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恒一「多々良さんが意識不明で病院に運ばれた?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:42:28.81 ID:1wOxP9HM0
 いないもの対策が成功して恒一は事情を理解しているということで
 いないものは中尾で立候補ということで
 中尾がいないものなので席の場所が見崎→望月→中尾と玉突きになってる感じで
 中尾→窓際最後尾
 望月→窓から二番目の前から二番目(前島の後ろ)
 見崎→真ん中前から四番目(恒一の左隣)

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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:43:47.15 ID:1wOxP9HM0
 朝 3年3組教室


 水野「ああ、夜勤から帰ってきた姉貴が言ってた」

 赤沢「学校にも連絡が来てるわ。一時間目の国語はLHRに変更、それについての話し合いになるわ」

 恒一「……それって例の災厄だから?」

 赤沢「現時点ではなんともいえない。それを判断するためにも情報を集めないと」

 水野「病院も何でもいいから情報が欲しいそうだ」

 恒一「原因を掴みかねてるって事?」

 水野「そんなとこだ」

 ガラガラ

 久保寺「みなさん、席についてください」

 赤沢「先生が来たわね。じゃあ水野君。病院からの報告はお願いね」

 水野「まk―、お、おう」

 赤沢「?」

 水野(まかせろー、って言いそうになっちまった。あぶねあぶね)

 中尾「」ニヤリ
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:46:29.90 ID:1wOxP9HM0
 一時間目 国語→LHR


 水野(メモを見ながら)「……というわけで、多々良は深い昏睡状態にあって、これが三ヶ月続くとい
わゆる『植物状態』と診断される状況だそうだ」

 水野「原因・治療法とも不明で……言い換えると医学的には異常は見当たらないとのこと」

 水野「そこで精神的な要因が考えられるので、最近多々良が何か強いショックを受けるような出来事が
なかったかどうか」

 水野「もし知っている奴がいたら情報を提供して欲しい、と。病院からは以上だ」

 赤沢「ありがとう。では藤巻さん」

 藤巻「」ビクッ

 赤沢「多々良さんが倒れたときの状況を教えてください」

 恒一(藤巻さんが一緒だったのか……)

 藤巻「ああ、うん……。状況といってもなあ。会ってろくに話もしないうちにいきなりだったし」

 赤沢「お願いします」

 藤巻「ああ、えーと、時間は昨日の午後6時20分くらい。場所はZマート。県道から脇に少し入ったとこ
にあるスーパーな」

 杉浦「!」

 金木「!」

 松井「!」

 高翌林「!」

 赤沢(多佳子が動揺してる……? いや、前後の三人もか)

 藤巻「今日の3,4時間目が家庭科で調理実習だろ。そこで必要なものを買いに、東側の出入り口から入
ったんだ、Zマートに」

 藤巻「そしたら西側の出入り口の方に見知った顔が見えたんで近づいてみたら、恵だったわけ」

 藤巻「恵について行って同じ物を買っとけばまず間違いはないだろうと思って声をかけたんだが、振り
向くかどうかというところでドサッ」

 藤巻「恵、倒れちまった……」

 藤巻「慌てて支えたんだが、呼んでも揺すっても目を覚まさないんで救急車を呼んでもらったんだ」

 藤巻「成り行き上アタシが救急車に同乗したんだが……聞かされたのは水野……のお姉さんからの情報
に付け足すことは何もなかった。恵の両親もしばらくして病院に来たんだが、原因に心当たりがある様子
じゃなかったなあ」

 赤沢「ありがとう」

 赤沢「では……」ジーッ

 杉浦「……」

 赤沢「部活中の様子はどうでしょう。吹奏楽部の王子君に猿田君」

 王子「ショックを受けるようなことがあったとは思えないなあ。調理実習をとても楽しみにしていたよ
うだったし」

 猿田「演奏もいつもどおりだったぞな」

 赤沢「そうですか……。部活が終わって以降、何かあったのかしら?」ジーッ

 杉浦「……あの」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:47:06.68 ID:1wOxP9HM0
 赤沢「たk―杉浦さん」

 杉浦「直接多々良さんのことじゃないんだけど、いい?」

 赤沢「どうぞ」

 杉浦「実は私も昨日、Zマートで買い物したの。理由は藤巻さんと同じで、調理実習の食材を買うため。
時間はもう少し早かったと思う」

 杉浦「だからかな。藤巻さんも多々良さんも見てなけど、そのかわりに駐車場の端の方に金木さんと松
井さんを見たような気がするんだけど」

 金木「!」

 松井「!」

 杉浦「二人は何か知らないかな、と思って」

 金木「あ、ああ。Zマートなら行ったよ。時間は杉浦さんよりもさらに早かったと思う。駐車場では亜
紀と待ち合わせしてたんだ」

 金木「家庭科では別の班だからね。予習もかねて、亜紀の家で同じものを作ろうってことになって」

 松井「」コクコク

 赤沢「外で待ち合わせ? 二人なら、その……互いの家を知っているのでは?」

 金木「歩きながら少し話したいな、って思ってね」

 松井「恵ちゃんも奈緒美ちゃんも見なかったし、多佳子ちゃんにも気づかなかったよ」

 ???「フェアじゃないね」

 赤沢「高翌林君?」

 高翌林「僕だけ名乗り出ないのはフェアじゃないよ」

 赤沢「ということは高翌林君もZマートに?」

 高翌林「うん。でも中には入ってないんだ。たまたま通りがかって、外のトイレに寄っただけ」

 赤沢「誰か知っている人を見かけましたか?」

 高翌林「ううん、誰も」

 高翌林「ただ帰ろうとしていた時、店から出てきた人が中を振り返って見ていたから、多々良さんが倒れ
て騒ぎになっていたんじゃないかな」

 高翌林「実際に見てないからフェアな判断は下せないけど」

 ガヤガヤ ドウイウコトダ カタヨッテルゾナ

 赤沢「静かに。ほかに、昨日Zマートに行ったという人はいますか?」

 一同沈黙

 恒一(廊下側の列の全員が昨日Zマートに居合わせたということか)
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:49:30.50 ID:1wOxP9HM0
 昼休み 第二図書室
 赤沢 恒一 見崎 勅使河原 望月 小椋 綾野 有田 廊下列の面々 水野 中島 王子 猿田 米
村の計18人が押しかけてきている


 千曳「このままだと植物状態、か」

 赤沢「どうしたらよいのでしょうか?」

 千曳「多々良君は女子だったな」

 赤沢「はい」

 千曳「ふん。●×年度のことだ。二学期のある日、一人の三年三組の生徒―まあ、男子なのだが―が外
出中に突然意識を失い入院した」

 千曳「入院生活は長きに及び、三ヶ月を経過して受験シーズンを迎え、植物状態と診断されてもなお目
を覚まさなかった」

 千曳「その年はある年だったんだが、いないもの対策が成功してね。卒業式まで一人の犠牲者も出さず
に乗り切ることができた」

 赤沢「まさか……」

 千曳「いや、いないものに指名されたのは別の生徒だよ」

 千曳「その生徒の入院と現象の関係は特に調べなかった。調べようがなかったというのがより正確なの
だろうが、前例がなかったし、確信もない」

 千曳「下手に動いて藪蛇になってもつまらない。なにより犠牲者−彼が「犠牲者」ではないとするなら
ば−を出さずに卒業まで乗り切ることに必死だったからね」

 千曳「卒業式を終えて紛れ込んでいた死者が姿を消し、皆が安堵していたところに病院から連絡が入っ
てきた。入院していた生徒が奇跡的に意識を取り戻したということだった」

