.57 ID:X9vlZUyI0
まどか「そ、そうだけど」

納得のいかない私は、それでもほどかちゃんの足を止めようと考える。

ほどか「もー。大丈夫ですよ。こう見えて私、とっても強いんですよ?」

いつもの調子でそういうほどかちゃん。だけど心配なのは心配で、一人で危険な場所に行くなんていうのは
なんだか私には許せなくて。
だから……。

まどか「私もいくよ」

そう伝える。

ほどか「ダメですよ。魔女の気配はしませんけど、危険な状況であることには変わらないですし」

私の申し出を拒否するほどかちゃん。でも、そんなことは百も承知で。

まどか「危険なのはほどかちゃんも変わりないよね?」

ほどか「私は魔法少女です」




まどか「でも、だよ。魔法少女でも戦いで命を落とすことはある。マミさんが言ってたよね」

屋上で私達のこと。ほどかちゃんが何者でなにが目的なのか。そういったことを話した時にマミさんが言っていた。

魔法少女の戦いは過酷で一瞬でも気を抜けば命を落とすこともある。っと。

これは魔法少女になったばかりのほどかちゃんに向けての忠告でもあり、親である私に対しての覚悟を問う言葉でした。
事実、私はそんなことを一切考えてはいなかったのです。なので当然覚悟なんて言うものはありません。

ほどかちゃんが死ぬ。

そのことは私には受け入れがたく、絶対に容認できないことでした。
しかし、普通に考えれば戦いの中で命を落とすなんていうことはありえる話で、覚悟しておかなければいけないこと。
ほどかちゃんがあまりにも戦いのことに関して普通だったので、そんな当たり前のことを私は想像もしていなかったのです。

まどか(ホント。嫌になるよね、そういう自分の甘いところは)

今、ほどかちゃんが一人で危険な場所に出向こうとしている。
私なんかがついていっても邪魔になるだけかもしれない。
いや、足を引っ張るだけだろう。





まどか(でも、本当にこの子が危ないときは――)

弾除けの盾になってでも守り抜く。

そんなことを言ったらきっと彼女はすごく怒るだろう。

まどか(だから私のこの覚悟は言わないよ)

言ったら連れて行ってもらえないだろうしね。
だから私は、ただじっと彼女の瞳を見つめる。
絶対にあなたを一人ではいかせないと決意を持って。

ほどか「……はぁ、しょうがないですね……」

折れたのはやはりほどかちゃん。
この子は押しに弱いのだ。

まどか(てぃっひっひ。勝った)
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 22:25:00.62 ID:tmM4PmOIO
ここは落ちないので一気に投下せんでもいいかもね
73 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:25:01.68 ID:X9vlZUyI0
ほどか「一つ、絶対に私から離れない。二つ、勝手な行動はとらない。三つ、危なくなったら私を置いてでも逃げる」

三本指を立てて条件を一つずつ述べていくほどかちゃん。そして

ほどか「守れますか?」

っと締めくくる。

まどか「守るよ。絶対」

二と三以外はね。

心で一部を拒否しながら頷く。
嘘にはならないよ。だって、全部守るとは言ってないもん。
ほどかちゃんとは離れないっていうのは守るって私は誓ったんだもん。
しっかり確認をとらないほどかちゃんが悪いんだよ?

ほどか「はぁ……。おとうさんはこうなったら頑固なんだもん……」

なにやらブツブツと呟くほどかちゃん。
その様子から渋々ながらも納得してくれたようだ。

いぇーいwwwwまどかちゃん大勝利wwww

まどか(てぃっひっひ。さすがは私)



ほどか「じゃあ行きますよ。絶対に離れないで下さいね?」

まどか「らじゃー!」

ほどか「もぅ! 絶対ですからね!?」

まどか「わかってるわかってる」

心配するほどかちゃんに手をひらひらさせ応える。
さてさて、気を引き締めないとね。

まどか(ほどかちゃんの危険は、私が全部取り払うんだから)

そう、なにが相手でも――。




さやか「ん? まどかとほどか、どこにいくんだろ……?」
74 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:25:27.91 ID:X9vlZUyI0
―― 工事中のフロア ――


QB「はっはっ――」

何者かはわからない。
だけど今、僕は攻撃を受けている。
この力は魔法少女のものだ。

なら僕は今、魔法少女から攻撃を受けていることになる。

QB「はっはっは――」

何度目かになる攻撃を避け、ただひたすら逃げる。
本当はもっと簡単に逃げることもできる。が、そうもいかない。

QB「はっはっ――」

なぜならこの危機は、っといってもこの個体が破壊されたところで別の個体があるのだから危機とも呼べないけれど、
なんにせよこの危機はチャンスだ。

QB『まどか! まどか!』

鹿目まどか。今、僕が呼びかける少女。
この少女は途方もない程の力、魔法少女としての才能を持っている。



QB『助けて! まどか!』

テレパシーを用いまどかに救難信号を送り続ける。

普通ならば気のせいで済ませられるか怖がって逃げるだろう。
しかし、鹿目まどかはそのどちらでもない。
彼女は自身に求められる助けの声を拒んだりはしない。

QB「っく!」

徐々に苛烈を極める攻撃をギリギリのところでかわしながら、僕は鹿目まどかに呼びかけ続ける。
僕の、僕達の目的を大幅に進行させるために。

QB「っ!!」

ついに避けきれず攻撃に当たってしまう。
だが、これでいい。

鹿目まどかはもう僕の傍にいる。この状態の僕を発見すれば彼女はきっと僕にたいして同情を抱くだろう。
僕達にはわからないモノだが、僕達に有利に働くのならばそれを利用しない手はない。

しかし、気になるのは鹿目まどかと共にあるもう一人の存在。
どうやら彼女も魔法少女のようであるが、いったい彼女は何者なんだ。

少しずつ薄れていく意識の中で僕はイレギュラーである。二人の魔法少女の事について考え続けた。
75 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:25:54.36 ID:X9vlZUyI0
まどか「ほどかちゃん! あれ!」

キュゥべぇのことを助けに工事中のフロアにきた私達は、キュゥべぇであろうと思われる生物を発見する。

まどか「ひどい……」

傷だらけで横たわるキュゥべぇを抱きかかえ、どうしようかと考える。
とにかく治療をしないと!
動物病院でいいのかな!? それとも110番!?

ほどか「落ち着いてください。この状態なら私の魔法で治せます」

まどか「魔法ってそんなこともできるの!? 便利!」

魔法の便利さに舌を巻く私。
こんなに便利なら一家に一人魔法少女だね!

ほどか「まぁ私の場合は治すというより戻すですが」

そういって魔法少女の姿になるほどかちゃん。
やっぱり何度見ても可愛いなー。ミニスカートとかかなり似合ってるし。
でも、なにかを思い出すんだよね。ほどかちゃんの衣装って。

ほどかちゃんがキュゥべぇを治そうと近づいた瞬間、ジャラジャラと鎖の音がしたかと思うと
あるはずのない、いや、あってほしくない姿が私達の目の前に現れるのでした。



まどか「ほむらちゃん……」

ほどか「……」

ほむら「そいつから離れて」

彼女の第一声はそれ。
だけど言葉としての意味は理解できても状況としての意味は理解できない。

まどか「だってこの子、ケガしてる……」

そして一瞬遅れて事態を理解する。
キュゥべぇを襲っていたのはほむらちゃんだ。ということに。

まどか「だ、だめだよ! ひどいことしないで!」

キュゥべぇを庇うように抱きかかえる。

ほむら「あなたには関係ない」

少しずつ近寄るほむらちゃんに私はなぜか恐怖のようなものを感じた。
76 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:26:21.82 ID:X9vlZUyI0
まどか「だってこの子私を呼んでた! 聞こえたんだもん! 助けてって!」

ほむら「そう……」

私の前に立ち止まりじっと私を見つめるほむらちゃん。

まどか(どうして!? どうしてほむらちゃんがキュゥべぇを!?)

予想外な出来事にパニックになる。
ほどかちゃんならなにか知っているのではないかと、隣にいる彼女の顔を見る。
だけど、そのほどかちゃんも難しい顔をしながらほむらちゃんの顔を見つめているだけだった。

ほどか「あの、」

ほどかちゃんがなにかを言いかけた瞬間、その声を打ち消す大きな音と煙がほむらちゃんに襲いかかった。
突然の出来事に驚く私を聞き慣れた声が呼ぶ。

さやか「まどか! ほどか! こっち!」

声をした方を見るとさやかちゃんが消火器を使いながら私達を呼んでいた。
条件反射でさやかちゃんの方に向かう。




まどか「さやかちゃん! ほどかちゃん、早く!」

驚いているほどかちゃんの手を掴みこっちに来るように促す。

ほどか「で、でもお母さんが……」

まどか「いいから早く!」

ほむらちゃんのことが気になるらしい。
だけど、事態は切迫しているんだ。
煙に飲まれたほむらちゃんの方を向いたまま立ち止まるほどかちゃんを強引に引っ張りその場から連れて行く。

さやか「えい!」

さやかちゃんが空になった消火器をほむらちゃんのいる方に投げる。

まどか(さすがにやりすぎだよさやかちゃん!)

でも助けに来てくれた手前、それは言わずにおこうと考えるのでした。
77 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:26:57.10 ID:X9vlZUyI0
―ほむら―

ほむら「っく……」

ガスを魔法で振り払い、辺りを見回す。
まどか達はどうやらこの場から去ったようだ。

ほむら(……。すぐに追えば間に合うわね)

魔法少女である私ならばすぐに追いつくであろう。

ほむら(鹿目ほどか、本当に魔法少女だったのね)

魔法少女の姿を見て確信を強める。
だが、いまさらそんな情報はどうでもいい。
問題は。

ほむら(あの子の様子からすると、あの子はインキュベーター側のようね)




魔法少女の真実を知らない。
だから、インキュベーターの味方をするのだろう。

ほむら(できれば敵対したくはなかったのだけど)

私の目的を邪魔するのなら仕方がない。
なにより、あの子はまどかの信頼を得すぎている。
あの子がまどかに魔法少女になってほしいと願えば、まどかはすぐに契約してしまうだろう。

ほむら(なら、その前に)

そう考え、まどか達を追おうとする。
すると周りの景色が、いや空間が歪みだした。

ほむら「こんな時に……」
78 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:27:30.66 ID:X9vlZUyI0
―まどか―

さやか「はぁ! はぁ! なによあいつ! 今度はコスプレで通り魔かよ!
    ってほどかもなにその恰好!? 流行ってんの!?
    っつか、なにそれ? ぬいぐるみじゃないよね? 生き物?」

矢継ぎ早に質問してくるさやかちゃん。
どうしよう……。なんて説明したらいいのかな……。

ほどか「……説明は後でします。それより今はここから逃げましょう」

少し元気のないほどかちゃんがさやかちゃんに走りながらそう告げる。

まどか(やっぱりまずかったかな……。ほむらちゃんにあんなことしちゃって……)

しかも逃げてきちゃったし……。

後悔しながら逃げ続けるという矛盾に頭を抱える私。
そんな私の悩みを増やす事態がまたひとつ。




さやか「あれ!? 非常口は!? どこよここ!?」

まどか「変だよ、ここどんどん道が変わってる……」

ほどか「こんな時に……」

ほどかちゃんが少し焦ったように呟く。
まさか、これって……。

さやか「あーもう! どうなってんのさ!!」

さやかちゃんが苛立たしげに吐き捨てる。

まどか「な、なにかいる!」

ほどか「二人とも! 私の傍から離れないでください!!」

ほどかちゃんが大声で叫ぶ。
もしかしなくてもこれって……。

まどか(魔女ってやつ!?)

79 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:27:58.99 ID:X9vlZUyI0
使い魔「♪ 〜♪」

なにかを歌いながら、私達の周りに増えていくモノ。
そのあまりの異常な状況に私とさやかちゃんはお互いを抱きしめ合います。

まどか(だ、だめだよ! 怯えてる場合じゃ、ほどかちゃんを守らないと!)

そうだ、私がほどかちゃんを守るんだ。

でも、さやかちゃんの体が震えていることに気づいた私はその腕を解くことができずにいました。

さやか「冗談だよね? 私、悪い夢でも見てるんだよね? ねえ! まどか!」

まどか「さやかちゃん……」

ほどか「大丈夫です! あなたたちは私が守る! その為に私は……!」

ほどかちゃんが自分の盾からなにかを取り出します。
え? あれって……。

まどか「銃?」

よく映画で見るようなその黒々とした鉄製の物体は紛れもなく、敵を撃ち倒し、その生命を奪う物でした。
私はそんな、女の子が持つには不似合いな物を両手に一つずつ持つほどかちゃんに少し驚きました。





さやか「ちょ、ちょっとほどか! あんたなんでそんなもの!」

ほどか「説明は後できっちりします! とりあえず今はこの中にいて下さい」

ほどかちゃんが手をかざすと私達の周りに淡く優しく光るドーム状の粒子が広がります。

まどか「これは……」

ほどか「結界です。この中にいれば安全ですから」

さやか「あーもう! 絶対に説明してよね!」

さやかちゃんが横で叫ぶ。
でも震えは止まったようで、ほどかちゃんに任せれば安心だと思ったのでしょうか。

ほどか「はい。……ごめんなさい。怖い思いをさせてしまって……」

そう私達に謝ってほどかちゃんは周りにいるモノに向かっていきます。
80 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:28:30.45 ID:X9vlZUyI0
―ほどか―

ほどか(この子達は魔女じゃなくて使い魔……)

左手に持つ銃はマシンピストル。普段は折りたたまれているそれを素早く展開し周りにいる使い魔に打ち続ける。

ほどか(魔女は結界の奥深くにいるってところかな)

撃ちもらし反撃に出ようと迫ってくる子達には右手に持つマグナムで確実に仕留める。

本来ならば、訓練をしていない私がこれらの銃を扱うことは体の負担からいって難しいだろう。
だけど魔法少女になった私は身体能力が並の人間とは比べ物にならない程、飛躍している。
それに、とある事情により、銃器の扱い方は知識としても経験としても備わっている。
だから、ただ戦う分には支障はない。

だけど……。

ほどか(この魔女はたいしたことはない。けど、……)

ちらりとパパ達のいる結界を見る。

ほどか(どれだけ弱い魔女でも油断は禁物。パパ達がいる今、戦えるのが私だけじゃ魔女と戦うのまでは避けた方がいい……)

ならば、今私がすべきことは……。

ほどか(魔女が恐れて逃げるような派手な攻撃を仕掛ける!)

そう考え、盾に収納しているノートパソコンを取り出す。




ほどか(できれば魔力はあんまり使いたくはないのだけど)

今はそうもいっていられない。
パソコンを開き画面に写るレーダーを見る。
レーダーに写る多数の赤い点。ちょうど円状にまとまって広がるそれの中心に、カーソルを合わせそこに向けてエンターキーを押す。

押した直後に上空から聞こえる落下音。

私は急いで自身の周りに結界を張り、遠からず訪れる衝撃に備える。

ほどか(ごめんね……。あなた達に恨みはないけど……)

二秒ほど経っただろうか、使い魔達は意志を持たないのか、自身に迫りくる危険にもあまり関心を示さず、ただ、歌い続ける。

そしてそれから一秒後。




――辺りに爆音が広がった。
81 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:29:40.41 ID:X9vlZUyI0
―まどか―

まどか「あ、あれって……」

さやか「ミサイル……だよね……」

自分の目の前で起きたことが信じられない。
ほどかちゃんが盾からパソコンを取り出しそれを操作すると上空からなにかが落ちてくる音が聞こえた。
上に目を向けるとそこには戦争映画等でしか見たことのないものがあって、それが今までほどかちゃんが戦っていた物達の下へ落ちていったのだ。

さやか「は、はは。なにこれ。ミサイルって」

ほどか「正式な名称はヘルファイアミサイルです。まぁ大層な名称ですがミサイルの中ではそんなに威力はないですね。
    それでも、威嚇としては十分でしょうが」

周囲の景色がもとに戻る中、ほどかちゃんがこっちに戻りながら、そう説明する。

さやか「いや、威力はないって……。あの爆発はそうは見えないよ……」

さやかちゃんに同意。
だってあれだけたくさんいたのが一瞬で……。




まどか(ほどかちゃんって本当に強いんだね……)

呆然として彼女を見る。これは親子喧嘩とかしたら絶対に勝てないな。
怒ったほどかちゃんに上からミサイルを落とされるとかシャレにならないもん。

まどか(この子は絶対に怒らせないようにしよう)

ほどか「それよりキュゥべぇを……」

まどか「あ」

すっかり忘れてた。

まどか「そうだよ! 早く治療しないと!」

今更ながら慌てる。
もう随分と時間が経ったけど大丈夫かな。





「じゃあ私の出番ね」

急に後ろから声がしたので、驚いて振り向くとそこには

まどか「マミさん!」

マミさんが魔法少女らしき衣装を身にまとい、そこにいた。

さやか(だれ?)

まどか「どうしてここに?」

マミ「魔女の気配がしたものだから来たのだけど……。
   どうやらもう終わったみたいね」

ほどか「すいません……。肝心の魔女は逃がしてしまいました」

申し訳なさそうにほどかちゃんは謝る。
魔女ってさっきのじゃないんだ……。
82 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:30:07.36 ID:X9vlZUyI0
マミ「あなたの責任じゃないわ。まどかさん達を守る為なんでしょう?」

まどさや「え?」

ほどか「……ずっと見てましたね?」

まどさや「え?」

マミ「ふふ。ごめんなさい。でも、これから戦う仲間としてあなたがどう動くかは見ておきたかったから」

ほどか「はぁ。これで合格ってわけでしょうか」

ヤバい話についていけない。

マミ「えぇ。本当にごめんなさいね? でも、あなたの話はあまりに突拍子もなかったから」

ほどか「いえ、自分がマミさんなら同じようなことをすると思うので」

マミ「そう。ありがとう。その言葉で少し楽になれたわ」

さて、と呟きなにもないはずの空間に目をやるマミさん。

マミ「あなたもこれでわかったのではないかしら、暁美ほむらさん?」

しかしそれは私の勘違いで、そこにはほむらちゃんがいた。




ほむら「……」

さやか「あいつ……!」

さやかちゃんがほむらちゃんに食って掛かろうとする。

まどか「待って! さやかちゃん!」

そんなさやかちゃんを静止し、ほむらちゃんに向けて話す。
そう、ほむらちゃんがなんでキュゥべぇを狙うのかその理由を聞かないといけない。

まどか「ほむらちゃん! どうしてあなたはキュゥべぇを!」

ほむら「さっきも言ったようにあなたには関係ないわ」

同じ返事を返すほむらちゃん。
そんなほむらちゃんにマミさんが反論する。

マミ「関係ない、ということはないんじゃない? キュゥべぇは私のお友達だもの。
   それにあなたにとってもまどかさんは特別なんじゃないの?」

ほむら「!」
83 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:31:22.41 ID:X9vlZUyI0
マミさんのその言葉に明らかに動揺した素振りを見せるほむらちゃん。
っていうかマミさん! それ以上は!
焦りながらマミさんの方を向く。だけどマミさんは、任せて。とでも言いたげにウインクをして話を続ける。

マミ「どうなのかしら? 未来からきた魔法少女。暁美ほむらさん?」

ほむら「!! ……どうして、それを……」

マミ「さて、どうしてかしらね?」

警戒を最大限にし考え込むほむらちゃん。
そして、目線を私達に合わせる。そして、その場にいる私達を順々に眺める。
その順番がほどかちゃんに移った時、っというよりもほどかちゃんが身に着けている盾を見た時に
なにかを納得したかのような顔に変わる。

ほむら「そう……。鹿目ほどか、あなたが原因のようね」

静かに、しかし冷たさを持った声色でほどかちゃんにそう言い捨てる。
その声の冷たさに少し怯える仕草を見せたほどかちゃんを庇うように私は前に立つ。

マミ「自分から煽っておいてなんだけど、今はそんなことは問題ではないんじゃないかしら」

緊迫した空気の中、マミさんだけが同じ調子で話し続ける。

ほむら「どういうこと?」

マミ「今、重要なのはその子がまどかさんを守ったという事実。
   そして、それはあなたがやろうとしていることと利害が一致している。
   そうじゃない?」

ほむら「! ……そこまで知っているのね」

今の言葉で大よそのことを理解したのか、ほむらちゃんはまた考え込む。

マミ(あなたならここまで言えばだいたいは理解できるでしょう。
   キュゥべぇを狙った理由もあなたがまどかさんを魔法少女にしたくないと思うがゆえの行動だとすれば納得はいく。
   まぁ、やり方は気に食わないけどね)

まどか(だ、大丈夫かな……)

マミさんの意図が読めずにただおろおろするだけの私。
ほどかちゃんはなにかを察したのか黙って成り行きを見守っている。
さやかちゃんは空気だ。

マミ(さぁ、どうするの暁美さん。ここまで言ったのだから私達が敵でないことと私達にあなたに対する敵意はないのはわかったはず。
   あなたの目標の一つにワルプルギスの夜の撃破があるのなら、ここで私達と手を組むのが最善なのは理解できるでしょう?)
   
考えがまとまったのかほむらちゃんが口を開く。

ほむら「どうやらあなた達と争うのは賢明ではないようね」

まどか「ほむらちゃん!」

この流れはもしかして! さすがマミさん! これを狙ってたんだ!

マミ「なら……」

ほむら「えぇ、私に協力してもらえないかしら。
    私の目的のために。そして見滝原のために」

まどか「や、やった! やったよ! ほどかちゃん!!」

やった! ほむらちゃんが私達に協力してくれる!
凄いよ! マミさん凄いよ!! だってあの状況からほむらちゃんを仲間に引き込むんだもん!
やっぱりマミさんは頼りになるよ!
さやかちゃんは空気だけど。

まどか「ねぇ! やったね! ほどかちゃん! これで……」

これで私達、親子三人揃ったんだ!

ほどか「……よかった……」

俯くほどかちゃん。……。
なんとなく察した私は彼女に優しく抱き着いて、そして優しく、優しく頭を撫でてあげるのでした。

マミ(よかった。なんとかうまく言ったようね)

マミさんも安堵したのか優しく微笑んでいる。
さやかちゃんは空気だ。
84 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:31:51.17 ID:X9vlZUyI0
―ほむら―


ほむら(……)

巴マミ達と協力。これは紛れもない僥倖でありワルプルギスの夜のことを考えれば戦力が大幅に増えたことは間違いない。
だが、

ほむら(鹿目ほどか、やはり危険すぎる……)

彼女がなぜ私と同じ時を渡る能力を持っているのか。
その答えは願いが時間に関係するようなことだったのであろう。だが、彼女は知りすぎている。

ほむら(どこで調べたのかはわからないけど、ワルプルギスの事、そして私の事)

あの様子ではまどかの才能の事まで知っているのではないだろうか。

ほむら(……まどかに近づいたわけはそこにあるの?)

キュゥべぇを助けたこともわからない。
あの子の知識から考えるに、魔法少女の真実についても知っていると思うのだけれど。
なら、あの子にとってもキュゥべぇは敵ではないのか。

ほむら(まさかまどかの才能を使ってなにかしようというんじゃ……)

彼女の魔力の強さも気になる。
さっきのヘルファイアミサイルを召喚した時の様子から見ても彼女はまだまだ力を隠し持っているはず。
本人はうまく隠しているようだが、ベテランである私から見れば隠しきれるものではない。




ほむら(巴マミもそのことには気づいているはずなのだけど……)

マミはなにも感じなかったのだろうか……。
それともわかったうえで黙っているのか。

ほむら(まぁ、どちらにしろ協力関係を結べたのはいい傾向だわ)

今後の魔女退治もやりやすくなるし、まどかの契約阻止も本人が事情を知っているのなら容易だろう。

ほむら(その上で鹿目ほどかに怪しい動きがあれば……)

私が始末すればいい――。

さやか「いや、あのー。説明してほしいんだけど」

QB「……」

――――――――――――
――――――――――
――――――――
85 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:32:18.26 ID:X9vlZUyI0
―― まどホーム ――


グッドイブニング! 鹿目まどかです!
今日はとってもいい日でした!
マミさんと協力できるようになったし、なによりほむらちゃんと仲良くなれたんですよ!!!
いやっほーい!! やったねまどちゃん! 家族が増えるよ!

そのせいかほどかちゃんも上機嫌!
さやかちゃんにマミさんの家で色々と説明して(ほむらちゃんも一緒だよ!)家に帰宅。
そして、いつも通りパパのお手伝いをしていたのですが、お手伝い中も鼻歌なんかを歌っちゃたりなんかしてその機嫌のよさが窺えます。

まどか(そりゃ嬉しいよね。ずっと会いたかったママに会えて、仲良くなれたんだもん)

私もパパとして嬉しいです! 嬉しさのあまりほどかちゃんがお風呂に入ってる時に乱入したら悲鳴をあげられて叩き出されました!!
今は反省の意味を込めて正座中です! 足が痺れました!!

まどか(そういえばさやかちゃん驚いてたなー)

話を聞いたさやかちゃんは驚きのあまりなんだかおもしろい顔になってました。




まどか(一応、マミさんの家からの帰り道、ほむらちゃんがいなくなってから私とほどかちゃんとほむらちゃんの関係については説明したけど……。
    すっごい顔してたなー)

さやかちゃんの、未来から嫁と娘が来るってどんなエロゲだよ。っていう言葉が忘れられません。

まどか(でも、これですっごく前進したよね)

そうです。どうなるかと思っていたことが実現したのです。
しかもマミさんは優しいし、ほむらちゃんもなにを考えてるのかはわからないところはあるけどなんだかんだで優しい。

まどか(だって、なんだか私を見る目は優しいんだよね)

だって私がバカなことをやった時の、ほどかちゃんが私を見る目と同じだもん。

まどか(やっぱり親子だねー)

今となっては疑いようもないこととして私の中にある事実。
ほどかちゃんが私とほむらちゃんの娘であるということ。
86 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:32:46.59 ID:X9vlZUyI0
まどか(ほむらちゃんも私の家で住めないのかな? 聞いたところによると一人暮らしみたいだし)

そうしたら親子で暮らすことになるんだし……。その方がいいよね?

まどか(そうすれば、ほむらちゃんもほどかちゃんに対して優しくなってくれるはず……)

なんとなくだけど、ほむらちゃんはまだほどかちゃんに対して思うところがあるような気がする。
少し疑ってるっていうのかな。心底信用してるって感じはしないんだよね。

これはマミさんの家で感じたことだ。
ほどかちゃんがほむらちゃんに世間話的なことをふってもほむらちゃんは当たり障りのないことしか言わなかった。
ほどかちゃんはそれでも母親と話せた嬉しさからか気にしてなかったみたいだけど……。

まどか(どっちも表情からは読めない子だけど、バレバレだよね)

ほどかちゃんが作った感情で本心を隠す子なら、ほむらちゃんは感情を殺すことで本心を隠す子。
違うようで全く同じなんだよねあの二人。

まどか(まぁ、バレバレなんだけどね)

まだまだわだかまりはあるみたいだけどその辺は

まどか(私が頑張るしかないよね)



明日も学校! 今日、みんなで明日のお昼を一緒に食べることを約束した。
そしてみんな手作りのお弁当を持ってくること! っていうことも伝えたし

まどか(うん! 明日が楽しみだね。てぃひひ)

ほどか「お父さん、お風呂空きましたよ?」

私の前にお風呂からあがったばかりのほどかちゃんがいた。

まどか(おぉ……。色っぽい)

まさに神が与えた奇跡です。
私は今すごく感動しています。

ほどか「……っていうかなんで裸にバスタオルを巻いて正座してるんですか?」

まどか「いや、これはちょっとね」

自らの罪を反省していたとは言わずに口を濁す。
87 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:33:25.84 ID:X9vlZUyI0
ほどか「もぅ……。バカな事してないで早くお風呂入ってください。明日も学校ですよ?」

まどか「あ、うん」

ほどかちゃんに促され立ち上がろうとする。

まどか「あ」


はい、お約束です。
足の痺れからうまく立ち上がれない私。
そして倒れこむ私。
倒れた先にはほどかちゃんがいて。
まぁ、押し倒す形になったわけで。
それで、うまいこと巻いてたバスタオルがこう、はらりと、ね?

でも、今は私は女の子。
つまりなにも問題ないわけです。
女の子が女の子を押し倒しても問題ないわけです。
ましてや同年代。そこにはなんの罪も生まれません。
男の子がほどかちゃんを裸で押し倒していたとかなったら問題ですよ?
そんな現場を見たら私の怒りにより鹿目家に代々伝わり、封印されし鋼鉄の処女がその長き眠りから目覚めます。
目覚めます。それはもう凄い勢いで。
でも私は女の子! えっちなことをしても許されるというスキルを持った女の子!
だから大丈夫なのです!!

だから普通に謝れば大丈夫!!
あ、ごめん/// ケガしなかった?
とか/// この記号を付けて可愛く謝れば許されるに決まっている!
そうだそうに違いない!! ///← この記号は優秀なんだ!! 基本困ったらこれをつければ許される!!!
なら早く謝ろう! 手遅れになる前に!!

まどか「ふひひ/// だ、大丈夫でござるか? ほどか殿、いい匂いでござるね/// フォカヌポゥ///」

よし! いける!!

ほどか「……」

無言で私を押しやり、そのままなにも言葉を発さずに立つほどかちゃん。

まどか「あ、あの……」

なんだかすごくまずい、汗が止まらない。
お風呂に入る前でよかった。

まどか「ほどかちゃん……?」

ほどか「……ふふふ」

にこっと笑うほどかちゃん。その慈愛に満ちた笑顔を見た私は思った。

まどか(あ、これダメなやつだ)

と。

ほどか「先に寝ますね? 早くお風呂に入らないとダメですよ?」

じゃあと自分の部屋のドアを開け最後に私に向けてもう一言。

ほどか「おやすみなさい。まどかさん」

と言ってバタンッとドアを閉めるのでした。

まどか「……」

や、やばいよ……。
あれガチなやつだよ……。

この受け入れがたい絶望に解決案を出せぬまま私の夜は更けていくのでした。
88 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:33:57.35 ID:X9vlZUyI0
―ほむら―

―― とある場所 ――


ほむら「こんなところに呼び出してなんの用かしら?」

まどか達と別れ数時間後。
夜も更け、街も静寂が支配を深めようとする中、私は呼び出しを受けこの人気の無い場所に単独やってきた。

マミ「あなたに少し聞きたいことがあるのよ」

巴マミ。さっき別れたばかりの彼女が質問を投げかけてくる。

マミ「あの場ではまどかさんと美樹さんがいたから、詳しくは聞けなかったわ」

ほむら「……」

鹿目まどかと美樹さやかがいたから――。巴マミがその二人の名前しか出さないということは。

マミ「あなたもわかっているのでしょうけど、ほどかさんのことよ」

やはり。巴マミも気づいていたのか。




ほむら「あの子が何かを隠しているということなら私もそれは気づいているわ」

あらかじめ聞かれるであろうことを先に言っておく。話はスムーズに進めたい。

マミ「そう。あの子が力を隠していることについても?」

ほむら「ええ」

だが、それを私に聞いてどうするというのか、私がその理由を知っているわけはないのだから。

マミ「……。暁美さん、私はあの子を信じているわ」

ほむら「え?」

急にわけのわからないことを言いだす巴マミの意図がわからず戸惑う。

マミ「あの子がさっき魔女空間でまどかさん達を守ったという事実は覚えているわよね?」

当たり前だ。そんな最近のことを忘れるわけがない。
鹿目ほどかは使い魔からまどか達を守った。
あの子がどのような目的を持っているにせよその事実だけは変わらないことだ。




ほむら「それがなんだっていうの?」

相変わらず理解できないことを話すマミに若干の苛立ちを込め聞き返す。

マミ「怒らないで。私が言いたいのはあの時あの子にはそれが全てだったんじゃないかってことよ」

ほむら「……」

マミの怒らないで、の言葉に少し冷静さを失っていた自分に気づく。
すぐに平静になるように努め、彼女の真意をはかる。

マミ「あの子は賢いわ。私達への立ち振る舞いといい、戦い方といい。しっかり考えた上で行動している」

それはわかる。迂闊な行動には出ない。感情のまま行動しない。
魔法少女になったばかりだというのにあの立ち回り方は、あの子の頭の良さからくるものであろう。

だからこそ、気をつけなければいけないのではないかとも言える。

89 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:34:36.95 ID:X9vlZUyI0
マミ「その賢い彼女があなたが近くにいて、目立つ力を使えば自分の力量がバレてしまう。そんな状況下であんな力を使うかしら?
   そもそもあの場面であんな派手な力を使う必要はあったかしら?」

ほむら「……」

マミ「本当に隠したいのならばあのまま地道に使い魔を倒し続ければよかった。それは十分できたはずよ」

確かに、そうだろう。
あの程度の使い魔ならばそう時間もかからずに殲滅できたはずだ。

マミ「でも彼女は力を使った。それもかなり目立つ形でね」

なぜかしら? と私に問う巴マミ。

そんなことはわかりきっている。

ほむら「魔女をあの場から遠ざけたかったからでしょうね」

その私の答えに満足したのか巴マミは、そう。っと呟き。

マミ「そこまでわかっているならいいわ。ごめんなさいね? こんな遅い時間に呼び出したりして」

そう言って立ち去ろうとする。


ほむら「待ちなさい! 言いたいことはそれだけなの!?」

マミ「ええそうよ。……そうね強いて付け加えるなら、あの子がそうした理由は凄く単純な理由で
   あの子の優しさからきたのでしょうね。ってところかしら?」

ほむら「っ!」

なんだか全てを見透かされていたような気がする。
巴マミ。あなたはやはり厄介ね……。

ほむら「私にあの子を信じろ、と?」

マミ「あら? 信じてないの? 私達は仲間でしょう?」

なにをバカなことを? とでもいいたげな顔をして私に聞き返す。

だけど、私はその言葉に返事をすることが出来なかった。

マミ「まぁいいわ。これからよろしくね。暁美さん。明日のお昼、楽しみにしているわ」

もう話すことはないと言いたげに歩を進めるマミ。
だが急に足を止めこちらを振り返る。

マミ「そうそう、言い忘れていたのだけど……」

ほむら「なに?」

マミ「私は、暁美ほむらさん。あなたも信じているから」

そういって今度は足を止めずに歩き、夜の闇に消えていった。

ほむら「……」

それを見送り、呆然と立ち尽くす私。

ほむら「信じろと……? 今更、私に何を信じろというの……」

信じては、裏切られる、その繰り返しの中にいる私に今更なにを……。

ほむら「あなたも信じている、か……。裏切った本人であるあなたがよくいえたわね」

しかし、それも全て自分の責任。
私が今までうまくできなかったのがいけないのだ。
私が彼女達を裏切らざる負えない状況に追い込んだのだ。
全て自分が……。

ほむら「巴マミ。やはりあなたとは考えが合わないみたいね」

また、あの感情が襲ってくる。
ただ無心にそれを排除する。

ほむら「なぜなら私は――」

私が一番信じられないわ――。

少し、左手の甲が放つ輝きが薄れたような気がした。
90 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:35:07.42 ID:X9vlZUyI0
―QB−

―― 同時刻 別の場所 ――


QB「やぁ、早かったね」

この夜更けに僕をテレパシーで呼ぶ者。
それは今日知り合った人物で話を聞く限りでは僕達にとっては敵に該当する存在。

QB「鹿目ほどか、いったい僕になんの用だい?」

ほどか「……」

この子の用がなんなのか。それは僕にはわからない。
だけど、彼女の目的に鹿目まどかの契約の阻止が含まれているなら彼女にとって、僕達は敵になるということになる。

QB「僕としては、君と話すよりもまどかの契約を遂行するための策を考えたいところなんだけどね」

彼女のおかげで鹿目まどかとの契約は絶望的なものになった。
鹿目まどかが悩んでいた、人の役に立ちたい。という悩みも彼女の存在によりすでに解消されてしまっている。

QB「まったく、想定外だよ。ほむらのこともそうだけど君は本当に余計なことをしてくれた。
   まさかこんなことがおこるなんてね」

お手上げのポーズをする。
僕に感情はないがこういう時にこういう風な仕草をするということは知識としてある。






ほどか「そのことで話があるの……」

今まで無言だった彼女が唐突に口を開く。

QB「そのこと……っていうのはなんだい? 主語を明確にしてくれないとわからないよ」

この星に住む人類は意志の疎通に相手の判断に委ねることに頼りすぎている。
その結果いらない誤解を生み。争いあう。
まったくわけがわからないよ。

ほどか「ごめんね。話っていうのはまどかちゃんの契約のことについて」

まどかの契約。その言葉が彼女の口から僕に向けて出るのは意外だった。

QB「どういうことだい。契約はしないでほしいってことかい? だったら無駄だよ。僕達はまどかに契約を迫り続ける。
   例え、どれだけ勝算が薄くてもね」

あれだけの才能だ。諦めろというのは無理がある。
91 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:35:33.38 ID:X9vlZUyI0
ほどか「うん。そういうと思った」

あなた達はそういう人たちだもんね。っといい彼女は僕の答えをわかっていたかのように話す。

QB「わけがわからないよ。君はこんなわかりきった答えを聞きにきたのかい?」

本当にわけがわからない。どうしてそんな無駄な事を。

ほどか「待って。話は終わりじゃないよ。私が本当に話したいのは――」

そう言って彼女が話したことは驚くべきことだった。
繰り返していうが僕達には感情がない。
だけど、その話は感情があったのなら驚くに値するものだろうと考えられる。




ほどか「今のが私のお話。たぶんあなたなら信じられると思う」

QB「……信じがたい話ではあるけどね」

だが、信じるしかない話ではある。

QB「……これが本当なら君は……」

ほどか「うん。覚悟はできてるよ」

笑顔でそう答える彼女。

ほどか「でさ、お願いなんだけど、パパに契約を迫るのはやめてほしいんだ」

さっきと同じ話だ。
さっき僕が出した答えは拒否。
だが今回は……。

QB「わかったよ。まどかにはもう契約を迫らない」

受諾。




QB「そもそも、拒否する理由がないね。君の話が真実ならまどかの力はもう必要なくなったんだから」

そう。必要ない。来たるべき日が来れば全ての問題は一気に解決する。

QB「むしろ、僕達は君にお礼を言うべきなのかもね。ほどか」

彼女のおかげで全てが無事に解決するんだ。ならばお礼を言うべきだろう。

ほどか「いいよ、お礼なんて。あなた達はあなた達のやるべきことをやっただけだもんね」

そういって照れくさそうにはにかむ彼女。

QB「へぇ……。普通の人間は僕達のやってることに対して怒りを抱くはずなんだけど……」

彼女は魔法少女の真実を知っている。それはもう確定事項だ。
にもかかわらず、怒るわけでもなく悲しむわけでもなくむしろ賛辞を投げかけるとは。

ほどか「あ、勘違いしちゃダメだよ? あなた達のやり方には賛成できないもん」

ただ、と続け。

ほどか「なんにでも犠牲はつきものだもんね。ただそれが大きいか小さいかなだけ……」

そう告げる彼女。
それは僕に言っているというよりは自分に言い聞かせているみたいだった。
92 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:36:03.37 ID:X9vlZUyI0
ほどか「とにかく、約束だからね?」

念を押すほどか。

QB「大丈夫だよ。僕達は嘘はつかない」

ほどか「大切なことを言わないまま事を進めるのは嘘に含まれるんだよ?」

痛いところを突いてくる。
だがそれなら……。

QB「君も嘘つきじゃないか」

彼女の言う通りならそうなる。

ほどか「いいんだよ。私は嘘つきだから」

そうくるか。

QB「成程ね。君は賢いね」

純粋にそう思う。

ほどか「そりゃ私は世界一頭のいいママの娘だもん」

そうやって胸を張る彼女。
そういう仕草をする彼女はとても重い決意をしているような人間ではなく一人の少女に見えた。

ほどか「じゃ、私帰るね。あんまり夜に出歩いてパパにばれたりしたらうるさいから」

うんざりしたようにそう言う彼女だが、心の底から嫌ではないんだろうと感じた。
むしろ、そういうことが嬉しく幸せなのだろう、となぜか思えた。

QB「そうかい、じゃあ僕も行くよ」

ほどか「うん。バイバイ。またね」

僕に手を振る彼女。お返しにとばかりに僕は耳を振る。

彼女と別れて少し経った。

QB「まさか、こんなに嬉しいイレギュラーとはね」

こんなことなら大歓迎だ。




QB「……」

覚悟はできている。彼女はそう言った。

QB「それも嘘だね。鹿目ほどか」

いや、厳密には嘘ではなく彼女は本気で覚悟し、この時代に来たのだろう。

だが、

QB「今の君はとても幸せそうだよ」

その幸福感は君の覚悟とは相反するものじゃないのかい?

QB「……」

空を見上げる。月が雲にその半身を隠され淡い光を放っている。

QB「僕達らしくないんだろうけど……」

祈ろう。彼女の幸せを。そう遠くない未来に消え去るであろう彼女の幸福を。

QB「感情がなくても祈るくらいはできるさ――」

いつのまにか月はその全てを覆い隠され、その淡い光さえも、もう見えなくなっていた。

――――――――――――
――――――――――
――――――――



93 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:36:29.96 ID:X9vlZUyI0
マミがほむらと密会をし、別れたその帰り道。

マミ「……」

マミ『……。暁美さん、私はあの子を信じているわ』

マミ「うふ、うふふふ」

マミ「やばいわ……。私やばいわ……」

マミ『私は、暁美ほむらさん。あなたも信じているから』

マミ「ふふふふふ。カッコよすぎるわ、私」

マミ「精神的に未熟な後輩を導く頼りになる先輩っていうのかしら」





マミ「よかったわ。バラバラな仲間をまとめる、頭のいいクールな先輩を妄想しといて」

マミ「そうね。今の私はさしずめ……」

マミ「スピリット・コネクター(数多の意思を束ねし指揮者)といったところかしら」

マミ「うふふふ。うふふふふふ」

マミ「おーっほっほっほっほっほ!!!」

おっさん「こんな夜中にうるせーぞ!!」

マミ「ひっ! ごめんなさい!!」
94 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:36:56.18 ID:X9vlZUyI0
―― まどホーム ――


まどか「ねぇねぇほどかちゃん」

ほどか「なんですか?」

まどか「ほどかちゃんの魔法少女の衣装を見てて思ったんだけどさ」

ほどか「はい」

まどか「あれって初音m「お父さん」」

まどか「え?」

ほどか「それは言っては駄目です。絶対に」

まどか「え」



ほどか「ふぅ……。世の中には触れてはいけないことがいっぱいあるんですよ」

まどか「え、うん」

ほどか「では、私はお風呂に入りますので」

まどか「あ、うん」

まどか「……」

まどか「……」

まどか(今度ネギ持って戦ってくれないかなー)
95 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:37:34.51 ID:X9vlZUyI0
―まどか―

―― 屋上 ――


こにゃにゃちは! 鹿目まどかです!
今日も今日とて学校! 
みんな仲良く登校したり授業受けたり宿題を忘れて怒られたりと、そんないつも通りの日常を送っている私です!

まどか(だって昨日色々あって宿題のことなんてすっかり忘れてたんだもん)

っと言い訳しますがそれはやっぱり言い訳で、ほどかちゃんとほむらちゃんはしっかり宿題をやってきてる辺りさすがだなーっと思ってしまうのでした。

まどか(父親としての威厳が……)

でも大丈夫。未来の私はほどかちゃんという立派な女の子を育てているのです。
それはつまり、勉強なんてできなくても立派な大人になれるということなのです。

まどか(ほむらちゃんも、そんな私に恋しちゃったのかもしれないし)

この人には私がいないとダメだから……。

っとダメダメな私に同情してくれたという感じでしょうか?
まぁ若干不名誉な気もしますが、それでほむらちゃんを落とせるなら問題なしです。




まどか(さてさて、今は昨日のメンバーで屋上にてお昼ご飯なわけですが)

昨日のメンバーとは、私、ほどかちゃん、ほむらちゃん、マミさん、さやかちゃんなわけです。

そして! ついにやってきました私の作戦を実行する時が!

まどか(名付けて! お弁当のおかずを交換しあって好感度を上げちゃおう作戦!)


説明しよう!! お弁当のおかずを交換しあって好感度を上げちゃおう作戦とは!!!

まず、みんなのお弁当を褒め、場がいい感じになったところでお弁当のおかずを交換しようと提案!
そしてうまいことほむらちゃんのおかずをほどかちゃんに食べさせる!
おふくろの味に感激したほどかちゃん感涙!!
その様子を見たほむらちゃんが





ほむら『もう、どうしたの? 急に泣いたりして……』

ほどか『だ、だって……。お母さんのごはん、おいしくて……』

ほむら『そんなことくらいで泣くだなんて……。鹿目ほどか、あなたはなんて愚かなの』

ほどか『ご、ごめんなさい……』

ほむら『ほら、涙を拭きなさい。そんなことじゃこれから毎日泣くことになるわよ?』

ほどか『……え?』

ほむら『これからは毎日、私の料理を食べることになるんだから、ね?』

ほどか『ママ……』

ほむら『ほどか……』
96 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:38:02.47 ID:X9vlZUyI0
っとこんな感じになることを狙ったあざとい作戦なのだ!!!

ほどかちゃんとほむらちゃん。母娘であるにも関わらずどこかよそよそしい(一方的にほむらちゃんが距離を置いている感じだけど)この二人。
まぁ、ほむらちゃんにはほどかちゃんが娘だって言ってないんだけどね。

ちなみにさやかちゃんには厳重に口封じをしています。

まどか(ばれるならさやかちゃんからだろうし)

感情に任せて行動する子だから、ついうっかりとかもありえるし……。

それはいいんです。
とにもかくにも、あまり仲がよろしくないこの二人。
父親である私はそれを良しとしません。このまま放っておくのはダメです。

まどか(だからとりあえず、お弁当のおかずでも交換して親睦を深められないかなーっと)

だから、こんな作戦を思いついたわけで、、、。




今、私達が座ってる位置関係はこんな感じ↓

        マミ
     ほむら  ほどか
      さやかまどか

ほむらちゃんとほどかちゃんは向かい合って座っています。
マミさんはいつも通りニコニコ。ほむらちゃんは無表情。ほどかちゃんはほむらちゃんの方をチラチラ見ながらいつも通りニコニコ。
さやかちゃんは空気です。





まどか(ここまでは計算通り)

事前にマミさんにメールでこのことは伝えています。
マミさんはかなり乗り気でぜひ協力したいっと言ってくれました。

まどか(さすがマミさんは頼りになる)

マミさんが味方についたならもう大丈夫。
後は作戦の狼煙をあげるだけ……!

まどか(マミさん……)チラ

マミ(ええ)コク

マミ「あら、みんなのお弁当よくできてるわね」

始まった!!!




さやか「そうdまどか「そうですか? 私は普段自分で作ったりしないからあんまり自身ないですよ」ティヒヒ

さやか「いyマミ「そんなことないわよ? まどかさんもすごく上手よ」

さやか「まどか「そういってもらえると嬉しいです/// でも、マミさんのお弁当凄いなー」

まどか(なんで重箱なんだろう?)

若干の疑問は浮かぶがそこはまぁいいや。

さやkマミ「ありがとう。一人暮らしが長いからかしらいつのまにかね?
      でも、暁美さんのお弁当も可愛らしくていわね。すごくおいしそうだし」

さyまどか「うんうん! なんかまさに女の子! って感じだね!」
97 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:38:30.49 ID:X9vlZUyI0
ほむらちゃんのお弁当はシンプルながらもしっかりと色彩、栄養のバランスが考えられたお弁当で、これこそ女の子のお弁当といいたげに光り輝いている。

まずは卵焼き。
その黄金色に輝く姿は見る物の食欲を刺激させ空腹を助長させる。

そして小さく作られたハンバーグ。
キチンと整えられた形は市販のものかと見紛う程であるがその色艶といい少しついた焦げ目といい、
そこから推察するに彼女の手作りであろうことが窺える。

次に可愛らしい、それぞれピンクと紫色の串に刺されたアスパラベーコン巻。
可愛らしい動物を形どって作られたその串にまず心癒され、
そして食べればその美味に下を癒されるれ、
お腹に入れば空腹を癒される。という一粒で三度おいしいまさに珠玉の一品。

さらに二つあるおにぎり。
三角に作られたそれは一つは海苔で巻かれもう一つはふりかけを使って作ったのであろう、基本的なおにぎりではあるが、
角は少し丸まっており、その丸みから彼女自身の手によって作られたことを見るだけで理解させてくれる。
もう一度言おう。彼女自身の手で、だ。
それだけで、そのおにぎりががコンビニ等で売られているような大量生産大量消費を目的とされたような安価な物ではなく、
それ一つでダイヤにも勝る価値があるものであることが御理解頂けると思う。
理解できない奴は夜道に気をつけろ。

彩りの面では季節に合った野菜をうまく使い、華やかに、かつ目に優しくと彼女らしいマメな性格を感じさせるものになっている。




ほむら「そ、そうかしら///」

おぉ、照れてらっしゃる。

まどか(かわいいのぅwwかわいいのぅww)

マミ「ほどかさんも凄くいいわね。なんだか動物園みたいだわ」

まどか「うん。正直びっくりした。食べるのがもったいなくなるよね」

ほどか「あ、ありがとうございます/// はりきっちゃいました///」

ウヒョー!! こちらも照れてらっしゃる。

まどか(眼福よのぅ)
98 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:39:01.04 ID:X9vlZUyI0
ほどかちゃんのお弁当はなにやら凄まじい。

まずタコさんウインナーにリンゴはうさぎさん。
これは料理の嗜みがある人ならば容易く作れることが出来、そしてお弁当のおかずに少しの遊び心を乗せたい方ならば誰でもするだろう。
だが、彼女の遊びはこれでは終わらない。

なんと、チキンライスをクマが寝ているように作り、その上から卵をタオルケットのように被せるという一風変わったオムライスを彼女は作ったのだ。
そして、オムレツを枕のようにクマの頭に引いているのも好ポイントであると言えよう。

さらに、草原で寝ているのをイメージさせているのか、周りには綺麗に数種類の野菜を使い彩豊かで見る物を楽しませるように出来ている。
そして、寝そべるクマの周りに先程のタコさんウインナーにうさぎさんが仲良く集まると、
種族の垣根を越えた共存をお弁当という箱の中に見事、現出してみせたのだ。

そんな遊び心に富んだ彼女のお弁当はもはや、遊びの域を超え芸術作品にさえ昇華してみせたといえるのではないかと思う。





ほむらちゃんのお弁当が慎ましくかつ強かであり芯の強い、
一見地味に見えるが観察すれば観察するほどその魅力に惹かれ虜になる大和撫子タイプなものであるとしたら、
ほどかちゃんはエレガントかつ優美。
その美麗さから傲岸そうで近寄りがたいが仲良くなればその胸の内に秘められた優しさを見せてくれる。そんなツンデレ御嬢様タイプといえるであろう。

まどか(しかし二人ともここまで料理がうまいとは。未来の私はお料理しなかったのかな?)

自身の未来に不安を抱きつつも作戦を実行する。

まどか「ねね。せっかくだしおかず交換しようよ!」

さあ! ここからが本番だ!

マミ「あらいいわね。そうしましょうよ」

マミさんがここぞとばかりにアシストしてくる。
ナイスです! マミさん!

さやか「あー。それいいね。やろうよ」

今までいたのかどうかわからなかったさやかちゃんも同意する。
これで過半数の賛成は取れた! さぁ! 後は押し通すだけ……!




ほむら「いいわよ。はい、どうぞ」

ほむらちゃんがお弁当を差し出す。

きた! きたきた!! この時が!!!

まどか「わー、ありがとうー。でも、なにたべるかまよっちゃうなー」

マミ(まどかさん、ビックリするほど棒読みだわ)

マミ「そうね、ぜんぶおいしそうだものね」

まどか(マミさん、ビックリするほど棒読みだよ)

まどか「ねえねえ、ほどかちゃんはどれが食べたい?」

ここ! ここが大事!!
99 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:39:26.41 ID:X9vlZUyI0
ほどか「え、えっと……」

突然話をふられて焦るほどかちゃん。

まどか(いい! いいよ! その初々しい感じ! 大好物だよ!)

初めての母親の料理を目の前にして躊躇っている彼女の顔は、
戸惑いながらも視線はお弁当に釘付けで、どうしても食べたいであろうことが把握できる。

まどか(うん、卵焼きだね! 卵焼きが食べたいんだね!)

視線は卵焼きに一直線。今すぐにでも食べたいのだろう。
だが、母親に対する遠慮か、なかなか手を出せずにいる。

マミ(頑張って! ほどかさん頑張って!!)

マミさんもこの緊迫した空気に手を握りじっと見守る。
あと少し、あと少しなのだ。

まどか(あと少しでほどかちゃんの可愛いお口にほむらちゃんの卵焼きが……!)

ほどか「じゃ、じゃあこの卵焼きを……」

意を決したように卵焼きに箸を伸ばそうとするほどかちゃん。





まどマミ(きた!!!)

ついに、ついにこの時が!!!

後、もうほんの少しでほどかちゃんの箸が届く。
そう絆を深める黄金色のアーティファクト、卵焼きに!

まどか(生きてきた! 私はこのために生きてきた!)

作戦は成功。これで私達の目的は達成された。
そう確信した私。

だが

さやか「この卵焼きうまそうだよねー。もらい」

成功は一人の悪魔によって握りつぶされた。

ほどか「あ……」

まどマミ「」
100 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:40:02.50 ID:X9vlZUyI0
さやか「おぉー。うまい! ほむらってば本当に料理うまいじゃん!」

ほむら「そう? そう言われると嬉しいわ」

さやかああああああああああああああああああああああああああんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!
貴様あああああああああああああああああああああああああんんんんあああああ!!!!!!!!!!!!!!!
なにして、なにをしてええええええええええんんんんんああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!

まどか(なにしてるのさやかちゃん!!! ほんと……なにして!!!)

バカなの!? この子バカなの!!?
空気読めないってレベルじゃないでしょ!!!
え!!? ……バカなの!!?

マミ(美樹さんが卵焼きを取ったっていうんなら殺すしかないじゃない!)

マミさんもあまりの事態に怒りを露わにしてるよ!!!
そりゃそうだよ!! 怒るよ!! 

ほどか「あぅ……」

うわああああああああ!!!!!!???? ほどかちゃんがしょぼんとしてる!!
すっごく落ち込んでるよ!!!!




まどか(どうしようどうしよう!! こんなの想定外だよ!)

なにか、なにか解決案を!! ダメだ! 思いつかない!

まどか(この状況を打開する方法なんて学校で習ってないよ!!)

ふざけないでよ!! なんの為の学校なの!?
困った時には全然役にたたないじゃない!!

まどか(腐ってる! この国の教育は腐ってる!!)

私はこの国の教育に怒りを隠しきれませんでした。
この国は粛清されるべきだとも思いました。

まどか(ゴメン……。ほどかちゃん……。この国のせいで……)

ほどかちゃん。彼女もまたこの国の腐敗(さやかちゃん)の犠牲者なのです。




ほどか「……」

しょんぼりするほどかちゃん。見ていて心を抉られるような痛みを覚えます。

さやか「あ、あれ? 私なんかやらかした?」

今更空気を読んだのかこの異常な雰囲気に気づくさやかちゃん。

まどか(いまさらなにを!! さやかちゃんはいつもそうやって終わってから気づくんだ!!)

本当にいまさらどうしようもありません。
もう手遅れです。もう誰にもこの状況を覆すなんて……。

私が全てに絶望し諦めかけたその時でした。

ほむら「はい。食べなさい」

この腐敗した世界に神が舞い降りました。
101 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:40:28.55 ID:X9vlZUyI0
ほどか「……え?」

ほむら「欲しかったんでしょう?」

ほむらちゃんがほどかちゃんのお弁当にポンッと置いたその光り輝く黄金色の宝石。
それは、この暗く澱んだ世界に差す一筋の光明。
まさに神の救いそのものでした。

ほどか「あ、あの……」

ほむら「全く、卵焼き一つでそこまで落ち込むだなんて……。鹿目ほどか、あなたはなんて愚かなの」

ほどか「あぅ……」

今度は怒られてしょんぼりするほどかちゃん。するとそれを見たほむらちゃんは

ほむら「食べないのかしら?」

っと卵焼きを取り上げようと箸を伸ばす。





ほどか「あ! 食べます!! とらないでぇ!」

慌てて卵焼きを隠し、食べる意志があることを告げるほどかちゃん。

ほむら「そう。なら早く食べなさい。時間もあまりないんだから」

ほどか「は、はい」

そう言われ急いで卵焼きを口にするほどかちゃん。
一口、二口と口に運び咀嚼をし、それを飲み込んだ彼女は今まで見たこともないようなへにゃっとした、だらしない笑みを浮かべ

ほどか「おいしいです……。すごく、おいしいです」

っと言った。




ほむら「そう」

その言葉にそっけなく返事を返すほむらちゃんでしたが、なんだかその顔は満更でもないように見えました。

まどか(よかった……。よかったよぉ……)

マミ(いい話だわ……)

思わぬ感動のシーンに思わず涙を浮かべる私とマミさん。
全米が泣くこと間違いなしでしょう。

さやか「あー。なんか丸く収まった感じ?」

空気でありながら空気を読めない子がなにかのたまっています。
とりあえず、私はその子に笑顔で近寄り

まどか「さやかちゃん」ニコニコ

さやか「あ、なに? まどか」

まどか「お前だけは絶対に許さん」

っと優しくいってあげるのでした(・ω<) テヘペロ

さやか「」

――――――――――――
――――――――――
――――――――
102 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:40:54.16 ID:X9vlZUyI0
ぐーてんたーく! 鹿目まどかです!
一波乱あったお昼ご飯も、ほむ神様の救いのほむほむにより和やかに終わり、今は時間をすっ飛ばして放課後!
本当は放課後ティータイムに洒落込んでバンド活動でも始めようかと思ったのですが魔法少女はそうもいかない。

マミ「これが昨日の魔女が残していった魔力の痕跡。基本的に魔女探しは足頼みよ。
   こうしてソウルジェムが捉える魔女の気配を辿っていくわけ」

昨日の工事現場に集まり、マミさんが自分のソウルジェムを使い魔女を探す。
そう、ほどかちゃんが私達を守るために逃がした魔女を今日はやっつけようというのだ。

さやか「意外と地味ですね……」

なぜ、さやかちゃんがいるのかというと

さやか『私も気になるしついていくね』

っと強引についてきたのでした。

ほどかちゃんとほむらちゃんはさやかちゃんが来ることに反対していたけれど(私がついていくことにも反対みたいだったけど、そこは、ほら、ね)

さやか『魔法少女が三人もいたら大丈夫っしょ』

っとの言葉とマミさんの

マミ「まぁここまで巻き込んでしまったのだし、
   こっそり後をつけられるよりかは最初から一緒に行動していたほうが守りやすいんじゃないかしら」

っとの言葉に渋々納得する二人でした。






まどか(っていうかバレバレだったんだね)

置いて行かれたら後をつけるっていうの。
さやかちゃんも同じだったらしく、その言葉に苦笑していた。

さやか「光、全然変わらないっすね」

しばらく歩いてみるが一向に魔女が見つかる気配は無し。

マミ「取り逃がしてから一晩経っちゃったからねー……。足跡も薄くなってるわ」

まどか「あの時、すぐ追いかけていたら……」

その私の言葉に申し訳なさそうな顔をするほどかちゃん。

ほどか「ごめんなさい……。私の責任です……」

まどか「あ、そ、そういう意味じゃなくてね」

失言だった。自分の迂闊な言葉に反省する。
103 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:41:22.48 ID:X9vlZUyI0
マミ「仕留められたかもしれなかったけど、あなた達を放っておいてまで優先することではなかったわ。
   だからほどかさんの判断は正しかった。あの状況なら私だって同じように行動していたもの」

そういって顔だけを後ろに向け

マミ「暁美さんもそう思うでしょ?」

っとほむらちゃんに話しかけるマミさん。

ほむら「そうね。一般人がいる以上その選択が正しいわ」

そのほむらちゃんの答えに満足げに笑顔で頷き、

マミ「ね、気にすることじゃないわよ」

ほどかちゃんに微笑むのでした。

ほどか「ありがとうございます」

そして笑顔に笑顔で返す。




まどか「……ごめんなさい」

自分が足手まといだということを改めて痛感する。
彼女達の行動を狭めているのだと。

マミ「ふふ、いいのよ」

そんな私の気持ちを受け取ったのか私にも微笑んでくれるマミさん。

さやか「うーん! やっぱりマミさんは正義の味方だ!」

だね。
優しくて、大人で人の為に頑張っているマミさんは正義のヒーローみたいでかっこいい。

まどか(私もマミさんみたいになれたらなー……)

そしたら、ほむらちゃんとほどかちゃんも私のことをもっと頼ってくれるんだろうな。





さやか「ねぇマミさん……。魔女のいそうな場所せめて目星とかはつけられないの?」

それからしばらく歩き続け、魔女は見つかる気配もなく、焦れたさやかちゃんがそう質問した。

マミ「魔女の呪いの影響でわりと多いのは……。交通事故や傷害事件よね。
   だから大きな道路や喧嘩が起きそうな歓楽街は優先的にチェックしないと……」

マミさんがある程度、魔女が出現しそうな場所を説明してくれる。

マミ「後は、自殺に向いてそうな人気のない場所。
   それから、病院なんかに憑りつかれると最悪よ」

病院の言葉に反応するさやかちゃん。

マミ「ただでさえ弱っている人達から生命力を吸い上げられるから。目もあてられないことになる」

そこまで言い切るとマミさんのソウルジェムに反応があった。

マミ「かなり強い魔力の波動だわ」

その言葉に一気に臨戦態勢になるほむらちゃんとほどかちゃん。

マミ「近いかも……」
104 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:41:54.94 ID:X9vlZUyI0
―― 廃ビル ――


魔力の痕跡を辿り、着いたのはもう使われていないであろうビル。

マミ「間違いない。ここよ」

ここに魔女がいる。
緊張感から少し汗をかく私。
いよいよ魔女との戦いが始まるんだ。

さやか「マミさんあれ!」

さやかちゃんがビルの屋上を指差し私達に注意を促す。

さやかちゃんが差した方を見るとそこには今にも飛び降りようとする人影が――。

まどか「きゃああ!!」

私達がその人影を捉えた瞬間、その人は屋上から飛び降りる。
まさか人の自殺の現場を見るとは思わず叫び声を上げる私。

そんな中、マミさんがいち早く変身し前に飛び出す。




マミ「はっ!」

マミさんが手をかざすと黄色に光る帯状のものが現れ、飛び降りた人。
今でははっきりわかるが、OLであろう落下する女性の体をクッションとなって優しく支える。

支えられ落下のスピードを弱めたその人の体はゆっくりと下降し安全に地面に着地する。

マミさんがその人の体を観察し、首元にあるマークに気づくと一言。

マミ「魔女の口づけ……」

と呟き。

マミ「やっぱりね」

っと言った。




私達は急いでマミさんに近寄り女性の安否を確かめる。

まどか「こ、この人……」

マミ「大丈夫。気を失っているだけ」

その言葉に、ほっと一息つく私達。

マミ「いくわよ」

そういってマミさんはビルの中へ。いつの間にか変身を終えていたほむらちゃんとほどかちゃんもそれに続くのでした。
105 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:42:48.24 ID:X9vlZUyI0
――ビル内 エントランス ――


ビルの中に入り私達は辺りを確認する。
すると階段の上にマークが浮かびあがった。

マミ「今日こそ逃がさないわよ」

そう告げた後にさやかちゃんが持ってきていたバットに触れる。
マミさんに触られたバットは淡い輝きを放ち変化した。

さやか「うわわわわ」

まどか「すごい……!」

マミ「気休めだけど……、それで身を守るくらいの役にはたつわ。絶対に私達の傍を離れないでね」

私達に忠告すると、マミさんとほむらちゃん階段を先に上る。





ほどか「後、これを渡しておきます」

ほどかちゃんがなにか小さいトロフィーのような形をしたストラップを渡してくれる。

さやか「なにこれ?」

ほどか「トロフィーシステムという、戦車等に襲いかかるミサイルやロケットを迎撃するための防衛システムを
    魔女戦ように魔法で変化させたものです」

なにやら物騒なことを口走るほどかちゃん。
戦車て、ミサイルて……。

ほどか「私の魔法で魔女や使い魔の攻撃は自動で迎撃するようになっているので、これで防御の面は安全だと思います」

さやか「はぁー。魔法って本当にすごいねぇ……」

そんなことまで出来るとは……。
魔法恐るべしだね。




まどか「うん、ありがとう!」

やっぱり魔法少女が三人もいると頼もしい。無敵感がハンパないね。

ほどか「でも、絶対に油断しないでくださいね?
    魔女の結界内ではなにが起きるかなんてわからないんですから」

心配そうに私達の顔を見るほどかちゃん。
それだけ危険な場所なんだろう。

まどか「うん。わかってる。絶対にほどかちゃん達の傍からは離れない」

あなたを守るためにも。

ほどか「……。わかりました」

私の言葉に少し目を細めほどかちゃんは頷いてくれる。
その目からはなにがあっても私達は守ってみせるという意思を感じられる。

マミ「話はすんだ? いくわよ!」

まどさや「はい!」
106 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:43:22.70 ID:X9vlZUyI0
―― 魔女結界内 ――


魔女の結界内に入り魔女のもとへと急ぐ私達。
主にマミさんが先頭で使い魔を葬り、ほむらちゃんがその援護。
ほどかちゃんが私とさやかちゃんの周りを固めるように守るといったふうに進んでいる。

さやか「なんか楽勝って感じだね」

隣で魔法のバットを振るいながら私に話しかけるさやかちゃん。

まどか「うん。マミさんもそうだけど、ほむらちゃんも凄いもん」

マミさんは戦国時代にあった火縄銃のようなものでだいたいの敵を一掃し、零れた敵はほむらちゃんが拳銃で的確に撃ち倒す。
その二人の連携は見ていてとても頼りになるもので、これならどんな敵がきても怖くないとそう思えた。

マミ(……やっぱり、私と暁美さんは共に戦ったことがあるようね。
   私が行動しやすいように的確に援護をしている)

マミ(おかげでとてもやりやすいわ)

ほむら「……」




さやか「うん。なんかあの二人息ばっちりだよね。阿吽の呼吸っていうの?
    なんか夫婦みたい」

まどか「ああん!!?」

さやか「ひ!? ま、まどか?」

まどか「なに? さやかちゃん」

さやか「え、あれ? 今すごい顔……」

まどか「なに言ってるの? 寝ぼけてる場合じゃないよ」

さやか「う、うんそうだね」

全くさやかちゃんは……。
なにをバカなことを。
ほむらちゃんは私のだよ? 教えたでしょ?

