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まどか「奇跡じゃなくて、必然なんだよ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/06(月) 18:17:33.86 ID:VEoWuk5y0
━━━━ほむらちゃん、行って

強い意志を持った桃色の瞳が私のそう告げる。

━━━━で、でも…まどか…まさか?!

━━━━……ごめんね…ほむらちゃん、ばいばい

まどかが傷だらけで動けない私に近付く。そして私の盾を…ひと思いに回した。

「だめぇええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」

バサァッ、と羽毛布団が勢いよく持ち上げられた。

チュンチュンという鳥の囀りが聴こえる。
目に入るのは見覚えのあるどこまでも白い壁。


また、駄目だったの…?

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1344244653
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/06(月) 18:19:22.96 ID:VEoWuk5y0
「…どうしてあなたは……そうやって自分を犠牲にして…!」

ポタポタと透明な涙が流れる。
あのまどかは…自分の命に自分でピリオドを打った。
大好きな人たちを守るために…

あのまどかは未契約だったが、恐らく私を他の平行世界に送り出してから契約するつもりだったのだろう。
そして……ワルプルギスを倒し、その黒く濁るソウルジェムを己で…

「ぅ…ぁあ……」

ドクン

ジワジワと…私の魂が黒く侵食されて…

「っ…!」

駄目よ……まどかを…守るんでしょ…!?
私はソウルジェムを取り出す。
3 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/06(月) 18:20:42.29 ID:VEoWuk5y0
シュパァン!という音がし、私は魔法少女衣装になっていた。
そして勢いよく盾からグリーフシードを取り出す。

お菓子の魔女のグリーフシード。いつぞやの巴マミを救えなかった時間軸。
強い思いを込め、私はソウルジェムに其れを当てた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ブォォォォォオオ

五月蝿いトラックの音が耳を通り過ぎる。

「…はぁ……」

私は溜め息を付いた。
ここは病院の外。何故そんなところにいるのかと言えば、散歩。
ひと時とは言え絶望に当てられてしまった為、気分転換に外の空気を吸おうと思った、のだけれど…


ここは科学の街、見滝原。美味しい空気など存在する訳もなく。
田舎が懐かしくなってきた…

「お父さんお母さん、元気かしら……」
4 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/06(月) 18:21:38.42 ID:VEoWuk5y0
コツッ

そんなことを呟きながら、路地裏へと向かう。
こっちの方がまだ静かで良いわ。

そう思い曲がり角を曲がろうとする。

「…あそこにいるのは……?」

ピンクの髪に深紅のリボン。
そんな少女が、路地裏の壁に寄りかかっていた。
…!まさかまどかが倒れて…!?

カチッ

即座に私は変身を済ませ、時間停止をする。
まどか…!

地面を蹴る。早く、早く!!

カチッ
5 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/06(月) 18:22:30.05 ID:VEoWuk5y0
時間停止を解除する。

さらさらと風に靡く、二つに纏めた桃色の髪。
蝶結がさらにその美しさを際立てている。
そして、力強さと儚さを持ち合わせる睫毛。
すうすうと寝息を立てている艶めく唇と、ぷにぷにとした頬。
あゝ、そしてまだ未熟な可愛らしい躰。

「ッ…間違いなくまどかね……何でこんなところで寝ているの…?」

謎の赤い液体を抑える為鼻に手を添えながら私はそう云った。
しかしきゅんきゅんが止まらない。そうこう言っている間に鼻血は手を染める。
仕方ないわね……
私はシュルシュルと純白のハンカチを鞄から取り出し、鼻に当てた。

「……うーん…?」

コツコツと小気味よい音を立てながら歩を進める。
まどかの目の前に私はしゃがみこんだ。
6 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/06(月) 18:23:03.28 ID:VEoWuk5y0
「すぅ……ん…うぇひ……」

気持ちよさそうに寝てるわ……起こしちゃ不味いわね
そう思い頭を片手でそっと撫でる。さらさらとした髪が掌にふわりと触れた。

「まどか……今回こそは…」

憂いを帯びた瞳を寝ているまどかに投げかけた、その時に。

「ん…ほむ、らちゃ……?」

「ッ…!?」

そんな…まだこの世界の私はまどかと知り合っていないはずよ!!
硬直した私を嘲笑うように元凶がその瞼を開ける。
7 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/06(月) 18:24:35.07 ID:VEoWuk5y0
「ぁ…?」

何時もと変わらない桃色の瞳。しかしその瞳はどこか…

「……!?……あなた、誰ですか…?」

まどかは目を見開き、私から後退る。しかし後ろは壁の為、最低まで壁に引っ付くしか私から離れる方法はない。
…起きたら目の前に知らない人がいたらびっくりするのは分かるけれど、流石に傷つくわね…

ん?知らない人?……さっきのは空耳だったのかしら…
そう思いまどかの質問に答えることにした。

「…あぁ、御免なさい。散歩していたら壁に寄りかかって倒れている人が居た物だから、つい近付いてしまって」

ペコリと頭を下げる。間違ったことは言ってないわ。
8 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/06(月) 18:25:12.29 ID:VEoWuk5y0
「ふ、ふぇ!?……こちらこそ、御免なさい…すみません、起きますね」

そう言ってまどかは地面に手を付き、立ち上がった。
間髪入れず、私は質問する。

「あなたは何故こんな所で寝ていたの…?」

そう、これが何よりも聞きたい質問だった。
私はじぃっとまどかを見つめる。

「ぁ、ぅ…ち、ちょっと人と待ち合わせしてたら眠くなっちゃって…それで」

まどかはそう申し訳なさそうに目を逸らした。
9 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/06(月) 18:27:24.52 ID:VEoWuk5y0
「そう……それじゃ、躰にも問題はなさそうね。さようなら」

