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咲「―――あ?」 咲の股間「」 パオーン - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage]:2012/08/01(水) 11:29:27.49 ID:ntwh/dmV0
和「どうしたんですか染谷先輩、まだ夏休みなのに部室に集めたりして」

まこ「いや……咲のやつがそうしてくれって頼んできたんじゃ」

優希「きっとタコスパーティでも開いてくれるんだじぇ!」

京太郎「ねーよ」

京太郎「……ところで、当の本人はまだ来てないのか?」

ガラッ

咲「こんにちはー。あ、もうみんな揃ってる」

まこ「おう、久はまだ来とらんがな」

咲「いいですよ、それじゃさっそく始めよっか」

優希「へ? 何を?」

咲「何って、部室に来たんだから麻雀に決まってるよ!」

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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:30:50.92 ID:ntwh/dmV0

京太郎「え……そのためにわざわざ呼んだのか?」

咲「いいからいいから、席について!」

和「は、はぁ……」

優希「あんまやる気起きないけど、しょうがないからやってやるじょ」

まこ「こらこら。まぁ、気持ちはわかるがのう」

和「準決勝敗退で、長野に帰ってきたばかりですからね……」

京太郎「じゃあ俺は咲の後ろで見てようかな」

咲「さ、さ、早く始めよう!」

和(咲さん……誰よりもあなたがショックを受けていたはずなのに、なぜ……?)
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 11:31:41.28 ID:NHEd+j4A0

優希「さぁ! 私が起家だじぇ!」 ピッ

コロコロ

まこ「ん……、咲が起家のようじゃな」

優希「え、えええぇぇぇぇぇ!?」

京太郎「タコスが起家じゃないなんて珍しいな」

優希「た、タコス力が足りてないんだじぇ……だから起家になれなかったんだじぇ……」

和「そんなオカルトありえません」


東一局

和(あまり良い配牌ではないですね)

優希(んー……タコス力が出てないとすれば妥当な配牌だじょ)

まこ(こんなもんじゃろ)

京太郎「咲の配牌はー……? ふーん………ん? あれ……?」

咲「……………」

まこ「どうした咲? 早く捨てんかい」

咲「ツモ」

和優ま「「「!!?」」」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 11:32:18.25 ID:NHEd+j4A0

咲「天和 16000オール」

優希「ま、まじか!!」

和「こんなところですごい偶然な……」

まこ「おいおい咲、初っ端から飛ばしすぎじゃ」

咲「えへへ!」 ニコッ


東一局 一本場

和(出鼻を挫かれましたけど、先ほどの配牌よりは良い感じですね)

優希(今度はやらせないじぇ!)

京太郎「え……? あ………、……え!?」

京太郎(麻雀初心者の俺でもわかる……ッ! 咲のこの配牌は……!!)

咲「ねぇ、みんな」

まこ「ん、なんじゃ?」

咲「インターハイで優勝したくない?」

和「はい?」

まこ「来年のことを言うと鬼が笑うぞ、咲ー」

咲「違いますよ染谷先輩、今年ですよ今年」

優希「なに言ってるんだじょ、咲ちゃん……。もう今年のインハイは終わったじぇ……」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 11:32:57.76 ID:NHEd+j4A0

京太郎「さ、咲………お前何を……」

咲「するんだよ。今から」

和「何をです!」

咲「今年のインターハイで優勝」

まこ「咲! 気でも狂ったんか!」

咲「やだなぁ、私は正常ですよ。見ててくださいよ、染谷先輩」

咲「今から、それをしますから」 ドワッ

和「!?」 ゾクゾクゾクッ

咲「ツモ 天和・国士無双 32000オール」

優希「あ……え?」

まこ「はぁ!? つ、積み込みかっ!?」

和「あ、ありえません! こんなのありえません! 自動卓ですよ!?」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:33:25.70 ID:JmZHA/tm0

咲「みんなトビだね。じゃあもう半荘やろっか」

優希「馬鹿馬鹿しくてやってらんないじぇ! 犬! 替われ!」

咲「ダメだよ優希ちゃん、京ちゃんには後ろから見ててもらうんだから……」

優希「でも―――」

咲「ユウキチャン……?」 ドッワァァァーーー

優希「ひっ……!?」 ゾクッ

和(な、なんですかこの……殺気にも似た威圧感は……!?) ゾゾゾーッ

まこ(卓から離れたいのに……体が動かん!) プルプル

咲「麻雀は4人でやるものだよ? 抜けちゃったらできないよ」

京太郎(卓に着いてない俺にも……咲の威圧が伝わってくるッ……!!)

京太郎(逃げたい……でも足が言うことを聞きやしないッ……!)

咲「あ、私がまた起家だねっ」

まこ(まさか)
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:34:09.82 ID:JmZHA/tm0

咲「ツモ 天和・九連宝燈 32000オール」

和「あ……あ……」

優希「」 ガクガクガクガク

まこ「さ、咲……」

咲「次だよ、また私の起家だね」

咲「ツモ 天和・緑一色 32000オール」

京太郎「うっ……うっぷ……」

まこ「咲! いったい……いったい何が目的なんじゃ!」

咲「さっき言ったとおりですよ染谷先輩。 ツモ 天和・大四喜 32000オール」

咲「今年のインターハイで………ツモ 天和・清老頭 32000オール」

ピシッ

咲「優勝するんです。 ツモ 天和・大三元・字一色 48000オール」

ピシッ ピシィッ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:34:33.83 ID:ntwh/dmV0

―――ところ変わって、長野県内にあるという日本オカルト研究所

研究員A「所長! 先ほどから異常なほどのオカルト波が検出されていますッ!」

所長「なに、場所は?」

研究員B「ここ、長野県です!」

所長「……天江衣か」

研究員B「いえッ……! 場所が違います! この位置は龍門渕ではありません!」

所長「違う場所で麻雀を打っている可能性は十分ある。場所の特定を急げ」

研究員B「ハッ!」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 11:35:06.37 ID:NHEd+j4A0

研究員A「お言葉ですが所長」

所長「なにかね」

研究員A「先ほど、天江衣と推測されましたが……彼女が本領を発揮するのは満月が出ているときでは?」

所長「確かに。今は半月に近い時期で、しかも日中じゃないか!」

研究員B「場所特定! 清澄高校です!」

所長「なに、清澄!?」

所長(清澄といえば今年のインハイ予選で、あの天江衣擁する龍門渕高校を破った……)

所長「まずい、これは大変なことになるかもしれんッ!」

研究員A「いったい何が始まるんです?」

所長「宇宙の法則が乱れる!」

研究員一同「「「な、なんだってーーーーー!!」」」

所長「行くぞ! 清澄高校に急行だッ!」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:35:31.26 ID:JmZHA/tm0

〜清澄高校・麻雀部部室〜


まこ「お、お前さんは……狂っとる!」

咲「あはは、それならさっきから何かブツブツ言ってる和ちゃんの方が狂ってますよ」

和「SOA……SOA……」 ブツブツ

優希「」 ガタガタガタガタ

咲「優希ちゃん、どうしたの? さっきから震えてばかり。 ツモ 天和・九連宝燈 32000オール」

ピシッ

和「も、もうやめてください咲さん……」

咲「え? なに? 聞こえない。 ツモ 天和・字一色 32000オール」

ピシッ

優希「」 ガクガクブルブル ジョワァァァ

咲「ちょっと! 臭いよ優希ちゃん! あーあ、シートが汚れちゃった」

咲「ツモ 天和・四暗刻・大三元 48000オール」

ピシピシィッ

京太郎「も、もうやめろ咲ィ!!」 ガシッ
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:36:04.64 ID:JmZHA/tm0

咲「離してよ京ちゃん、苦しいよ〜」 ドワッシャァァァァ

京太郎「のぴゅっ」 プシュー

ドサッ

和「す、須賀くんが全身の穴という穴から謎の液体を噴出して倒れたぁぁぁーーーー!!」

咲「邪魔するからいけないんだよ、京ちゃん」

咲「ツモ 天和・四暗刻・大四喜・字一色 64000オール」

ピシピシピシピシ

優希「」 モリモリモリモリ

まこ「お、終わりじゃ……この世の終わりじゃ……」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 11:36:26.82 ID:NHEd+j4A0

〜清澄高校・旧校舎・麻雀部部室前〜

ドタドタドタドタッ

研究員B「そこの部屋ですっ!」

所長「むっ、部室の前に誰かいるぞ!」

久「あ、あなた達は……?」

所長「われわれは日本オカルト研究所のものだ。君は?」

久「この高校の学生議会長兼麻雀部元部長、竹井久です」

所長「それはそれは、長い肩書きをお持ちだ。ところで麻雀部ならどうして入らないのかね」

久「それが……今日集まるって聞いて少し遅れたらなぜか部室に入れないんです!」

所長「まさか…………スコープ!」

研究員A「はい!(装着) こ、これは!?」

研究員A「瘴気です! それも……かなり濃度の濃い!」

久「瘴気……? そんなあるかどうかもわからないもので入れなかったとでも言うんですか!?」

所長「瘴気は存在するよ。現にここにある」

研究員A「運がよかったな君。おそらく部屋の中は恐ろしいことになっているぞ」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:37:06.68 ID:JmZHA/tm0

ピシッ ピシッ

久「な、なんの音……?」

所長「この音は……まずい!」

所長「今すぐ扉をぶち破れ! 中に突入するぞ!」

研究員A「防護服、装着! 突入します!」

ウ オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ !!!

研究員A「ぐあ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!」

久「な、なんなのーーーー!?」

研究員B「がんばれッ! がんばれッ、あともうひといきッ!!」

研究員A「ぬ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛ぉ゛お゛ぉ゛お゛お゛ぉ゛お゛ぉ゛ぉ゛ーーーーーッッ!!」

研究員A「ダラッシュアァァァァァーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

バターン!!

所長「よくやった! 扉が開いたぞ!」

咲「!!」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 11:37:32.70 ID:NHEd+j4A0

久「なんなのこれ……」

所長「空間が……“ヒビ割れている”ッ!?」

まこ「……ッ!! なんじゃ……!?」

和「部長!」

久「ど、どうなってるのよ……」

京太郎「」 ピクピク…

優希「」 ピクンッ ピクンッ

久「須賀君……優希……」

所長「既に二人ほど失神しているようだな……被害は甚大だ」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:38:14.80 ID:ntwh/dmV0

研究員B「とにかく入りましょう!」

研究員A「ま……待てッ……!!」

(懐からスッとラットを取り出す)

鼠「」テコテコテコ

久「ねずみ……?」

鼠「!?」 モガモガモガモガッ

鼠「」 キュゥ…

久「部室に入ろうとした鼠が……!!」

研究員B「もがき苦しんで……死んだ……」

研究員A「瘴気は……残っているッ……!」

所長「なんということだ……これでは中に入れんッ!」

咲「うふふ……あはは! なんだか知らないけど、そこで見ててくださいよ」

咲「今から仕上げですから」 ニコーッ
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:38:39.99 ID:JmZHA/tm0

咲「はいはい、起家起家」

咲「配牌完了」

咲「今まで描写省いてたけど全部やってたんだからねこれ」

和(誰に向かって言ってるんでしょう……)

まこ(仕上げとは……一体……)

咲「カン」 ■發發■

和ま「「!?」」

まこ「て、天和じゃない!?」

和「な、何をする気ですか咲さん!?」

咲「見ててよ」 ニッ
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:39:23.31 ID:JmZHA/tm0

咲「もいっこカン」 ■北北■

所長「ハッ! まさかあれをやる気なのか!?」

(嶺上牌を手に取る咲)

咲「……」 フッ

咲「もいっこカン!」 ■中中■

久「親の配牌から一度も捨てずに、もう三槓子!?」

和「そんな……オカルト……」


そして咲が取ってきた3枚目の嶺上牌を見た久達は息を飲んだ……


研究員A「4枚目の……白ッ!!」

久「手配には白の暗刻が!」

所長「あの牌を鳴かせるなー―――ッ」

咲「いいや! “限界”だッ! 鳴くねッ!」

咲「もいっこカンッ!!」 ■白白■

ピシピシピシピシピシ……
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:40:01.70 ID:JmZHA/tm0

咲(あの嶺上牌は和了牌である東……)

咲(あとはあれを掬って……手配に並べるだけッ!)

和「そんな……」 ピクッ

咲(和ちゃん……!?)

和「オカルトぉぉぉ………!!」 プルプル

まこ(和のやつ……まだ動けるんか……!!)

咲「無駄なのにねっ」 ヒョイ

和「ぁ」

咲「ツモ 四暗刻・四槓子・大三元・字一色 64000オール」


┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨……


ピッシャァァァァァーーーーーz__ ンッ!!!


研究員A「空間が……裂けたッ!」

久「夢よ……これは悪い夢だわ……」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:40:27.57 ID:JmZHA/tm0

咲「それじゃあ行くね」

和「咲さんっ……!!」

まこ「どこに行くんじゃ!!」

咲「数日前だよ」

和ま「「!!」」

所長「タイムトリップをするとでも言うのか……ッ!?」

久「待って! 何しに行くつもり!?」

咲「麻雀をしに……ね」

久「えっ……」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:41:00.81 ID:JmZHA/tm0

咲「私は会わなきゃいけないんです。お姉ちゃんに」

咲「来年はもう無理ですから」

まこ「そ、そんなことのために……わしらを巻き込んだんかッ!」

咲「言ってくれますね染谷先輩。あなたにとっては“そんなこと”でも、私にとっては大事なことです」

咲「ふふっ……安心してください。お土産はちゃんと持ってきますよ」

咲「清澄高校……インターハイ優勝をね!」

(空間の裂け目に近づいていく咲)

まこ「咲ィーーーーッ!!」

久「咲!!」

和「咲さん!!」

咲「……」 ニコッ


┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨……


ヴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛…………
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:41:27.32 ID:ntwh/dmV0

咲(すごい)

咲(なにかわからないけど、幾何学的な模様がそこらじゅうを飛び交ってる……)

「――s――ッ!!」

「―――k―ッ!!」

「―s―――ッ!!」

咲(まだ何か聞こえる…………)

咲(……フフフフフフフフフフ)

咲(気持ちいい…………)


――――――――

――――
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 11:41:53.66 ID:NHEd+j4A0

〜???〜

ジリリリリリリリリリ……!!

ガンッ!

咲「うるさいなぁ……もう」

咲「んーーー…………成功したのかなぁ」

咲「よっこらしょっと」

咲「…………あれ? どこだろ、ここ」

咲「知らない部屋だ……なんでこんなところで寝てたんだろ」

咲「数日前はまだ東京にいたはずなんだけどなぁ」

(ふと自分の体を見下ろす)

咲「……わっ! なんでこんな格好で寝てたの!?」

咲「タンクトップとパンツ一丁って! 恥ずかしいこと山の如しだよ!! 女捨ててるよ!!」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:42:21.02 ID:ntwh/dmV0

咲「っていうかこれ男物のトランクス―――」 ポロン

咲「―――あ?」

咲「」(目をこする)

咲「」(見る)

咲の股間「」 パオーン

咲「うぇっ……」

咲「うええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーッ!? エレファントぉぉぉぉぉぉぉーーーーーッ!!?」

咲「なに!? なんなの!? うあわあわあ! 袋とかついてるーーーー!!」

咲「ハッ」 (胸触る)

咲「ないっ!! ちょっとはあったのにっ! 完全になくなってるよぉ!」

咲「あぅあぅあぁ……どうなってるのこれ……」



咲「夢……?」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:43:02.10 ID:ntwh/dmV0

咲「そう、これは夢だ。夢なんだ」

ほっぺたギュッ

咲「いは(痛)っ!!」

咲「…………夢じゃない」 ズーーーーン

咲「……よく見たら間取りは私の部屋と一緒だ……」

咲「置いてある物は全然違うけど……。なにこれ? アイドルのグラビア?」


「咲ー、朝だぞー! 早く起きなさい!」


咲「わっ! お父さんの声が……!」

咲「どうしよう! 私が男になってるって知られたら――――」

咲(―――って、待って。この部屋の様子から伺うに……)

咲「私が男なことは何もおかしくないのかもしれない……」

咲「むしろ、自分が女だという私の認識が“この世界”では異常なのかも!」


咲「つまり、私は単純に時間を遡ったわけじゃない……」

咲「別の世界に……来ちゃったんだ……」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage saga]:2012/08/01(水) 11:43:37.04 ID:ntwh/dmV0

――――次回予告

運命を、宇宙の法則を捻じ曲げて時を越えた咲を待っていたのは
自分が男として存在している世界だった

次々と現れるその世界の仲間達……
男になった咲は一体何をしようというのか

次回 『見知らぬ、仲間』

この次も、サービス、サービスゥ!
26 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/08/01(水) 11:47:02.77 ID:JmZHA/tm0
というわけで、需要不明の誰得SSです
導入がやたら変なノリですが、次回からは普通になると思います
キャラ崩壊、(ほぼ)オリキャラが頻出する可能性大なので嫌いな方は回れ右してくださいね

あと謎のID七変化してますが全部同一人物です
念のため酉をつけておきます
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 11:58:25.47 ID:ynDjqPGso


ここから京ちゃんルートに期待
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 12:20:42.31 ID:7S2PDFoDO

申し訳ないがホモスレにするのはNG
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 12:58:33.79 ID:W1vOsV9w0
天和でツモ?
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/01(水) 20:57:36.01 ID:Adt+En6c0
天和はアガり宣言ツモであってんじゃないの?
天和みたことないけど
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/08/01(水) 21:04:13.46 ID:s0BwIG9co


てるてるが男ならあそこに風纏ってそう
32 : ◆RmlFOAHrTI [sage]:2012/08/08(水) 02:28:52.06 ID:SuBhuzYuo

――――前回までのあらすじ

清澄高校はインターハイ準決勝で敗退した。
姉と会うことができなかった咲は、この事実を捻じ曲げるため時を越える。

しかし咲を待ち受けていたものは、あるはずのない自分のムスコであった。




咲「気分サイアクだよ、もう……」

父「朝から機嫌悪いなァ、なんかあったか?」

咲「い、いやなんでもない」

父「……? ま、遅れないように学校行けよ」

咲「うん…………ん?」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:29:36.96 ID:SuBhuzYuo

咲「えっ!? お父さん、今日って何日!?」

父「七日だな」

咲「何月の!?」

父「おいおい、まだ寝ぼけてんのか? 六月だよ六月」

ド ォ ォ ォ ォ ォ ォ ン

咲「ろく……がつ……七日っ!?」

咲(麻雀部に入る前だ……! 戻りすぎちゃったよ!)

               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

咲(通りで真夏にしては涼しいと思った……まさかまだ六月なんて……)

咲(でも……そういうことなら麻雀部のみんなとも面識はないはず)

咲(それならこの異常事態の対応も少しは楽になりそう……かな)

咲「う……初めて学ラン着たけど、結構窮屈だ……」

「咲ー! 遅れんぞー!」

咲「い、今でるからー!」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:30:09.54 ID:SuBhuzYuo

〜清澄高校・教室〜

キーンコーンカーンコーン

咲「…………」

咲(……どうしよう。誰が友達だかわかんないよ)

咲(席は同じみたいだけど……)

咲(………………っていうか今気づいたんだけど)



咲(男じゃ女子の団体戦に出れないじゃん――――!!) ガガーーーンッ



咲(うわぁぁぁもおおぉぉぉぉ!! どうしよう! 早くこの状況なんとかしないと!) ジタバタ

ガンッ

咲(いたっ……机に足ぶっけた……)

バサッ

咲(ん? 机の中に本なんて入ってたんだ) ヒョイ

咲(なになに……“財前教授の総進撃”? 男の私はこんなの読んでたんだ)

?「おはよ、咲」 ポンッ

咲「え?」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:30:52.73 ID:SuBhuzYuo

?「また読書? 飽きないねーホント」

咲(か、かわいい子……。誰だろう……? この世界での友達?)

?「あれ? その本、前にもう読み終わったって言ってなかったっけ?」

咲「えっ……ああ、返すの忘れてたんだ」

咲(でも――うちのクラスにこんな子いたかな?)

咲(胸おっきいなぁ……和ちゃんレベルではないけど……)

?「ふーーん? じゃあ今読むものないんだ」

咲「そ、そうだね」

咲(それに……今の私って男だし。こんな可愛い子と友達なんてちょっとおかしいかも)
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:31:20.20 ID:SuBhuzYuo

「おっはー、今日も朝から宮永君に会うために通い妻ですか〜?」

?「誰が妻よ、誰が! 咲とは中学が同じなだけで、別になんもないから!」

「あはは。そういうことにしておきますか」

咲(あ、あれ……? どこかで似たような会話を聞いたような……)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
咲「はい、レディースランチ」

京太郎「おおう」

「咲ちゃんはイイ嫁さんだなァ」

咲「中学で同じクラスなだけですから! 嫁さん違います!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


咲(…………あっ)

「ま、仲良いのもいいけどさー、隣、もうセンセー来てたよ?」

?「げっ、もう!? やばっ!」

咲(まさか…………)
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:32:01.63 ID:SuBhuzYuo

教師「おら〜、お前ら席付け席ぃ!」

「あ、こっちも来ちゃった」

教師「ん? 須賀ァ! もう隣はホームルーム始まってんぞぉ!」

咲「!!」

?「い、いま戻りますって!」

?「じゃねっ、咲」

咲(嘘でしょ…………“あれ”が……京ちゃん?)

「じゃねー京子〜」

京子「おー!」 タタタッ




咲「須賀……京子…………」

咲(私だけじゃない……京ちゃんも女になってる!)

咲(っていうかなんで巨乳なの!? ずるい!)
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:32:38.34 ID:SuBhuzYuo

――――お昼

咲(京ちゃんと話そうと思って隣のクラス行ったらなんかたくさんの友達に囲まれてた……)

咲(そういえば元から京ちゃん友達いっぱいいたっけ……)

咲(っていうか京ちゃん、こっちの世界だとクラス違うんだね……ちょっと寂しい)

咲(…………あの本返しに図書室行こ……)



〜図書室〜

咲(世界が変わっても本は同じなんだ)

咲(んー……これにしようかな。こっちも面白そう)

「咲っ」

咲「ふぇ?」

京子「さっき教室来てたでしょ? なんか用?」

咲(えっ……気づいてたんだ)

咲「えーと……どうしてここにいるってわかったの?」

京子「朝、本返すって言ってたし。教室いなかったらここかな、って」

咲「学食にいるかもしれないよ?」

京子「咲、弁当派じゃん。端っから除外してる」

咲(なにこの子……察し良すぎでしょ……)
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:33:09.83 ID:SuBhuzYuo

咲「あ……、今日お弁当持ってきてないよ……」

京子「そうなの? じゃあ一緒に学食行く?」

咲「いいの? だって京ちゃん友達と―――」

京子「いーって。あんたに会いに行ったことはみんな知ってるし」

京子「なーんか勘違いしてるのはムカつくけど」

咲「あ、あはは……」

京子「っつーわけでいざ学食!」

咲「きょ、京ちゃん、図書室では静かに……」

京子「あはー、ごめんごめん」

咲(明るくて気立ての良い女性……って感じ)

咲(モテるんだろうなぁ……この世界の京ちゃん……)
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:33:39.85 ID:SuBhuzYuo

〜学食〜

京子「うどん! うどんにしよう!」

咲(レディースランチじゃないんだ……)

咲「……うどん好きなの?」

京子「それなりにね。まぁ、香川県民ほどじゃないけど」

京子「っていうか学食の麺モノっておいしくない? よくわかんないけどさ」

咲「そ、そうかな〜?」

京子「咲は何食べんの?」

咲「ん〜…………」 キョロキョロ

咲「」 チラッ

[日替わり! レディースランチ]

咲(わ、今日のレディースランチ美味しそう……)
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:34:07.94 ID:SuBhuzYuo

京子「なに? もしかしてレディースランチ食べたいの?」

咲「えっ! いや、その」

京子「なに? 恥ずかしい?」 ニヤニヤ

咲「ち、違うよ!」(焦)

京子「それじゃうどんは咲が買って。私がレディースランチにしたげるから」

咲「え、ちょっ……あ、ありがと……」

京子「素直でよろしい」

               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

京子「うどん最高!」 ズルズルーッ

咲「京ちゃん……女の子なんだし、もうちょっと綺麗にすすろうよ」

京子「ほっほぉ〜」 キラーン

咲「?」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:34:36.76 ID:SuBhuzYuo

京子「咲が“女の子なんだし〜”と来ましたか」

咲「な、なに……?」

京子「咲はもうちょっと“男らしく”したほうがいい!」 ズビシィッ!

咲「え、ええぇぇぇぇ」

京子「中性的な見た目に甘えてない? そんなんじゃいつまで経っても彼女とかできないぞ」

咲「う、うぅ」

咲(私にソッチの気はないんだけどなぁ……)

咲(でも今は男……)

咲「じゃ、じゃあさ……京ちゃんが彼女になってよ」

京子「甘えんなー!」 ペチペチ

咲「うひゃあ! ほっぺたペチペチしないでー!」



モブA「今日もあの二人仲良いな……」

モブB「宮永爆発しろ」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:35:23.45 ID:SuBhuzYuo

京子「そういえばさー」

咲「なに……」 ヒリヒリ

京子「レディースランチがあるのに、男子限定のランチはないわけ?」

咲「ないんじゃない?」

京子「んー、なんか特別感薄いのよねーレディースランチ」

咲「でも、私は注文できないけど、京ちゃんは注文できるんだよ?」

京子「こら」

咲「え?」

京子「また女の子みたいな一人称使って……」 (呆れ顔)

咲(あっ……いま“私”って言っちゃった……!)

咲「間違えた! ぼ……ぼっ、僕……だよね///」 カァァ

咲(は、恥ずかしすぎるっっ)
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:35:54.91 ID:SuBhuzYuo

京子「話し戻すけどさー、私が注文できたら別に特別じゃないじゃん」

咲「??」

京子「自分だけじゃ手に入らないものの方が特別感ない?」

咲「あぁ……わt……僕もフーディンとかカイリキーとかすごく欲しかったよ」

咲(通信相手いなかったし)

京子「うんうん。そういうことそういうこと」

京子「だからね、学食は“ジェントルマンランチ”を作るべきっ!」

咲「…………売れるのかなぁ?」

京子「…………あ、やっぱ売れない?」

咲「まず発想が陳腐だよ」

京子「くっ……陳腐と来たか……」



?「ジェントルマンランチひとつ!!」



咲「」

京子「」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:36:30.17 ID:SuBhuzYuo

おばちゃん「ないよ、そんなもん!」

                        レディースランチ       ジェントルマンランチ
?「なんでだーーー! なんで 淑女定食 があるのに 紳士定食 はないんだぜ!」

おばちゃん「呼ばなくても男子は学食来るからね」



咲「……」

京子「……」

咲「京ちゃ――」

京子「何も言わないで」

咲「うん……」



?「くっそー、贔屓だぜ! じゃあレディースランチくれ!」

おばちゃん「男子は注文できまへん」

?「くっそーー! じゃあタコスくれ、5個!」

おばちゃん「あいよ」

?「おっしゃ!」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:37:05.07 ID:SuBhuzYuo

?「あれ? きょーこじゃん!」

京子「」 ドキッ

京子「ダレデスカ、アナタ。ワタシ、アナタ、シラナイ」 アセダラダラ

咲「京ちゃん? 知り合いなの、この人」

咲(―――って、あれ? 手に……“タコス”!?)

咲(まさか…………)

?「知らんぷりすんなよー、冷たいぜー」

京子「ハァ……、同じ部活の片岡優希。タコス星人」

咲(やっぱりぃぃぃ!!)

片岡「ん、誰だこいつ」

京子「あんたには関係ないから、はやくあっちいけー」 シッシッ

片岡「んだよぉー! もしかしてきょーこの彼氏じゃねーだろーなー!!」

京子「なわけあるかーーっ!」 パコンッ!!

片岡「っっっっってーーー!!」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:37:39.19 ID:SuBhuzYuo

咲「あ、あの……宮永咲です。よろしく……」

片岡「……! 宮永咲……」

片岡「女の名前なのに…………なんだ、男か」

咲「………………」

咲(怒る……べきなのかな……?) 汗ダラー

京子「こらーー! 人の名前に何を言うかっ!」

片岡「えー、素直に感想言っただけだぜー」

京子「素直すぎんだ、このバカ!」

京子「咲も! ちっとは怒りなさいよ! “咲が男の名前でなんで悪いんだ!”とかさ!」

咲「ん〜、わt……ぼく、そういう性格じゃないし」

片岡「へへっ、わりーわりー。よろしくなー咲ー」

咲「よ、よろしく片岡くん……」

片岡「優希でいいぜ!」

咲「う、うん」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:38:06.60 ID:SuBhuzYuo

咲(京ちゃんが女の子な時点で予想しておくべきだったけど……)

咲(まさか優希ちゃんまで男に……)

咲(しかも結構ガサツだし)

咲「あの……京ちゃん」

京子「なに?」

咲「“同じ部活”って、京ちゃん部活入ってたんだ」

京子「ん、ちょっとね…………麻雀部に」

咲(ほっ……さすがにここは変わってない)

片岡「知ってるか、きょーこ麻雀ヘタクソだぜ!ww」

京子「まだ初心者だっつーの!」

咲「あ、あはは……」

咲「あの……わt、ぼくも……麻雀部見に行っていいかな?」

京子「えっ……?」

片岡「マジでか! 歓迎だぜ! 熱烈歓迎わんだーらんどだぜーーー!!」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:38:37.50 ID:SuBhuzYuo

京子「咲、麻雀できるの?」

咲「昔、ちょっとやってて……」

片岡「咲が入部してくれるならちょうど男子5人! 団体戦に出られるんだぜ!」

咲(男子5人……か)

咲(うへぇ)

咲「よく麻雀部入ろうと思ったね、京ちゃん」

京子「えっ、いや、まぁ、その、………ね///」

片岡「きょーこは俺の友人にベタ惚れなんだぞ」 ボソボソ

咲「へ、へぇ〜……」

京子「こら、そこ! 何ナイショ話してんの!」

咲(こっちでも和ちゃん……の男ver.が気になってるんだ……)
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:40:42.97 ID:SuBhuzYuo

――――放課後

京子「ここが麻雀部の部室だー!」 ババーン

咲「お邪魔しまーす」

京子「ちょっ……なんか言ってよ!」



〜部室内〜

?「ん……!」

京子「やほー、カズー。新入部員連れてきた!」

咲「ま、まだ入るとは言ってないよ!」

?「男子か」

咲「え……?」

咲(も、もしかしてこの人が……この世界の和ちゃん……?)

