このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

男「なんだそれは」 少女「魚。食糧取ってきた」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆OMKIIM81fs :2012/07/25(水) 01:18:08.12 ID:9IJXfKDpo
固有名詞途中で出てくるかも知れないので苦手な人は見ない方がいいかも

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1343146687
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

全レスゾーンゼロ @ 2025/06/16(月) 17:23:39.88 ID:/JulHR0so
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1750062219/

バームくんへ @ 2025/06/11(水) 20:52:59.15 ID:9hFPsRzXO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1749642779/

秘境 @ 2025/06/10(火) 00:47:53.81 ID:BDVYljqu0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1749484073/

【安価】上条「とある禁書目録で」鴻野江「仮面ライダー」【禁書】 @ 2025/06/09(月) 21:43:10.25 ID:qDlYab/50
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1749472989/

ツナ「(雲雀さん?!)」雲雀「・・・」ビショビショ @ 2025/06/07(土) 01:30:36.87 ID:AfN9Rsm0O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1749227436/

【安価コンマ】障害走を極めるその5【ウマ娘】 @ 2025/06/06(金) 01:05:45.46 ID:RaUitMs20
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1749139545/

貴様たちの整備のお陰で使いやすくしてくれてありがとう @ 2025/06/04(水) 20:56:21.03 ID:QjuK6rXtO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1749038181/

阿笠「わしの乳首に米粒をくっ付けたぞい」コナン「は?」灰原「は?」 @ 2025/06/04(水) 04:01:13.39 ID:ZjrmryLdO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1748977273/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/07/25(水) 01:37:53.07 ID:W1IkLdA/o
かまわん
3 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 01:40:00.29 ID:9IJXfKDpo
男「おいっ!何処行ったんだこら!」

屋敷の中を呼び回っても返事は無し。
口から愚痴がこぼれ出た。

男「…やはり首輪と鈴でも付けて置くべきだったか」

メイド「相変わらずの変態趣味で結構な事ですね」

男「気配を絶って背後に立つのとメイドの格好をするのが趣味のお前にまさか性癖を指摘されるとはな」

メイド「格好だけではありません、メイドです」

男「と、いう暗示を掛けられている」

メイド「相変わらずしつこいですね、ヒゲ面と相って鬱陶しさが増しています」

男「気付いてやれなくてすまないな、お前が老眼だったとは。今度老眼鏡を買ってこよう」

メイド「……」ジトー

男「……」

男「喧嘩両成敗だ。謝らんぞ」

メイド「御無礼を働き、申し訳ありませんでした」

男「……チッ」

男「……すまなかった」

メイド「男様のそういうところ、私は好きです。ですが」

メイド「舌打ちは頂けません、あと一度謝って下さい」

男「断る、それよりさっさとガキを探すぞ。俺は腹が減った」
4 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 01:45:09.10 ID:9IJXfKDpo
メイド「もう屋敷には居ないのでは?」

男「その可能性は高い」

男「最悪厨房の扉を破壊しなくてはならんな」

メイド「先程散々話しましたが、それは駄目です」

男「分かっている。だから今わざわざ俺が歩き回ってる訳だ」

メイド「これ以上中を探しても意味はありませんね」

男「…はぁ……」

男「外套とランプ持って来い……」
5 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 01:53:07.24 ID:9IJXfKDpo
玄関の前でメイドが用意した外套を羽織る。

男「今から森に出るなんて自殺行為じゃないか?」

メイド「私も着いて居ますし大丈夫です」

男「自信たっぷりだな」

メイド「なんたって森の妖精ですから」

男「やはり季節の変わり目は怖いな、自称妖精の可哀想な独身女性(特殊趣味持ち)が出てくる」

男「ランプを近付けるな、軽いジョークだ」

メイド「死因が軽いジョークなんて可哀想な方だと心底同情しています」

男「悪かった、俺が悪かった」

メイド「早いに越した事はありません、行きましょう」

男「と行っても殆ど日も暮れているがな……」

男が玄関扉を開こうと手を伸ばした瞬間。
その扉が独りでに開いた。

メイド「……」

驚いてさっと男の後ろに隠れるメイド。
開いた扉の先には。
6 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 02:07:20.59 ID:9IJXfKDpo
扉の外に立っているのは
何故か顔にシュノーケルを付けている、ゴスロリ服を着た11~12才くらいの身長の銀髪の少女だった。
そしてそこから流れ出る生臭い香り。

男「魚臭ッ!!」

メイド「うっ…」

メイドが背後で吐気を催した。

男「おい、吐くなよ?吐いたら本当に怒るからな?」

メイド「あい…」

くぐもった鼻声で返事をするメイド。どうやら鼻を摘まんでいるらしい。

男「…で、お前……」

シュコーシュコーと息をしながらこちらに入って来ようとする少女。

男「入るな馬鹿野郎!!」

ピタッと動きを止める少女。良くみれば全身が濡れていて服からポタポタと水滴が落ちている。
少女が始めて口を開いた。

少女「なぜ……」シュコーシュコー
7 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 02:17:37.96 ID:9IJXfKDpo
男「第一にその服装だ。そんな服装で入られると屋敷が濡れて汚れる」

メイドが後ろで鼻を摘みながらうんうんと頷いている。

少女「…脱げばいい?……」シュコーシュコー

男「俺はそれでも構わんが連れが煩いのでそれは勘弁してくれ」

少女「……じゃあ私、入れない…」シュコーシュコー

少女「…さっきは…入れてくれたのに……」シュコーシュコー

男「さっきと今では状況が別だ、それとシュノーケルを外せ。シュコーシュコーとうるさくて聞き取り辛い」

少女「…今、両手が塞がってる……」シュコーシュコー

少女はスカートのフリルの一部を縛って何かをそこに詰め込んでいて、それを両手で支えているようだった。

男「さっきはどうやって玄関の扉を開けた?」

少女「…気合いで……足で開けた……」シュコーシュコー
8 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 02:23:33.92 ID:9IJXfKDpo
男「おい、メイド。お前の大好きな無礼な客だぞ。力一杯罵倒してやれ」

メイド「にほいをなんほかしへくだはい」

鼻を摘まんで喋っているせいかよく聞き取れない。

男「お前の間抜けな姿が久しぶりに見れて嬉しいな」

メイド「……」ジトー

男「ったく……」

少女に近付いてシュノーケルを外してやる。髪の毛が引っかかって結構痛そうだ。

少女「…痛い、乱暴……オニチク……」

男「鬼畜のことか?難しい言葉を知っているな。で」

包みを指差して言う。

男「それはなんだ?」

少女「魚。食糧取ってきた」
9 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 02:27:54.43 ID:9IJXfKDpo
今日は此処まで
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/25(水) 06:22:22.07 ID:JTy1erPFo
期待
11 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 12:51:45.52 ID:9IJXfKDpo
男「はぁ……」