あまりここでまどかと話し込むのは得策ではない。
どうせ明日学校で会うのだし。
そう思い、私は踵を返した。

「ぁ…!……」

さて、今日は武器を調達しないといけないわ。

米軍基地に行って…あと暴力団のアジトにも行かなくちゃ…

「…ほむら、ちゃん……」

その声に、私は気付けなかった。
10 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/06(月) 18:28:41.95 ID:VEoWuk5y0
今日はここで終わり

暇つぶしに書いていく予定なので不定期です
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/06(月) 18:30:14.15 ID:rr51ibfZo
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 18:30:52.52 ID:4U2UbA9fo
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 19:49:07.31 ID:wtO19VaDO
ふむ面白そうだ機体
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/07(火) 10:16:10.29 ID:SiCOa6F1o
ループでアイテム持ち越しできるのか
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/07(火) 10:17:45.25 ID:arOUsqcPo
小物はOKって感じかな
武器はダメっぽいし
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/07(火) 15:21:41.98 ID:ZsdrzsEDO
武器OKでも毎回ワルプルギスで使い果たしてそうだから関係ないな
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/07(火) 20:16:41.45 ID:4XBc8qSt0
ほむほむって東京から来たんじゃないの?
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/07(火) 20:21:13.68 ID:arOUsqcPo
転々として、たまたま一個前が東京って説もある
19 : ◆AliceQDRbk :2012/08/07(火) 20:52:55.95 ID:T13Lxz4SO
こんばんは
色々疑問が発生しているようなので、回答を書いておきます

・盾の物は武器小物共に持ち越し可能、但しワルプルギス戦で武器は毎回使い果たしている

・ほむらは心臓病の治療の為、田舎から東京へ行き次に科学の発展した見滝原に来た設定

他にも矛盾らしき物がありましたらご指摘お願いします

次の投下は来週の月曜日当たりになると思います、それではまた
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/07(火) 21:18:28.91 ID:+lMSkm3SO
この酉…君か
まぁ完走さえしてくれれば何も言うまい頑張れ
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 03:29:13.27 ID:Kaq/q7XMo
まどかが記憶持ち越した系?
期待
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/08(水) 20:46:40.67 ID:7h4q1uL/o
疑問や矛盾というかループ持ち越しOKって色々と問題のある設定だから採用するのは珍しいんだよね
ストーリー外の矛盾なら脳内補完するから頑張ってくれ
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/09(木) 13:58:57.55 ID:00YS01J50
糞スレ発見
24 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:01:52.57 ID:+j2xrOTi0
すみません
月曜日が忙しくなり、投下できる可能性が薄くなったので出来ているところだけ投下させてもらいます

>>22
ありがとうございます、了解しました。出来るだけ矛盾を出さないよう気を遣います
25 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:02:30.23 ID:+j2xrOTi0
キーンコーン…

始業を告げるチャイムが静寂の廊下に響き渡った。何度目の光景だろう。

『はい中沢君ッ!』

『ぇ、え!……ど、どっちでもいいんじゃないかと…』

私はドア越しに聴こえる恐ろしくどうでもいい会話を聞き流しながら、思考の海へと身を投じる。


今回のまどかはどこか違和感を感じる……
私は数多の世界を渡り歩いて数え切れないほどの彼女を見た。性格が多少変化していることはあっても、違和感を感じたことはない。

何が変わろうと全ては同じ鹿目まどかなのだ。違和感が生じるはずなどないのに…
私は今回は何かと警戒したほうが良さそうだ、と結論付け現実へと思考を戻した。


『転校生を紹介します!暁美さん、入って』

丁度よく先生の呼ぶ声が耳に入る。自己紹介はいつも通りでいいわね。
26 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:03:34.91 ID:+j2xrOTi0
ガララ


カツ、カツ、とそこそこ底の高いローファーの靴音を聞きながら、私は胸を張り教壇へと闊歩する。

「はーいそれじゃ、自己紹介行ってみよう!」

明るい先生の声を聞きながら、私は口を開いた。

「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

無表情かつぶっきらぼうに言い切る。

「ぁ…」

思わず声が出てしまったかのようなまどかの声がした。
恐らくこの前の人だ、と驚いているはずだ。

そう思い、まどかに視線を移す。

いつもと変わらない桃色の髪が目線に入る。
次に蝶結、次に頬、次に瞳、次に唇…
27 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:04:31.07 ID:+j2xrOTi0
「…!!」

全体が見えた時に驚いた。

懐かしむような桃色の瞳。さながらずっと会えなかった旧友とやっと会えたような、そんな大人びた視線。
そんな瞳はすぐに移り変わり、幼く可愛らしい驚いた瞳へと変わった。

……気のせい、なの?