 千曳「ようやくそれが現象と関連があることの確信が得られ、藪蛇を恐れずに動けるようになったのだ
が、その時にはもう遅きに失していた」

 赤沢「災厄を乗り切った安堵のあまり、クラスの結束が失われてしまった?」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:50:09.36 ID:1wOxP9HM0
 千曳「いや、卒業式当日の別の騒動が話題と注目を掻っ攫って、調査どころではなくなってね。なにせ
いないものが―いや、それはどうでもいいな」

 見崎「その生徒はその後どうなったんですか?」

 千曳「彼は受験をしていないからね。三月の残り期間と四月の頭まで目一杯使って教師たちが補習に手
を尽くし、特例を認めさせてどうにか高校に進学したよ」

 千曳「行けるところに行ったという感じだが」

 千曳「私も社会科教師として協力した。思えば、あれが教鞭をとった最後の機会だったな……」

 千曳「それにしてもZマートか……。ねえ、君」

 米村「米村ッス」

 千曳「君の背後の本棚に夜見山市の地図が入っているから取ってもらえるかな」

 米村「一番新しい95年版でいいですか?」

 千曳「ああ、それと70年の版も頼む」

 米村「70年も? はいどうぞ」

 千曳「Zマート……」ペラペラ

 赤沢「県道近くのスーパーです」

 千曳「これか。番地は……!! やはりか……」

 恒一「千曳さん?」

 千曳「三年三組にまつわる災厄が、夜見山岬宅の火災と彼の死に端を発しているということはみんなも
知っているね」

 恒一「はい」

 千曳「隣接する雑木林など結構広い面積が焼失してしまって、火災後は住宅の基礎や黒く煤けた土など
が晒されていたのだが、しばらくして県道が敷設されることになってね」

 千曳「それに合わせてその土地が再開発の対象となったのだろうな」

 千曳「整地された土地に企業を誘致することになり、とある小売業者が応募したてきたと聞いていた」

 恒一「まさか」

 千曳「70年の地図と95年の地図で、位置が一致したよ。夜見山岬宅とZマートの」

 千曳「そう、Zマートは夜見山岬宅の跡地に建っているんだよ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:52:37.53 ID:1wOxP9HM0
 赤沢「決まり、ね……」

 恒一(多々良さんが意識不明になったのも現象による災厄?)

 恒一「このままだと、多々良さんは卒業式まで目を覚まさないということでしょうか?」

 千曳「前例通りのことが起こるとすれば、そうなるね」

 中島「そんな……」

 千曳「それで、君たちは多々良君を救おうというのだな」

 赤沢「え!?」

 中島「当然です!」

 赤沢「ちょ」

 中島「恵、卒業まで入院なんてかわいそう……」

 千曳「大勢でやってきたのは決意表明的なものだと思ったのだが、やはりそうか」

 赤沢「い、いえ、具体的な方針はまだこれから……」

 松井(現場証言を求められるかもしれないって泉美ちゃんが言うから)

 金木(亜紀が行ったら私も行くしかないじゃない)

 水野(姉貴を通じての病院との連絡係ってだけなんだよな)

 勅使河原 望月 綾野 小椋 有田 米村(野次馬でーす)

 杉浦(泉美についてきただけ)

 見崎(榊原君についてきただけ)

 恒一「そうだね中島さん。僕も多々良さんには戻ってきて欲しいと思う」

 赤沢 見崎 中島「!」

 高翌林「僕も同意見だよ。多々良さんだけこんな目に遭うのはフェアじゃない」

 藤巻「アタシも手伝うよ」

 藤巻(恵の両親のことを思い出したら、何とかしてあげたくなってきたからな)
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:53:22.81 ID:1wOxP9HM0
 松井「杏子ちゃん、私も恵ちゃんがかわいそうという点では同じ」

 金木「亜紀がそう言うなら……」

 王子「吹奏楽部一員として見過ごせないね」

 猿田「主席フルート奏者がこのままでは困るぞな」

 水野「病院との連絡はまk―、もとい、俺がやるわ」

 水野(多々良に早く良くなってもらわないと、姉貴がウザくて仕方ねえし)

 小椋「彩」

 綾野「うん」

 小椋 綾野 有田(←!)「私たちも混ぜて」

 米村(野次馬続行だ)コクリ

 勅使河原「サカキがそう言うなら俺たちもだよな。なあ望月、見崎」

 望月「うん」

 見崎「……そうね」

 赤沢「えー……」

 杉浦「あきらめなさい。これはクラスの総意のようなもの。対策係とて従わないと」

 赤沢「分かったわ。それで」

 一同 チュウモク

 赤沢「どうすればいいんでしょう」

 他一同(無能!)

 千曳「●×年度の卒業生から情報を集めるとしよう。場所がはっきりしたことだしね」

 恒一「単に『外出中』との話でしたね」

 千曳「ああ。だが●×年度もZマートでの出来事と見てまず間違いないだろう」

 千曳「場所のことを切り出せば何か思い出す者もいるかもしれない。今日の放課後から早速動くことに
しよう」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:55:25.50 ID:1wOxP9HM0
 放課後 第二図書室
 女子生徒たちは●×年度の卒業生への電話連絡に追われている


 高翌林「男子が締め出されるなんて、フェアなのかな?」

 水野「女子生徒が訴えかけた方が、特に男は真剣に動くんだとさ」

 勅使河原「反論できねえ……」

 米村「先輩のお姉さま方とお喋りできないからって、そうがっかりしなさんな、望月」

 猿田「いやいや、望月は女性扱いされなかったことが屈辱なんぞな」

 望月「そ、そんなことないよ。でも、三神先生が女の人が好きだって言うんなら、僕は……」

 他一同(うわぁ……)

 勅使河原(好きっていやあ)

 勅使河原「それにしてもよ、サカキ」

 恒一「ん?」

 勅使河原「中島が真っ先にああ言ったのは、まあ分かるんだよ」

 王子「多々良さんと一番仲がよさそうだからね」

 勅使河原「それに真っ先に賛成したのがサカキってのは、何か特別な意味があるんじゃねえかって思っ
て」

 恒一「何が言いたい?」

 勅使河原「みなまで言っていいのか?」

 恒一「い、いや、やめてくれ」マッカッカ

 勅使河原「やっぱりなあ。お前、多々良を見るときの顔がただ事じゃねえもん」

 恒一「勅使河原にはバレてたか」

 水野「勅使河原だけじゃないぜ」

 米村「転校生ってのは何かと注目を集めるもんだ。多少時間が経っても」

 恒一「うう」

 勅使河原「レベルの高い今年の3年3組の中でも多々良は頭半分くらいは抜けている」

 高翌林(165cm)「大きいからね」

 望月(163cm)「うん、大きい」

 水野(175cm)「そういうことじゃねえよ」

 勅使河原「だがまあ、東京っ子のお眼鏡に適うほどとはなあ」

 恒一「関東平野じゅう探してもそういないレベルだと思うよ」

 勅使河原「でっかく出たな。って、関東平野ってどこからどこまでだ?」

 恒一「群馬や栃木の平野部も関東平野だよ」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:57:19.09 ID:1wOxP9HM0
 水野(栃木ってどこだっけ?)