男「メイド。バケツとタオル持って来い」

メイド「あい」タッタッタ

少女「…私は…どうすればいい?……」

男「暫くそこに立ってろ」

少女「無理…重くて手が震えてる……」

男「ここでぶっちゃけたら後で死ぬ程嫌味を言われるぞ」

ぶっちゃけなくても言われそうだが。

少女「我慢…する……」

男「ところで鍵はどうした?」

少女「……鍵?」

独特の間の空いた返答に苛立ちながら説明する。

男「厨房の鍵だ。お前があいつから奪っていったアレだ」

少女「あぁ……アレか…」
12 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 13:06:10.06 ID:9IJXfKDpo
少女「…ちゃんと…持ってる…」

男「本当か?お前泳いでたんだろ?」

少女「…大丈夫……人の物は失くさない…」

男「なら人から奪うのもやめて欲しいもんだ」

少女「…反省…しています……」

男「やれやれ……」

男「おい!まだか!メイド!」

メイド「はいはい今行きますよ」

メイドがバケツと大量のタオルを持ってやって来た。

男「そんなにタオルあったのか?カビてんじゃないだろうな」

メイド「男様の今日と明日の湯浴みの分です」

男「おい!」

メイド「冗談ですよ。唯の予備です。客人用の」

男「たちの悪い冗談はやめろ…」
13 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 13:15:02.71 ID:9IJXfKDpo
男「ほら、ここに全部入れろ」

分かった、と返事をすると縛りを解いて中のものを出す。
中小の大量の川魚がバケツに雪崩れ込んだ。

男「凄い量だな…少なくとも一人前じゃあなさそうだ」

少女「…三人分……」ピース

男「……今日は泊まっていけ…」

メイド「それよりも服装の方をどうにかしないと…」

男「お前が拭けよ?なんの為にタオルを持って来させたと思ってる」

メイド「うぇ…」

男「普段から変態変態言われてるんだ、たまにはまともな行動を取らないとな」

メイド「……恨みます」

男「恨むなら自分の性別を恨め」

男「ある程度拭いてやったら後は風呂に入れてやれ。その間に俺は魚を捌いておこう」
14 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 13:27:13.80 ID:9IJXfKDpo
メイド「そういえば厨房の鍵は?」

男「おい、出せ」

少女「…分かった」

言うなり口の中に手を突っ込む少女。

男「おい……」

メイド「まさか…」

少女「…おぇっ……」

用意してあった予備のバケツに胃液と共に吐き出される厨房の鍵。

少女「…大切に…しまって置いた…」

少女「…ここ二日間ほど何も食べてないから…多分…綺麗?」

ポカンとしているメイドは放って置いて笑顔で少女を手招きする。

少女「…何?……」トコトコ

思い切り頭を叩いた。

少女「…いたい…」ジーン

男「自業自得だ…ったく」

男「ゴム手袋でも使うか……」

メイド「食事の時間…遅くなりそうですね」

男「まったく……」

目の前の少女を見据える。

少女「…何?……」

男「困った客人だ…」
15 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 13:41:15.07 ID:9IJXfKDpo
〜三時間前•屋敷周辺の森〜

薪を割ってから屋敷へ帰る途中。おかしなものを見つけた。

男「おい、起きろ」

見た感じ等身大の人形のようなゴスロリ少女が倒れている。

少女「………」

ペチペチと頬を叩くが反応が無い。
体温は暖かく脈もあるので生きてはいるようだが。

少女「…おなかすいた……」

眼と口を同時に開けての第一声。
そこに焦燥感は無くパッと見ふざけているようにも見える。

男「ほら、食え」

腰から下げた鞄から健康食品を取り出して与える。
以前、といってもかなり前だが外の街に行って買ってきた物だ。
こういう物は日持ちするし大丈夫だろう。

少女「…パサパサしてる…砂食ってるみたい……」

男「水だ」

少女「…おお……至れり尽くせり……」ゴクゴク
16 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 13:47:03.92 ID:9IJXfKDpo
男「で、どうした?お嬢が家出でもして来たか?」

少女「…うーん……」

少女「…出て来たというか……追い出されたに近い……」

男「……」

ややこしい事になってるらしい。
面倒臭いが此処に放って置くのもバツが悪い。

男「歩けるか?ここから5分ほど歩いた所に俺の家がある…まぁ借り物だが」

少女「…ん……」

少女は掌を握ったり開いたりしている。
体の調子を確かめているようだ。

少女「体は大丈夫…問題無し…」

男「ならついて来い」

少女「…分かった……」
17 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 13:57:53.08 ID:9IJXfKDpo
男「おい!メイド!」ゴンゴンゴン

メイド「はいはい!どうしましたか…って」

背後の少女を見た後俺の顔をジト目で見た。

メイド「…何処から攫って来たんですか?」ジトー

男「森から攫って来た」

メイド「私の前でその台詞は割と冗談になりませんよ」

男「…そこの道で行き倒れてた」

メイド「本当ですか?」

少女の方を見て尋ねる。

少女「…本当…マジ……」

メイド「一応信じます」

男「そうしてくれ。あと腹が減ってるらしい。」

男「夕飯の用意は出来てるか?」

メイド「それが……」

メイド「材料が少なくて三人分は……」

男「また失敗したのか…」

メイドは料理の腕は悪くないのだがたまにかなり盛大なミスをする。
そのせいで食材の減りがかなり早い。

メイド「……」ズーン

男「仕方ない。俺とお前で分ければ良いだろう」

メイド「…申し訳ありません…」

男「俺は優しくない。気にするなとは言えんぞ」

メイド「はい…」ズーン
18 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 14:00:40.53 ID:9IJXfKDpo
くいっくいっと服の裾を引っ張る手に気が付いた。

少女「…それは悪い……」

男「じゃあお前が我慢するか?」

少女「…無理…育ち盛り……」

男「ならせめて用意を手伝ってやれ」

少女「…オーケー……」

メイド「はぁ……」
19 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 14:05:15.87 ID:9IJXfKDpo
トボトボと厨房に向かうメイドとそれに着いて行く少女。
メイドが厨房の扉に鍵を差し込もうとするところで少女が口を開いた。

少女「…食材…無いの?」

メイド「……申し訳ありません…」ズーン

少女「…魚……好き?」

メイド「…生以外は……」

少女「……ちょっと取ってくる…から待ってて」

メイド「え?」

言うなりメイドの手から鍵をひったくって走り出す少女。

男「おい…あのガキ何処かへ走って行ったぞって」

男「何ボーッとしてる」

メイド「申し訳ありません…」

男「あ?」

メイド「厨房の鍵…取られちゃいました」

男「……は?」
20 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 14:05:57.41 ID:9IJXfKDpo
ここまで
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/25(水) 15:30:58.70 ID:Ud7lPKGTo
ほう
いいかも
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/07/25(水) 16:47:58.66 ID:ntdz/QA8o
おつ これは期待
23 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 18:55:40.85 ID:9IJXfKDpo
男が拾った時に食べ物与えてるから吐いたら割と汚いんじゃね?と今頃気付いた……
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/07/25(水) 19:35:11.56 ID:CuSXr5DYo
喉にひっかけてた
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/25(水) 19:35:34.22 ID:pyNT0SIHo
>>23で何かワロタ
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/07/25(水) 20:10:52.23 ID:S5ElGjJf0
>>23
胃腸とか丈夫そうだし
ちょっぱやで消化したって感じで大丈夫じゃない?