「あ、暁美……さん?」

何だか歓声やら先生の困惑した声が聞こえる気がするが、これも気のせいだろう。たぶん。
28 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:05:45.03 ID:+j2xrOTi0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ざわ ざわ ざわ

休み時間に入り教室が騒がしくなる。
あぁ、また今回も女子生徒が私の周りに群がるのね……面倒くさいわ

「暁美さんってどこの学校にいたの?」
「暁美さんって部活とか何やってた?」
「すごくさらさらな髪だよね、シャンプーとか何使ってる?」

…適当に応答していく。
そんなのどうでもいいじゃないの。なんでこう、珍しい物を見るような目で見るのかしら。
あぁ面倒臭い……さっさと抜け出してしまいましょう。

「ごめんなさい、緊張してしまったみたいで……保健室に行かせてもらえるかしら」

いつもの嘘文句をスラスラと吐いていく。
思いついた最初の頃はちょっと噛んでいたけれど、もう慣れたものだわ。
29 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:07:02.29 ID:+j2xrOTi0
「あ、あたしが連れてくよ!」「私も私も!」

どこまで面倒臭い奴らなのかしら。ほっといて頂戴。

「お構いなく、係の人にお願いしますから」

私はキッパリと言い切り、もうすっかり記憶してしまったまどかの席へと向かう。

「…ちょ、ちょっと……転校生なんかこっちに来てない…?」

五月蝿くウザったい美樹さやかの声が聞こえる。空気が読めればまだマシなのに。

「鹿目まどか、あなたがこのクラスの保健委員よね。……連れていってくれる、保健室」

最大限まで冷たい声と冷たい目で促す。
30 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:08:21.03 ID:+j2xrOTi0
「あ、うん!」

ふぅ…これで取り敢えずは一段落かしら?

「…えっと、それじゃ暁美さん?来て」
kite…きて…来て…
不覚にも鼻の奥にほんのり鉄の匂いが漂った。



ガララ


コツ コツ


私はまどかより前に出る。ペースを持って行かれた場合、忠告が出来ない場合がある。

「あ…あの、暁美、さん?」

「ほむらでいいわ」

動じず歩を進めながら返答する。
31 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:09:19.95 ID:+j2xrOTi0
「ほむら、ちゃん?」

それが一番嬉しい呼び名。ずっと変わらない、まどかとの……。

「あ、その……ほむらちゃんって、この前……私が路上で寝ちゃってた時に、会った人だよね?」

…それを聞かれることは予想済みよ。

「ええ」

ばっさり答える。無駄に仲良くなったりしたら大変だから。
……悲しい、けれど

「そっか……ごめんね」

何故謝るの…と言いたいけれど、言えないわ……
しょうがない……しょうがないのよ
32 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:10:20.46 ID:+j2xrOTi0
「ほ、ほむらちゃんってさ!」

話題が切り替わったわね。まぁ、大方名前の話でしょうけど。










「ほむらちゃんって…とっても、美人だよね!」









「ぶふ……っ!?」

き、聞き間違いかしら……今『美人』って言われたような…
う、うん気のせいよね!あの天使のようなまどかが私を褒めてくれるはずないわ!恐れ多い!
そう考え、私は目尻を押さえる。
33 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:11:35.13 ID:+j2xrOTi0
「瞳も紫でとっても綺麗だし…髪の毛もサラサラで綺麗な黒で……憧れるなぁ」


なん……だと?
え?どう返答すればいいの?え?


「ど、どうも……」


わたしのばかああああああああああああああああああああ!微妙な雰囲気になるじゃない!

「…ぁ、あ、ご、ごめんね……変なこと言っちゃって」

……天然って恐ろしいわね。


コツ コツ


……そうこうしているうちにもうすぐ保健室。
……それじゃ、そろそろ言いましょう
34 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:12:06.47 ID:+j2xrOTi0
キュッ


私は勢いよくまどかの方へ振り返る。

「…………鹿目まどか。あなたは自分の人生が尊いと思う?家族や友達を大事にしてる?」

鋭い眼光でまどかを見つめる。無駄だと、分かっていても。
やらなきゃいけない。

「ふ、ふぇ?う、うん……とっても、大切に思ってるよ」

毎回変わらない、答え。変わってくれない反応。

「……なら……決して違う自分に変わろうだなんて、思わないことね」


コツ コツ


逃げるように保健室へと歩を進める。そしてゆっくりと……唇を噛んだ。
35 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:12:44.66 ID:+j2xrOTi0
キュッ


私は勢いよくまどかの方へ振り返る。

「…………鹿目まどか。あなたは自分の人生が尊いと思う?家族や友達を大事にしてる?」

鋭い眼光でまどかを見つめる。無駄だと、分かっていても。
やらなきゃいけない。

「ふ、ふぇ?う、うん……とっても、大切に思ってるよ」

毎回変わらない、答え。変わってくれない反応。

「……なら……決して違う自分に変わろうだなんて、思わないことね」


コツ コツ


逃げるように保健室へと歩を進める。そしてゆっくりと……唇を噛んだ。
36 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:15:10.92 ID:+j2xrOTi0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ダァン ダァン

CDショップの中の改装フロア。あまりにも無機的なその世界の中に、銃声が響き渡る。

「きゅぷっ!」

タタタタタ

相も変わらずゴキブリみたいにしぶとい奴。
いや、ゴキブリ以下ね。ゴキブリと同列に扱ったらゴキブリが可哀想なレベルだわ。

「逃がさないわ」

そう呟くと私は盾に手を掛ける。

カチッ


カチッ

ダダダダダダダダダ

「きゅっ…!?」

刹那、インキュベーターは蜂の巣になった。時間停止で何発か鉛玉を打ち込んだのだ。
時間停止を使える私にただの走りで勝てるはずもないのよ。
37 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:16:57.80 ID:+j2xrOTi0
私はそっとそのインキュベーターの亡骸を持ち上げる。
さあ、さっさと次の個体を寄越しなさい。

タタタタタ、とまた近くから小さな足音が聞こえた。

「さ、第二ラウンドと行きましょうか。下等生物」

手間かけさせないで欲しいわ、本当に。
私はそう言い、地面を素早く蹴った。


ギャリィッ

どこからか鎖の擦れる音が耳へと届く。まさか……!

『きゃ、きゃぁあ!』

っ、接触してしまう!