 米村(群馬って何だ?)

 恒一「東京にはかえっていないタイプかな」

 水野「コギャルやガングロが群れ成す魔都だからな」

 勅使河原「いや、3組にも一人いなかったか?」

 米村「藤巻のは部活焼けだろ」

 猿田「いっしょにしたら和久井が怒るぞな」

 勅使河原「本人じゃねえのかよ……」

 一同(笑)

 勅使河原「で、何で多々良なんだ?」

 恒一「何でって、えと……」

 恒一「た、多々良さんはああ見えてとても親しみやすい人でね。一度だけ二人きりで話したことがある
んだけど―」

 勅使河原「……サカキが何で惚れたかじゃなくて、何で多々良がぶっ倒れたか」

 恒一「〜っ」

 望月「より厳密には何で多々良さんだけが、だね」

 王子「多々良さん個人というより、列で考えた方がいいじゃないかな」

 猿田「列の全員が夜見山岬の家の跡地に集まるというのが、災厄の発動条件なのかの?」

 高翌林「その上で、多々良さんだけが何かの条件を満たしていてああなった?」

 恒一「……もしくは、多々良さんだけ条件を満たしていなかった」

 恒一「その場合、『条件を満たしていないこと』が条件みたいなものだから、まあ同じだね」

 勅使河原「とすると、どうなる?」

 恒一「ランダムで選ばれたとか、席が前から二番目とかそういうのでない限り、多々良さん以外の5人
に何か共通点があるということだよ」

 勅使河原「共通点かあ。倒れたのが高翌林ならすぐに分かるんだけどなあ」

 高翌林「ええ! 僕以外みんなフェアじゃないの?」

 勅使河原「男はお前だけだろ!」

 望月「心臓が弱いってのも高翌林君だけだね」

 米村「杉浦なら眼鏡ってことになるか」

 水野「髪の長さ……は金木も長いし」

 勅使河原「金木に関しては、松井とのセットで考えるべきことがあるだろ」

 望月「それって……」

 水野「あの列で多々良だけがノンケってか」

 米村「だとすると杉浦は赤沢か」

 勅使河原「藤巻は江藤か多々良への一方通行として」

 望月「和久井君……」

 勅使河原「んで」チラ

 高翌林「フェ?」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:57:58.77 ID:1wOxP9HM0
 勅使河原「……望月と高翌林って同じ飛井町だったよな」

 水野「一緒に帰ってるのを見たことあるぜ」

 勅使河原「途中で人目につかない場所というと……」

 米村「夜見山川の橋」

 勅使河原「ソレダ!」

 望月「ナンノハナシヲシテルノカナ」

 勅使河原「橋の下でアーーーーッな仲にならないように気をつけろって話だ」

 高翌林「そんなのフェアじゃ―」

 望月「ごめん、高翌林君!」

 高翌林「フェ?」

 望月「僕はもう身も心も三神先生の物なんだ!」

 高翌林「心はともかく身はまだだよね?」

 望月「だから君の気持ちには応えられないよ」

 王子「一途だね」

 猿田「馬鹿ぞな」

 勅使河原「馬鹿で一途なんだろ」

 恒一(名簿を見ながら)(多々良さんと金木さんと高翌林君が飛井町か)

 恒一(でも他の三人は別々の町だし、番地の数字もバラバラだから関係なさそう……ん?)

 恒一(こ、これは……?)

 勅使河原「与太話はこれくらいにして。なあ、サカキ」

 恒一(う〜ん)

 勅使河原「サカキ。おい、サカキ。……多々良の旦那!」

 恒一「え? な、何?」

 勅使河原「お前も望月並みにたいがいだな。旦那は何か思いつくことはないのかよ」

 恒一「二つ、あるかな」

 勅使河原「おお何だ? 言ってみろよ」

 恒一「一つ目は、苗字の字数だね」

 勅使河原「多々良……三文字か」

 王子「他は全員二文字だね」

 猿田「名前の方はどうかの?」

 米村「えと、藤巻と杉浦が三文字で、松井・金木・高翌林が二文字、多々良だけ一文字か。関係なさそう
だな、こっちは」

 恒一「そうとは限らないよ。この現象の発端となった人の名前を思い出して」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:58:46.34 ID:1wOxP9HM0
 望月「夜見山……岬? あ!」

 勅使河原「夜見山岬も苗字が三文字で名前が一文字なのか」

 王子「なるほど」

 猿田「辻褄はあってるぞな」

 勅使河原「二つ目ってのは何なんだよ?」

 恒一「恵さん以外の5人には共通点についてなんだけど……」

 勅使河原(ツッコまんぞ)

 恒一「それは―」

 赤沢「みんな」

 男子「!」

 赤沢「●×年度の卒業生への連絡、終わったわよ。何話してたの?」

 勅使河原「この世の不条理と不公平について」

 赤沢「はぁ?」

 恒一「この現象について考察してたんだよ」

 王子「なぜ多々良さんなのか。なぜ多々良さんだけ、なのか」

 千曳「それで何か有用な結論は出たかね?」

 恒一「一応は。でもその前に確認。中島さん」

 中島「は、はい?」

 恒一「恵さんは三年になってからZマートを利用したことあるのかな?」

 赤沢・見崎(めめ、めぐみさん?)

 中島「……ええ。いっしょにお茶菓子を買いに行った、かな」

 中島(本当はタイムセールに出撃した戦友だけど、利用したかどうかだからいいよね)

 恒一「……という訳です」

 赤沢「??」

 千曳「なるほど」

 赤沢「いえ、ぜんぜん分かりません」

 見崎「無能」ボソ

 千曳「3年になってからZマートに行ったことがあるなら、なぜその時倒れなかったのか」

 千曳「なぜ昨日でなければならなかったか」

 千曳「彼女自身を含む列の全員が一堂に会すというのが必須条件だったのではないか、ということだね
?」

 赤沢「ああ、偶然にしては出来過ぎているから漠然とそうじゃないかとは思ってたけど……」

 見崎「無能」ボソ

 千曳「まあ確定したわけではないが、その線でも調べていってみることにしよう」

 千曳「さあ、そろそろ下校時刻だ。みんな気をつけて帰りたまえ」

 恒一「調査の方はどうなるんです?」

 千曳「当時の関係者の中には県外はおろか国外に住んでいるものもいるからね」

 千曳「中学生の手には余るだろうから、私が動くことにするよ」

 千曳「あの年の対策係といないものの協力を得られることになったから、まあ何とかなるだろう」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 14:59:16.78 ID:1wOxP9HM0
 帰り道
 猿田 王子