まどか(ほんとにもう)




ほどか「二人とも緊張感がなさすぎますよ」

私達のゆるさを咎めるほどかちゃん。

まどか「ごめんね。さやかちゃんが変なこというから」

さやか「私のせいかい!」

ほどか「はぁ……。まぁいいです。お二人は私が守りますから」

そういってほどかちゃんは以前とは違った銃で私達に迫る敵を撃ち続ける。

さやか「今度のほどかの銃ってあれだよね。007の使ってるやつだよね」

さやかちゃんがボソボソとほどかちゃんの銃のことについて説明する。

まどか「そういえば、あんな感じだったね」

それよりも私はほどかちゃんの守りますからの一言に感動が収まらない。

まどか(本当にいい子に育って……)

抱きしめたくなるね。ホント。

ほどか(なんだろう、無性にパパに向けて撃ちたい)

107 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:43:57.83 ID:X9vlZUyI0
―― 最深部 ――

そんなこんなで奥深くまで危なげなく進んだ私達。
そして遂に。

マミ「見て、あれが魔女よ」

魔女のもとに辿り着いたのでした。

さやか「う、グロイ……」

まどか「あんなのと戦うんですか……?」

ほむら「……」

ほどか「……」

始めてみる魔女は想像よりもとっても恐ろしくて、今までの楽勝ムードを一気に消してくれたのです。

マミ「大丈夫。負けるもんですか」




そう言ってさやかちゃんのバットを地面に突きつける。
すると私達の周りにほどかちゃんが張ってくれた結界と似たようなものができたのです。

さやまど「わぁ……」

マミ「下がってて、行くわよ暁美さん。ほどかさんはまどかさん達をお願い」

ほむら「えぇ」

ほどか「はい!」

ほどかちゃんに私達の守りを託し、
魔女の前に降り立つマミさんとほむらちゃん。





さやか「ね、ねぇ本当に大丈夫なの?」

それをさやかちゃんは心配そうに見守る。
正直、私も心配だ。

あの魔女の姿を見てしまうと、人が勝てるのかと思ってしまう。
それ程に魔女の姿は異様で奇怪だった。

ほどか「大丈夫ですよ。マミさんとお母さんはとっても強いですから」

信頼しているのだろう。自信を持ってそういうほどかちゃん。
その自身に満ちた声に私達も安心し、ただ黙って見守ることにした。

ほどか(……ごめんね)

ただ、なぜかほどかちゃんが魔女の方を辛そうに見ていることだけが気になったけれど――。




ほむら「まずは私が相手の注意を引き付けるわ。巴マミ。あなたはその隙を狙って」

単純な攻撃力は巴マミのほうが上。しかし彼女の技は隙が多い。
ならば小回りの利く私が相手の注意を集めて隙を作るのがいいだろう。

ほむら(そう、あなたから教わったのだし)

ちらりと巴マミの方を見る。
私の言うことがわかっていたのか最初からそのつもりだといわんばかりに攻撃の準備をする。

マミ「わかったわ、くれぐれも私の攻撃に巻き込まれないでね?」

そう忠告するマミだが、その顔からはそんな下手はうたないけど。っと言いたそうに見える。

ほむら「あなたがそんなミスをするわけないじゃない」

その言葉を送りさっそく魔女のもとへ向かう。

マミ「ふふ。私のことを良く知ってるみたいじゃない」
108 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:44:55.72 ID:X9vlZUyI0
―ほむら―

ほむら「まずは私が相手の注意を引き付けるわ。巴マミ。あなたはその隙を狙って」

単純な攻撃力は巴マミのほうが上。しかし彼女の技は隙が多い。
ならば小回りの利く私が相手の注意を集めて隙を作るのがいいだろう。

ほむら(そう、あなたから教わったのだし)

ちらりと巴マミの方を見る。
私の言うことがわかっていたのか最初からそのつもりだといわんばかりに攻撃の準備をする。

マミ「わかったわ、くれぐれも私の攻撃に巻き込まれないでね?」

そう忠告するマミだが、その顔からはそんな下手はうたないけど。っと言いたそうに見える。

ほむら「あなたがそんなミスをするわけないじゃない」

その言葉を送りさっそく魔女のもとへ向かう。

マミ「ふふ。私のことを良く知ってるみたいじゃない」

ゲルトルート「ぉぉぉぉぉぉぉ……」

ほむら「……大きい図体の割にはすばしっこい」

この空間内をすばやく動き回る魔女にたいして、サブマシンガンを使い相手の動きを制限するように撃ち続ける。

ほむら(そういえばあの子も実銃を使っていたわね)

チラリとまどか達の傍にいる魔法少女、鹿目ほどかの顔を見る。

ほむら(あの子がそんなものを必要としているとは思えないのだけど)

彼女の力ならそんなものに頼らずとも魔法の武器を使えばいいはずだ。
現にまどか達に渡したトロフィー等は魔法で作り出したはず……。

ほむら(あくまで力を見せたくはないということかしら)

理由はわからないが、そういうことだろう。

ほむら(まぁいいわ、いずれ必ず化けの皮を剥いであげる)

今はまどかを守ってくれるあの子の存在は有難い。
まどかに危害を加えないというのなら、その時まで利用すればいいだけの話なのだから。



ほむら(……今すべきなのは)

この魔女を葬り去る。ただそれだけ。

ほむら(だいぶ弱ってきたようね)

私の攻撃はあまり当たっていないが、マミの攻撃は今のところ全て命中している。

ほむら(狙い通りね)

基本的に魔女の戦い方はワンパターンであり思考も単純なもの。
目先の危機にばかり捉われて行動するせいで隙ができ、相手の本当の狙いを避けるまでには至らない。

ほむら(マミもそれをわかって私が牽制しやすいように敵を攻撃している……)

魔女が私に反撃しないように、反撃の素振りを見せるとすぐに相手の動きを止めるように攻撃。
おかげで私は自分の役割を果たしやすい。


ほむら(まさか、あなたとこうして戦える日がまたくるなんてね)

こんなことは思いもしなかった。

ほむら(その点においてもあなたには感謝しているのよ)

鹿目ほどかの方をもう一度見る。
相変わらず彼女はまどか達を守ることに専念しているようだ。

ほむら(まぁ、それとあなたを信頼するかはまた別の話だけれど……)

一定の攻撃を受けた魔女。もうそろそろ終わりかと思えた直後、マミのいる方から声が聞こえた。

109 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:45:21.49 ID:X9vlZUyI0
ほむら「!」

マミ「っ!」

さやか「あ!」

そちらを見ればマミが使い魔に足を絡め捕られ、魔女の触手により体の自由を奪われていた。

マミ「くっ!」

魔女は縛ったマミをそのまま壁に打ち付ける。

空間内に轟音が鳴り響き、壁に打ち付けられたマミが苦しげな表情を浮かべる。
しかし、魔女の攻撃は止まずそのままマミを逆さに宙づりにし、持ち上げる。

ほむら「巴さん!」

助けなければ。
そう思いマミに近寄ろうとするが、それは意外にもマミ本人に止められる。

マミ「大丈夫。これから共に戦い続ける仲間に、あんまりかっこ悪いところは見せられないものね!」

そう告げたマミ。
その瞬間地面から無数の糸が出現し、今度は魔女の方が拘束される。




マミ「惜しかったわね」

魔女の拘束から逃れたマミが胸元のリボンを外し、降下。
マミの周囲を舞ったリボンはそのままマミの手に戻り、その姿を変質させた。

マミ「暁美さん下がって!」

ほむら「!」

その言葉に急いでその場から離れる。
私が離れた頃には、マミの両手には超巨大のマスケット銃が存在し、魔女にその砲口を向けていた。

マミ「ティロ――」

そのまま、その巨大な銃を抱え落下するマミは、魔女が聞くであろう最後の言葉を解き放つ。

マミ「フィナーレ――!!」

その瞬間、マミの持つマスケット銃は咆哮を上げ魔女に対し超強力な一撃を浴びせかけるのであった。

雷鳴のような響きの後に残るのは静寂。今まで私達が戦っていた魔女はその存在を葬り去られ、
後には、着地したマミがどこかから出した紅茶を啜っている姿が残っていた。
110 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:45:49.28 ID:X9vlZUyI0
まどか達の方を振り返り笑顔だけで終わったことを告げるマミ。

さやか「か、勝った……?」

まどか「すごい……」

空間が歪みもとの世界に戻る。
マミは魔法少女の変身を解き、魔女が落としたグリーフシードを拾う。

まどか「それって……」

マミ「えぇ、グリーフシードよ」

さやか「魔女の卵ってやつ?」

ほむら「そうよ。……キュゥべぇいるのでしょう?」

QB「ここにいるよ」

今までどこにいたのかインキュベーターが姿を現す。





マミ「じゃあさっそく使いましょうか」

ほどか「今回は私はいいです。ソウルジェムも穢れてませんし、マミさんとほむらさんで使ってください」

鹿目ほどかが自身のソウルジェムを見せ穢れの無いことを告げる。

マミ「そう? じゃあ遠慮なく……」

マミがグリーフシードにソウルジェムの穢れを吸わせる。

マミ「はい、暁美さんも」

そして私にグリーフシードを渡す。

ほむら「えぇ」

それを受け取り、同じように穢れを吸わせる。

ほむら「これ以上は無理みたいね」

ソウルジェムの穢れを全て吸い、
真っ黒になったグリーフシード見てそう呟く。





マミ「そうみたいね」

さやか「あの、それってそのまま放っといたらどうなるの?」

さやかが真っ黒になったグリーフシードを指差しそう質問してくる。

ほむら「魔女になるわ」

さやか「うえぇ!? やばいじゃん! それ!」

マミ「大丈夫よ。そのためにキュゥべぇがいるんだから」

マミが私の手のひらにあるグリーフシードを掴みキュゥべぇに向かって投げる。

QB「よっと」

それを取り込み処理するインキュベーター。
そんな様子を見ていたさやかは

さやか「なんか……。グロ……」

っと引いていた。
111 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:46:15.61 ID:X9vlZUyI0
―まどか―

―― 廃ビル前 ――


OL「ここは……? あれ? 私は?
   い、やだ、私……。なんで、そんな、どうして、あんなことを!」

ビルの前に気絶していた女性の介抱をするために戻ってきた私達。
ちょうど彼女は起きたばかりで状況を理解し、パニックになる彼女をマミさんが優しく抱き留めていた。

マミ「大丈夫、もう大丈夫です。ちょっと悪い夢を見ていただけですからね」

さやか「一件落着ってとこかな」

まどか「うん……」

怯える女性を宥めるマミさんを見ていると、無事に魔女を倒し、本来なら死んでいたはずの人を助けることができたんだと、
なんだかとても誇らしげな気分になってきました。
そして、みんなで協力して魔女を倒したという事実がこれから起こる苦難に対してもみんなで頑張れば乗り越えられる。
みんなで力を合わせれば達成できると確信させてくれて、きっと私達の未来は幸せで笑顔に満ち溢れてるんだろうって、
甘い考えかもしれないけど、もしそうなら、それはとっても嬉しいなって思ってしまうのでした。

――――――――――――
――――――――――
――――――――


112 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:46:47.06 ID:X9vlZUyI0
美樹さやかはある部屋の前で壁に背を預け立っていた。

――上条恭介。

その部屋の主の名前がネームプレートによって伺い知ることができる。


はぁ――。


なにか、大事な覚悟を決めるように美樹さやかはひとつ溜息を吐く。
そして意を決したのか、少し真面目な顔になった彼女は部屋の中に入ろうと足を動かす。

部屋の住人である上条恭介は清潔さを保ったベッドに横たわり、
その視線を開かれた窓の外に向けていたが、来訪者であるさやかに気づくと少し微笑みながら


やぁ――。


っと挨拶をする。

そしてその挨拶に笑顔で答えるさやか。

そのことから二人が浅からぬ関係であることが読み取れる。




さやかは彼の傍に近寄りベッドの近くにあった椅子に腰かけた。


はいこれ――。


さやかが恭介に以前購入したであろうCDを渡す。

それを見やり相変わらず微笑を浮かべながら恭介は素直にそれを受け取る。


わぁ――。いつも本当にありがとう。レアなCDを見つける天才だね――。


そして、彼女の贈り物に対し最大限の賛辞を贈る。

その賛辞に彼女は普段友人には見せないような照れを顔に浮かべ、


はは、そんな運がいいだけだよ、きっと。


はにかみながらもその賛辞を受け取る。
113 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:47:15.75 ID:X9vlZUyI0
恭介は近くのポータブルレコーダーを手に取り、
今贈られたばかりのCDをセットし自分の耳にイヤホンをかけながらさやかに話す。


この人の演奏は本当に凄いんだ。さやかも聞いてみる?


そう言いながらさやかに片方のイヤホンを差し出す。


い、いいのかな――。


その申し出にさやかはさっきよりも照れながら、イヤホンを受け取る。


本当はスピーカーで聞かせたいんだけど、病院だしね――。


恭介の言葉によりここが病院であり、数ある中の一病室であることがわかる。

片方のイヤホンを分け合ってつけたさやかと恭介は少しお互いを近づける。
その行為にさやかの心はまた揺れ動くのであるが、決して嫌な素振りを見せることはない。

そう――。美樹さやかはこの少年に対し恋心を抱いていた――。




ゆっくりと綺麗な音色が流れ出す。

その音色にリラックスしたのか、
さやかは目を瞑り自分が恭介に淡い思いを抱くきっかけになった、昔の光景を思い出す。

時が流れ、さやかが音色に聞惚れていると、
ふと、恭介の方から鼻をすする音が聞こえる。

さやかはその音が気になり、恭介の方に顔を向ける。

恭介の顔は最初部屋にはいった時のように外に向けられていた。

ただ、違う点を挙げるとすれば、彼の体が震えていたことであろうか。

さやかはその姿を見、彼が泣いていることに気づいた。が――。

彼が泣く理由を理解している彼女は慰めの言葉をかようと考えるが、なにも言えなかった。
ただ寂しげな、苦しげな表情を浮かべ、彼の涙に気づかないふりをするしか方法がないのであった――。

114 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:47:43.51 ID:X9vlZUyI0
 ―― とある公園 ――


マミ「ティロフィナーレ!」

ぶおなせら! 鹿目まどかです!
今日も今日とて魔女退治! いつものメンバーで魔女をあっさり片づけてほっと一息。

さやか「いやー、やっぱマミさんってかっこいいねー」

バットを担いださやかちゃんがマミさんを褒めながら近寄る。

マミ「もう……。見世物じゃないのよ?」

そう言いながら電灯の上から降り変身を解くマミさん。

マミ「危ないことしてるって意識は忘れないでいてほしいわ」

そのマミさんの忠告をバットを天に掲げ

さやか「イエース!」

っとさやかちゃんは元気に答える。





ほむら「はぁ……」

ほどか(さやかさん本当にわかってるのかな)

そして、同じように変身を解いて私達のもとに近寄るほむらちゃんとほどかちゃん。

まどか「あっ、グリーフシード落とさなかったね」

そういえば魔女を倒せばあるはずのものがない。

QB「今のは魔女から分裂した使い魔だからね。グリーフシードは持ってないよ」

まどか「魔女じゃなかったんだ」

さやか「なんか、ここんとこはずればっかだね」

さやかちゃんが最近の不発ばかりに気落ちしたような声を出す。
確かに、結構倒したりしてるのになー。でも、使い魔ばっかりみたい。





マミ「使い魔だって放っておけないのよ、放っておけば分裂元と同じ魔女になるんだから」

ほどか「そうですね。それに使い魔が人間を襲うこともありますし」

さやか「それマジ!?」

マミ「本当よ、だから使い魔もできるだけ倒しておかないと」

ほむら「……」

ほどか「あの、ほむらさん、お疲れでしょうか……?」

さっきから無言のほむらちゃんにほどかちゃんが心配そうに声をかける。

ほむら「あなたには関係ないわ」

だけどそれを突っぱねるほむらちゃん。

ほどか「ご、ごめんなさい……」

冷たくあしらわれ落ち込むほどかちゃん。
115 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:48:58.18 ID:X9vlZUyI0
はぁ……。また、か……。

まどか(やっぱり、なんかほどかちゃんには冷たいんだよね……)

最近、一緒に行動するようになって、
私はともかくマミさんやさやかちゃんに対しても徐々に心を開いてくれるようになったと思う。
でも、

まどか(ほどかちゃんにだけは相変わらず変化なしなんだよね……)

お弁当の一件以来、あれで態度も軟化するかと思ったけどそうでもない。
ほどかちゃんはほどかちゃんなりにほむらちゃんに対してなにかと気を使ったり話しかけたりしてるんだけど。

まどか(肝心のほむらちゃんがあれじゃあね……)

ほむら「まどか、怪我はない?」

そうやってあれこれと考えていると、ほむらちゃんが私に声をかけてくれる。

まどか「え? あ、大丈夫だよ! ほどかちゃんが守ってくれてるし」

私とさやかちゃんはほどかちゃんが身を挺して守ってくれている。
だから怪我などはするはずがないのだ。

まどか(むしろ怪我をしているのは……)

ほどかちゃんをちらっと見る。

彼女は隠しているつもりだろうけど、
今日もバッドを振り回しながら戦うさやかちゃんに近寄る使い魔の攻撃から守って傷を負ったはずだ。

まどか(本人はかすり傷だから大丈夫って言ってたけど……)

確かに傷は浅いみたいだけど、それでも大切な娘が傷を負ってまで戦うのは我慢できない。

まどか(とりあえず、後でさやかちゃんには制裁を加えるとして)

この二人の仲はなんとかしないとね。

マミ「じゃあいきましょうか」

マミさんがそう言って帰宅しようと促す。

さやか「そういえば、魔法少女になる時って魔法少女になる代わりに願い事を叶えてもらえるんだよね」

帰り道。さやかちゃんが唐突にそんなことを言いだした。

マミ「ええ、そうよ。大体のことなら叶えてもらえるわ」

そうよね? っとキュゥべぇに目配せするマミさん。

QB「そうだね。まぁそのあたりはその人間の持つ才能によるところが多いけどね」

キュゥべぇがマミさんの説明に補足をいれ説明する。

さやか「そっかー……」

なにか考え込むさやかちゃん。

マミ「なに? なにか叶えてほしい願い事でもあるの?」

さやか「いや、そんなにたいしたことじゃないんだけどね! ちょっとね……」

そう言って誤魔化すさやかちゃんだが明らかに様子がおかしい。

ほむら「やめておきなさい」

今まで黙っていたほむらちゃんが急に声をあげる。

さやか「え?」

ほむら「魔法少女になんかなるものではないわ。特にさやか、あなたのような人間は」

さやか「な、なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのさ!」

ほむらちゃんの言葉にさやかちゃんは少しムキになる。

まどか(あー。また始まったよ)

この二人、決して仲は悪くないのだけど、些細なことで言い合いになる。
大体はさやかちゃんのバカな発言にほむらちゃんが鋭い、っというか冷たいツッコみをいれて始まるのだけど、
116 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:49:58.72 ID:X9vlZUyI0
まどか(でも、今日のはほむらちゃんの方が……)

あんな言い方をされた誰だって怒るに決まってるよね。

ほむら「あなたも見てきたでしょう? 魔法少女の戦いは常に危険と隣合わせ、いつ死ぬかもわからない状況下での戦いを強いられるのよ」

そこで一息ついて話を続ける。

ほむら「あなたのように感情に流されやすいような人は魔法少女には向かないわ」

だからやめておきなさい。そう締めくくる。

一見さやかちゃんのことを心配してそういったようにも聞こえる。
だけど、さやかちゃんは頭に血が昇っているのかそんなことには気づかない。

さやか「そりゃあたしはマミさんみたいに落ち着いてもないし、ほどかみたいに器用じゃないけどさ!」

でも、っと声を荒げ

さやか「そんな言い方ってないんじゃないの!? 本当にほむらって冷たいよね!!
    もう少し言い方ってものを考えた方がいいんじゃない!!」

完璧にお怒りモードに変わってしまった。




まどか(あー。どうしよう……)

ほどか「あぅ……」

ほどかちゃんもおろおろしている。
基本的にほむらちゃんの味方なほどかちゃんだから、
こんなふうにほむらちゃんが悪い場合はどう仲裁したらいいのかわからないみたいだ。

マミ「はいはい、ケンカはやめましょうね。もう夜も遅いのだし、近所迷惑よ」

マミさんが喧嘩両成敗と二人の頭をコツンっと優しく叩き、場を収める。

ほむら「ほむ!」

さやか「うっ……。だってほむらが!」

怒りの収まらないさやかちゃんが今度はマミさんに食って掛かる。

マミ「でも、暁美さんの言う通りだと思うわよ?」

マミさんがほむらちゃんの言葉を肯定しさやかちゃんの怒りを宥めにかかる。

さやか「マミさんまで!」
117 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:50:24.32 ID:X9vlZUyI0
マミ「魔女との戦いは本当に危険なことなの。私だって今まで何回も死にかけたことはあるわ」

そう語るマミさんの表情は真剣そのものだ。
さやかちゃんも何かを感じたのか黙ってその言葉を聞いている。

マミ「それに、実際に魔女との戦いで命を落とした魔法少女も見たことある。
   暁美さんの言う通り魔法少女の戦いは常に危険と隣り合わせなの」

だから、と言葉を続け

マミ「暁美さんは暁美さんなりにあなたを心配して魔法少女になるべきではないと言ったんだから、
   少しはその意図を組んであげてもいいんじゃないかしら」

そう言ってニッコリ微笑むマミさん。
その笑顔にすっかり毒気を抜かれたさやかちゃんは渋々ながらも頷くのでした。

マミ「それと、暁美さん?」

ほむら「な、なによ」

マミ「あなたも心配なのはわかるけどもう少し言い方を考えなさい。
   あんな言い方じゃケンカを売っているようなものよ?」

メッとほむらちゃんにもお説教をする。





ほむら「べ、別にさやかが心配だから言ったわけじゃ……」

プイッとそっぽを向くほむらちゃん。怒られて心外なようだ。

さやか「怒られてやんの」プププ

そうやってほむらちゃんをからかうさやかちゃん。
そんなさやかちゃんに腹がたったのかほむらちゃんは

ほむら「いい度胸ね美樹さやか。覚悟しなさい」

銃を構えるのでした。

さやか「うわあああ!! あんたそれは反則でしょ!?」

まさかの展開に驚いて逃げ回るさやかちゃんを追い掛け回すほむらちゃん。

ほむら「安心しなさい。サイレンサーはついてるから騒音はでないわ」

さやか「そういう問題じゃなーい!!」
118 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:50:58.01 ID:X9vlZUyI0
マミ「はぁ……」

そんな二人を溜め息を吐きながら捕まえるマミさん。
そして今度は強めにゴンッと頭を叩くのでした。

ほむら「ほむ!!」

さやか「いだ!!」

マミ「二人とも? あんまりおいたが過ぎると……」

ティロフィナるわよ?

っとなんだか凄く怖い笑顔でマミさんはそう言い捨てる。
そんなマミさんに二人は……。

ほむさや「ご、ごめんなさい」

っと素直に謝るのでした。




ほどか「……」

そんな様子をぼけーっと眺めるほどかちゃん。

まどか「ほーどかちゃん」

そんなほどかちゃんに抱き着く。

ほどか「わわ。な、なんですか」

急に抱きしめられたので驚くほどかちゃんだけど、相変わらず拒みはしない。

まどか「別にあの二人は本気でケンカしてたわけじゃないからね?」

ほどか「え?」

まどか「あの二人にとってはあれがコミュニケーションみたいなものなの」

かなり迷惑なものではあるけど。





まどか「だから、心配しなくても大丈夫だよ?」

ほどか「……」

きっとほどかちゃんはお母さんが友達とケンカをしているのを見て不安に思ったのだろう。
優しい子で凄くお母さんが大好きな子だから、友達と仲良くしてほしい。
単純にそう考えたんだろうな。

まどか「困ったママだね。可愛い娘にこんなに心配させて」

よしよしと頭を撫でる。
本当にほむらちゃんには困ったものだ。
可愛い私達の娘にここまで苦労させるんだから。

ほどか「お母さんは悪くありません」

そう言いながらほどかちゃんはマミさんに怒られて正座しているほむらちゃんを見ている。

ほどか「だって、お母さんはお母さんですから」

まどか「ふふ、なにそれ」

理由になってない理由を言うほどかちゃん。
でも、その言葉でお母さんが大好きなのは伝わってきて私はなんだか幸せな気持ちになるのでした。
119 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:51:26.43 ID:X9vlZUyI0
まどか「そういえばマミさんはどんな願い事をしたんですか?」

一騒動あった帰り道。
ふと、私は気になった疑問を口にする。

まどか(ほむらちゃんとほどかちゃんの願い事はだいたい知ってるんだけどマミさんのは聞いたことないんだよね)

すると、今までほどかちゃんと談笑していたマミさんの足が止まる。

まどか(あ、あれ。なんか空気が……)

まずいことを聞いたかもしれない。

まどか「いや、あの、どうしても聞きたいってわけじゃなくて」

焦りながらも迂闊な質問をしたことを後悔しながら取り繕う。
私の焦りを察したかこの空気をなんとかする為か、マミさんが困ったような表情をしながら私の質問に答えてくれる。

マミ「私の場合は……」

目を瞑り何かを思い出すかのように話し続けるマミさん。




マミ「考えてる余裕すらなかったってだけ……。
   後悔してるわけじゃないのよ? 今の生き方はあそこで死んじゃうよりはよっぽどよかったって思ってる」

でもね、っと言い閉じていた目を開けるマミさん。

マミ「ちゃんと選択の余地がある子にはキチンと考えた上で決めてほしいの」

ちらりとさやかちゃんの方を見て、また歩き出すマミさん。
少し、辛そうなその姿に私達はなにも言わずただついていくだけだった。

マミ「私にできなかったことだからこそ、ね……」

マミさんの過去になにがあったのかはわからない。
でもマミさんの言葉は重くて軽々しい気持ちで魔法少女にはなってはいけない。
そう私は思うのでした。

まどか(ほむらちゃんもほどかちゃんも、魔法少女になった時はどんな想いだったんだろう……)

彼女達の願いは知っている。だけど、その時の想いまでは知らない。
大切な人だからこそ私はその想いがとても気になるのでした。




さやか「……」

まどか「さやかちゃん、もしかして上条君のこと……?」

さっきの質問といいさやかちゃんの今の様子といい、多分、さやかちゃんは叶えたい願いがあるのだろう。
そして、さやかちゃんが今、一番叶えたいということとは……。

さやか「うえ!? な、そんなことは!」

あ、当たりか。

さやか「いや、さ。私なんかよりもそういう奇跡を必要とする人がいるんなら、その人のために使うのはって考えただけだから」

ほむら「さやか……」

ほむらちゃんがなにかを言おうとするがマミさんがそれを手で静止する。

マミ「あまり関心できた話じゃないわ」

マミさんがさやかちゃんの考えについて自分の意見を述べる。

マミ「他人の願いを叶えるのならなおの事、自分の望みをはっきりさせておかないと」

そういってさやかちゃんの方に体を向けるマミさん。
120 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:52:15.13 ID:X9vlZUyI0
マミ「美樹さん。あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」

まどか「マミさん……」

マミ「同じことでも全然違うことよ、これ……」

マミさんらしからぬ突き放した言い方。
でも、言ってることは正しくてなんだかそれが凄く悲しかった。

さやか「その言い方はちょっとひどいと思う」

俯いてマミさんにそう反論するさやかちゃん。
でもきっとさやかちゃんもマミさんの言ってることの正しさは理解しているから強く言い返せないんだと思う。

マミ「ゴメンね、でも今の内に言っておかないと……。そこを履き違えたまま先に進んだらあなたきっと後悔するから」

いつもの優しい笑顔でマミさんは謝罪する。
そしてそんなマミさんの言葉にほむらちゃんとほどかちゃんも思う所があるのか何かを考えているようでした。

さやか「……。そうだね、私の考えが甘かった。ゴメン」

さやかちゃんも笑顔で謝り、場は少し柔らかい空気になるのでした。




まどか(……履き違えたまま先に進んだら)

ほむらちゃんとほどかちゃんは後悔していないのでしょうか。
二人とも言ってしまえば自分の為ではなく他の人の為に願い魔法少女になったんだ。

まどか(もし、少しでも後悔があるのなら……)

私は二人になにができるのでしょうか。

まどか(大切な人なのに……)

でも、きっと私にはなにもできないんだなって。
私はその時になってもウジウジしているだけなんだろうなって。そう思えてしまう。
そんな、なにも出来ない自分が腹立たしくて、嫌で、思わず私は手を強く握ってしまうのでした。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
121 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:52:40.27 ID:X9vlZUyI0
―― 病院 ――


ボンジュール! 鹿目まどかです!
今日はさやかちゃんの付き添いでほむらちゃんと一緒に上条君が入院している病院に来ています!
ほどかちゃんはマミさんと一緒に魔女探し。
少し心配だけどマミさんが一緒なら問題はないと思います!

さやか「はぁ……。よぉ、お待たせ」

ほむらちゃんと談笑しつつさやかちゃんを待っていたのですが予想よりも早く戻ってきました。

まどか「あれ? 上条君会えなかったの?」

さやかちゃんの気落ちした表情を見るに目的の人物とは会えなかったことが察せられました。





さやか「うん。なんか今日は都合悪いみたいでさー」

仕方がないので帰る準備をする私達。
さやかちゃんは会えないことが悔しいのか外に出てからも文句をいっています。

さやか「わざわざ会いに来てやったのに失礼しちゃうわよねー」

ぶつぶつと不満を言い続けるさやかちゃん。

まどか(都合が悪いんなら仕方ないと思うけどな)

まぁ、さやかちゃんもその辺はちゃんと理解しているんだろうけど。

まどか(でも、自分の感情を口に出さずにはいられない子だからねー)






まどか「ん?」

今まで隣で歩いていたほむらちゃんがいません。

まどか「あれ?」

後ろを見るとほむらちゃんがじっと何かを見つめていました。

まどか「ほむらちゃん?」

何を見ているのか気になり、私も同じようにほむらちゃんが見ている方を見ます。
すると、そこには

まどか「あれって……」

さやか「ん? どうしたの?」

私達の様子に気づいたさやかちゃんも同様に私達の視線の先を追います。
122 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:53:08.23 ID:X9vlZUyI0
さやか「あれ、グリーフシードじゃん!」

魔女の卵であるものが柱に刺さっていました。

ほむら「孵化しかかってるわ」

ほむらちゃんの言葉に驚く私達。

まどか「嘘!? なんでこんなところに!」

さやか「どうするの!? こんなところで孵化したら……!」

さやかちゃんが病院を見上げながらそう言った。

まどか(そうか、ここは!)

マミさんが言っていたことを思い出す。

――病院なんかに憑りつかれると最悪よ。
ただでさえ弱っている人達から生命力を吸い上げられるから。目もあてられないことになる――。

まどか「早くなんとかしないと!」




ほむら「落ち着いて。私がなんとかするわ」

冷静にそう言い、私達を宥めるほむらちゃん。

さやか「だ、大丈夫なの?」

さやかちゃんはほむらちゃんにそう尋ねる。
顔は不安でいっぱいだった。

ほむら「えぇ。あなた達は今の内に逃げて」

まどか「逃げるって! ほむらちゃん一人で行くつもり!?」

ほむら「当然でしょう? あなた達は魔法少女ではないのよ。
    今はマミ達もいないのだし」

確かに、そうだけど!! 




さやか「そ、そうだ! とりあえずマミさん達に連絡を!」

慌ててマミさんにさやかちゃんは連絡を取ろうと携帯を取り出す。
でもそんな、さやかちゃんをほむらちゃんが

ほむら「それには及ばないわ」

っと押しとどめる。

さやか「な、なんでさ!」

なぜ止めるのかわからず、さやかちゃんはその理由を聞き出そうとする。
私も意味がわからない。
この状況でマミさん達を呼ばないなんて。

ほむら「この魔女は――」

そして、そんな問いにほむらちゃんが答えようとした直後、当たりを眩い光が包むのでした。

ほむら「しまっ――!」

まどか「きゃあ!?」

さやか「うわ!?」
123 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:53:36.68 ID:X9vlZUyI0
―ほむら―

 ―― 魔女結界内 ――


ほむら「……っ」

迂闊だったわ、まさかこんなに早く孵化するなんて……。
今までのループならばもう少し時間があったはずなのだけれど……。
こんなことなら無理矢理にでもまどか達を避難させるべきだった。

まどか「こ、ここって……」

怯えながら辺りを見回すまどか、その表情は不安そのもので、彼女のそんな顔を見ていると胸が痛む。

さやか「まさか、もう孵化した感じ……?」

さやかも同様に辺りを見回し、不安気な顔をする。

ほむら「そのようね。でも安心して、あなた達は私が守るから」

そう彼女達に告げ変身を済ませる。
その言葉に一応の安心はしてくれたようだった。




ほむら(でも、正直厳しいわね)

状況はかなり悪い。
二人を守りながら、この結界を抜けなければならないのだから。

ほむら(私の能力では守りながら戦うには少し無理があるわね……)

時を止める能力も無限ではない。
自分だけの身を守るならまだしも。

ほむら(せめて一人ならば問題なかったのだけれど……)

ちらりと二人を見る。
相変わらず落ち着きなく周りを見ている二人を見て、一人で二人を守ることの難しさを想像する。

ほむら(いや、守ってみせるわ)

守って見せる。せっかくここまではうまく事が運んでいるんだ。
まどかだけでなく、さやかも救えるかもしれないという今回のループ。




ほむら(こんなところで躓いてたまるものか……)

救いたい人を救える。それは今の自分の頑張りで達成できるかもしれない。

ほむら(こんなチャンスそうそうないのだから)

決意し前方を見やる。
魔女を倒さなければいけない。
この魔女は自分が、
なぜなら――。

救いたい人の中には巴マミも含まれているのだから――。
124 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:55:56.72 ID:X9vlZUyI0
―マミ―


ほどか「!」

マミ「どうしたのほどかさん?」

共に魔女を探しているほどかさんが急に驚いたように振り返る。
その様子はとても焦ったように見え、なにか悪い出来事が起こったのではないかと思わせる。

ほどか「どうやらお父さん達が魔女の結界内に閉じ込められたようです」

マミ「どうしてわかるの?」

私にはまったくその気配はしなかった。

ほどか「実はお父さんには小型の発信機を付けてるんです。その発信機の信号が途絶えたので恐らく……」

なにやら可愛い顔でとんでもないことを話すほどかさんに、さすがの私も狼狽する。

マミ「ええーっと……。それはまどかさんは知ってるのかしら?」

ほどか「知らないですよ?」

この子。何気に凄いわね。

マミ「そ、そう。でも発信機なら圏外の場所にいるから途切れたとかもありえるんじゃ」

ほどか「それはありえません。
    私の魔法で作っているので、異質な空間に閉じ込められない限りは遮断されるようなことはないですから」

成程ね……。この口ぶりから察するとこういう事態も想定していたということね。

マミ(この子、一体どこまで考えて行動しているのかしら)

あまりにも先を見据えた行動をする彼女に少し恐怖に似た感情を覚える。

ほどか「マミさん。急ぎましょう。魔女の結界内にいるとしたら、お父さん達が危険です」

その通りね……。
今は彼女の本当の目的がなにか、なんてことよりまどかさん達の救出に向かうのが先決。

マミ「そうね。場所はわかるの?」

ほどか「病院です。今日はさやかさんの付き添いでそこに行くといってましたから」

信号が途絶えた時間的にも間違いはないです。っと付け加え魔法少女に変身する彼女。
私も変身を済ませ、急いで向かうことにする。

ほどか「魔女の結界内に入れば発信機も機能を取り戻します。急ぎましょう」

なにやらいつもの落ち着きがない彼女。若干焦っているのだろうか。

マミ(まぁ、両親が危機に陥っているというのだから当たり前よね)

少し、昔を思い出す。
自分は救えなかったから……。

マミ(あの時、もう少し願い事をよく考えていたら……)

今更だが常に後悔してきたことだ。
あの時、私がよく考えて行動していたら。

マミ(パパとママは――)

先を走る彼女を見る。
その必死な顔から早く自分の大切な人を助けたい。そう考えているのだろう。

この子には私のような後悔はしてほしくない。
そう強く思えた。

そしてこの子がそんな後悔をしないためにも。

マミ(私が助けてあげなくちゃ、ね」

そう考えるのであった。
125 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:56:24.88 ID:X9vlZUyI0
―ほむら―


ほむら「はぁ……はぁ……」

まどか「大丈夫……? ほむらちゃん……」

まどかが心配そうに私の顔を覗き見る。

ほむら「心配はないわ。大丈夫よ」

問題がないことを告げ、また先に進む。

ほむら(思いのほか数が多いわね……)

ここまでくる間、多くの使い魔を倒した。
が、奥に進むにつれ数を増やして襲い来る使い魔には正直手を焼いていた。

一人で先に進むにはこの程度の敵、問題はない。
しかし、今は二人を守りながら先に進まなくてはいけない。

魔法少女でない二人は当然身体能力の面でも一般的な少女と変わらず、
そんな二人のスピードに合わせ、守りながら先に進むというのは精神的にも肉体的にも辛いものがあった。





さやか「ゴメン……。私等、足手まといだよね……」

珍しくさやかが私に謝る。

ほむら(本当に珍しいわ、こんなこと今までのループでも……)

あまりの出来事におもわず笑ってしまう私。

ほむら「ふふふ」

さやか「な、なにがおかしいのさ!」

そんな私が気味が悪いのか狼狽するさやか。

ほむら「まさかあなたが私に謝るとは思わなかったから」

そう告げると、少し顔を赤らめいつもの口調で

さやか「な、人が心配してるっていうのになによそれ!!」

そういってそっぽを向くさやか。
あのさやかが私の事を心配して……?
ふふ、本当に今回のループはおかしなことが続くのね……。





ほむら「ごめんなさい。でも本当に大丈夫よ。
    少し疲れただけだから」

でも、その疲れももうなくなった。
私には心配してくれる人がいるのだから。

ほむら(こんなところでへばってはいられないわね)

心が少し暖かくなるのを感じ、私は先を見据える。
そして改めて、最深部へ向かうべく私達は再び走りだした。
126 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:56:52.11 ID:X9vlZUyI0
―マミ―


マミ「ここね」

魔女の結界がある。どうやら本当にまどかさん達は魔女の結界内にいるようだ。

マミ「全く、連絡くらいしなさいよ……」

これではなにかあった時のために連絡先を交換した意味がないではないか。

ほどか「行きましょう」

結界内に足を踏み入れるほどかさん。やはり少し焦っているようだ。

マミ(……少し、マズいわね)

焦りは冷静な判断をくだせなくなる。
命が関わってくる戦いにおいてそれは避けた方がいい感情だ。

マミ(なんだか、嫌な予感がするわ……)

無性に胸騒ぎがする。この戦いでなにか、悪いことが起きそうな……。そんな予感。

マミ(杞憂だといいのだけど――)

そう願いながら私も結界内に足を踏み入れた。
127 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:57:18.43 ID:X9vlZUyI0
―ほむら―


ほむら「ここね……」

多数の使い魔を退け、ただひたすらに最深部を目指し、ようやく辿りついた場所。

ほむら(この魔女だけはマミと戦わせるわけには……)

今までのループの中でも、マミがこの魔女にやられる確率は非常に大きい。
その大きな理由として単独でこの魔女に挑んだ。というものが挙げられるが――。

ほむら(私達の援護があるとはいえ、少しでも可能性があるならば……)

それは潰しておくに限る。

ほむら(少し、臆病になりすぎかしら……?)

今のところ今回のループは最高の形で進んでいる。
まどかもさやかも魔法少女にはならないだろうし、マミとも信頼関係を結んでいる。
後はワルプルギスを倒せば自分の目的は達成される。




ほむら(いいえ、臆病なくらいがちょうどいいわ)

少しでも甘さを出せば足元を掬われるかもしれない。
潰せる可能性は先に潰しておくに限るのだ。

ほむら(あとは……)

鹿目ほどか、彼女をどうするか――。
イレギュラーであり、不穏分子でもある彼女。

どういった考えを持っているのかもわからず、なにをするかもわからない。
ある意味では一番危ういと感じる存在。

それをどうするか――。

彼女に対する対策を考えつつ、魔女のもとへ近づく。

ほむら「今日は手早く済まさせてもらうわ」

私の前にいる。見た目は可愛らしい魔女に対しそう言い放つ。
理解しているのかはわからないが、そんなことはどうでもいい。
どうせすぐに消す存在だもの――。

128 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:57:44.14 ID:X9vlZUyI0
―マミサイド―


ほどか「……」

マミ「……」

やはり焦っている。
襲いかかる使い魔を倒しながらそう考える。

マミ(いつもの彼女ならもっとスマートに決めるもの)

なぜだかわからないが彼女は使い魔に対しても、魔女に対しても一撃で相手の息の根を止めるように戦う。

マミ(……、敵に対して情けはかけない、ましてや魔女や使い魔は人に仇なす害あるもの。
   かける情けなどない)

それゆえに一瞬で命を絶つ。そう考えるのが普通なのだろう。

マミ(だけど彼女は……)

できるだけ苦しめたくないから。その理由からそんなふうに戦っているように思える。




マミ(それがなぜだかわからない、彼女の優しさからくるものなのかもしれない)

でも、それだけではないような気もする。

マミ(でも、今日の彼女の戦い方は……)

できるだけ攻撃は最小限に留め、あくまで先を急ぐことを念頭に置いている。
だから、その攻撃は牽制。相手の足を止めるようなものに限られている。
でも、本来の精彩さはない。

マミ(この判断は正しい。だけどなぜかしら。この子らしくない戦い方がこうも焦っているように見えるのは)

親が危機なのだから焦る気持ちはわかる。だけど、戦いにおいて焦りは……。

マミ「ほどかさん」

先を走る彼女に話しかける。

ほどか「なんでしょう」

こちらに振り向かず声だけで要件を聞く彼女。




マミ「少し、焦りすぎではないかしら」

宥めるような声色でそう告げる。

マミ「あなたらしくないわよ。そんなことじゃ戦う前にバテてしまうわよ」

ほどか「でも急がないと……」

相変わらずこちらを振り向かずに答える彼女。

マミ「確かに状況は切迫しているわ。でも救援に行くものが冷静さを欠いてどうするの?」

私達は救援。現場の状況次第で動きを変える。冷静な判断力が必要なのだ。

マミ「それに暁美さんは優秀な魔法少女よ? 彼女ならそう無茶なことはしないはずだわ」

その言葉に少し速度を緩める彼女。そしてこちらに顔を向け。

ほどか「すいません……。少し冷静さを欠いていました」

そういって申し訳なさそうに謝るのであった。
129 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:58:11.66 ID:X9vlZUyI0
マミ「わかってくれたのならいいわ」

よかった。どうやら落ち着いたようだ。
ほっと胸を撫で下ろし、これなら大丈夫かと安心する。

ほどか「マミさんがいてくれてよかった……」

マミ「え?」

速度は変えずにそんなことを言う彼女に私はその意図が掴めずに聞き返す。

ほどか「私だけなら、きっとなにもできずにいました」

マミ「……」

ほどか「マミさんが協力してくれたから、お母さんを説得できたし、今もこうして冷静に戦うことができる」

マミ「……」

ほどか「マミさんが魔法少女の先輩として私達を見ていてくれるから私達は安心して戦える」

だから、と言いながらこちらを振り向き

ほどか「マミさんは私の憧れです。」

少し照れながら私にそう告げる彼女。
そんな彼女の言葉に思わず立ち止まってしまう私。





ほどか「マミさん?」

急に立ち止まる私を変に思ったのか彼女も立ち止まり、こちらに体ごと向き直る。

マミ「憧れる程のもんじゃないわよ……。私……」

ほどか「……」

マミ「無理してかっこつけてるだけで、怖くても辛くても誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり」

今まで無理して隠してきたものが溢れる。

ほどか「あ……」

マミ「魔法少女であるあなたならわかるでしょ? いいものじゃないわよ。魔法少女なんて」

ずっと。思ってきたことだ。そして誰にも言えなかったこと。
私の醜い部分。誰にも見せたくなかった部分。

俯き。何も言わない私に彼女が近づいてくる。

ほどか「マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃないです」

笑顔で私に語りかける彼女。




ほどか「お父さんがいるし、お母さんがいる。さやかさんもマミさんのことを尊敬してるんですよ?」

それに……。っといいながら彼女は私の顔を覗き見て。

ほどか「私だって、いるんですから」

彼女の笑顔が私の瞳に映る。
とても安心できる笑顔だ。

ほどか「マミさんが怖い時は一緒にいますし、辛い時はその辛さをわけてください。泣きたい時は私も共に泣きます
    だから、マミさんは一人じゃない。私が、みんながマミさんを守ります」

マミさんが私達にそうしてくれたように……。

マミ「……」

その言葉に瞳が潤む。彼女の笑顔が眩しい。
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 22:58:27.76 ID:/07bezn8o
ようやくシャル戦か
131 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 22:59:05.08 ID:X9vlZUyI0
マミ「わかってくれたのならいいわ」

よかった。どうやら落ち着いたようだ。
ほっと胸を撫で下ろし、これなら大丈夫かと安心する。

ほどか「マミさんがいてくれてよかった……」

マミ「え?」

速度は変えずにそんなことを言う彼女に私はその意図が掴めずに聞き返す。

ほどか「私だけなら、きっとなにもできずにいました」

マミ「……」

ほどか「マミさんが協力してくれたから、お母さんを説得できたし、今もこうして冷静に戦うことができる」

マミ「……」

ほどか「マミさんが魔法少女の先輩として私達を見ていてくれるから私達は安心して戦える」

だから、と言いながらこちらを振り向き

ほどか「マミさんは私の憧れです。」

少し照れながら私にそう告げる彼女。
そんな彼女の言葉に思わず立ち止まってしまう私。





ほどか「マミさん?」

急に立ち止まる私を変に思ったのか彼女も立ち止まり、こちらに体ごと向き直る。

マミ「憧れる程のもんじゃないわよ……。私……」

ほどか「……」

マミ「無理してかっこつけてるだけで、怖くても辛くても誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり」

今まで無理して隠してきたものが溢れる。

ほどか「あ……」

マミ「魔法少女であるあなたならわかるでしょ? いいものじゃないわよ。魔法少女なんて」

ずっと。思ってきたことだ。そして誰にも言えなかったこと。
私の醜い部分。誰にも見せたくなかった部分。

俯き。何も言わない私に彼女が近づいてくる。

ほどか「マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃないです」

笑顔で私に語りかける彼女。




ほどか「お父さんがいるし、お母さんがいる。さやかさんもマミさんのことを尊敬してるんですよ?」

それに……。っといいながら彼女は私の顔を覗き見て。

ほどか「私だって、いるんですから」

彼女の笑顔が私の瞳に映る。
とても安心できる笑顔だ。

ほどか「マミさんが怖い時は一緒にいますし、辛い時はその辛さをわけてください。泣きたい時は私も共に泣きます
    だから、マミさんは一人じゃない。私が、みんながマミさんを守ります」

マミさんが私達にそうしてくれたように……。

マミ「……」

その言葉に瞳が潤む。彼女の笑顔が眩しい。
132 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:00:46.19 ID:X9vlZUyI0
そうか、そうなんだ。
私には……。

マミ「そうね、そうなんだよね……」

彼女の手を握る。
とても温かく凄く安心する。

マミ「本当にこれから私を守ってくれるの? 傍にいてくれるの?」

涙が零れる。でもそれを拭わず彼女の手を握り続ける。
彼女は私の行動に驚いた顔をしたが、すぐにもとの笑顔に戻り。

ほどか「はい。私なんかでよかったら」

そう私の懇願に応えてくれるのであった。

マミ「まいったな、まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのにな……」

照れ隠しにそんなことを言いながら、彼女の手を離し涙を拭う。
我ながら恥ずかしいところを見せてしまった。

マミ「やっぱり私、ダメな子だ」

笑いながらそう言う。

ほどか「マミさん」

そんな私に彼女も笑顔で返してくれる。

マミ「少しムダに話し過ぎたわね、こんな時に」

苦笑し、今の状況下でなんてことを話していたのかと反省する。

マミ「ごめんなさいね。急ぎましょう」

改めて先に進む。彼女も同じように苦笑し歩き始める。


マミ「本当にありがとう、かっこわるいとこ見せちゃったね」

ほどか「いえ、そういうマミさんも可愛いですよ?」

笑顔でそんなことをいう彼女に少し赤面する。

マミ(こ、この子は素でそんなことを……)

マミ「そ、そうだこの魔女をやっつけたらみんなでパーティーしない?
   仲間になってからそういうことしてないし、記念ってことで)

感情を誤魔化すためにそんなことを提案する。

ほどか「いいですね。 マミさんがケーキとか作ってくれるんですよね?」

マミ「え、ええ。まぁ」

ほどか「楽しみです!」

とびっきりの笑顔でそにう彼女。
そして、またまた赤面してしまう私。

マミ(も、もお。なんなのよこの子は……)


ほどか「使い魔が!!」

マミ「任せて! 今日という今日は速攻で片づけるわよ!!」

並み居る使い魔に猛攻を加える。

133 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:01:24.55 ID:X9vlZUyI0
マミ(体が軽い……)

使い魔を倒しながらそう思う。

いつも感じる重さがない。解放された気分だ。

マミ(こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて……!)

傍にいるほどかさんを見る。
彼女も、自身の武器を使い使い魔を倒していく。





マミ(もぅ何も怖くない!)

そう、怖くない。

なぜなら――。

マミ(私、一人ぼっちじゃないもの!)

周りにいる使い魔を一掃し終える。
そんな私にほどかさんは驚きの声をあげる。

ほどか「す、すごい……」

使い魔を片づけ、彼女の手を取り再び走り出す。
そう。私は一人じゃない。今の私は誰にも負けない!

マミ(待っててね、みんな!!)
134 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:01:53.80 ID:X9vlZUyI0
―ほむら―

ほむら「はっはっ」

あと少し、そんなところまで魔女を追い詰めることができた私。

ほむら(この魔女の本体はこいつじゃない。でもそろそろ……)

出てくるはずだ。こちらの猛攻に耐えその攻撃が止んだ時、そいつは姿を現す。

ほむら(これで、これでマミは死なずに済む)

なんとか無事に済みそうだ。
その安心からか今までの疲労も重なり、少し気を抜いてしまった。

だが、それがいけなかった。

ほむら「っ!?」

まどか達が数体の使い魔に狙われたいることに気づくのが一瞬遅れてしまったのだ。

ほむら「しまっ!」

結界は張っている。だけど私の魔法少女としての才能はあまり高くない。
だからあまり強力な結界は張れない。




ほむら(くっ!!)

急いで時を止めまどか達のもとへ向かう。

結果、まどか達を守ることはできた。
しかし、安心したのも束の間。

ほむら「ぐぅ!!?」

腹部に強い衝撃。
時が動いた瞬間。隙ができていた私を魔女が見逃すはずはなく私は魔女の攻撃をモロに受けてしまった。

まどか「ほむらちゃん!!」

さやか「ほむら!!」

二人の叫び声。
攻撃を受けた私はそのまま壁に叩きつけられ、そのまま地面に落下。俯せに倒れる。
意識が朦朧とする。

ほむら(ま、まずい……。二人を守らないと)

二人のもとに使い魔達が再度近寄る。
このままでは二人が危ない。
135 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:02:24.78 ID:X9vlZUyI0
ほむら(っつ! 思ったよりダメージが大きい……)

急ごうとするが体が思い通りに動かない。
二人を守らないといけないのに……。

まどか「あ、あぁ……」

さやか「こ、こっちくんな! あっちいけ!!」

さやかが腕を振り使い魔を退けようとするがそれも無駄。

徐々に近寄る使い魔。
そして遂にその内の一体が襲いかかる。

ほむら「ダ、ダメ!!」

使い魔がさやかに喰らいつこうとし、もう駄目かと思ったその時、

ドン! っという発砲音がしたかと思うとまどか達に襲いかかった使い魔が消え去る。
そして発砲音が続き、まどか達の近くにいる使い魔は次々と倒される。

「どうやら間に合ったみたいね」

声がした方に目を向けると人影が二人。

ほむら「あ……」


マミ「まぁ、主役は遅れてくるのが王道よね!」

ほどか「まどかちゃん! さやかさん!」

マミがマスケット銃を魔女の前で構え牽制。その隙に鹿目ほどかがまどか達を庇うように立ち、二人に結界を張る。

ほどか「怪我はないですか!?」

まどか「私達は大丈夫! それよりほむらちゃんが!」

その言葉に私の方を見る鹿目ほどか。
その表情はひどく狼狽しているようだ。

ほどか「マ、ほむらさん!!」

急いで私に近づく彼女。
そして私の傍で盾を操作する。

ほどか「今すぐ傷を治します!」

その彼女の行動を押し留め彼女に今やるべきことを伝える。

ほむら「私はいいからそれよりマミを! あの魔女は――!!」

ほどか「え!?」




マミの方を見る。
魔女に猛攻を加え、今まさに止めをさすところに見えた。

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

魔女を撃ち抜くマミの必殺技。

まどかもさやかも勝利を確信したのか喜んでいるように見える。

マミ(やった!)

マミもこれで終わったと緊張を解いたようだ。

だが、しかし――。

倒したと思った魔女の口から、本体が出現し高速でマミのもとへ接近。
そしてその巨大な口を大きく開き、その鋭い牙で今まさにマミを噛み砕かんとしていた――。

マミ「あっ――」


そして、肉と骨が噛潰される、ぐちゅ、ぐちゃっ、っという聞き慣れない音が辺りに響いた――。
136 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:03:02.91 ID:X9vlZUyI0
まどか「ひっ――」

さやか「う、嘘――」

ブチブチ! と皮が切れるような音が聞こえた。
そしてなにかが噴き出す音――。

辺りに漂う、鉄の、臭い。

まどか「い、いやああああああああああああああああ!!!!!!!!」

そして、まどかの絶叫――。






まどか「ほ、ほどかちゃーーん!!!」





鹿目ほどかの名前を叫び、腰が抜けたのかまどかは地面にへたりこむ。
気を失いかけているようだった。

マミ「あ、あぁ……」

マミの前で吹き荒れる血しぶき。
それはマミの全身を濡らし、彼女を赤く染める。

そう……。結果を言えば、マミは助かった。

しかし。

ほどか「くっ……」

苦しげに呻く鹿目ほどか。
当然だろう。彼女の右腕からは、いや……。
今はもう存在しない右腕があった場所からは血が噴いているのだから。




ほむら『私はいいからそれよりマミを! あの魔女はマミを殺した魔女よ!!』

ほどか『え!?』

その言葉を聞いた彼女はそれだけで状況を察知、急いでマミのもとへ急行した。

その結果、マミは彼女に救われた。

しかし、代償は大きく。
マミの命を救った引き換えに彼女は自身の右腕を失った。

ほどか「つぅ……!」

目の前の光景に呆然とするマミを安全な場所に移動させ、急いで自分の服を破り、止血をする彼女。
137 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:03:30.45 ID:X9vlZUyI0
ほどか「ぐぅ……」

苦悶の表情を浮かべる彼女は、しかしすぐにその顔を笑顔に変え

ほどか「大丈夫ですかマミさん?」

っとマミを気遣うのであった。

マミ「だ、大丈夫って、あなたのほうが……!」

その言葉に少し気を取り戻したのか、だがそれでも狼狽しながら答えるマミ。

ほどか「私なら大丈夫です」

平気そうな顔を作りマミを安心させるためにそう答える彼女だが、その額には大粒の汗をいくつも浮かべている。




マミ「そ! 大丈夫なわけ!! どうして私を庇って!」

相変わらず錯乱するマミ。その顔は真っ青だった。

ほどか「だって、いいましたよね? マミさんは私が守るって」

無理矢理だろう。激痛を堪え、再び笑顔でそうマミに告げる。
そして彼女はこう言った。

ほどか「待っててください。すぐにあの魔女をやっつけちゃいますから」

そして魔女のもとへ向かう彼女。

そんな彼女を止めるマミの声。

マミ「ま、待ちなさい! そんな怪我じゃ……!」

そのマミの静止を振り切り、でも、一つだけ言葉を残す。

ほどか「大丈夫ですよ。私、結構強いんですよ? 早く終わらせてマミさんのケーキ、食べたいですし」

そう言い残し、魔女の前に立つ鹿目ほどか。
魔女も彼女の腕を喰らい終え、眼下に立つ彼女を見据える。
138 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:03:57.53 ID:X9vlZUyI0
ほどか「あなたに恨みはないけど、みんなの為にも、私の為にも……。倒します!」

キッと魔女を睨みつける彼女。
そんな彼女に、その全てを喰らおうとする魔女の牙が迫る。

さやか「あぁ!!」

彼女の体はそのまま飲み込まれたかのように見えた。
そのことにさやかが叫ぶ。

だが、彼女は無事で、少し離れた場所に立っていた。

ほどか(助ける時も、時を止めればよかったのにな。そこまで頭がまわらなかったや。
    焦るなってマミさんに言われたばかりなのに……。私のバカ)

なぜ、避けられたのかわからない魔女はもう一度、彼女を喰らおうとするがやはり無駄で……。

ほどか(ごめんね、痛いと思うけどこうするしかないの)




何度か喰らおうと迫り、それを避けられを繰り返す魔女。

ほどか(恨まないで。とは言わない。でも、私も必ず報いは受けるから)

だから、ごめんね――。

っと彼女の呟く声が聞こえた気がした。



そして、辺りに響く爆音。




自身の攻撃を避けられ続ける魔女はなぜかわからず、しかし、他に方法がないのか相変わらずの攻撃を繰り返していた。
そして、ついに鹿目ほどかの反撃を受けたのであった。

おそらく、爆音の正体はC4だろう。
それを噛み付かれる瞬間に魔女の体、そして最後に口内に取り付け、仕留められる量を仕掛けたら起爆。
魔女はその爆発に耐えられずにその体を四散させた。

ほどか「ふぅ……」

爆煙が晴れた後、そこには鹿目ほどかの立つ姿だけが残り、今度こそ本当に戦いが終わったことを告げる。

さやか「終わった、の……?」

終わった。
だが、勝利の代償は消えない傷跡となって、彼女の体に残した。

139 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:04:23.61 ID:X9vlZUyI0
ほどか「……」

さやか「ほどか!」

戦いが終わり、安心したのか、彼女は倒れこむ。

さやか「ほどか! ほどかってば!!」

さやかが彼女の名前を何度も呼び続ける。
しかし、完全に気を失っているのか、彼女はなんの返答もよこさない。





ほむら「このままでは危ないわ」

血を失い過ぎている。
血はまだ止まっていないのだろう、彼女が止血するために用いた服を今も赤く染め続けている。

ほむら「マミ」

今も呆然と座っているマミに呼びかける。
この傷を治せるのは、といっても無くなってしまった腕の再生までは無理だろうが。
しかし、とりあえずの傷を治すことができるのはマミしかいない。

ほむら(まぁ、魔法少女はソウルジェムさえ無事なら死にはしないのだけど)

だが、このままにしておくのはまずい。
明らかに生命活動を続けるには難しい出血をしたにも関わらずにも生きている彼女を見れば、みんなが不審に思ってしまう。

ほむら(それは避けたい。魔法少女の真実を知られるわけには……)

マミは相変わらず放心状態だ。無理もないが、それでは困る。




ほむら「マミ! 何をしているの! この子を治すことが出来るのはあなたしかいないのよ?」

命の恩人を見捨てるつもり?

そういった直後、マミがやっと動き彼女の体を泣きながら癒し始める。

マミ「ほどかさん! ごめんなさい! ごめんなさい!!」

ほむら(これでいい)

本来ならばこの子にはここで死んでもらうのが望ましいけど――。

ほむら(でも、この状況で見捨てるような真似は、ね)

そんなことをすればまどか達の反感を買ってしまうだろう。

ほむら(それは避けたい。せっかくここまでうまくいってるんだから)

それに、彼女を救う為にまどかに契約されでもしたら困る。

ほむら(それはあなたも本意ではないでしょう?)

意識のない鹿目ほどかに対し、そう問いかける。
当然、返答はない。
140 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:04:49.51 ID:X9vlZUyI0
ほむら(……)

彼女を一瞥し、マミと同じく放心状態のまどかのもとに近寄る。

ほむら「まどか、大丈夫?」

まどかにそう声をかける。
可哀想に……。怖かったのね。こんなに震えて……。

ほむら「もう大丈夫よ、もう怖い魔女はいないわ」

努めて優しくまどかにそう語りかける。

まどか「あ、あ……。ほどかちゃんが……」

相変わらず彼女の心配をするまどか。
彼女なら死んではいないというのに……。





ほむら「大丈夫よ、彼女は今、マミが治療しているわ」

まどか「腕は!? ほどかちゃんの腕は治るの!!?」

まどかがそう叫ぶ。
よかった。気は取り戻したようね。

ほむら「残念だけど、腕の再生までは無理ね。彼女の能力はあくまで癒し。なくなったものを作ることは無理よ」

まどか「そ、そん……な……」

その言葉を聞きまた放心するまどか。
まったく、命はあると言っているのに。

やっぱりこの子は優しすぎるわね。

でも、これは利用できるかしら。

ほむら「まどか。これが魔法少女として戦うということよ」

さっきまでとは違い、少し強めの口調でまどかに語りかける。
141 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:05:16.59 ID:X9vlZUyI0
ほむら「こんな風に傷つき、いつ命を失うかわからない戦いを続けるのが魔法少女の宿命」

そう、それが魔法少女というもの。
テレビ等で見るような幼い少女が憧れる甘い世界とは違う。

ほむら「今回はまだ運がいい方よ。腕だけで済んだんだから」

そうまどかに告げた時、


待ちなよ――。


っという声がこの空間にあがった。




さやか「運がいい? 腕だけで済んだ?」

さやかが語気を荒げながら私に近づく。

ほむら「えぇ、そうよ。命があっただけマシ。もしかしたら命を失っていてもおかしくはなかったのよ?」

その通りだろう。少し運が悪ければ彼女の命は……。
そんな私の言葉に怒りが臨界点を突破したのか、さやかが私の胸倉を掴み睨みながら叫ぶ。

さやか「あんったは! あれを見てなんとも思わないの!? ほどかは! ほどかの腕は!!!」

なんだというのか。確かに私の言い方は冷たいかもしれない。

だけど、

ほむら「私は、事実を、言った、までよ」

胸倉を掴むさやかの腕を掴み強引に離そうとする。
私は何も間違ったことは言ってはいない。

さやか「そんなことを言ってるんじゃない!! 
    あんたには! あんたにはほどかが傷ついたことを悲しむ心はないの!!?」

私の反抗に負けじと掴む手に力を入れるさやか。
142 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:05:42.94 ID:X9vlZUyI0
なぜ、私があの子のことで悲しまないといけないのか。
だがそれを言うわけにはいかない。
信頼を失ってしまう。

ほむら「悲しいとは思うわ。当然じゃない。仲間だもの」

本当は仲間とは思ってはいない。
むしろ彼女は敵だ。
そう思っている。

さやか「嘘だね……。あんたはほどかのことを仲間とは思っていない……! 
    あんたの目は! あの子を、敵だと言ってるね!!」

相変わらず、人の感情には鋭いことを言うさやか。

ばれているのなら仕方がない。

ほむら「えぇ、そうよ……。私はあの子を仲間とは思っていない……! 
    むしろ敵だと認識しているわ!」

そう言って、さやかの拘束を解きその体を突き放す。





さやか「あんたは!! あんたはあぁぁ!!!」

バチン!! っと何かをはたく音が聞こえた。





いや、叩かれたのだ。
私が、まどかに。





まどか「……」

いつの間にか立ち上がり私の前に無表情で立つまどか。

143 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:06:12.01 ID:X9vlZUyI0
さやか「まど、か……」

マミ「まどか、さん……」

ほむら「あ……」

じんじんと痛む右頬を抑え、私はあまりの出来事に呆然と立ち尽くす。

ほむら(たたかれ、た……?)

わた、しが、まどかに……?