カチッ シュン


タタタタタタタ


時間停止でまどかとインキュベーターの居るところへ向かう。間に合え……!
38 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:17:43.91 ID:+j2xrOTi0
カチッ


「ほむら、ちゃん……?」

地面に座っているまどかの手には忌々しい下等生物が抱えられていた。間に合わなかった……

「……そいつをこっちに渡して」

氷のように冷たくまどかを見つめる。

「ほむらちゃんがこれをしたの…?」

恐る恐ると言った感じでまどかは私に尋ねる。答えるしか……

「ええ。そうよ、でもあなたには関係ない」

カツ カツ

じりじりと距離を詰めていく。
39 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:18:34.21 ID:+j2xrOTi0
「寄越しなさい」

手をまどかに突き出す。

「ぅ、ぅ……」

ブシュゥウウウウウウウウウウウウ

瞬間、白い煙が視界を遮った。

「く……!」

「まどか!こっち!」

また美樹さやか!いつもいつも邪魔ばかり…!

「さ、さやかちゃん!でも……ほむらちゃんが!」

「あぁもう!なんで転校生の心配するのさ!自分の心配して、もうっ!」

「ちょっと、さやかちゃぁん!」

タタタタタタタ

くそ……!取り敢えず煙を払わなければ…
私は天へ右手を突き出す。
40 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:24:23.60 ID:+j2xrOTi0
 ブワァ

魔法の力で白い煙が払われる。
よし、これで……!?


ギュルルル


「魔女の結界!?なんでこんな時に……!」

《♪ ♪ ケラケラケラケラ》

忌々しい使い魔の声を聞き、苛立ちがふつふつと湧き出てくる。

「黙れ……!」

ダダダダダダン

《a...》

時間停止からの乱射で周辺の使い魔が蜂の巣になっていく。

巴マミとの接触だけは避けなければならない……!
41 : ◆AliceQDRbk :2012/08/09(木) 14:26:32.83 ID:+j2xrOTi0
今日はこれで終わりです。

>>34-35が連投になっていますが、ミスです。見なかったことにしてください。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/09(木) 14:48:21.36 ID:CdhPGyoyo
スレタイにxxxHOLICっぽさを感じる
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/08/09(木) 14:48:34.50 ID:T3RZIPVAO
どっかで見たことある酉だと思ったら〜君……
いやここはSS速報だ、何も言うまい
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/08/09(木) 15:33:00.88 ID:Z9KTZdf2o
スレタイでミセを訪ねるほむほむかと思ったのに……
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/09(木) 15:46:57.43 ID:RHqDhALlo
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/08/09(木) 17:54:41.95 ID:EBOtQq0ao
>>44
過去スレだけど、ほむらが侑子さんのミセを訪ねる話ならあるよ
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/08/09(木) 19:36:14.13 ID:Z9KTZdf2o
>>46
山口のよしみでkwsk頼む
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/09(木) 22:45:07.16 ID:01UEhjGIO
糞コテがSSに興味を持ったか

所々入るネタが寒い

つまんねつまんね
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/09(木) 23:13:29.84 ID:Bukfu5hGo
コテが被ることはよくある
ちゃんと確認したのか?
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/09(木) 23:16:41.49 ID:xVRooOeWo
ほっといていい
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 06:43:33.56 ID:WQBCSGico
続きはまだかね?
52 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/08/19(日) 13:07:30.93 ID:7ubmOwPSO
すみません。
色々と忙しく、中々投下の目処が立たないので、とりあえず報告だけさせていただきます。

早ければ今週、遅ければ再来週あたりに投下します。

あまり小説やSSは書いたことがないので、アドバイス等ありましたら是非お願いします。
53 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:27:30.29 ID:fQpJ77zSO
携帯から投下します。
誤字脱字等ありましたらご指摘お願いします。
54 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:28:18.24 ID:fQpJ77zSO
――焦りに心を蝕まれながら私は走る。お願い、間に合って……!

しかし、努力虚しくその顔は硬直した。

金髪縦ロールの少女が、まどかたちの前で銃を広げ乱舞していたからだ。

「………間に合わなかった…」

私は頭を抱え項垂れた。

刹那、爆発的な音にビリビリと骨という骨が震えた。

その衝撃に顔を上げると、まどかたちを恐怖へと陥れていたであろう使い魔たちが、マミの無駄にでかい大砲により一瞬で消滅していた。
55 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:29:45.44 ID:fQpJ77zSO
「……相変わらずド派手ね、あの先輩はぁっ……!」

そういう派手さがまどかたちに間違った憧れを与えるというのに。

ひくひくと顔を引き攣るのを抑えながら私はマミの元へと向かう。

ストッ

「ぁ……!」

私が鉄骨で出来た足場に身を降ろすと、まどかが怯えの表情を見せ、さやかはまどかを庇うように片腕を広げた。

「……魔女は逃げたわ。仕留めたいならすぐに追い掛けなさい?」

マミがこちらを向き、私を諭すように話しかける。
56 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:30:47.45 ID:fQpJ77zSO
「私が用があるのは」

こちらをまっすぐに見つめてくるマミから、まどかの腕に抱かれたインキュベーターへと視線を写す。

「飲み込みの悪い子ね。見逃してあげるって言ってるの」

マミへ視線をもう一度戻すと、その穏やかだった表情は睨みの視線に変わっていた。

非常に困った。彼女と敵対するのは出来れば避けたいところだが、今ここでインキュベーターを見逃せば必ずあの淫獣はまどかに契約を迫るだろう。

ここは変化球で。私はそう心の中で判決を下すと、深く息を吸い、重い口を開いた。
57 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:32:47.62 ID:fQpJ77zSO
「……心遣いは有り難いけれど、引くことはできないわ。でも、あなたも穏便に済ませたいところでしょう?」

