このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

クロ「魔法少女?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/18(土) 20:23:44.62 ID:9YbsFwGDO
<注意>魔法少女とサイボーグクロちゃんのクロスオーバーです。
とにかく、完結が目標です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1345289024
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

=^・ω・^= ぬこ神社 Part125《ぬこみくじ・猫育成ゲーム》 @ 2024/03/29(金) 17:12:24.43 ID:jZB3xFnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711699942/

VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711673687/

小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1711622906/

満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/08/18(土) 20:26:43.53 ID:3SbD7PAAO
クロちゃん懐かしいな期待
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/18(土) 20:34:02.65 ID:9YbsFwGDO
いつかのエピローグ




夢を見た。 見たことも無いような景色。でも、とても懐かしい景色。


そして、胸クソの悪い光景。


さっきまで、まるで戦争でもしていたかのようにその街は瓦礫と化していた。
そこらじゅうには、もう使いようがないのか、持ち主をなくした銃火器が力なく横たわっている。


でも、それでいいのだと思った。
戦いは終わった。後はあいつらが好きにすればいい。特に、あいつにとってはずっと望んでいた結果なのだから。


誰かが、こちらを覗きこんでいる。


「・・・ロっ!起き・・・!お願い!」


その時になって、ようやく自分が仰向けになっていることを知った。

揺り起こされる、抱きかかえられる。


「う・・・るせ、な。」


大丈夫だっての。ちょっと疲れてるだけだ。
お前こそ、ひでぇ顔だ。泣いてんのか?


「嫌、嫌よ・・・。しっかりしてよ!ク・・・!」


黒髪の女が、さっきから、ずっとこんな感じだ。
まったくこいつらときたらどいつもこいつも泣き虫だからなぁ。


そろそろ口を開いてやらなきゃな。身体を起こしてやらなきゃな。


でも、なんだろな。これは、たぶん。


─────たぶん、ダメだ。


4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/18(土) 20:36:07.24 ID:pj0BNQe90
クロってクロちゃんかwwwwwww
なつかしすぎて期待しかないwwwwwwww


一応、ロミオとジュリエットって宇宙人なんだよな・・・・
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/18(土) 20:38:45.36 ID:9YbsFwGDO
「・・・ん。」


身体が重い。ギシギシと音が聞こえるほど、そして実際には本当にきしんでいるだろうに。
普段の馬鹿供の馬鹿騒ぎによる強制的な目覚めとは違う、自発的な目覚め。
それなのに、嫌気が差する。イライラする。ムカつく。


理由は、ただひとつ。なんとも夢見が悪かったからだ。あれが悪夢だったのかどうか、それすらも分からないが。

ゆっくりと身体を起こす。目覚めたばかりで、視界がぼやける。
そして、ぼやけたままで視界は元に戻らない。
時間は夜らしい。


「新しいパターンだな。」


縁側で眠りについたのは、昼頃だった。
少し目をつぶっただけで夜まで寝るほど深い眠りではなかったはずだし、そもそもここは道路の上。愛しい縁側ではない。


「剛のヤローの発明か、オイラが寝てる間に電信柱がミサイルくべたかのどっちかだろうな。」

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/18(土) 20:45:06.30 ID:9YbsFwGDO
拉致監禁なら、何度も。空間移動ならば一回程経験した。
慣れたものですぐに状況確認にかかる。


「どっかの住宅街ってとこか。街並みからすりゃ、日本みてぇだ・・・。少なくとも、オイラの知ってる日本じゃねーな。」

OK納得と、立ち上がり。


「どーすんだよ、これ・・・」


すぐに、両膝と、両の手をを地面についてうなだれた。自分がこんなことになった理由も、どうすればいいのかも分からない。


「こんなもん、いつぞやのジャングルと対してかわらねーじゃねえか・・・。」


どうする、いや、まだあのハゲの仕業である可能性も捨てきれない。
ならば、どうだろう。いっそのことこの家々を破壊し尽くせば、この状況の原因が顔を出すのではないか。
もう、やってしまおう。

立ち上がり、胸の武器庫から愛用の銃を取り出そうとした時。


「ね、猫が立ってる!?」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 20:59:51.41 ID:W0fY8mhIO
最近完結しないSSが増えてるから是非完結させてくれ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 21:02:44.00 ID:TiQL1rAz0
ミーくんは出るのかな?
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/18(土) 21:31:41.57 ID:9YbsFwGDO
あん?と振り向いた先には、制服を着た金髪の少女が唖然とした顔でこっちを見ている。
付いた肉から想像するに高校生だろう。


「日本語ってことは、言葉は通じるな。おい、お前ここはどこだ?」


金髪の少女「しゃべった!?しかも、黒猫がっ!!何、なんなの闇の使いなの!これ以上私に契約しろというの?!」


唖然としていた少女が、今度は興奮した様子でこちらに詰め寄ってきた。


「はぁ?」


そして、目にも止まらぬ早さで少女は黒猫を捕まえたかと思うと一目散に駆けていった。


ソレカラソレカラ


少女の家にて


金髪の少女「なにかしら、さっきの昭和のアニメテイストの繋ぎは。うP主の趣味?」


「やめろ、初投降のSSでメタネタなんて面白くもなんともない。」


そんな風に一見和やかに、会話をしている一人と一匹ではあるが、よく見ると少女の頭には大きなたんこぶができている。


「落ち着いたか?」


金髪の少女「えぇ、さっきは取り乱してしまったわ。ごめんなさいね、カイン。」


「恥ずかしい名前を付けるな。クロだ、クロ。」


「でも、あなただって酷いじゃない。いきなり頭を殴るなんて、なにあれ鉄アレイで打たれたと思ったわよ。クロード。」


「クロだ、更にハズイわ。それより煎餅はないのか?」


「残念だけど、ないのよ。クッキーはお嫌い?キッド。」


「ク・ロだ。頭に直接叩き込まれたいか。」


と、そこにきてクロは少女の額にガトリングのような銃を突き付けた。
その様子に慌てたのか、少女はクロに謝罪した。


「ご、ごめんなさい。しゃべる黒猫が私の前に現れるなんて、こんな不思議な事が二度も起こるなんて信じられなかったから。」


恥ずかしそうに、申し訳なさそうに顔を少しだけ伏せた少女───名を巴マミ
と言う。


10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/18(土) 21:48:20.71 ID:9YbsFwGDO
完結を意地でもさせるけど、長くなりそうです。
夏休みでよかった。
サイボーグクロちゃんsideのキャラクター登場はまだ考えてません。今から、怖い話見ます。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/18(土) 21:49:30.77 ID:RCEl3+kE0
しゃべり方的にまだ契約したてのマミさんかな?
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage saga]:2012/08/18(土) 23:45:50.27 ID:qVedeysG0
クロちゃんとか懐かしいな
恐怖の大王にも(多分)勝てるんだったよな確か

>> 4
正確には一つ目宇宙人の召使いロボットじゃなかったっけ?
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/18(土) 23:59:34.31 ID:9YbsFwGDO
クロは『二度』という言葉に違和感を覚えた。
ということはマミは、自分より以前にしゃべる猫のような不思議に出会っていることになる。
そして、先程、銃を向けられた時の彼女の落ち着き。慌てたような顔をしながら、次に相手がどうでるかを確認していた。
こちらが、本気ではなかったとはいえ、どうにも妙なものを感じた。


そして何より、さっきから感じるこの視線。


クロ「・・・うっとおしい。」

敵意はなく、悪意はなく、しかし、善意もない、不安もない、ただひたすらに観察する気配がある。
相手がどれほどの利をもたらすのか、どれほどの不利をもたらすのか、それだけを見極めようとしている。


その気になれば感じることもできないほどの、無機質で、無感情なのっぺりとした視線。
それを、この部屋に来る前、マミに出会ったときから感じるのだ。


マミ「どうしたのクロ?」


クロ「いや、どこに行っても、面倒事はついてまわるもんだなって思ってるだけだ。」


ヤレヤレと心底面倒くさそうに首をふるクロを不思議そうに見つめながら、マミは一口紅茶を飲んだ。



───マンションの屋上



「へぇ、しゃべる猫なんて。少し気になるから見に来てみれば、なんてことない。ただの人形じゃないか。」


「あれなら放って置いても構わない。あんなものに、この宇宙の理を変えられるはずがない。」


QB「さて、そろそろマミにも働いてもらおうかな。」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/19(日) 00:04:49.64 ID:oc2ZP+bDO
第一話 完です。


これを読んでくれる人はいらっしゃるのでしょうか。書きながら、懐かしさで手が止まります。
個人的には漫画の印象がどぎつくて、少々、中2的な表現が増えると思います。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/19(日) 00:31:14.32 ID:oc2ZP+bDO
第二話『勝手に手下にしてんじゃねーよ。』


クロ「紹介したい奴がいる?」


昨日の晩はそのまま、マミの家に泊まることになった。
何処かに行くあてもなければ、何かをやるあてもなかった。
特に、この目は夜道を歩くにはいささか頼りなかったからだ。


そして、そのまま目覚め。彼女の作ったベーコンエッグを朝食にしている。


マミ「そう、私の友達。キュウベエっていうのよ。」


クロ「お前の友達が、そのままオイラの友達になれるものなのか?」


第一、その『キュウベエ』とやらにそのまま自分を紹介しても大丈夫なのかと、クロは訝しげにマミを見つめている。


「大丈夫よ。あの子しゃべるし、サイズもあってるもの。」


妙にキラキラした目をこちらに向けているマミだが、クロは完全に呆れてしまっている。
これは、あれだ、たぶん九官鳥のキュウベエみたいな落ちだろう。


クロ「つまんねぇの連れてきたら喰っちまうぞ?」


一応、釘を刺す形でクロはマミに冗談めかした言葉をぶつける。


マミ「安心して、とっても素敵な。私の大切な友達なんだから。」


その様が、とても幸せそうで、その陶酔がどこか危なかっしく、クロは面倒そうにため息をついた。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/19(日) 02:29:03.22 ID:BgCYEnFqo
クロちゃんか
つい昨日、新しい漫画を注文したよ
破壊のプリンスの活躍、楽しみにしてる
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/19(日) 11:06:22.24 ID:oc2ZP+bDO
マミ「あ、そうだわ。その前にお買い物に行かなくちゃ。そろそろ紅茶がきれそうなの。あなたも来る?」


行ってやる義理はないし、昨日今日で一緒に買い物に行くほど仲良くなったつもりはなかったが、しつこいようだが、クロはすることがなく。故に、返事はなし崩し的に『YES』となった。


───街


クロ「これが、見滝原か。」


一人と一匹は並んで歩いていた(クロは周囲に怪しまれないように四つ足で)。話には聴いていたが、随分と近未来的な雰囲気であふれている街である。
そこらじゅうのいたる所に人間的な美的感覚に溢れており、「いかにも」な造形物で溢れている。


クロ「スゲー、未来都市ってやつか。」


マミ「サイボーグのあなたが言うのも変な話よ。」


そっちの方がよっぽどオーバーテクノロジーじゃないとマミは苦笑する。彼女にはある程度の事情を伝えてある。喋れる理由と、何処から来たのか。
それを、あっさりと彼女は信じた。


「お前、何でそういうの簡単に受け入れてんだよ。不思議って言ったって、しゃべる猫だわサイボーグだわ、ここまでくりゃ不気味じゃねえのか?」


「不気味なんかじゃないわよ。とっても素敵なことだもの、それに私はそういうのには慣れて──」


「それでさぁ!またあの先生ふられたみたいよ!」


「マジで?もうそろそろヤバイんじゃない?てかもうアウトでしょ、アウト。あれはもう、化石になるだけよ。」


歩いていた道の途中、マミの言葉を遮るように、中学生くらいの制服を着た少女達が道端にあったゲームセンターから出てきた。
うるさいほどの笑い声、邪魔になるくらいの身振りを加えながら歩いている。


ありがちで、気に留める必要もない。ただの中学生がこちらに向かってる。
しかし、一人と一匹は動けずに


クロ「おい、どうした?」


正確には、動かないのマミであった。
立ち止まったまま、うつむいて、前を見ていない。


キャッ、キャッと騒ぎながら彼女達はクロ達をよけながら歩いていく。
マミは、立っているだけだった。ただ立っているだけだった。


クロ「なぁ、あれお前の着てた制服と同じだったな。」


マミ「・・・えぇ、同じよ。見滝原中学の・・・・・・同じクラスの子達よ。」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 11:55:04.66 ID:pPQypGRDO
クロちゃん好きな作品だから期待
マサムネだっけ?虎猫は、あいつも出るのかなwkwk
あ、そうだキュウベエじゃなくキュゥべえが正しい
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/19(日) 12:09:11.91 ID:IyCFm911o
ブt…マタタビな
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 12:15:06.12 ID:pPQypGRDO
>>19
そうそうマタタビだマタタビ懐かしすぎて名前がうろ覚えが多い
とりまThanks
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/19(日) 12:42:28.99 ID:oc2ZP+bDO
>>18

ご指摘感謝します。いかんせん、まどマギの方も懐かしい作品の部類に入りかけているので、細かい間違いもあるかもしれません。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 12:47:17.81 ID:pPQypGRDO
>>21
完走してくれたらそれで満足だからあまり気にしなさんな
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/19(日) 13:47:07.67 ID:oc2ZP+bDO
同じクラスで、あれか。
自分の中で知る、クラスメイトと言えば、カズマ達のような関係しか知らない。彼らは小学生で、マミは中学生、そんな違いを加味しても、うつむき、どこも見ようとしないの彼女の態度を見てみれば、何が起きてるのかは大体理解できて───。


クロ「マミ。」


マミ「えっ。」


クロ「ゲーセン行こうぜ。」


キョトンとした顔をマミはクロに向けた。
彼女はまだ知らない。要するに、理解できたら、ほっとけないのが彼なのだ。



───ゲームセンター


マミ「ちょ、ちょっとクロ!あなた勝手に入ったらダメよ!!」


初めて入る、ゲームセンターという場所と、ずんずん進んでいく黒猫に面食らいながら、マミは的外れなことを言いつつもゲームセンターの自動ドアをくぐった。


その瞬間


音が、光が弾けた。


マミ「・・・、すごい。」


勿論、知識としては知っているし、外から見たことはあった。
でも、実際に中に入ることはなく。ましてや遊んだことだってなかった。
そんなことより、彼女には優先すべきことがあったから。



色とりどりのランプや、電子音が散らかっていて、まるで花火のようだった。
そこにいる人々は、真剣な顔、笑顔、悔しそうな顔、様々な表情が見えて、どんな顔をしていても楽しそうだった。


クロ「おぉ、流石は近未来都市。そこそこ面白いゲームはそろってんな。」


足元から声が聞こえた。
大した感慨もなさそうな顔で見滝原のゲームセンターを褒めているクロだが、一応猫である彼がゲームセンターに入っても大丈夫なのだろうか。


クロ「で、何して遊ぶんだ?」


マミ「な、何って何が?」


クロ「何がって、お前・・・、あぁ、ったく、こーいう場所は初めてか?」


心底呆れ返ったような顔を向けられたマミだが、彼女にしてみればどうしてクロがこんな顔をしているのか分からず困惑しているようだった。


24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage saga]:2012/08/19(日) 16:28:29.19 ID:epk6bIY60
そういえばクロちゃんて確か宇宙人の地球侵略も阻止してたな
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/08/19(日) 21:22:56.43 ID:+VAETSmAO
だんだんクロと杏子が被ってみえてきたwwww


口が悪くて世話焼きなところとかさ
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/19(日) 22:42:26.60 ID:oc2ZP+bDO
そこから、マミはクロにつれられ、おっかなびっくり、好奇心旺盛に遊び始めた。


ギターを模したゲームをした時は、マミがコードを押さえクロがギターにぶら下がりながらストロークを行った。そのさまは、周囲の人に「鬼だ、鬼がいる。」という言葉を紡がせるほど圧巻だった。


クレーンゲームでは、欲しいものが手に入らず業を煮やしたクロが直接ゲージに入ってとってきた。
途中、人が覗きこんできた時、人形のふりをするクロを見てマミは笑いを堪えるのに必死だった。


楽しいことが、当たり前に楽しいことをマミは思い出した。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/19(日) 22:58:26.71 ID:oc2ZP+bDO
クロ「下手くそ。」


シューティングゲームで迫りくるゾンビにパニックに陥って足を引っ張り、ゲームオーバーに追い込んだマミに対しクロは辛辣だった。


マミ「・・・、ごめんなさい。」


口では謝ってはいるが、彼女は彼女で申し訳なさもあるが、若干納得のいかないような顔をしている。
プレイ中はやたらと「えぇ?なんで!?」とか「ウソよ!本当だったらここは」とか散々叫んでいた。


マミ「あ、そういえば。」


ハッと我にかえったようにマミはクロの方に向き直った。


マミ「クロ、これありがとう。」


そう言って見せてきたのは首にかかったネックレス。先程、クレーンゲームでクロがとってきたものだ。


クロ「お前の金だろ。オイラに礼はいらねーよ。」


ぶっきらぼうで、そっけない。それでも彼女は、クロがゲームセンターに自分を連れてきた理由が大体分かっていた。
だから、このお礼はネックレスだけじゃなく、気を遣ってくれたお礼でもあった。


ありがとう、今度は小さく口の中でお礼を言った。

マミ「じゃあ、今度こそお買い物に行きましょう───!?」


『タスケテ』


突然、マミの顔が真剣な顔に引き締まり、彼女の雰囲気もなにやら深刻めいた空気をにじみ出し始めた。
そして───
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/20(月) 02:10:20.24 ID:ywPrGTLDO
クロ「おい!?マミ!!」


こちらには目もくれず、声も耳に入らなかったかマミは駆け出してしまった。


クロ「チィ!待てってーのコラ!!」


そして、クロもまた駆けていった。




─────ショッピングモール・工事中の区画



ハァ、ハァ、ハッ、ハァ


息が途切れる、喉に薄い膜が張りついたような不快感に呼吸が途切れそうになる。しかし、それでも立ち止まる訳にはいかない。
この腕の中で苦しんでいる小さな命を守るために。


青髪の少女「何よあれ!コスプレ女で、動物虐待ってどうかしてんじゃないの!?」


吐き捨てるように言い放った少女が、青い髪を揺らしながら必死に走っている。鬼気迫るという言葉が今の自分たちにはおあつらえ向きだと、『鹿目まどか』は思った。


友人である『美樹さやか』について、このショッピングモールに訪れたが、そこで自分に助けを求める声を聴く。
その声のする方に向かうと、傷だらけの不思議な動物が、さらに、その動物を襲っていたの自分の学校に転校してきたクラスメイトで────。


説明してもしきれない、これ即ち、ピンチである。


さやか「ここまでくれば・・・大丈夫かな?」


息も絶え絶えにたどり着いた場所は薄暗い、まだ工事の済んでいない区画。
一体、あのショッピングモールのどのあたりなのかはさっぱり分からないが、今のところ人の気配はなく。あの転校生近づいている訳ではないらしい。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/20(月) 02:42:40.92 ID:ywPrGTLDO
まどか「さやか、ちゃん・・・。大丈夫?」


少しずつ息を整えながら、まどかは転校生に襲われた際に機転を利かせて自分を、いや自分達を助けてくれたさやかに感謝した。


さやか「ふぅ・・・、私より、その白ネコの方を心配してやりなよ。」


その言葉に、ハッとして腕の中を覗きこんでみると、その生き物は苦しそうではあるものの、少し落ち着いているのか大人しくまどかの腕の中にしっかりと抱き締められている。


さやか「しっかし、みょうちくりんな動物だなぁ。」


さやかの言葉通り、まどかはこの動物を見たこともなかった。
真っ白な身体に、長い耳、さっき見た時は真っ赤な瞳をしていた。
今は傷だらけだが、手当てをして身体もふいてあげれば随分と可愛らしい容姿になることだろう。


しかし、恐らくこの動物は可愛いだけではない。
助けを求める声は、直接自分の頭に響いた。
あれは、よく言うテレパシーというものではないか。もしかしたら、自分は、とてつもない神秘に触れようとしているのかもしれない。


さやか「な、何これ!?」


と、さやかの引きつったような声で今度は、腕の中から弾けるように顔を上げた。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 06:34:19.24 ID:AwTocVrDO

面白いから続き期待してる
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/20(月) 10:38:32.37 ID:ywPrGTLDO
『空間が歪む。』そんな表現くらいは、彼女達も漫画や、小説くらいでは知っている。
そして、当然知っているだけだ、その凡庸なイメージではただユラユラと陽炎が揺れているだけのもの。
だから、彼女達は恐怖した。


分からない、理解できない。空気が逆流して、眼に見えない何かが捻れていく。今、ここにいながら全く訳の分からない場所に引きずり込まれていく。


その内に、景色すらも変化していく。書き換えられる。まるで、原色の絵の具を子供が適当に塗り込んでいくように世界は上塗りされて、色が完全に変わった。


さやか「何よ、今度なんなの!?」


奇妙奇天烈、珍妙なオブジェが、おもちゃ箱から飛び出したように散らかっていた。


そして


『───────!』


『────────!』


先程から、子供がはしゃいでいるような声があたり一面から聞こえてくる。
その言葉は『言葉』と読んでいいのかさえ分からないほどに理解不能で、ただただ、こちらの不安を煽るのみだ。


まどか・さやか「!?」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 11:22:13.90 ID:AwTocVrDO
きたか!(ガタッ)
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/20(月) 11:40:24.94 ID:ywPrGTLDO
それは異様な光景だった。まるで、海外のカートゥーンに登場するような、ともすれば可愛らしく、しかし、それでも、脳が、感覚がれっきとした恐怖を伝えてくる。


異形の姿。


さやか「う、うそ。そんなこんなことって。」


まどか「あ、ああ。」


数は分からない、囲まれている。
しかし、実際にどれほどこの異形が存在しているのか知ったところで、彼女達にはどうすることもできない。
これは、紛れもない絶望の形であった。


さやか「夢だよね!こんなのただの悪い夢で。」


自らの言葉にすがりつくようにさやかは喚き散らすが、その言葉で決して夢から揺り起こされることはなく。ただ単に、『現実』を確認しただけに留まった。


まどか「た、すけて。」


少女は互いに身をよせあう。しかし、震えは止まらない。


まどか「誰か」


少女は腕の中の動物を抱き締めた。それは、守ろうとしたのか、ただ、何かに縋りたかっただけなのか。


まどか「誰か──!」


そして、その声は届く。


「んだよ、まだこんなにいたのか。」


絶望を砕く銃声が響いた。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 11:53:24.35 ID:AwTocVrDO
口調や銃声…クロちゃんお馴染みのガトリングか!
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/20(月) 12:52:26.82 ID:ywPrGTLDO
クロ「・・・ったく。マミは見つかんねーし、妙な所に迷い込んだと思ったら、妙な奴らに襲われるしよ。」


岩をドリルで砕くような音が響いた瞬間、土煙に辺りは包まれた。


さやか「今度はなによぉ。」


半泣きのような顔をしながらさやかは弱音を吐いた。そして、まどかは土煙が舞い上がる場所を呆然としながら見つめている。


そして、『それ』はフラリと姿を現した。


さやか「ねこ?」


二人は面食らった。この異様な世界に姿を現した新たな存在が黒猫で、しかも二本足で立ちながら、右腕には何か筒状のものを嵌めている。


そして、そのまま、此方に向かって歩いてきた。


クロ「おい。」


まどか「は、はい!」


思わず、まどかは敬語になる。そして、さやかは慌ててまどかを庇うように、まどかとクロの間に立ちふさがった。


さやか「な、何よ。」


今、自分たちを取り囲んでいる化け物とは違い、言葉を操る猫、恐怖はあったが、多少はとっつきやすかったのか震えながらではあるがさやかはクロを睨んでいた。


クロ「ふせろ!!」


その言葉に弾かれたようにまどかはさやかの身体を押さえつけ地面に伏せる。

そして、その瞬間、身体の上から、風圧が届く。
突然の発砲、身体を伏せながら後ろをそっと向けば、化け物が身体の破片をばらまきながら吹っ飛んでいき、やがては霧散する様を確認できた。


クロ「前は戦争だったが、今度はなんだ?ファンタジーか?」


軽口をたたくその口元には、ニヤリと笑みを浮かべながらクロは化け物の前に立っている。
臆することもなく、怖れることもなく。


クロ「いいぜ?相手してやる。そうこなきゃな、退屈しちまう。」


銃口を、前へ向けた。


そこから先は、まどかにとっては夢見ごこちのような感覚でよく覚えていない。しかし、確かなことは、その『救世主』は突如として現れ、化け物を鬼神のごとき強さで蹴散らし。
自分たちを救ったということだけだった。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/20(月) 13:34:15.59 ID:HNsLxwQg0
相変わらずクロはかっけーな
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/20(月) 21:50:54.35 ID:ywPrGTLDO
二人の少女はへたりこんだまま動けなかった。
夢のような恐怖と訪れた救い。
そして、今の静けさが信じられず。
しかし、未だ変わらぬ世界の光景に白昼夢であったなどという言い訳は通用しなかった。


さやか「あ、あ。」


さやかはどう言葉をはっせればいいのか分からず、それでも声帯を震わせなければ自分は二度と喋れなくなるのではないかという意味不明な恐怖から、ただうめき声ともとれる声を発していた。


信じれなかった。目の前の黒猫は、ガトリングのような武器を使い、あの化け物達を全滅させた。
考えなしのように攻撃しながら、しかし、自らは無傷で更にいえば自分達までケガひとつない。


と、そこまで考えたところでへたりこんだままの彼女達の目の前に黒猫が歩いてきた。


さやか「ひっ!?」


まどか「うぅ。」


敵か味方分からない、しかもかなりの強さをもった得体の知れない猫。もしや、こいつも化け物の一種かと身を強ばらせる二人にクロは声をかけた。


クロ「もらしたか?」


さやか・まどか「・・・・・・え?」


予想斜め上をゆくその言葉に、二人は思わず固まる。


クロ「怖けりゃとっと家に帰って母ちゃんに一緒に寝てもらうように頼むんだな。怪我しないうちに。」


その言葉に馬鹿にするような空気を感じたさやかは憤りを隠さずクロに詰め寄った。


さやか「な、乙女に向かってなんたる言い草なんだよ!そもそも、どうやってここから出ればいいのか分からないし、大体あんたはなんなのよ!?」


その言葉に含まれた若干の優しさを感じたまどかはクロに頭を下げた。


まどか「あ、あの!ありがとうございます。助けてくれたんですよね。え、えとお礼はかつおぶしがいいですか?」


そう畳み掛けるように同時に喋りだした二人に、面倒くさそうに耳をかきながら一瞥をくれていた。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/20(月) 22:10:15.82 ID:ywPrGTLDO
クロ「詫びはいれねーし、礼もいらねーよ。そもそもそんな暇もねー。」


まどか「それってどういう?」


『────────!?』

『────────!!』


またもや、空気は一辺した。


さやか「ま、またこいつら!」


どこに隠れていたのか、先程全滅させたと思っていた化け物がまたどこからか集まっていた。


クロ「お前等、立って走れるか?」


その言葉に、二人は顔を似合わせて、足に力を入れるも、腰が抜けたのかまったく立ち上がることさえできない。


まどか「ど、ど、どうしよう?!」


クロは焦る二人を確認し、彼女達の前に立ちふさがる。


クロ「なら、そこにいろ。別に逃げなくてもいい。」


その言葉に、まず守られている二人が圧倒された。 先程の戦闘力が凄まじい説得力を持たせている。本当にここから動けなくとも、彼なら自分達を無傷で守りぬいてくれる気がし────


ガスっ!と弾の充填を促す空気の抜けたような音がガトリングから響いた。


クロ「やっぱ、走れねぇか?」


まどか・さやか「ええええええ!?」


一転、ピンチに陥った。


『──────!!』


その隙を逃さず化け物達が突っ込んでくる。


クロ「ちっくしょおがぁ!!拳骨でいったらぁ!!」


拳を握り込んだクロは二人を背に化け物達に突っ込んでいく。
そして────


そして、凄まじい閃光が化け物達の群れを貫いた。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/21(火) 17:36:25.97 ID:CtN8qOJK0
クロちゃんもそうだがあの漫画のキャラって悲惨な過去持ちばかりだよな
絵柄の割には重い話やグロが多いわで、まどマギと共通してる部分が結構ある
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 18:29:37.13 ID:nwBkDohDO
>>39
とりあえずsageような
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/21(火) 20:50:18.58 ID:Ztps6NuDO
クロ・まどか・さやか「・・・え?」


おそらくは銃声、強烈な破裂音の音源の方に慌てて振り向く。


「あなた達怪我はない!?もう大丈夫よ!!」


そこにいたのは、一人の少女だった。
黄色を基調とした、可憐らしい服装に、可憐な佇まい。その表情は凛々しく整っている。


二人には見知らぬ顔だった。
しかし、一匹にはよく知られた顔であり。


彼は行動に移った。


クロ「何が大丈夫よ!!だ。この馬鹿!!」


ゴチンという音が、マミの頭から響いた。
まどかとさやか、さらにはマミも目を白黒させている。
スルリと伸びた黒い腕、まさにクロの腕が拳骨の形でマミの頭に乗っかっていた。


マミ「え?え?」


クロ「どこほっつき歩いてたんだコラァ!急に走りだしやがって、どんだけ探したと思ってんだ?あぁ?」


まるで喧嘩を売っているような言葉使い。
ヤンキーがいちゃもんをつけているみたいだった。
おそらくは、きっと自分達を助けてくれたのは彼女であり、その命の恩人たる人物にたいしてはとてもじゃないが適切な態度ではなかった。


マミ「ご、ごめんなさい・・・。」


頭をさすりながらマミはクロに謝ったが、クロはプイと顔を背けた。


クロ「・・・別に謝ることじゃねーよ。」


クロからすれば、いなくなったマミを追いかけたが、見失い。迷い込んでしまった場所が急に姿をかえたかと思えば現れたのは化け物。
彼は彼で、あの時焦っていたのだ。


42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/21(火) 22:12:40.22 ID:Ztps6NuDO
まどか「あ、あの!」


急に張り上げた声は彼女自身からしても驚くほど大きく響いた。
その場にいた全員からの視線を向けられ、まどかは萎縮してしまう。


まどか「え、えと・・・。」


マミ「あなた、その子・・・。」


指摘されて、思い出した。か、改めて実感したか。彼女はなんとか、腕の中にいる動物について知らせようとした。


まどか「こ、この子が、さっきから怪我してて!苦しんでるんです!は、早く病院につれいってあげなきゃ!!」


マミ「大丈夫よ。」


まどか「で、ででも、もしかしたら、見たことない動物だから、大きな病院つれていかなきゃ!」


そんな様子に苦笑しながら、もう一度マミは大丈夫だと言った。


マミ「その子をちょっと預けてもらえるかしら?」


え?と驚きながらもまどかはそっと白い動物を彼女に手渡した。
そして、彼女は慈しむように、優しく抱き締めた。 すると、光が溢れた。目を焼くような閃光ではなく温かさを感じる灯りのような。


そして、光が治まった瞬間。


「ふぅ、助かったよ。ありがとうマミ!」


さやか「え!?しゃべった!!」


まどか「す、すごい、やっぱりさっきのは・・・。」


「まどかも、ありがとう。さっきは本当に危なかったんだ。」


突然の事に二人は言葉をなくしていた。傷もなくなり、綺麗な体をした白い動物は唖然と黙る二人を尻目に喋りだした。


マミ「無理もないわね。自己紹介にいきましょう。私は巴マミ。魔法少女よ。」


さやか「・・・魔法。」


まどか「少女・・・?」


そして、さやかはチラチラとクロの方を気にしだした。


さやか「魔法少女ってことは、この黒猫は使い魔とかそういうものなんですか!?名前はあのジ○的な!?」


マミ「えぇ、みたいなものよ。」


43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/21(火) 22:45:00.08 ID:Ztps6NuDO
クロ「誰がみたいなものだ。勝手に手下にするんじゃねーよ。」


と冷静に突っ込みを返されたマミは、ほんの少しだけクロを睨んだ。


まどか「あの、すみません。助けくれてありがとうございます!え、えーと。」

クロ「クロだ。」


マミ「ありがとう!クロちゃん!!」


そりゃ、どうもと適当に返しながら片手をあげるクロに、まどかは緊張をほぐされた気分になった。


しかし、さやかは警戒心を抱いてしまっているのか、先程からクロに近づこうとはしない。
クロもクロで気にしていないようだった。


「そして、ボクはキュウべえ!」


成長期に入る前の少年のような中性的な声が聞こえた。
そして、その方向には、その声のイメージにそぐわぬ、白い、小さな身体をした動物は人懐こそうな顔をしている。


キュウべえ「実は君たちにお願いがあるんだ!」


お願い?と少女達は首をかしげた。


マミは、にこやかに笑っていた。


キュウべえ「ボクと契約して、魔法少女になってほしいんだ!」


そしてクロは、つまらないテレビを見ているような顔で耳をほじっていた。


44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/21(火) 22:46:31.03 ID:Ztps6NuDO






声が聞こえた。


「始まってしまった。」


哀しそうに。


「できることなら、最初の時点で止めたかったのだけど。」


悔しそうに。


「・・・彼が来ている。」


少しだけ、穏やかに。


「今度こそ、変えてみせる。」


「まどか・・・。」


悲壮に。






「・・・キッド。」



第一話 終了
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 23:08:03.55 ID:ycg7P5/DO
クロは救世主兼破壊神だからどうなるか。
未だにビルが倒壊してないのが奇跡だな
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 23:08:25.69 ID:NBmhBUcSO
クロちゃんとか俺得
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/21(火) 23:38:16.42 ID:tPrIipmeo
とっておきとか持ってきてんのかな
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 23:39:07.92 ID:nwBkDohDO
そういやクロちゃんは昔キッドって呼ばれてたんだっけ…ヤバいクロちゃん最初から読みたくなった
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/21(火) 23:44:50.44 ID:Ztps6NuDO
>>43
ミス

マミ「ありがとう!クロちゃん!!」→まどか「ありがとう!クロちゃん!!」

です。申し訳ないです。

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/22(水) 20:39:37.15 ID:zWJQ0XIDO
クロ「・・・。」


クロ「・・・。」


クロ「・・・グゥ。」


第二話 「覚悟・・・ねぇ。」


世界は意外とファンタジーに溢れている。なんだかサブカル的な空気を持つアニメのセリフの一節のような言葉だが、存外馬鹿にできたものではない。


例えば、『クロ』という一匹の黒猫の話。
とある理由から、二人の老夫婦の家でくらしている彼だが、ひょんな事から死亡。
更に、その理由となった悪(笑)の天才(失笑)科学者によりサイボーグへと改造。そこからは、何故か戦時中の砂漠の異世界へ飛ばされたり、(今どき)超能力少女に恨まれたりと、とてもじゃないが一息では語り尽くせぬ数奇な運命を辿っており、今回も中々であった。


「・・・ロ、クロ!」


クロ「うーん。」


遠くの方から聞こえる声と、身体を揺り動かされる感覚に意識が多少なりと覚醒する。
くぁ、と大きく欠伸をしながら薄目を開けるとそこには金髪の少女、マミがいた。


クロ「んだよ・・・。出かけるのか?」


マミ「えぇ。それでね、少し帰りが遅くなるかもしれなくて・・・、お留守番を頼めるかしら?」


初めて会った時と同じ、制服姿をした彼女が申し訳なさそうな面持ちでいる。しかし、クロはあまり動いてまわるような性格をしていないため、あちらこちらへと引っ張り回されるよりは留守番の方が都合がよかった。


クロ「おぉ、行ってこい行ってこい。」


眠気が未だにクロの中で勝っているのか、ゴロリと横になりながらプラプラと手を振る。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/22(水) 20:51:14.60 ID:5aITNrUh0
続ききたあああああ
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/22(水) 21:18:25.56 ID:zWJQ0XIDO
マミ「ええ、行ってくるわ。」


その態度にも大した反応を示さずカバンを持ってマミは玄関に向かった。


クロ「いってらっしゃーい。」


なんでもない言葉だった。適当で、だらけていて、さしあたって気にもとめる必要もないはずだった。


しかし、その言葉に、マミの足は止まった。


『いってらっしゃいマミ。』


クロ「どうした?いかねーのか?」


ドアの開く気配がないことを訝しんだのか、横になったままクロがこちらを見ていた。
ハッと我に返ったマミは慌てて返事を返す。


マミ「ううん、なんでもないわ。」


クロ「?」


マミ「いってきます。」


マミは、こんなやりとりはいつ以来だったかと思い出しながら、結局思いだせずに家の扉を開けた。



────マミ宅


クロ「遅くなる、ってことは、あれか『魔法少女体験』って奴だな。」


眠気に身を任せたまま一人ごちたその言葉に返す者は誰もおらず、彼は一人、ベランダからさす日の光に一番近い場所で横になっていた。


人間からすれば、それはただの怠惰と言われるが、彼は猫。あくまでも、実際に悪魔と呼ばれているが猫である。
怠惰は、生活の一部であった。


そして、気分のままに、少し前の出来事を思い出していた。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/22(水) 21:59:33.88 ID:zWJQ0XIDO
戦いの後、いつのまにか世界は見覚えのある風景に戻っていた。そして、混乱する、まどか・さやかの両名の為に今は説明が必要とマミは判断し、彼女達を自らの住むマンションにまで招待することに決めた。



まどか「魔女?」


さやか「使い魔?」


クロ「結界?」


三者三用の言葉を呟きと同時に二人と一匹は首を捻っていた。
絶望を撒き散らす『魔女』、実際に害を為す『使い魔』、そして、人を引きずりこみ二度と出ることは叶わない『結界』。


さやか「少し、信じがたいというか・・・。」


と口では言いつつも、その全てを実際に見てしまっている彼女はファンタジーを現実として受け入れざるを得ない事を悟り、力なく座り込んでいる。


クロ「相当なファンタジーだな。魔女に、魔法少女ってのも。」


クロはボンヤリとしたような表情で、何故かまどかの膝の上にいる。


まどか「・・・じゃあ、マミさんは、ずっとあんな凄いのと戦っていたんですか?」


マミ「えぇ、でも、あれはまだ使い魔。上にはもっと強力な魔女もいるわ。」


感嘆するまどかに対して、諫めるように現実を言葉として伝える。
だから、と彼女の言葉は続いた。


マミ「ちゃんと、考えた方がいいわよ?魔法少女になるなんて。」


そう、ここに彼女達が集められた理由は、その案件がメインであった。
まどか・さやかの両名は先の戦いで助けたキュウべえから、魔法少女にならないかとスカウトされていたのだ。


─────しかも、『何でも願いを叶える』という条件付きで。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/22(水) 23:26:26.76 ID:zWJQ0XIDO
さやか「なんでもっていうと、満完全席だとか、早く人間になりたいだとか、そんなんでも!?」


興奮した様子で、一緒に席に着いているキュウべえに確認するも、まどかの膝にいるクロはからかうようにニヤニヤ笑う。


クロ「おいそこの腹ペコ妖怪人間。」


さやか「だ、誰が妖怪人間だよ!」


クロ「お前、そんなしょーもない願いで、あんな所に好きこのんで行くつもりか?」


歯に衣着せない遠慮のない言い様にさやかはどうにか反発しようとするもそこをマミに諫められた。


マミ「いいえ、クロの言うことも分かるわ。」


願いが叶う、と言うことは、ただそれだけではない。一度願いが叶ってしまえば、そこから始まるのは明日をも知らぬ戦い。
人知れず、人のために、自らを省みずに、されど、必ず生きなければならない。


マミ「そんな覚悟が必要になるわよ?」


先の柔和な雰囲気から、突然厳しい態度を見せるマミにさやかはグッと黙り込む。


まどか「キュウべえ、願いって本当になんでも?」


強ばった空気をほぐそうと、まどかはキュウべえに尋ねた。
小さな動物は、小さな目をクリクリと輝かせながらまどかの質問に答える。


QB「うん、何でも。命をかけて叶えたい願いがなら。」


その言葉に考えこんでしまったまどかと、先程から神妙な顔をしているさやか。しかし胸の中に往来している想いを二人は語らない。キュウべえは続ける。


QB「もちろん強制はしない。これはとても難しい話だと思うからね。でも、まどか覚えておいて。」


───君が望みさえすれば、君が望む以上のことができる素質があるんだよ?───
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/22(水) 23:47:10.83 ID:zWJQ0XIDO
まどか「え?それってどういう・・・。」


キュウべえの言葉の意味も、その発言の意図も分からなかったまどかは更に質問を続けようとしたが、その前に彼の限界が来てしまった。


クロ「・・・お前なぁ、もう、いいんじゃねぇのか?」


大いに不機嫌そうに、ドスの効いた声が部屋に響いた。


マミ「そういえば、どうしてクロはあなたの膝の上にいるの?」


今まではそう気にならなかったことだが、クロはそうそう馴れ合いをよしとする性格ではないことくらいは、マミにも分かってきたが、ここに来てこれはどういう風の吹き回しなのか。


まどか「え、えっと。やっぱりさっきのが恐かったらしくて、身体の震えが止まらなかった時に、傍にいてくれたから・・・つい。」


つい、でまどかは、ぬいぐるみを強く抱き締めるように、抱き寄せようとする。その気配を感じ取ったクロは、無理矢理身体をまどかの腕からひっこねくと、ジロリとねめつける。


クロ「もう、いいだろうが。ベタベタされんのは大嫌いなんだ。」


もう、いいというのは、まどかの震えが治まった事を指していることは、クロ本人でさえも分からないことだろうが、まどかは、敏感だった。


まどか「やっぱり・・・。やっぱり優しいんだね、クロちゃんは。」


クロ「ハァ?」


悪魔、破壊のプリンス、災厄などと散々呼ばれたクロではあるが、そのような好意を正面からぶつけられたことは、とある電気スタンドを除いて皆無であったため。


その言葉は、かつての記憶まで、何故か呼び起こした。


『疫病神め!!』


『お前のせいだ!お前なんかがいたから。』


まどか「クロちゃん?」


恐る恐るというようなまどかの言葉で、クロは我に返った。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 00:38:06.17 ID:lcky48fp0
何と言うかクロと杏子は色々似てるな
過去に全てを失いその原因が自分のせいだと責められ罪の意識に苛まれ
友達(マミ、マタタビ)を傷つけてしまった事もそっくりだ
そんなクロと杏子が出会ったらどうなるか気になる
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/23(木) 02:01:33.57 ID:0zzi5K9DO
なんかミーくんやマタタビも出てきそう
剛くんが出たら和むだろうな(笑)
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/23(木) 21:06:52.26 ID:s6PX1TIDO
クロ「いや・・・。」


なんでもないと首をふるクロを心配そうにまどかは見つめた。どういうことだろう───彼が一瞬だけ痛みを感じたような顔をしているようにみえたのは。


マミ「はい!じゃあ、話を戻すわよ?」


パンッと彼女は、話題の変換、及び進行を求めて、大きく両の手を打った。


マミ「じゃあ、こうしましょう!」


魔法少女、願い、魔女、戦い。
美樹さやか、鹿目まどかの両名には、それらの事が、いまいちピンとこなかった。
今までの慣れ親しんでいた日常とその裏でひた隠しにされてきた現実としての<幻想世界>。


受け入れがたく、そして、それ以上に魅力的だった。そんな、彼女達に、魔法少女や、魔女について知るために、魔法少女の先輩たる巴マミと行動を共にしてみる。


それが、魔法少女体験コース。


らしい。


────現在


クロ「回想だけで半日かかったなぁ。何が夏休みだから更新に時間は関係ないだ。しっかりと深夜一時迄には寝るくせに。」


と、原作リスペクトのメタネタをぶちこんでみるも相変わらずなんの手応えも感じなかった。


マミが外出してから、いまだに昼にもなっていなかった。
しかし彼は確かに、破壊的な衝動を胸に秘めているクレイジーキャットであるが根本的な性格は、やはり猫である。


つまり、だらけていられるならば、彼はとことんだらけるのだった。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/23(木) 23:45:19.44 ID:s6PX1TIDO
────見滝原中学校


ここで自分のするべき事とはなんなのだろう。
彼女は、かつてはそう思いながら、今では何も考えないで、常にそこにいた。


鐘の音が聞こえれば、席を立つ。
また聞こえれば、席に座る。


ずっと、そうしてきた。


いつからと言われれば、それは、この学校に来た時からだと間違いなく言える。最初は、話しかけてきたクラスメイトも、今では誰も話しかけてはこない。


清々もしない、何も感じない。


いつからだろう。


どうしてだろう。


ずっと、そう考えて、考えて、彼女はこの学校でそれを考える事をやめた。


それに今は、少しだけ、そんな考えから離れる事ができそうだった。




そして今日、彼女がこの学校で、言葉を発することはとうとう無かった。


────見滝原中学校


鹿目まどかは、緊張していた。
それは、この瞬間、この場所に『彼女』がいることに起因する。
見滝原中学二年、保険委員長たる少女。特技及び、取り柄──これといってなし。積極性も窮地での図太さもなく。保険委員長という立場も立候補の際に手を挙げたの自分一人だけだったため、後はトントン拍子に『長』などという立場にたった。


と、そんな評価を自分に与えているほど、自分に対してへっぴり腰な彼女は、ピンチだった。
つい最近、この学校に転向してきたクラスメイト──暁美ほむらの登場によって。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/24(金) 00:15:18.36 ID:DZBRLQkDO
まどか「え、えと、その。」


目の前にいる少女、暁美ほむらに対しては、まどかは一口では語りきれないものがあった。
それは、あの『異変』との出会い・・・、魔女の結界に巻き込まれる前のこと。


あの時、キュウべえを傷だらけになるまで追い詰め、キュウべえを助けようとした自分達を追い掛け回していたのは彼女だからだ。


そして、まどかは今、彼女に呼び出しを受け、人気のない校舎裏にきている。


まどかは、あぁ、焼きをいれるってこういうことなのかなと、目の前から感じる圧迫感に一人絶望していた。


大したことを言えずに凍り付いてしまっているまどかだったが、意外なことに口を開いたのは彼女だった。


ほむら「アイツに会って、巴マミとも接触したのは、分かっている。」


初めて出会ってから、彼女のこの氷のような態度と、射ぬくような言葉使いにはまったく慣れることはなかった。
まどかは、顔を伏せるしかない。


ほむら「私から、言えることは一つよ。契約なんてしてはいけない。大切な人を本当に愛しているなら。」


その言葉に、まどかはなけなしの勇気を振り絞って反論を試みる。


「で、でも、できることなら、大切な人を守るために、戦うことも必要なんじゃ!」


「そんなの、誰も望まないわよ。」


ピシャリとほむらは言った。


「それに、あなたが大切だから私が戦いますなんて、馬鹿げた言い草だわ。そんなの死にに行く理由を他人に押し付けるような弱虫の言い訳なんて、私はもう──。」


今までの、彼女からは想像もつかないような言葉の羅列にまどかは目を白黒とさせており、残念ながらその内容も少ししか頭にはいらなかった。


そして


ほむら「・・・。」


何故かほむら自身も、驚きを隠せなかったのか目をパチクリさせていた。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/24(金) 00:32:07.98 ID:DZBRLQkDO
まどか「・・・じゃあ、ほむらちゃんは大切な人っているの?」


会話まで、止まってしまった気まずさから逃れるためなのか、そこまで言う彼女が何を考えているのか知りたくて、まどかは訊ねた。


ほむら「いるわよ。」


が、面食らっていた様子の彼女だったがその質問にはよどみなく答えた。


ほむら「命をかけて守るべき人と」


──そして


ほむら「世界で一番恋した男。」



───私には、ただそれだけ───


先程の冷たい空気も、消え去った。
そして、まどかは、彼女に話しかけることができなかった。


声をかけることがはばかられる程に、彼女のその姿は凛としていたからだ。


ほむら「もう一度言う。契約なんてやめなさい。」


そして、彼女はこう続けた。


ほむら「悩むことがあれば、あなたの傍にいる頼りになる存在に頼ればいいわ。」


そこだけ、彼女にしては柔らかい言葉で、忠告ではなく明らかな助言で、まどかの頭に残ることになった。


ほむらが去った校舎裏で、立ち尽くすまどかは、ほむらちゃんって恋したことあるんだ・・・、と少し見当外れの感嘆を覚えていた。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/24(金) 22:59:40.72 ID:DZBRLQkDO
時間が立つのは早い、とう感覚はこんなにも不思議なものだろうか、と美樹さやかは思う。


友達と話す放課後


割と調子よくテストを解けている時


これから待っている事への期待や、舞い上がっている時ほど───。まるで、タイムスリップをしたように、胸の音が高鳴る方へ進んでいく。


『魔法少女』『願い』この二つの言葉が持つ輝きに彼女は魅せられていた。


魔法少女という存在の神聖さ、人知れず戦い、人知れず人を救う。
魔女を悪とするならば、魔法少女は正義だった。
その正義の一端にこれから自分は触れることになる。


あの時見たマミの姿に、さやかはハッキリとした憧れと、陶酔を抱いていた。


そして、『願い』


この言葉は、彼女の中で非常に重く、くっきりとした輪郭で一つの意味を為していた。


例えば、もしキュウべえが魔法少女なんて関係なしに願いを叶えてくれる存在だとしたら、彼女はその思いを叶えようとしただろう。


そこは、まだ考えなければならない。
いかんせん、自分の考えが甘いのではないか?という疑念がまだある以上、安易な結論はだせやしなかった。


だから、これからマミさんに付いていく。
あの可憐で、大人びた、美しい『正義の味方』に。


が、巴マミの顔と一緒に、あの嫌なイメージまで湧いてきた。
あの、黒猫だ。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/24(金) 23:06:29.24 ID:D5b58lbh0
お、続ききたか
待ってたぜ
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/24(金) 23:22:00.96 ID:DZBRLQkDO
あの日、初めて結界に取り込まれた時に出会ったあの猫。


歩く、喋る、口が悪い、銃刀法違反ets・・・、それだけでも随分と警戒すべき存在であるはずなのに、あの日見た奴の戦いは常軌を逸していた。



あの猫は、笑いながら銃を撃っていた。


愉快そうに、馬鹿にしながら、誇るように、楽しむように、下手したら次の瞬間には笑い転げてしまうのではないかと思う程、彼は銃を乱射したのだ。


よくドラマや映画でみるようなサイコな犯人とは、違う。暗い喜びとは違う、当たった避けたで楽しそうにドッヂボールをする子供のようだった。


しかし、さやかはその軽薄さが気に入らない。


確かに、あの時は、救われた。
しかし、その後に助けにきてくれたマミの方が、真剣に戦っている戦士という印象を受けたし、あんな戦い方をする奴と比べたら天と地、女神とドブネズミ(猫だけど)を比べるようなものだ──、とさやかは考えていた。


そもそも、何故マミは、彼と生活できるのか。
そう言えば、まどかもあの猫には親しく接していた。


まったく、理解しがたい。


しかしそこは(まぁ、いいか。)という中学生特有の能天気さでもって彼女は気分を切り替えた。


今から、一度家に帰って、準備をしてから、まどかやマミと合流する。
そして、魔法少女体験コースによりもっともっと自分は知る必要がある。


自分の憧れの、正体を。


─────マミ宅


クロ「これ、昼飯はちゃんとあったけどよ。」


クロ「晩飯がイカ飯ってどういうことだよ!!」




猫に、イカや海老を与えてはいけないのだ。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/24(金) 23:25:10.48 ID:Kcz+U3qu0
さやかは自分が信頼しないなら親友や恩人が信頼しても、一切信用しないからな
最初に疑うとその相手の言葉がどれだけ心こもってても嘘にしか聞こえないんだっけ?
その代わり一度信頼した相手は周りが信頼しなくても完全に信用するんだっけか
…面倒臭い性格
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/24(金) 23:41:38.90 ID:Ecd35hK50
今にして思えばコタローが初登場時に称した人生クソゲー論とか
剛くんの「この腐った世界を変えるにはただ一つ!世界征服だ! やつらがわれわれを拒絶して「 カベ」を作るのなら!
われわれの手でこの世の「カベ」すべてをタタキ壊すのだ!」
とか児童誌だとは思えんほどの毒がある台詞が多かったなあ
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/24(金) 23:49:08.12 ID:DZBRLQkDO
クロ「クソ。マミの奴、オイラをただの残飯担当にしようとしてんな!」


眠気は、とっくに空腹で吹き飛んでしまったのか、クロは少しばからイラついていた。
彼は、サイボークであり、エネルギー供給はガソリン(ハイオクからレギュラーまで)や軽油を主としており、飢餓で死ぬことはない。


しかし、機械になる前の習慣からか、今でもまだ腹が減り、食物を摂取することでもエネルギーを吸収している。


要は、別に食う必要はないが、食いたいから食うのだ。


クロ「こんな時にミー君かナナでもいりゃゲフン・・・、ミー君がいればなぁ。」


誰が聞いているわけではないが、一応照れ隠しを加えてクロは次の行動を模索する。
「魔法少女体験ゲーム」だかなんだかで、マミは帰りが遅いと聞く。


成る程、待つのは馬鹿らしい。
そして、この家には食料が異様に少ない。
あくまでも、一人分しか置いておらず、急な客の分も計算にいれていないようだ。


何よりも、気になるのはこの臭い。


まどかと、さやかと、マミ。
たった三人。三人だけしか臭いを感知できないのだ。
つい最近出会った二人、その分の臭いを外せば、たった一人しか残らない。


もっと食い込んだ見方をすると






この部屋には、『家族』を感じることができなかった。


最低限の家具に、最低限の洋服に、最低限、最低限、最低限、最低限、最低限、生活感がないのではなく、あくまで取り繕ったような部屋。


女の子らしさを、幸せな自分を、そんな空々しさが、この部屋にはあった。


クロ「親無し、か。天涯孤独だったかどうか、微妙だな。」


クロ「飯食いに行くか。」


防犯の為、ベランダの窓から出ていくことにした。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/24(金) 23:56:39.80 ID:SHkdMLsw0
原作でもクロに否定的だったのってニャンニャンアーミーの4号くらいだっけ?
まあクロちゃんってノリが軽いといか順応生高い奴等が多くて
さやかみたいに潔癖すぎて頑固なキャラっていなかったから
そんな奴がクロに関わったらどういう目でクロを見て、どういう感情を抱くのか期待
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/25(土) 00:02:04.84 ID:qWSjHbOG0
マミ「クロは凄く良い子なのよ?」

まどか「そうだよ!なんで信用しようとしないの!?」

さやか「なんでまどか達は笑いながらガトリングを乱射する、明らかに怪しい生物を信頼出来るのさ!?もしかしたら私達を何かに利用しようとしてるかも知れないんだよ!?それともあの生物に変なこと吹き込まれたの!?目を覚ましなよ二人とも!」

こんな感じかな?
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 00:16:00.70 ID:giMOKZXDO
銃刀法違反ってさやか…クロは猫だぞ(サイボーグだけど)だから銃刀法違反は関係ないんや!

まぁマミさんからしたらクロはサイボーグとは知らないけど喋ったり戦ったりする特殊な猫程度の認識だからガソリンなどを好むって知らないし置いてないわな

さやかならマタタビと仲良くなれそう
マミさん→クロ
さやか→マタタビ
ほむら→コタロー
まどか→ナナ
杏子→ミーくん
これなら相性抜群じゃね?
特にコタローとほむら組んだらある意味最強タッグだな…
コタローが兵器を作りほむらがそれを魔女に使う
あれ?これだけでワルプルギス倒せるんじゃ(笑)
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/25(土) 00:16:13.45 ID:R0SgSLst0
>>69
さやか…言ってる事はそこまで間違ってないけどさ
QBがクロは怪しいとか言い出したらQBの肩持ちそうだな
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/25(土) 00:22:23.75 ID:R0SgSLst0
>>70
それだけじゃなくコタローならまどマギ側の問題を殆ど解決できそうだぞ
「無限エネルギー装置」とか「バイオメタル」とかどれも
宇宙のエネルギー問題やら魔法少女の問題にどれもうってつけすぎる
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/25(土) 00:49:13.80 ID:L6DxfP1DO
そう言えば、自分の母親とは一体どうなった。 彼は考える。
当時存在した『猫狩り』。


人間が、自分の力を誇示するため、いや、自らの矮小な無力さを誤魔化すために行った猫の大量虐殺。


それに、巻き込まれたのだろうか。


自分は、母親を知らなかった。
母親と聞いて、思い出すのは真っ白な犬だった。
優しく、温かな────。


自分は、父親を知らなかった。
父親と聞いて、思い出すのは灰色の猫だった。
厳しく、真っ直ぐな────。


自分にとっての家族は、あの時出会った仲間達だった。
彼がいたから、自分は生きていた。
生きる術を、生きる力を与え、生きるという行為そのもを彼らは教えてくれた。


いや、それ以前に───

クロ「ここは?」


別に食料を求めてはいなかったが、とりあえず空腹を誤魔化す為に彼は長いこと散歩をしていた。
その内に、どこかの住宅街に迷いこんでしまったようだ。


彼にしては珍しく、考え事をしていたためだ。


ここは・・・、家?


クロ(でけーな。)


この辺の家々を見渡してみれば、これくらいの大きさは普通なのかもしれないが、やはり、桜町の築百年(だった)の家から見てみれば立派なものである。


クロ(こんだけデカい家を直すとなったら、マタタビの奴どんな顔するかね。)


「ん、誰かな?」


ビクンと身体を強張らせながら、声のした方へ顔を向けるとそこには一人の男がいた。


74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/25(土) 00:59:50.05 ID:L6DxfP1DO
眼鏡をかけた、エプロン姿の、気弱そうな男だった。


「猫?こんなところで何をしているのかな?」


優しく笑いながら、彼は近づいてくる、敵意も悪意もない。
クロは、ただ彼を見ていた。


クロ「ニャア」


「お腹でも空いたのかな?」


クロ(おぉ、正解)


「えぇと、はいこれ。」


すると、彼はエプロンのポケットから一つまみほどの煮干しを取り出すと彼の前にそっと置いた。


クロ(お前は大阪のおばちゃんか。)


「それにしても。もうすぐ、日も落ちそうだけど良いことあるかもなぁ。」


一本ずつ噛み締めるように煮干しに食らい付くクロを優しく見下ろしながら彼は言った。


「知ってるかい?黒猫は不幸の象徴とされているんだ。」


クロの動きが止まった。


「でもね、外国では黒猫は幸せを運んでくるとも言われているんだ。」


食べるのを止めて、クロはジロリと男をねめつけた。


「なら、僕は。君を幸福の使者だと思うことにする。」


だって


「出会いを全て、不幸にしてしまうなんて、一番不幸なことじゃないか。」


そう言って、男は真っ直ぐな瞳でクロの瞳を覗き込んだ。
そして、それは───


クロ「グレー?」


「あれ?今、誰か喋っ、あぁ!待ってよ!」


男が疑問に思う前に、クロは全力疾走でその場から走り去っていった。


「もっとしっかりしたご飯をあげたかったんだけどな。」



あり得ないことをした。 ヘマもいいところだった。苛立ちがわく、自分自身に。


親離れできないガキじゃあるまいし。


75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/25(土) 23:36:56.65 ID:L6DxfP1DO
まどか「ごめんなさい!遅れました!」


日も沈まんとしている時間、マミとさやかが立っている場所に、まどかは走ってやってきた。


さやか「おっそいぞ!まさか御飯をちゃんと食べてきたわけじゃないよなー?」


図星、である。
出ていく直前に、父から、軽くでも夕食を食べないか?と誘われたのだ。
そして、マズいことに、今日も父も御飯は美味しかった。


まどか「か、完食しました。」


まさか、本当に食べてきたとは思わず、さやかは軽くズッコケる。
確かに、食事は大事ではあるが、例えば、緊張感とか、不安とか───、この娘には無かったのだろうか?


マミ「あら?戦いの前の食事は大切なことよ、美樹さん。」


その言葉に、さやかは軽く反応を返す。


さやか「あのー、マミさん?その、名字は止めてくださいよ。さやかでいいですって!」


まどか「私も、まどかです。下の名前で読んでください。」


その言葉に、マミは目を丸くした。
いや、それは本人の中ではそうなっていただけで、まどかやさやかには分かりづらいものであり、おそらく、マミ自身もその感情を表に出すことを良しとしなかっただろう。


その喜びと、胸に浮かんだ一つの『打算』を。


マミ「えぇ、じゃあ、ありがたく呼ばせてもらうわ。さやかさん、まどかさん。」


その言葉に、目の前の二人はニッコリと笑った。


76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/26(日) 00:14:56.12 ID:Q0hZ9VlDO
見滝原、そこは確かに、美しく、発展し、人による整備が行き届いた日本有数の都市である。


しかし、最初からそうだったわけではない。
発達の裏には、一つの衰退があり、創造の裏には、破壊がある。
ビルを作れば、もう一つの大きなビルを都心部にを作る。
勿論、企業は新しい巨大なビルに居を構えたがる。
マンションを作れば、駅前に巨大なマンションが建つ。


もっと良いものを、もっと便利なものを、もっと高価なものを。


もっと美しく、もっと楽に、もっと、もっともっと


人は、そうやって発展をしてきた。
全てを捨てて、作りかけのプラモデルはそのままに、また新しい玩具を欲しがるように。


それは、ここ見滝原も同じだ。


都心部に行けば、見上げるほどの高層ビルがテトリスのように並んではいるが、少し街の外れた場所に向かえば、廃工場や、空きマンション、人が住まなくなった建物がポツンポツンと増えていく。


人気もあまりなく、錆びれた場所。


彼女達は、そこを歩いていた。


さやか「へぇ、そのソウルジェムっていうので、変身したり魔女の居場所が分かったりするんですか。」


マミ「えぇ、分かるといっても結局は近づいてみないとはっきりとしないから、確認はしに行かなきゃいけないのだけど。」


少しばかり、イタズラっぽく笑う彼女の手には、卵のような形をした宝石がある。
それが、ソウルジェム。
魔法少女の力の源、らしい。


らしい、とは、やはり話が分からなかったというのと、いよいよ神秘じみた物証が目の前にあり、それだけで満足したような気分になったからだった。


まどか「あの、マミさん。クロちゃんは元気ですか?」


突然の質問に、マミはキョトンとし、さやかは顔をしかめた。
前者は疑問から、後者は嫌悪である。


マミ「朝、学校に行く時は眠っていたけど・・・どうかしたかしら?」


まどか「パパが言ってたんです。今日、黒猫が庭に迷い込んできたって。そして、その猫は喋ったそうなんです。」


マミ「喋った?クロがそんなポカを犯すとは思えないわね・・・、何て喋ったのかしら?」


彼は、それなりに常識がある猫だ。
つまり、人間の中に存在する常識や、既成概念にも精通しているため、無闇に二足歩行をしたり、人語を操ることはしない。


それは、彼と過ごした、ここ数日の中で知ることができた彼の一面である。


77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/26(日) 00:22:16.89 ID:Q0hZ9VlDO
今日は、ちょっとここまでです。


明日は、昼頃に投稿しますので、興味のある方は覗いてみてください。


様々な、ストーリーのごり押しがこの後続きます。
力技でクロスオーバーしてしまいますので、特に、あのキャラは全力で捏造します(もうばれてるでしょうが)。


因みに私は、インドじゃ犬と結婚した人もいるし・・・猫くらい別に大丈夫だよね!と、考えて書いています。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 14:01:46.75 ID:UnHL0dLDO
昼はもう過ぎてるぞ?
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/26(日) 15:19:53.19 ID:Q0hZ9VlDO
まどか「えっと、確か・・・、グレーって。」


さやか「ハイハイ!もう、やめてよ。あんなんの話はさ。」


名前どころか、その概要を聴いただけでも嫌気がさすとでも言いたげにさやかは、クロの話題を切り上げようとする。


まどか「さやかちゃんは、クロちゃんのこと・・・嫌い?」


オズオズと伏し目がちに、まどかは、さやかを見つめる。
彼女は恐れていた。


自分は、クロの事を好ましく思っていた。
まだ出会いから短いが、彼はそれなりに、感情を押し隠さず、良い部分も悪い部分も曝け出すタイプだと理解できる。


まどかは、あまり、聡いほうではない。
人並みに鈍く、人並みに疎い。


まどかは、そこを恐れている。


さやかは友達で、クロだって友達だと思う。


そんな彼らが、憎しみあってしまうことはたまらなく辛いと思うからだ。


さやか「いや、まぁ、嫌いっていうか気味が悪いというか?」


さやかは、そんなまどかの様子を感じ取ったのか、敢えて言葉を濁した。


否定とも、肯定ともとれるその態度に、深く突っ込めるような度胸はまどかにはない。


伝えたい事も伝わらず、伝えられず、彼女は軽く自己嫌悪に陥り、そんな様子に傷付き、苛立つさやか。


と、そんな重い沈黙を打ち破るものがいた。


キュウべえ「確かに、彼の在り方はボクにもよく分からないものがあるよ。」


いつまにか彼は、まどか達の足下を歩いていた。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 16:52:36.34 ID:FWLLvvoS0
やっぱさやかはクロを信頼出来ないか
多分命を助けたとしても「アンタ、私達を何に利用するつもり?」って言葉が返ってきそうだな

んでクロが何言っても
さやか「うるさい、私はアンタを信用出来ない、アンタの言葉は全部嘘にしか聞こえない」って言われそうだな

後、まどか辺りに「なんでクロを信用しないの?」っ聞かれたら
さやか「まどかはさぁ、親友の私と笑いながらガトリング撃ちまくる得体の知れない生き物、どっちを信じるのさ?」ってなって、まどかがどっちも信じてるとか言ったら
さやか「まどかはあの猫を信じるの?…私はまどかを信じたいけど、アレを信用するならまどかも信用出来なくなるよ?」
とか言いそうで怖い
さやかが最初に疑った相手は決して信用しないからね、ほむらの事も「私分かっちゃうんだよね、アンタが嘘つきだって事」って言ってたし、最初に疑われたら絶対信用されないよね
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 17:08:17.67 ID:UnHL0dLDO
>>80
落ち着けよ

>>1が書きにくいだろ?
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 17:20:00.68 ID:56hx77UM0
そもそもクロが信用できないとか嫌われて大人しく引き下がるタマかあ?
むしろ嫌がったら逆に喜んで関わってくると思うんだが、人の嫌がる事をするのが大好きなサディスティック星の王子だぜ。あいつあ
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 17:28:27.06 ID:CCO0TMPDO
さやかはすごいうたぶり深いけど結構鋭いからクロの本質を見抜いたらあっという間に仲良くなれそう
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/26(日) 17:53:02.99 ID:SlikRmsS0
確かにさやかは鋭いけど、悪い本質しか見抜かないんだよな
ほむらの場合は「何か重要な事を隠してて、それを誰にも教える気がない」(何故教えないか、この場合は魔女化を防ぐためだったりまどかを守るため、というのは分からない)だったしな、相手の良いところよりも悪い所を先に理解して、それ以上知ろうとしないって感じかな?

クロの場合、銃の扱いに慣れてて、昔人を殺したんじゃないか(何故殺したかは知ろうとしない)とか聞かれて、クロなら正直に言うだろうし、それを聞いた後に「人殺しなんかと仲良く出来るわけない!アンタは魔女と変わんない!」的な事言いそうだよな
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/27(月) 21:24:43.13 ID:vq70zBPDO
まどか「キュウべえ!?」


しなやかな動きでコンクリート塀の上から、彼女達の数メートル前に降り立った彼は、こちらを振り返りながら言葉を続けた。


キュウべえ「彼からは、生きている生物から感じるような波動を感じない。」


さやか「じゃ、じゃあ、アイツはもう死んでるっていうの!?何それ、ゾンビってことじゃない!!」


まどか「く、クロちゃんが?」


キュウべえの言葉を受けた彼女達は衝撃と動揺を覚える。
先日、会ったばかりでも、あれ程のインパクトを受けたあの存在感を持つ黒猫が、すでに死んでいるというのか───。


マミ「それは、仕方がないわよ。」


しかし、その動揺を押さえるためにマミは、彼女達に自分の知る事実の一つを明らかにする事にした。


マミ「彼は、サイボーグなのよ。」


サイボーグ?


その言葉の、意味をさやかは考えた。


まどかは、アーノルド・シュワル○ネッガーの顔を思い浮べた。


そして


まどか・さやか「ええええええ!?」


同時に、純度100%の驚愕で彩られた絶叫が響き渡った。


しかし、キュウべえだけは、じっと黙り込んだままだった。


86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/27(月) 21:26:48.90 ID:JbgoYtB30
まあ確かに一度死んでるがな
確か機械の体に魂突っ込んだんだっけ?
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/27(月) 22:07:21.43 ID:vq70zBPDO
まどか「サササ、サイボーグって、あれですよね!ダッダダダっていうあれですよね!!」


因みにシュワルツではなくシュワルツェである。


マミ「え、ええ、そうよ。カリフォルニア州知事とは違うと思うけど・・・。」


妙に興奮した様子のまどかに詰め寄られたマミは、少し戸惑いながらも、冗談めかして質問に答える。
しかし、その言葉も耳に入っているのかいないのかまどかは目を輝かしていた。


テンションが最高潮に達しようとしたため、さやかは、まどかをマミから引き剥がす。


さやか「はい、ストーップ!まどか、マミさんがドン引き五秒前だよ。」


パコンと頭を叩かれたまどかは、ハッとした顔をしたかと思うと、顔が沸騰するくらいに真っ赤になり、慌ててマミから離れた。


まどか「ご、ごめんなさい!私、まだちっちゃい弟がいて、その子と将来ちゃんと話を合わせられるようにってロボットものとか見てたら割と面白くて、その、早く新劇場版が見たいとか、フォーゼ最終回良かったなとか!あれ、あれれれ。」


緊張と羞恥と混乱で、脳内で考えていることが、ダダ漏れになっているほどに、まどかはパニック状態に陥り、それを目の当たりにしたマミも、慌てて彼女をこちら側に引き戻そうと、まどかの両肩を掴んだ。


マミ「落ち着きなさい、まどかさん。深呼吸して深呼吸。」


まどかとしっかりと目を合わせながら、マミは「はい、すーはー。」と深呼吸を促す。
まどかも、それに合わせるように呼吸を大きく行う。


何度も、何度も、行う事により、まどかの意識も落ち着きを取り戻し、目にも必要以上の力がこもっていない。


────だから、なのか


まどか「・・・あれ?」


『それ』に気付いたのはまどかだった。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 22:13:51.92 ID:KJlZHNRDO
クロは剛くんに前から狙われてて愛しの犬にミサイルが行ってそれを庇ってそのまま連れていかれた感じだっけ?


それにしてもヱヴァ新劇場版は来年だっけ?フォーゼ最終回は良かったのは同意
ただ次回作のウィザードお前は存在を認めない
89 :最終的にはウィザードも良く思えるはず・・・ですよね、きっと :2012/08/27(月) 22:32:14.42 ID:vq70zBPDO
そこにあったものは、大きなマンションだった。
今は誰も住んでいない、見栄えも黒く煤けたマンション。


そこにいたのは女性だった。
会社勤めをしているのか、あまり派手めの服装ではないが、きっちりと着こなしたスーツ。


彼女は、屋上に立っていた。


ユラリ、フワリ、フラリ、そんな効果音がピッタリと似合うような、挙動だった。
しかし、それはそんな可愛らしい表現で表せられるような状況ではないことは理解できる。


身体の軸がなく、立っていても、すぐに倒れてしまいそうだ。
そんな彼女が、あんな屋上のヘリに立っている。


何をしようとしているのか、それが導く悲劇をその場にいる誰もが分かった。


さやか「落ちる!?」


まどか「ッ?!」


この場合、言葉を発することができただけ、さやかは幾分か冷静だったのかもしれない。
勿論それは、誇張の表現として取ってもいい。


しかし、隣にいたまどかは「あっ」とも「ひっ」とも取れる、息を飲む暇もないよいな悲鳴を上げてしまったところを見ると、さやかは状況を読むことはできていたととれる。


しかし、『彼女』の行動は、それらの二枚も三枚も上手だった。


マミは、突然、落ちていく彼女の落下地点と予測される場所に走りだす。


まどか・さやか「!?」


その事態に付いていけない二人は立ち尽くすだけであるが、そんな彼女達の目の前で、マミは光に包まれ、その姿を変貌させる。


マミ「お願い、間に合って!」


切迫した叫び、気合いとも呼べるが、切願とも呼べる一声と共に、光のリボンがマミから、飛び降りた女性に向かって飛んでいき。


まどか「やった!」


さやか「よっしゃ!」


見事に絡めとった。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/27(月) 23:14:53.19 ID:vq70zBPDO
さすがに肝が冷えたのか、マミは、ふぅと息をついたまま、しばらく動けなかったが、膝に力をいれて走って女性の元に向かった。

その様子を見た二人も、顔色を不安と喜色でごちゃ混ぜにしながら、マミに付いていく。


マミ「・・・これは。」


女性を、そっと地面に横たえたマミは、ちょうど首筋のあたりにある、不可思議な形をかたどった小さな紋様のようなアザを見ながら顔をしかめた。


さやか「マミさん、それは・・・何ですか?」


マミ「『魔女の口づけ』──魔女の標的になった人間につけられるものよ。」


魔女、標的、その言葉に、まどか、さやかの顔は青ざめた。


こんなことが、実際に起きているのだ。


魔女という存在、そんなものに命を刈り取られる人間がいること。


そして、それは自分達の生活のすぐ近くで起きていたこと。


知らなかった、でも、もはや知らなかったでは済まされない。


彼女達は、知ってしまったのだから。


マミ「さぁ、行きましょう。」


マミが見つめる方向に目をやると、そこには、ぽっかりと暗い口を開いている扉があった。



─────見滝原 住宅街


クロ「あぁ、ったく、情けねぇー。」


誰も見ていないことをいい事に、クロはコンクリート塀に背もたれながら空を仰ぎ、そう吐き捨てた。


91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/27(月) 23:15:53.90 ID:vq70zBPDO
さすがに肝が冷えたのか、マミは、ふぅと息をついたまま、しばらく動けなかったが、膝に力をいれて走って女性の元に向かった。

その様子を見た二人も、顔色を不安と喜色でごちゃ混ぜにしながら、マミに付いていく。


マミ「・・・これは。」


女性を、そっと地面に横たえたマミは、ちょうど首筋のあたりにある、不可思議な形をかたどった小さな紋様のようなアザを見ながら顔をしかめた。


さやか「マミさん、それは・・・何ですか?」


マミ「『魔女の口づけ』──魔女の標的になった人間につけられるものよ。」


魔女、標的、その言葉に、まどか、さやかの顔は青ざめた。


こんなことが、実際に起きているのだ。


魔女という存在、そんなものに命を刈り取られる人間がいること。


そして、それは自分達の生活のすぐ近くで起きていたこと。


知らなかった、でも、もはや知らなかったでは済まされない。


彼女達は、知ってしまったのだから。


マミ「さぁ、行きましょう。」


マミが見つめる方向に目をやると、そこには、ぽっかりと暗い口を開いている扉があった。



─────見滝原 住宅街


クロ「あぁ、ったく、情けねぇー。」


誰も見ていないことをいい事に、クロはコンクリート塀に背もたれながら空を仰ぎ、そう吐き捨てた。


92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/27(月) 23:42:20.12 ID:vq70zBPDO
>>91

oh・・・、連投。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/08/27(月) 23:47:16.12 ID:O4Jn6dkUo
おお…クロちゃんのSSがあったとは…
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/27(月) 23:52:42.96 ID:vq70zBPDO
どういうことかは、分からない。
どうすれば、あのナヨナヨした男から、アイツを連想することになったのか。


もう一度、この違和感を確かめたい思いもあるが、なんとなく顔を合わせ辛い。猫の自分が、人間相手にこんな気を回すのもおかしな話だった。


クロ「もう、帰るか。」


食料の問題だったが、それは悪いと思わない事を、悪いと思いながらも、途中にあったバイクから燃料を大量に頂いたことにより解決した。
明日からはマミに、いろいろ頼んで、飯と燃料の両方を用意させようと決めた。


もう、そろそろ日も暮れる自分は夜目が効かないため、夜間の行動はできるだけ避けたい。


クロ「あ?」


と、そこで妙なものを見つけた。
数メートル後ろ、電柱が立っているが、その陰に、こちらを伺っているモノがいた。


クロ「おい、どーした。出てこいよ。」


ビクッとその影は、動いたかと思うと、プルプルと震えだした。


クロには、その正体はすでに分かっている。
しかし、ああいうのは無理に引きずりだすようなやり方ではなく、少し、待ってやったほうがいい。


敵意もない、あんな子供相手は特に。


クロ「今日は妙な臭いがするからな。野犬に食い殺されたくなけりゃとっとと帰れ。」


その言葉で恐る恐る、電柱からその正体を現したのは、子猫だった。
子猫と言っても、まんま赤ん坊ではなく、幼い子供のような体躯である。
その姿は、いつぞやのブッチを思い出させた。


「ミー。」


クロ「帰る場所はねえだ?なら、群れに入ってねぇのか?」


「ミー。」


クロ「母ちゃんはどうした。」


95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/28(火) 00:22:56.75 ID:hRAG+XoDO
ぶっきらぼうながら質問を重ねる度に緊張が和らいだのか、目の前の子猫は饒舌になっていった。


曰く、自分は母親からここに行くように隣街からやってきた。


曰く、母親は食料の少ない街の現状を憂いての行動に出ただけで、決して悪党ではないこと。


曰く、自分にはお目付け役がおり、ここには彼と一緒に来たこと。


クロ「そいつはご苦労さんだな。」


クロのからかっているようで、その実は本気で労っているという言葉だが、子猫はその言葉を素直に受け止めたのか、誇らしげに胸を反らした。


クロ「そこまでして会いたいのか、その、なんだ?」


「ミー。」


クロ「そう、そのマザーって奴に。」


これも彼の話から、分かったこと。
どうやらこの街には、迷子になった猫や、怪我をした猫、流行り病にかかった群れを保護し、治療を行う『マザー』という人間がいるというのだ。


その人間は猫の言葉を解するため、コミュニケーションを取ることができ、トラブルを抱えた猫にとって神のように讃えられているらしい。


そんなんがいるものなのか?と首をかしげたくなるような内容だが、魔法少女や魔女がいる街である。
そんな不思議な存在がいても不思議ではないし、そもそもその『マザー』も魔法少女なのかもしれない。


クロ「んじゃ、とっととそのマザーとかいうのに会いに行きゃいいだろ?」


「ミー。」


どうやら、今そのお目付け役が、マザーの家を確認しているらしい。
ならば、そのお目付け役がここに来るまでここで待っていようとクロが思った───その時だった。


気配が変わる。明らかな変質、空間の変更を感じる。捻れと、引っ張られていく感覚。


クロ「これは、あの時の!」


そして、世界は変わった。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/28(火) 00:37:55.89 ID:Oc4BbHVR0
猫の言葉がわかる人間で治療まで行っている人間…
まさか「かずみ☆マギカ」の里美か?
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/28(火) 21:10:46.94 ID:hRAG+XoDO
二回目にもなれば慣れたものであり、更に言えばこの現象に関しては自身では抵抗のすべはないことも知っている。


目の前で、暗い世界が構築されていく様を見ながら、半ばクロは見物するような面持ちで結界の中へ引きずりこまれていった。


クロ「猫まで襲うってのか?無差別もいいとこだな。」


呆れたように、変貌した風景を眺めまわすも、いくばくかの違和感を感じる。
それは今見える世界に対して、もっと言えば今のこの『見える視界の』状態に関して。


周囲は、まさに暗闇の中にあるとも言えた。
以前取り込まれた結界よりも暗く、闇が深い。


通常ならば、これくらいの暗さでも、ある程度は動けたかもしれないが、彼はそれができない。


クロは夜目が効かないのだ。
暗闇における彼の視力は、彼の行動を大きく制限するものだった。


クロ「やっかいなことになっちまった。」


流石にぼやかざるを得なく、苛立ちまぎれに耳をかいていると、自分の足に擦り寄ってくるものがいた。


「ミー・・・。」


不安げな、か細い声が聞こえてきた。


クロ「お前まで来てたのか?」


どうやら巻き添いを食ってしまったらしい子猫は身体を小さく震わせながらクロにピッタリを張り付いてきた。


クロ「どうしたものかねぇ・・・。」


『こんなところにいても、どうしようもないわ。先に進みましょう。』


ザ、ザ、と一瞬だけ、ピントの合わない視界にノイズが走った。


クロ「!?」


身体を強張らせる。
頭を振って、もう一度目を凝らしてみても、もうなんの異常も見当たらなかった。


ノイズと共に一瞬だけ見えた何かと、一瞬だけ聞こえた声───、考えて見ても検討がつかない。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/28(火) 21:41:16.50 ID:hRAG+XoDO
「ミー?」


黙ってしまったことで、不安を煽ってしまったのか、子猫は恐る恐るというように話しかけてくる。


クロ「考えてもしょうがねーか。行くぞ、チビ助。」


腹から剣を抜き出して、闇の奥を睨んだ。


『──────!』


『───────!』


とそこで、以前感じたやかましい気配が群がってくる。

「ミ?」


クロ「根性みせろよ!行くぞオラァ!!」


左手で、子猫を担ぎ上げ、右手で剣を握りしめ、クロはその気配、そしてその奥にあるもっと大きな何かに向けて走りだす。


一瞬だけ見えた、黒髪の少女の幻を追いかけるように。




────Side マミ一行


深く、異様な世界。


例えば、こんな世界に一人閉じ込められたらどうなるだろう?とまどかは考える。
今は、さやかという友達がいて、マミという頼りなる先輩がいて。
そんな彼女達がいるからこそ、ただの恐怖で済んでいるだけなのではないか。


だからこそ、ここに一人取り込まれた人間がいるということは、おぞましく生々しい恐怖をまどかに与えた。


もし、ここに一人ぼっちだったら?


冗談ではない。想像することもごめんこうむる。


さやか「大丈夫?まどか。」

と、そこで、その友達であるさやかが、まどかの気を察してか声をかけてくれた。
つい先ほどは、クロを巡って気持ちの行き違いをかんじてしまったが、今はこうして気にかける優しさを見せてくれる。


そんなさやかに、まどかは別の意味でもホッとさせられた。


そんな彼女だが、今は護身用として持ってきたバットをマミに魔法でファンシーなフォルムの武器に変えてもらい、それを両手で握りしめている。
時折現れる使い魔相手に振り回しているのだが、倒すには至らず、その度にマミが止めをさしているのだが。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/28(火) 22:53:19.17 ID:hRAG+XoDO
さやかは、利発で活発で、例え何もできなくてもバットを持って戦おうとするくらいに勇気がある。


そして、自分達に気を回しながら、度々現れる使い魔に向けて銃を放ち、怯える自分に励ましの言葉をくれる頼りになるマミ。


そんな中で、まどかは思う。


じゃあ、自分はどうすればいいのか?


勇気もなく、力も、強い意志もない自分は───


マミ「来たわ。ここが───この結界の最深部よ。」

と、時間がどれくらいたったのか分からないまま歩き続けたが、気付けば目的地に着いてしまったようだ。目の前にあるのは、扉。


ゲームで見るようなラスボス前にある豪華絢爛な扉ではなく、クレヨンか水彩画で書きなぐったような色彩の扉だった。
冗談みたいな世界だ。
そして、本当に嘘みたいな話はここからなのだと、まどかは恐れと共に、しかし、それでも逃げまいと足を踏みしめた。


マミ「この先には魔女がいる。いい?物陰に隠れなさい。そしたら、私が魔女を倒すまで決して出てきてはだめよ。」


さやか、まどかの両名はゴクリとお互いが唾を飲み込む音を聞いた。
さっきから、喉がカラカラだ。
今、この瞬間、この瞬間だけは気を休めることができた。


マミが、その手をドアノブにかけるまでは。


がチャリと、ドアが開く。


不思議な事に、光が溢れていた。
こんなにも恐いのに───、三人は光に包まれていった。


100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/28(火) 23:28:45.53 ID:hRAG+XoDO
そこにいたものは、今まで見た全てのものの中で醜悪で、悪辣で、奇怪な姿をしていた。


薄暗い色調の肉塊に、蝶の羽が生えていた。
そして、その頭には、大量の薔薇が茂みを作っている。


身体のどこにも、共通する部分はなく、ミスマッチとミスマッチをつなぎ合わせて無理矢理形作ったアンバランスな造形物。


嫌悪と、恐怖の、権化。


まどかとさやかは初めて知った。


これが────魔女なのだと。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/31(金) 01:54:10.60 ID:TyAofJB30
続きまだかなぁ?
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/31(金) 12:01:56.75 ID:J9jJL1PV0
もしかして、作者って昔にじファンでリリカルなのはStrikerSとクロちゃんのクロスオーバー作品を書いてた人? ゲームセンターのやり取りが似てたけど… あの作品の続きも気になるけど、今はこの作品を頑張って!応援してます!!!
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/31(金) 21:25:37.34 ID:HyuFfHdDO
マミ「早く隠れて!!」


気合い一線で放たれたマミの叫びに反応したのはさやかであった。
恐怖と驚愕によるショックから抜け出せず立ち尽くしてしまったまどかの手を掻き毟る勢いで引っ掴むと全力疾走、調度人間二人分程が隠れる事ができそうな大きなレンガの塊の後ろにまどかと自分を押し込んだ。


そして、開戦の合法は銃声として鳴り響いた。




─────Side クロ


クロ「だらっしゃああああ!!」


ヒュンっ!と、細長い棒が風を斬るような音が暗闇で響く。


クロは、自分の何倍もあろうかという長剣を振り回しながら全力で闇の中を走っていた。


当てずっぽうで、なんのプランもないような疾走劇だが、彼が剣を振り回すたびに、彼の背中にはまるで黒猫のような姿をした異形が骸として転がっている。


クロ「・・・そろそろ飽きてきたぞ、コレ。」


結界に閉じ込められてから、早20分程経った。
襲い掛かってくる、敵というのも見つかり、楽しみながら進んでいたのが、これがまた退屈だった。


同じ姿、単調な攻撃、そもそもヤワイ。
それを斬り捨てながら、走る。
暗闇の中には、目指すべき光は弱く。
時たま足を何かにぶつけながら進んでいる。


そもそも、あれはなんだったのだろうか。


一瞬だけ走ったノイズと、幻覚に幻聴。


あんな黒髪の女なんて見たことはなかった。


クロ(いや、ちげーな。見たことはある。ここに来た時に見た夢の中にいた女だ。)


いよいよ、きな臭いものを感じる。
明らかに、自分すらも巻き込んだ何かが起きている。


今までの、戦いからは想像もつかない何かが。


「ミー!」


左腕で抱え込んでいた子猫が声を張り上げた。
どうやら、彼は夜目は効くらしい。


クロ「扉?」
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/31(金) 22:01:25.05 ID:HyuFfHdDO
ようやくゴールらしきものに辿り着いたのか、それともまた新たな面倒ごとへの入り口か、彼は考え事を一時中断することにした。


とにかく今は、進む。


クロ「蛇がでるか、鬼がでるかってか。」


どっちにしたって厄介事は起きそうだ。


らぁっ!と気合いと共にクロは扉を蹴破った。


クロ「あぁ?」


扉の向こうにあったのは闇であった。


深く、広く、粘ついた、まるで物質のような存在感を感じる。


クロ「おい、チビ。」


子猫は、その声のする方へ顔を上げた。
そこにあったのは、先ほどから、猛進を続け、自分には理解できない存在を退け続けた黒猫。


クロ「いいか、早いとこどっか逃げろ。」


その真剣そのものになった顔であった。


「ミー?」


と、首を傾げた瞬間には、子猫は自らの身体が浮く感覚を覚える。


自分が投げられたと気付いた瞬間には、子猫は身体が叩きつけられ、地面と摩擦しながら飛んでいた。


抗議と疑問をこめて、クロの方を見た時には、クロは何かに殴り付けられたかのようにその身体を宙に浮かしていた。


105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/31(金) 22:28:48.93 ID:HyuFfHdDO
クロ「だっ、だっ、だっ。」


三回。


身体を激しく地面に打ち付けながら飛んだ。
いきなりの攻撃。
しかも、今までと比べれば強力な敵だと分かる。


つまり、これは。


クロ「最高じゃねーか。」


ニタリと、笑みが浮かぶ。


退屈しのぎ、どんな世界だろうと関係ない。
自分の敵は、いつだって退屈だ。


つまらないモノと、くだらないモノ、ぶっ壊す。
ただ、それだけが彼の行動原理。


クロ「面白くなってきたじゃねーか。」




──── Side マミ


その様を、彼女達はどう呼べばいいのだろうか。


足りない言葉を掻き集めても、その可憐さをどう形容すればいいか分からなかった。


舞うように、マミは跳ぶ。


獲物と見定めていた魔女は、頭上からの銃撃にまともにダメージを受けた。


マミの武器はマスケット銃、元のモデルは先込め式の火縄銃であり、三銃士の銃士に支給されているのはこのモデルである。


ヨーロッパの風紀を感じるアンティークのような銃に、魔法少女の姿になったマミはとても相性がよかった。


しかし、それは見ている側としての意見であり、さやかとまどかは「似合っている」という感想であった。


マミ「あら?今日は調子が悪いのかしら、それともダンスは苦手?」


挑発をするようにマミは、魔女と対峙しながら言葉を投げつける。
果たして、それを魔女は挑発と受け取るのだろうか。


そもそも、アレに言葉を解することができるのか。


それは、定かではなかったが、魔女はマミに突っ込んでいく。


それを見ながら、彼女は冷静に引き金を引いた。


106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/31(金) 22:52:13.94 ID:HyuFfHdDO
果たしてそれは、絵になるのか。


どれ程可憐に見えるだろうか。


彼女達は見ているだろうか。


どう、思ってくれるだろうか。


『お前、つまんねー撃ち方すんなぁ。』


と、そこで少し前のゲームセンターでの出来事を思い出した。


シューティングゲームをしていた時のことだった。
慣れない連射型の銃に戸惑い、ゾンビにリンチにあっていた自分に、クロという黒猫はこう言ったのだ。


クロ「何、マジになってんだよ。もっと遊べよ。」


呆れ顔で、つまらなさそうに。
マミには分からなかった。例えば、これはゲームだろうが、銃を使って戦う自分にしてみれば多少は本気を出したかった。


本気をださなけばならないと思っていた。


その事を、まだ魔法少女の事を知らなかったクロにぼかしながら訴えたところ、彼はため息をついた。


クロ「クソまじめだな。撃つ奴には撃たれる覚悟がどうのこうのって本気でいいそうな奴だな。」


そして、耳を掻きながら彼は


クロ「銃ってのは───

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/31(金) 22:55:13.91 ID:HyuFfHdDO

まどか「マミさん!危ない!!」


マミ「!?」


天井から滑空するように魔女が空間を滑り落ちてくる。
マミは慌てたが、顔色は変えないように気を遣った。


マミ「せっかちね。」


もう、終わらせよう。


彼女は、クロの言葉を振り払う。
少なくとも、自分は彼の言葉のようには銃は使えない。
自分にはできないことなのだ。


マミ「ダンスはいかが?」


その言葉と同時に、大量のマスケット銃が姿を現した。
魔女を取り囲み、滅ぼすための、銃士。


それが──魔法少女。


マミ『ティロ・フィナーレ』


引き金が引かれたのは、どの瞬間なのか。
それは、分からないが、一気に迸る閃光と火花が、醜悪なフォルムを持つ魔女を飲み込んだ。


そして、マミは。


マミ「ふぅ。」


どこから出したのか分からないティーカップを優雅に傾けていた。



──── Side クロ


クロ「がぁっ!」


身体が、バラバラになるような感覚が走る。
右か左か、それも分からなくなりそうな闇の中、クロは謎の敵からの攻撃を一身に受け止め続けている。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/31(金) 23:15:33.61 ID:HyuFfHdDO
クロ「クソっ、夜目だとかどうとかの問題じゃねーぞこりゃ。」


悪態をつく、まだ口がきけるだけマシだと考える。
だが、彼もただの悪運の強さだけでここまで生きている訳ではない。


直感と、五感全てを、全開にしているのだ。
彼は、幼児期の栄養失調が原因で元の視力自体もかなり低い。
そのかわり彼は、そのハンディキャップを埋めるようにその他の感覚が非常に発達している。


聴覚、嗅覚、風のうねり、殺気、全てを感じようとして、彼は倒れない。


気を抜くな、と足を踏み込む。


研ぎ澄ませ、と歯を食い縛る。


そして───


クロ「オラぁっ!!」


何かに、向けて手に握る剣を振るった。


クロ「!?」


確かに、当たった。


感触としては正解だったが手応えは一切い。
直ぐ様、弾き跳ばされるように宙を舞う事になってしまった。


クロ「はぁっ!はぁっ!・・・野郎っ。」


息が荒れる、このままではただのジリ貧だ。
相手の正体も対処法も分からないままでは、冗談ではなく死ぬ。


なにか、なにか無いのか。


『暗闇の魔女・・・その性質は妄想』


まただ、また聞こえた。
なんだこれは、まったく分からない。
見当もつかないことばかり起こってくれるな、とクロは苛立つが、その幻聴の中に気になる言葉があった。


クロ「暗闇の魔女、暗闇、闇・・・なるほど。」


やってみる価値のある行動がクロの頭に浮かんだ。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/31(金) 23:34:05.30 ID:HyuFfHdDO
子猫には、何がおきているのかは分からなかった。
多少なりと見えるボンヤリとした影がクロのものだとしても、その彼に大分長い距離に投げられたため、遠目では分かり辛かった。


たが、激しく何かがぶつかる音や、その度に痛みに耐えるようなくぐもった声が子猫の身を縮こまらせる。


怖い、怖い、怖い。


あんなに強かったクロを追い詰める存在と、そんな存在によりずっと守ってくれていたクロを失うのではないかと彼は恐怖を覚えていた。


もう、ダメだ。


もう、ダメだ。


すると、子猫は、またも信じられないものを見た。

遠くに見える小さなクロの影がフラフラと走り始めたのだ。
敗走、間違いなかった。
勝てる訳がなかった、姿の見えない化け物なんかに。


しかし、逃げることも許されないのか、クロはまたしても吹き飛ばされた。
右へ、左へ、後ろへ、前へ、あちらこちらにやたらめたらにクロは転がっていた。


更に、血でも流れているのかビチャビチャと液体が流れるような音もする。


子猫は、腰が抜けていた。死なんて見たことはない、母は優しかったので自分にできるだけ側にいて危険から守ってくれていたから、でも今まさに目の前で起こっていることは、彼の見たことのない世界だった。


母と友達の姿が目に浮かび、目にジワリと涙が浮かんだ瞬間。


クロ「こんくらいだな。」


クロの声と共に、爆発的な炎と熱風が飛び散った。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/31(金) 23:47:20.00 ID:HyuFfHdDO
闇を、炎が切り裂き。


全てを、暴き出した。


クロ「大分ガソリン無駄にしちまったぜ。」


ニタリ、と凄味のある笑みを豪々と燃え盛る炎が写し出した。


クロ「闇ってんなら光によえーってことだよな。なら簡単な話だ。油はよく燃える、そして油ならオイラの腹ん中にあるんだよ。」


彼は、ふらふらと攻撃を受け吹き飛ばされながら、自らの燃料であるガソリンをぶちまけたのだ。
辺り一面にまんべんなく広がった油に、後は剣を地面に叩きつけ火花を起こせば、後は知っての通りの科学現象だ。


クロは前を、睨む。


そこにいたのは、五本の足が生えた星型の黒い異形───、暗闇の魔女。


しかし、魔女は燃え盛る炎の光に囲まれて動けない。


クロ「お前、本当に光が苦手なんだな。」


ニヤニヤしながら剣を構える。
しかし、その目は射ぬくように鋭く敵を見据えていた。


クロ「勿体ねぇ、光ってのは昼寝にゃ最高なんだせ!!」


一発の踏み込みで、弾丸の様に飛び出したクロは、その勢いで魔女に、剣を突き立てた。


────闇が爆散した。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/01(土) 01:37:51.44 ID:od1LbHMPo
クロちゃんはやっぱかっけえな
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga]:2012/09/01(土) 10:51:17.83 ID:AzvhteLN0
なにこれ

超かっけえ
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga sage]:2012/09/01(土) 10:52:06.48 ID:AzvhteLN0
すまんsage忘れた
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/01(土) 15:04:28.92 ID:IGh4RoTDO
異形の消滅と共に、世界は元の光景を取り戻し、クロは住宅街の道路に、剣を握りしめたまま立ち尽くしているだけだった。


戦いの傷痕も、勝利の痕跡も残さず、ただ傷付いた身体で重力から抗い続ける。


「ミー!」


と、そこに子猫が、いきなりクロの顔面に飛び込んできた。
突然の事に面食らうも、自分にしがみ付いている子猫はプルプルと震えており、とてもじゃないが、引き剥がせない。


好きにさせて、自分もしばし身体を休める。


と、そこで足下に何か、光る物が落ちていることに気付いた。
頭に、子猫をぶら下げたままそれを拾い上げ、自分の目の高さまで掲げる。


クロ「なんだこれ?」


卵型の宝石のような物、誰かが落としたのかとも思ったが、先程の戦いの後に現れたそれに安易な決め付けは禁物だった。


クロ「取り敢えず、取っとくか。」


「ニャア!ニャア!」


クロがその宝石を腹にあるポケットに入れた時、誰かを探すような鳴き声が住宅街に響いた。


「ミー!」


と、その声に応えるように子猫は、精一杯の大きな声で、相手に呼び掛ける。 ようやく、お目付け役が帰って来たらしい。


頭から、スルスルっと降りた子猫は、蛍光灯の灯に照らされているお目付け役らしき猫に向かって走った。


先の戦いの恐怖と、やっと知り合いと出会えた安心からか、自分よりも少し身体の大きな猫に擦り寄っている。


しかし、こちらに気付いたお目付け役が、突然険しい顔をしてクロを睨み付けてきた。
どうやら、子猫の様子がおかしいということをクロのせいだと疑っているらしい。


「ミー!ミ、ミ、ミ、ミー、ミー!」


そんな空気を察したのか、子猫は必死に、まとまりのない内容であるが、お目付け役にクロの無実を訴える。
彼に助けてもらったことを報告する。


115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/01(土) 15:12:48.40 ID:IGh4RoTDO
「ニャア?」


「ミー!」


そんなやり取りの末、ようやくお目付け役は納得したのかクロに近寄り、先刻の詫びと、目下の者世話になったことの礼を述べた。


クロ「分かった、分かった。もう行け。」


投げ遣りながら、クロもその言葉に応える、未だ名残惜しそうな子猫はお目付け役に首根っこをくわえられて連れていかれた。


「ミー!ミー!」と最後まで大きな声でお礼を言いながら。
そして、クロは手を軽く振りながら見送った。


───黒い毛の子猫と、虎模様の毛色のお目付け役の猫の背中を。


116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/01(土) 23:30:41.45 ID:IGh4RoTDO
クロ「ふぅー。」


二匹の姿が完全に見えなくなるのを待っていたかのように足が崩れ落ちた。
コンクリート塀に身体をもたれさせるとズルズルと滑るようにへたりこんだ。


身体の疲労がそろそろ限界をむかえる。
なんとか急所を避けていたとはいえ長時間攻撃を受け続けていたこと確かだ。


視界がぼやける。


全身の金属筋肉が弛緩する。


クロ「あ、そういやマミだ。家、かえ・・・ん、なきゃ・・・。」


完全に思考が泥のような眠気にとらわれる瞬間。


自分に近づいてくる影を見た。



───── マミ自宅前


戦いの後、結界は解けた。


これは、いつも通り。


その後は、倒れている女性の為に匿名で救急車を呼んだ。


これも、いつも通り。


その後、まどかとさやかと手を振って「またね。」と言って別れた。


これは───、本当にいつ以来だっただろうか。


誰かと一緒に帰ったのも。


歩きながら人の笑顔が隣にあったのも。


本当に久しぶりで、マミは機嫌が良かった。
彼女達にも、魔法少女という存在を知ってもらうことができた。


マミ自信、何がどう喜ばしいのかは分からなかったが、とにかく軽い興奮を覚えながら帰路に着いた。


そして、ちょうど自宅マンションの前にさしかかった頃だった。


「随分遅い帰りね、カウガール。悪い狼でも退治していたのかしら。」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/02(日) 00:10:30.48 ID:MICl8cUDO
そこにいたのは、黒髪の少女に、無感情を顔にぶら下げた少女。
かつてのキュウべえの話と、つい最近のまどかの話に聞く転校生であり、謎の魔法少女───暁美ほむら。


というのは分かった。
いや、分かる。分かるのだが、なんださっきのは。


マミ「え、えーと。ほむらさん?そのセリフってどういう・・・。」


まさかセリフに突っ込まれるとは予想だにしなかったのか、何やら無表情ながら彼女は慌てふためきだした。


ほむら「は、ハードボイルドよ。」


何がどうした事か分からない。
話に聴いてる限りでは、彼女はもっと冷たく鉄面皮を被ったような人物のはずだが、今目の前で「おかしい、彼はあんなに格好良く決まってたのに」とブツブツ呟く少女からはそんな様子は伺いしれなかった。


マミ「で、何の用かしら。」


もう、とっと帰ってもらおう。
マミはそう決断した。


ほむら「・・・単刀直入に言う。即刻魔法少女ごっこをやめなさい。」


ごっこ、という言葉に多少は怒りを覚えたが、息をそっと吐いて自分を抑えた。こんなことで怒る必要はないのだと。


マミ「ごっこ、は訂正してほしいわね。少なくとも私は覚悟を決めて戦ってるわ。」


覚悟・・・ねぇ、そんな言葉が目の前の少女から聞こえてきた。
なんだか、そのセリフは普段の彼女は絶対に言いそうにないだろう事がなんとなく分かる。


無理に、誰かの真似をしているような。


ほむら「あぁ、そう言えば鹿目まどかと美樹さやかの目の前で魔女を倒したみたいね。どう?せいぜい格好良く倒せたかしら。」


別の事に思考が巡っていたマミに、突然あからさまに皮肉っぽくほむらは言葉を投げかけた。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/02(日) 00:28:08.18 ID:MICl8cUDO
その言葉は見事に


マミ「なんですって。」


マミの心をえぐった。


ほむら「危険な戦いを見せる?あんな雑魚じゃチュートリアルにもならないわ。それをわざわざあんな派手な攻撃で、あんな派手なアクションで立ち回るんだもの。」


───まるで『魔法少女』みたいだったわ───


ともすれば、次の瞬間には激しい哄笑をあげそうな雰囲気だが、彼女はただひたすら冷たくマミを見ていた。


マミ「うるさいわね。」


ほむら「そんなに地獄の道連れがほしいの?」


マミ「・・・うるさい。」


ほむら「それとも褒め讃えてくれる後輩?なら私がやってあげましょうか?上手く笑ってあげられるかはわからないけど」


マミ「黙れ!!」


激しい激昂からくる喉も裂けるような絶叫が闇夜に響いた。
しかし、その叫びを聴いてもほむらはどこ吹く風というようにマミを見つめていた。


ほむら「何を恐れているの?」


ただそう聞いてくるほむらのその言葉が、マミはただただ怖かった。
そして、彼女は行動にでた。


光に一瞬にして包まれたマミは、魔法少女へと姿を変えていた。


しかし、それでもほむらはひかなかった。


ほむら「『随分とつまんねー理由で銃を構えるんだな、お前は。』」


銃声が響いた頃には、もう彼女の目の前には誰もいなかった。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/02(日) 00:37:10.85 ID:MICl8cUDO
フラフラと、よろめくように自分の部屋のドアの前に着いた頃には、もう数十分はかかっていた。
どうしてしまったのだろうか。
どうやってここまでたどり着いたのかはマミには分からなかった。


しかし、もう考えるような体力も気力もなく、ほぼ機械的に鍵を開きドアノブをひねった。


声もなく玄関に上がり、リビングに入る。
すると、かすかな寝息が聞こえてきた。


マミ「・・・クロ。」


なぜかテーブルの上に、身体を横たえている黒猫を見やると、やっと少し気持ちが落ち着いた。
そっと頭を撫でていると、もう一つテーブルに乗っているものがある。


マミ「お煎餅?」


そう言えば以前、お煎餅がないとごねていたことがあった。


マミ「自分で買ったのかしら?」


でも、もしそうなら、どうやって?