まどか「ほむらちゃん……」

依然、無表情で、感情のこもらない声色でまどかは私に話しかける。
だけど、何も感じられないはずのその声には確かな迫力があった。

まどか「ほむらちゃんはほどかちゃんを仲間だとは思ってないの?」

今さっき言った言葉をまどかは聞いているのだろう。
だから、その言葉をもう一度、ただもう一度言えばいい。

だけど……。

ほむら「あ、私は……」

言えない。
まどかの迫力に。そして、言ってしまえば全てが終わる気がして。
私は、何も言えなかった――。





まどか「わかったよ」

なにがわかったというのか、沈黙は肯定と受け取ったのか。
まどかは諦めた表情をして、二度、首を振り、私に、こう宣言した。

まどか「ほむらちゃんは、ほどかちゃんを仲間だと思っていない」

ううん。違うね
っと言い。

まどか「ほむらちゃんは、ほどかちゃんを敵だと思ってる」

そう言って私をキッと睨み付け。

まどか「なら、ほむらちゃんはほどかちゃんの敵。つまり――」




私の敵だよ――。




私にとってなによりも恐れる。でも、想像だにしなかった言葉を投げかけた――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
144 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:06:38.91 ID:X9vlZUyI0
―まどか―

どうも。鹿目まどかです。
今、私は自宅にいます。

本当は学校にいなければいけない時間なのだけれど、事情があり休みました。

まどか「はい、ほどかちゃん」

ベッドに腰掛けるほどかちゃんに、うさぎの形に切られたリンゴを差し出す。

ほどか「……」

ほどかちゃんはそれを無言で首を振ることによって、食べる意志が無いことを告げる。

まどか「おとついからなにも食べてないでしょ? ダメだよ何か食べなきゃ」

ほどかちゃんが右腕を失ってからあれから二日。
マミさんの治療の甲斐あってか、なんとか一命を取り留めたほどかちゃん。
すぐに意識を取り戻し、私達はそのことにほっと胸を撫で下ろした。
145 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:07:20.68 ID:X9vlZUyI0
―― 二日前 病院 ――


ほどか「ん――」

まどか「ほどかちゃん! よかった! 意識が……」

マミ「よかった……。本当に、よかった……」

さやか「ったく! 心配かけさせんなっての!!」

意識を取り戻したほどかちゃんに抱き着く。
ほどかちゃんは状況を把握できていないみたいでボーっとしていたけど、意識がはっきりしてきたのか

ほどか「ママ! ママは!? ママは無事なの!?」

辺りにいないほむらちゃんに気づき、そう尋ねる。

その言葉に暗い顔をするマミさんとさやかちゃん。
その表情に勘違いしたのかほどかちゃんは慌てて





ほどか「ま、まさか、ママになにか!?」

ほむらちゃんを探そうと立ち上がる。
だけど血を失いすぎたのか、今まで気絶していたのに急に立ち上がったせいか、貧血を起こし、また倒れる。

マミ「ダメよ! 治療したとはいえ、まだ安静にしてないと!!」

ほどか「でもママが! ママが!!」

ほどかちゃんらしくなく酷く狼狽、錯乱する。
そして抑えつけようとするマミさんを払いのけようと暴れる。

まどか「安心して。暁美さんは無事だから」

落ち着かせる為に暁美さんの無事を伝える。
その言葉にほどかちゃんは安心したのか、全身の力が抜け、マミさんの体にもたれかかる。

だけど、なにかに気づいたのか、私の顔を驚いた顔をして見上げる。





まどか「どうしたの?」

ほどか「パパ、ママのこと……」

まどか「暁美さんがどうかした?」

ほどか「な、んで……」

なにが起きたのかわからない。
といった顔をするほどかちゃんに私は一つ息を吐き、さっきあったことを説明することにした。

まどか「さやかちゃん、マミさん。ごめん。
    この子と二人っきりにして」

その言葉にさやかちゃんが声をあげる。

さやか「!? まどか!」
146 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:08:57.21 ID:X9vlZUyI0
そんなさやかちゃんをマミさんが声で静止する。

マミ「美樹さん。ここはまどかさんの言う通りに……」

さやか「で、でも……」

納得できないと言いたげにするさやかちゃんに、マミさんは今度は強めに

マミ「美樹さん!」

さやか「っ!」

その声にビクッっと体を震わせ、そして素直に言うことを聞き、そのままマミさんと一緒にこの場から去る。
去り際にほどかちゃんに向けて、すごく申し訳なさそうにしていたさやかちゃんの顔が印象に残った。





まどか「……」

ほどか「……」

二人が去ったこの場所で私は今、ついさっき起きたことを話した。
真実をありのままに――。

ほどか「それで、お母さんは……」

しばらく沈黙が続きほどかちゃんは暁美さんがどこに言ったのかを聞いてきた。

まどか「知らないよ」

後を追ったわけではない。
だから私が暁美さんの居場所を知っているはずがない。





ほどか「そう、ですか……」

ほどかちゃんは私を責めなかった。

責めずに、ただ、ただ悲しそうに、泣きそうな顔で俯いていた――。

私を責めたらどれだけ楽になれただろう。
涙を流せばどれだけ楽になれただろう。

でも彼女はただ黙って、事実を受け入れ、一人悲しむのだった。
147 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:09:24.53 ID:X9vlZUyI0
―― 現在 ほどルーム ――


まどか「一口だけでもいいから食べて? お願いだから……」

このままではほどかちゃんの体が持たない。
でもほどかちゃんはただ無言で、リンゴを一瞥すらせずに俯いていた。

まどか「……。りんご、ここに置いておくね。気が向いたらでいいから食べて?」

ほどかちゃんの近くにリンゴの入った容器を置く。

まどか「体を拭くタオルを持ってくるね? 汗、かいたでしょ?」

タオルを持ってくる為に部屋を出ようと立ち上がる。

ドアの前で振り返り、彼女の右腕を見る。
可愛らしいピンクのパジャマを着た彼女の右腕は、そこにあるはずのものがなく、
換気の為に開けた窓から入る風に、その薄い布をゆらゆらと揺らすのでした。




まどか「待ってて?」

できるだけ陽気にそう言って部屋を出る。

バタン。
ゆっくり閉めたはずのドアの音が嫌に大きく聞こえる。

まどか「……」

洗面所にあるタオルを取りに、階段を降りたところで声をかけられる。

知久「まどか、ほどかの様子は……」

その問いに無言で首を振る。
それで全てを察したのか、溜め息を吐くパパ。





知久「何があったのか詳しくは聞かない。まどか達が話す気になるまではね」

でも、と付け加えパパは話を続ける。

知久「僕もママもタツヤもまどかを、ほどかを心配している」

それだけはわかってるね? っとパパは言ってくれる。

まどか「うん。ありがとう」

嬉しいよ。といい私は洗面所に向かう。

実際にありがたいことだった。
魔法少女の存在もほどかちゃんが戦っていることも知っているパパ達。
二日前に右腕を失ったほどかちゃんを連れて帰ってきた時も、なにも聞かず、
ただ黙って私達を受け入れてくれた。

でも、その時の表情はとても痛々しいもので、私は今もその時のパパ達の顔が忘れられない。
148 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:09:52.92 ID:X9vlZUyI0
ほどか「ママ……」

誰もいない部屋でただ後悔する。

ほどか「私の、せいだ」

私があの時、魔女の攻撃をしっかり避けていれば。

私があの時、マミさんをあの場所に連れて行かなければ。

ほどか「私のせいで、ママとパパは……」

もっと私が考えて行動していれば、こんなことには……。

ほどか「ごめん……なさい」

誰かがいるわけではない。だけど謝らずにはいられない。




ほどか「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……」

痛い思いをさせていまった、殺してしまった魔女さんにごめんなさい。
怖い思いをさせてしまったマミさんにごめんなさい。
嫌な後景をみせてしまったさやかさんにごめんなさい。
心配をかけてしまったおじいちゃん、おばあちゃん、タツヤおじちゃんにごめんなさい。
酷いことを言わせてしまったパパにごめんなさい。

そして。

ほどか「ママ、ごめんなさい」

悲しい思いをさせてしまったママに、ごめんなさい――。





ほどか「私が、弱いから……。バカ、だから……」

みんなに辛い思いをさせてしまった。

ほどか「こんなんじゃ、こんなことじゃ……」

誰を救うことも――。

ほどか「もっと、強くならなきゃ、もっと、強く――」

じゃないと、誰も守れない。

いつのまにか流れていた涙を拭い、立ち上がる。
そして、今はもう無い右腕を見る。
149 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:10:34.72 ID:X9vlZUyI0
ほどか「とりあえず……」

この状態ではこれからの戦いで不便だ。

ほどか「……」

魔法少女に変身し対策を講じる。

ほどか「これでよし」

右腕に確かな質量を感じる。
質感はないがこれで武器は持てるだろう。

ほどか「慣れるまで時間はかかるだろうけど。仕方ないよね」

本当は右腕が切断されただけとかならばなんとかなったのだけど……。




ほどか「全部食べられちゃったもんね」

これじゃ時間を戻しても復活はできない。

ほどか「対象がないとさすがに無理だもん」

意外と不便な能力だな。そう思う。

ほどか「まぁ、私が悪いよね」

油断したのは私だ。
魔女戦が命がけなのは重々理解していたはずなのに。





ほどか「命があっただけ運がいいんだよ」

きっとそう。

ほどか「よし。みんなにもう大丈夫だって言わないと」

そして、ママとパパに仲直りしてもらわないとね。

ほどか「喧嘩中のパパとママの仲直りは娘の私にお任せ! だね」

笑顔で右腕を上げる。
うん。大丈夫、私は笑顔だ。

だからきっと、大丈夫。
150 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:11:02.56 ID:X9vlZUyI0
―まどか―

まどか「はぁ……」

用意を終えて、ほどかちゃんのもとに戻ろうとする。
するとパパ達がいるリビングから声が聞こえた。

「寝てなくて大丈夫なのかい!?」

「大丈夫です! 御心配をおかけしてごめんなさい。この通り! 私は元気ですから」

「ほどかー!」

まどか「え? ほ、ほどかちゃんの声!?」

私が今、一番聞きたい声が聞こえ、私は慌ててリビングに戻る。

まどか「ほどかちゃん!!」

ドタドタと廊下を走る。
そしてリビングに入るとそこには。

ほどか「あ、ダメですよ、お父さん。廊下は走っちゃ」

そういって右腕を使い私の頭に優しくメッとするほどかちゃんがいた。





まどか「あ、ご、ごめん。って右腕!! なんで!?」

なんであるの!? さっきまでは……!

ほどか「生えました!!」

そう言って、ほどかちゃんは右腕をぶんぶん振る。

いやいや!! 生えたって!! いやいやいや!!!

まどか「生えないよ!! 腕だもん!!」

そうやって否定する私にほどかちゃんは急に真剣な顔をして

ほどか「実はですね……」

なにやら秘密の話をするようにほどかちゃんは私に耳打ちするように話す。
151 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:11:29.07 ID:X9vlZUyI0
まどか「え? なになに」

凄く真剣な表情の彼女におもわず身を乗り出してしまう。

ほどか「私は、頭さえ無事なら体を再生できるんです」

そ、そっか。そうなんだ……。それは凄い!

まどか「って! んなわけないでしょ!!」

再生できるんなら今までやらない必要ないじゃん!!

ほどか「お、おぉ……。お父さんにしては鋭いツッコみ」

なにやら感心するほどかちゃんだけど、バカにされてるようにしか感じない。




まどか「ほ〜ど〜か〜ちゃ〜ん?」

さすがの私も怒るよ?

ほどか「あー、ごめんなさいごめんなさい! 怒らないで!」

降参っとお手上げのポーズをしてなぜ右腕があるのかの説明するほどかちゃん。

ほどか「実はですね」

こういうことです。っと右腕を外すほどかちゃん。

まどか「ちょ」

驚く私。

まどか「え!? なに!? どうして!?」

なにこれ!! 
え!? 右腕とれ!!? え!?




ほどか「あー。義手ですこれ」

まどか「ぎしゅ?」

聞きなれない単語だ。

ほどか「要は人工の腕ですよ」

そういってそれを私に渡す。

まどか「わわ。……ほんとだ」

触ってみたらわかる。
これ、作り物だ。

ほどか「わかってくれました?」

そう言って私から義手を取りまた右腕があった場所に填める。

まどか「……」
152 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:12:20.81 ID:X9vlZUyI0
ほどか「それよりお腹が空きました。リンゴは食べたんですけどまだ足りないみたいです」

そういうと空の容器を見せ。お腹を押さえる。

ほどか「おじいちゃん、すいませんけど何か食べさせてくれたら嬉しいです」

そういってお腹を押さえながらパパにそう伝える。

知久「え? う、うん。ちょっと待っててね」

一連のやりとりをボーっと見ていたパパはそう言われ慌ててキッチンにはいる。

知久「なにかリクエストでもあるかい?」

ほどか「じゃあオムライスがいいです!」

腕をあげ、そう答えるほどかちゃん。

タツヤ「おむらいすー!」

その声に一緒になって腕をあげるタツヤ。




ほどか「タツヤおじちゃんも一緒に食べましょうねー。
    おじいちゃんのオムライスはとってもおいしいですから!」

そう言ってタッちゃんを右手で撫でようとする。
けど、一瞬躊躇った顔をした後、左手に変え笑顔で撫でる。

まどか「っ!」

私はそんなほどかちゃんを抱きしめる。
強く強く、絶対に離さないように。

ほどか「わわ! どうしたんですか! 急に抱き着かれたら危ないですよ!」


私は病み上がりなんですよ?


そう抗議の声をあげるほどかちゃんだが、そんなことはどうでもいい。




まどか「やめてよ……」

ほどか「え?」

まどか「やめてよ……。無理するのはやめて!」

おもわず大声になってしまう。
でも、もう止まらない。

まどか「なんでそんなに無理するの!? 辛いんでしょ! 悲しいんでしょ!!」

なら! なら!!

まどか「私にそれをぶつけてよ!! これじゃ! これじゃあ!!」


私はなんのためのパパなの!!?


そう言うと場は静寂に包まれた。

そして、しばらくしてからほどかちゃんの


ごめんなさい――。


その言葉がかすかに、聞こえた。
153 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/21(土) 23:21:45.57 ID:X9vlZUyI0
あぁ、ごめん眠すぎるからちょっとねる
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/07/21(土) 23:23:50.40 ID:13vUoN0Yo
乙ー
こっちなら落ちる心配もないしゆっくり寝なされ
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/21(土) 23:36:29.82 ID:2o4xsFr+o


前回と変わったのってどの辺だろう
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/21(土) 23:41:15.07 ID:4wGpYpvJo
待ってる
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/21(土) 23:59:37.11 ID:CU+vFoO9o
期待
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 00:12:43.68 ID:Ev8bChXvo

続きに期待してる
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/22(日) 00:20:36.21 ID:ux78wd+Eo
待つぞ
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 00:53:04.15 ID:tzi3+e6No
向こうで次スレ立てた上に誘導までしてんのか
またこっちに変なのが大量に増えるな
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 01:03:10.92 ID:vA4trRQDO
>>160
そこまで粘着する奴いないんでね?
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 01:04:18.68 ID:tzi3+e6No
>>161
純粋に変なのが増えるんだよ
板ルール読まないでvipのノリで突っ走るやつ
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) :2012/07/22(日) 01:12:19.06 ID:VSJgaSWY0
ワクワク
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 01:46:16.69 ID:s1n8qZ7ro
今来たけど、まだほどかのままなのかよ
せっかく引っ越したんだからもっとまともな名前にすりゃいいのに

ほどほどにしとけよな
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/22(日) 01:53:11.09 ID:UdryUK4m0
・・・と言ってるそばから、その変なのが来たようだ
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/22(日) 02:00:06.10 ID:i1WXlM2so
ほどほど言いたいだけやろ!
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/22(日) 02:26:08.24 ID:bDcSZqt7o
ほwwwwwwwwどwwwwwwwwwwwwwwかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 04:38:19.62 ID:jV0mYPyIO
スレで絶賛されまとめに載ってニヤニヤしたかったろうに
メシウマwwwwww
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 08:28:12.62 ID:vA4trRQDO
>>168
板違いなんでお引き取りください。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/22(日) 08:30:22.02 ID:jXgE87Yso
このスレ一見さんお断りなんだっけ?
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/22(日) 08:41:53.80 ID:EU0JihWUo
>>170
それは荒らしが立てたスレの謳い文句だろ
最初から投下してるぞここは
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 09:34:48.87 ID:s1n8qZ7ro
いくらなんでもほどかは無いわ
あんまりだよ
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/22(日) 10:33:47.36 ID:YlYrxPVMo
だからほのかかホミカにしろとあれほど
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 11:00:38.35 ID:LGdZwZUIO
Vodkaちゃん!
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/22(日) 11:00:55.35 ID:GKdOp7ito
ほどほどにしとけよほどか
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 11:04:14.03 ID:BY15OBAto
|w0)オデノカダダハ…
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/22(日) 11:04:14.29 ID:EU0JihWUo
>>174
すげえしっくりきた
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 11:09:55.35 ID:s1n8qZ7ro
>>176
ジョーカーは帰れ
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 11:23:47.56 ID:LGdZwZUIO
叩かれることこそ美徳と言っておきながら結局ここまで逃げちゃったんだね
アホスwwwwwwwwwwwwwwww
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/07/22(日) 11:31:46.31 ID:hPqm45RM0
ほどかはなぜ,ほむらには本当のこと言わないんだ?
てか、未来では女の子同士でも子供が作れるんだ。遺伝子操作の技術
めっちゃ発達しているんだな
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 11:34:13.69 ID:FYt7Ypv4o
ほむらがまどさやに執拗に非難されるのがよくわからないんだけど
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 11:40:39.86 ID:BznlPB9uo
ほどかがほむらの娘でそのことを言えないにしても、
未来からきた云々はだれか説明しろよ
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 11:43:19.93 ID:s1n8qZ7ro
おっさんまどか
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 12:23:26.95 ID:VJDhWXb3o
まだ続きがあるんだから気長に待とうぜ
ここは2ヶ月は落ちないし、保守もいらないよ
あと書いてる人以外は基本sage推奨
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/22(日) 12:26:19.01 ID:s1n8qZ7ro
age
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 12:34:48.03 ID:qaz5hDemo
重大な局面をギャグで都合よく流した以上はもう全部ギャグとして進めてほしい
ほどかがどんな裏を持ってたとしてもギャグで覆せちまうから
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/22(日) 13:12:57.47 ID:s1n8qZ7ro
名前自体がギャグと言う
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/22(日) 15:42:05.93 ID:jV0mYPyIO
普通につまらん
特に荒らしにに対して保険掛けてるところが一番寒いわ
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/22(日) 15:43:15.61 ID:jV0mYPyIO
つまんね
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/22(日) 17:37:44.30 ID:sU2RZGtPo
まあSS速報ならマンセーしてもらえるだろ
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 17:46:52.34 ID:VJDhWXb3o
つまらないと思う方はVIPのノリで書き込まないでお帰り下さいね
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/22(日) 17:49:17.58 ID:ws5p/Kl2o
ここは批判お断りの信者様の根城だもんな
撤収だ撤収
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/22(日) 17:52:03.50 ID:i1WXlM2so
長屋が出たぞwwww
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/07/22(日) 18:02:17.74 ID:35oi0N9AO
>>193

長屋って何なんですか?
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 18:06:47.05 ID:XT0AUEoB0
さやかが恭介に振られて杏子と子作りとか安易でつまんない展開は勘弁な!
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/07/22(日) 19:47:22.70 ID:t61eTvXe0
続きまだー?
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/22(日) 20:43:49.41 ID:Ta0VyqT3o
逃げたんじゃね
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/22(日) 21:56:35.70 ID:sdbtWb8Jo
めっちゃ面白いとこ見つけたのに・・・
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/22(日) 22:19:05.82 ID:3eaMps5Ho
気長に待とう
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/22(日) 22:31:45.58 ID:Mpd/oyHIo
今日中に来なきゃ見限る
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/22(日) 22:32:43.35 ID:EU0JihWUo
四連続長屋は流石にワロタ
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 23:05:42.25 ID:KjFxrhtFo
VIPのノリ云々は問題にはならないでしょ。
批判されたくなくばそもそもネットに出すなって言う、ね。
しかもすぐVIP如きから逃げる様な豆腐メンタルな癖して無駄に叩きの保険かけてるって言うね。

ここまでやってしまえば批判受けない方が珍しいわ。
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 23:12:47.17 ID:M/b4MT9Zo
やってはいけないのは埋め立て晒し上げなど
別に批判は駄目じゃない
そんなもん
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 00:06:05.05 ID:B0PeyhUgo
VIPの時みてないからどういう状況か知らないけどVIPのノリでワイワイ騒ぎ立てるな
ここはSS速報でVIPとは違うんだから
郷に入っては郷に従えって言うだろ
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 00:11:50.62 ID:UyA1Wvoco
だーからノリなんつー抽象的なモンは免罪符にならねえっての
素直に感想が書かれてる、ただそれだけ。

あくまで騒ぐ事を論点に置くなら先ず君が先に消えればいい。
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/23(月) 00:12:16.88 ID:1agrTPQco
どうでもいいけど書き溜めあるならはよ
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 00:12:52.29 ID:zJsc/FEMo
結局日曜のうちに来なかったか
VIPで始めてたもんだからすぐ最後まで見られることを期待したのにこれとかガッカリだ
次からは初めからSS速報でやってくれよ
俺は常駐してないから見ないけど
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 00:31:48.14 ID:Hl/UlwMIO
長屋やめろwwww笑っちまうwwww
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/23(月) 00:35:08.83 ID:7L8SyG/Fo
読み飛ばしたからつまんねーとか言う気はないが
VIPのスレ見たら荒らしと馴れ合ってて駄目だコイツと思った
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 00:39:34.42 ID:NA2Aro2wo
てか書き溜めあるならtxtにでもしてどこかに上げてくれ
作者だって貼るのめんどいだろ?
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) :2012/07/23(月) 00:54:31.47 ID:x57h2sYQ0
まだー?
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 01:15:22.52 ID:2sx7iN6IO
普通にいいなと思ったら、なんか荒れてるな・・・
俺は気長に待つよー
逆に暫く開けた方が煩いのが減っていいかも(笑)
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/23(月) 02:33:10.65 ID:CvcIxd02o
まだか
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 03:35:27.45 ID:bmoahaxIO
作者の人間性もアレだけど一番アレなのは登場人物の口調がなんか違うとこ
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 04:39:22.51 ID:ZyIG/FlBo
あんま外野の雑談で埋めるなよと
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/07/23(月) 13:56:40.89 ID:nZUDo4OOo
ほどか「ごめんなさい」

ほどかちゃんは控えめな笑みを浮かべ、どこの日常でも耳にすることの出来る謝罪の言葉を告げた。
それからほんのわずかな間を空けて、そんなほどかちゃんの頭がぼんっと破裂する。
比喩ではなく、文字通り、ぼんっと。

弾け飛んだ肉片がねばっこい血液と共にがさやかちゃんの顔にべちゃっと張り付いた。
視神経から伝わる映像に思考が追いつくよりもはやく、さらに自体は目まぐるしく動いていく。
マミさんの頭が、ぎゅっと潰れた。
巨大な圧力を受けたわけでもないのに、ぎゅっと。
ぎゅっとといえばこねこね。こねこね。シャイニングハーツ! パン!愛を込めて!

愛を込めて!そう!パンを!
パン!!!パーン!!!
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/07/23(月) 17:35:24.18 ID:nZUDo4OOo
こうなったらとことんまで叩かれてやる。
vipの荒らし叩きは成長の糧。支援は心の栄養。

もうふっきれたから叩いてくれるやつらはどんどんこい。

甘えなんて捨ててかかってこい

218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 17:38:07.38 ID:z/sTAShIO
>>1こねーかなー
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 18:09:00.01 ID:TXocSiqpo
ネタとしては面白い
内容は読んでないから知らん
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 19:03:54.29 ID:V5Velg9wo
続きまだー?
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 20:08:57.12 ID:26spqZJq0
ちょっとvipでの流れも含めて何があったか教えてくれ
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 20:11:33.90 ID:NFkY6VCZo
まどか「未来から来た私の子供!?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1342779036/

まどか「未来から来た私の子供!?」★2
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1342850014/
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 20:29:22.95 ID:UyA1Wvoco
作者が餌撒きしちゃったのが運の尽きだね
あとほどかと命名したのも
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 20:35:02.54 ID:ROt6nd+9o
寝て冷静になってあの叩かれっぷりを思い出したら投下するの嫌になったのかな
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 20:48:03.14 ID:UyA1Wvoco
まぁ当然でしょ
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/23(月) 20:51:17.59 ID:ySg0lkV30
ちゃんと読んでるからめげずに完走だけはしてくれ
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 20:54:04.31 ID:NFkY6VCZo
完走ってか最後まで書き溜めてあるって宣言していたじゃん

最初投下したのと変えるって言ってたから、そこで時間かかっているんじゃね? 放置は流石に無い
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 21:18:27.58 ID:LH0YQZkNo
あんな長時間投下し続けるような人がまる二日近くなんの報告も無しなんてあるだろうか
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 22:06:13.36 ID:UyA1Wvoco
疲れたんだよきっと
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/23(月) 22:44:50.13 ID:De3POmN3o
はよ
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 22:49:48.12 ID:79JuxXmSO
いつ来るか分からないが、もう書かないと決めたなら放置せず↓に依頼するのを忘れずに


■ HTML化依頼スレッド Part4
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1335365683/
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 03:28:36.66 ID:QUZJChUFo
こう言って彼は姿を消した。

981 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/07/21(土) 15:02:51.57 ID:tfBYz0O10
こうなったらとことんまで叩かれてやる。
vipの荒らし叩きは成長の糧。支援は心の栄養。

もうふっきれたから叩いてくれるやつらはどんどんこい。

甘えなんて捨ててかかってこい
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 07:00:43.46 ID:mFUV8DUDO
負け惜しみワロタwwwwwwwwwwwwww
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 07:09:26.66 ID:sEzFw0FIO
どうせ沈静化したらしれっと書き込むだろ
オリキャラ出して妄想するのは寝る前自分の頭の中だけにしとけばいいのに
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 07:57:14.22 ID:LwWuVMvOo
>>232
ひどいな
これは荒らし・叩き容認ってことですか?
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 08:07:43.70 ID:9M3hW8IPo
そういう事。でもここでは荒らすのはNGね

叩くのは好きにしろ、だけど
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 08:12:51.99 ID:bfwKLNgdo
でもここだと叩きも荒らし扱いされるんだろうな
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 10:19:31.53 ID:pc1464vyo
まだかな
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 11:15:49.26 ID:QUZJChUFo
>>236
君の言う荒らしの基準を示さないとな?
まさかぼくのかんがたルールじゃないよね?
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 11:17:15.76 ID:v2k/N9SIO
少なくとも>>1がVIPで言った痛いレスをコピペするのは荒らしだろ
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 11:50:11.59 ID:QUZJChUFo
>>240
やっぱ俺ルールかよ
話になりそうにないって言う

どんな荒らしよ?
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 12:15:37.29 ID:sEzFw0FIO
そんな荒らしよ
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 14:43:48.35 ID:/ok1yUpho
ここは2ヶ月落ちないんだから無駄レス控えろ
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 15:02:46.67 ID:sEzFw0FIO
ほどほどにしとけよ
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 20:37:49.00 ID:o934soMU0
荒らされて気の毒にと思ったけど
>>232見てこりゃしゃーねーなーと思いました
何故わざわざ相手してしかも煽ってるんだ
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/24(火) 22:42:24.05 ID:64ukDi2bo
甘えを捨てた結果がこれだよ
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 00:52:32.57 ID:K6P8vr6yo
続きの投下、放棄するならそう言って欲しいんだけど
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/25(水) 00:54:41.51 ID:wgeRMTmYo
こっちに貼ったのは実は本人じゃないとかありそう
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 00:57:28.05 ID:dRiRgxyvo
556 名前:sage :2012/07/21(土) 21:37:13.94 ID:tfBYz0O10
じゃあ速報で一気に投下します。
確か制限ないよね

571 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] :2012/07/21(土) 21:44:47.98 ID:tfBYz0O10
立てました。
なんかごめんね
250 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:12:35.81 ID:PifaLPGB0
すいません風邪ひいて寝込んでました。

続き投下します。
251 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:13:12.76 ID:PifaLPGB0
―ほむら―

―― ほむホーム ――


ほむら「……」

暗い暗い場所で彼女は膝をかかえ座り込んでいた。

ほむら「……」

いつからこうしているのだろうか。
彼女の顔を見るとかなりやつれているだ。
そのことから、食も取らず、睡眠も取らずにずっとこうしているのではないかと思わせる。

ほむら「……」

彼女の瞳は無そのものであり、
なにも映していないかのように暗く澱んでいる。

ほむら「……」

そんな彼女のもとに来訪者が訪れる。




QB「暁美ほむら」

インキュベーター。
暁美ほむらが敵と認識し毛嫌いする生物が彼女になんのようだろうか。

ほむら「……」

答えはない。
だが、それでも構わないとインキュベーターは語りかける。

QB「どうやら、まどか達と仲違いをしたみたいだね」

最近のマミ達の様子がおかしく、なにがあったのかを聞いた彼はこの場に来た。

QB「なら君はすぐにまどか達と話し合い関係を修復したほうがいい」

その言葉に少し暁美ほむらが反応する。

ほむら「どういう風の吹き回し?」

非常に聞き取りづらい声量で彼女は敵であると認識している者に問う。




QB「君にこのままでいられると困るんだ」

困る。彼はそういった。

何が困るのか。

鹿目まどかの契約を阻止する自分は邪魔な存在のはず。
ならば、彼女から遠ざかっている今が彼等にとって最大のチャンスでは。

そうほむらは考え、インキュベーターに再度問う。

ほむら「なにを……企んでいるの?」

もはや自分の考え以外は信じられない彼女は全てを疑い、
そして一人、堕ちていく。

QB「企む。それは僕等が鹿目まどかの契約をする為、なにかを企んでいる。
   そう捉えていいんだね?」


その通りだ。お前等にはそれしかないだろう。


そう言いたげに目の前でペラペラと話すインキュベーターを睨み付ける暁美ほむら。
252 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:15:02.51 ID:PifaLPGB0
QB「それなら心配はないよ。僕等は鹿目まどかから手を引いた」

ありえない言葉を聞きおもわず目を見開くほむらであったがすぐにもとの無表情に戻る。

QB「信じられない。と言いたい顔だね」

当たり前だ。無言のまま、表情だけで告げるほむら。

QB「確かにそれを証明する手立てはない、だから信じてくれとしかいえない」


こいつ等らしくもない。発言
一体なんなのだこのループは。
どうしてこうまで狂って――。


ほむらは今までのループと比べ、あまりにも異常な今回のループについて考える。
いったい、なにが原因でこうなったというのか、と。





QB「とにかく君にはほどか達と協力してワルプルギスの夜を倒してもらわなくては困るんだ」

ほどか。

その言葉にほむらは少し笑みを浮かべる。

そうだ、ほどか。

鹿目ほどか彼女の存在だ。

ほむら「そっか、そうだったのね」

ふふふ。っと笑うほむらにインキュベーターは怪訝な表情を浮かべる。

QB「どうしたんだい。暁美――」


ほむら。


そこまで言い切る前に。彼は、といっても数多ある同個体の一つのだが――。
ともあれ、彼はその命の灯を消した。




いや、消されたというの方が正しい。

そう彼は暁美ほむら、その少女の持つ命を奪うことを目的とした、
人によって作られ、今も改良を重ねられている兵器にその生命を絶たれた。

ほむら「あの子が全ての原因――」

あの女がいたから、このループはこうも歪んでしまった。

狂ってしまった。

ほむら「せっかくうまくいっていたのに」

本来ならばこのループで私の旅はハッピーエンドを迎えるはずだった。

ほむら「でも、あの女が邪魔をしたせいで」

全ては壊された。
253 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:15:41.81 ID:PifaLPGB0
ほむら「あの女がいたから」

そうだ、今までのループもあの女が裏で糸を引いていたに違いない。

ほむら「だから、うまくいかなかったのね」

そうよ、その通りだわ。そうに違いない。

ほむら「本当の敵は――」

あの魔女。

鹿目ほどか。

ほむら「そう、そうよ魔女よ。あれは魔女」

みんなあの魔女に騙されているんだ。

あの悪い魔女に。






ほむら「ふふふ、待っててまどか」

私が救ってあげる。

ほむら「だって約束したもの」

まどかと約束。

ほむら「まどかをまもってあげるって」

わたしがまもるのまどかをまじょから

そう、しかめほどか、まじょから

まじょから――。

いつの間にか彼女の部屋にはインキュベーターだったものしか残っていなかった。

暁美ほむらはどこへ消えたのか。それはわからない。

ただ、彼女が消えた部屋はその闇を少し和らげた。

そう感じた――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage ]:2012/07/25(水) 06:16:40.86 ID:gU4AbNMxo
しかめほどかはないわ
255 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:17:52.23 ID:PifaLPGB0
時刻は夕暮れ。
美樹さやかは上条恭介の病室にいた。

なにを聴いてるの――?

亜麻色の髪の乙女。

いつもの彼らしくもなく、
無愛想にそう答える恭介。

あぁ、ドビュッシー? 素敵な曲だよねー。

さやかはそう明るく話しかける。
だが恭介は無言だ。

……。私ってほら、こんなだからさー。クラシックなんて聞くがらじゃないだろってみんなが思うみたいでさー。
たまに曲名とか言い当てたらとすっごく驚かれるんだよねー。意外過ぎて尊敬されたりしてさ――。

恭介が教えてくれたから、でなきゃ私、こういう音楽ちゃんと聞こうと思うきっかけ、多分一生なかっただろうし――。

さやかはさぁ――

なーに――?

さやかは僕をいじめてるのかい――。


なんでまだ、僕に音楽なんて聞かせるんだ――!

嫌がらせのつもりなのか――。

だって、恭介、音楽好きだから――。

もう聞きたくなんかないんだよ! 自分で弾けもしない曲! ただ聴いてるだけなんて――!!


そう叫び手を振り上げる恭介。


僕は! 僕は――!!


そして自身が今も使っている、ポータブルレコーダーにその手を振り下ろす。

ガシャンっという音が部屋に響き、ベッドに血しぶきが舞う。

そんな恭介の暴挙に驚き、慌ててその行為を止める為にさやかは立ち上がる。


動かないんだ。痛みさえ感じない! こんな手なんて――!


そう泣きながら話す恭介にさやかは。


大丈夫、きっと、なんとかなるよ! 諦めなければ、きっといつか!


そう慰める。


諦めろって言われたのさ――


もう演奏は諦めろってさ。先生から直々に言われたよ。今の医学じゃ無理だって――。

僕の手はもう二度とうごかない。奇跡か魔法でもない限り治らない――!


あるよ――

――え?

奇跡も魔法もあるんだよ――!


窓の外では夕日がその姿を隠そうとしていた――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
256 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:40:12.40 ID:PifaLPGB0
―ほどか―

今晩は。鹿目ほどかです。
今日はパパとマミさんの三人で魔女探し。

夜中の繁華街を中心に探索しています。

マミ「大丈夫ほどかさん? 傷は痛まない?」

ほどか「大丈夫です」

まどか「無理はしないでね?」

ほどか「はい。ありがとうございます。……あれ?」

パパ達の言葉に感謝を述べ、ふと前方を見やると見慣れた姿が。

まどか「どうしたの?」

ほどか「あれって仁美さんじゃないですか?」

まどか「あ、ほんとだ。こんな夜に一人でどうしたんだろう?」

ほどか「仁美さん!」

仁美さんのもとにかけより声をかける。
御稽古の帰りだろうか?

ほどか「仁美さん?」

返事がないな。
それに少し様子がおかしいような……。

ほどか「……! マミさん!」

ほどか「仁美さんの首に魔女の口づけが!」

マミ「!」

まどか「仁美ちゃん!」

パパが慌てて仁美さんの傍により声をかける。

まどか「ねえ! 仁美ちゃんってば!」

仁美さんの肩を掴み二、三揺さ振り声をかけ続ける。
その呼びかけにボーっととしていた仁美さんの意識が気が付く。

仁美「あらぁ、まどかさんごきげんようー」

まどか「どうしちゃったの? ねぇ、どこいこうとしてたの?」

仁美「どこってそれは」

そこで少し笑い、仁美さんは言葉を続ける。

仁美「ここよりもずっといい場所、ですわ」







ほどか「マミさん……」

マミ「マズイわね、完璧に操られてるわ」

マミさんは顎に手をやり思考する。

そして

マミ「とりあえず彼女についていきましょう」

その先に魔女がいるはずよ。

と言いパパに仁美さんと一緒に目的の場所へ誘導してもらうことを告げる。

ほどか(……魔女がいる場所へいけばママも現れるはず)

そう考え、仁美さんを救うためにも、ママとパパのためにも私は仁美さんの後についていくのでした。
257 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:40:57.03 ID:PifaLPGB0
―― 工場 ――


仁美さんの後をつけ、ついた先には寂れた工場。
そこには大勢の人達が魔女の口づけによりここまで誘い込まれていた。

ほどか「これは……!」

マミ「危なかったわね」

少しでも遅けれこの人達は全員……。

ほどか(よかった……)

助けることができそうだと胸を撫で下ろしほっと一息つく私。

まどか「あれ!」




パパが指差す方向では女の人が塩素系洗剤と酸性系の洗剤をバケツに混ぜていた。

ほどか「っ!」

急いでそれを奪い取り、工場の窓の外に投げる。
ガシャーンっとガラスの割れる音が工場内に響く。
そして、外に向けて放り出されるバケツ。

なんとか、間に合ったみたい……。

ほどか「はぁ、はぁ」

そんな私の行動に操られている人達が襲い来る。
その姿はまるでゾンビみたいで、少しだけ恐怖を覚えた。

ほどか「くっ!」

魔法少女である私ならばただの人であるこの人達に負けるわけもないが……。

ほどか(この人たちは操られているだけ、そんな人たちに危害を加えるわけには!)

この人達は被害者だ。
そんな人達に力を使って万が一にも怪我を負わせてしまうわけにはいかない。





なにか打開策を練る。
だけど、いい考えは浮かばず壁際に徐々に追い詰められる。
そんな私を呼ぶ声がした。

マミ「こっちよほどかさん!」

マミさんに呼ばれ、その方向を見ると扉を開け手を振りそちらに誘導するマミさんとパパの姿が映る。

ほどか「!」

走り、すぐにその先へ滑り込む。

その直後バタンっと乱暴に扉を閉める音が聞こえる。
荒れる息を整える私にマミさんが声をかけてくれる。
258 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:41:22.30 ID:PifaLPGB0
マミ「大丈夫? 怪我は……」

ほどか「大丈夫です。それより……」

マミ「えぇ、いるわね」

まどか「え? え?」

私達の周囲には使い魔。
そして、

ほどか「結界。いきましょう」

マミ「えぇ」

ほどか「お父さんはここで待っていてください。すぐに戻ってきますから」

パパにはここで待機してもらい、変身し結界内に入り込む私達。
259 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:42:01.44 ID:PifaLPGB0
―― 魔女結界内 ――
 

異質な空間。
ふわふわと浮かぶその感覚からここに重力というものが存在していないことを想像させる。
そして、周囲には多くのモニターがあり、それを使い魔達が一つずつ抱えている。

そして、モニターにはある映像が映っていた。

マミ「なにかしら……? 大人の、男性と女の子?」

マミさんが映像を注視し、呟く。

その言葉が気になり私もモニターに映る映像を見る。

ほどか「……!」



それが間違いだった――。




ほどか「っ! やめて!!」

突如大声をあげる私に驚いたマミさんがこちらを向き何事かと問いただす。

マミ「ど、どうしたのほどかさん……」

頭を押さえ、座り込む私の肩を抱き、落ち着くように宥める。

だが、今の私にはその声が聞こえず。

ほどか「やめて! やめてよ!! わかってる! わかってるから!!」

映像に映し出されるのは、ピンクの髪をした成人男性。
その男性は、年は私達ぐらいの女の子に話しをしている。
いや、口論している。っと言った方がいいだろうか。
だが、なにやら険悪な雰囲気が音声の無い映像からも見て取れる。

我慢の限界か、女の子の頬を勢いよく叩く男性。
その行動にショックを受けたのか泣きそうになりながらその場から走って立ち去る女の子。





ほどか「いや!! あれは私が!! 私が悪いの! そんなことはわかってる! わかってるから!!」

相変わらず叫び続ける私をマミさんが落ち着かようと抱きしめる。

マミ「ほどかさん! 大丈夫よ!!大丈夫だから!」

だがそんな声が聞こえるわけはなく。

そして。

映像に黒い綺麗な長髪をした美しい女性が映し出される。

そしてさっきの男性がその女性に向け黒い、無機質な、日本では一部の人しか持つことを許されないモノを使い。

涙を流しながら何かを男性に語りかける、その女性の生命を





絶った――。
260 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:42:55.11 ID:PifaLPGB0
―マミ―

ほどか「いやあああ!!!!!!!!!!」

絶叫。
モニターに映る映像を見たほどかさんは、完全に錯乱し、叫び声をあげる。

マミ「ほどかさん! ダメ! 落ち着いて!!」

そんな彼女をなんとか落ち着かせようとするが、突き飛ばされてしまう。

そして、彼女は自分の持つ盾から銃を取り出し所構わずに乱射し始めた。

マミ「!! ほどかさん!!」

ほどか「うわああああああああああ!!!!!! やめろ!!!!!! やめろおおおおおお!!!!!!」

このままでは危険だと思い、なんとか彼女に近づこうとするが、
こう乱射されては近づけない。




マミ「くっ! どうすればいいの!?」

こんな時、暁美さんならば時を止め彼女を助けることができるのだろう。

マミ(このままじゃほどかさんが!)

そして数体の使い魔が混乱状態にある彼女に近寄り、攻撃を仕掛けようとする。

マミ「ほどかさん!」

使い魔達が隙だらけの彼女に対して攻撃をしかけようとしたその時。





青い閃光が使い魔達を掻き消し、そして彼女を苦しめるモニターを消滅させた。

261 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:43:21.49 ID:PifaLPGB0
マミ「あ……」

私の眼前に立つ。白いマントをつけたビスチェ風のトップと左右非対称なスカートを穿いた一人の少女。

無言で立つ彼女はほどかさんの頭を一つ撫で、


もう大丈夫だから――。


そう笑いかけるのであった。

マミ「み、美樹さん!」

美樹さやか。その少女がこの場所にいる。
なぜか。理解はできない。
だが一つわかることは、彼女のその着ている衣装。

それは――。




マミ「あなた、どうして!」


魔法少女に――!


その言葉に、無言で私に笑いかけることだけで返答し、眼前にいる魔女に向き直る彼女。

さやか「……」

その手にはいつの間にか剣が握られており、彼女はそのまま魔女に飛び掛かる。

さやか「はあ!」

剣を振り、使い魔、魔女に無数の斬撃を浴びせかける。
そして勢いよく魔女を空中に弾き飛ばし自身も跳躍。




さやか「これで――!」

魔女よりも少し高く飛び右手に掴む剣を突き立てるように刺す彼女。

さやか「とどめっだああああぁあぁ!!!!」

そしてそのまま落下のスピードを利用し、魔女を剣で突いたままもの凄い勢いで急降下。

地面に激突した瞬間。吹き荒れる魔女の黒い血の雨。

そして、その雨が止んだかと思うと、空間は崩壊し始める。
262 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:44:00.03 ID:PifaLPGB0
さやか「いやぁ、ごめんごめん、危機一発ってところだったねぇー」

まどか「さやかちゃん……。その恰好……」

鹿目さんが美樹さんの衣装に疑問を投げかける。
その問いに美樹さんが頭を掻きながら答える。

さやか「ん? いやぁ、はっはっはっ! なに、心境の変化ってやつかなぁ」

そう言う美樹さんに心配そうな目を向けるまどかさん。

さやか「大丈夫だって! 初めてにしてはうまくやったでしょ私」

へらへら笑いながら、私に目で同意を求める。

マミ「え、えぇまぁ」

あの時、美樹さんがこなければ危なかったのは事実。

だけど。





マミ「本当にいいの? あなた、これでもう……」

私の質問の意味を理解したのか美樹さんは笑いながらこう答える。

さやか「いいんですって! その辺は覚悟済みです。それより……」

ちらりと目を離れたところに向ける。

そこには気絶したほどかさんが寝ていた。

さやか「ほどかの方が……」

彼女は魔女の空間が崩壊するとともに安心したのか気絶。
そして今も眠り続けている。

マミ「大丈夫。気を失っているだけのようだから……」

まどか「ほどかちゃん……。マミさん、結界内でいったいなにが……」

そう私に問いかけるまどかさん。
だけど、あれを言ってもいいものか……。
263 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:44:37.69 ID:PifaLPGB0
マミ「……魔女の攻撃から私を庇ってね、それで……」

美樹さんに目配せし、話を合わせるように促す。
その私の意図を察したのか美樹さんも話を合わせる。

さやか「そうそう! そこにピンチのマミさんとほどかを救う為にさやかちゃんが颯爽と参上! 
    並み居る使い魔と魔女をばったばったと倒したってわけ!」

まどかさんはその話に納得したのかほどかさんの傍に近寄り眠る彼女の顔を撫でる。

まどか「そう、ですか……」

顔を撫でる彼女の瞳はとても悲しそうで、自分の無力を嘆いているようにも見えた。

さやか『ねぇマミさん』

美樹さんからテレパシーが送られてくる。

さやか『実際なにがあったの? 私は途中からだからよくわかんないんだけど、あれは……』

ほどかさんの錯乱を見た美樹さんはあの状況が明らかに異常であったと話す。




マミ『後で話すわ』

そう答え。
先に魔女に操られた人達の介抱を始める。

マミ(あれは……。あの映像は……)

さっき見た映像を思い出す。

ある男性がある女性を撃ち殺す場面。

そしてそれを影から見つめる女の子。

マミ(ほどかさん、あなたの目的はまさか――)

安らかに眠る彼女の愛らしい顔を見ながら、私は頭に浮かんだ考えを首を振り掻き消すのであった。
264 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:45:06.54 ID:PifaLPGB0
―― 電波塔 ――


「で、わざわざこんなところに呼び出して、アタシに話しってなに?」

手に持つ棒状の菓子を齧りながら赤い髪をした少女は語りかける。

ほむら「あなたに協力してほしいことがあるの」

暁美ほむらはその赤髪の、自身とそう変わらないであろう年齢の少女にそうきりだす。

「きょーりょく?」

ほむら「二週間後この街にワルプルギスの夜が来る」

その言葉に少し眉を顰めほむらの真意を図るように顔を見る少女。

「なぜわかる……」


そのような気配は感じられない。そもそも噂通りならばワルプルギスの夜はその気配すら感じさせず顕現するはず。
それをこの女はなぜ知っている。

そう考え、この少女が何者であるかを探る。




ほむら「それは秘密」

長い髪を手でたなびかせそう答えるほむら。

そして

ほむら「ともかくそいつさえ倒せたら私はこの街を出ていく。後はあなたの好きにすればいい」

と赤髪の少女にそう告げる。

俯き考える少女。

「ふーん……。ワルプルギスの夜ねぇ……」

そう言い再びほむらの顔を見る。

「確かに一人じゃ厳しいが、二人ががりなら勝てるかもなぁ」

そしてにやつきながたもう片方の手に持つ、菓子の箱をほむらに差出し。

杏子「食うかい?」

そういうのであった。

佐倉杏子。
また、一人の魔法少女が見滝原に現れるのであった――。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
265 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:45:35.64 ID:PifaLPGB0
――病院 屋上 ――


さやかは上条恭介が入院する病院の屋上にいた。
そこには数人の人影があり、上条恭介その人もいた。

屋上には少しぎこちない、だが優しい綺麗な音色が響く。

さやかはその音色を聴き、微笑みながらその音色が発せられる場所を見る。

その音色は上条恭介が発していた。
正確には上条恭介が奏でる、ヴァイオリンから。

さやかは恭介を見、そして目をつむる。

さやか(私の願いは叶ったんだ)

上条恭介の手は、もう動かない。
そう医師に宣言されていたはずだ。

にも関わらず彼の手は音を奏でる。







それはさやかの願いによるものだ。
さやかが魔法少女になる代償に、叶えられる願い。

本来ならば、自身のために使うはずの願いを彼女は恭介のために使った。

恭介の手を治すために。

一般的な魔法少女ならば、その行為を否定するだろう。
そしてそれが正しいのだろう。

だがさやかの顔は満足気で、かつ幸せそうに見えた。

後悔なんてあるわけない――。

そう言いたそうに見える彼女の顔は夕焼けに照らされ、とても美しいものに見えた。

そして彼女の左手の中指には指輪が填められ、輝いていた。
266 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:46:13.47 ID:PifaLPGB0
―― 街 ――


ブエナスタルデス! 鹿目まどかです!

ほどかちゃんを危険な目に合わせた魔女を倒した日から一日経った夕方。
今日はマミさん、さやかちゃん、そしてほどかちゃんの四人で行動しています。

まどか(本当はほどかちゃんは置いてきたかったけど)

相変わらず無理矢理ついてくるほどかちゃん。
最近傷つくことが多く、危ない目にばかり合っている彼女。

彼女のパパとしてはもうこんなことは止めてほしい。
と思いながらも、彼女の頑固さに押し負けて結局流されてしまうのでした。

まどか(無理なんだろうけど、この子には普通の女の子として暮らしてほしい……)

彼女の目的を忘れたわけではありません。
そして私がすべきことも。

でも、

まどか(ここまで傷つかないと果たせないのなら……)

いっそ、諦めて私と一緒に――。







そこまで考えて首を振る。

まどか(違う。わかってる)

そんな事を彼女が望んでいないことくらい。

まどか(でも、でも、それでも)

もう……。この子が傷つく所は見たくない。

まどか(勝手だよね……)

勝手だ。結局私は、自分のことしか考えていない。

まどか(私、嫌な子だ……)

自己嫌悪に嵌り、心が苦しくなる。
最近、こんなことを考えてばかりだなー……。




マミ「ここね」

マミさんがソウルジェムを持ち、魔女の気配を感じる場所を探し当てる。
その瞬間結界が開かれ、周囲の雰囲気が変わる。

ほどか「この結界の感じは使い魔ですかね」

ほどかちゃんが結界を見ながらそう告げる。

さやか「楽にこしたことないよ。こちとらまだ初心者なんだし」

マミ「使い魔とはいえ油断は禁物よ? 今日は美樹さん一人で戦うんだから」

そうです。今日は魔法少女になったばかりのさやかちゃんを鍛えるためにも極力さやかちゃん一人で戦います。
マミさんとほどかちゃんは後方で戦い方の指示とか危ないときは援護とか、、、まぁ、そんな感じです。

さやか「わかってます」

そう元気に答えるさやかちゃん。
ちゃんと今回の主旨は理解はしているようだ。
267 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:47:37.56 ID:PifaLPGB0
使い魔「ぶううううーーん!! ぶううーーん!」

さやか「あれが……!」

まどか「逃げるよ!」

なにやらやたらテンションの高い使い魔を発見。

さやか「任せて!」

そういい変身するさやかちゃん。

そしてたくさんの剣を召喚し使い魔に対し攻撃をしかける。





使い魔「ぶ、ぶううううーーん!! ぶううーーん!」

なかなかすばしっこく避ける使い魔。
そして一本の剣が使い魔に今、当たろうとした時


邪魔が入りました。








さやか「!」

杏子「ちょっとちょっと、なにやってんのさ、アンタ達」

突然の来訪者。
それに驚く私達を尻目に使い魔はその隙に逃げてしまいます。

さやか「誰よあんた!」

空間がもとに戻り、路地裏に変わる。
そして、突如現れた人物に向けてそれぞれ反応を返します。

マミ「佐倉、さん……!」

ほどか「杏子さん……?」

まどか「え? 杏子って確か……」

ほどかちゃんが力を借りたいって言ってたあの?

私達の反応を見て、少し首を傾げる杏子と呼ばれた女の子。
268 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:48:09.33 ID:PifaLPGB0
杏子「マミは久しぶりだね。でも」


アンタは誰だい?


そういって手に持つ槍をほどかちゃんに向ける杏子ちゃん。

ほどか「……」

その問いにほどかちゃんは無言になる。
なんと言えばいいのか考えているふうにも見える。

杏子「ん? あんた、ほむらに似て……? あぁ、あんたが……」

そういう杏子ちゃんに今度はほどかちゃんが質問する。

ほどか「ほむらさんを知ってるんですか!?」

杏子「あぁ、まぁちょっとね」




ほどか「ほむらさんは、あの人はいまどこに!」

ほどかちゃんの剣幕に少し押されたのか、若干引きつつも杏子ちゃんは素直に質問に答えます。

杏子「さぁ? そこまでは知らないよ」

ほどか「そ、うですか……」

まどか「……」

暁美さんと仲違いしてから、私達は暁美さんとは会っていない。
学校にも登校はしてこない。
そんな暁美さんにほどかちゃんは何回も連絡を取ろうとしているようだが、電話は繋がらず、メールにも返信はないみたいだ。

夜な夜なあけみさんがいそうな場所を探したりもしているようだがそれも効果はない。

杏子「はぁ……、なんかよくわからないけど、まっいいや」

杏子ちゃんは溜め息交じりにそう言うと、ほどかちゃんに向けていた槍を今度は近くにいたさやかちゃんの首筋に突きつける。




杏子「ところで、あんたさ見てわかんないの? あれ魔女じゃなくて使い魔だよ。グリーフシードを持ってるわけないじゃん」

さやか「だって、あれほっといたら誰かが殺されるのよ!?」

そう反論するさやかちゃん。
その言葉に杏子ちゃんはもう片方の手に持っていたたい焼きを齧りながら。

杏子「だからさー、4、5人ばかり食って魔女になるのを待てっての。そうすりゃグリーフシードもちゃんと孕むんだからさー」

そう言ってさやかちゃんの首筋に当てる槍を引く。

杏子「あんた、卵産む前の鶏絞めてどうすんのさ」

さやか「魔女に殺される人達をあんた……! 見殺しにするっていうの!?」

その言葉に杏子ちゃんは少し呆れた顔をした。そして、ぷっと吹き出し。

杏子「なるほどねー。マミ、あんたいい仲間を見つけたんだ」

そうマミさんに言い放つ。
269 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:48:50.45 ID:PifaLPGB0
杏子「甘い考えのあんたに似た、甘い考えのバカがさ」

そう言ってバカにしたようにけらけらと笑う。
さやかちゃんは杏子ちゃんのその態度が気に食わなかったのか、怒気を露わにし、つっかかる。

さやか「あんたは……」

そんなさやかちゃんに杏子ちゃん自分の方から近づく。

杏子「やっぱりほむらの言った通りだね。あんた等は甘い。そんなんじゃワルプルギスの夜には勝てない」

ほどマミ「!」

杏子「私が、それをわからせてあげる」

そういうとさやかちゃんに攻撃を仕掛けようとする。





マミ「ほどかさん!」

ほどか「は、はい!」

さやかちゃんを助けようと、そして戦いを止めようとマミさんとほどかちゃんが変身する。

さやか「二人はさがってて!」

でも、さやかちゃんは助けようとしてくれたほどかちゃん達を止める。
その表情には怒りが張り付いていて、感情が爆発してしまったことが窺える。

さやか「こいつだけは! こいつだけは許せない!!」

そう言うと杏子ちゃんに剣戟を浴びせる。
だが杏子ちゃんはそれを軽く受け止め、

杏子「あんたさー。なんか大元から勘違いしてんじゃない?」

そういって剣戟を受けながらも余裕の表情で話す。




杏子「食物連鎖って知ってる? 学校で習ったよね?」

そして鍔迫り合いの形になり笑いながらさやかちゃんに顔を近づける。

杏子「弱い人間を魔女が食う。その魔女を私達が食う……」

そして急にふっと力を抜き後ろに少し下がる。
そのせいでさやかちゃんはバランスを崩し、前のめりに倒れそうになる。

杏子「これが当たり前のルールでしょ。そういう強さの順番なんだから」

結果としてさやかちゃんは前方に倒れこむことはなかった。
なぜなら杏子ちゃんの足によりお腹を支えられ、くの字に曲がりながらも寸でのところで地面に激突することはなかったから。
270 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:49:18.93 ID:PifaLPGB0

さやか「くっ!!」

すぐに態勢を立て直し杏子ちゃんに剣を振るう。
しかし、その攻撃は一瞥もされず避けられ、そして空を斬る。

杏子「やれ人助けだの正義だの、そんなおちゃらけた甘い考えで契約するから」

そういってほどかちゃんの方を見る。

杏子「だから、あいつは腕を失ったんじゃないの」

そういって、またけらけらと笑う。
ほどかちゃんはその言葉に自身の右腕を触り、俯く。

さやか「あんたは!! あんたってやつはー!!!」

その言葉に本気で怒り、さやかちゃんは剣を振るい続ける。
しかし、杏子ちゃんはそれを全て微動だにせず受けとめる。





杏子「ちょっとさ、やめてくれない……」

手に持つたい焼きを食べながら呆れた顔をする杏子ちゃん。

杏子「遊び半分で首突っ込まれるのってさぁ、」


ホントむかつくんだわ――。


そういうと杏子ちゃんを勢いよく弾き飛ばす。






さやか「うわあぁ!!」

杏子ちゃんに弾き飛ばされたさやかちゃんは、
そのまま錐揉み状に回転し壁に激突し、その衝撃で壊れた水道管から流れる水を頭からかぶる。

杏子「ふん。とーしろが、ちっとは頭冷やせっての」

つまらなさそうにそう言い捨てると、くるりと振り返り立ち去ろうとする。

だけど……。

杏子「……。おっかしいな、全治三か月ってくらいにはかましてやったんだけど」

さやかちゃんに背を向けたままそう腹立たしげに告げる。

さやか「あんただけは許さない! あんたみたいなやつがいるから……!」

よろけながらも立ち上がるさやかちゃん。
そんなさやかちゃんに対し杏子ちゃんは改めて向き直る。





杏子「うぜぇ」

そう言い放ち槍を構える。

杏子「超うぜえ!」

そして、さやかちゃんに飛び掛かる。

杏子「つーかなに? そもそも口のきき方がなってないよね。先輩に向かってさー!」

さやか「黙れー!!」

そして、二人の魔法少女の本気の戦闘が始まった。
271 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:50:19.20 ID:PifaLPGB0
まどか「ねぇどうして! 魔女じゃないのに! どうして味方同士で戦わなければならないの!?」

マミ「どうしようもないわ、お互いに譲るつもりがないもの……」

マミさんが諦めたように首を振る。

まどか「でもこんなのってないよ……」

ほどか「とにかく止めましょう! このままじゃさやかさんが!」

戦いを見る限りさやかちゃんの防戦一方だ。このままではいずれやられてしまうだろう。

マミ「そうね、美樹さんには悪いけど」

そういってマスケット銃を構え杏子ちゃんの動きを止めようとするマミさん。

そして狙いもつけ、後は発砲するだけとなったところで。



「それには及ばないわ」



辺りに、凛とした声が響いた。








杏子ちゃんがさやかちゃんに止めをさそうと跳躍。
そして、回避行動をとれないまでに追い詰められたさやかちゃんにそのまま槍を突き立てようとした。

でもそれは叶わず、槍は地面を抉るだけに留まった。

杏子「え――!?」

さやか「あ――」

まどか「!!」

マミ「あれは――」

ほどか「!」
272 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:50:47.51 ID:PifaLPGB0
―ほどか―

さっきの水道管により出来た水溜りが水しぶきをあげる。

それはそこに降り立った人により出来たもので、
水飛沫はかすかに路地裏に入り込む夕焼けにより輝く。
そして飛沫はそこに降り立った人までも輝かせ、その光景はまるで天使が地上に降り立ったかのように連想させた。

ほむら「……」

そう、その人こそ暁美さんその人で、私達とは決別した、私の母親、その人だった。

ほどか「マ、ママ……」

誰にも聞こえない程度の声で呟く私。
ママが、あれだけ会いたかったママがいま私の目の前にいる。

おもわず、かけつけそうになる。
だけど、走りだしそうな足を押さえ私はただ、その光景を見守る。

完全に着地したママは、自身の髪を手でたなびかせ無言で立つ。

その姿はとても綺麗で私はその光景に状況も忘れ見惚れてしまった。





マミ「暁美さん……」

杏子「ほむら……」

まどか「……」

パパが私に近づき私の前に庇うように立つ。
その目はママを睨むように見ていて、私はそんなパパの姿を見て悲しい気持ちになるのだった。

ほむら「……」

少し、私の方を見たママ。
だけど、その瞳からはなにも感じられず。
でも、私はその瞳になぜか体を強ばらせてしまう。

杏子「なんのつもりだ? 邪魔をするなんて」

なぜその必要があるのか、そう問いただす杏子さん。
そんな杏子さんにママは視線を向ける。

ほむら「あなたが馬鹿なことをしているからよ」








杏子「はぁ? でもあんたとの協力の条件には……」

そこまで言う杏子さんを睨みつけることで黙らせるママ。

協力? 条件? なんのことだろう。

ほむら「さやかを殺すことは条件に入っていないわ」

殺す。

ママの言葉から信じられない言葉が出てきて驚く。
そして、その言葉の意味を少し考える。

なら、なにを殺すことは条件に入るのか――。

まどか「……!」

なにかを察したのかパパの警戒は一層強くなり、ママに私が見えないように立ちはだかる。
そんなパパを相変わらずなにも映さない瞳で見、そしてもう一言。

ほむら「それに、その役目は私のモノよ」

そう、パパを見たまま宣言するかのように言い放つ。
273 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:51:26.75 ID:PifaLPGB0
マミ「暁美さん!」

マミさんがママに詰め寄る。

マミ「あなたは勘違いしているわ! 話し合えばすぐに解決する誤解を!」

そう叫ぶマミさんを一瞥するママ。

ほむら「勘違いをしているのはあなた達の方」

そして、


いずれわかるわ――。


そう告げ杏子さんに、行きましょう。
と言い、変身を解きこの場を立ち去ろうとする。

杏子さんは渋々といった感じで同じように変身を解きママについていく。





ほどか「待って! ほむらさん!」

そう言ってママを止める私。

だけど、ママは私の声に反応することもなく歩き続け。
大通りの方へ消えていった――。

慌てて追いかけようとする私をパパが凄い力で押し留める。

ほどか「はな、して! ママを、お母さんを追いかけなきゃ!」

だけど、無言で私を抱きしめ絶対に行かせないと、押し留めることで意思表示するパパ。

まどか「……」

ほどか「どう、して……」

パパの意図がわからず、もう追い付けないことを悟った私は地面に座り込む。
274 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:51:56.66 ID:PifaLPGB0
―杏子―

杏子「なぁ、いいのか? 目的の奴ってあいつなんだろ?」

先を歩くほむらにそう質問する。

ほむら「えぇ、そうよ」

こちらを振り向かずに答えるほむら。

杏子「なら今ここで――」

そこまで言った私にほむらが冷静に反論する。

ほむら「今は無理よ。マミもいるし、さやかもいる」

さすがにあの二人がいる中、目的を果たすのは無理よ。

そう言ったほむら。




杏子「まぁ、そうだろうけどさ」

嘘だと思う。

杏子(こいつの能力なら相手の人数は関係ないだろ)

時を止める能力。
私の信頼を得るためにこいつは自分の能力を話した。

杏子(まっそれだけなんだけど)

でも、それだけでだいたいのことはわかった。

時を操るということはこいつの願いは時間に関係する願いだったんだろう。
つまりこいつは未来から来たと考えられる。
それなら、ワルプルギスの夜の情報をこいつが知っていたことにも辻褄が合うしな。

杏子(どのくらい未来から来たのかはわからないけど)

でも、こいつの口ぶりからそう遠い未来ではないだろう。





杏子(まぁ今はそんなことはどうでもいいか)

今はこいつの目的を果たすのはその能力を使えば容易いはずだということ。

杏子(たしか、鹿目ほどかを殺すだっけ)

なぜこいつがそんなことを考えるのかはわからない。

杏子(一応、理由は聞いたけどさ……)

納得はいかないものだ。

いや、さっき本人を見るまではどうでもよかったから納得していたことだっけな。

杏子(ほどかって奴がこの世界を滅ぼすために鹿目まどかって奴の才能を利用しようとしてる。だっけ)

荒唐無稽のない話だ。
バカらしくもある。
だけどこいつはそう信じているみたいだ。
275 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:52:24.79 ID:PifaLPGB0
杏子(だいたいそんなことをしてほどかって奴になんのメリットがあるんだよ)

自分の住むとこがなくなったら困るだろ。

杏子(それに今日見た限りではそんなことを考える奴には見えなかった)

世界を滅ぼすどころか世界を救うことを願うような甘ちゃんに見えた。

杏子(どーも、話がおかしいみたいだね)

なにか、どこかでズレてしまったのではないか。
些細なことがきっかけで、事態はおかしくなってしまったのではないか。

そう感じる。




杏子(っていうかアタシもなにを熱くなってんだか)

本当は今回の目的はほむらの言う、この街の魔法少女を見にいっただけだ。

杏子(あの、さやかって奴)

あいつを見ていたら無性に腹が立った。
あいつの甘い考えを聞いていたら嬲り殺したくなった。

杏子(……。あいつの願いはなんだったんだろう)

ふと、あのバカの願いが気になり、そんなことを考える。

杏子(ま、私には関係ないけど)

そう結論付け、でも、少しだけ調べてみようかなっと思いながら、目の前を歩くほむらを見る。




杏子(なんにせよ、こいつは信じすぎないほうがいいね)

正直こいつが一番得体が知れない。
なにを考えているのか、全く読めないのだ。

杏子(これならむしろ、バカなぶんあいつらのが信じられるよ)

そう考える。
そして、ほむらの後姿を眺めながら、こいつも悲しいやつだよなー。っと思う。

杏子(きっと、こいつは誰も信じていないんだから――)

――そう自分、さえも。

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276 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:52:52.93 ID:PifaLPGB0
―― 病院 ――  


美樹さやかは胸にCDを抱え、病院の廊下を走る。

顔は笑い、一刻でも早く彼女は彼女の想い人に会いたい。
そう感じさせる。
しかし、彼女が上条恭介の病室に辿り着き、
その部屋を見た時、目的の人物はいなかった。

怪訝な顔をし、部屋のなかを見回すさやか。
その後ろを看護師である女性が通る。

それに気づいた彼女はさやかのことを知っていたのか、上条恭介のことについて話す。

あら、上条さんなら昨日退院したわよ――。

その言葉に驚いた顔をするさやか。

リハビリの経過も順調だったから予定が前倒しになって――。

そう話す彼女にさやかは、

そうなんですか――。

っと返す。その表情はさっきの浮かれたような顔とは違い、少し傷ついたようにも見えた。
277 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:53:23.39 ID:PifaLPGB0
―― 上条家 門前 ――


さやかは上条恭介の家の前に立っていた。
そして呼び鈴を押そうと指をインターホンに近づけた瞬間、彼の家から聞き慣れた音色が聞こえる。

その音にはっとし、呼び鈴を押そうと近づける指を止めるさやか。
そして、少し微笑を浮かべ帰ろうと門に背を向ける。

杏子「会いもしないで帰るのかい? 今日一日追い掛け回したくせに」

さやかの後ろにはガードレールにもたれかかる、杏子がいた。

さやか「お前は……」

杏子「知ってるよ、この家の坊やなんだろ? あんたがキュゥべぇと契約した理由って」

杏子「まったく、たった一度の奇跡のチャンスをくっだらねーことに使い潰しやがって」

苦々しげにさやかに言い捨てる。





さやか「お前なんかになにがわかる!」

その言葉に杏子は語尾を荒げ、さやかに諭すように話す。

杏子「わかってねーのはそっちだバカ! 魔法ってのは徹頭徹尾、自分だけの望みを叶えるもんなんだよ!
   他人のために使ったってろくなことにはならないのさ!」

そこで区切り、もう一言を添える。

杏子「巴マミはそんなことも教えてくれなかったのかい?」

腹立たしげに杏子を睨むさやか。

杏子「惚れた男をものにするならもっと冴えた手があるじゃない。せっかく手に入れた魔法でさぁ」

そう厭らしく笑いながら話す。
そんな彼女を気味悪く思ったのかさやかは少したじろぐ。

さやか「な、なによ……」






杏子「今すぐ乗り込んでいって、坊やの手も足も二度と使えないくらいに潰してやりな」

さやか「!!」

杏子「あんた無しではなにもできない体にしてるんだよ。そうすれば今度こそ坊やはあんたのモンだ! 身も心もぜーんぶね」

続けざまにそういう杏子。

杏子「気が引けるっていうなら、あたしが代わりに引き受けてもいいんだよー? 同じ魔法少女のよしみだ。お安い御用さ」

さやか「絶対に……。お前だけは絶対に許さない……! 今度こそ必ず……」

にやにやと笑いながら挑発めいたことを話す杏子に、
怒りからか震えるさやか。

杏子「場所変えようか?」

そんなさやかにそう提案し

杏子「ここじゃ人目に付きそうだ」

278 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:54:01.30 ID:PifaLPGB0
―まどか―

―― まどホーム ――


まどか「……」

昨日あった、暁美さんの言葉を思い出す。


――さやかを殺すことは条件に入っていないわ。


この言葉、この意味を考えると……。

まどか「まさか、あなたは……」

あの時のほどかちゃんに向けた暁美さんの目。
何も考えず、何も映さない。そう見えたその瞳。

だけど、感じるものがあった。

まどか「あの時、暁美さんは確かに……」

ほどかちゃんを殺す気だった――。





頭を抱える。

まどか「きっと、これは私のせいだ」

あの時、暁美さんを叩いたから、突き放したから――。

まどか「私、なにをやってるの……?」

ほどかちゃんは、暁美さんは私を救う為に未来から過去に戻ったと言っていた。

まどか「そんな子を私は……」

でもあの時は、ほどかちゃんが大怪我をしているのに酷いことを言う暁美さんにかっとなって……。
気づいたら叩いていた。

まどか「でも、あれじゃ駄目だったんだ……」

そうだ、本当はあの時、暁美さんにちゃんと事情を説明するべきだったんだ。




まどか「まだ、まだ間に合うよね?」

そうだ。まだ全ては終わっていない。まだ、やり直せる。

まどか「ほむらちゃんに謝ろう。そして全部話そう。そしたら――」

今度こそ本当の意味で私達は家族になれるから――。

マミ『まどかさん! ほどかさん! 聞こえる!?』

急にマミさんの声が聞こえた。
突然のことに驚く。

まどか「え、マ、マミさん?」
279 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:54:27.28 ID:PifaLPGB0
ほどか『聞こえます。どうしたんですか?』

自室にいるであろうほどかちゃんの声も聞こえますます慌てる。

まどか「え、なにこれ……」

その疑問にマミさんが答えてくれる。

マミ『突然ごめんなさい。これはキュゥべぇに頼んで、テレパシーをあなた達に送ってもらってるの』

キュゥべぇってそんなことまで出来るんだ……。

マミ『それより大変なの! 美樹さんが――!』

マミさんがさやかちゃんの身に危険が迫っていることを告げる。
その話に、私は急いで出かける準備をする。

まどか(もしかしたら、ほむらちゃんに――)

出来れば会えることを祈り私はほどかちゃんと共に外に飛び出した。
280 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:56:06.98 ID:PifaLPGB0
―三人称―

―― 歩道橋 ――

杏子「ここなら遠慮はいらないよね。いっちょ派手にいこうじゃない」

そういい変身する杏子。
それに対しさやかも変身しようとするが、

まどか「待って! さやかちゃん!」

まどかの静止が入る。

さやか「み、みんな!? 邪魔しないで!」

まどか「だめだよこんなの! 絶対おかしいよ!」

そのまどかの声に杏子は笑いながら槍を構える。

杏子「ふん! ウザい奴にはウザい仲間がいるもんだねー!」

そう言って今にも飛び掛かろうとする。





ほむら「じゃああなたの仲間はどうなのかしら」

そんな杏子の背後にいつの間にかほむらが立っていた。

杏子「ほむら……」

ほどか「ほむらさん!」

マミ「暁美さん!」

ほむら「話が違うわ、さやかには手を出すなと言ったはずよ」

ち、っと舌打ちして杏子は憎々しげにほむらを睨む。

まどか「ほむらちゃん!」

ほむらの名を呼ぶまどか。
だがそんなまどかをほむらは無視し杏子と話し続ける。





杏子「あんたのやり方じゃ手ぬるすぎるんだよ! どの道向こうはやる気だぜ?」

そういって少し笑う杏子にほむらはこう告げる。

ほむら「なら私が相手をする。手出ししないで」

そういうほむらに、少し考える素振りを見せ、

杏子「ふん。じゃあこいつを食い終わるまで待ってやる」

っと、自分の口に咥えた菓子を指差す。

ほむら「充分よ」

ほむらそう言いうとさやかのもとに近づく。
その態度が気に食わないのか、挑発と捉えたのか苛立たしげに

さやか「なめるんじゃないわよ!」

そう言って変身しようとソウルジェムを掲げるさやか。
281 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:56:34.50 ID:PifaLPGB0
まどか(ダメ! いま、戦いになったらほむらちゃんと話すことが出来なくなる!!)