京子「ほらっ、咲。自己紹介!」 ボソボソ

咲「うっ……み、宮永咲です。よろしくおねがいします」 ペッコリン

原村「原村和(カズ)だ……、よろしく」

咲(なんというか……男になったことで華やかさは失われたけど) ジロジロ

咲(それによってクールな面が強調されたというか……顔もイケメンだなぁ) ジロジロ

原村「…………っ/// な、なんか顔についてるか?」

咲「あ、ごめんなさい、ジロジロ見ちゃって―――」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:41:27.69 ID:SuBhuzYuo

片岡「オラァァァァァァーーーーーッッ!」 バターーン!!!

咲「!」 ビクゥッ

片岡「オッス! 来たかサッキー!」

咲「さ、さっきー?」

片岡「あだ名だぜ、あだ名」

京子「またタコス買って来て……。昼もタコスだったじゃん」

片岡「昼は違うもん食う予定だったんだけどな、学食のババァが融通聞かなくて仕方なくタコスだったんだぜ!」

咲「無茶苦茶言ってる……」

原村「優希はこういうやつだ」

原村「ところで……麻雀、強いのか」

咲「え、と……。自信はあるかな……?」

原村「おもしろい。さっそくやろうじゃん」

片岡「丁度四人だしな! 俺のタコス力を見せてやるぜ!」 タコスバクバクバク

京子「空気清浄機つけておくか……」 タコスクサイ

               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

東一局

東:片岡 南:原村 西:咲 北:京子

咲(さぁ……この異常世界から脱出できるチャンス……だけど)

咲(力を使いすぎたのかなぁ。起家でもないし、普通の配牌になっちゃった……)
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:41:55.62 ID:SuBhuzYuo

京子「んんー、良い配牌かも」

片岡「おっしゃ! リーチ!」

京子「えぇ!?」

咲(……! ダブル立直!)

原村「今日も絶好調だな」 タンッ

咲(安全に自風切り……かな) タンッ

片岡「ロォーーンッ!!」

咲「!」

片岡「ダブリー・一発・ダブ東・赤2、親っ跳だぜぇ!」

京子「うわ、一巡目立直から西単騎待ちとか読めるわけないじゃん!」

京子「こんなの事故だよ咲。気にすんなー」

咲「う、うん……」

咲(当たり牌から気配とか全然感じられなかった……どういうこと……?)
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:42:26.82 ID:SuBhuzYuo

東一局 一本場

7巡目

片岡「ふふふ、リーチ!」

原村(また高い手作れてそうだな、優希のやつ) タンッ

咲(自風の暗刻作れたけど……おかしい……槓材が見えないよ……) タンッ

京子「げっ、要らないの引いたー。でも安牌っしょ!」 タンッ 捨て:西

咲「あっ! それカン」

京子「!?」

原村「!?」

片岡「親リーで明槓!?」

咲(嶺上牌は見える……これはたぶん和了牌の三萬!) スッ

咲(…………ッ!! …………發……?) サァァ

原村(……? なんだこの反応? 嶺上牌引いて顔青ざめるなんて)

原村(……危険牌でも引いたのか?)

咲(全然違う……見えない……全然見えない!) タンッ 捨て:發

京子「あ、やった! ロン!」

咲「えっ!」

京子「自風・發 40符2飜はえーと……」

原村「2600」

京子「そう! 2600!」

咲(京ちゃんから和了られちゃうなんて…………)



その後、咲は終始うだつの上がらない麻雀を打った。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:43:12.85 ID:SuBhuzYuo

結果
1位:原村 2位:片岡 3位:京子 ラス:咲

咲「…………」 カタカタ…

京子「さ、咲ー?」

原村「なんつーか……元気出せよ」

片岡「そうだぜ! 麻雀って運要素つえーし、こういう半荘もあるぜ!」

咲「うん……」

咲(どうしよう……どうしよう! あの力だけじゃなくて、元々あった雀力まで消えちゃった……!)

咲(これじゃ元の世界に帰るどころか……この世界で全国優勝もできやしないよ!)

?「調子が悪い……ってのは本当かもね」

咲「……っ!?」

京子「部長、いたんですか」

片岡「突然話しかけたからサッキーびっくりしちゃってるぜ」

竹井「ああー悪い。こんにちは、宮永くん。僕がこの麻雀部の部長、竹井久(ヒサシ)だ」

咲(部長男バージョン……なんか真面目そうだけど、遊んでそうな人だな……)
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:43:44.45 ID:SuBhuzYuo

竹井「今の半荘、やたらカンしてたけど、なんで?」

咲「そ、それは……」

竹井「まるで確認するかのように、嶺上牌をめくりたがった」

竹井「そこに何かあったからだ……違うかい?」

咲「…………」

竹井「ま、ともかく、今の腕じゃ団体戦でも足を引っ張るだけになるが……」

竹井「鍛え甲斐はありそうだね」 ニヤリ

竹井「麻雀部部長として、歓迎するよ、宮永咲くん!」

咲「…………」

咲「やっぱり……」







咲「麻雀部入るのやめます」







京片原竹「「「「えっ」」」」


「「「「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!?」」」」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:44:30.39 ID:SuBhuzYuo

――――次回予告

時空の狭間に消えた咲
彼女が残した爪痕はかつての仲間達に深く刻まれていた

優希、和、まこ、京太郎
次々と目を覚ます中、ただ一人眠り続ける少女

その名は……

次回『起きない、少女』

この次も、サービス、サービスゥ!
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/08(水) 02:45:39.55 ID:SuBhuzYuo
〜キャラクター紹介〜

■宮永咲(男)
別世界の宮永咲。見た目は女の時とほぼ同じ。
本人はエレファントなどと大仰な言い方をしていたが、せいぜい子像ぐらいである。

■須賀京子(女)
須賀京太郎の女バージョン。金髪セミロング。
かなりのお節介焼きであまり人を嫌わない。わりと巨乳。

■片岡優希(男)
片岡優希の男バージョン。茶髪で短髪。タコス好きはそのまま。
小柄な体格にコンプレックスがある。ちんちんもミニマム。

■原村和(男)
原村和の男バージョン。髪はさっぱり系、色はピンク。でもイケメン。
京子に片思いされているが釣れない態度をとる。背はわりと高い。巨根。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/08(水) 02:50:28.26 ID:SuBhuzYuo
というわけでこういう感じのスレです

全国1000万の咲-saki-ファンのみんなッッ、すまんッッ!
誰得SS書いて垂れ流すの大好きなんだ……(遠い目

週に一度、次回予告含め25レスでこれからもやっていきたいと思います
もう3話は書き終わってるけど、週一投下でやっていきたいッッ
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2012/08/08(水) 03:03:58.46 ID:jdD2Ka2go
これは面白そうだww
来週も期待してます
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 03:59:12.47 ID:4wvtxSzDO
これは期待

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/09(木) 21:52:41.46 ID:xdasAUzH0
和の巨根を「おいなり」呼ばわりしながらもみしだくクロチャー…ゴクリ
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/10(金) 06:12:03.32 ID:w19OE6ZLo
ティムコの大きさ⇔胸の大きさ
だとすると元の世界の京太郎は巨根か
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/08/11(土) 11:38:40.28 ID:qyXtXcDu0
一つ言っとくと天和は他の役と重複しないよ
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/11(土) 12:19:39.90 ID:JyDPD4dN0
>>63
なんでさ
役満の複合有りのルールでやってるなら別に問題ないだろ
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/08/11(土) 13:37:10.45 ID:5iFJhqXAO
京子が巨乳なゆるゆりの京子で再生された
66 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/08/15(水) 03:28:02.78 ID:Qsrl9d7Bo
今回は3話でいきなり、一旦本来の世界をクローズアップ

書いておいてなんだけど、今回は飛ばし読みしても一向に構わんッッ!
あくまでこのスレの本筋は「咲-saki- 男編」なので!
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:28:50.70 ID:Qsrl9d7Bo

――――前回までのあらすじ

咲が辿り着いた世界で性別が変わっているのは自分だけではなかった。
変わってしまった仲間達の姿に以前の面影を重ねながら、咲は麻雀部へと足を向ける。

しかしそこで待ち受けていたのは、己の能力が消失していたという事実であった。




〜???〜

京太郎(…………? どこだここ……)

京太郎(白い……天井……?)

京太郎「ッ……! 頭……いてぇ……」

「おお! 京太郎が目覚めたじぇ!!」

京太郎「その声……優希か?」

優希「おう!」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/15(水) 03:29:19.51 ID:HfM4PFDMo
和と咲のホモ展開しか想像できないんだが(震え声)
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:29:58.88 ID:Qsrl9d7Bo

コツコツ ガラッ

所長「目が覚めたか、須賀くん」

京太郎「あ、あなたは……?」

所長「日本オカルト研究所の所長だ」

所長「そしてここは“日オ研”傘下の病院。キミはあのあとここに運び込まれた」

優希「京太郎は三日も寝てたんだじょ」

京太郎「なにっ!? 三日……!?」

優希「染谷先輩やのどちゃんはもう目覚めてるじぇ」

所長「キミだけ彼女から直接瘴気を当てられたからな……下手したら死んでいた」

京太郎「っ……、状況がよくわからないんですけど……」

所長「あの日、麻雀部の部室で起こった出来事は覚えているかね」

京太郎「あ……、咲が暴走して……腕ずくで抑えようとしたら気を失ったんだっけ……」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:30:50.59 ID:Qsrl9d7Bo

京太郎「ハッ……! 咲は! 咲はどうしたんですか!?」

所長「…………」

優希「…………」

京太郎「なんで……黙るんだよ」

ガラッ

久「黙ってないで、説明するのが筋でしょう?」

京太郎「部長!」

久「ね、所長さん」

所長「……仕方あるまい」

京太郎「……教えてください! 何があったのか!」

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               ・
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               ・
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:31:32.43 ID:Qsrl9d7Bo

〜病院の一室〜

京太郎「咲が……タイムトリップした?」

所長「本当かどうかは確かめようがない。だが彼女はそう言っていた」

久「今年のインターハイで優勝するんですって」

京太郎「あ……確かにそんなことを言っていた……」

京太郎「でも、そんなこと無理でしょう!? 人が時を遡るだなんて!」

所長「オカルトの力は常識で計れんのだよ。彼女の“オカルト”は既に人の域を逸脱していた」

所長「キミも見ていたのだろう? 彼女が全自動麻雀卓で“天和”を連発する様を」

京太郎「……はい。 あんなことが人にできるなんて……」

優希「しかも2度目以降は他の役満を複合させてたじぇ」

久「でも……どうして咲はあんなことをしたのかしら」

所長「………………」

所長「……麻雀は“確率”のゲームだということを知っているかね」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:32:35.77 ID:Qsrl9d7Bo

優希「確率?」

久「まぁ……言おうとしてることはわかるけど……」

所長「我々の言う“オカルト”とは、その確率を自力で変動させることを言う」

所長「例えば、タコスを食べると東場のみ良配牌・良ツモになる確率が高くなる、といった風にな」

優希「じょっ!?」

京太郎「もろに優希のことじゃねえか!」

優希「でもそれって自力じゃなくてタコス力のおかげだじぇ」

所長「それでもキミがオカルトを発揮していることに変わりはない」

久「……咲はその“オカルト”を使って天和を連発したというの?」

所長「その通り」

久「…………」

優希「ありえないじぇ……」

京太郎「でも、実際あったことだぜ……?」

優希「そうだけど……」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:33:42.84 ID:Qsrl9d7Bo

久「……確かに咲は私たちとは違う“何か”が見えてた」

久「でも決して自力で天和が出せるなんてものじゃなかったわ!」

所長「私も、彼女がそこまでのオカルトを持っているとは思っていなかった」

所長「だが……事実、あったのだろうな」

所長「……これは私の憶測だが」

所長「彼女があれほどまでのオカルトを操れるようになったのは、何某かの出来事があったのではないか?」

久「出来事……?」

京太郎「もしかしてインハイで負けたことか?」

優希「確かに……咲ちゃんショックで塞ぎ込んでたじょ」

所長「清澄高校は準決勝で敗れたんだったな」

久「ええ。3位で迎えた副将戦でそのまま姫松高校がトバされて……」

京太郎「咲に回る前に負けちまったし……、相当ショックだったろうな……」

所長「個人戦はどうしたのかね? 彼女は出てないのか」

優希「うちからはのどちゃんだけだじぇ」

久「個人戦の咲、今思えば明らかに手を抜いていたからね」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:34:45.56 ID:Qsrl9d7Bo

所長「――となると、やはりそのことが引き鉄になった可能性が高い、か」

所長「理由は知らないが、彼女はどうしてもインターハイで優勝したかった。しかし」

所長「その道は断たれた」

久「…………」

所長「取り返しのつかない状況に、さぞ絶望したことだろう」

所長「そして溢れ出した。彼女が秘めていた潜在能力が……」

優希「それであの天和連発か?」

京太郎「待ってくれ! とりあえず、咲がすごいオカルトを発揮できるようになったのはわかった! 納得はできないけど!」

京太郎「じゃあどうして天和を連発すると、時間を遡ることができるってんだ!?」

久「そ、そうよ! 麻雀で時を越えるなんてことができるっていうの!?」

所長「結論から言えば―――」

久「…………」 ゴクリ…

京太郎「…………」 ゴクッ…

優希「…………」 ゴクン…

所長「――――さっぱりわからん!」



久京優「         ∧∧
            ヽ(・ω・)/   ズコー
           \(.\ ノ
         、ハ,,、  ̄
          ̄             」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:35:52.25 ID:Qsrl9d7Bo

所長「そんなこと、こっちが聞きたいぐらいだ!」

京太郎「ちょっ……、えぇぇぇぇぇ!?」

優希「わかってるんじゃなかったのか!?」

所長「わかってるなんて一言も言ってないんだが」

久「たしかにそうだけど……」

所長「ただ、どうしてそうなったか? ――ということの推測は立てている」

京太郎「じゃあ……それを聞かせてください」

所長「うむ」

久「待って、別室のまこと和を呼んでくるわ。全員で聞いたほうがいいでしょう」

京太郎「麻雀部全体の問題ですしね」

優希「だじょ」

               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

まこ「ふぅ、わしらも病人なんじゃがな」

優希「のどちゃん、大丈夫かー?」

和「ええ、少しフラつきますが……。須賀くんの方が重症のようですので」

京太郎「ごめん、和、染谷先輩……」

まこ「ま、その身をもって咲を止めようとした行動力に免じて、許してやるわ」

所長「二人は一先ず空いてるベッドに入ってくれ。……それでは話そうか」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:36:42.86 ID:Qsrl9d7Bo

所長「まず繰り返しになるが……どうして彼女――宮永咲があのような凶行に出たのか、だ」

京太郎「凶行……たしかに凶行だけどさ」

所長「発言をまとめると、“今年のインターハイで優勝”するために“時を越える”という目的があったと見れる」

まこ「姉に会う……とも言っとったな」

優希「姉って、宮永照か? なら東京に行けばいつでも会えるじぇ」

和「それじゃあダメなんです。一度会いに行ったそうですが、取り合ってくれなかったとか……」

和「咲さんは麻雀を通してならお姉さんと話し合えるんじゃないかって、そう言ってました……」

所長「なるほど。彼女は優勝どころか、最低限の目標である決勝戦にすら出られなかったわけだ」

所長「しかしこれで彼女の目的はハッキリした」

所長「1.姉に会う、2.ついでにインハイ優勝、3.そのためには時を遡らなくてはならない」

所長「この3つの目的があって、あの瘴気漂う異常空間を生み出したのだろう」

まこ「そういえば……あのあと部室はどうなったんじゃ?」

所長「ヒビ割れていた空間はすべて元に戻った。ただ、瘴気は残っていたがな」

久「みんなを救出するのも大変だったみたいよ。私は身体検査受けてたから実際に見てないんだけど」

京太郎「咲……なんてことやったんだ、あいつ……」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:37:08.45 ID:Qsrl9d7Bo

所長「次に……一番の問題点。あの異常空間は何故発生したのか、だ」

優希「咲ちゃんが原因じゃないのか?」

京太郎「当たり前だろ。いまそれを話し合ってるんだから」

優希「うがー! 犬は黙ってるじょ!」

京太郎「っつーか、お前元気だな。あの卓に一緒に座ってたのに」

優希「へっへーん! きっとタコスの加護のおかげだじぇ!」

京太郎(……あんな体験したから真っ向から否定できねえ)

久「はいはい、話が横道に逸れてる!」 パンパン

京優「「すみません……」」

まこ「よーわからんが……咲が発した、その……“瘴気”ってやつが原因じゃないんか?」
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:37:37.22 ID:Qsrl9d7Bo

所長「確かに、部屋全体を覆っていた瘴気が原因と考えるのが自然だ」

所長「だが、瘴気自体はオカルト持ちなら出せるのだよ」

和「またオカルトですか……」 ウンザリ

久「ちょっと待って、ならさっき説明した通り優希がオカルト持ちなら、優希も瘴気を出せるってこと?」

所長「少なからずではあるが……」

所長「わかりやすい例はあの天江衣のような支配型能力を持つ者だ」

京太郎「し、支配型能力……」

まこ「まるで漫画じゃな」

所長「対局中、急にゾクゾク来たり悪寒が走ったりしたことはないか?」

所長「あれはその者の瘴気に触れているのだ」

和「そんなオカルト……」

所長「通常なら悪寒が走る程度で人体に悪影響はないが……」

所長「今回の宮永咲の場合は、まさにレベルが違った。こうして入院患者を3人も出してしまったのだから」

所長「こういう事件が起こらないように我々日本オカルト研究所が存在していたのだが……」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:39:53.11 ID:Qsrl9d7Bo

まこ「じゃあやっぱりその、“レベルが違う瘴気”を使ったんじゃろ」

所長「彼女がオカルトの力を使ったのは間違いないが、それは違う」

久「どうして? そう言い切れる理由があるの?」

所長「先ほど、“麻雀で時を越えられるか”と聞いてきたな」

京太郎「それができるかどうか、わかんないんですよね?」

所長「そう、断言できない。前例もない」

所長「もし彼女が時を越えたのだとすれば、世界初の時間逆行者であり、世界初の麻雀でタイムトリップした者になる」

まこ「そりゃあタイムトリップ自体が初めてならそうなるじゃろ」

所長「……話を元に戻そう」

所長「彼女が瘴気で時を越えられるのであれば、自分の部屋で一人、タイムトリップすれば良かったはずだ」

優希「確かに、私たちを巻き込む理由がないじょ」

まこ「明らかに麻雀をしたがっていたしのぅ。やっぱり“あの麻雀”か」

京太郎「天和連発……」 ゾクッ

和「SOA」

久「いや……さすがにありえてるって」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:40:36.81 ID:Qsrl9d7Bo

所長「ここからは完全に推測だが―――」

所長「“オカルト”というものは確率の操作、言い換えれば“運命の操作”ともなる」

所長「彼女は天和連発によって膨大なる量の運命を“書き換えた”」

まこ「それが……なんだっていうんじゃ?」

所長「麻雀で天和が出る確率が何分の1か知っているかね?」

久「えーと……確か約33万分の1……?」

所長「ご名答」

優希「でも咲ちゃんが天和だけを出したのは最初の一度だけだじぇ!」

まこ「そうじゃ……2度目以降は必ず何かの役満を複合させとった」

京太郎「後ろで見てたからよ〜く覚えてる……2度目は天和・国士無双だった!」

所長「天和・国士無双の確率は約32億分の1だ」

和「一つ複合するだけで文字通り桁が違う……」

所長「天和・九蓮宝燈は約4900億分の1、字一色や大四喜などは兆を超える確率になる」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:42:43.87 ID:Qsrl9d7Bo

京太郎「でも……だからなんだってんですか!」

所長「彼女はこの世の法則を捻じ曲げたのだよ」

久「法則……!?」

所長「この世の法則を運命の書き換えにより乱し、空間を歪ませたのだ!」

まこ「意味がわからん」

所長「正直、言ってる私も本当にそのような理論が成立するのかわからない」

優希「おい」

所長「だが! 実際に起こりえてしまったのだ!」

所長「キミ達も見ただろう! あのヒビ割れた空間を!」

所長「……そして彼女が最後に見せた親の一巡目での四槓子、嶺上開花」

所長「恐らく彼女も、あれが最も多くの確率を操作しなければ出せないものだとわかっていたのだろう!」

所長「あれがトドメの一撃……! 空間を“割った”!」

所長「そして……タイムトリップしたのだ……」
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:43:48.27 ID:Qsrl9d7Bo

京太郎「咲は……どうしてそれでタイムトリップできると知っていたんだろう……」

久「私たちにわかるわけがないわ。でも、咲には何か確信があったんでしょうね」

まこ「じゃなきゃ、あんなことやらんじゃろ」

所長「世界最大級のオカルト能力の持ち主だ。直感で理解していても不思議じゃない」

京太郎「くっ……!」

優希「…………」

和「…………」

京太郎「咲を……咲を連れ戻すことはできないんですか!?」

所長「現状の我々に、タイムトリップの手段はない」

京太郎「そんな……もう二度と咲と会えないってのかよ!!」

久「それはわからないわ」

京太郎「部長! なんでそんなこと言えるんです!?」

久「咲が目を覚ますかもしれない」

京太郎「…………」

京太郎「……………………は?」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:45:06.47 ID:Qsrl9d7Bo

               ・
               ・
               ・
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               ・

〜とある病室〜

咲「…………」

京太郎「これは……一体どういうことだ……?」

久「これは咲よ」

京太郎「見りゃわかりますって!」

京太郎「そうじゃなくて、どうしてタイムトリップしたはずの咲がここにいるんですか!」

所長「……意識がない」

京太郎「え……?」

所長「彼女はいわば“植物人間”状態に陥っている」

所長「恐らく、意識だけ過去に行ったと考えるのが妥当か」

所長「まぁ、ただぶっ倒れただけの可能性も残ってはいるがな……」

優希「目が覚めたばっかりだから京太郎は知らなかったんだじぇ」

まこ「わしらも昨日知って驚いたからのう」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:48:11.92 ID:Qsrl9d7Bo

京太郎「もし咲が目覚めたら……」

京太郎「タイムトリップなんかできてなくて……」

京太郎「オカルトの使いすぎで倒れたってだけなんですよね……?」

所長「患者の様態からして…………可能性が0でない、というだけだ」

京太郎「く……ちくしょう……! ちくしょう!!」

京太郎「うっ……」 クラッ

優希「京太郎!」

和「須賀くん!」

まこ「一番重症っちゅう男が……。安静にしとれ!」

京太郎「でもっ……!」

所長「手は尽くす」

京太郎「……!」

所長「まだ状況を完全に把握できていないが―――」

所長「手は尽くすさ……」

京太郎「…………」

京太郎「……お願いします……咲を……咲を助けてやってください……!」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:48:53.04 ID:Qsrl9d7Bo

〜日本オカルト研究所〜

研究員A「どうですか、あの事件の被害者達の様子は」

所長「疲労が出ている以外、人体への影響は無い。問題は精神だが、これも後々には残らない程度の傷だろう」

研究員B「それはよかった」

所長「うむ、良い傾向だ」

研究員B「これで心置きなく、あの時収拾した“瘴気”を実験に使えるというものです」 ニヤリ

所長「悪いやつだな、キミは。……彼女らが心配じゃないのかね?」

研究員B「ふふふ、所長こそどうなんです?」

所長「キミほどじゃあるまい」

研究員A「あのー、別に悪の研究員ごっこしなくていいですから」

所長「あ、わかった?」

研究員A「だって研究員Bのやつ、超心配してましたもん」

研究員B「…………俺、実はroof-topの常連でして」

所長「染谷君が心配だったのか」

研究員B「…………///」

研究員A「うわぁ」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:49:36.99 ID:Qsrl9d7Bo

所長「しかし……この瘴気で解決への糸口が見つかればよいが……」

研究員B「そうですね、もしかすると世界の危機かもしれませんしね」

研究員A「えっ? 初耳ですよ、それ!」


  ざわ……
          ざわ……
                   ナニ? セカイノキキ?
    マジカヨ
            ヤバクネー?