一つの疑問と、無数の謎。


魔法少女と黒猫の長い夜が終わった。


第二話 終


120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/02(日) 00:51:30.06 ID:MICl8cUDO
次回予告


クロ「次回?三話か。」


まどか「違うよ、案の定のミスだって。」


クロ「んだよ、夜10時をまわってからの誤字率の高さ半端ねぇじゃねーか。」


まどか・クロ「[ピーーー]ばいいのに。」


まどか「では、次回は四話『たとえ、そんな気持ちじゃなくても』です。」


クロ「もはや、話数すら定かじゃなくなりかけてるけどな。」


121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/02(日) 01:46:52.42 ID:dp9ZRRAJo
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 14:04:02.43 ID:pZYrzgcjo
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/02(日) 23:46:48.71 ID:MICl8cUDO
まどか「・・・。」シャバダバダッチヘンシン♪ シャバダバダッチヘンシン♪


まどか「・・・。」ヒィ!ヒィ!ヒィ!


まどか「信じてる!私は信じてるから!ウィザード!!」


第四話 『たとえそんな気持ちじゃなくても』


目が覚めたのに、闇の中にいたあの日の感覚を自分は生涯忘れることはないだろう。


その場から逃げることはできない。


目を閉じたら二度とこのまぶたが開く事もないことが分かる。


錆びた鉄の臭いと、油の臭いで脳が掻き回され、たった一つの事にしか思考が巡らなくなってしまう。


何となく、漠然としたイメージだったのに、お気に入りの漫画やアニメで見たようなモノは悲しかったけど、こうなるなんて誰も教えてくれなかった。


「パパ、・・・ママ。」


そんな状態にあった『彼女』が、自らの守護者たる両親を探したことは当然のことだった。
今すぐ抱き締めてほしかった。
そして、こう言ってほしかった。


「大丈夫だ。」と。


それは、当然の事であり。


「ひっ!」


とんでもない間違いでもあった。


「あ、ああああああ・・・!いやああああああ!!」


彼女が見たのは、かつては父であったものと、辛うじて張り付いた衣服で母だと知ることができる程に壊れた塊であった。


胃から何かが込み上げてくる。
熱い塊が食道を通って逆流した。


「いや、いやだ。」


荒い息をつきながら、そんな言葉を漏らした。


「死に、たくない。死にたくないよぉ。」


身体がどんどん冷たくなっていく、感覚がだんだんなくなっていく。
視界が黒ずんでいく。


「願いを叶えてあげようか?」


そこに、白い影が滑り込んできたところで、その夢から巴マミは目覚めた。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/03(月) 00:07:55.57 ID:xJgeVSzDO
マミ「あああああああ!」


まるで、まったく別の物を振り払うように彼女は布団を跳ねとばした。
夢の続きのように荒い息をつく、渇いた喉がはりついているのか、ヒュウヒュウと細い風が通る音がする。


身体を起こして、そのままの体勢から動けない。
足が、腕が震えてしまい、立ち上がれない。
震えを抑えようと、自らで身体を掻き抱くが、どうしても先ほどの夢を思い出すとそうもいかなくなる。


いや、あれはただの夢ではない。


あれは追体験なのだ。


あの夢は、彼女の過去であり、原点であり、罪だ。
どんなに忘れようとしても、どんなに逃れようとしてもついて回る。


それは、彼女が彼女たる証明でもあるのだから。


マミ「やっぱり・・・、あの人があんなこと言うから。」


憎々しげに、彼女は少し前に家の前でほむらという少女と出会った日のことを思い出した。
自らの行為を、信念を否定し、踏み躙るあの言葉の数々をマミは受け入れはしなかった。


しかし、忘れることもできなかった。


125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/03(月) 17:56:25.60 ID:xJgeVSzDO
まどかやさやかと出会ってからずっと考えていたこと。


そうなったらいいなと思っていた。


次第にそうしたいと願うようになったのだ。





─────マミは、まどかとさやかが魔法少女になることを望んでいた。


しかし、やはり彼女も馬鹿ではない。


分かるのだ。彼女達を戦いに引き込もうなど、自分がどれだけ身勝手なことを考えているかも。


『地獄の道連れ』をただ増やすことの愚かしさを、マミは十分知っていて、それでも苦悩をしているのだった。


マミ「ふぅ、とりあえず顔を洗おうかしら。」


目が覚めてしまったので、今は悩むよりも、生活習慣を優先させることを思い立った。
自分が今、どれだけ酷い顔をしているかを考えながら彼女は洗面所に向かう。


そして洗面所までたどり着いたその時、ふと目の端に何か黒い影が映った。
クロがいるのかと思いそちらに顔を向けると、洗濯籠の中から黒いしっぽがはみ出していた。


マミ「って大変じゃない!クロしっかりしなさい!」


まさか何かの間違いで、大量の洗濯物に押しつぶされているのかと、大慌てでしっぽを掴み引っ張りだすと、黒い猫の生皮がプラプラゆれていた。


マミ「きゃあああ!中身どこにいったよ!?」


慌てふためいてマミは、洗濯籠をひっくり返し、洗濯物をかきわけて、彼女のいう中身を探そうとしていた。


「おい!どーした!?」


聞き覚えのあるその言葉に振り替えると、そこにいたのは


マミ「クロ!・・・よね。」


そこには、メタリックなボディで猫の形を作り上げた姿があった。


クロ「おい、なんかあった・・・わけじゃなさそうだな。」


126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/03(月) 18:12:12.81 ID:xJgeVSzDO
気が抜けたのか、壁に手をつけてもたれかけながらクロはマミをジトッと睨んでいた。


クロ「朝っぱらから騒がしい奴だな。」


マミ「ご、ごめんなさい。それより、これは?」


自分の手に握った黒猫の生皮をクロに見せる。
そもそも彼はそういうが、朝っぱらから、知り合いの猫の皮らしきものを発見して狼狽えない人間がいないはずはない。


クロ「よく見ろよ。ただのぬいぐるみだ、ぬいぐるみ。」


そう言われて、もう一度その手の中の感触を確かめると、確かに柔らかい布の感触があった。


クロ「そそっかしいな、お前は。ククッ。」


漏れる笑いを隠そうともしないクロに対し、マミは顔を真っ赤にして反論する。


マミ「だ、だってしょうがないじゃない!朝起きたばっかで、寝ぼけていて、だから」


言いおわる前に、目の前で爆笑が起きた。


「ギャーハッハッハ!!間違えねーよ普通はさ!!」


ケラケラと床に突っ伏して笑うクロに、マミは肩を震わせていた。
顔をうつむかせ、拳をギュッと握りしめ────そして




マミ「ハハハハっ!だ、だって仕方ないじゃない。焦っちゃったんだもの!」


彼女もまた、笑顔を弾けさせた。
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 20:47:49.07 ID:gbc+0vmDO
ウィザードは微妙だったな
だって変身音が石原タッチ変身!石原タッチ変身!に聞こえるんだ…
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/03(月) 20:55:39.59 ID:7koFOq5Yo
あっそう、で?
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/03(月) 21:07:24.90 ID:Uo2HPSgZo
乙?
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/03(月) 22:35:05.71 ID:xJgeVSzDO
クロ「それでも、お前!あんなに焦る奴がいるかよ、ヒヒヒ。」


勘違いの恥ずかしさと、目の前の猫の飾り気なしの大笑いにつられる形ではあったが、マミもまた笑った。先刻の夢が、少しだけ薄れるほどには、楽しいという感情が蘇ってきたのだ。


そこからしばらく、一人と一匹は洗面所で笑い合った。









クロ「ふぅー、朝っぱらから笑った笑った。」


マミ「そうね。こんなに笑ったのは久しぶりだったわ。」


その後、いつまでも洗面所にいるわけにはいかなかったので、マミは朝の準備をすませ、今はクロと一緒にトーストをかじっている。


マミ「だって驚いたんだもの。結構チープなドッキリに凄く反応する人の気持ちが分かったわ。」


もう落ち着いたのか、いつもの微笑を浮かべて、マミは紅茶をすすっていた。


クロ「ま、それくらいが調度いいんじゃねぇのか?お前最近かっこつけて、気持ちとかだしてなかったからな。」


マミのカップを傾ける手が止まった。
それを知ってか知らずか、クロはパンを咥えながらさらに続けた。


クロ「あいつらに良いとこ見せて、魔法少女になってほしいってか?意外とガキっぽいとこあんだな。」


クロにしてはなんでもない言葉だった。
彼は、マミがどんな理由で行動にでいるかはまったく知らないのだから。


しかし、それでいながら彼は、マミがどうしたいかだけを知って、世間話として彼女の心の一端に踏み込んでしまった。


それは責めている訳ではない。
しかし、マミにとっては、それを指摘されることは、今の彼女には断罪と同じ意味だった。


なぜなら、彼女自身が、『やましい事』として思い悩んでいるのだから。
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 22:37:41.88 ID:exfgVuQSO
続ききたー
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/03(月) 23:16:24.31 ID:xJgeVSzDO
マミ「・・・それは、あなたには関係ないことよ。」


ここに第三者がいれば、明らかに空気が変化したことに気付いたかもしれない。そうすれば、多少はクロをたしなめ、マミを諫めるきっかけを作ることができただろう。


しかし


クロ「そうか?もうだいぶ関わっちまったしなー。それに暇つぶしにゃ調度いいし。」


暇つぶしなんかじゃない。そんなんじゃない。


クロ「あの二人なんかいたって大して役にたたねーかもしんねーぞ。オイラが手伝ってやるよ。」


役に立つとかそんなんじゃない。
そんなつもりじゃない。


クロ「そもそも、願いを叶えるだのくだらねーこといってるアレのために、命までかける必要は・・・」


マミ「あなたに何が分かるのよ!!!」


突然の絶叫に、クロは前を見た。
軽く目を見開いてマミの顔を伺う。


そこにあったのは、目に涙をため込み、唇を噛み締めた少女だった。


マミ「誰にも、分からない。」


ダッと、駆け出した彼女は何も言わず乱暴に玄関のドアを開けた。


「いってきます」とは言わなかった。
「いってらっしゃい」とは言えなかった。


クロ「やっちまったか・・・。」


ため息をついてゴロリと横になった。
頭にかつて言われたことがよぎる。


『まったくほんっとにクロちゃんってば乙女心を分かってないんだから!』


『どうしてそうも一番言ってほしい言葉が言えなくて一番言ってほしくない言葉はポンポン出てくるのよ!』


とは、小一時間ナナとケンカした時に言われた言葉だ。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/04(火) 00:02:11.63 ID:QA3r/TNDO
誰かの気持ちなんてものは、分かりようがないことだった。
殺されそうになるほど憎まれても、全てを失う直前になってようやく気付く。


そんなことくらい、とっくに知っているはずだった。


クロ「・・・うまくいかねーよな。」


と、そこで机の上に可愛らしい包みで包まれた弁当箱さしきものが置いてあることにクロは気付いた。


クロ「ったく。」


ふぅと息を漏らして、クロは弁当箱を掴んだ。


やるべき事はもう分かっていた。



─────通学路


まどか「絶対、絶対良くなるよ。フォーゼだってそうだったもん。オーズとかもすぐ慣れたし、三十話くらいまで見ないと評価は難しいよ。」


さやか「まどか?何言ってんの?」


仁美「何かお悩みでもあるのですか?」


世界のどこかから石ノ森電波を受信したまどかに対し、さやかともう一人、薄い緑かかった髪をウェーブさせた、物腰の柔らかそうな少女が心配そうな顔を見せている。


まどか「お願い、私はあんな響鬼の時の争いは見たくないよ。」


ブツブツと呪文のように言葉を続ける彼女に対し、他の二人の少女もどうしたものかと考えあぐねていた。


さやか「あぁ、もう!」


仁美「さやかさん、まどかさんはどうしてしまったのでしょう?」


さやか「よく分からないけどまた仮面ライダーでも見たんでしょ、月曜日は大体こんなものだよ。」


前はずっと泣きながらフィリップがーと言いながら登校していた事があった。
次の月曜日はもの凄く嬉しそうな顔をしていたが。


仁美「まどかさんがここまで心乱される仮面ライダー・・・、私、気になります!!」


さやか「やめなさい。」


まどかを真ん中に置いて、言葉だけでキャイキャイとじゃれ合う二人。
そんな風に彼女達の登校風景は流れていった。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/04(火) 00:41:36.65 ID:QA3r/TNDO
しかし、その日常風景にまじる異端に最初に気付いたのは、仁美であった。


仁美「あら?」


と、首を傾げた後にフフフと微笑む。


さやか「どうしたの?仁美。」


仁美「あれをご覧になってください。」


そっと、彼女が指差す方を見る、そこにいたのは


仁美「お弁当箱を咥えて何処に行くのでしょうか?」


弁当箱を口に咥えてコンクリート塀の上を歩く黒猫であった。


さやか「あーーー!!」


まどか「へ?ってあれ!クロちゃん!?」


驚きの声を上げたさやかと、彼女によりこちら側に引き戻されたまどかが見た先にいたのは、しばらく会っていなかったクロだった。


仁美「お二人とも、お知り合いなのですか?」


仁美の疑問に、少し言葉に詰まるが、なにも全てを説明する必要はないので適当にお茶を濁す程度の説明をすればいいのだ。


さやか「さ、最近よく遊んでいる猫でさ!ね、まどか。」


まどか「うん、お世話になったモゴっ!?」


慌ててさやかはまどかの口を塞いだ。


仁美「お世話、ですか?猫ちゃんに。」


案の定引っ掛かってしまったのか、仁美は人差し指を口元にあて首を傾げている。
可愛らしいが、今はそんな場合ではなかった。


さやか(もう、まどか!どこの世界に猫の世話になる女子中学生がいるのさ!)

まどか(ご、ごめんなさい。)


小声で言い合う二人だが、それはさらに仁美の疑心を深めてしまったようで


仁美「うぅ、ずっとお友達でしたのに、今更隠し事なんて・・・、酷いですよー!」


あっ、と言う暇もなかった。
オヨヨと涙しながら仁美は走りだしてしまった。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/04(火) 00:45:34.62 ID:QA3r/TNDO
読んでくれてる方ありがとうございます。
突然ですが、このSSでは仮面ライダーを多少ネタにするところがあります。
気分を害す方もいるかもしれませんが、私としては仮面ライダーは平成も昭和も大好きです。
こちらもやりすぎないように致しますので、どうぞご容赦下さい。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/04(火) 01:05:59.66 ID:RHO2dE9Po
>>1がライダーネタ使ってその後読者が反応するのはいいけどさ
けっこうたった後に唐突にレスすんのはどうかと思うわ
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/04(火) 12:19:21.63 ID:QA3r/TNDO
クロ「なんだありゃ?」


自分を通り過ぎて走っていく少女を横目で見る、なにやら泣いているように見えたが、そこまで悲壮な雰囲気が出ていた訳ではなかった。
気に掛けるまでもないと判断し、歩みを進めようとした時だった。


まどか「クロちゃーん!」


聞き覚えのある声が近づいてきた。
振り返ってみると、ピンク色をした髪を元気よく揺らしながら少女がこちら走ってくる。


クロ「よぉ、まどかじゃねーか。元気か?」


まどか「うん、クロちゃんはどうだった?」


ボチボチだ、とノラリクラリと返事をするクロに対し柔らかい笑顔をまどかは見せていた。
つい最近まで、魔法少女体験コースについていきマミとはよく会っていたが、クロとはここ数日は出会っていなかった。


懐かしい、とはまた違うが、こんな場所で出会えるとは思わず、嬉しく思っているのだ。


まどか「そうだ、実はね。最近うちで猫を二匹預かってるんだ。会ってみない?」


目を輝かせながら、まどかはクロに尋ねるも、彼としてはそれほど興味はなく。


クロ「オイラが会ってどうなるんだよ。」


まどか「猫ちゃんが何を考えているか教えてほしい!」


とても夢見がちな、ファンシーな望みをぶつけられて、多少面食らいつつもクロはその提案に『ノー』を突き付けた。


クロ「やだよ、めんどくせーし。」


まどか「えー、じゃあ猫の気持ちが分かる道具とかないの?」


クロ「そういうのは青いのに頼れ。」


それかニャウリンガルを買え、とまどかをあしらう。しかし、まどかもまどかでそのようなぞんざいな扱いを受けつつも、クロとの会話を楽しんでいるようだった。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/04(火) 12:55:31.19 ID:QA3r/TNDO
が、そんな様子を面白く思わない者が一人いた。


さやか「あんた、ここで何をしてるのよ。」


キツイ言葉に目をやると、その雰囲気にそぐわぬ厳しい顔を漂わせた少女がこちらを見ていた。


クロ「なにって言われてもなー、宅急便だよ。」


黒猫だけに、とからかうように笑い、傍らの弁当箱をアゴでしゃくった。
因みに、今のクロは多少は人通りを気にしてか四つ足で立っている。


まどか「それ・・・お弁当?」


やはり苦手なこの空気だが、冗談めかしたクロの態度に勇気づけられ、まどかはようやく口を開くことができた。


クロ「まーな。マミのヤツとケンカしたら、怒って学校いっちまったからな。」


その言葉に、軽い好奇心を抱いたのは、まどかであった。
マミというあの大人びた、自分にとっても先輩でもある彼女が『怒り』という感情を見せたということに、興味を覚えたのだ。


しかし、さやかが抱いたのは嫌悪だった。


さやか「ふん、どうせあんたが変なことしたんでしょ?」


クロ「正解。いい勘してるじゃねーか。」


まただ、またこの笑み、人を馬鹿にしているような笑みを顔全体に浮かべて、さやかに向けて右手で親指まで立てている。
腹立たしかった。


さやか「・・・まどか、私、もう行くから。」


顔をそらし、吐き捨てるように呟いて、さやかは学校へ向かう道を走っていった。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 18:54:51.21 ID:u73SFV8DO
このまどかが、ディケイド最終回見た時の反応が気になる
あと、青髪のうざさが半端ない。原作でもこんな感じなのか?
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 19:21:10.32 ID:mm0gNsUDO
>>139
おのれディケイド!ディケイド好きな作品だったのに終わりが酷すぎてショック受けたオレガイル

さやかは…うん…まぁ…原作の方がまだ少しマシって感じ…
魔法少女になってマミさんのあとを継ぐと後悔しない言ってるが最終的に後悔して「あたしってホント…バカ…」と言ってソウルジェムが割れてグリーフシードを生み出し魔女化
赤い魔法少女が魔女化したさやかと一緒に自爆で最期を向かえる
さやかは一直線過ぎて疑うと間違ってても自分は間違ってない相手が悪いとか思い込んで自滅しちゃうタイプ
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/04(火) 19:46:54.57 ID:0dWjFkWO0
まあまあクロちゃんでも、初期のチエやコタローもかなり問題があったんだし
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/04(火) 20:05:08.90 ID:QA3r/TNDO
まどか「さ、さやかちゃん!」


足早に、まどか達から離れていくさやかに慌てて声をかけるが彼女に振り返る気配はなく、そのまま見えなくなってしまった。


まどか「・・・ごめんね、クロちゃん。」


クロ「なんで、お前が謝ってんだ。」


まどか「だって・・・。」


クロ「バーカ。」


俯いたまどかの肩は震えていた。
前髪が目を覆うようにパサリとかかっている。


クロ「慣れてんだよ。こーいうのは。」


見慣れたボンヤリとした、感慨の無さそうな顔をクロはまどかに見せていた。
しかし、彼女にはその顔がたまらなく辛い。
彼のそんな顔は見たこともないが、涙を流したり、そうでなくても憤慨を剥き出しにするべきじゃないのかとまどかは思っていた。


こんな顔を、彼にはしてほしくない。
まどかは、それを話題を変えることで誤魔化すしかなかった。


まどか「クロちゃんは、そのお弁当どうするの?」


突然変わった話題に、クロはまどかの下手くそな気遣いを感じ、とりあえずそれを頂くことにした。


クロ「ま、アイツの臭いでもって捜し出して渡しゃあいいだろ。」


取り敢えず学校まで案内してくれ、と頼まれたまどかもその提案を快諾し、まどか達は学校へと足を向けて歩きだした。


まどか「ところでクロちゃん。」


クロ「あ?」


まどか「マミさんの匂いってどんな匂いなの?」


その質問はあまりにも不躾過ぎた。
事実まどかは直ぐに失言をさとり顔を真っ赤にして、取り繕う。


まどか「ご、ご、ご、ごめん!なしにして!今のなし!」


そんな様子にニヤニヤしながらクロはまどかを見上げた。
顔はまさに喜悦そのもので。


クロ「そうか、じゃあその前にお前の匂いを教えてやろうか?」


まどか「や、やめてよ〜。」


クロ「えーと、まずは」


彼らは、そんな感じで学校に向かって行った。
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/04(火) 20:23:17.51 ID:RHO2dE9Po
マミとのギャップが駄目みたいだからもうちょっと付き合いあったら大丈夫だったかもね
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 20:40:41.17 ID:WhPXpKCDO
まどかの匂い…だと……(ガタッ
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/04(火) 20:51:48.72 ID:QA3r/TNDO
─────数時間後 見滝原中学


男子生徒A「いや、まじ読んでみろって、王ドロボウJing。」


男子生徒B「あの時代のボンボンってどんな客層狙ってたんだろうな。」


お弁当を家に忘れてきたことに気付いたのはお昼休みのチャイムと共にカバンを開いた時だった。
そういえば、あの時カッとなったままに家を出てきてしまったが、カバンの中に弁当箱を入れた覚えがない。


マミは唇を噛み締めて俯いた。
情けなくなくて仕方がない。


朝はあんなに楽しかったのに、勝手に見透かされたような気分になって逆上してしまった。
さぞや彼も、呆れ果てて、愛想を尽かしたことだろう。


いつだってそうなのだ。
求められたらかえせないくせに、自分はどこか期待している。


今だって、この喧騒の中、自分が俯いている様を見て、気になっているクラスメイトがいるのだ。


例えば、「お弁当忘れちゃった。」


とかなんとか、今まで誰かがしていた事ができれば彼女達だって助けてくれるかもしれない。


今なら間に合うだろうか────今さらだ。


今なら冗談っぽく笑って────今さらだ。


今さら、マミにはどうもできなかった。


そんな勇気は、もう彼女の中にはひとかけらもない。そして、マミはガタンと音をたてて立ち上がり、逃げるように教室から出ていった。


廊下を抜けて、階段を駈け降りて、時々人にぶつかりそうになりながらも、すりぬけていく。


自分は透明人間みたいだと、マミは思った。
誰にも気付かれず、悟られず、このまま消え去ってもなんの問題もない。


(嫌だ。)


誰も声をかけてくれない。


(嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。)


ひとりぼっちは────嫌だ。


「マミ!」


突然、後ろから呼び止められた。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 21:04:51.73 ID:u73SFV8DO
良く考えたらクロちゃんの関係人物も一部除いてアレな方々ばかりだな
まどか原作知らないからくぐってみたけど、コタローの親父がつくった無限エネルギー発生装置じゃ駄目なのかな
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/04(火) 21:37:40.74 ID:QA3r/TNDO
慌てて振り向いた彼女の視線の先にいたのは、キュウべえだった。
白く小さい身体に、柔らかそうな尻尾をシュルンと揺らしながらマミの視界に、はっきりと写っていた。


マミ「キュウべえ・・・。」


襲いくる不安と恐怖から、なんとか逃げ出そうと走り回っていた彼女にとって、その姿はどんなに救いになっただろう。


『あの日』から、朝も夜もずっと一緒にだった。
戦いの時も、孤独の中にいても、その姿を見れば安心できた。
やっと捜し求めていた安息に出会うことができマミは崩れ落ちそうになるほどの安堵を覚えた。


QB「どうしたんだい?可哀相に、何か怖いことでもあったのかな。」


可愛らしい声でマミのことを案ずるキュウべえ。
彼が心配してくれている、ただそれだけでマミは満足だった。


マミ「うぅん、なんでもないわ。ありがとう、少し落ち着いたから。」


いつもの『自分』を、取り繕った彼女は一つ小さく深呼吸をして、仕切りなおすように言葉を続ける。


マミ「購買でパンでも買ってくるわ、キュウべえも食べましょう。そうね・・・、クロにも後で謝らなきゃ。」


QB「その、クロのことなんだけどね。」


マミ「クロがどうかしたの?」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/04(火) 21:54:48.35 ID:QA3r/TNDO
何か、彼から感じる不穏な空気を感じて、マミは真剣な顔付きになる。


QB「あれから、ボクも考えてみたのだけど、彼の存在はおかしいと思うんだ。」


マミ「え?」


ポカンと、虚を突かれたように、唖然とした様子だったが、構わずキュウべえは疑問と、疑念をあげつらった。


QB「まず、彼は異世界から来たというけれど、そもそもその話が真実かはまだ定かではない。しかも、彼自身の目的だって、彼は話そうともしない。」


最初に、まどかやさやかと出会った時、彼は使い魔を退けるほどの戦闘力を発揮したという。
それほどの、存在がマミの魔女退治に参加することもなく、ふらついている。
キュウべえの指摘はこうだった。


そして、更に


QB「彼はサイボーグだと言うけどね、殆ど機械の身体のような彼が、例えどんなオーバーテクノロジーの力でも、あそこまで完全な心を宿すのだろうか?」


その言葉は、ゆっくりと、崩し落すようにマミの心を揺らしはじめた。


マミ「それ、ってどういう、こと?」


QB「彼は、自分が感情を持っているように偽って、ボク達に近付こうとしているのかもしれない。最近現れた暁美ほむらという魔法少女、彼女と何らかの関係がある可能性もあるよ。」


そのキュウべえの言葉の半分は、彼女の耳には届いても、頭には入ってこなかった。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/04(火) 22:06:06.80 ID:RHO2dE9Po
今日のおまえが言うなスレはここですか?

剛くん驚異の科学力!
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/04(火) 22:11:22.86 ID:QA3r/TNDO
(クロに・・・心がない?)


もし、そうなら。


あの日ゲームセンターに連れていってくれた事は?
あの日の証たるネックレスはまだ首にかかっている。


あれが、嘘?


一緒にご飯を食べたり、顎を撫でようとして怒鳴られたり、今朝にやっと二人して笑うことができたのに





あれも、嘘?


あの乱暴な口調も、たまに見せる不器用な優しさも、少しのお節介も、あれが全て、彼に組み込まれたプログラムだというのか。


────自分達を騙そうと、悪意をもって連れてこられた


QB「人形、なのかもしれない。」


マミ「にん、ぎょう?」


ボンヤリとした口調でマミは呟いた。
まるで、夢心地のようで、もし、そうならきっとそれは、悪夢だった。


QB「彼がこの町の平穏を乱す存在ならば、分かるよね?マミ。」


光のない瞳で、彼女はじっと自分の手のひらを見ていた。
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/04(火) 22:26:55.16 ID:Nk5zKWv70
・・・とりあえず言えることは「キュゥべえ・・・・お前が言うな!」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 22:40:02.44 ID:a3oHSbYX0
とりあえずクロにはQBを出し抜いてコケにして欲しい所
でもクロからしたら感情のないQBはいじめがいのないつまらない相手なんだろうな
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/04(火) 23:05:34.04 ID:RHO2dE9Po
ワルプルぶっ飛ばせばおk
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 00:53:29.73 ID:udK8gJKDO
大ドロボウJINGは名作だったな…あれとまどマギのクロス最高に面白い

とりあえずお前達よく考えろやつは代わりはいくらでもある、ならばいくら撃ち殺そうが斬り刻もうが死なない
ならストレス解消に持って来いじゃないか、死なず罪悪感もなく好き放題できる逸材それがキュゥべえだろ
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 01:23:17.03 ID:4aXPAGd30
>>154
サンドバックですね、わかります


それならある意味いいオモチャだな

156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/05(水) 17:51:26.12 ID:9pANIrfr0
んで何度やられても姿を表して「無駄だよ」「わけがわからないよ」と挑発すると
感情もないから何されても何とも思わないし、逆にサンドバッグしてる側が神経を逆撫でる事になるような気が…
ある意味鼻の長い電柱以上にうざい存在だな
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 18:42:51.79 ID:udK8gJKDO
もしくは殺さず半殺し状態で口を塞ぎ縄で縛って吊しておいてストレス溜まった時に死なない程度にサンドバックにする
口を塞いどけば喋らないし殺したりしなきゃいいサンドバックになってくれるはずだ
殴られるたびに一回一回テレパシー使うような無駄な事しないだろうしなwwww
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 18:55:47.90 ID:dQpkknLDO
剛くん&コタローなら「QBだけを一網打尽にする装置」なんてピンポイントな物を作りそうな気がする
159 :クロ「レスの柄がどんどん悪くなってねーか?」 :2012/09/05(水) 18:59:27.83 ID:DzkuXeuDO
朝の間は、まどかと正門で別れた後、学校の周りをふらついたり、木陰で眠りながら時間を潰した。


そうこうしているうちに昼のチャイムが鳴ったので、そろそろマミを探すために、クロはこっそりと学校の敷地内に侵入した。


が、そこは近未来都市の弊害──クロにとっては──というべきか、元の世界の学校とは違って整備が行き届きすぎている。
真っ正面から入っても、いざ姿を見られてしまえば追い掛け回されるのは眼に見えている。
学校に入り込んだ犬猫の末路なんてそんなものだ。


人通りの少ない場所を慎重に選んだ。
その辺のノウハウは幼少時代で学んだ人間から食料を拝借する方法を応用している。


勿論、マミを探すために校舎内に入り込むとなると他の手段を模索する必要がある。
人間の変装をするなんて児童書のような事はしないが。


クロ「お?」


風が吹いたその時、知った匂いを運んできた。
それは、まぎれもなく探し人の匂いそのものである。


クロ「外にいんのか。」


そいつは都合がいいとクロは、弁当箱をくわえながらタッと駆け出した。
こんなところで捕まるのも馬鹿らしいので、早目に仕事を済まそうと思ったのだ。


そして、校舎の裏に出たところで、その背中を見つけた。


人通りもないような、少し薄暗い場所に彼女は立っていた。


クロ(こんなとこで何してんだか。)


そして、弁当箱をそっと地面に置いた。


クロ「おい、マミ。忘れもんだぞ。」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/05(水) 20:56:49.88 ID:DzkuXeuDO
クロ「喧嘩した後に忘れもんしてんじゃねーよ。ダセーぞ?」


マミ「・・・・・。」


クロ「・・・何黙ってんだよ?」


黙りこくったまま、振り返りもしない彼女に、多少苛立ちと、そして、焦りを覚える。
どうして彼女があれ程、怒りをあらわにしたのかは分からないが、これは相当怒っているようだと、クロは合点した。


─────が


マミ「あああああ!!」


事態は更に悪化していたのだと、マミから向けられた銃口を見て、クロ初めて気が付いた。


────見滝原中学 校舎内


まどか「ひゃっ?!」


さやか「なんだろうね、今の。すっごい大きな音がしたけど・・・。」


仁美「どこかで、工事でもしているのでしょうか?」


突然、どこかで大きな破裂音が聞えた。
一瞬だけ、クラスが騒めくも直ぐに元に戻る。


嫌な予感がして、まどかは窓の外を見た。


空は、全てが遠く感じるくらい青かった。


────校舎裏


一発目は、右目の上あたりに着弾した。
金属同士が激しくぶつかりあう音と共に、文字どおり目に火花が散る。


至近距離でまともに銃撃を食らったためか、身体が激しくのけぞる。
その際に、またもやマミが銃を構えている姿が目に入った。


敢えて衝撃に逆らうことはやめたクロはそのまま地面を転がりマミから離れる。しかし、二発、三発、とまだ弾丸は身体をかすっていった。


161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/05(水) 21:06:35.53 ID:e5OSyjCno
QB「ちょろいわー」
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/05(水) 21:07:32.01 ID:EU0wP1EI0
普通いきなり撃つかよマミさんよ・・・
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/05(水) 21:15:38.39 ID:DzkuXeuDO
マミから目を離さずに、なんとか6メートル程、距離を保つ。


クロ「てめぇ、何考えてやがる。」


唸るようにマミを問い掛けるが、彼女は震わせてクロを睨んでいた。
クロはゆっくりと、胸の武器庫から剣を抜きさる。


クロ(!?)


嫌な気配を感じたのは、背後からであった。
慌てて振り返れば、そこにあったのは一丁のマスケット銃、そして同然それはクロに向けて火を吹いた。


クロ「くそっ!」


その場から、真横に飛ぶ。


躱せたかどうかは一切気にしない。


気にすることもできない。


次の瞬間には、マミが此方に銃口を向ける姿を確認できた。
二丁拳銃、躱せない、ならば、躱さない!


長い剣に、その身を隠すように構えると、凄まじい音が連続して響き、火花が飛び散る。


マミ「私は正義の味方じゃなきゃいけない、魔法少女じゃなきゃいけない、強くなきゃいけない、この町を守らなきゃいけない。」


ブツブツと自分に言い聞かせるような言葉がマミから漏れている。
それは、許容範囲を超えたコップから水が溢れだしてしまっているような、そんな様を連想させた。


クロ「はぁ?だからなんだってんだよ。」


マミ「そうじゃなきゃダメなのよ・・・、パパとママを死なせちゃったんだから・・・、私はそうじゃなきゃダメなんだ!!」


絶叫と共に、引き金は弾かれた。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/05(水) 21:21:26.04 ID:rEWgf8pZ0
ムキュゥべえ「人間は本当に愚かだ・・・・・。自分と信頼していると思っているが、本当はそんなものなんて存在しないことに・・・・」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/05(水) 21:43:49.86 ID:DzkuXeuDO
クロ「るっせえんだよ!!!!」


その銃声をかき消すような一喝を放ちながら、クロは剣を振り回して弾丸を弾く。
そして、そのまま回し蹴りでマミの腕を全力で蹴り跳ばした。


銃は弾き跳ばされ、マミは丸腰になった。


クロ「チェックメイトだ。」


剣を、マミの首筋に当てがい、初めてクロは彼女の今の顔を見ることかできた。


彼女の両頬には、涙が溢れていた。


クロ「お前・・・。」


戸惑いは、躊躇にかわり、油断へと変わった。
突然放たれたリボンに、クロはグルグル巻きにされ地面に転がる。


マミ「私は、魔法少女。」


此方へと、マミは歩みを進める。


マミ「ためらうもんか。」


両手を前に構えると、彼女の腕は光に包まれ、次の瞬間には巨大なマスケット銃が顕在していた。


クロ「お前が『魔法少女だから』ねぇ、随分な理由で殺されるもんだな、オイラも。」


が、銃口を眼前に向けられたクロは、退屈そうな顔でマミに語り掛けた。


クロ「『随分とつまんねー理由で銃を構えるんだな、お前は。』」


どこかで聴いたような言葉に、マミは荒れる感情のままに引き金を引こうとした───その時だった。


チリンと音がして、マミの首からネックレスが落ちた。
戦いの途中で、金属が痛み千切れてしまったのだろう。


その音で、マミは俯く。


マミ「・・・嘘つき。」


マミ「本当は心なんてないんでしょ、私なんてどうでもいいのに、自分の目的を果たすために近付いてきたんでしょ。」


クロ「マミ、お前・・・。」


マミ「馬鹿よね・・・機械に心なんてあるわけないのに。」


『あるよ!!』
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/05(水) 21:57:25.79 ID:DzkuXeuDO
ぶつけられる言葉とマミから漏れる嗚咽だけの世界の中、何故か、その言葉を思い出した。


『前にも言ったでしょ!アタイ、クロちゃんが死にそうになった時、すんごく不安で心が痛くて死んじゃいそうだったもん。だからあるんだよ、アタイ達にも心が。』


それはいつだったか、聴いてみた事があった。
突然機械の身体になった自分がほんの少しだけ、気になって彼女に聴いた時、彼女は胸を張ってそう答えた。


だから


マミ「この胸の痛みなんて、分からないでしょ。」


クロ「お前の痛みなんて知るわけがねーだろ。」


彼もまた、真っ直ぐに答えられた。


クロ「でもオイラにも、オイラ達にだって痛みくらいあるぜ?」


その言葉に、マミは唇を噛んだ。
そして、銃は現れた時と同じく光に包まれて霧散した。
そして、彼女は踵を返して歩いていく。


マミ「この街からいなくなって。今度会ったら容赦はしないわ。」


クロ「おい、マミ!」


マミ「お願い・・・!」


必死で涙を堪えたような顔で振り向いたと思ったら、彼女は走りだしてしまった。


クロ「このリボン・・・、ほどいてけよ。」


残されたクロは、そう呟いた。
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 22:29:25.88 ID:udK8gJKDO
マミさんはクロと喧嘩したあとに同級生が楽しそうにしてるのを見たりお弁当忘れてしまい分けてもらう事もできずいっぱいいっぱいだった時に淫獣の言葉でドカン!なったんだろうね

よしちょっくら淫獣キュゥべえ狩り行って来る
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/05(水) 22:57:27.35 ID:rkqHFq540
盛り上がってまいりました
169 :CM :2012/09/05(水) 22:59:02.46 ID:DzkuXeuDO
さやか「ほんと、あんたみたいな奴が主人公のアニメを見てみたいね。子供なんか見れたものじゃないでしょ。」


クロ「はっ、冗談言うなよ。お前みたいな奴が出てくるアニメなんざ劇場版とか夢のまた夢だろ。」


さやか「何言ってんの?女子中学生が出るのよ?時かけばりの爽やかな感動を与えるわよ。」


クロ「それを言ったらオイラなんか猫だぜ?そりゃあもう狼こどものあめとゆ○くらいのホットなストーリー展開だろ。」


まどか「寝言は寝て言えばいいんじゃないかなって・・・。」


魔法少女まどかマギカ!劇場版公開間近!!
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/05(水) 23:14:07.73 ID:e5OSyjCno
機械に心が宿らなかったらゴロー編はできな…そもそもクロちゃんが無理だぜ…

ところでさやか応援のために初恋ロボの出番はありますか?
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/06(木) 03:08:38.71 ID:hA01h+sDO
劇場版はアニメの編集版なだけだからなぁ…

クロは漫画の方が過激でアニメはちょいユルなのさ残念なのだよ

マミさんクロ追い出したらシャル戦どうするんだ…
マミる前にクロが助ける展開を予想してたのにどうなるか楽しみ
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/06(木) 21:41:05.66 ID:fVSa5AKDO

さやか「初恋ロボはいやだぁ!!」


まどか「どうしたの、さやかちゃん!?」


時は流れ、今は放課後。


昼間には学校の近くで、何か騒ぎが起きたようだったが、生徒も先生もさして問題にするような事はなかった。
だから、というような理由ではないが、自分も気にすることはしなかったのだ。


さやか「いや、なんでもない・・・、なんか悪寒が走ってさ。」


まどか「気分悪いの?」


青ざめた顔をして震えているさやかに、心配してまどかは声をかける。


さやか「大丈夫、大丈夫。それに一応病院には行くからね。」


イタズラっぽい顔で笑う彼女の頬は隠しようがなく赤らんでおり、事情を知るまどかも思わず微笑ましくなった。


まどか「うん、じゃあ、今日は私一人でマミさんに着いていくよ。」


友の背中を押すことが、まどかは嬉しいと共に、なんだかこそばゆい気もする。


さやか「ごめん、勝手な事情で・・・。マミさんにはよろしく伝えといて。」


じゃっ、と軽く腕を挙げると元気よくさやかは走りだした。
すると、こちらを振り返り足踏みしながら彼女は大声でもう一度まどかに呼び掛けた。


さやか「変なドジしてマミさんに迷惑かけるんじゃないぞー!!」


まどか「もぅっ!そんなことしないもん!!」


憤慨してやり返すと、アハハと笑いながらさやかは、とうとう姿が見えなくなるまで走っていった。


それを見たまどかは、もう一度微笑むのだった。
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/06(木) 22:07:21.73 ID:fVSa5AKDO
クロ「あー!んだよこれ切れねー!!」


身体に巻き付いたリボンは、きつく自分を縛り上げておりちっとやそっとじゃ緩みそうもなかった。
もがいてもがいて、リボンを地面に擦らせてみたものの、その行為が報われる気はさらさらない。


しかし、それでも、諦めることはできなかった。


クロ「ああああああ!!」


苛立つ、ただ足掻く


クロ「くっそおおお!!」


そして───ついに


クロ「てか、こんだけ叫んでんだから誰か助けにこいよ!!」


他力本願に走った。


「無駄よ、それは特殊な力が込められているから、物理攻撃では切れ目をいれることさえできない。」


────と、どこか聞き覚えのあるような声が響いた。
冷たく、感情を殺しきった、全てを突き放すような、そんな声であった。


クロ「今度はなんだよ。」


慌てて、なんとか身体を起こすも、足まで縛られているため直ぐに倒れてしまう。
目視では、どこにいるかは皆目見当も付かない。


「私は巴マミとは同業者。」


同業、ということは魔法少女という事になる。
そんなのが、今ここに何の用かは知らないが都合はいい、なんとかこの窮地を脱したかった。


クロ「じゃあ、見りゃ分かるだろ?この様だ。早く縄をほどいてくれ。」


「何故?」


クロ「何故って・・・。」


巴マミに会うためだ、とそれだけの事しか考えていなかったため。
クロは答えに詰まった。


クロ「どうでもいいだろうが!お前には関係ねー。」


因みに、謝るという選択肢だけは端からないことをクロに変わって明記しておこう。


「・・・。」


声は沈黙したが、気配はまだすぐ近くに『彼女』がいることを告げていた。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/06(木) 22:27:18.64 ID:fVSa5AKDO
「あなたは、魔法少女になるためには願いが必要なことを知っているかしら?」


クロ「あぁ?あのキュウ太郎だかキュウちゃんだかが言ってたことだろ。それがなんだよ。」


その話は一度聞いている、今はそれどこではない。
とにかくマミに会って、なんかしなければ気が済まないのだ。
こいつに構っている暇などない。


「彼女の願いは、『生きる』事だった。」


リボンを切ろうともがいていたクロの動きが止まった。


「彼女がまだ家族と一緒に暮らしていた時の話よ。父親と母親、そして巴マミの三人でドライブをした帰りのこと───」


彼らには、非など存在しなかった。
非があるとするならば、それは反対車線から飛び込んできたトラックの方であるべきだ。


しかし、非がどこにあるかという話にはなんの意味もなく、起きてしまった悲劇は、全ての人間に平等な理不尽を撒き散らした。


「巴マミの、父親と母親は───即死だったそうよ。」


クロはその話を聞いていた。


ただ、黙って聞いていた。


「その時に現れたのが、あいつ。」


───キュウべえ。


魔法少女になるのなら、願いを叶えよう。
彼は、恐らく、彼女にそう提案した。


父親の血と、母親の血、そして、自分の身体からの溢れている血にまみれ。


身体の痛みと、心の傷みと、恐らくはもう動かない両親への哀しみと、暗闇。


その時の彼女の、恐怖など誰が代弁できようか。


その時の彼女の、不安など誰が代弁できようか。






彼女はその時、ひとりぼっちになってしまったのだから。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/06(木) 23:10:08.76 ID:fVSa5AKDO
「そして、彼女は願った。」

生きていたい、と。


父の骸と、母の骸、二つの死に挟まれた彼女は、自らの渇望のままに望んだ。
死にたくない、生きていたい、父と母の事など度外視した自分勝手で独りよがりな願い。


しかし、それを誰がせめようか。
生き死にが、常に自分の隣にあった世界で生きていたクロにとっては、その願いは当然のことに思えた。


そして────


『うるせぇ!この腰抜け野郎!!』


『この借りはいずれ返す。』


────転がる目


────辺り一面に広がる血の池




「そして彼女は、家族は見殺しにした自分を今日まで責め続けている。」


あれだけの事を引き起こしておきながらノウノウと生きている事をただただ苦悩するしかなかった自分と被ってしまった。





─────病院前 駐輪場


さやか「ふんふふーん。」


ご機嫌に鼻歌をふかしながらさやかは病院までたどり着いた。
目的もはっきりしているし、カバンの中には選りすぐったCDも忘れずにいれてある。
自分で言っていながら、まどかのような凡ミスを犯すような事はしない。


さやか「ふふふん、ってあれ?」



駐輪場に何気なく置かれた宝石。
それに気付いたのは奇跡的ではあった。


QB「まずいね。」


さやか「う、うわ!ってあんたねぇ!ビックリさせないでよ。」


突然現れたキュウべえに抗議するも、それを遮るような形で彼は言った。


QB「・・・『羽化』が近い。」
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 02:52:18.86 ID:PGZCS+sDO
>>1よ、面白いんだが投下するならする、今回は終了なら終了と言ってくれなきゃわからないぞ
あと次いつ投下するかの予告あると助かる
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/07(金) 06:32:34.29 ID:ENx5fSy2o
クロちゃんといいメダロットといいデビチルといい
ボンボンはハードだな
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 11:57:37.08 ID:PQlt3vyDO
マミ「・・・。」


彼女は、ただ立ち尽くしていた。
感情の発露もなく、声を発することもなく。


涙を流すこともなく。


今、無理に笑えと言われれば、彼女はその通りにできる自信があった。
例えば、今ここにいる、このどうしようもない自分を笑さえすればそれで良かった。


でも、もう、涙を流すことに彼女は疲れていた。


マミ「?」


と、心の騒めきを打ち消すように屋上のドアが力一杯に開かれた。


まどか「マミさん!やっと見つけた!!」


マミ「まどか・・・さん?」


どうしたの?と聞く前に彼女はマミの肩にすがりついた。
突然の事態に対応が遅れ、狼狽えたマミだったが、そんな事にも気付かない程、まどかも焦燥している。


さやか「さっき、さやかちゃんから電話が来て!キュウべえと一緒にいるけど、大変な事になるって!!」


マミ「落ち着いて!」


まどかの両肩を、マミはおもいっきり両手で掴む。
はっ、とした顔で思い出したように大きく息をつく。


マミ「まどかさん、さやかさんとキュウべえに何があったの?」


まどかは唾を飲み込み、マミの目を見た。


まどか「病院に、もうすぐ魔女が誕生しそうだって、さやかちゃんが。」


その言葉を聞いたマミは静かに息を吸う。



────行くの?


行かなきゃ。


────できるの?


やらなきゃ。


そして、彼女は息を吐いた。


マミ「行きましょう。まどかさん。」
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 12:00:05.12 ID:PQlt3vyDO
>>176


ご指摘、感謝します。


しっかりと予告して行きます!
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 14:27:48.31 ID:fnNW6CRC0
マミさんが誰かを呼ぶときは苗字だった気がするけど… まぁいいか!続き待ってるぜ!
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/07(金) 14:51:09.98 ID:0ADyqp1+0
まどか達が名字じゃなくて名前で呼んでくれって話しがあって
マミさん名前で呼んでるんだが…読み飛ばしてないか?
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 14:57:23.97 ID:PGZCS+sDO
>>180
まどさやが友達だから名前で呼んでくださいと言ったから名前呼びになった
あとsageろ
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/07(金) 15:38:48.36 ID:fnNW6CRC0
>>181
>>182
教えてくれてありがとう!今から最初から読み直して来ます!
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 19:00:50.74 ID:PQlt3vyDO
クロ「ちっくしょうが!」


必死になってリボンを振りほどこうとしているその様は、まるで苦しみにのた打ち回っているようにさえ見えた。


話を聞かせてから、彼は30分以上はそうしている。
見ていて胸が痛くなる程に、それは痛々しかった。


『彼女』はただその姿を目に焼き付ける。


「あなたが行ったところで、彼女は耳を貸すのかしら。」


その問いにクロは答えるつもりも暇もないと、歯を食い縛りもがく。


「喧嘩をして、あんな酷いことも言われて、それでも何故あなたは彼女を見捨てないの?」


もし、クロが落ち着いていたら、その時、『彼女』の口調に軽い憤慨が滲み出ていることに気付けたかもしれなかった。
しかし、相も変わらず、クロはそんなことに構ってはいられなかった。


それでも、その問いだけはきちんと聞こえていたようで


クロ「アイツが何を言ってほしいだとか、家族がどーだとかオイラには知ったことじゃねーよ。」


彼は、口を開く。


クロ「ただ、一宿一飯の恩義ってヤツか。」


クロが視線をそらした先には、マミに渡すはずだった弁当箱が空になって転がっている。


クロ「うまかったって、言いに行くだけだ。」


めんどくせーけどな、とふてぶてしい顔をするクロに、『彼女』は───


「変わらないわね。あなたは。」


呆れたような言葉をもらした。


クロ「は?お前、どーいうこと」


「説明している暇はないわ。」


クロの言葉を遮るように、『彼女』は言葉をつむいだ。


「このまま行けば────巴マミは、死ぬ。」


クロ「なんだと?」


「場所は、見滝原総合病院。彼女はそこで、魔女に襲われて死ぬ。」


185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 19:39:08.96 ID:PQlt3vyDO
一瞬の静寂と共に、クロの身体に巻きついついた戒めは解かれた。
誰が、は考えずとも分かったが、何で、かは考えても分かりそうになく。


また、考えるつもりなどなく、クロは走りだした。
が、すぐに彼の前に、影が立ちふさがる。


クロ「そこをどけ!!」


「襲われたならまだしも、魔法少女がいなくては結界に侵入することはできない。」


激情のままに戦闘態勢に入ろうとするクロに、『彼女』はそう告げた。


クロ「ならどーしろってんだ!?」


詰め寄るクロに、彼女は感情を込めず言った。


「私は、暁美ほむら。魔法少女よ。────力を貸すわ。」



────マミ・まどかside


そんなやり取りがあったとはつゆしらず、彼女達は既に魔女の結界の中に突入してしまっていた。
まどかは、よくさやかに着いて病院に行っていたし、この街の道もよく知っていた。
近道を通ることなんて、お茶のこさいさいだったのである。


マミ「もう結界まで・・・、まだ魔女は誕生していないにしても、急がないといけないわね。」


ほのかに暗い世界の中を、魔法少女に姿を変えたマミと、制服姿のまどかは二人で歩いていた。
しかし、先ほどから妙にマミが足早に歩いているので、まどかは彼女の後ろの方を歩いている。


気を抜けば、二人の距離はかなりあいてしまうような気がして、まどかは必死で、競歩をしているくらいの気持ちで歩く。


まどか「さやかちゃん、大丈夫ですよね?」


心配事が、あまりにも多すぎて、まどかはマミに話しかけた。
それは、この沈黙に対するやりきれなさも大いに含まれての事だったが。


186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 20:33:12.03 ID:PQlt3vyDO
マミ「大丈夫よ。私が必ず、やりとげるから。」


その言葉に、まどかは少しの安堵を覚える。
その背中からは、その表情をうかがい知ることはできないが、いつもと変わらぬその姿にまどかはホッと息をついた。





「あ?」


安心しすぎたのか、どうなのか、この緊張感にはまったくそぐわない空腹の象徴。
つまりお腹が鳴る、という失態を犯してしまったのだ。


まどか「や、や、や、違うんです!これはその、今日は急だったからご飯を食べてなくて!だから、その、なんというか。」


そんな弁明をまどかは慌てて繰り返していると、やがて、マミの背中が震えていることに気付いた。
笑っているのだ。


まどか「その・・・、面目ないです。」


顔を真っ赤にして、まどかは俯いた。


マミ「ううん、ありがとう。」


すると、マミの風を切るようなスピードの早足が少し緩やかになった。
もちろん、急いでいないことにはならないと思うが。


マミ「さやかさんからは、その後連絡はあったかしら?」


まどか「はい、まだ大丈夫らしいけど、急いでほしいそうです。」


窮地に、役に立つとも分からないキュウべえと二人きりで待たなければならないのは、大層神経をすり減らすことだろう。
有事の際には、彼女達には戦う術はない。


もし、何かできることが一つだけあるならば


────契約、という手段だけが残される。


もし、そんな事態になれば、さやかはどんな選択をするのだろうか。
彼女は、自分なんかよりも人一倍、マミに対する憧れを持ってる、更に、彼女には戦うに値する願いがあることもまどかは知っている。


187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 21:31:00.09 ID:PQlt3vyDO
ならば、今目の前にいる、マミ自身の願いとはなんだったのだろうかと、まどかは気になり、聞いてみたくもなった。
しかし、その『願い』というのは、その人のとても大切なものような気がして、直接聞くことはためらわれた。


でも


まどか「マミさん!」


これだけは聞きたかった。


まどか「マミさんは、どうして戦えるんですか?」


少し、踏み込みすぎたかもしれないが、まどかにとってはあくまでもギリギリのラインをついたつもりであった。


願いは一度叶ってしまったら、お終いだ。
重要なのは、そこから戦い続けられるかどうかなのではないかとまどかは思う。


まどか「ごめんなさい、急に変なこと聞いちゃって。」


だからこそ聞いてみたかった。
何故、マミがそこまで戦うことができるのかと。


まどか「私って、あんまり自分で誇れるようなことなんてなくて。だから、ただ漠然と人の役に立てたらいいなって思ってたんです。」


力もなく、特別な目的もない。
ただひたすらに、普通の日々を送ってきた自分に、突然、『何かできるかもしれない』という可能性が飛び込んできた。


しかし、それでも自分は答えを出すことに踏ん切りがつかなかった。
命を懸けた願いと、命を懸けて戦うこと、その意味の重さを自分は理解できていないと思ったからだ。


しかし


まどか「マミさんに守ってもらったりしながら、魔法少女体験だって経験するうちに、自分は何をやっているんだろうって思っちゃったんです。」


例えば、さやかは戦うということがどういうことなのかを考える際は、幾分か前向きな考えでもって悩んでいた。


しかし、自分はどうだったのだろうか?
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 21:48:11.79 ID:PQlt3vyDO
戦っているマミと、悩むさやか


そんな二人をただ見ているだけの自分



まどか「それが、嫌になって父に相談してみたんです。」


ある、家に帰りついた日のこと。最近、飼い始めた二匹の猫を、父親は庭でじゃれ尽かせていた。
その時に、ただなんとなく、誤魔化しながら聴いてみたのだ。


今、自分の近くで頑張っている人がいること。


その人の側にいることしかできない自分が嫌になっていること。


まどか「そしたら、こう言ってました。」


『見ていることしかできないなら、見届けてあげなさい。』


最初、その言葉にはなんの意味も見出だせなかった。
解決策でも、なんでもない。いつもと、変わらないじゃないかと。


まどか「でも、そういうことじゃなくて。」


ただ、コツコツと踵を鳴らしていたマミが足を止めた。
まどかは少し、面食らうも、マミがこちらに耳を傾けていることが分かり、話を続ける。


まどか「魔法少女になるだとかの前に、私がマミさんのために何ができるんだろうって、そう考えれば、父の話が理解できたんです。」


見届ける、それは、側にいるということで


まどか「私は、魔法少女になろうとか、たとえそんな気持じゃなくても、マミさんの側にいたいんです。」


友達としての、意思表示であった。
そして、その言葉に、マミは目を見開いた。


189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 22:12:22.54 ID:PQlt3vyDO
彼女の日常は戦いと隣あわせであり、常に孤独の中にあった。


しかし、その時の彼女は、ある種それを罰だと考えていた。
父と母を見殺しにして、自分一人だけ助かった自分。


ならば、人を救おう。


死に瀕した他人を救い、魔女と戦い、孤独の中で死んでいこう。


そこまで、考えた。
しかし、彼女は未だ中学生である。
大人びた身体と、その態度に隠されてしまいがちだが、彼女は子供なのだ。


そんな異常な世界の中、耐えられずはずがなかった。


孤独と、生まれてしまった責任に。


故に、彼女は、共に戦う仲間を望んでしまった。
魔法少女体験も、もしかしたら、彼女達が自分と同じ道を辿ってくれるのではないかという打算によるもの。


それしか、ないと思っていたから。


自分が、誰かを引き寄せるなんてそれくらいでしか、できるはずがないと思っていたから。


しかし、今、自分の隣にいる少女は、自分のそんな考えをいともたやすく拭いさった。
こんな自分を、友達だと呼んだ。


まどか「マミさん?どうかしました?」


流石に、黙りすぎたか、まどかが心配そうに話かけてくる。
慌てて取り繕った。


マミ「ありがとう、早く片付けて、一緒にご飯を食べましょう。私も、お昼から何も食べてないもの。」


その言葉に、まどかは眉をひそめた。


まどか「あれ?クロちゃんがマミさんにお弁当を届けに行ったと思うんですけど、会いませんでしたか?」


その言葉に、マミはもう一度凍り付いた。


190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 22:34:28.05 ID:PQlt3vyDO
マミ「おべん、とう?」


まどか「はい、朝に、その、ケンカをした後に忘れていったから届けに来たって、クロちゃんが・・・。」


会うにはあったが、お弁当は受け取っていなかった。
キュウべえから、彼が『目的は分からないが』こちらに向かっていると聞いて、実際に会って話かけられていた時も、頭の中に飛来する思いで、あんまり彼が何を言っているのか分からなかったから。


マミ「クロが、じゃあ、私・・・、なんてことを。」


胸に走った痛みに、マミは下唇を強く噛んだ。


機械が、心がない存在が・・・、そんな優しさを見せてくれる訳がなかった。
自分は、とんでもない勘違いから、彼を傷付ける言葉をぶつけてしまったのだ。


まどか「マミさん・・・。」


全てを理解できた訳ではないが、なんとなく事情を察することはできた。


まどか「また、ケンカしちゃったんですか?」


力なく、マミは頷いた。


まどか「なら、ご飯は皆で食べましょう。その時に、ちゃんと謝ればいいじゃないですか。」


軽い調子で言う、しかし、まどかにはクロが許してくれるであろうことも分かっていた。それは、多少の嫌がらせは受けるかもしれないが。


だって


まどか「クロちゃんだって、マミさんの友達じゃないですか。」


────見滝原 路上


クロ「?」


ほむら「どうかしたかしら?」


クロ「いや、なんか誰かオイラに関して恥ずかしいことを言われた気がする。」


彼らは、バイクで移動していた。
法定速度など、最初から存在していないと言わんばかりの猛スピードで道を猛進している。


ほむら「このバイク、勝手に改造して良かったのかしら。」


クロ「いーだろ、違法駐車だから。次はどっちだ。」


右よ、と道案内をするほむら、病院まではもう少しだ。
また、スピードが上がる。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 23:01:20.24 ID:PQlt3vyDO
ほむら「さっきから飛ばしすぎじゃないかしら?」


クロ「は?聞こえねーぞ。」


このバイクは一応二人乗りに改造されているが、クロが乗りやすいようにサイズはいじっており、ほむらは少しバランスが取りづらいのだ。


ほむら「だから!ちょっと怖いから!スピードを緩めて、キャアっ!」


クロ「ファイヤー!!」


悲鳴を上げるほむらに、楽しそうなクロ。
そんな彼らではあったが、着実に目的地までたどり着きつつあった。



─────結界内


マミ「着いた、ここが結界の中心・・・。」


ひたすら歩いていく内に、広い空間に出た。
見上げたら、通常の体育館の天井よりも高い。
広さもそれなりにある。


そして、その部屋の中心に据えられている宝石は黒く淀み、激しい邪気を撒き散らしている。
見ているだけで、吐き気を催してしまいそうだ。


さやか「マミさん!まどか!良かった、来てくれて!」


どこに隠れていたのか、さやかが走ってくる、その顔は安堵の表情で塗り固められているが、多少、強ばりを見せている。
自分達が来るまでどれだけの恐怖に駆られていたのだろうかと、まどかは胸を痛めた。


マミ「もう大丈夫よ、さやかさん。」


さやか「いやぁ、本当に間に合って良かった。」


安堵のままに、さやかがそんな言葉を発した、その時、さやかの胸に抱かれたままのキュウべえが、口を開いた。


QB「いや、残念ながら間に合いはしなかったようだ。」


暗い闇が、弾けた。


慌てて、振り向いたそこには、すでに誕生していた。


そして、世界もまた編成された。
突如として、甘い香りに包まれる。
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/07(金) 23:52:05.59 ID:PQlt3vyDO
頭が回らなくなってきたので、明日の昼頃にもう一度投下します。


そして、マミ編終了ということになります。


単純計算、900は超える文章量をもって、この作品は完結すると思います。


では、また明日会いましょう。


因みに、EDテーマ曲は、「赤く熱い鼓動」を脳内再生かYouTubeで再生してください。
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 00:13:56.17 ID:cLVQXIfSO

楽しみだ
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 00:56:04.08 ID:wP5+eoBr0
乙!! 続きを待ってるぜ!!!!
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 01:45:36.13 ID:6vrE0ABDO
まて!マミさん編終了って事はマミさんマミられてしまうのか!?
マミさんマミられてクロ達間に合わなくて終わっちまうのか!?
そうなるくらいならマミさんの代わりに俺がマミられる!
なにいってるかわからないと思うが俺もわからない
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/08(土) 09:02:41.11 ID:yCtq2cfio

許してくれるけど一々弄られそうであるww
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 16:01:31.93 ID:+Xfj+B4DO
今まで、まどかもさやかも魔女の作る結界の中を何度も見たことがある。
そして、そのいずれにも、彼女達の持ちうる『常識』と『理屈』では説明することができない摩訶不思議な世界が広がっていた。


ぎとついた色彩が闇を塗り固め


地球に存在する法則を無視しきった造形物が転がる。


そして、辺り一面から感じる怖気と、悪意で常に肌があわだっていた。


───そして、ここも例に漏れることもない。


辺り一面に広がるのは、大小含めたお菓子の山。


『大小』と言っても、やはり自分の持ちうる常識のものさしでははかりえなかった。


岩石ほどの大きさのキャンディから、教室のガラス戸並みのチョコレート板。
普段自分達が手にする物が、この世界においてはあまりの小さく思える。


まるで、絵本やアニメの世界を現実に再現したようで、それゆえに不気味だった。
メルヘンチックな光景と、今、自分達を包む緊張感のギャップが紛れもない異常を伝えてくる。


マミ「・・・いた。」


マミのその言葉に、まどかとさやかは、この空間の中心部。
山のように積み上げられたお菓子の玉座。


まるで、小動物のような動きでお菓子をあさり


マミ「二人とも、早く隠れて。」


鮮やかなピンク色をした、とても可愛らしい異形。


マミは、それを見つめてゆっくりと闘気を漲らせていく。


まどか「マミさん・・・。」


心配そうな顔をする『友達』を安心させようとマミは、振り返った。


マミ「大丈夫。」


その言葉と共に、魔女に向かって走り出した。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 19:21:38.65 ID:+Xfj+B4DO
あまり時間をかけるつもりはマミにはなかった。
相手の力は未知数ではあるが、身体の大きさは自分の膝くらいまでしかない。


マミ(何か妙な真似をされる前に、仕留めるっ!)


可愛らしい外見で、楽しそうにお菓子をあさっているが、それがなんだというのだろう。
あれは、魔女であることは間違いはなく、故に心乱すことなどあり得ない。


マミ「はあああぁっ!!」


顕在させた長めのマスケット銃を逆手に持ち、そのグリップを渾身の力を込めて背中を向けたままの魔女に叩きこんだ。


『──────!?』


突然の衝撃に、その小さな身体が吹っ飛んでいく。
慌てて空中でブレーキをかけて、魔女はマミの方に身体を向けた。


マミ「まだまだいくわよっ!」


間髪を入れずに追撃をいれる。
両手にマスケット銃を構えては、放ち、捨てる。
何度も、何度も、捨てては、銃を顕在させて弾を放つ。


しかし、その全てが魔女に命中したわけではなかった。
蛇行するように飛び回るため、多少は擦ったりはするが致命傷にはいたらない。


それでも、マミは攻撃の手を休めることはしない。
トンっ、と軽く地面を蹴ると、魔女に向かって風を切りながら突進する。
銃を一発撃ち込み、魔女の退路を限定させると、そこに向かって猛スピードでたどり着き。


マミ「やぁっ!!」


またしても、魔女を銃で殴打した。


さやか「すごいっ!やっぱりマミさんはすごいよ。」
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 19:59:33.83 ID:+Xfj+B4DO
子供のようにはしゃぎながらマミを見上げるさやかの隣で、まどかはじっと彼女の舞を見ていた。


まどか「マミさん・・・。」


さやかは気が付いているだろうか、今のマミの戦い方は、かつて彼女が見せてきたような舞うような戦闘方法とは少し違う、力技を交えながら着実に敵にダメージを与えていく戦い。


マミの中で、どんな変化が起きたのかは分からない。
だが、まどかは、見届けると決めた。
そして、勝利を、漠然と想像した。


────ただ、漠然と。




マミ(いける。)


彼女は、ただ引き金を弾き、敵の掃討を目指し、魔女を追った。


マミ(私は、このまま戦える。)


心も決まった。


自分は一人ぼっちではないと知った。


後は、戦うだけだ。
自分が、戦う、そして守る。
守らなくてはいけない。

────だって、もう何も怖くないのだから。


空間に広がるお菓子の甘い匂いと、戦闘による高翌揚だろうか。
マミの思考はだんだんと直線的になっていった。
判断力に鈍りはないのだが、他の選択肢を選ぶ余裕が知らず知らずに無くなっていった。


ただ銃を構え、そして引き金を撃つ。
しかし、それだけでは仕留めきれなくなってしまった。


マミ(もっと近づかなきゃ。)


彼女は思い出すべきだった。
いくら魔法で顕在させていようと、マスケット銃というタイプは連射式ではなく一度撃てば弾込めまで時間がかかることを。


故に、一度使った銃は捨て、その後また新しい銃を使う。
そのスタイルを彼女は忘れてしまったのだ。


マミ「捕まえた。」


放たれたリボンが、魔女の身体を縛り上げる。


一発目、命中しなかった。


二発目、放てなかった。


200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 20:12:24.11 ID:+Xfj+B4DO
リボンで括り付けられた魔女が、その小さな顔にはりついた口をバカリと開いた。
信じられない程、大きく開かれたその口からは


マミ「え?」


もっと巨大な顔がズルリと這い出てきた。


真っ白な丸い巨大な顔に、大きな目と、大きな口がくっついている。
その口が、開かれると、そこにはキバがずらりと並んでいた。


マミは動けずに、その様を見る。


そして、理解する。


これは『死』を自分に与えるものだと。


マミ(終わった。)


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ


マミ(これでお仕舞い。やっとこれでパパとママの所に行ける。)


死にたくないっ、死にたくないよぉっ!


マミ(一人で家にいるのは、寂しいもの。友達だけじゃ、寂しいもの。)


マミ(まどかさん、さやかさんさようなら。ごめんなさい───。)


キバが、マミに近づいていく。
アドレナリンのせいか、ゆっくり進むその世界で、その場にいる誰もが絶望をただ見ていることしかできなかった。


「マミーーーーーー!!!!」


ただ一匹、彼を除いては。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 20:50:08.55 ID:+Xfj+B4DO
次の瞬間、マミが見たものは、その大口の中に広がる虚無の闇ではなく。


その巨大な顔面と、それに、めり込むように突き刺さったバイクだった。
その大きな目を丸くさせて、自らに迫っていた危機が離れていく。


その時になって、マミはようやく『それ』の全貌を知ることができた。


ヌラリとした蛇のような身体に、左右で青と赤の異なる色をした翼がついている。


─────あれに、自分は殺されるところだったのだ。


崩れ落ちるように、ペタリとお尻をつけて座り込む。そこから、動ける気がしなかった。
頭が真っ白になって、しっかりと生きているはずなのに、視界がぼやけてしまう。


ただ、傍らに、黒い影がいることだけが分かった。






クロ「おいマミ!大丈夫か!?マミ!」


もはや胸ぐらを掴むほどの勢いでマミを覗き込むが、反応が薄い。
目に力が入っておらず、口もポカンとあいている。
恐らくは、気を失った状態と同じだと思う。


クロ「間に合っただけでも、よしとするかね。」


と、視線を後ろにそらすと、そこにはいつもの二人が立ち尽くしていた。


クロ「おい、まどかぁ!!」


その大声に、まどかがピクリと反応するのを確認する。
クロは彼女にある頼みごとがあった。


クロ「マミと、そいつを頼むぜ。」



そいつ、で指差された方には、何故か、暁美ほむらが目を回して倒れている。
まどかの混乱が一層激しくなったようだった。


しかし、そんなものには、もう、クロは目もくれない。


クロ「よう、大口野郎。」


突然の攻撃に驚いて逃げた魔女が、もう一度獲物を狩ろうと戻って来ていた。
魔女と戦う魔法少女よりも、更に小さなその体躯で、クロは立ちふさがる。


その背を、少女達に見せながら。


クロ「腹が減ってんなら、オイラに任せろよ。鉛なら死ぬほど食わせてやるぜ?」
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 22:03:32.60 ID:+Xfj+B4DO
まずは、躊躇う必要もなく、クロはガトリングを魔女に向けて放つ。
その巨体のどこに狙いを定めればいいのかは考えず、ただ全弾を使いきる勢いで撃ち続けた。


しかし、魔女もまた、黙って撃たれ続けるつもりはないのか、弾を避けながら高い天井に飛び上がっていく。
狙いを定めているつもりだったが、魔女には命中せずに壁に穴を開けるだけに終わってしまう。


クロ「くそっ!あんまり狙って撃たねーからな。数撃ちゃ当たる精神も考えもんだぜ。」


ぼやきながら少し後ろが気になり、振り向いてみると、まどかとさやかが、マミを安全圏にまで運ぼうと躍起になっている。


クロ「まだあんなとこにいんのか?!」


慌てて、彼女達の所まで全力疾走する。


クロ「何たらたらやってんだよ!」


さやか「うるさいわね!こっちはこっち手一杯なの!!」


威勢よく怒鳴り返してくる様子から、先ほどのショックからは脱したらしい。
しかし、マミの方はいまだに全身の筋肉を弛緩させており、まどかとさやかの二人では上手く運べないようだった。


取り敢えず、まずはこっちを手伝おうとクロが決断した、その瞬間────


まどか「クロちゃん!?後ろ!!」


青ざめた顔でまどかがクロの背後を指差す。
ただならぬその行動に後ろを振り返ると、僅か十数メートル前から、猛スピードでキバを剥き出して魔女が突っ込んでくる。


まどか「え?」


さやか「わっ!」


そのキバが自分たちを捕えようとした寸前に、まどかとさやかは突き飛ばされ、その場から弾き跳ばされるように投げ出された。


さやか「え?!」


まどか「クロちゃん!!」


クロは、寸での所で彼女達を救うことはできた。


しかし、魔女のそのキバは、クロの身体をしっかりと捕えてしまった。
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 22:25:54.11 ID:+Xfj+B4DO
ギリギリと、金属が軋むような音がまどかの耳にも届いていた。
彼は、確かにサイボーグで、身体はただの生物よりは丈夫だろう。


クロ「が、あ、ああ。」


その苦しむようにもれる声がクロの窮地を端的に表していると思った。


そして、業を煮やしたのか、魔女はクロを咥えたまま翼を動かし宙に舞はじめた。


行き先は、壁。


魔女は、クロを咥えたまま壁に叩きつけ、そのまま、こすらせるように進み、彼をいたぶり始めた。


クロ「ああああああ!!」


火花を散らして、壁にめりこみながら引きづられるクロの、まるで激痛に耐えるような絶叫が、まどかとさやかの耳に届いた。


まどか「クロちゃん!!」


口を両手で押さえたまどかは、もはや泣きそうな顔をしており、さやかは痛みを堪えるように顔を歪ませている。


やがて、クロは高い天井から、地面まで投げ捨てられた。


クロ「がふっ!」


鈍い音を立てて叩きつけられたクロは右手をついて立ち上がろうとした


クロ「・・・くそったれ。」


しかし、本来右手があるべき場所には、ケーブルがぶら下がり、その先では火花がバチバチとなっているだけである。


先刻の攻撃で、千切れてしまったのだ。


自分だって馬鹿ではない。
この戦いは、圧倒的に不利だった。


─────それでも、この戦いから逃げることはできない。


初めて会った時のゲーセンでのマミの楽しそうな顔が頭をよぎった。


まどかやさやかと出会い、生き生きとしたマミの顔が頭をよぎった。


自分を敵と見なしてでも、『居場所』を守ろうとしたマミの顔が頭をよぎった。


───自分だって同じだったから───
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 22:49:20.48 ID:+Xfj+B4DO
『おぉ、ようやく目を覚ましおった。』


『ヨーカンは嫌いかえ?』


呑気な老夫婦の、気が抜けるような声を思い出した。


しかし、『あの日』から、ただ死ぬことだけを考えていた自分に、守るモノを与えてくれたのはその声だ。


生き続ける覚悟を思い出させてくれた。


もう一度、親友に出会えるチャンスだってくれた。


『家族を見捨てた自分を、彼女が責め続けている』なら、それを理由に、彼女が諦めようとしているなら


そんなことは、させない。


クロは左手で、剣を抜いた。


クロ「マミぃ!きーてんだろうが!!」


鋭い視線を、魔女へ。


クロ「ぼっちのてめーが、やっと自分の居場所を見付けたんだろーが!!だったら最後まで」


ゆっくりと、旋回しながら黒い巨体はもう一度クロに踊りかかる。


クロ「すがりつけ!!」


一線、身体を横に逸らしながら突っ込んできた魔女の横っ腹を掻き斬った。


クロ「やったか!」


走りぬけながら剣をその身体から抜き取るも、その傷は切り裂いた直後から再生していく。


クロ「・・・言うんじゃなかった。」


どうやら相手は、再生能力を身体に宿しているらしい、ちっとやそっとの攻撃では倒せないようだ。


どうしたものかと悩む、クロだったが、ふと自分の真下に巨大な影が出来ていた。
もしや、と勘付くも、時既に遅く


クロ「だぁぁぁっ!!」


巨大なキャンディに押しつぶされてしまった。
魔女が、お菓子を自由に作り出す能力を、戦闘に応用したのだ。


クロ「ちっ!いちいち厄介なことしてきやがってこの!!」


剣が、衝撃で飛んでいってしまった。
今は、素手、身体の半分以上はキャンディに押しつぶされている。


そして、魔女はゆっくりと、面倒な黒猫を始末しようと迫ってくる。


205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 23:05:36.88 ID:+Xfj+B4DO
岩陰で、彼女が見ているだけでいられたのは、そこまでだった。


まどか「うわああああ!!」


恐怖をはねのけるように絶叫しながらまどかは駆け出した。


さやか「まどか!?」


向かう先は、クロではなく。
クロが落とした剣。
今まさに、魔女が迫ろうしている瞬間にである。


クロ「バカ!!足手まといだ。とっと逃げろ!!」


流石のクロも、怒鳴り散らしてまどかを追いやろうとするが、彼女は聞きもしないで剣を握る。


まどか「お、重いぃ・・・。」


必死になって持ち上げようとするが、浮かび上がることはない。


クロ「そんなもん、お前が持ったって使いよーがねえだろうが!」


まどか「私は・・・、使えないけど、できるんでしょ!クロちゃんなら!!」


苦悶の表情を浮かべながら、まどかは、はっきりと言い切った。


まどか「私は、力なんてないけど、見ていることしかできないけど・・・、それでも、友達を見捨てることだけは絶対にしない!するもんか!!」


その言葉に、混じり気のないその覚悟に、クロは今度こそ黙った。


まどか「うーん!!」


必死に、持ち上げようとするまどかの手に、もう一つ、手の平が添えられた。


まどか「さやか・・・ちゃん?」


さやか「お、重っ!」


いつの間にか、まどかの隣に来ていたさやかが、クロの剣を一緒になって持ち上げようとしていた。


あれだけ、クロを気に入っていなかったさやかが。


クロ「さやか、お前なにやってんだ。」


さやか「勘違いすんなっての!お腹が空いて、早いところこんな場所から、帰りたいだけ!!」


クロの言葉に、ヤケクソのようにさやかは返した。
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 23:23:29.32 ID:+Xfj+B4DO
クロ「・・・だとよ。早いところ帰ろうぜ。」


クロは、魔女を見据えた。


正確には、魔女の動きを縛りつけている彼女を、であるが。


クロ「マミ。」


クロや、まどかにさやか、彼らに踊りかかろうとしている魔女を、マミは必死で押さえ付けていた。


マミ「前に言ってたわね。『もっと楽しんで銃を撃て』って。」


引きづられそうになる身体を必死で、地面に縫い止める。


マミ「多分ね。私はあれをしなきゃいけないとか、これをしなきゃいけないとかで、自分の戦いすらも制限しようとしていた。」


荒い息を飲み込んで、マミは笑った。


マミ「すぐに、楽しんで戦うなんて、できないかもしれないけど、もう私は譲らない。自分の定めた戦いを、最後まで戦いぬく。」


それでも、怖くて怖くて、仕方がない時もあるかもしれない。


────ならば、その時は


マミ「あなたを頼ってもいいかしら?クロ。」


まどか・さやか「いっけえええ!!」


二人の少女が投げた剣が、黒猫の伸ばした左手に届く。
それを確認したマミは、魔女を解き放つ。


キャンディが、真っ二つに割れ、黒い弾丸が魔女に飛び込んでいく。


少女に対する、答えを届けるために。


クロ「気が向いたらな。」





そして、魔女の顔面に縦一文字に剣が叩き込まれた。
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 23:42:23.29 ID:+Xfj+B4DO
渾身の力で、振り下ろされた剣は、その勢いを[ピーーー]ことなく前進する。


そして、魔女の蛇の様な身体を縦に切断した。


さやか「また、再生する!?」


しかし、魔女の身体はまたもや、元通りにくっつこうとしており、ほっておけば今までの苦労は水泡に喫する。


クロ「くたばれ。」


マミ「ティロ・フィナーレ」


大量に浮かぶ銃は、魔女に銃口を向けていた。


クロの身体中に穴があき、そこからミサイルが覗いていた。


────爆風は、魔女を骨まで残さず焼き切った。






まどか「マミさん!?」


さやか「そんな!」


戦いの余韻も冷めやらぬ中、その声は響いた。


マミが、突然倒れたのだ。


その場にいた全員が、彼女のいる場所に走りだした。


クロ「マミ、マミ!しっかりしろ!!」


フラフラになりながらも、一番にマミの元に駆け寄ったのはクロであった。
うつ伏せになったマミを、仰向けにさせ、必死になって呼び掛ける。
どこかでケガをしたのか、頭から血を流していた。


クロ「しっかりしろぉ!死ぬな!」


マミの傍らで、彼は縋りつくように語りかけた。
叫ばなければ、もう届かないような気がしたからだ。
それでも、彼は信じたくなかった。


こんなことを、誰が認められるというのか。


208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/08(土) 23:46:45.44 ID:+Xfj+B4DO
まどか「マミさん!」


さやか「・・・そんなぁ。」


どうしたって、二人はマミの姿を直視できなかった。青白い顔で、眠ったような彼女を見ると、視界がぼやけてしまう。


クロ「マミ?!」


最後の力を振り絞るように、マミは右手を上げて、クロの頬を撫でる。
手の平にも、血が張りついており、クロのぬいぐるみにマミの血がしみこんでいった。


マミ「クロ、ごめん、なさい。心、がないなんて、いって。ごめん、なさい。」


クロ「もう、しゃべるな!!殴るのは後にしてやるから!今はいい!!」


力が抜けたのか、自らの頬を滑り落ちていくマミの手を、クロは小さな手で握りしめた。


マミ「やっぱり、クロはいい子ね。」


小さく、マミは微笑んだ。


マミ「こんなにも、私、のために・・・泣いてくれるん、だもの。」


やがて、彼女の目はゆっくりと閉じられていく。
長い、長い孤独から、解放された少女は。


ゆっくりと、瞳を閉じた。

209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/09(日) 00:06:11.48 ID:8ZNmRcNDO
─────三日後


クロ「・・・で?」


マミ「えーと、怒らないでちょうだいクロ。」


見滝原総合病院 305号室にマミとクロはいた。
マミは、ベッドの上にちょこんと座っており、クロは傍らの椅子にドッシリと苛立ちを隠そうともせず腰掛けていた。


マミ「あのね、疲労がたまってたらしいの。よく考えてたら最近は寝てなかったし、ケガもね頭をちょっと切っただけ大したことは」


クロ「紛らわしいわ!!」


マミに飛び付いたクロは、拳骨を彼女の頭にグリグリと押し付けた。
イタイイタイと、涙目になりながらも、マミはクロを無理にはねのけようとはしなかった。


その口元は、楽しそうにほころんでいる。


まどか「ただいま戻りました!お弁当買ってきました。」


さやか「あっ!このバカ猫、マミさんに何やってんだよ。」


両手に、コンビニで一杯買い占め、ぱんぱんになったビニール袋を持った騒がしい二人が入ってきた。


マミ「ごめんなさい。本当は約束通り私がご飯を作りたかったのだけど。」


申し訳なさそうなマミに対して、まどかとさやかは、にこやかに笑った。


まどか「いえいえ、今はゆっくり休んで、マミさんの手作り料理はまた今度で。」


さやか「そうですよ。だってそもそもコイツの助けが遅かったせいですから!」


クロ「おい。」


またもや、騒がしくなりそうだったが、流石に病院である。
マミは話題をそらした。


マミ「でも、そんなに期待されるほど、私は自信ないわよ。」


クロ「いや」


少し、困ったようなマミの言葉をクロは遮った。


クロ「あれは、うまかったぜ。」


あさっての方向を見ながら、クロは誰に聞かせるでもないといった態度で、そう呟いた。


マミ「ありがとう、クロ。」


しかし、マミの満面の笑みが照れを隠すクロを逃がしてはくれなかった。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/09(日) 00:11:05.71 ID:8ZNmRcNDO
病室がよく見える木の枝に腰掛け。


暁美ほむらは、病室の中をよく見ていた。


巴マミがクロに抱きつき、黒猫は必死で抜け出そうと身体を動かしている。


ほむら「やっぱり、彼は。」


期待をこめて彼女は呟いた。



ほむら「いや、まだ分からない。」


そして、腰を上げると、音もなく空に飛び上がる。
その途中、もう一度、彼女は病室のまどかと、クロを見つめる。


寂しげな瞳をたたえたまま、彼女はいづこかに去った。


マミ編 完
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/09(日) 00:21:51.22 ID:8ZNmRcNDO
次回予告


まどか「これはグロンギ文字とゲマトリア解釈法を組み合わせているんだよ。」


マミ「気になる人?人に限らなければ一匹いるわね。」


さやか「私は、どうすれば。」





クロ「目ん玉潰されても会いに来るんだもんな。」
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/09(日) 00:27:04.77 ID:8ZNmRcNDO
第一部完です。


昼といいつつ、こうなりました。
申し訳ないです。


次回は明日、投下します。


さやか編、スタートです。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/09(日) 00:45:47.52 ID:5rFULfNG0
乙です

クロがかなりらしいですね。言い回しが原作のそれっぽい
それからマミにクロが激を入れる所でこのシーン思い出した

>クロ「オマエの生きているこの世界ほど、予測不能でエキサイティングなRPGはないと思わないか?」
>コタロー「それは、クロちゃんみたいに自由に生きているやつの台詞だろ?!」
>クロ「そーか?世界はお前が考えてるほど単純じゃないと思うぜ。いっぱしのゲーマーなら『クソゲー』って決めつける前にもっとやりこんでみろよ。お前の人生がクソゲーかどうか、十年後に判断してもおそくはねーだろ?」
>「十年なんて無理だよ。ボク一人じゃ最初のダンジョンで行き詰ってゲームオーバーさ。」
>「本当に困ったときは、オイラを召喚しな。道なんていくらでもこじあけてやらァ。」

「人生は神ゲー」…マジで名言だわ。それから信じられるか……これ児童誌の漫画の台詞なんだぜ?
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/09(日) 00:51:37.13 ID:u/rB+xjPo

おそらく気絶したまんまだったほむらェ・・・
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/09(日) 00:54:41.98 ID:8ZNmRcNDO
>>207

規制がかかってました。

勢いをころすことなく。


なのですが、これも規制されまるでしょうか。
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 02:30:45.84 ID:foCfGCpDO
>>215
あげるな

>>1
[ピーーー]とか死ぬとか魔翌力とかはメール欄にsagaと入れるとピーーとか魔翌翌翌力とならないよ

とりあえず乙!さやかは魔法少女になるのかどうか気になるな
217 :216 [sage]:2012/09/09(日) 02:32:06.82 ID:foCfGCpDO
saga入れ
[ピーーー]魔翌力
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 02:33:06.42 ID:foCfGCpDO
あれ?[ピーーー]魔翌力sagaと入れたんだが…
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/09/09(日) 02:33:51.34 ID:foCfGCpDO
おかしいな…魔力
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/09/09(日) 02:35:05.92 ID:foCfGCpDO
なるほど理解した
何度もレスすんませんm(__)m
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/09(日) 02:43:09.73 ID:u/rB+xjPo
テストスレですべきだった
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 08:19:21.74 ID:8ZNmRcNDO
>>220


ありがとうございました。
色々試してみたいと思います。


あと、個人的にはSS上げてるひとは、自分で自分にsageちゃいけないんだと思ってました。


223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 18:45:52.33 ID:8ZNmRcNDO
さぁ、10時を過ぎたら文章が荒れるという弱点をかかえたまま。


始まります。さやか編です。
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/09/09(日) 18:57:35.67 ID:8ZNmRcNDO
マミ「叩いて。」


クロ「被って。」


マミ・クロ「ジャンケンポン」


ポカリ


マミ「ふみゅっ!」


クロ「へっへーん。」


マミ「うぅ〜。」


クロ「叩いて!」


マミ「か、被って!」


マミ・クロ「ジャンケンポン!」


ポカリっ


クロ「やーい、ノロマめ〜。」


マミ「むぅ、も、もう一回!」


マミ「叩いて!」


クロ「被って」


マミ・クロ「ジャンケンポン!」


カコンっ!