そう考たまどかはさやかのもとに走り、彼女の手のひらからソウルジェムを奪う。

そして――。

まどか「さやかちゃん! ごめん!」

なぜか道路にそれを投げ捨てるまどか。
そしてそれはトラックの荷台に乗り猛スピードで持ち主であるさやかから離れてしまうのであった。

ほむら「!?」

ほどか「な!?」

そのことに反応する二人。
そして急いで、トラックを追うべく時を止める。





さやか「まどか! あんた、なんてことを!!」

まどかの奇行に文句を言うべく近寄るさやか。

まどか「だって、こうしないと!」

すると、まどかに近づいたさやかが電池が切れたように倒れかかる。
まどかはそんなさやかを倒れないように支える。

まどか「さやかちゃん……?」

マミ「さやかさん!? いったいどうして……」

マミも急に起こった出来事が理解できず。さやかに近づく。

QB「今のはまずかったよ、まどか……」

キュゥべぇが、まどかの行為に対し非難の声をあげる。

杏子も近寄り、体の力が抜けきったさやかの首を掴み、そのまま持ち上げる。





まどか「やめて!」

マミ「佐倉さん!」

まどかとマミが突然の杏子の蛮行に驚く。
しかし、そんな声にも耳をかさず依然さやかを持ち上げる杏子。
すると彼女は焦ったような声をあげる。

杏子「どういうことだ、おい……!」

そのまま額に数滴の汗を流しながら言葉を続け、

杏子「こいつ、死んでるじゃねぇかよ!」

衝撃の事実を告げた――。

まどマミ「え――」
282 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:57:07.24 ID:PifaLPGB0
幾許かの時間が経った。
その間にキュゥべぇはさやかがなぜ死んでいるのか、その話をまどか達にした。

場にはまどかの泣き声。

そして苛立たしげにキュゥべぇを掴む杏子。

顔面蒼白で地面に座り込むマミがいた。

ほどか「……」

ほむらとほどかがさやかのソウルジェムを拾い終え戻ってくる。





ほむら「……」

ほむらがそっとさやかの傍にソウルジェムを置く。

すると今までなんの反応を示さなかったさやかがビクンっと動き、青白かった顔に血色が戻る。
そして意識を取り戻したさやかは上体だけを起こす。

状況がまったく掴めず、ただぼんやりと周囲の人間の顔を見回すさやか。

さやか「なに? なんなの?」

だが彼女達は、さやかのその声に答えることはなかった――。

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283 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:57:36.76 ID:PifaLPGB0
―まどか―

―― マミホーム ――


……。鹿目まどかです。
衝撃の事実をキュゥべぇから告げられ、あの歩道橋にいた全員は今、マミさんの家にいます。

まどか「……」

場の空気は重く、さっきから誰も言葉を発しようとはしません。

そんな中、さやかちゃんが口を開きます。

さやか「騙してたのね、私達を……」

QB「結果的にはそうなるね」

さやかちゃんのその言葉に、キュゥべぇは否定もせず言い訳もせずそう告げた。

さやか「あんた! これがどういうことかわかって!」

声を荒げ、キュゥべぇに掴みかかるさやかちゃん。そんなさやかちゃんをほどかちゃんが止める。

ほどか「やめてください! さやかさん!」

でもその静止には耳も貸さず、さやかちゃんはキュゥべぇを掴んだまま、
近づくほどかちゃんを睨む。




さやか「あんたも、知ってたんだよね!」

その声にビクッと肩を震わし、俯くほどかちゃん。

さやか「知ってて言わなかったんだ。なんでよ!」

ほどか「そ、それは……」

煮え切らない態度のほどかちゃんに益々怒気を増し、叫び続ける。

さやか「あんたもこいつと同じだ。あんたも私達を騙していた!」

まどか「さやかちゃん! それは違うよ!」

怒鳴られるほどかちゃんを庇うように前に立ち、ほどかちゃんに非はないことを伝える。

さやか「なにが違うっていうの!? そいつは知ってて黙ってたんだよ!? こんなことを!」

こんな大事なことを……! っといい座り込むさやかちゃん。

静寂――。

その場にいる誰もが何も話さなかった。
284 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 06:59:26.63 ID:PifaLPGB0
―― 学校 ――

まどか「いい天気だねー」

そう言って空を見る。
時刻は昼。いま私は昼食を食べに屋上に来ている。

ほどか「そう、ですね」

私の声にほどかちゃんは元気無くそう答える。
どうやら、相当まいっているようだ。

昨夜、魔法少女の真実を聞かされ、重い空気の中解散となった私達。

その結果、夜が明けた今日、ショックからかさやかちゃんとマミさんは欠席。
ほむらちゃんは来ているがお昼になるとどこかへ行ってしまった。

そして、杏子ちゃんはなにかを考えながらそのまま消えてしまい、
私は落ち込むほどかちゃんを慰めながら今に至るというわけだ。

まどか(我ながら強くなったね)

前まででの私ならばこんなことがあれば、落ち込んだままなにも手をつけなかっただろう。
だけど、今は。

まどか(この子のおかげかな)

隣で元気のなさげなほどかちゃんを見やり、そう考える。

まどか(本当は私もショックだけどいつまでも落ち込んではいられない)

だって、私はこの子を守ると決めたんだから。
私しかこの子を守れる人はいないんだから。

まどか(とにかく、ほむらちゃんともお話ししないとね)

さやかちゃん達のことも気がかりだけど、今はほむらちゃんと仲直りするのが先決だよね。
昨日見たほむらちゃんはなんだかやつれてたようにも見えたし……。

まどか(私のせいだよね……)

私があんなことをしたから。

ほむらちゃんを叩いた手のひらを見つめる。
今、思えば人を叩いたのなんて初めてだったな。

285 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:00:28.19 ID:PifaLPGB0
まどか(嫌だな。すごく嫌な気分)

よく叩かれた方より、叩いた方が痛いなんていうけど、あれは違うね。
叩かれた方が痛いに決まってるよ。

それでも、私がこんなに辛いのは。

まどか(あんな方法しか選べなかった自分の無力さを嘆いてるんだよね)

結局、自分のことしか考えてないんだ。
最悪だよ、そんなの。

ほむらちゃんは私のために頑張ってくれてるのに。
それに、ほどかちゃんだって……。




まどか(ごめんね、ほどかちゃん。私、約束を破るよ)

ほむらちゃんに全部伝えよう。
そして仲直りするんだ。
じゃないといつまでもみんなバラバラなままだ。

まどか(なら、私がなんとかしないと。だよ)

私はパパだ。パパは家族の中で一番強くないといけないんだ。
そう決意して、私の隣に座り空を眺めるほどかちゃんの頭を撫でる。

ほどか「どうしたんですか……」

そんな私の行為を不思議がる彼女。

まどか「えー? ほどかちゃんは可愛いなーってね」

ほどか「なんですか、それ」

急になにおかしなことを言ってるの? そんな顔をする彼女だけど、私の手を払いのけたりはしない。
それが今の私にはすごくありがたかった。

まどか(ごめんね、ほどかちゃん。私に勇気をちょうだい。みんなを守り抜くことができる勇気を)
286 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:01:06.34 ID:PifaLPGB0
―三人称―

―― 教会 ――

古ぼけた教会がある。

もう随分使われていないのだろう。
ところどころが老朽化のせいかぼろぼろになり、本来の機能を果たすことは叶わず、
もはや雨露をしのぐ場所としか呼べない。
そんな誰も立ち入ることはないであろう場所にて話し声が聞こえる。

馬鹿野郎――! 

普段は静寂の身が支配するであろう教会に怒鳴り声が響く。

怒鳴り声の主である佐倉杏子はこの日、自宅にて落ち込むさやかを連れ、
自身の元、自宅であるこの場所に彼女を連れてきた。

この場所にて杏子は自身の過去について話、落ち込むさやかを励まそうとした。
争いあう仲であるはずのさやかを想いその行動にでたことは彼女なりの優しさなのだろう。
もしくは、自身と似た境遇にいたさやかにシンパシーを感じたのかもしれない。





杏子はさやかに対し、自分がこれまでしてきた生き方を勧め、魔法少女の能力を自身の為にのみ使うことを勧める。

だが、さやかはそれに対し自分の考えは曲げないことを告げる。

その返答に杏子は激昂したのだ。

杏子「ッ!」

教会から出ようと階段を降りるさやかを睨みつける杏子。

そんな杏子にさやかは振り返ることなく、自分が邪魔になるというのなら前のように殺しにくればいいと告げる。
そして、そのことを恨んだりもしないと。

言いたいことは全て言ったとばかりに教会からでる。

そんなさやかの態度に杏子は自分の手に持っていたリンゴに荒々しく齧り付き見送るのであった。
287 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:01:33.15 ID:PifaLPGB0
 ―― ほむホーム ――

ほむら「急に話がしたいだなんてどうしたのかしら」

まどか「ごめんね、どうしてもほむらちゃんに話したいことがあったから」

放課後。
ほどかちゃんには用事があると告げ一先ず別れた。
そして私は単身、私達を避けるように帰ろうとするほむらちゃんを捕まえ、
話をするべくほむらちゃんのお家にお邪魔したのです。

まどか「まずは……。ごめんなさい!」

ほむら「なんのことかしら」

出会ってすぐ、急に頭を下げる私の意図が読めないのだろう。ほむらちゃんは少し困惑気味だ。

まどか「この前は、ほむらちゃんを叩いちゃって……。ほむらちゃんは私のために頑張ってくれてるのに」

ほむら「あぁ、あのことならもういいわ。私も悪かったのだし」

まどか「本当に?」

ほむら「えぇ、もう大丈夫よ」





まどか「……。なんでだろう、私。ほむらちゃんのこと信じたいのに、嘘つきだなんて思いたくないのに……。
    全然、大丈夫だって気持ちになれない。ほむらちゃんが言ってることが本当だって思えない」

ほむら「……」

まどか「ねぇ、ほむらちゃん。あなたはどうしてほどかちゃんが……。憎いの?」

ほむら「……、別に憎くなんて……」

まどか「嘘だよね」

嘘だ。短い間だけど一緒に過ごしてほむらちゃんのことはよくわかった。
この子は自分の事に関しては嘘つきだ。

特に自分の感情に対しては頑なに偽り続ける。

まどか「ほむらちゃんはほどかちゃんのことを憎い。たぶん、殺したい。そう思ってるんじゃないかな」

まっすぐほむらちゃんを見つめる。
悲しいことだけど、ほむらちゃんの本心を聞かないと始まらない。

まどか「それがなんでかはわからないけどね」


288 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:02:06.50 ID:PifaLPGB0
ほむら「……だとしたらどうだっていうの」

……。やっぱりね。

まどか「だとしたら私はほむらちゃんのその考えが間違いだって言うよ。
    ほむらちゃんはほどかちゃんのことを誤解してるって言う」

ほむら「誤解……?」

まどか「うん。ほどかちゃんはほむらちゃんが思うような子じゃない。
    ほむらちゃんが憎く思うような子じゃないよ」

ほむら「なにを根拠にそんな……」

まどか「ほむらちゃんこそ、なにを根拠にほどかちゃんのことをそんなに目の敵にするの?」

ほむら「それ、は……」

まどか「ほどかちゃんは今まで私達を守ってくれたよね。
    マミさんのことだって片腕を失ってまで守った」

ほむら「……それは、あの子の演技で……」

まどか「演技? どうしてそんなことをする必要があったの?
    死ぬかもしれなかったんだよ」




ほむら「それは……。まどかに信頼されるために。私達を騙すために……」

まどか「なんでほどかちゃんが私達を騙さないといけないの?」

ほむら「あの子の目的にそれが必要だから……」

まどか「目的? ほむらちゃんが考えるほどかちゃんの目的ってなに?」

ほむら「それは……。あの子はまどかの魔法少女の才能を利用して……」

まどか「利用して?」

ほむら「世界を自分のものにしようと……」

……。驚いた。まさか、そんなことを考えていたなんて。
世界を自分のものに? そんなのあるわけないのに……。

まどか(ここまで追い詰められてたなんて……)







ほむら「あの子は魔女だから……。悪い魔女だから、だからみんな騙されて……」

うわ言のように、自分に言い聞かせるようにぽつぽつとほむらちゃんは話し続ける。
その姿は病的で、私のせいでここまで追い詰めてしまったのだと、改めて自分の行いを後悔する。

まどか「違うよほむらちゃん。ほどかちゃんは魔女なんかじゃない」

ほむら「でも、あの子は私からまどかを奪った……。まどかの傍にいれるのは私のはずなのにあの子がそれを奪ったから……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「だから、あの子は敵。まどかを脅かす敵だから……。私はまどかを守らないといけないから……」

そうだ、ここまでほむらちゃんを追い詰めたのは私だ。
未来で魔法少女になったせいでほむらちゃんはどうしようもなく追い詰められてしまった。

まどか(ごめん。ごめんねほむらちゃん)

まだなにかを言い続けるほむらちゃんを抱きしめる。
289 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:03:06.10 ID:PifaLPGB0
まどか「ほむらちゃんごめんね」

ほむら「まどか……?」

まどか「私のせいだよね。私が魔法少女になったせいでほむらちゃんはこんなに追い詰められて……」

ほむら「まどかのせいじゃ」

私の言葉をすぐさま否定するほむらちゃん。
だけど、これは私の責任なんだ。

まどか「ううん、私のせい。本当ならほむらちゃんに恨まれるのは私のはずなのに……」

ほむら「私がまどかを恨むなんて……」

まどか「ほむらちゃんは優しいもんね」

こんなに優しい子を私は……。
でも、嘆いてばかりはいられない。

まどか「ねぇ、ほむらちゃん。私のいうことなんて信じられないかもしれない。
    でもお願いだから信じて? ほどかちゃんは敵じゃない」

ほむら「……」

これだけはわかってもらわないといけない。
じゃないといつまでも二人の気持ちはすれ違い続けることになる。

まどか「ほむらちゃんは未来から来たんだよね」

ほむら「……、えぇ、そうよ」

まどか「その目的は私を魔法少女にしないため」

ほむら「えぇ」

まどか「どうして私がそれを知っていると思う?」

ほむら「それは、あの子が教えたから……」

まどか「うん、そうだよ。ほどかちゃんが教えてくれたから。
    じゃあさ、なんでほどかちゃんはそんなこと知ってると思う?」

ほむら「それは、どこかで調べて……」

まどか「どこで? そんなことを知ってるのはほむらちゃんや私達だけだよね?
    そもそも、私の才能を利用する為だけなら別にそんなの知らなくてもいいよね」

ほむら「それは……」

一つずつ一つずつ、丁寧にほむらちゃんの誤解を解いていく。
冷静になって考えれば、きっとほむらちゃんもわかってくれるはずだから。

まどか「これから話すことはほむらちゃんにとって信じられないことだと思う。
    それにそのことを証明する証拠もない。でも、信じてほしい」

そして、最も重要な事実を告げる。
本当はほどかちゃんには止められているけれど、こうなってしまえば言う他ないんだ。

ほむら「……?」

私がなにを言いだすのか、見当もつかないほむらちゃんは小首を傾げる。
そんな、姿を見た私は、そんな姿も可愛いな。と場違いなことを考えてしまう。


慌てて雑念を振り払い、
話に集中するべく、覚悟を決めるべく、深呼吸を一つ。

まどか「ほどかちゃんがほむらちゃんのことを知っている理由。
    そして、未来から来た理由。それはね……」

また、一つ息を吐く。

そして――。


彼女がほむらちゃんの子供だからなの――。


ほむらちゃんにとって衝撃的な真実を告げた。
290 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:03:37.22 ID:PifaLPGB0
まどか「これが、ほどかちゃんが未来からきた目的だよ」

ほむらちゃんの誤解を解くために私は今まで黙っていたことを全て話した。
これで、ほむらちゃんが信じてくれるかはわからないけど、信じるしかない。

まどか「だから、ほどかちゃんが私達の敵なんてことはありえないよ。
    だってあの子は私達の娘なんだもん」

ほむら「……そんな事って……。あなたはそれを本当に信じられるの?」

まどか「うん。私はほどかちゃんを信じるよ」

ほむら「そんな、そんな話……」

まどか「でも、そう考えたら全部の辻褄は会うよね」

ほむらちゃんのこと。ワルプルギスのこと。魔法少女の事。
ほどかちゃんとほむらちゃんの姿が似ていることも、そう考えれば辻褄が合う。




ほむら「でも、それじゃあ、あの子は……」

事実を伝えられたほむらちゃんが眉間に皺をよせ、深く考え込む。
そんなほむらちゃんに、私はどうしてもあの子を信じてほしくて話し続ける。

まどか「ほむらちゃんお願い。ほどかちゃんを信じてあげて。
    あの子はほむらちゃんのために未来から……」

ほむら「少し黙って!!」

まどか「!」

苛立たしげに声を荒げるほむらちゃんに驚いてしまう。
そして、私の狼狽に気づいたほむらちゃんは、怒鳴ってしまったことについて謝罪する。

ほむら「あ、ごめん、なさい……」




まどか「ううん。こっちこそごめん」

少し、焦りすぎたかもしれないかな。
ほむらちゃんだって、急にこんなことを言われたら混乱するよね。

ほむら「……。しばらく一人にしてもらえるかしら。考えをまとめたいの」

まどか「わかった。またくるね」

ほむらちゃんの言葉に頷き彼女の家から出る。
私が出来るのはここまでかな。

後は……。

まどか(信じてるからね、ほむらちゃん)

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291 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:04:27.79 ID:PifaLPGB0
―― まどホーム ――


まどか「……」

ほどか「……。どうしたんですか。出会いがしらにいきなり土下座なんて」

時刻は8時。
ほむらちゃんの家から帰宅し、
私を出迎える為に玄関に出てきたほどかちゃんに出会った私は史上稀にみる土下座を決行していました。

まどか「真に申し訳ございません」

ほどか「いや、話が読めないんですけど……」

まどか「実は……。ほむらちゃんに、ほどかちゃんが娘であることを伝えてしまいました」

ほどか「!? ……!!?」

うわっちゃー。めちゃくちゃ驚いてるよ……。
これは私死んだかな……。





ほどか「ちょ、え? それ、本当ですか?」

まどか「本当です。ごめんなさい」

ほどか「どどどどうして」

まどか「その、あの、ほむらちゃんと仲直りするために……」

ほどか「そ、そうですか」

まどか「はい……」

ほどか「……」

まどか「……」

沈黙、、、





まどか(ヤバい、どうしよう。この沈黙が怖い。
    もしかして、ほどかちゃん魔法少女に変身したりしてないよね)

それで、前みたいにミサイル落とそうとしてたりとか……。

まどか(すっごい気になる。でも、今顔を上げるわけには……)

ほどか「……。あの、顔を上げて下さい」

まどか「へ?」

ほどか「気にして、ませんから……」

まどか「え??」

ほどか「いえ、むしろ私が悪いんです。本来なら、お母さんにも伝えるべきことでしたから」

まどか「??」

なんか状況がいまいち読めないな。
とりあえず、ほどかちゃんが怒ってないことだけはわかるけど……。
292 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:04:53.94 ID:PifaLPGB0
ほどか「私が最初に内緒になんて言うからこんなややこしいことになったんですよね……」

まどか「えーっと。それって、ほむらちゃんにほどかちゃんのことを黙ってたことだよね」

ほどか「はい……」

まどか「でも、それはほむらちゃんが信じてくれるかどうかわからないから仕方ないって……」

ほどか「ですが、伝えるべきことです……」

まどか「……」

ほどか「私が臆病だったから……」

うーん。なんか話の内容が掴めないな……。

まどか「臆病って?」

ほどか「実は……。私がお母さんに黙っていた本当の理由は……」





まどか「怒られるのが怖かったから!?」

ほどか「はい」

まどか「え、えー……」

ほどかちゃんが言うには、ほむらちゃんは魔法少女の真実を知っている。
そんなほむらちゃんに自分が娘だと言えば、そんな愚かな行動をした自分を軽蔑するのではないかと恐れたからだという。

まどか「まさか、そんな理由で……」

ほどか「ごめんなさい……」

しゅんっとうなだれるほどかちゃんを見る。
まさか、そんな子供じみた理由で黙っていたなんて……。

まどか「うーん……」

でも、考えて見れば、この子はまだ中学二年生の子供なんだよね。
普段の落ち着いた振る舞いや大人びた表情から、ついつい忘れてしまいそうになるけど……。





まどか(しかも、究極のお母さんっ子)

だから、ほむらちゃんに嫌われるようなことは避けたかったのかもしれないな。
まぁ、普通は怒られたからってそれが嫌われることには繋がらないんだけど……。

まどか(ほどかちゃんはほむらちゃんのことになると、常識がなくなるからなー……)

それに、嫌われるだけが理由じゃないだろうし。
たぶん、本当の理由は……。

まどか(心配させたくなかったっていうのが一番の理由かな)

娘が魔法少女の残酷な運命を背負っているなんてほむらちゃんが知ったら、すごく悲しみそうだもんね。
あの子のことだから、自分の責任だって自分を責めそうだし……。

まどか(やっぱりほむらちゃんに似てるなー)

自分だけで背負っちゃうところとか、自分で自分を追い詰めるところとかそっくり。

まどか(そんなとこ似なくてもいいのに……)
293 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:05:19.38 ID:PifaLPGB0
まどか「ねぇほどかちゃん」

ほどか「……はい」

まどか「今回のことはほどかちゃんは悪くないよ」

ほどか「……でも」

まどか「だって、子供なら自分の親に嫌われたくないって思うのは当たり前だし、
    心配かけさせたくないっていうのもわかるよ」

この子の場合は、その気持ちが強すぎるのが難点なんだけど。

まどか「ほむらちゃんのことを考えて黙ってたんでしょ?」

ほどか「……はい」

まどか「じゃあほどかちゃんは悪くないよ。ううん、誰も悪くない。
    ただ少し、間違っちゃったんだよ」

どこかでみんなの気持ちがズレて、それで間違った。
すごく曖昧でふわふわとした理由だと思うけど、今回のことに関してはそうしておこう。




まどか「でも、間違いは正せるんだよ。
    それに気づくことが出来たら、人は間違いを正すことが出来る」

ほどか「……」

まどか「だからさ、今度は一緒に間違えないように考えよう?
    一人より、二人。二人より三人で考えた方がきっといい考えが浮かぶよ。それにさ、」

私達は親子なんだから。

そう締めくくって、ほどかちゃんの頭を撫でる。

ほどか「そう、ですね……。一人で考えて行動しても……」

そこで言葉を終えて、ほどかちゃんは俯く。
なにを言いたいのかは正確にはわからないけど、ほどかちゃんもきっと私の気持ちに気づいてくれたんだと思う。





まどか「……」

彼女の頭を撫でながら祈る。

まどか(お願い、ほむらちゃん。後はあなたが信じてくれれば……)

そうしたら、私達は……。
今度こそ本当の家族に……。

まどか(信じるしか、ないよね……)



叶うなら、みんなが救われますように……。

294 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:05:45.49 ID:PifaLPGB0
さやか「……」

まどか「さやかちゃーん! おはよう」

おはようございます! 鹿目まどかです!
ほむらちゃんに真実を告げた日から明けて次の日。

いつも通りほどかちゃんと仁美ちゃんと登校中に昨日は休んださやかちゃんを見かけました。

さやか「!」

仁美「おはようございます、さやかさん」

ほどか「おはようございます」

やっぱり、ほどかちゃんまだ引きずってるみたいだね。
さやかちゃんと顔を合わすのは辛そうだ。

さやか「あ、あぁー。おはよう!」

さやかちゃんの方もおかしい。
いつも通り元気に振舞おうとしてるけど、その元気が空回りなのはすぐわかった。





仁美「昨日はどうかしたんですの?」

さやか「ちょっとばかり風邪っぽくてねー」

まどか「さやかちゃん……」

さやか『大丈夫だよ。もう平気、心配いらないから。
    ほどかもごめんね。この前は酷いこと言って。あんたのことだから黙ってたのにはわけがあるんでしょ?』

ほどか『さやかさん……』

さやか「さーって今日もはりきって……」

いつも通り、掛け声をあげようとするさやかちゃんだったけど、その言葉は途中で不自然に止められた。
さやかちゃんの目はある方向を見つめていて、気になった私達はその方角へと目をこらす。
するとそこには……。




仁美「あら、上条君退院なさったんですの……」

さやか「……」

まどか「……」

仁美ちゃんの言葉に、なにも返さいさやかちゃん。
そんないつもとは違ったさやかちゃんが気になり、ちらりと顔を伺う。

さやかちゃんの上条君を見る目はどことなく寂しそうだった。


295 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:06:14.14 ID:PifaLPGB0
―― 教室 ――

まどか「よかったね、上条君」

さやか「う、うん……」

まどか「さやかちゃんも行ってきなよ。まだ声かけてないんでしょ?」

仁美「……」

さやか「私は、いいよ……」

まどか「……」

学校に着いた私達。
会話の内容はやっぱり上条君のことになり、さやかちゃんに挨拶でもしてきたらどうかと促すのですが
さやかちゃんは複雑そうな表情をして固辞します。

でも、その視線は上条君を追っていて、すぐにでも話しかけたいことがありありと伝わってきました。

仁美「……」

ほどか「……」
296 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:06:57.40 ID:PifaLPGB0
―さやか―

―― 放課後 喫茶店 ――

さやか「それで、話ってなに?」

いま、私は仁美に呼び出され、いつもの喫茶店に二人でいる。

私の前にはいつになく真剣な表情の仁美が座っていて、
今から話される内容がなにか、大事なものだと思わせられた。

仁美「恋の相談ですわ」

さやか「……」

思わぬ言葉が出てきて驚く。

仁美に言いよる男子は多く毎週のように告白なんかされている彼女だけど、
仁美自身から恋の相談なんかは受けたことがない。

そのことから私は仁美は色恋なんてものに興味がないのではと勝手に思い込んでいた。





仁美「私ね、前からまどかさんやさやかさんに秘密にしてきたことがあるんです」

さやか「え……う、うん」

仁美「ずっと前から、私……。上条恭介君のことお慕いしておりましたの」

さやか「!! ……そ、そうなんだ」

恋の相談と言われ、仁美にも好きな人が出来たのか。と考えはした。
だけど、まさか仁美が恭介のことを……。

さやか「ま、まさか仁美がねー。なーんだ、恭介のやつ隅におけないなー」

できるだけ、普段通りに振舞おうとする。
だけど、あまりにも予想外のことに声が震える。

仁美「さやかさんは上条君とは幼馴染でしたわね」

さやか「あーう、うん。まぁ腐れ縁というか、なんというか……」
297 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:07:23.77 ID:PifaLPGB0
仁美「本当にそれだけ?」

さやか「……」

本当はそれだけじゃないでしょう。と仁美は目で語りかける。
だけど、その問いかけに私は言葉を返せなかった。

仁美「私、決めたんですの。もう自分に嘘はつかないって。あなたはどうですか」

そう語り続ける仁美は相変わらず私の目から視線を外さない。

仁美「さやかさん、あなた自身の本当の気持ちと向き合えますか」

さやか「な、なんの話をしてるのさ」

勝手に話し続ける仁美になにか勘違いをしているんじゃ、という意味を込めてそう返す。
だけど、そんな言葉は聞こえないと言いたげに仁美は話を続ける。





仁美「あなたは私の大切なお友達ですわ。だから抜け駆けも横取りするようなこともしたくないんですの」

仁美「上条君のことを見つめていた時間は私よりさやかさんのほうが上ですわ。
   だからあなたには私の先を越す権利があるべきです」

さやか「仁美……」

もはや、私の答えをも待たずに私の気持ちは知っているとばかりに彼女は話す。
彼女の言葉はとても真剣なもので、きっと彼女なりに私のこと自分のことをよく考えた上で出した結論なんだと思う。

でも、私は……。
私には……。





仁美「私、明日の放課後に上条君に告白します。丸一日だけお待ちしますわ。
   さやかさんは後悔なさらないよう決めてください」

仁美「上条君に気持ちを伝えるべきかどうか」

さやか「……私は……」


私に告白する資格なんて――。




私の答えは聞かずに去っていく仁美。
一人喫茶店に取り残された私はしばらくそこから動けなかった。
298 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:09:17.28 ID:PifaLPGB0
―まどか―

―― さやホーム 正面入口前 ――

さやか「……マミさんには繋がらないか……」

さやかちゃんは、マミさんに連絡を取ろうと携帯に電話を掛ける。
だけど、マミさんには繋がらず、溜め息交じりに携帯を閉じる。

まどか「さやかちゃん、今日なにかあった?」

溜め息を吐いたさやかちゃんの顔は疲れているように見えた。
それは、ここ最近あった色々な出来事からの疲れにも見えたが、それだけではないと私は感じた。

さやか「え、別に、なにも……」

まどか「嘘だよ。だって、さやかちゃん辛そうな顔してるもん。
    ねぇ、辛いんなら私に言ってほしいな。私は魔法少女じゃないけど、さやかちゃんの友達だよ?
    だから、さやかちゃんが辛いときは頼ってほしい」


さやか「……。あんた、なんで……。なんでそんなに優しいかな。私にはそんな価値なんてないのに」

悲しげにそう呟くさやかちゃん。その顔はうっすらと笑みを浮かべていて、自嘲しているようにも見えた。

まどか「……」

ほどか「さやかさん……」

さやか「私ね、今日後悔しそうになっちゃった」

ぽつり、ぽつりとさやかちゃんは今日あったことを話し出す。
そして、自分の想いを。

さやか「あの時、仁美を助けなければって、ほんの一瞬だけ思っちゃった。正義の味方失格だよ」

悲しそうに、辛そうに、自分のことを憎々しげにさやかちゃんは語る。
瞳にはうっすらと涙も光って見える。

まどか「……」

黙ってさやかちゃんを抱きしめる。
今はただ、何も言わずにさやかちゃんの話を聞いてあげたい。


さやか「仁美に恭介を取られちゃうよ……。でも私、何もできない……!」

私を抱きしめながら、徐々に声を荒げ、自分の感情を吐き出す。
目からは涙がボロボロと零れている。

さやか「だって私、もう死んでるんだもん! ゾンビだもん! こんな体で抱きしめてなんていえない!
    キスしてなんていえないよ!」

泣き喚くさやかちゃん。

苦しいんだろうな。辛いんだろうな。
そんな感情を全部流してほしくて、ただ私は彼女を抱きしめる。

私にはそれしかできないから……。

ほどか「……」


さやか「ありがとう、ごめんね」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「もう大丈夫。スッキリしたから」

そう言って笑顔を作るさやかちゃんだけど、まだ無理をしているようにも見える。

まどか(当たり前だよね……。そう簡単に吹っ切れるものじゃないもん)

なにか言おうと思うけど止めておく。
これ以上はきっと、さやかちゃんも触れられたくないだろうから。

さやか「さぁ、いこ! 今夜も魔女をやっつけないと!
    ほら! ほどかも!」

ほどか「はい……」
299 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:09:46.30 ID:PifaLPGB0
―― 魔女結界内 ――

さやかちゃんを襲う無数の触手。
木の枝や幹を彷彿とさせるそれは、いくら薙いでも復活しさやかちゃんを絡め取ろうと、その先端を伸ばし続ける。

ほどか「さやかさん!」

さやか「ほどかはまどかを守ってて! こいつは私が一人でやるから!」

ほどか「でも!」

さやか「いいから!」

そう言って魔女の本体に飛び掛かる。
だけど、その攻撃が届くことはなく、さやかちゃんは木の枝を束ねた物に押し返されそのまま飲み込まれる。

まどか「さやかちゃん!」

ほどか「っ!」

慌ててさやかちゃんを助けに入ろうとするほどかちゃんだが、ある乱入者によりその必要はなくなった。





杏子「全く、見てらんねぇつーの。いいから、もうすっこんでなよ。手本を見せてやるからさ」

さやかちゃんを抱きかかえ安全な場所で降ろした後、槍を構える杏子ちゃん。
そして、そのまま魔女に攻撃をしかけようとするけれど、さやかちゃんが前に出たことによりそれは阻まれた。

杏子「お、おい!」

さやか「邪魔しないで。一人でやれるわ」

再度、スピードを増して魔女に飛びかかる。
そして、魔女の首を刎ねることに成功する。
だけど首を斬られたにも関わらず魔女は生きていて、反撃をまともに受けてしまう。

まどか「さやかちゃん!」

接近しすぎたさやかちゃんはその反撃をまともに受けてしまい、全身を突き刺されてしまう。

さやか「ふふふふ……。あははははは」

全身を串刺しにされ、血をだらだらと流しながら笑うさやかちゃん。
様子が変に見えた。
300 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:10:15.96 ID:PifaLPGB0
杏子「あんた、まさか……」

さやか「あははは、ふふふふふふ」

首を刎ねられたはずの魔女は首があった場所から触手を生やし、さらに、さやかちゃんに猛攻を加える。
だけど、その無数の触手に突き刺されながらも、さやかちゃんはそれを気にも留めずに攻撃し続ける。

まどか「さやかちゃんどうして……」

血を撒き散らしながら魔女と戦うさやかちゃんを見て、おもわず震えてしまう。
魔女の血とさやかちゃんの血が吹き出し、混じり合うその後景は今まで見てきた戦いの中でも特に異質に思えた。

ほどか「そんな、痛みを消して……」

まどか「それって……」

痛みを消して戦う。
魔法少女は魂がソウルジェムに変質したことにより、元の体と分離。
体とのリンクを断つことが出来る。

それを利用し、本来体が受けるはずであった痛みを消して戦うことが出来る。

キュゥべぇが真実を語った時に、同時に私達に伝えたことだ。





杏子「あのバカ……」

杏子ちゃんが眉を顰め、さやかちゃんの姿を睨む。
その表情は険しいながらも憐れんでいるようにも見えた。

さやか「あっははははは! 本当だ!」

その間もさやかちゃんは魔女に反撃され、お互いの黒い血を撒き散らしながらも攻撃を続ける。
そして、地面に流れる液体。

さやか「その気になれば痛みだって消せる!」

狂った様に笑い、もはや斬り伏せるというよりも叩き伏せるように戦うさやかちゃん。
そんなふうに戦う彼女を見た私は思わずその姿から目を背けてしまう。

まどか「やめて……。もう、やめて……」

そして、力無く呟くしかなかった。
301 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:11:45.53 ID:PifaLPGB0
―マミ―

―― マミホーム ――

マミ「……」

魔法少女はもう死んでいる。
その事実を知ってからしばらくが経った。

マミ「……」

私はそのことにショックを受け、学校にもいかず、そして魔女退治にもいかず、自室に籠っていた。

マミ「ねぇ、キュゥべぇ」

名前を呼ぶ。今までは信頼して呼んでいた名前だ。
そして、これからも信頼し続けると思っていた名前。

QB「なんだい。マミ」

マミ「魔法少女は死んでるのよね」

変わるはずのない答えを聞く。
だが、もしかしたらという期待もあった。

QB「そうなるね」

だけど、やはり返ってくる答えは望んでいたものではなかった。

マミ「そう」

しかし、それはもうよかった。
死んでいることに変わりはないけど。
私はこうやって生活することが出来ている。

マミ「ねぇ」

再度、質問する。
だけど、今度の質問は少し変わったものだ。

マミ「まだ、なにか隠していることが、あるんじゃない?」

その言葉に反応するキュゥべぇ。
それだけで、答えがわかった私はそのまま質問を続ける。

マミ「それって、魔女に関連したことじゃないの?」

QB「やれやれ。もう黙っていても無駄みたいだね」

そこまで言うと観念したのか、キュゥべぇは首を振り答え始める。

QB「そこまで言うなら全部わかってるんだろうね。
   そうだよ。今、マミが考えている通りさ」

キュゥべぇらしくない、すごく曖昧な答えを返してくる。

マミ「あなたらしくないわね。そんな答え方」

QB「そうだね。少し僕達の考え方に影響を与えることがあったのさ」

マミ「そう」

でも今はそんなことはどうでもいい。
302 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:12:12.20 ID:PifaLPGB0
マミ「そう。そうだったのね」

そっか。ふふふ。
そうだったんだ。

QB「マミ?」

マミ「ふふふ」




――魔女の正体は魔法少女だったんだぁ。






マミ「ふふ、ふふふふ……。……ない」

QB「なにか言ったかいマミ?」

マミ「いーえ。なにも」

なら――。


魔法少女が魔女になるっていうなら――




――死ぬしかないじゃない。

303 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:12:51.54 ID:PifaLPGB0
―まどか―

―― バス停 ――

まどか「さやかちゃん、あんな戦い方、ないよ……」

魔女を倒し、その疲れからかふらふらのさやかちゃんを休ませるために、
雨宿りも兼ねて屋根のあるバス停にて休む私達。

まどか「痛くないなんて嘘だよ。見てるだけで痛かったもん。感じないから傷ついてもいいなんてそんなのダメだよ」

ほどか「……」

さやか「ああでもしなきゃ勝てないんだよ。私、才能ないからさ」

私の肩にもたれ掛りながら、さやかちゃんはそう言い捨てる。
その声はとても無機質なもので、とてもさやかちゃんの声とは思えなかった。

まどか「あんな戦い方で戦ってたら、勝てたとしてもさやかちゃんの為にならないよ」

さやか「私の為にってなによ」

呻くように、でもその声からは確かな怒りを感じられた。





まどか「え……?」

さやか「こんな姿にされた後で、なにが私の為になるっていうの?」

立ち上がりソウルジェムを私に突きつける。
その表情は酷く歪んで見えた。

さやか「今の私はね、ただ魔女を殺すしか意味のない石ころなのよ。
    死んだ体を動かして生きてるふりをしてるだけ。そんな私の為に誰がなにをしてくれるっていうの?
    考えるだけ無意味じゃん。ほどかもそう思うでしょ?」

そう言って、さやかちゃんは私の横に座るほどかちゃんに笑いながら同意を求める。

でも、ほどかちゃんはどう答えていいのかわからないといった表情をするだけで、
辛そうにさやかちゃんの瞳を見つめ返すだけだった。

まどか「でも、私はどうしたらさやかちゃんが、みんなが幸せになれるかって……」

さやか「だったら、あんたが戦ってよ」

さやかちゃんは、ぶっきらぼうにそう言い放つ。
その声と表情には私に対する呆れと嫌悪が入り混じっているようにも見えた。
304 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:13:28.44 ID:PifaLPGB0
ほどか「さやかさんそれは!」

さやか「ほどかは黙ってて」

さやかちゃんがこの後なにを言おうとするのか気づいたのか、
ほどかちゃんが慌てて止めに入る。

だけど、そんな静止をさやかちゃんは目と言葉を持って遮る。

さやか「あんた誰よりも才能あるんでしょ? 私みたいな苦労しなくても簡単に魔女をやっつけられるんでしょ」

まどか「私は……。そんな……」

さやか「私の為になにかしようっていうんなら、まず私と同じ立場になってみなさいよ。
    無理でしょ? 当然だよね」

さやか「ただの同情で人間やめられるわけないもんねぇ!」

少しずつ声を荒げ、私を詰る様に嘲る様に叫ぶ。




まどか「同情なんてそんな!」

さやか「なんでもできるくせに、なにもしないあんたの代わりに私がこんな目にあってるの。
    それを棚に上げて知ったようなこと言わないで!」

そういってさやかちゃんは停留所から出ていこうとする。

だけど、立ち止まりほどかちゃんの方を見ると、憐みの籠った声で

さやか「……ほどかも大変だよね。まどかのせいでほむらがあんな目にあうっていうのに、それをわかっててこんな体になってさ
    あんたの目的ってさ魔女に見せられた、あの映像にあった出来事を止める為だよね?」

そう告げる。

ほどか「ッ!」

まどか「え……?」






さやか「……」

まどか「さやかちゃん!」

さやか「ついてこないで」

そう言うと停留所から飛び出し、走り去っていく。
私達はそれを見送ることしかできず、ただ黙って雨の中走る彼女を眺めることしかできなかった。









さやか「馬鹿ね、私……。なんてこと言ってんのよ!」

さやか「もう、救いようがないよ……」

――――――――――――
――――――――――
――――――――
305 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:14:11.80 ID:PifaLPGB0
―ほむら―

―― ほむホーム ――

ほむら「あの子が私の子供……?」

昨日まどかに言われたことを思い返す。
鹿目ほどか。彼女は未来からきた私の子供だと。

ほむら「そんなこと、あるわけ……」

そう思いたかった。だけど、そう思い込もうとしても無理だった。

そもそも、私はあの子に初めてあった時から、なぜか他人のような気がしなかった。
なにか親しみのようなものを感じていたのだ。

でも、

ほむら「第一、まどかとの子ってどういうわけよ……」

まどかは女の子じゃない……。
インキュベーターの星の技術で性転換って……。

ほむら「そんなの信じられるわけないじゃない……」

いくらなんでも話が突拍子がなさすぎる。







ほむら「いえ、決してまどかが相手なのが嫌なわけじゃないけど……」

むしろそのことに関しては嬉しいわよ?
でも、できれば私が父親役がよかったわ。

ほむら「っていうかそれが本当なら、私はどうやってワルプルギスの夜を乗り越えたの?
    まどかの話じゃ、未来ではマミ達もみんな元気なようだし……」

……。今はそんなことはいいわね。

とにかく、あの子が私の子供。それを事実として受け止めるべきかどうか。

ほむら「……。確かに辻褄は合うわね」

あの子が知っている知識は偏りがあるものの私達関連のことばかり。
特に、私の願いのことなんて私が言わなきゃわかるわけがない。






ほむら「私の願いを知っているインキュベーターはあの時間軸のみの存在なわけだし……」

それに、

ほむら「あの子が私に似ていることは認めるしかないし……」

思えば、戦い方も考え方も多少の相違はあっても似通っていた。
それも母娘だからと考えたら頷けるのか。

ほむら「状況証拠だけは揃ってるのね……」

色々考えて見てそう結論する。

ほむら「DNA検査でもしたらはっきりするのかしら」

でも、なんて言って見てもらうの?
この子が私の本当の子供か調べてくださいって?

ほむら「ダメだわ。そんなことしたら違う病院に入院させられてしまうに決まってるわ」
306 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:14:40.02 ID:PifaLPGB0
QB「やぁ、なにか悩んでるようだね」

ほむら「……。急に現れないで頂戴。っていうか勝手に家に入らないで」

QB「まぁそういわないでくれよ。最近シリアス続きでこういうバカげた空気が恋しいんだ」

ほむら「なんの話よ」

QB「こっちの話さ」

ほむら「はぁ……。なんの用なの?」

QB「なに、君の悩みに答えを出そうと思ってね」

ほむら「盗み聞きとはいい度胸ね。殺すわ」






QB「待って待って! せめてこれだけは聞いて!」

ほむら「なにかしら」

QB「ほどかと君は正真正銘、親子だ。これは間違いない」

ほむら「どうしてそんなことがわかるのよ……」

QB「僕も気になっていたからね。調べてみたのさ。
   それで、君達の毛髪なんかを調べてみた所、やっぱり親子だということが証明されたのさ」

ほむら「そう。わかったわ」ターン

QB「きゅっぷい!」

とりあえず不法侵入の淫獣は始末してと。
でも、これで確定したわけね。






ほむら「……。どうしろっていうのよ」

それがわかったとして、今更私にどうしろと……。

ほむら「あれだけ酷いことをしておいて、仲良くしろって?」

そんなことできるわけないじゃない……。

でも……。

ほむら「あの子は私の為に魔法少女の運命を受け入れてこの時代に来たのよね……」

なによそれ。なんて愚かなの。

ほむら「……」

私も人の事はいえないか……。
307 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:15:06.41 ID:PifaLPGB0
ほむら「はぁ、どうしてまどかに似なかったのかしら……」

あ、ダメだ。まどかに似たら似たで結局、魔法少女になるわね。

ほむら「一つ気になることがあるわね」

あの子の願い。本当に私の為なの……?

ほむら「私を助ける為。それは間違いないとは思うけど……」

行動基準が私の目的に沿ってるし、ワルプルギスの夜を倒すためにマミ達に協力を仰いだのも私の為みたいだけど。

ほむら「でも、それなら別にこの時代じゃなくても……」

あの子の母親として存在している時間軸の私を助ければいい話じゃない。
なのにどうしてわざわざこの時代に……。




ほむら「まだ、隠していることがありそうね」

そういえばインキュベーターは知っているのだろうか。
目の前にある死体を眺めそう考える。

あの子はこの淫獣と仲がよかった。
魔法少女の秘密を知っているにも関わらずだ。

ほむら「普通なら、嫌うはずだけど……」

……。とにかく一度会う必要がありそうね。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
308 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:15:42.34 ID:PifaLPGB0
―さやか―

さやか「はぁ……はぁ……」

使い魔を倒し終え一息つく。
でも、出来ればもっと戦っていたかった。

戦っている間はさっき見た光景を忘れられるから。

さやか「はぁ……はぁ……」

仁美と恭介が楽しそうに笑いあっている光景。

仁美は恭介に告白したんだろうか。
たぶん、したんだろうな。

それで、その笑顔なんだから、きっと……。

さやか「くそ……」

どうして私じゃないんだろう。
どうして恭介の隣にいるのが私じゃ……。






さやか「だれ……」

誰かが近づく気配がする。

ほどか「さやかさん」

さやか「ほどか……。なにしにきたの」

いったいなんの用があるのか。今は誰の顔も見たくないってのに。

ほどか「これを使ってください」

そう言って私にグリーフシードを渡す。

さやか「いいよ。グリーフシードなら自分でとるから」

だけどそれは受け取らない。施しは受けない。
そんなものを受けたら自分が余計に惨めになるだけだ。






ほどか「でも、さやかさんのソウルジェムもうそんなに穢れて」

さやか「いいって言ってるでしょ!!」

私が大声をあげるとほどかは驚き、狼狽したようだった。

さやか「あ、ごめん。そんなつもりじゃ……」

八つ当たりだ。そう思い謝る。

ほどか「いえ、……」

ほどかもそんな私の気を察してかすぐに表情をもとに戻す。
309 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:16:11.24 ID:PifaLPGB0
さやか「ほどか、聞いてもいいかな」

ほどか「はい」

さやか「あんたはなんで、ほむらを救おうと魔法少女になったの?
    知ってたんでしょ? 魔法少女の運命をさ」

ほどか「はい……」

さやか「なんで? こんな体になるのがわかってたのにさ、
    なんであんたはこんなことを続けられるの」

ほどか「……少し、長くなりますよ?」

さやか「あぁ、いいよ」

ほどか「私の話を聞いたらこのグリーフシード使ってくれますか?」

さやか「わかった」

ほどか「絶対ですよ?」







さやか「わかったって。どうしてそこまで必死なのさ」

ほどか「だって、ソウルジェムが穢れきったら魔法少女は魔女になるんですよ?」

さやか「は――?」

いま、なんていって……。

ほどか「魔女の正体は魔法少女。これが、まだみんなが知らない真実の一つです」

さやか「ちょ、ちょっとそれって……」

ほどか「そのことも含めてお話ししますね。これは私の目的にも関わることですから」

さやか「ほどか……?」

そう言って話始めるほどかの顔は、今まで見たこともないような無表情な顔で、とても冷たく、恐ろしく感じた。
そして、ほどかが語り始める。自身が隠してきた真実を。



ほどか「私がこの時代にきた本当の目的は――」
310 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:16:49.48 ID:PifaLPGB0
―まどか―

―― まどホーム ――

まどか「はぁ……」

いま、私は自室でさやかちゃんのことを考えている。
なんで、あの時追いかけなかったのか……。

まどか「あの時、追いかけなきゃ駄目だったのに……」

なのに私は追いかけることができなかった。
それは、さやかちゃんの言っていた言葉が気になったからだ。

さやか『あんたの目的ってさ、あの映像にあった出来事を止める為だよね?』

まどか「あの映像にあった出来事ってなんなの?」

そのことをほどかちゃんに聞いてもなにも言ってはくれなかった。
そして、それには答えずに

ほどか『さやかさんのことは私に任せてください』

そういって学校が終わるとさやかちゃんを探しに出かけてしまった。





まどか「また、私はなにもできないのかな……」

はぁ……。っと二度目になる溜め息を吐く。
どうしてこう、うまくいかないんだろうか……。

ほむら『まどか。いる?』コンコン

まどか「! ほ、ほむらちゃん?」

ほむら『よかった。窓を開けてもらえるかしら』

まどか「え、え? ちょっと待ってね」

ほむらちゃんの突然の来訪に驚く。
まさか、いきなり現れるなんて……。

ほむら「わざわざごめんなさい」
311 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:17:43.52 ID:PifaLPGB0
まどか「いいよ。でも突然どうしたの?」

ほむら「え、っと今日はあの子に用があったのだけど……」

そう言ってほむらちゃんは辺りを見回す。

ほむら「でも、いないようね……」

まどか「ほどかちゃんなら、さやかちゃんを探しに言ったよ」

どうしたんだろう。ほむらちゃんがほどかちゃんに用なんて珍しいな……。

ほむら「さやか……。しまったわ。自分のことに気を取られ過ぎてそこまで気が回らなかった……」

まどか「え、さやかちゃんがどうしたの?」





ほむら「話は後よ、とにかく今はさやかを探しましょう」

まどか「でも、ほどかちゃんが任せてって……」

ほむら「その子にも用があるのよ」

そう言って窓から出ていくほむらちゃん。
もぅ……。なんなの、私全然、話についていけないよ……。

ほむら『まどか、早く』

まどか「わかったからちょっと待って」
312 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:18:58.15 ID:PifaLPGB0
―さやか―

ほどか「以上で私の話は終わりです。他の人には黙っててくださいね?」

さやか「……」

ほどかの話を聞き始めしばらく経った。

ほどか「これで私がこの時代にきた理由は納得してもらえたと思います」

さやか「あ、あんたそれ本気で言ってんの?」

その内容は信じがたく、そして、あまりにも衝撃的だった。

ほどか「本気です。私はこの目的を果たすためならなんでもします」

さやか「じょ、冗談じゃないって。それじゃあんた、その後は!」

ほどか「覚悟の上です」




さやか「ば、ばかだよあんた。正気じゃない……」

ほどか「そうですね。私もそう思います」

なんでそんなに冷静なのさ、あんたのやろうとしてることは……。

ほどか「約束です。グリーフシードを使ってくれますか?」

再び私にグリーフシードを渡すほどか。
でも私は、今度はそれを拒みはしない・

さやか「……」

グリーフシードに穢れが吸い取られていく。

ほどか「……よかった」

それを確認したほどかがほっと一息吐く。
なにがよかったのか。なにもよくないんじゃないか。





ほどか「さやかさん」

さやか「な、なによ」

ほどか「私の目的のために力を貸してくれませんか?」

じっと私の目を見つめ懇願してくる。

さやか「あ、うぅ……」

ほどか「そうすれば、さやかさんの望みだって叶うかもしれませんよ?」

そうだろう。この子の言ってることが本当なら私の今の悩みは大方解消される。
でも、本当にいいのか?

ほどか「あ、それと一つ言い忘れてました」

ぽんっと手のひらを叩き伝え忘れがあることを告げる。

ほどか「仁美さんはまだ、上条さんに告白はしていませんよ」
313 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:19:28.33 ID:PifaLPGB0
さやか「え?」

ほどか「私がお願いして、待ってもらいました。
    今、さやかさんはとても不安定な状態で、とても告白なんてできる状態じゃないので待ってくださいって」

さやか「あ、あんた」

ほどか「本当は、こんなことはしたくなかったんですけど、状況が状況ですからね」

え、でもそれじゃあ仁美はなんで恭介と……。

ほどか「でも、告白は待ってもらいましたけど、仁美さんが上条さんに対するアプローチまでは止めてませんからね。
    さすがにそこまではやりすぎだと思いますし」

さやか「それじゃあ……」

あれはただ話してただけ……?






ほどか「さやかさんもうかうかしてられませんよー?
    仁美さんああ見えて積極的ですからね。急がないと本当にとられちゃいますよ?」

だから、明日からは学校にもちゃんと来てください。
そう笑顔で締めくくるほどか。

さやか「あ、あんた……」

ほどか「余計なお世話だとは思います。だけど、こうなってしまった以上は仕方ないですよね」

そう言って、ウインクをしてくる彼女。
そこまでされたらなにも言えないじゃんか……。

さやか「どうして私なんかの為に……」

私はあんたや、まどかに酷いことを……。
散々心配してくれて私のことを助けてくれた彼女達に酷い仕打ちをしたんだ。




ほどか「いいんですよ。あの時のさやかさんはちょっと疲れてただけですから」

さやか「疲れて……」

ほどか「そうです。疲れてたからちょっといらいらしてただけです」

さやか「……」

ほどか「そりゃ疲れますよ。朝は学校でそれが終わったら魔女退治。休みもなくそれを続けるなんて。
    今考えたら魔法少女ってすっごくブラックですよね」

ほどか「でも、もう大丈夫です。さやかさんはもう苦しまなくていいんです」

そう言って私に近寄り抱きしめてくれる。
314 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:20:17.89 ID:PifaLPGB0
ほどか「さやかさんはいっぱいいっぱい頑張りました。
    自分だって辛いのに苦しいのに人を守る為にグリーフシードを落とさない使い魔まで倒して……」

そしてそのまま私の頭を撫でる。

ほどか「それって普通できませんよ? みんな、なんだかんだで自分のことで手一杯なんですから
    でもさやかさんはそれを続けた。さやかさんは凄いです」

さやか「あ、でも、私……。仁美の事を助けなきゃよかったって……」

ほどか「そんなの仕方ないですよ。さやかさんは恋する女の子なんですよ?
    好きな人が取られそうになったら嫉妬くらいしますよ」

さやか「でも、」

ほどか「じゃあ、さやかさんは今、仁美さんが魔女に襲われていたら見捨てますか?」

さやか「え……」



ほどか「恋のライバルである仁美さんが魔女に襲われさぁピンチ! その時さやかさんはどうします?
    放っておきますか? 仁美さんがいなくなればライバルはいなくなりますもんねー」

さやか「仁美がいなくなれば……」

ほどか「はい。仁美さんがいなくなれば。すごいチャンスだと思いません?」

そんなの……。

さやか「……だ」

ほどか「はい?」

さやか「そんなの、やだ……。仁美は私の友達だから、親友だから、いなくなるのはやだ」

ほどか「そうですか」

優しい、ほどかの声が聞こえる。
相変わらず私の事を抱きしめるほどか。
でも、なんだか全部許されたようで、それが今はたまらなく嬉しかった。




ほどか「そこまでわかってるのなら、さやかさんはもう大丈夫です」

大丈夫。そう言われてなんだか、泣きそうになる。

さやか「う、ううぅぅぅ……」

ほどか「今まで辛かったね、悲しかったね。でも、もう大丈夫だから。
    さやかさんは幸せになっていいんだよ? さやかさんが望む未来を追い求めてもいいんだよ?」

だめだ、もう泣く。
こんなの、ずるいよ……。

さやか「う、うわあああああああああん! 辛かった! 悲しかった! もう死んでるって言われて! ゾンビだってわかって!
    これじゃあ恭介と一緒にはいられないって思ったら嫌で! でも後悔はしたくないから意地張って!」

今まで抑えてきた感情が溢れる。
私はほどかの胸に顔を埋め泣き続ける。





ほどか「そうだね。辛かったよね。好きな人と一緒にいられないのは悲しいもんね」

よしよしと私の頭を撫でてくれる。
だから私は安心して子供の用に泣くことができた。





うわああああああああああああああああん――!!


いつの間にか辺りには私の泣き声とほどかのあやす声しか聞こえなくなっていた。
315 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:20:45.53 ID:PifaLPGB0
さやか「……なんか、ごめんね」

ほどか「いえいえ、さやかさんなかなか可愛かったですよ? 意外と子供なんだなーって」

さやか「この! あんたは人の弱みを!」

ほどか「ごめんなさーい」

手を挙げてぶつ仕草をする私に頭を押さえて謝るほどか。
そんなバカなことをしていると、いつもの私に戻れたんだ。そう思えた。

さやか「まったく。……でも、あれだね。ほどか、結構胸あるんだね」

顔を胸に埋めた時、確かな質感を持った、柔らかいものがこう……。
包み込んでくれて……。

ほどか「ちょっとさやかさん、それセクハラ……」

そんな私の言葉にほどかは胸を両腕で庇いながら、じとーっとした目で非難してくる。





さやか「いやいや、だってさ、あんたの親を見たらさ……」

ほどか「……その辺は詢子さんの血でしょうかね」

さやか「あぁ……。よかったね」

ほどか「まぁ、はい」

さやか「……」

ほどか「……」

さやか「ふふ」

ほどか「ふふふ」

さやか「あははは! なに話してるんだろうね私達、こんな時に胸の話なんて」

さっきまでのシリアスムードはどこにいったのか、場には明るい笑いが響き渡る。
全く、なんで胸の話なんかしてるんだ私達は。

でも、ま。すっごく楽にはなったかな。
316 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:21:19.64 ID:PifaLPGB0
ほどか「さやかさんがふってきたんじゃないですかー。っていうか、失礼ですよ! お母さんに!」

さやか「あ、まどかはいいんだ」

ほどか「お父さんですから」

さやか「あぁ、確かに」

ほどか「もー。帰りますよ? もう遅いですし」

さやか「あー。そうだね。私のとこは結構、放任主義だからいいけど、ほどかのとこは厳しそうだもんね」

ほどか「はい。特にお父さんが……」

さやか「まどかが?」

なんか意外だな。ほどかには激甘に見えるのに。





ほどか「なんか、最近特に。この前とか一人で夜にコンビニに買い物に行ったら、危ないとかで一時間お説教ですよ?」

さやか「うっわ。なにそれ」

さすがに引くわ。

ほどか「私は魔法少女なんだから大丈夫だっていうのにそれは関係ないって聞かないんですよ……」

さやか「まどかがねー……」

やっぱり親になったらみんな変わるのかねー。こりゃビックリだわ。

ほどか「心配してくれるのはありがたいんですが、さすがに過保護すぎるっていうか……」

さやか「ほどかも苦労してるんだねー……」

ほどか「……はい」

そう頷くと、そのままがっくりとうなだれる。
うーん。私からは頑張れとしか言えないね。
317 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:22:16.18 ID:PifaLPGB0
さやか「……ところでさ、本当にさっきのあれ黙ってるつもりなの?」

話を変え、さっき聞いた話、それについての確認をする。
ほどかは黙っていると言ったけど、こんな話を黙ったままにしていて本当にいいのか……。

ほどか「はい」

即答か……。

さやか「なんで? こんなこと黙ってたら……」

ほどか「でも、言ったらきっと止められるでしょうから。最悪、監禁もありえますし」

さやか「……」

だろうね。私だって出来れば止めたい。
さっきは自分のことでいっぱいいっぱいだったけど、改めて考えると間違ってるんじゃないかとも思う。


ほどか「バカな自己犠牲だと思いますか?」

さやか「正直ね」

ほどか「止めたいですか?」

さやか「……正直ね」

でも、

さやか「ほどかはそれを望んじゃいないんでしょ?
    なら、私に止める権利はないよ」

実質命を救われたようなもんだし。

さやか(いや、救われるのか……)


ほどか「ごめんなさい。出来ればこのことは言いたくなかったんですけど……」

さやか「……」

ほどか「でも、さやかさんに知ってもらえて少し楽になりました」

さやか「そっか」

……。この子の覚悟は本物か……。

さやか(嫌になるね。私はなんであんなことで悩んで……)

自分の小ささに嫌気がさすよ。全く……。

さやか(でも、本当にまどか達に黙ったままでいいのかな……)

そこだけはどうしても納得いかないんだよな。
これはまどか達にとっても大事なことだろう。

それなのに黙ったままなんて……。


ほどか「行きましょうか」

さやか「あ、うん」

ほどかに促され、思考を切る。そういえば、帰ろうとしてったっけ。

ほどか「明日は学校に来てくださいよ?」

念を押すように再度、確認するほどか。
この子も心配性だねー。

さやか「わかったって。まどかにも謝らないとダメだしね」

酷いこといっちゃったもんね。
あー……。なんであんなことを私は……。

今更ながら後悔が……。
あの時の私をひっ叩いてやりたいよ……。
318 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:22:57.49 ID:PifaLPGB0
まどか「あ、いた!」

さやか「まどか?」

引き上げようと歩を進める私達。
でも、その歩みは見知った友人と遭遇することですぐに止められてしまう。

ってかなんでまどかがこんなところに? ほむらまでいるし……。

まどか「もうさやかちゃん探したよ?」

怒りながらまどかが近づいてくる。
まさか探しに来てくれたのかな?

まどか「ほどかちゃんも! こんなに遅くなるなんて聞いてないよ!」

あ、違うな。ほどかの方が心配だったんだな。

さやか「あー、ごめんごめん。ほどかは怒らないでやって。もとはといえば私のせいだしさ」

まどほむ「え?」



二人が信じられないものを見たような目で見てくる。
なに? 私変なこと言った?

まどか「えっと……。さやかちゃんもう大丈夫なの?」

さやか「え、あー」

そういや私、暴走してたもんね。
忘れてた。そりゃ不思議そうな顔をするわけだ。

さやか「あー、もう大丈夫。ほどかがさ、その……。叱ってくれたから。
    頭も冷えたよ」

まどか「ほどかちゃんが……?」

納得いかないのか、どうやって説得したのか、っと怪訝な顔をしてまどかはほどかを見つめる。
ちょっとまずいかな。


さやか「あー、だから私は大丈夫だからさ! 心配かけてごめん! 酷いこといってごめん!」

まどか「あ、うん……」

ほむら「……」

うー……。無理があるか。でも押し通すしかない。

さやか「と、とにかくもう遅いしさ、帰ろうよ! まどか達は出歩いてちゃまずいでしょ?」

まどか「う、うん……」

さやか「ほらほら、帰ろ帰ろ!」

まどかとほむらの体を押して無理矢理帰宅を促す。
強引だけど、しょうがない。


ほむら「ちょ、ちょっとさやか」

まどか「危ないよ!」

さやか「さぁ、帰ろー。 それ帰ろー。いつまでもフラフラしてたらマミさんに怒られるよ」

そういえばマミさんはどうしたのかな……。
最近見ないし、携帯にも繋がらないし……。


「あら、私がどうかしたの?」


さやか「え?」

なんか聞き覚えのある声がしたような……。
319 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:23:46.33 ID:PifaLPGB0
マミ「あら、みんな揃ってるわね」

さやか「マミさんこそ、どうしてこんなところに……」

マミ「みんなを探していたのよ? 家に行っても留守だったし……」

あー。マミさんも心配してくれてたんだ。
なんか悪いことしたなー……。
こんなに迷惑かけて。

さやか「そうなんですか、ごめんなさい。でも、ほどかのおかげで解決しましたから」

ね? っとほどかに目配せする。
ほどかはそれに笑顔ではい。っと答えてくれて今回の一件が一応の解決をしたことを示してくれる。

マミ「解決? いったいなにが解決したっていうの?」

あれ? なんか食い違いがあるのかな、てっきり私のことを探してくれてたんだと思ったけど……。


ほどか「そういえばマミさんはさやかさんが無茶してたことを知らないんじゃないでしょうか」

あ、そういや会ってないもんね。じゃあ、あれかな。私達が家にいないのを魔女を探しに行ってるって勘違いしたとかかな。
それならマミさんが魔法少女の姿なのもわかるし。

さやか「あー。この辺の使い魔はもう全部、私が倒しちゃいましたよ」

マミ「そうなの?」

あまり興味がなさそうに返答するマミさん。
なんだろう? 少し違和感があるな……。

ほむら「……?」

まどか「ね、マミさん少し様子が変じゃない?」

まどかがほどかに小声でそう話しかける。
確かに、変かな。
よく見れば顔も少しやつれてるし、なにより笑顔がいつもと少し違うような……?


ほどか「そうですね……。やっぱり、魔法少女のことで悩んでるんじゃないでしょうか……」

ほどかがそう言ってマミさんに近寄っていく。
慰めるつもりかな。ほどかならそれが出来るだろうし。

さやか(なにからなにまで悪いな……)

マミ「まぁいいわ。みんな集まってるなら都合がいいし」

都合がいい? 一体なんの話をして……。

さやか「!? マミさん!」

まどか「マミさん!!」

ほどか「え……?」


信じられない光景が目の前に広がった。
マミさんがほどかの胸元に銃を向けていたのだ。

マミ「まずはあなたからね」

笑顔でそう言い放つマミさん。
その顔は狂気に彩られていて、なにかの冗談かと思っていた私の考えを裏切り、そして――。

ほむら「ほどか!」

ダアン――。っという銃声となにかが砕ける音が聞こえた。

ほどか「あ――」
320 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:24:25.79 ID:PifaLPGB0
ほむら「そ、そんな……」

マミさんが放った銃弾はその狙い通りにほどかの胸元に飛んでいった。
そして、そのまま彼女のソウルジェムを砕く。

さやか「嘘、でしょ」

そのはずだった。


ほどか「え、パ、パパ……?」

まどか「……」

もう少しで銃弾が届く、もう間に合わない。
私達が諦めかけた時だった。

ほどかの目の前に彼女の近くにいたまどかが飛び出したのだ。
そのおかげでほどかを貫くはずだった弾はその役目を果たせずにほどかは助かることになった。





ほどか「う、うそ……」

崩れ落ちるまどか。
ほどかはそれを支えようとするがショックのせいかフラフラと足元が覚束ない。

さやか「! まどか!」

手を貸そうと私も傍に近寄る。
でも、あんなのをまともに受けたら……。

マミ「あ、わ、私……」

まさか、まどかに当たるとは思っていなかったのか、自分のしでかしたことに呆然としその場に座り込むマミさん。
だけど、今はマミさんに構っている暇はない。






ほむら「ま、まどか……。そんな嘘でしょ……?」

いつもは冷静なほむらもあまりの出来事に半ば意識を失いかけ呆然としている。

さやか「ちょっと、まどか! しっかりしなよ!」

意識のないまどかを揺さぶり声をかけるけど反応がない。
まさか、本当に死んで……?