言い切ると、私はまた息継ぎをし次の言葉を続ける。

「私も戦闘に発展させるのはあまり気が進まないわ。そこで、提案よ」

顔色を窺うようにマミを見つめる。訝しげな表情はしているが、話を聞く気はあるようだ。

「提案………?」

「ええ。あなた、彼女たちに魔法少女についての説明、する気なんでしょう?」

そう言うと、私はまどかたちを見やる。

「ええ、そうよ……。それが気に食わないって訳かしら?」

キッと睨み付けてくる少女を尻目に、私は続ける。
58 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:34:08.49 ID:fQpJ77zSO
「ええ。だから、あなたの”説明会”に私も参加させて欲しいのよ」

皮肉げにそう言い切る。

「…………え?」

どうやら意外だったらしい。険悪だった雰囲気が、一瞬間抜けな雰囲気に変わった。

「でっ、でも!あなたを参加させたら、何をしでかすか分からないわ!キュゥべえを怪我させた張本人を信用できない」

そう言って取り直し、私を見つめてくる。

「そうね。だから、これを預けるわ」

シュパァン

私は変身を解き、あるものを投げた。
59 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:35:17.68 ID:fQpJ77zSO
パシッ

「……これ……あなたのソウルジェムじゃない……!なんのつもり……?」

そう。私が投げたのは、他ならぬ私の命そのものだった。

「あなたといる間は、キュゥべえを襲ったりしないわ。ソウルジェムが手元になければ変身できないし」

彼女は絶対に私のソウルジェムを、私が何かしでかさない限り壊すことはないだろうと信じての判断だった。

私はこの、さみしがりやで、かっこつけで、豆腐メンタルな先輩を、信じていたから。

「だから、彼女たちと一緒に行かせてちょうだい。なんならそのソウルジェム、返さなくてもいいから」

力強い眼差しでマミを見つめる。
60 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:36:45.50 ID:fQpJ77zSO
「………はぁ…私にはあなたの考えてることがまったくわからないわ……」

呆れたような眼差しでマミは見つめてくる。

「なら、このソウルジェムは説明する間預かっておくわ。それなら、一緒に聞いていてもいいわよ」

そう言うと、マミは私のソウルジェムを両掌で包んだ。

「あ、あの……説明とはっ……?」

美樹さやかがまぬけな声でマミに聞いた。

その隣にいるまどかは何故かどことなく嬉しそうだ。

「…あぁ、ごめんなさい……でも、その説明をする前にキュゥべえを貸してもらってもいいかしら?」
61 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:38:09.60 ID:fQpJ77zSO
「あ、は、はいっ!」

まどかが慌ててキュゥべえをマミにそっと渡す。

キュゥべえは虫の息で、今すぐ首をマミってやりたいのを我慢するのに多くの力を使った。

……あれ?マミるって……何かしら?

「さて……」

マミはキュゥべえをそこらへんにあったブルーシートの上に置くと、私のソウルジェムを片手に持ち、片手をキュゥべえに翳しながら正座をした。
62 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:39:06.31 ID:fQpJ77zSO
フワッ

とても優しい、イエローの光がキュゥべえのまわりに広がる。

恐らく固有魔法で治療をしているのだろう。みるみる傷が癒えていく。

「す、すごい……」

目を見開いて驚くさやか。

「ぅ………」

ピクリ、とキュゥべえが動いた。

そして、しばらくするとそのくりくりと紅い目を開ける。
う………うざい……

「…ありがとうマミっ!助かったよ」

マミを見上げニコリと笑うキュゥべえ。
くそ、やめろォ……っ!
63 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:40:09.47 ID:fQpJ77zSO
「お礼はこの子たちに。あなたを見つけたのはこの子たちよ」

「ありがとう!まどか、さやか!」

彼女たちに向き直り、もう一度笑う淫獣。

ほむ”ぅ”う”う”う”う”……

「し、しゃべった!?てかなんで私たちの名前を!?」

またも驚く彼女。
無理もないだろう、こんな気味の悪い生き物。

「実は、君たちにお願いがあるんだ!」
64 : ◆AliceQDRbk :2012/08/24(金) 23:41:05.37 ID:fQpJ77zSO
「お願い?」

きょとんとしてまどかがみつめる。

「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ!!」
「ほむあっ!!」

ガコォオン

「ほむらちゃん!?」
「て、転校生!?」
「ええっ!?」

怒りで思わず頭を鉄筋にぶつけた私は気絶する寸前にあるものが見えた。

正座したまどかの太ももの間。

「(ナイス……ホワイトパンティッ!!」

「え……ぁ、ぃ、いやぁああああああ!!」

まどかの悲鳴が遠く遠く響き渡った。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 23:41:53.38 ID:fQpJ77zSO
投下終了。
また暇ができれば投下します。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 23:48:14.11 ID:K2flZ2vDO
ほむらのナイス!ホワイトパンティに吹いたwwww
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 00:40:23.63 ID:W+jWs2/ko
なんだろうこの小ネタのせいで話に集中できない感じ…
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 18:48:29.32 ID:VNMzuTtHo
>「(ナイス……ホワイトパンティッ!!」
途中から声に出てんじゃねーかwwww
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/28(火) 21:56:55.75 ID:tikCNSpDo
はよ
70 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:50:36.43 ID:PEz9K1Cn0
夕焼けの紅に包まれた、見滝原を望める小綺麗な部屋。