マミ「あいた!?ずるいわよクロ!ヘルメットで叩くのはルール違反じゃない!」


クロ「ルール違反をしちゃいけないっていうルールはなかったぜ?」


マミ「いじわる!いじわるだわ!!」


看護婦「うるさいわよ、巴さん!!あなただけの病院じゃないんだから、もっと静かにして下さい!!」


マミ「ご、ごめんなさい・・・。」


クロ(人形のふり。)
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/09(日) 19:00:40.93 ID:foqG43af0
「」の中の最後に。はどうなんだろう
いや、別に>>1が昔からやっているならいいんだが、普通は付けないような・・・・
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/09(日) 19:15:12.37 ID:u/rB+xjPo
別によくね?
どっかで「」の中の最後に。付けても問題無いとか聞いた気がしないでもない
227 :そして、そっと。を外す [sage]:2012/09/09(日) 21:20:58.32 ID:8ZNmRcNDO



さやか編 第一話「うまくいった覚えがねーよ」


クロとマミの喧嘩に端を発した魔女退治騒動。
マミが危うく死にかけるという危機を乗り越えたが、度重なる疲労心労で、彼女はとうとう限界を迎えた。


彼女に言い渡された量刑は、一週間の検査入院である。


マミ「もうやめるわ」


クロ「なーんでだよ?盛り上がってきたじゃねーか」


見滝原総合病院の病室にて、どうにも暇になってしまった彼女はクロとミニゲームをして時間を潰そうとしたのだが・・・、どうにもマミは膨れっ面である。


マミ「だってクロったら、さっきからいじわるばっかりするんだもの」


初めはそれなりに、楽しんでいたクロではあったが、勝負事になるとどうにも本気になってしまう彼である。


前述の叩いて被ってジャンケンポンは例に漏れず。
オセロ、トランプでも度重なる妨害と嫌がらせを受けた。
その度に半泣きにさせられるのはマミである。


クロ「よし、じゃあ公平にしようぜ。お前にもオイラを攻撃するチャンスをやろう」


マミ「本当?」


クロ「あぁ、マジで。」


快諾、といった二文字が顔に浮かぶようなクロに、マミは思わず乗り気になってしうが、彼女は気付くべきであった。


クロの『公平に』という言葉に騙され、彼は決してもうズルはしないと言ってなどいないということを。

228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/09/09(日) 22:03:13.50 ID:8ZNmRcNDO
クロ「軍艦、軍艦、チョーセンっていいながらジャンケンをするゲームだ。」


そのルールはこうである。


まず、グーは軍艦、パーはハワイ、チョキはチョーセンという呼称に変わる。


左手でお互いに握り合う。


軍艦、軍艦、チョーセンの呼び掛けで、ジャンケンをし、勝ったものは「一本とって」と言いながら、相手の手の甲を叩ける。


以下エンドレス。





そのルールを聞いても、マミはどこか釈然としない顔をしている。


それもそのはずで


マミ「それは、さっきの叩いて被ってジャンケンポンとまったく一緒じゃないかしら?」


クロ「バカ言え、さっきは攻撃方法は二つ、でも今度は一つだけしかないだろうが」


マミ「ヘルメットは攻撃方法には入らないわよ!」


反論と異論なら口に出なければおさまらなかったが、元来の流されやすい性格がこんなところでも彼女は出てしまい、言われるがままにクロのゲームに参加してしまったのが、運のつき。


クロ「さーて、泣かすぞ?」
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/09(日) 22:39:46.43 ID:8ZNmRcNDO
───鹿目まどかは中学生である───


いかにもな、紹介文ではあるが、それが事実だ。
彼女は中学生であり、義務教育の真っ只中で、思春期絶賛突入中の所謂、お年頃の少女。


学校に行けば勉強をし、友達と戯れ、家に帰ればテレビを見て、家族と過ごす。


そんな、絵に書く必要もないほどの普通の少女である彼女は、彼女自身が信じられないような不思議な日々を過ごした。


魔法少女として戦う、大人のような可憐さを持つ巴マミという少女との出会い。


口が悪くて乱暴だけど、本当はやさしいサイボーグのクロという猫との出会い。


その出会いは自分に色々なことを教えてくれた。
戦うことの辛さと、覚悟を決めることの重要性。


そして、死への恐怖。


あれから、マミは入院しているが、彼女の口からは魔法少女として復帰するのかどうかは語られていない。


言葉にはしていないが、彼女はもう戦うことはできないのではないかと、まどかは思った。
魔女との戦いで、クロを援護したマミではあったが、内心ではどれほどの苦しみを押しころして戦っていたのだろうか。


それを考えれば考えるほど、自分としても彼女はもう戦う必要はないのではないかと思ってしまうのだった。


だから、彼女は魔法少女の巴マミではなく、友達で先輩の巴マミをお見舞いするために見滝原総合病院にやってきたのだった。
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/09/09(日) 23:07:36.58 ID:8ZNmRcNDO
まどか「ここかな?マミさんの病室は」


受付で手続きをすましたあと、まどかはマミの病室の前に立つ。
お菓子も買ったし、ジュースも買った。
今日はどんな話をしようかと、ワクワクしながらドアノブを握ると、どうにも中が騒がしかった。


「泣くなっての!な?」


なんだかどこかで聞いたことがある声と、女の子がすすり泣く声が聞こえてくる。


大急ぎで、まどかはドアを開けた。


まっか左手を押さえながら、泣いているマミ


そして、その傍らで冷や汗を流してなんとかマミを宥めようとしているクロがいた。


まどか「な、なにをやってるの!クロちゃんは!!」

まどかの登場に面食うクロではあったが、今はそれよりも彼としてはマミをどうにかしたかった。


クロ「いやあのな、ゲームをしてたら、ちょっとやりすぎた、かな?」


気まずそうに顔を反らすクロだったが、まどかはずいと彼に近づいていき、顔を掴んで自分と目を合わさせた。


まどか「謝ったの?」


クロ「・・・いや。」


話を聞かずに謝れ、というのも行き過ぎた行為に思えるが、ことクロに関してはあながち間違いではない事だろう。


ゆえに、まどかは強気だった。


まどか「マミさんに謝って。」


言われてすぐに謝るのは何か釈然とせずウーとクロは唸るが、涙目のマミと、慣れないにらみを聞かせるまどかを見るとそうもいかなくなってしまう。


クロは意地をはるのをやめ、マミに顔を向けた。


クロ「悪かった。謝る。」


まるで小学生のいじめっ子が反省はしたが、不器用に謝っているみたいだった。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 23:12:45.24 ID:8ZNmRcNDO
とりあえず今日はここまでにします。


もっと読みやすく、もっと分かりやすい文章を書きたくなりました。


「」の。は、今回が初のSSで、よく分からなかったのです。
ご指摘、感謝します。


では、また明日のうちに投稿します。
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/09(日) 23:34:46.12 ID:TwsXCNoto


純文学とかは「。」と書いてるのも多いから気にせずとも大丈夫
個人的には句点有りの方が好き

ただ、現代では鍵括弧最後の句点は外す方が一般的ではある
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/10(月) 01:46:46.84 ID:OhXRTMH4o
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/10(月) 12:42:37.85 ID:arWueCtDO
マミ「・・・いいわよ、許してあげる。」


泣いたカラスがもう笑う。
最近になってマミは、こういった表情をコロコロとかわるがわる見せるようになっていた。


ともすれば、情緒不安定ギリギリのラインであるが、今まで、ずっと押さえ込んできた感情と表情を、彼女はまるで、ひとつひとつ確かめるように見せていった。


それは、特にクロが一緒にいる時に顕著にあらわれる。


まどか「クロちゃん、マミさんは一応病人なんだからあんまりふざけちゃダメだよ。」


不器用に心をあらわにしていくマミに対し、戸惑いがないわけではないが、しかし、この変化をまどかは好ましく思っていた。


クロ「ふざけちゃいねーよ。いつだってオイラは真剣だぜ?」


まどか「女の子相手に本気で真剣勝負しちゃダメなの!」


腰に手をやって、メッと人差し指を立ててクロを怒るまどかである。
控えめな性格である彼女が、ここまで強気な態度にでることもなかなか珍しい。


クロ「あいあい、わかったよ。」


と、右手をダルそうプラプラとふる。


クロ「あ。」


まどか「え?」


マミ「あら。」


ベキンと音がして、なんとクロの右手が肩から落ちてしまった。
床に落ちた我が身の一部をベッドの上からクロは見下ろした。


クロ「やっぱり、出来合いの腕じゃこうなるよな。」


まどか「く、く、クロちゃん!どうしちゃったの!?」


クロ「どうしたも、こうしたも・・・、前の戦いでこうなっただろうが。」


あ、とまどかの脳内に、鋭いキバを持つ魔女の攻撃で右手をちぎられたクロの姿を思い出した。


まどか「でも、そういうのって大体次話で何事もなかったかのようにくっついてるものなのに。」


クロ「覚えているうちに伏線を回収したいんだろ。」


ヨッと声を出して床におり、腕を拾う。
前回の戦いでちぎれてしまった腕は見つからず仕方なく落ちている粗大ゴミでスペアの腕を作ったのだが、さっきのどつきあいで壊れてしまったようだ。


235 :(たまに付く)「。」は気にするな! [saga]:2012/09/10(月) 13:05:08.16 ID:arWueCtDO
マミ「その・・・、ごめんなさい」


マミが申し訳なさそうな顔でこちらを見てくるので、ため息をついて呆れたような顔でクロはマミを見る。


クロ「オイラは好きにやっただけだ。暴れてーから暴れた。お前にゃ関係ねーよ」


ちぎれた右手を左肩にからいながらクロは言った。
その言葉にマミは、そうね、と目を伏せ


マミ「えぇ!私一切気にしないわ!クロが勝手にやったことだもの!」


と、なかなかにいい笑顔で言ったものだから、クロはマミの頭に持っていた腕を投げつけた。


クロ「調子にのるな。」


マミ「ご、ごめんなさい〜。」


まどかは思った。


マミは、少し子供っぽくなっている。
幼稚なイタズラや、生意気な言動、まどかが彼女に見ていた大人らしさは見るかげもない。


しかし、まどかと二人っきりの間は、そんな様子を彼女は見せることはないのだ。
こんなマミを見れるのは、クロがいるときだけである。


まどか(普段は真面目だけど、親戚のお兄ちゃんが来たときは妙にはしゃいでいる長女みたいな感じかな。)


そんなまどかの推測はいざ知らず。
マミは、頭をさすりながらクロに腕を渡している。


クロは猫であり、猫の成長速度は人間とは違う。
もしかしたら、クロは自分たちよりもずっと年上の、大人な男の人なのかもしれない。


それなら、こんなじゃれつく年下を時に邪険にあつかいつつも、からかいながら相手してやる彼の態度にも納得がいく、とまどかは考える。
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/10(月) 13:07:40.60 ID:4w/tBihDO
そういやクロも自分で自分を修理してたもんな…
さてクロ側のキャラで次に出てくるとしたらミーくん辺りだなサイボーグ繋がりで
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/09/10(月) 16:04:26.32 ID:VmqgNOiKo
>>211のセリフ的にマタタビではないだろうか
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/10(月) 17:10:37.03 ID:4w/tBihDO
あーそうかマタタビは眼帯してたっけか…じゃあマタタビか
クロに不信感抱いてるさやかにマタタビあったらどう思うのか…
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/10(月) 21:59:16.36 ID:arWueCtDO
そんなやり取りの途中、マミは話題を変えた。


マミ「ところでまどかさん。先日の件は大丈夫そうかしら?」


まどか「はい!父と母には友達からペットを預かるって言ってあります」


実はここ数日間、クロはずっとマミの病室で過ごしていた。
運良く病室はマミ一人しか入っておらず、今日までは彼の好きに過ごせていたのだが、看護婦や先生も出入りがある。
さすがに、このまま一緒にいるわけには行かなくなった。


そこでマミの退院が済むまで、クロをまどかの家に預けることになったのだ。


クロ「世話んなるな」


まどか「ううん、構わないよ。一杯お話しよう?」


年頃の少女を納得させるような話術などクロは持ち合わせていない。
彼は適当に返事を合わせるにとどまった。


そこに、もう一人の来訪者が現れる。


「あれ?まどか・・・、とあんたもいるのね」


美樹さやかである。
まどかに対するフレンドリーさは、クロを見た時には180度真逆の態度に変わってしまう。


マミ「来てくれてありがとう。さやかさん」


さやか「何言ってるんですか、マミさん!変な気を使わないでくださいよ。」


恐縮したようにさやかは、頭を下げるマミにあたふたと両手をふった。


さやか「・・・そんなの、やめてくださいよ。」


一瞬だけ、まどかはさやかの言葉に違和感を感じた。


しかし、一体何を示している違和感なのかは分からず、結局、話の内容も変わってしまった。


さやか「でも、今日ちゃんと会える時間を作れて良かった。最近忙しくて。」


クロ「猫の手なら貸すぜ?ちょうど一本いらなくなったところだ。」


左手でもった腕をフラフラとふり、ホイッと投げてよこすクロに、さやかは腕を受け取りながら睨む。
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/10(月) 22:21:20.35 ID:arWueCtDO
さやか「猫の手になんの意味があるのよ。一番大切なのは人の手だよ。」


投げ返された腕を受け取りながら、なんとなく一理あることを言われたクロは、また帰ってきてしまった腕をうろんげに見つめる。


クロ「いらねーんだけどなぁ。邪魔な腕なんて・・・。」


さやか「そんなこと言うなよ!!」


クロがポツリと漏らした何でもないような呟きに、さやかは過敏に反応をしめした。
クロの言葉を否定するように、大きな声で彼の言葉を遮った。


驚いたのは、クロだけでなく、マミ、まどかもそうであった。
そして、さやか自身ですらも自らの行動にたじろいでいる。


まどか「さやか、ちゃん?」


さやか「いや、別に、あんたのこと心配してるわけじゃないけど・・・、もっと自分を大事にしなよ。自分の身体なんだからさ。」


クロ「・・・なんで、お前にいちいち言われなきゃならねーんだよ。」


一応、クロはさやかに口答えをしてみる。


しかし、明らかに図星をつかれたのも確かであった。


マミ「そうよ、クロ。あんまり無茶はしないでちょうだい。」


ね?と笑うマミには、お前に言われたくないと思うクロだが、さやかの豹変には正直驚いた。


少々、彼女に対する認識を改めるべきなのだろうか?


まどか「そ、そうだ、さやかちゃん。これから行くとこあるんでしょ?先にそっちの用事を済ましてきてよ。」


さやか「あ、うん。ありがと、まどか。」


何かを隠すような二人の態度にクロとマミは首をかしげる。
そんな二人を尻目に、さやかは足早に病室を後にしようとする。


さやか「あ、まどか、マミさん、お疲れ様でした。」


相も変わらず、クロには何もなく、さやかは頭を下げて、いずこかへ去った。
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/10(月) 22:35:10.74 ID:arWueCtDO
お疲れ様です。


今日はここまでにしたいと思います。


明日中にまた投稿します。


このSS、そこそこ自信はないのですが、完結を目指すというテーマの下、進んでいきたいです。


では、また明日。


因みに、どんな形・シチュエーションになるかは分からないが登場するキャラクター


マタタビ・ミーくん・???


になります。


今度こそ、本当にまた明日!
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/10(月) 22:46:07.93 ID:OhXRTMH4o

なるほど初恋ロ(ry
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 01:12:56.27 ID:yq7YE7ADO
????はニャンニャンアーミーですか、わかりm(ピチュン)
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga sage]:2012/09/11(火) 17:50:46.68 ID:QX22VYN50
変化球でヘビビンガーですか、わかr
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/11(火) 23:15:51.14 ID:MpMpt9nDO
クロ「へんだな」


マミ「えぇ、いつもより歯切れが悪い、というか・・・」


まどか「いろいろあるんです。さやかちゃんにも」


歯切れが悪いのは、まどかも同じである。
さやかの事情というものを知っているとすれば、それは彼女なのだが、どうにもまどかに語るつもりはないようだ。


マミ「そう・・・、じゃあ今はあまり気にしないでおきましょう。それじゃ、まどかさん?」


まどか「はい?」


今はまだ何も聞けるような立場ではないことを悟ったのか、マミも話題を変えることにした。
まどかもさやかも、話したいときに話せばいいのだから。


それに、あまり長居をしてもらうのも、落ち着かない。


マミ「まどかさんにも色々あると思うし、今日はこれくらいにしておきましょうか」


遠慮しているわけではなかったが、いつまでもまどかの厚意に甘えるわけにいかない。
今のところ、マミにできることは、まどかが気に病まない程度に、彼女の時間を尊重することであった。


まどか「マミさん・・・。はい!じゃあクロちゃんは私が責任を持って預かります」


勿論、まどかだってそれは分かっているのだ。


クロ「じゃあな、マミ」


マミ「えぇ、クロもまどかさんに迷惑をかけちゃダメよ。それと・・・」


────キュウべえのこともよろしくね。


その言葉に、クロは黙って一言だけ「あぁ」と返事をした。
煮え切らない、こんな言い方をするのは今までなかったことである。
まどかもマミもひっかかった。


しかし


クロ「お前も、寝てばっか、食ってばっかだと、また太るぞ」


この一言により、全てがうやむやになった。


────見滝原総合病院・受付


看護婦「あら、銃声?」


看護婦B「たぶん巴さんの病室ね。よくあるのよ。また、注意しなきゃね。」
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/11(火) 23:41:32.47 ID:MpMpt9nDO
「また?!またってどういことよ!!あなたに私の何が分かるっていうのよ!?」というマミの絶叫と弾丸を背に、クロとまどかは病院の外まで走って逃げた。


とにかく離れないと狙撃される可能性も高かったため、しばし病院の門をくぐり道路に出たあとも走り続けた。


そして、病院が大分遠くまで離れた場所までやってきたとき、ようやく立ち止まることができた。


クロ「はぁっ、はぁ、し、死ぬかと思った。」


まどか「ギ、ギリギリだったね。」


互いに、両手両膝をつきながら、息も絶え絶えである。


まどか「もう、クロちゃん!!どうして女の子にあんなこと言うの!!」


ウガーと立ち上がり、クロにつめよるまどか。
そんな彼女に多少、押されてしまう。


クロ「冗談だって!」


本当本当と、誤魔化すようなクロに、ふんまんやるかたないといったまどかではあるが、取り敢えずは道の上で猫と揉めることは避けたかった。


まどか「女の子はねぇ。体重と放課後のお菓子には人生を賭けてるんだよ。」


なんだか相反するベクトルを二つ並べられるまどかである。


まどか「おいそれと軽い気持ちで踏み込んじゃダメ!男の子には不可侵の領域だよ!」


熱心な顔でつめよる彼女の必死さというか決死さに押される形で、クロは納得する。


乱れた息も整え、彼らはまた進みだした。
今度はゆっくりと。
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/11(火) 23:57:46.63 ID:MpMpt9nDO
まどか「本当に、クロちゃんは・・・」


クロ「悪かったよって、後で言う」


むすっとした顔で、しぶしぶと言うクロが、なんだかおかしくてまどかは微笑んだ。


まどか「マミさん・・・、変わったね」


クロ「そうかぁ?」


突然のまどかの言葉に、クロは訝しむような声で答える。


まどか「うん、前はあんな風に気持ちをだすことはしなかったから・・・」


クロ「オイラ達の前だからだろ」


そんな簡単に変われるわけではないし、変わったからといって全てがうまくいくわけではない。


クロ「あんまり急がなくていーだろ」


だから、クロはまどかにそう言った。
マミに対してではなく、マミの周囲にいる、友達としてのまどかに、言っておいた方が良いだろうから。


まどか「うん、分かった。」


それが分かったからこそ、まどかも頷いた。


まどか「もう、そろそろで着くよ。」


そうこうしていう間に、まどかの家にたどり着こうとしていたが、なんだか見覚えのある光景である。
迷子になったという理由で、そこまで気にもとめていなかったが、ここに来てみると思い出す。


クロ「ここは・・・」


まどか「あれ?来たことあるの?」


キョロキョロと辺りを見渡すクロに、まどかは首をかしげながらも、指を差した。


まどか「そしてあれが、私の家だよ」


クロ「・・・」


そこは、かつて最初の魔女を倒す前に迷い込んだ家であった。
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 00:22:01.34 ID:ga0Ckc+DO
妙な巡り合わせもあるもので、クロは素直に驚くことにした。
そして、更に驚くべきことが、まどかが玄関の扉を開けた瞬間に起きた。


まどか「いらっしゃい。クロちゃん。」


おじゃましまーす、と軽い口調で玄関から家に入ろうとした時である。


「お兄ちゃん!?お兄ちゃんだ!!」


やかましい声が聞こえた瞬間。
クロの頭の上に、黒い影が飛び込んできたのだ。


「すごいすごい!どうしたの!?お兄ちゃんもここに住むの!?やったぁ!!」


最初は驚いたものの、めんどくさそうに息を吐くと、視線を上にあげて頭の上にいるであろうそれに語りかけた。


クロ「また会ったな。チビ助」


「チビ助じゃないよ?ボクね、かぐらっていうの!!」


元気な声で、そう自己紹介する黒猫は、かつて魔女の結界に取り込まれたとき、一緒に閉じ込められた子猫であった。


出会った時も元気一杯で感情豊かな猫であったが、今はそれが倍になっているようだ。


かぐら「ほむら!ほむらー!来て来て!!」


かぐらがまた、誰かを呼んだ。
さすがに、クロも次に来るのが誰かは分かる。


ほむら「何だよかぐら、あんまり大きな声を出すなよって、げっ!」


現れたのはあの時の「お目付け役」の虎猫である。
げっ!が非常に気になるところだが、今は気にしないでおくことにした。


かぐら「あの時のお兄ちゃんだよ!」


ほむら「こら、かぐら!離れるんだ!」


クロの頭にしがみついたかぐらを何とか引っ張ろうとするが、クロの身体には触らないようにしているために、うまくいかない。


ほむら「この街の猫にも縄張りがあるんだから!失礼のないようにしなきゃダメなんだよ!」


かぐら「やーっ!」


ほむら「やーっ、じゃない!」


自分の周りをクルクルと走りながら悪戦苦闘しているほむらに、クロはさすがに助け船を出した。


クロ「構わねーよ、よそ者はオイラも一緒だからな」
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 00:33:50.95 ID:ga0Ckc+DO
ほむら「だ、騙されないぞ!そう言って油断させるのが都会の猫の手口だって父さんが言ってた!!」


なるほど、なかなかに良い教育を受けている。
お目付け役として、子供の世話を任される理由が分かった。


まどか「ねぇねぇ、クロちゃん」


そのひそめるような声に振り替えると、そこには瞳を煌めかしたまどかがいた。


まどか「この子達が何言ってるのか分かるの?」


クロ「あぁ、まーな」


きゃー!とまどかは頬を手で押さえて騒いでいる。
その様は、まさに夢見る少女だ。


かぐら「まどかちゃん、変な子だー」


ほむら「やっぱり、人間なんて近づかないほうがいいんじゃ・・・」


現実は、知らない方がよいが。


250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/12(水) 00:34:57.04 ID:ga0Ckc+DO
今日はここまで!


オリジナルキャラクターを出してしまいましたが、猫です。


では投稿はまた明日のうちに。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/09/12(水) 00:36:34.24 ID:ga0Ckc+DO
今日はここまで!


オリジナルキャラクターを出してしまいましたが、猫にしました。


投稿はまた明日です。


読んで頂き、本当に感謝しています。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/12(水) 01:26:48.27 ID:f2VTODFg0
猫の一匹が「ほむら」・・・
マザーが誰なのか気になるな
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 09:30:28.82 ID:EnlxoRSDO
オリジナルでも猫なら大丈夫…かな?
虎猫の名前とほむほむ同じだと書くとき混乱したりしいか心配
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/09/12(水) 09:36:23.53 ID:SdDsaL7no

まさかの魔法少女チエコ登場とか…ねーな
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/12(水) 18:28:24.06 ID:ga0Ckc+DO
猫が喋っていることが分かる、というものは人間にとってある種のロマンのようなものなのだろう。


ならば、このはしゃぎようにも少しくらいは理解を示してやるのが人情だ。
クロは、まどかを無視することにした。


かぐら「あー!?」


と、そこにまたしても、かぐらの大声が響いた。
頭の上から飛び降りて、かつては右腕があった場所に顔をよせる。


かぐら「お兄ちゃん、ケガしてるの!?大変、大変だ!!マザーに伝えなくちゃ!」


ジタバタと大騒ぎをして、辺りを走り回り始めたかぐらを見て、まどかはギョッとした顔になる。
かぐらの突然の行動に驚きを隠せないのだろう。


まどか「クロちゃん、この子どうしちゃったの!?」


かぐらのパニックは、更にまどかのパニックを呼び、お目付け役のはずのほむらにしても、アワアワと狼狽えるばかりである。
クロはため息をついて、狙いを定めて足を踏み出した。


かぐら「ふにゃっ!?」


見事に、クロの足はかぐらの尻尾を捕らえ、かぐらは引っ張られる形で身体をべちゃりと床に倒れこました。


クロ「落ち着けっつーの。これくらい大丈夫だ」


説明するのもかったるいといったような口調だったが、その目はしっかりとかぐらを見据えていた。
そして、パニック状態に陥っていたかぐらも落ち着きを取り戻した。


かぐら「本当にだいじょうぶ?痛くない?」


心配そうにこちらを見つめてくる子猫、もし嘘でも「痛い」などと言おうものなら、感じるはずのない痛みを感じてしまいかねない程の純心が垣間見えた。


クロ「あぁ、当然だ。オイラの強さを忘れたか?」


かぐらの脳裏に浮かぶのは、あの化け物を屈服させたあの姿。


だから、その言葉を子猫はあっさりと信じた。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/12(水) 18:59:11.20 ID:ga0Ckc+DO
かぐら「忘れてないよ!お兄ちゃんすっごくかっこよかったもん!!」


今度は、身体を擦り付けながら、その感動を伝えようとしているのだろうか。
クロも、さすがに邪険に扱うことはしない。


彼自身は、そこまで意識していないことだが、クロは目下の者には優しい。
されるがままに、かぐらのやりたいようにさせている。


しかし、そんな様子を面白くなさそうに見ているのは、ほむらである。


クロ「そんな目で見なくてもいーじゃねえか。お前だって根性あるぜ?」


クロにしては珍しいフォローの言葉であり、また、嘘のない言葉でもあった。


こんな小さな子供達が群れから離れ、長距離の別行動をとる。
これは、ありえないことである。


それを、見事に目的地に到着させた。
称賛に値する行為である。


ほむら「ふ、ふんっ!当然だ!なんたってオレはかぐらの師匠なんだからな!」


虎猫が胸を張る。


かぐら「おー、ほむら偉そう!師匠みたいだ!」


みたいじゃなくてそうなんだよ!とほむらはかぐらに詰めよるが、笑いながら逃げられてしまう。


そのうちに、追い駆けっこが始まる。


『だったら箸くらい使えるようにならなきゃな!』


懐かしい光景を思い出した。
まだ、子供だった頃の、『彼』の兄貴ぶった得意気な顔と一緒に。


ちょうど、自分達もこれくらいだったろうか。


257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 21:19:51.14 ID:f2VTODFg0
今このssの影響でクロちゃんの漫画読み直してるんだが
6巻の読者に募集したオリジナルサイボーグの中に
「アサシンロボみっふぃーちゃん」って奴がQBとクリ卒だぞ
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:13:23.67 ID:ga0Ckc+DO
どこか懐かしい影を持つ二匹に、懐かしい頃を重ねてしまった。


そんな事を考えた所で、仕方がない事くらい分かっている。
それでも、楽しそうに駆け回る彼らは、廃工場を生きていた自分たちにそっくりだった。


まどか「はわー」


そこに、気と間の抜けたような声が後ろから聞こえてきたので振り替えると。
そこには、かぐらとほむらのじゃれ合う姿に目を細め、恍惚の表情で微笑むまどかがいた。


クロ「・・・どうした。一瞬で頭でも打ったか?」


少し引きながらクロが尋ねると、まどかは夢見ごこちのまま答えた。


まどか「可愛いなぁ。癒されるなぁ。」


答えになっているのか、いないのかは微妙なところだったが、今の彼女とのコミュニケーションは困難だと判断する。


クロ「よし!チビ共そこに直れ!!」


ビシッとしたクロの言葉に、子供達の動きも止まる。一応彼らに確認しておきたいことがあったのだ。


クロ「お前らがここにいるってことは、『マザー』とやらもここにいるのか?」


ほむら「あ、あぁ、そうさ」


まどか「お兄ちゃんもマザーに会いにきたの?」


恐る恐るといったほむらに、首を傾げるかぐら、そんな彼らを見たまどかが、またもや「はうわっ!」とどこからか息を漏らす。
だが、今は、彼女に構う必要はない。


クロ「来たのは成り行きだ。でも、来た以上はそいつに挨拶する必要があんだろ」


分かっている範囲では、マザーは人間だ。
ならば、この鹿目まどかの肉親であることは間違いないだろう。
しばらく世話になるなら、必要なことはすますべきだ。


勝手きままな猫ライフを送りたいなら、最低限度のことはやらなければならないのだ。
その上で、殴るだとか、壊すだとかの決断を下す。


それが、クロのやり方だ。
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/12(水) 22:25:09.74 ID:3vhIFtKho
まどかと桜小学校の小学生を比べると小学生の方が大人にみえる不思議!
260 :一つ前で、かぐらのセリフがまどかになってしまいました。 [sage saga]:2012/09/12(水) 22:37:53.69 ID:ga0Ckc+DO
かぐら「マザーは優しいから、きっとお兄ちゃんの腕も治してくれるよ」


さっきまでの元気な声ではなく、優しく慈しむような声色でかぐらはクロの目を見つめる。


しかし、どんなに優しくても、あのハゲのような科学力を持っていなければ、この腕は直せない。


優しさや、薬では治らない。
自分は生きてはいるが、物であることも理解をしていた。


クロ「で、マザーはここにいるのか?」


かぐら「いるよ!さっきまでボク達と遊んでくれたの!」


そりゃ、都合がいい。


クロがそう言おうとした───その時だった。


誰かが、玄関に近づいてくる気配を感じて慌てて、普通の猫らしく四足歩行の体勢になり、いつ誰がきてもいいようにする。


そして


「おや?帰っていたのかい?まどか」


現れたのは、年若く穏やかな顔つきをした男性であった。
そして、その男性もクロは見たことがある。


クロ(こいつは・・・)


まどか「可愛いなって・・・ぱ、パパ!?」


慌てて正気を取り戻したまどかを微笑みながら見ていた男は、クロに視線を滑らせた。


「久しぶりだね、おチビさん。」


クロ(チビぃ?)


少し、カチンとくる言い草を食らったクロだったが、次の瞬間に事態は一変する。


それは、かぐらの一言により始まった。


かぐら「あー!マザーだ!」


ほむら「こら、かぐら!失礼だぞ!?」


耳を疑った。 今、なんと言った?


この男が?『マザー』?

いや、マザーというより、これは───────



クロ「ファザーじゃねーか!!」
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/12(水) 22:45:59.32 ID:ga0Ckc+DO
今日はここまで、投稿はまた明日です!


なんとマザーはファザーでした。
主夫って偉大!


知久さんには、クロスオーバーSSならではの役回りをして貰います。


では、また明日!
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/12(水) 22:51:56.27 ID:3vhIFtKho

安直に詢子さんだと思ってましたはい

>>258でかぐらがまどかになっとる
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 23:01:21.39 ID:xqhr4ohIO
かぐらとほむらって、猫の地球儀か?
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/09/12(水) 23:05:54.75 ID:SdDsaL7no
>>259
あいつらが逞しすぎんだよwwwwwwwwww
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/12(水) 23:12:21.29 ID:ga0Ckc+DO
>263


そうです!


あの二匹の幸せな姿をみたい!


という思いもあるにはあるのですが、基本的には名前以外別モノです。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 23:17:10.69 ID:ga0Ckc+DO
>>262


ご指摘感謝します。
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/13(木) 02:23:49.68 ID:omx+4PODO
しかし、そんな様子を面白くなさそうに見ているのは、ほむらである。

どうしてもほむら(人間)が壁の裏からジーと面白くなさそうにみてるイメージにwwww
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/13(木) 07:20:07.58 ID:c2mVbCV40
てっきり里美さんだと思ってました、ええ。
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/13(木) 21:21:22.97 ID:Z3cmXEFDO
「ようこそ、鹿目家へ。僕は鹿目知久」


リビングに通されたクロは、普通に来客として椅子に座り、来客としてお茶をだされた。
隣には、まどかも座り彼女も落ち着かない表情を浮かべている
あまりの事態についていけない。


クロ「おい、お前の親父ってどうなってんだよ」


まどか「分かんない。私だっていつからパパは猫ちゃん達から神様のように慕われてるのか気になるよ」


ボショボショと顔をよせあって相談をするも、お互いに望んだ答えは返ってこない。


知久「マザーって呼び方かい?僕も戸惑っているのだけど、この子達がそう呼ぶのをやめてくれないんだよ」


それどころか、こちらの会話は筒抜けだったらしく、彼は参った参ったと笑ってしまう。
クロに、まどかは目を丸くして顔を見合わせた。


かぐら「だってマザーはマザーだもん、ねー?」


知久「ハハハ、だからやめてくれよ、かぐらちゃん」


しかも、まどかには分からないことだが、彼はかぐらやほむら達とコミュニケーションを取っている。
つまり、猫の言葉が分かるのだ。


クロ「あー、つまりなんだ?あんたが猫の間で神や仏のように奉られている訳だな」


知久「それも言い過ぎだよ。僕は別に慈善事業でやっていないからね、頼ってきた子達だけ面倒を見ているだけだから」


それがどれだけの事かを、理解しているのだろうか。
普段はあまり恩義などを感じないのが猫の社会だが、そこで噂話で神様扱いになる人間など聞いたことがない。


よほどの人格者か、馬鹿のどちらかだ。
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/13(木) 21:43:44.98 ID:Z3cmXEFDO
知久「だけど君だって噂に聞くよ?クロちゃん」


自分を図るように見ていたクロに、知久はいたずらっぽく笑いかけた。


知久「猫に襲いかかった人間を返り討ちにした黒い影の噂や」


クロ「はぁ?」


知久「工事で住み家を奪われ殺されそうになった一家を救い、工事を中断に追い込むまで暴れ回った黒猫がいるらしいとか」


何となく、クロが何をしてきたのか理解してきたまどかはクロの顔を覗きこむ。


見事に彼は、苦虫を噛んだような顔をしていた。


知久「ここ最近で有名になった黒い救世主伝説の本人に出会えるなんて光栄だよ」


見事なほどのニコニコ顔に、とうとうクロは顔をそらした。


まどか「クロちゃん・・・知らない間に色々してたんだ」


クロ「暇だったんだよ」


とうとう苦虫を百匹ほど噛み締めたような顔になってしまったクロを、まどかは微笑んで見つめた。


知久「つい、最近では見たこともない怪物をやっつけてしまったとか嘘みたいな話も聞いたね」


かぐら「ウソじゃないもん!本当だもん!!」


机の上にいたかぐらが、知久に訴えかける。
そうだね、と彼はそっと、かぐらの頭を撫でてやった。
えへへー、とかぐらも笑う。


まどか「クロちゃん、怪物って・・・」


クロ「成り行きだ、成り行き!」


煩わしそうに言葉を返すクロに、今度は知久も笑顔になる。


クロ「なんだその目は、そこの鹿目親子!」


うがーっと、クロは頭を掻き乱してしまいそうなほどの絶叫をあげた。
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/13(木) 22:07:03.16 ID:Z3cmXEFDO
知久「まどか、少しこの子達と遊んできてくれないかな?少しクロちゃんと話がしたいんだ。」


知久がそんな事を言いだしたのは、少しばかりクロの事情を話したり、かぐら達の話を聞いたり───もっともまどかは何を言っているのか分からず、残念そうにしていたが───しながら時間を潰していた時だった。


まどか「うん、分かった。さぁ!行こうかぐらちゃん!ほむらちゃん!!・・・ん?ほむらちゃんって」


そういえばそうだなぁと、一人納得するまどかについてかぐらとほむらは机からジャンプで降りてリビングから出ていった。


かぐら「まどかちゃん、やっぱり変だねー」


ほむら「待てよ!かぐらー!危ないぞ!?」


もうすでに舐められている。


あれは、間違いなく苦労する。


知久「改めて、ありがとう。あの子達を助けてくれて」


すると、突然前の席にいた知久に頭を下げられた。
クロは顔をしかめた。


クロ「やめろ、成り行きだって言っただろうが」


知久「それでもだよ」


ふぅ、と彼は息をついた。


知久「あの子達には、これ以上の苦しみはいらないんだ」


その言葉に、クロは思わず考えを巡らした。
おそらく、かぐらとほむら、彼らに関する考察にクロと知久にはズレはないだろう。


知久「あんな小さな子供達を群れから遠ざけるなんてどうかしてる。ありえないことだよ・・・よっぽどのことではない限りは」


つまり、それは、彼らの母親及び群れに、なんらかの危機が訪れた事を示していた。


間違いなく、どうにも出来ないレベルの・・・。
しかし、彼らの母親は、そんな事態に子供達を巻き込むことを避けようとしたのだろう。


────適当な嘘をついて、なんとか生きて、此処にたどり着くことを祈りながら


知久「だから、ありがとう」

彼は頭を上げなかった。
クロはそっと目を閉じ、あの子供達を思い浮かべた。


知久「これで、あの子達の家族の思いに応えることができる」


クロ「そうか」


そっと、クロは頷いた。
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/13(木) 22:09:56.39 ID:Z3cmXEFDO
すいません、今日はちょっとここまでにします。


投稿はまた明日です。
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/13(木) 22:18:45.04 ID:+trkZ2/ro
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 00:07:14.16 ID:K7cA9ztQ0
おりこ☆マギカみたいな外伝系列のキャラや「神名あすみ」とかは出演するの?
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage saga]:2012/09/14(金) 11:35:03.08 ID:XAF7S9180
>>274
いや、後者は駄目だろ…
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/14(金) 12:34:00.17 ID:81Z/9lADO
>>274


あまりやりすぎると混乱しちゃうんで、僕が(笑)。


「あれ?誰か今通った?」的な登場が、僕の限界だと思います。
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 19:25:49.67 ID:12sq6KEDO
ぬあああらば!まどかの隣をミーくんが横切ってまどかが「ん?!」となって二度見するくらいは(笑)
278 :すみません、投稿は今日のお昼頃にします。 [sage saga]:2012/09/15(土) 00:22:03.89 ID:x4TlW7RDO
知久「まぁ、ここまで言っておいてなんだけど、まだそうだって確認できた訳ではないよ」


まだ確認していない、という言葉から察するに恐らく彼は、かぐら達の住んでいた街にも足を運ぶつもりなのだろう。


これはもう、頭の良い人格者ではなく、頭の悪いお人好しなのではないか。
呆れ果ててグゥの音もでない。


クロ「たしかに、こりゃお節介な母ちゃんだ」


『マザー』という言葉に込められた意味が、なんとなく分かってきた気がする。


知久「お節介なら君だって似たようなものだよ。この街に来てから一体いくつの厄介ごとに首を突っ込んだんだい?」


彼には、自分が異世界から来たという事情を話している。
しかも、あっさりと信じられてしまい、ある程度の説得は必要だと身構えていたクロは肩透かしをくらってしまった。


そもそも、猫と会話できるような男である。
異世界だ、サイボーグだ、なんて彼にはファンタジーではなかったのかもしれない。


クロ「お前、いつから猫と話せるようになったんだ?」


その言葉に、知久は腕を組んで唸った。


知久「うーん、話せるようになったのは、ここ二・三年かな?それまでも、普通に通りすがった猫達の世話はしていたんだけどね。ある日、猫に突然話しかけられたんだ。びっくりしながら、答えてみたらコミュニケーションが成立してね」


いやぁ、あの時は本当に驚いたよ、と頭を掻きながら彼は笑う。


知久「最近じゃ自分が猫になっている夢を見るくらいだよ」


能天気な男だった。
温かく、緩い、全てを受け入れるような柔らかさがありながら、ここまで自分の明確な意志を伝えてくる。


よく、分からない人間だ。


クロ「・・・夢、ねぇ。そいつはどんな夢だ?」


知久「あぁ、それは──」


まどか「わきゃー!やめてかぐらちゃーん!!」


かぐら「待て待てー!悪い奴はやっつけちゃうぞー!」


知久の言葉を遮って、庭からまどかの悲鳴と、かぐらの楽しそうな声が聞こえてきた。


まどか「かぐらちゃん!ギブ!ギブ!!」


かぐら「お腹見せてないからダメー!」


不幸なことに、まどかの言葉はかぐらに通じるが、かぐらの言葉はまどかには通じないようで、もう、まどかには何が何やら分かっていないのだろう。


クロ「楽しそーだな」


知久「そうだね」


彼らは、座して動かなかった。
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/15(土) 00:23:32.16 ID:x4TlW7RDO
>>277


ミーくんの出番は、その内、大分後ですがありますよ!
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 01:43:36.85 ID:pfmev4/DO
ミーくんの出番あるのかー嬉しい限りだ(笑)
最近アニメをみてミーくんに惚れ直しそうになったくらいだから嬉しい(笑)
もしかしてその内じいさんばあさんまで見滝原に来たりしない…よな?
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/15(土) 01:52:03.70 ID:FK4xGgaYo
クロちゃん達が暴れても問題無いよう住民に耐性をつけよう(提案)
まずはダンクが町を歩いてもスルーできるところから始めよう
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/15(土) 13:21:22.05 ID:x4TlW7RDO



───例えば、と思う。


しかし、その『例えば』を考えれば考えるほど


叶わなかった現実を思い知る


何かをしようと決意したって


何もできない自分を鼻で笑う


そんな日常を変えたかった


ただ、それだけだったんだ


────見滝原総合病院・時間は少し巻き戻る


カーテンから漏れてきた日の光が、寝呆け眼に突き刺さる。
まだ重い身体が少しだけ浮かび上がるような感覚を感じた。


しかし、夢見心地の感覚でも自分の左半分だけは、どうにも重いままだ。
自分は一体、後何回目覚めるたびにこんな気持ちになればいいのだろうか。


少し、首を動かして時計を見た。
後、一時間程で午後のリハビリの時間だ。
今度こそ、今度こそ、と彼は自分に言い聞かせ、左腕を見た。


(まだ、動かさなくていい)


今、動かそうとして、失敗したら、今度こそ自分は立ち直れなくなる。


祈るように目を閉じる、そのまま数分動かなかった。


すると、ドアが開く音が聞こえた。


たぶん、彼女だ。


彼は、心を落ち着かせて、首を来客に向けた。


「やぁ、さやか。いらっしゃい」


さやか「うん、おはよう。恭介」


283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 14:09:40.34 ID:lkyTjUlZ0
UP主更新来てるかどうかわかりにくいから
必要な時だけsageるようにした方がいいと思う
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/15(土) 16:18:56.66 ID:x4TlW7RDO
開口一番で朝のあいさつをされてしまった。
どうやら、さっき起きたことは、分かっているらしい。
付き合いが長い彼女だからこそ、なのだろうか。


恭介「おはよう、さやか。」


さやか「よろしい。」


そんな言葉のじゃれあいも、昔にくらべればかなりくだけたものになった。
こうなる前は、病室で二人きりになれば、お互いに何を言えばいいのか分からなくなってしまったものだ。


しかし今は、そうでもない。
ただ、それだけの関係性になるのにどれだけの時間が必要だったか。


恭介「いつも、ありがとう」


さやか「何を言ってるのさ。おじいちゃんになるよ」


そして、時間がかかっただけの価値がある。
そんな、仲の良い二人という関係は心地良かった。


恭介「最近、何か変わったことあった?」


さやか「変わった、こと?あー、えぇー」


何故か彼女は、歯に何かが詰まったような、煮え切らない態度をしている。
何をするにも一直線の彼女が、こんな顔を見せることも珍しい。
少し、面白いので様子を見ることにした。


さやか「い、いろいろ!」


恭介「いろいろ?」


追い込まれた彼女を見るのも、楽しい。


さやか「そう、いろいろ」


誤魔化せたと言わんばかりの顔を見るのも、楽しい。


恭介「良かったね。さやか」


本当に、友達と一緒にいることは楽しかった。
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/15(土) 16:55:03.72 ID:x4TlW7RDO
彼女をじっと見ているうちに、少し顔が赤くなっていることに気付いた。
急いで来たせいで暑いのだろうか?
そんなに、急ぐことはないのに。


さやかは優しい。


彼女の顔をマジマジと見ながらそう思った。


さやか「あ、あのね。恭介」


恭介「うん?」


さやか「そ、その」


彼女が何かを言おうとしたタイミングを見計らったように病室の外から、激しい破裂音と廊下を走る音が聞こえてきた。


『なんで最後にあんなこと言ったの!?』


『うるせー!とにかく今は逃げろ!!』


ギャーギャーと叫び声は近づいたかと思えば、凄まじい早さで遠ざかっていった。


恭介「なんだろう、今の?さやか・・・さやか?」


彼女もさぞ驚いただろうと思い、その顔を覗いてみると激しい苛立ちに耐えるような顔で、肩を震わせていた。


さやか「・・・あんにゃろ〜。やってくれるじゃない、良い雰囲気だったのに」


そして、何かボソリとつぶやいているようだったが、今一聞き取れなかった。


『そ、外だ!』


『馬鹿、止まるな!あいつどっかで狙ってやがるぞ!』


ついさっきの声の主達は、もう病院の外に出たらしい。
反響する大声が、ここにも聞こえてきた。


恭介「・・・さやか」


さやか「へっ?どうかした?」


考え事をしていたさやかが顔を上げた。


恭介「身体を起こしてくれないかな?」


286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/15(土) 16:58:04.62 ID:x4TlW7RDO
さやか「うん、良いけど・・・どうして?」


恭介「窓の外が、見たいんだ」


不思議そうな顔をしたものの嫌な顔を一つせずに、彼女は僕の身体を支えてくれた。
ゆっくりと、身体を窓に近付けた。


日の光が、目に突き刺さって痛いほどだった。






その時、見えたものは、桃色の髪をした少女と、黒猫が転げ回るように駆けていく光景。







それは、胸が痛いほど、羨ましくなる光景だった。


軽やかに走る少女と、自由に跳ねるように駆ける黒猫。


見てみたのはいいが、少し辛かった。


動かない左腕が、また少し痛んだ気がした。
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/15(土) 16:58:39.98 ID:x4TlW7RDO
>>283


ありがとうございます!
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 17:55:25.16 ID:pfmev4/DO
クロやミーくんとかが普通になるようまずはニャンニャンアーミーで耐性をだな
もしくはガンダ●を…
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 20:37:14.96 ID:JtJg6Y7SO
猫の地球儀が出たということはガブリエルが出る可能性が微レ存・・・?
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/15(土) 21:53:47.05 ID:x4TlW7RDO
────鹿目家近辺の路上


そして、クロと知久が話している時間まで、時を少し進ませよう。
その間、まどかは、かぐらとほむらの二匹を連れて散歩をしていた。


まどか「いい天気だなぁ」


空を見上げ、ほんわかとした笑顔を浮かべる。


まどか「そして、可愛いなぁ」


視線を下げ、ほっこりとした笑顔を浮かべる。
道の上では、ほむらが自分の尻尾をかぐらにくわえさせて歩いていた。
道に迷わないようにだろう。


そんな彼らを見ていると、幸せな気分になってしまうのは自然の・・・いや、女子中学生の摂理だ。


まどか「そういえばパパは、初めてこの子達が来た時名前を付けさせてくれなかったのは、この子達から名前を聞いていたからだったんだ」


恍惚の表情の中、どこか冷静な部分が何事かを呟いていた。


まどか「いいなぁ、私のパパみたいに猫ちゃんと話せるようになれたらなぁ。魔法少女になれば分かるかなぁ」


「そんなのにならなくても、ドリトル先生に弟子入りすればいいじゃない」


まどか「にゃー!?」


突然、凛とした声がまどかの真後ろから聞こえてきた。
まどかは飛び上がって振り向いた。


まどか「あ、暁美ちゃん!?」


ほむら「ん?」


驚きながら、ほむらの名字を呼ぶまどかに、若干ひっかかるほむら。


まどか「こ、こんなところで何をしているの?」


ほむら「別に、ただ通りすがっただけの謎の少女よ」
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/15(土) 22:16:47.90 ID:x4TlW7RDO
まどか「自分で言っちゃうんだ」


ほむら「言うだけじゃないわ。生徒手帳には書いてあるもの」


まどか「謎の少女なのに、生徒手帳はちゃんと持つんだね、暁美ちゃん」


あれ?と今度こそほむらは気付いた。
もはや、看過できるはずもない。


ほむら「・・・まどかさん、あなた前までは名前で呼んでいたじゃない」


まどか「え、だってあの子とかぶっちゃうよ?」


あの子と言ってまどかが指差した先には、黒猫に自分の尻尾をくわえさせて虎猫がキョトンとした顔でこちらを見ていた。


ほむら「いや、なんで人間の私が譲歩した形になってるのよ」


感情をあまりださない表情だったが、明らかな不服を彼女は訴える。


まどか「えー、それじゃあ分かり辛くなっちゃうよ!」


ほむら「分かりやすいとか分かり辛いで、人様の名前の扱いを適当にするんじゃないわよ」


ほむら「ニャア?」


まどか「ほら、今のはたぶん、暁美ちゃんが突然猫の鳴き真似をしたみたいに感じるんじゃないかな」


暁美「誰が暁美よ」


まどか「だって暁美ちゃんがマミさんの時に助けに来たけど車酔いで全然役にたってなかったのが悪いんだよ!!」


かぶりを振って嘆きだしたまどかに対し、こめかみがキレそうになったが、暁美は押さえた。


暁美「なるほどね、彼の影響がこんなところまで出るなんて」


深い陰が差した顔に、鋭い瞳が光った。
どうやらかなりからかい過ぎたようだ。
散々怖い思いをさせられた仕返しを敢行して、歩みよりを試みたのだが、成果はかんばしくないようだ。


暁美「本当、覚えてなさいよ。キッド」


キッド?とまどかが首を傾げている間に、暁美はいずこに去っていった。
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 00:32:40.43 ID:bch2HWmDO
今日は、後に夜ごろにもう一度投稿します。


ありがとうございました。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/16(日) 00:44:52.91 ID:BN/eTzIwo
まあ致し方ないなww
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/16(日) 01:12:01.93 ID:mOKSYyNfo
暁美ちゃんが脳内で
クロちゃん絵で再生されるようになってきてるwwww
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 06:35:06.86 ID:tWfFwRIDO
車酔いして役に立たなかったのみたらマミさんの失態は可愛くみえるもんなww
俺的には獣医ドリトルよりイワマルに弟子入りした方が…
世界中飛び回るが経験はかなり詰めてそこらの新人獣医なんかめじゃないww
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/17(月) 20:10:16.33 ID:4fvpPE0DO
最初は不思議な子だなぁ、というのが、まどかのほむらに対する印象だったが、ここ最近では変な子だなぁ、という印象に変わってきている。


そのお陰でと言えるのかどうかは分からないが、最初に出会った時から彼女にあった近寄りがたい雰囲気はどこか軟化している気がする。
しかし、それでもまだ彼女が隠し事をしていることは分かる。
自分を避けていることも分かる。


分からない、暁美ほむらという少女が掴めない。
分かりあおうにも、自分さえも避けられている状況において、まどかは無力だった。


やりきれない想いに、なんとなく視線を下げてみると、いっこうに進もうとしない散歩に飽きてしまったのか、かぐらとほむらがじゃれあっていた。


まどか「この子達は素直でいいな」


本当に、こんな風に遊べたらそれだけで人間幸せになれそうな気がしたまどかであった。


まどか「そう言えば、クロちゃんが子供の頃ってどんな感じだったんだろう?」


思いを巡らせば、無秩序に思考は飛ぶ。
色々考えた末にクロの過去まで気になってしまったまどかである。


例えば、どんな友達がいたのだろうか?


どんな飼い主に飼われていたのだろうか?


どんな生活をしていたのだろうか?


まどかは、自分は、あまりクロの事を知らないのだと気が付いた。
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/17(月) 20:37:17.83 ID:4fvpPE0DO
まどか「うーん、気になるけどなぁ」


考えても仕方がない。
家に帰ったら本人に聞けば良いのだと割り切った時だった。


───自分の横を何かが通り過ぎた。


感じた違和感に、慌てて振り返るとそこにいたのは、人だった。


世間的には中年と呼ばれるような顔立ちをしている男性が妙に弾むような足取りで歩いていた。
ヨレヨレのスーツに、汚れた靴を着こなしたサラリーマン、その背中からは鼻歌も聞こえてくる。


しかし、その跳ねるような足取りは軽いというより、朧気で、そのまま倒れてしまってもおかしくないくらい希薄だった。


おかしくて、不気味なその男性から目を逸らせず、角をフラリと消えるように曲がっていくまで、まどかは立ち尽くしていた。


まどか「なんだったんだろう・・・今の」


姿が見えなくなるまで、妙に息もできなかったまどかは、大きく息をはいた。
ただの変質者なのだろうか、ひたすらに不気味で、怖気が走る。
今になって鳥肌もたつ。


不安になって子猫達を見てみると、先ほどの人間に対する恐怖からか震えていた。


まどか「かぐらちゃん、ほむらちゃん・・・」


もう大丈夫だよ、そういって身体を抱き締めようと近づいた時だった。


ほむら「みぎゃー!!」


まどかは、ほむらの尻尾を踏んだ。
いけない!と思って慌てて足を離したが、ほむらは五メートルはまどかから離れて警戒するように見つめている。


かぐら「ふーっ!」


が、もっと怒っていたのはかぐらであった。
身体をぐっと低く構え、まどかを鋭く睨み付けている。


まどか「か、かぐらちゃん?」


次の瞬間、ニャーっ!とかぐらはまどかに飛び掛かり、まどかはダッシュで逃げていった。
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/17(月) 21:05:53.15 ID:4fvpPE0DO
まどか「ってことがあって・・・」


その話を聞いたクロと知久はため息をついた。


知久「それでほむらくんはあの調子だったのか」


シュンと頭を伏せているまどか、そのまどかを警戒してか必要以上に近づいてこず、リビングの入り口に姿を隠しているほむら。
そんな状況を理解した知久は、苦笑いをしている。


かぐら「そうだった!かぐらは怒っていたのです。まどかちゃん、よくもほむらに酷いことをしたな!」


クロ「最終的にお前も遊んでたんじゃねーか」


どうやらかぐらは、ほむらが理不尽な攻撃を受けたのだと勘違いして、まどかに攻撃をしかけたが、途中で楽しくなって遊びに走ってしまったようだ。


かぐら「ふみゅっ」


クロ「ったく」


テーブルの上で、まどかに飛び掛かろうとしたかぐらの尻尾をクロは掴む。
ジタバタとかぐらは暴れたが、やがて諦め、まどかに顔だけを向けた。


かぐら「こら、まどかちゃん!いけないことをしたら、ちゃんと謝らないといけないんだよ。お母さんが言ってたよ!」


自分に向かってニャゴニャゴと言うかぐらに、まどかは戸惑って、助け船を求めた。


知久「いやぁ、こういうのは本来父親である僕が言わなきゃいけなかったんだけどな」


クロ「お前な・・・」


あんまり、父親であろうと頼りにしちゃいけない時もあるのだとまどかは知ったが、それどころではなく、かぐらは毛を逆立てていく。
クロは、尻尾を離していない。


かぐら「ま〜ど〜か〜ちゃ〜ん。聞いてるの〜?」


まどか「あう〜」


怒っているのは分かるが、それだけではどうしようもなく、まどかの焦りは募る一方である。


──そして


知久「まどか」


やっと、知久は口を開いた。


知久「自分のしてしまったことを、もう一度思い出してごらん。そうすれば分かるよ、自分がどうするべきか」


口調は穏やかであったが、キッパリとした物言いであった。
その言葉に、まどかは落ち着きを取り戻し、入り口のほむらに身体を向けた。


まどか「ごめんなさい、ほむらくん」

299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/17(月) 21:27:47.92 ID:4fvpPE0DO
その姿に、ほむらは目を丸くして、かぐらは満足気に微笑んだ。
知久は、嬉しそうにまどかを見つめ、クロは興味なさそうにかぐらの尻尾を離してやった。


ほむら「別に・・・いい」


ボソリと呟くような声がクロの耳に届いた。


まどか「えーと、どうなったのかな?」


クロ「許してやるとさ」


不安げにこちらを見てきたので、クロはほんの少し唇を歪ませて答えてやる。


クロ「まぁ、女の前で恥かかされて平気な雄はいねーよな」


ニヤリと笑って、クロはほむらを見た。


かぐらは女の子である。
少し小さな黒猫ではあるが、年の頃はほむらはの二つ下。


ほむら「なっ!?」


リビングに飛び込んできたほむらが、クロにくってかかった理由は、ただ一つである。


ほむら「お前いい加減なことを言うなよ!」


クロ「あー?まだ、なーんも言っちゃいねーぞ?」


ほむら「言ってるようなものだろ!いいか!違うぞ、全ッ然違うからな!!」


突然騒ぎだしたほむらに、まどかとかぐらは目を丸くさせている。


まどか「どうしたんだろう?」


かぐら「おー、ほむら元気一杯だ」


そんな彼らを見ながら、知久は楽しそうに笑っていた。


クロ「あぁ、でも恋愛相談はやめとけよ?そんなの上手くいった覚えがねーよ」


ほむら「今、恋愛って言ったー!!」


第一話 完
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 21:32:07.88 ID:4fvpPE0DO
次回予告


暁美「私のこと、ほむらって呼ぶまで絶対に助けないから」


クロ「そんなに死にてーなら、好きに殴っても構わねーよな」


恭介「ね、猫が喋った?」




第二話「誰が迷うか」



次回は、明日中に投稿します!
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 08:12:06.09 ID:RRHcitdSO
ん?二話?
もう五話ぐらいじゃなかった?
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 08:56:24.75 ID:dlzO1RSDO
>>301


あまり話数を重ねると混乱する(僕が)と思うので


マミ編


さやか編


杏子編


ほむら編の四つに別けていきます。
ゆえに、さやか編はさやか編で、また一話から始めていきます。


そして、今回はさやか編の一話が終了したわけです。
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 18:42:25.02 ID:RBTDW6CDO
うむ、くるしゅうない面白いぞだから早めに投下してください
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 18:55:31.43 ID:RBTDW6CDO
ふとミーくん達にじいさんばあさんが捕まって人間なんかしったこっちゃねぇからスキにしな、とかっこつけたけどミーくんのミサイルだったかで狙われたら庇ってミーくんに「で、なんだって?」といわれ顔を真っ赤にしてるシーンを思い出した
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/18(火) 21:16:04.91 ID:dlzO1RSDO
詢子「え、えっと・・・ここまで来て、こんなこと言うのは、あれなんだけど」


いつものような気の強さは鳴りを潜めた彼女。
今、震えるその肩に触れたら、そこからサラサラと崩れてしまうのではないか。


知久「うん」


詢子「キス、だけじゃないと・・・、駄目になるから、その」


相手を失望させてしまうのではないかと、不安そうな彼女の唇を、彼はそっと人差し指で押さえた。


知久「いいよ」


詢子「へ?」


そっと、頬に手を添えられる、優しく引き寄せられる。
彼の唇が、近付いてくる。

知久「動かないで」


────そして


以上が、まどかの母親であり、知久の妻の鹿目詢子が今朝見た夢のハイライトである。


詢子「な、なんじゃこりゃああああ!!?」


さやか編 第二話「誰が迷うか」


朝食をとっている時、突然自分の母親が、頭を掻き乱して叫びだしたので、まどかは驚いてしまった。
しかも、この母親にしては珍しく顔を真っ赤にしており、なおのことなにがなんだか分からない。


詢子「あー!なんで初めてのホテルでキスだけだったんだ!そして、なんでそんな夢を今になって見なきゃいけないんだ!!」


更に、少し子供としては聞きたくないような事まで口走っている。
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 21:16:50.40 ID:/qnZB4uy0
>>クロ「そんなに死にてーなら、好きに殴っても構わねーよな」

>>恭介「ね、猫が喋った?」

恭介良い奴だった・・・・
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/18(火) 21:41:09.69 ID:dlzO1RSDO
まどか「パ、パパ!?」


助けを求めて父親を見るが彼はニコニコ笑って、弟であるタツヤの側で、彼の耳をそっとふさいでいた。


タツヤ「なーに?」


知久「アハハ、随分と懐かしい夢を詢子さんも見たね」


父親の行動の意味は分からないが、不快ではないらしくタツヤはされるがままになっている。


まどか「え?じゃあ本当にキスだけで・・・じゃなくて!」


両親の蜜月などあまり知りたくはなかったまどかは、顔を赤らめてブンブンと振った。


まどか「早くママをなんとかしてあげてよ!」


知久「詢子さんはかわいいなぁ」


ドS!?とまどかは驚愕の表情を自分の父親に向けた。
こんな一面があったなんてまったく知らなかったのだ。


しかし、そうこうしてる間にも、詢子は両手を地につけて、どんどん自己嫌悪から小さくなっていく。


まどか「パパ!もう見てられないよ!」


知久「うん、それじゃあ、まどかはタツヤの面倒を見てあげてね」


娘の必死の説得が通じたのか、彼は自らの妻の下へ歩み寄り、そっと腰を下ろして、詢子の耳に口を寄せて、何事かを呟いた。


どんな言葉をかけてあげているのかは、なんだか家族として恥ずかしくも気になるもので、まどかはその光景を食い入るように見つめていた。


そして


詢子「ぷしゅううううう」


頭から湯気をだして、母は倒れた。


まどか「トドメを刺した!?」
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/19(水) 21:14:27.06 ID:3dR3INxDO
ごめんなさい。


更新は明日の昼頃になりました。


よろしくお願いします。
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/20(木) 13:24:10.25 ID:br626PzDO
一騒動の後は、母も落ち着きを取り戻し、少し顔を赤らめながら食事の席についた。
まどかも、いつも強気な母親の姿を見たのは初めてだ。
中々見ない母の新鮮な表情と、まだ見ぬ父の底知れなさを垣間見た気持ちになる。


知久「そういえば、クロ達は起きたのかい?」


皆が席についた食事の途中で、知久はまどかに聞いた。その言葉に、まだスクランブルエッグを口に含んでいた彼女は頷いて変事をして、少し急いで口の中のものを片付ける。


まどか「うん、私の部屋でまだ寝てるよ」


その言葉に反応したのか、口の周りに食べかすを付けたタツヤがニャンコ?とはしゃぐ。
そんな幼い彼をハイハイとまどかは宥めた。


詢子「クロって・・・、昨日来た新参だろ?」


まどか「うん」


詢子は、いやぁとしみじみと腕を組ながらひとりごちる。


詢子「アイツには助かってるよ。アイツが来てからチビ助どものイタズラがピタリと止まったから・・・」


そう、実はクロがこの家に来る前は、かぐらとほむらの二匹のイタズラ、というか、暴走が酷いものだった。
はしゃぐかぐらを抑えようと走り回るほむらによって、家具が倒れたり、夜になるとほむらが哀しそうな夜鳴きをしながら歩きまわるため、わざわざ知久がその度に起きて相手をしてやったりと、中々手強いものだったのだ。


詢子「今まで、なんどか猫達の世話はしてきたけど、あれは大変だと覚悟をしていたよ。でも、できた猫が来てくれたもんだね」


今まで何度か、という言葉が指すように、この鹿目家では、野良猫の世話をしている、らしい。
らしい、というのも、ここまで本格的な話になっていたということを、まどかは昨日までまったく知らなかったのだ。


父は、猫からマザーと奉られている。
母は、そんな父の行動を受け入れ、また手伝いもしている。
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/20(木) 13:53:22.36 ID:br626PzDO
まどか「うん、クロちゃん面倒見が良いから。昨日はごねる二匹をギュッて抱き締めて寝かしつけていたし、ご飯を食べたがらないかぐらちゃんに口移しで食べさせていたし・・・」


やけに、クロは子供の面倒を見るのが上手かった。
ぶっきらぼうで、めんどくさがりなのはそのままに、それでもしっかりと子猫達から目を離さずに世話をする。
今までに、見たことのない姿だった。


知久「たぶん、彼もどこかの群れに属していたんだろうね。仲間と一緒に」


まどか「クロちゃんの・・・仲間」


今度、本人に聞いてみようと、まどかが考えた頃には、朝食は食べ終えていた。


詢子「ごちそうさま」


まどか「ごちそうさま」


詢子もしっかりとご飯を食べ終え席を立とうとしたとき、まどかは慌てて母の頭を指差した。


まどか「ママ!頭、さっきのでボサボサになってるよ!」


詢子「うおっ!?」


頭を掻き乱した詢子の髪型はどこぞのパンクロッカーのようにぴんぴんに跳ね回っていた。


詢子は走って洗面所に駆け込み鏡を覗きこむ。
力一杯、感情的に髪を弄ったため、少しばかり時間はかかりそうだ。
洗面所の入り口にまどかは立って、そんな母の様子を見た。


まどか「ママ!私もう行くよ!?」


いつもは、玄関を出るのは二人一緒だったが、さすがにこうなってはそうもいかないだろうし、無理に母親を急がせる必要もない。


詢子「あぁ、行ってこい。クロックアップするから」


冗談めかした荒い言葉を受けて家を出ようとした時、ふと気になっていたことを聞いてみた。


まどか「そうえば、ママ」


詢子「あに?」


まどか「あんなにたくさんの猫。急に引き取って、大変じゃない?」


最初、父がこのようなボランティアをしていることを知った時、何故母は、こんなことを許したのだろうと思っていた。
自分は、例えば困っている猫がいたりすれば、それは助けてしまいたいと思う。しかし、この母はとても厳しい人で、何をするにも覚悟と責任を背負うことが大事だと説く人だ。


自分が、もし中途半端な優しさでそんなことをすれば、叱られるのは自分なのだ。
そんな母は、この行為についてどう思っているのだろう。


詢子「猫が一匹増えようが、子供が一人増えようが関係ない。この家にいる以上は、猫だって家族だ」


何でもないように、母は髪を弄りながら言った。


詢子「それに────、愛する夫のやることに一々ケチなんてつけないさ」


少し、照れたように微笑んで、そう言うのであった。
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/20(木) 20:08:47.96 ID:br626PzDO
────まどかの部屋


クロ「スゥ」


かぐら「クゥ」


ほむら「うーん」


まどかの部屋の真ん中に、固めるように敷かれた座布団とタオルの塊、その上に三匹の猫達が重なりあって眠っていた。
一番大きなクロが、かぐらとほむらを身体の上に寝かせ、更に片手で巻き付けるように抱き締めて寝ている。


しかし、かぐらはそれでグッスリと眠っていたが、もう一匹、ほむらはなにやら眉をひそめて寝心地が悪そうに唸っていた。
なんとか、身体を捻ってそこから抜け出そうとするも、強い力で抱き締められているためまったく上手くいかない。


ほむら「あつい……………。おい、あんた、起きろ」


クロ「う、うーん」


動かせる範囲で、クロの身体を揺すってみるも、軽い反応を示すだけで、起きるまではいかない。
イライラもたまってきて、ガリガリとクロの身体に歯をたてても、妙に硬くてこちらの歯がおかしくなりそうだった。


クロ「ん?んー、朝か」


と、その努力が実ったのかどうかは分からないが、クロが重たい瞼をこじ開け、早朝特有の荒い声を発した。
ほむらは一瞬だけ、怯むもすぐに持ちなおし、クロの胸の中からくってかかった。


ほむら「いい加減に離せ、この野郎!」


朝っぱらからの元気な声にあからさまにクロは顔をしかめた。
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/20(木) 20:34:44.54 ID:br626PzDO
クロ「離せって……、お前が昨日の晩に一人で眠れないっつったろーが」


ほむら「い、いってねーよバカァ。」


そう、確かにほむらは『クロには』言っていない。

彼がそう言ったのは


かぐら「ボクに言ったんだよね!」


ほむら「でぇーー!」


クロの腹の上で、ピョコンと耳を動かしながら顔を起こしたかぐらに、ほむらは驚きを隠せなかった。
朝から元気な二匹に、うんざりしながらもクロはしっかりとその手を離さない。


かぐら「前まではボクと一緒じゃないと寝れなかったんだよー」


ほむら「こらっ、余計なことを言うなよ」


まるで学校の先生に生徒が友達の悪行をわざとらしく言い付けるように、かぐらはニヤニヤしながらクロに言う、すると、ほむらは嫌そうな顔をして口止めにかかった。
しかし、未だにクロはその拘束を解かない。


それは、こんな風に、一ヶ所に固まって眠ることは何年ぶりかのことだったので懐かしくなってしまい、少しばかり手放し難いという理由からだった。


しかし、そうも言っておられず、そろそろ本格的にほむらが嫌そうにもがきだしたので、腕を離す。


ほむら「うわっ」


かぐら「おぉ」


クロがグッと身体を起こすとズルズルと滑るように二匹はクロの胸の上から落ちていった。
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/20(木) 21:34:40.90 ID:br626PzDO
クロ「ふわぁ、飯でも食うかね」


カーっと、大きな口を開けて欠伸をして、クロは二匹に向かって聞いたが、まどかは「ご飯?」と嬉しそうにピンっと尻尾を立てて喜びアピールをするが、ほむらは「ご飯?」と眉をひそめて機嫌悪いアピールをしている。


かぐら「お兄ちゃん、お兄ちゃん」


クロ「あん?」


かぐら「またチューしてご飯食べさせてくれるの?」


その言葉に、一番反応を示したのほむらであった。
彼は昨日、クロがかぐらに対して口移しでご飯を食べさせたところを目の当たりにしていた。
あの時は、唖然とするだけで終わってしまったが、今回は違う。


ほむら「ダメダメダメ!絶対ダメェ!」


かぐら「えー、何で?ギュッてされてチューってされるんだよ?」


ほむら「それが嫌だし、ダメ!」


頑なに、口移しでの食事を認めないほむらに、まどかは首をかしげ、クロは唇を歪ませる。
いいからかい相手を見付けたようだった。


クロ「んじゃ、お前がしてやりゃいいじゃねーか」


ほむら「オ、オレはいい!」


うん?といつもと違う連れの様子に不思議そうな顔をするかぐら、いやまったく彼女も随分と男泣かせなものである。


314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/20(木) 22:06:34.84 ID:b1GI6o1g0
かぐらが二箇所ほどまどかになってるw
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/20(木) 22:11:28.57 ID:b1GI6o1g0
嬉しそうにピンと尻尾を立てるまどか見てみたい
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/20(木) 22:18:40.39 ID:br626PzDO
クロ「まぁ、取り敢えずは飯だ飯」


かのままからかい続けても腹は膨れないのて、ほむらは納得はいってる訳ではないだろうが、クロは話を早々に切り上げて、まどかの部屋から出ようと立ち上がった。


そして、その背中をかぐらは嬉しそうに、ほむらは憎々しげに、トコトコとクロの後をついていった。


リビングに出ると、もうそこには誰もいない。
あちらこちらから差し込む朝日の中で動いている影は存在していなかった。


そういえば、知久は朝にはあの子供を幼稚園に連れていくと言っていた。
しかし、そこは主夫、キョロキョロと辺りを見渡してみれば、部屋の邪魔にならないような場所に三枚の餌が置かれている。


一枚は、猫まんまと言っても差し支えない食事の余り物を寄せ集めて作ったようなもの、後の二枚には、食パンを温いミルクで煮込んだ離乳食がよそわれていた。


クロ「かぐら、お前がごちゃごちゃ言うから、飯がキャットフードからバージョンアップしてんぞ」


かぐら「えーと、してやったり?」


違うだろ、とポフンと左手をかぐらの頭に乗せた。
実は昨晩は、かぐらがキャットフードの味を嫌がり、中々食べなかったので、クロは強硬手段に出たのだった。


クロ「慣れねーな、左手一本ってのも」


大分この生活も不便になってきた。
サイボーグであることを誤魔化すために、胸から切れた右腕までを包帯でグルグル巻きにしているのだが、まずはその圧迫感、そしてたまに、ついつい右手を使おうとした時の苛立ちはクロの心をささくれだたせる。


かぐら「いただきまーす」


ほむら「いただきます」


しかし、今まさに、こうして朝食にがっついている二匹を見ると、まぁなんとなくその心も落ち着くのも事実であり、機会があったら暴れればいいと余裕も出てくるのだ。


クロ「食い終わったら、出かけるぞ」


口元をミルクまみれにさして、二匹はクロの顔を見た。


かぐら「どこいくの?」


どんな楽しい場所に連れていってくれるのかと、期待をこめた瞳を輝かして、かぎらは尋ねる。


クロ「病院だ」


びょーいん?と頭にハテナマークを浮かべたかぐらとほむらをよそに、クロは自分の朝食に食らい付いた。
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 22:23:42.15 ID:br626PzDO
>>314

あっ!ありがとうございます!


尻尾を立てているのはかぐらでした。


首をかしげているのもかぐらでした。


しかし、まどかに脳内変換してみたところ、めちゃくちゃ可愛いんじゃねーかと思ってしまいました。


少し誤字も増えてきたので、今日はここまで、明日は学校で隙を投稿するので早くて昼頃から時間をあけながらの投稿になります。
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/20(木) 22:58:24.03 ID:b1GI6o1g0
乙でした^^ また楽しみに待ってます(o・・o)/~
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 23:04:17.81 ID:br626PzDO
>>316

かのまま→かぐら


膨れないのて→膨れないので


かぎら→ かぐら


ケータイの故障を疑うほどの誤字の嵐でした。
失敬です。
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 00:56:55.71 ID:BYF7TJrDO
長くて読みにくいからひとつ分のを半分にしてやった方がいいよ
その方が読みやすい
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/21(金) 02:36:22.14 ID:PwrTXJjMo
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 22:20:53.91 ID:BYF7TJrDO
マダー?
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/21(金) 22:50:11.76 ID:Hz03Z9xDO
────見滝原総合病院・裏口


かぐら「お兄ちゃん、これ大丈夫なの?」


クロ「知るか!てか、今話しかけんな!」


食事を終えたクロは、かぐら達を家においていく訳にはいかなかった。
子供を留守番させることのリスクの計り知れなさは、自らの幼児期の体験から理解しているつもりだからだ。


ほむら「落ち、落ちるぅ……」


だからこそ、クロは目的地にたどり着くまで、二匹を自分の身体にしがみつかせたまま、病院の壁をロッククライミングしていた。
一つ一つ、力強く左腕の爪を壁に食い込ませ、両足を駆使し、自分の重い身体と文字通り『猫二匹分』の重みを支え、必死で上へ上へと登っていく。


かぐら「すごい!すごい!ほむら、すごい眺めだよ!」


ほむら「今見たら、死ぬ」


ガタガタと震えるほむらね腕はしっかりとクロの首に巻き付いているため、非常に鬱陶しい。
しかも、クロは片手で登っているのだ彼も彼で、一つも気の抜けない状況にあった。


クロ「あっぐぅぅ!チクショー、お前らと関わるとなんからしくねーことばっかしてる気がするぜ!!」


ほむら「ふ、ふん!ならほおっておけばいいじゃないか!」


324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/21(金) 23:07:34.64 ID:Hz03Z9xDO
クロ「あぁ?なら、今ここで……捨ててこうか!?」


クソ生意気な顔でのたまうほむらに、息も絶え絶えになりながら、クロがそう毒づくと、案の定ほむらはクロに弱々しく食って掛かる。


ほむら「い、今捨ててみろぉ!ば、化けて出てやっかんなぁ!?」


ガタガタ震えが更に強くなったのを、背中に感じながら力を込めた。


目的の窓までもう少し────そして


クロ「んじゃ、化けてでんのはもう少し待ってろ………よっと!」


そこに手がかかった。


────見滝原総合病院・マミ病室


今日も今日とて、彼女は暇であった。
することもなく、やることもなく。
人との関わりも訪ねてくる友人を抜かせば、病室に来る看護師と挨拶を交わすぐらいのもので、そして、相変わらず、学校のクラスメイトが来る事はなかった。


今、一体授業はどこまで進んだのだろうか?


今度のテストの範囲は、もう決まったのだろうか?


そんな簡単な事が分からない。
今まで、億劫がってしてこなかったこと、魔法少女としての自分のことばかりかまけて、避けて、考えないようにしてきたこと。


魔法少女だからなんなのか?


いざ、自分がこうなってしまえば、特別なこともなにもない、ただベッドに横たわるだけの少女だ。


彼女は、やっと理解した。


自分が、普通の少女だったのだと。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/21(金) 23:22:14.86 ID:Hz03Z9xDO
少し暗い気持ちになったときだった。


マミ「?」


コンコンと、窓を叩く音が聞こえる。
一体どうしたのか、風が吹いているのかと思い、しばし静観していたが、やがてその音は、ゴンゴン!と窓ガラスを叩き割らんほどに激しくなっていく。


そこで、ようやく彼女は、ハッとした顔になり、窓を開けた。


マミ「いらっしゃい。クロ」


歓迎の意味を込めてニッコリとマミは微笑んだが、窓のさんを掴んでゆっくりと現れた彼はそれに笑顔を返す余裕などなかった。


クロ「ゼーハー、ゼーハー、てめー、早く、開け、ろや」


片手と頭を窓の枠部分に乗せて休みながら、身体中の二酸化炭素を絞りだすような荒い呼吸を繰り返すクロを、マミは目をパチクリとさせながら見た。
そんな彼女を尻目に、重い身体を引っ張りあげようにして、彼は病室に飛び込んだ。


しかし、着地は上手くいかず、勢いのままにベチャッと音を立てて彼は、病室の床に倒れこんだ。
背中に、二匹の子猫をのせたまま。


326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/21(金) 23:36:17.26 ID:Hz03Z9xDO
マミ「だ、大丈夫かしら?クロ」


クロ「………大丈夫に見えるか?」


さすがというか、息はすでに落ち着いたようだった。しかし、憮然としたような口調がうつ伏せに倒れたままの彼から聞こえてくる。


ほむら「ここが、病院?」


かぐら「お姉さん、だぁれ?」


と、そこで彼女は気付いた。
今日の来客が一人だけではないことに。


マミ「ク、クロ……この子達は?」


クロ「連れ」


連れ、という言葉に色々問いただしたい気持ちはあるが、取り敢えず、おそるおそるながらマミは、まずはクロと同じ毛並みを持つかぐらに手を伸ばしてみた。


かぐら「?」


ペロッと、何も考えず、かぐらはマミの指先を舐めた。
猫特有のざらついた感触がマミの指をくすぐる。


端的に言おう、マミはそれにクラッときた。


マミ「可愛いーっ!」


ギュッと抱きしめられるかぐらと、何故だか巻き添えを食らったほむらが、マミの大きな胸の中で目を回している。


年頃の少年ならいざしらず、猫にとってはあれは拷問のようだろうと思ったものの、クロはまずは身体を休めることを先決とした。


クロ「なーむー」
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/21(金) 23:54:11.10 ID:Hz03Z9xDO
マミ「あー」


結果論から言うと、かぐらとほむらにマミは嫌われた。
力一杯、手加減なしで彼らを扱ってしまったのだ、あのかぐらでさえ、マミを警戒してクロの背中に隠れてしまっている。
そのため、クロはマミのベッドに腰掛けることができず、病室の床に二本足で立っている状態だ。


ほむらはグロッキーになって今は、誰からも距離をとったままである。


クロ「お前な……、せっかくオイラが気晴らしにと思って連れてきたのによ」


嫌われてどうすると、呆れたよう言葉を吐かれ、マミは返す言葉もなかった。


マミ「だって、子猫なんて見るのは久しぶりだったんだもの」


クロ「久しぶりぃ?どんな生活してりゃ………って、まぁ、そんな生活してりゃそうもなるか」


唇を尖らせるマミに、ダルそうに耳をかくクロ、しかし、病室に流れる空気はシンと静かになる。


クロ「で、どうだ身体は」


マミ「まぁまぁ、よ。もう少しで退院できるわ」


へぇ、と呟くクロだったが、最初一週間の入院と言われてから、もう一週間は経った。
これ以上期間が増える必要はないはずだ。


それでも、マミが退院するのはもう少し後になるかもしれない。
医者の許しがでても、彼女がどうにか頼みこんで延長させるかもしれない。


予想だったが、なんとなく自信はあった。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/22(土) 00:12:35.57 ID:37000uvDO
───だから、自分はこう言ったのだろうか?


クロ「だったらよ……、お前、適当に寝てろよ」


マミ「え?」


クロ「オイラがやっとくぜ。魔法少女の仕事ってヤツなら」


マミはポカンと口を開けていた。
信じられない言葉を、信じられない人物から聞いたように。
そして、ポロポロと言葉が、マミの口から零れてきた。


マミ「私……恐いの」


涙のように、強い心の殻が破れるように


マミ「あの時だって、クロを助けたくて、なんとか頑張れたけど」


決壊した。


マミ「私……、もう無理だよぉっ!これ以上は、戦いたくないよぉ……」


いや、本当はとっくに限界だったのかもしれなかった。
命や、戦いを背負って生きるには、その背中は小さすぎる。


しかも、誰も、その苦しみを気付いてやれないなら、彼女の歩む日常は地獄でしかない日々だったろうに。


ギュッと毛布を握りしめる彼女の顔は前髪の覆われ、全てを見ることはできなかった。


でも、見ることができなくても


その気持ちの全てを知ることができなくても


クロ「お前みてーなガキは、ガキらしくしてろ」


不器用で、ぶっきらぼうな優しさが、確かにマミの隣にいた。


クロ「魔法少女の手伝いと言えば黒猫だろ?」
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/22(土) 00:14:12.71 ID:37000uvDO
すいません、今日は更新遅くなりました。


ということで次回は、日付が変わるまでに投稿したいと思います。
本日は、どうもありがとうございました。
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/22(土) 02:45:52.16 ID:1GdDku1DO
あるぇ〜?マミさん違う意味で退場してまうの?
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/22(土) 20:55:23.27 ID:37000uvDO
マミ「で、でもクロ……、本当にいいの?」


彼には魔女と戦う力はあるだろうが、魔女を探したり結界に侵入する力はない、ただの猫だ。


サイボーグであっても


高い戦闘力を誇っていても


それでも彼は別の世界から来た、魔女とは無関係のただ猫なのだ。


そんな彼を巻き込んで良いのだろうか?


クロ「んなもん今更だろーが」


そんなマミの心配事をクロはあっさりと一蹴する。


クロ「ちょうど暴れたりねーところだったし、飯の礼もしておきてーしな」


ニタリと笑うその様は軽薄でありながら凄味を含ませている。
しかしそれが、どれ程の安堵を彼女に与えたことだろうか。


マミから、力が抜けていく


ゆっくりとベッドに横たわり、彼女は顔を横にしたままクロにこう言った。


マミ「ありがとう」


332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/09/22(土) 21:12:03.95 ID:37000uvDO
かぐら「あのお姉ちゃん、すごく疲れてたね」


クロの隣を歩くかぐらが、ポツリと言ったのは、病院が見えなくなるくらいに歩いた頃だった。


ほむら「いきなり身体を押しつぶしてくるような人間が疲れてるって?」


心配そうなかぐらに反して、ほむらのマミに対する評価は乱暴な人間のそれだった。
少しばかり、トラウマを作ってしまったようだ。


マミの二つの膨らみに挟み込まれ窒息しかけるという苦しみは、猫には暴力以外の何物でもなかった。


クロ「………」


そんな二匹を従える形で歩くクロは先ほどから黙りこくって歩いている。
それが多少の居心地の悪さを感じさせ、二匹は調子が狂う。
嫌になる前に、はっきりさせたいかぐらは、迷わず尋ねる。


かぐら「お兄ちゃん、さっきから黙ってばっかでつまんないー」


ほむら「何か考えているなら早く言えよ。恐いんだよ」


かぐらに追従する形で、ほむらもクロに少しキツイ口調で問いただすも、クロは仏頂面で歩いていた。


クロ「あー」


と、そこで急にクロが立ち止まり、かぐらとほむらは首も傾げて立ち止まる。


そして、彼は口を開いた。


クロ「なんか、らしくねーな」
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/22(土) 21:54:52.30 ID:37000uvDO
かぐら「らしくないって、あのお姉ちゃんのこと?」


かぐらの疑問に、クロは答えず。
さぁな、とはぐらかしてしまう。


気になる態度を取ったかと思えば、簡単に身を翻してしまう、いかにも猫らしい反応だったが、期待したような答えを得られず、かぐらはむくれる。


かぐら「お兄ちゃんのいけずぅ」


ブーブーとブーイングを飛ばす、かぐらを一瞥し、クロは堪忍したようにため息をついた。


クロ「らしくねーってのは、オイラの方だ」


かぐら「へ?」


その言葉の意味をかぐらが考えあぐねていた時


ほむら「!?」


隣にいたほむらが、目を剥いて背後を見やった。


「君らしさ、か。とても興味深いね。それは──」


声は突然聞こえたはずだった。
しかし、ほむらの感じた気配と、聞こえてきたその声にはタイムラグがあった。


────声を聞いて気配を感じた、というより、さっきまで感じていた気配が突然言葉を発したような。


ほむら「な、なんだよ!お前!?」


その希薄な存在から感じる、言い知れぬ不気味さに、ほむらは声を荒げる。



「ボク?ボクはキュウべえだよ」


334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/23(日) 17:04:59.23 ID:JFfDPgdDO
QB「君たちとは初めましてになるね───そして」


ゆったりとした動きで、その視線はクロをとらえた。


QB「君とこうして話すのは初めてになるかな、クロ?」


一歩、クロは前に進んだ。
ほむらとかぐらを守るように自分の背中に回した彼は、退屈そうな口調とだれきった顔で、相対する。


クロ「よー、キュウべえだっけか。最近見なかったなー?魔女退治以来か?」


QB「そうなるかな」


クロ「あの時、お前途中でいなくなったよな。どこ行ってたんだよ」


QB「君の戦いに巻き込まれてね。隅っこで転がっていたんだよ」


クロ「そりゃ失敬」


何でもない言葉、ただの世間話をしているだけの彼らだったが、お互いがお互いに真意を悟らせないようにしていた。


ほむらもかぐらも、子供特有の敏感さで、その緊張感を感じとったのか、クロの背中で固まっている。


QB「別に構わないさ。君も僕もマミと一緒に暮らしていた者同士、仲良くしようよ」


可愛らしい顔を傾けて、おそらく笑顔とおぼしき顔を形作るそれに、クロはただ一言だけを返した。


クロ「やなこった」
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/23(日) 17:21:53.50 ID:JFfDPgdDO
その言葉に、キュウべえは顔を歪ますことなく、唖然とすることもなかった。
その顔はいつも通り変わらず、ただそこにあるだけだった。


「行くぞ」というクロの言葉でようやく後ろにいた二匹は身体の緊張が解けるのを感じた。


ほむらは自分の喉がからからになっており、息をするだけでも痛みが走る程で、隣のかぐらに至ってはどこか放心してしまっているようだ。


たかだか、10分にも満たないその時に張り詰めていた緊張感は、それ程常軌を逸していたのだ。


───そして、踵を反したクロがキュウべえに背中を向け、歩きだそうとした時だった。


QB「そういえば、マミに変わって魔女退治をしてくれるそうだね」


突然かけられた声に、クロは立ち止まった。


クロ「まぁな、退屈しのぎにゃちょうどいいからよ」


背中を向けたまま、クロはそれが何でもないことのように言葉を紡いだ。
今更、決意や覚悟を決める必要もなく、それが当然のことのように。


QB「退屈しのぎかい?退屈になるたびに君は腕や足をちぎられるのかい?」


336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/23(日) 17:37:48.35 ID:JFfDPgdDO
周りくどい、その言い草が気に入らなかった。


クロ「言いてーことがあんなら、とっとと言えよ」


回り道を好まず、二の足を踏むことを選ばないクロのその言葉は、その空間に一時の沈黙を生んだ。


───そして


QB「単刀直入に言うよ。魔女退治は魔女少女がやるべき使命だ。君に手を出されても困るよ」


キュウべえの言葉が、まずは先手を切った。


クロ「別にいいじゃねーか。少しは絡ませろよ」


間髪を入れず、クロは答えた。
もはや揺るぎようのないその意志は、面倒くさそうな耳をほじる態度に隠されていたが。


クロ「第一、その魔法少女のマミがあんな状態だろーが」


QB「なら他の魔法少女にやってもらうだけだよ」


他という言葉を聞いたクロは、耳をかいていた腕をそっとおろした。


クロ「他ってのは、まどかか、さやかか?それ以外に誰かいるってのか?」


QB「それ以外?たくさんいるじゃないか、この街には願いを抱えた少女達が」


何を言っているんだとでも言うようなキュウべえの淡々とした言葉をクロは黙って聞いていた。


その表情は、キュウべえからは背中越しでは気付くことはできない。
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/09/23(日) 17:51:22.50 ID:JFfDPgdDO
クロ「変わりはいくらでもいるってか?あいつはな、お前のこと、気にしてたぜ?」


QB「マミの事かい?彼女がどうしてもというなら、少しくらいは無理してもら───」


彼は、自分の言葉を最後までクロに伝えることはできなかった。
なぜなら、猛然と振り返り突っ込んできたクロ本人に力一杯地面に押し倒されていたからだ。


クロ「いい加減にしろよ、オイ」


首を捕まれたまま持ち上げられ、ダンっと地面に叩きつけられたキュウべえは仰向けにされ、クロはその身体の上に乗っかり、首を左腕で押さえ付けた。


クロ「《お前ら》が何を考えてんのかはどーでもいい」


左腕に力を込め、顔をキュウべえに近付け、腹の底からドスの効かせた声を響かせ、クロは警告した。


クロ「あいつらに、余計な真似をしてみろ……、埃一つ残さず殺すぞ」
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/23(日) 19:52:18.83 ID:Af6n9fdDO
>QB「単刀直入に言うよ。魔女退治は魔女少女がやるべき使命だ。君に手を出されても困るよ」

魔女少女…?あながち間違ってはないがいきなり暴露する淫獣にワロタ
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/23(日) 19:57:49.72 ID:JFfDPgdDO
>>338


ではあえてミスではないことにしときます。


ともいかないので、報告ありがとうございました。
340 :1ですよ。 :2012/09/23(日) 20:05:25.96 ID:MdEzxi2d0
個人的に、風邪ひきました。
しんどいので更新は明日になります。

とうとう、クロスオーバー先の登場人物に[ピーーー]とまで言ってしまったこのss、どうぞよろしくお願いします。

では、また明日。
341 :と思いましたが投稿 :2012/09/23(日) 22:20:09.28 ID:JFfDPgdDO
QB「へぇ……、なんとなく分かったよ。《君らしさ》がね」


ギリギリと押しつぶさんばかりに喉を押さえ付けられていながら、キュウべえは何でもないように口を開いた。
痛みは感じていないらしい。


QB「どこまで知っているのかな?」


確認するようなキュウべえの言葉、そして、かつてマミの部屋で感じた観察するようなのっぺりとした視線を目の前から感じる。


クロ「臭いだよ。この街のそこらじゅうから感じるぜ?てめーのうさんくせぇ臭いがよぉ」


QB「なるほどね……、少し君を誤解していたよ。ただの人形じゃなさそうだ」


感心したような言葉を吐くが、まるで、そう、まるで感情が籠もっていない。
ただ単に、こういう場合は、どう言えばいいのか、マニュアルに書かれていることを声にだして読んでいるようなものだ。


QB「ただ、これ以上は君のためにはならない」


クロ「あぁ?」


キュウべえは顔をそらして、何かを待つように黙り込んだ。


「な、なにやってんだよ!!」


そして、彼女はやって来た。
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/23(日) 22:37:56.03 ID:JFfDPgdDO
真横から受けた衝撃でクロの身体がはね上がった。
キュウべえから引き剥がされゴム鞠のように転りながら、自分が先の声の主から蹴られたことに気付く。


かぐら「お兄ちゃん!?」


ほむら「おい!?あんた!!」


自分達の所まで転がってきたクロに二匹が駆け寄ってくる。
しかし、彼らを意に介すことはなく、クロは片手をついて立ち上がった。


こちらを睨んでいる───美樹さやかの顔をニタリと笑いながら睨み返しながら。


クロ「何してくれてんだよ、さやかぁ」


硬い鉄の塊のような身体を蹴り飛ばしたにも関わらず、彼女は痛がるそぶりも見せていない。
肩を大きく上下させて、鋭くこちらを睨んでいる様子から、痛み以上に興奮が先走っているらしい。


クロ「お前、学校はどーしたんだよ」


さやか「今日は学校の創立記念日で半ドンだったんだよ。そしたら、あんたが……!」


何て間が悪いのか、こんな時に限って、しかも創立記念日で半ドンという黄金パターンが異世界にも存在するとは思わなかった。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/23(日) 22:56:51.90 ID:mZ5zi4yMo
タイミングドンピシャとかQBさんまじパネェっす
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/23(日) 23:18:24.27 ID:JFfDPgdDO
さやか「何が目的なのよ……!どうして、こんな酷いことを」


倒れたままのキュウべえを抱きかかえながら、さやかは怒りを露にする。


しかし、クロはクロでとんだ茶番に巻き込まれてしまったことに軽く後悔していたため、その態度が逆に、彼女の神経を逆撫でした。


さやか「説明しなよ!」


クロ「さぁてね。気に食わねーってのが、一番だな」


その言葉は、ある意味クロの本心であった。
正直の所、クロはキュウべえがくだらないことを始めようとしていることまでは分かっていたが、具体的に何をどうしようとしているのかまでは分からなかった。


つまり、これは近くにいる少女達に危害が及ぶ前になんとか蹴をつけようという、クロなりの宣戦布告だったのだが、多少失敗したようだった。


言葉も、その態度も、彼女には全てが、気に入らなかった。


さやか「気に入らない?ただそれだけで………、ふっざけんなよ!!」


怒れる彼女から向けられる敵意に意をかえさずクロは口笛を吹かんばかりにとぼけた顔をしていた。


そして、とうとうさやかがキレそうになった時


QB「別に構わないよ」


今まで黙っていたキュウべえが喋りだした。


さやか「キュウべえ!?」


心配そうに声をかけるその姿が、『いかにも』で反吐がでそうなクロであったが、取り敢えずその場は押さえることにした。


クロ「イヤぁな、臭いだなコイツぁ」


QB「魔女が来ている」


345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/23(日) 23:19:42.87 ID:JFfDPgdDO
そして、ようやく今日はここまでになります。


読んでいただきありがとうございます。
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/23(日) 23:35:25.14 ID:mZ5zi4yMo

(ちょろい…!)
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 01:23:50.95 ID:n6S/UjI/0
QBの正体の一片にたどり着いたクロパネェな
つーかQBって臭いあるの?
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/24(月) 02:08:45.14 ID:JqbDQ3LQo
比喩じゃね
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/24(月) 20:22:13.46 ID:2SURhrUDO
その日、鹿目まどかは急ぎの用も学校に残る用もなく、いつも通りゆっくりと家路についていた。


しいて言えば、いつもよりも早い時間に授業が終わるという普段とは違う一日に、胸が踊ることは少なからずはあったが、それ以上のことはなく、いつもの日常が単純に午前中に繰りあがっただけのようにまどかには感じられた。


まどか「創立記念日なんてまったく意識してなかったよ」


しかし、彼女自身以外のいつもとの相違点は、そんな彼女の呟きに答える存在が、およそ二人ほどいないということだろうか。


一人目、美樹さやかは、学校を出るまでは一緒にいたのだが、そこから先はさやかに別の用事があるとのことで、彼女とは別行動を取っている。


まどか(また病院かな)


ほんの少し、人に変な目で見られない程度に微笑む。彼女はきっと、大好きなあの少年の所に行って献身的に見舞いをしているのだろう。


さやかに聞いたら、慌てふためいて否定するのかもしれない。
─────ただ遊びに行っているだけなのだと。


さやかは、優しい。


だからきっと、そのうち彼女は毛嫌いしているが、クロとも仲良くできるとまどかは信じていた。




そして、二人目、志筑仁美。


彼女は、朝から学校に来ていなかった。
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 21:10:42.24 ID:2SURhrUDO
一体どうしたのだろうかと心配になる。
朝の先生の話では、理由はよく分からないらしいが、風邪なら風邪で彼女の家から連絡があるだろう。


教師も知らない事情で、しかも彼女は無断欠席なんてするような人ではない。
不安が、まどかの胸を徐々に覆っていく。


まどか(家に帰ったら、仁美ちゃんの家に電話をしてみよう)


心配するなら、少しは行動をとった方がいいだろう。
それが、クロとの出会い、彼の言動から学んだことだ。


そう心に決めれば、不思議と不安も多少は拭い去ることもできた。


考え事をしていたからなのか、歩みのスピードが落ちていたようだ。
少しだけ、ペースを早めて歩く。


不安と、期待がごちゃまぜになりながら、まどかの背中を押していた。


まどか「?」


と、足が止まった。


まどか「鼻歌……?」


どこかで聞いた事のある声色で、聞いた事のないメロディを奏でている。
しかし、それは、何故だか普段はそんなことを絶対にしそうにない人がやっているような、そんな違和感を覚えた。


351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/24(月) 21:51:05.68 ID:2SURhrUDO
彼女は、曲がり角から、突然現れた。


どんなリズムをとっているのか分からない歩調で


どんなメロディに身を任せているのか分からないが、身体を揺らしながら


まどか「ひ、仁美、ちゃん?」


はたして、まどかは、今目の前にいる人物を、志筑仁美本人だと断定していいものか分からなかった。
普段の彼女の、物腰の柔らかい態度と、大人しい姿をまどかは知っている。


彼女がなんでこんな風になっているのか、まったく理解が出来なかった。


仁美「はぁい、まどかさん」


彼女が志筑仁美であることは、どうやら間違いないようだ。


しかし様子はおかしい。どこか間延びした、メロディに乗り切れないで歌われたような抑揚で名前を呼ばれる。


そして、仁美がまどかの方にダンスのステップを踏むように身体を向けた時に、まどかは思わず「ヒィっ」と小さな悲鳴を漏らした。
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/24(月) 22:04:38.43 ID:2SURhrUDO
その顔の形は、普段から見ている志筑仁美のもので間違いなかった。


しかし、その顔色は、血の気が通っていないように青白く。
半開きになっているその口は辛うじて笑みを形作っていると分かるくらいに歪んでいる。


気がちがっているんじゃないかと、まどかは思った。


まどか「ど、どうしたの仁美ちゃん。今日、学校……皆心配して、たよ?」


それでも、彼女は逃げようと震える足をなんとか押さえ込んで、仁美に声をかけた。
何かの冗談であればそれでいいと思いながら。


仁美「あらぁ、心配させてしまってごめんなさい。でも、私行かなきゃいけない場所があるの」


妙に舌足らずな、夢見心地のような喋り方で、まどかの質問に答えているものの、心を込めているとは思えない。


例えば、RPGのモブキャラクターのように何を聞いてもそう答えるようになっているのではないかと思う程、機械的な受け答えであった。


まどか「行かなきゃ、いけない場所?」


そして、震えながら聞いたまどかのその言葉は


仁美「えぇ、そうよ。そうだ!!」


なんらかのスイッチだったのだろうか。


仁美「あなたも行きましょうよ、まどかさん」
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/24(月) 22:31:33.81 ID:2SURhrUDO
え?と聞き返す間もなく、仁美に右手首を掴まれたまどかは、その手の冷たさにギョッとした。


まるで氷水に突っ込んだような冷気が腕を突き刺す。
しかし、そんなことも関係ないというように、仁美はまどかの腕を引っ張り始めた。


まどか「あっ!?」


いきなりの事で、踏ん張りも効かなかった。
ガクンっと身体が揺れて、その反動もあってか仁美にされるがままに引きづられていく。


仁美「さぁ、行きましょう。全ての苦しみを忘れに、全ての喜びを感じに!!」


まるで吟遊詩人のように歌いながらも、一体どこにそんな力を彼女は持っていたのかと思う程、凄まじい力でもってまどかは引っ張られていく。


まどか「いや、やめて!離してよ、仁美ちゃん!!」


彼女が、何をしたいのか、何をするつもりなのかは分からない。
でも、このまま彼女に連れていかれてしまえば、きっと良くないことが起きる。
そんな予感が、まどかにはあった。


────遠い昔のおとぎ話で、美しい少女に導かれるままに、森に迷いこんだ旅人の末路は……


まどか「い、いやだ!嫌だよぉ!!」


仁美「さぁ!さぁ!!さぁ!!!」


まどか「嫌ああああああああ!!」


必死の訴えも虚しくズルズルと、まどかは引きづられていった。
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/24(月) 22:38:55.46 ID:2SURhrUDO
すみませんが、事情があって今日はここまでにします。


明日は昼までに投稿しますので、よろしくお願いします。
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/25(火) 14:13:20.65 ID:Rwkn3+0DO
臭いがある


存在するだけで悪意をふりまき


存在するだけで絶望を呼び寄せるような


あまりにも感覚的すぎるそんな臭いを感じる嗅覚を、クロは幼児期の極端な視力低下をカバーするために備えていた。


いや、嗅覚だけではなく、聴覚や、視覚以外の五感から直感的なものまでも彼は感じることができる。


クロは、今まさに、この街に漂っているその『臭い』のある場所に向かって走っていた。


本能が行き先を示し、意思によって歩みを進める。


道順までは分からないが、方角はなんとなく分かる。
クロは、ある時はブロック塀の上を走り、屋根の上を走り、道を走る。


そして、だんだんと目的の場所に近づいているのが分かる。


ここに来てから、嫌にはっきりと分かるようになった『魔女』という異形の臭い。
風に運ばれてくるようなものではない、ただ分かるのは『いる』ということだけだ。


街並みも変化していき、人気もなく、住宅地からも離れていく。


そして、目に入ったのは錆付いた大きな廃工場だった。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/25(火) 14:33:21.52 ID:Rwkn3+0DO
さやか「あぁ、もう!何をアイツは急に走りだしたのよ!?」


苛立ちまぎれにそう吐き捨てたさやかは、キュウべえを抱いたままその場に立っていた。
つい先程までいたクロは、突然走りだしてしまったし、クロと一緒にいた二匹子猫も、後を追うように走っていってしまった。


結局、残されたのはさやかだけである。


QB「言ったろう?魔女の反応がある。おそらく彼はそれを感じ取ったんだよ」


さやか「じゃあ、アイツは……」


おそらく、目的は魔女退治だろう。
あの時も、確かにクロには助けられた。
しかし、それだけでは、どうにも信用が出来なかった。
何か別の目的があるのではと疑ってもいた。



戦いというのは、元来命をかけて戦うものではないだろうか。
例えば、マミのような、彼女のような戦い方こそ、正義の味方なのではないだろうか。


さやかは、クロのような軽薄な戦い方が気に入らなかった。


そう、ならば、自分だったら────、自分なら正義を為せるのではないか。
目指す正義を為す者がいないなら、自分でやればいい。


彼女の行動力と、意思の推進力は一つの答えを出そうとしていた。


しかし、結局のところ、彼女は何一つ分かっていなかった。
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/25(火) 17:00:31.51 ID:Rwkn3+0DO

QB「見に行くかい?」


さやか「え?」


腕の中からこちらを見上げるキュウべえが、淡々とした口調で提案する。


QB「さやかが魔法少女になりたいのであれば、彼が一体どういうモノなのかを知る価値はあるんじゃないかな」


さやか「アイツが……どういうものか?」


確かに、自分は、あの黒猫がどういったものかは、分からない。
比較的にあっさりと、まどかや、あのマミでさえ彼の事を信頼した。


もしかしたら、間違っているのは自分なのだろうか?