ほら初期の刃牙も戦う前におじやとか色々食っても一気に消化したし
27 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/25(水) 23:46:19.52 ID:9IJXfKDpo
正直ここでミスすると思って無かったので回想部分は脳内補完で以下>>8から
28 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 00:04:54.97 ID:PGo2qYMUo
三人分の食事が用意されたテーブルの椅子に腰掛ける。

男「ふう…やっと飯にありつける」

メイド「お疲れ様でした」

男「お互いにな……」

男「…あいつはどうした?」

メイド「間も無く来られるかと」

男「そうか……ところで」

メイドを見て言う。

男「何故席に着かない?」

メイド「他のものに示しが付きませんので」

男「臭いで頭がイったか?」

男「昨日まで同じテーブルについてテーブルマナーについていちいち指摘してくるお前は何処に行ったんだ」

メイド「今日からメイドは私一人ではありません」

男「なに?」

メイド「どうぞ!」

ぱっぱかぱーんとでも音がなりそうなジェスチャーでリビングの扉を指すメイド。
テンションが高くて非常に鬱陶しい。
29 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 00:14:41.21 ID:PGo2qYMUo
少女「…どうも……」

タッタッと走って少女の両肩に手を置くメイド。

メイド「どうでしょう!?」

男「テンション高いなお前」

メイド「それより見て下さい!どうですか!」

少女「…どうも……」ペコリ

男「……メイド服だな」

眠そうな目は相変わらずだが先程とは服装が違う。メイドと同じだがサイズの小さなメイド服を着ていた。
大方着替えが無かったので予備のを着せたのだろう。

メイド「ノリが悪いですねー…もっと他に感想があるでしょう?」

男「ふむ……」

改めてメイド服の少女を見る。
地味なロングスカートのワンピースだが、メイド服の持つ特有の雰囲気と少女の外見は何とも言えない様な官能的な雰囲気を生み出していた。
次に思った事がそのまま口から出た。

男「特殊性癖持ちの金持ちに高く売れそうだな」
30 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 00:20:39.72 ID:PGo2qYMUo
メイド「…相変わらず素直じゃない上に発想が変態のそれですね……」

男「打算的と言え。それに幼いとは言え客に使用人の服を着せるお前も中々だぞ」

男「それより腹が減った。さっさと席に着いてくれ」

メイド「分かりました。少女さんはこちらへ」

少女「…うん……」

メイド「あー可哀想に落ち込んじゃってますよー」

男「本人の前で言いたい放題だな」

服の裾を引っ張る手に気付いた。

男「どうした?服装が気に入らないならそこのメイドに言え」

少女「…違う……」
31 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 00:25:48.34 ID:PGo2qYMUo
少女「…この服…似合ってる?…」

男「あぁ似合ってる。外の街に出れば一部の男達がこぞってお前に札束を握らそうとするだろうよ」

少女「…そう……」ムフー

男「……」

皮肉が通じていないらしい。

メイド「フッ…いい気味です。スベってます」

男「……頂きます」

メイド「頂きます」

少女「…頂き…ます……」

言いたい事は多々あったが取り敢えず食事を開始させた。
32 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 00:36:24.74 ID:PGo2qYMUo
メイド「この魚、捌いてないじゃ無いですか……」

男「そのサイズは捌くべきなのか悩むんだよ」

メイド「迷ったら捌くべきです。迷•即•捌です」

メイドはテーブルマナーにはうるさいが食事中の会話だけには何も言わない。
二人で食事を取っている時も大体話し始めるのはメイドの方だ。
その時、魚の骨と格闘中の少女がふと口を開いた。

少女「…男の職業は何?……」

男「突然だな」

少女「…教えてほしい……」

男「売れないミュージシャンだ」

少女「…マジで……」

男「冗談だ。それで、何故俺の職業が気になる?」

少女「…うーん……学校の宿題?…」

メイド「どんな宿題なんですか?」

男「信じるのか?明らかに疑問系だったぞ」

メイドは外の街に街に行くのは嫌がる癖に外の世界の事をよく知りたがる。
それ以上は何も言わずに少女が口を開くのを待った。
33 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 00:40:22.15 ID:PGo2qYMUo
少女「…パパとママの職業を聞いてくること……」

メイドの動きがピタッと止まった。

男「いつから俺たちはお前のパパとママになったんだ?」

少女「…ママが誰なのかはまだ言ってないのに…」フッ

ふふんと少女が笑う。

男「その歳で揚げ足取りか。将来大物になりそうだ」

少女「…当然……」ムフー

男「……」

やはり皮肉は通じていないらしい。
34 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 00:44:15.41 ID:PGo2qYMUo
男「ママの職業から聞いてやれ」

他に聞きたい事もあったがわざわざ聞くのも面倒臭いので遊びに付き合ってやる事にした。

メイド「私ですか!?」

少女「…ママの職業何?……」

メイド「メイドです」

男「趣味と仕事が同じってのは良い事だ」

少女「…成る程……」

メイド「馬鹿にしてませんか?」ジトー

男「心当たりがあるのか?」

メイド「……」

男「……」
35 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 00:53:16.73 ID:PGo2qYMUo
少女「…次パパ…答えて……」

男「売れない小説家だ」

メイド「自分に自信が無いから最初に売れない、が付いてるんですよ」

少女「…成る程……」

男「おい、妙な話を捏造するな。自信満々だと返されても困るが」

メイド「じゃあさっさと答えてあげたらいいじゃないですか」

男「……公務員だ。元が付くがな」

メイド「……」

少女「…じゃあ……今はニート?」

男「そう答えるのが一番正しいんだが何と無く癪に触るな……」

少女「…パパはニートで、ママはメイド……」

男「娘の普段着はゴスロリと加えれば変わり者一家の完成だな」

俺が教師なら確実に関わりたくない一家だ。
36 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 01:10:18.55 ID:PGo2qYMUo
食事を終えてリビングでくつろぐ。
少女に幾つか質問をしようとした所で呼び鈴が鳴った。

男「この時間に客か…」

心当たりの顔は3人ほど。
どの顔も思い出すだけど今の気分を憂鬱にさせた。

男「最悪でもあのババアは勘弁願いたいが……」

食器を片付け中のメイドに変わって玄関に赴く。

男「どなただ?」

?「アタシだよ、色男」ゴンゴン

扉越しに聞こえる老婆の声。
嫌な予感に限って当たるものだ。

?「嫌な顔をしてないでさっさと開けておくれ」

男「透視も出来るなら解錠も出来るだろう」

?「お前さんが分かりやすいだけさね」

男「ったく…」

鍵を外し、ガチャリと扉を開いた。
37 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 01:10:50.71 ID:PGo2qYMUo
男「"魔女"がこんな時間に何のようだ?」