 猿田「榊原の作った回鍋肉、旨かったぞな」

 王子「さすがに前の中学で料理研究部に入っていただけあるね」

 猿田「多々良は食えなかったぞな」

 王子「同じ班なのにね」

 猿田「やりきれない話ぞな」

 王子「そうだね」

 猿田「多々良、昨日の部活の休憩時間に家庭科の教科書を熱心に読んでいたぞな」

 王子「最近じゃシベリウスの伝記だっけ、読み進めていたはずなのにね」

 王子「楽しみにしていたんだと思う。榊原君との……」

 猿田「やりきれない話ぞな」

 王子「まったくだね……」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:00:59.49 ID:1wOxP9HM0
 数日後の放課後 3年3組教室
 第二図書室にいた面々が揃っている


 水野(通話中)「分かった、録画しとくから。安心して職務に精励してろ」

 水野(通話中)「気にして医療事故とかやらかすなよ」

 水野(通話中)「何がスーパーナースだ、ド新人。切るぞ」ピッ

 水野「ふう」

 他一同「……」

 水野「姉貴からだ。多々良の病状に変化なし。原因・治療法、依然不明だとよ」

 望月「明らかに別のことも話してたよね」

 猿田「この定時連絡慣れてきてしまったぞな」

 水野(慣れてきたド新人ナースが私信ぽいこと話すようになったし)

 王子「千曳先生の姿をあの日以来見ないね」

 望月「直接話を聞く必要のある生徒の元を飛び回ってるんだって」

 勅使河原「なあ、旦那。あれ、どうなんだよ?」

 恒一「あれ?」

 勅使河原「お前が言いかけたやつ」

 赤沢「何の話?」

 勅使河原「旦那に有力な仮説があるんだとよ。多々良以外の5人に共通点があるって」

 恒一「単なる思い付きだよ」

 赤沢「興味あるわね」

 綾野「聞きたいなー、こういっちゃんの仮説」

 恒一「えー……気乗りしないんだけど」

 恒一「千曳さんが帰ってきて、●×年度の生徒にも同じことが当てはまってたら披露してもいいかな」

 綾野「その千曳先生がいないから暇なのー。演劇部が休みで」

 小椋「『私たちには気晴らしが必要ね』」

 綾野「そうねクイズはどうかしら?」

 赤沢「いや、そこは恋だから。クイズじゃなくて恋だから」

 赤沢「今のはシェイクスピアの『お気に召すまま』よ」ドヤ

 綾野「えー、恋でもいいけど、こういっちゃんて眠れる病室の美女にくびったけなんでしょ?」

 恒一・赤沢「え……え?」

 恒一「綾野さんたちも知ってたの?」

 赤沢「眠れる病室の美女って、多々良さんのこと!?」

 綾野「てっしーから聞いたよ」

 勅使河原「大っぴらに認めといて、いまさら広めるなはねーだろ」

 赤沢「くびったけってどういうこと!? 恒一君、まさか多々良さんのことを―」

 恒一「まあ、そうだけど……」

 赤沢「そうなの!?」

 小椋「そうかなーって思ってたらやっぱりそうだったって感じだけどね。あと泉美うるさい」

 中島「……」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:01:47.42 ID:1wOxP9HM0
 綾野「ね、ヒントでいいからさ」

 恒一「正解かどうか分からないのにヒントって、何かおこがましいなあ」

 小椋「いいからいいから」

 恒一「えーと、この中だと小椋さん」

 小椋「あたし?」

 恒一「―は、セーフだね」

 小椋「仮に席が廊下列だったとしても、Zマートに行って平気って事?」

 恒一「うん」

 綾野「あー、由美は多々良ッティとはいろいろ正反対だからねえ。発育とか発育とか発育が」

 小椋「ひとつしか挙げてないじゃない!」

 恒一「ここにはいないけど、佐藤さんもセーフだね」

 綾野「おお、長身枠で巨乳枠と一緒! 希望が持てたじゃん」

 小椋「さっきと言ってること違うじゃない!」

 恒一「桜木さんもセーフ」

 綾野「ゆかりッパイ!」

 小椋「榊原君! ひょっとして当てつけ?」

 恒一「いや、窓側から順に言ってるだけだよ」

 勅使河原「当てつける胸もないし」

 水野「それを言うなら押し当てるか押しつけるだろ」

 勅使河原「合わせりゃ『当て』『つける』だな」

 小椋「」ブチッ

 小椋「『いよう、おそろいだね、馬と鹿とが』」

 小椋「合わせりゃお前らだよ」

 小椋『馬〜鹿』」プイ

 赤沢「こんどは『十二夜』ね。だいぶ改変してるけど」ドヤドヤ

 勅使河原「しかし胸の大きさに思い至らなかったのは」

 水野「男として不覚……」

 赤沢「こ、恒一君。じゃあ私も?」

 綾野「巨乳枠の最終兵器、キタ!」

 小椋「多佳子がセーフってことはそうなるわね」

 恒一「ごめん、赤沢さん。じゃなくて、残念だけど赤沢さんは……」

 赤沢「そう……。わざわざ告白を断るみたいな言い回ししなくてもいいのよ」

 恒一「いや、そんな意識はしてないけど」

 赤沢(意識されてないんだぁ……)ウルッ

 恒一「女子で他に明らかにセーフなのは江藤さんと柿沼さんだね」

 水野(サラッと言ってるけど、ぜんぜん違う、真逆といってもいいくらい二人だな)

 恒一「問題は有田さんだ」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:02:17.44 ID:1wOxP9HM0
 有田「え?」

 恒一「有田さんがセーフかアウトかは分からない。柿沼さんと金木さん以上に特殊で、どちらとも断定
できないんだ」

 有田「普通が売りなのに……」

 米村「柿沼も金木も、まあ特殊ではあるが……」

 松井「杏子ちゃん、特殊だって」

 金木「亜紀にとって特別な存在って意味よ」ユリユリ

 松井「そっかあ」ユリユリ

 水野「……いや、性癖がな」

 勅使河原「男子はどうなんだよ」

 恒一「男子はね……。高翌林君以外で明らかにセーフなのは、僕だけなんだ」

 王子「女子は9人、有田さんも入れると10人もいるのにかい?」

 恒一「うん……。米村君も可能性はあるけど、有田さんと同じく特殊、その上で微妙かな」

 米村(俺微妙なのか……。知ってたけど)

 恒一「ヒントは以上、かな」

 勅使河原「だー、ぜんぜん分かんねえ。ていうかセーフなの誰だっけ?」

 綾野「んもう、てっしーだな。私も忘れちゃったけど」

 ???「みんないるようだね」

 一同「!」

 千曳「今戻ったよ」

 恒一「千曳さん。何で麦藁帽子にアロハシャツなんですか?」

 千曳「言っただろ、海外に住んでいる者もいるって。当時の担任の教師でね」

 千曳「宝くじで高額当選を当てて、一切合財をサイパンに移して悠々自適に暮らしているそうだ」

 千曳「真っ先に座席表を入手しなければならないと思ってね」

 恒一「サイパンに行ってきたんですか?」

 千曳「いや、準備を終えたところで国際FAXで送られてきてね。当時の対策係といないものが根回しし
てくれたんだよ」

 千曳「ちょうどいいから、そのまま遠方に住む卒業生に話を聞きに行って、今戻ったところなんだよ」

 勅使河原「それで麦わらにアロハ……」

 千曳「いろいろ興味深いことも分かったから、今から伝えるとしようか」

 赤沢「第二図書室に移るんですか?」

 千曳「いや、説明に黒板を使いたいからこの教室にしよう。さ、みんな席につきたまえ」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:02:53.99 ID:1wOxP9HM0
 千曳「まず、●×年度の植物状態事件―と、今から呼ぶことにするが―も、発端はZマートだった」