そして、彼女達が間違っていた場合、自分はどうするべきなのか。


脳裏に、一人の少年の姿が浮かんだ。


さやか(願い……)


意を決して、さやかはキュウべえを見た。


さやか「キュウべえ、魔女はどこにいるの?」



────廃工場内


抵抗虚しく、まどかが仁美に連れてこられた場所は廃工場だった。


何故彼女は、自分とは縁遠い場所に、迷うことなくたどり着くことができたのか。
ここに来るまでの彼女はまるで何かに呼び寄せられているかのようだった。
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/25(火) 17:30:46.07 ID:Rwkn3+0DO
しかも、そこにいたのは彼女達二人だけではなかった。


まどか「こ、これは……、何?」


そこには、十数人の老若男女が、今の仁美と同じような妙に力のこもっていない笑顔でめちゃくちゃな事を叫んでいる。


「天国へ行こう!」


「楽園に、楽園を目指す!」


まるで、出来の悪い演劇を見ている気分になったが、今目の前で起きていることは現実である。
よく見ると、いつぞやの挙動不審なサラリーマンもその集団の中にいた。


なんとかして、仁美の手を振り払って逃げ出したかったが、彼女の力の強さと、自らの身体の震えで上手くいかない。
魔女や使い魔という化け物に害を与えられ恐怖もした。
そして、今、目の前にいるのは人間である。


こんなにも、タガが外れた人間が怖いとは考えた事もなかった。
下手な化け物を見るより、自分と同じ形をしたモノの奇行が恐ろしくて仕方がない。


まどか「あ、あれって……」


そして、まどかは見た。
一際彼らが、集まっている場所の中央に置かれたバケツが二つ。
どこからか漂ってくる薬品の香り、そしてこの廃工場───、さっきから蒸し暑い、空気の出入りが少ないようだ。
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/25(火) 19:56:16.86 ID:Rwkn3+0DO
前に、テレビで見たことがあった。
洗剤を混ぜ合わせて毒性のガスをお越し自殺をする人々のニュース。


まどか「ま、まさか……」


天国とは文字どおりの意味なのではないか。
あんた大量の洗剤が混ざってしまえば、一体どれほどのガスが発生するのか、このままでは、ここにいる全員がただではすまない。


まどか「ダメーーっ!!」


仁美がよそ見をしている一瞬の隙をついて、まどかは握られていた手を振りほどき、走りだした。
何が起きているのかは分からない。


でも、そんな事はどうでもよかった。
ただ、ひたすらに、自分の目の前で命が尽きる瞬間なんて見たくなくて、目の前の人波を必死でかきわけながら進んだ。


そして、二つのバケツがある場所にたどり着いたまどかは、それらを両手に掴むと、今度は一目散に工場の出口に向かって走った。


とにかく、バケツの中身を早く処分する必要がある。
中身をこぼさないように、それでも慎重に進んでいたが、彼女の進路に影が立ちふさがった。


仁美「あら、まどかさん。どこに行くのかしら?」


360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/25(火) 20:01:38.15 ID:xfP0S2VDO
さやかの心情のナレとはいえマミと呼び捨てはどうなのか…
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/25(火) 20:01:47.29 ID:BXkkeofpo
でたあぁああああああ!仁美さんの【約束されし勝利の拳(ハラパン)】だぁ!!
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/25(火) 20:43:59.85 ID:Rwkn3+0DO
いや、ふさがれたのは退路も同じであった。
気付けば、その場にいた全員からまどかは囲まれてしまっていた。


仁美「まどかさん。それを返していただけないかしら?」


一歩、仁美が近づいてくる。
しかし、もしも引き下がれば今度は後ろにいる誰かが自分を取り押さえるのだろう。
まどかができる抵抗は、ただそこに立って、手に持つバケツを渡さないことだけ。
そんなまどかに、ツカツカと仁美は近づいてくる。


まどか「仁美ちゃん!お願い、正気に戻って!仁美ちゃ、アグッ!」


自分の鳩尾のあたりに、まどかは衝撃を感じた。
鈍い痛みがジンワリと広がり、口の中に不快な酸味が走る。
身体を九の字に曲げた時、自分の腹に仁美の拳が突き刺さっているのを確認した。


足に力が入らない。
膝から崩れ落ちたものの、両手に持ったバケツは奇跡的にこぼれはしなかった。


しかし、そんな付け焼き刃的な奇跡などなんの意味もなさない。
このままでは、彼らにバケツを奪われてしまう。


仁美「さぁ、まどかさんも行きましょう」


まどか「仁美ちゃ……ダメぇ」


立ち上がれず、抵抗もできないまどかのもとに、ゆっくりと、一歩、また一歩と、沢山の足音が近付いていく。


ギュッと目を閉じたまどかの耳に響いたのは、目的を果たした狂人達の歓声ではなく。


一つの爆発音だった。
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/25(火) 21:05:32.00 ID:Rwkn3+0DO
「辛気くせーわ、薬品くせーわ……換気がいるな」


さっきまで蒸し暑かったのに、何故か今は風を感じる。
そして、聞き覚えのある声に、まどかは目を開いた。

一ヶ所だけ土埃が起きている場所があった、よく見ると壁に大穴が空いている。
そして、小さな影が筒状の物をつけた左手をこちらに向けていた。


安堵と喜びの中で、まどかは叫んだ。


まどか「クロちゃん!!」


よぉ、と軽い返事をしながら、クロは空けた穴から工場内に入ってくる。


クロ「なんだこいつら、こんな場所に集まって暇人共か?」


まどか「クロちゃん、お願い助けて!この人達これで死のうとしてるの!!」


何故か膝をついたままのまどかが、『これ』と指したものは二つのバケツであった。
強い薬品臭がする、そしてまどかの言葉でクロは気付く。


クロ「けっ、本当に暇人じゃねーか」


侮蔑の目で、辺りを見渡した。
左手につけた銃口を周囲の人間達に向けた。


364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/25(火) 21:27:16.97 ID:Rwkn3+0DO
自殺、という行為を、大抵の動物は行わない。
自分の身は自分で守ることが重要な世界では、生きる事が全てだ。
だから、クロは、自ら死を選ぶようなヤツは馬鹿なだけだと考えている。


ロボットだって死ぬために、戦ったのだ。
辛く、苦痛を伴う運命に立ち向かい、心をすり減らしながらも己の役目をまっとうしたヤツだっていたのだ。


そして、彼を殺したのは自分だ。


クロ「じゃあ、まかせろ。てめーら全員ぶっ殺してやるよ」


物騒な言葉を聞いたまどかは、慌てて声を上げる。 クロが何をしようとしているのかに気付いたからだった。


まどか「やめて、ちょっと待って!なんか変なの、この人達」


ガトリングに内蔵されている引き金を引こうとしていたクロは、その指を止めた。


クロ「んだよ」


まどか「この子、私の友達で、こんなこと絶対にするはずがないの!もしかしたら……」


この子と、言ってまどかが見つめる先にいたのは、淡い緑色の髪をした少女がいた。
なんの感情も持っていないかのような目でこちらを見ている。
よく見れば、そこにいる全員が同じような目でクロを見ていた。


確かに、これはおかしい。
ただ単純に、魔女の臭いがする場所に、都合よく馬鹿が集まっただけなのかと思ったが、どうやら違うらしい。

365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/25(火) 21:48:20.75 ID:Rwkn3+0DO
まどかの様子に、乱暴されたのではと思いから、頭に血が登っていたこともあったかもしれない。


まどか「お願い、この人達を見捨てないで」


《見捨てちゃダメー!!》


懇願するような瞳で、こちらを見てくる姿に、どっかの電気スタンドが叫んだ、いつぞやの言葉を思い出した。


クロ「別に本当に殺しゃしねーぞ?」


こうなってしまったら、やるしかない。
左手を下に向け、力を抜くと、ガトリングが腕を離れた。


仁美「あら撃ってくれないの?残念だわ」


周りの人間達も、口々に残念だと喚きだした。
黙っていれば、その内クロが銃を放ち、自分達の命を刈り取ってくれるものと期待していたようだ。
もはや、猫が二本足で立っているとか、しゃべっているとかはどうでもいいらしい。


仁美「じゃあ、さっきの続きをっ!?」


喋っている途中だった仁美の額に、さっきまでクロが使っていたガトリングがぶち当たっていた。
ゴキンっという凄まじい音が近くにいたまどかの耳にも届いく。
クロを見ると、全力投球で振りかぶって投げた後のモーションをしていた。


仁美「はふ〜」


目を回して、仁美は倒れこむ。
地面に身体を打ち付ける寸前で、まどかはその彼女を受け止めた。
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/25(火) 22:21:45.65 ID:Rwkn3+0DO
抱きとめて顔を覗き込むと、そこにあったのは穏やかな寝顔だった。
強制的にではあったがこれで良かったかもしれない。


と、首筋に何かシミのような物がついていることに気付いた。
それは、かつて見たものと形は違えど、それが指す意味は同じだと分かる。


まどか「魔女の口付け!クロちゃん!」


この事態をクロに伝えなければと、彼に目をやった時─────クロは飛び蹴りでサラリーマン風の男の顔面を吹っ飛ばしていた。


唖然とするまどかを尻目に、今度は左手で拳を作り、背後から襲い掛かってくる女性のわき腹に裏拳を叩き込んだ。


次々と襲い掛かる人間達を、クロはその小さな身体をふんだんに使い、打ち倒していく。
しかし、圧倒的な実力差にありながらも人々はクロに傾れ込むように向かってくる。


やはり、合法的に自殺させてくれそうだからなのか。


既に倒れている人間の両足を掴み、クロはジャイアントスイングをしながら、残りの人々にぶつけて薙ぎ倒していく。
よく見ると、彼が振り回しているのは、あのサラリーマンの男だった。


クロ「ほい、ラスト!」


367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/25(火) 22:43:43.07 ID:Rwkn3+0DO
ポイっと投げられた男は、クロに向かい走ってきた男三人にブーメランのように直撃し、絡み合いながら地面に倒れた。


クロ「やっぱ片手じゃしんどいわ……」


左手で額の汗を拭う仕草をしながら、ダルそうな顔をしたクロは、そのまま、まどかの側にやってきた。


クロ「ケガは?」


ぶっきらぼうに、言いにくそうにクロは、まどかに尋ねた。
目をパチクリさせたものの、まどかは笑って大丈夫と答えた。
それが、クロの心からの優しさであることくらい、分かってきたからだ。


「お兄ちゃーん!」


クロ「あだっ!」


まどか「かぐらちゃん?」


クロの頭の上に、突然張りついたのは、小さな黒猫かぐらであった。


かぐら「もぅ、置いてくなんてヒドイよ!」


クロ「分かってやるから、とりあえず頭から降りろ」


頭の上にびったりと乗っかったかぐらはブーイングをあげ、クロは腕を組んでしかめっ面をする。
そこに「待てって!かぐら!」と虎猫のほむらも駆け込んできた。


クロ「お前らな、勝手についてきてんじゃねーよ」


368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/25(火) 23:08:22.51 ID:Rwkn3+0DO
ほむら「お前になんかついてきてない!かぐらについてきたんだ!!」


似たようなもんだろ、とクロは突っ込みを入れる。
むー、と膨れっ面でクロを睨むほむらで、ようやくまどかは、ほわっとした気持ちになることができた。


さやか「これは、なんだ!?」


次に駆け込んできたのは、さやかであった。
走ってきたせいか、息が乱れており、その腕にはキュウべえを抱いている。


さやか「どうして人が倒れて……?」


キュウべえの導きで、魔女がいる場所まで来てみれば、そこにあったのは大勢の人間達が倒れている光景に、猫と


さやか「まどか?仁美!?」


友達の姿だった。


まどか「さやかちゃん!これはね、魔女がこの人達を操っていたの!それをクロちゃんが助けてくれて……」


まどかは、クロがさやかを嫌っていることを知っていたからこそ、まずは、いらぬ争いを避ける前に状況を説明することから考えた。


しかし、さやかだって馬鹿ではない。
そんな事いちいち説明される必要はなかった。
そんなに、挙げ足を取るように食ってかかるつもりなんてないのに、これでは……
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/25(火) 23:22:19.64 ID:Rwkn3+0DO
さやか「そんなに、私のこと信用できない?」


まどか「……え?」


さやか「そっちの黒猫の方が信頼できる?」


信じられない言葉を聞いて、まどかはさやかを見た。
さやかのその顔は、自嘲に満ちて、哀しげに揺れている。


まどか「そんな、何を言ってるの……さやかちゃん」


呆然としたまどかの言葉は、それゆえになんの意味もなさかった。
そしと、また別の言葉にかき消される。


QB「大変だ。そろそろ魔女がくる。まどか、その子はここから離した方がいいよ。巻き込みたくなければね」


え?と対応が遅れた。


さやか「もう、何やってるんだよ、まどか!ほら、さっさと運ぶよ?」


と、そこに先程の、暗さが嘘だったかのような明るさでさやかが近付いてきて、仁美を担いだ。


さやか「うわ!重いな〜、なんて言ったら怒るかなぁ?」


ね?まどかと無邪気に聞いてくるさやかの顔を、漠然と見つめる。
何か、何か取り返しのつかない過ちを犯してしまった気がしてならない。


魔女の結界に、引き込まれる直前まで、まどかの頭はそのことで一杯だった。
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/25(火) 23:23:27.34 ID:Rwkn3+0DO
今日はここまで!


明日も今日のようなタイミングで投稿します。


ありがとうございました!
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 00:31:35.55 ID:KACDQaODO
>>360

実はちょっとした描写だったりします。

372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 16:50:14.40 ID:KACDQaODO
まどかにとって、それは見慣れた光景になってきたが、同時に未だ慣れない感覚でもあった。
しかし、目の前で異世界が構築されていく様に自分に為す術はないことも知っている。


ただ立ち尽くすだけである。


クロ「ちっ、いちいちこんなめんどくせー手順踏む必要あんのか?」


毒づくクロの声が聞こえた。


目線を下げると、案外すぐ近くに彼はいて、その横顔は青い光に照らされている。
そこで、ようやくまどかは、周囲の光景に目が届く。


そこは、青い円柱状の空間だった。
まるで、水族館にあるような一室。
青い光が、水のように淡く揺れている様から、そんな連想をした。


今この場にいるさやか、キュウべえ、かぐら、ほむら、クロ。
この場所が、結界ではなかったら、この場にいる全員でここを楽しむことができただろうか、と馬鹿な考えが頭を過る。


この美しい空間は、『魔女』がいなければ成立しないことが、皮肉じみていた。


クロ「ボケッとすんな、まどか」


まどか「……うん」


クロ「きたぜ」


クロの言葉に、皆が首を上に上げた。

373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/26(水) 17:32:28.93 ID:KACDQaODO
天井から、光が漏れてくる。
そして、その光の中心で黒い影がだんだん大きくなっていくのが見えた。
いや、影が大きくなっている訳ではなく、こちらに近付いてきて光を遮る範囲が広くなっているだけだ。


やがて、その影の全貌が明らかになっていく。


ボディはパソコンのディスプレイ部分の形をしており、そして、長い髪の毛が翼のように蠢いて羽の役割を担っていた。


その周りを、小さな人型の、翼が生えた人形が魔女を中心に円を描くようにして飛んでいるそれは、映画や、アニメでよく見る天使降臨の場面のようだった。


クロ「まどか、チビ共を頼むぜ」


思わず思考停止に陥っていたまどかだったが、クロの言葉で脳ミソを再起動させる。


まどか「分かった。……クロちゃん」


クロ「おう」


まどか「気をつけて」


クロは、今は左手一本しかない状態だ。
さっきは人間相手だったからこそ良かったものの、魔女相手にどこまでやれるのかは全くの未知数だった。


それでも、まどかは───


クロ「おう」


そう言ってニタリと口角を上げるクロを信じるしかなかった。
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 18:25:21.39 ID:KACDQaODO
まどかが、さやか達の下へ走っていく。
わざわざ確認することはなかった。
腹から剣を引き抜いたクロは、上にいる魔女を睨み付ける。


まったく得体のしれないものに見下ろされていることが気に食わない。


───まずは、そこから引きずりおろす!


全身を思いっきりのばし、身体中に仕込んでいるミサイル発射口を開いた。


クロ「一気に片付けるぜぇ?」


軽い爆発音と共に、クロの身体が反動で後ろに飛ばされる。
そして、今度は激しい爆風でゴロゴロと地面を転がった。


空中に、黒い煙がたれ込めている。
どうやらミサイルは全て、魔女に直撃したようだった。


クロ「よーしよし、くたばってくれよ?」


口ではそう言いつつも左手の剣を油断なく構える。
無闇に動かない、ただ待った。
敵が、尻尾を出すその瞬間を、自らの爪で、それを仕留める瞬間を───。


空気が激しく動いた。
煙を引き裂くように、四角い影が突っ込んでくる。
クロはそれを身体を捻りながら躱しながら、壁の高い位置に向かって跳んだ。
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 18:48:08.65 ID:KACDQaODO
壁に張りつき、そこに力一杯に剣を突き立て、クロはそこにぶら下がる。


クロ「こっちこいよ、化け物!」


果たして挑発が魔女に通用するのかは分からないが、それでも、魔女は攻撃を躱されたものの最小限の動きで旋回し、クロに踊りかかる。


そして───またも真っ正面からミサイルの直撃を受けた。


クロ「ざんねーん、大当たりだぜ」


剣の柄の所にぶら下がっているクロの尻尾から煙が登っていた。
彼には尻尾にもミサイルがあることを、どうして魔女が知りえようか。


ガコンと地に落ち、ブスブスと煙をあげている魔女は、時たまブルブルと震えている。
人間でいう気絶に近い状態だろうか。
壁にぶら下がっているままのクロはそれを見て、確信した。


クロ「こいつぁ、早めに済みそうだな」


それは、勝利の宣言だったはずだった。
戦いは、すぐに決着するはずだった。


この時、クロは決して油断した訳ではなかった。
戦いにおける優位性の中で、単純に思考の余裕が生まれたのだ。


それは、何も考えず、早めに戦闘を終わらそうとしていたが、どうやらそれも上手くいきそうだったから。


考える余裕、戦闘以外の事を考える、その余裕をクロは生み出してしまった。


その思考の隙間、感情の向こう、それを読み取る者がいることも知らずに。

376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 20:16:41.89 ID:KACDQaODO
剣から手を離したクロは地面に降り、そして、ホイッという掛け声で腕を伸ばし、壁に突き刺さった剣を抜いた。


後はトドメを刺すだけで、この戦いは終わる。
ポンポンと肩を剣で叩きながら近づいていく。


クロ「!?」


突然、魔女が動き出し、パソコンの画面のような身体をクロに向けた。


クロ「なんだ!?」


最初、真っ黒い画面に鏡のようにクロの姿が写っていただけだった。
次に、プツンとテレビの電源が入ったような音がして画面が切り替わる。







そこに写されていた映像に、クロの頭は真っ白になった。


クロ「あああああああああ!!!!」





まどか「クロちゃん?」


突然雄叫びをあげたクロに、まどかは驚いた。


戦いが始まった時、クロの邪魔にならないように、さやかは腕にキュウべえを、まどかはかぐらとほむらを抱いて、できるだけ離れた場所でクロの戦いを見ていた。


その戦いは一方的で、当初の心配を大きく裏切ってくれたが、後少しというところでクロの様子がおかしくなった。

377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 20:38:51.83 ID:KACDQaODO
トドメを刺さんと、魔女に近づいていたクロが突然目を見開いて、魔女に飛び掛かっていった。


しかし、それを待っていたかのように、魔女はクロに激しい体当たりを仕掛け、直撃した。


魔女の体当たりを受けたその身体は、衝撃のままに吹き飛び反対側の壁に激突する。


ズルズルと壁に寄り掛かるようにクロは崩れ落ちた。


まどか「クロちゃん!?」


どうしたのだろうか。
後もう少しで、クロは勝利を掴めるはずだったのに、何が起きたというのだろう。
腕に抱いたかぐらが、クロの危機に腕の中で暴れだした。


まどか「かぐらちゃん!?ダメ!!」


必死に押さえようとギュッと強く抱き締めた。
バリバリと藻掻くように腕を引っ掻かれる、それでも離すわけにはいかなかった。
それでも、一人では限界がある。


まどか「さやかちゃん!少し手伝って、お願い!!」


近くにいる友達に手伝いを頼もうと、さやかに向かって叫んだ。
しかし、まるで、まどかの言葉が聞こえないかのように彼女は、クロと魔女の戦いを睨むように見つめていた。


まどか「さやかちゃん!さやかちゃん!!」


何度呼んでも振り返らない。
今、目の前で起きている戦いを、彼女はその目に焼き付けようとしていた。
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 20:56:46.59 ID:KACDQaODO
まどか(クロちゃんは!?)


かぐらの身体を押さえこんで、なんとか今の状況を確認しようと前を見ると、クロはゆっくりと立ち上がっていくところだった。
少し、ホッと安堵するまどか。


そして


クロ「あああああ!!」


またもや飛び掛かり、剣で斬り掛かるもクロは弾き飛ばされる。
すぐに立ち上がり、たま斬り掛かり、弾かれて、また斬り掛かる。


ずっとその繰り返しだった。


さっきまでの余裕はどこにいったのか、まるで考えなしの戦い方になってしまっている。
そして、不意に魔女が、身体をこちらに向けた。


パソコンの画面のような身体に、今は何か映像が写っていた。
誰かが撮影したカメラを再生しているように、その映像は次々と場面を写した。
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 21:10:33.79 ID:KACDQaODO
一番最初に写ったのは、たくさんの猫達だった。


どこかの廃工場のような場所に彼らはいた。


そして、次の場面に切り替わった。





あちらこちらから、血が吹き出していく。
何かの視線を動き、人間二人がいた。


彼らは銃で、猫達を打ち殺していたのだ。


そして───、彼らもまた血を吹き出して倒れた。
銃を握り締める黒い猫の手が、画面の端に写っていた。



場面が切り替わり、今度はどこかの橋の下が写った。


そこには、たくさんの小さな土の山と、それに寄り添うように腰掛ける白い犬がいた。


見るからに、美しく、優しそうな犬


そして、場面が変わると、その犬は血塗れで倒れていた。


次に、小さな虎猫が写った。


画面の方を、この視界の持ち主を気がかりそうに見ては歩いている。


楽しそうにじゃれあいながら、ふざけあいながら
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 21:21:14.22 ID:KACDQaODO
次の場面では、虎猫が必死の形相で、何かに馬乗りをしいるようだった。


そして、彼を振り払うように黒い腕が突き出された。
転がっていく虎猫、右目を押さえて、うずくまったまま動かない。


近くに、眼球が転がっていた。


最後に写ったのは、一番最初に写った猫達の─────変わり果てた姿だった。


赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤



血の池に、猫達の残骸が転がっていた。


そして、無音映画のような映像は、最後、こんな台詞で締め括られた。




《お前のせいだ》
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 21:34:11.00 ID:KACDQaODO
まどか「な、に今の?」


吐き気が止まらない。
それと同時に、涙が止まらない。
大切なものが一つ一つ失われていく痛み、がヒシヒシと伝わってきた。


まどか「あれは……、クロちゃんなの?」


何故だか、そう思った。


クロ「ふざけんな……、よそ見、してんじゃ、ねえ!」


ダンっ!と足を鳴らして立ち上がるも、すでにクロはフラフラになっている。


そして、今度は逆に、クロを仕留めようと魔女はゆっくりと浮かび上がった。


まどか「クロちゃん、ダメ。ダメだよ……」


声が漏れる。多分、自分の。
なんとなく分かる。
あの状態のクロを行かせてはいけない。


クロが剣を構える。


そして、魔女が猛スピードでクロに突っ込んでいく。





まどかの腕を、何かが擦り抜ける感覚があった。
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 22:22:55.62 ID:KACDQaODO
魔女とクロが正面からぶつかる事はなかった。
ぶつかる瞬間に、クロが真横からぶつかってきたものに押し倒されたからだ。


獲物を見失った魔女は勢いあまって壁にぶつかり、めりこんでしまった。


クロは仰向けになったまま動けない。
身体の上にのしかかってブルブルと震えているかぐらがいたからだ。


クロ「……どけ」


ボソリと、呟くようにクロはかぐらに言った。


かぐら「やだ」


そして、かぐらもか細い声で、しかし断固とした意志を伝えてくる。


クロ「もう大丈夫だ、だからどけ」


かぐら「大丈夫じゃないもん。絶対に痛いもん」


そういえば、かぐらは自分がサイボーグだという事を知らなかったか。
ならば、伝えた方がいいだろう、自分には痛みを感じることなど、ないのだと。


クロ「こんくらい、全然痛くねーよ。オイラはな」


サイボーグなんだと続くはずだったクロの言葉は


かぐら「お兄ちゃんが平気でも、そばにいるかぐらが痛かったんだもん!!」


かぐらの涙混じりの叫びにかき消された。
思わずクロは、目をパチクリとさせた。


かぐら「痛かったもん……、お兄ちゃんがボコボコにやれていたとき、痛かったもん」


その声は、自暴自棄になりかけた心を打ち抜いた。


かぐら「このま、ま。いなくなっちゃうんじゃないかって。いなく……、嫌だよぉ、いなくなっちゃ嫌だよぉ!」


その嗚咽は、ヤケクソに暴れていた思考を霧散させた。


383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 22:35:42.30 ID:KACDQaODO
まどか「かぐらちゃん……」


猫の言葉を知らないまどかには、その全てを理解することはできなかったが、かぐらがクロを救ってくれたことは分かった。


「あら、こんな事になるなんて、意外だわ」


まどか「暁美ちゃん?」


何故ここに暁美がいるのかと不思議に思ったが、そういえば、彼女も魔法少女だったかと思い出した。
そんなイメージが長らくなかったから、忘れていても仕方がないだろう。


暁美「心情ナレーション、あんた読者に突っ込まれ始めてることを知りなさいよ。そして、まどか、私のことほむらって呼ぶまで絶対助けないから」


妙なことを口走りながらも、その言葉を聞いてみれば、どうやら彼女は自分達を助けにきてくれたようだ。


まどか「来るの……遅くない」


ほむら「なんも聞こえないわ。……クロ!」


ほむらは、手に持っていた銃をクロに向かって投げた。
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 22:54:26.28 ID:KACDQaODO
聞いた事がある声と共に、黒い何かがクロに向かって投げ込まれた。
左手を伸ばし、クロはそれを横になったまま掴みとる。


────それは、あの時使った改造銃と同じ形をしていた。


動きを止めていた魔女が、ゆっくりとクロの方に身体を向けた。
先ほどまでとは、形が違う。
箱の上に、何か女性のような異形が乗っかっている。


クロはそっと、かぐらを自分の背中に置いて立ち上がった。
もう、妙な考えに心を乱す必要はない。
引き金を引け、狙って撃て、生きたけりゃ、ただそれだけでいいのだ。


銃口を、魔女に向ける。


魔女の身体にまた、先ほどの映像が映った。


だが、もはや遅かった。


クロ「あばよ」


引き金が引かれ、クロの腕が衝撃で跳ね上がる。
そして、弾丸は、『女』の額に直撃した。




そして、『女』の頭は、爆散し、あたり一面に飛び散っては霧散し、最後には魔女は塵になりながら消えていった。
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/27(木) 00:42:52.37 ID:Utc8c4XDO
結界が崩れるのは突然のことで、いつの間にか、まどか達は、元の廃工場に立っていた。
奇行を行っていた人々は皆倒れたままになっていたが、原因とおぼしき魔女を倒したことで心なしか、穏やかな顔で眠っていた。


勿論、志筑仁美もそうだ。


まどか「はぁ、今回もギリギリだった……」


身体から力が抜ける。
結界に入ってからずっと抱き締めていたほむらが、やっと腕から解放され、地面で伸びをしていた。


まどか「もう、家に帰りたい。けど、こんなにたくさんの人をどうしよう」


暁美「それに関しては問題ないわ」


自信満々に暁美は胸を張る。
携帯電話を掲げて、まどかに見せた。


暁美「私が救急車を呼んでおいたわ。あと、数分もしないうちに来るでしょう」


クロ「やっと役に立ったなぁ、お前」


クロの言葉に、暁美は別になんてことないですよと言いたげに、澄ました顔をしていたが、頬を赤く染めている。


386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/27(木) 00:54:47.15 ID:Utc8c4XDO
誰もが満足そうな顔をしていたが、一人だけ、さやかだけが、何か思い詰めた顔をしていた。
そして、あたかもタイミングを見計らっていたかのように彼が動き出した。


QB「流石だったよクロ。やっぱりボクもまだまだだね。君もしっかりと魔女を退治できるんだ」


元の世界に戻って来た時に、さやかの腕から離れたのだろう。
キュウべえが尻尾を揺らしながらクロに近づいてきた。


暁美「黙りなさい。今なら半殺しで許してあげるから」


ほむらの言葉を無視して、キュウべえはクロの目の前に立った。
そして、なんの感情の籠もらない瞳でクロの顔を覗きこんだ。


QB「ところで、あの時の魔女が見せてきた映像……あれは君の記憶だね」


相手が何を考えているのかは、分からないが、クロにとって、一々誤魔化すような事ではなかった。


クロ「あぁ」


QB「へぇ」


一瞬の溜め、そして
突き付けるように、彼は言った。


QB「君は人を殺したことがあるんだね」


さやかの肩がピクリと揺れた。


クロ「あぁ」


387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/27(木) 01:12:41.64 ID:Utc8c4XDO
さやか「人…殺し?」


空気が一変した。
まどかも、暁美も反応することができないスピードで、場が凍り付く。
ユラユラと揺らぐような、足取りでさやかが、クロの前まで歩いてきた。


さやか「ねぇ……あんた」


クロ「なんだよ」


その顔には、脅えも怯みも浮かんでいない。
ただそこには、なんでもないような、あるがままのクロがいた。


その揺るぎなさに、さやかはカッと頭が熱くなった。


さやか「分かってんのかよ!人殺しだぞ!?許されることなんかじゃない」


クロ「オイラに、お前ら人間共の決まりごとは関係ねーよ」


さやか「なっ……!」


さやかの目をクロは真っ直ぐに、見つめていた。
ブレずに、恐れずに、果てには自分のしたことすら目を反らさない。


クロ「オイラは、やりたいよーに、やるだけだ」


その言葉は、決定的だった。
さやかの思いと、価値を真っ向から否定する言葉、その言葉は、さやかの心を激しく乱した。


さやか「あんたが……、魔女退治?正義の味方?」


ギュッと拳を握り締めるさやかを、まどかはただ唖然と見ているだけだった。


唇を噛みしめて肩を震わすさやかを、暁美はくだらなそうに見ているだけだった。


さやか「冗談じゃない!!」


遠くから、サイレンの音が聞こえてきた。

388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/27(木) 01:24:47.90 ID:Utc8c4XDO
────一日後・病院の屋上



一人の少年が、高いフェンスの前で車椅子に座っていた。
空をおおいつくさんばかりの金属の網は、そこら中に広がり、そこから見える街を、さらには自分ですらも縛りつけているようだった。


自分の左手を見る、もうため息すらでない。


ここから、もうどこにも行けないのでは、と思ってしまう。
このフェンスをよじ登って、飛び立つことすら自分にはできないのだから。


「お前、死にてーのか?そんなに死にてーんだったら、好きに殴ってもいいよな」


ふと、そんな乱暴な言葉が自分に向けられた。
イライラしてるんだよ、とその後に続く。


誰だろうと思い、キョロキョロと首を動かすと、屋上の貯水槽の所で、右手がない黒猫がこちらを見ている。


「何見てんだよ」


「ね、猫がしゃべった?」


上条恭介は、こうして黒猫と出会った。


第二話 完
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 01:26:25.76 ID:Utc8c4XDO
第二話、こんな感じです。


次は三話ですね。
話暗くなるかもしれません。
よろしくお願いします。


390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/27(木) 01:38:12.14 ID:Q2JlSrrno

殺した相手はショウさん達よりゲスなんだがな…
あと正義の味方をするなんてひと言も(ry
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/27(木) 17:13:26.89 ID:Utc8c4XDO
クロ「ヒーローになった覚えはねーさ」


さやか「なんで…皆、こんな奴なんかを」


マミ「私は……一人じゃないから」


恭介「君は、強いんだね」


さやか編第三話「それでも、僕は」


今夜投稿します。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/27(木) 20:25:47.14 ID:Utc8c4XDO
恭介「え、えっと」


クロ「は?」


恭介「いや…、その」


クロ「言いてぇことあんならはっきり言えや!」


屋上の、貯水槽の所から猫に見下ろされる。
その突然の出会いは、恭介に驚愕と絶句をもたらした。
口についてくる語彙は接続詞ばかりで、その後に繋げるべき言葉は出てこない。


病院の屋上で黄昏ていたら、しゃべる黒猫に怒鳴られた。
自分でも何を言っているのか分からないが、しかし、事実だ。


クロ「おいおい、まさかびびってんのか?」


恭介「それは、まぁ」


しかも、口が悪い。
こういった相手がもしも人間だったら避けるなり、無視するなりできただろうが、向こうはこちらに話し掛けてくるし、もっと言えばこんなの無視できるわけがない。


恭介「あ、あの。猫、ですよね?」


クロ「猫だぞ」


恐る恐る訊ねると、彼はあっさりと答えてくれた。
わりと、律儀な方らしい。


恭介「なんで、しゃべってるんですか?」


クロ「クレイジーキャッツだからだ」


そして、割と冗談も言うタイプらしい。
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 00:47:25.77 ID:C4Z3hOEDO
>クロ「クレイジーキャッツだからだ」

クロwwww
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/28(金) 14:09:27.65 ID:MbpXGHsDO
さやか編第三話


恭介「ははっ、なんですか、それって?」


説明にはなっていないが、黒猫の言葉に笑みがこぼれた。
こんな、あり得ない状況に置かれながら恭介は黒猫に対して、恐怖や嫌悪は全く湧いてこなかった。


妙に人間臭い黒猫の雰囲気は、とても受け入れやすいものだったからだ。


恭介「名前は何ていうんですか?」


そう言えば、ここまで話していながら、自己紹介をしていないことに気付く。


お互いに言葉という意思の伝達能力がありながら、これは礼儀に失したことをしてしまった。
しかし、たぶん目の前の黒猫は毛程も気にしてはいないだろうが。


恭介「すみません、名前はなんですか?」


クロ「クロ、だ。お前は?」


自己紹介にしても、人に名前を聴くにしても、左手で耳を掻きながら、という態度はあまり適当ではない。
しかし、まだ会ったばかりなのに、それが彼──クロの素なのだと、あっさりと受け入れることができた。


そういう猫なのだと、思わさせられた、というべきだろう。
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/28(金) 14:29:03.03 ID:MbpXGHsDO
恭介「あ、あの!」


クロ「あん?」


しかし、それでも聞きたいことがあった。
こんな不思議な出来事なんて、人生でそうあることではない。
これに至っては、奇跡の出会いである。
だから、聞けるうちに、聞けるだけ聞いておきたかった。


恭介「あなたは、なんなんですか?」


クロ「なんだっつってもなー、まぁ、かいつまんで言うとだなぁ」


やれやれ、と言うようにクロは、貯水槽から飛び降りて恭介がいる場所まで歩いてきた。
割と小さな身体や、顔がよく見えるほど近くにクロは来てくれた。


恭介は、興味津々にクロを見つめるが、どこから見ても、ただの黒猫である。



そして、ようやく恭介は、黒猫から様々な説明を受けた。
理解しがたいことから、興味深いことまで、しかしそれを全部語るには時間がかかるので、ここは『かくかくしかじか』ということで許してほしい。


恭介「異世界?サイボーグ?すごい!そんなにロボット技術が発達した世界が存在するなんて!」


一通り聞いた後、彼は興奮したように顔を赤らめた。
彼は普段から病院にいるため白い肌で、更にそれは強調されている。
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/28(金) 14:54:01.88 ID:QTSwz4Qp0
そういえば恭介はまどポの番外編で魔法少女の話しに食いついていたなww
スズキと同じオタ気質なんだろうか?

クロが恭介にまで好かれだしたらますますさやかの立場がなくなるな
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/09/28(金) 15:02:24.83 ID:MbpXGHsDO
いつの世も、どこの世も、ロボットや機械の身体というものは少年達の心をくすぐるコンテンツらしい。
だが、クロにはあまり理解できない、生身の身体の方がずっといいと思うからだ。
やはり、なんやかんやで平凡が一番なのだ。


恭介「じゃあ、どうして病院にいるんですか?ここに何かあるんですか?」


クロ「たいしたこたねーよ」


興奮して恭介は車椅子から身を乗り出すが、バランスが悪く、落ちてしまいそうだ。
しかし、あまり気にもならないようで、クロの答えを今か今かと待っている。


クロ「……病院に来る用事なんて一つだけだろ?」


恭介は、緊張したのかゴクリと唾を飲み込んだ。


クロ「見舞いだ」


へ?というような顔をしている恭介に思わず呆れる。
病院に表れるサイボーグの全てがボディガードをしたり、患者を救いに来たりする訳ではない。


クロ「なんだ、期待外れみてーな顔しやがって。腹立つな」


ガン!ガン!と車椅子のタイヤをクロは何度も蹴った。


恭介「うわっ!?ちょ、ごめんなさい、ごめんなさい!」
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/28(金) 15:15:44.23 ID:MbpXGHsDO
あまりに傍若無人、車椅子を使っている人間に対して、ここまで遠慮をしない人も珍しい。


人ではないけれど。


クロ「アーッハハ!揺れるぞ?揺れるぞ?」


楽しそうに車椅子のタイヤを蹴り続けるクロを見ていると、懐かしい気持ちになった。
しかし、クロは勿論初対面だし、こんな経験はそうないことだ。


一体どうしてこんな気持ちになったのかを考えると、思い当たることがあった。


恭介(そっか、いつ以来だろう。───僕の目の前でこんなに賑やかな笑い声を聞いたのは)


いつもお見舞いにくる人は、友達も家族ですらも、ここ最近はあまり目立って笑うことはしなくなっていた。
楽しげに笑うことが、悪だとでも言うのだろうか。
それともそうすることで、自分が傷つくと思っているのだろうか。


そんな気遣いなんて、いらないのに。


恭介「や、やめてくださいって!」


口ではそう言いつつも、クロにつられて困ったように笑った。
久しぶりに、楽しくて笑った気がした。


399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/28(金) 20:02:32.46 ID:MbpXGHsDO
相手が人であれば、恐怖を感じたかもしれないが、車椅子を蹴っているのが猫の姿をしているため、威圧感もそれほどないことも影響したかもしれない。


クロ「あー、退屈ってのは嫌なもんだな」


ひとしきり蹴った後で飽きたのだろう、足を下ろすと、クロは退屈そうに空を仰いだ。
そして、頃合いを見て恭介は話し掛けた。


恭介「ところで、お見舞いって、友達か誰かがここにいるんですか?」


クロ「おうよ」


友達、という言葉を聞いて、昨日の事を思い出した。
あの日、廃工場での出来事により、事は、こじれにこじれてしまっていた。


その日の事に、クロは思いを巡らせた。



──── 一日前 廃工場


さやかに絶叫を真っ正直からぶつけられたクロは、それでも動じることはなく、逆に、激情に燃えるさやかの瞳を、睨み返していた。


クロ「オイラは、ヒーローになった覚えはねーさ。そうだって言ったこともないぜ?」


言って聴かせるように、クロはさやかに自分の考えを伝えた。
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/28(金) 20:34:39.51 ID:MbpXGHsDO
その言い方が、更にさやかを焚き付ける。


さやか「魔女と戦うっていうことは、正義の味方になるっていうことじゃないか!マミさんは、あんなに一生懸命戦っていたのに、あんたは自分の欲求を満たしたいだけじゃないか!」


クロへ対する、怒りが、不信感が、さやかの中で爆発した。
暇潰しだと言っては戦いに首を突っ込み、場をかき乱す。
自分勝手な理由で、明確な目的も感じられない。


さやか「マミさんだって、あんたと関わってからあんな調子だし!」


別に、マミが入院生活から抜け出せなくなったのはクロのせいではない。
それでも、人間には言ってしまいたいことがある。
叫んでしまいたいことがある。


それを、クロは心の底から理解しており、だから、その言葉を受け入れる事は雑作もなかった。


さやか「あんたが来てから何もかもおかしくなったんだ!この疫病神!!」


だから、次の瞬間、まどかがさやかの頬を平手で打った事に、クロは素直に驚いてしまった。
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 21:03:37.67 ID:MbpXGHsDO
さやか「え?」


パァンと渇いた音が鳴り響いた。
さやかの頬は赤く腫れており、強い力で叩かれたことが分かる。
いつの間に、そこにいたのか、まどかは右手を振り下ろしたような格好から動けないようだった。


頬を押さえながら、さやかは、ゆっくりとまどかの顔を見た。
まどかは、荒い息を吐きながら、泣きそうな声でさやかに叫んだ。


まどか「どうして?どうしてそんなこと言うの!クロちゃんは戦ってくれたよ?守ってくれたよ?さやかちゃんだって分かるでしょ!?」


その言葉に、突然、さやかは火が点いたように怒鳴り返した。


さやか「分かれ?分かってるのは、あいつがどんな奴かよ!まどかこそ、分かってない。アイツは人を殺してるんだよ!!」


その言葉は、さやかにとっては決定打であるつもりだった。
それを突き付ければ、まどかはクロに対する認識を変えるだろうと、目を覚ますことができると思っていたのだ。


しかし、まどかは、ただ、さやかの目を見据えた。


まどか「関係ないよ。クロちゃんに昔何があっても、何をしていても。私は、今日まで私の隣にいたクロちゃんを信じる」
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/09/28(金) 21:26:42.03 ID:ih8PZ2/Z0
殺さなきゃ救えない奴もいたし、殺してでも救わなきゃいけない奴はもっといた。
ボンボンはその辺割とシビアだったよな・・・
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 21:37:02.69 ID:MbpXGHsDO
その言葉は、さやかの心を激しくえぐり、揺さぶり、苛立たせた。


さやか「へぇ、やっぱりそうなんだ」


ギッと、鋭くまどかを睨むその瞳には、マグマのように暗い感情が渦巻いている。
気味が悪いほど、冷めたような顔付きでさやかはまどかを睨んでいた。


さやか「私なんかより、やっぱりそっち?自分を守ってくれるような強い奴の方がいいんだ。ふーん、そんなものだよね」


やってられるか、そう言って、さやかは足早に、廃工場から去っていった。
後ろを振り返るようなことはついぞなかった。


まどかは、ずっとそこに立ち尽くしていた。


クロ「おい、まどか?」


呆然、と言った方がいいだろう。
まどかは、夢から覚めたような顔で、さやかを殴った手を見ていた。


まどか「クロ、ちゃん」


そして、自分の側まで来ていたクロを、ぎこちない動きでゆっくりと見た。
顔面蒼白で、唇も震えている彼女も、ついに我慢が限界に達した。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 22:18:28.59 ID:MbpXGHsDO
まどか「クロちゃああああん!」


クロ「どわっ!?」


突然、クロに駆け寄ってきたまどかは、しゃがみこんでクロに抱きついてきた。


まどか「どうしようっ、どうしようっ!さやかちゃん、叩いちゃったぁ」


小さなクロの身体を押しつぶさんばかりに抱き締めたまどかは、狼狽と興奮から抜け出せず。
力の手加減が全くできていなかった。


クロ「離せって、バカ!このバカ!」


まどか「バカだよぉ。私、あんなことしちゃって、本当にバカだよぉ!」


クロは助太刀を求めて、ほむらを見たが、彼女はおもしろくなさそうな顔で、口をヘの字に曲げている。


その後、クロはなんとか、まどかをなだめすかして、落ち着かせることに成功した。
まだスンスンと鼻を鳴らしている、まどかと、その彼女を心配そうに見つめる、かぐらとほむらを連れ、家に帰りついたのであった。


家に帰った時、知久や詢子がしつこく問いただしてこなかったことが、せめてもの救いだった。
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 22:19:40.68 ID:MbpXGHsDO
今日は以上になります。

明日は休日なので昼から投稿していきたいと思います!


では、ありがとう、お疲れ様でした!
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 02:15:17.59 ID:/CTfgG/SO
乙!
次の投下を楽しみにしてる
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/29(土) 02:33:41.34 ID:mWvs3XKXo
青いののクズ度が3倍位になってるなww
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/29(土) 12:43:12.96 ID:d9TnhUADO
────現在 見滝原総合病院・屋上


という昨日の神経すり減る出来事を思い出すクロであった。
あの後も、グズるまどかを寝かしつけ、グズるかぐらとほむらを寝かしつけて、猫にしては異常な深夜にようやく寝ることができたりと、クロは、自分が母親にでもなった気分だった。


恭介「クロさん、どうしました?」


あまりにも渋い表情をしていたクロに、恭介は怪訝そうに聞いた。
疲れと苛立ちを露にした顔付きになっている黒猫は感情をさらすことに全く躊躇いはないようだ。


クロ「疲れてんだよ」


恭介「疲れ……ますよね。生きてれば誰だって」


恭介は、暗い顔をして俯いた。
先ほどの陰鬱とした気持ちがぶり返してきたのだ。


クロ「お前は、ここで何してんだ?」


今度は、クロが質問をしてきた。
少し、顔を向けてみるとそこには、意外にも柔らかく笑う顔があった。
優しげで、ただ相手の言葉を待つ温かさも感じられる。


恭介「僕は────何もしていないんです」


だから、ポツリと恭介は自分の弱さをこぼしてしまった。
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/29(土) 13:04:30.09 ID:d9TnhUADO
ひとつ、こぼせばそれは、並々と溢れてきた。
奥から、底から、次々と吐き出ててくる。


恭介「僕、事故に遭ったんです。もう死ぬかもしれなかったくらいに大きな」


その弱さを、恭介は止める術を知らなかった。
何故なら、彼はずっと、この思いから避けていたからだ。
直視すれば、自分の心すらダメになりそうなくらいに。


恭介「その日から左半身が動かなくなって、今もまだ、ここでリハビリをしてるんです」


その言葉を、クロは黙って聞いていた。
目をつぶって、腕を組み、車椅子に背をもたれかけて、恭介の言葉の一つ一つを聞いていく。


恭介「なんにもないような繰り返しで、ずっとここにいなきゃいけないのかなって思って……」


クロ「面倒くせー奴だな」


恭介「え?」


クロは、恭介を遮るように言葉を発した。
いや、もう大体のことを理解したゆえの行動でもあっただろう。


クロ「結局、お前は何がしてーんだよ」


恭介「え?それは、腕が動かせるようになりたい……とか」


その言葉に、クロは呆れたように首を振る。
そして、身体を車椅子から離して、恭介の前を歩いていく。


背中を向け、首を軽く恭介に向けながら、彼は言った。


クロ「そんなんじゃねーだろ。どうしたいかなんて、腕が動かなくたって決められるだろ?」

410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/29(土) 13:20:32.85 ID:d9TnhUADO
恭介は、その言葉に目を丸くした。
自分が、何をしたいか。
腕の事を度外視して、考えろなど、そんなこと誰も言わなかったことだった。


恭介「クロ、さん」


だからこそ、恭介はその言葉に答えを返せなかった。
頭が真っ白になってしまったのだ。


クロ「じゃな、また会おうぜ」


そう言って駆け出したクロはトンと軽く足を踏み込み空に跳んだ。


恭介「あ……」


真っ青な空に、しなやかに黒猫が浮かび上がっていく様を、恭介は惚けたように見ていた。


自由が、そこにあった。


屋上から落ちていくクロを、恭介はただ見ていることしかできないでいた。




────見滝原総合病院・マミの病室


ゴキン、という凄まじい衝撃音に危うくマミは飲んでいた紅茶を吹きこぼしそうになった。


マミ「て、敵襲!?」


慌てて衝撃音のした方に、顔を向けると開け放した窓の枠の部分に黒猫がぶらさがっていた。
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/29(土) 14:26:26.72 ID:kqW6XCvAO
前回のQBとのカラミといい何かクロちゃんがたっくんに見えてきたw(QBは草加さん)
そして青いのは相変わらずウゼェな…
箱の魔女経由で断片的な記憶を見たくせに、人殺しの所ばかり目くじら立ててるけど…まずあいつら猫虐殺してたじゃねーか。マミ(人間)が他の人間守るために魔女(人間以外の生物)を[ピーーー]のとクロ(当時純猫)が他の猫守る為に虐殺してた人間(猫以外の生物)[ピーーー]のの何がちげーんだよ?
本当に自分にとって都合の良い部分しか見てねーなおい。

そして疫病神発言がトータルで見るとブーメランな件
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/29(土) 15:26:06.31 ID:d9TnhUADO
マミ「きゃあああ!どうしたのよクロ!?」


慌ててベッドから飛び出してクロの下にパタパタと駆け寄った。
両脇に手を差し込んで自分の顔の前に持ってくれば、クロは苦悶の表情を浮かべていた。


マミ「どうしたの!?」


クロ「いや、ちょっと見栄を張った立ち去り方をしたものの、うまいこと着地する方法が見つからなかっただけだ……」


マミ「そ、そう」


心配するなと片手をあげるクロに、マミは怪しみながらも一応納得することにした。
彼女も付き合いがそうそう浅い訳ではない、恐らく何かがあったのだろう。


しかし、クロがいいと言う以上は心配はしない。
きっと、大丈夫だろうからだ。


マミ「また、何かあったの?」


抱き上げて、その顔を覗き込みながらマミは聞いた。


クロ「また?なんだそりゃ、オイラがいつ『何か』したっていうんだ」


マミをからかっているのか、それとも誤魔化しているのか分からない。
しかし、ニヤニヤと笑っている時ほどクロは何かを隠していることがある。
比較的正直だが、素直ではない黒猫の意外な一面だと、マミは思う。
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 15:48:06.89 ID:mz/eF0NDO
ロボポンも借金2億返せなかったっぽいし、ボンボンは割りと0f
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/29(土) 17:20:38.61 ID:mWvs3XKXo
デビチル光闇とかヒロイン全員処刑されたしなww
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/29(土) 19:44:02.38 ID:d9TnhUADO
マミ「ふふっ、相変わらずね」


クロ「へっ、いちいち会うたびに性格変わってたまるかっつーの。それといい加減おろせ」


クロの抗議を受け、マミは「はいはい」といいながら、クロを自分の寝るベッドの上におろした。


どこか、マミの自分にたいする扱いが上手くなっている気がして、少し居心地が悪いクロは顔をそらした。


マミ「お茶菓子食べる?」


クロ「……おう」


はい、とクッキーの入った手渡される。
手を伸ばして受け取ろうとすると、ニコニコと微笑むマミの顔があった。
バッ、と奪うようにして袋を掴み貪るようにクッキーを口にほおりこんだ。


クロ「〜〜〜〜っ、お前なぁ!」


ニコニコと笑いながら、クッキーを食べるクロを見ているマミに対して、なんだか一言二言でも言ってやりたくなったクロだった。


しかし


マミ「何?お茶でも飲む?」


そんな風に言ってやりたい気持ちを、見事にマミの無邪気な顔に制されてしまう。


クロ「別に、いらん」


モゴモゴと、クッキーを噛みながら言葉を濁すクロをマミはやはり笑って見ていた。
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/29(土) 20:08:55.18 ID:d9TnhUADO
マミ「おいしい?」


クロ「……うまい」


マミ「そう、良かったわ」


ともすれば、語尾に音符のマークでも付きそうなくらいご機嫌なマミを、怪訝な顔でクロは見返す。


マミ「あら?もっと別のお菓子がほしい、のむぐっ!?」


腹が立ったので、手に持ったクッキーを腕を伸ばして、笑みで開いていたマミの口の中に押し込んでやった。


マミ「……せっかく、いい雰囲気だったのに」


こくんと、噛み砕いたクッキーを飲み込んだマミは唇をとがらせた。
猫にどんな期待をしているんだとクロはため息をついてクッキーをまた一つ頬張った。


クロ「ったく、けったいな奴から、厄介な奴までいんのな。この街ってのはつくづくややこしい街だな」


眉間にシワを寄せながら言うその言葉には、クロの考えていた以上に愚痴のよいな響きが含まれており、マミはその子供のような雰囲気を意図的に抑えた。


マミ「色々、大変だったみたいね」


そして、クロをねぎらうような言葉もかけた。
実際に、色々大変でこれからも大変なのは間違いのないことではあったが、少し妙だった。
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 20:25:58.09 ID:d9TnhUADO
色々?大変?どうしてそれをマミが知っているのだろう。
昨日の今日で、あんなえげつない話を病人にするほど自分は暇人じゃない。


────じゃあ一体


クロ「お前、色々って、誰からその話を聞いたんだよ?」


マミ「誰って……、あの人から」


あの人と、マミが指をさした先にあったのは、マミのベッドの右斜め前にあるベッドであった。
今日ずっと空きベッドだったそこに、今はなんと人が横になっている。


しかも、それは


暁美「あうーー」


黒髪で(元)謎めいた少女・暁美ほむらその人だったのである。
思わず、クロはずっこけてしまった。


クロ「お前、なにやってんだ!こんな所で!!」


点滴を打ちながら、ベッドに完全に身体を横たえているほむらは、普段から元気のない目から、更に生気を抜いたような顔でクロに顔を向けた。


ほむら「こんにちわ、クロ。元気だったかしら」


クロ「いや、元気だったかとか聞かれても」


418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/09/29(土) 20:42:17.73 ID:d9TnhUADO
本気で体調が悪そうな人に聞かれても、なんだか元気ですと言うのも変な感じがした。


クロ「……何があったんだよ」


とりあえず、話だけでも聞いてやろうと、クロはほむらの言葉に耳を傾けてやることにした。


ほむら「……ぃぃゎ」


クロ「なんて?声ちっさ!」

────暁美ほむらの回想


廃工場で、クロやまどか達が去った後の話である。
救急車を呼んだ後、ほむらは考えた。


ほむら「……」


今目の前にある、混ぜるな危険の洗剤入りのバケツ二つ。
これを処分しなければならないのではないか。
ここにいる人間全員が、集団自殺か何かを疑われたら色々と面倒な事になる。


しかも、ここにいる人間のうちの一人はまどかの友達である。
あまり話を大きくして、まどかやその周辺を刺激するのは得策ではない。


そこで、ほむらは両手にバケツを持って、工場の外に運び出した。
えっちらほっちらと、危なっかしく歩き、工場のから出た時だ、それは起きた。


ほむら「はれ!?」


コツン、とほむらは石につまずいて転けた。


ほむら「ぶっ!?」


ベチャ、とほむらは完全に地に伏した。


ほむら「んなぁっ!?」


ガチャン、とバケツは二つとも倒れ、中身が溢れだした。
そして、混ぜるな危険が────混ざった。
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/09/29(土) 20:56:41.81 ID:+suyRHx3o
なんというドジっこほむほむ
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 20:58:31.97 ID:d9TnhUADO
────現在


ほむら「気付いたら病院にいたわ。風が強かった事と、救急車の到着が早かった事が幸いしたそうよ」


しみじみと言う、ほむらの顔は九死に一生を得た人がインタビューを受けている間のやったった感がでている顔をしており、非常に、なんというか


クロ「バカみたいだな」


ほむら「はうっ!?」


痛いところを突かれたようで、ほむらはベッドの上で固まってしまっている。


マミ「クロ、あんまり苛めないであげて?話すと割りと可愛いとこあるのよ(バカで)」


ほむら「巴マミ!今あなた括弧付けたでしょう!?何を入れた!括弧の中に何を入れたのよ!」


マミの言葉に、ほむらが食って掛かるも、ホホホと笑うばかりでマミは真面目にほむらに取り合わなかった。


クロ「病院で声を張るな、バーカ!」


ほむら「む、むぅ〜」


そして、クロの一喝で、ほむらは大人しく引き下がった。
ブスッと頬を膨らませてベッドに身体を沈める。
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/29(土) 21:18:17.66 ID:d9TnhUADO
そんな様子に、マミは心から微笑ましくなった。
ほむらがここに来た時、それはそれは、自分は警戒した。
何かの罠ではないかと思ったくらいだ。


しかし、こんな偶然もなく、割と本当に辛そうな顔を見ていると心配にもなり話を聞かないこともないと思った。


そして、クロの周りで起きた騒動を聞いた時、さやかとクロの話は本当に胸が痛んだが、ほむらは冷静を装いながら、一生懸命クロの潔白を説明しようとしてくれた。


何でもないと言いながら、あなたには関係ないかもと言いながら、彼女は必死だった。


だから、ほむらもまた、クロの協力者なのだろうとマミは結論することできたのだ。


ほむら「あまりバカにしないでくれる。こう見えて私は、割と凄いのよ!」


クロ「OK、いい子だから、勘弁してくれ」


ほむら「い、いい子……!」


満足したようだが、それでいいのか謎の少女とクロは思わない事もなかったが、ずっとあんな態度でこられるより、今のような性格の方がやりやすい。


クロの視線の先で暁美ほむらという少女が照れながら澄まし顔という複雑な顔をしていた。
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 21:20:35.37 ID:d9TnhUADO
今日はここまでです。


明日は、さやか編終了に向けてラストスパートをかけたいですが、用事があるためそんなに投稿できないかもしれません。


あらかじめご了承ください。


では、ありがとうお疲れ様でした。
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 21:35:53.11 ID:nEprtRSN0
>>411
>前回のQBとのカラミといい何かクロちゃんがたっくんに見えてきたw(QBは草加さん)

あーつまりなんだ。まどか=真理 さやか=木場って事でいいのかな?
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/09/29(土) 22:05:49.95 ID:+suyRHx3o
>>423
QB「これも全てクロって猫の仕業なんだ」
さやか「なんだって、それは本当かい?」

うん、そのままだ
そういや木場もNTRてたな
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 07:26:34.82 ID:e5O4HCBDO
>クロ「いや、ちょっと見栄を張った立ち去り方をしたものの、うまいこと着地する方法が見つからなかっただけだ……」

クロ…さすがやで!

ボンボンで安定してつうかまともだったのSDガンダムくらいか?
デビチルはヒロイン確かに死んだし幼なじみ(男)は人間じゃなかったし
ロボポンは世界大会で優勝はしたが借金返済に使わず王子に返却か何かしてちっちゃい会社で地道にやるのを選んだ感じだったよな
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/30(日) 07:47:22.35 ID:XGoZa3tuo
小学生の腕もげたんだっけデビチル
ボンボンは過酷やで……
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/30(日) 12:02:18.26 ID:ciQGdfNDO
クロ「まぁ、オイラの事はいいさ。お前の方はどうなんだ?」


マミ「わ、私?どうして?」


まるで突拍子もないことを言われたような反応をマミは見せた。
ヤレヤレと言いたげに、クロは肩をすくめる。


クロ「何のために病院にいると思ってんだ?身体は平気かって聞いてるんだよ」


その言葉に、マミは言いずらそうに視線をそらす。
分かりやすい反応を見せる彼女、つまり、もう少し入院したいという事らしい。


クロ「もう、気が済んだろ。家に帰れ」


マミ「でも、疲れてるし」


うつむいた彼女は、泣きそうな顔にも見えるが、拗ねているようにも見える。
要は、ただ駄々をこねているだけなのだ。


クロ「どんだけ寝りゃお前の疲れは取れるんだよ。後、学校、もうそろそろ行け」


何故、自分がこのような母親じみたことを毎度毎度しなければならないのかと思うが、もはや、好きにさせてくれとクロは思うばかりだ。


マミ「学校……行きたくない」


しかし、敵もさるものである。
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 12:21:50.56 ID:ciQGdfNDO
彼女は、今日まで一週間以上は学校を休んでしまっている。
ただでさえ、学校では人を避けて過ごしていた自分が突然休み、そして突然登校すれば、更に好奇の目で見られるかもしれない。
もっと言えば、もはや皆に自分がいないことなど、どうでもよく思われているのではないか。


そんな疑心が、マミの心に重く立ちこめていた。


クロ「行くだけ行ってみろ」


そんな、マミの心が理解できた訳ではなかっただろうが、クロは静かに口を開いた。


クロ「一つにびびってたらなんでもかんでも怖く見えちまうけどな、見えちまうだけだぜ?案外、なんでもねーもんさ」


マミ「クロ、ちゃん」


クロ「どうしてもってんなら」


少しイタズラっぽく笑ってウインクをする。
そんなクロにポカンとした顔を見せるマミに、クロは言った。


クロ「オイラを呼べばいい。そんじょそこらの奴よりは頼りになるぜ?」


その言葉を聞いたマミは、心に温かいものが溢れてくるのを感じた。
ポトポトと布団に、小さな雫が落ちていく、あぁ、自分は今泣いているのだとマミは知った。


429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 12:40:00.33 ID:ciQGdfNDO
クロ「お、おい、マミ?」


心配というよりは、動揺したような顔でクロはマミの顔を覗き込んだ。
本当に、この強い猫にも、こんな弱った顔があるのだな、とマミはそれを知れて本当に嬉しかった。


マミ「……大丈夫、私は……一人じゃないから」


涙をごしごしと袖で拭って、ニコッとマミは笑った。
ふん、と鼻をならしてクロは顔を明後日の方向に向ける。


ほむら「むー」


そこには、どういう訳か頬を膨らませて不機嫌そうな顔をしているほむらがいたが無視した。


クロ「……じゃあ、オイラは帰るぜ」


ベッドからひょいと飛び降りたクロは、窓の枠の上にまた飛び乗って、マミに顔を向けた。


クロ「んじゃな、マミ」


マミ「えぇ、また」


ほむら「……無視するのね。ふーんだ」


いじけたように布団を両手いじり、顔を下に向けるほむら。


クロ「またな、ほむら」


だったが、クロの声を聞いた瞬間に慌てて顔を上げる。
しかし、そこにはもう、黒猫の姿はなかった。
それでも、ほむらは目を丸くして、頬を上気させていた。
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 15:17:28.19 ID:e5O4HCBDO
ダメだwwwwほむらがどっちのほむらか混乱するwwww
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/30(日) 15:25:05.32 ID:WqCqrWCXo
猫の台詞は『』とかにしたらいいかもね
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 15:41:21.79 ID:ciQGdfNDO
>>431


そうですね、そういった事を今後、ほむらが被った時にそうします。


いっそのこと、ほむら決定戦みたいなこともやろうかなとも考えてみたり。


後、申し訳ないことに今日は少し投稿ができないと思います。

できても、少しくらいです。


明日にまた、投稿しますのでご了承下さい。
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 17:53:25.50 ID:uTVnSLcwo
やべえ、このほむら可愛い
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 21:09:39.56 ID:FxS0qz7DO
>>423
まどかの中の人、子役の時に真理役(幼少時)で5 5 5に出たらしいな
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/30(日) 22:22:16.58 ID:/3z9ke0qo
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/01(月) 17:18:02.71 ID:tPdoDBXF0
まどマギしか知らないがクロって杏子に似てるな
杏子が精神的に成長しきったら、こんな感じになりそう
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/01(月) 19:54:27.78 ID:Fs0Fl9oDO



屋上から、黒猫が落ちていく姿が頭から離れず恭介は、しばらくその場から動けずにいた。


そして、彼の言葉もずっと頭の中を駆け巡っていた。


『どうしたいかなんて、腕が動かなくたって決められるだろ?』


その言葉に対する答えは、自分の中で堂々巡りに行き交って、最終的には『言い訳』になって返ってくる。
どうしようもない、という思いだけが恭介の今の気持ちだった。


でも、明らかにそれは問題だと分かる。
このまま、そんな言い訳に流されてしまえば自分は取り返しのつかない場所まで流されてしまうのではないかと思ったのだ。


恭介「……それでも、僕は……」


しかし、踏ん切りがつかない。
いざとなると、どうすれば良いのか、何も考え付かないのだ。


「恭介?」


急に後ろから飛んできた言葉に、思考の渦に沈んでいく意識が浮かび上がった。
それは、よく知る人物の言葉だった。


恭介「さやか?こんな所に何か用かい?」


さやか「まぁ、その、迎えに来たよ」
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 20:14:59.90 ID:Fs0Fl9oDO
恭介「迎え?看護婦さんはどうしたのかい」


さやか「いや、なんか……、その、『行ってこい』って言われて……」


少しだけ、俯いて恥ずかしそうにモゴモゴと口を動かしているさやかに、恭介は大体の察しが付く。
大方、自分たちの中を深読みした看護婦が、からかいがてらにさやかをよこしたのだろう。


少しだけ、恭介は苦笑した。


恭介「ありがとう、よろしく頼むよ」


さやか「うん」


さやかは、嬉しそうに頷いき、近寄って車椅子のグリップを握った。
軽い揺れを感じる、ゆっくりと動かそうとするさやかの優しさを感じる。


本当に、いい友人を得たのだと思った。


さやか「恭介、なにか嬉しそうだね」


恭介「そ、そうかな?ハハハ」


色々悩む言葉をかけられたものの、やはりあの黒猫との出会いは自分にとって嬉しいものだったのだろうか。
自分が顔にでやすいタイプの人間だとは思わず慌てて誤魔化した。


恭介(さすがに、サイボーグの猫に会ったなんて事は言えないよな)


439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 20:42:39.36 ID:Fs0Fl9oDO
自分の下手な誤魔化しだったが、さやかは「そっか」と納得してくれたようだった。
このまま、普段の会話にしていこうと、恭介はさやかに声をかける。


恭介「さやかは、最近どうかな?学校とか、友達とか」


さやか「……友達」


なんでもない言葉のはずだった。
しかし、後ろに感じるさやかの空気が変わり、なにやら沈んだような雰囲気を感じる。
彼女の呟きが、さらにそれを強く意識させた。


恭介「さやか?」


一体何があったのだろうかと恭介は思いを巡らすも、いかんせん自分は長らく病院にいる身で彼女に大した助言をかけられる身ではない。


さやか「大丈夫大丈夫!なんでも、ないから」


恭介「……そう」


その言葉は、果たして彼女自身を守る言葉か恭介を気遣った言葉か。
しかし、恭介は何も言わず、何も言えず。
ただ車椅子に揺られて運ばれていくだけだった。


誰かの痛みを知らぬ二人が、それぞれの想いを抱えながら屋上を後にする。


────他愛のない言葉を掛け合いながら。
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 20:55:44.17 ID:Fs0Fl9oDO



第三話「それでも、僕は」 完


次回予告


クロ「なんだこりゃ、手紙?」


詢子「友達が目の前で泣いているのに逃げていい理由なんて存在しない」


恭介「僕は……僕は!!」


第四話「進みたいなら」


即時投稿
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 21:13:21.59 ID:Fs0Fl9oDO



クロが病院から鹿目宅までたどり着いたのは夕暮れ時であった。
別に大した用事もなければ、何かの感傷に浸るような事もなかった。
ただ、なんとなく遅くなった、これは人間にもよくある事ではないか。


扉の前に立つと、手をグンッと伸ばしてドアノブを握る。
この時間帯であれば知久もいるだろうし、鹿目嫁もいるはずだ、因みにまどかは調子を崩して今日は学校を休んでいる。


つまり、家に人があるなら鍵は開いている。
クロはそのまま、ドアノブを捻り扉を開けた。


クロ「ただいまーってか?」


少なくとも自分が喋れることを知らないであろう鹿目嫁・詢子がいる可能性があるなら、と小さな声でクロは呟く。
それに答える者はいないであろうことは分かっていたので、クロはそのまま家の中に入った。


「待てーー!」


『待て待てー!』


しかし、そんなクロの言葉が聞こえた訳ではないだろうが、大きな足音が近づいてきた。
大きな人間の足音が一つに、小さな獣の足音が一つ。


『うわああああ!』


いや、一つ。


念のために、四足歩行の姿勢をとったクロに、その足音と声の主が近づいてきた。


クロ「いっ?!」


一つは、虎猫ほむらの姿だった。
しかし、何かから逃げるように走り回る姿にクロは思わず声を上げてしまった。
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/01(月) 21:34:22.16 ID:Fs0Fl9oDO
普段と変わらない臭いに、普段とは明らかに違うその姿。
ほむらは、なんと小さな身体にピッタリと合うようなフリフリが付いた人間でいうワンピースのような衣装を纏っていたのだ。


ほむら『あぁっ!良いところにいた、あんた助けろよ!』


大慌てでクロの背中に回り込んだほむらは、そのまま身体を必死にクロで隠していた。


クロ「……なんだ?お洒落に目覚めたか、雌に目覚めたか、どっちだ?」


ほむら『どっちも違う!』


かぐら『あぁ!?ほむら発見!!』


ヒィっ、とその声に更に怯えるほむらだったが、声の主は彼もクロもよく知るかぐらの声であった。


クロ「お前もか」


そしてクロの言葉が示す通り、かぐらもまたほむらと同じ衣装を身にまとっていた。
ほむらとは違い、色違いの白いワンピースだったが。


「見つけた見つけた!よーし、お手柄だぞぉ、かぐらちゃん」


更に、後ろから現れたのは一人の女性であった。
この家の家計を恐らくは一人でまかなっているであろう人物で、最も重要な人間。


知久の嫁で、まどかの母である詢子が、小さな手のひらサイズの麦わら帽子を持ちながら現れた。


かぐら『詢子!捕まえよう!お兄ちゃんそこどいて、ほむらに帽子かぶせられない!』


かぐらが、詢子が喜色満面の様相でクロに迫ってきた。
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 21:59:23.52 ID:Fs0Fl9oDO
つまり、そういう事だ。
ほむらは詢子に服を着せられそうになって慌てて逃げていたのだろう、まぁ半分以上は手遅れだが。
後は、帽子をのみというところで脱走。
すでに服を身にまとい、しかも気に入ってしまったかぐらと、どうしても帽子をかぶせたい詢子が結託して追いかけまわしていたのだろう。


まぁ、ほむらの思う所も十分に理解できる。
人間の趣味の一つで、自分達の衣服をわざわざ動物に着せるというものがあるらしい。
まず服というものはお洒落ではなく体温調節のためにあるもので、体毛がある動物には必要ないのだが、人間の趣味思考とはよく分からない。
かぐらは、順応しすぎている。


詢子「そんなに嫌がるなよぉ。絶対に可愛いからさ」


かぐら『そうだよ、ほむら。後は帽子だけだよ?』


クロ(そういう問題じゃねーだろ)


ほむら『嫌だよ!』


それはそうだ。
まだ幼いとはいえ群れに属していた野良猫である。
いちいち人間の趣味に振り回されることはない。
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/01(月) 23:17:01.67 ID:Fs0Fl9oDO
ほむら『女物なんて嫌だ!俺は男なんだぞ!!』


クロ(そっちかい)


存外、彼はゆとりだった。
クロはそのままとっとと歩いて、背中にいるほむらをかぐら・詢子の両名の前にさらした。
彼にとっては割りとどうでもいいことだったからだ。


ほむら『あぁ!?卑怯者!!』


少し後ろを振り向いて意地悪くニタリと笑ってクロはその場から離れる。


詢子「いよーし、感謝するよクロ。さぁ、ほむら〜、覚悟しろー」


かぐら『可愛くお着替えしましょうね〜』


詢子・かぐら「『うーふーふーふー』」


不気味な笑い声の後に聞こえてきた悲鳴を背に、クロはまどかの部屋に向かう。
すると、その途中に廊下に妙な物が落ちている事に気付いた。


クロ「これは、帽子?」


それは見てみれば分かる事なのだが、気になるのはそのサイズ。
小さいのだ、人間の頭にはまるような幅をしていないし、帽子の両側には大きめの穴が二つ開いている。


クロ「おいおい、まさかオイラの分じゃねーよな」


445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 23:51:08.07 ID:Fs0Fl9oDO
よく探偵物のドラマで見るようなシルクハットタイプの帽子だった。
色は黒で、赤いリボンが巻いてある。


クロ「……」


ちょっと気になって試しにそれを被ってみると、なるほどサイズは見事にピッタリである。
なんの気もないような顔をしながらポンポンと帽子を触り、脱ぐこともなくクロはまたまどかの部屋に向かって歩いた。


────まどかの部屋


今日、まどかは学校を休んだ。
ここ最近では珍しく風邪をひいてしまったからである。
しかしこれは、単なる体調管理の不備によるものだけではなかった。


まどか「はぁ……」


深く吐いたため息と共に、思いを巡らせるのは友達のこと。
意見の相違も初めてならばケンカをしたのも初めてだったまどかにとって、さやかとの出来事は彼女に動揺を与えることになった。


所謂、知恵熱というものだろうか。
頭の痛みや腹痛などの目立った症状はなく、当初は発熱と身体のだるさだけがあった。


しかし、今では熱も下がり身体のだるさも少しではあるが取れつつある。


まどか「はぁ……」


とは言え、身体の快調が、そのまま心に表れるとは言えないのもまた、事実であった。
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/02(火) 00:09:54.03 ID:q4zYpUIDO
鬱々と思い悩むまどかであったが、自分の部屋の扉ががチャリと開く音を聞き首をドアの方へ向けた。
しかし、そこを見ても、誰も見えない。


風のイタズラか何かかと、首を傾げたが、いきなりベッドの下から黒い影が飛び出してきた。


まどか「うひゃあっ」


思わず悲鳴を上げたまどかだったが、すぐにその影の正体に気が付いた。


まどか「ク、クロちゃん、おかえり」


クロ「ただいま。そんでビビりすぎだ」


自分の視界ではベッドの下はちょうど死角になっていたので、ビビるのも許してほしかったが顔を出したクロをよく見ると、それどころではなかった。


まどか「……クロちゃん、その帽子」


いつもの呆れたような顔の上には、いつもとは違う帽子が乗っかっていた。


クロ「拾ったんだよ」


事もなげに告げるクロを見て、まどかはプルプルと震えはじめた。
なんだなんだと、クロも多少の緊張を禁じ得ない。
が、それはすぐに杞憂に変わった。


まどか「……か」


クロ「か?」


まどか「格好いいーー!!」


突然の大声と共に、クロの身体を抱き上げたのだ。


まどか「わぁ、凄い似合ってるよクロちゃん!」


クロ「そ、そうか」


多少なりと、クロも万更ではないらしく、まどかに好きにさせている。
格好いいと褒められる分にはクロも多少は気分はいいのだ。


まどか「ねぇ、さぁ、お前の罪を数えろって言ってよ!」


クロ「嫌だよ」
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 00:10:59.71 ID:q4zYpUIDO
今日はここまで、明日はまた人目を忍んで昼頃から投稿開始です。
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/02(火) 00:19:32.12 ID:1TulC8IKo

449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 01:04:58.75 ID:9YluHRkDO
風都在住のハーフボイルド探偵「・・・・」
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 05:17:22.72 ID:MVRj7rKDO
スカル【さあ、お前の罪を数えろ】
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 06:04:59.60 ID:jpr9nlfDO
チョーイイネ!オツストライク!サイコー!

あとハーフボイルドやおやっさんはシルクハットじゃなくてテンガロンハットだぜ


どうでもいいがウィザード普通に見た目もストーリーも全てにおいて一話から…いや、画像流出当初&劇場先行登場の頃から大好きなんだが、まどか的にはまだ微妙なのか?
第一シャバドゥビダサい言ってる奴は単にオーズ観てないだけだろ。タトバに慣れた俺にとっちゃシャバドゥビなんざ可愛いくらいだ
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/02(火) 12:20:35.02 ID:q4zYpUIDO
まどか「えー……」


えー、じゃねぇよと言いながらクロは白い目をしている。
さすがに、そこまで彼女の趣味に付き合ってやる必要はない、第一そんなこっ恥ずかしいことをノリノリで出来るような性格をしていない。


まどか「そうだ、マミさんは元気してた?」


クロ「同じく体調不良の人間が何言ってやがる」


クロをそっとベッドの上に降ろしながらまどかは、決まり悪そうに笑った。
しかし、これも彼女らしいと言えばらしい。
自分のワガママ以上に他人を優先させる性格を持っているのだろう。


故に、さやかに対して突発的にとは言えとってしまった行動に戸惑ったのかもしれない。


まどか「クロちゃん?」


クロ「あぁ?……まぁ、元気そうだったぜ」


入院している奴に元気だったと言うのも変な話だが、本当に元気なのだから仕方がない。


まどか「そっか、良かった」


本当に、嬉しそうに彼女は笑うのだ。
他人の小さな喜びを幸せに感じ、他人の幸せを喜びとする、今どき珍しい人間だ。
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/02(火) 13:50:49.54 ID:q4zYpUIDO
そんな人間は苦手ではあるが、好ましくない訳でもない。
それに、今回の件に関してはまどかを自分の個人的な事情に巻き込んでしまった面もある。
クロ自身も無関係の顔をするつもりはなかった。


クロ「さやかとは連絡とれたか?」


だから、彼は少し踏み込んでみた。
取り敢えず目指すところは、まどかとさやかの仲直りが先決であるが、いかんせん年頃の少女達のケンカに首を突っ込むのは盛りのついた雄猫同士のケンカの仲裁以上に辛そうだ。


まどか「ううん……全然取れない」


クロ「まっ、そりゃそうか。昨日の今日だもんな」


しかも、クロにはこんな経験はさらさらない。
あったとしても、喧嘩両成敗で無関係な者達すら巻き込んで気付けば有耶無耶になってたというパターンくらいだった。
参考にはならないだろう。


クロ「まぁ、しょーがねーだろ。明日学校にでも行って──」


まどか「学校行きたくない」


「オメーもかよ」とクロは頭を掻いた。

454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/02(火) 14:06:45.42 ID:q4zYpUIDO
クロ「そうも言ってらんねーだろうが、元気になりゃ学校に行く!中学生が甘えんなっつーの」


枕を抱きかかえて、駄々っ子のように唇を尖らせるまどかにクロはめんどくさそうではあるが、諫言めいた言葉をかけた。


まったく彼は今朝から何から彼自身が考えるらしくない行動を取りっぱなしだったが、いまいち「なら、ほっとけるか?」と聞かれたら言葉を濁してしまうような気持ちだった。


しかし、元来彼は根っからのお人好しであり、トラブルメーカーでありながら同時に、解決も行う『トラブルワーカー』という特殊な属性でもある。
つまり、何が言いたいかと言えば、クロはまったく素直ではないというこだ。


まどか「……ふーん」


と、何やら顔を伏せたまどかが分かったように声をもらし、それに気付いたクロは彼女を見る。


クロ「なんだよ」


まどか「私には、マミさんに言ってくれたみたいな格好いい事言ってくれないの?」


はぁ?と、思わず声を荒げるようにまどかに聞き返すも、今更そんな事で怯むような彼女ではなくなっていた。
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/02(火) 14:26:40.14 ID:q4zYpUIDO
まどか「『行くだけ行ってみろ』」


クロ「……」


まどか「『どうしてもってんなら、オイラを呼べばいい。そんじょそこらの奴よりは頼りになるぜ?』」


何故、あの時マミにかけた言葉が一字一句違わず、まどかに伝わっているのだろうか。


クロ「テメー、誰から聞いた」


もはや、先ほどの雰囲気はどこへやらで、まどかの事もテメー呼ばわりである。


まどか「マミさんから、メールで」


チッ、と舌打ちするクロに、ニヤニヤしながらまどかが顔を寄せる。
こんな顔をする奴だったかと、クロは軽く距離をとった。


まどか「いいなぁ、私も言われてみたいな〜。こんな事言われたら学校どころかどこにだって着いていくのにな〜」


クロをからかうように、わざらとらしくねちっこい言い方をするまどかだったが、そこそこ彼の我慢の限界を超えたらしい。


クロ「よーし、じゃあ言ってやるぜ」


まどか「へっ?っていひゃいいひゃいいひゃい!?」


クロは伸ばした左手で、彼女の左頬をつねった。


クロ「まずは、黙ってくれねーとな。なんだっけ?行くだけ行ってみろ?だよな」


ニヤニヤと邪悪に笑いながらクロはまどかの頬を伸ばし、それに比例して彼女は涙目になって絶叫する。


まどか「すみまふぇん!もう二度といいまふぇんふぉで!!」


拷問は、10分ほど続いた。
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 14:58:36.33 ID:q4zYpUIDO
まどか「うぅ……酷いよぉ、クロちゃん」


クロ「ふん、オイラにちょっかいかけるなんざ百年はえーよ」


頬を押さえてヨヨヨと、片手を着くまどかの隣で、クロは腕を組む。
はたから見ればクロの横暴さだけが目立つが、実際はやり返されることが分かっているくせにちょっかいをかけたまどかにも責任があったりする。


まどか「んー、頬っぺた伸びた気がするよ」


自分の頬を揉み解すようにマッサージをするまどかに謝るつもりなどないクロは話題を変える。


クロ「んじゃ、この話は終わりだ」


まどか「えっ?私の学校は?」


クロ「行きたきゃ行けばいーだろ」


余りにも適当な返答で、しかも望んだ言葉はかけられずがっくりとなるも、一応は従う。
この適当のようで、すっぱりとした性格を持つ猫には後になってああだこうだと言うのではダメなのだと、また一つまどかは学んだ。


クロ「お前、ちょっと手伝え」


まどか「手伝い?」


病み上がりの自分に彼の手伝いで出来る事があるのだろうかと、まどかは首を傾げた。


クロ「あぁ、腹ん中の整理だ」
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/02(火) 20:10:43.36 ID:q4zYpUIDO
まどか「お腹の整理?」


おう、と頷いた彼は腹についたハッチを開き、左手を突っ込んだ。
そして、ゴソゴソと中を漁るような動作を見せている。
まどかは興味津々でその様子を見ていた。


クロ「おぉ、あったあった」


そういってズルリと取り出したものはマシンガンのような形をした銃である。
分かる人が見ればどんなタイプの銃かは分かるのだろうが、まどかにはそんな知識はないため名称は分からなかった。


クロ「こいつはとっておきだぜ」


まどか「とっておき?」


まどかが首を傾げた時、彼女には嫌な瞬間がしたが既に遅かった。
クロはニヤリと笑い、まどかに銃口を向けた。
更に銃身の部分がパカリと開いたかと思えば、そこにはミサイルが並んでいる。


まどか「あわわわわわわ!?」


悲鳴をあげながらベッドの端まで後退りし、壁にぺったりと身体を押し付けるまどかを、クロはケタケタと笑う。
どうやら、またからかわれただけらしい。


458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/02(火) 20:34:51.22 ID:q4zYpUIDO
まどか「もう……クロちゃんってば、ホントに心臓に悪いドラえも○なんだから……」


クロ「んだよ、冗談だぜ冗談」


マシンガンのミサイルを収めるクロ、ニヒルな笑みと黒い帽子はやはり相性は抜群でいつも以上に意地悪な印象を受ける。
そして、そのマシンガンをベッドの上に置いた。


クロ「まず、一つ」


まどか「ほぇー、まだあるの?」


またもやまどかが、おそるおそる近づいてクロの作業を覗きこんでくる。
それを横目で見ながらクロはまた、腹の中をまさぐる。


クロ「あっ」


そして、左手を抜き去り、またもやまどかに向けた。
今度はいつも使っているガトリングではなく、四角い形をした二つの大きな銃口がついた銃火器であった。
またもや、まどかは悲鳴をあげて後退るはめになる。


クロ「なっつかしーなー、まだあったのか」


まどか「いちいちこっちに向けないでよ!!」


思い出に浸るような笑みをクロは浮かべるが、それに反してまどかは涙目で抗議した。
まさか引き金を引くなんてことは───下手したらあるかもしれないが、弾を当てることはないだろう。
しかし、怖いものは怖かった。
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/02(火) 21:02:12.65 ID:q4zYpUIDO
その後も、次々とベッドの上にならべられる、ガトリング・剣・銃・ニワトリの着ぐるみ等々、その一つ一つにリアクションを起こしたり、大袈裟に驚いている間に時間は過ぎていった。


クロ「まぁ、こんなもんだろ」


まどか「これで全部?」


よくもまぁ、これほどの量の物が入っているものだと、まどかは感心する。
まさかとは思うが、あの腹は四次元ポケットなのではないだろうか、以前クロに聞いた否定されだが。


クロ「右手の代わりになるもんでもありゃいいと思ったんだけどな」


クロのぼやきも耳には入っているが、今現在まどかが気になっているのはクロのあのお腹である。
中はどうなっているんだろう、もう一つの入り口に繋がっているのだろうか。


気になる


クロ「ま、無い物ねだりはどうしよーもねーか」


気になる


クロ「まどか、入れ直すの手伝え……ってまどか?」


気になる


まどか「クロちゃん!御免!!」


460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/02(火) 21:15:46.32 ID:q4zYpUIDO
謝罪の言葉というより、侍が斬り掛かってくるような意味合いで叫びながらまどかはクロに飛び掛かって、クロの腹に手を突っ込んだ。


クロ「おまっ、バカ!ダッハハハハハ、くすぐったいくすぐったいって!!」


まどか「よいではないかー、よいではないかー」


腹の中を触りたくられるくすぐったさに大笑いするクロに、飛び掛かったまま攻勢を崩さないまどか。
彼女にとっては行き過ぎた悪ノリではあったが、同時に意地悪に対する仕返しでもあった。


まどか「クロちゃーん、もっとお腹を見せてよー!」


クロの身体を押さえ込み、顔をぐぐっと近付けて、まどかは顔を覗きこむ。
どこが学校に行きたくなくてへこんでいる少女なのかと思う程ニコニコとしてる。
が、今は関係のないことだった。


クロ「ギャハハハハハって!いい加減に……しろー!!」


グンっと身体を折り曲げて、まどかのおでこに向けて放つヘディングは見事に成功した。
ゴキンと、金属が何かにぶち当たったような激しい音がなり響き、まどかは糸がきれたように倒れた。
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/02(火) 21:36:26.38 ID:q4zYpUIDO
クロ「はーはーっ!なんなんだよこいつは……」


大きく荒い息をしながら、自分の腹に手を突っ込んだまま、身体の上に倒れこんだまどかに毒づいた。
初めて出会った時の控えめで静かだった頃の彼女はどこにもいなかった。
似たようなキャラの変貌を遂げた知り合いはいるにはいたが。


とにもかくにも、クロは彼女から自分の身体をひっこぬくことにした。
一応意識も確認したが、額にたんこぶを作って目を回しているだけなので大丈夫だろう。


クロ「どっこらしょっと」


ズルズルと手や足を動かして、身体をずらしながら抜け出す。
割とまどかの全体重が乗っかっていたので、やっとのことで身体が解放されたときは、ふーと額の汗を拭うほどだった。


クロ「あん?」


しかし身体は抜いたが、未だに彼女の腕は深く自分の身体の中に入ってしまっている。


クロ「なんもねーっつーの」


むしろ自分だって、自分の身体の仕組みを知れるなら知りたいが、全てを知っているのはあのハゲなのだ。
どうしたって、自分ではあずかり知れない何かが身体のどこかにあるのだろう。
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/02(火) 21:48:29.57 ID:q4zYpUIDO
少し、自分の身体について不安になるが、考えたって仕方がない。
まどかの腕を腹から抜き取った、その時だった。


クロ「ん?」


もう全て腹から荷物は取り出したはずだった。
しかし、まどかの手には銀色の機械のパーツが握られている。
まどかの指から、それをもぎとってみる。


まだ、何かが自分の腹に入れられている。
しかも、自分が知らない間に。


慌てて、クロは腹の中をかき回してみると、やはりまだたくさんの機械のパーツを取り出すことができた。


クロ「おいおい、誰のイタズラだこれは」


彼は普段は、自分の整備は自分で行うし、身体に何を入れるかはほとんど自分の判断で決めている。
ハゲや、その他の人物には手も口もださせていないのだ。


ということは、つまり、これはクロ自身が決定して入れたことになる。
しかし、クロにはその記憶が一切ないのだ。


そして、この部品の一つ一つ、これだけはクロには記憶がある。
確実に、自分はこれを使った覚えがあったからだ。


クロ「無限……エネルギー装置」
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/02(火) 22:00:12.60 ID:q4zYpUIDO
この時、クロは動揺を隠せなかった。
何故、なんのためにコレを自分が所有しているのか、あの戦いの後、確かにこれは『彼』がバラバラにして隠したはずだった。
人類が、正しく力を扱えるようになるまでにと。


一つ一つの部品を手にとってみても、それが確かな本物でフェイクではない事は身体が知っていた。
しかし、それが逆に『ならば何故?』という謎を読んでいる。


クロ「ん?」


と、一つの部品を手に取った瞬間に紙のようなものがヒラリと落ちた。
部品の裏に張りつけてあったものらしい、何かヒントになるようなメッセージが残されていたのかと、それを広いあげて目を通した。


クロ「げっ」


しかし、そこに書かれていたのは紙面に並べられた数字の数々であった。
暗号ということなのか、はたまた何かの数値をさしているのかは分からなかったが、今のクロにはそれだけが頼りだった。


クロ「とは言ってもなぁ」


紙を覗いて眉間に皺をよせても答えが浮かんでくる訳はなく。
更にこんなガチの頭脳勝負での謎解きは専門外であり、どうすることもできない。
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/02(火) 22:11:36.57 ID:q4zYpUIDO
まどか「痛たー、もうクロちゃんは、本当に……」


まどかが額を撫でながら、クラクラする頭を揺らしながら起き上がると、クロは紙面とにらめっこをしている最中だった。


まどか「どうしたの、クロちゃん?」


クロ「謎解き中だ」


邪魔だ話し掛けるなと言わんばかりの態度だったが、まどかは構わずクロが読んでいる紙を覗きこむ。


クロ「読んだって分かんねーだろ」


これは相当に練りなられたはずの暗号であり、まどかは勿論、自分だって解ける訳がないとクロは考えていた。
もう少し頭のいい人間に、明日あたりマミにでも相談しようと、クロが心に決めた時だった。


まどか「あっ、できるよコレ。私、解読できる」


クロ「当たり前だ。できる訳がねー、できる?」


信じられない言葉を聞いたクロは、首をまどかに向けて唖然とした顔になる。


クロ「えっ?お前、マジで」


まどか「うん」


何がどういう訳なのか、さっきから驚くようなことばかりが起きている。
しかし、とにもかくにも、今はこの暗号の解読が急務であった。
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/02(火) 22:24:05.73 ID:q4zYpUIDO
まどか「これはね、ゲマトリア解読法とグロンギ文字を組み合わせた暗号なの」


どうやら、ウルトラマンと仮面ライダーを見ている者はあっさりと暗号を見抜く力があるらしい、まぁ、恐らくは彼女だけだと思うが。


クロ「読めたか」


まどか「ちょっと、待って。後、もうちょっとだから」


こんな遊びめいた暗号を残す人間には心当たりがあった。
恐らくは、『コタロー』である。
無限エネルギー装置の開発者の息子であり、今現在の装置の責任者でもある、『科学者』だ。


これで、間違いない。
この一連の出来事には、なんらかの意味があることなのだろう。


────それが、指すものは一体なんなのか


まどか「読めた!」


まどかの声が上がり、取り敢えず思考を本題に傾ける。


まどか「えーと、『最後のピースは女神の手に』」


随分と、抽象的な書き方であり、こんな時に限って中二を発病させるんじゃねーと怒鳴り散らしたくなる。


クロ「くっそー!訳が分からん!!」


まどか「待って、まだ続きがある」


まどかの言葉に、クロを耳を傾け、そして困惑を浮かべる事になってしまう。
結論から言えば、謎はやはり深まることになったのだった。


最後、メモにはこう記されていた。


『魔法少女を救え』
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 22:25:02.95 ID:q4zYpUIDO
今日はここまでです。


明日も同じようなタイミングでの投稿になります。


お疲れ、そしてありがとう!
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/03(水) 00:13:37.67 ID:Uitz0sLSO
>ゲマトリア解読法とグロンギ文字を組み合わせた暗号

難易度高ぇよwww
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/03(水) 02:34:29.70 ID:lgOJ0icFo
ネクサスとクウガか
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/03(水) 03:20:37.11 ID:Kk6Z0aFm0
「最後のピースは女神の手に」か…
間違いなくまど神が関係しているな
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/10/03(水) 08:44:26.30 ID:ek9Y3tFCo
あの戦いって対ゴロー戦?それとも親父が来て装置おいて行った時?
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/03(水) 19:46:29.94 ID:1EKqXGkso
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/03(水) 21:06:14.66 ID:MB7kKNrDO
まどか「クロちゃん…これって、どういうこと?」


クロ「さぁな」


誰がなんのために入れたのか分からない無限エネルギー装置に、誰がなんのために書いたのか分からないメッセージメモ。
しかも、そのメッセージに書かれていたあまりにもタイムリーなワードである『魔法少女』という言葉。 まどかが疑問に思うのも当然の事であった。


まどか「でも、これってクロちゃんがここに来る前に入れておいた物なんでしょ?だったら」


クロ「さぁな」


しかし、クロは生返事を繰り返すばかりでまともな答えは返ってこない、それ以上に彼自身も困惑の表情を露にしている。


まどか「さぁなって…じゃあここに来る前はどうしてたの?」


クロ「さぁな」


この質問にまでその返事で返ってくるとは思わず、まどかは「えっ」という驚きの声を上げた。


クロ「覚えてねーんだよ、ここに来る直前に何をしていたのか」


それは彼自身疑問に思うこともなく、故にこれまで考えずにいたことだった。
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/03(水) 21:24:45.99 ID:MB7kKNrDO
まどか「そんなっ!じゃあクロちゃん、記憶喪失ってこと!?」


クロ「それはねーな。元の世界の事は覚えている。でも問題はここに来る直前の記憶だ」


何故全く気にしなかったのだろうか。
そもそも、どうやって自分はこの世界に来たのか?