所長「きみぃ……」

研究員B「……すみません、軽率でした」

所長「あまり大事にしたくはなかったのだが……」

所長「君達、聞いてくれ。今回の一件は前代未聞のオカルト事件だ」

所長「だからこそ不確定事項を勝手に断定することはできない!」

所長「この世界が危ない、ということもまだ予想に過ぎん」

所長「現場を見た者ならそう思いたがることも理解できるが―――」

所長「―――今は“まだ”不確定事項である!」

所長「さらに言えば……その可能性は低いと見ている! ……あまり気負わずに仕事してくれ」


  ざわ……
          ざわ……
                   ソンナコト イワレテモナー
   ハイ、ソウデスカ ナンテ イエナイゾ


所長「…………はぁ」

研究員B「ほんっっっとうに、すみません……」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:50:21.61 ID:Qsrl9d7Bo

               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

〜所長室〜

研究員A「……で、結局どうなんすか?」

所長「なんだね」

研究員A「“危機”の件ですよ」

所長「…………危険があるのは確かだ」

研究員A「どれぐらい危ないんですか?」

所長「1か0だよ。危ないか危なくないかのどちらかだ」

所長「とりあえず、宮永咲がタイムトリップに成功したと仮定して話をしよう」

所長「私は3つの仮説を立てた。うち2つは危険が及ばないものだが」

研究員A「危険な方からお願いします」

所長「ではそれを仮説1としよう。これは彼女が歴史の“改変”を行なった際――」

所長「手を加えられた世界を“真”なる世界とし、この世界が消滅する……というものだ」
.     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
研究員A「…………?」

所長「よくわからないかね」

研究員A「YES! YES! YES!」

所長「"OH MY GOD"」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:51:57.05 ID:Qsrl9d7Bo

所長「つまり、宮永咲が歴史を変えたらこの世界が消えちゃうかもしれない、という説だ!」

研究員A「大分噛み砕きましたね」

所長「誰のせいだ」

研究員A「でもそういう説は、創作物では見たことないですね。自分の知識が浅いだけでしょうが」

所長「創作は作家の妄想だ。現実での事象は今までに例がない。どんなことも予想して然るべきだ」

研究員A「そうは言いますけどね。その説、今こうして我々が語らってる時点で破綻してませんか?」

研究員A「彼女は過去に跳んだんです」

研究員A「その説が正しいのであれば、彼女が過去に行った瞬間この世界が消えることになります」

所長「消えるまで猶予があるのかもしれん」

研究員A「可能性……ですか」

所長「まぁ、私もこれが正しいとは思わん」

所長「むしろ彼女が引き起こした運命の操作による空間の崩壊の方が危険だ」

研究員A「事件現場は封鎖してますけど……あれから3日、何も起こりませんね」

所長「だからこそ、それを含めて“可能性は低い”と言ったのだがな」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:52:44.94 ID:Qsrl9d7Bo

研究員A「それで……仮説2と仮説3はなんなんです?」

所長「仮説2は、彼女が歴史の“改変”を行なった際に“世界が枝分かれする”という説」

研究員A「パラレルワールドというやつですか」

所長「そうだ。もし宮永咲によって清澄高校がインターハイ優勝を飾ることになっても――」

所長「それはその世界のこととして続き、清澄が優勝した世界と、優勝してない今の世界が残る」

研究員A「この世界に影響はない……ってことですね」

所長「…………あることはある」

研究員A「え?」

所長「……一人の少女が帰ってこない」

研究員A「……! 宮永咲……ですか」

所長「彼女が歴史の改変に失敗すれば、枝分かれは起こらずに戻ってこれる……はずだ」

研究員A「さらにその説が合っていれば、ですけどね」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:53:32.45 ID:Qsrl9d7Bo

所長「そして仮説3、これは完全に別の世界」

所長「タイムトリップではなく、独立した世界に行ったという説」

研究員A「それもこの世界に影響しないですね。それに宮永咲も……」

所長「ああ。この説だと宮永咲が帰ってくる手段がない」

所長「彼女がもう一度法則を乱して、“運良く”この世界に戻ってこない限り……」

研究員A「……自分は……なんとなくですけど……」

所長「……?」

研究員A「その説が一番近いような気がします」

所長「…………かもしれんな」

所長「だが、まずはやるだけのことをやってみなくてはな」

所長「彼女が発した“瘴気”の研究から進めよう!」

研究員A「はい!」



所長(須賀君には悪いが……どうしようもなくなった時は、許してくれよ……)
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:54:12.07 ID:Qsrl9d7Bo


―――――1週間後

〜咲の病室〜


咲「……」

京太郎「咲……」 ギュッ (手を握る)

咲「……」

京太郎「お前にやられた傷はすっかり良くなったよ……」

京太郎「なぁんてな、恨みがましいこと言っちまった」

咲「……」

京太郎「俺さ……ホントに全然気にしてないぜ?」

京太郎「だからさ、気まずくて寝たフリしてるんなら……起きていいんだ」

咲「……」

京太郎「咲……起きてるんだよな……? 今にも目を開けるんだよな……?」

咲「……」

京太郎「なぁっ……! 咲っ……!!」

京太郎「起きてくれよ! 咲! なぁッッ!!」

京太郎「いい加減……目ェ開けてくれよ……」




咲「…………」 ピクッ

京太郎「――――――ッッ!!」

京太郎「今……動いた……!?」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:54:45.19 ID:Qsrl9d7Bo

――――次回予告

能力の消失を知った咲は、今の立場に絶望する
しかし、いくら絶望しようと失った力が戻るはずもない

麻雀から、現実からも逃げ出し、咲は家に引き篭もる
そこにやさしい言葉はなかった

次回『雨、逃げ出した後』

この次も、サービス、サービスゥ!
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/15(水) 03:56:26.07 ID:Qsrl9d7Bo
〜キャラクター補足〜

■宮永咲(女)
意識だけ別世界に跳んだため現在抜け殻状態だと思われる。

■須賀京太郎(男)
咲の瘴気を直で流し込まれたため、危うく死に掛けた。
他の誰よりも咲を心配している。咲に特別な感情を抱いているが、本人に自覚はない模様。

■片岡優希(女)
咲がタイムトリップした際、最も早く失神したため精神を侵されず、軽症で済んだ。

■原村和(女)
咲があんなことをしたにも関わらず、オカルトを否定し続ける模様。

■染谷まこ(女)
特に補足することがない。

■竹井久(女)
直接巻き込まれたわけではないので、身体検査程度で済んだ。
咲ほどの絶望はしていないがインターハイで力及ばなかったことを悔やんでいる。
94 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/08/15(水) 04:09:23.90 ID:Qsrl9d7Bo
というわけで賢明な方は流し読みしてくれたであろう第3話でした

本当はもっと後に持ってきてよかったんだけど、一応第1話の補足ということで早めにやっておこうと思いこの位置……
次回からはちゃんとおちんちん咲ちゃん編が再開するよー
現在6話を書いてるけどちゃんと再開してるから嘘じゃないよー

>>68
さ、咲ちゃんは体が男でも心は乙女だから問題ないよ(((;゚Д゚)))
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/08/15(水) 04:38:38.89 ID:SF9DVFtAO
京太郎と京子を入れ換えれば互いに空気にならずにすむな
96 : ◆RmlFOAHrTI [sage]:2012/08/22(水) 22:27:34.81 ID:ZfK0cVcxo
今日って水曜日じゃん……
忘れてた
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:28:20.52 ID:ZfK0cVcxo

――――前回までのあらすじ

時空を越えたのは咲の精神だけで、身体は元の世界に留まっていた。
その姿を見た麻雀部員達は彼女に哀れみの感情を向ける。

一方、オカルトの研究者達は自論を展開し、これからの対策を練っていた……。


※2話最後からの続き


〜清澄高校・麻雀部部室〜

咲「失礼します……!」 ダッ

原村「おいっ!」

京子「咲っ!」 ダッ

片岡「サッキー、一回負けたぐらいであんなに落ち込まなくてもなァ」

原村「部長……足引っ張りそうとか、それはないだろ……」

竹井「わるいわるい! ちょっと厳しい部長を演出しようと思って毒吐いちゃった」

竹井「でも――鍛え甲斐があるってのはお世辞じゃないよ? 僕の目が曇ってなければね」

片岡「いまいち信用に欠けるぜ」

竹井「…………」(汗)

原村「これで学生議会長だもんな……」

竹井「あはは……あーーーっ、外、雨降ってんじゃん! 傘持ってきてない!」

片岡「話題逸らしやがった」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:29:01.93 ID:ZfK0cVcxo

〜外〜


ザーーーーー

咲「ハァッ……ハァッ……!」 パシャパシャ

京子「咲っ!」 パシャパシャ

咲「こ、来ないでっ……!」

京子「どうしたの咲……、突然傘も持たずに飛び出して……」 (咲を傘に入れる)

咲「ハァ……ハァ……」

京子「…………何かあったの?」

咲「ハァ……ハァ……京ちゃ……には……関係ない……」

京子「あの半荘終わってから、ちょっと様子おかしいよ……」

咲「………………」

京子「ねぇ、一体何が―――」

咲「…………さいな……」

京子「……え?」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:29:33.35 ID:ZfK0cVcxo

咲「うるさいなって言ったんだよ!!」

京子「―――ッ!」 ビクッ

咲「……っ」

咲「…………」 タッタッタッ…

京子「さっ……!」

京子(……咲……)



咲(なに京ちゃんに当たってんの私……ゼッタイ嫌われたよ今の……)



               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

〜咲の家〜

咲「……ただいま」 ビチャビチャ

しーーーーーーん

咲「……こっちの世界でも……お父さんは仕事か……」 ビチャッ

咲「…………お風呂入ろ」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:30:05.56 ID:ZfK0cVcxo

咲「うぇ……びしょびしょ……」

咲「はぁ、気持ち悪い……」 ゴソゴソ

咲「…………」 モゾッ

咲「…………」

咲の股間「」 プルプル

咲「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーー!!!」

咲「び、びっくりした…………そうだよ……今の私は男なんだよ……」

咲「そういえばトイレにも行ってなかったからまともにみるのはこれが初めてだった……」

咲「うわ……グロテスクだよ……なにこれ……? 花のツボミみたいになってる……」

咲「…………」 ビローン

咲「すっごい伸びる……!」

咲「…………」 (皮をめくる)

咲「キモッ!」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:30:31.63 ID:ZfK0cVcxo

〜風呂〜

咲(…………はぁ)

咲(もうどうすればいいかわかんないよ……)

咲(男になって、唯一の取り柄だった麻雀もできなくなって)

咲(みんなを巻き込んでまで何しにこっちにやってきたんだろ……) ジワ…

咲(……もう元の世界に戻れないし……)

咲(…………うぅ……) グスッ

咲(どうすればいいの……どうすれば……)
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:31:05.03 ID:ZfK0cVcxo

――――夜

父「咲、食わねぇのか」

咲「……食欲、ない……」

父「……仕方ねえな。おかず残していいからご飯だけでも食え」

咲「…………うん」 パクパク

咲「…………」 モグモグ

父「なんかあったのか」

咲「…………」 パクパクモグモグ

咲「うっ…………」 ジワァ…

父「……ハァ。高校生にもなって……」

父「いじめか」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:31:30.47 ID:ZfK0cVcxo

咲「……違う」

父「意地張るなよ? お前が泣くほどのことっつったら―――」

咲「違うっていってるでしょ!?」 ガタン

父「……っ! なんだよその物言いは!」

父「せっかく心配してやってるってのによ!」

咲「余計な……お世話だよぉ!! うわぁぁぁぁぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ  ぁ  ぁ  ぁ  ぁ  … …」 タッタッタッ

父「…………チッ」




咲(何がわかるっていうのさ……! 今の私の気持ちなんか……)

咲(誰にもわからないよ! 誰も私の気持ちなんかわからない!)

咲(こんなの……理不尽だ……)

咲(こんな世界……なくなっちゃえばいいんだああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:32:02.47 ID:ZfK0cVcxo

――――翌日

〜麻雀部部室〜

京子「咲が学校来てない」

片岡「マジかよ!」

原村「はぁ、俺らが原因か?」

京子「そ、そうは言ってないよ? でも心当たりといえばそれしかなくて……」

竹井「か、風邪かもしれない」 メソラシー

京子「無断欠席だって先生が……」

片岡「部長!」

竹井「僕のせいかい!?」

片岡「あの余計な一言のせいだぜ!」

原村「俺はそうは思わないけどな……」

京子「え……?」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:32:45.14 ID:ZfK0cVcxo

原村「あいつ、始める前は“麻雀に自信あります”って感じだった」

原村「だが始まってみれば惨敗」

原村「カンできる時は必ずカンするし、明らかな危険牌を平気で切って放銃」

原村「しかも様子を見るに差込じゃない。初心者もいいところ」

片岡「言いすぎだぜカズ! サッキーなりの理論があっての危険牌切りだったかもしんねーし!」

原村「どうだか。少し麻雀やって偶然1位連発とかだったんだろう。実力を勘違いしてたのさ」

原村「で、昨日はうまくいかなかった。それでヘコんでるだけじゃないか」

京子「そ、そんなことでヘコむほど咲は弱くないわよ!」

片岡「まぁ……負けてヘコむってのはわかるけど、麻雀ってどうやっても勝てない時とかあるしなぁ」

竹井「一半荘やっただけで実力を測るのは早計だ」

原村「そうですけど……、無断欠席ってつまり、ヘコんでるのは事実ですよね?」

竹井「まぁ……そうなるのかなぁ」

片岡「どうなんだよ京子、サッキーってそんなにメンタル弱いのか?」

京子「えっと……私の知る限りだけど、こういうゲームでコテンパンにやられても学校休むなんて事はなかった……」

片岡「じゃあやっぱり部長のせいだぜ」

竹井「オイオイ! 待ってくれ、僕にも意見があるんだ」

京子「意見……ですか?」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:33:19.80 ID:ZfK0cVcxo

竹井「あのさ、僕はあの半荘、途中から見てたんだけどさ」

竹井「彼、カンして引いた嶺上牌みて“これじゃない”って顔してた」

原村「!!」

竹井「その様子だとカズも見てたな」

原村「……ああ」

竹井「彼は理論でなく……“直感”で麻雀をやる雀士だとしたら?」

片岡「直感……!?」

竹井「そう。やたらカンしたりするのも、なにか自分が有利になる確信があってやってたんじゃないか?」

竹井「でもそれが昨日は悉く外れた」

京子「…………」

竹井「彼は今までその“直感”で勝利を重ねてきたんじゃないか?」

竹井「だからこそ、その直感が効かなくなってショックを受けた」

片岡「うおぉ……なんか説得力あるぜ……」

京子「さすが部長……よく見てますね」

竹井「ふふ、伊達に学生議会長やってないぞ」



竹井(……ほとんど口から出任せっていうのは秘密DA☆)
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:34:02.85 ID:ZfK0cVcxo

原村「ありえない」

京子「……カズ?」

原村「みんな本気で聞いてたのか? そんなオカルトじみた話、信じられるわけない」

竹井「カズ、人には無限の可能性が秘められてるんだ」

原村「俺には部長が言い逃れに口から出任せ言ってるようにしか聞こえないんですが」

竹井「」 ドッキーーーン

片岡「部長?」

京子「どうしました?」

竹井「……あぁー! そういえば学生議会の仕事残してたんだわ!」 ヒラメキー

片京「「へ?」」

竹井「それじゃ、ちょっと行ってくるから、今日はもう解散ってことで!」 スタコラサッサ

京子「ちょっ、部長!?」

原村「……な?」

京子「…………あれで学生議会長……ねぇ」

片岡「あの人に関わった人間の8割が一度はそう思ってそうだよな……」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:34:47.21 ID:ZfK0cVcxo

原村「……須賀さん」

京子「はひっ!?」

原村「あいつ……宮永の家って知ってるか?」

京子「知ってるけど……どうして?」

原村「あー……なんつーか、部長が言った“直感”云々を信じるわけじゃないが――」

原村「俺の考えじゃ腑に落ちないことがあるのは事実だ」

原村「だから……本人から直接聞きたいと思って、さ」

片岡「そうだな。俺もサッキーんちに行くぜ!」

京子「…………私はちょっと賛成できないかも」

原村「っ! ……なんで!」

京子「昨日、雨の中追いかけたんだけどさ……」

京子「何があったのか聞いたら“京ちゃんには関係無い”って言われちゃって……」

京子「それでも食い下がったんだけど……最終的には怒鳴られちゃった……」

原村「…………」

片岡「サッキー……こいつはちとお灸をすえにゃならんぞ」

京子「ちょっ、優希! それは――」

片岡「いや、聞いた限りじゃ、それはただのやつあたりだぜ!」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:35:14.53 ID:ZfK0cVcxo

京子「だとしても……! 学校休むなんてよっぽどのことだよ!?」

京子「私たちがおいそれと踏み込んでいい問題じゃないんじゃないかな……」

京子「たとえ昨日の麻雀が原因だとしても……さ」

片岡「きょーこ……」

原村「…………」

原村「わかった。わかったよ須賀さん」

原村「……気が向いたら、でいい。気が向いたら宮永の家の場所を教えてくれ」

京子「…………うん」



京子(咲……今どうしてるんだろう……)

京子(やっぱり……家に行くのがいいのかな……)

京子(でも……いきなりカズや優希を連れて行くと、咲は会ってくれない気がする……)

京子(…………二人には悪いけど、今日帰りに咲の家に行ってみよう)
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:35:41.98 ID:ZfK0cVcxo

〜咲の家〜

ピーンポーン

京子「…………」

京子(……誰もいない?)

京子「……」

ピーンポーン

京子「…………」

ブッ
『…はぃ……ぃゃながです……』

京子「あっ……さ、咲? 私! 京子!」

『…………』

京子「今日、学校休んだよね? それで、その―――」

『……帰って』

京子「ぇ……」

『……帰ってください……』

京子「さ、き……?」

ブツッ

京子「…………」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:36:22.28 ID:ZfK0cVcxo

京子(ここで引き下がっちゃダメだ……!)

ピーンポーン

京子(ちゃんと……咲と話さないと……)

ピーンポーン

ブッ
『…………』

京子「咲っ! あのさ!」

『』ブツッ

京子「ぁ…………」

京子(くっ……!)

ピーンポーン
 ピーンポーン

ブッ
『…………』

京子「咲!」

『……いい加減にしてください』

京子「!?」 ドクンッ

『なんなんですか、あなた……私のなんなんですか……』

京子「ぇ……?」

京子「咲……? あなた、咲よね……?」
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:37:06.24 ID:ZfK0cVcxo

『うるさいなっ!』

京子「ひっ……!」

『お前こそ誰だ! 誰だ!』

京子「ぇぅ……だから、私は……京――」

『黙れ……! その名を騙るな……お前は……“京ちゃん”なんかじゃない……!!』

京子「咲……!? 何を……言って……」

『帰れ! 帰れよ! “ストーカー”!』

京子「す、と……」

『』ブツッ

京子「咲……どうして……」 グスッ






咲「はぁーっ……はぁーっ……」 イライラ

咲「んぐ……ぅぅ」

咲「…………ぅ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ あ ぁ ぁ ぁ あ ぁ ぁ !!!」 ボフッ (布団に倒れこむ)

咲「馬鹿ッ! なんで……甘えないの……!?」

咲「せっかくこの世界の京ちゃんが……わざわざ来てくれたのに……!」

咲「どうしてっ……どうして傷つけるようなこと……言っちゃったんだよぉぉぉぉぉ……」

咲「相手を傷つけて……自分も傷つけて……誰も得しないよこんなの……」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:37:41.79 ID:ZfK0cVcxo

咲「“あの”京ちゃん……泣いてた……」

咲「見なきゃいいのに……2階の窓から……カーテンの隙間から覗いちゃってさ……」

咲「馬鹿じゃないの……傷つくだけなのに……」

咲「……ぐっ……ひぐっ……」 ウルウル

咲「京ちゃん……助けてよ、京ちゃん……」

咲「私……おかしいよ…………」

咲「ごめん……ぅ゛ぅ゛ぅ゛……京ちゃんごめん…………」

咲「全部……私がいけないのに……」

咲「私の都合で巻き込んでごめん…………私の都合で辛く当たってごめん……」

咲「どっち゛の京ちゃんも゛……私を許し゛て゛く゛れないんだぁ……」

咲「う゛ぁ゛ぁ゛……! う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛……ごめ゛ん゛……き゛ょうぢゃぁ゛ぁ゛ん゛……」








114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:38:12.05 ID:ZfK0cVcxo

――――三日後

父「咲ッ!」

咲「…………」

父「今日も学校に行かないつもりか!」

咲「…………行きたくない」

父「いい加減にしろッ!」

バシッ!

咲「――ッ!」 ヒリ

咲「人の……気持ちも知らないで……!」

父「ああ、そうだ。知らないさ! 知りようがない!」

父「聞いても答えてくれないんだからな」

咲「ぅ゛…………」

父「いじめじゃないんだろ。だったら何をそんなに拗ねてんだ!」

父「俺はお前をそんなやわな男に育てた覚えはない」

咲(こっちだって……まともに育てられた覚えはないよっ……!)
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:38:39.41 ID:ZfK0cVcxo

               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

咲(無理矢理制服着せられて家追い出された……)

咲(はぁ……こんなことされて行くわけないじゃん……)

咲(………………)



咲(―――とか考えつつ、自然と学校に足が向いてる自分にムカつく)

咲(自慢にならないけど……自分から学校サボったことなんて一度も無かった)

咲(でも……今の気持ちで行けるわけないよ……)

咲(いっそこのまま……どこか知らない場所へ行っちゃおうかな……)

咲(お父さん、心配するだろうな……)

咲(ふふ……傷心の娘を無理に家から追いやったのが悪いんだ……)

咲(…………今は息子か……)

咲(……なに考えてるんだろ、私……)

咲「――――ッ!」 ドキッ

咲(う、ぉ……ぁ、あ、あれって……)



京子「――――」

片岡「――――」



咲(京ちゃんと優希くん……)

咲(ぅゎ無理……! 逃げよう……見つかる前に逃げよう……ッッ!!) ダダダッ
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:39:08.52 ID:ZfK0cVcxo

〜人気の無い雑木林〜

咲「ハァー……ハァー……」 汗ダクダク

咲「ここまで……くれば……」

咲(……フゥ。今日はここで放課後まで時間潰そう……)

ジャリッ

咲「ひぅッ!?」 ドッキーーーーーン

猫「ナーン」

咲「な、なんだ……ネコ……」

「宮永!」

咲「ぃへッ!?」

「何してんだ、こんなところで……」

咲「あ、あぁゎゎ……は、はら……む」

原村「そうだよ、原村だ。一回会ったきりだな」

咲「な、なんで、なんでこんなところ……」

原村「家から学校までのショートカットっていうか……夜は暗いから使えないけど……」

咲(に、逃げたい……)

咲(でも……もう走れないぐらい……疲れた……) ハァー
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:39:49.99 ID:ZfK0cVcxo

原村「…………もういいのか?」

咲「え……?」 キョトン

原村「もう、学校出れんのか」

咲「…………」

咲「……行きたくない」

原村「そう、か……」

咲「…………」

原村「…………」

原村「宮永」

咲「……なに?」

原村「お前と話がしたんだけどさ」

原村「……付き合ってくれるか?」

咲「…………学校遅れるよ」

原村「学校より、お前と話がしたい」

咲「…………」
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:40:15.43 ID:ZfK0cVcxo

〜川原〜

原村「ま、座って話でもしよう」

咲「……いったい、なんの話……?」

原村「…………ヘコんだのか?」

咲「…………日本語で」

原村「っ。……あの半荘で負けて、ヘコんだのか?」

原村「それで、学校休んでたのか……」

咲「……違うよ」

原村「じゃあ……やっぱ部長の言った言葉か」

咲「部長の……言葉?」

原村「え」

咲「なにそれ……」

原村「このままじゃ足手まとい云々……」

咲「ごめん、覚えてない……」

原村「」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:41:00.55 ID:ZfK0cVcxo

原村「…………ってーことはさ、あの時既に……部長の言葉が耳に入らないぐらいの……」

原村「その……なんつうか……お前にとっての“異変”が起きてた……とか?」

咲「――――!!」

原村「…………マジか」

咲「……」 コクン

原村(部長の言ったことはオカルトチックで信用ならないが……)

原村(的外れでもなかったってことか……?)

原村「あー……、その、さ」

原村「……俺に、話しちゃくれないかな」

原村「あの一半荘で宮永に何が起きたのか」

咲「…………」

原村「…………」

原村(ま、話してくれないよな)

原村(面と向かって会うのだって今日が2度目……信用もクソもない)

原村(塞ぎ込むぐらいナイーブな話題だ……)

原村(第一、俺なんかに話せる話なら、塞ぎ込んでなんかいないだろうしな)

原村(はぁ……、そこまで結論だしといて聞き出そうとしてる俺は一体こいつのなんなんだろうな……)
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:41:41.34 ID:ZfK0cVcxo

咲「…………原村くん」

原村「――? なんだ、宮永」

咲「……原村くんはオカルトチックな話を信じないよね」

原村「!」

原村(どうしてそれを……!?)

咲「だから……話しても無駄」

原村「…………はぁ」

原村(……考えようによっては、チャンスだぞこれ)

原村(ここで受け答えに間違わなければ……聞きだせる)

原村「…………そうだな」

咲「…………でしょ」

原村「…………」

原村「……“これじゃない”って顔、してたよな」

咲「――――!!」

原村(部長の戯言に乗っかるのは癪だけど……)

原村「何が見えてたんだ? お前には……何が見えていた……?」

原村(今はそれよりも、宮永のことが気になる……!)

咲「どうして……? ……原村……くん」

原村「茶化さない。誤魔化さない。否定しない。……真面目に聞く」

原村「だから話してくれ、宮永……」



咲(…………違う……?)

咲(原村くんは……和ちゃんと……)

咲(……………………)

咲「…………わかった……」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/22(水) 22:42:19.08 ID:ZfK0cVcxo

――――次回予告

別世界の友人との運命的な邂逅に心を開く咲
親身になって話を聞く原村に咲は確かな友情を感じていた

そして、咲はとある決心をする……

次回『咲、心のむこうに』

この次も、サービス、サービスゥ!
122 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/08/22(水) 22:45:44.39 ID:ZfK0cVcxo
最初はギャグスレにするつもりだったのに、なんでかこんな展開になった
で、でも次回から明るくなるはずなので

他の咲スレ更新多すぎて追うの大変ですね
俺なんかやる夫スレも見てるから更新チェックだけで5時間ぐらい飛ぶ……
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/24(金) 04:19:38.04 ID:uWInvPla0
乙、更新してるの気がつかなかった……。
しかし、これは咲和で百合+BLルートとみたww
124 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/08/29(水) 20:40:08.71 ID:qEV7vktEo
レスありがとうございます
たとえ読者数0になっても最後まで続けるつもりです(不慮の事故で死んだりしなければ)
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:40:37.55 ID:qEV7vktEo

――――前回までのあらすじ

自分の殻に閉じこもる咲を心配する京子
しかし咲は心と裏腹に酷い言葉をぶつけてしまう

自らの行いによりどんどん追い詰められていく咲
ついには「学校に行け」と父親に家から追い出されてしまった

そこで偶然原村と出会った咲は、逃げられない状況からも少しずつ心を開こうとしていた……




原村「…………槓材が見えていた?」

咲「正確には違うんだけどね……自分が欲しい牌がはっきり見えてたんだ……」

原村「……あり……ッ……」

咲「アリ?」

原村「いやっ! あり……蟻が靴に乗ってきてた……ははは」

原村(あぶなっ……“ありえない”って言うところだった……)

原村「そんで! ……それが見えなくなったってことか?」

咲「見えるような感覚はまだある……」

咲「でも……全然違う牌が出てくる……」

原村「ほう。中だと思ったら白だった、とか」

咲「もっとバラバラかな……三萬だと思ったら發で……それ切ったら京ちゃんに和了られちゃった」

咲「危険牌とかも……雰囲気で察知できてたのに……それすら判らなくなって……」 グスッ

原村「…………」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:41:27.61 ID:qEV7vktEo

咲「優希ちゃ……優希くんのダブリーに一発で振り込んじゃうし……」

咲「私があの半荘で何回みんなに振り込んだと思う……?」

原村「確か……4回ぐらいだっけ」

咲「6回だよ……6回も放銃しちゃったんだよ!!」

原村「運が悪かっただけだ」

咲「違うよ……牌の見えない私なんて所詮……ポンコツってことだよ……」

原村(牌が見えたら誰でも超人……だと思うが)

原村「……それで、その……のっ……」

咲「…………の?」

原村(くっ……使うのにすげぇ抵抗のある言葉だっ……)

原村「の、の……“能力”……?」

原村(くぅっ! なんだよ能力って! 漫画かよ! ふざけてるぜまったく……)

咲「能力がどうかしたの……」

原村「その……能力が無くなったぐらいで、お前は……麻雀辞めるのかよ?」

咲「っ…………!」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:44:07.30 ID:qEV7vktEo

原村「麻雀、好きなんじゃないのか?」

咲「…………嫌いだった」

原村「……“だった”?」

咲「昔……家族で麻雀しててさ……負けたらお年玉取られちゃったんだ」

咲「勝ったら勝ったで怒られるし……」

原村(なんて家族だよ……)

咲「だから±0で終わるように頑張ってたら……能力というか……自然と±0にできる麻雀を打ててた……」

原村「…………」

原村(嘘言ってる様には聞こえない……)

原村(それにもしこいつの妄想だとしても、それが原因で引き篭ってるようじゃ、やっぱ否定的なことは言えないな……)

咲「でもね、大切な仲間のおかげで……嫌いだった麻雀が好きになれたんだ」

原村「……大切な仲間、ね。俺の知ってるやつか?」

咲「ううん……。今はもう……会えない人」

咲(はは……大切な、仲間……か)

咲(自分でみんなに酷いことして、会えなくなって……それが悲しくて……)

咲(馬鹿だよホント……)

原村(……想像以上にハードな内容なのか、もしかして)
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:45:11.30 ID:qEV7vktEo

原村「じゃあ、話を戻すが……麻雀、今は好きなんだよな?」

咲「…………」

原村「……? どうした」

咲「あの日から、わかんなくなっちゃった……」

原村「……俺と初めて会った日か」

咲「」 コクリ

原村「の……能力、が、消えたことを知った日でもある……と」

咲「」 コクリ

原村「…………ハァ」(呆)

咲「な、なにその反応!?」

原村「お前、麻雀が好きになったって……嘘じゃないのか?」

咲「え…………」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:45:39.84 ID:qEV7vktEo

原村「……あの日、須賀さんに誘われて麻雀部に来たんだよな」

咲「じ、自分から……行きたいって言ったんだよ」

原村「ほーう。自分の力をみんなに見せびらかそうとして?」

咲「なっ……! そ……そんなことない!!」

原村「じゃあ――なんだ?」

咲「っ……! それは……麻雀で……みんなと仲良く……」

原村「嘘だ!」

咲「ぅ……」 ビクッ

原村「ならなんで麻雀部に入らなかった!」

原村「麻雀は負けることだって多々あるゲームだ! それをたった一度負けただけで……!」

原村「本当はお前は麻雀が好きなんじゃなくて……勝って相手の上に立つことが好きなだけなんじゃないのか!?」

咲「それは違う!」

原村「何が違うんだ!」

咲「私は……私は……そんな人間じゃない……」

咲「…………」

原村「じゃあ……どうして……」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:46:36.13 ID:qEV7vktEo

咲「ショックだったんだよ……」

原村「…………」

咲「力のなくなった私は……初心者の京ちゃんより弱い……」

咲「みんなから……必要とされないかもしれないって……だから……」

原村「傷つく前に逃げた……って言うのか」

咲「それは…………うん……そうかも……」

原村「……馬鹿だな」

咲「…………えっ?」

原村「麻雀が弱いからって、爪弾きにするわけないだろ」

咲「…………」

原村「俺、お前が部室に来た時さ、実はすっげぇ嬉しかったんだぜ?」

咲「え……うそ……」

原村「感情があんまし顔に出ないってよく言われるから、気づかないのも無理ないけどさ」

原村「もしこいつが入部して……一緒に麻雀できたら、楽しいだろうなって」

咲「それは……インハイに出れるから」

原村「ははは! そんな下心は無いって言ったら嘘になるけどな」

原村「でもマジでさ、嬉しかったんだ」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:48:38.13 ID:qEV7vktEo

原村「俺、いままで転校ばっかで友達作るの苦手でさ……」

原村「でも同じ部活とか……グループの仲間なら、自然と仲良くなれるだろ」

原村「だから……なんていうか……お前とも……友達になれるかなって……///」

咲「は、原村くん……///」 カァ

原村「……うっわ! 恥ずッ! なに言ってんだ、俺は! ///」 カァァァ

咲(原村くんも……やっぱり同じだ……)

咲(和ちゃんなんだ……私の……“大切な友達”の……!)

咲「……うふふ」

原村「……!」 ドキッ

原村「……笑った」

咲「え?」

原村「いや、宮永……今日初めて笑ってくれたなって思ってさ」

咲「あっ……えっ? あ、いや、あのっ!」 (焦

原村「……結構かわいい顔するじゃん。ホントに男か?」

咲「じ、実は女の子でしたー…………なんて?」

原村「………………」

咲「…………」

原村「…………」

咲「…………原村くんのいじわる」 ボソッ

原村「……!?」 ドキドキーン
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:50:06.16 ID:qEV7vktEo

原村(なんだこいつ……なんで俺、男なんかにドキドキしてんだよ……?)