 千曳「学校には外出中としか伝わってなかったが、生徒たちは知っていたようだ」

 千曳「保護者の一人に消防署勤務の人がいてね。倒れた生徒を救急車で運んだのがその人だった。そこ
から広まったようだね」

 千曳「この現象に関しては、記憶の改変は働かないらしい」

 千曳「座席表を元に植物状態になった生徒と同じ列の者に話を聞いたのだが、皆Zマートにいたことを
よく覚えていたよ」

 千曳「もっとも、そこが夜見山岬宅の跡地ということや、列の他の生徒も来ていたということは知らな
かったがね」

 千曳「そしてこれが座席表だが、小さいから黒板に書くとしよう。当該の列は廊下側ではなく窓側で…
…」カキカキ

 赤沢「こ、これは……!?」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:03:42.14 ID:1wOxP9HM0
 茅野礼司
 大森郁夫
 高月桜子
 井上恒一
 漆原皐月
 花田智子
 ジェレミー・ウッドワース


 恒一(こ、恒一?)

 高翌林(郁夫、だね)

 水野「苗字が三文字の奴がいねえ」

 米村「名前が一文字の奴もいないな」

 勅使河原「旦那の第一仮説は崩壊じゃねえか」

 恒一「……」

 見崎「1列が7人なんですね」

 千曳「当時は子供の数が少し多かったからね」

 金木「男女比が全然違う……」

 松井「」コクコク

 千曳「男子と女子を列で分けなかったらしいね」

 勅使河原「留学生までいんのかよ」

 千曳「ウッドワース君は日本暮らしが長く、日本語も堪能でね」

 千曳「日本に骨を埋める覚悟でアメリカンスクールではなく日本の学校を選んだそうだ。小学校も地元
だよ」

 千曳「それより、ウッドワース君の席について何か気づくことはないかな?」

 米村「窓際、だよな」

 王子「その一番後ろっていったら……」

 一同(いないものの指定席!!)
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:04:51.15 ID:1wOxP9HM0
 千曳「そう、この年のいないものはウッドワース君だった。彼が立候補したんだよ、いないものに」

 赤沢「立候補?(中尾と同じじゃない)」

 千曳「アメリカ人の彼は人一倍疎外感には弱いが、英雄願望はその何十倍も強くてね」

 杉浦「対策が成功した年の対策係といないものが一躍英雄というのは、想像に難くないですね(じゃあ
中尾も?)」

 赤沢「その実績を引っさげて彼は……」

 千曳「ふん。愛を告げたよ。対策係に」

 勅使河原「あ、愛ぃ!?」

 千曳「いないものだった時の彼を支えたのも、ひとえに対策係への思慕だったわけだ」

 勅使河原(中尾の動機もこれで確定か)

 千曳「卒業式に騒動があったと言わなかったかな?」

 勅使河原「卒業式を告白イベントに変えたと」

 千曳「あれは告白なんて生易しいものじゃなかったよ。何せ指輪まで用意してたんだからね」

 勅使河原「そりゃ騒動にもなるわ……」

 千曳「あの年の対策係だけではなく、いないものの協力も得られたのは、つまり二人が揃って行動しや
すい状態だからだよ」

 水野「今いっしょに暮らしている、と」

 猿田「それより先生、植物状態になった生徒って一体誰ぞな?」

 千曳「む? ああ、男子諸君にはその生徒の名前をまだ教えてなかったかな。それは―」

 恒一「井上恒一さん、ですね」

 千曳「……正解だ」

 勅使河原「ちょ、ちょっと待てよ。旦那と同じ名前のやつじゃねえか。何で黙ってたんだよ」

 赤沢「もう知ってると思ったんだもの」

 見崎「無能」

 勅使河原「じゃあ旦那の仮説は……」

 千曳「榊原君はどうやら真相にたどり着いたらしいね」

 千曳「手がかりになるかもしれないと、いろいろ当人らから聞きだしてきたのだが、不要になってしま
ったかな」

 恒一「じゃあひとつだけ。ジェレミー・ウッドワースさんですが、綴りは Jeremy Woodworth で間違
いありませんか?」

 千曳「ふん。ジェレミーもウッドワースありふれた名前で、一般的にはその綴りで間違いないし、彼の
場合も、当時も今もその綴りだよ」

 千曳「……ああ、欧米人の場合、発音はそのままで綴りだけ違う場合もあるからね」

 猿田「作曲家のエリック・サティがそうぞな」

 王子「時期によってEricだったりErikだったりするんだよね」

 恒一「ならば、僕の仮説とも合致します。付け加えると、有田さんと米村君がセーフだということも僕
の仮説の中では確定しました」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:05:20.11 ID:1wOxP9HM0
 中島「それで治療法は?」

 恒一「ひとつだけ思いつきはしたけど……」

 中島「早速実行しましょう!」

 恒一「え、でも……」

 中島「友人として許可します!」

 勅使河原「待て待て中島。それって旦那じゃないと駄目なのか?」

 恒一「女性でも可能だけど、男性の方が手っ取り早いね。それも、この現象に対してセーフな人じゃな
いといけない」

 恒一「このクラスだと僕と高翌林君だね」

 米村「お、俺は?」

 恒一「米村君は現象に対してはセーフだけど、治療の方は、その……微妙なんだ」

 米村「う、うわ〜ん!」タッタッタ ガラガラピシャン

 杉浦「……どっか行っちゃった」

 勅使河原「旦那が乗り気じゃないなら、高翌林にやってもらうか?」

 恒一「恵さんは誰にも渡したくない……」

 勅使河原「答えになってねえ!」

 勅使河原(いや、なってるのか?)

 勅使河原「なんだなんだ、旦那もプロポーズしてやるって言い出しそうだな」

 勅使河原「まさか今年も愛の力で乗り切ってやろうってか?」

 恒一「実は……そうなんだ」

 他一同「え゛」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:06:09.16 ID:1wOxP9HM0
 市民病院
 目指す病室の前で沙苗と米村が待っている


 米村「お、来たか」

 勅使河原「いやいや、何でお前が先回りしてるわけ?」

 米村「泣きながら廊下を走ってたら、宮本先生に捕まって病院に連れてこられた」

 勅使河原「保健室じゃなくていきなり病院て、一体どれだけ叫んでたんだよ」

 水野「ド新人は何でこいつを案内したわけ?」

 沙苗「夜見北の制服着てるからお見舞いかと思って連れてきちゃった」

 沙苗「お、ホラー少年もいる」

 恒一「こんにちは、沙苗さん」

 沙苗「今日はお見舞い? それとも眠れる病室の美女の目を覚まさせる王子様役?」

 恒一「いちおう後者で……」

 猿田「王子なら本物がいるぞな」

 王子「はじめまして。王子誠です」

 沙苗「あらかわいい」

 恒一(ついに来てしまった)

 中島「目を覚まさせるのって、やっぱりキスとかするの?」

 恒一「ある意味もっと過激なこと、かな(って言えば反対するかな?)」

 中島「……失敗した場合の代償は?」

 恒一「僕が大恥をかく。あと嫌われるリスクかな。意識がないときに一方的にするようなことじゃない
から」

 中島「恵は優しいから大丈夫」

 恒一「それにも限度はあるでしょ」

 赤沢・見崎(そのときは私が!)