魔女「ヒョッヒョッ、この時間に魔女が尋ねると言ったら要件は一つじゃよ」

男「また姿を狼に変える気か?」

以前宿泊を断った際に一度姿を変えられた事がある。
"知り合い"に変な仲間意識を持たれるわメイドには構いまくられるわ散々だった。

魔女「断る前提かや、相変わらず冷たい男よのう」

男「ひ弱で低姿勢なババアならまだしも明らかに怪しい高慢ちきクソババアを何故泊めなきゃならん」

魔女「今日はあんたの為に来てやったのに酷い言い草だねぇ」

男「…何?」
38 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 01:18:48.68 ID:PGo2qYMUo
魔女が身を乗りだし、俺の耳に顔を近付けて囁いた。

魔女「ションベン臭いメスガキが一匹。上がり込んでるんじゃないか?」

男「何の事だ?」

魔女「あんたの為と言っとるじゃろう。いちいち下らんトボけ方すんじゃないよ」

男「お前と話してると反射的に嘘が出る。才能だな、ババア」

魔女「素直じゃないガキだねェ、バンシーのメスガキもこりゃ苦労する訳だ」

男「まぁいい、上がれ」

魔女「茶ぐらい出しな」

男「一発しばいたら帰れよ」

魔女「そりゃあんたの態度次第じゃて」
39 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 01:22:37.79 ID:PGo2qYMUo
先に厨房に入りメイドに話して置く。

男「客人だ、直ぐお帰りになるそうだが一杯用意してやってくれ」

メイド「…魔女様ですか?」

男「勘が良いな。大当たりだ」

メイド「男様は顔に出ますから」

男「相手してくる」

メイド「直ぐ持って行きます」

男「分かった。不味いのを用意してやれ」

メイドがやれやれといった風にこちらを見たが気にしないことにした。
40 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 01:34:05.99 ID:PGo2qYMUo
リビングに入るとちょうど魔女も廊下からリビングに入ってきた所だった。

魔女「椅子くらい勧めたらどうだい」

男「俺に気遣いで期待しない方がいいぞ」

仕方なく椅子を差し出すと魔女は無視して奥の立派な作りの揺り椅子に腰掛けた。

男「その歳で天邪鬼やってると周りからの信頼を失うぞ」

魔女「心配してくれるのかい?嬉しいねェ」

魔女に差し出した椅子に自分で座り、小さな丸テーブルを挟んで魔女と向かいあう。

魔女「ガキは?」

男「屋敷の部屋だろう、一室貸し与えてある」

リビングへ戻ってきた時には既に少女の姿はなかった。

魔女「そうかい、でも一応」

目を閉じる魔女、5秒ほど経ってから目を開いた。

魔女「どうやら本当みたいだねェ」

男「便利な能力だな」

魔女「そうでもないさ?こうしてお前さんの顔をじっと見ても……」

男「……」

逸らさず睨み返す。

魔女「"心"までは分からないからねェ」

ヒッヒと笑う魔女。

男「嫌な趣味してるな、ババア」

魔女「それじゃ、本題に移ろうかね」

男「分かった」
41 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 01:39:39.75 ID:PGo2qYMUo
魔女「単刀直入に言おう、あのガキ」

魔女「ありゃ"死霊"の類だよ。ここ三日前に突然出てきたからね。一発で分かった」

男「……」

考えを巡らせていると茶を盆に入れたメイド来た。

メイド「お茶です」

魔女「相変わらず綺麗だね、バンシー連中の中でもとびきりの美人、いや美少女かねェ」

メイド「有難うございます、魔女様。お話し、共にお伺いしても宜しいでしょうか」

魔女「あぁ好きに聞いときな」

微笑み返す魔女。メイドに対しては好々婆のような顔だ。

魔女「で、話を戻すとだ」
42 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 01:46:37.20 ID:PGo2qYMUo
魔女「あのガキ、見張っておいたんだがねェ」

魔女「だんだんお前さんの所に向かっているように見えるのよ」

男「……」

メイドが不安気にこちらを見つめる。

魔女「死霊が近付く条件は大きく分けて二つだ」

魔女「一つ、死期が近付くこと。これはその名の通りさ。病気だったり寿命だったり」

魔女「そしてもう一つ」

男「他人の怨みを買い過ぎること…か」

魔女「そう。まぁ正確にはあと一つあるがこれはあんたの場合違うだろうねェ」

メイド「体質…ですか?」

魔女「そうそう、だが今この状況で当てはまるのは二つ目」

魔女が改めてこちらを見る。

魔女「さて、どうするんだい?」

男「……」

メイド「……」
43 : ◆OMKIIM81fs [sage saga]:2012/07/26(木) 01:54:16.66 ID:PGo2qYMUo
メイド「……こ」

メイドが口を開きかけたがそれを手で制した。

魔女「あんたが望むなら殺しの手伝いをしてやってもいい」

男「願い下げだババア」

魔女「良いのかい?まぁ勿論手伝う場合代償は頂くがね」

男「運命を変えるんだ、寿命の半分くらいか?」

魔女「片手くらいで勘弁してやってもいいけどねェ」

メイド「魔女様!!」

席から立ち上がり激昂するメイド。

魔女「あんたの気持ちも分かるがこりゃアタシじゃなくても確実に代償がいるよ」

魔女「"死霊"を殺すというのはそういう事さね」

メイド「…すみません……」

ガタンと再び席に着くメイド。
44 : ◆OMKIIM81fs [sage saga]:2012/07/26(木) 02:02:53.14 ID:PGo2qYMUo
魔女「それでどうするんだい?時間は無いよ。あのガキはもうお前に辿り付いてんだ。いつ殺す気なのかは知らないがねェ」

男「俺は手を出す気は無い」

メイド「な…!」

魔女「このまま死ぬのかい?ま、かなりの怨み買ってんだろうが…」

魔女「あたしゃこれでも一応助けるつもりで来たんだがねェ」

魔女「決めるのはお前さん自身だがね」

言うなり腰を上げる魔女。

魔女「それじゃ帰ろうかね。バンシーの娘や、出口まで送っておくれ」

メイドがこちらを睨むが俺は顔を背けた。

メイド「男様!」

男「怒鳴るならババアを送ってからにしろ」

メイド「……絶対ですからね」

魔女「ヒョッヒョッ…若いねェ」

メイド「…お送りします」
45 : ◆OMKIIM81fs [sage saga]:2012/07/26(木) 02:12:41.07 ID:PGo2qYMUo
リビングの扉を開くところで魔女が振り返った。