原因は?方法は?意図的か?偶発的か?


分からない。


いや、分からなかったというべきだろう。
間違いなく意図的に、目的を持ってクロは『見滝原』に送り込まれた。


じゃあ、誰に?ハゲか、コタローか?
だが、彼等がそこまでしてこの街に入れ込むような事情はないはずだ、いや、事情が突然『できた』可能性も捨てきれない。


じゃあ、それは何だ?


情報量と物的証拠のバランスが悪過ぎて、答えが出ない、頭が回らない。
これでは、水にこぼれたコーヒーをすくえと言うような物である。


つまり


クロ「分からん」


もはや、それだけで充分だった。
クロは、メモをグシャグシャに握り締めると腹の中に入れてしまった。
そして、ガチャガチャと武器の数々を入れはじめる。
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/03(水) 22:00:05.38 ID:MB7kKNrDO
まどか「い、いいの?これって凄く大事なことなんじゃないの?」


クロ「いいんだよ、こんなもんで一々悩んだってしょうがねーさ」


まどかは心配そうにクロに訊ねるも、彼はなんでもなさそうな顔をしている。
クロとしては、それは少しくらいは気になるが、分からない以上どうしようもないというのが本音だ。


クロ「そもそも、何が魔法少女を救えだぁ、命令すんなっつーの気にくわねー奴だぜ。そんくらい自分で決めるわ」


心底嫌そうな顔をしているクロを不思議そうにまどかは見ていた。
というのも、彼は充分にこのメモの言葉通りに『魔法少女』を救っているのではないかと思ったからだ。


未だマミ一人にしか彼は会っていないが、彼女も救われたと言えるのではないか。
そして既に自分で決める、その言葉が表すままに彼は自ら進んで魔女との戦いに巻き込まれている。


クロは今、一つ一つの武器を形を確かめるように握り締めては、身体の中に押し込んでいる。


まどか「クロちゃん……」


まどかの言葉にクロが振り向くと、そこには銃を差し出している彼女の姿があった。
クロは黙ってそれを受け取る。


クロ「ちっ、面倒なことになってきやがったぜ」


吐き捨てるようなクロの言葉が、まどかにはとても頼もしかった。
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/03(水) 23:38:50.30 ID:MB7kKNrDO
すみません、色々事情込み込みで今日はここまでです。


明日はちゃんと更新しますんで、許してください。


お疲れさまです!
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/04(木) 00:00:30.36 ID:+LH++TXXo
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/04(木) 13:40:21.92 ID:bTe+u3hDO
武器の整理が終わり、まどかとクロはリビングまで降りることにした。
結局、何も解決などしていないが空腹という新たな問題がでてきたので取り敢えずは、そっちが先決であった。
気付けば、もう夕飯時である。


知久「まどか、クロくん、もう用は済んだのかい?」


いつの間に家にいたのだろう、知久が声をかけてきた。
最も、彼は大抵家の中ではリビングが主戦場である。
別に、その辺を見かけなくてもなんらかの家事をしているはずで、いちいち姿を見なくても気にすることはない。


まどか「うん、お腹空いちゃったよ〜」


既にテーブルには夕食が並んでいる、豪勢ではないにしても随分と凝った料理の数々だ。
まどかは、ふらふらとそっちのように誘われるように歩いていく。


詢子「いやぁ、いいねー」


かぐら『いいよ、凄くいいよ、ほむら!』


そして、もう一方では先刻の騒動の決着がついたらしい。
案の定ほむらが見事なコーディネートに彩られ、それを見ながら詢子とかぐらは歓声をあげていた。
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/04(木) 13:52:51.32 ID:bTe+u3hDO
ほむら『ちくしょう、ちくしょうっ……!』


当の本人は暗い影のさした顔で俯いていたが、見ている分には5分は大爆笑できる。
しかし、詢子や息子の『タツヤ』がいる限り、声を出すことは憚られた。


まどか「クロちゃーん、何やってるの?って、あ、あれは!?」


食事のシュミレーションと称して幾分かのつまみ食いを終えたまどかが見たものは、ワンピースを着せられているかぐらと、ほむらであった。
そして、クロの方を勢い良く振り向くと、何故か目を輝かしながら何かに期待するようにそわそわしながらほむら達に目をチラチラと向ける。


クロ「いいんじゃーの?」


どうして、自分に許しを得ようとするのかは分からなかったが、クロはゴーサインを出した。
すると、パァと顔をほころばし、まどかはほむら達に駆け寄っていく。


母と共に顔を見合わせて、子猫達を抱き上げたり、ケータイの写メで写真を撮ったりしている。
時たま、『こっちの方が可愛い』と言う言葉も聞こえてきたが聞き流した。
479 :訂正クロ「いいんじゃねーの」 :2012/10/04(木) 18:47:43.58 ID:bTe+u3hDO
クロ(猫と人を比べてやるなよ)


まどかとほむら(人)の関係性というものは決して悪いものではない。
最初の最悪の邂逅から今日までの日々で、まどかの側に変化があったのかは分からない。
まどかはほむらを邪険にも扱わず、必要以上に関わろうともしない、いい距離感を保てている。


知久「クロくん、ご飯の用意が出来たよ」


クロがぼんやりと考えていると、知久がクロにだけ聞こえるくらいの大きさで語り掛けてきた。
クロも返事を返さず、軽く頷くだけで済ます。
その視線は、猫達と楽しそうに戯れるまどかを追っていた。


知久「いつも世話をかけるね。最近、まどかもイキイキしているよ」


ここ最近は元気はないけど、と知久は続けた。
やはり、娘の変化には敏感なのだろう。
彼女が最近悩みを抱えていることに気付いているようだ。


知久「詢子さんも、詢子さんなりにあの子を元気付けようとしてくれているみたいだ」


まどかと一緒になって、ほむら(猫)を抱き上げたり帽子を被せたりする詢子。
彼女もまた楽しそうに笑っている。
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/04(木) 19:15:40.45 ID:bTe+u3hDO
声にならないほむら(猫)の悲鳴が聞こえた気がした。


知久「……まぁ、少しほむら君には気の毒だけどね」


今日はご飯を多めにあげることにしようと、彼は穏やかに笑った。
思えば、彼はいつも笑っている気がする。
まどかが家を出ても、詢子が家を出ても、ただ笑って彼女達の帰りを待っているのだ。


何が、彼をそうさせているのだろう。
ただ単に根っからの善人なんてものはいないが、芯がある人間は進んで善を為せるものであり、逆に芯がなければ悪業だってこなせないものだ。


クロは、鹿目知久という男に興味を抱き始めていた。


知久「はいはい、そろそろ皆でご飯を食べよう」



タツヤ「おなかへったー」


知久の声に触発されたのか、タツヤも食卓につかない母と姉に抗議するように声を上げる。
確かに、リビングについてからかれこれ30分はたとうとしている、いい加減にクロも食事にありつきたかった。


まどか・詢子・かぐら「「『はーい』」」


なんとも元気な返事と共に三人娘が移動を開始する。


ほむら『……』


そして、後にはヨロヨロと立ち尽くすだけの虎猫が残されていた。
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/10/04(木) 19:44:07.92 ID:9Q5rdLADO
もしミーくん登場するならワルプルさんを合体して一斉射撃で俊殺しそうだwwww
マタタビのステルスブーメランなんか特に魔女戦で大活躍するだろうな
どっから来るかわからないから魔女も下手に攻撃できないだろう
あれ?となるとワルプルさんを倒すのはマタタビだったりして……
科学兵器が効かないワルプルさんならマタタビの武器が約立つないっぱいマントの下に隠してるし
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 20:19:21.62 ID:3lqdf/Fr0
11話でミサイルの直撃食らって更に追い打ちをかけるように時限爆弾まで作動させての爆撃までやって
ピンピンしてたんだから、マタタビやミーくんが加勢しただけじゃワルプルギスの夜は潰せんだろう…
ゴローの抜け殻を倒した時のような事でもやらない限り無理
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/04(木) 21:29:19.78 ID:bTe+u3hDO
クロ達の食事はテーブルから少し離れた、あまり人が所用で通らないような邪魔にならない場所に皿が三つ並べられている。
献立はというと、クロには柔らかくほぐした焼き魚が、ほむらとかぐらにはミルク粥である。


食事の温度といい、柔らかさといい中々に猫の舌にも調度よく、クロの魚に至っては毎日新鮮なものが皿に乗っかっている。
まさに、『主夫』の面目躍如と言ったところか。


そんな美味しい料理でも、猫達はただ黙って皿に顔を突っ込んで食べている。
感想や会話など今は必要ない。
感性や感情は単純化させてしまえば、猫も人間も大差ないが、本能の面で獣として生きる以上、食事は早めに終わらせるという癖がついているのだ。


片や、人間達の食事というものは大分趣きが違う。
クロも分かり切った事だが、人間の食事には『コミュニケーション』という新たな役割が存在する。
ただ黙ってする食事というものを味気ないとする風潮、もはやウン百年とつちかってきた風習の域である。


484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/04(木) 21:53:27.32 ID:bTe+u3hDO
知久「まどか、身体はどうだい?」


まどか「うん、もう平気だよ。明日は学校に行けそう」


詢子「それでも、今日のうちにしっかり身体休ませな」


タツヤ「まろかー、しょうゆー」


まどか「タッくん、醤油をかける料理はないよ」


とまぁ、こんな感じで鹿目家の食事の風景は過ぎていく、なんら特別な事はない普通の家族である。


かぐら『お兄ちゃん、お兄ちゃん』


かぐらが小さな声でクロを呼ぶ、彼女の言葉が彼等に理解できる事はないと思うが、かぐらなりに気を使ったのだろう。


クロ「なんだよ」


クロも、かぐらに合わせて声を潜める。


かぐら『どうして、まどかちゃんやマザー達は口に皿をつけて食べないの?お行儀が悪いよ』


はぁ?と思わず声が漏れそうになったがなんとか抑える。
そして、かぐらの疑問もまた彼女の中では当然なのだろう。
これまで、なんどか鹿目家の食事風景を見ていただろうことから、ずっと気になっていたのかもしれない。

485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/04(木) 22:17:54.31 ID:bTe+u3hDO
かぐら『タッくんが真似しちゃダメなんじゃないかな』


首を傾ける、かぐら。
顔を皿に近付けてはいるが、ほむらもまた聞き耳を立てている。
ふぅ、とため息をクロは吐いた。


クロ「あいつらの手元。見えるだろ?木の枝みたいなヤツ」


かぐら『うん、あれって何?』


クロ「箸だ」


かぐらは『端っこ?』と検討外れの疑問を抱き始めている。
変な勘違いをさせる前に一気に説明した方が良さそうである。


クロ「違う、箸だ、ハ・シ。あれで飯を挟んで食うのが人間の礼儀なんだよ」


かぐら『じゃあ、あれで食べた方がいいの?』


クロ「あんなんで飯食える猫なんて──」


いねーよ、そう続けようと思ったが残念ながら一匹、異様に箸の使い方が上手い化け猫が頭に浮かんだ。
兄貴面でいつも自分の側にいた虎猫、箸の使い方や食料の見張り役がいない時間帯はアイツから教わった。


かぐら「お兄ちゃん?」


クロ「───教えてやろうか?あれの使い方」


ピコン、とかぐらの尻尾が立ち、ほむらもまた顔を上げる。
どうやら二匹共、興味があるようだった。


かぐら『本当!?』


目を輝かすかぐらに、さりげなくだが、クロをチラチラと見ているほむら。
反応は上々だった。
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 22:21:57.59 ID:bTe+u3hDO
今日は、ここまで。


明日は昼から投稿します。


読んで頂いて、感謝しております!
お疲れです!
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 22:48:56.19 ID:1z9DzT5+0
そういえばマタタビって生身だからクロやミーくんよりも打たれ弱いんだよな
実際ゴロー戦で撃たれて倒れたところをクロに担がれてたし
まあそれが普通なんだけどさ
そういう事を考えると魔法少女の本体をSGに・・・って言うQBの理屈は間違ってないのかもしれん
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 07:27:16.71 ID:QI2NrINDO
漫画だとマタタビがキッド(クロ)と再開して戦った時ステルスブーメランで首切られたがサイボーグだから大丈夫なんだなー的な流れからキッドにできて拙者に〜の流れがアニメだと首切られてもないのにキッドにできて拙者に〜な流れになったよな
あれ今にして思えば流れがおかしいよな…
オオサムコサムの時も市民陸上自衛隊?は核のはずがスーパーミサイルだったり…
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/10/05(金) 10:50:27.49 ID:Jd3U6L0Mo
アニメは変な規制がかかるからなぁ
アニメ版デビチルもおかしかった
漫画どころかゲーム版とすら全く違ったし
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 12:09:48.80 ID:t+5osYtDO
マタタビはミー君やクロと比べれば打たれ弱いだろうけど、チョップで土管割ってたよな
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/05(金) 13:16:52.26 ID:n86DsGnDO

もしも、知り合いにこの事を突っ込まれたらなんと言って誤魔化そうか、チビ達の暇潰しか自分にとっての暇潰しか。
なんにしても、今になって『かつての』兄貴分の真似事でもしてみくなっただけなのかもしれない。


じゃあ、今は兄貴分ではないのかと聞かれれば少しニュアンスが違う。


自分が、もはや弟分ではないのだ。


かぐら『ほむら、ハシの使い方教えてもらえるんだって、やったね!』


ほむら『ふ、ふん、まぁ興味はないけど、やる価値はありそうだね』


無邪気に語らう二匹を、クロはじっと見つめる。
ほんの好奇心だ。
自分から進んで何かを教えるという事がどういうものなのかを少し知りたい、それだけ。
もし、それ以外に理由があるとするなら、この小さな黒猫と虎猫に、いつかの黒猫と虎猫を思い出した。 みたいな事なのかもしれない。


クロ「なんつってな」


あくまでも、仮定の話としてだが。
いつの間にか、皿に入っていた魚はなくなっている。


クロ「ごちそうさん」


知久の方を向かい、小さな声で言うと、彼はこちらに目をやり、ウインクをしてきた。
どうやら聞いていたらしい。
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/05(金) 13:41:06.81 ID:n86DsGnDO
まどかや詢子にも、怪しまれていないところを見ると、どれだけ自然な動作でウインクをしたのかという事になるし、そもそも他の人間に聞こえていないのに、どうして聞こえたのかとも思う。
変なベクトルで底知れぬ男である。


知久「ところで、まどかは最近学校はどうかな?」


まどか「うーん…普通、かな」


向こうの家族の団らんは続いていたようだ。
しかし、口に物を入れたまま食べる事なく、きちんと飲み込んでから話しているのは、知久の教育の賜物か、それとも詢子の指導の賜物か気になる。


詢子「へぇ、友達となんかあったの」


まどか「!?」


まどかは不意討ちをくらい言葉に詰まった。
クロはクロで、よく分かるものだと目を丸くした。
学校の事を聞いて普通と答えるのも中々怪しいが、それで友達関係だと気付くのもなんとも……鹿目詢子、鋭い女である。


まどか「それは、ちょっと、色々あったかな。話せないけど…」


傍から聞いていても、多少の良心の呵責を感じた。
まぁ、呵責を感じるだけでそれが良心かはまた別問題だが。


493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/05(金) 14:10:49.17 ID:n86DsGnDO
詢子「色々、ねぇ…、まどかも悩むようになったか」


まどか「そんな、まるで私が悩んでこたなかったみたいな言い方しないでよ」


失礼な、と言いたげなまどかを見て、知久と詢子は愉快そうに笑う。
その瞳には柔らかな光をたたえている。


知久「そうじゃないよ、ただ友達の事で悩んだり傷付いたりするのは、その人の事を本気で考えてなかったら出来ない事だからね。
まどかにも、それができるようになった事が嬉しいんだ」


ニコニコと笑う知久は、まず父親としての気遣いの言葉をかける。


知久「でも、何かあったら直ぐに僕達に言ってくれ。できうる限りの力を貸すよ」


そして面白いそうに笑う詢子は、母親として背中を押すような言葉をかける。


詢子「友達が目の前で泣いているのに逃げていい理由なんて存在しないよ。今こそしっかりその友達と向き合うんだ」


まどか「うん、でも泣いているというより、怒っているというか」


知久「涙が見えたから、泣いているとは限らないよ。一体何を思っているのかを考えないと」
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/05(金) 19:26:01.49 ID:n86DsGnDO
まどか「パパ…、うん、分かった」


なんとも気を休めることだけしか価値のない言葉だが、しかし家族という身近な人間からの言葉である分にはその言葉には意味があるものだった。
しかも、見るからにお人好しの知久と、その嫁の言葉である。
少なくとも嘘ではないだろう。


クロ(バ家族だな、バ家族)


ここにいる父から娘までがこうなのだから、タツヤもきっと、そんな人間になるのだろう。
しかし、見ていて悪い気はしないのだから、この『家族』は不思議だ。


彼らの食事が終わるまで、クロはずっとその様子を見ていた。


────三時間後


かぐら『うにゃー、ハシ…ハシぃ』


ほむら『ダメだよぉ、かぐらぁ』


クロ「あぁっ、クソっ」


まどか達の食事やお茶が終わり、まどかも病み上がりのため一応早めの就寝となった。
しかし、時間も遅く、満腹になったせいもあってか子猫達も眠りについてしまったので、まどかはかぐらを抱き、クロはほむらをおぶってまどかの寝室まで向かっている。
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/05(金) 20:05:48.28 ID:n86DsGnDO
まどか「皆よく寝てるね。抱っこしてても起きないんだもん」


クロ「そーだな」


小声でひそひそ話をするまどかに、クロもまた声を抑えて手短に返事をする。
楽しげに遊んでいたかと思えば糸が切れたように眠る。
この頃の猫は誰だってそんなものだ。


まどか「着いたよ、開けるね?」


自分の部屋の扉の前に立って、まどかはクロ確認する。
あまり電気をつけて子猫達を驚かせないように月明かりを頼りにドアノブを探し、腕をあまり使わないように肘に引っ掛けて、まどかはドアを開けた。


まどか「お先にどうぞ」


まどかは肘で器用にドアノブを押さえながら、扉を開いた状態に保つ、彼女の厚意を受け入れてクロが先に入る。


クロ「ん…」


中は光があまり通っていないのか、自分の目では真っ暗な部屋に見える。
やはり、夜目が効かないというものは不便だった。


まどか「ごめん、クロちゃん。暗かった?」


まとかが電気のスイッチを調節したのだろう。
軽い、目に焼き付かない程度のオレンジ色の灯りが点いた。
その光を頼りにして猫用の簡易ベッドを探して、ほむらをそっとそこに寝かせる。


496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/10/05(金) 20:29:29.70 ID:n86DsGnDO
まどか「よいしょっと」


気合いを入れるような声とは裏腹に、まどかもまた、ほむらが眠っている場所と同じところにかぐらをそっと寝かせる。
子猫達は、二匹ならんで先ほどの身体の揺れを物ともせずに熟睡しており、まどかとしては心落ち着く瞬間であった。


クロ「ったく、今日はすんなりと寝やがったか。このままずっと寝てくれりゃ気も楽だぜ」


しかし、クロはガリガリと頭を掻いて毒づいている。
見知らぬ人が聞けば笑えない冗談だが、そんな言い草でもしっかりと子猫達のために声を潜めている所から、彼の人(猫?)となりを知ることができる。


まどか「ふふっ、でもクロちゃん、可愛い寝顔だよー」


クロ「けっ、そうかいそうかい。じゃ、こいつらを見習ってとっと寝ようぜ」


ググッと身体を伸ばしながら言うクロに、まどかは少し屈んで顔を寄せ、じっとクロを見た。
何か言いたげである。
そして、クロの「なんだよ?」という言葉にふにゃっと顔を笑顔にする。


まどか「なんだかさっきのやりとり、新婚さんみたいだったね」


クロ「うるさいわ」


ビシッと軽いのチョップがまどかの頭にゴツンとあたり、軽い悲鳴を彼女はあげた。
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/05(金) 20:44:48.45 ID:n86DsGnDO
まどか「うぅ、DVだ、ドメスティック・バイオレンスだ」


涙目になりながら頭を自分で擦っているまどかを見ながらフンっと鼻を鳴らすクロ。
下手な冗談の類には誰よりも厳しく接するのが彼なりの流儀であった。


クロ「寝るぞ、とっととな」


はーい、とやはり少し疲れが出てきたのか間延びした声で返事をしながら、まどかはベッドに向かっていく。


少し、考えてクロは今のうちに彼女に言っておきたいことを言うことにした。
それは、さやかとまどかが揉めてから考えていたことでもあったこと。


クロ「なぁ、まどか」


まどか「なに?」


クロ「お前、オイラに一々付き合う必要はないんだぜ?明日さやかに友達に戻ろうって言えよ。あんな黒猫を信用するの止めるからってよ」


口にして、なんとも馬鹿らしい提案だと自分でも思う。
鹿目まどかに、そんなことが言えるわけがないことくらい自分でも分かっているはずだ。


甘ちゃんで、お人好しで、優しすぎる彼女にそんなことはできない。
ただ心を悩ますだけのことだ。
忘れてくれ、そう言うつもりだった。
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/05(金) 21:24:06.89 ID:n86DsGnDO
まどか「ううん、そんな事しないよ」


きっぱりと断られる。
彼にしては珍しく言ってしまった言葉に後悔を覚えた。


まどか「そんなの嘘だから、私クロちゃんの事が大好きだよ。そんな事は言わない」


クロは、まどかに背中を向けたまま、その言葉を聞いていた。


まどか「それに、さやかちゃんは友達なんだ。友達には嘘はつけない。だから明日ちゃんと話すの、クロちゃんの事も私の気持ちも」


背中で聞いていても、彼女の強い気持ちが感じられた。
いつの間に、これほどまでに強情になってしまったのか。


まどか「たぶん、クロちゃんの影響かな?」


クロ「地の文を読むな。……ふぁ、とっとと寝るぞ」


大きく欠伸をしたクロは、ゴロンとその場で横になってしまった。
シーツも座布団もない床の真上にである。


まどか「クロちゃん。そこじゃなくてさ、私のベッドで寝てもいいんだよ」


クロ「やなこった、チンチクリン」


「チンチク……」と、絶句するまどかを無視して、クロは目を閉じた。

499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 21:27:44.50 ID:n86DsGnDO
今日はここまでが、話の展開的に切りがいいのでここまでにします。


読んでいただきありがとうございました。
お疲れ!
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/05(金) 21:42:58.31 ID:ySHoaj7H0
クロちゃん完全に魔法少女アニメのマスコット的なポジになってますね
いや…比較対象の白いのがあまりに異質なだけか
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga sage]:2012/10/05(金) 21:55:44.93 ID:ddY2g2iA0

相変わらず更新早いしクオリティ高い
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/10/06(土) 00:53:23.63 ID:JPllZtSj0
>>500
ガトリングぶっ放して色々な物を破壊しまくり、人が嫌がる事をするのが大好きなドSな猫が
マスコットの魔法少女作品なんて邪道すぎるわwwww
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 01:39:29.18 ID:EkkjP6CDO
だがあの陰湿な裏で何をして何を考え表情も声色も何一つ変えない淫獣に比べたらクロはツンデレなマスコットと思えなくもない
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/06(土) 04:58:42.96 ID:WSjbD5/vo
>>502
マスコットが海兵隊な魔法少女もいるんだし何の問題もない
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/06(土) 06:41:17.24 ID:h1L+vRflo
>>504
そいつはまた邪道魔法少女じゃないか
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 22:41:43.26 ID:EkkjP6CDO
マスコットが33歳の合法ロリ天使だったりマッチョな魔法少女だったりするのもいるから大丈夫だ、問題ない
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2012/10/06(土) 23:12:55.18 ID:3311yKPAO
『この俺も魔法少女になることができたわ・・』
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/06(土) 23:39:20.66 ID:EtB7+ApV0
クロって元がデフォルメみたいなデザインだからなのかもしれないけど
ウメス絵の中に混ざっても違和感なく溶け込めそうだよね
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 01:10:10.92 ID:Lq34sUFDO
>>507
個人的には魔法少女らおう☆マギカより黒王号?がひどい
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/07(日) 13:35:09.23 ID:UsWududDO
夜が明けたらしい。


チュクチュクと小鳥の鳴く声が耳を打つ。
彼らの井戸端会議は人間には朝を告げる耳心地の良い目覚しになるだろうが、クロからすれば、朝から不快な与太話で目を覚まさなければならないのだ。
鬱陶しいったらありゃしなかった。


クロ「うぁー、この世界の鳥はよく喋るもんだ」


重い目蓋を持ち上げると、目の前では子猫二匹が折り重なって眠っていた。
身体を捻るついでにまどかのベッドを確認すると、そこに彼女の姿はなく、すでに学校に向かった事が分かる。


クロ「……」


無言のまま立ち上がったクロは、そのまま警戒心もなく二本足で歩き、まどかの部屋を出た。
そして、階段を降りてリビングに向かう。
まどかがいないという事は詢子もいないという事である。
と言う事は、ここにいるのは知久とタツヤだけになるので別に二本足で歩いても問題はない。


知久「やぁ、おはようクロくん。よく眠れたかな?」


案の定、というべきかいつものエプロンスタイルで食器を片付けている知久に出会った。
よくもまぁ、朝からそんな笑顔を見せられるものである。


511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/07(日) 13:53:01.06 ID:UsWududDO
クロ「おはようさん。あんたはいつも楽しそうだな。なんか良い事あったのか?」


未だ眠気と身体のダルさが離れてくれないクロは呆れと驚きをないまぜにしたような口調になっている。
知久がいつ見てもあぁなのは人間のバイタリティ的にも異常ではないのか。


知久「これと言ってはなかったかな。強いて言えば、まどかと詢子さんが元気そうだった事だよ」


タツヤ「パパぁ、はやくー」


「あと、タツヤもね」と、テーブルに座って父親を急かしているタツヤを見て、知久は言う。
もはや、完璧なまでの優男である。
一般的に見れば、「だから主導権を嫁に取られているんだ」とタジマヨーコが聞けばこれまた怒り狂いそうな言葉を彼は浴びてしまいそうだが。


しかし、『群れ』として考えた場合、あえてNo.2に属するという行為は割と無駄ではなかったりするのだが、それに対する考察以上に、クロは今空腹だった。


クロ「パパー、オイラも腹減ったー」


冗談っぽく、気の抜けたような言い方で知久に今日の朝食をねだる。
「はいはい」と笑いながら、彼はキッチンに向かった。
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/07(日) 14:09:18.79 ID:UsWududDO
クロ「隣、失礼するぜ?」


クロが着席する椅子に選んだのは、タツヤの右隣である。
これから保育園に向かうのだろう、しっかりと服も着替えて準備も万端というところだ。


タツヤ「くおー、おはよー」


クロ「おぅ、おはよー」


上手く発音できないのか、舌足らずに名前を呼ばれる。
しかし、挨拶をしている事は分かるので、ちゃんと返してやる。
ついでに、頭にポンポンと手を乗せてやるとキャッキャッと嬉しそうに笑う。


クロ「お前も保育園か、朝から大変だな」


タツヤ「たいへんたいへん」


大変という事を分かっているのだろうか?大きく頷くタツヤを見て、そう思わずにいられないクロだった。
この家に来てから数日、勿論タツヤとも接点がないはずがなく、時間がある日や両親が側にいれない時は、まどかやクロが遊び相手になっていたのだ。
同年代や、ある一定の年に達しているならまだしも、子供相手に何かされたところで怒るようなクロではなく、そこはうまくやっている。


513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/07(日) 14:38:24.05 ID:UsWududDO
そして、今まさにタツヤが髭を引っ張ってるが怒鳴り散らしたりはしない。
勿論痛みを感じない事もそれなりに理由になるし、まどか辺りがしてきたら鉄拳制裁を行使するが。


タツヤ「くおー、あそぼー」


クロ「お前は保育園に行くっつー使命に殉じろ」


髭や耳を引っ張られてもどこ吹く風のクロである。
そこに、朝食を乗せたおぼんを持った知久が現れた。
つい先ほどの顔をそのまま張りつけたような、しかしそれでいて心からの笑顔である。


知久「ハハッ、随分とタツヤも懐いたみたいだね」


愉快そうな多少の悪戯っぽさをブレンドしたような言い方である。
はいはい、言いたい事は分かりますよーと言わんばかりの顔をするクロであったが、相変わらずタツヤに好き勝手にされていた。


クロ「あぁ、『母親』が二人もいりゃ、元気に育ちもするだろうさ」
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/07(日) 19:36:29.55 ID:UsWududDO

猫達の救世主『マザー』、彼がそう呼ばれている事をクロはからかった。



知久「やめてくれよ、ここ最近まで忘れていたのに」


知久が困ったように笑う。彼の表情は楽しそうに笑うか、嬉しそうに笑うか、哀しそうに笑うかのどっちかで、きっと喜怒哀楽を笑顔で表現できるのだとクロは思った。
今度まどかに怒った時はどうだったのか聞いてみよう。


クロ「あんたが忘れたって、恩義を忘れねー奴がいる限りずっと覚えられてんだろ」


受けた恩や義理なんてものは、中々忘れられる物ではない。
それに応えられるかどうかは別として、やはり記憶のどこかにこびりついているのだろう。


知久「恩義なんて……そんな特別なことじゃない。でも、とても難しいことだけど僕は皆の居場所を守りたいだけなんだ」


少しだけ、笑顔が消えた。
変わりに一瞬だけ覗いたのは、決意の表情。
優しげで、厳しくて、凛々しくて、温かい。
そんな顔に、クロは呆気に取られた。


タツヤ「パパぁ?」


そして、待ちくたびれたタツヤの急かす声に、クロも知久も我に返った。
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/07(日) 19:48:28.49 ID:UsWududDO
知久「おっといけないな。クロくん、タツヤを保育園に送ってくるよ。ご飯はこれ」


知久は手に持ったままだったおぼんをようやくクロの前に並べる。
魚と、味噌汁とご飯、そして魚とご飯を混ぜ合わせた離乳食が二つあった。


知久「この二つはかぐらちゃんとほむらくんのだよ」


さぁ、行こうかと言いながらタツヤを抱き上げる知久、そこそこ急ぎらしいがタツヤはそんな事は関係ないらしく笑顔だった、知久もだが。


クロ「行ってらっしゃい」


リビングから廊下に出る知久に向かってそう言うと、彼は身体ごと振り返った。


知久「うん、行ってくるよ。タツヤもほら、お兄ちゃんに行ってきますって」


タツヤ「いってきまーす」


何をわざわざ子供に言わすのかとも思うが小さな手のひらがクロにブンブンと振られているため、クロも軽く手を振ってやる。
満足したタツヤに満足した知久は姿を廊下に消してパタパタという足音とガチャッという玄関の扉を開閉した音だけを残していった。


クロ「誰がお兄ちゃんだ」
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/10/07(日) 20:08:08.75 ID:TMsf7e/AO

ツッコミワロタ。
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/07(日) 20:12:44.21 ID:UsWududDO
小さな声で突っ込みをいれるが聞く人間など誰もいやしない。
クロは黙ってテーブルの上に置いてある箸立てに手を伸ばし箸を手に取った。


クロ「いただきます」


一言日本人ならでは礼を済ませ、それから皿を手に持ち米を口に運ぶ。
これが全て猫のとった行動なのだと、この文章だけでは信じてもらえないだろう。


クロ「あ、米の炊き方いい」


米を気に入ったクロは、今度は味噌汁にも手を伸ばしズズっとすする。
ほぅっと思わず息が漏れてしまうほどだった。


クロ「うわっ、うめぇ。ミーくんよりうめぇ」


料理もできて家事もできるとなれば完全なる超人である。
有能な人間が家に一人いるだけで随分と助かるものだ。


例えば、『アイツ』がそうだったように。


役に立ち、能力と実力のある者が頂点に立てばいい訳ではない。
敢えて出しゃばらず、上を目指さない事で『群れ』そのものを生かす。


知久の生き方は、グレーに似ている。


クロ「……まさかな」


かつて感じたあの感覚が、またクロの頭によぎるも自ら否定した。

518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 20:13:20.79 ID:Lq34sUFDO
タジマヨーコwww
初恋ロボの時にも似たような言ってたな
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/07(日) 20:41:23.67 ID:UsWududDO
黙りこくったクロは今度は魚に箸を伸ばした。
なるほど、よく焼かれているし良いものを選んでいるからだろうか身が柔らかい。
口にほおりこんで噛みしめると味が舌に染みる。


クロ「ちょっと待てよ、本当にうまいぞこれ」


驚きながら箸を動かしていると、リビングに近付いてくる二匹分の音と臭いがある。


かぐら『あぁ、お兄ちゃんだぁ。おはよー』


ほむら『うーん』


眠たそうにフラフラと歩いている二匹は舌がもたつくような喋り方になっている。


クロ「むしろどうやって起きたんだよ」


かぐら『うー、鳥さんが、鳥さんがぁ』


ほむら『酷かったんだ』


あぁ、あれかとクロも納得する。
確かにあれは、言葉にする事すらはばかられるほど酷い話だった、二度と語られることもないし伏線にもならない程だ。
あれを聞けば流石の彼らも目を覚ますだろう。


クロ「お前ら飯くえ。出かけんぞ」


目を細めて眠たげに唸っている二匹のうち、ほむらが不機嫌になる。


ほむら『出かけるって、まさか病院じゃないよな』


クロ「正解」
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/07(日) 21:17:07.07 ID:UsWududDO
ほむら『やっぱり』


ガクリと顔を下げるほむら。
因みに断ったところで、無理矢理にでも連れていかれそうなので拒否はしない。


かぐら『また、マミってお姉ちゃんのところ?』


首を傾げて眠そうではあるが、疑問を身体で表現しながらかぐらは聞く。
クロはその姿を横目で見ながら味噌汁をすすった。


クロ「いや、今回はまず違う奴に会いに行く」


かぐら・ほむら『『違う奴?』』


クロの視界の端で、二匹が顔を見合わせた。



─────見滝原中学校


まどかは、学校に着いてからずっと深呼吸をかかしていない。
一度、廊下を歩いてすれ違った先生から過呼吸を疑われてしまう程だった。
それくらい、彼女はずっと緊張していたのだ。


美樹さやかと話す。
そしてクロの事を理解してもらい、仲直りもする
それが、まどかが自らに与えた史上命題であった。


だが


いざ、教室に入りその姿を確認すると、どうにも話しかけずらかったのだ。


背中を見かける度に肩を叩いてみようと思った。
すれ違う度に話しかけなければと思った。


だが結局、妙な誤魔化しをいれてしまい、どうにも実行できないでいた。
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/07(日) 23:14:47.29 ID:UsWududDO
まどか(大丈夫、絶対に大丈夫。昨日あれだけ寝ているクロちゃんを抱き締めたりして勇気をもらったんだ。やれるっ……やれるよ、私)


クロが聞いたらなんらかの制裁は避けられないであろうを事を胸の中で唱えながらまどかは自分を鼓舞する。


これから昼食である。
その時間を利用してさやかに話しかける、問題はない。
よしっと頬を両手でペシンっと叩いて気合いをいれた時だった。


さやか「まどか?」


まどか「いやあああああっ!!」


とてもじゃないが普通に驚いたとは思えない絶叫を上げたまどかに後ろから話しかけたさやかは驚愕の表情を浮かべる。


さやか「えぇっ!?いや、ちょっとあんたこっちに来なさいよ!!」


突然現れたさやかに腕を掴まれたまどかは、あれよあれよと言う間もなく屋上に連れていかれてしまった。
鉄の扉を開けて外に出ると空は青く、風が顔を撫でる。


少しだけ息を乱しているさやかがゆっくりとまどかの顔を見やる。
そこにあったのは浮かない顔で彼女自身も勢いに任したものの、どうすればいいか分からないようだ。


本当は自分がここに連れてこなければならなかったのだが、こうなってしまった以上腹を括るしかない。


522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/07(日) 23:30:05.87 ID:UsWududDO
まどか「さやかちゃんっ!」


さやか「分かってるよ」


意を決したまどかの言葉にさやかが呟くような声を漏らした。
まるで疲れ切ってしまった響きからは、それでも彼女の真意を読み取る事はできない。


さやか「流石に、あの猫を信じているだけであんたと縁を切るなんておかしな話だ。まどかは好きにすればいい、でも私は───」


まどか「さやかちゃん!私は、私だけの問題を解決しにきたんじゃない」


やはり、まだ。


まだ彼女は分かってはいなかった。
これはただ、さやかとずっと友達でいようと言うために彼女と話したかったのではない。


まどか「確かに、さやかちゃんとはずっと友達でいたい。絶対にそれは譲れない。でも、それはクロちゃんにだって言える事なんだ」


適当に、投げやりに「ごめん、やっぱり友達でもいいよ」とさやかは言ってきたも同然だった。
しかし、序盤こそもたついたがまどかは「絶対に友達になる」という確固たる想いを固めていたのだ。


まどか「クロちゃんは確かに人を殺したよ。でも、何か事情があったかもしれない。そうじゃなきゃ、クロちゃんは適当な理由なんかじゃあんな事しない」
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/07(日) 23:47:06.28 ID:UsWududDO
さやか「そんな理由はなかったら?ただ単に殺したかったから、殺したんじゃなくて?」


まどか「そんなつまらない事はクロちゃんはしない。絶対にしないっ!!」


きっぱりと言い放つ彼女にさやかは面食らったのか黙っている。
ここ数日をクロと共に暮らしていたまどかだからこそ断言できることだった。


さやか「そうだね、あんたが言うならそうなんだろうさ」


まどか「さやかちゃん…」


やっと、少しだけ気持ちが通じたのかと思い彼女に歩み寄ろうとした時だった。
まどかは気付いた、さやかが達観し、疲れたような顔をしていることに。


まどか「さやか、ちゃん?」


さやか「分かってたんだ。本当はただ理由が欲しかっただけで、なんでも良かったんだ」


どうしたのだろうか、次の瞬間には笑い出してしまいそうでありながら、泣き出しそうな空気を纏って彼女はブツブツと呟いている。


さやか「悪いヤツがいれば、もっと楽に心が決まると思ったんだ。そうすれば、正義の味方になることなんて恐くないって……」


まどかは、さやかの考えている事が分かってしまった。
そして、どうすればいいのかも分からなかった。


さやか「まどか、私は……私は魔法少女になりたい」
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 23:48:29.60 ID:UsWududDO
今日は投稿終了になります!


いよいよさやか編も終わりそうです。


ありがとう、そしてお疲れ!
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/10/08(月) 00:52:49.74 ID:iPMsEWHY0
い や な 予 感 し か し な い
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 18:38:54.39 ID:ygBSBBCj0
さやかが何もしなくてもクロが恭介をどうにかしてくれそうなんだよな
恭介がクロと仲良くて信頼してると知ったらさやかはどう思うんだろう
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/08(月) 21:20:03.51 ID:egHI/JdDO
とうとう、この瞬間が来たと言えるかもしれなかった。
まどかは、さやかの抱える事情を知る数少ない人間の一人である。


魔法少女になるという事、そしてその報酬とも言える『願い』の名に恥じぬ願望がある事も分かる。


まどか「で、でも、あんなに危険なんだよ!?マミさんだってあんな目にあって……、さやかちゃんだってどうなるか」


さやか「そう、だから今までずっと悩んでいた」


たった一つの願いを叶えれば、そこから先は戦いの日々。
自分の願いは叶える価値も、そのために戦う価値だってある。
そんなの、分かっているのに────怖いのだ。


怖くて怖くて、仕方がない。
だからこそ、彼女は欲したのだ


さやか「私はアイツとは違う。アイツにほだされたマミさんとも違う……、そう思えば魔法少女になる事なんて怖くないって思ったんだ」


戦う理由を、正義の意義を、己のきっかけを。


しかし、それでも、何度言い聞かせてもその一歩を踏み出すことができないでいた。


恐怖と願いと理想と幻想の中で、さやかはただただ悩み続けている。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/08(月) 21:54:03.55 ID:egHI/JdDO
さやか「それに、見ちゃったんだ……」


ここで、初めて彼女は笑顔を見せた。
自らを嘲笑い、傷付け、心をズタズタに引き裂くような、そんな笑顔を。


さやか「昨日、アイツと恭介が話していたのを」


まどかは、目を丸くした。
病院に行っていることは分かっていたが、まさか恭介とも出会っていたとは知らなかった。
彼は、そこまで多弁ではないことをしっかり理解しておくべきだったのに。


さやか「アイツと話している時の恭介、すごく楽しそうだった」


彼の、あんな笑顔弾けた笑みを見たのは、初めてだったかもしれず、さやかは


その笑顔を見て、寂しい自分が悔しかった。

その笑顔を見て、嬉しい自分が悔しかった。

その笑顔を見て、悲しい自分が悔しかった。

その笑顔を見て、妬ましい自分が悔しかった。


悔しかったことが、悔しかった。
その笑顔を見れた、自らの喜びを押し流すように溢れてきたその感情に、さやかは飲み込まれてしまった。


さやか「恭介を守ってあげられるのは私だけなんだ。私じゃなきゃダメ……、そうじゃなきゃ嫌なの!!」
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/08(月) 22:17:18.80 ID:egHI/JdDO
まどか「甘ったれるなぁっ!!」


さやか「!?」


まどか「そんなの、そんなのただ自分可愛さで周りを見ていないだけじゃない!好きな人に振り向いてほしいから願いを叶えたい?勝手にしなよ、でもその思いの結果で傷付く人だっている事も分かってよ!」


突然、堰を切ったように叫びだしたまどかに、さやかは圧倒された。
今まで一緒に過ごしてきて、彼女のこんな姿を見たのは初めてだった。


まどか「魔法少女になるっていう事がどういうものかは分からない。でも、今さやかちゃんがしようとしていることは絶対に違う!」


さやか「あ、あんたに何が分かるのよ!関わらないでよ!!」


まどか「分からないけど、関わるもん!私は友達だから!!」


叫びを終えたまどかは、力が抜けたように座りこみ、荒い息をついた。
茫然自失になってしまったのか、それとも叫びと一緒に魂まで抜けてしまったのだろうか。
それは、さやかも同じで、彼女もまた言葉を紡ぐ事ができずにいた。


まどか「ハァ、ハァ……なんて、クロちゃんなら言うかもね。何も言わないかもしれないけど、そう思うよ」


530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/08(月) 22:36:14.93 ID:egHI/JdDO
まどか「私は、いっつもさやかちゃんに、守られてばかりだった」


さやかに必要なのは取り繕った言葉なんかではない。まどかはポツリポツリと語り出した。


まどか「何も言えないけど、ただ黙っていても楽しかった。だってさやかちゃんが楽しいお話を一杯聞かせてくれたから。危ない時も、さやかちゃんが側にいてくれるだけで安心できて……だけど!」


まどかはさやかに駆け寄り、その肩を掴んだ。
その顔は、ぼやけてしまう。
感情が高まると、悲しくなくても涙が出るのだとまどかは初めて知った。


まどか「マミさんと会って、クロちゃんと会って、戦うってどういう事なのか……守るってどういう事なのかを知ったの」


あれだけ可憐で落ち着いていたマミはただの少女だった。
恐怖を、悲哀をたった一人で押し隠して、それでも戦うことしか道がなかった。


あれだけ飄々としたクロでさえも苦しみを抱えていた。
あの時の魔女との戦いで見た映像から察するに、彼もまた失い続けた末にあがき続ける者だった。


まどか「私だって戦う。さやかちゃんのその辛いとか、苦しいっていう感情を少しでも楽にしてあげたい」
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/08(月) 23:01:03.40 ID:egHI/JdDO
そんな気持ちで、魔法少女になってほしくなかった。
あんな血を流し続ける戦いに、友達を行かせたくなかった。
それが、どんなに甘っちょろくて、利己的で偽善と欺瞞に溢れた感情か、まどかには考える余裕もない。
しかし、例え彼女自身が理解していても、躊躇いはしなかっただろう。


さやか「……でも、でもそれじゃあ、何も変わらない。変わらないんだ」


両肩を掴まれたまま力なく呟かれたさやかの言葉が、まどかの胸に鈍く刺さる。


さやか「あんたは、何も分かっていない。私の願いは確かにワガママだけど、それだけでもないっ!」


ドンっと肩を突き飛ばされたまどかは、為す術もなく地面に転がる。
その行為は、深くまどかを傷付ける結果となった。
この瞬間、まどかはさやかに全てを拒絶されたのだ。
親愛を、警告を────友情を。


走り出したさやかの背中をただ見ることしかできないでいたまどかは、しばしその場で凍り付いていた。


しかし


まどか「……負けるもんか」


ゴシゴシと袖で涙を拭って、まどかはふらつきながらも立ち上がった。


さっき言ったばかりではないか、友達なのだと。
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 23:02:41.11 ID:egHI/JdDO
ちょっと頭が動かないので残りは明日にします。


読んでくれてありがとう!お疲れ様でした!


533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 23:26:19.21 ID:RisAdawr0
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/10/09(火) 00:05:25.83 ID:3I3zp/Oz0
。゚(゚´Д`゚)゚。
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/09(火) 00:39:57.48 ID:OLj8h6tBo

本編でもおっかけてくれてたらなー
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/09(火) 12:18:23.76 ID:gI/lV9ag0
つまりこれは、あれか?
仁美じゃなくてクロが恭介をNTRするのか…アッー!!
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/09(火) 13:56:01.08 ID:mLRClCHDO
─────見滝原総合病院


ベッドの上で、一人の少年が自分の左腕を見ていた。
ダラリと力なく白いシーツの上に垂れ下がっているそれは、どんなに力を込めても微動だにしない。
思いを込めたところで反応だって返りやしなかった。


唇を噛み締める。
嗚咽のような呻き声が漏れた。
出来ることならこの苛立ちに身を任せてこの腕をを叩きつけてしまいたい。


しかし、それすらも叶わない。


いらない、こんなもの、もういらない。
これがあれば望んでしまう。
『いつかきっと』と、しかしそれはもう、ありえない。


「う、う、うぅ……、ああああ!!」


右手を拳に固めて、思いっきり左腕を殴り付ける。
二度、三度、四度、痛みはない。
なのに、涙が止まらない。


「なんで、なんでだよぉ!!なんで、僕だけが、こんなっ……!」


虚しさからか、とうとう彼はそうする事すらやめて、シーツをギュッと握り締めた。


「うるせぇな、ここは病院だぞ」


ふと、聞き覚えのある声が耳を打ち、少年は顔を上げた。


「クロ、さん?」


「よう、恭介」
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/09(火) 14:26:50.64 ID:mLRClCHDO
クロ「昨日ぶりだな。もしかしなくてもなんかあったろ」


何故彼が、ここにいるのか。
そして何故病室の扉から普通に入っているのか、恭介には分からなかった。
しかし、今は疑問より、驚きの方が大きい。


恭介「どうして、ここが?」


クロ「臭いだ」


臭い?と力なく疑問を呟く彼に、クロはニタリと笑う。


クロ「あぁ、辛気臭ぇってヤツさ。そいつを追い掛けてたらここに来た」


冗談めかしているようで、本気でクロは言っていると感じた。
事実、自分もこの瞬間なら病院で一番辛気臭いかもしれないという、そんな暗い自信がある。


恭介「何しにきたんですか?すみません、今日は誰かと話す気分じゃないんです…」


クロ「そう言うなよ」


今はとてもじゃないが、誰かと話したりできるような気持ちではなく、クロには帰って欲しかった。
それと、今の自分のこんな情けない姿をクロに見られたくないという気持ちもあるにはあった。


しかし、そんな事くらいで帰るような男でもなかった。


クロ「アニマルテラピーってヤツだ。どうだ?」
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 15:23:44.22 ID:OpSYGrgDO
アニマルテラピーじゃなくアニマルセラピーでは?
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/10/09(火) 16:29:03.02 ID:F0A4bdPpo
クロちゃんがそんな細かいこと気にするわけないだろ
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/09(火) 20:15:54.15 ID:mLRClCHDO
恭介「……テラピーではなく、セラピーでは?」


クロ「あぁ、そうか。ちっ、慣れねー言葉を使うもんじゃねーな」


ガリガリと頭を掻き毟りながら苛立つそぶりを見せるクロ、彼はいつも通りだった。


恭介「ん?」


ふと、クロの後ろに小さな二つの影が並んでいることに気付いた。
よく見ると、二匹の子猫がこちらを見ている。
アニマルセラピーというものをクロが全うするとは思えないが、もしかしたらこの二匹にそれをさせると言うのだろうか。


クロ「こいつらはオイラが世話んなってる所で預かっているチビだ」


オイ、と首を下に向けて呼びかけるも、恭介を警戒しているのかクロの前には出ていこうとはしない。
その様子が、なんだかあまりに人間臭くて温かい、ほんの少しだけ恭介は心の平穏を取り戻した。


クロ「あー、分かったよ。その辺にいろ」


来る前に説明はしたってのによ、とため息を吐きながらクロは、なんの気なしに恭介のベッドの横まで歩く。


すると、そこにはゴミ箱があった。


中を覗く。


そこには、沢山のCDケースが投げ込まれていた。
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/09(火) 20:35:06.31 ID:mLRClCHDO
いや、ゴミ箱に入っている物が全てではない。
よく見るとゴミ箱の周りにも沢山のCDケースが散らばっていた。
CDケースだけではなく、写真立てまで転がっている。


広い上げて覗き見る。


クロ「へぇ」


そこにいたのは一人の少年だった。
格調高いスーツを着て、バイオリンを握っていた。
隣にいるのは母親だろうか、恐らくは彼が手に入れたであろうトロフィーを持っている。


しかし、それ以上に目を引くのはその少年の自信に満ちあふれた表情だ。
自分に進む道には阻む物などひとかけらもないと、その視界を曇らせるものは一点もないと言うような輝きを持つ顔をしていた。


クロ「今じゃ似ても似つかねーな」


しかし、彼は興味がなかったようにその写真立てを投げ捨てた。
がシャンと音を上げてガラスが割れる音が響く。
恭介は、黙ってその音を聞いていた。


クロ「……腕、動かねーって言われたのか」


背中を恭介に向けて、ゴミ箱を漁りながらクロは言う。
流石に、こんなに荒れた自分を見せれば分かるだろうか、相変わらず適当なようで見ている所は見ているようだ。
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/09(火) 21:04:19.44 ID:mLRClCHDO
恭介「……もう、どんなにリハビリをしても駄目だそうです。奇跡か魔法でも起こらない限り動かないって、先生に言われました」


力なく、という言葉がそのまま当てはまるような言い方だった。
覇気もなく、意気もない。
その言葉にはなんら意味が無いのではないかと錯覚を起こしてしまいそうなほどだ。


クロ「それ、さやかには言ってねーだろうな」


しかし、クロが一番最初に発した言葉は意外な人間の名前だった。
恭介にとっては聞き馴染みのある美樹さやかと、恐らくクロの言う『さやか』は同一人物だろう。


では、何故?


恭介「なんで、さやかがこの病室に出入りしている事を知ってるんですか?」


その言葉を聞いて、ようやく彼はこちらを振り向いた。
左手でCDをつまみながらプラプラと揺らすという見るからに軽薄な態度でありながら、明らかに彼は威圧をしている。


クロ「会った時に少しだけ臭いがあったし、ここに来てからも臭いがした。それと、このCDにもな」


特に、CDには沢山の臭いが染み付いていた。


例えに過ぎないが


店の棚に並んでいたCDを手にとっては戻し手にとっては戻しとすれば、これほど臭いがつくのではないか。


ようやく選んだ一点物を、これから届ける人間を思って胸に抱きしめれば、これほど臭いがつくのではないか。
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/09(火) 21:21:33.15 ID:mLRClCHDO
恭介「……無理なんですよ。僕には、もうさやかの期待に応える事はできないんだ」


あぁ、ダメだ。
押さえられない。
弱い自分が、汚い自分が溢れだしてくる。


恭介「さやかは絶対にバイオリンが弾ける僕だけを欲している!今のこの僕なんて誰も求めちゃいない!!指が動かない僕なんて誰も認めちゃくれないさ!!さやかだけじゃない、父さんも母さんも!みんなも!!」


奇跡?魔法?それはきっと、自分の指が動くようにとでも誰かが祈るのだろうか。
自分だって、できる事ならそうしたい。
でもそれは、逆に言えば指が動かない自分は、バイオリンを弾けない自分には何の価値なんて存在しない事の証明にも繋がる。


恭介「クロさん、あなただけは違った。あなたは僕に言ってくれた。『腕が動かなくても出来る事を考えろ』って」


クロは、あの時何も知らないであろう自分に、寄り添ってくれた。
彼だけは、自分に適当な優しさで擦り寄ろうとしなかった。


恭介「でも、でも、僕に出来ることなんてバイオリンくらいで……、何かをしようなんて何も思いつかない」


弾けもしないバイオリンのCDも、どこまで言っても着いてまわるかつての栄光も、忘れてしまいたいのに捨てられない。

545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/09(火) 21:43:54.23 ID:mLRClCHDO
恭介「……今日、さやかが来なくて良かった。来ていたら僕は絶対にあたり散らしていたから」


そう言ってクロの方を見た恭介が見たものは、迫り来る黒い足だった。


恭介「ぶっ!?」


激しい衝撃で脳が揺れた。
口一杯に痺れた感覚と、鉄の味が広がる。
鼻もツンと痛み、身体がもんどりうってベッドから転げ落ちる。


全身を激しい衝撃が打った。


恭介「う、ぐっ。はっ」


クロ「奇跡に魔法?冗談キツいぜ。そんなもん使ったところでテメーのその性根は直らねーだろうさ」


未だ息が乱れ、身体の痛みが取れないが、その胸の上にドスンと足が乗っけられる。
涙が出てしまったのか、はたまた少し眼のピントが狂ってしまったのかは分からないが、自分を見下ろしているであろうその顔はどうにもぼやけて見ることがっきない。


クロ「テメーの考えてることくらい分かるぜ。理屈こねたところで、結局は向き合うのが恐いんだろ?バイオリンのCDを聴いて、結局は弾けないことを確認する事が恐くて恐くて仕方がない、ちげーのか?あぁ!?」


グッと、足に力が込められる。
息が詰まる。
まだ、その表情を知ることはできない。


クロ「オイラの場合も似たよーなもんだ。目ん玉えぐられても会いにくるんだもんなぁ」
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/09(火) 21:59:50.57 ID:mLRClCHDO
彼が何を言っているのかは分からない。
どんな顔をしているのかも見えない。


クロ「でも、それでも見なきゃなんねーんだ!どんなに適当な事言ってもケリはつける。一生かかってもな」


恭介「な、んの、話ですかっ!?」


息も絶え絶えになりながら恭介は訊ねた。
こんな状態でありながら、クロの話に興味を覚えたのだ。


すると、急に胸を強く圧迫していた力がなくなった。
クロが足を退けたらしい。


クロ「昔の話だ。オイラは友達の目ん玉取っちまった」


字面に並べると、なんとも投げやりに言っているように見えた。
しかし、その言い方は真っ白で、どんな感情も込められていない。
裁判官が罪状を読み上げるような、そんな言い方だった。


クロ「その時はもう、何がなんだか分かんなくなっちまった。ずっと一緒にいたヤツをオイラは自分で不幸にしちまった」


何で、こんな所で自分語りをしなきゃならないのか、クロはそれに対する明確な答えを持っていない。


クロ「でもな、そいつはその後、死ぬような目にあって、それでもオイラに会いにきたんだ」
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/09(火) 22:17:39.37 ID:mLRClCHDO
あの時、自分であの出来事を事故だと言ったのは、恐らく彼は事故だと思っているからだと考えたからだった。


少し、意地の張り合いのようなもので戦いになったが、しかし、その頃には、クロは彼の復讐をその身に受け止めることすらできなくなっていた。


自分の首が落ちたのは、そういう事だったのかもしれない。


クロ「だから、オイラは死ぬまでアイツの眼帯を見てやる。アイツがいなけりゃ、今のオイラはいねーんだ」


恭介「……」


彼の昔話は壮絶で、それが自分と当てはまっているのかなんて分からなかった。
すると、胸の上に無造作に投げ込まれた物があった。動く右腕でそれを握る。


クロ「テメーには、それが見なきゃいけないもんじゃねーのか?今は弾けないバイオリンだが、今日まで気持ちを保たせてきたのは何だ?」


恭介「さやか……」


そっと、恭介はCDを握りしめる。
これは、過去だ。
今となっては重苦しく、冷たい他人のような過去。
こうなってしまえば、いっそ未来を見据えた方が幸せなのに、この黒猫は過去すら眺めろと言う。


一生悩め、と言うのではなく、いつか決着をつけるためにそうしろと言う。

548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/09(火) 22:37:31.11 ID:mLRClCHDO
こんなに説教臭いのは、最初で最後だとクロは思う。
全く、本当にらしくないことを自分は平気でしている。
しかし、これは男としてやらなくてはいけなかった事でもある。


誇りを忘れた男に対して、必要だった事だと思う。
だから、言った言葉に後悔はしない。
恭介に自分の過去を明かしたことだって、そうである。


恭介「僕は……僕は!どうしたら!」


恭介の瞳から、ついにボロボロと涙が溢れる。
顔面は腫れ上がり、口元や鼻から血が出ている。
なんと情けない姿だろうか。


クロ「足が動かなかろーが、腕が動かなかろーが、望むなら這ってでも前に進める。生きてりゃなんだってできるさ」


ただ力強い声だけが恭介の鼓膜を震わせ、胸を打った。
今、この世界にはクロと自分しかいないような気持ちになる。


クロ「どーしてもしんどけりゃオイラに言え。行きたい場所に連れてってやるよ、引きずり回してでもな」


恭介「……クロさん。ん?」


自分の頬の辺りをザラリとしたものが撫でていた。
目だけを動かしてそこを見ると、さっきの子猫の一匹が舐めていた。
クロより小さな黒猫である。


恭介「ははっ、ありがとう」
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 22:39:13.81 ID:mLRClCHDO
今日はここまでにします!

明日もこんなタイミングでの投稿になります。


読んでくれてありがとうございます!
そしてお疲れ様です!


では、また!
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/10/09(火) 22:41:39.78 ID:SOCXhRM30
乙!次回楽しみにしてるぜ!
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 23:50:43.86 ID:QO0EdBY40
何この下手な人間の男より漢らしい猫・・・カッケェ
女主体のまどマギでこういう男気溢れる奴っていないから新鮮だわ

それからUP主はまどポやったのか?恭介が「バイオリンを弾けない自分には価値がない」と思ってるとことか同じだし
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/10(水) 00:22:11.55 ID:0eOtbcBDO
>>551


いやー、まどポはやったことがなくてですね。


アニメやドラマCDの微かな記憶を頼りになんとか書いてます。
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/10(水) 00:25:50.87 ID:mE6f3rbx0
ミーくんやマタタビが「かずマギ」のあすなろ市にきてるとかだったら面白そうだな
ミーくんが星団側でマタタビがユウリ様の側のつくみたいな感じで
マタタビならユウリの復讐のためのいきすぎた行動や魔女化を阻止してくれそう
それでも復讐自体は止めないだろうけどさ
ミーくんは料理繋がりで立花さんに拾われ、それが縁でかずみと知り合い星団に関わっていくような感じで
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/10(水) 00:28:11.30 ID:I+YpZojpo
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/10(水) 00:42:53.48 ID:H4m8dEk+0
>>552
マジか?マミさんが学校で自分はいても居なくてもどっちでもいい存在なんじゃないかと思い詰めたり
なに言ってもやっても不信に思う相手の事は全然信用しないさやかの性格とか
結構まどポであったネタが多かったから、てっきりプレイしてたんじゃないかと思ったが・・・
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/10(水) 01:04:01.24 ID:I+YpZojpo
それアニメからでも推測できね?
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/10(水) 01:20:29.67 ID:H4m8dEk+0
>>556
まあそうなんだが他にも共通した点が色々あったからさ。マミさんは実は流されやすいとこがあるとかね

>>553
見てみたいけど、まだ完結していない以上は無理でしょ。
それからプレイアデスって本編のメインの5人以上に一筋縄じゃいかない連中ばかりだぞ?
唯一、協力仰げそうなのってかずみとカオルぐらいしか思いつかん
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/10(水) 07:28:44.14 ID:k1tPmBOC0
>>557
ミーくんは一応猫だから里美にも協力仰げそう


・・・途中で、「ごめんなさい。ミーくん」とか言って裏切りそうだけど・・・・
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/10(水) 18:11:14.38 ID:2lZU007DO
かずマギはコミックまでの内容しかしらんがかずみ13は1〜12までのかずみと戦ってどうなったか気になる
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/10(水) 23:03:21.17 ID:0eOtbcBDO
力なく笑みが零れる。
自分を嘲笑うような冷たい意味を込めて。
しかし、それでも胸に込み上げてくる温もりが確かにあった。
自分に寄り添う柔らかな感触がそれを教えてくれる。


恭介「……情けないなぁ、僕は…助けられてばかりだ」


天井を眺める。
先ほどまで、訳も分からないような涙が視界を阻んでいたというのに、今はもうそんなものは存在していない。


泣くなら今のうちだというのに、ここから先は地獄のような日々が続く。
ならば、とっとと泣いて、涙枯れるまで泣いてしまえば、もう涙なんて流さなくてすむかもしれないのに。


しかし、どうやら自分の心は決まってしまったらしい。


クロ「恭介……」


恭介「今日から、大変ですね」


クロは、そっと恭介の顔を覗き込んだ。
彼の今の感情を知るために、自らを曝け出した彼の出した『答え』を知るために。


恭介「クロさんも、よろしくお願いします」


その、少しだけ困ったような頼りない笑顔を見たクロは、ニヤリと笑って「おう」と応えた。
絶望に立ち向かう第一の準備を恭介は整えたのだ。
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/10/10(水) 23:09:02.06 ID:e8DEcBJ60
up主、更新きたかどうかわかりにくいから最初はsageない方がいいぞ?
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/10(水) 23:36:16.56 ID:0eOtbcBDO
クロ「さぁてと、そろそろ行くかね」


よいしょっ、と言いながら背筋をググッと伸ばしたクロがそのまま扉に向かって歩きだした。
その突然の行為に、床に転がったままの恭介が声を上げた。


恭介「クロさん、どうしたんですか?何か用事でも」


クロ「あぁ、後こいつらも預かっててくれ」


驚きの声を上げる恭介に、クロは足下にいたもう一匹の虎猫をつまみ上げひょいと放った。
慌てて、なんとか右腕で優しく受け止めるも流石に全ての衝撃を和らげることはできない。


ほむら『にゃぎゅっ!』


小猫の口から空気が漏れるような悲鳴が上がる。
心配になって首を動かして見てみるとそこには凄まじい怒気をクロに発している虎猫がいた。
一応は元気らしい。


しかし、それは置いといて彼はクロに確認しなければならない事があった。


恭介「どこへ行くんですか?」


クロ「用事ができた。厄介な臭いが出てきやがったからな」


厄介な臭い?それがどう言うことなのかは分からないが、彼が突然纏った空気は恭介にとって今まで一度も感じた事がないようなひりつくような雰囲気を醸し出している。
少しダルそうな態度でありながら、隙のない姿だった。
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/10(水) 23:49:11.55 ID:0eOtbcBDO
クロ「あぁ、後もう一つは知った臭いがするな」


と、ここに来てクロが、今まで見たことのない類の笑みを深めだした。
なにやらイタズラを思いついたようなそんな顔で恭介の顔を見る。


恭介「知った、臭い?」


クロ「おうよ、さやかだ。美樹さやか、知り合いか?」


さっきまでその人物の話をしていた事くらいクロだって分かっている。
しかし、その挑発に恭介は気付かない。
胸の上に置いているCDケースに手をやった。


まぶたを閉じれば、すぐにこれを持ってきた時の彼女の顔が浮かんできた。


いつだって笑って、彼女はそのまぶたの裏にいた。


クロ「んじゃ、オイラは行ってくるぜ───」


クルリと恭介に背を向けたクロは、外に出ようと扉に手を掛ける────その時だった


恭介「待ってください!!」


クロの手が止まった。
声のする方、後ろに身体を向けるとそこには、恭介がいた。


恭介「んぅ、はっ。はぁっ、っはぁ」


いつの間にか身体をうつ伏せにしたらしい彼は、右腕と右足で地面を掻くようにしてクロのいる所まで這ってこようとしていた。


564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 00:05:58.47 ID:uMvngx8DO
クロ「なんのつもりだ?」


恭介「僕も、連れてって下さいっ」


クロ「はぁ?」


長らく運動をしてこなかったせいもあるだろう。
恭介は息切れをしながら、時には上手く床に足や手が引っ掛からず無様にカエルのようにのた打ち回っているようにしか見えなくても、それでも確実にクロに向かって進んでいた。


クロ「お前な、足手まといって知ってるか?手も足もまともに動かせねーお前に何ができるって?寝てりゃいいんだよ」


しかし、クロは恭介に厳しい言葉を投げつけるだけだ。
実は、確かにクロは恭介を試した。
しかし、それはさやかの危機に対してどんな態度をとるかを見るためのもので、まさか恭介が「一緒に行く」と言いだすとは思ってもいなかったのだ。


故に、クロは今現在苦虫を噛み潰したような顔をしている。


クロ「お前がここにいれば、さやかを連れて戻ってきてやるからよ」


少しだけ、子供に言い聞かせるような物言いでクロはなんとか恭介を病室に置いていこうとするが。
そうこうするうちに、恭介はクロに手を伸ばせば届く距離まで来ていた。


恭介「はぁ、はぁ、おかしいですね……クロさん、言ったでしょ」


息切れを起こして、顔を赤らめ、途中で唾を飲み込みながら彼は言った。
少しだけ、ニヤリと笑いながら。


恭介「僕の行きたい場所に、連れていってくれるんでしょ?」


その得意気な顔に、クロは舌打ちを打った。
どうやら抜かった、詰めが甘かったようだ。


クロ「後悔すんなよ?」


そして、クロの腹も決まった。
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/11(木) 00:36:56.32 ID:uMvngx8DO
────見滝原総合病院・受付


広いロビーには、今日も病院に用がある沢山の人が椅子に座ったり、うろついたりしている。
看護婦の一人はそれを見て、誰にも気付かれないようにため息を吐いた。


心中では、今日もこんなに人がいると嘆いていたり、はやく月末のコンパの日になれば良いのにと愚痴っていたりと荒れに荒れていた。


故に、突然風のようにロビーを駆け抜けていった一台の車椅子に彼女は凄まじく反応した。


看護婦「コラァっ!!そんなスピードで車椅子を走らせる馬鹿がいますかぁ!!」


「すみませーん、すぐに帰りますんで!」


と、気の弱そうな声が、さながら救急車のドップラー効果のように遠ざかっていった。
というより、あの車椅子に乗った少年はどこかで見た事があるような。


そして、最も気になるのは車椅子の下に張り付いていた影───あれは、確か


看護婦「猫?」


首を捻っても口からは答えはガチャポンのようには出てこない。
しかも、考えれば考えるほど、なんだか、こう。


看護婦「主任、今日はもう帰っていいですか?はい、疲れてるみたいなんです。幻覚が」
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/11(木) 00:37:57.60 ID:uMvngx8DO
今日は以上です。次は昼頃から投稿開始です!


一応日付けは変わっているので、また今度!
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/10/11(木) 00:58:22.68 ID:BdS1AQYAO
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/11(木) 01:32:01.56 ID:bzN8WR4F0
乙。
今更何だがクロが原作より物を破壊するのが少ないのは魔女がいるからだよなあ
頻繁に現れるからトラブルを起こすヒマもないほど忙しい
結界の中でいくら暴れても街には全く影響がない…破壊のプリンスにはある意味、最高の環境かもしれん
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/11(木) 12:38:39.23 ID:uMvngx8DO
その猛スピードで走る車椅子は、土煙を上げながら住宅密集地を駆け抜けていた。


恭介「わっ、わ、わ、わ」


ガタンと激しい揺れが身体を上下に振り回す度に、恭介はなんとか身体をその衝撃に合わせて身体を動かし、車椅子から振り飛ばされないようにする。
念のために備え付けのシートベルトを腰に強く巻いているが、それでも不安感は拭いきれなかった。


恭介「で、でもクロさん!厄介事って結局なんなんですか!?」


大声を上げて、後ろの方で車椅子を押しているであろうクロに声をかけた。
耳元で風が横切る音がひっきりなしに聞こえる。
普通の音量では自分の声など掻き消えてしまうだろう。


クロ「厄介事は厄介だ!後悔しねーつったのはお前だぞ!?腹ぁくくれよ!!」


苛立ちと、威勢の良さが込められた叫びが返ってくる。
彼の態度や急いでいる様から、さやかに確かな危機が迫っている事を感じ取れる。


恭介「さやか……」


クロ「けっ、いっちょ前に心配とかしてんじゃねーよ!!役立たずのくせしやがって!!」


自分の呟きはどういう訳かクロには筒抜けだったらしく、わざわざ聞こえやすいようにと返事は大声である。


クロ「根性は認めてやるけどな」


恭介「えっ、今なんて」


クロが何かを言った気がしたが、恭介は聞こえなかったらしく、クロもまた二度も言う気はない。


クロ「黙ってな、舌噛むぜ!?」


グンっと、またスピードが上がった。
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga saga]:2012/10/11(木) 13:41:35.10 ID:uMvngx8DO
恭介「あのっ、もう少しゆっくり行けませんか!?僕は大丈夫ですけどこの子達がっ!!」


恭介の両膝には子猫が必死になってしがみ付いていた。
彼らは振り落とされまいと、爪をズボンを越えて太ももにまで食い込ませており非常に痛かったが気持ちは理解できる。


クロ「そいつらは鍛えてんだよ!───それにもうそろそろ着くぞ」


そう叫ぶと、突然車椅子のスピードがガクンと落ちた。
随分と無茶なブレーキをクロはかけたらしく、その反動としわ寄せは一気に座っている恭介を襲った。
上体が前のめりになり、シートベルトで腹部が締め付けられ激しい圧迫に痛みが走る。
咄嗟に恭介は、右腕を使い子猫二匹を一気に抱き締め、なんとか彼らが弾き出される事を防いだ。


恭介「痛っ、だ、大丈夫?」


どうにか車椅子から振り落とされずに済んだ恭介は、急いで腕に抱いた二匹の猫を見る。


かぐら『きゅう〜……』


ほむら『ニャー(もう少しで脳ミソ吐くところだった)』


二匹とも目を回してはいるが無事らしい。
しかし、鍛えている訳ではない事は明白だった。
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/11(木) 21:21:57.52 ID:uMvngx8DO
車椅子が止まった場所は、普段よく見るような住宅街の中であった。
よく見ると言っても、中々病院の外には出ない恭介にとっては久方ぶりの光景ではあったが。


クロ「臭いは、ここだな」


やれやれ、とボヤキながらクロは辺りを歩き回り始めた。
恭介は、ただ黙ってその行為を端から見ている。
その周囲を見回しながら、ただ見える物に目を向けるのではなく、その見える物の向こうまで覗かんとする眼光に、彼は物を言えなくなってしまったのだ。


クロ「間違いねー、さやかの臭いはここで途切れてる。ってこたー、もう結界の中かよ」


頭をガリガリと掻きながら彼は佇んだ。
恭介はその様子に少しヤキモキとしだしてきた。
彼の言を借りるなら、今こうしている間にもさやかが厄介事に巻き込まれているかもしれないのに。


早く、早く合わなければ、会って、会って?


恭介(僕は、さやかに会ってどうしたいんだろう?)


一つの疑念が湧いた。
ここに来ることと、これからさやかに会いに行くこと。
その事自体にはなんの迷いもない。
しかし、彼女に会ったその時の自分の為すべきこととはなんなのだろうか。
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 22:02:10.69 ID:uMvngx8DO
「中に行くというのなら手を貸すわ」


クロ「あぁ?」


突然、背後から声は聞こえた。
透き通るようで、重く鋭い響きを持ったその声の方にクロは顔を向ける。
恭介は、身体の自由があまり効かず、なんとか首の捻りだけでその声の主の姿を見た。


その黒髪の少女、暁美ほむらの姿を。


クロ「よう、お前身体はいいのか?」


ほむら「えぇ、どうせ退院の手続きなんてまともに取れないもの。抜け出してきたわ」


恭介にしてみたら、中々に理解し難い言葉を言いながらほむらはクロに近づいていく。
途中、少しだけ彼女から視線を向けられたがそれも一瞬だけ、すぐにほむらという少女はクロを見た。


自分に向けられたその視線の冷たさを考えると、彼女のクロに対する温かさと柔らかさは別人のように感じられるレベルである。


恭介「あの、クロさん……この方は?」


クロ「あぁ、暁美ほむら。今どき風の魔女っ娘だ」


ほむら「魔女っ娘ではない、魔法少女よ。断じて違うわ」


クロの適当な紹介を軽く受け流すほむらであったが、恭介にとってはそんなに簡単に無視できるはずがない単語があった。
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 22:51:15.26 ID:uMvngx8DO
恭介「ま、魔法少女?何ですかそれ……、厄介事って一体……」


ほむら「黙りなさい」


疑問点を解決したい恭介は声を張り上げてほむらに向かって質問するが、彼女はそれを一言で切り捨てる。流石に、恭介もそれ以上は言葉を続けられず、なんだかよく分からないうちに「ごめんなさい」という謝罪までしてしまった。


そして、ここぞとばかりにほむらは畳み掛けようと口を開く


ほむら「大体、貴方に説明した所でどうなると言うの?足を引っ張る前に帰りなさ、キャンッ!?」


が、突然彼女の身体が沈んだ。
いや、いきなり膝が曲がり身体がバランスを崩しただけのようである。


膝カックンという奴だろうか、まだ元気だった頃に学校で流行っていたあれをクロがハイキックをほむらの膝裏に食らわす事で再現したのだ。


クロ「アホな事言ってんじゃねー」


驚きとある種の抗議からか、うーと唸りながらほむらはしゃがみこんでクロを睨んでいる。


ほむら「だってそいつのおかげでどれ程苦労したことか……」


呟きは、恭介には聞こえなかったがクロにはよく聞こえた。
事情も理由も分からないが、ほむらは恭介を嫌っているようだ。

574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:24:35.13 ID:uMvngx8DO
しかし、そこまではクロも関わるつもりはなかった。
自分はお人好しでもなければ、便利屋でもないのだから、というのがクロの言い分だろうか。


クロ「そろそろ行かねーと。ヤバそうだぜ」


恭介の焦燥と不安がヒゲにチリチリと焼け付くように嗅ぎとれる。
もう、遊びは無用。
ここからは、本気だ。
拗ねていたほむらも、いつの間にか立ち上がり真面目な顔をしている。


ほむら「じゃあ結界を開くわ。後は、分かるわね?」


クロ「OK、楽勝だぜ。中にいる化け物をぶっ殺すついでに生意気少女を引っ張り出してくるだけの簡単なお仕事だろ?」


ほむらの言葉のほとんどの意味を恭介は未だ理解できていない。
「結界」も「開く」ということもよく分かっていない。
しかし、クロの軽いノリで放たれる不穏な言葉に身体は緊張に包まれた。


ほむら「最後に一つ、忠告するわ」


ほむらが口を開いた。
その忠告という物には、恐らく自分は含まれていないのだろうが、恭介は黙って聞く。


ほむら「お人好しも大概にしないと、あなた、いつか死ぬわよ」


やはり、それはクロに向けられた言葉であった。
忠告ではあったが、その表情からはその真意は読み取れなかった。


恭介「え?」


突如として身体が沈んでいくような感覚が意識ではなく肌を襲ってきた。更に、視界は徐々に闇に飲み込まれようとしており、ほむらの姿が遠ざかっていくように見えた。


クロ「オイラが?冗談じゃねーよ。生きてやるさ、死ぬまでな」


しかし、その異変を意に介さないクロのその言葉と共に、視界は完全に闇に沈んだ。

575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/11(木) 23:38:29.90 ID:uMvngx8DO
少女は、一人残された道の上で顔を伏せたままで呟いた。


ポツリ、ポツリと、雨が雫が落ちるように『─』を流すように。


ほむら「『キッド』は嘘つきだったわ。あなたはどうなのかしら『クロ』」


そして首を振って顔を上げる頃には気持ちは落ち着いたようだった。


ほむら「私には、私のするべき事がある」


そう言って、その姿は消えた。




次回予告


さやか「私は、選びたいんだ!」


恭介「掴み取ってみせるさ!僕の生きる僕の明日を!」


クロ「マタタビィィーー!!」


さやか「決めたよキュウべえ──」



次回 さやか編 完結


今日の投稿は以上になります。
読んでいただきまして、ありがとうございます!
そして、お疲れ様です!
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 00:54:35.43 ID:JlZgHBp30

この流れだとさやかは契約しなそうだけど、その場合魔法少女の真実とかどうするんだ?
杏子だけで話を進めてもすぐ終わっちゃいそうだし織莉子達を乱入させるのかな?
クロはまだ魔法少女とも戦っていないしヴァイス戦のようなギリギリのバトルが見たいところ
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 05:06:38.39 ID:6QGICHxDO
臭いじゃなく匂いじゃね?この場合
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/12(金) 13:05:28.89 ID:VPvfAYcDO
恭介「ここは、一体……?」


惚けたように吐いた息は、知らず知らずに自らの脳裏に浮かんだ疑問文を読み上げた形になった。
眼前に広がるその世界は、未知の闇と未開の光が広がる荒唐無稽な無秩序な光景で埋めつくされている。


美術の本に載っている『シュール・リアリズム』そのものである。
そして、足下には遥か下方へ伸びる一本道があった。


クロ「んじゃ、行くぞ!」


ガクンっと身体が後ろに引っ張られる感覚がする。
またもや、クロが車椅子を押し始めたようだ。
風を切る感覚には爽快感はなく。
ただひたすらに闇の中に飛び込んでいくだけの言い様のない不安があった。


恭介「ク、クロさんっ!」


クロ「なんだ?これ以上のサービスは扱ってねーぞ!!」


クロの絶叫が聞こえるのとほぼ同時に、恭介の背中で激しい火花と破裂音が響いた。
驚きから反射的に顔を前に向ける。
しかし、そこには更なる驚愕があった。


『───────!』


『───────!?』


異形、それだけで十二分なほど説明がつくであろう者がそこにいた。
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/12(金) 13:24:06.61 ID:VPvfAYcDO
恭介「うわああああっ!?」


大量の化け物達が、一度に飛び掛かってくる。
まるで、自分を覆い隠そうとするように。


恐怖、驚愕、嫌悪、絶望、それら全てを絶叫に塗りこめても足りない。
それだけの感情が一度に湧き、パニック状態に陥りかける。


何とかして、逃げたい。


ここから、逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい!!


クロ「うるせえ、突っ切るぞ」


さっきよりも長めの激しい銃声と、妙にはっきりと聞こえたクロの言葉で恭介は自分を取り戻した。
そっと瞼を開くと、そこにいたはずの化け物達はすでに消え去っていた。


少し、気になって身体を捻って後ろを見ると、体全体を使って車椅子を押しながら左手に何か銃火器のような物(先ほどの音から想像するにガトリングのようなものだろうか)を取り付けたクロがいた。


クロ「くっそ!片手がねーのはもうウンザリだっ!!これが終わったら絶対なんとかしてやる!」
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 13:56:27.89 ID:VPvfAYcDO
目の前にいるのは得体の知れぬ化け物で、後ろにいるのは底の知れぬ黒猫で、恭介は自分が今巻き込まれている世界の特異性を思い知り戦慄きながらも、どこかで眠っていたところを起こされるような感覚を抱いていた。


銃声が鳴り響き、異形は霧散する。
その世界を、今、自分は直進しているのだ、どこにも行けなかった自分が。


恭介(後、少しだ。後少しで僕は掴める。掴めるはずだ)


何を?────それは


クロ「見えたぞ、扉ぁ!!」


恭介「えっ?」


恭介の思考はクロの叫びにより途切れる事になってしまった。
目の前に突如として現れたと言った方が正確だろう。
ここまでの道順などあってないような物だったからだ。


そのおあつらえたような扉は、自分達を待っていたように開いた。


──────住宅街


ほむら(もうそろそろ、最深部に着いた頃かしら?)


結界の外で佇みながらほむらはあの時のクロの表情を思い出していた。
ある程度は、余裕を持って行動する彼があそこまで急いでいるところを見ると、早々に魔女の所までたどり着きそうである。


ほむら「はぁ」


巴マミの次は、まどか、更には美樹さやかに上条恭介と、彼のお人好しは最限がない。
ため息だって出るというものだ。
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/12(金) 18:23:03.02 ID:kTDiYhXV0
>ほむら「だってそいつのおかげでどれ程苦労したことか……」

悪いのはさやかちゃん!上条君はそこまで悪くないよ!