 中島「そのときは私が責任を取るわ。焚きつけた責任を」

 赤沢・見崎「!」

 恒一「どうやって?」

 中島「どうとでも。恵に嫌われた分私が好きになる、とか?」

 赤沢・見崎「!」

 中島「恵を彼女に出来ない代わりに、私をするとか?」

 赤沢・見崎「!!」

 中島「恥についてはどうしようか? いっしょに恥をかく? それとも私を辱める?」

 勅使河原(わお)

 望月(わお)

 綾野(わーお)

 恒一「あらぬ誤解を招くような言い回しまで用いて僕を焚きつけようというのは……」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:06:48.02 ID:1wOxP9HM0
 中島「恵を何とかしてあげたいと思う榊原君は素敵よ」

 中島「植物状態になったのが私だったら良かったのに、って思えるほど」

 恒一「……僕も中島さんみたいな友人を、出来れば東京にいたころに欲しかったな」

 勅使河原(その結論はいかがなものか)

 望月(中島さんの本音は額面どおりにしても)

 綾野(さっちーがすごくオンナの顔してるよ……)

 恒一「なんか、退路を絶たれた気がする」

 勅使河原(それは違うぞ、サカキ)

 綾野(さっちーは別のゴールをこういっちゃんの後ろに設置したんだよ)

 中島「それでもまだ躊躇いがある?」

 恒一「そりゃ、ね……。男にだって、大事な時のためにとっておきたいものはあるよ」

 恒一「ましてウッドワースさんと違って、指輪もなしとなれば……」

 中島「それを今出すことを強いられているのね」

 恒一「うん、強いられているんだ。現象に」

 沙苗「へえ、吹奏楽部でクラリネットを? やっぱりパパからもらった楽器だったりするの?」

 王子「よくご存知ですね。中学入学の際にプレゼントされました」

 沙苗「クラリネットっていえば、パパからもらうって相場は決まっているからねえ」

 猿田「でも壊れてはいないし、音も出るぞな」

 王子「吹奏楽部としてはフルートの方が、ね……」チラ

 猿田「楽器じゃなくて吹き手がの」チラ

 中島「……強いられているのね」

 恒一「……現象にね」

 千曳「決心がついたようだね」

 恒一「一応は」

 千曳「しかし面白いものを見せてもらった」

 中島「榊原君に手抜きさせないためですよ」プイ

 中島「卒業式まで目を覚ますことの出来なかった恵に、同情する風を装って近づいて……」

 中島「そういうのが許せないだけです」

 千曳「飽くまで友情に殉じるというのだね」

 中島「……」ウツムク

 綾野(さっちー、泣きそう……)

 千曳「ま、それもよかろう」

 千曳「多々良君が良い友達を持ったということだろうからな」

 千曳「さて、みんな。榊原君の心の準備が出来たそうだ。始めるとしよう」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:07:43.89 ID:1wOxP9HM0
 千曳「……というか、衆人環視下でよかったのかな?」

 恒一「むしろその方が都合がいいんです」

 恒一「みんなは、これから僕の言うことをすべて事実として受け入れて欲しい」

 千曳「72年度の3年3組が、夜見山岬を生きているものとして扱ったように、かね?」

 恒一「そうです。正にそうです」

 千曳「……分かった。では入るとしよう」

 沙苗「はーい、御開帳」ガチャ
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:08:29.63 ID:1wOxP9HM0
 病室内部
 多々良恵がベッドに横たわっている


 米村「全員で入ると狭いな」

 勅使河原「窓の外が空いてるぜ」

 米村「空きすぎだよ! 主に地面までの距離が」

 松井「杏子ちゃん、見えないよ」

 金木「おんぶしてあげる」

 松井「わあい」ヨイショット

 小椋「彩、見えないんだけど」

 綾野「たけるんに高い高いしてもらう?」

 水野「しねーよ」

 恒一(恵さんの両親は今は不在か)

 多々良「……」

 松井「きれい……。世界で杏子ちゃんの次に」

 金木「私の上には亜紀がいるから三番目だよ」

 見崎(まるで人形。霧果の作品以上に情念のこもった)

 見崎(その情念の正体は多々良さんの心? それとも現象の……)

 赤沢(悔しいけど認めざるをえないわね。本当にきれい)

 赤沢(微動だにしない様が、このまま永遠に美しいんじゃないかと錯覚させる)

 藤巻「恵、凍りついたままだ。あの時アタシに向けた笑顔のまま……」

 藤巻(あるいは、いっしょに回鍋肉を作ることになったはずの誰かさんに向けた)

 藤巻「確かにきれいだけど、そろそろ解き放ってやれよ」

 藤巻「……いい加減表情筋が疲れてるだろ」

 沙苗「きれいという感想に水をさすようで悪いけど、床ずれになりかけているのよね」

 恒一(な、何が何でも成功させないと)

 恒一「じゃあ、始めますね」

 綾野「いいよいいよ」パシャパシャパシャ

 小椋「どこに隠してたのよ、そのカメラ」

 恒一(こんな感じかな。こう、手を握りながら……)

 恒一「恵さん。突然の申し出で悪いんだけど……」

 他一同「」ゴクリ
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:09:08.03 ID:1wOxP9HM0
 恒一「榊原恵になって欲しいんだ」

 赤沢 見崎「」フラッ

 杉浦「泉美!」ダキトメ

 米村「お、おい見崎」ササエ

 杉浦「(予想はしてたけど)大丈夫?」

 赤沢「は、はは、頭をハンマーで殴られたような衝撃って、本当にあるのね」

 見崎「ショックで左目が見えなくなった」

 米村「シャレになってねえよ」

 多々良「……」

 恒一「あれ?」

 赤沢「し、失敗?」

 杉浦(泉美、ニヤけすぎ)

 千曳「この場合、何を事実として受け入れればいいのかな?」

 恒一「あ! 間違えました、緊張のあまり」

 千曳「若いねえ」

 恒一「えと、恵さん」

 恒一「君は今から榊原恵だ」

 他一同「!」

 恒一「勅使河原」

 勅使河原「お、おう」

 恒一「この人の名前を言ってみて」

 勅使河原「名前って……たt」

 恒一「勅使河原」ギロッ

 勅使河原「(やっべ、目がマジだ)榊原……恵だよな」

 恒一「うん、そうだね。望月」

 望月「榊原さん……榊原恵さん、だよね」

 恒一「高翌林君」

 高翌林「フェアじゃない気もするけど、今日は特別だね。榊原恵さん」

 千曳「(事実として受け入れるというのはそういうことか)ふん、榊原恵君か」

 水野 米村「榊原、恵……」

 水野(でいいのか?)