さやか「シャレになってないって! ねぇまどか! まどかったら!」

「落ち着けバカ、死んでねーよ」

さやか「え?」
321 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:25:09.48 ID:PifaLPGB0
杏子「よく見ろよ。血も流れてねーし息もしてるだろ?」

声のした方向を向くと、杏子が槍を携えながら歩いてきた。

ほどか「え、あ、ほんとだ……」

ほむら「え、まどか死んでないの?」

杏子「勝手に殺してやるなよ……」

錯乱気味の二人がその言葉に調子を取り戻す。
え、でもなんで……? 確かに銃弾はまどかを貫いたはずじゃ……。

さやか「な、なんで……」

杏子「弾ならあそこ」

杏子が指で壁の方を指す。
その方向を見ると、確かに壁に弾がめりこんでいた。




杏子「咄嗟にしてはうまくいったよなー」

杏子が分割した自分の槍の一部を指先でくるくると回す。

さやか「え、まさかあんたが?」

杏子「感謝しろよ?」

八重歯を見せニヤリと笑う杏子。
多分、あの槍の一部を銃弾に当てて軌道を逸らしたんだよね?

さやか(なんちゅう器用なことを……)

普通できる? そんなこと……。






杏子「っていうか、こいつも当たってないのになんで気絶してんだよ、ほら起きろ」

そう言うと杏子はまどかの傍に寄ってきて槍の柄の部分で頭をこんこんと突く。

ほむら「ちょ、ちょっとあんまり乱暴に扱わないで。怪我人よ」

ほどか「そうですよ、お父さんは気絶して」

杏子「はぁ……、だから弾は当たってないって。無傷なのこいつは」

まどか「う、うーん……?」

少しすると、まどかが目を覚ました。
そして、きょろきょろと辺りを見回しほどかを見つけると急に焦ったように肩を掴むと強引に揺さぶる。

322 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:25:55.74 ID:PifaLPGB0
まどか「ほ、ほどかちゃん大丈夫!? 生きてる!?」

ほどか「わわわ、大丈夫です平気です!」

さやか(まぁ生きてはいないんだけど)

杏子「おい」

さやか「いた! なんで槍で叩くのさ!」

杏子「バカなこと考えただろ」

なんで私の考えてることが……。

杏子「短い付き合いだけどお前が空気を読めないのは理解したからな」

さやか「なにそれ……」

ほむら「ちょっと落ち着いてまどか。ほどかが目を回しているわ」

まどか「え? あ、ごめん」

ほどか「あうぅ……」

まどかから解放されたほどかがふらふらと頭を回す。
っていうか、まどかの方が大丈夫じゃないのかって話だと思うけど……。

まどか「あれ?」

さやか「ん?」

そういえばほむら、今。

まどか「ほむらちゃん今……」

まどかがじっとほむらの顔を覗き込む。
同様に私もおかしなものを見るようにほむらの顔を見つめる。

ほむら「な、なにかしら……」

そんな私達の異様さに若干引き気味のほむら。

まどか「ほどかちゃんのことをほどかって」

さやか「呼んだよね」

ほどか「え?」

ほむら「あ」

まどか「ちょ、ちょっと呼んだよね!? 名前だけで! ほどかって!」

さやか「う、うん! 呼んだ呼んだ! そういえばさっきも!」

ほどかの胸に銃弾が迫った時もほどか! って。

さやか「しかも、時間を止めて助けようともしてたよね!」

まどか「本当に!?」

ほむら「いや、それは……」

ほどか「え、え?」
323 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:26:25.44 ID:PifaLPGB0
さやか「ちょっとどうしたのさ! あんたほどかのことは敵だー! っとか言ってたよね!?
    それが助けようとしたりして!」

まどか「ま、まさかほむらちゃん……。ついにほどかちゃんの魅力に気づいて!?」

ほむら「ちょっとなによそれ。べ、別にいいじゃない。助けるくらい……」

口をもごもごさせながらそっぽを向くほむら。
こ、これは……。

さやか(デレか!? デレが来たのか!?」

杏子「へー。おかしなことを言うなほむら」

ほむら「な、なによあなたまで」

杏子「いや、アタシはお前からそいつを殺すーなんて物騒な言葉を聞いてるからさ。
   だから、そんなお前がそいつを助けようなんて言うと思わなかったもんでな」

杏子がニヤニヤしながらほむらに詰め寄る。
え、っていうかあんたらそんなこと計画してたの?

ほむら「う……」


杏子「へー、助けるねー。なんだ本当はそいつのこと仲間だと思ってたんだな。
   大切に思ってたんだなー」

ほどか「……」

まどか「杏子ちゃん……」

ほむら「う、そういうわけじゃ……」

杏子「じゃあどういうわけだよ? 仲間だと思ってない奴を助けようとするか? 
   ましてや殺そうとしてた奴だぞ」

ほむら「くっ……」

徐々にほむらを追い詰める杏子。


なんかこんなに困った顔のほむら見るの初めてだなー。
ほむらにこんな表情をさせるとは杏子恐るべし……。

杏子「素直になったらどうだ? 守りたかったんだろ? 
   こいつが死ぬのは嫌だったんだろ? で、今こいつは危険を脱して無事生きてるんだ」

なら言うことあるよな?
そうほむらの肩を叩いてほどかの方へ押し出す。

さやか(なにこのイケメン)

急に現れておいしいとこ全部持っていきやがった。
324 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:26:52.24 ID:PifaLPGB0
ほむら「あ、えと」モジモジ

ほどか「あ、はい」モジモジ

ほむら「あ、あの……。その、ぶ、無事でよかったわ///」モジモジ

ほどか「あ、えっと、はい。すいません。ありがとうございます///」モジモジ

まどか「……ふふ」

さやか(なんだこれ)

なにをしてるんだこの母娘は。
普段はバシバシ言いたいことをいう二人なのに。
もっと色々言うことあるだろ!

さやか(あー! もどかしい!)

いっそのこと私が!

杏子「邪魔すんな」

さやか「いた! だから頭を槍で叩くなって!」

杏子「お前が空気を読まないからだろ? もうあの二人は大丈夫だよ」

二人を微笑みながら優しい目つきで眺める杏子。
なにこれ、あんたそんなキャラだっけ……?

325 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:27:22.84 ID:PifaLPGB0
杏子「さてと」

さやか「どこ行くの」

杏子「あれ」

そう言うと指を差す。
そしてその方向を見ると……。

さやか「あ」

マミさんが呆然と座り込んでいた。

さやか「忘れてた」

そういやいたね。




杏子「酷い奴だな。尊敬してる先輩じゃねーのかよ」

軽蔑の眼差しで私を見てくる杏子。

さやか「しょうがないじゃない! 一気に色々あったんだから!」

杏子「お前はあたふたしてただけだろ?」

ぐっ……。
こいつはホントに可愛くないことを……!

さやか(いつか見てろよ……)

なにかしらの形でやりかえす!
絶対に泣かす!



杏子「おい、マミ。いつまで腑抜けてるんだよ」

マミ「え?」

声をかけられマミさんはやっと意識を取り戻す。

杏子「お前、なにしたかわかってんのか? 危うく死人が出るとこだったんだぞ」

マミ「な、なによ。あれは急にまどかさんが出てきたから……」

杏子「そういうことじゃねーだろ。お前は仲間に向けて発砲した。
   この意味がどういうことかわかってんのかって聞いてるんだ」

真剣な表情でマミさんに向けて語りかける。
そんな杏子の気迫に押されてか、自分のしてしまったことに対する自責からかマミさんはいつものように強気には出れないみたいだった。
326 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:27:57.52 ID:PifaLPGB0
マミ「で、でもしょうがないじゃない……。魔法少女は死ぬべきなんだから」

杏子「はぁ? 何言ってんだよお前」

的を射ないマミさんの答えに杏子は訝しげな表情をする。

私もマミさんのその言葉は意味がわからない。
どうして魔法少女が死ななければいけないのか。

マミ「あなた達は知らないからしょうがないわよね。ふふ。いいわ、教えてあげる。
   あなた達もまだ知らない魔法少女の真実を」

魔法少女の真実……? 私達が知らないって……。

ほむら「! まさか!」

ほどか「……」

マミ「ふふふ。心して聞きなさい。魔法少女の真実。それは!!」






魔女の正体は魔法少女なのよ――!!!


マミさんの言葉に周囲はしんっとなる。
誰も言葉を発さない。







マミ「ふふふ。驚いて言葉も出ないでしょう? 無理もないわ。私だって驚いたもの。
   どう、これでわかったでしょう? 魔法少女が死なないといけないわけが」

さやか「……」

杏子「……」

マミ「わかったのならいいわ。じゃあ、今度はおとなしく私に殺されなさい。
   大丈夫。みんなを殺したら私もすぐに――」

ゴツン! っと鈍い音が辺りに響いた。

そしてその後に続くマミさんの悲鳴。

マミ「いったーい!! なにするのよ佐倉さん! 槍で頭を叩くなんて酷いじゃない!」

いやあんた……。
327 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:28:35.26 ID:PifaLPGB0
杏子「はぁ……。マミ、そのことならたぶん、ここにいる奴等みんな知ってるぞ」

マミ「へ?」

杏子「そうだろ?」

さやか「うん、まぁ」

ほどか「えぇと、はい」

ほむら「当然の如く……」

まどか「私もさやかちゃんを探している間にほむらちゃんから……」

杏子「ほら」



マミ「へ?」

あぁ、マミさん。きっと一人で空回ったんだろうな。

さやか(同類か……)

なんだかんだで私とマミさんは似てたのか……。

杏子「それで、なんで魔女の正体が魔法少女なら死なないといけないんだ?」

マミ「え、だっていずれ魔女になるならその前に死なないと、魔女は人間に仇名す存在だし……」

まぁ、マミさんの生き方だとそうなるか。

さやか(私も魔女になって人を襲うのはゴメンだし)

杏子「バカ。それなら今じゃなくてもいいだろ?」

マミ「え?」



杏子「なぁほどか。魔女になるのはどういう時だっけ?」

ほどか「え、えーっと。魔法なんかを使いすぎたせいでソウルジェムが穢れきると魔女になりますね。
    後は絶望したりすると一気に穢れるのでそれが原因で魔女化したりもします。
    まぁそれでもすぐになるわけではなく徐々に。といった感じですが」

急に杏子に話しを振られほどかは焦りながらも魔女になる原因を説明する。

杏子「ふーん。で、確かソウルジェムを砕いたら私達は死ぬんだよな?」

ほどか「はい。そうなりますね」

わかった、サンキュ。っといいほどかに向けていた目をマミに向きなおす。

杏子「そういうことだ。わかったか?」

マミ「な、なにがよ」



杏子「つまりだ、魔女になるって言っても今すぐになるわけじゃない。しかも急になるわけでもない。
   ソウルジェムのことにさえ気を使えば今まで通り生活できるわけだ」

マミ「……」

杏子「だから、今すぐ死ぬ必要はねーだろ? 最悪、魔女になる直前に砕けばいい話じゃん」

マミ「あ……」

杏子「だからさ、その時まで今まで通り生きようぜ。もしかしたら魔法少女から普通の人間に戻れる方法もあるかもしれないしさ」

な、そうだろ? そう言って杏子は私達の方へ顔を向ける。
いや、その瞳はほどかに向けられていた。

ほどか「……」
328 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:29:06.38 ID:PifaLPGB0
杏子「もし、マミが自分のソウルジェムを砕くのが怖いっていうんなら、そん時はアタシがやってやるしさ」

再びマミさんの方へ向き挑発気味にそう締めくくる。

マミ「馬鹿にしないで、その時は自分でやるわ」

それを受け取ってマミさんが立ち上がり、汚れの付いたスカートを払いながら、
そう言い返す。

杏子「おぉ、それでこそ巴マミだ」

そう言うと杏子はケラケラ笑いながら頭の後ろで手を組む。

マミ「……」

杏子「ほら、あいつらに言うことあるんだろ」

マミ「えぇ」

少し、俯きながらマミさんがこっちにゆっくりと歩いてくる。



マミ「あの、ごめんなさい!」

そして勢いよく頭を下げ謝罪。

マミ「私、魔法少女が魔女になるって聞いて……。
   それで、なんだかおかしくなって、みんな死ぬしかないって」

頭を下げながら話続けるマミさん。
その肩は少し震えている。

マミ「でも、佐倉さんに言われたように今、死ぬ必要はないのに……。なのにあんなことして……。
   ほどかさんにもまどかさんにも怖い思いをさせて……」

ごめんなさい! 

さやか(マミさん……)


一人で悩んでたんだろうな。
誰にも相談できずに、一人でこんなこと抱えて……。

さやか(今、思えば私達マミさんに頼ってばかりだったもんね)

マミさんが頼りになるから、ついつい甘えて……。
だから、マミさんはそんな私達の為に頑張って……。

さやか(私達にも原因はあるか……)

特に私なんか、周りが止めてくれてるにも関わらず暴走しちゃうし……。
329 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:29:59.69 ID:PifaLPGB0
まどか「……ふふ」

ほどか「……えへへ」

まどかとほどかが笑い出す。急にどうしたんだろう。

まどか「顔を上げてくださいマミさん」

ほどか「私達は気にしてませんから」

マミ「え……?」

まさかの言葉に驚いたのかマミさんは顔を上げる。

まどか「まぁ実際かなりビックリしましたけど」

ほどか「マミさんの気持ちもわからないでもないですからね」

マミ「……」


まどか「私もさっきほむらちゃんから聞いた時は驚いたし、っていうかほどかちゃん! 
    そんな大事な事黙ってるなんてヒドいよ!」

ほどか「ごめんなさい。ちょっとショッキングな事実なのでどう言ったらいいか迷ってました。
    最悪、知らなくてもいいことかなーって」

まどか「知らなくてもいいことじゃないでしょ!? っていうかかなり深刻な事じゃない! どうするの!?」

ほどか「まぁ、その辺は追々考えるということで……」

まどか「なにそれ!? もう! 罰として今日はほどかちゃんと私は一緒に寝ること!! いい!?」

ほどか「ちょ、なんですかそれ! お父さんが一緒に寝たいだけでしょう!?」

まどか「そうだよ」

ほどか「えぇ……。開き直ったよこの人」

まどか「あ、ほむらちゃんもね? ほむらちゃんも今まで黙ってたんだから同罪なんだから」

ほむら「ほむ!?」

ほどか(あ、ママが一緒なら嬉しいかも)


さやか「あんたら……」

杏子「バカだな」

マミ「……ふふふ」

まどか「あ、マミさん笑ったー」

マミ「え、あ、これは違うの」

杏子「なにが違うんだよ? 笑っただろ?」

マミ「もぅ! 佐倉さん!」

さくら「確かに笑ったね」

マミ「美樹さんまで!」

ほどか「えへへ、いつものマミさんですね」

マミ「え?」

まどか「そだね、いつもの頼れるマミさんだ」

ほどか「私達の大好きなマミさんですね」
330 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:31:00.70 ID:PifaLPGB0
マミ「……」

杏子「はは、よかったじゃん。こいつらさっきのことは全然気にしてないって」

マミ「でも……」

杏子「いいだろ? 気にしないって言ってんだから。なら甘えろよ。
   マミは少し気にし過ぎなんだよ」

マミ「……」

まどか「マミさん! また一緒に頑張りましょう!」

ほどか「そうですよ! 私達は仲間なんですから!」

マミ「……」

まどか「お互いに助け合う。マミさんが言ったんですよ?」

マミ「あ……」

ほどか「そうですよ。むしろマミさんが辛いときに一人にして、私達が謝らないといけないくらいですよ」


マミ「そんなことは……」

ほどか「いえ、ごめんなさい。マミさんを一人にして……」

そう言って今度はほどかが頭を下げる。
それを見たマミさんは慌ててまた頭を下げる

マミ「そんな、今回の事は全部私が悪いわ! ごめんなさい!」

まどか「ううん。私達がマミさんに頼りすぎてたから……。マミさんは一人で追い詰められて
    ごめんなさい!」

マミ「いや、そんなことは……。ごめんなさい!」

そして、ごめんなさいごめんなさいと謝り続ける三人。
331 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:31:26.97 ID:PifaLPGB0
さやか(あー、まぁなにはともあれ一件落着ってやつ?)

どうやらこれで全部丸く収まったの、かな?

杏子「ったく、世話がやける……」

杏子は相変わらず謝り続ける三人を見つめながらそう呟く。
思えばこいつがいてくれたから、こうなったんだよね。

さやか「あんた、なんだかんだでいいやつじゃん」

ニヤニヤしながら杏子の脇腹をつつく。
まさかこんな一面があるなんてねー。

杏子「あぁ? バカ、そんなんじゃねーよ」

照れているのか悪態をつく。
なんだなんだ、意外と可愛いなこいつ。





さやか「ふっふっふっ。杏子ちゃんは可愛いのー」

杏子「ウゼェ……。それより、お前に話しがある」

急に真剣な顔になり、私の顔をじっと見つめる。
おぉ、なにかな、まさか愛の告白とか!?

さやか「そんな! 私達女同士なのよ!?」

杏子「超ウゼェ……。はぁ、マジな話なんだよ。少し付き合え」

さやか「……ここでは話せないことなの?」

杏子「あぁ、ほむら」

ほむら「なにかしら」

杏子「お前も付き合え。お前にも関係……。いや、お前にとって重要な話だ」

凄く真剣な眼差しでほむらを見続ける杏子。
なにさ、一体なんの話をしようっていうのよ……。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
332 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:32:08.64 ID:PifaLPGB0
―ほむら―

 ―― ほむホーム ――

ほむら「で、なんの話かしら」

あの後、まどかとほどかと別れ、落ち着いて話せる場所がいいという杏子の為に自分の家に呼ぶことにした。

マミ「私も聞いた方がいいのよね?」

できれば、マミもいた方がいいという杏子の言に従いマミもこの場所にいる。

杏子「あぁ、それなんだけど……。ほどかのことだ」

さやか「! あんたまさか……」

ほどかのこと。杏子はそう言った。
さやかの反応を見るにさやかは察しがついたみたいだけど……。




杏子「あいつがこの時代に来た本当の理由。それを今から話す」

さやか「ちょっと杏子! それは!」

杏子「黙れ。さやかも本当はわかってるんだろう? これは伝えなきゃいけないことだって」

さやか「そ、それは……」

杏子の言葉に俯き何も話さなくなるさやか。
珍しい……。さやかが杏子にやり込められるとは……。

マミ「……美樹さんと佐倉さんはほどかさんの本当の目的を知っているのね?
   本人に聞いたのかしら」





杏子「アタシは直接聞いたわけじゃない。さやかに話しているところを偶然聞いただけだ」

マミ「偶然?」

杏子「偶然」

マミ「そ、なら仕方ないわね」

杏子「だろ?」

ニヤリ。っと笑いあう二人。
この二人はこういうところで気が合うのだから……。

ほむら「その理由とやらを早く聞かせてもらえるかしら?」

このままでは話が進まない。
私としても、あの子がなにかを隠しているのは気づいている。
それがわかるというのなら早く知りたい。
333 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:32:35.00 ID:PifaLPGB0
杏子「んー? ママは娘のことが心配なのかー?」

意地の悪い顔で茶化すようにそう言う杏子。
この子は……。

さやか「ちょっと杏子! ほどかのことはほむらには秘密で!」

マミ「……いえ、暁美さんの様子から察するにそのことにはもう気づいているのかしら?」

さやか「え?」

ほむら「はぁ……。まぁね、まどかから聞いたわ」

さやか「え、そうなんだ……」

ほむら「まぁ、あの子には私が知っていることは話してないけど」

ほどかにはそのことはまだ伝えていない。
なにか、タイミングが掴めないから。

まぁ、まどかが伝えているとは思うけど。





杏子「早く自分の口から言ってやったほうがいいぞ。そんで抱きしめてやれ」

ほむら「なんでそんなこと……」

抱きしめるとか、今更そんなこと出来るわけ……。

杏子「時間がないんだよ。あいつにはもう」

ほむら「え……?」

時間がない? それはいったいどういう……。

杏子「あいつは、ほどかはな。ワルプルギスの夜を倒した後は」



消えちまうんだ――。



その杏子の言葉に場は静まりかえる。
私はその意味が理解できずにただ、呆然とするしかなかった。


――――――――――――
――――――――――
――――――――
334 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:33:38.38 ID:PifaLPGB0
 ―― 翌日 学校 ――

ほむら「……」

黒板には無数の数列が刻まれている。
だけど、私にはその数字を理解することは出来ない。
いつもの私ならばその意味を理解し、そこから導き出される答えを出すことが出来るのだが、今の私の心境ではそれは不可能であった。

だから、ただ、ボーっとそれを眺めることしかできなかった。

「暁美。暁美!」

ほむら「あ、はい」

ふいに私を呼ぶ声が聞こえた。
条件反射でその声に答えるが誰に呼ばれたのかまではわからない。

「どうした、ボーっとして。まぁいい、前に出てこの問題を解いてみろ」

少し状況を把握できた。
私を呼んでいたのは先生で、私に黒板に刻まれたあの数列を解け、そう指示しているのだと。

ほむら「すいません。わかりません」

だけど、今の私にそれを説くことは不可能だ。


「え、そ、そうか……。まぁ、この問題は難関高校の受験用でかなり難しいからな……。
 な、なら鹿目、鹿目ほどか。代わりに解いてやれ」

ほどか「はい」

鹿目ほどか。
私と同じように未来から来た魔法少女であり、私の娘。

その子が前に出て私の解けなかった問題を代わりに解く。

「うん。完璧だ。間違いは一つもないぞ」

ほどか「ありがとうございます」

彼女の回答は完璧で、一点の間違いもない。
そのことを褒められた彼女の顔はとても嬉しそうで、少し誇らしげでもある。

席に戻る途中の彼女と目が合う。私と目があった彼女は少し照れくさそうで、でも褒められたときよりも嬉しそうに見えた。

ほむら「……」

「みんなも鹿目に負けないように頑張るんだぞ。
 正しい答えを導く力は将来必ず役に立つ。自分の未来を決める時に助けになってくれるんだからな」


自分の未来を決める助け。

彼女はその力があったから、正しい答えを導けたのだろうか。
誰も死なず、まどかだけでなくマミ達が生存したまま、ワルプルギスを越えることが出来る。

彼女にその力があったから、私には出来なかった、そんな奇跡のようなことが起こせたのだろうか。

なぜ、私にはその力がなかったんだろう。
なぜ、私には正しい未来が導けなかったんだろう。

もし、私にその力があれば。
もし、私に彼女のような才能があれば。


私は、あの子を失わずに済んだのだろう――。
335 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:34:07.34 ID:PifaLPGB0
―― 前日 ほむホーム ――

ほむら「消えるって……どういう意味よ」

杏子の言葉が理解できず、私は聞き返す。

杏子「そのままの意味だ。ワルプルギスの夜を倒せばほどかは消える」

さやか「私が説明するよ。えっと、さっきほむら達が来る前にほどかに聞いたんだ」

さやかが説明を引き継ぎ説明を始める。
その内容は信じがたいものだった。

336 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:35:06.25 ID:PifaLPGB0
 〜〜 回想 〜〜


ほどか『私がこの時代に来た本当の理由は、魔法少女をこの先の未来から消し去ることです』

さやか『!? そ、それってどういう……』

ほどか『さやかさんは、まだ知らないので先に教えておきますね?
    魔女の正体は魔法少女です』

さやか『は!? う、嘘でしょ!!?』

ほどか『本当です。ソウルジェムが穢れきった時、魔法少女は魔女になります』

さやか『そ、そんなの信じられるわけ……』

ほどか『ですが、これは事実です』

さやか『い、いやちょっと待ってよ! 魔法少女が魔女になって誰が得をするっていうの!?
    メリットがないじゃん!』

ほどか『メリットならありますよ? キュゥべぇが宇宙人だということはお話ししましたよね』

さやか『え、うん。そうだけど、それがなんの関係が……』


ほどか『キュゥべぇの星は私達の文明よりずっと進んでいるんです。そして、その文明の力により、ある発見をした』

さやか『発見?』

ほどか『今、この宇宙は深刻なエネルギー不足に陥っているらしいんです。
    地球でも石油がいつなくなるかわからないっていう話は聞きますよね? それと同じ感じですかね』

さやか『……』

ほどか『ただ、違うのはことの重大さです。この一件を放っておくと、この宇宙自体が成り立たなくなる。
    そう結論づけたキュゥべぇ達はその問題を解決しようとする』

さやか『解決……?』

ほどか『はい。試行錯誤を繰り返し、キュゥべぇ達はある星において重大な発見をします』

さやか『それって……』

ほどか『察しの通り、地球の人類ですね。彼等は私達人類の持つ感情に目を付けました』

さやか『感情……? そんなものになにが……』

ほどか『簡単に言うと私達の持つ感情というものはキュゥべぇ達には無いもので、
    それを宇宙のエネルギーに充てることによって宇宙の寿命を延命させることが出来るみたいです』


ほどか『グリーフシードってありますよね。あれをキュゥべぇ達が回収する理由はそういうことみたいですよ』

さやか『え……?』

ほどか『あれはもともとソウルジェムなんですけど、穢れが溜まりすぎるとグリーフシードに変化するんです。
    その時に発生するエネルギーを回収することがキュゥべぇ達の目的みたいですね』

さやか『そ、そんな』

ほどか『ソウルジェムの穢れは絶望することで溜りやすくなるみたいですから、彼等は基本的に絶望をエネルギーとしているんでしょうかね』

さやか『……だから、あんたは魔法少女を消そうってわけ? これ以上そんな馬鹿みたいなことをさせないために』

ほどか『少し、違いますね。私はこの方法を決していい方法だとは思っていませんが、仕方のないことだとは考えています』

さやか『それってどういう!? こんなの許されるわけないじゃない!』

ほどか『そうですね。当事者の私達からすれば納得のいくものじゃないですし……。
    でも、仮に明日、明後日に宇宙の寿命が来るとして私達が魔法少女になることでしか救われないとしたらどうします?』

さやか『そ、それは……』

ほどか『そうなったら私は迷うことなく魔法少女になりますよ。少ない犠牲でみんなが救われるのなら。
    ……。まぁ、極論ではありますけどね、でも決して先送りにはできない問題です。』
337 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:35:39.69 ID:PifaLPGB0
さやか『確かに、そうだけどさ! なら、あんたはなんで魔法少女を消そうとしてるのさ! 矛盾してるじゃん!』

ほどか『あくまで、それしか方法がないのならですよ。このシステムがよくない方法なのはわかってますから』

さやか『それってどういう……』

ほどか『私の魔法少女としての才能はお父さんよりも上みたいです』

さやか『は?』

ほどか『私の時代のキュゥべぇがそういってました。なぜかはわからないみたいですけど』

さやか『……』

ほどか『お父さんでさえ、神になれる程の才能を持っているのに私はそれよりも上なんです。
    なら、なんでも出来ちゃう。そう思いませんか?』

さやか『あんた、何を考えて……』

ほどか『それを知った私はキュゥべぇに質問しました。
    私が宇宙のエネルギー不足を解消するように願えばそれは解決するんじゃないかって、もう魔法少女を生み出さなくてもいいんじゃないかって』


ほどか『答えはイエスでしたよ。私程の力を持つなら出来るだろうって』

さやか『じゃ、じゃあ……』

ほどか『はい、だから私は魔法少女になったんです』

さやか『でも、それならなんでこの時代にくる必要があったのさ? 別にその願いならほどかのいた時代でも』

ほどか『それじゃダメなんです』

さやか『え?』

ほどか『私の第一目標はあくまでお母さんを救うこと。それには変わりありません』

さやか『あ……』

ほどか『でも、私の時代ではもうお母さんはいませんから……』

さやか『……』

ほどか『私としては本当は最初に魔法少女が生まれる前に解決したかったんですが、
    それだと未来そのものに影響が出てお母さん達の存在自体がなかったことになるかもしれないってことで断念しました』

さやか『そう、なんだ……』


ほどか『ここが重要なんですが、私の願いはまだ達成されていません』

さやか『え? どういうこと?』

ほどか『私の願いは複数の因子が絡んでいますから、少し複雑なんですよ。キュゥべぇは願いは一つしか叶えてくれませんし。
    宇宙のエネルギー問題とお母さんを救うことは関係ありませんから』

さやか『まぁ、確かに』

ほどか『それにお母さんを救うということは魔法少女の運命から解き放つことでお母さんを普通の人間に戻さないといけません。
    でないと、いずれ魔女になってしまいますし』

ほどか『そこで考えたのが因果を集結させることです』

さやか『?』

ほどか『ほら、よくゲームとかでラスボスを倒せば今までの問題は全て解決。
    主人公達は幸せに暮らせるっていうご都合展開がありますよね?』

さやか『あ、あぁまぁ』

ほどか『それでですね、私はワルプルギスを倒すことにより、
    宇宙のエネルギー不足を解消それプラス、私達は魔法少女の運命から解き放たれるっていうふうなシナリオ考えたわけです』
338 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:36:21.95 ID:PifaLPGB0
ほどか『キュゥべぇには呆れられましたよ。
    そんな面倒な願いをするのは君が初めてだって』

さやか『そりゃ、そうだろうね……』

ほどか『でも、おかげで問題は解決。ワルプルギスさえ倒せばみんなが幸せに暮らせる世界が訪れるってわけです』

さやか『成程ね……。でもなんでワルプルギスなの? その辺の魔女じゃダメだったの?』

ほどか『それは私も考えたんですけど、なんでも私の願いは色んな要素が混じりすぎていて普通の魔女だと受けきれないみたいです
    でも、ワルプルギスだと、それにも耐えうるとか。ワルプルギスって色んな魔女の複合体みたいですからその辺も関係あるんですかね』

さやか『へー。なんかヤバそうだね。そんな奴に勝てんの?』

ほどか『それは大丈夫です。私の力は凄いですから』

さやか『それは頼もしいや』

ほどか『まぁ、私の目的っていうのはそういうことです』

さやか『一つ質問いい?』

ほどか『なんですか?』

さやか『ワルプルギスを倒した後、ほどかはどうなるの?』

ほどか『……。未来に帰りますよ』


さやか『嘘だろ』

ほどか『どうしてそう思うんですか?』

さやか『どうしてかなぁ……。ただ、なんとなくわかっちゃうんだよね。あんたが嘘つきだってこと』

ほどか『……』

さやか『あんた自分の命を諦めた目をしている。自分のことに関してはどうでもいいって思ってる』

ほどか『……そんなこと』

さやか『ねぇ、本当のことを言ってよ。私が言うのもなんだけどさ、私達仲間でしょ?』

ほどか『……ふぅ。さやかさんには叶いませんね。わかりました。言いますよ』

さやか『……』

ほどか『だいたいわかってるみたいですから簡潔に言いますね』

ほどか『ワルプルギスを倒せば私の存在は消えます』

さやか『!!』


ほどか『っと言っても完全に消えるわけじゃありませんよ? お母さんがお父さんと結婚して私を生んでくれれば、私はまた復活します。
    私がお母さんに黙ってほしかったのはそういう理由もあるんですよ? 
    お父さんはまぁ大丈夫でしょうけど、お母さんはそんなこと知ったら照れて気まずくなりそうですから』

さやか『でも、それは!』

ほどか『はい。今の私ではありません。でも、大丈夫です。記憶は引き継がれますから』

さやか『え?』

ほどか『ほらご都合展開ですから』

さやか『でも……』

ほどか『大丈夫ですって。なんとかなります』

ほどか『以上で私の話は終わりです。他の人には黙っててくださいね?』

さやか『……』


      〜〜 回想 終 〜〜
339 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:37:24.86 ID:PifaLPGB0
―― ほむホーム ――

さやか「ってわけ」

マミ「そんな、ことって……」

ほむら「……」

さやかが話したことはとても信じられない内容だった。
あの子は私だけでなく、この世界まで救おうと考えていたのだ。

杏子「……」

マミ「でも、それならあの子の行動にも納得がいくわね」

さやか「あのさ、ほむら。ほどかは本当にあんたの為を思って動いてるんだ。
    だからさ、少しはあの子のことを気にかけてやってよ」




もう少しでいなくなっちゃうんだからさ……。

その言葉が胸に刺さる。
あの子は一人でそんなにも辛い使命を背負っていたのか……。そしてそれを一切出さずにいたのか。

ほむら「バカな子……」

きっと辛かっただろうに、苦しかっただろうに……。
一人でいなくなるのは怖いに決まっているのに……。

さやか「ほむら……」

マミ「暁美さん……」




杏子「ちょっと、いいか」

さやかの話を黙って聞いていた杏子が声をあげる。

さやか「なに?」

杏子「本当にそれだけか?」

マミ「どういう意味?」

杏子「あいつは本当に真実を全部語ったかってこと」

さやか「なに? まだなんかあるわけ?」

杏子「よく考えて見ろよ。宇宙のエネルギー問題ってところをさ。
   確かにあいつが凄い力の持ち主でその才能を使えば解決できるっていうのはわかる」

けど、っと続け。

杏子「いくらなんでもずっとっていうわけにはいかないんじゃないか?」
340 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:37:53.78 ID:PifaLPGB0
さやか「どういうこと?」

杏子「つまりだ、一応のところの解決は出来るだろうけど、将来的にまたエネルギーの不足はやってくるんじゃないかってこと。
   いくらほどかでも、エネルギーってやつを無限にすることは無理だろ?」

確かに、言われてみればそうだ。
あの子の能力を見ていても、あくまで有限のモノを使ってそれを消費して戦っている。
力を押さえているといえばいいかもしれないが、それならば魔力の消費まで抑える必要はないだろう。

杏子「見たところ、あいつもグリーフシードは使ってるみたいだし、あいつ自身の能力は無限じゃないんだろ?
   願いが永遠に関係することにも関わらず」

さやか「で、でもそれがなんだっていうのさ、結果的にほどかの願いのおかげで、
    エネルギーの問題は解決するし、魔法少女の問題だって……」

杏子「それだよ。魔法少女が今後生まれないようにする。そこがおかしいんだって」

マミ「……。確かにおかしいわね」

マミもなにかに気づいたのか杏子の意見に賛同する。




マミ「考えても見て? そもそも魔法少女が存在する経緯は宇宙のエネルギー問題の解消の為」

さやか「だ、だからほどかはそのシステムを止めるために」

マミ「そのシステムを作ったのは誰?」

さやか「え? そ、それは……」

ほむら「インキュベーター……」

マミ「そう。そのキュゥべぇ達が魔法少女のシステムを破棄するなんてありえるかしら?
   だって、ほどかさんの願いだけじゃあいずれまた、宇宙のエネルギー問題は起こるのよ?」

さやか「え……」

杏子「なのに、ほどかの話じゃキュゥべぇは納得してるんだろう?
   おかしいよな。あいつは嘘はつかないはずだ」

インキュベーターは嘘はつかない。
感情がないゆえに聞かれたことに対しては全てとは言わずにも答えるはずだ。




マミ「だけど、キュゥべぇは魔法少女をこの先生み出さないことに了承した」

杏子「あいつの願いにキュゥべぇ達が契約をしないなんて入ってなかったよな?」

あの子の願いはあくまで、私達が魔法少女の運命から解き放たれること。そして宇宙のエネルギー不足の解消。
この先、魔法少女が生まれないのは、必要なくなるからできる、副次的な要素にすぎない。

マミ「どうしてだと思う? ほどかさんが願いにそれをいれなかった理由と、キュゥべぇが納得した理由」

さやか「う……」

ほどかならばその問題に気づいたはずだ、自分の願いが永遠のものではないと。
にも関わらず、魔法少女のことを願いにいれなかった理由は……。

ほむら「その必要がないから」

杏子「だろうな」

マミ「それしかないわね」
341 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:38:24.89 ID:PifaLPGB0
さやか「え? どういう意味? まさかほどかが嘘をついてて魔法少女を救うのは目的じゃないってこと?」

杏子「それはないだろう。あいつはその事に関しては嘘は言わないだろ」

さやか「じゃあ、なんだっていうのよ!」

杏子「さぁ? さすがにそこまでは……」

マミ「まぁ真相は知っている人に聞くのが一番じゃないかしら?」

ねぇ? マミはそういうと、部屋の隅に目を向ける。
さっきまではなにもなかったそこには、あるモノがいた。

QB「やれやれ。気づいていたんだね」

マミ「当たり前よ。何年の付き合いだと思ってるの」







マミ「あなたなら知っているはずよね?」

QB「そうだね。知っているよ。今の僕もほどかから直接聞いたからね」

マミ「話してちょうだい。包み隠さずにあなたの知っているほどかさんのことを全て」

今までの経験からか、マミはそう強く念押しをしする。

QB「それはできないね。このことについてはほどかからきつく口止めをされている」

君達には絶対に話すな、とね。

インキュベーターの口ぶりから察するに彼が知っていることこそほどかの本心であり、真実なのだろう。
そして、絶対にばれるわけにはいかない真実。

さやか「ちょっと待ちなよ! あんたのせいでこんなことになってるのに今更そんなの許されるわけないでしょ!?」





QB「許される許されないの問題じゃないんだよ。これは契約だ。
   ほどかは僕達の目的に協力する代わりに君達に話す口を封じた。なら僕はその契約を厳守しなくてはいけない」

そうだろう。彼等はそういう生き物だ。
契約やルールというものに関しては彼等は、どのような形にしろ守り続ける。

マミ「そう、なら仕方ないわね」

さやか「マミさん!?」

マミ「ねぇキュゥべぇ。あなたがほどかさんと交わした約束は確か、私達に自分の目的を言わないことよね?」

QB「そうだね」

マミ「なら、ほどかさんの隠していることを確認の為に暗唱するのは契約違反にはならないわよね?」

さやほむ杏「!」

QB「……」
342 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:38:51.27 ID:PifaLPGB0
マミ「だって、契約の内容を忘れない為に暗唱するな、なんてことは言われてないでしょ?」

QB「確かに、そうなるね」

マミ「それを偶然私達が聞いてもそれはあなたの過失にはならないんじゃないかしら?」

少し、苦しいような気もするけど……。

QB「どうだろうね……。まぁ、そうとも取れるのかもね」

マミ「そうよ。あなたは私達に話す意図はなかった。
   だけど、忘れない為に確認したところ、それをうっかり聞かれた。なら仕方ないわ」

ほむら(詭弁ね)

実際に聞かれたのなら、経緯はどうあれまずはその罪を問われる。





ほむら(だけど……)

それはあの子も同じ。
嘘はつかないと言っておきながらその言葉には嘘だらけ。
ならば、最初に約束を破ったあの子が悪い。

ほむら(社会的に信用度の低い人とは重要な契約は結べないものだし)

マミ「どうかしら?」

QB「……」

マミ「そういえば、あなたの為にケーキを用意したあるのだけれど……。
   それは私の機嫌次第であなたの胃袋に入るかどうかは怪しいわね」




QB「はぁ、マミには叶わないね」

さやか「じゃ、じゃあ!」

QB「……。そういえば、ほどかの言っていた内容はなんだっけな。
   忘れてしまわない内にもう一回覚えなおそうかな」

さやか「なに言って……」

杏子「し!」

キュゥべぇの言葉に口を挟もうとするさやかの口を杏子が押さえる。
この子は……。今の流れでわからないのかしら……。

QB「えーっと。そうだ。あれは確か――」

343 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:40:36.93 ID:PifaLPGB0
 〜〜 回想 〜〜

QB『成程ね。君の願いが暁美ほむらや他の魔法少女の救出、そしてエネルギー問題の解決というのはわかったよ』

ほどか『そっか、じゃあパパにはもう契約を迫らないでもらえる?』

QB『それは無理だね』

ほどか『……どうして?』

QB『確かに君の願いで一応の解決は見られるかもしれない。
   だけど、それはあくまで一時の問題だ』

ほどか『……』

QB『いくら君の力が強大とはいえ、膨大であるエネルギー量をこの先ずっと賄えることは無理だよ。
   力は無限じゃないからね』

QB『それは君も気づいてるんだろう?』

QB『確かに鹿目まどかとの契約を止めることはできるよ。一応、現段階ではエネルギーの問題は解決する』

QB『だけど、未来においても契約をストップするのは無理だ。いづれ再噴出する問題に対して僕達は行動せざる負えないだろう』

ほどか『だろうね』

QB『だから、君の願いが完璧に叶うのは無理だろうね』

QB『でもまぁ、鹿目まどかとの契約は止めることにするよ。君の願いにそれが含まれている以上、契約するのはルール違反だろうからね』

ほどか『そっか、ありがと』

QB『でも、未来においてまでは保障できないよ』

QB『じゃあ僕は行くよ。君の願い、叶うといいね』

ほどか『待って、あなたには全部話すよ』

QB『まだなにかあるのかい?』

ほどか『うん。これを聞けばあなた達も魔法少女のシステムがいらなくなるのに納得がいくと思う』

QB『へぇ、興味深いね』

ほどか『実はね、私の願いはママ達を救う、エネルギーの問題を解決する。その他にもう一つあるの』

QB『……』

ほどか『あなた達は絶望の感情をエネルギーに変えてこの宇宙の寿命を延命するために使ってるんだよね?』

QB『そうだね。その通りだ』

ほどか『それは別に魔法少女のものじゃなくてもいいよね』

QB『ん……。そうだね。魔法少女が魔女になる時に発生する力をエネルギーに変えているわけだけど……。
   もとは人の感情だからね、魔法少女のものじゃなくてもいいと言えばそうなるね』

QB『それがどうしたんだい?』

ほどか『つまり、今を生きている人が持つ負の感情をそのままエネルギーに変えることもできるわけだよね』

QB『まぁ、そうなるね。ただ、そんなシステムは今のところないけど』

そもそも、そんなシステム。作ろうにも膨大な時間と膨大な力が……。
そこまで言いかけて彼女の言いたいことに気づく。

QB「君はまさか……」

ほどか『うん。私のもう一つの願いは――』


――人の負の感情を永遠にエネルギーに変え続ける存在になることだよ。


ほどか『それならこの先、魔法少女は必要ないし、エネルギーも減り続けることはなくなるよね?』


      〜〜 回想 終 〜〜
344 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:41:02.71 ID:PifaLPGB0
―― ほむホーム ――

QB「だったかな」

マミ「っ!」

杏子「うそ、だろ……」

さやか「そ、それって……」

ほむら「そんな……」

永遠にって、そんな……。それじゃあ、あの子は……。

杏子「ふざけんなよ!!」

マミ「!」

さやか「杏子……」

ダンッ!! っという大きな音が部屋中に響き渡る。
音の出どころを探ると杏子が目の前にあったテーブルに思いきり拳を叩きつけていた。





杏子「それじゃあなにか!? 
   あいつは一生、人の不幸を自分に取り込んでバカみたいにそれをエネルギーに変え続けるっていうのかよ!!」

QB[……」

そうなるのだろう。
彼女は永遠に絶望の連鎖に捉われたまま、それを受け止め、只々、エネルギーを吐きだし続ける。
そんな機械になる。

杏子「なんだよそれ! いくらなんでもそんなの酷過ぎるだろう!」

酷過ぎる。その通りだと思う。
なぜならあの子がそのようなシステムになってしまう瞬間。
金輪際あの子に救いは訪れない。

あの子はこれから、人の苦しみや悲しみ、嘆き、痛み、絶望。
そういったものしか見れずに感じられずにただ存在するしかないのだから。




杏子「あいつが覚悟して決めたことなら仕方ない。そう考えてたけどこれじゃあ……」

ただの馬鹿な自己犠牲じゃねーか……。

杏子はそう呟きそのまま、うなだれる。

馬鹿な自己犠牲。
本当にそう思う。

自分の身を犠牲にして、滅びゆく世界を生かす。
ヒーローのように高潔で清廉な心だと思う。

だけど、それは同時に自分の身を使い世界を好きなように作り替えることにも繋がるのではないか。
345 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:41:59.65 ID:PifaLPGB0
ほむら(なんだ、私の考えは間違いじゃなかったのね)


鹿目ほどか、あなたはやっぱり世界を自分の思う通りにしたかったんじゃない――。


ほむら(でも、その結果あなたが不幸になるんじゃ、意味ないでしょうに……)






本当にバカな子――。





いつしか誰も話さなくなっていた。

頬が濡れる感触があったので手で触れる。
すると、なにか水のようなものに当たる。
これはなんだろうか……?

私の部屋は雨漏りなどしていないはず……?
そもそも今日は雨なんて降って……。

ほむら(あ――)

そうか、私は泣いているんだ。




なぜ? あの子が愚かだから――。

なぜ? あの子が無理をするから――・

なぜ? あの子が哀れだから――。

なぜ? あの子と別れることになるのが――。

ほむら(あ、あぁ――)

涙が止まらない。
止めようとしても、全然おさまってくれない。





ほむら「あ、あ……。ほど、か……」

ほどか、つい最近まで憎んでいた女の子の名前を口に出す。
殺したいとさえ思っていた子だ。

ほむら「あ、私は、なんてことを……」

なんてことをあの子にしてしまったのだろう……。
なんてことをあの子に言ってしまったのだろう……。

ほむら「あ、謝らないと……」

謝らないといけない。
あの子は何も悪くないのに、私が勝手に勘違いして敵視していただけなのに。
346 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:43:17.60 ID:PifaLPGB0
ほむら「ほどか……。ごめんなさい……」

さやか「ほむら!」

ふらふらと立ち上がる私にさやかが抱き着く。
邪魔をしないでほしい。私はあの子のところにいかないといけない。

ほむら「はな、して……。私あの子に謝らないと……」

酷いことを言ってごめんなさい。
酷いことをしてごめんなさい。

そう謝らないといけない。

さやか「だめだよ! 今のあんたが言っても傷つけるだけだ!」

ほむら「どうしてよ! 私はただあの子にしたことを謝ろうと!」

さやか「それで、どうするの!? 今のあんたはそれだけじゃすまないでしょ!?」

それだけでって……。
いったいなんのことを……。

さやか「冷静じゃないあんたが言ったら絶対に今聞いたことを言うでしょ!?
    ほどかのところにはまどかもいるんだよ!?」


さやか「まどかにこんな残酷なこと教えるつもり!?」

ほむら「あ――」


まどか、私の大切な人で私の全てを変えてくれた人。

今、まどかはほどかの傍にいる。
まどかにとってほどかは自分の命よりも大切な存在なのだろう。

マミの攻撃から身を挺して庇った時も、その後で自分のことよりもあの子の心配をしたことからも、
そのことは容易に想像がつく。

その、まどかにこんなことを言えるのだろうか……。

ほむら「そんなこと、出来るわけ……」

さやかに抱き着かれながらずるずると床にへたりこむ。

身体に力が入らない。
どうすればいいのかわからない。

私はあの子になにをしてやれば……。

さやか「謝るのはまどかのいない時にしな。ううん、それももうだめかもしれない。
    勘のいいほどかはきっと今のあんたが謝ったりしたら不審に思うかもしれない。
    そして、すぐに自分の目的がばれたことに気づいて……」

さやか「あんたを追い詰めた自分を恨むだろうね」

さやかが悔しそうな顔でそう呟くのが視界の端に写る。


あぁ、そうか。あの子はそういう子だものね。

どこまで言ってもお人よしで……。そんなところはまどかにそっくり。

ほむら(どうして、私に似なかったのかしら――)

あぁ、ダメね。私に似たら似たできっと今以上に無茶をしていたでしょうから。

ほむら(私に謝る権利すら与えてくれないなんて……)


なんて親不孝な子なのあの子は――。


いつの間にか涙は止まっていた。

ただ、左手にあるソウルジェムの輝きが少し濁った。
そんな気がした――。
347 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:43:44.27 ID:PifaLPGB0
―― 学校 ――

ほむら「……」

昨日の夜のことを思い出し、相変わらずボーっと黒板を眺める。

黒板に書かれたほどかの回答はすでに消されていて、

せっかくあの子が考えて出したその答えをあっさり消してしまった先生に、
少しの怒りを感じながらも、それは理不尽なことだと思い直し、首を振りその感情を振り払う。

怒り……。
これもあの子は受けとめなくてはならないのだろうか……。

基本的に怒りという感情はマイナスの面を持つ。

義憤という言葉もあるが、それはマイナスに属するのか、
だが、誰かの為に怒るというのならそれはプラスではないのか……。

意味のないことだと思い今度は強めに首を振り、また沸き上る嫌な感情を振り払う。





そんなわたしの様子を不審に思ったのか先生が声をかけてくれる。

「暁美。大丈夫か? かなり気分が悪そうだぞ」

確かに気分は悪い。
だけど、こんな感情もこの先あの子が受け持つことになるのだと思うと……。

ほむら「すいません。少し体調が悪いようですので、保健室で休ませてもらいます」

駄目だ、こんな状態では授業なんて受けられない。
さっきから、同じようなことをグルグルと考え続けている。

「そうか、あんまり無理はするなよ。このクラスの保健委員は鹿目まどか、だったな……。
 鹿目! 暁美を保健室に連れて行ってやれ」

まどか「あ、はい!」

まどかが私に近寄り心配そうに声をかける。
348 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:44:11.00 ID:PifaLPGB0
まどか「大丈夫ほむらちゃん? うわ、顔真っ青だよ、一人で立てる?」

ほむら「大丈夫よ、ありがとう」

そうは言ったものの少し足がふらつく。
そんな私を慌ててまどかが支える。

ほどか「あ、あの! 私も付き添ってもいいでしょうか?」

そんな私の状態を見たほどかが挙手をして先生にそう訴える。

その表情は心配そうで、そんな顔をさせてしまったことに対して、
罪悪感を感じてしまう。




「うーん、そうだな。かなり辛そうだし保健室までなら……」

ほむら「いえ、結構です。まどかさんだけで十分ですから」

今、あの子の顔を見るのは無理だ。
見たら嫌でも辛くなる。それではあの子に不振がられてしまう。

ほどか「あ……、そう、ですか……」

その私の言葉に少し落ち込んだ顔で座るあの子。

駄目ね……。私はあの子をまた傷つけてしまった。

まどか「え、えと。じゃあいこっか……」

落ち込むほどかが気になるのかちらりと一目見て、
それでも保健委員としての役割を果たすために私を支えながら教室を出るまどか。
349 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:44:45.57 ID:PifaLPGB0
まどか「大丈夫? 本当に辛そうだよ?」

ほむら「大丈夫よ、少し休めば治るわ」

治るのだろうか? いや、きっと無理だろう。
休んで治るくらいなら、ここまで苦労はしない。

ほむら「……私は駄目ね……」

まどか「え?」

私の突然の言葉の意味が理解できなかったのだろう。
まどかは疑問の声をあげる。

ほむら「また、あの子を傷つけてしまった」

まどか「さっきのこと?」

ほむら「えぇ……」

まどか「うーん。確かに傷ついただろうけど……。でも大丈夫だよ。
    ほむらちゃんがそれを後悔するんなら、これからはほどかちゃんを喜ばせる為に行動すればさ」

そうすればきっと、ほどかちゃんの心も楽しさや喜びで埋まるんじゃないかな?

まどか「だって、ほどかちゃんはほむらちゃんのことが大好きだからね!」

そう笑顔で語りかけてくれるまどか。

その笑顔で私は何回も救われた。
その笑顔があったから私は今まで絶望しないでここまで進んでこれた。

でも、今はその笑顔に救われることはなかった。


まどか「聞いてよー。ほどかちゃんったらさ、昨日は私と一緒に寝る約束してたのにさー」

ほどか『あれはお母さんも一緒の約束だったはずです。お母さんがいないいんだから契約は無効です』

まどか「なんて言うんだよ!? 酷いよね! 私だってほどかちゃんのこと好きなのにさー。
    いつもいつもお母さんお母さんって」

私の愛にも少しは答えてほしいよ! 全く! 

そう言って怒りを露わにするまどかだが、その表情は笑顔だ。
きっと、そんなことも彼女にしてしまえば嬉しいことであり楽しいことなのだろう。
350 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:45:13.04 ID:PifaLPGB0
まどか「あ、そうだ! ほむらちゃんがほどかちゃんの為になにかしてあげたいんだったらさ」

こういうのはどう? っと提案をするまどか。

まどか「今日さ、ほむらちゃんの家にほどかちゃんと私でお泊りするの! ちょうど明日は学校もお休みだしさ
    家族水入らずってことで」

どうかな? そう言って首を傾げるまどかを見て少し思案する。
その提案を受けてもいいものか、まどかは家族水入らずだと言ったが今更私にそんな権利があるのか。

私は散々あの子を傷つけ苦しめてきたんだ。
そんな私に今更、母親面する権利など……。





まどか「……。ほむらちゃんはさ、少し気にし過ぎだと思うな」

ほむら「え……?」

まどか「今、ほむらちゃんが考えてること当ててみよっか」

ほむら「……」

まどか「今更私にあの子の母親である権利なんかない。
    私にはあの子の家族でいることなんて許されない」

そう考えてるでしょ。

そういうまどかの顔は凄く真面目で、そして確信に満ちていた。






まどか「ほむらちゃんからすれば、今までのことがあるのに今更なんて思うかもしれないけどさ……」

でも……。そう言って話を続ける顔は相変わらず真面目なもので、でもどこか寂しそうでもあった。

まどか「ほどかちゃんの母親はほむらちゃんにしか出来ないいんだよ?
    ほどかちゃんが抱えている大きな苦しみはほむらちゃんにしか癒せないんだよ?」

ほむら「!」

まどか「だから、せめて最後の時まではあの子には幸せでいてほしいの」

私だけじゃあの子を幸せにすることは無理だから。

少し俯いたまどか。私にはその顔は見えなくて、でも、なんとなくだけど、まどかは泣いている。
そう感じずにはいられなかった。

ほむら「まどか、あなたまさか」

知っているの? あの子が隠していることを全て……?

だけど、そんなはずはない。
あの子がまどかに言うはずないし、さやか達もあんなことは黙っているはずだ。
351 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:45:53.18 ID:PifaLPGB0
まどか「……。ね! お泊り、どうかな?」

ほむら「え……?」

急に顔を上げ、笑顔のまま、私にそう質問する。
しかし、私は突然のことに理解できず思わず聞き返してしまう。

まどか「ほどかちゃんの為にも、そしてほむらちゃんの為にもこのままじゃよくないしさ」

まどか「だからお願い。今日だけでも一緒にいてあげられないかな」

そう言って頭を下げるまどか。
まどかは私の為にもと言った。






私の為。それはどういう意味だろうか……。
私自身、あの子には申し訳ない気持ちでいっぱいでなにかしてあげられないかと考えてはいる。

だけど、それは私の罪を滅ぼす為で、哀れなあの子の行く末を案じているからで……。
それに、私はあの子があまりにも可哀想で……。あの子のこれからを思うと身を切られるように痛くて……。

ほむら(あぁ、そうか……)




私はあの子を愛しているんだ。
娘として――。我が子として――。





ほむら(おかしな話ね)

私が生んだわけではないのに。あんなに憎んでいたのに。

ほむら(こんなことに今更気づくなんて)

思えばその兆候は以前からあった。
あの子が悲しそうな顔をするたびに、私は自分の感情が揺り動かされていた。

ほむら(思えばあの時も)

あの子が腕を失った時、私はあまりにも冷静すぎた。
いくら敵だとは考えていたとはいえ、仮にも仲間として行動していた人間がああなってしまえば取り乱すはずだ。

ほむら(だって、私はそこまで強くはないもの)

でも、私はただただ冷静に無感情に対処しようとした。
まるで、自分の心に渦巻く感情を押さえつけるかのように。
352 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:46:24.83 ID:PifaLPGB0
さやかの言葉に激昂し、みんなの前で敵だと叫んだのも、
自分の本心を認めたくないから出た嘘だったんだろう。

以前のループでさやかに言われた言葉を思い出す。

ほむら(本当に私は嘘つきね。自分の心にさえ嘘をつき続けていたんだもの)

……。まどかが言った私の為とは、きっとそういうことなんだろう。

ほむら(もう自分に嘘をつくことはやめて、素直になるべき)

きっとそう言いたいのだろう。


ほむら「そうね……」

まどか「え?」

頭を下げ続けていたまどかが私の声に頭を上げこちらに顔を向ける。

ほむら「そういえば、あの子を私の家に呼んだことはなかったわね」

まどか「そ、それじゃあ」

ほむら「えぇ、たまには私達三人で過ごすのもいいわね」

だって私達は親子なんですもの――。
そう心の中で呟く。


まどか「ほむらちゃん!」

まどかが私に抱き着いてくる。

その顔には涙が流れていて、
でも今まで見てきた中で一番の笑顔で、その顔につられ私も泣きながら笑ってしまうでのあった。

ほむら(そうと決まれば、夕飯の買い出しにいかないとね)

せっかくの親子水入らずなんだから、外食は避けたい。


ほむら(あの子はなにが好きなのかしら……?)

まぁ、まどかに聞けばわかるか。

ほむら(なんだか、気分がよくなってきたわ)

さっきまで胸にあった嫌な気持ちはもうすっかりなくなっている。
ただ、今は早くあの子の喜ぶ顔が見たい。その気持ちでいっぱいだ。

ほむら(罪滅ぼしではなく、今、私達の幸せの為に)

それがあの子にしてあげられること。

そして――。

ほむら(私がやりたいこと――)

――――――――――――
――――――――――
――――――――

353 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:47:08.70 ID:PifaLPGB0
―ほどか―

―― ほむホーム ――

ほどか「あ、あの本当にお邪魔してもいいんですか……?」

ママの家の玄関の前で本当に家に入っていいものか、尻込みをしてしまう私。

今日、体調の優れないママを保健室に連れて行った後、
戻ってきたパパは休み時間になると私に開口一番こう言った。

まどか『今日はほむらちゃんの家にお泊りだから!』

ほどか『え? なんですか急に?』

まどか『だから、ほむらちゃんの家にお泊り! 家に帰ったらすぐに用意するからね!』

ほどか『え、ちょ、ちょっと』

用件だけを告げるとパパはすぐに自分の考えに集中し私の言葉には耳も傾けなくなった。

まどか『明日はどこにお出かけしようか……。晴れるのかな? 天気予報は……』

ほどか『話を、聞いてよ……』


ほむら「なにを遠慮しているの。私がいいと言ったんだから素直に受け取りなさい」

ほどか「は、はい……」

まどか「うぇひひ」

なんなんだろう……。
ママはいつも通りだけど、パパはなんか浮かれているというかなんというか……。

ほどか(なんか、ウザいんだよね……)

さっきも、テンションが上がりすぎたのか急に私に抱き着いてきたり、かと思えば真面目な顔でじっと私の目を見つめてきたり。
そしたら、次はだらしなく笑ってみたりとなんだか表情だけでも忙しい。

ほどか(まぁ、でもママと一緒にいられるのは嬉しいけど……)

でも、なんで急に? 今までそんな気配はなかったのに……。

ほどか(パパはやっとママにも思いが通じたとか言ってたけどさ)

いくらなんでもいきなりすぎるような……?


ほむら「どうしたのそんなところでボーっとして。こっちに来なさい」

玄関でそんなことを考える私にママが手招きをする。

あぅ……。ママが呼んでくれてる。どうしよう……。すっごく嬉しいよ……。

ほどか「は、はい!」

急いでママの言う通り家にお邪魔する。

まどか(おぉ、なんだかほどかちゃんに猫耳と尻尾が見えるようだよ……)

ほどか(まぁ、ママが一緒ならなんでもいっか♪)

……。ママに抱き着いたりしたらダメかな? 
さすがに怒られるよね。
354 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:47:37.50 ID:PifaLPGB0
ほどか「わぁー、凄い……」

目の前に並べられた料理に驚く。

まどか「す、っごい豪華……」

豪華、その一言で済ますにはなんだか失礼な気もするけれど、それしか出てこない。
それ程にママが用意した料理はどれも素晴らしく、キラキラと輝いているように見えた。

ほむら「そんなに驚かれるとなんだか照れるわね///」

自分の料理を見て驚かれることに照れるママ。
照れる姿も可愛いなー。

ほどか(うん。私のママはやっぱり完璧だ)

改めてそう思う。





ほむら「さぁ、食べましょう? 料理は見て楽しむだけのものではないわよ」

そう言ってママは手を合わせる。

まどか「そうだね! ほらほどかちゃんも手を合わせて!」

そしてそれにパパも続く。

ほどか「そうですね」

パパに促され私も二人と同じように手を合わせる。

まどか「それでは……」

「「「いただきます!」」」

三人の声が重なり、部屋に響く。




まどか「うわ! これすっごくおいしいよ!」

ほどか「これも凄くおいしいです!」

まどか「ちょ、ちょっとほどかちゃんそれは私の肉団子だよ!」

ほどか「早い者勝ちです!」

ほむら「まだたくさんあるのだからケンカしないの」

ほどか「そうですよ。パパは食い意地が張りすぎです」

ほむら「あなたもよ」

ほどか「う、ごめんなさい……」

ほむら「全く、ほら口元にソースがついてるわよ。女の子がはしたない」

ほどか「ごめんなふぁい」
355 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:48:03.49 ID:PifaLPGB0
まどか「てぃひひ」

ほどか「なにがおかしいんですか?」

まどか「ほどかちゃんって子供だなーって」

ほどか「なに言ってるんですか、お父さんと年は変わりませんよ」

まどか「いや、そういう意味じゃ……。
    っていうかほどかちゃんは私の子供だから間違ってないよね!?」

ほどか「まぁ戸籍上では」

まどか「それ以外では違うの!?」

ほどか「可能性はありますね」

まどか「なにそれ!? うぅ、ほむらちゃーん。ほどかちゃんがいじめるよー」

ほむら「はいはい。そういえば、クリームシチューはどうかしら?」

まどか「流された!?」





ほどか「すっごくおいしいです!」

ほむら「そう。まだまだたくさんあるから」

ほどか「ありがとうございます!」

まどか「あの、私も会話に参加したいかなって」

ほどか「えー……」

まどか「なんでそんなに嫌そうなの!?」

ほどか「だって……」

まどか「うぅ、ほむらちゃーん!」




ほむら「はいはい、もう……。あまりまどかをいじめないの」

ほどか「お父さんごめんなさい」

まどか「ホントほむらちゃんには素直だね……」

ほどか「シチューおかわりもらってもいいですか?」

ほむら「えぇ、器をかしなさい。よそってくるわ」

ほどか「いいんですか……?」

ほむら「遠慮しないの」

ほどか「ありがとうございます!」
356 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:48:47.59 ID:PifaLPGB0
ほむら「はい。このくらいでよかったかしら」

ほどか「はい! ちょうどいいです! ありがとうございます!」

ほむら「そう」

まどか(……。ほどかちゃんもほむらちゃんも楽しそうだな。
    てぃひひ、やっぱりお泊りしてよかった)

ほどか「隙ありです!」

まどか「あぁ! 今度は私の卵焼きを!」

ほどか「戦場では弱い兵士からやられるんですよ……」

まどか「いや、意味わかんないよ!?」

ほむら「だからケンカしないの……」


ほどか「うぅ……。もぅ食べられないです……」

まどか「わ、私も……」

ほむら「あんなに食べるからよ……。まさか完食するなんて思わなかったわ」

ほどか「だって、残すわけには……」

ママがせっかく作ってくれた料理。それを残すなんて考えられない。
神様にだって許されない禁忌だよ。

ほむら「明日のお弁当のことも考えて多めに作ったから残しても大丈夫だったのよ?
    残ったら詰めるつもりだったのだし……」

ほどか「え、そうなんですか? もしかしてマズイことしちゃいました?」

確かに三人分にしては多いとは思ってたけど……。


ほむら「大丈夫よ、食材はあるのだしまた作り直すわ」

ほどか「あぅ、ごめんなさい」

これじゃあママの負担がかかっちゃう……。

ほどか「明日のお弁当作り手伝いますね?」

ほむら「別に大丈夫……。いえ、そうね。
    手伝ってもらえるかしら」

ほどか「はい!」

ママのお手伝い……。
頑張らないと。


357 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:50:33.91 ID:PifaLPGB0
まどか(うんうん。母娘っぽくなってきたね)

ほむら「さて、お風呂も湧いたみたいだし、先に入ってらっしゃい」

ほどか「先にいいんですか?」

ほむら「えぇ、片づけもあるし」

ほどか「手伝いますよ? この量を一人では大変じゃ……」

結構あるよね。
食べてばかりで、そのままだと悪いし。






ほむら「気にする必要はないわ。えっと、あなたは……」

ほどか「?」

まどか「!」

なんだかママの様子がおかしい。なにやら口をもごもごさせてる……?

ほむら「えっと、その……。私の……」

ほどか「私の……?」

なんだろう……。




まどか「……」ドキドキ

ほむら「私の……。お客様なのだし」

まどか「ありゃー……」

ほどか「あ、はい」

まぁ、確かにお客様に片づけをさせるのは家主としては考えるところか。
ママはそういうことを気にしそうだし。

ほどか「うーん。そういうことでしたら先にお風呂頂いちゃいますね」

ほむら「え、えぇ」

申し訳ないけど仕方ないか。
ちょっと手伝いたかったけど。
358 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:55:12.05 ID:PifaLPGB0
まどか「待って!」

私がお風呂に入る準備をして、さぁお風呂場に向かおうとするとパパが私の肩を掴み待ったをかける。

ほどか「どうしたの?」

まどか「お風呂なんだけどさ、せっかくだからみんなで入らない?」

ほどか「え」

ほむら「さすがにそれは……。三人で入るのは狭いし、片づけもしないと」

まどか「大丈夫だよ! 片づけなら私達も手伝うし、お風呂もうまくやれば三人で入れるよ!」

必死で自分の論を主張するパパ。
……。ママとお風呂に入れるのは嬉しいけど……。でもパパとも……?