咲「原村くん」

原村「な、なんだ?」

咲「ふふっ! 顔……赤いよ?」

原村「!!!!!」 ドキィッ!!

原村「……う」

咲「?」

原村「うぉぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!」

咲「わぁ! な、なにーーー!?」

ガシッ

咲(!?!? こ、股間さわっ……///)

モミモミモミモミモミモミーーーーーーーー

咲「うひゃああああああああーーーー!!」

原村「ヒュー……やっぱついてるじゃん……」

咲「は、原村くんの……変態……///」

原村「…………」 汗タラーリ

原村(お前こそ、なんで男にキンタマ揉まれてまんざらでもない顔だよ……)
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:50:59.92 ID:qEV7vktEo

咲「ひどいよー……原村くんにひどいことされたよー……」

原村「すっげぇ棒読み……」

咲「…………」 チラッ

原村の股間「」 モッコリーヌ

咲「チャーーーーンス!!」

原村「ヘアッ!?」

ガッシ! モミモミモミモミモミモミーーーーー

原村「うへえええええええええええええーーーー!」

咲「あはは、どうだー! なんとも言えない気持ちになったでしょ!」

原村「野外で思いっきりキンタマを揉んできたのはお前が初めてだ」

咲「あはは……!」

咲(ちょっと大胆だったかなぁ)

咲(でも女の子同士でも胸触りあったりするし……男同士でしかできない貴重な体験しちゃったかも……///)



※男同士でもこんなことしません…………えっ? しないよね?
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:52:02.30 ID:qEV7vktEo

原村「ハァ……ここが田舎でよかったわ……マジで」

咲「ここ通学路から外れてるし、人通りも少ないし……きっと誰も見てなかったよ」

原村「ならいいんだけど。変な勘違いされても困るしな」

咲「あはは……」

原村「…………」

咲「…………」

原咲「「なぁ(ねぇ)」」

原村「ッ!」

咲「!」

原村「あ、いや……宮永から……」

咲「い、い、いいよ! 原村くんからで……」

原村「お、おう。あのさ……宮永」

咲「うん」

原村「その……やっぱりダメか?」

咲「日本語で」

原村「あ……、ぷっ。ははは! さっきも言われたな、それ」

咲「主語はきちんとしなきゃダメだよ?」

原村「そうだよな……その通りだ」

原村(どうもきっぱり言うのは恥ずかしいんだよな……)
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:53:27.89 ID:qEV7vktEo

原村「あの、さ。やっぱり麻雀部に入ってくれねーかな……って」

咲「…………!」

原村「麻雀弱くてもみんな気にしないぞ。俺も優希も部長も……たぶん須賀さんも」

咲「…………」

咲「……私も―――」

原村「いや! 待ってくれ!」

咲「え?」

原村「最後まで言わせてくれ! じゃないと、その……絶対タイミング無くす自信がある」

咲「……ぷ。ふふ! それなら……言っていいよ」

原村「おう……。その……なんだ」

原村「それからー……あの、俺と……」

咲「俺と?」

原村「とっ……、友達になってくれない……か……?///」

咲「…………うん!」

原村「……へへっ。だよな、そう言うと思った」

咲「なにそれー」
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:54:55.22 ID:qEV7vktEo

原村「いや、お前結構ノリ良いし……今日話してすっげー印象変わった」

咲「そうなんだ」

咲(でも、自分でも不思議)

咲(全然知らない男の人と、どうして突然仲良く話せたんだろう……?)

咲(元々原村くんは和ちゃんだから?)

咲(……違うよね。たぶん……京ちゃん)

咲(原村くんと京ちゃんは性格も違うし見た目もあんまり似てないけど……)

咲(京ちゃんは気の置けない唯一の男友達だったもん)

咲(同年代の男の子との接し方なんて、京ちゃん以外知らないから……)

咲(自然と……京ちゃんと同じように、親しくしちゃったんだ……)

咲「…………」 チラッ

原村「……?」

咲(もちろん原村くんが良い人だったってこともあるだろうけどね……!)

原村「それで、その……麻雀部の方はどうなんだ?」

咲「それは……私の話と一緒に答えるね」

原村「……! そうか……」
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:55:39.03 ID:qEV7vktEo

咲「私さ……やっぱり原村くんの言うとおりだったかもしれない」

原村「何がだ……?」

咲「私が、本当は麻雀好きじゃないんじゃないかって話」

原村「…………」

咲「麻雀楽しいって思ったのは、勝つことの嬉しさを知ったからなんだ」

原村「……そりゃあ、勝てば嬉しいし、負ければ悔しいよな」

咲「もちろん、それからも時々負けたよ」

原村(時々かよ……)

咲「でも、それは自分が勝つのが当たり前に感じてたからだと思う」

咲「今は負けたけど、次やれば私が勝つよ……って」

咲「そんな気持ちがあったんだと思う。たぶんね」

原村「至極当然の思考だ」

咲「そうかな? …………でもね」

咲「さっきも話した通り、力の無くなった私はポンコツなんだ」

咲「負けたら、負けたで、負けっぱなし……きっと、それが怖かった」

咲「唯一の取り柄だった麻雀、みんなに『咲はすごいな』って思わせられる麻雀で勝てなくなったら……」

咲「もうどうしていいかわからなくなって……」

原村「…………」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:56:27.19 ID:qEV7vktEo

咲「でも、今日原村くんと話して……どうしていいかわかった」

原村「え……。な、なんだよ。照れるじゃん……///」

咲「ふふ……。私、決めたんだ……」

原村「決めた?」

咲「うん! 私、強くなる」

原村「……!」

咲「力が無くても、麻雀で勝てるようになりたい!」

咲「だから……原村くん」 スクッ

原村「……? どうした、急に立ち上がって……」

咲「…………フゥ」 (深呼吸)



咲「私に…………私に麻雀を教えてください!」 ペッコリン
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:57:32.89 ID:qEV7vktEo

原村「!!」

原村「はは……そういうことか」

咲「お願いします!」

原村「違うな、宮永」

咲「え……?」

原村「友達に頼む時は、もっと気軽でいい」

咲「あっ……」

咲「私に……その、麻雀……」

咲「教えてくんねー?」

原村「軽すぎ」 ポカッ

咲「ってて!」

原村「お願いされるまでもないよ」

咲「…………ということは……!」

原村「もちろん、俺が鍛えてやるよ! インハイでも通用するぐらい!」

原村「これから麻雀部の“部員同士”として、お互い頑張ろうぜ?」

咲「あ……はぁ……!」 パァァ

咲「うんっ!!」 ニコッ
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 20:58:59.31 ID:qEV7vktEo

               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

――――放課後

〜清澄高校・麻雀部〜

原村「おっす」

竹井「お、来たか」

片岡「おう! 遅かったなー」

京子「ホントホント。いつも放課後すぐに部室来るのにねー」

原村「まぁ、な。実は新入部員連れてくるのに少し手間取ってさ」

片岡「な! マジかーーーー!?」

竹井「それは本当かい!?」

京子「新入部員!? すごいじゃんカズー!」

原村「ほら、入れよ」

「し、失礼します……」 ヒョコッ

京子「えっ……あ……!」

片岡「お……おぉ!?」



咲「1年の宮永咲です……よろしくお願いします!」 ペッコリン

竹井「宮永くんーーーーーー!?」
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 21:00:14.69 ID:qEV7vktEo

京子「咲ッ!!」 ダッ

咲「あ、京ちゃ―――」

ギュッ

咲「あ……」

京子「もう……! 心配したんだから……!!」

咲「京ちゃん……怒ってないの……」

京子「怒ってるわよ!! どうして……相談してくれなかったの……」

咲「ごめん……ごめんね京ちゃん……」

咲「ひどいこと言ってごめんね……私、どうかしてた……」

京子「いいよ、もう……。でも、あれが私の性分だから」

京子「ああ言われてもしょうがないかもね」 テヘ

咲「ごめんね……本当にごめん……私……あっ……ぼく……」

京子「いいよ、“私”で」

咲「え?」

京子「ごめんね咲……私が決めることじゃないよね……咲の一人称だもの」

咲「京ちゃん……京ちゃん……!!」 ギュッ



竹井「ええ話や……」

片岡「京子は俺の嫁!」

原村「なに言ってんだこのバカ」
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 21:01:54.99 ID:qEV7vktEo

原村「でー、その……いつまで抱き合ってんだ?」

京咲「「!!」」 ババッ

京子「あっ! いや、その、これは! 違くて!///」

咲「あ、あははー……」

竹井「それでは改めて! 僕達麻雀部は君の入部を歓迎しよう!」

竹井「よろしく、宮永くん」 スッ(手を差し伸べる)

ガシ

咲「よろしくお願いします、部長」

片岡「お! 俺も俺も!」 ガシッ

京子「いやいや、なんでアンタも参加してんの」

片岡「ノリだよノリ! ほら、京子も!」

京子「えーっ!」 (と言いつつ手を貸す) ギュッ

竹井「なんだなんだー? みんなそんなに宮永君を歓迎したいのか?」

片岡「もちのロン! 跳満だぜ!」

京子「意味がわからん!」

咲「……」 チラッ

原村「…………なんだよ」

咲「……」 キラキラ

原村(うっ……なんという“お前もやってくれオーラ”。目輝きすぎだろ……)
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 21:02:40.64 ID:qEV7vktEo

原村「はぁ……わかったよ」 スッ

咲「えへへ……」 ニコッ

原村「んぐっ……!」 ドキッ

原村(や、やめろその顔……ホントどうかしてるな俺……///)

京子「どうしたの? カズ」

片岡「照れてんだぜ。カズはこういうの苦手っぽいからなー」

原村「て、照れてねーし! ほら、この後どーすんだ!」

片岡「え、俺に聞かれても」

京子「あんたがやりだしたんでしょー!?」

竹井「じゃあ、ここは部長の僕がまとめるとしよう」

片岡「さすが部長。やる時はやるなぁ」

京子「なんつー無礼なヤツだ……“一応”先輩なのよ?」

竹井「す、須賀さん……君もわりと人のこと言えないよ……?」

京子「ゔ……すみません……」 ペコ

竹井「それじゃあ気を取り直して、これからみんなでがんばろう!」

竹井「新生・清澄麻雀部、ファイト、オーーーー!」

「「「「オ『ちょっと待ぁぁてぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーいッッ!!!!』 バターーンッ

咲京原片「「「「!?」」」」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 21:04:14.27 ID:qEV7vktEo

?「いくら……ハァハァ……なんでも……ハァハァ……酷すぎじゃ!!」

咲「あの……誰ですか?」

?「なにぃぃぃーー!」 ガビーン

?「――ってぇ、新入部員かい。なら知らんでもワケないのう」

染谷「わしは染谷まことっちゅーもんじゃ。ちなみに2年! お前の先輩じゃけん、よろしくの」

咲(ああ、染谷先輩の男バージョンか……やっぱり癖っ毛なんだなぁ)

染谷「お前さんが以前来てソッコー帰ったっちゅうやつか。まぁ、よくうちんとこに入部してくれたのう」

咲「色々とありまして……」

京子「あ、そう、そうだよ。連れてきたのカズだよね?」

原村「ん……、ああ、そうだが」

京子「咲を説得したってことでしょ。一体どんな魔法使ったの!?」

原村「ま、魔法!? そんなもん―――ハッ!」 チラッ

咲「…………?」 (首かしげ)

原村「―――ま、まぁ、この俺に掛かれば……チョイ……だよ」

原村「あ、“ちょちょいの”すら要らないんだぜ? チョイだよ、チョイ!」

片岡「お、おう……」

京子「カズってこんなキャラだっけ」

片岡「いや、こんな冗談言うのは俺の知らないカズだぜ……」

竹井「ははぁーん?」 ニヤニヤ

染井「ほぉ〜?」 ニヤニヤ

原村「そ、そこ! 先輩二人ィ!!」
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 21:05:04.43 ID:qEV7vktEo

咲「原村くんって面白い人だよね」

京子「咲、いつの間にカズと仲良くなったの?」

咲「えーと……今日?」

片岡「速っ!!」

京子「はぁ……良かった」

咲「え?」

京子「やっと咲にもまともな男友達ができた……って」

片岡「果たしてカズはまともなのか」

原村「おい」

片岡「っつーか待てぇい! 俺もサッキーと友達だぜ!?」

京子「アンタはまともじゃないし」

片岡「オゥ! そういう評価か俺って!」

京子「まともな男子はいっつもタコス臭くありませーん」

片岡「ちゃ、ちゃんとファブ○ーズしてるぞ!(家で)」

咲「あはは……そういう問題じゃないと思うなぁ」

片岡「サッキー!?」

竹井「はいはい! それじゃそろそろ真面目に部活始めるぞー!」
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 21:07:06.21 ID:qEV7vktEo

竹井「まず宮永くんは決定として……ま、一年組で卓囲んでやってもらおうか」

竹井「25000点持ちの30000点返し、ウマは無し。後は大会ルールに準ずる。OK?」

竹井「あ〜、宮永くんは大会ルールわからないかな。ま、わからないことがあれば聞いてくれ」

咲「あ、はい」

原村「部長、あの……俺、宮永の後ろで見たいんですけど、ダメですか?」

竹井「え? ……へぇ〜」 ニヤニヤ

原村「なに変な誤解してるんですか!/// ただ単に宮永の力量を知りたいだけですよ!」

染谷「そーゆーことならわしが入っちゃる」

咲「は、原村くん」

原村「アドバイスはしないぜ? まずは見るだけだ」 ボソッ

咲「わ、わかった……」

               ・
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               ・
               ・

東三局

東:染谷 南:咲 西:片岡 北:京子

原村(やはりリードは優希……追うはこの局親の染谷先輩か)

原村(宮永はこれまで振り込んでこそいないものの、和了ってもいない)

原村(だが優希のツモで削られて配給原点を割ってる……)

原村(ラスは染谷先輩に放銃した須賀さん……でもまだ誰にも一位の目はある)

原村(ここは一位の優希から直撃したいところだが……宮永にそれができるのか……?)

6巡目

咲(よし……なんだかいい感じ)

原村(平和一盃口赤1テンパイ……手早く綺麗に揃えてきたな)

咲:打 二萬

原村(……? リーチかけないのか……?)
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 21:09:15.88 ID:qEV7vktEo

7巡目

咲「あ、ツモ! 平和 ツモ 一盃口 赤1 20符4飜は1300・2600です」

京子「えーっ! テンパってたの!?」

染谷「親っ被りかい。ま、リーチ掛けられてない分、軽傷で済んだわ」

原村(リーチ掛けてれば一発も付いて跳満……確かにもったいない……)

原村(最初に親っ跳喰らってるから今の5200じゃ25000にすら達してないし)

原村(無闇にリーチするのはよくないとは言え、待ちも悪くないし、この状況でリーチしないというのは……)

片岡「あのな京子、ダマテンという戦法があってだな―――」

京子「ふむふむ、なるほど……」

原村「……宮永。今、どうしてリーチしなかったんだ?」

咲「えっ……?」

咲「あの……聞いても笑わない?」

原村「…………ああ」

咲「どうしても……和了りたかったんだ……」

咲「牌の見えない、今の“私だけの力”で……!」

原村「…………そっか」 フッ

原村(そうか……こいつは今、全力で麻雀を“楽しんでる”んだ……)

原村「でも……次はお前の親番だぜ。等身大の……お前の全力を見せてくれないか」

咲「うんっ。ここからは勝負に勝つ麻雀を目指すよ!」

染谷「お? 言うのぉ!」

片岡「追いついてみろよサッキー!」

京子「わ、私も負けないから!」



咲「あはは! 麻雀って……楽しいね!」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 21:09:43.56 ID:qEV7vktEo

原村(麻雀には“流れ”があると信じる人達がいる)

原村(もちろん俺はそんなもの微塵も信じちゃいない……)

原村(……でも、宮永がどうしてもアガりたくてアガったあのダマ和了……)

原村(あれから宮永の意気が増したような気がした)

原村(後ろから見ていてはっきりと伝わってくるほどに……)

原村(結局――宮永は半荘終わって3位だったが、とても良い顔で笑っていた……)

原村(……俺は“流れ”なんて信じちゃいないが……)

原村(論理から外れた“ああいう和了り”が……少しはあってもいいんじゃないかな……とか)

原村(宮永を見て…………少しだけ思った)



原村(……ほんの少しだけ、な……)
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 21:10:23.22 ID:qEV7vktEo

――――次回予告

心新たに麻雀の修行を始める咲
しかし感覚を引きずる咲に、原村の教えるデジタル麻雀が早々身に付くはずがなかった

中々上達しない咲に、染谷がとある提案をあげる

次回『フジタ、来店』

この次も、サービス、サービスゥ!
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/29(水) 21:11:45.51 ID:qEV7vktEo
〜キャラクター紹介〜

■竹井久(男)
竹井久の男バージョン。真面目そうで遊んでそうな人。
学生議会長。ダメに見られがちだが、実はきちんとしている。ちんこはそれなり。

■染谷まこと(男)
染谷まこの男バージョン。一人だけ名前の表記がそのまんまでない。
男でもやっぱり髪型はワカメ。雀荘の一人息子。ちんちんは平均サイズ。
151 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/08/29(水) 21:16:02.42 ID:qEV7vktEo
(※)原村くんはホモではありません……タブンネ


それと、こんなスレを書きました

優希ちゃん「みやなヶ島のテル退治だじぇ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346145422/

お暇でしたら是非ご覧くださいませませ
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 22:06:37.91 ID:uq9IBaDKo
乙!
咲が暴走ぎみではあったけど引き込まれた
次も楽しみだなー
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 00:36:28.97 ID:n0W8m//a0

精神が女性な分、こっちの方がまだ健全……?
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 19:09:20.74 ID:xb9guPefo
ホモォ…┌(┌ ^o^)┐ホモォ…
155 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/09/05(水) 21:06:47.35 ID:9y5yt/U6o
レス感謝っ……! 圧倒的……圧倒的感謝っ……

それでは今週分投下
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:07:36.41 ID:9y5yt/U6o

――――前回までのあらすじ

世界から孤立したと思い込んでいた咲を救ったのは偶然出会った原村和だった

原村のおかげで立ち直った咲は麻雀部に入部し、強くなることを決意

            ボーイズマージャンストーリー
かくして“本 格 美 少 年 麻 雀 物 語”が始まろうとしていた―――――のだが?



―――咲が入部して数日経過した頃

〜清澄高校麻雀部部室〜

東二局
東:竹井 南:染谷 西:咲 北:京子


京子「」タンッ 打:一筒

咲「ポン―――あっ」 打:九萬

原村「また……」

咲「い、い、い、言わないでよぉ! それバレちゃうから!」

竹井「はっはっは。また無意味なポンかい?」

咲「うぅぅぅぅ……バレた……」 ジト目

原村「お、俺を睨むなって……。“あっ”って言った時点でバレてるから……」

咲「でも! ほら、ここから大物手だって!」

原村「……その手牌で?」
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:08:49.79 ID:9y5yt/U6o

咲:手牌
  _____________________ ..____
 │二│四│六│四|四|五|六|七|八│九│|一│一├──┐
 │萬│萬│萬│筒|筒|筒|索|索|索│索||筒|筒|一筒|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

咲「…………」

原村「どうやって役つけんだこれ……」

咲「さ、三色……」

原村「何巡かける気だ」

咲「役牌……」

原村「ねーじゃん」

咲「もいっこ一筒引いて……り、嶺上開花?」

原村「テンパイしてから言え」

染谷「ほう、まだテンパイしてないんか」

咲「原村くん!」

原村「あ、今のはナシに……」

咲「ならないよ!」

片岡「いやー、サッキーとカズの漫才見てると飽きねーな!」

京子「あはは……参加してる側にしてみれば、対局止まるから勘弁して欲しいなーなんて」

咲「ご、ごめん……。もう! 原村くんのせいだよ!」

原村「俺か……?」

咲「そうだよ!」

京子「もう捨てていい?」

咲「う、うん……」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:10:00.27 ID:9y5yt/U6o

数巡後―――

咲「…………!」 ツモ:西

咲(うっ……やっぱり一筒じゃない……)タンッ 打:西

咲(あぁ、感覚に頼るのはやめようって思ってるのに、ついクセでやっちゃったなぁ……)

咲(っていうかそもそもこれ一筒でも意味ないじゃん……なんてバカなこと……)

竹井「ロン。3900」

京子「あちゃー」

竹井「はっはっは。たまには部長の威厳を示さないとね」

染谷「ザンクで威張るかフツー」

竹井「手が伸びなかったから仕方ないだろう」

染谷「じゃあ威張んな!」

片岡「きょーこ、他家がリーチかけて二向聴なら降りた方がいいぞ」

京子「そういうもんなの?」

片岡「高い手なら突っ張ってもいいけどなー。安い手で突っ張って放銃しちゃったら意味ないだろ」

京子「なるほど……」 メモメモ

咲(こっちの京ちゃんは真摯に麻雀覚えてるなぁ……)

咲(それに比べて私……足踏みしてる……)

咲(大会はもうすぐだって言うのに……!)
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:11:10.86 ID:9y5yt/U6o

―――対局終了

結果
1位:染谷 2位:竹井 3位:咲 ラス:京子

竹井「ま、捲くられた……」

染谷「はっはっは! どうじゃ、先輩の威厳っちゅうんはこういうことじゃ!」

京子「すごいです」 パチパチ

竹井「後輩に捲くられてしまった僕は?」

京子「かっこわるいです」 パチパチ

竹井「でも拍手してくれるんだ!?」

咲「ラス回避したけど……全然和了できなかった……」

咲「麻雀ってこんなに和了れないものだったっけ……」

片岡「運が悪い時はあるぜ。そんなに落ち込むなよサッキー」

原村「もっとこう……臨機応変にだな。高い手を望めなければ鳴いてササッと……」

咲「そんなにうまくいかないよ!」

咲(くぅ……今までは“そんなに”うまくいってたんだけど……)

原村「やっぱ宮永はネト麻で練習だな……」

咲「えぇ! あんなの麻雀じゃないよ!」

原村「麻雀だよ!」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:12:12.95 ID:9y5yt/U6o

京子「じゃ、大会に出る男子のために私は抜けますね」

竹井「悪いね須賀さん。お茶入れてくれるとありがたいな」

京子「はーい」

染谷「ナチュラルに扱き使いおって……」

竹井「じゃあカズと優希入って、咲はネト麻ね」

咲「えぇ〜!」

原村「えーじゃない!」

咲「おぉ〜!」

原村「」 ペチッ(両手で頬を挟む)

咲「むゅっ」

原村「……ったく」

原村「練習がんばれよ、宮永」 イケメンスマイル

咲「う、うん……」

京子「………………」
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:13:36.55 ID:9y5yt/U6o

カチカチ……

咲(ネト麻……。確かに感覚をシャットダウンできるから、練習には向いてるんだろうけど……) カチッ

ロン

咲「」 ビクッ!!

 跳 満

咲「ふ……ふぇぇ……」(涙目

咲「つ、次……」

カチカチ……

コトッ

咲「?」

京子「はい、咲にも淹れてきたよ。紅茶でいいよね」

咲「あ、ありがと京ちゃん……」 ズズッ…アチッ!

京子「どう? ネト麻の調子は」

咲「相変わらずだよ……」 カチカチ……

咲「んー……配牌は良いんだけど……あ、テンパイ!」

咲「即リーで良いよね……」 リーチ!
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:14:08.25 ID:9y5yt/U6o

トンッ トンッ トンッ トンッ トンッ トンッ

リーチ!

京子「あ、追っかけリーチ」

咲「むむむ……」

トンッ トンッ トンッ トンッ トンッ トンッ

ツモ!

咲「えぇぇぇ!?」

京子「あーあ、追っかけに負けちゃった……」

咲「また焼き鳥……」

咲「なんなのさもう! 絶対これ牌操作されてるよ!」

京子「あはは。そんなことないって」

京子「そんなこと言ったら上位ランカーはどうなっちゃうの」

咲「ゔ……え、えと……運営にお金払ってる……」

ポカッ

京子「おばか」

咲「いてて、冗談だよぉ」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:14:37.99 ID:9y5yt/U6o

ガチャッ

?「会長ー、仕事終わりましたよ」

竹井「はぁい、ご苦労さん!」

咲(!?) チラッ

京子「咲?」

咲「お、女の人だ……」

咲(誰だろう……この世界で女の人ってことは、元は男……のはず)

染谷「わりゃぁ、また仕事押し付けよって……」

竹井「もうすぐ大会なんだーって言ったら快く……ね?」

?「まぁ、幽霊部員とは言え私も麻雀部の一員ですから……」

竹井「悪いね……君には迷惑をかけてばかり……」

咲「あの……その方は?」

?「ん?」 チラッ

咲「…………?」 (首かしげ)

?「…………ぬぁっはぁっ!!?」 ハナヂピュー

咲「へ?」

?「ななななな、なんでふかこの美少年はぁぁぁぁぁーーーーーッッ!!?」

咲「え、ええぇぇぇぇぇーーーーっ!?」
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:15:11.05 ID:9y5yt/U6o

竹井「新入部員の宮永咲くん、1年生だ」

?「宮永くん! あなた宮永くんって言うのね!」

咲「え、え、えぇぇ?」

竹井「そんな名前と容姿だが、男装した女の子じゃないぞー」

?「わかります、ええ。私の美少年レーダーがピンピン……いえ、ブザーがブファーブファー唸りやがってますからッ!!」 フンスッ

?「宮永くん……いえ、ここはお姉さんらしく“咲くん”とお呼びしましょうか……否、ここは親しみをこめて“さっくん”というのも……」ブツブツ

?「さっくん! やはりさっくんが良い! あぁさっくんこんにちは初めましてごきげんようさようなら……」 ブツブツ

?「あ゙ あ゙ あ゙ あ゙ あ゙ ! さっくんさくさくしたいよぉ〜(謎」

咲「あ、あの……」 ドンビキ

京子「先輩……」

原村「うわぁ……、ああいう人だったのか……」

片岡「サッキー顔が引き攣ってるぜ」

咲「と、とにかく! あなた誰ですか!?」

?「はっ……! ごめんなさい、自己紹介もせずに……」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:15:42.25 ID:9y5yt/U6o

副会長「私は清澄高校学生議会副会長を勤めさせていただいております、内木一奈(イチナ)です」 メガネキラッ

咲「副会長さん……」

咲(あぁ、あのメガネの……)

副会長「一応、1年の頃より名前貸しということで麻雀部に籍をおいてますが、基本的には幽霊部員ですのでよろしくどうぞ」

副会長「でぇもぉ〜、さっくんがいるんだったらぁ〜、毎日通っちゃうかもぉ〜」(アニメ声)

竹井「はいはい! そこまで! 咲、彼女にセクハラされたら迷わず110番するんだぞ」

副会長「し、しませんよセクハラなんて!」

咲「あ、あはは……」

副会長「あぁ、かわいい……会長、こんな子が入ったのならすぐに言ってくださいよ……」

竹井「知らないよ、君の趣味なんて(汗」

副会長「あ、そうだ! 染谷君、さっくんにメイド服着せていい!? ゼッタイ似合うから!」

染谷「は、はぁ!? 咲に!?」

副会長「お願いお願い! 今すぐじゃなくて明日のバイトの時でいいから!」

染谷「し、しかし……明日はのう……」 チラッ

竹井「んー……、そうだなァ」 チラッ

原村(…………? 何故俺を見る……)
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:16:49.31 ID:9y5yt/U6o

京子「内木先輩って染谷先輩の雀荘でバイトしてたんですか?」

副会長「知らなかった? これでも重宝されてるんだけど」

咲(男女性別が変わるだけでこんなに変化するものなんだ……)

染谷「…………」 ジロ

咲「……? な、なんですか染谷先輩……」

染谷「副会長、あんた……」

副会長「?」

咲「?」

染谷「良い目しとるのう! 採用じゃ!」

副会長「ぃよぉぉぉっし! さっくんのメイド服姿ゲットォォォォォーーーーッッ!!」

咲「」

原村「」

京子「」

片岡「」

咲「そ、染谷先輩!!」

染谷「なんじゃ」

咲「わ、わたし……男なんですけど……(誠に不服だけど)」

染谷「今流行ってるじゃろ、男の娘」

咲「お、おとこのこ……?」 ←わかってない
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:17:35.97 ID:9y5yt/U6o

京子(咲のメイド服姿……)

原村(宮永のメイド服姿……)

片岡(サッキーのメイド服姿……)

京原片(((見たい……!!)))

京子「あ、あの私も!」

原村「お、俺も!!」

片岡「俺も明日雀荘いくぜーー!!」

染谷「なにぃ!?」

竹井「優希と須賀さんは僕と一緒にお留守番。いいね?」

京片「「えええぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!?」」

竹井「副会長に写真頼むから」

京片「「留守番、OK!」」

咲「なんて人達だ……」

原村「お、俺は行って良いのか……」 ラッキー

竹井「カズもちゃんと部活来いよ?」

原村「oh....」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:18:02.50 ID:9y5yt/U6o

               ・
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               ・

――――夜

〜咲の家〜


咲(元の世界だと染谷先輩の雀荘に行く経緯はバイトの人手が足りないからだった……)

咲(まぁ部長の真意はカツ丼さん……藤田プロと会わせるためだったんだけど……)

咲(やっぱり明日、藤田プロは雀荘に来るのかな……?)