私たちはその部屋の真ん中に陣取られた硝子製の三角形のテーブルに着いていた。


黄色のふわふわした生地に生クリーム、チョコレートがふんだんに使われたとても食欲がそそられる手作りケーキに、
上品な食器に注がれた、茶色の液体からゆらゆらと上がる白い湯気。
そこからほんのりと香るダージリンの匂いに包まれながら、私は痛む頭を押さえていた。


ここは巴マミの部屋。何故か赤面したまどかによると、マミは気絶した私をわざわざ抱えてここまで運んでくれたらしい。


気絶する前にしていたことが思い出せない……

「ごめんなさい、私何をしていたの?」

相も変わらず頭を抱えて、首だけを回しまどかたちを見つめる。

「「………………」」

何故かまどかとマミは顔をほんのり紅に染め、ぷい、とそっぽを向いてしまった。
はい?
71 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:51:52.71 ID:PEz9K1Cn0
「自分の胸に聞いてみなよ……」

美樹さやかははぁ、とため息をつきながら呆れたようにじっと見つめてくるし。

「…何よ………はっきり言いなさいよ…」

不満そうに目を細め、彼女たちを見つめてみる。
私は何をしたのよ…?


しばらく険悪、というか、微妙な雰囲気が流れた。
何よ、なんなのよ……


「あ、ああっ!!自己紹介を忘れていたわね!」

汗をだらだらと垂らしたマミに露骨に話題を変えられた。

「私の名前は巴マミ。見滝原中の三年生よ」

マミは自らの豊満な胸に手を当て、そう言うと私たちにニコリと微笑む。
むぅ…

「あ、あたしは美樹さやかです!二年生です」

矢継ぎ早にさやかが身を乗り出して続けると、
まどかに視線を移した。
72 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:52:41.34 ID:PEz9K1Cn0
「あ、えっと……私は鹿目まどかです、学年はさやかちゃんと同じで……」

そう言うと、まどかは遠慮げに上目遣いでこちらを向いてくる。

「……私は暁美ほむら、学年は同上」

すっと、息継ぎをする間もなくクールにそう言い切る。


「あー……転校生?無理にクールぶらなくても、もういいよ……」

さやかが哀れみの視線でこちらを見てきた。
さやかのこんな表情は初めて見た。これほどムカつくとは。

「なっ……何よ……」


気付けばこの場にいる全員が哀れみの視線で私を射ぬいていた。

「……さ、さぁ……あ、キュゥべえはもう自己紹介済みだったわね」

あせあせとマミはそう言うとぱちんと手を叩く。
目が忙しなく泳いでいる。
73 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:53:30.03 ID:PEz9K1Cn0
それに不思議不思議した白猫はこくんと頷くと、口を開く。

「マミ、そして……暁美ほむら。彼女たちは…僕と契約した魔法少女なんだ」

くるん、と白い尻尾が空を舞う。
小さな紅い瞳がマミと私をじっと見つめた。

「…魔法少女ぉお?」

さやかが目を見開いて間抜けな顔で驚く。
オーバーアクションな少女だ、まったく。

「暁美ほむらはちょっと……よくわからないのだけどね」

きゅい、と不思議そうに首を傾げるキュゥべえ。
ここまで殺したくなる小動物と言うのも、中々いるものではないだろう。

「え?」

マミがきょとんとした顔でキュゥべえを見つめた。
訳が分からないという顔だ。無理もない、か。

「まぁそれは、あとで話すよ。マミ、ソウルジェムを出してくれるかい?」

紅い目が促すように静かにマミに告げた。

「あ、えっと………これがソウルジェムよ」

きらきらと黄色い輝きを放っている宝石を取り出すと、マミは微笑む。
綺麗なソウルジェムだ。彼女のおっとりした内面が滲み出ている。

「「ソウルジェム?」」

まどかとさやかが同じ台詞を同じタイミングで話す。
まったく性格が違うと言うのに、友達としてはぴったりだわ。
――まぁ、性格が同じだったら絶対噛み合わないわよね。
74 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:53:56.57 ID:PEz9K1Cn0
「魔法少女が契約によって生み出す宝石よ。魔力の源でもあるわね」

私は思考を止め真実を隠して質問に答える。
今は、言うべきではない。

「契約って…?」

まどかが恐る恐るキュゥべえに聞いた。

「僕は君たちの願いを何でも一つ叶えてあげる。その代わりに、魔女と戦う使命を課されるんだ」

無表情な顔が淡々と事実を告げていく。

「魔女って言うのはね……例えば、魔法少女が希望の象徴とするなら、魔女はその逆。絶望をまわりに撒き散らすのよ」

その味気ない説明にマミが付けたし、苦い顔をした。

「うわぁ……どんな被害があるんですか?」

さやかも苦い顔をした。

「人が……魔女に取り込まれ、亡くなったり……魔女に操られて、意図にない行動を起こしたりするわ」

マミが目を瞑り、顔を伏せる。悲しそうな顔だった。

「そんな………!」

「だから、私たちは戦わなければならないのよ。この身が滅びる、その時まで、ね」

無表情で紅茶を啜りながら、私はティーカップにゆらゆらと映る自分を見ていた。
醜い、ものだ。
75 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:54:42.53 ID:PEz9K1Cn0
「あ、あたしたちも……魔法少女になれるんですか?」