ほどか(それはちょっと……)

いくら女の子の姿とはいえ、パパはパパだし……。
それに、ママもあんまり乗り気じゃないように見えるし。

ほどか「私も別々の方がいいと思いますけど……」

まどか「駄目だよ! ありえないよ!」

ほどか「ひぃ!?」

私の言葉を聞いたパパが私の顔に自分の顔をかなり近づけ、今度は私の両肩を強く掴む。
その形相はまさに必死だ。

まどか「せっかくのおとまりなんだよ!? なのにそんな大事なイベントをスルーするなんて許されると思う!?
    ううん! 絶対ダメだよね!!」

ほどか「なんの話ですかー!!」

ほむら「ちょ、ちょっとまどか……。ほどかが凄いことになってるわ」

まどか「いーい!? これは絶対に避けちゃダメなことなの!! 必ず通らないといけないことなの!!」

ほどか「あうあうあうあう」

ほむら「わかった! わかったから離してあげて! 首が取れるわ!」

まどか「え、ほんとに? 入ってくれるの?」

ママの言葉のおかげで揺さぶるのをやめてくれたパパ。





ほむら「え、えぇ。大丈夫?」

ほどか「だ、だいじょぶれふ」

でも、若干手遅れで私はふらふらだ。

ほむら「ダメじゃない。乱暴しちゃ。ほどかは女の子なのよ?」

まどか「う、ごめんなさい」

パパの狼藉をママが叱る。
しょんぼりするパパに少し同情するけど、さすがにあれはやりすぎだよね。

ほどか(首とれるかと思った)

ソウルジェムさえ無事なら死なないだろうけど、首のない魔法少女なんて嫌だよ。
ホラーだよ。
359 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:56:04.40 ID:PifaLPGB0
ほどか「……」

ほむら「……」

まどか(ぐふふ。ぐふふふふ)

はい! こんばんは! 久しぶりにまどかちゃんだよ!
いやー、主人公なのに最近影が薄くて困るよねー。

なんか、置いてきぼりっていうの? 
話の流れについていけてないっていうのかさー。

まどか(みんな好き勝手動きすぎだよね)


まぁそれはおいといて。
今! 私は! お風呂場に! います!

まどか(正確には湯船の中ね)

みなさん聞いてくださいよ! 私の目の前には今、エデンがあります。

ほどか「あの、痛くないですか?」

ほむら「え、えぇ。ちょうどいいわよ」

まどか(きたよきましたきましたわ)

なんと! あのほむらちゃんとほどかちゃんが一緒にお風呂に入ってるんですよ!?
全裸で!

全裸で!





まどか(しかも、二人で洗いっことかね、しちゃったりしてね)

まぁ、そういうふうに私が仕向けたわけだけど。

まどか(いやー、でもまさかやってくれるとは)

ダメ元だったんだけどね。

でも、お風呂に入ってから二人ともなんか妙に緊張しちゃっててね、
冷静に判断できないのか、自分を見失ってるのか結構なんでも聞いてくれるんだよね。

まどか(二人に冗談でおっぱい揉んでいい? って聞いたら殺されそうになったけど)

まさか、二人で時を止めてラッシュをかけてくるとはね。
時が動き出した時のあの激痛といったら凄かったね。


360 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:56:58.38 ID:PifaLPGB0
まどか(まぁ、目覚めつつある私にはそれすらも快感なんだけどね)

おっと、いけないいけない。私まで自分を見失うところだったよ。

まどか(いや、でも本当に言い眺めだね)

照れながらお互いの体を洗いあう二人。
その初々しさといったらもう……。

まどか(初めて制服の袖を通した中学一年生に匹敵するね)





ほむら「……。あなた、結構胸あるのね」

ほどか「え、は、はい。まぁマミさんやさやかさんよりはないですけど……」

ほむら「……」

まどか(ふおおおおおお!!)

いい! いいよ! ほむらちゃんその表情! ぺたぺたと胸を押さえる仕草もグッドだね!

まどか(わかる。わかるよ。
    きっと、どうして娘のこの子はこんなに成長してるのに私は……。っとか考えてるんだよね!)

多分、私のママの血だろうね! ほどかちゃんのプロポーションはママに似てるところあるからね。
見事に隔世遺伝しちゃったわけだ。

まどか(顔はほむらちゃんそっくりなのになー)

まぁ、でもそのおかげでほむらちゃんのこの表情を見れたわけだし……。

まどか(ナイス遺伝!)
361 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:57:27.46 ID:PifaLPGB0
ほどか「あ、あの……。未来のお母さんは今よりも、その。おっきいですから……
    だから、あまり気にしなくてもいいかと……」

ほむら「え!? そうなの!!?」

まどか(え!? そうなの!!?)

マジで!? なんで!? 

まどか(ま、まさか私が揉んで大きく……)

よく聞くよね。それ。





ほどか「え!? あ、はい……」

ほむら「そ、そう……。そうなの、ふふ」

まどか(あ、すっごい嬉しそう)

やっぱり気にしてたんだなー。
まぁ、年頃の女の子としてはね。

まどか(私も頑張らないと)

ほむらちゃんの為に。ティヒヒ。

ほどか(うぅ……。どうしよう、確かにおっきくはなるんだけど……。
    それでも私より小さいとはいえない……)
362 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:58:25.68 ID:PifaLPGB0
まどか「さてと、じゃあ私はあがるね」

色々と堪能したしね。
この辺が頃合いかな。

ほむら「え、もう?」

ほどか「早くないですか?」

まどか「でももう体も洗っちゃたしね。少しのぼせたから涼んでるよ」

嘘ではない。
実際、興奮しすぎてちょっとのぼせた。

まどか(ハッスルしすぎたかな)

まぁ、本当の目的は二人っきりにさせたいから。

まどか(なんだよね)





なんだかんだでこの二人がゆっくり話してる所は見たことない。
和解したとはいえ、まだまだ距離のある二人だし。

まどか(だから、二人っきりでゆっくり話せる時間がいると思うんだよね)

かといって放っておいてもこの二人じゃそんなことできないだろうし。
少し強引だけど、まぁいい機会かな。

まどか「あ、二人はゆっくり浸かっててね? 私なら大丈夫だから」

そう言い残してお風呂場から出る。

さてさて、うまくいってくれればいいけど。

まどか(まぁ、今の二人なら問題ないかな)

さてと、牛乳でも飲もうかな。
お風呂上がりの牛乳っておいしいよね

まどか「〜♪」
363 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:58:54.59 ID:PifaLPGB0
―ほむら―

ほどか「いっちゃいましたね……」

ほむら「えぇ」

どうしよう……。まさかまどかがこんなに早くお風呂場から出ていくとは思っていなかった。

ほむら(二人っきりで一体なにを話せばいいの!?)

私はそんなにコミュニケーション能力は高くないわよ!?
コンビニでも声を出すのが恥ずかしいから定員に、肉まん下さい。とか言えないんだから!

ほむら(ど、どうすれば……)

困ったわ。どうしよう……。

ほどか「……」ソワソワ

あ、この子もなにかいずらそうにそわそわしてる。





ほむら(ごめんなさい。コミュ障な親でごめんなさい)

な、なにか打開策を……。
駄目だわ! 何も浮かばない!

ほむら(く、まさかこんなところで最大の難関にぶちあたるとは……)

やはり、このループも一筋縄ではいかないようね……。

ほどか「あの」

ほむら「ひゃい!?」

あ、なんか変な声が出たわ……。この子も少し驚いてるわね。
いけないいけない。いつも通りに……。

ほむら「ごほん。なにかしら」

よし、大丈夫。





ほどか「今日はありがとうございました」

ほむら「え?」

ありがとう? なにに対してかしら……。

ほどか「私、元の時代ではお母さんが幼い頃に亡くなってて、だからこういうのに憧れてたんです」

ほむら「……」

そういえば、この子のいた時間軸では私は病死してるのよね。

ほどか「お母さんと一緒にご飯を食べたりとか、一緒にお風呂に入ったりとか。
    それで、お父さんとバカなことをやって、それを叱られたりとか……。
    友達がそういうことをやってるのを見てて、私にもお母さんがいればあんなのだったのかな。とか考えてて……」

364 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 07:59:24.34 ID:PifaLPGB0
……。ふと、私の母親のことを思い出す。
母親とはもう何年も会ってはいない。
時間的には一ヶ月しか経っていないが、私の体感時間では何年も経っていることになる。

私の母親も、私の体のせいでよく心配してくれた。
体の弱い私を気遣って、少しでも栄養のいい食材で料理をしてくれたり、高熱で寝込んだりした時は一晩中看病をしてくれたり。

私のせいで凄く迷惑をかけたものだ。

ほどか「だから、お母さんとこうしていられる時間がとても嬉しくて……。
    あなたが私を生んだわけではないことはわかってますけど、それでも……」

幸せで……。

そう呟くこの子。





あぁ、そうか。
この子は寂しかったのか。
そして、怖かったんだ。

ほむら(この子が私に対しては一歩引いた態度を取っていたのはそういうことね)

私に拒絶されることが怖かったから。
だから、いつもあまり踏み込まずにいた。

そうすれば、もし突き放されたとしても傷は浅くすむから。
そう考えていたのだろう。

ほむら(馬鹿ね……。自分の大切な人に拒絶されれば傷つかないはずがないのに)

何度も経験してきたから言えることだ。
そして、何度も経験しても学習することも出来ず、毎回失敗してきたことだ。




ほどか「だから、今日お母さんの家にお泊り出来て本当に嬉しかった。
    これで、私は心残りなくワルプルギスの夜を倒すことができます」

ほむら「……」

ワルプルギスの夜。
奴が具現する時がこの子の……。

ほどか「ありがとうございます」

また、お礼を言う彼女。

お礼を言うのはこちらの方だというのに……。

この子のおかげで、私はまどかを魔法少女にすることもなく、誰を死なせることもなく、ループを終わらせることができる。
しかも、魔法少女の運命から解き放たれ、普通の暮らしも出来るようになるという豪華なおまけ付きだ。

365 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 08:00:12.10 ID:PifaLPGB0
それに比べれば私がこの子にしたことといえば……。

ほむら(ただ、母親面をしただけじゃない)

でも、この子にはそれがとても嬉しいことで、なによりも幸せなことだという。

ほむら(なら、私は……)

せめてこの子の最後の時まで母親であり続けなければいけない。

ほむら「お礼を言う必要はないわ」

ほどか「え……?」

ほむら「私もあなたと過ごせて楽しかったし、こうしていられてとても幸せよ」

ほどか「お母さん……」

だから、伝えなくてはいけない。
私には言わなければいけない言葉がある。





ほむら「だって、あなたは……」

私は母親で、この子は私の子供なのだから……。
だから、私は言わなければいけない。

この子に、私はあなたの母親だと。

ほむら「あなたは私の大事な……」


そう、私の大事な――。


ほむら「むす『ちょっとほむらにほどか! いる!?』」

ほどか「え、あ、さやかさん?」

ほむら「」
366 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 08:00:38.39 ID:PifaLPGB0
さやか『あんたら、お泊りパーティしてるってホント!? どうして私も誘わないかな!』

ほどか『え、えっとすいません』

さやか『すいませんじゃないよ! 今から私も行く……』

杏子『さやかー!!!』

さやか『げぇ! 杏子!?』

杏子『お前なにしてんだよ!』

さやか『なにって、ほどか達がほむらの家に泊まりに行ってるみたいだから私も行こうかと……』

杏子『おま! お前ホントバカだな! ちょっとは考えて行動しろ!』

さやか『な、なによ! なんであんたにそんなこと言われなきゃ!』

杏子『あーもういい! ほどかにほむらすまん! このバカはアタシがきっちりシメとくから許してくれ!
   ほどか! 思う存分ほむらに甘えろよ! ほむらも素直になれよ! じゃあな!』

さやか『あ、何勝手に! ちょ、あんたそれはマズイって! その太くて長いのは仕舞って! ちょ、あ、アーッ!』





ほどか「あ、テレパシー切れた。さやかさん大丈夫かな……」

ほむら「」

ほどか「お母さん?」

ほむら「」

ほどか「おーい」

ほむら「はっ!」

な、なんなの!? いま、なにが起こったの!?
367 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 08:01:26.50 ID:PifaLPGB0
ほむら(え、なに今の? なんでさやか、……え?)

今の必要? そんな流れじゃなかったじゃない。
絶対おかしいでしょ今のは。

ほどか「あのー」

ほむら「え、な、なにかしら」

ちょっと待ってまだなにが起きたのか整理がついてないのよ。

ほどか「さっき、なにかいいかけてませんでした?」

ほむら「ほむ!?」

え、えーっと。ど、どうしよう……。
この空気の中言えるわけないじゃない……。





ほむら(完璧にタイミングを逃したわ)

ほどか「……」ジー

うぅ、見てる、見てるわ。
でも、こんな空気だし……。

ほむら「え、えーっと。そろそろあがらない? って言おうとしたのよ。
    もう大分浸かっているし……」

ほどか「あぁ、そうですね。さすがにのぼせそうです」

ほむら「そ、そうでしょう? 明日もあるのだし。今日はこのくらいにしときましょう」





ほどか「はい!」

いい返事ね……。やっぱりこの子は素直でいい子なのね。

ほむら(こういう所はまどかに似たのね……)

そんなことを思いながら湯船からあがる。

ほむら(っていうか、さやか。あの子は許さないわ)

必ず復讐してやる。

そう心に誓いほどかと一緒にお風呂場から出る。
まぁ、またチャンスはあるわよね。

ほむら(きっと……)
368 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 08:03:16.67 ID:PifaLPGB0
―まどか―

まどか「ねぇねぇ。私だけ遠くない?」

ほどか「そうでしょうか? そんなことないと思いますが」

まどか「いやいや! 明らかに大きい隙間があるよね!」

ほどか「隙間があるのが普通ですだと思いますけど……」

まどか「じゃあなんでほどかちゃんはそんなにほむらちゃんにべったりくっついてるの!?」

ほどか「狭いですから」

ほむら「もぅケンカしないの……」


場面は変わってまどかです! 
お風呂にも入って、三人でのんびりと談笑でもしながら過ごして気づけば日付も変わって12時半!

明日のこともあるのでもう寝ようということになり、またまた私の提案でお布団をくっつけて川の字に一緒に寝ようということに!
さっきとは違い、その提案はあっさり受諾されたのですが、ほどかちゃんがほむらちゃんにべったりで私に構ってくれません!

ちなみに順番はほどかちゃんを真ん中に左側がほむらちゃん。右側が私です!


まどか「こんなの絶対おかしいよ! いいよ! ほどかちゃんがこっちに来てくれないなら私から行くから!」

ほどか「ちょ、ちょっとお父さん! 狭いですって! きゃ! どこ触って!?」

まどか「てぃひひひ! よいではないかよいではないか!」

ほどか「ちょっと怒るよ! ひゃん! やめて!」

まどか「おぉ温かい……」





ほどか「うぅ、お母さーん」

ほむら「まどか、セクハラはやめなさい」

まどか「セクハラじゃないよ。スキンシップだよ」

親子のちょっとした交流だよ。

ほどか「違います! 明確なセクハラです!」

まどか「またまたぁw 嬉しいくせにww」

ほどか「うわ、ウザい……」

ウザいはないよ! 酷いよ! 
369 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 08:03:49.37 ID:PifaLPGB0
まどか「ほどかちゃんが不良に!? た、大変だよほむらちゃん!」

ほどか「誰のせいですか!」

ほむら「もう寝ましょうよ……」

まどか「くぅー。このままじゃほどかちゃんが髪を金髪に染めて服装も派手にして、携帯とかもデコっちゃう女の子に……」

あれ、想像すると可愛い?
あ、そう言えば魔法少女の衣装の時もミニだったよね

まどか「ってダメだよミニスカートは! 危険が危ないよ!」





ほどか「なんの話ですか……。っていうか私の時代のお父さんと一緒のこと言わないでください」

ほむら「あら、未来のまどかもあなたにそんなことを?」

ほどか「はい、一度私がミニを穿いて出かけようとしたら、怒り狂って止められました」

ほむら「酷いわね……」

ほどか「えぇ、ですから私の服ってズボンとかデニムとかが多いんですよ?
    ショートパンツも禁止されてて……」

まどか「そりゃするよ! そんなのダメだよ!」

ショートパンツにハイニーとか絶対似合うよね!?
だからダメ! どうしても穿きたいなら私の目の前だけでだね!




まどか(写真に収めないと!!)

ほむら「あなたも苦労したのね……」

ほどか「はい……」

まどか「ほどかちゃんは露出の多い服装は禁止だからね!?」

じゃないとどんな虫が寄ってくるか!!

ほむほど「はぁ……」

370 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 08:04:16.49 ID:PifaLPGB0
まどか「……寝た?」

あれからしばらく、話題も尽きて本格的に寝ることになった私達。

ほどか「寝ました」

ほむら「寝たわ」

ほんとにこの母娘は。そっくりなんだから……。

まどか「そっか、まぁ、じゃあこれから話すことは私の一人言ね」

ほどか「はい」

ほむら「ええ」




まどか「今日は本当に楽しかったよ。
    なんかさ、やっと本当の親子になれたって感じで。バカやったりね」

ほどか「バカなのはお父さんだけです」

まどか「寝たんじゃなかったの?」

ほどか「寝言です」

まどか「ふふ。そっか。……。私はこんな日がずっと続けばいいのになって思うんだ」

まどか「私がバカやってほどかちゃんに怒られて、そんな私達をほむらちゃんが優しく見守ってくれる。
    とっても平凡でなんてこともない日常だけど、とっても幸せで尊いもの」

そして、私達が一番望んでること。





まどか「だから、私はこんな日々をずっと送りたい。
    誰がいなくなることもなく、三人で一緒にこれからを過ごしていきたい」

ほどか「……」

まどか「ねぇ、約束してくれるかな? 私達はこれからもずっと一緒だって」

ほどか「……」

ほむら「……」

まどか「どんなことが起きてもそれを無事に乗り切って三人で暮らせるって」

約束してくれないかな?

そう呟く私の声に誰も答えてはくれなかった。

でも、しばらくして……。
371 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 08:05:00.87 ID:PifaLPGB0
ほどか「これは寝言ですけど……」

ほどかちゃんがぽつり、ぽつりと話し始める。

ほどか「私も今のこの日々がかけがえのないもので、とても幸せです」

まどか「……」

ほどか「お母さんがいて、お父さんがいる。
    それにさやかさんやマミさん。杏子さんに仁美さん、おじいちゃんにおばあちゃん。タツヤおじちゃんもいる。
    こんなに大好きな人に囲まれて私はとても幸せです」

ほどかちゃんはそう言うと、私の布団に入ってくる。

ほどか「だから、約束です。私達はこれからずっと一緒です」

そして、私にそっと抱き着く。

まどか「ありがとう……」





ほむら「私も約束するわ」

ほむらちゃんも私の布団に入り、ほどかちゃんを抱きしめる。

ほむら「私達はいつまでも一緒。そして三人で暮らす。
    私だってこの日々を失いたくないもの」

まどか「うん……」

いつの間にか誰も話さなくなっていた。
でも、通じ合うものは確かにあって。それがあるから言葉はもういらないんだって思えた。

まどか(約束だよ)

――約束。

三人で暮らす。こんな些細な願いすらも叶うことはない。

この時の私はすでにそれを知っていて、
でもそんな脆くも儚い誓いに頼ることでしか自分の感情の置き場をどうすればいいのかわからないのでした。

――――――――――――
――――――――――
――――――――
372 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/25(水) 08:17:20.25 ID:PifaLPGB0
すいません。出かける時間が来たのでここで区切らせてもらいます。

色々と問題ばかりの僕ですけどあと少しだけお付き合い願えたら助かります。

とにかく完結は絶対させます。

ごめんなさい。
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 08:17:47.44 ID:dRiRgxyvo
随分頑張ったな。乙
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 08:21:31.11 ID:RvutB3Dko
乙乙
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 08:26:12.99 ID:iwTDGfuDO
朝から乙
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/25(水) 09:00:33.77 ID:8Afx09UIO
残念な頭の作者さん
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 09:28:48.72 ID:OkJgGT5fo
あれだけ挑発していたのにへこたれすぎワロス
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 09:47:01.41 ID:icmPU+OWo

だけど量的に絶対VIP向きじゃなかったなコレ
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 10:02:59.91 ID:t/skAz4Jo
続き来てた!
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 11:03:09.32 ID:L73jKGEE0
なんていうかなんだ、昔はこういう二世逆行ものって結構あったなぁ…って思った
うん、それだけ
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 11:26:46.71 ID:puqr2ST4o
[たぬき]のことか
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 12:22:07.64 ID:8Bmw9DoIO
あかん。ほどかの三文字を見るだけで吹く。
たちけて。

もうほどほどにしたいんだよ。
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 12:23:34.45 ID:+nHsOsFIO
メアリースー物でトップレベルに面白い
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 15:30:28.17 ID:vmGBaoFZ0
杏さやになるのかならんのかそれだけ聞きたい
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 19:38:23.21 ID:LGtcH6eao
これはいい、ほどかがどうの言っているのは2次創作だと割り切ればいいんだ

それにしてもマジ面白い、最後まで頑張ってくれぜひとも
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 22:51:37.53 ID:J6MnAMu+o
期待
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 23:35:36.08 ID:8Afx09UIO
自演擁護が湧いてるな
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 23:53:21.04 ID:BInYfO3To
これは面白い
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/25(水) 23:53:24.65 ID:H42RkRZbo
もう許してやれよ
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/26(木) 14:34:36.14 ID:JsUzXAAdo
絶対に許さない、絶対ニダ
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/26(木) 15:50:20.55 ID:0imyNFuN0
なぜこの量でvipでやろうと思ったし・・・・・・
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/26(木) 17:34:33.91 ID:0+rMw03no
VIPでやればやるほどまどかSS自体に対するヘイトが上がるんだよなあ…
長編は特に
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 17:40:18.08 ID:l5JR2DIIO
言うほど面白くない癖に下手に慣れあったり挑発したり。
自業自得だね
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 17:43:36.66 ID:QREi0xmQ0
話の内容は置いといてvipで散々煽った理由はなんだったんだろう
虚勢?
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 17:53:36.60 ID:l5JR2DIIO
アンチに負けない俺かっこいいってやりたかったんじゃね
現実は「俺大人だからうまくあしらうぜ!」→ボッコボコ だったが
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/26(木) 18:05:39.61 ID:o/mPNsr/o
期待してるからアンチに負けずに頑張れ
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/26(木) 20:00:54.64 ID:qfAG4IaVo
謝れば許す
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 02:27:56.54 ID:03I3uI6lo
変な奴ら気にすんなよ
面白いし続き待ってる
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 04:06:33.23 ID:yMK6KvGIO
くっさ
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 21:16:10.94 ID:V3UogLxo0
なんか愛知っぽいのがいるな
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/27(金) 21:20:44.06 ID:u6Yk7gJ4o
愛知って?
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/07/27(金) 21:36:20.78 ID:Kn9cu1lp0
>>1は夏厨なんだな、きっと
お前ら荒らすなよがきの妄想だ、暖かく見守ってやれ
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/27(金) 21:51:19.87 ID:AA5jzAnWo
SSスレにガキの妄想とか言っちゃう人
長文で地の文ありのSSには小説()とか書籍化したら買う!とか言いそうな人だな
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 23:44:35.71 ID:B2PeQbSSo
>>403
論点ずれてるよ君
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/27(金) 23:48:50.65 ID:QTjPLKmYo
ていうかまた来なくなったな
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/27(金) 23:49:18.88 ID:PvI4DLZDo
(ズレてるも何も論点って何だろう…)
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/27(金) 23:58:10.87 ID:8evT4CaOo
そんなきとよりまどかとほむらの結婚前夜がみたいです
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/28(土) 00:32:22.74 ID:cTIWG24Uo
この作者の文章力の高さはSSというよりまさに本物の小説のように思える
作家になれるんじゃないか?
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 00:48:26.75 ID:nbtNlVJIO
昨今の読者に媚びたようなラノベ臭がしない良作
小説家になれるというか本物の小説家が執筆しているといっても過言ではない
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 01:00:40.91 ID:591r2EbFo
流石にネタだよな?
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/28(土) 02:40:04.93 ID:lFEOrDGYo
投下いつでもいいからね
待ってるよ!
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 10:06:52.07 ID:591r2EbFo
長屋ェ…
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 12:58:30.93 ID:T699MBNIO
ネタだろ
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/28(土) 13:46:20.76 ID:6cKTWZU2o
ネタっていうか敢えて褒めちぎっておいて他人に叩かせるアンチに見える
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 14:05:49.69 ID:KUspOH4DO
叩くのがいなきゃ繋ぎかえなどで自演叩きもやってそうだ
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 14:09:31.11 ID:nbtNlVJIO
ネタだよ
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/28(土) 14:33:48.90 ID:DgkQyd5Po
この分量でこのペースだと、仮に叩きが無くてもVIPで終わらせるのは無理だったろうな
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/28(土) 21:48:20.76 ID:hD9pflQwo
>>174,177
ちょ、ウォッカかよww
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 23:23:33.81 ID:skHCZL93o
今更…
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/29(日) 00:24:07.35 ID:9SoXrHt70
普通に面白いと思う
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/29(日) 01:39:52.35 ID:a9mOvFhno
今日中に完結させろや
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/07/30(月) 20:16:34.07 ID:ttbWzNUa0
楽しみなんだから
はよ
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 21:10:49.29 ID:+aRRLpHIO
俺もある意味楽しみだ
はよ投下しろや屑野郎
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/30(月) 21:46:23.81 ID:8N4qu5Iro
さっさとしろヘタレ野郎
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/30(月) 23:06:15.38 ID:Q04DwQUao
はよ
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 00:59:20.10 ID:tKSGwnGIO
はよはよ
つまんねぇSSだけど批評してやるからよ
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/31(火) 02:23:36.62 ID:rbEBCZR40
ttp://www.amaga.me/image/nz19203286467.jpg
イメージ映像?
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 12:05:59.05 ID:bEkR8tVJo
>>427
これだとほむらが男だな、胸的に
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 14:19:31.89 ID:vGq3LCcIO
>>427
かわいいwwwwほっこりした
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/31(火) 14:24:18.87 ID:zz5A++yNo
おいもうすぐ一週間放置だぞいつやるか報告くらいしろクズが
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/31(火) 19:58:44.42 ID:itacsBV+o
>>430
気持ちは分かるが、落ち着けな
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/31(火) 20:01:50.41 ID:Srj4thFmo
擁護しようと思ったけど、たしか罵声は好きなだけ浴びせていいってあっちで立てたとき最初に言ってたはず
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/31(火) 20:28:56.21 ID:blPYvupKo
よくVIPでやろうとか思ったなこんなの
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 20:48:38.53 ID:hTWu9DJv0
>>432
ここでは、そういうのは顰蹙
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/31(火) 21:15:59.75 ID:fgomASr5o
ほどか「ごめんなさい」

ほどかちゃんは控えめな笑みを浮かべ、どこの日常でも耳にすることの出来る謝罪の言葉を告げた。
それからほんのわずかな間を空けて、そんなほどかちゃんの頭がぼんっと破裂する。
比喩ではなく、文字通り、ぼんっと。

弾け飛んだ肉片がねばっこい血液と共にがさやかちゃんの顔にべちゃっと張り付いた。
視神経から伝わる映像に思考が追いつくよりもはやく、さらに自体は目まぐるしく動いていく。
マミさんの頭が、ぎゅっと潰れた。
巨大な圧力を受けたわけでもないのに、ぎゅっと。
ぎゅっとといえばこねこね。こねこね。シャイニングハーツ! パン!愛を込めて!

愛を込めて!そう!パンを!
パン!!!パーン!!!
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/31(火) 21:24:34.09 ID:ad7XikzVo
このスレの長屋率は異常
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 21:47:56.39 ID:UBD0s98Po
>>436
お前もな
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/31(火) 22:43:45.08 ID:4VLnjOCqo
まあ実際利用者数でも長屋が一番多いだろ
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 22:44:10.06 ID:XO5gcxRIO
マンション住まいと庭iPhone大杉
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/31(火) 22:45:21.53 ID:4VLnjOCqo
庭Androidも長屋
441 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:31:16.03 ID:H/1Hm58w0
かなり、間が空いてすいません。投下します。
442 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:31:43.79 ID:H/1Hm58w0
まどか「ここが仁美ちゃんの家が建てたタワーかー」

ほむら「すごいわね、なんでもスカイ○リーより高いらしいわよ」

ほどか「凄いです……」

まどか「実は今も伸びてるらしいよ。仁美ちゃんが言ってた」

ほどか「伸びてるってなんですか?」

ほむら「表現としてはおかしいわね」

まどか「わかんないけど、なんか女の子同士の仲がーっとか、百合の花がーっとか、そのパワーで伸びるらしいよ」

ほどか「難しいです」

ほむら「要領を得ないわね」




まどか「うん。私も説明されたけどわかんなかった]

ほどか「まぁ、難しいことはいいじゃないですか! それよりすごく眺めがいいですよ!」

まどか「あっ、走っちゃ危ないよ!」

ほむら「全く……。どうしたというのかしら、いつものあの子らしくなくはしゃいで」

まどか(ま、理由はわかるけどね。ふふ。ほどかちゃん嬉しそうだなー)

今日は三人で仁美ちゃんの家が建てたっていうタワーにお出かけ!
で、今はショッピングエリアにやってきたというわけです。





ほむらちゃんとお出かけできるのが嬉しいのかほどかちゃんは朝から浮かれっぱなし。
そんな彼女を見て私も来てよかったと幸せな気持ちになるのでした。

まどか「へへへー」

ほむら「まどかも嬉しそうね。そんなに楽しみだったの?」

まどか「そりゃねー」

そういうほむらちゃんもなにやら楽しそうで、私達みんなでニコニコ。
なんだかすっごくいい感じです。

まどか「ほら! ほむらちゃんもいこ! ほどかちゃんが呼んでるよ?」

ほむら「え、ええ。わかったから引っ張らないで」
443 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:32:20.72 ID:H/1Hm58w0
まどか「わー綺麗だねー」

ほどか「はい! 見滝原が一望できますね」

ほむら「正直ここまでとは思っていなかったわ」

景色に見惚れるほむらちゃんとほどかちゃん。
その距離は出会った頃に比べとても近く、徐々に二人が母娘になっていってるんだと思わせます。

まどか(むー)

でも、二人が仲がいいのはいいのですが、このままだと私が空気です。
私だって二人の事は大好きなのですからそれは嫌です。





まどか「えい!」

ほむほど「きゃ!」

ほむら「ちょ、ちょっとまどか?」

ほどか「お父さん。急に手を引っ張ったら危ないよ」

二人の間に入り右手でほむらちゃんを左手でほどかちゃんの手を掴み、強引に自分のほうに引き寄せる。

まどか「えへへー」

ほむら「もう……。まどかまではしゃいで、少し落ち着いたほうがいいわよ」

ほむらちゃんが私を叱ります。
でも、その顔は優しい笑顔で、きっと本気では怒ってないんだろうなって思います。




まどか「ごめんごめん。でもさ、こうやって三人で手を繋いでると、私達家族って感じでしょ?」

そんな言葉に少し驚くほむらちゃんとほどかちゃん。
そして二人でお互いの顔を見つめ合う。

すると二人はなにがおかしいのか、くすくす笑ってしまいました。

まどか「え、えー、二人とも笑うなんてひどいよー!」

ほむら「ご、ごめんなさい、でも、まどかが」クスクス

ねぇ? と言いた気にほどかちゃんの方を見るほむらちゃん。

ほどか「は、はい。今のはお父さんがちょっと……」クスクス




まどか「えー。いいこと言ったと思ったのになー」

そう言って拗ねるふりをする私。

ほむら「ごめんなさい。謝るから機嫌をなおして?」

ほどか「ね、謝るから拗ねないで?」

そんな私を慌てて宥める二人。
でも、私は怒ってなんかいません。

だって、まだ手は繋いだままだし、三人はくっついたまま。
こんな状況で怒る方が無理があります。

でも、こんなやり取りもなんだかとっても幸せで、かけがえのないものに思えたので私はしばらく拗ねたふりを続けるのでした。

まどか(てぃひひ)
444 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:32:56.70 ID:H/1Hm58w0
まどか「あーこのリボン可愛い」

ほむら「そうね」

あれからしばらくして、せっかくショッピングエリアにいるのだから何か買おうと品物を物色することにしました。

ほどか「お父さんに似合いそうだね」

ピンクパープルの鮮やかな色をしたリボンを見て私達はそう話します。

まどか「うーん。ちょっと派手すぎないかな?」

ほどか「そうでもないよ。このくらいがちょうどいいと思うよ」

まどか「うーん」





ほむら「まどかにも似合いそうだけど、あなたにも合いそうだと思うわよ」

ほどか「え?」

急にそんなことを言うほむらちゃんに驚くほどかちゃん。
まさか、自分にふられるとは思っていなかったのでしょう。

ほどか「そ、そうでしょうか。少し派手すぎる気も……」

私と似たようなことをいうほどかちゃん。でも、その顔は少し赤く、きっと照れているんだなって思います。

ほむら「あら、あなたが言ったのよ? それくらいがちょうどいいって」

ほどか「あぅ……」




まどか(おっと、これはチャンスかな)

名案が浮かんだ私はある提案をすることに。

まどか「そうだ! せっかくだからさ、みんなでプレゼントしあいっこしよ?」

ほむほど「え?」

まどか「みんなで遊んだ記念に! ってことでさ、どうかな?」

そう言って二人を見る。
二人は少し考える素振りを見せ、こう言いました。

445 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:33:31.03 ID:H/1Hm58w0
ほむら「そうね。いいわよ」

ほどか「せっかくですしね」

まどか(よしよし)

まどか「じゃあ、今から30分間お店を見てまわってプレゼントを決めるってことで!」

ほむら「えぇ、わかったわ」

ほどか「では、また後で」

そう言ってほどかちゃんは近くのお店に入っていく。




ほむら「じゃあ、私も……」

そういって移動しようとするほむらちゃんの手を掴む。
ほむらちゃんに手伝ってもらわないと計画が成り立たないのです。

まどか「まって!」

ほむら「どうしたの? なにか言い忘れたことでもあったのかしら」

まどか「ううん。ほむらちゃんはこのリボンを買ってあげて」

そういってさっきまで見ていたリボンを指差す。

ほむら「え?」

まどか「ほどかちゃん、このリボン凄く気に入ってたみたいだからさ」




ほむら「別にかまわないけど……。まどかがプレゼントした方があの子は喜ぶんじゃないのかしら」

まぁ、喜んではくれるだろうね。でも、

まどか「実は私はほどかちゃんに渡すものは決めてるんだ。だから、こっちはほむらちゃんがお願い」

これはほむらちゃんが渡さなきゃ意味がないよね。

まどか(似合うって言われた時のほどかちゃんすっごく嬉しそうだったし、ね)

ほむら「まどかがそこまでいうなら……」

わかったわ。
そう言ってリボンを手に取り会計を済ませるほむらちゃんでした。
446 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:34:11.23 ID:H/1Hm58w0
まどか「ほむらちゃん」

プレゼントを選ぶために別行動をしてから三十分が経過。
そして、また集まった私達。まずは私から二人に選んだ物を渡して、次にほどかちゃんが私達に。
最後にほむらちゃんの番となったわけだけど……。

まどか「あれ」

渡さないとっと小声でいい、ほむらちゃんに渡すように促す。

ほむら「え、ええ……」

ほむらちゃんが緊張気味にほどかちゃんに対して、リボンの入っているであろう袋を渡す。

ほどか「あ、私にですか……?」

おずおずとほむらちゃんを見、そう尋ねるほどかちゃん。




ほむら「あなた以外にいないでしょう」

ほどか「あ、ありがとうございます! 開けてもいいですか?」

ほむら「どうぞ」

嬉しそうにそう言うとほどかちゃんは丁寧に袋を開ける。
うんうん。なんかいいね。こういうのって。

ほどか「これって……」

中にあるリボンを大切そうに手に取りそれを見つめる彼女。

ほむら「それが気にっていたみたいだから」

まどか「よかったねー。欲しかったんでしょ?」

にやにやしながらほどかちゃんにそう言うと、なにか気づいたのか私の顔をじっと見てきます。





ほどか「んー」ジー

まどか「どうしたの?」

なにか用でもあるの? っと見つめ返す。
少し白々しいか。

ほどか「……とう……」

まどか「え? なになに? よく聞こえなかったよ」

ほどか「なんでもありません!」

まどか「もー。なにを怒ってるの?」

ま、本当はばっちり、ありがとう。って聞こえてたんだけどね。
照れちゃってかわいいなー。

まどか(てぃひひ)
447 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:34:40.43 ID:H/1Hm58w0
まどか「あ、そうだほむらちゃん」

いい考えが浮かんだ私はほむらちゃんを手招きし、耳元でこう提案する。

まどか「せっかくだからさ、ほどかちゃんにあのリボンで髪を結ってあげてよ」

ほむら「私が?」

まどか「ほむらちゃんがプレゼントしたんだから当然でしょ?
    ほら早く早く」

ほむら「そうね、わかったわ。ほどか。少しいらっしゃい」

私に急かされ、少し緊張気味にほどかちゃんを呼ぶ。
でもその呼び方はちょっと怖いよ。




ほどか「な、なんでしょうか」

ほらー、そんなふうに呼ぶからほどかちゃん怖がってる。
まぁ、ビクビクしながらもほむらちゃんの言うことには素直に従うんだけどね。

ほむら「えっと、せっかくだからつけてみたらどうかしら? 
    手伝うわよ」

ほどか「ほ、本当ですか!?」

ほむら「え、えぇ」

おぉ、かなり嬉しそうだね。
まさかここまで喜ばれるとは……。

まどか(ちょっとほむらちゃんが羨ましいかな)

私ならこうはいかないもん。





ほどか「えへへ」

ほむら「……」

今、目の前で母と娘の交流を見ているわけですけど……。

まどか(これはいい目の保養になるね)

携帯のムービーで撮っとこう。

ほむら「あなたの髪、綺麗ね。手入れが大変でしょう?」

ほどか「ありがとうございます。でも、お手入れはそんなにしてないんですよ?
    多分、一般的な女の子の手入れと変わりないはずです」

ほむら「そう。そういえば昨日もシャンプーとリンスだけだったわね」

んー。確かにほどかちゃんってそこまで入念に手入れしてないよね。

トリートメントはしてるのって聞いたらめんどうなのでしてませんって答えてたし。
それで、あの髪って……。ほむらちゃんも似たような感じだし、
女の敵だよね。
448 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:35:17.23 ID:H/1Hm58w0
まどか(しかし、この光景は癒されるね)

まさかここまでの威力があるとは甘く見てたよ。
この母娘恐るべし……。

ほむら「できたわ」

ほどか「ど、どうですか?」

まどか「うん! すっごく可愛いよ!」

ほむら「似合ってるわよ」

ほどか「ほ、ほんとうですか? 私、ちょっとあそこの鏡で見てきます!」

てててー。っと小走りに鏡の方に行く彼女。
その顔はいまだかつてない程に笑顔だ。




まどか(いやー。よかったよかった)

思惑通りだね。

ほむら「あんなに浮かれて……。転んで怪我でもしたらどうするのかしら」

そんなふうに言いつつも口元がにやけてるよほむらちゃん。
まっ、あんなに喜ばれたら嬉しいよね。

まどか「てぃひひ」

ほむら「どうしたの?」

まどか「えー? なんだか幸せだなーって」

幸せ。口についてでた言葉がこれほどまでにしっくりくることがあったでしょうか。
とても曖昧で不確かな言葉だけど、私は今とても幸せなのだと胸を張って言えます。





まどか(ずっとこんな日が続けばいいのに)

ふと、昨日の約束を思い出す。

ほどかちゃんは私にこういった。

――私達はこれからずっと一緒です。

ずっと一緒。あの子は確かにそう言ってくれたんだ。

まどか(……ばれてないって思ってるんだろうね)

あの子がなにかを隠していることは気づいている。

その内容がどんなものかはわからないけど、きっとそれはあの子の存在に関わることなのだろう。
でも、それを私に言えば必ず止められるとわかってるからあの子は嘘をついているんだ。

きっとあの子は私達を傷つけない為に嘘をついたんだろう。
それが結局、傷つけることに繋がることもわかってて。
449 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:35:44.70 ID:H/1Hm58w0
ほむら「まどか?」

私が険しい顔をしているのを不審に思ったのだろう。
ほむらちゃんが心配そうに話しかけてくれる。

まどか「ねぇ、ほむらちゃん。
    ほむらちゃんはほどかちゃんがやろうとしていることを知ってるよね?」

ほむら「!」

当たり。
まぁ、あれだけほどかちゃんに対する態度が変わればなにかあるとは思うよね。

まどか「教えて。私だけ知らないのはおかしいよ」

だって、私はあの子のパパなんだから。





ほむら「で、でも……」

言い難いことなんだね。
たぶん、私が想像しているよりも残酷なことなんだろうな。

なら、なおさら聞かないと。

まどか「ほむらちゃんが一人で苦しむ必要はないよ。
    私だってあの子の親なんだから、なら私だって一緒に苦しみたい」

ほむら「!」

まどか「まぁでも、さすがにここではマズイよね。ほどかちゃんもいるし」

あの子が必死に隠していることだ。
ばれたとわかれば姿を消すかもしれない。

まどか「今日の夜。
    ほどかちゃんにばれないように家から抜け出して、ほむらちゃんの家にいくからその時にお願い」

ほむらちゃんの目を見てほぼ一方的にそう告げる。
無理だと言われても無理やりにでも聞き出す。





ほむら「……わかったわ」

私の覚悟が伝わったのか、ほむらちゃんは少し息を吐き諦めたように首を二、三振り了承する。

まどか「ごめんね。無理言っちゃって」

ほむら「悪いとは思ってないくせに」

まどか「てぃひひ……」

ばれてるか。さすがほむらちゃん。私の事はよくわかってるね。

まどか「だって、私だけなにも知らないままとか酷いよね?」

たぶん、さやかちゃん達もこのことは知ってるんだろう。
昨日の学校での態度は少し変だったから。

まどか(ほどかちゃんの顔を見ずらそうにしてたもん)

全く、みんなわかりやすすぎるよ。
下手な嘘なんて、つかないほうがいいのに……。
450 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:36:32.86 ID:H/1Hm58w0
まどか「お願い……。覚悟は出来てるから……」

ほむら「……えぇ」

少し嘘。本当はちょっと怖い。

まどか(でも、本当に怖いのはきっと……)

鏡の前でほむらちゃんにセットしてもらった髪を嬉しそうに眺め、色々とポーズをとるほどかちゃんを見る。
その姿は普通の女の子のようで、とてもなにか悲壮な決意をした人には見えなかった。

まどか(本当に、あの子は……)

幸せそうなあの子を見ていると胸に温かいものが流れるようだ。
でも、今はそれが悲しい。





ほむら「……」

ちらりとほむらちゃんを見る。
ほむらちゃんもほどかちゃんの方をじっと見つめている。

その顔は微笑んでいるがとても悲しそうであの子を憐れんでいるようにも見える。

まどか(ほむらちゃんも同じ気持ちか……)

色々あったけど、ほむらちゃんもようやくあの子を娘として認めて、不器用ながらも母として接している。

まどか(おかしい話だよね、私達まだ中学生なのに)

しかも私に至っては女の子だ。





まどか(でも、今は……)

今は、あの子の親でないと言われた方が違和感がある。
いや、違和感どころではない。

まどか(絶対に私は、私達はあの子のパパとママだから)

隣にいるほむらちゃんの手を握る。
突然のことに驚くほむらちゃんだっだが、すぐにそれを受け入れ私の手を握り返してくれる。

そして、二人で笑いあい、頷く。
きっと、今の私達の気持ちは同じで繋がっている。

だから、私にはもう怖いものなどない。

だから、私はもう悩まない。

だから、私はもう挫けない。

だから、私は絶対にあの子を守ってみせる――。






――そして、ついに運命の日が訪れた――
451 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:37:21.14 ID:H/1Hm58w0
―三人称―

―― ??? ――

???「みなさんお揃いでこんなところに来て――。一体、どうしたんですか?」

さやか「どうしたもこうしたもないよ」

マミ「そんなこと聞かれるまでもないでしょ?」

杏子「バカな仲間が暴走して、わけのわからないことを仕出かそうとしてる。だからそれを止めに来た。それだけだ」

???「そうですか。そんなお仲間がいるんですね。心中お察しします」


広い、とても暗く、なにやら異音が聞こえる空間に五つの存在が対峙する。
その空間はとても暗く、しかし何も見えないというわけではなく、ただ、暗い。
視覚的な意味での暗さではなく、精神的な意味での暗さを心に残す異様な空間だった。




その空間には、天井などは存在せず、材質はわからぬが赤茶に焦げた地面がその球形の形を現し、不自然に宙に浮かぶだけで他にはなにもない。
ただ、存在するとすれば、その部屋の主であろうか、一つの異形だけであった。

いや、よく見ればその異形の背後に大きな白い物が見える。

あまりにも巨大すぎてそれを見る者は壁としか認知できないであろう。
しかし、はるか上空からそれを見れば、ある物質であることがわかる。

それは大きな、あまりにも巨大な繭であった。

ドクンドクンと脈動し、今にも孵化しそうなそれはただ、自らの誕生を待っているように見える。
そして、異形はその繭を守るように、母が子を庇うようにその前に立ちふさがる。





その異形は、人の姿に似てはいるが、真っ黒の翼を背に二枚持ち、頭部に黒の兜。体には薄いアーマーを着込み、
下部には黒のスカートを穿き、衛兵が装備するような長いブーツを履いている。
その姿はまるで神話に存在する戦乙女を彷彿とさせ、崇高な存在であるのではないかと見る者を魅了する程美しかった。

その異形の瞳は左目は紫に輝き、右目は桃色に輝いている。
そして、周囲には数多くの三角錐に形どる飛行物が浮いておりその異形を守るよう、もしくはその意志に従うように飛行している。

一つ普通の人としての形があるとするならば、
髪を結わうのに使っているものが、ピンクパープルに彩られた人の手で作られたであろうリボンを使用していることか。

ほむら「ほどか、愚かなことは止めなさい」

一人の魔法少女が一歩、異形の前に歩を進める。
452 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:38:48.31 ID:H/1Hm58w0
ほどかと呼ばれたその異形はその少女を慈しむように見る。

ほどか「愚かなこととはなんでしょう」

そして微笑みながら、問う。

ほむら「あなたの馬鹿な自己犠牲のことよ」

じっとほどかの瞳を見つめ、ほむらはそう言い放つ。

ほむら「あなたが犠牲になることはないでしょう」

ほどか「ですが、誰かがやらなくてはいけないことです。このまま放っておけば無駄に悲しむ人が出てくるだけ」

ほむらの言葉にそう反論する。

その言葉を聞いてまた一人魔法少女が前に進みである。

さやか「じゃああんたは、あんたがいなくなることで出る悲しむ人はどうなってもいいっていうの?」

ほどか「それについては申し訳ないと思います。ですが、なにか重大な事を成し遂げる時、犠牲は必ず出るものです」

マミ「その犠牲があなたの守りたいものなのに?」

杏子「それって、矛盾してないか? お前はお前が守りたいものの為にこの時代にきたんだろう?」

新たに二人の魔法少女が前に進み、そう問いかける。

ほどか「論点のすり替えですね。私は私の守りたいものの為に今、こうしているんですよ?
    それに、犠牲とは私一人のことだけを言います。他の誰も犠牲にはなりませんよ」

四人の魔法少女を順番に見やりそう答える。


さやか「それじゃあ私の質問には答えてないね。
    あんたのその自己犠牲のせいで悲しんで辛い思いをする人の気持ちはどうするっていうのさ」

ほどか「それについては、さっきも言ったように謝るしかありません。時が解決してくれるとしか言えませんね」

さやか「そんなことで納得できると!?」

ほどか「納得してもらうしかありません。全員が納得して、幸せな道を歩める方法なんて馬鹿な私には思いつきませんでしたから」

杏子「じゃあ、なんだよ。お前はこれを自分の独りよがりな考えでやらかしたってことになるな。誰も頼んでねーのに」

杏子が挑発気味にケラケラ笑いながらそう告げる。

杏子「つまりこれはお前のわがままってことだ」


ほどか「そうですね。そう捉えてくれても構いません。誰に頼まれたわけではありませんので」

マミ「そう。じゃあ、私達があなたを止めるのも私達のわがままってことでいいかしら」

マミが多量のマスケット銃を召喚しその内の一つをほどかに構える。

ほどか「そうですね。それはマミさん達の意志です。なら私にそれをどうこう言う権利はありませんね」

さやか「そっか。じゃあ、あんたへの説教はあんたをボッコボコにしてからたっぷりとしてやるよ」

さやかも自身の手に持つ剣を構え、ほどかに向き直る。

ほどか「お説教も痛いのも嫌なので反抗しますよ?」

杏子「構わないさ、どうせそれは無駄に終わる」

槍を構えいつでも戦闘を始められように臨戦態勢を取る。
453 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:39:50.91 ID:H/1Hm58w0
ほどか「まだ始まってもいないのに凄い自身ですね。言っときますけど私、強いですよ?」

ほむら「知ってるわ。あなたはとっても強い子。なぜならこんなことを一人で成し遂げようとしているんだもの」

ほむらがまた一歩二歩とほどかに近寄る。

ほむら「でもね、それは同時に弱さよ。誰に頼ることもなく。誰に相談するでもなく。一人で成し遂げようとすることは弱さ」

きっとほどかを睨み付け、彼女の行いが弱さからくるものだと断言する。

ほどか「一人でなんでも出来るならその人は強いと思いますが」

ほどかの視線はほむらにだけ注がれている。

その表情からはこの人にだけはわかってほしかった。
そう感じられた。


ほむら「いいえ、弱さよ。なぜなら人は一人では生きられない」

銃を盾から取り出すほむら。

ほむら「人の持つ本当の強さっていうのわね。互いに支え合うことで弱さを補うところにあるの」

そして銃を構える。

ほむら「喜びも悲しみも分け合って、そして想いを強くする。
    あなたのように一人で全てを背負い込んで一人で成し遂げようとする。それは――」

銃口をほどかに向け言い放つ。




弱さよ――!!






止める為に。戦う。
大切な人だから、失いたくない人だから。

だから、戦う。

たとえ、そのせいで傷つけようとも傷つこうとも。

矛盾しているようで正しい行いを、ただ決意をもって先へ進む為に歩んでいく。

あの子と共に歩む為に。約束を果たす為に。



なぜなら――。

あなたは私の――。

大切な――。



ほむら「止めてみせるわ! あなたを必ず!!」

ほどか「止められるなら止めてみて下さい! あなた達が、あなたが何と言おうと私は止まりません!!」

そう言うと、ほどかは目の前に手をかざす。

すると、今までなにもないはずだった場所に魔法陣が浮かび、その中心から生えるように、大きな剣が具現される。
その、彼女には大き過ぎる大剣を両手で持ち構える。


自分の邪魔をするならば、容赦はしないという意思を込めて。


ほどか「この歩みを止めるわけにはいかないんです!!!」


――今、この場所で彼女達の運命を決める、最後の戦いが始まろうとしていた。
454 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:40:28.79 ID:H/1Hm58w0
―― 少し前 ――


――直ちに避難指示の発令を!!


雷雲が轟音を轟かせる中、見滝原の市役所では職員が慌ただしく動いていた。

鹿目まどかが鹿目ほどかと出会い一ヶ月が経ったその日。
彼女の言葉通りに今日この日、大きな災いがこの街を襲おうとしていた。


――本日午前七時。突発的異常気象に伴い、避難指示が発令されました。付近にお住いの皆様は速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします。





ほむら「……くる……!」

マミ「……」

さやか「ついにこの日が……」

杏子「あぁ」

ほどか(これで全てが……)


5人の魔法少女はその災厄を迎え撃つ為にここにいた。

それぞれの想いを秘めながら――。
455 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:41:46.67 ID:H/1Hm58w0
―― 避難場所 ――

避難場所に選ばれた公民館では、避難指示に従った人々がひしめいていた。

不安そうな顔をする者。珍しい事態に浮かれる者。ただ、ボーっと警報が解かれる事を待つもの。
色々な人が様々な考えの中、思い思いに過ごす。

この人々に共通する考えといえば、死ぬことはないだろう。
それだけか。



タツヤ「きょーはおとまりー? きゃんぷなのー?」

知久「あぁー。そうだよ。今日はみんなで一緒にキャンプだー!」

知久が息子であるタツヤの問いにそう答え、その幼い体を抱き上げる。
その行為に無邪気に喜ぶタツヤ。そしてその笑顔を見て優しく微笑む母である詢子と知久。

まどか「……」

ただ、娘であるまどかだけが浮かない表情をしていた。

まどか(みんな……)

何かを祈るように、ただただ、想い続ける。
みんなの無事を。そして、未来を。
456 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:42:26.71 ID:H/1Hm58w0
ほむら「……」

荒れ狂う気象の中、5人の少女は歩いていく。
その途上、5人は変身を済ませる。

マミ「あれがワルプルギスの夜……」

マミは雷雲の中にある影を見つけ、そう呟く。

さやか「でかいね」

その影は巨大で、見る者に恐怖を与えるかのように空中に静止していた。

杏子「ま、アタシ達ならラクショーだろ」

普段通りの調子で杏子そう言い放つ。
だが、その表情は至って真面目だ。




ほどか「これで、終わりです。みなさん油断しないでください」

ほどかが気を引き締めるように4人に伝える。
その言葉に皆は頷き、あるいは笑顔で了承の意を伝える。

ほむら「今度こそ。決着をつけてやる……!」

眼前に聳える魔女に向かいそう吐き捨てるように呟き、ほむらは盾に収納してあったランチャーを取り出す。

杏子「じゃあ、予定通り私とさやかは前線に斬りこんでくる。援護は任せたからな」

マミ「任せて」

杏子とさやかが自身の武器を携える。
そして、マミは大量のマスケット銃を取り出し、隣でランチャーを構えるほむらと同じようにワルプルギスに向けて銃口を構える。




ほどか「使い魔は任せて下さい。あと、これを」

ほどかがワルプルギスのもとへ向かおうとする二人に小型の箱のようなものを手渡す。

さやか「なにこれ?」

ほどか「ステルスです。これを所持している限りお二人の位置がワルプルギスと使い魔にバレることはありません」

杏子「は、そいつは頼りになるね」

そう言ってステルス機能のついた装置を受け取る二人。
457 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:43:07.28 ID:H/1Hm58w0
ほどか「ですが、本当に消えたわけではありませんので攻撃は受けます。その点にはよく注意をして下さいね」

その言葉に了解。とだけ返し、ワルプルギスのもとへ向かう。

マミ「ねぇ、二人が見えなくなるのなら私達も攻撃しづらくなるんじゃ……」

マミが銃口の先から目を離し疑問をぶつける。

ほどか「大丈夫です。私達にはお二人の姿が見えるようにちゃんと設定してますから」

マミ「そう」

なら安心ね。そう言って、再び銃口の先へと目を向ける。


そして――。

多量の発射音が辺りに響く。





ほむらとマミの攻撃が始まり、その砲撃はワルプルギスに直撃する。
そして、ワルプルギスは爆煙に飲まれる。

マミ「一応直撃だけど……」

ほむら「まだ終わりじゃないわ!」

砲撃による煙が晴れる。しかし、そこには先ほどと変わらない姿のワルプルギスが存在していた。

マミ「あれだけの攻撃を喰らって無傷!?」

ワルプルギスの夜「アーハハハハハハハ」

不気味な笑いを発しながら空中を舞うように動くワルプルギス。
その姿はまるで、無力な少女達の無謀を憐れんでいるかのようにも感じた。

マミ「く、バカにして!」

マミが改めてマスケット銃を召喚する。
そして、改めて発砲しようとした時、ワルプルギスの動きが止まった。
458 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:43:39.14 ID:H/1Hm58w0
杏子「へらへら笑ってんじゃねーよ! ちょこまか動きやがって! じっとしてろ!」

杏子がビルの上に立ち、多量の槍を召喚。そしてその伸縮自在の槍を鎖のようにしワルプルギスの夜を縛り付ける。

杏子「さやか!」

さやか「任せて!」

縛り付けられ身動きできないワルプルギスにさやかがその眼前にまで飛び上がり、空を斬る。
そして、それによって生み出された無数の鎌鼬を浴びせかける。

さやか「でやあああああああああああ!!!!」

だが、ワルプルギスはそんな攻撃にも動じずに相変わらず笑い続ける。

ワルプルギスの夜「キャーハハハハハハハ」





さやか「ちっ、傍でゲラゲラと! うるさいっての!!」

もう一度斬撃を浴びせようと剣を構えるさやか、しかしそれは杏子の静止により中断された。

杏子「! さやか一度退け! 様子が変だ!」

杏子の言葉にワルプルギスの夜を縛りつけていた鎖に着地するさやか。
その姿を確認した杏子はすぐさま縛りを解き、さやかをワルプルギスのもとから引きはがそうと鎖を自身の方へ引き付ける。

さやかが杏子のもとへ辿り着いた瞬間。
それまで笑うことだけにしか使われていなかったワルプルギスの口から炎が吐き出された。

さやか「嘘でしょ……。あいつ火まで噴けるの」

杏子「ふざけた野郎だな。全く……」

これでは至近距離からの攻撃は危険すぎる。
相手に姿が見られていないことを考慮すれば少しづつならば攻撃を仕掛けられるだろうがそれでは効果は薄いだろう。




杏子(こりゃどうもまいったね……)

堅過ぎる。こいつを倒すためには超強力な一撃をお見舞いするしかないのだろう……。

杏子(と、なると頼りになるのは……)

鹿目ほどか。

現最強の魔法少女である彼女に任せるしかないのだろう。

杏子(あいつは頑なに力を隠してきた)

だが、この状況下ではそれも、もう無理だろう。

杏子(まぁ、キュゥべぇが言っていた通りなら、それも納得か)
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 23:44:20.39 ID:xh8HaVfIO
こここ高速投下wwwwww
叩かれたくないから逃げきるんですねwwwwwwww
460 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:44:37.73 ID:H/1Hm58w0
―― 数日前 ほむホーム ――

ほむら「これが、あの子がこの時代にきた本当の理由。そしてあの子がやろうとしていることよ」

まどか「……」

ほむらちゃんとほどかちゃんとのお出かけも終えて、約束通りほむらちゃんの家に真実を教えてもらいにきた私。
その話はとても残酷なもので私はその衝撃にしばらく沈黙していた。

マミ「あの子の覚悟は本物よ。これは誰にも止められない」

私の頼みで集まってもらったマミさんが口を開く。

覚悟は本物。
そうだろうか。ほどかちゃんは本心からそう願っているのだろうか。





さやか「出来るならやめてほしいけどさ。でも、それじゃあほどかの頑張りを無駄にするわけだし……」

さやかちゃんが自分を納得させる為だろうか。

仕方がないよね。

そう呟く。

仕方がない? ほどかちゃんの犠牲は仕方がないこと……?

杏子「アタシもあいつの願いはバカだと思う。だけど、アイツが考えて出した結論なら文句は言えないだろ」

なら、好きにさせるしかない。

バカな願い。本当にそうだ。

自分の身を犠牲にして、みんなを救う。
そう言えば聞こえはいいだろう。だけど、そんなことは自分の思い通りにしようと企む独裁者と変わらない。





自分が望まない、嫌な未来を変える為に自分を犠牲にして世界を好きなように変えようなんて――。

まどか「ねぇ、ほむらちゃんはそれでいいと思う?」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃんはそれで納得いく? あの子がやろうとしていることは正しいことだって、自信を持って言える?」

ほむら「それ、は……」

そうは思ってないんだね。なら――。

まどか「止めないとダメだよね。自分の娘が間違った道に進もうとしているのなら」

親である私達が――。

そう伝えるとほむらちゃんは俯くだけでなにも話さなくなった。
461 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:45:09.21 ID:H/1Hm58w0
まどか「……。ほむらちゃんは何を迷ってるの? 何を悩んでるの?」

俯くほむらちゃんに問いを重ねる。

ほむら「私には、あの子を止める資格なんて、ないから……」

資格。ほむらちゃんはそう言った。

まどか「資格って?」

ほむら「私が未来から来たことは知ってるわよね?」

それならばほどかちゃんから聞いたことだ。
当然知っている。





まどか「確か、私を魔法少女にしない為だっけ」

未来で魔法少女になって死んでしまった私を助けるためにほむらちゃんはキュゥべえと契約した。

ほむら「えぇ、願いの内容は少し違うけど。その通りよ。
    じゃあ、このことは知っているかしら?」

まどか「このことって……?」

ほむら「私はこの1ヶ月をループしている。もう何度も何度も」

さやマミ杏「!!」

まどか「……」





ほむら「知らなかったようね」

まどか「成程ね、だから色んなことを知ってたんだ」

知りすぎている。そのことはずっと前から思っていたことだ。
ほむらちゃんはあらゆる場面を想定して動いている気がしていた。

まどか「だから、ほどかちゃんに対してあんなに警戒してたんだね」

ほむら「そうよ、今までのループではいなかった存在だもの。なにか異常なことが起こってるんじゃないかと思うに決まってるわ」

ほむらちゃんのほどかちゃんに対する態度はおかし過ぎると思っていた。
だけど、それなら納得がいく。
462 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:45:37.67 ID:H/1Hm58w0
まどか「でも、わかったでしょ? ほどかちゃんには敵意なんかないって」

ほむら「そうね。あの子は本当に優しい子。あの時の私が愚かだったのよ」

まどか「じゃあどうして? ループのこととほむらちゃんにほどかちゃんを止める資格がないのは関係ないよね?」

ほむら「私だって未来を変えようとしてるのよ? なのに関係ないなんて言えるかしら?」

……。確かにそうだ。
そうだけど、ほむらちゃんは……。

まどか「だけど、ほむらちゃんは自分を犠牲にしようとはしてないよね?」

無事にワルプルギスを倒せば普通に生活するつもりじゃ。





ほむら「いいえ。私は自分の目的を果たせば死のうと考えていたわ」

さやマミ杏「!!」

まどか「どうして……?」

ほむら「私は魔法少女としては才能が無さすぎるの。時を止める能力のおかげで戦えてはいるけど……。
    だけど、自分専用の魔法武器すら作れず、戦い方も現代兵器に頼ったもの」

まどか「……」

ほむら「でも、時を止める能力はワルプルギスの夜を倒しその日を越えれば失ってしまう。
    私は魔法少女としては戦えなくなるのよ」

そう言ってほむらちゃんは自嘲気味に笑う。
何を言っているのだろうか。時を止める能力がなくなるから戦えない?
そんなことあるわけないのに……。





まどか「言ってる意味がわからないよ。能力がなくなるのと戦えなくなるのになんの関係が……」

ほむら「わからない? 魔法少女にはグリーフシードが必要なのよ?
    そしてそれを取るには力がいる。力のない私には魔法少女として生きていくことは不可能なの」

成程ね……。こういうところもほむらちゃんに似たんだな。

勝手に一人で考えて勝手に一人で答えを出して。
結果自分一人が犠牲になれば済むとか考えちゃう。

まどか「ほむらちゃんのバカ」

ほむら「え?」

まどか「なに言ってるの? 力が無いから死ぬ? 才能が無いから死ぬ?」

ほむら「そうよ。それのなにがおかしいの……」

私の言葉にむっときたのか、ほむらちゃんは少し拗ね気味に反論する。
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/31(火) 23:45:56.46 ID:xh8HaVfIO
ほどほどにしとけよ
464 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:46:05.42 ID:H/1Hm58w0
まどか「おかしいよ。そんなの絶対おかしい。だってさ、それってさ」


――私達のことを全然信頼してないってことだよね?