咲(…………来ても私には関係ないよね。今の私じゃ相手にならない……)

咲(未熟だったとはいえ、能力のあった私でもコテンパンにやられちゃった相手だもん……)

咲(……そういえば藤田プロも男になってたりするのかな)

咲(カツ丼ドカ食いする太っちょだったりして……くすくす……)

「咲……」 コンコン

咲「お父さん?」

ガチャッ

父「咲、お前麻雀部に入ったんだって?」

咲「……うん」

父「そうか……」

咲「それがどうしたの……」
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:18:47.06 ID:9y5yt/U6o

父「いや…………なんでもねぇ」

パサッ

咲(WEEKLY麻雀TODAY……?)

父「57ページ…………」

咲「!」 ドクンッ…

父「じゃ、早く寝ろよ……」 キィィ バタンッ

咲「…………」 ドキドキ

咲(これって……まさかお姉ちゃんが載ってるやつ……)

咲(…………)

咲(…………見れない……)

咲(見れるわけないよ……男になったお姉ちゃんの姿なんて……!) ガシッ

ガコンッ(ゴミ箱行き)

咲(もし……見ちゃったら…………私の中の何かが……壊れちゃいそうで……)

咲(で、でも……いずれ見ることになるかもしれないし、今見た方がダメージ少なそう……)

咲(いや、でも……見るのは怖い……!)


               ・
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               ・
               ・
               ・


チュン チュン

咲「気になってほとんど眠れなかった……」 ゲッソリ
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:19:46.57 ID:9y5yt/U6o

――――次の日、放課後

〜雀荘−roof-top〜

副会長「こんにちはー」

咲「こんにちは」

染谷「おう、お二人さん。さっそくじゃが、これに着替えてくれ」

咲「ほ、本当に着るんですかこれ……」

染谷「ただの雀荘じゃうちもやってけなくてのう。メイド雀荘にしとるわけじゃ」

咲「そういうことを聞いてるんじゃなくて……」

染谷「もっとカスタムしたやつのが良かったか? 一番シンプルなメイド服にしたんじゃが」

咲「そうじゃなくて! 私は……ゴニョゴニョ……男……ですよ……」

染谷「バレんバレん。わりゃ中性的な顔しちょるし、童顔じゃけん」

副会長「さっくん、世界一可愛いよ!」

咲(喜んでいいんだろうか……)


……着替え完了!


咲「ゔ……恥ずかしい……」

咲(あの時着たのより地味なタイプだけど、恥ずかしいことに変わりないよぉ……)

副会長「かわいいよさっくん……メイド服のさっくん……」

副会長「男の子なのに無理矢理女装させられちゃって照れてるさっくん……」

副会長「穿いたことの無いスカートに違和感アリアリでヒラヒラさせちゃうさっくんかわいい……」

副会長「ぬ゙む゙ゥッ! やば、出る。血が。鼻血が出る。萌え血が出る」

染谷「服汚さんでくださいよ」
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:20:13.39 ID:9y5yt/U6o

咲(スカートヒラヒラは別に、初めて着たからしたわけじゃないんだけど……)

咲(でも久しぶりに女っぽい格好したな……恥ずかしいけど、なんか落ち着く)

咲(女の子に戻ったみたい…………パンツは男物だけど)

咲「あっ……」

副会長「どうかした?」

咲「副会長さん、髪の毛三つ編みにしたんですか」

副会長「うふふ、気づいちゃった?」

染谷「見りゃわかるじゃr――」

副会長「私とさっくんの会話に口挟まないでくれる!?」

染谷「」

副会長「長い髪を保ってるのは、こういう格好したとき三つ編みにするためなの」

染谷「かつらでいいじゃn――」

副会長「黙って?」

染谷「」

副会長「私なんかほら、メガネでしょ。メガネメイドさんといえば三つ編みなのよ」

咲「は、はぁ……」

副会長「ポイントは『おさげが一つ』ってところ! 二つでは“地味”という印象を与えてしまうの。これはアウトよ」

染谷「どうでもいいーーーー! こっちは咲に仕事説明しなきゃならんから、内木さんは先に仕事行ってくれんか!」

副会長「ちぇー。わかりました、わかりましたよぅ」

咲(変な人だなぁ…………話題振らなければよかった……)
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:20:52.07 ID:9y5yt/U6o

〜清澄高校麻雀部部室〜

原村「あれ……宮永は」

竹井「直接まことの雀荘行ったよ」

片岡「ふぁー、今日はこの4人で部活かー」

京子「染谷先輩は家の都合で時々休むし、咲が来るまではこういう面子も珍しくなかったじゃない」

竹井「カズ」

原村「はい?」

竹井「東風戦、僕より上の順位で終えたら雀荘行ってもいいぞ?」

原村「」 ガタッ

京子「わ! 急に立ち上がらないでよ」

片岡「待て待て、それって俺が部長より上だったら、俺も雀荘行っていいのかーーー!?」 ガタッ

竹井「いや、カズだけだ」

片岡「」 ズコー

京子「どっちにしろこの面子じゃ私はラスだし関係ないわね」

竹井「須賀さん、そういう考え方は良くない。上昇志向でいかないと!」

原村「なんでもいいです! やりましょう、今すぐ始めましょう!」

竹井「カズ、もちろん雀荘行っても練習するんだぞ?」

原村「わかってますって! やりますよ!」

片岡「バリバリ気合入ってんな……東場で俺に勝てると思ってるのかーーー!」


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               ・
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               ・


原村「じゃ、行ってきます!」 ガチャ バタン

竹井「」

片岡「」

京子「」

竹井「ま、まさか圧勝とは……」

片岡「和了る隙もなかったぞ……」

京子「東二で飛ばされた……」 ガクッ

竹井(最近、咲に付きっ切りで自分を疎かにしてるんじゃないかと思って勝負吹っかけたけど)

竹井(これはもしかすると…………逆か) ニヤッ
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:21:22.91 ID:9y5yt/U6o

〜雀荘−roof-top〜

おじさん「おやおや、今日はかわいい子がいるねぇ」

咲「あ、え、そ、そうですか……///」

若者「新しいバイトの子、入れたの?」

染谷「いえ、今日臨時で入ってもらったんですよ」

副会長「さっくん大人気! まぁしょうがないよね、さっくんだし」

おっちゃん「さっくん?」

副会長「あだ名……いえ、ニックネームです!」

おっちゃん「へぇ〜。じゃあさっくんちゃん、おっちゃんの代わりに入んない? おっちゃんこれでラストだから」

おじさん「いいねぇ、大歓迎だよ」

咲「あ、あの、あの……私麻雀弱いですから……」

副会長「あら、そうなの?」

咲「副会長さんは……?」

副会長「ここのバイトも長いし、それなりかなー……って自分で思ってるだけだけどね」

若者「じゃーメガネちゃん入ってよ」

副会長「かしこまりました」 ペコリ

おじさん「えー、おじさんはさっくんちゃんのが良かったなー」

咲「あ、あはは……」

染谷(うーむ、全然バレとらんどころか大人気じゃな。こりゃ本格的に雇うことも……)

カランカラン

染谷(……む)

染谷「いらっしゃい」

咲「…………!」 ゾクッ
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:22:09.74 ID:9y5yt/U6o

藤田「……」

咲(藤田プロだ…………!)

咲(え……?)

藤田「あら……、今日のバイトはかわいらしいのね」

咲(……女……女性だ……!)

咲(藤田プロはそのまま……!? どういうこと……) ジー

藤田「ふふ、私の顔に何かついてるかしら」

咲「あ、いえ、すみません!」

藤田(話に聞いてた“彼”がいないな……) キョロキョロ

藤田「ちょっと早く来すぎちゃったか……」ボソッ

藤田「いつものやつ、特盛りでお願い」

染谷「はい」

藤田「…………」 ジー

咲(うぅ……なんか見られてる……) ソワソワ

染谷「咲、これあのお客さんに運んで」

咲「あ、はい……」

咲「お待たせしました」 コトッ

藤田「はい、どうも」

藤田「…………」 チラッ

咲「な、なんでしょう……?」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:22:46.02 ID:9y5yt/U6o

藤田「あなたは打たないの?」

咲「えっ……」

咲「いえ、その……いま席埋まってますし」

カランカラン

咲「!」

染谷「おー、いらっしゃい」

原村「ハァハァ……疲れた」

藤田(……来た)

原村「宮永……」 ハァハァ

咲「は、原村くん!? え、えーと、部活は?」

原村「部長に許可貰って来たから……」 ハァハァ

原村「ダッシュで来た」 イケメンスマイル

染谷(そこまでして来たかったんかい)

原村「…………」 ジロジロ

咲(は、原村くんに見られてる…………恥ずかし過ぎるよぉ……)

原村「へぇ〜……似合ってんじゃん……///」 ポリポリ

咲「ひぇっ!?」

咲「…………///」 カァァ

藤田(ほぉ……)
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:23:29.64 ID:9y5yt/U6o

藤田「丁度良い。そこの彼氏さんもいれて打とうじゃないか」

原村「か、彼氏ぃ!?」

咲「ち、違いますよ! 友達です! 友達!」

藤田「そう恥ずかしがらないでもいいじゃない」

咲「っていうか面子足りませんし!」

カランカラン

お爺さん「席あるかい?」

藤田「これで揃った」 ニヤ

咲「う……」

原村(宮永と同卓か……)


               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

南三局

原村「―――ロン」

咲「!」

原村「タンピンドラ1、2600」

咲(やっぱりダメだ……ダメダメだ……)

藤田(この子から何か嫌なものを感じたんだが……勘違いだったか?)
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:24:00.86 ID:9y5yt/U6o

南四局(オーラス)

東:咲    17400
南:爺    23600
西:原村  33200
北:藤田  25800


咲(やっぱり勝てない……)

咲(藤田プロがいるからとか、そういうんじゃなくて……単純に私が弱いだけ…………)

咲(それにあの時散々やったからわかる……藤田プロはここで捲くってくる……)

咲(ラス親で逆転の可能性も十分あるけど……今の私の実力じゃ……)

咲(藤田プロは出し抜けない……!!)

咲「」 カタカタ

藤田「…………」 ジー

藤田(ラス親だってのにすっかり諦めムードか……)

原村「宮永」

咲「……っ!」 ビクッ

原村「お前まさか諦めてるんじゃないよな」

咲「!!」

原村「ここが踏ん張りどころだろ……! 取ってみろよ、一位!」

咲「で、でも……」

原村「強くなりたいんだろ! なら……足踏みしてる場合じゃない……!」

原村「まだ勝負は終わってない。最後まで全力で来い!」

咲「…………」

咲「……わかった」 キッ

藤田(ふぅん……)

お爺さん(青春してるなぁ)
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:24:42.68 ID:9y5yt/U6o

咲(弱気になっちゃ成せる物も成さない……当たり前のことだった……)

咲(そうだよね……決めたもん。強くなるって)

咲(ならびびっちゃダメだ。諦めちゃダメなんだ)

咲(原村くんは強い。もちろん藤田プロも強い。お爺さんは……わからないけど)

咲(でもそれがなんだ……私だって……勝てる可能性はある!) ゴッ

藤田(……っ! なんだ……? やはりこの子には何かあるのか……?)



―――9巡目

咲(張った……)

咲:手牌
  ___________________________  .__   伍=赤ドラ
 │五│伍│五│三|四|八│八│八│六|七|  │  │  │|六|
 │萬│萬│萬│筒|筒|筒|筒│筒│索|索|南│南│南│|索|   ドラ:九萬
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

咲(三暗刻南ドラ1……! ツモか原村くんを直撃で捲くれる!) 打:七索

フッ

咲(…………!?)


―――その時、咲の脳裏に

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                                __
                           │伍│
                           │筒│
                                 ̄ ̄
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

咲(え……)


―――当たり牌が過ぎったッ


咲(五筒……しかも赤牌)

咲(それが……あの嶺上牌だっていうの……!?)
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:26:33.78 ID:9y5yt/U6o

咲(でも……誤情報だよね……。こっちに来てから散々これに騙された……)

咲(さっきまで全然見えなかったのに……どうしてここに来て……!)

藤田「……」 タンッ 打:南

咲(最後の南……! もし“あの”嶺上牌が赤五筒なら……)

咲(三暗刻を崩しても嶺上開花南ドラ2で満貫……)

咲(大明槓の責任払いがこの雀荘にあったかどうか覚えてないけど、アリでも親だから続行できる……)

咲(どうする……!!)

咲(鳴く……? でもこのまま進めた方が堅実……)

咲(どうする……どうする……どうする……!!)

咲(このまま進めればトイトイへの変化も見込める……そうすれば親っ跳で誰から和了っても一位……)

咲(どうする……どうする……どうする……どうする……どうする……どうする……!!)

咲(私の答えは……)

藤田「どうしたの? あなたの番よ」

咲「…………」



















咲「――――カン!」
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:27:33.05 ID:9y5yt/U6o

――――次回予告

藤田との闘牌を終え、より一層強くなりたいと思うようになった咲と原村。
部長はそうなることを見越し、既に強化合宿を計画していた。

長野県予選まで残り10日……
清澄高校は最後の追い込みを掛ける……

次回『命の洗濯を』

この次も、サービス、サービスゥ!
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:28:00.36 ID:9y5yt/U6o
〜キャラクター紹介〜

■内木一奈(女)
清澄高校学生議会副会長、内木一太の女バージョン。黒髪ロング。
至って真面目な性格だが、かわいい男の子を見つけると暴走する。
この世界では麻雀部所属(幽霊部員)、roof-topでバイトもしている。Bカップ。


〜キャラクター補足〜

■藤田靖子(女)
元の世界と変わらず女性である。roof-topの常連であることも同じ。
久やまこととは元と性別が違えど交流はあるようだ。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 21:29:31.22 ID:NfuSUoxBo


カツ丼さんはそのまま・・・なにか裏がありそうだな
183 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/09/05(水) 21:30:26.19 ID:9y5yt/U6o
カツ丼さんの回の予定だったのに副会長に尺を取られて
カツ丼さんの出番が最後のちょろっとになってしまった……反省

しかしまさか副会長の名前が判明するとは思ってなかった
咲日和2巻で名前見た瞬間に「あ……女ver.の名前考えなきゃ」とか思ったのは世界中で俺一人だろうなぁ
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 22:19:07.82 ID:cCoUI+ue0
やべぇ
面白すぎる
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/05(水) 23:18:16.56 ID:XsrXIlgto
なるほど、そういうことだったのか
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 00:13:09.13 ID:imZAM8Kp0

副会長がショタコンっていう噂は本当やったんなぁ
187 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/09/12(水) 22:04:07.16 ID:0nYA5apco
4レスもついてる!
これからも(`・ω・´)がんばるぞ!

では投下
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:04:45.60 ID:0nYA5apco

――――前回までのあらすじ

咲を一目見て気に入ってしまった麻雀部の幽霊部員、内木一奈のせいで雀荘『roof-top』にバイトへ行くことになってしまった咲。

以前の経験と重ね合わせ、カツ丼さんこと藤田プロの登場を予見する。
だが今の自分の実力では相手にならないことも同時に悟っていた。

いざ対局し、やはり敵わないと弱気になる咲に声を掛けたのは原村だった。
叱咤激励を受けた咲は逆転の三暗刻南ドラ1を聴牌。
しかしそこで咲の頭を過ぎったのは、当たり牌が嶺上にあるという予感。

果たして嘘か真か―――
理と勘の狭間に揺れる咲はいよいよ答えを出した。



〜雀荘−roof-top〜


咲「カン!」

原村「!!」

お爺さん「!?」

藤田「――――ッ!?」

            ______   カンッ
  ._ __ ┌──┤  |  |  |
    ― ―. │  南│南|南|南| て
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ そ


シュッ―――!


咲(この感覚を……今は信じたい……!)

原村(まさか……宮永っ!!)
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:05:18.77 ID:0nYA5apco

タンッ!

咲「――――ツモ。嶺上開花南ドラ2」


  _____________________  .__          ______
 │五│伍│五│三|四|八│八│八│六|六||伍│  ┌──┤  |  |  |
 │萬│萬│萬│筒|筒|筒|筒│筒│索|索||筒│  │ 南 │南|南|南|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


原村「嶺上……開花……」

藤田「――――!!」

藤田(これは……!)

咲「染谷先輩」

染谷「……な、なんじゃ?」

咲「ここでは大明槓の責任払いってありますか」

染谷「いや……うちは役満の包(パオ)しか採用しとらん……」

咲「ありがとうございます……なら4000オール」

咲「西入は無しなので…………私が逆転ですね!」

原村「お……おおぉぉ……!」

藤田「……やれやれ」



終局

1位:咲    29400 +19
2位:原村  29200 -1
3位:藤田  21800 -8
4位:爺    19600 -10



藤田(油断していた、というわけではなかったはずなんだが……)

藤田(いや……そう思いつつ、実のところ嘗めていたんだろうな……)

藤田(何かを感じようと所詮は学生……そう考えていた)

藤田(せめて“あいつ”ほどバリバリ感じさせるものがあれば…………いや、言い訳にしかならないな)

藤田(…………こいつはちょっと……見せ付けるか)

藤田「ふふ……」

原村「……?」

藤田「次、やろうじゃないか……!」 ドッ!!

咲「!!」 ゾクゾクッ

咲(藤田プロが……本気……!?)
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:06:12.07 ID:0nYA5apco

               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

咲「」 グデー

原村「」 ガクー

お爺さん「」 チーン

染谷(爺さん、完全にとばっちりじゃな……)

藤田「フー……」 キセル プハー

咲(け、結局今日全体でマイナス収支……)

咲「さ、さすがプロですね……」

原村「へ……?」

藤田「あら」

染谷「なんじゃ咲、藤田プロのこと知っとったんか!」

咲「えっ……あ、その……WEEKLY麻雀TODAYに載ってましたから……」

藤田「へぇ……なるほど。ならあの萎縮様もわからないでもない」

原村「プロだったのか……通りで……」

原村(……通りで、なんだよ……)

原村(……強い……って続けるつもりだったのか、俺……)

原村(一度も一位になれなかったんだぞ……悔しくないのかよ俺……!)
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:06:44.81 ID:0nYA5apco

原村「くっ!」 ガタッ

藤田「全中王者も、所詮そのレベルってことだね」 フフン

原村「!」

咲(あ……やっぱり原村くんもインターミドル個人優勝者なんだ……)

藤田「インターハイ、清澄高校も出場するんだって?」

原村「……! 染谷先輩……」

染谷「いや、すまん。最初からお前さんと引き合わせる手筈だったんじゃよ」

染谷「色々とイレギュラーで咲も加わったが……」 チラッ

副会長「?」 (首かしげ)

藤田「このレベルなら……全国出場は無理だね」

原村「ッ!」

藤田「聞いたことぐらいはあるだろ。龍門渕高校の天江衣―――」

原村「あまえ……ころも……!?」

原村「聞いたことないですけど」

藤田「」 ガクッ

藤田「ま、まぁ、いい(汗」

染谷「すいません、こいつあんまり他を気にしないやつなんで」

咲(天江衣……名前はまったく一緒だけど……やっぱり男の子なんだよね……?)
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:07:52.04 ID:0nYA5apco

藤田「まぁ、あいつは色々と問題があるが……」

藤田「実力は本物だ」

原村「…………」

藤田「去年、男女混合でプロアマの親善試合があってね……半荘18回やって私は2位だった」

原村「それじゃあ……1位がその……?」

藤田「そう―――天江衣だ」

原村「!!」 ガガーーンッ

原村「クッ…………くそぉーっ!!」 ダッ

キィ バタン カランカラン

咲「原村くん!?」

染谷「おい、カズ! お勘定!」

副会長「お金取るんだ……」

染谷「当たり前じゃろ! レッスン料じゃレッスン料」

藤田「おい、それ私にくれよ」

咲「そんなことより原村くんを追わないと……!」

染谷「待て咲!」

咲「止めないでください!」

染谷「その格好で行くつもりか?」

咲「」 メイドフクー

咲「…………着替えてから行きます」

副会長「待ってさっくん! まだ写メ撮ってない!」 ピロリロリ〜ン
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:08:19.26 ID:0nYA5apco

〜外〜

咲「はぁっ……はぁっ……!」

咲(どこ行ったんだろう原村くん……!)

咲(当てもなく追いかけようとしたけど、私の知らないところだったらどうしよう……!)

咲「はぁ……はぁ……」

咲(立ち止まって少し整理しよう……)

咲(あの日……藤田プロにヘコまされて、私と和ちゃんはどうした……?)

咲(…………どうしたんだっけ……)

咲(…………)

咲(……そうだ。部室に戻って部長に……!)

咲「麻雀部の部室だ!」
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:08:54.77 ID:0nYA5apco

〜清澄高校麻雀部部室〜

竹井「そういうと思って――――既に用意していたのさ!」


麻雀部 超強化合宿計画
            ババァ―――z__ ン


原村「!!」

原村(考えを読まれていた……!?)

原村「あ……そうか。考えてみれば藤田プロも部長の差し金でしたもんね……」

竹井「はっはっは。ま、上には上がいるってことをわかってもらいたくてね」

竹井「いきなりプロと引き合わせたのは悪いと思ってる」

原村「でも、良い刺激になりましたよ……」

原村「目指すは全国出場……いえ、全国優勝ですから……!」

竹井「ふっ……言うようになったな!」

原村(全国大会で優勝して……親父を見返す……!)

ガチャッ

咲「原村くん!」 ハァハァ

原村「宮永……!?」

竹井「どうしたー?」

咲「はぁ……やっぱりここにいた……。いきなり走り出して心配したんだからね!?」

原村「あ……悪い。居ても立ってもいられなくなってさ……」

竹井(仲良いなぁ……)

エロイームエッサイム エロイームエッサイム♪(着メロ)

咲「わっ! ……部長のケータイですか」

竹井「おっと失礼、メールだ。…………ほぉ」

ブブッ(振動音)

原村「あ、俺にもメール来て……あ」

竹井「なかなか似合ってるじゃないか、咲」 ニヤァ〜

咲「え……? なんのこと…………ひぇ!?」

咲(め、メイド服姿の私がーーーーーー!!)

竹井「あはは、副会長、知人全員に送信してるなこりゃ」

咲「○×△□◇$#*@ーーーーーーッッ!!」

原村(帰ったら即行でPCにバックアップしよう)
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:09:23.55 ID:0nYA5apco

――――翌日

〜清澄高校麻雀部部室〜

竹井「というわけで、週末に麻雀部“超”強化合宿をやりたいと思う!」

京子「超……強化ですか」

竹井「うん。団体戦に出る男子中心になるから、須賀さんには悪いが……」

京子「まぁ、いつものことですし。私もまだ初心者ですからね」

京子「初心者の身で一日に2半荘ぐらい囲ませてもらえるだけありがたいです」

咲(……どう考えても元の世界の京ちゃんよりは卓囲ませてもらってるんだよね)

咲(京ちゃんが女になったからか、部長が男だからか…………どっちもかな)

片岡「超強化か……。やべーな、また強くなっちまうぜ!」

原村「優希はまず南場で失速しないようにしろよな」

片岡「そう言われてもなぁー。長いんだよ半荘って。東風ならサイコーなんだけど」

染谷「今年の団体戦はすべて半荘。対策は必須じゃ」

片岡「わかってるけどさぁ」

咲(優希くんは優希ちゃんに比べると少しパワー不足な気がする)

咲(有利な東場でも勢いに飲まれると調子が悪くなるような……)

咲(……このころの優希ちゃんもそうだったかな?)
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:09:50.92 ID:0nYA5apco

原村「しかし……超強化って一体なにするつもりですか」

竹井「ま、具体的に言えば、メンバーの長所短所を再確認して改めようってところだな」

竹井「例えば優希、典型的な先攻逃げ切り型で点数計算ができない」

竹井「東場は調子良いが、南場では失速し、最終的に逆転されることが多い」

竹井「さぁ、優希の改善点は?」

原村「…………南場で失速しないことじゃないですか」

片岡「それができたら最強になっちまうぜ!」

竹井「ま、そこを改善するのは現実的じゃないね」

染谷「なら点数計算できないところか?」

竹井「それもあるけど、今そっちにかまけてる暇はないかな」

京子「点数計算って……逆転とかする時に必要ですよね?」

竹井「先攻で逃げ切れるなら要らないさ。ま、優希は追いつかれるだろうが」

竹井「そこで優希に必要なのが攻撃力の底上げと南場での守りだ」

片岡「守りぃ?」

竹井「優希はどうも南場で失速することが自分でもわかっているのに攻撃の手をやめないんだよな」

片岡「攻撃は最大の防御だぜ! 俺が早和了りしちまえば、相手は和了れないしな!」

原村「だから南場は失速するんだろ? 早和了りできるのか?」

片岡「ゔ……、そ、そうだけどさぁ」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:10:20.26 ID:0nYA5apco

竹井「ま、詳しいことは合宿で指示するとして……今日も部活を始めようか!」

ガチャッ

副会長「会長! 麻雀部、合宿するんですって!?」

竹井「」 ギクッ

染谷「おい、なんでいまギクッて顔した」

竹井「か、彼女は置いていきたい」 ボソッ

染谷「わりゃぁ……なんてやつじゃ」

竹井「だって見ただろ一昨日の……! あれじゃうるさくて練習にならないぞ……!」(小声)

副会長「?」

京子「先輩も来るんですか?」

副会長「いくいく! さっくんとお泊りする!」

竹井「ほら……」(小声)

染谷「まぁ、気持ちはわかるが……」

京子「女子は私一人ですし、先輩いると助かりますよー」

副会長「ふふふっ、部員としてたまには部に貢献しないとねー」

竹井(くっ……須賀さん、余計なことを……!)

竹井「ふ、副会長? キミ、学生議会の仕事は……」

副会長「全て終わらせました。溜まっている案件はありません」

竹井「は、ははは。もう終わらせたのかー! さすが副会長!」

竹井(有能っ……! 圧倒的有能っ……!)

竹井(ここ最近大会を理由に仕事頑張ってもらってるから拒否することもできないし……!)

竹井(これは困ったことになったぞーーーーッ!!)


片岡「なんかいつも余裕な部長が焦ってるような気がするぜ」

原村「面白いから傍観してよう」

咲(いいのかなぁ?)
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:10:48.68 ID:0nYA5apco

――――週末

〜清澄高校・校内合宿所〜

合宿は校内の合宿所で行なわれる
しかし校内と言っても高校からは距離があり、温泉とかついちゃったりしているのだ☆


副会長「ふあー! 初めて来ましたよ、合宿所!」

竹井(結局断れなくてついてきてしまった……) ズーン

染谷「あそこに案内板がある。ま、小さい施設だし覚えるのは簡単じゃ」

京子「わ、温泉とかあるんだ」

原村「部屋は……3つしかないぞ」

竹井「ま、まぁ……あくまで泊まる専用の施設だから」


染谷「おい咲」

咲「はい?」

染谷「次はお前の番」 ズイッ

咲「わっ! …………全自動卓ですかっ」 オモイッ!!