魔女「今までどれだけ怨み買ってどれだけ殺してきたのか知らないけどねェ」

魔女「何故今死のうとするんだい?」

魔女「お前さんは急に聖人にでもなったつもりのかい?」

魔女「償うつもりなら一人殺した瞬間に死ねば良かったのさね」

魔女「ま、好きに生きて好きに死にな」

魔女「お前さんの人生だ。短くつまらないガキの人生だがね」

男「ありがたい言葉だな、相談所でも開いたらどうだ?」

魔女「もう開いてるよ。道に迷ったら来な」

魔女「アタシの相談所はガキだろうが悪霊だろうが地縛霊だろうが化け物だろうが」

魔女「誰でもウェルカムさね」

男「死ん後化けて行くことにしよう」

魔女「いつでも来な」

言うなり出ていく魔女。最後までメイドがこちらを恐ろしい形相で睨んでいた。
46 : ◆OMKIIM81fs [sage saga]:2012/07/26(木) 02:30:25.58 ID:PGo2qYMUo
廊下を歩くメイドと魔女。メイドが口を開いた。

メイド「魔女様お願いです…!男様をお助け下さい!」

必死に懇願するメイド。

魔女「あいつが断ると言ったんだ。あたしゃ手を出すつもりは無いよ」

メイド「そんな…」

魔女「これは意地でも何でもないさ。それにアタシには心までは読めないからねェ」

魔女「向こうは案外つまらん意地でも張ってるのかもしれないけどねェ」

メイド「わ、私が代わりに」

魔女「やめときな」

メイド「……」

二人が廊下で足を止めた。

魔女「その自己犠牲の精神は見上げたもんだけど」

魔女「後に傷を残すよ。絶対に。それもとびきり大きな」

メイド「それでも…!」

魔女「どうしてもというなら説得しな」
47 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 02:31:12.24 ID:PGo2qYMUo
ローブの中から魔女が小さな鳥籠を取り出した。
中には何も入って居ないように見えるが"何か"が動いているのを感じる。

魔女「使い魔だ。お前さんがあいつを説得させたらいつでも籠を開きな」

魔女「ギリギリであろうとなかろうと一瞬さね」

メイド「……」

無言で鳥籠を受け取るメイド。

魔女「但し飛ばす時は必ず説得が成功した時のみ」

魔女「これは"契約"さね、魔女の契約だ」

魔女「破ったらもっと酷いことになるよ」

メイド「はい……」

魔女「それともう一つ」

魔女「あんた絶対あの死霊に手ぇ出すんじゃないよ」

魔女「殺した瞬間二人共地獄行きさ」

魔女「じゃあね、アディオス」

魔女は蝙蝠に変化するとそのまま飛び去った。
48 : ◆OMKIIM81fs [sage saga]:2012/07/26(木) 02:38:29.43 ID:PGo2qYMUo
ダンダンと音を出し、廊下を踏みしめながらこちらに人がに近付いてくる。
バタンとリビングの扉が開いたと思ったら。

男「ぐっ……」

腹に奔る痛みと共に後方に体が吹っ飛んだ。
どうやら殴られたらしい。

男「がはっ…がっ!」

壁に当たって咳き込んだ。

メイド「何を…考えているんですか?」

メイド「何ですか……死ぬって!」

表情は見えないが、声を殺して泣いているらしかった。

男「俺は……欲張りでな……」

男「この状況を…お前との生活を…続けたいんだよ…」

メイド「だったら!!」
49 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 02:45:50.86 ID:PGo2qYMUo
男「片腕失くして…他に何か代償払って…あのガキ殺した後で……」

男「俺は…お前とのこの生活を続けて行ける自信が無い」

メイド「そんな…くだらない事で…」

ボロボロと涙を流すメイド。

男「今、俺の人生で一番大切なのはこの生活だ。他は何も無い」

男「それに……正直あの時俺は一回死んだと思ってた」

メイド「今は!!そんな事が聞きたいんじゃなくて!!」

メイド「片腕一本もがれても!生きるって!!言え!!」

男「無理だ」
50 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 02:48:51.01 ID:PGo2qYMUo
バチンと頬に衝撃が奔った後目の前が暗く鳴った。
耳鳴りと共に意識が遠のく。

メイド「死ぬなんて許しません……絶対です……」

男「ぐっ……」
51 : ◆OMKIIM81fs [sage saga]:2012/07/26(木) 03:00:26.95 ID:PGo2qYMUo
森をひたすらに走っている。
木々が生い茂る森林を縫うようにして成年男性を抱えながら常人ではあり得ないスピードでひたすらに走っている。
屋敷で男を連れ出してから一時間は経っただろうか、その時からひたすらに走った。

メイド「……」

何も考えてなど居ない。ただ逃げたかった。
生きる事をやめようとする男から。男を殺そうとする少女から。その状況から逃げたかった。
足がもつれる。

メイド「くっ……」

地面に男を投げだしながら倒れこむ。辺りには霧が満ちていて何も見えない。

メイド「……」

非常に眠い。眠くて意識が遠のく。

メイド「ダメだ…眠ったら……」

意識を奮いたたせるために舌を噛んだ。
男を背負おうと立ち上がった時、それは見えた。

少女「……」

少女が男の側に立っている。手には鎌。身の丈を遥かに越える大きな鎌。

メイド「やめて…その人を……殺さないで……」

少女「……」

こちらを見る少女は出会った時と同じく眠そうな瞳でこちらを見た。

メイド「お願いだから…」
52 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 03:03:46.28 ID:PGo2qYMUo
少女が口を開いた。

少女「…ん……了解してあげても、いい…かな…」

メイド「……え?」

頭の中が空っぽになった。

メイド「良かったぁ……」

頭から地面に倒れ込んだ。傷だらけの顔は幸せそうな笑顔。

少女「…楽じゃないね……この仕事も…」

シュンと鎌を消し空を眠そうな瞳で月を見上げる。
53 : ◆OMKIIM81fs [sage saga]:2012/07/26(木) 03:18:03.20 ID:PGo2qYMUo
夢を見ている。
大きな湖の前で男が木にもたれかかっている。
腹にかなり深い傷を負っているようで出血が酷い。
女が通り掛かる。腰まで伸ばした黒の髪で全身を深い緑のシンプルなワンピースで包んでいる。
男が口を開き。女が男の前で止まった。

男「…誰…だ…」

女「…あなた、私が見えてるの?」

男「誰だか…知らん…が…おい…女……」

男「俺の…死体…隠せ……」

女「嫌です」

男「その…湖に…投げ入れろ…」

女「もっと嫌です。湖が汚れます」

男「…尤も…な意見だ…クソ…」

女「……」

男「…早く、やれ……死んじまい…そうだ…」

女「投げたらもっと早く死にますよ」

男「…そう…しろと言っている…」
54 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 03:28:04.11 ID:PGo2qYMUo
女は数年前、近くの屋敷で仲間達と共に一人の初老の男性に仕えていた。
尊敬も雇用者との関係も何も無い。
ただ、遊びだった。
娯楽はこの森、この閉じられた世界では酷く少ない。
初老の男性はとても穏やかな人物で他の仲間達に外の世界の事をたくさん教えていた。
初老の男性と特に仲の良かった一人のバンシー。
この"遊び"もその女性が始めた。
楽しく新鮮な日々が暫く続いたが、やがて皆遊びに飽いていき、一人、また一人と屋敷を離れた。
だが、初老の男性と一人の女性だけは残って楽しそうに暮らしていた。
仲間達に合わせて離れた自分は、その幸せそうな光景を見るのが趣味になった。
55 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 03:37:47.33 ID:PGo2qYMUo
やがて初老の男性と女性は消え、屋敷はぽつんと寂しく残された。
女は憧れた。
この"恋"という"遊び"を自分も体験してみたくなった。
だから、目の前の人間に頼んだ。