さやかが私たちを期待に満ちた目で見つめてくる。
その両掌は胸の前でシスターが神に祈るように、組まれていた。
……彼か。

「……なれるわ。けれど……やめておきなさい。魔法少女なんて、ろくなことがないわ」

私はティーカップを机の上に置き、さやかを見つめる。

「魔法少女になるということはね。人としての人生を、諦めるということなのよ」

さやかを睨む。あなたは、考えが甘過ぎる……

「そう……友達と遊ぶ時間も出来ないし、恋をする時間だって、なくなっちゃうわ」

意味こそ取り違えているが、マミも悲しそうな顔で肯定の意見を続け、
さやか、まどかを見る。

「人間の暮らしがしたいなら……どれだけ、叶えたい願い事があっても、諦めなさい。決して軽く考えてはダメよ」

そう、きちんと考えて……
彼女は向こう見ずで、考え無しに契約してしまう。それは、死を意味するのだから。

「……わかった。ちゃんと、考えてみる」
76 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:55:12.29 ID:PEz9K1Cn0
さやかがそう言うと、まどかは合わせて頷く。

「……うん、じゃあ、日も暮れてしまったし!今日はお開きにしましょうか」

マミは微笑み、立ち上がる。

私たちも立ち上がり、頭を下げた。

「あなたたちも、魔法少女の戦いを見てきちんと決めたほうがいいだろうし……明日は今日逃がした魔女を倒しにいきましょう」

「え?」

マミはさやかたちにニコリと笑う。

「あなたたちも魔女退治に付いてくるのよ。勿論、安全は保証するけれど……どうかしら?」

マミはさやかとまどかを交互に見た。

「あ、は、はいっ!いきますっ!」

「わ、わたしもっ!」

さやかの台詞を食い気味に返事するまどか。
流石に魔法には興味があるのだろう。
77 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:55:56.88 ID:PEz9K1Cn0
「良かった!暁美さんはどうかしら…?」

彼女と手を組んでおくことは悪いことではない。
多少なりとも、今日という一日の間で好意的に見てくれたのだから、このチャンスは見逃せないだろう。
しかし少しバツが悪い。彼女とまともに話をしたのなんていつ以来だろうか。

「…行くわ……」

返事を目を背けながらボソッと呟くように言い放った。

「ふふ、よかった……じゃ、暁美さんは少し残ってもらってもいいかしら?」

「ええ…」

ぷい、と顔を背けたまま返事をした。
大方ソウルジェムを返してもらえるのだろう。
78 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:56:27.86 ID:PEz9K1Cn0





































79 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:58:13.20 ID:PEz9K1Cn0
「ふふ………可愛い後輩が出来て嬉しいわ」

まどかたちが去っていった玄関をいとおしそうに眺めるマミ。

――彼女はずっと、一人きりで、誰にも頼れずに生きてきたのだ。
誰かに頼りたくて、それでも、杏子のように裏切られるのが怖くて……
自分を見ていてくれる人がいると言うだけでも、彼女はとてもとても、幸せなのだろう。
それほどまでに、彼女は孤独に侵されていた。


コトンッ

口元に持っていた紅茶を机に置く。本題に入ってもらわねばならない。

「…それで。私に用があるんじゃなかったの?」

内心とは裏腹に、私はじろりとマミを見る。
本当は、今すぐ優しい言葉をかけたいほどだったけれど…。

「あ、ごめんなさい……はい、これ」

マミは微笑み、スカートのポケットから大事そうに私の紫のソウルジェムを渡す。

「……いいの?また私はキュゥべえを襲うかもしれないわよ」

私はまだ手を伸ばさず、そう確かめる。
せっかくなのだし、彼女に警戒されるのは、避けたい。
80 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 21:59:32.44 ID:PEz9K1Cn0
「………あなたは、悪い娘には見えないわ」

真剣な顔をして、マミはソウルジェムをそっと掌で包む。


「まだ、判断しきれてはいないけれど……それに、理由無しにキュゥべえを襲ったりするはずはないと思うの。何か思うところがあるんでしょう?」

そう言って、マミは真剣に続ける。
その瞳は睨みを効かせているようにも見えた。


「お願い、教えて。何故キュゥべえを襲うの?」

…彼女は、魔法少女の仲間が欲しいのだろう。
そして、私を信じたい。


――どうしてだろう。
今日の私は。それを裏切れない……――


「…長い話になるわ。そして、辛い話にもなる。それでも、自分を見失わないで欲しいの」

無意識に言葉が口を開ける。
ここまで早く真実を話すはめになるとは思わなかった。
けれど、彼女には早く立ち直ってもらっていたほうがいい。
ああもう、私らしくない考え……こんなのとっくに捨てたはずなのに。


でも、あちらから歩み寄って来てくれたのだから。
この時間軸は、これに賭けてみたい、と思わされた。


目の前の彼女は覚悟を決めたようにこくりと頷いた。


私は、今までの長い長い時間の旅路を話し始めた――
81 : ◆AliceQDRbk [saga]:2012/08/30(木) 22:00:26.49 ID:PEz9K1Cn0
投下終了。色んな文章の書き方を試していきたいです
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/30(木) 22:04:51.36 ID:v5Sg3iFPo
乙!
これからの展開が楽しみだぜ
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 22:41:05.98 ID:4Vi29iDDO
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 18:39:21.80 ID:YxtXiG5to
このスレはエタる
85 : ◆AliceQDRbk :2012/09/29(土) 23:37:24.67 ID:7MFXEArr0
━━ふわり、と暖かな風が艶めく黒髪を揺らした。

夜空に浮かぶ緑の木々がざわざわと揺らめき、葉の数々が煉瓦張りの通学路にゆっくりと落ちていった。

こつ、こつ、と茶色の革靴が煉瓦をリズミカルに叩く。小さな衝撃が身体全体に響き渡る。

「……」

黒髪の少女、暁美ほむらはその歩を止めることなく思考の海へと飛び込む。

たった2、3時間しかなかったのにも関わらず、この絶望の連鎖から抜け出す希望が見えた昨日のことを。
86 : ◆AliceQDRbk :2012/09/29(土) 23:38:10.29 ID:7MFXEArr0
━━昨日、ほむらはかつての先輩巴マミに全てを話した。

かつての弱い自分。魔法少女と魔女の、真実。まどかを助ける為に一ヶ月を何度も、何百という日々を過ごしてきたこと。

話し終えた時、ほんの一瞬後悔と不安がふいに頭をよぎった。話して何になったというのか?それにマミはまた、錯乱してしまうのではないか?