 米村(多分……)
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:09:58.67 ID:1wOxP9HM0
 小椋 綾野「『……こだまする山々にむかってあなたのお名前を叫び、おしゃべりな大気まで声ふるわ
せて』」

 小椋 綾野 有田(←!)「榊原恵!!」

 小椋 綾野「『と言うようにしてやります』」

 小椋 綾野「そうしなければあなたは、この3年3組に身の置き所がなくなるでしょう」

 小椋 綾野「この忌まわしき現象に魅入られている限り」

 松井「婚約おめでとー、榊原恵ちゃん」

 金木「先越されちゃったな、榊原恵」

 藤巻「式には呼んでくれよ、榊原恵」

 中島「早く退院して、またいっしょにタイムセールに出撃したいな、恵。……榊原恵」

 王子「夜見北の主席フルート奏者の座は今も空席のままだよ、榊原恵さん」

 猿田「また『精霊の踊り』を吹いて聴かせるぞな、榊原恵」

 赤沢「ちょっとみんな。こんなの絶対おかしいわよ。中学生でプロポーズなんて」

 千曳「前例はあるよ」

 赤沢「でも!」ギリッ

 杉浦「……榊原恵さんには回復してもらわないと」

 赤沢「多佳子まで!」

 杉浦「あ、あのね泉美。泉美はもう榊原君の前で女の子であることは無理だと思うの」ミミウチ

 赤沢「な、な……」

 杉浦「中島さんだって、ほら……」

 中島「なんのことかしら」プイ

 杉浦「そんな泉美を見てるのが辛いの」

 杉浦「だから女の子であることが出来ないなら、最後はせめて対策係であって欲しいな、って」

 赤沢「た……かこ? 何を言って……」

 杉浦「……認めてあげて。彼女が榊原恵さんだって」

 赤沢「う、うわあああああああああああん」タッタッタ バタン

 赤沢「ああああぁぁぁぁぁ……」

 勅使河原「行っちまった……」

 米村「あんまり叫んでると宮本先生に捕まるぞー」

 恒一「さあ、見崎も頼むよ」

 見崎「……」

 見崎「う、うわあああああああああああん」タッタッタ

 見崎「ああああぁぁぁぁぁ……」

 小椋 綾野「『ブルータス、お前もか』」

 米村「あんまり叫んでると宮本先生に捕まるぞー」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:10:26.67 ID:1wOxP9HM0
 恒一「水野さん」

 沙苗「なあに、プロポーズ少年」

 恒一「紹介します。榊原恵さんです」

 沙苗「おー、榊原恵ちゃんかー。あ、そうだ」テクテク

 恒一「水野さん?」

 沙苗「これ書き直しとこう。って、あれ?」

 恒一「どうしたんです?」

 沙苗「んー、表札がね。さっき出てった子が書き直したのかな?」

 ???「あ、あのー」

 一同「!」

 榊原恵「あの……」

 中島「恵?」

 榊原恵「さっちゃん。ただいま……じゃなくてはじめまして、かな。名前、変わっちゃったし」

 中島「恵ぃ〜!」ギュ

 中島「榊原君に辱められかけた〜」

 恒一「中島さんに辱めさせられかけた件について」

 榊原恵「うんうん、大丈夫。動けなかったけど、廊下での会話聞こえてたから」

 恒一 中島「え゛」

 水野「植物状態っていっても、呼びかけに反応するくらいの意識レベルを保ってる場合もあるのよ」

 中島「それにすごく耳良いもんね」

 榊原恵「恒一君は私がつなぎとめるから。その……安心して」

 榊原恵「みんなもはじめまして。そしてお騒がせしました。あと、ありがとうございます」

 榊原恵「榊原恵です」

 千曳(ここに残った全員が榊原恵だということを受け入れた瞬間、植物状態から解放されたというわけ
か。ふん……)

 沙苗「ささ、先生のところへ行って精密検査を受けようか。まあ、大丈夫だとは思うけど」

 榊原恵「ちょっと待ってください。ごめんね、さっちゃん。恒一君」オイデオイデ

 恒一「何? わあ」

 榊原恵「」ギュッ

 榊原恵「大好き」

 綾野「『えんだあああああああああ』」

 小椋「『いやああああああああああ』」

 米村「あんまり叫んでると宮本先生に捕まるぞー」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:11:27.51 ID:1wOxP9HM0
 翌週 3年3組教室 LHR


 榊原恵「……というわけで、はじめまして榊原恵です」

 榊原恵「戸籍上はまだ旧い名前なのですが、少なくとも学校では榊原恵でよろしくお願いします」

 榊原恵「そうしないとまた倒れちゃうかもしれないので」

 オカエリー ジャネエダロ ハジメマシテー ヨロー フェアー

 風見「ありがとうございました」

 榊原恵、見崎の後ろの席へ

 見崎「……」ポケー

 榊原恵(見崎さん、何かこう……植物状態みたいだけど大丈夫かな?)

 風見「えー、では」チラ

 赤沢「ドーシテ ドーシテ」バサバサ

 風見「……」メガネクイッ

 風見「榊原君、今回の現象について説明をお願いします」

 恒一「はい」黒板前へ

 恒一「その前にまず、榊原さんとの席の交換に名乗りを上げてくれた桜木さん、実際に交換してくれた
江藤さんにお礼を言いたいと思います」

 江藤「どもども」@廊下列前から二番目

 恒一「これは二人を身代わりにしようというものではなく、二人にこの災厄に対する耐性があるためで
す」

 風見(災厄を回避するのに長けていようとは、さすが僕のゆかり)

 恒一「再発防止のために、廊下列の全員を耐性のある人で固める必要があったというわけです」

 恒一「最初に名乗り出てくれたのは桜木さんでしたが、風見君が怖かったので江藤さんにお願いしまし
た」

 江藤「どもども」(奈緒美との駄弁りが捗るいい席だわ)

 恒一「さて、この現象ですが、概要は先週のLHRで知らされた通りでみんなもご存知かと思います」

 恒一「その後、第二図書室の司書の千曳さんを中心に調査を進めた結果、●×年度に一度前例があるこ
と、Zマートが夜見山岬宅の跡地であることなどが分かりました」

 恒一「現象発動の条件は完全には分かっていませんが、●×年度との共通項から」カキカキ


1 3年3組の任意の列の全員がZマートにいること
2 その中に1人だけある条件を満たしていない(=耐性がない)ものがいた場合、その人が植物状態に
なる


 恒一「この二点は確定しています」

 恒一「条件を満たしていないものが複数だった場合も発動する可能性がありますが、確かめようがあり
ません」

 恒一「実験するわけにもいかないので」

 恒一「また、いないもの対策が成功しているという共通項もありますが、それが今回のことに関係して
いるかどうかも分かりません」

 中尾「」ニヤリ

 恒一「とにかく、Zマートを利用するときは気をつけるようにしましょう。同じ列の人とは行かないと
いうのが賢明です」

 恒一「それで、その耐性についてですが」

 マッテマシタ ジラシスギゾナ フェアジャナイネ
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:22:41.07 ID:1wOxP9HM0
 恒一「それを持たない者が植物状態になる。植物状態。植物」