とある安価スレの影響で恭ほむを考えている俺にとっては少し嫌な発言 ボソ
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 18:37:41.82 ID:JlZgHBp30
さやかってそんなウザイかあ?
チエも似たような感じの性格だったじゃないか。クロちゃんに出てくる女キャラも似たようなもんだろ
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/12(金) 18:43:12.27 ID:kTDiYhXV0
ssじゃ、原作より三〜四割増しされているからなぁ。自分勝手さが
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 19:25:08.34 ID:JlZgHBp30
俺はいいと思うけどね。こういうクロに反発する役回りの奴も必要だろ
だからこそクロがどう対応するのかが見物なわけで
今の所はそこまでアレな事はしていないだろ問答無用で攻撃とかさ
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/12(金) 20:49:54.81 ID:VPvfAYcDO
彼は明らかに関わりすぎている。
この世界、この時間でも、その行動原理は変わらない。


それでいて、予測はつかない。
かつて経験した『最悪のハッピーエンド』はその中で生まれた。


だからこそ


ほむら「やりとげてみせる」


言葉に出して、自らを奮い立たせる。
今度こそ、これは最後のチャンスなのだ。


「ほむらちゃーん!!」


思考と記憶の渦に飲み込まれかけていた自意識が、その声に反応した。
顔を上げると、道路の向こうから駆け寄ってくる人物がいた。
鹿目まどかである。


まどか「はぁっ、はぁ、いい、良いところに」


肩で息を繰り返し、あばらの辺りが痛むのかしきりに押さえている。
どれだけの距離を走ってきたのか、それとも単純に体力がないのかは分からなかったが、とても喋れそうな状態ではなさそうだ。
ほむらは、問を待たずに答えだけを告げた。


ほむら「美樹さやかなら、魔女の結界に閉じ込められたわ。今、クロが助けに向かっている」


586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/12(金) 21:19:40.25 ID:VPvfAYcDO
まどかの顔は、ジェットコースターのように青ざめてから少し落ち着きを取り戻していくという変化を見せた。


まどか「そ、そんな事に……。でも、一応クロちゃんがいるなら安心かな」


安堵の表情を浮かべるまどかに、それこそほむらもまた安堵した。
彼がいると、まどかの動揺も押えられる。


まどか「ところでほむらちゃんはどうしたの?また足手まとい?」


何故だろう、どういう因果でこんな事を言えるようになったのだろう。
クロの影響か、はたまた『幾度となく繰り返した末に起きる偶然』の一つなのだろうか。


取り敢えず無言で、まどかのこめかみを両手の拳骨でグリグリと押さえ込む。


まどか「にゃああああっ!」


ほむら「あら?おかしいわね。某クレヨン五才児でもこうしたらごめんなさいできるのに、あなたからは猫の鳴き声が聞こえる」


押すとこ間違えたかしらと、さらに押さえ込む。
悲鳴のレベルが一段と上がった。


「へぇ、楽しそうだね」


成長期に入る前の少年のような中性的な声がほむらの耳の鼓膜に響いた。
不愉快な思いが増す。


ほむら「えぇ、だから邪魔しないうちにとっとと消えてくれるかしら。キュウべえ」
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/12(金) 22:13:26.45 ID:VPvfAYcDO
扉を開いた先にはぽっかりと開いた空間があった。


恭介「子供、部屋?」


果たしてそれは恭介の見立てた通りであった。
その空間には、そこら中に子供がクレヨンで書き殴ったような落書きがちりばめられている。
そして、大小様々な積み木が積み重ねられており、城の形を型取ったもの、適当に積み重ねられたものがあった。


その様は、玩具の牢獄。

クロは恭介の車椅子に駆け上がり、ひじ掛けの上に飛び乗り、感覚を研ぎ澄ませる。


クロ「いた。生きてるぞ」


クロの声、そして視線の向く先に集中する。
そこにあったのは、積み木の塊。
その陰から、一人の少女が飛び足してきた。


恭介「さやか……さやかっ!?」


クロに口を押えられる。
慌てて彼の顔を見ると、黙れと目で合図を送られた。
血相を変えたさやかは気付かずに目の前を走ってる。まるで、何かから逃げているように。


クロ「団体さん、来るぜ」


その声がまるで合図だったかのように、さやかの背後の積み木の山が弾けるように吹き飛んだ。
まるで遊びに飽きた子供が蹴り飛ばしたかのように、乱雑な軌道を描いて巨大な積み木があちらこちらに飛び散っていく。


恭介「あれは、さっきの!!」
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/12(金) 22:28:11.61 ID:VPvfAYcDO
先ほどは、そんな余裕などなかったため、姿をよく見る事はしなかった───確認する前にクロが倒していた事も原因の一つだったが────のだが、今ではその全貌を知ることができる。


その一つ、一つは形が違うが、小さな子供のような形をした人型が玩具の飛行機や機関車に乗せただけの粗雑なデザインをしている。
もはや、それ自体が子供の落書きその物のような。


大量のそれが、今まさに、さやかを飲み込もうとしていた。
もしあれが、さやかに辿り着いたらどうなるのか?
考えたくもなかった。


さやか「きゃああああ!」


クロ「行ってこい!!」


考える暇もなかった。


恭介「へっ?」


激しい衝撃と共に、車椅子はもうスピードで動き出した。
どういう事なのかは恭介には分からないが、クロには分かっていた。
彼が全力で蹴り飛ばしたからである。


恭介「うわああああああ!!」


徐々に近付くさやかの姿、その絶叫に彼女も恭介に気付く。
「あっ!」とも、勿論「どうして」とも言う間もなく少年と少女は追突した。


589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/12(金) 22:53:18.33 ID:VPvfAYcDO
ガチャンッという激しい音が鳴る。
そして、反動で恭介は前のめりに倒れ、さやかに覆いかぶさるようにぶつかった。


それが、互いに強制的に身体を地面に伏せさせるような形になり、目前に迫っていた化け物達は彼らの頭上を飛び越していった。
そして、それらはそのまま『彼』の的になる。


クロ「ヒャッハー!!」


耳をつんざく歓声と、銃声。
小さな爆発音が重なり、最終的には空中から激しい爆風も感じた。


クロ「終わったぜ、お二人さん」


その彼女にとっては今一番聞きたくない声のする方をキッと睨むと、そこには左手にガトリングをつけたクロが倒れた車椅子の上でポーズを決めていた。


さやか「あんたねぇっ、もう、本当に信じられない!どういうつもりなのよ!恭介まで連れてきて」


クロ「ピーチクパーチク、るっせーな。後、その恭介だがお前の貧相な胸で溺死しかけてんぞ」


「何を!」と食ってかかろうとした彼女だったが、気付けば確かに恭介はその顔をさやかの胸に埋めていた。
身体の自由が効かない彼は先刻からずっとそのままだったようである。


さやか「ひゃああああ!?」


慌てて恭介の肩を掴んで離す。
現れたその彼の顔は全体的に真っ赤であり、鏡を持っていないが分からないが自分だって同じくらい赤い事は分かった。
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/13(土) 02:18:27.32 ID:ZUeHd6nDO
クロ「お二人さん、ラブコメってんのは良いけどよー」


倒れた車椅子に腰を下ろしたクロはケタケタ笑いながら二人に野次を飛ばした。
本人は実に愉快そうに小馬鹿にした態度に出ているが、さやかにしたらたまったものではなく、キッと鋭い眼光をクロに向ける。


さやか「うるさい!あんたには言いたい事があるんだ」


クロ「後にしろよ。先客だ」


相も変わらずニタついた顔のままだったがその視線はさやかを見てはいない。
クロから見て前方、自分たちの後方に顔を向けた。


さやか「アイツは……魔女っ」


恭介「魔、女?あれが?」


さやかは奥歯を噛みしめ、恭介はまた新たに聞いた単語に目を丸くするばかりである。
彼の中にある『魔女』というイメージにそれは合致する事はなかったからだ。


そこにいた『それ』は、あくまで少女の形をしていた。
少女という線の中に、狂ったように色彩を放り込んだというべきだろうか。


その少女に近い何かはうずくまって、地面に何かの絵を描いていた。
一心不乱に、いや、もはやそれは心乱れるほどと言ってしまえるくらいに。
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 10:08:55.86 ID:scZ+dQNW0
おお。まどポで出てきた「落書きの魔女」じゃないか
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/13(土) 15:11:55.92 ID:ZUeHd6nDO
クロ「どっか隠れてろ」


さやか「ちょっ、あんた何を勝手に、ってうおっ!?」


邪険に扱われることにはっきりと抗議をぶつけようとしたさやかに、それを遮るように二つの小さな影が山なりに飛んでくる、子猫達である。
慌てて、さやかは彼らを両腕で出来るだけ衝撃を吸収できるように捕まえた。


さやか「あぁっ、もう!」


確かにあの黒猫は嫌いだが、この子猫とましてや恭介を自分の意地に巻き込む事はさやかも良しにはできない。
彼女は持ち前の決断の早さで猫達を左腕に抱き、右肩でグイッと恭介の動かない左側の身体を支えるように肩を抱いた。


恭介「あ、ありがとう、さやか」


さやか「ううん、ごめんね。こんなことになっちゃって」


お互いに申し訳なさそうな顔をしている。
恭介にとってはさやかに伝えたい事があるのに、今はそれどこれではなくなってしまった。
ただ、黙って恭介は左半身をさやかに支えられながらその場から一歩、また一歩と離れるしかない。


またもや、自分の力の無さを痛感するばかりだ。
クロを背中に置いて、さやかに連れられて歩きながら奥歯を噛みこむ、痛いほど。
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage sage]:2012/10/13(土) 21:13:12.67 ID:t3yAsnwT0
>>557>>558
かずマギの4巻とTDS買ってきたけど、サキと里美はどうにかなりそうな気がする
里美のあれは追い詰められすぎて、ああなった感じだから
説得するなり止めるなりして支えて上げればどうにかなるのでは?ミーくん猫だし
サキも実際はかずみを[ピーーー]事にかなり迷っていたみたいだし…親しくなるとみらいに闇討ちされそうだけど
ただ問題はミチルの蘇生の件をどうするかだけどさ。剛くんやコタローでも死んだ命を蘇らせる事は不可能なんだし…
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 21:43:53.07 ID:9f1uS09DO
ミチルもかずみのように複製された皮と魔女の血肉で復活したみたいにsおや?誰かきたようだ
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/13(土) 21:50:27.41 ID:BheRy7vD0
この際、時空を飛び越えて過去にいけばいいじゃないか。異世界に行った事もあるし
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/13(土) 21:54:54.36 ID:ZUeHd6nDO
クロ「さぁて、待たせたな」


ゆっくりと腰を上げて、車椅子の上から悠然と魔女を見下ろす。
未だ顔も上げずに熱心に落書きを繰り返す魔女、しかし残念だが今はこっちに付き合ってもらおう。


クロ「遊ぼうぜー?」


迷いなく構えられたガトリングが火を吹いた。





─────住宅街


キュウべえ「やれやれ、やっぱり間に合わなかったか。毎度毎度、君の妨害には手を焼かされるよ……暁美ほむら」


その白い影は、どこから現れたのか、いつからそこにいたのかは分からない。
しかし、それを考えるのは『これ』にとっては全てが無意味だった。
ほむらは、考える事は諦めている。
いつだったか、これを説得しようとした事もあったが、今なら文字通りの嘲笑い話だ。


まどか「キュウべえっ、今までどこ行ってたの!?大変なの、さやかちゃんが魔女の結界にッ!」


まどかの必死な叫びは、沈痛極まりない響きを持っていた。
悪ふざけをしていても友達が一人危険な目にあっているのだ、クロという保険があったとしても心配にもなるだろう。


ほむら(大丈夫、理解できる。落ち着け、誤るな。目の前の事に集中しろ)
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/13(土) 21:56:27.59 ID:t3yAsnwT0
無理だろ。魂がミチルのではないんだし
それにクロやミーくんの場合、まだ瀕死の状態だったからサイボーグになっても本人そのままだったんだし
ゴローの場合も咄嗟に魂をタコメーターに移し替えたんたから成立したわけで
本当に死んだ命はどうにもならない
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/13(土) 22:27:20.71 ID:t3yAsnwT0
>>595
かずみ本編が始まる前に…って言うなら可能かもしれないが
ほむらの願いのように過去に戻るっていうのはなあ…
そしたらかずみはどうするの?ってなっちゃうしで…酷だけど、やはり現実を受け入れさせるしかないんじゃないかな
クロやマタタビだって過去は過去だと割り切ってるだろうし、出来てもたぶんやらないだろう
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/13(土) 22:44:17.84 ID:ZUeHd6nDO
QB「まどか、ボクだってさやかを助けたいのは山々なんだけどね、暁美ほむらは許してくれないんだ。さっきから邪魔ばかりしてくるんだ」


彼の言葉が信じられないのか、自分が信じられないのか鹿目まどかがショックを受けたような顔でこちらを見た。


心が騒めくが関係ない。
一応は、彼の邪魔はさせないために結界内にコイツを入れる事は防ぐ事はできたのだ。


ほむら「助けたい?驚いたわ。あなたも冗談が言えるようになったのかしら、インキュベーター」


まどか「インキュ、ベーター?」


自分の知り得ないキュウべえの名称を聞いたまどかは理解が追い付かないようだったが、当のキュウべえは「へえ」と納得したような声を出した。


QB「うん、キミはどういう訳か『知っている』という事か。理解し難いけど」


真の名前を呼んでみても動じていないようだ。
動揺もなく焦りもない。
まどかには混乱があったが、これはいつもそうだ。
ただひたすらに人の心を掻き乱し、最悪の結果を招く。
あの黒猫とは真逆の存在だ。


ほむら「今回はあなたも仕事はないだろうし、見逃してあげるわ。だからとっとと私の視界から消えなさい」


600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 23:06:20.24 ID:scZ+dQNW0
そういえばQBはクロと色が正反対だな
色だけじゃなく口調、感情、役割、行動面etc.etcあらゆる意味で対極だな
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/14(日) 01:17:58.86 ID:hmV8JwfDO
QB「そうだね、残念ながらボクはこの中には手を出せない───でも、『ボク』ならどうかな」


妙な言い回しにまどかは完全についていけないが、ほむらは歯噛みする。
自らの思慮の浅さをめたくそに殴り付けてやりたい気分だった。


ほむら「まさか、あなたッ……」


QB「準備はいくらでもしておくべきだよ。この世界の初等教育で学ばなかったのかい?一足先に入り込まさせてもらったよ」


捨て台詞ではない、完全なる勝ち名乗りを残すような形でキュウべえはコンクリート堀の向こうに一足で飛び越してて消えた。


ほむら「待ちなさいッ!」


その姿に黙っていられなくなったほむらは追い掛けようとしたが袖を掴まれ、その身体は後ろに引っ張られた。
思わず睨むようにその手の主を見れば、鹿目まどかもまたこちらを睨んでいた。


ほむら「離しなさい。今はあなたに構ってる暇はない」


まどか「嫌だ」


強気な態度と真っ直ぐな瞳に気押される。
いつの間に、こんな顔ができるようになったのだろうか。


ほむら「……当然ね。私の事なんて信用できるはずがないわ」


当て付けのようになった
その言葉は、もしかしなくてもまどかを傷付けるかもしれなかった。
しかし、しっかりとまどかはそんなほむらを見据えていた。


まどか「そういう事じゃないよ。でも、どういう事なのかは知りたい」


602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/14(日) 13:06:00.67 ID:hmV8JwfDO
まどか「ほむらちゃんの目的は何?どうしたいの?私はそれが知りたい」


まどかは、ただ知ろうとしていた。
いくら彼女に近付くために無理矢理にからかったところで本当の理解には足りないのだ。
だから、ここでこの手を離してはいけない。
自分には知らなければいけないことがあるのだから。


その言葉を聞いた暁美ほむらは驚き、目を丸くしてまどかを見つめた。
しかし、そっと目を伏せて首を振る。


ほむら「……ごめんなさい。今はまだその時ではないの」


まどか「そんな……」


その言葉にまどかは握りしめたその手の力が抜けていく。
ほむらは優しくまどかの手を握り、そっと引き離す。
しかし、その握った手を離すことはなかった。


ほむら「私の事はいつか必ず説明するわ。今は、クロを信じてあげて」


まどか「クロちゃんを?」


それは言われなくても自分はそうするが、どうしてほむらはそんな事を言うのだろうか。
そもそも、彼女はいつだってクロに対して親しみを持っているような気がする。
自分や他人を拒絶する彼女は、クロに関しては全てを受け入れている。


ほむら「あの子はああだから、なんにでも首を突っ込んで最後まで関わろうとするわ。だから、あんまり無茶しないようにたまには叱ってあげて。お願い」
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/14(日) 19:57:33.86 ID:hmV8JwfDO
まどか「ほむらちゃん…?」


ほむら「ここで待っていてあげて……クロのことを」


まるで昔の文集の感想を述べるような温かい感傷と痛々しいまでの懐古に満ちたその言葉を残して、今度こそほむらは駆けていった。


まどか「……」


その背中を、まどかはただ見つめることしかできなかった。
そして、ここにいても自分にできる事は『クロを信じて待つ』『さやかの無事を祈る』という事だけである事が無性に切ない事のように思えて、胸の辺りにそっと手をやった。


まどか「……お願い」


誰に願ったのだろう。


でもそれが神でない事だけは確かだった。


─────結界内


クロ「死ねぇぇぇぇ!!」


基本的には、死んだような沈黙を保っている魔女の結界という空間であるが、今はとんでもなく野蛮な暴言と、激しい銃声が響き渡っている。


クロの放ったガトリング弾は空気を引き裂きながら直進し目の前にそそりたつ巨大な積み木の山を粉々にした。
破片が降り注ぐも、クロは構わずその崩れる積み木の山を睨み付けている。


クロ「ちっ、外れか」


やがて、ガトリングの狙いと視線を外し周囲に注意を巡らせる。
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/14(日) 20:15:33.54 ID:hmV8JwfDO
クロ「魔女とかくれんぼかよ。こーゆう悪ふざけは宇宙人だけにしとけっつーの」


グルリと周囲を見回しながら、それでもしっかりとクロは悪態を吐く。
戦闘を開始しようと魔女に近付いた瞬間に、魔女は自分の気配に気付いたのか落書きを止め、大量の積み木がアートのように積み重なった場所に消えた。

逃げたのかと思い後を追い掛けたが、どうにも違うらしい。


『───────!!』


声が聞こえる、周囲に広がる積み木の山の何処かからか響き渡る笑い声。
子供がイタズラを仕掛けた時、それに引っ掛かる大人を見て喜ぶような邪気の無い声、それ故にこの状況の悪意は比例していく。


クロ「そこかッ!」


真横から感じたザワザワとした気配に銃口を向け、またもや一つの山を撃ち崩しすも、そこに居たのは魔女ではない。
大量の使い魔であった。


『──────!』


まるで『残念、ハズレでした!』とでも言うような、さっきよりも一際大きな笑い声が聞こえる。


ひどく、カンに触った。


クロ「こ、なクソォォォッ!!」


飛び掛かってくる使い魔に向けても大量のガトリング弾を発射する。
向かってくる使い魔達は、皆一様に笑いながら、子供のような歓声を上げながら一匹残らず撃ち落とされた。
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/14(日) 21:07:23.19 ID:hmV8JwfDO
クロ「ゼェ、ゼェ、ゼェ。ちっくしょう、舐めやがって」


バタバタと撃ち落とされて墜ちていく使い魔を見ながら乱れた息を整わせる。
疲れてなければ歯を食い縛っているところだが、息をするために今は開けっ放しにしなければならない。


このまま、考えなしに弾丸を撃ち続けたところで単なる弾の無駄であり、もはや本当に残りの弾数は少なくなっている。
今ここで馬鹿みたいに撃ちまくるのは得策ではない。

必要なのは、頭を使って撃ちまくることなのだ。


自分を取り囲む積み木の山、どこからともなく聞こえる笑い声。


見えないなら、見えるようにすればいい。
邪魔な物があるなら、ただ退ければいい。


クロは、ガトリングを左手をプラプラと振りながら地面に投げた。
別に捨てる訳じゃない、今これからする事には必要ないだけだった。


クロ「遊びは、終わりだあぁぁッ!!」


高めに高めた気合いを爆発させるが如くクロは激烈たる叫びと共に身体中に備えられた砲門を開き、ありったけのミサイルを発射した。





先の銃撃とは比べものにならない程の火炎と爆風が巻き起こった。
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/14(日) 22:19:26.32 ID:hmV8JwfDO
さやか「きゃああああっ!?」


恭介「うわああああっ!!」


かぐら『荒れてるねー』


ほむら『アイツには加減ってものはないのかよ』


人間二人の悲鳴と、彼らには理解はできないであろう呟きが大きな岩ほどの大きさをした積み木の後ろから聞こえた。
さやか、恭介、かぐら、ほむらの二人と二匹である。


当初は、少し離れた大量の積み木が置かれている場所から聞こえる銃声や、クロの物とおぼしき声と魔女の笑い声に時折その身体をびくつかせている程度だったが、とうとう起きた爆風と熱風は不安と恐怖を煽るものだった。


さやか「馬鹿じゃないのアイツ!め、滅茶苦茶じゃない!!」


腰が抜けたのか地面にお尻をついたままさやかは動けなくなってしまった。
あんな激しい爆発はハリウッド映画でしか見たことはなく、現実に体感する事になろうとは思ってもみなかったことである。


さやか「恭介ッ!大丈夫!?」


物陰に隠れているとはいえ爆風の煽りは少なからず受けた。
身体のバランスが取れなくなった恭介は地面に突っ伏してしまっている。


恭介「う、うん、平気。ハハッ、凄いなぁクロさんは」


607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 23:22:03.76 ID:JEgO/11w0
      ./       ;ヽ
      l  _,,,,,,,,_,;;;;i  <いいぞ ベイべー!
      l l''|~___;;、_y__ lミ;l  逃げる奴は魔女だ!!
      ゙l;| | `'",;_,i`'"|;i |  逃げない奴はよく訓練された魔女だ!!
     ,r''i ヽ, '~rーj`c=/
   ,/  ヽ  ヽ`ー"/:: `ヽ
  /     ゙ヽ   ̄、:::::  ゙l, ホント 魔女結界は地獄だぜ! フゥハハハーハァー
 |;/"⌒ヽ,  \  ヽ:   _l_        ri                   ri
 l l    ヽr‐─ヽ_|_⊂////;`ゞ--―─-r| |                   / |
 ゙l゙l,     l,|`゙゙゙''―ll___l,,l,|,iノ二二二二│`""""""""""""|二;;二二;;二二二i≡二三三l
 | ヽ     ヽ   _|_  _       "l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |二;;二二;;二=''''''''''' ̄ノ
 /"ヽ     'j_/ヽヽ, ̄ ,,,/"''''''''''''⊃r‐l'二二二T ̄ ̄ ̄  [i゙''''''''''''''''"゙゙゙ ̄`"
/  ヽ    ー──''''''""(;;)   `゙,j"  |  | |
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 23:37:31.29 ID:mN9m8+Bdo
雑談してぇんなら余所でやれよks共
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/15(月) 05:10:53.27 ID:VYkWl39So
初恋の魔女ヒロスエ
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 06:55:26.56 ID:FceyCg1DO
>>609
何そのクリームヒルト・グレートヒュン以上の最強最悪の魔女
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/15(月) 17:21:01.07 ID:HJYENQZDO
地面にひっくり返りながらも困ったように、それでも確かにこんな状況でありかながら恭介は笑っていた。
そんな姿にさやかは戸惑いながら彼を助け起こす。


何故だろう、あの姿を見ても尚、恭介のクロに対する嫌悪は感じられない。


いや、まどかに言ってしまった事を今一度認めなければならないのだろう。


クロに敵がい心は《自分が魔法少女になる、という決断を取りやすくするために無理矢理に敵対心を持っている部分もある事》を、《『願い』の代償に対する恐怖を誤魔化すための行為だという事》を。


そして、そこまでしても気持ちに踏ん切りがつかない事にさやかは恐怖すら抱いている。


恭介を救うという行為をすんなりと行えない自分は、やはりまどかに『ただのワガママではない』と言ったところで単なる見返りを求めているだけではないのか、そんな気持ちのまま魔女と戦う事ができるのか。 そんな考えばかりがさやかの頭の中に巡っていた。


恭介「───さやか、君に言わなきゃいけないことがあるんだ」


と、ふいに身体を支えている恭介がこちらに顔を向けてきた。
至近距離で、しかもかなり真剣な顔でこちらを見つめていた。
緊張で胸が高鳴った。


さやか「な、なに?」


恭介「実は───」


恭介がその言葉を告げようとした時、激しい激突音が彼の言葉を阻んだ。


612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/15(月) 19:23:12.17 ID:HJYENQZDO
その瞬間、確かに障害物は取り払われたはずだった。


クロ「どこだぁッ!?」


その瞬間、確かに舞い上がる土煙の中に動く影を見たはずだった。


クロ「見ーっけ!」


────そして、それは間違いなく目当てにしていた魔女で、腹の武器庫から剣を抜きさりながら飛び掛かって、そうそうにトドメをさせるはずだった。


────足に、何かが絡み付く感覚を感じるまでは。


クロ「んなッ!?」


後、もう数メートル近付けば剣が届く距離に来たのに足が引っ張られた。
右足は踏み込んだままで異変はない、後ろ側に残した左足を見る。


黒い枝のような形をした何かがまとわりついている。


そして、それは凄まじい力で突如としてクロを後ろに投げ飛ばした。


クロ「うわああああっ」


壁に激突するまで、回避や受け身をとる暇など、ましてやそれを考える事すらできない。
無抵抗のまま、己が壁にめり込むほどの衝撃をその背中に受ける事になった。


クロ「がっ、はぁッ!」


あまりの衝撃に肺に溜め込んだ酸素を全て吐き出す。
身体中の筋肉が緩み左手から剣がこぼれ落ちる。
そして、自身も重力に従い壁からズルリと滑り落ちた。
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/15(月) 20:04:33.26 ID:HJYENQZDO
後もう少しだった。
何が自分の邪魔をした?
あの魔女の能力か何かか?
自分は何を読み違えた。

片手をついて身体をお越し、前を睨む。
そして、その光景はクロにとっては驚きだった。


クロ「おいおい、マジかよ」


そこにいたのは隠れんぼで見つかった事でする事がなくなったのか命を落とす寸前だったとも知らず、先程の魔女が落書きをしている。


そして、もう一つ


まるで神に祈りを捧げるような姿をしているその身体は炎に焼かれた人柱の如く真っ黒に染められている。
そして、身体中からは木の枝のよく似た形をした触手が何本も枝分かれしながら生えている。


クロ「……魔女が二匹も出るなんて聞いてねーぞ」


自分は魔女の事などよく分からない。
しかし、これは恐らく十分に異例の現象ではないだろうか。


一つの結界は、一匹の魔女が形作る。
一匹の魔女は、己の世界を一つの結界に投影する。


これは、一体なんだ。


クロ「しかしまぁ、やるっきゃねーよな」


地面に落ちたままの剣を拾いあげる。
戦いはもう始まっているのだ。
今更、敵の数が増えようがどうなろうがそれは、敗北の理由にはならない。


614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/15(月) 22:45:48.34 ID:HJYENQZDO
まだ身体からは痺れは取れていないが、構わず駆ける。
一歩でも早く、二歩目より早く、三歩目の足を踏み込む。


『──────!!』


影のような魔女が、こちらに向かって枝を伸ばしてきた。
一線で両断するも、それだけで終わらずに次から次ぎへと呑み込まんばかりに襲い掛かる触手にクロは徐々に押され始める。


クロ「うおッ!?」


そして、首に巻き付いた触手に身体ごと持ち上げられる。
首から下の全ての部位に走る衝撃の反動で、思わず武器が手から離れた。


クロ「やば、しくじっ──」


そのまま空中に放り投げられた。
身体を包む浮遊感の中、次の一手のためになんとか腹に手を突っ込むも。


『─────!!』


まるで子供がはしゃぐような声が聞こえたと思ったら浮いた身体を掴まれた。
飛行機のプロペラが回る音がして、これはあの落書きのような使い魔だと知る。


クロ「うおッ?おおおお!?」


アクロバット飛行のまさにそれだった。
空中を一回転しながら使い魔はそのまま地面に直行していく。


クロ「マズい!マズい!!マズいって!!!」


空中では喚いても、もがいてもどうしようもなく。
抵抗もできないまま地面に叩きつけられた。
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/16(火) 21:32:00.63 ID:unD+rQ9M0
乙。続き待ってるぜ
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/17(水) 14:21:37.14 ID:FC2nmbwDO
『─────』


下半身がおもちゃの飛行機の使い魔が、自分の勝利を無邪気に喜び地面に倒れたまま動かないクロの頭上でクルクルと飛び回っていた。


まるで、幼児が大人を相手にしたプロレスでの勝利を誇っているようなケラケラと喧しい笑い声が──────


『────!?』


────────突然、黒い小さな手が伸びてきて、使い魔の首を握りしめた事により止まった。


クロ「ケタケタやかましいんだよ……人の頭の上で」


クロがゆっくりと立ち上がる。
多少、身体に負荷がかかったものの戦えない程のダメージではなかった。
しかし、それでも随分とサンドバックになってしまったものだ。
沸き上がる腹立たしさから腕に中にいる使い魔を渾身の力で握り、締め殺した。


騒いでいたソレは、大人しくなりクロの手の中で霧散する。
しかし、まだだ、まだ足りない。
コケにされた事も痛め付けられた事も、この落とし前を付けなければ一生の悔いになる。


クロ「つっても大分面倒だけどな」


自分の欠けた右腕を見やる。
なるほど、雑魚相手ではない戦いになると厄介な事この上ない。
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/17(水) 20:51:34.45 ID:v8V71O//0
>>1は劇場版まどマギやハノカゲのTDSは見たの?
それから杏子とマミさんの関係はフェアウェルを下敷きにしているのか?
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/17(水) 21:24:48.61 ID:FC2nmbwDO
クロ「……よし、楽勝だ。二本あるうちの一本だろ?ハンデにもなりゃしねー」


さっきから身体が痺れている。
受けた一撃一撃が重かったせいだろうか人工筋肉や関節あたりが軋む。


しかし弱音は口に合わないし、手を抜くのは柄じゃない。
やるしかないのだ自分は。それに、今はただの戦いじゃない。
恭介、さやか、かぐら、ほむら───彼らをここから生きて帰す、そこまでやらなければならない。


クロ「ホント、飽きねーなここは」


虚勢を張れ、余裕を取り繕え、弱音には唾を吐け、言い訳は踏み躙れ、生きる事を諦めた奴は死ぬ、生きる、生きる生きる生きる生きる生きる生きる生きる。


クロ「オイラは、負けねー!!」


荒い息を吐き、強い意気を撒き散らしてクロはその一歩を踏み込んだ。
前へ、ただそのスピードだけが、己の力を表す。
走りながら胸の中に腕を突っ込んで新たな武器を抜き出す。


クロ「食らえよ、取って置き───ッ!?」


が、どこからともなく伸びてきた触手がまたしてもクロの腕を鋭く弾いた。
せっかくの取って置きは出番の時もなく、何処に飛んでいく。


かなり、ヤバかった。
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/17(水) 22:03:34.18 ID:FC2nmbwDO
ほむら『おい、アイツかなりマズいんじゃないのか!?』


かぐら『……』


二匹は、積み木の物陰から多少びくつきながらもクロの戦況を見守っていた。
最初の化け物を相手にしていた時、まだ彼は勝機を逸してはいなかったが、今の二対一の状況では大変な苦戦を強いられていた。


黒い触手による、息もつかせない程の攻撃をなんとか掻い潜るのがやっとのようだ。


かぐら『───ッ!!』


それを見ていたかぐらは、突然駆け出した。
それも壁の前の方へと。
慌てて、その後を大急ぎでほむらは追う。


そして、その背中に飛び掛かってかぐらを地面に押さえ込んだ。


かぐら『離して!離してよほむら!!』


ほむら『ふざけるな!お前があそこに行ったところでどうなるんだよ!?』


押さえ込まれながらも必死で身体をよじり、さらには地面に爪を食い込ませて彼女は前に進もう進もうとする。
しかし、ほむらもほむらでそれをなんとか防ごうと渾身の力を腕と足に込めた。


かぐら『お兄ちゃんに武器を持っていってあげなきゃ……、急がないと』


ほむら『バカッ、危険だ!あんなところに行ったらただじゃ済まないぞ!?』
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/17(水) 22:21:39.40 ID:FC2nmbwDO
かぐら『お兄ちゃんはボクを助けてくれんだ!だから今度は』


ほむら『足手まといになるだけだ!お前なんかに何ができるんだよ!?』


叫び合う二匹の想いは平行線のままだった。
かぐらをクロを想い、ほむらはかぐらを想う。
そこにあるモノの重みや意味合いはどれも同じではあったが、そうであるが故ににベクトルが違えばそれは反発しあうだけだった。


かぐら『……バカ』


ほむら『え?』


かぐら『ほむらのバカバカバカァ!弱虫!!もう知らない!!』


その言葉の全てが幼いほむらの心を抉る。
ほむらにしたら、自分の大切な妹分を守りたいというそんな想い一心で、他にはなんの他意もなかった。
この瞬間は、かぐらから絶大な信頼を得ているクロに対する少年としての嫉妬心も彼女に言われたような臆病もない。


それなのに、かぐらからぶつけられた罵詈雑言は彼を茫然自失とさせてしまった。


さやか「あっ!こら猫ちゃん!?」


時間に換算すればほんの一瞬、しかし確かにほむらの身体から力は抜けた。
その隙を見逃さず、かぐらはほむらを蹴り飛ばし駆け出していった。
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/17(水) 22:23:53.76 ID:Kg4Ocukio
メイの馬鹿!もう知らない!!
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/17(水) 23:08:57.93 ID:FC2nmbwDO
かぐらが脱兎の如く駆け出し、少し遅れた後にほむらも走った。
彼女の進行方向に見えたそれは普段クロが使用しているガトリングである。


なんと幼く、向こう見ずな決断であろうか。
あんなにもクロと化け物の戦いが起きている場所のすぐ近くまで接近して命の補償はまずないのに。


しかし、かぐらは駆ける。


だから、ほむらもまた追う。


ほむら『かぐらー!止まれー!!』


かぐらは、実を言うと何も考えてはいなかった。
ただクロの役に立ちたくて、行動を起こすことが正しいのだと思い込んでいて───そこから先のことなんて考えてもいない。


だんだんと目当てのガトリングに近づいてきた。


後もう少し、後もう少しでそれに手が届く。
あれさえあれば、クロを助けることができる。
その一心だけで、彼女を進んだ。


そして


かぐら『やった!』


そこまで、たどり着いた彼女は


まさか背後に、黒い触手が自らを狙って踊りかかろうとしていたことなんて知りもしなかっただろう。


ほむら『かぐら───!!』


そんな自分を守ろうと、ほむらがその身で守らんと覆いかぶさるようにして自分の前に立ちふさがろうとは夢にも思わなかったろう


────そして、それは最悪の結果を呼んだ。
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/17(水) 23:15:20.17 ID:FC2nmbwDO
それを見た彼は、ただ走った。






彼には分かったのだ、行かせてはいけないことが。






だから、彼は全力で走った。







守りたくて、守りたくて、自分の目の前であんな光景を見ることはもうごめんだったから。








影が過った。 頭の中。 消えていった影が。









ダメだ、それだけはダメだ。ダメだ。ダメだ。
やめてくれ。やめてくれ。お願いだ。動け、もっと早く。頼む。








足が動く、前に、前に、その影のためなのか、今見える光景のためなのか分からない。









クロ「マタタビィィーーー!!!!!」







624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/17(水) 23:38:25.39 ID:FC2nmbwDO
かぐら『あ、あああ……あぁ』


ほむら『かぐ、ら。かぐら!大丈夫か!?』


無我夢中でかぐらに覆いかぶさった。
少し後ろを走っていた自分には彼女に迫る触手が見えていたからだ。
とにかく全力で走って、後はもう必死で彼女を守っただけだった。
少し見れば彼女が無傷であることは分かるが、しかしかぐらは目を見開いてガタガタと震えている。


何故、だろう。


かぐら『お、お兄、ちゃ』


背筋に悪寒が走った。
まさかと思い、後ろを振り向いた。
そこには、最もあってはならない光景が広がっていた。


クロ「ば、ばっきゃろ……。な、なに、うろつい、てんだ、よ。チビ、共……」


息も絶え絶えのクロが、自分達の前に立ちふさがっている。
その胸には、鋭く尖ったような黒い触手が深く突き刺さっていた。


ほむら『あ、あんた……』


かぐら『い、いや、いや、嫌』


クロ「行け、ほむら。かぐらを連れて、逃げ」


必死でほむらに言葉を伝えようとするも上手く形にならない。


クロ「ぐあああああ!」


それどころか、化け物はクロを貫いたその触手を、クロごと天高く掲げるように上へと運んだ。
まるで神に捧げる供物のように、そして皮肉にもその化け物の姿は天に祈る少女の姿をしていた。


クロ「ハッ、ハッ、ハッ……ハッ」


自分の身体を貫通した触手をどうにかしようとしていたのか、クロの左手はそれを力強く握り締めていた。


かぐら『いや、いやだ。いやだよぅ』


だが、やがてその腕は、力なくダラリと垂れ下がった。
それが何を指すのか、もう分からない者はいなかった。


かぐら『嫌だああああああああ!!』
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/17(水) 23:40:19.92 ID:FC2nmbwDO
今日はここまでにしたいと思います。
戦闘描写は難しい。パワポケGoodENDより難しいです。


明日はちゃんと投稿します。
皆さん、読んでくれてありがとう!
そしてお疲れ様です!
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/17(水) 23:46:26.68 ID:Kg4Ocukio
五十鈴のグッドより難しいとかやべえな
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/17(水) 23:56:39.22 ID:v8V71O//0
しつこいようだが>>1は劇場版まどマギやハノカゲのTDSは見たの?
それから杏子とマミさんの関係はフェアウェルを下敷きにしているのか?
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/18(木) 00:04:21.38 ID:IlsRlgLDO
>>627


すみません、返事を書くのが遅れました。
僕の下敷きはアニメとドラマCDです。

劇場版やゲームには金銭的な理由から手が出せていない状態です。


マミさんと杏子の関係はちゃんと描きます。
割りとストーリーの肝なんです。
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/18(木) 00:22:26.13 ID:3Cs2rO3h0
そうか、答えてくれてありがとう。楽しみにしてる
それからTDSはゲームじゃなくフェアウェル・ストーリーを下敷きにしたハノカゲの漫画の事だぞ?
ゲームやらなくても、二人の掘り下げがや過去の経緯が詳しく描かれいるので
本一冊分くらいの買える余裕があれば是非とも。俺が>>1にとやかく言える事じゃないけどさ
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/18(木) 01:18:54.10 ID:yeQjCpzNo
つっても半公式みたいなもんでしょ?
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/18(木) 22:05:31.29 ID:7fJHN7zM0
乙です
お互いに共通点が多いクロと杏子が出会ったらどうなるか気になる
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 00:48:11.31 ID:kXZGnkoT0

相変わらずクオリティ高えな
まさか、さやかもこの後に及んでクロを疑うような事はしないよな?
それから魔女2体とかパネェな。片腕ない状態でこれはキツイわ。いいサプライズだけどさ

633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 15:34:04.50 ID:H0bz78tDO
>>621に全部持ってかれたwww
さて、クロ陣の中でそろそろ誰か登場してもいいと思うのだが……
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 19:13:31.80 ID:ad3tc3iw0
魔女が一つの結界に2体同時に出るって本当にあるケースみたいだな
ソースは話題に挙がったTDSだが
UP主もまさか半公式と同じような展開になると思わなかっただろうけど
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/19(金) 21:55:53.55 ID:1LOGC8VDO
さやか「なに、今の…、どうなったの?」


分からない。
その全ての前にさやかは立ち尽くす事しかできなかった。
故に、理解が追い付かない。
頭がその情報による答えを出すことができないのだ。


さやか「まさか、あいつ死───」


舌が痺れる、頭の麻痺がそのまま移ってしまったようだった。
その言葉を、決定的な結論を付ける言葉を


「死んでいる、と言えるだろうね。いや、正確には止まっているの方が良いかな」


変わりに口にする者がいた。


さやか「キュウべえ!?」


白い毛色に細い体躯をした彼は、まるで影のようにさやかの後ろに立っていた。
その姿には『いつから』や『どうして』という疑問全てを有耶無耶にしてしまう程の存在の希薄さと、それに矛盾する存在感がある。


さやかは、簡単に彼がいることを受け入れてしまった。


さやか「死んだ?アイツが……」


さやかは、目を見開いて力なく呟いた。
死んだ、死んだ?
どういう事だ、だって生きてたじゃないか。
さっきまで、生きて、戦っていたのに。


身体から力が抜ける。


さやか(え?どうして、私)


膝が砕けた。
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/19(金) 22:17:37.22 ID:1LOGC8VDO
かぐら『お兄ちゃん!お兄ちゃん!!うわああああ!!』


ほむら『落ち着け!行くぞ、かぐら!!』


かぐらは半狂乱になっていた。
無理もない、とほむらは思う。
目の前で、『死』といものを見たのはきっとかぐらは初めてだったのだから。
それも、クロはほむらから見て、彼女の親以外でかぐらが最も慕っていた猫であることは間違いない。


その混乱は図り知れず、今自分が少しでも身体の力を抜けば彼女はすぐに自分を突飛ばし、彼の下へ走りだすだろう。
そうなれば、まず命はない。


ほむら『落ち着け!行こう、逃げなきゃ!!』


自分だって平静を装っているが内心では泣き叫びたい気分だ。
嫌い、という程ではないが彼を見れば悔しかった。
かといって好きでもない。でも、『いつか』と思うくらいには憧れていた。


そんな存在が突然死んでしまった。
それも、自分達を庇って。


しかし、自分は泣くわけにはいかない。
立ち止まるわけにはいかない。


逃げろ、と言われた。
かぐらを連れていけと、つまり自分は託されたのだ。
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/19(金) 23:31:44.40 ID:1LOGC8VDO
ほむら『かぐら!!行くぞ、走れ!!』


託された、自分は。
彼に言われるまでもなく自分は彼女を守らなければならない。
しかし、クロはその身を呈して本来自分が為すべきはずだった事を果たした。


やはり悔しくて、でもそれ以上にほむらは今自分がやらなければならない事を真剣に考えていた。
今度こそ自分が……、彼に託された自分だからこそやらなければならないと。


かぐら『ほむら、どうしよう!?お兄ちゃんが、お兄ちゃんが!!』


ほむら『今はそんな場合じゃない!!』


ほむらは上を見上げた。
魔女達は物珍しそうに掲げているクロを見ており、こちらを見ている。
逃げるならば今しかないのだ。
ほむらは、かぐらの目をギッと睨むように覗き込む。


ほむら『いいか、かぐら。今ここで俺たちが生きてここから出られなきゃ、アイツがなんのために命をかけたの分からなくなるぞ!?』


身体を震わせているかぐらだったが、次から次へと涙が溢れている瞳に多少の落ち着きが出てくる。


それがチャンスだった。
ほむらはかぐらの首の後ろ側を噛んで、身体中の力を総動員して彼女を引きずるようにしながら走った。
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 09:39:30.47 ID:hFZ2SDdDO
「止まってる」か、なるほど
よし誰かガソリンを…って結界の中だからガソリンがねええええ!
このままだと皆死んじまう!どうなるんだ!(棒)
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/20(土) 10:18:40.74 ID:pDYXvipDO
かぐら『ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』


走っている間、ずっと耳元で聞こえる力ない呟きはいちいちほむらの胸を抉った。
それでも立ち止まるつもりはなかった。


ほむら(守るんだ。俺がかぐらを守る!)


それができなくて、何が兄貴分なのか。
ほむらは人間達がいるであろう場所に向かって走った。


恭介「さやか!どうしたの!?ねぇ、さやか!」


さやか「死んだ、アイツが?でも、それじゃあ、私は」


さっきから、さやかの様子がおかしい。
虚空を見つめて、二言三言誰かと話していたかと思えば、ついには崩れ落ちてしまった。


自分はと言えば、その拍子に手がすり抜けてしまい地べたに倒れ込んでいる。
痛みは勿論あるが、今は自分の事よりさやかの方が気がかりであった。


恭介「さやか、しっかりして!さやか!!」


さやか「……」


ダメだ、まったく耳に入っていない。
右手右足で身体をなんとかずらして、魔女を仰ぎ見る。
こんな時、最も頼りになる存在はそこでピクリとも動かない。


恭介「……クロさん」


うつむく、彼なしではあのような化け物を追い払うことなどできないだろう。
彼のような強さを持った者はここにはいない。
ヒーローなんて、どこにもいない。
奇跡も、魔法もありはしない事なんて、自分が一番知っているのに。


恭介「?」


と、うちひしがれている彼の視線の端っこにそれが写った。
クロが使おうとしていた銃器、それが少し遠いが確かにそこにある。


恭介「……よし」


恭介は行動を開始した。
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 10:48:12.27 ID:pDYXvipDO
QB「彼はもう動けない。もしここから出れたとしたら確かに彼をどうにかする手段はあるかもしれない」


さやかの周りをグルグルと周りながら、その『声』は前から後ろから、右から左からと彼女を縛りあげるように語り掛けてくる。


QB「しかしそれは、ここから出られたらの話だよ。このままではここにいる全員が死ぬことになるだろうね」


さやか「……死ぬ?」


ダメだ、それはダメだ。
死ぬのはダメ。
でも、このままでは。


このままでは─────だったら


QB「それを避けることができるのは、君の選択次第だよ」


選択、それが指すものなど考えなくても分かった。


さやか「……契約して、魔法少女になる」


なんだ、簡単じゃないか。
そうすれば良いのだ。
確かに、クロを失ってしまった事で反面教師的に考えていたヒーロー像が無くなりパニックに陥ったが、そんなの関係ない。


自分が魔法少女になり、戦えばいい。
まどかの言葉もどうでもいい、願いを叶えてしまおう。
願い、自分の願いは。


さやか「恭介───!?」


その姿を確認しようとしたさやかは、驚愕した。
彼は、そこにいなかったのだ。
背中に氷を突っ込まれたような感覚が走る。
まさかと思い、首を巡らせると彼はここから少し離れた場所の地面を這いずっている。
一も二もなく、さやかは飛び出していった。
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 12:43:34.11 ID:kMNzjvNh0
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/10/20(土) 15:36:33.21 ID:TTRxx/GA0

何だかんだ言っても、さやかはクロを信頼…頼りにしてたのね

>>631
そう言われるとかぐらがゆまに見えてくるな
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/23(火) 14:13:52.42 ID:e2M1jR3DO
右足と、右手だけで前に進む事はなんと難しいのだろう。
そしてきっと、今の自分の姿は滑稽で情けないものになっているだろう。


右足を地面に引っ掛けてみても足が滑ってしまう。
右手の場合もそうで、しかも長年の運動不足のせいか息が激しく乱れる─────それでも身体は止まらない。
前に進むことを止めようとしない。


何で───決めたから


何を───進むことを


どうして────それは、それは何故だろう。


いや、分かっているはずだ。
分かっていなければならないんだ。


「恭介ッ!?」


自分を呼び止める声が聞こえたが、それでも恭介は這う事はやめなかった。
聞こえてはいても、彼にはそれにどう反応すればいいかを判断できる余裕がないのだ。
すると、突然かき抱くような強さで肩を掴まれ、我に返ったように恭介は止まった。


さやか「恭介、止まって!恭介!!」


顔を上げて確認すればそこにいるのは今にも泣き出しそうな顔で怒鳴るさやかの姿がある。
恭介は、まるで信じられないようなものを見たような顔でさやかの顔を見た。


恭介「さやか……、何やってるんだよ。ここにいたら危ないよ!!」


644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/23(火) 21:27:18.82 ID:e2M1jR3DO
さやか「それはこっちのセリフよ!あんなとこに行ってどうするつもりなの!?」


恭介の言葉にさやかはただただ驚き、彼女の彼に対する態度にしては珍しく語気を荒げている。
彼の言葉も今のこの行動もさやかには理解ができないでいた。


自分は決めた。 願いを決めた。
だから、彼はもう傷付かなくてもいい。
明日になれば、きっと今までよりも幸せになれる。
あの化け物だって倒してみせる。


恭介「僕は、僕はクロさんを助ける」


しかし、その思いも言葉も振り切るように恭介はまた身体を動かし始めた。
業を煮やしたさやかはとうとう恭介の服を思い切り握りしめてその動きを止める。


さやか「なんで見れば分かるでしょ!?アイツは……アイツはもう死んでいるんだ!動けないんだ!」


あれが分からないのかとさやかは魔女により吊り上ゲられたままのクロを指差して叫んだ。
自らの言葉の残酷さも、それを恭介に突き付ける汚さも十分理解しての行為だった。


恭介「そんなのまだ分からないじゃないか!このままじゃ皆死ぬ。でもクロさんならなんとかしてくれる!」


さやか「ッ!……いい恭介、もしそうだとしても恭介がやる必要はないんだよ?」
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/23(火) 23:51:25.41 ID:e2M1jR3DO
信じて欲しかった。
恭介を救えるのは自分なのだと。
信じて欲しかった。
ヒーローはもう存在するのだと。


さやか「腕も足もきっと良くなるよ」


気味が悪い程の優しい声が恭介の耳を打つ。
その時初めて恭介はじっくりとさやかの顔を見る事ができた。


恭介「さやか?」


その顔に、その瞳に恭介は言葉に詰まった。
彼女の顔には媚びるような笑顔が張りついていて、目には輝きが失せ濁っている。
恭介は、そんなさやかを今まで見たことがなかった。


さやか「ね、私がなんとかするから。アイツなんかいなくてもヒーローなら私がなれるよ。恭介は私が守ってあげる」


恭介「さやか、何言って」


ゾッとするような空々しいような響きを持つ言葉を繰り返すさやか。
まるで黙ってしまえば恭介がどこに行ってしまうのではないかと思っているようにも見えた。


さやか「奇跡も魔法もあるんだよ?だから───」


恭介「───さやか」


恭介はさやかの言葉を遮る。


もう十分だった。


彼女の言葉の意味まではよく分からなくても良かった。
自分の弱さが、彼女に対する甘えが彼女をこんな風にしたのだ。
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/24(水) 21:19:28.13 ID:3DYO31+DO
恭介「僕には、魔法も奇跡も必要ない」


さやか「……え?」


そんな言葉を受けるとは全く予想していなかったのだろうか、さやかはポカンと口を開けている。
構わず恭介は言葉を続けた。
伝えなければならない事を。


恭介「もしも……もしもの話だけど、さやかが魔法や奇跡で僕の身体を元に戻してくれたとしてもそれは意味がない事なんだよ」


それは宣戦布告であった。
これから先の未来への、ここから先の苦難への


恭介「僕自身が決めて僕自身の為に動いていく事が大切なんだ。その為にはそれこそ這ってでも前に進んでいく……だから」


それは宣言であった。
自分の傍にいてくれた。
自分に夢を諦めないようにと言い続けてくれていた優しい少女への。


恭介「だから、そこで見ていてほしいんだ。さやか」


恭介の真っ直ぐな瞳に射ぬかれたさやかは今度こそ力が抜けてしまったのか、スルスルと恭介から手を離した。
恭介はまた身体を必死で動かして前に進んでいく。


足掻くような藻掻くような、ゆっくりとしか進めていないその様は、しかしさやかにとってはまるで遥か彼方に走り去って行ってしまうようなそんな奇妙な気持ちにさせられるものだった。
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/24(水) 22:38:25.86 ID:3DYO31+DO
さやか「恭介……じゃあ私は、私はどうすればいいのさ」


自らの未来を彼は自分で掴むと言った。
しかしそれなら自分はどうだと、さやかは茫然自失の中で思った。
彼ばかりが進んでしまえば、自分がこれから歩む道には何一つとして意味はない。


自分の願いは彼の願いであるはずで、彼の願いで自分はこれからの日々を繋いでいけると思っていた。


だが、彼はそんな願いを置いて行ってしまったのだ、いや違う。
置いて行かれたのは、自分の願いだ。


さやか「はは、ハハハ。なんだ、やっぱりそうだったのか、まどかの言う通りだ……」


さやかは、ここに来て自分のがいかに独り善がりの行動に出ようとしていたのかを知った。
たとえ恭介の身体を元に戻したとしても結局彼の生き方にまでは干渉できない。


彼は彼として考えて生きるだろうし、自分はきっとそんな恭介を見ている事しかできないのだ。


さやか「私はバカだ。大バカだ……やっぱり見返りが欲しかっただけじゃないか」


恭介はゆっくりと、だが確かに前に進んでいく姿をさやかに見せている。
あのベッドの上にいたはかなげな少年の姿はそこになく。
ただ遥か、ただ遥かを目指して進む力強さをみなぎらしていた。
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/24(水) 23:04:42.34 ID:3DYO31+DO
さやか「私の願い。願いってなんなんだろう」


自分の望みは当の本人に拒絶された。
ならもう自分には願いも戦う理由もなくなったはずだった。
しかし、必死になって前に進もうとしている恭介を見る、クロを弄ぶように吊り上げている魔女を見る。


さやか(戦うという事……)


あの脅威が、あの化け物がいつ恭介に牙をむくのか分からない。


さやか(守るという事……)


自らを盾にしてまで子猫達を守り抜こうとしていたクロ。
自分にはあるのだろうか、その覚悟があるのだろうか。


QB「さやか、願いは決まったかい?」


キュウべえの声が後ろから聞こえた。
いつの間にか近づいていたらしい。


QB「あの少年はああ言っていたけどね。それでもどうするかは君次第だ。彼は心に決めたままの行動を取った。なら君も心が定めた道を進めばいい」


キュウべえの言いたい事は分かる。
でもダメだ。
もう決まってしまったらしい。
それこそ、心が叫ぶのだ。


その望みを────


さやか「決まったよ、キュウべえ。でもね」


QB「?」


さやか「決まったのは、願いじゃない。────覚悟だ」
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/24(水) 23:57:50.27 ID:x/fSaH6DO
オカッパ頭のギャング「」ガタッ
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/25(木) 00:58:34.87 ID:duYUu43So
覚 悟 完 了
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/25(木) 13:54:28.19 ID:t661YfBP0

まどポとかTDS見てると、恭介や願い元々よりも、依存しすぎなさやか自身に問題がある気がするから
だから、こういう形で恭介に突き放されたのは、かなりよかったのかも

魔法少女になる前に恭介に対する「その幻想をぶち壊す」必要があったわけだよ。上条なだけに
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/25(木) 20:33:53.80 ID:a/AS3QkDO
恭介「はぁ、はぁ、ッはぁ────」


激しい息の乱れにも多少は慣れてきたようだ。
口の中で粘つき呼吸を妨げる唾を軽く飲み込み、気合いを入れ直して恭介は目の前にあるマシンガンのような武器に向かって進み続ける。


自分がやらなければならないこと。
勿論それは、あの武器を使ってあの化け物を倒すなどという自惚れた考えを指してはいない。


とにかく、クロの戒めを解く。
それが今最も最優先されるべき行動、いやそれ以上に自分が一番やりたいことだった。


そうしたいという思いは、それが無駄かどうかでは止められない。
例えクロが本当に死んでしまっていたとしても


恭介「痛!?ッ──」


考えが途切れる。
地面に引っ掛かった爪がそのまま剥がれてしまったようだ。
病院の中であまり爪を機会もなく伸ばしっぱなしにしていたことを鈍痛と共に後悔した。


それでも、腕を伸ばす事を止めるわけにはいかない。
足で地面を蹴る事を止めるわけにはいかない。


しかし、やはり地面に手を付ける度にズキン、ズキンと指先が痛む。
だんだんと足も重くなる。

身体が止まった。
その瞬間に身体でだましだましにしていた疲労が一気に込み上げてくる。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/25(木) 21:22:35.99 ID:a/AS3QkDO
思わず俯く。
今まさに、自分はこの瞬間にも諦めようとしている事が分かったからだ。
痛みと疲れ、情けなくもそれは致命的に自らも歩みを止めている。
それが本当に情けなくて涙が出そうだった。


でも、かつての自分はそこで終わっていたが、今は違う。
違うと証明しなければならない。
もう一度と思い、腕に力を込めようとした時だった。


恭介「ん?」


─────ふと、服の右袖が引っ張られるような感覚がした。
誰かが小さな力で前の方に連れていこうとしているような。


その現象の正体を確認するために恭介は顔を上げた。


恭介「君は……」






そこにいたのは、一匹の小さな虎猫だった。
その虎猫はその小さな口で恭介の袖に噛み付いて後ろ向きのまま必死になって引っ張ろうとしていた。


自分はきっと彼の体重の何十倍はあるだろう。
腕を引っ張るだけでもとんでもない力を有するはずで、それでも彼は一心不乱に恭介を前に連れていこうとしていた。


恭介「君も、手伝ってくれるのかい?」


無言、返事や反応はない。
ただ子猫は、その必死な様を見せるだけである。
それだけで十分過ぎるほどだった。

654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/26(金) 12:48:02.11 ID:1ZKgqqrDO
恭介「……よしっ!」


心の中に、とても熱いものが流れ込んでくるのを感じる。
自分を手伝おうとしている子猫の姿に今までにない気持ちが生まれたのだ。


恭介(負けたくない、負けるもんかッ!)


自分の中にこんな感情があるなんて思いもしなかった。
地面を掻き進みながら恭介は考えていた。


恭介(進め、進め……、もう二度と立ち止まるな。進めぇッ!!)


かつてバイオリンで目指した栄光、そこから蹴落とされた挫折。
今もまだ完全に振り切ったとは言えないかもしれない。


それでも、今は逃げてはいけない。
理屈などない。
逃げたくないから、逃げない。


恭介(もう少し、もう少しだ)


ほむら『がんばれ!もうちょっとの辛抱だぞ!』


ほむらは、目の前の少年にかけていた。
かぐらはもう既に安全な場所に隠れさせている。
しかし今は、それだけではいけない事くらい分かっていた。


そんな中で、何かをしようとしている少年を見つけたのだ。
がむしゃらに無茶苦茶でも行動に出ようとしている姿、そして彼の視線の先にはクロが使用していた武器がある。


ほむらもまた迷わなかった。
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/26(金) 13:44:59.18 ID:1ZKgqqrDO
かぐらは言った。
ほむらは弱虫だと、だから証明したかったのだ。
自分の中に燃える意地を、それこそ意固地になってやりとげて見せたかった。


恭介(行ける、僕は進む。そして届かせてみせる!!)

反骨と逆襲を掲げた一人と一匹、その遅々としてしか進んでいなかった歩みは確実にその距離を縮め、そして────


恭介「よしッ!!」


その手はようやく目標物に届いた。
クロが落とした武器、もしかしたら自分に残してくれたのかもしれないとさえ思えるほどに胸が熱くなった。


恭介「後は、これで……」


ギッ、と化け物を睨む。
一匹はただひたすらに地面に落書きを繰り返し、もう一匹はまるで新しい玩具を自慢するようにクロをぶら下げていた。


もう一度、手元にある銃を見る。
そして確認する。
何をすべきか、何をしたいか。
ギュッと銃のグリップを握り締めた。
そして、それをクロを捕らえている化け物に向けようとして───


恭介「お、重いッ!?」


あまりの重みについ悲鳴が出た。
流石に金属の塊であるそれを自分が簡単に持ち上げられるとは思っていなかったが、それでも信じられない程の重力を感じる。


恭介「こんな重いものを、クロさんはあんな簡単に持ち上げていたのか……」
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/28(日) 17:57:04.31 ID:9SGerX8I0

このssで上条が初めて好きになれそうだ
次の更新を楽しみにしてる
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/30(火) 16:02:40.89 ID:pNxIW9DDO
掴み上げる度に擦り抜けるように自分の手から落ちてしまう。
長年の入院生活はおおよそまともな握力を奪い去ってしまっていた。


恭介「くっそおォッ!!」


あの辛く単調なくせにきつかったリハビリとはなんだったのか、こんな時に役に立たないでいつ役に立つものなのか。
理不尽な怒りすら沸く中で、しかし恭介は諦めるつもりもなかった。


恭介「上がれ、上がれ!」


もはやその怒りすらも腕に力を込める。
今まで何一つ掴み取る事ができなかった分の思いも込めて、しがみ付いているとすら形容できそうな程の力で彼は銃を握り締めていた。


恭介「諦めない……!僕は、絶対に諦めないぞ!」


爪が剥がれた指から血がダクダクと流れる。
銃も右手もすでに血塗れだ。
でも今はそんな事すらどうでもいい、彼は力を込め続けた。


恭介「うおおおッ!」


やがて、思いは形として現れはじめた。
ゆっくりと銃が持ち上がりだしたのだ。


恭介「もっと!もっとだ!上がれぇッ……」


声がかすれる。
グリップを握り締める手からは血がしたたり落ちていく。
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/30(火) 21:26:10.50 ID:pNxIW9DDO
血で指が滑りそうになる、しかも重みで腕がおかしくなりそうだ。
プルプルと震えながら腕は上がる。
銃口が持ち上がり、標準がなんとか化け物に合いそうになる。


その瞬間だった。


恭介「───え?」


突然腕の力が抜ける。
限界、どんなに気持ちでカバーしたところで曲げられない現実だった。
元々のスタミナの不足と今現在まで感じていた疲れは容赦無く恭介から腕の力を奪ったのだ。


恭介(そんな、こんなところで。嘘……だろ)


ゆっくりと腕が下がっていく、銃はなんとか握り締めているが腕を上に向けて維持する力がない。
まるでスローモーションのような時間の中で、恭介は絶望に顔を青ざめる。


恭介(もう少しなのに、もう少しで僕は、届くのに、そんな……)


銃の重みと己の弱さで下がっていく腕、それが


恭介(!?)


下がっていく、その途中で止まった。
地面に完全に落ちるその前に、その腕を必死に踏み締めて支える彼によって


ほむら『うっ、うわあああああ!!』


先程まで恭介を引っ張っていた小さな虎猫は今度は恭介の腕の真下に立ち、彼の腕を支えていた。
銃の重みと恭介の腕の重み、そのどちらにも耐え、ほむらは自分の為すべき事を為していた。


恭介「……ありがとう。本当に、ありがとう……、また助けられたね」


その姿にほんの少しだけ笑みを向けた恭介は、今度こそ、化け物に向けてその瞳をぶつけた。


覚悟と決意を、そして、恭介の腕は先程とは比べものにならないくらい滑らかに動き、その銃口を────そこに向けた。


恭介「いっけぇぇぇーーー!僕は僕自身の未来を掴み取ってみせる!!」
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/30(火) 23:21:00.57 ID:pNxIW9DDO
引き金を引いたその瞬間、腕が砕けてしまったかのような衝撃が走った。
いやそれは、もはや『腕が中から爆発したような』感覚とも言えた。


その激しすぎる反動は恭介の身体を、そしてほむらの小さな身体も突き飛ばし地面に転がす。
それもそうだろう。
マシンガンから飛び出していったものは弾丸などではなく、マシンガンの奇妙に迫り出した部位がパカリと開いた場所から発射された六発程の小型ミサイルだったからである。


ほむらは気絶した。
そして恭介は、先程までの威勢の良さも熱い程の覇気も抜け落ちてしまったような顔でそのミサイルの軌道を目で追う。


恭介は見た。ミサイルは、まるで我先にと獲物に群がるように化け物に向かって飛んでいき───そして、その身体に着弾した。


閃光、加えて爆炎


その光景は恭介の網膜に焼き付いた。
しかし、見た。
化け物がその触手からクロを取り落とす瞬間を、クロが地面に向かって落ちていく光景を。


そして、クロが一瞬だけ光に包まれた事を。


痛みか驚きか、激しく身体をよじらした化け物は自らに危害を加えたらしき恭介に向かって触手を伸ばしてきた。
もはや躱せる訳もなく、ただぼんやりと恭介はその様を見ていた。


猛烈な勢いでせまる、その『死』に恭介は冷静とも呼べる面持ちだった。


たとえ、ここで死んだとしても、もしかしたら後悔はないかもしれないとさえ思えるほどだった。
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/30(火) 23:38:35.25 ID:pNxIW9DDO
────『彼』が目覚めたのは降下の途中だった。
自らが空を切り裂く感覚に、妙に居心地の悪い浮遊感から彼は全てを察した。


どうやら死にぞこなったらしい。


地面が近い、彼は体勢を変えて地面に降り立つ準備を取る。


苛立ちがあった。


情けなさがあった。


だが、今はそんな事はどうでも良かった。


ダン!と音がする程の激しい着地。
右手の辺りを見ると、そこには『さっきまでは』なかった右手があった。
ギュッと力強く握り締めた拳で、取り敢えず近くにいた『それ』をぶん殴る。


その小さな身体からは想像もできないほどの渾身の力が込められた拳をぶつけられたその黒い影のような化け物は吹っ飛んでいき、反対側の壁に直撃した。


恭介「やった……、やったあッ!!」


少年は待ちわびた。
その姿を信じていた。


その小さな姿、そのおよそ危機的状況には似合わない面倒くさそうな態度。


クロ「待たせたな」


その『男』の帰還を。
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/31(水) 01:14:14.43 ID:8uqy34t/0

クロちゃん復活キター?
でも、これ…さやかもしかしなくても折角の一度きりしかない願いを…
まあ、そこらへんはさやかがどういう答えを出したのかで期待
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/31(水) 21:46:45.90 ID:uEovAr5DO
ゆっくりとクロは自分の右手をもう一度見る。
何かを確認するように握って、開く。
そして、ため息を吐いた。


クロ「完全に直ってるってことは……情けねーな」


こうなる事は避けたかった。
いや、こうしない為に自分はここまで来たのに、それができなかった。
これに関しては、誰に何を言うこともできない。


自分の背負うべきヘマである。


クロ「んじゃ、やるか」


素早く顔を上げると、そこには迫り来るたくさんの触手があった。
その先は鋭利に尖っており、殺傷力を高めている。


クロ「うおおおお!!」


しかし、迷わずクロは突っ込んでいく。
それはただの勢いや気合いに任せた行動ではない。
いわば賭けであり、彼女を信頼しての行為。


そして、クロはその賭けに勝った。


「はああああッ!!」


猛然と走るクロの前に、更に躍り出る影があった。


白いマントがはためき、青みがかった髪が揺れている。
ファンシーなスカートのような衣装と、それによく似合う西洋のサーベルを握り締めていた。


美樹さやか────それは、魔法少女の姿だった。
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/31(水) 22:24:33.56 ID:uEovAr5DO
踊りかかる黒い触手を、さやかは手に握るサーベルを振り回して切り落としていく。
大きくもなく重量感もないサーベルは、次から次へと魔女の魔手を打ち払い続ける。


そのスピードは、有体に言って高速。
目にも止まらぬ速度で繰り出される剣撃は、その魔女の攻撃全てをその場にて切り捨てることを可能としていた。


型もなく、殺陣もない。


どこか自身の胸にある感情を叩きつけるような荒々しさすら感じた。


さやか「はあああああッ」


彼女はその攻撃を文字通りさばくだけが精一杯であり、その場から動く事はできないでいた。


しかし、変わりに退かなかった。
臆さなかった。


逃げなかった。


クロ「背中借りんぞおッ!!」


彼女の後ろを駈けていたクロはそのまま地を蹴り、さやかの背中を蹴り空中にその身を投げ出した。


そして、クロは魔女に向かって跳んだ。


魔女の攻撃、そのほとんどを受けているのはさやかである。
しかも、攻撃をすればするほどダメージも受けている。


勿論それだけでは決定的な攻撃とはならない。
ならば決定打を与える第三者が登場すればいいのだ。


宙に舞うクロは腹を開き、そこから箱型のツインキャノンを取り出し右手にはめる。
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/01(木) 00:41:09.01 ID:FQs+VQgF0
乙!
今まで仲悪かっただけにこの共闘は燃える!
このssは、もっと評価されてもいいと思う
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/01(木) 01:02:34.27 ID:kMGO1+QDO
さすがに魔女も異変に気付いたのか触手をクロに飛ばしてくる。
が、その攻撃の意識をさやかに向けていたためか、先程の攻撃に比べれば手数は少ない。


クロ(飛んでくるのは五本、なら二本目を躱した時に……!)


あらかじめ狙いを定めておく。
ここから先にどんな体勢になって撃ち込むための行動を決めるために。
元々クロもスナイパータイプではない。
故に、己の直感と行動に全てを賭けるのだ。


クロ(───きたッ)


触手がクロの身体を捕らえんと向かってくるのが見える。
タイミング、それがこの瞬間における唯一無二の勝利の鍵。


一本目、空中で身体を捻ってやり過ごす。
耳元で触手が通り過ぎたのか風を切る音が聞こえる。


二本目、既に地面に着地をしているクロは、身を屈めて触手を避け、そして全力疾走で走る。


武器を取り付けた右腕を伸ばす。


何かを察したのか魔女は身体の周囲に網状に触手を張り巡らした。
守りを固めるつもりらしい。


だが、もはやそれに意味などないのだ。
クロが伸ばしたその腕は、右腕。


さやかが願いを捨ててまで取り戻した腕である。


熱くならない訳がなかった。


クロ「ぶち抜けぇッ!!」


二つ分の銃声は、魔女の触手と砕き、そして魔女の本体を貫いた。

666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/01(木) 01:24:08.69 ID:kMGO1+QDO
黒い魔女の身体に、二つの穴が空いていた。
細いその身体は肉片をえぐり取られ、ヨロヨロとよろめき、次の瞬間には木の枝のように折れてしまいそうだ。


そして


『──────!』


それは、断末魔だったのだろうか。
それに痛みや絶望を感じ取る程の感情があったのかは分からないが、確かに殺した。
それだけは、確かだった。


霧散していく魔女の姿を静かに佇みながら、クロはジッと見つめていた。


クロ「……後は」


魔女の消滅を確認した後、顔を反らしてもう一体の魔女がいる方向に目をやった。
そこには、自分の意識が途切れる前と変わらぬ姿で床に落書きをしている魔女がいる。


クロ「まだいたのか?逃げりゃいいのによ」


喧騒も殺し合いも、それには全くもって意味をなさないものなのかもしれなかった。


これがしている事は、ただ、絵を描くだけである。
しかしそれが使い魔を生み出し、人を殺す。
無邪気な邪気と言えばいいだろうか。


だが、これには、心がない。
どんなに探ってみても何も感じないのだ。


どんなに殺意を向けても

どんなに怒りを向けても


空々しいばかりであり


魔女、というものの不可思議さは際立つばかりである。


少女の姿をして遊戯にふける魔女。
思えば、最初の鬼ごっこすらこれにとってはほんのじゃれ合いだったのだろう。


でも、殺す。


クロは初めて、言い様のない思いを感じた。
いや、どんな気持ちなのかは分かる。


なんというか───哀れだった。





銃声
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/01(木) 02:52:49.00 ID:kMGO1+QDO
クロ「……良かったのか?」


後ろは振り返らずに、クロは訊ねた。
本人にはちゃんと聞こえるだろうか。
それ以前に自分の言葉に聞く耳を持ってくれているかも分からない。


さやか「バカな事を聞かないでよ。アンタが動けなきゃこの場の全員は死んでた」


機械的な返事が帰ってくる。
模範解答なら丸が付くだろうが、感想文なら残念ながら0だろう。
だが、それがさやかの精一杯である事も分かっている。


クロ「恭介の腕……どうするつもりだ?」


さやかが言葉に詰まる様子が背中を向けていても分かった。
そもそも、クロは恭介とさやかには現状維持でなんとかするつもりでいた。
さやかを魔法少女にしないために、その主たる理由になるであろう恭介の方からさやかを説得すればいいはずだった。


だが、甘かった。


とことん甘く、そして上手くいかなかった。


さやか「恭介が言ったんだ」


ポツリと呟くさやかの声をクロは黙って聞く。


さやか「魔法にも奇跡にも頼らないで前に進むって。なら、私がそれを邪魔しちゃいけないでしょ。信じなきゃ駄目でしょ。だって……だって、大好きなんだもん。頑張るって決めた男の子に、下手な手伝いはいらないと思ったんだ」

668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/01(木) 19:57:51.00 ID:kMGO1+QDO
その言葉を聴いたクロは腕組みをしてため息を吐いた。
その行為はわざとらしく、それは彼なりの誤魔化しだったのだろう。
人に弱みを見せたくない彼らしさ。


その『らしさ』を理解しているが故にさやかはもう、そんな態度に苛立ちを覚える事はなかった。


さやか「ねぇ、クロ。私って本当にバカだね」


クロ「おぉ、とんだ大バカだぜ。折角の願いだっつーのに得体の知れない化け猫を助けた。どうしようもないお人好しだ」


言葉が堰を切ったように溢れた。
いや違う、言いたい事はそういう事ではなくて。
でも、なんというかそこまではっきり言うのも違うのだ。


つまり


クロ「……借りは返すぜ。百倍くらいにして」


これくらいが、一番だろう。


さやか「は、あははは!」


自分なりに納得できる答えを返せたと思っていたが、突然笑いだしたさやかにクロは少し納得がいかず怪訝な顔をしてさやかに顔を向けた。


クロ「テメー、なに笑って……げっ」


あまりに愉快そうな声で笑っていたから、クロはその驚きに固る。
彼にとって一番苦手とする物がそこにはあった。


さやかは笑いながら、涙を流していたのだ。
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/01(木) 21:25:02.64 ID:kMGO1+QDO
さやか「やっぱ、格好良いよ、あんた……。そりゃ恭介も慕うわ」


クロ「お、おい。大丈夫か?どっか痛むか?」


さやか「は?あんた何言って……て、あれ?どうしたのかな。これ、なんで、涙が」


ポロポロと零れる涙を止めようと必死に目をこするさやかだが、一向にその涙が止まる様子はなかった。
やがて、魔法少女の姿も解け元の制服に戻ったが、彼女はそれに気付かずに涙を流し続けている。


クロ「えーと、あれだ!ありがとう。ありがとうございました!ほれ、ちゃんと礼を言ったぞ?珍しくな。だから泣くな……って訳わかんねーか。あぁッ、くそったれ」


今にも唾を吐き捨ててしまいかねない物言いをしながらも、彼にしては非常にてんやわんやとした態度を見せている。
誰かを面と向かって慰めるということはクロの苦手分野なのだ。


『さやか!!』


どうしたものかと首を捻っていたクロの耳に、その声は届いた。
あん?と顔をそちらに向ければいつの間にか『彼』が直ぐ近くに来ていた。


さやか「恭介?───恭介ッ!」


そしてクロ以上にその声に反応を示したのは勿論さやかであった。
こちら側になんとか歩腹前進で近づこうとしている恭介に向かってさやかは駆け出した。


クロ「ったく。やっと適役が来たか」


やはり自分はどうにもこうにも役者として不足しているようだ。
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/02(金) 13:27:21.04 ID:fX/PHNcDO
遠くから駆け寄ってくる少女はいつもの姿に戻っていた。
今日一日だけでも、随分と特異な時間を過ごしたものだ。
化け物に、それを相手どって戦うサイボーグの猫。
そして、変身ヒーローのように姿を変えて戦うさやか。


こんなにも不思議な世界が自分の知らない所に広がっているなんて。


さやか「……恭介」


恭介「さやか!凄いじゃないか!さっきのはなんだい?教えてくれないかな?」


すぐ近くまで来てくれたさやかに恭介は好奇心を露にして語り掛けた。
知りたい事と聞きたい事が山ほどあった。
だが、彼女の様子がおかしい。


うつむいたままで髪に隠されているのかその表情を覗き見る事はできない。
さらに、その肩は小刻みに震えていた。


恭介「さやか?……あれ、雨?」


ポタポタと自分のすぐ近くに水滴が落ちてきた。
こうして地面に這いつくばっている自分でなければ気付けないほど少量の。


こんな所に雨が降るわけがなく、確かめるために恭介は顔を上げた。


恭介「泣いているの?さやか」


その言葉がきっかけになったのだろうか。
糸が切れたように、さやかは膝をついた。
顔が近くなり、やっとその表情を恭介は見ることができた。


さやか「恭介……ごめん」


思った通りの泣き顔がそこにはあった。
病院に来た時にいつも見せる笑顔ではなく。
顔をくしゃくしゃにして、流れる涙を拭おうともしない。


恭介「……さやか、いいんだよ」


さやか「ごめん…、ごめんね。ごめんね。ごめんね」


恭介「いいよ。泣かないで」


右手を支えにしてなんとか顔を上げた。
こんな時、左手が使えたら彼女の涙を拭う事も、抱き締める事もできたのに、そんな事を少しだけ恭介は思った。


でも恭介は嬉しかった。
今までずっと笑顔を見せて自分を励まし続けた彼女が、こんな強い感情を見せてくれたのだ。
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/02(金) 13:46:35.43 ID:fX/PHNcDO
長い入院生活の中ではあまり他人から感情をぶつけられる事はない。
皆が気をつかうからだ。
誰かに頼られる事もなければ、弱音を吐かれる事もない。
少しだけうそ臭い人間関係。


でも今は、ずっと自分の側にいてくれた少女が涙を流している。
理由は正直よく分からない。
しかしこの瞬間、彼女は正直な素直な心を見せてくれているのだ。


恭介「いいよ。さやか、もう、いいんだよ」


それでもやっぱり、笑ってほしい。
恭介はごめんと繰り返す彼女の肩に額を当てた。


抱き締める事ができない自分にできる精一杯であった。
さやかは、そんな恭介を強く抱き締める。


涙を流しながら、強く。強く。
やっと探し人に会えた迷子の子供が握った手を離さないみたいに。


恭介「ありがとう、さやか。助かったよ。そして、ありがとう。今まで僕の隣にいてくれて本当にありがとう」


さやか「恭介……恭介ぇ。うぅッ……うわあああん」


恭介「それを伝えたかったんだ。ずっとずっと伝えなきゃいけなかったのに、忘れていたんだ。今日、やっと言えたよ」


さやかは泣いた。
恭介も笑いながら、少しだけ泣いた。


クロは離れた所で、少しだけ照れくさそうに明後日の方向に顔を向けていた。


そして、弾けるように結界が解けた。
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/02(金) 17:39:15.09 ID:fX/PHNcDO
道路の上で、ずっとまどかは待ち続けていた。
祈るような気持ちを越えて、もうすでによく分からない神様にまでも祈りを捧げる程に。
どれくらいたったのかは分からない。
もう何時間もたっているような気もするが、時計は見る気にならない。


だから、彼女はずっと待った。
友達を、信じて、絶対に帰ってくると。


クロ「よう、どうした」


まどか「きゃああああ!?」


が、なんの脈絡もなく話し掛けられ、まどかは思わずその場から飛び上がった。
心臓が爆発するくらいに高鳴っている。


まどか「ク、クククロちゃん!?帰ってきたの!?」


後ろから呼び掛けてきたのは待ち人の一匹であるクロだった。
帰ってくる事を信じていたものの、いざ急にとなると驚きを隠せないものである。


クロ「あんだよ、帰っちゃダメだったか?くたばった方が良いってか」


まどか「そんなんじゃないよ!!」


こちらの心配もつゆしらずに軽口を叩くクロに少しだけまどかは怒る。
クロもそれを察したのか軽い調子ながらも「へいへい」と諫めた。


まどかだって結界にありながら心配して不安にもなっていたのだ。
その怒りだって当然だ。
コホンと咳払いをしてまどかは仕切りなおす。
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/02(金) 17:57:57.15 ID:fX/PHNcDO
まどか「じゃあ……改めて、お帰りなさい。クロちゃん」


ニッコリとまどかは笑った。
クロはなにやら面白くなさそうな顔をする。
どうにも、こういうのは落ち着かない。
普段なら誰ぞやを蹴り飛ばしたりして誤魔化すところだが気も進まない。


仕方なく、仕方なくだ。


クロ「ただいま。まどか」


まどかはとても満足そうである。
そして、クロの更に後ろの方を見て目を丸くした。


まどか「うわっ!さやかちゃんが恭介くんと抱き合ってる!?」


クロ「おぉ、ま、言いたいことはあるだろうが。今はほっといてやれよ」


恭介がさやかに身を委ね、さやかが恭介を抱き締めるという奇妙な、でも甘い光景がそこにはあった。


果たして結界の中で何があったのかは見当もつかないが、きっと捨てたものではない事が起きたのだろう。
まどかは、そんな二人を見てそう思った。


しかし、ずっとそんなのを見ていると気恥ずかしくなってくるもので、まどかはクロの方を見ることにした。
と、さっきは気付かなかったがその背中で二匹の子猫がおぶっている事を知った。
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 18:00:41.61 ID:uWsj14ODO
クロちゃん陣から他に誰もでなさそうな感じだな
最低でもナナとか剛くんコタローロミジュリの誰かが出ればこのシリアスがぶち壊れてギャクテイストになってある意味面白いんだがww
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/02(金) 18:10:15.98 ID:fX/PHNcDO
まどか「クロちゃん、その子達は大丈夫だった?」


クロ「さてね。確かめてみるか」


少しダルそうに、クロは背中におんぶしている二匹を身体を揺らして起こそうとする。
しかし、その揺らし方も乱暴なものではなくまるであやすように揺らしている。
別に起きなくてもいいのかもしれないと思うと、まどかは目を細めた。


しかし、割りと眠りは浅かったのかすぐに二匹は身じろぎをし始めた。


ほむら『ん、んう』


かぐら『うぅん』


クロ「……目覚めたか?ならとっとと背中から降りろチビ共」


ほむら・かぐら『……………………』


寝呆け眼から一転二匹は目をまん丸として言葉に詰まった。
ここで説明しておくと、ほむらはミサイル発射の風圧にやらる気絶をしていたし、かぐらはかぐらで早々にほむらに隠された安全な場所でショックを受けて気を失っていた。


クロが復活した際、二匹には意識はなく。
また、眠っている間にクロに救出されたため、今この瞬間が一度死んでからの初顔合わせであった。


故に、二匹の反応は驚愕以外のなにものでもなかった。
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/11/02(金) 18:23:50.09 ID:p12rXpKKo
>>674
後々ミーくん出るって言ってたような
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/02(金) 20:38:54.41 ID:fX/PHNcDO
ほむら『わああああああああ!?化け物!?お化け!?お化けー!!』


かぐら『お化け!?お化け!?すっごい!!』


ほむらには恐慌状態で、かぐらに至っては一周して興奮状態になっている。
背中でヤイノヤイノと暴れる二匹に更に輪をかけてクロは面倒そうな顔になかった。


クロ「やかましい、背中であばれ」


かぐら『うわーーん!!』

るなよ、とクロは口の中で呟いた。
さっきまで騒いでいたかぐらが、今度は泣きだしてしまったのだ。
泣いて、泣いて、顔を背中に押し付けている。
クロはあっけに取られてしまった。


かぐら『ごめんなさい!ごめんなさい!ボクのせいで死んじゃったから。お兄ちゃんお化けになっちゃったんでしょ!うわーん!!』


クロ「あ?誰が死んだ……って一回死んだか。でも今は生きて」


まどか「クロちゃん!死んだってどういう事!?」


クロ「は、はぁ?」


なんとかかぐらに対して取り繕おうとしたが、今度はまどかがくってかかってきてしまった。
死んだ、という単語が聞き捨てならなかったようだ。
保健委員の血が騒いだのかもしれない。


まどか「だだだ、大丈夫なの!?ゾンビ?サイボーグゾンビになったの!?」


クロ「テメーは何を言ってやがる。だから死んだけど今は生きてるから平気だっつーの!!」


かぐら『ゾンビになっちゃたんだーーー!』


話しを聞けーーーー!!


少しだけ、ちゃんと泣いてる人を落ち着かせるくらいはできるようになっておこう。
泣きじゃくるかぐらとまどかをあやしながらクロは思った。
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/02(金) 20:59:52.59 ID:fX/PHNcDO
遠くから聞こえてくる喧騒を聞きながら、暁美ほむらは闇の中に佇んでいた。
上手くいかなかった事もあったが、しかしそれは前回の時よりは少しだけ展開が違った。


その変化は、少しだけ、ほんの少しだけだが彼女に希望を持たせた。
もしかしたら今度は、変えられるかもしれない、と。


ほむら(いや、まだ。全てが終わるまでは)


首を振って自分を諫める。


落ち着かなければ、まだ誰も救われていないのだから。


「意外だったね。彼女があんな形で契約を結ぶなんて」


ほむら「───ふん、思い通りにならなくて残念ね。あなた事だから、散々彼女にとって都合の良い事ばかり言って契約させたかったんでしょう」


QB「人聞きの悪い事を言わないでくれ。ボクは強制はしないよ。一つの考えを述べたまでさ」


闇の中で鈍く赤い二つの目が光る。
少年のような、少女のような聞きやすく、耳馴染みによい声。
ずっと聞いていたいと思わせてしまうその声は、下手すれば誰かに狂えと言えば狂い。
死ねと言えば死んでしまうかもしれない。


魔力や、魔術ではない。
そうなるように計算されつくされたような物を感じる。
『いつだって』。


ほむら「でも、クロがいるからそう大した工作もできない。困ったものねインキュベーター」


QB「困ったものは君も同じだよ。そこまで知ってるとなると、流石のボクも気味が悪いよ」


お前が言うな、そう言ってやりたかったが、これに怒りをぶつけても仕方がないのだ。
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/02(金) 21:10:48.26 ID:fX/PHNcDO
QB「一体ボクはいつ君と契約したんだろうね。もしも過去に戻れるならボクは過去のボクを止めるだろうに」


────いや、大丈夫だ。気付いている訳ではない。
恐らく『よく分からなくて困ってしまったから冗談を言った自分』を演出して擦り寄ってみようとしたのだろう。


自分で考察をして虫酸が走った。


ほむら「魔法少女勧誘をとっとと諦めろって言った方が早いんじゃないかしら」


QB「なるほど、それもありだね」


今度の言葉をほむらは受け流す事はできなかった。
あまりの驚愕に、キュウべえに詰め寄ろうとさえしそうになったが、慌てて堪える。


ほむら「……どういう事?」


QB「まぁ、あくまで保険だけどね。最近良いものを見つけたんだよ。絶望の卵なんてものじゃない────絶望そのものをね」


なんだこれは、違う。


今までとは、違う。


ほむら「なにを、言って……」


はっきりとした姿を見せないまま。
気配だけが遠ざかっていく。
闇が深い。


そして、さらに深く、濃くなった。
その中でほむらは立ち尽くすばかりだった。



さやか編 完

680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/02(金) 21:17:32.11 ID:fX/PHNcDO
次回予告





杏子「正式手続きをして私のお兄ちゃんになってくれよ!!」


クロ「はぁ?」


まどか「パパって……何者なんだろう」


かぐら『それがマザー、母なる場所』




知久「それが、居場所を守る理由」


クロ「お前、まさか」




明日の昼ぐらいに投稿します。



クロ「杏子、お前に見せたいものがある」





少しもたつきましたが、これからも続きますので、よろしくお願いします!
ではお疲れ!また明日!!



681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/03(土) 00:10:24.73 ID:hNjG9KDQ0
いよいよ杏子編か…
お互いに似た部分があるクロと杏子が出会ったら、どういう感情を抱くのか
恭介との下りを見てもわかる通り、クロは自分の罪と真正面から向きあってる
そんな自分とは全く正反対の生き方をしてる奴と出会ったら、間違いなく杏子は反発を抱いて衝突すると思うが…
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/03(土) 01:01:48.29 ID:RlKpp2rSO
乙!
次の投下も楽しみにしてる!
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/03(土) 19:51:51.77 ID:0JokThSDO
目が覚めた。


身体が重いのもほんの数秒だ。
そもそもそこまで深く眠りこけていたわけではなかった。


今から見回り、餌場とその他諸々──── 。


ここでは少しでも気を抜くと、そこから全てが崩れ去ってしまう。
だから、しっかりと自分が───というよりここに住む各々が栓を閉じなければならない。


そう、各々が





「おい!何また先に食ってんだよ!?」


「うるさいなー。そっちだってまた大声だしてるじゃないか」


声が聞こえる。
どうやら餌場の方からだ。どこぞの鼠が入り込んだかと思うが、自分は彼らの声を知っていた。


どうやら鼠ではなくて、イタズラ子猫のようだ。


あいつらは、また……


今度こそ叱り飛ばしてやらなければと思い、近づいていく。




─────そして



「おい」




そこで、『鹿目知久』は目を覚ました。
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/03(土) 20:37:34.95 ID:0JokThSDO
夢の中で目が覚めて、そして現実でも目が覚めた。
この奇妙なシンクロはそれほど特別な事ではないかもしれないが、しかしそれでもほんのりとした興奮を朝から届けてくれる。
要するに、なんだか得した気分になったのだ。




知久「……夢、か」


最近あの夢をよく見る。
とても不思議な夢で、まるで子供が見るような夢でありながら妙にリアリティーに溢れていた。
夢の中で自分は猫で、大きな廃工場の中で野良猫の群れの一員として暮らしているのだ。


そしてその夢にはいつだって、二匹の子猫が登場する。
名前は、確か


知久「マタタビに……、キッド」


詢子「う、うぅん」


何気ない記憶の中にある名前を口に出してみたものの、どうやらその声で隣に寝ている詢子を起こしてしまったらしい。
悪い事をしてしまったと声を潜めてみるものの、彼女はすでにモゾモゾと動き始めている。


詢子「……うん?」


そして、寝転がったままお互いに顔を合わせた。
目覚めたばかりの妻はいつもの強気な表情は鳴りをひそめて、少し夢見心地というかトロンとした目をしている。


知久「おはよう。詢子さん」

685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/03(土) 20:54:46.24 ID:0JokThSDO
詢子「はわわわわわ」


知久「はわ?」


知久の顔を見た途端、詢子はいきなり顔を真っ赤にして布団に丸く包まってしまった。
何故そうなるのかと妻の考えを図りかねたが、すぐに思い当たる節が出てきた。


クスリと笑って知久は身体を起こす。


知久「どうしたの詢子さん?出ておいで」


優しく問いかけてみれば、プルプルと震えている布団の中から拗ねたような声が聞こえてきた。


詢子「いやだ。またいじわるするつもりだろ!」


寝起きでまだ舌も回らないのだろうか。
多少舌足らずだが、しかしそれでも拒否を告げてくる。
そんなに昨夜のアレは堪えたようだ。
少し反省、少しだが。


知久「意地悪なんてしないよ?」


詢子「うそちゅき」


おや、本格的に舌が絡まっているようである。


知久「嘘じゃないよ。僕は詢子さんが大好きだから、そんな事しないさ」


詢子「……ほんとに?」


布団からほんの少しだけ顔を出して上目遣いでこちらを見ている。
化粧は落とすと普段よりも幼い顔立ちになる彼女は、そこを嫌がってはいるものの、こうなった以上とても可愛い。
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/03(土) 21:33:26.34 ID:CsNekihDO
昨夜のアレって一体なんなんでしょうね(棒)
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/03(土) 22:15:24.24 ID:NHvZVLHOo
昨日は(ry
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/03(土) 23:16:32.48 ID:0JokThSDO
すみません、尻切れとんぼですが今日はここまでにします。
明日は今度こそ、昼に投稿しますのでよろしくお願いします!


ではお休み!
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/03(土) 23:31:14.22 ID:NHvZVLHOo
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/04(日) 00:16:49.27 ID:xjUvAtKk0


>だが、これには、心がない。
>どんなに探ってみても何も感じないのだ。

魔女って言うならば基になった魔法少女の燃えカスみたいなもんだからな
ゴローの抜け殻と似たような物だと思えばいいのだろうか?
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/04(日) 13:47:04.53 ID:B1D5ByMDO
知久「本当に」


笑いかけながらそう言うと安心したのか、まぶたをゆっくりと詢子は閉じて、布団に丸まったまま二度寝をしてしまった。
しかし、朝と呼べる時間帯ではあるもののまだ二時間程の余裕がある事も事実であり、知久は後もう少しだけ眠らせてあげる事にする。


因みに自身はもう眠るつもりはない。
朝の準備をする時間が来るまで妻の寝顔をじっくり堪能しよう。
彼はそうも考えていた。


─────鹿目宅・廊下


まどか「あわわわわわわ」


何か、とんでもないモノの一端を垣間見てしまったまどかは両親の部屋の前で顔面からマグマが流れ出そうな程に顔を真っ赤にしていた。


まどか「だ、だ、弾道が1上がりました」


杏子編 第一話 『野良猫じみて』


その食事風景はやはりいつもと変わらない。
ここに住み着いて幾日とたったクロにとってはその変わらぬ光景は見慣れたものとなり、それこそ『いつも』という表現を迷いなく使える程になった。


知久がニコニコとして、詢子が少し眠そうで、タツヤは口の周りにお弁当をつけと、まどかは少し駆け足で朝食をとる。
朝特有ののんびりとした慌しさ。


用意された朝食を早々に摂り終えたクロはボンヤリとそれを眺めていた。
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/04(日) 14:54:12.87 ID:B1D5ByMDO
詢子「まどか、醤油取って」


まどか「しゅ、しゅうゆね。分かった」


詢子「いや、その人はいらないから。醤油」


まどか「分かってるよ!そんなんじゃないから。そんなでこんな面白くもない駄洒落を言った訳じゃないから!」


知久「まどかは元気だね」


いや、少しばかりまどかの様子はおかしいようだ。
顔を赤らめているのは別に怒っているからという訳ではないし、そもそも朝見た時からああだった気もする。


クロ(つーか、妙に家族と目を合わさないようにしてんな)


そう、さっきからまどかは家族の誰になにを言われても俯いたままであり、あまつさえタツヤを見ても何か考える素振りを見せたかと思えばまた顔を赤らめる。
これは重傷ではないだろうか。


クロ(……あれか?自分の親の情事を見て次の日から顔合わせ辛いってヤツじゃねーよな。まさか)


あながち外れではない事を知るよしもないクロは考える事に飽きたのか自分の朝食に口をつけた。
今日のご飯は、詢子がいるため箸を使うわけにはいかず猫まんまのような物を食す。


それでも十分に考えて作られているため、美味い事には変わりないのだが。


693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/04(日) 20:43:43.58 ID:B1D5ByMDO
クロ「………」


ほむら『………』


かぐら『………』


そして彼の両側にはいつもの二匹がぴったりと張り付くように寄り添いながら、皿に頭を突っ込んでいる。
そう、「ぴったり」とだ。


クロ(鬱陶しい……)


先日の戦いの後から、妙にこの二匹が懐き出した。
例えば、今までなら朝起きた時、今までだったらかぐらが引っ付いて寝ている事ならよくある事だが、最近ではほむらも一緒に眠るようになった。
たまの気晴らしの散歩にも無理矢理にでも引っ付いてこようとするので非常に落ち着かないのが難点だ。


しかし、これをほむら限定で考えた場合は彼が今まで持っていたわだかまりが多少は解けたと言えなくもない。


問題はかぐらである。


はっきり言って悪化しているのだ。


寝ている所に寄り添おうとする時も、これまでは横に引っ付くだけで満足していたのだが、今では無理矢理に腕の中に身体をねじ込むように入れて眠っているし。
あまりの邪魔臭ささに少し荒い言い方で引き剥がそうとするとまるで今にも殺されてしまうのではないかと思う程の不安を越えた絶望に染まった顔になるのだ。
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/04(日) 21:58:51.16 ID:B1D5ByMDO
原因として考えられるのは、恐らく前の戦いで自分が一度『死んだ』事だろう。
まだ歳から考えて、身体も精神も熟成などしてはいない子供なのだ。
まだ母親から離れて過ごすという事すら難しいはずで。
そんな時にあんな物を見せられて、その反動が出た。


そう考えた方がいいのかもしれない。


クロ(……鬱陶しい)


もう一度心の中でそう呟くも、彼はかぐらやほむらから離れようとしない。
これは別に彼らに対する反省や後悔からくる類いの優しさではなかった。


もっと切実に、もっと単純に、分からないのだ。
生まれた時から『親』というものを失っていたクロには幼い子供の『不安』を癒す方法など持ち合わせがない。
不安にかられた自分を抱き締める存在がいた覚えがないのだから。


クロ(じゃあ抱き締めるってか?バカ言え)


どうしたものかと空を仰ぐもそこには天井で、要するになるようにしかならないのだと納得する。


クロ(親、か。こいつらは隣町から来たつってたな。後でまどかにでも聞いてみるか)


695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/05(月) 01:45:53.13 ID:cm9kMPGQ0

面白いんだけど、このオリキャラの猫2匹は一体どういう役回りなの?
今の所は、ただのモブに毛が生えたようなもんで、
今までの役割も既存の原作キャラで充分に補えるし、そこまで必要性も・・・
この2匹に描写を割くなら、まどマギ側の描写をふやしたり、
クロちゃん側の登場人物とかを登場させた方がいいのでは?

それから、クロと同じ黒猫の「エイミー」は登場するの?
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/05(月) 02:36:24.28 ID:tddwV75ao
話が進めばおいおい分かるんじゃないかな
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/05(月) 03:45:26.97 ID:qUbAZqcDO
書きたいように書いてもらうのが一番
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 08:14:10.95 ID:l4O2/8CIO
宇宙のガズゥ二話来てたな
やっぱこの可愛い絵と重い展開がマッチして面白い
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/11/05(月) 13:40:01.49 ID:x8CP4rip0
危ない!なんでも溶かす液だぁぁ!!はいつ出てくるか楽しみでならないww
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/05(月) 14:51:12.63 ID:A44fi3Tj0
>>698
クグってみたけど、作者の「横内なおき」って、今pixivで活動してたのか…
クロちゃんもそうだか、絵柄の割りに殺伐としたストーリーとか
まどマギの作風と共通する所があるよな
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/05(月) 20:00:04.11 ID:mn8PiVCd0
乙です
杏子がクロに喰ってかかりそうって、意見があったけど。
クロは杏子におじいさん、おばあさんに拾われるまでの
目的もなく虚無的に生きていた頃の自分と重ねそう。

それからマミさんがクロにご執心だと知ったら、すごい
ジュラってきそう(笑)
ディファレントストーリーでも後輩2人に世話を焼くマミさんに
嫉妬してたしね。
sage
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/05(月) 21:06:24.59 ID:3nELFe7P0
sage入れるとこ間違えてるぞww
E-mailのとこにいれるんだよ
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/05(月) 21:27:38.85 ID:xLg9PEhDO
知久「そういえば、今日じゃなかったかい?まどかの友達が退院するのは」


まどか「うん、そうなの。だから今日は少し病院に寄ってから帰るね」


知久「うん、勿論良いよ」


そう、ここらで一つきちんと明記しておこう。
随分前に始まったような気がしないでもない巴マミの入院生活は今日で終了と相成った。
長かったとは言うものの怪我とう面から見れば彼女はもうとっとと退院できたはずだったのだが、マミに関しては精神面への多大な考慮が功を奏したのか長めの入院生活になった。


要するにゴネ得である。
そんな事で入院生活の延長なんて出来るのかと疑問には思うが……まぁ、気が向いたら試してみたらどうだろう。


まどか「うん……後ね」


知久「なんだい?」


またもや赤面するまどかだが、今度は顔を合わせ辛いというより言いたい事を少し言いだせないようだ。 これから自分は恥ずかしい事を言いますとばかりにモジモジとしている。


知久はただ笑って次の言葉を待っている。
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 22:04:24.16 ID:xLg9PEhDO
まどか「あの、あのね!今日、マミさんを家に招待したいの……良いかな」


詢子「良いぞ」


知久「勿論」


まどか「早いっ!?」


自分の知り合いを家に招く。
それを更に親に許可を得るという行為は、まだ中学生であるまどかにとっては多少の勇気を要するものだったのだが、認可はあっさりと即決で下った。
嬉しいというか少し戸惑いもある。
この二人何も考えてないのではないかと。


まどか「そ、そんな簡単に決まっちゃうなんて。もし私が男の子を連れて来てもあっさりと許しちゃうのかな?なんて……」


詢子「バカ言うなよ。まず殺す。話はそれからだ」


知久「詢子さん、全部はまずいから半分くらいでいいんじゃないかな」


まどか「あの、冗談だよね?」


詢子・知久「「ふふふ……」」


軽い気持ちで言った冗談だったはずなのに、何故だろうこれから先の血の未来が二人の笑顔に透けて見える。
とりあえず何も考えていない訳ではなく、何かとんでもない事は考えているようである。


クロ(親バカ……)


まどか「嘘って言ってよぉ。ウインナー上げるからぁ」

705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/06(火) 01:03:02.10 ID:BpvowjXA0
乙です!
上条もそうだけど、ssとかであんまり焦点が向かないキャラにもスポットを当ててるのがいいね
まどマギssでは魔法少女達の話になりがちでまどかの親って、蚊帳の外な事が多いから
まどかの家族の描写が多いssは結構貴重かもしれない。
クロちゃんが猫故だからの特権なのかもしれないけどねww

それからマミさんは、メンタル大丈夫だろうな?
戦えないかもとまどかが言っていたが、魔法少女にとってそれは死活問題だし
クロはSGの秘密を知らないけど、入院中のマミさんに、GSをちゃんと分けてたのか?
魔法使わなくても、体の維持や感情の乱れでジェムは濁る仕様なんだし
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/06(火) 06:14:07.34 ID:Jv6DrtSVo
まさか無限エネルギー装置が伏線だったりして・・・
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/06(火) 21:01:57.89 ID:kVWHAabDO
詢子「ハハハッ、ウィンナーよりもそのミートボールで手を打とうじゃないか」


まどか「なッ、登校前の楽しみに取っておいた最後の一口を!?」


少しばかりテンションが上がってきたのだろうか。
詢子がなんだか元気になりはじめた。
そこにまどかもしっかりと輪をかけていく辺りが鹿目家たる由縁なのだろう。


詢子「美味い物は先に食った方が良いに決まってるだろ?この世界はバイキング(食事的な意味で)じゃない、バイキング(海賊的な意味で)なんだ。与えられる前に奪う。それが弱肉強食の法則さ」


まどか「……パパ〜、助けて〜」


知久「分かった分かった。後で詢子さんのお弁当のおかずをまどかの方に移しておくから」


詢子「ナニィッ!?等価交換の法則だとぉ!?」


やめてくれよぉと、今度は詢子が知久にすがりついている。
こんな風に一日一日でこの家族が見せる姿は毎度のように違う。
笑ったり、ふざけたり、慌てていたり、焦っていたり。


父がいて、母がいて、そんな『家族』という幸せの形を、クロは初めて目の当たりにした。
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/06(火) 21:44:21.18 ID:kVWHAabDO
クロ(つーか、あいつら時間は?)