そう言ってさやかちゃん達の方を見る。

さやかちゃん達の顔は呆れや怒りが浮かんでいて、私と同じことを思っているんだなって感じさせた。




ほむら「……」

まどか「ねぇ、ほむらちゃん。ほむらちゃんには私達がいるんだよ?」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃんには一緒に戦ってくれる仲間がいるんだよ?」

いつも一人で戦ってきたほむらちゃんは、いつしか後ろを見ることを忘れてしまった。
前を向いてただ、歩を進める。止まることもせずにただ、未来の為に。

振り返れば仲間がいることも忘れ。優しく見守ってくれていることにも気づかずに。

ただ最初の約束を信じ、祈り……。

でもそれは依存だ。
その約束に固執し、結局ほむらちゃんは進むことはできなかった。





彼女は歩んでいるつもりでも、結局前へ進むことはできなかった。
迷子の子供のように、ただ同じところを彷徨って……。

いや、子供ならばまだマシだ。
泣いて自分が困っていることを周囲に伝えることが出来る。

だけど、ほむらちゃんは泣くことも禁じて誰かに頼ることもせずに進んだから、自分が袋小路に閉じ込められていることにも気づかずにいた。

まどか「ほむらちゃんはもっと私達を頼っていいんだよ?
    ううん。何度も私達を助けようとしたほむらちゃんは私達に頼らなきゃダメ」

ほむら「でも、力がない私がいたら、足手まといに……」
465 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:46:31.97 ID:H/1Hm58w0
杏子「ばーか、なに言ってんだよ」

ほむらちゃんの言葉に杏子ちゃんが呆れ顔で文句をいう。

杏子「お前一人の足手まといがいたところで、このアタシが魔女に負けると思うか?」

マミ「そうね。私も同意見だわ」

マミさんが杏子ちゃんの言葉に続く。

マミ「暁美さん。あなたは考え過ぎよ? そして私達を甘く見過ぎ。
   あまり侮らないでもらいたいわね」




さやか「そうだよ! ほむらのことくらいこのさやかちゃんが守ってやるって!」

さやかちゃんが任せなって。といいながら自分の胸を叩く。

杏子「なに言ってんだよ、現状足手まといの奴が」

さやか「ぐ! 杏子あんたねー! ここは空気を読むとこでしょうが!」

マミ「あら、まさか美樹さんから空気を読むなんて言葉が聞けるなんて……」

さやか「マミさんまで!」




ほむら「……」

みんなの言葉を呆然としながら聞くほむらちゃん。
これで、わかってもらえただろうか。

まどか「どう? ほむらちゃん」

ほむら「え……?」

まどか「みんなほむらちゃんのことが大好きなんだよ。ほむらちゃんがいなくなるなんて嫌だって思ってる」

ほむら「……」

まどか「だから、いなくなるなんて言わないで。一人で死ぬなんて絶対言わないで。もし、ほむらちゃんがいなくなったら……」




――私は地の果てまででも追いかけてそれを止めるよ?
466 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:46:59.46 ID:H/1Hm58w0
ほむら「あ……」

そう告げるとほむらちゃんはボロボロと涙を零す。

ほむら「わた、し……。もう誰にも頼ったら駄目だって……。弱いところを見せたら駄目だって……」

今まで抑えてきた感情が溢れだしたのか、涙を拭おうともせずに話し続ける。

まどか「うんうん。辛かったね、苦しかったね。ごめんね? 私のせいで」

ほむら「まどかのせいじゃ、ない……。私が弱かったから……」

泣き続けるほむらちゃんを抱きしめ、よしよしと頭を撫でる。
きっと苦しかったんだろうな。誰にも悩みを言えずに一人で戦うなんて辛かったんだろうな。

まどか(一人ぼっちなんて、寂しいに決まってるもん)







さやか「……」

杏子「どうしたんだ?」

さやか「いや、ほどかはやっぱりまどかとほむらの子供なんだなって思ってさ」

マミ「……。そうね、そっくりだわ。優しいところも一人で抱え込む所も」

杏子「そうだな……」

さやか「ねぇ、マミさん。杏子」

杏子「なんだ?」

マミ「なにかしら」

さやか「私、ほどかが自分で決めたことなら仕方がないって、そう思ってた。
    だけどさ、まどかの今の話を聞いてそれは間違いだって思った」

マミ「……」




さやか「あの子も迷子なんだ。一人で自分の進む道を決めて、それが正しくないことにも気づかずに進んで……。
    だからさ、私達が気づかせないと。そっちの道は間違いだって」

杏子「そうだな」

マミ「そうね」

さやか「私は止めるよ。あの子の好きにはさせない。だってあの子は私達の大切な」


さやマミ杏「仲間だから」

さやか「へへへ」

マミ「ふふふ」

杏子「ははっ」

――――――――――――
――――――――――
――――――――
467 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:47:32.24 ID:H/1Hm58w0
杏子「さて、あいつはどう動くか……」

眼前で飛び回るワルプルギスを睨み、いつの間にやらどこかに消えたほどかの姿を探す。

さやか「キュゥべぇの話通りなら、まずはワルプルギスを倒すんだよね」

アタシ達がほどかを止める。
その決意した後、キュゥべぇをマミに呼んでもらい聞いた話によると、
ほどかはワルプルギスに集約した因果を自分に取り込む為に必ず自身の手でワルプルギスを滅すると言っていた。

杏子「なら、ワルプルギスの近くにいるはずなんだけどな……」

目を凝らし探す。
あいつの姿を見つけておかないと厄介なことになる。
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/31(火) 23:47:56.83 ID:xh8HaVfIO
なんかいざ投下されると普通につまらんな
469 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:48:02.62 ID:H/1Hm58w0
 〜〜 回想 〜〜


杏子『因果を自分に取り込む? そんなことが本当に出来るのか?』

QB『彼女の願いは特殊だからね。複数の願いを叶える為にはそうするしかない』

さやか『じゃあ、私達の内の誰かがワルプルギスを倒せばほどかは願いを叶えられないんじゃないの?』

QB『それは不可能だ。
   普通のワルプルギスならその可能性もあっただろうけど、この時間軸のワルプルギスはほどかの願いの影響のせいでかなり強力になっている。
   並の魔法少女の攻撃ではいくら攻撃してもダメージ一つ与えられないよ』

杏子『なぁ、一つ気になってたんだけどさ、ほどかはなんで力を使わないんだ? あいつは最強の魔法少女なんだろう?』

マミ『それは私も気になっていたわ。今までもあの子が力を思う存分に振るえばすぐに解決できたことはたくさんあったはずなのに』

QB『使いたくても使えないのさ』





ほむら『どういうこと?』

QB『魔法少女の力は自分の因果の深さに依っているからね。そして願いもその因果の力を利用している。
   でも、ほどかの場合はそれをワルプルギスに貸しているようなものだからね。だから、本来の力は今はないのさ。
   まぁ、それでも彼女が君たちよりも強力な魔法少女であることは間違いないけど』

まどか『ちょっと待ってよ、それじゃあほどかちゃんもワルプルギスには勝てないんじゃ』

QB『その点は大丈夫だ。ワルプルギスの夜はほどかの攻撃には耐えられない。そういうふうになっているはずだからね』

さやか『なんで?』

QB『そもそもがほどかの力だからね。同じ力のほどかの攻撃は全て通してしまうのさ。
   いや、通すというかほどかがワルプルギスの力を吸収するといった方が正しいかな』

マミ『つまり、ワルプルギスを触媒にして因果を集約。そしてそれを自分に取り込むことで複数の願いを叶えようとしてるってこと?』





QB『そうだね、だからほどかにとってワルプルギスは魔女ではなく自分の分身みたいなものじゃないのかな』

さやか『そんな……。じゃあ、ほどかがワルプルギスを倒せばその時点で終わりってことじゃん!』

QB『正確にはワルプルギスを倒して1日後だね』

杏子『どういうことだ?』

QB『ほどかの願いは自分を永遠の存在にしてこの世の負の感情をエネルギーに変換することだからね。
   それは普通の体では無理だよ。だから自分をそれに対応できる存在に作り替えるんじゃないかな』

マミ『概念になるってこと?』

QB『まぁ、最終的にはそうなるんだろうけどね。でもそれになる前に前段階がある』

さやか『それって……?』

QB『魔女になるってことさ』

まどほむさやマミ杏『!!?』
470 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:48:29.74 ID:H/1Hm58w0
QB『といっても君たちが見てきたような魔女じゃないよ。あれは魔法少女が絶望して変化したものだからね。
   だから、人々にとって絶望を振りまく存在でしかない』

ほむら(随分他人事じゃない)

QB『だけど、ほどかは自分自信で望んでそうなる。だから根本的なところで違うのさ』

杏子『……。止める手立てはあるのか?』

QB『それを僕に聞くのかい?』

マミ『答えなさいキュゥべぇ。頭を撃ち抜かれたくなければ』

QB『やれやれ、まぁこのことは契約外のことだからね。ほどかを止める方法なんて約束させられてないしね』




さやか『どういう方法なの?』

QB『簡単なことさ、ほどかが魔女になる前に殺せばいい』

ほむら『!! あなた!!』

杏子『止めろほむら! 今こいつを殺しても問題は解決しないだろう!』

ほむら『ッ!』

QB『やれやれ、僕はただ聞かれたから答えただけなのに酷いね』

マミ『あなたは質問されたことに答えればいいの。それ以外の余計なことは喋らなくていいわ』

QB『……』

さやか(マミさん本気だ……)







まどか『……。ねぇキュゥべぇ、どうしてほどかちゃんを殺せばほどかちゃんを止められるの?』

QB『ほどかの意志がなくなるからね。そうなったら願いもなにもないだろう?』

まどか『つまり、ほどかちゃんの願いはほどかちゃんの意思で叶えてるってことだね?』

QB『そうだね。僕等はあくまで、ほどかが願いを叶えられるようにその材料を集めただけだからね。
   それをどうするかは、ほどか次第だよ』

まどか『……』

さやか『まどか?』

まどか『みんな聞いて――』



      〜〜 回想 終 〜〜
471 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:49:00.97 ID:H/1Hm58w0
―さやか―

さやか「しっかしまどかも無茶なこと言うよね」

杏子と同じようにさっきから姿が見えないほどかの姿を探す。

杏子「あぁ……。まさか、一度ほどかにワルプルギスを倒させて力を吸収させた後に、ほどかを説得しようなんてな」

杏子がキョロキョロと辺りを窺う。相変わらずほどかの姿は見えない。

さやか「キュゥべぇが言うにはほどかは魔女になる準備の為に魔女結界を出して、そこに引きこもるんだっけ?」

杏子「そこにアタシ等が乗り込んでほどかに止めるように説得という名の鉄拳制裁。
   ボロボロになったほどかを結界内から連れ出すだったな」

さやか「無茶苦茶だよね。ってか鉄拳制裁とか言ってないでしょ」

なにを勝手に付け足してんのこいつ。





杏子「結果的にそうなるだろ? どうせ話し合いで終わるわけないんだ」

相変わらずほどかを探し続ける杏子。
口ではああいっているけど、本音では話し合いで済めばいいと思ってるな。

さやか「成功するといいけど」

杏子「成功させるんだ」

そう力強く言う杏子。
私はその強い意志を感じさせる横顔を見て少しドキッとするのであった。
  
472 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:49:34.41 ID:H/1Hm58w0
―マミ―

マミ「さてと、やることはやったわね」

マスケット銃を撃ちながら隣にいる暁美さんに話しかける。

ほむら「えぇ、後はあの子の行動を待つだけ」

同じくランチャーを撃ちながら暁美さんは私に返事をする。

マミ「うまくいくと思う?」

ほむら「どうかしらね。あの子は頑固だから」

マミ「あなたに似たのね」

ほむら「まどかによ」

そう返す暁美さん。その表情は真面目で本気でそう思っているんだな。っと思わせる。




マミ(全く。この親子は……)

どうしてこうまで似てしまったのか、しかもダメなところばかり。

マミ(まぁ、そんなところも可愛いのだけど)

ほどかさんの顔を思い浮かべ、そういえば約束していたパーティーをしていないことを思い出す。

マミ(このまま反故にするなんて許さないわよ。あなたには私の作った料理をいっぱい食べてもらうんですから)

そう決意しワルプルギスと周囲の使い魔に向けて発砲を繰り返す。






マミ「暁美さん。絶対にみんなで帰りましょう」

ほむら「当然よ」

誰かが欠けるなんて嫌だ、
私はもう誰も失いたくない。

マミ(あんな思いもう味わいたくないもの)

昔、助けることが出来なかった両親の顔を思い出す。

今度は助けてみせる。
今度こそ後悔なんてするもんか。

マミ(待ってなさいほどかさん。私はしつこいわよ?)
473 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:50:14.14 ID:H/1Hm58w0
―ほどか―

ほどか「……」

ステルスを使い、ワルプルギスの夜のすぐ傍で佇む。

ほどか「これで終わる」

いや、始まるんだ。

ほどか「楽しかったなぁ」

この時代に来て過ごした日々を思い出す。

ほどか「パパって意外と可愛かったんだ」

女の子の姿のパパはとても愛らしく、まさかこんな人が男の人になるなんて。と最初見た時は驚いたものだ。

ほどか「パパったら私が娘だー。なんて言ったらビックリして……」

その時の光景を思い出し、くすくすと笑う。





ほどか「さやかさんもあんなに可愛くていい人なのになんでふられちゃったんだろ?」

未来のさやかさんは杏子さんと結婚している。
子供も二人いて、その子達は私の幼馴染だ。

ほどか「まぁ相手が悪いか」

仁美さんが相手だもんね。
でも、杏子さんと結ばれたさやかさんは幸せそうで、フラれても結果的によかったんじゃないかと私は思った。

ほどか「この時代でもさやかさんと杏子さんはケンカばかりだったね」

まぁ、結局さやかさんの方が弱いんだけど。

ほどか「ふふ……。杏子さんこれから苦労するんだろうなー」

暴走するさやかさんを止めるのはいつも杏子さんの役目だ。





ほどか「ママ……」

暁美ほむら。ママの顔を思い出す。

ほどか「やっぱりママは世界で一番綺麗だったなー」

ママの顔を見たときは嬉しかった。
初めてママの手料理を食べた時は嬉しかった。

ほどか「クリームシチュー、おいしかったなぁ……」

本当はもっと食べたかった。
でも、あんまりおかわりしすぎるのもどうかと思い一回だけでやめておいたのだ。

ほどか「屋上でみんなでお弁当も食べたっけ」

まさか、ママと学校で昼食を食べれるなんて思わなかったから、あの時ははしゃいだものだ。

ほどか「前の日は楽しみすぎて寝れなかったよ」

憧れ、だったもんなぁ……。
474 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:50:55.95 ID:H/1Hm58w0
学校の運動会なんかで、友達はママと一緒に食べてるけれど自分は一人で食べてたから。
パパは仕事でこれなかったし。

いや、私が黙っていたんだ。私のせいで迷惑をかけたくなかったから。

ほどか「まぁ、杏子さん達が一緒に食べてくれたけどね」

あの後、杏子さんからそのことを聞いたパパに泣きながら怒られたっけ。
なんで言わなかったの。とか、知ってたら行ってた。とか。

ほどか「だから言わなかったんだよ?」

パパは私が寂しい思いをしていたら困っていたら必ず飛んでくるから……。

ほどか「あの時、教えてたら、何日も徹夜して仕事を終わらせてから来るのはわかってたもん……」

いつもいつも、私のことばかり考えて、自分のことなんて考えずに無茶ばっかりするんだから……。
私はパパにいつまでも元気でいてほしいのにさ……。







髪を結う為に使っているリボンに触れる。

ほどか「ママのプレゼント……」

パパが気遣ってくれてママが私の為に買ってくれたリボン。

ほどか「えへへ」

ママとパパが似合うって言ってくれた。
こんな経験なかったから、凄く嬉しかった。

これさえあれば私はどんなことでもやり遂げることが出来るって思った。

ほどか「ありがとう。ママ。パパ。私頑張るからね」

そう呟いて、前方に手をかざす。
するとそこには小さな魔法陣が浮かび光輝き、収束する。
光が収まるとそこには弓が浮かんでいた。





ほどか「あなたもゴメンね? 利用するようなことをして……」

眼前で笑い続けるワルプルギスに向けて謝罪する。
本当ならこの子も救いたかった。

でも、私に力がないからそれは無理で……。

ほどか「ゴメン。せめてあなたの苦しみは私が引き受けるから」

ふわふわと浮かぶ弓を手に取りワルプルギスに向ける。

ほどか「だから、ごめんなさい」

もう一度謝り弦を引き絞る。
475 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:51:31.49 ID:H/1Hm58w0
そして――。






杏子「いたぞ! ワルプルギスのすぐ近くだ!」

さやか「あんなところに!」


マミ「見て! 光がワルプルギスの夜に!」

ほむら「あの色は!」




――ピンクパープルに輝く鮮やかな光がワルプルギスを貫いた。




476 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:52:38.37 ID:H/1Hm58w0
―― 避難所 ――

まどか「……」

詢子「ん? どうした、まどか」

まどか「え? ちょっとトイレ」

詢子「……」

知久「詢子……」

詢子「わかってる」





      

まどか「……」

詢子「どこ行こうってんだい、おい」

ママが私の手を掴みどこに行くのかと問う。

まどか「ママ。私、助けにいかないと」

詢子「……。他の奴らに任せろ」

ママは真剣な表情で私を行かせないように私を掴む手に力を込める。

まどか「私でなきゃダメなの!」

そんなママの手を払い意志を告げる。
私にしかできないことがあるから、それを果たさいといけないから。




詢子「……」

パンっという音が響く。

詢子「てめぇ一人だけの命じゃねぇんだ! そういう勝手やらかして! あれがどれだけ……」

ママの言葉を遮る。

まどか「わかってる。私にもよくわかる」

ママの顔をじっと見つめる。

まどか「私だって、ママのことパパのこと大好きだから、どんなに大切にしてもらってるか知ってるから。
    自分を粗末にしちゃいけないの、わかる……」

少し俯き、そして、また顔を見つめる。
477 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:53:08.70 ID:H/1Hm58w0
まどか「だから違うの! みんな大事で絶対に守らなきゃいけないから……。
    その為にも私いますぐいかなきゃいけないところがあるの!」

詢子「なにをするかは説明できねぇってか」

頷き肯定する。

詢子「なら、私もつれてけ」

首をふり否定。

まどか「ダメ。ママはパパやタツヤの傍にいて。二人を安心させてあげて」

まどか「ママはさ、私がいい子に育ってくれたって言ったよね。嘘もつかない。悪いこともしないって。
    今でもそう信じてくれる? 私を正しいって思ってくれる?」

その言葉に目を細め、私の覚悟を図る様にママはじっと顔を見つめてくる。






詢子「……。絶対にへたうったりしねーな? なにがあっても後悔はしねーな?」

まどか「うん」

詢子「なら、いけ」

まどか「ありがとう。ママ」

詢子「絶対に連れ帰ってこいよ。そんであのバカ孫の顔を、もう一度私達に見せろ」

まどか「うん。引っ叩いてでも連れてくるよ」

詢子「はは……」

まどか「いってきます」

詢子「いってらっしゃい」

笑顔で私を見送るママ。
その顔は普段通りの顔で私のことを信じてくれてるんだと心から思えた。
478 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:53:39.51 ID:H/1Hm58w0
―ほむら―

マミ「これがあの子の魔女結界……」

さやか「隠しているつもりなんだろうね」

杏子「御大層に封印までしやがって」

ほむら「……」

あの子が作り出した魔女結界の前で私達は佇む。
時間もないので早速入ろうとするが侵入出来ないように入口には網目状の封印が施されている。

マミ「私達が入ってくることも想定していたってことかしら」

さやか「どうする? 入れそうにないよ」

さやかが剣で封印を斬るがびくともしない。






マミ「ちょっとどいて」

私達を下がらせマミが自分のリボンを取る。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

そして必殺である技を封印に向けて発砲。

マミ「……。ダメね、傷一つつかないわ」

杏子「くそ。こんなところでモタモタしてる暇はないってのに」

ほむら「……」

この封印はあの子が作り出した物……。ならば……。





ほむら「……」

さやか「ちょっとほむら、ソウルジェムを取ってどうしたのさ」

ほむら「こうするわ」

さやかの問いに実践することで答える。

杏子「お、おい!」

マミ「ソウルジェムを投げ入れて!?」

ほむら「……」

網の隙間から自分のソウルジェムを勢いよく投げ入れる。
勢いよく飛び、徐々に私から離れていく私の本体。
そして100メートルを越すであろう距離まで離れると私の意識は無くなった。

マミ「ちょ、ちょっと! どうするのよ!」

杏子「待て! 封印が!」

さやか「開いて……」
479 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:54:07.70 ID:H/1Hm58w0
ほむら「う……」

さやか「あ、気づいた!」

意識を取り戻すと目の前にはさやかの顔があった。

ほむら「……どうやらうまくいったようね」

辺りを窺うとそこはさっきいた場所とは違う。
どうやら結界の中に入れたようだ。

マミ「無茶し過ぎよ! ソウルジェムを結界の中に投げ入れるなんて」

ほむら「でも、封印は解けたでしょう?」

杏子「そうだけど……」

あの子が施した封印なら人に危害を加えるような真似はしないだろう。
ならば、私のソウルジェムを投げ入れればソウルジェムを拾えるように封印は解ける。と踏んだんだけどどうやら正解ね。





さやか「全く、解けなかったらどうする気だったの?」

ほむら「大丈夫よ。絶対に解けると思っていたから」

確信はあった。

ほむら「封印があの形でよかったわ。隙間なく張り巡らされていたらどうしようもなかったもの」

杏子「そりゃ、まさかあんな手にでるなんてほどかも思わなかっただろうよ」

でしょうね。そう心の中で呟き自分のやったことの愚かさに苦笑する。

ほむら「行くわよ。あまり時間もないわ」

マミ「そうね」

さやか「この扉を開けばほどかがいるんだね」

杏子「だろうな」

必ず連れ出す。私達4人はそう決意し、扉を開け、中に入っていった。

480 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:54:36.44 ID:H/1Hm58w0
―まどか―

まどか「はっはっ」

街中を走る。
さっきまで吹き荒れていた風はもう嘘のように止んでいて、いつの間にか青い空まで見えていた。

まどか「急がないと……」

これはつまり、ほどかちゃんがワルプルギスを倒し、自分を魔女にするための準備をしているということだ。

まどか「……見つけた!」

ほむらちゃんが見せてくれたワルプルギスの出現予測ポイントまで辿り着く。
するとそこには数多くの戦いの残骸が残されていた。

まどか「みんなはどこかな」

辺りを見回すがみんなの姿はない。





QB「ほむら達ならもうほどかの結界の中だよ」

まどか「そうなんだ……」

急に現れたキュゥべぇがみんなの居所を教えてくれる。
少し遅かった。

まどか「……」

QB「どこにいくんだい」

まどか「ほどかちゃんのところだよ」




QB「君が行っても邪魔になるだけだよ」

まどか「だろうね」

QB「ならなんで」

まどか「私がほどかちゃんのパパだからだよ」

それ以外に理由はない。

QB「やれやれ。訳がわからないよ」

わかってもらえなくてもいい。
これは、私自身の勝手なけじめだから。

まどか(待っててすぐに行くから)
481 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:55:10.12 ID:H/1Hm58w0
―ほむら―

―― ??? ――

ほむら「っ!!」

ほどかの結界内に入った私は思わず耳を塞ぐ。

この空間には地面というものがなく。
無重力なのか宇宙に出たように私達は自身に感じるはずの重量を感じずただ、空中に浮かんでいた。

あるとすれば音だけであり、その音は私達を苦しめる。
だが耳を塞いでも、音は聞こえ、聞きたくない声が私の頭に響く。

ほむら「もうやめて! 聞きたくない!」

さやか「なん……なの! これ!」

杏子「くそ! こんなの!!」

マミ「嫌! 私は……!」

さやか達も私と同じように耳を塞ぎ音を消そうとするが無駄であるようだった。

ほむら「く! こんなの、こんなのって!」

この何もない空間に響き渡る声それは――。







「痛い痛いよ……」「苦しい、助けて……」「ああああああああああああああああ」「殺さないで! やめてくれ!!」
「ママ! 助けてよママ!」「くそ! あいつのせいで俺は!」「殺す殺す殺す殺す殺す」「ああああ! 足が! 俺の足が!」
「いやだ、こんな世界で生きていくのはもういやだ」「死ぬしかない。俺はもう死ぬしかないんだ」「死ね! 人間は全部死ぬべきだ!」
「どうして俺がこんな目に……」「ごめんなさいパパ、ママ……。あの時私がしっかり考えて願えば今頃パパとママは……」
「ぐああああ! 痛い!! 痛いよ!!」「あいつらは楽しそうなのに俺は……」「私の赤ちゃん、どうしてこんなことに……」
「ひひひひひひ」「恭介……。あの時仁美を助けなかったら……」「あいつを殺せば俺があの子と……」「もう駄目だ……」
「許さない。絶対に許さない」「うわあああ!! 何も見えない! なんで!? どうして!!」「ふふふふふ」
「あの人が悪いんだ。私をないがしろにするから」「私の願いのせいで、家族は……。妹は……」「死ねー!! みんな死んでしまえ!!」
「あははははは、やってやった俺が!!」「僕はなんてことを……」「なぜだ! どうして私がリストラなんて!」
「まどか……。また救えなかった……」「あぁ、生きるのにもう疲れた」「死のう……」「どうして私ばかりが辛い思いを……」
「ふふふ。今すぐ殺してあげるから」「ああああああ!! 私の子供が! 子供が!!!」「焼ける……。私の家が……」
「お腹が減ったよ……」「みんな消えろ」「死死死死死死死死死死」「全部僕が悪いんだ……」「俺は死ぬべきだ……」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」「つかれた」「ああああああああついあついあついあつい!!!!」
「助けて!!」「いやだ! 死にたくない!!」「どうして……父が……」「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」「ころす」
「はははははははは」「血が、血がとまらないーーー!!!」「きえろきえろきえろきえろ」「みんなで死ねば怖くないよね……」
「あー……。苦しい、痛い……」「呪ってやる」「もう駄目だ……」「ママー! パパー! 助けてよー!!」「暗い暗い暗い」





ほむら「やめて!! 嫌よ! こんなのもう!!」

聞きたくない――!

やめて!!

そう叫び、絶望に飲まれようとした時、


――大丈夫。もう苦しまなくてもいいんだよ。


ほむら「え――」

声が聞こえた。

その声は慈愛に満ちていて、その声を聞いた私は今感じていた苦しみから解放され、なにかに包まれるような安心を感じていた。
482 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:55:36.50 ID:H/1Hm58w0
さやか「声が聞こえなくなった……」

さやかが辺りを見回しそう呟く。

杏子「今の声って……」

マミ「ほどかさんの声よね……」

ほむら「……」

ほどかの声が聞こえてから、あの嫌な音は聞こえなくなっていた。
だが、また徐々に音は広がり始めこの空間を支配しようとしていた。




さやか「あっちから聞こえた! いこう!」

さやかが泳ぐように声のした方へと向かう。

杏子「またあの嫌な声が聞こえ始めたしな」

杏子もそれに続く。

マミ「暁美さん!」

マミがわたしの手を取り先へ進むように促す。

ほむら「え、えぇ」

それに引っ張られるようにしてついていく。






ほむら(こんなところで……)

あの子はこんな場所でこれからずっと過ごすのだろうか?
無限の時間をこの負の感情に溢れる空間で。

ただ、エネルギーを生み出すために……。

ほむら(ッ!)

それを想像し吐き出しそうになる。
この先、ずっと終わりなく、この声を聞き続けなければいけない。
それがどれだけ苦しいか辛いか……。

ほむら(バカ! こんなの絶対に!)

許せない……。許せるものか!

ほむら(必ず連れ出すから! こんな場所にあなたを一人きりになんて……)

させるものか――
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/31(火) 23:57:01.82 ID:xh8HaVfIO
なんだ、みんな興味を失ってしまったんだね
SSはつまらないけど>>1が面白いっていう珍しいスレだったのに
484 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:58:38.82 ID:H/1Hm58w0
―ほどか―

―― ??? ――


ほどか「立ち向かうというのなら容赦はしません! 
    こうなればあなた達を無事に外に送り返し、今度は入ってこれないよう封印を強固にするだけです!」

どうやって入ってきたのかはわからない。

だけど、私の封印が甘かったからママ達はこの場所に来てしまった。
なら、今度はより強力な封印を施すまでだ。

杏子「は、そんな心配いらねーよ! だってお前はアタシ達と一緒にこの場所から出るんだからな!」

杏子さんが槍を伸ばし私を絡め取ろうとする。

ほどか「そうは、いきません!」

翼を羽ばたかせ空中に退避。
だけど、槍はそのまま矛先を空中に向けて私を追ってくる。





杏子「逃げても無駄だ! そいつはどこまでもお前を追うぜ!」

ほどか「なら操っているあなたを狙うまで!!」

空中から急降下し、杏子さんのもとに向かう。
そしてそのまま剣を振りおろし杏子さんの握っている槍の柄を叩き落そうと試みる。

だが、

さやか「杏子だと思った!? 残念さやかちゃんでした!」

さやかさんが杏子さんの前に躍り出て私の剣を受ける。

ほどか「邪魔をして!」




そのまま鍔迫り合いの形になり、押し合いが続く。

さやか「そりゃ邪魔するでしょ! 仲間がバカやろうとしてるんだから、さ!」

しかしその鍔迫り合いはさやかさんの方から一歩的に終わらせられる。
なぜなら、さやかさんは急に力を抜いて後ろに体制を崩したのだ。

ほどか「く!」

さやかさんという支えを失った私はそのまま前によろける。
そして、今までさやかさんの体のせいで見えなかった眼前の光景が写し出される。

ほどか「!!」
485 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:59:10.57 ID:H/1Hm58w0
マミ「悪いわね! 今日の私は本気モードよ! だから容赦なくいかせてもらうわ!!」

マミさんが巨大な砲口を私に向けて立っていた。
そして、そのまま私に向けて

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

砲撃の音が空間に響く。
そして私を光が飲み込んだ。

さやか「やった!?」

杏子「やりすぎだバカ!」

マミ「バカってなによ! あれくらしないと止められるわけないでしょ!!」

ほむら「……まだよ!」







ほどか「……」

マミ「うそ……でしょ?」

杏子「バリアーってやつか……」

さやか「はは、さっすがほどか。なんでもありだね」

ほどか「みなさん本気みたいですね」

驚いた。まさか本気で止めにきているとは。

ほどか(認識が甘かったか)

バリアーを解き、空中へと飛翔する。





ほどか「みなさんのお気持ちはわかりました。どうやら本気で私をここから連れ出したいみたいですね」

さやか「だから、そういってんじゃん。バカ」

私を見上げながら、さやかさんが悪態をつく。

ほどか「ありがとうございます。そのお気持ちは嬉しいです」

マミ「なら、言う通りにしてもらいたいものだわ」

マミさんがマスケット銃を構えながら、そう告げる。

ほどか「それはできません。これは必要なことですから」

意識を私の周囲を飛行している三角錐の物体に向ける。
すると、無軌道に飛行していたそれらは私の指示に従うようにその先端をママ達に向ける。
486 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/07/31(火) 23:59:44.34 ID:H/1Hm58w0
杏子「気をつけろ! なにかするつもりだ!!」

杏子さんのその声に迎撃態勢を取るママ達。

だけど、無駄だ。

ほどか「安心してください。動きを止めるだけですから」

出来れば傷つけたくはなかった。
でも、それももう叶わない。

ならば、私も覚悟を決める。

ほどか「行って――」




――ファンネル!







私の言葉に呼応し多数のファンネルがママ達に襲いかかる。

さやか「ちょ、ちょっとどうすんのさ!」

杏子「どうって! 迎え討つしかないだろう!」

マミ「そんなこと言っても数が多すぎるわ!!」

ほむら「ッ!」

迎撃しようとするママ達だがもう遅い。

既にファンネル達はママ達を四方八方取り囲み、その切っ先を向けている。





ほどか「降参してくれませんか? 出来れば傷つけたくはないんです」

懇願する。このまま帰ってくれれば誰も傷つかずに済む。

マミ「バカ言わないで! 誰がそんなこと!」

杏子「むしろ降参するのはお前だろ?」

さやか「杏子の言う通りだね。じゃないと泣く羽目になるよ?」

ほむら「……」

ほどか「そうですか。なら仕方ありません」

はぁ、っと溜息を吐く。
この状況下でまだ諦めないなんて……。





ほどか「本当にみなさんはお人よしがすぎます」

まぁ、こんなみんなだからこそ、私はこの人達の未来を守りたいんだ。

ほどか「さっきも言ったように動きを止めるだけですから安心してください」

剣を天にかざす。そして、ママ達の方向へ斬るように振り下ろす。

その瞬間。多量のファンネルがその先から閃光を放つ。





はずだった。
487 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:00:39.11 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「!!」

さやか「あれ、無事……?」

杏子「なんともないよな……」

マミ「どう、して……?」

目を瞑っていたさやかさん達が何も起こらない事を不審がり目を開き辺りを見回す。

さやか「え? あれなくなってる?」

マミ「いえ、残骸があるわ」

杏子「……ほむらか!」

マミさん達の周囲に散らばるファンネルの残骸。
そしてその残骸を踏みしめるように立つママ。

ほむら「……」

髪をたなびかせ、煙を噴き出す銃口を地面に向けたまま無言で私を見つめるママ。
その目の迫力に思わず私はたじろいでしまう。





ほどか「時を止めて、ファンネルを無力化したんですね……」

ほむら「えぇ。まだ使えるようでよかったわ」

忘れていた……。ママの能力は時を止められるんだ。
なら、ビームを撃つ前にファンネルを全て撃ち落とすことは容易いか……。

ほどか「ッ!」

自分の愚かさに後悔しているといつの間にかママが目の前にいた。

ほむら「戦いの最中に考え事をするものではないわ」

そしてそのまま空中で体を捻り、私を叩き落とすように回し蹴りを放つ。

ほどか「ぐっ!」

まともに蹴りを受けた私はそのまま地面に急降下。
しかし、地面にぶつかるその前に羽ばたき、態勢を整えようと試みる。





ほむら「甘いわ。あれで終わりだと?」

だが、態勢を整える前に、同じく急降下してきたママの膝蹴りをモロに腹部に受ける。

ほどか「がはっ!」

そして腹部に痛みを受けたまま地面に激突。

ほどか「う……。ぐ……」

ママは激突の反動を利用して後方にジャンプ、そしてそのままくるりと1回転して着地。
そして首元に引っかかる髪を手でかきあげるのであった。

ほむら「痛みもあるのね。よかったわ、まだ人間のままのようね」

相変わらず私の瞳を見据えながら、冷静に観察するママ。
488 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:01:21.22 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「私は……。もう人間じゃ……」

今の私は後ろの繭を守護する使い魔のようなもの。
だから人間などでは……。

ほむら「いいえ、あなたは人間よ」

そう言い放ち、また私に近寄る。

ほどか「!」

慌てて立ち上がり、ママに向けて剣を向ける。
さっき受けたダメージはもうない。

ほどか「私が人間? ふざけないでください! 人間ならあれだけのダメージを受けてこの速さで回復するわけが」

普通なら死んでいてもおかしくない程の衝撃だ。
だが、私は骨を折ることもなく、血を流すこともなく、ただ痛みを感じただけで澄んだ。

そして、その痛みももうない。



ほむら「何度も言わせないで。あなたは人間よ」


――その証拠にあなたは苦しんでいるじゃない。


そう言って、私の目の前にまで来たママの顔は凄く怒っているように見えた。

ほどか「……!」

慌ててママの傍から離れる。

ほむら「あなたは私達を傷つけることを恐れて本気を出せないでいる。
    なぜなら、私達を傷つけたくないから」

また私に近づく為に歩を進める。

ほむら「あなたはさっき私達が止めようとしていることが嬉しい。そういったわね?」

ほどか「それが、なんだっていうんですか……」

みんなが私を想ってくれている。それを嬉しく感じることの何がおかしいというのか……。


ほむら「つまりあなたは、私達と一緒にこの先の未来を歩んでいきたい。そう思っているんじゃないの?」

ほどか「! 違いますよ、私が嬉しく思ったのはあなた達の好意に対して……」

ほむら「嘘ね」

ほどか「……なぜそういえるんですか」

ほむら「今思えばあの封印からしておかしいのよ。何故あんな先が見えるような構造にしたのか」

一歩。また一歩と私に近寄る。

その度に私は後退する。



ほむら「あんな封印じゃあ、私達がなんとかしようと考えるに決まってる。あなたならそれくらいわかるはずよね?
    なのに、あなたはあんな気を引くような封印を施した」

ほどか「……」

ほむら「そもそも、結界を隠すこともあなたなら出来たわよね? あなたは最強の魔法少女なんだから」

ほどか「それは、時間がなくて……」

思ったより早く発見されてしまったから隠すことも出来なかったんだ。
だから……。

ほむら「それも嘘。時間を自由に操ることが出来るあなたが時間が足りないですって?
    笑わせないで」

ほどか「ッ!」
489 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:02:10.14 ID:DNGo6+BZ0
ほむら「あなたは私達に止めて欲しかったんでしょう?
    だから1か月前にまどかとコンタクトを取った」

ほどか「……」

ほむら「あなたにしかワルプルギスの夜を倒せない。
    いえ、違うわね。そもそもあなたの願いを考えれば私達の協力なんているかしら?」

ほどか「……れ」

ほむら「いらないわよね? 
    あなたは黙って自分の身を隠し、危なければ私達に気づかれずに少し力を貸し、目的の日までずっと姿を消せばよかった」

ほどか「……まれ」

ほむら「それをしなかったのは何故か。あなたは怖かったのよ。一人ぼっちで誰にも知られずに消えるのが。
    だから、まどかと会い協力を仰いだ。何故なら、あなたは私達と一緒にいたかったから。つまり――」


――あなたは私達と共に生きていきたいのよ。


ほどか「黙れーーーッ!!!!!」







ほどか「違う違う違う!!! 私は一人は怖くない! 恐れてなんかいない!!」

私が恐れているのはママ達の未来がなくなること!
ママ達が魔法少女の運命を背負わされ続けること!

ほむら「違わないわ。あなたは恐れている。一人でいることを。そして」




――このまま消えてしまうことを。


ほどか「ッこの! 黙れッ!!」




ほむら「一人ぼっちが怖いくせに強がって! 勝手に諦めて!! 一人が嫌ならそう言えばいい!
    周りに助けてもらえばいい!!」

ほどか「黙れと言った! 二度言った!!」


ママに向かい勢いをつけまっすぐ飛翔。

そしてその勢いのまま剣で斬りかかる。

すでに無傷で済ませようなんてことは考えていない。
その口を閉ざすために、私の心を乱す言葉を止めるためにただ剣を振り降ろす。





ほむら「まどかの言った通りだったわ」

その剣を盾で受け止めるママ。

ほむら「あなたはやっぱり迷っている。本気で覚悟しているわけではないわ」

ほどか「自分勝手な解釈を!!」

ほむら「あら。私は喜んでいるのよ。もしあなたが本気なら止められないと考えていたんだから。
    でも、あなたが迷っているっていうのなら――」


――私も全力を出せる!!
490 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:03:21.03 ID:DNGo6+BZ0
そう言うとママは盾から手榴弾を取り出す。
そしてそのまま口でピンを引き抜き地面へと落とす。

ほどか「!?」

そんなことをすればママまで爆発に巻き込まれてしまう。
そう考えた私は、慌ててママを守るべく周りに結界を張る。

だが、手榴弾が爆発することはなかった。

ほむら「ごめんなさい。それはダミーよ」

ほどか「ぐ!?」

突如、私の体が拘束される。
鎖のようなものが私の動きを封じたのだ。

杏子「は、これでちょろちょろ動きまわれねーだろ!!」

ほどか「こんなもの……!」

杏子さんによる拘束を解こうともがく。
こんなものは少し力を入れればすぐに破って……。

さやか「させるわけないじゃん!」

その隙をついて、いつの間にか近づいてきていたさやかさんが私に斬撃を浴びせる。

ほどか「つ!?」

さやか「痛い? ゴメンね。でもあんたを止めるにはこれしか方法がないの」

体に斬り傷が増えていく。
あまりの痛みに苦痛の表情をあげてしまう。


マミ「さて、今度は決めるわよ」

ほどか「!!」

マミさんが再び召喚した、巨大な砲銃が私にその砲口を向けていた。

ほどか(馬鹿な! まださやかさんが近くにいるのに!)

このままじゃ二人とも!!。

マミ「ティロ・フィナーレ――!!」

だがマミさんは迷うことなく砲撃を開始。
そして巨大な光が私達を包もうとしていた。

ほどか(くっ! バリアー……。駄目! 間に合わな――)

光はもう目の前。
このままではさやかさんが……。

だが、さやかさんを光が飲み込むことはなかった。


さやか「ナイスほむら!」

ほむら「少し危なかったわ……」

ほどか(いつのまに!)

時を止めて救出した!?
そんな素振りは……。

ママの能力は厄介だ。
二度同じ手を食わないように注意していたというのに。

ほどか(私が一瞬マミさんに気を取られた隙に……!)

なんてギリギリなことを……。一秒でも遅ければそのままみんなまとめて飲み込まれたというのに……。
眼前に迫りくる光を視界に捉えその無謀さに驚く。

自分も脱出しようとするが杏子さんの鎖が邪魔をして身動きがとれない。



そしてもがく私を光が包み込んだ――。
491 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:05:09.91 ID:DNGo6+BZ0
マミ「……」

さやか「今度こそ……」

杏子「まともに喰らったはずだからな……」

ほむら「ほどか……」

マミ「煙が、晴れるわ」

さやか「……ちぇ」

杏子「は、そう簡単にはいかねーか……」

ほむら「諦めるものですか……」

ほどか「……」

自身の体を見る。外傷は多数ある、がもはやそれもどうでもいい。

ほどか「……」

この傷は私の甘さが招いたものだ。ならば甘んじて受けよう。

ほどか「……」

ママの言う通り確かに私は迷っていた。
ママ達を傷つけることも、世界を救うことも。

そして、

一人になることも――。

ほどか「……」

だが、覚悟が足りないといのなら、それに足る覚悟を注ぎ足せばいいことだ。

ほどか「……」

剣を上空に構える。

杏子「なにを、する気だ……?」

さやか「上! 見て!!」

マミ「なによあれ!?」

ほむら「巨大な魔法陣……」

ほどか「……」

私の力により上空にて魔法陣が形成される。
その大きさはこの空間の空を覆い尽くすほどであり、見る者を圧倒する。

上空に燦然と輝く魔法陣は自身の形を崩壊させ、数多の粒子を生み出す。
そしてその粒子を中心に集約させる。

さやか「どうする、つもり……?」

ほどか「……」

光が集約を終えたのを確認する。
そして球形に集まる巨大な光のもとへと飛翔する。

杏子「な! あの中へ突っ込むつもりか!?」

光の中に入る。
すると数多の光の粒子が私の体を包み私の中に入り込む。

マミ「光を吸収しているの……?」


そして、光が消える――。

杏子「!!」

さやか「なによ、あれ!」

マミ「そんな……」

ほむら「く……!」
492 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:05:37.01 ID:DNGo6+BZ0





変化した。
光の全てを吸収したほどかはその体をさらに異形へと変える。

さっきまで二枚であった黒翼は六枚にまで数を増やし、さらにその大きさまでも肥大させている。
そして体には無数の魔法陣が帯状に纏わりつき彼女の体を包んでいる。

彼女が所持していた剣はその姿を巨大化させており、持ち主の手を離れ、彼女の右方にて敵を切刻む時を待つかのように空中で静止。
左方には彼女の体全てを覆い隠せるかのような盾が彼女に迫る脅威を取り払うかのように存在し、その威容を見せつける。

体を覆う鎧は上部は龍の鱗のようなものに変化しており彼女の胸部、腕、背を守る様に張り巡らされている。
下部には漆黒に彩られた短いスカートを着用し、彼女の足部には以前よりも重厚さを増した物に変化している。

さらに彼女の周囲には先程ほむらが破壊したはずのファンネルがその外装をより強固にし、飛来。

先程の彼女と同じ箇所といえば、身に着けているリボンのみであろうか。
それほどまでに彼女の姿は変化している。




493 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:07:17.06 ID:DNGo6+BZ0
さやか「はは、なんかやばそうな雰囲気?」

マミ「驚いたわ……。まさかここまでとはね」

杏子「でも、諦めるつもりはないんだろ?」

ほむら「当然よ」


ほどか「――」

ほどかはそのピンクパープルに輝く両目をほむら達に向ける。

そして、彼女達のいる方向へと手をかざす。

その瞬間、ほむら達を囲むように魔法陣が現れ――。






ほむら「!!」

さやか「!?」

杏子「ぐ!?」

マミ「きゃあ!!」


魔法陣から彼女達を撃ち抜く光線が吹き荒れた。







ほむら「う……」

さやか「あ、ぐ……」

杏子「く、そ……」

マミ「くぅ……」

地面に倒れ伏すほむら達。
その姿は満身創痍と言え、もはや立って戦うことは不可能だと感じさせる。






ほどか「……」

そんなほむら達の前にほどかは降り立つ。

そして。

ほどか「覚悟は、出来ました――」

そう告げる。

ほむら「どういう、ことよ……」

ボロボロの体に鞭打ち立ち上がろうと試みるほむら。
だが膝を立てることが精一杯のようで、立ち上がることは出来ないでいるようだった。
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/08/01(水) 00:07:45.06 ID:exEczaJr0
最初は口調がどうしょうもなかったけど
だんだん面白くなってきたじゃないか。

ラストスパートだしっかり頑張れよ。
495 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:08:23.48 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「私には一人でいる覚悟がなかった。それは認めます――」

ほむら「なら、大人しく、私達と一緒に……」

ほどかを睨み付け、ほむらはそう懇願するように口を開く。

ほどか「それは出来ません。やはりこれは必要なことですから――」


――誰かがやらなければいけないことですから。


そう答え、拒絶を示す。


ほむら「この、わからずや……」

相当辛いのか、ほむらは今にも倒れそうに片膝を着きフラフラと体を揺する。

そんなボロボロのほむらにほどかは近づく。

ほどか「あなた達を傷つけてしまったのは私の甘さが原因です。
    そして、あなた達が私がいなくなることで悲しむことも――」


だから――。


そう話、ほむらの頭に手をかざす。


ほどか「あなた方の記憶から私を消します――」

ほむら「!!」


ほどかの手の平から優しい淡い光が溢れる。

さやか「ば! やめ!!」

杏子「お前なに言ってるんだよ!」

マミ「やめて! ほどかさん!!」

ほどか「あなたの言った通り、私はあなた達の前に姿を現すべきではなかった――」

ほむら「やめ、なさい!」

ほむらは必死にその光から逃れようと体を引きずり後ろに下がる。

496 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:09:15.52 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「そうすれば、あなた達を、あなたを傷つけずにすんだ――」

だが、光はその輝きを広げ、既にほむら達全員を包むまでに達していた。

ほどか「ごめんなさい。私には謝ることしかできません。傷つけておきながら、私はそれしか言えないんです――」






ですから、せめて私のことは忘れてこれからの日々を幸せに暮らしてください――。







ほどか「さようなら――」

ほむら「やめてーーーーーーッ!!!!!!!!!」


ほむらの絶叫が響く。
だがその叫びは無駄で。
そして、光が彼女達の記憶からある少女のことを消そうとしていた――。


















――その時、上空から一本の矢が降り注いだ。








497 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:09:47.76 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「――!!」


ほむら達から記憶を奪おうとした光はその矢により霧散し、その役目を果たすことなく消滅した。


ほむら「あ……」

さやか「な、に?」

マミ「……?」

杏子「覚えてるよな、アタシ達……」

自分達の記憶から少女の存在が消えていないことを確認するほむら達。





さやか「覚えてるよ、うん。覚えてる」

マミ「一体なにが……」

杏子「なんでだ……」

ほむら「あの矢は……。まさか」

ほむらが地面に突き刺さる矢を見、呆然と呟く。

さやか「矢……?」

杏子「あそこに突き刺さってる桃色のあれか……?」

マミ「一体どこから飛んできて……?」

マミ達もほむらにつられ、どこかからか飛来してきた矢を見つめる。

ほどか「ッ!」

ほどかだけが矢の飛んできた位置を視認出来たのか、その方向を睨み付ける。

彼女が睨み付けるその先には――。










「てぃっひっひ。間に合ったみたいだね」











498 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:10:33.35 ID:DNGo6+BZ0
さやマミ杏「!!」

ほむら「その声は、やっぱり……」

ほどか「パパ……」

まどか「やっほー。パパだよー」

鹿目まどか。彼女が魔法少女の衣装を身に纏い空中に浮かんでいた。

まどか「よっと。魔法少女って空も飛べるんだねー」

地面に足をつけ開口一番、誰に言うでもなくまどかは驚きを伝える。






まどか「これなら学校にもすぐ着けちゃうね!」

そして、地面に倒れる仲間達に手を伸ばす。

ほむら「まどか、どうして魔法少女に……」

まどかの手を借り、立ち上がるほむら。
そして当然の疑問を口にする。

まどか「えー? キュゥべぇに頼んだからだよ?」

杏子「そうじゃないだろ!」

杏子が納得のいかない答えに食って掛かる。
が、まどかはそんな声も軽く流し、傷だらけの仲間達の体を眺める。






まどか「まぁそんなことより、みんな傷だらけだからね、パパっと治しちゃうね。パパだけに」

そう伝え、手から光を放ち、ほむら達の傷を治す。

マミ「傷が引いていく……」

まどか「ウェヒヒ。凄いでしょ」
499 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:11:09.84 ID:DNGo6+BZ0
まどか「え、っていうかあれなに!? ほどかちゃんあんなになっちゃったの!!?」

ほどかの姿を見つけ、驚き慌てるまどか。

まどか「……」

そして真剣な表情でじーっと見つめる。

ほどか「なんですか、あなたもなにか言いたいことが――」

まどかの言葉を待つ。
今更なにを言われても、もう動じないと目で意志を伝え。

まどか「いいね! すっごい可愛い!!」

ほどか「え」







まどか「なにその翼! いいね天使みたいだね! あ、もとからほどかちゃんは天使みたいに可愛いよ?
    でもその可愛さに磨きがかかったっていうの? 今の可愛さは神様すらも恐れ慄いて土下座する的な?
    それになんか、この魔法陣もいいよね。神秘的っていうかさ、神々しいっていうのかな!
    あと、この剣と盾もいい味出してるね! 不釣り合いに大きいところがギャップで可愛いっていうのかな。
    小柄なほどかちゃんがこんなの持って戦ってたら私いっちゃうよ! 
    え!? っていうか目どうしたの!!? なんか宝石みたいだよ! きゃー! もっとよく見せて!!」

ほどか「え、ちょ」

まどか「あーん。可愛い可愛い!! 羽もぴこぴこ動いてさ! 触るね!?」

ほどか「きゃん! や、やめて!」

まどか「きゃん! だって! 可愛すぎるよもう!
    あ、そうだ写真撮らなきゃ写真!!」

そう言ってどこからともなくカメラを取り出す。




まどか「はーい、いくよー! 1−1はー?」

ほどか「え、ゼ、ゼロ?」

まどか「正解! じゃあ、1+1はー?」

ほどか「にー」

まどか「はいどうも! いい笑顔頂きましたー!」

ほどか「はっ! しまった!」

まどか「うーん。いいねー。これは永久保存しないとね」
500 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:11:39.84 ID:DNGo6+BZ0
さやか「……」

杏子「おい、あれ止めろよ」

マミ「いやよ、私まで同類になるじゃない」

さやか「ここはやっぱりほむらの出番だね」

ほむら「私!?」

マミ「頑張って暁美さん!」

杏子「さすが、ほむらは頼りになる!」

さやか「ママ頑張って!」

ほむら「あなた達……。覚えてなさい! 特にさやか!」





まどか「あ、ほどかちゃんなにそのスカート! 短すぎない!?」

ほどか「仕方ないでしょう! そういう衣装なんだから!」

まどか「禁止っていったよね!? ちょっとめくらせて!」

ほどか「きゃー!! エッチー!!」

まどか「おぉ、意外と過激な……」

ほどか「殺す! あなたは許さない!! いって! ファンネル!」

まどか「ウェヒヒ! 当たらなければどうということはない!!」

ほどか「この! 待て!!」

まどか「まったないよー!」






ほむら「あの……。まどか?」

まどか「何? ほむらちゃんもほどかちゃんのパンツの色知りたい? あのねー」

ほどか「ぎゃー!! ママには言わないでー!!」

まどか「うぇひひひひ」

ほどか「この! セクハラ親父!!」

ほむら「はぁ……。いい加減にしなさい!」

まどか「いた!!」

ほどか「きゃん!」
501 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:12:11.03 ID:DNGo6+BZ0
ほむら「あなた達はどうしてそう! すぐにケンカするの! ちょっとそこに正座しなさい!」

まどか「あちゃー」

ほどか「あぅ……」

ほむら「全く! 少しは落ち着きを持たないと駄目じゃない!」

まどか「怒られた……」

ほどか「お父さんのせいですよ……」

ほむら「ちゃんと聞きなさい!!」

まどほど「はい!!」



さやか「なにあれ」

杏子「さぁ?」

マミ「ミイラ取りがミイラになってるじゃない」





ほむら「はぁ、……。は! ち、違うわ、こういうことじゃなくて……」

まどか「どうしたの?」

ほどか「体調悪いの?」

ほむら「この子達は……」

こほん。と咳をし、態度を改めるほむら。

ほむら「……。まどか、どうしてあなたはここに来たの?」

ほどか「ハッ!」

その言葉に我を取り戻したのかほどかは慌てて正座を解いて距離を取る。
そして何もなかったかのように空中にて静止。
502 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:12:41.49 ID:DNGo6+BZ0
まどか「えー? ほどかちゃんを連れ戻しにだよ?」

なにを分かり切ったことをと言いたげにその質問に答える。
そして、まどかも正座を解いて立ち上がる。

まどか「いたた、足が痺れてるよ」

そして、離れて空中に佇むほどかに目を向ける。

まどか「ねぇ、ほどかちゃん一緒に帰ろ?」

ほどか「あなたもそういうのですね。ですが私は戻るつもりはありません――」

まどか「もー。なんなのその喋り方、――こんなのさっきはつけてなかったでしょ?
    なに、雰囲気作り? っていうか体中傷だらけだよ。嫁入り前なのに……。って誰が嫁にやるか!!」

ほどか「ぐ! い、今はその話はいいでしょう! とにかく私は帰るつもりはありませんから!」





まどか「あちゃー。娘がぐれちゃったよ。どうしようか? ママ?」

ほむら「マ、ママ!?」

まどか「ほむらちゃんはママでしょ? で、私がパパ」

ほむら「そ、そうだけど……」

まどか「娘の非行は親が止めないと駄目だよね?」

真面目な顔でほむらにそう告げる。
そして、ほどかをじっと見据える。

ほむら「! そうね」

ほむらもその表情から何かを察したのか、まどかと同じようにほどかを見つめる。




まどか「……。ゴメンねほむらちゃん。私、結局魔法少女になっちゃった」

ほむら「全く、あなたは私が何を言っても聞かないんだから……」

まどか「てぃひひ。ごめん」

ほむら「いいわ、その代わりあの子を絶対止めるわよ」

まどか「うん。絶対に」

そして、ほどかを見据えたまま二人は居並び、
まどかは弓を、ほむらは銃を構える。

まどか「さぁ、ほどかちゃん。悪い子にはお説教だよ!!」





覚悟してね――!
503 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:13:16.06 ID:DNGo6+BZ0
―まどか―

―― 少し前 魔女結界前 ――

まどか「……これがそうだね」

あれから辺りを少し探索。そしてほどなくして大きな結界を見つけることが出来た。

まどか「待っててほどかちゃん。みんな」

中に入ろうと一歩。
すると私を呼び止める声がした。

QB「待ちなよまどか」

まどか「キュゥべぇ。まだなにか用があるの?」

私は急いでいるんだ。一刻も早くみんなの所へ……。

QB「今の君が行ってもなにも出来ないよ」

またそれか。




まどか「さっきも言ったでしょ? そんなのは関係……」

ない。そう言おうとするがキュゥべぇはそれを待たずに続けて話し続ける。

QB「今のほどかを止めるにはそれに対抗する力が必要だ」

そんなことはわかっている。
だけど、私にはその力はない。

まどか「それもわかってる。だけど、私は普通の人間でそんな力は……」

QB「忘れたのかい?」

やれやれ、君は記憶力が悪いんだね。そう言いたげにキュゥべぇは首をふる。

失礼な。




まどか「何? 私をバカにしにきたの?」

QB「違うよ。君にいい話を持ってきたんだ」

まどか「いい話……」

QB「まどか、君には魔法少女の才能がある。
   そしてそれは、ほどかに及ばないにしてもかなり近い力だ」

まどか「!」

そういえばそうだった……。
っていうか、私は女の子だった。

まどか(父親として行動し過ぎて忘れてた)

QB「つまり、君が魔法少女になれば、もしかしたらほどかを止めることができるかもしれない」

あくまで君次第だけどね。

そう言い添える。
504 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:13:45.00 ID:DNGo6+BZ0
まどか「でも、いいの? キュゥべぇの目的は……」

この宇宙のエネルギー不足の解消。
それならほどかちゃんの邪魔をする私達は……。

QB「見てみたいのさ」

まどか「え?」

QB「こんな絶望的な状況下にも関わらず、君達はほどかを止めようとする。
   まどかに至っては生身の体で止めようとしている」

まどか「……」

QB「ほどか一人の犠牲で、自分達は幸せな毎日を送れるのにも関わらず、だ」

まどか「……それは」





QB「君達の行動は不可解で非合理的だ。種の本能に逆らっているとも思えるね。
   でも、そんな君達を見て、それに惹かれている僕達もいるんだ。……全くわけがわからないよ」

でも、だからこそ……。

キュゥべぇはそう言葉を続ける。

QB「見てみたいんだ。君達がその不可解で非合理的な行動の先に何を得るのか。
   本能に逆らってまで得る物とは何か」

まどか「キュゥべぇ……」

QB「だから――」








――僕と契約して魔法少女になってよ!!





505 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:14:23.16 ID:DNGo6+BZ0
―まどか―

―― ??? ――

ほどか「驚きました。まさかあなたが魔法少女になるなんて――」

本当に驚いた。
こんなことは考えもしなかった。

まどか「ごめんね。約束破っちゃったね」

頭を掻き、笑いながらパパは謝る。

ほどか「全くですよ、嘘つきな父親なんて最低です――」

出来る限りの悪意を込めて、そう告げる。

まどか「嘘つきな娘はどうなの?」

ほどか「……」






まどか「まぁ、可愛い娘の嘘だからね。父親としては許してあげたいんだけど」

パパは真剣な表情で一歩前に進み出る。

まどか「でも、その嘘がほどかちゃん自信も傷つけている嘘だっていうんなら話は違うよね」

そして弓を私に構える。

ほどか「なんの話ですか――」

まどか「ほどかちゃんはこんな所にいたくないって話だよ。
    私達と一緒にいたいってこと」

また、その話か。

ほどか「その話ならもう済みましたよ。私は納得してここにいるし、覚悟もしました」

まどか「どうかな」

弦を引き、そのままの態勢で静止。





まどか「確かに、ほどかちゃんはこのことについて納得しているのかもしれない。
    覚悟しているのかもしれない。でも――」


――本当に願っているのはそれじゃない。


ブン っという音が鳴る。
パパが弦を引く指を離し、形を変えられた弦が本来の自分の形に戻る際に奏でた音だ。

矢は飛んでこなかった。
もとより、パパは矢など装着していなかったのだ。

しかし、私には確かに見えた。

私のもとへ飛んでくる矢が。

一直線に私の胸へと飛来する矢が。

パパの想いが。
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 00:15:07.96 ID:/gYvcr6ao
ファンネルとかwwwwww
507 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:15:41.79 ID:DNGo6+BZ0
訂正。

―ほどか―

―― ??? ――

ほどか「驚きました。まさかあなたが魔法少女になるなんて――」

本当に驚いた。
こんなことは考えもしなかった。

まどか「ごめんね。約束破っちゃったね」

頭を掻き、笑いながらパパは謝る。

ほどか「全くですよ、嘘つきな父親なんて最低です――」

出来る限りの悪意を込めて、そう告げる。

まどか「嘘つきな娘はどうなの?」

ほどか「……」






まどか「まぁ、可愛い娘の嘘だからね。父親としては許してあげたいんだけど」

パパは真剣な表情で一歩前に進み出る。

まどか「でも、その嘘がほどかちゃん自信も傷つけている嘘だっていうんなら話は違うよね」

そして弓を私に構える。

ほどか「なんの話ですか――」

まどか「ほどかちゃんはこんな所にいたくないって話だよ。
    私達と一緒にいたいってこと」

また、その話か。

ほどか「その話ならもう済みましたよ。私は納得してここにいるし、覚悟もしました」

まどか「どうかな」

弦を引き、そのままの態勢で静止。





まどか「確かに、ほどかちゃんはこのことについて納得しているのかもしれない。
    覚悟しているのかもしれない。でも――」


――本当に願っているのはそれじゃない。


ブン っという音が鳴る。
パパが弦を引く指を離し、形を変えられた弦が本来の自分の形に戻る際に奏でた音だ。

矢は飛んでこなかった。
もとより、パパは矢など装着していなかったのだ。

しかし、私には確かに見えた。

私のもとへ飛んでくる矢が。

一直線に私の胸へと飛来する矢が。

パパの想いが。

508 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:16:17.94 ID:DNGo6+BZ0
―まどか―

まどか「ここは……」

キュゥべぇと契約し、魔法少女になった私は急いで結界内に侵入した。
そして、結界内を進み、少しすると見つけた扉を開けその中に入る。

まどか「なんだか不思議な場所だねー」

ふわふわと浮かぶ自分の体を眺め、そうひとりごちる。

まどか「声……」

声が聞こえる。

まどか「――!」

その声はとても嫌なものだった。






まどか「っ!」

怨嗟嫉妬怒り悲しみ苦しみ妬み嫉み痛み哀しみ恐れ懐疑恨み憎しみ忌悔やみ怖れ憤り嫌悪
軽蔑困惑悲痛苦悩苦痛苦悶慟哭憂悶煩悶沈痛疑心寂寥蟠り暗鬱陰鬱暗然沈鬱不快憂鬱疑心

そんな負の感情、絶望が私に襲いかかる。

まどか「こんなの……」

それはとても苦しく、悲しいものだった。
頭がどうにかなりそうで、ここにいるだけで気が狂いそのまま絶望の中で死んでしまうそう思えた。

まどか「……けて」

助けてほしい。
誰でもいいから私をここから連れ出してほしい。

そう私が強く願ったその時、聞き覚えのある声が、蜷局巻く負の螺旋から聞こえた。



509 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:16:43.43 ID:DNGo6+BZ0
パパとママと一緒にいたい。離れたくないよ――。


まどか「!」

その声は私が今求めている人の物で、私が失いたくない人の声で、


一人は嫌、寂しいよ、みんなと一緒がいいよ――。


まどか「ほどか、ちゃん……」


パパ、ママ――。




助けて――。












まどか「!!!」


急いで奥へと進む。

まだ私を蝕む声は聞こえるがもはやそんなことはどうだっていい。

まどか「ほどかちゃん! ほどかちゃん!!」

娘の名前を呼ぶ。愛する娘の名前を。

まどか「いま、行くから! パパが助けるから!!」

娘が呼んでいるんだ。
私に助けを求めているんだ。

なら――。

こんなところで絶望に付き合っている暇はない。

510 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:17:22.11 ID:DNGo6+BZ0
―ほどか―

―― ??? ――

まどか「聞いたんだ。ほどかちゃんの声を」

ほどか「……」

まどか「あなたは助けを求めていた。あなたは救われたいと願っていた」

ほどか「……」

まどか「だから、私が助ける。ううん、私達が」

ほむら「えぇ、そうね」


ほどか「……。百歩譲ってそうだとしても、私は止まるわけにはいかない。
    私が諦めれば多くの人が悲しむことになる――」

それは許されないことだ。
それは許してはいけないことだ。





ほどか「だから、私は――!!」

ファンネルを全面展開。

ほどか「あなた達を打ち倒し、先へと進む――!!」

いって! ファンネル――!! 

その声に従い、ファンネルはパパ達へと襲いかかる。

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「わかってるわ!」

ママが先程と同じようにファンネルを撃墜しようと時を止める。





ほむら「いまの内に!!」

ほどか「させません――!」

ほむら「! どうして!」

ほどか「忘れたんですか! 私にも時を操る能力はある――!」

そしてそれはあなたと同じ。ママだけが時を支配できるわけじゃない。

ほどか「さらに、今の私の能力は――!」

以前の私とは比べ物にならない。だから――。


ほどか「いって! ファンネル――!」

ほむら「そんな!? 対象に触れずに!!?」

それくらいの芸当、出来ないで世界を救おうとは考えない。
絶対の力がある私だからこそ、その身を捨ててでもあなた達を守ろうと考えたんだ。
511 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:17:52.18 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「防げるものなら防いでください――!」

ほむら「く!!」

ママだけならば、避けることは出来るだろう。
だけど、他のみんなは無理だ。
そもそも、時を無制限に操ることが出来る私に対して勝利を得ようなどということが間違いだったんだ。

ほむら「終わりです――!」

ほむら「みんな!!」

ファンネルのビームがパパ達を捉えようとしたその時。

まどか「勝手に終わりにしてもらったら困るな!」

動けないはずのパパが手をかざし、みんなを守るべく結界を張った。





ほどか「そんな! どうして――!」

時は止めているはず! なのにどうして!!

ほどか「まさか、パパも時間に関連した願いを――!?」

まどか「それは、どうだろうね!」

驚き思わず時を止めるのを忘れてしまう。
そして私の驚きの隙をついたパパが一気に私に距離を詰め、私の懐にまで迫り至近距離で弓を放とうと構える。





ほどか「近づいたところで――!」

私には盾がある、自動で私を守護する鉄壁の守りが。

まどか「! 父親と娘の間に割って入るなんて悪い子だね!!」

パパの放った弓は私を貫くことはなく、盾に拒まれる。
そして、右側に浮かぶ剣を操り目の前にいるパパに向け振り下ろす。

ほどか「殺しはしません――!」

まどか「殺されるつもりもないよ――!」

その攻撃は身を捻って避けられる。
だが、それも予想済みだ。
512 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:18:23.42 ID:DNGo6+BZ0
まどか「!!」

地面を叩き、砕く。
その際に発生した飛礫がパパに襲いかかる。

顔に襲いかかる飛礫をガードしようとパパは腕を顔の前でクロスさせる。

そう、それが狙いだ。

ほどか「ボディーががら空きですよ――!」

鳩尾に向けて拳を放つ。
これで意識を飛ばすことが出来るはずだ。

ほむら「させない!」

そうはさせないとママがパパの前に立ち、私の拳を両手で受け止める。

ほむら「親を殴るのは倫理的にどうかしら」

ほどか「子供に銃口を向けておきながら今更なにを――!」

すぐさま反対の手でママを突き飛ばそうとする。
だがママは一気に後ろに跳躍することでそれを避け、私と距離を取る。





さやか「親子だけで盛り上がってるんじゃないっつうの!」

杏子「アタシ等も忘れんなよな!!」

さやかさんと杏子さんが私の背後に回り込み近接攻撃をしかけようと自身の得物を振りかぶる。

ほどか「そんな攻撃が――!」

さやか「な!」

杏子「くそ!」

翼を羽ばたかせ、その風圧により後ろの二人を吹き飛ばす。
そして、態勢を崩した二人に追撃を喰らわせようと数基のファンネルを操る。





ほどか「撃ち抜く――!」

マミ「撃ち落とす――!」

四散するファンネル。
マミさんが空中に飛び上がり、さやかさん達を狙い撃とうとするファンネルを全て撃ち落としたのだ。

ほどか「邪魔を――!」

マミ「するに決まってるわよ!!」

依然、空中に浮かぶマミさんに向け、取り囲むようにファンネルを操る。
513 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:18:51.25 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「避けられますか――!」

まどか「その必要はないよ!」

パパが一本の矢を放つ。
桃色の軌道を描きながら、その弓はまっすぐマミさんのほうに向かい、このままではマミさんを貫ぬいてしまう。
そう思ったが、矢は途中で光となり分散、マミさんを囲むファンネルに向け、それぞれがその軌道を修正した。

ファンネルの爆散の煙に飲まれその姿を隠すマミさん。

煙が晴れようやくマミさんの姿が現れたその時には。

マミ「ティロ・フィナーレ――!」

巨大な砲口を私に向けていた。
そして、ゆっくりと近づいてくる光の塊。






ほどか「そう何度も同じ手が――」

さやか「通用しないのはわかってる!!」

マミさんの砲撃と同時。
さやかさんが空中に浮かぶマミさんの背を踏み台に高く飛び上がり、そしてそのまま上空に飛翔。

そして砲撃を避けようとする私の行動を制限するように空中から剣を大量に投下。
私の周囲に大量の剣が突き刺さる。

ほどか「こんなもの時間を止めれば――!」

時間を止めすぐさま回避行動に出る。
目の前には巨大な光。そして周りには大量の剣。



ならば逃げる先は――。

514 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:19:20.54 ID:DNGo6+BZ0
まどか「上に行くよね!!」

ほむら「思考が煤けてるわよ!」

ほどか「――!!」

上空には待ってましたとばかりにママとパパが。
そしていつの間にか杏子さんの仕業であろう大量の鎖が張り巡らされていた。

ほどか「いつの間に――!」

まどか「さやかちゃんの剣に目を向けている間にだよ!」

ほむら「観察力が足りなさ過ぎるわ!」

鎖により高く飛ぶことが叶わなくなった私に対して、ママはランチャーを構え発射。
そして、眼前に迫りくる砲弾。





ほどか「そんな武器で私に傷をつけられると――!」

避けるまでもない攻撃。ならば盾で受けきってそのまま反撃に出ればいいだけだ。

ほむら「観察力が足りないと今言ったはず!!」

ほどか「な――!」

砲弾が私の目の前に来た瞬間、理解した。

ほどか(砲弾の影に隠れて矢が――!!)





私の死角を突くように砲弾を隠れ蓑にし直進する桃色の矢。
その軌道はちょうど砲弾を防ぐべく移動した盾の防御範囲スレスレを通るように描き、私の胸に向け発射されていた。

ほどか(避け――)

胸部は鱗の鎧で守られているとはいえ、パパ程の力を持った魔法少女の攻撃には耐えられない。
なら、致命傷を避ける為に回避しなければ。




――だが、私がそう考えた時には間に合わず、そして、その矢は私の体を貫いた。


515 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:20:13.02 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「――」


お腹をさする。あの瞬間、身を逸らしなんとか胸部へのダメージは避けた。
だけど、その行為は位置をずらすに留まり、腹部へと矢を受けてしまったのだ。

だが、そこに傷はない。

ほどか(どうして――?)

確かに矢は私を貫いたはず。
だけど、痛みもなく血も流れてはいない。


ほどか「――」

なにが起きたのか理解できず、空中に静止したまま地面に降り立つパパとママを見る。





まどか「……」

ほむら「……」

二人はなにも言わずにただ私を見つめる。

ほどか「――。確かに矢は私を貫いたはず。なのにどうして、私にダメージがないんですか?」

不可解な出来事に対して答えを求める為にそう質問する。

まどか「そりゃ傷つくはずないよ。だってほどかちゃんを貫いたのは癒しの矢だもん」

ほどか「――?」

癒しの矢? それはどういう――。

ほむら「まだ気づかない? はぁ……。本当にあなたは自分のことに関しては無関心なのね」

ママは呆れるように溜息を吐く。

自分のこと?