女「あなたにお願いがあります」

男「……ぁ?…」

女「私の願い、一つだけ叶えてくれませんか?」

男「…死に…かけ…に頼み事か…ずいぶん…無茶な女だ……」

女「私の"ご主人様"になってくれませんか?」

男「……ふ…」

男「…断……固……拒否する…」

男「……」

女「……意地っ張り」

女は男を連れて屋敷へ向かった。
56 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/26(木) 03:39:16.63 ID:PGo2qYMUo
なんか重いのか臭いのかそうじゃないのか分からない急展開はここで終了です。
今日はここまで
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/26(木) 04:18:16.96 ID:nYJogBzUo
ふむ
おつんこ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/26(木) 06:41:41.70 ID:LGGrCdbAO
乙ん
59 : ◆OMKIIM81fs [sage saga]:2012/07/27(金) 13:19:27.94 ID:HgULu+Lwo
懐かしい夢を見ていた。
体を何かに背中から引き摺られる妙な感覚で目が覚める。

少女「…起きた?……」

男「良く分かったな」

少女「…体重…軽くなったから……」

男「ここは何処だ?」

少女「…森……屋敷から大分離れてる…」

大方メイドが気絶した俺を運んで逃げたのだろう。

少女「…愛されてる……」

男「ありがたい話だ。助かった、もういい。下ろしてくれ」

少女「…ん……」

ありがたいし、想われるのは悪くないが時々それが怖くなる。

男「なぁ、ちょっと聞いて欲しい」

どうかしていたのだろう。目の前の少女に悩みを聞いて欲しくなった。

少女「…うん……」

男「昔話、していいか」
60 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/27(金) 13:28:02.87 ID:HgULu+Lwo
男「お前らに仕事を隠しても意味が無いのは分かるんだがな、話がかなり長くなるので省略させてもらう」

男「ある仕事で俺、殺されかけたんだよ」

男「結局標的には逃げられるわ散々でな、とにかくその時は自分の死体を隠そうと思ったんだ」

少女「…なんのため?……」

男「…さぁ、何でだろうな……」

自分の存在が明るみに出れば上に迷惑をかける、からだろうか。今の自分には到底出来ない行動だ。

男「この森、今の屋敷の周辺に湖あるだろ」

少女「…知ってる…そこで魚取った……」

男「彼処でこいつ…メイドと会ったんだ」

少女から引き取り背中に背負ったメイドを見やる。幸せそうな顔で静かに寝息を立てていた。

男「出会ったころは本当に死にかけだったんだがな、不思議と良く憶えてる」
61 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/27(金) 13:43:00.76 ID:HgULu+Lwo
男「その頃はこいつ、今と全然違ってな」

男「髪はボサボサでクソ長かったし、死にかけの俺に全く物怖じしてない、やたらと生意気な女だと思った」

まぁ普通に考えて死体隠しに協力してくれるやつなんていないだろうが。

男「次の日、目が覚めたら屋敷に居た」

男「傷は消えてて目の前にメイドが控えてるんだからな、唖然とした」

男「良く見たら昨日の女だった。髪が相変わらずボサボサだったからな。」

男「そいつが言うんだ。『おはようございます。ご主人様』ってな」

男「鳥肌が立った。何を言ってるんだこいつは。まだ夢でも見てんのか?って思ったぜ」

男「死に掛けた時の話をしたら、知ってるらしくてな。夢じゃないと気付いた」

男「助けた引き換えの条件が"ご主人様"だ」

少女「…それで、引き受けたの……」

男「まさか、助けて貰ったのには礼を言ったが柄じゃないし、何より意味不明だからな」

男「屋敷も直ぐに去るつもりだった」
62 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/27(金) 13:50:10.23 ID:HgULu+Lwo
少女「…何で、留まったの?……」

男「引き止められたんだ、自分だけ助かって何も礼をしない気か、とな。他にも散々罵られた」

男「無視しても良かったが、何と無く出来なかった。何故助けたのか、何故そんなに拘るのか知りたかった」

男「結局"お客様"で妥協した、いや」

男「妥協しているのはこいつだ。俺は何もしてやってないし、今だって仇で返そうしてる」

メイド「髪を…切ってくれたじゃないですか……」

男「起きてたのか」

メイド「今起きました…下ろしてください…」

男「大人しく背負われてろ」

メイド「……」

そういうと大人しく背中にしがみ付いた。

男「あんなの礼でも何でもない。ただ見た目が鬱陶しかったから切ったまでだ」

メイド「それでも、良かったです…嬉しかったです…」

メイド「他人に何かしてもらうの……初めてでしたから……」

男「……そうか、なら良かった」
63 : ◆OMKIIM81fs [sage saga]:2012/07/27(金) 13:55:25.42 ID:HgULu+Lwo
男「昔話は終わりだ、帰るぞ」

少女「…ね…」

男「…どうした?今、殺す気か?」

背中のメイドがピクリと動いた

少女「…違う、お願いがある……」

男「余程の事でない限り何でも聞いてやろう」

少女「…ん……」

少女「…私も、あの屋敷に住みたい……」

男「俺は構わん、10年だろうが20年だろうが住め」

少女「…メイド…は?……」

メイド「…構いませんよ」

少女「…ん、じゃあそうする……」

それっきり誰も、何も喋らなかった。
64 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/27(金) 19:26:52.66 ID:HgULu+Lwo
男は数日間そこに留まったが、ある日、突然出て行くと言い出した。

女「流石、通りがかりに自分の死体の隠蔽を要求する人ですね。助けた側の要求を一切聞き入れずに、食べるだけ食べて出て行くなんて」

男「そんな男に主人になれと迫ったのは誰だ?」

男「それに食事を勧めたのはお前だ、その上に食料の魚も全て俺が釣って来たものだ」

男「あと何度も聞くが俺を主人にしてどうするつもりだ?」

女「仕えます」

男「ここ数日間、嫌と言うほど仕えてもらった。お陰で体に新しい傷も出来たぞ」

女「……」

女は直感的に理解した。この男と恋をするのは不可能だ。性格がこれでもかというほど捻じ曲がっている。
荷造りを終えた男が玄関先で振り返る。

男「世話になったな。金なら払おう。幾ら欲しい?」

女「お金なんて使わないし、いりません。それより礼として、代わりのご主人様を連れて来て下さい」

男「無理な相談だ。仕事柄プライベートの知り合いは極端に少ない」

女「友達が少ないのを仕事のせいにするなんて、心底同情します。きっと仕事仲間の他の人達には絶対あなた以上に友達がいると思いますよ」

男「そんな奴はプロとして失格だな、明日には死んでいるだろう」

女「友達がいないのに死に掛けた人もいますけどね」
65 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/27(金) 19:41:13.60 ID:HgULu+Lwo
男「…いい性格をしているな。夜の街でその手の仕事でもしたらどうだ?メイドより女王様のが似合ってるぞ。その調子を維持できるなら引く手数多だ。間違いない」