片岡「はっはっは! だらしねぇなサッキー!」

原村「さっきヒーコラヒーコラ言ってたのはどこのどいつだったかな……」

片岡「きょ、きょーこじゃね?」(焦

京子「私は運んでないわよ!」

咲(うぅ……こういう力仕事させられるなんて、男って損だよぉ……)

咲(でもこんな重い物、前は京ちゃん一人で運んでたんだ……。なんかすごい罪悪感……) ズーン
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:11:18.96 ID:0nYA5apco

〜部屋〜

竹井「こっちが男子部屋、隣が女子部屋です」

竹井「練習は主にこっちの部屋でやります。卓は1つしかないのでノートPCも2台持ってきてます」

竹井「4人が卓を囲んで、余った人はネト麻で練習。みなさん、オッケー?」

みなさん「「「「「「オッケー!」」」」」」

片岡「しかし7人も同じ部屋にいるとさすがに狭いなー」

咲「そうだね」

咲(前は6人だったし。一人しか違わないけど)

竹井(…………!)ヒラメキッ

竹井「あー……副会長」

副会長「はい」

竹井「昼飯の買出しよろしくっ!」 グッ(サムズアップ

副会長「ええっ!? 来てすぐ!?」

京子「それならここに集まる前に言って下さいよ!」

竹井「あ、いや……須賀さんは別に」

京子「女の子一人で行かせるつもりですか! 私も行きます!」

副会長「うぅ、天国のお父さんお母さん、私は良い後輩を持ちました……」

副会長「両親生きてるけど☆」テヘペロッ

竹井(うぜぇ……)

竹井「じゃあよろしく……」

京子「あ、夕飯の買い物も一緒にしてきますね」

竹井「え? あ、あぁ! 悪いね……」

竹井(こ、これでは副会長を追っ払う作戦が……)

染谷(こいつはホントにもう……)
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:12:03.96 ID:0nYA5apco

――――それから

竹井「さぁ、気を取り直して練習、練習!」

竹井「まず優希は調子が悪いと思ったらすぐオリることを考えて打ってくれ」

片岡「え゙ーーー」

竹井「登り調子の時はガンガン攻めていいから」

片岡「おし!」

原村(単純なやつ……)

竹井「で、次は咲―――なんだけど」

咲「はい?」

竹井「まことの雀荘でなんか不可解な和了をしたそうじゃないか」

原村「!」

咲「あっ……」

片岡「不可解な和了?」

竹井「なんでも三暗刻を捨てて嶺上開花で和了ったらしい」

片岡「は? 一飜下がってるぞ?」

染谷「嶺上牌が赤ドラじゃった」

片岡「 ( ゚д゚ ) 」

咲「…………」

染谷「印象的なのはそれぐらいじゃが、それからも暗槓すると絶対手が進んだりしとったなぁ」

原村(そういえばあの日以来、いつもの宮永に戻ったから気にしてなかったが……)

原村(確かにあの日、あの雀荘での宮永の打ち筋はおかしなところが多かった)

原村(まさか…………) チラッ

咲「…………」

原村「……戻った……のか?」

咲「えっ……?」
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:12:30.64 ID:0nYA5apco

原村「牌が……その、見える……とか」

片岡「え゙ぇ゙!?」

咲「お、驚くよね……やっぱり……」

片岡「いや、カズのオカルト肯定発言に驚いた!」

咲「そっち!?」

竹井「おいおい、カズー。僕の仮説を『そんなオカルトありえまてーんwww』とか否定しておいてそれはないだろー」

原村「そんなふざけた言い方してません!」

原村「なんつーか……その……宮永見て、考え方が……ちょびっとだけ変わったかな……って」

片岡「う……あのカズの考え方を変えるなんて……恐るべしサッキー!」

咲「は、原村くん……」

竹井「あ! じゃあさ、じゃあさ! 僕の悪待ち理論も認めてくれるんだよね!?」

原村「それはありえません」

竹井「」

染谷「クックック……認めるのは咲だけか?」 ニヤニヤ

原村「先輩ッ!! やめてくださいよ、もう……///」
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:12:57.05 ID:0nYA5apco

原村「それで……どうなんだ、宮永」

咲「え、えっと…………戻ったのは……あの時だけだよ」

咲「次の日の部活だと、また違う牌が見えちゃって……」

竹井「どっちにしろ牌は見えるのか」

染井「なんちゅうやつじゃ」

咲「え? 信じてくれるんですか?」

竹井「ま、うちにはタコス食うと東場だけ強くなるやつもいるしな」

片岡「俺か! イェイ!」

染谷「テンション高い」 ペシッ

片岡「いてっ」

竹井「しかし……なぜ雀荘にいた時だけ戻ったんだろう」

原村「いや、雀荘でも打ち始めの頃は特におかしなことはしてなかっただろ?」

咲「うん……。単純に見えなくなってたのと、藤田プロとか原村くんとか格上相手に萎縮しちゃってて……」

染谷「本来のポテンシャルを発揮できなかった……っちゅうわけか?」

咲「わかりません……。でも、最初のオーラスで原村くんから気合を入れて貰ったら、運気が回ってきたような気がします」

竹井「うーん。咲のやる気に能力が応えた、ということかな?」

原村「それだと宮永が普段やる気無いみたいじゃないですか!」

咲「や、やる気はあるよ! 強くなりたいもん!」

染谷「しかし他にいつもと違う要素は…………あ」

咲「え、な、なんですか?」」

染谷「ほぉ〜、もしかすると……そういうことか……?」

竹井「な、なんだ? まことは何か心当たりがあるのか!?」

染谷「咲」

咲「は、はい」








染谷「メイド服着て麻雀打ってみ」

「「「「……は?」」」」
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:13:24.00 ID:0nYA5apco

咲「な、な、な、なんでですかーーーー!?」

染谷「それしか考えつかん! そもそもな、わりゃぁ男のクセにメイド服似合い過ぎなんじゃ」

染谷「そりゃもう“生まれてくる性別を間違えた”ってぐらいに!」

咲「ぅひ……」

原村(心の底から同意したい……)

片岡(別にそれ理由になってなくねー? ま、どうでもいいや)

染谷「部長、副会長におつかい追加じゃ。わしの店によって咲用のメイド服を持ってくるように」

竹井「オッケーイ!」 ピポパ prrrrrrrr

咲「え、えぇぇぇぇ!? ど、どうしてまた……!!」

染谷「例え間違っちょるとしても、可能性がある限り試してみるのが筋ってもんじゃろ」

染谷「それに、牌が見えるようになるなら強力パワーアップ間違いなしじゃからのお」

咲「それは……そうですけど」 チラ

原村「…………? どうかしたか」

咲「ううん、なんでもない……」

咲(それって原村くんはどう思うんだろう……)


               ・
               ・
               ・
               ・
               ・


原村「宮永……それ」

咲「うん、たぶん………“和了れる”」

竹井「!」

染谷「……!」

咲「カン」 ■北北■

シュッ―――!

咲「ツモ―――1000・2000」

片岡「マジか!!」

染谷「こいつは本物じゃな……」

竹井「これはもしかしてもしかするぞ……」

副会長「さすがさっくん!! 世界一かわいいよぉぉぉ」

京子「メイド服着たら強くなるって……どういうことなの……」

咲「………………」

咲(まだダメだ……見える牌は間違わなくなったけど……全然見えない)

咲(配牌もあまりよくないし、現時点じゃ元の世界で麻雀部に入った頃以下……)

咲(でも能力が戻ってきてる感覚はある……メイド服の効果……なのかなぁ?)
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:14:06.93 ID:0nYA5apco

〜夜〜

片岡「はぁ〜、最初はスゲーと思ったけど、そこまで勝ってないなサッキー」

咲「うん……こんなものだよ」

原村(……そう……とは思えないが)

竹井「ん、もうこんな時間か。よーっし、1年生組は先にお風呂入っちゃって」

片岡「よっしゃぁーーー! 温泉だ温泉!!」

原村「おい、あんまりはしゃぐなよ?」

片岡「だってよ、温泉なんだぜ?」

原村「まぁ、気持ちはわかるけど……」

染谷「わしらは?」

竹井「上級生会議。あ、副会長はどうする?」

京子「一人で入るのもなんですから、一緒に入りましょうよ」

副会長「そうだね〜。幽霊部員だし、どうこう言える立場じゃないんでお風呂行っていいですか?」

竹井「オッケー。じゃ、ごゆっくり〜」
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:14:34.52 ID:0nYA5apco

〜男湯〜

咲(今気づいたけど…………)

片岡「どうしたサッキー?」(真っ裸)

原村「入らないのか?」(真っ裸)

咲( こ れ は や ば い !)

咲(ふえぇ……男でも自分の裸ならもう見慣れたけど、さすがに他人の裸は見たくなかったよぉ〜)

咲(ん…………) チラッ

原村の股間「」 ドォォォォン

咲「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!」

原村「ど、どうした宮永!?」

咲「あ、あ、あばばばっばばbb」

咲(な、なにあれ……!? モンスターがいるよぉぉぉ!!)

片岡「なんか知らねーけど、さっさと服脱いで行こうぜ?」

咲「う、う、う、う、うん……」 チラ

片岡の股間「」 オォゥ...

咲(良かった……優希くんのは私と一緒だ……)

咲(と、とにかく覚悟決めて服を脱ごう……恥ずかしいけど我慢……!) パサッ

咲(ぅぅ……今は自分も男だけど……男の人に堂々と裸を見られるなんて……)

咲「……じゃ、い、行こっか……?」(タオルで前隠し)

片岡「なぁ、サッキー」

咲「えっ?」

片岡「さっき、俺のチンコ見たろ?」

原村「ブッ――――!!」

咲「ぅへ!? な、なん……っ!?」

片岡「誤魔化さなくていいって! 別に気にしてねーし!」 (咲の背中バシバシ)

片岡「ま、サッキーも俺と同じ、“仮性仲間”でよかったぜ」(小声)

咲「か、火星……?」

咲(なんだろう……?)
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:15:03.20 ID:0nYA5apco

               ・
               ・
               ・
               ・
               ・


片岡「ふあああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜…………生き返るぜぇぇぇぇぇ…………」

原村「最近はインターハイも近いし、あんまり心休まる時が無かったからな……」

原村「ふぅ……まさに命の洗濯だ……」

咲「気持ちいいね〜」

原村「なぁ、宮永」

咲「ん……なに?」

原村「どうするんだ、インターハイ」

咲「ふぇっ?」

原村「その……結局、の……能力……とか使うのかよ、って話……」

咲「…………」

咲「ねぇ、原村くん」

原村「…………?」

咲「まだ原村くんに教わりたいこといっぱいあるんだ」

咲「だから、間違ってるところとか、ああした方がいい、こうした方がいいってこと全部……」

咲「どんどん私に指導して欲しいな……って」

原村「…………」

咲「原村くんが能力とかそういうオカルトに否定的なのは最初から知ってるよ……」

咲「でもそんな力がなくなったって話をする私に、原村くんは自分の考えを曲げて、やさしく接してくれたよね……」

咲「だから…………インターハイは原村くんに教わった技術で……挑みたいんだ」

原村「宮永……」

咲「それに、メイド服着て大会に出るわけにもいかないでしょ?」

原村「ははは……そりゃそうだ」

咲「だから……これからもよろしくね、原村くん」 ニコッ

原村「あ、ああ……///」
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:15:53.77 ID:0nYA5apco

〜女湯〜

京子「はぁぁぁぁ〜〜、いいお湯ですね〜〜〜」

副会長「こういう時、よく『生き返る〜』って言うけど、なにが生き返るんだろうねー」

京子「う〜ん、気持ち……とか精神的なものじゃないですかね」

副会長「おぉ〜。その返し方は予想してなかった」

副会長「でもいいね。心も身体も生き返る。いいお湯だ〜」

京子「そういえば……先輩ってどうして咲を気に入ってるんですか?」

副会長「そーねー。こんなこと言ったら引かれると思うけど……子供みたいな男の子が好きなの」

京子「ろ、ロリコンの逆バージョンですか……」

京子「そりゃ、咲は童顔だし、声も高いし、男なのにあんな性格ですけど……」

京子「子供っぽいって言うと優希だってそうじゃないですか? 背だって咲より小さいですし」

副会長「あー、違う違う。片岡くんはね、なんていうか“ガキ”っぽくてねー。可愛げがない!」

副会長「その点、さっくんはすごいよ! 中まで可愛さたっぷりだもん!」

京子「は、はぁ……。確かに優希に可愛さを求めるのは酷ですけど……」

副会長「そういえば須賀ちゃんはさっくんと付き合い長いの? 随分と親しいみたいだけど」

京子「中学からの同級生です。今はクラス違いますけどね……」

京子「咲ってあんまり友達作るのうまくないみたいで心配して色々と世話焼いてたんですけど、やっぱりこういうのってウザいんでしょうか……」

副会長「人によるよね〜。素直じゃない子は嬉しいくせに遠ざけようとするね」

京子「咲は……どうなんでしょう」

副会長「あはは。会って数日の私に聞いてどうすんの」

京子「咲が麻雀部に入部する時にいろいろとありまして、それで……」

副会長「何年もそうして来たんでしょ? 自信持ちなよ。さっくんとの“関係”に」

京子「先輩……。やっぱり咲が居ない時はすごい良い人ですよね」

副会長「ちょっ……それどういう意味!? さっくん居る時の私は悪い人なの……!?」 ガビーン

京子「い、いや、悪いっていうんじゃないですけど」
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:16:23.27 ID:0nYA5apco

                                             片岡「おらぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!」

                                                             バッシャーーーン

                                             原村「バカヤロー! 飛び込むなっ!」

                                             片岡「ははははは! いいじゃん! 他に誰もいねーし!」

京子「…………」

副会長「…………」

京子「元気ですね、男子達……」

副会長「…………ええ、すっかり失念していたわ」

京子「え?」

副会長「あの薄い竹垣の向こうに……生まれたままの姿のさっくんが居るということを!!」 ザパーン

京子「 ( ゚д゚ ) 」

副会長「どっかに穴空いてないかな〜〜?」 ウロチョロ

京子(見直した瞬間これだよ……)

京子「やめてくださいよ、先輩。女の子のやることじゃないですよ!」

副会長「女の子である私がやることは、女の子のやることになるでしょ!」

京子「言葉遊びしてるんじゃなくてですね!?」

副会長「あぁ、ダメだ。無いよ、穴……」

京子(ホッ……これで副会長の凶行も、男子に覗かれる心配もなくなったか……)

副会長「須賀ちゃん、肩車して」

京子「いい加減にしてくださいっ!!」

                                             片岡「お、きょーこの声が聞こえたぞー」

                                             片岡「おーーーい、きょーーーこーーーー!!」

京子「な……。ん、もう! なーーーにーーーー!?」

                                             片岡「裸見せろーーーー!! はははははーーー!!」

京子「死ね!!! バカタコス!!!!!」
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:17:14.79 ID:0nYA5apco

〜男子部屋〜

染谷「本気か……?」

竹井「ああ。何度でも言うぞ」

竹井「 咲 を 大 将 に 起 用 す る 」

染谷「く……! あのな……」

染谷「いくらあいつがなんだかわからん力を持っとるからと言って、大将はないじゃろ!」

染谷「咲の麻雀の腕は知ってのとおり、お世辞にも上手いとは言えん!」

染谷「それに…………大将にはあの“天江衣”が出てくるんじゃぞ!」

竹井「だからこそだ」

染谷「!?」

竹井「全国大会を目指すのなら龍門渕高校は必ず僕らの前に立ち塞がる」

竹井「龍門渕が去年と同じ構成なら間違いなく大将は天江衣」

染谷「じゃが、去年龍門渕は天江衣を大将に据えたせいで、大将戦にまわる事無く敗退した……」

染谷「構成がそのままとは限らん……」

竹井「まこと、こんな噂を聞いた事はないか?」

染谷「?」

竹井「天江衣は月の満ち欠けによって強さが変わる……」

染谷「…………!?」

竹井「その噂が本当なら……月が出ていてもおかしくない大将戦の時間に天江衣は登場するだろう」

染谷「…………だからって、どうして咲をぶつけることになる!」
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:17:53.61 ID:0nYA5apco

竹井「天江衣は僕らの理解できない域にその身を置いている」

竹井「インターミドル王者のカズだって、天江衣には勝てないだろう」

染谷「…………」

竹井「だからこそ、得体の知れない力を秘めていそうな咲に、大将戦をまかせたいんだ」

染谷「じゃが……今日見た限り、そこまで強いとは……な」

染谷「藤田プロにもかなりやられとったし……」

竹井「まさか、あれが限界とでも?」

染谷「なっ……!?」

竹井「僕は思うよ。彼はまだ本調子じゃない。どうすれば真価を発揮させられるのかわからないけど」

竹井「この合宿と……残りの日数で咲を本気にさせてみせる!」

竹井「そのためには副会長にも協力してもらわなくちゃな……」

染谷(ほんっとにこいつは…………今日の合宿で副会長が存外おとなしくしてるもんだから、手のひら返しちゃって……)

染谷「しかしまぁ……大丈夫かのお……」

竹井「分の悪い賭けだってのはわかってるさ。でも僕は―――」

染谷「そういう賭けには妙に強い……じゃろ?」

竹井「わかってるじゃないか」 ニヤリ
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:19:00.48 ID:0nYA5apco

竹井「それに―――」

染谷「それに?」

竹井「似てると思わないか? 今の咲と、天江衣……」

染谷「…………」

染谷「ハァ…………われ、絶対面白がってるじゃろ……」

竹井「はっはっは! 今から楽しみだよ!」

染谷「ちったぁ否定せんか!」 ポカッ

竹井「HAHAHA!!」


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――――インターハイ長野県予選当日

〜予選会場前〜


竹井「それじゃ……行こうか!」

全員「「「「「「はい!!」」」」」」
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:20:58.11 ID:0nYA5apco

――――次回予告

熱い気持ちを牌に込め、続々と集結する勇士達

目指すは全国優勝
しかしその道程は険しく、重苦しい……

58の高校が己の夏とただ一つの切符を賭けて激突する!

次回『決戦、長野県予選会場』
213 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/09/12(水) 22:24:19.10 ID:0nYA5apco
今週は以上!

気晴らしの短編を書く暇もないぐらい他のスレを見ている
やっぱり減らした方が良いのだろうかッ

もう書き溜めも尽きちゃってるので
もしかしたら来週まで間に合わない可能性も……なきにしもあらず
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 23:20:31.56 ID:PbnnUc1I0

やっぱ面白いわぁ
次も楽しみにしてます
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/09/12(水) 23:29:54.72 ID:xV3YVury0
乙乙
この作品好きやから、気長に待っとりますでー
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 23:37:41.32 ID:2wPWH5Tw0

今日はガンガンの発売とこれ楽しみにしてましたー
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/09/15(土) 19:41:19.70 ID:/rxwHYNoo
おつなのよこれもー


優希のためにタコスを作る恭子ちゃん……
いい嫁さんじゃないですかやだー!
218 :宮藤芳佳 [sage]:2012/09/16(日) 17:44:30.11 ID:Yl/JE/I/0
そして、すごくBL臭がする咲と和
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 18:03:09.29 ID:m2W/tX9/o
>>218
番長時空から出張おつかれさまッス!
220 : ◆RmlFOAHrTI [sage]:2012/09/18(火) 09:47:59.53 ID:KAo236NRo
今日から3日間旅行に行ってしまうので今週の投下はお休みさせていただきます
現時点で完成してないので出先から投下も無理です

すみません! あとレスありがとう!
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/19(水) 03:47:40.61 ID:+5XvCUuKo
いってら
お土産よろしく!
222 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/09/26(水) 23:26:47.62 ID:QnXAG2oMo
今週も間に合いませんでしたorz
いやー旅行から帰ってきてから忙しくってー……すみません超言い訳です
ヒサえもんとか書いてる場合じゃなかったマジで

書き終え次第投下するという形で……
223 : ◆RmlFOAHrTI [ saga]:2012/10/03(水) 23:30:25.66 ID:1QlgCxX1o
書く時間がなかなか取れなくて大変です
とりあえず水曜日に間に合ってよかった

投下します
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/10/03(水) 23:30:45.52 ID:LBJ0R6Qko
マッテタデー
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:31:04.80 ID:1QlgCxX1o

――――前回までのあらすじ

染谷の雀荘で自身が持つ能力の片鱗を見せた咲
失われたはずの能力がなぜ、再び咲の下へ帰ってきたのか?

……それはメイド服を着ていたからであった

強化合宿を終えた清澄高校は意気揚々と地区大会に挑む



〜予選会場〜


ワイワイ ガヤガヤ


京子「わぁ……人多いなぁ」

竹井「出場校全58校、加えて観戦者やマスコミ多数」

竹井「長野は去年、天江衣っていう怪物が登場したからね。それなりに注目されてるから嫌でも人は増えるのさ」

原村「これだけ人がいれば悪目立ちしなくていいんじゃないですか」

染谷「注目される側のお前がよお言うのお」


ワッ!


染谷「お」
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:31:49.77 ID:1QlgCxX1o

「風越高校だ!」

「去年は県2位!」

「部員80人を擁する強豪……!」

福路「…………」

「キャプテンの福路だ……」

「なんでいつも右目瞑ってんだ……」

福路「いつまで言われるんだろう、これ……」

吉留(言われるの嫌なら開ければいいのに……)


ざわっ……!


福路「おや」


竹井(お出ましだ……)


「龍門渕が来たぞ……ッ!!」

「前年度県予選優勝校――!!」
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:32:16.50 ID:1QlgCxX1o

「井上 純――沢村 智紀――国広 一 ――龍門渕 透也――」

「昨年の四天王は2年になっても健在だッ……!!」


パシャッ カシャッ

龍門渕「ふふ……目立ってる目立ってる……最高だよ!」

国広「うわぁ……僕目立つの苦手なんだけどな」

龍門渕「はじめぇ! それでも龍門渕四天王か! なさけない!」

龍門渕「まぁいい、それならはじめの分までこの僕が目立ってあげよう!」

龍門渕「さぁ、マスコミしょくーん! 僕を撮りたまへ! 美しく撮りたまへーーーー!!」

パシャパシャパシャ!!

龍門渕「Foooooooooooooo――――――!!!!!!」



片岡「クソッ! あんなやつらには負けられないぜ!」

原村「ああ……そうだな」

片岡「一番目立つのはこの俺だぜーーーーーー!!!!」

原村「そっち!?」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:32:42.95 ID:1QlgCxX1o

記者「龍門渕はこれでいいかな。さて、と……次は――」

藤田「天江がいないな」

記者「藤田プロ! 今日はどうしたんですか」

藤田「解説プロとして呼ばれている」

記者「今年も団体戦は風越か龍門渕で決まりでしょうね」

藤田「どうかな。もしかすると去年の天江衣みたいなやつが現れるかもしれない」

記者「えぇ? 確かに去年の天江は目覚しい活躍でしたけど……」

藤田「毎年――ああいうのが一人や二人出てくるものさ」

藤田「一昨年は西東京の宮永、去年は鹿児島の神代、そして天江衣」

記者「その2人と宮永照を並べるのはどうかと思いますが……」

藤田「本質的には一緒だろう。まぁ……見た目の問題はあるが」

藤田「今年もそんな『牌に愛された子』が出てくるかもしれない」

記者「……そんなオカルトチックな話、私は信じられませんよ」

藤田「私もできれば信じたくないけどね」

記者「……今年も出ると思います? 天江と同じようなのが、この同じ長野で」

藤田「さあ。解説プロとして呼ばれてるから贔屓なことは言えないが……」

藤田「8割方、龍門渕が勝つんじゃないかな」

記者「全中王者の原村に関しては―――?」

藤田「天江とはタイプが違うよ。麻雀が上手いとは思うけどね」

藤田「ここらが正念場じゃないかな。一皮剥けるか、“全中止まり”か……」

記者「――と、ウワサをすれば原村ですよ! 失礼します!」

藤田(原村和……か)
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:33:09.12 ID:1QlgCxX1o

      イ ン タ ー ミ ド ル
藤田(全国中学生大会覇者――)

藤田(その実績と端整な顔立ちでマスコミ受けもいいが……)

藤田(この前雀荘で打ったときは“大したことない”という印象だったな……)

藤田(あれからどうだ……? 私と打って何か変わったか、原村―――)



記者「キミが入ったことで清澄高校もいいところまで行けそうね」

原村「どこどこまで行ければいい、なんて志の低い目標は持ち合わせていません」

記者「?」

原村「目指すは全国優勝です!」

記者「おぉ、それはそれは」

記者(ま、意気込みは十分ね)



竹井「あれ、咲。どこ行ってたんだ」

咲「トイレ行こうとしたら迷っちゃって……」

副会長「さっくんレーダーのついた私がさっくんの危機を感知して無事案内しておきましたのでご安心を」

竹井「なにそれすごい」

咲(……あっ)


原村「」 ドータラコータラ

記者「」 ナンタラカンタラ


咲(原村くんもやっぱり取材とか受けるんだ……)

咲(っていうか記者の人も見覚えある……。うーん……)

咲(思えばお父さんとか先生とかもそのままだし、大人は性別変わってないのかなぁ)
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:34:22.67 ID:1QlgCxX1o


               ・
               ・
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               ・
               ・


竹井「それではオーダーを発表しまーす」

染谷「なんで直前になってから……」

竹井「え? その方が面白いじゃん」

全員(面白いか……?)

竹井「先鋒――優希、次鋒――まこと、中堅――僕、副将――カズ、大将――咲!」

原村「ええっ!? 宮永が大将!?」

咲(ここは同じなんだ……)

竹井「ありっ……咲が大して驚いてない」

咲「あ、あはは……どうしてでしょうね(汗」

京子「咲が大将で大丈夫なんですか!?」

京子「大将って言ったら……いわゆる最強ポジションじゃないですか!」

竹井「ルール的にはそうでもないんだな」

京子「え?」

竹井「10万点を5人で共有するから、大将に回るまでにトビ終了ということもありえる」

竹井「強い人は先に出した方が確実ってことさ」

片岡「つまり! 俺が最強ってことだぜ!!」

染谷「わりゃぁ点数計算ができんから先鋒なだけじゃい」
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:35:22.12 ID:1QlgCxX1o

京子「でも……大将戦まで縺れ込んだら、大将が強い方が有利じゃないですか」

竹井「須賀さん、あんまり咲を見くびっちゃダメだよ」

京子「う……ごめん、咲」

咲「別に気にしてないからいいよ。京ちゃんの意見もわかるし」

咲「でも部長が決めたことだもん。私は精一杯がんばるだけだよ!」

京子「咲……。……うん、がんばって!」

副会長「さっくん! 私も応援してるからね!」

染谷「ともかく……、オーダーはもう変えられんからのう」

咲「そうですね……」

原村(……まさか部長達は宮永の力に賭けてるのか……?)

原村(馬鹿な……あんな条件付で使えるわけがないのに……)

咲「どうしたの原村くん……?」

原村「……え? いや、なんでもないよ……」

原村(……宮永も上達はしてる。とにかく副将の俺が十分稼いで宮永にバトンを渡すのが最善だろう……) ゴクリ…
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:36:39.28 ID:1QlgCxX1o

「一回戦の相手、清澄・東福寺・千曲東だってさ」

「うっはwwww 楽勝杉ワロタwwwwww」



原村「」 ピクッ

咲(わ、わ……そういえばこんなことあったっけ……!)

咲「は、原村君……!」

原村「……言わせておけば良い。後で吠え面かくのは向こうさ」

咲「ほえづら……(汗」

咲(ほっ……。男だからもっと怒りを顔に出すかと思ったらそうでもなかった……)



「清澄ってあれじゃね? 原村……カズ? だかがいるところだ」

「なんか記者に全国優勝とか言ってましたねwwww ワロローンwwwww」

「ありえねーっしょ。ちょっとイケメンだからってチヤホヤされてるだけだわ、ありゃ」

「全中王者wwww キングカズwwwww ドドインドインドイーンwwwww」



原村「」 ピクピク

咲(うわぁ……青筋って漫画の表現じゃなかったんだ)

片岡「なんかあったかー……って、うおっ!? どうしたカズ!?」

原村「ナンデモナイ、ナンデモナイ」 ピクピク

片岡「サッキー、何があったんだ?」

咲「え? あ、いやー……」


≪あと10分で一回戦が始まります。各校の先鋒は所定の対局室にて待機してください≫


片岡「おっと! ふふふ、ついに主役の出番がやってきたぜ」

京子「誰が主役だ、誰が」

片岡「もち、この俺! おっしゃ行ってくるッ! きょーこ、タコスの包み紙捨てといて!」 ポイッ

京子「ちょっ……こら! ったくもう……!」
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:37:09.57 ID:1QlgCxX1o

〜対局室〜

ガチャッ

東福寺先鋒・永森「…………」 チラッ

千曲東先鋒・土屋「…………」 チラッ

今宮先鋒・門松「wwwwwwwwwww」 ニヤニヤ

                       ヒーロー
片岡(うへ、俺が一番最後か。ま、 主 役 は遅れてやってくるもんだからな!)

片岡「よろしく!」 グッ ピシッ!!

永森「……よろしく」

土屋「よろしく」

門松「うーーーーいwww(ォライッ、ォライッ」

片岡(なんだこの人…………?)


≪第一回戦、開始!≫

東:清澄    100000
南:今宮    100000
西:千曲東  100000
北:東福寺  100000
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:38:04.23 ID:1QlgCxX1o

片岡:手牌
  _____________________________   伍=赤ドラ
 │一│一│三|五|七|三│四│九│三|四|伍|  │  │  │
 │萬│萬│萬│萬|萬|筒|筒│筒│索|索|索|東│東│  │   ドラ:一萬
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



京子「ぶっ……!」 ゲホッゲホッ

咲「きょ、京ちゃん、大丈夫?」

京子「ゔ…うん…………なにあの配牌……!?」 ゴホッ

竹井「ははは、こりゃ行けそうだ」



片岡(絶好調だぜ!) 打:白

門松「ポンw」

門松(特急券あざーっすwww 俺のスピードについてこられるかな?www) 打:東

片岡「ポン!」 打:九筒

土屋「!!」

永森(げ……)

門松「ちょwwww ダブ東ワロタwwww」

土屋・永森((笑えねーよ!))



片岡「ツモ! 6000オール!!」

門松「開幕親っパネwwwww マジパネェwwwww ワロタwwww」

土屋・永森((だから笑えねーって!))
         . .       . .
門松「親っパネと、マジパネェでかけてるからwwww ワロリングwwwwワロリングwwwwww」

土屋・永森((誰だこいつをエースポジションに起用したヤツは……))
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:38:58.77 ID:1QlgCxX1o

東一局 一本場

片岡「ロン! 11900!」


東一局 二本場

片岡「ツモ! 4200オール!」


東一局 三本場

片岡「ツモ! 2900オール!」


東二局

片岡「ツモ! 2000・4000!」


東三局

片岡「ツモ! 1000・2000!」


東四局

片岡「ロン! 5200!」



土屋(おいおいおい……こいつぁヤベー!)

永森(少しは勢い止めろよ……!)

門松(正直舐めてましたwwww サーセンwwwwww)

片岡(……ふぅ、2度目の親番だけどさすがにタコス力が尽きてきたぜ……)
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:39:46.10 ID:1QlgCxX1o

南一局

永森「ろ、ロン! 2000!」

土屋「! ……はい」 チャラッ

永森(安目だが……これ以上清澄の親連荘はさせられない)


南二局

門松「ローンwww 小三元ktkrwwww 12000よろしゃーっすwww」

土屋(ぐっ! やばい……!)