不安でぎゅうぎゅうと押しつぶされそうな心を何とか抑えて、伏せた顔を上げた時にほむらに表れた表情は驚きだった。

巴マミは、泣いていた。その美しい黄色の瞳に悲しみを灯して、ぽたぽたと宝石のように透き通った涙を流していた。

「っ、ぁ、大変っ、だったのねっ、……ごめん、なさい……あな、たにそんな、辛いっ、思いをさせて……」

大きくしゃくりあげながらそんな言葉を掛けてくれた先輩に対して、ほむらは思わず声が喉を付いた。

「信じて、くれるの……?」

信じられなかった。どうしてマミは私に対してこんな慈愛の言葉を投げかけられるのか?

━━あなたにとって私は、数時間前に会ったばかりの他人でしかないのに。
87 : ◆AliceQDRbk :2012/09/29(土) 23:38:52.97 ID:7MFXEArr0
「勿論、よ……ごめんなさいっ、ごめんなさい……辛かったよね……苦しかったよね……」

赤く目を腫らして、そんな言葉を並べていくマミに、私は喉が、目が、胸が、熱くなってしまった。

━━子供のように泣き出した私を、マミはゆっくりとなだめるように抱きしめてくれた。



しばらくして、落ち着いたほむらはマミにこう聞いた。

「魔法少女は……魔女にいずれなるのよ?怖くはないの……?辛くはないの?」

先ほどマミから飛び出してきたのは、漠然とした不安の言葉ではなかった。それは、ほむらに対する謝罪だけだった……。

「怖いし、辛いけれど……暁美さんが経験してきた辛さに比べれば、こんなのちっぽけだもの……いざとなればソウルジェムを砕けばいいのでしょう?」

そう微笑みながらマミはほむらの頭を撫でた。
88 : ◆AliceQDRbk :2012/09/29(土) 23:39:37.86 ID:7MFXEArr0
その言葉を聞いて、ただただ嬉しかった……この秘密を全て明かしたことなど、今までの時間軸では一度もなかった。

私の今までの努力が、積み重ねてきた辛い思いが。誰かに認められたというだけでも、とても嬉しくて、たまらなかった。



ふと、ほむらは移り行く夜空に手をかざす。街頭の淡い光に照らされて、白く今にも折れそうな細指が星と星との間に写りこんだ。

「……ふふ」

柄にも無く柔らかな微笑みをほむらは浮かべ、視線を上から目の前へと落とす。

小さな公園がある。普通の人間が見ればただの公園に過ぎないが━━魔法少女が見れば、大きな亀裂があるように見えるのだ。

━━魔女の、結界。

恐らく今は巴マミと使い魔が交戦しているであろう結界を見つめ、ほむらはゆっくりと右手を宙へとかざした。
89 : ◆AliceQDRbk :2012/09/29(土) 23:41:51.21 ID:7MFXEArr0
ブワァッ、という大きな風が吹いたような音が静寂の公園を包み込む。


ゆっくりと、何も見えない暗闇が目の前へと広がっていく。


━━待っていてください。


心でそう呟き、ほむらは駆け出した。
90 : ◆AliceQDRbk :2012/09/29(土) 23:45:44.71 ID:7MFXEArr0
少ないですが、投下終了です。


改めて最初から読み返してみると、やはり酷い文ですね…

こんな駄文ですが、これからできる限り頑張っていこうと思います

エタる可能性は無きにしもあらずですが、少なくとも打ち切り展開にしてでも完結だけはさせたいです。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/29(土) 23:48:51.90 ID:/UcNTWiko

待ってたぜ
マミさんが真実を受け入れたってのになんだろう、嫌な予感がする
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 09:01:42.15 ID:cQlo/l0IO
なんだろう、一挙放送を見たせいか。スゴく泣けてきたんだが
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/09/30(日) 09:09:33.64 ID:1pIsdAobo
生きておったか
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/28(日) 10:33:46.01 ID:ZssEOZGpo
1ヶ月経つが大丈夫か
95 : ◆AliceQDRbk [sage]:2012/11/02(金) 19:06:43.30 ID:WJXVrzZSO
大丈夫です。すみません。

多分今月中に一回は投下できると思います。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/11/07(水) 00:39:23.79 ID:vrAXq1CN0
待機
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 15:01:15.77 ID:0wZvalX7o
( ・_・)
98 :1 [sage]:2012/12/30(日) 15:47:42.47 ID:jExl5+If0
すみません、トリップを忘れてしまい名前欄が1だけになってますが>>1です。

しばらく書けなくて申し訳ないです…
実は諸事情により続けることが難しくなりました。

書き切りたいのは山々なのですが、今書くことはできないので、一旦html依頼を出させていただこうと思っています。

また余裕ができましたら、再編集して書き切ってから投稿しようと思います。
いないかもしれませんが、楽しみにしてくださっていた皆様にはとても申し訳ないと思っています。
それでは、本当に申し訳ありませんでした。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 17:51:11.66 ID:uf+P0UpTo
多分再投稿されることは無いと思うが、一応期待しておく
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