女「結構です。それより早く出て行ったらどうですか?」

男「言われなくても、そうしようとしていたところだ」

女「ふん」

一つ鼻を鳴らして踵を返すメイド。

男「待て、ひとつ思い付いた」

女「何をですか?正直もう心変わりされても迷惑ですよ」

男「その髪だ、鬱陶しいその髪を剪定してやろう」

女「人の髪を木の枝に喩えないで下さい。非常に不愉快です」

男「その鬱陶しい髪では誰も雇わんだろう。東方の地の怪物のようだ」

女「似たようなモノですし気にしてません」

男「察しが悪いな。お前がどう思うかじゃない。他人がどう思うか、だ」

女「……」
66 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/27(金) 19:51:27.11 ID:HgULu+Lwo
場面が変わる。
椅子に不機嫌そうな顔で女が座っている。

男「頭をあまり動かすなよ。宣教師になりたいなら話は別だが」

女「経験あるんですか?みっともない切り方したら呪いますよ」

男「安心しろ。素人ですら今よりみっともなくするのは難しい」

女「……」ムスッ

男「ほら、じっとしてろ。髪濡らすぞ」

水で長い髪を濡らし、切っていく。
長い髪の房がぼとり、ぼとりと落ちていく。
67 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/27(金) 20:01:10.77 ID:HgULu+Lwo
女「どんな仕事をしてるんですか?」

男「掃除関係」

後ろ髪を切りながら間髪入れずに男が答える。

女「外の掃除屋さんは命懸けの仕事なんですね。想像も付きません」

男「お前は何か仕事をしているのか?」

女「メイドです」

男「お前の場合それは趣味だ」

女「違います」

男「せめて野良メイドにしろ。本職に失礼だ」

女「私は野良猫か何かですか……」

男「前切るぞ。口閉じろ」

女「え」

口を閉じるのが遅れた女の口に髪が数本入る

女「ぺっ!ぺっ!何するんですか!」

男「悪い。口と手が別動していて忠告が遅れた」

女「私をいじめて悦んでるんですね…もしかして変態の方ですか…?」

男「お前が慌てるのを見るのは確かに楽しい」

女「やっぱりへんた……ぺっ!ぺっ!」

女「切る時は言ってください!!」

男「じっとしてろと言っただろ。前見てじっとしてろ」
68 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/27(金) 20:09:48.88 ID:HgULu+Lwo
女「……」

一旦切るのをやめ、女を見てなにやら思案する男。
暫くしてまた後ろの髪を切り始めた。

男「何故拘る?」

女「メイドのことですか」

男「あぁ、概ねそうだ。何故主人を欲するのかも知りたい」

女「自分の事は全然話さないクセに…」

男「俺を納得させるだけのことなら、手伝ってやらんこともない」

女「…いいです、貴方はなんとなくご主人様っぽくありません」

男「その通りだ。やっと理解したか」

女「……私たちの世界、娯楽っていうのがすごく少ないんです」

男「……」

男は散髪櫛を使って髪を切りながら、黙って女の話を聞いている。
69 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/27(金) 20:26:45.42 ID:HgULu+Lwo
恋をしたいというのは隠して話した。
何となく恥ずかしかったし、言ったら死ぬ程からかわれそうだったからだ。

男「要するに、その"遊び"をもう一度したくなったと?」

女「……そうです」

男「ふむ……」

男「見ろ」

話している間に髪を切り終わっていたらしい。男が手鏡を手渡した
手鏡を覗くと見違えたようにすっきりとしたショートカットの自分が写っていた。

女「……呪うのはやめにしておいてやります」

男「そうか、それは助かる」

男「こっちに来い」

そう言うと男は自分の荷物が置いてある方へ歩いていった。
女は黙って着いていく。
男は荷物から大き目の財布を取り出すと中からあるだけの札を取り出し女に手渡した。

男「一生分はあるだろ。しばらく泊めろ」

女「……」

女「ほんっっとに自分勝手ですね…」

男「俺はお前の恋愛相手の主人じゃあない。客だ」

女「……」

鈍感そうなのに鋭い男だ。
ブラフかも知れないが先程の会話から何か感じ取ったのだろう。

男「客に対する礼儀も憶えておけ、駄目イド」

女「……」

女「一番狭い部屋をあてがわせていただきます……」

男「その方がいい。今の部屋は広過ぎる」

女「…厄介な客です」

口ではそう言いながらも、この生活は退屈しないものになる。そう思えた。
主人不在の館。
一人の客と一匹の野良メイドがそこに向かった。
70 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/27(金) 20:27:19.53 ID:HgULu+Lwo
ここまで
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/07/27(金) 20:56:32.04 ID:So6M3EKAO
乙(`・ω・)b
72 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/28(土) 23:48:35.76 ID:C4FzZaOKo
回想多いねごめんね
>>63の翌日から
73 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/28(土) 23:58:35.19 ID:C4FzZaOKo

……

メイド「……」ムクッ

懐かしい夢を見た。
あの後帰ってから湯浴みをして着替えて寝た。
各人、何も言わずに各々の部屋に移動して寝た。
昨日の事を思い出し、急に不安になって、着替えてから男の部屋を足早に目指した。

メイド「……男様、男様」コンコン

メイド「失礼します」ガチャ

鍵を外し部屋の中に入る。
…はずだったが開けようとした扉が途中で止まった。

メイド「チェーンロック……」

扉と部屋の壁の間に繋げられたチェーンがメイドの侵入を阻んでいた。

男「つい最近付けた。それよりどうした?」

メイド「客室を勝手に改造しないで下さい」

男「付けたのはこの部屋だけだ。それよりどうしたんだ?朝食にはまだ早いだろう」

チェーンロックを外す動作の中で男が言った。

男「ほら、入れ」

メイド「…失礼します」
74 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/29(日) 00:08:12.70 ID:lydWW8rno
部屋に入って唖然とした。
ベッドに何か、いる。それも見憶えのある。
"それ"はもぞもぞとベッドから這い出し言った。

少女「…おはよう……」

メイド「な、な、な」

男「どうした?」

メイド「へ、変態ーッ!!」

男「……」パチーン
75 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/29(日) 00:13:21.91 ID:lydWW8rno
……
………

メイド「…誠に申し訳ございません」

男「怒っていないと言えばウソになる、が……」

真っ赤に腫れ上がった頬を摩りながら男が言った。

男「…大方そいつと俺が寝てたとでも思ったんだろう?ま、字面だけ見たら変わらんがな」

少女「…男、と寝た……」

少女はまだ眠そうな目を擦りながら答える。

男「部屋出て顔洗ってこい。湖に落ちるなよ」

少女「…ん……」

トコトコと歩いて部屋を出て行く少女。
メイドと男が残った。
76 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/29(日) 00:18:11.35 ID:lydWW8rno
男「寝ようとしたら扉をしつこくノックされてな、仕方なく中に入れた」