ほむら「体をよくみなさい。変化は確かにあるわ」

変化……。変わったところなんてない。
傷ひとつついていないんだ。

傷ひとつ……?

ほどか「――!」

おかしい。私はさっきまで傷だらけのはずで……。
自分への戒めとして残しておいた傷が消えているなんて……。

ほむら「気づいた? あなたがさっきまでの戦いでついた傷は元通りのはずよ」
516 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:20:43.42 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「なぜ、そんなことを――」

意味がわからない。
敵である私の傷を癒してなんの得が……。

杏子「ホント。わけわかんねーよな」

さやか「まぁ、そこがまどかのいいところなんだけどね」

マミ「テレパシーを送られた時はびっくりしたわ」

ほどか「テレパシー――?」
517 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:21:24.76 ID:DNGo6+BZ0
〜〜 回想 〜〜

ほどか「驚きました。まさかあなたが魔法少女になるなんて――」

まどか「ごめんね。約束破っちゃったね」

まどか『みんな聞いて』

ほむら『テレパシー? どうしたのまどか』

まどか『ここに来る前にあった空間で聞いた声のことを話すね』

さやか『あぁ、あれね』

マミ『まどかさんもあれを聞いたのね』

まどか『うん。そしてほどかちゃんの声も』

杏子『ほどかの声?』

ほむら『聞かせて』

まどか『あそこで私は――』

ほむら『そう……。あの子はやっぱり……』

杏子『あのバカ……。自分にまで嘘つきやがって』

さやか『絶対止める。そんな話を聞いたらなおさらだよ』

マミ『えぇ、目の前の苦しんでいる人を救えないで、なにが正義の魔法少女よ』

まどか『みんなありがとう。それでね――』

杏子『ほどかの傷を治す!? なんでそんなこと』

まどか『だって傷だらけのほどかちゃんなんて見てたくないもん』

さやか『いやいや、そんなこと気にしている場合じゃ……』

マミ『そうよ。そんな甘い考えが通用する相手じゃ』

ほむら『わかったわ』

さや杏『ほむら!?』

ほむら『自分でやっておいてなんだけど、私もあの子のあんな姿を見ているのは正直辛い。
    だから、まどかの言う通りにするわ』

杏子『ああもう! このバカ親共は!』

マミ『甘さは親ゆずりね……』

まどか『てぃひひ///』

さやか『いや、褒めてないって』

ほむら『でも、手はあるの? いくらまどかがいるといってもあの子の力は強力よ。
    私達のことを考えて全力は出していないようだけど……』

さやか『嘘……。今でもあんなに強いのに?』

まどか『あんまり強い力を出し過ぎたら私達を殺しちゃうからね。たぶん一割も力を使ってないんじゃないかな』

杏子『は、冗談きついって……』

マミ『じゃあどうするの? そんな相手に傷つけずに戦うなんて……』

まどか『それなんだけど、確認してみたいことがあるの』

ほむら『確認したいこと?』

まどか『うん。それは――』


      〜〜 回想 終 〜〜
518 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:21:51.27 ID:DNGo6+BZ0
さやか「でもこれで決まりだね」

杏子「あぁ」

ほどか「なんのことです――」

話が読めない。一体なにが決まったというのか。

マミ「あなたの弱点は胸にあるということよ」

ほどか「――!」

ほむら「正確には胸部にあるソウルジェムかしら」

ほどか「なぜそうといえるんですか――」

そんな素振りは一切見せていない。
そもそも鎧のせいで見ようとしても見えないはずだ。





まどか「さっき、私がほどかちゃんの体を色々触った時だよ?
    でも、確認したけど、そんな物はなかったからね。だから唯一見てない胸の部分にあるのかなって」
    
ほどか「あの時に――?」

確かに色々と触られはしたが胸部には一切触れられていないはず。
じろじろと見つめられはしたが……。

さやか「だから、まどかはそれを確認するために矢を放ったってわけ。
    あんたの胸に向けてね」

杏子「そしたら案の定、お前は胸を庇うように必死で避けたってわけだ」


ほどか「成程……。ですがそれならなぜ、私の傷を癒す必要があったんです?
    あのまま普通の矢を放っていたら私を倒せたかもしれませんよ――」

現に危なかった。
519 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:22:25.26 ID:DNGo6+BZ0
まどか「それは単純にほどかちゃんの傷ついている姿を私が見たくなかったから。
    自分の娘の傷だらけの体なんて見てて心に悪いよ」

ほどか「それだけの理由で――?」

まどか「私にとっては大事な理由なの」

最初見たときショックで死ぬかと思ったんだから。
プリプリ怒りながらそう言うとパパは頬を膨らませる。

ほどか「……。仮に私の胸にソウルジェムがあるとして、それをどうするつもりです?
    ソウルジェムは魔法少女の本体といえるもの。それを破壊すれば私は死にますよ――?」



「それは嘘だね。ほどか」

ほどか「――!」

この声は……。






マミ「キュゥべぇ!」

さやか「どうしてここに!?」

QB「なに、ちょっとね。今はそんなことどうでもいいだろう?」

杏子「まぁ、確かに。で、嘘ってどういうことだ?」

QB「ほどかの胸にあるソウルジェムを壊してもほどかは死ぬことはない。
   そういうことさ」

さやか「どういうこと?」

QB「そもそも、今君たちが戦っているほどかは本当のほどかではない。
   本当のほどかは」

あれさ。

そう言ってキュゥべぇは奥にある白い壁を指す。






マミ「あの壁が……?」

さやか「あれってただの壁じゃないの?」

杏子「……? 待てよく見たらあれ動いてるぞ!」

QB「それはそうさ、それは壁じゃない。
   魔女の繭だからね。正確に言えばほどかの繭かな」

さやか「!」

マミ「この白いの全てがそうだっていうの……?」

杏子「でかすぎんだろ……」

QB「つまり、今君たちが戦っているのは、その繭から生まれるほどかを守る為に繭から分離した使い魔みたいなものさ。
   まぁ、意志は繋がってるからほどかに変わりはないんだけどね。でも、彼女を倒してもほどかは死なない」

ほむら「本体であるあの繭さえ無事なら、今戦っているあのほどかはいくらでも蘇るってこと?」

QB「そういうことだよ」
520 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:22:56.87 ID:DNGo6+BZ0
さやか「ちょっと待ってよ! じゃあほどかを止めるにはどうすればいいのさ!」

QB「それは簡単だよ。あの繭が孵化するまえにほどかを説得できればいい。
   その為に君達はここにいるんだろう?」

マミ「えーっと。つまりやることは変わらないってこと?」

QB「そうだね。そして一つ教えておこう。
   ほどかの胸にあるソウルジェム、あれは本体である繭から力を送られるためのもの。
   つまり胸にあるそれを壊せば、あのほどかは無力化できるよ」

ほどか「――!!」

余計なことを……。

杏子「へぇ、それはいいことを聞いたな」

マミ「本当に。しかもそれを壊してもほどかさんは死なないんでしょ?」

QB「そうだね、あくまで力を受容するための装置にすぎないからね」





ほどか「それがわかったからと言って、なんですか?
    結局のところ、この私を倒しても私が帰りたいと本気で望まない限りあなた達の願いは叶いません。
    そして、それを私が望むことはありません――」

大きく飛翔し、後ろにいるマミさん達を越して繭の前に降り立つ。

ほどか「つまり、あなた方のやっていることは全て無駄です――」

そして、マミさん達のいる方へと手をかざす。

杏子「あれは!」

さやか「まさか!」

マミ「二人とも後ろに下がって!」

ほどか「遅い――!!」

私のやろうとしたことがわかったのか、すぐに後ろへ下がろうと試みるマミさん達。
だけど、その行為は無駄で、すでにマミさん達は魔法陣に囲まれそこから噴き出す光の柱に飲み込まれた。
521 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:25:10.56 ID:DNGo6+BZ0
まどか「みんな!」

ほむら「っく!」

パパ達がマミさん達のもとへと走る。

マミ「う……」

さやか「相変わらず……。それは反則でしょ……」

杏子「くそったれ……」

まどか「待っててすぐに治すから!」

パパがボロボロのマミさん達の傷を癒そうとする。

ほどか「させない――!」

だが、それを許す私ではない。
もう一度魔法陣を召喚するために手をかざす。






ほどか「もう、こんなことは終わりにしたいんです――!」

ほむら「それはこっちのセリフよ!」

ママが私の攻撃を妨害しようと私のもとへとまっすぐ跳躍する。

ほどか「あなた程度の力一つでなにが出来ると――!」

迎え討つようにファンネルをママの前に展開。
そしてビームを放つ。

ほむら「そんなもの――!」

発射されたビームを避けるために地を蹴り空中へと一気にジャンプ。
寸でのところでそれを躱す。

だけど

ほどか「甘い――!」

ほむら「な!? きゃあああ!」

ママの足を絡め取るように鎖を召喚し、そのままパパ達のいる方へと引き落とす。





まどか「ほむらちゃん!」

落下するママを受けとめようとするパパ。

ほどか「人の心配をしている場合じゃありませんよ――!」

そのパパに向け巨大な砲銃を召喚し、狙いを定める。

さやか「そんな!」

杏子「あれはマミの!!」

マミ「どうして!」



ほどか「ティロ・フィナーレ――!!」

まどか「!!?」

ママを受け止めることに成功したパパを巨大な閃光が包み込む。

そして辺りに轟く爆音。

522 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:26:20.95 ID:DNGo6+BZ0
まどか「あ、う……」

ほむら「ぐ、うぅ……」

さやか「まどか! ほむら!!」

マミ「しっかりして!」

杏子「くそ!」

必死に立ち上がりパパとママのもとへとよろよろと向かうマミさん達。

ほどか「これでわかりましたか? 私は全ての魔法少女を消す存在。
    つまり、過去、現在、未来に存在する全ての魔法少女の能力が使えるんです。
    そして、これが私とあなた方の力の差……。覚悟の差です――」





さやか「あんた!」

その言葉を聞いて、私を睨み付けるさやかさん。
その顔は憎しみに彩られていた。

そうだ、これでいい。
どうあっても諦めてくれないというのなら、いっそ。

ほどか(憎まれたほうがいい――)

そうすれば私のことなんて見捨てて帰ってくれるだろう。

まどか「やめて、さやかちゃん。ほどかちゃんは悪くないよ」

睨み付けるさやかさんの肩を掴み、パパは立ち上がる。

だけど、ふらふらで無理矢理立っているであろうことがすぐに理解できた。






ほどか「悪くない? なにを馬鹿なことを。今、私はあなた達を殺そうとしているんですよ?
    それのどこが悪くないと――?」

ほむら「それを悪いことだと理解しているのなら、あなたは悪くないわ」

パパと同じようにふらふらの状態でママも立ち上がる。

マミ「暁美さん! 私の肩に掴まって!」

マミさんが慌ててママを助け起こす。
そして、その肩につかまる。

ほどか「意味がわかりませんね。悪いことだとわかっているから悪いことをしても許される?
    そんな考えが通用するわけないでしょう――?」


罪は罪だ。わかっていてそれを行うなら余計タチが悪い。
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 00:26:41.24 ID:uRtZrHtLo
面白い気がしてたけど日を置くと冷めるもんだな
今更この量の続きを読む気が起こらん
524 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:26:55.66 ID:DNGo6+BZ0
杏子「よくいうよ、アタシ達を殺せてないくせに」

杏子さんがそう悪態をつく。

ほどか「ですが、あなた達を傷つけたのは事実。そんな私の行いを悪くないなんて。
    あなた方の甘さにはほとほと呆れますね――」

そうだ、私はパパ達を傷つけている。
殺すつもりはないが、傷つけている、その事実に変わりはない。

ほどか「さぁ、どうします? 傷を治してまだ続けますか? 
    私はいいですよ。まぁ、今度は無駄話も出来ないくらいに痛めつけますが――」

悪意を持って、笑いながらそう言い捨てる。

これで、帰ってくれればいい。
そうすれば、もう誰も……。

まどか「帰る? 冗談言わないでよ」

パパがまっすぐ私の瞳を見つめる。




まどか「帰られるわけないじゃん」

ほどか「どうして、ですか――」

なぜそこまでして……。
そんなボロボロになりながら……。

まどか「だってほどかちゃん泣いてるもん。
    泣いてる娘を一人残して親が帰るなんてありえないでしょ」

ほどか「は? 私が泣いてるわけ――」

ポロリと頬をなにかが伝う。
その冷たいものがなにかを理解するのに時間はそれほど必要なかった。

ほどか「あ――」





まどか「無理して悪ぶらなくてもいいよ。
    ほどかちゃんがそんな子じゃないことくらいわかってる」

ほどか「で、でも私は――」

まどか「傷つけたからなに? 人が生きていく上で、誰も傷つけることがないなんて本気で思ってるの?」

ほどか「――っ」

まどか「私達のは体の傷なだけまだマシだよ。こんなのそのうち治るし」

そう言い捨てるパパ。
その瞳からはもはや甘さは消えていた。
525 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:27:33.79 ID:DNGo6+BZ0
まどか「ねぇ、ほどかちゃんは私が魔法少女にどうやってなったと思う?」

ほどか「――?」

どうやって?
願いの内容を聞いているのか……。

でもそんなの……。

ほどか「わかるわけないですよ。時を操っているんだから時間に関係したお願いじゃないんですか――?」

でもそれだと、癒しの力を持つ理由がわからない。

まどか「違うよ。時間なんか関係ない」

ほどか「じゃあ、わかりませんね。あなたが何を願ったのかなんて――」

そもそも知る必要もない。





QB「やれやれ、はっきり教えてあげればいいじゃないか。まどか」

キュゥべぇが回りくどいことを。とい言いたげに呆れた声を出す。

QB「ほどか、まどかはなにも願っちゃいないよ」

ほどか「は――?」

さやか「え、それってどういう……?」

杏子「願っていないってどういう意味だよ」

QB「そのままの意味さ。まどかは自分の望みを言わなかった。
   なにも願わずに、魔法少女になったのさ」

マミ「そんなことが可能なの?」

QB「僕も驚いたよまさかこんなことが起こるなんてね――」

526 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:28:27.45 ID:DNGo6+BZ0
―QB―

――少し前 結界前にて ――


QB「まどか、願いはどうするんだい?
   君ほどの才能ならどんな途方もない望みだろうと叶えられるだろう」

数多の時を束ね因果の特異点となった彼女ならばどんな願いも叶えられる。

まどか「……」

QB「さぁ、鹿目まどか。その魂を対価にして君は何を願う」

まどか「私……」

一つ深呼吸をするまどか。そして、落ち着いた目で語る。

まどか「願いは望まない」

QB「な――!」

どういう意味だ。
まさか、魔法少女にはならないということじゃ。





まどか「勘違いはしないで。魔法少女にはなるよ。
    ほどかちゃんを止めるためには力が必要だから」

QB「なら、どういう……」

まどか「そして、私が願うのはほどかちゃんを止めること。
    それは私自身の意思で、私自身の想いで」

QB「……」

まどか「奇跡なんかに頼るんじゃなくて、私が自らの意思でほどかちゃんを止める」

私の想いであの子を止めてみせる――。
私の意思であの子を連れ戻して見せる――。




まどか「これが私の想い、私の祈り」

人の想いの力が引き起こす。絶対の理。

QB「そんな、馬鹿な!」

エントロピーが――!!
まさか、願いも言わずに彼女は――!


まどか「さぁ、キュゥべぇ! 私にほどかちゃんを止める為の力を――」


あの子に私の想いを伝える為の力を――!


QB「――!!」
527 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:29:09.29 ID:DNGo6+BZ0
―ほどか―

QB「まさか、願いを言わずに想いだけで魔法少女になるなんて、そんなの聞いたことがないよ」

マミ「じゃ、じゃあまどかさんはなにも望まずに願わずに魔法少女になったっていうの?」

QB「その通りさ。だからかな、まどかは魂を犠牲にしてはいない」

さやか「それって……」

QB「魂を対価に願いを叶え、魔法少女にするのが僕達のシステムだからね。
   その願いがないのに魂をとれるわけがないよ」

杏子「じゃあなんでまどかは魔法少女になってるんだ?」

QB「さあね。まどか流に言えば想いの力が引き起こしたんじゃないかな」

まどか「てぃひひ///」





QB「全くメチャクチャだよ。想うだけでこんなことを起こすなんて」

ほどか「つまりお父さんは根本的に私達と違う魔法少女ということ――?」

キュゥべぇにそう質問する。

QB「そうだね。僕達の力を借りて魔法少女になったことは事実だけど。
   代価は支払っていない。だから、根本的には君達とは違うといえる」

いや、代価は払っているのかな。
そう自分の言葉を否定する。

QB「まどかが支払った代価は自らの想い。それはほどか、君を止めたいという強い意志だ」

ほどか「――!」





QB「そしてそれは今も強くなり続けている」

じっと私のことを見据え、キュゥべぇは語り続ける。

QB「だからまどかの力に制限はないよ。
   想い続ける限り、まどかは決して倒れない。決して諦めない」





だから、絶望しない――。



528 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:29:36.83 ID:DNGo6+BZ0
QB「ある意味でまどかは正真正銘の魔法少女になったと言えるね」

ほどか「っ――!」

そんな、馬鹿なことが……。

まどか「ほどかちゃん。世界を救おうとするあなたの行為は立派だよ?
    だけどね」


――その為にあなたが命を犠牲にすることは間違ってる。


ほどか「そんな、こと――!」

綺麗事だ。
それが間違っているというのなら、人が今も生きながらえていることすらも許されないことになる。

ほどか「人は大勢の人を生かすために少数の犠牲を容認してきました!
    それは種を残す為に! 未来に生きる人達の為に! 明日の為に!」

だから、私も過去に習って自分の命を投げ出してでも遂行する。
みんなの生きる場所を守る為に、大好きな人達の笑顔の為に……。






まどか「そうだね。確かにそう。でもね、本当に人がそれを望んでいると思う?」

ほどか「なにを――!」

まどか「人が歴史を、悲しい記録を残すのは、その過ちを繰り返さない為。
    次、同じことが起こった時の為に対策を講じる為」

ほどか「それが、どうした! それでも犠牲が出るのは止むをえない場合もある――!」

今がそうだ。私が止めないと宇宙のエネルギー問題は解決できない。
そして、それを解決しないと、苦しむ魔法少女は今も生み出され続けるんだ。

ほどか「それを間違っているというのなら! あなたが誰も犠牲にせずに済む方法を今出して見ろ――!」

出来るはずがない。そんなこと。





ほどか「出来るはずないよね! だっていくら想いの力が強くても、永遠の存在にはなれないあなたが!
    未来永劫ずっとこの宇宙を守れるわけではない! だって死ねばあなたの想いは無くなるんだから――!!」

人の想いなんてその程度だ。死ねばその人の想いはなくなる。

だから、絶対の存在が必要なんだ。
永遠の存在がこの世界を見守り続けなければならないんだ。


ほどか「なにも出来ない無力の分際で! わかったふうな口をきくな――!!」

そう叫び、パパに一気に近寄る。

そして剣を振り降ろす。
529 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:30:09.59 ID:DNGo6+BZ0
さやか「まどか!」

ほどか「邪魔だ――!」

パパを助けようとするさやかさんの動きを止める為に地中から鎖を召喚し足を絡め取る。
その動きを封じる。


そして剣を避ける為に後ろにバックステップしたパパに追撃。

振り降ろした剣を地面に突き刺す。そしてそれを軸にして、円を描くようにくるりと横に一回転。
同時に足蹴りを放つ。

まどか「う!!」

ほむら「まどか!」

私の蹴りをモロに受け吹き飛ぶパパを抱き留めようとママが飛び出す。





ママがパパを受け止めたと同時に用意しておいた砲銃を構える。

ほどか「喰らえ!!」

マミ「させない!!」

そうはさせないとマミさんも砲銃を構える。

「「ティロ・フィナーレ――!!!」」

そして、同時に発射。

巨大な光の塊が二つ大きな轟音をたてぶつかり合う。





マミ「こっちは本家よ! 偽物が適うわけ!!」

徐々に私に迫る光の塊。


ほどか「勘違いを! 狙いはこれだ――!!」

マミ「な――!?」

光の壁に隠れていたファンネルがマミさんの前に現れる。
それらはすでに発射体制を取っておりマミさんを狙い撃とうとしている。

マミ「しまっ――!!」
530 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:30:40.49 ID:DNGo6+BZ0
杏子「マミ――!!」

杏子さんが、避けきれないと判断し、マミさんに発射口を向けるファンネルを叩き落とす。

ほどか「それも予測済みだ――!」

マミ「佐倉さん!」

杏子「な!?」

ファンネルを撃墜した杏子さんのさらに上空、そこには魔法陣がその姿を広げている。

そしてその中心部から雷音。

ほどか「痺れるだけじゃすませない――!!」

杏子「が!!?」

そのまま上空に浮かぶ杏子さんを雷撃が貫いた。






さやか「杏子!! あんたって奴はーー!!」

マミ「駄目よ美樹さん! 迂闊に近づいちゃ!!」

頭に血が昇ったさやかさんが戒めを断ち切り、私の胸を貫こうと剣を突くように構え突進。

ほどか「そんな蛮行が――!!」

だがそれは盾によって塞がれさやかさんは衝撃の反動によりよろける。

さやか「つ!」

その隙を逃さないように剣を振るう。

さやか「殺す覚悟もないあんたの剣なんて――!!」

ほどか「それはあなたも一緒のことだ――!!!」

うまく態勢を整え、かろうじてさやかさんは私の剣を受け止めることに成功した。




鍔迫り合いの状態になり、じりじりと押し合いが続く。

さやか「ふ――」

さやかさんの力が緩む。
そして一気に後ろにのけぞり私の態勢を崩そうとする。

だが、それを予想していた私は同じように力を緩め後ろに半歩下がる。

ほどか「芸のない!!」

さやか「どう、かな!」

だが、ただのけぞっただけではなかった。

さやかさんはのけぞったまま地面に手を伸ばしそのままバク転。
そして、足を曲げたまま地面に着地した瞬間、足を伸ばし、地を蹴る。その勢いを利用しそのまま私にもう一度突進を喰らわせる。

だが、当然そのような攻撃は盾に阻まれることになる。
531 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:31:06.58 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「同じことを繰り返す――!!」

さやか「さっきとは違う!」

マミ「その通りよ!!」

背後からマミさんの放つ銃撃の音が聞こえる。

どうやら私とさやかさんが争っている間に後ろに回り込んでいたみたいだ。

マミ「当たった! ッ――!?」

だが結果的にその銃撃が私に当たることはなかった。

マミ「そんな消え――!?」







ほどか「残像ですよ――!」

マミ「く――!」

超スピードを持ってマミさんの背後を取り、そして蹴りを浴びせかける。

マミ「きゃあ!!」

咄嗟に振り向きガードを試みるマミさんだが間に合わず、そのまま吹き飛ばされる。

マミ「っ!」

吹き飛ばされたマミさんはなんとか態勢を整えようと空中で身をひねり、そのまま縦に回転してなんとか着地する。
そして膝を着きながらも私の方を向き直るが

マミ「な――!」

その眼前にはファンネルの銃口。

そして閃光がマミさんの体を貫く。





マミ「が、は……」

マミさんは血を吐きその場に倒れ伏す。

さやか「マミさん!」

マミさんの放った銃弾を避ける為に空中に飛び上がっていたさやかさん。
そして、そのまま着地。

さやか「ぐう!!?」

着地と同時にさやかさんが苦痛の声をあげる。
それもそのはず、さやかさんの体には私によって生み出された、地面から生えた刀身が突き刺さっていた。


ほむら「さやか! マミ! 杏子!」

血を流し倒れる仲間の名前を叫ぶママ。
その表情には苦悶が広がっていてみんなの安否を気遣っているように見える。
532 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:31:37.73 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「大丈夫、殺してはいません」

殺すもんか。
ぼやける視界を手で拭うことではっきりさせる。

ほどか(なぜ、涙なんて――)

涙が止まらない。
なぜだ。どうして私は泣いて……。

ほどか(くそ! 止まれ! 止まれ!)

強引に目をこする。

泣くなんて傲慢だ。偽善だ。

ほどか(あの人達を止めるにはこうするしかないのに――!)

それを悲しむなんて間違ってる。

だが、涙が止まることはなかった。






まどか「もう無理はしないで」

ほどか「――!」

パパがママに支えられながら立ち上がる。

ほどか「まだやるっていうの――!?」

もうやめてほしい。これ以上こんなことしたくない。

ほどか「もう、もうわかったでしょ!? あなた達が私に敵うわけない!
    力の差がありすぎるの――!」

だから諦めて。これ以上はもう……。

まどか「諦めない」

ほどか「――!!」

どう、して……。





ほどか「もう、いやだよ。もうやめてよ……」

膝が折れる。
なんでこんなことしなくちゃいけないのか。

どうして私は大好きな人達を傷つけないといけないのか。

ほどか「こうなったら時を止めて……」

そうだ、無理矢理追い出してしまえばいい。

それから、記憶を消せばママ達がここに来ることもない……。
そして、結界を隠して時間が来るまで待てば……。

ほどか「そうすれば、私の勝ち……」

諦めて帰ってもらおうなんて考えが甘いんだ。
わかってもらおうとしたのが悪いんだ。
533 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:32:06.75 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「そうだ、そうすればいい――」

震える足を無理矢理立たせて時を止めようとする。

まどか「ねぇ、ほどかちゃん。あなたはさっき死んだら想いはなくなる。そう言ったよね?」

そんな私をパパが話しかけることで静止する。

ほどか「? それがどうしましたか――?」

確かに言った、その人の持つ意志はその人が滅べば無くなる。
当然のことじゃないか。

まどか「それは間違いだよ」

ほどか「なにが間違いだって――」




まどか「人の想いは伝えることができる。人から人へと渡すことが出来るんだよ」

ほどか「なにを言って――」

パパがなにを言っているのかわからない。
でも、その言葉は真に迫る感じがした。

まどか「人の想いは人に伝えることで、繋げることができるんだよ」

祈る様にパパは両手を合わせる。
すると、パパの周囲に白く輝く光が沸き上ってきた。





まどか「そして繋がった想いは人を強くする――」

目を瞑り、パパは賛歌を歌うように言葉を紡ぐ。

その言葉に影響されてか光はその輝きを一層強め、広げていく。

ほどか(なに、この光――)

まどか「ほどかちゃんに見せてあげる。人の想いが生み出す力を」

目をゆっくりと開き、そう宣言するパパ。
その瞳は黄金色に輝いているように見えた。

534 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:32:42.00 ID:DNGo6+BZ0
さやか「う、あれ……」

まどか「その力があれば人はどんな困難でも乗り越えることが出来る」

光が満身創痍のママ達を包み込む。

杏子「傷が……」

まどか「どれだけ傷つこうとも、人は自分の手で未来を掴んで見せる」

その傷を癒すように、彼女達の助けになるように。

マミ「治って……」

完全に傷が癒えたのか、立ち上がり、自身を包み込む光を眺めるママ達。






ほむら「これは、この心に流れてくるのは、まどかの想い……?」

さやか「いや、違う。まどかだけじゃない」

杏子「さやかやマミ、ほむらの想いも……?」

マミ「ううん。私達だけじゃない。ほどかさんを想うみんなの想いが……」

まどか「ほどかちゃん。あなたを一人ぼっちになんて絶対させない」

その言葉に白く輝く光が破裂したように辺りに広がる。

そしてパパの姿が高密度の光の粒子に包みこまれる。
その瞬間、一気に収束。






まどか「ほどかちゃんを一人苦しませたりなんかしない」

光の中から姿を変えたパパが現れる。

さやか「まどか……」

杏子「お前……」

マミ「その姿は……」

白と桃色の衣により形作られたドレスを着、そして薄桃色のブーツを穿き
足に届くまで髪が伸びたパパ。
その背中には二枚の翼をはためかせ、黄金に輝く瞳を私に向ける。






まどか「あなたを一人、絶望の底に沈めたりなんて、しない――!!」

手を上空にかざす、するとそこには弓が現れ、その弓を掴むとパパは一気にその弦を引き絞り天に向けて矢を放った。

上空にて光となって四散する桃色に輝く矢。

その光はそれを呆然と眺めていたマミさん達に降り注いだ。

マミ「――!!」

さやか「これは――!」

杏子「力が湧いてくる――!」


光に包まれたマミさん達もその姿を変化させる。
535 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:33:11.15 ID:DNGo6+BZ0
マミ「凄い……」

さやか「これならいける……」

杏子「あぁ!」

それぞれ、その姿を変えたマミさん達が私を睨み付ける。

ほどか「――ッ」

その凄まじい気迫に押され後ずさる私。
だがすぐに思い直し、戦闘態勢をとる。

ほどか「姿を変えたからといって、なんですか――!」

そうだ、どれだけ力を増幅させても私に勝てるわけがないんだ。
想いの力なんかに私の覚悟が負けるはずはないんだ。





さやか「本当にそう――?」

ほどか(速い――!)

さっきまで離れていた場所にいたと思っていたさやかさんがいつの間にか私の目の前に現れる。

その姿は、侍が着る藍色に染められた袴のようなものを着用し、背には蒼く清廉に輝く翼。
そして、腰には日本刀が携えられていた。

鞘に手を置き刀を抜きはらおうとするさやかさん。

だけど、黙ってそれを許すほど今の私は甘くない。

ほどか「不用意に近づくから――!」
隙だらけのさやかさんに先に攻撃しようと大剣を操る。
そして、さやかさんの体を風圧で吹き飛ばすように縦に下ろす。

だが、

ほどか「――!?」

大剣はその役目を果たすことなく私の前で砕け散った。





ほどか「そ、そんな――」

さやか「あんたの覚悟は誰かを傷つけてまで成し遂げられる程、強くはないよ」

一閃。

さやかさんが刀に触れた瞬間、青の閃光が奔ったかと思うと、さやかさんの姿は私の後ろへと移動していた。

そして、刀を鞘に納める音が聞こえると同時。
私の覚悟を示す剣はその姿を瓦解させ、真っ二つに斬り離されてしまった。


ほどか「あ、ありえない――。こんなことは――」

ありえない。ありえるはずがない。
私の力は、最強のはずなんだ。全てを成し遂げる為に私は無敵の力を、強さを得たはずなんだ。

なのに、どうして――。
536 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:33:56.16 ID:DNGo6+BZ0
杏子「独り善がりの力なんて最強のわけねーだろ」

ほどか「ッ!!」

空中へ跳躍した杏子さんが赤い色の矛を構える。

西洋の騎士を思わせる朱に塗られた甲冑に全身を包み、フルフェイスの兜から目だけを露出させ、私をきっと睨み付ける杏子さん。
自身の燃えるような長い髪をなびかせて、そして、紅に燃え盛る翼を持って宙を舞う。

杏子「人の強さっていうもんはな、誰かと支え合って弱さを補い合ってそして、認め合って高めるもんだ」

杏子さんの矛の周りを火焔が螺旋状に渦巻く。
その様は全てを喰らい尽くし燃やし尽くす、龍の姿を彷彿とさせる。

杏子「お前みたいに自分の強さに依存して、そっから前へ進もうともしない奴に最強はついてこねーよ」

そう言い捨てた直後、杏子さんは赤き龍を解放つ。


杏子さんのもとから解放された龍は彼女の意思を受け取ったように、
まっすぐに私のもとへと咆哮をあげ向かってくる。

ほどか「こんな、もの――!!!」

今にも私を食い尽くさんと迫る炎龍の火焔を防ぐ為、
絶対防衛の名を冠するに相応しい鉄壁の盾を全面に展開。

ほどか(この盾を破ることは不可能――!)

あらゆる物理攻撃もその堅牢さを持って跳ね返す。
それが、私を守護するこの盾の役割。

だから、杏子さんの矛がどれだけ強力だろうと必ず私が勝つに決まっている。



杏子「よく、最強の盾と最強の矛のどっちが強いかっていうよな。あれ結局どっちのが強いと思う?」

ほどか「あの話に答えはありませんよ。強いていうならどちらも強く、弱いんじゃないですか」

答えが反発しあっているから矛盾。
あれはその意味をわかりやすく説明する為の故事だ。

杏子「いーや、答えはちゃんとあるさ」

そう言って、少し笑う杏子さん。
その笑みは優しい笑みでこの時代の杏子さんからは見たこともない慈愛に満ちた微笑みだった。




杏子「想いの強い方が勝つんだ――」



矛と盾のぶつかり合う爆音が響く。

守護者である盾はその身を焦がし、炎に包まれようとも私の身を守ろうと堅守する。
対して、炎龍にその姿を変えた矛は、守護者の腸を食い破ろうと咆哮をあげる。


ピシリ――。

なにかに亀裂が入る音が聞こえた。

ほどか「――!?」

刹那。鉄壁の守護者であるはずの盾が崩壊。

ガシャガシャと音を立て、それを断末魔の悲鳴とするかのように崩れゆく守護者。
そして、炎龍はその身を一片たりとも残さぬと、その破片にまで喰らい付く。

ほどか「う、そ――」

目の前から私の体を護る守護者が消え、視界が開ける。

眼前には燃え盛る炎。
しかし、その炎は真っ暗だった私の道を照らす灯にも見えた。
537 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:34:27.81 ID:DNGo6+BZ0
マミ「ほどかさん、あなたは私にこういってくれたわよね」

ファンタジーに出てくる魔導師を思わせるマミさんの衣装。
檸檬色に彩られたローブを纏い、頭には縁の長い魔法使いが使うような三角の帽子を目深に被り、
片目だけを覗かせ超超巨大な砲のスコープにその目を当てる。

背から生えた燦然と光を放つ黄金色の翼を大きく羽ばたかせ、巨大な砲撃への反動を抑制しようとする。

いや、マミさんの持つ砲は、もはや砲と呼ぶには相応しくなく、超巨大な柱と呼ぶべきだろう。
地面にその巨体を横たえるその柱は、その砲口にあたる箇所に、無数の光の粒子を集約させ、束ね極太の線とする。

ほどか(あれはマズイ――)

眼前に聳える光の柱を見てそう思う。

全てを切り裂く剣は折られ、全てを跳ね返す盾は崩壊した。
今の私にあれを受け止める術は……。






マミ「私が怖い時は一緒にいるし、辛い時はその辛さをわかちあってくれる。泣きたい時は共に泣いてくれる。
   だから、私は一人じゃない。あなたが、みんなが私を守るって」

ほどか「それが、どうしたんですか……」

マミ「あの言葉、そっくりそのままあなたに贈るわ」

スコープから目を離さずにそう宣言する。

マミ「あなたが怖い時は一緒にいるし、辛い時はその辛さを私にわけて。泣きたい時は共に泣く。
   だから、あなたは一人じゃない。私が、みんながあなたを守る」

そして、一言付け添えて。

マミ「だから、自分の殻に閉じこもるのはもうやめなさい。
   自分の殻を破って、一歩を踏み出す勇気を持つ」







それが、人の持つ強さよ――。




音が消えた。

マミさんの言葉を皮切りに、砲口に束ねられていた光が破裂。
柱からレーザーが発射され、空間を軋ませる程の威力を持った純粋な破壊の光が私を包み込もうとしていた。
538 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:35:12.83 ID:DNGo6+BZ0
さやか「……」

杏子「……」

マミ「……」

ほどか「はぁ、はぁ――」

さやか「しぶといね」

杏子「もう諦めてくれれば話も早いんだけどな」

マミ「そうね。早く一緒に帰ってお茶でも飲みたいわ」


マミさんが放った光は私を飲み込み、その存在を消そうとしていた。
剣も無く盾もない私はバリアーを張ることで、その砲撃を耐え、なんとか難を逃れることに成功した。

さやか「しっかし、あのバリアー反則だよね」

杏子「まさか、あの攻撃を防ぐとはな」

マミ「でも、完全に防ぎきったわけじゃないみたいよ」

ほどか(バリアーが――)

ボロボロになったバリアーを見る。
完全に回復するには時間がかかるだろう。




杏子「もう一発いけるか?」

マミ「今すぐには無理ね。さすがにあんな力、連発は出来ないわ」

さやか「私も実はもう力は残ってないんだよね。さて、どうしよっか」

どうやらあの攻撃は当分こないみたいだ。
なら、

ほどか「その前に戦闘不能にする――!」

両手をかざし、前方に魔法陣を召喚。

ほどか(今のマミさん達には下手に手を抜けない――)

だけど、あまりに強すぎてもその存在ごと消してしまうだろう。

ほどか「半分の力なら――!!!」

半分の力なら直撃を避けても無力化できるはずだ。





ほどか「動かないでくださいね――!」

魔法陣から黒い粒子が溢れだす。
そして、束ねられた粒子が線となる。

ほどか「狙いがはずれますから――!」

よく狙い、マミさん達のソウルジェムには絶対に当てないように照準を合わせる。

さやか「ありゃまずくない?」

杏子「ヤバいな。しかも避けれる気がしねー」

マミ「まぁ、大丈夫でしょ」

ほどか「余裕を見せて――!」

一気に発射。
無数の光の帯がマミさん達を捉えようとする。



その光は桃色に輝く結界に阻まれた。
539 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:35:58.99 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「っ――!」

まどか「ほどかちゃん。もういいんだよ」

ほどか「なにが――!」

まどか「私達に伝わった想いにはほどかちゃんのものもあるの。
    そして、それはほどかちゃんの過去にも繋がった」

ほどか「な――!」

私の過去? そんな、じゃあまさか……。
脳裏に過る、嫌な記憶。

ある男性が、ある女性を撃ち殺す映像。

ほむら「辛い思いをしたのね。そのせいであなたは自分が全て悪いと思って過去を変える為にこの時代に来た」

ほどか「ち、ちが――」

違わない。
私が魔法少女をこの世から消し去りたいと思った原因はそれだ。





まどか「でも、もういいんだよ。あなたが悪いわけじゃない。あなたが苦しむ必要はもうない」

ほどか「で、でも私が――」

私のせいで、死んだんだ。
私が産まれたせいでママは……。

ほむら「いいえ違うわ。あなたのせいじゃない。
    私が死んだのはあなたが産まれたせいなんかじゃ絶対ない」

ほどか「で、でも――」

それでも、私が頑張らないと世界は……。





まどか「一人で全部背負う必要はないんだよ……」

ほむら「あなたも見たでしょう? 人の想いが生み出す力を。
    この力があればきっとこの宇宙が抱える問題なんて解決するわよ」

ほどか「そんなこと、それでもし無理だったら――」

世界は滅びるんだ。
それに、今も魔法少女は生み出され苦しむんだ。

ほどか「そんなこと許せない――! 誰かが傷つくのがわかっていてそれを見過ごすなんて!」

私にはできない。

だから――。





ほどか「もう迷わない――! 全力であなた達を迎え討ちます――!!」

今のパパになら全力を出しても死にはしないはず。

手をかざし、力を集中させる。

眼前に浮かぶ魔法陣。
そしてその魔法陣は形を変え弓となる。

その、弓を取り構える。

ほどか「これで最後です――! この一撃に私の全てを捧げる――!!」

それでもあなた達が止めるというのなら止めてみろ――。
540 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:36:28.21 ID:DNGo6+BZ0
ほむら「本当に聞き分けのない子……」

まどか「ほむらちゃんにそっくり」

ほむら「まどかによ」

まどか「そんなことないよ、思い込みの激しいとことかほむらちゃんにそっくりだよ」

ほむら「あら、頑固な所はまどかにそっくりよ」

まどか「そんなこというなら、泣き虫な所はほむらちゃんそっくりだね」

ほむら「人の話を聞かない所はまどかにそっくりだわ」

まどか「髪が長くて綺麗な所はほむらちゃんそっくり」

ほむら「愛らしい所はまどかに似たわ」

まどか「頭のいいとこはほむらちゃん」

ほむら「優しい所はまどか」

まどか「なんなの!?」

ほむら「なによ!!」

さやマミ杏「ケンカすんな!!」







さやか「あんたらそんな場合じゃないのはわかってる!?」

杏子「もうほどかは準備できてるんだぞ!!」

マミ「後半に至ってはお互いを褒めてるだけだし!」


ほどか「……」


さやか「あぁごめん! ほどかを無視してるわけじゃないから!」

杏子「だからそんなに傷ついた顔すんなって!」

マミ「ごめんなさい! せっかくの決め台詞が台無しになって!!」

まどか「え、ほどかちゃん傷つけられたの? 誰に?」

ほむら「許せないわ」

さやマミ杏「お前等にだよ!」






まどか「まぁ、冗談はこのくらいにして」

ほむら「そろそろ終わりにしましょうか」

さやか(こいつら……)

杏子(マジうぜぇ……)

マミ(ティロ・フィナったらダメかしら……)
541 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:36:59.01 ID:DNGo6+BZ0
まどか「さて、と……。ほどかちゃん。私達が勝ったら一緒に帰るんだからね」

ほむら「お腹も空いたでしょ?」

ほどか「ふん。いいですよ、どうせ私が負けるわけないんです――」

まどか「言ったね。 約束だよ? 一緒にお風呂にも入るんだからね?」

ほむら「私と二人っきりでね」

まどか「ほむらちゃん!?」

ほむら「冗談よ」

ほどか「この、馬鹿にして――!」





まどか「じゃあ、ほむらちゃん。準備はいい?」

ほむら「えぇ、聞き分けのないあの子にお仕置きをしましょう」

そう言うとママとパパは二人並び立つ。

ママのもとに光が集まる。

すると、ママの手元に紫色の弓が現れ、そして――。

さやか「なにあの翼……」

杏子「凄いな……」

マミ「強力な力を感じるわ……」

パパとは違い黒と紫の衣により形作られたドレスを着、そして紫のブーツを穿き、
その背中には二枚の巨大な翼をはためかせ、銀色に輝く瞳を私に向ける。



まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「えぇ、まどか」

二人の背後に桃と紫に光る二つの魔法陣が出現。
それと同時に弓を構える。

ほどか「その程度の力で――」

私も同じように魔法陣を出し、弓を構え弦を引き絞る。


まどか「見せてあげる。これが人の――」

ほむら「私達の」




「「想い――!!!」」





542 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:37:25.49 ID:DNGo6+BZ0
二つの閃光がぶつかり合う。

一方はピンクパープルに輝く決意の閃光。
もう一方は想いを乗せた桃色と紫の閃光。


ほどか「そんな! 互角――!?」

互角のように見えた。
だが、実際には――。

さやか「いや、まどか達のほうが押してる!」

徐々に、徐々に桃と紫の二本の閃光が押していく。

マミ「いける! このままいけば――!」

杏子「いけ――!!」





桃と紫が混じり合う。
二つの想いを繋ぐように数多の想いを伝える為に。

彼女の歩みを止める為に、彼女を正しい道へと導く為に。
彼女を縛り付ける、その束縛を断ち切る為に。



そして――。







最愛の娘を救うために――。







さやマミ杏「いっけえええええええええええ!!!!!!!!!!」

543 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:37:52.66 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「あ――」


目前に迫る、綺麗な光。

桃色と紫の粒子をキラキラと撒きながら、その光は私を包み込むようにまっすぐ進む。


ほどか(私の大好きな、ママとパパの色――)


大好きなママ。そしてパパ。

そんな二人が放った光がもうすぐに私のもとへと来る。


ほどか(そっか。私、負け――)


そう考えを巡らせたその時、私のソウルジェムをピンクパープルに輝く矢が貫いた――。
544 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:38:19.20 ID:DNGo6+BZ0
ほどか「……」

空を見る。

この空間の空は暗く、なにも映さない闇の色だった。
そんな空を見上げ私は呟く。

ほどか「青い空が見たいなー……」

澄んだ青い空。

私は覚えてないけど、もとの時代で私がママとパパと一緒にピクニックに行った時、
三人で丘に寝転んで青い空を見たらしい。

その話をパパから聞いてから私は青い空が一番好きだ。

ほむら「見に行きましょう。一緒に」

ママが倒れる私の頭を抱え膝枕をしてくれる。




ほどか「ママ……」

ほむら「なにかしら?」

私の顔を笑顔で見つめてくれるママ。
その顔は母が子に向ける優しい笑みで、私がママに一番向けてほしかった表情だ。

ほどか「私、負けちゃった……」

負けた。私は負けたんだ。

ほむら「そうね。でも、あなたはよく頑張ったわ」

そう言ってママは私の顔につく汚れを拭う。

ほむら「全く、せっかくの可愛い顔が台無しよ? 制服もこんなに汚して……」

ほどか「ごめんなさい……」

自分の身体を見る。この世界の学校に通う為に魔法で作った制服がボロボロだった。
545 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:39:52.19 ID:DNGo6+BZ0
ほむら「帰ったらクリーニングに出さないと……。その前にお風呂ね。
    今日はしっかり髪の手入れもするわよ?」

私の髪を触りながらママは今後の予定を述べる。

ほどか「一緒に入ってくれる?」

ほむら「当然よ」

ほどか「そっか、楽しみだなぁ」

楽しみ。ママとずっと一緒にいれるなんて夢みたい。

まどか「お風呂だけじゃないよ」

ママの肩越しにパパが顔を出す。

まどか「これからは一緒にご飯も食べるし、学校にも通う。それから休みの日はお出かけしないとね」

優しく微笑みながら、そう言うパパは本当に楽しそうだ。





さやか「当然、私達も一緒だからね」

杏子「ま、付き合ってやるよ」

マミ「佐倉さんったら! ほどかさんの為にケーキを作るから、食べに来てね?」

まどか「その時は私も一緒だけどね」

マミ「まどかさんは呼んでないわ」

まどか「ほどかちゃんと二人っきりは許さないよ!!」

マミ「別にそれくらい、いいじゃない!」

まどか「ダメだよ! 絶対に!」

さやか「あーはいはい。黙ろうね」

杏子「ケンカすんなよ」
546 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:40:47.21 ID:DNGo6+BZ0
―ほむら―

ほどか「えへへ」

ほどかがまどか達を見て笑う。
全くあの子達はこんな時にも……。

ほむら「本当にどうしようもないわね……」

ほどか「ねぇ、ママ。私、みんなのこと大好きだよ」

ほどかが急にそんなことを言うから驚く。

ほむら「そう……」

ほどか「みんなと一緒に過ごせたらきっと幸せなんだろうなって思うんだ」

ほむら「そうね……。きっとそうだわ」




ほどか「きっと楽しいんだろうなー……。ママがいてパパがいて、みんながいて……」

ほむら「楽しいに決まってるわ。当然じゃない」

ほどか「そうだよね。うんきっとそう」

そうだ。あの言葉を言わなければ、色々と邪魔が入って結局言えなかったあの言葉。
今なら言える。ちゃんと伝えられる。だって今、ほどかは私の腕の中にいるんだもの。


ほむら「ねぇほどか、あなたは私の大切な――」

ほどかの顔を撫で優しく話しかける。

そして、いまこそ一番伝えたい言葉をこの子に――。









ゴメンね、ママ。









しかし、ほどかの謝罪が私の言葉を塞いだ。
547 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:41:23.15 ID:DNGo6+BZ0
ほむら「え――?」


ほどかの体が透き通っていく。
確かにあったはずの彼女の温もりが私の腕から徐々に消えていく。


ほむら「え、なに、これ――?」

まどか「ほどかちゃん!!」

異変を察したまどかが近づいてくる。




まどか「ちょ、ちょっとこれどういう……!」

状況が理解できずに狼狽した声を出すまどか。

さやか「な、なにこれ! どうしてほどかが消えかかってんのさ!」

杏子「お、おいどういうことだよ!」

マミ「どうして!? ソウルジェムを壊しても消えはしないって!!」

マミ達もなぜほどかが消えようとしているのかわからずにただ慌てふためく。

消えようとしている? ほどかが? なぜ?





ほむら「ほ、ほどか! これはどういうことよ! いったいなにが――!」

起こってるの。
その言葉を待たずに答えを出す声がした。




QB「タイムオーバーさ」




まどか「キュゥべぇ! タイムオーバーってどういう意味!?」

QB「そのままの意味だよ。君達は間に合わなかったんだ」

ほむら「間に合わなかったってなにによ!!」

要領を得ない回答にイライラが募る。

QB「繭の孵化が始まった。もうすぐでほどかは魔女になる」

ほむら「!!?」

どういうことよ……。だってまだ時間は……。
548 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:42:10.76 ID:DNGo6+BZ0
杏子「おいおい、冗談だろ!? まだ三時間も経ってねーだろーが!!」

さやか「そうだよ! ワルプルギスを倒してから一日は大丈夫なんだよね!?」

マミ「嘘をついたのキュゥべぇ!!」

QB「嘘じゃないさ。一日は大丈夫。それに間違いはない」

マミ「ならどうして!」



ほどか「それは私が説明しますね」





まどか「ほどかちゃん!」

今にも消えてしまいそうなほどかがゆっくりと丁寧に話し出す。

ほどか「孵化には一日かかる。それは本当です」

さやか「で、でも現に今……」

ほどか「それはあの繭が孵化をするのに24時間という時の流れが必要ということです」

マミ「そ、そんなのわかってるわよ!」

杏子「今更そんなこと言われなくても理解してるに決まってるだろ!」





まどか「!!」

ほむら「あなたまさか!?」

この子の能力の一つは確か……。

ほどか「パパとママは気づいた? うん、そうだよ」






――早く孵化するようにあの繭の時間を早送りしたんだ。


549 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:43:41.65 ID:m2ltahhk0
―まどか―

さやマミ杏「!!?」

まどか「っ!」

やっぱり、でもいつから……。

ほどか「ちょうどパパが変化した辺りかなー。
    あの辺りから、もしかしたら私は負けるかもしれないって思ったから保険にね」

賢いでしょ? そういって笑うほどかちゃん。

まどか「そ、そんな……」

足から力が抜ける。
まさか、そんなことって……。

ほむら「う、嘘よ……」

ほどか「ゴメンね。約束、また破っちゃった」

やめてよ、謝らないで。
そんな言葉聞きたくない……。





ほどか「もうそろそろ時間だね」

まどか「!」

ほどかちゃんの体がどんどん透き通っていく。
もはや、彼女の体を通り抜けて先の光景が見える程だった。

ほむら「いや! いかないで!!」

ほむらちゃんが叫びながらほどかちゃんの体を抱きしめる。
いかせないように、消えないようにと。

ほどか「ママ。ごめんなさい」

ほむら「言ったじゃない! みんなと暮らせるのが楽しみだって! なのになんで!」

ほどか「……」

ほむら「嘘だったの!? それも嘘だったっていうの!!?」

もはやほむらちゃんの叫びは悲鳴だ。
550 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:44:46.34 ID:m2ltahhk0
ほどか「嘘じゃないよ……。嘘なもんか……」

ほむら「だったらどうして!!」

ほどか「私だって一緒に暮らしたい! みんなと一緒がいい!!」

ほむら「!!」

ほどか「でも、それじゃ駄目なの! それじゃみんな不幸になるだけなの!!」

まどか「ほどかちゃん……」

ほどか「魔法少女が存在している限り、不幸な人は生まれる!! 
    それは絶対にそうなの! そして今もそんな人が出続けてるの!!」

ほむら「……でも!」

ほどか「私は、そんなの、嫌なの……。
    いつかに任せて今を放っておくなんて無理なの……」

だから――。

涙で顔をぐしゃぐしゃにしたほどかちゃんは言葉を続ける。

ほどか「だから、せめてママ達だけは私が正しいって言ってよぉ……」

まどか「!!」

ほむら「っ!」

ほどか「私が間違ってるなんてわかってる……。
    最低な自己犠牲なんだってわかってるよぉ……」

ほむら「あ……」

ほどか「でも、誰かが、誰かがやらなきゃ……」

まどか「ほどかちゃ……」

私は馬鹿だ。
この子は最初から全部わかってて、間違ってるってわかっててこんなことを……。


ほむら「ほどか……!!」

ほどかちゃんを抱きしめるほむらちゃん。
でも、すでにほどかちゃんの体は見えなくなるくらいまで消えかかっていて……。

ほむら「ごめんなさい! ごめんなさい!! 私、あなたのこと何もわかってなかった!
    あなたは辛い思いをしてるのに、自分のことばかりであなたのことを何も――!!」

ほどか「う、うぅうう、ママ、ままあぁあ!!!」

ほどかちゃんもほむらちゃんに抱き着く。

ほむら「ほどか、あなたは正しいわ。あなたが間違ってるわけない……」

ボロボロと涙を零しながら、でも必死に笑顔を作り、ほどかちゃんにそう語りかける。

そして、手を頭の方へと持っていき――。


ほむら「なぜなら、あなたは私の大切な――」









――娘なんだから。






551 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:45:39.29 ID:m2ltahhk0







ほどかちゃんの頭を撫でようと手を伸ばし、今まで自分が伝えられずにいた言葉を伝えようとする。







――でも、その時にはもうほどかちゃんの姿は消えていて、ほむらちゃんの手には彼女が身に着けていたピンクパープルのリボンだけが残されていた。






あ――

呆然とするほむらちゃん。

そして――。


あああああああああああっ――!!!!!!



辺りにほむらちゃんの叫び声が響いた。



552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 00:46:08.03 ID:LxEsgq/IO
相変わらずギャグは恐ろしい程寒いな
553 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:47:41.77 ID:m2ltahhk0
―― 未来 ――


「まま―、そのりぼんかわいいねー」

「そう?」

娘が私の足にしがみつき、私の頭のリボンについて話し出す。

「うん! すっごくかわいい! まま、にあってる!」

「ふふ。ありがとう、でもこのリボンはもともとあなたの為に買ったのよ?」

「えぇー。わたし、しらないよー」

「そうね。あなたは知らなくて当然だわ」

娘の頭を撫でる。
急に頭を撫でられて驚く娘だが、すぐに幸せそうな、くすぐったそうな顔をして気持ちよさそうに目を細める。





「あの人遅いわね……」

時計を見る。
時刻は八時を過ぎており、普段ならとっくに帰宅しているはずの主人について考える。

「ぱぱおそいー」

娘もいつもより遅い主人に不満なのか口を尖らせ、ブーブーと不平を言う。

「今日はあなたの大切な日なのに、仕方ないパパね」

今日は娘の五歳の誕生日だ。

すでに部屋には誕生日の為の準備が施されており、後はプレゼントを買ってくるであろう主人を待つだけだというのに……。





「はぁ、こんな日に遅刻なんて相変わらずね……」

そういえば、プロポーズの日も、結婚式の日も遅刻してきたっけ。

「さやか達と遅くまで飲んでいたからなんて言い訳してたけど」

さすがに結婚式の日にまで遅刻はないと思う。

私は慣れているからよかったけど父なんてカンカンに怒っていたっけ。
まぁ、それはいいのだけれど、さすがにこの子の出産の日にまで遅れた時にはどうしてくれようかと思った。

「あの時はお義母さんが傍にいてくれたからよかったけど……。」

正直初の出産で不安だったのだ。

「もし、お義母さんが天誅を下さなかったら私がやってたわね」

この子が産まれて落ち着いた後、近所のゴミ捨て場でボロボロになって発見されたあの人を思い出す。
帰ってきた後の土下座は凄かった。

人って覚悟を決めたらあそこまでの土下座ができるのね……。
554 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:48:08.28 ID:m2ltahhk0
「んー……」

娘が眠そうに眼をこする。

「眠いの? だったら少しお休みする?」

「やー、ぱぱにおかえりなさいするの……」

しかし限界が近いのか、こっくりこっくりと船を漕ぐ。

「本当にあの人は……」

可愛い娘に無理をさせて……。

「今度は骨の二、三本じゃ済ませないわ」

そう固く決意する。





「そうだ、ちょっといらっしゃい」

「なに、ままー……」

相当辛いのか、ふらふらと私についてくる。
このままでは危ないので手を繋ぎ、娘が転ばないようにする。

「ここに座って」

「んー……」

化粧部屋に入り、備え付けている鏡台の前の椅子に座らせる。
そして、自分の髪からリボンを取り、娘の髪に結わう。

「あー。ままのりぼん」

それに気づいた娘がはしゃいだ声をあげる。

「似合うわよ」

もう一つのリボンも結って、娘の髪を整える。

ツインテールの完成だ。





「えへへー」

娘が嬉しそうに鏡に写る自分を見つめる。

その姿は昔の主人にそっくりだ。

(もう少し髪が長くなったら……)

そんなことを考えて首を振る。
この子はこの子だ。

あの子の面影を押し付けてはいけない。
555 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:48:46.11 ID:m2ltahhk0
「ただいまー!」

玄関から主人の声がする。
どうやら帰ってきたらしい。

「やっと帰ってきたわね」

出迎えようと玄関に向かう。

「ゴメン! 会社にプレゼント忘れちゃって取りに戻ってたらこんな時間に……」

「全く……。不注意すぎるのよあなたは」

「ホントゴメン! あの子怒ってる……?」

「さっきまでは眠いのもあって不機嫌そうにしてたけど、今は大丈夫よ」

「本当!? よかったー……。あれ、そういえばいつものリボンは?」

「ふふ、化粧室に行ってみて」

「?」






「あれ、そのリボン……」

主人はすぐに娘の姿を見つけ、その変化に気づく。

「へぇー。だからかー。」

納得し、もっと近くで見ようと娘に近づく。

「おぉー。よく似合ってるねー。うん。かわいいかわいい」

娘の体を抱き上げ笑顔でそういう主人。

「んー? どうしたの?」

いつもなら抱き上げれば無邪気に声をあげ、喜ぶ娘の反応がない。
それを不審に思った主人が首を傾げる。

「あら、まだ怒ってるのかしら」

「えぇー。ゴメンね? パパ悪いことしたよね? ゴメンナサイ!」

娘を降ろし、娘の目線にまで腰を落とし謝る。
556 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:49:16.34 ID:m2ltahhk0
「……」

だが、娘の反応はない。

「……?」

本当におかしい。
いつも、楽しげな娘の顔が無表情に塗り固められている。

「まさか、熱でもあるんじゃ」

そう思い、おでこに手を合わせる。

「ど、どう?」

主人が心配そうに娘の顔を覗き見る。

「いえ、熱はないようね」

「そ、そっか……」

安心したのかホッと息を吐く主人。だけど、私は安心できない。
明らかに異常な娘の様子に心がざわめく。

(本当にどうしたの……)








「おーい。どうしたのー? パパだよー」

主人が心配そうな声色で娘の顔に頬擦りする。

いつものこの子なら喜んで頬擦り仕返す。

が、今日は違った。






「やめてください」





557 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:49:45.34 ID:m2ltahhk0
「へ?」

「え?」

主人の頬擦りを嫌がるように、顔を手で押し返す娘。

「もう、パパはベタベタしすぎですよ」

いつもの娘らしからぬ口調と雰囲気。

でも、この口調は。この雰囲気は……。

「お風呂もいつも私と入りますし……。寝る時も一緒。私はママと一緒の方がいいのに」

「へ、そ、そんな……」

娘の本音? にショックを受けorzこんな姿になる主人。
だけど今はそんなことはどうでもいい。






「あ、あなたまさか……」

「あ、ママ。いつもパパのお世話ご苦労様です」

そう言って娘はぺこりと頭を下げる。

私はこの話し方を知っている。
私はこの雰囲気を知っている。

「お腹が空きました。パパも帰ってきたことですし、ご飯にしませんか?」

お腹を押さえ自分が空腹であることを娘がアピールする。

「あ、そ、そうね」

目から涙が零れる。

そうか、そうなのね。







「ほらパパもいきますよ。今日は私の誕生日なんですよ?」

そう言って主人の手を引く娘。

「う、うん」

主人も気づいたのか、娘の手を握り、片方の手で涙を拭う素振りを見せる。

「あ、言い忘れていました」

そう言って主人の手を離し、娘は立ち止まる。

「どうしたの。ほどかちゃん」

ほどかちゃん。主人はそう言った。

いつも聞きなれたその言葉がなぜかすごく久しぶりに聞いたように思える。
558 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:50:40.74 ID:m2ltahhk0
「えっと、ですね。しばらく勝手な理由でいなくなりました。それについてはごめんなさい」

そう言って再びぺこりと頭を下げる。

「ですが、まぁこうして帰ってきたので許して下さい」

「あ……」

「……」

「ですから、パパ、ママ」

頭をあげた娘は微笑んでいた。
その五歳らしからぬ慈愛に満ちた表情に思わず見惚れてしまう。

そして、娘は続けて――。








――ただいま!








そう言って私達に抱き着いてくる。

その娘を抱きしめて私達はこういう。







――おかえり。


っと。



彼女の髪を結わう為に付けたリボンが、そのピンクパープルの輝きを増したような気がした。


                                          ――終わり――
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 00:56:32.29 ID:dST3rrB7o
560 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 00:58:15.83 ID:m2ltahhk0
終わりです。

色々とごめん。
もうほんとごめん。

上にある批判とかはしっかり受け止めます。
つまらないっていう人は俺の力不足です。ごめんなさい。

応援してくれた人はありがとうございます。



完結したらどうしたらいいんでしょうか?
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 01:00:42.91 ID:LxEsgq/IO
頑張ったねwwwwまとめに載るといいねwwww
のくすではあんまり評価良くないねwwwwww
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 01:07:18.79 ID:v8Me+qxu0
いやー怒濤の投稿お疲れでした。
かなりの駆け足だったけど。

さて寝るかww
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:09:10.06 ID:HQPd7Sd+0
終わってたか、乙。今から読ませてもらうよ
完結したら、HTML化スレに依頼しに行くんだぜ
そのスレの>>1がやらないと意味ないからな
まぁ、なんだ。周囲の言うことはあんま気にすんな。叩いてる奴の少なくとも半分以上は周囲に流されてやってるだけだろうからな
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/01(水) 01:09:49.92 ID:sNsd60uDO


こっちではまだまどマギSSが結構あるんだな
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 01:17:40.23 ID:LyRkgxZIO


自分の意思で言うがつまんなかったよ
566 : ◆Y9E2ABw2YKVM [saga]:2012/08/01(水) 01:22:10.24 ID:m2ltahhk0
>>563ありがとうございます。でも、全部自分の蒔いた種なんですよね。




本当に読んでくれた人、ありがとうございます。

次、なにか書く時は少しでも面白いものを書けるように頑張ります。
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 02:53:45.01 ID:rga34Ot3o

面白かったよ
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 03:44:42.38 ID:JFMGeuHFo
あのさあ、まどかが好きな読者の事って考えて書いた?
鹿目まどかと言う女の子が好きな奴がこれ読んでどう思うと思ってる?
自分の好きなキャラクターを身も心も心底気持ちの悪いキャラクターに改変されて誰が喜ぶんだよ

まどかは間違っても男になりたいなんて思わないし、男になってほむらと結ばれたいなんて、気持ち悪い考えを持ったり実行したりするようなキャラじゃないんだけど
全編ギャグでふたなり化してとかなら、まだマシだったけどこんな中途半端にシリアス要素入れた物でやられると、正直ムカツクしキモイ

まどかの両親含め、まどかが父親と言うのを周囲があっさり受け入れるとかありえないし、都合がよすぎるぞ
ほどかと言うオリキャラは名前以外はそんなに悪くなかったけどさあ、無理にまどかとほむらの娘にする必要あったの?

まどかかほむらどっちか片方の子供で、未来で死んだ母親の親友に助けを求めに現代来たとかならまだマシだったと思う
(ほどかの伴侶はあえて存在をぼかすとかして出さなきゃいい)

大体なんでもかんでもまどほむにすればいいって訳じゃないし、浅い知識で書かれたウケ狙いの二次創作は鼻に着く
せめてハノカゲ版コミカライズ全3巻を読んでから書くべきだった

とりあえずまどかが一番好きな奴らに謝れ
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 03:50:15.93 ID:JFMGeuHFo
訂正
× (ほどかの伴侶はあえて存在をぼかすとかして出さなきゃいい)
○ (ほどかの父親が誰かはあえて明言せずにぼかしといて、読み手に想像させるとかすればいい。例えばほむら×タツヤとかほむら×まだ見ぬパートナーとか好きなように想像できるようにするのも手だと思う)

こんだけ叩かれて投下しきったのと、結構な量を書ききった事だけは褒めてあげる
次に何か書く時は各キャラクターのファンの事をもう少し考えてくれ
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 04:27:09.34 ID:EfXdb0WKo
>>1
ここから見出したし前スレも知らないから叩かれてるのがよく分からんが良かったと思うよ
ところで何故未来でほむらが殺されたのかってどこかに書いてたっけ?
見落としてたらすまんが教えてくれるとありがたい


>>568-569
うわぁ・・・これは流石に気持ち悪いというか・・・クレーマーって怖いな、、
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 08:11:09.13 ID:r6zGLMyqo
>>1がせっかく批判は受け止めるって言ってるのにクレーマー呼ばわりかよ
甘やかしすぎなんだよ
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/01(水) 08:43:55.21 ID:pDnEbXnWo
ほむらが殺された理由は回収してほしかった

あとiPS細胞でなんとか()じゃなくて性転換までしたならその辺も書いてほしかったなーって

自分も書く側だからあんまり批判とかできないけど、貼った伏線くらいは回収してほしかったな
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 09:54:13.92 ID:cIShOTfGo
まあ>>1の言うとおり自分で蒔いた種だし批判はしっかり受け止めるって言ってるから、色々言われて当然だよね。そこを叩くのはお門違い

個人的には、あそこまで大見得を切って荒らしの立てた☆2のスレを使ったくせに、何でこっちに逃げたのか気になるかな

574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/01(水) 14:44:56.45 ID:9AbceXeY0

意外と面白かったわ

けど、とりあえず、まどかがほむらを殺した事について
何故自分が悪いと思ったのかの流れが知りたいと思ってしまうのでした

それとこの内容だと男体化でなくQB星の技術で女同士でも子供が出来る方式でも良かったかも
そっちでもほむらが産めばほむママまどパパになるし

あと、まどかのほどかLOVEっぷりばかりが強調されてて、まどか→ほむらの描写が少なすぎて
(ほどかに関する会話以外の、ほむら自身と向き合ったまどかの会話がほとんどない印象を受けた感じ)
個人的には、親子の愛は感じるが夫婦としての愛をいまいち感じられず、家族?って感じがしてそこがちょっと残念
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 15:01:25.23 ID:ovIxsunko
たしかにまどかがほむらを愛するかどうかは微妙な感じだったなww
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/01(水) 15:44:34.80 ID:ymHWuD1Oo
そんなに言うことないけど荒らしに付き合ってめんどくさいことしたとこは反省しとけ
あと長すぎるからVIPでやるのは無理だっただろこれ
それなりに面白かったけどギャグが寒いのと、まどかがおっさんすぎるのは個人的に残念だな
シリアスな感じじゃなけりゃキャラ崩壊でかまわんと思ってるのでそんなに気にしちゃいないけどさ
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 16:31:16.30 ID:R+7bSiz5o
乙乙、次回作も楽しみに待ってます。
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/01(水) 16:35:30.14 ID:U2CrmYfRo
終盤の衣装が変わるのは良かった
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 16:36:12.79 ID:kr0JXVo9o
もうVIPではやるなよ
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/01(水) 20:36:30.15 ID:HhZXHYmJo
よくこんだけ書いたな乙
いきなりファンネルだとか甲冑だとかほどかとかその辺のセンスはもうどうしようもないな
あとほどかにかき消された新ほどがが不憫でならない
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 00:06:02.45 ID:kUcAVL8n0
すげぇ急いで終わらせた感があるな
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 23:26:39.29 ID:Dg0ivl2c0
 
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