そこそこふざけ倒してはいるが、今は急ぎの用があるはずの二人だ。
こんな事をしている暇は勿論ない。
最初に気付いたのはまどかであった。
何気なく、本当に何気なくだろう。
壁にかかっていた時計を見て目を丸くした。


まどか「いけない、ママ大変もう時間だよ!」


詢子「うおっ!?こりゃダッシュがいるな」


時計を確認してそれなりに時間がないことを知ったのだろうが、それでもしっかりと二人は手を合わせて『ごちそうさまでした』と声を揃えて言った。
それを見た知久は、やはりニコニコと笑っている。
本当に嬉しそうだ。


まどか「じゃあ、パパ、タッくん、行ってきます」


詢子「行って来る」


知久「はい、行ってらっしゃい」


別々の言葉がバラバラにかけられるが知久は、やはり笑って、その言葉を一くくりに受け止めて一言で彼女達を送り出した。


慌ただしい足音が遠ざかっていき、最後に玄関の扉が開く音が聞こえた。
ようやく、彼女は自分の勤め先───まどかに関しては勉め先と言える───に向かっていったようだ。
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/07(水) 21:48:46.28 ID:n3p35ogDO
クロ「ごっつぉさん。……んじゃ、オイラも行くか」


知久「あれ?珍しいね。こんな早い時間にお出かけかい?」


しっかりと女性陣が家から出た事を確認してからクロは口を開く。
やはり普通の猫が喋る姿を事情を知らない詢子に見せるのは抵抗がある。
あの飄々とした彼女を見るかぎりでは猫が喋ったからと言ってどこぞの『快楽に溺れやすい猫』のように世間に見せびらかされる事にはならないだろうが、それでも多少は面倒くさい事にはなると思う。
家にいる時くらいは静かに暮らしたい。


クロ「あぁ、ちょっくら今から」


知久「病院かい?」


クロ「……まぁな」


言葉を先読みされ、クロは口の中で舌打ちをつく。
驚き以上に面白くないという思いがあったからだ。
理由なんて、今の知久顔を見ればそれだけで十分だろう。
『やっぱりね』と顔にデカデカと書いているよいな笑顔がそこにはあった。


知久もまたこちらの不機嫌に気付いたのだろう。
今度は苦笑いを浮かべている。
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/07(水) 22:29:59.10 ID:n3p35ogDO
知久「何も嫌がることはないだろう?心配で仕方がないから今日までだって毎日のように病院に行っていたじゃないか」


そう、知久の証言通りクロは時間があれば病院に向かっていた。
巴マミに会いに行くために。
さやかの騒動の前日も後日も欠かさず、恭介に出会った事だってマミに会うついでの出来事である。


付け加えるなら、そのついでの行動が一時は自らの死にまで繋がってしまうとはクロは思いもしなかっただろうが。


クロ「心配で仕方がないとかじゃねー、暇で仕方がなかったんだ!あと毎日とかいい加減な事ぬかすな。精々……週5とか、6だ」


しかしクロもさるもので、中々その善意を認めようとはしない。
更に『お見舞い』という言葉を決して使おうとしないとう徹底ぶりである。
最後の方は流石に無理がある事を言っていると気付いたのかはっきりしない言い方であったが。


知久「ハハハッ、優しいね」


クロ「だーッ!そういうのが嫌なんだっての。いちいち人を良い奴にしなきゃいけねーのか?いーじゃねーか、別に嫌なヤツでもよ」


知久「そういう訳にはいかないんじゃないかな。君の場合は特に」


クロ「あぁ?」
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/07(水) 23:03:38.14 ID:81d0imLQ0
>あと毎日とかいい加減な事ぬかすな。精々……週5とか、6だ

ツンデレだ・・・物凄く典型的なタイプのツンデレだ・・・
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/07(水) 23:10:23.49 ID:n3p35ogDO
クロだって大人である。
一々意見の食い違いくらいで掴みかかったりはしない。
しかし、今のクロは知久の言う事に反応しては食って掛かっている。
それは別に単純な反目ではない。
言葉を掛け合って戯れ合っているようにも見える。


知久「もうちょっと素直になってもいいんじゃないかなってこと」


クロ「オイラはいつだって素直だぜ」


知久「君は自分に正直なだけだよ。他人には嘘は吐くけど誠実で、それでも素直ではないだろう?」


あるいは、クロが諭されているようにも見える。
またもや面白くなさそうに「ケッ」と吐き捨てているクロを見れば若干後者の方が正しいのかもしれない。


クロ「あーはいはい、負けだ負け。ここは『素直』に善処するさ」


知久「すまないね。少し説教くさくなってしまった」


申し訳なさそうな彼を見ながら、元々知久は、世話焼きが性分の人間なのだろうとクロは考察する。
そうでなければ子供が二人いる家庭で主夫なんかやってられないだろう。
そして恐ろしい程に気が回る男でもある。
元の世界、桜町にはいないタイプの人間だ。


というよりあっちにはロクな大人がいないせいでクロ自身が頼られる側によくなっていた。
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/07(水) 23:14:01.74 ID:pmwFeHzGo
確かにロクな大人がいねぇなww 剛君とか鈴木とかww
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/07(水) 23:26:12.82 ID:81d0imLQ0
>>713
でも、待て一応スズキはまだ「大人」にはいるのでは?
ゴローの親父に「これはあなたの無責任の結果なんだ!!」と怒鳴ったり
結構体を張ってたしね。やる時はやるタイプだよ
それ以外では、あだ名がジムで生徒に舐められたりと散々だがwwww
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/11/08(木) 00:20:25.62 ID:eHCdoEfMo
スズキ夫婦はまああの作品の中ではまともな方に入るだろ、他がひどすぎるって話もあるが
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/08(木) 00:49:00.31 ID:XDts47t60
よく知らんけど、まどマギに負けず劣らずトラブルメーカーが多い漫画なのか?
サイボーグクロちゃんって
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/08(木) 01:55:54.40 ID:inuJdTEY0
トラブルメーカーが多いってか
皆が皆トラブルを呼び起こすカオス空間によくなる

アニメじゃメタい発言もあったからな〜
人気投票がうんぬんとか
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/08(木) 02:32:41.82 ID:LDxQlK6DO
主要人物全員トラブルメーカーだな
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/11/08(木) 15:29:12.27 ID:eHCdoEfMo
>>717
メタは漫画からだよ
トミーの宣伝とか作者云々とかあったろ
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/08(木) 16:19:28.04 ID:UQZSrIdDO
アニメでも見るかと思ったらアニメはオススメできない、アニメはアニメの楽しみがあるが中途半端にしかアップされてない
知らない人は漫画から入るべき
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/11/08(木) 18:23:44.55 ID:eHCdoEfMo
デビチルにしてもそうだったが、規制入ったのか過激表現一切排除されてつまらなくなってたからな
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/08(木) 18:40:50.05 ID:nD+IOYdH0
デビチルは別物だろwwww

アニメクロちゃんは原作の「核発射!」が別の物に変えられたのがショックだった
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/08(木) 20:29:30.06 ID:BpoGrCZ6o
>>722
やむおえん、メガトンミサイルを使おう・・・!かw
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/08(木) 21:48:03.87 ID:skSOu/mDO
クロ「あぁ、ガキじゃあるまいし。口出しされんのは勘弁だぜ」


知久「分かった。気を付けるよ」


なるほど出来た人間である。
しかしこういった人間の善意は断りずらいのが難点だ。
それでなくても世話を焼かれる事には慣れていない。
このままでは、ナナと同様されるがままである。


それは雄猫の誇りの危機だ。


あぁ、あぁ、あぁ、やりずらい。
今なら溜め池だけで呼吸しながら一日を過ごせそうだ。
もう、ここにいては毒される。
ニコニコ笑った男に。


クロ「もう行くぞ。かぐら、ほむら準備はいいな」


クロは、自らを取り巻く都合の悪い空気を振り切るように一方的に会話を区切って玄関に歩きだした。
そのすぐ後ろを二匹の子猫がトコトコと付いて歩く。
その姿を黙って見ていた知久だったが急に思い出したように声を上げた。


知久「クロくん、ちょっと待って!」


クロ「あん?まだなんか言いてーことあんのかよ!」


ちょうど玄関に向かう廊下にその姿が隠れそうになった時であった。
顔だけをひょっこりと出して知久に不機嫌そうな表情を向けている。
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/08(木) 22:46:24.67 ID:skSOu/mDO
知久「行ってらっしゃい」


タツヤ「いってらっしゃーい」


やはり知久は笑って、それにつられたようにタツヤも笑ってクロに手を振ってくる。
正直、悪い気はしない。


しかし、それと同時にもの凄くこっ恥ずかしい事をされているような気にもなってしまう。


クロ「……行ってきます」


それでも耳をポリポリと掻きながら、クロはしっかりと返事をする。
そうするのが自然で、拒む理由も特になくて、それ以上に、そう言いたかったから言ったというのが主な理由であった。


そして、クロは足早に子猫を連れて廊下に姿を消す。
足音は流石に聞こえないが玄関のドアが開いて閉じる音がした。


知久はそれを最後まで聞くとまた一つ満足気に笑った。
そして、少し時計を見てタツヤを保育園に連れていくにはまだ時間に余裕がある事を確認する。
まずは机に並べられた空になった食器を片付けようと手に取った時。


それは唐突に訪れた。
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/09(金) 02:07:28.30 ID:oN3SQKlx0
>>720
気になるけど、本屋に置いてないんだよ
古本屋にいっても何冊かはあったんだけど1巻は置いてなかった
調べたら、ほぼ絶版で再発行もしていないし…
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/09(金) 07:55:21.08 ID:IYz1lXKIO
そんな貴方にガトリングセレクション
初期の重要な話は大体入ってる

というか古本屋で単行本手に入るなんて羨ましい
俺なんて古本屋十軒くらい回ったが一冊も無かったんだぜ…
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/09(金) 10:50:22.82 ID:QbWEgiJDO
古本屋、ネット通販、使える手は全部使って血眼になって最近やっと全巻+番外編を揃えたよ……
全部集めた後に近所の古本屋に全巻揃ってた時の悔しさったら無いよ
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/09(金) 20:08:09.44 ID:Rt0yb+PH0
近く漫喫で本編全巻読めるオレは勝ち組か……
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/11/10(土) 03:46:09.62 ID:KzKIh/fwo
ところでクロちゃんで腹を抱えて笑ったところってあった?
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 16:46:19.00 ID:9fSdYdIIO
>>730
インディコールで鈴木が橋渡る場面は笑った
宝探し編は終始ギャグと鈴木のじいさんすげえで徹底してるよな
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 19:18:53.80 ID:0MlSUu5DO
剛くんが南極でT.MのホワイテブレスをPVの格好で歌わされたシーン
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/10(土) 22:18:19.64 ID:hQjMIKLb0
作者更新どうしたのかな?
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/10(土) 22:46:25.08 ID:A535n3Ta0
>>730
俺はミーくんの「ベイビー!」が笑えたww
その後のクロの突っ込みも含めてww
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/11/10(土) 23:15:11.85 ID:A535n3Ta0
もし、マミさんが復活してクロと共闘したら
杏子の「ロッソ・ファンタズマ」みたいにクロの武器に名前をつけそうだよなww
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/11(日) 20:19:34.74 ID:M1jF0A9DO
『心配すんなって。ちょっとメシを取ってくるだけさ』


『大丈夫さ。コイツの面倒はオレがしっかりと見るからな!』


『そんなのいらない。自分の面倒ならもう自分で見れる。オイラはそんなガキじゃねぇ!』


『へんッ、言ってろよ』





知久「……?」


それが『来た』のは突然の事であった。
目の前が真っ白になったかと思えば、微かに何か、いや誰かが見えたのだ。
影が二つに、声も二つ。
聞き覚えがあるようで、それでも確かな物もない。


まるで忘れてしまった夢を思い出そうとしているようで、それは今の自分には遠すぎる何かのような───そんな気がした。


タツヤ「パパ?ろーしたの?」


風が吹いて、そして去るように白昼夢は去り、少し不安そうにタツヤはこちらを見ている。


知久「タツヤ……大丈夫だよ。パパは平気、少しだけ夢を見たんだ」


ゆめ?とタツヤはよく分からなさそうに首を可愛らしく傾げる。
知久は、そっとその柔らかい髪を撫でた。
そして、大丈夫という自分の言葉をもう一度口の中で呟いた。


あれに悪いものは何も感じなかった。
感じたものはただ懐かしく、そして温かい。
そんな、まるで『思い出』によく似たものだった。
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/11(日) 22:00:35.21 ID:M1jF0A9DO
────住宅街


朝の見滝原の街は佇む老人のように静かな姿を見せていた。
そんな、まるで詩人のような表現もあながち間違いではないと思う。

人々は朝目覚めてから少し時間が経った事からか仕事や学校に向かう人は、ほとんど見受けられない。
道行く人はまばらで、その人も一度すれ違えば振りかえることなく何処へ消える。


そんな道を三匹の猫が歩いていた。
右から虎猫、黒猫、小さい黒猫の順番である。
その真ん中の位置を陣取って歩くクロはなんとも言えない苦い顔をしながら歩いていた。


ほむら『……なぁ』


クロ「んだよ」


ほむら『暑苦しくないのかよ。クロ』


クロ「あぁ、暑苦しいぜ。できる事なら離れてほしいくらいだ」


虎猫・ほむらは少しだけ案じるような表情でクロの顔を見上げている。
因みに、彼は先の件で思うところでもあったのだろうか、クロに対する呼び名は『あんた』から『クロ』へと変わった。


何を思ったのかまではクロにはどうでもいい事であり、そう呼びたいなら勝手に呼べばいいので深く聞くつもりはない。
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 18:11:11.46 ID:EkjUULIo0
今日、発売のTDS下巻買ってきて読んだ
よ…
マミさんが、ずっと戦い続けてこれたのは、両親を救えなかった贖罪と「誰かとずっと一緒にいたかった」という寂しさからだったのか…
その後、杏子と和解できたと思った矢先に…ああいう結末だっただけにこのssではマミさん杏子共々救われて欲しいわ

それから、読んでて改めて思ったが、やっぱり杏子とクロは似てる。
素直になれなくて、意地を張って悪ぶって心にもないことを言ってしまったりとか、本当に似てる
共通点がかなり多い二人だけど、明確な違いがあるとすればなんだろう?



739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/12(月) 20:46:46.27 ID:r65ex7Pwo
>>738
下はいいけど上はチラ裏
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/12(月) 20:58:45.22 ID:Rk2cptBDO
そんな事、今、自らが直面している諸々の問題に比べたらどうでもいい事だった。


かぐら『……』


至って真面目でピッタリとクロに引っ付いて歩く小さい黒猫・ほむら。
いや、もしかしたら本人にとっては険しい顔をしてあるつもりなのかもしれないが。


クロ「おい」


かぐら『……』


クロ「おい。離れろよ。邪魔くせー」


ほむら『かぐら……』


クロが大雑把に突き放すような言葉をぶつけても、ほむらが案じるような言葉をかけても彼女は決してクロの側から離れるような事はしなかった。
身を寄せて、合わない歩幅を必死に足を動かして揃えようとしている。


かぐら『……』


そして、口数も少ない。
出会ってからもう大分経ったが、こんな彼女を見るのは初めてである。
すっかりしおらしくなってしまい、あの弾けたテンションはここ数日鳴りをひそめてしまった。


やりにくさ、苛立ち等々を彼女に感じてはいるものの、原因の一つとして確定しているのは自分である訳でクロは無理矢理には突き放すつもりはないのだが。


ふぅ、と一つため息をクロはついた。
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/12(月) 21:26:31.22 ID:Rk2cptBDO
クロ「おいコラ、元気娘」


少しキツい言い方をするクロに、流石のかぐらも身体をびくつかせて顔を上げた。
その小さい身体を見下ろすその顔は睨むというより呆れているようだ。


かぐら『な、なにさ』


ようやく、かぐらの顔に力がこもる。
小生意気というか、なんにでも突っ掛かるような子供の気色がそこにはあった。
喜ばしいとしておこう、なんとも子供単純である。


クロ「何をそんなに考え込んでいやがる。朝っぱらからうっとーしいんだよ」


かぐら『……やっぱり。邪魔?』


が、折角少しだけ元気にしたはずが、その元気にした本人の言葉でまたしてもかぐらは顔を下げた。
ほむらから責めるような視線を飛ばされる。


クロ「あぁ、邪魔だな」


しかし、クロは迷わずその言葉を告げた。
かぐらは、ただ沈黙する。
その顔はすぐにでも泣きそうで、目には涙がたまっていた。


そして、かぐらはゆっくりとクロから身体を離そうと足を動かし始める。


クロ「その顔が」


かぐら『……え?』


が、クロが次に発した言葉にかぐらは離れようとしていた足を止めた。
クロもまた立ち止まる。
顔はかぐらには向けず、どこか明後日の方を見ていた。
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/12(月) 21:57:50.20 ID:Rk2cptBDO
クロ「くっつきてーなら暗い顔すんな。近いとこでそんな顔されちゃ迷惑だってんだよ」


かぐら『お兄ちゃん……』


まるで、信じられない衝撃の事実を告げられたような声をかぐらが漏らした。


その声を聞き、やれやれと言わんばかりの顔になっているであろう自分の顔、少なくともかぐらに見せるつもりはなかった。


こういう時にどうすればいいか?など、正直分かってはいるのだが、その通りにするのはシャクだ(何に対してかの議論は不毛だ。不毛ったら不毛だ)。
しかし、だからと言ってあまのじゃくな対応は事を荒立てる。


クロ(どっかの電気スタンドに鍛えられてっかんなぁ)


頭をよぎるのは頑固でワガママで落ち込みやすい上に負けず嫌いという厄介な女。
あんなのと四六時中一緒にいれば少しは慣れがでるものだ。


かぐら『お兄ちゃーん!』


と、そこに安堵と喜びがいっぺんに身体を走ったであろうかぐらは、その反動でクロの首筋に抱きついていてきた。
抱き付くと言ってもほとんど飛び掛かってきたようなものだが。


かぐら『やったー!お許しがでちゃたよー!』
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/12(月) 22:52:05.11 ID:6TkJlNQ/0
>>738
明確に分けるとすれば、色々な経験をした大人と子供という違いじゃない?
14、15歳くらいに思春期のせいだと思うけど、マミや杏子、さやかもだけど、潔癖症すぎるんだと思う
誰だってあって当然な利己的な気持ちをやましい事だと、気にしすぎて自己嫌悪に陥りがちなんだよね
色々経験を詰めば、それに折り合いをつけたり割り切ったり出来るんだけど、まだ、幼いからね
本編やTDSでも、すれ違いが多いのも人と人との距離感が、よく掴めないからというのもあると思う
過去の回想でマミさんが、杏子の言葉を早とちりして
自分から、歩み寄る事に遠慮がちになってしまったのもそのせいだろう
クロやマタタビも、いつもいがみ合ってるけど、いざとなれば力を合わせるし
お互いに心の底では信頼してるでしょ?それが違いみたいなもん

>>739
まどマギとのクロスでもあるんだし、ある程度は話しててもいいんじゃない?
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/12(月) 23:49:36.61 ID:Rk2cptBDO
クロ「タダで許しを出した覚えはねーぞ」


かぐら『うん、笑うー!!』


じゃれつくかぐらを好きにやらせてはいるものの、自分の取った行動に段々と多少の照れを感じてきたクロは顔を反らした。


ほむら『へー』


しかし、反らした先に待っていたのは、ほむらのジト目である。


クロ「……なんだよ」


ほむら『べっつにー、ズルい奴だなって思っただけだ』


なんとも、チビのくせに含みを持たせた言い回しをしてくるものである。
しかも割と誉められているものだから、やりにくいったりゃありゃしない。
仕方なく、取り敢えず何も言わずクロはそのまま歩きだした。
そんなクロの背中を一拍遅れて二匹は追い掛けて、トコトコとまた横に並んで歩きだす。


かぐら『いやー、やっぱり優しいね。いいね。お兄ちゃんにしておくのは勿体ないよ!』


やはり、単純。
今までが嘘っぱちが如く、かぐらはキャッキャッと騒ぎながら隣を歩いている。
少しではあるが、気をもんだり、心配したことを後悔してしまいそうな復活ぶりだ。
やれやれ、である。


745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/13(火) 00:15:23.93 ID:6Y33nS0DO
クロ「それが勿体ねーなら他に何なれってんだよ」


かぐら『パパ!』


クロ「勘弁してくれ……」


満面の笑みのかぐらには悪いが、それには少し懲りているのだ。
げんなりとしていると、かぐらは面白くなさそうにブーイングを飛ばしてくる。
パパという言葉にはいい思い出はない。
こうみえてもクロは、ある日突然「ほーら、これがあなたのパパですよー」と言われるという衝撃体験がある男なのだ。
それを、もう一回?
さすがにしんどい。


かぐら『えー、ママもきっと喜ぶよ?お兄ちゃんみたいなパパがいれば』


クロ「分かりずれー存在だなそれゃ」


本気で残念そうなかぐらを軽い突っ込みで受け流しながらクロは気になっていた事を聞くことにした。


クロ「なぁ、お前らは隣町から来たんだろ?どんな所だ?」


単純な好奇心と、興味。
知らない世界を冒険したいというアグレッシブな気持ちは毛程も湧かないが、それでも身近な存在である彼らのことくらいは知りたかった。


ほむら『こことあまり変わらない。猫の足には少し遠いけど、それでも歩いていけない程、遠い場所じゃない』


クロ「ま、お前らみてーなガキが無事に辿り着けた訳だからな。ちゃんとしたルートを通りゃ危険もそんなにないだろうな」


一応、納得はする。
まだ納得しきれない事もあるにはあるが、まぁ聞こう。


746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/13(火) 00:35:31.42 ID:6Y33nS0DO
かぐら『そしてね!虹色の家に住んでたの!ほむらの家族や皆と一緒に』


クロ「虹色の家?」


かぐら『そう!ママの家だよ!』


また分からない単語が出てきた。
虹色の家?
それは、単純に七色に塗装された小屋かなにかなのだろうか。
それとも少女の目に写ったありのままの光景を言葉にしただけなのだろうか。
さっぱりである。


クロ「まーいい。ママの家って事は群れのリーダーなのか?お前のお袋さんは」


かぐら『袋?ママはそんなんじゃないよ』


クロはそういう事じゃねーよ、と律儀に突っ込みをいれる。
なんというか、彼女の母親の気苦労は相当なものだったのかもしれない。


ほむら『かぐらの母さんはオレ達に寝床をくれたり、餌を持ってきてくれたりしてくれたんだ。でもリーダーじゃなかった。───ていうかなれないんだ』


よく分からず、クロは首をかしげた。
そこまでしておきながらリーダーじゃない?
話を聞いた限りじゃ相当な実力者ではないか。


一般の猫が普通そこまで出来るはずが────まさか


クロ(おいおい、マジかよ)

かぐら『そしてね。なんか最近危険だからここから離れろって、ママが言ったの』


クロ「……会いてーか?」


かぐら『うん。ちゃんとご飯を食べ切らなかったらママ凄く怒るんだよ。でも、今のかぐらは一人でもちゃんと食べてるの。それを教えてあげたいんだ』


楽しそうに告げるかぐらの顔をクロは真っ正面から見れなかった。
それは照れ隠しでもなんでもなく、彼女の笑顔が眩しく感じてしまったからだった。
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 00:40:57.53 ID:6Y33nS0DO
今日は以上です!


さぁ、この杏子編でしつこくはったあの伏線も回収されます。さぁ、がんばるぞ!


次は15時くらいにまた書き込みます!
では、お休みなさい!


748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 00:46:59.37 ID:WtDl2FXN0
ヒュー!乙
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/13(火) 00:49:26.58 ID:OiPBBMOv0
七色の家、食べ物を残したら怒る…
まさか、ママって…
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/11/13(火) 07:08:04.63 ID:AxnfScLJ0
乙!
これはヤバいな、色々な意味で
楽しみすぎる
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/13(火) 18:50:14.66 ID:9DPhILdN0

上で話してた、TDS下巻読んだけどさ
願いで死者蘇生って、できたんだな
外伝含めて、誰もやらないから、てっきり出来ないもんかと思ってた
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/13(火) 21:15:23.65 ID:5B63JLr20
>>751
あの世界では本人や他人の記憶を基にして作られた「合成人間」が存在する事がかずマギで語られている
そして、下巻の冒頭でミチルらしき女の子がいる
後は・・・わかるな?
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/13(火) 21:46:47.75 ID:6Y33nS0DO
─────見滝原・とあるビル内


詢子「で……結局なんですか?」


見滝原市街に存在するビル群の中にある決して小さくはないガラス張りにされた建物。
その一つにぶすったれた表情を惜し気もなくさらしている彼女はいた。
名は鹿目詢子、言わずと知れた鹿目家が稼ぎ頭である。
時間は昼、家のため、夫のため、子供たちのために働いた彼女は束の間の休息をとっていた。


はずだったのだが。


「ごめーん!休憩中だった?」


詢子「休憩中?それどころか食事中でしたよ」


詢子が今いる場所は、普段彼女がデスクワークをしている机や椅子がごった返している職場とは違う。


まずは立派なソファーが部屋の中央で向かい合っており、広いくせに一人用とのたまう机が一つ、そしてその前には先ほど軽い調子で謝った女性が革張りの椅子に腰掛けていた。
ここは、所謂『社長室』であり、そこにいる女性はすなわち社長である。


社長「いやぁ、申し訳ないなー」


詢子「そうですね。常日頃から働いていても休憩しているようなもんの貴女には分かってもらえないかもしれませんが。労働者にとっては30分だろうと1時間だろうと休憩というものはその日を乗り切るためには必要なものなんです。それをわざわざ叩き潰そうと言うのですから、それはそれは大層なご用件なのでしょうね?」
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/13(火) 22:35:17.89 ID:6Y33nS0DO
社長「ひ、一息で言い切った!凄く手短に済ませたいんだ!」


当然、とばかりに詢子は腕を組んでいる。
今目の前にいる女性、口調や喋っている内容から察して欲しいが、あまり中身の伴わないタイプの人間だ。
一応年も近く、割と懐かれているが、いちいち暇になるたびに呼び出したりするので詢子は嫌っている。


詢子「で、なんですか?ホント、ろくな用じゃなかったら一族郎党、ハクビシンもろとも滅ぼしますよ」


社長「滅ぼすって……酷い上にハクビシンと並べられたってなんのくくりか分からないよ」


詢子「害獣です」


社長「表出ろ!!」


怒りにまかせて社長が、机を跨いで飛び掛かってきた。
まさか自分の家族を家屋の破壊やふん害で最近都心でも被害を与えている害獣指定された動物と並べられるとは思わなかったのだろう。
高く跳び、詢子に踊りかかった。


詢子「死ね」


が、飛んで火に入る夏の虫とはこの事か。
不穏な呟きを唇にたたえた詢子の右足はまるで鞭のようにしなりながら跳ね上がり、爪先が社長の鳩尾に突き刺さった。


社長「オゥフッ!?」
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/13(火) 23:18:40.70 ID:KJP0clOU0
>>752
よく見たら、確かにミチルらしいのがいた
もし、この仮説が正しいなら何一つ救いがねえな
杏子が命懸けで助けたマミさんは、自分自身の境遇や世界に絶望するし、誰一人報われねえな…
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/13(火) 23:47:53.24 ID:6Y33nS0DO
空中でバランスを崩した社長はそのまま背中から床に叩きつけられる。
なんだか、よく分からない呻き声を上げながら床でのた打ち回っているが構わず詢子は声をかけた。


詢子「で、なんの用ですか?」


社長「こ、このタイミング、でッ?!」


詢子「で、なんの用ですか?」


社長「も、もっと、何か、言葉を……」


詢子「で、なんの用ですか?」


社長「……はい、あのね。天童コーポレーションの社長さんが来るの」


もうこれ以上喋ったところで相手にされないどころか、自らの顔面の真上にある靴底から察するにもっと惨劇が自らに降り掛かると判断した社長は本来の用事を告げた。


詢子「天童グループ、ねぇ。隣町の件ですか?」


社長「うん、前回と全く同じだよ」


天童コーポレーション、それはここ10年の間に隣町で爆発的と言っても過言ではない成長を遂げた隣町にある会社である。
元はどこにでもありがちな普通の会社が、ある日突然現れた男により町でも一番の影響力を持つ会社になったという俄かには信じがたい裏話付きだ。


その会社が最近、隣町の土地開発に関して共同提携を持ちかけてきたのだ。
一旦は、諸々の理由で断ったが、今度は社長直々の参上だという。


757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 23:51:33.05 ID:mP/9yrCj0
あの話を見た後だと、マミさんが真実を乗り越えるのは、
かなり難易度が高いんじゃないかと思い知らせるなぁ

クロは恐らく、元の世界に帰るだろうし・・・

マミさんの孤独感を拭いきれるのか心配
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/13(火) 23:52:10.20 ID:6Y33nS0DO
尻切れトンボになりましたが、今日はここまでにします。
明日は少し早めの時間に投稿できますので、ちゃんと頑張るんでよろしくお願いします。ごめんなさい。


天童?、あぁ、アイツです。


社長?、あぁ、完全に話の繋ぎに必要だっただけです。使い捨てです。


では、ありがとう!お疲れさま!
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 00:05:35.00 ID:QMBmPVTIO
天童[ピーーー]
ゲス度ならQB上回るぞそいつ
宇宙の為とかでもなく完全に私利私欲だし
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/14(水) 00:13:14.60 ID:yGj0HMr9o
天童ってミー君のお母さんを殺したあの下衆か!
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/14(水) 00:16:59.33 ID:xWgQRfYu0
乙。
更新終わってなかったのか
空気読まずに雑談して>>1には悪い事したな
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/14(水) 00:36:42.73 ID:ThHlKk3P0
乙カレー
しょうがないよ、5時くらいまで繋がらなかったんだし
天童って・・・ミーくんと剛くんの過去に出てきたあいつか
異世界ではなく、クロちゃんの世界の延長線上なのかな?
それから詢子さんww知久さんの前では借りてきた猫の様だったのに

>>755>>757
大丈夫だよ。破壊のプリンスのクロならBADENDを破壊してくれるさ
つーか、「クロちゃん大好き一緒に歴史に名前を残して死のう」のヤンデレ少年とか
色々、愛が重すぎる元電球のお手伝いロボットや
怒りと憎しみしか残っていなかった暴走機械とか
まどか☆マギカのキャラ並に問題を抱えてる奴等がみんな・・・変わっていったんだぜ?
きっと、魔法少女達に「希望」を見せてくれるさ
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 02:33:56.80 ID:x7PiaTrDO
一瞬、天の道を往く男かと思ってしまった
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 20:07:13.07 ID:WvI9s5T/0
>>755
何一つ救われなかった。わけではないんじゃない?
最期に自分の事を家族の様に思ってるくれる子がいたと知って、孤独じゃないとわかったんだし
まあだからこそ、やり切れないんだけどさ

それからUP主に質問なんだけどさ
本編とドラマCDが下敷きにしてるって聞いたけど
まどポの落書きの魔女が出てきたという事は
買ってはいなくてもスピンオフとかの、まどか関連の情報は色々集めてると思っていいんだよね?
という事はTDSの内容の一部や設定も取り入れるの?
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 01:10:15.58 ID:wtXOmeiDO
(死者蘇生されてるSSはあるとは言えないな)
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/16(金) 21:19:51.62 ID:saruNUuR0
更新どうしたのかな?
いつも、ほぼ毎日やっていたから、急に停止すると不安になる…
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/17(土) 20:38:12.23 ID:Z8aqLfi00
エタるのは勘弁してくれよ・・・
更新を楽しみにしてるssなんだから
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/17(土) 21:01:56.02 ID:K1lnqptDO
どうにもきな臭い話である。
一度提携を断られた仕事を再度粘ってくる事に関しては、よくある事であり気にも止める必要はない。


しかし、何故わざわざ社長まで出張ってくるのだろうか。
話に聞いた限りでは、その仕事自体はよくある土地開発絡みのものなのだが、それをわざわざ隣町の企業がこの見滝原の企業に提携を求めてきた。


社長「なんのつもりかな。……そもそも私、あの人苦手なんだよね」


詢子「奇遇かつ、奇跡的ですね。私は奴が嫌いですよ」


そこまではっきりと言い切る詢子に対し社長は苦言を呈する事もなければ先ほどの脳天気さを発揮して何かを言う事もなかった。
ただ、心底共感したように頷くばかりである。


詢子「……お?」


社長「来たね」


堅い扉をノックする音が部屋に響き、二人は顔付きを変えた。
これから招き入れる者はただの客人ではない。
かといって普段相手にしている同業者でもない。


「やぁやぁ、失礼するよ」


それが何かは、これから見極める事としよう。
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 21:51:02.54 ID:K1lnqptDO
すみません。色々忙しくて更新できませんでした。

月曜からはしっかりと更新できると思いますが、明日もそこそこなら投稿できます。


後、基本的に本家の情報や設定は使える分はしっかりと使っていきます。
描写は無理で匂わせるくらいで終わる設定もあるかもしれませんけど、ではまた明日!


770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/17(土) 23:00:40.97 ID:9AKVSfvlo
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/17(土) 23:28:15.29 ID:etcI74210
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 21:32:02.44 ID:HfqdJddG0
>>1どうした?やっぱり忙しいのかな?
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/19(月) 22:16:00.81 ID:0gxk+UsDO
社長「こんにちは、天童社長。今日はわざわざ足を運ばせる形になってしまい申し訳ありませんでした」


まずは、社長が軽く頭を下げながら挨拶の言葉を述べる。
その姿に、つい先程までの軽々しさはない。
相手に対する最低限の礼儀と、そして相手に見くびらせない凛とした佇まい。
人間には二枚の仮面があるとよく言われるが、この社長には何十とも言える仮面が備わっているのだろう。部屋の隅に控えながら詢子そっと舌を巻いた。


社長「それで、今日はどのようなご用件で?」


天童「またまた、分かっていらっしゃるでしょう?いちいち確認するまでもない!我が街の発展とこの街との将来についてのお話ですよ」


相手の挨拶に大した反応も示さず天童は声高らかに自らのペースで話を進めていく。
街の発展と将来、そんなもの、はっきり言ってたかだか一企業が出しゃばってどうにかなるとは思えないのだが、天童という男のテンションは上がっていく。


天童「申し訳ない。先日こちらに寄越した者の話ではよく分からなかったでしょう?」


まるで何かの演説か、いや演劇なのか。
天童は顔にわざとらしいシナを付けながら語りだした。
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/19(月) 23:30:20.12 ID:0gxk+UsDO
天童「しかしご安心を今後はそのようなすれ違いがないように私が直々に話を進めていきましょう。それなら大丈夫だ、そうに違いない。これからの事を考えれば些細なミスでも進歩の妨げになりかねない。言うなれば、これは街の未来を決定付けると言うに相応しい───」


社長「ちょっとお待ちを」


一方的なワンサイドゲーム、言うなれば文字通りの天童の独壇場に社長は待ったをかけた。
というより、こんなもの議論にはならないだろう。


社長「高層マンションの建設でしたか?それを街の発展に繋げていきたい、とそういう話ですしたよね」


天童「おぉ、おぉ、そう。そうです。失礼、話が長くなりました」



出会ってから会話になるまでが長かった。
ようやく落ち着きを取り戻し始めたのか、天童は静かな口調で話しだす。


天童「えぇ、こちらの街に高層マンションを建てる。あなた達にはそれを手伝って頂きたい」


社長「それが分からない。何故、マンション一つを作るために他の企業と連携をとる必要があるのです。しかも、隣町の会社と」
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/20(火) 00:49:30.86 ID:1sDLa8LDO
天童「それに関しては、恥ずかしながら他県に向けての宣伝といいましょうか。こちらの街だけではなく見滝原にも同じマンションを作れば中々面白い宣伝効果がありますよ」


社長「そちらの街もこちらの街も、住宅に対して人口が余っている訳ではないでしょう」


天童「外からのお客さんを増やしましょうという事ですよ」


答えというものは、天童も持ち合わせがあるようだ。
恐らく今のところよく分からない話も、きっと理解するに時間はそれほどかからないだろう。
乗れるかどうかで考えた場合、まぁ、乗れない事はない話だ。


詢子「天童さん、質問があるのですが」


もう頃合いだろうと見て詢子は声を上げた。



天童「……なんだい、君は」


詢子「気にしないでください。ただのキャリアウーマンですよ」


まさか今更その存在に気付いた訳ではないだろうに、しかし天童は突然発言をした詢子に驚きと不愉快まじえた顔を向けている。


詢子「その高層マンション。高層と言うからには、そりゃあ高いんでしょうねぇ」
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/20(火) 01:30:16.40 ID:CiVyF6QI0
更新終わったのかな?乙
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/20(火) 02:27:39.87 ID:Jd/2FScK0

TDSで新たに掘り下げられたキャラの側面をどう反映させるのか期待
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/20(火) 14:45:43.29 ID:1sDLa8LDO
天童「あぁ、そうだね。美しい街を一望できるように、そうすれば」


詢子「だったら」


放っておけば天童の更なるスタンドアッププレイが始まるところだったが、詢子はそれを唐突な言葉に切る。
そこに来て、初めて天童は顔を不快気に歪めた。


構わず詢子は続けた。


詢子「では下手したら市街地のど真ん中に見上げる程のマンションが建つと。そうなると大変ですねぇ。大きな日陰なんかができれば嫌悪感を抱く方も出てくるでしょう」


天童「……確かに、そういった問題は起きてくるでしょうが、しっかりと対策は立てます」


詢子「対策って言ってもどうせあの手この手で問題を棚上げさせるぐらいでしょう」


よくある話である。
日照権というヤツだ。
建築物の日当たりを確保するためにある権利。
それにより起きる問題を解決するとなるとそれは、もはや人と人との問題ではなく、人と法と金の問題になってしまう。


元来、詢子は正直浅い知識と信念のない自称良識を振りかざされるこういった話は大嫌いなのだが、そうまでしてでも詢子は天童の話を蹴りたい。
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/20(火) 20:26:36.37 ID:1sDLa8LDO
何故?はっきり言って勘である。
この男を見ているだけで、かつて鉄パイプ握り締めてヤクザの事務所に突撃を決めた時に感じた妙な危機感を覚えているのだ。


天童「君は……随分と耳に痛い事を言ってくれるねぇ」


詢子「おや、不快でしたか?こちらはアドバイスのつもりだったのですが」


天童「そんなこと……とても勉強になったよ」


先程と比べてみれば明らかに顔色も声色も変わっている。
何か、どす黒いものに染まっていくような。
詢子は鋭く目を細めた。


詢子「まぁ、なんだかんだと言いましたが、結論として我々は貴方の話には乗れません」


天童「ほぅ」


詢子「訴訟だなんだで我が社の看板に傷が付くようならそちらの方が問題ですし」


その言葉を聴いた天童はあからさまに失望したとうように首を振る。
その姿に後悔など詢子は抱かない。


天童「やれやれ、進化を望まない人間など哀れで仕方がありませんね。で、社長さん、まさか貴方の彼女に同調するのですか」


社長「はい、勿論です」
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/20(火) 22:45:50.67 ID:1sDLa8LDO
その毅然とした迷いのない言葉に天童は流石に驚いた。
何故、それほどまでに自らの部下のこんな無礼な態度を前にして動じずにいられるのか。
もしや、この社長の指示なのかと疑うも天童はすぐにその考えを捨てた。


今、目の前にいる女が他人の命令で動くような奴だとは到底思えなかったからだ。
この女は、そんな器ではない。


詢子「我々は別に進化を恐れている訳ではありません。ただ後々に禍根を残すような愚かな仕事はしたくないだけです。誰も傷つかせず、お互いに利益を生み出す。それが『一流』として為すべき仕事。初めから自分の尻拭いを考えている人とは働けません」






どうぞ、おかえり下さい。





そう言って、もはや悪意以外は感じない慇懃無礼な態度で詢子は天童を送り返したのだった。
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/11/20(火) 23:46:11.50 ID:o4Eqam8AO
かーちゃんかっけぇ
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/11/20(火) 23:47:45.84 ID:FsVrlrkHo
いいぞもっと言ってやれ
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/20(火) 23:59:00.58 ID:1sDLa8LDO
詢子「いかかですか、社長?我が社の新たな交渉術は」


社長「えげつないよ!!」


明らかに『これはマズいな』と簡単に分かるような顔で部屋から出た天童の姿を確認した詢子は悪びれもせずにそうのたまった。


社長「交渉じゃないよ。あれはただ人の話を聞き流しながらひたすら帰らせようしていただけだよ」


詢子「しかし、社長も私の言うことには同意すると」


社長「あれは、なんか雰囲気に呑まれて格好いい事を言ってみたらああなっただけだよ!」


なんと言っても、なんとかしようにも自分の言葉では目の前にいる鹿目詢子を縛る事はできない。
しかし、分かっていても言いたくなる。


誰よりも約束事を守りながら、誰よりも常識を嫌う彼女と共にいればこんな事はしょっちゅうではあるが、心臓に悪い。


詢子「良かったじゃないですか。厄介払いができて」


社長「まぁ、正直ありがたいけどさ……、でも、今日はやけに直接的な言い方だったね」


そう、普段であれば彼女はあんな言い方ではなく、もう少し柔らかな表現で、ゆっくりと時間をかけながら話を進めていくのだが。
今日はなんというか、急いでいたような気がした。


詢子「えぇ、まぁ」


曖昧な返事。
その顔色は少し険しい。
嫌なものを感じた。
ただ漠然とした予感にすぎない何かがあった。
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 00:00:15.42 ID:MCPUbT9DO
今日はここまでで!


また明日は夕方頃からの投稿になります。
では、お疲れ様でした!
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/21(水) 00:37:22.42 ID:Hp45wXry0

鉄パイプを握り締めてヤクザの事務所に突撃を決めたって・・・
詢子さんは昔何をやっていたんだ!?
まどポではほむらを見てると、昔の無鉄砲な自分を思い出すと言っていたが
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/21(水) 13:40:57.00 ID:MCPUbT9DO
詢子「あいつ……あの男は少々ヤバイかもしれませんね」


鋭い視線を窓の外に向ける詢子を見つめて、社長はそっとため息を吐いた。
長い付き合いだ。
彼女がこんな時どう思うか、そしてこれまでどんな行動に出てきたか十分に知っている。
だからこそ、彼女には理解してもらわなければならない。


社長「詢ちゃん。無茶は駄目だからね?知くんや子供達を泣かせないように」


あの頃は直感的な行動をとって、どんなに痛い目を見ても後悔なんてしなかった。
だが、今は違う。


社長「私達はもう大人なんだから」


守らなければならない物の重みを知ってしまったのだ。
なんにでも突っ掛かれば良いという訳にもいかない。


詢子「……それは、命令ですか?」


社長「詢ちゃんは命令なんて聞いてくれないでしょ?だから、これはお願いだよ。友達からの」


その言葉に詢子は目を丸くして軽く微笑んだ。
大人びた容姿の彼女からは想像し難かった子供のような無邪気な笑みであった。


詢子「分かったよ。シスカ」


よろしい、と赤みがかった髪の色をした女性もまた満足そうに笑うのだった。
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/21(水) 14:04:58.51 ID:9EVigCRJo
シスカ!?
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/21(水) 14:51:13.48 ID:Q4RxcSFn0
シスカって…
まさか、並行世界の同一人物か?
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 15:11:14.21 ID:KfwMrXfDO
誰だっけ?
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/21(水) 17:12:42.27 ID:MCPUbT9DO
────見滝原総合病院前


だらだらと歩き続けて、どれ程時間がたっただろうか。
三匹はようやく目的地である病院の前に辿り着いた。猫の足で、しかもさほど急ぐ事なく歩いていたためか。
ここまで来るのに結構な時間がかかった気がする。


かぐら『流石に道を覚えたとは言え長かったねー』


クロ「へぇ、道覚えられたのか?」


少しばかり驚いたような顔をクロはしている。
子猫というものは基本的には道というものは覚えられないものである。
迷子になって親元から離れれば自らの死の確率だって上がってしまう。
だから、親も基本的には子に道を教えない。
道順を頭に入れる事は子猫には中々難しい事なのだが。


ほむら『あんだけ毎日引っ張り回されれば嫌でも覚えるよ』


はっきりとしたその物言いにクロは顔をしかめた。
ちっこいくせに嫌味を言ってくれるものである。
別に嫌なら家に残ってればいいものをホイホイついてくるのだから仕方ないではないか。
しかし、外出するたびに病院に向かっていた事も事実である。

791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/21(水) 18:30:25.71 ID:MCPUbT9DO
かぐら『しょうがないよ、ほむら。だってお兄ちゃんはマミちゃんが心配で仕方がなかったんだから』


ほむら『そうだな。どうしてもっていうなら付き合ってあげなくもなイタタタタタ!?』


当初は子供の言う事と我慢していたが、ほむらもかぐらもやりすぎたようだ。
クロは無言で二匹の頬の片方ずつを両手で引っ張り上げた。


かぐら『うにゃああああ!?ごめんなさーい!』


ほむら『離せ!離せって!お願いします離してください!』


クロ「へっ、ガキがオイラにケンカうるなんざ十年早いぜ」


限界ギリギリまで引っ張りあげられた二匹の頬は面白いくらいに伸びている。
そんな二匹をケタケタと笑いながら見下ろすクロの顔はイタズラ坊主のそれであった。
大人気ないというより子供じみている。


クロ「……ん?あいつら」


しかし、ふと視線を何気なく上げた時だった。
病院の入り口の前に、見覚えのある二人の姿がそこにある。


かぐら『あうっ!?』


ほむら『ふぎゃっ!』


興味は既に別の物に移ったか、クロはつねっていた指を緩めた。
つねり上げられていた痛みを軽減するために身体を少し上の方に背伸びしていた二匹はバランスを崩してそのまま地面にべちゃっと倒れる。


クロ「行くぞ」


が、あまり大した気を使うことなくクロは走りだし、二匹も涙目になりながらついていった。


恭介とさやか、二人がいる方へと。
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/21(水) 20:44:29.52 ID:MCPUbT9DO
クロ「よう、お二人さんで散歩か?」


恭介「あっ、クロさん!おはようございます」


軽く手を上げながら近づいてくるクロに気付いた恭介は元気に挨拶をしてくる。
車椅子に座ったままだが、身を乗りださん限りの勢いだ。


さやか「あ、あんた……、その、おはよう」


と、その恭介の後ろで車椅子をさっきまで押していたさやかの様子が少しおかしい。
普段の快活さは鳴りを潜め、しどろもどろで此方を見ようとしない。
さやかが自分の事を嫌いでも、それでもこの態度はそういうのとは違うような気がしてならないクロである。


クロ「なんだよ。随分としおらしいじゃねーか」


少し馬鹿にするような色を言葉につけてみても、それに対する強い反応はないままである。
どうしたものか、とクロは耳を掻いた。


恭介「そういえば!先日のお礼がまだでした。クロさん、あの時は本当にありがとうございました」


果たして、その沈黙に対するフォローだったのか、それともこの隙にと思ったのか、恭介はいきなりクロに礼を述べた。
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/21(水) 22:49:47.08 ID:MCPUbT9DO
クロ「おう」


まるで、そんな事なんてどうでもいいという言葉を態度そのもので表現したようなつっけんどんな返事をクロは返した。
というより返すしかなかったのだ。
さやかの態度が気がかりになっていた所に突然慣れない『お礼』をされてしまえば戸惑いだって生まれるだろう。
そもそも、自分にだって礼を言わなければならないのに。
しかし、そんなクロを嬉しそうに見ながら恭介は更に口を開いた。


恭介「あれから、しっかり両親と話し合いました。ここにいるより、家に帰って、それから学校にも通おうと思います。そっちの方が良いだろうって」


クロ「……お前は、それでいいのか?」


恭介「はい、さやかにも腕の事と一緒に話しました」

語られたその決断は、決してもろ手を上げて祝福できるようなものではなかった。
恭介が歩むと決めた道は、ただ目的地だけは立派にあるものの血を吐きながら進む事を強いられる地獄のような道である。
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 23:43:58.01 ID:MCPUbT9DO
だが、恭介は自ら退路を断った。
言い訳も甘えも諦めも、簡単に許されてしまう。
しかし、その誘惑を振り切り続け、苦しみと共に有ることを望んだのだ。


そんな恭介に、クロはそれほど多くの言葉をかけるつもりはなかった。


クロ「まぁ、気張れよ」


男に、手向けの花は似合わない気がした。


恭介「それと、ですね。……さやか」


少し、しんみりとした空気が流れたが話はそれで終わりではなかったようで、恭介はさやかの方に首を向けた。
声をかけられて驚いたのだろうか、さやかは身体がはね上がっている。


恭介「さっき話してたろ?今しかないよ。ほらほら」


さやか「う、うん。分かった」


さやかは意を決したように足を一歩、車椅子の前に、つまりクロの目の前に向けた。
その遅々とした様子は、嫌々ながらというより恐る恐ると言った方が適切だ。


そして、いぶかしるクロの目の前にたったさやかは、一つ大きく息を吸ったかと思うと、それはもう、まさに振り下ろすがごとく頭を下げた。


さやか「今までごめん!」
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 00:02:21.80 ID:xUu1tlmDO
今度こそ、クロは呆気に取られた。
謝った?さやかが?あんなに、もはや忌み嫌っていたと形容できる態度を見せていた美樹さやかが?
というより、そこまで謝られるような事を自分はしただろうかと思うも、まずは一言である。


クロ「んだよ、気持ちわりーな。気にすんなよ」


さやか「そういう訳にはいかないんだ……」


クロの言葉に、さやかはゆっくりと首を振った。
彼女は、自分がどんなに勝手な事を言ってきたか、それくらい分からないほど愚かではない。
一々クロの言葉に突っ掛かり、もっと酷い事も言った。
それこそ、いっその事あやまらない方が良いのではないかとも思った。


しかし、それではダメなのだ。
前に進むと自分の思い人が決めた時、そしてそんな彼を支えたいと思った。
そして、今のままの自分で良いはずがない事も理解した。


都合の良い考えで、都合の悪いモノを排除しようとする。
自分の中にはそんな嫌な自分がいる。
その全てを正すことはできないかもしれない。
だからこそ、今この瞬間は正しい事がしたかった。


さやか「本当に、ごめんなさい」


そして


さやか「そ、それから。あ、あり、ありが」


精一杯のお礼を、照れ臭くて仕方がないけどそれでも言いたい。
感謝を、敬意を、この黒猫に示したかった。


────示したかったのに。


クロ「恭介、餞別だ!」


さやか「……へ?」


796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/22(木) 00:16:53.66 ID:xUu1tlmDO
風が、やけにはっきりと風を感じる。
何故だろう、というか何処からだろう。
いや、なんか太ももがやけにスースーと。


呆然としたまま顔をしたに向けると、そこには自分の肌色をさらした太ももと、地面に落ちている学校指定の制服のスカートがあった。
スカート?あぁ、そういえば学校に行く前にここに立ち寄ったんだっけ、でもなんでスカートがあんな所に。


恭介「さ、ささ、さささやか、ス、スカートがッ」


その声にギギギと錆びた金属がこすれる音がしそうなぎこちない動きでさやかは振り返った。
そこには、もう真っ赤に染まった顔をした恭介がいた。


クロ「……黒か、マミでも水色なんだぜ。さやかちゃんたらおっとなー」


そして、その声の方を向けばニタニタと笑う黒猫がいた。


さやか「……ずりおろしたのか。お前」


クロ「そうだ」


彼らは端的なコミュニケーションにより効率的に各々の状況を察する。
クロは後ろに控えた子猫を両脇に抱えて猛ダッシュで戦線から離脱した。


さやか「待てえぇぇぇぇぇ!このクソ猫ぉぉぉぉぉぉ!!」


恭介「さ、さやかダメだって!ちゃんとスカートはかなきゃ!!」


見滝原総合病院の駐車場に、少女の怒声と少年の悲鳴も似た叫び、そして壊れたラジオのような愉快そうな笑い声がやかましく響いたのだった。
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 00:18:49.26 ID:xUu1tlmDO
今日はここまで!明日は夕方ごろの投稿になります!


因みにシスカは、とても『あのシスカ』によく似たキャラクターとして書きました。
ストーリーとしては重要ではありません。


性格も全然違いますよ。


ではお休みなさい。
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 12:32:01.81 ID:WSAR9n4Q0

さやかが黒でマミさんが水色か…
まどかは何色…あれ、ミサイル?こっちに逃げr
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/22(木) 18:06:30.29 ID:CbBJwbq60
コメント少ないみたいだけど、見てる人少ないのかな?
やっぱり「サイボーグクロちゃん」自体がマイナーな部類に入るからか?
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/22(木) 18:22:19.18 ID:4TeX4IoJo
ボンボンの中じゃトップクラスの知名度だと思うけど今となってはそもそもボンボン自体がマイナーか
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/22(木) 19:13:24.14 ID:R0AcJhLZ0
>>1を悪く言うわけではないが
ほぼ毎日、更新しているからコメントするタイミングが掴めないというのもあるんじゃない?
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 19:27:32.78 ID:JfI76Q4oo
俺がチェックしてるまどかクロススレの中では多い方なんだがな
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/22(木) 19:53:23.43 ID:xUu1tlmDO
ほむら『あんた……、もうちょっとなんとかならないのか』


少女の絶叫を振り切り、そして風を切りながら走るクロの腕の中で、ほむらはそんな回りくどい言い回しをした。
しかし彼の言葉はもっともな話で、あの嫌がらせはあまりに唐突ではないか。


そう、それがたとえ─────


ほむら『照れ隠しでも限度があるだろ』


かぐら『そうだよ、さやかちゃん恥ずかしそうだったし』


両脇から非難の視線が飛んでくるのをクロは感じた。
なんとも、この二匹もしっかりとした糾弾の態度を見せている。
度重なる修羅場による慣れからか一々尻込みするような事が無くなっているのだろう。


それにしても『照れ隠し』とは。
まぁ、正直に言うとそれもある。
それをはっきりと認めると公言はしないが。


クロ「んだよ。中学生のスカート捲りくらいで騒ぐなって」


ほむら『人間ってパンツ見られるの恥ずかしいんだろ?前に紐みたいなヤツで遊んでいたらまど姉に泣きながら怒られたぞ』


いや、ちょっと待て。紐?まどかが?何考えてんだアイツ。
と、また新たな問題が飛び込んできたがクロは一先ず流すことにした。
興味はあるが、関わりたくない。
若さにも色々あるのだろう。
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/22(木) 20:14:57.77 ID:xUu1tlmDO
かぐら『……でも、せっかく仲良くなれそうだったのに』


かぐらの、その心からの哀しそうな声にクロは足を止めた。
彼女の顔を覗き込めば心底残念そうな顔がそこにはある。
かぐらは、クロがさやかから疎まれていた事を知らない。
だから、単純に友達が増える機会がなくなったと思ったのだろう。


クロ「別に今すぐに仲良しにならなきゃいけねーわけじゃねーだろ」


しかし、あれだけ一度は反目していた(クロからすれば興味なかったが)仲である。
突然、仲良くしましょうで深い仲を築ける訳がない。
それに、さやかは少し義務感のようなもので頭を下げていたところがあった。
それが良いことだとか悪いことだとかの問題ではないのだ。


クロ「ゆっくり、ゆっくりでいいんだよ」


口ではぶっきらぼうでダルそうな言い草である。
しかし、その顔を不思議そうにほむらとかぐらは見ていた。
初めて、本当に初めて、この猫の優しそうな顔を見た気がしたから。


かぐら『お兄ちゃん?』


クロ「それにからかいがいのある奴は一人くらい居てくれねーとな!」


805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 20:55:49.35 ID:xUu1tlmDO
ウシャシャシャ!とけたたましい笑い声が響きわたる。
その凶悪な笑顔に先の温かい顔は引っ込んでしまった。
かぐらはムウと眉をひそめる。
敵はかくも手強いものか。


クロ「よし、んじゃ行くぞ」


そして、なんとも楽しそうな顔でクロは巨大な病棟の壁を見上げた。
普段ここからマミの病室に向けてロッククライミングをしている猫達には見慣れた光景である。
だが、慣れているのはあくまでも『見る事』だけであり、ほむらは『登る事』には全く慣れていない。



ほむら『げっ、また壁登るのか?』


クロ「それしかねーだろ」


故に、ほむらは思いっきり顔をしかめているが全くもって意にかえす様子はクロには見えない。
やがて、ほむらは観念したようにため息と共に俯いた。
ちなみに、かぐらは全然平気なのか、とても乗り気である。


クロ「掴まってろよっと!」


そんな二匹がしっかりと身体にしがみついた事を確認したクロは壁に爪を突き立てて登り始めた。

806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/22(木) 22:44:23.70 ID:xUu1tlmDO
少し見慣れた天井と、少し見慣れた白いシーツと着慣れた患者衣。
その殆どが今日までまったく慣れることはなかった。
見知らぬ天井は寝る前に気になっては眠気を削がれるし、シーツや患者衣もなんだか整い過ぎて肌に合わない気がした。


だが、不思議なものだ、と巴マミは考える。
今日で退院だと思うとそれらの違和感が突如として愛着に変わり、ほんの少しだが物憂げな気分になったのだ。


マミ「ふふッ」


なんだろう、こんなにも穏やかな気持ちになれるなんて入院前は思いもしなかった。
マミは、ふと窓の外にある風景を見た。


この風景だけは、最初から最後までずっと見ていられた。
日々変わる空の色も、刻一刻と姿を変える雲の形も、街も、音も、人の声も、全てがマミの心に流れこんでくる。
その感覚がたまらなく、嬉しかった。


そして、それだけじゃない。
『彼』はここから現れるのが通例でマミは、いつも、今日だって待っているのだ。


マミ「あッ!」


こんな風に窓を叩く音が聞こえてくるのを。
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 23:00:51.22 ID:xUu1tlmDO
ヒョイと足をベッドから降ろして、下にあるスリッパを履いた。
それから少し力を腰を上げる。
うん、もう普通に暮らす分には平気なようだ。


そして、パタパタと跳ねるような音を病室に響かしながらマミは窓の近くまで駆け寄って、窓を開きその下を覗き込めば、そこに目当ての彼はいた。


マミ「おはよう。クロ」


クロ「よう、すっかり元気そうじゃねーか」


窓の下にある壁に黒野がぶら下がっていた。
その腰の辺りには子猫が二匹必死で爪をたて落ちまいとしている。
どうにも口では余裕ぶってはいるが限界が近いらしい。
マミは気合いを入れてクロの脇に両手を差し込んで引っ張り上げた。


猫三匹分の重み、しかも一匹は金属の塊のようなものであり、多少手間取ったがなんとか病室の中に入れる事に成功する。
クロをそっと床に置いて、マミはふぅッと額の汗を拭った。


クロ「お疲れさん」


マミ「えぇ、どういたしまして」


クロの言葉にマミは腰を屈めてわざわざ目線を合わせて答える。
そうなると、つまらなそうに目線をそらすのがクロである。
勿論マミもそんな事くらい承知だが。
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/22(木) 23:17:21.64 ID:xUu1tlmDO
クロ「そんで、退院おめでとう」


更に、ぶっきらぼうに言葉は続く。
この辺りは別にクロは不器用なだけではない事も分かってくる。
経験と付き合いは重要だとマミは思う。


マミ「ありがとう」


クロ「そればっかじゃねーか」


マミ「だって、クロにはそれしか思えないわ」


クロ「けっ、バカ」


自分が今どんな顔をしているか、クロは考えるのも嫌だった。
だから、なんとかできうる限りのしかめっ面をしているつもりだ。
それなのに、笑顔のままのマミが少し癪だった。


マミ「まだ手続きまで時間あるし、お茶でも飲むかしら?」


クロ「紅茶は飲まねーぞ。舌に合わない」


マミ「大丈夫よ。緑茶があるの。ほむらさんが忘れていった物を使わせてもらうから……」


あぁ、そう言えば居たな。
思い出せば少し前の話だったのだが、今になってみれば記憶の隅っこに追いやられてしまうような些細な出来事だったのだと思う。


そんな事を考えている内にマミはポットを再沸騰させる手順を終えたようだ。
足下をうろついていた子猫二匹をそっと抱き上げてベッドに座った。
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/22(木) 23:26:42.82 ID:3mwb/ZTp0
まどかやさやかが下の名前で呼んで欲しいといったから下の名前で呼ぶのはわかるけど
ほむらはそうじゃないんだから、名字でよくね?
そこまで親しくもないと思うし
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/22(木) 23:33:51.85 ID:xUu1tlmDO
抱き上げられた二匹は口々にミーミーと鳴いているがマミからすれば猫が鳴いているだけだ。


ほむら『こんにちは、もう締めるのは勘弁だぞ』


かぐら『退院おめでとう!マミお姉ちゃん!少しふっくらしたね』


マミ「あらあら、何か言ってくれているのね。クロ、この子達はなんて?」


だが、やはり興味はわくらしくマミは無邪気に聞いてくる。


クロ「オイラは通訳ロボットじゃねーんだぞ」


そうは言いつつも、教えるくらいならお安い御用である。
だが、ほむらもかぐらも若干要らぬ言葉を付け加えてしまっている。
特にかぐらは危険だ。


数秒迷ってクロは口を開いた。


クロ「退院おめでとう。元気になって良かったね、……だとさ」


まぁ、嬉しい!そう言ってマミは子猫達の頭を撫でている。
……別にいいではないかとクロは思う。
人間の政治家だって通訳が変な脚色をしたりしているじゃないか。
以前北○鮮のニュースで通訳が元の言葉とは全然違う文を読んでいたこともあったし。


クロ(ま、いーだろ別に)


クロは割とできる猫である。
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/22(木) 23:48:04.69 ID:xUu1tlmDO
クロ「しかし、まぁ。長引いたもんだな」


マミ「……ごめんなさい」


マミはクロの言いたい事が分かって、クロはマミが何故謝ったのか分かった。
だから、お互いに黙りこんだ。
クロはもう、これ以上言う事はないという思いからだったが、マミはどうやら少し違うらしい。
クロはため息をついてマミに目をやった。


マミ「怖くなったの。このままここにいれば戦わなくても済むかもしれないとか、学校に行かなくても済むとか思ったら」


クロ「学校は知らん。だが、戦うのはオイラがやるって言ったろうが」


それに変わりはない。
ここから先も変えることもないだろう。
学校に関しては、行ってもらうが。


マミ「……違うの」


マミは首を振った。
まったくどうにも、彼女の悩みは尽きる事はない。
だが、それで良いのかもしれない、ともクロは思いながらマミに近付いていく。


マミ「だって、ここから出たら。私はまた一人だもの。学校に行っても、家に帰っても、それならいっそ」


クロ「はぁ?学校でぼっちなのは当然だろーが、なんで家でまでぼっちなんだよ」


ピョンッとクロは一足飛びでマミのベッドの上に飛び乗った。
近くで見ればマミは少し涙目だ。
調子が狂いそうになるが、なんとか持ち直した。
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/23(金) 00:07:36.90 ID:SdHWvWaDO
マミ「だって!あなたはまどかさんの家にお兄さんとして残るんでしょ!?凄く居心地が良さそうだって、まどかさん言ってたもの!」


クロはポカンとした。
なんだ、どうすればそんな話になるのだろうか。
いや、そもそも自分の知らぬ場所でそんな重要な会話が行われていたのか。
少しゾッとする。
そもさも、お兄ちゃんってなんだ。


マミ「私の事なんてどうでもいいんでしょ」


笑って、泣いて、今度はなんだ。
ツンと見事に顔をクロから背けているが、これは拗ねているのだろうか。
どっかの電気スタンドにも似たような態度をとられた事があったが、これはなんとも鬱陶しい限りだ。


だが、あんまり怒らせるのは得策ではない。


クロ「チッ、バカ。あのな、あの家にはお前がへたれてたから住んでたんだよ!」


だって、この街におけるクロの帰る場所は一つだけだ。


クロ「もう元気になったんだろーが!……なら、帰るぞ」


その言葉を別に気取って言うつもりはクロにはなかった。
耳を掻きながら、つっけんどんに。
だが、本人はそのつもりでも受け取り手はそうはいかないのがコミュニケーションの常であった。


マミ「クロォッ!」


次の瞬間、それはそれは強い力でクロはマミの胸の中に抱き締められてしまった。


マミ「もう、もう大好き!大好き!大好き!」


言葉と共に、顔中に何故かキスの雨も降り注いでくる。
サイボーグゆえに、あまり肌の感触は感じないが、まぁ、ありがたく受け取っておこう。
そんな風にクロは思っていた。
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 00:10:44.72 ID:SdHWvWaDO
>>809


マミさんなりの、チャレンジのつもりなんです。
少しでも距離を縮めよう、理解しようという努力の一環のつもりです。


そして、今日はここまでにします。
明日は正直投稿できるか分かりません!


一応夕方頃が努力目標です!
お疲れ様でした。

ありがとう!
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 00:37:14.96 ID:cGUoS77K0

前々から思っていたがマミさんがナナに似てるというのは同意
独りぼっちだった反動で誰かに依存して束縛したがったり、ネガティブで思い込みが激しくて面倒臭くて色々と重い所とか……
誤解のないように言っておくが、マミさん嫌いじゃないからね自分、そういう所も引っ括めて好きだし
しかし、これ完全にクロに依存してるな…クロが元の世界に帰る時が心配だわ
その事を受け入れられるまでに精神的に成長する事を祈る
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/23(金) 00:39:06.19 ID:xrPUBZJQo
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/23(金) 01:21:42.56 ID:zm2lUDB80
おつかれーしょん
遂にマミさんも退院していよいよ杏子出てくるかな 楽しみ^^
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/23(金) 08:48:25.96 ID:P1rZKRe+o
>>814
つまりナナと大喧嘩になるのかw
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/23(金) 19:29:01.87 ID:2Mypnr6f0

マミさんの胸に埋もれてキスされその上「大好き」って言われるとか
ちくしょう…クロ羨ましい妬ましい…
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/11/24(土) 13:37:04.58 ID:ffYPtdrAO
乙です
出会い方が良かったのもあるけど
よくクロとマミさんは仲良くなれたよな
同じ猫を守るためとは工事現場ぶっ壊したりしてるのに
820 :819 [sage]:2012/11/24(土) 17:57:13.87 ID:bPR/47HAO
途中で送信してしまったみたいなんで続きを
クロって正義のために戦ってるわけでもない、やりたいようにやってる所謂アウトロー系でしょ?
正義の味方を志てる潔癖気味なマミさんとはそこら辺の相違でぶつかってもおかしくなさそうだが
実際にスピンオフでも、自分の理想をわかってくれない他の魔法少女達に失望していたんだし
まどかとメールしてるんなら、クロが工事を中断に追い込むまで暴れ回ったのを知ってるはず
その事について一体どう思ってるんだ?
納得いく説明や解釈が欲しいな
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/24(土) 19:04:45.06 ID:eCpozxey0
甲斐甲斐しくクロが世話焼いて命懸けで助けたからじゃ理由にならない?
後、クロは何だかんだで使い魔だろうと残らず刈ってるし
それからマミって、自分のスタンスを相手に押しつける子じゃないと思うんだが
まどポでもほむらが誰かのために戦ってると知れば仲間になったんだし、ある程度の融通は効くんじゃないか?
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 19:14:00.03 ID:aXyZ1IQDO
>>820


解釈を物語に入れるのはうっすらとになってしまうので、はっきりと物語に差し支えないレベルの説明になります。



このストーリーのマミさんは確かに『工事現場での妨害』を知っています。
しかし、『猫の家族』を救ったという話として聞いているため工事=悪、クロ=正義という認識になりました。


その事実だけを知っているという事、更にクロに対する幻想もあり、舞い上がっているマミさんは、このSS上のさやかとは逆の状態になっているのです。


要は、完全な依存状態、という解釈していただいた方が早いかもしれません。


さぁ、では続きをどうぞ!

823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/24(土) 19:42:42.90 ID:aXyZ1IQDO
クロ「あぁ、はいはい。分かったから離れろよ」


それにしても、とても中学生とは思えない程の膨らみをもった双球に挟まれていながら、しかしクロはまるでなんとも思っていないようだった。


男として、一体どういう神経してるんだと言われてしまいそうだが、彼は猫で、謂わば雄なのだ。
クロの美点、というか美意識に関しては人間的ではない。
一度は犬に惚れ、電気スタンドとも色々ある彼にとっては胸が大きかろうが、小さかろうが関係ないのだろう。


マミ「うふふ」


だが、そんな事は知るよしもないマミはお構いなしだ。
まるでプレゼントを貰った子供のような笑顔を見せてる。
出会ってから今日まで、まさかこんな顔をされるとは思ってもみなかった。
人の心は分からないものだ。


そしてクロは、本当にここまで好意を寄せられる理由が分からない。
桜町での扱いからかけ離れたこの状況、少し戸惑う。


クロ「……まぁ、ほっときゃ勝手に愛想尽かすか」


マミ「え、クロ。今なんて?」


824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/24(土) 20:19:28.49 ID:aXyZ1IQDO
クロがポソッと呟いた一言がよく聞こえなかった。


クロ「いいや。……さて、そろそろ本当に帰んぞ。」


しかし、二度も言うつもりはないらしい。
多少首を捻るが納得する。
本当になんでもない言葉だったのかもしれないと、マミは一人合点しクロを腕から解放した。


マミ「ええと、じゃあ一度家に帰って準備をしてから、まどかさんの家に行きましょう」


クロ「なんだ聞いてるのか」


えぇ、と頷くマミのその顔はなんとも言えない顔である。
嬉しそうで、恥ずかしそうで、楽しそうで、申し訳なさそうだ。
顔を下に向けてはいるもののしっかりとその頬は赤らんでいる。


クロ「……とっとと支度しろ」


そんなに楽しみなら善は急げだろうに、クロは呆れたような顔でマミを急がせる。


マミ「えぇ、分かったわ!」


その子供じみた笑顔も、跳ねるような足取りで支度をする姿も、もしかしたら彼女は今までに知りえなかった喜びや笑顔を取り戻そうとしているのかもしれないと、クロはなんとなく思った。


ほむら『なんだ、もう帰るのか』


かぐら『意外と早かったね』


ベッドに腰掛けながらマミを見ているとチビ猫達が近寄ってきている。
そういえば、マミが抱きついてきた時彼らはベッドの端っこで転がっていた。
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/24(土) 22:28:45.19 ID:aXyZ1IQDO
あまり邪魔にならないようにと配慮していたのだろうか。
だとして、少し嫌だ。
子供にそんな気の使い方されるのは誤解でも嫌だ。


クロ「お前らも一旦ここから出るぞ」


かぐら『はーい!』


かぐらは素直に近づいてきたが、ほむらは何故かその場から動こうとしない。


クロ「なにやってんだよ」


ほむら『嫌だ。もうオレはロッククライミングなんてやりたくない』


キッとこちらを涙目になって睨んでくるほむらに、一瞬クロとかぐらは硬直する。
どうやらこれまでの無茶な壁登りは、ほむらの幼い心に凄まじい傷を残してしまったらしい。


魔女に殺されかけたりしたわりには微妙なところで肝が据わらないようだ。
かぐらが膨れっ面でほむらにブーイングを飛ばす。


かぐら『もう、早いところマミお姉ちゃんの家に行こうよ。そして、まどかちゃん達とご飯食べよう』


ほむら『別に行かなくたっていいよ。どうせオレ達オリジナルキャラはいてもいなくてもストーリー上にはたいして関係ないんだ……』


かぐら『だから頑張らないといけないんでしょ』


幼いながら、中々の宿命を背負った二匹である。
それを言ったら主人公なのに人気投票で一位をとれなかった事がある自分も、そこそこ考えなければならないような気がする。


クロ(……考えても答えが出ねぇのが悲しい)
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/24(土) 22:32:57.60 ID:enPtd3THo
何気にメタ発言すなwww
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/24(土) 23:34:02.60 ID:aXyZ1IQDO
切なさと怒りが胸から溢れだしてきたクロは苛立ちのままに行動に出た。


クロ「だぁ!もう、行くぞ!」


ほむら『うっ、うわぁッ!?』


ゴネるほむらの首根っこを捕まえて無理矢理でも引っ張り上げようとするが爪をベッドのシーツ全力で食い込ませて抵抗をされる。


ここまで嫌がられれば、流石にこれまでの無理なロッククライミングを少しは気に病むが、それも今日で最後なのだ。


クロ「最後くらい男を見せろってんだ!」


かぐら『そうだ!このヘタレめ!なんとか言ってみろ!』


ほむら『や〜だ〜!』


苛立ちから本気で引っ張るクロと、恐怖から本気で嫌がるほむら。
クロが引っ張るその首の皮は面白いくらいに伸びてしまっている。
だが、ガンとしてほむらは動くつもりはないらしい。


マミ「えっと、クロ?なにをしてるのかしら」


かぐら『ちょっと、マミお姉ちゃんも何か言ってやってよ!』


マミ「あらあら、ごめんなさい。あなたに言われても分からないわ」


かぐらによりニャゴニャゴと語り掛けられるものの、勿論マミにはその言葉を解する事ができない。
困ったように笑いながら、クロを見つめる。
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/25(日) 00:02:07.72 ID:xG8bObKDO
今日の更新は以上になります。
毎日毎日呼んでくださっている方、コメントをくださる方、本当にありがとうございます。


明日は昼からの投稿になります。
では、皆さんお疲れ様!
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/25(日) 00:20:21.18 ID:1soJ7dW+0

>『猫の家族』を救ったという話として聞いているため工事
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/25(日) 00:28:39.43 ID:1soJ7dW+0

>『猫の家族』を救ったという話として聞いているため工事
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/25(日) 00:38:28.03 ID:V4VR7lVo0
連投スマン、何か最後まで表示されない
>>『猫の家族』を救ったという話として聞いているため工事
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/25(日) 00:41:58.32 ID:V4VR7lVo0
連投スマン、何か最後まで書き込めない
マミさん、これ完全な盲信状態じゃ…今は表面化していないけど危うい精神状態だなあ
それから今のマミさんのクロへの依存って猫のかぐらも似たような感じじゃないか?
そこら辺で何か今後絡みがありそう
833 :1です。 [sage]:2012/11/25(日) 13:49:12.91 ID:xG8bObKDO
ごめんなさい。


今日は更新が難しいと思うので、明日の夕方頃からの更新とさせていただきます。


よろしくお願いします。
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/25(日) 23:34:48.29 ID:nKh4XAtT0
サイボーグクロちゃん全巻を何とか手に入れたよ
5巻まで読んだ感想としては、いい意味で色々ぶっ飛んでいて面白い
最初読んでて画力が低いと思ったけど、個性的なキャラとテンポのいい会話とコマ割りで気にならなくなった
異世界篇は引き込まれたよ。過酷な砂漠の世界観、タブーを巡る争い、異世界の謎と、SFチックな要素満載だったな
それからクロVSバイス戦…あれは鳥肌物だろ。とっておきを使うまでの一瞬の攻防がパネェ
あそこから作風がいきなりハードになりすぎだろww
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/26(月) 02:31:29.92 ID:Cp7vPB8Z0
>>814
言われてみれば本質的な所で似てる部分があるかもしれん
まどマギキャラとクロちゃんのキャラを共通点の多さで組み合わせるとこんな感じかな?
クロ:杏子 素直になれない 悪ぶる
ナナ:マミ 依存 色々重い
さやか:チエ クロor杏子に対する嫌悪 惚れてる相手に尽す 感情をコントロールできない

まどかとほむらだけが思いつかない・・・
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [SAGE]:2012/11/26(月) 17:34:58.10 ID:H3/6GSrR0
少し共通点があるからって一緒くたにし過ぎじゃないか?
マミとナナって別にそこまで似てないと思うが?
ナナはマミの様に理想の魔法少女や先輩の仮面を付けて演じたり出来る様な器用な真似なんて出来ないだろ…
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 19:44:44.22 ID:QxRMFNDB0
>>799
ほぼクロス側のキャラばかりの視点で進み、まどマギキャラが脇役みたいな感じだからじゃないか?
一人ぐらいまどマギ側でのメインキャラを絞るべきだった
それから・・・ほむらに関しては種明かしが行なわれるまでは保留だが
マミさんのキャラ付けがssでよく見る典型的なぼっちキャラだったのがな
他人と一線を引くキャラなだけに、心を開くまでの過程をもう少し丹念に描いて欲しかった
さやかに関しては、他の媒体でもこんな感じだったんで言う事は特にない
面倒臭くない、さやかなんてさやかじゃないと思うんで
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 20:01:52.72 ID:8xOuushDO
正直、レス付いてる方だと思うけど
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/26(月) 20:08:22.85 ID:Cp7vPB8Z0
>>836
似てるっていうのは性格や能力的な意味じゃなくて
あくまで本質というか根本の部分の話ね

>>837
キャラ付けに関しては好みの問題なんで何ともいえないけど
マミさんが心を開く過程はちゃんと筋道を通してない?
ゲーセンで一緒に遊んだりして、マミさんの境遇をなんとなく察してそれとなく気遣ったりしてるし
しかも、「何か合ったらオイラを召喚しな」とまで言ってる
寄り掛かれる、悪く言うなら依存対象を求めてるマミさんなら
心を開いてもそこまで不思議ではなくないか?
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 20:31:35.26 ID:QxRMFNDB0
>>839
最初から、あっさり信じすぎ
何年もベテランやってるんだから、もっと警戒してもおかしくない
魔女の一種かもしれないと勘繰るのが普通だろ
本編や各種媒体での、マミさんのクレバーな判断能力を踏まえるんなら
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/26(月) 20:54:06.22 ID:Cp7vPB8Z0
>>840
お前がそう思うんならそうなんだろう(AA略
842 :気合い入れて投稿開始! :2012/11/26(月) 20:57:04.91 ID:zKoJldGDO
クロ「ロッククライミングが嫌なんだと」


マミ「それは……誰だって嫌なんじゃないかしら」


前々から窓ガラスから出入りしているクロ達を受け入れたり見送ったりしていたマミではあるが。
どう考えても無理がある方法ではないかと常々思っていた。
しかし、マミのその言葉にも「そうか?」と言わんばかりにクロは首を傾げている。


かぐら『もー、早く帰ろうよ〜。ボクここの匂い好きじゃないんだよ〜』


クロ「聞いたか?お前のかぐらがこう言ってんぞ」


ほむら『うー……』


クロは、ほむらの首根っこを掴んだままで逃がすつもりはないらしい。
多数決の面でも、このままでは抵抗むなしく彼が連行されるのは火を見るより明らかだ。


マミ(流石にそれは可哀想よね……。それじゃあ)


数秒の思案、しかしそれは一つの解決策を導いてくれた。
これならば、『ロッククライミングの拒否』を訴えるほむらの意向と『早急な帰宅』を訴えるクロとかぐらの意向を尊重する事ができる。


マミ「……あの、提案があるのだけど」


クロ・かぐら「提案?」


ほむら『……はにゃ?』
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 21:13:15.04 ID:QxRMFNDB0
>>841
本編の設定を踏まえて
キャラの性格が公式に近い感じの方が説得力増すだろ?
本編があんだけ絶望的なんだから

そもそもさっきから同じIDの千葉県しか擁護していない時点で
挿して知るべしだと思うんだが?
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/26(月) 21:15:18.84 ID:Cp7vPB8Z0
>>843
今、>>1が更新してるだろうが
空気読めよ。論評なら終わってからやれ
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 21:39:46.60 ID:nvvGKN9K0
批評もほどほどにしろよな>>1のやる気が削がれてエタったらどうすんだよ
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/26(月) 21:48:58.03 ID:zKoJldGDO
────30分後


退院の手続きはスムーズに済んだ。
途中看護婦の方から「とても元気のある病室でしたね」と語り掛けられた時は顔から火が出る思いだったが、それ以外には特に表記する事もなく。
必要な書類に書き込んだ後、その他諸々の手順を踏んで、マミは無事に紙の上でも退院と相成なった。


マミ「……ふぅ、やっと帰れるわね」


一番初めに病院の自動ドアをくぐってから、もう随分と日付は動いている。
少し長く過ごした場所に対する不思議な名残惜しさはあるものの、やはり、その胸の大半を占めるものは解放感であった。


一日がとても長かった日もあれば、一時間がとても短った日もある。
まぁ、その。長かった日にはクロがいて、短かった日にはクロがいなかったとう単純な理由だが。


マミ「……それにしても、やっぱり重いわね」


両手を見て、少し気が滅入る。
病院に入院する前にまどかやさやかが準備してくれたスーツケースに、パンパンに膨れたショルダーバッグを両手にぶら下がっているからだ。


それにしても、バッグに荷物を詰めて出かけた場合、行く前より帰りの時の方が荷物が増えている気がしてならない事があるがあれはどんな現象なのだろうか。


しかし、今回に関しては増えてはいるのだが。
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/26(月) 22:35:05.64 ID:zKoJldGDO
「も、もう限界。これ以上はヤバイ」


すると、ショルダーバッグの中から不機嫌な声がくぐもって聞こえてくる。
最初のゴネようからすれば大分長い間堪えてくれたものだ。
マミは辺りを見渡してから道の邪魔にならない場所に荷物を置き、ショルダーバッグのチャックを開いた。


クロ「ぷはっ!……い、息が……く、苦しかった」


チャックが完全に開かないうち、凄まじい早さでクロの顔が飛び出してきた。
必死に酸素を求めて舌を出して荒い呼吸を繰り返している。


マミ「や、やっぱり、少し狭かったかしら」


クロ「狭い、暑い、苦しい。10分以上居るにゃしんどすぎるっつーの」


あの病室でマミが出した問題の解決方法とは、見ての通り、猫達をバッグの中に入れて運び出すというものであった。
当初、主にクロが既に膨れ上がったバッグを見て難色をしめていたがサイズ的にはなんら問題はないほむらとかぐらの賛成意見、多数決の原理においてクロは渋々バッグの中に潜りこんだのだったが。
案の定、窮屈な思いをすることになってしまった。
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/11/27(火) 20:04:35.26 ID:o2YZ5mXM0
昨日このスレを見つけ、今日ガトリングセレクションを二冊とも購入。
今読んでも面白いわあのマンガ。
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/27(火) 20:06:14.38 ID:o2YZ5mXM0
sage忘れスマヌ
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 20:28:22.61 ID:VjssmaLDO
アニメは製作会社が倒産した際のゴタゴタで未だDVD化されてないのが悔やまれる
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 21:23:28.98 ID:1ql/Dmn00
昨日のQxRMFNDB0のせいでやる気が削がれたって事はないよね?
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 22:19:42.17 ID:kGdqRvGDO
すみません!


今日ちょっと用事がありまして、投稿を忘れてました!


今日は難しいかもしれません。
因みに、意見はきちんと受け止めはすれ凹んでヤル気をなくすことはありませんよ!


頑張るのでこれからもよろしくお願いしますね?
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 22:23:41.51 ID:1ql/Dmn00
おう!更新まってるぜ!
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/28(水) 00:52:22.48 ID:uytl+Y5i0
>>848
俺も最近全巻買ったんだが面白いよな
つか、主要キャラの過去が件並み重すぎだろ…
キッド編読んで、クロが杏子に似てると言われてる意味がわかったよ
仲間or家族を守るために必死で頑張って来たのに疫病神or魔女とか言われて全てを失ってしまうとかまるで同じじゃないか…

後、野良猫集団の中でクロが新米として身を投じていく様が、虚淵が好きそうなヤクザ映画みたいジャマイカww
「オッケー電柱ども、まずベイビーから手を離そうか」みたいな台詞回しがいいね
ブラクラみたいに洋画の吹き替えっぽい言い回しがカッコいい
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/28(水) 20:40:28.79 ID:rzUHFQUDO
マミ「あ、あの子達は?」


あちー、あちーと言いながらクロは出てくるものの、他の二匹は中々出てこない。
まさか熱中症にでもかかったかと思い、マミは慌ててバッグの中を確認する。


ほむら『すー…』


かぐら『…むにゃ』


二匹は、カバンの中で丸まって眠っていた。
ふぅ、と小さく、マミは安堵の息を吐く。
大丈夫だと自分に言い聞かせてもこういう事をする時は多少不安になるものである。


特に、マミに関しては過去の事があるから尚更敏感だ。


クロ「よく寝れるよな。まったく」


マミ「……クロ?」


カバンを覗き込んだマミの後ろから突然顔を出したクロに彼女は思わず驚きの声を上げてしまう。
そんな彼女をいぶかしるようにクロは眉をひそめた。


クロ「なんだよ」


マミ「な、なんでもないの……。ちょっと思い出しただけだから」


なんでもないと首を振りながら答えた後に付け加えられた言葉は、彼女にとっては呟きだったのかもしれないがクロには、はっきりと聞こえていた。


クロ(思い出した、ねぇ)
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/28(水) 21:29:55.27 ID:rzUHFQUDO
かつて、『暁美ほむら』から聞いたマミの昔話が頭によぎる。
やはり、過去なんてものはどうあっても忘れる事はできないようだ。
ポリポリと耳の裏を掻きながら、なんとなくそう思った。


それにしても、どうしてほむらはマミの過去を知っていたのだろう。
マミとほむらが二人でいる所を見たのは病院にいた時の話で、マミの過去をほむらから聞いたのは、もっと前の事である。


そして、ほむらの事でひっかかるのはそれだけではない。
記念すべきクロの魔女退治第一号となった魔女の戦いの時に走ったあのノイズとともに見えたあの少女とほむらとの関係も気になる。


あれはいつも見ている『視覚としての映像』ではなく。
極めて『機械的な映像』であった。
記憶よりもあやふやで、幻よりも確固たるもの。


クロ(……わかんねーな)


『ど、泥棒ーー!!』


そんな脳内の思案切り裂いて、突然の大声が響き渡った。


マミ「泥棒ですって!?」


クロ「ん?」

857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/29(木) 00:10:21.79 ID:KYUps34k0
更新終わったのかな?
マミさんが思い出しのってやっぱり「彼女」だよな・・・
それから泥棒って誰なんだろうなー(棒)
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/29(木) 12:15:50.04 ID:3bB4dCPM0
泥棒だと・・・!?一体何杏子なんだ・・・?
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 13:48:43.79 ID:WUFHBrFDO
泥棒ね・・・。一体何アン子なんだ
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 16:31:31.19 ID:1MlWj+qV0
泥棒・・・一体何ん子なんだ・・・
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/29(木) 16:52:00.37 ID:+kVqYjOIo
泥棒だと・・・一体何味なんだ・・・?
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/29(木) 18:03:22.48 ID:QHcf5vS30
>>859>>861 ノリがいいぞwwwwww君たちwwwwww
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/29(木) 20:55:43.93 ID:O+ChaoADO
マミからしてみれば不穏極まりない言葉に彼女は顔を引き締める。
まるで、魔女が現れたような切羽詰まった顔になる彼女を少し、クロは物珍しそうにいていた。


だが、よく考えたら自分の常識と彼女の常識を照らし合わすこと自体に無理があるのだとクロは一人納得した。
そんなクロを尻目にマミは辺りをキョロキョロと見回している。


マミ「泥棒って、一体どこに!」


クロ「声は一応あっちからだぜ」


泥棒と叫ぶ声が聞こえたのは自分達の後ろ側からだった。
クロは今まで歩いてきた方向に身体を向け、マミもそれを見て慌ててそれに習う。


道の向こうから軽いエンジン音が近づいてくる。
その音をぼんやりと聞きながら、クロはジッと注視していた。


クロ「……来たぜー」


現れたのはなんのヘンテツもないスクーターであった。
色は灰色を主とした車体で、その運転手はフルフェイスを被り、身に付けた服は上から下まで黒で統一している。


そして、その腕にはまるで戦利品のようにぶら下げた茶色いバッグがあった。


マミ「引ったくり!?」


864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/29(木) 21:17:41.42 ID:O+ChaoADO
マミの悲鳴のような叫びを聞いたクロの耳に、更にもっと別の声が届いた。


「おーい!誰か、誰かそいつを捕まえてくれぇ!!」


近づいてくるスクーターのはるか後ろに見えるその人影はよろめきながら、それでも本人からしてみれば必死で走っていた。
恐らくは、あのバッグの持ち主だろうか、視力には自信がないのだが、声の様子では老人の男性だろう。


見ればスクーターとの距離は絶望的、ただでさえも遠いその距離はどんどんと離れていく。
そして、それに比例するように当然の如く、スクーターは此方に距離を詰めてくる。


爺「と、止めてくれぇ!そのバッグは婆さんの大事なものなんじゃあ!!」


もう動けないのか、立ち止まってうずくまった老人が絶叫した。
疲れからか枯れたその声は弱々しくもはっきりと街に響いた。
そこでようやく周囲の人々が異変を察し老人の方に集まっていく。


クロ(……爺さんと婆さんは、元気だろうか)


この思いは少し場違いだろうか。
しかし、それでもその思いは、確かにクロを突き動かした。


865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 21:39:13.02 ID:O+ChaoADO
マミ「くっ、止まりなさい!!」


自分達に向かってくるスクーター、このままではみすみす見逃してしまう。
そんな事は、彼女は許すことはできない。
そんな悪を見逃すような事はできない。


マミがスクーターの進路方向に飛び出そうと身体を動かす。
もうその距離は10メートルを切っている。
あまりに危険で向こうみずな行動であった。


このままでは、ぶつかる。
誰が見ているかは彼女は知らないが、少なくとも彼女はそう思った。
走りながら、マミはギュッと目を閉じた。



硬い鉄の塊が激突する音がした。


マミ「くぅッ………………え、あら?」


目を閉じたままで視覚を遮ったせいで何がどうなったのかが分からない。
捨て身の行動をとったその代償である衝撃もいつまでたってもやってこない。


一体、どういう事なのかと恐る恐るまぶたを開くと。


引ったくり「いてぇ…、いてぇよぉッ……」


スクーターは道の上で、もの見事にグシャグシャになっていた。
まるで、巨人に真横から思い切り殴り付けられたようだ。
そして、その持ち主は前述の言葉を地面にのたうち回りながら喚いている。
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/29(木) 23:06:43.67 ID:O+ChaoADO
マミ「……え?」


クロ「行くぞ」


事態を飲み込めないでいるマミの足下で、いつの間にかクロがマミの荷物を頭上に掲げるようにして持っている。


クロ「ずらかれ!」


マミ「え、えぇ」


クロに急かされるままにマミは走った。
その場から逃げるように。
しばらく走り続けて喧騒が遠ざかり、もう完全に聞こえなくなってからクロは少し足を緩めた。



マミ「はぁ、はぁ……ふー、クロ……」


クロ「なんだ?」


マミ「あれは、あなたがやったの?」


息を切らしたままで、マミはクロにそう聞いた。
その言葉の歯切れの悪さは、恐らく疲れだけではないことは分かる。


クロ「……やりすぎだって言ってんのか」


マミ「……それは」


マミの前を歩いていたクロが足を止めてバッグを地面に置いた。
ため息を吐きながらクロはマミの方に振り返る。


クロ「なんでもはできねーよ」


マミ「え?」


クロの口から出てきた言葉にマミは目を丸くした。
想像していた物と違う言葉だったからだ。
まったく自分の言葉を意に介さないか、言いくるめにかかろうとすると思っていた。


だが、クロは牽制するような言葉を、まるで聞き分けのない子供に言い聞かせるように言う。
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 23:54:18.13 ID:O+ChaoADO
クロ「なんでもはできねーし。だから、やんねー」


そのかけられる言葉にマミは上手く答える事ができない。
そんな彼女の姿を見て、クロはまた一つ彼女の本質を見つけた気がした。


クロ「他人にも気を遣って、そんで目的も達成する。そいつぁ、最高だ。文句なしにそれができる奴はすげーよ」


マミ「でも、あなたは私を助けてくれたわ。さやかさんも、まどかさんだって。あなただって十分」


クロ「オイラはヒーローじゃねぇ。なるつもりもねぇ」


かつて、さやかにも言ったような言葉をマミにもぶつけた。
戸惑ったようにマミは、クロを見つめながら言い淀んでいる。


謂わば、マミは潔癖症だ。
自分の理想は気高く、そして、それを他人にもどこか求めている節もある。
そして、その思いの暴走から以前のようなケンカにまで発展した(マミの胸の内を全て理解した訳ではないが)。


だが、マミが別にそんなタイプの人間であろうが別に干渉するつもりはなかった。
問題は、その潔癖をこともあろうに自分にまで求めている事である。


クロ「なんでもかんでもは、できねー。……できねーんだ」


868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/29(木) 23:58:36.09 ID:O+ChaoADO
例えば


木に押し潰されていくゴロー


例えば


ミサイルに吹き飛ばされていった子猫達


例えば


仲間達






あの時、自分は何をしていたのだろうか。


どうあっても、『自分』にはできなかったのだろうか。


答えは、まだ分からない。
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/30(金) 00:25:38.97 ID:PUuvmdWDO
マミ「クロ……」


クロ「まぁ、それでも、どしてもってんなら手を貸すぜ。前に言った通りにな」


さっきまでクロから流れていた重たい空気がクロ自身により払われた。
聞きたいことはまだまだあったのに、クロはこういう所が一番ズルいとマミは思う。


『パ、パン泥棒ー!!』


またもどこから声が聞こえてきた。
今度はこの通りではなく、また別の通りであるらしい。
クロは呆れたように空を仰いだ。


クロ「ったく。なんだ、今日は泥棒の運動会でもやってんのか?」


マミ「クロ、どうしよう?」


またしてもマミがそわそわとしている。
こちらも大概だ。
本当に、苦労するタイプの人間なのだろう。


クロ「ほっとけ、ドブネズミに一々関わる必要はねぇ」


マミ「ドブ、ネズミ?」


物騒な物言いにマミは首を傾げた。
まぁ、あまり馴染みがないのだろう。


クロ「ああ言う生き方をしている奴らはいつかしっぺ返しを食らうんだ。罰って奴だな。さっきの盗人みてぇによ」


マミ「さっきのって、あれはクロがやったんじゃない」


悪い事をした人間には、何をしてもいい。
まるでそう言っているような気がしたマミは、釈然としない面持ちになる。
だが、クロが言いたい事はそういう事ではない。


クロ「ああされたって文句は言えねぇ生き方を選んじまったんだよ。あいつらは」


マミ「それが、罰?」


クロ「あぁ、最も。世の中にゃドブネズミみてぇに生きる事そのものが罰だって奴もいるんだろーさ」


大した感慨も、感情も込められなかったクロの言葉にマミは圧倒された。
ただ単純に、魔法少女だとかいう世界と同等か、まったく異質な闇を見た気がした。
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/30(金) 00:34:04.42 ID:PUuvmdWDO
クロ「マミ、お前は行くなよ」


ふいにかけられた言葉は、あまりに優しい響きを持っており、マミは思わず返事をなくしてしまった。


だが、変わりにどうしても、どうしても聞いてみたかった。


マミ「あなたは、どこに立っているの?」


クロの言うこちら側とはなんなのだろう。
彼は、自分とは違う世界の住人で、そしてもっと根本的に『違う』種類の、遠い、遠い存在なのではないか。


もし、そうなら、あまりに哀しいとマミは思っていた。


クロはその言葉にニヤリと笑って答えた。


クロ「オイラはどこにでもいってやるぜ?楽しい方向ならな」








街を『少女』は疾走していた。
風を切り、人の隙間を縫うように。
手には、パンを握りめており赤毛がスキップをしているように跳ねている。


少女は、笑っていた。
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 00:36:12.69 ID:PUuvmdWDO
今日の更新は以上になります。
次回の更新は土曜日です。


感想いつもありがとうございます。
では、またよろしくお願いします!
お疲れ様!!
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/30(金) 01:04:06.69 ID:bO6JHj2M0
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 01:32:51.45 ID:u21KdsrM0

ミスリードかと思いきや、いやはや
ドブネズミみたいに生きる事そのものが罰ねえ
実際にそういう節が確かにあるよね
誰なのかはあえて言わないが
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/30(金) 07:49:11.00 ID:mPEgE8tpo

ついに来たか!
溝鼠みたいな生き方か・・・・ん?
ねずみで思い出したけど、ゴーくんとコタローが作ったねずみロボットで絵に描いてようなムカつく奴が居たような
名前は確かミ・・・ミー・・・ミッキーマウス?
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage sage]:2012/11/30(金) 19:00:55.83 ID:bO6JHj2M0
>>874
名前はミッキー6型(ローク)
巨大ロボット造って人間を踏み潰すという念願を叶えようとするも、クロ達に阻止され
命乞いでピ〇チュウのコスプレしてクロに「似てねぇ」と言われ逆に踏み潰されるってオチww
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/12/01(土) 14:26:54.57 ID:jSMc4saO0
クロはマミさんの本質を全て理解してるわけではないのね
会って、まだ1ヶ月もたってないんだから当然といえば当然だが
マミさんも、自分の正義が建前の物で、本音をまだ自覚していないみたいだし
杏子との再会で、それを認識するのかな?
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/01(土) 15:16:56.20 ID:nIBzHdxDO
>>875
電柱曰く「コスプレを甘くみな〜い」だったな
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/01(土) 20:41:08.46 ID:WkOJOvFC0
みんなマミあんの事ばかり話してるけど
少しはさやかちゃんの心配もしてやれよ
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage sage]:2012/12/02(日) 03:06:43.64 ID:wr032sO30
恭介がさやかが魔法少女になる瞬間に立ち会っていて
魔女や使い魔だのの魔法少女の事情を理解している
その上、恭介が腕が動かない自分を受け入れるほどに精神的に強くなった
これだけ恵まれた状況じゃ、よほどの事がない限り絶望しないと思うの

つーか、ここまでお膳立てして「安定のさやか」になったら、もうどうしようもねえ・・・
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 12:04:20.60 ID:gkHJO98DO
いや、それでこそ安定の青魚だろJK
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 15:13:42.10 ID:cMFkSsCX0
なんでマミは窃盗犯を捕まえる時に魔法を使おうとしなかったんだ?
リボン出して、縛るくらいはできる筈だが
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 19:17:16.17 ID:7szmpusX0
>>876
正義も間違いなくあると思うんだけどね
使い魔を放置する魔法少女のマジョリティをわざわざ否定してマイノリティでいたんだから
そうじゃなきゃ、契約した2年間の間でとっくに折れてると思われ
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 21:20:57.64 ID:4HuLdUpn0
>>1よ…更新予定日もう過ぎてるぞ?
出来ないなら出来ないと書いてくれなきゃ困る
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/03(月) 20:30:05.05 ID:Kce100gDO
────見滝原中学


学校生活の連続的惰性──もっと単純に言って『ダルさ』───については、もはや言わずもながだろう。
それとなく真面目に席につき、それとなく真面目にペンを握り、それとなく真面目に先生の話を聞きながら、それとなくまどかは思っていた。


今は、四時限目の授業の真っ最中。
朝は自分を降った男に対する罵詈雑言に対し、生徒に同意を求めるという暴挙に出ていた早乙女先生は落ち着いたのか、はたまた仕事に私情は持ち込まないのか、現在は真面目に授業をしている。


まどか(お昼……まだかな)


決して、不真面目なタイプではないと自負するまどかであるが、それでも勉強が大好きではない、あくまでも普通の人間だ。
できれば授業が早く終わってほしいし、学校も早く終わってほしいというまだ若い学生らしい感性も持ち合わせている。


特に、今日は少しでも早く家に帰りたい。
マミの退院祝いの準備がまだすんでいないのだ。


まどか(さやかちゃんも誘ったから、忙しくなるかも)


そういえば、さやかは三限の授業中に登校してきたが、妙にイライラしたのは何故だろう。
恐らくは病院に行っていたはずだが、そこで何かあったのだろうか。
885 :誤イライラした 正イライラしていた :2012/12/03(月) 21:35:46.12 ID:Kce100gDO
まどか(まさか、まさかねぇ)


ふと、頭に黒い影がよぎったが思い違いだとまどかは思った。
いかに、彼とさやかは反目(一方的に近いものがあったが)しあっていたとは言え、問題は殆ど解決したようなものである。
まさか、今更になってケンカする理由もないだろうと考えたのだ。


しかし、まどかは甘かった。
波風たたない場所に好き好んで行く、又は無理矢理波風たたせるのが彼───クロの為せる業であるという事を。


早乙女「はい!では今日はここまで!分からないところがあれば質問に来てください。そしてリア充は消えてください」


まどか「あれ?」


授業終了を宣言する言葉にハッと我にかえった。
そのちょうど数秒後にチャイムが鳴り響く。
急速に広がる空気の緩和に教室は飲み込まれる。


『きりーつ、れい』


ダラダラとした、もはや習慣と成り下がってはいるものの、礼をしてやっと授業は本当の意味で終わった。
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/03(月) 23:06:22.91 ID:Kce100gDO
まどか「うー、やっとひと段落だよ」


軽く背筋を反らして伸びをする。
できれば両手まで伸ばしてみたいが流石に恥ずかしい。
ずっと同じ姿勢でいるというのは、味気なくとんでもない苦痛である。


まどか(……それにしても、喉渇いたな)


授業中はずっと席についたままだし、それなりに緊張していたため我慢はできていたが、授業が終われば我慢する道理はない。
そういえば、学校の自販機が新商品を仕入れたと話に聞いた。


まどか(じゃ、今日はそれでいいかな)


目的の地、目的の物を定めて、教室から廊下に出て、階段に向かう。
自販機がある場所は一階だ。
その途中、さやかにも何が欲しいか聞いた方が良かったかと思ったものの、あれだけ謎の苛立ちを抱えていた彼女に話し掛ける勇気はあろうはずもない。
まどかは構わず歩みを進める事にした。


まどか「……うっ、うーん」


階段の踊り場まで降りようとすると目の前の窓から光が射してきた。
長時間、ノートと黒板ばかりを見てきたからだろうか。
飛び込んできた日の光で少し目が痛かった。
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/04(火) 12:13:28.57 ID:aVwROfuDO
階段を一歩一歩降りるたびに、胸がドキドキしていくのを感じる。
正直、想像するだけでも楽しみなのだ。
友達を家に招いて、そして皆でお祝い事をする。
気持ちが先走ってしまうのも、無理はないだろうと自分に言い聞かせた。


タン、タン、タン、とリズムよく階段を降りる。
今日まで少し大変な目にあう事も多かった。
命に関わる大騒動もあって、友達とケンカだってした。
しかし、ここでようやく何も考えずに、単純に楽しいと思えるような事ができる。


マミとさやかと、そして、クロと。


皆で────。


妙にフンワカした思考で歩いているうちに、どうやら階段は降りきってしまったようだ。


まどか(自動販売機は……と、あった)


階段を降りきった所からしっかりと自販機の姿を確認することができた。
他の場所にも自販機はあるにはあるのだが、残念ながら新商品の入荷はここが一番早い。


まどか(どんなジュースなのかな?……変なのだったら嫌だな)


かつて某コーラ会社が出したキュウリ味。
一度さやかにその事実を知らされぬまま飲んで割と本気で「おいしい」と言ってしまったあの日の微妙な空気をまどかは忘れられない。
それがトラウマになったか、ゲテモノ系は苦手だ。
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/04(火) 12:37:33.38 ID:aVwROfuDO
まぁ、そもそも学校がそんな遊びのようなジュースをわざわざ仕入れるはずもない事くらい分かってはいるが。
とにかく、早く買って昼食を摂ろうと思い立ち、改めて自販機に歩き始めた。


すると、そこには既に誰かが自販機の前にいた。
先客だろう。


まどか(……あれって、もしかして)


少し小柄な体躯は凛と伸び、しかし無駄な物がどこにも付いていない事を背中からでも分かる。
黒く、長い髪が柔らかい風に撫でられ静かに揺れていた。


まどか(ほむら、ちゃん……)



少しだけ、緊張しながらその背中に近付いていく。
そう言えば、ここ最近はあまり話していなかった。
相変わらず、彼女の事は何も知らない。
どうにかしようとクロに助けを求めた事もあるにはあるが、めんどくさそうにしていたので期待はできない。


などと、そうこう考えている間に大分距離は詰まってしまっている。
流石に、もう覚悟を決めるしかない。


まどか「スゥー、ハァー」


ほむら「新作はトマトジュースよ。……かなり微妙ね」
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/05(水) 20:24:50.98 ID:yryF6udDO
まどか「え?」


ほむら「前はただの栄養ドリンクだったし、次こそはって期待しても現実はこんなものよね」


振り向いたその顔は哀しそうで、切なそうで、もしかしたら、もう少し離れていたら怒っているようにも見えたかもしれない。
『近くにいて良かった』と、なんとなくまどかはそう思った。


ほむら「こんにちは、鹿目さん。あなたも新作のジュースを見に来たの?」


まどか「こ、こんにちは、ほむらちゃん」


ほむら「あら、今日は暁美ちゃんじゃないのね」


まどか「も、もう、からかわないでよ」


何故だろう。
いつもなら少しからかい半分で接する事ができるのに、今日はうまくいかない。


分からない。
でも、それが、まどかにはたまらなく哀しい事に思えてならなかった。


ほむら「ここ最近はどう?巴マミと美樹さやか、そしてあなた自身は?」


その言葉に、まどかは頭を捻った。
どう伝えたらいいのか、よく分からないのだ。
ここ最近では、魔女が現れたと思わせるような挙動は誰も見せていないし、なんらかの異変を訴える者もいなかった。


そんな日常に与えるべき言葉をまどかは悩んだ。
悩んで、悩んで、どうしようもなくなって、彼女は『その』言葉を選んだ。

890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/05(水) 20:42:44.95 ID:yryF6udDO
まどか「いつも通りだよ」


選ぶしかなかった言葉だった。
他に何か洒落た一言を用意してくれたのなら、まどかはその言葉を選んだかもしれない。
しかし、頭に浮かんだ言葉はただそれだけ、ならばまどかはそれを選ぶのみである。


しかし、しかし彼女は


ほむら「───そう」


ただの一言だけそう呟いた彼女は、とても満ち足りたような顔を一瞬だけ見せたのだ。


ほむら「それじゃ、私は行くわ。邪魔してごめんなさい。早くジュース買わないと昼休みが減るわよ」


まどかはハッとした。
ほむらが見せた顔に、見惚れてしまっていた事を認めなければならない。
しかし、そうこうしている間にほむらは既に歩き始めている。


まどか「ま、待って!ほむらちゃん!」


何か、何か、かける言葉はないだろうか。
呼び止めたほむらが訝しるようにこちらを見ている。
焦り、はやり、どうにか頭に浮かんだ言葉をぶつけた。


まどか「今度は、好きなのが来ればいいね!今度は、ほむらちゃが欲しい物が!」


ほむら「……そうね。でも、それは私が選べることじゃないわ」


そう言って、ほむらは歩き去ってしまった。
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/05(水) 21:12:30.75 ID:yryF6udDO




まどか「って事があったの」


さやか「……ふむ」


授業は全て終了して、HRも終わった。
今、まどかはさやかと一緒に下校している最中である。
いつもは志筑仁美も加えた三人組で帰っているのだが今日は、彼女は家の用事で先に帰ってしまった。
その下校中に、まどかはさやかに今日の昼にあった話をしてみたのだ。


さやか「どんどん分からなくなってくるなぁ。あの転校生、何がしたいんだかさっぱりだよ」


暁美ほむらを知るヒントが得られればと思い、さやかに聞いてみたのだが彼女も首を傾げるばかりである。
そもそも、彼女に関しては初対面の襲撃のイメージが強すぎて、さやかのほむらに対する認識は偏っている気がする。


まどか「で、でも助けに来てもくれたし」


さやか「助け?……あぁ、パソコンみたいな魔女の時に来てたらしいね。正直あいつの事で頭ぐちゃぐちゃで覚えてないな」


フォローをいれたつもりだったが無駄骨のようだ。
自分でも、どうしてほむらに対してフォローをいれたいのか、分からない。
ただ単純に、悪い人だと思いたくないだけかもしれないが。
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/05(水) 22:12:44.90 ID:yryF6udDO
さやか「うーん」


さやかは考え込んでしまった。
少し前の騒動を思うと、恐ろしい気もする沈黙である。
もし、さやかがほむらを敵として認識した場合、自分はまたさやかと違う決断を取らなければならない。
それは、まどかには、たまらなく辛い事だった。


まどか「……さやかちゃん?」


心が不安に染まりきる前だった。
さやかが一言、大きな声で宣言した。


さやか「よし決めた!───まだ何も決めない!」


まどか「……へ?」


いつもの彼女からは想像できない、というより意図がよく分からない決断を彼女は、やけにキッパリとした口調で告げた。


白か、黒か。
まさに竹を割ったようなという言葉をそのまま女の子の形にしたような少女から出てきたとは思えない言葉である。


まどか「それって、どういう事?」


その心は如何に、と聞いてみたまどかに対して、少し照れくさそうにさやかは口を開いた。


さやか「……なんていうかさ、私が思う転校生とまどかが知ってる転校生は全然違うでしょ?」


まどか「うん……まぁ」


さやか「じゃあ、まだ転校生がどんな奴かは分からないんだろ?そんな状態であいつは良い奴だー、とか悪い奴だーとか騒いだって、そんなの馬鹿みたいでしょ……なんて、思っちゃったり」


893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/05(水) 22:27:01.37 ID:yryF6udDO
最後辺りは彼女も口籠もっていた。
その言葉に彼女自身が以前当てはまっていた事くらいさやかが一番理解しているのだろう。
だからこそ、まどかは驚き、そして嬉しかった。


さやか「な、なんだよ」


まどか「別に、なんでもないよ」


その喜色は顔に出ていたらしく、さやかはジト目で睨むが、まどかはどこ吹く風である。
それにしても、以前と比べたら少々意地悪になっているかもしれない、とさやかは思う。


そう、クロが来てから。


クロが。


クロ……


クロ『黒か』


さやか「だああああああ!!」


まどか「さ、さやかちゃん!?」


穏やかな雰囲気が一変、さやかは頭をかき乱して心の底からの絶叫をあげた。


さやか「」ダメだ!時間が忘れさせてくれるかもと思っていたけど、全然ダメだ!あのクソネコがあああ!!