 恒一「今にして思えばこの植物というのが、ヒントにして答えでした」

 恒一「すなわち、旧廊下列の榊原さん以外の5人の共通点とは」カキカキ


 藤巻奈緒美……藤
 松井亜紀……松
 金木杏子……木 杏
 杉浦多佳子……杉
 高翌林郁夫……林


 恒一「名前に植物を表す字が含まれているということです」

 恒一「そのことは●×年度に植物状態になってしまった井上恒一さんの列にも当てはまっていました」
カキカキ


 茅野礼司……茅
 大森郁夫……森
 高月桜子……桜
 井上恒一
 漆原皐月……漆(ウルシノキ)
 花田智子……花
 ジェレミー・ウッドワース


 恒一「茅というのはなじみが薄いかもしれませんが、要するにススキのことです」

 勅使河原「それより訳わかんねえのはウッドワースの方だろ」

 恒一「●×年度のいないものだったウッドワースさんの名前の綴りは Jeremy Woodworthで」カキカキ


 Jeremy 「Wood」worth


 勅使河原「ああ、『木』だっけ?」

 恒一「woodは厳密には『木材』で、植物としての木はtreeなんだけど、その辺のこだわりはないみたい
だね」

 恒一「それを言ったら林や森だって具体的な植物じゃなくて地形だし」

 恒一「水野君の『野』や、猿田君の『田』、勅使河原の『原』も植物と無縁な場所とは考えられないか
ら、耐性があるとみなされるかもしれません」

 勅使河原「現象ちゃんは英語と地理と生物が苦手らしいな」

 風見「それ以上に苦手科目の多い君が何を言う」

 勅使河原「う、うっせー」

 恒一「さらに夜見山岬にも同じ事が当てはまっていたかもしれないと思ったのですが、千曳さんが思い
出せないとのことで、これはよく分かりません」

 勅使河原「26年前のことなら、普通に忘れるだろ」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:23:49.34 ID:1wOxP9HM0
 恒一「念のため、確実に耐性がある人を全員挙げてみます」カキカキ


 女子
 藤巻奈緒美……藤
 松井亜紀……松
 金木杏子……木 杏
 杉浦多佳子……杉
 桜木ゆかり……桜 木
 江藤悠……藤
 柿沼小百合……柿 百合
 小椋由美……椋(ムクノキ)
 有田松子……松
 佐藤和江……藤

 男子

 高翌林郁夫……林
 榊原恒一……榊
 米村茂樹……樹


 松井「杏子ちゃんと小百合ちゃんが特殊っていうのは、苗字と名前両方に植物が入っているからなんだ
ね」ユリユリ

 金木「耐性二倍で亜紀を守るためって意味よ」ユリユリ

 柿沼(松井さんを守る自信ないです)

 有田(私が二人以上に特殊なのは、名前の方にだけ植物が入っているのが私だけで、●×年度の高月桜
子さんを見るまで断定できなかったからか)

 渡辺(珊瑚って動物なんだよねぇ)

 風見「榊原君、そのリスト一人欠けているよ」

 恒一「あ、そうだね。『榊』原恵、と」カキカキ

 中島「『俺の嫁』ってルビふっとけば?」

 榊原恵「さっちゃん……」

 恒一「そうするよ」カキカキ

 ザワザワ ノロケゾナ

 榊原恵「恒一君……」

 恒一「そうしとかないと中島さんに取られそうだから」

 榊原恵「さっちゃんが恒一君を取ろうとしてるって話じゃないの?」

 中島「ふふふ♪」

 勅使河原「ああ、だからプロポーズか」

 風見「今さらだね」

 勅使河原「植物を含む苗字になれば耐性がついて、植物状態が解消されるのか」

 藤巻「藤巻大輔……」

 和久井「♪」ホワァ

 風見「桜木智彦……」

 桜木「」ビクッ

 風見「……失礼。では、すべての疑問が解消されたようなので―」

 米村「あの……」キョシュ

 米村「俺、まだ微妙なままなんだけど」

 他一同(微妙すぎて忘れてた)
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:24:29.67 ID:1wOxP9HM0
 恒一「ああ、米村君は現象に対しては茂樹の『樹』でセーフだけど、『米』は植物じゃないからなあ」

 米村「だめなのか?」

 恒一「うーん、米は稲の種子から籾殻を落としたもののことを言うから」

 恒一「あ、でも英語だと稲と米の区別がなくてどっちもriceだね」

 勅使河原「現象ちゃん、英語苦手だぜ」

 米村「試してみる手もあったじゃないか」

 勅使河原「米村が多々良にプロポーズしたところで周りは支持したと思うか?」

 猿田「無理だろうぞな」

 米村「……」チラ

 榊原恵「」ビク

 榊原恵「ご、ごめんなさい」ペコリ

 米村「う、うわ〜ん!」タッタッタ ガラガラピシャン

 米村「ああああぁぁぁぁぁ……」

 小椋 綾野「『あんまり叫んでると宮本先生に捕まるぞー』」

 風見「……」メガネクイッ

 風見「えー、オチがついたようなのでこれにてLHRをお開きにしたいと思います」

 水野(いやいや、終わりじゃないぜ)

 水野(二親等以内の血族はこの現象に襲われるのか?)

 水野(『沙苗』の『苗』は、現象的のセーフなのかアウトなのか?)

 水野(しつこく聞かれそうな気がする)

 水野(それとド新人が、病室の表札がどうとか言ってなかったか?)
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2012/08/07(火) 15:24:58.08 ID:1wOxP9HM0
 水野宅
 水野早苗の部屋


 沙苗(さて、録画も見終わったことだし寝ようかな)ピッ

 沙苗(夜勤はしんどいけど今日明日休みだし、うるさい弟たちは学校でいないし、こういう面では悪く
ないわ)ゴロン

 沙苗(それにしても誰だったんだろ。病室の表札を『榊原恵』に書き換えたの)

 沙苗(可能性としては泣きながら出て行った二人だけど、二人とも動機はなさそうだし)

 沙苗(そもそも『榊』なんて画数の多い漢字を書いている時間はなかったはず)

 沙苗(なんだか、ホラーめいているわね)


 第二図書室
 愕然とする千曳


 千曳(今回も記憶の改変は起きなかったようだが、どうしたことだこれは)

 千曳(記憶ではなく記録、あの子に関する記録が全て『榊原恵』に改竄されている)

 千曳(現象の仕業……ということは、現象公認カップルということか!)

 千曳「尋常ではないね」


 おわり

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/07(火) 15:43:58.63 ID:V+XWaGl+0
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/07(火) 19:55:52.21 ID:UJM+Q1mDO
よくわからんがいい話だった
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/08(水) 00:38:04.66 ID:GdugEQAno
いやー良く練られてて面白かった 多々良さんエンド良いね  
後日談もみたいな おちゅ
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/09(木) 02:46:02.77 ID:NNe0RS9vo
乙!

こういうミステリ好きだわ
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