南二局 一本場

片岡(ふぁ〜あ……守りの麻雀つまんないぜ。まぁ、これもみんなのためだ) 打:一筒

土屋「……! ロン。3900の一本場は4200」

片岡(っと、言ったそばから守れてない! まずいまずい)


               ・
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               ・


先鋒戦終了
1位:清澄    164200(+64200)
2位:東福寺.   84900(-15100)
3位:千曲東.   78500(-21500)
4位:今宮.     72400(-27600)


土屋(終わってみれば……清澄の勢いは東場だけだった……) グッタリ

門松「ラスとか笑えねーんすけどマジでwwwww」

永森(一位と7万点差とか……泣きたい)
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:40:14.54 ID:1QlgCxX1o

竹井「セオリー通り、先鋒に強い人を据えているならもうキツイはず」

染谷「ん、次はわしの出番じゃけえのお」

竹井「まこと、わかってるな?」

染谷「おーおー、わかっとる。がっぽり稼いで戻ってくるわい」

京子「染谷先輩、頑張って!」

咲「応援してます!」

染谷「まぁまぁ、あんまり期待せんでな」













染谷「がっぽり稼いでくるといったが…………スマン、ありゃウソじゃった」

竹井「ま、まぁオッケーだよ、うん。よく1位キープしてくれた!」

咲(染谷先輩、まさか±0とは)


次鋒戦終了
1位:清澄    164600(+400)
2位:今宮.     93600(+21200)
3位:東福寺.   71200(-13700)
4位:千曲東.   70600(-7900)
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:41:13.72 ID:1QlgCxX1o

中堅戦終了
1位:清澄    179100(+14500)
2位:今宮.     92900(-700)
3位:東福寺.   68900(-2300)
4位:千曲東.   59100(-11500)



実況「さて、対局室Eで中堅戦が終了した様です」

実況「この対局室Eでは次の副将戦、注目の原村が登場しますが――」

藤田「その実力がインターハイでも通用するか、この初戦で決まるかもな」



咲「原村くん、その……」

原村「?」

咲「月並みな言葉しか思いつかないけど…………頑張って!!」

原村「…………ああ、大丈夫だ。余裕持って宮永に回してやるから」

咲「……! ……うん!」


原村(大丈夫……だよな?)
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:41:51.49 ID:1QlgCxX1o

≪副将戦、開始!≫

原村(ここで稼ぐ……! 稼いで宮永にバトンタッチだ!)

原村「ロン! 5200!」

原村「ロン! 2000!」

原村「ツモ! 1000・2000!」



実況「清澄高校原村、軽快な和了でトントンと点数を重ねていきます!」

藤田「…………」



原村(行ける……! ツモも配牌も好調だ……!)

今宮副将・田中「…………」

原村「リーチ!」

東福寺副将・河内「…………!」

千曲東副将・上柿「…………!」

原村「ツモ! 2000・4000!」



ワァァァァーーー
             ざわ… ざわ…



実況「原村、他家をさらに突き放す満貫一発ツモ! 誰か止める者はいないのかー!」

藤田「何を焦っているんだろうな、原村は」

実況「焦っている……? 原村がですか?」
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:43:02.52 ID:1QlgCxX1o

藤田「副将戦が始まった時点で2位とは9万近い差をつけていた」

藤田「しかし原村はそれでも足りないとばかりに点数を稼ぎに行っている」

実況「稼げるならば稼いだほうがチームにとってプラスになると考えたのではないでしょうか」

藤田「ただ己の収支に固執しているだけかもな」

実況「は、はぁ……(いくらプロだからって口悪いぞこの人……)」



咲(原村くん……もしかして私のために引き離そうとしてる……?)

染谷「調子ええのお」

竹井「しかし攻撃的過ぎるな」

竹井(カズ……普段のスタイルを崩すとここ一番で大事に至るぞ……!)

京子「…………!」 ハラハラ



南三局

原村(親番にして配牌一向聴……!)

原村(メンピンも良いが……少し回してタンヤオも含ませる……!) 打:西



実況「清澄・原村、平和一向聴を捨てて西の対子落とし!」

藤田「西以外は中張牌だ。タンヤオも入れるつもりだろう」

実況「親番ですからそのままでも良かった気がしますが、さて……おっと! 原村、すぐに二萬を重ねた!」

実況「タンピン一向聴、ドラ(七索)含みの両面待ちに持っていきたいところ!」
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:43:29.26 ID:1QlgCxX1o

実況「あーーーっとしかし! 今宮高校、田中! 三元牌が集まっているーー!」



河内「……」 打:白

田中「ポン!」



実況「手には發一枚に中の暗刻! 小三元一向聴だ!」

実況「そ、そしてっ! まさかのまさか! 重ねますッ! 發が田中の手に入るーーー!」

実況「九筒・發のシャボ待ち、大・小三元テンパイーーーーッ!」



原村(よし、テンパイ……ここは!)



咲「原村くんっ、ダメ!!」

京子(カズ……!) ハラハラ



原村「リーチ!」

田中(…………ニヤッ)
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:44:24.34 ID:1QlgCxX1o

実況「清澄・原村、ここでリーチ!」

藤田「やはり……焦っているな。この巡目で場に三元牌がほとんど出てないことに気づいていない」

実況「千曲東、東福寺ともにベタオリ! さぁ、今宮・田中が發を掴むか! 清澄・原村が發を掴まされるのか!」



染谷「こんの実況、カズが和了ることも考慮せえよ」

片岡「でもこの状況じゃ大三元に目が行くのは仕方ないと思うけどなー」

竹井「直撃だけは避けてほしいが……」



河内「…………!!」 ツモ:中



実況「東福寺・河内、4枚目の中を引いた! しかし、ここは捨てられません!」

実況「……っとぉ! 東福寺、今宮のもう一つの当たり牌、九筒を切ったーーー!!」



田中(チッ……そっちじゃねーよ!)



実況「和了りません! 今宮・田中、当然の如くこれをスルー!」

実況「そして原村のツモは――――うわぁぁぁぁぁーーーー! 發! 發です! なんたることでしょう!」

実況「三枚目の發がここで切られたーーー! 清澄高校・原村、東福寺に救われました!」



田中(くっ……っざけんなよぉぉ!!)
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:45:32.99 ID:1QlgCxX1o

原村(う……今のは大丈夫だったか……)

原村(リーチしてから場の異常さに気付いたが……やばいな、少し冷静さを欠いていたみたいだ……)



しかし、その二巡後―――



田中「来たぜぇぇぇぇ! ツモ! 8000・16000!!」

原村「――――!!」

上柿「うげ……」

河内(うわ、これって……!!)



実況「出ましたーーー! 今宮高校・田中、大三元ツモ和了ーーー!!」

実況「南三局にして、清澄・原村、役満の親被り! ここまで稼いだ得点をほとんど吐き出してしまったーーー!」

藤田(あの時から何も変わってないどころか……焦ってダメになっているようだな、原村)



竹井「東福寺に救われたが……後でお説教だな」

咲「原村くん…………」



河内「ロン……3900です」

原村「……! はい……」



副将戦終了
1位:清澄    178400(-700)
2位:今宮    122100(+29200)
3位:東福寺.   54800(-14100)
4位:千曲東.   44700(-14400)



実況「役満和了のおかげで一位との差をつけた今宮高校、大将戦で巻き返しなるか」

実況「それでは対局室Eより場面を動かしまして、大将戦は対局室Nの様子を実況いたします!」
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:46:31.35 ID:1QlgCxX1o


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≪一回戦、終了!≫

実況「さぁ、長引いていた対局室Cの試合も終了して、第一回戦がすべて終了いたしました!」

実況「全中覇者・原村のいた対局室Eはどうなったんでしょう……お、やはり清澄が勝ち抜いているようですね」

実況「千曲東の親連荘が凄まじかったようですが、なんとか2位今宮からも逃げ切り、対局室Eは清澄高校が勝ち上がりです」



京子「咲、お疲れ様」

咲「うん、本当にお疲れだよぉ……」

副会長「え゙っ! さっくん大丈夫!?」

咲「は、はい……なんともないですから」

副会長「あのちくわ東めぇ……さっくん狙い撃ちしまくるなんてもう……ゆ゙る゙ざん゙!!」

竹井「落ち着いて! 落ち着いて、ね!? 問題起こされたら咲の頑張りがなかったことになるから!!」

副会長「わ、わかりました…………。あぁ、もう今日のことでちくわが嫌いになっちゃった……」

片岡「ちくわじゃなくて千曲だぜ?」

副会長「え、そうなの?」

染谷(マジボケかい)
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:47:55.88 ID:1QlgCxX1o

原村「すまん、宮永……。俺がもっと稼いでいればもう少し余裕で―――」

咲「原村くん、部長に怒られた?」

原村「あ、ああ……」

咲「なら、そういうこと言わないで」

咲「ここまで追い詰められたのは私のせいだよ。開始時点で2位とは5万点も差があったんだから」

咲「原村くんは私を気にせずに打ってほしいな……私も頑張るから」

原村「み、宮永……」

京子「………………」


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午後の2回戦も先鋒〜副将が稼ぎ、大将が守りきる形で清澄高校は決勝へと勝ち上がった
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:49:14.23 ID:1QlgCxX1o

〜ラーメン屋台〜

竹井「今日はみんな、お疲れ様!」

部員達「「「「「「お疲れ様です!」」」」」」

竹井「明日の決勝は大方の予想通り、龍門渕や風越が進出したようだ」

竹井「決勝では今日の一、二回戦でやったようなことは到底無理だろう」

原村「天江衣ですか……」

染谷「龍門渕は天江だけじゃない。他の4人もエース級っちゅう噂じゃ」

竹井「まぁ、もし僕らが龍門渕や風越、あともう一校を抑えて断トツで大将に回したとしても――」

竹井「――やっぱりあの天江衣が壁だね」

京子「なんなんですか、その天江っていうのは……」

竹井「まさしく怪物さ。去年の長野県予選では全国大会常連校の名門風越を下して圧勝」

竹井「全国大会では他家3人をまとめてトバすなんて離れ業もやってる」

京子「そ、それって……全国大会も予選と同じルールですよね……?」

竹井「そう、10万点持ちだ」

京子「うそ……」(唖然)

原村「馬鹿げてるな……」

片岡「サッキー、だいじょぶか? そんなやつとやりあうなんて……」

副会長「そそそそそ、そうだよ! さっくんが心配ですわたし!」

竹井「いや……咲なら―――咲ならやってくれると思って、このオーダーにしたんだ」

原村「!?」

片岡「!?」

京子「!?」

副会長「!?」

咲「…………」

染谷「すまんな、咲。わしは反対したんじゃが……」

咲「大丈夫です。部長が何に期待しているかも、わかってますから」

竹井「咲…………頼む」

咲「はい……」

竹井「みんなも、気を負わずに。明日は全力で決勝戦を戦い抜こう!」

咲原片「「「はいっ!!」」」

竹井「―――じゃ、ラーメン食べよっか」

片岡「長話してたせいでラーメン伸びてる!!」
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:50:12.65 ID:1QlgCxX1o

〜帰り道〜

竹井「じゃ、僕たちはここで」

染谷「明日のためにしっかり休んどくんじゃぞ」

副会長「さっくん、おやすみ〜! あとみんなも」


片岡「きょーこ、俺の自転車の後ろに乗せてやるぜ!」

京子「お断りしますー」

片岡「な ぜ に!」

京子「アンタ、後ろに人乗せてても立ち漕ぎでグラグラ揺らすじゃないの!」

片岡「うっせー! なら乗せてやんねーぜ! あばよぉ!」 シャコシャコー

京子「もう夜遅いのに騒がしいやつ……」

咲「あはは……」


咲「あ、私こっちだから」

京子「うん、また明日ね」

原村「しっかり寝ろよ」

咲「んもう、わかってるよ! えへへ、おやすみ!」 トテテテ
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:50:49.46 ID:1QlgCxX1o

京子「咲、明日は大丈夫なのかな……」

原村「やっぱり心配なんだ」

京子「そりゃもうねー。放っておけないってオーラ出てるし」

原村「…………」

原村「……そういえば、須賀さんって家こっちのほうなんだな」

京子「違うよ」

原村「ふーん…………っえ?」

京子「カズに話があるから、こうして2人きりになったの」

原村「…………はなし?」

京子「ねぇ、カズ――――」








京子「――――好きな人……いる?」
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 23:51:16.91 ID:1QlgCxX1o

――――次回予告

元の世界に残された咲の体が突如目を覚ました

仲間たちが歓喜の声を上げたのも束の間、
オカルト研究所・所長は衝撃の事実を彼らに伝える

咲の体にいるのはいったい何者なのか?

次回『心のかたち、咲のかたち』
250 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/10/03(水) 23:56:54.73 ID:1QlgCxX1o
投下終了、ありがとうございました
ふぅ、ギリ水曜日

麻雀のところ大変です……ほかのスレの人たちはすごい!
副将戦は結構すらすら書けたけど、急いで書いたんで間違ってるところあるかも (・ω・`;)

ペースダウンというか、できれば週一でやりたいんですが
やっぱり隔週になりそうな気がします
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 00:16:50.24 ID:xRsmN/3P0
乙 再来週が待ち遠しいな
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 04:06:44.15 ID:5aZ0fAOGo
乙!
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/04(木) 18:35:58.05 ID:d1nPI0Wto

個人的に京子ちゃんの外見は胸のある淡なイメージ
254 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/17(水) 23:27:06.65 ID:JNO9xJs8o
レスありがとうございます ホントやる気出ます

しかし……痛恨のミスっ……! 間に合ってないっ……! 書きあがってないっ……!
すみません、結局また一週間延びますorz
筆がのってないわけじゃないので来週は確実に大丈夫!

まぁ間に合わないことを予期して>>151のスレに以前書いた短編を落としておきました
お暇でしたらどぞ
255 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/10/24(水) 23:30:06.86 ID:h5cKe2MMo
週一投下がいつの間にか三週一投下になっているという……

しかもギリギリ
見直す時間がないヤバイヤバイ
ミスがあったらどんどん指摘してくださいね

投下します
256 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:30:33.03 ID:h5cKe2MMo

――――前回までのあらすじ

長野県予選を一回戦、二回戦と勝ち抜いた清澄高校麻雀部
強豪集う決勝戦に不安を抱きつつも、彼らは全力で戦おうと団結する

一方、元の世界では……




〜咲の病室〜

京太郎「咲! 咲!!」

咲「…………ん」

京太郎「…………!!」

京太郎「咲……」

咲「ん……ふぁ〜……」

京太郎「はは……あくびしてら……」

京太郎「おはよう……咲」


満面の笑みで咲の目覚めを見つめる京太郎

しかし―――


咲「ん、おはよ……お父さん」

京太郎「へっ? おいおい、寝ぼけてるのか咲……。俺だよ、京太郎だ」

咲「え……?」 ゴシゴシ(目を擦る)

咲「…………」
257 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:30:58.77 ID:h5cKe2MMo

〜病院〜

閑静な病院に息急き駆ける少女たちの姿があった

急いでいながらも彼女らの顔は明るく、また、希望があった

彼女たちは目的地である病室の前に立っている京太郎を見つけて声をかけた


久「須賀くん! 咲が目を覚ましたんですって!?」

京太郎「…………」

久「あ、あれ?」

優希「どーしたんだ? 京太郎」

まこ「咲が目ぇ覚ましたんじゃろ? お前さんが一番喜びそうなもんじゃが……」

まこ「……まさか、何かあったんか」

和「!!」

京太郎「わかりません……、今お医者さんとオカルト研の所長さん達が咲を診察してます」

和「ふぅ……咲さんが目を覚ましたのは間違いないんですね」

久「咲が目覚めたとなると、タイムトリップは失敗してたってことね」

京太郎「…………」

優希「何をそんなに落ち込んでるんだじょ! 咲ちゃんが目覚めて嬉しいだろ!」

京太郎「嬉しいよ! そりゃ嬉しくないわけがない!」

優希「っ!」 ビクッ

京太郎「でも咲が目を覚まして……俺を見て……開口一番こう言ったんだ……」








咲「…………キミ、だれ……?」
258 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:31:25.96 ID:h5cKe2MMo

久「そんな…………」

まこ「ショックで記憶喪失か。あんなことを起こしたんじゃ。有り得ない話じゃない」

京太郎「でも……! 咲は俺の声を父親の声と勘違いしたんですよ!?」

京太郎「自分の名前も憶えてるようだし……単純な記憶喪失とは思えないんです!」

優希「自分の名前を憶えてるのはよくあるパターンだじぇ」

和「でもそういう場合、憶えてるのは名前だけのような……」

久「一部の記憶だけ喪失した、ってことか」

まこ「まさかあの時、あの場所にいたもんだけ憶えとらんとか……」

久「それは私も含まれるのかしら」

まこ「それはどうかのう……」

和「とにかく……咲さんの診察が終わらない内にはどうにもなりませんね……」

優希「いっそ咲ちゃんの診察を覘きに行くってのはどうだ?」

久「それは……」


ガチャッ


所長「宮永くんの診察が終わったよ」

久「渡りに船ね」
259 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:31:51.39 ID:h5cKe2MMo

京太郎「咲は……やっぱり記憶喪失なんですか……?」

所長「私も初めはそう思ったんだが…………そうだったらどんなに良かったことか」

京太郎「!?」

和「どういう意味ですか……!?」

所長「彼女にはどこも異常なところなどなかった……身体的にも、精神的にもね」

まこ「でも……咲は京太郎のことを憶えてないって言ってましたが」

所長「憶えてないというには語弊がある」

優希「は?」

久「……どういうことですか?」

所長「元より“知らない”んだよ、彼女は」

京太郎「なっ……まさか咲は精神だけ幼児退行したとか!?」

所長「違う」

優希「じゃあもしかして身体は咲ちゃんだけど、中身は別人とか?」

所長「それも違う」

所長「彼女は間違いなく、宮永咲本人だ」

所長「いや……彼女ではなく、“彼”……か」

5人「「「「「!?」」」」」
260 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:32:17.12 ID:h5cKe2MMo

久「か、彼……?」

和「どういうことですか!? 咲さんはれっきとした女の子です!!」

所長「身体はそうだ。しかし精神は違う」

京太郎「…………」

所長「彼女は意識だけ過去へ跳んだと、以前言ったな」

久「でも咲は目覚めた……。タイムトリップは失敗したってことじゃないの……?」

所長「ああ、失敗したよ。タイムトリップはね」

京太郎「じゃあ、咲はどうなったんですか……?」

所長「彼女は過去ではなく、別の世界へ跳んだのだ……!」

まこ「別の世界!?」

所長「そしてその反動で“向こうの宮永咲の精神”がこちらに送られてきてしまったのだ!」

和「そ、そんなオカルトありえません!」

所長「ありえてるからこうなっている!!」
261 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:32:46.27 ID:h5cKe2MMo

優希「じゃあ……咲ちゃんが行った別世界ってのは……咲ちゃんが男の世界なのか……?」

所長「そうなるな」

久「咲が男の世界…………私たちとは接点無さそうね」

京太郎「それじゃ俺を知らなかったのも……」

所長「いや、彼は君のことを知っていたぞ」

京太郎「え? でもさっき、咲は俺を見て……」

所長「正確には向こうの世界の君のこと……だがね」

京太郎「それって……もしかして」

所長「そう。向こうの君は女なのだよ」

優希「な、なにーーーーっ!?」

京太郎「と、ということはつまり……全員の性別が違う世界……?」

所長「かもしれん。実物を見ることができないから予想の域を出んがな……」


その一言から病室は沈黙に包まれる

何も言おうとせず各々自らの考えに耽る中、決心したかのように京太郎は口を開いた


京太郎「今の……今の咲に会わせてください」
262 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:33:13.45 ID:h5cKe2MMo

〜咲の病室〜

異常なしと判断された咲は今すぐにでも退院できるほどであったが
一先ず様子見ということで入院を続けることになった


咲「…………」

ガチャリ

京太郎「…………」


一度にたくさんの人と会っては混乱するだろうということで面会するのは京太郎一人だ

何か思いに耽る表情の咲を見て、京太郎はできるだけ愛想のよい顔をして話しかけた


京太郎「よお」

咲「キミは……」

京太郎「俺は須賀京太郎ってんだ」

咲「そっか……キミが“こっちの京ちゃん”なんだね……」


こちらの咲も既に自分の置かれた状況について理解していた
263 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:33:44.64 ID:h5cKe2MMo

京太郎「ここ、いいか?」

咲「どうぞ」


咲に許可を取り、近くの椅子に腰かける


京太郎「お前、男なんだってな」

咲「うん。今はその……女の子になっちゃったみたいだけど」

京太郎「自分の顔見たか?」

咲「見たよ。不思議だけど……ほとんど同じ顔」

京太郎「マジで?」

咲「うん。元々中性的な顔立ちだし、性格も女々しいってよく京ちゃんに言われてた」

京太郎「ははは……もしかして向こうの俺も俺とおんなじ顔してんの?」

咲「全然違うよ? 京ちゃん、美人さんだし、おっぱい大きいし」

京太郎「マジでっ!? しゃ、写真とか持ってない?」

咲「も、持ってるわけないよ!」

京太郎「あ、そーだよな。ははは」

咲「気になるんだ。京ちゃんのこと」

京太郎「そりゃ、別世界の自分のことだしな。しかも美人で巨乳とか、俺好みだぜ」

咲「へぇ〜、あの京ちゃんも男だとこうなっちゃうんだ……」

京太郎「どーいう意味だおいっ!」
264 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:34:11.55 ID:h5cKe2MMo

咲「僕の知ってる京ちゃん……須賀京子ちゃんはね、明るくて気立てが良くて美人で……」

咲「僕みたいな暗い文学少年にも構ってくれるパーフェクト超人なんだよ」

京太郎「ありえねぇ……想像できねぇ」

咲「こっちにしてみればキミこそありえないよ!」

京太郎「へーへー、悪かったでござんすね」

京太郎「……ま、あんまりへこんでないみたいで安心したよ」

咲「…………?」

京太郎「咲の―――あ、今言った咲は女のほうな? 女の咲が向こうの世界に行ったせいで、お前がこっちに来ちまったからさ……」

咲「え? そ、そうだったの……?」

京太郎「あれ……聞いてなかったのか」

咲「うん……説明されてたのかもしれないけど、自分の置かれた状況に唖然としてたから、聞き流しちゃってたのかも」

京太郎「そうだよな……。お前にしてみりゃ何の前触れもなく別の世界に来て、しかも性別まで変わっちゃったんだからな」

咲「あのさ…………こっちの……女の子の“宮永咲”はどういう子だったのか教えてくれないかな」

京太郎「ああ……わかる限りでいいなら話すぜ」

咲「うん、お願い」
265 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:34:38.05 ID:h5cKe2MMo


               ・
               ・
               ・
               ・
               ・


咲「……そう、なんだ」

咲「女の僕はもう一度麻雀を始めたんだね」

京太郎「……! お前は違うのか……?」

咲「うん。麻雀部に所属してすらいないよ」

京太郎「マジかよ……。俺は―――いや、京子は誘ってこなかったのか?」

咲「京ちゃんが? なんで?」

京太郎「……こっちの咲が麻雀部に入ることになったのは、俺が咲を誘ったからなんだ」

咲「!!」

咲「それで……女の僕は誘いに乗ったの?」

京太郎「ほぼ強引に連れてった」

咲「あー……」

京太郎「なんつーか……その時点では咲が麻雀上手いなんて知らなくてさ、カモのつもりで誘ったんだよ」

咲「ひ、ひどい人だね……」 ジトー

京太郎「う……うるせー! まぁ、咲ってあんま友達いねーし、麻雀部は俺以外女の子だったからさ……」

京太郎「咲の顔を広める切っ掛けっつー面もあったんだよ」

咲「それホント?」

京太郎「マジだよ」

咲(わ、急に真剣な顔になった……嘘じゃないみたいだね)

京太郎「最初は咲も麻雀嫌いーとか言ってたんだが、麻雀部の子と仲良くなってな……」

京太郎「しかもあいつ麻雀超強くてさ。県大会も優勝して、インハイまで行っちゃったんだよ」

咲「インハイ……?(内角高め……?)」

京太郎「インターハイ、全国高校生大会のことだ」

咲「へぇ……すごいんだね」

京太郎「お前は麻雀上手くないのか……?」

咲「わかんない。…………もう何年もやってないから」

京太郎「………………」
266 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:35:54.77 ID:h5cKe2MMo

京太郎「じゃあ、やろうぜ。麻雀」

咲「……え?」

京太郎「嫌か?」

咲「…………麻雀嫌いだから」

京太郎「そっか…………もしかしたら元の世界に戻れるかもしれない唯一の方法なんだけどな……」

咲「!?」

京太郎「しょうがない、やりたくないって言うんなら……」

京太郎「これからも仲良くしような、咲…………」 ガタッ スタスタ

咲「ちょっ、ちょっと待って!?」

咲「なに!? どういうこと!?」

咲「どうして麻雀が元の世界に戻れる唯一の方法なのさ!?」

京太郎「咲は麻雀をして別世界に移動したんだ」

咲「は……? 意味がわからないよ」

京太郎「俺だって…………俺だってわかんねーよ!」

咲「!!」

京太郎「麻雀で天和出しまくってこの世の法則を乱して、異世界に繋がるワームホールを発生させたんだとさ!」

京太郎「ふざけてるだろ? 馬鹿げてるだろ!?」

京太郎「でも、現に起きちまった! お前もその被害者だ!」

咲「………………」

京太郎「俺はもう一度咲に会いたい……! 女の咲に!」

京太郎「あいつがいなくなって初めて…………初めて自分の気持ちに気づいた!」

京太郎「俺はあいつが…………宮永咲が……好きだってことに……!」

咲「!!」
267 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:36:47.08 ID:h5cKe2MMo

京太郎「…………悪いな、大声だして」
                            ヒ ト
京太郎「いくら理由があっても……俺は他人が嫌な事を強要したりしねえよ……」

京太郎「それに、お前も咲だもんな……急に男から告白されたみたいで、変な気持ちにさせたろ……」

京太郎「すまん……俺もう帰るわ」


スタスタと病室の入り口に歩いていく京太郎

しかし咲はそれを呼び止める


咲「待って!」

京太郎「…………」 ピク

咲「ぼ、僕……麻雀…………」

京太郎「なんだよ、無理して嫌いな麻雀しなくてもいいぞ……」

京太郎「本当にそれで戻れるかもわかんねーしな……」

咲「や……やだよ!」

咲「僕も…………君と同じだ……!」

京太郎「…………?」

咲「好きな人に会えないのは嫌だ!」

京太郎「!!」
268 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:37:25.37 ID:h5cKe2MMo

京太郎「それって―――」

咲「うん…………僕は京ちゃんが好きなんだ」

咲「彼女を振り向かせることはできないかもしれないけど…………もう会えないなんて絶対嫌だ……」

京太郎「………………」

咲「だから…………やる。…………麻雀……!!」

咲「元の世界に帰りたい!!」

京太郎「………………」 ニッ

京太郎「男らしい一面、ちゃんと持ってるじゃないか……」

京太郎「……俺も…………力の限り協力するぜ」


ポフと、咲の頭に手を乗せる京太郎


咲「!?」

京太郎「あっ……わりぃ。見た目が咲なもんでつい…………」


いきなりのことでおかしな反応をしたのか、あるいは体が反応したのか
その行動によって、精神的に男であるはずの咲の顔は紅潮していた


咲「べっ……別にいいよ、気にしてない……///」

咲「と、とりあえずよろしくね! “こっちの京ちゃん”……///」

咲(なんでだろ……向こうの京ちゃんとは似ても似つかないのに……なんでだか安心する……)

京太郎「あ……そういやお前のこと、なんて呼んだらいい?」

咲「咲……でいいよ? 僕も君の事は“京ちゃん”って呼ばせてもらうから」

京太郎「い、いいのか? お前の“京ちゃん”は俺じゃなくて、京子のことなんだろ?」

咲「京ちゃんは京ちゃんだよ。僕の好きな京ちゃんも、君も、一緒の京ちゃん」

咲「だから……よろしくね、京ちゃん」

京太郎「…………! ああ……よろしく、咲!」
269 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:37:59.08 ID:h5cKe2MMo

―――――数日後の朝

〜咲の家〜

咲「ええぇぇ〜〜〜!? これ、僕が着るの!?」

京太郎「当たり前だろ! それが清澄の制服なんだから」

咲「だ、だ、だ、だ、だって! セーラーだよ、セーラー!!」

咲「こんなの着たら、僕変態だよ!!」

京太郎「問題ない! 体は女だ!」

咲「心に問題大有りだよぉ〜〜〜!」

京太郎「さぁ、早く! 着替えて! ハリーアップ!」

咲「わ、わかったよ!」

京太郎「おう」

咲「いや、“おう”じゃなくて……」

京太郎「―――?」

咲「えっ!? なんで“何がおかしいの”みたいな顔してんの!?」

咲「恥ずかしいから出てってよ!! 着替えられないから!!」

京太郎「!! あぁぁー! すまん! もうなんつーかお前のこと男としか思ってなかった!」

咲「そっ、それはありがたいことなんだけど……とにかく出てって!」

バタン!