まどか「かぎかっこから台詞がはみ出してる!?一体何があったの!?」


地団駄で地割れが出来そうなくらいに、彼女は足を踏みならしている。
はたして、その引き金になったものは、一体なんなのか?
いや、やっぱり、想像はつくのだけど。


まどか(……クロちゃーん)
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 22:29:07.07 ID:yryF6udDO
今日はここまでにします。


すみません。最近疲れで書いていても寝落ちしてしまって、最後の言葉が書けませんでした。


次回はしっかりとします。
よろしくお願いします。


投稿は明日の昼と、夜です。
お疲れさまでした。
読んでいただきありがとうございます。
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 22:44:28.42 ID:MdHGmvxm0
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 23:07:57.92 ID:a4YDZffn0

以前書いた質問だけど
なんで、マミは窃盗犯を捕まえる時に魔法を使わなかったんだ?
変身しなくてもリボン出して縛るくらいはできる筈だぞ?
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 04:07:20.43 ID:btFCAa1DO
>>896


そいつはストーリーに関わる事項ですんで軽くでしか説明できないんです。


要は『自』が出たと言いますか、それが僕自身が考えたシャルロッテ戦におけるマミさんの敗北理由にもなります。
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 15:43:08.40 ID:btFCAa1DO
申し訳ありません。


巷で有名なノロウイルスの襲撃にあいました。
結果ボロ負けで寝込むことになりました。


2日〜3日まで待っていてください。
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 18:28:41.86 ID:r431m0zm0
お大事にね
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 18:39:22.02 ID:9BkFFxpQ0
お大事に
ナナちゃんの手料理を用意せねばだな
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 19:25:59.01 ID:+o1uBjif0
>>900
おい、それ悪化するだろww
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/06(木) 20:20:51.18 ID:QMj430KJ0
お大事に
ミーくんの手料理でも用意するか
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 21:57:40.42 ID:Y8HcaoMbo
お大事に
ロミオとジュリエットに頼んで看病してもらおう
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 07:56:28.39 ID:jq9pcXxIO
お大事に
ヒロスエに頼んで看病してもらおう
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 20:32:06.36 ID:yc4PCniAO
お大事に

編んだのー!
つマフラー
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 20:16:54.01 ID:y4ZPxYHDO
長い、長い戦いでした!


お見舞いレス本当にありがとう!


では、投稿開始です!
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/11(火) 20:53:53.32 ID:y4ZPxYHDO
さやかの苛立ちに引きずられるように、やや足早にまどかは帰路についていた。
チラリと隣を見ると、未だ悪鬼羅刹のような形相で歩いているさやかがズンズンと一歩一歩に力を込めて歩いている。
まるでアスファルトが親の仇か何かのようだ。


ふぅ、と一つため息を吐いて思いを巡らせる。
まず、さやかに関してはもう自分ではどうにもできないので落ち着くのを待とう。
家に招待してから自慢の父おいしい料理を食べてしまえば機嫌だってすぐに戻るだろう。
その自信なら多分にあった。


なら考えるべきは、今日最大のメインイベントである『マミさん退院おめでとうパーティー』についてだろう。


まず第一に料理だがこれについては大丈夫だ。
料理の準備も、そして料理も父が行う。
父の料理は、あの母をして『外食なんぞ行ってられるか』と言わしめた程の味を誇るのだ、任せておけば間違いはない。


第二に、部屋の飾り付けである。
『何もそこまで』と思われそうだが、それを敢えてしてこそのパーティーだ。
これに関しても大丈夫。
朝から父は張り切っていたし自分たちが家に帰る頃にはすべてが終わってしまっているだろう。


そう、全てが……。

908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/11(火) 22:07:28.43 ID:y4ZPxYHDO
まどか(……あれ?これ、私なにひとつとして絡んでいない?)


おさらいして考えてみれば凄まじくロクでもない事実に気が付いてしまった。
如何に万能かつ優秀な父がいたとしても、マミは自分たちの先輩である。
その人のお祝い事の準備を何から何まで丸投げは流石にマズいのではないか。


いや、確かにプレゼントは準備している。
しているけれども、だからなんだという気がする。
やはり、自分たちの大切な友達のためのパーティーなのだから自分たちでおもてなしをするべきだろう。


まどか(よし、決めたよ。もう決めた。家に帰ったらなりふり構わず準備をしよう。全霊をこめて折り紙であのリングを作って繋げるんだ)


もう、そのためならまどかはロボットになってしまってもよかった。
もうそろそろ家が見えてくる。


そうだ。


隣にいるさやかにもちょっとばかり手伝ってもらおう。
怒りのベクトルをほんのちょっと変えてもらえば作業もきっと捗るだろう。
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/12(水) 06:43:39.82 ID:kTrLpDjD0
復活したか!完治おめでとう乙
余計なお世話かもしれんが>>1は書き留め出来ない環境なのか?
毎日、こまめに投下するよりもキリのいい所まで区切ってから
一気に投下した方がコメントがつきやすいと思うぞ?
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 00:21:12.52 ID:HAZK3mbIO
治ったか良し
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/13(木) 19:12:28.04 ID:XgwJ6scDO
もう少し、もう少しで家に着く。
この道を真っ直ぐ歩いて、次の角を右へ、するとほら見えてきたるは愛する我が家である。


さやか「お、まどかん家だ!久しぶりだなぁ。まだパパさんはいるの?」


と、環境の変化からか、さやかは苛立ちから脱したようだ。
まだ一度訪れてから数ヶ月くらいしかたっていないだけなのに、なんとも懐かしそうな顔をしている。


その顔を見るだけで、照れくさいような嬉しいような気持ちになるものだ。


まどか「行こう。さやかちゃん」


さやか「オッケー!いやぁ、楽しみだなぁ。エッチな本とかあるかなぁ」


まどか「ないよ!タッくんはまだまだ子供もいいとこだよ!」


いやらしい笑みを浮かべる彼女に対して、苦笑しながらまどかは突っ込んだ。


さやか「いや、まどかの」


まどか「……な、ななないよ!あるわけないじゃない!そんなのあり得ないよ!」


まさかの態度を見せるまどかに、おやおや〜とさやかは追及の姿勢を見せた。
いや決して、そういう直接的な物は持っていないにせよ。
突っ込まれれば多少は痛い物くらいまどかも持ち合わせはあるのだ。


まどか「さ、さぁ!早くマミさんの退院パーティーの準備をしよう!」


さやか「ねぇ〜ん。まーどかー!」


912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/13(木) 21:10:13.26 ID:XgwJ6scDO
追いすがるさやかを引きずるようにして、家の玄関の前で歩いた。
ニマニマといたずらっ子のような笑みを浮かべるさやかはやりずらいが、しかし彼女は今日のお客人の一人である、締め出す訳にはいかない。


まどか「ただいまぁ」


さやか「お邪魔しまーす!」


しかし、さやかもそこは物心ついてから人付き合いを十年と重ねてきたわけで、あっさりと切り替えて家の中に入ってきた。


さやか「あれ、やっぱりパパさんはいないのかな?」


まどか「あれ?時間帯としてはもう家にいるはずなんだけどなぁ……。もしかして今日の準備で足りない物を揃えに行ったのかも」


すっかり話題がそれた事に胸を撫で下ろしながら、後ろ手で扉を閉めた。
少し玄関から辺りを眺め回してみても廊下からいつもの柔らかい笑顔が現れる様子はない。


さやか「あれ、でも鍵閉まってなかったよね」


まどか「うん、言えばそうなんだけど」


あの父が『ちょっと出るだけだから』というだけで施錠を怠るはずがない。
だが、そうなると首をもたげてくるのは『もしや』の可能性である。
まどかは、スッと顔を真剣そのものに引き締めてさやかを見る。
そして、さやかまたまどかとほぼ同時に同じ考えに至ったのか深刻そうな顔でまどかに頷いてみせた。
913 :sage [sage]:2012/12/13(木) 21:52:50.48 ID:0xmp/kH+0
サイクロか懐かしいな〜昔よく見てたな〜
スレタイ見た時はワンピースの百計のクロかと思ったわwwwwww
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/13(木) 22:34:41.10 ID:XgwJ6scDO
まどか・さやか(……泥棒ッ!)


二人はまず、そっと靴を脱いだ。
そして、そのまま音を立てないように家に上がりこんだ。
何故、この緊急時にわざわざ靴を脱いだのかは、恐らく彼女達にしか分からないだろう。
彼女達も、日本人なのだ。


まずは、家に来て大体の人間が一番最初に訪れるであろうリビングに向かおうとまどかは決心する。
その旨を手振りとアイコンタクトでさやかに伝えれば彼女は引き締まった表情で頷いた。


一歩、一歩それ程足を持ち上げないですり足に近い動きで進む。
後ろをわざわざ確認できる訳ではないのでよく分からないが、きっとさやかも似たような動きをしているのだろう。


別に、彼女達に隠密の心得などあろうはずもなく、それとなく好奇心の赴くままに行動にでているだけである。


────そして


『…む…し……ね。ど……し…し……』


まどか(いるッ!)


リビングにつながる扉の前に立ったその時、確かにその向こうから声が聞こえてきたのだ。
もはや、これはまごうことなく、招かねざる客がこの家の中に入り込んでいる事を示していた。
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/13(木) 23:16:00.75 ID:XgwJ6scDO
二人はまたも顔を見合わせて頷きあうと、ドアノブに目をやった。
まどかはゆっくりと、ノブに手を置くとそっと深呼吸をした。
この時、彼女の胸の中にあった思いは、恐怖と緊張と、それを覆い隠すばかりの猛りであった。


怖い、確かに怖いが、彼女の頭には『たかが人間だろう』という考えがあった。
様々な化け物の襲来にあったのだ。
今さら人間など、恐れる程ではない。


そんな、荒唐無稽とも呼べる考えである。


さやかを見ると、彼女はソウルジェムを握りしめていた。
もしもの場合はきっと、彼女は変身という行動に出るつもりだろう。
めぼしい武器に心当たりのないまどかは、取り敢えず手に持った学生カバンを握りしめた。


まどか「……いち、にの、さんで開けるよ」


ポソッと、半分は口の動きだけでまどかはさやかに告げた。
さやかもまた、首だけで了解とする。


まどか「いち、にの、さんッ!!」


さやかの了解を見たその時には、まどかの心は決まっていたらしく、合図と共に、まどかは勢い良く扉を開きカバンを振り上げながら飛び込んで行った。
さやかもまた、その後に続いていく。


まどか「くせものー!!……………って、あれ?」


さやか「ど、どうした!?まどかッ!!」


果たして、確かにリビングの中に、普段であればあり得ない人物がそこにいた。
突然、飛び込んできたまどか達に驚き、目を丸くしながら呆然としている。


しかし、まどか達もまた、そこにいた人物に驚きを隠せない。
部屋に入る前に膨らませていた勇気が音を立てて抜けていった。


まどか「……マ、マミさん?」


マミ「はれ?」
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/14(金) 00:00:41.28 ID:H7T1TJ1DO
リビングの床にペタリと座りながら、マミはこちらを見て目を丸くしている。
恐らく自分と彼女は、今、鏡を見ているように同じ顔をしているかもしれない。


自分は、まさかの人物の登場による驚き、彼女は、突然声をかけられたことに対する驚き、と意味はまったく違っているが。


さやか「マ、マミさん、どうしてここにいるんですか!?てか、一体ここで何を」


マミ「えっ?あ、あぁ、そうよね。説明が必要ね」


いち早くショックから抜け出したさやかが尋ねると、マミもまた気を取り戻したようにワタワタとし始めた。
だが、まどかはまだ動けずにいる。


まどか「……」


別に、マミがここにいるのは、まどかなりの解釈でどうにでもなる。
問題は彼女が両手で持っている細長く切られた折り紙のようなもの。
彼女はそれを今まさに、リングのように丸めて繋げあわせているところであった。
色とりどりのそれは、床にも散らばっており、中々大量に作られている事が分かる。


何故、パーティーの主役が、今まさにここにいるのだろう。
そして何故、よりにもよってパーティーの準備を主役がしているのだろう。
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/14(金) 00:23:07.84 ID:H7T1TJ1DO
「おー、なんだ帰ってたのか?」


愕然としているまどかの耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
錆びたブリキ人形のような動きでゆっくりと振り替えると、つい先程開けたドアの前に見覚えのある黒猫が立っていた。


まどか「クロ、ちゃん?」


クロ「おう」


右手をプラプラと振りながら軽い態度で近づいてくるその姿はいつものままである。
いつものままであるのだが、まどかはある疑念により彼から目を離せない。


さやか「よぉ、クソ猫」


クロ「おいおい今朝のやつなら、悔い改めたぞ」


さやか「あんたの中でしか解決してないんだよ」


軽口の言い合い、さやか自体はもうすでに落ち着いているようで、激しい罵声のぶつけ合いというより、たんなるジャブの打ち合いに終始している。


クロ「ん、なんだよ、マミ。まだ全然終わってねーじゃないか」


マミ「ごめんなさい。こういうの本当に久しぶりで、まだ上手くできなくて」


まどか「やっぱりクロちゃんがさせてたんじゃない!!!!」


突然の叫びに、当のクロは思いっきりビクついて仰け反った。
マミもさやかも驚きを隠せないでいる。
しかし、まどかは、半泣きになりながらクロに詰め寄っていく。


まどか「訳分かんないよ!言ったよね!今日はマミさんの退院パーティーだって、私言ったよね!!」


クロ「あの、あ、はい。……聞きました」


もはや敬語である。


まどか「じゃあどうして当の主役がこんなところでパーティーの準備にいそしんでるの!!」


クロ「それはですね」


まどか「言い訳するな!!」


クロ「はい、すみません」
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 00:25:41.15 ID:H7T1TJ1DO
こっから長くなりそうなので今日はここまで。
明日は夕方頃から投稿を開始します。
読んでいただきいつも感謝しています。


とてもじゃないけど時間の都合で書きだめできないのが残念です。


しかし、また明日、しっかり投稿しますのでよろしくお願いします。
919 :sage [sage]:2012/12/14(金) 01:24:02.97 ID:qvPSUo6M0
お疲れちゃ〜ん♪
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 13:48:25.70 ID:0T5SADduo

どうしてって聞いといて言い訳するなはいくらなんでも理不尽じゃないっすかねまどかさん
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/14(金) 19:15:36.27 ID:H7T1TJ1DO
端から見ていて、弁解を聞いておきながら、いざ答えようとしたら口を開くなとクロは怒鳴られていた。
まるで会社の上司から受けるパワハラのようだ。


しかし、まどかもまどかで半泣きになりながらもしっかりと怒りは持っているようで、頭に色々と整理がついていないようで、自らの言葉に疑問は持っていないらしい。


まどか「何、考えてるの!?本当に、もう大雑把すぎるよ!私、ちゃんと、かんがえ……考えてきたのにぃ……!」


泣いてはいるものの発している空気は今にもクロに飛び掛かってしまいかねないものがある。
友の見せたなかなか珍しい姿に驚きつつ、さやかはまどかの肩をさすりながらなだめた。


さやか「コラコラ、楽しい祝いの席の前に何を泣いているのさ?それにほら、バカ猫も少しは反省してるみたいだし」


さやかの言葉に含まれた一部罵倒に、クロは耳をピクリと動かしたが、動かしただけに留まった。


マミ「ごめんなさい……。私が無理を言ってこうさせてもらったの。クロも知久さんも止めてくれたのよ?」


と、そこにマミも申し訳なさそうに加わった。
まどかの顔をそっと覗きこみながら諸々の事情を説明した。
まどかは俯いてプルプルと震えていたが、ゆっくりと顔を上げる。
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/14(金) 19:59:10.51 ID:H7T1TJ1DO
まどか「……マミさん。それ、本当ですか?」


マミ「えぇ、クロも最初はやめろって言ってくれていたの。だけど、私、こういう事するのって子供頃以来で、どうしてもやりたくなって、それで……」


最初のミスは、クロと共に一度家に帰ってから、特にする事がなかったことから始まった。
荷物を戻し、子猫達を起こし、軽く部屋にたまった埃を片付けた後、完全なる暇になってしまったのだ。


そして、マミはどうしてもはやる心を押さえられず、鹿目宅に向かいたくなった。
その時、クロは難色は示していた。
こういうものは主賓は多少遅刻するくらいが丁度いいんじゃないか、とも進言されたが、マミはどうしても見も心も押さえる事ができない。
そして、そのまま、クロもマミのワガママに付き合う形で動いてしまったのだった。


マミ「ここに来た時、知久さんも驚いていたわ」


まどか「え、じゃあ本当に?」


まどかがクロに目をやると何か言いたげな顔でぶすったれている。
それを見ると、暴走気味に怒って泣いてとしていた過去の自分が間違っていたと分かってしまうものだ。
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 21:58:26.73 ID:H7T1TJ1DO
まどか「ク、クロちゃん……ごめんね?」


クロ「別にー、退院パーティーの主賓をパシリに使うような鬼畜にわざわざ謝るこたないんじゃねーの」


まどか「拗ねていらっしゃる!?うわわわ、本当にごめん!許して!なんでも言うこと聞くから」


事情も聞かず、状況証拠だけで、恐らく多少は気に咎めていたであろうクロを怒ってしまった。
なんと謝罪をすればいいのか分からず、これといった熟考もしないで言葉を並べる。


クロ「ほほーう。なんでもってか?」


そのため、クロが突然ニタリと唇の両端を持ち上げた理由が、まどかには一瞬よく分からなかった。


まどか「はっ!?」


が、自らの言葉を省みてすぐに間違い、いや、もはや過ちに気付いた。
自分はなんと言った?
なんでもする?
この、今目の前で不気味にニタつく黒猫に?


まどか「いや、あの、限度というか、限界はあるよ。分かるよね?分かってくれているよね?ね?」


既に立場は逆転、勝敗は決していた。
まどかの不安気な訴えにクロはニタニタと笑うばかりである。


そんな様子を見て、さやかは案の定の光景を見たと言わんばかりにヤレヤレとかぶりを振った。
そして、マミは楽しそうに笑うのである。
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/14(金) 22:29:25.63 ID:H7T1TJ1DO
マミ「さぁ!皆揃ったところだし、パーティーの準備を再開しましょう!」


パチンと両手を胸の前に合わせてマミは宣言する。
その音、その弾むような声は、その場にいた全員の目を引くに十分であった。
まどかも、マミのその姿を見て思わず、その笑みをお裾分けされてしまうくらいだ。


それと、同時にクロが何故、マミをこんなに早い時間に連れて来てしまったのか、その理由も分かった。
ほんのちょっとだけ、視線だけをクロに向けると、気付いたのか睨まれてしまう。


まどか「ふふっ」


クロ「あぁ?……んだよ」


まどか「ううん、やっぱり優しいんだなって」


クロ「……バカ、言ってろ」


きっと彼女の待ちきれなそうな姿に彼なり少しでも答えようとしたのだろう。
そのあまりに無垢なワガママに抗うことは彼はしなかったのだ。


勿論、彼がそれを認める事もないだろうし、真実が彼の口から述べられる事もなく、これはほとんど想像の範疇を超えてはいない。
まぁ、見当外れとも思えないが。
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/16(日) 18:05:15.03 ID:fE8tbeeDO
クロ「で、なにから始めんだよ?」


苦虫というものがどういうものはかは分からないが、もしかしたら今それはクロの口の中にいるのかもしれない。
そう思ってしまえる程に、彼は渋い顔をしている。


それでも、とっとと会話を進めていく辺りに彼の頑固さが垣間見える気がするまどかである。


さやか「そんじゃ、私とマミさんはこっちのリングを作っておくからさ。まどか達は紙に何か書いておいてよ」


まどか「紙に?」


さやか「そそ、派手にマミさんの帰還を祝う言葉をデデーンとさ!」


こういうアイディアを出し合う場になると、大抵は案を出しては引っ込め、出しては引っ込めというるつぼにはまってしまうパターンがほとんどだが、さやかのようにはっきりと決定ができる人物がいると物事は楽に進む。


さやかの号令を合図に各々が、それぞれの作業に取り掛かっていった。
マミは、とても楽しそうな顔をしながら最初していたリング作りを再開し、さやかも彼女の隣に座って折り紙に手をつけはじめた。
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/17(月) 16:09:42.09 ID:Yd4hu9yDO
まどか「祝いの言葉かぁ……」


他の面子が作業に取り掛かっていくのを尻目に、まずは、まどかは考えこむ。
何故だろう。
ただ安直な言葉を選び、ただ当たり障りのない文章を作るのは平凡人間たる自分には最も適しているはずなのに、いざこうしてやるとなると悩んでしまう。


まどか(なんかこう……『マミさん退院おめでとう!』みたいなのじゃ寂しいような……、でもかといって何が浮かぶ訳でもないし)


自らの貧相なボキャブラリーにアクセスしたところで、まったくもっていい言葉は浮かばない。
もういっそ『おめでとう』や『祝!退院』のようなフレーズで十分、どころか妥当なのだが、それで折れる事はまどかのプライドが許さなかった。


まどか「ねぇ、クロちゃんはどうすればいいと思う?」


単純にアドバイスが欲しかった。
何かこう、平凡というフィルターに阻まれた思考能力を突破するためのアドバイスが。
さっきからずって黙っているのだから、きっとクロだって何か考えてくれているはず、そう考えての事だったが。


クロ「あ?」


テーブルの上にヤンキー座りしながら、マンガを読んでいたクロが本の上から顔を出した。
割りと、不真面目な態度で挑んでいるらしい。
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 18:32:32.49 ID:Yd4hu9yDO
まどか「だから何やってんの!」


たまりかねて、まどかは自分でも珍しいくらいに怒った。
なんだろう、クロの場合、非常に怒りやすい気がする。
まぁ、こういう時くらいは協調性を発揮して欲しいと本気で思ってはいる。


クロ「いや、だってまだ空島終わんねーんだぞ!長すぎんだよ!」


まどか「まだ空島!?そこからが無駄に長いよ!……じゃなくて、真面目に考えてよ!」


クロ「るっせーな!適当に書いてりゃいーだろうが!」


今、何をすべきかは理解しているようだ。
しかし、そこまで、そういう言葉を重要視せずに、中身があればいいだろうという、男子特有のガサツさが見て取れる。


まどか「適当じゃダメだよ!折角の機会なんだからちゃんとした言葉を書きたいの!」


まどかはまどかで、女子としてクロに立ちふさがる。


まどか「クロちゃんだってマミさんが退院して嬉しいんでしょ!?だったら力を貸してくれたっていいじゃない!」


クロ「はぁ?別に嬉しかねーよ」


マミ「え?」


売り言葉に買い言葉で、まどかと言い合うが、途中、マミから不穏な言葉が聞こえてきた。
明らかに空気がよどんでいく。


クロ「……それとこれとは関係ねーだろうが!!」


928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 18:58:06.68 ID:Yd4hu9yDO
慌てたように声を荒げて言葉そのものは濁すクロだが、何故か、まどかは勝ち誇ったような顔をしている。
まるで「貴様の正体見破ったぞ!」と言いたげだ。


まどか「ほら、やっぱり嬉しいんじゃない。早く一緒に考えようよ」


やはりそういう論調できやがるかと、クロは奥歯を噛みこむ。
できる事なら暴れ回って有耶無耶にしてしまいたいところだが、それだと尚更要らぬ誤解を与えかねない。
ならば、とクロは切り口を変えた。


クロ「断る。それにテメーの薄っぺらいボキャブラリーじゃ日が暮れっちまうぜ」


まどかの顔がまたムッとなる。
それを待ちわびたようにクロはニタリと笑って言葉を続けた。


クロ「ボキャブラリーの薄さが胸にまで表れてるよーなチンチクリンが、いくら頭捻っても無駄なんだよ!」


まどか「う、薄いとかじゃないもん!スレンダーなだけだもん!」


顔を真っ赤にしながら、まどかはクロに食ってかかった。
この時期の少女は、百万人の教育者に聞いても皆揃って認める程の多感な時期である。
その多感な時期の敏感な少女の心に事もあろうに土足で踏み入るクロに、まどかは己のアイデンティティーのために戦う。
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/17(月) 20:50:26.87 ID:Yd4hu9yDO
クロ「ハァ?全国のスレンダーに謝れ。無いくせによ」


まどか「あるもん!見たことないからそう言えるんだよ!」


まどかがムキになればなる程、クロもまたエンジンがかかっていく。
もうこうなった時点で、まどかはクロの思うつぼにはまっているのだが、当のクロ本人が面白がってヒートアップしているため止まる気配がない。


クロ「見たくねーよ。そもそも見たところで胸に気付けないかもしれーな!小学生体型中学生!」


まどか「……うぅ」


クロのマシンガンの如き悪口にまどかが俯いた。
まるで小学生の子供のような暴言だが、クロは『絶対に相手を怒らせられる』言葉を計算して選んでいる。
つまり、口喧嘩の年季の入れようが違う。
中学生に負けるはずがないのだ。


勝ち誇ったような顔でテーブルの上で仁王立ちするクロだが、まどかが俯いたまま動かない。
しかも、よく見れば肩がプルプルと震えているのが分かる。
心に、軽い動揺が走る。
やりすぎたか、まさか泣かしたのかと思い近付いていく。


そっと顔を覗きこもうとした時だった。


930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 21:18:05.73 ID:Yd4hu9yDO
クロ「むぎゅ!?」


それは突然の出来事だった。
いつものクロならばそんな唐突な事態にも対応できたかもしれない。
だがしかし、『それ』はあまりに不意討ちで、騙し討ちに近かった。


まどかは、クロを抱き寄せ、自らの胸元に思いっきり押しつけたのだ。


まどか「ほら!あるでしょ!?ないはずがないよ!ほらほら!」


端見ればそんなバカな、他にもやりようはいくらでもあるだろうと突っ込みが入りかねない。
実際には、本当にその通りなのだが、今のまどかには耳には入らないだろう。
怒りか、はたまた羞恥か、顔を真っ赤にして目を回しながら、それでも彼女はクロを離そうとしない。


クロ「この、離せ!」


顔を上に向けて辛うじて喋れるようにする。
だが、その必死の言葉も今のまどかには届かないようだ。


クロ(……よし、やるか)


打つ手なし、と即決したクロが拳を固めた。


その時だった。


「こほん」


クロ・まどか「!?」
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/17(月) 22:38:28.50 ID:Yd4hu9yDO
それは、ただ一度の咳払いだった。
なんの変哲もない、一人の少女から漏れたもの。
だが、確かにクロとまどかはその咳払いに凍り付いた。
一気に、冷気と、もはや殺気と呼んで差し支えないほどの重圧が伝わってくる。


二人揃って、そのプレッシャーの出どころに顔を向けると


マミ「……」


そこには、これでもかと言うほどのジト目を向けているマミがいた。
まだ作業は終わっていないのか、その手には作りかけのリングが握られていた。
というより、握り締められていた。


さやか「……」


そんな彼女の隣で、さやかはずっと俯いている。
色々堪えかねていたのだろう。
彼女がずっと静かだった理由がようやく分かった。


マミ「……いい加減になさい」


一言、ポソリと呟かれたそね言葉に込められたメッセージ性は半端ないものであり、その後の作業で、無駄話をする人間は誰一人としていなかった。


20分という驚異的なスピードでパーティの飾り付けは終了した。
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 22:40:23.56 ID:Yd4hu9yDO
今日の投稿はここまでにします。


今まで、たいしたメッセージを残さず申し訳ありませんでした!


明日は、夕方からの投稿になります!
読んでいただきありがとう!
お疲れ様です!


933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 00:24:44.13 ID:OxL/P3G/0
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 00:24:44.53 ID:OxL/P3G/0
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/18(火) 15:20:00.91 ID:PNBWsDLDO
マミ「これで、準備万端ね!」


マミの満足そうな声が作業の完全な終了の合図として響き渡った。
鹿目家のリビングはいつもの当たり障りのない姿から一変していた。


壁や天井には、折り紙で作ったリングのテープを綺麗なアーチを描きながら、部屋をぐるりと囲むように張り付けられており、悪く言えば単調な色調をしていたその部屋を見事に彩っていた。
また、色彩やテープの量も装飾過多になっておらず、見ていて居心地の悪さは感じない。


マミ「楽しかったわぁ。もう、これだけで満足しちゃいそう」


そして、マミは彼女自身の言葉が示す通り、とても楽しそうな顔をしていた。
中学生になってから、彼女は『皆で何かをする』と言うイベントから遠ざかってきた。
それは、彼女を取り巻く環境における問題、そして彼女自身が持つ問題の両方が招いてきた事だ。


しかし、今日、彼女は久しぶりに、本当に久しぶりに誰かと何かを完成させた。
魔女を倒すだとか、誰かを守るでもなく、本当に楽しい事、ただそれだけのために行動できたのだ。


それは、彼女にとって本当に価値のある事だった。
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 17:20:23.15 ID:PNBWsDLDO
マミ「本当、ありがとう。みんなにも手伝わせちゃって……」


さやか「あ、もう喋っていいんですか?……もう、何変な事言ってるんですかマミさん。普通こういうのはマミはする必要は無かったんですから」


マミ「そういうものかしら?ふふ、でも、本当にありがとう」


いえいえ、とさやかは照れくささで赤くなった顔をを隠すように、指先で頬を軽く掻いた。
さやかも、途中で起きた声を上げることすらできなかったトラブルがあったが、このマミの顔を見ればそれもどうでもよくなるものである。


マミ「まどかさんもクロもありがとう」


まどか「あ、いえ。そんな事ないです。本当」


クロ「あぁ」


当初の作業で最も大きな問題を抱えていたコンビもようやく仕事を終わらせたようだ。
まどかはマミから飛ばされた重圧のショックから未だ抜け切れていないのか軽く暗い顔をしている。
元凶とも呼べるクロは、何食わぬ顔でまどかの隣に座っているが。

937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/18(火) 19:03:25.04 ID:PNBWsDLDO
マミ「……それにしても」


マミは微笑みながらリビングの壁に貼ってある長い用紙を見上げる。
そう、それこそがまどかとクロが喧々諤々になり───半分以上はじゃれあい───ながら書き上げた横断幕だ。


『巴マミ嬢の退院を祝って』


マミ「退院祝いと言うよりヤクザの出所祝いみたいだけど、気持ちとしては本当に嬉しいから不思議だわ」


クロ「しょーがねーだろ。アイデアとしてもボケとしても、これが限界なんだよ」


まどかは俯きながら、彼女らしからぬ暗い半笑いを見せている。
別に、ふざけている訳ではない。
反省の限界を超えてしまっただけだ。


マミ「ふーん……」


と、ここでマミはクロの顔をジッと見つめてきた。
まさかさっきの怒りがまだ納まっていなかったのかと身構える。


それゃあ、確かにおふざけは過ぎていた。
その自覚くらいはクロにもある。
怒るのなら勝手にすればいいとも思うが、もういいじゃないかとゲンナリもする。


938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 19:40:46.22 ID:PNBWsDLDO
そんなクロを全く意に返さず、テクテクとマミはクロの目の前まで近づいてきた。
怪訝な顔付きでマミをねめ付けてみるがその表情は『無』そのものであり、感情は読み取れない。



クロ「……どーしたよ?」


不機嫌そうな声でマミに尋ねる。
普通の人間が聞けば少し怖気づく位の威圧感が、その声色にはあったが彼女は気にする様子はない。


────そして


クロ「んなっ!?」


突然、マミはクロの両脇の下に両手を突っ込んで抱き上げた。
まどかもさやかも、その急な行動に驚き、目を丸くして見守ってる。


マミ「えい!」


そして、とうとう、気合いを入れるような掛け声を発したかと思うと、マミはクロを思いっきり胸元抱き寄せようとした。


クロ「えい」


が、クロが無造作に突き出した右足がマミの顔を当たった。
それは、さながらつっかい棒のように、それ以上のマミとクロの接近を防ぐ。


マミ「う〜」


クロ「なんのつもりだっつーんだよ」


女の子の顔を足蹴にするという、他人から見ればとんでもない行為を、何でもないように、いっそ不機嫌そうにクロは行っていた。
しかし、マミもその行為自体には何も感じていないのか、クロの足の裏にあるその顔はクロ以上に不機嫌である。
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 20:25:11.89 ID:PNBWsDLDO
マミ「……なんで?」


クロ「あぁ?」


マミ「まどかさんには抱っこさせてあげてたのに、どうして私は駄目なの?」


クロ「基本的には誰だろうとオイラはノーサンキューだぜ」


マミ「そんなの不公平じゃない!」


膨れっ面で突っかかっていくマミに、鬱陶しそうにあしらうクロ。
そんな様子を見ながら、さやかはため息をついた。


さやか「……マミさんも難儀な事になってんね。何をどうすればああなるのさ」


あの態度や、今までの事を思い出せばマミがあの黒猫にたいしてどのような感情を抱いているのかは火を見るより明らかだ。


本当に『その』感情なのかは流石に断言はできない。だが、間違いなく単なる『信頼』や『親愛』では片付かないだろう。
しかし、よりにもよって、人に非ずとはどういう事か、更によって、あんなガサツな野郎とはどういう事なのだろうか。


もうちょっと、マシな奴は世界中にいるはずなのだ、例えば……その、自分の好いているとある男子も中々のものだと思う。


さやか(まぁ、例えマミさんでも渡さないけど、なんつって言ってみちゃったりしてさ!)

940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/18(火) 20:52:10.87 ID:PNBWsDLDO
キャー!キャー!と自分で考えた事に一人で頭を沸騰させているさやかだったが、流石に落ち着きを取り戻さないと頭がわいているみたいなので自重した。


まどか「難儀な事ではないんじゃないかな」


ふと、まどかがそう呟いた。
盛り上がっていたさやかには、それが先ほどの自分の言葉に対する答えなのだと気付くのに少し時間がかかった。


まどか「マミさんにとって、クロちゃんは初めて会った頼っても大丈夫な男の子なんだよ」


さやか「頼っても……大丈夫?」


まどかは思う。
自分達が出会う前、マミは一体どんな生活をしていたのだろう。
出会ったその瞬間から魔女との戦いの中に、その身を任せていた彼女の日々は、やはり孤独だったのではないかと。


それは、自分やさやかだけの出会いでは決して彼女の心を埋める事はできないものだったのだろうか。
今になってはもう分からない。
彼女の望みを期せずして叶えてしまったクロの存在によって。


まどか「たぶん、クロちゃんが人間でも猫でも関係ないくらい、マミさんは嬉しいんだよ」


941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/18(火) 22:33:46.35 ID:PNBWsDLDO
さやか「……嬉しい、か」


思うところがあるのか、さやかは黙りこくってマミの顔を見つめている。
しかし、彼女がそれ以上口を開く事はなかった。
まどかもまた、深く詮索するような事はしない。


きっとこれは、自分達でおいそれと簡単に答えを出していい事ではないのだと思う。
大切な、大切な友達の事なのだから、しっかりと悩んで、想ってあげるべきなのだから。


「ただいま。おや?」


さやか「あれ?」


マミ「あら?」


クロ「おう」


各々が各々の考えにふけっていた時だった。
突然の来訪者に皆が一斉に顔を上げた。
その殆どが驚きに満ちた視線を浴びている本人は、いつものような柔らかい笑みを浮かべている。


まどか「お帰りなさい。パパ」


その笑みに答えるように、まどかもまた笑って彼を出迎えた。
そこは、流石は父娘といったところである。


さやか「あ、あのお邪魔してます!」


ニコニコと見つめ合う仲良し親子の間にどんなタイミングで割り込んでいいものかと、悩んでいたさやかだったが、「ままよ」とばかりに声を張り上げた。
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 23:10:15.64 ID:PNBWsDLDO
知久「こんにちわ。君が美樹さやかさんだね?いつも、まどかがお世話になっています」


さやか「と、とととんでもないです!こちらこそいつもまどかにはお世話してますので……ってあれ?」


両手にビニール袋をぶら下げた知久に深々と頭を下げられたさやかは動揺した。
自分の友達の父親というだけで妙な緊張感があるのに、そこまで礼儀正しくされたら参ってしまう。
そのせいか、日本語がこんがらがっている。


知久「ハハハ、ありがとう。まどかのお友達が二人も来てくれるなんて僕も嬉しいよ」


しかし、それすらも彼は笑って受け入れてしまった。成る程、人となりは完全には分からないが、敢えて言うなれば『まどかLV100』と言ったところだろうか。
まどかの全てを平均値以上に繰り上げたらこうなるに違いない。


マミ「お帰りなさい。お疲れ様です。知久さん」


クロ「遅かったじゃねーか。もうこっちは終わっちまったぞ」


今度はマミ達が知久を迎え入れる言葉をかけた。
何でもないように態度でいるがクロは未だにマミから離してもらえておらず、マミはクロから足を退かしてもらえていない。
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/18(火) 23:28:59.29 ID:PNBWsDLDO
知久「すまないね。何から何までやらしてしまって」


だが、その一見しただけで奇妙と分かる光景すら知久はわざわざ突っ込まず、そればかりか申し訳なさそうな顔をしている。


マミ「いえ、私がしたい事をしただけで、むしろワガママを言ってしまって申し訳ないくらいです」


そのままの姿勢でマミは礼儀正しく挨拶をする。
中々にシュールな光景だ。


まどか「ところで、パパは何しに行ってきたの?お買い物は分かるけど……今晩の食材?」


知久「うーん、半分正解かな。実は今晩の料理に関しては殆ど準備はできていてね。後は仕上げをするだけでいいんだ」


己が父ながら抜け目ない、とまどかは舌を巻く。
自分にもその要領の良さが欲しいものだが、いつかなんとかなる気もする。
それは、ともかく、半分とはどういう事だろう。


マミ「それは、私の分なの」


まどか「マミさんの?」


まさか、マミだけが個別で食べる食料ではあるまい。
そんな失礼な考えがよぎったまどかを知ってか知らずかマミは続けた。


マミ「前に、私が手料理を作って皆で食べようって約束したでしょ?それを……その、クロが覚えていてくれて、どうしてもって言うから」


クロ「んなこた言ってねーだろうが。オイラはやれるもんならやってみろっていったんだよ」


真っ赤に染まるマミの頬を、さっきよりも強めにグリグリと足を押しつけるクロだが、あまり効果はないようで、殊更、彼の『照れ隠し』を際立たせてしまっている。


さやか「へぇ、マミさんの手料理かぁ。楽しみだなぁ」


マミ「任せてちょうだい」


クロ「ちっ、勝手にしろい」


諦めたのかクロはマミから足を退けて、プイと顔をそらしてしまった。
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 23:31:08.78 ID:PNBWsDLDO
今日はここまでにします。


明日もまた、今日のようなテンポで投稿します。
明日、明後日には、泥棒ちゃんを登場させたいです。


今日読んでいただいた方、本当にありがとうございます。
お疲れ様でした。


また、明日!
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 00:02:10.25 ID:Wodp4Zyh0
乙カレー

>さやか(まぁ、例えマミさんでも渡さないけど、なんつって言ってみちゃったりしてさ!)

なんかヤバイ、フラグが立った気がするけど気のせいだよね!うん!!
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 14:22:49.04 ID:5s7jWz1DO
クロ「OK、とっと作ってこい」


マミ「うんっ」


ちょっと待っててねと言ってクロを床に降ろした後、彼女はキッチンに向かって走って行く。


マミ「あ」


その途中で思い出したのか追い越した知久に駆け寄る。
そんな少女に微笑みながら、知久は手に持ったビニール袋を渡した。
慌てていたのか、楽しみで気が急いていたのかは分からないが、女はどうしてあんなに料理をしたがるのだろう。


そんな風にクロは考えるが、よくよく思い出してみればここの家主である詢子はまったく家事をしていなかった。
できないのか、やらないのか少し気になる。


まどか「あれ、どうしてマミさんはパパの事を名前で呼んでいるのかな?」


マミの姿が見えなくなってから、ふと思い出したようにまどかは抱いていた疑問を口にした。
あまりにも自然に会話が為されていたせいであまり疑問を抱いていなかったことだが、やはり気になってしまう。


さやか「あぁ、そう言えば」


知久「それはね、僕からお願いしたんだよ」


まどか「それは、まぁ分かるけど」


あのマミが、初対面の人間、しかも友人の父親をいきなり下の名前で呼ぶような非礼はしないだろう。
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 15:54:13.05 ID:5s7jWz1DO
知久「実は、詢子さんのためなんだ」


まどか「ママの?」


はて?自分の父を名前で呼ぶことがどうして、母のためになるのだろうか。
自分にはとんと見当がつかないし、見てみればさやかも答えが分かっていないようだ。


しかし、クロは一番最初にマミと家に来て事情は分かっているらしく。
あまり、興味は無さそうにしている。


知久「これから皆、詢子さんに会う事になるだろう?その時に僕の事を『おじさん』なんて呼んでいたら、きっとなし崩し的に詢子さんは……」


まどか「あ〜、なるほど」


確かに、父も母も、風貌や物腰にいたるまで、その全てが『若い』の一言である。
それは、若々しいという形容詞すらそぐわないほどのものだ。
しかし、母に関して、同じ『女』として言わせてもらえば、決して、それは偶々手に入れたものではない。
詳しくは、エチケットとして言えないが、日々のたゆまぬ努力あっての事である。


故に、そんな母に何かの手違いで『例の一言』を言ってしまえば、恐らくあの性格だ、間違いなく拗ねる。
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 16:57:20.33 ID:5s7jWz1DO
知久「そういう事だから。さやかちゃんも僕の事は名前で呼んでくれないかな?できれば詢子さんも」


さやか「は、はぁ……」


理解はできるが納得はいかない、そんな微妙な顔で頷いた。
それなりにやり辛さがあるのだろう。


しかし、そんなさやかを見て、知久は満足そうに微笑む。
これは単純に、彼の妻に対してだけの気遣いなのだろう。
それができれば、後の事は割と大雑把に考えているのかもしれない。


知久「じゃあ、僕はちょっとその辺に出かけてくるよ」


まどか「え、また?」


さっき帰って来たばかりだというのに、今日は珍しく慌ただしい。
それに、いつもの父と違うのは、それだけではない。


まどか「タッくんのお迎え?」


知久「ううん、今日は早いらしくて、詢子が行く事になってるんだ」


それじゃ行ってきます、と言って足早にリビングから出ていってしまった。
まどかは、戸惑いの中で、その背中に行ってらっしゃいと言うしかない。
珍しく、彼はこちらに顔を一度も向ける事なく玄関に向かってしまった。


さやか「うわー、そんなに話した事なかったけど、すんごく優しいじゃんか」


玄関の扉が、開いて閉まる音が聞こえてきた事を合図にして、さやかは口を開いた。
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 19:38:55.00 ID:5s7jWz1DO
出会ったその瞬間から振りまいていた笑顔や、今ここにいない人に対する気配り、よくある他人の親は良く見える現象とは違う。
本当に、心からいい人なのだと分かる。


さやか「なかなか羨ましいじゃないの、まどか。……まどか?」


まどか「え?どうかした」


どうかしたもこうしたもない。
今、話しかけていた事に気付かなかったのだろうか。
思わず怪訝な顔付きになってしまったが、それでもまどかは、ジッと知久が消えていったリビングの入り口を見つめていた。


まどか「なんだろう?パパ、ピリピリしてた」


呟き、同意も反対も求めていない。
彼女の中でしか成立していない声が漏れ聞こえてきた。
その顔は不安に染まっており、さながら、親に置いていかれてしまった幼児のような雰囲気を持っている。


さやか「まどか?」


まどか「あ……、ううん、なんでもない。気のせいかも」


なんでもない、そう言って顔を向けるまどかのその顔は、決して、なんでもないで納得できるような物ではなく。
いつものように、困ったような乾いた笑顔を浮かべていた。


950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 20:10:17.79 ID:5s7jWz1DO
さやか「……そっか」


それでも、納得しようとしている自分がいた。


もしかしたら、彼女の中で無視できない何かがあったのかもしれなくても


自分の知らない事で傷付いているのかもしれなくても


それでも、何もできない。


────何もしない。


そんな状態が正しいとは思えない。
でも、その一歩が出ないのだ。


怖い、まどかの、友達の胸に何があるのか、それが例え自分に関係なくても、知ってしまう事が怖い。
だから、踏み込めない。


そんな自分が堪らなく嫌で、こんな自分にも笑いかけてくるまどかの顔をまともに見れなくて顔をそらした。


さやか「……あ」


顔をそらした先には、そう言えばさっきから喋っていないクロの姿があった。
不思議な事に、彼もまた、なにやら思案するように顔をしかめながらリビングにある窓から外を見ている。


まどか「あれ?どうしたのクロちゃん」


さやかが聞けなかった事を、まどかが代弁するようにクロに尋ねた。
その声に、耳をピクリと動かしたクロは、いかにも煩わしいという態度を醸し出す。


クロ「いや、まぁ、気のせいでも、そうじゃなくてもいいんだけどよ。いよいよもって訳が分からん」


彼のその言葉の意味自体が分からず、少女達は首をひねることになった。
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 21:20:24.49 ID:5s7jWz1DO
────鹿目家・前


外に出てから、軽く振り返って家を眺めた。
この家に住むまで、彼女と出会ってから長くて、この家に住んでから、家族と過ごした日々も長かった。


これからも、きっと続いていくだろうか。
いや、続かなければならない。
自らの手で、掴み続けなければならないのだから。
この家に、降り掛かる悪意や不幸から必ず守る。


そのために、自分はいるのだから。


知久は顔を前に向けた。
正確に言えば、家の塀の前でヒョコヒョコと揺れている黒い影に。


知久「何をしているんですか?」


外から、なんとかして家の中を覗こうとしていた影は動きを止めた。
用心と、細心の注意を払いながら知久は塀の向こう、つまり影がいる方に歩いていった。


そして、その影がはっきりと見える場所まで来た時、知久は面食らった。


「あぁ、いやぁ、申し訳ない。驚かせてしまいましたか!ハッハッハッハ!!」


その姿を見られた途端、そこにいた影───男は申し訳なさそうにした次の瞬間には大声で笑い始めたのだ。
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 21:36:23.26 ID:5s7jWz1DO
まず、知久は、その男の体躯に圧倒された。
成人男性で、平均より少し上ほどの身長である自分が、見上げるほどの大男で、それでいて、ふくよかに出っ張った腹。
まるで、アニメに出てくる熊のようだ。


その顔に黒々と生えているヒゲもその印象を濃くしている。
しかし、その男が最も、他の追随を許さぬくらいにおかしなところはまだあった。


それは


知久「……猫耳」


その男は、自分の身体にピッタリと、それはもうピッタリとサイズが合っている黒猫の着ぐるみに身を包んでいたのだ。


思考が、止まる。
脳が、理解を拒否している。
どうすればいいのか、どうしたら、どうなるのか、さっぱり分からない。


───取り敢えず


知久「……すみません、警察ですか?」


猫男「あー!待って下さい!怪しい者ですが、危うい者ではないんです!!」


携帯を片手に握った知久に対し、大慌てで男が声をかけた。
知久は、その男をジッと見ながら、携帯をパチリと閉じた。


知久「かけてませんよ。そもそも、使えなかった。圏外になっているので」


見透かすような眼を、知久は緩めない。
その顔に、男はため息をついた。


猫男「ここのお巡りさんとは顔馴染みではないんです。すまないが、この辺一体に電波妨害を張らしてもらいました」
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 21:51:54.68 ID:5s7jWz1DO
知久「ここでは顔馴染みでないというなら、どこかでは顔馴染みになっているという事ですか?お巡りさんと」


猫男「えぇ、まぁ。しかし、そんなに睨まないでほしい。足が震えてしまいそうだ」


知久の問いに、男は妙に照れ臭そうな顔で頭を掻きながら肯定する。
そんな男の様子を訝しみながら、そして彼の言葉で、自分がさっきから彼を睨みつけていた事に初めて気が付いた。


確かに、この男が家族に害を為す者ならば、正直自分が何をしていたのか分からない。
そこまで激しい感情を顔に出していたのか。


そんな知久に、男は微笑みかけた。


猫男「分かります。子供がいれば親はそんな顔を私のような男に見せなければならない。……まぁ、実は私にも息子がいるんですけどね」


またも、大声で笑う。
しかし、今度はどこか寂しそうで、それは苦笑いにも似ていた。
その顔に、思わず知久は警戒を緩める。


分かってしまったのだ。
彼が、自分と同じ人間だと。


知久「……いつもそんな格好なのですか?息子さんはさぞお怒りでしょう」


猫男「ハッハッハ!いつもだつご……いや、会いに行くたびに叱られています。ほとんど会えないですが」
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 22:13:10.09 ID:5s7jWz1DO
快活に話す男、ならば、少し踏み込んでも大丈夫だろうと知久は判断する。


知久「あなたは、ここで何をしているのですか?」


もう一度尋ねた。


猫男「いえ、彼の様子を身に来たのですが、良かった。相も変わらず元気だ」


答えは返ってきた。
予想もしない答えだった。


知久「彼?……じゃあクロ君の知り合いなのかい?どおりで外を気にしていたはずだ」


猫男「おぉ、やはりあの金髪のお嬢さんに抱き上げられていた時にこちらを見ていたのはそういう事でしたか!」


なるほど、なるほどと一人ウンウンと納得している男の前で、知久は考えこむ。
クロは、彼自身が述べたように異世界の住民である。
そんな彼の知り合い、つまりクロにとって元の世界から来た人物の登場。


知久「あなたは、あなたの目的は、なんですか」


何故、何故こんなにも緊張しているのだろう。
分からない、何も分からない。
声が震えている。


猫男「この世界における私の目的は、あります。だが、まだ然るべき時ではありません。───しかし、必ず、その時はやってきます」


知久は、もう喋らない。
その男の言葉の全て、一語一句を聞き漏らさないように神経を集中させる。


猫男「あなたにも、あるはずですよ。この世界、この時間における役目が、果たすべき眠っている役割がね」


今度は逆に、男が知久に向かって歩いてくる。
動けない。
言葉が、知久の足に絡み付いていた。


そして、目の前まで男が来た時、男の唇が小さく動いた。


猫男「……奥さんやお子さんから目を離さない方がいい。何人か片付けたが、この家は見張られている」


知久「なッ!?」


猫男は、そのまま知久を通り過ぎていき、ノッソノッソと走り去ってしまった。
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 22:30:04.56 ID:5s7jWz1DO
知久「僕の、役割?」


理解が、不明で不能で不可能だった。
もう、ここにはいない男の言葉、しかし、確かに浮浪者の戯れ言で片付けきれない何かがあった。


では、一体、なんだ?


あの男の役目とは、自分の役割、眠っている?


いや、そもそも、この街で何が起きているのか。


《奥さんやお子さんから目を離さない方がいい》


知久「詢子さんッ、タツヤッ!!」


胸に悪寒が走った。
その思いのままに、知久は駆け出す。
男の話なんて、どうでもいい。
今の自らの役割は、守ること以外、何物でもないはずだと信じていた。







『×××!見てみろよ、やっぱりオイラの方がデカいだろ』


『うるせーな、このガキ!オレがお前よりデケーに決まってんだろ!!』



────*******、***********─────


『えー!?なんでさもっとよく見ろよ!』


『そうだぜ!しっかりと確認しろよ』



『『×××!』』



一話・完



956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 22:32:52.83 ID:5s7jWz1DO
今日はここまでになります。
遅筆でもうしわけなく思いますが、お付き合い下さい。


あとどう考えても、2スレ目に突入しますね。
すみません。


では、明日の夕方投稿します。
また会いましょう。


あと、猫男さんを覚えている方はいらっしゃるのでしょうか。
キャラ紹介とかした方がいいのかな。
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 22:38:55.68 ID:owu+tYODO
だれかと思ったらコタローの親父か
これまた意外なのが出てきた
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 00:35:22.60 ID:xgR4b4SLo
待て!次スレ!
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 08:06:03.79 ID:G3pCeh2M0
コタローの父ちゃんとはまさかだった
無限エネルギー装置とかも出てくるのだろうか
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 08:59:57.07 ID:zTBulqsg0
無限エネルギー装置は出て来てるよ
まだ使っていないだけで
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 18:37:10.99 ID:bGnc4CvDO
────鹿目家・リビング


クロ「………」


マミ『まどかさん、これ掻き混ぜて泡立てておいてくれないかしら』


まどか『はいっ、任せて下さい!』


さやか『マミさん、フルーツここに置いて置きますね』


クロ「…………くぁ」


第二話『いちいち言葉にすんな』


思わず大きな欠伸が口から漏れた。
知久が、外に出てから既に30分が経過しているが、まだ彼が家に帰ってくる様子はない。


彼が何故外に出たのか。
それは勿論、『あれ』を見たからだろう。
知久もやたらと気が立っていたし間違いない。
本当だったら、自分にも関係のある事なのだが、よりにもよってあんな格好でいるなんて……、あれは関わりたくない。


そのうち、縁があれば出会う事もあるだろう。


まどか『マミさん、できましたよ』


マミ『ありがとう、そこに置いておいてもらえるかしら。後、さやかさん。今イチゴを食べたら、後でお預けしちゃうわよ?』


さやか『ぎくぅッ!やだなぁ!もう、そんな事しないですよ〜。アハハハ』


クロ「……女ってのはどうして黙って料理ができねーんだよ」


どうせ大した事は考えてもないし、してもいないのだが、キッチンから聞こえてくる声にそう思わずにはいられない。
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 19:07:42.28 ID:76WS6Ae50
魔法少女に成り立てのさやかはともかく
ベテランのマミさんは、外の不信人物や見張りの気配に気付いてもいいと思うが?
初戦敗退率7割、2年でベテランの魔法少女界で、長年生き残ってきたんだし
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 19:08:29.57 ID:bGnc4CvDO
結局、あの後まどかとさやかはマミを手伝いたいと言ってキッチンの方に入っていった。
よく分からないが、きっと彼女達にとっては楽しいのだろう。
女三人よればかしましいという事か。
まったく声が絶える気配はない。


クロ「……料理か」


果たしてマミの、いや、こうなったら彼女達の料理の腕前とは如何なるものであろうか。
この舌は決して肥えている事はないが、それでも美味い料理と不味い料理が分からない訳ではない。


一級のシェフ並みの料理から、食ったその瞬間に内部爆発を起こす程の危険物まで、それはもうピンキリ味わい尽くしたのだ。
しかし最近では、舌がイカれてきたせいか、不味い料理も食えるようになってしまった。


そこは、良い事なのか悪い事なのか微妙なとこだ。


『うーッ』


と、そこにあの少女達とは違う喉から振り絞るような声が割り込んできた。
彼女達よりずっと幼い少女ような声。
クロは、寝転がりながら首をそっちに向けた。


クロ「よぉ、やっと起きたのか、かぐら」


かぐら『あー、お兄ちゃんおはよー』


今さっき起きたのだろう。
まだ目は完全には開ききっておらず、歩くたびに伸びをして、先ほどのような声を出している。
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 20:19:09.55 ID:bGnc4CvDO
かぐら『お久しぶりです〜。皆さん、ボクを覚えてますか〜』


クロ「やめろ。それなりに事情はあったんだ」


寝呆けているせいか、謎の電波を彼女は受信してしまったようだ。
クロはポリポリと耳を掻きながら適当にあしらう。

クロ「ほむらはどこにいんだ?」


かぐら『ふわぁー……ん?あぁ、えーとね、バックの中でまだ寝てるよ』


だらしなく欠伸をしながらかぐらは受け答えをしている。
いや、しかし、猫的に考えてみればこの姿はある種スタンダードと言えるか。
猫の、しかも子供の行動にいちいちひっかかった所でなんになる訳でもないが、ただ漠然と考える。


かぐら『……よいしょっと』


クロ「んあ?」


横になったクロの身体の上に、急にかぐらがのしかかってきた。
何かの悪ふざけかと思ったが、彼女はそこに落ち着いてしまっている。
どうやら長居するつもりらしい。


クロ「……おい」


かぐら『えへへー』


965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 20:47:16.66 ID:bGnc4CvDO
顔をしかめるが必要以上に嫌がりはしない。
そもそも、子供はこんなもんだという認識がクロにある事に加えて、もう大概に慣れた事も理由である。


かぐら『お兄ちゃん身体かたーい』


クロ「まぁ、サイボーグだからな」


かぐら『サイボーグ?』


クロ「生身じゃねーって事だ」


かぐらが身体の上で首を捻っている。
これくらいの年齢の子供にはよく分からないのだろう。
だから、彼女は自分を恐れないのだろう。


この身体になってからの自分には何も変わるところなどない。


性格は変わらない、食事だってとれる、眠りにだってつける。
以前とはまるで変わらぬ生活を送っている。


だが、何を言ったところで、厳然たる事実として、自分はやはり変化してしまった。


匂いも、身体中の至るところも、以前の猫とはまるで違う。


正直に言えば、やはりあるのだ。
その辺の猫に避けられたり、これみよがしに警戒されたり。
形は猫でも、明らかなる異質である自分は恐れの対象になりやすい。


どんなに自分が気にしなくても、機械の身体はそういうものだ。


かぐら『……よく分かんないや』


そんなクロを知ってか知らずかゴロリとかぐらは、身体の上に寝そべっている。
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 21:47:03.74 ID:bGnc4CvDO
クロ「ガキは単純だな」


かぐら『ふぇ?』


こういう事は、もう考える事すら馬鹿らしいのだ。
大体仮面ライダーじゃないのだから、改造人間の悲哀なんて持ってたってどうにもならない。


キョトンとしているかぐらの顔に、そんな確信めいた考えが浮かんだ。


マミ『できたわ!』


まどか『やったー!』


さやか『うわ、これ美味しそう!』


キッチンから声が聞こえてきた。
どうやら完成したらしい。
その後も、なにやらあちらではしゃいでいるようだ。


かぐら『あれ、まどかちゃん達何やってんの?』


クロ「料理だとよ」


かぐら『ふーん。お兄ちゃんは手伝わないの?』


クロ「男は台所に立たないもんだ」


ほえー、と感心したようにしているかぐらではあるが、クロ自身は言ってしまった後に、知久や知り合いの顔が浮かんでしまって彼らをどの辺のカテゴリに加えるべきか考えた。


主夫、とでも言うべきだろうか。


クロ「にしても、遅すぎるか」


また、ここにきて思考が一周してしまった。
未だ、知久は帰ってこない。
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 23:23:52.18 ID:8cw/WPb40
魔法少女達も、もう人間じゃねえんだぜ・・・
彼女達の本体がSGだと知ったらクロはどう思うのか
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/21(金) 16:30:36.55 ID:hZBsj6hDO
─────見滝原・住宅街


息が上がる。
道を足で思い切り蹴り上げるたびに、口に、鼻に飛び込んでくる風のせいで、呼吸も上手くいかない。
本来であれば、自転車で移動した方が早いはずなのに、そんな事すら考える余裕がなかった。


知久「はッ、はッ、はッ──はァッ」


あの男からの忠告を聞いたら、もうこうする事以外にないように思えてならなかった。
妻と子供から目を離すな、その言葉が真実なのかどうかを考える暇などない。
兎に角、今は無事を確認する事が先決だ。


つい先ほど、知り合いに連絡したところ、もう既に、詢子は会社を退社したらしい。
ならば、今、彼女はタツヤの保育園に向かっている事になる。


知久(大丈夫だ。…大丈夫。絶対、大丈夫だ)


「うわっ!?」


ドスンッと何かが身体に思い切りぶつかった感触があった。
慌てて気が付くと、目の前で赤毛の少女が尻餅をついている。


知久「ご、ごめんなさい!」


「あ、おいコラ!待てよ!!」


しかし、今は気にする事はできなかい。
申し訳ないという気持ちより先を急ぐ気持ちの方が先だった。
そのまま、少女を無視して走り去った。
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/21(金) 16:40:55.60 ID:hZBsj6hDO
「チッ、なんだってんだよ。一体」


男が消えていった先を睨みながら、少女は吐き捨てるように呟いた。
どうにも苛々しているようだが、その怒りをぶつける先はもう見当たらない。


ふと、彼女は地面を見下ろした。


「……あ」


小さく声を漏らした彼女の視線の先にあったものは、ポッキー、お菓子だった。
なんの変哲のない、ただの。
だが、彼女の雰囲気は明らかに一変した。


「くっそぉッ!アイツ、いつか殺してやるッ!!」


まるで親の仇を見つけたような激情を醸し出しながら、彼女は叫んだ。


─────そして


「あぁ?なんだ、あんたら、なんか用かい」


自らの背後に忍び寄る影に、振り向いた。


970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 11:00:52.17 ID:xGaoN6rDO



さっきの少女に怪我はなかったろうか。
思えば酷い事をしてしまったものである。


疲労、焦り、痛みに加え、後悔まで抱え込んで、それでも知久は止まれない。
もうすぐで、保育園に着く。


何が起きているのか、何が起きようとしているのか、彼にはまったく理解できない。
だが、それは行動を止める理由にはなり得ない。


あの男の言葉を信じるならば、走らなければならない。
守るために。


知久(早く、間に合わなくなる前にッ!)


守るため?


知久(僕が、僕がやらなければッ!)


────本当にそうか?


知久(もう二度と!……え、二度?)


『繰り返さないためだろう』


知久(なん、だ?今の……)


足が止まった。
あれだけ身体が酸素を求めていたというのに、今は息が止まっている。


知久(誰だ……、君は。いや、僕だ。これは───)


分からない、知らない、そんな何かがいる事に気付いた。
頭、とはまた違う。
もっと、もっと深い場所に、静かに佇むように。


知久(これは、一体)


舌の根が痺れる。
今、この瞬間、一言も喋れる気がしない。
意識すら遠くなりかけている。
恐怖とは違う、拒絶ともまた違う、自分でも理解しえない感情に飲み込まれかけた。


その時だった。


「───パパ!」
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 11:51:13.25 ID:xGaoN6rDO
鼓膜に飛び込んで来た言葉に、脳ミソを殴り付けられたような感覚を覚えた。
遠退いていた五感が戻ってくる。
身体中にあった痺れのようなものも徐々にに引っ込んでいった。


タツヤ「パパー、ろうしたの?」


詢子「あれ?今日は私の当番だってちゃんと話したよな」


詢子と彼女に抱き抱えられているタツヤを視界にいれた時


二人の声をしっかりと聞いた時


知久はようやく、まともな呼吸をする事ができた。


詢子「ど、どうした!?そんなに疲れて……、ま、まさか熱?風邪!?大丈夫?!知久さん!!」


だが、今までの疲れの分が急にぶり返したせいか、非常に荒い呼吸を繰り返してしまっている。
その様子を見て、詢子は慌てふためいていた。


知久「大丈夫……だよ。ちょっと走ってきちゃった、から」


息も絶え絶えに、なんとか口元に笑みを形作れたのは半分は根性と半分は奇跡だったかもしれない。
詢子やタツヤは、心配そうにこちらを見ているが、その顔ですらホッとできる自分がいた。


詢子「ど、どうしてそんなに急いできたんだ?」


知久「ふぅ……今日は、まどかのお友達のためにパーティーをする日だろ?詢子さん、テンション上がってバイクを乗り回してるんじゃないかって心配で」


詢子「そんなに子供じゃないやい!!それに、もうバイクは卒業したんだ!!」

知久「でもこの前、ベッドの下にバイクマガジンって雑誌が」


詢子「ぬかった!?ち、違う、私はもう風にはならないと決めたんだ!」


タツヤ「ヤンママ?」


詢子「タツヤ!?それどこで覚えたんだ!?」
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 13:30:59.81 ID:xGaoN6rDO
彼女は、一応誤魔化されてくれた。
あくまで『くれた』訳であって、納得まではしていないようだが、少なくとも今は問い詰めるつもりはないらしい。


知久は、素直に彼女の態度に安堵した。
男の言葉も、自らの行動も、根拠など存在しない。
何一つ理解できない事を話して、闇雲に不安にさせるくらいなら黙っていた方がいい。


知久「……ふふ」


ようやく余裕が出てきた。
目の前で、妻と我が子が楽しそうに話している。
緊張からの緩和で笑みがもれる。


今日は色々ありすぎだ。
あの男性にも、またいつか出会うような気がするし、あの少女にはいつか謝らなければならない。


そして、『あれ』も────


知久(いや、やめよう)


今日は、やめておこう。
まだまだ、これからやる事は山ほどあるのだから。
料理の仕上げや、食事の準備、その他色々。
でも、そんな事、文句などさらさらない。


知久「詢子さん、タツヤ」


詢子・タツヤ「「?」」


二人してキョトンとした顔を浮かべている。
たまにだが、うちには子供が三人いるような気がする時がある。
これを言えば、彼女は怒りそうだが。


知久「帰ろっか」


やっと、言えたような錯覚を覚えた言葉だった。
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/25(火) 21:50:02.66 ID:RTEXncTDO




まどか「えぇ、あの……。大分時間がかかりましたね。はい」


まどか「一応、世間的にはクリスマスですしね。なんと作者はほとんどトナカイの着ぐるみでピザ配りに終始したとか。なんでサンタじゃないんでしょうか?」


まどか「その甲斐あってか見事に更新できませんでしたけどこうしてなんと」


さやか「はい!マミさん退院おめでとうございます!!」


『おめでとー!!』


まどかの言葉を遮って、さやかが声を張り上げた。
それを合図にして、その場に明るい声が弾ける。
同時に、クラッカーが打ち鳴らされ、明るい破裂音が鳴り響く。


クラッカーを持っているのはまどか、さやか、知久、詢子の四人である。
詢子は膝にタツヤを乗せ、二人一緒にクラッカーを引いていた。
その音に、飛び出した色とりどりの紙吹雪きにタツヤは楽しそうにはしゃいだ。


しかし、その場にいる誰よりも満面の笑顔をたたえている人物がそこにいた。
テーブルの一番目立つ場所、所謂主賓席とも言える場所に立ち、先ほどの紙吹雪きや紙テープを顔や頭に張り付けながら照れくさそうにしている────巴マミだ。

974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/26(水) 22:24:31.01 ID:dtLO9uJL0
クリスマスの後始末に忙しいのかな?
この時期は慌ただしいからね、気長に待ってるよ
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/27(木) 23:51:14.52 ID:rchjR3+Eo
パパさんまた脱獄したんか
コタロー泣くぞ
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/28(金) 18:53:11.60 ID:KvUi8DZDO
マミ「みんな、ありがとう。本当に、すごく嬉しいわ……」


顔はとても嬉しそうなのだが、妙におずおずと喜びの言葉を発しているのは、きっと長らくなかったこのような日に対しての戸惑いもあるのだろう。
しかし、そんな少女を他の者達はまるで彼女の気持ちが乗り移ったかのような、同じ嬉しそうな顔で迎えるのだった。


知久「さぁ、ご飯もできてるからね。たんとお食べ」


マミ「あ、あの。知久さんも、詢子さんもこんな素敵な場を用意して頂いて、本当に感謝しています」


知久の言葉に、マミは改めて恐縮したようにお礼を言う。
今の彼女の胸にある思いは、それだけでも足りないくらいだったが、マミにはそれしかできない。


詢子「こらこら、折角のお祝い事だぞ?しかも君のだ。君がそんな顔してちゃ、周りはどうはしゃげばいいか分かんないぞ」


マミ「え?そ、そうなんですか?」


詢子「そ、だからさ。思いっきり元気みせてくれてもいいんだ。今日は、ここが君の家で、私たちが君の家族。そう思ってくれていいんだぞ?」


柔らかく、温かい、知久の言葉


無遠慮で、真っ直ぐな、詢子の言葉


それらは、ゆっくりと染み渡るようにマミの心に入り込んで満たしていく。
こんな気持ち久しぶりだった。
本当に、懐かしい、長らく感じなかった感情が蘇ってくる。
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/28(金) 19:19:12.42 ID:KvUi8DZDO
マミ(パパ…ママ…)


詢子「うん?どうした?」


マミ「あッ、いいえ!なんでもないです!すみません、もう食べちゃっていいですか」


まどか「そうそう、私ももうお腹ペコペコだよ」


知久「ごめんね。ちょっと遅くなって」


あれから、マミ達が料理を完成させてから少し時間が経ってから鹿目夫妻とタツヤは帰って来た。
何故か、疲れている知久が心配そうな詢子に見守られながら料理を開始し、完成させたのは当初のパーティー開始時刻の一時間後である。


無論、彼の調理スピードは凄まじいものがあり、常人であればその倍はかかるであろう事は間違いないのだが、それでも空腹には耐えられない。
机の上には見渡すばかりのご馳走。
香ばしい臭い、温かい湯気、食欲は増すばかりだ。


詢子「さっき知久さんが良いって言っただろ。見な。さやかちゃんはとっくに手をつけているよ」


さやか「むぐぅッ!?」


突然、話題を向けられたさやかは狼狽しながら顔を上げる。
なんとか否定、及び申し開きを述べたかったようだが、その口の中は既に一杯だ。
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/28(金) 21:42:06.72 ID:KvUi8DZDO
さやか「むぐ、むぐぐぐ!」


何かを伝えたいようだが、言いたい事は伝わらない。
分かるのは、さやかは割と脂っこいものでも平気でいけるという事だけだ。


マミ「あら、随分と手が早いのね。直ぐに食べないと私の分までなくなっちゃうわ」


さやか「むぐ〜(マミさ〜ん)」


笑顔、笑い声がもう一度弾ける。
からかわれている立場のさやかも、口の中にある物を咀嚼して飲み込んでから笑った。


それから、各々が食事の挨拶をして、目の前のご馳走を切り崩し始めた。
そんな様子を、少し離れた場所から、彼らは眺めていた。


かぐら『あうー、おいしそうだよー』


ほむら『あーあ、羨ましいな』


クロ「言うな」


楽しげな声が行き交う机を遠くから覗きこむようにして見つめているのは、いつもの三匹である。
普段こそ騒がしいか、又はせわしないかのどちらかの彼らであるが、今は珍しく軒並みテンションが低い状態である。


その理由は実に単純。


猫達の目の前に並べられたキャットフード、そして人間達が食べているご馳走の数々。
猫の目から見ても、どちらが美味しそうなのか、その目には明らかである。
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 21:22:47.81 ID:tQP13vN50
年末だから忙しいのかな?
更新待ってるよ
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/02(水) 20:10:52.13 ID:5HHGprlS0
クロちゃんって、めっちゃ懐かしい!!
面白すぎて今日だけで全部読んじゃいました!
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/02(水) 20:25:04.04 ID:wvhMdLjw0
>>980
sageしろガキ
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/02(水) 20:32:32.17 ID:5HHGprlS0
>>981
すんません、忘れてました。
でも、してないだけでそこまでいうことはないと思いますが?
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/03(木) 07:03:09.39 ID:FAcL2q8B0
>>982さん
気にする人は無茶苦茶気にするんで気を付けた方が良いですよ。
口の悪い人もいますので(笑)

あと、ageられた場合、>>1が来たのでは、と思わせる事もあるので以降、気を付けてやって下さい。
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/03(木) 13:06:21.72 ID:ed2K3Im70
>>983さん
わざわざご丁寧にありがとうございます。
以後気を付けます。
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/03(木) 21:20:51.99 ID:O6IxtMkgo
気をつけなくていいから二度と書き込むなks
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/03(木) 22:12:46.24 ID:Mb6i8dADO
かぐら『いいなー、いいなー、ああいうカラフルな食料食べてみたいなー』


クロ「……こっちだって幾分カラフルだぞ?」


ほむら『赤茶色と茶色と鈍い緑色しか見えないじゃないか』


舌打ちもつかず、さして苦言も呈さず、クロはただため息をついて、子猫達の抗議を受け流した。
それは勿論、彼自身もキャットフードとご馳走を見比べて思うところが多々とある事を示している。


向こうで中々の料理を食した事もある上に、正体を知らず自分をただの猫として扱う老夫婦もキャットフードを出した事はない。
こんな、言ってしまえばあからさまな『差』は、クロだって面白くないのだ。


しかし、それでも、これがここの流儀、虎穴に入らずんばなんとやら、そもそも虎穴に入れてもらっている身であれば、さしたる文句も言えない。


クロ「文句言うなっつーの。これがオイラ達のスタンダードなんだからよ」


かぐら『でもー』


それでも、かぐらは不満たらたらだ。
まったく、気持ちは確かに分かるが食うに困らないだけありがたいと思うべきだろうに。
ならば、とクロは詢子あたりに気付かれない程度に意地悪く口を歪ませた。


クロ「残したらダメなんだろ?ママに言いつけんぞ」


かぐら『えっ!?ダ、ダメダメダメ!!ぜーったいダメー!!』


987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/03(木) 22:40:19.35 ID:Mb6i8dADO
脅しをかけた途端に、かぐらは大急ぎでキャットフードに食らいつきはじめた。
子供に対する脅しで親を出せば十分効くというのは本当のようだ。


しかし、ただ言い付けると言っただけでここまでするとは、よほど『ママ』とやらは恐いらしい。
先ほど彼女が話していた通り、きっと食事を残すたびに酷い目にあったのだろう。


それが、今は少し待遇の良い場所にいるものだから、子供本来の堪え性のないワガママが出てきてしまっているのだ。


ほむら『ふー、じゃオレも食うか』


そして、ほむらもまたモソモソと食べはじめた。
流石に、妹分が食べ出した手前、兄としてゴネ続ける訳にはいかなくなったのだろう。
子供らしいが、それで良い。


しかし、これ程色々、チビ共について考えているとまるで自分が──────


クロ(……やめよう。今からそんなん考えてたらジジイみてーになっちまう)


まだ、早い。
かつて自分が出した決断は変わっていない。
『父親』になるには、そういった存在になるには、自分はまだまだだろう。
先は、長い。
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/03(木) 23:05:00.08 ID:Mb6i8dADO
あけましておめでとうございます!


明日から、しっかりと更新を開始していきます。
忙しさに負けかけていましたが、なんとかメドがつきました!


989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 00:39:01.67 ID:kKNA23tY0
あけましておめでとうございます!!!!
待ってました、明日からも頑張ってください!!!
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 11:52:06.32 ID:hor3EHsDO
そろそろ次スレ立てたほうがいいんじゃない?
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 19:54:29.39 ID:aHctTb0DO
作者です。



クロ「魔法少女?」Part2のスレです。


http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/1357296516/l20


一応、ここに遊びのようなものを残して起きます。


992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 20:23:43.19 ID:aHctTb0DO
ある日の夜のお話



まどか「うー、うー、……眠れない」


「緊張するなぁ……、でも頑張らなきゃ。明日、さやかちゃんに会って言いたい事全部言わなきゃ。あぁ、でも怖いなぁ」


クロ「るっさい……。とっとと寝ろ」ゥーンzzz


まどか「もぅ、クロちゃんも寝ちゃうし。でも、私は眠れないし……、こうなったら眠たくなるまで考え事とかしてみよう!」


「───例えば、もしクロちゃんが人間の男の子だったら」


ホワンホワンホワンホワワワーン

まどかの妄想桃色日記

幼なじみとの朝編

まどか「ほらクロちゃん!朝だよ!起きて!!」バサッ


クロ「へっ、は?……布団、布団はどこだ?」ガサゴソ

まどか「二度寝はダーメ」


クロ「あ?」


まどか「朝早いからって怖い顔しないの」


クロ「……んで、テメーがいんだよ」


まどか「クロちゃんの事だから絶対起きないでしょ?パパやママも心配してたし」


クロ「家族ぐるみでいらぬお節介感謝するぜ。じゃ、お休み」


まどか「ってこら!布団引っ張っちゃダメ!……キャアッ!?」ズルッ バターン


クロ「お前の方が引っ張って……おいッ!?」ドスンッ


993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 20:56:58.28 ID:aHctTb0DO
まどか「アイタタタ……、あれ、え?」


クロ「……よう」


まどか「ク、ククククロちゃん!?なんで私の上に!」


クロ「お前、引っ張った。オイラ、バランス崩した。そして、こうなった。分かるか?」


まどか「わ、分かる。分かるけど……」


クロ「……」


まどか「そ、その、顔が近いよ?」


クロ「……ケガはねーか」ポソッ


まどか「へっ?」


クロ「別に、よっこらせと。さぁて、顔真っ赤にした奴に変な事される前に朝の準備をすませるかね」


まどか「へ、変な事なんてしないもん!」


クロ「じゃ、リビングで待ってろよ」スタスタ


まどか「うん…………………よし、行ったよね?行動開始」






リビング


クロ「なんだ、これ」


まどか「その、料理です……」


クロ「料……なんだってもう一回言ってみろ」


まどか「だから、料理……なの。真っ黒でよく分かんないかも、しれないけど」


クロ「あぁ、局地的に夜になってるぐらないの焦げ具合だな」
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/04(金) 21:00:01.67 ID:IwPFjMPZ0
まどかが料理がうまいssみたいことないな……
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 21:13:58.65 ID:aHctTb0DO
まどか「そ、その、パパとね一緒に作ってた時はすごく上手くいってたんだよ?」


クロ「そりゃ、知久が隣にいて上手くできねーのは猿ぐらいなもんだ」


まどか「うっ、そ、それでね。自信もついたから、一人でもやれるって思って、そしたら」


クロ「そもそも、なんで下手くそのくせしてオイラに飯作ろーとしてんだよ。いらねーだろ。そんなの」


まどか「だ、だって、クロちゃんいつも一人だから、ご飯レトルトだけですましちゃうし……、たまにご飯に誘っても来てくれない事もあるし。だから、いつも助けてくれるお礼にって思って……」


クロ「へー」


まどか「でも、ごめんなさい。……こんなのいらないよね。迷惑だよね。本当にごめん。……今から捨てるから、だから」


クロ「ごちそーさん」


まどか「だから……え?」
カラッポ?


クロ「ったくよ。すこぶる不味いぜ」


まどか「……クロちゃん?」


クロ「だから、次は頼むぜ?まどか」


まどか「……うん……うんッ!!」





妄想終了



まどか「悪くない……これは、悪くないよ!!」


まどか「なんだろう。あまりの再現度に我ながら引くよ!」


まどか「そ、その、普段でもやってくれる気もしないでもないけど……、でも、ちょっと、ヘヘヘ」


まどか「て、照れくさくて、もっと眠れない、かなぁ?」
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 21:38:18.74 ID:aHctTb0DO
さぁ、以上です。


たんなる妄想に輪をかけた妄想話なのでこんなもんです。


今日以降は、2スレ目の方に書き込みます!
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 23:05:27.46 ID:Jd/SUArc0
言葉使いや性格も相余ってクロの擬人化した姿が杏子で脳内再生される
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 23:24:18.24 ID:2P2aO/o8o
おつかれ
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 06:57:04.37 ID:jWm2QqaW0
遂に2スレ目突入か。
胸熱だな。
最後の>>1000どうぞ
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/05(土) 08:17:41.70 ID:skF94ZoDO
クロ「1000だ!」
1001 :1001 :Over 1000 Thread
☆.。 .:* ゜☆.  。.:*::::::::::::::::゜☆.。. :*☆:::::::::::::::::: 。.:*゜☆.。.:*
:::::::::::::=:。.: *  ・゜☆  =:☆.。 .:*・゜☆.  。
:::::::::::::::::::::::::.:*゜☆  =:. :*・゜☆.::::::::::::☆
。.: *・゜☆.。. :* ☆.。:::::::::::::::.:*゜☆  :。.:・゜☆.。
::::::::::::::::: *=@☆.。::::::::::::::::::::::::::::::.:*・゜☆    =磨K☆.。
:::::::::::::::::::.:*・゜☆  :. :*・゜☆.::::::::::::::::::::::::::゜☆.
:  =: :   *  ゜☆.。::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
☆.。 .:* ゜☆.  。.:*::::::::::::::::゜☆.。. :*☆:::::::::::::::::: 。.:*゜☆.。.:*
:::::::::::::=:。.: *  ・゜☆  =:☆.。 .:*・゜☆.  。
:::::::::::::::::::::::::.:*゜☆  =:. :*・゜☆.::::::::::::☆
。.: *・゜☆.。. :* ☆.。:::::::::::::::.:*゜☆  :。.:・゜☆.。
::::::::::::::::: *=@☆.。::::::::::::::::::::::::::::::.:*・゜☆    
:::::::::::::::::::.:*・゜☆  :. :*・゜☆.::::
   ::  !ヽ  :
   :     !ヽ、    ,!  ヽ
                 ,!  =]‐‐''   ヽ:
   :   / ´`)'´    _      !、
            lヽ /   ノ    , `     `!:
       lヽ、  /  Y    ,! ヽ-‐‐/          l
.     =@>‐'´`   l   ノ   ヽ_/          ノ:
      ,ノ      ヽ =@           _,イ:
    '.o  r┐   *   ヽ、 ヽ、_     ,..-=ニ_
    =@   ノ       ノヽ、,  !..□ /     ヽ
     ヽ        .ィ'.  ,!    ハ/    、   `!、    七夕に…
      `ー-、_    く´ =@    /     ヽ  
         ,!     `!  l              ヽ、__ノ    このスレッドは1000を超えました。もう書き込みできません。
         l     `! `! !              l
          l  . =@ ,=@ヽ、 、_ ,ィ      ノ               
         l、_,!   し'   l =@  `l     =@               ://vip2ch.com/
1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
遊戯王の不正が明るみに 2chから これはやばいぞwwww @ 2013/01/05(土) 08:06:39.20 ID:faDJaJeK0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1357340799/

4人のAV女優の名前教えろください @ 2013/01/05(土) 04:36:13.71 ID:fQ/TxMI4o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1357328173/

五郎「八十稲羽か……いかにも田舎だな」 @ 2013/01/05(土) 03:47:19.36 ID:rtdePnSZ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357325239/

裏A雑男坂 @ 2013/01/05(土) 01:58:58.94 ID:+SyxKvgYo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1357318738/

赤「肉の塊になりやがれえ!」青「私のコレクションにしてあげましょう」 @ 2013/01/05(土) 01:04:19.26 ID:dGsRqk1E0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357315459/

【初心者だ】部活をつくる【煮るな焼くな】 @ 2013/01/05(土) 01:01:15.19 ID:7skFE8gIO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1357315275/

【神様の名前なんて】コンマでまどか☆マギカ!【誰も知らない】33 @ 2013/01/05(土) 00:58:55.88 ID:uMEt7IMAO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357315135/

ここだけ能力者の集まる高校 さらにコンマゾロ目で異能の力に覚醒247 @ 2013/01/05(土) 00:28:24.22 ID:HBxidA3xo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1357313304/



VIPサービスの新スレ報告ボットはじめました http://twitter.com/ex14bot/
管理人もやってます http://twitter.com/aramaki_vip2ch/
Powered By VIPService http://vip2ch.com/

761.81 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)