メイド「……何も、されなかったんですか?」

下世話な話ではなく、真剣な話だと分かったのだろう。男が答えた。

男「大丈夫だ、入ってくるなりベッドにダイブ。俺はそこのソファに横になって寝た。お陰で首が痛い」

男「誰かさんのせいで頬も痛い」

メイド「……申し訳ありませんでした」ズーン

男「ま、早とちらないようにこれから気を付ける事だ。俺たちも顔を洗って飯にしよう」

メイド「……はい」ズーン

何時もの言葉責めが無いのが余計に辛かった。
77 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/29(日) 00:25:43.91 ID:lydWW8rno
全員顔を洗い、食卓に着こうとしたところで第二の問題が起きた。

メイド「…あ」

男「どうした?」

メイド「食材が…ありません」

男「……昨日の魚は」

メイドが無言で首を振る。

少女「…お腹すいた……」グー

メイド「どうしましょうか…」ズーン

少女を除く二人が悩んでいると玄関の呼び鈴が鳴った。

男「こんな時間に誰だ?まさか第二の刺客じゃ無いだろうな」

少女「…ん、多分大丈夫……」

メイド「とにかく私、見てきます」

男「頼んだ」

玄関に向かうメイドを見送った。
78 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/29(日) 00:42:22.75 ID:lydWW8rno
メイド「今開けます」

玄関の扉前で言うと呼び鈴の音がピタッと止まった。先程の第二の刺客という言葉が気になりつつも扉を開いた。

?「聞きましたよメイドさん!」

瞬間、何者かに両手を握られた。
唖然としているメイドを無視し、相手の"人物"はまくし立てる。

?「なんでも男が亡くなったとか…本当に残念です」

?「あいつは悪いところは多々あれど良いところは極端に少ないヤツでしたが、まぁあれで居なくなると寂しくなったりなかったりするものです…」

メイド「は、はぁ?」

?「あ、これお見舞いです。人が死んだ後に肉は縁起が悪いなと思ったのでフルーツの盛り合わせを…」

男「なんだ、"人狼"か」

男「助かる。朝飯が無くて困っていたところだ」

横から出てフルーツバスケットを受け取る男。

人狼「……」

人狼が男を見た瞬間叫び声を上げる。

人狼「お前死んだんじゃなかったの!?」

男「失礼なヤツだ、この通り五体満足だ」

人狼「お、俺の計画が…未亡人篭絡の計が……」

メイド「未亡人って……」

人狼「またあのバアさん俺にウソ付きやがったなぁぁぁ!!!」

男「うるさいぞ、人狼」

少女「…誰……うるさい……」

屋敷から出てきた少女を見た瞬間人狼の動きが止まった。

人狼「こ、子ども……だと?」

少女「……」ムフー

少女は何故か誇らしげだ。
79 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/29(日) 00:51:57.25 ID:lydWW8rno
人狼「そ、そんな!何時の間に作ったんだ!?」

男「作ってない。勝手に自己完結するな」

人狼「てんめぇぇえ!!それはこれから作るって事かァ!?ぁあ!?」

男「やかましい奴だ……」

耳を塞ぎたくなる。
実際メイドは後ろで我関せずと言った風に耳を塞いでいる。

少女「…おじさん、うるさい……」

人狼「お、おじさん!?俺が!?」

人狼「クソッたれ!!なんだよこの状況!!なんか俺だけ置いてけぼりじゃねえか!!」

男「あのババアが何言ったか知らんが全部ウソだ。お前はいい加減ババアから情報の取捨選択が出来るようになれ。いつまで騙されてるつもりだ」

人狼「…ちょっとバアさんに文句言ってくる」

男「あぁ行って来い」

人狼は狼に変化すると森の方へと走り去った。
80 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/29(日) 00:59:10.83 ID:lydWW8rno
メイド「……まるで嵐の様でしたね」

男「あれで平常運転なんだろう」

少女「…おなか、すいた……」グー


……
………

少女「…んしょ……」

人狼から貰ったフルーツを分けて食べ終えた後、少女が椅子から降りて言った。

少女「…私、ちょっと用事あるから…出掛ける……」

男「そうか、これから俺達も出掛けようとしていたところだ」

メイド「俺達!?」

男「買い出しだ。必要だろう」

男「今回はお前も着いて来い」

メイド「…外の街…あまり出たく無いんですが」

男「どうしてもと言うなら俺が一人で行こう」

メイド「……」

メイド「行きます……」

男「よし、じゃあ用意してこい」

再び少女と向き合う。

男「正午まで、遅くても正午過ぎには帰ってくる。昼飯が食べたいならその辺りに戻って来い」

少女「…ん、了解……」

少女「…じゃ、行ってくる……」

男「あぁ、行って来い」
81 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/29(日) 01:11:09.40 ID:lydWW8rno
半時間ほど歩いて森の外に出た。

男「あれから体調はどうだ?」

メイド「大丈夫です」

メイドの服装はいつもとは違い、シンプルなワンピースだった。容姿も相まってどこかの令嬢のようにも見える。

男「そうか、ならいい」

メイド「…なんで誘ったんですか?」

男「一人じゃ来れんだろう?それになんだかんだ言って外の街に興味があるんだろ」

メイド「…今日、なんだか男様が優しくて不気味です」

男「言うな、サービスだと思え。今日一日限定だ」

メイド「…なんか自信満々で上から目線でムカつきます」

男「駄弁ってないで行くぞ、ほら」

手を差し出す男。

メイド「……」

その手を握った。

メイド「…ムカつきます……喜んでる自分に」

男「よしよし精々ムカつけ」

二人は手を繋ぎ、街へ向かった。
82 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/29(日) 01:12:58.75 ID:lydWW8rno
メイド√終了
83 : ◆OMKIIM81fs [sage]:2012/07/29(日) 01:13:38.62 ID:lydWW8rno
ここまで
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/07/29(日) 01:57:26.14 ID:xHGLu7qEo
あとは人狼√と魔女√で終わりだな
がんばれ!
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 11:50:31.48 ID:TBHLqsNHo
嘘だろ…

これからじゃねーか
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/29(日) 23:13:29.38 ID:WXGpuPBKo
正しい句読点の付け方教わりに来ました
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/30(月) 00:23:52.20 ID:g/uRv9x30
>>86
残念ながらHTML依頼を出されてるよ
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/07/30(月) 10:59:30.04 ID:RuuNG6m9o
kusowarota age
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 11:23:59.96 ID:na/J1qEIO
えっ
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/07/30(月) 12:40:38.21 ID:1mQ1by1co
句読点を見にきたら、一行目で読みにくかった
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/30(月) 22:28:46.91 ID:Jg4L2JsBo
>>82
> メイド√終了


句読点講師√終了
51.16 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)