咲(はぁ……素かな、アレ。僕も男だから気持ちはわかるけど、さすがに見せるのは抵抗あるよ……)

咲(しかし…………) ヌギヌギ


服を脱いで自分の体をまじまじと見つめる咲


咲(これが女の子の体かぁ……)


退院してからこうして一人で着替えるのは今が初めてなのである

ゆえに15歳の男子としては興味津々にならざるを得ない……ッ
270 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:38:25.59 ID:h5cKe2MMo

咲(ゴクッ……)


意識してしまう……

今は自分の体であるが、それは異性の体なのである


咲(少しぐらい……触っても怒られないよね……?)

咲(だって、僕の体なんだし……)


誰に聞かせるわけでもなく自分自身に言い訳をして

恐る恐る、つけているブラをずらし乳首を外気に触れさせる

男とは違う感覚が、その突起から感じられた


咲(胸は小さいけど……男とは全然違う……。んっ……!)


手のひらで包み込むように自らの胸を触る咲

自分だけれど自分じゃない、異性の体を触るという妙な背徳感が感情を高ぶらせ行為を加速させた


咲(し、下はどうなってるんだろう……)

咲(トイレじゃ良く見えなかったし……鏡越しならよく見える……)


イケないことをしていると自覚しながらも、咲の手は迷いなく己のショーツに手をかけた

そしてスッと下に下ろそうとしたその時――――


「おーい! まだかー! 遅刻するぞー!」

咲「」 ビクゥッ!!


ドア越しに聞こえた京太郎の声で一気に現実に引き戻された


咲(う……、くぅ〜〜〜! 僕ってば何やってんのさ!? こんな状況であんな気分になっちゃうなんて……!)

咲(………………やるなら今日の夜にしよう……うん……)


咲はてこずりながらも急いでセーラー服を身に纏い、カバンを持って京太郎を出迎えた
271 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:38:53.69 ID:h5cKe2MMo

咲「お、お待たせっ!」

京太郎「遅いっ! …………ん? お前、顔赤いぞ」

咲「ひっ!? ぃぇぁ、これは……///」

京太郎「…………?」

京太郎「……あっ! はは〜ん? お前、もしかして自分の体に興奮してたな?」

咲「」 ドキッ!!!

咲「」 パクパク

京太郎「…………冗談のつもりだったんだけど」

咲「」 アウアウ…

京太郎「マジですか…………」

咲「」 ///


無言で俯く咲


ゴチンッ

咲「ぃてっ!」

京太郎「俺の好きな女の子の裸を勝手に見た罰」

咲「で、でも―――僕の体だよ?」

咲「お風呂とか入ったら絶対見ることになるよ?」

京太郎「じゃあ俺にも見せろ!」

咲「自分が何言ってるか理解してる!?」

京太郎「…………冗談だよ」

咲「目がマジだよ京ちゃん……」

京太郎「まぁ……男の咲が中にいる時に見せてもらうってのはなんかズルイしな…………」

咲「そ、そうかな? 僕は向こうの京ちゃん(女)の裸を見られるなら、中身がこっちの京ちゃん(男)でも見たいけど」

京太郎「このド変態がっ!!」

咲「えぇ!? さっきの発言した人に言われたくないんだけど!?」

京太郎「俺は好きな人相手には誠実でいたいのだ!」

咲「そ、そうなんだ……」
272 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:39:36.39 ID:h5cKe2MMo

咲(そういえば……向こうの京ちゃんには好きな人いるのかな……)

咲(……こっちの京ちゃんは女の僕が好きっていうけど…………) ジー

京太郎「なんだ? 俺の顔に何か付いてるか?」

咲「んーん、なんでもない」

咲(これは……可能性あるかもしれない……!) グッ

京太郎「なんにせよ、咲の裸を正々堂々と見るためにも、咲には麻雀がんばってもらわないとな!」

咲「動機が最低だよ!! …………でも、僕もがんばる!」

咲「僕だって元の世界に戻って向こうの京ちゃんの裸を見たいんだ!」 ムスー

京太郎「お前も同じじゃねえか!」

咲「………………同じだね」

京太郎「………………同じだ」

咲京「「YEAAAH!!」」

ピシ ガシ グッ グッ


シモネタ会話で友情を確かめ合う咲と京太郎

高校生男児とは、エロのためにやたらとがんばったりするものなのだ

ちなみにこんなくだらない会話をしていたせいで、もう走っても遅刻確定である
273 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:40:21.94 ID:h5cKe2MMo

―――放課後

咲「ふぅ〜〜、終わったぁ……」

咲(女の子のフリするのって疲れる……。股広げちゃいけないし、京ちゃんは“僕”って一人称を使うなっていうし……)

咲(勉強も全然付いていけなかったし……これは病院で長い間寝てたんだからしょうがないけど……)

京太郎「咲ー。ん? クタクタなご様子だな。大丈夫か?」

咲「ははは、平気だよ平気」

咲(こっちでは京ちゃんと同じクラスなんだね。うらやましいなぁ)

京太郎「それじゃ、旧校舎行くぞ」

咲「旧校舎?」



〜清澄高校・旧校舎〜

咲「旧校舎なんて初めて来たよ」

京太郎「麻雀部の部室は旧校舎にある」

咲「あ……」

京太郎「どうした?」

咲「これから行くんだね、麻雀部に…………」

京太郎「…………やっぱり麻雀することに抵抗あるか……?」

咲「ううん、そうじゃない。麻雀することには決心ついてるから」

咲「ただ…………これから会う人達と、どう接すればいいのか不安なんだ……」

京太郎「咲……」


咲は目覚めてから京太郎以外の麻雀部員と会っていない

京太郎が咲と会話して、麻雀部のみんなとはまるで面識がないと知ったからだ

京太郎からの提案で今日、こうして集まるまで咲とは顔を会わせないようにしようと決めていたのだ


京太郎「大丈夫だ。みんな良い人達だから。咲のことも受け入れてくれる」

咲「でも……みんな女の子なんだよね?」

咲「ぜ、絶対……キョドるよ僕…………」

京太郎「でも向こうの俺とは普通に話せてたんだろ?」

咲「それは…………京ちゃんだからだよ。長い付き合いだから平気なだけ……」

京太郎「ん〜……、まぁそれなら俺がフォローしてやるさ。だから頑張れ、咲!」

咲「う、うん……っ! 頼んだよ!」

咲(やっぱり京ちゃんはこっちでも僕の頼りになってくれるんだ……!)
274 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:41:40.20 ID:h5cKe2MMo

〜清澄高校・麻雀部部室〜

咲「」 ソロー


京太郎の背中に隠れながら、咲は部室に足を踏み入れた


京太郎「こんちわ〜」

まこ「お、来たなー」

久「あ、須賀くん…………ってことは!!」

咲「」 ビクッ

京太郎「先輩、咲のやつ怯えてるんで……」

久「あ……、ごめん」

京太郎「いま、お二人だけですか?」

久「もうすぐしたら来ると思うけど。みんなも今日咲が来るって知ってると思うし」

京太郎「珍しいですね、上級生二人が先に揃ってるなんて。俺達も終わってすぐに向かったのに」

まこ「今日、咲が来るっちゅう話じゃったからのう。先に部室行ってようと思っとったんじゃ」

京太郎「なるほど。…………これは好都合かも」

咲「な、なんで……?」

京太郎「今この部屋には咲にとって接しやすいと思う人しかいないからさ。後の二人が来る前に自己紹介済ませちまおう」

咲「う、うん……そだね……」

久「えーっと、それじゃ……はじめまして、でいいのよね? 宮永咲“くん”」

咲「!!」

京太郎「部のみんなは咲が今どういう状況か知ってるって教えただろ?」

咲「そ、そうだったね。じゃあこの部室内なら女の子のフリしてなくていいんだ」

久「だからって鼻ほじったり股をポリポリ掻いたりすることだけはやめてね?」

咲「うっ…………し、しませんよそんなこと!!」

京太郎「なんだ、普通に話せるじゃないか」

咲「ふ、普通じゃないよこれ! っていうかこの人だれ!?」

久「あらごめんなさい。私は3年の竹井久よ」

咲「竹井……? もしかして……生徒会長の……?」

久「あ、知ってるんだ? 学生議会長だけどね」

咲「男の方ですけど……何度か見たことあります」

久「やっぱり向こうじゃ私も男なわけね……。どういうやつだった?」

咲「えーっと…………真面目そうな人でした」

久「へぇ……意外ね?」

まこ「まるで自分が真面目じゃないとでも言いたそうじゃな」

咲「見た目しか知らないんで……。お仕事してる姿しか見たことありませんし」

京太郎「あ〜、こりゃ公の場で真面目ぶってるだけですね」

久「へ〜、須賀くんは私のこと真面目ぶってる人だと思ってたわけね〜」 ニッコリ

京太郎「ち、ちがいますよ、そうじゃな―――いっ!? ぃでででぇっ……あ、あし踏んで……るぅっ!? ぐ、グリグリしない、で……!」
275 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:42:09.69 ID:h5cKe2MMo

まこ「そんで……わしが部長の染谷まこじゃ。先日代替わりしたばっかりじゃから、学年は2年じゃな」

まこ「お前さんのことは京太郎からよぉく聞いとる。わしも力になっちゃるけぇ、頼りにせえな?」

咲「は、はい! よろしくお願いします」 ペコリ

まこ「ちなみに、いまお前さんが穿いとるスカートはわしのじゃ」

咲「へっ!?」

まこ「京太郎、そこの写真持ってきぃ」

京太郎「あ、これっすか」


写真立てには麻雀部の5人が地区大会で優勝した時の写真が入っていた


まこ「これが元々咲が穿いとったスカートな」

咲「!?」

咲「み、み、短いーーーーー!!」

咲「京ちゃん、これ痴女だよ! 痴女!!」

京太郎「いや、今時の高校生ならわりといるけどな…………」

咲「だけど……女の僕だよ!? 信じられない……」

京太郎「ははは」

咲「……あれ? じゃあなんで今僕は染谷先輩のスカートをはいてるんですか?」

まこ「昨日な、京太郎がうちに来て『今の咲に短いスカートは辛いだろうから貸してください』って頼んできたんじゃ」

京太郎「この反応を見ると、頼みに行った甲斐がありましたよ」

まこ「しかし……ぷっ! ち、痴女とは……」 プクク…

久「和や優希が聞いてたらどんな顔したでしょうね?」 クスクス

ダダダダダダダダダッ


旧校舎にドタバタと駆ける足音が響く


久「――っと、噂をすれば……」

バタンッ!!

優希「優希ちゃん、部室にいっちばぁぁぁぁぁぁ〜〜〜ん乗りだじぇ!!」

咲「」 ビクゥッッ

和「一番どころか最終組じゃないですか」 ヤレヤレ

咲「ぅ……」
276 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:43:11.94 ID:h5cKe2MMo

優希と和から隠れるように再び京太郎の背中に回る咲


京太郎「優希! 騒がしいぞ」

優希「ん? なんでいつも通りなのに―――あっ」

咲「」 オズオズ

和「遅れてすみません。……あ―――、咲さん!」

咲「!」 ピクッ

和「退院できたんですね、心配してたんですよ」

優希「…………の、のどちゃん」

和「なんですか、ゆーき」

優希「い、今の咲ちゃんは咲ちゃんじゃなくて咲くんなんだじぇ……!」

和「意味がわかりません」

京太郎「和っ!」

和「??」

和「あっ、すみません…………咲さんは記憶喪失なんでしたね……」

久(どうしても認めないつもりなのね)

咲「京ちゃん……、みんな知ってるんだよね……?」

京太郎「あ、ああ…………知ってはいるな、うん」

京太郎(ただそれを認めて受け入れるかどうかまでは別だが……)

優希「さっきは驚かせちゃったみたいでごめん。私は片岡優希だじぇ! よろしく!」 サッ


元気あふれる優希に戸惑いを見せたのも数瞬、その笑顔に警戒を解いて咲と優希は握手を交わした


咲「知ってると思うけど……、僕は宮永咲。よろしくね、片岡さん」

優希「名前でいいじょ」

咲「えっ、えっ……? い、いきなり名前は……」

優希「何か問題あるのか?」

京太郎「優希、勘弁してやってくれ。今の咲は同姓じゃなく、異性なんだ」

京太郎「咲の性格じゃ異性をいきなり名前呼びってのも無理な話だろ?」

優希「なるほどなー。じゃあ、しょうがないから呼びやすいように呼んでいいじぇ!」 ニカッ

咲「う、うん。ありがとう、二人とも」

優希「んー、しかし私も“ちゃん”付けで呼ぶのは憚られるじぇ」

優希「ここは親しみを込めてニックネーム…………むっ!」

優希「サッキーだじぇ! これから男咲ちゃんをサッキーと呼ぶことにする!」

京太郎「サッキーって……。どう思うよ、咲…………ん?」

咲「ぼ、僕……あだ名とかつけられたの初めてだよ!」

優希「ふはは! 初めて相手はのどちゃんではない! この優希ちゃんだァーッ!」 バァァーz_ ァン

和「なっ……ゆーき! ずるいです!」

京太郎「和、それより自己紹介」

和「あ、そっ……そうでしたね」
277 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:43:50.23 ID:h5cKe2MMo

和「原村和です。私の顔を見て、何か思い出せませんか……?」

咲「え、えーと…………(汗」

まこ「和のオカルト否定もいい加減困りもんじゃな」

久「それが和の長所でもあり、短所でもあるわ」

優希「友達を批難したくないけど、それって短所のほうが多い気がするじぇ……」

和「咲さん、私寂しいです。せっかく咲さんと仲良くなれたのに、また心の距離が離れてしまうなんて……」

咲「え、と、その、う………………」

京太郎「あ、あーー! もうこんな時間だ! そろそろ練習始めませんか?」

咲(京ちゃん……! ……助かった)

久「そうね。宮永くんの実力も見てみたいところだし」

まこ「このまま戻らんかったら来年はこの咲が女子大会に出場することになるしのう」

咲「えっ!?」

京太郎「冗談よしてくださいよ! これから元に戻れるかもしれないっていうのに!」

優希「元に戻れる…………そういえばそんな話、何日か前にしてたな」

京太郎「そうだ。あの日のことを再現してもらうんだ」

まこ「またあれやるんか……。正直、怖いわ」

優希「思い出しただけでトイレが近くなるじょ……」 ブルッ

咲「えと……僕、長い間麻雀やってなかったのでとりあえず一度やってみましょう」

まこ「じゃあわしと優希と…………京太郎!」

京太郎「俺っすか!?」

まこ「この面子が適任な気がしてなー? 安心せい、ちゃんと考えとるつもりじゃ」

京太郎「……染谷先輩がそういうなら安心ですね」

咲(頼りになる先輩って感じかな、染谷先輩は)

咲(京ちゃんを除くと、この中で一番接しやすい気がする……先輩なのに)

優希「今は中身が違うからってサッキーも咲ちゃんであることには違いない……油断はしないじぇ!」

咲(片岡さん……か。会長さんや原村さんに比べるとまだ接しやすい子だ)

咲(愛嬌があるというか……こっちも警戒を解いちゃうような人柄だね)

京太郎「ふぅ、とりあえずハコワレだけは回避しないとなっ」

咲(あと一人は京ちゃん。目覚めてから3日でもうかなりの仲良し)

咲(元の京ちゃんを知ってるおかげですぐに仲良くなれた、こっちの世界での親友……)

まこ「それじゃ、咲も席について」

咲「あ、は、はいっ」 ストン

まこ「ん、よし」 ニカッ

咲「あ…………」

咲(…………そっか。染谷先輩は僕に配慮してこの面子を選んでくれたんだ……)

咲「よろしく……よろしくおねがいします!」

咲(接しにくい人もいるけど……みんな僕の仲間なんだ……!)

咲(がんばる……僕はがんばるぞ!)
278 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:44:24.25 ID:h5cKe2MMo


               ・
               ・
               ・
               ・
               ・

咲「…………」 ズーン

優希「まさかサッキーがトビとは思ってなかったじょ……」

京太郎「どうした咲……? 調子悪いのか?」

咲「わ、わかんない……。久しぶりだからかな」

久「もしかして……宮永くんには咲のような力はないんじゃないの?」

京太郎「そんなことは……! 昔の話を聞いても、咲と同じで±0をやってたって……!!」

まこ「女の咲だって相当なブランクがあったって話じゃろ? じゃあなんで男咲は…………」

和「あの、なんていうか……単純なことでしょう?」

優希「のどちゃん! わかるのかっ!?」

京太郎「なんだ……!? 教えてくれ!」

和「いえ、普通に考えて―――記憶を失ったことが原因では?」

京太郎「………………」

まこ「………………」

久「………………」

優希「………………」

和「あの…………どうしたんですか、みなさん黙って」

まこ「とりあえず……今度は優希と京太郎抜けの久、和入りでやってもらおうか」

久「んー、一応手加減はしないでいくわよ」

和「よろしくおねがいしますね」

咲「あ、はい……」

京太郎「後ろで見てていいか?」

咲「え? う、うん! もちろん」


しかし、久や和が相手となったこの半荘

咲は前の局より速く箱割れしてしまった
279 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:44:52.39 ID:h5cKe2MMo

和「なんというか……本気でやってるんですか、咲さん」

咲「ほ、本気だよ!」

和「やはり記憶喪失で麻雀のことまで忘れてしまったのでしょうか……」

まこ「とにかく、もう一度あれを起こすのは無理なようじゃな」

久「宮永くん、あなたはどういうイメージで今まで麻雀を打ってた?」

咲「±0にするためにどうすればいいか考えて……そうしたら自然に牌が見えたんです」

咲「でも……今はそれが…………」

京太郎「見えなくなったのか?」

咲「ううん、見えるけど……ツモるのは見えたものと“別の牌”なんだ……」

まこ「力はあるけど、おかしな動作しとるっちゅうことか」

京太郎「精神は向こうの咲ですけど、体はこっちの咲ですからね……。何か噛み合ってないのかもしれません」

まこ「なるほど、一理あるのう」

久「須賀くんにしては理知的な意見ね」

京太郎「どういうことですかそれ! ……俺だって咲のために色々考えてるんですよ」

咲「京ちゃん……ごめん。僕じゃ力になれないかもしれない……」

京太郎「そんなことない。片鱗は見えてるんだ。じっくりやろう」

咲「でも…………こんな調子じゃ……」

京太郎「咲! …………あんまり気負うな」

咲「え…………」

京太郎「お前がなにかできなくても、オカルト研の所長さん達がどうにかしてくれるかもしれないしな」

咲「でも……京ちゃんだって、早く女の僕に会いたいんでしょ?」

京太郎「そりゃ会いたいさ。でも…………」

京太郎「咲が戻ってくるってことは、お前とはお別れしなくちゃいけないわけだろ?」

咲「…………!!」

京太郎「せっかく仲良くなれたのに、すぐにさよならじゃちょっと寂しいぜ……」

咲「京ちゃん…………」
280 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:45:27.14 ID:h5cKe2MMo

京太郎「だから、無理するな。できないならできないでいいんだ」

京太郎「それでお前を責めるやつなんか誰もいない。俺も優希も染谷先輩も竹井先輩も……たぶん和も」

咲「う……、あ、あの…………」

咲「ありがとう…………京ちゃん……///」


紅潮する顔を俯いて隠す咲

この感情は嬉しさか、恥ずかしさか、女の体にいる故の感情の誤作動なのか、咲には判断がつかなかった


優希「サッキー、顔赤いじょ」

久「あらあら」 ニヤニヤ

まこ「これはこれは」 ニヤニヤ

咲「な、なんですか! べ、べつにそういうわけじゃ……! きょ……京ちゃんが恥ずかしいこというからだよ!」

京太郎「俺は親友相手にも誠実でいたいのだ!」

咲「だからってクサイセリフ言っていいわけじゃないって!」

久「はいはい、こっちもからかって悪かったわ。とりあえず練習を続けましょう?」

まこ「そうじゃな。続けてれば咲の抱えてる問題の原因も見えてくるかもしれんしの」

咲「あ、はい……わかりました」

咲(…………でも…………“親友”かぁ……)

咲(京ちゃんもそう思っててくれたんだ……まだ会って丸3日しか立ってないのに……)

咲(向こうの世界とこっちの世界の人の絆は……繋がってたりするのかな……?)
281 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:46:16.34 ID:h5cKe2MMo

―――ところ変わって、日本オカルト研究所では


研究員A「所長ーーー!! 所長ーーーーーーー!!」

所長「なんだね騒々しい!」

研究員A「先ほど届いた封書と宅配の件なんですが……」

所長「どうかしたかね」

研究員A「これをご覧ください……!」

所長「んー……ふむふむ。……………………は?」

所長「なにィィィィィィィーーーーーーーッッ!?」

研究員B「え、なんですか? どうかしました!?」

所長「いますぐこの資料を瘴気研究班に渡してこい!」

所長「それと、清澄高校の麻雀部に連絡を入れる! AとBは明後日予定入れるなよ!」

研究員A&B「「ええーーーっ!? 明後日って日曜日じゃないですかーーー!」」

所長「ゴチャゴチャ言わない! さぁ、今すぐ行動に移すぞ!」

研究員A&B「「ら、ラジャーーーー!!」」
282 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:46:59.16 ID:h5cKe2MMo

―――日曜日

〜清澄高校・麻雀部部室〜

まこ「というわけで、今日はオカルト研の人たちが来とる」

所長「すまんね、休日の朝っぱらから」

咲「あの……わざわざやってきたということは、何かあるんですよね?」

京太郎「まさかこの事態を解決する策を見つけたんですか……?」

所長「いや、そこまでではない。しかし事態が進展する可能性は大いにある!」

優希「おお〜」

和「咲さんの記憶を戻せるんですね!」

所長「………………」

研究員A「………………」

研究員B「………………」

和「どうしたんですか、急に押し黙って……」

所長「えー……と、とりあえず機材を運び込んでくれ」

研究員A&B「「ラジャー!」」

久「き、機材……?」


そうして部室に運び込まれたのは、形容しがたいマシーンであった

サイズは…………そう、冷蔵庫ぐらいというのが適当である


優希「なんかSF映画とかに出てくる頭につける機械と、テレビみたいなのがあるじょ」

和「記憶を映像にして抽出する機械でしょうか……?」

所長「ンッンー、近いけど違う。これは向こうの世界を見るマシーンなのだ!」

咲「えっ、えええぇぇぇぇぇーーーーーっ!?」

京太郎「向こうの世界を見る!?」

和「意味がわかりません」
283 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:47:46.83 ID:h5cKe2MMo

久「まだ事件から2週間ぐらいしか経ってないのに、もうそんなものを開発したんですか!?」

所長「いや、なんというか……うむ、そういうことだ」

まこ「オーバーテクノロジーじゃな……。日本オカルト研究所、侮りがたし」

所長(謎の宅配物がキーパーツだったとは言えんな……。まぁ、この子らに説明しても仕方ない)

所長「では、咲くん。イスに腰掛けて、これを被りたまえ」

咲「ぼ、僕がですか?」

所長「うむ。これを被ることで、向こうの君とリンクして、向こうの君が見ている景色がこのテレビに映し出される仕組みだ」

優希「すげーーー!! いったいどうなってるんだ!?」

研究員A「君に説明しても理解できないと思うよ」

優希「それもそうか……」

研究員B「わかる範囲で言えば、あの日宮永咲から発せられていた瘴気を使って、向こうの世界との接点を作ってるんだよ」

京太郎「研究の成果ですね」

所長(本当はまったく進んでなかったがな……)

咲「かぶりました」

所長「うむ、それでは…………」

所長「……………………」

久「所長さん?」

まこ「どうかしました?」

所長(………………これが初起動…………)

所長(……………………失敗したらどうしよう!!?)
284 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:49:02.28 ID:h5cKe2MMo

所長「ええい! ままよ!!」 ガチャコーン

京太郎「なんですかその掛け声ッ!?」

咲「すごい不安だーーーー!!」

ビビビビビビビビイイイィィィィィーーーーー

咲「rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr」

京太郎「さ、咲ぃぃぃぃーーーー!?」

所長(やっべ……これ失敗してないよね……?)

和「と、止めてください!! 咲さんが……咲さんが死んでしまいます!」

研究員A「ど、どうしよ……」

研究員B「こういう時責任取るのが上司の仕事ですよね」

所長「お前らぁぁぁ! まだ失敗って決まってないだろうが!」

咲「」 カクン

京太郎「咲っ!!」

まこ「わぁぁぁぁぁぁ!!」

久「所長さん!?」

所長「いや、これ、どうしよ……」

パッ

優希「あ、テレビついたじょ」

所長「…………………………なんだ、成功じゃないか!」

研究員A&B「「やりましたねーーー!!」」

5人「「「「「………………」」」」」 シラー

所長「なんだその目は! ともかく、映像を見たまえ!」

久「そうだったわ、向こうの咲は今何をしてるのかしら……」

京太郎(咲…………)

まこ「ん? …………これって……」

和「…………予選会場…………ですか?」
285 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:49:58.38 ID:h5cKe2MMo

――――次回予告

長野県予選決勝、先鋒戦
立ちはだかる強敵に苦戦を強いられる清澄高校……

そしてそれを傍観する元の世界の面々
インターハイを終えた彼女らは、自分達と似て非なる男達の戦いを固唾を呑んで見守るしかなかった

次回『男の戦い』
286 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/10/24(水) 23:50:41.00 ID:h5cKe2MMo
〜キャラクター補足〜

■宮永咲(女)
異世界の咲(男)が体を動かしている。
女の体に興味アリアリだが、胸が小さいことを少し残念がっている。
最初は疑問を抱いていた京太郎のことも見直し、現在は想い人の京子の影を重ね始めている様子。

■須賀京太郎(男)
咲が好きだということを自覚した。
咲を元に戻したいが、男の咲とも別れたくないと思っている。

■染谷まこ(女)
麻雀部の部長になりました。
287 : ◆RmlFOAHrTI [saga]:2012/10/24(水) 23:56:16.17 ID:h5cKe2MMo
投下終了、ありがとうございました
またギリギリ(汗)

今回は3週間ぶりということでいつもの25レス+5レスでお送りしました
…………嘘です……普通に尺足りませんでした……

後半、1レス分の文量が多くなっているところから詰め込み始めたことを察しできると思います
たぶん前半のレスを1レスにまとめたりすれば25レスで収まったかもしれませんが、結局30レスということで妥協しました

次回、おそらく……さ、再来週ということで……
3週間も一応視野に入れて(ボソッ
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/24(水) 23:58:01.99 ID:/TvdR5kB0
おつやでー
そういや今日水曜だったか、来てて嬉しい
次の投下ものんびり待っとるよ
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/25(木) 02:44:51.79 ID:7gn05s8Co
乙ー
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/25(木) 07:25:38.30 ID:42bg2BaIO
おつでー

謎の配達物……555ブラスターか
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/25(木) 23:56:17.60 ID:bxx2nDIWo
京ちゃんは咲にとって良い嫁さんになれるね!
いや、婿さんか?
292 : ◆RmlFOAHrTI [sage]:2012/11/13(火) 21:45:45.56 ID:136kYYAHo
3週間も目前というのに一向に筆が進まない……!
年内に終わるのだろうか……

これから気張って書く予定ですが、おそらく間に合わないと思うので
事前に用意していた短編の続きを>>151のスレに投下するということで代わりとさせていただきます
293 : ◆RmlFOAHrTI [sage saga]:2012/11/22(木) 23:21:53.01 ID:PLINJtnbo
今まではどうにか筆がノって書けてたんですが、今回に来て完全に止まってしまいました
展開が決まっているのにどうしても書けないもどかしさがくやしいです

とりあえず少しずつ書き続けてはいますが、
牛歩過ぎる遅さと見直し&書き直しの嵐なので、このスレは一時凍結とさせてください(土下座)

もう一個のほうに手を付けてるんじゃないのか、と言われれば否定できないのですが
一応こっちのほうが優先度高いんですよ、ホント(書けてないけど)

残り3,4話、多くて5話ぐらいで終えられる予定なのできちんと完結はさせます(スレも残しておきます)
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/23(金) 01:44:01.23 ID:jfme4JlDo
気長に待っとるよ
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 11:36:57.18 ID:YQ3PN+OQo
えーよまったりで
296 : ◆RmlFOAHrTI [sage]:2013/01/03(木) 06:50:53.36 ID:BWegaLI2o
保守

書く気はまだあります……;
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/03(木) 11:16:41.55 ID:i9gD3K6IO
舞ってる
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 10:24:19.37 ID:t8isL4aOo
まだー(AA略
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/04(月) 22:04:48.87 ID:CGe35PO90
淫乱ピンク(♂)
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/12(火) 22:26:16.65 ID:rTair+4Ho
男の国広くんとかガチ犯罪者じゃないか

そして純ニキは男の中の男なのかそれとも逆に男の娘になってしまったのか

透華にいたってはほとんどスーパースターマンだし
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/16(土) 01:56:19.64 ID:2U+LBZ9T0
パオーン
302 : ◆RmlFOAHrTI [sage]:2013/02/25(月) 03:15:04.08 ID:GAfVq8kWo
保守

ちまちま書いてます
完全に向こうの方が優先度高くなってますけど……
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/25(月) 14:29:29.26 ID:s+WgY6A9o
おk
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/11(月) 10:35:13.81 ID:YTNTWZOIo
やっぱ掛け持ちってクソだわ
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/26(火) 09:41:43.80 ID:2+02FOWao
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/21(日) 20:48:32.51 ID:9JeH23nzo
そろそろ落ちちゃうな
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